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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

~このサイトのご紹介~ 魔性の淫楽への招待状

2026年03月22日(Sun) 21:12:01

はじめにお読みください。
一話読み切りのお話がほとんどですが。
吸血鬼ストーリーといっても。
「他では目にすることはまずないでしょう」
そう断言できるほど?変わった世界のお話なので・・・。

【付記】
弊ブログに登場する人物・団体はすべて架空のものであり、実在するかもしれない人物・団体とは何の関係もありません。
(2018.2.12念のため追加しました)

カテゴリの解説

2025年08月14日(Thu) 19:11:24

ひと言で吸血鬼ものの短編といっても、それこそいろんなお話が混在していますので。
カテゴリをちょっと、整理しました。
お話に共通のおおまかな設定については冒頭↑の「招待状」に書かれてありますが。
ちょっとだけ、付け加えておきます。

貞操公開の夜。

2022年11月15日(Tue) 21:25:11

今夜の貞操公開は、安岡さん宅と永村さん宅が当番です。
安岡さん宅は、奥さん、お母さん、長女のルミ子さん。次女の初音さんはまだ年端がいかないので勘弁してほしいということです。
永村さん宅は、奥さん、長女の小春さん――それに次女の深雪さんが今回からOKをもらえました。

おぉ・・・という声にならないどよめきが、一座のあいだから洩れた。

説明は淡々と、続けられる。

永村さん宅では、長男の嫁の奈加子さんも、前回に引き続きOKです。
ご両家とも、着衣のままでの応接もご諒解が取れています。
ご家族全員、お相手の男性の精液でスカートのすそを浸したいとご希望です。
ひと晩ごゆっくり、楽しまれますように。

自分の苗字を「永村さん」とわざわざ他人行儀に読み流し、感情を殺してすべてを棒読みにしたわたしは、
みるからに好色そうな、自分よりもずっと年配の男たちの面々の間からかもし出される猥雑な雰囲気を、耳で目で確かめながら、
彼らの都合に沿ったわたしの言葉の影響が彼らの間に好もしく拡がるのを、忌まわしくも妖しい気持ちで眺めていた。
好奇の囁きがひと言、ふた言洩らされるのが、敏感になった鼓膜に、刺激的に突き刺さる。

安岡さんのご主人には地酒のご用意を――と言いかけたわたしの前に立ちはだかった凌蔵さんは、
「わかってるって」とこたえながら、わたしの目の前に一升瓶をどかんと置いた。

都会育ちのよそ者たちが、この村にとけ込むために――
自分の妻を、母親を、娘を、村の顔役たちを満足させるために差し出す苦痛を和らげるため、紛らわせるため、
彼らは当地のいちばん佳い酒を用意して、自分たちの性欲を満たすために尽力してくれた善意の持ち主に振る舞うのが習慣となっている。
さいしょは車座になって、いっしょに飲んでいる者たちは、やがて一人抜け二人抜けて、目ざす家へと足を向ける。
許された歓びを予期するあまり、自分の脚が三本になったような錯覚に囚われながら。

妻子を汚される夫たちが、酒を喉に流し込む間に、
妻や娘や母親たちは、順ぐりに。
彼らの濁った精液を、その身体の奥底にまで、注ぎ込まれてゆく。
そしてやがて、夫たちが酔いにその身を傾け、泥酔に堕ちてゆくうちに、
彼女たちまた、白い脛を放恣に開き切って、屈辱を愉悦へと塗り替えられて、堕ちてゆく――


淫らな風習を持ったこの村では昔から、妻を取り替え娘を取り替えては犯すことで、狭い世界での懇親を深めつづけていた。
そのうちの一人がにわかに都会で会社を興し、成功して。
格別の昇進を果たしたいもの、事情があって都会に住みつづけることができなくなったものを対象に、
自らの出身地に作った事務所への転勤を奨励するようになった。
過疎地である彼の出身地では、若い女がまれになったから、
社員の妻や母親、娘たちを、いまなお故郷に住みつづける男たちの欲求のために、還元しようとしたのだった。
かつて母親を相手に筆おろしを果たし、姉妹や妻たちを分け合い、娘たちまで犯し合ってきた昔馴染みたちのため、
若い女を供給することを、隠れた事業のひとつに据えこんだのだった。

出世を目当てに妻子を提供すると割り切った男たちは、
「ここでしばらく我慢すれば、あとはずっと贅沢できるのだから」とそそのかし、
都会に住まうことを憚らなければならずに流れてきた者たちは、
「ここで暮らすには、そうするしかないのだから」と言い含めていた。


酔いが回ってきたころに。
同僚の安岡の家に向けて、真っ先に駆け出していった男が戻ってきた。
白髪頭を振り乱して、昂った名残りに、まだ顔を火照らせて。
はだけたワイシャツも、着崩れしたズボンもそのままに、裸足でずかずかとあがり込んできた。
安岡宅に乗り込んだときにも、そうしたように。
「安岡の女房をいただいてきた。ええ女だ。娘も母親似だ。下の娘もいずれ、楽しみじゃのー」
こんなふうに責めたら、ああなりよった――と、ひとしきり自慢話が続き、
そのあとに随うように、どっとはやす声があがった。

一座の関心は、禁忌になっている下の娘に集中した。
「下の娘はなんつった?いくつだぃ?」
「初音っつうたな。14歳じゃそうな」
「エエ年ごろぢゃわい。食べごろぢゃわい」
「まったくぢゃ。安岡のやつも、出し惜しみしおつて」
彼らの舌鋒は、口々に安岡への攻撃を集中させた。
「それに引き換え、永村さんは気前がエエのう。わしらのことをちゃんとわかって下さっていらっしゃる」
彼らが妙にわたしに対して礼儀正しいのは、きっと目いっぱいの振る舞いを許容しているからだろう。
振る舞われる酒も、当地の一級の酒だった。

いまごろ、妻の美奈(48)は、長女の小春(22)は、今ごろなん人めの男に組み敷かれているのだろうか。
今夜が初めての「公開」となる下の娘の深雪(17)は、どんなふうに犯されているのか。
昨晩村の長老相手に処女を喪ったばかりの初々しい身体も、一人前に苛まれているのだろうか。
息子は――いまごろ家でどうしているのだろう?
初めて嫁を抱かれたとき、そして、自分の母親まですぐ傍らで犯されたとき、
がんじがらめに縛られて、怒りに顔を赤らめながらも、ズボンの奥の怒張を、こらえかねているのだろうか。

「ま、一杯飲みなせぇ」
傍らの男に注がれた酒を苦々しく口に含みながら。
覗きたい。その勇気がない。それでも気になる――
そんな自問自答を、今夜もくり返しながら、夜が更けてゆく。


あとがき
比較的短いですが、どうにも不徹底です。
自分の妻子の運命を決める言葉を吐く主人公の気持ちを、もっと深彫りする必要がありそうですな。
^^;

う――ん。(近況)

2022年11月05日(Sat) 15:42:03

どうもこのところ、低調ですね。。。 (-_-;)
構想はあっても、途中で力尽きちゃうんですよ。。 ^^;

先ほど長い長い3連作をあっぷしたのですが、
「長いのはすべて駄作?」と思いたくなるような出来栄えです。。

描きたいことはいろいろなきにしもあらずだったのですが。。。

ヒロインさんはかなり、お気に入りなんです。
こういう質素系な乙女は好みです。
そんな人がチラとだけでも艶や色気をかもし出してくれるといいな・・・という想いで取り組んだのですが。。。

どうぞ長い目で見てくださいませ。 m(__)m

みずきの結婚

2022年11月05日(Sat) 12:11:06

上背の乏しい、ずんぐりとした背格好のOLだった。
遠藤みずきという名のその彼女は、OL2年生。
いつも気難しそうなしかめ面をして、机に向き合っている。
仕事はできるのだが、とにかく地味。質素。
千鳥格子のベストにボウタイつきの白のブラウス、黒のスカートという制服を地味に着こなして、
他の多くのОLたちが、うっすらと光沢を帯びたストッキングで競うように脚を彩るなかにいて、
いつも見映えのしない野暮ったい肌色のパンストに脚を通していた。
お洒落な女のあいだでは、映画女優が身に着けるようなガーターストッキングを穿く子もいるときいている。
だがきっと、遠藤みずきの履いているのは間違いなく、国産の量産型の安価なパンストに違いなかった。

その彼女の、太くてむっちりとした脚周りを、薄地のパンストが張りつめたように包んでいるのを、
同期入社になる笹森隆一は、われ知らずうっとりとした目で追っているときがある。

太っちょな女は男にモテない――遠藤はそう思い込んでいるのだろうか?
彼の母親は恰幅が良く、そのせいか隆一には豊かな肢体の持ち主に対する憧憬こそあれ、偏見はまったくない。
もしかしたら安産型かもしれない――と、時折彼女のしっかりとした足許を、密かに盗み見てしまうのだった。


老舗と言われる会社ではあったが、大株主である本家は、途方もない田舎に暮らしているという。
隆一の入社したその会社には、本家である創業者の地元の出身者が、多く採用されていた。
とはいえ、なんの変哲もない一般企業であったから、都会生まれの隆一には創業者の出身地など、たいした意味を持ってはいない。
けれども――気になるあの遠藤もまた創業者と同郷だと聞くと、やはり関心を持たないわけにはいかなかった。

うわさでは、その街は遠い以前からずっと、吸血鬼が棲んでいるという。
たいがいの住民たちは、吸血鬼に妻や娘を逢わせてうら若い生き血を吸わせ、
なかには吸血鬼を家庭に受け容れて妻や娘を犯すことを許容しているものすらいるという。
夢のように現実味のない話なので、隆一はそんなうわさは無視していた。
けれども、遠藤みずきに対する関心が日を追って深まるにつれ、そうしたうわさにも無関心ではいられなくなっていた。

はたして遠藤みずきは、吸血鬼に遭っているのか?
遭っているとしたら、それはいつからのことなのか?
聞けば、彼らは上品に装われた女たちの脚に目がないという。
だとすると――遠藤みずきもまた、通学用のハイソックスやストッキングを、吸い取られた血潮に濡らした過去もあったのだろうか?
あの太めの脚にとおした質素な肌色のストッキングを、彼女はふしだらに剥ぎ堕とされたりしているというのだろうか?

どういうわけか。
ズキズキとした嫉妬心に似たものが、まるで雷をはらんだ黒雲のようにむくむくと、隆一の脳裏に広がっていった。

ある飲み会の帰り、隆一は普段は付き合わない三次会にまで合流していた。
すでに、同僚の若手社員たちは三々五々散ってしまって、周囲にいるのは古参の年配社員ばかりだった。
けれども彼らは、そんな隆一の存在を苦にするでもなく、隔てなく杯を酌み饒舌な世間話に興じていた。
やがてその一座からも、一人また一人と人が減っていき、
いつの間にか隆一の隣には、古崎という50年配の社員が一人、まだ未練がましく最後の一合瓶をかざしていた。

「そろそろあがりますかな」
古崎がそういうと、隆一はふと、彼が創業者一族と同郷だということを思い出した。
ふと、思いもしない言葉が、口を突いて出た。
「遠藤みずきって、どういう子なんですか?」
「みずきちゃん?」
酔眼を少しだけ見開いて、古崎は応じた。
「あー、地味だけどいい子だよね。嫁にもらうには向いたおなごだと思うよ」
古崎はざっくばらんにそういうと、
「なんだ、みずきちゃんに気があるのか?なんなら橋渡ししてやろうか?」
と水を向けてきた。
渡りに船だった。
「あの人、付き合っている男の人とか知っていますか?もう決まった人がいるのかな――って」
「うぅーん・・・」
古崎は、遠くを見るような目になった。
「そりゃ、本人に聞くのが一番よかよ」
どこの方言かわからない言葉を口にすると、ほんとうに酔いが回ってきたのか、古崎は黙りこくってしまった。


「みずきちゃん、ちょっと悪いがな、笹森くんといっしょに、深山壮(みやまそう)さんまで使いに行ってくれんかね」
古崎がきのうのことはまるで忘れたような顔をしながら、
いつものように仏頂面を決め込んで机に向かうみずきに不意の依頼を投げたのは、果たして偶然だったのか。
隆一の運転する社用車にみずきが同乗し、ふたりはお得意先である深山壮へとむかった。
ただし、その深山壮というお得意先との取引内容は、隆一もよく聞いてはいなかった。
助手席に座ったみずきに、いつものソツのない口調で「なにか聞いてる?」と問いかけたが、
「行けばわかるそうです」と、いつもの無色透明な声色が返ってきただけだった。

ふつうなら。
社の女の子との車の出張なんて、軽口をたたいて楽しいはずなのに。
みずきは怖い顔をしてじいっと押し黙っているし、隆一も彼女のことをヘンに意識して、いつもの軽口が上ずってしまうのだった。

深山壮は、都会からは車で半日もかかる、かなりの郊外にあった。
名前の通り、背後に山林を抱え、ツタの絡みついた古い洋館は、どれほどの年月を経てきたものかというくらい厳めしく映った。
「きみは来たことがあるの」
隆一が聞くと、みずきはなん度かあるとこたえた。
大きな扉がきしみながら開かれると、扉の向こうには八束と名乗る初老の男が佇んで、丁寧に二人を招き入れた。
八束は隆一をキラリと光る瞳で見つめたが、隆一は彼の視線に気づかなかった。


結局その日は、深山壮で昼食をとっただけでおわった。
しかし、しきりと会話に水を向ける隆一の熱意が伝わってか、寡黙なみずきもぽつりぽつりと自分のことを話し始めて、
彼はその夜にみずきを彼女の行きたいというバーに誘うことに成功した。
みずきにバーなどおよそ似つかわしくなかったが、隆一はあえて理由を尋ねず、彼女の言に随うことにした。

「きみは結婚したいと思う相手はいるの?」
単刀直入な隆一の問いに、みずきは相変わらずのポーカーフェイスだった。
聞こえていないのか?と思うほどの無反応に隆一が少しうろたえると、みずきはいった。
「言おうかどうしようかと思ったんだけど――」
実は、付き合っている彼氏がいる――そういわれたらおしまいだ。
隆一の脳裏にそんな不吉な予想がよぎったとき。
みずきは意外なことを口にした。
「笹森くん、吸血鬼の存在って信じますか?」
「え・・・?」
「いるんです。じっさいに」
「・・・」
「あたし、そのうちのひとりに、高校生のころから血を吸われています」
「え・・・」
「死ぬほど吸い取られることはないけれど、なん度か気絶したことがあります」
「・・・」
「信じられないですか」
「いや・・・そんなことはない。みずきさんの言うことなら信じます」
それはやはり、あなたが処女だから・・・?と言おうとした刹那、みずきは裏腹なことを口走っていた。
「その方にあたし、処女を差し上げました」
「えっ」
隆一は仰天した。
少なくとも彼の知るみずきはごく控えめで物堅い娘なので、自分からそのようなことをあからさまに言い出すタイプではなかったから。
「これからもきっと、抱かれつづけるし、あたしもお慰めしたいと思っています――たとえだれかと結婚したとしても」
さいごのひと言は、声色は低かったが、その分固い決意が感じられた。
「八束さんだね」
隆一は、単刀直入にいった。
みずきの瞳に、驚きの色が広がった。


遠藤と書かれた表札は、さいしょのころに比べるとかなり古びてはいたものの、
まだ誇らしげに高々と、門柱にいかめしく掲げられていた。
その家名が汚辱にまみれたものになっているなど――とても信じられないくらいに、それは立派なお屋敷だった。
品の良い初老の紳士である遠藤氏は、自分の娘の婿になりたいという隆一を、丁寧に邸内へと導き入れてくれた。
「でも、先客がおりますでな。貴方のお相手はそのあと――ということになりますでの」
淡々と語るその口ぶりからは、これから妻を犯される男の悲哀は、なにひとつ感じられない。

「様子が気になるときは、いつもここからこうやって、のぞき見することにしておるのです。
 でも二人とも、たいそう機嫌よくお相手を務めては、たんと悦ばされてしまいますでな。
 わたくしなどはもう慣れましたが、それでも家内をあのように愛し抜いていただけるのは、
 夫として嬉しいことだと思うようにしておるのです」
遠藤氏が指さしたふすまのすき間からは、隣室のようすが手に取るように見て取れた。
地味な薄茶のスーツを着込んだみずきの母親に、
同じくらい地味な会社の制服であるねずみ色のジャケットを身に着けたみずき。
ふたりとも、神妙な顔つきで正座をしていて。背後にまわった八束のために気持ちを集中させているようだった。

八束はまず、みずきの母親の背後に近寄ると、彼女のうなじをつかまえた。
そして口の両端から牙をむき出しにすると、がりりと咬んだ。
黄ばんだ犬歯が象牙色の皮膚に食い込んで、赤黒い血潮がビュッ・・・と潤び出る。
「真緒や・・・」
遠藤氏が、妻の名を呼んだ。
真緒夫人は、肩先に撥ねた血潮には目もくれず、ひたすらに目を瞑り、強欲な吸血に耐えている。
「まず母親が、手本を見せることになっておりますでな。なので、家内のほうがいつも先なのです」
遠藤氏は、なおも淡々とした口調を崩そうとはしない。
自分の愛妻の体内をめぐる血液が、チュルチュルと人をこばかにしたような音を洩らして渇いた喉に吸い込まれてゆくのを、
じいっと凝視するばかりだった。
「つぎは、娘の番ですじゃ」
遠藤氏の枯れ切った声色の矛先が、自分の恋人に向けられたのに、隆一はゾクッとする。
みずきもやられてしまうのか?
彼女の母親と同じように、あのうら若い身体から、血潮を抜き取られてしまうのか?
いや、そんなはずはない。そんなこと、あってはならない――
隆一の想いは、虚しかった。
母親と同じ経緯でみずきもまた首すじを噛まれ、ブラウスに赤黒い斑点を拡げてゆく。

ふたりが失血のあまりまろび伏すと、八束は容赦なく、二人の足許を狙った。
さいしょに真緒夫人の足許が狙われた。
男は好色な唇を、ストッキングのうえから真緒夫人の脛に這わせてゆく。
こげ茶のスカートにはあまり合わないねずみ色のストッキングがねじれて引きつりながら、チリチリと引き剥がれてゆく。
娘と同様倹しげで、見映えのしないながらも気品をたたえた目鼻立ちが、悩ましい翳をよぎらせた。
ちゅうっ・・・ちゅうっ・・・
リズミカルな音を立てて、真緒夫人の血潮がふたたび吸い上げられてゆく。
彼女の顔色は明らかに貧血の症状を呈していたが、夫である遠藤氏は制止する気振りすら見せず、
真緒夫人もまた、その色褪せかけた頬に、自分の吸血相手に少しでも豊かにわが身をめぐる血潮を与えたい――という意思をありありと滲ませていた。

「みずきの足許はよう狙われたもんです。
 あの子も健気に尽くしよるので、八束殿にはたいそう愛おしがられておるのです」
見慣れた野暮ったい肌色のパンストが張りつめるふくらはぎに、八束は母親の血に染まった唇を圧しあてる。
ぬるり・・・ぬるり・・・
卑猥な舌が、みずきの足許をヌメヌメと這いまわる。
がちがちと歯の根が合わなくなる心地に耐えながら、隆一はみずきの受難の光景に目を凝らした。
喉がからからになっている。
なんという不埒なやり口だろう。なんという恥知らずな仕打ちだろう。
けれどもみずきは、父親の言うとおり、眉を軽くひそめたまま、
ストッキングに装う足許を、恥知らずな凌辱にゆだねてしまっている。
しっかりとした肉づきのふくらはぎの周りに張りつめた薄地のナイロン生地がブチブチとはじけ散ってゆく有様に、隆一は思わず失禁した。

「ああ・・・」
遠藤氏がしんそこ悲し気な声色になったのは。
女ふたりの生き血を吸い取って精を増した男が、彼の愛妻のうえに欲情もあらわにのしかかったためだった。
「真緒・・・真緒や・・・えぇのぅ、似合いの殿方じゃ。
 可愛がってもらうがええ、誰が何と言おうと、お前は三国一の嫁御じゃ。
 長年わしに尽くしてくれた褒美に、ときめく恋に身をゆだねるのじゃ・・・」
老人の切れ切れな声色に応えるかのように、真緒夫人はのしかかってくる逞しい肩に細腕をまわし、
力づくで圧しつけられてくる唇に、薄い唇で精いっぱい応えようとしていた。

こげ茶色のスカートを揺らしながら、真緒夫人は三度も果てた。
引き抜かれた一物から滴る粘液が、ボトボトと畳のうえに滴り落ちた。
妻を犯した淫らな粘液を、このあと老人はくまなくふき取るのだという。
それがこの家のあるじの役目なのだと――
「あなたに、それがよう勤まりますかの」
遠藤氏は穏やかに目を細め隆一のほうを窺った。
無理なさらんでええのですよ――と、その眼は語っているようだった。

次はいうまでもなく、みずきの番だった。
グレーのジャケットを脱がされて、千鳥格子のベストと黒のスカート姿をあお向けにされて
あの太い脛を、自宅の畳のうえに横たえている。
男はもういちど、みずきの脛を愛おしげに舐めた。
脛だけではなく、内ももも、太ももも、ひざ小僧も。
脚の輪郭をなぞるようにくまなく、好色な唇や舌を、破れ果てたパンストの舌触りをなおも愉しむように、なぶり抜いてゆく。
男の唇が、みずきの首すじを吸った。
ああ――
みずきが犯される。みずきが汚される。
丸顔に団子鼻、薄い眉に細くて楚々とした目じり。
あまり美しくない容貌に、それでも初々しい翳をよぎらせて、
かつては野暮ったく厚ぼったい黒のタイツに包んでいた足許に、
嬲り抜かれ剥がれ落ちた肌色のストッキングをまだからみつかせて、
静かに足摺りをくり返してゆく。
切なげにくり返される足摺りは、婚約者のまえで犯される悲哀を示すのか。
それとも、未来の花婿が受け容れた情事を、ひとりの女として悦び抜くためなのか。
かりに後者でもかまわない――と、隆一はおもった。
俺はこのさして美しくない、太い脚と質素な装いをたしなむ女を、妻にする。
彼女の純潔ははるか以前に奪われて、婚礼を控えたいまもまた、その身を淫戯にゆだねようとしているけれど。
俺はこの人を妻にする。
笹森夫人のまま犯され辱め抜かれる彼女を、愛し抜く。

さいしょのうちはひたすら忌まわしく、早く過ぎてほしい刻だったはずなのに。
夜通し愛し抜かれる婚約者の姿から目を離すことができず、ひたすらに昂りつづけてしまっていた。


街で行われる婚礼に、礼装に身を包んだ笹森家の面々が、一列となって入場する。
隆一の母は、そのふくよかな身から、夫の目の前で生き血をたっぷりと引き抜かれ、三人もの吸血鬼の輪姦に身をゆだねていた。
隆一の父は、自分の妻を犯した吸血鬼と意気投合して、三人にそれぞれ、隆一の兄嫁、姉、妹を引き合わせてしまっていた。
隆一の兄は憤慨しながらも、自分の愛妻が辱められるあで姿から、弟と同じように目を離せなくなってしまい、
姉も妹も、それぞれの婚約者を目の前に、競うように純潔を散らしていった――
華やかな礼装のスカートの裏を、夫ならぬ身の粘液で濡らした女たちは、
いつこの街に移住しようか――と、そればかりを心待ちにしているのだった。

娘と妻を、吸血鬼に捧げて・・・

2022年11月05日(Sat) 04:33:25

濃い緑色のハイソックスに浮いた太めのリブが、豊かなふくらはぎをなぞるように流れていた。
はた目には太い脚としか映らないかもしれないが、八束にはなによりもセクシィに見える。

この制服を考案したデザイナーは、採用した名門校は。
折り目正しく着こなしたはずのこの制服がひとたび着崩されたとき、
こんなにふしだらな風情を醸し出すことを意識していただろうか。
制服の少女が出歩いてはいけない刻限の、夜更けの街灯を照り返すハイソックスのリブが、
こんなにも淫靡に照り輝くことを、知っているのだろうか――

たった今処女を喪失した少女は、薄目をあけて、悲鳴のひとつ、うめき声の欠片さえ口から洩らさずに、
スカートの内側を初めての血で濡らしている。
滴る血潮は太ももを伝い落ちて、ハイソックスのゴムにまでしみ込んでいた。
リブをくしゃくしゃに折り曲げながら、八束はみずきの足許から、ハイソックスを抜き取ってゆく。
今夜の記念、戦利品としてせしめるつもりなのだ。
片脚、もう片脚・・・と、手を緩めずに、容赦なく、制服の一部を剥ぎ取っていった。
それから少女の身体を仰のけると、ふたたび首すじに唇を這わせ、
這わせた唇を、おとがいから少女の唇へとすべらせてゆき、
自身の分厚い唇で覆い隠すように、小ぶりで控えめな少女の唇を呑み込んでいった。

かすかな吐息を洩らしながら、少女は初めて切なそうな顔をして、男の口づけに応じていった。
裸足になったつま先は、芝生のうえをなん度も足摺りをくり返して、
白い指先が掘り返した泥にまみれていった。


合格するまでは、駄目。
みずきの意思に八束はしたがい、合格発表の帰りを待ち伏せて結果を聞くと、
否応なく公園に引きずり込んだのだ。

いちどだけでは、嫌。
みずきの希(ねが)いを、八束はかなえた。
少女の下校途中を毎日のように襲い、ある時は公園に引き入れ、深夜になれば路上に制服姿を横たえて、犯し、愛し抜いた。
ぶあいそに閉ざされていた口許は、ときにほころびたように白い歯をのぞかせて、
その白い歯並びは、淫蕩なうわぐすりを塗られたように、なまめかしさを帯びて静かに輝いた。
少女のそんな変化に気づく大人は、担任を含めほとんどいなかった。

みずきが一度だけの関係を忌んだのは、
たんに処女を破る愉しみだけのために自分の肉体を供することをきらったのであって、決して淫蕩な意図ではなかった。
けれども回を重ねることで、18歳の少女の身体はじょじょに目ざめていった。
みずきの母親を含めなん人もの女を夢中にさせた八束のぺ〇スは、
この初心で頑なな少女の身体をも、淫らに染め抜いていたのだった。
無防備な素人娘の肉体は、手練手管に長けた八束の思うままであった。
八束は制服のブラウスに包まれた彼女の胸をまさぐり、ブラウスを引き裂いて、ブラジャーも引き剥いで、
ピンク色の初々しい乳房を、唇で蹂躙した。
派手やかな蹂躙に、少女は口を開き、なにか言おうとし、そして言葉のすべてを呑み込んで、制服姿をその蹂躙にゆだねた。
それでも彼女はかたくななまでに、いつも通学用に愛用している分厚いだけの野暮ったい黒タイツを脚に通しつづけた。
けれども八束にとって、彼女の不器量な装いはむしろ、どんなに艶やかなストッキングよりもそそられるものになっていた。
地味すぎるほど大味な黒タイツを咬み破りながら、彼はうら若い少女の生き血に酔いしれた。

彼女の母親は、学校指定の高価なハイソックスを娘とその情夫のために買いそろえた。
みずきは母校の制服の一部が黒タイツと同じくらい吸血鬼の劣情をそそり、目をくぎ付けにすることを知っていた。
機嫌が良いときの彼女は、しばしばハイソックスを脚に通して、深夜の路を制服姿で出歩いた。
深夜の通学路は、淫らな闇へとつながっていた。
街灯に照らされるハイソックスのしなやかなナイロン生地に浮き彫りとなるツヤツヤとしたリブを、見せびらかすようにして脚をくねらせると、
よだれまみれの好色な唇に惜しげもなくさらしてゆき、気前よく咬み破らせていった。


娘を愛してくれているのだね。
みずきがいつものように黒タイツを咬み剥がれ、淫辱のかぎりをつくした挙句、裸足に革靴を突っかけて立ち去ったあと。
彼の傍らに立ったのは、みずきの父親である遠藤だった。
「きみのおかげで、遠藤家の名誉は泥にまみれてしまった。きみは、娘だけではなくて、家内のためにも仇敵なのだ」
言葉は恨みに満ちていたが、言葉遣いは物柔らかだった。
娘のみならず妻までも凌辱されしまった夫・父親の苦痛を減じるには、手段はひとつしかなかった。
妻が凌辱されたとも知らずに家路をたどる遠藤を彼は待ち伏せて、否応なくその首すじに咬みついたのだ。
吸い上げた血潮には、かすかにみずきの血と似通った芳香が含まれていた。
八束は、みずきの父親の生き血を、ゴクゴクと嚥(の)んだ。
遠藤の理性が消えるまで、八束は彼に対する吸血行為をやめなかった。
致死量近い血液を抜き取ってしまったのは、遠藤の脳裏から常識と理性を奪い去るのに必要なことだったが、
同時に彼は、遠藤の血の味にも魅了されていた。
さすがはみずきちゃんのお父さん――そう念じながら、彼の妻を犯してきたばかりのぺ〇スをそそりたて、遠藤の血を吸いつづけた。

ふらふらと自宅にたどり着いた遠藤を迎えたのは、娘を寝かしつけた妻だった。
驚いたことに妻は、見慣れた花柄のブラウスを引き裂かれ、ラベンダー色のスカートにはだれのものとも知れぬ精液を滴らせていた。
ストッキングをむしり取られた素足にも、おなじ色の忌むべき粘液はまとわりついていた。
留守宅でなにが起こったのか、彼はひと目で覚っていた。
彼は妻をねぎらい、自分も同じ相手に血を吸われてしまったのだと告げた。
いまごろ、夫婦の血が仲良く、干からびていたあいつの血管をめぐって、こわ張った皮膚を温めているんだろうな――
そういいながら、互いに互いをいたわり合うように、身体を重ねていった。

遠藤夫人は、その後も八束と逢瀬を重ねた。
八束は遠藤の妻を犯すたびに、その事実を彼に告げつづけた。
遠藤は、自分に嘘をついてまで八束との時間を作ろうとする妻の心の裡に、すでに真面目な恋が芽生えているのを直感した。
どうか、妻の想いまでは踏みにじらないでもらいたい――遠藤はただ、八束にそう希(ねが)った。
八束は遠藤の志をありがたく受け取り、妻をきみの愛人の一人にして欲しいという彼の希(ねが)いにこたえることにした。
娘が襲われたことが縁となって結ばれたふたりは、夫である遠藤の理解のもと、愛をはぐくんでいった。


遠藤が、娘と生き写しの細い目であらぬ方を見やりながら、八束を前に独り言(ご)ちた。

 血に飢えた貴男を娘が見かねて、自分の生き血を吸い取らせた。
 初めての吸血体験を楽しみすぎた娘が貧血になったのを貴男は介抱して家に送り届けてくださり、
 それに感謝した家内もまた、「娘の生き血がお口にあうようならば」といって、すすんで貴男に首すじをゆだねた。
 そして二人は恋に落ちた。
 わたしは長年連れ添った家内に裏切られはしたが、家内が実り豊かな恋を体験できたことを、わたしは夫として感謝したい。
 そして、家内の恋を祝福したい。
 遠藤家の名誉などは、よろこんで泥にまみれさせてしまおう。
 最愛の妻である真緒(まお)の貞操を、改めて貴男にプレゼントしたい。
 家内の貞操は、すでに貴殿が独力で勝ち得たものではあるけれど、改めてわたしから捧げたいのだ。ぜひ受け取ってほしい。
 それに娘の未来も、きみが開いてくれた。
 娘にとって、きみは大きな存在だ。そして、最初に識った男性だ。
 今後娘はだれかと結婚するかもしれないが、きっときみのことを忘れないだろう。
 もしも結婚した後の娘も欲しいというのなら、わたしは娘婿よりも、きみの側に立つと思う――

ありがたいことですね――奥さんも娘さんも、遠慮なく貴方から受け取りましょう。
八束はいった。
遠藤が、スラックスのすそをそろそろとたくし上げる。
淡い毛脛の浮いた脚を、黒光りする薄地のナイロンが、毒々しく輝いていた。
いま、家内の愛用しているストッキングを、黙って持ち出してしまいました。
貴男にぜひ、愉しんでいただきたくて、ね――

ちゅうっ――
遠藤の足許から、忍びやかな吸血のおとがあがった。
激しい食欲の発露に、この初老の紳士がみるみる顔を蒼ざめさせてゆくのを、ひとりの青年が息をつめて物陰から見守っていた。

野暮ったい黒タイツ

2022年11月05日(Sat) 01:00:37

冷たく透きとおった風が吹き抜ける通りを、緑色の制服に身を包んだ女学生がこちらに向けて歩み寄ってくる。
背は寸詰まりで、ずんぐりとした身体つき。
血色のよいだけが取り柄のあまり美しくない丸顔には、赤茶けたにきびが浮いている。
真面目くさった赤い縁の眼鏡の奥には、ちょっと意固地そうな細い目が、不景気な視線をこちらに向けて、
早くも待ち伏せしている黒い影の思惑を見通していた。

濃いグリーンのブレザーに、同じ色調のチェック柄のスカート。
そんなお洒落な制服を、ほかの生徒とは別の学校のそれのように、野暮ったく着こなしている。
太ももを見せびらかすようにミニスカートをなびかせて歩く同級生たちよりも、ぐんと丈が長く、ひざ小僧が完全に隠れてしまっていた。
スカートのすそから覗く、黒タイツに包まれた脚は肉づきが豊かで、
そこだけが若い女の生き血を欲しがる性(さが)をじんわりと逆なでする。
いつものお定まりの、少女のあか抜けない佇まいに、八束はなぜか安らぎさえ感じていた。

少女が八束の前で、足を止めた。

血が欲しいんですね?

