淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・
~このサイトのご紹介~ 魔性の淫楽への招待状
2026年03月22日(Sun) 21:12:01
はじめにお読みください。一話読み切りのお話がほとんどですが。
吸血鬼ストーリーといっても。
「他では目にすることはまずないでしょう」
そう断言できるほど?変わった世界のお話なので・・・。
【付記】
弊ブログに登場する人物・団体はすべて架空のものであり、実在するかもしれない人物・団体とは何の関係もありません。
(2018.2.12念のため追加しました)
カテゴリの解説
2025年08月14日(Thu) 19:11:24
ひと言で吸血鬼ものの短編といっても、それこそいろんなお話が混在していますので。
カテゴリをちょっと、整理しました。
お話に共通のおおまかな設定については冒頭↑の「招待状」に書かれてありますが。
ちょっとだけ、付け加えておきます。
久しぶりに
2023年05月19日(Fri) 21:08:30
わーっと描いちゃいました。 (^^ゞ
黒の礼服姿のまま、四つん這いに圧し伏せられて、
「アアもう勘弁」とか言いながら黒のパンストの足首を舐め抜かれてゆく――
そんな一情景を妄想したところからのスタートでした。
結論は例によって、めでたしめでたしの大団円。
新しい街で妻の交際相手にも恵まれ、充実した日常が待ち受けていることでしょう。^^
ほかにも書き溜めたのがいくつかあるんだけど、どれも結論に行きつかない・・・
気が向いたらあっぷしますね。
一作目と二作目の、切っても切れない関係。
2023年01月30日(Mon) 04:19:26
久しぶりにあっぷできたと思ったら、がちで寝取られモノでした。。
一作目の餌食は、比較的若めのご夫婦。
まずご主人が咬まれて、それから奥さんが襲われます。
着飾ったスーツ姿、脚に通したストッキングを唇や舌で愉しまれ、血を撥ねかされたり咬み破られたり。
いつもどおりの段取りで、夫婦ながら妖しい堕落に導かれてしまいます。
妻を犯される夫。人妻をモノにした吸血鬼。
ふたりの間にはむしろ、清々しい共感が生まれ、
夫は吸血鬼が妻のことを愛人のコレクションにまんまと加えてしまったことを称賛し、
妻が吸血鬼に第二の嫁入りをすることを祝っています。
二作目の餌食は、うら若い婚約者。
処女の血を吸うだけだといって、親友の許婚を襲うのですが、
もちろん若い二人の行く先は無軌道な関係――
でも、幼いころから吸血鬼のことを知っていて、家族ぐるみですべてを受け容れている主人公は、
自分の未来の花嫁がみすみす侵蝕され寝取られてゆくのを、胸をはずませながら見届けています。
花嫁の純潔をゲットする吸血鬼と、その幼馴染の青年。
この二人の間にも、お互いを尊重し合う雰囲気がうかがわれます。
ふつうに考えて、ありえない関係ではあるものの。
まだまだこういう話(の)をいくらか、紡いでいきたいと思っています。
もしかすると。
一作目で自分の結婚式に友人夫婦を招いた人物は、二作目の花婿なのかもしれません。
婚礼の招待客も、花嫁も。
着飾った衣装もろとも辱めを受けながら、その辱めに歓びを見出し、夫や花婿ともども受け容れてゆく――
こういう街にはたぶん、争いは存在しないのかもしれません。
というわけで、とりあえずはここで、一区切り。
う――ん。(近況)
2022年11月05日(Sat) 15:42:03
どうもこのところ、低調ですね。。。 (-_-;)
構想はあっても、途中で力尽きちゃうんですよ。。 ^^;
先ほど長い長い3連作をあっぷしたのですが、
「長いのはすべて駄作?」と思いたくなるような出来栄えです。。
描きたいことはいろいろなきにしもあらずだったのですが。。。
ヒロインさんはかなり、お気に入りなんです。
こういう質素系な乙女は好みです。
そんな人がチラとだけでも艶や色気をかもし出してくれるといいな・・・という想いで取り組んだのですが。。。
どうぞ長い目で見てくださいませ。 m(__)m
母交換。
2022年09月29日(Thu) 23:15:15
親友のカズユキくんのお母さんは、とても清楚だ。
都会育ちの名門校出身で、知的で奥ゆかしい感じがした。
路子さんというお名前で、主婦としてもその名のとおり、道を踏み外さない堅実そうなひとだった。
彼女はボクの通う中学で、教師をしていた。
いつかあの女(ひと)のパンストを、むしり取ってやろう――ボクは物騒な想いを、彼女に対して寄せていた。
彼女が以外にも派手な下着を好んでいることも、毎日脚に通しているパンストが、妖しい光沢を秘めていることも、
洗濯ものあさりで得た成果から、ボクはつぶさに知っている。
案外――淫乱な牝ではないだろうか・・・?
身に着ける下着が性格の裏付けにならないことなど、大人になればふつうにわかるはずのことさえも、
10代のボクらはあまりにも、無知すぎていた。
「3人でさ。うちの母さんを、犯してみない?」
校舎の裏で集合した、いつもの仲良し3人組みは、ヒロシくん、カズユキくん、そしてボク。
3人とも、クラスの学級委員で優等生。
表向きは模範的な生徒だった。
その学級委員たちのきょうの議題は、そんなふうにとても不穏なテーマだった。
「賛成!」
いの一番に、ヒロシくんが挙手をした。
控えめなカズユキくんは、その勢いに圧されるように、
「いいの・・・?ほんとに・・・?」
と念を押すようにボクに訊きながら、続いて手を挙げた。
場所はカズくん家(ち)。
うちだと父さんいるし、ヒロシのとこも親がうるさいんだよね?
カズくんのところなら、お母さん平日の日中は学校だから、人目がなくて良いと思う――
自分の母親の肉体を提供するのだから、話はボクが主導権を握っていた。
ヒロシくんはいちいち、「賛成」「賛成」と、ボクの案に賛意を表してくれた。
けれどもカズユキくんは、あくまで慎重路線だ。
「でも――だいじょうぶだろうか、あと始末とかさ・・・」
けれどもけれども、カズユキくんの慎重路線は、決して生真面目な倫理観からくるものではない。
その証拠に、彼の発言は終始、「してはならないことをすることへのためらい」ではなくて、
「バレたら困るし、逃げ道がほしい」という懸念にそったものだったから。
「大丈夫、母さんも観念したら暴れたりしない人だし、愉しんだ後は片付けも手伝ってくれると思うよ」
ボクはあっけらかんと、ふたりにいった。
「じゃあ――賛成」
さいごにはカズユキくんも、おずおずと手を挙げてくれた。
翌日。
ボクは母さんを家から連れ出して、カズユキくんの家に向かった。
母さんはボクの気に入りの紅色のスーツを、この日も身に着けていた。
栗色の巻き髪は、きのうセットしたばかりのもので、
なまめかしいウェーブを風になびかせていて、
胸もとのボタンをくつろげたピンク色のブラウスの襟首からは、
黒のブラジャーの吊り紐が、チラチラと覗いていた。
脚に通した肌色のストッキングのテカり具合も、
10代の男の子たちの目を眩ませるには、じゅうぶん過ぎるほどのものだった。
連れて歩く女が、イケてる女だということは、
男にとってもっとも、誇らしいことだとボクは思う。
まして同伴する女が、悪友たちの飢えた性欲の餌食になるのであればなおさら、
その獲物は美しく気高いものでなければならなかった。
ボクは自分の情婦(おんな)を、彼らと分け合おうとしていた。
母さんにはむろん、ボクの意図を、隅から隅まで話している。
それでも母さんは、父さんがぼくにくれた母さんの貞操を、父さんに無断でまた貸ししてしまうことに、異論を唱えたりはしなかった。
出がけに母さんは、中学校に電話を入れている。
ちょうど休み時間に合わせてのことだった。
母さんは路子を呼び出してもらうと、いった。
「息子さん、具合悪そうに歩いていらっしゃいましたよ。お家に帰ってひと休みするんですって。
放課後の課外活動はほかの先生にお任せになって、早く帰ってあげたほうが良いのではありませんか?」
相手は学校の先生だから、母さんもしぜんと改まった敬語口調になっていたけれど、
ボクはそれさえも、ゾクゾクと興奮しながら聞き耳を立てていた。
そう――母さんがカズユキくんの家で犯されている真っ最中に、路子先生には戻ってきてもらわなくちゃならないのだ。
女学校では素行のわるい生徒だった母さんは、先生という行いすました人たちに反感を持っていたから、
ボクの悪だくみにも、ひと肌脱いでくれたのだった。
そう――まずは文字通り、ひと肌脱いでもらわなくっちゃ。
「あら、カズユキさんこんにちは、きょうは学校早かったのね。ヒロくんもいたの?
うちの子もそうだけど、3人とも学校さぼっちゃ、ダメよ」
あくまで母親然として、ボクたち悪ガキをたしなめようとする母さんに、
「タヅくんママ・・・タヅくんママ・・・ぼくはもうたまらない!」
いきなり母さんにすり寄ったのは、ヒロシくんだった。
「あっ、何するの!?いけないわよお、まだ子供なんだから――」
笑って受け流そうとする母さんを、ヒロシくんはしっかりと羽交い絞めにつかまえて、首すじにディープなキッスをする。
あ!ボクの母さんになんてことを――!
ボクが思わず声をあげたのは・・・きっと本音だったに違いない。
「駄目、駄目、駄目ですったらっ!」
母さんの声色は、いつもベッドのうえで聞かせてくれる嬌声に近くって、
その甲高い声がまた、ボクたちの股間をいっそう、逆立ててゆく。
「ほら、ほら、カズユキ――触れっ」
母さんの両腕を後ろ手に絞めつけながら、ヒロシくんはカズユキくんに言った。
「え・・・え・・・エ。。。いいの?ホントにいいの?」
真面目ぶっているカズユキくんだって、本音は女の身体に触りたくって触りたくって、しょうがないのだ。
「あ・・・あっ、うぅん・・・っ」
ヒロシくんに羽交い絞めにされた母さんは、苦痛げに柳眉を逆立てる。
細い眉がピーンと逆立ち、ヒクヒクと慄(ふる)えるありさまに、カズユキくんも我を忘れた。
稚拙な掌が母さんのブラウスをまさぐり、波立てて、しまいにくしゃくしゃにして、
ブチッ・・・
と、音をたてて裂けた。
「あっ、何すんのよっ」
母さんは本気で口を尖らせたけれど、もはやカズユキくんの勢いは止まらなかった。
黒のブラジャーをたくし上げられ、格好の良い乳房をぷるんとブラウスのすき間からはじけさせると、
二人の少年は息遣いを変えた。
「ちょ、ちょっと・・・っ、タヅくん、やめさせなさいよっ」
制止を求める母親の声が、平穏な日常ではボクたちの圧制者だったはずの大人と立場が逆転したことを感じさせた――
「あっ、いけない。だめ。駄目ですったら・・・っ・・・」
母さんの声は、2対の猿臂と汗ばんだ背中とに圧しつぶされていって、
しまいには、息せき切ったカズユキくんの手で、パンストを引きずり降ろされてしまっている。
「ただいまァ・・・」
なにも知らないのどかな声が、玄関先に流れた。
けれども、母さんとファックしまくっているカズユキくんの耳には届かないらしい。
「俺が手を抑えててやるから、ほら、そこだ、そう――」
ヒロシくんが母さんの腕をねじ伏せながらカズユキくんに囁いて、
カズユキくんはそれにいちいちばかみたいにうなずき返しながら、母さんのブラウスを引き剥いでゆく。
「あ――」
背後からした驚きの声が、時を停めた――
「そうれ、一丁あがり――」
きょうのМVPは、間違いなくヒロシくんだった。
カズユキくんが母さんを、そしてボクが路子先生を犯すのの手伝いを、いちから十までやってのけてくれたのだから。
あとで母さんが言っていた。
カズくんたら、おかしいわあ。
お母さんがヒロくんに抑えつけられて、パンストをタヅくんにびりびり破かれちゃったときに、一番強く射精したのよ――
路子先生の見慣れた服装。
それがボクを強姦魔に変えていた。
高嶺の花な空色のブラウスを、びりびり破いて。
手の届かないはずの紺のタイトスカートを、これ見よがしにたくし上げて。
ボクの母さんのパンストを引き破かれたお返しに、路子先生のパンストもブチブチッ・・・と剥ぎ堕として。
破壊欲に燃えて逆立ったぺ〇スを、太ももにぬるーっと這わせていって。
さいごにズブズブと、埋め込んでいった。
目が飛び出さんばかりにボクを睨むカズユキくんのまえ、
ボクは路子先生を、征服していった。
乱暴なだけね――って母さんに呆れられている太ももの躍動に、路子さんの脚の動きが重なって、
知らず知らず、同調し始めてゆくのを感じて、ボクの興奮はマックスになった。
自分の母親を犯されるのって、どうしてこんなに燃えるんだろう?
