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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

ご近所の弔問先で夫婦ながら亡者に襲われ妻が犯された件

2023年05月19日(Fri) 21:05:45

この街に吸血鬼がいるといううわさは、赴任する前から知っていた。
けれど、実際に足を踏み入れてみると、どこにでもあるようなごくふつうの地方の街だった。

忌中の回覧板がまわってきた。
はす向かいの色町さんというお宅で、ご主人が亡くなったらしい。
回覧板を持ってきたお隣の奥さんは、お通夜にいらっしゃいますよね?と念押しするように俺に言った。
「やっぱりこういうときには、行かなくちゃならないもんなのかなあ――」
俺が言うと女房の華菜は、
「しょうがないじゃない、ご近所づき合いが大切だっていうんだから」
と、相槌を打ってくる。
どちらも、気乗りしないことが見え見えの問答だった。

どうやら吸血鬼にやられたらしい――と、お隣の奥さんは声をひそめて教えてくれた。
ここの吸血鬼は、死ぬほど吸わないはずなんですけどねぇ・・・と、ふしぎそうに首をひねっていた。
ふつう吸血鬼といえば、人の血を吸い尽くして殺してしまうか、自分の仲間にしてしまう。
そんな固定観念を持っていたのだが、どうやらこの街に棲む吸血鬼は、そうではないらしい。
「人の生き血を純粋に愉しんで、舐め味わうんだそうですよ。
 あらいやだ、私ったら!変なこと言っちゃって。忘れてくださいねぇ」
奥さんはどことなく楽しげにそういうと、そそくさと背中を見せて自分の家のほうへと戻っていった。
早くも喪服に着替えていた彼女の足許を、黒のストッキングがなまめかしく透きとおらせていた。

夕刻になるとそれでも俺たちは、喪服を着て色町家を訪問した。
いちどか二度くらいしか顔を合わせていないはずのご主人の顔は記憶が定かではなく、
遺影にも見覚えがなかった。
ひつぎの前には喪主である奥さんと息子さん、それだけしかいなかった。
「あらいらしたのね」と愛想よく振舞っていたお隣の奥さんも、いつの間にか姿を消していた。
ちぃ―――ん。
お線香の匂いとともに鉦を鳴らす音がひっそりと響いた。
それを合図に、なんとしたことか、ひつぎのふたが突如として開いた。
なんと、死んだはずのご主人が、白装束のまま起き上がったのだ。
鉛色の顔で、目だけがランランと輝いている。
えええええっ!
俺はびっくりして、縮みあがってしまった。女房を逃がすのさえ忘れた。
ご主人は俺にやおら飛びかかってきた。
首のつけ根に痛みが走った。
なんとしたことか、ご主人は俺の首すじを噛んで、血を吸い上げ始めたのだ。
キャアッ――ッ!
華菜も思わず悲鳴を上げたが、組んづほぐれつする二人の男を前に、どうすることもできない。
グチャグチャと汚い音を立てて血を吸い上げられながら、
俺は貧血を起こして、その場にひっくり返っていた。

つぎの獲物は、いうまでもない、女房の華菜だった。
華菜は黒のストッキングの脚をすくみ上らせて、俺が血を吸い取られるのに目を見張っていたが、
俺がぶっ倒れてしまうと同時に、自分も尻もちを突いて、その場に動けなくなってしまった。
亡者と目を合わせてしまった華菜は、狼狽して部屋から逃げ出そうとした。
四つん這いになって、這う這うの体なのだ。
背後からすぐに、亡者に腰を抱かれて圧し伏せられた。
うろたえて手足をジタバタさせる華菜を抑えつけて、首すじに唇を吸いつけていった。
俺の血が撥ねたままの唇が、華菜のうなじを這った。
俺は助けを求めるように遺族のほうを見たが、彼らは姿を消していた。
ああ――ッ!
悲鳴一声、華菜はうなじに喰いつかれ、声と同じくらいの勢いで、血潮が畳に飛び散った。

キュウッ、キュウッ、くいッ、くいッ・・・
押し殺すような音を立てて、華菜の血は亡者の欲望のまま吸い取られてゆく。
俺は華菜を助けようと焦ったが、手足がいうことを聞かない。
失血で、すっかり痺れてしまっていたのだ。
どうすることもできないままに、みすみす華菜の血を吸われるがままになってゆくのだ。
やめろ・・・やめろ・・・華菜を殺すんじゃない!
叫んだつもりが、かすかな呟きにしかならなかった。
けれどもそれは、相手の耳に届いたらしい。
亡者はこちらをふり返った。
顔色が、さっきの薄気味悪い鉛色から、ずっと血の気を帯びていた。
そういえば、一昨日夫婦で買い物に出た帰りに、この人とは会釈をし合ったっけ。
化け物の顔が、血の気が戻っただけで、隣人のそれにたやすく変換した。
その血色は、俺たち夫婦の身体から吸い取ったものに違いないのだ。
おぞましさに、慄(ぞっ)とするのを覚えた。
「こ、殺さねぇ・・・」
化け物はうめくように、いった。
え?と訊き返そうとすると、なおも呟いた。
「あ、ありがたい・・・」
え?
俺は思わず、訊き返してしまった。
ひとの女房をつかまえて生き血を啜っておいて、「ありがたい」とは何事だ!?
けれども俺は覚っていた。
噛まれた傷口に浸潤するように、毒液が身体の奥にまでしみ込んできて、
男の意図をありありと、伝えてきたのだ。
男はせつじつに、俺たち夫婦の血を欲していたのだ。

男はすぐに俺から視線を逸らすと、すぐさま華菜に注意を引き戻していった。
華菜は負傷しながらも、手の力が緩んだのをよいことに、無体な抱擁から抜け出そうとしていた。
男は華菜の脚をつかまえ、抑えつけた。
肉づき豊かなふくらはぎが、薄手の黒のストッキングに映えて、ジューシーに透きとおっている。
「うふっ、エエな、エエのお・・・」
男はうわ言のようにそう呟くと、華菜のふくらはぎに唇を吸いつけてゆく。
唇の端から洩れた唾液が、ストッキングの表面に散った。
「ひッ!」
華菜の呻きが、恐怖に引きつった。
男は華菜の脚をストッキングのうえからヌルーッと舐め味わうと、
再び牙をむき出して、華菜のふくらはぎに喰いついた。
「ギャッ!」
華菜の悲鳴は、お世辞にもきれいなものではなかった。
圧しつけられた唇の下、ストッキングにツツーッと裂け目が拡がって、地肌の白さを見せつけた。
男はご満悦で、華菜の血を呑み耽っている。
ごくッ、ごくッ、ごくッ・・・
飲まれているのが女房の血でなければ、じつに豪快な飲みっぷりといえてしまいそうなほど、
男の喉はじつに旨そうに、華菜の血にむせ返っている。
「やめて、やめて下さい、お願いしますッ――」
華菜の訴えはその場に居合わせただれにも聞き届けられず、
しばらくの間は華菜の血で旨そうに鳴る喉鳴りだけが、部屋を支配していた。
男は、華菜のうら若い血液を、ひたすら楽しんでいた。

「誠に申し訳ございません」
傍らには、姿を消したはずの奥さんが戻って来ていた。
「主人が生き返るには、どうしても人さまの生き血が必要だったのです。
 それでどうしてもと、お呼び立ていたしました。
 お隣の奥さまも、じつは同罪ですの」
見ると、回覧板を届けてくれたお隣の奥さんも、部屋の隅に座って、きまり悪そうに会釈を投げてくる。
「さ、わたくしたちもお相伴しましょ」
喪主の奥さんに促されて、お隣の奥さんも喪服のスカートを引き上げて、黒のストッキングの太ももを露わにしてゆく。
「お相伴」とはこの場合、逆の意味だろう。
けれどももしかすると、「血を吸う」側だけが味わっているのではなく、
「血を吸われる」側も、なにかを得ているのかもしれない――そんな馬鹿な!俺は自分の妄想を、慌てて打ち消した。

「若奥さま、もうご無理ですよ。いくらお若くてもそれ以上いっぺんに飲ませちゃったら身が持たないわ」
喪主の奥さんはご主人を華菜から引き離すと、「こんどはこちら」と、
追いやるようにお隣の奥さんのほうへとご主人の身体をのしかからせてゆく。
引き上げられた重たい漆黒のスカートのすそから覗いた太ももは、素人の奥さんとは思えないほどなまめかしかった。
ご主人は、お隣の奥さんの腰を抱き寄せると、黒ストッキングの太ももに唇を吸いつけた。
パチパチと微かな音をたてて、ナイロン生地がはじけていった。
「うッ――!」
お隣の奥さんがおとがいを仰け反らせる。
ゴクッ、ゴクッ、グビッ・・・
華菜のときよりもさらに貪欲に、ご主人はお隣の奥さんの生き血を需(もと)めた。
奥さんがその場でぶっ倒れてしまうと、ご主人は喪服のブラウスを引き裂いて、
その下のブラジャーまで剝ぎ取って、乳首を口に含み、ぞんぶんに舐め味わってゆく。
もはや、彼の欲求が生き血だけにとどまらないことを見せつけてゆくのだった。

「どうぞこちらへ」
喪主の奥さんは、蒼ざめた顔で茫然としている俺たちを、隣の部屋へと招き入れた。
「この街に来てまだ間もないので、びっくりされたことでしょうね。
 でもこのあたりでは、こういうことよくございますの。
 主人がおふたりの生き血を頂戴した御礼代わりに、このあたりの慣わしをお伝えしておきますね」
差し出されたメモには、こんなふうに書かれていた。

汀 憲継
 色町若菜
   晴雄
   凛太
 伊香堅司  
   布美子(お隣の奥さま)

色町晴雄
 伊香布美子
 寺澤 晃
   華菜

これは・・・?
俺が声をあげると、奥さんはいった。
「この汀憲継というのが、おおもとの吸血鬼です。
 そうそう、ご自宅のお向かいさんですね。
 それがわたくし色町若菜を襲って男女の関係をして、ことのついでに主人や息子の血も吸ってしまいましたの。
 幸い息子の時は手加減してくれましたが、主人のときはつい吸いすぎちゃって・・・こんなことになりました。
 エエ、主人は自分の妻を犯した男に、生き血を吸い尽くされてしまったのです。
 じつは主人、前々から伊香さんの奥さまと不倫してたんですが、なにしろご近所でしょう?
 汀さまは伊香家のご夫婦も狙ったのです。
 でも――汀さまは伊香さまの奥さまに主人のことを取り持ってくれて――
 汀さまがご主人の血を吸っているあいだに、布美子さんしっかり浮気を楽しんでいらっしゃるのだわ。
 わたくしですか?わたくしは汀さまが時おり訪ねてくださるだけで満足なのです。
 幸い、主人とも関係は続いておりますし。
 でも、こんどは血を吸い尽くされてしまった主人のために、新たな血液の提供者が必要になったのです。
 血を吸い尽くされてしまっても、
 ひと晩明ける前にだれかの血で身体を充たすことができたら、吸血鬼にならずに済むの。
 主人は吸血鬼になるよりも、自分も血の提供者で居つづけたいと望んだので、
 (変わっておりますでしょ?自分の妻を犯した男に血を吸われたがってるなんて!)
 布美子さんに手伝ってもらって、おふたりをお招きしたのです。
 ひどいやつだとお思いでしょうか?
 でもここに棲んだ以上、いつかは必ずだれかに襲われてしまいますもの。
 どうせなら、お互いご近所のほうがなにかと便利ではないですか。
 あら、あら」
最後のひと言は、部屋の向こうの痴態に向けられたものだった。
「御満足ぅ・・・?」
妻の声に色町氏はウムと応じて、こちらの部屋へとあがり込んできた。
「お前も――」とだけ言うと、
奥さんはすべて心得ているらしく起ちあがって、黒のストッキングの脚を差し伸べてゆく。
ご主人が足許に抱きついてきくると、ためらいもなくストッキングを食い破らせて、
喉を鳴らしながら自分の血を飲み込んでゆくのを、ちっとも騒がず見おろしていた。
しつような愛撫は、両脚に加えられた。
奥さんの白い脛には、いびつによじれた帯のようになったナイロン生地の残骸が残るばかりになっていた。
「これで皆さん、おあいこね」
奥さんは軽く笑って、ストッキングをむざんに裂き取られた脚を見せびらかす。
華菜も、あちらの部屋でのびている隣の奥さんも、ストッキングを派手に裂かれてしまっていた。
女三人は、互いに顔を見合わせて、きまり悪げに笑った。

ご主人はなおも目を血走らせていたが、俺と目が合うと、いった。
「突然で悪かった。ぢゃがもう少しだけ、協力してくだされ」
え――?
俺が怪訝そうな顔をする間もなく、ご主人がのしかかってきた。
たたみのうえに抑えつけられた俺は、再び首のつけ根を食い破られて、
色町家の畳を自分の血で濡らした。

ご主人が俺を放して起きあがるときにはもう、
俺は貧血で頭をクラクラさせてしまっている。
「これでよしと」とご主人は呟くと、こんどは再び華菜の番だった。
華菜は、着てきたジャケットを脱ぎ捨てて、ワンピース姿だった。
四角い襟首に縁どられた胸もとの白さに惹きつけられるように、ご主人は華菜の肩に猿臂を伸ばしてゆく。
華菜は怯えた顔つきで、失血に苦しむ俺と、迫ってくるご主人とを等分に目をやっていたが、
「あなた、だいじょうぶ?」
と俺に身を寄せようとしたところをつかまえられて、またも首すじを噛まれてしまった。
「ああーッ!」
なん度めかの絶叫が客間に響いた。
「若けぇ、若けぇなあんたの奥さん――活きが良くって、気に入ったです」
敬語交じりのため口に、害意は感じられなかったけれど。
彼が俺の目の前で女房の首すじに噛みついて血を啜っていることだけは確かだった。
「やめろ、やめろ、放してやってくれ・・・」
俺は声も切れ切れに訴えたけれど、
「そうはいかねぇんだ、今夜は特別な夜なんだ」
と、ご主人はくり返すばかり。
「そうなのよ、特別な夜なのよね」
向こうの部屋から移ってきたお隣の奥さんは、犯された凄惨なままの姿で、ご主人を弁護する。
ブラウスは引き破られ、片肌があらわになっていた。
ご主人はなおも、華菜に迫った。

華菜は壁を背負う格好になって、もう逃げられなくなっている。
「奥さん、悪りぃが、もう少しだけ脚をイタズラさせていただくぞ」
厚かましくも、華菜の穿いている黒のストッキングを、なおもいたぶり抜きたいらしい。
華菜は怯えた顔で相手を見つめると、ちょっとだけ俺のほうへと謝罪するような目線を投げて、
やがておもむろに、あきらめたように、自分のほうから、ツツッ・・・と脚を差し伸べてゆく。
え?おい!?なにをしているんだ!?
俺は思わず声をあげようとしたが、喉が引きつって声にならなかった。
華菜が差し伸べたのは、まだ嚙まれていないほうの脚だった。
男は華菜のふくらはぎに舌を這わせると、
「エエ舌触りのパンストぢゃ」と、しんそこ嬉しげに華菜の脚を舐めまわしてゆく。
女ふたりは興味津々、華菜の受難に見入っていて、同性の危難を救おうとするけしきはみせない。
「破ってもエエな?」
わざわざ念を押して、華菜が小さく頷くのを見届けてから、
男は尖った歯をむき出して、華菜の脚の輪郭を犯した。
涙の痕のように、ツツーッと伝線がつま先まで走ってゆく。
キュウッ、キュウッ・・・と、ひとをこばかにしたような音を立てて、華菜の血は吸われた。
固く瞑られた華菜の瞼から、涙があふれた。
「あら、あら、かわいいわぁ」
喪主の奥さんが、はしゃいだ声をたてた。
「ほんとう――あたしもさいしょはそうだったのよ」
「アラ、わたくしもですわよ」
女ふたりは、楽し気に言い争っている。
その間に、男は華菜のふくらはぎにも、太ももにも、ワンピースごしに腰やお尻にも咬みついてゆく。
熱っぽい接吻を迫らせるようなやり口だった。
そして最後にもう一度、首すじに喰いついた。
意外にも、華菜は叫び声をあげなかった。
「あァ・・・」
かすかに洩れた吐息に、どこか聞き覚えがあった。
そして、慄っとした。
夫婦のベッドでアノときに洩らす吐息と、全く同じだったのだ。

華菜の恰好の良い脚から、黒のパンストがズルズルと引きずり降ろされてゆく。
無念そうに歯噛みをしながらも、華菜は相手の欲求に応えて、
パンストを脱がせやすいようにとさりげなく、脚の向きを変えていった。
ショーツも黒だった。
男は華菜の股を軽くおし披(ひら)くと、ショーツのうえからおもむろに唇を吸いつけていった。
ちゅるっ、じゅるっ、ぢゅるううっ。
接吻をくり返すたび、音が露骨でしつようになった。
薄いショーツのなかで、華菜の陰毛の一本一本が、恥知らずな唾液に濡れそぼっているのだろう。

目のまえでここまで夫権を侵害されながら、俺はなぜか腹を立てていなかった。
なぜだ?華菜が目の前で犯されようとしているのに――
首すじにつけられた咬み痕が、またもずきん!と強く疼いた。
そうだ、こいつのせいだ。
操を踏みにじられようとしている華菜の戸惑いよりも、俺はむしろ、
夫の前で人妻をモノにする特権を行使しつつある吸血鬼のほうに共感を感じ始めている――

いつの間にか。
華菜はワンピースの後ろのファスナーを降ろされてしまい、黒いブラジャー一枚になっていた。
電灯に照らし出された白い肌が、なめらかに輝いている。
たしかに――咬みつきたいというやつの気持ちが、いま痛いほどわかりはじめていた。
整然とした肌理をした、つややかに輝く白い素肌を、むたいに食い破り醜い噛み痕を刻印する。
それがどんなに楽しいことか、傷口の妖しい疼きが、刻々と伝えてきた。
「ご主人様、よかったですわね。ご自分の奥さんが初めて犯されるところを御覧になれるなんて」
喪主の奥さんが、ゆったりと言った。
自分の亭主が人妻を犯そうとしている場に立ち会っているとは思えないほど、のどかな声色だった。
口ぶりからして、皮肉や冷笑ではなさそうだった。
しんそこ、妻の貞操やぶりをいっしょに祝うことができる幸運を悦んでくれているらしかった。
この連中の貞操観念は、俺には理解できない――俺はなんとか、そう思おうとした。

男は、華菜のブラジャーとショーツに手をかけると、ピーッ、ピーッと鋭い音を立てて引き破くと、
乳房と秘部を同時に無防備にさらしてしまった。
「ご主人悪いね、今夜は楽しませていただくよ」
それが俺に対するご主人の、さいごの礼儀だった。
「ひーっ」
ご主人はにょっきりとふくれあがった一物を手にすると、それを華菜の股間に忍ばせてゆき、
悲鳴をあげる妻にのしかかって、こともなげに腰を淪(しず)め、妻を狂わせていった。

お茶の間に、母親の声があがった。
「凛太さん、もうお勉強はいいわ。こっちきて御覧なさい。
 母さんのときは嫌だったろうけど、よその奥さんだったら良いんじゃない?
 しっかり見て勉強するのよ」

十代前半の男の子にとって、刺激的すぎる勉強だったはずだ。
「ちょっとあたし、面倒見てくる」
お隣の奥さんが座をはずして、目を血走らせて階上の勉強部屋に引き取った凛太のあとを追った。
発育してしまったぺ〇スを揉んで、出してあげるのだという。
「時々飲んでもらっているみたい」
奥さんは、独り言のように、おそろしいことを口にした。

華菜も俺も、茫然として座り込んでいた。
さっきまで華菜は、豊かなセミロングの黒髪をユサユサ揺らしながら、ご主人と組んづほぐれつしていた。
さいしょはおずおずとだったが、一度刺し貫かれてしまうと、もう止め処がなかった。
「さいしょが好(よ)すぎたの、だからといって――していいことと悪いことがあるわよね」
華菜はうわ言のような口調で、それでもしきりに恥じていた。
「恥ずかしいのはこっちもいっしょだ」
俺は素直に応じていた。
「お前が夢中になってるの視て、興奮しちまった」
「あら、あら」
恥ずかしすぎる告白に対して、華菜は寛容だった。
ズボンがびしょびしょになっているのを見て、
「早く、クリーニングに出さないとね」
と、主婦らしい心配をした。

「若奥さん、ご主人、布美子さん、わたくし。
 四人もの方の血を思う存分吸い取らせていただいたおかげで、主人は死なずに済みました。
 心から御礼申し上げます」
改まった口調で、色町の奥さんがいった。
三つ指ついて頭まで下げられて、「いやいや・・・」と俺たちまでもが恐縮してしまい、
華菜にいたっては「ふつつかでした」とまでこたえてしまっている。
「ふつつかなんかじゃねぇよ」
男がいった。
「旦那さん、時々でエエから、華菜ちゃんの血ィ吸わせてもらえんかの?
 わしは吸血鬼にはならずに済んだが、嗜血癖は身に着いちまっておるから、
 これからも布美子さんのことは、日常的に襲うことに決めておるんぢゃ。
 ぢゃが、それだけでは足りんて・・・もうお一人、襲えるおなごがおれば、安心して暮らせるというもの。
 うちの家内には汀さまがいるから、亭主といえども手ぇ出せんのでな・・・」
それはなんとも気の毒に――と思ったが、
いちばん「気の毒」なのは、妻を吸血され犯された俺のほうではないだろうか?
ご主人は、俺の想いを汲み取っていた。
「あんたらご夫婦のご厚意がなければ、いまごろわしは吸血鬼に成り下がっておった。
 感謝の気持ちは忘れねぇ。おふたりを侮辱するようなまねも、もちろんしねぇ。
 いまは血がなくなってのぼせ上がっておるぢゃろうから、きょうの返事は要らねえから、
 明日以降、良い返事をきかせておくれでないか?」


家にたどり着いたのは、夜中すぎのことだった。
俺も無言。華菜も無言。
亭主のまえでほかの男を相手によがり声をあげてしまったことを恥じているのか、
華菜は終始目を伏せていた。
「護れなかった俺が悪いから」
と、俺は華菜をかばった。
俺も――目のまえで妻を犯されながら昂ってしまった恥ずかしさが、ついて離れなかった。
あれは恥ずかしい。どうみても恥ずかしい。
夫の風上に置けないほどの恥ずかしさだ。
けれども――
華菜のことをあそこまで大胆に、雄々しく踏みにじったあの牡(おす)の身体の力強い躍動が、
瞼の裏に灼(や)きついて離れなかった。

