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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

~このサイトのご紹介~ 魔性の淫楽への招待状

2026年03月22日(Sun) 21:12:01

はじめにお読みください。
一話読み切りのお話がほとんどですが。
吸血鬼ストーリーといっても。
「他では目にすることはまずないでしょう」
そう断言できるほど?変わった世界のお話なので・・・。

【付記】
弊ブログに登場する人物・団体はすべて架空のものであり、実在するかもしれない人物・団体とは何の関係もありません。
(2018.2.12念のため追加しました)

カテゴリの解説

2025年08月14日(Thu) 19:11:24

ひと言で吸血鬼ものの短編といっても、それこそいろんなお話が混在していますので。
カテゴリをちょっと、整理しました。
お話に共通のおおまかな設定については冒頭↑の「招待状」に書かれてありますが。
ちょっとだけ、付け加えておきます。

姑凌辱。

2020年05月27日(Wed) 09:31:33

広いリビングの壁際に、きちんとした洋装の婦人二名が、二人の吸血鬼に迫られていた。
間島達也(14)の母さと子(40)と、その姑・間島柳子(63)の二人である。
柳子の前には、いつもの吸血鬼が。
さと子の前には、彼の兄が。
兄弟で、嫁と姑に迫っているのだ。

すでにこの光景が家庭内に受け入れられてしまっているのは、
リビングの二面を鍵の手に仕切る廊下に、
さと子の夫で柳子の息子である幸雄(42)・さと子の息子である達也(14)の両名が
息をひそめていることからも、それと知れる。

「な、なにをなさるんです・・・っ」
初めて咬まれてからまだ日も浅い柳子は、
気位の高そうな整った面差しに恐怖と嫌悪の色を泛べ、
自身と、自身の嫁との前に立ちふさがる吸血鬼たちに、
気丈にも制止の声をあげた。
けれどもそのきつく眉を顰め批難の色をありありとよぎらせた頬のすぐ真下には、
赤黒い咬み痕がくっきりと泛んでいて、
彼女がいちどは彼の欲望に屈してしまった明らかな証拠となっていた。

「奥さん、もうよくご存じでしょう・・・?」
眼の前に立ちふさがる吸血鬼が、自らがつけたその咬み痕に、
彼女にわかるようにあからさまな視線を送りつつ、
余裕たっぷりに柳子をたしなめる。
「御婦人がたの熟れた生き血で、からからに乾いた喉を潤していただきたくて、こちらに伺ったのですよ」
なれなれしく肩に回された腕を一度は振り払ったものの、
もう一度巻きつけられた猿臂は、柳子夫人を捩じ上げるように密着してきて、
もう振り放すことはできなかった。

「あ、あなたは幸雄の取引先の社長さんでしょう!?」
なんとか相手の理性を取り戻させようと、吸血鬼と息子との関係性に訴えかけたが、
化けの皮を自ら剥いだ吸血鬼には、痛くもかゆくもなかった。
「先日初めて口にした貴女の血が、忘れられない――」
男はそう言うと、女との距離をさらに詰め、鶴のように細い首すじに、無遠慮な唇を圧しつけていった。
「ああッ!」
女の絶叫とともに、薄茶のスーツ姿の彼女の肩先に、赤黒い血潮が撥ねた。

ちゅうっ・・・ちゅうっ・・・ちゅうっ・・・
露骨にあがる吸血の音に、柳子は鼻白んだ。
圧しつけられてくる男の頭を抑え、なんとか引き離そうともがいたが、
もがけばもがくほど、男の牙は皮膚の奥へと刺し込まれていった。
「ああああああっ・・・」
目を瞑り、白い歯をみせ、女はもだえ苦しむ。

その様子を傍らから見やっていた嫁のさと子が、姑に声をかけた。
「お義母さま。平気よ。いっそのこと、慣れてしまえば良いんだわ」
「あ、あなたは・・・っ。幸雄の嫁ではありませんか!?それがあのようにふしだらな・・・ッ」
痛みをこらえつつ抗弁する姑の切羽詰まった口調とは裏腹に、
嫁のほうは、ごくおだやかなたしなめ口調になっていた。
「いっしょに堕ちましょ、お義母さま♪」
若いさと子のほうはなんの抵抗もなく情夫の兄の牙を受け容れると、
白のブラウスの胸に惜しげもなく、自身の体内をめぐるバラ色の液体を、撥ねかせてしまっている。

ああああああああ・・・
ふた色のうめきが徐々に弱まり、肩を並べた二対の洋服姿は
抑えつけられた壁に沿うようにして、姿勢を崩していった。


「うまく撮れているか?」
「バッチリだよ、パパ」
父親は正面から。
息子は横合いから。
ひそめた声を交し合う。
手ブレしないように三脚に立てたカメラのファインダー越しに、
嫁と姑が吸血鬼相手に気前よく血液を振る舞うありさまを見守り、昂ってゆく。

ずるずると姿勢を崩した二個の洋服姿は、
スカートからひざ小僧をあらわにし、
ギュッと閉じていた両ひざを割られていって、
さと子の穿いている黒のストッキングも、
柳子が脚に通した肌色のストッキングも、
じわじわと舌で辱められながら、剥ぎ降ろされていった――

達也の化粧はこのごろ、だいぶ板についてきた。
母親の服での女装姿も、たいそう似合っていた。
幸雄は達也を引き寄せると、達也は拒もうともせず、
ワンピースのすそから侵入した卑猥な掌のまさぐりに、早くも股間をゆだねてしまっている。

リビングでは、獲物を取り替え合っての凌辱行為が。
廊下では、父子相姦の変態行為が。
いつ果てるともなく、続いてゆく――


間島家の変態的な日常に、姑の柳子が巻き込まれてしまったのは、ごく最近のことだった。
発端は、嫁であるさと子からの提案だった。
さと子は、自分の母親の貞操をつい先日、
吸血鬼の凌辱に惜しげもなくゆだねてしまったのであるから、
もうどっぷりと浸かり切っているといって、過言ではなかった。

さいしょはどこの主婦も、吸血鬼と情交するなど、気の進もうはずはない。
まさに生命がけの恋になってしまうからだ。
けれども、都会で暮らすことができなくなって流れ着いたこの街で、
ほかならぬ夫の手引きで手際よく咬まれ、犯され、堕とされてしまうと、
彼女は夫ともども、情夫たちの最良の協力者となっていた。
本来人妻の婚外恋愛に対して、
最も過敏にしてかつ非協力的な立場をとるべきはずの夫が、
最愛の妻であるはずの彼女の貞操を吸血鬼どもに貪り食わせてしまったことに、
彼女は女として感謝していた。
そして、同じ女としての歓びを、実母だけではなく姑とも分かち合いたいと思った。
姑という存在は、夫以上に、嫁のふしだらに対して、
実に過敏にしてかつ非協力的な立場をとるべき存在だったためである。

街は、慢性的な血液不足に陥っていた。
50代までの女性で自ら血液の提供を希望するものは、ひととおり「総なめ」状態だった。
彼らの牙にかかった女性の大概は、
吸血鬼と恋に落ちるか、
夫によって貞操もろともプレゼントされてしまうか、
先に牙にかかった息子や娘の身代わりとなるべく辱めを忍ぶかした者たちだった。
案外そうした息子や娘はいち早く吸血鬼にたぶらかされていて、
母親が決然と身代わりを申し出るよう仕向けたりしているのであったが。

彼らは血液提供者――つまり自分たちの仲間――を増やすのに、躍起となっていた。
あるものは隣町の知人を”輪”のなかに引き入れようとし、
あるものは勤務先に、理解のある夫婦者の転入を打診しようとした。
そのような中、さと子が実母を血液提供者の仲間に引き入れようと考えたのは、
街の雰囲気としてごく自然な成り行きだった。
そして、さらにさと子が姑を血液提供者の仲間に加えようと企てたものまた、
この歪んだ家庭の雰囲気としてごく自然な成り行きだった。

「うちからもう一人、年増の美人をお仲間に加えるの。万事私が取り仕切るけど、よろしいわよね?」
さと子は実母を吸血鬼に紹介したときと同じように
夫の実母を彼らに凌辱させてしまうことを提案したが、
幸雄は自身の母親が生け贄に選ばれることを、望みこそすれ拒もうとはしなかったのだ。
「けど、父さんが気の毒だな――」
唯一、長年連れ添った妻を寝取られることに対する父親への同情も、
「いざとなったら、あたしが相手してあげる♪」
という妻の言い草に、なんなく遮られてしまうのだった。

折しも、近隣での会合に招ばれた母の柳子が、久しぶりに息子と嫁の顔を見たいから・・・と連絡してきたとき、
たまたまアポイントなしで知人が訪ねてきたていを繕って、幸雄は吸血鬼を家にあげた。
この不埒な客人は、きっと母の血を気に入るだろう、と、幸雄はおもった。
なにしろ、幸雄やその息子の達也の血を、彼はたいそう気に入っているのだから――
初対面のご婦人に対する吸血鬼は、いつものように礼儀正しく振る舞って、
たちまち堅物の賢婦人として知られた柳子の警戒心を解いた。
それから、彼女をひと目見るなり幸雄を物陰に呼んで、いった。
「最初の一発めは、だんなさんは御覧にならないほうが良いよ」

幸雄は、彼のアドバイスにはつねに従うことにしていたので、
吸血鬼に言われるままに、幸雄は用を思い出したと曖昧な口実を告げると、
母を招んだ自宅から逃げるように立ち去った。
そのわずか数分後、息子の立ち去ったリビングで、
どたばたと派手な物音があがって、
その物音の熄(や)んだとき――
間島柳子六十三歳は吸血されたうえ、たっぷりと犯された。
夫しか識らない身体に吸血鬼は満足を覚え、なん度もなん度も彼女を愛し抜いて、
とどめを刺すように激しい十三回目の吶喊で、柳子はぐったりと力を抜いた。
令夫人が夫以外の男に心を許すまで、じつに十二回もの挿入に耐えたのだ。

「すごいわあ、お義母さま」
さと子が賞讃の声をあげた。
「私、ほんの数回でイッちゃったのに」
吸血鬼は自分の情婦となった人妻があげる嬌声を横っ面で聞きながら、
嫁のふしだらすぎる言い草に姑が腹を立てるのを感じた。
この生真面目な女は、こうなるまでにじたばたと悪あがきをくり返し、
腕を突っ張り身体を捻じ曲げ、さんざん抵抗をつづけたのだ。
突っ張った腕をへし折るように胸を合わせ、
スカートを着けたままの細腰に自分の腰を狂ったように沈み込ませ、
12回もの恥ずかしい想いをして、やっとその気になったのだ。
この貞淑な令夫人の抵抗が凄まじいものであり、
お人好しな息子が目の当たりにするものではないという予想は的中したのだ。
そして、抵抗が激しければ激しいほど、勝ち得たものの貴さを実感することができるのだった。
さらに、これほどまでに激しく抵抗するような女は、
却ってそのぶんふつうの人妻よりもずっと従順になるものだと確信していた。

一泊の予定だった柳子は、着替えをあまり携えていなかった。
だから吸血鬼は、その首すじを狙うときも、
襟首に血が撥ねないようにと入念に咬んで、生き血を啜った。
貞操観念の強いご婦人を襲うときにいつもそうするように、
着衣のまま手際よくことを果たしてしまうと、
あまりのことにぼう然自失したスーツ姿にまたがって、
己の勝利を確かめるように、なん度もなん度も挿入行為を繰り返した。
あまりにも手際よく犯されてしまったので、
自分の身になにが起こっているのかを自覚するより早く、快感を覚え込まされてしまったのだ。

こと果ててしまうと、われに返った婦人が最も気にするのは、自身の身づくろいだった。
わが身に起こった出来事を、帰宅後に夫に悟られてはならない。
柳子の懸念をいち早く察した吸血鬼は、彼女を姿見の前に連れてゆき、
襟首から離れたところにつけられた咬み痕が、血浸しになっていないこと、
着崩れしたスーツが、血も汗も体液にも浸されていないことを指摘してやった。
帰宅してきた息子までもが、白い歯をみせて、母に訊いた。
「良かったでしょ?」
思わず頷いてしまってから恥じらう姑を前に、嫁は初めてこのひとと仲良くなれると実感した。

そのあとの柳子は、じつに賢明に振る舞った。
持ち前の冷静さを取り戻すと、だれもが不幸せにならない道を正しく選択したのだ。
今夜のことは内密にする。
さしあたって、夫には告げない。
嫁の不貞も許す。息子の意思なのだから、尊重する。
自分自身との関係はこれ以上勘弁してほしいが、
どうしてもと請われるのであれば、この家限りでの内密のこととする条件で、応じる――

彼女はこの件について息子が一枚かんでいると悟ると、何食わぬ顔で帰宅した息子に向かって、
「婦人の貞節というものを軽く考えてはならない」
と、型通りの訓戒を与えたうえで、
「けれども母さんに限っては、きょうの貴方の配慮を、悦んで・・・ではないけれど、受け容れる」
と約束した。
吸血鬼と仲良く暮らすことで、だれも死なずに済むというこの街の仕組みを理解すると、
私も時々血を差し上げに伺いますと告げて、吸血鬼を欣(よろこ)ばせた。

柳子は吸血鬼と和解すると、なにも知らずに自宅で待つ夫に電話をかけて、
一泊の予定だったが、少しゆっくりしてきますと伝えていた。
座布団の上に正座しながら電話を掛ける姿を、
吸血鬼は
「行儀の良いご婦人だ」
と称賛した。
自分の勝ち得た獲物が貴婦人であることはとても悦ばしいといって、
実母の貞操を差し出した夫を悦ばせた。

着衣のまま人を襲うことを好む吸血鬼のため、
柳子は着用してきた千鳥格子の柄のスーツと、持参した薄茶色のスーツとを代わる代わる身に着けて、
惜しげもなく情夫の体液に浸し抜いた。
目ざめてしまった歓びに戸惑いながらも、柳子は破倫の渦にわが身をゆだね、狂っていった。

若返った柳子が、夫のために永年守り抜いた貞操を惜しげもなくかなぐり捨てて、息遣い荒く振る舞うありさまに、
息子の幸雄はもちろん、孫の達也までもが昂っていたのは、いうまでもない。
いつも威厳あふれるお祖母さまが、女になってる――
達也はむしろ、祖母に対する畏怖が親しみに変わるのを感じていた。

嫁の服を借りて帰ってゆく姑を送り出すとき、さと子は言った。
「またいらしてね」
「エエよろこんで」
おうむ返しに応えた姑は、息子の結婚以来初めて、嫁と声を合わせて笑った。
そしてその誘い通り、
柳子は律儀にも、よそ行きのスーツを用意のうえ、息子の家を再訪した。
そのときのありさまが、冒頭のくだりである。



「お義母さま、だいじょうぶ?」
口では姑を労わりながら、さと子は同じ歓びを共にしたものの目になっている。
「お夕飯の支度を――」
言いかけた姑の口を封ずるように、さと子はいった。
「お義母さまの手を煩わせるわけには参りませんわ。そちらは私が受け持ちますから、お義母さまは引き続き・・・」
あとはウフフと笑いでごまかして、さと子はいままでになく軽い足取りで台所にむかった。

「~♪」
鼻歌交じりに家事にいそしむ台所まで、物音は十分に届いた。
真っ暗になったリビングでは、女としては一人取り残された柳子が、着崩れしたスーツ姿のまま、
吸血鬼、その兄、息子の幸雄、孫の達也までもに囲まれて、
四人の男がのしかかり代わる代わる性欲を吐き散らしてゆくのを、相手にしていった。

数時間前まで夫とともにいたときから身に着けていたスーツの存在が、
さいしょのうちこそ彼女の理性を苦しめたけれど。
ストッキングごしに舐め着けられる舌や、
ブラウス越しに荒々しく揉み込まれる掌や、
ブラジャーのストラップを無造作に断ち切る尖った爪や、
複数同時に素肌のうえを這いまわる唇たちが、彼女の理性を蕩かしていった。

「御飯ですよ~♪」
嫁の明るい声が頭上に響いた時。
柳子はまだ、ストッキングを片方だけ穿いたまま、
息子のなん回目めかの吶喊を、しっかりと受け止めている最中だった。



≪街の広報誌から≫
血液提供者の対象年齢拡大へ  献血者の負担緩和狙う

二十四日、市は吸血鬼有効政策の一環として、血液提供者の対象年齢を拡大すると発表した。
従来のガイドラインでは、十代から五十代の男女を吸血の対象としていたが、六十代男女のうち健康な者も含める。
実施は即日。

中高生の血液提供者を持つ家庭では、
その両親が子女の体力負担軽減を願って血液提供を希望するなど、
家族単位での浸透がさかんであるが、
既婚女性に対する吸血行為が性行為を伴うケースも報告されており、
「嫁の乱倫行為に発展しかねない」との声がその親世代からあがっていた。

反面、「息子夫婦が正常な夫婦関係を維持させたい」との希望から、
進んで血液提供を希望する初老の夫婦もおり、
市の決定を待たずにガイドラインを越えた年齢の男女が自発的に血液の提供に応じたケースも報告されている。

―街の声ー
「姑に黙ってもらうにはいい機会だと思います」
そう語るのは、間島聡子さん(仮名)。
聡子さんは昨年市に転入後すぐに、夫である幸夫さん(同)のすすめられて、
幸夫さんと親しい関係にある吸血鬼に血液の提供を始めた。
「一回に吸われる量が多くて、日中もくらくらする日がありましたけれど、
 事情を知った母が父を説得して血液を提供してくれることになってから、
 体がだいぶ楽になりました」
聡子さんと吸血鬼との親密な関係を夫の幸夫さんは承知しているが、
「最近、主人のお母さまが感づきだしたみたいで・・・ちょっとはらはらしてるんです」
幸夫さんの母・龍子さん(同)は近々同家を訪問する予定。
良き嫁である聡子さんは今、姑を堕とすためのシナリオ創りに余念がない。


5月27日9:31構想 6月1日20:44加筆・あっぷ

放送の途中ですが(まだ続ける気らしいw) ~ブログ拍手をいただきました~

2020年05月16日(Sat) 13:34:40

夕べ、少し以前のコチラのお話に、拍手をいただきました。

「事務職員の妻」
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-3892.html

描いた時から、地味め~なお話だな~と思っていました。
けれども、もう半年前に描いたものがこうして人目に触れている というのは、嬉しいものですね♪
よくみたら、3拍手となっていました。以前に2度、拍手をいただいている ということですね。

せっかくなので、読み直してみました。
やはり、地味。
でも、案外イケてる。
うふふふふふん。(笑)

拍手をくださいました方、ありがとうございました。
他の方々も、よかったら読んでみてください。
(^^)

義父母を交えての乱倫

2020年05月15日(Fri) 11:23:14

母娘で、肩を並べて犯されていた。
もっとも――女性の意思に反して交わりを遂げられてしまうことを「犯される」というのであれば、
娘のほうは、必ずしもそうではなかった。
娘は人妻で、娘が相手をしている男は、実の父親だった。
母親のほうは、傍らで獣と化した夫と同じくらい危険で兇悪な吸血鬼を相手にしていた。
娘は父親との近親相姦を、積極的に腰を振って愉悦していたが、
母親はまだ新婚初夜の花嫁のように動きもぎこちなく、戸惑いながら相手の欲求に応じ続けていた。
けれども手練れな吸血鬼が貞淑な年配妻を飼いならすのに、さほどの時間はかからなかった。
そして、「犯されている」はずの母親のほうもまた、頬を赤らめながら、ためらいながらも腰を振り始めていった。


「パパは昔からあたしのこと、犯したがってるの♪」
夫婦のベッドのなかで、妻のさと子が囁いた言葉は、
まるで毒液のように夫の幸雄の耳朶を染め、胸の裡をどす黒く染めていった。

「こんどのお誕生日のプレゼントは、あ・た・し♪」
実家の電話口に出た父親に娘はそう囁いて、
父親の胸の裡をも、同じ色で塗り替えていった。
「代わりにね、ママに恋をさせてあげようよ♪」
愛娘の悪だくみに、父親は即座に協力すると確約した。

娘の婚家に現れた夫婦を初めて目にした吸血鬼は、丁寧な会釈を交し合ったあと、娘夫婦に耳打ちをした。
「さいしょの一発めをだんなに見せるのは良くない」
と。
「貞淑で生真面目なおかみさんだ。しんけんに抵抗するだろう」
「だからいいんじゃない♪」
あくまで能天気に言い寄る女を、吸血鬼はいつになく気難しい顔つきで遮った。
「本気の抵抗って、見ていて面白くはないものだぜ」
あくまで、実地を知っている者らしい発言に、娘も娘婿も服従の頷きを返してゆく。

娘が父親を誘って散歩に連れ出し、
よそ行きのスーツを連れ込んだ納屋の藁にまみれさせているとき。
貸し出された夫婦の寝室では、貞淑な年配妻の貞操喪失劇が、どたばたとくり広げられていた。
介添え役の娘婿だけが、固唾を呑んで隣室から覗き見して、すべてを見届けた。
引き裂かれたワンピースに、吊り紐を断たれたスリップ。
そのすき間から覗く、意外に若々しい柔肌。
肩になだれかかる乱れ髪が、黒々と蛇のようにしなやかに、豊かな乳房をユサッと撫でた。
永年守りつづけてきた操を不当に汚された貴婦人は、ぼう然としてあらぬ方を見つめていた。


