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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

人妻の愛人をまた貸しする集い

2017年08月27日(Sun) 08:03:36

この街に棲む既婚女性のほとんどは、吸血鬼の愛人になっています。
個人差はありますが、だいたい週に2~3回は逢って、生き血を吸われているのです。
彼らに生き血を吸い取られる行為は、とても甘美な快楽を伴います。
だから妻たちは夫の制止をも振り切って、情夫たちと逢引きをし続けるのです。
もっとも、この街の人たちは吸血鬼を受け容れていて、共存しようとしていることもあって、
表だって彼らを批難したり争ったりするものは、だれもいません。
夫たちはむしろ苦笑しながら、不倫行為を伴う妻たちの逢瀬に見て見ぬふりをしたり、
むしろすすんで愛人宅まで送り迎えをしたりしているのです。

うちの妻も、例外ではありません。
数年前この街に転居してくると、ひと月以内に吸血鬼に襲われて、咬まれてしまいました。
相手はこの街の顔役で、わたしの仕事上でも関係のある人物です。
妻はまだ30代と、比較的若かったので、グレードの高い吸血鬼に見初められたのでした。
「あのひとに襲われるなんて、名誉に思わなければいけない」というのが、此処での通り相場だったのです。
彼は礼儀正しい紳士だったので、公私の区別をきちんとつけました。
仕事中は一切そういう話題に触れず、妻を支配しているという力関係で仕事を仕切ることは絶対にしませんでした。
はた目には、良好な関係を保っている取引先としか思われないほど、穏やかな関係です。

吸血鬼の社会にもグレードの高い低いがあって、彼のような実力者だと都会育ちの若妻を手ごめにするのも意のままなのですが、
もちろんそうでない吸血鬼もいるみたいです。
この街に生まれ育って、母を犯され、妻を犯され、娘の夜這いの手引きまでかって出た永年の協力者。
そうした人たちがごほうび代わりに吸血鬼にしてもらった・・・そんな話を聞いたことがあります。
けれどもそうした吸血鬼たちにも、良い女を得るチャンスがなければならない――彼らはふつうに、そんな意識を持っています。
彼らは一概に、弱者に寛容な態度を示すのです。
弱い立場の吸血鬼が、良い女を得るための集い――それが、月にいちど街はずれの荒れ寺で行われる、
「人妻の愛人をまた貸しする集い」
というイベントなのです。
グレードの高い吸血鬼たちが、自分たちのご自慢の愛人を寺に伴います。
愛人たちは皆、こぎれいに装ってくるように命じられて、
夫が結婚記念日に買ってくれたよそ行きのワンピースや、
いつもPTAのときに着ていくスーツ姿で集められるのです。
集められた愛人たちに、グレードの低い吸血鬼たちがむらがるのです。

そうした集いが開かれて、招待客のメンバーに妻が含まれていると告げられると、
夫たちは誓約書にサインをさせられます。
「恵まれない吸血鬼に良質な血液を提供するために、
 自身が進んで交際を受け容れているパートナー以外の吸血鬼が複数、最愛の妻の血液を享受することに同意します」
おおむねそんな内容です。
サインをした夫たちは、特別に荒れ寺に参観に訪れることが許されます。
妻を提供した夫たちは、永年連れ添った妻たちが、自身の同意のもとにまた貸しされるのを、見届ける権利を得るのです。

内容は・・・まあ、落花狼藉といったていなのですが。
正装した妻たちが身なりのよくない飢えた吸血鬼たちに抑えつけられて、否応なく欲求を成就されてゆく光景は、
いちど目にしたら忘れられないほどのものなのです。
複数の吸血鬼が肉欲のおもむくまま愛妻を輪姦する。
そんな光景を目にした夫たちは・・・恥を忘れた昂奮を植えつけられて、帰宅します。
着衣をなかばはぎ取られた妻たちを護るように伴って。

帰宅したあと。
妻たちはほとんど全員、淫らな舞台の第二幕を迎えることになるのです。

供血ノルマ 6

2015年10月18日(Sun) 07:55:21

村は、狩り場になっていた。
なんとかして、ヤツに血を吸わせてやらないと。
俺はけんめいに相手を選び、家に上がり込んでいっては、ヤツにチャンスを作ってやった。
チャンスは一度でよかった。
俺といっしょに上がり込んだ家には、ヤツはいつでも自由に出入りできるのだから。
たちまち、周りの家に住むもの全員が、やつの牙にかかっていった。

上は60代の老夫婦から、下は中学生の少女まで。
若い子にあたったときには、さすがに目を細めていたけれど。
年増女も、決して嫌いではないらしい。
そう、セックス経験のある女には、べつの愉しみかたがあるのだから。
男を積極的に襲うのも、きっとそいつの女房を手に入れたくてそうしているのだ。
邪魔者は味方につけてしまえば、あとでゆっくりヒロインを料理できてしまうのだから・・・

生き血を気に入られてしまうと、血を吸い尽されてしまう。
そうすると、いちどは棺おけに入る羽目になるのだが。
そうなった村のものも、吸血鬼になってだれかを襲い、一定量以上の血を吸うと、真人間に戻ってしまう。
ヤツだけは、身体の出来が、ほかの人間とは違うらしかった。

俺はいちど吸い尽されて。(死なない程度に)
自分の故郷を案内させられて。
さいしょに弔い騒ぎを起こしたのは、女房だった。
さすがに浮気相手をなん人も作るだけの女、吸血鬼のことも引き寄せてしまったらしい。
でも・・・そこまで女房の血を気に入られたことについては、俺も案外と、まんざらではなかった。

女というやつは、自分の好いた男には、なんでも与えたくなるものらしい。
ヤツが自分の母親を見初めたと察すると、女房は父親に話をつけて、
好色な親父を相手に父娘相姦に応じるのを条件に、
永年連れ添った妻が、ときどき娘の家で浮気をすることを認めさせていた。
見合いで結婚をした義母は、夫以外の男を識らなかったらしい。
「母にも、青春が必要なのよ」
女房は白い目で、そういった。

実の両親に対してさえそうなのだから、まして仲の良くない姑に対しては、なおさらだった。
ヤツがお袋のことを餌食にしたがるときには、女房は姑のことを、こともなげに呼び寄せてやった。
「お義母さまだって、お義父さまがもういらっしゃらないんだから、好きにしていいじゃないの」
女房は白い目で、いつもそういう。
傍らでは、かつてはしつけに厳しかったしまり屋のお袋が。
脱げかかった黒のストッキングにふしだらなしわを弛ませながら、
両脚をおっ拡げて、真昼間からひーひーあえいでいる。


きょうはきょうとて、俺の家はハレムのようになっている。
俺の下には、おさげ髪を掻きのけられた娘がいた。
女房は・・・あけ放たれたふすまの向こう、きのうお袋がそうしていたように、
ストッキングを片方ずり降ろされて、ひーひー呻いている。

やつが嬉し気に、呟いている。
きょうの達成率は、まだ50%。
でもわしは、それでもじゅうぶん、満足ぢゃ・・・


【追記:2017.6.6未明】
意外に反響があるので第一話のURLををリンクしておきます。
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-3189.html
「5」から逆戻りにさかのぼるのも、めんどうですからね。
  ――自分の描いたお話を、「5」から逆戻りしてさかのぼらざるを得なかった管理人より――

供血ノルマ 5

2015年10月18日(Sun) 07:42:42

蒼ざめた顔をした女房が、俺のほうへと迫ってくる。
俺は陶然となって、首すじをくつろげる。
女房は俺の首のつけ根のあたりに食いついて。
ぎゅうぎゅうと強引に、血を吸い取っていった。

もういちど、俺の血を吸い尽してくれ。頼むから。
ヤツにせがんでみたら、そんなことは夫婦で解決しろといわれた。
そう、いちどは吸い尽されたはずの血が、俺の体内に戻ってくると。
俺自身は、血を吸いたいという欲望を忘れかけていた。
けれども・・・娘のうえに身体を重ねてしまった恥知らずな経験は。
いちど足抜けしかかった泥沼に、もういちどまみれてみたいという欲求を、俺の中に消し難く植えつけていたのだった。
墓から舞い戻った女房は、恨めし気に俺を見、ものも言わずに食いついてきた。
脳天が痺れるような歓びに、俺は身をゆだねていった。

こんどは俺が冷たくなって横たわり、
真人間に戻った女房が、悲し気な顔を繕って、弔問客を迎え入れる。
寺の住職は、赤黒い咬み痕を僧衣に隠すようにして。
やはり咬まれてしまった住職夫人に手伝わせて、通夜の段取りを進めていく。
この晩は、ずいぶんと人が集まった。といっても、夫婦が四組。

クフフ。こんどはなん100%かね?
やつは物陰から本堂のようすを見てほくそ笑む。
弔問客は、残らず咬まれていった。
ヤツと、嗜血癖を身に着けてしまった娘と女房に。
子供に咬まれながら、ひーひー呻いている女房に。
だんなを咬んでしまったヤツが襲いかかって、引導を渡す。
べつの夫婦には、住職夫婦が。
ほかの二組の夫婦は、あたかも自分の番を待ち受けるかのように本堂の片隅に立ちすくんで、
逃げるのも忘れて惨劇に見入っている。
やがてそのふた組も、夫婦それぞれ引き分けられて、咬まれていった。
あなた、起きなさい。
女房はひつぎのふたをあけて、俺を出してくれた。
喪服のスカートを脱いだ女房は、太ももを半ばあらわにしたスリップをひらひらさせて、
男のほうへとのしかかった。
相手は学校の先生だった。
先生の奥さんは、俺に懇願するような視線を向けた。
けれども俺は、喉が渇いていた。
とびかかって押し倒すと。
自分の妻の名を呼ぶ先生が、ヒッとひと声叫んで気絶した。
黒のストッキングに包まれた奥さんのふくらはぎは、ひどく柔らかだった。

セックス経験のある女には、もうひとつの愉しみがある。
失血で動けなくなった奥さんは、まだ肩で息をしていた。
のしかかって、スカートのなかに手を突っ込んで、股を開く。
太ももまでのストッキングは、脱がせる手間が省けた。
紫のショーツを足首まで引きずり下ろしてしまうと、
さすがの奥さんも、観念したようだった。
くくくく。だんなさん、悪りぃな。頂くぜ。
よだれをしたたらせてのしかかっていったとき。
女房が俺の鼓膜に、毒液を注ぎ込んだ。

ゆっくり愉しんでちょうだい。
みんなあたしの、浮気相手の奥さんたちなの・・・

供血ノルマ 4

2015年10月18日(Sun) 07:28:44

世帯数数十軒。
ほとんどが顔見知りという、この片田舎では。
ヤツのことは、すぐに広まるに違いなかった。
けれどもヤツにとって、そんなことはどうでもいいことだったらしい。
しゃれっ気のない村だな。どいつもこいつも、スカートなんかほとんど見かけない。
通りに面したガラス窓から道行く男女の品定めをしていたヤツは、どうもそんなことが、気になるらしい。
そうだな。
女たちがスカートを穿くのは、入学式や卒業式、女子の中高生、あとは葬式くらいのものだからね。
俺がそういうと、ヤツはムフフといやな笑いを泛べた。
それが狙いなのさ。
ひとの女房を吸い殺しておいて、ヤツの言いぐさはあんまりだった。
娘はショックで、きょうは学校を休んでいた。
密葬は家族だけで執り行う。
そんな村の風習が、ヤツに幸いしていた。
今夜の通夜に現れるのは。
血を吸われた住職と、俺と娘以外では。
近所に独りで暮らしている、うちのお袋。
それに、やはり近所で夫婦で暮らしている、女房の両親だけだった。
どちらも年寄りだぞ。
咎める俺に。
身近なところを固めないで、どうするんだ。きょうも最低2人だぞ。
ヤツは少しだけ、厳しい顔をした。

年寄りだと、2人でひとり分かな・・・
俺は俺で、わけのわからないそろばんを、薄ぼんやりとはじいていた。

その晩は、ちょっとした饗宴だった。
夕刻に姿を見せたお袋は。
やつの狙い通り、黒のワンピースに墨色のストッキングで足許を透きとおらせていた。
仏前に線香を供えるとき。
娘はなにか言いたげにしていたけれど。
さほど祖母になついていなかったのか、とうとうなにも言い出さなかった。
ヤツがお袋のまえに立ちふさがったのは、仏前からさがろうとするその時だった。
あァ~ッ!
いきなり首すじを咬まれたお袋は、その場で絶叫し、昏倒した。
嫁と仲の良くない姑は、嫁の仏前で喰われるのがスジだろう?
ヤツの言いぐさは、スジが通っていないようで、通っている。
そう感じる目の前で、お袋の穿いている黒のストッキングが、むざんに咬み剥がれていった。

ぐったりとなったお袋を、隣室に寝かしつけると。
入れ代わりに、女房の両親が現れた。
さいしょに義父が。それから義母が、相次いで血を吸われた。
朦朧となった義父のまえ。
義母は和装の喪服の帯をせわしげな指にゆだねて、装いをくつろげられていった。
そう、セックス経験のある女には、もうひとつの愉しみかたがあるのだった。
還暦を過ぎた義母の素肌は、意外につややかに輝いていた。

どういうことなんだね?
身づくろいする妻を俺とを見比べながら、義父は咎めるよりも怯えながら俺に訊いた。
ヤツは隣室に引き取っていた。
引き取っていたんじゃない。お袋と一戦交えている最中だった。
献血しなくちゃ、ならんのです。
どうして?という問いが、自分のなかで湧いた。
けれどもそれはもう、改めて問うまでもなく、俺のなかでは自明の義務だった。
一夜に最低二人。
やつのために、生き血を提供できる人間を連れてくる。
それが俺の務めなのだ。

もういちど、奥さんをごちそうになるよ。
羽交い絞めにされた義父はふたたび首すじを咬まれ、「ああああっ!」と叫ぶ。
血を抜かれてぐったりとなった義父のまえ。
義母は恨めし気に俺を睨み、すぐにあきらめたように、いちど着なおした喪服を、自らくつろげていった。

今夜は達成率150%。なかなかやるな。
お袋と義父母の帰った後。
ヤツはそう言いながら、娘の首すじまで咬んでいる。
これで200%。佳い夜ぢゃ。
娘さんは明日は学校だね?頬っぺが蒼くならないていどに、手加減しておくよ。
娘ははたして、ヤツの気遣いを受け入れるのだろうか。
畳には脱ぎ捨てられた黒のストッキングが一対、蛇のように横たわり、
その傍らには脱ぎ捨てられた白足袋が一足、金色のこはぜを光らせていた。

吸血ノルマ 3

2015年10月18日(Sun) 07:08:27

坊主を呼べ。いや、こちらから出向こう。
ヤツはそう言い捨てると、
顔色を鉛色にした女房と寝息を立てる娘とをそのままにして、
俺を寺まで案内させた。
寺のお内儀は50近かったが、美人だった・・・と、妙なことを思い浮かべながら、
真っ暗ななかのわずかな街灯を頼りに、俺は寺の門をほとほとと叩いていた。

