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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

~このサイトのご紹介~ 魔性の淫楽への招待状

2020年03月22日(Sun) 21:12:01

はじめにお読みください。
一話読み切りのお話がほとんどですが。
吸血鬼ストーリーといっても。
「他では目にすることはまずないでしょう」
そう断言できるほど?変わった世界のお話なので・・・。

【付記】
弊ブログに登場する人物・団体はすべて架空のものであり、実在するかもしれない人物・団体とは何の関係もありません。
(2018.2.12念のため追加しました)

カテゴリの解説

2019年08月14日(Wed) 19:11:24

ひと言で吸血鬼ものの短編といっても、それこそいろんなお話が混在していますので。
カテゴリをちょっと、整理しました。
お話に共通のおおまかな設定については冒頭↑の「招待状」に書かれてありますが。
ちょっとだけ、付け加えておきます。

やれやれ。

2019年02月12日(Tue) 07:42:49

ヘンな時間に目が覚めて、きのうあたりから思い浮かんでいたお話が書けそうな気がしてキーを叩きはじめて、
気がついたらもうこんな時間。
とても二度寝はできません。(苦笑)
せっかくなんで、描いたお話みっつのかいせつなどを、描いてみます。

≪人妻ふたり≫

狙った人妻を落とすため、夫を味方に引き込もうとして吸血する手口はいつもながらですが。
血を吸われた夫は、同僚に妻を日常的に寝取られていて、その状況を受け入れています。
そして、自分の妻に惚れてしまったという吸血鬼の望みも、好意的にかなえてしまいます。
ほんのちょっとだけ、間男よりも夫である自分を尊重してくれたことが、案外嬉しかったのかもしれません。

狙われた人妻はなかなかしたたかで、浮気相手の奥さんを黙らせようとして、一計を案じます。
夫はその片棒を担いで、見事?先方の奥さんを篭絡。
堅物で知られたその奥さんは、夫以外の身体を識ってしまったためか、それまでの夫婦生活が虚しかったからか、
自分の夫が奥さんを寝取った代償と称して、相手を受け入れていきます。
さりげなく小ぎれいに装い、
さりげなく愛情表現を口にする――「お宅に戻りにくい夜は、うちで休んでいってほしい」
どちらかというと、こういう風情で不貞をくり返す貞淑妻に、惹かれます。^^


≪親友の未亡人≫

これは、二度寝しようとして布団に戻ったとたんにひらめきました。(笑)
親友の死後の再婚ですから寝取りとは違いますが、前夫の写真のまえでのエッチは、寝取り要素があるかもです。^^
案外こういう展開を、前夫さんも望んでいたのかも。^^
自分の死後の妻のことを気づかって、妻の再婚相手を探すご主人は、意外にいそうな気がします。
でも、自分のまえで将来を誓ってもらおうという方は、あまりいらっしゃらないでしょうけれど。
ところが今度はどんでん返しで、妻と前夫の実家のある村が風習を持っていて、
女装趣味で奥手の主人公をいともかんたんに巻き込んでしまいます。

夫婦ながら女として愛されるふたり。
さいごのフィニッシュをキメるころには、それまで聞き取れなかった方言がわかるようになっている。
情を交わせ合うことができるようになって初めて、お互いを理解できるようになったというのを表現してみました。


≪母を法事に連れ出す。≫

このお話を描いた後、気になったのは、主人公のお母さんです。
都会の未亡人が洋装のブラックフォーマル姿で襲われて、黒のストッキングを引き裂かれて犯される。
なん度かいても、そそられます。^^
さっそく、キーを叩きつづけました。

前夫が嫉妬するから女の姿で墓参をするというのが、さいしょに浮かんだイメージです。^^
駅頭の表現は、そのあとすぐに浮かびました。
隠れて続けてきた女装がどうせばお母さんにれてしまうのなら、初手からショッキングなご対面を果たして見せようと思いました。
でも、なんのためにそんなことをするの?と感じながらキーを叩いていたら、美奈子さんが教えてくれました。

母親を目あてにしていたお舅さんが、礼儀正しく振る舞う彼女を前に、表むき慇懃に挨拶を返す――
なにを考えているのかちゃんと心得ている息子の目線から見ると、妙に淫らなものがよぎります。
嫁と嫁の叔父とか、彼自身を目あてにしている親友のお父さんとか、
一連の顔合わせシーンは、キーを叩きながら思いつきました。

母、妻、それに夫――
三人が三人ながら、洋装のブラックフォーマルに身を包み、黒のストッキングの脚をくねらせながら、
淫らな宴の渦に巻き込まれていきます。
お互いの恥部をさらけ出し合うことで、却ってスッキリする場合も、あるのかもしれません。

貞淑な賢夫人でとおっていたお母さん。
どうしてどうして、初めて目の当たりにする息子の女装姿にも動じることなく、
初めて体験する乱交パーティーの場にも平然と応じてしまいます。
亡夫にちゃんと謝罪をして罪滅ぼしする行儀の良さも、素敵です。

主人公の女装さんは、まだまだ自分は女として未熟だと悟りますが、
このお嫁さんとお姑さん、それに村の衆たちに磨かれれば、きっと魅力的な熟女に成長することでしょうね。

母を法事に連れ出す。

2019年02月12日(Tue) 07:21:01

「どうしたの、その格好?」
待ち合わせた駅のホームで、母はわたしを見て目を見張った。
息子夫婦と待ち合わせたはずなのに、そこに肩を並べて佇んでいる2つの人影はふたりとも、婦人ものの喪服を身に着けている。
近づいてよくみると、そのうちのひとりは自分の息子だった。
それは、どんな母親でも驚くだろう。
女の自分を母に見せるのは、美奈子の田舎でひと晩過ごした後で良い――わたしはそう思っていた。
けれども美奈子は、ここを出る時から女の格好でいるべきよ、と、わたしに言った。
もしもお義母さまがほんとうに筋金入りの堅物なら、女装したあなたを見て愛想を尽かして帰るでしょう。
お義母さまがそういうひとなら、あそこには行かないほうが良い――彼女はそういったのだ。
あそこでの営みが耐えがたい辱めにしかならないというのなら、さいしょからお義母さまにそういう経験をさせるべきではない。
同じ女として、それは残念過ぎることだから。
たしかに美奈子の言い分は、もっともだった。
わたしは勇気を出して、洋装のブラックフォーマルを身にまとい、黒のストッキングの脚を駅頭の風にさらした。
申し合せたように黒のストッキングに染まった三対の脚は、そのうち一対がたじろいだように半歩下がり、
行儀よくかかとをそろえてまっすぐに立ち、それから意を決したように他の二対と同じ方角へと歩きだしていた。
実家に残してきた父の写真に、彼女は顔向けすることができるのだろうか。
ふとかすめたそんな不安を正確に読み取って、わたしと向かい合わせに座った美奈子は、確信に満ちた笑みを投げてきた。

「伺うのは美那子の実家だけれども、美奈子と同郷である前のご主人とわたしは親友なので、墓参りもする。
 それが再婚の条件だから。
 でも、わたしが男の姿でいくと前のご主人が妬きもちをやくかもしれないから、女の姿でお参りをする」
母にはそういう言い訳を用意していたけれど、どうやらわたしの女装趣味はとっくに、カンの良い彼女のアンテナに触れていたらしい。
「前からそんな気はしていたけれど」
という母のつぶやきを、美奈子も、敏感になったわたしの鼓膜も、とらえていた。

美奈子の実家の敷居に、母が黒のストッキングに包まれたつま先をすべらせるのを、わたしは胸をドキドキはずませながら盗み見ていた。
そんなわたしを、美奈子は面白そうに窺っていた。
母は美那子のお父さんに向って、「お世話になっております」と、頭を下げた。
尋常な礼儀正しさを示す母に、義父もまた田舎めいた慇懃さを表に出して、応じてゆく――
母の写真を見ていちばん昂奮した男が、表向きの礼儀正しさを完璧に装うのをみて、
やはりこの土地の人たちは油断がならないと思った――もちろん、自分のことは棚に上げて。
初めて見せた母の写真を前に、「うっ、ひと目見ただけでおっ勃っちまう!」なんて騒いでいたくせに。
もっともらしい顔をしてお辞儀をし合っていてもきっと、これは夫婦の固めの杯だとか、どうせいけすかないことを考えているに相違なかった。

夜の宴に合わせて、三々五々、周囲の者たちがなん十人となく、集まって来る。
美奈子の叔父もそのなかにいた。
彼がはじめから美奈子を目あてにしていることを知りながら、わたしは彼とも親しげにあいさつを交わす。
先方も嬉しそうに、「やあ、いらっしゃい」と、歓迎してくれた。
はた目には、縁故が濃いわけでもないのに遠来の客を新設に迎える遠縁の人にしか、見えなかったはずだ。
いや、じっさいには美奈子を通して、ほんとうに濃い関係なのだが。
美奈子が初体験を済ませた相手がこの叔父で、それ以来祐介と結婚してからも、
里帰りのたびに情交を重ねてきた間柄。
わたしもまた、彼と美奈子との関係は尊重することにしていた。
美奈子とわたしとを、ふたりながら初めて征服したのも、彼だったから。
「未来の妻となる美奈子を犯して下さい」――わたしにそんなことを口にさせて悦に入る、わたしといい勝負の変態だった。

初めてわたしを犯した祐介のお父さんも、やって来た。
彼とも初手は、ごく慇懃に挨拶を交わしてゆく。
傍らから挨拶を交し合うふたりを目にした母は、まさかこの男が息子を女として征服しただなんて、思ってはいないだろう。
もっとも彼は、別れぎわわたしのお尻をスカートのうえから勢いよくボンと叩いて、周囲を笑わせていたけれど。

わたしのときには、さいしょのひと晩はそのまま寝(やす)ませてくれたけれど、
母のときには、宴はさいしょの夜から始められた。
美奈子の父親が、母にぞっこんになってしまったからだった。

真夜中。
宴がたけなわを迎えて、灯りが暗く落とされると、いつもの組んずほぐれつが始まった。
わたしの傍らで押し倒された美奈子の叔母は、「あとで・・・ね♪」と、わたしに目配せをした。
似通った面差しの叔母と姪――この村への”帰郷”が思った以上に頻繁になったのは、彼女の存在も理由のひとつになっていた。
わたしのうえには、息せき切った祐介のお父さんがのしかかっていた。
スカートのなかに突っ込まれた節くれだった掌はさっきから、ストッキングを波立てながら荒っぽい愛撫をくり返しはじめている。
母のほうを見ると、さいしょはなにが起きたのかわからなかったらしい、ちょっとびっくりしたような顔をしたが、
迫って来た美奈子のお父さんに、そのまま押し倒されていった。
美奈子は自分の父に手を貸そうと、母の両手首を抑えつけようとしたけれど、
母は「だいじょうぶですから」と、やんわりと美奈子の干渉を拒絶した。
そして、圧しつけられてくる唇を目を瞑って受け止めると、
喪服のブラウスのうえから乳房をなぞるようにまさぐる掌を、這いまわるままにさせていった。
賢婦人といわれた母。
自分から応えることは決してしなかったけれど、動じることなく毅然として、相手の男性の劣情に、身を任せていったのだ。

翌朝、母は鏡に向かって、墓参のための化粧をたんねんに施していた。
「そろそろいいかな」と声をかけるわたしに、「エエ、いつでもよろしいわ」と、鏡を見ながら応える母。
いつもと変わらぬ凛とした雰囲気ををたたえていた。
ちょっとからかってやりたくなった。
「夕べは母さんらしくなかったね」
「そんなことないでしょう」
母は鏡から目を放さずに、こたえた。やはりいつもと変わらないトーンだった。
「うちに置いて来た父さんの写真を思い出して、父さんごめんねって手を合わせましたから」
父さんごめんねで片づけられてしまうのか――女はやはりしたたかだ。
婦人ものの喪服を身に着けているのも忘れ、わたしは思った。
まだまだ女には、なり切れていないみたいだな、と。
言葉を途切らせたわたしに、今度は母がいった。
「母さんらしくないことを言うようだけど」
「なあに?」
「今朝のお化粧、美奈子さんのお父さまのためにしているのよ」

あのかた、やもめ暮らしが長いんですって?
再婚は法的にどうだかわからないけど、まだ私もだれかに尽くしてみたい気もするのよ。
もっともああいう方だから、母さんを未亡人のまま抱きたい・・・なんて仰るかもしれないけれど。

楚々とした母の横顔に、女の表情がよぎるのを、わたしはただ立ち尽くして見つづけていた。
背後からは、朝っぱらから自分の叔父と戯れている美奈子の声が聞こえる。
淫らな静けさを漂わせた田舎の早い朝が、始まろうとしている――

親友の未亡人

2019年02月12日(Tue) 06:34:55

この世を去る間際、親友の祐介は、わたしに言い残した――美奈子をよろしく頼む、と。
祐介は学生の頃からの親友だった。
女装趣味に走ったわたしは30になっても独身をとおしていたが、祐介はそんなわたしにも分け隔てなく接してくれたし、
時には奥さん公認で、女の姿でのデートにも応じてくれた。
もっとも祐介は、奥さんを裏切ったことはなく、セックスの関係はなかったけれど。
こんなわたしでは、美奈子さんが気の毒だ。
結婚に自身を持てないわたしは言った。なによりも、親友の早すぎる死を受け入れることができなかった。
けれども祐介は言いつづけた――きっとうまくいくから。お前も幸せになれるんだから。
祐介がいなくなってから一年経っても、彼女の意思が変わらないのを確かめてから、わたしは美那子と結婚した。
初めて美奈子を抱いた夜は、祐介の命日だった。
法事のかえりに祐介の家に立ち寄り、喪服姿の美奈子にムラムラッときたときには、もう遅かった。
理性の消し飛んだわたしは、祐介の写真のまえで美奈子を抱きすくめていた。
たたみの上に抑えつけられたままの格好で、美奈子はわたしを抱きとめながら、いった。
「祐介の前で、しよ」
――わたしは美奈子の唇を、夢中になって吸い始めていた。

2時間後。
わたしたちは2人肩を並べて、祐介の写真の前で深々と頭を垂れて、将来を誓っていた。

祐介と美奈子は、同郷だった。
初めての里帰りは、祐介の墓参も目的のひとつだった。
美奈子はともかくとして、わたしまで受け入れてもらえるとは思っていなかったので、
夫婦で泊れるようで近くの街にホテルを予約していたのだが、
村の人たちはわたしにも分け隔てなく接してくれて、「いっしょに泊まっていきんさい」と、地元の言葉で言ってくれた。
もっとも方言のきつい土地なので、何をしゃべっているのか、ほとんど聞き取ることができなかった。
ただ、彼らの温和な顔つきで、わたしも歓迎されていると伝わってきた。

村に到着したのは夜だった。
美奈子の実家の人、祐介の実家の人、その近所の人、そのまた親戚の人。
あの広い祐介の実家に、いったいなん十人の人が招(よ)ばれてきたのだろう?
男たちはそろって赤ら顔で、女性たちはそろって、美奈子と同じように色白で気品があった。
四十五十のご婦人でも、えもいわえれない色気を漂わせていた。
翌日お参りに出かけるときのこと。
祐介との約束で、わたしは婦人ものの洋装の喪服姿で墓参をすることになっていた。
おおぜいの人たちのまえで、洋装のブラックフォーマルを身に着けた姿をさらすのは、ちょっと勇気が要ったけれど。
都会の通りではかかとの高いパンプスを履きこなせるほどの経験を持っていたこともあって、
いちど視線を浴びてしまうともう、ふつうに振る舞うようになっていた。
「だいじょうぶ、私も祐介も、あなたのことしゃべっているから」という美奈子の言葉も、背中を押した。

異変が起こったのは、墓参をした日の夜のことだった。
その夜も、身内の宴が用意されていた。
わたしも美奈子も、墓参帰りの洋装のブラックフォーマルのまま、宴席に連なった。
夜中を過ぎて、酔いもかなり回ったころ、突然照明が落ちた。
停電ではなかった。なぜなら、オレンジ色の小さな照明だけは灯っていたから。
けれども、影絵のようになった人影たちは、てんでに組んずほぐれつ、妖しい舞いを舞い始めていた。
それがなにを意味するのかを、わたしは瞬時に覚った。
宴がたけなわを過ぎると、既婚未婚の見境なく、相手かまわず交わる風習――
目のまえでそれを見て体験するとは、夢にも思っていなかった。
すでに美奈子のうえには、美奈子の叔父がのしかかっていた。
やめさせようとする手をさえぎった人影は、わたしを押し倒し、唇を重ねてきた。
相手は、祐介の父親だった。
「あっ・・・それは・・・」
とっさに抗おうとしたけれど、思わずあげた悲鳴は女声になっていた。
祐介のお父さんは強引にわたしの唇を奪うと、「うちの嫁と乳繰り合っておるんだな」という意味のことを土地のことばで囁いた。
地元の方言のきついかれの言葉は、それまでほとんど聞き取ることができなかったのに、この咄嗟の場での囁きだけは、ひどく鮮明に鼓膜に伝わった。
「え、ええ・・・」
不覚にも応じてしまったわたしはいつか、強引に奪われた唇で、せめぎ合うように応じてしまっていた。
黒のパンストを唇でなぶられながら脱がされてゆくのを、わたしは脚をくねらせながら応じていって、
そんなわたしの様子を美奈子は、わたしでも祐介でもない男に抱きすくめられながら、顔を輝かせて見入っていた。

宴は明け方までつづいた。
そのあいだにわたしは、祐介のお父さん、美奈子のお父さんに弟、さいしょに美奈子を犯した美奈子の叔父・・・と、
限りなくなん人もの相手をつとめ、昂ぶりながら応じてしまっていた。
美奈子もまた、なん人もの男を相手に、交接に興じていった。
「お久しぶり」「すっかり女ぽくなりおって」
切れ切れに聞き取れるそんなやり取りから、美奈子が結婚前からすでに、おおぜいの男たちと交わってきたことを知った。
「お婿さん、さいごにビシッとキメてや」
だれかに言われるままに、全裸になっていたわたしは、さいごに美奈子を抱いた。
衆目の見つめる前フィニッシュを遂げたとき、祐介の写真のまえで初めてイッた夜のことを思い出した。
「どっちもこなせるなんて、良い婿さんだな」
傍らから聞こえたその声は、明らかに称賛の意思を帯びていた。
そしてわたしは、この夜を境に、初めはひと言も聞き取れなかったこの土地の方言を、聞き取れるようになっていた。

村を訪れたときには、一対の夫婦の姿をしていたけれど。
都会への帰りは、すすめられるままに、婦人もののスーツ姿で美奈子と肩を並べていた。
「またおいでなさいや、法事のときじゃなくても良かから」
すっかり馴染みになった祐介のお母さんが、優しく声をかけてくれた。
「エエ、すぐ来ます」
私に代わって美奈子が、イタズラっぽく笑って答える。
「この人も、来たがると思いますから」
照れ笑いを視られまいとして、わたしはわざと横を向いていた。
祐介のお父さんは、いった。
「あんたのお母さん、後家さんなんだってな?よければこんど、連れてきなさい」
美奈子のお母さんも、いった。
「みんなで仲良くなりゃええからね」
母は評判の賢夫人だった。
都会育ちの気位の高い母が喪服姿をはだけられながら犯されてゆくのを想像して、
わたしはスカートのなかで思わず、股間を逆立ててしまっていた。

人妻ふたり

2019年02月12日(Tue) 05:10:28

よっぽど飢えているのか?こいつ・・・と、正直俺は思った。
男のくせに俺を襲うとは。
勤め帰りに路上で襲われて、首すじに牙をぐいぐいと突き立てられながら、
どうしてそんなふうに余裕をかませることができたのか?これはいまだに謎である。
でも少なくとも、男はまるきりの獣ではなかった。ちゃんと会話が成り立っていた。
「あんた、よほど飢えているのか?」俺はいった。
同じ勤め帰りでも、スーツ姿のOLがわんさと通りかかるはずなのに。
よりにもよって男を択ぶとは、同性愛者なのか?とさえ思ったから。
けれどもそれは違った。
男はいった。
「あんた有森優子の旦那だろう?わしは優子に惚れてしまった。
 想いを遂げる前に、あんたを仲間に引き入れておきたくてな」
どうりで・・・さっきから・・・目つきがトロンとして来て、傷口が妖しく疼き始めている。
この街に棲む吸血鬼が人妻を狙うとき、しばしば先に夫を狙って口説くというのを、ふと思い出した。
そういうことなのか?と訊くと、あつかましくも、わかっているなら話が速いな、ときた。
契約を結ぶ際、相手に不利な重要事項は事前通知するのが建前だ。
だから俺は、言ってやった。
「あいつ、浮気してやがるんだぜ」
「え?どういうことだ?」
「夫公認の彼氏がいるって言っているんだ」

人妻を襲うとき、夫への事前通告をするというルールは存在するらしいが、
通告の対象に浮気相手は含まれていないらしい。
やつは、あんたの彼氏の了解は要らない、と言い切った。
優子のまえで、少なくとも俺の優位性を認めてはくれたというわけだ。
俺はその事実になんとなく納得して、そのまま血を与え続けた。

そんなふうにして二度逢って、それから優子を紹介するために、自宅に誘ってやった。
結婚式帰りのその夜、優子はやつの注文通り、若づくりに着飾っていた。
人妻を襲うときには、その装いもろとも辱める。
そんなけしからぬ嗜好を、俺は好意的にかなえてやることにした。
晴れ着を泥まみれにさせながら、妻が堕ちてゆくところを視たかったのかもしれない。
予定通り、優子はブラウスを真紅に染めながら生き血を吸い取られ、
陶然となって堕ちていった。

吸血鬼の奴隷に堕ちたあとも、日常に変化はなかった。
夫婦関係とか日常生活とかを壊さないのが、やつらの鉄則らしかったから。
俺は優子と今までどおり、なにも起こらなかったかのように暮らしつづけて、
優子は今までどおり、浮気相手との逢瀬を重ねた。
そのくせ吸血鬼との情事も、愛人に断りなく、だれにもまして乱れるようになっていった。
そのうちに優子は、したたかなことを思いついた。
「貴方は私の浮気な性分を理解してくれるけれど――あのひとの奥さんはだめね」
「あのひと」というのはもちろん、優子の愛人である酉葉雄介である。
彼は同じ勤務先の同僚で、妻とは社内パーティーで知り合っていた。
そして、同僚の妻であるということにも考慮を払わず、見境なく優子を犯し、夢中にさせた。
けれども彼の妻である里美は根っからの堅物だった。
見合い結婚したという里美は重役の娘で、箱入り娘だったのだ。
そして、浮気性な夫の浮気を敏感にかぎつけては、夫の不埒を詰り倒しているという。
「あのひとの奥さんを、あいつに襲ってもらうってどう?」
浮気相手の妻を陥れL計画を、どうして夫に相談するのだろう?
優子の寄せる変な信頼感に、それでも俺はこたえていった。

「あたしが行くのはまずいから、代わりにあなた行って」
自分の妻を襲わせることに、酉葉はかなりの抵抗を示したが、
日常的に犯している人妻の旦那である俺のまえで、強く出ることはできなかった。
「同僚と取引先の社長を酉葉の家でもてなす」という俺のアイディア(その実優子の発案だった)を、酉葉は渋々呑んだ。
女房を寝取られる旦那の気持ちが、今ごろわかったか――俺はちょっとだけ、意地悪な気分を楽しんでいた。

優子の新しい情夫である吸血鬼は、表向きは如才ないビジネスマンだった。
彼はたくみに酉葉の妻である里美にもお酒をすすめ、言われるままに里美も杯を重ねた。
アルコールに和らいだ席は次第にしどけなくなって、
吸血鬼は首尾よく?招かれた家の主婦をモノにしていた。
悪酔いして身体を傾けたまま、妻の痴態を渋面を作って見つめる酉葉に、俺は胸のすく想いだった。

ある晩家に戻ると、意外にも玄関のまえには、里美が佇んでいた。
いつもより仕事が早く片づいて、夕暮れの名残りが残る時分だった。
薄闇に透けて見える里美は、初めて堕落を経験したあの晩と同じように、小ぎれいに着飾っていた。
「うちの主人がお邪魔しているんです」
え?と問い返す俺に、
「あと、この間のあの方は、娘さんのお部屋で家庭教師をしているそうです」
言われるままに娘の勉強部屋の灯りを見あげる俺は、きっと間抜けな顔をしていたと思う。
「口うるさい私を首尾よく黙らせたご褒美ですって――あのかたたち、処女の血がお好きなんですものね」

落ち着かないですね、よかったらうちへ来ませんか?
返事も聞かずに先に立って歩き始めた里美は、黒のストッキングを穿いていた。
いかにも地味なよそ行きのスーツはきっと、堅物らしい彼女のチョイスなのだろう
ひざ下までも丈のあるスカートの下、黒のストッキングを通してピンク色に透きとおるふくらはぎが、なまめかしかった。

誘われるままに俺は、酉葉夫人に連れられて、彼女の家にあがりこんだ。
それから先のことは、もう言うまでもないだろう。
「あんなふうに、お宅に戻りにくい夜は、うちで休んでいってくださいね」
奥さまの代わりに、私お相手しますから――
しおらしく目を瞑った彼女の生真面目な横顔は、少女のようにウブだった。

都会育ちの若妻、村の風習にまみれる。

2019年02月10日(Sun) 09:11:28

磯辺の息子の晴也が妻の香澄を伴って村を訪れたのは、両親がこの地に移り住んだ翌年の夏のことだった。
そして、自分の両親がこの村で体験した不思議な話を聞かされた。
香澄は遠慮しようとしたが、義父は「香澄さんにも聞いてもらって構わない」といって、
赴任してすぐ、お母さんに夜這いに協力してほしいと頼み込まれて引き受けたこと、
それでもどうしても、お母さんを本気で好いている人以外にゆだねる気にはならないと訴えたこと、
ところが意外にも、お母さんが親切に面倒を見た男の人が、お母さんのことを好きになってしまったと告白してきたこと、
ひと晩だけのつもりでその人とお母さんとを逢わせてやったが、お母さんもその人のことを好きになって、
いまでは一緒に暮らしていることを告げた。

晴也はいった。
「だとするとお父さんは、お母さんに素敵な恋をさせてあげたことになるんだね」
息子の意外な言葉に磯辺は驚いたが、「お前がそう受け取ってくれるのなら、母さんもよろこぶはずだ」とこたえた。


ひと晩両親の家に泊まると、地元の若い衆に誘われるまま、晴也はつまといっしょに山に山菜取りに出かけた。
若夫婦の目当ては地元の新鮮な山菜であったが、
若い衆たちの目当てはもちろん、磯辺の息子が伴った若妻の新鮮な肉体だった。
人目のない山奥にまで来ると、三人の若い衆は、息せき切りながら若夫婦をふるい山小屋に引き入れた。
そこは、彼らが夜這いをかけた人妻を呼び出して、ひと晩じゅう愉しむために作った隠れ家だった。
山小屋に誘い込まれた晴也はあっという間に三人がかりで縄で柱に縛りつけられて、
びっくりして声も出ないでいる香澄は、やはりあっという間に男どもの猿臂に縛りつけられるようにして、犯された。
村の若い衆たちは、都会の洗練された装いの若妻を手籠めにして、好き勝手に熱情を注ぎ込んでいった。

予定通り山菜取りを終えた彼らは、若夫婦を磯辺の家の近くまで送り届けた。
若い衆の頭だった一人は、自分の居所を描いたメモを香澄に渡して、
夫の晴也には、逃げも隠れもしない、おれのしたことが罪だというのなら、訴えてもかまわないと告げた。
そして、「急なお願いだったのにご夫婦でこたえてもらって嬉しかった」と、不思議なことを口にした。

ふたりきりになると、香澄は晴也にいった。
「ねえ、もう一度してもらおうよ。あたし、三人がかりなんて初めて。凄く感じちゃった♪」
晴也があきれていると、「あたしもお義母さんみたいな、素敵な恋がしてみたい♪」と訴えた。
そしてさいごには、「晴也が嫌なら私一人でも行く♪」とまで、言ったのだ。
晴也は仕方なく、新婚三か月の妻に素敵な恋をさせてやることにした。