彼女はぶっきら棒に八束に話しかけ、自分よりも上背のある相手を、白い目で見あげた。
「ああ――喉が渇いている。ひどくね」
「じゃあ、すぐそこで」
感情を消した鈍い声色でこたえると、少女は傍らの公園へと革靴に縁どられた脚を向けた。

公園の奥まったあたりには、手ごろなベンチがあった。
入り口からの視界は人の背の高さほどの生垣に遮られて、閑静な住宅街の真ん中にありながら、
人の注意を惹かない死角となっている。
少女は重たそうな鞄を傍らに置くと、ベンチに腰かけて脚をくつろげた。
参考書がいっぱい詰まって変形しかかった鞄には名札が提げられていて、
「遠藤みずき」と、少女の名が整ったサインペンの筆跡で書かれていた。
「タイツ破きたいんでしょ?」
もの分かりのよい受け答えとは裏腹に、少女の声色はあくまでもぶあいそで、事務的でさえあった。
応えの代わりに八束は、少女の足許にかがみ込んで、
丈の長いスカートのすそからわずかに覗く黒タイツの脛に、唇を吸いつけた。
しつように這いまわる唇のあとを、飴色をした唾液が糸を引いてつづいた。
男が唇をなすりつけながら、自分の履いているタイツの舌触りを楽しみはじめているのを、
少女はしかめ面のまま受け止めている。
黒タイツ越しに、しっかりとした肉づきのひざ下をくまなく舐めまわすと、
八束はふくらはぎの一角を侵すように、ひときわ強く唇を圧しつけると、口の端に隠した犬歯で、おもむろにみずきの足許に食いついた。

「――っ!」
咬んだ瞬間、少女は声にならない叫びを洩らしたが、
声をあげることを恥じるかのように押し黙り、
男が吸血に耽るあいだ、じっと身を固くして、鋭い目線をあらぬ方へと投げている。
17歳の健康な血液が、吸血鬼の渇いた舌を潤して、喉に満ち、胃の腑に澱んだ。

二度三度と、男はみずきの左右の脚に代わる代わる咬みついたが、少女は頑ななまでに歯を噛みしめて、男の牙を受け容れつづける。
女学生の足許を覆うタイツやストッキング、ハイソックスを咬み破って愉しむという、
潔癖な少女には忌まわしいだけのはずの不埒な所作に、
明らかに嫌悪の情を交えながらも、彼女はひたすら沈黙を守り受け留めつづけてゆいった。

彼女の履いている黒のタイツは、艶も彩りもほど遠く、ただたんに分厚いだけの野暮ったい代物だった。
「あたしなんかを、どうして襲うの」
ある日少女は、八束に尋ねたことがある。
初めて襲われた、次の次くらいのころだった。
もっと可愛らしくて、靴下フェチな貴方が悦びそうなお洒落な靴下を履いている子がおおぜいいるのに――と言いかけたとき、
男はいった。
「あんたがクラスで一番知的な子だからだ」
少女は押し黙り、用意していた罵詈雑言を呑み込んだ。
そして、彼女の履いている野暮ったいタイツを舌でいたぶり咬み剥ぐことに熱中している男に求められるまま、
左右の脚を、ゆっくりと交互に差し出しつづけていった。

初めてのときはきっと、彼女の豊かな体形が目を引いただけだろうと、少女はおもっている。
きっとたくさん、血を獲れるから――
たしかにあの夜、男はひどく飢えていた。
塾帰りの彼女をこの公園に引きずり込むと、抗う制服姿を芝生のうえに抑えつけ、
無防備になった首すじに思い切り牙を降ろしてきた。
ジュッ!と鈍い音を立てて血が飛び散って、ブラウスの襟首を濡らすのを、彼女は感じた。
男は傷口に唇をあてがうと、ヒルのようなしつようさで彼女の血を吸い上げて、ゴクゴクと喉を鳴らして呑み込んでいった。
飢えている!とっさに彼女は直感した。殺されるのかと思った。
でもすぐに、吸血鬼との共存を受け容れているこの街では、吸血鬼に襲われても殺されることはないと教わったのを思い出していた。

この街に吸血鬼が出没するのも、
それと知りながら、窮乏した両親がこの街を選んだのも、
彼女はよくわかっていた。
だから――いずれはそうした者たちの毒牙にかかるとは、覚悟していた。
胸もとをまさぐる猿臂を拒みはしたものの、もはや逃れるすべはないと観念した彼女は、すぐに抵抗を諦めた。

結果的には、賢明な判断だった。

ひとしきり彼女の血を吸い取って落ち着きを取り戻した八束は、彼女に謝罪を告げて、彼女の生命を断つ意思はないと告げてきたのだ。
それでも、一定の凌辱行為は、忍ばなけれはならなかった。
その夜、歩みを進める彼女の足許を照らし出した街灯は、
スカートと同じ色調の濃いグリーンのハイソックスのリブを浮き彫りにしたように際だたせていて、
ハイソックスに包まれた豊かなふくらはぎは、吸血鬼をすっかり魅了してしまっていたのだ。

首すじからおびただしい血液を抜かれた彼女は、ほとんど意識もそぞろになりながら、
昼間のように明るい芝生のうえにうつ伏せにされて、
彼女の足許ををなぞるようにしつように舐めつけてくるる舌と唇で、
制服の一部であるハイソックスのしっかりとしたナイロン生地の舌触りを愉しませる羽目に陥ったのだった。

生気に満ちたみずきの血に、八束はしたたかに酔い痴れた。
豊かな肢体を脈打つ血液は飢えた吸血鬼の食欲をそそり、
食欲を満足させるとこんどは、みずきの着ている折り目正しい制服姿に劣情したのだ。
野暮ったい着こなしぶりに、吸血鬼はむしろ欲情していて、
濃い緑のハイソックスが真っ赤に染まるほど、みずきの足許に執着した。

その夜、飢えた吸血鬼を自らの血で存分に満足させた少女は、
自分の血を吸い取った男に付き添われて帰宅した。
不幸にして、父親は不在だった。
出迎えた母親は、貧血でもうろうとなった少女の傍らで抑えつけられて、
娘がハイソックスの脚を愉しませたのと同じように、薄地の肌色のストッキングを穿いた脚を弄ばれた。
みずきの野暮ったさはきっと、母親の質素な生活ぶりに影響されたに違いないと、
安ものらしいパンストを咬み剥ぐことに熱中しながら八束はおもった。
倹しい生活でもストッキングをたしなむ趣味のよさにも、好感をもった。
人肌恋しさに矢も盾もたまらなくなった八束は、みずきの傍らでその母親を犯した。
それ以来、母娘は代わる代わる吸血鬼に首すじをゆだね、血液を日常的に提供するようになっていた。


その日も下校途中のみずきを公園に引き込んで、野暮ったい黒タイツを咬み剥いでしまうと、
少女は恨めしそうな白い眼をして、あらわになった白い脛を見、タイツを破った男を見た。
「いつも思うけど、趣味よくないですよね」
ふつうなら。
吸血の愉悦に酔った少女たちや人妻たちは、こぞって彼に恍惚としたまなざしを向けるのに。
彼女には毒が効かないのか、血を吸われた後も、氷のように冷静だった。
まだ冬も浅いのに彼女が学校指定のハイソックスではなくてタイツを履いているのは、
手持ちのハイソックスをすべて、惜しげもなく咬み破らせてしまったからなのだと、八束はよく知っていた。
彼のためになん度もスカートのすそを汚すようになったみずきの母が、そう告げたのだ。

打ち解けない顔つきのまま、
それでも男に逢いつづけて、
望むほどに生き血を吸わせ、
好むほどにタイツを破らせ、
それが多分、彼女なりの心づくしなのだと――
八束は覚りはじめている。

もうじき卒業だよな。
八束はいった。
進学クラスに入ったこの娘はきっと、都会の大学を受験し、旅立ってしまうのだろう。
頼みがある――と、八束はみずきにいった。
何?
相変わらず、ぶっきら棒な相槌が返ってくる。
志望校に合格したら、いちどあんたを犯してもよいか。
男の予期に反して、少女はかたくなに、「だめ」といった。
そうか――
しんそこ残念そうに、八束はあらぬ方を見やった。

沈黙が流れた。

傍らの少女が珍しく、クスッと笑った。
がっかりしたみたいね。
求愛をこばまれたら、だれでもそうだ。
八束はこたえた。
求愛しつづけてるじゃない。
いつも求められて――そのたびにあげてるじゃない。
少女は恨めしそうに、いった。
やはり制服姿を辱められながら、うら若い血潮を吸い取られるのは、屈辱なのだろう。八束はおもった。
けれどもそれはちがった。
少女はいった。

いちどじゃ嫌。

え・・・?

何度も抱いてくれるというなら、愛されてもいい――少女はめずらしく羞じらいながら、告げている。

先生の妻。

2022年10月22日(Sat) 10:56:22

カズユキくんのお母さんとの一件で味を占めたボクが次に狙ったのは――
担任の奥原先生の奥さんだった。
奥原先生はボクの所属する「読書クラブ」の顧問の先生で、
男子生徒5人で作ったそのクラブは、しばしば先生の家で読書会を開いていた。
先生の奥さんはおしゃれな人で、紅茶を淹れたお盆を持ってきてくれる時にちょっとだけ顔を出すだけだったけれど、
ボクたちはいちように、奥さんの大人の色気に生唾を吞み込んでいたものだった。
とくに奥さんがいつものように穿いている、濃紺のストッキングは――
白い脛をそれは艶めかしく妖しく染めあげていて、
ボクの狂った網膜には、まるで――娼婦のようにさえ映るのだった。

あのパンストを脱がしてやりたい。
夫である先生の前で、引き裂いてやりたい。
そんなけしからぬ欲求に、毎日股間が疼くようになったのは、ごくしぜんななりゆきだった。

妹の紗代とは、もう半年前から関係ができていた。
学校帰りのセーラー服姿にむらむらッと来て――
「お兄ちゃんやめて」と言われながら、前開きのセーラー服をはだけて乳首を吸い、
ひざ下までもある丈の重たいプリーツスカートをユサユサと掻きあげて、
まだ童くさい唇に、むしろ強く劣情しながら、
ショーツを脱がした太ももの奥へと、たけり狂った一物を圧しつけていったのだった。
足摺りをくり返すうち。
履いていた真っ白なハイソックスが初めての血に浸るのを、
さいごのほうでは、「しょうがないなー」と照れ笑いしながら、
「もっと・・・」とおねだりしてくるまでになったのは。
きっと母さんの淫乱な血を、受け継いだからに違いない。

紗代のことは、兄さんとも共有していた。
ボクがさいしょに犯し、母さんには黙っていてくれるのと交換条件で、
家の外に連れ出して、草むらに埋もれながら、代わる代わるやりまくってしまったのだ。
だから、奥原教師夫人攻略作戦を実行するにあたっては、まず兄さんの許可を取った。
許可はあっさり下りた。
それよりも、「紗代の気持ちを大事にしろよ」――と、そのときはさすがに兄さんだと思ったものだ。

「いいわよ~♪」
紗代は意外にあっさりと、承諾した。
「まだ大人の人としてないもんね」
淑徳を示すとされたセーラー服の白のリボンをもてあそびながら、
紗代は悪びれもせず、学校の先生とヤるなんて痛快!と、むしろ乗り気なところをみせた。
ボクたちの自分勝手なセックスにうんざりしていたのか、それともたんに新しい刺激が欲しかったのか。
きっとその両方だったんだろう。


「やあ、いらっしゃい」
先生はいつもの謹厳な態度で、ボクたち兄妹を迎え入れた。
背後には珍しく奥さんの昌枝さんまでも顔を出して、にこやかに会釈を投げてくれた。
奥さんは白のタイつきブラウスに、濃い紫のロングスカート。
半ばしか見えない脛は、例の濃紺のストッキングに妖しく染めあげられていた。
きょうの濃紺のストッキングは、ボクのために穿いてくれている――
そんな妄想が黒雲のように、むくむくと沸き上がった。
表向きは礼儀正しい笑みをうかべて応対していたけれど。
ズボンのなかで窮屈そうに、ボクの一物が鎌首をもたげるのを、必死にこらえていた。

紗代が、(このひとね?)と言わんばかりに、ボクを見かえる。
ボクは素知らぬ顔をして、奥さんにも礼儀正しくご挨拶をして、さっそく先生の書斎にお邪魔した。

先生の書斎は、畳部屋で、ボクたち「読書クラブ」の部員5人が詰めても平気なくらい、広かった。
先生には前もって、話をつけていた。
 ボクの妹を犯したいと思いませんか?
 いつも妹の黒のストッキングの脚を、じとーっと見つめていますよね?ボク知ってるんです。
 なんなら、ボクがチャンス作りますよ。
 先生になら、妹を犯されても許せるって思うんです。
 妹にはよく、言い含めておきます。家にもナイショにするように言います。
 それはそうですよ――ボクの家だって、健全な家族ですからね・・・
 目印は――先生の好きな妹の黒ストにしましょう。
 学校の制服で黒のストッキングなら、彼女もOK、とご理解くださいね――
そう。
先生の家にお邪魔するとき紗代は、通学用の黒のストッキングを脚に通していた。
奥さんの濃紺のストッキングと好一対。とても良い眺めだった。

書斎に入ったとたん、先生はボクの顔を見、「いいんだね?」と念を押すと、
ボクが頷くのも待てないように、紗代の手を強引に引っ張った。
肩を鷲づかみにされた、白のラインが三本走る濃紺のセーラー服の襟が、いびつに歪んだ。
紗代がなにか言おうとすると、その唇を強引なキッスがふさいだ。
紗代は声もあげずに、ふらふらと姿勢を崩していった。
ボクにはヤラセだと分かっていたけれど、初々しい戸惑いに満ちた導入だった。
紗代の示したかすかな抵抗にそそられたのか、
先生はいっそう鼻息荒く、紗代の着ている前開きのセーラー服をくつろげてゆく。
レエスのついた白のスリップが、濃紺の制服の合い間から、鮮やかに眩く覗いた。
いつも謹厳にみえた先生にして・・・教え子の目の前で、その妹を犯そうと目の色を変えるのだから。
先生というのは、油断がならない。ボクはそう思った。
なぜか――先日犯したばかりの路子先生のことを、ふと思い出した。
路子先生のほうがずっと、生真面目でいちずだと・・・思いたかった。

奥原先生のごつごつと節くれだった掌が、紗代のスカートの中にもぐり込んだ。
スカートのひだが、掌の盛り上がりを写して、その盛り上がりがずんずんと腰回りまでたどり着いて、
黒のパンストをずるずると引きずり降ろしにかかってゆく。
それは足許にまで反映されて、足許にぴったりと張りつめていた薄地のナイロン生地が皺くちゃになって、
ふくらはぎ周りから、ふしだらに浮きあがった。

兄とつるんで2対1ですることもあったから、いつも見慣れている光景のはずだったけれど。
相手が先生だと、どういうわけかひどく興奮してしまっているボクがいた。
そこへ――
奥さんがいつものように、お紅茶を淹れて部屋をノックした。
「お盆だけ受け取って・・・」
先生は、身勝手なことをいう。
ボクはもちろんそうするつもりはなかったから、ドアを大っぴらに、開け放ってしまっていた――
ドアの向こうには、お盆を抱えたまま絶句している昌枝さんがいた。

「どうしたのですか??」
声色は平静を取り繕ってはいるものの。
蒼ざめた顔色は、隠しようもない。
明らかに、狼狽していた。
そしてボクは、明らかに状況を愉しみ始めていた。

「見てください、先生、ボクの妹を襲っているんです。犯しているんです。わかりますよね?」
「エエ・・・エエ・・・わかります・・・」
奥さんは気の毒なほど、おろおろしていた。
「初めてなんですよ、まじめな子ですから。嫁入り前なんですよ。なのにこんなことされちゃって――」
手許がくるってお盆のうえの紅茶をこぼしそうになった奥さんからお盆を引き取ると、
ボクはそれを本棚のうえに落ち着けた。
「あ・・・ありがとうございます」
昌枝さんはかろうじて、そういった。
明らかに、おろおろしていた。
けれども先生は、紗代のうえにのしかかった勢いをどうすることもできなくなって、
なんと妻のまえで教え子の妹の股間に向けて、濁った精液をびゅうびゅうと放射してしまっていた。

紗代は唇を嚙んで、甘んじて凌辱を受け止めた。
折り目正しい制服のスカートは、プリーツをつづら折りに乱れて、
その丈長なすそからは、脛まで引きずり降ろされた黒のパンストが片方だけ、覗いている。
「あなた、あなた、若い娘さんにそんな――」
夫の乱行を制止しようとした昌枝さんの声が、途切れた。
背後にまわったボクが彼女を羽交い絞めにして、後ろ手にまわした掌が、ブラウスのうえから胸を激しく揉み始めたからだ。
「あ・・・な、なにをなさるんです!?」
昌枝さんの尖った声色が、ボクの嗜虐心をいっそうそそった。
ぼくは体重を思い切り昌枝さんの身体に乗せて、紗代のすぐ傍らに、華奢な身体を転がしていた。
先生ははっとなって身を起そうとしたが、紗代はしっかりと先生の背中に腕を巻きつけて、ぴったりと離れない。
そのすぐ傍らで、ボクは昌枝さんの――いや、昌枝のブラウスを引き剥いでいった。
昌枝の胸もとを気高く引き締めていた純白のボウタイを、花びらを散らすようにむぞうさにほどき、
白のブラジャーの胸をはだけると、羞恥して胸もとを覆おうとした両手を容赦なく払いのけ、
ついでに頬に平手打ちを一発お見舞いする。
思わず抵抗の手を止めた昌枝の首すじに強いキスを這わせながら、ブラジャーの吊り紐を両方とも、引きむしるようにして断ち切っていた。

「き、きみっ、昌枝になにをするというのだ!?」
先生の狼狽した声が耳をくすぐる。
そのくせ先生が、紗代の下肢との結合を止めようともせずに、
制服のスカートに包まれたお尻を鷲づかみにし続けているのを、
妹を犯された兄として、見とがめないわけにはいかなかった。
「一緒に愉しもうよ」と、紗代。
「そうですよ昌枝さん、一緒に楽しみましょうよ」と、ボク。
けんめいにいやいやをする昌枝さんの唇を、先生の目の前で奪うと、
こじ開けた唇のすき間から覗くしっかりと食いしばった歯を、舌を入れてなぞっていった。

ビチッ・・・ブチブチッ!
鋭い音を立てて、濃紺のストッキングを裂き取っていくと。
うろたえて涙ぐむ昌枝の顔をじっと見つめる。
先生は、自分の妻が虐げられる有様に欲情してしまったらしく、
いまは熱っぽく、妹との情事に耽り込んでしまっている。
たけり立った肉棒を、無防備になった股間に圧しつけて、あっという間にもぐり込ませると。
キュッと閉ざされた昌枝の瞼から、涙がしたたり落ちた。
けれども、ボクは知っている。
何度もこすり合わせ、突き込んでいくにつれ。
昌枝は下肢を弾ませて、応えはじめてしなったことを――


「妹さん、処女じゃなかったじゃないか」
先生は口を尖らせた。
「わかっちゃいましたか?」
ボクは照れ笑いで誤魔化した。
「家内を襲わせる約束をした覚えはないぞ」
先生はなおもボクのことを、咎めつづける。
「お互い様じゃないですか」
ボクは楽しそうに打って返した。
「昌枝はほかの男など識らなかったんだ」
憤懣やるかたない先生に、ボクはいった。
「昌枝をモノにできて嬉しいです。誘ったらきっと、逢ってくれると思います。
 そうしたらお礼に、いつも穿いている濃紺なストッキングを、
 舐めつけながらずり降ろして、ブチブチ引き裂いて楽しむことにしますね」
先生がグッと昂るのをつぶさに見て取ると、
「授業が始まりますよ」と、余裕たっぷりに促していた。


「こんどだけですよ?」
昌枝はおびえた上目遣いでボクを見る。
「さあ、それはどうかな」
ボクは昌枝の肩に腕を回して、わが物顔に横抱きに抱きすくめる。
「OKだったら穿いてきてくださいね」とおねだりをした濃紺のストッキングが、
きょうも昌枝の下肢を妖しく染めている。
「奥さんは、ボク専用の娼婦にしてあげるからね」
唇で唇をこじ開けると、昌枝は歯を食いしばって拒もうとして、そのかたくなな歯を、テロテロと舌で、舐め抜いてゆく。
ドアのすき間から注ぎ込まれる、嫉妬に満ちた視線がくすぐったい。
そう。
昌枝には密会をねだりながら、密会場所と時刻とは、先生に報告してあげているのだ。
絶対手を出さないと約束してくれるなら、昌枝を楽しむところを見せてあげますよ。
ボクの言い草に、先生は無抵抗に頷くばかりだった。
ボクに言われたとおりに着飾った昌枝が、ボクの家に現れたのを覗き見て、ドアの向こうの人が絶句するのを感じると。
華奢な身体を引き寄せて、強引に唇を奪っていた。
卑猥に迫るボクからわが身を隔てようと腕を突っ張るのを、平手打ちで黙らせると。
あとはかんたんだった。
嫉妬に狂う視線を自覚しながら、
無抵抗な首すじを舐め、
胸もとを護るこげ茶色のブラウスを、釦を飛ばしながら剥ぎ取って、
漆黒のブラジャーをよだれで濡らし抜いたあげく、釣り紐を断ち切ってゆく。
そうされるのを知りながら、この女は装ってきたのか。
きょうの清楚でセクシーな装いは、ボクを楽しませるためのもの。
決して、教諭夫人としての品位を保つためのものなんかじゃない――
お目当ての濃紺のストッキングのうえからふくらはぎに唇を這わせて、
薄々なナイロン生地の舌触りを愉しみ抜いて、舐め抜いて、
辱めを尽くして、くしゃくしゃにしながらずり降ろしてゆくと、
ドアの向こうから熱いため息が漏れた。
先生、興奮しすぎだよ――
自分の奥さんが情事に耽るのを視て興奮するなんて、好すぎる趣味だと思いますよ――


「住み込みのお手伝いで、置いていただけませんか?」
昌枝が三つ指ついて、ボクのまえで頭を垂れている。
日常的にボクとの情事が重ねる妻に憤慨した先生に、追い出されちゃったのだ。
実家に帰るという選択肢もあったのに、不始末があらわになることを恐れた昌枝は、
なにをおいてもまっすぐに、濃紺のストッキングに包んだ脚を、ボクの家へと向けたのだった。
「うん、それはいいネ。母さんに頼んでみるよ」
ボクは担任の妻を支配する日常を妄想して、うきうきとしながらこたえていた。

楽しい日常だった。
学校で先生の授業を受けると、ボクはまっすぐ家に帰って、昌枝を犯した。
昌枝はボクのために、いつも着飾って待ってくれていた。
母さんも兄さんも、昌枝をボクの囲い者として接してくれて、
日中は家事の手伝い、そして夜はボクの性欲のはけ口となるために、あきらめきった身体を投げ出していった。

読書クラブのほかのメンバーを家に招んで、
淑やかに装わせた昌枝を、よってたかって犯したこともあった。
「青春だ・・・」
「まさか先生の奥さんとやれるなんて・・・」
みんなとても悦んでくれたし、感動して涙を流すやつまでいた。
ボクたちの精液まみれになる日常を、昌枝は唯々諾々と受け容れた。
唇をこじ開けるたび、這い込まされる舌を拒もうとしてかたくなに閉ざしていた前歯は、もう何の妨げにもならなかった。
むしろ――這い込ませた舌に自分の舌を絡み合わせて、じゃれ合うようにもつれ合わせる。
そういう女になっていった。


「やっぱり――家内を返してくれないか」
先生はもじもじと、ボクに頼み込んできた。
「ずいぶん勝手なんですね」
ボクは焦らす愉しみに、くすぐったそうに片目を瞑る。
「妹さんを犯したのは一回こっきりで、きみは家内を奪っていった。不公平じゃないか」
先生はまたも、身勝手なことをいう。
「あとが続くかどうかは、男としての腕だと思うよ」
ボクはぬけぬけと、そうこたえた。
「昌枝はボクに逢いつづけた。ボクも昌枝を招びつづけた。
 ふたりの気持ちがひとつになったんだ。
 教え子の男としての成長を、むしろ歓んでほしいかな」
二人きりの時はもう、ため口になっていた。
「ほかの部員も、悦んでいるよ。
 教師の妻を抱けるなんて、こたえられないって。
 ボクは気前のよい男だから、昌枝を独り占めしようなんて思わない。
 もう――先生の奥さんじゃなくて、ボクの女なんだから、好きにやらせてもらうよ」
「ま・・・ま・・・待ってくれ!」
先生は見苦しくうろたえた。
「わかった、わかったから――昌枝を返してくれ。頼むから返してくれ。
 教え子のお手伝いをしているなんて人聞きが悪いし、
 それも犯されているなどとしれたら、ほんとうに困るから・・・」
どこまでも世間体ばかりを気にする先生に、さすがにあきれながらも、ボクはいった。
「じゃあ約束してよ。
 昌枝を先生の家に戻してあげる。
 だからその代わり、ボクが昌枝を楽しむ手引きをしてほしいんだ。
 ほかの部員もいっしょだぜ。
 先生の奥さんに戻るからって、昌枝がボクの女であることに変わりはないんだ。
 遠慮なく、権利を行使させてもらうからね。
 でもその代わり――
 ボクが昌枝を弄んでいるところ、先生には視る権利を認めてあげよう」
先生は泣き笑いで、応えてくれた。

制御しがたい性欲に苦しむボクたちのために、先生は自分の奥さんを紹介してくれて、
奥さんの貞操を、ボクたちの性欲のはけ口のために提供してくれた。
自分の愛妻に、教え子たちの恋の手ほどきをさせたのだ。
妻の不倫を叱ったふりをして、教え子の家のお手伝いとして住み込ませたのも、先生の配慮。
ボクやほかの部員たちへの応接の仕方をわきまえさせるための、先生の好意的な措置だった――
校内では今や、そういう解釈で通ってしまっている。
身勝手にも教え子の妹の純潔を汚そうとした先生は、生徒たちの情操教育のために妻を提供して、
独特な教育技法を身に着けた教諭として、不思議な高評価を得るようになっていた。


読書クラブの教材は、先生が選んできていたけれど。
いまのボクたちは、それでは飽き足らなくなっていた。
先週の教材は、昌枝に書かせた手記だった。
「悪い妻です。
 主人に隠れて、教え子たちと逢っているんです。
 オトナっぽい服装が良いという彼らのために、夫に買ってもらったスーツやワンピースを精液まみれにされて、
 黒や濃紺のストッキングを片脚だけ脱がされて、
 主人の名誉に泥を塗りながら、わたくし自身も楽しんじゃっているんです・・・」
真面目くさって朗読する部員たちに、先生は苦虫をかみつぶした顔をしながらも、
「この人妻の心理を考えてみようね」と、
夫の教え子たちの手に堕ちた蝶の心理を、「妖しく満ち足りた心境」なのだと解釈してくれた。
きょうの教材は、先生自身の手記だった。
「妻を教え子たちに支配されて、数か月が経ちました。
 中学にあがったばかりの娘さえ、入学祝いに犯されてしまったけれど。
 家族が教え子との懇親を深めることに熱心なのは、夫としては妖しい嬉しさを覚えます。
 教育者としてのわたしは、間違っているのでしょうか――」

母交換。

2022年09月29日(Thu) 23:15:15

親友のカズユキくんのお母さんは、とても清楚だ。
都会育ちの名門校出身で、知的で奥ゆかしい感じがした。
路子さんというお名前で、主婦としてもその名のとおり、道を踏み外さない堅実そうなひとだった。
彼女はボクの通う中学で、教師をしていた。
いつかあの女(ひと)のパンストを、むしり取ってやろう――ボクは物騒な想いを、彼女に対して寄せていた。

彼女が以外にも派手な下着を好んでいることも、毎日脚に通しているパンストが、妖しい光沢を秘めていることも、
洗濯ものあさりで得た成果から、ボクはつぶさに知っている。
案外――淫乱な牝ではないだろうか・・・?
身に着ける下着が性格の裏付けにならないことなど、大人になればふつうにわかるはずのことさえも、
10代のボクらはあまりにも、無知すぎていた。


「3人でさ。うちの母さんを、犯してみない?」
校舎の裏で集合した、いつもの仲良し3人組みは、ヒロシくん、カズユキくん、そしてボク。
3人とも、クラスの学級委員で優等生。
表向きは模範的な生徒だった。
その学級委員たちのきょうの議題は、そんなふうにとても不穏なテーマだった。
「賛成!」
いの一番に、ヒロシくんが挙手をした。
控えめなカズユキくんは、その勢いに圧されるように、
「いいの・・・?ほんとに・・・?」
と念を押すようにボクに訊きながら、続いて手を挙げた。

場所はカズくん家(ち)。
うちだと父さんいるし、ヒロシのとこも親がうるさいんだよね?
カズくんのところなら、お母さん平日の日中は学校だから、人目がなくて良いと思う――
自分の母親の肉体を提供するのだから、話はボクが主導権を握っていた。
ヒロシくんはいちいち、「賛成」「賛成」と、ボクの案に賛意を表してくれた。
けれどもカズユキくんは、あくまで慎重路線だ。
「でも――だいじょうぶだろうか、あと始末とかさ・・・」
けれどもけれども、カズユキくんの慎重路線は、決して生真面目な倫理観からくるものではない。
その証拠に、彼の発言は終始、「してはならないことをすることへのためらい」ではなくて、
「バレたら困るし、逃げ道がほしい」という懸念にそったものだったから。
「大丈夫、母さんも観念したら暴れたりしない人だし、愉しんだ後は片付けも手伝ってくれると思うよ」
ボクはあっけらかんと、ふたりにいった。
「じゃあ――賛成」
さいごにはカズユキくんも、おずおずと手を挙げてくれた。


翌日。
ボクは母さんを家から連れ出して、カズユキくんの家に向かった。
母さんはボクの気に入りの紅色のスーツを、この日も身に着けていた。

栗色の巻き髪は、きのうセットしたばかりのもので、
なまめかしいウェーブを風になびかせていて、
胸もとのボタンをくつろげたピンク色のブラウスの襟首からは、
黒のブラジャーの吊り紐が、チラチラと覗いていた。
脚に通した肌色のストッキングのテカり具合も、
10代の男の子たちの目を眩ませるには、じゅうぶん過ぎるほどのものだった。

連れて歩く女が、イケてる女だということは、
男にとってもっとも、誇らしいことだとボクは思う。
まして同伴する女が、悪友たちの飢えた性欲の餌食になるのであればなおさら、
その獲物は美しく気高いものでなければならなかった。

ボクは自分の情婦(おんな)を、彼らと分け合おうとしていた。
母さんにはむろん、ボクの意図を、隅から隅まで話している。
それでも母さんは、父さんがぼくにくれた母さんの貞操を、父さんに無断でまた貸ししてしまうことに、異論を唱えたりはしなかった。

出がけに母さんは、中学校に電話を入れている。
ちょうど休み時間に合わせてのことだった。
母さんは路子を呼び出してもらうと、いった。
「息子さん、具合悪そうに歩いていらっしゃいましたよ。お家に帰ってひと休みするんですって。
 放課後の課外活動はほかの先生にお任せになって、早く帰ってあげたほうが良いのではありませんか?」
相手は学校の先生だから、母さんもしぜんと改まった敬語口調になっていたけれど、
ボクはそれさえも、ゾクゾクと興奮しながら聞き耳を立てていた。

そう――母さんがカズユキくんの家で犯されている真っ最中に、路子先生には戻ってきてもらわなくちゃならないのだ。
女学校では素行のわるい生徒だった母さんは、先生という行いすました人たちに反感を持っていたから、
ボクの悪だくみにも、ひと肌脱いでくれたのだった。
そう――まずは文字通り、ひと肌脱いでもらわなくっちゃ。


「あら、カズユキさんこんにちは、きょうは学校早かったのね。ヒロくんもいたの?
 うちの子もそうだけど、3人とも学校さぼっちゃ、ダメよ」
あくまで母親然として、ボクたち悪ガキをたしなめようとする母さんに、
「タヅくんママ・・・タヅくんママ・・・ぼくはもうたまらない!」
いきなり母さんにすり寄ったのは、ヒロシくんだった。
「あっ、何するの!?いけないわよお、まだ子供なんだから――」
笑って受け流そうとする母さんを、ヒロシくんはしっかりと羽交い絞めにつかまえて、首すじにディープなキッスをする。
あ!ボクの母さんになんてことを――!
ボクが思わず声をあげたのは・・・きっと本音だったに違いない。

「駄目、駄目、駄目ですったらっ!」
母さんの声色は、いつもベッドのうえで聞かせてくれる嬌声に近くって、
その甲高い声がまた、ボクたちの股間をいっそう、逆立ててゆく。
「ほら、ほら、カズユキ――触れっ」
母さんの両腕を後ろ手に絞めつけながら、ヒロシくんはカズユキくんに言った。
「え・・・え・・・エ。。。いいの?ホントにいいの?」
真面目ぶっているカズユキくんだって、本音は女の身体に触りたくって触りたくって、しょうがないのだ。
「あ・・・あっ、うぅん・・・っ」
ヒロシくんに羽交い絞めにされた母さんは、苦痛げに柳眉を逆立てる。
細い眉がピーンと逆立ち、ヒクヒクと慄(ふる)えるありさまに、カズユキくんも我を忘れた。

稚拙な掌が母さんのブラウスをまさぐり、波立てて、しまいにくしゃくしゃにして、
ブチッ・・・
と、音をたてて裂けた。
「あっ、何すんのよっ」
母さんは本気で口を尖らせたけれど、もはやカズユキくんの勢いは止まらなかった。
黒のブラジャーをたくし上げられ、格好の良い乳房をぷるんとブラウスのすき間からはじけさせると、
二人の少年は息遣いを変えた。
「ちょ、ちょっと・・・っ、タヅくん、やめさせなさいよっ」
制止を求める母親の声が、平穏な日常ではボクたちの圧制者だったはずの大人と立場が逆転したことを感じさせた――

「あっ、いけない。だめ。駄目ですったら・・・っ・・・」
母さんの声は、2対の猿臂と汗ばんだ背中とに圧しつぶされていって、
しまいには、息せき切ったカズユキくんの手で、パンストを引きずり降ろされてしまっている。


「ただいまァ・・・」
なにも知らないのどかな声が、玄関先に流れた。
けれども、母さんとファックしまくっているカズユキくんの耳には届かないらしい。
「俺が手を抑えててやるから、ほら、そこだ、そう――」
ヒロシくんが母さんの腕をねじ伏せながらカズユキくんに囁いて、
カズユキくんはそれにいちいちばかみたいにうなずき返しながら、母さんのブラウスを引き剥いでゆく。
「あ――」
背後からした驚きの声が、時を停めた――

「そうれ、一丁あがり――」
きょうのМVPは、間違いなくヒロシくんだった。
カズユキくんが母さんを、そしてボクが路子先生を犯すのの手伝いを、いちから十までやってのけてくれたのだから。
あとで母さんが言っていた。
カズくんたら、おかしいわあ。
お母さんがヒロくんに抑えつけられて、パンストをタヅくんにびりびり破かれちゃったときに、一番強く射精したのよ――

路子先生の見慣れた服装。
それがボクを強姦魔に変えていた。
高嶺の花な空色のブラウスを、びりびり破いて。
手の届かないはずの紺のタイトスカートを、これ見よがしにたくし上げて。
ボクの母さんのパンストを引き破かれたお返しに、路子先生のパンストもブチブチッ・・・と剥ぎ堕として。
破壊欲に燃えて逆立ったぺ〇スを、太ももにぬるーっと這わせていって。
さいごにズブズブと、埋め込んでいった。
目が飛び出さんばかりにボクを睨むカズユキくんのまえ、
ボクは路子先生を、征服していった。
乱暴なだけね――って母さんに呆れられている太ももの躍動に、路子さんの脚の動きが重なって、
知らず知らず、同調し始めてゆくのを感じて、ボクの興奮はマックスになった。


自分の母親を犯されるのって、どうしてこんなに燃えるんだろう?
自分で母さんを犯すのも楽しいけれど。
父さんのまえで母さんのスカートを精液まみれにするのも楽しいけれど。
「ヒロくん、カズユキくんも、元気ねえ・・・ッ」
なんてのたまいながら、よそ行きのスーツ姿をよその子たちの精液まみれにされてゆく母さんを視るのも、とてつもなく興奮する。

そしてなによりも、
きょうの成果は、路子。
何年も前から、ずうっと狙っていた、路子。(もう呼び捨て)
その路子を、学校教師をしているときそのままの服装で、
薄いブルーのブラウスに濃紺のタイトスカート、肌色のストッキングという、知的で清楚なスタイルで、
人もあろうに息子の前で、「路」にはずれた行為を強要されて。
女教師としてはあるまじきことに、夫以外の年端も行かない少年たち――それも息子の親友の餌食になって。

それなのに路子は、
白昼のもと、ほしいままに貞操を汚されたうえ、「あぁ~ん」なんて、口走ってしまって。
パンストの手触り舌触りを楽しむボクのために、脚をくねらせてさえくれたのだから。
あのとき路子の脚から抜き取ったパンストは、いまでもボクの戦利品として、手許にある。


何よりも良かったのは、犯され抜いた路子がボクたちと犬ころのようにじゃれ合うのを目にしたカズユキくんが、
自分の母親の痴態を見て、勃起してしまったこと。
そしてさいごには、「カズくんやめなさい」とお母さんが制止するのも構わず強引にまたがっていって、
お母さんのスカートが精液まみれになってしまうほど、射精してしまったことだった。

きょう大活躍だった、ヒロシくんは。
もともとボクに、自分のママを襲わせてくれていた。
そう――ヒロシくんもまた、自分のお母さんを襲われることに興奮を覚える、いけない男の子だったのだ。

男子三人の欲望がはじける下で。
堅実な主婦と規律正しい中学教師は、ふたり肩を並べて、息をはずませて。
息子たちの奴隷へと、堕ちていったのだ。
3人が3人とも、互いの母親を共有する仲になったのは、それから間もなくのことだった。

母さんとのデート。

2022年09月29日(Thu) 22:01:51

ボクの青春時代の話をしよう。
高校入学まえに、ボクは初めて女の身体を識った。
相手は母さんだった。
母さんは、ボクを最初に欲情に誘った女――

まだ小学校高学年のころ。
急に気分が悪くなって学校を早引けしたときに。
父さんと母さんの部屋から、妙なうなり声が漏れてきた。
二人が部屋のなかで、子供たちに決して見せないようにして、仲良くしているのは。
子ども心に知っていたけれど。
そのときの相手は、父さんじゃなかった。
母さんが嫁入り前に伯父さんに犯されて純潔を捧げてしまってから、ずうっと伯父さんの情婦(おんな)だということを、
ボクはまだ知らなかったのだ。

いつもの見慣れた花柄のワンピースのすそから覗いた太ももは、
肌色のストッキングの光沢を、毒々しいほどつややかによぎらせていて。
ボクは具合が悪くなったのさえ忘れて、いちぶしじゅうを見守ってしまっていた。
それ以来。
愛する人を直接愛することはもちろんのこととして、
愛する人が別のだれかに愛されるのを視て欲情する歓びを、
網膜の隅々にまで、覚え込んでしまっていた。

ボクが初めて女の身体を識ったのは、それからそう遠くない時期のことだった。
父さんの目を盗んでは、父さんと母さんの部屋のなかで、
息をはずませ合って、太ももを擦り合わせ合って、
片や愛液を力まかせに注ぎ込み、
片やまき散らされる愛液を、恥を忘れて口に含んだ。

父さんにバレたのは、とうぜんのなりゆきだった。
もちろん叱られたし、監視の目も厳しくなったけど。
人目を忍んで逢いつづける男女のことを、防ぐ手立てがないことがわかると、
父さんは潔く自分の負けを認めて、
高校の入学祝にと、母さんとの付き合いを認めてくれるようになっていた。
ボクはその晩、父さんに平身低頭してお礼をいって、
そのまま母さんをわが物顔に横抱きにすると、
勉強部屋へと引きずり込んでしまっていた。
その晩初めて母さんは、ボクの部屋で夜を明かしたのだった。

青春だった。
無軌道きわまりない、青春だった。

きょうも母さんは、家から抜け出してきて、
学校をさぼったボクとの待ち合わせの公園に姿を現した。
「タヅくん(ボクの名前は田鶴夫)、待った?」
母さんはボクの気に入りの紅色のスーツに身を包んで、ふっくらとした笑みを投げかけてきた。
「待ったよ――あそこがパンパン」
ボクの言い草に母さんは華やかに笑うと、
「じゃあ、早く行こう、ホテル」
と、ボクを促した。
「なんなら、ここでも良いんだよ?」
ボクが意地悪く笑うと、母さんはさすがにうろたえて、
「駄目、駄目、皆さんにバレちゃうでしょ」
と、いった。
もうとっくに――ボクたち母子の仲は、周りのものも、いや街じゅうでうわさになってしまっているのを、
母さんはまだわかっていないのだろうか?