自分で母さんを犯すのも楽しいけれど。
父さんのまえで母さんのスカートを精液まみれにするのも楽しいけれど。
「ヒロくん、カズユキくんも、元気ねえ・・・ッ」
なんてのたまいながら、よそ行きのスーツ姿をよその子たちの精液まみれにされてゆく母さんを視るのも、とてつもなく興奮する。
そしてなによりも、
きょうの成果は、路子。
何年も前から、ずうっと狙っていた、路子。(もう呼び捨て)
その路子を、学校教師をしているときそのままの服装で、
薄いブルーのブラウスに濃紺のタイトスカート、肌色のストッキングという、知的で清楚なスタイルで、
人もあろうに息子の前で、「路」にはずれた行為を強要されて。
女教師としてはあるまじきことに、夫以外の年端も行かない少年たち――それも息子の親友の餌食になって。
それなのに路子は、
白昼のもと、ほしいままに貞操を汚されたうえ、「あぁ~ん」なんて、口走ってしまって。
パンストの手触り舌触りを楽しむボクのために、脚をくねらせてさえくれたのだから。
あのとき路子の脚から抜き取ったパンストは、いまでもボクの戦利品として、手許にある。
何よりも良かったのは、犯され抜いた路子がボクたちと犬ころのようにじゃれ合うのを目にしたカズユキくんが、
自分の母親の痴態を見て、勃起してしまったこと。
そしてさいごには、「カズくんやめなさい」とお母さんが制止するのも構わず強引にまたがっていって、
お母さんのスカートが精液まみれになってしまうほど、射精してしまったことだった。
きょう大活躍だった、ヒロシくんは。
もともとボクに、自分のママを襲わせてくれていた。
そう――ヒロシくんもまた、自分のお母さんを襲われることに興奮を覚える、いけない男の子だったのだ。
男子三人の欲望がはじける下で。
堅実な主婦と規律正しい中学教師は、ふたり肩を並べて、息をはずませて。
息子たちの奴隷へと、堕ちていったのだ。
3人が3人とも、互いの母親を共有する仲になったのは、それから間もなくのことだった。
市長夫人、堕ちる――
2022年07月24日(Sun) 23:32:08
壬生川市長の良き相談相手でもある京子夫人が初めて吸血鬼に襲われたのは、あろうことか市長室でのことだった。
その日不幸にも市長は外出しており、京子夫人はがらんどうの市長室で夫の帰りを待つことにした。
がらんどうの部屋、のはずだった。
しかし、市長室にも吸血鬼の追求の魔手は、すでに伸びていたのだ。
若い女性職員が市長室に呼び出され、吸血鬼の頭に生き血を吸われる。
そんなうわさが事実であることを、ミス倭館【わかん】市役所とうたわれた紫桃いずみも奈々邑リカも知っていた。
「吸血鬼保護条例」を発布すると市長は、市役所の全女性職員と職員の妻とを対象に、血液提供者を募ったのだった。
「おまえにも、いつかは出てもらわなくちゃならない」
市長は京子夫人にそう言ったし、京子夫人もまた、夫の志を実現するために、わが身を犠牲にする気持ちを固めていた。
しかし、その日その時のことだとは、市長夫妻は思ってもいなかった。
その日、喉をカラカラにさせた吸血鬼は、いつも若い女性の血液を提供してくれる親切な市長を頼りに市役所にやって来て、
またいつものように、市役所の職員の妻か女性職員をみつくろってもらおうと思い、市長室のドアをノックもせずに開けたのだった。
だしぬけに姿を現した吸血鬼を前に、ものに動じない京子夫人も思わずうろたえた。
その様子を見て取った吸血鬼も、さらにうろたえた。
奥ゆかしいスーツに身を固めた、しっとりと落ち着いた風情の年配女性のその様子に、嗜虐癖をそそられてしまったのだ。
気がつくともう、京子夫人を抱きすくめてしまっていて、
柔肌から伝わるほのかな体温と、着衣を通して感じる豊かな肢体とに夢中になってしまっていて、
がくがくぶるぶると身を震わせながら、夫人の肉づき豊かなうなじに、牙を突き立てていったのだった。
キャー。
はからずもあがった悲鳴はドアの外にも漏れたけれど、
口の堅い市長の側近たちは、なにごとも起きていないかのように執務に励んでいて、
市長夫人を援護するために席を起つものはいなかった。
それから市長が帰庁するまでのあいだの約30分。
吸血鬼に迫られた市長夫人は、わが身に脈打つ熟れた血潮をたっぷりと、魔性の毒牙に浸す難に見舞われたのだった。
さいしょのうちこそ不覚にもうろたえてしまったものの、
もともと京子夫人は、吸血鬼を街に受け容れようとする夫の施策に理解を示し、良き協力者になろうと望んでいた。
彼女は気を取り直すと、わたくしのような年配女性でもよろしいのですかと尋ねた。
吸血鬼は、血に飢えていた。
「あんたの血が欲しい。気が済むまで愉しませていただきたい」
目の前に現れた年配婦人は、彼にとって血液を提供すべき肉体としか、映らなかったようだ。
そんな忌むべき来意を告げられた夫人はそれでもつとめて平静さを装って自分の齢を告げ、
それでもよろしいのですかと相手の気持ちを確かめた。
それでもありがたい、といわれると、
「わたくしは市長の妻です。よろこんでお相手するべき立場におります。
でもやっぱり怖いわ。手加減なすってね」
と告げた。
「市長の妻」ときいて、吸血鬼はちょっとのあいだ逡巡した。
けれども理性や良識よりも喉の渇きの切実さがまさって、床に抑えつけた夫人の首すじを、もういちど喫(す)った。
京子夫人は観念したように薄い唇から白い歯をしっとりとのぞかせると、目を瞑り、相手の欲求に応じていった。
ひとしきり夫人の体から血を吸い取ると、吸血鬼はわずかに理性を取り戻した。
親友である市長の愛妻を床に押さえつけ、真っ白なスーツに埃をつけることにためらいを覚えた。
「よろしければあちらで」
と、彼は夫人に来客用のソファをすすめた。
しかし京子夫人は、
「ソファを汚しては主人に叱られます」
と固辞して、ジャケットだけを脱いで夫の安楽椅子の背もたれにかけると、
すでに血に濡れていたブラウスはそのままに、床にあお向けにされたままの姿勢で、男の吸血を受け容れた。
夫である市長が戻ってきたときには、京子夫人は夫の親友を相手に吸血行為を許しつづけて、
自身の体内をめぐる血液を賢明にも過不足なく提供し、来客の凶悪な喉の渇きを落ち着かせることに成功していた――
いきなり視界に飛び込んできた夫人の受難のシーンに、市長は驚愕した。
30年近く連れ添った愛妻だった。
それがよそ行きのスーツ姿をねじ伏せられ、
ブラウスに血潮を散らしながら吸血鬼に虐げられている姿を目の当たりにしたのだから、
おぞましさに慄(ふる)えあがったとしても無理はない。
けれども、夫の入来に気づいた夫人は夫を手で制すると、
「もっと早く、このかたの御意に随うべきでした」
とだけ、告げた。
彼は、きちんとした服装の婦人に目がなかった。
首すじに牙を突き立て、ブラウスを持ち主の血潮で染めて、衣装を辱めながら吸血し、
渇きが収まるとおもむろに犯すのがつねだった。
特に、スカートのすそから覗く脛を彩るパンティ・ストッキングは、彼らの好餌となった。
くまなく舐められ、したたかに唾液に濡らされ、舌触りを愉しまれ抜いた挙句、むざんに咬み破られてしまうのだった。
その日夫人は、ごく地味な肌色のストッキングを脚に通していた。
ふっくらとした柔らかそうな肉づきのふくらはぎを、薄地のナイロン生地が優雅ななまめかしさに彩っているのを見ると、
これが吸血鬼の慰みものにならぬはずはない――と、市長は観念した。
ところが吸血鬼は、「こちらのご婦人に恥を搔かせるわけにはいかない」と、己の気に入りの悪戯を愉しむ権利を放棄すると告げたのだ。
帰り道に夫の部下たちに、破れたストッキングの足許を盗み見られるのは、お恥ずかしいでしょうからな――と。
そのひと言が、夫人の態度を和らげた。
折しも、退庁時間を過ぎたころだった。
皆が退庁してしまうまで、わたくし貴方のお部屋で、このかたのお相手を務めさせていただきますね――と、夫人はいった。
吸血鬼は、度重なる市長の厚意に浴してから、彼に友情を感じるようになっていた。
市長は、長年連れ添った愛妻を、彼の友情にゆだねることにした・・・
「たまたま新しいのをおろしてきたの。恥を掻かずにすみましたわ――」
部屋に二人だけとなった相手が、自分の足許を辱めたいとウズウズしているのを間近に気配で察しながら、
京子夫人はこぎれいに装った足許をちらと見やると、そういった。
「どうぞ存分に愉しんでくださいね。この際お気遣いはご無用ですから――」
夫人の心遣いに吸血鬼は惑乱し、ドアの外で待っている市長に悪いと思いつつも、夫人の首すじをふたたび吸った。
彼女もまた、熟した血潮を舐め取られる歓びに、目ざめはじめていた――。
その日夫の執務室で、京子夫人は吸血鬼の望みを受け容れて、
パンティ・ストッキングを穿いたまま、上品に装った自分の下肢を不埒な愉しみに供してゆき、
片脚だけ穿いたストッキングに裂け目が走るのを見つめながらスカートの奥を手荒にまさぐられ、
夫以外のものを識らなかった無防備な股間に、剛(つよ)くそそり立った魔性の一物を沈み込まされていったのだった――
あとがき
優雅な年配婦人が、奥ゆかしく装った服をしどけなく乱されながら、堕ちてゆく――
たまりませんなあ。 ^^
挑戦者とチャンピオン ――八百長試合の裏で。――
2022年07月03日(Sun) 23:06:15
黒ちゃんの相手だけはねぇ・・・
そんなことが、声をひそめて交わされていた時代があった。
まだ彼らのことを、身近に目にする機会のないころだった。
チャンピオンシップのかかった前夜。
バット・ヴァンパイヤと名乗る挑戦者のの黒人選手は、女を欲しがった。
対戦相手は、白人選手のベリーハード・ショウ。
彼も女を欲しがった。
八百長試合に応じるための見返りだから、正当な権利というわけだ。
マネージャーはどうしても断り切れなくて、わたしの妻と母とを差し出すことにした。
彼の婚約者は別のクラスのチャンピオンに寝取らせてしまっていたので、
身内の女というと、ジムの共同経営者であるわたしの身内の女ふたりしかいなかったのだ。
母が白人選手の、妻は黒人選手の相手をすることになった。
場所を選ばない無法者だったので、
わたしの家がそのまま、濡れ場になった。
ひとつ部屋で、明日の対戦相手は、わたしの妻と母とをひと晩じゅう、愛し抜いたのだ。
母はあとになって、言ったものだ。
わたしが美紀さんの代わりに、黒ちゃんの相手をしようと思ったけど。
どうやらそうじゃなくて、よかったみたい。
――たしかにそうだったと、あとになって実感した。
逞しい褐色の臀部が、なん度となく、妻の細腰に迫っていった。
そのたびに妻の着ているよそ行きのワンピースのすそが、激しく揺れた。
黒髪をユサユサと揺らしながら、薄い唇にほろ苦いものを滲ませて、それでもグッと、歯を食いしばっていた。
ひとつ家のなか、妻の痴態を目にすることを強いられたわたしもやはり、密かに歯を食いしばっていた。
そんな妻やわたしの気持ちなど知らぬげに、
ヤマトナデシコ、オオ、イトオシイ・・・などと口走って、
褐色の鍛え抜かれた筋力を備えたけだものは、
几帳面に整えた黒髪がくしゃくしゃになるほど、指を挿し入れ揉みくちゃにしてゆく。
妻の自慢の髪の毛に加えられる凌辱は、犯される股間と同じくらい、わたしの目に灼(や)きついた。
傍らの母は、白人相手に身もだえしていた。
望まれて装った着物の襟をはだけられて、あらわになった胸を、どん欲に吸われていた。
