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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

~このサイトのご紹介~ 魔性の淫楽への招待状

2026年03月22日(Sun) 21:12:01

はじめにお読みください。
一話読み切りのお話がほとんどですが。
吸血鬼ストーリーといっても。
「他では目にすることはまずないでしょう」
そう断言できるほど?変わった世界のお話なので・・・。

【付記】
弊ブログに登場する人物・団体はすべて架空のものであり、実在するかもしれない人物・団体とは何の関係もありません。
(2018.2.12念のため追加しました)

カテゴリの解説

2025年08月14日(Thu) 19:11:24

ひと言で吸血鬼ものの短編といっても、それこそいろんなお話が混在していますので。
カテゴリをちょっと、整理しました。
お話に共通のおおまかな設定については冒頭↑の「招待状」に書かれてありますが。
ちょっとだけ、付け加えておきます。

前作のかいせつというか独り言というか。

2019年10月18日(Fri) 11:41:45

人さまの作品に触発されて描くことは、めったにありません。
作品というものにはそれぞれ強烈な主張や個性があるので、
真似ようとすればそれに引きずられるか、それ以下のものにしかならないケースが多いと思います。
二次創作で成功している人って、本当にすごいと思います。

またそもそもが、柏木ワールドと似たような空間を描いている作品というのは、私の知る限りでは皆無だと思います。
(pixivにいらっしゃる霧夜さまは、時おり柏木ワールドを二次元世界にしてくださいます。まあなんとありがたい♪)

まあそういう意味では良くも悪くも弊ブログのオリジナリティは高いのですが、
それでもやっぱり、なにかに触発されて描くということが、まったくないわけではありません。
それはふと耳にした、たった一言の言い回しだったり、ふと目にしたドラマのワンシーンである という意味では、
やはり創作というものが何物かからの影響力から全く自由であるとは言えないと思います。
もちろん、すべてを換骨奪胎してしまって、まったくの柏木ワールドに作り替えちゃうのは、いつものことですが。


先ほどあっぷをした下記のお話は、比較的人さまの作品に触発された度合いが大きいかもしれません。
それは、先日初めて目にした、↓のドラマです。

「中央流沙」
https://www.youtube.com/watch?v=RDAU2JuSnu4&t=66s
(この大作と私の描いたヘンなお話とは本来なんの関係もございませんので、原作者のお名前等詳細はリンク先をたどってみてください)

以下は多少のネタバレを含みますが、
官庁の汚職にまつわる疑惑を黒々しく描いた、この作家さんとしては珍しくバッド・エンドに近いストーリーです。
ドラマだけがそうなのか?と思ったら、どうやら原作もそうらしい。ちょっと意外でした。

特に巨悪に巻き込まれ自殺に見せかけて殺害された役人の妻のひょう変ぶりには、ちょっとぞくっと来るものを感じます。
いかにも質素な暮らしぶりの嘆きの未亡人が一転して、
自分の夫を罠にかけたかもしれない、年老いた巨悪の親玉と、おそらくそれとは知らず寄り添うようにして官庁に現れるというシーン。
身に着けた真っ赤なスーツに、セットしなおした艶々した黒髪に、
二人の関係を連想させる何かがあると感じるのは、決して読み過ぎではないはず。
未亡人の暮らし向きも、息子の成績もよくなり、そこだけは遺影の中の人の希望どおりには、いちおうなっている。
先ほどバッド・エンドと描きましたが、見方によっては不思議にハッピーエンドにもなっている。
巨悪が一人の人間の人生を呑み込んだあともまた、今までと同じ日常が、なにもなかったかのようにくり返されてゆく というあたりは、柏木としてもツボでした。

私のお話のほうはというと、このドラマの社会性というものには一切目をつぶり、ひたすら未亡人の行く末だけに狙いを定めています。
まあいつものパターンといえばそうなのですが、夫が一時的にしても吸い殺されてしまうというのは、柏木ワールドでは異色かもしれません。
ここは、「夫を殺したかもしれない男と萌えちゃう♪」というプロットを、しっかり頂戴しました。^^

ドラマでは、くだんの未亡人は、一連の疑惑がもみ消されたことを、
「でも容疑は晴れたんでしょう?捜査は中止なんだから」
と、他人ごとのようにたったひと言で片づけてしまっています。
亡き夫を軽んじているわけでは決してないのですが、完全にアチラ側に取り込まれてしまっている。
ゾクッと来るくらい不気味なものを感じさせる場面です。
この辺りは、実際には彼女は事件の真相を知らないわけですから、
ある程度状況を理解したうえで吸血鬼の愛人となってゆく市間々和代とは似て非なる展開というべきでしょうか。

柏木オリジナルとしては、
ヒロインである人妻に黒のストッキングを穿かせる(喪服をまとわせる)というそれだけのためにダンナを殺める――という、
本末転倒過ぎるやり口にも、吸血鬼のフェチぶりを込めてみました。
物堅いご夫婦は、妻の、ないし自身の浮気を現実なものとして考えることができません。
そんな彼らを夫婦ながら堕とすには、ご主人にはいったん消えてもらい、奥さんを未亡人にしたうえでイタダいて、
あきらめがついた?ないし納得がいった?時点でご主人を生き返らせて、
不倫女房と寝取られ亭主のカップルに作り直す・・・というストーリーです。
情事の時に裂かれた服をお布施がわりにする という上流婦人たちのくだりも、ちょっとこだわって挿入してみました。

隣室の奥さんを巻き込んでしまうお話もまた、柏木ワールドならでは?のオリジナルです。
この奥さんも、実はドラマに登場しています。
やはり質素で物堅いこちらのご夫婦の名誉のために言い添えると、ドラマではもちろんこんなことにはなりません。
ただしドラマでは、ご主人も一連の疑獄事件に巻き込まれかかるので、
へたをすれば殺害された隣室のあるじの二の舞い、
奥さんも巨悪の二号か三号にされてしまう危険性を孕んでいたのは確かだと思いますが。

ドラマの話と柏木ワールドと、話題が行ったり来たりの読みづらい文章になってしまいましたが、
さいごにひと言言い添えると、柏木が視たドラマは、昭和版です。
家のなかでもスカートを着けている主婦、ハイソックスをひざ小僧まで伸ばして履いている女の子、
そんな端々の情景が、それ以降のものとは比べものにならないくらいの奥深い風情を添えているように感じます。

吸血マンション ~壱号室~ 住人・市間々茂樹 和代 栄樹

2019年10月18日(Fri) 09:43:28

「きみの奥さんに、黒のストッキングを穿かせたい」

男はそういって、ニッと笑った。
たちのよくない笑みだった。
「今夜かあす、黒のストッキングを穿いた脚を咬みたいのでね」
そういって笑んだ口許からは、人間離れして尖った犬歯が覗く。
彼はこの街にいくたりも棲息する吸血鬼のひとりだった。

吸血鬼と差し向かいになっているのは、背広姿の中年男性。
いかにも物堅い勤め人という身なりだった。
じつは吸血鬼もまた、まったく同じくサラリーマンの格好をしている。
この街の怖いところは、そうした吸血鬼が、一般人と見分けのつかない状態で、日常生活にまぎれ込んでいることだった。

「エ・・・黒のストッキング・・・ですか。それに・・・咬みたい・・・と?」
中年男性は、困惑しているようだった。
傍らにある彼のデスクは、ほかの者とは別格に、部屋の中央に前向きにしつらえてあって、
部下たちの横顔を見おろしながら指図する位置にあった。
デスクのうえには昔の事務所らしく、横長の名前入りのネームプレートがおかれてあって、
「秘書室 審査役 市間々茂樹」
と、肩書と名前とが二行に分かれて書かれてある。
この事務所ではナンバー・2の地位を帯びたその市間々氏が、いまはだれもいない真夜中の事務室で、吸血鬼相手に当惑している。

「きみには若い女の部下をなん人も紹介してもらって、ずいぶん面倒をみてもらっている。感謝しているよ」
吸血鬼はもの柔らかにいった。
「おかげできみの部下は一人残らず、血を吸わせてもらった。
 けれどもまだ、きみの紹介できる女で、まだその首すじにわしの牙を試しておらぬおなごがいる。
 ほかならぬ、きみの奥さんだ。わかってくれるね?」
「あ・・・はい、家内をお望みでいらっしゃいますか・・・」
「そう、それも黒のストッキングを穿かせたい」
「わたしから、よく言い含めておきます」
「それだけでは足らぬ」
「と、おっしゃいますと・・・?」
「あすの夜は、きみの通夜だ。奥さんには、本物の未亡人になっていただく」
「えっ」

自業自得といえばそうだった。
彼は職場での立場を良いことに、役目柄懇意になった吸血鬼のために、部下の女性を引き合わせ、
一人また一人と、その毒牙にかけていったからだ。
彼女たちはいまでも健在で、ただし以前よりは少しばかり顔色を悪くして、感情を消した顔つきで勤務を続けている。
市は、先年から、吸血鬼と人間との共存をうたい、両者の和合を求める政策を打ち出していた。
どこの会社も一定数の吸血鬼を引き受けて、女性社員や社員の家族の血液を、定期的に提供するようになっていた。
管理職としてはかなりグレードの高い市間々は、むしろその役割を積極的に引き受けて、
社員が退勤した事務所に独り残された女性社員が襲われる光景を愉しむのを日課としていた。
彼女たちは例外なく、声もなく追い詰められて首すじを咬まれ、
眉をピリピリとひそめながら、制服のブラウスを朱に染めてゆき、
床に倒れ伏してしまうと今度は、色とりどりのストッキングを咬み破かれながら、ふくらはぎから吸血を受けるのが常だった。
吸血鬼は、ストッキングを穿いた女性の脚に咬みついて吸血することを好んだのである。

それが、とうとうこんどは、妻の番である。
あるていど覚悟はしていたし、妻にも言い含めてはあった。
妻もまた、仕方のないことですから、なにも感じたりはいたしませんから、と、夫に応えていた。
なにも感じない――
有夫の婦人(ないしはセックス経験のある女性)が吸血されるとき、決まって性交渉を伴うことを言外に秘めていた。
すでにもうじき中学という息子がいる齢の妻であったが、まだまだ若さも色香も秘めており、
年頃になりかけた息子の目のないところでの夫婦の営みも、まだ週に1、2回は遂げられていた。
無意識にか意図的にか、市間々は職場に出没する吸血鬼の注意を自分の家族から遠ざけて、
もっぱら若い女性社員にのみ注がせるように仕向けていた。
しかしそれももう、むなしい努力におわった。
「わしのために、いちばん美味しいねたをさいごまで取っておいてくれたのだろう」
どうやら目の前の吸血鬼は本気でそう思っているらしく、良く輝くその瞳は、感謝と好意に満ち溢れていた。
もはや、逃れるすべはなかった。

けれどもーー
かれの言った「本物の未亡人」という言葉に、市間々は引っかかりを感じた。
「そろそろ交代の時期だということだよ、市間々くん」
吸血鬼はまるで、市間々の上司のような口調になって、市間々との距離をさりげなく縮めた。
市間々は吸血鬼ににじり寄られたぶんだけ無意識に身を引くと、
「いったい、どういうことなのですか!?」
と、やっとの思いで訊いた。
「言ったとおりの意味だ。きみには死んでもらう。そして明日からはわしが、きみの奥さん―和代さんだったな――
 その、和代のあるじとなるのだ」
人の妻を呼び捨てにしておごそかにそう宣言すると、吸血鬼はさらに市間々との距離を縮めた。
市間々は吸血鬼が、女だけではなく男の部下までも襲い、その妻や娘、婚約者を次々とモノにしていることを知っていた。
男の血も吸うけれど、あくまでも養分の摂取としての意味しか持たない。
そうして獲られた養分は、その妻や娘を襲ってねじ伏せるときのパワーとなって還元される。
追い詰められた壁際にギュッと抑えつけられて、この力はいったいどこから由来するのかと、市間々はふと考えた。
昨日襲われた桜井さゆり君からか。彼女はまだ新人だった。
そういえば今朝、事務所にふらっと現れたとき、ベテラン女性の鷺沼加代子もまた、別室に連れ込まれていた。
お局様でとおった鷺沼加代子が昼前に早退したくらいだ。かなりの血液を摂取されたに違いない。
やり手でっ通った加代子の、自信に満ちた日頃の笑みが、市間々の脳裏を刺す。
目のまえに迫った牙の持ち主が吸血鬼なのか、加代子なのか、ふとわからなくなった。

「お願いです、命はお助けを。いままでだれの命もお取りにはならなかったはず。
 家内との関係ですか?わたしはかまいません。家内を貴男に犯されても我慢します。黙認します。
 家内にもよく言い聞かせてあるんです。
言い募る市間々の様子を、吸血鬼は明らかに愉しんでいた。
「さすがに根回しの良いことだね、審査役殿」
吸血鬼は市間々をからかいながら、むき出した牙を市間々の首すじに深々と埋めた。
「ぎゃあっ」
背骨が折れるほどの抱擁と、牙の痛みとが、同時に市間々を襲った。

寄り目になってぶっ倒れた市間々の死に顔は、どこかユーモラスでさえあった。
吸血鬼はせせら笑いながら、呟いた。
「真面目なきみに、自分の妻を抱かれる苦痛など、与えたくなかったのだよ。
 それに奥さんだって、きみがいながらわしに抱かれるなどという芸当のできるタマではなかろうに」

――――――

慌ただしいまる一日が、やっと過ぎた。
きのうの朝は、夫の死体が事務所で発見されたという一報に驚かされて、
そのあと遺体との対面、吸血行為による失血症という診断書を見せられた。
弔いの支度一切は、夫の勤め先がめんどうをみてくれた。
「わが社で死人が出たのは初めてですな」
だれもがそんなふうに、まるきり他人ごとのようにそう言い交わしているのが、
麻痺しかかった鼓膜にも響いてきた。
一連の弔いは慌ただしく過ぎていって、夫は当地での最近の習わしとして、土葬に付された。
「そのうち、地面の下から奥さんに逢いに、起き上がってくるかもしれませんよ」
夫の上司の秘書室長は、穏やかな口調で和代にそういった。
慰めているのか、世間話をしているのか、単なる冗談なのか、よくわからない口調だった。
そして、本堂で貴女に話のある人がいると、室長は告げた。
息子さんは疲れているだろうから、先に帰らせておやりなさい、と、室長は忘れずにつけ加えた。

息子の栄樹を先に帰らせると、和代はさっきまで弔いが行われていた本堂に戻っていった。
すでにすべては片づけられたあとで、がらんどうの本堂がそこにあった。
相方が待っているというのは、本堂そのものではなく、そのわきの小部屋のようだった。
そのひとつのふすまが、和代を誘い込むように、半開きに開かれている。
その半開きのふすまの間から、黒の紋付を着た婦人が一人現れ、
悩まし気な顔つきをしながら襟足を整えると、足早に立ち去っていった。
住職の奥さんかな、と、和代はおもった。
入れ違いになるのもなんとなく憚られて、和代はひと呼吸おいてから、ふすまの向こうへと、黒のストッキングの脚を踏み入れた。
和代が気づかいしたほんのひと呼吸のあいだ。
小部屋にいた吸血鬼は、相手をしてくれた住職夫人から吸い取った血液を、
彼女からせしめたハンカチで綺麗に拭い取り、なに食わぬ顔つきに立ち戻っていた。

「このたびはまくとに・・・」
型通りのあいさつを、和代は虚ろな気分で受けた。
ご主人とは日頃から懇意にして頂いていたと称する目のまえの男とは、面識がなかった。
だから、彼の発する紋切りで長々とした挨拶から早く解放されたいという想いしか、湧いてこなかった。
男のほうでは、まるで真逆の気分だった。
たまには熟した女も悪くはない。
きのうまで女の部下をあっせんしてくれていた便利な相方の女房は、
彼の無慈悲な瞳には、ただの獲物としてしか映らなかった。
直前に住職夫人の血を味わったのも、知人の妻であるきょうの獲物を、余裕をもって長時間いたぶりたいがためだった。
決して、性急な食欲を見せつけて、初めての相手をうろたえさせまい・・・などという気づかいから来るものではなかったのである。

「ところで、ご主人から聞いていなさるとは思うが、わしは吸血鬼だ」
えっ・・・?
女がうろたえたのを、吸血鬼は敏感に察した。
そしてこの女が、自分のことをあまり亭主から聞かされていなかったのを悟った。
ゆくゆくは自分の妻の番がまわってくる・・・とは理解していながらも、まだまだ先のことだと思い込んでいたのだろう。
哀れなやつ。
土の下に埋められた男を思いながら、吸血鬼はほくそ笑んだ。
「そういうわけで、きょうはあんたの血を愉しませていただく」
女がうろたえて座布団のうえで後じさりするのと、男が腰を浮かすのとが、同時だった。

ああーッ!
半開きになったふすまの奥から、悲痛な叫びが本堂にこだました。
けれども、住職夫妻をはじめ、寺に残っているであろうだれもが、哀れな犠牲者に応じることはなかった。