情事のあとは、 喉が渇くものだ。
「お義母さん、お疲れさまでした。さあどうぞ」
そういって飲み物をすすめるはずが、じっさいにあてがったのは、気付け薬だった。
はっとわれに返ると、姑は呟くような小声でいった。
「幸雄さん、私、なにをされてしまったの?」
目許はまだ、戸惑いに充ちている。
なるべく早く、落ち着かせることが肝要だった。
「お義母さんは、恋をなすったのですよ」
「恋!?」
生来の生真面目さを取り戻しかけて、姑が娘婿のほうを振り返り、そして初めて娘婿が女の姿をしていることに気がついた。
「ゆ、幸雄さん、どうなさったの!?」
「情事のあとは、喉が渇くものです。彼にも飲み物をあてがわないと」
幸雄はゆうゆうと、肩まで伸びた地毛を見せびらかすようにそよがせながら、吸血鬼のほうへと歩み寄った。
そして、さっきふたりが乱れたベッドに腰を下ろすと、吸血鬼に肩を抱かれながら、いった。
「この方は、美人しか襲わないんですよ」

ふたりの首のつけ根には、くっきりと咬み痕がつけられている。
姑の菊代と、娘婿の幸雄。
ふたりながら同じ部位に同じ痕をつけられてしまうと、菊代はあきらめがついたようだった。
身づくろいをしなければならない――菊代が腰を浮かしかけると、幸雄が言った。
「だいじょうぶですよ。お義父さんはまだまだかかります。今夜はもう、戻らないかも」
幸雄は、永年ご執心の女を手に入れた男が朝帰りになることを、手短に姑に告げた。
「ですからお義母さんも、朝まで恋に励んだらよろしいでしょう」
「あなたはそれでよろしいの!?」
ふたたびベッドに組み敷かれてゆく菊代に、娘婿はいった。
「お義父さんにさと子さんを渡すのは、親孝行だと思っていますよ。
 そしてお義母さんに恋人をつくってさしあげるのも、やはり親孝行――」
娘婿に抑えつけられた腕を振りほどくことができないままに、
菊代は歯を食いしばって男の唇を拒み、それでも否応なく、夫以外の雄の匂いを喉の奥へと流し込まれ、むせ返っていた。


あくる朝、朝帰りした父娘を、菊代と幸雄は何食わぬ顔で出迎えた。
娘の着ていったよそ行きのスーツに藁がたくさん付いているのを菊代がわざと見逃すのを、
男たちは含み笑いをして見過ごした。
その次の夜のことだった。
母娘が2人ながら、肩を並べて組み敷かれたのは。


「アッ!なにをなさいます!?」
やって来た吸血鬼は、菊代を見るなりいきなり羽交い絞めにして、リビングのじゅうたんの上に転がした。
「識らない仲でもあるまいに――ご主人がおられると恥ずかしいのかね?」
救いを求めるようなまなざしは、あっさりと裏切られた。
「菊代、おとなしくしなさい」
「こ・・・今夜は・・・結婚記念日なのよッ」
泣き悶える菊代の細腕を、夫は力任せに抑えつけた。
「吸血鬼さん、さあどうぞ。自慢の家内です。気の済むまで愉しんでください」
「あああ、あなたあッ!」
年配妻の悲鳴の上に、吸血鬼の淫らな欲望が覆いかぶさった。

長年連れ添った女房が往生するのを見届けると、義父は愛娘と目交ぜをする。
「パパ、よろしくね♪」
母親とは裏腹に娘は自分から、体を開いていった。
「お義父さんは、さすがに男らしいですね」
妻を寝取られながらも、幸雄は義父の精力の強さに驚嘆するしかなかった。
この恥知らずな年配男は、最愛の妻の貞操を気前よく提供した見返りに、
娘のうら若い肉体を自由にする権利を、娘婿の目の前で堂々と行使したのだった。


「お祖母ちゃん、すごいね。あんなに激しく腰振っちゃって、明日起きられるのかな」
「夢中になってるときに、明日の心配なんかしないものだろ」
女ふたりのプロ顔負けな男あしらいを隣室から覗き見しながら。
幸雄はワンピース姿の達也を引き寄せて、
達也は父親の言うなりになって、重ね合わされてくる唇を、けんめいに吸い返していた。


数日後。
情事の数々を重ねて、菊代夫妻は都会に戻っていった。
お土産は、菊代の”初夜”のときに隠し撮りをした、ビデオテープ。
「コピーを取ってありますからね」
吸血鬼は菊代に聞こえるように、彼女の夫をわざとらしく脅迫した。
脅迫された夫は、
「だいじょうぶ、我が家の恥は内聞に願いますからね」
と、にんまり笑い返してゆく。
ビデオの内容は、物を投げたり、引っ掻いたり・・・
実に初々しい内容だった。
なによりも。
菊代が貞操を守り抜くために最後まで生真面目な抵抗をしたことを、証明する内容でもあった。
夫は妻の忠実さに満足し、これからはその義務をあの男に限って解除すると妻に告げた。
永年忠実で貞淑だった妻も、女に返って愉しみはじめた――
ビデオを最後まで観て、実感したからだ。
あの夜、さいごにベッドを離れる時の菊代の眼差しはひやりと冷めていて、
口許にはしたたかな充足感が漂っていた。

「菊は、季節を問わず咲くものですな」
永年遊び慣れた年配男の言い草は、妻を犯された後も悠々としていた。

夫婦の寝物語。

2020年05月15日(Fri) 09:00:30

間島幸雄(42)は貧血を起こして、夫婦のベッドで仰向けになっていた。
つい、さっきまで。
吸血鬼になった息子・達也(14)の相手をしていたのだ。
達也の相手をするときは。
女の姿になることにしている。
少しでも息子を、悦ばせたい一心で。
やはり男の吸血鬼は、女性を襲いたいものだから。

さいしょは妻の服を借りていたけれど。
妻が自分の服を着て、自分も息子の相手をするようになると、
彼は自前の婦人服を持つようになっていた。
夫の女装用品を、妻は甲斐甲斐しく、すべて揃えてくれた。
自分の不倫を認めてもらった、彼女なりの礼儀だった。

いまもまた。
幸雄は息子相手に、女として振る舞って。
血を吸い取られ、股間を割られ、息せき切った刻を共にした。
股間の奥に注ぎ込まれた若い体液の名残りが、まだ太ももに生温かく、へばりついている。
指に絡めた濃厚な粘り気を口に含むと、若さへの羨望がチラと胸をかすめていった。


1年まえ。
家族を伴って赴任してきてすぐに、
この地に棲まう吸血鬼に、一家全員が襲われて、生き血を吸い取られていた。
息子の達也(14)は、生き血を吸い尽くされて吸血鬼になった。
きっと、若い血は美味しかったに違いない。
けれども、妻のさと子(40)だって、越してきた当時はまだ30代。やはり美味しかったに違いない。
なにしろ、血を吸われたその晩に、男女の関係まで結ばされてしまったのだから。
(セックス経験のある女性はほぼ例外なく犯されるとは、あとから聞かされた)
それなのに、吸血鬼になったのは、達也だけ。
よほどの相性のある者だけが、選ばれるのだという。
たしかに――そうでなければ、街じゅう吸血鬼だらけになってしまうではないか。

生き血を吸われた妻は、吸血鬼に拉致されて、その邸に棲み込まされて、
一週間というもの、すべてを教え込まされていた。
事を表ざたにしないために、表向きの平静を取りつくろいながらも。
妻恋しさに、妻の服を身に着けて女装しているところを、
生き血を求めて自宅に侵入してきた吸血鬼に眠らされて、女として犯された。
男との経験は、初めてだった。
禁断の麻薬を味わってしまった彼は、
妻の身代わりに、自分と同じように妻の服をまとった息子のことを、やはり女として犯していた。

吸血鬼との交際を認めることを条件に、妻は一週間で戻ってきた。
物分かりのよい彼女は、夫と息子との関係を、視て視ぬふりをして過ごすようになった。
自分の情事を夫が視て昂るようになったのを、むしろ好都合だと考える女になっていた。


寝室の頭上を照らす灯りが眩しい。
どうやら今夜の貧血は、すぐにはひかないものらしい。
いつもよりしつようだったのは。
息子が日常的に餌食にしている同級生の畑川一家が、家族旅行に出てしまったせいだろう。
いまごろは。
若くて健康な睡眠を、貪欲にむさぼっているに違いない。
まあいい。明日の会社は休めば良い。
もともとが。
家族もろとも吸血されることに同意して選んだ赴任地だった。
仕事らしい仕事は特になく、しいて言えば健康な血液を提供できるための体調管理が、仕事といえば仕事。
オーナー経営者は、自分の生まれ故郷に、なにがしかの貢献をしたかったらしい。
社員やその家族の生き血を提供することが、健全な貢献かどうかは、わからないけれど。

がたり。
寝室のドアが、ノックなしに開けられる。
けだるく動かした目線のかなたに、妻のさと子がいた。
吸血鬼に犯された彼女は、この街に来てから若返ったようだ。
仮面夫婦だった都会での日常とは裏腹に、彼女の表情は、家にいるときも以前とちがって豊かになった。
「あなた、だいじょうぶ?」
うふふ・・・と笑いながら、猫のようにしなやかに、幸雄の傍らにすべり込んでくる。
こんなしぐさは、若いころでもしなかったはず。
「ああ、さすがに疲れたよ」
「ダメねぇ、あなた」
狎れきった雌猫のように鼻を鳴らして、さと子は夫を冷やかした。
「今夜は無理かな?」
と、自分から誘ってくることも、都会では考えられないことだった。
「そばにいて」
とだけ、短く返すと、
「そぅお?」
といって、しなだれかかるように身を寄せてくる。
性欲を満足させる夜を過ごすことができなくても、夫と寄り添おうとする妻としての優しさを、彼女は取り戻していた。
この街で。
妻は、なん人の男を識ったことだろう?
それなのに。
世間体や外聞とをかなぐり捨てた彼女は、仮面夫婦の仮面もいっしょに、脱ぎ捨てたようだった。

彼女は勝手に、寝物語を始めている。
「面白い話、聞きたい?」
「なんだね?」
「うちの両親のこと」
「ああ、もちろん」
「来週ね、父の誕生日なの」
「ああ、そうだったね」
「それで、うちに招んでお祝いしようと思うの」
「良いじゃないか」
「誕生日のプレゼントに、私をあげてもいい?」
「えっ」
どういうこと・・・?と訊き返すのは、もはや野暮というものだろう。
「父ったらね、昔から私のこと、抱きたがっていたのよ」
「でも、お義母さんもいっしょに招ばないわけにはいかないだろう?」
すでに幸雄のなかで、妻が実父と寝ること自体は、認めてしまっている。
なに、妻の情夫がもう一人増えるだけのことだ――
妻の応えもよどみがない。
「エエもちろん、母も招ぶわ」
「それは問題だ」
で、私にどうしろと・・・?と訊きかけた鼻先をかすめるように、
さと子はしなだれかかった夫との距離をさらに縮め、さらに身体を密着させた。
「再来週がね、2人の結婚記念日なの」
「いつもいっしょにお祝いしてたよね」
「そうなの。いつも一緒だから、父がかわいそうで・・・だから今回は、別々にお祝いしてあげようと思うの」
「長逗留になるのかな」
「そうね、そのつもり。だってぇ・・・うちだって、それくらいかかったじゃないの」
幸雄には、さと子が言わんとしていることがやっとわかった。
「お義母さんに、吸血鬼と逢わせてあげるというのかね?」
「そうよ」
さと子は、こともなげにこたえた。

父の誕生日には、私の肉体を。
結婚記念日には、母の愛人を。
ふたりに、プレゼントするの。
あなた、どう思う・・・?

勤め帰りの交歓

2020年05月15日(Fri) 08:10:08

※閲覧注意。完全なる同性ものです。^^;


「な、なにをするんだ、きみはッ!? こんなところで恥ずかしくはないのかねっ!?」
勤め帰りの夜道を襲われて。
畑川由紀也(38)は、息子の同級生である吸血鬼・間島達也(14)の肉薄を必死でかわそうとした。
生き血を求めてさまよっていた達也は、獲物を確実に得るために、
親友の父親の帰り道を舌なめずりして待ち伏せしていたのだ。

由紀也の高級なスーツのすそから覗く足首が、濃紺のストッキング地の長靴下に透けている。
その足首を吸おうと、路上に立ちすくむ由紀也の足許に、達也はあたりも憚らずに、かがみ込んだ。
足首をつかまれ、まだ稚なさの残る舌をふるいつけられながら。
由紀也は懸命に、彼のふらちな行為を拒もうとする。

「良い加減にし給えっ!きみは息子の友達じゃないか!」
口ではもっともらしく叱りつけてはいるものの。
薄い靴下ごしに、卑猥にヌメる舌を、チロチロと這わされて。
由紀也の抵抗はみるみるうちに、力の抜けたものになってゆく。
「せめてここでは勘弁してくれ。さ、あっちへ行こう」
折よく、近くには人けのない公園が、暗闇のかなたに沈んでいる。
OKの代わりに達也は、もういちど、卑猥なよだれにまみれたべろで、長靴下の足許をヌルリと舐め味わった。
由紀也は仕方なく、艶めかしく透けた足許を、少しのあいだ達也が愉しむのを許していた。

歩いてすぐの公園のベンチ。
ここを”濡れ場”にするのを、達也はさいしょから目論んでいたに違いない。
由紀也にはその意図さえわかりながらも、
まだ息子の親友による凌辱を、素直に受け入れる気にはなれないらしい。
「きみ、本当に困るよ。こんなところで、恥ずかしいだろう」
ため息まじりにたしなめる由紀也に、達也は平然と、
「会社ならよかったの?」
と返してゆく。
由紀也が口ごもるすきにスラックスのすそをひざのあたりまでたくし上げると、
ストッキング地の長靴下を、口ゴムのあたりから踝(くるぶし)にまで、くまなく唇を吸いつけ、舌を這わせてゆく。
由紀也の拒絶は、むしろ吸血少年の劣情を逆なでしたに過ぎなかった。
「きみ、やめたまえ。行儀悪いじゃないか!」
なおも往生際悪く非難し続けながらも。
由紀也は脚に通した滑らかなナイロン生地の舌触りを、存分に愉しませてしまっていた。

達也が舐めやすいように、脚の角度を変えてやって。
自分の拒絶が息子と同い年の情人をそそることに気がつくと、なおも「だめじゃないか」「よし給え」とくり返して。
くねらせる脚つきは、女のようにしなやかで、なまめかしさを漂わせる。
すでにさいしょに血を吸われたときから、由紀也は達也を本気で拒んではいなかった。
きちんと脚に通した靴下越しの辱めを、脚をくねらせて受け容れていた。

「あ、痛(つ)うッ・・・」
低い呻きを残して、由紀也は気絶した。
ふくらはぎの一角を、達也の牙が侵している。
静かに噴き出る血潮が、裂け目を拡げてゆく薄いナイロン生地にじわじわとしみ込んでいった。


「視たかね?」
「・・・」
「やはり、視るべきじゃなかったかな?」
「・・・」
問うているのは、吸血鬼。
問われているのは、由紀也の息子、畑川保嗣(14)。
親友に父親が、レイプどうぜんのあしらいを享けるのを目の当たりに、
この少年はそれでも、嫌悪の色ひとつ泛べることなく、
謹厳で気難しかった父親が悶えながら堕ちてゆくのを、冷然と見つめつづけている。
保嗣――いや、この場では”保江”と呼んだほうがふさわしいだろう。
自宅を抜け出してきたこの少年は、自分の通う中学の、女子の制服を身に着けていた。
そう――いまはほとんどの日を、女子の制服を身にまとって通学し、女子生徒として日常を過ごしているのだ。

親友の達也は、保江より少しだけ早く都会から引っ越してきて、
この地に棲む吸血鬼に血を吸われ、吸血鬼化した少年だった。
その達也と親しく交わるうちに、保江は彼の正体を聞かされ、それでも分け隔てなく交際をつづけた。
やがて達也に血を吸われるようになり、男女どうぜんの交わりも遂げられて、
女生徒化した彼――いや彼女は、今は達也の女装奴隷として、彼女なりの豊かな青春を送っている。

達也と父親との関係は聞かされていたが、
想いを遂げるところを直接視たのは初めてだった。
困惑する生真面目な父親の足許に、達也はじゃれつくようにしてしゃぶりついて、
保江のハイソックスにそうするように、薄手の靴下をむぞうさに咬み剥いで、
しまいにはスラックスまで脱がせて――
保江の家の一家の長は、保江の同級生に虐げられるまま従順になっていき、
しまいには、ハイソックスを履いたままの下肢を開かれて、吶喊を遂げられてゆく。

互いに互いの役目を入れ替えて、つぎには目の色を変えた由紀也が達也を組み敷いて、
やはり通学用のハイソックスを履いたままの下肢のすき間に股間を沈め、昂ってゆく。
濃密な愛の交歓を目の当たりに、保江の中に女らしい嫉妬の情が、しぜんと湧いてきた。
同時に、歓びを覚え込まされてしまった股間がヒクヒクと疼き、熱くなるのを激しく感じた。
――父さんも、愉しんじゃってる。だからあたしも、愉しんでしまって構わないんだ・・・
ふたりの痴態はむしろ、保江の背中を強く推した。
そんな昂りにはずむ保江の肩を、吸血鬼は制服の上から静かに抑えた。
わしらも、愉しんでしまおうか――
吸血鬼の囁きに、保江は大きく頷いてしまっている。


薄ぼんやりとした意識の向こう、重なり合うふたつの影のうごめきを、由紀也はぼんやりと見おろしていた。
受けに回るのは珍しかった――というよりも、今夜が初めてだった――けれども、
ごくしぜんに受け入れてしまった自分に、驚いていた。
やがて情人に促されるままに、いつものように息子の親友を女のように犯し、
ふたたび立場を代えて、女のように犯されていた。
女になるのも悪くない――初めてそう思った。

ふと見ると。
傍らで重なり合うふたつの影たちもまた、同じ衝動に身をゆだねているのに気がついた。
覆いかぶさっているほうは、妻の愛人だった。
抑えつけられているほうは――息子、いや娘の安江だった。
保江は制服のひざ丈スカートのすそを乱して、相手の欲求に応えていた。
薄闇のなかでもつれ合う二人を、街灯がスポットライトのように照らし出す。
あらわになった保江の太ももが、淡いグリーンの灯りを照り返して、ひどく眩しい。
いけない子だ。結婚前なのに。
思わず呟いたひと言に、達也はフフっと含み笑いをした。

親子ながら、むさぼられている。
親子ながら、むさぼっている。
向こうも自分たちに、明らかに気がついていた。
それでいて。
お互いに声はかけず。言葉も交わさず。気づいた素振りすら見せないで。
道徳的な規律は跡形もなく押し流されて、ただ欲望の渦に巻かれてゆく。

ポルノ小説で、読んだことがある。
母娘ながらレイプされ、堕ちてゆくシーン。
性別が真逆であったとしても、いまそれを親子で実演してしまっている。
そのことに、なんの罪悪感も、ためらいもない。
ふたりがここにいるということは、妻の和江は提供可能な血を吸い尽くされて、
リビングで野放図に大の字になって、へらへらと笑いこけているのだろうか。
もしかすると、最近付き合い始めているという達也の父が、いっしょなのかもしれない。

それでも良い――と、由紀也はおもった。
互いに息を弾ませ合い、愉しみ合っている。
ただ、相手が配偶者ではないというだけ。
愛し合っていることに、かわりはない。
理性や秩序を形作る衣装を剥がれ、ありのままの姿で、草にまみれて獣のように這いまわる。
そして一夜が明けると、またまっとうな日常にかえってゆく。
そんな一場があっても、良いのではないか――

生真面目に生きてきたいままでが無になったとは、思えない。
型枠にはめられてきた労苦が、いまやっと報われ始めているのだ。
異形のものが巣くうこの街で。

古いデータ。

2020年04月27日(Mon) 22:30:59

昔描いていた、ココのお話の原型に当たるデータを整理しました。
すべて2002年とか2003年くらいのワードデータです。
本来はひとつの長編で終わるはずだったのですが、
妹が襲われる前に母親が襲われたり、
妹のあとに母親が襲われたり、
長く描いているうちに話に一貫性がなくなって、「こりゃいかん」と思いいったん放棄したものです。
でもプロットはそう変わっていないので、いまの「妖艶」の原型に当たるものです。
原形のままお話を完結させる予定はないのですが、なんとなく捨てかねて持っていたのですが、
バックアップを取り過ぎて同一のタイトルのファイルがいくつもあったりしたので、この際バッサリ整理することにしたのです。

ダブっているものを一つだけ残せば良いだけの作業のはずが、
どういうわけか更新日時が2系統に分かれていて、
ひとつのファイルが1日の午前4時に更新されているのに対して、もう一つのファイルは同じ日の22時に更新されていたりとか・・・
それが特定の日ではなくて、まちまちの日でそういうことになっていました。
おまけに、最新のフォルダと思い込んでいたものの中に、一つ二つ古いファイルが紛れ込んでいたりして・・・
パソコンも当初から何台も買い換えていますし、大急ぎでバックアップを取って壊れかけ寸前のPCから救い出したこともありました。
そうこうしているうちに、まぜこぜになってしまったのでしょう。
大した管理能力です。(苦笑)