「さっ、行きましょ」
スックと立った立ち姿は凛としていて、惚れ惚れするほど美しい。
紅色のタイトスカートのすそから覗く太ももが、肌色のパンストを淡くテカらせていた。
ボクは欲情を我慢できずに、母さんの手首を邪険につかんだ。
「アッ、何するの!?」
いなやはなかった。
ボクは母さんを公園の植え込みの向こうへと引きずり込んで、
煽情的に揺らぐひざ上丈のタイトスカートを強引にたくし上げていた。

・・・・・・っ。
・・・・・・っ!

「ガーターストッキング、いいよね・・・」
放心して大の字になった芝生のうえ。
軽々とした真っ白な雲が、深い青空のうえにぽっかりと浮いていた。
「穿いたままできるからね」
母さんがこたえた。
股ぐらからむしり取った黒のショーツが、まだ指先に絡みついている。
ショーツには、女の湿り気で、しとどに濡れていた。
口許に持って行って、臭いを嗅ぎ、ゆっくりと口に含む。
「こら、やめなさいよ」
口をとがらせる母さんをけだるげにあしらって、ボクはしばしの間、その行為に熱中した。

「帰るわよ、父さんももうじき帰ってくるし」
「じゃあ、急いで帰らないと」
ボクは聞き分けよく起き上がると、いっしょに起き上がった母さんのスーツに着いた枯れ草を、払ってやった。
「案外物分かりが良いのね」
とうそぶく母さんに、ボクはこたえた――
「父さんだって、母さんの穿いているパンストを他の男に破かれるの視たがると思うから・・・さ」

叔父の愛妻と恋をする(相姦日記)

2022年09月18日(Sun) 16:04:22

田鶴夫さん、着てきてあげたわよ♡ゆう子のスーツ。あなた狙ってたでしょ?
栗色のセミロングの髪を揺らして現れたのは、兄の由貴夫だった。
兄は、兄嫁のゆう子のスーツで女装している。
千鳥格子のジャケットの襟首から覗く純白のブラウスは、ふんわりとした百合の花のようなボウタイが器用に結わえられていて、
白のタイトスカートのすそからは、ツヤツヤとした光沢を帯びた、これも純白のストッキングが、血色の良い足許を輝くように染めている。
兄の女装癖は中学校いらいのことだったから、メイクもさまになっていたし、ちょっと見にはふつうの既婚女性に見えた。
もっとも――兄の場合は淫乱な三十路妻という雰囲気がありありだったが。
そう、兄はボクに抱かれに来たのだ。

激しく飛び散る精液で、ゆう子のスカートをびしょびしょに濡らしてしまうと、
ボクの腕の中で兄さんは、白い歯をみせて笑った。
すけべ。
ほんとうは、ゆう子のことも犯したがっているのでしょ?
良く輝く瞳が、そういっていた。
妻が犯されないために、妻の服を着て女装して、ボクに抱かれに来る兄も。
同性同士のセックスは楽しいらしく、きょうもノリノリで相手をしてくれた。

ボクたち兄弟は、時には兄が男、ボクが女になり、時には兄が女、ボクが男になる。そんな濃い間柄だった。
それは出生のときから運命づけられていて、兄が生まれた時も、ボクが生まれた時も、
父や伯父は、「この子たちは男にも女にもなるだろうから」と、わざと女でも通るような風変わりな名前を名付けられたのだった。


ゆう子とボクとの関係は、兄との結婚前からだった。
その日は母さんの結婚式だった。
母さんは、父さんとの結婚前に父さんのお兄さんである伯父に襲われて、処女を奪われてしまっていた。
花嫁の純潔を兄に奪われるのは、ふつうに考えて不本意なはずだったけれど――
父さんの場合は、ちょっと違っていた。
昔から。
父さんは姉のセーラー服を着せられて、兄のセックスの相手をさせられていた。
股間に一物を挿入されることで、爆(は)ぜるほどの快感が全身を痺れさせてしまうことを、
父は伯父から身をもって教わっていた。
だから許婚を犯されてしまった時も、「兄さんらしいなぁ」と、兄の凄腕ぶりに脱帽しただけだったという。
その伯父が母さんに、正式にプロポーズした。伯母が健在であるにも関わらず、である。
もちろんプロポーズと言っても、正式に夫婦となるわけではない。同居するわけでもない。
実際には、情夫・情婦の関係を公にするだけのことだった。
それでも父さんは母さんを伯父と結婚させるために離婚届に判を捺し、
伯父は母さんとの婚姻届を町役場に出して、披露宴まで挙げたのだ。
そこが、兄さんとの結婚を控えたゆう子との、なれ初めになった。

ゆう子はその日の華燭の典を、ただ「身内の祝い事」としか、兄から聞かされていなかった。
婚約者の母親が夫の兄と結婚前から不倫していて、その不倫の仲を正式に認める宴だということを、宴席で初めて知ったのだった。
招かれた宴のあまりの不道徳な趣旨に、生真面目だったゆう子は少し顔色を変えていた。
その日着てきた淡いピンク色のスーツは、ゆう子のことを華やいだ雰囲気で包んでいたけれど、
彼女の顔つきは初々しい装いとは裏腹なくらい、尖っていた。
彼女の生真面目なしかめ面が、ボクの劣情を逆なでにして、ボク自身を鬼に変えていた。
ボクは兄さんを廊下に呼び出すと、「ゆう子さんはボクが犯すから」と宣言した。
ちょうどその昔、伯父が父に向って、お前の嫁の純潔を奪うと言い渡した時と同じように。
人の好い兄さんは、「ウン、お前なら安心だ。よろしくな」と、拍子抜けするほどあっさりと、婚約者の純潔を譲り渡してくれた。

「少し空気がよどんでいますね。出ましょう」
ボクはそういってゆう子を誘い出すと、言葉巧みに宴席の隣室に連れ込んだ。
丸テーブルが一脚と、椅子が4つしつらえただけの、狭い部屋だった。
「出ましょう、ここ」
不穏な何かを感じてゆう子が出ようとするのをボクは強いて引き留めて、
「ゆう子さんのことは、ボクが女にしてあげる」
と、囁いた。
雷鳴に打たれたようにビクッと顔をあげたゆう子の表情は、恐怖に包まれていた。
それがなおさら、ボクの嗜虐心に、火をつけた。

ぞうさもないことだった。
立ち尽くすゆう子を羽交い絞めにすると、無理強いに椅子に押し伏せて、白いパンストをビリビリと引き破ってしまった。
むざんに引き裂かれた薄地の礼装から素足が露出する惨状は、若い女を黙らせるのにじゅうぶんだった。
「これ以上騒ぐと、お洋服が汚れますよ」
冷ややかな脅し文句をゆう子の耳に吹き込むと、
迫ってくるボクの身体を隔てようと気丈にも突っ張っていた腕から、力が抜けた。
ボクはゆう子の首すじに、吸血鬼のように首すじに唇を這わせた。
柔らかな体温が、しっとりと潤いを帯びた皮膚から伝わってくる。
突っ張っていたところで、そこはまだ、はたちそこそこの小娘だった。
とはいえ、ボクはまだそのころ、高校生だったけれど――
でも、その道にかけてははるかに場数を踏んでいたボクは、なんなくゆう子のタイトスカートをたくし上げ、
慣れた手つきでショーツを足首へと、すべらせていった。
ゆう子が兄さんとの結婚を破談にしなかったのは、
ボクとのセックスを不覚にも、しんそこ愉しみ抜いてしまったからだと、ボクは確信している。


ボクの一族がこんなにフクザツなことになっていたのは、地域の風習も影響していたのだと思う。
過疎化が進んでいたこの街では、どこの家も恒常的な「女ひでり」の状態だった。
だから――嫁を貰い遅れた男たちは、友人の嫁と媾合(こうごう)することを許されていたし、
兄と妹、姉と弟、母と息子、父と娘――身近な異性に手を伸ばすことには、だれもが暗黙の了解をしていたのだ。
妻を奪われた格好の父さんは、親族席の最上席にちんまりと腰かけて、終始人の好い笑いを浮かべていた。
こよない愛妻家である父さんにとって、美人で陽気な母さんはなによりの自慢であったけれど、
その母さんが嫁入り前に、偉大な兄の心を射抜き、少々強引な形にせよロマンスを体験したことも、
その後も伯父の最もお気に入りの女として、数ある伯父の愛人たちのなかでナンバー・1であり続けたことも、
いまこうして兄から正式のプロポーズを受けて、役所に婚姻届けまで提出して披露宴の主役となったことも、
すべて誇らしく悦ばしいことだったのだ。
風変わりといえば風変わりだったが、父さんは父さんなりに兄を尊敬し、母さんのことを愛していた。

母さんの披露宴の日以来、ゆう子はボクのところにひっそりと、通ってくるようになった。
そうして、まだ兄にもいちども開いたことのない身体を惜しげもなく開いて、
嫁入り前の潔(きよ)く守り抜かねばならないはずの処を、淫らな精液にまみれさせていったのだった。


兄さんと長い口づけを交わすと、ボクは義姉さんの服が似合うねと言った。
スレンダーな兄の身体に、ゆう子のよそ行きのスーツはぴったりとフィットしていて、兄を見映えの良い女にしていた。
「こんどはこのお洋服――ゆう子に着せて送り届けるわね」
女の姿をしているときの兄さんは、ずっと女言葉で、あくまで女として振舞っていた。

「で・・・こんどはだれを、引きずり込むの?」
兄さんは共犯者の含み笑いで、じっとボクを視る。
「佐奈子叔母さん」
ボクが応えると、兄さんはなるほどねと言った。
佐奈子叔母さんは、父の弟の妻で、夫婦で中学校の教師をして、倹(つま)しく暮らしていた。
身なりはいつも質素だったが、教師らしくきちんと折り目正しくしていたので、そこはかとない気品を漂わせていた。
「あんたの大好物なストッキングも、愛用しているんだものね」
兄さんに図星を突かれて、ボクは苦笑いした。
ストッキングフェチは、中学に上がる前、母さんの情事をぐうぜん目にしてしまって以来のものだった。
空色のスカートのすそをまくり上げられた母さんは、
伯父の手で肌色のストッキングをひざまでずり降ろされて、太ももを眩しく輝かせていた。
それがいまでも、目に灼(や)きついて、離れないのだ。


乱倫の嵐が吹き荒れるこの街で、佐奈子叔母さんの貞操が無事だったのは、ほとんど奇跡のようなものだった。
一家の最高権力者である伯父は、うちの母さんにぞっこんだったし、父さんも母さんにしか目のいかない男だった。
ボクたち兄弟の筆おろしは、父さんのいない夜に母さんが、
「困ったものねぇ」と言いながら、ワンピースの襟首をはだけてくれて豊かな乳房をもろ出しにしてくれて果たすことができたし、
生真面目な佐奈子叔母さんをわざわざ巻き込まないでも、帳尻が合っていたのだった。

「佐奈子叔母さま、きっと叔父さま以外の男を識らなくてよ。だったらゆう子を撃沈したあんたのぺ〇スで、きっといちころだわよ」
兄さんはそういって、ボクを力づけてくれた。
叔母を犯す算段をする弟に、うまくいくよと励ます兄。
それがボクたちだった。
思えば、とんでもない兄弟だった。

狙われた佐奈子叔母こそ、いい迷惑だっただろう。
けれどもボクは容赦なく、彼女に迫った。
子どものころから可愛がってくれたり、勉強を見てくれた叔父への斟酌も、まるきりなかった。
ボクは叔母さんが欲しい。ボクのぺ〇スも、叔母さんを汚したがってそそり立っている。
だから叔母さんを狙うんだ。
すごく明快でしょ?


善良な叔母を引きずり込むのは、たやすいことだった。
その日はたまたま叔母にとって不幸にも、叔父は教育委員会の用事で遠出していた。
父さんが話があるって呼んでいる――というボクからの誘いを、叔母はまるで疑わなかった。
ボクたちの淫らな関係もつぶさに知っているはずなのに、自分だけは無縁で済むのだと思い込んでいたのだろうか?
けれども淫らな渦の吸引力は、叔母を飲み込むことを欲していた。
それくらい。
叔母は高雅で気高くて、穢すのにもっともそそられる獲物だったのだ。

招かれた自宅に、父さんも母さんもいなかった。
母さんは伯父さんに誘われてラブホテルに行っていたし、
父さんは尊敬する兄に母さんが愛されるところを視たいといって、いっしょに出かけていったのだ。
母さん好みの派手な洋服をふしだらにはだけていって、伯父が母さんを征服してしまうことを。
逞しい兄の男ぶりを見せつけられることを。
父さんはとても、悦んでいた。

そういうわけで、叔母は一人、客間に通された。
モスグリーンのカーディガンに、グレーのスカート、足許を彩るのは、濃いめの肌色のストッキング。
素朴な装いであればあるほど、ボクの目は好奇に輝き、胸の奥底に滾る嗜虐心を募らせていった。
几帳面な叔母が、つま先とかかとの補強部がぴったりと合うように穿きこなしているのを、ボクはつぶさに見て取った。
きちんとした服装に、すみずみまで意を用いている叔母に、好感を持った。
これからモノにする女は、淑女だ。
思う存分、辱めてやろう――

「兄さんはいらっしゃらないの?」
かすかに不審の色を泛べる叔母に、ボクは告げた。
「きょうはボク、年配の女のひとが欲しいんだ。さしあたってだれもいないから、叔母さんに相手をしてほしいんだ」
えっ・・・?
戸惑い腰を浮かしかける叔母を、ボクはあっという間に組み伏せていた。
「カーディガン破かなければ、あとはいいよね?」
そういうと、モスグリーンのカーディガンの下に着ていた黒のブラウスに手をかけて、力任せに引き裂いていた。
あっ!!
年長者の優位は、苦もなく消し飛んだ。
思いのほか白い叔母の胸が、黒のブラジャーの吊り紐一本に区切られていた。
ボクはその釣り紐も、力任せに引きちぎった。
「田鶴夫さん、いけないわ!そんなこと・・・」
叔母の顔には懇願の色があった。
「お嫁さんをもらったらどうするか、ボクに教えてくださいよ、先生」
生真面目な女教師の面ざしに小便をひきかけるような気分でからかうと、
「・・・っ」
叔母は声にならない悲鳴をこらえて、抗おうとした。
やはり母さんのほうが、こういう場に場慣れしている――ボクは素直に、そう感じた。
レ〇プどうぜんに犯されるのを好んでいた母さんに、なん人の男がまたがっていただろう?
母さんは手加減をよく心得ていて、頑強に抵抗して、徐々に力を抜いて、さいごに屈服してゆく手振り、顔つき、声色が、男どもを魅了してやまかなったのだ。
対する叔母は、ただぶきっちょにめくら滅法腕を突っ張って防戦するばかり。
気の毒なくらいのつたなさだった。

ブラジャーをむしり取り、指に吸い尽くような肌の触感をたしかめながら、乳首を唇で強く吸う。
「ああっ・・・」
夫に対して顔向けができない。家の名誉を守り抜かなければならない。
きっとこの女の頭のなかでは、そんなことがめまぐるしくぐるぐると廻っているに違いない。
ボクは彼女の思惑は一切無視して、ただ胸の柔らかさ、張りの良さを手触り、舌触りで楽しんでゆく。
豊かすぎも貧しすぎもしない、まずまずのおっぱいだと診たてていた。
ボクの掌はまるで掌じたいに意思が宿っているかのように、
もうなにも考えないでも、女を煽情するためのもっとも効果的なやり方で、叔母の素肌を手繰っていた。
首すじにキスをしたときは、ゆう子にもこんなキスをお見舞いしたっけ・・・と、なぜか義姉のことを思い浮かべていた。
ひとりの女を獲物にするのに、ほかの女のことを思い浮かべるのは失礼だ――ボクはすぐに、ゆう子の幻影を追っ払った。
凌辱という恥ずべき行為にも、礼儀もあれば、作法もあるのだ。

口づけは、濃く長く、相手の息が詰まるほどに味わった。
キスを許すと人妻はかなりの確率で堕ちる――そんなことを教えてくれたの、誰だったっけ?
でもたしかに、それを境に叔母の動きは、目だって緩慢になり、活発さを欠いていった。
お目当ての肌色のストッキングをいたぶってやろうとグレーのスカートを荒々しくたくし上げた時にも無抵抗だったし、
脂ぎった唾液にまみれた唇を太ももに圧しつけて、淡いナイロン生地をくしゃくしゃに波打たせていったときには、すすり泣きの声さえ洩らしていた。
薄紫色のショーツは、薄い生地で、唇でまさぐると意外に濃い茂みの剛毛が、チクチクとした。
叔父もこんなふうに、自分の妻の身体を愉しんでいるのか――
すでに叔母の誇り高い貞操をガードしているのは、この薄いショーツがわずかに一枚。
それもボクのエッチなよだれにまみれて、突き出した舌は、股間の秘奥の起伏さえも、つぶさになぞり尽くしてしまっている。

いまごろ妻が貞操の危機に直面しているなど夢にも思わずに、律義に執務しているであろう叔父を思い浮かべると、
なにやらくすぐったくなってきた。
待っててね。もうじき叔父さんの愛妻を、地獄に堕としてあげるからね――
謹厳な教育者である叔父の指導の甲斐もなく、ボクはしんそこ悪い子に育ってしまっていた。

「叔母さん、ごめんね、すぐ済ませるからね」
叔母の希望とは正反対のことを、引導を渡すようにして囁くと、叔母は身体の動きを止めた。
すでにパンストを片脚だけ脱がせて、ショーツは足首まですべり降ろしてしまっていた。
「どうしても、なさるというの?」
なおも言い募る叔母に、ボクは言った。
「ずっと前から、叔母さんを犯したかったんだ」
ほんとうは・・・生真面目で影の薄いこの叔母は長いこと、凌辱の対象ではなかった。
たまたまきのうきょうの思いつきで、犯すことに決めたのだった。
けれどもじつは、心の奥底ではずっと昔から、叔母を犯したかったのかも・・・と、ふと思った。
すでに主人の意思を離れてたけり狂ったボクの股間が、叔母の太ももの奥へと迷い込んでいた。
「だったら、だったら――せめて叔父さんのことをばかにしたりしないでね。あの人を悲しませるようなことはしないでね」
ボクの一物が叔母自身をえぐり抜く瞬間まで、叔母は夫のことばかり、気にかけ続けていた――


夕方。
部屋の隅で叔母は、呆然となりつつも、身づくろいを始めていた。
剥ぎ取られたブラウスは、モスグリーンのカーディガンの奥へとしっかりと押し込まれ、
吊り紐の着れたブラジャーは、ボクに戦利品としてせしめられていた。
ストッキングは幸い、少し伝線しただけだったが、これもボクにせしめられてしまっていた。
蛇のように伸びたナイロンの薄衣をボクがこれ見よがしに見せつけて、舌で意地汚く舐め抜くのを、叔母は悔しそうに視ていたけれど、
もうそれ以上怒りも泣きもしなかった。
「時々、逢って」
それは、叔母が内心もっとも恐れていた願いだったに違いない。
いちどきりのことなら、過ちで済まされる。
夫にも告げずに、墓場まで持っていこう。
きっと叔母は、そう思ったはず。
けれども、日常的な関係まで迫られてしまっては、夫に露顕するのは時間の問題だったから。
「いや!」
叔母は叫ぶようにこたえた。
反射的に、
ぱしぃん!
頬に平手打ちをくれていた。
「逆らう権利はないんだよ」
ボクは叔母にもう一度にじり寄ると、ブラウスの破れを抑える掌を取り除けて、カーディガンの襟首を強引に押し広げ、
あらわになった胸を吸った。
「聞き分けがわるいようだから、もう少し付き合ってもらうね」

ごめんなさい、あなた。ちょっと立ち眩みがしてしまって・・・きょうは祐介さんのところでお泊りさせていただきますね。
明日もお仕事早いんでしょう?きょうも――ご出張お疲れさまでした。

叔母の声色はいつもの静けさと穏やかさをたたえていて、なによりも叔父に対するいたわりに満ちていた。
こういう奥さんをもらうご主人は、きっと幸せなんだろうと、ボクは思った。
「せめて叔父さんをばかにしないでね。悲しませたりしないでね」
犯される直前の叔母の懇願が、鼓膜によみがえった。
叔母との関係をこれきりにしようとまでは思わなかったが、せめてこの生真面目な夫婦に余計な亀裂は招きたくないな、と、ふと思った。


佐奈子との関係は、週1のペースで続けられた。
いちど喪われた貞操は、元には戻らない。
佐奈子もそこは、観念したようだった。
グレーのスカートを精液まみれにしてしまったあの日を境に、ボクは叔母のことを佐奈子と呼び捨てすることにした。
だからここでも、ここからは佐奈子と名前で書く。

逢瀬はいつも、自宅の勉強部屋だった。
母さんは見て見ぬふりをしてくれていた。
むしろ――自分が相手をしなければ消し止められない息子の劣情を、
義妹が身代わりになって火消しをしてくれていることに、感謝しているふうだった。
いつも学校に着ていく、生真面目なスーツ姿がいいな。佐奈子には良く似合っていると思うよ。
すると佐奈子は、ボクの希望を容れて、スーツ持参で訪いを入れてくれるようになっていた。
そう、さいしょのときにブラウスを引き裂かれたことで懲りていたのだろう。
家を出るときと違う服装で帰るわけにはいかなかったから、
ボクと交接するために、佐奈子はわざわざ別の服を用意して、着替えてくれたのだった。

パンストを片脚だけ脱がせて、
ショーツをつま先まですべらせて、
スカートを着けたまま、秘奥をまさぐり、貫き、精液まみれに濡らしてゆく。
ボクが愛用しているハイソックスと同じ丈まで、ストッキングをずり降ろされて。
佐奈子はすすり泣きながら、ボクの欲求に応えてくれた。
けれどもそれが擬態にすぎないものになりつつあることを、ボクは知っている。佐奈子ももちろん、自覚している。
夫とはかけ離れて若々しい怒張を迎え入れた彼女の関門は熱く濡れぼそり、
怒張を押し返すように、ギュッと締めつけてくる。
こちらも負けずにと意気込んで、ぐりぐり、ざりざりと、関門を激しく往き来させてゆく。
佐奈子は身を仰け反らせて、感じていることを身体で白状してしまっている。


そんなことが、ふた月ほども続いただろうか。
佐奈子の脚から抜き取った戦利品のパンストが、もう数え切れなくなったころのことだった。
ボクが学校から戻ると、母さんがちょっと厳しい顔つきで、ボクのことをリビングに招き入れた。
そこには真っ黒な洋装の喪服を着けた佐奈子がうなだれて、黙りこくっていた。
「バレちゃったんだってさあ」
母さんはあけすけに、変事を告げた。
いつかはそうなることだった。
どこでだれがどう伝えたのかは、問題ではない。
ボクと佐奈子との仲は、叔父の知るところになってしまったのだ。

潔癖な教育者である叔父は、理由はどうあれ不貞を犯した妻を家に置くわけにはいかないと告げたという。
お前も教師として教壇に立つ資格はないから、当面休職したほうがよい、とまで、いったという。
物静かな叔父だけに、その言葉は重く、徹頭徹尾罪悪感とは無縁で過ごしてきたボクですら、冷や水を浴びせられた気分だった。
「どうするのよう」
母さんは蓮っ葉に、父さんに尋ねかけた。
ボクの不始末は、うちの不始末だった。そこはさすがに、両親だった。

「佐奈子さんのために、アパートを借りましょう。もちろん費用はうちで持ちますからね」
母さんは気前よく、佐奈子の住まいについての費用を受け持ってくれた。
もちろんボクには、こう囁くのを忘れなかった。
「あんた、わかってるんだろうね?あんたのために叔父さん、佐奈子さんを離婚してくれるんだよ。そういうことだろ?
 チャンスだよ。いまのうちにあの女(ひと)を、あんたの色に染め変えちゃいなさいな」

その晩佐奈子は、わが家の客となった。
改まった重々しい喪服姿にひき立った白い肌に、欲情を覚えずにはいられなかった。
母さんに言われるまでもなく、ボクは佐奈子の寝所を襲って、喪服姿のままひと晩じゅう、いたぶり抜いてしまっていた。
黒のスケスケのストッキングにブチチッと裂け目を走らせたまま、
厳粛な場でのみ装われるべき漆黒のスーツを、佐奈子はふしだらに着崩れさせた。
その夜は、佐奈子が自ら、学校教諭夫人の貞操の喪を弔う夜となった。

叔父は佐奈子とは顔を合わせたくないそうで、代わりに母さんが叔父宅に出向いて、佐奈子の服や身の回りの品を受け取ってきた。
調度も含めるとそれなりの量になったので、引越業者を依頼することになった。
受け取りを済ませると、母さんはボクに耳打ちをした。
「叔父さんのこと誘ってみたのよ、それとなく。でもね、やっぱり佐奈子さんがいいんだって。
 それに、わたしの場合佐奈子は処女で嫁に来たから、見返りは欲しくないんですって」
奪(と)られるいっぽうの立場に甘んじることを選んだ叔父を、ボクは偉いとおもった。
それにしても――そういうときに叔父のことを誘惑しようとする母さんもまた、凄いとおもった。

佐奈子のアパートは、寂しいくらいに空き間が目についた。
ぼくはその空き間を埋めるようにして、佐奈子のアパートに居座ることにした。

離婚届なるものを目にするのは、母さんのときに次いで二度目のことだった。
兄さんとの結婚を控えていたゆう子を犯したあの宴のとき、父さんと母さんとは、ご丁寧にも法的に離婚をしていた。
離婚届という書類の名前の重みに佐奈子はたじろいだようだったけれど、
ボクはさっさとペンをとると、妻の欄に佐奈子の名前を書き込んだ。
「ボクが出してきてあげるよ」というと、さすがに佐奈子はかたくなにかぶりを振って、自分で出してきますとこたえた。
結局、二人で町役場に出向いて、離婚届を出した。
「夫」の欄は、叔父の小さくまとまった整然とした字体で名前が記され、
その隣の「妻」の欄は、ボクの大ざっぱな字で、佐奈子の名前が記入されていた。

こいつを出してしまえば、佐奈子は叔父の妻ではなくなるのだ。
佐奈子は晴れて、自由になる。
その日以来ボクは公然と、佐奈子のことを自分の女として扱った。
佐奈子のアパートには毎晩寝泊まりをして、夜遅くまで元教諭夫人を苛んだ。
覚えたての縄の扱い方を試すために、佐奈子は叔父が仕立ててくれた黒留袖の上から、荒々しく縄を巻かれていった。
ギュッと縛った瞬間、「ウッ」とちいさいうめきをあげるのが、たまらなくいとおしく、可愛らしかった。
二十近くも齢が離れているなどとは、ついぞ思ったことさえなかった。
ボクは毎晩のように佐奈子を抱いたし、佐奈子もじょじょに、応えてくれるようになった。
もはや逃げ道は、どこにも用意されていなかったから――ぼくに身を任せるしかなかったわけだし、
いちど身を任せてしまった女を夢中にするすべを、ボクは十分すぎるほど、心得ていた。
佐奈子は、堕ちた。

道行く人がうわさするほどに、ボクと佐奈子が同居を始めたことは、街に知られていった。
佐奈子がボクの女であることを世間に見せびらかしてやりたくなって、
時には道端の草むらや、深夜の路上で、佐奈子の装いを剥ぎ取って、まぐわい抜くことさえした。
だれもがオシドリ夫婦だった教諭夫妻の離婚を知ったし、
妻のほうが教師を辞めてまで、恥知らずにも20も齢の若い甥に春をひさぐようになったことも知られていった。


それでもボクは、時折叔父のことが思い出されてならなかった。
生真面目な叔父は、相変わらず律義に中学に通い、生徒の指導に当たっているという。
教師のなかには教え子の男女に手を出して、体育館の裏や空き教室で、蒼い性をはじけさせる者もいたが、
叔父にかぎってそれはなかった。
このままだと、叔父の人生は彩がまったくないものになってしまう――と、ボクはおもった。

「叔父さんとこに、謝りに行かない?」
その夜も八回ほど佐奈子を貫いたあと、ボクは佐奈子に切り出した。
叔父の誂えた黒留袖に撥ねた精液を気にかけていた佐奈子は、ハッと目を見開いて、みるみる涙をあふれさせた。
「ほんとう?ほんとうにそうしてくださるの?」
佐奈子が意味のある言葉を発するのを、もしかするとここに来て初めて耳にしたような気がした。
そう――ボクはここにいる間は始終獣になっていたから、
彼女は服従の短い相槌や、苦痛に耐えかねたうめき声以外、ほとんど口にすることがなかったのだ。
「やっぱり佐奈子は、叔父さんのところに戻ってあげたほうが良い――ボクはそう思う」
でもね、と、ボクはつづける。
きみをあきらめたつもりはないからね。
きみが叔父さんと復縁することができたとしても、ボクはあくまできみのことを、ボクの女として扱うつもりだ。
ボクが強く肩を抱き寄せると、佐奈子は心もとなげに頷き、それからもう一度、強く頷きかえしてきた。


しばらく見ない間に、叔父は10歳ほども老け込んでしまったかのようだった。
小学生の息子と娘のめんどうは、長年住み込んでいる婆やが見てくれていたので、身の回りに困ることはなかったようだが、
やはりいつも寄り添っていた控えめで倹(つま)しいつれ合いが傍らにいないのは、寂しい限りだったのだろう。
「きょうお伺いしたのは――佐奈子さんを犯してしまったことをお詫びするのと、
 お二人が元通り復縁することをボクが希望していることをお伝えするためです」
ボクがそういうと、叔父は目をしばたたいてボクを見返し、「それはありがとう」と、いった。
安堵を交えた穏やかな声色だった。
意外にも。
「でもきみは、それで良いのかね?佐奈子に飽きてしまったというのかね?」
むしろボクを気遣うような口ぶりに、しんそこ済まないことをした気持ちになったのだけれど――
ボクが佐奈子をあきらめるつもりがまったくなさそうなのを顔つきで見て取ると、彼は穏やかに口を開いた。
彼の言い草は、さすがのボクにとっても、意外なものだった。

「佐奈子のことはよろこんで、家に迎えよう。きみの好意に感謝する。
 復縁のことも承知した。遠慮なくそうさせていただくよ。
 でも、もしもきみがまだ佐奈子に欲情を感じているのだとしたら、どうか自分自身に正直になりなさい。
 若いうちは女を欲しいと誰でも思うものだし、きみが佐奈子を欲しいと思ったり、
 生真面目な佐奈子を辱め抜いてみたいという気持ちも、わからないわけではない。若気の至りということだからね。
 もちろんわたしも、かなりの迷惑は感じたけれど――」
叔父は穏やかに笑いながら、つづけた。
「でも、そこは叔父甥の仲だから、水に流そうじゃないか。
 そして、きみさえ望むのなら――きみを佐奈子の愛人として、わたしの家庭に迎え入れようと思っている」
え?
ボクと佐奈子は、顔を見合わせた。
ほとぼりが冷めたころにまた佐奈子を誘い、思う存分交わろう――そんな不埒なことを思ってはいたのだけれど。
叔父がまさか、そこまでボクのことを理解してくれているとは、夢にも思わなかった。

「きみに佐奈子を望まれて、本心をいうとわたしは嬉しかった。
 あれは地味な女だが、所帯持ちがよくてしっかり者で、質素だけれど上品なひとなのだ。
 きみのような若い男性が佐奈子を見初めてくれて、わたしはとても誇らしく感じていたのだ。
 だから、きみが佐奈子を汚したと聞いた時、きっと一度では済まないだろうとすぐにわかった。
 そして――きみに佐奈子を独り占めさせてやるために、わざと佐奈子を離婚したのだ。
 佐奈子はわたしの妻という拘束から離れて、ひとりの女としてきみに仕込まれ、きみの色に染まるだろう。
 妻がきみの奴隷になるのに、それは必要なことだと思ったんだ。
 わたしたちが離婚したことは、学校にも知られたし、狭い世間だから、知らないものはいないだろう。
 そして、きみの情婦として無軌道に愛され抜いていることも、誰一人知らないものはいないだろう。
 うちの名誉はすっかり、汚れてしまった。でも、それで良いのだ。
 自分から進んでそう仕向けたのだし、汚されて却ってこざっぱりするということも、あるものなんだね。
 きみはわたしのことを、佐奈子の夫として認めてくれたのだから、
 ぼくはその見返りに、わたしの最愛のひとの貞操を、真心こめてプレゼントしよう。
 女が欲しくなったら、いつでも来なさい。妻も、きみのことをきっと、歓迎するだろう」


「お兄ちゃん、ママと何してるの?」
まだ幼い従弟の陽太は、ふすまを細目にあけて、目だけをこちらに向けてくる。
幼い目線の先には、よそ行きのスーツを着崩れさせ、セットした髪を淫らに波打たせた母親と、その母親を支配している従兄がいた。
「覗いていいよ」
とは、約束していた。
けれどもボクが佐奈子を犯しに行くと、彼は必ずと言っていいほど、母親の情事を覗き見していた。
もちろん彼の父親も、時折様子を窺いに来た。
無軌道な甥の欲求をまえに曝してしまった妻の身を案じて――というのも、むろんあったに違いない。
けれども、それとは別種の、好奇で好色な色合いが、あの謹厳な眼鏡の奥から射し込んでくるのを、
ボクも佐奈子も気づかずにはいられなかった。

彼は妻を奪われ、そして復縁を果たした。
夫婦仲は、以前にも増して濃やかだという。
そしてボクはこの家の堅実な主婦を凌辱する権利を、目いっぱい行使しつづける。
きっとそのことは――思春期の萌芽をみせはじめた従弟にも、色濃く投影されてゆくのだろう。
彼は白い歯をみせて、ボクに約束してくれたのだ。
「ボクがお嫁さんをもらうときには、お兄ちゃんに逢わせてあげる。
 ママと同じくらい、仲良くしてほしいんだ」