初めて咬まれた首のつけ根が、じんじんと疼く。
その痺れるような疼きは、理性までをも痺れさせてゆくようだと、和代はおもった。
撥ねた血がかろうじて、喪服のワンピースの襟首を浸す一歩手前でとどまっていた。
和代は傍らに転がったハンドバッグを開けて、なかからハンカチを取り出すと、
吸い残された血潮をせわしなく拭き取った。
そのあいだに、男は和代の足許にかがみ込んでいた。
なにをされるのか。
考えている余裕を、相手は与えてくれなかった。
ぬるっとした生温かい唇が、ストッキングのうえから吸いつけられるのを感じた。
あ・・・!嫌ッ!
潔癖に吊り上げた眉がピリピリと震えるのを、やつは面白がって視ている。
それが、ありありとわかった。
男はいったん離した唇を、ふたたび足許に這わせてきた。
今度は、これ見よがしに、ねっちりと、まるでストッキングの生地の舌触りでも愉しむかのように、なすりつけられてくる。
な・・・なんてことを・・・
和代はうろたえた。
まさか、主人を襲ったのも、このひと・・・?
かすかな疑念が鎌首をもたげた。
それを封じるかのように、こんどは上体に覆いかぶさってきた男の呼気が、和代の唇をふさいだ。
うっ・・・
むせ返るような男の匂いに、嫌悪の情が電流のように身体の芯を貫いた。
「はは、そう嫌がるものではない」
男は余裕たっぷりに、きょうの獲物をたしなめた。
「おやめになってください!夫を亡くしたばかりですの」
「存じておる。ご主人とは懇意の仲であった。わしも残念でならぬ」
「まさか・・・まさか・・・主人を殺めたのは貴男様では!?」
「だとしたらどうする」
「そんな・・・そんな・・・」
「安心せよ」
男は和代の疑念を否定も肯定もせず、ただひたすらに、女の唇を賞玩した。
「おやめになってください!」
和代は唇を振り放すようにして、叫んだ。
助けは、どこからも現れなかった。
どうしても、自分ひとりの力で、この男と話をつけるしかない――そう自覚すると和代はいった。
「どうすればお気が済まれるのですか」
「いましばらく、愉しませていただく」
男はみじかくそう告げて、なおも和代の唇をいたぶり、喪服のワンピースをこともなげに裂き散らすと、
あらわになった胸元を隠そうとする手を払いのけて、乳房をもてあそび、乳首を口に含んだ。
「嫌!嫌!嫌!」
和代はあくまでも、抗った。
夫と自分自身の名誉を、なんとしても守り抜かなればならないと思った。
けれども、それを独力で?圧倒的な吸血鬼の本気のアタックを、しのぎ切れるとでも思って?
自問自答しながらのせめぎあいが、しばらくつづいた。
「ご夫人はなかなか手ごわい、貞操堅固でいらっしゃるのだな」
男は、和代を抑えつけながら、いった。
「お許しください、主人のお友達なら、主人に恥を掻かせるようなことを・・・よりにもよってこのようなところで・・・」
歯を食いしばりながらも、涙ひとつ見せない和代を、吸血鬼は立派だと思った。
たぶん、夫と同じくらい生真面目で、責任感の強い女なのだろう。
やはり、夫が存命のまま襲うわけにはいかなかったのだ。わしのしたことは正しかったのだ。
吸血鬼は独り合点でそう思い、和代を力づくでねじ伏せつづけた。
再び首すじに刺し込んだ牙が、皮膚を破り、奥深く埋め込まれ、さらに強いほとびを帯びた血潮を、どす黒く噴き上げさせる。
ごくっ、ごくっ。ごくっ・・・
40前の主婦の血液が、貪婪に摂取されていき、和代の控えめな目鼻立ちに、死相が漂いはじめた。

和代は先に家に帰した息子のことを思った。
来年は、私立の中学を受験させようとしていた。
田舎町としては名門で、そこの学校に子どもを通わせることは、当地の上流階級の親たちにとっては、ひとつのステータスになっていたからだ。
夫はその姿を見ることはできない。ことによると私も、夫と同じ目に遭わされる。
そんなわけにはゆかない――妻であることは喪ってしまったとしても、母親であることだけは・・・
和代はあお向けに抑えつけられた格好のまま、涙にぬれた瞳を見開き、目のまえに息荒く迫った男をまともに視た。
「御意に従います。ですから、無事に家に帰してください」

――――――

家に帰りついた時には、疲れ切っていた。
幸い息子の栄樹は勉強部屋にこもっているらしく、玄関にも居間にも、姿を現さなかった。
住職夫人が喪服の着替えを用意してくれた。
きちんと畳まれた洋装の喪服を両手で捧げるように携えてきた夫人は、表情を消して、
「このたびはお目出度うございます」
と、堅い口調で和代に告げた。
なにがめでたいものか、と、和代は思い、住職夫人を睨みつけた。
けれども彼女はまったくどこ吹く風で、和代に睨まれていることさえ、気づいていないふうだった。
つい先刻、和代が犠牲となる直前までの赤裸々な情事の痕跡など、さらに押し隠してしまっていた。
このひとはわたしに、吸血鬼との情事のあとのあり方を無言で訓えようとしている――
和代はなんとなく、そう感じた。
引き裂かれた喪服は、吸血鬼が戦利品としてせしめていった。
襲った女性の衣類を戦利品にして、コレクションにするのだという。
和代はその嗜好に言い知れぬいやらしさを覚えたが、住職夫人のまえでそれをあらわにすることはなかった。
無言のまま立ち去ろうとする和代に、住職夫人はいった。
「その喪服は、差し上げます」
和代がびっくりして目を見開いていると、さらにたたみかけるように、いった。
「今度お越しになる時も、着替えは用意しておきます。お代はお受けするわけにはまいりませんので、お気遣いなく」
市長夫人や院長夫人といった名流の夫人たちがこの寺を訪れるときには、
着衣は自前で用意して、お布施と称して気前よく裂き取らせている――
そんなうわさを聞いたのは、この出来事が起きてからしばらく経ってからのことである。

夫婦の寝室の畳に腰を下ろすと、疲れがどっと出た。
吸い取られた血液の量も、ふつうではなかった。
それでも気丈に、鶴のように気高く顔をあげて帰途をがんばり通したのは、女の意地でもあったのかもしれない。
けれどももう、それも底をついた。
夕餉はすでに息子といっしょにお寺で澄ませてきたので、きょうのことはもう何の気づかいも要らない――
そう感じるともう、立ち直ることができなかった。
和代はほんの少しだけ泣き、それから身づくろいを済ませて、そうそうに布団に身を横たえた。


―――

2日後。
和代の姿は、ふたたび寺にあった。
息子には、初七日の打ち合わせだと言い置いて出てきた。
夕食の用意はしてきたので、きっと息子は自分とはろくろく口も利かずに、夜更かしをするか寝てしまうかするのだろう。
気難しい年頃となった息子はもう、母親とは距離を置きたがっていた。
それはいまの自分にとっても、好都合だ・・・そう思いかけて、自分の想いのはしたなさに、和代は人知れず赤面した。
これから、吸血鬼に抱かれるというのに。
夫が亡くなった、すぐあとだというのに。

脚にまとう黒のストッキングが、どのようなあしらいを受けるのか、もはや彼女にはよくわかっていた。
あのとき舌でくまなくいたぶられて、いびつによじれ、ふしだらに波打ち、他愛なく引き剥がされていった。
その行為ひとつひとつに滲んだあの執拗な情念が、いまとなっては、いとおしく感じられる。
体内に脈打つ血液に、牙から分泌された毒をまぎれ込まされたから――
そうとはわかっていても、いまはこの「いとおしさ」を大切に考えよう。
和代はそう割り切ることにした。

「お調べが済んだそうですね」
「ああ、まったくの濡れ衣だった」
吸血鬼はおうむ返しにこたえた。
まるで夫のような口ぶりだと、和代はおもった。
「お調べ」とは、夫に対する殺害の容疑である。
身近にいた吸血鬼として一応疑われ、取り調べを受けたのだ。
取り調べそのものは簡略で、彼の言はすべて受け入れられたという。
「嫌疑が晴れて、ほっとしている。あんたも、相手が夫の仇敵では、気まずいだろうからな」
吸血鬼はにんまりと笑った。
「だいじょうぶですよ」
和代もまた、にこやかに応じていた。
夫の生前のころの快活さを、早くも取り戻していた。
「かりに貴男が犯人でも――」
和代はいった。
「私、証拠を隠滅してでもあなたのことを庇いますから。あなたのものになれて、本当に嬉しい」
和代はそう口走りながら、いまのは自分の本心なのだと感じた。
男が一昨日と同じように足許にかがみ込んできて、黒のストッキングの脚をいたぶり始めても、むしろ積極的に応じていった。
もはやそれは、夫を弔うための装いではなく、新しい情夫に媚びるための衣装になり果てていた。
夫のための喪服は、すでに一昨日引き裂かれて、情夫のコレクションに加えられてしまった。
同じように彼の情婦にされていった女たちの服と、同じように。
私はしょせん、ワン・オブ・オール。
けれどもそうだとしても、後悔はない。
いまこのときだけでも、私は娼婦として、彼の腕の中で生きる。
仮に彼が、夫の仇敵でも構わない。
あなた許して。
こんないけない私を、許してくださいね。
でも今の私は、この人に辱められることが歓び。
貴方の家の名誉を汚すことが、無性に嬉しいの――

――――――

三か月ほど経ったとき。
人々はあの日弔いがあった事実を忘れた。
和代の夫である市間々茂樹が、ひっそりと帰宅したからである。
どこから戻ってきたのか、質そうとするものはいなかった。

未亡人になって吹っ切れた妻の和代は、すでに吸血鬼の愛人となっていた。
生真面目な彼女にとってみれば、夫のいる身であるうちには、不貞など思いもよらぬことだったが、
夫の生前に忠実な妻であったこの女は、今までと同じくらい熱意を込めて情夫に仕え、献身的に尽くすようになった。
再び生きることを許された夫は、以前と同じように勤務に戻った。
表向きは謹厳な勤め人だったが、
そのいっぽうで、自分が公務のなかで懇意にしている人が妻を気に入っていることを誇りに感じていた。
夫を迎えた和代は許しを請い、夫は妻の過去の不貞を受け容れ、明日からの交際までも認めたのだ。
いまでは彼は、息子ともども、妻の情事を盗み見ることに愉悦を憶えている。

夫を一時的に死なせることで、吸血鬼は一家を従順なしもべとして作り変えたのである。

――――――

初七日のあと。
和代は参列してくれた夫の同僚の妻である丹川めぐみを家に招んでいた。
丹川家は和代の住むマンションの二号室の住人でもあった。

法事に出る前の朝。
和代は夫婦の寝室で、吸血鬼と共にしていた床から起きあがると、
恋人同士のように抱き合ってから喪服に着替えた。
「いけない、これからお式だというのに――」
制止する和代のしぐさにむしろそそられた吸血鬼は、彼女の腰に巻いている漆黒のスカートの奥を、粘液で濡らしてしまっていた。
「住職の奥さまとも、まだこんな関係を?」
やんわりとした和代の責めには乗らず、吸血鬼は訊いた。
「なにかたくらんでいるな」
「エエ、熟女の血はお好きでしょう?」
「よくわかっているだろう?」
「ではもうひとり、ご紹介しますわ。私に心当たりがありますの。お隣の奥さんです。
 きょうのお式では、私のすぐ後ろに座っていますから、お分かりになりますわ」

法事のあとの疲れをみせない和代のことを、二号室の主婦である丹川めぐみは訝しんだ。
このところの和代は、やつれを見せないばかりか、夫がいたときと変わりないくらい快活に振る舞うようになった。
決して無理をしているわけではないらしい。
けれどもその快活さの源泉がどこにあるのか、めぐみには見えていなかった。
和代の首すじにくっきりとつけられた、二つ綺麗に並んだ咬み痕は、
このごろお嬢さんみたいに肩に伸びやかに流された黒髪に、すっかり覆い隠されていたからである。

「このたびは主人のことですっかりおせわになってしまって・・・ですからきょうは貴女をねぎらいたかったの」
和代の口許に泛ぶ不吉な薄嗤いをそれと予感しないまま、めぐみはすすめられた座布団に腰を下ろした。
喪服のスカートのすそから覗くふくらはぎは、たっぷりとした肉づきを持っていた。
脛の白さが黒のストッキングの薄い生地に透けて、しなやかな筋肉の起伏を微妙な濃淡で彩っている。
――あのひと、満足できそう。
和代は親し気な笑みに隠して、ひそかにほくそ笑む。

十数分後。
「あ、あァーッ!!」
微かな悲鳴が和代の鼓膜を小気味よくつんざき、やがて語尾を弱めてかき消された。
そしてその声は、隣室で母親の帰りを待つ少女の耳には、届くことがなかった。

吸血鬼たちの”前世”

2019年10月06日(Sun) 08:04:34

自身も首すじから血を流している吸血鬼――見かけたことはありませんか?
そういうシーンを目にするとき、決まって想像するのは、
「彼(彼女)が人間だった時には、どんなふうに襲われたのだろう?」
という点です。

もともと彼(彼女)は人間だったはず。
そして喪われた血液を再びわが身にめぐらせるため、今度は夜な夜な血を求めて徘徊するように――

かつて人間だったとき、どんな想いで血を吸われたのか。
いま吸血鬼となって人間を襲っているとき、どんな想いで相手を愉しんでしまっているのか。
そしてそのとき襲われている彼(彼女)は、どんな想いで血を吸い取られていったのか。

”想い”と”想い”とが交錯する瞬間。
そういうものを描いてみたいと、非常にしばしば思います。
「これぞ!」と思えるものはまだ、描けておりませんが。。。

え?
襲うときには獣になっていて、相手のことなんか考えていない?
もちろん、そういうお話のほうが多いのです。
ココでは、襲うほうと襲われるほうとが、お互いコミュニケーションをとりながら、
襲ったり襲われたりしますので・・・(笑)

樹に縛りつけられた某夫人の伝説。

2019年10月06日(Sun) 07:44:39

「太さがちょうどいいのかなあ」
公園の樹の幹を抱きつくようにして抱えながら、ケイタはいった。
この樹は、近所では、

「結わえられたご婦人の樹」

と、意味ありげに呼ばれていた。

かつて某夫人がこの公園で吸血鬼に襲われて生き血を吸い取られたうえに、この樹に縛りつけられて犯されたのである。
それに――
ケイタの傍らにいる妻の美紀子が同じ目に遭ったのが、つい先週のことである。

先月引っ越してきたばかりだった。
ケイタの実家に同居したがらなかった妻との妥協点が、この街への移住だった。
街に住むこと自体には、美紀子は異を唱えなかったのだ。
「吸血鬼の棲んでいる街だよ?怖くはないの?」
夫にそう水を向けられても、
「だってあなたも此処で育ったんでしょ?」
というばかりだった。

移り住んでからひと月ほどの間は、なにごともなかった。
けれども、やっと落ち着いた今時分になって、ケイタの日課である夕方の散歩中、公園で吸血鬼に遭遇したのだった。
気絶寸前まで血を吸い取られたケイタは自宅に電話をかけさせられた。
「この身体じゃ家までたどり着けないだろう。奥さんを呼びなさい」
吸血鬼の言い草の裏の意味を知りながら、ケイタは家に電話をかけていた。
「少し時間がかかってもいいからさ・・・よそ行きのスカートにストッキング穿いてきて」
意味ありげに告げるケイタは、美紀子が危険を感じてこの場に姿を見せないことを半分願った。
けれども美紀子は落ち着いた物腰で公園に現れたし、
お約束通りに?夫の血を吸った牙を白い首すじに突き立てられて、うら若い血を吸い取られていった。
男はケイタに、
「すまないね、でもこれも何かのご縁だと思ってもらいたい」
といいながら、ケイタが昏倒しているのをいいことに、
失血でふらふらになった美紀子を目の前の樹に縛りつけて、スカートをたくし上げていった。
ひざ小僧の下までずり降ろされたストッキングのふしだらな引きつれが、いまでもケイタの網膜を狂おしく彩っている。

旧知の吸血鬼と再会したケイタは、久しぶりに血をごちそうした。
それから、妻を紹介したいといって自分から呼び出して、美紀子の血も吸い取らせた。
夫の幼なじみの牙にみせられた美紀子は自分から願って、ブラウスを剥ぎ取らせて、
夫の前での不倫のセックスに耽った。

いまでは、そういうことになっているらしい。
夫婦ともに嫌がっていないことに、それから毎日のように、逢瀬はくり返された。
貧血で体調が思わしくない日でも、不倫セックスだけは、夫の同席の上で続けられた。
「あいさつみたいなものだからネ」
吸血鬼はそううそぶいたが、ケイタもまた美紀子に「彼がきみにあいさつをしたがっている」といって、
妻を公園に連れ出していた。

「でも某夫人の話って、どうしてみんな知っているのかしら」
美紀子がいった。
意外な質問にケイタは小首を傾げながら、
「さあ・・・自然に広まったんじゃないかな?
 人の口には戸が立てられないものだからね。
 当人がひた隠しにしていても、広がってしまったんだろう。
 考えてみれば、その某夫人も気の毒なことだね」

ケイタはふと思った。
この樹に縛りつけられて犯されたという某夫人は、いまでもこの街にいるのだろうか?
悪い評判が経って好奇心の満ちた視線にさらされて、耐え切れずに人知れず街を去ったのではないだろうか?
たしかに、夫婦ながら吸血鬼に襲われた者は、この街にはとても多い。
奥さんと吸血鬼がそれをご縁につき合い始めて、それをご主人が黙認したりいっしょに愉しんだりしているケースも、とても多い。
けれども、樹に縛りつけられて・・・という”伝説”には、猟奇的な、背徳的な香りがぷんぷんと漂っている。
先週この樹に縛りつけられて犯されたばかりの妻をこの公園に連れてきて、しゃあしゃあと散歩などしていることを棚に上げて、
ケイタは恥じて姿を消したであろう某夫人のことを思ってひとしきり嘆いた。

ばかね。
傍らで美紀子がクスッと笑った。
「なんでもわかっているような顔しちゃって、やっぱりあなたは女の気持ちがわかっていないのだわ」
ケイタはあわてた。
美紀子がこういう含み笑いを浮かべて反論するときには、決まって言い負けてしまうからだ。
「そのひとね、きっと自慢したんだと思うの」
小づくりな赤い唇から洩れた囁きは、意外な説を唱えはじめた。

樹に縛りつけられて犯されちゃうなんて、それは羞ずかしいことよ。
お外で、だれが視てるかわからないでしょう?
それに、こっちのつごうも考えないで、力づくでモノにされちゃうわけだから。

ご主人だって、某夫人に求婚したときは、たいへんだったはずよ。
結婚の承諾をもらうまでには、映画に連れて行ったり、美術館にお誘いしたり、
高級レストランでごちそうしたり、色々だったと思うの。
でも、一生一度しかしないような努力を重ねてようやく勝ち得た奥さんの身体を、
行きずりの吸血鬼に自由にされちゃうわけですもの。
悔しかっただろうなー。
でも、自分のたいせつな奥さまを無償で提供しちゃえるというのは、ご主人とその吸血鬼とは、よほどの関係だったと思うの。

某夫人はそうしたこともすべてわきまえたうえで、その吸血鬼とお付き合いを始めたんじゃないかしら。
だから、浅はかに自慢したのではなくて、いろいろな意味が込められていると思うの。
もしかするとそれはご主人に対する怨みかもしれないし
――でも怨みだけだったら、離婚しちゃうかもしれないわね――きっとそうじゃない――
むしろ、結婚しながら浮気をつづけて、意趣返しをしようとしたのじゃないかしら。
ダンナの前でのセックスで、吸血鬼もダンナのことも満足させながら、ダンナに黙って秘密の逢瀬も愉しんだのじゃないかしら。
それをだれにも言わずに黙っているなんて、愉しすぎて考えられなくて。
そのうちに、あなただけに教えてあげるわねって、ごく親しい人にだけ打ち明けるようになって。
そのうちだんだん慣れてくると、「あなただけ」の「あなた」がどんどん拡大していって、
とうとう周りの人みんなが知るようになったんだわ。
だから公然の秘密みたいになって、「ご主人も嫌がっていないみたい」となって”事件性”が消えちゃうと、もうだれも話題にしなくなったのだと思うの。
きっと某夫人のご主人も含めて、みんな知っているのよ。
某夫人がだれなのか――
そう・・・たぶん知らないのは、あなただけ――

え?