寺のなかにある住職の家は、だだっ広く、寺と同じくらい古びていた。
首すじに血をしたたらせながら、目つきをとろんとさせた住職
急な弔いをするといわれても、さして表情を変えることなく。
ご愁傷さまでしたな、と、俺に言っただけだった。
奥さんと子供がいないようだが・・・と、ヤツは言った。
息子と娘がいるはずだな。
娘は熱を出して寝ている、とだけ、住職はいった。
息子と奥さんは?重ねて問われてーー
おなじ部屋で寝ている、と、住職はいった。
どういうことなのだ?訊きつのる俺に。
そういうことなのさ。と、やつはいった。あまりひとに恥をかかせるもんじゃない。とも。
若いの、この土地では見かけんお人ぢゃが。事情に詳しいのかの?
住職の問いに、血を吸い取ると、いろんなことに詳しくなるのさ、と、ヤツは応えた。

家族に手を出すのは、あとの愉しみに取っておく。
あしたは弔いを、よろしく頼むよ。
ヤツは楽し気にそういって、住職も面白そうに、頷いていた。

きょうは達成率100%。まずまずだな。
ヤツのうそぶきに、俺は本能的に安堵を覚えていた。

供血ノルマ 2

2015年10月18日(Sun) 07:00:08

なんとかしてあいつに、血を吸わせなければ。
それがいまや、俺の日常になっていた。
生まれ育った街並みは、都会に出稼ぎに出た日と変わりなく、寂れたたたずまいに沈んでいたが。
いまの俺にはもう、狩り場という別の場所に思えるのだった。

駅に着いたとたん、やつの姿はフッと掻き消えていた。
入れ代わりに、出迎えに来た女房が、いつも通りのむっつりとした表情で俺を車停めに促した。
久しぶり、という笑みも、元気だった?という気遣いも、とっくになくなった夫婦だった。
代わりにハンドルを握った俺は、いつもの道を帰りながら、ヤツとの最後のやり取りを反芻していた。
女房は認めてやる。でも娘は、かんべんしてくれ。
ヤツはほくそ笑みながら、呟きかえした。
いいだろう。娘はお前の分だ。
なに言うんだよ・・・と、さらに蒼ざめる俺に。
まあ、どのみちお前の好きになるさ。
ヤツは不吉な予言をくり返しただけだった。

家にあがったのは、まだ真っ昼間だった。
俺は女房を掻き抱こうとし、女房は不快げに、俺を払いのけようとした。
留守宅に男が上がり込んだ形跡を、女房の態度でかぎつけていた。
お愉しみのようだな。
ふとわき起こる声色に、夫婦ながらぎょっとして振り向くと。
いつの間にか背後に、ヤツがいた。カギはちゃんと締めたはずなのに。
それからは、お定まりの光景だった。
あァ~・・・
女房は声をあげて男を振り放そうとしたけれど。
すぐに首すじを、咬まれてしまっていた。

昏倒した女を、男ふたりで見下ろして。
ヤツは俺に、物騒な診断結果を告げていた。
さっきまで男と逢っていたな。
めったにスカートを穿かない女房が、珍しく薄茶のスーツ姿だった理由が、ようやくわかった。
わかっているよな?
好きにしろよ。
禅問答のあと、俺はリビングから出ていき、ヤツは女房のうえに覆いかぶさる。
セックス経験のある女には、べつの愉しみかたがあった。

きょうじゅうに最低、二人分の血液が要る。俺も長旅のあとで、喉をカラカラにしていたから、もっとかもしれなかった。
答えに行き着くのに、さほど時間はかからなかった。
ちょうど娘の、下校時間だった。
ただいまぁ・・・
ガタガタと玄関を開けるもの音が、ひどく呪わしく俺の耳に響いたーー

あっ!う、うーんっ!
首すじを咬まれた娘は、黄色のカーディガンの肩をほとび散らされた血に濡らしながら、
顔をしかめて歯を食いしばった。
立ちすくんだ足許にも、ヤツはかがみ込んでいって。
白のハイソックスのふくらはぎに唇を吸いつけると、
チュウチュウ音をたてて、娘の血を吸い取ってゆく。
大の字に倒れたときには、真っ白だったハイソックスは、赤黒い血のりにべっとりと濡れていた。
室内に立ち込める錆びたような芳香が、俺を狂わせた。
ヤツの約束破りを認めてしまうだけ・・・そうと知りながら。
昏倒した娘のうなじを吸おうとして、俺はおさげに結った髪の毛を、せわしげに掻きのけていた。

夕餉はいつもどおりだった。
酔いから覚めた女房はなにかに引きずられるようにして、ふらふらと台所に起って行って。
蒼ざめた顔色に感情の消えた表情のまま、トントンと包丁の音をたてていたし。
娘はむすっとして勉強部屋に引きこもり、いつもより少しだけ熱心に、予習復習に取り組んでいた。

夕餉が終わると。
女房は娘を連れて、ヤツの待つ夫婦の寝間にむかった。
無表情のまま娘の両肩に手を置いて。
それから片手で、娘のおとがいを引き上げた。
ヤツは当然のように、娘の喉笛に、食いついていった・・・
風呂上がりに着替えた空色のブラウスと、赤と白のチェック柄のスカートに、
赤黒い血潮がぼとぼとと、重たい音をたてて撥ねかった。

娘がたたみのうえに膝を折ってしまうと。
女房は娘を抱きかかえて、勉強部屋に敷いてあった布団に寝かしつけて。
ヤツを横目でにらむと、自分からブラウスの襟首をくつろげていく。
俺のことはもう、見えていないかのようだった。
そのまま首すじを咬まれて。
ひざを着いたところを、後ろに回られて、スカートの上からお尻を咬まれて。
さらにうつ伏せになったところを、肌色のストッキングを咬み破られながら、ふくらはぎを吸われていって。
片方脱がされたパンストをぶらぶら揺らしながら、大股に開いた脚をばたつかせながら、ひーひー呻いていた。
その晩ひと晩で、女房は生き血を吸い尽された。

供血ノルマ

2015年10月18日(Sun) 06:34:05

なんとかしてあいつに、血を吸わせなければ。
それはいまの俺にとっては、必須の課題になっていた。

さいしょの出会いは、仕事帰りの夜だった。
後ろからいきなり襲われてーー気がついたときにはもう、道路のうえに寝そべっていた。
しばらくのあいだは、気絶してさえいたらしい。
そのあいだにヤツは、俺の血をあらかた、吸い尽してしまっていた。
顔面が冷えているのが、自分でわかる。そして、寄り目になっているのも。
ヤツは俺のようすをひと目みて、そして言った。
ここで待ってろ。
しばらく経ってからあいつが捕まえてきたのは、スーツを着た若い女だった。
勤め帰りのOLらしい。女は怯えきっていたが、抵抗する意思は失っていた。
首すじからは、紅い糸のような血のりのあとがひとすじーー俺は夢中になって女にむしゃぶりついて、
さっき俺自身がそうされたように、うなじの咬み傷に唇をあて、血を吸い取っていった。
路上に大の字に寝そべった女のうえ。
俺は首すじを吸いつづけ、奴は足許にかがみ込んで、ストッキングをぶちぶちと破りながらふくらはぎに食いついていた。

足りないな?もう少し待ってろ。
なかなか戻ってこないヤツのことを待ちかねて、
俺は仰向けになって気絶したままの女に覆いかぶさって、ひたすら喉の渇きを紛らわせていた。

ばか野郎。死んじまうだろうが。
鋭い囁きが、頭上から降ってきた。
やつが引きずってきたのは、半死半生のサラリーマン。
男だろうがなんだろうが、かまわない。
いまの俺は、ひたすら喉が渇いていた。

3人めは、なんなく捕まえてしまったらしい。
今度は、制服姿の女子高生。
こんな夜遅くまで、ほっつき歩っているのがよくないのだ。
自業自得なんだよ。と、呟いたのは、俺だったのか。ヤツだったのか。
やつは、女の首すじに咬みついて。
俺は、立ちすくむ女の足許まで這いずっていって。
紺のハイソックスを脱がせる手間も惜しんで、ふくらはぎを咬んでいた。

3人もの人間の血が、俺の身体のなかで織り交ざり合いながら、喪われた体温を取り戻していった。
傍らには、呆けたように尻もちをついた三人の男女。
やつはそのひとりひとりのうえにかがみ込んでーー
とどめを刺すのか?と思ったが。どうやらそうではないらしい。
額に手を当てて、なにやら呪文めいたものを唱えている。
一人、またひとりと・・・意識が定かではないながら、かすかにうなずいているのが見えた。
このまま置き捨てにしておけばいい。
気がついたときには、記憶をなくしたまま起き上がって、勝手に来た道をもどるだろう。
お前は・・・
不覚にも喉が渇いていたので、吸い過ぎた。
血を吸う癖がついちまったようだから、俺から離れることはできないぞ。

それからは、毎晩のようだった。
俺は仕事帰りに同じ場所でヤツに待ち伏せされて・・・
それでも帰り道を変えようとは、しなかった。
なにしろ俺だって、喉が渇いていたから。
そしてなによりも・・・まだ独力では狩りはできないのだから。

そんな俺のために、ヤツは獲物を引きずってくれてきた。
獲物を捕まえる能力を高めるために、まず俺の首すじをガブリとやるのは欠かさなかったが。
たまにはお前も、だれか連れてこい。
それが難しいと思うなら、お前の家にだれかを連れてこい。
あとはおれが、勝手にする。

そういうヤツの囁きにほだされたようになって。
俺は仕事仲間を家に飲みに誘った。田舎から珍しい地酒が届いたと偽って。
さいしょは同年輩の男ふたり。
それから、酒好きの若い女が三人で。
どちらの獲物も、ヤツは旨そうに味わった。
女のときは、俺まで昂奮した。
次々に首すじを咬まれ昏倒した女を襲うのは、かんたんだった。
セックス経験のある女は、もっと愉しんでいいんだぞ。
やつは陰湿な嗤いを泛べると、俺は強くうなずいていて・・・
大股をおっ拡げて仰向けになった女たちの太ももの奥に、そそり立ったモノを挿し込んでいった。

男でもいいのか?俺が訊くと。
そのうちわかる。ヤツはうそぶいた。
三日経って、ヤツのねらいがわかった。
さいしょに獲物にしたふたりの男のうち所帯持ちのやつのほうが。
自分の妻を連れて、おずおずと俺の家にやってきたのだから。
セックス経験のある女が相手のときは。
俺にも愉しむ権利が認められた。
せめて武士の情けで見せつけるのはよしにしようと・・・俺はだんなのほうの血を、めいっぱい口に含んでいった。

吸い尽してしまうのでなければ。
ひと晩に2,3人は必要らしい。
もちろんほとんどは、自分で狩ってくるのだけれど。
俺の助力は不可欠だといわれた。
特に仕事のある日は、もっと仲間を誘って来いと言われた。
俺の家で気を失った連中は。
その晩のことはなにもかも忘れているようだったけれど。
ーーあいつの家に招ばれたやつは、つぎの日目が死んでいる。
そんなうわさがどこからともなく立って・・・
どのみち出稼ぎの季節が終わろうという時期だったのをしおに、俺は都会を引き払った。
やつがついて来るといったとき。
くすぐったい戦慄のようなものが脳裏を奔った。
ひと晩に三人も喰えるほど、人はおらんぞ。
にらみ返した俺を、やつはたったひと言で黙らせた。
ーーお前の女房に興味があるんだ。

【ニュータウン情報】30代~40代夫婦間で流行、「婚外披露宴」

2015年03月20日(Fri) 08:36:21

既婚女性が夫以外の男性と結婚式を挙げる趣向の祝宴、「婚外披露宴」が19日、タウン内に所在するラブホテル「クイーン」で行われた。
新婦の加藤涼子さん(36)は、夫の正幸さん(39)の見守る前、10年前に正幸さんと挙式して以来という純白のウェディングドレスもきらびやかに登場。
50人以上詰めかけた招待客のまえで婚外結婚の誓いを誇らしげに宣誓すると、
新郎の熊手幸吉さん(62)と、熱いキスを交わした。

二人の出逢いは、「クイーン」向かいのビルが火事を起こした昨年暮れのこと。
逃げ遅れた涼子さんを幸吉さんが救出したのがなれ初めとなった。
妻を救われた夫正幸さんは感謝のしるしとして、涼子さんとのデートを幸吉さんにプレゼント。以来正式な交際を続けていたが、幸吉さんの熱烈なプロポーズを涼子さんが受け入れたことから、婚外披露宴が挙行されることとなった。
式場に選ばれた「クイーン」は、夫に隠れて幸吉さんに逢うときに頻繁に使ったラブホテル。
想い出の場所で夫の祝福を受けた新婦は、二人の夫と腕を組んで、バージンロードを歩む。

新婦・加藤涼子さんの談話
理解のある今までの夫と頼もしい新しい夫に支えられて、きょうの日を迎えることができました。
式場で用意してもらった宣誓の文章のなかに、「今までの夫を裏切るのではなく、愛する男性が二人になるということです」というくだりがあるのですが、共感しました。加藤とは結婚して10年になりますが、愛情がなくなったというわけではありません。むしろ、すごく愛しています。お互いに。だから、きょうの式も実現したんだと思います。じつはうち、夫同士も恋愛関係にあるんですよ。(笑)うまくいかないわけがないですね。
披露宴は、怖いですが愉しいです。
招待された女性は列席した男性を相手にご奉仕するんですが、母も、結婚している妹も、こんなことは初体験だと思います。父や義兄もそれなりに愉しんでくれたようですので、きっと皆さん素質がおありなんですね。もっと多くの既婚者の方たちに、「婚外披露宴」を体験してもらいたいと思います。

新郎・熊手幸吉さんの談話
さいしょに仲良くなったのが、正幸(新婦の夫)なんです。おなじ「幸」の字を持ってますねって。
「わし、あんたの奥さん狙っとるんじゃけど・・・」っていったら、嬉しがってくれましてね。ウマが合うんですよ。私たち。
それで、チャンスもらって射落として・・・(笑)最愛の奥さんを誘惑する機会をくれた正幸に感謝です。
ええ、いい身体してますで、正幸が独り占めにしちゃ、イカンです。(笑)
でもきょうは、ふたりに共通の「幸」を、正幸から分けてもらえました。3人で、理想の家庭を築いていきたいと思います。

夫・加藤正幸さんの談話
幸吉さんとはもともと、同性愛の関係でして。こちらに赴任してきてすぐに知り合って、強引に手ほどきされました。妻のときも、同じですね。やっぱり強引で。(笑)
涼子さんを狙っていると言われた時には、もちろん警戒もしましたけれど、「この人なら」という気持ちもありました。
最愛の妻が注目されるのは、夫として誇らしい部分もあるわけです。
それで、火事の時に救っていただいたお礼として、妻とのデートを”献上”したんです。
目のまえで奪われちゃったときに、直感は正しかったと確信しましたね。婚外披露宴をやろうと感じたのは、そのときでした。
今後は妻を支配されちゃう日常をおおっぴらに受け入れてしまうわけで・・・気分は複雑ですが、夫を二人持つこととなった妻を支え、見守っていきたいと考えています。
妻をほかの男性と交際させるというのは夫として勇気のいる決断だと思いますが、一夫多妻の国だってあるんですから、逆もアリでしょう・・・ということで。(笑)
個人的にも、幸吉さんを交えた新生活を愉しみたいと考えてます。

吸血スワッピング

2015年01月09日(Fri) 08:04:23

この街には、吸血鬼がはびこっている。
けれども被害届は、まず出ない。
喪われる血の量が多少の貧血程度で済むのと、相手がたいがい顔見知りであることが理由らしい。
我が家にも・・・吸血鬼が現れた。
相手は隣のご主人だった。

男同士の吸血である。
ロマンもなにもない。
気がついたらパジャマのまま組み伏せられて、喉を咬まれていた。
ゴクゴク、ゴクゴクと喉を鳴らして血を飲まれているあいだ、わたしは情ないことに、小さくなって震えつづけていた。