夫婦で。。

2022年09月10日(Sat) 02:54:37

妻が吸血鬼に犯された。
公園の片隅に連れ込まれ、勤め帰りのパンストを脱がされて、ひーひー言わされてしまっていた。
29歳のうら若い血潮は、吸血鬼の牙を満足させたけれど――量が足りなかった。
足りない量を満足させるため、彼女はわたしの血を吸うようそそのかした。
勤め帰りの靴下を咬み破かれながら、わたしは全身の血を漁り取られていった。
その次の夜から――わたしは妻の服を着て、吸血鬼の相手をするようになった。
それ以来。
わたしたちは夫婦で、吸血鬼の寵を競っている。

嫁、妹、そして姑

2022年09月10日(Sat) 01:54:26

若い女の生き血を求めて、吸血鬼が訪ねてきた。
妻の華絵がお目当てだった。
呼び出された華絵は、含羞を帯びた表情で、自分の情夫を迎え入れる。
結婚間近のころに、二人ながら襲われて。
先に血を抜かれたわたしの前で、華絵は全身の血を舐め尽くされた挙句、処女を散らしていった。
初めて識った男には、女は特別な感情を抱くという。
華絵と彼との関係が、まさにそうだった。
婚約者を守り切ることのできなかったわたしは、自分の未来の花嫁が吸血鬼に求愛されるのを受け容れて、
ふたりの関係を認めさせられ、そして悦んで認めてしまっていた。
新居に通ってくるこの不埒な年配男のために、新妻の貞操を汚される日常に、わたしは満足を覚え始めてしまっている――

黒衣の肩をそびやかす彼の背後に隠れるようにしているのは、伴われてきた妹の佳代だった。
華絵は佳代と目線を合わせると、ふたりはちょっとだけ顔つきに妍を浮かべた。
嫁入り前の身体を捧げたという点で、ふたりは同じ体験を共有していたけれど、
そのことはふたりを、意図せず競争相手にしてしまっていた。

きょうは母のことを欲しがっているの。私たちは添え物よ。
佳代の言葉に、華絵はちょっとだけ失望の色を泛べた。
「すまないね。奥さんと妹さんを借りるよ」という吸血鬼に、わたしはどういうことなのですかと訊いた。
「奥さんと妹さんには、女ひでりの男たちを慰めてもらおうと思っているよ」
彼は臆面もなくこたえた。

この街に吸血鬼が侵入してきて、すでに3年が経過していた。
人妻たちのほとんどは血を吸われ、彼らの奴隷にされていた。
そうした人妻の夫たちは、妻の情夫を家庭に受け容れることを条件に、好きな女を抱くことができる――
「奥さんにはそうした旦那衆が、3人。妹さんには5人」
ほくそ笑む吸血鬼に、妻は不満げにいった。
「アラ、わたくしのほうが少ないのですか?」
「その分、ひどくご執心でね――」と、彼が告げたのは、わたしの同僚たちの名前だった。
「彼らだったら仕方がない。満足させてやってくれないか」
同僚との不貞行為をあっさりと許したわたしに、妻もまたサバサバと返してくる。
「今夜は戻りませんからね」

情婦ふたりを「供出」してしまった吸血鬼の今夜の目当ては――母の規美香だった。

華絵が新居で情夫と乱れあっているところを偶然目撃してしまった母は、その場で吸血され、犯された。
30年近く連れ添った父以外の男を識らない身体を、手ごめにされてしまったのだ。
まだ若さを秘めた血液に、牙に含まれた毒液を混入されて、
無防備な股間に淫らな粘液を注ぎ込まれてしまうと、
賢夫人とうたわれた母が娼婦に化してしまうのに、半日とかからなかった。
着乱れた服のすき間から素肌を露わにした華絵は、そのいちぶしじゅうを見届けていた。
代わる代わる犯された嫁と姑は、その日のうちに共犯者同士になっていた。

「父がかわいそうだ」と主張するわたしの言を容れた吸血鬼は、その日のうちに父を訪ねて、母との交際を認めさせてしまっていた。
情夫とともに帰宅した妻を晴れやかな顔つきで迎えた父の首すじには、赤黒い咬み痕がふたつ、綺麗に刻印されていた。
「そういうことを望んだのではない」と主張するわたしのことを、吸血鬼は楽しそうな顔つきで見返してくる。
そう――わたしもまた、首すじに咬み痕をふたつ綺麗につけられて、
婚約者の純潔を嬉々として献上してしまっていたのだから。。

女ふたりが、若い女に飢えた男どもを満たすために立ち去ると、
わたしは吸血鬼を連れて実家に向かう。
出迎えた父は、年来の親友を迎えるように目を細めて吸血鬼に会釈をした。
「華絵さんは良いのかね?」
むしろ嫁の嫉妬を気遣う父に、「華絵はほうぼうでモテモテですから」とこたえていた。
父の引き取った書斎の隣室で。
母は奥ゆかしく着こなした和服の襟首を寛(くつろ)げられて、胸もとを露わに引き剝かれていった。
首のつけ根の一角に、赤黒く欲情した唇を這わされて。
きちんと結い上げられた黒髪の生え際を撫でつけられながら、じょじょに姿勢を崩してゆく――
父が隣室で聞き耳を立てていると知りながら、あなた、あなた許して頂戴――と声をあげて、
母は着物の下前を割られていった。

父は知っている。
乱れ抜いた母はやがて、息子であるわたしのことさえ受け容れて、
輪姦の坩堝(るつぼ)に巻き込まれ、ひときわ声をあげてしまうのを――

通勤用の靴下に魅せられた吸血鬼

2022年09月10日(Sat) 01:09:53

はじめに
煮詰まりの第三弾です。^^;


門春貴美也は、うつ伏せに組み敷かれていた。
相手の男は貴美也のスラックスを引き上げて、ふくらはぎに咬みついている。
昨日息子を襲っていた吸血鬼だった。
この街では吸血鬼が出没するとはきいていたが――まさか自分の身に降りかかる災難だとは、うかつにも思ってもみないでいた。
夕べ吸血鬼は、半ズボン姿の息子を抑えつけて、ハイソックスのうえからふくらはぎに咬みついて、血を啜り取っていた。
相手が自分の血を吸い終えると息子は人目を避けるように足早に立ち去ったが、
貴美也はそんな息子に声をかけることができなかった。
あのときの息子の、ウットリとした表情が忘れられなかった。

勤め帰りの貴美也は、丈が長めの靴下を履いていた。
黒地に赤のストライプの入った、凝ったデザインだったが、
吸血鬼はきのう息子にしたのと同じように、
貴美也の履いている靴下を咬み破りながら吸血していた。

ゴク、ゴク、ゴク・・・
男は喉を鳴らして、貴美也の血を旨そうに飲み味わっている。
同時に、貴美也の靴下を破るのも愉しんでいるらしく、
さっきからあちこちと角度を変えてくり返し咬みついては、
赤のストライブ柄の靴下を、持ち主の血で濡らしてゆく。

「あんたは、靴下が好きなのか?」
貴美也は思わず、訊いていた。
男が無言で強くうなずくのが、気配でわかった。
「息子のときも――ハイソックスを咬み破っていたな?」
「すまなかった」
男ははじめて、口をひらいた。
「こういうことが好きなものでね・・・」
ひっそりとそうつぶやき返しながらもう一度、男は貴美也の脚を咬んだ。
血がジュッと撥ねて、またも靴下を濡らした。
「どうしてこんなひどいことをするんだ!?」
貴美也は訊いた。
このままでは死んでしまう――とは、なぜか思わなかった。
相手の男は貴美也の血を愉しんではいたが、殺意は感じなかった。
「俺は人間の血が要りようなのだ。気の済むまで飲ませてくれたら、ありがとうを言ってお別れしたい」
勝手な言い草だ――貴美也は毒づいた。
「ごもっともだ。弁解の余地はない」
男は貴美也の靴下を舐めた。舌触りを愉しんでいるかのような、しつような舐めかただった。
――生命のあるうちに放してもらえるのなら、お礼に別の靴下を履いてきてやろうか?と、ふと思った。
むろんそんな歪んだ想像は、すぐに打ち消したけれど――
男はなおも、靴下を舐めている。
靴下に着いた血を舐め取って、舌触りを愉しみながら味わっているらしい。
いじましいことをするやつだ。 貴美也はおもった。
けれどもどうやらそれは、貴美也の生命を危ぶむ気持ちからそうしているらしい――と、ふと察した。
男は純粋に、貴美也の血を飲み味わい、履いている靴下を舌で愉しみたがっているだけのようだった。
しばらくの間、吸うものと吸われるものとは互いに葛藤しながら、
それでも吸わせることを、吸うことを、無言の押し問答のようにつづけていた。

せめて、息子のことを襲うのはもうやめてほしい、と、貴美也は懇願した。
――お気持ちはごもっともだ。
吸血鬼の声色には、同情がこもっていた。
どうやらそれは、本音らしい。
わしも人間だったころ、息子の血をほかのやつに吸われたからな。
吸血鬼は、ひっそりといった。
そうなのか?
そうなんだ。
息子さんは・・・?
親子ながら、吸血鬼となっている。
「俺も吸血鬼にするつもりなのか?」貴美也は訊いた。
「わしにそこまでする力はない。だが、あんたや息子さんを死なすつもりもない。
 ただ、くり返し恵んでいただきたいだけだ」
男はまたも、貴美也の靴下を舐めた。
しつようないたぶりに弛みを帯びたナイロン生地に、濡れた生温かい舌が愛でるようになすりつけられる。

迷惑だ――貴美也はいった。
男はかまわず貴美也のふくらはぎを吸い、なおも靴下に唾液をなすりつけた。
良い趣味だな。と、吸血鬼はいった。
なにが・・・?と訝しむ貴美也に、
いまどき珍しい、お洒落なタイプだと、男はほめた。
靴下の柄をほめているのだと、やっとわかった。
からかうな――貴美也はやり返した。
そうむきになりなさんな。わしは本気で、ほめている。
這いまわる舌が、薄地の紳士用靴下を、みるみるうちに皺くちゃに弛ませ、ずり降ろしてゆく。

男が貴美也の履いている靴下を気に入っているのは、どうやら本音らしい。
舐めかたにも、咬み破るときの牙の使い方にも、靴下を愉しんでいる気配をありありと感じた。
おぞましい――と、貴美也はおもった。
しかし――たしかにおぞましくはあるのだが・・・と貴美也は反すうした。
反すうの先にある闇の深さを初めて自覚して、意識がくらくらとなった。
失血のせいで、理性が変調をきたしている――貴美也はそう思い込もうとした。

もう少しだけ、愉しませてもらいたい。
好きにしろ――貴美也は自棄になったようにつぶやき返した。
ご厚意に感謝する。
男はにこりともせずに、こたえた。
厚意じゃない――決して厚意などではない。
貴美也はおもった。あくまでもこれは、強いられたことなのだ。
自分の履いている靴下に目の色を変えて、男が物欲しげに唇を、舌をふるいつけてくるのを、
貴美也はだまって耐えた。
丈の長めの靴下は、舌のいたぶりに耐えるように、しばらくの間はピンと張りつめていたが、
やがて淫らを帯びた舌なめずりに蕩かされるようにして弛んでずり落ちて、
吸血鬼の舌が分泌するよだれと持ち主である貴美也の血潮とで、濡れそぼっていった。

もう気が済んだだろう――?
貧血にくらつく頭を抱えながら貴美也が苛立たしげに囁くと、吸血鬼はやっと彼の足許から顔をあげた。
初めて目を合わせたその男は、蒼白な頬をゆるめて、ゆるやかにほほ笑んだ。
険しい顔だちには不似合いな目つきの穏やかさと、口許から滴る鮮血とが、ひどく不似合いにみえた。
「この靴下を譲ってほしい」
「好きにしろ」
投げやりにこたえた貴美也の足許から、片方、もう片方と、靴下が抜き取られていった。
吸血鬼はわざわざ、履き替えを用意してくれていた。
落ち着いたらこれを履いて、家に帰るとよい。
そう言い残すと、吸血鬼は煙のように夜の闇に溶けた――

貴美也の手に残された履き替えの靴下は、ひどく生地が薄かった。
まるで女の穿く黒のストッキングのようだ――と、彼はおもった。


終わりを告げようとする夏の夕風が、一抹の涼しさを過らせて吹き抜けた。
オフィスから出てきた貴美也を待ちかねたように、男がぬっと立ちはだかり、その行く手を阻んだ。
また来たのか――貴美也は内心、あきれている。

あれ以来。
男は三日にあげず貴美也の勤め帰りを襲って、血を啜るようになった。
息子に手を出すのをやめてくれるのなら――と、せがまれる吸血に渋々応じるようになって、
きょうでもうなん度めになるだろう?

幸い貴美也は自分の服の始末は自分ですることにしていたので、
通勤用の靴下の減り具合に、妻の美津代は気づかずにいた。
器用な男だった。
貴美也が抵抗さえしなければ、ワイシャツの襟首を汚すことなしに、首すじからの吸血をし遂げることができるのだった。
夜道で行き会うとふたりは数秒だけ目を合わせ、
貴美也がもう逃れられないと観念して目を反らすと、プレイが始まった。
男は貴美也の背後に回り込み、首すじを咬んで、ワイシャツの襟首を濡らすことなく吸血を遂げる。
手近なベンチに貴美也を腰かけさせると、スラックスのすそを引き上げて、
貴美也の履いている通勤用の靴下を、舌をふるって愉しむのだった。

きょうの貴美也のくるぶしを染めていたのは、さいしょの夜に逢った時手渡された、ストッキング地の長靴下だった。
脚に通すのが恥ずかしいほど薄い靴下は、やがて貴美也を魅了した。
いままで気に入りだったストライプ地の靴下と半々に履くほど愛用するようになっていた。
じんわりとした光沢を帯びたストッキング地の靴下は、貴美也の足許を、蒼白くなまめかしく染める。
濃紺のストッキングなど、女性でもなかなか脚に通さないだろう。
しいて言えば、夜の街の娼婦たちが、派手すぎるロングスカートの裾から、
抜身の刀を抜くように、青黒く装った脚線美をぬるりとさらけ出す――そんなときくらいしか、頭に浮かばなかった。
男に咬まれるのを予期しながら濃紺の靴下を脚に通すたびに、
貴美也は自分がまるで女のように、彼のために尽くし始めているのを自覚した。

その夜貴美也が穿いていたのは、黒の薄地の靴下だった。
男はずっと、貴美也の血を求めて、事務所の間近を徘徊していたらしい。
同僚の視線を気にしながらも、貴美也は手近な公園の手近なベンチへと、すすんで腰を下ろしていった。

「どうやら、息子の血はあきらめてくれないらしいな」
貴美也はいった。
男はこたえずに、引き上げられたスラックスのすそからのぞく薄黒く染まった貴美也の脛に、執着しつづけている。
靴下もろとも脚を辱める――そんな“前戯”ともいうべき行為を、男はひどく好んでいた。
貴美也はお洒落な靴下を好んでいたが、男は貴美也の履く靴下をいたぶることを好んでいた。
劣情にまみれた舌をふるいつけられながらも、プライドだけは失うまい――そんなふうに感じていた。
その半面で。
貴美也の履いてくる靴下の柄を趣味がよいと褒めながら舌をふるいつけてくる男のために、
せっかくだから愉しませてやれ。
そんな気持ちもわき始めていた。

薄地の靴下を咬み剥がれてゆきながら、貴美也はふと思う。
きっとこいつは、女好きだ。
そして貴美也のストライプ柄の靴下をよだれに濡らしながら咬み破ってゆくときと同じくらい愉し気に、
きっと近々、学校教師をしている貴美也の妻にも挑みかかっていって、
タイトスカートのすそから伸びたふくらはぎに取りついて、
あの肌色の薄地のストッキングを咬み破ってしまうのだろう――と、想像した。
それでも良い。
失血のあまり意識が揺らぐのを心地よく感じながら、貴美也はおもった。

そう感じ始めてから、一週間と経たぬうちに。
すっかり血を抜かれた貴美也の傍らで。
あわてふためくスーツ姿の足許ににじり寄った吸血鬼は、
肌色のストッキングに包まれたふくらはぎの一角に唇を吸いつけて、
淑やかな装いの主の悲鳴を、くすぐったげに受け流していった。
息子は今ごろ子供部屋で、真っ白なハイソックスに血をあやして、気絶しているに違いない。
いや、案外と――
意識を薄らげてゆく父親の目を盗んで、自分の母の受難を目にすることで、思春期に目ざめ始めようとしているのかもしれなかった。

白いハイソックスの同級生

2022年09月10日(Sat) 00:58:09

はじめに
これも、煮詰まってしまったお話です。^^;
やはり、そのまま捨ててしまうのももったいないので、あっぷしてみます。
おひまなときにどうぞ。^^


京子さんが真っ白なハイソックスに包まれた脛を大またに、こちらに向かって駈けてくる。
背後からは吸血鬼が迫っていた。
夕べ、ボクの血を吸い取った男だった。
一夜にして身体じゅうの血を舐め尽くされてしまったボクは半吸血鬼となって、いまは隠れて徘徊する身。
でも、京子はボクのそんな境遇を、まだ知らなかった――

セーラー服の両肩に、吸血鬼の掌が伸び、やつの体重が等分にかかった。
ボクの時と同じだった。
そのあとすぐに引き倒されて首すじを咬まれ、あとはされたい放題にされてしまった――
京子さんもきっと、同じ目に遭ってしまうのだ。

なのになぜか、ボクはドキドキと、乏しくなった血液を身体じゅうに駆け巡らせて――昂奮をおぼえている。
恥ずべき昂奮だった。
ボクの血を吸い尽くした吸血鬼は、ボクを家まで案内させて、迎えに出てきた母さんのことまで、咬んでしまった。
半ズボンの下に履いていたハイソックスをぞんぶんにいたぶったその男は、
それだけでは飽き足らずに、母さんの穿いているパンティ・ストッキングまでも愉しみたいとせがんだのだ。

肌色のパンストを咬み破られながら吸血される母さんの姿に、ボクはやはり昂奮を覚えて、
穿いていた半ズボンのなか、勢いよく射精してしまっていた。
やつはきっと、京子さんの履いている真っ白なハイソックスにも欲情して、おなじ狼藉をはたらく魂胆に違いない。
なのにボクはもう、自分の彼女がセーラー服姿を泥まみれにされながら辱められてゆく光景を想像して、
すでに半ズボンのなかが窮屈になるくらい、怒張をエスカレートさせてしまっている。
恥ずべき昂奮だ。忌むべき昂ぶりだ――
ボクはそう呟きながらも、いま現実に校庭の泥のうえに引き倒されてゆく京子さんの姿に、目をくぎ付けにしてしまっていた。

「やめてっ!ああッ!」
魂ぎるような悲鳴があがったが、周囲にはだれもいなかった。
男は構わず、京子さんを抱き寄せて、首すじを咬んだ。
強烈な一撃だった。
セーラー服の肩先に赤いしずくが撥ねて、真っ白な半そでと、紺色の襟に走る白のラインをまだらにした。
やつは京子さんのショートカットの黒髪を慣れた手つきで掻きのけると、
飢えた唇を健康そうに陽灼けした首すじにぴったりと吸いつける。

ちゅうっ。

折り目正しく着こなされたセーラー服姿から、十四歳の処女の血潮が啜り取られる――
ここまで音が、響いてきた。それがぼくの鼓膜を、淫らにくすぐった。

ちゅちゅちゅっ・・・

そそられる音だった。
ボクの彼女が生命の源泉をむしり取られ、14歳の健康な血液を奪い取られてゆく光景なのに――
空っぽになった血管をただズキズキと昂らせ、胸を妖しくわななかせてしまっていた。
美味しそうな血――
そんな想いが激しく去来して、ボクはわれ知らず起ちあがっていた。

植え込みから身を起して憑かれたように突き進んできたボクを見上げると、吸血鬼はいった。
「お前の彼女の血は、旨い」と。
「そう言ってもらえて、嬉しいよ」
目を丸くしている京子さんをまえに、ボクは嬉し気に、そう答えてしまっている。
うふふふふふっ。
吸血鬼は満足そうに目を細めると、ふたたび京子さんの首すじにつけた傷口を吸った。
「ああッ――」
彼女は白目を剥いて、仰け反った。

ムズムズと疼く唇をこらえかねたように開くと、ボクは自分でも予想しない言葉を口走っていた。
「ボクにも・・・分けて・・・」
「良いだろう」
吸血鬼は気前よく、京子さんの身体をボクのほうへともたれかけさせた。
ショートの黒髪がユサッと揺れて、汗ばんだ体温がずっしりとした手ごたえといっしょになだれ込んできた。
首すじには、むざんな咬み痕がふたつ、並んでつけられていた。
恋人に対するむざんな仕打ちを呪うゆとりもないままに、
血がたらたらと流れ出る咬み痕に、わななく唇を圧しつけていった――
恥ずべき渇きが、ボクを支配してしまっていた。

渇いた唇を、ねっとりとした血潮が生温かく浸す。
黒い衝動のままに、ボクは京子さんの血を、喉を鳴らして飲みつづけた。

「タカシくん・・・?タカシ・・・!?」
京子さんはかすかに身じろぎをして、顔をあげた。
ほとんど同時にボクも、吸いつけていた首すじから顔をあげた。
「えっ・・・?えっ・・・?タカシくんまで、あたしの血を吸ってるのっ!?」
我にかえった京子さんは声を尖らせて、それから腕を突っ張って、傷口を吸おうとするボクを拒もうとした。
ボクは彼女の腕を取り除けて、なおも血を吸い、また吸った。
恋人同士のせめぎ合いを、やつはじいっと見ているだけで、どちらにも加勢しようとはしなかった。

立ち去ってゆく吸血鬼の背中を横目に、ボクは京子さんのことを強く抱きすくめて、
生前には果たせなかった接吻を、淫らに遂げてしまっている。
泥濘にまみれた制服姿のうえにのしかかって、真っ白なハイソックスのふくらはぎに唇を吸いつけて、
白のハイソックスが真っ赤に染まるまで、京子の生き血に酔いしれてしまっていた。
初恋の女を獲物にするチャンスを与えてくれた吸血鬼に、心の底から感謝をしながら、
生え初めた牙を恋人の血潮に染めて、生気にあふれたピンク色の素肌を、淫らに染め変えていったのだった。


一週間後。
ボクは吸血鬼の邸へと、京子さんを伴っていた。
並んで歩く制服姿のスカートの下。
きょうも真っ白なハイソックスのふくらはぎが、大またに歩みを進めてゆく。
先週母さんのパンティ・ストッキングを咬み破った、あの恥知らずな唇が。
京子さんのハイソックスを愉しみ尽くしてしまうありさまを想像して、ボクはズボンの中身を張りつめさせてしまっている。

これから訪問する年配の男が、自分の血液を得たいと願っていると知りながら。
「ぜひ、お連れして♪」と、彼女は手を合わせ、つま先立ちして、願っていた。
淡い嫉妬がボクの胸を刺し、いびつな焔(ほむら)をかきたてるけれど。
ボクの血液を存分に吸い取ってその身に脈打たせている彼のため、
たいせつな恋人の血を、もう一度愉しませてあげたくて、
ボクは京子さんを伴って、吸血鬼の邸を訪問する。

「どうぞ、お好きになさってくださいね」
ためらいもなく揃えて差し伸ばされたふくらはぎに、
やつは目の色を変えてむしゃぶりついていったけれど。
ボクは自分の生き血を吸い尽くされたときと同じように惜しげもなく、京子さんの脚を咬ませていった。
キリッと装われた白のハイソックスの足許に、恥知らずなよだれをなすりつけられて、
整然と流れる太目のリブをいびつによじれさせてゆきながら、ずり降ろされてゆくのを見せつけられて、
嫉妬と妖しい昂ぶりとで、干からびた血管をゾクゾクと慄(ふる)わせていた。

捧げ抜いた血潮の量が度を越して、気絶してしまった少女が、静かに瞼を閉ざした下で、
首すじにつけた傷口に舌をふるいつけてゆく吸血鬼が、
穢れを知らない彼女の血潮を淫らに変えてしまうのは、きっと時間の問題――
けれどもきっと、ボクは、彼の誘惑を妨げようとはしないだろう。
むしろ。
真っ白なハイソックスの両脚が放恣に開かれた、濃紺のプリーツスカートの奥、
未来の花嫁の純潔が汚辱にまみれてしまうのを、
目を見張って見届けてしまうだろう。

妻を喪服にするために。

2022年09月10日(Sat) 00:27:46

はじめに
だらだらと長く、煮詰まってしまいました。。
そのまま捨ててしまうのももったいないので、あっぷしてみます。
おひまなときにどうぞ。^^


夜風が虚しく、ひゅうひゅうと、吹いていた。
寒々とした気分を抱えて、空っぽもまっぽに待った身体を抱えて、わたしは夜道を歩いていた。
総身をめぐる血液を引き抜かれたあとの、虚しいような、小気味良いような記憶が、ひたひたと残っていた。
すこし前まで真人間だった記憶は、しっかり残っているけれど、。
そんなことをされては困る・・・と、たしかに訴えたつもりだったけれど。
首すじを咬まれ、暖かい血液を吸い出されてゆくうちに、気分がグッと昂ってきて。
さいごのさいごには、もっと吸ってくれ・・・全部吸い取ってくれ・・・と、懇願していた記憶も、ありありと残っている。

きょうがどういう日かも、今夜がどういう夜かも、しっかりと認識していた。
そう――今夜は自分の、お通夜だった。
勤め帰りの夜道に、吸血鬼に出くわして。
生き血を一滴余さず吸い取られたあとの、あと始末だった。

妻は今ごろ涙にくれて、自分の棺に寄り添ってくれているだろう。
けれどもその棺の中はじつは空っぽで、
わたしはこうして、渇いた喉を抱えながら、夜道を徘徊している・・・
今となっては、自分の生き血を残らず吸い取ったさえない年配男の気持ちが、わかるまでになっている。
きっとあの男は――わたしの生き血をそれは美味しく、吸い取っていったはずだから。

生き返ったようだな。
傍らで、話しかける声がした。
姿はみえなかったが、声の主がだれなのかは、すぐにわかった。
わたしの生き血を一滴余さず吸い取った、この街に徘徊する吸血鬼。
血のない身体と化したわたしは、数時間前の真人間の間隔よりも、よりいっそう彼の感覚に近いものをもっていた。
三十代の、まだ若さの宿った生き血を、たんねんに美味しそうに吸い取ってくれたことを、
今では感謝の気持ちすら抱き始めていた。
生き返ったようですね・・・
わたしは他人ごとのように、男の言い草をくり返していた。

どうだね?気分は。
男はいった。
悪くはないです。いや、普通かな・・・
わたしはこたえた。
そんなものなのだよ。
男は囁いた。
何故かその言葉に、ひどく納得してしまっていた。
そう。
普通なのだ。
生き血を一滴余さず吸い取られてしまったのに。
抜け殻どうぜんになったはずのこの身を抱えて、ふつうに夜道を歩いている。
わたしの生き血を吸い取った彼にしたって、数年前にはわたしと同じように、
その身に宿した生き血を、だれかに吸い取られていったのだろう。

むしろ――わたしの血液が、男を悦ばせたことを。
わたしは嬉しく感じ、誇りに思い始めていた。
なぜならわたしは、吸血鬼になりかけていて。
そのために、その身にじゅうぶんな血液を通わせていたころとはかけ離れて、
「彼ら」のほうへと、よりシンパシーを感じるようになってしまっていたから。

旨かったからね、全部いただいてしまったのだよ。
ヌケヌケと語る彼を相手に、
お口に合って何よりでした。
美味しく味わってもらえたなら、全部飲まれてしまっても、納得できますよ――
などと。
躊躇なく応えてしまっていた。

もう少しだけ、咬ませてくれないか。
もう・・・血は残ってないのですよね?
いや、そんなことはない。いつでも吸えるよう、少しだけ残しておいた。
それは・・・どうも・・・
吸われる歓びを感じる権利を、まだ有していることに。
ほのかに密やかな満足を感じていた。

立ち止まるわたしの両肩を、男は支えるように抱きすくめて、
あのときと同じように、もう一度わたしの首すじを咬んだ。
痛痒いような。くすぐったいような。
傷口を通して血液を抜かれる、あの無重力状態が。
ふたたびわたしの身によみがえった。

あのときのように。
すぅっ・・・と気が遠くなって、ふらふらとその場にくず折れると。
男はわたしのスラックスをたくし上げ、丈長な靴下をほんの少し引き伸ばして、
わざわざ靴下のうえから、咬みついてきた。
靴下を咬み破られる――
それはなんとも、屈辱的な仕打ちだったけれど。
わたしはむしろ嬉々として、わたしの生命を奪ったその男に、通勤用の靴下を咬み破らせていった。

ほんとはね。
わしの狙いは、あんたじゃなくて――奥さんのほうだったんだ。
わたしの血など取るに足らない――と本音を言われたような気がしたけれど。
それでもわが身をめぐる血潮をすべて捧げたことへの満足感は、損なわれなかった。

今夜――
妻は黒一色の、洋装のブラックフォーマルを装って、
スカートのすそからは、薄墨色の靴下に染まった脚を、弔問客のまえにさらけ出している。
ふしぎなものだね。
男はいった。
あれほどそそる眺めなのに、だれもあんたの奥さんにそそられたり、襲ったりしようとはしないのだから――
わしはあんたの奥さんに、黒のストッキングを穿かせて、
泣き叫ぶ喪服姿を抑えつけて、喪服のすき間から、あの白い素肌に咬みついて。
その身にめぐる麗しい生き血を、一滴余さず、吸い取ってやるつもりなんだ。
あんたはあんたの奥さんに対してそんな不埒なことをもくろんでいるわしに、力を与えるために。
かけがえのない生き血を、一滴余さず吸い取られたというわけだ。
邪まな想いにすぎないことは、じゅうじゅう承知している。
けれども、ここまでしてまでわしは、
奥さんに黒のストッキングを穿いてもらって、咬み破り辱めながら生き血を啜りたいという欲求を、こらえ切れなかったのだ。
あんたはわしに、わしがあんたの奥さんの血を吸い取ることに――同意してくれるだろうね?

どうしてわたしはその時に、
エエよろこんで・・・
などと言い添えて、
ためらいもなく頷いたりなどしてしまったのだろう?

けれどもわたしは、なんの抵抗もなく、不審感もなく、
ずいぶんと念の入ったことですね・・・などと、苦笑しつつも。
わたしの血液を飲み尽くしてしまったその男の恥知らずな喉を、なおも満足させるため。
最愛の妻の生き血を無償で提供することを、よろこんで約束してしまっていたのだった。

家内の生き血――わたしのとき以上に、美味しく味わっていただけるのですね?
わたしの問いに、彼がくすぐったそうな笑いで応えるのを。
すっかり吸血鬼の感覚になじんでしまったわたしは、ひどく好もしく感じてしまっている。


もはや真夜中近く。
弔問客はすべて、引き払ってしまっていた。
ふつうなら、夜通しの蠟燭を守るために、ひとりやふたり、代わりがいてもおかしくないのに。
だれもかれもが、引き払っていた。
その夜に訪問客がいて、
妻は、彼女の夫の生命を吸い取った男を相手に、
その喉の渇きを飽かしめるために、
われとわが身をめぐる血潮を捧げ抜いてしまうのだと――だれもがわかっていたのだから。
きっとあの男のために、みんな気をきかせたのだろう。
あの方のお愉しみを、じゃましてはいけない――
だれもがそう言い交わして、喪家をあとにしたのだった。
そう。
男の弔問客の半数は、自分の妻や娘の生き血を、彼のために提供してしまっていたのだし。
女の弔問客の全員は、自身の血液を吸い取られ、彼のための娼婦になり下がっていたのだから。

夫婦で赴任したこの街は、
古風なたたずまいの裏側に、ひどく変わった風習を押し隠している。
喉をからからに渇かせた吸血鬼のために、
この街の人たちは、自分自身や家族の血液を、無償で提供している。
ふつうは、生命まで断たれるほどには吸い取られないはずが。
わたしが一滴余さず血液を吸い取られてしまったのは、いったいどうしたことなのだろう?
その問いに、男はすぐにこたえてくれた。
旨かったのさ。
男のこたえは、単純明快だった。
わたしはなぜか、素直に納得してしまっていて。
――それは嬉しいですね。
とっさにそう、こたえてしまっていた。

そういえば。
路上に抑えつけられてガブリと咬まれたそのときに。
ワイシャツに血を撥ねかせてしまいながらわたしは、男の貪欲さに辟易としていた。
チュウチュウ、キュウキュウと、あからさまな音をあげながら。
男はわたしの血を、さも旨そうに、啖(くら)い取っていった。
生命の危険をひしひしと感じながら。
男がわたしの首すじに咬みつき、スラックスを引き上げて靴下の上からふくらはぎに咬みついてくるのを、
拒みもせずに、むしろすすんで、靴下を咬み破らせてしまって、
三十代の働き盛りの血液で、やつの喉を潤すことに熱中しきってしまっていた。


喪家となったわたしの家は、
棺の置かれた部屋だけに灯りが点されていて、
妻は身体の線がぴったりと透ける漆黒のワンピースに身を包んでいて、
わたしの死を悲しんでいた。

妻の総身をめぐる血潮は――
彼に吸い取られるために、脈打っていた。

ごめんくださいね。
男はぞんざいに、妻に声をかけると、
妻はわたしの姿が目に入らないのか――そこでわたしは、自分が幽霊なのだと自覚した――、
目を見張って、自分の夫の仇敵を見つめていた。
相手の素性も、自分の夫の体内の血液を一滴余さず楽しんだことも、よくわかっている顔つきだった。

あの・・・あの・・・
妻は口ごもりながらも、夜更けの弔問客に応対しようとした。
けれども男の意図した応対は、彼女の予想よりもずっと、淫靡で露骨なものだった。
わかっていると思うが――
男はいった。
わしの身体のなかにだんなの生き血がめぐっているうちに、あんたの生き血も搾り取ろうというわけさ。
妻は立ちすくみ、蒼白になった。

そんな・・・なんてことを仰るんですか・・・
妻は怒りと恐怖で蒼白になって、立ちすくんでいた。
殺すつもりなどないよ。
男はいった。
ただ、あんたの熟れた総身にめぐる血潮を、舐め尽くしてしまいたいだけなのさ・・・
露骨な舌なめずりは、淑やかに装われた黒のストッキングの足許へと、向けられていた――

きゃあっ。
妻はわたしの棺のまえ、棒立ちに立ちすくんで、
早くも首すじを、咬まれていた。
わたしのときと、まったく同じ経緯だった。
漆黒の喪服のブラウスに、赤い血潮を撥ねかせながら。
ゴクゴクと喉を鳴らせて飲み味わわれていった――

夫の生命をいともむぞうさに断った男に、
有無を言わさず、つかまえられて。
夫の首すじを咬んだ牙に、潤いを帯びた熟れた素肌を食い破られて、
わたしの時と同じように、
チュウチュウ、キュウキュウとあからさまな音を立てながら、
妻の生き血は、貪られていった――

倒れてしまうと取り返しのつかないことになる。
それを察していたのだろう。
黒のストッキングの脚を、精いっぱい踏ん張りながら。
妻は無作法な吸血に、耐えつづける――
薄地のナイロンに艶めかしく透けるピンク色の血色が、余さず舐め尽くされてしまう危機に瀕していた。


飢えているんだね?
わたしはいった。心と心で、妻の耳には届かない会話が成り立っていた。
ああ、飢えている。
男はこたえた。
そう――きっと。
あの淫らな喉の渇きを潤すのには、わたしの血だけでは、足りなかったのだろう。
家内の生き血は、美味しいのかね?
わたしはいった。
旨い・・・しんそこ旨い・・・
男はこたえた。
それは良かった――
わたしは思わず、呟いていた。
どうせ飲み味わわれてしまうのなら、美味しい――そういってもらったほうが、はるかに嬉しい気がしていた。


はぁ、はぁ・・・
ふぅ、ふぅ・・・

失血のあまり、妻は肩で息をしていた。
華奢な身体を包む喪服を、めいっぱい仰け反らせて。
自分の夫の仇敵を相手に、
喉をカラカラにした吸血鬼を相手に、
それはけんめいに、かいがいしく。
好むと好まざるとにかかわらず。
妻は我とわが血潮を、無償で提供しつづけていった。
それがわたしの目にはなぜか、妻に対する同情を忘れさせて、
むしろ――自分の血を吸い取った男のために、
旨そうだな。
よかったな。
人妻の生き血にありつけて、ほんとうに良かった。
家内の血が口に合って、ほんとうに良かった。
忌むべきはずのそんな想いを、ごくしぜんに、ふくらませていた。