ケイタは耳を疑った。
ぼくだけが知らない??
某夫人って、だれのことだ?
混乱するケイタをまえに、美紀子は無慈悲なまでによどみなく、話をつづけた。

あなたのお母さま。

ケイタは愕然とした。

初めてわたしが襲われて、ぼう然自失になって家に戻ったとき、たまたま家の近くにいらしてて、
ブラウスが破けたりスカートに泥が撥ねていたりしたのをご覧になって、すぐにお察しになったのね。
「あなただけには話しておくわ」って、ご自分が襲われたときの出来事を、こっそり聞かせてくださったの。
「ついでにあの子にも話しておいて頂戴」って、お願いされたわ。あなた知らなかったのね。
お母さま、ふつうに真面目な主婦だったから、さいしょに犯されたときにはうろたえていらしたけれど、
そのうち慣れて、お父さまの前でも平気でお相手できるようになって、
そのうちお父さまには内緒でお相手に逢うようになって。
ダンナを裏切るのって、楽しいわよって仰っていらしたわ。
どんなに仲の良い夫婦でも、お互いが嫌だって思うときってあるでしょう?
そういうときには、逢いに行くんですって。もちろんナイショで。
夫に秘密を作るとね、悪いかなって気になって、もとの献身的な主婦に戻れるのよ ですって。
私が献身的な主婦になるかどうかはわからないけれど・・・
でも、ダンナを裏切るのは、楽しいわ。

さいごのひと言を囁くとき、さすがに美紀子の瞳は張りつめたけれど。
夫の反応に安心したのが表情に出て、小づくりな口許から白い歯がこぼれた。

きのう私を犯した人のなかに、年増好きな人がいらっしゃったの。
うちの母も未亡人していて寂しそうだから、今度紹介してあげようと思ってるーー
そんな身の毛もよだつようなことをさりげなく口にすると、美紀子は夫に囁いた。

お母さま、仰っていらしたわ。
親子は似るものなのね――って。


あとがき
前々作「妻を縛りつけた樹」と、おなじ樹なのかもしれません。
一連のお話はもちろん、あくまでもフィクションです。
良い子は決して真似しないようにしてくださいね。
(^_-)-☆

犯すもの 犯されるもの

2019年10月05日(Sat) 21:34:05

6畳間の薄暗がりのなか。
切迫した声にならない声、うめきにならないうめきが立ち込めていた。
それらがいっしょくたになって、激しい息遣いのままセイセイという吐息ばかりが耳についた。

6畳間に7人は狭すぎる。そう思った。
わたしは長女を、相棒はその母親を畳の上に抑えつけていた。
腕づくで肩を抑えつけ、首すじにかじりつくようにして、まだ生え切らない牙でガブリと食いついていた。
じゅるじゅると汚い音を立てて啜りあげた血は、うどんみりとした温もりを帯びていて、持ち主の熱情を伝えてきた。
十代の少女の健康で清冽な血潮が、いまわたしの干からびた血管を廻りはじめている。
傍らでは相棒が、わたしと同じ経緯で(何しろやり方は彼が教えたものだから)、その母親のうなじを抉っていた。
ゴクゴクと大げさな音をたてて貪っているのは、「お前も遠慮なく飲(や)るが良い」と伝えたくて、わざと聞こえよがしにしているのだろう。
そんなことさえわかるほど、彼とわたしとは通じ合っていた。

娘の父親で母親の夫である男は、押し入ってきた招かれざる来客に不意を突かれて、真っ先に首すじを抉られていた。
相棒の仲間2人がかりだったから、かなうはずがなかった。
身じろぎひとつできないほどの失血に侵されながらも、まだまだとばかりに、緩慢に血を吸い取られつづけている。
この薄暗い6畳間で息を弾ませ合っているのは、
妻と彼女を犯しているわたしの相棒、
娘と彼女を愉しんでいるわたし自身、
それに夫と彼を襲う二人組。その7人だった。

彼が自分の負傷以上に、妻や娘の運命を気にしていることは間違いなかったし、
わたしも道場を覚えていた。
つい最近、彼の立場を体験したばかりだったから。
少し過激すぎるのでは・・・?
言いかけたわたしを察するように、相棒はいった。
「じきに慣れるって」
たしかに・・・現に慣れ切ってしまっている自分にしょうしょう赤面しながら、わたしはもう一口、少女の血潮を吸い上げていた。

「血を摂れれば文句はない、死なせはしないから」
だんなを脅しつけている仲間が、こちらにも聞こえる声でそう告げた。
襲われている2人の女にも聞こえる声だった。
「代わるぞ」
相棒がいった。
「OK」
わたしもこたえた。
2人は同時に犠牲者の上から起きあがり、獲物を取り替えてのしかかった。
娘の絶望したようなうめきが、哀切に響いた。
「奥さん失礼、少しの辛抱です」
娘とは初対面だったが、妻のほうとは面識があった。
だって、襲った家は勤め先の同僚の家庭だったから。
奥さんはわたしの正体に気づくと、アッと声をあげた。
抗おうとした腕は重く、彼女の意思を反映しなかった。
着乱れたロングスカートを太ももまでせり上げて、むき出しの太ももを重ね合わせる。
もはや、血よりもそちらのほうが、目当てになりつつあった。
相棒も、同じことを考えているらしい。
娘の歯ぎしりが、悔し気に響いた。
逆立つほどに勃った一物が、奥さんの太ももをすべった。
ぬるりとした粘液が、奥さんの素肌に這っているのを感じた。
いちど男の一物を受け容れてしまった局部は濡れていて――奥さんの名誉のためにいえば、それは好色だからではない。意思に反して冒されるとき、不慮の負傷から守るための本能に過ぎない――猛り立ったわたしの一物も、すんなりと収まった。
突き入れたものが秘所の火照りに包まれるのを感じながら、わたしはぎごちなく妻以外の女との行為に入り込んだ。
擦れ合う太ももの間に、先着した相棒の粘液を感じた。
この粘液が一週間前、妻の秘所を犯した。
いまはわたしも、妻を犯した男と同じ愉悦を、愉しみ合ってしまっている――
サディスティックな振る舞いに、マゾヒスティックな歓びが重なり合って、わたしは激しく射精した。



いつもの家族のだんらんを踏みにじられた瞬間の記憶は、塗り替えられてしまったようにあいまいになっている。
そのときわたしは真っ先に襲われて、二人の吸血鬼に抑えつけられて、左右の首すじを咬まれていた。
ジュジュッとほとび出る血潮がシャツを生温かく濡らすのを、なんとなく憶えている。
その場に昏倒したわたしに、ほかの二人もズボンのうえから脚に食いついてきた。
じゅうたんの上で磔にされたようになって、わたしは体内をめぐる血液の大半を、この瞬間に摂取された。

下の娘は、お目当てにしていたやつがいたらしい。
いち早くリビングから連れ出されて、勉強部屋にあがっていく足音だけを残して娘の姿は消えた。
妻には年配の吸血鬼が、長女にはわたしと同じ年恰好のやつが、同時に首すじめがけて襲いかかった。
飢えた吸血鬼を前に、わたしたちは狩られる獲物に過ぎなかった。
灯りは消され、廊下から漏れる照明だけの薄暗さの中で、
わたしも、妻も、長女も、等しくねじ伏せられて、
三つの身体からは生き血を吸い上げられる音が、チュウチュウとあがった。

彼らは、獲物を取り替え合った。
妻を咬んだやつは長女のうえにまたがり、長女のうえにいたやつは妻を襲った。
わたしに取り付いて血を啜り取ったやつらは、やがて美味しいほうの獲物の分け前を主張しはじめて、
しまいには乱交の場のような息苦しいものになった。

「あんただったのか」
わたしはあきれた。
さいしょに長女を咬んだ、わたしと同じ年恰好のやつは、勤め先の同僚だった。
いつも半病人のように顔色がわるく、事務所の一番隅の机にうずくまるようにへばりついていた。
「息の合っていることだな」
わたしは精いっぱいの皮肉を口にした。
もちろん、妻と娘を取り替え合ったときのことである。
「同じ女を愛し合っていますので」
男のこたえに、わたしは絶句した。

彼が家族もろとも襲われたのは、先週のことだという。
彼の妻を最初に襲ったのは、いま目の前でわたしの妻を汚した男だった。
「あいつ、人妻が好みなんです。熟女の血はひと味違うというのが口ぐせで・・・
 もちろん家内を姦(や)られたときには、腹も立ったし悲しかったはずなのですが。
 いつの間にか記憶があいまいになってしまって、
 いまでは彼を家内の交際相手として受け容れています。
 気を利かせて座をはずしてやる時もありますが、
 わたしの目の前で見せつけたいみたいな願望があるらしく、そんなときには居合わせるようにしているんです。
 貴男も慣れれば、愉しめてしまいますよ」

まさか・・・
半信半疑のまなざしを向けると、男は白い歯をみせて笑った。
なんのてらいもない笑いだった。
妻や娘を汚されたわたしをあざ笑う嗤いではなかった。
むしろ、同じ経験をした連帯感を、わたしに対して感じているようだった。

ふと見ると、妻が腰を動かし始めていた。
正気を喪って、小娘みたいにはしゃぎながら、
「イヤですわ、主人のまえですわ・・・」
と、言葉では拒みながらも身体は受け容れはじめている。
その言葉すら――
淑女のたしなみとしてではなく、情夫をそそらせるために発していることが明らかだった。
わたしは思わず、妻の両肩を抑えつけていた。
「あ!」
わたしの振舞いに驚いた妻の目が、一瞬見開かれた。
けれども彼女の昂りは止まらなかった。
「イヤですわ、いけませんわ、あなた、いけないわよ・・・こんなこと・・・」
きちんとセットした髪を振り乱し、淑やかに腰にまとったロングスカートをふしだらにたくし上げ、
清楚に彩ったストッキングの脚を、下品な大またに開いて、
妻はどこまでも、堕ちていった。
わたしもどこまでも、堕ちていった。

目のまえで妻を犯したあいつの気持ちが、すこしだけ分かる。
ちく生、ひとの女房を愉しみやがって。
そう思いながらも、
ちく生、わたしよりも上手によがり狂わせやがって。
そんな思いも湧いてきて、
こんどはあいつと一緒に、だれかの家に忍び込んでみようか?
そんな気分にさえ、なってくる。
彼もまたきっと、かつて妻を襲われたときのことを思い出して、
自分が襲った家庭の世帯主のことを気遣いながら、その妻や娘を無遠慮にあしらっていくのだろう。
そしてわたしも、彼と同じ道を歩きはじめてしまうのだろう・・・


あとがき
衝動的にキーをたたいたら、珍しくバイオレンスなモノができあがってしまいました。
(^^ゞ
犯すほうは、犯されるほうの切なさを思いやり、
犯されるほうは、かつては彼もいまの自分と同じ立場だったことを思い出しながら、受難を受け容れていく。
しまいには、こんどは別のご家庭にお邪魔して、その家の妻や娘を並んで犯す。
うまく表現できないのですが、そんなイメージを描きたくてキーをたたきました。

女性の意思があまり表に現れていませんね。
ほんとうは、そこまで描き込まなければ、片手落ちというものです。反省。

妻を縛りつけた樹

2019年10月05日(Sat) 20:52:30

人間と吸血鬼の共存が可能になったとしても、
彼らに一方的に襲われて、片っ端から血を吸い取られるだけではないか――
ひそかにそう思っていたわたしだが、予想通り日ならずして、家族もろとも犠牲になる日がやってきた。

その日わたしは、早朝のランニングをしていた。
吸血鬼は夜訪れるもの、という先入観を捨てきれなかったわたしは、彼らがわたしの走路を遮るなど予想もしていなかった。
どうして彼らが真っ先にわたしを狙ったのか、さいしょはわからなかった。
彼らは、わたしの履いているハイソックスに目をつけたのだった。

手近な公園に連れ込まれたわたしは、三人の吸血鬼に組み伏せられた。
彼らのチーム・ワークは抜群だった。
わたしのことをベンチに抑えつけると、三人が三人とも、ほぼ同時に咬みついてきた。
ひとりは首すじに、ひとりは二の腕に、もうひとりはふくらはぎに。
チュウチュウと音を立てて生き血を吸い取られながら、わたしはしだいに陶然となっていった・・・

ふと気がつくと、彼らはいちように涙を流している。
意外な反応に思わず、どうしたのか?と、問いかけていた。
彼らは先週からわたしの自宅の隣家に棲みついていて、ふだんはあいさつ程度の言葉は交わしていたのだ。
彼らのひとりがいった。久しぶりに人の生き血にありついたので、と。
もうひとりがいった。ご主人の血が意外に若々しくて、予想以上に美味かったので、と。
さいごのひとりがいった。貴男の履いている靴下の舌触りが、ひどく気に入ったので、と。
律儀に応えをかえした彼らは、ふたたびわたしのうえにかがみ込んできて、生き血を貪りはじめた。
すでにベンチから転がり落ちていたわたしは、芋虫のように転がりながら、彼らのなすがままに血を吸い取らせてしまっていた。

奥さんと、年頃の娘さんが2人いますね?
たたみかけてくる彼らの目が、歓びに満ちていた。
家族には手を出さないでくれと懇願したが、受け容れてもらえなかった。
ひとりがわたしの家に走って、妻を呼んできた。
血の撥ねた芝生の上にわたしを見出した妻はびっくりして、その瞬間男たちの貪欲な猿臂に巻かれてしまっていた。
チュウチュウという音が、今度は妻に覆いかぶさった。
彼らが既婚女性を相手にするときには、性的関係を結ぶ習性があるときいていた。
失血にあえぎながらわたしは、妻が傍らの樹に縛りつけられて、
三人の男に代わる代わる愛されてしまうのを、目の当たりにするはめになった。
妻は、薄い黄色のカーディガンにえび茶色のスカートを着けていた。
日頃からきちんとした人で、肌色のストッキングを脚に通していた。
それが不幸にも、彼らの目を刺激してしまったのだ。
彼女の足許は男どもの舌にいたぶられ、淡いナイロン生地はみるみるうちに皴を拡げ、みるかげもなく咬み剥がれていった。

「さゆりと喜美香の血も、ご馳走してあげましょうよ~」
妻がわたし以上にイカレてしまったのも、無理はない。
夫の目の前で三人の男に凌辱されたのだから。
男の味を思い知らされてしまった妻は、さいしょのうちこそ抗っていたが、
やがて自分から気前よく身体を開いて、生き血を振る舞い始めて、
しまいには着慣れた洋服を皺くちゃに着崩れさせながら、夢中になって腰を使い始めてしまっていた。
破れ果てたストッキングをつま先から抜き取られながらきゃあきゃあとはしゃぐ妻の傍らで、
わたしは携帯で自宅に電話をかけていた。
たまたま出たのが長女だった。
いま父さんも母さんもお隣さんに襲われて、仲良くなったところだ。
これからうちに招待することにしたから、そのつもりでいなさい――
長女は結婚を控えていたが、感情を消した声で、待っているから気をつけて帰って来てね、と、こたえてくれた。

落花狼藉は、帰宅後が本番だった。
長女は22、次女は17.
3人の吸血鬼のうち2人は、処女の血を欲しがっていた。
お互い顔を見合わせると、それぞれの相手を決めたらしく、
わたしの二の腕を咬んだ男は長女を、わたしと妻の脚を咬んだやつは次女を追いかけまわした。
キャーっと相次いで娘ふたりの叫び声があがり、逃げ込んだ隣の部屋で2人とも咬まれてしまったのがいやでもわかった。
妻はうっとりとして、娘たちの叫び声に聞き入っていた。
「素敵・・・」と絶句しつつも、発育のよいふたつの若い身体から血液が旨そうに吸い出されていくのを気配で感じ取って、ひどくウキウキとはしゃいでいた。

次女はその場で犯された。
長女は結婚を控えているからと懇願して、凌辱を免れた。
案外と優しいやつだな、と、わたしは妻を振り返り、
妻は長女に、ほんとに良かったの?タカシさんには内緒にするから、あなたもして頂いたらあ?なんて、たしなめていた。
次女にも彼氏はいたのだが、有無を言わさず犯されてしまったので、お姉ちゃんずるいと口を尖らせた。
長女は口ごもりながらも、「だって喜美ちゃんかわいいけど、あたしはそんなことないから、せめて処女だけはタカシさんのためにとっておきたかったの」と、いった。
喜美香は「さゆりちゃんかわいい!」と姉を褒めて、「そんなら許す」といった。
そして、自分を犯した吸血鬼を上目遣いで睨んで、「彼には内緒だからね」といいつつも、血の流れた太ももを再び、開いていった。

娘たちを追いかけようとしなかったやつは、妻に執心だった。
夫婦ながら首すじを咬まれていたので、言うことを聞くしかなかった。
娘たちがそれぞれの勉強部屋にこもって、改めて相手を始めたとき、
彼は夫婦の床を我が物顔に占拠して妻の上におおいかぶさった。
妻は自分の情夫が女の洋服を引き裂くのを愉しむ習慣を持っていると知ると、
よそ行きのスーツに着替えて、荒々しくまさぐる掌に、ゆだねていった。
「主人の前です、お止し下さい」とかいいながら、わたしのほうをチラチラ盗み見しながら、襲われることを愉しみ始めていた。
制止する言葉やしぐさが、情夫をいっそう燃えたたせると思ったからだった。