それぞれにシャワーを浴びて、寝に就いた。
ベッドルームに入るとやおら華菜を抱き寄せて、激しく唇を吸った。
華菜も、応えてきた。
さいしょは謝罪するような、おずおずとした応えかただったが、
回を重ねるにつれ、俺の熱情が伝わったかのように激しく乱れはじめて、
ここしばらく交わしていなかった愛の刻を、はげしく交わした。
血を吸われたうえに、あの男になん度も犯され、疲れ切っているはずの華菜だったが、
そんなようすは微塵も窺われなかった。
むしろ、俺が圧倒されるほどにむさぼり返し、互いにガツガツとむさぼり合ってしまっていた。
心地よい疲れと虚脱感を身体の隅々にまで感じながら、俺は眠りに落ちた。


ふと気がついたとき。
部屋はまだ、華菜と乱れあった直後と同じく明るかった。
われ知らずまどろんでしまったようだ。
時計を見ると、2時。
熟睡したようにも感じたが、気を喪っていたのは意外に短い時間であった。
傍らをみると、華菜の姿がなかった。
いつも几帳面な華菜に似つかわしくなく、クローゼットが開け放たれていて、
衣類を取り去られたハンガーが床に落ちていた。
箪笥の抽斗も半開きになっていて、切られたパンストのパッケージが屑籠に乱雑に放り込まれている。
すべてが、華菜らしくない振舞いだった。
なにが起こったのか、俺は直感した。

表に出た俺は、すぐにさっと身をかがめて、手近な物陰をさがした。
街灯がスポットライトのように照らす真夜中の路上。
身を寄せ合うふたつの人影が、ひっそりと佇んでいた。
確かめるまでもない、ご主人と華菜だった。
華菜はクローゼットから引っ張り出した、真っ赤なタンクトップに黒のミニスカート。
足許には、スケスケのストッキングを黒光りさせている。
先刻脚に通していた礼装用のそれとは打って変わって、光沢のギラつく派手めのものだった。
華菜の気に入りのブランドで、都会にいたころは親友の結婚式のときによく脚を透していたのを覚えている。
差し伸べられた白い首すじに、男の唇が這っている。
男はなん度も、華菜の首すじに噛みついてゆく。
それが愛撫に等しいあしらいなのだろうということは、はた目にもわかった。
華菜も惜しげもなく白い肌をさらして、醜い噛み痕をくり返しつけさせてしまっている。
華菜もまた、男の真意を汲み取っていた。
「赤い服にバラ色の血――」
華菜はクスッと笑った。
俺とふたりきりの時だけにみせる、密やかで挑発的な笑いだった。
ご主人は華菜を引き寄せて、口づけを交わした。
まるで恋人同士のように、華菜は優雅にその唇を受け止めてゆく。
「来なさい」
男は華菜の手を引いた。
引かれるままに、華菜は男の意思に従った。

ふたりとも、想いは同じ――ということなのだろう。
いちどは冷静に考えなさい、と言われながらも。
夫との激しい愛を交わした後も。
相手の男を忘れることができなくて、華菜は夫婦の寝室を抜け出した。
あの伏し目がちな態度も、自分の奥にとぐろを巻いた想いに対する後ろめたさでしかなかったのだろう。
華菜が家を抜け出したのとほとんど同時に、ご主人のほうも、華菜を俺の家から奪い取ろうとして、家を抜け出した。
ふたりの想いはからずも、スポットライトの下で落ち合ったのだ――
俺は、なぜか深い感動を味わっていた。
夫としては忌むべきはずの、妻の不倫の現場のはずなのに・・・

庭に面した居間は、開け放たれている。
さっきまで、ご主人本人が骸となって、ひつぎのなかに収まっていたあの部屋だった。
奥さんも息子も、とっくに寝たのだろうか。
他の部屋はどの部屋も、静まり返っていた。
部屋に引きずり込まれた華菜は、挑むような瞳で、ご主人を見あげていた。
ご主人は有無を言わさず、華菜の足許に唇を圧しつけてゆく。
軽く抵抗しながらも、どうやらそれは彼女の本心ではない。
圧しつけられてゆく唇も舌も、しだいしだいに熱を帯びて、
真新しい華菜のストッキングを、恥知らずなよだれにまみれさせてゆく。
夫である俺に、操を立てるポーズをとっているのか?
もしかして、俺が覗いているのに気がついているのか?
ずきり・・・と胸の奥に黒い衝動が衝きあげた。
あ・・・
華菜が痛そうに目を瞑った。
噛まれたのだ。
ちゅうっ・・・ちゅうっ・・・
先刻ほどに急調子ではないが、華菜の身体をめぐるうら若い血液を、明らかに味わい楽しんでいる。
あああー
華菜が身を伏せて、打ち震えた。
男がのしかかり、首すじを噛んだ。
紅いタンクトップに、バラ色のしずくが撥ねるのが見えた。

月は西へと降りかかっている。
あれから1時間も愛されただろうか。愛し抜かれただろうか。
華菜は黒のストッキングを片脚だけ穿いたまま、セミロングの黒髪をユサユサと揺らしながら、
あお向けになった男の身体のうえで、躍動していた。
時には四つん這いになって、後ろからのえげつない挿入を受け留めさせられて、
口に咥えさせられて、なかに噴き出されて、嬉しそうにむせ返っていた。

不思議に、怒りも悲しみも湧いてこなかった。
妻の肉体を雄々しく支配した牡が、妻のことをしんそこ気に入って、
その夜が明けるのもまたずに二人で落ち合っていた。
最愛の妻の貞操は、昨夜激しく散らされた。
それは、若い夫婦にとってとても大きな、かつ深刻でもある影響をもたらしたはずだ。
けれども――
苦痛と犠牲を強いられた上に奪われた果実を、相手の牡はしんそこたんのうし、深く愛し始めている。
華菜を女として、高く評価していることは間違いなかった。
俺にとっては忌むべき一夜も、彼らにとっては、記念すべき「初夜」だったのかもしれないのだ。
もしもあれが「初夜」だとしたら、喪服は花嫁衣裳だったということか。
夫婦という良心の呵責を打ち破って生まれた、激しい恋。
もしもあれを「初夜」と呼ぶのなら――外野の人間は祝うしかないんだろうな。たとえ亭主である俺も含めて。

俺は割って入ることも、ふたりの行為を制止することもせずに、
自らの敗北を静かに反芻しながらふたりがし遂げるところを見届けると、
あとはしずかに、足音を消して立ち去ったのだ。
最愛の華菜を、四十男の欲望に独り占めにさせてやるために――


週末は、静かな曇り空だった。
「行こうか」
俺がふり返ると、
「行こう」
華菜ははずんだ声で応じた。
行先はもちろん、色町の邸。
華菜はよそ行きのグレーのジャケットに、同じ色のフレアスカート。
「清楚な服のほうが、興奮するらしいの」
華菜は得意げにそういった。
あの夜からいままでも、幾夜となく俺のことを裏切った女の言い草だった。
俺はそれでも、華菜の言葉をくすぐったく受け流した。
純白のタイつきブラウスは、バラ色しずくを今度も鮮やかに散らされてしまうのだろうか。
脚に通した肌色のパンストも、おろしたばかりのものだった。
「穿き古しじゃ恥かいちゃうから」
照れ隠しにつぶやく華菜に、
「礼儀作法というものだね」
と、俺も応じる。
ひと足歩みを進めるたびに、露骨なくらい派手やかな光沢が、その足取りを艶やかに彩ってゆく。

華菜の素肌をみすみす食い破らせてしまうことが。
よそ行きの衣装もろとも、ムザムザと辱められてしまうことが。
夫の立場からすれば最愛の妻に対する凌辱が、
じつは道ならぬロマンスの成就なのだと、いまは納得できてしまう。
自慢の妻を、きょうも見せびらかしてやろう。
ピチピチと若い華菜の肢体に、目の色を変えてむしゃぶりついてくるご主人の顔色を想像するだけで、
俺は恥ずかしい欲情に股間が熱くなってゆくのを、ガマンすることができなくなっていた。

ふたりの首すじには、おそろいのように、初めて噛まれた痕が赤黒く二つ、綺麗に並んでいた。

「代わりにうちの娘を、好きにして良いからな」 拡がる”懇親”の輪。

2019年12月26日(Thu) 07:19:27

「奥さんを寝取らせてくれてありがとう。代わりにうちの娘を好きにして良いからな」
隣家の男はそういってわたしの家に上がり込み、夫婦の寝室にまっしぐらに突進した。
勤めから帰宅すると。
男は玄関先で、わたしのことを待ち構えていた。
家に入って待っていればよいものを、「ご亭主の許可なしに上がり込むわけにいかない」と、妙なところで律儀だった。
引っ越してきてわずか一週間。
妻は隣家に棲むこの男の所有物(もの)になっていた。

買い物帰りに待ち伏せされたのだという。
自宅近くの公園に引きずってゆかれ、植え込みのかげに引きずり込まれて、スカートをたくしあげられていったという。
あとで訊いたら、「都会育ちの奥さんの、ストッキングを穿いた脚に夢中になった」と、わけのわからないことを言われたという。
湧き上がる性欲を即物的に満足させるためだけでは、なかったらしい。
本気で妻のことを、気に入ったらしい。
来る日も来る日も誘われて、そのくせ事後にたどる帰り道には、重たい買い物を独りで抱えてくれたという。
ショッピングには消極的なあなたとは正反対ね、と、妻はいった。
わたしが激怒しないと見越してしまうと、妻はあっけらかんと、なんでも話して聞かせてくれた。
「夫婦のあいだで秘密を持ちたくない」というのがかねての持論だったとしても、
浮気の顛末まで、こうもあけすけに語るものなのだろうか?
当の裏切られた旦那様(わたしのこと)の目のまえで。

「不面目じゃないのよ、必ずしも」と、妻はわたしの立場を弁護する。
「じつはあの人もね、奥さんをべつの人に寝取られてるの」
えっ!?と訊き返すわたしに、「興味ある?」と上目遣いをすると、頼みもしないのに語ってくれた。
あちらのご夫婦はお見合い結婚で、地元同士の間柄だった。
親同士も良く知っている関係で、子供が大きくなるまでは、ごくふつうの仲の好い夫婦だったが、奥さんが突然浮気をするようになったという。
相手は夫婦共通の幼なじみだった。
本当は彼も奥さんのことを好きだったけれど、家の関係でどうしてもあきらめなければならなかったのだ。
結婚前にその話を聞かされた彼は、幼なじみに婚約者の純潔を譲ることにした。
祝言の前夜、2人は結ばれて、以後はきっぱりと関係を絶っていたのだが。
やがて年を経ても独身を続ける幼なじみのため、奥さんは料理を作りにしばしば家を空けるようになったという。
いまは夫も認める「通い妻」。
それでもご主人は文句もいわず、幼なじみとの恋を見守ってきたという。
ちょうどそこにおあつらえ向きに表れたのが、わたしの妻だったというわけ――

買い物帰りのワンピース姿を餌食にされた妻は、次の日はよそ行きのスーツを餌食にされ、そのまた次の日は、ブラックフォーマルを着込んで公園に連れ込まれていった。
都会ふうの装いにほれ込んだという田舎の男性のため、持っていた服を次々と、男の餌食にさせていったというわけだ。
幼なじみとのアツアツの恋を見つめてきたという男と同じように、
わたしは長年連れ添った妻と地元の男との、熱々の恋を見守らされるはめになった。

口先では「また犯された」と訴える妻。
けれどもその口調は自慢げで、嫌悪感はかけらもない。
認めてほしいのだ。いくら鈍感なわたしでも、わかった。
わたしは受話器を取ると、妻から教わった男の家の電話番号を押して、男に告げた。
「いつでもいらっしゃい、わたしがいても構わないから」
妻が後ろから甘えるように抱きついてきて、わたしたち夫婦は久しぶりに熱い夜を過ごした――

それ以来。
男はいそいそと通ってくる。
わたしがリビングにいるときは、二階にある夫婦の寝室でしてもらっていたけれど。
やがて湧き上がる関心を抑えきれなくなって、こっそりとのぞき見するようになっていた。
習慣となってしまった恥ずかしい行為を二人は咎めもせずに、
わたしが覗いていると気がつくと、これ見よがしに「あなた~許して」「主人のよりも大きいっ」と、わざとわたしをそそるようなことを口走るようになった。

「代わりにうちの娘を好きにして良い」という男の約束も、律儀に守られた。
「だんなさん、うちさ上がり込んでくれ。娘は二階の勉強部屋だ」
男は言い捨てるなり、いつも通りに夫婦の寝室に突進する。
いつもと違ったのは、着飾った妻がベッドで待ち受ける部屋のドアを開ける前、こちらを振り向いたことだ。
「きっとだぞ」
念押しされた。

行ってみないわけには、いかなくなった。
インタホンを押しても応えはなかったが、門も玄関も、施錠はされていなかった。
いたって平穏な街なのだ――不倫や近親相姦が横行しているというだけで。
玄関のドアを開けると、家には人けがなかった。
古びてはいるが穏やかで、住み心地のよさそうな気配があった。
奥さんは朝から、浮気に出かけているらしい。
浮気を続けているといっても、所帯持ちはよいときかされていたが、きっとそういうことなのだろう。
階段の上は明るく、まっすぐには見えなかったが、勉強部屋には人の気配がした。
わたしはゆっくりと、階段を踏みしめて、あがっていった。
ドアをノックすると、娘が顔を出した。
まだ稚なさの残る顔だちだった。
娘さんはわたしとは目線を合わせず、ひと言だけ「どうぞ」というと、そっけなくドアのそばから離れた。
娘さんに引き込まれるようにして、わたしは部屋に入った。
女の子の匂いのする部屋だと思った。
学校帰りらしく、まだ制服姿だった。
濃紺の地味な制服のスカートのすそから、黒のストッキングに染まった足首が見えた。
男の子が女子生徒のかっこうをしているようだ、と、ふと思った。
娘さんはショートカットで、ボーイッシュな顔立ちだった。
わたしはやおら娘さんを抱きすくめたが、抵抗はされなかった。
唇を合わせると、応えてくる。
胸をまさぐると、嫌そうに身じろぎしたが、声をあげることも、それ以上抗うこともしなかった。
わななく掌がブラウスの胸ひもをほどき、釦をひとつひとつ外して、
はぐりあげた重たいスカートの奥から、黒のストッキングをずり降ろしていった。
狭くて静かな部屋のなか。
はずんだ呼気どうしがぶつかり合い、わたしは娘さんとガチガチ歯を合わせながら、接吻を重ねた。
娘さんは身を固くしていたが、どうやら男あしらいに慣れているようだった。
自分からパンツを脱いで、ストッキングを片方脱がされた足首までずり落としていった。
娘さんはすでに、男を識っていた。

狂ったような日常が続いた。
わたしは妻を伴って男の家を訪れて、隣同士の部屋でお互いの妻と娘とをむさぼり合った。
奥さんにべつの浮気相手がいるのが、かえって好都合なくらいだった。
昼日中からくり広げる、まるでエッチなビデオのような日常に、わたしは溺れた――

「学校を出たらすぐ、この子は結婚する。あんたのことは、婿さんにも話してあるから、遠慮せずに新居に遊びにいくがええ」
男はそういって、娘さんが結婚してからも付き合うよう、わたしに勧めた。
妻との縁を切られたくない――そんな下心が透けて見えた。
それにしても。
「婿さんにも話してある」とは、どういうことか?
遊びに行くといっても、親戚づきあいで行くわけではない。
結婚を控えた若い男性が、新妻を犯されることまで承知しているとは、とても思えなかった。
けれども、男のいったとおりだった。

「あなたが比奈さんのお相手なんですね。話は比奈さんからも、お父さんからも聴いています」
その青年は爽やかに笑って、白い歯をみせた。
「どうそうちにいらしてください。このあたりでは、客人に妻を抱かせるのが、最高のもてなしなんですよ」
ひっそりとづづけられてきた永年の淫らなしきたりが、彼の中で抵抗なく身についているのを感じた。
「それとね、知っていますか?比奈さんの初体験のお相手は、ほかでもないお父さんなんですよ」
青年は、イタズラっぽく笑った。

比奈さんが結婚すると、わたしは二人の新居にいそいそと通うようになった。
お婿さんはわたしのことを歓迎してくれて、落ち着いたころを見計らって、「ちょっと出てくる」といって長時間中座するのがつねだった。
夫を送り出すと比奈さんは、セーターを脱ぎ、ブラウスを脱いで、ブラジャー一枚の胸を見せつける。
ブラジャーをほどくのは、わたしの役目だった。
スカート一枚になった新妻が、夫以外の四十男を相手に、四つん這いになって乳房を揺らす。
静かな部屋で弾ませる息遣いは、焔を帯びていた。

わたしの留守とは入れ違いに、男は妻を抱きにわたしの家に来ていた。
都会妻を隷属させて狂わせて、たっぷり2時間あまりも愛し抜いてから、浮気に出かけた妻が留守にしている隣家に帰ってゆくという。
妻もわたしも、満ち足りたひとときを過ごして、わたしの帰宅後夫婦の時間を過ごした。
都会にいるときよりも営みは頻繁で、熱いものになっていた。
人の膚を交えると、こういうことになるのか――わたしたちは、変態夫婦なのか?
ふとかすめた疑問を、男は一笑に付した。
「なにごともご縁だからな」
男はそう言うと、指先を合わせて乳首を揉むような手つきをした。
妻の肉体を支配した掌だった。
男の指の間に、妻の乳首が透けてみえるような気がしたけれど。
決して悔しさも恥ずかしさも感じなかった。

そんなに頻繁ではないけれど。
都会住まいの夫婦が、ちらほらと移り住んでくる。
そして、だれかれとなくそうした新来の夫婦に接触して、やり取りを交わし、誘惑していった。
妻も娘も、夫や息子までも、目当てにされた。
この街は両刀遣いだったから。
「器用なものだね」
あきれるわたしに、男はいった。
「ご親類がみえられたら、ぜひ紹介してほしい。悪いようにはしない」
それはお断りですね、と、わたしがいうと、
「迷惑はかけない。あんたのせいにはならない。泊る家も用意する」
しつこく迫られて、閉口した。
男は、妻のことをまた貸ししてしまったと告白した。
相手は自分の奥さんを抱かせているのとは別の、幼なじみだという。
妻から電話があって、「今夜は戻らない」という。
すべてを聞かされたわたしは、「何もかも知っている」ということを語気で伝えて、「ゆっくり楽しんできなさい」とこたえていた。
その晩わたしは、初めてこの男と寝た。
そしてひと晩がかりで、妻がなんなく堕ちてしまった理由を体感した。
「婿さんとも一度寝て、娘を満足させられる身体かどうか確かめた」という。
この街は狂っている。そう思った。
もっとも、わたしたち夫婦も、すでに狂わされていた。
兄夫婦が、泊りで遊びに来たいと連絡をよこした。
一度は断ったが、やはりどうしてもといわれた。
わたしは、兄夫婦が泊りで来ることを、男に告げた。

一か月後、やってきた兄夫婦は、楽しい夜を過ごした。
さいしょのうちは、弟夫婦と、地元で親しくなったという隣家の年配の男性と、5人で楽しく飲んでいた。
兄嫁は、都会妻らしく、洗練されたデザインのワンピース姿だった。
ひざ丈のワンピースのすそからは、ストッキングを穿いた豊かなふくらはぎが伸びていた。
男の目が獣の輝きを帯びたのを、わたしは見て見ぬふりを決め込んでいた。
夜中を過ぎると、妻が兄を誘惑して、男が兄嫁を押し倒していた。
ねじ伏せられた兄嫁が、男の手でストッキングを脱がされてゆくのを、
兄は当惑したように見つめていたけれど。
弟の前で弟の嫁を抱いてしまった後ろめたさが、すべてを封印させていた。
夜が明けると、兄は自分の妻を犯した男におはようを言い、男もてらいなく応えていた。
兄嫁は自分を犯した男の前で長い髪を揺らして、「おはようございます」と、兄よりも礼儀正しくあいさつをした。
「楽しいからもう少しいましょうよ」と告げる美しい妻に、兄は口ごもりながらも同意していた。
一週間滞在した兄夫婦は、やがてこの街に移り住んだ。
覚え込まされた快感を、兄嫁が忘れられなくなってしまったためだった。

妻の弟夫婦も、同じ経緯で餌食になった。
そしてわたしの両親も、同年代であるこの男の餌食になった。
母にはむしろ、男の娘婿のほうが、ご執心だった。
母親に大勢の浮気相手がいたというお婿さんは、母親不在の家に育ち、若い女よりもむしろ、母親世代の婦人に心を惹かれるらしかった。
母もそんなお婿さんを気の毒に思い、積極的に振る舞った。
父はなにも言わなかったが、そんな母の振舞いを不平に思っているようすはなかった。
お婿さんが提供してくれた若妻のぴちぴちした肉体に、夢中になってしまった後ろめたさもあるようだったけれど、
もしかすると、似た者親子なのかもしれなかった。
他の男相手にあえぐ妻を覗く歓びを、伝えたつもりはなかったのだけれど。

妻を食べられて、相手の娘を食べて、兄嫁を食べさせて、母までも賞味させていた。
わたし自身は、男とも、お婿さんともつながっていたし、
母も兄嫁も、男とも、お婿さんとも良い仲になっていた。
だれもがそれぞれの歓びを抱きながら、懇親の輪はいまも、拡がっている――


あとがき
しょうしょう長すぎましたね。(^^ゞ
さいしょの文句がふと浮かび、そこから速かったです。A^^;

遭遇。

2019年12月19日(Thu) 08:03:46

街なかで、妻とすれ違った。
「あなた」と向こうから、声をかけてきた。
首すじにつけられた咬み痕が、まだほんのりと血潮をあやしていた。

連れの男性とも、軽く会釈を交わした。
妻はいつもより、若づくり。
齢も10歳以上は若く見える。
夫の前で腕を組んで通り過ぎる後ろ姿――
真っ赤なひざ上丈のタイトスカートのすそから覗くふくらはぎが、グレーのストッキングになまめかしく映える。
これからどこへ行くのか?
夫といえども、それを問うのは野暮になる。

自宅近くの商店街。
道行く人のなかには、顔見知りも多かったけれど。
だれも見とがめるものはいない。
有夫の婦人が夫以外の男性と恋に落ちることも、
吸血鬼が人妻の生き血を好んでたしなむことも、
この街ではごくありふれたこと。

「お互いが納得できるのなら、いいじゃない」
妻が抱かれているるところを初めて視てしまったときに感じた、禁断の昂り――
恥辱の記憶として口にしたことを、妻は真顔になって補ってくれた。

帰宅したわたしを待ち受けていたのは、妻からの留守番電話。
「ごめんなさい。遅くなりますので、晩ご飯はどこかで済ませてくださいね」
格好の良い脚に通されたストッキングは、いまごろ彼氏の唇になぶられて、見る影もなく剥ぎ降ろされているころだろうか。

それではわたしも、出かけよう。
妻の彼氏に覚え込まされた吸血の魅惑に、生えかけた牙が疼く。
歳の差婚をした同僚の新居。
お嬢さんが中学に入学したばかりの上司のお宅。
お母さんを紹介してくれたハイソックス少年の家。
きょうはどのお宅に、お邪魔しようか?