そのほかにも、古いファイルをだいぶ捨てました。
大事に秘蔵していた秘められたファイルを十数年間も抱え続けてくれていたCD-Rをシュレッダーで切るときは、
ちょっと寂しい気分になりましたね。
一枚一枚に、「ありがとう」を告げて、処分しました。

べつだん、「妖艶」を廃業するわけではありません。
ただ、心境を本格的に整理したい気分になっただけです。

1時間半で4話。

2020年04月26日(Sun) 22:21:06

しばらく間が空いていたのですが、なんだか今夜はどす黒い渦が渦巻いてしまいました。(^^ゞ

なんとなくの構想はあったのですが、かなり長いこと、描くまでのところまでイキませんでした。
さいしょのシーンで、学校帰りの保嗣がだれかに血を吸われていて、
血を吸われることに充足感を見出していて・・・というくだりくらいはイメージしていたのですが、
相手が達也なのか、吸血鬼なのかがはっきり浮かんできませんでした。
ワンピースの落書きをギミックにするのは、きょうの夕方くらいに泛びました。
それ以外は、ほぼキーを叩きながら、脳裏に浮かんだものを字にしていきました。

なんだか、なんでもアリになってきてしまいましたが、
それぞれの関係性には、それぞれの意味があるように感じます。

妻(和江)を寝取られた男(由紀也)が、「帰ってこないで」と妻の情事の予定を婉曲に告げられると、嫉妬に胸を焦がしながらもそれを歓びととらえて帰宅を控える とか、
人妻を吸血鬼にあてがった少年(達也)が、その夫(由紀也)が手持無沙汰にして待ちぼうけているオフィスに行って、同性の歓びを分かち合う とか、
達也が和江のワンピースをせしめて、和江に化けてオフィスを訪れるのは、父が母を吸血鬼に寝取られたときに、母の身代わりに女装をしたことで経験済みなんですね。
達也の父親は妻恋しさに妻の服で女装しているところを、寝込みを襲われて吸血鬼に調教されてしまって、妻ともども倒錯の館で女として暮らしますが、
同じく妻を寝取られた由紀也は、男のふくそうを捨てません。
妻の身代わりに愉しませてくれる達也のことも、女として愛しているようです。
どの組み合わせもそれぞれに、違う受け答えがあるようです。

深夜のオフィス。

2020年04月26日(Sun) 22:11:09

「今夜はなるべく遅くね。できたら、帰ってこないで」
達也からそんな電話がかかってきたのは、まだ勤務中のときだった。
なるべく遅く――というときは。
たいがい、吸血鬼が和江を襲いに来る時だった。
あべこべに、和江から出かけていくときもあった。
そういうときは、
「帰ってきてもいいよ、小母さんいないけど」
となるはずだから、
「なるべく遅く」
というのはきっと、自宅で和江が吸血鬼と過ごす時間が、長くて濃いものになる、ということなのだろう。
けれども、
「できたら、帰ってこないで」
とは、どういう意味だろう?
畑川由紀也は、答の出ない疑問を抱えながらオフィスの終業を迎え、
「失礼・・・」「お先に・・・」と声をかけて退社してゆく同僚を見送って、ひとりぽつんとオフィスに残っていた。
時計は夜の9時を回っている。
食事はすでに、済ませていた。
今夜は遅いだろうと踏んだ察しの良い同僚が、「いっしょにどう」と、出前を取ってくれたのだ。
ともかくも。
手持無沙汰だが空腹でもないその退屈なひとときを、一方的な連絡に待ちぼうけをくわされて、過ごしていた。

がた、がたん・・・
オフィスの通用口から、誰かが入ってきた。
達也か、吸血鬼か。
吸血鬼は今頃、妻の血を吸っているはずだ。
長くて濃いひと時を、すごしているはずだ。
だとすると達也だろうか。
彼はいつも、妻が襲われているときに、夫を引き留める役目をつとめていた。
役得に、働き盛りの四十代の生き血をたっぷり抜き取ることを忘れずに――
それと承知で、由紀也は達也を迎え入れて、
当地に来て初めて覚えた同性同士の歓びに、うつつを抜かすのだった。

通用口から入ってきた人影は、すぐに姿を現さなかった。
勝手がわからないのだろうか?
由紀也が目を細めて、通用口からオフィスにつながるロッカーの谷間に目を凝らすと、
薄茶のパンプスが遠慮がちに、オフィスの床をすべるのが視界に入った。
見覚えのあるオレンジ色に黒の水玉もようのワンピース――結婚記念日に妻の和江に買ったものだった。

和江がオフィスに?
どういうわけだろう?
彼女は吸血鬼といっしょに、恥を忘れたひとときを自宅で過ごしているはずだ。
だがよく見ると、ワンピースは和江のものらしかったが、
背格好も顔だちも、和江とは似ても似つかないことに気がついた。
それが和江の服で女装した達也だと気づくのに、数秒かかった。

「どういうことだね!?」
さすがに由紀也が色をなした。
それには答えず達也は、屈託なく笑った。
「似合います?」
という問いに、思わず由紀也は頷いていた。
脂粉に覆われた頬。薄い青のアイラインも、妻のものらしい。
スッと近寄ってくる身のこなしも、いつもと違ってなまめいていた。
しんなりと身を寄せてきた達也は、由紀也をいつものようにソファに腰かけさせると、
そのままもたれかかって唇を重ねた。
由紀也が黙ってしまうと、そろそろと足許にかがみ込んで、ストッキング地の靴下のくるぶしに舌を這わせた。

達也がストッキング地の長靴下をいたぶり抜くに任せながら、由紀也は訊いた。
「どういう酔狂なんだ?」
「よく見て」
達也は嬉しげに、ワンピースの襟首のあたりを見せつけた。
由紀也の息がとまった。
和江の着ていたワンピースには――きっと和江から吸い取った血で描いたのだろう――「たつや」と「かずえ」の名前が並んで描かれ、間には相合い傘まで描かれていた。

なにが起きたのかを、由紀也はすぐにさとった。
「小父さんはやっぱり、鋭いな」
「どうしてまた・・・!?」
「ボク、今夜やっと男になったんだ」
「そうだったんだ・・・」
「さいしょの女のひとは、やっぱり選ぶよね?」
「それはそうだろうな」
「だったら、和江を択ぶのが一番じゃないかな?」

強引な腕が、由紀也を引き寄せた。
強引な唇が、由紀也の唇を求めた。
求められるまま、由紀也はつい今しがた妻を犯した少年の唇を吸っていた。

この唇が、和江の膚を這ったのか。
あの一物が、和江の股間を狂わせたのか。
ちょっとのあいだ、由紀也は人並みの嫉妬を覚えたけれど。
スラックスのうえから太ももをまさぐる達也の掌が、すべてを忘れさせた。
――そうだ、俺はこの子とひとつなんだ――
ふたたび重ね合わされてきた唇を強く吸い返すと、
達也は「あぁ・・・」と、切なげにうめいた。

数分後。
由紀也は妻のストッキングを剥ぎ堕とした少年に、自分のストッキング地の長靴下まで咬み剥がせて、
妻の素肌をしつように這いまわった唇を、強く強く吸い返していた。
かつてこの少年は、独り寝をする父親のため、母親の服を身に着けて身代わりを務めたのを思い出した。
いま彼は、和江の服を着て、和江になり切ろうとしている――
由紀也は、すべてを忘れた――

「できれば帰ってこないで」
記憶のなかで、達也の声が妻の声と重なった。
和江はどうして、夫の帰宅を望まないのだろう?
もしや今ごろ和江は、保嗣と同じ振舞いに及んでいるのでは――と、ふと思った。
そして、その直感は正しかった。

その同じころ――
和江は初めて息子の前で吸血鬼に抱かれ、
息子は吸血鬼の導きで、身体を開く母の上へと、のしかかっていった。
四十代の主婦は一夜のうちに三人の男を識り、女ざかりの花を開いていった。

親友の母親を征服する。

2020年04月26日(Sun) 21:39:25

息荒く迫ってくる息子の悪友を前に、和江はどうすることもできなかった。
「大人をからかうものじゃありませんよっ」
和江はそういって達也をたしなめたが、
達也はせせら嗤うだけだった。

「小母さん、悪いけど今夜は、ボクの女になってもらうからね♪」
そういって達也は、和江の着ているワンピースの肩の釦をひとつひとつ外しにかかり、
「ヤスくんから、聞いているでしょ?初体験はヤスママがいいなって、ボク頼んだんだ」
そういって達也は、和江の着けているブラジャーの吊り紐を引きちぎった。
「和江はボクを愉しませるために、おめかししたんだよね?」
そういって達也は、這いずって逃れようとする和江の脚を抑えつけて、
和江の脚を舐めまわし、ストッキングをよだれまみれにさせていった。

達也が和江を、親友の母親として重んじていることは、しぐさのひとつひとつから伝わってきた。
さっき息子と唇を重ね合わせるのを盗み見てしまった和江は、
同じ唇が自分の唇に覆いかぶさってくるのを、どうすることもできなかった。
否応なく嗅がされる青臭い男の匂いを、鼻腔の奥まで満たしてしまっていた。
「ね、ね、お願い。やめて!あなたヤスくんのお友達なんでしょう?そんなこといけない・・・っ」
和江の理性的な訴えは、細腕をねじ伏せるほどの他愛なさで、へし折られていった。

数分後。
和江は無防備に晒された股間を達也の逆立つ一物でなん度も抉られながら、
やめて、やめて・・・をやって、やって、もっとやって・・・と、言葉つきを別人のように変えてしまっていた。
隣室で息子が耳を澄ませているであろうことも、もうどうでもよかった。
息子は認めてくれているのだ。
そして、自分の最愛の母親を、もっとも親しい悪友と結びつけようとしたのだ。

達也は親友の母親を相手に欲望を遂げると、
なおもダメ押しをするように、何度も何度もワンピースのすその奥へと吶喊をくり返した。
ふすまのすき間から覗き込む瞳を意識して、見せつけるように――


こと果ててしまうと、ふたつの身体は寄り添い支え合うようにして、壁に身を持たせかけていた。
半脱ぎにされたワンピースからは、豊かな胸が惜しげもなくさらけ出され、
窓から射し込む月の光に、その柔らかな輪郭を淡く滲ませていた。

「オレンジのワンピース、良く似合うね」
「主人が結婚記念日に買ってくれたのよ」
和江は恨めしそうに、男にこたえた。
「じゃあ全部脱がしてやるよ」
十四歳の少年は、どこまでも悪童だった。
貞操を奪われた人妻のデリカシイになどまるで配慮をせずに、ワンピースを強引に脱がせにかかった。
和江は猫のようにゆるやかに身をよじりながら、従順にワンピースを脱がされていった。

「戦利品だ、もらってゆくよ」
情夫の子供じみた強欲に従わざるを得ず、和江は悔しそうに唇を噛んだ。
「だいじょうぶだって、悪いようにはしないから」
達也はどこまでも、楽しそうだった。
素早く身を添わせて和江の首すじをチュッと吸うと、
口許についた和江の血で指先を浸して、ワンピースの肩先をなぞった。
「たつや」と「かずえ」と縦に並べて描くと、ふたりの名前の間に相合い傘を描いた。
「ひどいじゃないの」
和江が口を尖らせる。
達也は構わずに、和江のワンピースを全裸になった自分の身にまとってゆく。
「え・・・?」
怪訝そうな顔をする和江に、達也はイタズラっぽく笑いかけた。
「小母さん、いつも使ってる化粧品貸して」

ふすまの向こうとこちら側

2020年04月26日(Sun) 21:14:44

キュウキュウ・・・
ちぅちぅ・・・

低くくぐもった吸血の音が、薄暗いリビングに充ちている。
ほんとうならば、夕食どきのはず。
部屋は明るく、そこにはお膳が並べられ始めていなければならないはずだった。
けれども、自らが食事を摂るまえに、
保嗣は自らの血液を、異形のものに摂取させてしまっていた。

吸い取られているのは、自分の血――。
その証拠に、刻一刻と引き抜かれてゆく感覚が、足許から全身にゾクゾクと沁みわたってくる。
頭がどんよりしてくる。
身体から力が、抜けてゆく――
吸血鬼は、保嗣のふくらはぎに咬みついて、
通学用のハイソックスを血浸しにしながら、
十代の若い血潮を、旨そうに唇を蠢(うごめ)かせつつ抜き取ってゆく。

保嗣は、吸血鬼が自分の生き血に満足していることに、くすぐったいような誇らしさを感じながら。
傷口から抜けてゆく血潮の生温かさを、心地よくかみしめている。

死に至る吸血ではないことが、少年をより大胆にしていた。
それが風変わりな愛情表現であることが、少年をより大胆にしていた。

飲み味わわれた血潮は、吸血鬼の喉を潤し、胃の腑を満たし、
やがてその干からびた血管をめぐり始めるだろう。
そうすることで、ぼくは小父さんとひとつになれる――。
そんな想いが、少年を夢見心地にさせていた。

吸血鬼もまた、目のまえの少年が身体を開いて、惜しげもなく振る舞う十代の健康な血潮に、夢中になっていた。
おとなしく知性にあふれたこの少年の血潮は、思慮深さに満たされた深い芳香をたたえていた。
魅力的な血潮だと、吸血鬼はおもった。
その血を獲ることのできる幸運を、自ら祝福する想いだった。
優しく思慮深いこの少年の血潮を体内にめぐらせることで、少年とひとつになれるという歓びを感じ始めていた。

吸う側も、吸われる側も、相手とひとつになれる歓びにうち慄(ふる)えながら、同じ刻を過ごしていた。

隣室での出来事が、保嗣をさらに昂らせていた。
ふすま一枚向こうでは、
親友の達也が、母親の和江を組み敷いていた。

保嗣は、先刻達也につけられた首すじの傷口が淫らに疼くのを覚えていた。
達也はまず保嗣の血を吸い、それから彼の母親に挑んだのだ。

さっき保嗣のハイソックスを咬み破ったのと同じ牙が、
母の安江のストッキングを剥ぎ堕としていた。
さっき保嗣の唇に重ね合わされたのと同じ唇が、
母の安江の熟れた唇をむさぼっていた。
いつも保嗣の股間をしつように責めるあの逆立った一物が、
保江を惑乱させていることを、自らの体験でひしひしと自覚できてしまう自分がいた。

保嗣の血潮に浸った唇が、母親のそれに血塗られて、
保嗣の血潮が通り抜けた喉を、母親のそれが潤していって、
保嗣の血潮が淀んだ胃の腑に、母親のそれが後を追うように注ぎ込まれた。

ふたつの部屋を隔てるふすまは、故意に細めに開けられていた。
そして吸血鬼は、保嗣がふすまのすき間から絶えず母親の痴態をのぞき見できるように、
否、目の当たりにすることを強いるように、緩過ぎずきつ過ぎない力強さで、じゅうたんに抑えつけていた。

気がついたときには、制服の半ズボンを脱がされていた。
逆立った股間を、吸血鬼の唇が呑み込んでいた。
保嗣は、鬱積していた嫉妬の熱い塊を、不覚にも吐き散らしてしまった。
そう仕向けるようにと、吸血鬼はしつような舌舐めを保嗣の先端にあてがって、
根元や袋までもなぞり抜いて、わだかまる粘液を根こそぎほとび散らせるよう導いていったのだ。

重苦しい貧血を忘れて、少年は仰のけになって、荒い息を吐いた。
こんな昂りを、経験したことが無かった。
底まで浚われるほどの射精で、満たされたことが無かった。

母を目の前で侵される――
いけない歓びに目ざめてしまったことを悔いる少年の耳朶を、
吸血鬼は毒液のような囁きで充たしていった。

それでエエ。
それでエエ。
お前はエエ歓びに気がついたのだ。
好きなものに好きな人をお披露目したのだ。
愉しめないはずはなかろうでのぉ・・・

どきり。

2020年04月26日(Sun) 20:42:14

考えてみれば。
達也も保嗣も、女性の経験がまだなかった。
達也は吸血鬼によって同性の歓びに目ざめ、それを同じ都会育ちの親友の保嗣に教え込んだ。
達也は息子に教え込んだもので、父親の理性まで染めてしまった。
べつに童貞でいたいというわけではなかった。
チャンスがなかっただけだった。

吸血鬼が少年ふたりに囁いた。
お前たち――近いうち女の身体も識るが良い。
保嗣は思わずいった。
「達也君の方が、ぼくより先だと思います」
「そんなことないだろう」
達也は苦笑いをしながら、けれどもまんざらではない様子だった。

翌日吸血鬼は、保嗣を招んで、生き血を存分に愉しむと、いった。
達也がお前の母親を、筆おろしの相手に臨んでいる――と。
「ぼくも賛成です。というか、嬉しいです」
保嗣の口をついてでた言葉は、嘘ではなかった。
けれども半々に、親友に母を犯される苦みもまた、味わっていた。
どす黒い嫉妬にじりじりと下腹部を焦がしながら、保嗣はいった。
「ぼくが橋渡しをしてあげたいです」――と。

保嗣の母は、すでに吸血鬼によって、貞潔を汚されていた。
父に隠れて悦びあう痴情の日々を、保嗣は、知るともなしに知っていた。
いちど起きたことが、もういちど起こるだけ――
そう思いながらも、親友に実の母親を犯される片棒をかつぐことに、少しだけ抵抗を覚えていた。

吸血鬼に吸い取られた血潮を首すじからしたたらせながら家に戻ると、
母親は家でいつものように部屋の整頓やら晩ご飯の支度やらをしていた。
内心の葛藤とは裏腹に、呪わしい誘惑の言葉は、すらすらと口をついて出た。
「達也くんがさ、母さんのこと犯したがってるんだけど、どう思う?」
え?と、母親は顔をあげ、息子のほうを視た。
「あなたはどうなの?」
「達也くん、女の人って、まだなんだ。筆おろしの相手なら、ぼくは母さんをプレゼントしたいと思ってる」
やはり、内心の葛藤とは裏腹に、言葉だけはすらすらとすべり出た。

そう・・・
母親の和江は、悩まし気な目線を畳に落とし、そして言った。
「ヤスくんがいいのなら、母さんそうするけど」
どきり!と保嗣の胸がわなないたのは、そのあとだった。
「ヤスくんが先じゃなくっても、いいの・・・?」

達也君のほうが、ぼくより先だと思うよ・・・
いつかどこかで聞いたセリフだと思いながら。
保嗣はまたも、本心とは裏腹の応えを、すらすらと口にしていた。

放送の途中ですが 過去記事への拍手♪ ~喪服女装の通夜~

2020年04月05日(Sun) 13:20:51

これ、去年の9月に描いたお話なんです。
過去記事へのコメント・拍手は自由・・・どころかむしろ歓迎なのですが、
「ブログで下の方に流れた過去記事には目もくれない」
というような不文律でもあるのか、過去のものほどコメや拍手をいただくことが本当にありません。

ところがこちら↓の記事は、すでに2回、拍手をいただいています。

「喪服女装の通夜」
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-3848.html

さいしょは、あっぷの数日後。
そのつぎが、たしか3月ごろ。
三回目が、つい先日。

同じかたが何回も読み直してくれているのか、
別々のかたがそれぞれ見てくれているのかはわかりませんが・・・
なんにしてもありがたいことでございます。^^

帰宅。

2020年03月29日(Sun) 19:10:53

由紀也が家に着くころにはもう、だいぶ明るくなっていた。
家路をたどる途中、人はほとんど通りかからなかった。
咬みつかれたお尻の痕が、スラックスに拡がったまだ生温かい血痕と、
ひりひりと疼く傷口とでひどく生々しかったから。
できれば人目を避けて、家にたどり着きたかった。

「おっは♪」
傍らからだしぬけに声をかけられたときは、びっくりして、ちょっと飛び上がってしまった。
由紀也の態度にクスクスっと笑いかけたのは、オフィスの同僚である大鳥真央だった。
真央は男性でありながら、いまはOLとして勤務している。
ショートパンツの下の生足が、ひどくなまめかしくみえた。
どうみても、女のそれだった。
「ストレス解消してきたんでしょ」
真央の目線はあくまでも、仲間を見つめる眼差しだった。
「まあ・・・そんなとこかな」
照れ隠しをするように言いよどむ由紀也に、真央は図星を突くようにいった。
「奥さんの彼氏とラブラブしてきたんでしょ」
「どうしてわかるの?」
「顔に書いてあるもん」
真央はふふふっと笑った。
「で、どうだった?楽しかった?」
「ああ、かなりね」
夕べ意識がもうろうとなりながらも、妻を犯し息子をたぶらかした男の腕に、
自分の方から縋りついていった記憶が、恥ずかしく脳裏をよぎる。
「照れてちゃダメ」
と、真央はいった。
「早くオープンにしちゃいなさいよ。楽しいのなら、女も男もないじゃない」
軽くハミングして立ち去っていった真央の後ろ姿をみて、由紀也は少し気分が落ち着くのを覚えた。

都会では到底考えられない、常識の埒外の出来事。
吸血鬼に家族全員血を吸われ、男女の別なく犯されさえしてしまっている。
そしてそのことに、恥を忘れて歓びを覚えてさえしまっている。
それでよかったのだ・・・と、ふとおもった。