3人はひと月というもの、我が家に入り浸った。
しかし、わたしたちが失血で身体の不調を訴え始めると、初めてしまった、という顔をして、
身体が治ったころにまた来ると言い置いて、家からも隣家からも姿を消した。


公園のベンチに腰かけながら、わたしは妻と、わたしが家で淹れてきたコーヒーを愉しんでいた。
2人が座るベンチは、わたしが最初に襲われたときに、正気を喪うまで生き血を吸い取られた場所。
目のまえにそびえる樹は、呼び出された妻が縛りつけられて、代わる代わる犯された証し。
夫婦の床を占拠されているあいだ、わたしはコーヒーを淹れるのを習慣にしていた。
彼らは血の愉悦からさめて正気にかえると、ふつうの人間と変わらず飲み食いし、知的な会話も通じることが分かったから。
妻や娘を襲っている吸血鬼のためにコーヒーを淹れる。
わたしは卑屈な気分になるよりもむしろ、そういう被虐的な気分を愉しむようになっていた。

「いなくなると、寂しいもんだわね」
妻はコーヒーを口にしながら、つぶやいた。
コーヒー通の妻は、わたしの淹れたコーヒーを、味も香りも愉しみながら、ゆったりと口に含んでいく。
首すじにつけられた痣ふたつが、少しだけ薄くなっていた。
けれども色白の肌からは、まだまだくっきりとした情欲の痕跡は執拗に残っている。

長女は、吸血鬼に襲われたことを彼氏に打ち明けたという。
「振られるの覚悟ですべて話した」とあとで母親に告げたそうだが、彼氏もこの街の人間だった。
結婚の決まった彼に操を立てて処女を奪うのは見逃してもらったと聞かされると、彼女を優しく抱きとめたという。
「今夜、彼のところに泊ってくる」
と告げて、ひと晩家を留守にした長女。
翌日には彼氏と連れだって吸血鬼の家を訪問し、3人の吸血鬼に惜しみなく若い血を与えたという。
いちどモノにした彼女を提供する羽目になった彼氏は、吸血鬼たちに「気が進まなかったら座をはずしても良い」といわれたが、
ゆったりとほほ笑んで、最後まで見届けていきます、とこたえたという。
そして、未来の花嫁が吸血鬼3人に愛され尽くしてしまうと、「ふつつかでした」と頭を垂れる長女を抱き支えて、家までエスコートしたという。

次女の場合も、彼氏にばれてしまった。
処女を捧げることを強いた男が、次女の彼氏のところに出向いていって、「きみの恋人はいい身体をしている」と、無神経極まりないことを告げたのだった。
次女の彼氏からパンチを10発ほどももらった後、ふたりは不思議なことに、意気投合した。
「処女を奪られたのは許すとしても、そこは観たかった」という彼氏に、
「さいしょは視ないほうが良いのだ」ともっともらしくアドバイスする吸血鬼。
妻は隠れて聞きながら、笑いをこらえていた。

血液を抜かれて空っぽになった血管が、きょうも疼いている。
脱力した感じが居心地よくもあり、なにか飽き足らない予感も渦巻き始めている。
「あなたもほかの人を襲っていらっしゃいよ」
妻が傍らで、白い歯をみせた。
血を抜かれ過ぎて半吸血鬼になったわたし――
今は時おり、自分や家族の血を吸った彼らと連れだって、街の住人の家にお邪魔することもある。
聞けば彼らももとは普通の人間で、吸血鬼に妻や娘、母親を寝取らせることでいまの”特権”を得たという。
寝取られる愉しみを覚えてしまった男たちは、周囲にも同好のものを増やしながら、自らの欲望を満たしてゆく。


振り仰ぐと、目のまえの樹は赤く染まった葉に彩られている。
妻が縛りつけられたときには濃い緑色だったのに、「もう秋なんだな」と、ふと思う。
「あの樹の葉っぱの色は、きみの血の色かな」
と妻を振り返ると、
「あのとき真っ赤になって恥じらった、私の頬の色ですよ」
そんな返事が、かえってきた。

ハイソックス男子の呟き。

2019年10月01日(Tue) 06:48:43

初めて襲われたとき、ぼくは思わず口走っていた。
「死なさずに血を吸うことって、できないんですか!?」
どうしてそんなことを言ったのか、いまでもよくわからない。
けれどもぼくを追い詰めたその男は、それこそしんけんな顔つきで、
「もちろんそうするつもりだ」
といったのだった。
そして、答えの意外さにびっくりしているぼくをつかまえて、首すじを思い切り強く咬んだのだった。

初めての吸血に、うっとりとなってしまったぼくは、
そのままその場に倒れて、足許を舐められるのを心地よく感じながら、気絶した。
高校生にもなって、ぼくは半ズボンにハイソックスのスタイルを好んでいた。
ふとわれに返ったときには、気に入りのチャコールグレーのハイソックスは血に濡れて、あちこち咬み破られていた。
ぼくが露骨に迷惑そうな顔をすると、彼はすまないね、と言ってくれて、
それでもあつかましくも、もう片方の脚にまで、咬みついてきた。
ハイソックスが好きなんだ――そう直感したぼくは、
狙われたほうの足許からずり落ちかけていたハイソックスをとっさにひざ小僧の下まで引き上げて、
好きなだけ咬み破らせてしまっていた。

その日以来、ぼくはその公園で男と、待ち合わせるでもなく待ち合わせるようになった。
足許には、彼を悦ばせるために、色とりどりのハイソックスを、代わる代わる履いてきた。
彼はぼくのコレクションを誉めながら、一足一足、くまなく舐めて愉しんでから、咬み破っていった。
ぼくもまた、惜しげもなく脚をさらして、彼の欲望に応えていった。

彼女ができるとぼくは、まるで恋人同士のように定期的に逢っている吸血鬼のことを打ち明けた。
美奈子さんは面白そうに瞳を輝かせてぼくの話に聞き入って、
貧血になるといけないから、私も寄付しようかな・・・と、言ってくれた。
ふたりを引き合わせると彼は、似合いの彼女だね、といって、ぼくのために慶んでくれて、
それから脚を咬んでもいいという彼女の足許にかがみ込んで、彼女のふくらはぎに咬みついていった。
その日の彼女は、黒のダイヤ柄の、着圧ハイソックスを脚に通していた。
「痛くないように咬んでくれるんですね」
彼女が感心していると、
「礼儀ですから」
と、彼は奥ゆかしくこたえる。
「じゃあもう少し、良いですよ」
と、なおも吸血をすすめる彼女の足許から、
彼は無遠慮にびりびりと、着圧ハイソックスを破り取っていった。

こと果てて、「ごちそうさま」をしたあとに、
「いつもハイソックスなんですか」と問う彼に、
「イエ、ストッキングと半々ですね」と応える彼女。
そのやり取りを面白がって聞いているぼく。
この三人は、きっとうまくいく。ふとそんなふうに感じた。
「今度はストッキング穿いてきますね」
別れ際のひと言に、彼はとても嬉しげだった。

それからは二人連れだって彼のところに遊びに行って、
さいしょにぼく、それから彼女。
いつもその順番に、咬まれていって、
ウットリするほどもうろうとなった目線の先で、吸血鬼に襲われる彼女の姿に陶然となって見入っていた。
ただひとつだけ、気になったのは。
彼が、既婚女性を咬んだ時にはセックスまで遂げてしまうという習性を持っていること。
「結婚したら、ちょっと遠慮しますね」
思慮深い彼女はそういってくれたし、彼も引き留めたりはしなかった。
そして結婚後はぼくだけが、彼にハイソックスを咬み破らせてやる習慣をつづけるようになった。
少し習慣の中身が変わったとしたら、
半ズボンの下に穿いていく靴下が時おり、妻がいちど脚に通したストッキングに変わることだった。
「不倫するわけにいかないけど、気持ちはあるから」と告げた妻の、せめてもの心遣いだった。

その均衡が崩れる日が訪れた。
ぼくが長患いをして、彼のところに行けなくなった時のことだった。
「私行ってくる」
美奈子は意を決したように起ちあがり、
「その気のない人が襲われたらよくないでしょ」
といった。
ストレートな言い方に、言い訳がましさは微塵もなかった。
「彼によろしく」
ぼくはせめてものことと、明るくいって、彼女を見送っていった。

どうしても心配だったぼくがそのあと彼女を尾(つ)けて彼の邸に入り込み、
いちぶしじゅうを見届けてしまったことは、いうまでもなかった。
彼の腕の中、妻はちょっとだけ泣いて、涙を見せまいとしてすぐに指先で拭うと、
彼はその指を唇に持って行って、軽く含んだ。
そしてこんどはいとおしむように、しっかりと妻のことを抱きとめた。
その瞬間、ふたりは本当に結ばれたのだとぼくは感じて、
妻の貞操が喪われたことよりも、むしろ二人の心の絆を慶んでいた。

二人合わせたら、なん足の靴下を、彼に愉しまれてきたことだろう?
まだまだ愉しませてあげようね・・・
夫婦で交し合った笑みに、曇りはない。
ぼくがあとを尾(つ)けたことを咎めもせず、話題にも出さない妻――
二人の間では表向き、妻はいまでも貞淑だということになっている。
たぶんきっと、それが真実なのだと、いまでは思う。
ひとがきいたら、笑うかもしれないけれど。


あとがき
夫の親しい吸血鬼に理解を示す婚約者というのが思い浮かんで、キーをたたいてみましたが、少し散漫になってしまったかも。

「予言」数話

2019年10月01日(Tue) 04:46:30

「予言」をテーマに、いくつかのお話を小話ふうにまとめてみました。


第一話 ストッキングの丈が変わる。

「あんたの穿いているストッキングはきょうじゅうに、ひざから下までずり落ちる。」

なんて不吉な予言だろうかと、貴和子は思った。
けれども予言は現実となった。
他ならぬ、予言者の手によって。
引き裂かれたストッキングはひざ下丈までずり落ちて、犯される貴和子の足かせになった。
貴和子もまた、真新しいストッキングを破かれる行為に熱中した。

夫までもが、
妻のストッキングがハイソックスと同じ丈にまで破れてずり落ちて、
足許にふやけたようになってまとわりつくのを、昂りながら見届けた。

ストッキングとともに、自家の礼節まで喪われた。。
虚ろになった頭で貴和子は嘆いたが、かくべつ不幸だとは感じなかった。
貴和子の夫も、不幸だとは感じなかった。

あとがき
半脱ぎにされたり破かれたりしたストッキングをひざ下までずり降ろされながら、セックスに耽る女性。
見ごたえのあるアイテムだと思います。^^


第二話 婚前婚

「きみはぼくと結ばれるまえに、3回くらい結婚するんじゃないかな。」

レイジさんは私と婚約したのに、どうしてそんなことを言うのだろうかと、私は思った。
けれども、本当にレイジさんの言うとおりになった。
挙式の前夜、私は3人の男に犯されたのだ。
一人はレイジさんの親友、
一人はレイジさんのお兄さん、
そして最初に私を抑えつけて処女を奪ったのは、あろうことかレイジさんのお父さんだった。
そして、すべてはレイジさんの仕組んだことだった。
新婚そうそう、私は情夫を3人も抱える女になっていた。

あとがき
自分の花嫁を前もって身内の男と共有する風習というのが、土地によっては存在したみたいです。
実際の風習はもっと荒っぽくて女性の側の意思を無視したものもあり、近年禁止された――みたいな話も時々ききます。
そうそう、このお話はあくまでもフィクションですよ。^^;


第三話 ぼくの彼女を狙った男。

「きみの彼女を、きみの意思に反して犯したりなんかしないから。
 それに彼女は俺なんかより、きみを結婚相手に選ぶはすだから。」

彼のしてくれた約束は、意外な形で守られた。
その晩犯されたのは、ぼくのほうだった。
女として犯されたぼくはすっかり目覚めてしまい、
この凄い逸物を、彼女にも体験させてやりたくなっていた。
彼はぼくの手引きで彼女を犯し、彼女は彼の○ニスに夢中になった。
それでも彼女はぼくを選んだ。
そして、ぼくの妻のまま、彼との逢瀬を重ねていった。
(23:49 0:26 一部改訂)

あとがき
たしかに、意思に反してはいないようです。^^;
オチになったようであまりオチていないように感じるのは、
このオチがこの世界では、わりとありがちなパターンだからでしょうか。


第四話 おとこ妻。

幼なじみのケンイチが、ぼくのことを侮辱した。
お前は全く、女みたいなやつだなと。
きっと、一生オレの言うことを聞くんだろうなと。
その言葉は、現実になった。

ぼくは途中から女子生徒として学校に通うようになって、
そのケのあったケンイチは、ぼくを女として好きになり、二人は結婚した。
今夜もぼくは彼の言うなりになって、
高校生のころの女子の制服を着て、男言葉を使いながら愛し抜かれてゆく。
(23:57)

あとがき
いままで描いたなかで、いちばんオチたような気がします。(^^)



第五話 旧家の息子

「きみの嫁さんは、きっと僕の子を孕むよ。
 きみん家(ち)の子は、近親相姦しちゃうんじゃないかな?」

村いちばんの旧家に生まれた彼は、だれに向かってもそんなことをいった。
もちろんだれもが憤慨したり呆れたりした。
でも、憤慨した人も呆れたやつも、一人残らずおしなべて、精力絶倫な彼に、嫁を寝取られた。
しまいには、どこの家にもたいがい一人は彼の胤の子どもがいて、
その子が好きになった相手も、実の父親は彼だったりした。

知る知らないはともかくも。
兄妹婚や姉弟婚をするとのが、そこらじゅうにあふれ返った。
だれもが近親婚をしていたから、だれもが近しく交わり合った。
村じゅう和やかに、仲良く暮らした。
(0:12)


あとがき
かなり不公平な風習?
でもよく読むと、”彼”がすべてを得ることができたのは、旧家の生まれだからというよりは、その精力のほうに原因があったみたいです。


第六話 家族を狙われた男

きみのご家族を、犯したい。
妻や娘を見る彼の目つきは、ひどく物欲しげにみえた。
妻も娘も警戒して、わたしももちろん二人を彼から遠ざけた。
きみのご家族を犯したい。
そう言い続けて彼がモノにしたのは、五十を過ぎたわたしの母だった。
(0:16)

あとがき
あまりオチにはなっていないでしょうか?
いや、うまくオチてるはずなんですがねぇ。
母親を味方につけてしまえば、あとはなんでもアリとかに、なったりはしませんかねぇ?(笑)

お話のあとにところどころ入っている数字は、描き終えた時刻です。
あまりにも次から次へとお話が浮かぶので、頻度を記録しておきたくて入れてみました。
PCを閉じた後、寝床のなかでケータイで紡いでは、送信していました。
そして今、こんな時間に目が覚めちゃってます。
よく眠れない夜です・・・

吸血鬼を受け容れた街の記録。

2019年09月30日(Mon) 09:19:14

はじめに
ひところ描きためていたもののあっぷです。
上記のテーマで散発的に描きつづけていたのですが、読み返してみるとひとつのストーリーとしてそんなに破たんはしていないようなので、一括してあっぷしてみます。
吸血鬼と和解して、人命の保証と引き替えに彼らに市民の血を自由に吸わせることになった街の日常を、いろんな目線から語ってみようと思ったのですが・・・まあ似たり寄ったりの目線にしかなっていないみたいです。(苦笑)
途中途中に描いた日付を入れています。かなり前後しながらも、ぶれないお話を描こうとしていたみたいです。
「構想」としていますが、その実ほとんど変えていません。


タウン情報

○○市は、吸血鬼との共存を目指すため、来月1日から「吸血鬼親善条例」を施行、吸血鬼の受け入れを積極的に促進する。
近年吸血鬼による襲撃被害が続出していることに対応した措置。
具体的な施策は、居住地のあっせん、子女の公立学校への正式な受け入れ、暫定戸籍の整備、供給する血液を確保するための血液提供者の募集など。
吸血鬼の子女を対象とした学校への受け入れには、一部の私立学校も追随する見通し。また、血液提供の希望者には、市からの一定額の謝礼が支給される。
すでに吸血行為を体験した市民は少なくなく、市の担当課は、新規の血液提供者を大々的に募集する必要はなく、日常生活への影響は軽微であるとしている。
なお、この措置を受けて、吸血鬼側は人命を損なう恐れのある吸血行為を今後控えることを表明した。


校内だより  「吸血鬼受け入れのお知らせ」

来月1日から、当校は吸血鬼の生徒を受け入れます。
転入学に際しては、教職員、生徒及びその父兄をみだりに吸血の対象としないことが条件となっているため、生徒や父兄の皆様に必要以上に危害を及ぼす事態は発生しないものと思われます。
生徒、父兄の各位においては冷静な行動を取るようにお願いする次第です。
なお、転入者との親睦を深めるため、当校では生徒・父兄を対象に吸血鬼のために血液を提供する希望者を募集します。
年齢は13歳から60歳まで。健康な方で、男女を問いません。
面接は随時受付け、採否は本人のみに通知し、秘密は厳守されます。
生徒の安全を確保するため、各位の積極的な応募を希望します。


タウン情報 「変わる学校 父兄の協力求める市」

市内の学校では、吸血鬼受け入れについて父兄の間で不安が広がり、一部の生徒には転出の動きもみられた。
ただし、すでに吸血鬼は市内で日常的に活動しており、顔見知りの吸血鬼がいるという市民や吸血鬼の出入りを受け容れているという家庭も少なくないことから、動揺はむしろ限定的であるとも伝えられている。
反対に、「実態が不明であったものが明らかにされることで日常生活上の不安がなくなる(公立高校の父兄)」といった声もきかれ、同級生の吸血鬼のためにクラスの約半数が血液の提供を希望している学校もある。
市の担当者によると、「今回の措置は、すでに市内に浸透している少数弱者を保護するためのもので、吸血鬼と市民との平和的共存が趣旨。市民の皆さまは決して動揺することなく隣人との和解、懇親を心がけてほしい」と話している。


校内だより

当校では来月から、血液を求めて来校する方々への奉仕を充実させるため、当番制を導入することになりました。
月初以降、下記の順番で吸血鬼を対象とした奉仕を実施します。