ユニークな町内会。

2019年12月09日(Mon) 07:53:11

かつてこの街が吸血鬼に支配される以前、
この街では町内会が盛んだった。
男性たちは酒を持ち寄り、女性たちは料理を持ち寄って、飲み食いして楽しんでいた。

すっかりさびれたこの街であるが、いまでも町内会は、実は盛んである。
男性たちは妻を伴い、妻たちは娘たちを伴って、吸血鬼に飲み食いさせて愉しませている。

B助役夫妻の受難

2019年11月03日(Sun) 18:32:40

●●市が吸血鬼との共存を受け容れた理由のひとつに、市長をはじめとした市の首脳部が彼らに屈したことがあげられる。
市長は夫人と娘とを同時に犯され、吸血鬼の奴隷に堕とされていた。
そして彼女たちとの平穏な日常を取り戻すため、ほかの幹部に夫人の貞操喪失を促すと約束をした。

市には二人の助役がいた。
A助役は市長の意に従って、その夫人を望んだ吸血鬼の住処に夫人を伴い、血液の摂取を許した。
いちど血を許すとその場で犯されてしまうということをA助役が知ったのは、そのときのことだった。
長年連れ添った夫人の貞操と引き替えに、彼は市長一家の秘密も共有することになった。

もう一人のB助役は、市長の言に従わなかった。
やがてB助役夫人は、夜道で襲われて血を吸われ、人通りのある夜道で強姦された。
B助役はまっとうな倫理観の持ち主だったので、下手人である吸血鬼をたどりあてると、
苦情を言いに彼の住処へと一人赴いた。
吸血鬼はB夫人に無理強いしたことを内心後悔していたが、結果はひとつしかなかった。
B助役は血を全量吸い取られ、絶命したのである。

弔いはひっそりと営まれ、B助役は土葬に付された。
喪主となったB夫人は、通夜の客が去ったあと、夫のひつぎの前でふたたび犯された。
そして夫の土葬が済んだ後、自宅でみたび犯された。

一週間が経った。
夫人は吸血鬼の呼び出しに応じつづけて、その身をすっかり飼いならされてしまった。
夫の仇敵であるはずの男に、恥を忘れて身をゆだね、
求められるままに惜しげもなく生き血を振る舞い、ためらいもなく脚をひらいていった。
ふたりの絆がすっかり出来上がったその晩に、亡くなったはずのB助役は生き返って、帰宅を許された。

夫人は夫のことをなにごともなかったかのように迎え入れ、
B助役は自分が”死んで”いるあいだになされた不貞を咎めようとはしなかった。
つぎの日から彼は何事もなかったかのように出勤していった。
弔いは極秘裏に行われたので、だれもB助役がいったん死去したことを知るものはなかった。
助役が務めに出ると、入れ違いに吸血鬼が夫人の元を訪れた。
時には自分の住処に夫人を呼び出して、ねぐらで情婦との淫らなひと刻を愉しんだ。
それらすべてを夫であるB助役は薄々勘づいているようだったが、
蘇生させてもらったことに恩を感じたものか、それ以上吸血鬼が自分の妻を寵愛することに対して、苦情を言いたてることはなかった。

身内のあいだで、ひとつのうわさが出回った。
B助役が苦情を言いたてに吸血鬼の住処を訪れたあの晩に、じつはB助役は死んだのではなかったのではないか。
吸血鬼の住処に監禁された彼は、夫人が再三吸血鬼の呼び出しに応じてその意に従うようになったのを、目の当たりにしたのではなかったか。
そしてもはや抵抗し難いことを知って、観念して自分から夫人を吸血鬼の側女(そばめ)の一人として差し出すことを決めたのではなかったか。

すべては闇に葬られて、謎の彼方、藪の中である。


あとがき
「藪の中」という小説をご存知ですか?
旅する武士の夫婦が山賊に襲われて、武士の妻は夫の見ているまえで犯されてしまう。
けれどもその実情を語る三人(夫は亡霊)の証言はことごとに食い違い、真相はいったいどうなのか?というお話です。

柏木ワールドにしては、今回はちょっとだけハードな内容でした。
助役の奥さんが強姦されたり、助役が吸い殺されてしまったり。
でもどうやら、内実はいつもと同工異曲だった可能性が大のようですね。。 ^^;

少年の独白

2019年10月28日(Mon) 05:05:17

小父さん、ロリコンなんだろ?
制服のコを犯したいんだろ?
だったらぼくが、紹介してあげる。
うちの妹だけど、良いかな?
その代わり、条件があるよ。
小母さんをぼくに、襲わせてほしいんだ。
あらかじめちゃんと、話はしておいてね。
本気で抵抗されて、騒ぎになったらまずいから。

目印にね、白のハイソックス履かせてくるから。
小父さん、そういうの好きそうだから。
それが、姦っちゃってOKの合図ね。
小母さんのほうは・・・そうだな、肌色のストッキングがいいや。
うちの母さんが、よく穿いているようなやつ。
家で肌色のストッキングのときは、姦っちゃっていいことになってるんだ。
父さんがいても、平気だよ。
あのひと、視て歓ぶ人だから
・・・あっ、それは小父さんも、よく知っているんだったよね?

香奈子のこと?もちろん親には内緒だよ。
そんなこといいっていう親、さすがにいないよ。
でも本人にはよく言っておくからね。
ちょっぴり抵抗して、恥ずかしそうに目を瞑って、あとは股をゆっくり開いて、
小父さんの言うなりになればいいんだよね?
うん、うん、よく言っとく。


玄関を出るときは、何食わぬ顔だった。
兄妹で示し合わせてのお出かけ。
なにも知らない母さんは、
アラ、兄妹で珍しいわね、気をつけて行ってらっしゃい、なんて、のんきなことを言っている。
でも、あの小父さんのペ〇スって、母さんのスカートの奥にもうなん度ももぐり込んでいるんだよね?
欲張りだから。ロリコンといっても、願望だけで、専科じゃないから。
きょうは香奈子の制服のスカートの奥に、母さんのと同じペ〇スがもぐり込む日――

あらかじめ夕べのうちに話を着けたら、
でもちょっとだけ怖いっていうから、
処女なの?って聞いたら、処女だっていうから、
じゃあお兄ちゃんが先にしてやろうか?っていったら、
うん、お願い、そうして・・・っていうものだから、
初めてのキスにドキドキしながら、
ハイソックスのずり落ちた脚に毛脛の脚を絡みつけながら、
息はずませて、ドキドキしながら、
実の妹の股間を、破っていった。

後から考えたら、これが葉は娘丼ってことなの?って思ったけど。
擦り合わせた肌のすべっこさだけがやけに記憶に残って、
そっちのほうはどうでもいいやと、あまり深く考えないことにした。

玄関に佇む香奈子は、いつものセーラー服姿。
ひざ丈の濃紺のプリーツスカートの下、真っ白な真新しいハイソックスが、
ひざ小僧のすぐ下まで、ぴっちりと引き伸ばされている。
こうしてみると、まだ処女って感じだよな?って囁いたら。
うもう!やだっ!と、軽くひじ鉄を食ってしまった。

小父さんの家のピンポンを鳴らすとき、
さすがに隣の家だったから、母さんに聞かれなかったかな?って、すこし気にした。
開かれたドアの向こうには、小父さんの待ちかねたような顔があった。
さあさあと通されたリビングのソファには、
こぎれいなブラウスにスカート姿の小母さんが微笑んでいて、
いつもよりちょっとだけ濃い化粧に、早くも股間がドクドクと昂りはじめる。

こんなに若いのに、もう経験しちゃって良いの?
って小母さんに聞かれた香奈子は、
ちょっと早いかな・・・って思うけど。いいです。
と、初々しさを繕いながらもハキハキと応えている。

では――
と、どちらからともなく目で合図して。
ぼくは夫婦の寝室へ。
香奈子は小父様とふたり、そのままリビングで。
ふすまを閉ざしたのを合図に、ぼくは息荒く小母さんのブラウスの襟首を、押し広げにかかっていた。


母さんも妹も、未来の花嫁まで、小父さんに食われちゃったけど。
この満足感は何だろう?
この刺激って何だろう?

ロリコン親父とマザコン少年

2019年10月28日(Mon) 04:59:12

きみは、マザコンなんだね?
小父さんは、ロリコンなんだね?

お互い認め合った、お隣同士のご主人と少年。
少年は制服姿の妹を隣家に伴い、迎えるご主人は奥さんに言い含める。

隣同士の部屋で。
少年は人妻を、
ご主人は女子中学生を、
思い思いにねじ伏せてゆく。

少年の暴発は、奥さんのスカートの裏地とストッキングを濡らして、
ご主人の放散は、妹娘の制服のスカートとハイソックスを濡らした。

ご両親にもばれてしまったけれど。
母親はもともと、隣家のご主人と不倫の仲。
父親ももともと、妻の浮気を視て愉しむ夫。
娘の秘密さえ守ってくれればかまわないと、
初めての歓びに目ざめてしまった少女を、野放しにした。

やがて娘は成長して、何食わぬ顔で嫁に行き、
身代わりにその母親が、隣家のご主人との交際を復活させた。
そのあいだに、
人妻の味を覚えた少年は、とうとう隣家の奥さんのおなかを大きくさせてしまい、
ロリコンのご主人は願望を果たさせてもらった見返りに、なさぬ仲の子を大切に育てた。
自分の愉しみのつけを払わせてしまったことで、ちょっぴり後ろめたかった少年は、
やがて成人して、生娘と婚約したが、
大人になった女性の方がやはりよいと思ったので、
結納の帰りに隣家に立ち寄り、長いなじみとなったご主人に、婚約者の処女を進呈した。
少年と気が合ったという婚約者も、なかなかの性格で。
あなたほんとにおかしいわね、と言いながら。
未来の花婿の見守る目のまえで、こぎれいな桜色のスーツ姿を組み敷かれていって。
姑さえも狂わせたという一物に、いやというほど飼い慣らされていった。

嫁に行った娘も時おり実家に戻ってきて、
娘ができたら小父様に犯してもらうの・・・と言いながら、
旧交を温めて主婦のストレスを解消していった。

”被害者”は、少女の嫁ぎ先を含めてだれもいない。
男女はそれぞれの立場で自らの欲望を満たし、パートナーの浮気さえ愉しみつづけて暮らした。

吸血マンション ~弐号室~ 住人 丹川優一 めぐみ 優香(4)

2019年10月21日(Mon) 06:33:36

自室の居間で、丹川優一は失血で薄ぼんやりとなった頭を抱えて、あお向け大の字になっていた。
隣室では、さっきまで優一の身体から血を吸い取っていた吸血鬼が、妻を抑えつけている。
自室に招ぶようになってからも、妻のめぐみはよそ行きのスーツ姿で装っていた。
きちんとした服装をしたご婦人を玩ぶのが、あのひと好きなの。
臆面もなくそう告げる妻に、別の女の顔を見た思いだったが、優一は妻の企てを制止しようとはしなかった。
きょうめぐみが情夫のために身に着けた服は、去年の結婚記念日に買い与えた、濃い紫のスーツだった。
この服を着て、あのひとの娼婦になりたい。
夕べそう告げた妻のことを、優一はひと晩じゅう愛し抜いてしまっていた。
あのひととデキちゃってから、貴方強くなったわね。
自分の腕の中で妻がそう呟くのを、優一はセックスを愉しみ抜いた後の静かな充足感のなかで聞いていた。
セックスが強くなっただけではない、メンタルも強くなったのね。
言外に妻がそういっているのを、聞いたような気がした。

いつまでも人さまの家を、妻の情事のために使わせてもらうわけにはいかないとおもった彼は、吸血鬼を自宅に招いた。
勤務時間を抜け出して愉しむ、つかの間のひと刻。
そこで彼は自分の妻が別の男に辱め抜かれる姿に耽溺し、独り愉しみながら自室のじゅうたんを濡らしていった。

娘が毒牙にかかったのも、彼の知る前のころからだった。
「ほんとうはこのかたのために、私の処女も捧げたい気分だったの。
 でももう、あなたと結婚した後でしょう?捧げたくても捧げられないから、優香に代役を頼んだの。
あの子、二つ返事で引き受けてくれたわ――

めぐみがそう告げたとおり、優香はいま、優一の傍らで気絶している。
ひざ小僧まで引き伸ばして履いた、真っ白なハイソックスのふくらはぎを紅く染めて――
全裸の優一は、通勤用のハイソックスだけを身に着けていた。
濃紺のストッキング地の薄いハイソックスは、妻のストッキングと同じようにくまなく咬まれ破かれて、
半ばずり落ちたまま、脛に残っている。
男のハイソックス。妙jに色っぽいんだよな――
吸血鬼はそういいながら、薄地のハイソックスの舌触りを愉しみながら、唇をねっとりと這わせてきた。
妻のめぐみが、乞われるままにストッキングを脚に通して逢いに行く理由が、わかったような気がした。

バランスが良いね、と、吸血鬼がいった。
奥さんのストッキング。娘さんのハイソックス。あんたの薄手の長靴下。
奥さんの熟れた人妻の生き血。娘さんのきれいな処女の生き血。
寝取られ亭主殿の働き盛りの血も、捨てたもんではないからね。

ふたたび覆いかぶさってきた吸血鬼が、優一の頭を撫でまわし、首すじにつけた傷口をさらに深々と抉ってゆく。
ちゅうっ・・・と吸い上げられる感触に、優一は随喜の慄(ふる)えをおぼえた。
さっきまで妻の素肌を這いまわった唇が、ひどくなまめかしく感じられた。

吸血マンション ~弐号室~ 住人 丹川優一 めぐみ 優香(3)

2019年10月21日(Mon) 06:11:14

あしたの午後。
勤務中にちょっとだけ時間を作って、小生の宅にお越しください。
玄関に鍵はかけないでおきますから、ご自由にお入りください。
家内もろくろく、応対はできないと思いますが――
あとはお二人で、話をされると良いと思いますよ。
もちろん無理にはおすすめしませんが。

市間々の言う通りに、丹川は勤務先を抜け出して、自宅の隣家である彼の家の前にいた。
なかに入るのに、ちょっとだけ勇気が要った。
けれども、意外なくらいにすんなりとドアノブをまわし、中に入ってしまっていた。



初めて貞操を奪われた日のことは、いまでも鮮明に憶えている。
市間々夫人はちょっぴり意地悪そうなほほ笑みを浮かべて、彼のことを引き合わせた。
――こちら、わたくしの愛人ですの。吸血鬼で、若い人妻の生き血を欲しいと仰るので、それであなたのこと招んだのよ。
あわてふためく間もなく、だしぬけに抱きすくめられ、首すじを咬まれてしまっていた。
「あァーッ!」と思いきり叫んでしまった後、しばらくのあいだの記憶が飛んでいる。
われに返ったとき、さっき自分を咬んだ吸血鬼は、市間々夫人を抱いていた。
夫の初七日に装った喪服を着崩れさせて、露わになった乳首を口に含ませて、市間々夫人は悦に入っていた。
首すじからは吸い残された血潮がしたたり、ブラウスの襟首を汚していた。
丹川の家とさして変わらない俸給で質素な生活をしていたはずの夫人は、
値の張りそうなブラウスを汚されても、まるで顧みていないようすだった。
ひざ小僧の下までずり降ろされた、破けた黒のストッキングが、ふしだらな皴を寄せていて、
夫人がとうの昔に堕落しきってしまっていることを物語っている。
自分の穿いているストッキングも、同じようにあしらわれる――めぐみはそう直感して、身を固くした。
市間々夫人を抱きすくめていた吸血鬼がコチラを振り向くのが、同時だった。

ああっ、やめて、やめてえっ!
めぐみは泣きじゃくりながら喪服のブラウスのボタンをはずされ、
ブラウスをそぎ落とすようにして胸元から取り去られていった。
ふくらはぎに咬みつかれ、市間々夫人のストッキングと同じようにむざんに咬み破かれながら、引きずりおろされて、
ショーツを脱がされた股間にまさぐりを入れられたときにはもう、理性を喪失していた。
わが身をめぐる熟れた女の生き血が、相手の男の喉をゴクゴクと鳴らすのを耳にしながら、めぐみは犯された。

それから数日は、放心状態のまま過ぎた。
夫はなにも気づいていない様子だった。
夫婦の営みは、その間ずっとなかった。
年頃になりかけた娘の目を気にして、そういう機会を意図的に避けていたのだ。
むしろそのことが、身体に刻印された秘密を探り当てられる危険から遠ざけてくれたことを、めぐみはひそかに感謝した。
そして勤めに出てゆく夫と、登校していく娘を送り出して自由の身になると、
気がつくといそいそとおめかしをして、隣家のドアをたたいていた。
そこではすでに先客が、その家の主婦を押し倒していて、
めぐみはその次に待っている凌辱を、ためらいもなく受け容れていた。
市間々夫人と二人肩を並べて、代わる代わるよそ行きの衣装を堕とされ、ストッキングを穿いた脚をいたぶられるのが、日課となっていた。

その日も夫を送り出してしばらくすると、めぐみはよそ行きのスーツに着かえて、市間々の部屋のドアを開いていた。
市間々夫人は夫婦の床のうえでへらへらと笑いこけながら、吸血鬼とまぐわっていた。
もはやなにも隠し立てをする必要のない関係になっていた。
めぐみは、市間々夫人の血に濡れた唇で自分の唇を覆われるのを感じた。
いつものように積極的に吸い返してやると、市間々夫人の血潮の芳香が、甘酸っぱく鼻腔に満ちた。


玄関をノックしようとした手を引っ込めて、丹川はそのままドアノブをまわした。
ドアはすんなりと開いた。
玄関の向こう側は、外気とは別の種類の空気が、饐えた匂いを漂わせている。
リビングのじゅうたんのうえに、市間々夫人が長々と寝そべっていた。
首すじから流れた血が、見慣れた地味なカーディガンにも点々と散っていた。
ひざ丈のえび茶色のスカートは腰周りまでまくり上げられていて、
引き破かれた肌色のストッキングはひざ下までずり降ろされている。
目のやり場に困った丹川は、ふと奥の部屋に視線を転じた。
市間々夫人は正気を喪っていたが、外部からの侵入者の気配を感じるとふと目線をあげて、丹川を見た。
夫人は白い歯をみせてニッと笑い、アラ丹川さんの旦那様ようこそ、と、呟いた。
そして悪戯を見つけられた悪童のような、照れくさそうな笑いを浮かべて目を瞑った。

動かなくなった夫人の姿に促されるように、丹川は隣室を覗き込んだ。
視てはならないものを視た――
そう思った。
妻のめぐみの肢体が、市間々夫妻の床のうえで、自分以外の男の肉体と戯れていた。
迫られた挙句の情事であることは明白だったけれども、
その情事を重ねた末に、妻もまた愉しみはじめてしまっていることも、同じくらい明白だった。
手足をからめ合い、息を弾ませあって、唇と唇を熱っぽく重ね合わせていた。
妻はふとこちらを見、あわてたような顔になって一瞬身を固くしたが、
それでも止まらない男の動きに、自分の腰の動きを重ね合わせてゆく。
もう視られても構わない――そんな態度だった。
とっさに怒りに腹が冷えたが、つぎの瞬間股間が熱く昂るのを覚えた。
十年以上連れ添ったはずの女は、それくらいに卑猥極まりない振舞いを、ひとの家の床のうえで果たし抜いてしまっている。


十数分後。
すこしだけ待ってほしい。
妻を犯している男はちょっとだけふり返って、そういった。
身づくろいをする間くらいは、待ってやろうと思った。
同時に、情事を済ませて身づくろいをする妻の様子を目にするのも憚られた。
いったん身を引きはしたものの、女も男もなかなか部屋から出てこようとはしなかった。
ばかね。
背後で市間々夫人の声があがった。
冷ややかそうで、同情のこもった声色をしていた。
も少しだけ、見逃しておあげなさいよ。奥さんまだ若いんだから。
ふふふ・・・
市間々夫人は、意地悪そうに笑った。
ふすまの向こうからは、不貞をはたらく男女がふたたび、組んづほぐれつしている気配が伝わってきた。
丹川はふたりが満足するのを待った。股間がどうしようもなく熱くなっているのを、ひた隠しにしながら。


奥さんをお借りしています。
吸血鬼は悪びれずに、そういった。
娘さんに聞こえないように楽しみましょうよ――そういったら奥さんは同意してくれました。
賢いご婦人ですね。
娘さんがお年頃になると、ご夫婦の営みもしづらいことでしょうな、お察しします。
けれどもね、奥さんも女ですから――ご不自由なぶん、私が場を作って差し上げました。
時おり貴方も、お勤めから抜け出して見えられると良い。
いっしょに愉しみましょう。
こちらのお宅のご主人も、時おりそうしていらっしゃいますからね・・・

あなた、ごめんなさい。
妻のめぐみは、さすがに蒼ざめながら、謝罪の言葉を口にした。
けれどもしおらしく造られたその表情の裏側に、確固とした意思があるのを、丹川は直感した。
許してくれなくてもいい。それなら離婚してでも、私はこの人と添い遂げる。
でも今なら、私も妥協してあげる、貴方の顔を立てて、私の浮気を許すチャンスを与えてあげる――妻の顔にはそう書いてあった。
妻の顔に書かれた、自分のために用意された科白を棒読みするように、丹川は呟いていた。

家内がお世話になっています。
息抜きのひと刻を与えてくださっているようで――
わたしも目が覚めるような気分です。
お申し出には賛成です。
といいますか、改めてわたしのほうから、お願いさせて下さい。
知らないうちに奪られてしまった・・・というよりも、そのほうが納得がいきますので。
家内の貞操を、貴方様に無償でお譲りいたします・・・

吸血マンション ~弐号室~ 住人 丹川優一 めぐみ 優香(2)