ひたすら眉を寄せ、迷惑そうに顔をしかめながら、
自らの血液を、無償で提供しつづける妻のことを、
がんばれ。がんばれ。
応援してしまっている自分がいた。
妻はけなげに振舞って。
夫の生命を奪った男の喉の渇きを飽かしめるために、
三十代の人妻の血潮を、くまなく舐め尽くされていった。

男は、妻の首すじだけでは、満足しなかった。
スカートのすそから覗く、黒のストッキングに染まったふくらはぎに、もの欲しげな視線を這わせたとき。
妻は男の欲求をすぐに察して、ひどく戸惑い、うろたえながら。
いけません、よしてください。恥ずかしいです。お願いですからと、懇願した。
もとより――男が妻を放すはずはない。
あわてふためく妻を、畳のうえに抑えつけて。
薄墨色に染まったふくらはぎに、欲情に滾る唇を吸いつけて。
ヌメヌメ、ネチネチと、いたぶっていった。

わたしを弔うために装った、黒のストッキングを、
ふしだらに波打たせ、皺くちゃにされながら。
妻は顔をしかめて、男の非礼を咎めつづけた。
むろん、男は妻の叱声に、いっそうそそられたかのように。
清楚な黒のストッキングの足許に欲情しながら、
よだれを帯びた唇と、劣情をみなぎらせた舌をなすりつけて、
わたしの靴下を濡らした時よりも、はるかにしつように、
ぬらぬら、ネトネトと、だらしのないよだれで、薄地のナイロン生地を、濡らしていった。

やがて、こらえかねたように――
ずぶり・・・。
男の牙は、妻のふくらはぎの、いちばん肉づきのよいあたりに突き立って。
黒のストッキングを咬み破りながら、
渇いた喉を、不埒な欲求を満たすために、
キュウキュウ、チュウチュウと、あからさまな音を洩らして、
妻の生き血を、貪婪な食欲もあらわに、啜り取っていった――

夜明けが近くなったころ。
失血のあまり肩を弾ませていた妻は、
あぁ・・・と、絶望のうめきを洩らす。
そう。
有夫の婦人が吸血鬼に襲われると。
ほぼ例外なく、凌辱を受けてしまうということを。
妻は身をもって、思い知らされてしまうのだ。

男がわたしの生命を奪ったのは、
妻に喪服を着せて、黒のストッキングを穿かせるため――
喪服姿の三十代の未亡人を、辱め抜いて征服するため――
たったそれだけのために、わたしは体内の血液を一滴余さず吸い取られてしまった。

わたしが襲われた夜。
総身をめぐる血潮を、ほとんど舐め尽くされかけたとき。
わたしは彼の、妻に対するけしからぬ意図を告白されて、
それでももはや、自分の生命を手中にされてしまったわたしは、
きみの奥さんを凌辱したい。
わたしの血潮で牙を染めながらそう言い募る男をまえに、
わたしは一も二もなく、賛同してしまっていた。
わたしの血がお気に召したようなら、嬉しいので全部吸い取ってくださいと、
懇願の言葉さえ、口走ってしまっていた。
お前は自分の妻を、わしに犯されたいのだな?
念を押すような囁きを、毒液のように鼓膜に吹き込まれながら、
わたしは強く、頷き返してしまっていた――
はい、家内のことを、あなたに辱めていただきたいと、本気でおもっています・・・


三十代の人妻の生き血で、
引き抜かれた牙を染めながら。
妻はいつしか、吸血される行為に、惑乱していた。

わたくしを欲しくって、主人を殺めたとおっしゃるのですね。
とても嬉しいわ。主人を殺してくれて。
そこまでして、わたくしを欲しがるなんて。
女冥利に尽きることですわ。
死ぬほど辱められたいわ。
わたくし、貴男の奴隷になるわ。
主人の遺影のまえで、主人のことを裏切り抜いてしまいたいの・・・


喪服のスカートの奥を、イヤらしくまさぐられながら。
妻はもう、淫らな昂ぶりを隠そうとはしていない。
咬み破られたパンストを、唯々諾々とずり降ろされて。
薄いショーツ一枚で隔てながらも、淫らな舌に股間を舐め尽くされて。
しまいにはそのショーツさえ、自分の手で引き裂いて。
妻はゆっくりと、脚を開いてゆく――
わたしのことを弔う気がまだあるかのように、
片脚だけ通した黒のストッキングは、ふしだらな皴を波打たせながら、
ひざ小僧から脛へ、脛から踝へと、じょじょに剥ぎ降ろされてゆく。
赤黒く逆立った一物が、
漆黒のスカートの奥に、もの欲しげに侵入していって。
咬まれたときと同じくらい、淫らに眉を翳らせながら。
荒々しい上下動に、腰の動きを合わせていった。
わたし以外の精液を、初めてその身に受け容れて。
淑やかな喪服姿を、好色な腕に撫でつけられて、堕とされてゆく。

慎ましやかで、淑やかだった妻。
そんな彼女は、もういない。
いまは、わたしの前と自覚しながら、身をおののかせつつ、辱めを悦ぶ女。
守り抜いてきた貞操を、惜しげもなく泥に塗(まみ)れさせ、
わたしの名誉を、ためらいもなく貶めてゆく。
それを見守るわたし自身も。
貞淑な妻が、娼婦に変えられてゆく有様を。
嬉々として、見守りつづけている――


あら、あなたいらしたの?
妻はふと我にかえって、わたしを見やる。
好色な腕の中に、囲われるように抱きすくめられた格好のまま。
わたしを裏切る行為に、腰の動きをひとつにしながら、
淫らな吐息に、息弾ませながら、
うわべだだとお互いにわかり抜いている、見え透いた謝罪を、くり返す。
ごめんなさい。
ごめんなさい。
裏切っちゃって、ごめんなさい。
よりにもよって、あなたを弔うお通夜の席で、喪服を着崩れさせてしまって。
あなたの生命を奪った男の、わたくし愛人にしてもらえるなんて。
思いもよらなかったけれど――
いまはもう、この人の名字で呼ばれてみたい気分なの。

わたしはわれ知らず、唇をわななかせながら。
忌むべき祝福を、口にしてしまっている。
きみがぼくの親友に心を許してくれて、嬉しく思っている。
彼には、若い女の生き血にありつくことができたのが、自分のことのように嬉しいんだ。
最愛の妻の生き血が口に合うということが、半吸血鬼となったいまのわたしにとって、どれほど嬉しく誇らしいか、とても表現しきれない。
きみを奪(と)られてしまうのは、もちろん悔しいことだけれど――
当家の名誉を泥まみれにしてしまうことも、もちろん残念には違いないのだけれど――
それでもきみが彼に愛され抜いてしまうことが、ぼくにはとても、誇らしいんだ――


数か月が経った。
わたしは奇跡的に蘇生したとして、周囲によろこばれながら、自宅に復帰した。
夫婦の生き血を餌食にしたあの男は、わたしを生きながらコキュにして弄びたくて。
辱め抜かれる愉しみに目ざめたわたしも、
夫を侮辱する歓びに目ざめた妻も、
彼の恥知らずな意図に、賛同していた。
彼女はわたしの苗字を帯びたまま、不貞を悦ぶ妻として知られるようになっていた。

最愛の妻の貞操を無償でプレゼントした代償に、わたしは総身の血を抜かれて、今度こそ吸血鬼になって――
母や、妹や、兄嫁たちを手当たり次第に襲っては、その夫たちの好奇の視線を浴びながら、弄ぶ歓びに目ざめていた。

人妻宅配俱楽部 ――母・弘美の場合――

2022年08月28日(Sun) 22:32:23

第五話 凄絶たる相聞歌



母は知っているのか・・・?
つぎに自分を犯す男が、実の息子だということを・・・
思わず発した真剣な問いに、頭は苦笑しながらかぶりを振った。

だから美味しいんじゃねぇか。

頭の囁きは、俺の鼓膜を毒液に浸した。


相手になる女とは前もって、希望を伝えあうんだ。
どんなセックスを望むのか。
どんな服装で来て欲しいのか。
場所はどこにするのか――いっさいを、あらかじめ決めておくんだ。
やり方はいろいろあるんだが、あんたは若いから、ネット使うよな。だったら、チャットが良いかな。
弘美にも、ネットの使い方は覚えさせた。ちゃんと対応できるはずだ。時間はきょうの午後3時。
勤めは早引けせにゃならんが、そこはだいじょうぶ。支局長から許可を取っておいてやったぞ。

頭は得意げに、わらった。
俺の公私を、大手搦め手両方から抑えている――そう言わんばかりの態度だったが、
いつものように、不快な翳が胸を刺すことはまったくなかった。


早めの帰宅が怖ろしい情景を目の当たりにさせる――そんな記憶がよぎったが、
2時半に帰宅すると、家にはだれもいなかった。
志乃は宅配倶楽部のお勤めにでも、出ているのだろうか?
情事の待ち受ける外出のため、志乃が人目を忍ぶようにして家を出る情景を目にすることができなかったのが、ちょっぴり残念だった。
俺は俺で、志乃の不倫を夫の側から愉しみはじめるようになってしまっていた。

パソコンを立ち上げると、メールが届いていた。
指定されたURLにアクセスすると、そこがチャットルームだった。
なんのことはない、だれもがふつうに使用している、有名なサイトだった。
先に部屋を作っておくようにと、頭に指示されていた。名前もメッセも、もちろん指定されていた。

「隆 業務のことで □沢〇美様」

というのが、指定された名前とメッセージだった。
女性が先に部屋を作ると、邪魔者が入ってくる危険があった。
なので、先に部屋を作るのは、男の役目だった。

□沢〇美――伏字にするとずいぶんな名前だった。
じっさいには冒頭の□はフェイクで、俺の苗字は沢といった。
母は本名ではなく、奈緒美という名前で入室してくることになっている。

しばらく刻が流れた。

3時02分。

奈緒美(56)さんがチャットルームに入りました。

なんの前触れもなく、そんなメッセが流れた。

母だ。

このPCの向こう側、母の弘美が、薄紅色のマニキュアを刷いた指を、キーボードのうえをなめらかに滑らせている――
ぞくり、と、なにか黒いものが、俺の胸の奥でかま首をもたげた。


隆    こんにちは、初めまして
奈緒美 こんにちは
奈緒美 よろしくお願いします。

母の弘美らしい感じはあまり窺えないが、そのぶんだれか別の女と会話をしているような錯覚が、俺を大胆にさせた。

隆   俺があなたになにをして欲しがってるか、きいていますね?
奈緒美 はい・・・
隆   では、俺があなたになにをしたがっているか当ててみてください。
奈緒美 セックス ですよね?
隆   そうです。
奈緒美 ・・・。

まだ母はチャットに慣れていないのか。あるいは、宅配倶楽部の活動そのものの経験が浅いのだろうか。
俺は想像力をフル回転させて、チャットをつづけた。

隆   あなたは男に抱かれたいんだよね?
奈緒美 はい・・・
隆   だんなに隠れてそんなことをして、恥ずかしくないの?
奈緒美 恥ずかしいです・・・
隆   それでも、男に犯されたいんだよな?恥を忘れて。
奈緒美 はい・・・
隆   じゃあ、自分から言ってみろ。あんたは俺に、どうしてほしいのか?
奈緒美 抱いてください。
隆   もっと露骨に言えないの?犯して欲しいんだよな?
奈緒美 はい・・・犯してください・・・
隆   だんなを裏切っても、恥ずかしくないのか?
奈緒美 恥ずかしく・・・ないです。
隆   淫乱なんだな。
奈緒美 はい、淫乱なんです。
奈緒美 淫乱な女に、させられてしまいました・・・
隆   させられたって、どういうこと?

さいしょは俺がにぎっていた会話の主導権が、じょじょに奈緒美の側に移りはじめていた

奈緒美 甥の結婚式の日のことでした。
隆   うん
奈緒美 わたくしは、黒留袖(結婚式で着る着物のことです)を着てお式に出たのですが、てっきりホテルの人だと思ったんです。
隆   うん
奈緒美 ご親族の方はこちらにどうぞ・・・と言われて、客室に連れ込まれたんです。
隆   相手はなん人?
奈緒美  3人でした・・・

3人。またしても、あの3人なのか・・・?
志乃に覆いかぶさったあの逞しい年配男の肉体が、母の弘美の黒留袖姿までもねじ伏せていったのか・・・
俺は股間が堅くなるのを感じはじめていた。

奈緒美  声を立てたら殺すといわれて、わたくしすっかりすくんでしまって・・・
隆    ベッドに抑えつけられたんだな
奈緒美  はい
隆    どんな気分だった?
奈緒美  怖かったです。主人以外の方とそうしたことをしたことが無かったので・・・



ここで俺は、母の潔白な過去を初めて知った。
知ったところで今さら、空手形のようなものではあったけれど、
それでもやはり、幼い俺を育てた母には、誇り高い婦人でいてほしかった。
その想いから顔をそむけるようにして、俺はつづけた。

隆    ほんとうは、男にモテたくてたまらなかったんじゃないのか?
奈緒美  そんなことないです。でも・・・
隆    でも?
奈緒美  黒留袖の帯を解かれて、下着を脱がされてしまうと、ああもういけないと思いました。
隆    男に抱かれる気になったんだな?
奈緒美  そんな・・・
隆    感じたんだろ?ダンナ以外の持ち物に。
奈緒美  感じてしまったのは、3人の方にそれぞれ1回ずつ犯されてしまってから・・・
隆    やっと白状したな
奈緒美  もうどうなってもいいと思って、ベッドのうえで女になってしまったんです。
隆    ダンナのことも、家の名誉も恥も、ぜんぶ忘れてたんだな
奈緒美  恥を忘れたのは、主人のほうからなんです
隆    というと・・・?
奈緒美  主人は悪魔です。息子のお見合い相手を次々と犯して、娘までも狙ったんです。

え?

俺はびっくりした。
妹の華奈美が、親父に抱かれただと?
華奈美は俺より四歳年下の妹で、この春に志乃の同僚の教師と結婚したばかりだった。
野々村というその若い教師は、俺の新居に遊びに来た新郎新婦の若い友人たちの一人で、
やはり新居にやって来た妹と意気投合して、話がトントン拍子に進んだ・・・はずだった。

隆   娘さんは、ダンナに抱かれたの?実の父娘で?
奈緒美 はい、結婚前に関係を持って、いまでも続いているんです・・・
隆   息子の見合い相手も姦られたんだな?
奈緒美 ハイ、お見合い相手のなかで気に入ったお嬢さんを、わたくしが知っているだけで4人・・・
隆   息子との縁談はどうなった
奈緒美 主人がお嬢さんに言って、断らせていました。
隆   とすると、ダンナは息子の嫁の処女を奪うつもりはなかったということだな?
奈緒美 はい、でも・・・
隆   まだ何かあるのか?
奈緒美 主人は息子の嫁も狙っています・・・

最低だな。言いかけてやめた。
さいしょは俺が、一方的に妻の志乃を奴隷に堕とされて、被害者だった。
ところがそのあと、志乃を寝取った男たちと和解して、彼らの運営する若妻宅配倶楽部に妻を差し出し、俺自身も対価を得るようになろうとしている――
だから、だれもかれもが、同じ穴のむじななのだ。


第六話 邂逅

奈緒美、いや弘美とは、金曜の午後2時に逢う約束をした。
場所は駅前のホテルだった。
大胆すぎやしないか――とおもったが、頭がオファーしたのはそこで、どうやら絶対命令のようだった。
何食わぬ顔で勤めに出てゆく俺に、志乃はいった。
今夜は遅くなりますの。あなた、どこかでご飯食べていらして――
『若妻宅配倶楽部』のお勤めをするときの、決まり文句だった。
妻に裏切られ、家の名誉を汚すことが、もはや日常になっていた。
俺はわかったとだけこたえて、志乃に背を向けた。
志乃の足許は、真新しい薄茶のストッキングに染まっていた。

ロビーに入ると、フロントの係の者が俺をみとめ、黙ってキーを差し出した。
べっ甲製のバーに銀色の鎖に結わえられたキーが、静かな輝きを帯びていた。
白い字で、206号室と書かれてあった。
階段のありかがわからなかったので、エレベーターで2階に着いた。
部屋の前に、頭が待っていた。
「女は来ている」とだけ、小声でいった。
あとはうまくやれ――そう言いたげに、片目をつぶって笑った。
俺はぶあいそにあごで会釈すると、おもむろにキーを取り出して、206号室のドアを開いた。
目を見開いて凍りついた女が、そこにいた。

かつては俺が母と敬い、諭され叱られた女(ひと)――
けれども今は、志乃同様、ただの淫売婦になり下がった女(おんな)――

「まさか・・・まさか・・・」
母は、いや弘美は、肩をわななかせてうろたえた。
「隆さん、隆さん・・って、まさか薫のことだったの?」
「そうだよ、母さん・・・いや弘美さん、ずいぶんと得手勝手なことを覚え込んでしまったんですね」
俺は母を責めることに、小気味よさを覚えていた。

甥の婚礼のさ中、黒留袖姿をいたぶられながら、3人の男に征服されたこと。
息子の見合い相手が次々と、父の毒牙にかかっていったこと。
なによりも、娘の華奈美が父の性欲に屈して、結婚後もそのおぞましい関係を続けていること。
目の前の男に、何もかもしゃべってしまった――
もはや取り返しがつかないことを、弘美は自覚しきっているようだった。

「でも、あなたとは交わることができません」
弘美はキュッと唇を引き締めて、いった。
「いくら何でも、母親と息子で、そんなこと――」
反射的に、俺の平手打ちが弘美の頬をとらえた。
黒髪を乱して、濃い化粧を刷いた顔が、激しく振れた。
「い、いや・・・っ」
弘美は浮足立ち、何とかこの場を逃れようとした。が、むだだった。
俺はなんなく弘美の腕を捩じりあげると、華奢なその身体をベッドの上へと放り上げてしまった。

弘美は、地味なクリーム色のスーツを着ていた。家にいたころから見覚えのある服だった。
この女は、息子である俺の知っている服を着て、情事に耽ろうとしたのか。
見当はずれな憤りが、どす黒く俺を貫いた。
あわてふためくスーツ姿を、タックルでもかけるように腰周りに抱き着いた。
56歳の女の肢体は、30そこそこの息子の膂力にねじ伏せられて、ベッドのうえで膝を折った。
目の前に、弘美の脚が伸べられていた。
ひきつれひとつない肌色のストッキングが、ふくよかな脚を柔らかく包んでいた。
俺は思わず、弘美の脚を吸っていた。
上品に穿きこなされた薄地のストッキングを、淫らに染まった俺の唾液が濡らした。

懐かしい感触だった。
その昔俺は、母の下着で悪戯をしたことがある。
年ごろの男の子なら、だれでもやることだ。
母が脚に通していたストッキングは、いま風の強靭なサポートタイプではなく、昔ながらのウーリータイプというやつだった。
それくらいは、俺でも知っている。

くちゅっ。くちゅっ・・・くちゅっ・・・

俺は舌を蠢かせて、ストッキングの上から弘美の脚を吸いつづけた。
実母の礼装を汚すことで、侮辱してやろうと思ったのだ。

いつの間にか、弘美の抵抗が熄(や)んでいた。
弘美は、俺にされるがままに、脚を吸われつづけていた。
「いいわよ・・・汚してちょうだい・・・」
乾いた声色だった。
俺は顔をあげると、母親だった女と真向かいに顔を合わせて、いきなり距離をつめた。
初めて味わう母の――弘美の唇は、柔らかく暖かだった。

いったいいままでに、なん人の男に抱かれたのか。
もちろん、黒留袖を餌食にされたときだけではないはずだ。
そうでなければこんなにもの慣れた感じで、ホテルで男を待つことなど、ありえないはずだ。
けれども弘美は、俺がいかに責めても、いままで交わった男の数を、決して口にしようとはしなかった。

ショーツのうえから唇を這わせると、母の貞操が薄い生地一枚隔てたすぐのところにあるのだと実感した。
ごわごわとした剛毛を唇で感じながら、俺は弘美の股間を唾液で濡らしつづけた。
パンストを片方脱がされ、ショーツまで足首に滑らせてしまうと、弘美は抵抗をやめた。
俺は、いままでになくどす黒くそそり立つ股間の牙を、女の臀部に埋めていった。

はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・

ふぅ・・・ふぅ・・・ふぅ・・・

一度果てると俺は再び弘美を抱きすくめ、強引に唇を奪うと、舌を入れた。
弘美は前歯を食いしばって俺の舌を拒んだが、そんな抵抗もすぐにおわった。

ねとねと、ネチネチと。
俺たちは昼下がりのベッドのうえ寝そべりながら、行為をくり返した。
いちど許してしまったことは、もう後戻りはできなかった。
なん度もなん度も、交接をくり返した。愛し合った。
頭を撫でてくれるのが、無性に嬉しかった。
そそり立つ俺のチ〇ポを咥えてくれるのは、さらに嬉しかった。
俺は母の口腔に、粘り気の強い精液を、遠慮会釈なく、ぶちまけていった。
勃った乳首を舌先で舐めてやると、若い女のような嬌声をあげた。
実母の乳房を女のものとしてあしらうことに、えもいわれない歓びをかんじた。

俺が性懲りもなく、片方だけ穿かれたストッキングをネチネチといたぶっていると、
弘美は自分の装う礼装を下品ないたぶりに惜しげもなくゆだねながら、いった。
「あなたがわたしのストッキングを悪戯していたの、私知ってる」
そう――俺はわざとそっけなく答えた。

すると弘美は、意外なことをいった。
「あなた、わたしのストッキングを穿いて、粗相したでしょ?」
そうだったかな・・・記憶はもう遠い彼方だった。
「それを見つけたわたしが、どうしたか知ってる?」
さあ・・・
俺がうそぶくと、弘美はいった。
「わたし、そのストッキングをもう一度穿いてね、あなたの精液で濡れているところを、自分のあそこにすり込んだのよ」
え・・・
俺は思わず、目を細めた。
挿入行為ではないかもしれない。でもね、わたしが貞潔を汚したとしたら、きっとそのときからだと思ってる――

別れ際母は身づくろいをするときに、脱げかかったストッキングを太ももまでぞんざいにずり上げた。
娼婦のような、いぎたないしぐさだった。
教授夫人のすることとは、とても思えなかったけれど――
「今度うちでやろう」という俺に、
「だぁめ、それは――」と言いかける弘美をまたも押し倒して、
まるで若い恋人同士がそうするように、俺たちはなん度めかの吶喊をくり返すのだった。


第七話 交歓の宴

志乃が相手をしている学校教師の同僚が、妹婿の野々村だと知ったのは、それからすぐのことだった。
花嫁の純潔を実家で汚されたという過去に、俺は少なからず同情を感じていたから、
頭にそう聞かされても、怒りをおぼえることはなかった。

俺はその日、野々村と華奈美の家にいた。
客間に敷かれた布団のうえ、華奈美がしどけない格好で、俺といっしょにいた。
ブラウスはかろうじて身に着けていたものの、釦はほとんど外されていて、下半身は生まれたままの格好だった。

俺に挑まれたときにはびっくりして、「お兄ちゃんやめて」と訴えた華奈美だったが、
スカートを脱がせ、パンストを片方だけ脱がせてしまうと、観念したように身を固くして目を瞑った。
女は征服されるとき、みんなそういう仕草をするのか。そうではあるまい。
母のときは、さいしょは毅然として俺を拒もうとして、足許を唾液で濡らされながら堕ちていった。
さいしょの夜に実父を受け容れた女は、兄のまえでもかんたんに身体を開くようになっている。

「お義父さんからききました。これからも華奈美に逢わせてほしいとねだられました。
 華奈美さんもぜひそうしたいというので――ぼくはふたりの関係を受け容れたんです」
生真面目そうな白い顔を神経質そうに引きつらせながらも、野々村は感心なことを口にする。
俺との間のことも、とがめだてはしないつもりらしい。
お茶の間からは、つけっ放しのテレビの音が無機質に、流れ込んでくる。
野々村はきっと、テレビではなく、この部屋の様子を窺っていたに違いない――
そういう趣味のある男だった。

父が弘美と華奈美を母娘ながら若妻宅配倶楽部に差し出した「功績」で、野々村もまた、「特別会員」となっていた。
花嫁の純潔を父娘相姦で喪ったという経歴は、むしろ仲間うちでは歓迎されていた。
生真面目な野々村が「特別会員」となって真っ先に望んだ女が、ほかでもない志乃だった。

俺は、父親よりも屑な人間となり果てている。
親父はたしかに、実の娘と交わったが、
俺は実母と実の妹双方と交わっている。
それだけではない。
あの高雅な支局長夫人も、
母が黒留袖を餌食にされた婚礼の主である従弟の嫁も、
力ずくでねじ伏せ、恥知らずな性欲の餌食にしていた。

『若妻宅配倶楽部』は、いつか変貌を遂げようとしていた。
倶楽部の客――という関係ではなく、真剣交際の不倫関係に発展していったのだ。
「いいんじゃねぇのか?」
志乃をさいしょに犯した頭はいった。
「ビジネスで抱き合うよりも、心から抱き合うほうが、良いに決まってるわナ」
もともと、金銭の授受を伴わない「ビジネス」だった。
素人の人妻を手練手管で堕落させ支配下に入ること。
そうして意のままになるようになった女たちを、自分の妻が娼婦となることを許した寛大な夫たちの性欲解消のために手配すること。
それが彼らの、すべてだったのだ。

志乃は支局長と正式に交際を始めた。
けれどもそのいっぽうで、野々村との浮気も愉しむようになっていた。
時には自分を堕落させたあの3人と、まるでクラス会のように”宴”を開いているらしいし、
俺も無理やり招(よ)ばれては、年上の年配男3人の情欲にまみれてゆく妻の肢体を見せつけられるのを、面白がるようにさえなっていた。

華奈美は俺と付き合うといって、聞かなかった。
夫である野々村には面と向かって、
「貴方の稼いだお金で買った服を、お兄ちゃんのために汚させてあげたいの」
といっては、野々村を閉口させていた。
野々村はたしかに閉口していたけれど、
「もともと変わったご一家だから」と、兄妹相姦を日常に取り入れることに同意してくれた。

弘美とは、週に2度は逢う関係になっていた。
親父は俺と弘美の関係に気づいていたようだったが、面と向かってはなにも言わなかった。
実の娘を犯したことを後悔するような、殊勝な男には見えなかったので、ちょっと不思議には思っていた。

その日も、俺は弘美と逢っていた。
場所は実家だった。
志乃には何食わぬ顔をして家から出てきたし、志乃もまた、着飾ってどこかへ出かけていく様子だった。
お互いに不倫を愉しむ関係――
けれどもふだんの志乃は、こうなる以前よりもずっと、献身的に仕えてくれるようになっていた。
家庭の平安をお互いの淫事を許し合うことであがなっていることに満足して、暮らしていくべきなのだろう――俺は思った。

親父は出かけているようだった。
「お父さんたら、わたしが家にいるのにおめかしなんかしているから、不思議がっていらしたわ――」
息子を相手の情事のために装った、新調したばかりの紫のスーツを見せびらかしながら、弘美は笑った。
「その服も、精液でヌラヌラにされたいんだろう?」
俺が強がると、
「はい、はい。その通りですよ。お母さん、あなたの精液で濡れ濡れになりたい♪」
と、聞き分けの良いことをいった。

導入は、あっという間だった。
ブラウスのうえから乳房を揉みしだきながら、俺は弘美を押し倒してゆく。
「あっ、ダメ――」
弘美はこの期に及んでも、「息子と母親でなんて、ダメですよぉ・・・」と、わざと俺のことをはぐらかそうとする。
減らず口を黙らせるため、俺は弘美の唇を強引に吸った。
短いあいだにいろんな女と交わったが、唇は弘美のそれが、いちばん佳(よ)かった。
俺たちはしばらくのあいだ、十代の若者同士のように、キスをくり返し、相手の口腔の匂いを嗅ぎ合った。

茶の間の向こうは、父の書斎だった。
そこにはしばらくの間入ったことはなかったが、
本棚や机の占めるスぺ―スよりも、むき出しの畳の広さのほうが目立つような部屋だった。
弘美が、手にしたリモコンを操作した。
「なに・・・?」
俺が訊いても、弘美は笑うだけでなにも応えない。
リモコンは、茶の間と書斎の間を仕切る引き戸を開けるためのものだった。
引き戸は音もなく開いた。

あっ・・・!と思った。

志乃が、親父の腕のなかにいる。

なんてことだ。

見慣れたえび茶のスーツ姿で、学校教師としての装いのまま、早くもタイトスカートのすそに、精液を光らせてしまっている。

え?え?え?

仰天する俺をしり目に、志乃はまつ毛を震わせながら、細くて白い腰を、親父の逞しい腰の動きとひとつにしていた。
もう、俺のことも、母の視線も、志乃の意識にはないようだった。
白いブラウスは大きくはだけて、その隙間からは、黒のブラジャーの吊り紐が、白い胸をキュッと縛るのが目に入った。
タイトスカートは惜しげもなく裂けて、肌色のパンストをてかてかと輝かせる太ももを露出させている。
志乃が脚に通したストッキングは、光沢のよぎるサポートタイプだった。
ストッキングをよぎる光沢が、白い蛇のようにくねる脚の周りで淫らにギラついた。
慎み深かった志乃は、とっくに娼婦に堕ちていた。親父の奴隷に堕ちていた。

俺は、親父が自分の妻に手を出す俺に不平を鳴らさなかった理由を知った。
そして、親父に見せつけるように、弘美の唇を吸い、また吸った。
この女は、俺の女だ――
あたかもそう宣言するかのように、なん度もなん度も、弘美の唇を吸いつづけた。
弘美もまた、俺の接吻に、積極的に応じてくる。

俺たち親子は、恥に堕ちた――
絶望的な歓びに目を眩ませながら、
俺はなん度めかの吶喊を、実母の体内に吐き散らしていった・・・


あとがき
後半はちょっと、息切れしたかもしれませんね。^^;
そういえば相姦ものを描くのも、久しぶりのことでした。A^^;

人妻宅配倶楽部 ――妻・志乃の場合――

2022年08月28日(Sun) 22:18:38

はじめに

このお話は、チャットで知り合ったある方と話し込んでいるうちに構想がまとまったものです。
その方から伺った「若妻宅配倶楽部」という言葉に触発されて、こんなものを描いてみました。
なので、「宅配倶楽部」のプライオリティは、小生に属するものではないことを、お断りしておきます。

追記:いささかねたばれ。
お話の展開から、必ずしも「若妻」ではなくなったため、タイトルは「人妻宅配倶楽部」とさせていただきました。


第一話 扉の向こうの悪夢

悪夢の光景だった。
ずるをして出張先から直接家に戻った代償が、こんなに高くつくとは思わなかった。
自分の行いを、心から反省した。

インターホンを鳴らしてもだれも出なかったので、留守かと思って自宅のドアを開けた。
それが地獄に通じる扉とは、つゆ知らないで。
夫婦の寝室からうめき声のようなものが洩れてきて、何気なく足音を忍ばせ覗いてみたら――
妻の志乃がよそ行きの服装のまま、ベッドのうえにいた。
俺以外の男と。
それも、3人もの男と。

えび茶のタイトスカートに見覚えがあった。教師として中学校の教壇に立つときに、いつも着けているものだった。
ボウタイ付きの白のブラウスは確か、結婚記念日にプレゼントしたもののはずだ。
だから、ベッドのうえにいる女は、志乃に違いない。
几帳面なだけが取り柄のような女だった志乃は、いつもきちんとした服を、行儀よく着こなしていた。
ところがどうだ。
いまベッドのうえにいる女は、
黒髪を振り乱し、息せき切って、腰を大胆に振りながら、
のしかかってくる男の欲求に、自分のほうから応えつづけているではないか。

ブラウスは胸もとまではだけ、
引きちぎられたブラの吊り紐が二の腕に垂れ下がり、
あらなになった乳首は、男のうちの一人の、貪婪に吸いつけられた唇のなかにすっぽりとおさまっている。
片方だけ脚に通した肌色のパンストはふしだらに弛み、脛の半ばまでずり降ろされて、
悩まし気な足ずりをくり返しては、シーツをいびつに波打たせていた。

思わず息をのんだ時。
気配を察して四人の人間がいっせいに、こちらを振り向いた。
志乃は気の毒なくらい、狼狽した。
「ご、ごめんなさいっ・・・!でも仕方がなかったの!」
志乃の言葉に、こんどは俺が狼狽する番だった。

男どもは、こうなることを察していたかのように、強い目線でこちらのほうを見返してくる。
これは手ごわい――と、俺は思った。
「ど、どういうことなんだッ!?」
そう叫ぶ権利はあると思った。
驚きと怒りとをあらわにする俺に、男どもはいかにもそれは当然・・・という顔つきをして、
「昼間からお騒がせして、申し訳ない」
とだけ、いった。

必要なわびは入れるが、てこでも動かない――そんな態度だった。

「ここは俺の家だ。妻と話がしたい。あんたがたはひとまず、出ていってくれ」
声が震えているのをみじめだと思った。
けれども精いっぱいの虚勢に男どもは意外に素直に頷き返してきて、
「すべて我々がよろしくない。ご主人の憤慨はごもっともだ。つぐないに、精いっぱいのことはさせてもらう」
と、静かな声色でこたえた。
殺気のこもった声だ、と、俺はおもった。
志乃を組み敷いて欲望の限りを尽くしたうえに、夫には素直に振る舞う。
どういうことだ――と思う矢先、男のひとりがいった。
「こちらの弱みを白状しよう。じつは女ひでりで、困っている。
 厚かましいのは百も承知だが、もう少しだけ辛抱してもらえまいか。
 ここはご主人のお宅だから、もちろん家のなかにおられても差し支えない」

???