3年1組 2組 3組 (各出席番号順)
1年生のうち希望する生徒
教職員 (担任については、生徒引率時に奉仕を行う)
2年1組 2組 3組 4組 (各出席番号順)
3年生のうち希望する生徒
教職員 (担任については、生徒引率時に奉仕を行う)
1年1組 2組 3組 4組 (各出席番号順)
2年生のうち希望する生徒
教職員 (担任については、生徒引率時に奉仕を行う)

来校する吸血鬼は日によって増減があるため、進度は未定です。
奉仕が1週間以内となった生徒を対象に、父兄の皆様には個別に通知いたしますので、
ご子息・ご令嬢の体調管理にご留意いただき、当日はストッキング・ハイソックスを着用の上登校させるよう指導をお願いします。

(描き下ろし)


タウン情報 「”被害”ではなく”親善” 微妙なケースも」 

吸血鬼親善条例が施行されて、きょうで約1ヶ月となる。一部で懸念された混乱はなく、市民の間には平穏な日常が保たれている。

去る17日、下校途中の女子中学生3名が転入したばかりの吸血鬼の集団に襲われ、吸血、暴行される出来事が発生したが、その後被害に遭った女子生徒とその家族、女子生徒と交際中の男子生徒らとの間に和解が成立。3名の女子生徒は吸血鬼との交際を受け入れた。被害に遭った女子生徒の交際相手である男子生徒は、「彼女が犯されてしまったのは残念ですか、今では状況を理解し前向きに受け容れています。彼女が血液を提供するためにお相手を訪問するときには、彼女の負担を減らすために二人で行くようにしています。母も協力してくれるので、心強いです」と話している。

また、条例が施行された当日の1日には、帰宅途中の三十代の夫婦が吸血鬼と遭遇して、夫婦とも失血のため昏倒した事案も発生している。一時、夫が全治2週間の負傷、妻が複数の吸血鬼による性的な暴行を受けたと伝えられたが、その後吸血鬼と夫婦との間に和解が成立。夫は「性的な関係は生じたが、"暴行"ではなかった」と証言し妻もそれを認めたため、これも事件として取り扱われていない。加害者の吸血鬼と夫婦はその後親しく行き来しており、大きな問題は生じていないもよう。

このようなケースは他にも少なくとも数件発生しているが、「直後に和解が成立したケースは事件として取り扱わない(吸血鬼親善対策室)」という市の方針から、深刻な紛争には至っていない。
トラブルの多くは条例の施行後に市内に転入した吸血鬼によるもので、いずれも旧来からの居住者である吸血鬼が和解を仲介しているという。こうした市の対応には、「丸投げではないか」と一部から疑問が提起されているが、吸血鬼親善対策室は「担当部署では旧来から居住している吸血鬼に協力を仰ぐため、彼らとの意思疎通に腐心している。彼らと懇親を結ぶためにほとんどの職員が自身はもとより夫人や子女の血液を自発的に提供するなど誠実に取り組んでいる」と反論、理解を求めている。


生徒の提出作文(上記男子生徒による作文。卒業文集より転載)

彼女を吸血鬼に捧げたお話

ぼくの彼女は、ぼくが3年の2学期のとき、吸血鬼に犯されました。
当時彼女は2年生。同じ課外クラブてま知り合いました。
そして、(親にも内緒だったのですがら)彼女が1年の冬休みに、ふたりは初めて結ばれました。未熟者どうしの関係だったから、文字通り"手探り"のセックスをくり返す日々。友だちには早すぎると言われましたが、毎日が夢中でした。確かに早かったかもしれませんが、お互いにお互いを"最初で最後の異性"だと、いまでも思っています。

結ばれて半年ちょっと経った9月から、市が吸血鬼との親善条例を施行して、ぼくたちの学校にも吸血鬼がおおっびらに出没するようになりました。けれども、彼らはもともと生徒や父兄、先生や職員のあいだに紛れ込んでいたし、来賓として学校に堂々と出入りしている吸血鬼までいたので、条例じたいにそんなに違和感を感じていませんでした。時おり先生がたが、あらかじめオーケーしている生徒たちを空き教室に集めて来賓の吸血鬼に応接させたり、自分たちも手本わや見せたりしていました。それも順番に予防接種でも受けるような身近な感じがしたので、彼女とも「いつか咬まれちゃうかもネ」って話したこともありました。セックスの経験のある女子は咬まれたときに犯されることも聞いていましたが、ぼくたちの学年でそうした女子がほとんどいなかったので、あまり実感がありませんでした。(なんとなくは、警戒してたけど)

彼女が友だちと連れだっての下校中に吸血鬼に襲われたときいたのは、そんなある日のことでした。教えてくれたのは、母でした。ぼくたちの学校ではPTA のつながりが強いこともあり、こういう情報は早いのだと、母は言いました。話題が話題なので、ぼくにその話を切り出すときも母はおっかなびっくり、腫れ物に触るような態度でしたが、ぼくはむしろ「とうとう"順番"が回ってきてしまった」という気持ちでした。当時の新聞を読み返すと、「彼女が犯されてしまって悲しい」と書かれてありますが、いまの記憶では、むしろ、「ずっきん♪」ときてしまった部分のほうが大きかったような気がします。

彼女がどんなふうに抵抗したのか、
どんなふうにねじ伏せられたのか、
どこを咬まれてどんな感じがしたのか、
彼女を咬んだ吸血鬼は彼女の血を気に入ったのか。
彼女のほうではどうなのか?

気になって仕方ありませんでした。
すぐに彼女に会いに行きました。
彼女の家には、彼女以外にだれもいませんでした。
彼女は一人きりで泣いていたようでしたが、ぼくを家に入れてくれると、「ヤられちゃった♪」と、照れくさそうに笑いました。それからぼくたちは、長いことセックスに耽りました。
ぼくしか識らなかった身体には、彼の痕跡がありありと残されているような気がしました。ささいな仕草とか声とかが、いつもと違っていたからです。
けれどもぼくは、恥ずかしいことにそうしたことにさえ昂奮してしまって、「ユウちゃん、あたしのこと犯されて昂奮してるでしょ?」と図星を指されからかわれてしまいました。
なによりほっとしたのは、彼女のぼくに対する態度が変わっていないことでした。
吸血鬼とのセックスが気持ち良いあまり夢中になって、ぼくとのことを忘れられてしまっていたら、それこそ悲しかったですが、そんなことは全くありませんでした。
「咬まれたり犯されたりしているあいだ、ずっとユウくんのこと考えていた。怒られちゃうかな、嫌われちゃったら悲しいなって」と、彼女は言ってくれました。やっぱり彼女は最初で最後の女(ひと)なんだと思い、やさしく抱きしめてあげました。
これからのことも、彼女とじっくり相談しました。
彼女を襲った吸血鬼とは言葉を交わすことができて、「きみは彼氏のことを本気で愛しているようだから、仲を裂くつもりはまったくない。むしろ仲良くしなさい」と言われたそうです。それでも吸血鬼は彼女のことをあきらめたわけではなくて、つぎの週のおなじ曜日に逢おうと約束していました。彼女も、その約束は守るつもりだと言いました。
彼女が犯されているあいだ、ずっとぼくのことを考えていたのは、ぼくにすまないと思ってくれたからではあったのですが、そのなん分の一かは、「楽しんじゃってごめんなさい」だったのです。
そのときぼくはほんのちょっぴりだけムッとしましたが、いまでは違います。
彼女と同じ吸血鬼に咬まれて気持ち良いし愉しいと感じてしまいましたから・・・
彼女の生き血を奪われたことに対しても、ぼくは吸血鬼に嫉妬していました。そしてなによりも、

彼女はどんなふうに抵抗したのか、
どんなふうにねじ伏せられたのか、
どこを咬まれてどんな感じがしたのか、

そんなことが、とても気になっていたのでした。
吸血鬼が彼女の血を気に入ったことや、
彼女も吸血鬼のことを憎からず思っていることは、すでに忌々しいほど、わかってしまっていたのですが。。

ぼくは彼女に、これからすぐに彼に逢おうと言いました。
ぼくもいっしょに咬まれてあげると言ったら、彼女はホッとしたように頷きました。
びっくりしたのは、ふたりで出かけるときに彼女が、それまで着ていた目だたない普段着からよそ行きの服に着替えたことでした。
気になる男性のまえでは、すこしでも綺麗でいたいという女心を、意識しないてまはいられません。
ぼくとのデートのときも、彼女はいつもおめかししていました。だから、その日の彼女のおめかしも、ぼくといっしょに出かけるためではあったはずですが、同時に自分を咬んでモノにした吸血鬼のためなのだと感じたのです。

そんなぼくの気分を、彼女はしっかり見抜いていました。
わざわざ、「あなたたち二人のためにおめかしするんだよ」と、言ったのです。
その上には、「これからは」の接頭語がついているの?とぼくが訊くと、
「ヤーダ、国語の優等生!」とからかわれて、はぐらかされてしまったけれど。。

彼女のうら若い血を奪われたことに嫉妬を覚えたぼくは、当然のことながら、彼女を犯されたことにも嫉妬を感じていました。
けれども、好奇心のほうがまさってしまったのです。
ぼくは、ぼく以外の男に彼女がどんなふうに反応するのか、気になって仕方がなかったのです。

目のまえで彼女を咬まれ、犯されたときの感想ですか?
それはちょっと勘弁してください。(この作文を読んだ皆さんが、一番知りたいことだろうけど)
いま、ぼくにそのときの心境を正直に描きとめる力はありません。
ただいえることは、彼女が吸血鬼に咬まれに行くときにはなるべくぼくがエスコートして、2回に1回はその場に立ち会っている・・・ということだけです。
それでも、時には彼女はぼくに内緒で彼と逢ったりしているらしく、そのことをあとで彼から聞かされたりすると、かなり妬けてしまうのですが・・・

(ここまで7月28日~8月3日構想)



地元新聞

「ハイソックスを着用している健康状態の良好な男女生徒、若干名を募集します。該当する生徒は、302教室に集合してください」
「ストッキングを着用している健康状態の良好な女子生徒、若干名を募集します。女子の制服とストッキングを着用した男子生徒もOKです。該当する生徒は・・・」
授業中の教室に流れる校内放送に、教師も生徒も一瞬発言を控えて聞き入る姿が、地元の中学・高校で頻繁に見受けられるようになった。
校内に来賓として現れる吸血鬼に向けての対応である。
中学2年のクラスを受け持つ鹿村京子教諭(32、仮名)は語る。
「こういうとき、教師も指定されている場合には、率先して生徒を引率するんです。初体験の生徒や経験の少ない生徒の不安を取り除くために指示されました」
引率する教諭は、応接前に生徒の服装をチェックすることが定められている。
ストッキングを穿き慣れない女子生徒の足許を入念に点検し、ストッキングのねじれを直す姿などがよく見受けられるという。

鹿村教諭の受け持ちのクラスの生徒は、すでに全員が吸血鬼への応接を体験している。
「最初に漏れのないよう、出席番号順に呼び出されましたから、全員が体験者です。担任はその都度生徒を引率しました。クラス持ち回りだったので、貧血で倒れることはかろうじてありませんでした」
セックス経験のある女性が吸血の対象とされるときには、性的関係も結ぶことになる。秋に結婚を控える鹿村教諭にそのあたりの事情を取材すると、
「質問は生徒の引率のことだと聞いたのですが」と、やんわりと回答を拒否された。
ちなみに生徒たちに取材すると、鹿村教諭の最近のあだ名は「娼婦」だということである。

●●高校2年の林田直樹君(17、仮名)と井尾谷佳織さん(17、仮名)は、周囲にも認められた相思相愛のカップル。林田君によると、
「募集の放送がかかったときには、彼女と2人で行くようにしています。知らないところで何をされているのか心配しているよりも健全なので・・・エエ、井尾谷さんは処女なので、そちらのほうは心配ないので。ただ、彼女は吸血鬼の間でも人気があるので、目のまえで吸血されると嫉妬しますけどね」と、はにかむ。
井尾谷さんによると、最近彼女を特に指名する吸血鬼が2~3人できたという。
「”またあの人だね”って、彼と言い合いながら教室に行くんです。犯される心配はないのですが、ブラウスを脱がされたりハイソックスをずり下ろされたりといったことは普通にあるので、彼がやきもちを妬くんです。彼氏の前で乳首を舐められたときにはさすがに恥ずかしくて、対応に困りました」と、こちらも照れ笑い。
嫉妬しているところをばらされた林田君は笑って彼女を小突いていた。
「好きですから、嫉妬するのは当たり前です」と、笑いにも屈託がない。
「高校を卒業するまでには処女を卒業します」という井尾谷さん。「お相手はどちらに」という記者からの質問に、「微妙ですね」と意味深な反応が返ってきた。
「彼女の初体験を見せつけられるほうにも、最近興味があるんです」と語る林田君。
井尾谷さんの純潔の行方は、たしかに「微妙」な状況にあるようだ。

市内の中学・高校の中には当番制を採用している学校もあるが、詳細の対応については「市では一元的な指導は行わず、学校ごとに一任している(吸血鬼親善対策室)」としている。

(ここまで8月25日構想)



地元新聞 「冠婚葬祭の実態も一新 吸血鬼向けにリニューアルされる施設」

市内の結婚式場「しあわせホール」は施設を一新、来月1日から再オープンした。
今回の新装の眼目は、吸血鬼の出席者への対応。花嫁が披露宴の席上ウェディングドレス姿で襲われるケースが多発していることから、ホールのスペースを従来よりも2割~3割程度拡張し、出席者全員が吸血され犯される花嫁のあで姿を展観できるよう配慮された。
新郎、新婦の母親や新婦の友人代表も同時に襲われて交接を遂げられるケースが多いため、ホール中央に男女数組が交接できるスペースを設ける。吸血鬼の出席者を多数受け入れる披露宴の場合、交接の対象者が拡がり宴がエスカレートするケースもあり、「中央スペースの広さは従来の披露宴での実例を参考に設計したが、様子をみてさらに拡げることも検討する(式場担当者)」という。
失血により体調を崩した出席者のための応急対応に備えた救護室や、披露宴で生まれたカップルのための個室も用意される。披露宴で吸血の対象とされるのは既婚女性が多いため、カップル用の個室には夫など家族の控え室も用意されているという。「吸血鬼と二人きりになった奥さんのことが心配というご主人は毎回多いので、控え室付きの個室は1ホールにつき40室と多めに設置している。野外での交接を希望するカップルや、個室が行き渡らない場合には庭園をご利用いただけるよう、外部との境界には高い壁と植え込みを設けている(同)」
実際に野外の庭園の利用頻度は高く、「皆さんに視られながらのセックスで、いままでのマンネリ気分が一掃された(結婚歴10年以上のご夫婦)」や、「開放的な気分になって、彼氏以外に抱かれても抵抗なく受け入れることができた(来月結婚を控えた彼氏と同伴した独身女性)」といった声もきかれている。
「吸血鬼が増えたこの街でも、年配者の方々を中心に"妻を吸血されたり犯されたりするのは恥ずかしく不名誉なこと"ととらえる人がほとんど。ご令室やご令嬢を吸血の対象として提供を強いられるそうした方々への配慮も怠らず、吸血鬼と人間との親善が生まれる場となるよう努めたい(式場担当者)」といわれるように、まだ意識の古い男女も少なくないが、そのぶん「個室の利用頻度は予想以上に高い(同)」ともいわれ、新規の設備は有効に稼働しているようである。
当日の花嫁と花婿以外にも、多くのカップルが結ばれる場として、地元結婚式場の果たす役割は大きい。

(ここまで7月27日構想)


地元新聞 「吸血鬼に支配された結婚式場 ”歓び”に目ざめる招待客」

「しあわせホール」で、市外からの利用が増えている。
市民の結婚式に参列した経験のある男女がリピーターとして訪れているようだ。
その中の一人である園かなさん(23、仮名)は語る。
「初めて来たのは、友人の結婚式でした。その場で吸血鬼に襲われて以来、病みつきになってしまって、あまりつきあいのない人の結婚式にもすすんで出席しています。彼氏はいますが、ここの存在はまだ秘密にしています。将来結婚するときには、ぜひ利用したいです。彼氏のお母さんが厳しい人なので、ぜひここの流儀に慣れてもらいたいと思っています」
「複数の吸血鬼と関係ができてしまったので、言いにくくって」と本音を漏らしたかなさんは、屈託なく笑う。
すでに性的な関係を結ぶ特定の吸血鬼も複数いるというかなさんの顔に、曇りはない。

都会で大手企業の重役を務めるFさん(53)も、知人の披露宴に出席して被害に遭ってから、家族ぐるみで式場を積極的に訪問するようになった一人だ。
甥の結婚式に家族で参列したことが、Fさんの運命を変えた。
Fさんの過去を長男のHさん(27)が代弁する。
「従兄の結婚式には、わたしも妻を伴って参列しました。当時新婚三か月だったのですが――ご承知の通りの展開となりまして、妻も披露宴に居合わせた8人の方に犯されました。吸血するのは当然吸血鬼の方々なのですが、乱交タイムになると普通の人間の参列者も加わるんですね(笑)。そのうちのなん人かとは、妻がわたしの時よりも燃えている感じで・・・かなり妬けました。
母は厳しい人なのですが、それでもお1人だけ経験しました。吸血鬼のなかに仕切っている人がいて、”大勢は駄目”というタイプの女性を見抜くんだそうです。たしかに、妻が体験したようなことは母には不似合いというか――ですから父の隣に座っていた人(あとで吸血鬼だとわかりました)がしきりに父にお酒を勧めていて、日ごろ気難しい父が意気投合しているのが意外でした。
人妻を狙うときの最適任者は、ご主人とウマの合う人だそうですが、母の相手は父との相性で選ばれたみたいです。そのまま奥の部屋に手を引かれていって・・・ですから、”決定的瞬間”を目にしたのは、父だけなんです。
妻がなん人めかの男性と夢中で交わるのを前に目のやり場に困っていると、その前に妻をモノにした別の男性から声がかかって、奥であなたを呼んでいるからと・・・披露宴の広間に隣り合わせにいくつも小部屋があるのですが、母はその中のひとつにいました。ちょうど入れ違いに出てきた父が、”あまり視るものじゃないよ”とたしなめるように呟いたのは憶えているのですが、そこで母が父とは別の男性に抱かれていました。よく気づかいをする人で、心のつながりができているなと感じるようなセックスでした。身持ちの堅い母までもが堕ちてしまうのだと思うと妻の行状にも初めて納得がいきました。
それから妻のところに戻ると、わたしも乱交の仲間に加わったのです。妻の両肩を抑えつけてほかの男性に促したり、わたし自身もまたがっちゃったり・・・妻にはあとで軽く叱られましたけどね」
さいごは照れくさそうに首をすくめたHさんも、奥さんともどもかなり楽しんだようだ。
その時のご縁で吸血鬼1人、人間の男性2人と親密になったHさんの妻は、いまや「しあわせホール」の常連。交際相手の男性と示し合わせて、直接関係ないカップルの結婚式にも参列してお祝いをするという。「人の少ない披露宴だと、私たちのようなエキストラの招待客も歓迎されます。人数が多いとその分、場が華やぐからだそうです。私も若い女性の中にカウントしてもらえるので、そこそこうれしいですね。そこでお嫁さんが犯されるのを鑑賞してから、ダンナを裏切るんです(本人談)」という。
それでも夫婦仲が安泰なのは、「しあわせホール」への参列がいつも夫婦同伴であるところに現れていた。
息子夫婦の暴露を受けて、Fさんもようやくひと言だけ、重い口を開いた。
「遺憾ながら、家内のお相手は家内ととてもお似合いです。それが、重役夫人の名誉を汚すことを認めた理由です」