2019年10月21日(Mon) 04:17:34

秘書室は美人ぞろいでしたからね、もともと彼に狙われていた子も多かったんです。
それで、役目柄ぼくが、彼女たちとの仲を取り持ってやったんです。
けっきょく、秘書室の子は全員、血を吸われちゃいました。
それがぼくの業績といえば、言えなくもないんですが・・・
でも基本的には彼女たちが美人だったからお目にとまっただけで、ぼくはちょっとお手伝いをしただけ――
それが今度は、家内の血も吸いたいって言われたんです。
いわば家内も秘書さんたちと同列に視てくれたわけで・・・それで、その時もお手伝いをすることにしました。
応援してあげたくなっちゃったんですね、家内に対する彼の恋を。
もちろん、単なる性欲を満足させるためだけだったのかもしれないけれど、ぼくにとっては大切な家内ですから――
他人事にはしていられませんでした。
それで、ぼくの血を全部吸い取ってもらって、いちどお墓に入ることにしたんです。
家内もぼくがいたら、吸血鬼との恋なんてしづらいだろうって思ったんですよ。

ですから、家内が初めて犯された”決定的瞬間”なるものは、視ていません。
視ないほうが良いのだって、言われました。
だって、吸血鬼に血を狙われてるんですよ。
さいしょのときは、悲鳴をあげて逃げまどったり、泣きじゃくりながらねじ伏せられて服を剥ぎ取られたりするんです。かわいそうじゃないですか。
もちろん今では、そうはいってもぼくのために定説を必死で守り抜こうとしているところを、見守ってやるべきだったかも・・・って思うことはありますが。
それはすべてがめでたく成就した後だから、そう思えるものなのかもしれないですね・・・

奥さんのことは、うちの家内が取り持ったんです。どうもすみません。
でも家内も、悪気があったわけではないんですよ。
自分の身に起こった愉しいこと、嬉しいことを、親しくしていただいている奥さまに、素直に伝えたかっただけだと思うんです。
貴方にも――吸血鬼に奥さんを寝取られたことを、誇りに感じてもらえると嬉しいんですがねえ。

市間々さんは、そのときのことをよどみなく語った。
それにしても。
市間々さんの場合は、かりにもご主人がなくなった後という”自由の身”という立場が、奥さんの背中を押したのかもしれない。
けれどもめぐみの場合、わたしという夫がいながら不貞を働いたのである。
さいしょは強いられた行為だったかもしれないが、二回目以降は自分の意思で逢っている。
そこがどうにも、不当な仕打ちを受けたという気がしてならなかった。

奥さんを責めてはいけません。

市間々さんは、わたしの心のなかを見とおすようなことをいった。
いっそ、かれにぶつけてみたらどうですか・・・?と。

吸血マンション ~弐号室~ 住人 丹川優一 めぐみ 優香

2019年10月19日(Sat) 16:35:50

勤め先で打ち合わせをしている最中に、法事帰りの妻は隣家で吸血鬼に犯されていた――

マンションでお隣のご一家は、吸血鬼とトラブって家族が崩壊したと聞く。
妻のめぐみが、そういっていた。
まさかそれを口にした本人を発端に、我が家も似たり寄ったりの運命をたどろうとは、
そのうわさ話を横っ面できいていたわたしはもちろんのこと、
うわさ話をしかけてきためぐみ自身さえも、夢にも思わないことだった。

手引きをしたのは、お隣の奥さんだった。
奥さんはご主人を吸血鬼に吸い殺されて、
まさか吸い殺した本人とは知らずに接近してきた吸血鬼と、良い仲になっていた。
未亡人なのだから、だれもとやかく口出しはするまい。
そこまでの黙契さえ、なかったように思う。
だれもがだれもに対して無関心なプライベート空間。
それがマンションと呼ばれる住居の本質なのだから。

めぐみは血を吸われることにすぐに耽溺してしまい――彼らにしてみれば相性が良いという言い方になるらしい――たったの数日後には、娘の優香を引き合わせてしまっていた。
そんなわけで、わたしが妻の様子をおかしいと感じるようになった時には、妻と娘のすべてを奪われてしまったあとのことだった。

家に電話をしても、すぐに電話口に出なくなった。
休みの日でも外出をくり返し、隣家にお邪魔している時間が特に長い。
周囲からの情報との本人の言うこととが、いちいち食い違う。
街で男に伴われて歩いているところを見かけたと人に言われ問い質しても、その日は一日家にいたと言い張るばかり。
そのくせ、勤務時間中に少なくとも5回は鳴らした電話に、彼女は一度として出なかった。
なによりも。
服装がどことなく、派手になった。
化粧もほんのりと、濃くなった。
タンスの引き出しの奥に隠し持っている真っ赤なスリップは、わたしにはまるで見覚えがなかったし、
休みの日に独りいそいそと出かけていったときには、一見地味な肌色のストッキングに、つややかな光沢がよぎっていた。

きょう切り出そうか、明日にしようか・・・と思いまどっているときに。
隣家のご主人に誘われた。
いちどは吸血鬼に吸い殺されたといううわさだったのに、彼はいつの間にか家に戻っていて、
なにごともなかったかのように勤務に戻っていた。
ちょっと、面白いものを観に行きませんか?
部屋が隣で出勤時間が似通っていたとはいえ、部署も違い接点も少ない彼とは、顔を合わせれば会釈する程度の間柄。
まさかお互いの妻が共通の愛人を抱えているなどとはつゆ知らず、
わたしはなんとなく気づまりを覚えながらも、気の乗らない彼の誘いを断る勇気を持たなかった。

連れていかれたのは街はずれの、古い洋館だった。
なにかの資料館なのだろうか。表の表札は夕やみにまぎれてつい見落としてしまったけれど。
施錠もされておらず広いエントランスを持ったこの洋館は意外に気分のよい空気を持っていて、
訪問客を歓迎していることをその空気が語っているようだった。
「ほら、御覧なさい。200年前に実用されたドレスだそうですよ」
お隣のご主人――市間々さんは、古いものに対する意外なくらい深い造詣を披露しながら、ゆったりと広間や廊下をめぐって、展示されている調度について語ってくれた。
見てくれは謹厳そのもの、それは帰宅してからとそれ以前とでも、まったく変わりはなかった。
いたって無趣味にみえる彼は、いったいどこでこれほどの知識を身に着けたのだろう?
訝しいと思う遑もなく、彼は一つのガラスケースにかがみ込んで、目を細めた。

「御覧なさい。裂け方がなんとも言えず、粋でしょう?」
指さしたガラスの向こう側には、婦人用の様相の喪服が引き裂かれた状態で一着分、飾ってあった。
元の持ち主の姿をなぞったかのように、大の字に伸びた姿勢を取っていて、
チリチリに裂けた黒のストッキングまでもが、脚の位置をなぞるように配置されていた。
「これは・・・なんとも悪趣味ですね」
わたしが顔をしかめると、彼はおだやかに微笑みながら、いった。
「そんな風におっしゃらないでください。じつはこれ、家内の持ち物なんですよ」
え?と訊き返すわたしにこたえずに、彼は流れるような調子で、低く落ち着いた声色であとをつづけた。
「家内のものなんです。わたしを土葬にした後本堂に呼ばれて、そこで襲われたんですよ。
 前から狙っていたんだそうです、家内のことを。
 それに、ストッキングを穿いた脚に咬みつくのが好きで、
 わざわざ家内に黒のストッキングを穿かせるだけのために、わたしの血を全部吸い取ったんですからね」
信じがたいことを淡々と語りつづける彼は、それでも彼に対して怒ってはいない、とわたしに告げた。
むしろ、いままで体験したことのない歓びを、彼は与えてくれました。
血を吸われる歓び。血を吸う愉しみ。わたしはそのどちらも味わうことができているのです。
それともうひとつ。
妻が犯されるところを覗く愉しみ――
これ、覚え込んでしまうともう、抜け出すことができなくなるんですヨ。
ふふふ・・・といかにも愉しそうに、彼は哂った。
そして、隣のガラスケースに歩みを進めると、ケースの陳列物を指さして、言ったのだ。
「御覧なさい。こちらは、貴方の奥さまの持ち物です。一式綺麗に飾られていますね。
 裂かれ方が、粋でしょう?」
自分の妻のものを紹介したのと同じくらい、乾いた声色だった。

吸血マンション ~壱号室~ 住人・市間々茂樹 和代 栄樹

2019年10月18日(Fri) 09:43:28

「きみの奥さんに、黒のストッキングを穿かせたい」

男はそういって、ニッと笑った。
たちのよくない笑みだった。
「今夜かあす、黒のストッキングを穿いた脚を咬みたいのでね」
そういって笑んだ口許からは、人間離れして尖った犬歯が覗く。
彼はこの街にいくたりも棲息する吸血鬼のひとりだった。

吸血鬼と差し向かいになっているのは、背広姿の中年男性。
いかにも物堅い勤め人という身なりだった。
じつは吸血鬼もまた、まったく同じくサラリーマンの格好をしている。
この街の怖いところは、そうした吸血鬼が、一般人と見分けのつかない状態で、日常生活にまぎれ込んでいることだった。

「エ・・・黒のストッキング・・・ですか。それに・・・咬みたい・・・と?」
中年男性は、困惑しているようだった。
傍らにある彼のデスクは、ほかの者とは別格に、部屋の中央に前向きにしつらえてあって、
部下たちの横顔を見おろしながら指図する位置にあった。
デスクのうえには昔の事務所らしく、横長の名前入りのネームプレートがおかれてあって、
「秘書室 審査役 市間々茂樹」
と、肩書と名前とが二行に分かれて書かれてある。
この事務所ではナンバー・2の地位を帯びたその市間々氏が、いまはだれもいない真夜中の事務室で、吸血鬼相手に当惑している。

「きみには若い女の部下をなん人も紹介してもらって、ずいぶん面倒をみてもらっている。感謝しているよ」
吸血鬼はもの柔らかにいった。
「おかげできみの部下は一人残らず、血を吸わせてもらった。
 けれどもまだ、きみの紹介できる女で、まだその首すじにわしの牙を試しておらぬおなごがいる。
 ほかならぬ、きみの奥さんだ。わかってくれるね?」
「あ・・・はい、家内をお望みでいらっしゃいますか・・・」
「そう、それも黒のストッキングを穿かせたい」
「わたしから、よく言い含めておきます」
「それだけでは足らぬ」
「と、おっしゃいますと・・・?」
「あすの夜は、きみの通夜だ。奥さんには、本物の未亡人になっていただく」
「えっ」

自業自得といえばそうだった。
彼は職場での立場を良いことに、役目柄懇意になった吸血鬼のために、部下の女性を引き合わせ、
一人また一人と、その毒牙にかけていったからだ。
彼女たちはいまでも健在で、ただし以前よりは少しばかり顔色を悪くして、感情を消した顔つきで勤務を続けている。
市は、先年から、吸血鬼と人間との共存をうたい、両者の和合を求める政策を打ち出していた。
どこの会社も一定数の吸血鬼を引き受けて、女性社員や社員の家族の血液を、定期的に提供するようになっていた。
管理職としてはかなりグレードの高い市間々は、むしろその役割を積極的に引き受けて、
社員が退勤した事務所に独り残された女性社員が襲われる光景を愉しむのを日課としていた。
彼女たちは例外なく、声もなく追い詰められて首すじを咬まれ、
眉をピリピリとひそめながら、制服のブラウスを朱に染めてゆき、
床に倒れ伏してしまうと今度は、色とりどりのストッキングを咬み破かれながら、ふくらはぎから吸血を受けるのが常だった。
吸血鬼は、ストッキングを穿いた女性の脚に咬みついて吸血することを好んだのである。

それが、とうとうこんどは、妻の番である。
あるていど覚悟はしていたし、妻にも言い含めてはあった。
妻もまた、仕方のないことですから、なにも感じたりはいたしませんから、と、夫に応えていた。
なにも感じない――
有夫の婦人(ないしはセックス経験のある女性)が吸血されるとき、決まって性交渉を伴うことを言外に秘めていた。
すでにもうじき中学という息子がいる齢の妻であったが、まだまだ若さも色香も秘めており、
年頃になりかけた息子の目のないところでの夫婦の営みも、まだ週に1、2回は遂げられていた。
無意識にか意図的にか、市間々は職場に出没する吸血鬼の注意を自分の家族から遠ざけて、
もっぱら若い女性社員にのみ注がせるように仕向けていた。
しかしそれももう、むなしい努力におわった。
「わしのために、いちばん美味しいねたをさいごまで取っておいてくれたのだろう」
どうやら目の前の吸血鬼は本気でそう思っているらしく、良く輝くその瞳は、感謝と好意に満ち溢れていた。
もはや、逃れるすべはなかった。

けれどもーー
かれの言った「本物の未亡人」という言葉に、市間々は引っかかりを感じた。
「そろそろ交代の時期だということだよ、市間々くん」
吸血鬼はまるで、市間々の上司のような口調になって、市間々との距離をさりげなく縮めた。
市間々は吸血鬼ににじり寄られたぶんだけ無意識に身を引くと、
「いったい、どういうことなのですか!?」
と、やっとの思いで訊いた。
「言ったとおりの意味だ。きみには死んでもらう。そして明日からはわしが、きみの奥さん―和代さんだったな――
 その、和代のあるじとなるのだ」
人の妻を呼び捨てにしておごそかにそう宣言すると、吸血鬼はさらに市間々との距離を縮めた。
市間々は吸血鬼が、女だけではなく男の部下までも襲い、その妻や娘、婚約者を次々とモノにしていることを知っていた。
男の血も吸うけれど、あくまでも養分の摂取としての意味しか持たない。
そうして獲られた養分は、その妻や娘を襲ってねじ伏せるときのパワーとなって還元される。
追い詰められた壁際にギュッと抑えつけられて、この力はいったいどこから由来するのかと、市間々はふと考えた。
昨日襲われた桜井さゆり君からか。彼女はまだ新人だった。
そういえば今朝、事務所にふらっと現れたとき、ベテラン女性の鷺沼加代子もまた、別室に連れ込まれていた。
お局様でとおった鷺沼加代子が昼前に早退したくらいだ。かなりの血液を摂取されたに違いない。
やり手でっ通った加代子の、自信に満ちた日頃の笑みが、市間々の脳裏を刺す。
目のまえに迫った牙の持ち主が吸血鬼なのか、加代子なのか、ふとわからなくなった。

「お願いです、命はお助けを。いままでだれの命もお取りにはならなかったはず。
 家内との関係ですか?わたしはかまいません。家内を貴男に犯されても我慢します。黙認します。
 家内にもよく言い聞かせてあるんです。
言い募る市間々の様子を、吸血鬼は明らかに愉しんでいた。
「さすがに根回しの良いことだね、審査役殿」
吸血鬼は市間々をからかいながら、むき出した牙を市間々の首すじに深々と埋めた。
「ぎゃあっ」
背骨が折れるほどの抱擁と、牙の痛みとが、同時に市間々を襲った。

寄り目になってぶっ倒れた市間々の死に顔は、どこかユーモラスでさえあった。
吸血鬼はせせら笑いながら、呟いた。
「真面目なきみに、自分の妻を抱かれる苦痛など、与えたくなかったのだよ。
 それに奥さんだって、きみがいながらわしに抱かれるなどという芸当のできるタマではなかろうに」

――――――

慌ただしいまる一日が、やっと過ぎた。
きのうの朝は、夫の死体が事務所で発見されたという一報に驚かされて、
そのあと遺体との対面、吸血行為による失血症という診断書を見せられた。
弔いの支度一切は、夫の勤め先がめんどうをみてくれた。
「わが社で死人が出たのは初めてですな」
だれもがそんなふうに、まるきり他人ごとのようにそう言い交わしているのが、
麻痺しかかった鼓膜にも響いてきた。
一連の弔いは慌ただしく過ぎていって、夫は当地での最近の習わしとして、土葬に付された。
「そのうち、地面の下から奥さんに逢いに、起き上がってくるかもしれませんよ」
夫の上司の秘書室長は、穏やかな口調で和代にそういった。
慰めているのか、世間話をしているのか、単なる冗談なのか、よくわからない口調だった。
そして、本堂で貴女に話のある人がいると、室長は告げた。
息子さんは疲れているだろうから、先に帰らせておやりなさい、と、室長は忘れずにつけ加えた。

息子の栄樹を先に帰らせると、和代はさっきまで弔いが行われていた本堂に戻っていった。
すでにすべては片づけられたあとで、がらんどうの本堂がそこにあった。
相方が待っているというのは、本堂そのものではなく、そのわきの小部屋のようだった。
そのひとつのふすまが、和代を誘い込むように、半開きに開かれている。
その半開きのふすまの間から、黒の紋付を着た婦人が一人現れ、
悩まし気な顔つきをしながら襟足を整えると、足早に立ち去っていった。
住職の奥さんかな、と、和代はおもった。
入れ違いになるのもなんとなく憚られて、和代はひと呼吸おいてから、ふすまの向こうへと、黒のストッキングの脚を踏み入れた。
和代が気づかいしたほんのひと呼吸のあいだ。
小部屋にいた吸血鬼は、相手をしてくれた住職夫人から吸い取った血液を、
彼女からせしめたハンカチで綺麗に拭い取り、なに食わぬ顔つきに立ち戻っていた。

「このたびはまくとに・・・」
型通りのあいさつを、和代は虚ろな気分で受けた。
ご主人とは日頃から懇意にして頂いていたと称する目のまえの男とは、面識がなかった。
だから、彼の発する紋切りで長々とした挨拶から早く解放されたいという想いしか、湧いてこなかった。
男のほうでは、まるで真逆の気分だった。
たまには熟した女も悪くはない。
きのうまで女の部下をあっせんしてくれていた便利な相方の女房は、
彼の無慈悲な瞳には、ただの獲物としてしか映らなかった。
直前に住職夫人の血を味わったのも、知人の妻であるきょうの獲物を、余裕をもって長時間いたぶりたいがためだった。
決して、性急な食欲を見せつけて、初めての相手をうろたえさせまい・・・などという気づかいから来るものではなかったのである。

「ところで、ご主人から聞いていなさるとは思うが、わしは吸血鬼だ」
えっ・・・?
女がうろたえたのを、吸血鬼は敏感に察した。
そしてこの女が、自分のことをあまり亭主から聞かされていなかったのを悟った。
ゆくゆくは自分の妻の番がまわってくる・・・とは理解していながらも、まだまだ先のことだと思い込んでいたのだろう。
哀れなやつ。
土の下に埋められた男を思いながら、吸血鬼はほくそ笑んだ。
「そういうわけで、きょうはあんたの血を愉しませていただく」
女がうろたえて座布団のうえで後じさりするのと、男が腰を浮かすのとが、同時だった。

ああーッ!
半開きになったふすまの奥から、悲痛な叫びが本堂にこだました。
けれども、住職夫妻をはじめ、寺に残っているであろうだれもが、哀れな犠牲者に応じることはなかった。

初めて咬まれた首のつけ根が、じんじんと疼く。
その痺れるような疼きは、理性までをも痺れさせてゆくようだと、和代はおもった。
撥ねた血がかろうじて、喪服のワンピースの襟首を浸す一歩手前でとどまっていた。
和代は傍らに転がったハンドバッグを開けて、なかからハンカチを取り出すと、
吸い残された血潮をせわしなく拭き取った。
そのあいだに、男は和代の足許にかがみ込んでいた。
なにをされるのか。
考えている余裕を、相手は与えてくれなかった。
ぬるっとした生温かい唇が、ストッキングのうえから吸いつけられるのを感じた。
あ・・・!嫌ッ!
潔癖に吊り上げた眉がピリピリと震えるのを、やつは面白がって視ている。
それが、ありありとわかった。
男はいったん離した唇を、ふたたび足許に這わせてきた。
今度は、これ見よがしに、ねっちりと、まるでストッキングの生地の舌触りでも愉しむかのように、なすりつけられてくる。
な・・・なんてことを・・・
和代はうろたえた。
まさか、主人を襲ったのも、このひと・・・?
かすかな疑念が鎌首をもたげた。
それを封じるかのように、こんどは上体に覆いかぶさってきた男の呼気が、和代の唇をふさいだ。
うっ・・・
むせ返るような男の匂いに、嫌悪の情が電流のように身体の芯を貫いた。
「はは、そう嫌がるものではない」
男は余裕たっぷりに、きょうの獲物をたしなめた。
「おやめになってください!夫を亡くしたばかりですの」
「存じておる。ご主人とは懇意の仲であった。わしも残念でならぬ」
「まさか・・・まさか・・・主人を殺めたのは貴男様では!?」
「だとしたらどうする」
「そんな・・・そんな・・・」
「安心せよ」
男は和代の疑念を否定も肯定もせず、ただひたすらに、女の唇を賞玩した。
「おやめになってください!」
和代は唇を振り放すようにして、叫んだ。
助けは、どこからも現れなかった。
どうしても、自分ひとりの力で、この男と話をつけるしかない――そう自覚すると和代はいった。
「どうすればお気が済まれるのですか」
「いましばらく、愉しませていただく」
男はみじかくそう告げて、なおも和代の唇をいたぶり、喪服のワンピースをこともなげに裂き散らすと、
あらわになった胸元を隠そうとする手を払いのけて、乳房をもてあそび、乳首を口に含んだ。
「嫌!嫌!嫌!」
和代はあくまでも、抗った。
夫と自分自身の名誉を、なんとしても守り抜かなればならないと思った。
けれども、それを独力で?圧倒的な吸血鬼の本気のアタックを、しのぎ切れるとでも思って?
自問自答しながらのせめぎあいが、しばらくつづいた。
「ご夫人はなかなか手ごわい、貞操堅固でいらっしゃるのだな」
男は、和代を抑えつけながら、いった。
「お許しください、主人のお友達なら、主人に恥を掻かせるようなことを・・・よりにもよってこのようなところで・・・」
歯を食いしばりながらも、涙ひとつ見せない和代を、吸血鬼は立派だと思った。
たぶん、夫と同じくらい生真面目で、責任感の強い女なのだろう。
やはり、夫が存命のまま襲うわけにはいかなかったのだ。わしのしたことは正しかったのだ。
吸血鬼は独り合点でそう思い、和代を力づくでねじ伏せつづけた。
再び首すじに刺し込んだ牙が、皮膚を破り、奥深く埋め込まれ、さらに強いほとびを帯びた血潮を、どす黒く噴き上げさせる。
ごくっ、ごくっ。ごくっ・・・
40前の主婦の血液が、貪婪に摂取されていき、和代の控えめな目鼻立ちに、死相が漂いはじめた。

和代は先に家に帰した息子のことを思った。
来年は、私立の中学を受験させようとしていた。
田舎町としては名門で、そこの学校に子どもを通わせることは、当地の上流階級の親たちにとっては、ひとつのステータスになっていたからだ。
夫はその姿を見ることはできない。ことによると私も、夫と同じ目に遭わされる。
そんなわけにはゆかない――妻であることは喪ってしまったとしても、母親であることだけは・・・
和代はあお向けに抑えつけられた格好のまま、涙にぬれた瞳を見開き、目のまえに息荒く迫った男をまともに視た。
「御意に従います。ですから、無事に家に帰してください」