この男は、なにを言っているのだ?
もう一人の男が、いった。いかにもおだやかで、磊落そうな男だった。
こんなことには不向きな男にさえ見えた。
「気になりますよね?なんなら、覗いてもオッケーですよ。ご主人――そういうの楽しめるほうかな?」
俺は蒼白になって立ち尽くし、男どもは行為を再開していった。
声もなく立ちすくんだ俺をまえに、3人は場違いなほど恭しく俺に頭をさげたけれど、
その礼儀正しさとは裏腹に、志乃に向けられたあしらいは、がつがつと荒々しいものだった。

なぜ、あの時怒鳴り出してでも、とめなかったのか――
あとから何度もそう思ったが、
たとえやめさせたところでもう、事態はあまり変わらなかっただろうとも、その都度おもった。
ともあれ俺はその場を立ち去り、
志乃にのしかかっている男どもの気が済んで、志乃を解放するまでは、
闖入した暴漢たちに、妻を好きなようにさせてしまっていたのだった。

かすかに残る記憶では。
志乃がはだけたブラウスから乳房もあらわに悶える様子とか。
脚に通した肌色のパンストを引きむしられて、すすり泣くところとか。
気品漂うえび茶色のタイトスカートの前から後ろから、怒張した肉棒を突き入れられては、
落ち着いた色合いのスカートのすそを、淫らな粘液まみれにされてしまうところとか、
しまいにはスカードだけを着けることを許された志乃が、俺ですらしたことのない騎乗位を自ら受け容れて、
乱れた黒髪をユサユサと揺らしながら喘いでしまう有様まで、
逐一たどることができるのは――きっと覗いてしまったことの証しなのだろう。
俺は、彼らの一人のいうように、「楽しめてしまう夫」らしかった・・・


2時間後。
男どもは身なりを整えて、俺のまえに鎮座していた。
3人が3人とも、50がらみの男で――
つまりようやく30代に突入したばかりの俺よりも、ずっと年上だった。
だれもが、俺よりも逞しい身体つきで、そのうちどの一人とやり合っても俺が負ける――と容易に想像できるほどだった。
「ご主人悪りぃな、奥さんすっかり借りちまって」覗いても好い――といった、あの磊落な男がいった。
「暖かいご配慮、恩に着ますよ。ご主人いい人ですね」べつのひとりも、そういった。
ふたりとも、場違いなくらいむき出しな好意と賞讃を、俺に向けてあらわにしていた。
「ばか、失礼なことを言うなぃ」
頭だった痩せぎすな男が、配慮のなさ過ぎる仲間を鋭い声でたしなめた。
「悪りぃ悪りぃ」
さいしょのふたりは閉口したようにかぶりを振ったが、しんそこ悔いている様子ではない。
ただそこには、満ち足り切った三体の男の肉体が、みずみずしいほどの輝きを帯びていた。

とはいえ男どもは、必要以上に俺を嬲りものにするつもりはないらしく、
まるで商談でも切り出すように、来訪の趣旨を告げてきた。

「若妻宅配倶楽部 というのを知っている?
 配偶者のいない男や夫婦のSEXで満たされない男に、若妻を提供するビジネスなんだ。
 我々はこの事業に理解ある人妻を探し、女性スタッフとしてスカウトする業務を行っている――」
男の話は、俺の理解力、想像力を越えていた。

男はつづけた。
「奥さんとは、ふとしたことで知り合った。
 私の(と、頭だった男はいった)家が、ご近所なんだ。
 礼儀正しく、楚々としたたたずまいが以前から気になっていて、思い切って声をかけたのが先月のこと――」
その時からもう…下心ありありだったよな。磊落な男がちゃちゃを入れた。
根は生真面目らしい頭は、こんどは仲間をたしなめようとはしなかった。おそらく3人共通の本音だったのだろう。
「奥さんは身持ちが堅く、用心深かった。
 でもふjとした折にわれわれのことを気安くお宅にあげたのが、奥さまの唯一の失敗だった。
 奥さんのこと、咎めなさんなよ。
もうひとりが、あとをついだ。
「勿論その場で、犯しましたよ。
 奥さまいいお味ですね。
 我々はすっかり、奥さまの虜になりました。
 奥さまもすっかり、我々の虜になりました。
 いうなれば、相思相愛というやつです。
 どうかこの甘美な果実を、われわれから取り上げないでもらいたい――」
なんという勝手な言い草だろう?と思いつつも、俺が先を促してしまったのは。
きっとあまりにも常識からかけ離れた話を聞かされて、怒りの感情が麻痺してしまったためだろう。
頭があとを、ひきついだ。
「でも、我々は奥さまにとって、たんなる一里塚に過ぎないのです。
 これから奥さまには、背徳的な行脚をしていただくことになるからです。
 それが、わが『若妻宅配倶楽部』の趣旨なのですから――」

「奥さまの名誉のために申し添えますが、我々と出遭うまで奥さまは、ご主人以外の身体を識らないお身体でした。
 でもきっと、我々とは相性がよろしかったのでしょう。
 ご主人お一方のために守り抜いてきた貞操を、
 3人の男相手に惜しげもなく振る舞われた奥さまには、心から感謝しております。
 我々の奥さまへの恋情をご理解いただき、楽しむひと時をお与えくださったご主人もきっと、
 我々とは相性がよろしいに違いない。
 このまま真相が外に漏れて、無責任な非難や誹謗中傷に奥さまをゆだねるようなことはなさらないでしょうから、
 どうぞ奥さまを、当社の事業にご提供いただきたい――」
これ以上はない厚かましさを帯びた提案をすると、男たちは話を締めくくった。


お願い別れてくださいと、志乃はなん度も俺にいった。
それはお止しになった方が好いと、彼らはいった。
どうして離婚したのかといらぬ詮索をする人はどこにでもいるし、
結局はなにもかもが明るみに出て、お二人が恥を掻くだけではありませんかと。
それに何よりも――ご主人とお別れしたら、「人妻」ではなくなってしまいますからね。
貴女の商品価値が、下がってしまうのです・・・と。

男達のやんわりとした脅迫は、俺にもじゅうぶん通じた。
志乃にもそれは、わかったようだった。
少し時間をください、妻と二人で話してみますとだけ、俺がこたえると、
男どもは案外素直に、それがよろしいでしょう、とこたえてくれた。


男どもが家から出ていくと、俺は志乃にいった。
もう、すべてが手遅れなんだなと。
志乃は泣いていた。
けれども俺の問いかけには、無言だがはっきりと頷き返してきた。
志乃のブラウスは、まだ釦がふたつほど、外されたままだった。
ブラジャーを剥ぎ取られた胸もとがほんのちょっとだけ、衣類のすき間から覗いていた。
俺は無言で志乃につかみかかり、
弱々しい抵抗を苦も無く払いのけると、志乃を犯した。
何度も何度も犯した。
それが俺にできる、唯一の鬱憤晴らしだった。


第二話 娼婦と暮らす俺

翌日は土曜日だった。
俺は志乃を連れて、志乃から教わった頭の家を訪問した。
餌食にした夫婦の来訪を待ち受けていたかのように、3人とも顔をそろえていて、俺を鄭重に出迎えてくれた。
「夫婦で話し合いました。妻を、あなた方の仰る『若妻宅配倶楽部』に提供します」とだけ、俺はいった。
賢明なご判断です、と、頭がこたえた。
「ご協力ありがとう。ご主人の理解ある配慮に、心から感謝する」
志乃はよそ行きのワンピースを着飾っていた。
いつもより化粧が濃いと、俺はおもった。
「俺がうちに飼っていた売春婦を、あんたにお預けします。月曜の朝食は要るので、それまでには家に帰してください」
俺の言葉に志乃はびっくりしたようにふり返ったが、
そのときにはもう、花柄のワンピース姿は三対の逞しい猿臂の支配に落ちてしまっていた。
志乃の着ているワンピースは、まだつき合っていたころ、俺が誕生日に飼ってやったものだった。
夫婦になる前のいちばん幸せな記憶が、淫らに堕ちる――
俺はそうおもって、きょう着て行く服を選んだ志乃のチョイスを呪った。

「妻をここまで堕とすとは、たいした腕前ですjね」
もっと皮肉っぽくいうつもりが、なぜか素直に賞讃し得てしまっているのを感じた。
「せいぜいたっぷりと、かわいがってもらうと良い」
俺はそう言い捨てて、5年間連れ添った妻に背を向けた。
背後で女が押し倒される音とちいさな悲鳴、
ブラウスが引き裂かれストッキングが破ける音がした。
身体中の血液が逆流するような昂りを感じたまま、見送るものもいないその家を辞去した。


志乃が家に戻ってきたのは、月曜の明け方だった。
「たっぷりかわいがってもらえたようだな」
俺はいった。
「エエ。この身のすみずみまで、愛されてしまいました」
志乃はよどみなく、こたえた。
俺は思わずゾクリとするのを、こらえきれなかった。
大人しいだけが取り柄の、そして貞淑だっというこの女が、たった一夜で淫らな娼婦へと変貌している。
いや、そうではあるまい。
初めて落ちたというある日の白昼から、すでに妻の堕落は始まっていて、
たまたま夕べ、結実をみたにすぎないのだ。
けれども俺は、やつらに妻を売り渡して、最後のとどめを刺させてしまった。
不思議に悔いはなかった。
むしろ、正体不明のドロドロとした熱いものが、肚の奥底を焦がすのを感じていた。
それはじわじわと、俺の想いをとろ火で焙(あぶ)り、純度の高い透き通るような劣情に変わっていった。

ひととき、惨めな思いも抱えたが、
――俺は娼婦と暮らしている。
そんな感覚が、どこかいびつに心に迫った。
白い素肌に秘めた血潮を淫らに染めた女の夫は、自らの血潮も妖しく湧き立ててしまっている。


呼び出しは、頻繁に訪れた。
週に数回は、妻は着飾って支度をあとにした。
俺が居合わせているときでもお構いなしだった。
彼らはつねに鄭重だった。
俺にはじゅうぶんな敬意を払い、むしろ同好の士と見做しているような物腰だった。
志乃が「人妻」であることを重くみているらしく、志乃の主権はあくまでも俺にあると告げてくれた。
夫婦の交わりは自由だし、志乃は貴方にいままで以上によくかしづくはずだ、とも告げた。

たしかに志乃は、いっそうしおらしくなった。
もともと大人しいのが取り柄の女で、これでよく教師が勤まると思うほどだったけれど。
まるで昭和初期の貞淑妻のそれのように、楚々とした立ち居振る舞いにいっそう磨きがかかり、
俺が疲れて勤めから戻ったときのケアなどは、しんそこ心が癒される思うだった。

そのいっぽうで、夜の営みではべつな面もかいま見せた。
正常位のみで、まぐろのように寝そべって、感じているのかどうか定かでないほどの感度のにぶさが物足りなかったのに、
昼間の淑やかさとは裏腹に、声をあげ、時には叫び、大きく身をくねらせて、
感じているのを身体ぜんたいであらわにするようなあしらいに、
志乃の身に訪れる数々の淫ら振る舞いを想像する俺は、志乃の熱を伝染(うつ)されたかのように、夜ごとたけり狂うのだった。

呼び出しに応じるときの志乃は、ただひと言、「行ってまいりますね」とだけ、俺に告げて、
黙々と化粧を刷き、ストッキングに脚を通して、ハイヒールの足音をコツコツと響かせて情事に向かう。
まとう衣裳も、立ち居振る舞いも淑やかで。
けれどもいちど夜の闇にまみれると、牝の獣と化してしまう――
それが妻の日常だった。
遠ざかってゆくハイヒールの足音を耳にしては股間を抑え、脱ぎ捨てられた妻の洋服に射精をくり返す。
それが俺の日常になっていた。


第三話 特別会員の紳士

「夕べ、きみの奥さんを買った」
残業が果ててふたりきりになったオフィスのなかで。
支局長はそっと、俺にそう告げた。
「若妻宅配倶楽部 というんだそうだね?ぼく、実はそこの特別会員なのだよ」
プライベートの不祥事が職場に伝わることの悪夢感に、俺は総身に慄(ふる)えを疾(はし)らせた。
そんな俺の心中を見透かしたように、支局長はいった。
「安心しなさい。お互いさまなんだから」
低く落ち着いた穏やかな声色が、俺を本心からの安堵に導くのを感じて、
俺は妻を抱いたという上司に、ほのかに感謝の念をよぎらせている。

たしかにそうだろう。
いまは表向きだけが、よそ行きのしかめ面でまかり通る世の中だ。
社会的立場があればあるほど、部下の細君を買春した などということが、致命傷にならないわけはない。
俺は少しだけ、あの蟻地獄のような奇妙なシンジケートの仲間入りをさせられた上役に、むしろ同情の念を感じた。

あの、家内とは、どこで・・・?
訊いてはならないことを、それでも訊かずにはいられなかった。
結婚当時にも俺の上司だった支局長は、志乃とは結婚前から面識がある。
そんな見知ったどうしでの買春(ビジネス)に、俺はふと気をそそられたのだ。

お見合い写真のようにね、一人一冊ずつのカタログを持っているんだよ。
ぼくはそのなかから、なん人でも選ぶことができる。
ディープな会員ほど、大勢の女性を紹介してもらえるんだ。
ぼくはその中では――けっこう多いほうじゃないかな。
その日も彼らのうちのひとりが、私のところに「お見合い写真」を持ってきた。
もちろん、奥さんのもその中に含まれていたんだ。
ぼくはすぐに決めたよ。きみの奥さんに。志乃さんに――

相手の女性の服装を、お見合い写真のなかから択ぶことができるんだ。
ぼくが択んだのはね――ちょっと特殊な趣味なので友るしてもらいたいのだが――喪服なのだよ。洋装のブラックフォーマル。
清楚に透きとおる黒のストッキングが好みでね。
それに、喪服というもののもつ禁忌感が、たまらないんだ。
人を弔うための装いを淫らに愉しむ――そんな不謹慎な欲望の、ぼくは虜になっているんだよ・・・

そういえば。
志乃はきのう、法事に出るといって家を出た。
たしかに漆黒の衣裳に身を包んだ志乃の、丈長のスカートのすそから覗く薄墨色に染まった足許に、危うさを覚えないではなかったけれど。
さすがにそれは不謹慎だろうと、あらぬ思いを立ち入って出勤したのだ。
俺が勤めに出ているあいだ、志乃は喪服を着崩れさせながら、俺の上役と乱れあっていた。
あの薄黒いストッキングを唾液まみれにいたぶらせ、惜しげもなく引き破らせていた・・・
ズボンを通してさえあらわになる股間の昂りは、塩局長も気づいたらしい。
けれども彼は思慮深く目をそらしてくれて、そしていった。
視てみたいかね?志乃のお見合い写真・・・
そのときたしかに、支局長は俺の妻を呼び捨てにしていた――

それはたしかに、ページのすくないアルバムのような、ついぞいちども手にすることkのなかった、いわゆる「お見合い写真」の体裁をしていた。
開けてはならない扉を恐る恐る解き放つように。
俺は震える手で、ページをめくった。

アッ・・・と、息をのんでいた。
さいしょの頁があまりにも、くろぐととした意趣に満ちあふれたものだったから。
キャビネ版と呼ばれる大写しの写真のなかで。
志乃はベッドにあお向けになって、あらぬ方に目をやっている。
それはあきらかに、自宅にある夫婦のベッド。いつの間に、こんなものを撮ったのだろう。
相応の機材を持ち込まなければ、とてもこんな写りにはなるまいと、少しばかりカメラをかじった俺にも、それはわかった。
身に着けているのは、喪服。
たしかに見覚えのある黒一色の地味なスーツが、着崩れさせるとこうも妖しく乱れるのかと、俺はおもった。
そればかりか――。
はだけた喪服のすき間から、こぼれるように覗く白い肌は、真っ赤なロープの縛(いまし)めを受けて、キュッときつくすくんでいる。
漆黒のブラウスをはだけられ、その上から、身体の線があらわになるほどきつく縛られて、
太ももを横切る帯のように太いガーターは、肌の白さをいっそう際立たせ、
珠のように輝く肌には、ところどころ、灼(や)け爛れた蠟燭の痛々しい斑点が、不規則に紅く散らされていた。
目線が惑乱していると、ありありと自覚しているのに、焦げるほど強く、俺は見入ってしまっていた。

俺の変化を悦ぶように観察していた支局長は、頃合いを見計らうように、こう告げた。
「志乃を気に入った。ぼくはまた、志乃をオーダーしてしまった。きみの奥さんだと知りながら――
 つぎの逢瀬は、明後日の木曜の夜。場所はきみの家をお願いした。
 ぼくはきみに、明日から一週間の出張を命ずる。
 いけない上司を、許して欲しい。」
許すなどとそんな・・・と、俺は言いかけた。
俺の妻を、夫である俺の前で呼び捨てにして、
そのうえこれからも妻を犯すと宣言した、仇敵のはずのその男に。
けれども俺は、自分でもびっくりするほどよどみなく、応えてしまっている。
「『若妻宅配倶楽部』に、連絡を取ります。
 わたしは出張先で、彼らに誘拐されます。
 そして妻を縛ったロープで身体を結わえられたまま、自宅の寝室の押し入れに、転がされてしまうのです」
どうぞ俺のことは気にしないで、妻の肉体を愉しんでください。
なぜって――だんなの前でその妻を犯す愉悦を、支局長にお届けしたいのです・・・」

支局長は、いつもの穏やかな目鼻立ちを、いっそ和ませて、俺をみた。
そして、ちょっためらうふうを見せながらも、口を開いた――
「わかっているのかな?お互いさまの意味」
え?と問う俺に、支局長はいった。
「ここに赴任してすぐのことだった。
 ぼくの家内もね、『若妻宅配倶楽部』の餌食になっていたのだよ。
 若妻には程遠い・・と、ぼくは遠慮したのだが。もちろんそんな遠慮は無用だと言われてしまったよ。
 思い知ったよ。上には上がいるんだ。
 ぼくのような始終男には、志乃のような二十代の若妻が要るように、
 ぼくの家内を欲しがる年配男も、けっこうおおぜいいるんだということを」



第四話 「お見合い写真」のなかの悪夢

支局長と妻との交際を認めた俺は、何の見返りも欲しなかった。
妻に売春をさせるわけにはいかないから――というせめてもの意地が、俺のなかにもまだ残っていたというわけだ。
けれどもそのいっぽうで、報酬はすでにじゅうぶん享けている――そんな想いも、禁じ得なかった。
喪服マニアの支局長の手で、志乃の喪服は再三汚され、引き裂かれた。
そのつど洋服代を持ちたいという支局長の厚意を、俺は辞退しつづけていた。
自分の稼ぎから、他の男に玩弄されるための妻の衣装代が差し引かれてゆく。
その事実に、俺はマゾヒスティックな歓びをさえ、感じはじめていたのだった。

志乃はたいそう済まながっていた。
引き合わされる直前まで、その日の相手が夫の上司だとは、知らされていなかったのだ。
「相変わらず悪趣味だよな、あいつら」
おれはせいぜい憎まれ口をたたいたが、もとよりさほどの悪意も含まれていないことを、志乃は良く心得ていた。
「今度のボーナスで、喪服買えよ」という俺に、
「喪服のまとめ買いって、割安になるのかしら」と、志乃はいかにも主婦らしい気の廻し方をした。
まとめて買うほどに、志乃は支局長のために喪服を汚したがっている。
俺の発想は淫らに歪み、その晩妻が着けていた花柄のロングスカートは淫らな粘液にまみれて、
翌朝にはクリーニング屋行きの憂き目を見る羽目になっていた。

志乃とは、見合い結婚だった。
もともと感情をあらわにしようとしない、よく言えばたしなみ深く、悪くいえば物足りない女だっただけに、
志乃のみせたあらわな変化は、俺の日常をどぎつい極彩色の彩りをで染めた。



頭が俺のところにやって来たのは、志乃が出かけた後のことだった。
きょうのお相手は、支局長ではなかった。
彼は妻との結婚20周年を祝うため、旅行に出ていた。
見ず知らずの男と妻が、淫らなセックスに耽る。
相手の顔が見えないだけに、そうした日の妄想も、違った意味でどす黒かった。
出かけて至った志乃のいでたちは、学校に着て行く薄茶のスーツだった。
ストッキングも、地味な薄茶だった。
情事に出向くとき、志乃はいつも真新しいストッキングを脚に通していく。
獲った客への、せめてものたしなみのつもりだと、志乃は生真面目に言い訳をした。
「学校の先生だと思うぜ」
若妻宅配倶楽部のメンバーで、さいしょに志乃を犯したその男は、俺にそっと」囁いた。;
学校が聖域ではなく、教師もまた聖職などではないことを、知り抜いた声色だった。
同僚とセックスするときに、いつも学校で見慣れた服装を要求する。
何と歪んだ欲求だろう。
それに応える志乃も志乃だったが――もはやそれは、いつもの日常になり果ててしまっていた。

あんた、知ってるだろ?
男はいった。
自分の女房を宅配倶楽部のスタッフにすると、ご褒美をもらえるの。
「ご褒美」とは、支局長が部下の妻をモノにするような類のことだと、容易に察しがついた。
俺は無関心を装って、「知っている」とだけ、みじかくこたえた。
無造作に投げ出されたものに俺が息をのみ、震える掌で扉を開こうとするのに、数秒とかからなかった。

アッ・・・と、俺は絶句し、我を忘れ、息をのんでいた。
さいしょの頁があまりにも、極彩色の悪意に満ちあふれたものだったから。
キャビネ版と呼ばれる大写しの写真のなかで。
豪奢な黒留袖の襟首をおし拡げられ、もろ肌をあらわにしているのは、ほかならぬ――母の弘美だったのだ。

結婚式帰りを襲った。
ちょうど、あんたの従弟の結婚式があっただろう?
さすがはあんたの親だ。
お父上、何年もまえから、うちの会員でね。
自分の娘くらいの女に血道をあげて、ケツを追いかけること追いかけること・・・
大枚はたいて加入したから、だれも文句は言わなかったけれど。
あのどん欲さには、あきれたものさ。
ほれ、あんた六、七年前に、何度か見合いしたことあるだろう?
あの時の娘どものほとんどは、親父に抱かれた女だったのさ。
危なかったな。
すんでのこと、あんたは自分の親父に処女を捧げた女を、嫁にする羽目になりかけたんだからな。v
だからその息子であるあんたの奥さんを堕落させたときにも、あまり同情は感じなかったのさ。
いまでも、好いことをしたと思っているよ。別bの意味でな。
もうすっかり、あんたは俺たちの仲間だからね――
なのでご褒美に、その女を紹介するよ。
そのうちあんたの親父、志乃に毒牙を突き立てかねないからな。
・・・さきに姦ったもん勝ちだぜ・・・?


あとがき
前編はこれで終わります。
後編をつぎにあっぷします。

市役所の若い女性職員が、結婚前に・・・

2022年08月19日(Fri) 23:36:14

「常川桃花、本日付けで係長を命ずる」
無表情な課長の言葉に、桃花はひっそりと唇を噛んでうつむいた。
淡いブルーの格子縞のベストに、濃紺のタイトスカート。
市役所の清楚な制服に包まれたОL姿が、恐怖に立ちすくんだ。
それもそのはず、課長の隣に控える黒い影は、昨今市役所に出入りするようになった吸血鬼。
彼は、桃花の血が目当てで市長にすり寄って、
ついに本人の承諾を得て、係長の肩書と引き替えに吸血する機会を得たというわけだ。
もとより、本音は気の進まない応諾に違いない。
けれども、もうじき結婚を控えている――そんな当然すぎる抗弁さえもが、無力にへし折られた。
市の上層部の圧力に屈した彼女は、生き血を吸い取られるというおぞましい選択をせざるを得なかったのだ。
婚約者のいる身で、良家の娘が道を踏み外した行動に走ることを、吸血鬼はひどく悦んでいた――

招き入れられた別室で二人きりになると、吸血鬼はいった。
「わしがどこを咬みたがっているか、わかっておるな?」
「は、はい・・・」
「声に出して、それをわしに教えてはくれまいか」
控えめな茶髪の頭をかすかに揺らして、桃花はちょっとの間だけためらったが、
引き結んでいた唇をおもむろに開くと、いった。
「首すじ、肩、胸、脇腹。それに脚――でいいですか」
吸血鬼は、彼女の答えに満足したようだった。
おもむろに彼女の足許にかがみ込むと、桃花のふくらはぎをなぞるように撫でた。
発育の良いむっちりとした脚が、茶系のストッキングに包まれている。
立ちすくんだ脚がたじろいだように揺れたが、吸血鬼は許さない。
パンプスを穿いた脚の甲を抑えつけ、なん度もしつように、くり返し撫でつけてゆく。

さいしょはいつ咬まれることかとおびえ切っていた桃花だったが、
やがて自分の足許にうずくまり脚を撫でつづけている吸血鬼が、
ストッキングの手触りを愉しんでいるのが、ありありとわかった。

「なんていう色?」
吸血鬼は訊いた。
履いているストッキングの色を訊かれることを、
まるでスカートのなかに匿(かく)しているパンティの色を訊かれたように羞じらいながら、桃花の唇がかすかに動く。
「ア・・・アーモンドブラウン・・・」
「ウフフ、きみの脚に似合っているね」
吸血鬼は嬉し気にそう呟いたが、彼女の顔が屈辱に歪むのを認めると、「すまないね」とだけ、いった。

行為はこともなげに始まった。
ひざ丈のタイトスカートのすその下、ふくらはぎのいちばん肉づきのよいあたりに、
飢えた唇が、アーモンドブラウンのストッキングの上から圧しつけられた。
薄地のストッキングを通して、唾液を含んだ唇のすき間から、ヌラリと濡れた舌が、ねぶりつけられる。
薄地のナイロン生地がみるみるうちに、欲情たっぷりなよだれにまみれてゆくのを、
桃花はキュッと瞼を瞑って耐えた。
口許から一瞬だけ覗いた鋭い牙が、若い下肢に埋め込まれる。
アッ・・・
耐えかねたような小さな叫びが、半ば開いた大人しやかな唇から不用意に洩れた。

処女・・・なのだね?
吸血鬼の囁きに、桃花は応えようとはしなかった。

・・・・・・。
・・・・・・。

床のうえにあお向けになった市役所の制服姿にのしかかり、吸血鬼は新任の係長、常川桃花の首すじに、唇を貼りつけている。
ひざ丈のタイトスカートは強引にたくし上げられて、太ももまでがあらわになっていた。
桃花の足許をなまめかしく染めていた茶系のストッキングは、吸血鬼の牙と唇の蹂躙に遭って、派手な裂け目を拡げていた。
裂けたストッキングを履いたままの脚が切なげに、緩慢な足摺りをくり返している。
それ以外に、抵抗のすべをもたないのを嘆くかのようなけだるげな足摺りも、いつか失血のために徐々に動きを止めていった。

欲情に満ちた唇が、健康そうな素肌の上をヒルのように蠢いて、
自分の手に落ちた若い女の柔肌の舌触り、それに体温を、ぞんぶんに愉しんでいる。
こくり、こくり・・・と喉を鳴らして、この潔癖な21歳OLのうら若い血液は、魔性の喉に飲み込まれていった――


その一週間前のこと。
若い市役所職員の里川肇は、市役所の廊下で尻もちをついた格好のまま、吸血されていた。
背中を壁に抑えつけられ、首すじを咬まれている。
太くて鋭い牙は、男の首すじをなんなく食い破り、ワイシャツの襟首を血で汚しながら、
傷口のうえに飢えた唇をせわしなく、蠢かせてている。

肇は桃花の婚約者だった。

吸血鬼はキュウキュウと不気味な音をたてながら、肇の生き血を啖(くら)い取っている。
「あー・・・、あー・・・」
微かに洩れる悲鳴をなだめるように、吸血鬼は肇の髪を丁寧に撫でつけている。
男にしては、長めの髪だった。
失血のせいか、肇の上半身は力を喪い、横倒しに倒れていった。
それでもなおかつ、吸血鬼は肇の血を吸いやめようとはしなかった。
今度はスラックスのすそを引き上げて、ヒルのように貪欲な唇を、肇のふくらはぎに靴下のうえから吸いつけてゆく。
破けた靴下に生温かい血がしみ込むのを感じながら、肇は意識を薄らげていった――

「ぼ、ぼくの靴下を破いたみたいに――」
肇は、喘ぎ喘ぎ、いった。
「桃花さんの穿いているストッキングを、いたぶろうというおつもりですか・・・?」
「もちろんだ」
吸血鬼は、しずかにいった。
「わかりました・・・」
肇はうなだれた。けれどもけなげにも、彼はいった。
「桃花さんのストッキング――ほかのやつに愉しまれてしまうのは悔しいけれど・・・
 彼女が恥ずかしい想いをしながら破かれてしまうのなら・・・せめて存分に愉しんでくださいね」

「理解のある男だな、きみは――」
吸血鬼は、貧血でくらくらとしている肇の頭を抱きとめてやり、しみじみとつぶやいた。


変わった青年だった。
都会の大学を出て当地に赴任してきて、同じ職場の桃花と知り合った。
市が吸血鬼集団に屈してしまったことを知りながら、彼は内定辞退者が多く出るのをしり目に、予定通り職員に採用された。
半年ほどの交際期間を経て桃花と婚約したころにはもう、
役所の職員のうち既婚者の半数は妻を吸血鬼に食いものにされていたし、
女子職員もその三分の一が、吸血鬼を相手に処女を喪失したとうわさされていた。

「わたし、吸血鬼に咬まれちゃうかもしれないですよ。
 咬まれたら夢中になって、あなたどころじゃなくなっちゃうかもしれないですよ。
 処女だって奪(と)られちゃうかもしれないし、でも拒んだらダメっていうし・・・
 奥さんになるひとがそんなふうになっちゃっても良いんですか?」
交際を申し込んだとき桃花はそういって、いちどは肇の求婚を辞退した。
けれども肇はあきらめなかった。

彼らは人間の女性と、結婚することはできないそうだ。
だから、きみを見初めた吸血鬼がいたら、教えてほしい。
ぼくはそのひとと何としても仲良くなって、
もし望まれたなら――きみの純潔をよろこんでプレゼントするくらいの関係になってみせるから――

桃花は目を見開いて、しげしげと肇を見、
けれども彼の奇妙な申し出を笑い飛ばしたりはせずに生真面目に頷くと、彼の求婚を承知したのだった。


「きみの恋人は素晴らしい。処女だった。処女の生き血というものに、久しぶりにありついた――」
桃花の血を吸い終えたあと。
肇をまえに吸血鬼は、舌なめずりせんばかりに随喜の想いをあらわにしている。
「処女だった」
という言い草を耳にした肇は、目の前の吸血鬼が桃花の純潔までも散らしてしまったのかと一瞬おもった。
むろん彼らは、処女の生き血を格別好んでいたし、
品行方正な若い娘をつかまえて、さいしょのひと咬みで処女を奪ってしまうようなことはしないはずだった。
その点は、人妻狙いの吸血鬼とは違っていた。
セックス経験のある婦人は、生娘とは対照的に、いちど血を吸われると例外なく、その場で犯されてしまうのが常だったから。


吸血鬼が市役所の女子職員や職員の妻を襲った後、
その婚約者や配偶者は、吸血鬼との面談することを義務づけられていた。
吸血鬼たちは、彼女たちのパートナーをも征服し、支配することを望んでいたからだ。
妻を犯されたことに不満を持ち、いうことを聞かない夫がいたら、その場で血を吸い尽くして、
「きみを妻の愛人として、よろこんでぼくの家庭に迎えよう」というまで、放さないのだった。
彼らの牙の犠牲となった女たちの男性パートナーたちは、
目のまえの男が喉の渇きを潤すために最愛の女性の生き血を使用したことのお礼代わりに、
自身にとって大切な女性が、いかに彼らを満足させたかをこと細かに聞かされるのだった。
残酷すぎる面談だったが、里川はあえて自分から、面談を希望した。

「では、桃花さんの生き血は貴男のお気に召したのですね?」
肇は目を輝かせて、吸血鬼にいった。
「きのうきみの身体から吸い取った血と、さっき桃花の素肌から抜き取った血とが、
 わしのなかで仲良く織り交ざって、脈打っておるのだよ」
しずかにこたえる吸血鬼の言い草に、肇は股間を熱く火照らせてしまっている。
マゾの血が、ぼくの身体のすみずみまで脈打っている――
肇はそんなふうに感じた。


「常川くん、献血の用意はできているかね?」
課長に声をかけられた桃花は、「ハ、ハイ!!だいじょうぶです」と反射的に返事をかえしたが、
その場に肇がいるのを認めて顔を赤らめた。
通りかかった年配の女性事務員が桃花に笑いかけて、
「用意がいいね。パンストも、新しいの穿いてきたんでしょ?」
と、からかった。
桃花は真新しいパンストの脚を伸ばして、照れ笑いした。
吸血鬼に気に入られたアーモンドブラウンのパンストが、
ピチピチとはずむうら若い下肢に、つややかな光沢をよぎらせている。
わざと肇のほうは見ないで、桃花は席を起った。
女性係長の責務をまっとうし、若くて健康な血液を提供するために。


桃花が戻ってくるまでの時間が、ひどく長く感じられた。
ゆうに2時間は経っただろうか?
もしや桃花は、興が乗るあまりに犯されてしまったのではないか?
まさか、市庁舎のなかでそんな不謹慎なことを――と思い返してはみたものの、
そのようなことはすでに常識となりつつある昨今では、全くないとは言い切れなかったのだ。

吸血鬼は確かに、桃花の処女は結婚するまで守り通す――と約束してはくれた。
けれどもそんなものは、きっとどうにでもなってしまうのだと肇は知っていたし、
かりに桃花の処女が彼の手で早々と汚されてしまったとしても、桃花とは予定通り結婚するつもりだった。
汚された花嫁の手を取って華燭の典を挙げる――
そんな想像に、マゾヒスティックな想いが、ゾクゾクとこみあげてしまうのだった。
自分の理性がマゾの血で毒されつつあることを、肇はもう恥ずかしがってはいなかったし、
むしろそんな自分こそ桃花の花婿にふさわしいのだと感じていた。


「やっぱり私、婚約を破棄させてもらうわ」
桃花の声は冷たく、透き通っていた。
え――
肇は天を仰いだ。
いちばん聞きたくない言葉だった。
どうして?ぼくだったら、すべてを許すのに・・・
口にしかけた想いは、言葉にならなかった。彼は自分の意気地なさを呪った。
「私、一人の人にしか夢中になれない人だと思う。
 いまのように中途半端な気持ちだと、あなたにも、吸血鬼さんに対しても、いけないことだと思ってる」
桃花にとって、彼女の血を日常的に愉しんでいる吸血鬼はもはや、至高の存在だった。
なので、自分自身だけのことではなく、「彼に対しても申し訳ない」と言われてしまうと、さすがの肇も返す言葉がなかった。


「なんとかなるじゃろう」
吸血鬼は肇にいった。
まだ貧血でくらくらする。
肇もまた、時折吸血鬼の誘いに招かれて、彼の館で血を提供する関係になっていた。
身にまとっている服は、桃花のものだった。

もちろん、桃花自身から借り受けたのではない。
吸血鬼が桃花との逢瀬を楽しんだとき、
桃花の身体から剝ぎ取って自分のものにした服を肇に着せて、
肇を桃花に見たてて吸血を愉しんでいるのだ。
それでも、いちど別れてしまった桃花がそばにいるようで、肇は満足だった。
見覚えのある服も袖を通したし、初めて見る服もあった。
桃花がプライベートでどんなファッションを楽しんでいるのかを、彼はこういう形で知っていたのだ。
身に着けた服は吸血鬼に返したが、桃花本人をゆだねてしまうような気持になった。
吸血鬼は桃花と逢うたびに服を取り替えさせているらしく、
肇は桃花の服をなん着も、愉しむことができた。
いちど肇が身に着けた服を着て、桃花が市役所に出勤してきたときには、
思わず股間が熱くなって、そそくさと部屋からトイレに直行したことまであった。

吸血鬼の舌でしつように舐めまわされた足許からは、
桃花の代わりに穿いていたストッキングがむざんに裂けて、
その裂け目から肌に直接触れる外気が、そらぞらしいほどに冷ややかに感じる。
桃花はこんなふうにして、彼を満足させているのか・・・
嫉妬で狂いそうになったが、それでも彼は桃花になり切って、吸血鬼にかしづくのだった。
桃花の服を身に着けて吸血鬼に抱かれることが、桃花が彼を裏切る行為をなぞっているのだとわかっていながら、
肇は桃花の恋人の欲求を拒むことをしなかった。

「桃花はわしの牙に惑うて、お前を捨てた。
 わしはお前から桃花を奪った。
 じつはお前は――恋人を奪われてみたかったのではないか?」
鋭い見通しに足許を震わせながら、肇は頷いてしまっている。
そうなのだ。
恋する人を奪われたい。
もっともみじめな形で、皆に暴露されてしまうような形で、婚約者を寝取られ奪われる。
勤務中、上司が桃花をからかって、今夜は彼氏とデートかい?と冷やかすと、
桃花は人目を憚らず照れ、羞じらった。
周囲の男女も、桃花が彼氏を乗り替えたのだと知りつつも、「ふぅ~ん、お幸せに♪」などと、いっしょになって冷やかしている。
だれもが、肇が婚約までした恋人を吸血鬼に寝取られたのを知りながら、桃花の新しい恋を祝福しているのだ。
呪わしい光景。呪わしすぎる光景。
けれども――
そんな惨めな風景のなかで、どうしてぼくは恥ずかしい昂ぶりから逃れることができないのだろう?