地元新聞 「黒のストッキングはお好き? 冠婚葬祭場でも”吸血・不倫の舞台”を演出する”ダミー法事”が続出」

市内の結婚式場「しあわせホール」の隣接施設で冠婚葬祭場である「やすらぎホール」が、18日に改装を終えた。
従来通り実際の冠婚葬祭の場としても利用されるが、今後は「ダミーの法事」を軸に営業を展開するという。
同ホールを経営する「かしこ祭典」の梶間代表はいう。
「吸血鬼が街に侵入するようになってから、礼装姿のご婦人が襲撃を受けるケースが増えた。彼らは特に黒のストッキングを着用したご婦人の脚に好んで咬みつく習性をもっているので、喪服姿のご婦人が大勢集まる当ホールで吸血鬼向けの営業を企画した」という。
一部には「不謹慎だ」という声もあがるが、同社では「実際の式典とは別日に企画される等一定の配慮をしている(梶間代表)」と強調、受注件数も順調に伸びているという。
最初に企画されたのは、喪服女装の愛好会によるもの。
「淡い毛脛の浮いた男性の脚が黒のストッキングに装われて、独特ななまめかしさを帯びており、吸血鬼たちにも相当の人気のある企画(同社)」といわれる。
実際の法事の二次会としても活用されている。
「親族間では血の味が似通うことから、吸血鬼の間でも需要がある」といわれる。昨今では親戚同士の集まりは敬遠されがちであると伝えられるが、妻を寝取られる嗜好を持つ夫たちの間では喪服姿の夫人を同伴して活動するケースが少なくなく、「親戚づきあいは苦手ですが、やすらぎホールだけは別。今は”聖地”です」と断言する利用客も増え始めている。

(描き下ろし)


地元新聞 「市の経済にも大きな好影響」

市の経済状況をはかる市内経済白書がきのう公開された。白書によると、一部衣料品店の売上が対前年比20~30%増と、目立って好調である。
特に婦人服はフォーマルウェアを中心に対前年比40%と異例の伸びを示した。
「吸血鬼に襲われるご婦人が増えたことが大きいですね」と語るのは、創業70年のA洋服店。街の中心街のアーケード化から年々売上不振にあえいでいたが、ここにきて完全に息を吹き返したという。
「吸血鬼親善条例ができてから、ご婦人が真っ昼間から大っぴらに襲われるケースが目立って増えました。彼らはよそ行きのきちんとした服装の女性を好むので、勤め帰りや冠婚葬祭帰りのご婦人が好んで襲われるようです。学校帰りの途中を中高生が制服姿で襲われることも多いですね。ご婦人方がご主人や親御さんに内緒で親密な関係になった吸血鬼と逢う場合、事前に服を買うことが多いのですが、出先で唐突に難に遭い破れたブラウスの胸を抑えて駆け込んでくるご婦人も少なくありません。服はかさばるから持ち歩くわけにもいかないし、襲うときにはできれば前もって報せてほしいというのが本音ではないでしょうか(同)」
長期的に低迷してきてストッキングの売上も大幅に伸びた。ストッキングの売上が前年同期比50%増となったB用品店では、「吸血鬼がご婦人を襲うときには、ストッキングを穿いた脚に好んで噛みつくので、今では予備のストッキングを2~3足持ち歩いているご婦人がほとんどです。公立学校でもストッキングの着用を推奨しているので、一時は皆無に近かった女子中高生の需要も増えました」と語る。
「OLさんが愛用している着圧式のハイソックスも人気があるようです。また、学生さんの間ではハイソックスの人気も根強く、"毎週3~4足は破かれてます"という強者もいます。男子生徒の間でもハイソックスが流行していて、彼女を同伴して血液の提供に行く生徒さんが履いているようです(同)」と、ハイソックスの売上も順調だという。
意外にも、ストッキングを買う男性も増えているという。襲われた妻のために購入するケースばむろん多いが、それ以外にも"好んで穿いている男性が増えている"という。「奥さんを庇って身代わりに女装して血液を提供しているうちにはまってしまって、奥さん以上の頻度で身なりを整えて出かけて行くご主人もいるみたいですよ(同)」
ストッキングの嗜好が、市民の性嗜好にも大きな影響を与えつつあるようである。

(ここまで8月25日構想)

怒涛。

2019年09月28日(Sat) 10:43:48

きのうの朝。
構想が止まらなくなってしまいました。
お話があとからあとからわいてきて、たまたまPCをいじれない状況にあったのに、ケータイに文字を打ち込み続けていました。
以下にアゲたお話は、すべてそのときのものです。
ほかに、うまく続かなくなって途中で投げたお話が3話ほど。
あっぷするときに若干いじったお話はありますが、ほとんどは誤字を訂正したくらいです。
いったいあれば、なんだったのでしょうか?

姑の決断

2019年09月28日(Sat) 10:19:20

吸血鬼が若妻に横恋慕した。
彼は若妻を襲って血を吸い、犯してしまった。
若妻の夫は、最愛の妻の貞操が喪われたことを悲しんだ。
けれども妻が情夫に夢中になり、吸血鬼も妻のことを気に入っているのをみて、ふたりの関係を許すことにした。
吸血鬼は家庭を壊すことは望まず、彼女が人妻のまま犯すことを希望したからである。
妻も夫を愛していたので、夫婦はその後も仲の良い家庭を営んだ。
優しすぎる夫は、愛妻の新しい恋を祝福し、貞操の喪を弔った。

彼の母親が、息子の嫁の不倫に気がついた。
そして、息子までもが若い嫁の性交を認めてしまっていることを憂えて、関係を断たせようとした。
けれども、説得に出向いた母親は息子の家で吸血鬼に出くわして、あべこべに犯されてしまった。
いちど喪われた操は、元に戻らない。
けれども操を喪っても、夫婦愛まで壊れるとは限らない。
嫁の態度からそれと察した母親は、夫にすべてを打ち明けて、自分が嫁の身代わりに吸血鬼の愛人になりたいと告げた。
息子の血をうけた子どもの祖母になることを望んだためである。
父親は長年連れ添った妻を愛していたが、妻の決意が固いのを知り、自家の名誉が汚されるのを忍ぶことにした。

母親はまだ、四十代の女盛りだった。
それから8年の間、彼女は吸血鬼の愛人を引き受けて、その間に夫婦は愛し合って二人の子どもをもうけた。
やがて子どもたちご学校に通うようになると、吸血鬼と若妻の交際は自然に復活した。
夫や姑も、子孫を設けるというたいせつな役目を果たした彼女の恋を、もはや妨げようとはしなかった。
子どもたちは優しい息子と美しい娘に育った。
息子の花嫁と娘とは、二人ながら吸血鬼に処女を捧げ、特に娘のほうは吸血鬼の妻として結ばれた。
彼らの祖母が自らの貞操を汚すことで息子の血すじをつなぎ、なおかつ吸血鬼の花嫁をもたらすことになった。

9月27日7:58 脱稿

性欲の強い男の子

2019年09月28日(Sat) 10:05:59

性欲のとても強い男の子がいた。
十代のうちから自慰だけでは飽き足らず、セックスを楽しむのを結婚するまでがまんできないと母親に訴えた。
母親は夫と相談したうえで、自分が息子の相手をすることにした。
実母の手ほどきを受けて、彼は性技の達人になり、やがて実母を夢中にさせるまでになった。

彼の兄が嫁をもらうと、兄の新居に出向いて兄嫁を犯した。
友人たちが結婚すると、そのたびに新居に押しかけて、新妻たちを片っ端から犯した。
けれども女たちは彼の性技に屈してだれ一人抗わず、
父や兄を含めた夫たちもまた「あいつの女好きはしょうがない」と、笑って済ませていた。

やがて彼も嫁をもらった。
ところがそれまで人妻ばかり楽しんできた彼は、処女である花嫁にどうしても関心を持つことができなかった。
困り果てたあげく、彼は自分の花嫁を、他の男に抱かせることにした。
最初に選んだのは、父親だった。
息子の初体験のために、自分の愛妻の操を犠牲にしてくれたことを感謝していたためである。
けれども父親は、息子の嫁を犯すわけにはいかないと、花嫁の処女を奪う役目を引き受けなかった。
つぎに彼が相談に出向いたのは、兄のところだった。
新婚そうそう新居に上がり込んできた義弟に犯されて以来、兄嫁は夫公認で彼の恋人になっていたからだ。
けれども兄もまた、義理の妹を犯すわけにはいかないと、その役目を断った。
新居を襲わせてくれた親友たちも、同じだった。
だれもが常識的な人たちで、彼らが好意から自分たちの妻を襲わせてくれたことを彼は知った。

とうとう彼は、新妻の実家に出向いた。
新妻の父親は、自分の一人娘をものにしたいという願望を、かねてから抱いていた。
そして、娘婿のすすめるままに、里帰りをした娘の寝室に忍び込んで、犯してしまった。
それと引き替えに、彼が義母を奴隷にしたのは、いうまでもない。
晴れて男の経験を持った新妻に、彼は初めて欲望を覚えた。
そして、父親に捧げた操を守ろうとして必死に抗う妻に息荒く迫って、彼女が夢中になるまで愛し抜いた。
妻の父親は娘婿が長年連れ添った妻を気に入ったことを悦び、娘と妻の婿として彼のことを迎え入れた。
母娘ながら、彼の女となったのである。
義理の親子は時おり妻を交換し合って、楽しく暮らした。


9月27日7:30 構想

世界を守った夫婦

2019年09月28日(Sat) 09:42:08

世界征服を企んだ吸血鬼がいた。
手始めに、顔見知りの夫婦を襲って征服した。
先に襲われた夫は血を吸いとられる歓びに目覚めてしまい、愛する妻が襲われるのをむしろ嬉しげに見届けてしまった。
妻は夫の前で犯されて、世間体を気にする夫ともども服従を誓わされた。
それ以来、夫婦は代わる代わる襲われて生き血を吸い取られた。
夫は快感にふるえながら血を吸われて、
貧血を起こしてその場に倒れたあとは、妻が犯されるのを視て愉しんだ。
吸血鬼は夫婦を服従させたことに満足して、それ以上の悪事を行うのを忘れた。
この夫婦は、自分たちが堕落するのと引き替えに、世界を守ることに成功した。

9月27日6:35 脱稿

ストッキング地の靴下の夫婦

2019年09月28日(Sat) 09:29:10

濃紺のストッキングがたまらなく好きな吸血鬼がいた。
彼は好んで人妻を襲い、脚にまとわれたストッキングを咬み破りながら。生き血を吸った。
ある家庭に侵入したとき、誤ってご主人の血を吸ってしまった。
彼もまた、濃紺のストッキング地の、紳士用ハイソックスを好んで穿いていたためである。
気に入りの靴下を破かれたご主人は立腹したが、吸血鬼の毒に侵されてしまい、
なおも咬みついてくる吸血鬼に、靴下をブチブチと破かせて、血を吸うのを許してしまった。
同じ色のストッキングを穿いていた妻をも目の前で襲われてしまうのも、夢見心地で許してしまい、
自身の妻がドラキュラ映画のヒロインを演じるのをたんのうするはめに遭った。
ご主人は以前から不倫の関係だったふたりの仲を許して、お揃いの色のストッキングを穿いて吸血鬼をもてなすようななった。


あとがき
ちょっと読んだだけだとわかりにくいので、時系列に描いてみます。

さいしょに吸血鬼が妻を犯して、不倫の関係を結んだ。
妻は吸血鬼のために、彼の好んでいる濃紺のストッキングを穿くようになった。
吸血鬼は妻の生き血を求めて家にさまよい込んで、濃紺のストッキングのふくらはぎを咬むが、
夫の脚を妻のそれと取り違えて咬んでしまった。
夫は妻の浮気相手に生き血を吸われたが、吸血鬼の毒に侵されて、相手の欲望を許してしまった。
妻の情事を目の当たりにさせられながらも、夫はふたりの交際を許して、
おそろいで濃紺のストッキングを脚に通して咬ませるようになった。

9月27日6:25 脱稿

恩がえし。

2019年09月28日(Sat) 09:20:47

吸血鬼がある人妻をたらし込んで、生き血を吸った。
人妻の夫は、妻と吸血鬼との不適切な関係を歓ばず、なんとかして妻の仇敵を討ち果たしたいと思った。
毎晩吸血鬼を待ち受けたが、いつもまんまとしてやられて、吸血鬼が妻との逢う瀬を愉しむことを許してしまった。
しまいに夫は寝不足で健康を損ねて、病気になった。
妻は夫を気遣って懸命に看病し、連れ添ったしんけんな態度をみた吸血鬼も、交代で愛人の夫である男の看病をした。
やがて夫は全快したが、以前の頑なな態度を捨てて、最愛の妻の貞操をきみにプレゼントすると告げ、吸血鬼に妻との交際を許した。
人妻は夫の配慮に感謝して、ますます夫に尽くすようになった。

あとがき
『沙石集』という古典に、こんな話が出ています。
自分の妻の浮気現場を押さえようとして梁の上に隠れていた夫が足を踏み外して下に落ち、大けがをした。
妻ばかりか情夫までもが気遣って、夫を介抱したところ、
夫は情夫と和解して、妻のところに自由に通うことを許した。
ちょっとそんな話を、思い出しました。

9月27日4:50 脱稿

妻も母も。

2019年09月28日(Sat) 08:36:50

ある人妻が吸血鬼に襲われて、たらし込まれてしまった。
その人妻の夫は、吸血鬼を妻から引き離そうとあらゆる努力を試みたが、すべて失敗に終わった。
人妻はうら若い血潮を吸い取られて、徐々に素肌が色あせていった。
男は心底焦ってしまい、たまりかねて吸血鬼に哀訴した。
大切な妻なので死なせないで欲しいと。
吸血鬼は夫に同情したが、目下のところ生き血を吸い取らせてくれるのは彼女だけなので手放すことができないといった。
夫は父親の許しを得て、まだ女盛りだった自分の母親を、吸血鬼に紹介した。
吸血鬼は五十女の熟れた生き血に悦びながらも、もう少しだけ血があれば誰もが助かるのにとうそぶいた。
男は仕方なく、妻の服を借りて女装をして、こうするくらいしか方法がないと吸血鬼に哀訴した。
夫の女ぶりを悦んだ吸血鬼はさかんに夫の生き血を吸い、心からの満足を覚えた。
女ふたりは夫に許された不貞を愉しみ、夫もまた女として襲われる歓びを堪能した。
夫の父親さえもが、長年連れ添った愛妻のあで姿を覗いて堪能することで、満足を得た。
誰もが無上の歓びに浸りながら、その後の人生を愉しく送った。


あとがき
9月27日 4:37脱稿

色気を求める吸血鬼

2019年09月28日(Sat) 08:33:35

吸血鬼が独身の男を襲った。
男は彼の言うなりになって、血を吸われた。
男ひとりでは色気がないなと吸血鬼が言った。
男は自分の母親を紹介した。
母親は五十過ぎだが、女盛りだった。
吸血鬼は、男の母親に満足しながらも言った。
もう少し色気が欲しいなと。
男は吸血鬼に若い女の血を吸わせるために結婚した。
吸血鬼は、男のフィアンセをたらし込み、処女の生き血を愉しんで、そのうえで若妻の貞操まで玩んだ。
吸血鬼は男の妻の貞操に満足しながらも言った。
もう少し色気が欲しいなと。
男は吸血鬼の気持ちをそそるため妻や母親の洋服を借りて女装した。
吸血鬼ははじめて満足した。
男の妻は私の貞操が無駄に汚されたと苦情を言い、
母親もお父さんに顔向けできないじゃないのと苦情を言った。
父親は寛大な男で、わたしは家内の浮気をそれなりに愉しんでるよと笑い、
男も新妻の浮気を面白がっていた。
結局女たちは、男の女装ぶりの良さをしぶしぶ認めて、自分たちも浮気を愉しむようになった。


あとがき
9月27日 4:37脱稿

妻が、女らしくなった理由(わけ)。

2019年09月26日(Thu) 07:12:28

永年連れ添った妻が、女らしさを取り戻したのは。
不倫相手のために、美しくありたいと思うようになったから。
不倫相手が吸血鬼で、吸わせる生き血にうら若さを秘めたいと、強く感じたから。
女装にそまったわたしよりも、女らしくありたいと、不思議な競争心を燃やすようになったから。

分身の術。

2019年09月26日(Thu) 07:02:03

「いちどに大量の血液が必要になった。
 大勢でいくからそのつもりで」
吸血鬼から届いた連絡は、簡潔で残酷だった。
分身の術に心得のある”彼”は、いちどに複数の人間を襲うことができるのだ。
ふだんは顔色が悪くうっそりとした表情の”彼”は、いちど別れると顔を思い出せなくなるほど特徴のない顔だちの持ち主だった。