奥ゆかしい和装の美女をねだったチャンピオンは、自分のリクエストがかなえられたことに目を輝かして、
夫以外の男性は初めてだという母を、有無を言わさず組み敷いていった。
ほどかれた紅い帯が、紅葉の流れる河のようにつづら折れになって、
白熱した惨劇を、いっそう惨酷なものにしていた。
弱々しくためらった抵抗は、なんなくねじ伏せられて、
母は自分の息子ほどの白人選手を、
妻は同年代の黒人選手の相手となって、
彼らを前にするといっそうか細く見える肢体を、秀でたしなやかな筋肉に制圧されて、
逞しい腰のどん欲な上下動に、貞操をむしり取られていった。
ひとしきり性欲処理を済ませると、ベリーハード・ショウはそそくさと服を着て、
礼も言わずに立ち去っていった。
そのいっぽうで。
挑戦者である褐色のコウモリ、バット・ヴァンパイヤは、
飽きもせずに、自分と同年代の妻を相手に、挑みかかっていった。
褐色の逞しい臀部は、飽きもせずに、上下動をくり返す。
ふとしたはずみに目に入った彼の陰茎は非常に太く、
あんなものを受け容れさせて妻が壊れてしまうのではないかと、わたしは本気で懼(おそ)れた。
けれどもはっきりしているのは、バット・ヴァンパイヤはわたしの妻を、しんそこ気に入っているということだった。
躍動する筋肉が、汗をぎっしり浮かべた褐色の皮膚が、獣のように荒々しく真摯な息づかいが、
それらすべてが、歓びに満ちていた。
地味なねずみ色のワンピースのすそに、白く濁った粘液を光らせながら、
妻は絶えず足摺りをくり返し、その都度都度に、身体の奥底までも、淫らな体液で浸されていくのだった。
ただただ、自分の倍はあろうかと思える獣に挑まれることに、うろたえながら。
地味な肌色のストッキングはむしり取られ引き破かれて、ひざ下まで弛んでずり落ちて、
ふしだらな引きつれに、皴寄せられていった。
一週間後。
ジムの裏部屋の扉が細めに半開きになった向こうから、
わたしは一対の男女を覗き見ていた。
どうしても見たいのなら教えてやるよと、マネージャーが配慮してくれたのだ。
でも邪魔をしたら、ワンパンチだからな、と、わたしに忠告するのも忘れなかった。
新たなチャンピオンであるバット・ヴァンパイヤが顔を合わせているのは、わたしの妻だった。
妻は今朝、友人に会いに出かけてゆく――といって、家を出たはずだった。
けれどもその刻限は、マネージャーが教えてくれた、新しいチャンプと日本女性とが密会をする時間と一致していた。
まさか・・・と思いつつも、わたしはマネージャーに頼み込んで、ジムのなかに入れてもらったのだ。
「チャンピオン獲得、おめでとうございます」
妻は表情を消して、棒読み口調でそう告げた。
「お祝いをくれるのかな?ミセス・エンドー」
それくらいの日本語は、操れるようだった。
応えの代わり、彼女はブラウスの胸もとの釦に手をやって、釦を二つ三つはずしていた。
「ナイス・アンサー」
チャンプは嬉しげに白い歯をみせ、妻もためらいながら愛想笑いを泛べた。
瞬間、妻の華奢な身体に、黒人の巨体が覆いかぶさった。
丸太ん棒のような褐色の逞しい腕のなか、妻は苦しげに身もだえをする。
けれどもチャンプはお構いなしに、薄い唇をこじ開けるようにして、キスをくり返し、重ねていった。
地味な無地の紺のスカートを腰までたくし上げられて、ねずみ色のストッキングは片方だけ脱がされていた。
妻がねずみ色のストッキングを穿いているのを、わたしは見たことがない。
肌色のストッキングしか脚に通したことのない彼女にとって、きょうはなにかが特別だったのだ。
片方だけ穿いたストッキングも、ひざ小僧の下までずり落ちて、ふしだらに弛み、くしゃくしゃに波打っている。
妻が堕ちたということを、乱れた着衣がむざんなまでにあからさまに、教えてくれていた。
夫の目を盗んで黒人男性と情交を遂げる妻のようすを、
わたしはただ棒立ちになって、見守りつづけていた。
「ユーのワイフはじつにナイスだ」
バット・ヴァンパイヤは、わたしに言った。
妻はとうとうわたしに気づくことなく、立ち去ったあとだった。
「チャンピオンになったのも嬉しいが、淑やかなジャパニーズレディをモノにできたのは更に嬉しい」
不思議と怒りは、湧いてこなかった。
この黒人選手は、ひとの妻を相手に性欲処理にしながらも、
ともかくも妻を愛し、時には庇い、時には虐げて、
理性を突き崩された妻は、めくるめく痴情に堕ちていった。
そのことは、同じ男として、認めない訳にはいかなかった。
「さいしょは強引にいただいた。
でもリピートするのは奥さん次第だ。
ユーのワイフは賢い女だ。
だんなを傷つけまいとしながらも、自分もしっかり愉しんでいった。
ワイフを怒っちゃだめだぜ。
あれは賢い女だ」
チャンプはしきりと、わたしの妻をほめた――どうやら本音らしかった。
「時おり来日する。そのときは、ユーのワイフをまた、抱かせてくれ」
Yes,sir・・・
強制された答えのはずなのに、真実味を籠めてしまっている。
差し出された掌を握りしめると、ぐっと力を籠めてきた。
もちろん、わたしの掌が壊れないよ う、加減をして。
「ユーのワイフを、完全に奪うことはしない、約束しよう」
妻を穢した男は白い歯をみせて、意味ありげにウィンクをした。
おなじ日。
未亡人である母のことを、かつてのチャンピオンが呼び出して、日本の淑女の木尾の姿を日がな一日愉しんだことを、
マネージャーはそっと、教えてくれた。
彼の妻はけっきょく、長いこと情夫であった別のクラスのチャンピオンからのプロポーズを受け容れて、
遠い国へと旅立つ決意を固めたのだと、なぜか清々しい顔をして、いっしょに教えてくれた。
世界的なタイトルマッチとは無縁の、地下の各闘技場――
白熱した八百長試合に目を輝かせた青年たちが、きょうもひきもきらず、ジムへと押し寄せている。
商売繁盛は、まちがいなしだった。
妻が密会するときの洋服代をかせぐため。わたしは仕事に精を出す。
黒いチャンプの餌食になって、悶えるための装いを――
あとがき
おひさしぶりです。^^;
ずっと興が乗らずに、ブログを放り出していました。^^;
このお話――すでにだいぶまえに書いたのですが、なんとなくあっぷしそびれていたんですね。
少しだけ直して、あっぷしてみた次第です。
鬼畜な話は嫌いなのですが、これはその一歩手前。
強いられていたはずの関係なのに、奥さんがご主人にうそをついてまで、自発的に出かけていった――というくだりがツボなのでした。
喪服の戯れ。 ~夫婦は似るもの。~
2022年01月31日(Mon) 21:15:01
さっきまで。
男はわたしの足許を、舌と唇とペ〇スとで、辱め抜いていた。
いまはわたしは、貧血に干からびた身体を横たえて、
乱れ髪に、乱れ衣装。
はだけた漆黒のブラウスに、たくし上げられた同色のスカート。
そして、みるかげもなく咬み破られた、黒のストッキング。
そんなふしだらななりで、ベッドに身を淪(しず)めている。
礼装というきちんとした服装ほど、乱れ堕ちるとふつうの服よりも妖しさを増す。
そう感じるのは、わたしだけであろうか――
いや、少なくとも、もうひとり。
わたしと同じことを感じている女がいる。
ほかならぬ、わたしの妻である。
ドアの向こう。
呼び出されるまま、誘い出されるままに、
さっきまでわたしの血を旨そうに啜り取った男をまえに、妻は艶然とほほ笑んでいる。
「待った?」
「待ちかねたぞ」
「お化粧に時間がかかったのよ」
「それなら納得だ」
「どうせ・・・血しぶきで汚してしまう癖にぃ」
「あんたの喪服には、持ち主のバラ色のしずくが良く似合う」
妻はフフッ・・・と、笑い返した。
まだいちどしか、抱かれていないはずなのに。
ぴったりと息の合ったやり取りを、小気味よげに交し合う。
「今夜は主人、帰りが遅いのよ。だいじょうぶ。二時間はお相手できるから」
妻はそういうなり、男に背を向けて、ネックレスをはずしにかかる。
男はそんな妻の後ろ姿に、寄り添うように近寄って、器用な手つきでネックレスをはずしていた。
「ありがと」
「男にネックレスを外されると、旦那の束縛からほどかれた気分がするだろう?」
「そんなの、とっくにないわ」
わたしの目があるとは知らず、妻は傍若無人にそうこたえた。
「だれか・・・浮気相手探していたの。まさか吸血鬼に襲われるとは、思ってもいなかったけど」
どうやら後半は、独り言のようだった。
ソファにゆったりと腰を掛ける女の足許にかがみ込んで、
男は舌をピチャピチャと鳴らしながら、黒のストッキングに包まれた脛に、唾液をはぜている。
女は悔しげに、けれども少しくすぐったそうにして、男の所作に目線を落とした。
「どお?新しいのおろしてきたのよ。喪服にはちょっと、光沢が濃すぎるかしら」
きっとそれが、狙いなのだろう。
今夜の妻は、喪服の娼婦。
夫の血を啜った男を相手に、汚された貞操をなおも恥辱にまみれさせて、夫の家名を貶めてゆく。
ばりばりッと音をたてて、ブラウスが裂かれた。
裂けたブラウスのすき間から、珠のように輝く白い肌を覗かせて、
目を細めて乳房にしゃぶりつく情夫に、乳首を好きなだけ、弄ばせていた。
股間がじわり・・・と逆立つのを、わたしは感じた。
さっきまで。
わたしを犯し抜いた一物が、妻のスカートのすそをかすめて、その奥深くをに狙いを定めている。
なん年ものあいだわたしが堪能したあのなめらかな肌を、彼と共有することに、もはやためらいは感じなかった。
けれども、恥を忘れて悶え狂う妻の痴態は、さらにわたしを悩ませ、焦がれさせる――
引き剥がれた黒のストッキングを片脚だけ通したまま、
妻はあらぬ方に目線をさまよわせつつ、
「もっと、もっとォ・・・」と、せがみつづけた。
先刻わたしがあげた呻きと、おなじ言葉を、おなじ声色で。
やつはきっと、思っているに違いない。
「夫婦は似るものなのだ」 と。
喪服の帰り道。
2022年01月27日(Thu) 07:57:20
男なのに。
婦人ものの洋装のブラックフォーマルを身に着けて、知人の通夜に参列した。
会社の同僚宅だった。
この街に増え始めた吸血鬼に遭って、血を吸われて亡くなったのだ。
奥さんは泣き濡れていたけれど、さいしょに咬まれたのは奥さんのほうだった。
ご主人である同僚は、奥さんを日常的に襲われながらも、相手の吸血鬼の所業を受け容れていて、自らも血を与えるようになっていた。
むしろ、男盛りの吸血鬼が、自分の妻を見染めたことを、誇りに感じているふしさえあった。
彼が亡くなったのは、半吸血鬼になるためだと――だれもが感づいていた。
参列した女性の同僚や同僚の妻たちの少なくとも半数は、土葬された後蘇生するであろう彼に襲われることを予期していた。
今夜、喪主である奥さんが脚に通した黒のストッキングは、
夫の仇敵の舌を愉しませ、むざんに咬み破られてしまうのだろう。
奥さんもそれを、夫婦の床で、嬉々として許すのだろう。
そんなお弔いに、女ものの喪服を身に着けて参列した。
勤め先のものもなん人となく来ていたし、はっきりと見とがめられもしたけれど。
それでもかまわなかった。
チクチクと刺さる視線を、むしろ小気味よく感じていた。
革製の黒のパンプスが、足をかっちりと締めつけるのを、
薄くしなやかなナイロン生地が、ふくらはぎをぴっちりと束縛するのを、
酷く心地よく、感じていた。
コツコツとパンプスの足音を響かせながらたどる夜道を、さえぎる翳がいた。
