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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

テルヤと紗栄子と僕。

2018年01月17日(Wed) 05:23:57

いけすかない、虫が好かん。
幼なじみのテルヤを見るたび、紗栄子は必ずそういって毒づいた。
高慢ちきな美少女にとって、村はずれの貧しいあばら家に棲むテルヤなどは、軽蔑の対象でしかないらしい。
それとは真逆に、テルヤと仲良しの僕は、大病院の院長の息子。
地元の名士の御曹司と、街で評判の美少女とは、将来を誓い合った仲だった。
そんな紗栄子のことを、テルヤがいつも遠くから、もの欲しげな目で見つめるのを、僕は見逃していなかった。


ああッ・・・
ダメだよッ・・・
この、ヘンタイッ・・・
村はずれの納屋でのことだった。
良家の子女にあるまじき口ぎたない言葉で罵りながら、
紗栄子はのしかかってくるテルヤをどうすることもできなくなっていた。
テルヤは紗栄子の上に馬乗りになると、紗栄子の首すじにガブリと喰いついて、
むさぼるように血を吸い取った。
ひいッ、何するのよッ!
美少女は声だけは手厳しく相手を叱りつけたけれど、
押しつけられた唇を引き離すことは、とうとうできなかった。
テルヤは日ごろの引っ込み思案な自分をかなぐり捨てて、紗栄子の首すじを露骨に吸って、
ちゅ、ちゅ~と聞こえよがしな音まで立てて、若い血潮を吸い上げる。
そして、紗栄子の身体から力を抜けてしまうと、藁の上にうつ伏せになったふくらはぎににじり寄って、
こんどは脚に唇を這わせた。
テルヤのような家の子がめったにありつけるものではないはずの、
いいところのお嬢さんハイソックスが、いやらしい唾液に浸されてゆく。
しばらくの間ハイソックスの舌触りを愉しむように舐めまわすと、
テルヤは吸いつけた唇にグッと力を込めた。
紗栄子の履いている真っ白なハイソックスが、たちまち赤黒いシミに濡れた。
毒々しいシミがじわじわと拡がっていくのを、ほとび出る血潮のなま温かさで感じるのか、
紗栄子は悔し気に歯がみをする。
なだらかな肉づきをした紗栄子の脚に、僕は心ひそかに執着していた。
けれどもその侵すべからざる脚に、テルヤは僕の彼女と知りながら、
臆面もなく唇を吸いつけて、
欲望のままにむさぼって、
ハイソックスの舌触りを愉しんで、
吸い取った血潮でためらいもなく汚してゆく。
これは、僕にはできない愛しかただった。

僕はそのようすを、物陰からじいっと見つめるばかり。
どうして助けないのか?って?
僕は知っているから。
紗栄子はきょう、部活があるから先に帰ってと僕に言った。
でも、紗栄子は帰宅部で、どんな部活にも参加していない。
先に僕を帰した後、テルヤと示し合わせて、彼の家の近くの納屋で落ち合って、
生き血を吸い取らせてやっているのだ。
相手を口ぎたなく罵りながら、形だけは意に反して無礼なあしらいを受けてしまったというていをとりつくろって。
そんないけない習慣を、いつから身につけたのか。

テルヤは正直に、語ってくれた。
学校帰りに待ち伏せをして、ところも同じこの納屋に彼女のことを追い詰めて、
白のハイソックスの脚を辱め抜いてしまったのだと。
僕の彼女だと知りながら、でも僕の彼女だからこそ、征服してみたかったのだと。

きみは紗栄子と結婚すればいい。
でもできたら、きみのお嫁さんと逢わせてくれないか?時々でいいからさ。
ぼくはきみには恥をかかせないし、ぼくたちの関係を笑うやつがいたら、ぼくがただではすまさない。
だから、きみの嫁を襲わせてくれないか?
紗栄子が生娘でも、人妻になっても、ぼくは彼女の生き血を愛しつづけていたいから――

まるで恋人に気持ちを告白するような真剣な態度で、テルヤは僕にそういった。
僕は、正直に言ってくれてありがとうとだけ、テルヤにこたえた。


ふん、いけすかない。
ふたりで歩いている僕たちを気づかって、きょうもテルヤは会釈だけしてすれ違ってゆく。
たったそれだけのことなのに。
紗栄子はテルヤの存在自体が我慢できないと言わんばかりに、テルヤを嫌悪しつづける。
裏では僕には告げずに部活だと言ってはテルヤと示し合わせて、
あの真っ白なハイソックスで装ったふくらはぎを、惜しげもなく咬ませちゃっているというのに。
その想像をするたびに、僕の胸ははげしくジンジンと騒ぐのだ。
血が騒ぐって、こういうときにいうのだろうか?
未来の花嫁が襲われて、衣装もろとも汚されてゆく光景を視るといういけない歓びに、
ぼくはいつの間にか目ざめてしまっていた