玄関のドアを開けると、妻の和江はもう起きていた。
見慣れた薄いピンクのネグリジェ姿。
顔色が、ひどく冴えないように感じた。
「お帰りなさい」
シャツを破かれスラックスのお尻に赤黒いシミを拡げた夫を、和江は由紀也の予想通り、素知らぬ顔で出迎えた。
「咬まれてきたのね」
和江が訊くと、
「ああ、ずいぶん吸わせてしまった」
由紀也も当たり前のように、こたえた。
「無事にお帰りになれて良かったわ」
穏やかに潤んだ声色が、本音で安堵していることを伝えてくる。
「お前、顔色悪いな」
由紀也が妻を気遣うと、和江は正直にこたえた。
「血を吸われてしまいました」
蒼ざめた唇をきっちり引き結び、緊張に歯を噛みしめている。
人妻が吸血鬼に襲われることが、この街でなにを意味しているのか、お互いにわかっていた。
和江の首すじに、赤黒い斑点がふたつ、綺麗にならんでつけられていた。
じわっとなにかがはじけるのを、由紀也は感じた。
下腹部にたまった、マグマのようなものだった。
由紀也の喉が、カラカラになった。
「来い」
由紀也は妻の手を引いて、夫婦の寝室にまっしぐらに向かった。

一時間ほども、まぐわっただろうか。
ここ最近にない、充実した営みだった。
都会のそらぞらしい生活に疲れ果てた夫婦が、長いこと忘れかけていたものだった。
さいごの営みは、いつだっただろうか。
夫婦のきずなが離れてゆくという恐怖感から、妻に無理強いに迫った営み――
そんなものはすべて忘れ果ててしまうほどの熱い密着感に、妻も夫も満足していた。
息子の保嗣が階下に降りてきた気配がしたが、リビングの気配を察して、まわれ右して戻ってゆくのを、
横っ面で気配だけを読み取っただけで、夫婦はあるべき姿を取り戻すことに熱中した。

並んで座ったソファで、自分の方に妻が頭をもたれかけくる。
こんなことは、何年ぶりだろうか?
四十女の柔らかな肉体の感覚が、身体のそこかしこに残っている。
このところお盛んだった達也の生硬な身体つきとは違うものに、新鮮さを見出していた。

それでも由紀也は、ふと思う。
股間に残る深い疼き――
それは、吸血鬼が由紀也を、女として愛した証しだった。
達也との同性同士の関係も、ときに立場が逆転して、彼が女として犯される番がまわってくることがあった。
深々と突き入れてはじけさせる快感と。
深々と受け容れて浸し抜かれる快感と。
甲乙つけがたいものを、由紀也は感じ始めている。

たぶん。きっと。
まだあからさまに、言葉にしないまでも。
妻が情夫のもとにでかけてゆくことを、彼は妨げることはないのだろう。
そして、異性との悦びで得られない快感を得るために、きっと達也を呼び入れてしまうのだろう。

達也の父が訪ねてきた。 ~妻の仇敵との和解~

2020年03月29日(Sun) 11:02:02

1.真夜中のオフィス

オフィスにやって来た息子の親友・達也と公然と乱れ合ってから、三日が過ぎた。
初めて訪問(襲撃?)を受け逢瀬を遂げてからは、どれほど日が経ったことだろう?
なん回、いけない逢瀬を愉しんでしまったことだろう?

由紀也に対する達也の吸血行為は害意のないものだったので、
いちど由紀也を襲うと、なか三日は置くようにしていた。
由紀也の健康に配慮したのである。

いっぽう由紀也は、毎日でも欲しい快感を数日間、禁欲することになった。
禁欲はときに欲求不満を生むものだが、
由紀也はそれを、達也のために少しでも栄養価が高く活きの良い血液を愉しませるために必要な期間だと理解することにしていた。
以前より身体や健康に気を遣うようになり、美容体操まで始めた。
恋人のために美しく装おうとする女性のようでもあった。

息子のように女装の世界に足を踏み入れることは控えていたが、
そろそろ達也が現れそうなタイミングになると、
紳士用にしては艶やかすぎるストッキング地のハイソックスで、
スラックスの下から覗く足首を透けてみせることを忘れなかった。
達也が好んで咬み剥ぐのを心得ていたからである。

情夫のために化粧をする人妻のようだ――と、時おり由紀也は感じる。
けれども、達也を待つ夜に、薄い長靴下を脚に通すことをやめられない。
達也の舌を愉しませ、破かせてやるために。
それが辱めであり自分の名誉や威厳を損なうことになりかねないと知りつつも。
通勤用の靴下に達也の唾液をしみ込まされ、自分の血潮に浸し、ずり降ろされ咬み剥がれてゆくことが、たまらない快感になっていった。
自分の勤務中。
妻の和江が、吸血鬼のために艶めかしいストッキングを脚に通すのを笑えない――
このごろはまじめに、そう思っている。

息子さんを自分の”彼女”にしたい――
そんなことを告げにぬけぬけと勤務先にまで現れたこの少年に、初めて接したときのこと。
口先では「とても迷惑だ」「先生に相談した方が良いのかな」「自重したらどうかね」などといいながら、
不埒にも薄手の靴下に透き通る足首に唇を吸いつけようとしたこの吸血少年のため、
不覚にも由紀也は、達也が吸いやすいようにとわざわざ脚の向きを変えて応じていった。
たぶん――達也を吸血鬼にした男に接する妻の和江が、つややかなストッキングを脚に通してそうしているのと同じように。
けれども、いまの由紀也に、そのときの応接に対する後悔はない。
勤務が終わりに近づくと、彼は更衣室に入り、鼻歌まじりに靴下を履き替えてゆく。


案に相違して、その晩現れたのは自分より少し年配の男性だった。
もちろんふつうに、男の姿をしていた。
男は、達也の父ですと名乗った。
そういえば。
堀の深い顔だちがどことなく、達也とよく似た輪郭を持っていた。
いくぶん鋭さを失くし、生気が落ちているのは、
たんなる加齢のせいなのか。常習的な吸血を受けているためなのか。

「初めてお目にかかりますが、初めてのような気がしませんね」
間島幸雄(42)はそういってほほ笑んだ。
「そうですね、言われてみれば確かに――」
由紀也はそんなふうに応じた。
なにやら唇が、自分の意思とは離れて言葉を発している気がした。
考えてみれば。
このひととは、おなじ相手に吸血されている。少なくともその可能性が高い。
見ず知らずの他人では、ないように感じた。
彼の血液と自分のそれとが、同一人物の舌や喉を愉しませ、その干からびた血管に潤みを与えている。
不思議な関係だと思った。

いっぽうで、どことなく後ろめたい想いも、禁じえなかった。
眼の前のこの落ち着いた物腰をした紳士の愛息と戯れ合って、
いわば「食い物」にしているからだ。
どちらかといえば、色々な意味で「食い物」にされているのは、むしろ由紀也のほうともいえるのだが、
未成年である達也と働き盛りの四十代である由紀也との関係を、だれもがそうはとらないだろう。
間島は、由紀也の図星を指すように、
「息子がいつも、お世話になっております」
と、頭を下げた。
どこまでも、穏やかな物腰だった。
「いえいえ、こちらこそ――」
由紀也は後ろめたさといっしょにわいてきた、おかしみをこらえながら、
やはり鄭重に頭を下げた。
息子さんとエッチなコトを愉しませていただいて・・・
とは、さすがに口が裂けてもいえないな、と思いながら。

「うちの息子とは、どれくらいの頻度でお会いになられているのですか」
何気なくそんなふうに問われて、「数日に一回です」と思わずこたえてしまったが、
間島はそんなことは先刻ご承知なのだろう、一瞬ひやりとした由紀也の顔色の変化を受け流すと、いった。
「どうぞいつでも、逢ってやってください。しょうしょう変わったことをするやつですが、貴方にも、ご家族にも、決して悪気はないのですから」
なにもかも知り抜いた意識の持ち主が、淡々と言葉をつないでゆくのを、由紀也はぼう然として聞き入っていた。

この男性の息子を、自分は日常的に、女として接しなおかつ犯している。
けれどもあべこべに、この男の息子は、自分の靴下を咬み破り、足許からいやらしい音を洩らして、吸血をくり返している。
「どちらが上とか、下とか、決められないですね。強いて決めることもないでしょう。
 互恵的な関係というのは、そういうものですから」
男女のそれと、変わりありませんな、と、達也の父はいった。
お父さんにお嬢さんとのお付き合いを認めてもらえた――ひそかにそんな想いが、由紀也の胸をよぎった。

「はじめに、わたしのほうの恥をさらしておきますね」
なにかにつけて後ろめたい気分をよぎらせるのを察したのか、
間島はそれまでのことを、問わず語りに語りはじめた――


2.達也の父の問わず語り

ここへ来て、たしか一週間ほど経ったころのことでした――
「あなたのところも似たり寄ったりなのでしょうけれど」と前置きして、間島は語った。

最初に咬まれたのは、息子でした。
ある日、部活帰りにユニフォーム姿で襲われて、グリーンのストッキングを履いたふくらはぎに血をべっとりと着けて、べそをかいて帰宅したのです。
家内がびっくりして息子を迎え入れると、息子の背後には男がいました。
息子を襲った男でした。
男は息子の身体から吸い取った血を、まだ口許にぬらぬらと光らせていて、
唇の両端から鋭く尖った犬歯を覗かせていました。
その犬歯は、家内のことまでも狙っていたのです。
息子の血が気に入ったので、きっと家内にも興味をもったのでしょう。
自分の息子を咬んだ牙が自分の身をも狙っている――と家内が気づいたときにはもう、遅かったのです。
家内は玄関先で抑えつけられて、首すじを咬まれてしまいました。

行儀の良い家内は、家のなかにいても、スカートにストッキングを身に着けていました。
それがむしろ、あだになってしまったのです。
わが家を襲ったその吸血鬼は、礼装を着けたご婦人を好んで襲っていました。
ご承知のように、
街はずれの寺で行われる法事が、彼らのかっこうの餌食とされているくらいですからね・・・
都会育ちの人妻であり行儀のよい家内が、彼の目にとまってしまったのは、
いま考えると、いたしかたのないところ、というよりも、もっともなでした。
”運命”というやつですね。
いまではわたしも、それを受け容れています。ええもちろん、こころよく――

首すじを咬んで一定量の血液を摂取されてしまうと、もう身動きできなくなるのです。
身体的にも。精神的にも。
痺れた頭を抱え込むようにして悶える家内を抑えつけ、
吸血鬼は恥知らずにも、ストッキングを穿いた家内の脚を咬んだのです。
不埒な唇が家内のストッキングを唾液で濡らし、舌触りを愉しまれてゆくのをありありと感じながらも、
家内はどうすることもできませんでした。
そのまま男に、自身の装いを愉しませてしまったのです。
わたしは、家内が不意の客人を愉しませたことを、賢明な判断だったと思っています。
相手の好む飲み物を、身をもってもてなしたわけですからね。
客人をもてなすという、当家の主婦としての役割を、きちんと果たしたのだと思います――

チリチリに咬み剥がれてしまったストッキングを脱がされた女の運命は決まっていました。
その場で犯されてしまったのです。
そう、息子の視ているまえで。
息子はといえば、咬まれた首すじや足許を痛痒そうにこすりながら、
母親の受難に見入っていたそうです。
自分の衣装を剥いで胸もとをまさぐりはじめた吸血鬼の情欲よりも、
好奇心に満ちた息子の視線のほうが怖かった――あとで家内からは、そんなことを聞かされました。

じつは息子が咬まれたのは、この日に始まったことではなかったそうです。
はじめから、相性が良かったのでしょう。
下校途中に初めて襲われたとき、あの濃いグリーンのストッキングを咬み剥がれながら。
息子は彼とすっかり、意気投合してしまいました。
そしてそのとき、咬み剥がれたストッキングを脱がされてゆきながら、
息子は自分を襲った吸血鬼に約束をしたのです。
制服や部活のユニフォームの一部であるハイソックスを、いまのいやらしいやり方で愉しませてあげよう――と。
日常洗濯ものをしている母親に、靴下を何足も破かれていることがばれても困らないよう、
母親までも味方に引き入れたい。
息子はとっさにそう感じたそうです。
吸血鬼氏もまた、たまたまなにかの席で見かけた家内のフォーマルな装いに気を惹かれていましたし、
いま息子の血を口にして、その母親の生き血にも、当然にょうに興味をもったのです。
両者の意見はすっかりかみ合いました。
そして息子は吸血鬼と示し合わせて、母親の生き血を欲しがる彼のことを、家に呼び入れたというわけだったのです。

「ほんとうに、困った子ね・・・」
家内は声を詰まらせてそういいながらも、スカートの奥に淫らな粘液をはじけさせる情夫のやり口を、なすすべもなく受け入れていきました。
わたし以外の男は初めてだったそうです。
そんな初心な家内が、手練れの吸血鬼の求愛をしのげるはずはありません。
永年守りつづけてきた貞操を汚されてしまったことを悲しむ時間は、そう長くはなかったそうです。
家内はその場で自分の血を吸い犯した男にぞっこんになってしまって――そう、忌むべき恋に目ざめさせられてしまったのです。
「母さんが幸せになったんだから、良いじゃん」
と息子は言いますし、いまではわたしも、息子と同感なのですが――
わたしがなにも知らないでいるうちに、息子は吸血鬼のファンになり、家内は同じ吸血鬼の奴隷に堕ちていたのでした。

なにも知らない人間に、なにもかも知っている人間がどんなに愉快な優越感を覚えるか、おさっしになれるでしょう?
わが家がまさしく、そうでした。
ふたりはわたしが勤めに出かけてゆくと、示し合わせて吸血鬼を自宅に呼び入れて、
代わる代わる血を吸われ、女が男にされるように犯されていったのです。

やがて恋に落ちた家内は、吸血鬼と片時も離れたくなくなって、家を出ていきました。
「私、吸血鬼の愛人になりますから」
と、息子とわたしとに言い置いて。
わたしは家内のことを、送り出してやるしかありませんでした。
「いつでも帰ってきなさい」とくり返しながら。

家内がいなくなって数日後、勤め先から帰宅したわたしを出迎えた息子は、
驚いたことに、家内の服を着ていました。
サイズがちょうどぴったり合ったのです。
もちろん、息子の方が肩幅がありますし、ストッキングで装われた足許は、ごつごつとした男性的な筋肉に覆われていましたが――
けれどもその風情が、なんとなくむしょうに、わたしのことをそそってしまったのです。
気がついた時には、息子をリビングのじゅうたんの上に押し倒していました。
そして、家内との間につい最近まで交し合っていた熱情を、
あろうことか、家内の服を身に着けた息子を相手に、赤裸々にぶつけていったのでした。

息子は意外にも従順に、わたしを受け容れました。
さいしょから、そのつもりだったみたいでした。
男が男を愉しませるとき、どんなふうに振る舞うものなのか、
息子の身体は明らかに、覚え込まされていました。
吸血鬼に躾けられたのだと、あとで息子は教えてくれました。
息子のヴァージニティを勝ち得たのは、同性であるはずの吸血鬼だったのです。
「小父さんの身体は、素晴らしいよ。母さんがまいっちゃうの、無理ないと思うけどな」
息子はそういって、家内のことを弁護しました。
妻を奪ったわたしのことを気にした吸血鬼が、息子にわたしの相手をするよう指示したのだ――とも、きかされました。
わが家は完全に、吸血鬼の掌中に堕ちていたのです。

いつまでも家内をあのままにおいてはいけない、家庭崩壊になってしまう。
なによりも、吸血鬼に魅入られた家内を盗られっぱなしでは、世間の通りがよくないではないか――そんなふうにわたしは考えました。
姑息なやつだと、お笑いください――

「しばらくのあいだは、いいよ。ぼくが母さんの代わりを務めてあげるから。小父さんからの指示なんだ」
――長年連れ添った奥方を取り上げられたら、さぞかし寂しいことだろう。
――わしは一週間かけてきみの母さんを仕込んでおくから、
  そのあいだはきみが、お父さんを慰めておやりなさい。
吸血鬼は息子に、そう命じたそうです。
「あのひとたちは、ただ獲るだけじゃないんだ。ちゃんと考えていてくれるんだ」
息子のいいぶんをもっともだと思ったわたしは、
家内の口紅で綺麗になぞられた息子の唇に、自分の唇を恋人同士のように重ね合わせていったのです。
「しばらくのあいだ、母さんはあのひとにお預けしよう。でもいつか、きちんと迎えに行こう。そのあいだは、代役をお願いするよ」
そう囁くわたしをくすぐったそうに受け流すと、息子は言いました。
「母さんが戻って来てからも、母さんが恋人と逢うときには、いまみたいにいっしょに愉しもうね♪」

恥ずかしいお話を聞かせてしまいましたね、と、間島はいった。
けれども、由紀也は彼の告白を、恥ずかしいだけのものだとは受け取っていなかった。
むしろ、妻も息子も吸血鬼にたぶらかされ、息子との同性愛の関係を愉しみながら妻の不倫を受け容れその帰宅を待ちつづけた間島の告白が、肯定的な表現で彩られていることに驚いていた。
間島の寛容な態度にほだされるように、つい口走ってしまった。
「貴男と息子さんの関係は、よく理解できますよ。息子さん、いい身体していますよね」
「ああ」
間島の顔つきが、さらにほぐれた。
「そうおっしゃっていただけますと、嬉しいですな。どうぞ仲良くしてやってくださいね」
息子を犯されても嬉しい――間島の態度はそう告げていた。

「奥さんとは、その後は・・・?」
由紀也が問うまでもなく、間島は言葉をついでゆく――

家内がいないのはそれでも、わたしにとっては耐え難いことでした。
さほど夫婦仲がよかったわけではなく、都会を出てこの街に流れてきたときにはむしろ、冷え切っていました。
どうしてもかつての夫婦関係を取り戻したかったわたしは、時おり家内に強引に迫って、夫婦の営みの熱い刻をもとうとしましたが、
強いられた行為はますます、家内の心を遠くに追いやっていったのでした。

息子のいないある晩のこと。
わたしは、息子のまねをして、家内の服を身に着けてみました。
よそよそしくまとわりついたブラウスに、わたしの体温が行き渡ってなじんでくるのに、そう時間はかかりませんでした。
リビングのじゅうたんの上に横たわったまま、わたしはつい、うたた寝をしてしまいました。
どれほど刻が経ったものか――
ふと気がつくと、あたりは暗くなっていて、だれもいない室内で、わたしは上からのしかかる重圧感にあえいでいました。
わたしを抑えつけていたのは、この家から家内を連れ出していった、あの吸血鬼でした。
男はなにも言葉にしようとはせず、女のなりをしたわたしのことを、万力のような力で抑えつけて、首すじに牙を埋めてきたのです。

圧しつけられた唇の向こうで、わたしの血潮がはじけるのがわかりました。
ごくっ。ぐちゅうっ。
汚らしい音を立てて、男はわたしの血を飲み込んでいきました。
強制的な採血行為に、わたしは殺される!と思いました。
けれども男の意図は、そうではなかったようです。
男がわたしの血を気に入っていることが、すぐに伝わってきました。
――モウ少シ時間ガ欲シイ。達也ノ父親デアル貴方ノ血ハ、私ノ嗜好ニ叶ッタ味ダ。
そんな意思が、二の腕やわき腹にしつようにくり返されるまさぐりからも、伝わってきました。
わたしは身じろぎひとつならず、いや、身じろぎひとつせずに、彼の相手を務めつづけました。

吸血行為が終わるころには、わたしたちはもっと打ち解けた感じになっていて、
男がわたしの血を旨そうに飲むのをわたしは拒もうとはせず、
身に着けていた家内の服にしかけられた不埒な悪戯にすら、応じていったのです。
気がつくとそのころにはもう、わたしは妻の情夫に調教されてしまっていたのでした。
わたしは家内がそうされたように、ストッキングの脚を舐められ咬み破らせてゆき、
股間を狙って沈み込んでくる逞しい腰を、女のように受け入れていったのです。

物欲しげな掌が、家内のブラジャーやスリップを引き裂いて剥ぎ取ってゆくのを。
男の逞しい臀部が、スカートの奥に肉薄してきて、わたしの股間を冒すのを。
わたしはなんの抵抗も感じないで受け入れていきました。
ちょうど同じじゅうたんのうえ、息子がわたしの劣情を従順に受け止めたように。
そしてそのすこし前、家内が男の性欲に、寛大に接したように――
女役は、初めてでした。いつもは息子を女として愉しんでいましたから。
けれども初めて女として抱かれることで、限りない歓びに目ざめてしまったのです。