――――――

家に帰りついた時には、疲れ切っていた。
幸い息子の栄樹は勉強部屋にこもっているらしく、玄関にも居間にも、姿を現さなかった。
住職夫人が喪服の着替えを用意してくれた。
きちんと畳まれた洋装の喪服を両手で捧げるように携えてきた夫人は、表情を消して、
「このたびはお目出度うございます」
と、堅い口調で和代に告げた。
なにがめでたいものか、と、和代は思い、住職夫人を睨みつけた。
けれども彼女はまったくどこ吹く風で、和代に睨まれていることさえ、気づいていないふうだった。
つい先刻、和代が犠牲となる直前までの赤裸々な情事の痕跡など、さらに押し隠してしまっていた。
このひとはわたしに、吸血鬼との情事のあとのあり方を無言で訓えようとしている――
和代はなんとなく、そう感じた。
引き裂かれた喪服は、吸血鬼が戦利品としてせしめていった。
襲った女性の衣類を戦利品にして、コレクションにするのだという。
和代はその嗜好に言い知れぬいやらしさを覚えたが、住職夫人のまえでそれをあらわにすることはなかった。
無言のまま立ち去ろうとする和代に、住職夫人はいった。
「その喪服は、差し上げます」
和代がびっくりして目を見開いていると、さらにたたみかけるように、いった。
「今度お越しになる時も、着替えは用意しておきます。お代はお受けするわけにはまいりませんので、お気遣いなく」
市長夫人や院長夫人といった名流の夫人たちがこの寺を訪れるときには、
着衣は自前で用意して、お布施と称して気前よく裂き取らせている――
そんなうわさを聞いたのは、この出来事が起きてからしばらく経ってからのことである。

夫婦の寝室の畳に腰を下ろすと、疲れがどっと出た。
吸い取られた血液の量も、ふつうではなかった。
それでも気丈に、鶴のように気高く顔をあげて帰途をがんばり通したのは、女の意地でもあったのかもしれない。
けれどももう、それも底をついた。
夕餉はすでに息子といっしょにお寺で澄ませてきたので、きょうのことはもう何の気づかいも要らない――
そう感じるともう、立ち直ることができなかった。
和代はほんの少しだけ泣き、それから身づくろいを済ませて、そうそうに布団に身を横たえた。


―――

2日後。
和代の姿は、ふたたび寺にあった。
息子には、初七日の打ち合わせだと言い置いて出てきた。
夕食の用意はしてきたので、きっと息子は自分とはろくろく口も利かずに、夜更かしをするか寝てしまうかするのだろう。
気難しい年頃となった息子はもう、母親とは距離を置きたがっていた。
それはいまの自分にとっても、好都合だ・・・そう思いかけて、自分の想いのはしたなさに、和代は人知れず赤面した。
これから、吸血鬼に抱かれるというのに。
夫が亡くなった、すぐあとだというのに。

脚にまとう黒のストッキングが、どのようなあしらいを受けるのか、もはや彼女にはよくわかっていた。
あのとき舌でくまなくいたぶられて、いびつによじれ、ふしだらに波打ち、他愛なく引き剥がされていった。
その行為ひとつひとつに滲んだあの執拗な情念が、いまとなっては、いとおしく感じられる。
体内に脈打つ血液に、牙から分泌された毒をまぎれ込まされたから――
そうとはわかっていても、いまはこの「いとおしさ」を大切に考えよう。
和代はそう割り切ることにした。

「お調べが済んだそうですね」
「ああ、まったくの濡れ衣だった」
吸血鬼はおうむ返しにこたえた。
まるで夫のような口ぶりだと、和代はおもった。
「お調べ」とは、夫に対する殺害の容疑である。
身近にいた吸血鬼として一応疑われ、取り調べを受けたのだ。
取り調べそのものは簡略で、彼の言はすべて受け入れられたという。
「嫌疑が晴れて、ほっとしている。あんたも、相手が夫の仇敵では、気まずいだろうからな」
吸血鬼はにんまりと笑った。
「だいじょうぶですよ」
和代もまた、にこやかに応じていた。
夫の生前のころの快活さを、早くも取り戻していた。
「かりに貴男が犯人でも――」
和代はいった。
「私、証拠を隠滅してでもあなたのことを庇いますから。あなたのものになれて、本当に嬉しい」
和代はそう口走りながら、いまのは自分の本心なのだと感じた。
男が一昨日と同じように足許にかがみ込んできて、黒のストッキングの脚をいたぶり始めても、むしろ積極的に応じていった。
もはやそれは、夫を弔うための装いではなく、新しい情夫に媚びるための衣装になり果てていた。
夫のための喪服は、すでに一昨日引き裂かれて、情夫のコレクションに加えられてしまった。
同じように彼の情婦にされていった女たちの服と、同じように。
私はしょせん、ワン・オブ・オール。
けれどもそうだとしても、後悔はない。
いまこのときだけでも、私は娼婦として、彼の腕の中で生きる。
仮に彼が、夫の仇敵でも構わない。
あなた許して。
こんないけない私を、許してくださいね。
でも今の私は、この人に辱められることが歓び。
貴方の家の名誉を汚すことが、無性に嬉しいの――

――――――

三か月ほど経ったとき。
人々はあの日弔いがあった事実を忘れた。
和代の夫である市間々茂樹が、ひっそりと帰宅したからである。
どこから戻ってきたのか、質そうとするものはいなかった。

未亡人になって吹っ切れた妻の和代は、すでに吸血鬼の愛人となっていた。
生真面目な彼女にとってみれば、夫のいる身であるうちには、不貞など思いもよらぬことだったが、
夫の生前に忠実な妻であったこの女は、今までと同じくらい熱意を込めて情夫に仕え、献身的に尽くすようになった。
再び生きることを許された夫は、以前と同じように勤務に戻った。
表向きは謹厳な勤め人だったが、
そのいっぽうで、自分が公務のなかで懇意にしている人が妻を気に入っていることを誇りに感じていた。
夫を迎えた和代は許しを請い、夫は妻の過去の不貞を受け容れ、明日からの交際までも認めたのだ。
いまでは彼は、息子ともども、妻の情事を盗み見ることに愉悦を憶えている。

夫を一時的に死なせることで、吸血鬼は一家を従順なしもべとして作り変えたのである。

――――――

初七日のあと。
和代は参列してくれた夫の同僚の妻である丹川めぐみを家に招んでいた。
丹川家は和代の住むマンションの二号室の住人でもあった。

法事に出る前の朝。
和代は夫婦の寝室で、吸血鬼と共にしていた床から起きあがると、
恋人同士のように抱き合ってから喪服に着替えた。
「いけない、これからお式だというのに――」
制止する和代のしぐさにむしろそそられた吸血鬼は、彼女の腰に巻いている漆黒のスカートの奥を、粘液で濡らしてしまっていた。
「住職の奥さまとも、まだこんな関係を?」
やんわりとした和代の責めには乗らず、吸血鬼は訊いた。
「なにかたくらんでいるな」
「エエ、熟女の血はお好きでしょう?」
「よくわかっているだろう?」
「ではもうひとり、ご紹介しますわ。私に心当たりがありますの。お隣の奥さんです。
 きょうのお式では、私のすぐ後ろに座っていますから、お分かりになりますわ」

法事のあとの疲れをみせない和代のことを、二号室の主婦である丹川めぐみは訝しんだ。
このところの和代は、やつれを見せないばかりか、夫がいたときと変わりないくらい快活に振る舞うようになった。
決して無理をしているわけではないらしい。
けれどもその快活さの源泉がどこにあるのか、めぐみには見えていなかった。
和代の首すじにくっきりとつけられた、二つ綺麗に並んだ咬み痕は、
このごろお嬢さんみたいに肩に伸びやかに流された黒髪に、すっかり覆い隠されていたからである。

「このたびは主人のことですっかりおせわになってしまって・・・ですからきょうは貴女をねぎらいたかったの」
和代の口許に泛ぶ不吉な薄嗤いをそれと予感しないまま、めぐみはすすめられた座布団に腰を下ろした。
喪服のスカートのすそから覗くふくらはぎは、たっぷりとした肉づきを持っていた。
脛の白さが黒のストッキングの薄い生地に透けて、しなやかな筋肉の起伏を微妙な濃淡で彩っている。
――あのひと、満足できそう。
和代は親し気な笑みに隠して、ひそかにほくそ笑む。

十数分後。
「あ、あァーッ!!」
微かな悲鳴が和代の鼓膜を小気味よくつんざき、やがて語尾を弱めてかき消された。
そしてその声は、隣室で母親の帰りを待つ少女の耳には、届くことがなかった。

犯すもの 犯されるもの

2019年10月05日(Sat) 21:34:05

6畳間の薄暗がりのなか。
切迫した声にならない声、うめきにならないうめきが立ち込めていた。
それらがいっしょくたになって、激しい息遣いのままセイセイという吐息ばかりが耳についた。

6畳間に7人は狭すぎる。そう思った。
わたしは長女を、相棒はその母親を畳の上に抑えつけていた。
腕づくで肩を抑えつけ、首すじにかじりつくようにして、まだ生え切らない牙でガブリと食いついていた。
じゅるじゅると汚い音を立てて啜りあげた血は、うどんみりとした温もりを帯びていて、持ち主の熱情を伝えてきた。
十代の少女の健康で清冽な血潮が、いまわたしの干からびた血管を廻りはじめている。
傍らでは相棒が、わたしと同じ経緯で(何しろやり方は彼が教えたものだから)、その母親のうなじを抉っていた。
ゴクゴクと大げさな音をたてて貪っているのは、「お前も遠慮なく飲(や)るが良い」と伝えたくて、わざと聞こえよがしにしているのだろう。
そんなことさえわかるほど、彼とわたしとは通じ合っていた。

娘の父親で母親の夫である男は、押し入ってきた招かれざる来客に不意を突かれて、真っ先に首すじを抉られていた。
相棒の仲間2人がかりだったから、かなうはずがなかった。
身じろぎひとつできないほどの失血に侵されながらも、まだまだとばかりに、緩慢に血を吸い取られつづけている。
この薄暗い6畳間で息を弾ませ合っているのは、
妻と彼女を犯しているわたしの相棒、
娘と彼女を愉しんでいるわたし自身、
それに夫と彼を襲う二人組。その7人だった。

彼が自分の負傷以上に、妻や娘の運命を気にしていることは間違いなかったし、
わたしも道場を覚えていた。
つい最近、彼の立場を体験したばかりだったから。
少し過激すぎるのでは・・・?
言いかけたわたしを察するように、相棒はいった。
「じきに慣れるって」
たしかに・・・現に慣れ切ってしまっている自分にしょうしょう赤面しながら、わたしはもう一口、少女の血潮を吸い上げていた。

「血を摂れれば文句はない、死なせはしないから」
だんなを脅しつけている仲間が、こちらにも聞こえる声でそう告げた。
襲われている2人の女にも聞こえる声だった。
「代わるぞ」
相棒がいった。
「OK」
わたしもこたえた。
2人は同時に犠牲者の上から起きあがり、獲物を取り替えてのしかかった。
娘の絶望したようなうめきが、哀切に響いた。
「奥さん失礼、少しの辛抱です」
娘とは初対面だったが、妻のほうとは面識があった。
だって、襲った家は勤め先の同僚の家庭だったから。
奥さんはわたしの正体に気づくと、アッと声をあげた。
抗おうとした腕は重く、彼女の意思を反映しなかった。
着乱れたロングスカートを太ももまでせり上げて、むき出しの太ももを重ね合わせる。
もはや、血よりもそちらのほうが、目当てになりつつあった。
相棒も、同じことを考えているらしい。
娘の歯ぎしりが、悔し気に響いた。
逆立つほどに勃った一物が、奥さんの太ももをすべった。
ぬるりとした粘液が、奥さんの素肌に這っているのを感じた。
いちど男の一物を受け容れてしまった局部は濡れていて――奥さんの名誉のためにいえば、それは好色だからではない。意思に反して冒されるとき、不慮の負傷から守るための本能に過ぎない――猛り立ったわたしの一物も、すんなりと収まった。
突き入れたものが秘所の火照りに包まれるのを感じながら、わたしはぎごちなく妻以外の女との行為に入り込んだ。
擦れ合う太ももの間に、先着した相棒の粘液を感じた。
この粘液が一週間前、妻の秘所を犯した。
いまはわたしも、妻を犯した男と同じ愉悦を、愉しみ合ってしまっている――
サディスティックな振る舞いに、マゾヒスティックな歓びが重なり合って、わたしは激しく射精した。



いつもの家族のだんらんを踏みにじられた瞬間の記憶は、塗り替えられてしまったようにあいまいになっている。
そのときわたしは真っ先に襲われて、二人の吸血鬼に抑えつけられて、左右の首すじを咬まれていた。
ジュジュッとほとび出る血潮がシャツを生温かく濡らすのを、なんとなく憶えている。
その場に昏倒したわたしに、ほかの二人もズボンのうえから脚に食いついてきた。
じゅうたんの上で磔にされたようになって、わたしは体内をめぐる血液の大半を、この瞬間に摂取された。

下の娘は、お目当てにしていたやつがいたらしい。
いち早くリビングから連れ出されて、勉強部屋にあがっていく足音だけを残して娘の姿は消えた。
妻には年配の吸血鬼が、長女にはわたしと同じ年恰好のやつが、同時に首すじめがけて襲いかかった。
飢えた吸血鬼を前に、わたしたちは狩られる獲物に過ぎなかった。
灯りは消され、廊下から漏れる照明だけの薄暗さの中で、
わたしも、妻も、長女も、等しくねじ伏せられて、
三つの身体からは生き血を吸い上げられる音が、チュウチュウとあがった。

彼らは、獲物を取り替え合った。
妻を咬んだやつは長女のうえにまたがり、長女のうえにいたやつは妻を襲った。
わたしに取り付いて血を啜り取ったやつらは、やがて美味しいほうの獲物の分け前を主張しはじめて、
しまいには乱交の場のような息苦しいものになった。

「あんただったのか」
わたしはあきれた。
さいしょに長女を咬んだ、わたしと同じ年恰好のやつは、勤め先の同僚だった。
いつも半病人のように顔色がわるく、事務所の一番隅の机にうずくまるようにへばりついていた。
「息の合っていることだな」
わたしは精いっぱいの皮肉を口にした。
もちろん、妻と娘を取り替え合ったときのことである。
「同じ女を愛し合っていますので」
男のこたえに、わたしは絶句した。

彼が家族もろとも襲われたのは、先週のことだという。
彼の妻を最初に襲ったのは、いま目の前でわたしの妻を汚した男だった。
「あいつ、人妻が好みなんです。熟女の血はひと味違うというのが口ぐせで・・・
 もちろん家内を姦(や)られたときには、腹も立ったし悲しかったはずなのですが。
 いつの間にか記憶があいまいになってしまって、
 いまでは彼を家内の交際相手として受け容れています。
 気を利かせて座をはずしてやる時もありますが、
 わたしの目の前で見せつけたいみたいな願望があるらしく、そんなときには居合わせるようにしているんです。
 貴男も慣れれば、愉しめてしまいますよ」

まさか・・・
半信半疑のまなざしを向けると、男は白い歯をみせて笑った。
なんのてらいもない笑いだった。
妻や娘を汚されたわたしをあざ笑う嗤いではなかった。
むしろ、同じ経験をした連帯感を、わたしに対して感じているようだった。

ふと見ると、妻が腰を動かし始めていた。
正気を喪って、小娘みたいにはしゃぎながら、
「イヤですわ、主人のまえですわ・・・」
と、言葉では拒みながらも身体は受け容れはじめている。
その言葉すら――
淑女のたしなみとしてではなく、情夫をそそらせるために発していることが明らかだった。
わたしは思わず、妻の両肩を抑えつけていた。
「あ!」
わたしの振舞いに驚いた妻の目が、一瞬見開かれた。
けれども彼女の昂りは止まらなかった。
「イヤですわ、いけませんわ、あなた、いけないわよ・・・こんなこと・・・」
きちんとセットした髪を振り乱し、淑やかに腰にまとったロングスカートをふしだらにたくし上げ、
清楚に彩ったストッキングの脚を、下品な大またに開いて、
妻はどこまでも、堕ちていった。
わたしもどこまでも、堕ちていった。

目のまえで妻を犯したあいつの気持ちが、すこしだけ分かる。
ちく生、ひとの女房を愉しみやがって。
そう思いながらも、
ちく生、わたしよりも上手によがり狂わせやがって。
そんな思いも湧いてきて、
こんどはあいつと一緒に、だれかの家に忍び込んでみようか?
そんな気分にさえ、なってくる。
彼もまたきっと、かつて妻を襲われたときのことを思い出して、
自分が襲った家庭の世帯主のことを気遣いながら、その妻や娘を無遠慮にあしらっていくのだろう。
そしてわたしも、彼と同じ道を歩きはじめてしまうのだろう・・・


あとがき
衝動的にキーをたたいたら、珍しくバイオレンスなモノができあがってしまいました。
(^^ゞ
犯すほうは、犯されるほうの切なさを思いやり、
犯されるほうは、かつては彼もいまの自分と同じ立場だったことを思い出しながら、受難を受け容れていく。
しまいには、こんどは別のご家庭にお邪魔して、その家の妻や娘を並んで犯す。
うまく表現できないのですが、そんなイメージを描きたくてキーをたたきました。

女性の意思があまり表に現れていませんね。
ほんとうは、そこまで描き込まなければ、片手落ちというものです。反省。

誘拐ごっこ

2018年01月19日(Fri) 07:40:30

ぼくの住んでいる街では、「誘拐ごっこ」が流行っています。
本当の誘拐ではないので、被害届は出されません。
誘拐されるのはほとんどが結婚している女の人で、
その人のことが好きな男の人たちが、女の人本人や、その人のご主人の小父さんと示し合わせて行います。

狙った女の人に声をかけるのは、勤め帰りとか、買い物帰りとか、あまり迷惑のかからない時間帯を選びます。
専業主婦の場合は、子ども達が学校に行った後とかが多いみたいです。
声をかけられた女の人は、ご主人の小父さんの手前ちょっとだけイヤそうな顔をしたり、いちどは断ったりしてみますが、
最終的には連れていかれます。
連れていかれる場所は、街はずれの廃ビルとか、郊外の草むらとか、人目のないところです。
男の人はたいがい2~3人組で、連れてきた女の人をその場で襲います。
女の人は、服を脱がされ、おっぱいをまる見えのされたりしながら、犯されてしまいます。

女の人には、ご主人に連絡を取ってもいいことになっています。
たいがいの場合は小父さんに、
「誘拐されました。私の着替えをもって、何時にどこどこに迎えに来てください」ってメールします。
14時に誘拐されたら16時とか、17時に誘拐されたら20時とか、ちょっと遅めの時間に来てもらうようにお願いするのです。
どれくらいの時間誘拐されているのかは、男の人の人数や仲の良さでちょっとずつ違うみたいです。
小父さんのほうも慣れていますし、誘拐犯の男の人たちは友だちだったりする場合があるので、
奥さんが指定する時間よりもわざと少しだけ遅れていったりします。
逆に、早く行って、自分の奥さんが襲われているのをのぞき見をして面白がったりする、いけない小父さんもいるみたいです。

ぼくのお母さんも、このあいだ誘拐されました。
誘拐したのは、ぼくの友だちのユウくんとマサルくんと、マサルくんの弟のマサシくんです。
3人はぼくの家に電話をかけてきて、「お母さんを誘拐しちゃった、面白いからきみもおいでよ」と言ってくれました。
ぼくはびっくりしてお父さんに電話をしましたが、お父さんは仕事で来るのが遅れるって言いました。
「裕也はあと1時間くらい待ってから行ってあげなさい、父さんもあとから行くから」
というので、電話をくれたユウくんと話し合って、あと30分したら行くことにしました。
時間が早めになったのは、ユウくんやマサルくんやマサシくんがぼくのお母さんにしていることを、見せつけたいからでした。
ぼくはお母さんのたんすの引き出しから、いつも見慣れているワンピースを取り出して、
ドキドキしながら誘拐現場に行きました。
誘拐現場は、放課後の学校の、ぼくたちのクラスの教室でした。
ついこのあいだの父兄参観で、お母さんも来たばかりでした。

教室につくと、もう誘拐ごっこが始まっていました。
お母さんは、見慣れたねずみ色のスーツを着ていました。
でも、白いブラウスはボタンがはずれていて、その下に着けていたブラジャーもひもが切れていて、
おっぱいがまる見えになっていました。
すごく小さいころに視たッきりだったおっぱいを、仲良しのユウくんが唇を吸いつけて、
チューチュー音を立てて、夢中になって吸っていました。
まるでユウくんが赤ちゃんになって、お母さんの子供になっちゃったみたいな、変な気分でした。
マサルくんはお母さんのはいている肌色のストッキングを面白がってビリビリと破いていました。
大人の女の人がはくストッキングが、子供の手でむしり取られていくのが、
なんだかお母さんがマサルくんに征服されちゃうみたいな感じがして、ぼくはちょっとドキドキしてしまいました。
いちばん年下のマサシくんは、なんとママとキスをしていました。
お母さんも自分のほうからキスにこたえていっていて、自分のことを誘拐した三人組の男の子とすっかり仲良くなっちゃったのを知りました。
ぼくだけのお母さんを、他の男の子たちに征服されてしまったのです。

お母さんをとられてちょっとさびしいような、仲良くなってうれしいような、不思議な気分だったけど、
ユウくんにうながされてぼくもお母さんとキスをしました。
お母さんの唇はなんだかなま温かくて、柔らかくて、さいしょのうちはとてもヘンな気分だったけど、
そのうちに慣れてくると、母子で夢中になってキスのやり取りをしちゃっていました。
そのあいだにマサルくんは、お母さんのストッキングを脚からむしり取って、ぶら下げて見せびらかしてきました。
「じゃあ始めるからね」
とユウくんがいうので、キスをしただけで終わりじゃなかったんだと思いました。

ストッキングとショーツを脱がされたお母さんは、スカートも太ももが見えるくらいまでたくし上げられていました。
お母さんは、男の子たちに、「順番よ、乱暴にしないでね」と言いました。
みんな素直に「ウン」と言うと、その場でじゃんけんをして、順番を決めました。
ぼくはお母さんの子だからという理由で、じゃんけんからははずされて、いちばん最後にすることになりました。
最初がユウくん、それからマサシくん、さいごがマサルくんでした。
マサルくんはマサシくんに、「弟のくせにお前のほうが先なんだな」って言いましたが、マサシくんも負けていません。
「兄ちゃんがお嫁さんをもらったら、ボクが先に犯してあげる」とか言い出したので、
お母さんは、「兄弟げんかしないでね」って、注意していました。