きょうは部活だから。
見え透いた口実で僕を遠ざけるとき、紗栄子はちょっとからかうような顔つきで、僕の横顔を盗み見る。
彼女もまた、未来の夫に見せつけるといういけない歓びに、目ざめてしまっているに違いなかった。


あとがき
昨日あっぷした前作を描いた直後、同工異曲のお話がもう一つ泛びました。
たいとるを前作と似せているのは、そのせいです。
いまほどサッと手直しをして、あっぷ♪

良太と真由美と僕。

2018年01月16日(Tue) 08:11:21

「イヤだよ、きょうのハイソックス、白なんだもん」
僕の彼女になった真由美は、学校帰りに良太にせがまれて、血を吸われそうになっている。
それを物陰からひっそりとのぞき見している僕は、やはりいけないことをしているのだろうか?
きのう良太に血を吸われて貧血になった僕は、学校を休んでいた。
そういうときは、良太は僕に遠慮なく、真由美といっしょに下校するのが常だった。
彼氏を征服した男は、彼女を支配する権利があるんだ――良太は憎まれ口をたたくけれど、
内心しんそこぼくたちのことを好いている彼の言葉の裏には、毒はなかった。
それでも、生身の男としてもじゅうぶん真由美に恋着している彼は、よく意図的に僕の血を吸い過ぎて、僕を欠席に追い込むのだった。

「ちょっと待ってよ!白の日はダメって言ったじゃん・・・」
真由美の非難は、徐々に語勢を弱めてゆく。
すでに良太は真由美の足許にかがみ込んでいて、
プリーツスカートの下から覗くふくらはぎに、舌を這わせ始めている。
「やだ・・・みんな見てるよ、恥かしいよ・・・」
気の強い真由美がおろおろするのを面白がって、いっそう露骨に舌をふるいつけて、真由美のハイソックスの舌触りを愉しむと、
「じゃ、そこの草むらで隠れてしよ」
そういうと、大人しくなった真由美の手を引いて、肩ほどの高さのある雑草の彼方へと、身を沈めていったのだ。

ガサガサとかき分けた雑草のかなた。
真由美は四つん這いになって、それ以上の無防備な姿勢は許すまいと歯を食いしばりながら、
それでも恥ずかしいことをされる自分の足許が気になるのか、チラチラと目線だけは、泳がせている。
ほど良く発育したふくらはぎの柔らかそうな肉づきを包む、真っ白なハイソックス。
その上から良太は臆面もなく唇を吸いつけて、真由美の血を吸い始めていた。
ぼくの彼女になった真由美の血を。
履いている通学用のハイソックスを、意地汚く咬み破りながら。
そんないけない光景を目にしてドキドキしてしまっている僕は、もっといけないことをしているのだろうか?

やがて二人は、草むらから出てきた。
そして何事もなかったようなそぶりで、
良太は真由美の制服のスカートの上からおしりを触ろうとし続けて、
真由美は触らせまいとして手を払いのけ続けながら、
お互いの手と手とは裏腹なありきたりな会話をはずませながら、家路をたどっていった。
ただの仲の良いカップルの何気ない下校風景に見えたけれど、
少女の履いている真っ白なハイソックスのふくらはぎに、赤黒いシミがべっとりと着いているのがいっそう唐突で、
ぼくの網膜を狂おしく彩っていった。


そよぐスカートのすそから入り込んでくるそらぞらしい冷気。
まったく経験のなかった感覚に戸惑いながら、僕は真由美から借りた制服を、真由美の手を借りながら身につけてゆく。
サイズがひとまわり小さい紺のハイソックスは、いつも履いている自分用のものよりも強く足許を締めつけてきて、
やはりひとまわり小ぶりなサイズのブラウスが、胸元に揺れるリボンが、真由美の髪型に似せたウィッグの毛先の揺れが、
まるで真由美自身がグッと身近に寄り添うように、僕の身体を拘束する。