すみませんね・・・
口許に着いたわたしの血を手の甲で拭き拭き、ご主人はへどもどと頭を下げた。
不思議なもんでね。吸血鬼になると、鍵のかかっている家でもふつうに入ることができちゃうんですよ。
(あなたもいずれ、そうなりますよ)
そんなふうに言われているような気がした。
じつは今、私の血を吸ったやつがうちに来ていましてね・・・
ご主人はただならないことを言う。
うちの女房が、生き血を吸われてる最中なんです。
えっ!?助けないんですか?
そう訊きかえそうとしたわたしの機先を制するように、ご主人は言う。
邪魔しちゃいけないんです。自分だって吸血鬼なんですからね。
むしろ協力してあげるのが、ルールになっているんですよ。

そのときだった。
りぃん・ろぉん・・・
我が家のインターホンが鳴ったのは。
深夜残業の妻の美知恵が、戻って来たのだ・・・
すみませんね、旦那さん。悪いけど協力してもらいますよ・・・
協力もなにも、血を抜かれた身体には力が入らず、わたしはただ大の字になってリビングに寝そべりつづけていた。
ご主人は背中で、それでいいです、と言っているようだった。

見せつけている・・・
すぐにそうと知れた。
半開きのドア越しに、廊下の壁に抑えつけられた妻の美知恵が立ちすくんでいる。
返事がないのを不審に思った妻は、ハイヒールを脱いで上がり込んだを腕を掴まれたらしい。
怯える美知恵の肩をつかまえたご主人は、妻がこちらを振り向きざまに、
首すじをガブリ!と咬んでいた。
キャッ!
ちいさな叫びをあげて、妻が目を瞑る。
ちゅーーーーーっ!と鋭い音を立てて、妻の血が吸い出されていった・・・

その場にへたり込んで尻もちをついたまま、肌色のストッキングを履いたふくらはぎをネトネトとべろで舐められながら。
妻はぼう然と、相手の意地汚いいたぶりを眺めていた。
あなたもこのひとに、吸われちゃったの?
ああ・・・たっぷりとね・・・
あ。。。まだ吸いたそうよ・・・
ご馳走してやんなさい。きみさえよければ・・・
いいもわるいも、そうするしかないじゃない・・・
交わし合わされる虚ろな声と声に、ご主人はにんまりとしながら。
妻の両肩を抱くようにして、廊下に引きずり倒していった。
スカートの中に突っ込まれた手が、ブチブチ・・・ッ!と鋭い音をたてて。
パンストとパンティとを、同時に引き裂いていた。

通勤用のOL服のまま、髪を振り乱して、天井の照明を見あげながら、
はぁはぁと熱っぽい吐息を洩らしつづけた妻は。
なん度めかに強いられた交接のときに、とうとう自分のほうから、ひざを開いていった。
わたしはいけないことと知りながら、そのありさまをただぼう然と見つめていた。
不覚にも逆立ててしまった股間を、妻に盗み見られたのがわかったけれど。
妻もわたしもどうすることもできなかった。

今夜はうちの女房も来ますから・・・
わたしの首すじから吸い取った血を手の甲で拭き拭き、ご主人は口ごもりながらそういった。
わたしは、うなずくだけだった。
これから奥さんの血をいただきますね。
これにも、うなずくだけだった。
お宅の奥さんのほうが、うちのやつよりずっと若いですよね。ごめんなさい。
血を吸い合った後の展開がどうなるのか見越した言葉――けれどもわたしはやはり、無表情にうなずくだけだった。

今夜も妻の帰りは遅い。
わたしは携帯をとって、妻にかけていた。
家に戻っても出られないから・・・スーツのまま二階に上がって来てくれる?
それですべては、通じるはずだった。

奥さんのキスは、強烈だった。
前夜の侵入者に、生き血をあらかた吸い取られてしまったらしかった。
会釈もそこそこに、仰向けに横たわったわたしの上に覆いかぶさると
パーマのかかったロングの茶髪をかき寄せながら、首すじにかぶりついてきた。
妻はわたしのすぐ横で、ご主人に求められるままうつ伏せになって。
肌色のパンストを穿いたふくらはぎを、ネトネトと舐められ始めていた。
今夜のパンストは、結婚式のときくらいしか穿かない、光沢のテカテカするやつだった。
――部屋を分けようと提案したご主人の申し出を、かぶりを振って断っていた――
妻の穿いているパンストは、圧しつけられた唇の下でパリパリと裂け、くしゃくしゃに弛んで引きずりおろされ、
さいごに精液まみれにされてゆく。
わたしはわたしで、十歳以上も上の熟女であるお隣の奥さんの思うままにあしらわれて、
花柄のミニスカートから覗く太ももにうっとりとしながら、
強引に開かれてきた股間を合せて、うごきをひとつにしていた。

はぁ、はぁ・・・
ひぃ、ふぅ・・・
あぁん・・・
き、きくぅ・・・

かすかな声と声が響き合い、交わし合わされ――いつかふた組の息の合うカップルが誕生していた。

吸血の性癖は、一定期間をおくと消えるらしい。
隣家を襲った吸血鬼は、新たな獲物を求めて夜の闇に消えていった。
血を吸い取られたわたしたちは、血を吸ったご夫婦に求められ続けて・・・
ひたすらスワッピングに耽っていた。

今夜はいかがですか?
いいですね・・・
女房のやつ、ウキウキしながら鏡に向かってますよ。
うちの美知恵も、今夜は残業を切り上げて帰って来るみたいです。

この街にはこんなふうに仲良くなったご近所同士が、少なくないという――

夫の理解

2014年03月10日(Mon) 08:05:04

いつもいつも、済まないですね。
口先では慇懃なことをいいながら、男はウッソリと、玄関をくぐってくる。
勤め帰りのわたしは、まだスーツを着ていて、靴下だけを履き替えていた。
どういうわけか脚に執着するこの吸血鬼を、ほんのちょっとだけ、愉しませてやるために。

透ける足首に目ざとい視線を投げた男は、「いつもいつも、お気遣いをいただいて」
そういいながら、指で自分の唇を撫でていた。
渇いているときの、癖だった。

さいしょに妻が襲われ、それから娘までもが生き血をすすられて。
もはやわたしに残されたのは、一刻もはやく彼と”和解”をすませて、家族の生命だけでも確保することだけだった。
「脚がお好きみたい」
そういいながら、いつもスカートの下でストッキングをチリチリに咬み破られて帰宅する妻。
わたしはある晩訪れた彼のまえに立って、黙って自分のスラックスをひきあげた。
紳士用ですから、お笑い種にもならないでしょうが・・・
よほどうれしい記憶なのだろう。
いまでも彼は、わたしのまえで、その言葉を口にしてみせる。
わたしの口まねまで、たくみにまねて。

彼の好みに合わせて履いたのは、ストッキング地の紳士用ハイソックス。
すべらされてくる彼の舌は、彼がわたしの応対に満足していることを伝えてきた。
欲情にまみれた淫らな唾液を、たっぷりと含ませながら。


「いいですね。じつにいい舌触りです・・・」
寝そべるわたしの足許にかがみ込んで、男はいつものように、薄いナイロン生地のうえから、舌をふるいつけてくる。
「あなたを侮辱している気分になれるのが、まことに愉しい」
そんな腹立たしいことまで口にされながら、わたしは不平そうに舌打ちをしてみせるだけ。

かつての貞淑妻は、淫らな恋に酔いしれて。すっかり男の情婦に成り下がっていた。
そんな妻を、娼婦のようにもてあそび、
ましてや娘の純潔までも、むしり取って行って。
いまでは娘の制服のスカートの裏側は、男の粘液で白ぱくれているという。

それほどまでに、されながら。
どういうわけか伝わってくるのは、男がわたしの妻と娘に抱く情愛の深さばかり。
おなじ女を、好きになったのだ。
おなじ娘を、いとおしく思っているだけなのだ。
たぶんきっと、そのとおりなのだろう。
ただ、愛しかたの流儀が、常識とかけ離れているだけ―――

「嬉しいですね。このなめらかさ。このツヤツヤとした光沢・・・」
男はまだ、わたしの足許にとりついたまま。
ふしだらにしわくちゃにされ、くしゃくしゃにずり落ちてしまった紳士用のハイソックスを、賞玩してやまない。
チクリ、チクリ・・・と、時折牙を忍び込ませて。
みるかげもなく破いてしまうまで、たっぷりと愉しんでみせる。

どうせなら。
愉しみ抜くのが、礼儀というものでしょう?

そんな身勝手な言い草に。
わたしは深く頷いてしまっている。

妻以外の女を抱くのは、たんに血を獲るためだという見え透いた嘘さえも、
妻の身体を気遣ってくれるのだと受け取って。
きみのまえで奥さんを辱め抜くことができるのが、最高のもてなしなんだよ、という要求も、
嫉妬の歓びをわたしに植えつけようとする企みなのだと理解して。
せっかくできたご縁なのですから、妻のことを見捨てないでくださいね、なんて、懇願してみせている。

「あんたの生き血は、オードブルだ。メインディッシュが奥さんと娘さんだ」
そんなことを、いわれながらも。
男がその実、わたしの血を愉しみにしてくることも、気づいてしまっている。
「きみの生き血を吸い取った後、勤め帰りの奥さんをきみの前で襲うのが、なによりも愉しい」
そんな無礼さえ、楽しげに口にする男のために。
わたしは男を悦ばせるために、きょうも薄い靴下を脚に通してゆく。

夜道は必ず、懐中電灯をつけて歩くように。

2012年10月24日(Wed) 07:38:47

夜道は必ず、懐中電灯をつけて歩くように。

これは決して、安全のためばかりではなかった。
けれども村人たちは、今夜も灯りを掲げつづける。
その灯を目当てに、血が要りような吸血鬼たちが群がるために。



その少年が通りかかったのは、夕暮れのとばりが下りたころ。
サッカーの練習帰りらしい、白の短パン姿の彼の足許は。
薄灯りの下でも、白のストッキングが眩しく映えていた。
ユニフォームは泥だらけだったけど、この地区の少年たちは皆、帰りには真新しいストッキングを履いて帰ることになっていた。

あっ、吸血鬼だなっ!?
少年は声をあげ、自転車をとめる。
けれどもそこで予想されるような抵抗や揉み合いは、ついに実行されない。
わかったよ。血を吸いなよ。
もの分かりよく自転車を降りた彼は、正面と背後から忍び寄る影たちをまえに、観念したように目を瞑る。

あっ!痛てえっ!もっと手加減しろよなっ。
少年は非難をしたけれど。
それに応えるのは、キュウキュウ・・・ちゅうちゅう・・・という、あからさまな吸血の音ばかり。
あー・・・
つぎに洩れた声色は、どこか弛緩していて。
少年が感じているのが苦痛ばかりではないことを告げている。

もう気が済んだの?まだ足りないんだろ?
ところどころ紅く染まったストッキングを、ひざ小僧まで引き上げながら。
少年はじぶんを襲ったふたりの吸血鬼を、見比べる。
手加減してくれたお礼に、いいこと教えてやるよ。
あと30分、待ってみな。
俺の姉ちゃんが塾帰りに、ここ通るから。
今朝登校してったときには、黒のストッキング履いてたぜ?

ひと言余計よ・・・って、姉ちゃんがしかめ面をするのを予期しながら。
少年は「じゃあねっ」と言い捨てて、勢いよく自転車をこぎ始めた。
白のストッキングのふくらはぎをところどころ染めている紅い斑点が、サドルの両脇で上下をくり返していた。



時折揺らぎながら、ゆっくりと近寄ってくる灯りがひとつ。
それがさっきの少年の姉のものだと、吸血鬼どもは知っている。
ぺろりと舐めた口許には、少年から吸い取ったばかりの血潮が、まだテラテラと光っていた。
自分の体内をめぐる血液を求めて、セーラー服のすき間を侵されようとは、
来週のテストのことで頭がいっぱいの少女は、夢にも思っていない。

「ええーっ!?」
自転車をとめて、少女は叫び、立ちすくむ。
「見逃して・・・もらえるわけ・・・ないですよねっ?」
哀願を交えた問いかけにも、ふたつの影はかぶりを振るばかり。
弟さんがさっき、ここを通っていった。
その言いぐさにすべてを察した少女は、長いおさげをセーラー服の襟の向こうに追いやった。
薄暗いなかでも噛みやすいように、首すじをあらわにするために。

がぶっ。
ぶちり・・・
ひとりは正面から迫って少女のうなじに食いついて。
もうひとりは背後から這い寄って、ふくらはぎに噛みついた。
白のラインが三本走る襟首を、かきのけながら。
揺れるスカートのすそを、かいくぐるようにして。
牙を迫らされた白い膚は、みるもむざんに冒されてゆく。

ちゅうちゅう・・・キュウキュウ・・・
先刻弟を襲ったふた色の吸血の音が、いまセーラー服の少女におおいかぶさる。
ヒルのようにしつように這わされた唇の下。
ばら色のしずくはほとび、襟首を走る白のラインにしみ込んでいって。
黒のストッキングごし刺し込まれた牙に、薄手のナイロン生地は、じりじりと裂け目を拡げていった。

もう気が済んだ?いいこと教えてあげるから。
パート帰りの母さんが、このあと一時間ほどすると、帰ってくるの。
それから30分で、父よ。
父はきっと、母さんが襲われてるところ、見たがるわ。
やっぱ、心配みたいだから・・・
ふたりの血を吸えば、さすがにもう気が済むんじゃない?
きょうもお嫁入りまえの身体を汚さないでくれて、ありがとね。
お礼にまた明日・・・処女の血を愉しませてあげるから♪

おさげ髪をセーラー服の襟に揺らして。
細い肩をリズミカルに上下させながら、
少女は自転車でこぎ去っていった。



カツンカツンと響く、パンプスの足音に。
その背後にちょっと間隔を置いて伝わってくる、革靴の足音に。
ふたりの吸血鬼は顔を見合わせ、にんまりと笑みを交わし合う。

立ちどまったらすぐに、叢のなかに引き入れるだぞ。
だんなは勝手に、あとをついてくるだろうな。
そこで、キヒヒ・・・なに、あちらも心得ているさ。
夫婦で生き血を分け取りか。たまんねぇな。
奥さんは、まわしてもいいって話だぜ?脂の乗り切った、ええ身体しておるそうぢゃ。
だんなもきっと、いつもみたいに悦んで視よるぢゃろ。
ちげぇねぇ。くくくくくく・・・っ。

晩ご飯の食卓には、貧血で顔色の悪い四人が顔見合わせて、
なにごともなかったかのように、いつもの団らんの刻を過ごすのだろう。
勤め帰りを急ぐふたつの足音が、劣情を逆なでさせる男どものすぐ間近に、近寄ってきていた。

朝っぱらから・・・。(^^ゞ

2012年09月11日(Tue) 07:43:17

朝っぱらから、すまねぇな。(^^ゞ
隣家の年配親父は、今朝も妻のことを、誘いに現れる。
妻もよく心得ているらしく、朝から礼服姿。
ごはん済ませたら、お出かけになって下さいね?
申し訳なさそうな顔つきを作りながらも、いそいそと。
玄関で呼ばわる声に応じて、起っていった。
畳のうえを歩み去る爪先を、黒のパンストがなまめかしく染めていた。