翳はわたしのまえに立ちはだかると、フフフッと嗤った。
吸血鬼に狙われたこの街の人妻が、戸惑いながらもそうするように、
わたしも彼の欲望に従おうと、おとがいを仰のけて、目を瞑った。
相手は数か月前から、わたしの血を吸うようになっていた。
深夜に自宅をまぎれ出て、女の姿でさまようわたしを掴まえて、
けれども彼は、わたしのことを女として扱ってくれた。
それ以来――ブラウスをなん着、持ち主の血で染めたことだろう。
ストッキングをどれほど、卑猥な舌にいたぶらせたことだろう。
「そういうことだったのね」
冷やかな声色が背後からあがったのは、
首すじに埋め込まれる牙に陶酔させられて、しばらく経ったころだった。
思わず振り向くと、そこにいたのは妻の瑞恵だった。
瑞枝も洋装の喪服姿――夫の同僚の弔いに、今夜は参列するといっていた。
入れ違いになるかも知れない。ばれてしまうかもしれない。でも、もうばれてもかまわない――
そんなふうに思えたのは、同僚がたどった末路をみたためだったのだろうか。
「お似合いじゃないの」
半ば軽蔑したように、半ば意地悪な悪戯心を秘めた笑いが、白い頬をよぎった。
彼は妻のまえ、臆面もなくわたしを女のようにあしらって、
ベンチに腰かけて、すらりと流した黒のストッキングの脛に、器用に舌をヌメらせてくる。
妻は面白そうに、わたしたちの所作を見守っている。
「ストッキング、破いちゃうんだ」
彼がわたしの穿いているストッキングをなぞるように舐めつけたあと、
ふくらはぎに牙を差し込んで、脚の周りに張りつめた薄いナイロン生地をチリチリと咬み剥いでゆくのを、
瑞恵は嬉し気に、見守っている。
「あたしも・・・破ってもらっちゃおうかな~」
いつもののんきな口調で、彼女は軽くハミングするようにして、そう呟いた。
有夫の婦人が吸血鬼に血を吸われたら、犯されてしまう。
この街の人妻なら、だれでも知っていることなのに。
彼女はあえてわたしのまえで、吸血鬼にストッキングを破らせたいと呟いていた。
破ってもらうと良いわよ――わたしは女口調で、妻にいった。
「じゃあ、そうするわね♪」
妻はスキップするような軽い足取りで、わたしの血を吸っていた吸血鬼のほうへと歩み寄ると、
「どうぞ――」
と、さすがに少しだけ声を固くして、告げた。
わたしの穿いていたストッキングをいたぶっていた唇が、妻のストッキングのうえに吸いつけられて、
よだれを滲ませながら這いまわり、薄地のナイロン生地の舌触りを愉しみはじめた。
わたしは自分の妻の足許に咥えられる凌辱を、ただうきうきとした目線で、追いかけてしまっていた。
妻のストッキングハ、ふしだらによじれ、いびつな裂け目を走らせて、みるかげもなく咬み剥がれていった――
礼装の足許を狙わせて、黒のストッキングを気前よく剥ぎ降ろさせてしまうと、
漆黒のスカートのすそから、太ももの白さをさらけ出しながら、吸血鬼を誘った。
「貴方への罰よ。貴方のお嫁さんは今夜、他の男を識るの」
二ッと嗤った口許から、歯並びの良い白い歯をのぞかせると、
鮮やかな朱を刷いた唇を、呑み込まれるようにして、しつような接吻に応じていった。
漆黒の衣裳を剥ぎ堕とされて。
白い肌を闇夜に浮き立たせながら、
柔らかな肢体がわたしのまえで、不倫の交尾を遂げる――
おめでとう。
わたしの情夫と妻との恋が成就したことを祝福しながら、わたしは火照った身体を夜風に晒しつづけていた。
【管理人の独り言】つむじ風
2022年01月19日(Wed) 20:40:41
突如として。
どす黒い”魔”が降りてきて、柏木の脳裏のなかをつむじ風のように、荒れ狂っていきました。
それが、先刻来あっぷしてきた、一連のお話しです。
それぞれ登場人物は別人、同性のケのあるもの、ないもの、さまざまですが、
どうもひとつの共通項が、あるみたいです。
折り目正しい家庭が、吹き荒れる吸血の嵐のなかにさらされて、
それなのになぜか皆さん嬉々として、状況にすすんで対応、堕落の一途をたどっているのです。
目の前で妻を犯されながら、相手の自分の妻に対する一途な想いに感じ入って、姦通を許す夫。
(妻にも、息子にも、そして自分にも・・・彼氏が。)
婚約者の生き血を吸い続けている男に、自らの若い血を吸い取らせ、半吸血鬼になってしまう花婿。
(生き血を吸われる婚約者 (副題:花婿の実家、崩壊す))
花婿になるはずが半吸血鬼として里帰りしてきた息子迎え入れ、妻や娘を促してつぎつぎと血液の提供に応じさせる一家の長。
(生き血を吸われる婚約者 (副題:花婿の実家、崩壊す))
不倫の現場を抑えながら、妻の情夫の吸血鬼に咬まれあの世送りになったのに、ふたりの逢瀬をなぜか手助けする夫。
(喪服の悪妻。)
まあ、ココでいがい絶対あり得ないシチュなのですが、
一貫描かれているのが、「自分の仇敵にすすんで生き血なり、妻なり娘なりを分け与えてしまう行為」です。
潔く妻や娘を提供された吸血鬼たちは、感謝のしるしに彼女たちに容赦なく襲いかかり、したたかに汚してしまうのですが、
仇敵の関係のはずなのに、襲う側、襲われる側双方に、ある種のシンパシーが感じられます。
そのシンパシーがなにによるものなのか・・・は、まだ謎です。
個人的によく描けたとおもうのは、「生き血を吸われる婚約者 (副題:花婿の実家、崩壊す)」に登場する、主人公のお父さんです。
自分の妻や娘の血を吸いに現れたのは、息子の婚約者の情夫。
そんな幾重にも仇敵の間柄のはずなのに、「一家の長らしく」振る舞い、
妻や娘に正装させてコトに臨む段取りをするのです。
妻はそんな夫の想いを察してか、華奢な身体いっぱいに巡る自身の生き血を余すところなく啜り取らせて、
自家の血液の魅力を誇りながら与えることに、「女の意地」を見出しています。
それに対して、血を獲た男は一定の敬意を払い、
けれども花嫁は容赦なく、姑や小姑を追い詰めます。
彼女こそが、まさしく「侵略者」だったのかもしれません。
さいごの一作は、異色です。
夫をかけらも尊敬しない、しかも裏切り抜いた挙げ句無同情に罵っている。
しかも言葉遣いが下品。
前作の、丁寧な言葉遣いと物腰で、婚約者を公然と裏切る花嫁とは、裏腹なキャラクターです。
こういうタイプの人妻は、ココでは珍しいです。
けれどもさいごの一行にたどり着いたとき、彼女の真意がほの見えます。
あの一行――
りあるな柏木には、想像することのできないフレーズです。
まさに、”魔”が描かせた一行でした。
【ネタ話】かなり昔からの妄想
2021年08月23日(Mon) 15:56:52
ロングの黒髪を振り乱しながら、
グレーのスーツを着た若い女性が、
真昼間の路上、吸血鬼に襲われている――
そんな妄想を、中学生のころからしていました。
なん度も首すじを咬まれ、
そのたびに悲痛にうめき声を洩らしながら、
礼儀正しい言葉を選んで、生命乞いをくり返して、
けれども相手は容赦がなくて、
グレーのストッキングの脚にまで、無作法にも咬みついてゆく。
脚に通したストッキングを玩ばれていると知りながら。
その女の人は大きな瞳を悩まし気に翳らすだけで。
路上に座り込み、立て膝をして、そんな姿勢でふくらはぎを咬ませているときなどは、
むしろ、自分から咬ませているのではないかと思えるほど。
知らず知らず、二人の息は合ってしまっていて、
吸血鬼が咬みたがるところを、彼女のほうからすすんで差し伸べるようになってゆく。
致死量近い血液を、したたかに吸い取られながらも、
彼女は自分の生き血を吸血鬼がせつじつに求めていること、
そして、彼女の生き血の味をひどく気に入ってしまっていることを察していて、
あえて彼の狼藉を、声だけで制止しようとしていた。
やがて二人は、婚約者も認める仲となり、
その婚約者の見つめる前、
はだけたブラウスから乳房もあらわに、
彼女の純潔を奪おうとする吸血鬼をまえに、
おずおずと、身体を開いてゆく――
後半の処女喪失場面を思いついたのは、高校生くらいのころかもしれません。
どういうわけか、
グレーのストッキングを穿いた脚をわざとのように咬ませてゆく、ロングの黒髪の美女を、
そんなころから夢想していました。
理穂さんのストッキング
2021年08月23日(Mon) 11:24:31
婚約者の理穂さんが、吸血鬼に襲われた。
出勤途中、路上で襲われて、したたかに生き血を吸い取られたのだ。
幸い、生命は取り留めたが、息をするのがやっとの程の貧血ぶりだった。
あとで聞いたところでは、当地の吸血鬼は、襲った女性を吸い殺すことはないのだという。
ということは、理穂さんが吸い取られた血液の量は、彼らにとってマックス――
それだけ、理穂さんの生き血が彼の気に入ったということらしかった。
見舞いに飛んでいくと、理穂さんは蒼ざめた顔に精いっぱいの笑みを泛べて、ぼくの来訪をよろこんでくれた。
彼女の家に着くまえに、病院で薬をもらって帰る彼女の帰り道で出くわしたのだ。
ところがそれより少しあとに、当の吸血鬼が現れた。
理穂さんは縮みあがって、ぼくの後ろに隠れた。
迫ってくる吸血鬼に、ぼくはいった。
彼女を襲わないでください。貴男に血を吸われ過ぎて、疲れているのです。
吸血鬼はぼくと目線を合わせると、ちらと憐憫の色を泛べて、理穂さんを見た。
理穂さんは目線を合わせようともせずに、ひたすら怖れていた。
「迷惑をかけた」
男の当たり前のはずのひと言を、ぼくは茫然と受け止めていた。
「わたし、やっぱりあのひとに、血をあげようと思うの」
家に着いた理穂さんの口を突いて出た言葉は、意外なものだった。
「え?どういうこと!?」
喉渇いているんでしょう?だから、わたしの血で慰めてあげたい――
咬まれたときに注入された独で、理穂さんはすでにたぶらかされていたのだ。
彼女から託された紙包みを手に、理穂さんの家を辞去したのは、夕方のことだった。
「今朝穿いていたストッキング。あのひと、欲しがると思うの。
もしも途中で遭ったら、あなたから渡してくれないかな」
理穂さんの履いていたというグレーのストッキングには、
ところどころ血が滲み、大きな裂け目を走らせていた。
胸を痛めながら、裂け目の数を勘定したが、数えきれないほどだった。
このぶんだけ、彼女は苦痛を覚えたのか。
ぼくの胸に生まれかけた怒りを、彼女は敏感に察して、すぐに打ち消した。
「きっとそれだけ、切羽詰まっていたのよ」
襲われた女性の身に着けていたものを相手の吸血鬼に与える行為は、
彼女と吸血鬼の交際を認めることを意味する――
けれどもぼくは、帰り道に出くわしたそいつに、おずおずと紙包みを手渡してしまっていた。
幾分かの昂りさえ、胸に秘めながら。
白いハイソックスの保健部員
2021年06月24日(Thu) 08:11:19
保健部員の彼女は、制服のスカートの下、
白のハイソックスを看護婦さんの白タイツのように履きこなしている。
赤縁メガネに、そばかす顔。
肩先までの黒髪を地味に流して、スタイルは良くもなく悪くもなく、
ごく目立たない少女だった。
ハイソックスは、ふつうの真面目な女の子が脚に通す、無地のもの。
そんな控えめなたたずまいに、吸血鬼が欲情した。
彼は想いのままに学校に出没して、
女教師や女子生徒、それに女の事務員をさらっては、空き教室に連れ込んで、
想いの限りを尽くすのだった。
戸惑う保健部員のまえ、吸血鬼は内心舌なめずりをしながら少女を見つめた。
すまないが保健部員さん、わしを渇きから救っていただけまいか?