きのうしたたかに血を吸い取られた真由美は、白い顔をしていた。
まだ吸い足りないっていうの・・・
困り顔の真由美のために、ぼくはとっさに口走っていた。
「身代わりに僕が、きみの制服を着て良太に逢おうか・・・?」
真由美は驚いたように息をのんだが、案外いいアイディアかもね、といって、自分の制服を僕に貸すことに同意してくれた。
真由美に誘いの電話をかけてきた良太に事前にそう告げると、歓迎するよ、と、言ってくれた。
そして、傍らの真由美に聞こえないよう声をひそめて、
「実は、前からそうしてもらいたかったんだ」
と、彼はいった。
貴志なら女子の制服、似合いそうだから・・・
彼の言いぐさに内心ズキリとしたのは、いけないことだったのだろうか?
なにも知らない真由美は、「貴志ったら本物の女の子みたい♪」と、ただ無邪気に笑って僕のことをからかっていたけれど。


「責任、取りなさいよね」
真由美の声は、いつになく尖っていた。
声が尖って、当然だった。
卒業を明日に控えたその日の夕方。
村はずれの納屋でのことだった。
真由美は藁の上に組み敷かれたままの姿勢だったし、
良太は果たしてしまった後、まだ真由美の上におおいかぶさったままの格好だった。
行為に及ぶ前にしたたかに血を抜かれたぼくは、ただ惚けたように、納屋の一番隅っこで、ふたりのいちぶしじゅうを見せつけられていた。
「僕、責任取るから」
弱々しい声色だったけど、われながらきっぱりと言い切ることができた。
そう、お嫁入りまえの娘が男と仲良くすることは、この村では厳しく禁じられていた――そう、表むきだけは。
真由美は僕の声にはっとすると、素直な声色になって、「ごめん」とだけ、いった。
僕はかぶりを振って、真由美に応えた。
「そんなことない。僕も内心、こうなると良いと思っていたから」
それは真由美のためについた嘘だったけれど、どこまで嘘だったのか、いまでも確信を持てなかった。
でも案外、それは本音だった。
つい最近知ったことだけど、良太はすでに女を識っていた。
相手が僕の母だと知った時、良太にすべてを支配されることが、ひどく心やすいもののように感じることができた。
それに――
真由美の身代わりに、真由美の制服を着て、真由美になり切った僕と逢ったとき。
良太はいつもよりたっぷりと僕の身体から血を吸い取って、もちろん真由美のハイソックスもくまなく咬み破ったあと、
逆立った股間を真由美のスカートの奥へと、沈み込ませてきた。
自分でもびっくりするほど素直に受け止めてしまった僕は、彼のお〇ん〇んの剛(つよ)さをしんそこ味わわされて、
この快感を真由美にも体験させてやりたいと感じていた。
なぜかとても素直に、そう感じることができたことにも、歓びを覚えることができた。
吸血鬼に恩恵を与えるためだけではなくて、人間の男子として真由美を良太と共有できることが、嬉しいと感じた。
そのために、僕は今日、女になったのだ と・・・。

「罰としてあたし、結婚してからも良太と逢うから」
制服を着崩れさせて藁まみれになったまま、真由美は不貞腐れたような声色で、僕に毒づいた。
「いいよ、できればそうしてあげてほしい」
僕はドキドキを抑えながら、そう応えた。
「ウン、わかった。これ、貴志の嫁の務めだと思うことにする」
真由美はぽんぽんと男のように受け答えする。
「きみを良太と分け合うことができて、嬉しいよ」
良太はさすがに、ちょっとのあいだ言葉をさしはさむのを遠慮していたが、
ふたりのやり取りがおだやかにおわると、おずおずと言った。
「ありがと、貴志。ところで、もう一度だけしても、良いかな?」

何事もなかったように納屋から出てきた三人は、
真由美をはさんでいつものように仲良く、どうでもいいやり取りをしながら家路をたどった。
道行く人は、真由美のスカートから覗く太ももに血が垂れ続けているのに気がつくと、いちようにぎょっとしたが、
ぼくたちが気にせずに歩いて行くのをみると、なにも見なかった顔をして通り過ぎていってくれた。

卒業式前夜の納屋ではじけた情熱を、ぼくたちはきっと、生涯忘れることはないだろう。


あとがき
爽やかな青春日記・・・ではない、ですかね・・・? ^^;

同級生のハイソックス

2018年01月15日(Mon) 08:26:07

その当時貴志の学校では、
半ズボンにハイソックスといういでたちは、良家の令息のステータスだった。
貴志も毎日、詰襟の制服の代わりにブレザー姿で登校していた。
校則は、とくに良家の子女にはゆるやかだった。

貴志の幼なじみの良太は、幼いころから吸血鬼だった。
吸血鬼と人間とが共存しているこの街では珍しくない、半吸血鬼の家系だった。
貴志は良太の母に頼まれて、学校で良太が飢えたときに自分の血を吸わせてやるようになっていた。
本人同士はもとより、母親同士が仲が良かったのも幸いした。
色気づいて来た良太のために、貴志の母親が筆おろしの相手になってやったことを、このころの貴志はまだ知らない。