だんなさん、悪りぃ。借りは返すからのお。
玄関で呼ばわる声は、情け容赦のないほど、かしましい。
自分の嫁が不名誉を蒙るのだということを、近所に宣伝しているようなものだった。
わたしは仕方なく、玄関まで妻を送り出していって。

朝から精が出ますね。

精いっぱいの皮肉を、言ってやった。
エヘヘ・・・
野良着姿の初老のおやじは、はげ頭をてかてかさせながら。
悪戯坊主のような照れ笑いをして、
それでも照れくさいのか、首すじのあたりをしきりに引っ掻いていた。

庭先、借りますでの。
とんでもない申し出を、さっきの不作法とは打って変わった、慇懃な低い声で囁くと。
そのとんでもない申し出に、わたしもつい、うなずいてしまっている。
いつもの癖で・・・

明日の朝は、礼服ですの。
夕べ妻が、遠慮がちにそういうと。
わたしはほうきを手に、夜の闇を透かすようにして、その庭先を掃き清めていた。

おやじは妻の手を引いて、庭先にまわり込み、
わたしは何事もないかのように、リビングに戻る。
食事の終わるころ、しばらく語り合っていた男女のあいだに、異変が生じる。
あれ!
妻の鋭い声。
いひひひひひいっ。
おやじのわざとらしい、卑猥な嗤い。
もう、出勤どころではなかった。

都会のおなごは、いやらしいの~!
仰々しく呼ばわる男と向い合せに。
妻は礼装のすそをひるがえして、庭先を逃げ惑う。
わたしが掃き清めた、庭先で。
男と女は、卑猥な強姦芝居を展開するのだった。

あれえっ!お許しくださいましっ!
わたしにさえ口にしたことのないような声色で。
妻ははだけたブラウスの胸元から、白い肌を朝陽に曝す。

うへへへへへっ。都会女はええ舌触りの靴下を穿いておるのお。
立ちすくむ妻の足許にかがみ込んだ男は、ハイヒールの足首を掴まえて。
黒のストッキングのふくらはぎに舌をふるいつけて、薄手のナイロン生地をくしゃくしゃにしていった。

ひいーっ!お許しをっ!
庭先に押し倒された妻は、逞しい猿臂に抱きすくめられたまま。
もう、どうすることもできないで。
裸体の恥を、さらしていった。
まくれあがったスカートの裾から、ストッキングをずり降ろされた太ももを、あらわにしながら。
ブラウスを剥ぎ取られてあらわになった乳首を、恥知らずな唇でニュルニュルと弄ばれながら。

庭に押し倒されて。
スカートをまくり上げられて。
パンストを足首まで、ずるずると降ろされていって。
むき出しになった白い腕が、野良着の背中におずおずとまわるのを、
どうしてドキドキ昂ぶりながら、見守ってしまうのだろう?
わたしにも魔物が、とり憑いているのだろうか?
自分から放胆に伸ばした脚には、片方だけ黒のストッキングがまだのこっていて。
居間でわたしの給仕をしてくれていた時とかわらないほど、白い脛を清楚に染めている。

はふ・・・はふ・・・はふぅ・・・っ
礼装の黒のスカートを着けたまま。
黒のブラジャーの吊り紐を、片方立たれた背中を、陽に曝したまま。
片方残った黒ストッキングを、皺くちゃにして。
四つん這いにされた妻は、ひたすら、腰を使っている。
闖入者のまえ、もうすっかり従順にされてしまった柔らかい裸体を、歓びに輝かせながら・・・
引き抜かれるたび、白く濁った精液が、地べたにぼとぼとと、ほとび散った。

孕んでみるかえ?なに、いやだ?なに、すぐにその気になるさ。
都会のおなごは、いやらしいからのう。
遠慮するな。すぐ孕ませてやっからよ。
元気な男の子、さずかるぞお。

いけない!いけないっ!
子どもは、主人の子をぉ・・・

妻はあられもない身を曝し、はしたない声をあげて。
ご近所にはすべて、筒抜けだった。
朝の儀式が盛り上がるほど、周囲の人たちは妻にやさしくなるという。
おなじ体験をしたもの同士だけが共有する、連帯感で。
朝っぱらから家庭のなかまで闖入してくる、こういう客は。
最高の礼儀で、もてなさなければならないことに、なっていた。

夫であるわたしの、目のまえで。
柔らかい乳房を揉みくちゃにされていって。
妻はいつしか、昂ぶっていた。
わたしも不覚にも、ズボンを濡らしてしまっていた。

男は魔物。
妻を狂わせ、わたしをさえも、奈落の底に、引きずり込んだ―――

法事の手伝い・・・

2012年09月11日(Tue) 07:22:48

村の法事には、決まって都会育ちの婦人たちが手伝いに来る。
当番制でお声がかかるらしく、いつも顔ぶれはまちまちである。
もっとも・・・べつな揺らいでの人選は、とうぜんあると思われるのだが。

法事の末席に連なる野良着姿の男どもは、そんな人妻たちにも容赦しない。
むしろそれが、お前たちが法事の手伝いに来たほんらいの目的なのだと言わんばかりの態度だった。
数人は択ばれてくる都会の人妻たちは。
夫たちの参列すら、赦されていなかった。
法事のお手伝いに行ってまいります。
それがどうやら、夫婦の会話の合い言葉になっているらしい。
男に抱かれてくる。
あからさまに、そう告げないまでも。
夫たちはいちように、
行ってらっしゃい。気をつけて・・・
そう応えるならわしになっていた。

法事の列の末席に、伏し目がちになって参列した都会妻たちは。
背後から息荒く迫った野良着の者たちに、熱く濁った息を、首すじに吹きかけられながら。
黒のスカートのうえに組み合わせた両手を、手を握られる順番さえ決められているかのように、抑えられてゆく。
なかには狎れ狎れしく肩先に腕を回して、囁きかけてくるやつさえいる。
なにを囁いているんだ?って?
これからエェことしような。極楽にイカせてやるからのぉ。
どうせそんなことを、口走られているに違いない。

手を握られた女たちは、だれひとり抵抗を試みることなく、
清楚に映えた黒のストッキングのつま先を、きちんとそろえて、
参列者たちに黙礼をして、立ち去ってゆく。
寺の敷地のすぐ隣の、納屋のなか。
キリリと装った礼装を、見るかげもなく乱されてゆくのだと、知りながら・・・
ふっくらとしたふくらはぎをなまめかしく彩る、あの黒のストッキングも。
節くれだった指をかけられて、あらけなく剥ぎ降ろされてしまうのだろうか?

誘い出される参列者たち。

2012年09月11日(Tue) 07:15:02

法事の最中に、退屈になってくると。
参列している男どもは、目引き袖引き、目配せし合いながら。
礼装のすそから覗く、黒のストッキングに包まれた脚たちの品定めをする。
喪服に白い肌は、映えるものだから。

末席に参列している、野良着姿の連中には。
とくに最優先で、女を択ぶ特権が与えられる。
この法事にゆかりの、いわくのある者たちだった。
自分の妻や娘が参列している・・・という男どもは、
たいがいの場合、きょうのおこぼれにはあずかれない。
ただ、自分の女家族が、禿鷹のような連中に咥えられ持ち去られてゆくのを、見送るばかりである。

すまねぇな。
ずっと昔には幼馴染みの兄ちゃんだった中年男が、そう言いたげに。
こちらに向かって、目を投げてくる。
勝手にしなよ。
視線を投げられた側の、礼服姿の若い男は、ほろ苦く笑いながら。
そんなふうに目を返していく。

年配男は、若い男の向かいの席で、俯きがちに参列している若い女の手の甲を抑えると。
清楚な黒のスーツに身を包んだ女は、はっとして野良着姿を見あげ、
それから見比べるように、夫のほうを見る。
夫は目を伏せたまま、僧侶の読経に聞き入っている。

おずおずと立ち上がる女は、伏し目がちに姑のほうを見、
姑は神妙な顔つきで、若い嫁の目線を読んだというように、気づかれない程度の黙礼を返す。
あんたにお辞儀したわけじゃない。
そう言いたげな邪慳な顔つきをして。
もういちど、野良着の男のほうに、目線を送る。
こんどは、さっきの顔つきとは打って変わって、媚態にも似た、それは狎れ狎れしい笑みを泛べて。
野良着男は、姑とも身に覚えのある男なのだろう。
えへへ・・・とかすかに笑い声を立てて、若い嫁の手を引っ張って本堂を出て行った。

姑のほうにも、後ろから。
卑猥な手が、伸びてくる。
漆黒のブラウスの胸もとに忍び込んだ掌は、
袖の透ける薄地のブラウスの胸を波立てながら、胸の隆起をなぞっていった。
ぁ・・・
不謹慎な声をあげてしまっても。
周囲のものは咎めの視線さえ、送ってこない。
すぐ隣に腰をおろした亭主殿さえ、知らん顔をして読経に聞き入っている。

色即是空
空即是色・・・

経文にはいったい、どんな魔力が秘められているのだろう?

静まり返った本堂には、不思議と明るい気配に満ち満ちている。

お寺の隣の納屋

2012年09月11日(Tue) 06:59:44

法事のさいちゅうは、お寺の隣の納屋は、満員になる。
墓地につづく道端にある古びた納屋のなか。
薄暗いなか、黒の礼装に身を包んだ女が三人、
野良着の年配男どもを相手に厭々をしながら、黒のストッキングをずり降ろされてゆく。

一時間後。
意気揚々と引き揚げていく男どもは、それぞれに。
モノにした女の穿いていたストッキングをぶら提げて、納屋を出て行った。
破れた墨色の薄衣は、節くれだった指につままれて、
ひらひらと風に、舞っていた。

彼らを見送った三つの人影は、墓地の参道の傍らの茂みから顔を出すと。
「うち、喪主だから仕方ない」
「うちは、本家だからしょうがない」
「わしの嫁は、どうして目ぇつけられたんかのぅ」
「こうゆう席に、柄物のストッキングなんぞ穿いてくるからよ。
 ちょっかいかけてくれと、おのれから言うてるようなものではないか?」
違いない・・・
三人は、声を合わせて笑った。

妻の貞操 宅配サービス(夫同伴つき)

2012年04月29日(Sun) 08:01:13

RRRRR・・・
受話器を取ると、聞き馴染みのする年配の男の声でした。
―――だんなさん、悪りぃけど・・・女ひでりなんで、かあちゃん貸してくれないか?
露骨な問い合わせに顔をしかめながらも、わたしはおうむ返しに訊きました。
―――母でしょうか?家内のことでしょうか?
男はちょっぴり口ごもって、
―――ん・・・若奥さん。
それでもはっきりと、家内のほうを指名したのです。
―――隣のご隠居とふたりで、待ってますから。
こういうときにはいつもなのですが、遊びにおいでよ、というくらいの軽い感じの口調なのです。
―――迷惑ですね。わたしとしては。
そうくぎを刺しながらも。
―――家内に代わりますから・・・
そう応えてしまっている、わたし。

電話。
聞き耳を立てている家内に、わたしは受話器を差し出します。
―――エエ、ああ、はい。はい。
戸惑いながらも応対する家内の声が、さいしょのころよりも落ち着いているのは。
状況になれてしまったから?それとも男たちと肌を合わせることに、ひそかな快感を覚えるようになったから?
わたしが限りなく戸惑っているのを背に、家内は平静に応対を続けます。
―――そういうことなら、こちらからお伺いしますわ。うちには義母もいますので。
家内は受話器を置いて、わたしのほうに向きなおりますと。
―――お伺いすることにしました。あなた、エスコートしてくださるわね?
おっとりと小首をかしげるふくよかな笑顔に、抗しがたいものを感じます。

栗色に染めた髪を頭の後ろにキリリと束ね、軽く化粧を刷いた妻。
白のブラウスにうす茶のカーディガン。こげ茶色のタイトスカートの下は、黒のストッキング。
お気に入りの茶色のパンプスに、薄手のナイロンに透けるつま先を収めると、
―――行きましょ。
妻は散歩に誘うようなさりげなさでわたしに声をかけ、
―――ちょっと二丁目のご隠居さんのところにお伺いしてきますね。
離れにいる母にまで、まるで届け捨てをするように、声をかけていきました。

―――だんなさん、いつもすまないね。
―――迷惑なんですよ。ほんとうは。
本心をおり交ぜて、顔をしかめるわたしに。
(わかっていますから。^^)
そう言いたげな態度で、電話の主である良介さんは気さくにわたしたち夫婦に席を進めます。
―――ゴムだけは、ちゃんとつけてくださいよ。
そういうわたしに、そりゃそうだな、と、頭に手を当てておどけています。
きっと今回も、その約束は守られないのでしょう。

お隣のご隠居の平作さんも、にこやかな好々爺。
家内もすでに、何度となく、お相手をつとめてきた男性です。
―――やぁ、すっかりいい日和になりましたな。
平作さんはにこにこ笑いながら、家内にも丁重なお辞儀を投げてきます。
―――いつぞやは、どうも。
―――いえいえ、ふつつかで。
家内もそつのないこたえを、返していって。
―――晩御飯の支度もありますから、そろそろ始めましょうか?
周囲の気遣いに満ちた雰囲気を吹っ切るように、切り出しました。

―――だんなさん、悪いねぇ。あんたに悪気はないんだけど。
―――あんたのかあちゃんの身体、じつに具合がええんだよなぁ。
―――あ~、あんなにずこずこ姦られちまって。奥さんよがってますぜえ。
―――茶色のスカート、たまんねぇな。精液塗りたくってやるからな。
家内は着衣のまま、太もも丈の黒のストッキングも着けたまま。
代わる代わるのしかかってくる年配男たちの相手を、腰を揺すりながら応じていました。
時折眉をしかめ、時には歯をむき出して。
快感なのか。苦痛なのか。
それは、当人いがいには、うかがい知ることのできないものでした。

息荒く重ね合わされてくる唇にも、拒むことなく応じていって。
もっと股を開け というように、両ひざを押し拡げられると、柔軟に応じていって。
そつない応接。
まさにそんな感じの交接に、くり返しくり返し応じていくのでした。
四つん這いの姿勢で、スカートを着けたまま、後ろから挿入されていって。
はぁはぁ・・・はぁはぁ・・・
せめぎ合う息遣いが、わたしまでも妖しい悩乱に引きずり込んでいこうとするのです。

ストッキングのゴムを、白い太ももに色あざやかに滲ませながら。
毛むくじゃらの逞しい脚に、ストッキングを穿いた脚を絡みつけて。
陽灼けした筋肉に覆われた、丸太ん棒のような腕のなか、引きつる頬をペロペロと舐められて。
荷物を背負ったみたいな分厚い背中に、肉づき豊かな二の腕を、おずおずとまわり込ませて。
強引に奪われた唇を、せめぎ合うように、自分からも合わせていって。
熱っぽい情交に、わたしは不覚にも、パンツを濡らしてしまっていたのです。

―――どうってことはねぇ。あんたの愛するかあちゃんを、おら達も大好きだってことだからよ。
粗雑な口ぶりでしたが、彼らの言うことはきっと、ほんとうなのでしょう。
ほつれた後れ毛を撫でつけながら、家内は身づくろいを済ませると。
さいしょにあいさつした時とおなじように、
―――ふつつかでございました。
冠婚葬祭に来てくれた遠来の親戚に応接するときのように、ていねいに畳に三つ指ついてお辞儀をする妻。
わたしもあわてたように、妻のすぐ隣に正座して。
―――お楽しみいただけましたでしょうか?
ばかね。
そう言いたげな隣からの視線を受け流して。
―――すっかりたんのうしたよ。またこんどね。
のうのうと応えるお相手に。
今度は家内のほうが、
―――どうぞご遠慮なく、お声をかけてくださいね。
さっきわたしに投げてきた、閃くような反感などおくびにも出さず、
それはにこやかに応えていくのでした。