こたえはひとつしかないのだと、頭の悪くない保健部員は承知した。
そう、嫌といっても咬まれるし、いいわといってももちろん咬まれる。
彼女の皮膚の下をめぐる14歳の血液は、もはや吸血鬼の絶好の好餌となる運命だった。
「わかりました。お相手しますから、乱暴しないでくださいね」
少女は気丈にも吸血鬼をまともに見返し、
自分から先に立って、手近な空き教室へと入っていく。
こんな地味な私が?という想いもあった。
ヒロイン向きの柄ではない、と自覚していた。
期せずしてめぐってきたヒロインの役柄は、吸血鬼に襲われる役。
学芸会で吸血鬼の寸劇を演じたとき、冒頭に襲われる第一の犠牲者役の子も、
彼女よりはさえた美貌の持ち主だった。
それでも保健部員は、自分の役目を思い出して、
具合の悪くなった人の介護に専念しようと、心を決めた。
教室に入ると吸血鬼は、少女を後ろから羽交い絞めにして、
首すじを咬んで血を吸った。
「あっ・・・」
眩暈を起こして倒れかかる少女を、吸血鬼は支えてやり、
支えてやりながらなおも血を啜りつづけた。
「輸血だと思ってくだされよ」
引導を渡すような囁きに、少女は目を瞑り、恐怖をこらえながらもかすかに頷いた。
随喜のうめき声をあげて、男がのしかかってくるのを制服姿で受け止めながら、
少女は白い歯をむき出しにして、痛みと恐怖に耐えた。
男は保健部員の丈長なスカートをたくし上げると、
白のハイソックスを履いたふくらはぎも、咬んでいった。
「それだけはやめて」と、少女はちいさく叫んだけれど、
見境のつかなくなった吸血鬼の耳には入らない。
ちゅうっ、ちゅうっ、ちゅうっ・・・
ハイソックスを血で濡らしながら、盛んに音を立てて、少女の生き血を吸い上げてゆく。
「満足なさいましたか」
蒼ざめた顔に恨めしそうな色を泛べながらも、保健部員は患者の容態を気遣うのを忘れない。
「ありがたかった」
吸血鬼は彼女を抱きしめてお礼を言うと、教室から立ち去っていった。
恐怖が去ると、緊張から解放された少女は、ハンカチを取り出して、少し泣いた。
けれども、芯の強い彼女は、泣き顔を人に見られるのをきらって、
教室から出てきたときには、いつもどおりの彼女だった。
ふくらはぎがまっ赤に濡れた、ハイソックスを除いては――
少女が再び吸血鬼と出遭ったのは、一週間後の学校からの帰り道。
顔色ひとつで、自分のまえに立ちふさがった男が、なにを求めているのかを察した。
「喉が渇いているんですよね」
保健部員は呟くようにそういうと、
「未経験の子をびっくりさせるくらいなら、私が相手になるか」
と、さらに低い声で呟いた。
「ここでは嫌です。人のいないところで」
吸血鬼をまともに見返す目には、怜悧な輝きが宿っていた。
公園のいちばん奥まったベンチに腰かけて、
首すじに血潮をあやした少女は、それがブラウスの襟首を汚さないかと気にかけながら、
看護婦の白タイツのように履きこなしたハイソックスを、吸血鬼の舌にゆだねていた。
自分の履いているハイソックスを、意地汚くなぶり抜く吸血鬼を、
「迷惑がられると思いますよ」
と、たしなめながらも。
保健部員は、けっきょくは、患者の気の済むように、させてやった。
いたぶり抜かれたハイソックスが、くしゃくしゃに波打って、いびつによじれ、
血潮に濡れながらずり降ろされてしまうまで。
数年後。
「若田さん、13号室の患者さんよろしくね」
婦長に声をかけられた若田看護婦は一礼すると、
地味な赤縁メガネを光らせて、指示された病室へと足を向けた。
白衣のすそから覗く脛は、肌の透ける白のストッキング。
奉職してから、なん足愉しませてしまったことだろう。
まだ男を識らない身体は、吸血鬼の患者を対象に、処女の生き血を供給しつづけていた。
「蛭村さぁん」
入院したばかりの患者の名を呼びながら病室のドアを開いて、
若田看護婦は足をすくませる。
かつて中学校で何度も彼女の血に執着した、あの吸血鬼だった。
「あのときの保健部員さんか」
「相変わらず、人さまを困らせているのですね」
若田看護婦は、まともに吸血鬼を見返した。
「そういうことだ」
息荒くのしかかってくる吸血鬼の猿臂を、さりげなくかわしながら、
それでも若田看護婦は自分の勤めを忘れてはいない。
「ハイソックスのほうがよろしかったですか」
と問う看護婦に、「いいや、これが良い」と、
吸血鬼は舌なめずりをしながら、白のストッキングの足許へとかがみ込む。
「ほんとうに、看護婦になったのだな」
「エエ、ほんとうになりました。貴男のようないけないひとを癒すために」
吸血鬼は感謝するように目を瞑り、彼女を拝むように手を合わせると、
もはや欲望に忠実になって、看護婦の足許に唇を吸いつけた。
なよなよとした薄地のナイロンが男の唇になぶり抜かれ、
チリチリに咬み剥がれてゆくのを、看護婦は苦笑しながら見おろしていた。
真剣な間男と、不真面目な夫。
2021年06月19日(Sat) 08:51:06
妻の真依(まより)に、吸血鬼はいった。
「まじめな恋愛関係だよな?わし達は」
真依は棒読みのように、こたえた。
「まじめな恋愛関係です」
「そういうわけだ。きみの嫁は、わしの愛人の一人になりさがった。悪く思うな」
ククク・・・と邪悪に笑う彼はしかし、すぐに真顔になった。
「どうかこの恋を、かなえてもらいたい」
夫としての権利を、少しは尊重してくれるつもりらしい。
ぼくはいった。
「まじめな恋なら、仕方ないです」
真依がたんなる慰み物として、本人の意思に反して乱暴されるなら、夫として真依を守らなければならない。
けれども、彼女がきみといっしょにいて幸せだというのなら、ぼくは夫の座を去るか、夫のまま彼女の恋を許容するしかない――
理解のあるご主人だな、と、吸血鬼はにこりともせずに言い、奥さんをしんそこ愛しているのだな、とも言ってくれた。
彼はぼくの血を吸ってその場に昏倒させて、
ぼくはふたりが愛し合うありさまを、理性を忘れて薄ぼんやりとなってしまった脳裏に、しっかりと刻みつけた。
しんけんに愛し合うふたりより、
めろめろにされてしまった妻の痴態に昂ってしまったぼくのほうが、
はるかに不真面目なような気がして、ならなかった。
クリーニング店シリーズ(紹介)
2021年03月28日(Sun) 22:29:15
「喪服の女」以降は、予想外にさくさく描けてしまった連作です。
さいしょは単発もののつもりだったのですが、
不景気な顔つきをしたクリーニング店の奥さんが、舞台回しをしてくれました。
このシリーズには、三人の吸血鬼が登場します。
一人は、喪服の女とその娘のピンクのスーツの若妻を吸った吸血鬼。
もう一人は、クリーニング店の奥さんを吸った吸血鬼。
さいごの一人は、クリーニング店の店主。
この人は、自分の奥さんを吸った吸血鬼によって、半吸血鬼にされてしまった という設定です。
吸血鬼たちの人物設定はあまり濃くなかったような気がします。
どちらかというと、同じ吸血鬼でも人間から半吸血鬼になったクリーニング店の親父さんが、一番濃いかな。
吸われる側はいちように、濃いかもしれませんね。
娘の身代わりにと吸血鬼の相手を務めながら、欲望に溺れてしまう未亡人。
母親の負担を減らそうとして街に戻ってくる娘夫婦は、どちらが主導していたのでしょうか。
案外ご主人のほうも、奥さんを襲われることをよしとしているような気がします。(直接的には登場しませんが)
クリーニング店の奥さんは、舞台回しを務める一方で、自分自身も襲われてしまいます。
そして、木島母娘をこの世界に引きずり込む片棒もかついでいます。
木島夫人は、なに不自由ない良いとこの奥さん。
娘も賢くて、たぶん可愛い。
なのに、一人でクリーニング店にお使いに行く大胆さももってしまう。
大人の入口を覗き込みたい少女が、闇の世界に引きずり込まれて、いっぺんに大人になってしまいます。
木島氏は少し、一話と二話に出てくる若いご主人と、キャラがかぶるかもしれません。
さいごに登場するクリーニング店の坊やも、父親が処女をゲットした少女を嫁に欲しがるという、
かなりМな性格の持ち主です。
このシリーズは、吸血鬼がむしろ黒子で、襲われる側のほうが濃いという意味で、描いている本人も楽しめるシリーズでした。
・・・というか、被害者が濃いのはいつものこと??
続きが浮かべば、また描きますので、期待しないでお待ちください。
なぞなぞ ~大ぜい迫ってきた場合の対応~
2021年03月12日(Fri) 07:57:01
問い
若い女の生き血を欲しがる吸血鬼が、奥さんを狙って自宅に群がってきました。
適切な行動を思いつくだけ挙げてください。
答え(例)
交代で吸ってもらう
順番に並んでもらう
一晩三人までに制限する
自分も女装して仲間に加わる
娘が大きくなるまで待ってもらう
息子に彼女ができるまで待ってもらう
結婚式をやるからと言って、親族の女性を集める(嘘ではない)
学校を襲ってもらう
前作の個人的なツボ
2021年02月17日(Wed) 19:51:31
母親の血を吸った吸血鬼が息子の血を吸うのと、
父親の血を吸った吸血鬼が娘の血を吸うのとでは、
前者のほうがグッときます。
やはりおっさんには関心がないのでしょうかね。(^^ゞ 自分のことはたなにあげて。(爆)
二人並んで吸血される、というのも、個人的にツボです。
夫婦や姉妹でも良いし、母娘でもよい。
今回は珍しく、兄妹のシーンもありましたね。
同性に生かされてしまった少年が、
その直後に自分の彼女の純潔を狩られるシーンもお気に入りです。
まだひりひりしているのに、そのひりひりをもたらした一物が彼女の股間までも侵してゆく・・・と言うあたりが特に。
少女が少年を襲う話は、そんなに関心はありません。
どちらかというと、「今度、お母さんを紹介して」といって、愛人の吸血鬼のための手引きをするほうに気が行きました。
ここから先の、川黒家の受難話はどちらかというと行きすぎなのですが、
目の前で処女喪失した娘と結婚を強制させられるくだりを描きたかったのですね。
清香は「ついでみたい」とふくれていますが、
未来の姑と同時に同じ男に抱かれたわけで、吸血鬼的には十分意味があってしていることなのです。(そうなのか?)