自分を襲った悲運に、肇はいちはやく反応して、
ナイフのように心臓をえぐる悲しみは、すぐさま心の奥底からの歓びに変わっていた。
吸血鬼はいった。
「このままで済ますつもりはない。
 お前は、わしが捨てた桃花ともういちど、縁を結ぶ。そして今度こそ、ふたりは結婚する。
 だがな――そのあとのことはむろん・・・わかっておるぢゃろうの?」
ほくそ笑む吸血鬼の顔つきが憎たらしいほどに、図星を刺してしまっている。
「お礼は・・・もちろんいたします・・・」
桃花に扮した肇は、桃花になり切ったかのように、女奴隷のような科白を口にしてしまっている――


「ほんとに・・・いいの?」
きまり悪そうに、桃花は口ごもる。
「もちろん、最初からそのつもりだったから」
いつも引っ込み思案な肇のほうが、むしろずっと、歯切れがよかった。
きみを寝取られたくてたまらないんだから――とまでは、さすがにいえなかったけれど。
桃花が再び戻ってきたことに、彼の血管の隅々まで、歓びがいきわたるのを感じていた。
「でもあたし、あの人に襲われたらまた、随っちゃうよ。たぶん今度こそ、征服されちゃうからね」
肇はもう、負けていない。
「できればぼくのまえで――征服されてほしいんだ」
上ずった声に、桃花はプッとふき出していた。
「ほんとうにあなた――マゾなのね」


華燭の典は、とどこおりなく挙げられた。
その前の晩、桃花は肇の立ち合いのもとで、吸血鬼を相手に処女を捧げた。
鼻息荒くのしかかる吸血鬼の劣情に組み敷かれ、踏みにじられるような初体験だった。

なにも知らない両親が当地に向かっているあいだに、
彼らが自家に迎え入れるはずの花嫁はすでに、その身体に不貞の歓びを覚え込まされていた。
けれども桃花もまた、すでになん度も口づけを交わし合った情夫を相手に、息を弾ませて応じていって、
明日着るはずだった純白のウェディングドレスを精液まみれにされながら、
花婿を前にしての不貞に、明け方まで興じたのだった。

明日は花嫁となる桃花が、清楚なるべき盛装をこの暴君のために身に着けたいと願った時、
肇は、彼女の嫁入りが一日早まったことを理解した。

明日の華燭の典のヒロインが、
嫁入り前の白い肌を惜しげもなくさらして、
イタズラっぽい笑みさえ泛べながら、
おずおずと身体を開いていって、
市役所の係長としての責務を全うしてゆくのを、

吸血鬼が桃花がきょうまで守り抜いてきた純潔を容赦なく汚し、
蹂躙し、
しんそこたんのうし、
心まで奪い取ってしまうのを、

肇は目を輝かせ、昂ぶりに息を詰まらせながら見届けていった。

花嫁の婚礼衣装を精液で彩られてしまった新郎はその晩、
新居の畳や床までも、おなじ精液で濡らすことを承諾させられた。
もちろん悦んで、承諾してしまっていた。


「わしの兄がな、肇の母上のことを見初めおった」
婚礼の席上、ひな壇に陣取る肇にビールを注ぎに行くふりをして、吸血鬼が肇に囁いた。
え・・・?
肇はさすがにびっくりして、吸血鬼を視た。
「安心しろ、うまくやる。
 ぢゃが、事前に息子である新郎殿の了承を取ってから誘惑したいと、兄が申しておる」
――それが、ぼくに礼を尽くすということなのだろうか。いや、きっとそうに違いない。
肇はそう感じた。そして、彼の直感は正しかった。
なにもりも夕べ、吸血鬼が桃花の肉体を隅々まで味わい尽くしていったとき。
桃花の身体を、心を、ぞんぶんに愛し抜いていたことを肇は知っている。
たんなる性欲の処理行為などではなくて、
この吸血鬼は桃花のことを、しんそこ愛してしまっているのだ。
吸血鬼は花婿の目の前で桃花の純潔を辱め抜き花嫁への深い愛を示すことで、肇に対する礼儀を尽くし、
自身の花嫁が目の前で辱め抜かれるのを目の当たりにすることで、肇は吸血鬼への礼を尽くしていた。

礼服の股間が逆立つのを感じながら、肇は囁き返した。
「父のことを傷つけないのなら――」
「肇は優しい息子だな。心得た。お父上の名誉は尊重しよう」
――ぼくの名誉も尊重したくせに、桃花を犯したんですよね?
肇はクスッと笑い、吸血鬼をにらんだ。
さっきからお色直しで席を外している花嫁の白無垢姿を追いかけていった吸血鬼が、
花嫁を控室で押し倒し、さんざんにいたぶってきたことを、肇は知っている。

「妹御には、許婚がおられるのぢゃな」
「妹まで牙にかけるおつもりですか」
「むろんぢゃ。処女が好みなのは存じておろうが」
「ははー、かしこまりました。どうそ妹の純潔も、ぞんぶんに味わってください。ご兄弟♪」
妹婿になるという男とは、この場が初対面だったから、肇はさほどの同情を抱かなかった。


お色直しのたびに、吸血鬼は姿を消した。
花婿も同時に、着替えと称して座をはずした。
むろん考えることは、ひとつだった。
夕べ精液にまみれた純白のウェディングドレスは、花嫁控室のじゅうたんを彩り、再び花婿ならぬ身の精液に濡れた。
カクテルドレスに着かえた時も、いっしょだった。
新郎新婦の入場で、腕を組んで傍らに立つも桃花が、ドレスの裏側を白く濁った粘液でびっしょり濡らしているのを思い描いて、
肇はかろうじて勃起をこらえていた。

「白無垢のときね、あのひとに懐剣抜き取られて、もう身を守るすべがないのねって、すごくドキドキした」
ふたりして戻った婚礼の席で、新婦は新郎にそう囁いた。


肇の父の名誉を尊重するという約束を、吸血鬼の兄弟は律義に守った。
そのために、彼らはいささか込み入った筋書きを用意した。
最初は、肇の妹が狙われた。
「少しもったいなかったがね、他所の土地から来たものは、一発でキメちまったほうが良いのさ」
とは、吸血鬼の言い草。
夕べ新妻の桃花の処女を食い散らしたぺ〇スは、愛する妹の純潔までも、初めての血にまみれさせたのだ。
気の強い妹は、強姦されたときに引き裂かれたストッキングを穿き替えると、
気丈にも何事もなかったような顔をして席に戻り、
それ以後は彼氏の問いかけにも応じないで、式のあいだじゅう、ずうっと黙りこくっていた。
潔癖だったはずの股間を、淫らな毒液が浸潤してしまうのは、時間の問題だった。

そのつぎはいよいよ、彼の兄が肇の母を狙い想いを遂げる番だった。
肇の母の名は、登美子といった。
兄弟は、性格がよく似ていた。
両親の部屋に忍び込むとき、
「あの部屋を出るころまでには、あの女のことを登美子と呼び捨てにすることを、
 きっとご夫君から許されておることぢゃろう」
と、豪語した。

式がはねて、その晩泊る部屋に戻った肇の両親は、そこで吸血鬼の訪問を受けた。
くしくもその部屋は、昨晩当家の嫁が身持ちを堕落させたのと同じ部屋だった。
吸血鬼はおだやかに、夫妻に祝いの酒を進め、酔うままに打ち解けるままに、
自分の弟が新婦を挙式前から誘惑しつづけてきたと語り、
そして首尾よく、新郎の寛大なる理解と手助けを得て花嫁の純潔を手に入れたことを暴露した。
そのころには毒液を含んだ美酒は夫妻の血管を駆け巡り、理性を犯され始めた肇の父は、
息子が悦ぶことでしたら、それはけっこうなことですなどと、応じてしまっていた。
つぎは貴方の番ですよ――吸血鬼は意地悪く笑う。
貴方のまえで奥方を誘惑したい、黒留袖の帯というものをいちど、ほどいてみたい――とせがまれて、
せがまれるままに断り切れず――
腰の抜けてしまった肇の父は、うろたえる妻が着物の衿足をくつろげられて、帯を手ぎわよくほどかれてゆくのを、目の当たりにする羽目になった。
いけませんわおよしになって、主人のまえでと戸惑う声は、ディープ・キッスでふさがれてゆき、
肇の父も熱に浮かされたように、家内の貞操を貴方に差し上げますと誓ってしまっていた。

うろたえる夫。
うろたえる妻。
脱ぎ放たれた黒留袖を下敷きに獲物を組み敷いて、鼻息荒く迫る吸血鬼。
妻の黒留袖姿をまえに、
飢えた吸血鬼が行儀悪くよだれをしたららせながら襲い掛かるのを、
夫君はもはや制止しようとはしなかった。

そんなふうにして。
肇の父は惜しげもなく、長年連れ添った妻の貞操を、思い存分散らされていったのだ。

夫しか識らなかった股間はいかにも無防備で、
度重なる遠慮会釈ない吶喊に、分別盛りのはずの婦人の理性は、いともかんたんに崩れ落ちていった。

齢相応の分別というものをすっかり蕩かされた登美子は、
情夫に自分を呼び捨てにするのを許し、夫にも許してほしいと懇願していた。
彼の豪語は実現したのだ。
そして明け方になるころにはもう、今夜が自分にとっても婚礼だったのだということを思い知っていた。

夫君は気前良くも、きみと登美子は似合いのカップルだとふたりの仲を祝福し、
もはや登美子はきみのものだ、もしもきみが登美子をわたしから奪うというのなら、わたしは悦んできみの意向に随おう、
最愛の妻の名字を、きみの名字に置き換えてもかまわない――とまで申し出た。
しかし吸血鬼は、登美子をわしの奴隷にすることはのぞむところだが、
ご夫君のご令室のまま愛し抜き辱め抜きたいのだと希望した。
妻を犯された夫君が、吸血鬼の申し出を歓んだのは、いうまでもない。
こうして吸血鬼は結果的に、夫君の名誉を守ったのだった。

こうして吸血鬼の兄弟は、かたや弟が花嫁の純潔を勝ち得て、
つづいて兄が翌晩に、嫁の不貞を最も咎めるべきはずの姑の貞操を、辱め抜くことに成功したのだった。

夫君にも、褒美が与えられた。
最愛の妻の貞操を惜しげもなくプレゼントしたのだから、当然その資格があると、吸血鬼の兄弟はいった。
褒美とは、彼らが伴ってきた愛娘のことだった。
そう――夫君は心の奥底で、自分の娘を犯したがっていたのだった。
夫妻の血を吸い取ることで夫君の禁断の願望を悟った兄の吸血鬼に促されて、夫君は自分の娘を、その許婚の目の前で抱いた。
着飾ったよそ行きのドレスを反脱ぎにされて、肌色のストッキングを片方、ひざ下に弛ませたまま脚をばたつかせる彼女を前にうろたえる許婚に、肇はいった。
ぼくも夕べ、きみとまったく同じ体験を愉しんだのだ――と。
妹の許婚は、婚約を破棄することをあきらめて、未来の花嫁のために吸血鬼の愛人を新居に迎え入れることに同意した。

花婿二人は、獲物を取り換え合う獣たちを前に、
自分の花嫁がイカされてしまう光景にはらはらしつつも、
記念すべきその一日を、白昼の情事で極彩色に染めたのだった。


あとがき
お話、大きく前編と後編にわかれます。
前編は、結婚を控えた桃花が吸血鬼に狙われて、婚約者を裏切ってその餌食になるお話。
後編は、桃花と吸血鬼との関係を受け容れた肇の母親が婚礼の後、夫のまえで嫁の情夫の兄に犯されて、奴隷になってしまうお話。
まとまりのない話になってしまいましたが・・・どちらも好きなプロットです。^^

妻を汚されるということ。

2022年08月18日(Thu) 01:48:48

役所の車は、私用に使われることがある。
もちろん所属長が認める限りのことなのだが。
多くの職員たちはひっそりと、私用届を上司のもとに持ち届け、
上司たちは感情を消した顔つきで、しゃくし定規に判を捺す。

許可をもらった職員は、職員専用の駐車場から車を出して、自宅へと差し向ける。
そこにはよそ行きのスーツやフェミニンなワンピースに着飾った妻が待ち受けていて、
夫は華やかな装いの女を、助手席に乗せる。

行先は、街はずれのラブホテル。
あるいは、さらに鬱蒼と静まり返った古屋敷や、荒れ寺。
そこには若い女の生き血に渇くものたちが、自らの慰めを携えてくるものたちを、今や遅しと待ち受ける。

ホテルのフロントに二言三言囁くと、指定された部屋番号を告げられて。
職員は自身の妻を伴って、ドアをノックする。
そこに待ち受ける黒い影は、まず夫に襲い掛かると、首すじにかぶりついて、
息をのんで立ちすくむその妻の目の前で、夫の生き血を吸い取ってしまう。
生気を抜かれた夫が、からになったビール瓶のように客室のじゅうたんんじ転がされると、
こんどはその妻が、ベッドのうえに放り込まれて、
着飾ったブラウスを引き裂かれ、スカートをむしり取られ、ストッキングをいたぶり尽くされながら、
うつらうつらしている夫の目の前で身ぐるみ剥がれ、
引き裂かれたブラウスの襟首を持ち主の血で散らしながら首すじを咬まれ、
脚にまとうストッキングをブチブチと剝ぎ堕とされながらふくらはぎを咬まれ、
しまいには白肌をさらけ出して、犯されてゆく。

さいしょはまぐろのように横たわったまま、吸血鬼の凌辱を受け容れるがままだった妻たちも、
やがて夫の咎めるような目線に慣れ始めると、
しだいしだいに打ち解けていって、
着衣もろとも辱めようとする自身の愛人たちのけしからぬ趣向に、
わざと拒んだり嫌がったりしながらも応接するようになっていって、
しまいには夫の名前を叫びながら、よがり狂ってしまうのだった。

自分の妻が、ベッドのうえで、ほかの男を相手に娼婦のように振舞って、
結婚記念日にプレゼントしたスカートのすそを精液に浸し抜かれたり、
家の名誉を汚す淫らな粘液を、喉いっぱいに含まされたり、
主人のよりいいわぁ・・・などと、はしたない言葉を強制されるのを、
そのうち自分から口走るようになってゆくのを、見せつけられる。

妻たちが装い、唾液で汚され掌で引き裂かれ、辱められてゆくスーツやワンピースは。
かつて、結婚記念日や誕生日に、夫が自分で稼いだ金でプレゼントしたものだということを、
妻もそして吸血鬼どもも、よく心得ている。
夫たちは――自分の稼ぎで装わせた妻たちの貞操を、彼らにプレゼントすることを強いられているのだと。
いやでも自覚する羽目となる。

もはや理性を奪われた妻たちが、
四つん這いになった背後から、なん度もなん度も熱く逆立つ逸物をぶち込まれたり、
あお向けになった情夫の上にまたがって、自分から腰を使ってひーひー悶えながら髪をユサユサ揺らしたり、
間断ないまぐわいも、お互い息がぴったり合って呼吸を弾ませ合ってゆくのを見せつけられるなど――
結婚した当初には、予想もつかない仕儀であった。

夫たちは知っている。
これは妻たちから、罪悪感を取り除くための儀式なのだということを。
そしてじっさいには、
妻たちは自分たちの勤務中、家族の目を盗んで、夫の知らない密会を始終愉しんでしまっていることを。

ご念の入ったことに。
そうした事実を教えるために、妻の情夫たちはわざわざ夫に内密の連絡をとって、
留守宅に忍び込んだ夫婦のベッドの上や、
つい昨日夫のまえで見せつけたばかりのホテルの一室や、
時には街の人々が行き交う通りに面した草むらで、
彼らの妻の脚を、ストッキングの舌触りを愉しむように意地汚く舐めまわしたり、
しっかりとした肉づきをしたうなじに、舌をからませてみたり、
血を吸われることにも犯されることにも慣れ切った身体を、思い存分に弄ぶのだった。
夫たちもまた。
彼らの招待をこころよく受け入れて。
いつの間にか、最愛の妻が娼婦のようにあしらわれ、愛し抜かれてゆく有様を視る歓びに、目を眩ませていくのだった。

正の字。

2022年08月18日(Thu) 01:25:14

ひところ300人を数えたという市役所の職員は、今や200人ほどに減っていた。
なにしろ――吸血鬼に支配された街である。
相当数の市民が転居してしまい、それにつれて職員も離脱するものが相次いだ。
とうぜんのことだろう。
自分の妻や娘が吸血鬼の毒牙にかかって平気だという男のほうが、まれではないか。

けれども――すでに多くの男たちが咬まれ、吸血鬼に心酔してしまっているこの街で。
妻の貞操や娘の純潔を守り抜こうとするものは、すっかり少なくなっていた。

市役所の玄関に、奇妙な掲示がされるようになったのは、そうしたころのことだった。
正の字が、控えめな筆跡で、一本また一本と、引かれてゆく。
足取り鈍く出勤してくる職員たちが、人目をはばかるようにひっそりと、一本また一本と、正の字を引いていくのだ。
前の晩襲われた人妻や娘の数を、意味していた。

体重の約8%が血の量だと言われている。
そのうち20%も喪うと、生命にかかわるという。
だから、体重が40kgの女性だと、640mlほどが限界だということだ。
吸血鬼たちは、女性たちの生命を損なう意思はない。
なので、それ以上の血液をひとりの女性の身体から啜り取るということは、まずない。
もっと多くの血を彼らが欲する場合には、彼女の夫や娘が、餌食となる。
いちど彼らの牙の味を識ってしまったものは皆、彼らの毒に酔いしれるようになってゆく。

正の字の数からすると。
夕べ職員やその家族の体内から喪われた血の量は、20ℓにものぼった。
ひと晩のうちに、40人もの女性が、彼らの牙に弄ばれた――否、献血に協力し職員としてのキムを果たしたことになる。
夫よりも遅れて登庁した市長夫人もまた、純白のスカートのすそをしゃなりしゃなりとさせながら、誇らしげに棒を一本、引いていった。

数々の掌によって引かれた、ぶかっこうな正の字には。
一本一本に、夫たちの想いを載せている。
一本一本に、淫らに堕ちていった女たちの喘ぎが、込められている。

回りくどい告白。

2022年08月18日(Thu) 00:24:42

市長の奥さんが、吸血鬼の餌食になった。
三上の言葉に妻の優里恵は言葉を失った。
意思を喪った といっても良いかもしれない。
それくらい優里恵は、夫の上司の夫人に心酔していた。
いや、おそらくは――
この狭い街の住人のほとんどが、この高雅なトップレディを崇拝していたといっても過言ではなかった。

でも・・・そんな・・・
戸惑う優里恵にとどめを刺すように、三上はいった。
市長も、二人の仲をお認めになっているそうだ。
ご覧――
三上の指さすほうに目をやると、純白のスーツ姿の婦人が、見知らぬ男と語らっているのがみえた。
洋装のスーツを和服のような奥ゆかしさで着こなす人は、たぶんあのひとしかいない。
相手の男は市長夫人の肩にそっと手を添えると、夫人はすんなりと頷いて、すぐ目の前のビルへと消えた。
ラブホテルのロビーだった。

献血するときに、彼らが専用に使用しているらしい。
三上は妻に囁いた。
優里恵も・・・なん人かの人妻仲間から、そのことは聞き知っていた。
彼女の周囲でも、吸血鬼に身を許す人妻が続出していたのだった。

こっちへおいで。
三上は優里恵を、路上に連れ出した。
陽射しのまっすぐな表通りを、夫婦肩を並べて歩いていると、優里恵は少しだけ、冷静さを取り戻した。
けれども、彼女が取り戻しかけた理性はすぐに、もうひとつの情景のまえに、粉みじんに砕かれることになる――

こっち、こっち。
まるでいけないものをのぞき見しようとする悪い男の子のような顔をして、夫は優里恵をいざなってゆく。
たどり着いたのは、市役所近くの公園だった。
広々とした公園は緑が豊かで、街なかにあるとは思えないほどの奥行きを感じさせ、市民の憩いの場となっている。
三上はその公園の入ってすぐの片隅の、芝生の奥へと足を踏み入れてゆく。
遊歩道から離れ、あまり人のいない一角だった。
生垣の向こうに、優里恵は異変を感じた。
なにかまがまがしい気配が、どす黒く蠢いていた。

視て御覧。
夫に促されるままに生垣の向こうを覗き込んだ優里恵は、はっと足許をこわ張らせた。
肌色のストッキングに包まれた豊かな肉づきを、三上は我妻ながら惚れ惚れと盗み見る。
硬直しきったふくらはぎは、やや硬く筋ばっているようにみえたが、
それがまたカッチリとした輪郭をきわだたせ、四十にはまだだいぶある女の肉づきを、艶めいたものにしていた。
このふくらはぎに遠からず、吸血鬼の牙が食い込むのだ――
忌まわしい想像にそれでも三上は、歪んだ昂ぶりを覚えずにはいられない・・・

見開かれた優里恵の眼は、生垣の向こうの情景にくぎ付けになっている。
それもそのはずだった。
そこにいたのは、見知らぬ男と、官舎では向かい合わせに住む、町村助役の夫人・規美香の姿があった。
規美香とはしばしば行き来があり、つい先日も連れだって、デパートに買い物に行きランチをしたばかりだったのだ。
しかしそこに横たわる女は、いつもの快活な規美香ではなく、別の女だった。
きちんと着こなした上品なスーツを惜しげもなく着崩れさせて、
はだけたブラウスから覗く胸は、取り去られたブラジャーを押しのけるようにして豊かに熟れた乳房をあらわにし、
スカートを脱いでこれまた惜しげもなく曝された太ももの周りには、
ずり降ろされたストッキングがふしだらな弛みを波打たせまとわりついている。
淫らな吐息もあらわに戯れる、娼婦のような女――
それが目の前にいる女だった。
助役夫人の首すじには、バラ色のしずくを滲ませた咬み痕がふたつ、綺麗に並んで付けられている。

びっくりした?
夫の問いに頷き返すことさえ忘れて、優里恵はふたりの痴態から目を離すことができなくなっている。
白昼、陽射しの照りつけるさなか。
慣れ親しんだ同性の友人が、それも夫の上司である助役夫人が、見知らぬ男と痴態に耽り、別人のように乱れ果てている。
ショッキングな光景は優里恵の脳裏に狂おしく灼きついて、声を発することも、知人のふしだらをとがめることも忘れ果て、
その間に彼女の理性はまるで紅茶に沈んだ角砂糖のように、脆くも崩れ果てていくのだった。

幻惑された。そういってよかった。
忘れられない光景だった。あのひとが、規美香夫人が、夫のいる身で娼婦になり果てるなんて。
さりげなくさらけ出された、自身よりも秀でているように映る肢体が、男の逞しい体躯に、白蛇のように絡みつく――
スカートの奥に秘めた下腹部に、なにかがジワリとしみ込むのを、彼女は感じた。

行こう。
囁く夫の言に随って、彼女はわき目も振らずに現場から離れた。

視たよね?
視たわ。
どう思う?
どう思うって・・・ふしだらだわ。
愛し合っているとしても・・・?
そんな馬鹿な。
人の心は、裏まで見通せないものだからね。
いつも子供っぽいと思い込んでいた夫の声音が、どことなく深々と、優里恵の胸に食い込んだ。
視て御覧。
もういや。
でも、もういちどだけ――
彼方になった生垣の向こう、男女はすでに起きあがっていた。
そして優里恵は、もういちど、目を見張ることになる。

どこから立ち現れたのか、そこには規美香の夫・町村助役の姿があったのだ。
勤務の中を抜け出してきたのか、助役は夫と同じく背広姿だった。
彼は、さっきまで自分の妻を犯していた男と和やかに言葉を交わし、男もまた慇懃に、助役の声に応じている。
なにを話しているのかまでは聞き取れなかったが、二人がそう険悪な関係でないことは、容易に伝わってきた。
ご主人何も知らないの・・・?
優里恵が夫にそう囁こうとしたとき、その唇は凍りついたように止まった。

町村助役のまえ、男は規美香を我が物顔に引き寄せると、優しく抱き留めて、深々としたディープ・キッスを果たしたのだ。
夫である助役は控えめに傍らに佇んだまま、むしろ二人の様子をまぶし気に見つめている。
男は規美香の手の甲に接吻をして、いちどはその場から離れようとした。
ところが助役はふたりの間に入ると、妻と男の手を捕まえて結び合わせるように手を握らせると、
妻に二言三言囁いて――離れていったのは男のほうではなく、助役自身のほうだった。

助役夫人はそのまま、未知の男と腕を組み、まるで恋人同士のようにしてその場を立ち去ってゆく。
向かう先が、さっき市長夫人が不貞の場に選んだホテルの方角だと、優里恵にもすぐにわかった。

視たね?
視たわ。
あのひとは、吸血鬼のなかでも四天王と呼ばれるほどの大物なんだ。
日常的に献血に応じてくれるご婦人を最低一ダース必要とする、精力絶倫のひとだそうだ。
ご夫婦が散策しているところをたまたまあのひとが見初めて、助役夫人に「奥さんの血を分けてほしい」と望まれたそうだ。
助役はあのひとの奥さんに寄せる好意をかなえてあげることにして、
その晩――奥さんはあのひとの恋人にされたそうだ。

先日市役所で通達が流れてきた。
市長夫人が吸血鬼への献血に応じたことを自分から表明して、
ほかの市役所職員のご家族や女性職員に向けて、献血事業への協力を呼び掛けたんだ。

夫人が堕ちた日は「恩恵の日」と呼ばれることが正式に決定して、
その「恩恵の日」より前に吸血鬼に身を許した女性は、
「軽はずみな娼婦」と呼ばれることになって
市長夫人よりも身持ちの堅かった――つまりまだ貞操を保持している人妻は、
「身持ちの正しい賢夫人」と呼ばれることになったんだ。
だからきみは、「身持ちの正しい賢夫人」ということさ。
まだ、どの吸血鬼にも襲われていないのだろう?

ええもちろんよ・・・優里恵は言いかけたが、なぜかそれは言葉にはならなかった。
そして、夫の言葉は彼女の顔つきを、完全に凍りつかせることになる。

「あのひと、つぎはきみを餌食にと狙っている。きょう、本人から望まれたんだ」

回りくどい告白ね。
すごくすごく、回りくどい告白ね。
優里恵は微笑んだ。微笑もうとした。けれどもうまく微笑むことはできなかった。

市長夫人の行動を夫である市長から教わり、
分別盛りの齢ごろの妻が市民の憩いの場の片隅で「あおかん」に及ぶことを助役から教わり、
そのうえで、きょう受けたという告白を妻に伝える――
うろたえながらもこれだけの段取りを果たした三上のことを、優里恵は有能なやつだとおもった。
有能な職員の妻は、やはり夫に見合った役目を果たさなければならないと、同時におもった。

身体の奥がビクン!と、衝動にわなないた。
恥を忘れて夫のまえで淫ら抜いた規美香の姿が、ありありとよみがえった。
こんどは――私の番だ。
規美香は感情を消した笑顔を夫にむけて、いった。

じゃあ私も、娼婦になっちゃってかまわないのね?
いま穿いているパンスト、あのひとのよだれで濡らされちゃったり、咬み破らせちゃったりしても良いのね?
三十代の人妻の熟れた血――愉しませてあげちゃって、かまわないのですね?

今夜、お招きしようと思う。きみという御馳走を、あのひとに振舞うために――
十二になる娘の由香は、母の家に預けよう。
そして、妻がまだ若いうちjに吸血鬼の牙を、舌を、喉を愉しませる幸運に、俺も浸り抜こう。

十数年連れ添った妻を堕とす段取りを整えてしまった男は、いつか自分の股間をいびつな昂ぶりにゆだね始めてしまっている。

市長夫人、堕ちる――

2022年07月24日(Sun) 23:32:08

壬生川市長の良き相談相手でもある京子夫人が初めて吸血鬼に襲われたのは、あろうことか市長室でのことだった。
その日不幸にも市長は外出しており、京子夫人はがらんどうの市長室で夫の帰りを待つことにした。
がらんどうの部屋、のはずだった。

しかし、市長室にも吸血鬼の追求の魔手は、すでに伸びていたのだ。
若い女性職員が市長室に呼び出され、吸血鬼の頭に生き血を吸われる。
そんなうわさが事実であることを、ミス倭館【わかん】市役所とうたわれた紫桃いずみも奈々邑リカも知っていた。
「吸血鬼保護条例」を発布すると市長は、市役所の全女性職員と職員の妻とを対象に、血液提供者を募ったのだった。
「おまえにも、いつかは出てもらわなくちゃならない」
市長は京子夫人にそう言ったし、京子夫人もまた、夫の志を実現するために、わが身を犠牲にする気持ちを固めていた。
しかし、その日その時のことだとは、市長夫妻は思ってもいなかった。

その日、喉をカラカラにさせた吸血鬼は、いつも若い女性の血液を提供してくれる親切な市長を頼りに市役所にやって来て、
またいつものように、市役所の職員の妻か女性職員をみつくろってもらおうと思い、市長室のドアをノックもせずに開けたのだった。
だしぬけに姿を現した吸血鬼を前に、ものに動じない京子夫人も思わずうろたえた。
その様子を見て取った吸血鬼も、さらにうろたえた。
奥ゆかしいスーツに身を固めた、しっとりと落ち着いた風情の年配女性のその様子に、嗜虐癖をそそられてしまったのだ。

気がつくともう、京子夫人を抱きすくめてしまっていて、
柔肌から伝わるほのかな体温と、着衣を通して感じる豊かな肢体とに夢中になってしまっていて、
がくがくぶるぶると身を震わせながら、夫人の肉づき豊かなうなじに、牙を突き立てていったのだった。


キャー。
はからずもあがった悲鳴はドアの外にも漏れたけれど、
口の堅い市長の側近たちは、なにごとも起きていないかのように執務に励んでいて、
市長夫人を援護するために席を起つものはいなかった。
それから市長が帰庁するまでのあいだの約30分。
吸血鬼に迫られた市長夫人は、わが身に脈打つ熟れた血潮をたっぷりと、魔性の毒牙に浸す難に見舞われたのだった。

さいしょのうちこそ不覚にもうろたえてしまったものの、
もともと京子夫人は、吸血鬼を街に受け容れようとする夫の施策に理解を示し、良き協力者になろうと望んでいた。
彼女は気を取り直すと、わたくしのような年配女性でもよろしいのですかと尋ねた。
吸血鬼は、血に飢えていた。
「あんたの血が欲しい。気が済むまで愉しませていただきたい」
目の前に現れた年配婦人は、彼にとって血液を提供すべき肉体としか、映らなかったようだ。

そんな忌むべき来意を告げられた夫人はそれでもつとめて平静さを装って自分の齢を告げ、
それでもよろしいのですかと相手の気持ちを確かめた。
それでもありがたい、といわれると、
「わたくしは市長の妻です。よろこんでお相手するべき立場におります。
 でもやっぱり怖いわ。手加減なすってね」
と告げた。
「市長の妻」ときいて、吸血鬼はちょっとのあいだ逡巡した。
けれども理性や良識よりも喉の渇きの切実さがまさって、床に抑えつけた夫人の首すじを、もういちど喫(す)った。
京子夫人は観念したように薄い唇から白い歯をしっとりとのぞかせると、目を瞑り、相手の欲求に応じていった。

ひとしきり夫人の体から血を吸い取ると、吸血鬼はわずかに理性を取り戻した。
親友である市長の愛妻を床に押さえつけ、真っ白なスーツに埃をつけることにためらいを覚えた。
「よろしければあちらで」
と、彼は夫人に来客用のソファをすすめた。
しかし京子夫人は、
「ソファを汚しては主人に叱られます」
と固辞して、ジャケットだけを脱いで夫の安楽椅子の背もたれにかけると、
すでに血に濡れていたブラウスはそのままに、床にあお向けにされたままの姿勢で、男の吸血を受け容れた。

夫である市長が戻ってきたときには、京子夫人は夫の親友を相手に吸血行為を許しつづけて、
自身の体内をめぐる血液を賢明にも過不足なく提供し、来客の凶悪な喉の渇きを落ち着かせることに成功していた――


いきなり視界に飛び込んできた夫人の受難のシーンに、市長は驚愕した。
30年近く連れ添った愛妻だった。
それがよそ行きのスーツ姿をねじ伏せられ、
ブラウスに血潮を散らしながら吸血鬼に虐げられている姿を目の当たりにしたのだから、
おぞましさに慄(ふる)えあがったとしても無理はない。

けれども、夫の入来に気づいた夫人は夫を手で制すると、
「もっと早く、このかたの御意に随うべきでした」
とだけ、告げた。

彼は、きちんとした服装の婦人に目がなかった。
首すじに牙を突き立て、ブラウスを持ち主の血潮で染めて、衣装を辱めながら吸血し、
渇きが収まるとおもむろに犯すのがつねだった。
特に、スカートのすそから覗く脛を彩るパンティ・ストッキングは、彼らの好餌となった。
くまなく舐められ、したたかに唾液に濡らされ、舌触りを愉しまれ抜いた挙句、むざんに咬み破られてしまうのだった。

その日夫人は、ごく地味な肌色のストッキングを脚に通していた。
ふっくらとした柔らかそうな肉づきのふくらはぎを、薄地のナイロン生地が優雅ななまめかしさに彩っているのを見ると、
これが吸血鬼の慰みものにならぬはずはない――と、市長は観念した。
ところが吸血鬼は、「こちらのご婦人に恥を搔かせるわけにはいかない」と、己の気に入りの悪戯を愉しむ権利を放棄すると告げたのだ。
帰り道に夫の部下たちに、破れたストッキングの足許を盗み見られるのは、お恥ずかしいでしょうからな――と。

そのひと言が、夫人の態度を和らげた。

折しも、退庁時間を過ぎたころだった。
皆が退庁してしまうまで、わたくし貴方のお部屋で、このかたのお相手を務めさせていただきますね――と、夫人はいった。
吸血鬼は、度重なる市長の厚意に浴してから、彼に友情を感じるようになっていた。
市長は、長年連れ添った愛妻を、彼の友情にゆだねることにした・・・

「たまたま新しいのをおろしてきたの。恥を掻かずにすみましたわ――」
部屋に二人だけとなった相手が、自分の足許を辱めたいとウズウズしているのを間近に気配で察しながら、
京子夫人はこぎれいに装った足許をちらと見やると、そういった。
「どうぞ存分に愉しんでくださいね。この際お気遣いはご無用ですから――」
夫人の心遣いに吸血鬼は惑乱し、ドアの外で待っている市長に悪いと思いつつも、夫人の首すじをふたたび吸った。
彼女もまた、熟した血潮を舐め取られる歓びに、目ざめはじめていた――。

その日夫の執務室で、京子夫人は吸血鬼の望みを受け容れて、
パンティ・ストッキングを穿いたまま、上品に装った自分の下肢を不埒な愉しみに供してゆき、
片脚だけ穿いたストッキングに裂け目が走るのを見つめながらスカートの奥を手荒にまさぐられ、
夫以外のものを識らなかった無防備な股間に、剛(つよ)くそそり立った魔性の一物を沈み込まされていったのだった――


あとがき
優雅な年配婦人が、奥ゆかしく装った服をしどけなく乱されながら、堕ちてゆく――
たまりませんなあ。 ^^

歪められた統計

2022年07月24日(Sun) 22:13:16

柔らかな肌色のストッキングを脚に通して、
つま先にはカッチリと輝く、白のハイヒールに足の甲を反らせて、
コツコツという硬質な足音が、純白のタイトスカートのすそをさばいて、市長室を目指していく。

壬生川京子(56)は、市長の夫人。
そして壬生川市長はいま、畢生の問題に取り組んでいる最中だった。

「減っておりますのね」
低く透き通る響きの声に、市長は振り返りもせず、「ああ」とだけこたえた。
ふたりの視線の行く先には、針広げられた方眼紙のうえに赤い線でなぞられた、折れ線グラフ。
去年の秋をピークにダウントレンドに転じたその折れ線は、今や鎮静の一途をたどっている。
最悪期には、一日百件以上を記録した事案――
それは、吸血鬼に襲われた市民の数だった。


去年の夏が、初めてだった。
下校途中の女子高生が襲われて、瀕死の重傷にまで追い込まれた。
原因は、極度の貧血。
証言から、彼女が首すじを咬まれて、血液を経口的に、それもしたたかに吸い取られたことが判明した。
以来、勤め帰りのOLはもちろんのこと、家にあがりこんでうら若い主婦を狙うものまで現れるしまつだった。
招待されたことのない家には立ち入ることができない――という言い伝えはどうやら本当のようだったが、
彼らのなかには一般の市民も少なからず混じっていて、
そういう者たちが、顔見知りの人妻を目当てにする吸血鬼のため、手引きをしているのだった。

襲われるのは女性が主だったが、男性にも魔手は伸びた。
特に、いちど襲われた女性の夫や父親が、狙われた。
それ以来。男を襲われた一家から、同様の被害届が出されることはなくなった。
特定の女性がなん度も狙われるケースが目だったが、やがてそうした被害届も、出なくなった。