順番が決まったので、まずユウくんがお母さんのうえにのしかかりました。
ユウくんは半ズボンを脱ぐと、お〇ん〇んをまる出しにして、お母さんのねずみ色のスカートの奥に忍び込ませていきました。
そして、まる見えになったお母さんのおっぱいを唇に含みながら、お母さんにしなだれかかるようにして、体を寝そべらせていったのです。
とってもいけないことをされているんだ・・・って、直感的にわかったけど、
ユウくんにはそれをやめてほしくない気がしました。
ほかの2人の男の子も、「セックスって初めて見る、すげえ」って、目を輝かせてぼくのお母さんに見入っていました。

ユウくんはお母さんの上に馬乗りになって、ギュウギュウとお尻を押しつけるようにしていましたが、
やがて、小さな子みたいにおもらしをしてしまいました。
ユウくんのおもらしはお母さんのスカートや太ももを濡らしましたが、おしっこと違って、白っぽくてネバネバしていました。
ユウくんは、おしっこをし終わったみたいなスッキリした顔になって、マサシくんにあとをゆずりました。
鼻息荒くお母さんに組みつこうとしたマサシくんを、マサルくんはお兄ちゃんらしく「待て待て」といって引きとめて、
お母さんの太ももを濡らしたユウくんのおもらしをふき取りました。
「きれいにしてからやるもんだぞ」と弟をたしなめたマサシくんは、いつものようにやっぱり、きちょうめんでした。
ぼくのお母さんにしがみつくようにして挑んだマサシくんのあとは、
マサルくんが「うふー」と嬉しそうな声を洩らして組みついていって、お母さんのことを犯しました。
ユウくんが「ちょっとたまらなくなってきた」と言い出したので、
ぼくをはずしてもういちど、今度はユウくん、マサルくん、マサシくんの順番で、お母さんを犯しました。
みんなお〇ん〇んをむき出しにして、お母さんがお勤めの時に着けているスカートの奥におもらしをして行くのを、
ぼくは不思議な気持ちで視ていました。

「さあ、こんどは裕也の番だぜ」
ユウくんがぼくをうながすと、マサルくんも「親子でかけ合わせちゃおう」っていいました。
相手がお母さんだとそんなにいけないのかな?って思ったけど、
小さいころから見たことのなかったお母さんの裸にドキドキしながら、
無抵抗なお母さんのうえに身体を重ね合わせていきました。
知らず知らずおっきくなったぼくのお〇ん〇んをユウくんがつまんで、むぞうさにお母さんのまたの奥へとくっつけました。
それからなにがどうなったのか、ぼくにもよくわかりません。
お母さんはぼくのことを今までになくギュッと抱きしめて、気がついたら夢中になって、ぼくもおもらしをしてしまっていました。
「いい子だね、気持よかった?」とお母さんがきくので、気持ちよかったと正直にこたえると、
お母さんは、「ほかの男の子にもやらせてあげようね」っていいました。
それから暗くなるまで、だれも来ない教室のなかで、ぼくたちは代わりばんこに、お母さんとエッチを楽しみました。

「あっ、小父さんが来た!」
ユウくんが声をあげました。
見ると、教室の入り口にお父さんが立っていました。
勤め帰りだったのか、まだ背広を着ていました。
「こんばんは」
お父さんのこともよく知っていた3人の男の子たちは、悪びれもせずに夜のあいさつをしました。
「やあ、こんばんわ」
お父さんも愛想よく、子どもたちにあいさつを返しました。
「みんな初めてだったの」というお父さんに、
「ぼくは2人め。ママとしたから」とユウくんがいいました。
「ぼくも2人め。相手は母です」とマサルくんもいいいました。
いちばん年下のマサシくんが「ぼく5人目!」と声を張りあげると、
マサルくんは、「ウソつけ、初めてだったくせに」といいました。
「じゃあマサルくんは、きょう男になったんだね、おめでとう」
お父さんは自分の妻を犯した男の子たちに、すごく寛大でした。
「女の人が欲しくなったら、小母さんのことを誘拐してもいいからね。でも、よそで悪さをしてはいけないよ」
さいごの発言はとても大人だなって、ぼくは思いました。

学校を出ると、みんなで「おやすみなさい」を言って、別れました。
ぼくたちだけになると、
お母さんはお父さんに「おかえりなさい」とだけ言って、
お父さんはお母さんに「おつかれさま」とだけ言いました。

それ以来。
ぼくは誘拐犯のグループの仲間入りをしました。
四人でお互いのお母さんを誘拐し合ったり、
どのお母さんも都合がつかないときには、ぼくのお母さんを家から連れ出して、
空き教室や廃ビルや近くの公園で仲良くしました。
いつも厳しいお母さんを、よその男の子が征服してしまうのは、とても不思議な気がしています。
同時に、ふつうのエッチよりもいやらしい感じもします。
でもぼくたちは、お母さんを取り替え合うといういけない遊びに、それこそ夢中になってはまり込んでしまったのです。


――あれから20年が経った。
わたしが結婚をしたとき、新婚妻に最初に挑みかかったのは、あのマサシだった。
マサシがパンストフェチになったのは、母から勤め帰りのストッキングをねだり取ったあの日以来だったというけれど、
わたしの妻からも、ウェディングドレスの下にまとった純白のストッキングを、むしり取っていったのだった。
わたしたちはこの街で大人になって、いまでも棲みついている。
そして息子たちが大きくなって色気づいてくると、お互いの妻を融通し合って、
決められたルール通りに誘拐させ合うようになっている。
子ども達に誘拐された母親たちは、自分たちが襲われて犯されることで、
子ども達に性の大切さや女の人のいたわり方を身をもって教え続けている。
きっと息子の代になっても、彼らは譲り合い気づかい合いながら、妖しい生を愉しみ合っていくのだろう。

「ひとの女房を〇しやがって!」

2017年12月03日(Sun) 09:05:06

飲み友だちの吸血鬼が、俺の妻を襲った。
やつは襲った獲物の生き血を吸い尽さない代わり、
自分の餌食になった女が気に入ったら犯していく習性をもっていた。
幸か不幸か、やつは妻のことを気に入ってしまった。
妻の生き血を吸い取ったあと、欲望のままにしたたかに犯して、たちまち飼い慣らしてしまっていた。

やつが妻を襲って犯したあと、いっしょに飲んだ時、俺は思わず毒づいた。
「人の女房を犯しやがって!」
「すまんすまん」
やつは頭を掻き掻き素直に詫びて、憎めないテレ笑いを泛べて、
おかげで俺の怒りの矛先はあらぬ方へとつんのめって、行くあてをなくしてしまった。
いつものテなのだとわかっていながら、俺はちょっと毒づくだけで、やつのことを勘弁してしまっていた。
「けどお前の奥さん、いい女だったな」
やつがふと洩らしたひと言が、なぜか俺の胸をずきん!衝いて、
秘めていたマゾの血を沸き立たせてしまった。

やつと妻とはしばらくの間好い仲で、
時折俺の目を盗んではラブホテルにしけ込んで、吸血プレイを楽しんでいた。
たまには俺の留守中家にあがり込んで、したたかに吸血して、したたかに犯して、夫婦のベッドを汚していった。
そんなことを逐一知ってしまったのは、やつが俺にはわりと忠実で、妻との逢瀬を遂げるとちゃんと報告してくれるからだった。
もちろん――いつだか恵んでやった俺の血の味から、マゾの気配を察してのことに違いなかった。

やつと妻との仲は、近所でも評判になるほどだった。
けれどもやつのことだから、きっと妻にはすぐに飽きてしまって、
妻は捨てられてしまうだろうと、俺はたかをくくった。
案の定、やつはひと月と立たないうちにべつの女とつるみはじめて、妻とは疎遠になった。
そのあとやつといっしょに飲んだ時、俺は思わず毒づいた  
「人の女房を捨てやがって!」
「どっちがいいのだ?」
やつは困惑しながら、俺に訊いた。
知るもんか・・・とそっぽを向きながら、俺はそれでも妻が寂しがっていると教えてやっていた。

寂しがりな妻は、いちど男を識ってしまうともうとめどがなくなって、
こんどはべつの男とつるんでいた。
相手の男は真人間で、俺とは違ってエリートのサラリーマンだった。
悪いやつでは決してなかったけれど、俺はやつにかたき討ちを頼んでいた。
やつは妻の浮気相手の奥さんに手を出して、したたかに血を吸い取っていた。
それなりに気に入りもしたらしくって、ことのついでに犯していった。
「女房の浮気相手の奥さんまで犯しやがって!」
とは、さすがの俺も言わなかった。

妻が間男と浮気をしているあいだ、やつは間男の奥さんのところに入り浸って、
妻のときと同じように、飼い慣らしてしまった。
「なんだか食物連鎖みたいだな・・・」
俺がそんなふうに愚痴ると、やつは面白そうにふふふと笑った。
妻が間男に誘惑されて、その間男の妻がやつに生き血を吸われてゆく――
もちろん最下位は、俺の占める場所だった。
そのことがひどく俺のプライドを傷つけて、なおかつ俺のマゾ気質に火をつけていた。

幸か不幸か、夜のベッドで俺が独り寝することはめったになかった。
だってふたりとも、妻といちゃいちゃしているところを、やたら俺に見せたがるやつらだったから。
妻もまた、退屈することはなかった。
吸血鬼、人間の間男、俺と、三人の男の相手をしていたから。
間男のエリート・サラリーマンは、自分の妻が吸血鬼に犯されていると知って、
ひどく心配をして、ついでに嫉妬までして
――自分が人の妻を抱くのはよくて、自分の妻が他人に抱かれるのは良くないというのだから、勝手なものだ――
やつと仲が良いからという理由で、ひともあろうに俺を相談相手に指定してきた。
俺はお人好しにも、やつの相談相手になってやった。
「どうせなら、愉しんじゃえばいいじゃないか」
間男氏はびっくりして、俺を真顔で見つめた。
恥かしいことを口にした後顔をまともに見られるのは、けっこうキツいものだと、ちょっとだけ後悔したけれど。
やつは「そんなものなのかな」といって、お代を二人分払って居酒屋を後にした。
目のまえの男が、妻を自分に寝取られているとも知らないで(実はよく知っているのだが)、真顔で相談に乗ってくれたことに対する、きっと罪ほろぼしだったのだろう。

数日後。
間男氏は晴れ晴れとした顔をして、ふたたび俺の前に現れた。
「あんたの言うとおりだったよ。嫁を犯されるところを視るのって案外、感じるものなんだな」
自分が犯した女の亭主と飲むというサディスティックなことに歓びを感じる男が、
妻を目のまえで犯される光景に絶句する歓びに目ざめた瞬間だった。

ご機嫌で俺と別れた間男氏は、またもお代を二人分払ってくれた。
まったく、エリートってやつは、羽振りがよくって妬ましい。
ところがこの話に間男氏の話さなかった尾ひれがあることを、後日やつから聞いて知った。
やつと意気投合した間男氏は、目の前で自分の妻を抱いてもらい、
うっとりとなった自分の妻に、こんどは己自身がのしかかっていったという――
吸血鬼にすっかりたらし込まれていた間男氏の奥さんはなかなかの賢夫人でもあって、
夫と情夫とを同時に満足させるためとても熱心に振る舞ったという。
尾ひれはまだまだ、続いていた。
昂奮冷めやらぬ間男氏は、自分の奥さんが気絶するまで、
熟れた人妻の生き血を気前よくやつに寄付した後で、
俺のいないわが家に押しかけてきて、二人で妻のことまで輪姦していったというのだ。
「人の女房をまわしやがって!」
とは、さすがの俺も言わなかった。
そのときにはもう、極彩色に彩られた淫らな妄想が、俺の頭のなかを駆けめぐってたのだから――
妄想のなか
妻は吸血鬼の好みに合わせ、見慣れたよそ行きのスーツを着込んだまま、
ふたりの男相手に組んづほぐれつの凌辱プレイに、心ゆくまで耽り抜いていた――

人妻の愛人をまた貸しする集い

2017年08月27日(Sun) 08:03:36

この街に棲む既婚女性のほとんどは、吸血鬼の愛人になっています。
個人差はありますが、だいたい週に2~3回は逢って、生き血を吸われているのです。
彼らに生き血を吸い取られる行為は、とても甘美な快楽を伴います。
だから妻たちは夫の制止をも振り切って、情夫たちと逢引きをし続けるのです。
もっとも、この街の人たちは吸血鬼を受け容れていて、共存しようとしていることもあって、
表だって彼らを批難したり争ったりするものは、だれもいません。
夫たちはむしろ苦笑しながら、不倫行為を伴う妻たちの逢瀬に見て見ぬふりをしたり、
むしろすすんで愛人宅まで送り迎えをしたりしているのです。

うちの妻も、例外ではありません。
数年前この街に転居してくると、ひと月以内に吸血鬼に襲われて、咬まれてしまいました。
相手はこの街の顔役で、わたしの仕事上でも関係のある人物です。
妻はまだ30代と、比較的若かったので、グレードの高い吸血鬼に見初められたのでした。
「あのひとに襲われるなんて、名誉に思わなければいけない」というのが、此処での通り相場だったのです。
彼は礼儀正しい紳士だったので、公私の区別をきちんとつけました。
仕事中は一切そういう話題に触れず、妻を支配しているという力関係で仕事を仕切ることは絶対にしませんでした。
はた目には、良好な関係を保っている取引先としか思われないほど、穏やかな関係です。

吸血鬼の社会にもグレードの高い低いがあって、彼のような実力者だと都会育ちの若妻を手ごめにするのも意のままなのですが、
もちろんそうでない吸血鬼もいるみたいです。
この街に生まれ育って、母を犯され、妻を犯され、娘の夜這いの手引きまでかって出た永年の協力者。
そうした人たちがごほうび代わりに吸血鬼にしてもらった・・・そんな話を聞いたことがあります。
けれどもそうした吸血鬼たちにも、良い女を得るチャンスがなければならない――彼らはふつうに、そんな意識を持っています。
彼らは一概に、弱者に寛容な態度を示すのです。
弱い立場の吸血鬼が、良い女を得るための集い――それが、月にいちど街はずれの荒れ寺で行われる、
「人妻の愛人をまた貸しする集い」
というイベントなのです。
グレードの高い吸血鬼たちが、自分たちのご自慢の愛人を寺に伴います。
愛人たちは皆、こぎれいに装ってくるように命じられて、
夫が結婚記念日に買ってくれたよそ行きのワンピースや、
いつもPTAのときに着ていくスーツ姿で集められるのです。
集められた愛人たちに、グレードの低い吸血鬼たちがむらがるのです。

そうした集いが開かれて、招待客のメンバーに妻が含まれていると告げられると、
夫たちは誓約書にサインをさせられます。
「恵まれない吸血鬼に良質な血液を提供するために、
 自身が進んで交際を受け容れているパートナー以外の吸血鬼が複数、最愛の妻の血液を享受することに同意します」
おおむねそんな内容です。
サインをした夫たちは、特別に荒れ寺に参観に訪れることが許されます。
妻を提供した夫たちは、永年連れ添った妻たちが、自身の同意のもとにまた貸しされるのを、見届ける権利を得るのです。

内容は・・・まあ、落花狼藉といったていなのですが。
正装した妻たちが身なりのよくない飢えた吸血鬼たちに抑えつけられて、否応なく欲求を成就されてゆく光景は、
いちど目にしたら忘れられないほどのものなのです。
複数の吸血鬼が肉欲のおもむくまま愛妻を輪姦する。
そんな光景を目にした夫たちは・・・恥を忘れた昂奮を植えつけられて、帰宅します。
着衣をなかばはぎ取られた妻たちを護るように伴って。

帰宅したあと。
妻たちはほとんど全員、淫らな舞台の第二幕を迎えることになるのです。

供血ノルマ 6

2015年10月18日(Sun) 07:55:21

村は、狩り場になっていた。
なんとかして、ヤツに血を吸わせてやらないと。
俺はけんめいに相手を選び、家に上がり込んでいっては、ヤツにチャンスを作ってやった。
チャンスは一度でよかった。
俺といっしょに上がり込んだ家には、ヤツはいつでも自由に出入りできるのだから。
たちまち、周りの家に住むもの全員が、やつの牙にかかっていった。

上は60代の老夫婦から、下は中学生の少女まで。
若い子にあたったときには、さすがに目を細めていたけれど。
年増女も、決して嫌いではないらしい。
そう、セックス経験のある女には、べつの愉しみかたがあるのだから。
男を積極的に襲うのも、きっとそいつの女房を手に入れたくてそうしているのだ。
邪魔者は味方につけてしまえば、あとでゆっくりヒロインを料理できてしまうのだから・・・

生き血を気に入られてしまうと、血を吸い尽されてしまう。
そうすると、いちどは棺おけに入る羽目になるのだが。
そうなった村のものも、吸血鬼になってだれかを襲い、一定量以上の血を吸うと、真人間に戻ってしまう。
ヤツだけは、身体の出来が、ほかの人間とは違うらしかった。

俺はいちど吸い尽されて。(死なない程度に)
自分の故郷を案内させられて。
さいしょに弔い騒ぎを起こしたのは、女房だった。
さすがに浮気相手をなん人も作るだけの女、吸血鬼のことも引き寄せてしまったらしい。
でも・・・そこまで女房の血を気に入られたことについては、俺も案外と、まんざらではなかった。

女というやつは、自分の好いた男には、なんでも与えたくなるものらしい。
ヤツが自分の母親を見初めたと察すると、女房は父親に話をつけて、
好色な親父を相手に父娘相姦に応じるのを条件に、
永年連れ添った妻が、ときどき娘の家で浮気をすることを認めさせていた。
見合いで結婚をした義母は、夫以外の男を識らなかったらしい。
「母にも、青春が必要なのよ」
女房は白い目で、そういった。

実の両親に対してさえそうなのだから、まして仲の良くない姑に対しては、なおさらだった。
ヤツがお袋のことを餌食にしたがるときには、女房は姑のことを、こともなげに呼び寄せてやった。
「お義母さまだって、お義父さまがもういらっしゃらないんだから、好きにしていいじゃないの」
女房は白い目で、いつもそういう。
傍らでは、かつてはしつけに厳しかったしまり屋のお袋が。
脱げかかった黒のストッキングにふしだらなしわを弛ませながら、
両脚をおっ拡げて、真昼間からひーひーあえいでいる。


きょうはきょうとて、俺の家はハレムのようになっている。
俺の下には、おさげ髪を掻きのけられた娘がいた。
女房は・・・あけ放たれたふすまの向こう、きのうお袋がそうしていたように、
ストッキングを片方ずり降ろされて、ひーひー呻いている。

やつが嬉し気に、呟いている。
きょうの達成率は、まだ50%。
でもわしは、それでもじゅうぶん、満足ぢゃ・・・


【追記:2017.6.6未明】
意外に反響があるので第一話のURLををリンクしておきます。
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-3189.html
「5」から逆戻りにさかのぼるのも、めんどうですからね。
  ――自分の描いたお話を、「5」から逆戻りしてさかのぼらざるを得なかった管理人より――

供血ノルマ 5

2015年10月18日(Sun) 07:42:42

蒼ざめた顔をした女房が、俺のほうへと迫ってくる。
俺は陶然となって、首すじをくつろげる。
女房は俺の首のつけ根のあたりに食いついて。
ぎゅうぎゅうと強引に、血を吸い取っていった。

もういちど、俺の血を吸い尽してくれ。頼むから。
ヤツにせがんでみたら、そんなことは夫婦で解決しろといわれた。
そう、いちどは吸い尽されたはずの血が、俺の体内に戻ってくると。
俺自身は、血を吸いたいという欲望を忘れかけていた。
けれども・・・娘のうえに身体を重ねてしまった恥知らずな経験は。
いちど足抜けしかかった泥沼に、もういちどまみれてみたいという欲求を、俺の中に消し難く植えつけていたのだった。
墓から舞い戻った女房は、恨めし気に俺を見、ものも言わずに食いついてきた。
脳天が痺れるような歓びに、俺は身をゆだねていった。

こんどは俺が冷たくなって横たわり、
真人間に戻った女房が、悲し気な顔を繕って、弔問客を迎え入れる。
寺の住職は、赤黒い咬み痕を僧衣に隠すようにして。
やはり咬まれてしまった住職夫人に手伝わせて、通夜の段取りを進めていく。
この晩は、ずいぶんと人が集まった。といっても、夫婦が四組。

クフフ。こんどはなん100%かね?
やつは物陰から本堂のようすを見てほくそ笑む。
弔問客は、残らず咬まれていった。
ヤツと、嗜血癖を身に着けてしまった娘と女房に。
子供に咬まれながら、ひーひー呻いている女房に。
だんなを咬んでしまったヤツが襲いかかって、引導を渡す。
べつの夫婦には、住職夫婦が。
ほかの二組の夫婦は、あたかも自分の番を待ち受けるかのように本堂の片隅に立ちすくんで、
逃げるのも忘れて惨劇に見入っている。
やがてそのふた組も、夫婦それぞれ引き分けられて、咬まれていった。
あなた、起きなさい。
女房はひつぎのふたをあけて、俺を出してくれた。
喪服のスカートを脱いだ女房は、太ももを半ばあらわにしたスリップをひらひらさせて、
男のほうへとのしかかった。
相手は学校の先生だった。
先生の奥さんは、俺に懇願するような視線を向けた。
けれども俺は、喉が渇いていた。
とびかかって押し倒すと。
自分の妻の名を呼ぶ先生が、ヒッとひと声叫んで気絶した。
黒のストッキングに包まれた奥さんのふくらはぎは、ひどく柔らかだった。

セックス経験のある女には、もうひとつの愉しみがある。
失血で動けなくなった奥さんは、まだ肩で息をしていた。
のしかかって、スカートのなかに手を突っ込んで、股を開く。
太ももまでのストッキングは、脱がせる手間が省けた。
紫のショーツを足首まで引きずり下ろしてしまうと、
さすがの奥さんも、観念したようだった。
くくくく。だんなさん、悪りぃな。頂くぜ。
よだれをしたたらせてのしかかっていったとき。
女房が俺の鼓膜に、毒液を注ぎ込んだ。