妻はノリノリ、夫は渋々なのを、迎え入れた若い衆たちはひと目で見抜いた。
けれども夫の渋々は、世間体を気にしてのものだということまで、見抜いてしまっていた。
彼らは晴也に対して、「こないだは縛ってゴメンな。きょうは一緒に楽しもう♪」と告げた。
村の男衆たちが息荒く香澄に挑みかかってゆくのを見せつけられた晴也は、
自身も不可思議な昂ぶりを覚えて、彼らに促されるままに妻の身体にのしかかっていった。
意外にも香澄が抵抗したことが、晴也の性欲に、かえって火をつけた。
愛欲まみれの一日が過ぎると、彼らはすっかり、兄弟のように仲良くなっていた。
「こんどはうちの嫁を抱かせてやる」という誘いに乗る晴也を、香澄は睨みつけたけれど。
「その留守は俺たちがお邪魔するから」
という三人の申し出は、決して拒否しなかった。

「お義母さまは純情だから、お1人がいいみたいだけど――
 あたしはおおぜいの男子にモテるのがいいな。
 もしかしたらあたし、多情なのかもしれない――こんなお嫁さんでゴメンね」
そういう香澄を許すという意思表示の代わりに、晴也は熱いキスを交わすのだった。

「子どもができるまでは、ほどほどになさいね」
姑の香奈江は、嫁の香澄をそういって送り出す。
若い嫁の生き先は、女ひでりの若い衆たちの乱交の場。
夫である息子でさえ、その交わりを許してしまっている。
そして自分は――
夫の留守中に、同居している年上の男のために都会の装いを着飾って、犯されてゆく。
出かけたはずの夫は、きょうも庭先から息をひそめて、妾(わたし)の痴態を昂ぶりながら見つめつづけるのだろうか――

都会育ちの熟妻、夜這いの風習にまみれる。

2019年02月10日(Sun) 08:48:36

都会でのぜいたく暮らしの末、破産寸前になった磯辺は、勤務先の計らいで人里離れた村里へと転勤を命じられた。
その土地は会社の創立者の生まれ故郷だった。
磯辺は妻の香奈江を伴って赴任したが、その直後上司を通じて、奇妙な申し出を受ける。
この村では夜這いの風習がまだ残っているので、奥さんにも協力してほしいというのだ。
磯辺はうろたえながらも即座に断るが、上司の依頼はくり返しつづけられた。
創立者は、過疎化にさらされた生まれ故郷のことを気にしていて、
女ひでりになっていたこの村に若い女性を補充するために、自分の社員やその妻たちを移り住まわせていたのだ。

磯辺は訴えた。
「ひとの大事な妻をもてあそぶとは何事か。わたしの妻を本気で愛するつもりもないくせに!」
ところが意外にも、村川と名乗る一人の男が名乗り出た。
怪我をしているところを行きずりの奥さんに助けられた、親切にしてもらってとても惹かれたと。
村の夜這いは原則として不特定の相手と交わることになっていたが、例外的にだれかが一人の人妻を独占することも認められていた。
村川は磯辺よりも10歳も年上で、つれあいに先立たれていた。
村の衆たちは、若かったころの村川が、その妻を気前よく夜這いに差し出していたことを知っていて、
村川であれば来たばかりの都会妻さんを独り占めにしても認めると口をそろえていった。
ひととおりではない借金を棒引きにしてもらった見返りに、観念した磯辺は妻に夜這いの協力をさせることを約束した。

妻の香奈江は夫でもない男に抱かれることを嫌がり、貴方にも息子にも顔向けできなくなると訴えた。
磯辺は、いままでの義理もあるのでひと晩だけは相手をしてもらう、
そのうえで、もしもどうしても厭だったら、その時には私から断ってあげようと請け合った。
未経験の妻が抵抗することを見越した村の衆たちが、磯辺にそのようにしても良いと事前に告げていたのである。

夫が夜勤に出た夜、香奈江は初めて村川を自宅に迎え入れる。
そして戸惑い、うろたえながらも、男の腕に抱きすくめられていった――
一夜明けて帰宅した夫は、そこにいままでと変わりない妻を見つける。
ひと晩の情事のあとをきれいに拭い去った妻は、夜勤明けの夫を優しく迎え入れ、何ごともなかったかのように振る舞うのだった。
香奈江は、夕べのことはなにも語らなかった。
そして、今後夜這いを受け容れるのは勘弁してほしい――とも、口にしなかった。

それ以来、香奈江は週にひと晩の頻度で、村川を自宅に迎え入れた。
いつも、夫のいない夜だった。
そして、朝までまぐわい続けると、夜勤明けの夫を優しく迎え入れた。
朝から着飾って自分を迎える妻を見て、村川は思った。
この身体が夕べ、わたし以外の男の身体を受け入れたというのか――
得も言われぬ昂ぶりに胸を焦がしながら、磯辺は久しぶりに妻を強引に抱きすくめた。

村の衆たちは、周囲の評判を気にする磯辺を気づかって、磯辺の妻と村川の関係に、いっさい触れようとしなかった。
磯辺にも、その気遣いは伝わっていた。
村川はやもめだったが、磯辺から香奈江を取り上げようとはしなかった。
狭い村のことだから、2人が顔を合わせる機会は随所にあった。
けれども村川は終始磯辺に対して、都会の大学を出たエリート社員への敬意を忘れなかった。
磯辺は、村川を妻の愛人として受け容れる気持ちになっていた。
彼は、夜勤を週二回引き受けたいと上司に願い出た。
転任してきてから三か月経つと、香奈江と村川の逢瀬は週に3回となった。
週3回の夜勤が体力的にこたえた磯辺は、香奈江にいった。
「村川さんがお前に逢いたいと言ったら、わたしがるときでも出かけて行ってかまわない」と――
やがて村川は、磯辺の招きに応じていままでの家を引き払い、磯辺夫妻と同居するようになった。
そして、磯辺夫人の用心棒兼愛人として、夫の磯辺が不在の時はもちろん、
彼が居合わせているときでも、磯辺夫人と愛し合うようになっていた。

息子夫婦にあらいざらいその話をしたのは、彼らが村に赴任してきた直後のことだった――

上位の者があとから酔わされる。

2019年01月31日(Thu) 08:14:52

ものの順序として。
上位の者があとから酔わされるお話が、かなり好きです。

さきに娘や息子が襲われて、あとから母親が襲われる。
吸血されることに夢中になった娘や息子が、ハイソックスを咬み破らせてしまうのを目の当たりにして、
潔癖なお母さんは激怒します。
けれどもさすがのお母さんも、吸血鬼にはかないません。
たちまちねじ伏せられてしまい、
長い靴下を好む吸血鬼の卑猥な唇を、ストッキングを穿いた脚に吸いつけられてしまいます。
息子や娘のまえで、ストッキングをびりびり破かれながら吸血されるお母さん。
ある意味、お手本を見せてしまいます。

さらに上位が、お父さんです。
男女は平等ですから、上下というよりは吸血鬼との距離感かもしれません。
でも、たいがいのご家庭ではいまなお、一家の長といえばお父さんの役割のようですね。
このごろはほとんど見かけなくなりましたが、かつてビジネスマンの間では、ストッキング地のハイソックスが流行していました。
ただのおっさんでは芸がないので、ちょっとユニセックスなものを身に着けさせてみたくなります。
かくして、お父さんまでもが働き盛りの血を吸い取られ、めでたく?陥落してしまいます。
もう少し発展家のお父さんですと、体調を崩した奥さんの身代わりに、女装して吸血鬼の相手をします。
妻の服を身に着けて、自分も女になり切って犯されてしまいます。
妻が犯される想像と二重写しになって、得も言われぬ快楽に身を浸すことになります。
ある意味、幸せな出逢いかもしれません。(笑)

若夫婦の場合だと、お姑さんも絶好の餌食です。
嫁の不倫をやめさせようとして、あべこべに犯されてしまったりします。
あげくの果ては、永年連れ添ったお舅さんにも知られてしまうのですが、
お舅さんは意外にも温厚な紳士で、息子の嫁や自分の妻の情夫にも、寛大に接します。
お姑さんも、嬉し恥かしの五十路の浮気に耽るようになりますが、夫婦の関係は続きますし、むしろ深まります。
吸血鬼が、人妻のまま、彼女たちを愛そうとするからです。
いかがわしいことをやめさせようとしながら、ミイラ取りがミイラになる。
そんなところに萌えのポイントがあるのかもしれないですね。

ハイソックス好きな少年とその家族

2019年01月31日(Thu) 08:04:56

ハイソックス好きな少年がいた。
その時分はハイソックスの流行は終わっていて、男の子たちはだれもハイソックスを履かなくなっていたが、少年は毎日ハイソックスを履いて通学していた。
ある晩帰りが遅くなった少年は、公園のベンチで、ひと休みしていた。
そこを喉をカラカラにした吸血鬼が通りかかったのが、運の尽きだった。
吸血鬼は少年のことを女の子と間違え、首すじを噛んで血を吸った。
少年が貧血を起こしてベンチにたおれこんでしまうと、足許にはいよってハイソックスのふくらはぎをきまなく舐めた。
少年は、この人はハイソックスが好きなんだと直感して、内心いやらしいなと思いながらも、男の気の済むまで舐めさせてしまった。
大人しくしていれば生命は取らないという吸血鬼の囁きを信じた少年は、彼の好意を受け容れた。
吸血鬼は少年の履いているハイソックスを咬み破り、吸血を続けた。

次の日、少年は再び吸血鬼に出会った。
待ち伏せていたのだ。
吸血鬼の期待どおり、その日も少年はハイソックスを履いていた。
少年は、きょうのハイソックスは気に入っているのてま、破くのはやめてほしいと願った。
吸血鬼はハイソックスを舐めて舌触りを楽しむだけで許してやった。
それ以来少年は、吸血鬼を信用するようになった。
数日に一度は彼と待ち合わせて、ハイソックスの脚を咬ませてやるようになっていった。
少年は、吸血鬼が自分と同じくハイソックスが好きなことに気づいたので、彼に親近感を持った。
吸血鬼のほうも、少年が彼の嗜好に理解を示し若い血液を気前よく振る舞ってくれることに感謝していて、少年の体調をに配慮を示して吸血の量を加減してやることもあった。
同じ趣味の二人は、少年はハイソックスを履いて吸血鬼を愉しませることで、吸血鬼は少年のハイソックスをいたぶり咬み破ることで、愉しみを共有するようになった。

少年の母親は、息子が時々素足で北口することに疑念を抱いた。
そして、少年の帰りが遅いある晩、様子を見に出かけて行って、少年が吸血鬼に血を吸われているところを目撃してしまった。
彼女はすぐに吸血鬼に捕まえられて、首すじを咬まれ血を吸われたうえ、犯されてしまった。
少年は失血のあまり朦朧となっていたが、
母親が自分の血を吸っている男に捕まえられて、穿いていたストッキングをめちゃくちゃに咬み破られて犯されてゆくのを、ただうっとりと見守っていた。
長い靴下を履いていると、見境なく咬みつくんだね、と少年はいうと、今夜のことは内緒にするかわり、母さんと交代で逢いにくると吸血鬼に約束をした。
母親は、息子が覚え込んでしまったけしからぬ習慣をやめさせることができなかったばかりか、自分自身も巻き込まれて、不倫を犯してしまったことを悔いた。
けれどももう、後戻りをすることはできなかった。
彼女は息子の留守中や、貧血で倒れた息子を迎えに行ったときに、息子ともども生き血を啜り取られるようになった。
出かけていく時彼女は、吸血鬼に言い含められるままに、薄手のストッキングを脚に通していった。
無体に弄ばれて咬み破られると知りながら、彼女は吸血鬼の意向に従っていた。
客人のまえで正装するのは、礼儀正しい婦人として当然の行いだと思ったからである。
そして、欲情もあらわにのしかかって来る吸血鬼に、自分は貴男を愉しませるために正装しているわけではないと主張しつづけた。
そしてもちろん、彼女の正装は吸血鬼をぞんぶんに、愉しませてしまうのだった。

少年の父親は、かつて吸血された体験を持っていた。
彼は妻と息子が代わる代わる吸血鬼に逢いに出かけてその欲望を満たしているのを知ると、自分も出かけて行った。
彼はその頃流行っていた濃紺のストッキング地のハイソックスを履いていた。
それが吸血鬼の好みに合うことを知っていたからである。
獣性もあらわに咬みついてくる吸血鬼をまえに、スラックスを引き上げると、なまめかしい薄地の長靴下に透ける脛に、吸血鬼は目を輝かせた。
貴方は良いご主人であり父親だと彼を称賛すると、父親の長靴下をくまなく舐め尽して、
その息子や妻に対してそうしたように、靴下を咬み破って血を啜った。
こうして少年の父親も、働き盛りの血を吸い取られてしまった。
少年の父親は、妻や息子の生き血が彼の好みに合ったことを嬉しく思っていたので、自身の血をむさぼり尽されてしまうことに、喜びを感じていた。
こうして一家はめでたく、吸血鬼の支配を受け容れたのだった。

生き返らされた夫

2019年01月31日(Thu) 07:51:34

ある男が吸血鬼に襲われ、血を吸われて死んだ。
男は死後も意識があって、その後のことを見聞きすることができた。
男の妻は通夜の席で襲われて、吸血鬼の餌食となった。
親族の者たちは怖れて逃げ散ってしまい、だれも妻を救おうとはしなかった。
男の妻は喪服姿のままその場で犯され、吸血鬼の言いなりに振る舞ってしまった。
男は悔しがったものの、どうすることもかなわなかった。
しかし、妻が吸血鬼と接し続けるうちに、徐々にほだされてしまい、やがて打ち解けあってまぐわいを深めてしまうのを、男は不覚にも、淫らな気持ちで見届けてしまった。

妻はひとしきり吸血鬼に血を与え、身体でも悦ばせてやると、どうにかして夫を生き返らせることはできないかと懇願した。
妻は夫を愛していたし、同時に頼りにしていたのである。
吸血鬼は男と意思を交わしあうことが、できたので、男に生き返りたいかと尋ねてみた。
男は即座に、生き返って再び妻と暮らしたいと願った。
吸血鬼は男と出会った夜に、だれかの血を吸わないと灰になるところだったので、男に恩義を感じていた。
そこで、吸血鬼は男とその妻の希望を容れて、男の身体に血を戻して生き返らせた。
夫婦は、吸血鬼に身体中の血を舐め尽くされながらも、元通りに暮らすことができるようになった。

吸血鬼は、人の生き血を欲していたが、相手を死なせるほどの血の量は必要としていなかった。
だから吸血鬼は、この街に留まるあいだは夫婦から血をもらえないかと持ちかけた。
男が吸血鬼に血を与えたのは、もとより本人の意思とはかかわりのないことであったが、男も吸血鬼の事情を聞かされると、いくらかの同情を覚えた。
そこで、妻と相談して、交代で吸血鬼に血を与えることにした。
妻は夫の通夜の席で吸血鬼に犯されたことを忘れられなかった。
話の通じる相手であることは、夫を生き返らせてくれたことでそれと分かったが、
もしもこれからも夫婦ながら献血行為に応じるとしたら、性交は避けられないのではないかと気がかりだった。
けれども、羞恥心から、そうしたことを夫と相談することができなかった。

まず夫が血を吸われ、いよいよ妻の番になると、果たして吸血鬼は血を吸うだけではなく、身体の関係を求めた。
最初のときは、夫の知らないところで関係を結んでしまった。
妻は思い悩んだ挙げ句、夫に真実を告げずに関係を続けることにした。
誰も悲しませたくなかったからである。
夫は一度死んだときに吸血鬼が妻を襲って犯したところを視ていたので、
妻を吸血鬼に逢わせることに同意したときすでに、二人が肉体関係を結ぶことを予想していた。
吸血鬼はもとより、妻もまた自分の情夫との営みに惑溺を感じていたので、関係を絶つことはできなかった。
夫はふたりの関係を、しばらく見守ることにした。
妻は吸血鬼に身体を求められると、夫への貞節を思い吸血鬼を拒もうとしていたが、
やがて回を重ねるたびにほだされてしまい、大胆な逢瀬を重ねるようになっていった。
一方で夫のほうはといえば、ふたりの密会の有り様を覗き見することに、淫らな昂りを覚えるようになっていった。
妻はやがて、夫が自分たちの逢瀬を覗き見していることに気がついた。
初めは戸惑い、夫のしていることを恥ずかしく感じたが、もはや成り行きにゆだねるしかなくなっていた。
夫婦は吸血鬼を家庭内に受け入れて、長く満ち足りた関係を続けた。

絵を好む吸血鬼

2019年01月20日(Sun) 08:26:35

絵画の鑑賞を好む吸血鬼がいた。
還暦近くの吸血鬼だった。
彼の棲む街には美術館がなかったので、隣接する都会の美術館に、よく出かけていた。
そこであるとき、一組の夫婦と知り合いになった。
お互い好みが合い、会話はとんとん拍子にはずんだ。
晩ご飯はいかがですか?と問うご主人に、吸血鬼は思い切ってこういった。

実は私、吸血鬼なんです。隣の街に棲んでいて、ガールフレンドがなん人もいるんです。と。

そうだったんですね。ご夫婦はそう言って驚いたが、すでに吸血鬼の人柄が分かりかけていたので、いった。

家内に急に咬みついたりは、なさいませんよね?そういう方だとお見受けします。
そうだったら、べつに吸血鬼だろうが人間だろうが、関係ないのではありませんか?

吸血鬼は分け隔てをしない夫婦の態度に目を見張り、慇懃に頭を垂れて、いった。
できれば長く、おつきあいをしたいものですな、と。

それから彼はその夫婦と連れだって、月に2回は絵画鑑賞に出かけた。
夜は食事を共にして、気分良く別れていった。
もちろん、彼が奥さんを襲うことはなかった。
彼の棲んでいる街には、そういうけしからぬ欲求に応えてくれるガールフレンドが、なん人もいたからである。

それからしばらく経って、街にいた彼のガールフレンドが2人、同時に街を出ていった。
2人は転勤族の妻と娘で、ふたりながら彼の餌食になっていた。
娘の進学の関係で、避けられない転居だった。
ご主人は妻の浮気相手である吸血鬼に理解のある男で、
時折妻の服を着て女装して、逢ってあげましょうと約束してくれたけれど、
彼の欲求を満たすためのローテーションに、狂いが生まれた。
吸血鬼は献血してくれるガールフレンドたち――そこには好意的なご主人も含まれていた――が健康を損ねないように、綿密なスケジュールを組もうとしたが、どうしても一人足りないことに変わりはなかった。
彼は都会の夫婦に連絡を取って、しばらく会うのをやめましょうといった。

一か月後、吸血鬼の邸に、都会の夫婦が訪ねてきた。
驚きつつも夫婦を出迎えた吸血鬼は、邸のなかに入れるわけにはいかないから、そこのお店でお茶でもしましょうといった。
「あなたがいないと会話がはずまないものですからね」と、ご主人が笑っていった。
それ以来、人目のある喫茶店やホテルのロビーで短時間会話を共にすることで、彼らの交際は復活した。
そんな会合のなん度目かのこと。
街でいちばん大きなホテルのロビーで会合したときに、ご主人がちょっとだけ席を外した。
不運にも、突然の訪問と吸血鬼の渇きの刻とが、重なってしまっていた。
吸血鬼は欲求をこらえ切れなくなって、テーブルの向こう側にまわり込み、さっきまで夫の腰かけていたソファに腰を下ろすと、
戸惑う夫人を引き寄せて、首すじを咬んでしまった。
アアーッ!
奥さんがひと声叫ぶと、ご主人が慌てて駆け戻って来た。
吸血鬼は、好ましい交際が終わったと観念した。
せっかく彼らは分け隔てなくかかわってくれたのに・・・
ところがご主人の対応は違っていた。
奥さんにひと声、「だいじょうぶか?」と声をかけた。
奥さんが、「私はだいじょうぶ」と応えると、ご主人は、このホテルで部屋を取りましょうと言った。
幸い、空き部屋はすぐに見つかった。
そのあいだ吸血鬼は、奥さんを鄭重に介抱して、首すじにつけた咬み痕に滲む血が、服につかないよう気を配っていた。


ホテルの部屋に移った吸血鬼は、なおも奥さんの介抱を続けた。
ご主人はいった。

貴男はいつも紳士的で、喉が渇いているときも我慢をして、家内に接してくれていましたね?
だからわたしたち、相談したんです。
もしも貴男がどうしても我慢できなくなった時には、家内の血を吸わせてあげよう・・・と。
子供たちは独立しましたし、わたしに関するかぎりたいがいのことはお許ししますよ。

健全な清遊が、夫婦と吸血鬼とのあいだを、知らないうちに近いものにしていた。
吸血鬼はご主人に深く感謝をして、奥さんの首すじを咬み、うっとりとして血を吸われる妻の様子を見守るご主人に、
あなたに恥をかかせるわけにはいきませんからな・・・と告げると、ご主人の首すじにも咬みついた。
そして、酔い酔いになったご主人を隣のベッドに寝かせると、奥さんを組み敷いたまま、男女の愛を注いでいった。


月に2度の美術館通いは、その後も続いた。
そういうときには、いままでどおりの清遊だった。
吸血鬼はどこまでも紳士的に振る舞い、夫婦は思いやり深く接した。
そして、それ以外の逢瀬が週に1度、つけ加えられた。
時にはご主人も同席して、夫婦ながらの献血に応じていった。
血を吸い取られて仰向けになった奥さんにのしかかって、吸血鬼はけだもののように荒々しく彼女を愛したが、
ご主人は朦朧となりながらも妻のあで姿を見届けて、絵のように綺麗だよと告げるのを忘れなかった。

三つの鐘 ~祝・ご入学~

2019年01月19日(Sat) 07:08:55

不思議な風景に、貴志は胸をときめかせていた。
ひと月ほど前だったら、とても想像さえできない光景だった。
そのころはまだ、ゆう紀とは婚約をしたてのころだった。
親たちのすすめで、父親の同僚の娘さんという人とお見合いをさせられて。
十代の婚約は決して早くない、街のためにはとても良いことなのだと聞かされていた。
両親はまだ、その街に赴任したことはなかったけれど。
父親の勤務先の創業者が、不採算を承知のうえで設置したその街の営業所に勤めることは、エリートコースのひとつだとさえ、いわれていた。
「父さんもその街に赴任することがあるの?」
と訊く貴志に、
「さあ、どうだろうね?」
と、父親はちょっとだけ困った顔をしてなま返事をしたものだったが、
そのときにどうして父さんの返事がはっきりしないものだったのかは、いまの貴志にはよくわかる。

高校受験の時期が、近づいていた。
進路を母親に聞かれたときに、貴志が口にした学校名は、その街に所在する私立校だった。
大きく目を見開いた母親の美晴をまえに、「ぼくひとりでもあの街に行きたいんだ」と、貴志は告げた。
中3という若さで父親の同僚に処女を捧げた婚約者のゆう紀も、その学校に進学する予定だと、親たちも聞かされていたらしい。
「反対しにくいわね」と、貴志のいないところで美晴は夫の継田にいった。
継田家がその街のしきたりにまみれてしまう日もそう遠くないと、継田も予感せざるを得なかった。

合格通知が届くと、貴志はすぐにでも街に移りたがった。
「嘉藤の小父さんの家から通ってもいいって、言ってくれてるんだ」
息子がどうして同僚とそんな関係を結んだのか、継田にはわからなかったが、新たに費用を出して息子のためのアパートを借りるよりは安上がりだな、と、安直に思った。
まさかその嘉藤に、まな娘が日常的に汚されていることなど、そのときの継田にはまだ、思いもよらぬことだった。

貴志はいまの学校の卒業式も、セーラー服を着用して出席した。
「恥かしくないから。いまのクラスメイトとは、もう会わない関係だから」
貴志はそう言い張って、背広姿の父親と、スーツ姿の母親とともに、白のラインが三本入ったセーラー服姿で肩を並べて歩いた。
「良い時代になったってことなんだろうね」
継田は自分の気持ちを整理しかねながらも、自分自身に言い生かせるように美晴にいった。
美晴は継田よりもすこし前から、貴志が妹の制服を着て学校に行きたがっているのを知っていたし、
夫には内緒で一度ならず、女子の制服を着用して通学することを息子に許してしまっていた。
もちろんそんな彼女も、まな娘や息子の許嫁が、嘉藤に日常的に汚されつづけていることなど、思いもよらぬことだった。

その両親がいま、この街をいっしょに、歩いている。
街の学校はブレザーだったが、
貴志は同じクラスの男子生徒とはボタンのつき方が正反対のブレザーを着、
グレーのプリーツスカートのすそをひざの周りにそよがせて、
濃紺のハイソックスに包んだふくらはぎを見せびらかすように、大またで闊歩していく。
この街への転勤を希望した父親が、母親を伴ってこの街に来た時、貴志は父親の首すじに赤黒い痕がふたつついているのを発見した。
たぶんそれは、自分が嘉藤につけられた首すじの痕と、同じ間隔のはず。
父親は母親よりもひと足早く、同僚と和解をしたらしい。
嘉藤がまな娘と息子の嫁になる少女と契り、息子までも女として愛し抜いていることを、受け容れていたのだった。
そしていま父親は、まだなにも知らない母親の美晴を伴って、嘉藤の家を訪問しようとしている。
入学式の帰り道のことだったから、いつも質素な美晴も、小ぎれいなグリーン系のスーツで着飾っている。
けれども、この日のためにきちんとセットされた、ゆるいウェーブの黒髪も、
たんねんに化粧を刷かれた色白の豊かな頬も、
純白のブラウスの胸もとで清楚に結わえられたリボンも、
折り目正しく穿きこなされたベーズリ柄のスカートも、
脚に通した真新しい肌色のストッキングも、
ぴかぴかと光る黒のエナメルのハイヒールさえも、
あと10分と経たないうちに、夫よりもはるかに年上の暴漢の手にかかって、
持ち主の血潮を点々と散らされながら、弄ばれ嬲り抜かれてしまうのを、
貴志も、父親の継田さえもが、予感していた。

けれども美晴はきっと、快楽の淵に堕ちてしまうだろう。
娘や息子の血の味を通して、彼女もまた、貞淑妻の裏側にマゾヒズムを秘めていることを、読み取られてしまっているから。
折り目正しい正装に不似合いなあしらいを受けてうろたえた母さんが、
服を破かれ肌を露出させながら狂わされてゆく――
そんな光景を、父親とともに歓んでしまおうとしている自分が、呪わしくもほほ笑ましかった。
そして、堅実な良家の主婦を堕落させることを嗜好のひとつとしている嘉藤に、
永年連れ添った自分の愛妻を気前よく添わせようとしている父親の気前の良さも、呪わしくてほほ笑ましかった。
両親から受け継いだマゾの血が、いまでも貴志の全身に育まれ、脈打っている。
女子の制服を身に着けたその身に廻るぬくもりを抱きしめるように、貴志はひそかに自分の胸を抱いていた。

ボ~ン。
この街に持ち込まれた岩瀬家の古時計が、嘉藤の邸の奥で刻を告げた。
午後一時。
それは、継田夫人の貞操が喪失されると予告された時刻だった。
放恣に伸び切った白い脚には、裂かれた肌色のストッキングが、まだ切れ切れに残っていた。
自分を組み敷いている獣の欲情に応えはじめてしめてしまっている自分を呪いながらも、
美晴は夫と息子の見つめる視線を痛痒く受け止めながら、男に迫られた熟女としての役目を果たしはじめようとしている。



あとがき
「谷間に三つの鐘が鳴る」という歌があります。
ひとりの人間の人生を、生れたとき、結婚したとき、この世を去るときと、三つの鐘で表現した歌です。
素晴らしい歌とは似ても似つかない、どうにも罪深い鐘の音が、この街では絶えず聞かれるようですね。

美姉妹の葛藤を描いた前作を受けて、この三部作では妹娘の婚約者の変貌を描いてみました。
第一話では貴志の妹が添え物のように犯され、
第二話では貴志が女子生徒として犯され、
第三話では貴志の母が入学式のスーツ姿で犯されていきます。
母や妹、婚約者を寝取られてしまうことは、自身の初体験と同じくらい、深い意味をもっていると思われます。

三つの鐘 ~セーラー服の初体験~

2019年01月19日(Sat) 06:30:03

ボーン。

岩瀬家の古びた柱時計が、一時を告げた。
稚ない唇が、昂ぶりを帯びた股間の茎を、いっしんに咥え込んでいた。
たどたどしい舐めかたが、貴志を陶酔のるつぼに導いている。
その目線の先で、制服姿の遥希が、嘉藤に抱きすくめられていた。
遥希の制服は、都会らしいブレザータイプ。
薄茶のジャケットに赤のチェック柄のプリーツスカートをミニ丈に穿きこなして、
品行方正な白のハイソックスが、淫らな足摺りに翻弄されて半ばずり落ちたままふくらはぎを包んでいた。