行為がすむと、わたしはいいました。
「家内のしたことは、正しかったと思っています」
「きみのしたことも、賢明だったと思う」
彼はおうむ返しに、そういいました。
「さいしょから相性が良いと直感したのです。ええもちろん、貴方も含めてです。
 わしは人の生き血に飢えていました。その時分は、まだ獲物が少なかったからです。
 そこに、都会から越してきたばかりの息子さんが現れた。
 息子さんのスポーツ用ストッキングのふくらはぎに、わしは一目惚れしたのです。
 しなやかなナイロン生地のリブ編みが整然と流れるストッキングを血で濡らしながら、
 スポーツで鍛えられた若い血潮に酔いしれたい――
 そんなことを熱望したのです。
 スポーツマンの息子さんは、そんなわしに同情して、若い血液を気前よくわけてくれた。
 ユニフォームの一部であるストッキングも、惜しげもなく愉しませてくれた。
 そして、わしが女好きなのを見て取ると、
 母さんを紹介してあげようか?とまで、誘ってくだすった。
 奥さんに初めてお目にかかって、貴女の血が欲しい、貴女を犯したいとお願いすると、
 息子のお友だちでしたら歓迎しますといってくだすった。
 それから、わしのことを気の毒がって、
 高そうなブラウスの胸を御自分から見せつけて、剥ぎ取らせてくだすった。
 「少しくたびれていますけど、一応都会の人妻なんですよ」と、笑いながらね――

わたしは、吸血鬼の告白のいくばくかは作り話だと感じました。
けれども、作り話であっても構わない、とも感じました。
家内も息子も二人ながら彼に血を吸い取られてしまったことを、わたしは悲しんではいない。
むしろ、いま置かれた現実を愉しんでしまっている――そんなことに気がついたのです。
女の姿で抱きすくめられ、しつような吸血を受けたわたしも、目ざめてしまっていたのです。
彼はわたしの身に着けた家内の服を、わたしの身体もろとも愉しんでいきました。
一家の長としてのプライドとか、勤め人として当然気にするべき世間体とか、もはや忘れ果ててしまっていました。
もはや、プレイのような愉しみしか、そこにはありませんでした。

わたしの血に濡れた家内のワンピースを剥ぎ取られ、せしめられてしまっても。
彼が好みの戦利品を獲たことが彼のために嬉しい――
そんな気持ちがしぜんと湧いてきました。
そしてわたしは、もう一着妻の服を箪笥の抽斗から取り出すと、それを身に着けて、彼のあとへと従ったのです。


彼の邸は街はずれにあって、鬱蒼としたツタに壁じゅうを覆われた洋館でした。
その一室一室に、拉っしさられた人妻や娘が、宿っていました。
家内もそのなかで、一室をあてがわれていました。
そのお邸のじゅうたんを初めて踏みしめたとき、わたしはハイヒールを穿いていました。
そう、白昼女の姿で家からお邸までを歩いて通り抜けてきたのです。
ご近所の目を気にも留めないで。
そしてすれ違うご近所の方々もまた、女の姿をしたわたしのことを、なんの違和感もみせずに受け入れて、いつもと同じように親し気な会釈を返してきたのです。

わたしは女としてその邸を訪れ、吸血鬼氏に囲われて、一週間を過ごしました。
隣室に宿る家内と入れ替わりに、代わる代わる、吸血鬼に生き血を捧げ、女として抱かれていったのです。
そして、約束の一週間のお勤めを終えて一足先に帰宅した家内に迎えられて、わたし自身も帰宅しました。
「ご配慮に感謝します」
家内はわたしにそう告げました。
吸血鬼氏との交際を認めたことに対する、女としての感謝なのだとすぐにわかりました。
不器用なわたしは、能弁に受け答えをすることはできませんでした。
ただ、「きみの恋に協力したい」とだけ告げたのです。
以来、お互い、自分の発した言葉に忠実に、日常を過ごしているのです。


間島の話はショッキングだったが、由紀也にとってはひどく新鮮でもあった。
「うちも、そんなふうになれるでしょうか?」
知らず知らず、由紀也はそんなことまで口にしてしまっている。
「もちろんですよ、さあ行きましょう」
間島は由紀也を唐突にさそった。
「どこへですか」
「あなたの奥さまの、情夫さんのところへ」


3.由紀也、吸血鬼と対面する。

そのあと彼の身に起こったことを、由紀也は忘れないだろう。
間島が女として棲み込んだというその邸は、真夜中でもこうこうと灯りがついていた。
迎え入れてくれた吸血鬼は、由紀也の顔見知りだった。
取引先として、日常接している男だった。
そして、薄々由紀也が、妻との関係を疑い始めていた相手でもあった。
「ご明察だったようですな」
吸血鬼は、悪びれもせずに、いった。
「奥さんと息子さんには、世話になっております」
悪びれない告白は、むしろ落ち着いた声色で語られた。
「話は伺いました」とだけ、由紀也はいった。
「貴男とはこれから、どんな風に接してゆけばよいのでしょうか?」
「いままでどおり、お仕事上の取引先だと思ってくだされば、それでよろしい」
「きょうは取引先に求められて、血液の摂取に応じる――ということで好いわけですね」
「そういうことになりますな」

吸血鬼は、由紀也に女装することを、あえて要求しなかった。
「いまのお姿が貴男の本意だというのなら、それがいちばんよろしい」
そういって、勤め帰りのスーツ姿のまま、やおら首すじに咬みついてきたのだった。
咬まれた瞬間、息がとまった。
物凄い衝撃のために である。
くらくらと眩暈がした。
ただ不快なだけの眩暈ではなく、性的なものがぐるぐると渦巻くのを感じた。
とうてい、自分が排除できる相手ではないと、実感した。
なによりも。
いまの快感からわが身を引き離すことが不可能になっていた。
男が首すじから唇を離したとき、たしか「もう少しどうぞ」と言ってしまったような気がする
男はそれに対して、「すこし違いますな」と指摘してきたはずだ。
そして自分から、「もう少し、吸ってください、お願いします」と、告げてしまっていた。
男はふたたび無抵抗な首すじに唇を這わせて、今度は別の部位を食い破った。
そしてごくごくと喉を鳴らして、由紀也の血をむさぼった。
このまま吸い尽くされてしまっても、それで良い――とまで、由紀也はおもった。

しつように吸いつけられてくる唇が、由紀也の素肌を愉しんでいると告げていた。
ゴクゴクと貪婪に鳴る喉が、由紀也の血の味に満足していると告げていた。
抱きすくめてくる猿臂が、由紀也自身に執着していると告げていた。
寝取った人妻の亭主を支配する。そんな強欲な劣情を越えた好意が、
由紀也の身体じゅうの血管を、毒液のように浸していった。

けれども彼がわれに返ると、
強い眩暈を覚えながらも、まだ意識を保っている自分自身を、訪問先の邸のじゅうたんの上で見出していた。

頭上に煌々ときらめくシャンデリアが、ひどく眩しい。
「いかがです?」
ひとしきり由紀也の身体から血を吸い取ると、あお向けになった由紀也を、吸血鬼は上から見おろしていた。
「わたしは邪魔者ではなかったのですか」
いまここで由紀也の血を吸い尽くしてしまえば、和江も保江――保嗣――も独り占めにできる。
けれどもあえてそうはしないで、由紀也の生命を、彼は奪おうとはしなかった。
「貴方には、生きてもらいます。奥さんのストッキング代と息子さんのハイソックス代を稼ぐ人が必要ですから」
吸血鬼の諧謔に、二人の男は、ははは・・・と、乾いた声でわらった。

「いつもの取引とは、だいぶ違いましたね」
「そうですね。一方的に恵んでいただいたので」
「家内と息子も、恵ことにしますから」
「それはありがたい」
すでにせしめてしまっているのですから、わたしがいまあさら 認めるもなにもないのかもしれませんが――
と言いかけると、みなまで言うな、と、吸血鬼は目くばせでこたえた。
「いまのわたしに、後悔が残るとしたら――」
「ええ」
「家内と息子を、わたしの意思で差し上げることができなかったことです」
吸血鬼はにんまりと笑った。
「イイエ、奥方とご令息とは、いま、あなたのご意思でいただいたのだと思うことにしましょう。奥さまの貞操も。息子さんのヴァージニティも」

吸血鬼が今度は、由紀也の足許にかがみ込んでくる。
達也と同じく、くるぶしの透けた足首に、眼の色を変えているのだ。
由紀也はひと息深呼吸をすると、ねぶりつけられてくる舌を這わせやすいように、脚の向きをゆるやかに変えていった。
「きょうの奥方は、黒のストッキングじゃった。あんたも黒でもてなしてくださる。
 夫婦おそろいというわけですな」
冷やかすような囁きを、由紀也はくすぐったそうな顔をして、受け流す。
ぴちゃ、ぴちゃ・・・という唾液のはぜる音が、悦んでいた。
由紀也は妻と息子の仇敵に自分の装いを辱められ愉しまれてしまうことに、じょじょに耽り込んでいった。

それからどれくらい、刻が経ったのだろうか。
だれもいなくなった薄暗いリビングで、由紀也は目ざめた。
彼は身を起こすと、血の抜けた身体をいやというほど実感しながら、あたりを見まわした。
カーテンのすき間から、夜明けの薄明が透けている。

血潮のこびりついたワイシャツに、お尻を喰い裂かれたスラックス。
ネクタイと靴下は、取り去られ持ちさられていた。

この格好で帰宅したら、妻はなんと言うだろう?
そんなことを考えながらも。
和江はきっと、なにも言うまい。
根拠のない確信が、由紀也の胸を満たしていた。

3月23日構想

女の装い 男の装い

2020年03月22日(Sun) 21:56:58

「お疲れ~♪お先っ」
畑川由紀也とすれ違いざま、そのOLは肩までかかる栗色の髪を揺らしながら軽い会釈を投げてきた。
ひざ上丈の空色のタイトスカートのすそから覗く太ももが、てかてかとした光沢のストッキングに包まれて、眩しい。
「あ、お疲れ・・・」
由紀也もまた何気なく、彼女に声を帰してすれ違ってゆく。
ぱつんぱつんのタイトスカートに輪郭をくっきりさせたお尻を軽く振りながら立ち去る彼女のしぐさから、
自分のもつ抜群のプロポーションに対する自身が透けて見えるようだ。

大鳥真央と名乗るそのOLは、実は男性社員である。
当地に赴任してすぐ、御多分に洩れず妻を篭絡された後。
女装に目ざめて、いまでは女性社員として勤務している。
少し派手派手しいOL服は、妻のOL時代の服だという。
いったんすれ違った大鳥真央は、くるりと踵を返して戻ってきて、由紀也に追いついた。
そのまま肩を並べて歩きながら、真央は由紀也にそっと告げる。
「奥さん、吸血鬼とラブラブなんですって?おめでと♪」
正体を知らなければ、それとはわからないほど。
真央の言葉遣いは、むっとするほどセクシーだった。
「ああ、ありがとう」
妻本人にもまだおおっぴらに認めていない関係を表立って祝われて、
それでもごくしぜんに受け入れてしまっている自分自身を、由紀也は訝しく思ったけれど。
いつか妻ともこんなふうにスマートに彼女の不倫を語れるといいな・・・と、ふと思った。
「お二人に気を使って、いい子にしているのね。ご褒美にこんど、あたしがセックスしてあげようか」
真央は口紅のよく似合う厚い唇に、笑みをたたえた。
艶やかだ――と、由紀也は思う。
男が視ても。男だとわかっていても――
「あ、でも由紀也クンには、若い男の子がいるんだもんね。彼、きょうも来るかしら?」
真央は由紀也をからかっただけだったらしい。
再びくるりと回れ右をすると、彼女は背すじを伸ばして後も振り返らずに立ち去ってゆく。
カツカツとハイヒールの足音を硬く響かせながら。

真央はまっすぐに、家路をたどるのだろうか?
情事に耽る真っ最中の妻がいる自宅に。
それとも――
ほかの同僚たちがそうしているように、オフィスの打ち合わせスペースを使って、訪ねてくる吸血鬼と愉しいひと刻をすごすのだろうか。
幸か不幸か、由紀也は後者に属していた。
「小父さんの血を飲みたいから、会社で待ってて」と、達也から電話があったのだ。

「待った?」
がらんとしたオフィスのなかに由紀也をみとめると、達也は白い歯をみせた。
グレーの半ズボンの下、ひざ下ぴっちりに引き伸ばされたおなじ色のハイソックスが、オフィスの照明を照り返しツヤツヤとしている。
由紀也は股間に昂りを覚えながら、達也のほうへと足を向けた。

「穿いてきてくれてたんだね?やっぱり来てよかった」
達也に近寄ると、彼は再び白い歯をみせて笑った。
由紀也のスラックスのすそから覗くくるぶしが、薄手の黒の靴下に透けているのを、目ざとくみとめたらしい。
「見せブラみたいで好いな♪」
達也は由紀也をちょっとからかいながらそういうと、けれども言葉が本音であることを証明するように、さっそくのように目の色をかえて足許に飛びついてきた。
「来てくれるのなら、愉しませてあげようと思ってね」
くるぶしにあてがわれる舌の熱さを覚えながら、由紀也は大人の余裕で達也の仕打ちを受け流す。
履き替えも持っているから、気が済むまで愉しみたまえね、と、由紀也はつけ加えた。
達也のみせた白い歯には、自分の血の色がよく似合う――
由紀也は下品な舌なめずりにゆだねた足首にヌメる舌の感触にドキドキしながら、ふとそんなことをおもった。

達也がオフィスに来るということは、妻の和江は吸血鬼の来訪を受けているということなのだろう。
もしかすると、和江のほうから彼の住処を訪問して、まだ帰宅していないことも考えられた。
「ご明察、和江さん、彼氏と逢っているよ。隣の部屋から保江とのぞき見してたんだ」
保江とは、保嗣の女子生徒としての名前だった。
本名と母親の名前とを組み合わせて作った名前――女子の制服を買うと決めたその日に、息子から教わった名前だった。
息子の名前を女の名前に変えて呼び捨てにされても、さいしょのときほどに心が波立つことはない。
なによりも。
達也は息子を恋人にしていた。
息子を達也が最愛の人にふさわしい扱いをする限り、この吸血少年のなかに由紀也父子を侮蔑する感情はわかないであろう。

「小父さん、ノリがいいから好きだよ。さいしょのときから、薄い靴下の脚を積極的に愉しませてくれてたものね」
血に飢えた少年が、由紀也の穿いている靴下と、靴下越しにありありと感じるふくらはぎの皮膚の双方に執着していることが、しつような舌遣いでそれとわかった。

妻が吸血鬼に堕落させられるのと、息子が女性化するのと。どちらが屈辱的な出来事だろう。
いや、自分自身にしてからが。
その双方に関わった呪わしいはずの少年の手にかかって、
皮膚も、その下をめぐる生き血も、玩ばれてしまっている。

ソファの間近かで組み敷かれた由紀也は、首のつけ根に痛痒いものがもぐり込むのを感じた。
引き替えに、じわっと生温かい液体が噴きこぼれ、ワイシャツのえり首を濡らしてゆく。
首すじに回り込んだしたたりが、ワイシャツの裏側にすべり込んで、
アンダーシャツまで生温かく染めてゆく。
なのに由紀也は、いっさいの抵抗を放棄して、この吸血少年の貪婪な欲望に自らをゆだね切ってしまっている。

半ズボンを脱いで濃紺のハイソックスの脚を突っ張った少年の一物が、股間を冒した。
思うさま排泄された粘液に生温かく浸されながら、由紀也の一物も逆立っていた。
そして今度は少年を組み敷くと、逆に彼の股間を冒しにかかった。
少年は薄笑いを泛べながら、わざと力をゆるめた抗いで男の劣情を逆撫でにかかった。
じょじょに相手の侵攻を許していって、最後にはしつようで力強い吶喊に身を任せていった。
この吸血少年はしたたかにも、父親と息子とを、同時に手玉に取っていたのである。

血を吸い取られる感覚に陶酔を覚えながら、由紀也はおもった。
真央のように女を装って吸われるのと、男の姿のまま吸われるのと、意味は同じなのだろうか?と。
息子は女の姿になってしまった。
けれども由紀也自身は、いまのままの姿で吸われ捧げるほうが、自分にぴったりとくるような気がしていた。

2月3日構想

ビッチと淑女

2020年03月22日(Sun) 19:38:34

この街に移り住んできたときからの友達だった。
引っ込み思案な性格で、都会では友達ひとりできなかった保嗣は、達也の存在に夢中になった。
彼がじつは吸血鬼で、クラスのだれもがその事実を知っている――そう告白されても。
保嗣の達也に対する友情は、変わることがなかった。

部活帰りに襲われて吸血鬼になったという達也は、
自分が初めて咬まれたときのように、長い靴下を履いた脚に咬みついて吸血することを好んでいた。
半ズボンにハイソックスという、この街の学校のユニセックスな男子制服は、かっこうの餌食だった。
保嗣は達也の好みを理解すると、ずり落ちかけていたハイソックスを引き伸ばすと、ためらいもなく血に飢えた友人のほうへと差し伸べていった。

吸いつけられる唇を。
咬み破かれるハイソックスを。
しなやかなナイロン生地のうえに生温かくしみ込んでゆく、赤黒い血潮の拡がりを。
息をつめ夢中になって、見つめていた。
保嗣の血潮に秘められた優しい心遣いは、達也にストレートに伝わった。
唇をうごめかして血を啜る達也は、保嗣をギュッと抱きすくめて、
その抱きすくめられた熱情が、こんどは保嗣にストレートに伝わった。
お互いの熱情を伝えあい、受け止めあいながら。
ふたりはいつか、互いに互いの唇をむさぼり合うようになっていた。

男子の姿で抱かれて血を吸い取られているその時分には。
まだしも、節度や品位といういものが、あったように感じる。
初めて女子の制服を身に着けて登校したとき。
眼の色を変えて迫ってきた達也は、
自分の恋人が吸血鬼に吸われるのすらかえりみず、
ひたすらに、保嗣を求めていった。
求められるままひざを割られ、スカートの奥深くまで、ごつごつとした太ももの侵入を受け容れて。
半ズボンを脱ぎ合って睦み合うことを覚え込んでしまった身体は、しぜんと反応を重ねていって。
ふたりの男子のまぐわいは、いまは男女のまぐわいと何ら変わらないようすで、進行していったのだ。

そのあとの授業はもう、当然のことながら手につかなかった。
教室には戻ってみたものの、
授業の最中に出ていったふたりのあいだになにがあったのか、男子生徒も女子生徒も、だれもが理解しきっていて。
もちろんそんなことはおくびにも出さず、授業に励んではいるのだけれど。
目に見えない視線が自分を押し包む感覚を、もうどうすることもできなかった。

達也も同じ思いだったらしい。
つぎの授業も、またつぎの授業も、途中で保嗣をいざなって廊下に連れ出すと、
今度は授業中のクラスのまん前の廊下で、保嗣を組み敷いていったのだ。
思わず漏らしてしまった声は、筒抜けになっていたはず。
けれどもクラスメイトのだれもがそのことを咎めもしないばかりか、
入れ代わり授業にやって来る教師さえもが、ふたりの行動に視て視ぬふりを決め込みつづけたのだった。

スカートの奥に突き入れられた衝撃の余韻に、股間を熱く浸されたまま。
保嗣は教室をあとにし、家路をたどった。

女の身なりに服装を変えただけなのに。
いったいなにが、起こったというのだろう?
もはやそこには品位も節度もなく、
ただ”ビッチ”(牝)の振舞いが、そこにあるだけだった。

いままでも男子の姿で、そういうことをしてきた。
けれども、女の姿でするそれは、なにかが根本的に違っていた。
ごくおだやかに献血をし、
もっと性的な交接の時も、息を弾ませ合った昂りはあったけれども。
女と男になってしつように手足を絡ませ合ったあのひと刻は、
それらすべてを洗い流してしまうほどの力を持っていた。

けれども、ふと歩みをとめて保嗣はおもう。
ビッチと淑女とは、なにがどれほど違うというのだろう?