辞去した後の、かえり道―――
―――晩御飯の支度、早くしなくちゃね。
なにごともなかったような、妻の声でした。
だいじょうぶなの?覗き込むようにするわたしの視線を、わざと避けながら。
―――いつもあちらにお伺いしているのって、どうしてだかわかる?
謡うように訊いてくる声に、わたしはこたえを返しかねておりますと。
―――風に当たると、気分が変わるでしょう?
家内はさばさばとそういうと、わたしの前に立って、歩いていきます。
背すじをしゃんと伸ばして。
きりりと結い上げた髪を、リズミカルに揺らしながら。


あとがき
今朝は好調?^^
それとも、単なるすとれす過多?^^;
ひと寝入りして起きたら、また描けちゃいました。(^^ゞ

休日の中学校。

2012年04月29日(Sun) 06:28:11

家内とふたりの娘を連れて。
よそ行きのスーツや制服姿で、足を向けたのは。
下の娘の通う、中学校。
休日は投票所としてくらいしか開放されない体育館は、ごみごみとした人いきれが充満していた。

十代男子
十代女子
未婚男子 四十代まで
未婚女子 三十代まで
既婚女子 四十代

などなどと書かれたプラカードのまえ。
すでに十数人ずつは、居並んでいた。
たしかに投票所みたいな雰囲気ではあった。
目的を考えるとむしろ、予防接種かも知れなかったが。

わたしが並んだのは、既婚男子 四十代。
妻が並んだのは、既婚女子 四十代。
娘たちはセーラー服の襟首をそろえて、十代女子の行列に加わっていった。

いつの間にか、家族ばらばらになって。
わたしが通されたのは、狭い空き教室だった。
こんなところで、すみませんね。
顔見知りの吸血鬼は、親しげに笑いかけながら。
わたしのスラックスを、たくし上げていった。

エヘヘ。いつも悪いですね。
たまらないんですよ。ストッキング地のハイソックス。
破っちゃっても、かまいませんか?
好きにしたまえ。
わたしが淡々と応えると。
男はやおらかぶりついてきて、
ストッキングを穿いた脚を好んで噛む吸血鬼のために履いてきた薄地のハイソックスは。
ぱりぱりとかすかな音をたてて、他愛なく破れていく。

貧血・・・だね。
額を軽く手を抑えると。
あー。いけませんね。やり過ぎたかな。
男はわたしをソファに寝かせ、介抱するふりをして、こんどは首すじを噛んでくる。
しばらく診たてをするように、噛み入れた牙を皮膚の下に沈めたまま、
脈を測るふうをしていたが。
ウン、だいじょうぶ。だんな平気ですから。
そういうとやおら、首すじに、もういちど咬みついてきた。

痛痒い疼きをこらえかねていると。
男が囁いてきた。
お待たせしている間にね。
奥さんのこと、噛んできたんですよ。
いい肌してますね。血もおいしかった。
そのうえに―――

男は言いさすと、もっと危険な言葉で、わたしの理性をいびつにさせた。
きみのまえで、きみのワイフとファックしたい―――
あっちにいるんだ。呼んでくれないか・・・?
目のまえで妻を凌辱して、羞じらう妻を愉しもうとする男の不埒なこんたんを、
わたしは小声で、呪いながら。
それでも妻の名を、口にしてしまっている。

初子、お相手してあげなさい。

山奥の花見

2012年04月25日(Wed) 05:55:15

山奥の村の、そのまたさらに奥は。
吸血鬼の棲まう、桃源郷。
春ともなると、村よりもさらに一段時期の遅れた桜が、
それは見映えよろしく、咲き誇る。

彼らに受け入れられた、限られた人たちは。
赤、青、緑、紫と。
色とりどりの敷物をかついで、花見に訪れる。
うららかな好天の下、咲き誇る花を愉しむために。

おや、いらっしゃい。
さあ、どうぞ。
着飾った村の衆に、口々に迎えられるのは。
上品な老女だったり。気さくそうな好々爺だったり。
なかにはしょうしょうお下品な、禿げ頭の親父もいたりもするが。
だれもが仲良く、酒を酌み交わし始めるのだった。

あんたの酒は、うまいね。
気さくな好々爺は、しきりに盃を重ねながら。
真っ白な敷物のうえ、いちばんよいところにどっかとあぐらをかいていて、
照れているのか、酒がまわっただけなのか。
ひろいおでこを、それは気持ち好さげに、ほてらせている。
もっとうまい酒が、あるんじゃろ?
なぞをかけるような問いに、まだ若い旦那さんは、ちょっぴり気後れしたように。
花見には場違いな紋付き留袖姿の若奥さんをかえりみて。
そうですね。いちばんうまい酒をご披露しますか。
頃合いをみてそそくさと、座を起ってゆく。

あとはわたしたちで、だいじょうぶですよ。
四十年配の奥様は。いかにも慣れた様子で微笑んで。
真新しいセーラー服姿の娘の掌を、濃紺のスカートのおひざのうえで、しっかりと握りしめている。
じゃあ、酔い覚ましにちょっと、そこらへんをひと周りしてくるか。
ご主人は腰をあげるとすぐさま靴をつっかけて、
真っ赤なじゅうたんの上から立ち去ってゆく。
あとで・・・ね。
奥様と訳ありげな目配せを、交し合いながら。

えっ?えっ?こんなにおおぜい、いらしたんですか?
そうよ。みな様あなたのことがお目当てだったのよ。
わたしは添え物・・・そういいたげに、手酌をするのはお姑さん。
つい先週挙式したばかりの新妻をお披露目するには、うってつけの場だったはず。
まわりじゅう、もの欲しげなおじ様たちに取り囲まれてしまった花嫁のご主人は、とっくに座からはなれている。

白の敷物は、ここに来るのは初めてという奥さんを。
赤の敷物は、桜並木にネッカチーフをそよがせる娘さん、それにそのお母さんを。
青の敷物は、嫁と姑を。
鮮やかな色合いごとに、意味が含められていて。
木立のすき間から花見の様子を覗きながら、品定めに興じた吸血鬼どもは。
それぞれお目当ての女がいる敷物のうえ、あがりこんでゆく。

おい、おい。奥さんお盛んだねぇ。
すこし離れた小高い丘のうえ。
ここにも桜は咲いているけれど。
座を起ったいっかのあるじや、その息子たちは。
軽い酩酊を、明るい艶語にかえて。
じゅうたんのうえに組み敷かれてゆくお互いの妻たちの痴態を、眺め合っている。

去年のきょうのことなんですよ。うちのやつがはらまされたのは。
ほら、あの爺さまそっくりに笑うでしょう?
傍らのご主人が抱っこしている可愛い赤ちゃんは、何も知らぬ顔をして、にこにこ穏やかに笑っている。
愛想よくにぎにぎをする手を握り締めて微笑んでいるわたし。
都会育ちの頑固な姑は、今年は舅同伴で村を訪れて。がんばって紋付を着込んできたし。
すっかりここの風習になれた妻は、まえもって約束していたあいつのために、ピンクのスーツ姿をさらしていたし。
紫のじゅうたんには、黒の紋付もピンクのスーツも映えるらしい。
わざと白のセーラーを着てきた妻の妹は。
太もも丈の黒のストッキングの脚をばたつかせながら。
まくりあげられたスカートから覗く白い太ももを、紫の敷物に映えさせていった。

花を眺める女たち。
華を愉しむ吸血の衆。
そして、散らされる花びらに興じる、その夫や息子たち。
頭のうえを吹きすぎるのは、眠りを誘うほどゆったりとした、春の風―――

雨の情景

2012年04月22日(Sun) 22:58:32

花曇りの空を、雨滴がびたびたと、唐突に濡らしはじめた。
ばたばたばたばた・・・
乾いた地面を打つ大粒の雨がたてるかすかな砂埃で、あたりが薄っすらと煙たくなる。
白の頭巾に割烹着姿の女が屋内から駆け出してきて、あわただしく洗濯物を取り込んでいった。
二往復、三往復・・・
さいごの洗濯物を取り込んで、濡れはじめた頭巾を頭から取り去ったとき―――
背後から伸びた黒い影が、だしぬけに女を押し包んだ。

あ・・・っ!
女はちいさく叫び、とっさに逃れようとしたが。
すぐに傍らの納屋に、引きずり込まれてしまう。

あっという間の出来事だった。

納屋のなかに敷かれた藁のうえ。
女は脚をばたつかせながら、組み伏せられていって。
もの慣れたやり口で突っ張る両腕を取り除けられつぃまうと、
もの欲しげな唇を、もううなじに這わされてしまっている。

あっ・・・あっ・・・

女はなんどもみじかく叫び、けれどもかなわないとみるとすぐに、大人しくなった。
きゅうっ・・・きゅうっ・・・
押し殺すような吸血の音に女は身をよじったが、影は女を放さなかった。
雨脚が、はげしくなった―――

つかの間のにわか雨は、すっかりあがっている。
女は脱いだ頭巾でうなじのあたりを拭いながら、ふらふらと屋内にあがりこんだ。
居間に入ると夫と目が合って―――女は小娘みたいにどぎまぎして、あわてて目線をそらしてしまった。

なんだ、噛まれちまったのか。
えー、やられちゃった。(^^ゞ
女は照れ隠しに威勢よく、手に持っていた頭巾を洗濯機に投げ込むと、すぐにずたずたと荒々しい足音を立てて、階段をあがっていった。
だんなが顔をあげて、雨上がりの庭をふと見ると。
黒影が低く口笛を吹いて、男の注意をひいた。

こら。
傍らのちゃぶ台に取り残されていた箸置きをだんなが投げると、
影はそれを素早くキャッチして。
陶器でできた箸置きを割れないように縁側にそっと置くと。
もう、姿を消している。

梅雨どきは、もうすぐ―――
だんなはうさん臭げな目線をちらと庭先に投げると、もうそれ以上は追及しないで、
ものぐさそうな手つきで、キセルに煙草をつめてゆく。

クリーニング店の女房

2012年04月02日(Mon) 08:08:18

吸血鬼と公然と同居を始めた、とある街での出来事です。


街のクリーニング店は、多くの場合は集配専門で、いまどき、自前でクリーニングをしているところはとてもすくない。
ところがこの街の大通りに面したその大きなクリーニング店は、いまでもカウンター越しに並ぶアイロン台から、熱気がぷんぷん漂い流れてくるのだった。
昭和四十年代から抜け出してきたような、陳腐な街並みの一角だった。

店先にぶらりと現れたその男は。
痩せ身で干からびていて、血の気のない蒼い顔をしていて。
濁ったまなこでしばらくのあいだ、カウンターの向こうで大汗かいて作業をしている中年の夫婦を見つめていた。
らっしゃい。
親父がぶっきら棒に、声をかけると。
表情のない、意外に整った口許から、聞き取りにくいほどの低い声が漏れてきた。
え?
相手が思い切り小声なのが気に食わない、というように、親父が大仰に耳に手をあてがうと、
男はもう一度、おなじ言葉をつぶやいた。
―――奥さんの血が飲みたい。用意させてくれ。
・・・ゥ。
さっきまで威勢よく、乱暴なほどに体を動かして。
周りに汗を振り飛ばしながら、LLサイズのワイシャツ相手に取っ組み合うように、ひっくり返しとっくり返してアイロンをあてがっていた逞しい身体が、一瞬凍りついたように立ちすくむ。
けれども親父は、こういう挨拶を受けるのは初めてではなかったらしい。
招かざる客に応える代わり、やはり大汗かいて作業を続けている連れ合いのほうを振り向きざまに、
―――オイ、お前に客だ。血を吸いに来たってよ。
さっきまでと同じように荒っぽくぶっきら棒に、支度をしろや、とあごをしゃくった。
太っちょのおかみさんは、頭に結わえた頭巾をむしり取ると、むしり取った頭巾で広いおでこに浮いた汗をグイッと拭い、頬ぺたをふくらませて親父を睨んだ。
もともと頬骨の張った顔をしていたから、不平そうに見えたのはそうではなくて、たんなる労働の疲れが表情に浮いただけだったのかもしれない。
女は旦那そっくりのぶっきら棒な目色でカウンターの向こうの男を値踏みするように見つめると、
―――だいぶ、喉渇いているみたいだね。
ちょっと同情するようにつぶやくと、ふたたび旦那に睨むような視線を返して、
―――あいよ。
とだけ言うと、たすき掛けにした着物姿をひるがえして、引き戸の向こうへとそそくさと消えた。

シュウシュウ・・・シュウシュウ・・・
アイロンの放つさかんな蒸気のかすかな音が、残ったふたりの男の間に流れた。
女の身づくろいを待つあいだ。
吸血鬼は腕組みをして、帽子を目深にかぶったまま表情を消していたし。
クリーニング店の主人もまた、さっきまでと同じように大汗をかきながら、お客の服をアイロン台に組み敷くようにして、シュウシュウとアイロンを這わせつづけた。

できたよ、用意。
ふたたび引き戸をがらりと開けたおかみさんは、見るからに着慣れないスーツ姿。
新品らしい真っ白なブラウスの胸許のタイを、きゅうくつそうに結び合わせて、
太っちょのウェストにいっぱいいっぱいの緑のスカートの腰を、ぐいぐいと手直ししていた。
二階でさぁ・・・
太っちょのおかみさんは、頬骨の張った横顔に、感情ひとつ示さずに、男へとも旦那へともなく、引き戸の奥の階段のほうを指差した。
ほら、階上(うえ)にあがんな。
親父はやはりぶっきら棒に男にそういうと、階段を軋ませてゆく男女のほうへは目もくれずに、アイロン台の傍らで汗を振り飛ばしてゆく。

ぎし・・・
天井がかすかに軋んだのを、親父は明らかに聞きとがめたようだったけれど。
それには目もくれず黙々と、女房のぶんまでアイロンかけに精を出しつづけた。

小一時間もしただろうか。
ふたたび開いた引き戸の向こうに立ったのは、あの痩せ身の男。
干からびていた頬には、色つやを帯びていて。
帽子からはみ出してしょぼくれたように伸びていた白髪まで、ピンとはずんでいるようだった。
口許にちょっぴり浮いた赤いしずくが、女の身体から吸い取ったばかりの生気を秘めて、チラチラと輝きを帯びている。
親父は男の口許を見ないようにして、「血、ついてるぜ」と他人事のようにうそぶいて。
男はああ・・・と気づいたように、手にしたハンケチで彼の妻から吸い取った血を拭い取ると。
―――いくらだね?
ハンケチのクリーニング代を訊いていた。