「姉さんのときと、どっちが昂奮するの?」
自分の股間から顔をあげた上目遣いに、かすかな嫉妬が込められている。
結婚を約束した二人の間に、セックスの関係はまだない。
それはまだ、父親の同僚である嘉藤の特権であり続けていた。
フェラチオを覚えて間もないゆう紀の唇は柔らかで、生真面目なたんねんさで、恋人の一物をくまなくしゃぶり抜いてゆく。
同じ行為でも、姉の遥希とはだいぶ違っていた。
ゆう紀が抱かれている隣の部屋で遥希が貴志を慰めるときは、もっと挑発的な、なれたやり口だった。

自分の家にやってくる嘉藤は、出迎えた父親とはごくふつうに接していた。
そのなに食わぬ態度にむしろ、悪らつさを感じ取った貴志は、彼の態度に敏感になっていて、
父親が座をはずしたときに嘉藤が、母や妹をいやらしい目で盗み見るのを見逃さなかった。
まるで身体の輪郭を撫でまわすような目つきだと、貴志はおもった。
そのうち妹はすでに、両親の知らないところで、嘉藤の奴隷になり下がっている。
婚約者のゆう紀と交代でその嘉藤の家に妹を伴うという屈辱的な義務を、
それでも貴志は自分でも訝るほどの従順さで、果たしていった。
いびつな嫉妬が、この青年の感性を、鋭く育て上げようとしていた。

ソファに腰かけた貴志の前、ゆう紀はセーラー服姿のまま、姉との情事に見入る未来の夫を、唇で慰めつづける。
じゅうたんの上に拡がった、丈の長い濃紺のプリーツスカートに、貴志の目線が注がれた。
腰周りにまといつくスカートの、折り目正しい直線的なひだが、複雑に折れ曲がっているのを、薄ぼんやりと眺めていた。
「ぼくも穿いてみたいな」
「え・・・?」
顔をあげるゆう紀に、貴志がいった。
「ぼく、そのうちあのひとに、血を吸われるんだろ?」

そうね。吸われると思うわ。
嘉藤の小父さまは、父の血も吸っているの。
男の血はあまり関心がないって、口では言っているけれど。
奥さんや彼女を自分に捧げた男性の血は尊いって、いつか言っていたわ。
あなたの血にも、きっと興味あるはず。

「あなたの血にも、きっと興味がある」
ゆう紀の言いぐさに貴志はゾクッとした昂ぶりを覚え、その昂ぶりは股間を口に含んだゆう紀に直接伝わった。
「吸われてみたい?嘉藤の小父さまに」
「うん、それも、いいかも・・・」
「貴志くんも、やらしいね」
ゆう紀はクスッと笑った。
白い歯をみせて笑う白い顔はどこまでも無邪気で、まだなにも識らない十代の少女にしかみえない。
「ぼくも穿いてみたいって、なにを穿いてみたいの?」
「制服のスカート」
口にしてしまった言葉の異常さに、さすがに貴志は顔を赤らめたけど、
ゆう紀はまじめな顔をして、貴志を見つめつづける。
「ねえ、それって、私の制服?それとも、姉の着てるほう?」
はるちゃんの制服、かっこいいものね・・・と言いかけた言葉の裏にかすかに秘められた嫉妬に、貴志はうかつにも気づかなかったけれど。
彼は呼気をはやめながら、思ったままを口にしていた。
「きみの制服を、着てみたい」

貴志よりも少しばかり小柄だったゆう紀のセーラー服は、サイズがちょっとだけきつめだった。
それでも白のラインが三本走った袖は、貴志の手首を何とか隠していたし、
腰周りにギュッと食い込むスカートのウエストは、かえって少年の昂ぶりを高めた。
「制服は拘束具」だというけれど、貴志は別の意味でそうなのだと納得した。
腰の周りをユサユサと揺れる重たい濃紺のプリーツスカートは、ひざの下から入り込んでくる外気の空々しさには無防備で、
スカートの下でむき出しになった太ももを、ひんやりと撫でつける。
ひざ下までぴっちりと引き伸ばした真っ白なハイソックスの締めつける感覚にも、青年の皮膚を敏感になっていた。

「あの・・・」
女子生徒のかっこうになって嘉藤のまえに改めて立ったとき、貴志は心のなかが入れ替わるのを感じた。
身に着けたセーラー服が、彼を少女へと、塗り替えてゆく。
「恥ずかしい」
伏し目になった顔だちすらが、女の子の翳を帯びていた。
「似合っているよ、きみ」
嘉藤はそういうと、じゅうたんのうえにあお向けになった貴志の上に、荒い息でのしかかった。
セーラー服の肩をつかまれ、上衣の裾をまくり上げられ、胸を指でまさぐられる。
ゆう紀や遥希の胸をなん度もさ迷った手つきの巧みさに、貴志はわななきをおぼえた。
むき出しになった嘉藤の筋肉質で毛むくじゃらの脚が、重たい丈長のプリーツスカートを、じょじょにたくし上げてゆく。
嘉藤の荒い息に、貴志のはずんだ息遣いが重なった。
ふたりは、唇を重ね合わせていた。
ゆう紀や遥希、それに妹の彩音の素肌を這った唇――
その事実に慄然としながらも、貴志は行為をやめることができなくなった。
初体験のキスの相手が男だなどとは夢想もしていなかったけれど。
しつこく重ねられてくる爛れた唇のせめぎ合いに、なん度もなん度も、応えてしまっていた。

首すじに喰いついた牙が、自分の血を啜り上げるのを聞きながら。
股間から伸びたもうひとつの牙が、自分の股間を抉るのを感じた。
ゆう紀さんが夢中になってしまったのも、無理はない――貴志は思った。
これからもきっと末永く、ゆう紀さんはこの一物に、自分の操を蹂躙されつづけてしまうのだろう。
そして自分も、ゆう紀さんの結婚前の身体を、この男の劣情を慰めるために、悦んで与えつづけてしまうのだろう。
そして自分自身さえも、この男の情婦に堕とされて・・・女として犯されつづけてしまうのだろう。
両親がいまのこの光景を視たらどう思うのか?それは怖かったので、考えないことにした。
いまはただ、婚約者やその姉、そして彼の妹までも呑み込んだこの男の唇に、酔い痴れ続けてしまいたかった。

「母がいまいる街ではね、男子もセーラー服で通学できるんだよ」
ゆう紀がいけないことを、ささやいていた。
「ね。あたしたちも、あの街へ行こう。そして貴志くんも、女子生徒になっていっしょに学校に行こうよ」
ゆう紀のいけない囁きに、貴志は強く頷いていた。
「そうだね、ぼくもきみと同じ制服を着て、学校に行きたい」
「嬉しい!たまには気分を変えて、お姉ちゃんの制服を着ても良いからね」
いろんなことを見透かしてしまった悧巧すぎる少女の目は、それでも無邪気な輝きを失わなかった。

三つの鐘 ~少女たちの愉悦~

2019年01月19日(Sat) 05:45:16

ボーン。
岩瀬家の古めかしい柱時計が、一時を告げた。
貴志は蒼ざめた目線を、一瞬柱時計に注いだが、すぐに目線を元に戻した。
半開きになったふすまの向こう。
まだ稚ない婚約者のゆう紀が、セーラー服姿で、嘉藤に侵されていた。
これでもう、なん回目になるだろう?
すでにゆう紀は、貴志が覗いて昂っていることも、識っている。
それだというのに今は、結婚前にしてはならないことをしているところを、
未来の花婿に見せつけることに、快感を覚え始めてしまっている。

ねえ、貴志くんが見やすいように、ふすま開けておこうよ♪
そう提案したのは、ゆう紀の姉の遥希(はるき)だった。
初めて視られていると気づいたとき、さすがにゆう紀はハッと息をのんで、
両手に口を当てて貴志をまともに見つめていた。
「たっ・・・貴志くん?視ていたのっ!?」
震えて引きつった声が貴志を突き刺したとき、
まるで悪いことをしているのは自分のような気がして、貴志は顔を真っ赤にして俯いてしまった。
「いいじゃない、いいじゃない。貴志くんも愉しんでいるんだから――ふたり、お似合いのカップルよ」
貴志と自分との仲を姉が内心嫉妬していることに気づいていた妹は、
姉の言葉の真意をはかりかねて、それ以上に自分の過ちが招いてしまった状況のきわどさにうろたえてしまって、
なにをどう言っていいのか、わからないようすだった。
「ねえ、もう少しだけ、続けてみましょうよ。もうじき、煙草を買いに行った小父さまが戻っていらっしゃるから。
 そうしたらゆうちゃんは、小父さまをもういちど、満足させて差し上げるのよ」
貴志がゆう紀に向かって、ヘドモドと意味不明なお辞儀だけ残して隣室に戻ったのを見はからうと、姉はつづけた。
「貴志くん、けっこう愉しんでいるわよ。だから――ゆうちゃんも、もっと愉しんじゃおうよ」
状況を愉しんでしまっているらしい姉に、自分に対する揶揄が込められていないのを感じ取ったゆう紀は、
「そうするのがあなたの義務でしょ?」
と促す姉に、こんどはしっかりと頷きかえしていた。

再び戻って来た吸血鬼がゆう紀にのしかかるところをかいま見ながら、貴志は不覚にも股間を昂らせてしまい、
その昂った股間に、遥希の掌が、なだめるようにあてがわれた。
さいしょはズボンのうえからの愛撫だったのが、じょじょに大胆になって、
荒々しくジッパーをおろすとパンツのすき間から覗いた一物を揉みしだき、
さいごには唇を覆いかぶせて、噴き出す熱情のほとびを、慣れた口づかいで呑み込んでいった。

柱時計が真っ昼間の一時を告げたとき。
遥希はいつもそうするように、妹が犯されるのを視て昂っている貴志の股間を弄んでいた。
いつもとちょっとだけ状況が違うのは、傍らに少女がもう一人、あお向けに横たわっていることだった。
おさげ髪をじゅうたんの上に振り乱して、天井を仰いだ目は生気を失い、
それでもまだ意識がかすかに残っているのは、セイセイとせわしなく上下する細い肩からそれとわかった。
貴志の妹だった。
ゆう紀とは同級生で、なにも知らずに岩瀬家を訪れて、兄の目のまえで襲われて血を吸い取られた後だった。
おさげ髪を揺らしながらうろたえる少女の頭をつかまえて、嘉藤は獣じみた荒々しさで、そのうなじにガブリと喰いついた。
ふだん顔を合わせている同僚の娘に対する態度とはかけ離れたやり口に、
貴志の妹は目を回し、われを忘れた。
ゴクゴクと喉を鳴らしてうら若い血液を貪る男の意のままに、胸を揉まれ、股間をまさぐられながら、失神していったのだ。

美しい妹をきょうのご馳走の添え物のようにあしらわれたことに、貴志はマゾの血をよけいに昂らせてしまった。
「彩音ちゃん、だったよね?」
吸い取ったばかりの妹の血を口許からしたたらせながら、父親の同僚である嘉藤さんがかけた声に素直に肯くと、
「彩音です、よろしくお願いします」
と、神妙に頭を下げていた。

「良いのかしら?あんなに熱っぽくやっちゃって」
冷ややかに透きとおる遥希の声に、貴志はゾクッとした。
目のまえでは婚約者が、姦りまくられている。
そして、同じ危難に、妹までが巻き込まれようとしている。
もう少し大人になれば、もっと素敵な同年代の彼氏に恵まれるかもしれないか細い身体が、
父親よりも年上の男に汚されてしまうと知りながら、もうどうすることもできずにいたし、
妹の純潔が嫌らしい親父のひとときの性欲を解消するために蹂躙されてしまうという状況に、
身体じゅうの血管をズキズキとはずませながら昂りはじめてしまっている。

「よかったの?お兄さん?」
男の猿臂から解放されたゆう紀は、イタズラっぽい上目遣いで、恋人を見あげた。
「あ、ああ・・・うん・・・」
貴志の受け答えは相変わらずはっきりとしなかったが、真意は明確なのを、ゆう紀は見抜いてしまっている。

目のまえで、白いハイソックスを履いた妹のふくらはぎに、淫らな唇が吸いつけられる。
ふたたびの出血に真っ白なハイソックスを真っ赤に濡らしながら喘ぎはじめた妹の目が愉悦に狂い始めているのを、兄は見逃さなかった。

ゆう紀の手でズボンを脱がされるままに脱がされて、なん度めかの絶頂に近づいた股間の昂ぶりを、稚ない唇が包み込んでゆく。
姉を見習って、まだ不慣れな手つきがもどかしそうに、恋人の股間をつかまえた。
その手つきのもどかしさが、貴志をいっそう深い惑溺へと導いていった――

征服された妹娘

2019年01月17日(Thu) 07:18:21

お母さまはね、前に住んでいた街で恋をしたの。
お父さまは優しい人だから、お母さまがそのひとの恋人になるのを承知なさったの。
男の人がほんとうに女のひとを好きになると――
そのひとの裏切りすら、愛することができるようになるんだって。
信じるか信じないかは・・・・・・あなた次第ね。

姉の遥希(はるき)の口許からつむぎ出される、まるで呪文のようなひとり言。
妹のゆう紀は、聞くともなしに聞き入っていた。


お母さま、行っちゃったわよ。あたしたちを置いて。好きな人の棲む街に。
突き放すようにうそぶく姉の横顔を、ゆう紀はじっと見つめていた。
広いおでこの生え際を見せびらかすように、思いきりよく引っ詰めたロングヘア。
さらりと背中に流したその黒髪のすき間から、白い首すじが、これまた見せびらかすようにあらわになっていて、
その肌の白さの真ん中に、赤黒いシミのようなものがふたつ、数センチのへだたりをもって、肌の白さを翳らせていた。
「お怪我をしたの、お姉さま?」
ゆう紀の問いに遥希は薄っすらとほほ笑んでこたえた。
「怪我?・・・そうね、女の子は大人になるとき、怪我をするものなのよ」
あなたはまだ、なにも知らないのね・・・?
姉にそう指摘されたような気がして、ゆう紀はきまり悪そうに黙りこくった。

お母さまに手を出した人ね、お母さまの本命になれなかったの。
その人に悪いことをしたわ、つぐないたいのって、お母さまが仰るものだから。
だからあたしはその人に、初めての経験を差し上げたの。
あなた、あたしを悪いお姉ちゃんだと思う?
それともあなたも、あたしと同じ経験をしたいと思う?
え・・・いいの?
だってあなた、あなたには貴志くんって人がいるんでしょう?

長女の遥希には、まだ結婚を意識した相手はいなかった。
惣領娘(男兄弟のいない長女のこと)なのだから、お前は少し待ちなさい、と、父親からはいわれていた。
そして、次女のゆう紀のほうが先に、結婚相手が決まっていた。
まだ十代同士の婚約に、周囲はあまりの若さに驚いたけれど。
あの街ではこれがふつうなんですよという娘の父親の言いぐさに、同じ勤め先を持つ者たちは、無言の納得を示していた。

さいしょのときはね、お姉ちゃんが手を握っててあげる。
少しばかり痛いけど、声を出すのはガマンするんだよ。
あの人ったらね、痛そうに顔をしかめる女の子が、白い歯をみせるのが好きなの。


結婚してから夫となった人とだけすると聞いていた、あの行為。
恋人同士なら、ほかの人としてもかまわないのよ、とお母さまが囁いた、あの行為。
それをあたしは、結婚前に遂げようとしている。
相手の男が家に姿をみせたそのときになって、ゆう紀は初めて、身震いを覚えた。
いけないことをしてしまうという罪悪感と。
お母さまとお姉さまだけが知っていて、自分だけがまだ知らない未知の領域に足を踏み入れることへの好奇心と。
いったいどちらが、まさっていたのだろう?
そして意図的に顔をそむけた側には、婚約者である貴志への後ろめたさもまた、意識するまいとしても意識してしまっている。

「いいのかな?ほんとうに、いいのかな?」
姉に対する問いは、自分に対する問いでもあった。
けれどももはや、ゆう紀の純潔の行き先は、姉によって決められてしまっていた。
「もうここまできて、そんなことは言いっこなしよ。あたしが体験した男の人を、あなたも体験するの。
 お嫌?」
そこまで言われてしまっては、大人しい性格のゆう紀はもう、がんじがらめになってしまうのだった。

怖がらないでいいのよ。
お姉ちゃんが、手を握っててあげるから。
少しばかり痛くても、声をあげちゃダメ。
ご近所に、筒抜けになってしまうわ。あの家の娘はだらしがないって。
だから、あなたが声をあげないことは、家の名誉を守ることになるの。
――いいわね・・・?がまん。ガ、マ、ン。

のしかかってくる、自分の父親よりも年上の男をまえに、ゆう紀は悲壮な顔つきで、その刻を迎えた。
握り返してくる掌の力が痛いほどギュッとこもるのを感じて、姉娘は白い歯をみせる。
同級生のたか子ちゃんやみずきちゃんのときも、こんなだった。
あたし、痛いのって、好き・・・。
父親の上司だというその男が、目のまえで妹を汚すのを。
そしてその男の思惑どおり、妹が痛さのあまり白い歯をみせるのを。
姉娘は満足そうに見届けた。


どお?よかった?
いいのよあたしは。さいしょの刻だもの。ふたりきりにしてあげなくちゃ。
遥希の白い目線の先にいる少年は、
隣室で自分の父親よりも年上の男と息をはずませ合っている婚約者の横顔に、
目線をくぎ付けにしてしまってしている。
その頬が紅潮して、昂ぶりを見せていることに、遥希は自分の見通しが正しかったことへの満足感をおぼえていた。

ほんとうなんだね。男の人が女の子をほんとうに好きになると、その子の裏切りまで悦んじゃうって。
ふつうの女の子は、結婚前にこういうことをするのを、自分の結婚相手には見せたりしないものよ。
でもあなたは特別。
だから、きょうのパーティーに、あの子には内緒で、招待してあげたの。
あの子の処女喪失、あなたも祝ってくださるわよね?
うんうん、もう夢中で、彼女のお姉さんの声なんて聞こえてないっていうことね?

代わりにあたしのことを抱く・・・?って訊こうとして。
少女はそれを思いとどまる。こたえが想像できてしまったから。
どこまでいっても、私はわき役?
自分よりも先に結婚相手を得た妹への嫉妬を認めるのが怖くて、少女は口をつぐみ、目を背けそうになる。
その場を離れようとした遥希の掌を、強い力がギュッと抑えた。
貴志の掌だった。

ほら、お姉さん、視て御覧。せっかくの妹のあで姿なんだから。
示された指先のむこう、通学用のハイソックスだけを身に着けて全裸に剥かれたゆう紀が、
男と抱き合ったまま激しく腰を振って、息せき切ってその吶喊を受け容れている。
自分自身の初めての刻を思い出し、姉は顔を赤らめた。
ゆう紀さん、とってもきれいだね。ぼくはゆう紀さんのこと、惚れ直した。
ぼくが視に来たことは、ゆう紀さんには内緒にしておいてくださいね。
よかったらこれからも、パーティーに招待してくださいね。もちろん、時々でかまわないから。
ぼく・・・ゆう紀さんと結婚してからも、こういうパーティーを許してしまうかもしれないですね。
男として恥ずかしいけれど。

恍惚とした少年の横顔に引き込まれるように、遥希は少年の掌に、自分の掌を重ね合わせて、ささやき返す。
――ほんとう、ゆう紀の晴れ姿、とってもきれいだね。かわいいね。


あとがき
前作はあれでおしまいのつもりだったのですが、愛読者のゆいさんのリクエストを受けて初めて、インスピレーションが湧きました。
父親の上司を相手に処女を喪った姉が、妹も同じ運命に巻き込もうとするお話です。
自分よりも先に婚約者を得た妹や、自分たちを置いて恋人の元に走った母親への複雑な気持ちを描いてみました。
妹の初体験を一緒に目にした妹の彼氏に、彼女は父親をみていたのかもしれませんね。

ブログ拍手♪

2019年01月16日(Wed) 23:56:56

ちょっとこちらから目を話しているあいだに、ちょっと前に14もの拍手を頂戴しました。
とても嬉しかったです。(#^^#)
たぶん、以前から目を通しておられたものに、まとめて印をつけられたのかな?と想像していますが、
テーマ的にかなりはっきりとした共通性がみられ、少しずきッときました。
カテゴリは「少年のころ」が多いのですが、ほとんどがハイソックスのお話なんです。
私のなかでもいくつか気に入っているお話がありますので、少しだけ紹介してみます。

「スポーツハイソの時代」
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-3015.html
同じクラブに所属する男子数名が、色とりどりのライン入りハイソックスの脚を並べて、
学校に出没する吸血鬼に咬ませてゆくお話です。
個人的に気に入っているのは、キャプテンが堕ちてからその風潮が部員たちの間により素早く浸透するようになったというくだり。

さいごに大人になってからの主人公が、若い声たちが行き交う体育館を眺めて回想にふけるシーンがあります。
何気なく描いたのですが、いまでも記憶に残っています。


「デニムの半ズボンに、スポーツ用ストッキング」
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-2505.html
自宅に侵入してきた吸血鬼に、「あいにくだけどこの家には女の子がいないんだ」と言いながら、すすんで血を吸わせようとする少年。
強いられているはずの吸血を、むしろ自分を襲っているやつよりも愉しんじゃっている感じが漂います。
このお話、拍手の少ない当サイトにありながら、じつに11もの拍手をいただいています。


「少年少女のハイソックス」
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-2472.html
吸血鬼を歓迎する学校に行った主人公が、あてがわれた教室にいた男女の生徒たちの色とりどりのハイソックスの脚を狙うお話です。
男の子が女子と同じようにハイソックスを履いていたのは、じっさいには1970年代ころのことですから、いまとなっては大昔のことですね。
時折ネットを見ていると、ごくまれにですが当時の画像に出くわします。
男の子たちが、女子が履くようなライン入りのハイソックスを堂々と履きこなしている時代。
ついこの間のようでありながら、遠い昔の別世界です。


「素っ裸に、ハイソックス」
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-2342.html
生き血を吸い取られ、妻や娘までモノにされてしまった男が、吸血鬼になって、別の家に侵入して、
その家の夫をたぶらかし、妻や娘も餌食にする・・・限りなく続いてゆく食物連鎖。


「少女の履く、白のハイソックス~入学式帰り~」
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-2295.html
「もしもママの血で、足りなかったら。真由香の血を吸っても、いいからね。」
目のまえで母親の生き血を吸っている吸血鬼にそんなふうに声をかけてしまう、心優しい少女のお話。


「初体験のハイソックス 初体験の黒ストッキング」
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-2266.html
十三夜かけて、家族全員の生き血を吸い取ってしまうという残忍な吸血鬼。
けれどもその家の少女は彼に心優しく接して、家族はだれひとり血が尽きることがなかった――そんなお話です。


14のお話は、古いものでは2010年のものまであります。
ほとんどがハイソックスもの、カテゴリでいうと「少年のころ」にあたります。
いずれもが、昭和の香りがほんのり漂うお話です。
おひまなかたは、ひととき御覧になっていってくださいね。
(^_-)-☆

「逆」単身赴任――街の体験を再現する夫たち

2019年01月06日(Sun) 09:26:25

「オ、岩瀬くんか。久しぶりだね」
E市の事務所に着任すると、真っ先に声をかけてきたのは嘉藤だった。
「あ、どうもお久しぶりです。お元気そうですね」
ありきたりの返事を返す岩瀬に、嘉藤は周囲に聞こえないように耳打ちをした。
「前任地での出来事を会社で話すのは、ご法度だからな」
わかってますよ・・・と、岩瀬は苦笑いしながら応じた。

お互いにとって前任地は、夫婦の歴史を塗り替える場所だった。
吸血鬼の棲む街に赴任させられたものたちは、夫人の帯同が義務づけられていた。
当地での業務はほとんどなく、夫たちは労せずして高給を手にすることができた。
その代わり、同伴した妻や娘たちは、その地に棲む吸血鬼の毒牙にかかり、彼らの愛人に加えられていったのだ。

岩瀬の赴任は、嘉藤よりだいぶあとだった。
都会で借財を重ね、その追求から逃れるためにこの会社に入社し、吸血村への赴任を希望した。
妻も同意の上だった。
妻を吸血鬼に襲われて犯されてしまうのは、もちろん歓迎すべからざる境遇であったけれど、
もはや岩瀬にそれ以外の選択肢は残されていなかったのだ。
先輩にあたる嘉藤もきっと、なにか都会にいられない事情を抱えた立場だったのだろう。
借金は会社が肩代わりして返済してくれたので、このほど晴れて都会住まいを再開することのできた岩瀬だったが、
はたして嘉藤はどうなのだろうか。

嘉藤はその美しい熟妻を、あの街に残してきていた。
7人もいるという愛人たちが、嘉藤夫人との別離を惜しみ、嘉藤が彼らの思いに好意的に応えた――ときいていた。
いまでも嘉藤は週末ごとにあの街に戻っていたが、「2回に1回は見守り係さ」と、苦笑いしながら告白した。
帰宅した夫は、吸血鬼どもが自分に代わり妻とくり広げる熱々のラブ・シーンをたっぷり見せつけられてひと晩を過ごすのだという。
「いい齢をして男を7人も作りやがって」
嘉藤は心許した岩瀬にそう毒づいたが、
「俺の女房は魅力的だから、男が7人もいるんだぜ」
と、自慢しているようにさえ岩瀬の耳に響いた。

岩瀬の妻、紗栄子もまた、街に棲みついてすぐ、吸血鬼の来訪を受けていた。
出勤していった後の岩瀬家は、ほかの都会住まいだったサラリーマンの家庭同様、吸血鬼のハーレムと化していた。
ひとりの吸血鬼だけに奉仕することが決まった人妻以外は、月に1回、「ご開帳」と呼ばれる儀式を体験した。
その晩は、どこのだれが通ってきても受け容れるという儀式で、それをきっかけに愛人を増やす人妻も多かった。
すでに吸血鬼に妻を寝取られた夫たちにも、「ご開帳」への参加は許されていたから、
そういう夜に夫たちは、来訪する男どもの行列のなかに、勤め先の同僚の姿を見出すことも珍しくなかった。
「あいつ、うちの女房に関心あったんだな」
そんな新たな”発見”が、翌日からの夫たちの関係を変えた。
それまで高飛車な態度だった上役が、妻を抱いた若い部下に和やかに接するようになったり。
同僚どうしで公然と妻を交換し合ったり。
いちど抱いた若い部下の奥さんが忘れられなくなって、そんな上司の想いを察した部下が家に夕食に誘ったり。
奇妙なことに、妻を共有した経験をきっかけに、関係が良くなるのがつねだった。
岩瀬の妻である紗栄子と嘉藤の関係もそうだった。
自室で仰のけられた妻の裸体に覆いかぶさろうとする嘉藤は、岩瀬と目が合うときまり悪げに笑った。
けれども、そのあとの行為はどの男のそれよりも激しかった。
愛妻のうえにのしかかる上司。息をはずませてそれに応じる紗栄子。
ふたりの組み合わせに、岩瀬は不覚にも射精をこらえきることができなかった。
以来嘉藤は、岩瀬家に足しげく通うようになった。
「うちにお客が来ていてね」
それが嘉藤の口癖だった。
年輩だったが評判の美人だった嘉藤の妻のもとには吸血鬼たちが足しげく通いつめて、
夫の嘉藤は彼らに遠慮をして帰宅を遅らせるのが常だったのだ。
吸血鬼に妻を犯されているあいだ、嘉藤は部下の家に招かれて、その若妻を抱きすくめる――
「まるで食物連鎖ですね」という岩瀬に、「そう言うなヨ」と嘉藤は満足げに目を細めていた。


「嘉藤さん、今夜いっしょに夕食いかがですか?妻も会いたがっていますし」
岩瀬が嘉藤にそう持ちかけたのは、再会の翌日のことだった。
「まだ引越しで落ち着かないんじゃないのか?」という嘉藤に、
「お逢いした方が気分が落ち着くと、紗栄子が言っていました」と伝えた。
嘉藤はもちろん、よろこんで応じた。
「酔いつぶそうか?それとも、ロープでぐるぐる巻きか?」
嘉藤の問いに、「ロープ、用意してあります」と応えながら、岩瀬は以前と同じ呟きを口にした――まるで食物連鎖ですよね?と。