保嗣が目指した自宅では。
母親の和江が、家に上がり込んできた吸血鬼との情事に、淫らな汗を流している真っ最中だった。
激しい息遣いのもとに迫られ、肌をこすり合わせた挙句。
着乱れた黒のスリップの肩紐は、片方が二の腕にふしだらにすべり落ちて、
穿いたまま姦(や)れるからと情夫を悦ばせた黒のガーターストッキングは、これも片方がひざ小僧の下までずり降ろされていた。
すでに肌色のパンティストッキングは一足残らず、情夫の牙にかけられていて。
くしゃくしゃにされてむしり取られて戦利品としてせしめられるか、屑籠のなかへと堕ちていった。
派手になったのは、下着だけではない。
いままでの装いは、薄茶とか空色とか、地味なものが多かったはずなのに。
そうしたブラウスたちは襟首に血をあやしたまま情夫にせしめられていって。
入れ代わりにあてがわれた衣装は、真っ赤やショッキング・ピンクといった刺激的な色合いが増えている。
夫のいる夕方に呼び出されたとき。
指定された真っ赤なミニのワンピースに、てかてか光る黒のストッキングのイデタチで玄関に立った時。
背後で夫がなにか言おうとしてすぐさま口を噤(つぐ)んだのを。
上首尾にも外出の許可をいただいたんだわと思い込むほど、したたかな女へと変貌し始めていた。

息子はきっと、味方になってくれるに違いない。
彼女にはそんな確信があった。
だって、初めて吸血鬼が自宅に侵入をする手引きをしたのは、ほかならぬ息子だったから。
彼は彼の友人である吸血少年を伴っていつものように下校してきて、
更にもう一人ともなった招かざる客人が、母親の貞操を清楚な衣装もろともむしり取るのを、ふすまの向こうからのぞき見していた。
息子は母親に対する凌辱行為を妨げようとしなかったばかりか、
自分の痴態を目の当たりに昂りを覚えたうえに、同伴してきた同性の親友と、男女どうぜんのまぐわいを熱っぽく交し合ってしまったのだ。

それ以来。
帰宅してきた息子が、母親が情夫との名残を惜しむ時間が少しばかり長くなったからといって、視て視ぬふりを決め込んでいた。
多くの場合は同性の恋人を伴っていて、二階の勉強部屋や、
ときには母親が情婦にされたその日と同じように隣室のふすまの陰から視線を送ってきて、昂りをより深いものにしているらしかった。

「ああ、帰ってきた・・・」
和江が鈍い声で呟くと、吸血鬼はまさぐる手を止めかけたが、すぐに思い直して、
さっきよりも濃いまさぐりを、
胸許に。わきの下に。股間に・・・と、探り入れてくるのだった。


きょうの息子の居場所は、夫婦の寝室のすぐ隣らしかった。
ドア越しにかすかながら洩れてくる物音が。
ふたりの少年が組んづほぐれつしているところを、リアルに想像させた。

かつて名流夫人と謳われた和江だが。
もはや吸血鬼との情事を恥じる気持ちさえ、忘れ果てようとしていた。

身に着けていたモノトーンのプリントワンピースは、貞淑だったころからの数少ない生き残りの衣装だった。
それが、襟首に血潮を散らし、すそを太ももが見えるほどたくし上げられて、
着崩れさせた衣装から、素肌を挑発的に露出させた、さながら娼婦の装いとなっていた。
足許を清楚に装っていたはずの黒のストッキングは、淫らな唾液にまみれ、くしゃくしゃにされて、
ふしだらな皴を波打たせてずり降ろされていた。

清楚な名流夫人のおもかげは、もはやあとかたもなかった。

いつからこのような、”ビッチ”になってしまったのだろう?
清楚な装いを淫らに堕とされて。
辱められることが歓びに変わり、
清楚な装いを不埒な情夫を悦ばせるために身に着けるようになって、
篤実な勤め人の妻としての良妻賢母の装いの下には、淫らな娼婦の血潮が脈打っている。

けれども、”ビッチ”と”淑女”のあいだに、どれほどのへだたりがあるというのだろう。
清楚な装いを剥ぎ取られ、あっさり堕ちてしまった私――
それなのに、いまは情夫を悦ばせるために、あえて清楚に装って歓心を買おうとしている私――
そう、なにもかもが、紙一重なのだ。

息子は、男と女のへだたりをさえ、とび越えてしまっている。
私が、淑女から娼婦へのへだたりを駆け抜けるくらい、なにほどのことがあるのだろう?

3月15日構想

女装で登校。

2020年03月15日(Sun) 00:35:11

しゃなり、しゃなり、と。
音がまとわりつくように感じた。
初めて女子の制服を身に着けて、玄関を出たときのことだった。
母親の和江に見送られて家を出ると、保嗣はほうっと息をついた。
深呼吸で吸い込んだ冷気が、肺の奥まで沁みとおった。
達也は校門の前で待っている約束だった。
そこまでは、女子のカッコウで一人で歩く。
羞恥プレイみたい・・・と思いながらも。
独り言さえ女言葉になっている自分に気がついて、ちょっと嬉しかった。

いつもの半ズボンと同じように太ももを外気に曝しながらも。
まとわりついてくるスカートのすそが、ひざ小僧のあたりをひどく刺激していた。

見慣れた通学路が、別世界にみえる。
すれ違う人たちのなん人かは、保嗣の正体に気がついたのか、チラと目線を投げてくる。
そのたびにちょっとビクビクしてしまったけれど。
校門で待っている達也のことだけを考えて、保嗣――いや保江は、いっしんに通学路をたどった。

「よう」
達也がにんまりと笑って、こちらに向かって手を振った。
思わず淑やかに、お辞儀で返していた。
揺れるウィッグが頬に触れて、女の姿をしていることをいっそう実感させる。
「似合うじゃん。期待以上♪」
達也のピースサインに「そお?」と、保江は満足そうに笑った。


「起立!」「礼!」で始まる朝礼とホームルームは、いつも通りだった。
暮らしメイトのなん人かは、きのうまでと様変わりした保江のイデタチに、ちょっとびっくりしたように目を見張ったが、傍らの達也を意識してか、からかうものもおらず、声をかけてくるものもいなかった。
周囲の無反応が少しもどかしいくらいに感じていたら、
隣席の田中将人が声をかけてきた。
「やるじゃん。女子になったんだ」
「ああ・・・うん」
ちょっとだけ男言葉に戻りかけながらも、保江はウィッグを揺らして頷いた。
「親とか、反対しなかった?」
「ううん、意外にね、もの分かりよかったよ」
すっかり女のクラスメイトに戻って言葉を返すと、将人もまた、女子と話しているときと同じ態度に終始してゆく。
そのようすを遠くから見守る達也がにんまりするのを背中で感じながら、
彼氏以外の男子とおしゃべりをしているところを視られた気分になっていた。
「ほかの男子とも、どんどんしゃべれよ」
達也が声をかけてきた。
「そうなんだ」
「女子になったのをもっと感じて欲しいからな」
「わかった」
ちょっとだけ湧いた後ろめたい気分が、前向きに回れ右をした。
達也には短い返事だけを返して、保江は傍らの友人に声を投げてゆく。
「城田くーん!」


「よっ」
背中をたたかれて振り向くと、見慣れない男子生徒。
よくみたら、月川ヨシ子が笑っていた。
ショートカットの黒髪がよく似合う十四才。達也の彼女だった。
スポーツマンの達也は、女子にもてた。
そのなかで達也の彼女の座を勝ち取るのは、女子のあいだでも至難だったはず。
もしかすると”恋がたき”になるかもしれない彼女のことを、保江は眩しく感じる。
よく見ると、ヨシ子は一層眩しく見えた。
彼女が身に着けているのは保江とちょうど正反対――男子の制服だったのだ。
「これ、あなたのよ」
意外なことを、ヨシ子はいう。
そういえば。
達也にひとそろい、自分の制服をあげたことを思い出した。
抱かれた後に、着ていた制服をプレゼントしたのだ。
「時々借りてるの。悪く思わないでね」
ヨシ子はクスッと笑い、保江も思わず笑い返していた。
彼女は保江のことを、”恋がたき”ではなく”同志”だと思ってくれているらしい。
伸びやかな脚を覆う紺のハイソックスが、さらに眩しかった。

「行こうか」
かねて約束していたような顔をして、いつの間にか傍らに立っていた達也が声をかけてくる。
声をかけられた範囲に、保江もヨシ子も入っているらしい。
ちょうど授業が始まる間際だった。
他の生徒が着席するなか、廊下に出ていく3人のほうを、教師はわざと見ずに済ませた。

「どこに行くの?」
と問う保江に、
「いいところ」
女子の姿をしている保嗣――保江にすっかりいままで以上の親近感を抱いたらしいヨシ子が、スカートのお尻を叩いた。

誘い入れられた空き教室は、冷え冷えとしていた。
がらんどうな空気の支配しているモノトーンな教室のなか。
ずらりとならんだ机といすが、後ろのほうだけ不自然に片寄せられている。
「あそこがあたしたちの遊び場・・・なのよ」
ヨシ子が保江に耳打ちした。
案の定。
教室の隅に佇む黒い翳は、あの吸血鬼だった。

「やあ」
達也は健全なスポーツ少年の笑顔で吸血鬼に会釈をした。
吸血鬼は眩しそうに、会釈を返した。
「真っ先はぼくだよね?」
そういって半ズボンの下から差し伸べる脚は、球技サークルのユニフォームである、モスグリーンのストッキングに装われている。
「ククク・・・まあそうだね」
吸血鬼の浮かべた笑みに、ヨシ子が「やらしい」と、声をあげる。
少女の呟きを横っ面で受け流しながらも、吸血鬼は目でこたえてゆく。
どうやらヨシ子と吸血鬼も、遠い関係ではないらしい。
それ以外はほとんどわき目もふらず、
吸血鬼は達也の足許にかがみ込むと、運動部のユニフォームの一部に唇を吸いつけ、牙を埋めた。

う・・・っ
達也の眉がこまかく震える。
軽く食いしばった歯がキリキリとなるのが、聞こえるようだった。
吸いつけられた唇の下。
モスグリーンのストッキングにじわじわとしみ込んで拡がってゆく達也の赤い血に、ふたりの少女は目を奪われた。
愛する人の身体に脈打つ血――それはふたりにとって、特別なものだったから。
達也が尻もちをついてしまうと、吸血鬼はふたりの少女を振り返った。
吸い取ったばかりの血が、むき出された牙にあやされていて、それがチラチラと生気を帯びた輝きを秘めていた。
きれい――
少女はふたりとも、異口同音に声をあげた。
ヨシ子は催眠術にかけられたようにふらふらと脚を踏み出して、吸血鬼のほうへと歩み寄った。
そんなヨシ子をしっかりと抱きすくめると。
男はヨシ子の白い首すじに、彼氏の血のついたままの牙を咬み入れた。
じわっ・・・と噴き出す血潮が、ひどく鮮やかに、保江の網膜を染めた。
ブラウスの襟が赤黒く浸されるのもかまわず、少女は吸血鬼に生き血を捧げてゆく。
彼氏である達也は、尻もちをついたまま、恋人が吸血されてゆく様子を、うっとりと見上げてしまっていた。


自分の彼女を吸血鬼に襲わせて、処女の生き血を提供している男子がなん人もいるという。
そのひとりが達也だということを、保江は初めて知った。
両刀使いの達也は、ヨシ子のことも保江とおなじくらい、愛しているに違いない。
そうした愛情と、吸血鬼との仲を認める行為とは、きっと矛盾するものではないのだろう。
ヨシ子を愛しながら、愛するヨシ子を吸血鬼に吸わせる。
保嗣を愛しながら、その保嗣が吸血鬼の毒牙を享ける道すじを、整えてゆく。
愛するがゆえに、吸血鬼に捧げたくなるのだろう。
自分の恋人を吸血鬼に誇ることと、吸血鬼に襲わせることと、
たぶん達也のなかでは矛盾がないのだろう。
「ああーっ」
吸血鬼の腕のなか、ヨシ子が切なげに叫びをあげた。
わざとのような声色に、達也をそそろうとする努力を感じ取った。
けれどもその声色に、本音の快感が秘められていることを、達也も保江も感じ取っている。

「こんどはきみの番――吸い取られてしまったぶんは、きみがくれるんだよ」
達也が生えかけた牙をむき出して、保江に迫る。
「うん、いいよ・・・」
保江は陶然となって、ブラウスの釦を二つ三つ外し、達也の牙を待った。

ちゅうちゅう・・・
きうきう・・・
ふた色の吸血の音が、競い合うように、空虚な教室に響いた。
ひとつはヨシ子を相手にした吸血鬼の口許から。
ひとつは保江を吸いつづける達也の口許から。
お揃いの制服を着た女子生徒――ひとりは男子――は肩を並べ手をつなぎ合って、
吸血鬼たちの貪婪な欲望に、わが身をゆだねていった。


気がつくと。
傍らのヨシ子の姿がなかった。
吸血鬼も、いなくなっていた。
ふたりの行方を気にする間もなく。
「さあ、これからが本番♪」
達也が嬉しそうに、白い歯をみせた。
彼の下肢からは制服の半ズボンが取り去られて、
血をあやしたモスグリーンのストッキング一枚になっていた。
保江はふらふらと起きあがると、達也の太ももを抱いて、股間の一物を口に含んだ。
「ああ・・・いいなぁ・・・夢だったんだ・・・女になった保江に咥えてもらうのが」
恋人の行方など眼中にないように、達也はあらぬことを口走る。
口の中ではじけた一物が、巻きつける舌に応えるように、熱く圧してくる。
ほろ苦い粘液を口に含み、喉に流し込みながら、保江はなおも夢中になって、吸った。

気がつくと、教室の床に組み伏せられていた。
真新しい制服のスカートのすそが拡がり、
そのすき間から、達也のごつごつとしたひざ小僧に脚を押し広げられて、
熱く逆立った一物が、太ももをすべるようにして、スカートの奥へと侵入してくる。
ひざ小僧の下に巻きついたハイソックスの口ゴムの感触を、妙に生々しく感じながら、
保江はその逆立つ一物を、従順に迎え入れた。

いままでもなん度となく重ねてきた行為――
けれども、女子の制服を身に着けての営みは、また別次元のものだった。

ああ。いまこそ達也くんに、あたしの処女を捧げる――
保江は幸福感に充ちた瞳を瞑り、股間への熱い侵入を、淑やかに迎え入れた。

3月13日構想。

吸血鬼たちによる、少年たちへの教室内乱交。

2020年03月08日(Sun) 08:00:30

ひとりの少年は、ハイソックスのうえから脚を咬まれた。
もうひとりの少年は、ハイソックスをずり降ろされて、脚を咬まれた。

ハイソックスの舌触りと。
生の素肌の舌触りと。
どちらを愉しむほうが、よりいやらしいのだろう?
吸うほうも。吸われるほうも。そんなことを考えながら――
体内から抜き取られる血の量を省みることなく、ふたりの少年は献血に夢中になってゆく。

やがて血に飽きると吸血鬼どもは、少年たちの制服姿にのしかかる。
ハイソックスをずり降ろされた二対の脛を輝かせながら、少年たちは犯される。
白い歯のすき間から、随喜のうめきを洩らしながら。
腰を振って、応えてゆく。

犯される少年たちは手をつなぎ合って、言葉を交わす。
まるで娼婦になったみたいだね と。
そして、獲物を取り替え合う吸血鬼にこたえて、覚えたてた愛技で、彼らの欲望に応えて、
いけない遊戯に耽り込んでゆく。
女のようにあしらわれたふたりの少年は、放心状態で放課後を迎える。
そして、情事を終えた頃合いの母親たちの待つわが家へと、下校してゆく。

制服店にて

2020年03月03日(Tue) 07:56:42

中学生の息子を連れた母親が入店してくるのをみて、制服店の小母さんは、
「ああ、制服ですか?」
と、声をかけた。
「あ、はい、そうなんです・・・」
生真面目な母親がちょっぴり口ごもるのを、保嗣は心のなかでくすっと笑う。
「あのぅ、じつは、女子の制服でお願いしたいのですが」
決まり悪げに口火を切る母親を、ちょっといとおしくさえ感じた。
少なくとも、いまの言動のうえでは、和江は自分の側に立ってくれている。
そんな共感が、母に対するシンパシーを生んだのだろう。
父に黙って吸血鬼の情夫と逢いつづける母を、許しても良いと保嗣は感じた。

少女のように戸惑う安江を相手に、制服店の小母さんは、意外なくらいさばさばと、
「あ、そうなんですね?最近、そういう生徒さん多いんですよ~」
と明るく受け答えを返してきた。
一瞬、保嗣のほうにも目線を合わせてにっこりすると、
「採寸しますので、こちらへどうぞ~」
と、自ら先に立って母子を店の奥のほうへと案内した。
照明の弱いお店の一番奥のほうに、カーテンの下がった試着室がひっそりと佇んでいた。

保嗣が試着室のまえでちょっとのあいだまごついていると、
小母さんは早くも制服を一着両手で抱えてくると、いった。
「きみならA体でだいじょぶそうだね」
男子の制服である半ズボンから伸びた豊かな肉づきの太ももに、小母さんはふと眩しそうに目を留めた。
「スカート、履き方わかる?」
と問う口調には、からかいや冷やかしの色はまったくなかった。
これから女の子になるんだね、と、しぐさで伝える様子は、
これから中学生になるんだね、と、去年の春にしぐさで伝えてきた様子と、変わりなかった。
用意が整うと、小母さんは気を利かせるようにして、試着室から離れていった。
カーテンの向こうに保嗣を押し込みながら、
「きみ、ハイソックス似合うね」
と、ひと言添えるのを忘れずに。

お店の小母さんの好意的な物腰は、少年をひどくくつろいだ気持ちにさせた。
ちょっと動いただけで肘や肩の触れそうな密室のなか、
スカートを腰に巻き、ウェストのホックを留めると、つぎはジャケットを羽織ってゆく。
制服のスカートの重たい生地が、ひざ小僧の周りでさわっと揺れた。
迫ってくるほどの狭いスペースのなか。
真新しい制服の生地の香りが、保嗣の鼻腔を浸した。
血が騒ぐのを感じた。
少年の血ではなく、少女の血が目覚めたように、保嗣の身体の隅々まで脈動し始めた。

もとの姿に戻って試着室を出ると、小母さんは脱いだままの制服を大事そうに抱えた。
「お母さん、買ってくれるみたいだよ」
と小声でいうと、やはり大事そうに、丁寧にたたみ始めた。
初めてそでを通した女子の制服が、そのままそっくり自分のものになる。
そんな光景に、保嗣は胸をわなつかせた。
自分でも滑稽だと感じながらも、いまの瞬間を大切にしたい――と、そう思った。
あの服を着て、達也に抱かれる。
初めてそんな想像をすると、脚のつま先まで真っ赤になったかと思うくらい、のぼせてしまった。
小母さんは、そんな保嗣の様子に気づかぬようにして、ひたすら作業に没頭していた。

「スカートはミニ丈のもありますよ。最近は男女問わず人気があるみたいなんですよ」
さりげなく売り込みをかけた小母さんに、和江は「どうする?」と息子を振り返り、
保嗣はちょっと考えて、
「じゃあ、ミニもお願い」
とこたえた。
ミニ丈のスカートには、タイツかストッキングが好いな、とふと思ったのに応えるように、
「タイツとストッキング、買っておいたから」
と、傍らから和江が囁いた。
「余分めに、ね♪」
和江は、イタズラっぽく笑っていた。

保嗣の身体のあちこちにメジャーをあてがった小母さんは、職人のような目つきになって値踏みをするように少年と制服とを見比べた。
「袖をちょっと出しますね。1時間ほどで終わりますから、きょうじゅうに受け取れますよ」
「受け取りは自分でできるわね」
畳みかけるように尋ねる和江のほうはふり返らずに、保嗣は「わかってるよ」と、うるさそうにこたえた。
それが照れ隠しなのだと、和江も、小母さんも、保嗣自身も、分かり合っている感じだった。

「念のため二着いるかな」
さすがに制服店にまでは姿をみせなかった父親の助言に従って、
同じサイズの制服を二着、スカートはひざ丈とミニ丈をそれぞれ二枚ずつ購入した。
いったん制服店を出て他の買い物を済ませると、和江と保嗣はふたたび制服店へと戻ってきた。
どうしても早く受け取りたい、と、保嗣がせがんだためだった。
さいしょは一人で受け取らせるつもりだった和江もいっしょについてきたのは、買った制服が二着だったためだった。

二着の制服はそれぞれ立派な紙製の箱に入れられていた。
小母さんはその両方をひとつずつ開けて中を確かめるようにとすすめた。
しわひとつない真新しい制服に、保嗣は胸をずきん!とさせた。
明日から髪を伸ばそうと思った。
しばらくのあいだは、さっき買ったウィッグのお世話になるけれど。
いずれ地毛で女生徒としての髪の長さを蓄えて、学校に通うのだ。
母親は「お祝いね」と言い添えて、制服店で黒のストッキングを何足か買い求めてくれた。
たぶん・・・今週中にはすべて、吸血鬼の小父さんと達也とによって、咬み破かれてしまうだろうけど。
心のなかでほろ苦く笑いながら、保嗣は母親の振舞いに”同性”どうしの気遣いを感じて、神妙にありがとうと言った。

お財布のなかから一万円札を何枚も取り出す母親に、さすがにちょっと済まない気になりかけた保嗣だったが、
「来週はこれを着て女子になるんだよね」
と、和江が白い歯をみせると、嬉しそうに笑い返した。
母子とも葉の輝きが生き生きとしていると、制服店の小母さんは思った。
そして、いつも以上に心を込めて「ありがとうございます」を告げた。

2月20日構想 3月3日脱稿

このところ。

2020年02月11日(Tue) 09:21:27

ずうっと、同性ものが続いています。
年明けころからだったでしょうか?
いままでもそうした話は皆無ではなかったのですが、このところびっくりするほど構想が湧いてきました。
特に柏木の嗜好が変わったというわけでもなく。ちょっと不思議な気がしているのですが。
構想が湧き上がる限り、そのおもむくままに描くことにしていますので、
いましばらく、お付き合いください。

あまり意識したことはないのですが。
吸血鬼であるか人間であるか。
夫婦であるか否か。
そうした枠組みを超えるというのが、もしかするとひとつのテーマになっているのかもしれないですね。

もっとも、このテの話が苦手 というかたは、
カテゴリで「少年のころ」というのがそのテの話を含んでおりますので、避けて通っていただければ幸いです。

ああもっとも――
このカテゴリには、同性ではない話も多々含まれます。
ややこしくて、すみませぬ。。

月光奏鳴曲  ――ムーンライト・ソナタ――

2020年02月11日(Tue) 06:24:58

開け放しになった窓の向こうには。
闇になりたての空に、銀色の月が済んだ光を放っている。
ステレオのスピーカーが呟く低音のチェロの唸りが、
淡い闇のわだかまる畳の部屋に、ひっそりとわだかまっている。