奥様の貞操公開!は気に入りのプロットなので時おり描いていますが、
行列の中に顔見知りがいると、一段余計にひきたつように感じます。
このお話はもう少し後日談があるのですが、気が向いたら描きます。
ふたたび体験談
2020年07月25日(Sat) 21:31:36
男はなかなか、その太い一物を抜かなかった。
そして、いちど抜いてもまたすぐに、埋め込んでいった。
女は叫びながら、男をめくらめっぽうにげんこで叩いていたが、
もちろん男のダメージにはならなかった。
やがて叫び疲れた女は、ぜぃぜぃと荒い息を洩らしながら、男のいうなりになっていった。
男は女を仰向け大の字にして、何度も腰を沈めていって、
それから女を四つん這いにして、何度も腰を沈めていって、
さらに女を腹の上に載せて、何度も腰を突き上げていった。
女は髪を振り乱しながら、今や唯々諾々と、男のいうなりにプレイに応じた。
目の前の女が自分の妻とは思えなかった。
けれども妻はそんなふうにして、男に身体をなじませていった。
さいしょは嫉妬、それにかすかな憎悪。けれども憎悪は、すぐに消えた。
血管に注入された牙の毒は、わたしの血液のなかに淫らに織り交ぜられてゆき、
やがてやり場のない昂りは、男への称賛と目の当たりにするセックスへの陶酔に塗り替えられていった。
たちのよくない注射を十数発も食らうと、女はノックアウトされた。
息を弾ませ過ぎて絶息して、大の字になって伸びてしまったのだ。
「どうかね?」
男はわたしのほうに這い寄ってきて、訊かずもがなのことを訊いた。
「最高だね。」
わたしはこたえた。
きみのファックは妻を狂わせた。妻はもうきみのものだ。と、わたしはいった。
いいや、と、男はいった。
「きみの奥さんはあくまでも、ミセス江利川だ。
そしてわしは、そのミセス江利川を寝取る男だ。
そういう関係で、どうかね?」
きみの好きなようにするさ、と、わたしはこたえた。
では、そのようにさせてもらおう――男はそういうと、やおらわたしにのしかかってきた。
首すじを狙っているのがわかったので、目を瞑ってそのまま許した。
すこしだけ戻ってきた血潮が容赦なくむしり取られるのが、分かった。
それだけではなかった。
わたしはいつの間にか全裸に剥かれ、薄地のハイソックス一枚だけを身にまとっていた。
男はわたしを、さっきわたしの妻にしたのと同じやり方で、わたしを愛したのだ。
「そ、そ、そ、れ。は・・・っ・・・」
わたしはどもりながらも、黙ってはいけないと感じた。
けれどもすっかり血液をむしり取られてしまった身体はいうことをきかず、
彼のなすがままにされるよりほかなかった。
妻を再三犯した肉が股間に侵入し、ぬるりと熱い粘液を洩らした。
粘液はじわじわと身体の奥に拡がり、わたしの理性を痺れさせながらさらに奥へとしみ込んでいった。
そんなことを七度もされて、理性を喪わないものがいるだろうか?
その次は、息子の番だった。
幸い息子はまだ、寝入っていた。
けれども彼はあえて息子の頬ぺたを叩いて気を取り直させると、これからすることをこう告げた。
「今からきみを、わしの奴隷にする儀式を行う。
母さんと父さんは、さっきわしの奴隷になった。
きみにも、おなじようになってもらう。良いね?」
息子はあろうことか、お願い――といった。
お願いやめて、ではなくて、お願い、奴隷にして、という意味だった。
息子の頭は向こうを向いていた。
男がのしかかると、顔が見えなくなった。
ねずみ色のハイソックスの脚が開かれ、立て膝になった。
こうこうと輝く街灯が、純情で汚れを知らない少年の装いを、淫らな光沢に染めて照らし出していた。
きみの履いているハイソックス、好い色をしているね。
2020年07月18日(Sat) 03:55:01
学校帰りのときのことだった。
授業はいつも通り退屈で、つまらなかった。
ぼくは濃紺のブレザーにグレーの半ズボンの制服姿で、家に向かって歩いていた。
途中で一人の男の人に声をかけられた。
「ぼく、ちょっといいかな?」
自分のことを「ぼく」なんて呼ばれる年頃じゃなかったから、ちょっとだけ反撥を感じたけれど。
かけられた言葉の調子の深みのある柔らかさに、なんともいえぬなつかしさ・・・のようなものを覚えて、立ち止まった。
「なんですか?」
わざと他人行儀に、接してみた。
ことさらなれなれしくつきまとうようなやつなら、たいしたことないって思った。
男の人はみすぼらしいなりをしていて、うらぶれた齢かっこうに見えたけれど。
瞳だけがきれいに、輝いていた。
男のひとは、だしぬけに、ぼくの思いもよらないことをいった。
「きみの履いている靴下、いい色をしているね」
え?と思って足許を見おろした。
毎日、制服の一部として履いている、ねずみ色のハイソックスだった。
その日に限って弛んでずり落ちたりもせず――
ぼくはそういう行儀にふだんは無頓着だったから、良くずり落ちていては先生に注意されていた――
ひざ小僧のすぐ真下まで、ぴっちりと引き伸ばして履かれていた。
そうだろうか?と思って、まじまじと足許を見おろした。
彫りの深い縦じま(リブと呼ぶらしい)が脚の形に合わせて微妙にカーブを描いていて、
それが夕陽の陽射しを受けて、彫りの深い濃淡を受けていた。
「ねずみ色だと思うけど――青みがかっているような、好い色をしているね」
男はもう一度、そうくり返した。
学校の制服なんです、と、ぼくはこたえて、制服を褒めてくれて嬉しいです、と、つけ加えた。
「お願いがあるんだ」
男の人はいった。
大人の人が声をかけてくるとき、必ずそこには意図がある。
見知らぬ人ほど好からぬ意図で声をかけてくるから注意するように――父さんがそんな風に、いつだか訓えてくれたのを、
ぼくはなんとなく、思い出した。
けれどもぼくは、訊き返していた――どんなことでしょうか?って。
彼はいった。
私、吸血鬼なんだけど・・・怖くない?
「怖くはないですよ」と、ぼくはいった。本心だった。
男の人は丁寧だったし、なによりもぼくと同じ目線で話をしようとしていた。
そして、自分の存在に、どこか負い目を感じているのが、子供心にも伝わって来ていたから。
そういう人は、一見けしからぬことをしているようにみえても、決してそうではないのだと・・・
そこまで言葉にする力は、ぼくにはまだなかったけれど、
要約すればそんなようなことを感じたのを、いまでもよく憶えている。
男の人はいった。
「きみの履いているハイソックスを咬み破って、きみの血を吸いたいんだ」
エッ、そうなんですか?痛そうですね。。。と、ぼくはこたえた。
「なるべく痛くないようにするから――何とかお願いできないかな」
ふつうなら、行きずりの男が吸血鬼で、自分の血を吸おうとしていたら、
こちらは逃げるし、向こうは追いかけてくるだろう。
間違っても言葉を交わし、相手を理解しようなどとは、しないはずだった。
けれどもぼくたちは、不思議に落ち着いた気持ちのなかで、お互い言葉を重ね合っていた。
「喉が渇いているのですか?」
「明日の朝までにだれかの血を吸わないと、灰になるらしいんだ」
人に悪さをすることしかできないのだから、そうでも構わないんだけど――と、少しばかり投げやりに言いながらも。
きみのハイソックスの色を見ていたら、身近なところにもきれいなものがあるんだなと思って、
もう少し長生きしてみたいと思ったのさ。
ぶきっちょなぼくは、大人の人と話をするときは、いつもあがってしまうのに。
そのときにかぎって淀みなく、応えていた――
「ぼくのでよかったら、どうぞ」
男の人は、びっくりしたような顔をして、ほんとにいいの?って訊いてきた。
そう訊かれるとかえって怖くなっちゃうけれど・・・と言いながら。
いちど好いって言いだしたことを引っ込めるのは、男の子としてかっこ悪いから、
ぼくは「早く咬んで、済ませて下さい」といった。
相手の男の人はゆらっとしていて、背が高くて、見おろされて見おろす関係だったけど。
ぼくはむしろにらむような強い目で、男の人を見返していた。
「良い気性の子だ」と、彼はぼくのことをほめた。
気性が良いなんて言われるのは、初めてだった。
どちらかというと、意気地なしとか、だらしがないとか、そんなふうにしか言われない子だったから。
でも、口先のおだてでそういっているわけではないのだと、直感的に思った。
もしかすると、本当は持っていた「気性の好さ」を、彼がぼくの内側から、引き出してくれたのかもしれない。
「ちょっと待ってね」
さすがに切羽詰まってしまったぼくを、
「そこのベンチに座ろうか、落ち着くから」
と彼は促してくれて。
どうやらハイソックスが好きらしい彼のために、
ぼくはすこしだけずり落ちかけていたハイソックスを、両脚ともきちんと引っ張り上げていた。
「ありがとう」
かれはそういうと、まじまじとぼくの足許に目を落として、
両手でぼくのひざ小僧と足首とを抑えつけて、
ハイソックスの上から、ふくらはぎに唇を吸いつけてきた。
すぐには咬みつかないで、男は吸いつけた唇を、ヌルヌルと這わせてきた。
ハイソックスの生地の舌触りを愉しんでいるんだ――ぼくはすぐにそう直感したけれど。
彼の無作法なやり口をやめさせようとはしなかった。
「小父さんは、ほんとうにハイソックスが好きなんだね」
ぼくがそういうと、わかってくれてうれしい、感謝すると、彼はぼくの足許にかがみ込んだまま、そういった。
大人同士の会話みたいだった。
彼は同じ高さの目線で、ぼくと話をしてくれたし、
ぼくは支配される獲物ではなくて、善いものを施し与える善意の人として、彼に接していた。
やがて彼は、「少し痛いよ」と告げて、ぼくはどうぞと応えていた。
ずぶり・・・
食い込んでくる尖った異物――吸血鬼の牙が、ぼくのふくらはぎにめりこんできた。
ちゅうっ・・・
奇妙な音を立てて、傷口からほとび出た血が、吸い上げられてゆく。
ぼくはアッと思ったけれど、口には出さずに、
自分でもびっくりするほど静かな目線で足許に執着する男の狂態を見つめていた。
ちゅうっ、ちゅうっ、ちゅうっ・・・
キュウッ、キュウッ、キュウッ・・・
人も無げな吸血の音が、夕やみの迫る周囲の景色を支配していた。
やがて頭がふらっとして、ベンチのうえからずり落ちるようにして、ぼくは尻もちをついていた。
男はなおものしかかってきて、こんどはぼくの首すじを舐めた。
そして、獣が獲物をむさぼるような貪婪さで、ぼくの首すじに咬みついた。
ワイシャツの襟首に血を散らしながら、ぼくは彼の吸血に応じていった。
ありがとう。
もう片方の脚も咬んで、ずり落ちたハイソックスをぼくの脚から抜き取ると。
男はさいしょのひっそりとした声色に戻って、礼を告げた。
気分はどう?一人で帰れそうかな?