もともとわたしの取引先として家族に接近した”彼”は、さいしょに息子を襲い、
仲間に引き入れた息子の手引きで自宅に入り込むと、つづいて妻を襲った。
既婚の婦人を相手にするときには必ず、性交渉も遂げてゆくという”彼”の欲望に屈して、
妻は結婚して十数年守りつづけた貞操をむしり取られた。
いちど犯されてしまうともう、あとは夢中でしがみついたまま、
なん度も気前よく、許しつづけてしまっていた。
息子はそれを傍らで、失血した身を横たえながら、陶然と見入っていたという。
ふたりが男女の関係を結ぶのに、そう時間はかからなかった。

つぎに襲われたのが娘だった。
兄に連れ出された少女は制服姿のまま、”彼”の牙を享けた。
幸か不幸か、処女の生き血の貴重さを知る”彼”のおかげで、まだ純潔を保っているが。
それからいくばくもなく、若すぎる年頃で結婚相手の定まったいま、
未来の花婿の同意付きで、結婚前の身体を奪われることになっている。

さいごに吸われたのが、わたしだった。
もうどうなっても良い・・・と観念したわたしに、”彼”は終始紳士的に接した。
一夜明けるころには、妻は息子、娘が堕ちたのも無理はない・・・と思えるようになった。
家族はすぐに、平穏な日常を取り戻していた。

息子、妻、娘、わたしと、1人1人別々に吸われたものが。
きょうは同時に襲われるという。
常識的には、忌まわしい刻に違いないはずなのに。
ドキドキしてしまうのは、なぜだろう?
息子も、娘も、妻さえも。
同じ思いを抱いているらしい。
わざとらしい日常のやり取りを努めて重ねたけれど、そのうちだれもが黙りこくってしまって、
仲の良い家族は、約束の時間の約30分前を、ほとんど無言で過ごしていた。

インターホンが鳴った。
息子が起ちあがるとドアを開けて、さいしょに”彼”を家庭に引き込んだ時のように、”彼ら”をリビングへと引き入れた。
”彼ら”は無言で、めいめいに相手を選んで、距離を詰めてくる。
「きゃあっ」
さいしょに声をあげたのが、娘だった。
ブレザースタイルの洗練された制服姿を抱きすくめられて、真っ白なハイソックスの脚をすくめながら、
白ブラウスの襟首を早くも赤く染めている。
「ひいっ」
すぐ傍らで、妻が声をあげた。
そしてほとんど無抵抗のまま、じゅうたんの上にまろび臥した。
彼女が娼婦と化すのは、時間の問題だと思った。

気がつくと。
息子もわたしも、あお向けにされていた。
だれもが吸血鬼にのしかかられて、首すじを咬まれている気配が”彼ら”の背中越しにそれとわかった。
息子は、半ズボンから伸びた紺のハイソックスの脚を左右に拡げて、
娘も、白のハイソックスの脚をばたつかせて、
妻さえも、黒のストッキングに蒼白く滲ませた脛を、立膝にして。
めいめいに、しつような吸血に応じてしまっている。
やがてめいめいがめいめいに身体をひっくり返されて。
ストッキングやハイソックスの足許を、いたぶり尽くされてゆく。

「視たかったんだろう?家族が同時に吸われるところ」
わたしの上におおいかぶさっている”彼”が、耳元に囁いた。
思わず強く肯くわたしを、ぐいっと抱きすくめて。
鋭い二本の牙が首のつけ根を冒し、歪んだ劣情に淀んだ血潮を、ぐいいっと吸い上げる。

無上の快楽に目が眩んだわたしは、妻子を汚した男を、強く抱き返してしまっていた。


あとがき
個々に襲われる。
同時に襲われる。
家族で献血することを検討されているご主人。
貴男はどちら派でしょうか?

夫の降伏(幸福)

2019年09月26日(Thu) 06:20:36

まったく。
なんてつまらないことをしているんだろう。
歩みをすすめながら、タカシばおもった。

さいしょに息子が襲われた。
この街に棲みついた吸血鬼に、若い生き血を狙われたのだ。
襲われた吸血鬼と息子とは、その場で打ち解けてしまい、
息子はせがまれるままに、ハイソックスを履いたふくらはぎを咬ませていた。
妻が息子の異変に感づいた時。
しなやかなナイロン生地の舌触りを好む吸血鬼のために、
通学用のハイソックスをほとんど咬み破らせてしまっていた。

つぎに襲われたのは、妻だった。
息子を家に送り届けたときに顔を合わせたのがきっかけで、熟れた生き血を狙われたのだ。
初吸血のときに犯された妻は、その場で吸血鬼にほだされてしまい、
娼婦のように腰を振りながら、すっかり不貞行為にのめり込んでしまっていた。
夫がふたりの関係に気づいた時。
薄いナイロン生地の舌触りを悦ぶ吸血鬼のために、
ストッキングを1ダースも破らせていた。

さいごが彼本人だった。
勤め帰りを襲われて、その場で意気投合してしまい、
スラックスを引き上げて、長めのビジネスソックスを咬み破らせていた。
気づいた時にはもう、
ストッキング地のハイソックスを履いてもう一度逢おうと約束してしまっていた。

それが今夜のことだった。

息子と妻は、先に家を出ていた。
きっと若い順に、我が家の血を愉しまれているはず。
許すべきではない屈辱のはずなのに。
なぜかタカシの心は揺れた。
自分が生き血を啜り取られたときのあの感覚がよみがえってきて、
妻や息子が吸われるところを想像して、陶然となっている自分に気がついていた。

「穿いてきてやったよ、好きにしたまえ」
投げやりに言葉を放ったタカシに、吸血鬼はどこまでも鄭重な態度で接した。
貴兄の尊厳を傷つけるつもりはない。
そういいたいらしかった。
けれども吸血鬼の口許は、妻や息子の血で濡れていて、
吸い取られたふたつの身体は、同じ広間の片隅に、正気を失ったまま横たわっている。

息子の履いている紺のハイソックスのうえに、淫らな唇が吸いついて、
清冽な血潮が、ちゅう・・・っと吸い上げられて。

妻の穿いている肌色のストッキングのうえに、卑猥な唇が這わされて、
熟れた血潮が、ちゅう・・・と吸い上げられて。

自分の穿いているストッキング地の長靴下を通して、エッチな唇がまさぐりつけられて、
働き盛りの血液を、ちゅう・・・っと吸い上げてゆく。

いけない。
くらっとしためまいを覚え、頭上のシャンデリアを仰ぐと、
さらに眩暈が倍加した。
タカシは平衡を喪って、その場に倒れた。

引きあげられたスラックスの下。
妻が履いているストッキングと同じくらい薄手のナイロン生地ごしに、
卑猥な舌がなんども這わされた。
舌触りを愉しみ、牙を差し込まれ、生き血をちゅう・・・っと引き抜かれ、
ひざ丈の靴下はじょじょに弛み、しわくちゃにされて、ずり降ろされていった。

気がつくと。
妻はベッドのうえで吸血鬼と腰を結びあわされて、
着崩れしたブラウスのすき間から、乳房の白さをチラチラとさせて、
蒼白い吐息を穿きながら、愉悦していた。
妻の貞操を守ろうとする意思は、すでに失われていた。
さっきまで。
男は彼のうえにいた。
股間に突き入れられた衝撃が、まだじんじんと響いて、タカシの理性を冒している。
そのまえが息子だった。
半ズボンを脱がされた息子は、犯された女子高生みたいになって、
金のハイソックスを履いたままの両脚を、放恣に伸ばしていた。

妻が、なにかを言おうとしている。
こちらを向いてけんめいに、目で訴えている。
「もう、こんなのはイヤ」
というのかと思った。
けれども女が洩らした言葉は、真逆のものだった。
これからも、なん度も来ようね――
それにこたえる自分の反応も、思っていたのとは真逆のものだった。
ぜひ、そうさせてもらおう。今夜のきみは、とても素敵だ――


あとがき
家族を吸われた夫が、さいごに陥落するときに。
妻や息子の仇敵である吸血鬼の好みに合わせて、
ストッキング地の紳士用のハイソックスを自分から穿いて、出向いてゆく。
息子のハイソックスや妻のストッキングと同じようにいたぶられながら、
働き盛りの血を吸い取られて、自身も同じように堕ちてゆく。

まえにも同じようなものを描いた記憶がありますが、いつ頃のことだったかよく思い出せません。
バブルのころまでは少なからず見かけた、ストッキング地のハイソックスを履くビジネスマンも、このごろはまったく見かけなくなりました。

妻を目の前で犯される ということ。

2019年09月24日(Tue) 06:33:47

妻を目の前で犯される。
それは夫にとって、相手の男との力関係をはっきりと見せつけられる儀式。
自分だけの所有物だったはずの妻の身体が征服され、突き上げる本能的な衝動に心ならずも反応し始めて、
さいごには淫らな愉悦に染まり切ってしまうころ。
奴隷に堕ちた夫もまた、妻が女として、相手の男を満足させていることに、歓びを覚えるようになってゆく。

もちろんそこには前提があって、
妻を犯す男が害意の持ち主ではなく、純粋に寝取りを好み、かつ夫への配慮を怠らない場合に限られている。
夫の体面は保証され、婚姻関係の解消も家庭崩壊も起こらず、うわべは紳士淑女の夫婦でありつづけることが可能となる。
夫はあくまで大人の遊戯として、自分の妻が寝取られ、目のまえで犯されることを受け容れ、
家庭の主要な部分を侵犯されることを許容するのである。

喪服女装の通夜

2019年09月24日(Tue) 06:13:58

「私が死んだら、昭太さんは婦人もののブラックフォーマルを着て、お葬式に来て頂戴」
義母の佐奈子さんの訃報は、そんな風変わりな遺言とともに訪れた。
悲しみもそこそこに妻の美由紀は、猜疑の視線をわたしに投げる。
わたしの女装癖を、美由紀は良く思っておらず、佐奈子さんは擁護してくれていた。
けれども、遺言は遺言である。そこは美由紀もわかっていた。
「ちゃんと用意するから。あなたの喪服。試着にもついていくから」
強い口調でそう告げた美由紀は、慌ただしいなか時間を作って、デパートのブラックフォーマルの売り場にわたしを伴った。
「この人の着るものです」
婦人もののブラックフォーマルを一着求めたいという美由紀が、夫であるわたしを指さしたとき、
デパートの若い女性の店員はちょっとびっくりしたような顔をしたが、
交代で現れた年配の店員はごく物慣れていて、
「ご主人の体形だと、こちらか、こちらになりますね。こちらですと、袖が透けていて夏でも涼しく着れますよ」
幸いほかに客がいなかったことから、逃げるようjに試着ルームに入室して、
震える手つきでブラウスのボタンをはめ、スカートを腰に巻き、ジャケットの袖を通していった。
美由紀のおかんむりな様子を、カーテンごしにありありと感じながらも、新しい生地のむっとする匂いに包まれながら、しばし至福の刻を味わっていた。
けっきょく、店員のすすめる袖の透けているものを択んだ。
寸法が合っていたから・・・とわたしは弁解したが、美由紀の冷ややかな目線に変化はみられなかった。

そうこうするうちに、訃報の届いた翌晩である通夜の晩が迫ってきた。
義母はひなびた村に棲んでいた。
それは美由紀の生地とも程遠く、義母のそのまた父親、つまり美由紀の祖父が住んでいたという土地だった。
村は小ぢんまりとしていたが、その分仲良く暮らしているらしく、葬儀の段取りはとうに出来上がっていて、
わたしは名ばかりの喪主として、婦人もののブラックフォーマルに包んだ身を、喪主の席へと移していった。
夫婦で訪れたのに、そろって婦人もののブラックフォーマル。
そんな風変わりな夫婦連れに、村の人はだれ一人、奇異の視線を向けなかった。
義母からよく聞かされていたのだろう。
透明な風が重たい漆黒のスカートをかすかにそよがせ、ウィッグの髪もさやさやと揺れて、
黒のストッキングを通して秋の入り口の涼しい風が爽やかに流れていった。

夜になると、周囲の雰囲気は一変した。
ひととおりの度胸や焼香が終わると、本堂がそのまま、あろうことか乱交の場となったのだ。
兄が妹に襲い掛かり、母親と息子がまぐわい合う。
そして我々も、例外ではなかった。
美由紀にはなん人もの男――それもほとんどが自分の父親くらいの年齢のごま塩頭の親父ども――が群がり、
わたしさえもが黒のブラウスをくしゃくしゃにされて、剥ぎ取られてゆく。
すぐ手の届きそうなところで、美由紀が脚をじたばたとさせて暴れている。
けれどもほうぼうから伸びた逞しい節くれだった掌たちが、てんでに豊かな肢体を抑えつけてゆく。
美由紀の穿いている黒のストッキングに、よだれをたっぷりと帯びた唇が吸いつけられ、なまなましい舌が這いまわる。
わたしにさえも。
胸を揉まれ、股間を押し開かれて、ストッキングをびりびりと破かれ、ショーツを脱がされて、
初老の男の臭い息を吐きかけられながら、股間にその男の一物が突き入れられるのを、どうすることもできなかった。

傍らで、妻が犯されている。
それどころか、わたし自身までもが、男の一物を、幾人となく受け容れさせられている。
しだいしだいに、彼らの強引な身体の躍動が、わたしの血管に淫らなものを脈打たせ始めた。
気がついたらもう、女になり切って、せめぎあう一物たちを、あるいは咥え、あるいは舐めしごき、あるいは股間に受け容れて、
夢中になって抱き返していた。
なかには、美由紀を犯したばかりの一物も、含まれていたに違いない。
けれどももう、美由紀が身を持ち崩しても無理はないと思うほど、彼らの一物は胸の奥に響くほどの衝撃を、わたしにもたらしつづけていた。

嵐が過ぎたとき、わたしははっと気がついた。
目のまえに、死んだはずの義母がいた。
義母は和装の喪服を身に着けていて、首すじには赤黒い痣が二つ並んでいた。
よくみると、痣には血が滲んでいた。
「あなたたちも咬まれてるわよ」
義母に促されてみた姿見jには、犯され抜いた喪服の女が写っていた。
「昭太さん、見事な女ぶりでしてよ」
義母が本音でほめているのがわかった。
わたしの首すじにも、いつの間にか、綺麗に並んだ痣がふたつ、滲んでいる。
ふり返ると、美由紀と目が合った。
その美由紀の首すじにも、同じ痣が浮いている。

「吸血鬼の村なの。ここ。美由紀もここで育っていたら、処女のままお嫁入することはなかったわね。
 昭太さん、運が良かったわよ、この子、男を識らないでお嫁に行ったでしょ?
 そのまま終わるのはかわいそうだと思っていたの。
 どうかしら。美由紀を最初に犯したあの方と、いちばんしつこくつきまとったあちらの方。
 美由紀にお似合いだと思いません?」
まさに悪魔の囁きだった。
囁いた魔女は、この村に棲みつくうちに血を吸われ、娘と娘婿までも生け贄に差し出す気になったのだ。
けれどもわたしもまた、すでに堕ちた人間となっていた。
すでに衣装で女に堕ち、
喪服を破られることで娼婦に堕ち、
犯された妻の顔に歓びの色を見出すことで、寝取られ亭主に堕ちていた。

あくる朝。
「また来ようね」と笑う妻に、
「ここに棲んでもいいかな」と応えるわたし。
ふたりとも、ここを訪れたままの喪服姿。
黒のストッキングは破れてひざ小僧までがまる見えになり、
パンプスのかかとは片方ずつなくなっていて、
ブラウスの胸ははだけて、ブラの吊り紐が衆目にあらわになっている。
「この格好で帰るの?」
という義母は、わたしたちに帰りの服を用意してくれていた。
わたしのそれは、地味だが造りのしっかりとした、海老茶色の婦人もののスーツ。
美由紀のそれは、すけすけの黒のブラウスに真っ赤なミニのタイトスカート。
お互い黒のストッキングを穿くと、淑女と娼婦ほどの違いがあった。
「美由紀の服はね、あなたに執心の殿方からのプレゼント。今度からは昭太さんではなくて、そのかたの好みに合わせて装ってね」
「ぼくは、美由紀さんを奪(と)られちゃうんですか」
と訊くわたしに、
「だあいじょうぶ。寝取りに来るだけだから。みなさん、美由紀のことは、あなたの奥さんのまま犯したがってるの」
義母はイタズラっぽく、笑った。
周囲もあっけらかんと、笑った。
わたしは照れ隠しに笑い、美由紀も仕方なさそうに笑った。

夕べの通夜の席で、妻を目の前で犯した男たちと談笑しながら握手を交わし、
家内が欲しくなったらいつでもいらしてください、わたしも見て愉しみますから、なんて口にしてしまっている。
そんなわたしを視る美由紀の視線は、いつか和やかなものになっていた。
女装癖を咎めるときの、あのとがったものはもう、どこにもない。
夫に不貞の現場を見せつけたがっているという自身の変態性に目覚めてしまった彼女はもう、夫を咎めつづけることはないのだろう。
「近々、こちらに引っ越してきます。そのときはまた、家内と仲良くしてやってください。
 わたしのことも、女として抱いてください」
わたしのあいさつに、満座から拍手が沸き起こった。

新妻と輪姦専科な吸血鬼たち

2019年09月22日(Sun) 16:04:11

わい雑な明るさに満ち溢れたわが家のなかに、リエさんの姿があった。
リエさんはぼくの幼なじみで、近々結婚することになっている。
ぼくの家には子供のころから遊びに来ているので、当然、吸血鬼の小父さんたちとも顔なじみだ。
彼らの正体を知ったのは年頃になってからだったけれど、
ぼくの家によく遊びに来る理由が、母さんをまわしに来ていることだと聞かされた後でも、
もともと昔から知っているどうしだったので、彼女が彼らを避けたり嫌ったりすることはなかった。
(もちろん結婚前の娘としてある程度の警戒はしていたけれど)
「エ?吸血鬼だったんですか?びっくり~」
そんなていどのかんじだった。
ぼくたちの街はとっくの昔に吸血鬼と人間とが共存して暮らすようになっていたし、
リエさんのお父さんももの分かりのよい人だったから、
彼女のお母さんもまだだいぶ若いうちに彼らにモノにされてしまっていて、
うちに出入りしている5人衆の吸血鬼に、まわされちゃっていた。
「ユウくんのお母さんと仲良しの小父さんたちが、うちの母とも仲良くなってくれて、嬉しい♪」
彼女の感想は、そのていどの能天気なものだった。