ふたりの少年は、むき出しの胸を合わせて、互いに抱きすくめ合って、
互いに互いの体温を確かめるように、皮膚をこすり合わせている。
時おり重ね合わせる唇は熱く、周囲の冷気を忘れさせて、
はぜる呼気を呼び合うように重ねて、すれ違う乳首をじんじんと疼かせていた。
前を大きく開いた半ズボンに、ひざ下までぴっちりと引き伸ばされたハイソックス。
暑苦しく火照った足許から、少年たちは制服の片割れを取り去ろうとはしない。
唯一全き形で身体にとどめた衣類をいとおしむように、
それこそが最後に残された礼儀だと心得ているかのように脚を絡み合わせて、
互いに互いの、しなやかなナイロンの感触を確かめ合っている。

合わせた身体を放すと、少年たちは互いに相手の脚を吸った。
逞しいほうの少年は、女のような餅肌を持つ少年のなまめかしさを恋い慕い、
たおやかなほうの少年は、スポーツで鍛えられたしなやかな鎧のような筋肉に圧倒された。

逞しい少年がたおやかな少年の足許を吸うときは、
ハイソックスのうえから犬歯を埋め込んで、うら若い血液を喫った。
たおやかな少年は、相手の非礼を咎めることなくその行為を受け容れて、
制服の一部にじんわりと滲む血潮の生温かさに心を浸した。

たおやかな少年が、お返しの行為に耽るときには、
ハイソックスの足許からしなやかな太もも、それにその奥の股間までをも、
器用に慣れた唇で、くまなく舐めた。
逞しい少年は、自分のほうが犯されているかのように背すじを仰け反らせ、
促されるままに思うさま、半透明の熱情を、同性の恋人の喉の奥へと吐き散らしていった。

たおやかな少年は血を啜られることに、相手に尽くす歓びを覚えて胸を弾ませ、
いいよ・・・もっと吸ってとせがみつづけて、
逞しい少年は心優しい恋人のかいがいしい振舞いに胸震わせて、
きみが好きだと熱く囁く。

性別を同じくする者同士の性愛は、どこの世界でも忌まれることが多い。
けれども、子供をなすだけが性愛のすべてなのか。
不器用に交わされる気遣いと気遣いは、ふたりを照らす月の光と同じくらい、澄み透っていた。


オフィスの窓越しに覗く月は、フロアの住人たちに省みられる機会をほとんど持たない。
けれども、とり澄ました希薄な人間関係がお疲れさまの声を交えて立ち去ってしまい、
人影がふたつになり、照明までもが消え去ると。
窓に射し込む淡い輝きは、にわかにその存在感を増す。

「待ってたぜ、来ると思ったよ」
生き血に飢えた大人になりたての吸血鬼と、男盛りの血液に充ちた働き盛りのビジネスマン。
奇妙な取り合わせは当人同士も意外なくらいしっくりと組み合って、
ぶきっちょな手がネクタイをほどき、アンダーシャツを引き裂くと、
手練手管を帯びた腕が、むき出しの太ももに巻きつけられてゆく。

「よその息子さんに、不埒なことを教え込んでも良いのかな」
少年が男をからかうと、
「きみこそ、親友の父親を誘惑してるんだぜ?」
と、相手は恋人に交ぜ返した。

少年は制服のハイソックスの足許をツヤツヤと輝かせ、
男はスラックスの下に隠したストッキング地の靴下にくるぶしを透き通らせていた。
互いに互いのために装った足許に、うっとりと目を向けあって。
男女の交わりがシックスナインの姿勢を描くように、
互いに互いの足許に、唇を吸いつけ合ってゆく。

「小父さんの靴下、色っぽいね」
と、少年がビジネス用のハイソックスを舌でずり降ろすと、
「きみこそ、こんななりをして勉強がはかどるの?」
と、男は学生用のハイソックスをくしゃくしゃに波打たせてゆく。

セックスに長けた大人は、少年を難なく陶酔の淵に引きずり込んだ。
熱情に優る少年は、ひと足先にむき出しにした裸体をオフィスの床のうえに仰け反らせ、悶えながら応えてゆく。

似通った面差しが、血の近さを感じさせる。
少年は男とその息子とを、羨ましいと思った。
生気に満ちた血潮を慢心に湛えて、ふたりは父子ながら少年の渇いた喉を、惜しげもなく潤した。
自身のなかで織り交ざる父と子の血潮を、干からびた血管に漲らせることが。
いまは少年の生命力の源となっている。

手練手管に長けた四十男は、しばしば息子と同い年の少年を圧倒した。
吸血鬼が人間を支配するという単純な方程式は、ここでは成り立たない。
股間に擦り合わされてくる舌は、まだその種の営みの経験が浅い少年に、
淫らで奥深い技を教え込んでゆく。
彼の息子の不器用な振る舞いが、血に飢えた恋人に甲斐甲斐しくかしづくのとは、裏腹な振る舞いだった。
父親は技を教え込み、息子は真心を尽くした。
どちらがより尊いというものではない、と、少年はおもった。
そして少年は、父親には真心を伝え、その息子には技を教え込んでゆく。
中和されることの無い不均衡が、むしろ三人を三様に愉しませ悦ばせる。

行為を尽くして恋人たちの胸から身を放した少年は、
放心した父親の足許から薄い靴下を抜き取り、
気絶したその息子の足許から、自分のとお揃いのハイソックスを抜き取って、
意地汚くポケットにねじ込んでゆく。
彼らの衣類を几帳面に整えたその妻と母親とは、まだ夫婦の寝室に留まっていて、
数百年鍛えたといわれる牙を祖の柔肌に試され、熟れた血潮を愉しまれている時分だろうか。

すべての営みを、月だけが視ていた。


あとがき
夕べは”スノームーン”だったそうですね。
透き通る満月の冷たい輝きが、むしろ優しく思えるこのごろです。

朝帰りの母。女子の制服をねだる息子。

2020年02月02日(Sun) 09:57:54

「やっぱり朝帰りはまずいよ、母さん」
翌朝、父が出勤していったあとまで家に残っていた保嗣は、
9時をまわったころにけだるそうな顔をして戻ってきた和江に、そういった。

夕べ。
息子から女子の制服をねだられた和江は、息子の帰宅直前まで耽っていた吸血鬼との情事を思い出して、
股間を再び疼かせながらエプロンをはずした。
主婦を辞めて娼婦を始める――はた目には、そんな宣言のようにもとれるしぐさに、
息子の保嗣が胸を「ずきん!」と弾ませていたことに、和江は気がつかないでいた。
きっと母さんは朝帰りになる。
そうなると見越して、近所のおばさんの相談に乗っているとかなんとか・・・うまく口裏を合わせたとは言いながら、保嗣は母親をからかい半分にたしなめた。
「父さんと母さん、いつまでたっても、行き違いだよね。
 早く父さんに、ぼくに女子の制服を買ってくれる件を相談してほしいんだけど」

昨晩。
保嗣の父(和江の夫)である由紀也が、保嗣の親友である達也を相手に勤務先の無人のオフィスで情事に耽っていたころ。
母の和江は和江で、吸血鬼の誘いを受けていた。
半吸血鬼となった達也は、「ヤスくんとの交際をお父さんにも認めてもらう」と言い捨てて、保嗣の血を喫ったその足で由紀也のオフィスを訪れて、
保嗣の父を黙らせるため、そしてそれ以上に彼と睦み合うのを愉しむために、一夜を過ごしていた。
そして、保嗣の父の帰宅を遅らせることで、達也の大好きな吸血鬼の小父さんと和江との逢瀬に邪魔が入らないようにも画策したのだ。
オフィスでの情事には、さまざまな意味があったのだ。

保嗣は、達也が父と逢っていることも聞かされていたし、達也の意図も大体は理解していた。
和江がやすやすと吸血鬼にモノにされてしまったことに、
さいしょは控えめながら不満を鳴らした保嗣だったが、
いまでは自分の血を初めて喫った吸血鬼が、
母親の血を気に入ってくれていることに満足を覚えるようになっている。

初めて自分の血を喫った吸血鬼が、母と。
同性の恋人になった同級生が、父と。
生き血を吸い吸われて仲良く交わっていることが。
保嗣にえもいわれない幸福感をもたらしていた。

「一体夕べはどこにいたの?」
そう訊かれて和江は、少女のようにもじもじとしながら、言いにくそうに告白した。
家の様子が気になるからと、庭の隣に停めてあるマイカーの中で過ごしたという。
「匂いでばれない?」
息子のツッコミに、和江はさすがに慌てた顔をした。
「あとできれいにしておくわ」

昨晩父親の由紀也が帰宅してきたのは,真夜中過ぎのことだった。
父親の勤め先でなにが起きているのかを保嗣は知っていたし、
保嗣がなにかを察しているだろうことを、由紀也も薄々勘づいていた。
さすがに息子と顔を合わせるのは後ろめたかったらしく、
「母さんお友達が相談があるからって出かけた、今夜は戻らないかも」
という曖昧な説明にも気もそぞろに受けて、そそくさと独りの寝室に向かっていた。

そんな由紀也も、まさか自宅のすぐ裏手で自分の妻がほかの男に精液まみれにされているとはつゆ知らずだっただろう。
別々の場所で吸血鬼との情事に耽った夫婦は、別々の場所で一夜を過ごした。

朝帰りの母親と学校をさぼっている息子とが会話をやめたのは。
時ならぬインタホンの音のためだった。
玄関の扉を開くと、そこには由紀也がいた。
話を聞かれた?と一瞬思いぎくりとした和江だったが、すぐに自分を取り戻して、どうなすったんですか?と夫に訊いた。
「具合がよくないので会社を休むことにした」
という夫を安江は本気で気遣いながら――彼女もまた、夫の身になにが起きているのかを薄々知っていた――かいがいしく床の用意をし始める。
床の用意ができるまでのあいだ、由紀也はぐったりとなって、ソファにもたれかかるように身を沈めていた。
リビングに戻ってきた安江は、床の用意ができましたよ、と夫に告げると、盗み見るように息子のほうを見た。
「お父さんに、話したの?」

いざとなると保嗣は、年端も行かない幼な児のようにもじもじしていた。
都会で暮らしていたころには、厳しい父親だった。
両親ともに厳しいプライドの高い家庭で育てられた保嗣は、気弱な少年として成長した。

保嗣の様子をみた安江は、仕方ないわね、というように、ちょっとだけ顔をしかめ、それから言葉を改めて由紀也に言った。
「保嗣が明日から、女子の制服で登校したいというんです。あなたどう思います?」
失血で力の失せた父親の反応は、もどかしいくらいに鈍かった。
由紀也はちょっとだけ顔をあげ、訝しそうに息子のほうを窺った。
安江は保嗣を促すように、つづけた。
「お友達の達也くんと、おつきあいを始めたのよ、ね?」
保嗣はちょっとの間唇を噛んでいたが、首すじの疼きをこらえかねるようにして、思い切って口を開いた――。
「ぼくに、女子の制服買ってくれないかな。ぼく、同級生の達也くんの彼女になることにしたんだ」

口走ってしまうことで、自分を束縛しているなにかが破れたような気がした。
自分をさらけ出す小気味よさが、ふさぎ切っていた彼の心を解放したのだ。

「うん、まあ・・・いいだろう」
意外なくらいあっさりと、父親は息子の願いをかなえる言葉を口にした。
曖昧な返事は、息子の親友と契ってしまったことへの後ろめたさからくるものだったが、それは母子どちらも、まだあずかり知らないことだった。
保嗣はむしろ、父の「まあ・・・いいだろう。」は、吸血鬼と母との逢瀬に対しての感想のようにも受け取れて、仕方がなかった。
もしそうだったらいいのにな・・・保嗣はどうしようもない妄想にとり憑かれて、ひとりごちた。
「何か言ったか?」
「ううん、何も」
それが父と息子との会話のすべてだった。

「では、きょうにも制服店に行って、採寸してもらいますね」
安江はたたみかけるように、言った。
夫が黙って頷く姿に、なにかを赦されるような錯覚を安江はおぼえた。
頷いた夫は、同時に吸血鬼と自分との不倫の関係までも許してくれたように感じたのだ。
母と息子の願望が、どこまで由紀也に届いたのか――
けれどもまず家族で解決しなければならないのは、保嗣と達也の関係についてだった。

「女性生徒として通学するには、学校で何か手続きが要るんじゃないのか?」
由紀也は初めて、息子の環境が変わることについて、父親らしい気遣いをした。
「エエ、だいじょうぶみたいです。ここの学校は理解があって、前の日に担任の先生に連絡を入れておくくらいですって」
母親がすかさず、適切な返しをしてくれた。

「女子生徒としての名前は、決まっているのか?」
意外なくらい物分かりよく、由紀也は保嗣に訊いた。
保嗣もいまは淡々と、父の質問に応えてゆく。
「ヤスエにしようと思います。母さんの字をもらって」
「保江と書くのか。ちょっと古くさくはないか?」
「でも、達也くんがその名前を気に入ってくれているんだ」
「なら、それで決まりだな」
由紀也は無表情に哂った。
そして傍らに控える和江に、「着替えも要るだろうから、二、三着買いそろえてやりなさい」と告げ、「寝るから」とひと言残して寝室へと姿を消した。

布団にくるまっても由紀也は、なかなか寝つかれなかった。
妻と息子が「よかったね」とひそめた声を交し合うのも、いそいそと外出の支度をして女子の制服を買いに出かけてゆくのも、表に出た二人の足音が遠ざかってゆくのも、耳にしていた。
都会で暮らしていたころは貞淑だった妻と、おとなしすぎてはいたものの健全だった息子――のはずが。
自分の家族は娼婦がふたりと化してしまった――
ほろ苦い従属感に痺れながら、失血に疲れた身体を布団にもたれかけさせて、由紀也は眠りに落ちていった。

勤め帰り。

2020年02月02日(Sun) 09:30:01

勤め帰りの真夜中の道を、独り歩く。
頬をよぎる風は意外に冷たかったが、身体のほてりがそれを程よく中和してくれている。

口の奥に残る精液の匂いが、ほろ苦い。
精液の持ち主は、息子の悪友――もとい、彼氏になる少年。
同性同士で結ばれた関係を認知してもらおうと願う少年の訪問を受けて、
オフィスを穢すようにして、乱れあった余韻が、軽くはぜる息遣いにまだ、残っている。
吸血癖を持つ彼にオフィスで襲われたのは、これが二度目のことだった。

同性愛など異常な営み――と、つい一週間前までは、おもっていた。
まさか自分がそのようなことの虜になるなど、夢想だにしていなかった。
けれども、吸血されてわれを忘れた後のこととはいえ、意識も、記憶も、鮮明に残っている。

熱っぽく求められたことも。
求められることで身体の奥に潜むなにかが燃えあがったことも。
われを忘れて夢中で求めてしまったことも。

相手が息子の同級生であることも忘れて、
半ズボンにハイソックスの制服姿に夢中でのしかかっていって、
相手の好みに合わせて履いた、ストッキング地のハイソックスを、思う存分舌でいたぶらせ咬み破らせて――

一体あの嵐は、なんだったのだろう?
身も心も空洞が空いたようになって、いまは鬱積したものが余さず抜き取られたあとの不思議な爽快感だけが、
四十を過ぎた四肢と脳裏とを、居心地よく浸している。

辿る家路に行きつく先で。
妻は吸血鬼に犯されているはず。
犯される、という言葉には、強制力があるけれど。
じつは妻も同意のうえの関係なのだということもわかってしまっている。
けれども、夫である由紀也の知らないところでなされている行為は、夫の身にとっては「犯されている」のと同じこと。
けれども「妻を日常的に犯される」ということに、奇妙な昂りを覚えてしまっていることもまた、たしかだった。

脚に通した薄い靴下を達也に咬み破られたように。
妻の脚に通されたストッキングもまた、情夫の舌を悦ばせ、剥ぎ堕ちていったのだろうか?
スラックスの下、破かれた靴下が脛の途中までずり落ちているのを、口ゴムの締めつけで感じながら、
ひたすら家までの歩みを進める。
「何食わぬ顔で、洗濯機に放り込んでいくといいよ。和江さんは洗って持たせてくれるから。
 そうしたら、小父さんの靴下、ぼくにくれないか?
 記念に、コレクションさせてもらうから」
餌食にされた靴下を、息子の悪友にコレクションされる――
そんなことにどうして、ドキドキしてしまうのだろう?

由紀也は、家人のだれもが就寝していることを願いながら、ゆっくりとした足取りで家路をたどった。

交錯する交わり。

2020年01月24日(Fri) 05:38:39

若い血を求めてむらがる吸血鬼たちに身をさらして、
わが身をめぐる血潮を捧げることに、えもいわれない歓びを感じる。
仲良しの達也と誘い合わせて、同じ吸血鬼の舌を悦ばせ喉を癒す日常に、保嗣もまた歓びを覚えていた。
濃紺のブレザーに半ズボンの制服姿で肩を並べてうつ伏せになり、
おそろいのハイソックスを順ぐりに咬み破られながら吸血されるとき。
制服を汚すことを悦びながら足許を冒されてゆくことを。
吸血鬼の小父さんの体内で達也の血液といっしょになることを。
ひどく悦ばしく感じた。
ふたりの熱い血が仲良く織り交ざって、小父さんの干からびた血管を潤すようすを、ありありと想像することができたから。

破けたハイソックスを履いたまま下校してきても、母親の安江はなにも言わなかった。
たぶん、ご近所の奥さん仲間から、息子の身になにが起きるのかを聞かされているのだろう。
父もまた、そういう土地だと知りつつ、暮らせなくなった都会を捨ててこの街に身を投じたはずだ。

やがて保嗣は、達也を伴い自宅にもどるようになった。
息子の親友として家に上がり込んでくる若い吸血鬼のことを、安江はさいしょのうち、気味悪そうに遠目に窺うばかりだった。
女の本能は、するどい。
きっと彼が、女としての名誉を汚す行為に関与することを、本能的に悟っていたのだろう。

案の定、達也の手引きで安江を訪れた吸血鬼は、彼女を襲って血を吸い、犯した。
そのありさまを保嗣は、隣室で達也と乱れあいながらのぞき見して、ひたすら昂りつづけていた。
いけない息子だ、と、保嗣はおもった。
けれども、うちでもそうだよと耳打ちしてくる達也に、乳首をまさぐられながら、頷き返してしまってもいた。

躾けに厳しい母親が、保嗣の血を吸った吸血鬼を相手にうろたえながら、
保嗣の穿いている通学用のハイソックスを咬み破ったのと同じ牙に、肌色のストッキングを咬み破られてゆく光景が、ひどく小気味よく網膜を彩った。
やがて理性を奪い尽くされた母親が、あられもなく乱れてしまうありさまに、ゾクゾクしながら見入ってしまっていた。

保嗣は、自分の血を吸った男が母親の生き血に満足することを嬉しく思い、誇りに感じた。
保嗣の血を気に入った吸血鬼の小父さんは、保嗣の母親にも興味を抱いたのだろう。
母親の生き血の味は、きっと小父さんの期待を裏切ることはなかったはず。
――小父さんが母さんの血を気に入ってくれて、嬉しい。
保嗣は自分のうえにのしかかってくる同性の恋人に、そんなふうに熱く囁いていた。

吸血鬼の小父さんが、親友の達也とぼくの血を飲み比べしてくれる。
そしていまは、母さんとぼくの血を、いっしょに味わってくれている。
今ごろ達也が父までも襲って、親子ながら血を愉しんでいるなどとは、さすがに想像が及ばなかったけれど。
幾重にも重なり合う吸血の交わりを、保嗣はとても好ましく感じていた。

独り寝の夜

2020年01月24日(Fri) 05:37:31

独り寝の夜だった。
静かな夜が保嗣に訪れるのは珍しい。
たいがいは。
吸血鬼の小父さんか、最近は達也がしのんできて、
保嗣の身体におおいかぶさり、ひっそりと血を吸い、股間をまさぐり、冒してゆく。
お互い熱気を弾ませ合って、嵐が過ぎ去った後、安らかな眠りに落ちてゆく。

今夜は母の安江が、吸血鬼の小父さんに逢うために、エプロンをはずして出かけていった。
どうやら達也も、訪れないらしい。
まさか保嗣自身の父親と勤務先のオフィスで乱れあっているとは、さすがに思いもよらなかったけれど。

今夜はわが身に脈打つ血液を大切に過ごそう。
明日存分に、愉しんでもらうために――


父の帰りが、遅かった。
いっそ、帰ってこないほうが望ましいとさえ、おもった。
母が浮気に出かけている最中に帰宅してくるというのも、なんだか気の毒な気がした。
もしも自分が父さんの立場だったら――
けれども理性を汚染されてしまった保嗣の脳裏には、妻の浮気さえ悦んでしまう異常な夫の姿しか、思い描くことができなかった。

血が騒ぐのを抑えきれない夜。
明日吸血鬼のために捧げる血液がわが身のうちでうずめくのを、保嗣はけんめいに鎮めようとしていた。

ふたたびオフィス。

2020年01月20日(Mon) 07:30:46

きょうも全員、帰りが早いな・・・
がらんとしたオフィスのなか。
畑川由紀也は、空々しく明るい室内の照明のなか、独り立ち尽くしていた。
独りきりになると。
夕べの”情事”の記憶が、ありありとよみがえってくる。
息子の親友を相手に、息を弾ませ交し合ったあの熱情の交錯は、
やはり”情事”と呼ぶべきものだったのだろう。
齢に似ない手練手管にひかかって、親子ほど離れた齢の差はあっけなく崩れ去り、
理性のたがをやすやすとはずされてしまった。
まるでレ〇プされたあとのような。
けれども、後味の悪い記憶では、本人もびっくりするほど、なかった。
爽やかな敗北感というものがあるということを。
妻を犯されたことで、初めておぼえたけれど。
今回の記憶も、同じ種類の匂いがあった。