遅れて出てきたおかみさんは、別人のようにやつれた顔をしていて、頬骨の張ったいかつい顔までがひと周り小さくなったように見えた。
上半身は、ブラジャー一枚。むき出しの肩は意外なくらいなめらかな色つやを放っていて。
もっちりとした柔らかな筋肉に覆われた白い腕を惜しげもなくさらしながら、手にしたブラウスを洗濯物の山のなかに放り込んだ。
肩先にべっとりと、赤いシミが着いていた。
落とすのに時間かかるね。
あくまで業務的な口調に、ああ、そうだな、と、親父も業務的に応じていった。
しつような吸血を受けた後らしい。女は体までも痩せこけたようになっていて、
ぴっちぴちだったスカートのウェストを、ずり落ちないようにと抑えつづけている。
緑のスカートのお尻に黒っぽくにじんだシミを見咎めた親父は、「見栄張るなって」といいながら、女房の腰周りを解いてやると、肌色のストッキング一枚の太ももを寒そうにすくめた女をしり目に、スカートも洗濯物の山へと投げ込んだ。
うちはクリーニング屋だからよ。
親父は妙に、自慢気だった。
スカートをほうり上げるとき。
手にした女房のスカートを、親父はちょっとだけふしんそうに見つめて。
おかみさんはそのあいだ、やはりちょっとだけきまり悪げに、目をそらして。
裏地にべっとりついた粘っこい透明なものに気づかないふりをして、親父がスカートを洗濯物の山のいちばん上の、血の付いたブラウスの上へと放り投げると、
おかみさんはまたちょっとだけ、ほっとした表情を見せた。

「パンストはどうしようもねえな」
おかみさんの太い脚にはあちこち、噛み痕が浮いていて。
肌色のパンストは、見る影もないほどびりびりに破けていた。
ストッキングを脱がす手間も惜しんで、女の脚を噛みつづけたらしい吸血鬼は、ほくそ笑みながら口許を撫でていた。
「脱げ。みっともねぇから」
親父にいわれるままに、おかみさんはパンストを脱ぎ捨てると。
男はちょっとだけもの欲しげな色をよぎらせて。
すぐに気づいた親父は、女房にあごをしゃくって。
女房は、ほれ、と言うようにして、指先でつまんだパンストを、汚いものでも投げ捨てるように、男のほうへと放り投げた。
ふやけたパンストがふわりと宙を舞って、男の掌に掴み取られると。
「ナイスキャッチ」
親父がからかうように、おどけた声をあげた。
男は照れ笑いを返しながら、おかみさんのパンストをむぞうさにポケットに突っ込むと。
ハンケチはいつでもいいよ、と言い置いて、がらりと店のガラス戸を引いた。

くすんだ街の風景に埋没するように、男の陰が消えると。
ブラとパンティだけになった女房は、さすがに肌寒そうにしていて。
ふたたびアイロン台へとやろうとした目が、もう弱っていた。
―――無理すんねぇ。
親父は軽く舌打ちをすると、よろけかけた女房を抱き支えて、
そのまま引きずるように、奥の部屋へと連れ込んだ。
ほんの休憩のときに座り込むその畳部屋は、引き戸を閉められることもなく。
脚だけ土間におりたおかみさんの太っちょな脚だけがはみ出ていて。
しばらくのあいだ、じたばたと居心地悪そうに、白い太ももを上下させていた。

裸電球の照らす、殺風景な作業場のなか。
客足はぱったりと、途絶えていた。

寛容な年輩婦人と、飢えた二人組

2012年03月12日(Mon) 07:57:21

せっかくいらしたのに。
老婦人は自宅に居合わせたのが自分ひとりということに、ひどく申し訳なさそうな顔をした。
三十代の奥さんとその娘の生き血を吸うのを目当てに、訪れたわたしたち。
嫁と孫の代わりに、わたしでよければ身代わりになりますが、と言いさした老婦人は。
隣家に住まう娘とその息子とを、呼び寄せてくれた。

なにもかも知っている娘は、母親譲りの瓜実顔。
伏し目がちにあいさつの目くばせを送ってくるところも、母親と生き写しだった。
一人ずつ、お相手しなければね。
息子を促すと、自分のほうから客間のたたみの上に、白っぽいスーツ姿を仰向けにしていった。

彼の相手を、隣家の奥さんが。
わたしの相手は、息子のほうだった。
半ズボンの下、真っ白なハイソックスを横切る黄色と黒のラインが、鮮やかに目に灼きついた。
見ると、すでにかたわらで、相棒殿は若奥さんを相手に痴態に耽りはじめている。
しょうがないなぁ、母さんも。
近くの中学に通っているという息子は、ほろ苦く笑いながら、それでもためらいなく母親の傍らに寝そべって、わたしを促した。
飢えた唇を吸いつけた、ふくらはぎの上。
厚手のナイロンのしなやかな舌触りに、唾液がはしたないほど漏れてきた。

仕上げは、この住まいの女あるじだった。
黒のワンピース姿の老婦人を、二人がかりで抑えつけて。
わたしは首すじ、相棒氏は黒のストッキングの脚だった。
たしか、わたしの妻のときも―――
相棒氏はミニのスーツの裾をたくし上げて、妻の太ももにストッキングの裂け目を拡げていったのだ。

老婦人がふたりがかりの凌辱を受け入れている傍らで。
その娘は首すじの傷をハンカチで拭い、唾液と精液に濡れたパンストを脱ぎ捨てて、それをなぜか息子に与えて、
用意の穿き替えを、けだるそうに脚に通していって。
息子は息子で、受け取った母親のパンストに、軽く口づけをすると。
だらしなくずり落ちた自分のハイソックスを、やはりけだるそうに、引き伸ばしてゆく。

妻子を迎えにきた隣家のご主人が、ワイシャツをバラ色に濡らしながら。
息子とふたり、へらへら笑いこけて、奥さんが犯されてゆくのを愉しんでいる。

帰宅してきた母娘は、玄関の敷居をまたぐまえに、わたしたちの熱い抱擁を受け止める羽目になって。
若奥さんは、わたしが。
お嬢さんは、相棒氏が。
相手が貧血を起こすほどに、血を吸い取っていた。

先週、わたしの家で行われたばかりの儀式―――
相棒氏のことを慕うようになった妻は、わたしの留守中娘まで逢せるようになっていた。
今夜はどこの吸血鬼が・・・わたしの留守宅に訪いを入れているのだろうか?
そして相棒氏に連れられたわたしは・・・どこのお宅で喉の渇きを癒すのだろうか?
案外それは、貴男のお宅かもしれませんね・・・

共有し合う関係。

2012年01月19日(Thu) 08:15:02

わたしに組み敷かれて今夜、、
よそ行きのスーツを着くずれさせているのは、親友の妻。
夕べの真夜中には、弟の嫁が。
わたしのうえにまたがって、白い目をしてひぃひぃと息はずませていたし。
そのまえの番には、その妹が。
制服姿のまま、処女を散らしていった。

叔父に堕とされて、とうとう輪姦まで受け入れた妻。
それを目の当たりにするはめになった夫は、
こうして、分け前にあずかっている。
あなたも、よかったじゃないの。
天真爛漫に笑う妻は、今夜も朝帰りをするのだろう。

よそ行きのスーツのすその下。
はでに伝線したストッキングに欲情したわたしは、
出勤前に熱いまぐわいをはたすのだろう。
”相互扶助”とは、よくいったもの。
淫らなものを共有し合う関係の、熱く奥の深い懐のなか。
表向きの平穏な日常が、かろうじて成り立っていた。

ついでに。。

2011年10月24日(Mon) 07:57:54

お嬢さんの血を吸ったら美味しかったので、奥さんの血も吸わせて下さい。
ついでに、貴男のもね♪
小悪魔みたいに言い寄って来た吸血鬼は、男にしては妖しすぎ、女にしては力が強すぎた。

あー、美味かった♪
やっと放してくれたとき。
わたしの体内には、ほとんど血液が残っていなかった。
それくらい味わってもらえると、本望だね・・・
すっかり洗脳されてしまって。そんなことまで呟いてしまって。
でもいざ女房が襲われているときには、一人前に嫉妬していた。
あいつ。俺のときよりも時間かけて愉しんじゃって♪って。

すまないね。
ほんとうに喉が渇いていたのだ。
ふだんはあんな、失礼な迫りかたはしないんだ。
やつは言い訳がましくそう言って。
よかったよ~。だれも死ななくて・・・
女房や妻も、口をそろえてそういった。
ほんとうは。「よかったよ~」で黙るつもりだったのに。

献血よ。献血・・・
言い訳上手になった女たちは、そういってわたしを納得させて。
色とりどりのストッキングで足許を艶っぽく装って、出かけていく。
やつが好んで脚に咬みつくと知りながら。
そんなふうに口を尖らせているわたしにしても。。。
彼女たちが出かけた後、尾行するようにして家を出る。
足許を、紳士用のストッキング地の長靴下で染めながら・・・

家から出ても 戻っても。

2011年10月14日(Fri) 07:34:02

ふらふらと、家から出て来てしまっていた。
真っ昼間、情夫を迎えるという妻といっしょに、どうして居続けることができるだろうか?
なにも知らない娘は、学校に行ってしまっていた。

つい足を向けてしまったのは。
いっしょにこの街に赴任してきた上司の家。
上司は気軽に、迎えてくれた。
お茶でも・・・と思ったけど。あいにく家内が出かけていてね。
いまはす向かいのご隠居のところに、お嫁に行っているんだよ。
ついそこまで買い物に行っている。そういう口調だったが。
お嫁に行く。
それがこの街でどういうことを意味しているのか、鈍感なわたしでも容易に察することができる。
社内でも指折りの才媛で、在籍中には社長秘書まで勤めた女(ひと)が。
田舎のごま塩親父に迫られて、ブラウス姿を乱していく・・・そんな有様を想像して、
つい、ごくりと唾を呑み込むと。
こちらの雰囲気を察したように。
きみの奥さんは、どうしているの。
上司は二の矢を放ってきた。

エエ、じつは・・・
妻が迎えるという相手の男を紹介したのは、ほかでもない上司と、上司の夫人をいま独り占めにしているごま塩親父だった。
みなまで語らせずに上司は手で制しておいて、
それはうまくやったね。おめでとう。
見当違いな挨拶に、わたしが目を白黒させていると。

そういうことなら、早く帰っておあげなさい。
いまごろ奥さん、庭先で犯されているんだろう?
いっしょにいてあげない手はないよ。
奥さんもきっと、心細いだろうから。
早く帰っておあげ。
いまごろなら庭土にもみじが散っていて、
奥さんのあで姿も、さぞかし見映えがするんじゃないかな?

家に戻ると妻はもう、庭先からあがってしまっていて。
泥だらけになったワンピースが、洗濯機のへりにひっかけられていて。
ぬかるみに濡れたすそが、こちら側に覗いていた。

あらー、残念ね。もう終わっちゃったわよ。
そういう妻は、なにごともなかったように髪をセットし直していて。
水玉もようのブラウスに、紺のスカート、肌色のストッキング。
すぐにもお出かけに行きそうな装いだった。
お出かけに行く・・・ですって?そうじゃないわよ。もう一回「イク」んですから。
思わせぶりに目線をそらした妻が、甘えるように見あげたのは。
さっきまで庭先で妻を汚していた男―――

お邪魔していますよ。
奥さんお借りして、本当にすいません。
ひと目惚れしちゃいましてね・・・気分が落ち着くまでのあいだ、どうかおおめに見て下さい。
そうそう。ボクね。
奥さんを独り占めにしちゃうと、つい中に出しちゃうんですよ。(^^ゞ
かさねがさね、ごめんなさい。

そうよ。たっぷり中に出されちゃったわ。
あなたがいらっしゃらないからよ。

妻も恨めしそうに、口を尖らせていた。

もう帰るのか。そうとばかり思っていたら。
アラ。どうしてわたくしが着替えたのか、お察しにならなくて?
妻は親しみのこもった意地悪そうな目で、わたしを見る。
お見えになったお客さまには、二着汚れさせてあげるのよ。
クリーニングに出したばかりの紺のスカートのすそを、妻はピンと引き伸ばした。
つい一週間ほどまえ。このスカートを穿いたまま。
泣きじゃくりながら凌辱されていったのは、いったいどこのだれだったのだろう?

すみません。痛くなかったですか?
行為の最中、ぐるぐる巻きに縛られていたわたしを、荒縄から解放してくれるとき。
男はいたわりたっぷりに、ねぎらってくれた。
ね。このひと、やることは粗っぽいけど、悪気はないのよ。
彼に対する妻の弁護も、もっともなように思えてきた。
ぐるぐる巻きにされたわたしの、目のまえで。
男はいとおしげに妻を掻き抱き、スカートの奥をいやというほど、衝いていった。

すみません。
男は頭を掻き掻き、わびを言う。

さっきは独り占めにしているとつい中に出しちゃう、なんて申しあげましたが。
ご主人に視られているとやっぱり、中に出しちゃうくせがあるんです。

子供が生まれると、いいかもね。
優香にも妹か弟ができると、愉しいだろうから。

妻もしれっと、そういった。
娘の優香は中学にあがるとき、彼に入学祝をしてもらう約束になっている。
男は妻の言い草を否定も肯定もせずに、ただ照れくさそうに笑っていた。
彼とまともに交える目線にドキドキしながらも、わたしも照れくさそうに笑っていた。

お得意様。

2011年10月02日(Sun) 08:26:10

妻の生き血を吸いに来る、その五十がらみの男は。
いつもひっそりと、玄関先に佇んで。
わたしに小声で、「奥さんいますか」と訊ねるのだった。
ああ、家内に御用ですか。どうぞ中へお入りください。
わたしはつとめておうように振舞って、男を自宅に引き入れてやる。
招かれないと、侵入することはできないんですよ。
そう教えてくれたのは、だれだったか。
けれどもいちど招かれた以上我が家にいくらでも侵入する権利を勝ち獲たはずのこの男は、それでもわたしに、訪問の許可を求めて来る。
わずらわしかったのは、事実だった。
そもそも妻の生き血を吸いに来る訪問者を受け入れなければならないという異常な習慣に、波立つ気持ちを抑えるのがひととおりでなかった。
けれどもそうした想いは、さいしょのうちのことだけだった。
無抵抗に唯々諾々と仰向けになる妻にのしかかり、男がチュウチュウと音を立てて妻の生き血を吸い取る光景は、なぜかわたしを夢中にさせてしまったのだから。

奥さんいますか。
奥さんいますか。
男は毎晩のように、訪ねて来る。
吸い取る血液は、さほどの量ではない。
だから妻も、よほど身体の調子がすぐれないとき以外は、つとめて男の相手をするのだった。
うちの家内、すっかりごひいきですね。
あるとき揶揄をこめて、男にそういうと。
ほかのやつに襲われちまうのは・・・がまんならねえ。
そのときだけは、兇暴な光が目に宿っていた。
そこまで家内にご執心?
でもわたしはいつも、家内を抱いているんですよ。
つい、挑発するようなことを口にしてしまったことを、半ば後悔したけれど。
男はむしろ当然というように。
夫が妻を抱くのに、なんの不都合があるものか。
無理をいっているのはこっちのほうなんだから、だんなさんは気を遣わなくてもいいんだよ。
男はめずらしく、ながい言葉を口にした。
そうしてその晩も、着飾った妻のスーツ姿にのしかかって、生き血をチュウチュウと吸い取っていった。

夫婦のあいだをへだてようとしない男の言い草に、打ち解けたものを覚えたわたしは。
妻への気持ちをたしかめると。
彼女を口説き落とせたら、想いを遂げるがいいと云ってやった。
数カ月後。
長年連れ添った妻は、わたし以外の男を初めて識るようになっていた。

慈善事業。

2011年09月20日(Tue) 05:07:51

1.本人。

坊や、すまねえな。
ワタル少年を抑えつけたその無精ひげの男は、ひっそりと呟いた。
かさかさに乾いた唇にみあったような、絶え入るような声色だった。
少年はびっくりしたように男を見つめ、そして、思い切ったように身体の力を抜いた。
いいよ。ボクを見逃してもきっと、だれかが襲われちゃうんだろう?
男は目の色をかえて、少年の首すじに食いついた。
キュッ、キュッ・・・と、異様な音を立てて、血を吸い取ってゆく。
引きつったようにピンと伸ばした半ズボンの太ももが、だらりと力を喪った。
すまねえ。ほんとにすまねえ。
男は頭を抱えながら、それでも吸血をやめない。
濃紺の半ズボンとおなじ色のハイソックスに挟まれて、いっそう白い太ももにごくりと生唾を呑み込むと。
やおら、かぶりついていったのだった。

うー、貧血だよ。。。
すまない、すまないと言われるばかりにほさだれた自分は、やっぱりお人好しだったのか?
ちらりとよぎったそのい思いを、いともあっさりと吹っ切ると。
少年は猫背になりかかった背すじをしゃんと伸ばして、呟いた。
そうだ、みんなの血も小父さんたちに吸わせてあげよう。
穴があいてずり落ちた紺のハイソックスを、ひざ下まできっちりと引き伸ばすと。
歩きかたまでが、さっそうとしてくる。
それでも時おりは足取りをとめて、
引き伸ばしたハイソックスが、ふたつ並んだ穴ぼこをいっそう目だたせているのを気にしているようだったけれど。


2.両親。

あのひとたち、わるい人たちじゃないよ。
ワタルは両親に訴えた。
だってボクの血を吸うとき、『坊や、すまねえな』って。あやまってくれたんだもの。
首すじにつけられたばかりの痕が、まだ吸い残した血をあやしてなまなましい。

そうは言っても・・・ねぇ。
父親のタクミは、妻の恵理子をかえりみる。
そうよ・・・ねえ。
母親の恵理子も、さすがに気が乗らないようだった。
けれどもさりげなく洩らされたひと言は、爆弾のような効果を夫にもたらした。

あたしが吸血鬼に襲われちゃうの、パパ我慢できないでしょう?