天真爛漫な彼女の性格は小父さんたちにも気に入られていて、ぼくの友だちの中でも以前から別格扱いだった。
まして、恋人となり結婚相手となる過程では、しばしばたちの良くないアドバイスをくれたし、それが善意の応援のあらわれだということも、ぼくはよく承知していた。
だから、彼女を招いてのわが家に、彼らが彼女の顔を見たさに集まって、わい雑な明るさをかもし出すのも、もっともというものだった。
「オイ、夕太。いまのうちにしっかり、リエさんに穴をあけとけよ。いずれ、だれの嫁だかわからないくらいに人気者になっちゃうんだからな」
そんな露骨な冗談にも、リエさんは声をたてて笑い興じるのだった。

やがてぼくたちは結婚し、処女と童貞で新婚初夜を迎えた。
一週間の新婚旅行から帰ると、彼らへの”手土産”は、「新妻の貞操」――。
ほろ苦い現実を受けいれるため、ぼくは事情をリエさんに話して聞かせた。
「そのつもりでいたからだいじょうぶ」
とウィンクで返す彼女に、ちょっぴり想いはフクザツだったけれど。
それでも、あの5人に吸血されまわされてしまうという運命を、彼女がごくにこやかに受け止めてくれたことに、ぼくは大いなる安堵と満足とを感じていた。

「リエさんを真っ先に抱かせてくれ」
そう囁いてきたのは、一座の中でも比較的年配の、顔色の悪い男だった。
サキオと呼ばれるその小父さんは、母さんといちばん親しいようすだったが、
あるときひっそりと言われたことがある。
「お前の本当の父親は、わたしだ」と――。
彼は吸血鬼のなかでは半吸血鬼と呼ばれる存在で、もとはこの街のふつうの住人だった のが、街が受け入れた吸血鬼に血を吸い取られて彼らの仲間になった人物。
輪姦マニアの彼らのなかでは唯一の妻帯者で、サキオさんが初めて輪姦を経験したのは、ほかならぬ自分の奥さんだったという。
つまり、半吸血鬼となったお祝いの宴に、自分の奥さんを差し出したというわけだ。
彼はぼくのことを初めて咬んだ吸血鬼だったけれど。
ぼくは彼の言を、素直に信じた。
彼こそが、ぼくのほんとうのお父さん。
だから、自分の嫁を真っ先に捧げることが、親孝行なのだと。

彼にしてみれば。
自分の妻をまわした男たちに、息子の嫁まで獲物として与えることになるはず。
そこには独特の、マゾヒスティックな歓びがあるのだろう

リエちゃんが処女のうちから、じつはたっぷりと吸い取らせていただいていたのさ。
きみのお嫁さんは、とっくの昔からわしらの共有財産というわけだ。

「お母さんからは、抱かれてらっしゃい、すごいわよって言われてきました」
直前までそんなことを言っていたリエさんだったけれど。
いよいよコトに及ぶ・・・というだんになると、にわかに恥ずかしがって、
夫婦の寝室のふすまを開けたままサキオさんにのしかかられると、
「夕太、視ちゃダメ~!」
と、両手で顔を覆って絶叫していた。
もちろんそんなことが許されるはずもなく、
記念すべき新妻の貞操喪失シーンはみんなの記憶に残るよう、ふすまを開け放ったままの状態で、
夫であるぼくを含めた5人の男たちにも共有された。

次から次へと、順々にソファから起ちあがる男たち。
だれもが全裸で、あそこをビンビンに振り立てて、リエさんに挑みかかっていった。
さいしょのうちこそぼくの前であるのを気にして、なんとか貞操を守ろうと腕を突っ張ったりして抵抗していたリエさんも、
二人め以降になるともう、ほとんど無抵抗に受け容れてゆく。
ぼくはふと思った。そして、サキオさんに囁いた。
「リエさん、吸血されるの初めてじゃないよね?」
「わかるかね?」
サキオさんは、にやっと笑った。
実はまだ彼女が女子高生のうちから、制服姿に目のくらんだ彼らは自分たちの邸のなかに彼女を引きずり込んで、処女の生き血をたんのうしていたという。
「えっ、じゃあもうとっくに、寝取られていたの??」
「でもちゃんと、新婚初夜には処女だっただろう?」
「それはそうだけど」
彼らはリエさんがぼくの未来の花嫁なことを尊重してくれていて、犯すことはなかったけれど。
やっぱり処女の生き血には目のない、ただの吸血鬼だったのだ。
リエさんは制服姿のまましばしば彼らの住処に連れ込まれて、素肌を吸われ舐められながら、きゃあきゃあはしゃぎながら、生き血を吸い取られていったという。

不思議に、怒りは沸いてこなかった。
むしろ、リエさんが処女の生き血をたっぷりと彼らに愉しませることで、
わが家の嫁としての務めを果たそうとしてくれたことに対する感謝の気持ちがわいてきた。
「さあ、婿さんも加わるぞ~」
傍らでサキオさんが声をあげる。
「エエ~ッ!?」
いちばんだれよりも大声をあげたのは、ほかでもないリエさんだった。
みんなの前での夫婦エッチは想定外。
リエさんはのしかかってゆくぼくに目いっぱい抵抗して、すぐにねじ伏せられて、征服された。
周りじゅうの拍手などもう耳にも入らずに、ぼくは嫉妬心のかきたてるいびつでエッチな感情の虜になって、なん度もなん度も彼女を愛し抜いてしまっていた。


あとがき
多分ここに出てくる夕太くんは、17日にあっぷした「貞淑だったはずのお隣のご夫婦も・・・」で生まれた息子さんだと思います。
(^^)
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-3842.html

法事帰りのご婦人たち

2019年09月22日(Sun) 15:41:46

法事が良いのだ、と、彼はいった。
お弔いだと、悲しみの度合いが大きすぎて、十分楽しむことができないから と。
エッチなビデオなどで、通夜の席で乱れる未亡人なんてやっているが、多くの場合あれはうそだ ともうそぶいた。
そういいながら彼は、法事帰りのご婦人たちの、黒のストッキングに包まれた足許を盗みるのも忘れない。
そのうちのひとりが、足許に注がれる視線を見とがめて、こちらに歩み寄ってきた。
すっかり白くなった髪をきちんとセットした、老婦人。
躊躇いがちに書けてきた言葉は、
「あの・・・喉渇いていらっしゃるのですか?」
少々ならお相手しますよ・・・という老婦人の善意を、彼は鄭重に断った。
「それよりも貴女、少しお疲れのようですな。ご自宅に戻られたらすぐに、砂糖水を飲まれると良い」
お気をつけて・・・と慇懃に頭を垂れる彼に、
老婦人もまた善意を漂わせた気品ある目鼻立ちに、いっそうおだやかな色をたたえて、ごきげにょう、と声を送った。

しばらくして通りかかったのは、40代くらいの落ち着いたマダム。
「あの…先日は見逃していただいて助かりました」
どうやら獲物を狩りに出かけた公園で出くわした彼女を、体調が悪そうだからといって襲わずに帰宅を促してやったらしい。
どうにも律儀なやつだ。
マダムはその折の好意を恩義に感じていて、わざわざ遠い縁戚の法事に出向いてきたのだと告げた。
「きょうは身体の調子がよろしいので、少しならお相手できますわよ」
マダムの善意を、彼は断らなかった。
「きょうは”本命”がいるから、ご主人に必要以上の迷惑はかけませんよ」
と言い添えた。
ご主人同伴だろうが何だろうが、ふだんなら見境なく、襲ったご婦人の貞操を奪って悦に入るやつなのに。
彼女は同伴のご主人のところに戻って二言三言囁くと、
ご主人は遠目にこちらに軽く会釈を送ってきて、
それからこちらに背中を向けたベンチに腰かけて、煙草を取り出しはじめた。

「すまないですね・・・じゃあちょっとだけ」
喪服のスカートのすそを心持ちたくし上げたマダムの足許に、彼は唇を近づける。
薄いナイロン生地ごしに清楚に浮いた白い脛に、脂ぎった唇が、ぬるりと這わされた。

ちゅうっ・・・ちゅうっ・・・ちゅうっ・・・
吸血されるあいだじゅう、マダムは目を瞑っていた。
放された唇のあとは、鮮やかな伝線がひとすじ、スカートの奥にまで這い込んでいる。
「主人は侮辱だと憤慨するでしょうけど・・・これくらいのことはおおめにみてもらいますからね」
マダムはイタズラっぽく笑うと、さっきからじりじりしているご主人の後ろ姿へとパンプスの脚を駆け寄らせていく。
立ち去る夫婦連れのご主人のほうが、破れたストッキングを穿いた同伴者の足許を始終気にかけ続けているのを遠目に見送りながら。
彼は口許を拭うとうそぶいた。
「どうやら、本命がご来臨のようだ」
微かな足音だけで、それが聞き分けられるのだ。
わたしにはとうてい、その足音が妻のものだと聞き分けることなどできない・・・

曲がり角から現れた喪服姿は、まさしくわたしの妻――
わたしとはあえて視線を合わせることなく、彼に向って礼儀正しくお辞儀をし、彼もまたそれに劣らぬほど恭しく会釈を返してゆく。
そろそろわたしの立ち去るべきときがきた。
そう思って腰を浮かそうとすると彼は、
「どこへ行くつもりかね」
と訊いた。
「きょうの法事には、見届け役が必要なのだと、察しをつけてもらいたかったな」
彼はイタズラっぽく、にんまりと笑んだ。
そして、あくまでもわたしとは目を合わせようとしない妻の腕をとって、お寺の本堂へと足を向ける。
どうやらきょうもまた、わたしは目の前で犯される妻の、貞操の喪を弔うことになりそうだ。
まだ咬み破られていない妻の黒ストッキングが、いっそうなまめかしく、わたしの網膜を彩った。

お隣のご夫婦の後日談 または、”ピュア”だった過去

2019年09月17日(Tue) 07:55:31

パパには、仲良しの小父さんが5人います。
5人はいつも連れだってうちに遊びに来るので、小さいころからの仲良しです。
さいしょのうちはみんなでリビングに集まって、楽しくおしゃべりをするのですが、
そのうちにパパとママは寝室に姿を消して、小父さんたちはかわるがわる、ママと仲良くするんです。
そんなママのことを、パパは好きなお酒を片手に笑って見守っているし、
ぼくとも交代で遊んでくれるので、悪い気はしません。
それがいけない行為だとわかったのは、だいぶたってからのことです。
それがいけない行為だとわかった後も、ぼくは思うんです。
小父さんたちとは、「いけない行為」を許し合っているほど仲良しなんだって。
ぼくが大人になってお嫁さんをもらったら、ママと同じように、仲よくしてもらいたいと思います。
早く大人になりたいです。


子どもの作文は、怖いですね。
隣のご主人は、そういった。
初めて奥さんを捧げた動機は、子宝が欲しかったから。
望み通り子供を得て、産んで育てて、子供が育ったころ、ご夫婦には不思議な願望が芽生えていた。
もういちど、あのひとたちと結ばれたい。愉しみたい。
衝動のままに受話器を取って、彼らがなだれ込んでくるのに、30分とかからなかった。
PTA帰りのきちっとしたスーツを剥ぎ取られてゆく妻に、ここまで昂奮するとは思わなかった――
ご主人は、初体験の告白を私にしたときと同じ恥ずかしそうな口調で、そう告げる。

昔はピュアだった。
そう語る人たちの多くは、ピュアな過去が善でそうではない今を悪だと決めつけることは少ない。
息苦しいほどピュアだったお隣のご夫婦は、どうやら一線を越えてしまったらしい。
そして、一線を越えたことを必ずしも忌んではおらず、むしろ悦んでいるらしい。
次の世代にまで影響を与えつつあることをすら、むしろ悦んでいるらしい。

3連作。

2019年09月17日(Tue) 07:36:37

久しぶりに”やる気”が湧いたと思ったら、3つもあっぷしてしまいました。
(*^^)v
いつものことですね。
(^^ゞ

吸血鬼の支配を受け容れた街に住む夫たちの、人それぞれのありかたを、さらっと描いてみました。
生真面目な夫婦は襲われない。
なのにうちは、真っ先に襲われて、愉しんでしまった。
同僚の奥さんに想いを寄せていたのを、自身の妻の貞操と引き替えに、実現してしまった。
そんな夫たちを、必ずしも責められないような気がします。

さいごの事例はちょっと特殊。
せっかく生真面目ぶりを認められて、奥さんを襲われることを免除されていたのに、
自分から願って輪姦されてしまっています。
周囲の空気が伝線した、というのは、主人公の思い込みです。
夫婦はどうして直前まで話し合ったのか?
じつは、子供が欲しかったんですね。
輪姦マニアの吸血鬼5人組は、ご夫婦の真の希望をきいていたのでしょう。
希望は間もなくして、好意的に実現されます。
この5人組、主人公の母親のこともモノにしちゃっているようですが、
こちらのご家庭で子宝の話が出てこないのは、決して年齢だけの問題ではないようです。

どうしてわざわざ輪姦などという、まがまがしいものを選んだのでしょうか?
人は、気の進まない行為を多少無理して受け入れるときには、あえて過激な方法を択ぶことがあるようです。
それともうひとつは、
本当の父親がわからない形で、奥さんの妊娠を望んだのかもしれません。

今回は久しぶりに、自動筆記のように話がさくさく進みました。
(このブログはミラーサイトを持っているのですが・・・なぜかミラーサイトに入力する方がさくさく進んだ)
こういうときは、登場人物の真意を考えている時間すら、柏木にはなかったりするのです。
書き上げた後から、「あ、そういうことなのか」な感じ。
読みふけったミステリの謎が解けたときみたいな、ちょっと嬉しいひとときです。(^^)

貞淑だったはずのお隣のご夫婦も・・・

2019年09月17日(Tue) 07:25:57

とうとう捧げちゃいましたよ。
恥ずかしそうにそう語るのは、お隣のご主人。
吸血鬼が我が物顔にはびこるこの街で、妻を襲われなかった稀有な存在。
真に受けられると始末が悪い。
そんな思いがあるものか、この街を支配する吸血鬼は、無理強いは決してしない種族だった。
この街が吸血鬼を受け容れて、かれこれ2年ほど経って。
お隣のご主人も、そういう気持ちになったのだろうか?

決してね、”周りがみんなしていることだから”とか、そういうことではなかったのですよ。
言葉少なではあったけれど。
だれかに想いを聞いてもらいたいのだろう。
同じ市役所の職員で、吸血鬼受け入れの窓口に配属されたわたしが、
率先するように妻を捧げた事情を話した後に、彼の口をついて、そんな言葉が洩れてきた。
周囲の猥雑な空気が彼に伝染し、彼の妻にも伝染し、
いけない種子は夫婦の心の中に巣くってから長いことかけて、妖しい花を咲かせたのだろうか。

奥さんを”公開”する直前まで、夫婦で遅くまで話し合ったという。
”隣のご夫婦”であるわたしの事例も、考慮の対象とされていたと聞いて、ちょっぴりくすぐったい思いがした。
彼の奥さんをしんけんに堕としたがっている吸血鬼が、ご主人に向けて熱心にアプローチしたことがきっかけだった。
その吸血鬼は賢明にも、ご主人が許すまで、奥さんとは言葉さえ交わそうとしなかったという。
アプローチは、街が吸血鬼を受け容れた直後からひそかに続けられて、2年越しでやっと実を結んだという。
貞淑妻を堕落させるための計画は2年越しで継続されて、
生真面目で評判のこの市役所職員は、2年計画で市の方針を受け容れた。

ご主人はちょっぴり照れくさそうに、わたしに漏らす。
さいしょはね、そのひとだけだという約束だったのですよ。

わかりますわかります。わたしの母のときもそうでした。
”この齢まで守り抜いてきたものを汚すのは気が引ける、できればお一人だけにしてほしい”
そういって母は、母を熱烈に望みつづけたお一人にだけ許したという。
それでも母は、いまや妻をも超える7人もの愛人の持ち主。
どうしてそんなにこなせるかって?
うち5人は、輪姦専科なのです・・・

隣のご主人は、さらに照れくさそうに告白する。
いまではね、家内には5人、いるんです。
その5人は輪姦マニアでしてね、(おいおい、どこかで聞いた話だぞ)
わざわざわたしがいる自宅にやって来て、妻の献血を受けるんです。
犯される妻を見て昂ることができるなんて、夢にも思いませんでしたけれど。
いまではわたしのほうが熱心に、妻を犯してくださいと連絡を取っているありさまです。

熱心にアプローチしてきた彼も、さいしょからそのこんたんでした。
彼の願望は、わたしの妻を我がものにしたい・・・というだけではなくて、
わたしの妻を、みんなで輪姦(まわ)したいということでしたから。
お互いの利害が一致して?いまでは愉しくプレイをしています。

子宝に恵まれないまま、10年も夫婦をやってきましたけれど、
妻にあんな願望があるだなんて、知りませんでした。
わたしにこんな願望があるだなんて、わかっていませんでした。

先日、夫婦して産婦人科に行きました。
わたしが原因で子宝に恵まれていなかったのですが、
3か月の診断をもらったんですよ。
もちろん、産んでもらって育てるつもりです。
彼女もわたしも、子供が欲しかったので。

正当化された不貞行為

2019年09月17日(Tue) 07:04:51

妻の愛人は3人いる。
ひとりは、初めて夫婦ながら相手をした吸血鬼。
もうひとりは、そのあとわたしの母を襲った吸血鬼。
いまは嫁も姑も抱かれるという、濃い関係。
そしてもうひとりは、わたしの同僚――。
わたしと同じくらい早い段階で奥さんを犯されて、自身も血液のほとんどを奪われて、半吸血鬼になった男。
本人がそんな身になったのは。
じつは妻に焦がれていたからだという。
ふだんは謹直で、結婚も誰よりも遅かったけれど。
シャイで濃い愛情の持ち主は、
自分の奥さんとはラブラブなくせに。
人の妻にまで手を出す男。
ときにはセックスだけで呼び出され、妻も応じていると知りながら。
わたしはきょうもなに食わぬ顔で、友達と逢いに行くと告げる妻のことを、やさしく送り出していく。

妻と同僚との不貞は、献血行為の名のもとに正当化されている。
妻のなかでも。
わたしのなかでも。