久々に顔を合わせた岩瀬夫人の歓待に、嘉藤はしたたかに満足した。
部下を縛ってしまうと、エプロンを着けたままの紗栄子を後ろから羽交い絞めにして、吸血鬼みたいに首すじを吸った。
「あぁあ・・・っ」
紗栄子が柳眉を逆立てて、嘉藤に応じた。
初めて咬まれて以来、首すじを吸われると感じてしまうのが、紗栄子の習性になっていた。
目のまえでは、縛られた岩瀬が目を充血させてこちらを見ている。
「亭主の前で感じちゃっていいのか?」
と、紗栄子を責めながら、スカートのなかに手を入れて、秘所をグイグイとまさぐり続けた。
紗栄子の身体から力が抜けて、たたみの上にひざを突いてしまうと、力まかせに押し倒した。
パンストを半脱ぎにしたまま犯すと、岩瀬が特に昂奮するのを、嘉藤はよく心得ていた。
嘉藤の虐げるように激しいセックスに、岩瀬夫人も、岩瀬じしんも、したたかに感じつづけてしまっていた。
ここは吸血鬼のいない都会の一隅だったが、マンションの室内では、あの街と同じ光景が再現されていった。


それ以来、岩瀬夫妻と嘉藤の交流が再開した。
「今夜どう?」と嘉藤が誘うと、岩瀬は必ず応じた。
紗栄子は専業主婦だったので、いつでも都合を合せることができた。
初めての夜は娘2人の寝静まった深夜だったが、
「もう娘たちも年ごろなので、夜よりは昼間のほうが気を使わなくて良いです」
と、紗栄子は母親らしい気遣いをみせた。
嘉藤と岩瀬は業務上もコンビを組んでいたので、出張・直帰の名目で、事務所をそうそうにあとにすると、岩瀬のマンションへと直行した。
どうしても夜になるときは、あらかじめ指定したホテルに紗栄子が待っていた。
よそ行きのスーツ姿に息荒くのしかかってゆく嘉藤の背中を、岩瀬はいつも昂った眼で見つめつづけていた。


「紗栄子が、街に帰ります」
岩瀬の告白に、嘉藤は眉をあげた。
以前から紗栄子に執心だった吸血鬼が、どうしても戻ってきてほしいとラブ・コールを送って来たというのだ。
愛人の意向が夫のそれに優先するのは、つねのことだった。
そして紗栄子が一番気にかけたのは、夫のことではなく嘉藤のことだと、岩瀬は告げた。
「そう・・・それは寂しくなるね」
しんみりとなった嘉藤を慰めるように、岩瀬がいった。
「娘たちは当面、こちらに残ります。学校がありますからね。急には移れないんですよ」
街での赴任期間中、図らずも手にした高給で裕福になった岩瀬は、このマンションも持ち家になっていたし、娘たちは名門校に入学させていた。
姉妹はそれぞれ別の学校に通っていた。
上の娘はブレザーで、下の娘はセーラー服だという。
そう言えば、真昼に岩瀬のマンションで情事の真っ最中に、下の娘が急に帰ってきたことがあったのを、嘉藤は思い出した。
白と紺のセーラー服の夏服に、白のハイソックスの足許が眩しかった。
嘉藤の表情が動くのを読み取るように、岩瀬がいった。
「紗栄子の留守中は、娘たちに相手をさせます。紗栄子もそのつもりです」


岩瀬の上の娘を犯したのは、紗栄子が街に戻ったわずか一週間後のことだった。
下の娘を父親が連れ出した後、勉強を教えるという名目で姉娘の勉強部屋に入るとき、嘉藤はさすがに胸が震えた。
なにも知らない姉娘はにこやかに嘉藤を迎え入れ、机に向かう少女の傍ら、嘉藤はベッドに腰かけてよいと言われた。
折り返しのある深緑のハイソックスが、嘉藤の目を眩しく射た。
約束どおり、数学の問題を三問、解いてやった。
理系だった嘉藤には、ぞうさのないことだった。
少女は健康そうな白い歯をみせて、嘉藤にいった。
「教えてくれたお礼をしなくちゃいけませんよね?」
え?と首をかしげる嘉藤に、少女はちょっとだけ羞じらいをみせた。
「教えてくれたお礼が教えてもらうことになるって、母から聞いています」
回りくどい表現を、なんとか舌を噛まずに伝えようとする少女の口ぶりは、意図を裏切ってたどたどしかった。
「聞いているのか?」
「嘉藤の小父さんを悦ばせてあげてって・・・」
口ごもる少女を、これ以上しゃべらせるべきではないと嘉藤は感じた。
少女の手を引くと、思いのほか素直に立ち上がり、ベッドに座る嘉藤の隣に腰を下ろした。
力を込めてシーツの上に押し倒した少女の胸を、制服のブラウスの上から揉みはじめると、
彼女は、唇から生暖かい吐息を洩らした。
ピリピリと神経質にまつ毛を震わせる横顔が、紗栄子に似ていると思った。
嘉藤は少女の横顔に顔を近寄せていって、唇を奪った。
ピンク色をした唇をこじ開けて吸った少女の吐息は、唇の色と同じ色をしていると思った。
脱がされたパンツをハイソックスを履いたままの足首に絡みつかせながら、少女は初めての痛みに耐えた。
きちんとひざ下まで引き伸ばされたハイソックスが、切なげな足摺りとともに、弛んでずり落ちていった。

知っていたんです。
お父さまが小父さまを連れて帰ると夜は、いつも早くに寝かされるけど。
部屋まで聞こえてくるお母さまの声がふつうじゃなくって、怖くなって覗いちゃったんです。
お父さまが縛られているのを見て、小父さまはほんとうは強盗なの?って思いました。
仲良しの小父さまにだまされて、お父さまは縛られお母さまは襲われているのかな?って思いました。
でも小父さまとお母さまとは、息がすごく合っているような気がしました。
それからお母さまにお父さまから電話がかかって来て、どこかに呼ばれていくのを何度も見ました。
そのたびにお母さまは綺麗なお洋服でおめかしをして、あたしたちを残してウキウキと出かけていきました。
なにか楽しいことがあるのだろうか?と思っていたら、夜遅く帰って来たお母さまのストッキングが破けていました。
よく見ると、髪もちょっと乱れていて、ブラウスは着崩れていました。
あれはぜんぶ、小父さまの仕業だったんですね?

妹にも手を出すんですか?
良いですよ、あたしお姉さんだから、妹が怖がらないよう手引きしてあげます。
出来るお手伝いがあったら、いつでも申しつけてくださいね・・・

たどたどしく洩れる声色のすべてを聞き取ると、嘉藤は再び欲情を覚えて、
制服のスカートの奥にもういちど、強く逆立った一物を突き立てていった。
少女は目をキュッと瞑り、のけぞりながら歯を食いしばった。
声を洩らすまいとしているのがわかったから、声をあげるまで犯しつづけた。
「ァ・・・」
思わず洩らした小声に悔しそうな顔をする少女に、「声、あげたね?」と囁くと、
「イヤだ、小父さま・・・」と目をむいた。
抗議をしようとする口許を、唇を圧しつけて塞いでやると、少女は初めて、応えてきた。

岩瀬が再び街への転勤の辞令をもらったとき、嘉藤も同時に街に戻っていた。
嘉藤の妻の和香子は、すでに特定の彼氏を作っていたが、
今後も彼氏の来訪を自由に認めるという条件で、夫との同居を受け容れた。
なん人もの男たちとの交流を経て、性格もセックスもいちばん相性の良い一人を決めたのだ。
もっとも浮気性な和香子は、かつての恋人たちとも、時折夜を共にするので、
嘉藤は妻の多忙な日常に、再び振り回されるようになっていた。
和香子が自宅で彼氏といっしょに過ごす日は、嘉藤は自宅を明け渡して、岩瀬の家を訪ねた。
岩瀬の妻の紗栄子も多忙な日常を再開させていたので、いつも逢えるとは限らなかったが、
姉娘につづいて妹娘も犯していた嘉藤が、女に不自由することはなかった。
岩瀬はいつも、妻の情事に同行をさせられていた。
送り迎えはもちろん、吸血鬼の毒牙にかかる妻のありさまを見せつけられるという大任を仰せつかることもしばしばだった。

街を経験した夫たちは、他所の土地に赴任しても街の世界を再現してお互いの妻をむさぼり合い、
街に戻って来たあともまた、犯し犯される日常を愉しみつづけていった。

「逆」単身赴任。

2019年01月06日(Sun) 08:06:46

夫が出勤の用意をしているすぐそばで、嘉藤和香子は受話器を片手に自慢のロングヘアをブラッシングしていた。
「ええいいわ。9時にホテル松ね?間に合うように行く。
 あっ、でも喉渇いてる?吸血のほうは手かげんしてほしいの。
 夕方ね、べつの方と先約があるから・・・」
和香子が受話器を置くと、入れ違いのように嘉藤がネクタイをいじりながらリビングに戻って来た。
「うまく締められない」
和香子は「はいはい」と言って夫に寄り添うと、器用な手つきでネクタイを直してやった。
ネクタイを直されながら嘉藤は、
「おれ、今夜は帰り遅いほうがいいの?」
と、訊いた。
「貴方さえ気にならないのなら、いつ戻って来てもいいわ」
「ん、わかった」

午後2時――
「これでよしと。じゃあねえ♪」
和香子はまだベッドにいる愛人に向かって小手をかざし、おどけた様子でその手を振った。
身づくろいはきっちりできていたが、首すじを咬まれた痕は淡い血潮をまだあやしていたし、
男の手で脱がされたストッキングはふやけたようになって、ベッドの端からじゅうたんに垂れていた。
「ストッキングはおみや(お土産)。好きにしてね」
犯した女の脚からストッキングを脱がしてせしめるのが、この情夫のくせだった。
部屋を出る間際、和香子の携帯が鳴った。
「はい?」と応える和香子の声と入れ違いに、嘉藤の声がひびいた。
「あ・・・だいじょうぶかな・・・と思って」
和香子は内心チッと舌打ちをすると、いった。
「お洋服は平気。ストッキング破られただけ。ホテルのベッドで、8回したわよ」
サバサバと言い捨てると、一方的に携帯を切った。

午後4時。
家のインターホンが鳴った。
「早いわねぇ・・・」
和香子はぶつぶつ言いながら、出た。
そして、玄関の前に立った男がだれなのかを確認すると、
「はーい、もうちょっと待ってぇ。あなたのために目下、絶賛お着替え中♪」
そういって、一方的にインターホンを切った。
約束は、5時だった。
でも女は表に待つべつの情夫を、インターホンの鳴った20分後には入れてやった。

午後7時半。
近くのパチンコ屋で時間をつぶすつもりが、玉の出が悪くて中途半端な帰宅になってしまった。
この刻限だと、妻のいる家にはまだ、男がいるかもしれない。もういないかもしれない。
約束は5時だと言っていたから、2時間もあれば妻の生き血も身体も、侵入者はじゅうぶんにたんのうした後だろう。
この街で、吸血鬼が人妻のもとに通うということは珍しい出来事ではなかったし、
それを承知で当地に赴任を決めたのは嘉藤自身だったから、
ふたりきりでいる時間を長くしてやるのも夫の務めだと考えていた。

都会妻は特に人気があって、同じ事務所に赴任してきた同僚のほとんどすべては、妻を吸血鬼に寝取られていた。
吸血行為を伴う逢瀬だから、毎日というわけにはいかなかった。
多い人で週2か週3が限度だった。
ひとりの相手に忠実に尽す人妻もいれば、なん人もの吸血鬼を情夫にもつツワモノもいた。
和香子の場合は後者だった。
そもそものなれ初めが、赴任直後に開かれた歓迎会が、そのまま乱交パーティーに移行したのだ。
目のまえで輪姦される妻が随喜の声をあげるのを、嘉藤は半ば絶望を感じ、半ば安堵を覚えながら見守りつづけた。

浮気妻に気を使って帰宅を遅らす自分を卑屈だと、年老いた母にはよく詰られた。
しかし、息子夫婦を詰問に訪れた母は嫁の情夫のひとりと出くわし、返り討ちに遭うように血を吸われた。
人妻の血を吸うと例外なく濡れ場をともにするのが彼らのしきたりだったから、
嘉藤の母も例外なく、そのようにあしらわれた。
以来母は嫁の不倫を憤ることをやめて、どうやって父を説得したものか、息子の赴任先に着飾って訪れるようになった。

恐る恐るドアを開けた自宅は、真っ暗だった。
嘉藤はああやっぱり、と、ため息をついた。
まだ帰って来るべきではなかったと思った。
それでも玄関を施錠し、靴を脱ぎ、身体が意思を喪って動くかのように、夫婦の寝室の前にたどり着いた。
「あぅあぅあぅあぅ・・・」
部屋のなかからは、妻があげる露骨なうめき声が洩れてきた。
昼間に咬まれたのとは反対側の首すじから血をしたたらせ、それを夫婦のベッドのシーツにぽたぽたと散らしながら。
真っ赤なスリップ一枚に剥かれた妻は、血色のわるい皮膚をした男と抱き合っていた。
むっちりとした太ももが、かすかな灯りを受けて白く輝き、夫の目にもなまめかしい。
吊り紐が外れかかってしわくちゃになった真っ赤なスリップが、妻がふしだらに堕ちていったことを物語っていた。

午後10時半。
「すこし、弱くなったんじゃない?」
ベッドから身を起こして、和香子がいった。
シーツを取り替えた後、やっと自分のものになった夫婦のベッドに身を横たえると、
嘉藤は獣のように妻を襲っていた。
妻の情事を目にすると、不覚にも劣情がむらむらと沸き起こり、情夫がベッドを離れると、つかみかかるように妻を押し倒すのがつねだった。
さいしょのうちはねちねちと妻を責めながら、軽く数時間は行為を続け、「まるで新婚のころみたい」と妻に言わしめた嘉藤だったが、
さすがに五十の坂を越えると、あちらのほうもさほどお盛んではなくなったらしい。
そのことと妻への愛情とは、また別次元の問題だったが――

先刻、部屋を出てくる情夫とはち合わせになると、
「ゥ・・・お邪魔しました」「いえ・・・どうも」と、男ふたりはきまり悪げにあいさつを交わし、
そのようすを和香子は面白そうに見ていた。
この情夫と夫とは同年輩のせいか、気が合いそうだと思った。
いちど三人でお酒を飲みましょうよという和香子の提案は、いまのところまだ一日伸ばしになっている。

「寝たばこはだめよ」
そういって和香子に取り上げられた洋モクを残り惜し気に見送りながら、嘉藤はいった。
「転勤が決まった」
「あ・・・やっぱり」
和香子はそうひとりごちると、夫にいった。
「私、この街に残るわ。お相手さんたちが悲しむもの」
「やっぱりな、そういうと思った」
「あなた単身赴任して下さい。もちろん、いつ戻って来てもいいわ。
 もともと私、平日は”アルバイト”で忙しいし、貴方も帰り遅いでしょう?
 平日にあまり会えない夫婦が、平日は全然会えなくなるだけじゃない」
「今つき合ってる人は、なん人いるの?」
夫の問いに、和香子は3人・・・4人・・・と、指折り数えて、いった。「7人よ」
一本一本折られてゆく和香子の指に嘉藤の目が吸いついてくるのを、和香子は感じた。
「7人も悲しませるわけには、いかないよなぁ・・・」
嘉藤はどこまでも、お人好しな亭主だった。

翌週、嘉藤の送別会が地元の男衆たちによって、賑々しく開かれた。
情夫たちの間をお酌して回る和香子を見ながら、俺の選択は正解だったと、嘉藤は思い込もうとした。
振る舞われた高い酒が、あと1杯で尽くされる。
こちらが地酒を飲んだのと見返りに妻を抱かれてしまうのは、歓迎会の乱パ以来のすじ書きだった。
今夜もきっと、そうなるのだろう。
一座の間から女性の姿が一人ずつ消えていき、七人の男衆はお酌をして回る和香子の立ち居振る舞いに目線をくぎ付けにしていた。
「ご主人飲んだ?そろそろいいかな?」
部屋の照明のスイッチに手をやる男衆のひとりに嘉藤が頷くと、灯りが消えた。
きゃあっ・・・
女の叫びがひと声あがり、真っ暗になった部屋は獣たちの熱気のるつぼと化していった。

世を去ったはずなのに。

2019年01月04日(Fri) 10:39:28

貴方が世を去ったあとですね、とても面白いことになっているんですよ。
ふつうの人なら目くじら立てるような話なんですが、ほかでもない話好きの貴方なら、きっと面白がると思うんですよ。
ねえ、ちょっと耳を傾けてみませんか、ちょっとだけ、ご覧になってみるのもおススメですよ。

闇の彼方から聞こえてくる声に、わたしはふと目を覚ました。
おかしいな持病が高じて寿命が尽きたはずなのに、なぜ意識があるのだろう?
目を開けると、そこは真っ白な世界だった。
白い壁に包まれた狭い部屋。わたしが数年ぶりに生き返ったのは、そんな場所だった。
果たして実在する場所かどうかもわからない。
そこでは走馬灯のように、わたしがこの世からいなくなってからの映像が、映し出されていったのだった。

息子が大学を出て就職した。
かなりの大企業だったのに、すぐに退職して地方の街に移り住んだ。
いったいどうしたことかと思えば、上司の紹介でお見合いをした相手と結婚するためだということだった。
それならなおさら会社に残るべきだったのではないか?と思ったのだが、
傍らの声がそうでもなかったのです、と、教えてくれた。
その街はその企業の創業者の故郷で、若い人が少なくなっているから、移り住んでくれる人を社内で強く募集しているのだと。
いずれにしても、息子は若くてきれいな嫁をもらって、のどかな土地で自足した生活を得たようだった。

別の声が、さらに横から口を出した。
特ダネ情報です!奥さんが再婚されます。相手は吸血鬼です。
――えっ?それって、どういうこと?

その吸血鬼氏は、息子さんのお嫁さんの彼氏です。
結婚前から彼女やそのお母さんの血を吸っていて、どちらとも初体験をしているつわものです。
――そりゃ、たしかにつわものだね。。

吸血鬼氏は婚礼の席で、奥さんを見初めてしまいました。そして、つごうのよいことに未亡人だと知ってしまったのです。
息子さんが紹介したんです。
吸血鬼氏は、着飾って婚礼に出席された新郎の母親を、ホテルの室内で強姦しました。
黒留袖の帯をほどいて、まる裸にしてひと晩じゅうやりまくったのです。
――おお!なんということだ!

ふつうの奥さんなら、そのひと晩で、ご主人との思い出を一生ぶん、きれいに忘れてしまうほど強烈なのですが、
貴方の奥さんは気丈で意志の強い人です。婦徳を辱めたことについて謝罪を求められました。
吸血鬼氏は、紳士的に振る舞いました。潔く謝罪したのです。
奥さんはその謝罪を受け入れ、血液が不足しているのであれば献血に応じてもよいと仰いました。
――すこし寛大過ぎはしまいか?

そうですね、ちょっと謝っただけでOKしてしまうなんて、やっぱりご主人のことは忘れたのかもしれません。
ですが、何度も襲われるうちにほだされてきてしまいまして、とうとう吸血鬼氏の求婚をお受けになられたのです。
おめでとうございます。
――おめでとうと言われると悪い気はしないが、ちっと情けない気もするね。

吸血鬼氏は喪服が好きで、奥さんには逢瀬の時に喪服を着てくるようにとおねだりしました。
奥さんは彼の希望を好意的にかなえてあげました。
だから奥さんが毎日喪服を着ているのは、決して貴方を弔うためばかりではなく、彼氏を悦ばせるためでもあるのですよ。
――喪服姿はたしかにわたしもそそられる。わからん気もしないではないが・・・苦笑

きょう、奥さんはいままでのお宅を出て、吸血鬼氏の棲み処に移られます。
お!でも感心ですね。ちゃんとあなたのお仏壇に、手を合わせていらっしゃる。
――律儀でまじめな女なのだよ。

妻:とうとう貴方以外の男性のところに嫁ぐことになりました。
  けれども貴方の菩提を弔うことも忘れません。その条件で、あのひとのものになることにしました。
  貴方のことを思って喪服を身に着け、あのひとを悦ばせるために脱がされてゆきます。
  どうかこの愚かな未亡人のふしだらを、許してくださいね。
――許すとも!許すとも!

妻:アラ、貴方のお写真がちょっとだけ笑ったような。
  貴方もともと助平でいらっしゃいましたからね。
  わたしたちが愛し合うところを御覧になって、悦にいっていらっしゃるかもしれませんね。
  いやらしいひと。

密会する婚約者

2019年01月04日(Fri) 10:18:48

薄茶のスカートの後ろ姿が、背すじをしゃんと伸ばして、まっすぐ前へと歩みを進めてゆく。
スカートの裾から覗く、ちょっと肉づきのよい脚は、スカートと合わせたおなじ色のパンプスが、アスファルトの路面に硬質な足音を刻んでゆく。
まるでお見合いにでも行くように、改まった服装で、しかもウキウキと。
こちらに後ろ姿をみせる穂香さんは、わたしのお見合い相手。近々婚約しようというほど、話はとんとん拍子にすすんでいた。

その穂香さんがだれかと密会している――そんなうわさを拾ってきたのは、母だった。
穂香さんの棲む街とわたしの住む街とでは、駅が三つほど離れている。
うさわなど、伝わりそうな、伝わらなさそうな、そんな距離感。
けれども、相手の男は弟さんとは別人で、ずっと年上らしいのに、身内どうぜんに打ち解けている。
なんか怪しいっていう話だよ。
母は見てきたようないいかたで、未来の息子の嫁をくさした。
案外、母自身が見たのかもしれない、と、わたしは思った。

さっそくわたしの探偵がはじまった。
さりげなく訪問を断られた土曜日の朝。
わたしはさりげなく彼女の家の近くを徘徊し、彼女が家を出るのを目にした。
彼女が家を出たのはお昼前、両親が外出した後だった。
薄茶のジャケットに白のブラウス、ジャケットと同じ色のタイトスカートに、やはり同じ色のパンプス。
決して派手めではないけれども立ち姿がひきたつのは、穂香さんの気品のゆえだろう。
足音を忍ばせてあとをつけるわたしのほうを、彼女は一度としてふり返らなかった。

意外にも。
彼女が訪れたのは、地元のホテル――ふたりがお見合いをした場所だった。
そしてさらに意外にも、そこには先に家を出た両親が、待ち受けていた。
穂香さんを迎えたご両親は、さらに別の男性を席に迎え入れ、娘の隣に座らせる。
そこはわたしの場所のはずだ!
叫びたい気持ちを、かろうじてこらえた。
四人はしばらくのあいだ、談笑していた。
ごく打ち解けた相手のようだった。

ホテルのなかにも、表通りにも人影はほとんどなく、ガラス張りのレストランの店内のようすは、
ホテルの庭園にほどよくしつらえられたベンチに腰かけたままでも、手に取るようにつぶさにうかがえた。
男性はどうやら、お母さんといっしょにレストランに入ってきたようだった。
お父さんはひとりで先着して皆を待ち、お母さんと男性、それに娘の穂香さんのために席をとり続けていたらしい。
男性がやがて、奇妙にも、お母さんの足許に身をかがめた。
恥かしがるお母さんがすくめる足許に唇を吸いつけて、足首からふくらはぎをたんねんに吸いつづけている。
よく見ると。
お母さんの穿いているストッキングはむざんに咬み破られて伝線を拡げ、ふくらはぎの輪郭から剥がれ落ちていくのだった。
彼の行為は、それだけでは終わらなかった。
つぎは、並んで腰かけている穂香さんの足許にまで、唇を吸いつけていったのだ。
穂香さんは恥ずかしそうに顔を上気させながらも、どこかウキウキとしていて、イタズラっぽい笑みさえよぎらせている。
そして、彼が本当に咬みつくと、くすぐったそうに白い歯までみせたのだ。

お父さんはどこまでも、淡々としていた。
足許を卑猥なよだれに濡らされ、ストッキングを目のまえで咬み破られるというのは、ご婦人たちにとっては恥辱であるべきなのに、
母娘とも嬉々として男にストッキングを破らせ、お父さんまでもが妻や娘に対する非礼な仕打ちを、おだやかにやり過ごしている。
レストランのなかのウェイターやウェイトレスたちも、気づいていないはずはないのに、咎めようともしていない。
わたしは、室内でくり広げられる奇妙な儀式から、目が離せなくなっていた。

やがて男は、穂香さんが笑いをおさめるのを見はからって、彼女だけを促して席を起った。
そして、ご両親にちょっとだけ会釈をすると、
まるで恋人にそうするかのように穂香さんの肩に手をかけて、レストランの出口へとエスコートしてゆく。
ご両親は鄭重に礼を返して、ふたりを見送るばかり。

いったい、彼女の婚約者はだれなのか?
怒りと混乱とで、わたしは頭のなかが昏(くら)くなった。
そして、母娘の足許からストッキングが噛み剥がれてゆく有様が、網膜から離れなくなっていた。

われにかえったときには、レストランのなかにいた。
ご両親はまるで、わたしの出現を見越していたかのようにおちついていて、わたしをふたりが腰かけていた席に促した。

ご覧になりましたね?
あのひとは、穂香と結婚することはできません。吸血鬼だからです。
彼は家内と結婚前からのご縁があって、家内に生き写しの穂香にも、ご好意を持たれたのです。
でも、吸血鬼はなん人もの女性から血をもらわなければ生きていけません。
ですから多くの場合、彼らは独身を通すのです。
そして、彼らの愛した女性は人間の男性に嫁ぎ、新しい家庭をかげながら守ろうとします。
ええ、折々若いご夫婦から血をもらいながら・・・ですが。
家内の場合もそうです。
初体験のお相手は私ではなく、さきほどの彼とでした。
以来ずっと血を吸われつづけ、私と結婚してからも、関係を続けました。
私も、そうすることを望んだからです。
初めて家内が襲われて生き血を吸い取られるところを目の当たりにしたときに、不覚にも昂奮してしまいましてね。
そういう男性は、この地では歓迎されるのです。
うちは代々、そういう関係を続けていく家柄なのです。
この街では、こんなふうに選ばれた女から生まれた長子は必ず女で、そして美しく育つ――といわれています。
家内も評判の美人でしたし、幸い娘もそうでした。
そして幸か不幸か、あなたのおめがねにとまった――
でも、逃げ出すなら今のうちです。
一切合切、吸い取られてしまいますからね・・・

わたしは躊躇なく、席を起った。
やはり行かれるのですか・・・お父さんの目が、悲しそうな色を宿したが、
わたしが穂香さんがいまいる部屋の番号を教えてほしいと告げると、表情を改めた。

さいしょの子供は、女の子がいいと思っていましたし・・・
新妻を寝取られる夫という立場も、愉しむことができるような気がしています。
お父さんと同じ立場を、引き継いでみたいと思います。
問題は、わたしの母です。
婚礼のおりにいちどだけ、彼に誘惑させてみませんか?
母も大人の女性です。それに未亡人です。
恋をしてもまだおかしくない年代だし、そうすることでどこにも迷惑は掛かりません。
父も――息子の嫁の浮気相手と母が交渉したと聞いたら、面白がるかもしれないですね・・・

母さんの帰り道

2019年01月04日(Fri) 09:42:07

あうぅぅ・・・

家の外から、うめき声がきこえた。
うめき声はどことなく陶酔を帯びていて、
しばらく切れ切れに聞こえた後、
「ひっ・・・」と声を引きつらせ、途切れてしまった。

こういうことは、この近所ではよくある。
吸血鬼の出没する森や公園やらがそこかしこにあって、
ぼくの家でも、家族全員が咬まれた経験を持っている。
それでもぼくは、声のしたほうをチラチラと落ち着きなく見やってしまった。
母さんの帰宅がまだだったからだ。
そんなぼくの様子を見た父さんは、「気にせんでええ」とみじかく言って、再び拡げていた新聞に目を落としてゆく。
ぼくはやはり落ち着かない気分を抑えることができなくなって、ジャケットを取りに部屋に戻った。

隣の部屋から姉が顔を出した。
「うめき声でしょ?」
図星を指されたぼくはちょっと悔しくなって、
「そうだけど」
と、わざとぶっきら棒にこたえた。
「行かないでいいんじゃない?」
姉はしかめ面を崩さずに、いった。
「やっぱ気になるじゃん」
「男の子ってやっぱりそうなのね」
いけすかない・・・という目でぼくを見る姉に、心外だという気持ちをこめて、こたえた。
「母さんがまだなんだ」
「知ってるわよ」
姉はどこまでも、ぼくの上手を行く。
「だから行かないほうがいいでしょって言ってるの」
無言でジャケットを羽織り背中を向けるぼくに、姉はとどめを刺すようにいった。
「行きたきゃ行ってもいいけど、もう少し間を置いてからにしなよ」
ふり返ると姉は相変わらず怖い顔をしていて、(親のそういうところを視るものじゃないでしょう)といいたげだった。
「とにかく・・・心配だから」
口ごもるぼくに、姉はいった。半ズボンの足許に目を止めたまま。
「ハイソックスくらい、履いて行ったら?」