顔色まで気遣われるのがちょっとてれくさくて、ぼくは大丈夫ですと応えていた。
きょうは母も家にいないので、ハイソックスを汚されて取られたことも、うまくわからないようにしておくからねとまで、告げていた。
つぎに逢うのは、一週間後――
そんな約束に、指切りげんまんまでしてしまっていた。
家路をたどるぼくは、学校に通うことを初めて楽しみに感じはじめていた。
【寓話】長男の”勇気”
2020年07月14日(Tue) 04:11:13
街が吸血鬼を受け容れた。
その家の夫婦は、そうなる以前から、同じ吸血鬼に夫婦ながら血を吸われていた。
その吸血鬼は、既婚の女を相手にするときは、男女の関係を結ぶのを常としていた。
その事実を知ったとき、初めて血を吸われた妻はうろたえて、夫もやはり困惑した。
けれども夫婦とも心を決めて、夫は妻の不貞を受け容れるようになった。
すでに子どもたちが大きくなっていたので、跡継ぎの不安がなかったためだった。
ふたりの間には、独立して隣町に住んでいる長男と、まだ女学生をしている長女がいた。
長女は両親と吸血鬼の関係を知ると、自分も処女の血を与えるようになった。
そして女学校を卒業して同じ街の幼なじみと祝言を挙げると、
それでも嫁入り前からの交際を重んじて、吸血鬼とも逢いつづけた。
新しい夫は気の良い男で、時おり嫁と吸血鬼が睦み合うところをのぞき見しては、
逢瀬を遂げた後の妻を抱いて、激しく愛するのだった。
隣町に出た長男が事情を知ったのは、だいぶあとになってからのことだった。
自分の嫁は隣町の出身で、吸血鬼とは無縁で過ごしていた。
両親も妹夫婦も、長男には多くを告げようとはしなかった。
吸血鬼もまた、長男とは顔見知りだったけれど、ほかの者たちと心を合わせ知らん顔を決め込んでいた。
長男の婚家が混乱することを避けようと考えたのだ。
しかしやがて、長男は同じ町の幼なじみから事情を知って、自分の実家も吸血鬼と懇親していることも知ってしまった。
少しばかり悩んだ彼は、嫁と相談して、自分たちの息子が小学校に上がるのを機に、実家に戻ってきた。
貧血に悩む両親と妹夫婦に同情したのだ。
跡取りができたので、家の存続にも問題はないというのだった。
だれもが長男の帰宅を歓迎した。
初めての夜、長男の嫁は気丈にも、ひと晩かけて吸血鬼の相手を務め、
骨の髄まで焦がれるほどに、愛されてしまった。
相手をしてくれた女性に親身に接するのが、彼らの礼儀だったためだった。
長男の嫁は戸惑いながらも相手を務め、
やがて吸血鬼の腕の中で悩乱をこらえ切れなくなって、
明け方にはすっかり、恋の虜になっていた。
そんな嫁を長男は許して、いままで以上に嫁を愛するようになったという。
長男が嫁への愛情を深めたのは、のぞき見する愉しみに魅入られてしまったからだというものもいたが、
長男とその嫁の行いを、それ以上非難するものは、だれもいなかった。
朝の散歩。
2020年06月27日(Sat) 08:18:08
朝。
犬を連れて、散歩に出かける。
このごろは暑い日中が続いていたけれど、
梅雨空もまだ折々顔を出していて、今朝の空も、薄どんよりと高い雲に覆われている。
ハーフパンツの下には、太めのリブが流れるねずみ色のハイソックス。
背すじを伸ばして、リードを提げ、いつものとおり近くの公園に出かけていった。
妻は犬とおそろいのリードを提げて、夕べ遅くに出かけていった。
夕べは漆黒のワンピースに、黒のストッキング――そう、喪服姿で出かけていった。
べつにお通夜というわけではない。
上品なスーツ姿に首輪をされて、吸血鬼の男友だちと、ひと晩愉しい夜を過ごすのだ。
愛犬とお揃いのリードでつながれた妻は、いろんなことを教え込まれて・・・
帰宅すると、若いころの驕慢さを忘れたように、従順な専業主婦にすり替わっている。
犬を放してやると、嬉し気にしっぽを振って、芝生の上を駆けていった。
ベンチに独り腰かけていると・・・やはり今朝も現れた。
この街の吸血鬼は、朝日を浴びても平気なのだ。
脛毛を見せるのが嫌で、ハイソックスを履く習慣を持っていたけれど。
彼らはハイソックスを履いた脚に好んで咬みつく習癖を持っていた。
「いつも悪いね」
と言いながら。
そいつはわたしの足許にかがみ込んできて、
ふくらはぎに痛痒い一撃を加えて、牙を埋め込んできた。
ちゅうっ。・・・
ひそやかに洩れる吸血の音を、
吸うものも、吸われるものも、シンと押し黙って聞き入っていた。
行為の最中。
駆けまわるのを止めた飼い犬は、わたしから数メートル離れた正面で、お行儀よく「お座り」をして、
飼い主の愉しみを見守っている。
這わされた唇に浮いた血潮がハイソックスにじわっとしみ込んで、
濡れた生温かさが、じわじわと拡がっていった。
家に戻ると入れ違いに、制服姿の娘が出てきた。
「お、早いね」
わたしが声をかけると、娘は口をとがらせて、いった。
「きょうは学校じゃないから」
あ、そう。
わたしは間抜けな顔をして、出かけてゆくセーラー服の後ろ姿を見送った。
濃紺のプリーツスカートのすその下、
肉づきの良いふくらはぎを包む真っ白なハイソックスが、真新しいリブをツヤツヤとさせていた。
娘とすれ違って、あの男が追いかけてきた。
やっぱり・・・と思った。
家の門の前で待ち受けると、男はわたしの足許にかがみ込んで、ハイソックスを抜き取ってゆく。
今朝の戦利品をむぞうさにポケットに突っ込むと、
遠ざかってゆくセーラー服姿を追いかけていった。
やつの唇を通して、わたしの血と、娘の血とが、織り交ざって。
干からびた血管を生温かく染めるのだろう。
失血の招いた眠気が、わたしの脳裏を染めてゆく。
さて、もうひと寝入りしようか。
そのあいだに、妻も、娘も、帰ってくる。
二度寝から目覚めたら。
昨夜過ごした淫らな記憶を消し去った顔つきの妻に、いつものようにおはようと挨拶を交し合う。
唐突なる「なん年か後」。
2020年06月15日(Mon) 19:05:50
前作をもって、1月12日あっぷの「競技のあとで。」以来ずっと続いてきた一連のお話の、一応の大団円といたします。
長かった。。。
異様な愛情表現の連続でしたが、
たんに奇をてらう目的ではなくて、
異性か同性か
ということも。
近親かそうでないか。
ということも。
場合によっては障害とはならないというお話にしてみたつもりです。
こだわりを忘れて愛し合った彼らに、幸いあれ。
ひとつのシリーズで5カ月も引っ張ったというのは、本ブログ始まって以来のことでしたし、
同性どうしの関係をこれほど前面に出すのも、初めてだったと思います。
いままでよりも嗜好が特段変わったわけでもなんでもないので、
(いつもどおり”お約束”な姑崩しも出てきましたし 笑)
どうしてこういうお話ばかりが連続したのか、自分でも説明に困るのですが。。。
ここの読者の方は、「いつものこと」と、さして気に留めずに流してくださるものと信じます。
このシリーズが時に復活したとしても、
いままで描いてきたお話同様、
相互の関係は他の話を読まなくてもわかるよう、描き進めるつもりです。
細かい矛盾点や齟齬はいままでのお話同様、きっと出てくると思いますので、
いまは過去となったこれらのお話をわざわざ念頭に置かずに読んでいただけてもだいじょうぶな造りになると思います。
放送の途中ですが(まだ続ける気らしいw) ~ブログ拍手をいただきました~
2020年05月16日(Sat) 13:34:40
夕べ、少し以前のコチラのお話に、拍手をいただきました。
「事務職員の妻」
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-3892.html描いた時から、地味め~なお話だな~と思っていました。
けれども、もう半年前に描いたものがこうして人目に触れている というのは、嬉しいものですね♪
よくみたら、3拍手となっていました。以前に2度、拍手をいただいている ということですね。
せっかくなので、読み直してみました。
やはり、地味。
でも、案外イケてる。
うふふふふふん。(笑)
拍手をくださいました方、ありがとうございました。
他の方々も、よかったら読んでみてください。
(^^)
古いデータ。
2020年04月27日(Mon) 22:30:59
昔描いていた、ココのお話の原型に当たるデータを整理しました。
すべて2002年とか2003年くらいのワードデータです。
本来はひとつの長編で終わるはずだったのですが、
妹が襲われる前に母親が襲われたり、
妹のあとに母親が襲われたり、
長く描いているうちに話に一貫性がなくなって、「こりゃいかん」と思いいったん放棄したものです。
でもプロットはそう変わっていないので、いまの「妖艶」の原型に当たるものです。
原形のままお話を完結させる予定はないのですが、なんとなく捨てかねて持っていたのですが、
バックアップを取り過ぎて同一のタイトルのファイルがいくつもあったりしたので、この際バッサリ整理することにしたのです。
ダブっているものを一つだけ残せば良いだけの作業のはずが、
どういうわけか更新日時が2系統に分かれていて、
ひとつのファイルが1日の午前4時に更新されているのに対して、もう一つのファイルは同じ日の22時に更新されていたりとか・・・
それが特定の日ではなくて、まちまちの日でそういうことになっていました。
おまけに、最新のフォルダと思い込んでいたものの中に、一つ二つ古いファイルが紛れ込んでいたりして・・・
パソコンも当初から何台も買い換えていますし、大急ぎでバックアップを取って壊れかけ寸前のPCから救い出したこともありました。
そうこうしているうちに、まぜこぜになってしまったのでしょう。
大した管理能力です。(苦笑)
そのほかにも、古いファイルをだいぶ捨てました。
大事に秘蔵していた秘められたファイルを十数年間も抱え続けてくれていたCD-Rをシュレッダーで切るときは、
ちょっと寂しい気分になりましたね。
一枚一枚に、「ありがとう」を告げて、処分しました。
べつだん、「妖艶」を廃業するわけではありません。
ただ、心境を本格的に整理したい気分になっただけです。
1時間半で4話。
2020年04月26日(Sun) 22:21:06
しばらく間が空いていたのですが、なんだか今夜はどす黒い渦が渦巻いてしまいました。(^^ゞ
なんとなくの構想はあったのですが、かなり長いこと、描くまでのところまでイキませんでした。
さいしょのシーンで、学校帰りの保嗣がだれかに血を吸われていて、
血を吸われることに充足感を見出していて・・・というくだりくらいはイメージしていたのですが、
相手が達也なのか、吸血鬼なのかがはっきり浮かんできませんでした。
ワンピースの落書きをギミックにするのは、きょうの夕方くらいに泛びました。
それ以外は、ほぼキーを叩きながら、脳裏に浮かんだものを字にしていきました。
なんだか、なんでもアリになってきてしまいましたが、
それぞれの関係性には、それぞれの意味があるように感じます。
妻(和江)を寝取られた男(由紀也)が、「帰ってこないで」と妻の情事の予定を婉曲に告げられると、嫉妬に胸を焦がしながらもそれを歓びととらえて帰宅を控える とか、
人妻を吸血鬼にあてがった少年(達也)が、その夫(由紀也)が手持無沙汰にして待ちぼうけているオフィスに行って、同性の歓びを分かち合う とか、
達也が和江のワンピースをせしめて、和江に化けてオフィスを訪れるのは、父が母を吸血鬼に寝取られたときに、母の身代わりに女装をしたことで経験済みなんですね。
達也の父親は妻恋しさに妻の服で女装しているところを、寝込みを襲われて吸血鬼に調教されてしまって、妻ともども倒錯の館で女として暮らしますが、
同じく妻を寝取られた由紀也は、男のふくそうを捨てません。
妻の身代わりに愉しませてくれる達也のことも、女として愛しているようです。
どの組み合わせもそれぞれに、違う受け答えがあるようです。
放送の途中ですが 過去記事への拍手♪ ~喪服女装の通夜~
2020年04月05日(Sun) 13:20:51
これ、去年の9月に描いたお話なんです。
過去記事へのコメント・拍手は自由・・・どころかむしろ歓迎なのですが、
「ブログで下の方に流れた過去記事には目もくれない」
というような不文律でもあるのか、過去のものほどコメや拍手をいただくことが本当にありません。
ところがこちら↓の記事は、すでに2回、拍手をいただいています。
「喪服女装の通夜」
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-3848.htmlさいしょは、あっぷの数日後。
そのつぎが、たしか3月ごろ。
三回目が、つい先日。
同じかたが何回も読み直してくれているのか、
別々のかたがそれぞれ見てくれているのかはわかりませんが・・・
なんにしてもありがたいことでございます。^^
このところ。
2020年02月11日(Tue) 09:21:27
ずうっと、同性ものが続いています。
年明けころからだったでしょうか?