ゆっくり愉しんでちょうだい。
みんなあたしの、浮気相手の奥さんたちなの・・・

供血ノルマ 4

2015年10月18日(Sun) 07:28:44

世帯数数十軒。
ほとんどが顔見知りという、この片田舎では。
ヤツのことは、すぐに広まるに違いなかった。
けれどもヤツにとって、そんなことはどうでもいいことだったらしい。
しゃれっ気のない村だな。どいつもこいつも、スカートなんかほとんど見かけない。
通りに面したガラス窓から道行く男女の品定めをしていたヤツは、どうもそんなことが、気になるらしい。
そうだな。
女たちがスカートを穿くのは、入学式や卒業式、女子の中高生、あとは葬式くらいのものだからね。
俺がそういうと、ヤツはムフフといやな笑いを泛べた。
それが狙いなのさ。
ひとの女房を吸い殺しておいて、ヤツの言いぐさはあんまりだった。
娘はショックで、きょうは学校を休んでいた。
密葬は家族だけで執り行う。
そんな村の風習が、ヤツに幸いしていた。
今夜の通夜に現れるのは。
血を吸われた住職と、俺と娘以外では。
近所に独りで暮らしている、うちのお袋。
それに、やはり近所で夫婦で暮らしている、女房の両親だけだった。
どちらも年寄りだぞ。
咎める俺に。
身近なところを固めないで、どうするんだ。きょうも最低2人だぞ。
ヤツは少しだけ、厳しい顔をした。

年寄りだと、2人でひとり分かな・・・
俺は俺で、わけのわからないそろばんを、薄ぼんやりとはじいていた。

その晩は、ちょっとした饗宴だった。
夕刻に姿を見せたお袋は。
やつの狙い通り、黒のワンピースに墨色のストッキングで足許を透きとおらせていた。
仏前に線香を供えるとき。
娘はなにか言いたげにしていたけれど。
さほど祖母になついていなかったのか、とうとうなにも言い出さなかった。
ヤツがお袋のまえに立ちふさがったのは、仏前からさがろうとするその時だった。
あァ~ッ!
いきなり首すじを咬まれたお袋は、その場で絶叫し、昏倒した。
嫁と仲の良くない姑は、嫁の仏前で喰われるのがスジだろう?
ヤツの言いぐさは、スジが通っていないようで、通っている。
そう感じる目の前で、お袋の穿いている黒のストッキングが、むざんに咬み剥がれていった。

ぐったりとなったお袋を、隣室に寝かしつけると。
入れ代わりに、女房の両親が現れた。
さいしょに義父が。それから義母が、相次いで血を吸われた。
朦朧となった義父のまえ。
義母は和装の喪服の帯をせわしげな指にゆだねて、装いをくつろげられていった。
そう、セックス経験のある女には、もうひとつの愉しみかたがあるのだった。
還暦を過ぎた義母の素肌は、意外につややかに輝いていた。

どういうことなんだね?
身づくろいする妻を俺とを見比べながら、義父は咎めるよりも怯えながら俺に訊いた。
ヤツは隣室に引き取っていた。
引き取っていたんじゃない。お袋と一戦交えている最中だった。
献血しなくちゃ、ならんのです。
どうして?という問いが、自分のなかで湧いた。
けれどもそれはもう、改めて問うまでもなく、俺のなかでは自明の義務だった。
一夜に最低二人。
やつのために、生き血を提供できる人間を連れてくる。
それが俺の務めなのだ。

もういちど、奥さんをごちそうになるよ。
羽交い絞めにされた義父はふたたび首すじを咬まれ、「ああああっ!」と叫ぶ。
血を抜かれてぐったりとなった義父のまえ。
義母は恨めし気に俺を睨み、すぐにあきらめたように、いちど着なおした喪服を、自らくつろげていった。

今夜は達成率150%。なかなかやるな。
お袋と義父母の帰った後。
ヤツはそう言いながら、娘の首すじまで咬んでいる。
これで200%。佳い夜ぢゃ。
娘さんは明日は学校だね?頬っぺが蒼くならないていどに、手加減しておくよ。
娘ははたして、ヤツの気遣いを受け入れるのだろうか。
畳には脱ぎ捨てられた黒のストッキングが一対、蛇のように横たわり、
その傍らには脱ぎ捨てられた白足袋が一足、金色のこはぜを光らせていた。

吸血ノルマ 3

2015年10月18日(Sun) 07:08:27

坊主を呼べ。いや、こちらから出向こう。
ヤツはそう言い捨てると、
顔色を鉛色にした女房と寝息を立てる娘とをそのままにして、
俺を寺まで案内させた。
寺のお内儀は50近かったが、美人だった・・・と、妙なことを思い浮かべながら、
真っ暗ななかのわずかな街灯を頼りに、俺は寺の門をほとほとと叩いていた。

寺のなかにある住職の家は、だだっ広く、寺と同じくらい古びていた。
首すじに血をしたたらせながら、目つきをとろんとさせた住職
急な弔いをするといわれても、さして表情を変えることなく。
ご愁傷さまでしたな、と、俺に言っただけだった。
奥さんと子供がいないようだが・・・と、ヤツは言った。
息子と娘がいるはずだな。
娘は熱を出して寝ている、とだけ、住職はいった。
息子と奥さんは?重ねて問われてーー
おなじ部屋で寝ている、と、住職はいった。
どういうことなのだ?訊きつのる俺に。
そういうことなのさ。と、やつはいった。あまりひとに恥をかかせるもんじゃない。とも。
若いの、この土地では見かけんお人ぢゃが。事情に詳しいのかの?
住職の問いに、血を吸い取ると、いろんなことに詳しくなるのさ、と、ヤツは応えた。

家族に手を出すのは、あとの愉しみに取っておく。
あしたは弔いを、よろしく頼むよ。
ヤツは楽し気にそういって、住職も面白そうに、頷いていた。

きょうは達成率100%。まずまずだな。
ヤツのうそぶきに、俺は本能的に安堵を覚えていた。

供血ノルマ 2

2015年10月18日(Sun) 07:00:08

なんとかしてあいつに、血を吸わせなければ。
それがいまや、俺の日常になっていた。
生まれ育った街並みは、都会に出稼ぎに出た日と変わりなく、寂れたたたずまいに沈んでいたが。
いまの俺にはもう、狩り場という別の場所に思えるのだった。

駅に着いたとたん、やつの姿はフッと掻き消えていた。
入れ代わりに、出迎えに来た女房が、いつも通りのむっつりとした表情で俺を車停めに促した。
久しぶり、という笑みも、元気だった?という気遣いも、とっくになくなった夫婦だった。
代わりにハンドルを握った俺は、いつもの道を帰りながら、ヤツとの最後のやり取りを反芻していた。
女房は認めてやる。でも娘は、かんべんしてくれ。
ヤツはほくそ笑みながら、呟きかえした。
いいだろう。娘はお前の分だ。
なに言うんだよ・・・と、さらに蒼ざめる俺に。
まあ、どのみちお前の好きになるさ。
ヤツは不吉な予言をくり返しただけだった。

家にあがったのは、まだ真っ昼間だった。
俺は女房を掻き抱こうとし、女房は不快げに、俺を払いのけようとした。
留守宅に男が上がり込んだ形跡を、女房の態度でかぎつけていた。
お愉しみのようだな。
ふとわき起こる声色に、夫婦ながらぎょっとして振り向くと。
いつの間にか背後に、ヤツがいた。カギはちゃんと締めたはずなのに。
それからは、お定まりの光景だった。
あァ~・・・
女房は声をあげて男を振り放そうとしたけれど。
すぐに首すじを、咬まれてしまっていた。

昏倒した女を、男ふたりで見下ろして。
ヤツは俺に、物騒な診断結果を告げていた。
さっきまで男と逢っていたな。
めったにスカートを穿かない女房が、珍しく薄茶のスーツ姿だった理由が、ようやくわかった。
わかっているよな?
好きにしろよ。
禅問答のあと、俺はリビングから出ていき、ヤツは女房のうえに覆いかぶさる。
セックス経験のある女には、べつの愉しみかたがあった。

きょうじゅうに最低、二人分の血液が要る。俺も長旅のあとで、喉をカラカラにしていたから、もっとかもしれなかった。
答えに行き着くのに、さほど時間はかからなかった。
ちょうど娘の、下校時間だった。
ただいまぁ・・・
ガタガタと玄関を開けるもの音が、ひどく呪わしく俺の耳に響いたーー

あっ!う、うーんっ!
首すじを咬まれた娘は、黄色のカーディガンの肩をほとび散らされた血に濡らしながら、
顔をしかめて歯を食いしばった。
立ちすくんだ足許にも、ヤツはかがみ込んでいって。
白のハイソックスのふくらはぎに唇を吸いつけると、
チュウチュウ音をたてて、娘の血を吸い取ってゆく。
大の字に倒れたときには、真っ白だったハイソックスは、赤黒い血のりにべっとりと濡れていた。
室内に立ち込める錆びたような芳香が、俺を狂わせた。
ヤツの約束破りを認めてしまうだけ・・・そうと知りながら。
昏倒した娘のうなじを吸おうとして、俺はおさげに結った髪の毛を、せわしげに掻きのけていた。

夕餉はいつもどおりだった。
酔いから覚めた女房はなにかに引きずられるようにして、ふらふらと台所に起って行って。
蒼ざめた顔色に感情の消えた表情のまま、トントンと包丁の音をたてていたし。
娘はむすっとして勉強部屋に引きこもり、いつもより少しだけ熱心に、予習復習に取り組んでいた。

夕餉が終わると。
女房は娘を連れて、ヤツの待つ夫婦の寝間にむかった。
無表情のまま娘の両肩に手を置いて。
それから片手で、娘のおとがいを引き上げた。
ヤツは当然のように、娘の喉笛に、食いついていった・・・
風呂上がりに着替えた空色のブラウスと、赤と白のチェック柄のスカートに、
赤黒い血潮がぼとぼとと、重たい音をたてて撥ねかった。

娘がたたみのうえに膝を折ってしまうと。
女房は娘を抱きかかえて、勉強部屋に敷いてあった布団に寝かしつけて。
ヤツを横目でにらむと、自分からブラウスの襟首をくつろげていく。
俺のことはもう、見えていないかのようだった。
そのまま首すじを咬まれて。
ひざを着いたところを、後ろに回られて、スカートの上からお尻を咬まれて。
さらにうつ伏せになったところを、肌色のストッキングを咬み破られながら、ふくらはぎを吸われていって。
片方脱がされたパンストをぶらぶら揺らしながら、大股に開いた脚をばたつかせながら、ひーひー呻いていた。
その晩ひと晩で、女房は生き血を吸い尽された。

供血ノルマ

2015年10月18日(Sun) 06:34:05

なんとかしてあいつに、血を吸わせなければ。
それはいまの俺にとっては、必須の課題になっていた。

さいしょの出会いは、仕事帰りの夜だった。
後ろからいきなり襲われてーー気がついたときにはもう、道路のうえに寝そべっていた。
しばらくのあいだは、気絶してさえいたらしい。
そのあいだにヤツは、俺の血をあらかた、吸い尽してしまっていた。
顔面が冷えているのが、自分でわかる。そして、寄り目になっているのも。
ヤツは俺のようすをひと目みて、そして言った。
ここで待ってろ。
しばらく経ってからあいつが捕まえてきたのは、スーツを着た若い女だった。
勤め帰りのOLらしい。女は怯えきっていたが、抵抗する意思は失っていた。
首すじからは、紅い糸のような血のりのあとがひとすじーー俺は夢中になって女にむしゃぶりついて、
さっき俺自身がそうされたように、うなじの咬み傷に唇をあて、血を吸い取っていった。
路上に大の字に寝そべった女のうえ。
俺は首すじを吸いつづけ、奴は足許にかがみ込んで、ストッキングをぶちぶちと破りながらふくらはぎに食いついていた。

足りないな?もう少し待ってろ。
なかなか戻ってこないヤツのことを待ちかねて、
俺は仰向けになって気絶したままの女に覆いかぶさって、ひたすら喉の渇きを紛らわせていた。

ばか野郎。死んじまうだろうが。
鋭い囁きが、頭上から降ってきた。
やつが引きずってきたのは、半死半生のサラリーマン。
男だろうがなんだろうが、かまわない。
いまの俺は、ひたすら喉が渇いていた。

3人めは、なんなく捕まえてしまったらしい。
今度は、制服姿の女子高生。
こんな夜遅くまで、ほっつき歩っているのがよくないのだ。
自業自得なんだよ。と、呟いたのは、俺だったのか。ヤツだったのか。
やつは、女の首すじに咬みついて。
俺は、立ちすくむ女の足許まで這いずっていって。
紺のハイソックスを脱がせる手間も惜しんで、ふくらはぎを咬んでいた。

3人もの人間の血が、俺の身体のなかで織り交ざり合いながら、喪われた体温を取り戻していった。
傍らには、呆けたように尻もちをついた三人の男女。
やつはそのひとりひとりのうえにかがみ込んでーー
とどめを刺すのか?と思ったが。どうやらそうではないらしい。
額に手を当てて、なにやら呪文めいたものを唱えている。
一人、またひとりと・・・意識が定かではないながら、かすかにうなずいているのが見えた。
このまま置き捨てにしておけばいい。
気がついたときには、記憶をなくしたまま起き上がって、勝手に来た道をもどるだろう。
お前は・・・
不覚にも喉が渇いていたので、吸い過ぎた。
血を吸う癖がついちまったようだから、俺から離れることはできないぞ。

それからは、毎晩のようだった。
俺は仕事帰りに同じ場所でヤツに待ち伏せされて・・・
それでも帰り道を変えようとは、しなかった。
なにしろ俺だって、喉が渇いていたから。
そしてなによりも・・・まだ独力では狩りはできないのだから。

そんな俺のために、ヤツは獲物を引きずってくれてきた。
獲物を捕まえる能力を高めるために、まず俺の首すじをガブリとやるのは欠かさなかったが。
たまにはお前も、だれか連れてこい。
それが難しいと思うなら、お前の家にだれかを連れてこい。
あとはおれが、勝手にする。

そういうヤツの囁きにほだされたようになって。
俺は仕事仲間を家に飲みに誘った。田舎から珍しい地酒が届いたと偽って。
さいしょは同年輩の男ふたり。
それから、酒好きの若い女が三人で。
どちらの獲物も、ヤツは旨そうに味わった。
女のときは、俺まで昂奮した。
次々に首すじを咬まれ昏倒した女を襲うのは、かんたんだった。
セックス経験のある女は、もっと愉しんでいいんだぞ。
やつは陰湿な嗤いを泛べると、俺は強くうなずいていて・・・
大股をおっ拡げて仰向けになった女たちの太ももの奥に、そそり立ったモノを挿し込んでいった。

男でもいいのか?俺が訊くと。
そのうちわかる。ヤツはうそぶいた。
三日経って、ヤツのねらいがわかった。
さいしょに獲物にしたふたりの男のうち所帯持ちのやつのほうが。
自分の妻を連れて、おずおずと俺の家にやってきたのだから。
セックス経験のある女が相手のときは。
俺にも愉しむ権利が認められた。
せめて武士の情けで見せつけるのはよしにしようと・・・俺はだんなのほうの血を、めいっぱい口に含んでいった。

吸い尽してしまうのでなければ。
ひと晩に2,3人は必要らしい。
もちろんほとんどは、自分で狩ってくるのだけれど。
俺の助力は不可欠だといわれた。
特に仕事のある日は、もっと仲間を誘って来いと言われた。
俺の家で気を失った連中は。
その晩のことはなにもかも忘れているようだったけれど。
ーーあいつの家に招ばれたやつは、つぎの日目が死んでいる。
そんなうわさがどこからともなく立って・・・
どのみち出稼ぎの季節が終わろうという時期だったのをしおに、俺は都会を引き払った。
やつがついて来るといったとき。
くすぐったい戦慄のようなものが脳裏を奔った。
ひと晩に三人も喰えるほど、人はおらんぞ。
にらみ返した俺を、やつはたったひと言で黙らせた。
ーーお前の女房に興味があるんだ。

【ニュータウン情報】30代~40代夫婦間で流行、「婚外披露宴」

2015年03月20日(Fri) 08:36:21

既婚女性が夫以外の男性と結婚式を挙げる趣向の祝宴、「婚外披露宴」が19日、タウン内に所在するラブホテル「クイーン」で行われた。
新婦の加藤涼子さん(36)は、夫の正幸さん(39)の見守る前、10年前に正幸さんと挙式して以来という純白のウェディングドレスもきらびやかに登場。
50人以上詰めかけた招待客のまえで婚外結婚の誓いを誇らしげに宣誓すると、
新郎の熊手幸吉さん(62)と、熱いキスを交わした。

二人の出逢いは、「クイーン」向かいのビルが火事を起こした昨年暮れのこと。
逃げ遅れた涼子さんを幸吉さんが救出したのがなれ初めとなった。
妻を救われた夫正幸さんは感謝のしるしとして、涼子さんとのデートを幸吉さんにプレゼント。以来正式な交際を続けていたが、幸吉さんの熱烈なプロポーズを涼子さんが受け入れたことから、婚外披露宴が挙行されることとなった。
式場に選ばれた「クイーン」は、夫に隠れて幸吉さんに逢うときに頻繁に使ったラブホテル。
想い出の場所で夫の祝福を受けた新婦は、二人の夫と腕を組んで、バージンロードを歩む。

新婦・加藤涼子さんの談話
理解のある今までの夫と頼もしい新しい夫に支えられて、きょうの日を迎えることができました。
式場で用意してもらった宣誓の文章のなかに、「今までの夫を裏切るのではなく、愛する男性が二人になるということです」というくだりがあるのですが、共感しました。加藤とは結婚して10年になりますが、愛情がなくなったというわけではありません。むしろ、すごく愛しています。お互いに。だから、きょうの式も実現したんだと思います。じつはうち、夫同士も恋愛関係にあるんですよ。(笑)うまくいかないわけがないですね。
披露宴は、怖いですが愉しいです。
招待された女性は列席した男性を相手にご奉仕するんですが、母も、結婚している妹も、こんなことは初体験だと思います。父や義兄もそれなりに愉しんでくれたようですので、きっと皆さん素質がおありなんですね。もっと多くの既婚者の方たちに、「婚外披露宴」を体験してもらいたいと思います。

新郎・熊手幸吉さんの談話
さいしょに仲良くなったのが、正幸(新婦の夫)なんです。おなじ「幸」の字を持ってますねって。
「わし、あんたの奥さん狙っとるんじゃけど・・・」っていったら、嬉しがってくれましてね。ウマが合うんですよ。私たち。
それで、チャンスもらって射落として・・・(笑)最愛の奥さんを誘惑する機会をくれた正幸に感謝です。
ええ、いい身体してますで、正幸が独り占めにしちゃ、イカンです。(笑)
でもきょうは、ふたりに共通の「幸」を、正幸から分けてもらえました。3人で、理想の家庭を築いていきたいと思います。

夫・加藤正幸さんの談話
幸吉さんとはもともと、同性愛の関係でして。こちらに赴任してきてすぐに知り合って、強引に手ほどきされました。妻のときも、同じですね。やっぱり強引で。(笑)
涼子さんを狙っていると言われた時には、もちろん警戒もしましたけれど、「この人なら」という気持ちもありました。
最愛の妻が注目されるのは、夫として誇らしい部分もあるわけです。
それで、火事の時に救っていただいたお礼として、妻とのデートを”献上”したんです。
目のまえで奪われちゃったときに、直感は正しかったと確信しましたね。婚外披露宴をやろうと感じたのは、そのときでした。
今後は妻を支配されちゃう日常をおおっぴらに受け入れてしまうわけで・・・気分は複雑ですが、夫を二人持つこととなった妻を支え、見守っていきたいと考えています。
妻をほかの男性と交際させるというのは夫として勇気のいる決断だと思いますが、一夫多妻の国だってあるんですから、逆もアリでしょう・・・ということで。(笑)
個人的にも、幸吉さんを交えた新生活を愉しみたいと考えてます。

吸血スワッピング

2015年01月09日(Fri) 08:04:23

この街には、吸血鬼がはびこっている。
けれども被害届は、まず出ない。
喪われる血の量が多少の貧血程度で済むのと、相手がたいがい顔見知りであることが理由らしい。
我が家にも・・・吸血鬼が現れた。
相手は隣のご主人だった。

男同士の吸血である。
ロマンもなにもない。
気がついたらパジャマのまま組み伏せられて、喉を咬まれていた。
ゴクゴク、ゴクゴクと喉を鳴らして血を飲まれているあいだ、わたしは情ないことに、小さくなって震えつづけていた。

すみませんね・・・
口許に着いたわたしの血を手の甲で拭き拭き、ご主人はへどもどと頭を下げた。
不思議なもんでね。吸血鬼になると、鍵のかかっている家でもふつうに入ることができちゃうんですよ。
(あなたもいずれ、そうなりますよ)
そんなふうに言われているような気がした。
じつは今、私の血を吸ったやつがうちに来ていましてね・・・
ご主人はただならないことを言う。
うちの女房が、生き血を吸われてる最中なんです。
えっ!?助けないんですか?
そう訊きかえそうとしたわたしの機先を制するように、ご主人は言う。
邪魔しちゃいけないんです。自分だって吸血鬼なんですからね。
むしろ協力してあげるのが、ルールになっているんですよ。

そのときだった。
りぃん・ろぉん・・・
我が家のインターホンが鳴ったのは。
深夜残業の妻の美知恵が、戻って来たのだ・・・
すみませんね、旦那さん。悪いけど協力してもらいますよ・・・
協力もなにも、血を抜かれた身体には力が入らず、わたしはただ大の字になってリビングに寝そべりつづけていた。
ご主人は背中で、それでいいです、と言っているようだった。

見せつけている・・・
すぐにそうと知れた。
半開きのドア越しに、廊下の壁に抑えつけられた妻の美知恵が立ちすくんでいる。
返事がないのを不審に思った妻は、ハイヒールを脱いで上がり込んだを腕を掴まれたらしい。
怯える美知恵の肩をつかまえたご主人は、妻がこちらを振り向きざまに、
首すじをガブリ!と咬んでいた。
キャッ!
ちいさな叫びをあげて、妻が目を瞑る。
ちゅーーーーーっ!と鋭い音を立てて、妻の血が吸い出されていった・・・

その場にへたり込んで尻もちをついたまま、肌色のストッキングを履いたふくらはぎをネトネトとべろで舐められながら。
妻はぼう然と、相手の意地汚いいたぶりを眺めていた。
あなたもこのひとに、吸われちゃったの?
ああ・・・たっぷりとね・・・
あ。。。まだ吸いたそうよ・・・
ご馳走してやんなさい。きみさえよければ・・・
いいもわるいも、そうするしかないじゃない・・・
交わし合わされる虚ろな声と声に、ご主人はにんまりとしながら。
妻の両肩を抱くようにして、廊下に引きずり倒していった。
スカートの中に突っ込まれた手が、ブチブチ・・・ッ!と鋭い音をたてて。
パンストとパンティとを、同時に引き裂いていた。