けっきょく、家を出るのに30分近くかかった。
玄関のドアを開けるぼくのことを、父も姉も見送らなかった。
サンダルをつっかけて、声のした家の裏手のあたりに足を向ける。
声の主は、やはりそこにいた。

母さんは夕方、みんなの晩御飯を用意すると、ひっそりと出かけていった。
出かけるときに穿いていたこげ茶のパンプスが、歩道の隅っこに転がっている。
その数メートル奥の草むらに、パンプスの脱げたつま先だけが見えた。
母さんの脚は、かかととつま先のついた肌色のストッキングに包まれたまま、
泥まみれになりながら、じりじりと足摺りをくり返していた。

先に草むらから姿を現したのは、黒い翳だった。
翳の主はとても色褪せた肌をしていて、グロテスクな容貌をしていたけれど、
顔なじみのぼくを認めると、ちょっと会釈を返してきた。
人間らしい応対に、ぼくはにこりともせずに応じた。
「母さん、そろそろいいだろ?」
ぶっきら棒にぼくがいうと、男はにんまりと笑った。
口許を、吸い取ったばかりの母さんの血でヌラヌラと光らせたまま。

「来ないでいいから」
草むらの奥から声がした。
男が下腹部も濡らしているのをみて、草むらの影でなにが起きていたのかは察しがついた。
ほんとうは、もう十分以上まえに来るべきだった――と、けしからぬ考えがちらと頭をかすめた。
「もう少しつづけてやろうか?」
男がいった。
「いいよ、そこまでしなくて」
母雄あのヌードで昂奮する妄想にかられたぼくを見通したような言いぐさに、
ぼくは照れ隠しにそっぽを向いた。
「きみの父さんが迎えに来た時は、つづきをしたんだがな」
男はただならぬことを聞こえるように呟きながら、路上に落ちていたパンプスを拾い、草むらのほうへと投げてやった。
ぼくよりも、母さんを襲ったやつのほうが、よほど身づくろいの役に立っていると思った。
でも、よくよく考えてみれば、彼らは自分たちのしたことの後片付けをしたに過ぎないのだから、
ぼくが済まながる必要はないのだった。
「まだ喉渇いてるの?姉さん呼んでこようか?」
草むらのほうにも聞こえるように、ぼくは男にいった。
「姉さんのことはきのう吸った。なか三日は置かんと旨い血が吸えぬ」
身勝手なやつだと思った。
母と姉と――2人ながらこの男の誘惑に屈し、血を吸われていた。
「それに、せっかくきみが来たんだし・・・」
え?と思う間もなく、強い力のこもった猿臂に引き寄せられた。
生臭い息が耳たぶをかすめる。
身じろぎ一つできないほどきつく抱きすくめられたまま、首すじにチクリと鋭い痛みが走った。

母や姉が屈するのも、無理はない・・・
そんなふうに薄ぼんやりと思ったときにはもう、ぼくはすっかり貧血になって、草むらの傍らに長々と寝そべっていた。
男は、「靴下も愉しませてもらおう」といって、ぼくの了解も待たずに足許にかがみ込み、
履いていた白のハイソックスのうえからチロチロと舌を這わせ始めている。
母さんは身づくろいを終えて、薄ぼんやりと佇んでいた。
息子が自分と同じように血を吸われているというのに、助けもせずに、見守っていた。
もっともぼくだって、母さんが襲われるところをのぞき見して昂奮しようとしていたくらいだから、
母さんを責めることはできなかったけれど。
やがて男の牙がふくらはぎに食い入って、白のハイソックスに赤黒い飛沫が飛び散り、
生温かい血のりがじわじわとしみ込んでいった。

「ただいま戻りました」
疲れ切った母さんは、気の抜けた声で帰宅を告げた。
お茶の間からは「ああ」という父さんの、やはり力のこもらない相づちが返って来た。
こげ茶のスーツはどうにか身に着けていたけれど、
髪は振り乱しブラウスの襟首は大きくはだけ、破れたストッキングはくるぶしまでずり落ちて、皺くちゃになっている。
情事の名残りをありありととどめた姿をみたのは、ぼくだけだった。
「母さんシャワー浴びるから、あなたはもう上にあがって」
ぼくの顔をまともに見ないでそういう母さんの脇をすり抜けて、言われるままに階段に向かう。
すれ違いざま、生々しい女の気配が、ふわっとぼくを包みかけた。
なにか鋭いものに、ズキッと胸の奥を衝かれるような気がした。

「なか3日だってさ。すぐにお呼びがかかるんじゃない?」
二階に戻ったぼくは、隣の部屋から顔を出した姉に、憎まれ口をきいた。
姉は血に濡れたハイソックスを履いたぼくの足許を、じっと睨んだ。
吸血鬼は、丈の長い靴下のうえからふくらはぎに咬みつくのを好んでいた。
だから、母さんが着込んだスーツの下に穿いていたストッキングも、狙われたのだ。
運動部のユニフォームのストッキングを穿いて行ってもよかったけれど、
チームメイトを裏切るような気がして、わざと姉のタンスから一足おねだりをした。
自分のタンスを漁る弟の背中を、姉は白い目で睨んでいたけれど、自分のハイソックスを弟がせしめることには文句をいわなかった。
「代役ありがと。これお駄賃」
ご念の入ったことに100円玉を1枚掌に圧しつけようとしたのを、かろうじて突き返した。
「しょうもない」
姉弟同時に同じ言葉を口にして、お互い相手を見、初めてクスッと笑った。
「父さんによけいなこと、訊くんじゃないわよ」
姉はそういって、部屋の扉をぴしゃりと閉めた。
訊くな――ということは、よくお訊き、ということにちがいない。
あまのじゃくな姉らしかった。

靴下を履き替えて下に降りると、父さんがまだリビングにいて、テレビを見ていた。
見ているといっても、薄ぼんやり目をやっているだけで、そこで時間をつぶしているというていだった。
「きょうはテレビで徹夜しようかな」
父さんがいった。
「そこまで気を使うことないんじゃない?」
ぼくはいった。
「どこまで知ってるんだ?」
「いまのことならたいがい」
「昔のことは?」
「さあ・・・」
どちらの側も躊躇をしながらも、父さんはすべて語ってくれた――

この街には底知れぬ森がある。
そこには吸血鬼が住んでいて、若い娘や人妻をたぶらかしていた。
吸血鬼たちは、襲った人間を死なせない代わり、街に棲むものたちの血を自由に吸えることになっていた。
なにも知らずによその土地からやってきた父さんはそこで母さんを見初めた。
結婚生活は幸せだったが、ある日、家が吸血鬼の襲撃を受けて、ふたりながら血を吸われた。
ほんとうは、吸血鬼は、父さんのことは殺してしまってもよいつもりだった。
血を吸われ犯される母さんを見て不覚にも昂奮してしまったことが、父さんの命を救った。
じつは、母さんは代々母から娘へと血を提供しつづけてきていた家の一人娘だった。
父さんを愛していた母さんは掟を破って父さんと結婚したので、怒った吸血鬼が新居を襲ったのだ。

さいしょは母さんは、父さんに隠れて血を提供しつづけることで、うわべの幸せを守ろうとした。
年ごろになってすぐに、血を吸われ始めた母さんは、吸血鬼の寵愛を受けていたし、
女としての初体験も吸血鬼相手に済ませていた。
すべての過去を押し隠したままこの土地に住み続けることに、無理があったのだ。
自分の嫁がもともと吸血鬼の情婦だったと知っても、父さんは母さんと別れようとしなかった。
父さんは吸血鬼と逢瀬を続ける母さんを許し、母さんは父さんを愛しつづけ、ぼくたちが生まれたのだった。

姉さんはきっと、母さんを見習って、この土地の女として生きるのだろう。
そしてぼくも案外、父さんのように・・・もらった妻を吸血鬼に差し出してしまうのかも知れない。
そんなことを考えていると。
血を吸われてウットリしている母さんをのぞき見していた時に昂った不埒な股間が、
いままで以上に逆立って来るのを、抑えることができなくなっていた。

洋館の淫らな夜 ~キースの場合~ 3

2018年12月09日(Sun) 08:26:27

君たち、初めてじゃないな?
慧眼な兄はひと目で見抜いた。
ええそうよ。
リディアはあっさりと、火遊びを認めた。
良家の令嬢にはふさわしくない習慣が、日常化していた。
どれくらい逢っているの?
かすかな嫉妬にかられてキースは訊いた。
週に二回・・・かな?
リディアは恋人を振り返った。
恋人にセックスの頻度を確認するような顔つきだった。
いつかどこかでこんなやり取りを見聞きしたような気がしたが、いつのことだったかすぐに思い出せなかった。

じゃあ、さっきの鬼ごっこもお芝居?
キースは、新婚初夜の花嫁が処女ではなかったことを知った花婿のように興ざめた顔をして、いった。
「ええそうよ、だからお兄様のためにふたりで話し合って、さいしょのときのようすを再現したの」
「じっさいにはもぅすこし、痛がってたけどね」
茶々を入れる吸血鬼に令嬢は、忠実な再現よ、と、訂正した。
「お兄様については大丈夫。
ドキドキの初体験しっかり拝見したわ。
ほんとうはあたしとのほうがおつきあいが先で、
彼がお兄様の血を欲しがったから、お兄様のこと書き置きでおびき出したの」
なんのことはない、かれが兄としてあれほど迷ったことを、妹は兄にたいして、なんの罪悪感もためらいもなく実行に移していたのだ。
不思議と腹は立たなかった。
なによりも、吸血される愉しみをリディアと共有していることに、キースは昂奮を覚えた。
「あたしの血だけじゃ足りないから、兄さんを襲ってってお願いしたの。いけなかった?」
リディアの諧虐味を帯びた言いぐさが、キースの被虐心をくすぐった。
「ぼくに関しては、なんの問題もなかったよ」
キースはくすぐったそうに自分の首すじを撫でた。
ちょうど妹が、同じ部位をどす黒く滲ませていた。
「おそろいだね」
キースは言いながら、自分の咬み痕に親指と人差し指をあてがってふたつ並んだ牙の間隔を測ると、それをそのままリディアの首すじにあてがってみせた。
ふたつの咬み痕は、ぴったり同じ間隔だった。
ばかね。
わざわざ寸法を測ろうとする兄を、妹は笑った。

きみのストッキングはわしときみとでさんざん愉しんだけど、妹さんのタイツは3人で愉しめるね。
ベンチに腰かけたリディアはきゃっきゃっとはしゃぎながら、ロングスカートのすそをおひざの上で抑えたまま、もう片方の脚もためらいなく差し伸べていき、
吸血鬼は黒革のストラップシューズを履いた令嬢の足首を抑えつけながら、すらりとしたふくらはぎから黒のタイツをびりびりと噛み剥いでいった。
キースはキースで、お手本に咬ませたストッキングに赤黒いシミを滲ませているのを臆面もなく外気に曝しながら、
真新しいタイツが噛み剥がれてだらしなくずり下ろされてゆくのをウキウキと見守って、さいごには自分の手でガーターもろとも足首まで引き降ろしてしまい、妹に黄色い叫びをあげさせていた。

遠くから声がした。それは若い女の声であたりをはばかる声色をしていた。声の主は黒のドレスに白いエプロンを着けていた。兄妹の家のメイドのお仕着せだった。
「ジュリア!どうしたの!?」
女主人はわれにかえって令嬢の威厳を取り戻した。あまりの豹変ぶりに兄が肩をそびやかした。
「奥さまが急にお戻りです、リディアさま」
ジュリアは狼狽を隠さなかった。


屋敷に戻ったときにはもう、屋内はほとんど真っ暗になっていた。
兄妹の母であるダイアナは、夫君の留守中をいいことに、恋人のリデル氏を自邸に連れ帰ってのご帰館だった。
逢引き先のアパルトマンから電話で侍女のジュリアをたたき起こすと、前もって家の様子を聞き出して、
兄妹が寝入っていることを聞き出すと、きみの家の夫婦のベッドできみを辱めたい――というリデル氏の願望をかなえるため、急きょ戻って来たのだった。
ただジュリアは、「マデリーンも寝ているの?」と問う女主人の問いに、この末娘の行状だけはかばい切れなかった。
ダイアナは自分の血を最もよく引いている娘の行動に疑問を持たなかった。
そして、自分の留守をいいことにマデリーンがマイケルと出かけていることを次女の態度から察すると、フンと鼻を鳴らして軽く受け流したのだった。
もっともマイケルが夜遊びに出かけたという情報は、マイケルの父でもあるリデル氏から、とっくの昔に筒抜けだったのだが。

シャワーの音を立てるわけにはいかないので、ふたりはそのままそれぞれの自室で寝むことにした。
肌に染みついた血潮は、吸血鬼が余さず舐め取ってくれたから、気にする必要はなかった。
兄妹の陰部にまで舌を這わせる吸血鬼に、さすがに初心なふたりは顔を赤らめたけれど。
年ごろになってからは初めて目にするお互いの陰部に這う舌を、そして陰部そのものを、目をそらさずに見つけ合った。
キースのそれは、妹の視線を受けて、昂ぶりにそそり立っていた。
それを目にして思わず「おっきぃ…」と洩らした妹のまえ、彼の昂ぶりはさらに勁(つよ)さを増していた。

ふたりは、母とリデル氏のなれの果てから、興味をそらすことができなかった。
肉親に対する関心と、男として女としての関心とが、半々だった。
初めて邸内に足を踏み入れた吸血鬼は、兄妹と侍女とをいざなって、屋敷のあるじのベッドルームのなかを、顔を並べて覗き込んだ。

すごい…
そういいかけてあわてて声を潜めたリディアの口許を、吸血鬼は手早く掌で制した。
キースも、息をのむ思いだった。
それほどに、ふだんあれほど見栄っ張りで子供たちにはむやみと行儀作法に厳しいダイアナの乱れかたは、日常を逸していた。
出かけていったドレス姿のまま、彼女はベッドのうえで抱かれていた。
せわしなく首すじに接吻する情夫の熱情を、かぶりを振って遮ろうとして果たせずにしまったのも、明らかに計算のうちだった。
熱っぽく交わされる唇と唇の激しさが、ふたりのあいだに芽ばえたものがきのうきょうのものではないことを告げていた。
我が物顔にダイアナの腰のくびれを掻き抱く腕は逞しく、痩せ身で神経質な父とは似ても似つかなかった。
面と向かっても、パパはかないっこないわね…リディアは冷酷に断定した。
キースは、腰までたくし上げられたドレスの裾から覗く脚に、目をくぎ付けにさせていた。
脱げかかったストッキングがしわくちゃになりながら、かすかな灯を受けて光沢を滲ませているのに、目が離せなかった。
貴婦人が堕落したように見えるわね――と、リディアは兄の想いを代弁した。
傍らに控えていた吸血鬼はキースの肩を抱き、唇を重ねた。
彼はキースのなかに芽ばえかけた母親に対する憎悪を感じていた。
それを他へと逸らすための口づけだった。
キースは重ねられた唇に、ようやくわれを取り戻した。
同性の接吻でわれにかえる自分をどうかとも思ったが、なによりも、恋人がそばにいるという心強さがすべてを救った。
彼の胸の奥から父親を裏切って不倫に興じる母親への憎悪は消えて、不道徳に歓びを見出すもの同士の共感へと塗り替わった。
「あたしもストッキング、穿いてみようかな」
兄の気持ちを見透かすように、リディアが囁きかけた。

気がつくと、すぐ傍らで吸血鬼が、侍女のジュリアにのしかかっていた。
「たまらなくなってきた」という呟きは聞こえていたが、母親の濡れ場に夢中だった兄妹はもう、上の空だった。
首すじに血を吸っているとばかり気配で感じていたけれど――吸血鬼はジュリアの首すじを吸っていただけではなかった。
メイドの黒のドレスの裾をたくし上げられて、リディアはすすり泣きながら、犯されていった。
身近で目の当たりにする処女喪失に、キースはさらなる昂ぶりを感じた。
黒タイツの脚をすくめながら、ジュリアは身体をガチガチに固くしながら、太ももを開かれ、挿入を受け入れてゆく。
やがて男の強引な上下動がジュリアの腰に伝わり、熱烈に応じていくのを見つめながら、
血を吸い取られて洗脳された自分が、ジュリアの変節を嗤うわけにはいかないと思った。
リディアは、ジュリアが目のまえで犯されるのを目にして、つぎは自分の番…と観念し、
ひとつ年上の女奴隷が自分よりもひと足早く女になるのを、ウットリとした目で見つめていた。


長い夜が明けた。
兄妹が共犯同士になり、母親の不倫を目にし、忠実なジュリアが処女を喪った夜が。
その日はさすがに兄も妹も、マイケルとのデートから帰ったマデリーンも、白い顔をして家で大人しくしていた。
夜明け前に情夫を送り返したダイアナも、珍しく昼間で寝ていた。
ジュリアだけがかいがいしく、いつもの務めを果たしていた――メイドの装いの裏側に、初めての痛みの名残りの疼きを押し隠しながら。


「やつにママの生き血を吸わせてやりたい!」
激情に声を上ずらせて、キースは吐き捨てるようにいった。
「賛成」
リディアは冷めた声で、証人の宣誓でもするように、片手をあげて兄に応じた。
「パパを裏切ったママは、死刑に値するわ。あのひとに血を吸い尽されて、ヒィヒィ言わされるところを視てみたい」
すこし目的をはき違えていないか?キースはほんのちょっとだけ疑問を感じたが、妹の語気に異議をはさもうとはしなかった。
その晩ふたりは吸血鬼を窓から自邸へと呼び入れて、母親の寝室へと案内した。
首すじから血を流した息子と娘を目にして、ダイアナは不審そうに二人を見比べたが、その背後に黒マントの男の姿をみとめ、初めて悲鳴をあげた。
生で観るドラキュラ映画は、数分間で終わりを告げた。
部屋じゅう逃げ回ったママは、ネグリジェ姿のまま寝室を逃げ回り、つかまえられて、首すじを咬まれてしまったから。
息子や娘と同じように首すじに血をあやした女は、せめて貞操だけは守ろうとした。
夫婦のベッドのうえ、両腕を突っ張って抵抗するダイアナの姿に、
キースは「しらじらしい」と舌打ちをし、リディアは「リデルさんのために守っているのね」と、冷ややかに見つめた。
そして、強引に腰を静めてくる男に、ネグリジェに包まれた肉づき豊かな腰があっさりと応じ始えてしまうのに、
「ジュリアよりぜんぜん早い」と、キースはなおも詰るのだった。
こうして誇り高い名門の令夫人であるはずのダイアナは、自分の夫以外に夫の親友のリデル氏と、吸血鬼までも受け容れて――娼婦に堕ちていった。



「お兄さんも来たの?」
やって来たキースをみて、マイケルは気軽に声をかけてきた。
キースは最初、自分に声をかけて来たのが誰だか、わからなかった。
マイケルは女の子の格好をしていた。
フリルのついた白いブラウスに真っ赤なベスト、腰から下は赤と黒のチェック柄のスカートに、ひざから下はアミアミの真っ赤なハイソックスを履いている。
見覚えのある服だと思ってよく見ると、マデリーンのものだった。
マイケルに女装癖があるのは以前から聞いて知っていたけれど、じっさいに目にするのは初めてだったし、
ましてそれがマデリーンの服だと思うと、妹が侮辱されているような、ちょっと不愉快な気持になった。
「お兄さん」と呼ばれるのも心外で、まだ認めたわけじゃないから、と、奇妙な反撥を感じたのだった。
「お兄さん」と言いながらも、マイケルはキースよりも年上だった。
だから、よけいにからかわれているような気がした。
彼はキースの顔色を察すると、素直に言葉を改めた。
「きみもこんなところに足を運ぶようになったんだね、キース」
おとといの夜、妹を犯していた男――そんな男と口を利くのは潔くない――キースはまだ、そういう子供っぽい潔癖さも持っていた。
同性愛をしながら…だって?でも、彼との関係は、決して不純なものじゃない。
「マデリーンとは本気だよ」
マイケルは真顔でいった。
「そう、それなら良いけど」
キースはやっとのことで、そう応じた。
そして、妹の履いていたアミアミの真っ赤なハイソックスを履いているマイケルの足許を、眩しそうに見つめた。

順番は、マイケルのほうが先だった。
招ばれていたのは全員が十代の青年で、まるで予防接種の順番みたいに、閉ざされたドアの外に行列を作っていた。
「いったい、いつから我が学園は吸血鬼を受け容れるようになったのか」
マイケルが声をひそめて、いった。
「きみが引き込んだんだろう」
「いや、きみだ」
「そんなことはない」
「案外、学院長だったりしてね」
たしかに、学院長の許可なしに教室を使うことはできない。
そして、きょうのこの教室に居座っているのはほかでもないあの吸血鬼だったのだ。
夕べはママを。
おとといはキースやリディア、それにジュリアまでを。
あれほど好き放題にものにしていったというのに、どれだけ喉をカラカラにしているのだろう?
見ず知らずの少年たちを、こんなにも毒牙にかけて。
べつの嫉妬が、キースのなかをかけめぐる。
「よそうよ、きりがないぜ」
マイケルがたしなめた。マデリーンの服を着ているので、まるで下の妹にたしなめられている気分だ。
ほかにも、ふたつ前の少年が、どうやら母親のものらしいよそ行きのスカートスーツを身に着けていて、
学園はいつになく、妖しく華やいだ空気を漂わせていた。
「ぼくね、マデリーンを未来の花嫁として、彼に紹介することにしたんだ」
そう言い残してドアの向こうに消えたマイケルの後ろ姿を、見逃すことはできなかった。
細目に明けたドアの向こう、マデリーンの服を着て抱きすくめられたマイケルが首すじを咬まれてゆくのを目にして、
マデリーンが咬まれているところを想像しないわけにはいかなかった。
そして、いつかここには、リディアの服を着て来ようと、心のなかで思った。



高慢ちきな少女だ、と、キースは思った。
屋敷では、父親の帰国を祝うホームパーティーが開かれていた。
招かれたのはリデル氏のご一家。
母親であるダイアナの愛人であるリデル氏とマチルダ夫人、令息であるマイケルとその妹のキャサリンだった。

その日は、マイケルとマデリーンの婚約パーティーをも兼ねていた。
マイケルがそれを、父親のリデル氏を通して望み、それを支持したダイアナが夫を説得した。
「まだ早すぎる」と最初は渋った父親のジョナサンも、妻には逆らえずに、親友の息子がまな娘を犯すことに同意した。
――もっとも周知のように、実際にはすでに彼のまな娘は、とっくに篭絡されてしまっていたのであるが。
その夜のパーティーでは、マイケルとマデリーンが二人きりで過ごす部屋まで用意されていた。
マイケルが妹のキャサリンを、キースに正式に紹介したのは、その場でのことだった。
「代わりというわけじゃないけれど」
相変わらずデリカシーに欠けたいいかたで、彼は妹を紹介した。
さすがの彼も、きょうは女の子の服装ではない。
彼の女装癖は周知の事実で、必要以上に男らしい父親のしかめ面をかっていたが、彼以外にマイケルのその風変わりな習慣を咎めるものは、この席にはだれもいなかった。
タキシードに身を固めたそのマイケルが紹介した妹のキャサリンこそが、キースが高慢ちきだと感じた相手その人だった。

眩いほどの美少女だった。
二重瞼の大きな瞳に、きっちりと引き結んだ真っ赤な唇。誇り高い金髪に、ぬけるような白い肌。
肩まであらわにしたドレスの胸もとは豊かなふくらみを帯びていて、つい先日までローティーンだったとは思えないほどだった。
「ぼくがきみの妹を犯す代わりに、きみはぼくの妹を姦(や)る。濃い関係だと思うけどどうかな」
マイケルはひそひそ声でそういって、キースの顔色を窺った。
そしてその顔つきに、興味と反感とが半々にあらわれているのを見て取って、義兄となるこの年下の青年が予想通りの反応を示したことに満足した。
「結婚することを犯すっていうのは、やめたほうがいい」
キースはどこまでも潔癖にそういうと、紹介されたキャサリンの掌をとって挨拶の接吻しようとした。
キャサリンは自分の掌を相手の男が丁寧に扱っていないと感じたらしい。
不機嫌そうに顔をしかめ、キースがとった手を振り払った。
仰天するキースに鋭い視線を投げると、キャサリンは兄の腕を取って、「行きましょ」といった。
義姉となるマデリーンをも無視した行動だった。

「おやおや、いけないね。お父さんはお前にそんな行儀作法を教えた覚えはないよ」
父親のリデル氏が、娘をたしなめた。
「そうそう、親同士はこんなにうまくいっているんですからな」
痩身のジョナサン氏もまた、リデル氏に同調した。
彼の首すじに赤い斑点がふたつ滲んでいるのを、その場にいるだれもが目にしていた。
帰国そうそう、彼は夫婦のベッドで組み敷かれ、吸血鬼に咬まれていた。
相手は、息子や娘を冒し、そのうえ妻までもモノにした男だった。
すべてを認める代わりに、吸血鬼はジョナサン氏にすべてを語ってくれた。
妻とリデル氏とが、夫以外誰もが知っている仲になっていること。
今後夫婦で円満にやっていくには、ダイアナとリデル氏の関係を認めて、こころよく受け容れるしかないこと。
家族全員が彼に血を吸われ、妻はリデル氏だけではなく彼の支配も受け容れてしまっていること。
同じく血を吸われた息子とは同性愛の関係を結び、上の娘のリディアも処女の生き血を捧げつづけていること。
短時間の吸血で洗脳されてしまったジョナサン氏は、寛大にもすべてを受け入れた。
そして妻を呼ぶと、夫婦の寝室を潔く明け渡し、ひと晩ふたりの好きなように、愉しみを尽くさせてやった
そして同じように、こんどはリデル氏を呼ぶと、彼にも夫婦の寝室のカギを渡し、ひと晩ふたりの好きなように、愉しみを尽くさせてやった。
どちらの晩も、間男たちはダイアナに対する想いを遂げると、歓びを分かち合いたいと願う夫のジョナサンを寝室に引き入れて、縛られた彼のまえでその妻を愛し抜いていったのだった。

妻の愛人として受け容れたリデル氏に、ジョナサン氏はすべてを打ち明けた。
子ども達の世代で、吸血鬼を受け容れる風潮が生まれている。
息子も娘も、そしてわたしたち夫婦まで、その毒牙にかかってしまった。
わたしの家とかかわると、貴男の家族のなかにも犠牲者が出かねない…と。
リデル氏はいった。
この街に出没する吸血鬼は強欲で好色だが、決して人は殺めないときいている。
だとしたら、家庭内に吸血鬼を受け容れることは、妻に愛人を迎えることとそう変わりはないのではないか?
それに、貴兄の懸念はすでに時機が遅くて、息子の恋人であるご令嬢も、どうやらすでに毒牙にかかっているようですね…と。

リデル氏の言葉を裏付けるように、
彼がジョナサン夫人と愉しい一夜を過ごした同じ晩に、その息子は婚約者のマデリーンを伴って吸血鬼の館へと赴き、
未来の花嫁の生き血を捧げ、その肉体までも共有することを誓わされていた。

マイケルがモノにした処女は、マデリーンだけではなかった。
義兄となるキースに、彼はただならぬことを囁いた。
「キャサリンをきみの妻として差し出すけれど――彼女は早熟だ。すでに男を識っている。相手はほかでもない、実の兄であるこのぼくだ。
 あらかじめ告げておくのが礼儀だと思うから、きみには話しておく」
結婚後も兄妹の関係を続けるつもりなのか?と訊くキースに、マイケルはいった。
「きみがリディアとの関係を続けるようにね」


すべてが、走馬灯のように過ぎていった。
結婚を明日に控えた夜、キースは自宅での最後の夜を過ごしていた。
屋敷の中庭では、婚約者のキャサリンが、明日の華燭の典にまとうはずの純白のドレスを一日早く身にまとい、
吸血鬼に裸身をさらそうとしていた。
衆目の前で行う誓いの接吻をまえに、キースは花嫁の両肩を抑えつけておとがいを仰のけ、
首すじへの接吻を果たさせてゆく。
長い長いケープを夜風になびかせながら、キャサリンは物怖じひとつせずに凛と佇み、そのまがまがしい牙を受け入れた。
ずず…っ。じゅる…っ。
幾人もの若者、そして人妻たちのうえに覆いかぶさった吸血の音が、未来の花嫁にも訪れるのを目の当たりに、キースの心は揺れたけれど。
高慢な少女の肩先を抑える手にこめられた力は、弱まることがなかった。
純白のドレスに真紅のしずくひとつ滴らせることなく、吸血鬼はキャサリンの血を飲み干した。