いままでもそうした話は皆無ではなかったのですが、このところびっくりするほど構想が湧いてきました。
特に柏木の嗜好が変わったというわけでもなく。ちょっと不思議な気がしているのですが。
構想が湧き上がる限り、そのおもむくままに描くことにしていますので、
いましばらく、お付き合いください。
あまり意識したことはないのですが。
吸血鬼であるか人間であるか。
夫婦であるか否か。
そうした枠組みを超えるというのが、もしかするとひとつのテーマになっているのかもしれないですね。
もっとも、このテの話が苦手 というかたは、
カテゴリで「少年のころ」というのがそのテの話を含んでおりますので、避けて通っていただければ幸いです。
ああもっとも――
このカテゴリには、同性ではない話も多々含まれます。
ややこしくて、すみませぬ。。
脚と唇。
2020年01月14日(Tue) 06:57:21
達也の顔色が、日ごとに悪くなってきている。
頻繁な吸血を受けながらの日常――それはスポーツ少年である彼にとっても、かなりの負担を強いられる行為だった。
「顔色、蒼いぜ」
保嗣にそういわれても、達也は笑ってこたえるだけだった。
おそろいの制服の半ズボンの下は、おそろいの濃いグリーンのストッキング。
通学用のグレーや紺のストッキングではなく、きょうは達也の試合用のストッキングを履いて、2人ながら吸血鬼に奉仕をしたのだ。
筋肉質で引き締まった達也の脚も。
透き通るように色が白くきめ細やかな皮膚に覆われた保嗣の脚も。
代わりばんこに咬まれては、吸血鬼の牙と唇とを愉しませてゆく。
わざとあげるうめき声も、吸血鬼の耳に小気味よく響いたはず。
「まるで、娼婦になった気分だな」
達也はそういったけれど、それは保嗣の実感でもあった。
血を抜かれたあとの身体はひどくけだるかったが、
それでも美味しそうに吸い上げられるときのあのえもいわれない感触は、
抱きすくめられまさぐり尽くされたときのあの掌のいやらしい感触は、
まだ二人の若い肢体に淡い疼きとともに残っている。
ふたりは自然に、身体を重ね合わせていた。
「きっと、ぼくのほうが先に吸い尽くされるな」
達也はいった。
保嗣も、たぶんそうなるだろうと内心おもった。
「スポーツで鍛えた血は、美味しいんだろうね」
保嗣は達也の不吉な予言には直接こたえずに、そういった。
それからちょっと考えて、つけ加える――
「もしも達也が吸血鬼になったら、ぼくの血を吸っていいからね」
ふたりは顔を見合わせると、どちらからともなく唇を近寄せ合って、重ね合わせてゆく。
初めての接吻だった。
吸血鬼に強いられたことは、いままでなん度もあるけれど。
重ね合わせた唇は、結び合わされたように密着して、いちど離れてもまた残り惜しげに、再び吸い合ってゆく。
股間の疼きをこらえかねて、お互いに相手の半ズボンのチャックを降ろし、ショーツの中身をまさぐり合うと、
先に保嗣が達也の勃った一物を口に含み、つぎに達也が保嗣のそれを強く吸った。
吸血鬼に吸われるような感覚だと、保嗣は白く濁った熱情を口に含まれながらおもった。
近い将来。
達也は吸血鬼となって、保嗣を襲うのだろう。
その日が楽しみだ――失血に蒼ざめていた白い皮膚に赤みを取り戻しかけた少年は、せつじつにそう思っていた。
堕ちた病院 未亡人婦長と吸血鬼の恋・番外編
2019年12月02日(Mon) 07:48:43
はじめに
今年のまだ陽気の良かったころに描いていた、「未亡人婦長と吸血鬼の恋」シリーズの番外編です。
いま見たら、連載開始は5月23日でした。8月まで長丁場になって、その間泛んだ別のお話は、しばらくお蔵入りにしていましたっけ。
(^^ゞ
昭代の勤め先である病院の院長は、美澤という男だった。
齢のほどもわきまえず、若い女には目がないたちで、
いまだに若い看護婦を無人の病室に呼び入れては手籠めにしているという。
若い看護婦に限らず、病院の看護婦はほぼ総なめの実態――
そのなかには息子の嫁となった看護婦まで、含まれていた。
もちろん婦長をしている昭代がその標的とならないわけはなかった。
わるいことに。
彼の病院は、昭代の夫が生前務めていた会社の重要な取引先でもあった。
「ご主人の立場は私次第でどうにでも」
院長の殺し文句は、じつにわかりやすかった。
心ならずも院長の欲望に従った妻は、二度目以降はあくなき彼の欲望に屈したのだった。
昭代のなかでは、初めての不倫だったというけれど。
彼女は院長との交際を前向きにとらえて、「セックスだけではない、もっとまじめなお付き合いをしましょう」と、映画や美術館にも、自分から誘うようになった。
夫の大口の取引先との、家族ぐるみの付き合いという隠れ蓑をまとって。
昭代は夫の勤務中に、院長と示し合わせた逢引の場に、よそ行きのスーツをまとって足しげくかよった。
ふたりの仲は、もちろん秘密。
生真面目な夫を傷つけまいとする配慮を忘れずに、昭代はせっせと不倫に精を出して、夫を裏切りつづけた。
内助の功が償いになるのだろうか?と思わないことはなかったけれど。
数ある院長の情婦のなかで、もっともレディとして尊重されているという実感が、
昭代を院長との不倫から遠ざけさせなかった。
その夜の院長はいつになく、荒々しかった。
どうなすったんですか?
昭代は訊いた。
訊かなくても、こたえはわかっていたけれど。
そう、新しい女をモノにしたとき、院長はいつもこんなふうに、荒々しいのだ。
昂奮の余燼が、さめやらないのだろう。
そしてそういうときには必ずといっていいほど、昭代を相手に選ぶのだった。
相手はきっと、看護学校を出たての子――
真面目ですじの良い子だが、そういう子に限って男性経験があるものだ。
「やっぱり処女ではなかったようだ」
院長の独り言は、犯した女を咎めるものだった。
「いい気なものですね」
まるで古女房が夫の火遊びをたしなめるような口調で、昭代は応じた。
夫が亡くなったあと、昭代は吸血鬼と出逢って交際を始めた。
院長とは同時進行だった。
生真面目な昭代だったが、不倫を掛け持ちすることに、不思議と罪悪感は感じなかった。
相手だって自分の奥さんを裏切っているのだし。
吸血鬼はなん人もの人妻や娘を牙にかけているのだし。
彼女はしばしば、院長と逢ったその足で、吸血鬼のねぐらへと脚を向けるのだった。
下着とストッキングだけは、替えを用意して。
その夜の吸血鬼は、いつになく荒々しかった。
そういう時には決まって、新しい獲物をモノにしたあとのことだった。
きっと、昂奮が収まらないのだ。
どこかのだれかと似ている――と、昭代は思った。
「いま、なにを考えていた?」
「あたしのもうひとりの恋人のこと」
「俺に抱かれながら、不埒なものだ」
自分の不埒を棚に上げて、男はいった。
「そうね――でもそのひとって、あなたとよく似ているの」
きょうの獲物はどういう女(ひと)・・・?
女は訊いた。
「あんたの勤め先から出てきた、若い看護婦だ」
「看護学校出たての子ね?」
「そうかもしれんな。あろうことか、病院でセックスしたすぐあとだったようだ」
「相手は院長よ」
「たいしたことだ」
「あなたとはウマが合いそう」
「あんたの病院を、征服したい」
「またその話?」
「ああ、その話だ」
仲間がおおぜい、飢えている。なんとかしてやりたい。
俺がまだ人間だったころ、妻のことを襲わせてやったくらい、仲の良い連中なのだ、と、男はいった。
「不思議なたとえね」
昭代は笑った。
「私のことも襲わせる気?」
「俺の特別な女だといえば、犯しはしても鄭重に接するはずだ」
そうかもしれない――と、昭代はおもった。
彼らには彼らなりの礼儀やけじめがある。そんな感じが、彼の抱擁を通して伝わってくる。
「うちの病院、看護婦多いわよ。いまどきの病院は看護婦不足のところが多いんだけど」
「好色な院長に取り入ろうとする、さもしい女が多いというわけだな」
「院長の息子の若先生が、いい男なの」
「じゃあ女どもは、そっちが目当てか」
「院長のお手当てが目当てのひともいるわ」
「院長の女を横取りするには、どうすればよい」
「そんなこと、自分でお考えになったら?」
「なあに・・・」
男はほくそ笑んでいる。
もうきっと、あらかた見当はつけているのだろう。
男の狙いは、昭代にとって意外なところにあった。
院長夫人だった。
堅物で知られた、齢59にもなるそのご婦人を、男はみごとに篭絡していた。
院長夫人もまた、ためらいながらも、初めての不倫に応じていった。
地元の名士である院長は、夫人の不適切な交際を、むろん好まなかったが。
醜聞が拡がるのを恐れて、夫人と吸血鬼との交際を黙認することにした。
吸血鬼はいつものように、院長が夫人をプレゼントしてくれたのだと自分に都合よく解釈をして、娘たちの目を気にする夫人のために、しばしば夫人を病院に招いた。
院長のはからいで空けられた、病棟の一番奥の病室が、2人の濡れ場になった。
娘の目を気にしないで済むためには、むろんべつの方法もあった。
吸血鬼はためらいもなく、それを実行に移した。
病院で女たちの足許から抜き取るのは白のストッキングと相場が決まっていたはずが、
院長夫人の肌色のストッキングや、娘たちの学校帰りのハイソックスが交じるようになった。
妻の貞操や娘の純潔を台無しにされるのを横目に、院長はせっせと看護婦たちを篭絡し、愉しい夜は、ときには昼を過ごしていた。
昭代が言ったとおり、二人は似た者同士だったので、ウマが合ったらしい。
お互いはお互いの獲物に無用の口出しをせずに、まるで当番制のように、獲物を取り替え合いながら、病室のベッドを濡れ場にしていった。
院長の息子は生真面目な男で、彼のおかげで病院がもっているようなものだった。
父や新来の患者が看護婦たちや、自分の母親や妹たちまでも病室に引き込むのも、視て視ぬふりをして、本業に熱中した。
病室に引き込まれる看護婦たちのなかに、自分の妻が混じっていることは、吸血鬼が来る前から視て視ぬふりをしていたので、
若い嫁が父の親友と良い仲になることも、しいてとがめだてしようとはしなかった。
病院が吸血鬼たちの楽園と化すまでに、一箇月とかからなかった。
あとからあとから入り込んでくる吸血鬼に、院長はさすがに辟易したけれど。
病室に呼び入れられた夫人がおおぜいの吸血鬼たちに輪姦されて悦ぶところを目にしてしまうと、すぐにおとなしくなった。
その病院に勤める看護婦の頭数プラスアルファの数の女たちは、あっという間に吸血鬼と院長と共有物と化していた。
余分な人数は、院長夫人や若先生の奥さん、それに院長の娘まで含まれていえる。
若先生も娘婿も、吸い取られたばかりの血を首すじにあやしたまま、
妻たちが吸血され犯されるありさまを、ただすくみ上って見ているだけだった。
昭代も、彼の仲間のなん人かのお相手をした。
すっかり操は汚れてしまったが、いまさらどうでもいいことだった。
あのひとのために汚したというのなら、亡き夫もきっと許してくれる。
そんな確信があった。
情事を終えて帰宅した真夜中過ぎ、昭代は決まって夫の写真に手を合わせる。
「あなた、視てたでしょ?」
優しく咎める言葉つきに、夫の写真はちょっと申し訳なさそうな笑みを泛べるだけだった。
2019.7.21構想