・・・・・・。

・・・・・・。

夫も息子も、だまって恵理子を見つめている。
うちに呼ぼうよ。
ふたりの男はほとんど同時に、おなじ声をあげていた。

慈善事業だもの・・・ね。
恵理子は自分で自分をだますような口調で、夫と息子に応じている。


3.運動部のお兄さんたち

そういうわけなんだ。だからお兄さんたちも、慈善事業に協力してくれないか?
ワタルのしんけんな目つきに、ユニフォーム姿のお兄さんたちは、
意外なくらいまじめに話を聞いてくれた。

恥ずかしくって、言えなかったんだけどさ。
いちばんのっぽな部員が、ひっそりと呟いた。

じつはオレんとこ、両親が吸われているんだよね。

・・・・・・。

・・・・・・。

同級生も、下級生部員も、口を開いたタカシ青年のことをいちように見つめていた。
奇異な目つきをするものもいたが、共感のまなざしも意外に多かった。

うちもさ、お袋のこと親父がエスコートしてさ、お袋の血を吸わせているんだ。
あっ、俺んとこもいっしょ。
こないだ・・・彼女紹介しちゃった。
三人がほとんど同時に、のっぽ部員に同意の意を示すと。
さすがは団結の強い運動部員たちのこと、あとは、われもわれも・・・だった。

きみ、ハイソックスに穴があいているね?
秀才らしい部員が黒ぶちめがねを光らせて、ワタルの足許をみた。
あ、ほんとだ。
だれかが指し示す指先で、濃紺のハイソックスの生地にふたつ、咬み痕が綺麗に並んでいた。
陽の光を受けてツヤツヤと輝く太めのリブのそこだけが、かすかにねじ曲がっている。

おれ・・・このストッキング汚してもいい。
短パンの下に履いた白地に青のラインの入ったスポーツ用ストッキングの脚をちょっとだけもちあげて、誰かが言うと。
じゃ、行こうぜ。
ユニフォームの肩を並べて、足取りをそろえて、整然とランニングしていった。
いつものルートをずうっとそれて。


4.両親の寝室。

ママはよそ行きの、スーツ姿。
いつも父母会に着てくる、うす茶色のジャケット。
胸もとについたボウタイがゆらゆら揺れる、白のブラウス。
ジャケットとおなじ色の、お尻のラインがくっきりと浮かぶタイトスカート。
白い脛がじんわりと透ける、肌色のストッキング。

嫌っ、嫌ッ。近寄らないでくださいッ!
怯えた声で、部屋じゅう逃げ惑って。
壁ぎわに、追い詰められて。
両肩をつかまえられて。
アァーッ!
ママは悲痛に、絶叫した。

必死にかぶりを振るのを、片方の頬を抑えて動きを封じると。
がぶり・・・!
キュウッ、キュウッ・・・・キュウッ、キュウッ・・・
あ。ボクが血を吸い取られたときと、おなじ音がする。
なんだか、ワクワクしちゃうな。理屈を抜きに。

抱きすくめられた背中ごし、うす茶色のジャケットが脱げ落ちて。
ストッキングを履いた足許の畳に、ぱさりと落ちる。
女のひとの着ている服が脱げていくのって、どうしうてこんなにドキドキするんだろう?
あっ、ブラウスにどろ~りと、赤黒いしたたりが、帯みたいに垂れてきたっ。
おいしそう・・・っ

あー、厭っ、厭っ、もうお放しになってくださいッ!
ママはまだ、抵抗を諦めていない。
いちど畳に尻もちをついて、吸血鬼の小父さんの腕を振りほどくと、
転げ回るようにして、逃げようとする。
はだけるブラウス。
振り乱す髪。
ミニスカートみたいにたくし上がって、太ももがまる見えになったうす茶色のタイトスカート。

太ももに圧しつけられた小父さんの唇が、ヒルみたいにヌメヌメと這いまわる。
そのたびに、肌色のストッキングはねじ曲がり、くしゃくしゃにしわを寄せ、
ヌラヌラ光るよだれを、たっぷりしみ込まされてゆく。
レイプみたいだ。
隣でパパが、呟いた。
レイプって。なに・・・?
それって、女のひとにとってはいいことなの・・・?
パパの唇から洩れると、なんだかとてもいいことみたいに聞こえちゃう。

アア~ッ!イヤーッ!
ママが悲痛に叫んだとき。
太ももに吸いつけられた小父さんの唇に、いっそう力がこめられて。
肌色のストッキングが、パチパチとはじけていった。
女のひとって、服が破けるとおとなしくなるみたい。
そういえばきのう小父さんに紹介した、隣の佳代お姉ちゃんも。
制服のブラウス破かれたとたん、すくみあがっちゃったっけ。
まる見えになったブラジャーの吊り紐に、ボクはなんだかドキドキしちゃった。

ひいっ・・・ひいっ・・・あうううううっ・・・
ブラウスをはぎ取られて。
ブラジャーは自分から、はぎ取って。
上半身裸になったママは、四つん這いの姿勢になって。
おっぱいをぷりんぷりんと揺らしながら。
まだ腰に巻いているうす茶色のタイトスカートの奥まで、
小父さんに腰をすりつけられちゃっていて。
時々引き抜かれる小父さんのおち○ん○ん、ひどく赤黒くて、逆立っていた。

ほんとはね。
ママにああいうことをさせちゃうことは、ないんだよ。
パパはちょっと情けなさそうな顔をして、首すじの痕を撫でていた。
ジンジンと響くんだよね。ボクわかるよ。
ボクの首すじやふくらはぎも、さっきからキモチよく疼いているから。
ふつうはさせないことをさせちゃうのって、
パパが小父さんと仲良くなったから、特別に認めてあげてるってことだよね?
パパを見あげようとした頭を、抑えつけるように。
大きな掌が、ボクの頭に乗っかって、
乱暴にぶきっちょに、撫でていた。
ワタルは賢いね。いいことを言うな。
パパ、痛いよ。痛いってば!


5.下校途中のお姉さん。

おじさんたちがね、ショジョの血を下さいって頼んでくれってボクに言うんだ。
ブレザーにチェック柄のプリーツスカートのお姉さんたちは。
みんな困ったような顔をして、お互い顔を見合わせていた。

あいつ、説得しかねているのかな。
でもきっと、みんなあいつの言うこと聞いちゃうんだぜ?
たぶん・・・な。
物陰からようすを窺っているのは、あのときの運動部員たち。
だれもがお揃いの白のスポーツ用ストッキングに、赤黒いシミを滲ませていた。

行こ。
行こ。
かすかに呼び交わす声が、こっちまで聞こえてくる。
あー、やっぱり。
少し落胆したように声をあげたのは、あののっぽの部員だった。
あのなかに理恵も、いるんだぞ・・・
口にしたのは、彼女の名前だった。
真由まで行くんだ。
べつのやつは、妹の名前を呟いていた。

まだ汚されていない、白のハイソックスの脛を並べて。
女子学生たちはいっせいに道をかえて、
彼氏や兄たちがたどった、あの邸へと脚を向ける。
バイバ~イッ!
澄み渡った青空の下。
お姉さんたちを見送るワタル少年の子供らしい声の響きに、
青年たちはがっくりきたような顔をし、情けなさそうに顔を見合わせあって・・・
さいごにエヘヘ・・・と、照れ笑いを浮かべあっている。


6.

彼女ができたら、紹介しちゃうのか?
咎めるような口調の父親に。
ワタル少年は、呟くようにこたえている。
もう、知らないうちに紹介しちゃっているのかも。
いつもの舌足らずな稚ない声とは打って変わった、別人のように大人びた声で。

べそを掻き掻き吸血に応じていった、隣の佳代お姉ちゃんのセーラー服姿。
そろえた脚に順ぐりに、真っ白なハイソックスにバラ色のシミをつけられていった制服姿の乙女たち。

卒業式の謝恩会の出し物に鬼ごっこを提案して。
色とりどりのスカートをひるがえして逃げまわった同級生たちも、
小父さんやその仲間の男たちに、つぎつぎとつかまえられて。
ブラウスを汚されたりハイソックスをくしゃくしゃにずり降ろされたりされていった。

ママのところに習いごとに来ている、勤め帰りのお姉さんまで。
ねずみ色のストッキングのふくらはぎをじゅうたんの上に抑えつけられて、噛まれちゃっていて。
いちど噛ませるとあとはもう、なんどもなんども噛ませちゃって。
上品な感じのするねずみ色のストッキングを、それはハデハデに、噛み破らせちゃっていた。

あのなかのだれかが、ボクの彼女になるのかな。
それとも、吸血鬼を識らない街で、恋人を見つけて。
なにも知らない彼女を、小父さんに紹介しちゃうのかな。
どちらの想像も、ワタル少年にはくすぐったい疼きをわき起こすのだった。


あとがき
長い・・・長いだけだ・・・www
珍しく一時間ちかく、かかっちゃったよ。。。


追記
いちどまちがって、本文描かないうちにあっぷしたのが、5:07。
いま描きあがったのが、6:01。
やっぱり一時間だね。 笑
でも、描いている間愉しかったから、まあいいか。(^^)

使い古されていた妻。

2011年06月20日(Mon) 05:11:25

周囲の男たちの手で、使い古されていった妻。
色あせた肌と引き換えに、じつに円満なご近所づきあいがそこにあった。
きょうも彼女は、ひっそりと笑いながら。
隣家の年配男性のため装ったスーツの下。
わたしを裏切るために、肌色のストッキングを太ももに引きあげていく。

吸血鬼、おっさんにからまれる。

2011年05月08日(Sun) 07:51:44

吸血鬼に襲われる人間は、支配されたり怯えたりするものなのに。
どういうわけか、あべこべに。
人間に叱りつけられちゃっている吸血鬼を見るはめになった。
街の居酒屋で知り合ったその吸血鬼は、
夜の雑踏の中では目だち過ぎる、黒いマントを羽織っていて。
四十がらみのおっさんといっしょに、酒を飲んでいた。

さすがに黒マントにいきなり声をかけるのはためらわれたけれど、
わたしと隣り合わせになっていたのは、おっさんのほうだった。
彼がちょっと席をはずした合い間に、向こうの方から声かけてきた。
知っているか?あいつ本物の吸血鬼なんだぜ?って。
ああ、知っていますよ。
この街に吸血鬼が棲まっていることは。
街の住人なら、だれでもしっている。
そして、吸血鬼と住人たちとが、じつはかなり仲良く暮らしていることも。

だいたいねぇ、あんたらけしからんよ。
酔っ払ってくると、もう人間も吸血鬼も、あったものじゃない。
からんでいるのは、おっさんのほうだった。
結婚前の娘はまだわかるよ?ちゃんと責任取ればいい話なんだから。
あんたら人妻にまで、手を出すだろう?
処女の生き血だけじゃ、満足できないのかねー。まったく。
どちらかというと吸血鬼のほうが、旗色が悪そうだ。
ま 日ごろ人の生き血を吸って生きている連中だから、負い目があるのは仕方がないか。

おっさんの相手をしている吸血鬼も、おっさんとほぼ同年配のようだった。
吸血鬼に齢があるのかどうか・・・よくわからないけれど。
がらっぱちなおっさんとは不釣り合いな初老の紳士で、おっさんの剣幕に困惑したようで、
それでも穏やかな笑みを絶やさないのは、基本的にふたりが親しい間柄だからなのだろう。
人の血を吸うことで、人を支配しようとするのが、映画で見た吸血鬼。
でもこの老紳士のばあい、それを負い目と感じるような人の好さが、はしばしに観て取れた。
だからこそおっさんも、かえって歯に衣着せぬ言い方をするのだろう。
このひと、「人妻の生き血を吸うとはけしからん」っていいながら。
その「人妻」って、どうやらじぶんの奥さんのことみたいだから。

んで、明日は学校かね?
ああ・・・相手が、つごうがつかないのでね。。。
なじみの女性が、身体の調子が悪かったり、なにか抜けられない用事をかかえていたりすると。
どうやら彼らは礼儀正しくも、遠慮するらしい。
たまには夫婦の夜を・・・みたいな言い分でも、夫婦のほうを優先する手合いもいるらしい。
それでよく滅ぼされなかったね といいたいくらいに人の好いのが多いらしいけれど。
だからこそ、人間社会にとけ込んでもいるのだろう。
で、学校でなにするんだね?
たたみかけるような質問攻めは、どうやらわたしにも話を聞かせたいという魂胆のようだった。
・・・相手にあぶれた吸血鬼はね。あんたもよく知っているはずなんだが。
いちいち口にすることを、ちょっと厭うような顔をしながら。
こいつ、わざといわせたいんだな?と、どうやら相手の気分を読みとったらしい黒衣の彼は。
座り直して、すこし前かがみになって。いかにもそれらしい態度を作りながら。語るのだった。

相手にあぶれた吸血鬼はね。
あの女学校に入り込むんだ。もちろん生徒のいる時間にね。
そこでは処女の生き血を、たっぷり愉しめることになっているからね。
毎日お当番と称する女子生徒たちが、奥まった校舎にある、開かずの教室に呼び集められて。
制服姿のまま、乙女たちはわれとわが身をめぐる血潮を、飢えた唇にゆだねるのさ。
このあいだは、処女がほとんどいなくてね。閉口したよ。
だから明日は、校長が。
担任の女教師を介して、処女ばかりを択んで、集めてくれることになっているんだ。