夫としての義務をキースが黙々と果たすのを、キャサリンは軽蔑したように視ていたが、
やがて抱きすくめられたまま夢中になってしまうと、未来の夫の目をはばからず、
「いやん!あぅん!はぁあん!」
と、良家の令嬢にあるまじきはしたない声をあげつづけた。
それは、自分の実家と婚家の名誉を辱めかねない行為であったけれど、どうしても止められないものだった。
立て続けの吶喊は、まだ少女である身体には猛毒のような刺激を与えつづけたので、キャサリンは思わず涙声で洩らしていた――
「忘れられなくなりそう」
と。
忘れる必要はないよ。きみは感じつづければ良い。
キースはそう囁いて、彼女の手首を芝生の上に抑えつけた。
「許してくれるのね…?」
初めて神妙な顔つきになった花嫁に、キースは額に接吻をしてこたえた。
「ひと晩、嫁入り前の夜を愉しむといい」
潔く背を向けた未来の夫に、キャサリンは聞こえないように囁いた。
「あなたも楽しんでね」


中庭に面したバルコニーに佇むふたつの影が、花嫁の不道徳な振る舞いに熱い目線を注いでいた。
キースとリディアだった。
「うちもリデル家も、めちゃくちゃになっっちゃったわね」
上目づかいで兄を見あげるリディアは、含み笑いを泛べている。
「そうだね。でも、だれもが愉しんでいるのなら、それでいいんじゃないのかな」
「マデリーンに子供ができたみたいよ」
「マイケルの子じゃないらしいね」
「生まれた子が女の子なら、あのひととつき合わせるって言っていたわ」
「それが良いかもしれない。――男の子だったらきっと――」
「あなたみたいに、妹や彼女をあのひとに差し出すようになるはずね」
「実の親子でも、血を吸い合うのだろうか」
「きっとそうよ、愉しむに決まってる」

キャサリンの結婚を記念して、その母親のマチルダの貞操も、堕とされることになっていた。
彼女も旧家の生まれで、もの堅い婦人だった。
上流社会きっての賢夫人とうたわれ、親友の妻同士であるふしだらなダイアナとは似ても似つかなかった。
その彼女が、夫とダイアナの不倫に気づいたのは、むしろ“彼ら”がぐるになって、知らしめたのだという。
ベッドのうえで乱れる二人を前に絶句し逆上したマチルダの背後には吸血鬼が忍び寄り、
夫を詰る声はすぐさま、血を吸われるものの悲鳴に変わった。
ダイアナとリデル氏とが明け渡したベッドのうえに、マチルダは吸血鬼ともつれ合うようにして投げ込まれ、
黒タイツの脚を舐め尽されていった。
狎れたやり口で自分の足許が辱めらるのを、マチルダ夫人は悔し気に眉をひそめて耐えた。
そのあとの吶喊も、娘が体験した身体を自分までもが受け容れさせられるという異常な状況に気をのまれながらも、涙ひとつみせず耐え抜いた。
彼女は意地の強い婦人だったので、目もくらむ凌辱をさいごまで毅然と受け止めたのだった。

――殿方を愉しませるためにまとっているわけではない
咬み破られたタイツを脱ぎ捨てた夫人は、そういいながらも気前よく、手にしたタイツを愛人として受け容れた男に与えていった。
貞淑なご婦人ほど愛着がわくと囁く吸血鬼に魅せられたように、マチルダ夫人は首すじから血を流したまま情夫を見あげ、
「今度お逢いするときには、もっと舌触りのよさそうなものを選んで、穿いてあげますね」
といった。
長年貞淑に仕えてきた妻が堕ちるところをかいま見させられたリデル氏はちょっとだけ複雑な顔つきだったが、
握手を求めてきたジョナサン氏の手を握り返す力はつよかった。


「あたしたちくらいは、まともな関係じゃないとね」
リディアは、ニッと笑って、白い歯をみせた。
兄の前で初めて吸血鬼に咬まれて兄に「堕とされちゃったみたいだね、お姫様」とからかわれたときと、同じ笑みだった。
リディアが口にした「まともな関係」とは、「まともに愛し合う関係」のことだと、キースにはすぐにわかった。
「じゃああたしたちも…しましょ」
リディアは兄とのへだたりを、さりげなく縮めた。
兄妹としては、すでにふさわしくない近さだった。
「きみももうじき、結婚するんじゃないのか」
「かまわないわ」
リディアが呟くのと同時に、キースはリディアを抱きしめていた。
「同じ血をはぐくむ同士――仲良くやりましょ」
小賢しい囁きを止めない唇を、キースの唇が熱く塞いだ。
しつような接吻にむせ返りながら、リディアが呟く。
「やっぱり初めてのときは、兄さんと迎えたかった」
兄の婚約者のおめき声が聞こえる外気を避けるように、ふたりはリディアの部屋へとさ迷い込んだ。
荒々しく押し倒す影に、ベッドに埋まった影が囁く。
「好きにして」と。
部屋の隅に佇む、もうひとつの黒い影が、部屋にわずかに人影を投げていた燭台を吹き消した。
侍女のジュリアだった。
「おめでとうございます。お幸せに――」
そっと立ち去る後ろ姿を満足そうに見やりながら、リディアはいった。
「あの子もお兄様のこと、好きだったのよ。お嫁さんが浮気で帰ってこない夜には、あの子のことも呼んであげてね」


あとがき
長々と読んでいただき、ありがとうございました。
結末をつけるためかなり端折って描いてしまいました。(^^ゞ

キースのお嫁さんをだれにするのかはちょっと葛藤がありまして。
母親と情夫との濡れ場を目撃している傍らで犯されてしまった侍女のジュリアも候補の一人です。
濡れ場を目撃して昂ってしまった吸血鬼氏の性欲処理のため、むぞうさに純潔をむしり取られてしまうのですが、
はからずもキースが目撃した処女喪失の場面は、未来の花嫁のものだった――というのもありかな、と思ったので。
あとは、リディアとの兄妹婚のセンも考慮しました。
籍を入れる入れないの問題にこだわるのでなければ、同じ家で暮らしている兄妹というのはありがちなことですし、
男と女のことですから、そこに芽ばえてはならないはずのものが芽ばえることも、決して皆無とは思いませんから。
でも最終的には、母親の情夫の娘である高慢な美少女が当選しました。(笑)
すでに処女ではない花嫁を吸血鬼に捧げようとする夫に侮蔑の視線を投げた彼女ですが、
そこはまだうら若い女性。さいごは「忘れられなくなりそう」と、純情な涙を流します。
淫乱な血は父譲りでしょうか?

もの堅い賢夫人であるマチルダはちょい役でしたが、好きなキャラです。
地味な黒タイツを舐め尽されたあと、こんど脚に通すのは、肌の透けるなまめかしいストッキングというパターン――
使い古されているかもしれませんが、なん度描いても嬉しいシーンです。

欲を言えば、端折ってしまったシーンで、それまで色濃かったリディアの怜悧で奔放なところとか、
その忠実な侍女であるジュリアの出番がほとんどなかったこと(ラストシーンはおまけです)、
淫らな人妻だったダイアナや、もともともは一番大胆だった最年少のマデリーンにはもう少し場数を踏んでもらいたかったというところでしょうか。

洋館の淫らな夜 ~キースの場合~ 2

2018年12月09日(Sun) 07:59:10

つづきです。
吸血鬼に魅入られてしまった青年と吸血鬼との逢瀬が延々とつづられてきましたが、
つぎは妹を巻き込んでいくくだりです。


なん度めかの逢う瀬のときだった。
吸血鬼はそろそろ、キースとその妹のことについて、仕掛けてみることにした。
きみを侮辱してるつもりはないんだ、キース。
きみのくれたプレゼントを、僕なりのやり方で愉しんでるだけなんだ。
吸血鬼はそう言いながら、キースのふくらはぎをいつものようにあちこち咬んで、
彼の履いているライン入りのハイソックスを、見るかげもなくびりびりと噛み破いていった。
キースはどこまでも、のんびり構えていた。
「あーあ、ずいぶんハデに破くんだね。
ママにばれないようにしなくっちゃ。
きみと逢うときに履いてくる長靴下は濃い色に限ると思ったけど・・・どうやら関係ないみたいだね。
こんどはさいしょのときに履いていた、ハイスクールに通うとき履いていく紺色のやつがいいかな。」
吸血鬼は、彼がどんなハイソックスをなん足くらい持っているのか、先刻承知のようだった。
「通学用のやつはきみのためによぶんに用意しておくから。
学校のそばに棲んでいる吸血鬼がうちの制服が気に入っていると知ったら、校長先生も悦んでくれるかもね
・・・そんなわけないか。」
キースはおどけて肩をすくめた。
左右まちまちの丈にずり落ちたハイソックスの足許を見下ろしながら。

ところでさ。
吸血鬼は憂鬱そうな声でいった。
このペースでいくときみの血は、あと1週間くらいで吸い尽くされて・・・きみの身体のなかは空っぽになる。
そうかもね。ここのところかなり頻繁だったから・・・
キースは意外なくらい冷静な反応をしめした。
まるで恋人同士がセックスの頻度を確認するように。
「吸血行為は、吸血鬼と人間のあいだで交わされる、もっとも崇高な儀式なのだ。
きみとの関係はぜひ長続きさせたいから、頻度を落とす必要がある。
吸血鬼が青年に飽きたとか、寵愛が落ちたというわけではなく、むしろ恋人の体調を心づかっての言葉だった。
けれどもキースはすぐには引き下がらなかった。
「ボクは我慢できるよ。
君にとってあの友愛の儀式――かれらは一連のあの行為のことをそう呼んでいた――は、きみの生命につながることなんだろう?
ボクが来てあげられないとしたら、そのあいだだれが君の相手をしてあげるというんだろう?
君が淋しい想いをするなんて、いてもたってもいられなくなるよ!」
いったいどこに、これほどまでに吸血鬼である彼のことを気にかけてくれるものがいるだろう?
かれを死なせるわけには決していかない・・・吸血鬼は改めてそう感じた。
語り合いながらキースは、ストッキングがずり落ちるたび引っ張りあげていたし、吸血鬼は始終かれの足許に唇を吸いつけ舌を這わせていった。
きみの代わりにリディアを連れてきてくれないか?
紅茶を切らしているなら、コーヒーをいただこうか・・・そんなさりげない口調で、吸血鬼はキースの妹の血を要求した。
血を提供するための身代わりに妹を要求するなんて・・・
そういうそぶりを一瞬みせた青年はしかし、その人選がじつに適切だと思い直さないわけにはいかなかった。
彼がこよなく愛するキースの血ともっとも似た血を宿しているのは、血を分けた兄妹であるリディア以外に考えられなかったから。
きっと彼は相手がボクの妹のことだから、こんなにも胸を割って前もっての相談をしてくれたのだろう。
吸血鬼はなおも躊躇うかれの耳許に囁いた。
鼓膜の奥底に、毒薬を沁み込ませるように。
――彼女が自分の血を自分自身のためだけに使うか、飢えた者と分かち合う気になるのかは妹さん自身の大人のレディーとしての判断だ。
この件に関しては、きみにはなんの責任もない。ただ僕に機会を与えてくれただけなのだから・・・
いつかどこかでこんな出まかせを言ったような・・・
吸血鬼はそんなことを思いながら、すでに己の腕のなかでウットリとなっている青年の首すじを、もう一度がぶりと咬んでいた。
「わかった。きみのリクエストに応えてリディアを紹介するよ。妹もきみのことを気に入ってくれると良いんだけど」
青年は気前よく、吸血鬼に自分の妹の生き血を振る舞うことを請け合った。



同性の恋人である吸血鬼に、妹の生き血をプレゼントする―――
このプランは、想像力と好奇心に富んだ青年を夢中にした。
夕べ誓いのキスまで交わしあったその計画で、キースは朝から晩まで頭がいっぱいになっていた。
――きみの妹さんにも、都合というものがあるだろう?
だから、わしは3日間待つことにするよ。
きみが妹さんを連れてウェストパークに入ってきたら、いつでも姿を見せられるよう用意をしておくから。
どうしても妹さんの都合がつかなかったり、話しかけるチャンスがなかったり、きみの決心が鈍ったりしたら、
3日めの晩にきみ一人で来てくれないか?そうした場合には・・・愉しい罰を与えてあげよう。
恋人のそんな寛大な申し入れに、キースは内心、彼をそんなに待たせるなんて心外だと感じていた。
けれどもたしかに、相手のいることでもあったから、親友の申し出通りの3日以内ということで誓いのキスに応じたのだった。
できれば期限ぎりぎりに独りで深夜のウェストパークを散歩したくなかった。
かれは妹たちや親たちのスケジュールを確認する作業から取りかかった。
父親はおとといから2週間の予定でフロリダに出張に出ていた
――それこそわが吸血鬼氏のように翼でも生えていないかぎり、妻が浮気しようが、息子や娘たちが吸血鬼と仲良しになろうが、なにもできないはずだった。
母のダイアナは、あすは一日じゅうスケジュールはなく、あさっての夜はかねて"うわさ"のあるリデル氏とミュージカルを観に行くはずだ。
帰りはきっと、遅くなるにちがいない―――そう、たぶん真夜中だ。
下の妹のマデリーンは、そのすきを狙って恋人のマイケルとデートのはずだ。そして肝心のリディアは―――なにも予定がないはずだった。


真新しいストッキングのパッケージの封を切るときは、いつも気分がときめくものだ。とくに愉しい計画のある場合は!
キースは鼻唄交じりに封を切ると純白のストッキングに唇を押しあてる。いつもの儀式だった。
今夜のストッキングを脱ぐときにはきっと、鋭利にきらめく恋人の牙をいくつも受けて、キースの熱い血潮に染まって淫らなキスの雨を降らされながら、剥ぎ取られていくはずだった。
このごろは自分で脱ぐことが減って、血潮をたっぷり含んでぐしょ濡れになったやつを恋人の手で脚から抜き取られる機会が増えていた。
ハデにカラーリングされてぐっしょり濡れそぼったストッキングを剥ぎ取られるようにして脱がされるとき、
キースはまるでレイプを愉しむ少女のように、マゾヒスティックな歓びにうち震えながら、されるがままになるのだった。


「御機嫌ね、お兄様」
軽くハミングしながら足音を近づけてきて、妹の部屋の開けっ放しになっていたドアに寄りかかった兄を、リディアは読みさしの本を置いて振り返った。
美しい金髪が肩先に揺れて、窓辺から逆光となって降りそそぐ夕陽が、その輪郭を染めた。
キースが妹の髪に眩しそうに目を細めたのは、夕陽のつよさのせいばかりではなかった。
目のまえの乙女がその身体に宿した血液は、純潔の誇りを湛えているはずだ。
それは必ずや、かれの恋人をもっとも悦ばせる種類の飲みもののはず――
捧げる獲物の価値の高さにキースの胸は躍ったが、反面自分の分身のような存在を汚してしまうことへの畏れが、鋭くかれの胸をさした。
吸血鬼が予期しなおかつ危惧した心理――いみじくも彼は、「きみの決心が鈍ったら」と言っていた――が、妹想いの兄の胸にきざしたのだった。
「どうしたの?お兄様?」
なにも知らない(という態度をリディアは決め込んで、キースは信じ込んでいた)少女は、無邪気な微笑みをにこっと浮かべ、キースは息苦しそうなあえぎを隠しきれないままに言葉をついだ。
「ちょっと・・・散歩しない?」
「いいわよ。この本を読み終わったら」
リディアはいったん置いた分厚い本の、まだまん中くらいのページを開きながらいった。
キースが思わずげんなりした顔をすると、リディアは可笑しそうに声をたてて笑った。
「ばかね。信じた?そんなわけないじゃない」
リディアは読みさしだったはずのページを抑えていた手を、しおりを挟みもせずに放すと、分厚い革装の本をベッドに投げ込んだ。
「きょうのお勉強はもうおしまい。
最高じゃない!
パパはずっとお留守、ママはだれかさんとデート。
マデリーンもそんなイカれたママの目を盗んで火遊び。
素晴らしい家族愛だわ。
おうちに取り残されたのは、要領が悪くておばかさんな兄貴と、くそ真面目な妹。
お似合いの兄妹ね!」
少女はけたたましい声で笑った。
キースはちょっぴり不平そうに、
「おばかさんはご挨拶だね」と言ったけれど、
一見おしとやかに取り澄ました優等生な妹の小気味よい毒舌に、本気で怒ったようすはなかった。
「おばかさんじゃなくて?」
リディアはイタズラッぽく笑った。
「きみが決めることさ」
「いいプランでも?」
「さぁ・・・?」
兄はもったいぶって受け流した。
「乗ってもいいわ」
リディアは席を起って髪をかきのけると、花柄のロングスカートをお行儀わるくサッとたくし上げ、タイツに綻びのないのを確かめた。
「あたしの用意はいいわよ」
「それはけっこう」
キースは口笛を吹いた。

リディアが無造作にスカートをはね上げたとき、黒のタイツを履いたすらりとした脚がちらっと覗き、舞台裏をカーテンが押し隠すようにすぐに視界を遮ってしまったけれど、
そのわずかなすきに、リディアの身につけたタイツが真新しさを感じさせる艶を帯びているのを、兄は見のがさなかった。
その日のロングスカートは紫とスミレ色の小さな花模様があしらわれていて、ところどころに草色の小さな葉をつけた長く長く伸びる茎がツタのように絡み合っていた。
リディアがそれと見越してわざと新しいタイツに脚を通したことまでは、キースには思いも及ばないことだった。
兄が妹を吸血鬼に遭わせる計画に胸をはずませている頃、それとは裏腹に妹は、兄にばれないように、初体験の乙女をいかに演じるかを思い描いて、胸をはずませていたのだった。

「白のストッキング素敵ね」
リディアはキースの足許を見つめて、いった。
あながち口先だけではないらしく、リディアは真新しい純白のストッキングに包まれた格好の良い兄の脚に、ちょっとのあいだ見とれていた。
「きみは世界で数少ないボクの味方だよ」
「唯一じゃなくて?
残念ながら・・・キースはそうやり返したいのをかろうじてこらえた。
「逢わせたいひとがいる」
「ハンサムな男の子?」
「化け物かもね」
「場合によっては」
リディアはひどく大人びた顔つきをして言葉をついだ。
「ハンサムな男の子より退屈しないかも」
「男の子は退屈?」
「とくにマイケルみたいなのは」
「マデリーンが発狂する」
「あの子のまえでは言わないわ」
「腹黒な姉さんだ」
「心優しい姉よ」
リディアは訂正した。
「その心優しい乙女に期待して」
兄は淑女に対するように、妹に手を差し出した。
リディアはまるでお姫様のように、片方の手でスカートのすそをつまみ、もう片方の手で兄に手を預けると、あとも振り返らずに部屋を出た。


濃いオレンジ色の夕陽が、群青色に暗くなった快晴の空に鮮やかに映えていた。
兄妹はゆっくり大股に歩みを進めながら、広壮な邸宅や古い城壁に控えめな区切りを縁取られた、この雄大なパノラマを見るともなくふり仰いでいた。
大股にゆっくりと歩みをすすめる二対の脚は、
片方は夕闇のなかでもきわ立つ純白のストッキングに包まれ、
もう片方は花柄のロングスカートのなかに黒タイツで武装した女の武器を、さりげなく隠していた。
兄に比べて妹のほうはひと周り半ほど身体がちいさく、背丈は兄の肩にやっと届くくらいだった。

「きょうはウェストパークはお休みのようね」
目的地に着いてみたら遊園地は休みだったとき間抜けな恋人に向けるようなからかいの目の色をして、リディアは兄を見上げた。
彼女は白くて細い指先にピンと力をこめて、閉ざされた公園の入り口に貼られたポスターを指さした。
"CLOSED"
と赤い字で大きく書かれた下には、「芝生の手入れのため」と、ご丁寧にも添え書きがされている。
「さあどうかな?」
兄は余裕たっぷりにウィングした。かれの手にはぴかびか光る小さな鍵が握られていて、それは重たく厳めしい錠前の鍵穴に、ぴたりと収まったのだ。
「素晴らしい!」
少女は手を叩いて、金髪を揺らして小躍りした。
「爺やから借りておいたのね?なんて手回しがいいこと!」
「これでも"おばかさん?"」
ちょっと得意げに肩をそびやかす兄に、
「こだわるのは、男らしくないわ」
リディアは相変わらずの減らず口で応じた。
耳障りに軋む鉄製の扉の向こう側は、塗りつぶされたような漆黒の闇だった。
「どうするの?」
さすがに立ち入りかねてリディアが金髪を揺らせると、それを合図にするように、公園じゅうの照明にパッと灯りが点った。
それらは、園内ぜんたいをくまなく真昼のようにするにはかなり不足だったが、闇に慣れかけた目には眩いほどの明るさに思えたし、昼間とは趣のちがう光を受けた芝生がグリーンのじゅうたんみたいになだらかな起伏のある園内に広がる光景に、少女は夢中になった。
「綺麗・・・!」
リディアはこんどこそ、ときめきの声をあげた。
「ステキよ、兄さま」
リディアは近くの手すりに腰かけてあたりを見回す兄に駈けよって、頬ぺたにキスをした。
夕風にあたったせいか、その頬は冷たかった。
有頂天になった少女の後ろで公園の入り口の重たい鉄扉が音もなく再び閉ざされ、"CLOSED"の看板が裏返されたことに、少女は気がつかなかった。
裏返された側には、「ロケ中のため関係者以外立入禁止」と、書かれていた。
なかからかりに悲鳴や叫び声がしたとしても、それは撮影中のドラマか映画の科白の一部としてしか、見なされないだろう。

リディアが重ねてきた接吻の感覚が、キースの頬にまだ残っていた。
甘美な温もりを帯びた彼女の唇は柔らかく、蠱惑的であった。
いったいこの唇を、将来どんな男性が獲得するのか、キースは多少の嫉妬を交えて思いめぐらした。
否、彼女にはそんな未来は待っていないかも知れない。
今宵彼女は兄の手引きで吸血鬼に逢い、穢れのない処女の生き血を啜られるのだ。
挙げ句、名門の令嬢であるはずの彼女は吸血鬼の女奴隷に堕とされて、なみの結婚はできない身体にされてしまうかもしれない。
今宵与えられる処女を支配するのはかれの親友であり恋人ですらある男だから、
リディアがこの公園内で徒らに十七歳の娘ざかりの生命を断たれる気遣いはなかったにしても。
兄に与えた栄誉を、妹も享受することは、キースの頭のなかでもじゅうぶんに予想されていた。

招かざる客人は、街灯の灯りの及ばない薄闇の彼方から姿を現した。
そのタイミングはキースでさえ称賛の口笛を洩らしたほどの鮮やかさだった。
短く刈り込んだ銀色の髪、どす黒い褐色の頬、ギラギラと輝く瞳。
お約束どおりの黒マントは、夜風に翻るたびに真紅の裏地があざやかに映えた。

「キャーッ!」
リディアがいきなり悲鳴をあげた。
恐怖に震えたか細い声は、園外までは届きそうになかったが、兄さんとおしゃべりしているときよりは軽く1オクターブは高かった。
あわてる兄をみて、リディアはこんどは笑い声をはじけさせた。
「お兄様にしては上出来よ!素晴らしい演出だわ。ついつり込まれてノッちゃったじゃない!」
はしゃぎ切ったリディアは恭しく片膝を突く吸血鬼に手を与え、ゆうゆうと接吻にこたえた。
「そんなことして!咬まれたらどうする!?」
キースは眉を八の字に寄せ、妹の軽はずみをたしなめた。
けれどもそれとは裏腹に、彼自身もだんだん気分ノッてきて、声色が芝居がかってくるのが自分でもわかった。
「お兄様は自分のお友だちが怖いの?」
「そういう問題じゃなくて・・・」
いい募ろうとするキースをまるきり無視して、リディアは背を反らせて吸血鬼と対峙するように向き合った。
灯りを受けて輝く長い金髪が夜風に流れて肩先にたなびき、紅潮した横顔が、挑戦的な視線を吸血鬼にそそいでいた。
――お似合いのカップルだ。
心のどこかからそんな呟きがして、キースはあわててそれを打ち消した。
やめさせなければ。
キースの胸に、遅まきながら兄としての自覚が芽生えた。
やつの牙は呪われている。あの尖った犬歯の切っ先に含まれた毒がまわったら・・・!
手の届く距離に、白く透き通ったきめのこまかい肌があった。
襟ぐりの深いブラウスから覗いた胸許が、灯りをうけていっそう気高く輝いていた。
あの気高い素肌を汚させてはならない。
「いけない・・・リディア・・・!」

兄のことを無視して、リディアはフフン、と、わざと小生意気な笑いを浮かべた。
「ムードと衣装は合格として、演技力のほうはどうかしら?
どこまで本物に迫れるのかしら。
兄からよく聞いていると思うけど、バストをおさわりしながらチューするなんて、古い手はなしよ。
あたし、助平なだけの退屈な男の子は願い下げなの」
いけない、リディアは彼に本気でケンカを売っている。相手が本物の吸血鬼だとも知らないで。
焦りを覚えたキースは、ふたりの間に割って入るようにして、
「リディア、今夜のきみは、ちょっときみらしくないな。
もっとクールにいこうよ。
こういうのはどうだい?
ボクがきみの前で、彼に血を吸わせてみせるんだ。
ボクだって、いきなり妹を咬ませるわけにはいかないからね。納得できる?」
リディアは嬉々としてキースのことを見上げた。
「お兄様のことだから、まさかひとにいきなり咬みつくようなやつを連れては来ないって思ってるわ。
レディの肌にいきなり咬みつくなんて無作法は、最低だもの。想像するだけで・・・おお嫌!」
――"おお嫌!"らしいぜ?気の毒な相棒君。
キースは半分ほっとして、半分は吸血鬼に同情して、彼を見た。
「怖くなったら、遠慮なくお逃げ」
キースは内心、かれが血を吸われているあいだに妹が怯えて逃げてくれることを願いながらそういうと、シャツのボタンをふたつ外して、吸血鬼のほうを向いた。
いつもの"儀式"だった。
キースが傍らの樹に身をもたれかけさせて、恋人の口づけを待つ乙女のように、おとがいを仰のけて目を瞑ると、
吸血鬼の唇の両端からむき出された牙が、すんなり伸ばしたうなじに、まっすぐ降りてきた。
象牙色をした犬歯がキースの首筋に埋まり、咬み痕を覆い隠すように吸いつけられた唇が、白い皮膚のうえを熱っぽく這いまわる。
やがて牙がひときわ力を込めてグイッと刺し込まれる気配とともに、
干からびかけた唇の端からバラ色のしずくがひとすじ、透き通るほど白い皮膚のうえを、たらーり、と、伝い落ちた。
「凄い・・・」
リディアは逃げもせず、兄が吸血されるシーンに、魅入られたように熱中した。
吸血鬼がキースの首筋から牙を引き抜いてかれの両肩を放すと、かれは目をひらいてうっとりとした目で恋人を見上げた。
それから、たるみかけた白のストッキングをきりりと引き伸ばして、芝生のうえにひざを突き、今までもたれかかっていた樹の幹に両手でつかまって身体を支えた。
吸血鬼はキースの足許にかがみ込んで這い依ると、革靴の足首をギュッと握って抑えつけ、白のストッキングのふくらはぎを舐めるようにして唇を吸いつけた。
キュウッ・・・
ひとのことをこばかにしたような、あからさまな音があがった。
純白のストッキングにみるみる紅いシミが拡がって、吸血鬼はゴク・・・ゴク・・・と喉を鳴らして、キースの血をむさぼった。

き・・・効くぅ・・・
キースはいつもの癖で、長いまつ毛をピリピリと震わせた。
暖かい血潮が傷口を抜けてゆく痛痒い感覚が、かれの胸の奥をじりじりと焦がしていった。
「もっと・・・もっと吸って・・・」
キースは額にうっすらと汗を浮かべて、うわ言のように口走った。
「ひと晩ガマンさせちゃって、ゴメンよ。その代わり今夜は、気のすむまでボクを辱しめて・・・」
もうリディアのまえでも、どうでもかまわなかった。
装いもろとも辱しめられながら生き血を吸われる歓びを、身近なだれかに見せびらかしてしまいたかった。
リディアの純潔な血を兄として守り抜くよりも、むしろ兄としては誇らしく捧げるべきだと思った。
随喜に目の前がかすんできた。
気がつくと、樹の根元に尻もちをついていた。
かれは、緩慢な動作でずり落ちたストッキングを直していた。
「ますます興味深いわ」
リディアは眸を輝かせていた。
「兄をそこまでにしてしまうなんて、あなた素敵ね。でも完全に信用したわけじゃないわ」
「ひどく慎重なのだね、マドモアゼル」
「もちろんそうよ。かけがえのない乙女の血をお捧げするためのお相手選びですもの。慎重な女の子は、念には念を入れるものよ」
真に迫った吸血シーンに恐れをなして逃げ出すどころか、リディアは彼に自分の血を吸わせることを本気で考えはじめている。
「退屈なの、あたし」
いつだか彼女は、たしかにそういっていた。でも、その退屈しのぎのために、あの致命的な牙を択ぼうというのか?
兄とおなじ選択を?
もっともかれのときだって、さいしょから希望してこうなったわけじゃない。
「兄とは息が合ってるようね。あたしとはどうかしら?」
「お試しになる?」
伸びてくる腕をあわててうけ流して、少女は懸命にいった。
「お芝居が上手でも、み入ったトリックかもしれない」
「ひとつの可能性ですな」
吸血鬼は否定しなかった。
「巧妙な詐欺行為?」
「獲物が美しい乙女なら、試みる値打ちはあるでしょう」
「でなければ、すべてが夢かも」
「もちろんそれも、あり得ます」
「夢だと賭ける!」
「どういう方法で?」
「かけっこ!」
少女は勇ましくこたえた。
「よろしいでしょう」
「いいの?あたし、クラスではリレーの選手なのよ」
果たして彼女は、ロングスカートでリレーの競技に出場したことがあるだろうか?と、キースは首をひねった。

「お好きなだけお逃げなさい。五つ数えたら、あとを追いかけます」
「いいわよ、手かげんしないで。なんなら、五つを早口で数えても?ども、まんまと逃げられちゃったら、お気の毒さま」
リディアはもう勝ったと言わんばかりに、彼女より頭ふたつ上背のある吸血鬼を、挑発するように見上げた。
ふたりの身長差をみて、キースはリディアをひとりで連れ出したことをすこし後悔した。
恋人の欲情を満足させるには、リディアの身体はちいさ過ぎた。
つぎにリディアを逢わせるときには、侍女のだれかか、リディアの下の妹のマデリーンを交えなければいけないと思った。
「用意はよくってよ」
リディアはきらきらと挑戦的に輝く眸で、吸血鬼を見た。
「では、どうぞ」
吸血鬼は余裕たっぷり、獲物の少女に逃走を促した。
吸血鬼はわざと、五つをゆっくり数えた。

花柄のロングスカートを腰のまわりにひらひらさせながら、か弱く舞う蝶のように覚束ない足取りで、少女はゆっくりと逃げまわり、
そのあとをぴったりと寄り添うようにして、吸血鬼があとにつづいた。
競技はあっけないほどすぐにおわった。
リディアに追いついてもすぐには捕まえようとせず、十歩ほどよけいに走って、手近なベンチのすぐそばで、彼女のことを捕まえた。
リディアは立ったまま、首すじを噛まれた。
煌々と輝く灯りの下、柔らかそうなうなじの肉に黄ばんだ犬歯が埋まるのがキースの目にありありと映り、
抱きすくめられた腕のなかリディアが痛そうに顔をしかめた。
白く透き通る肌を這う唇からは、バラ色のしずくが静かな輝きをたたえながら、たらたらと滴った。
小刻みにわななく細い肩が昂りにはずみ、刻々と変わる彼女の面差しが気持ちの変化を物語る。
力ずくで仰のけられたおとがいの下、深々と食いついた白い柔肌からは、バラ色の血潮がいくすじも流れた。

ああっ。なんて美味しそうにっ・・・!