ふと振り返ると。
自分を犯した少年が、そこにいた。
夕べと全くおなじように、ひっそりとした雰囲気をたたえて。
濃紺の半ズボンに、おなじ色のハイソックス。
きのうのハイソックスは、たしかねずみ色だった。
色を選べることは、息子の足許からそれとわかってはいたつもりだったが。
きのうとはわざと色違いのハイソックスを履いてきた理由が、彼なりにあるのだろう。
それは由紀也のことを意識してのものではなかったか――?
寒気に似た昂りが、ぞくりと背すじを突き抜けた。

「小父さん、いい?」
ツカツカと革靴の足音を響かせて近寄ってきた少年は、そのまま由紀也の方に腕をまわして、唇を圧しつけてきた。
なんのむだもない、ごく自然なしぐさだった。
由紀也も同じくらいすんなりと、達也と唇を重ね合わせてゆく。
接吻は、長時間続いた。
舌でなぞる歯のすき間から、錆びたような芳香が洩れた。
なんの匂いだか、察しがついたけれど。
由紀也は憑かれたように、その芳香を愉しみだした。
彼の舌は達也の歯茎をなん度も行き来し、ついさっき彼が体験したばかりの交歓の残滓を探りつづけた。
「わかる?」
唇を離すと、達也が笑った。
由紀也も笑った。
「息子の血を、喫ってきたのだね?」
「はい、そのとおり」
会話の内容のおどろおどろしさとは裏腹に、白い歯をみせたその笑いは、爽やかで人懐こくさえあった。
「息子さんの血の香り、いいでしょう?」
「なんのことか、よくわからないな」
「じゃあ、そういうことにしておきましょう」
達也はあっさりと譲ったが、媚びを濃厚に滲ませたしぐさで由紀也にすり寄ることはやめなかった。
「座りたまえ」
「エエ」
向かいのソファを進めたのに、達也が腰かけたのは由紀也のすぐ傍らだった。
「ぼくの”也”と小父さんの”也”――同じ名前なんですよね、ご縁を感じるな」
「ひとの家の息子の血を吸っておいて、あつかましい」
口の利き方が対等になってきたのを感じながらも、由紀也は達也の差し伸べる太ももをさすり始めた。
半ズボンの舌から覗く達也の太ももはツヤツヤとしていて、女の子の膚のように滑らかな手触りがする。
運動部で鍛え抜かれたことは、滑らかな素肌を傷つけることがなく、むしろ輝きを増す結果をもたらしていた。
吸い取った血液が達也の膚の輝きに作用していたのだが、まだそこまでのことを由紀也は知らない。
「手触りの良い肌だ」
「小父さんに触られるのは愉しい」
達也も拒否しなかった。
むしろすり寄るように身を寄せて、太ももを中年男の欲情にゆだねていき、
年端のいかない子供が頑是なくおねだりをするようなしぐさで、彼の口づけをせがんだ。
熱い口づけが、なん度もなん度も交わされた。

「息子の血はお口に合ったかね」
由紀也が訊いた。
達也はそれには答えずに、鞄から紙包みを取り出した。
包みのなかには、ハイソックスが二足入っていた。
どちらも履いたあとのもので、少年の指につままれて、ふやけたようにだらりと床を指してぶら提げられる。
片方はねずみ色の、息子が朝登校するときに履いて出たものだった。
もう片方は濃いグリーンに黄色のラインが入った、達也のユニフォームの一部だった。
こちらも由紀也には見覚えがあった。
息子といっしょに観戦した試合で、達也は短パンの下にこのストッキングを履いていた。
「どちらもヤスくんの血ですよ」
達也はニッと笑う。
「ぼくのストッキングも、ヤスくんに履いてもらったんです」
自分の愛用しているストッキングを保嗣に履いてもらい、ふくらはぎを咬んだのだという。
「そういうことをして、楽しいの?」
真面目な顔をして問う由紀也に、達也は声をあげて笑った。
「やだなあ、小父さん。楽しいに決まってるじゃん。ぼくとヤスくんとがいっしょになった記念に、永久保存するつもりなんだから」
息子の恥ずかしい証拠が、目のまえの少年の手に握られている。
「これをねたに小父さんを脅迫して生き血をねだる――なんて、どう?」
達也の顔は笑っていたが、目にはしんけんな輝きをたたえている。

さっきから達也は、息子のことを「ヤスくん」と呼んでいた。
由紀也はまたひとつ、達也との距離が近まったのを感じた。
「じゃあ、悦んできみの脅迫を受けるとしようか」
由紀也が寛大にもそう告げると、達也は「やったぁ」と、無邪気な声をあげた。

「まだ家に帰らないほうがいいですよ」
達也はいった。
「吸血鬼の小父さんが、和江のところに行っているから」
耳もとに囁いたみそかごとが、由紀也の鼓膜を妖しくくすぐる。
自分の妻を呼び捨てにされたことにも、不愉快を感じない。
それだけ彼との距離が近まったということなのだろう。
いまわしいはずの事実をむしろつごう良く受け止めた彼は、達也を抱きしめながら、こたえた。
「じゃあ、すこしゆっくりしていこうね」
「悦んで♪」
達也は由紀也にしなだれかかるようにして、なん度めかの接吻をねだった。

「ぼくの血を吸いに来たんだろう?」
「小父さん、鋭いな」
達也がわざとらしく由紀也をもち上げた。
「きのう小父さんの血を吸って、ヤスくんの血がどれほど美味しいか、想像がついたんだ。親子の血は似るからね」
「それはなによりだった」
「あと、小父さんの靴下の咬み応えも♪」
達也はウフフと笑った。
「じゃあ、今夜も咬み剥いでもらおうかな。きみが来ると思って、新しいのをおろしてきた」
さりげなくたくし上げられるスラックスから、愛用しているストッキング地のハイソックスに透けた脛を覗かせた。
きょうのハイソックスは、黒だった。
「色違いだね」
「黒は嫌いだったかな?」
そんなことはない、と、達也はつよくかぶりを振った。
「小父さんの靴下の色と合わせようと紺を履いてきたけど、行き違いだったなって思って」
「それは残念なことをした」
由紀也は、いつか達也と示し合わせて同じ色の靴下を履こうとおもった。
「でも、きょうの和江さんも、黒のストッキング穿いてたよ、夫婦でおそろいだね」
達也はこんどは、由紀也の妻のことを和江さんと呼んだ。
そんな濃やかな気遣いにもかかわらず、無邪気に笑う達也が打ち解けた表情と裏腹なおそろしいことを告げるのを、由紀也は聞き流すふりをしようとした。
けれども想像力が彼の努力を突き崩した。
目のまえで神妙に控えているこの息子の親友は、吸血鬼が妻を犯すときの手引きをし、吸血後の後始末までするアシスタントを勤めているという。
「どんなふうにやっていたか・・・きみは視たの」
「うん、ヤスくんといっしょに」
「じゃあ、どんなふうにしたのか、再現してみてくれる・・・?」
由紀也がたくし上げたスラックスを、ひざ下を締めつける口ゴムがみえるまでさらにいちだんとたくし上げると、達也はフフっと笑った。
「じゃあ、するね」
「ウン、どうぞ」
淫らな唾液を帯びた唇が、通勤用に履いた薄手のナイロン生地越しに圧しつけられるのを、由紀也はぞくぞくとしながら見守った。
圧しつけられた唇は、たんねんに唾液をしみ込ませながら、薄いナイロン生地のうえを這いまわり、いびつに波立てて、くしゃくしゃにずり降ろしてゆく。
くるぶしまでずり降ろされた靴下を、由紀也がふたたびひざ下まで引き伸ばすと、達也の唇がふたたび、凌辱をくり返してゆく。
二度、三度とつづけられた前戯のすえ、由紀也のハイソックスは破られた。
「なるほど・・・いやらしいね・・・」
ぽつんと呟く大人の声に、「もっと・・・」とせがむ囁き。「いいよ」と応える呟き。
ふたつの影はひとつになって、じょじょに姿勢を崩してゆく。
ジッパーをおろされて前を割られた半ズボンから、赤黒く逆立った茎をつかみ出すと、由紀也は唇で押し包むように咥え、露骨にしゃぶりはじめた。
「ああああああ・・・」
眉を寄せて呻きながら、達也は由紀也のなかに白熱した粘液を放出した。
親友の父親に対する遠慮は跡形もなく消し飛んで、びゅうびゅうと勢い良く、注ぎ込んでいった。

女子の制服を買ってほしい。

2020年01月20日(Mon) 07:09:32

「女子の制服を買ってほしい」
保嗣からそう打ち明けられて、母親の和江は戸惑った。
「女子の制服なんか買って、どうするの?」
「達也君のために毎日着ていく」
え・・・?
どういうこと?と問う目線のなかに保嗣は、
すでに和江が答えを理解していることを直感した。
「ぼくは、達也君の恋人になる。だからこれから毎日、女子の制服を着て登校するんだ」
思いがけない息子の言葉に、和江は息をのんだ。
息子の通う学校に、そういう生徒がなん人かいることを、和江は知っている。

女子になりたくて、女子の制服を着て通学することを、この街の学校は許容していた。
吸血鬼と同居するこの街で、女子生徒の生き血は不足ぎみである。
ある男子生徒が、自分の彼女の身代わりに彼女の制服で女装して身代わりに咬まれたのが発端らしいが、
それが男子生徒たちの女装熱に火をつけて、彼女の身代わりだけではなく、いろいろな事情から女装する子が増えたのだという。
学校が女装生徒に優しいのには、そんな事情も見え隠れしているらしい。

けれどもそれは、身近な話と聞かされながらも、どこか別世界のことのように、和江は感じていた。
まさか目の前の息子の口から、そのような言葉が発せられるとは、思ってもいなかった。
こちらに越してきたすぐのころから友達付き合いをしている達也という少年が、
息子と男女交際のような関係になっていることも、薄々察していたはずなのに。

「お父さんがなんて仰るかしら」
和江はけんめいに逃げ道を探しているようだった。
けれども保嗣は追いすがるようにして、いった。
「案外、だいじょうぶかも」
「どうして」
「だって父さん、母さんと吸血鬼の小父さんが交際しているの、薄々知っているみたいだもの」
和江は痛いところを突かれた、とおもった。

彼女が吸血鬼に襲われたのは、この街に来て間もないころ、まだひと月と経たないうちのことだった。
脚を咬むのが好きな吸血鬼だった。
首すじを咬まれて貧血を起こし昏倒すると、
穿いていた肌色のストッキングをみるかげもなく咬み破られながら吸血されて、
理性を奪い尽くされた彼女は、夫のいる身であることも忘れ果て、恥を忘れて乱れあってしまった。
それ以来。
手持ちの肌色のストッキングを破り尽くされて、
夫の稼いできた給料のなかから高価な黒のストッキング代を差し引くようになって、
相手の望むまま、毒々しく輝くストッキングを何足愉しませてしまったことだろう?
けれども逢瀬を遂げる日に限って夫の帰りは遅く、ちょうど情夫を送り出し、身づくろいを終え、周囲の痕跡を消し去った直後に、夫の帰宅を迎えるようになっていた。
夫の不在はむしろ彼女にとって都合が良く、吸血鬼に促されるままに情事を重ねていった。
「もしもご主人が途中で帰ってきても、わしを愉しませてくれるかね」
そう囁かれたときにためらいもなく、「もちろんそのつもりです」とこたえてしまったのは、つい昨日のことだった。
息子が咬まれるようになったと知っても、息子を咎めることも、いまは情夫となった吸血鬼を制止することもなく、新しいハイソックスを何足も用意してやるなど協力的に振る舞っているのは、夫に対する後ろめたさからか。
それとも、吸血鬼が息子の血までに気に入ったことに歓びや満足を覚えたためか。

「わかったわ。保嗣の制服のこと、父さんに相談してみましょうね」
和江はそう言わざるを得なかった。
げんにきょうも、息子が下校してくる直前まで、夫を裏切る行為を続けてしまっていて、
息せき切った交歓の残滓が、スカートの奥深く押し隠された秘所の周りに、まだとぐろを巻いている。
まだやり足りない――浅ましいと思いながらも、その想いを振り切れなかった。
和江はソファから起ちあがると、エプロンを外しながら、いった。
「母さん、用事を思い出したから、ちょっと出てくる。制服のことは任せて頂戴」
「いいよ。父さんが戻ってきたら、上手く口裏を合わせておこうね」
物分かりのよい息子は、なにごともなかった都会のあのころのように、爽やかすぎる笑みを返してきた。

一見物分かりの良い息子だったけれど。
そのくせ夫婦の寝室までついてきて、彼女の着替えを見たいとせがんだ。
情事を遂げるまえにおめかしするところを、見せてやるのが習慣になっていた。
彼女はわざと寝室のドアを開けっぱなしにして、息子の好奇の視線をまとわりつかせながらふだん着を脱ぎ、おっぱいをさらしながらブラジャーを真新しいものに取り替え、スリップを取り替えてゆく。
きょうの息子の目線は、好奇心だけのものではないのを和江は感じた。
女性の着替えのお手本を見せるつもりで、余裕たっぷりに彼女は着替えた。
おっぱいをさらす時間を少し長めて、いちばん視良い角度でさらすことも忘れずに。

「制服を女子用にするなら、下着も女の子のものをそろえなくちゃね」
一瞬主婦の声色にもどってついた独り言に息子が露骨に喜色を泛べるのを横目に、
黒のストッキングをひざからスカートの奥へと引き伸ばしていった。
息子も明日から同じしぐさで、女になってゆく――
自分が吸血鬼の情婦となるために装うように、息子も同性の親友の恋人となるために、装ってゆく。
そういえば、息子の彼氏にも、嗜血癖があるらしい。
母子で肩を並べて互いの恋人を取り替え合いながら血液を捧げ抜く。
そんな日も、もしかしたら訪れるのかもしれない。
年頃になってから生じた息子との距離感が、べつの意味で縮まろうとしているのを、和江は直感していた。


あとがき
どこまで続くかわからない、柏木には珍しい同性のシリーズです。
12日掲載の「競技のあとで」以来続いています。
ほぼ同性の絡みしか出てこない。なのに、不思議とすらすらと描けます。

親友の父親。

2020年01月14日(Tue) 08:09:30

畑川くん、ちょっと。
畑川由紀也(40、仮名)を表情を消した上司が呼び止めたのは、その日の夕刻だった。
「息子さんの友だちという人が、きみを訪ねてきているよ」
そう言い捨てて立ち去った上司の陰に隠れていた少年は、由紀也を見てうふふ・・・と笑った。

ふたりはもちろん、面識がある。
達也はしょっちゅう、保嗣の家に遊びに来ていたから。
息子の親友と名乗るこの少年がじつは半吸血鬼で、息子の血を狙っていることを、由紀也は知っている。
都会育ちの畑川家に、周囲の人たちは遠慮がちだったけれど。
吸血鬼社会では畑川家の家族全員の血液をだれが獲るのかは、すでに転居した時点では決められてしまっていた。
もちろん、本人たちの同意もなしに。

達也は息子の保嗣と仲良くなると、友人の一人として家に上がり込むようになり、
やがてその手引きでまず妻の和江が吸血鬼に襲われてたらし込まれてしまったことも、由紀也は視て視ぬふりをしていた。
この街に棲む以上、妻を吸血鬼に襲われて犯されることは、避けては通れない道だった。
家族の血と引き替えに安穏な日常を得ていることに、由紀也は一片の後ろめたさを覚えている。
けれども、都会での暮らしに失敗した彼には――いや、彼の家族全員にとっても――もはや今の安穏さだけが、この世で唯一の居場所になっているのだ。

眼の前に現れた達也は、学校帰りらしく、制服姿だった。
半ズボンにハイソックス――年端もいかない子供の服装だと思い込んでいたけれど。
背丈の伸びた年頃の少年が身にまとうと、こんなことになるのか・・・
由紀也は、ハイソックスに包まれた達也の、女の子のようなしなやかな足許に、ふと欲情をおぼえた。
達也は由紀也の顔色を、気になる男の子の些細な態度の変化を見逃さない女子生徒のような目線で見守りつづけていた。

「どうしたの?まだ仕事中なんだけど」
こうした訪問で、吸血鬼が留守宅に上がり込んでくるタイミングをさりげなく教えてくれることを、由紀也は今までの経験で知っている。
きょうも和江は冒されるのか――
淡い諦念を噛みしめかけると、達也は意外なことをいった。
「きょう伺ったのは、ご挨拶です」
「え?どういうこと?」
「保嗣くんを正式に、ぼくの彼女にすることに決めました」
「えっ」
「明日、保嗣くんの血を吸って、ぼくの奴隷になってもらいます」
息子さんを奴隷にする前に、お父さんに御挨拶に伺ったのです・・・という目の前の少年に、由紀也はいっぺんで理性を奪われた。
いずれはそうなる・・・と、わかってはいたつもりでも。
息子が同性の同級生に彼女にされると宣言されるのは。
魂を抜かれるほどの衝撃だった。

「それはとても迷惑なことだね」
由紀也はわざと傲岸な態度でこたえた。
「きみもよくわかっていると思うけど、保嗣は男の子なんだ。ゆくゆくは彼女ができるものだと思っている。
 なのに、きみも男子だろう?息子を女の子扱いされるのは好ましくないね、先生に相談した方が良いのかな。
 保嗣はうちの跡継ぎなんだし、きみも自重したらどうかね?」
彼のもっともらしい意見を、達也はしゃあしゃあと受け流した。
「きょうはそのお礼に、ぼくが小父さんの相手をしに来てあげたんですよ。上司の人も・・・ほら、帰っちゃったみたいだし」
気がつくと。
勤務先のオフィスにいるのは、由紀也と達也だけになっていた。

ワイシャツの釦を自分から外しはじめた達也の手許を抑えつけて「やめたまえ」といったはずだった。
所がいつの間にか、達也を腰かけていたソファから引きずりおろしてしまっていて、
床のうえで組んづほぐれつをくり返してしまっている。
制服の濃紺の半ズボンを自分の股間から分泌した粘液で濡らしてしまったとき。
息子を犯しているような錯覚を覚えた。
その錯覚が、むしろ由紀也を罪深く刺激した。
彼は女性に対するのと同じような吶喊を、息子の親友であるこの少年に対してくり返していった。

「お掃除、手伝うよ」
達也は気品のある少年の顔つきに戻ると、自分を女として扱った中年男にそういった。
「モップと雑巾はどこ?あ、知ってるわけないよね?ぼく探すから」
そういって達也は素早くモップと雑巾を探してくると、床に散った粘液と血液とを、器用に拭き取っていった。
慣れた手つきだった。
この手で息子の血も拭われたのか。
情事を済ませた後の妻の血も、自宅のフローリングから拭い去られたのか。
この少年が、吸血鬼が和江を犯すときにしばしば立ち会って、アシスタントをしていることも、彼は当の吸血鬼から聞かされていた。

粘液は彼自身のもの。
そして、血液もまた、彼のものだった。
欲望を果たしたあと。
ひと息ついている由紀也にのしかかってきた達也は、首すじに咬みついて由紀也の血を吸った。
由紀也がその場に昏倒すると、スラックスをたくし上げられる感覚を覚えていた。
ふくらはぎを覆う、ストッキング地の濃紺のハイソックスが、淡い毛脛に包まれた中年男の脚を覆っている。
そのうえからまだ稚なさの残る唇が吸いつけられて、舌触りを愉しみ始めるのを自覚すると。
あろうことか彼は、達也が少しでも愉しめるようにと、自分から脚の向きを変えて、応えはじめていったのだ。

貧血になるほど血を吸い取られながらも。
喪われた血の量に、彼は満足を覚えた。
「だいぶ、口に合ったようだね」
「なにしろ、保嗣君のお父さんの血ですからね」
悧巧そうな目の輝きが、いっそう妖しさを増していた。

「いちど、小父さんの靴下を破ってみたかったんです。ストッキングみたいに薄い紳士用の靴下って、初めてだったから」「
「どうだったかね」
「いい感じです。息子さんにも履いてもらいたいです。彼がお父さんの箪笥の抽斗をさぐっても、視て視ぬふりをしてあげてくださいね」
白い歯をみせて笑う少年に、由紀也も笑い返していた。
「気に入ってもらえたのなら、破らせてあげたかいがあるかな。よかったら、もう少し愉しむかね?」
由紀也は用意よく、カバンのなかから穿き替えを取り出しかけている。

引き揚げられたスラックスのすその下。
筋肉の起伏を艶めかしい濃淡に彩ったストッキング地の長靴下が、中年男性の足許を染めている。
笑み崩れた少年の唇が、通勤用の靴下の上を這いまわり、牙で侵して、容赦なく裂け目を拡げてゆくのを、
由紀也はただ、へらへらと笑いながら、嬉し気に見入っていた。
家族で彼の奴隷に堕ちるのも悪くない――
薄れてゆく意識を愉しみながら、彼はさいごまで、口許から笑みを絶やすことはなかった。