通勤用のOL服のまま、髪を振り乱して、天井の照明を見あげながら、
はぁはぁと熱っぽい吐息を洩らしつづけた妻は。
なん度めかに強いられた交接のときに、とうとう自分のほうから、ひざを開いていった。
わたしはいけないことと知りながら、そのありさまをただぼう然と見つめていた。
不覚にも逆立ててしまった股間を、妻に盗み見られたのがわかったけれど。
妻もわたしもどうすることもできなかった。

今夜はうちの女房も来ますから・・・
わたしの首すじから吸い取った血を手の甲で拭き拭き、ご主人は口ごもりながらそういった。
わたしは、うなずくだけだった。
これから奥さんの血をいただきますね。
これにも、うなずくだけだった。
お宅の奥さんのほうが、うちのやつよりずっと若いですよね。ごめんなさい。
血を吸い合った後の展開がどうなるのか見越した言葉――けれどもわたしはやはり、無表情にうなずくだけだった。

今夜も妻の帰りは遅い。
わたしは携帯をとって、妻にかけていた。
家に戻っても出られないから・・・スーツのまま二階に上がって来てくれる?
それですべては、通じるはずだった。

奥さんのキスは、強烈だった。
前夜の侵入者に、生き血をあらかた吸い取られてしまったらしかった。
会釈もそこそこに、仰向けに横たわったわたしの上に覆いかぶさると
パーマのかかったロングの茶髪をかき寄せながら、首すじにかぶりついてきた。
妻はわたしのすぐ横で、ご主人に求められるままうつ伏せになって。
肌色のパンストを穿いたふくらはぎを、ネトネトと舐められ始めていた。
今夜のパンストは、結婚式のときくらいしか穿かない、光沢のテカテカするやつだった。
――部屋を分けようと提案したご主人の申し出を、かぶりを振って断っていた――
妻の穿いているパンストは、圧しつけられた唇の下でパリパリと裂け、くしゃくしゃに弛んで引きずりおろされ、
さいごに精液まみれにされてゆく。
わたしはわたしで、十歳以上も上の熟女であるお隣の奥さんの思うままにあしらわれて、
花柄のミニスカートから覗く太ももにうっとりとしながら、
強引に開かれてきた股間を合せて、うごきをひとつにしていた。

はぁ、はぁ・・・
ひぃ、ふぅ・・・
あぁん・・・
き、きくぅ・・・

かすかな声と声が響き合い、交わし合わされ――いつかふた組の息の合うカップルが誕生していた。

吸血の性癖は、一定期間をおくと消えるらしい。
隣家を襲った吸血鬼は、新たな獲物を求めて夜の闇に消えていった。
血を吸い取られたわたしたちは、血を吸ったご夫婦に求められ続けて・・・
ひたすらスワッピングに耽っていた。

今夜はいかがですか?
いいですね・・・
女房のやつ、ウキウキしながら鏡に向かってますよ。
うちの美知恵も、今夜は残業を切り上げて帰って来るみたいです。

この街にはこんなふうに仲良くなったご近所同士が、少なくないという――

夫の理解

2014年03月10日(Mon) 08:05:04

いつもいつも、済まないですね。
口先では慇懃なことをいいながら、男はウッソリと、玄関をくぐってくる。
勤め帰りのわたしは、まだスーツを着ていて、靴下だけを履き替えていた。
どういうわけか脚に執着するこの吸血鬼を、ほんのちょっとだけ、愉しませてやるために。

透ける足首に目ざとい視線を投げた男は、「いつもいつも、お気遣いをいただいて」
そういいながら、指で自分の唇を撫でていた。
渇いているときの、癖だった。

さいしょに妻が襲われ、それから娘までもが生き血をすすられて。
もはやわたしに残されたのは、一刻もはやく彼と”和解”をすませて、家族の生命だけでも確保することだけだった。
「脚がお好きみたい」
そういいながら、いつもスカートの下でストッキングをチリチリに咬み破られて帰宅する妻。
わたしはある晩訪れた彼のまえに立って、黙って自分のスラックスをひきあげた。
紳士用ですから、お笑い種にもならないでしょうが・・・
よほどうれしい記憶なのだろう。
いまでも彼は、わたしのまえで、その言葉を口にしてみせる。
わたしの口まねまで、たくみにまねて。

彼の好みに合わせて履いたのは、ストッキング地の紳士用ハイソックス。
すべらされてくる彼の舌は、彼がわたしの応対に満足していることを伝えてきた。
欲情にまみれた淫らな唾液を、たっぷりと含ませながら。


「いいですね。じつにいい舌触りです・・・」
寝そべるわたしの足許にかがみ込んで、男はいつものように、薄いナイロン生地のうえから、舌をふるいつけてくる。
「あなたを侮辱している気分になれるのが、まことに愉しい」
そんな腹立たしいことまで口にされながら、わたしは不平そうに舌打ちをしてみせるだけ。

かつての貞淑妻は、淫らな恋に酔いしれて。すっかり男の情婦に成り下がっていた。
そんな妻を、娼婦のようにもてあそび、
ましてや娘の純潔までも、むしり取って行って。
いまでは娘の制服のスカートの裏側は、男の粘液で白ぱくれているという。

それほどまでに、されながら。
どういうわけか伝わってくるのは、男がわたしの妻と娘に抱く情愛の深さばかり。
おなじ女を、好きになったのだ。
おなじ娘を、いとおしく思っているだけなのだ。
たぶんきっと、そのとおりなのだろう。
ただ、愛しかたの流儀が、常識とかけ離れているだけ―――

「嬉しいですね。このなめらかさ。このツヤツヤとした光沢・・・」
男はまだ、わたしの足許にとりついたまま。
ふしだらにしわくちゃにされ、くしゃくしゃにずり落ちてしまった紳士用のハイソックスを、賞玩してやまない。
チクリ、チクリ・・・と、時折牙を忍び込ませて。
みるかげもなく破いてしまうまで、たっぷりと愉しんでみせる。

どうせなら。
愉しみ抜くのが、礼儀というものでしょう?

そんな身勝手な言い草に。
わたしは深く頷いてしまっている。

妻以外の女を抱くのは、たんに血を獲るためだという見え透いた嘘さえも、
妻の身体を気遣ってくれるのだと受け取って。
きみのまえで奥さんを辱め抜くことができるのが、最高のもてなしなんだよ、という要求も、
嫉妬の歓びをわたしに植えつけようとする企みなのだと理解して。
せっかくできたご縁なのですから、妻のことを見捨てないでくださいね、なんて、懇願してみせている。

「あんたの生き血は、オードブルだ。メインディッシュが奥さんと娘さんだ」
そんなことを、いわれながらも。
男がその実、わたしの血を愉しみにしてくることも、気づいてしまっている。
「きみの生き血を吸い取った後、勤め帰りの奥さんをきみの前で襲うのが、なによりも愉しい」
そんな無礼さえ、楽しげに口にする男のために。
わたしは男を悦ばせるために、きょうも薄い靴下を脚に通してゆく。

夜道は必ず、懐中電灯をつけて歩くように。

2012年10月24日(Wed) 07:38:47

夜道は必ず、懐中電灯をつけて歩くように。

これは決して、安全のためばかりではなかった。
けれども村人たちは、今夜も灯りを掲げつづける。
その灯を目当てに、血が要りような吸血鬼たちが群がるために。



その少年が通りかかったのは、夕暮れのとばりが下りたころ。
サッカーの練習帰りらしい、白の短パン姿の彼の足許は。
薄灯りの下でも、白のストッキングが眩しく映えていた。
ユニフォームは泥だらけだったけど、この地区の少年たちは皆、帰りには真新しいストッキングを履いて帰ることになっていた。

あっ、吸血鬼だなっ!?
少年は声をあげ、自転車をとめる。
けれどもそこで予想されるような抵抗や揉み合いは、ついに実行されない。
わかったよ。血を吸いなよ。
もの分かりよく自転車を降りた彼は、正面と背後から忍び寄る影たちをまえに、観念したように目を瞑る。

あっ!痛てえっ!もっと手加減しろよなっ。
少年は非難をしたけれど。
それに応えるのは、キュウキュウ・・・ちゅうちゅう・・・という、あからさまな吸血の音ばかり。
あー・・・
つぎに洩れた声色は、どこか弛緩していて。
少年が感じているのが苦痛ばかりではないことを告げている。

もう気が済んだの?まだ足りないんだろ?
ところどころ紅く染まったストッキングを、ひざ小僧まで引き上げながら。
少年はじぶんを襲ったふたりの吸血鬼を、見比べる。
手加減してくれたお礼に、いいこと教えてやるよ。
あと30分、待ってみな。
俺の姉ちゃんが塾帰りに、ここ通るから。
今朝登校してったときには、黒のストッキング履いてたぜ?

ひと言余計よ・・・って、姉ちゃんがしかめ面をするのを予期しながら。
少年は「じゃあねっ」と言い捨てて、勢いよく自転車をこぎ始めた。
白のストッキングのふくらはぎをところどころ染めている紅い斑点が、サドルの両脇で上下をくり返していた。



時折揺らぎながら、ゆっくりと近寄ってくる灯りがひとつ。
それがさっきの少年の姉のものだと、吸血鬼どもは知っている。
ぺろりと舐めた口許には、少年から吸い取ったばかりの血潮が、まだテラテラと光っていた。
自分の体内をめぐる血液を求めて、セーラー服のすき間を侵されようとは、
来週のテストのことで頭がいっぱいの少女は、夢にも思っていない。

「ええーっ!?」
自転車をとめて、少女は叫び、立ちすくむ。
「見逃して・・・もらえるわけ・・・ないですよねっ?」
哀願を交えた問いかけにも、ふたつの影はかぶりを振るばかり。
弟さんがさっき、ここを通っていった。
その言いぐさにすべてを察した少女は、長いおさげをセーラー服の襟の向こうに追いやった。
薄暗いなかでも噛みやすいように、首すじをあらわにするために。

がぶっ。
ぶちり・・・
ひとりは正面から迫って少女のうなじに食いついて。
もうひとりは背後から這い寄って、ふくらはぎに噛みついた。
白のラインが三本走る襟首を、かきのけながら。
揺れるスカートのすそを、かいくぐるようにして。
牙を迫らされた白い膚は、みるもむざんに冒されてゆく。

ちゅうちゅう・・・キュウキュウ・・・
先刻弟を襲ったふた色の吸血の音が、いまセーラー服の少女におおいかぶさる。
ヒルのようにしつように這わされた唇の下。
ばら色のしずくはほとび、襟首を走る白のラインにしみ込んでいって。
黒のストッキングごし刺し込まれた牙に、薄手のナイロン生地は、じりじりと裂け目を拡げていった。

もう気が済んだ?いいこと教えてあげるから。
パート帰りの母さんが、このあと一時間ほどすると、帰ってくるの。
それから30分で、父よ。
父はきっと、母さんが襲われてるところ、見たがるわ。
やっぱ、心配みたいだから・・・
ふたりの血を吸えば、さすがにもう気が済むんじゃない?
きょうもお嫁入りまえの身体を汚さないでくれて、ありがとね。
お礼にまた明日・・・処女の血を愉しませてあげるから♪

おさげ髪をセーラー服の襟に揺らして。
細い肩をリズミカルに上下させながら、
少女は自転車でこぎ去っていった。



カツンカツンと響く、パンプスの足音に。
その背後にちょっと間隔を置いて伝わってくる、革靴の足音に。
ふたりの吸血鬼は顔を見合わせ、にんまりと笑みを交わし合う。

立ちどまったらすぐに、叢のなかに引き入れるだぞ。
だんなは勝手に、あとをついてくるだろうな。
そこで、キヒヒ・・・なに、あちらも心得ているさ。
夫婦で生き血を分け取りか。たまんねぇな。
奥さんは、まわしてもいいって話だぜ?脂の乗り切った、ええ身体しておるそうぢゃ。
だんなもきっと、いつもみたいに悦んで視よるぢゃろ。
ちげぇねぇ。くくくくくく・・・っ。

晩ご飯の食卓には、貧血で顔色の悪い四人が顔見合わせて、
なにごともなかったかのように、いつもの団らんの刻を過ごすのだろう。
勤め帰りを急ぐふたつの足音が、劣情を逆なでさせる男どものすぐ間近に、近寄ってきていた。

朝っぱらから・・・。(^^ゞ

2012年09月11日(Tue) 07:43:17

朝っぱらから、すまねぇな。(^^ゞ
隣家の年配親父は、今朝も妻のことを、誘いに現れる。
妻もよく心得ているらしく、朝から礼服姿。
ごはん済ませたら、お出かけになって下さいね?
申し訳なさそうな顔つきを作りながらも、いそいそと。
玄関で呼ばわる声に応じて、起っていった。
畳のうえを歩み去る爪先を、黒のパンストがなまめかしく染めていた。

だんなさん、悪りぃ。借りは返すからのお。
玄関で呼ばわる声は、情け容赦のないほど、かしましい。
自分の嫁が不名誉を蒙るのだということを、近所に宣伝しているようなものだった。
わたしは仕方なく、玄関まで妻を送り出していって。

朝から精が出ますね。

精いっぱいの皮肉を、言ってやった。
エヘヘ・・・
野良着姿の初老のおやじは、はげ頭をてかてかさせながら。
悪戯坊主のような照れ笑いをして、
それでも照れくさいのか、首すじのあたりをしきりに引っ掻いていた。

庭先、借りますでの。
とんでもない申し出を、さっきの不作法とは打って変わった、慇懃な低い声で囁くと。
そのとんでもない申し出に、わたしもつい、うなずいてしまっている。
いつもの癖で・・・

明日の朝は、礼服ですの。
夕べ妻が、遠慮がちにそういうと。
わたしはほうきを手に、夜の闇を透かすようにして、その庭先を掃き清めていた。

おやじは妻の手を引いて、庭先にまわり込み、
わたしは何事もないかのように、リビングに戻る。
食事の終わるころ、しばらく語り合っていた男女のあいだに、異変が生じる。
あれ!
妻の鋭い声。
いひひひひひいっ。
おやじのわざとらしい、卑猥な嗤い。
もう、出勤どころではなかった。

都会のおなごは、いやらしいの~!
仰々しく呼ばわる男と向い合せに。
妻は礼装のすそをひるがえして、庭先を逃げ惑う。
わたしが掃き清めた、庭先で。
男と女は、卑猥な強姦芝居を展開するのだった。

あれえっ!お許しくださいましっ!
わたしにさえ口にしたことのないような声色で。
妻ははだけたブラウスの胸元から、白い肌を朝陽に曝す。

うへへへへへっ。都会女はええ舌触りの靴下を穿いておるのお。
立ちすくむ妻の足許にかがみ込んだ男は、ハイヒールの足首を掴まえて。
黒のストッキングのふくらはぎに舌をふるいつけて、薄手のナイロン生地をくしゃくしゃにしていった。

ひいーっ!お許しをっ!
庭先に押し倒された妻は、逞しい猿臂に抱きすくめられたまま。
もう、どうすることもできないで。
裸体の恥を、さらしていった。
まくれあがったスカートの裾から、ストッキングをずり降ろされた太ももを、あらわにしながら。
ブラウスを剥ぎ取られてあらわになった乳首を、恥知らずな唇でニュルニュルと弄ばれながら。

庭に押し倒されて。
スカートをまくり上げられて。
パンストを足首まで、ずるずると降ろされていって。
むき出しになった白い腕が、野良着の背中におずおずとまわるのを、
どうしてドキドキ昂ぶりながら、見守ってしまうのだろう?
わたしにも魔物が、とり憑いているのだろうか?
自分から放胆に伸ばした脚には、片方だけ黒のストッキングがまだのこっていて。
居間でわたしの給仕をしてくれていた時とかわらないほど、白い脛を清楚に染めている。

はふ・・・はふ・・・はふぅ・・・っ
礼装の黒のスカートを着けたまま。
黒のブラジャーの吊り紐を、片方立たれた背中を、陽に曝したまま。
片方残った黒ストッキングを、皺くちゃにして。
四つん這いにされた妻は、ひたすら、腰を使っている。
闖入者のまえ、もうすっかり従順にされてしまった柔らかい裸体を、歓びに輝かせながら・・・
引き抜かれるたび、白く濁った精液が、地べたにぼとぼとと、ほとび散った。

孕んでみるかえ?なに、いやだ?なに、すぐにその気になるさ。
都会のおなごは、いやらしいからのう。
遠慮するな。すぐ孕ませてやっからよ。
元気な男の子、さずかるぞお。

いけない!いけないっ!
子どもは、主人の子をぉ・・・

妻はあられもない身を曝し、はしたない声をあげて。
ご近所にはすべて、筒抜けだった。
朝の儀式が盛り上がるほど、周囲の人たちは妻にやさしくなるという。
おなじ体験をしたもの同士だけが共有する、連帯感で。
朝っぱらから家庭のなかまで闖入してくる、こういう客は。
最高の礼儀で、もてなさなければならないことに、なっていた。

夫であるわたしの、目のまえで。
柔らかい乳房を揉みくちゃにされていって。
妻はいつしか、昂ぶっていた。
わたしも不覚にも、ズボンを濡らしてしまっていた。

男は魔物。
妻を狂わせ、わたしをさえも、奈落の底に、引きずり込んだ―――

法事の手伝い・・・

2012年09月11日(Tue) 07:22:48

村の法事には、決まって都会育ちの婦人たちが手伝いに来る。
当番制でお声がかかるらしく、いつも顔ぶれはまちまちである。
もっとも・・・べつな揺らいでの人選は、とうぜんあると思われるのだが。

法事の末席に連なる野良着姿の男どもは、そんな人妻たちにも容赦しない。
むしろそれが、お前たちが法事の手伝いに来たほんらいの目的なのだと言わんばかりの態度だった。
数人は択ばれてくる都会の人妻たちは。
夫たちの参列すら、赦されていなかった。
法事のお手伝いに行ってまいります。
それがどうやら、夫婦の会話の合い言葉になっているらしい。
男に抱かれてくる。
あからさまに、そう告げないまでも。
夫たちはいちように、
行ってらっしゃい。気をつけて・・・
そう応えるならわしになっていた。

法事の列の末席に、伏し目がちになって参列した都会妻たちは。
背後から息荒く迫った野良着の者たちに、熱く濁った息を、首すじに吹きかけられながら。
黒のスカートのうえに組み合わせた両手を、手を握られる順番さえ決められているかのように、抑えられてゆく。
なかには狎れ狎れしく肩先に腕を回して、囁きかけてくるやつさえいる。
なにを囁いているんだ?って?
これからエェことしような。極楽にイカせてやるからのぉ。
どうせそんなことを、口走られているに違いない。

手を握られた女たちは、だれひとり抵抗を試みることなく、
清楚に映えた黒のストッキングのつま先を、きちんとそろえて、
参列者たちに黙礼をして、立ち去ってゆく。
寺の敷地のすぐ隣の、納屋のなか。
キリリと装った礼装を、見るかげもなく乱されてゆくのだと、知りながら・・・
ふっくらとしたふくらはぎをなまめかしく彩る、あの黒のストッキングも。
節くれだった指をかけられて、あらけなく剥ぎ降ろされてしまうのだろうか?

誘い出される参列者たち。

2012年09月11日(Tue) 07:15:02

法事の最中に、退屈になってくると。
参列している男どもは、目引き袖引き、目配せし合いながら。
礼装のすそから覗く、黒のストッキングに包まれた脚たちの品定めをする。
喪服に白い肌は、映えるものだから。

末席に参列している、野良着姿の連中には。
とくに最優先で、女を択ぶ特権が与えられる。
この法事にゆかりの、いわくのある者たちだった。
自分の妻や娘が参列している・・・という男どもは、
たいがいの場合、きょうのおこぼれにはあずかれない。
ただ、自分の女家族が、禿鷹のような連中に咥えられ持ち去られてゆくのを、見送るばかりである。

すまねぇな。
ずっと昔には幼馴染みの兄ちゃんだった中年男が、そう言いたげに。
こちらに向かって、目を投げてくる。
勝手にしなよ。
視線を投げられた側の、礼服姿の若い男は、ほろ苦く笑いながら。
そんなふうに目を返していく。

年配男は、若い男の向かいの席で、俯きがちに参列している若い女の手の甲を抑えると。
清楚な黒のスーツに身を包んだ女は、はっとして野良着姿を見あげ、
それから見比べるように、夫のほうを見る。
夫は目を伏せたまま、僧侶の読経に聞き入っている。

おずおずと立ち上がる女は、伏し目がちに姑のほうを見、
姑は神妙な顔つきで、若い嫁の目線を読んだというように、気づかれない程度の黙礼を返す。
あんたにお辞儀したわけじゃない。
そう言いたげな邪慳な顔つきをして。
もういちど、野良着の男のほうに、目線を送る。
こんどは、さっきの顔つきとは打って変わって、媚態にも似た、それは狎れ狎れしい笑みを泛べて。
野良着男は、姑とも身に覚えのある男なのだろう。
えへへ・・・とかすかに笑い声を立てて、若い嫁の手を引っ張って本堂を出て行った。

姑のほうにも、後ろから。
卑猥な手が、伸びてくる。
漆黒のブラウスの胸もとに忍び込んだ掌は、
袖の透ける薄地のブラウスの胸を波立てながら、胸の隆起をなぞっていった。
ぁ・・・
不謹慎な声をあげてしまっても。
周囲のものは咎めの視線さえ、送ってこない。
すぐ隣に腰をおろした亭主殿さえ、知らん顔をして読経に聞き入っている。

色即是空
空即是色・・・

経文にはいったい、どんな魔力が秘められているのだろう?

静まり返った本堂には、不思議と明るい気配に満ち満ちている。

お寺の隣の納屋

2012年09月11日(Tue) 06:59:44

法事のさいちゅうは、お寺の隣の納屋は、満員になる。
墓地につづく道端にある古びた納屋のなか。
薄暗いなか、黒の礼装に身を包んだ女が三人、
野良着の年配男どもを相手に厭々をしながら、黒のストッキングをずり降ろされてゆく。

一時間後。
意気揚々と引き揚げていく男どもは、それぞれに。
モノにした女の穿いていたストッキングをぶら提げて、納屋を出て行った。
破れた墨色の薄衣は、節くれだった指につままれて、
ひらひらと風に、舞っていた。

彼らを見送った三つの人影は、墓地の参道の傍らの茂みから顔を出すと。
「うち、喪主だから仕方ない」
「うちは、本家だからしょうがない」
「わしの嫁は、どうして目ぇつけられたんかのぅ」
「こうゆう席に、柄物のストッキングなんぞ穿いてくるからよ。
 ちょっかいかけてくれと、おのれから言うてるようなものではないか?」
違いない・・・
三人は、声を合わせて笑った。