キースは心のなかで、激しく舌打ちした。
嫉妬も羨望もありの舌打ちだった。
兄であるかれの目の前でリディアの血を吸う吸血鬼にも、悩ましげにかぶりを振りながらも牙を受け入れてゆく妹にも、同時に嫉妬していた。
いきなり素肌に咬みつくのは、無作法ではなかったのか?
「おお嫌!」ではなかったのか?
あのいまいましいやつは、細くて白いリディアの首すじに、ツタがからみつくようなしつようさで飢えた牙を迫らせてゆき、
リディアもまた、いちど咬まれてしまった傷口をなん度も吸わせてしまってゆく。
ついにはまるで求めあう恋人どうしのように、汚れを知らない生娘にはおぞましかるべき吸血に、みずから耽るように応じてゆくのだった。

やがてリディアはみずから姿勢を崩すように傍らのベンチに腰を降ろした。
貧血になったのか…?と兄は思ったが、そうではなかった。
彼女は花柄のロングスカートをはしたないほどたくしあげると、
あらわになった黒のタイツを履いたふくらはぎに、赤黒く爛れた唇がヒルのように吸いつくのを面白そうに見つめるのだった。
タイツのうえからぴったりと這わされた唇の下にあざやかな裂け目が走り、それが裂けた生地ごしに皮膚を蒼白く透き通らせながらつま先へと伸びていくのを、
キースもリディア自身もウットリとして見つめつづけていた。

堕とされちゃったみたいだね、お姫様。
キースがおどけて声をかけると、リディアはイタズラっぽく笑い返してニッと白い歯をみせた。
そして嬉し気にピースサインまでして、兄に応じるのだった。

                              ―つづく―

洋館の淫らな夜 ~キースの場合~ 1

2018年12月09日(Sun) 07:53:49

はじめに

何年かまえ、病気をして臥せっていた時に、携帯に打ち込んでいたお話を載せてみます。
長らく未完で放っておいたのですが、それもどうかと思ったので。

さいしょは未完のままあっぷしようかと思ったのですが、描いていた当時からラストは一応見えていたので、完結させることができました。
数年間の断層があるので、どこから描き継いだかバレバレかもしれませんね。(笑)

舞台は珍しく、西洋です。
吸血鬼ものの洋画でも観るような気分で愉しんでもらえると嬉しいです。

吸血鬼と同性愛的な関係を結んだ青年と、その妹たち、母親、母親の情夫やその家族――などが登場人物です。



                            洋館の淫らな夜 ~キースの場合~


石造りの高い城壁が、オレンジ色の夕焼けをおおきく遮っていた。
頭上にはすでに、藍色の闇が夜の訪れを告げている。
城壁に遮られているぶんたけ空は藍色の部分が広く、けれどもまだ色褪せしていないオレンジ色の夕焼けも、まだじゅうぶんにその存在感を主張していた。

その城壁のすぐ下の、闇に覆われかかった芝生のうえ―――
長い金髪をたなびかせながら、少女がひとり走ってきた。
こげ茶のロングスカートをユサユサと、重たそうに揺らしながら。
走りのはやさが少女にとってもどかしいものであるのが、容易にわかった。
そして、かなり狼狽しているということも。

少女のあとを追う影は、あきらかに異形のものだった。
短く刈り込んだ銀色の髪、深い皺に覆われた褐色の頬、口許から時おりチロチロとはみ出た牙には、
いま襲ったばかりのメイドから啜り取ったバラ色のしずくを、まだ生々しく滴らせている。
異形の影は、倒れたメイドの身体を乗り越えて、年若なメイドよりもさらに若い女主人に追いすがってゆく。
飢えた男の鼻先を、薄闇に透ける白のフリルつきのブラウスが、蝶のようにか細く舞った。

脚にまとわりついたこげ茶のロングスカートを重たそうに捌きながら逃れようとする少女の歩幅に合わせるように、
血に飢えた男は少女のあとからびったり寄り添うようにして追いすがって、
頃合いをみてか細い肩を後ろから抱きすくめると、力ずくであおのけた首すじに、がぶりと食いついた。

"ouch!"

少女は鋭く叫んだ。
さきに餌食にされた彼女のメイドが咬まれたときに発したのと、おなじ言葉だった。
ぱらぱらっ・・・と飛び散る血潮が、黒い影となって夕闇に散った。
抱きすくめた肩ごしに、吸血鬼は舌なめずりをして、
令嬢に接するのにはにつかわしくない意地汚いやり口で、つけたばかりの傷口に舐めるように唇を這わせた。
ちゅうっ・・・
ひとをこばかにしたような、恥ずかしいほどあからさまな音が、這わされた唇から洩れてきた。
少女は立ちすくんだまま、血を吸われた。

ふたつの影はしばらくのあいだ、揉み合うようにもつれあったが、
やがてちいさいほうの人影が耐えかねたように姿勢を崩すと、傍らのベンチの上にもたれ込むように尻餅をついた。
男が追跡を手かげんしたのは、どうやらこのベンチの在処を見当にしたようだった。
吸血鬼はどうやら、好色なたちらしい。
少女の身につけているこげ茶のロングスカートを腰までたくしあげてしまうと、
あらわにされてすくませた脚に、タイツの上から唇を這わせていった。
上品な接吻ではないことは、明らかだった。
ふくらはぎから内腿、足首と、まるでタイツの舌触りを愉しむように、男はあらわにした少女の脚のあらゆる部位にくまなく接吻を這わせていった。
真っ白なタイツには、たちまち紅いシミがあちこちに撥ねた。

"ouch! ouch!"

咬まれるたびに少女は、身を仰け反らし金髪を振り乱して叫んだが、男はかまわずに、この手荒なあしらいに熱中し続けた。



思ったよりもあっけない、拍子抜けするほど他愛のない"手続き"だった―――吸血鬼に生き血を吸い取られちゃうということは。
闇の向こうから伸びてきた腕がツタのようにからみついて、キースのことを後ろから羽交い締めにすると、
背後からぴたりと寄り添ったその人影は、おもむろに彼の首すじを唇に含んで、
この青年の理性を、痺れるような疼きで突き崩していった。
ずぶずぶと根元まで埋め込まれた魔性の牙は、活きのよい若い血潮を吸い出したのと引き換えに、
妖しい陶酔で理性や警戒心を萎えさせてしまう毒液を、かれの体内に注ぎ込んでいったのだ。

もしかするとほんとうは、すこしは抗ったり、じたばた暴れたりしたのかも知れない。
じじつあとでかれが気づいたときには、現場の泥が半ズボンの太ももにまで撥ねて、乾きかけてこびりついていたから。
けれどもキースのいまの記憶では、あの記念すべき晩、
かれはいともやすやすとたぶらかされてしまって、飢えた吸血鬼相手に、
由緒正しい名門のあと継ぎ息子の血を、十代後半の若い肉体から気前よく振る舞ってしまっていたのだった。

皮膚の奥深く埋め込まれた牙を通して、自分の身体に手ひどいあしらいをする相手の意思が伝わってくるような錯覚を、キースは覚えた。

ありがたい・・・若いひとの生き血にありついたのは久しぶりだ・・・渇いた喉がしんから癒える
・・・と、キースの生き血の質を褒め、なによりもひどく悦んでいた。

このままおとなしく血を吸わせてくれるなら、決して死なせない・・・もぅ少し血を吸って気がすんだら生かして家に帰らせてあげる。

・・・とさえ、口走っているようだった。

「きみは妹さんのことを気にしているね?ここで逢うことになっていた」
キースの生き血をひととおり吸いおわると、吸血鬼は首すじにつけた傷口から牙を引き抜いて、耳許に囁いた。
「どうしてそれを?」
キースはビクッとして、まつ毛のながい瞳をあげた。
「わしは、血を吸った人間の心のなかが読めるのさ」
恐怖にゾクッと震えるキースに、吸血鬼は裏腹なことを呟いてくる。
「ある意味それは残酷なことだぜ?たいがいのやつらはこっちのことを忌み嫌っているからね・・・」
「あぁ、そういえばたしかにそうだね・・・」
キースは相手の男の口調に、屈折した寂しさがあるのを感じた。
理性を酔わせるためにかれの血管に染み込まされた毒液に、同情と共感とが織り交ざっていった。

キースは吸血鬼のもの欲しげな視線が、いちどならず自分の足もとにさ迷うのを感じた。
舐めるようにしつような視線がからみつくのは、濃紺の半ズボンの下から覗いている、ふくらはぎだった。
発育の良いキースのふくらはぎは、半ズボンとおなじ色のストッキングで、ひざ小僧のすぐ下までキッチリと覆われていた。
真新しい厚手のナイロン生地は、太めのリブをツヤツヤとさせている。
ハイスクールから邸に戻ったばかりの彼は、ちかくの公園で待つという妹のリディアの書き置きを手に、制服を着替えもせずにふたたび邸を出てきたところだった。
「きみ、ストッキングに興味があるの?」
吸血鬼は図星を突かれたように一瞬目を見開いて、すぐに苦笑しながら肯定した。
「よかったら、きみにあげようか?学校のやつだから、ボク同じのをなん足も持っているんだ。
それとも、このまま噛ませてあげようか?」
吸血鬼は手短かに、咬んだあとできみの脚から抜き取りたいと答えた。
ずいぶんコアなんだね・・・青年は笑った。爽やかな笑いかただった。
そこには蔑みのニュアンスは全くなく、むしろイタズラ仲間としての軽い共感があるのを、吸血鬼は感じた。
「いいよ。噛み破っても。気が済むまで愉しんだら、脱いであげるから。
その代わり、きみがさっき言ったように、ボクのことを生かして家に帰してくれるかな?
そうしたらお礼に、きみのためにもぅ一足、ストッキングを履いてきてあげてもいいよ」
吸血鬼は嬉しげにほくそ笑んだ。
―――よかろう。取引成立だ。

抵抗をやめたキースのことを草むらにねじ伏せた吸血鬼は、
かれのふくらはぎにストッキングのうえからなん度も噛みつきながら、
その体内に脈打つ若々しい生き血をちゅるちゅると吸い出してゆく。

かなりの貧血で頭のなかが朦朧となりながらも、キースは自分が死ぬような気がしなかった。
しばしば、いびつによじれずり落ちたストッキングを自分の手で引き伸ばしてやり、わざと噛ませてみたりしたほどだった。
失血で息をはずませながら、青年はうわ言のようにいいつづけた。
「ねぇ、こういうのはどうだろう?
きみは人の生き血を欲しがっていた。
ぼくはきみの希望を快く受け入れて献血に応じてあげた。
だからきみがぼくから獲た生き血は、強圧的にむしりとったわけではなくて、
友情の証しに進んで飲ませてあげたものだ、というのは?
さっききみは取引って言ったけれど、
きょうのことは、好意的な寄付とかサーヴィスということにしてくれない?」
「素敵なアイディアだね」
吸い出した血潮の新鮮な芳香に目を細めながら、吸血鬼はいった。
まだ彼は時おり濃紺のストッキングの舌触りを嬉しそうに愉しみながら、
毒蛇のような牙をチロチロとさ迷わせては、バラ色の血を舌なめずりしながら味わっていった。
「きみは協力的なんだね。嬉しいことだ。きみの血をもう少し愉しんだら、約束どおり放してやろう」
死の恐怖を免れた青年は、求められるままに吸血鬼と口づけを交わした。
錆びたような血液の匂いが、少年の鼻腔をついた。
「ドキドキしちゃう・・・これがぼくの血の味なんだね・・・!」
キースはむさぼりあうように、自分のほうから唇を合わせていって、二度三度と口づけを交わした。
安堵が、かれを大胆にしたらしかった。
それがじつは吸血鬼のつけ目だったことに、まだかれは気づいていない。
「美味しい・・・きみがボクの血を欲しがるのは、考えてみればもっともなことなんだね」
青年は酔ったように口走りながら、なおも舌なめずりを繰り返す吸血鬼のために、
ずり落ちたストッキングをもういちど、ひざまで引き伸ばしてやった。

制服の一部でもある紺のストッキングを噛み破らせちゃっていることは、
毎日同じストッキングを履いて肩を並べて学校通いをしているクラスメートたちまで冒瀆されてしまっているような、後ろめたい憤りに似たものも覚えたけれど、
その感情とは裏腹に、かれ自身がクラスメートたちをナイショで裏切っているような、えもいわれないくすぐったいような愉悦もまた、その裏返しとして抗いがたく感じてしまっているのだった。


そんなふたりの様子を近くの物陰から見つめる、二対の視線があった。
ひとつは好奇心たっぷりの。もうひとつは、やや躊躇をみえかくれさせたもの。
躊躇しているほうの視線の主は、あの夕闇のメイドのもの。
そして前者はもちろん、その女主人のものだった。
「あぁ、キース坊ちゃままでが・・・」
絶句するメイドの理性的すぎる反応に、まだ十代半ばの女主人は軽い不平を鳴らした。
「はやくひとを呼ばないと、リディアさま。キースさまが貧血になってしまわれますわ!」
おずおずと進言するメイドを目で制すると、リディアと呼ばれた少女は目の前でくり広げられている吸血劇から目を離さずに、ゆっくりとかぶりを振った。
「まだまだ早いわ。
あの方が、お兄さまの血をあんなに美味しそうに吸い取っているところじゃないの。
あたしが兄さまのことを呼び出して、あの方にチャンスをあげたの」
十代半ばの女主人がワクワクとした目つきで見つめている吸血の光景の主人公は、ほかならぬ自分の兄だったのだ。
「あたしのときもあんなにお行儀悪く、脚をばたつかせたり叫んだりしていたのかしら。覚えていて?」
女主人は、イタズラっぽく笑った。
「存じませんわ。あたくしはすぐに気を失ってしまったんですもの」
黒い瞳の女奴隷は、小娘みたいにどぎまぎしながら、あるじの横顔を盗み見た。
まだ幼ささえ残したノーブルに整ったリディアの目鼻立ちは、妖しい歓びに輝いている。
「あっ!また咬まれたっ!痛そう~!」
なんて、クスクス笑いを浮かべながら。

主従ながら襲われて血を吸われてしまってから。
会瀬を重ねた挙げ句、男はリディアに囁いたのだ。
「きみの兄さんが自分の血を自分だけのために使うか、渇いたものに分かち与える気になるのかは、兄さん自身の判断だ。
きみは今回の件に関してなんの責任も負う必要はない。僕に"機会"を与えてくれただけなのだからね」
リディアは恋人同士の逢瀬に酔うように、ウットリとほほ笑んで頷きを与えていた。


リディアの思った通り、兄は出し抜けで無作法な吸血鬼の訪問を受けながらも礼儀正しく応対し(結果的に賢明な判断だった)、
生命の保証を得る口約束をきちんと得た上で、相手の欲しがるものを過不足なく与えていった。
まさに理想どおりの兄さまだわ・・・リディアはウキウキとして瞳を輝かせた。

あるていど二人が満足したのを見て取ると、リディアは夢から覚めたように驕慢な女主人の顔つきに戻って、命令し慣れた声色で、年上のメイドに言った。
「さっ、きちんと拭くのよ」
女主人はメイドの首のつけ根のあたりをハンカチーフでギュウッと拭うと、同様に自分の首周りを彼女に拭かせた。
ふたりとも慣れた手つきで、相手の傷口を濡らしていた吸い残しの血を跡形もなく拭い取っていった。
「これでよしと」
リディアはハンカチーフに着いた血潮を一瞬口許にあてがって、お行儀悪くチュッと舐めると、メイドに言った。
「いいこと?あなたはなにも見なかった。何も知らなかった。しっかり口裏合わせてね」
女奴隷が頷くのを見返りもせずに、リディアは気分を入れ替えるように深呼吸をした。
そしてわざとらしく大きな声で、お兄さま!?お兄さまあ!?って叫びながら、兄を探しまわる妹を、熱心に演じはじめたのだった。


「これで良かったのかな?」
白のショートパンツの下、真新しい真っ白なストッキングに覆った脛を軽く交叉させて、キースはおどけてポーズをとった。
「気に入ってなん足も買ったのに、みんな女みたいだって笑うんだ」
キースは不平そうに鼻を鳴らした。
吸血鬼は、そんなことはないさ、よく似合っているよ、と、年若い同性の恋人を褒めた。
どうやら本音でそう思っているらしい。
好色そうに目じりにしわを寄せて目を細め、男の子にしては柔らかいカーヴを帯びた脚線美が真新しい純白のナイロン生地に輝くのを、眩しそうに見つめている。
いまが真っ昼間であるだけに、真新しい白のストッキングの生地の白さがきわだって、太めのリブの陰影が鮮やかに浮き彫りになっていた。
それはしなやかな脚のラインをなぞるように絶妙なカーヴを描いて、発育の良い肉づきを惹きたてていた。

「じつに美味しそうだ」
吸血鬼は目を細めたまま、もう一度青年の脚を嘆賞した。
「ああ良かった」
キースは嬉しそうに白い歯をみせた。
十代の青年らしい、健康な笑いだった。
取り戻すことのできた健康の輝きは、吸血鬼の禁欲のおかげだった。
「中4日も猶予してもらって、ゴメンよ」
キースは神妙な顔をして言った。
「喉からからにしているんじゃないかと思って、気が気じゃなかったんだ。
それともどこかで、活きのいい血にありつくことはできたかい?」
なにも知らない青年の善意に満ちた視線に、吸血鬼は夕べとおとといのことはしばらく黙っていようと思った。
彼の妹が密会を申し込んできて、お気に入りの黒のタイツを3足も破らせてくれたということは―――
どうやら嫉妬心とは縁の薄そうなキースのことだから、親友が飢えずに済んだと知ったらむしろ安堵の笑みを浮かべてくれそうだったけれど。
「いいこと、兄さまにはナイショよ」
と、リディアにされた固い口止めを、吸血鬼は守るつもりだったのだ。
―――禁欲は正味1日だったけどな。
吸血鬼は心の奥で笑った。
たいした禁欲とはいえなかった。

キースは自分がストッキングを履いて学校に通うのを、みんなが笑うといって、不平そうに口を尖らせていた。
「ママも、学校で笑われるくらいならやめたほうがいいって言うし、このストッキングがいいって言ってくれたのは、君ぐらいのものだよ」
キースはしなやかな下肢をもて余すように、白のストッキングの脚を伸びやかに組んで、吸血鬼に見せびらかした。
さあ!早く咬んで・・・そんなふうに誘っているように、血と情欲に飢えた視線にはそう映った。
吸血鬼はそろそろと素早く自分の影を青年の均整のとれたプロポーションに忍び寄らせると、
痩せこけてはいるが力の込められた腕を毒蛇のように巻きつけて青年の身体の自由を奪った。
「あ・・・!」
キースはみじかく叫んだが、とっさの身じろぎはつよいものではなかった。
吸血鬼の本能的な征服欲を適度にそそるていどの、絶妙なものだった。
わずか二度の逢う瀬でそんなふるまいを身につけてしまったのはやはり、かれ自身吸血鬼の良きパートナーになるための素質を備えていたからに違いなかった。
「せっかくのおニューのストッキング、どこにも履いていくあてがないのなら、持っているやつ全部をきみの血でペイントしやってもいいんだぜ?」
「か・・・考えさせてもらうね・・・」
キースはわざと口ごもってみせ、それからあっけらかんと笑って、近寄せられる牙がうなじの肉にずぶりと埋め込まれる瞬間を、ドキドキしながら待った。

昼下がりの太陽の光に鮮やかに縁どられた木陰の下で。
ちぅちぅ・・・キュウキュウ・・・
キースの血を吸いあげるあからさまな音が、だれはばかることなく洩れてくる。
覆い被さってくる吸血鬼を上に、白のストッキングをひざ小僧のすぐ下までキッチリと引き伸ばしたキースの脚だけが陽射しを浴びて、じゅうたんのように広がるグリーンの芝生のうえ、緩慢な摺り足をけだるそうに繰り返していた。

「やっぱり中4日はキケンだなぁ・・・」
吸血鬼の熱い抱擁のなかキースは照れ笑いに笑った。
自分の体内に宿した若い血潮を吸血鬼が気に入ってくれて、美味しそうに飲み味わってくれていることが、むしょうに嬉しかった。
失血のために頭がぼう・・・っとしてきて、5日まえの夕闇のなかで初めて覚えた陶酔が、ありありとよみがえってくる。
むしょうに喉の火照りを覚えて、Tシャツに撥ねたばら色のしずくを指先に絡めると、青年はそれをチュッ!と口に含んだ。
ほろ苦い芳香が鼻腔に満ちて、キースは思わずむせ返った。
「きみにはまだ、刺激の強すぎる飲みものだな」
吸血鬼は嗤った。
未成年の酒かたばこをたしなめるような口調だった。
「まるできみは、ママみたいなことを言うんだね」
会話を続けようとした青年は、なん度めか首すじをつよく吸われて、ウッとうめいて言葉をとぎらせた。
吸血される歓びに、絶句してしまったのだ。
ふふ・・・
吸血鬼は青年が自分の手中に堕ちたことに、満足そうに笑った。
血のりをべっとりとあやしたままの唇で、喘ぐ唇を吸うと、キースは夢中になって吸い返してきた。
「さぁ、いよいよお愉しみだ。
きみの履いているストッキングを、よだれがくまなく沁み込むくらい、たっぷりいたぶらせてもらうよ
―――わし流の、意地汚いやり口でね」
白のストッキングの脚に男が唇を近寄せると、青年は彼の下でちょっぴり悔しそうに秀でた眉をひそめ、それから薄っすらと微笑んだ。
「きみが陽の光を怖がるたちじゃなくって、なによりだったね。明るいうちなら、ストッキングの見映えもじゅうぶん愉しんでもらえるからね」
この期に及んでも青年が立て膝をして、吸血鬼のために履いてきたストッキングに泥をつけまいとしていることに、吸血鬼は内心ちょっと感心していた。
ひざ下丈の靴下に執心するという意味では、ふたりはいわば同好の士だった。
ひとりは身に着けることで、もうひとりは咬み剥ぐことで、ストッキングを愉しんでいるのだった。

吸血鬼は、キースの身体を思い切り横倒しにした。
脚の片側が芝生にじかに着いて、かすかに泥がはねた。
青年の気づかいを無にしたわけではなく、たんにふくらはぎを咬みたかったからだった。
吸血鬼はカサカサに干からびた唇を、厚手のナイロン生地に流れる太リブのうえから、つよく圧しつけた。
キースの履いているストッキングのしなやかな舌触りにくすぐったそうに相好を崩すと、
吸血鬼は口許の両端から尖った牙をむき出しにして、カリリと咬んだ。

あー・・・

キースは眉を寄せてせつなげな声を洩らした。
抑えたうめき声の下、しつような接吻にいびつによじれたストッキングには、赤黒いシミが滲んでいった。
うひっ・・・うひっ・・・
本性もあらわにカサカサの唇を物欲しげに吸いつけ舌なめずりをしながら、真新しい純白の生地にためらいもなく、赤黒いしずくをほとび散らせていった。



「お嬢様よろしいのですか!?」
メイドのジュリアは黒い瞳に心配をあらわにして、女主人を窺った。
リディアはしらっとした顔つきをして、かぶりを振った。
「あたしもふつか続いたのよ。
さすがにいま出ていくわけにはいかないわ。
もぅ少し、ふたりを愉しませてあげましょうよ」
無感情な顔つきをしての冷静な観察のあとには、口を尖らせての感情的な文句が、可愛い唇をついて出た。
「本当にもうっ!
あのひとったら、無作法だわ。
おニューのタイツを履いて脚を咬ませてあげたのに、
タイツを脱いで履き替えて帰ろうとしたら、また捕まえられて咬まれちゃった。
おかげで、たった1日で二足も台無しよ。おまけにどっちもせしめられちゃうし・・・
ロングスカートじゃなかったら、ママに素足なのを見つかっちゃうところだったわ」
小声でブツブツ文句をいう女主人の横顔を盗み見ながら、女奴隷はなにか言おうとしてすぐに口をつぐんだ。
うわべは相手の男の無作法に文句をいいながら、少女の口調はむしろ得意げだったから。
それを正直に指摘したらお姫様のご機嫌がきっとうるわしくなくなるだろうことに察しをつけるていどには、この女奴隷には賢明さが備わっていた。
彼女はリディア付きのメイドだったので、いつもリディアと行動をともにしていた。
したがって、彼女の女主人が吸血鬼と密会するときは必ず同行しなければならず、
女主人ともどもいずれ劣らぬ非の打ちどころのない首すじを、代わる代わる咬まれてしまうのがつねだった。
順序とすればジュリアは、吸血鬼の貪婪な渇きから女主人を守るため、自身の生き血をすすんで、令嬢が受難するまえのオードブルとして供するのが常となっていた。
リディアは、兄がおニューの白のストッキングの足許に、遠目にもそれとわかるほど鮮やかに深紅の飛沫を散らすのを、密かな共犯者の視線で小気味良く眺めていたし、
その女奴隷は自分たちがふたり揃ってかろうじて相手している吸血鬼のために、たったひとりで生き血を提供し続けるキースのことを、称賛と懸念の入り交じった目で見守っていた。
おなじサイズの歯形の咬み痕がついたうなじを並べて、身分違いの少女はふたり、それぞれ別々の想いを秘めながら、青年たちのじゃれ合いを見るともなしに見つめ続けていた。