ああ、芝居っ気たっぷりな、その態度。
おっさんの反応に火をつけたのは、いうまでもない。
こーのー!娘たちをたぶらかしおって!!
時代遅れのシルクハットのうえから、げんこつでぼかん!と、なぐられてしまっていた。
けったくそ悪い。処女じゃないの、どうのって。半分以上はお前らが穴をあけているんじゃないか。
結納をすませた娘を、花婿になる男子に連れて来させて。
邸の奥で、晴れ着姿を押し倒しているって、あれほんとうか?
つくづくお前ら、許せんなー。

さいごに頭のうえから、お酒をふりかけられて。
ほうほうのていで、酒場から姿を消した吸血鬼。
あー、すっきりした。
おっさんはさいごの一杯を、ゆうゆうと注文する。
今夜はおれのおごりだからな。感謝しろよな。
恩着がましくうそぶくあたりは、おっさんも案外と、お人が好いようだ。
じぶんの女房を喰っちゃっている男に、酒までおごっちゃうんだから。
騒々しく、荒れちまって、すいませんね。若先生。
あした女学校に行って、生徒集めて血を吸うんだって言っていたでしょう?あいつ。
じつはね。
明日の当番の生徒のなかに、うちの娘がいるんですヨ。
たまにはちょっと、言ってやらなくちゃね。
おっさんはいかにもせいせいした、って、照れ笑いを浮かべている。

なに、うちの女房このごろ調子わるくてね。
だれかさんに、かわいがられ過ぎちまって。
ま・・・来るのがおさまりゃ、どうってことなくなるんですけどね。
うちの娘は、高校三年でね。母親似なんですよ。
お袋の血を吸えないときにはいつも、女学校通いしているらしいんですよ。
ま、本気でうちの娘に惚れているらしいから。
いずれうちの婿に迎えてやるつもりでは、いるんですがねぇ。
娘さんの話になると。ちょっとお酒に、涙が交じってきたようだ。

独りで黙っているのは、このさいフェアじゃないな。。。
そう思ったわたし、思い切って、口をひらいていた。
そうですか。わたしの彼女あの学校に勤めているんですよ。
人のはなしになると、おっさんはすこし、活気を取り戻す。
先生なんですかー。そいつはインテリですね。
あっ、もしかして、B組の担任?なんてこた、ないですね?えっ、そうなんですか。奇遇だなぁ。
そんなありきたりの会話のなかで、お互いの立場を確かめあって。
そうなんですか、先生も処女の生き血を、吸われちまうんですね。
生徒の手引きするだけじゃ、フェアじゃないですもんね。
お手本を見せているんですねぇ・・・
そのうち晴れ着を着て、ふたりで邸まで来いって誘われませんか?
くれぐれも、誘いに乗っちゃ、いけませんよぉ。

ああ、今夜は残る酒になりそうだ。


あとがき
>明日の当番の生徒のなかに、うちの娘がいるんですヨ。
>わたしの彼女あの学校に勤めているんですよ。
この二行描きたくて、なん十行も浪費を・・・ ^^;
いつものことですが。 (-_-;)

このごろしばらく日をおいて描くことが多いんですが、
やっぱり毎日描いていたときのほうが、さらさらと描けるものですねぇ。
以上、不出来なお話のイイワケです。 (^^ゞ

あたしの生き血で、よかったら・・・ ~半吸血鬼の日常~

2011年05月02日(Mon) 12:09:46

おーじさーんっ!
はるかかなたの路上から、あけっぴろげに明るく大きな声が、
シンの耳を突き刺した。
黒マントをはおった肩をびくっとすくめ、シンはい眠りから覚めたような情けない顔をして、自分の娘と同じくらいの年ごろの少女と目線を合わせた。
濃紺の制服に、色白の笑顔が映えている。
なまめましさよりも稚なさ未熟さのほうが先に立つのは、年ごろからしてもしかたのないところ。
そんな少女が、おさげの髪を傾げながら、周囲の人どおりに声ひそめることもなく、こういった。
おじさん、喉渇いているんでしょ?
図星だった。
顔いろみれば、わかるんだからー。
どしん!と背中をどやされて、シンはみっともなく飛び上がった。

家族全員が、吸血鬼の毒牙にかかって。
死という最悪の状況は免れたものの、定期的に血を欲する身体になってしまっていた。
そういうときに紹介されたのが、菜々美だった。
手を貸してくれたのは、自分や妻の生き血を吸い取った吸血鬼。
せめてもの罪ほろぼしだという。
いい加減なことをするな!挙げようとした怒声を、すぐに呑み込む羽目になった。
あらかじめ言い含められていたらしい少女が、素直に仰のけたおとがいに。
われしらず、くいついてしまっていたから。
善意の献血だとだけ、親から聞かされているらしい少女は、
それ以来シンの専属として、供血行為をつづけてくれているのだった。

さすがにここじゃあ・・・
あたりをはばかって、シンがもじもじする。
だって。ほかの人襲っちゃうほうが、よほどマズくない?
菜々美はどこまでもまっすぐな目で、クラスメイトの父親のことを見あげている。
病院に着くまでに発作が起こるのを心配する家族のような目で。
わかった。ご厚意に甘えるよ。
大人としてのていさいを守ろうとしながらも、お礼の言葉を口にするのが精いっぱいのところだった。
電信柱の陰に隠れるように、少女の制服姿を壁に抑えつけると。
ムズムズとした牙の疼きをもう我慢し切れなくなって、シンはがばっ!と、口を開いた。
きゃっ。
とっさに目をそむけた少女のうなじに、鋭利な牙が二本、狙いあやまたず突き立った。
ずぶずぶと冒す皮膚の柔らかさを心地よく感じる己が、疎ましい―――
けれどもわずかばかり残った理性のかけらをあざ笑うように、
シンは菜々美の血を、ほてった喉に流し込むようにむさぼっていった。

もう~。
菜々美が口を尖らせるのも、無理はない。
白のブラウスの襟首は赤黒く汚れ、勢い余って噛みついたふくらはぎは、
ずり落ちかけた真っ白なハイソックスが、やはりバラ色の飛沫を散らしている。
派手派手~♪
足許に散った血のりに動じるふうもなく、少女は無邪気に脚をピンと伸ばすと、
シンおじさまのまえ、見せびらかすようにぶきっちょにくねらせた。
悪い・・・目の毒・・・
心のなかの想いが、思わず口から洩れたらしい。
何よ~~~。ひとがせっかく献血してあげたのにぃ。
少女はむくれて、おじさまのお尻を革の鞄でぶっ飛ばしていた。

赤黒いシミも、そのままに。
たるんだハイソックスを、ひざ下まできっちりと引き伸ばす。
あたし一人じゃ、足りなさそうね。きょうは母さん家にいるから、逢わせてあげる♪
心持蒼ざめた頬をものとのせずに、少女は先に立って、大またに歩みを進めていった。
真っ赤に濡れたハイソックスを履いたまま、自分と並んで歩みを進める少女を横目に、
シンは一瞬だれかを二重写しにしたけれど。
そんなことはおくびにも出さないで、彼女の家のインターホンを鳴らしていた。
はぁい。
落ち着いた低い声色から伝わってくる、熟女の生気―――
はしたなくもまた、兇暴な本能がゆらめくのを。
シンはどうすることもできないでいる。

あら、いらっしゃい。
彼女の母親は奥ゆかしげに、優雅な会釈を送ってきた。
いつもそうしているように、よそ行きの洋装を、まるで和服のようにしっとりと着こなしている。
きょうあたり、お見えになると思っていましたの。
淡いグリーンの落ち着いた色調のスーツのすその下。
肌色のストッキングに包まれた脛の、豊かな肉づきが。
さっきから彼のことを、ジンジンと刺激している。
娘が座をはずしたのは、服を着替えに行ったからだろう。
また制服汚されちゃったー。って。ムクレながら足早に、階段を登っていった。
着替えたらそっち行くからねー。
しょうしょう無神経なくらい張りのある声を耳にしながら、
シンは菜々美の母親を後ろから羽交い絞めにして、首すじに牙を突き立てている。

いかが・・・ですかぁ?
つねに淑やかな菜々美の母は、こういうときにでも語調を崩そうとしない。
首すじからたっぷりと血液を吸い出され、白皙の頬を萎えたように透きとおらせてしまっているものの。
足許ににじり寄るいけない唇の誘惑をまえに、気丈にも脚を差し伸ばして、応えてゆく。
真新しい肌色のストッキングが、男の不埒なよだれに染みた。
娘が…降りてきますわ。
懸命に男をけん制しながらも。
娘の客人が、どうしてもさいごの一線を越えないとおさまらないらしいと察しをつけると、
じぶんからスカートのなかに手を入れて、ショーツをひざまでおろしていった。
娘が階上から降りて来ないうちに、済ませてしまおうという配慮だった。
彼女が冒されている応接間に隣り合わせた夫の書斎からは、コトリとも音がしない。
きっといつものように、見て見ぬふりをきめこんでいるのだろう。
貞操を汚されることを婦人の不名誉と心得ている彼女にとって、
夫の心遣いにむしろ、ほっとするものをおぼえていた。
このひとだって、自分の妻を侵入者に犯される夫の気持ちはよくわかるはず―――
いま、自分を組み敷いている半吸血鬼が、いやらしい肉欲におぼれているだけではないことは、夫人も敏感に察している。

スカートのなかのほてりが、まだ消えない。
けれどもふたたび降りてきた娘に、母親は、いらっしゃい。もう平気なの?あなた若いわね って。
いつもどおりの穏やかな声を投げている。
なにも気づいていないらしい娘は、もうっ。母さんたらすぐ冷やかすんだからっ!って、
ぷんぷんむくれながら、三つ編みに結い直したおさげをゆらゆら揺らしながら、おじさまのほうへと歩みを進める。
娘には、手を出さないでね。生娘の生き血、お望みなんでしょ。
賢明な母親は半吸血鬼にそういって、相手の邪心をたくみに殺いでいる。
ふたりきりの勉強部屋で血を吸わせないのも、おかしな衝動にとりつかれないようにとの配慮だった。

ストッキング穿くと、ちょっとは大人びてみえるのね。
母親は怜悧な冷やかしで、娘の対応をほめている。
だってぇ~。
菜々美もそれ以上は、口にしない。
礼節という言葉が似合いの母が衣装を乱して吸血の相手をして、
真新しいストッキングをいつも、男の唾液にまみれさせてしまうのを見て、
少女も薄々、この献血行為がいわくいいがたいものを含んでいるのを察しているらしい。
口ではあいもかわらず、大サービスなんだからねっ!みどりのお父さんだから、信用しているんだからねっ!
まな娘の名前を出されて一瞬ひるみを覚えたシンだったが、
吸血鬼のおじさん、早く元気になってねっ!
うつ伏せになった少女は、黒のストッキングを履いた脚を無邪気に投げ出ししてくると。
少女がどさりと投げ出した、薄黒のナイロンに染まった脚から目が離せなくなって。
足首を掴まえ、ふくらはぎに唇を吸いつけて、
淡いナイロンをくしゃくしゃに、よじれさせてしまっている。
ああ、いけない。なんていやらしい…
自分の所業を、恥じているのか。少女の足許の風情に対する反応なのか。
こんどは本音を洩らすまい―――
あえぐ男の唇の下。
真新しい薄手のストッキングをびりびりと噛み破りながら。
シンはひたすら、いけない、いやらしい・・・と、反芻をつづけていた。

彼女のハイソックス

2011年04月19日(Tue) 07:12:29

デニムの半ズボンやスカートの下。
ぼくは、ライン入りのハイソックス。
彼女は、ひし形もようのハイソックス。
手をつないで目指すのは、彼の待つ緑の原っぱ。
透き通る青空と、眩しく輝く太陽の下。
昼間だって、平気だよ。きみたちがついていてくれるなら。
喉をからからにした彼は、そういいながら。
腹ばいになったぼくたちの足許に、順ぐりにかがみ込む。
彼女の足許に吸いつけられた唇に、ぼくは嫉妬を覚える。
きみというやつは、こんなにも熱く、彼女のふくらはぎも吸うんだね。
こんなに趣味悪く、彼女のハイソックスも噛み破るんだね
こんなにしつっこく、ぼくたちの若い生き血を、吸い取るんだね。

手をつないで見上げる、星空の下。
夜ならオレに、任せろよ。
彼はえらそうに、そういって。
ぼくは、彼女から借りた、ひし形もようのハイソックス。
彼女は、ぼくから借りた、紺色のハイソックス。
赤黒く濡れたひし形もようを撫でながら。
彼女が彼に制圧されて、組み伏せられて。
ぼくのハイソックスがずるずると、彼女の脛からずり落ちるのを。
胸焦がしながら、盗み見る。
ぼうっとなった理性かげで。
焙られるような焦りをおぼえていた。
目のまえで。
侵されてゆく白い素肌ごし、そそぎ込まれてゆく毒液が。
彼女の理性を淫らに変える。

申し合わせたような、黒のスーツの下。
彼女は、なまめかしく透きとおる、墨色のストッキング。
ぼくも、おなじ色あいの、薄手のハイソックス。
スラックスから覗く、女みたいに透けるぼくの足首を。
彼女はからかうように、くすっと笑う。
並んで仰向けに寝かされた,彼の邸のベッドルーム。
ズボンを脱がされて、女みたいだってからかわれながら。
彼は墨色に透けたぼくのふくらはぎを、
たんねんにくまなく舐めまわしながら、
若い血液を容赦なく、抜き取っていった。
そのほうが・・・きみもかっこがつくだろう?って、からかいながら。
身体じゅうを支配する、脱力感と。
未来の花嫁の純潔を、目のまえで汚されてしまうという屈辱と。
なにやら妖しげに、焔のようにくゆらぐ淫らな予感。
それらがごっちゃになって、ぼくはただドキドキと胸はずませながら。
彼と彼女の逢瀬を、気絶したふりしながら、盗み見る。
迫られた彼女は、あれよあれよという間にスカートをたくし上げられていって。
あのなまめかしいストッキングを、ぼくのハイソックスとおなじ丈までずり降ろされて。
身を揉んで羞じらいながら、彼のものになってゆく。

手をつないで歩いてゆく、彼の待つ草むらで。
ぼくは、とっておきの薄々な黒ストッキング。
彼女は、赤と黒の鮮やかな、しましまもようのハイソックス。
大胆なダイヤ柄に透けるぼくの脛を、そっと見て。
彼女は輝くように、笑っている。
どっちに欲情するかな?彼ったら。
あれ以来、色を深めたようにみえる、彼女の眸。
嫉妬しているのはどうやら、ぼくだけではなかったらしい。
あたしが具合のわるいとき。
あなたはあたしの身代わりに。
あたしの服着て、彼と逢って。
そういう約束に、彼のまえ。指きりげんまんをすると。
じゃ、そろそろはじめようか?鬼ごっこ。
にまにまとイタズラッぽく笑んだ、彼をみて。
きゃあ~っ!吸血鬼だわーっ。血を吸われちゃう~っ。
彼女は大仰に、声張り上げた。
だれ聞き咎めるものもいない、原っぱだった。
彼女のデニムのスカートも。
彼女から借りた、礼装用の黒のスカートも。
等しく、草切れまみれになって。
やっぱりぼくたちには、野っ原が似合うんだね。
息も絶え絶えになるほど、吸われながら。
仰向けになったまま、彼女と手を握り合っている。
おやおや、仲がよろしいのだね?
冷やかす彼に、顔窺われて。
彼女は気丈にも、ジョークで反撃をする。
そうなの。なかがいいの。って。
めくり揚げられたデニムのスカートから覗いた太ももが、
灼きつくほどの陽に映えて。
健康な若さを輝かせながら。
淫らな精液に、まみれていった。