市長の知人の妻が吸血鬼に襲われ血を吸われ始めたのは、去年の秋のころだった。
有夫の婦人、あるいはセックス経験のある女性が襲われると、ほとんどの場合犯された。
ことのついで――ということなのかと、市長は訝ったが、
情報提供に応じてくれた被害者の夫は、どうやら本心から好意を持つらしい――と告げてくれた。
彼らは多くの場合、まっとうな結婚ができない。
けれども、かつては人間であり、暖かい血を体内にめぐらしていた過去を持つ彼らは、人並みに女を愛さずにはいられないのだった。

市民から提出される被害届は、この半年で目だって減っている。
体面や外聞を憚って被害届を取り下げる者もいたが、
もっと別な理由――自分を襲った吸血鬼、あるいは自分の妻や娘を襲った吸血鬼への好意や共感から、
被害届の提出を思いとどまるものが、少なからずいるという。
「自分の奥さんを犯されたのにかね?」
市長はさすがに顔をあげて、知人を見た。
エエそうなんです、と、知人はこたえ、
彼らは大概、犯した人妻のだんなも狙いますからね――と、意味深なことを告げた。

だいぶあとからわかったことだが、血を吸われたもの同士のあいだは、同じ運命をたどった人の首すじの咬み傷が見えるという。
知人は早い段階で咬まれ、妻同様生き血を吸い取られていた。
そして――血を吸われる快楽に目覚めたものたちは、だれもがくり返し吸われることを望み、
自分の妻や娘が生き血を餌食にされ、みすみす犯されてしまうのすら、許容するようになるのだった。


「減っているのは表向きだけだ」 市長がいった。
「わかっておりますわ」 京子夫人がこたえた。
「けれどもこれは、良い傾向なのだ」
市長は自分に言い聞かせるように、いった。

市長は街のあらゆる有力者たちとくり返し会合を持ち、ひとつの結論に達した。それが、去年の初冬のころだった。
知人夫妻を通して透けて見えた彼らの意図は、ごく穏便なものだった。
人の生き血が欲しい。
女のひとを抱きたい。
そうした欲求をさえかなえてくれるのであれば、必要以上に暴れることはない。まして人の生命も奪ったりしない。
それが、彼らの意向だった。
じじつ、いまのところ、吸血事件で命を落としたものはいない。
けれども彼らと対立を深め、吸血行為を弾圧すればきっと、望まざる犠牲者の出現も間近いはずだった。

市長は彼らとの間に、協定を締結した。
彼らの欲望を満たすことを妨げない代わりに、市民の安全を保証してほしい――と。

吸血鬼との協定を独断で結んだことには、激しい反撥がうまれた。
市長は女性の名誉を守らないのか――とまで、糾弾された。
吸血鬼の横行する街に、自分の妻や娘を歩かせたくないという人々が、多く街を捨てた――
いまでは街に残った大概のものが、自分自身や家族の血液を、彼らの渇きのために提供するようになっていた。

さいしょの被害者であった女子高生は、初めて自分を襲った吸血鬼に、純潔を与えたという。
つぎに咬まれた勤め帰りのOLは、自分を咬んだ相手に婚約者を紹介し、ふたりで吸血される歓びに目ざめると、
未来の夫が視ているまえで、小娘みたいにはしゃぎながら犯されていったという。

何よりも。
市長自身が、模範を示さなければならなかった。
彼には、京子夫人とふたりの娘がいた。
50代となっても美しく気品をたたえた京子夫人は、自身が狙われるのと引き換えに娘たちの安全を願ったが、
そうはいかないことはだれよりも自覚していたし、娘たちもまた、健気に母の意向に随っていった。

上の娘はすでに結婚していたが、里帰りする度に、夫には内証で吸血鬼の相手を務めた。
妹娘は通学している女学校の授業中に呼び出され、空き教室で男の味を覚え込まされた。
それでも市長の一家は以前と変わらず睦まじく、何事もないかのように暮らしている――


あとがき
ひどく説明的な文章に。。。 (^^ゞ
つづきは描くかもしれず、描かないかもしれず・・・ (笑)

肉づきたっぷりな脚が、まとうもの。

2022年07月22日(Fri) 00:34:20

「あのひとに、血を吸わせてあげるわね。あなた、妬きもちやくのはアウトだからねっ!」

彼女はそういって、セーラー服姿をひるがえして、ぼくに背を向けた。
そして、ひざ下丈のプリーツスカートをいさぎよくさばいて、大またで歩き去っていった。
濃紺のハイソックスをひざ下まで引き伸ばした、肉づきたっぷりなふくらはぎが、いつまでも目に灼(や)きついていた――

あのハイソックスを、惜しげもなく咬み破らせてしまうのか。
ぼくはしんそこ悔しかったし、彼女の履いているハイソックスを咬み破る権利を勝ち得た男を、しんそこ羨ましく感じていた。


それからどれだけ、刻が経ったことだろう?
「あのひとに献血してきますね。いまさら妬きもちなんか、妬かないでしょうけど・・・」
きみはそういって、よそ行きのスーツ姿を、あのときと同じように背けて、歩み去ってゆく。
えび茶のタイトスカートに狭められた窮屈な歩幅を、もの慣れたようにさばきながら、
奥ゆかしい足取りで、淫らな情事の待ち受ける邸へと、歩みを進めていった。
肌色のストッキングが張りつめたふくらはぎは太く、けれども薄地のナイロン生地のなまめかしさをいっぱいに張りつめさせていた。

あのストッキングを、惜しげもなく咬み破らせてしまうのか。
ぼくはしんそこ惜しいと思ったし、彼女のストッキングをいたぶる権利を勝ち得た男を、しんそこ妬ましく感じていた。

刻が経っても。
齢を重ねても。
変わらぬ想いが、そこにある。
けれどもぼくは、そのつど最愛の彼女を送り出し、
彼女はあの男の欲求を満足させるため、いつもの装いを目いっぱい引きたてて、
背すじを伸ばして、歩みを進める。

彼女が伏せるベッドのうえくり広げられるのは――まごうことなき不倫。
けれどもぼくは、彼女とあの男との営みに、苦情を言いたてるつもりはない。

むしろ思う。
彼女を想うさま、愛して欲しい。
彼を思うさま、抱きとめて欲しい。
ふたりの営みがぼくを裏切る、ぼくの家名を汚す行為だったとしても。
ぼくはふたりの愛の交歓に、心からの拍手を送るに違いない。


あとがき
濃紺のハイソックスに包まれた、健康な輝きに満ちた女子校生のピチピチとしたふくらはぎ。
薄手のストッキングに包まれた、大人の色香を漂わせた人妻の、むっちりと熟れたふくらはぎ。
いずれ劣らぬ脛であっても、齢を隔てれば同一人物の脚――そういうこと、きっとあるのでしょうね。^^

彼女のハイソックス 彼氏のハイソックス

2022年07月11日(Mon) 23:12:10

学校帰りのセーラー服の乙女たちが吸血鬼に襲われて、
ひとり、またひとりと噛まれて、地べたに膝を突いてゆくのを、この街ではだれも、止めようとはしない。
さいぜん品定めされながら血を吸い取られていった少女たちの親たちすらも、
娘たちがそのうら若い血で、吸血鬼の喉を悦ばせているのを、よしとしているようだった。

この街が、吸血鬼と共存を約してから、もう何年も経っている。
いまどき彼らのために、血を愉しまれたことが1度もない女など、たぶん一人もいないだろう。
どうしても妻や娘を穢されたくない。そう考える男たちは、とっくの昔に街から姿を消していた。
残った男たちはだれもが、生命の保証と引き替えに、
妻や娘や母親、それに自分自身の血液さえも、提供することを受け容れている。
妻や娘をかばうため――
夫や父親たちのなかには、自らの妻や娘の服を身にまとい、彼女たちの身代わりとなって血を吸われる者も少なからずいた。


瀬名田少年は、そうした家に育った少年たちの一人だった。
濃紺の半ズボンに、同じ色のハイソックス。
同学年の少女たちと似通った制服の着用が義務づけられていたので、
男子なのにハイソックスを履くことには、なんの抵抗も感じていなかった。

半ズボンから覗くピチピチと輝く彼らの太ももは、しばしば彼らの好餌となった。
「彼ら」は、男女わけ隔てなく、若い血液を求めていた――


学校帰りに立ち寄る公園の、片隅で。
同級生が3人、吸血鬼に迫られている。
おそろいの紺のハイソックスを履いたふくらはぎに、代わる代わる唇を吸いつけられて。
つぎつぎと顔色を蒼ざめさせて、その場に倒れ伏してゆく。
瀬名田少年はその日も、昼さがりの街なかでくり広げられるそんな光景を目にしていた。
いつもの光景・・・
そう見逃してしまうことができなかったのは。
その中の1人が、瀬名田少年の婚約者である波満子だったからだった。

波満子は真っ先に咬まれて、急速な失血に身もだえしながら、紺のハイソックスを咬み破られていった。
残る二人が互いの体温を確かめるかのように身を寄せ合って、それでも順ぐりに足許に唇を這わされて、
飢えた唇がまさぐるように蠢く下で、おそろいのハイソックスを咬み破られて、しなやかなナイロン生地に血を滴らせてゆくのだった。
同じ制服を着た少女たちが、まるで物まねでもしているかのように、
うり二つなしぐさで身を仰け反らせ、ふらつかせ、その場に倒れ伏してゆくのを、
少年はむしろ無感情に、見流している。
彼にとってはだれよりも、真っ先に倒れ伏して身じろぎひとつできなくなっている波満子の様子に、心を100%持っていかれているのだった。

獲物を3人モノにした吸血鬼は、そのうち2人を帰したあと、残るひとりを念入りにいたぶるという。
運わるく、その日残されたのは、ほかならぬ波満子だった。
遠目に注がれた、嫉妬に満ちた熱い視線を。
男は獣のような敏捷さで、察知していたに違いなかった。

ひざ下丈のプリーツスカートは、ユッサリと重く、ひだを豊かに拡げている。
女らしいしなやかさを帯びた下肢を遮る通学用の制服をまさぐりながら、
男はみるみる、波満子の太ももをあらわにしてゆく。

うふふふふふっ・・・

われに返った波満子が尻もちをついたまま後じさりをするのを、
狡猾な蛇のように地を這いながら追いつめて、
怯える足首を掴まえて、とざそうとするひざ小僧をおし拡げて、
これ見よがしに牙をむき出すと、濃紺の制服に包まれて白く映える太ももに、がぶりと食いついてゆく。
さっき彼女のクラスメイトを相手にみせた貪婪さをあらわにして、
キュウキュウ、グイグイと、波満子の血をむさぼり喰らう。
「あ・・・あ・・・あ・・・っ」
うろたえる波満子は再び訪れた急激な失血に目を眩ませて、
まっ白なセーラー服の夏服に泥を撥ねかせて、その場にうつ伏せに倒れ伏した。

ククク・・・
波満子の身体から引き抜いた血潮を牙から滴らせたまま、
男はむぞうさに、波満子の脚を引っ張りあげて、
さっき咬みついたのとは別の脚に、もの欲しげな唇を吸いつけていった・・・


視てるね・・・?
眠るように気絶した少女の、セーラー服の胸もとから顔をあげた吸血鬼は、
生垣の向こうからこちらを窺っている瀬名田少年に、透視するような鋭い視線を送った。
瀬名田少年がおずおずと顔を出すと、彼はいった。
「素直でよろしい」

「もっと視たいのじゃろ?こちらに来るがよい」
吸血鬼は、少年が波満子の許婚であることを知っていた。
「わしが憎いか?」
吸血鬼の問いに、少年はかぶりを振った。
そのしぐさはどうやら本気らしいと、吸血鬼はおもった。
「この娘を気の毒に思うのか?」
それも違う、と、少年はやはり、かぶりを振った。
そう。波満子は嫌がってはいない。
むしろさいしょのひと噛みは、狙われたふくらはぎを自分のほうから差し伸べていた。
「この子のしたことを、お前に対する裏切りと思うのか」
それもやはり違う。少年はまたも、かぶりを振った。
好ぅく、心得ているようじゃな・・・
吸血鬼は、初めて目を細めて、少年に向けた視線を和らげた。

忌まわしいんです。
若い血潮を、身体じゅうから舐め尽くされてしまうだなんて。
でも、貴男がたがぼくたちの血を欲しがっているのも、わかるんです。
だって吸血鬼なんですから。人の血を吸って生きているんでしょう?
いっしょに暮さなければならないとしたら、ぼくたちはやはり、貴男がたに血を提供する必要があるんです。
波満子さんもそう思っているし、ぼくもわかっているんです。
だから――波満子さんはぼくの希望を入れて、ご自身の血で貴男を愉しませているし・・・
ぼくもやっぱり、それを熱望しているんです。
変だと思われますよね?
ほんとうは、人間は吸血鬼と、闘わなければおかしいですよね?

吸血鬼は、少年の背中に腕をまわした。
少年は、拒まなかった。
「きみの脚も、見映えがよろしいね」
「そう思ってくだすって、嬉しいかもしれないです・・・」
「わしに襲われて生き血を吸われる乙女の気持ちが、少しはわかるかの?」
「ハイ、わかります・・・」
「乙女は未来の花婿を裏切ってでも、己の若い血潮を吸わせたがるのじゃ。
 この街の花婿たちは、花嫁が吸血鬼を受け容れるのを、許容しなければならぬ」
「ぼくは、あなたを許容します――」
「許容するだけかの?」
「いいえ・・・」
その・・・その・・・と、少年は言いよどんだ。
自分はいったい、何を言おうとしているのだろう。
男としての誇りを忘れ、伴侶を守る義務を放棄して・・・
瀬名田家の跡取り息子は、家の名誉を穢すような振る舞いを、吸血鬼に許してしまってよいのだろうか?
けれども、少年の理性を支えようとする潔癖さは、すぐに崩れ果ててゆく。
まるで紅茶の中に放り込まれた、角砂糖のように、たあいもなく――

若い女の血を差し上げたくて――
父さんはそういって、母さんを親しい吸血鬼の邸に伴った。
母さんはその晩ひと晩、家に戻ってくることはなかった。
その後も母さんが、父さんに隠れてお邸を訪問しつづけて、
瀬名田夫人としての誇りを放棄するようになったのは、
夫が最愛の妻の貞操を気前よく恵んだ相手だからだったはず。

ぼくは・・・ぼくは・・・
ためらいもなく、父さんの歩いた道を踏み出してみる。
差し伸べた脚から、ひざ下までぴっちりと引き伸ばされた濃紺のハイソックスを、みるもむざんに噛み剥がれてゆきながら。
少年はいつか、恍惚とした笑みを漏らしていた。
失血からさめて、もういちど起きあがった恋人が、セーラー服に着いた泥を気にも留めずに、
おそろいのハイソックスをいたぶられ若い血を啜られる未来の花婿に賞讃のまなざしをそそぐのを。
彼は気恥ずかしく、けれど誇らしく受け止めて。
彼女の花婿をも恋人として篭絡した吸血鬼は、くすぐったそうに受け流すのだった。


あとがき
セーラー服の少女たちが、通学用のハイソックスを他愛もなく咬み破られながら、生き血を愉しまれてゆくのを。
親たちは、そして少女の彼氏たちは、どんな気分で盗み見るのでしょうか?
あり得ない設定であるとはおもうのですが。
この少年のように、そしてこの街の親たちのように、
恋人や娘が吸血鬼との逢瀬を遂げて、処女の生き血への渇望を成就させてしまうのを、
気恥ずかしく誇らしく見守ることも、時にはあるのではないでしょうか・・・

三人(みたり)の乙女を嚙む男

2022年07月11日(Mon) 22:13:40

お揃いのセーラー服の肩を並べて、少女が三人こちらへと歩み寄ってくる。
ゆらゆらと揺れる濃紺のプリーツスカートのすそから、白い脛、小麦色の太ももを覗かせて、
彼女たちは道行く人の目を、眩しく射止めていた。
発育の良い三対の脚たちは、すらりとした脚、太っちょな脚――
さまざまな輪郭を、紺のハイソックスに包んでいる。

「小父さん、来たよ♪」
いちばん背の高い子が、公園の隅のベンチにうずくまるように腰かけた、影のような男に声をかけた。
彼女の胸もとには、学級委員の徽章が、誇らしげに輝いている。
影はぬらりと起ちあがると、紺のハイソックスの脚たちを目にして、ほくそ笑んだ。
痩せぎすでみすぼらしく、こけた頬と枯れ木のような肌の色の持ち主は、
ゆらり、ゆらりとよろめきながら、少女たちのほうへと近寄ってゆく。

「もう、やだなぁ。また脚を狙うのね?」
クラス委員の波満子は、三つ編みのおさげを照れくさそうに肩先に揺らしながら、
それでも足許にかがみ込んでくる男の唇を、妨げようとはしなかった。
男は臆面もなく、紺のハイソックスのふくらはぎに、唇を吸いつけた。
クチュッ・・・と、唾液のはぜる音が、ひそかかに洩れた。
「あ・・・あ・・・」
波満子は遠くを見つめながら、みるみるうちに目の焦点を曇らせてゆく。

第一の少女がくたりとくず折れると、男は顔をあげて、残る二人の少女を見た。
二人は「女史」と呼ばれたクラス委員がみるみるうちに目をまわしてしまうのを息をのんで見守るばかり。
男の口許に、波満子の血が滲んでしたたるのを認めると、
ちょっとだけ怯えた顔つきになって、お互いの身を寄り添い合わせた。
「さあ、つぎは早苗かな?それともかの子の番かの?」
男はたっぷりと獲た生娘の血潮を嬉し気に舐め取ると、
舌なめずりをして、二人のほうへと這い寄った。

ちび助の早苗は、おかっぱ頭の下に伸びた秀でた眉をしかめながらも、
「じゃあ次はあたしかな」と、自分から紺のハイソックスの脚を差し伸べた。
「きょうのやつはちょっと寸足らずだね。ゴメンね~」
と笑うのは。
男がひざ下ぴっちりに引き伸ばした長めのハイソックスを露骨に好んでいるのを揶揄したかったから。
男は「どれどれ」と、早苗の足許ににじり寄ると、
脛の半ばまでしか覆っていないハイソックスを、ちょっとだけ引き伸ばすしぐさをした。
男の悪戯心を敏感に察した早苗は、きゃあきゃあはしゃいで飛びのいた。
寸足らずなハイソックスの口ゴムのすこし上のあたりの、いちばん肉づきのよいふくらはぎに唇を這わせると、
吸血鬼はその唇を、強く吸いつけた。
「アッ、もう!」
さいしょに咬まれた波満子が、男の好みに合わせて脚に通した長めのハイソックスを血で濡らしたままうつ伏している傍らで、
早苗は小柄な体躯を仰け反らせながら、むき出しのふくらはぎから血潮を啜り取られてゆく。
男の口許から洩れた血潮が、ハイソックスの口ゴムを濡らすのを感じると、
早苗は「やったわねえ」と呟いて、男を白い目で睨(ね)めおろした。
ハイソックスを血で汚されまいとした彼女の意図は、彼の痴情を妨げることができなかった。

早苗が失血のあまり尻もちをついてしまうと、一人残ったかの子は、
「もぅ、いつもあたしが最後なんだからあ」と、鼻を鳴らした。
それは不平を鳴らすようでもあったが、同時に得意そうでもあった。
太っちょなかの子のふくらはぎは、吸血鬼の大好物だった。
なによりも。
だれよりもふんだんに血液を供給できる大きな身体を気に入っていたのだ。

わざと身を背けて逃げようとしたかの子を、吸血鬼は後ろから羽交い絞めにして、肉づきの豊かなうなじにガブリと食いついた、。
ピチピチとした小麦色の皮膚が鋭い牙に切り裂かれて、
ドクドクとあふれ出る血潮が男の口許からこぼれて、ぼとぼとと地面を打った。
「あ・・・もったいない飲み方しないで!」
少女は声をあげて抗議した。
吸血されることじたいは、拒まないという態度だった。
男は背後から腕をまわして、セーラー不育の胸もとを引き締める紺色のリボンを揉みくちゃにしながら、
かの子の血を飲み耽った。
自分の体内をめぐる血潮がゴクゴクと男の喉を鳴らすのを、かの子はうっとりと聞き惚れていた――

ふたりの少女の後ろ姿が、セーラー服の襟首を並べて、公園の出口を目指している。
きょうの「ご指名」は、さいしょに餌食となった波満子らしい。
「おうちに帰るまえに――悪りぃがもう少し、楽しませてもらうぞ」
男はにんまりと笑った。
波満子もまた、白い歯をイタズラっぽく覗かせて、笑っていた。

夫婦の夜。

2022年07月11日(Mon) 01:54:43

目のまえで。
妻のかおりが、吸血鬼に抱きすくめられている。
見なれたベーズリー柄のワンピースが皺くちゃになるほど強く力を込めて、
男はかおりのことを放すまいぞといわんばかりに、
ゆるいカーブを帯びたかおりの上半身を、ヒシと掻き抱いている。
彼の腕は枯れ木のように細く、かおりの肩先に喰い込ませた指も、ごつごつと節くれだっていたが、
強い執着がありありと、滲んでいた。

月の光を浴びたふたつの影が寄り添う様子は、あたかも熱愛する恋人同士のようであったけれど、
やつの目当ては、かおりの生き血――
ふつうの恋人同士ではない証しに、
かおrの着ているワンピースの襟首には、持ち主の身体からほとび出た血のりが滲んでいた。
夜目にも白い首すじに牙を突き立てて、
やつはかおりの身に秘められた、24歳の若い血潮に酔い痴れているのだ。

ごく、ごく・・・ぐびっ。
かおりの血を飲み耽る生々しい喉鳴りが、わたしの鼓膜を苛んだ。
まるでレイプでもしているような、荒々しい飲みっぷりだった。
かおりを死なせることはしない。血を吸い尽くしてしまうことは絶対にない。
そうした確信がなければ、わたしは恐怖のどん底に落ちてしまっていただろう。
彼はかおりを、愛してしまっている。
わたしもそれを、認めてしまっている・・・


初めて夫婦ながら襲われたとき。
わたしはかおりを庇って、わたしの血を吸い尽くして良いから、妻には手を出さないでくれと願っていた。
けれども彼は、すでにかおりへの恋情に目がくらんでいて、
わたしの血を吸い尽くすと、飲み終えた空瓶のように放り出し、
それから言葉を失い立ちすくむかおりに、迫っていった。
かおりは立ちすくんだまま、夫の仇敵に求められるままに、うら若い血潮を提供しつづけていった・・・
やつのかおりに情熱はほんものだったのだと、いやというほど思い知らされていた。

恐怖に身もだえするうら若い肢体から、若い血液をしたたかに抜き取ってしまうと、
かおりももはや、わたし一人のかおりではいられなくなっていた。
生き血を吸った人妻は必ず犯す――それが彼らの習性だった。
その日から、かおりはやつの”女”になった。

やつの”女”となりながらも、かおりはわたしの生命を救うことを忘れなかった。
かおりの必死の願いを、やつはあっさりと聞き届けた。
わたしのことを憐れんで――ではなかったと思う。
たんに夫のいる人妻を、征服したかったからに違いなかった。
わたしがやつの性悪なたくらみを許したのは・・・
お前の前でかおりを犯す愉しみを尽くしてみたい。お前にも、妻を犯される歓びを植えつけてやりたい という、
正直に願われて、断り切れなくなってしまったからだ。
わたしの体内に戻されて、ふたたび脈打つようになった、28歳の健全なるべき血潮は、
やつから伝染(うつ)された毒に、穢され抜かれてしまっていた・・・

今夜もまた、やつはさいしょの夜と同じように、かおりを抱いて血を啖(くら)っている。
汚らしい音を立てて、がつがつと。
かおりもまた、彼の腕のなか・・・うら若い肢体に秘めた血潮を、求められるままふんだんに、口に含ませてしまっている。


あとがき
なんとなく、内容のない叙景詩になってしまったような・・・ (^^ゞ

同級生の訪問。

2022年07月03日(Sun) 23:25:36

同級生のカオリさんが、ぼくの血を吸いに来た。
お兄さんのヨシトさんも、いっしょだった。
ヨシトさんは、母さんの生き血が目当てだった。
なので、半ズボンからむき出しにしたぼくの太ももをちょっとだけ咬むと、
すぐ家の奥へと入っていった。
けれどもぼくは、ちょっと咬まれたあの痛痒さにうっとりとなって、
その場にへなへなと尻もちをついてしまっていた。
両親の寝室のほうから、キャーという叫び声があがるころ、
ぼくはカオリさんに首すじを咬まれて、ほんとうにうっとりとなってしまっていた。

カオリさんの牙はぼくの首すじに食い込んで、
ヒルのように吸いついた唇が、獣じみたどん欲さで、ぼくの血を啜り取る。
けれども――
息せき切ったカオリさんの振舞いがぼくのことを圧倒して、
生命を脅かされているという恐怖さえ、忘れ果ててしまうのだ。
チュウチュウ、ごくりん・・・と、ぼくの血が彼女の喉を鳴らすのに聞き入りながら、
ヨシトさんが母さんを手なずけてゆくのを、やはり耳の奥で聞き取ってしまうのだった。

この街は、吸血鬼であふれている。
たとえば、仲良し三人組の女子のうち一人が咬まれると、
残りの二人は血管を空っぽにした親友のため、強制的に献血に応じる羽目になった。
とある球技部は、キャプテンが咬まれてしまうと、伝染(うつ)りが速かった。
上下関係が密だったから、後輩たちが先輩のため、次々と咬まれていった。
校内で行われる紅白試合では、
出場した全員が、おそろいのひざ丈のストッキングのふくらはぎに、赤黒いシミを滲ませている――なんてことさえ、起きるのだった。

先生たちはこういうとき、いつもなんの助けにもならなかった。
自分たちの教育現場には、掲げられた理想と寸分の狂いもないのだと思い込みたいらしくって、
クラスの親睦とか、年長者へに示すべき敬意とかを、ただ虚ろに説教するだけだった。

母さんはいまごろ、スカートをたくし上げられて、ヨシトさんに姦られちゃっているころだろう。
いつも上品に脚にまとっている、あの肌色のストッキングも、
むざんに破かれて、片脚にだけ通したまま、手荒い愛撫に揉みくちゃにされてしまっているのだろうか。

ぼくもカオリさんに組み敷かれて、
カオリさんはぼくの上に馬乗りになって、
制服の濃紺のプリーツスカートをユサユサさせながら、
ぼくとひとつになっている。

カオリさんは、自分のお兄さんに処女を捧げていた。
家族のなかで、まっ先に咬まれたヨシトさんは、自分を咬んだ吸血鬼を家のなかにひき込んで、
年頃の少女とその母親を襲うチャンスをプレゼントして、
首尾よくお母さんを愛人にした吸血鬼はお礼返しに、
カオリさんを真っ先に犯す権利を与えていた。

近い将来、カオリさんは、ぼくのお嫁さんになる。
けれどもきっと、ぼくは自分の花嫁に、お兄さんとの逢瀬を、許してしまうに違いない。

こういう夜、父さんの帰りは遅い。
きっといまごろ、カオリさんのお父さんと二人で、
留守宅で妻を支配されているのを苦笑いで受け流しながら、
一献酌み交わしているころなのだろうか。


あとがき
これも、蔵出しのお話です。^^;

吸血鬼の共存を受け容れた社会では、きっとこういうことが横行するんでしょうね。
わたしも、吸血鬼になりたい・・・ (笑)

挑戦者とチャンピオン ――八百長試合の裏で。――

2022年07月03日(Sun) 23:06:15

黒ちゃんの相手だけはねぇ・・・
そんなことが、声をひそめて交わされていた時代があった。
まだ彼らのことを、身近に目にする機会のないころだった。

チャンピオンシップのかかった前夜。
バット・ヴァンパイヤと名乗る挑戦者のの黒人選手は、女を欲しがった。
対戦相手は、白人選手のベリーハード・ショウ。
彼も女を欲しがった。
八百長試合に応じるための見返りだから、正当な権利というわけだ。
マネージャーはどうしても断り切れなくて、わたしの妻と母とを差し出すことにした。
彼の婚約者は別のクラスのチャンピオンに寝取らせてしまっていたので、
身内の女というと、ジムの共同経営者であるわたしの身内の女ふたりしかいなかったのだ。

母が白人選手の、妻は黒人選手の相手をすることになった。
場所を選ばない無法者だったので、
わたしの家がそのまま、濡れ場になった。
ひとつ部屋で、明日の対戦相手は、わたしの妻と母とをひと晩じゅう、愛し抜いたのだ。

母はあとになって、言ったものだ。
わたしが美紀さんの代わりに、黒ちゃんの相手をしようと思ったけど。
どうやらそうじゃなくて、よかったみたい。
――たしかにそうだったと、あとになって実感した。

逞しい褐色の臀部が、なん度となく、妻の細腰に迫っていった。
そのたびに妻の着ているよそ行きのワンピースのすそが、激しく揺れた。
黒髪をユサユサと揺らしながら、薄い唇にほろ苦いものを滲ませて、それでもグッと、歯を食いしばっていた。
ひとつ家のなか、妻の痴態を目にすることを強いられたわたしもやはり、密かに歯を食いしばっていた。
そんな妻やわたしの気持ちなど知らぬげに、
ヤマトナデシコ、オオ、イトオシイ・・・などと口走って、
褐色の鍛え抜かれた筋力を備えたけだものは、
几帳面に整えた黒髪がくしゃくしゃになるほど、指を挿し入れ揉みくちゃにしてゆく。
妻の自慢の髪の毛に加えられる凌辱は、犯される股間と同じくらい、わたしの目に灼(や)きついた。

傍らの母は、白人相手に身もだえしていた。
望まれて装った着物の襟をはだけられて、あらわになった胸を、どん欲に吸われていた。
奥ゆかしい和装の美女をねだったチャンピオンは、自分のリクエストがかなえられたことに目を輝かして、
夫以外の男性は初めてだという母を、有無を言わさず組み敷いていった。
ほどかれた紅い帯が、紅葉の流れる河のようにつづら折れになって、
白熱した惨劇を、いっそう惨酷なものにしていた。

弱々しくためらった抵抗は、なんなくねじ伏せられて、
母は自分の息子ほどの白人選手を、
妻は同年代の黒人選手の相手となって、
彼らを前にするといっそうか細く見える肢体を、秀でたしなやかな筋肉に制圧されて、
逞しい腰のどん欲な上下動に、貞操をむしり取られていった。

ひとしきり性欲処理を済ませると、ベリーハード・ショウはそそくさと服を着て、
礼も言わずに立ち去っていった。
そのいっぽうで。
挑戦者である褐色のコウモリ、バット・ヴァンパイヤは、
飽きもせずに、自分と同年代の妻を相手に、挑みかかっていった。

褐色の逞しい臀部は、飽きもせずに、上下動をくり返す。
ふとしたはずみに目に入った彼の陰茎は非常に太く、
あんなものを受け容れさせて妻が壊れてしまうのではないかと、わたしは本気で懼(おそ)れた。
けれどもはっきりしているのは、バット・ヴァンパイヤはわたしの妻を、しんそこ気に入っているということだった。
躍動する筋肉が、汗をぎっしり浮かべた褐色の皮膚が、獣のように荒々しく真摯な息づかいが、
それらすべてが、歓びに満ちていた。
地味なねずみ色のワンピースのすそに、白く濁った粘液を光らせながら、
妻は絶えず足摺りをくり返し、その都度都度に、身体の奥底までも、淫らな体液で浸されていくのだった。
ただただ、自分の倍はあろうかと思える獣に挑まれることに、うろたえながら。
地味な肌色のストッキングはむしり取られ引き破かれて、ひざ下まで弛んでずり落ちて、
ふしだらな引きつれに、皴寄せられていった。


一週間後。
ジムの裏部屋の扉が細めに半開きになった向こうから、
わたしは一対の男女を覗き見ていた。
どうしても見たいのなら教えてやるよと、マネージャーが配慮してくれたのだ。
でも邪魔をしたら、ワンパンチだからな、と、わたしに忠告するのも忘れなかった。
新たなチャンピオンであるバット・ヴァンパイヤが顔を合わせているのは、わたしの妻だった。

妻は今朝、友人に会いに出かけてゆく――といって、家を出たはずだった。
けれどもその刻限は、マネージャーが教えてくれた、新しいチャンプと日本女性とが密会をする時間と一致していた。
まさか・・・と思いつつも、わたしはマネージャーに頼み込んで、ジムのなかに入れてもらったのだ。

「チャンピオン獲得、おめでとうございます」
妻は表情を消して、棒読み口調でそう告げた。
「お祝いをくれるのかな?ミセス・エンドー」
それくらいの日本語は、操れるようだった。
応えの代わり、彼女はブラウスの胸もとの釦に手をやって、釦を二つ三つはずしていた。
「ナイス・アンサー」
チャンプは嬉しげに白い歯をみせ、妻もためらいながら愛想笑いを泛べた。
瞬間、妻の華奢な身体に、黒人の巨体が覆いかぶさった。
丸太ん棒のような褐色の逞しい腕のなか、妻は苦しげに身もだえをする。
けれどもチャンプはお構いなしに、薄い唇をこじ開けるようにして、キスをくり返し、重ねていった。

地味な無地の紺のスカートを腰までたくし上げられて、ねずみ色のストッキングは片方だけ脱がされていた。
妻がねずみ色のストッキングを穿いているのを、わたしは見たことがない。
肌色のストッキングしか脚に通したことのない彼女にとって、きょうはなにかが特別だったのだ。
片方だけ穿いたストッキングも、ひざ小僧の下までずり落ちて、ふしだらに弛み、くしゃくしゃに波打っている。
妻が堕ちたということを、乱れた着衣がむざんなまでにあからさまに、教えてくれていた。
夫の目を盗んで黒人男性と情交を遂げる妻のようすを、
わたしはただ棒立ちになって、見守りつづけていた。


「ユーのワイフはじつにナイスだ」
バット・ヴァンパイヤは、わたしに言った。
妻はとうとうわたしに気づくことなく、立ち去ったあとだった。
「チャンピオンになったのも嬉しいが、淑やかなジャパニーズレディをモノにできたのは更に嬉しい」
不思議と怒りは、湧いてこなかった。
この黒人選手は、ひとの妻を相手に性欲処理にしながらも、
ともかくも妻を愛し、時には庇い、時には虐げて、
理性を突き崩された妻は、めくるめく痴情に堕ちていった。
そのことは、同じ男として、認めない訳にはいかなかった。

「さいしょは強引にいただいた。
 でもリピートするのは奥さん次第だ。
 ユーのワイフは賢い女だ。
 だんなを傷つけまいとしながらも、自分もしっかり愉しんでいった。
 ワイフを怒っちゃだめだぜ。
 あれは賢い女だ」
チャンプはしきりと、わたしの妻をほめた――どうやら本音らしかった。

「時おり来日する。そのときは、ユーのワイフをまた、抱かせてくれ」
Yes,sir・・・
強制された答えのはずなのに、真実味を籠めてしまっている。
差し出された掌を握りしめると、ぐっと力を籠めてきた。
もちろん、わたしの掌が壊れないよ う、加減をして。
「ユーのワイフを、完全に奪うことはしない、約束しよう」
妻を穢した男は白い歯をみせて、意味ありげにウィンクをした。

おなじ日。
未亡人である母のことを、かつてのチャンピオンが呼び出して、日本の淑女の木尾の姿を日がな一日愉しんだことを、
マネージャーはそっと、教えてくれた。
彼の妻はけっきょく、長いこと情夫であった別のクラスのチャンピオンからのプロポーズを受け容れて、
遠い国へと旅立つ決意を固めたのだと、なぜか清々しい顔をして、いっしょに教えてくれた。


世界的なタイトルマッチとは無縁の、地下の各闘技場――
白熱した八百長試合に目を輝かせた青年たちが、きょうもひきもきらず、ジムへと押し寄せている。
商売繁盛は、まちがいなしだった。
妻が密会するときの洋服代をかせぐため。わたしは仕事に精を出す。
黒いチャンプの餌食になって、悶えるための装いを――


あとがき
おひさしぶりです。^^;
ずっと興が乗らずに、ブログを放り出していました。^^;
このお話――すでにだいぶまえに書いたのですが、なんとなくあっぷしそびれていたんですね。
少しだけ直して、あっぷしてみた次第です。

鬼畜な話は嫌いなのですが、これはその一歩手前。
強いられていたはずの関係なのに、奥さんがご主人にうそをついてまで、自発的に出かけていった――というくだりがツボなのでした。