「きみと逢うときに履いてくるストッキングは、濃い色にかぎるようだね」
自身の血潮で鮮やかに彩られた白のストッキングの脛を見おろして、キースは照れ笑いしながらそういった。
「履き替えに家に戻っても平気なのかね?」
吸血鬼はかれの家族の注意力を気にしたけれど、青年は白い歯をみせて笑った。
「大丈夫さ。これはハイスクールで履き替えてきたやつなんだ。
よかったら記念にあげてもいいよ。
これからいつもの紺のやつに履き替えるから。
でも、紺のやつまで破くのは、今日のところは勘弁だぜ?」
「こんど逢うときには、黒いのにしなさい。白のラインが二本入ったやつ」
どうやら吸血鬼は、キースのコレクションのかなりを把握しているらしかった。
キースはそのことに感心しながら、いつ見たんだい?と訊いたが、ろくな応えは返ってこなかった。
吸血鬼は耳も貸さずに、キースの足もとに夢中になってとりついていたから。
青年の問いに応えるよりは、ところどころ赤黒い血糊のこびりついた白のストッキングを、思い切り噛み剥ぐほうに夢中になっていたのだ。
「あっ、ヒドイなあ・・・っ!」
噛み剥がれてゆくストッキングの持ち主のくすぐったそうなあっけらかんとした笑い声を頭上に聞きながら、
吸血鬼はだらしなく弛んだストッキングを、なおもくしゃくしゃにずり降ろしていった。



キースはそれからも、2日か3日に一度は、吸血鬼とのアポイントメントを取るようになっていた。
その間に例の白のストッキングはあらかた、パートナーの強引な牙にむしり取られ、咬み剥がれてしまっていた。
見た目は手荒なあしらいではあったものの、ふたりの間には濃やかな気づかいが通いあっていた。
片方は親友の顔色や身体の調子の変化に敏感すぎるほどに気をまわし、
もう一方も好みが同じな同性の恋人のために脚に通すストッキングの色や柄選びに余念がなかったし、
なにかの事情で密会の間隔が開いてしまうときには、相手が耐えがたいほどひもじい想いをしないかと気を揉んでいた。

吸血鬼の立場であれば、ふつうなら、一滴でも多くの血を吸い取りたい、つかまえた相手は気のすむほどに血を獲るまでは決して放すまいとするだろうし、
キースの立場であれば、血を吸われまい、装いを辱しめられまいとして、必死の逃走や抵抗を試みるはずであった。
けれどもこのふたりはふたりながら、相手を気づかって行動したのだった。
吸血鬼は自分の相手をしてくれる青年の身体のようすを気づかいながら、吸い取る血の量を手かげんしようとしたし、
そのうら若い恋人のほうは、自分の体内をめぐる血液を一滴でも多く提供し、足許の装いを少しでも愉しませてやることで、男の寂しい渇きを癒してやろうと腐心していた。

吸血鬼は彼の恋人が自分のために、どんなストッキングで足許を装ってくるか愉しみにしていた。
彼は、焦がれるほど愛していた。
あの柔らかな首すじにジリジリと牙を迫らせたとき、年若い彼の獲物が秀でた眉をキリキリと引きつらせるのを。
足許をきりっと引き締めるストッキングをネチネチといたぶって、整然と流れるリブを脛の周りにいびつによじらせるのを。
しなやかな舌触りのするストッキングごしに牙を思うさま咬み入れたときの、若々しい肉づきのもっちりとした咬み応えを。
吸いあげるたびに喉を熱く潤す血潮のほとびを。
なによりも、彼の好みに歩み寄ろうとして話を合わせ時には家族を欺いてさえ密会を示し合わせてくれる年若いパートナーの、かいがいしい心遣いの濃やかさを。

キースはキースで、歓びに目覚めてしまっていた。
あの痩せこけた猿臂に巻かれて強引に抑えつけられるときの、絶対的なものに支配を受ける歓びに。
ハイスクールの制服である半ズボンやワイシャツに泥や草切れを撥ねかしながら、
かれの体内に脈打つ生き血をグイグイとむしり取られていくときも、
恋人から求められる熱烈さを実感して、随喜に震えあがっていた。
獣が獲物を生きたまま喰らうような食欲をあからさまにした汚い音をたてて生き血を飲み味わわれたりすると、
自分の若さがパートナーを魅了しているという実感を覚えて、ついゾクゾクとした昂りを抑え切れなくなっていたし、
そのうら若い肢体にツタのように絡みつき抱きすくめてくる痩こけた手足が人肌の温みを帯びてくると、
かれの若さが恋人の慰めになっているという充足感が、失血による苦痛をむしろ陶酔にかえていった。

                                 ―つづく―

短文:少年の母親と姉と彼女(ちょっと変更♪)

2018年12月09日(Sun) 03:25:22

その少年は、母親が父親以外の男に逢っているのを知っていた。
物陰に隠れて覗き込む少年のまえ、彼女はそうとは知らず、男に身をゆだね、不倫の逢瀬に悦んでいた。
その光景に、本能的にゾクゾクしてしまった少年は、
母親の密会を父親に対して黙っていることに決めた。
相手の男もまた、少年が自分たちの密会を覗いているのを知りながら、
これ見よがしにその母親を抱きすくめ、情痴のかぎりを尽くしていった。

やがて男は、少年の姉とも逢うようになった。
母親は、娘が男の情欲に、嫁入り前の素肌を犯されていると知りながら、その行為を黙認しているようだった。
少年はやはり、ふたりの逢瀬をドキドキしながら見守っていた。

やがて少年は、つぎの男の獲物が、自分の彼女であることを覚っていた。
さすがに彼は恋人を守ろうと身構えて、男を彼女に近づかせまいとした。
ところが案に相違して、男の次の目当ては、少年自身だった。
母親や姉と同じ経緯をたどってズボンを脱がされ、女同様に犯された少年は、
男の欲望に身をゆだねて、同性同士に歓びに耽り抜いていった。
そして、男の恋人となった少年は、自分から彼女を男に引き合わせて、
未来の花嫁の純潔を、男の愉しみのために捧げ抜いていた。

母親、姉、妻と、自分にとって大切な三人の女を愉しまれながら。
彼自身も男の恋人となって、抱かれるのを覗き、自身も抱かれ尽しながら、
歓びを深めてゆくのだった。


あとがき
少しだけ、変えてみました。
吸血鬼モノから、両刀使いモノに。
どちらも同質に感じるような気がするのは、私だけ? ^^;

短文 少年の母親と姉と彼女

2018年12月09日(Sun) 03:19:20

その少年は、母親が父親以外の男に逢っているのを知っていた。
物陰に隠れて覗き込む少年のまえ、彼女はそうとは知らず、男に身をゆだね、生き血を吸われていた。
その光景に、本能的にゾクゾクしてしまった少年は、
母親の密会を父親に対して黙っていることに決めた。
相手の男もまた、少年が自分たちの密会を覗いているのを知りながら、
これ見よがしにその母親を抱きすくめ、情痴のかぎりを尽くしていった。

やがて男は、少年の姉とも逢うようになった。
母親は、娘が男の牙に、嫁入り前の素肌を侵されていると知りながら、その行為を黙認しているようだった。
少年はやはり、ふたりの逢瀬をドキドキしながら見守っていた。

やがて少年は、つぎの男の獲物が、自分の彼女であることを覚っていた。
さすがに彼は恋人を守ろうと身構えて、男を彼女に近づかせまいとした。
ところが案に相違して、男の次の目当ては、少年自身だった。
母親や姉と同じ経緯をたどって首すじを咬まれて血を吸われた少年は、
男の欲望に身をゆだねて、生き血を吸い尽されていった。
そして、男の恋人となった少年は、自分から彼女を男に引き合わせて、
未来の花嫁の純潔を、男の愉しみのために捧げ抜いていた。

母親、姉、妻と、自分にとって大切な三人の女を愉しまれながら。
彼自身も男の恋人となって、抱かれるのを覗き、自身も抱かれ尽しながら、
歓びを深めてゆくのだった。


あとがき
いつもながらの吸血鬼バージョンです。^^

吸血児童。

2018年11月26日(Mon) 07:57:45

桜井晋也が父に招(よ)ばれてこの村に来たのは、春のことだった。
お前もそろそろ、身を固めないか?いいひとがいるんだが。
勤務先がかわって山奥の田舎に母を連れて引っ越した父と会うのも、ひさしぶりのことだったが、
その誘いを断り切れない事情を、彼は抱えていた。
教師だった彼は、教え子の女子生徒にわいせつ行為をはたらいたかどで、失職していたのだ。

意外にも、相手の女性はまだ未成年だという。
晋也もまだ二十代だから、それほど不自然な年齢差ではないだろう――と、母は取って付けたようにいった。
16歳になったら、結婚は自由だからね。制服を着た女子高生を、おおっぴらに抱けるんだぞ。
父も珍しく、そんな下世話な冗談をいった。

女子高生を抱ける。
晋也のなかで初めて、血が騒いだ。
すっかりその気になっていた。

紹介されたのは、まゆみという少女だった。
白のハイソックスは、いくらなんでも子供っぽ過ぎるだろ。
晋也はそう思ったが、濃紺のセーラー服姿でお見合いの席に現れた少女に、いっぺんに好意を抱いた。
少女は緊張しているらしく、色白の丸顔に大きな瞳をはりつめて、
ほとんど口も利かずに晋也の顔を見つめるばかりだったけれど。

学校で教師として働ける。
残念ながら、小さい子ばかりの学校だったけれど、それ以外の仕事をしたことのない晋也は気が楽だった。
この村の学校はどこも私立だから、オーナーの気に入れば入れるのさ、と、父は訳知り顔にいった。

初めて学校を訪問したとき、校庭の隅に立ち尽くした、瘦せっぽちの少年がこちらをじっと視ているのに、晋也は気づいた。
あの子、さっきから俺を見ている。
そう父に告げると、あの子は吸血鬼だよ、と、父はこともなげに言った。
え?と訊き返すと、父はいった。

ほら、視て御覧。あの子のハイソックス、真っ白なのに赤いシミがついているだろう?
あの子も吸われたばかりなのだよ。
都会から越してきて、ひと晩で家族全員血を吸い取られてしまったんだ。
お前も狙われないように、気をつけなくちゃな。

あの子はあぶないな。
ふつうは目だたないように、
髪を伸ばして首すじの咬み痕を隠したり、
ふくらはぎの傷を色の濃いハイソックスやタイツで隠したりするはずなのに。
わざとわかりやすくしているっていうことは、だれかぼくに血を下さいって言っているのと、同じことなんだよ。
目を合わせちゃだめだぞ。血を吸われたいのなら話は別だけどな。

晋也は慌てて少年から目をそらした。
けれども少年は、晋也が校門を出ていくまで、じっと見つめつづけていた。
彼が、自分の新妻の純潔を狙っているとは、夢にも思わなかった。

先生、ちょっといいですか?
授業が終わるとすぐに、その少年は晋也のほうへとやって来た。
もはや避けようがなかった。
少年は晋也の受け持ちのクラスにいた。
そして授業のあいだ、ずっと晋也を見つめつづけていた。
晋也は必死に目を合わせまいとしたけれど――授業が終わって迫って来た少年と、目を合わせずにはいられなくなった。
凄い目力だと、晋也は思った。
気がつくと、教室にはもう、だれもいなくなっていた。

喉、渇いてるんです。 少年はいった。
そ、そうかい・・・? 晋也は必死に受け答えする。
水でも飲んだら?と言い添えようとしたが、かすれて声にならなかった。
本当は先生、ぼくに血を吸われるの、愉しみにしてたんでしょ?
そ・・・そんなことはない。
少年は白い歯をみせて、ニッと笑った。
いやな笑いかただった。
教室を出ようとする後ろ姿をつかまえられて、ズボンのうえからお尻を噛まれた。
ギャッ!
ひと声叫んだ彼を制するように、噴き出した血を呑み込むゴクゴクという喉鳴りが、耳ざわりに響いた。

まゆみと結婚するんだよね?
遠慮なくそうするといいよ。
村をあげてお祝いしてくれるよ。
エッチな先生、おおっぴらに女子高生を抱けるんだね。
いろんな制服を着せて、愉しむといいよ。
でも、まゆみを最初に犯すのは、ぼくだからね。約束だからね。

全身から力が抜けて足腰立たなくなった晋也の手を取りあげて、無理やりに指をからめて「指切りげんまん」をすると、
少年は「失礼しまーす!」と、いままでにない元気な声を張りあげて、教室を後にした。

すべてを知るのに、時間はかからなかった。
帰宅してみるとあの少年が家にあがり込んでいて、母親の寝室に侵入していた。
邪魔してはいけないよ、と、たしなめる父に断って中を覗くと、
ねずみ色のストッキングを穿いた母親のふくらはぎに、あの少年が咬みついていた。
そういえば父も、へんにさえない顔色をしていた。
夫は妻を守るものだからね。父はあとで晋也にそういった。
少年の欲望を満たすため、父は妻の血液を無償で提供しているのだと、初めて覚った。
お前にもそうしてもらうために、来てもらったんだ。どうやらわが家の人間の血は、彼のお気に召したらしくてね・・・

わいせつ教師の血は、意外にイケるね。
少年は白い目で晋也を見あげた。
先生はまゆみと結婚するんだろ。
もちろんそうすればいいと思うよ。
セーラー服の女子生徒と、おおっぴらにセックスできるんだものね。
でも、まゆみはぼくのものだからね。
まゆみを最初に犯すのもぼくだし、
結婚した後もぼくがその気になったら、先生はまゆみを差し出さなくちゃいけないからね。

指切りげんまん・・・
失血で動きの鈍くなった先生に、少年は小指を差し出した。
晋也は昂ぶりに声を上ずらせて、指切りげんまん、と応じながら、自分から少年の指に自分の指をからめていった。

黒沓下の男。

2018年11月26日(Mon) 07:13:33

ロングホースを履くのは、ビジネスマンのたしなみなのですよ。
男はそういって、きょうもスラックスの下にひざまである丈の長い沓下を履いてくる。
貴男もお好きだとは、嬉しい限りですね。
ふつうはすね毛を見せないために履くものなのですが・・・
足許にかがみ込んでくるみすぼらしい老人のまえ、
折り目正しいスーツ姿が身をかがめて、スラックスをたくし上げた。

ツヤツヤとしたリブタイプのもの。
水玉もようの入ったもの。
しゃれたストライプ柄のもの。

この老人のために、いままでなん足履いてきたことだろう?
老人は彼の足許に唇を吸いつけて、自慢のロングホースを咬み破りながら、血を啜る。
老人は、吸血鬼だった。

都会暮らしが長かった男は、かなり高価なものもたしなんでいたけれど。
劣情もあらわに唇を這わせてくる老吸血鬼のため、すべて気前よく咬み破らせていた。
きょう、彼のために履いてきたのは、ストッキング地の、肌の透けるタイプ。
老人も、男も、もっとも気に入りのタイプだった。


さっきから。
横たわる男の足許にのしかかるようにして。
老吸血鬼は、ふくらはぎを包む薄地のナイロン生地に、舌を這わせつづけている。
なめらかな舌触りに、ひどく満足したらしい。
なん度も舌をヌメらせて、よだれを上塗りしていった。

さっきまで。
老人が自分の妻を犯していたのを、男は察している。
初めて誘い出したときと同じ喪服姿で、妻は老人の誘いに応じていった。
丈の長い漆黒のスカートのすそからのぞく足首を、ふくらはぎを、足の裏まで。
くまなく舐められたうえ、咬み破られていった黒のストッキング。
老人は、犯した人妻が穿いていたのと同じ色の沓下を、その夫が脚に通すことを望んだ。
男は苦笑いしながら、老人の嗜好をかなえていった。

ぱりぱりとかすかな音を立てて、靴下の生地が裂けてゆく。
チクチクと素肌を侵す牙の、痺れるような疼痛に酔いながら、男は軽く歯がみをした。
女房を辱められるのが悔しいのか?
老人が囁いた。
イイエ、と、男はこたえた。
家内の生き血が貴男のお口に合って、嬉しいと思っていますよ。
あんたの血も、なかなかのもんだ。
どうぞ、気の済むままに――
男はしずかにこたえながら、足許に目を落とす。
肌の透ける、なまめかしい光沢を帯びた沓下が、意地汚い唇と牙に、凌辱されてゆくありさまを。
男も目で、愉しみはじめていた――

妻の穿いているストッキングも、こんなふうにあしらっておいでなのですね・・・?
辱められる自分の脚に、妻を凌辱する唇が、想像のなかで重なり合った。
男は股間が勃(た)つのを感じた。
裂かれたブラウスのすき間から、つり紐の切れたブラジャーの胸をチラチラさせながら、帰宅していった妻。
こういう帰り道は危なくて、二次災害もよく起こる村だった。
都会育ちの人妻たちは、女ひでりの吸血鬼のために、夫とともにこの村に招(よ)ばれたのだから。
もっとも、妻に限って帰り道が安全なのも、男はよく心得ている。
老人は村の有力者で、彼が自分のオンリーだと宣言した女に、手を出すものはいなかったから。

妻は毎日、老人と逢っていた。
妻は毎日、夫を裏切りつづけていた。
きちんとした他所いきのスーツを着こなして。
老人のもっとも好む、喪服を身に着けて。
生真面目な妻は、息を詰めて老人の邸のドアを叩き、声を忍ばせて半裸に剥かれた身体をくねらせていた。
貧血で顔色のわるいときにも、妻は出かけていった。
老人の性欲を満たすために。
なるべくなら、主人が出勤した後にしてほしい。そう願ったこともあるけれど。
夫が在宅しているときも、老人の誘いは絶えなかった。
そういうとき、夫はおだやかに妻を送り出し、あの方によろしくと言づけるのを忘れなかった。
そして、妻のあとを尾(つ)けて老人の邸に赴いて、
裂けたブラウスから胸をのぞかせ、伝染を太く走らせたストッキングから脛をのぞかせながら立ち去った後、老人に抱かれた。
先刻犯された妻と同じ色の、黒沓下を履いた脚を、咬ませていった。


あとがき
しばらくぶりに描くと、まとまりのないものになることが多々ありますね。
(^^ゞ

寵愛。

2018年11月18日(Sun) 08:34:52

不思議な街だ、と、俊哉はおもった。
田舎街なのに、どこか洗練されていて、透きとおった空気とこぎれいな佇まいとが同居していた。
通っている学校は、男子もハイソックスを履く学校だった。
大多数の少年たちは、私服でも半ズボンに色とりどりのハイソックスを履いていた。
かつて、少年たちがおおっぴらに、女の子みたいな真っ赤なハイソックスを履いていた時代があった――
いつだか父さんが、そんなことを言っていたっけ。
俊哉がそんなことを考えていると、背後からガサガサと複数の足音が近づいて来た。

急な接近にびっくりして顔をあげると、そこには同じクラスの少年が5~6人、俊哉を見おろしていた。
都会から引っ越してきた俊哉を、目の仇のようにしていた少年たちだった。
両親の生まれ故郷というこの街で唯一なじめないのが、彼らだった。
けれども、いつも敵意に満ちた視線を送ってきた彼らの態度が、あきらかにちがった。
頭だったタカシという少年が、俊哉にいった。
「お前、親方に寵愛されているんだって?」
「寵愛」という言葉をこの年代の少年が使うのを、俊哉はこの街に来て初めて知った。
寵愛――・・・って・・・?
問い返す俊哉に、親方のお〇ん〇んを、お〇りの穴に容れられることだよ、と、タカシはかなり露骨な表現を使った。
タカシの態度からは、俊哉と親方の関係を皮肉るというよりも、手っ取り早く意思を疎通したいという思いの方を、より強く感じた。
「そう・・・だけど・・・」
戸惑いながらもはっきりと肯定した俊哉の顔を、タカシはまじまじと視た。
「お前ぇ、えらいな」とだけ、彼はいった。
「だったら俺たち仲間だから」
ぶっきら棒にタカシは告げた。
これから血を吸われに行くんだけど、相手がまだいないんならお前も連れてこうと思ってたんだ。
でも、親方が相手じゃ、邪魔できないな――タカシは口早にそんなことをいうと、
仲間を促して、あっけに取られている俊哉に背中を向けて、立ち去っていった。
少年たちは、ひとり残らず、ハイソックスを履いていた。
この街に棲む吸血鬼が、ハイソックスを履いた男子の脚を好んで咬む――
そんなうわさを移り住んですぐに俊哉は耳にし、それからすぐに、実体験させられていた。

少年たちが”親方”と畏敬をこめて口にした男は、60代のごま塩頭。いつも地下足袋に薄汚れた作業衣姿だった。
もともとは、女の血だけでは満ち足りなかったので、少年たちを埋め合わせに襲っていたのだが、
いまでは少年も、女たちと同じくらい愉しみながら手籠めにするのだ、と、その老人は俊哉に語った。
初めて襲われた日のことだった。

その日俊哉は担任に残されて、遅くなった帰り道を急いでいた。
その前に立ちふさがったのが、親方だった。
避けて通ろうとした俊哉の手首をつかまえると、傍らの公園に強引に引きずり込んだ。
あれよあれよという間に、首すじを咬まれていた。
この街に吸血鬼がいるといううわさがほんとうだったのだと、俊哉は思い知らされた。
シャツをまだらに汚しながら、俊哉は若い生き血をむしり取られた。
親方の目あては、俊哉の履いている濃紺のハイソックスだった。
通学用に指定されているハイソックスはまだ真新しく、街灯に照らされてツヤツヤとした光沢を帯びていた。
舌なめずりしながら足許に唇を近寄せ吸いつけてゆく吸血鬼に、失血で力の抜けた身体は抵抗を忘れていた。
ちゅううっ・・・
口許から洩れる静かな吸血の音の熱っぽさが少年に伝染するのに、そう時間はかからなかった。
俊哉はもう片方の脚も気前よく咬ませ、クスクス笑いながら吸血に応じていった。
別れぎわには、見るかげもなく咬み剥がれたハイソックスを、唯々諾々と足許から抜き取られていった。

母親を連れて来いという親方の要求にも、もちろんこたえた。
素足で返って来た息子を、母親のみずえは咎めることもなく、息子に連れ出されるままに親方の家を訪問していた。
母親はなぜか、すべてを予期したように、よそ行きのスーツで着飾っていた。
その日初めて、少年は男が女を犯すところを目の当たりにした。
裂き散らされたストッキングをまとい残したままの脚が、地下足袋を履いたままの逞しい脚に、絡みついていった。
それが、父親を裏切る行為だということを、少年はなんとなく直感したけれど、
「父さんには黙っているから」
とだけ、母親に告げた。
(だからまたお招ばれしようというのね?)と言いたげにみずえは俊哉を見つめ、
母親を連れてくる代わりに覗くことを黙認すると息子に親方が約束したのまで、見抜いてしまっていた。
見抜いたうえで母親は、親方のところに通っていったし、息子もそのあとをついていった。
母親が都会から持ってきた洋服がすべて破かれてしまうのに、たいした日数はかからなかった。


「だんな、すまんですね。ちょっと寄り道していきますで」
透一郎と肩を並べて歩いていた農夫は、すれ違った学校帰りの少年たちをふり返ると、ニタニタと笑いながら足を止め、
ちょっと会釈を投げて、きびすを返していった。
似たような手合いが数人、少年たちを取り囲むようにして近づいて行くのを、透一郎は見た。
お互いに同数だと確かめ合うと、少年たちはなにも抵抗するそぶりもなく、彼らの意図に従った。
あるものは傍らのベンチに座り込み、あるものは塀に押しつけられるように立ちすくみ、あるものはその場にうつ伏せになって、
むき出された牙に、首すじや胸もとをさらしていった。
半ズボンの下から覗くピチピチとした太ももや、おそろいの紺のハイソックスに包まれたふくらはぎも、例外ではなかった。
紺のハイソックスを履いた少年たちのふくらはぎに、飢えた吸血鬼の唇がもの欲しげに這わされてゆくのを、
透一郎は遠くからじっと見守った。
吸われる彼らのなかに息子がいるような気がした。
吸っている彼らのなかに親方がいるような気がした。
「あっ・・・ちょっと・・・」
口ではたしなめようとしながらも、自分たちに対するしつような吸血を止めさせようとはしない彼らの姿に、息子のそれが二重写しになった。

「息子に手を出すのはやめてくれませんか?」
いちど透一郎は、家族にも黙って、親方のねぐらを訪れていた。
「そのつもりで帰って来たのではないのかえ」
親方は野太い声で応じていたが、透一郎を見る目は息子を見る父親のようないたわりに満ちていた。
「すっかり都会の水になじんじまったようだな」
といいながら、親方は少し待て、と、透一郎にいった。お前の息子をきょうここに招んであるから――と。

父親が物陰に隠れていちぶしじゅうを視ているとはつゆ知らず、
俊哉はいつものようににこやかに親方のねぐらの薄汚れた畳のうえに、通学用のはいハイソックスのつま先を滑らせて、
まるで恋人同士のように口づけを交わすと、
服の上から二の腕や胸、腰周りを撫でまわされながら、なおもディープ・キスをねだっていった。
太ももに思い切り喰いつかれたときには、さすがに声をあげていたが、その声もどことなくくすぐったげで、嬉しげだった。
親方が随喜の声を洩らしながら息子の生き血を吸い取るのを、透一郎は息を詰めて見守っていた。
父親として止めさせることもできたはずだが、あえてそれをしなかったのは、
少年時代の自分と二十年以上まえの親方とが、むつみ合う二人の姿に重なり合っていたためだった。

        ―――――

透一郎の母は、息子に誘い出されるままに親方の餌食になって、熟れた生き血をふんだんに振る舞うはめになっていた。
そして、男女の交わりがどんなものなのかまで、息子に見せつけてしまっていた。
はじめのうちは、自分の意思に反して。それからやがて、自ら肩を慄かせ昂ぶりに夢中になりながら――
母の不始末を知った父は、親方を咎めに出かけていったが、帰宅した時には別人になっていて、
あのひととは家族ぐるみでのおつきあいをすることになったから、とだけ、ふたりに告げていた。
それ以来、学校帰りには体調の許すかぎり、親方の家へと立ち寄った。
両親の血を吸った親方が、自分の血に興味を示すのは当然だ、と、子ども心に思っていた。
おふたりの血がブレンドされたお前の血はとても美味だという奇妙なほめ言葉を、肩を抱かれながらくすぐったく耳にしていた。
そして、結婚相手が決まったらわしに紹介しろ、良い子を産めるかどうか、血の味で確かめるから――といわれるままに、
みずえをねぐらへと連れて行った。

みずえは親から土地のしきたりを言い含められていたので、こういうときにどうすれな良いのかを知っていた。
婚約者である透一郎の手前、形ばかり抗ったのち抱きすくめられて、首すじを咬まれていった。
新調したばかりのブラウスに血が撥ねて、クリーニング代がかかるわねと思ったときにはもう、正気をなくしていた。
こぎれいな訪問着を着崩れさせながら抱きすくめられ生き血を吸い取られてゆく婚約者をまえに、息を詰めて見守る透一郎の視線を怖いと思った。
華燭の典の席上、純白のウェディングドレスに包まれた新妻は、前夜に呼び出されて犯された余韻に股間を深々と疼かせながら、意義深い刻を過ごしていた。

        ―――――

息子が帰ったあと、透一郎は親方を見つめた。
親方は、透一郎が子供のころの目に戻ったと感じた。
透一郎は勤め帰りのスラックスをそろりとたくし上げると、かつて親方に賞玩された足許をさらけ出した。
彼の足許は、ストッキング地の黒の長靴下に染まっていた。
「なまめかしいの」
親方は目を細めた。彼が露骨に示した好色そうな色に、透一郎は満足した。
押しつけられてくる唇の下、なよなよと薄い沓下はふしだらに皺寄せられて、
力を込めて咬み入れられた牙に、ブチッと裂けた。
顔をあげた親方は笑った。透一郎も笑っていた。
透一郎は親方の背中に両腕を回し、親方は刈り込んだ髪の生え際に唇を這わせた。
ワイシャツの襟首を濡らしながら、久しぶりの陶酔に、透一郎はため息をもらした。
身体がバランスを失って、背中に畳を感じながら、靴下一枚だけをまとった下肢をめいっぱい拡げる。
物陰に隠れた妻の視線をありありと感じながら、透一郎はむしろ昂ぶりを覚えていた。
夫の前で抱かれるみずえの歓びも、きっとこんなふうなのだろう――
息子をさえも犯した逸物に狂おしさに息を詰まらせながら、透一郎はふとそう思っていた。


あとがき
思いきり、男物でした。^^;