良太は、ハイソックスに執着する性癖を持っていた。
喉が渇くと貴志のいる教室に行って、授業中でも構わず貴志のことを呼び出すと、
鼻息荒く貴志の足許に唇を迫らせて、ハイソックスの上から唇を吸いつけてきた。
そんなときでも貴志は、
「授業中に、やだなあ・・・」
と苦笑いしながらも、担任の先生に断って教室を出、手近な空き教室や裏庭で、吸血に応えてやっていた。
良太が自分の服装を気に入ってくれているのが、むしょうにうれしかったのだ。
貴志は、露骨に舌をふるいつけてくる良太のために、気の済むまでハイソックスを舐めさせてやり、
ふくらはぎに食いついてくる牙で、ハイソックスを惜しげもなく破かせてやっていた。
貴志が咬み破られて血の撥ねたハイソックスを履いたまま教室に戻って来ても、だれもが見て見ぬふりをした。
吸血鬼に関係のあるものも、そうでないものも、その程度の配慮はわきまえていた。

「気になる女の子がいる」
良太が出し抜けにそう言い出したのは、やはり授業中に貴志を呼び出して吸血に及んだあとのことだった。
組み敷かれた格好のまま貴志は、「そうなんだ」とだけ、こたえた。
良太は口許からぽたぽたと、さっき吸い取ったばかりの幼なじみの血をしたたらせてくる。
それをわざと、真っ白なワイシャツの胸に受け止めながら、
「こら、こら。着替えないと教室に戻れないじゃん」
といった。
手足をだらりとさせた大の字の格好で、足許ににじり寄って来る幼なじみを見るともなしに見守りながら、
「誰なんだい?」
と、さっきの話の続きを促した。
「きみのクラスの真由美ちゃん」
以外に素直に帰って来た返事に良太の欲求の強さを感じた。
ふくらはぎに這わされた唇の両端から、牙がチクチクと滲んでくる。
2本の牙が、ずぶっと、貴志のふくらはぎに刺し込まれる。
じわじわと滲んできた血潮がハイソックスになま温かくしみ込むのを、貴志は感じた。
「わかるよ」
咬まれる快感に夢中になって置き去りにしてしまったこたえを、貴志はいまさらながらに口にした。
「彼女、美人だものなあ」
「貴志は、好きな子はいないの」
「僕?うん、とくにいないけど」
「頼みがあるんだ」
「わかってるよ」
「そうなんだ」
「彼女のこと、呼び出してくれっていうんだろ?」
「いいの?頼んでも」
貴志は良太がまだ真由美と同じクラスになったことがなく、
同級生の女子にさえろくに口をきけない良太がまだ真由美と言葉も交わしていないことを知っていた。
「僕が紹介してやるよ。仲良くなれるといいね」
「でも――」
良太がちょっとだけ、言いよどむ。
そう、吸血鬼の家に生まれたものは、人間の娘とは結婚できないしきたりになっていた。

入れ替わってやれるとよかったんだけどなあ――と、貴志は思う。
まだ若すぎるのかもしれないけれど、貴志には女子に対する思い入れがあまりなかった。
良家の子女にふさわしい美貌を備えた貴志は、その実クラスの女子の注目の的だったのだけれど、
そんなことは彼には、どうでもよいことだった。
あの内気なやつが、どうやって真由美に挑むというのだろう?
モテる男子が、モテない男子をからかうような優越感は、彼にはなかった。
むしろ、幼なじみが意中の子にうまくアタックできるのかどうかが、気になるだけだった。

「ご対面」は、さっそく次の日の放課後に行われた。
「話があるから来て」とだけ言って誘い出した真由美は、
ある種の期待を込めた女子の顔つきをして、言われるままに学校の裏庭にやって来た。
そしてそこに貴志だけではなく、良太の姿をみとめて、露骨に眉をひそめた。
良太が吸血鬼だということは、校内のだれもが知っていたので、
ふつうの女子としての潔癖さを、彼女も同じように表に出したに過ぎない。
「僕の幼なじみの良太。いつも僕の血を吸わせてやっているんだけど――」
戸惑う真由美を前に、ちょっと酷だなと思いながらも、貴志はストレートに言った。
「彼、きみの血を吸いたがっているんだ」
口に出した瞬間、酷だったのは真由美に対してではなく、良太に対してだと初めて気づいた。
良太はギクッとして顔色を変えて、その場から逃げ出すように足を半歩引いていた。
貴志は良太の手をさりげなく抑えながら、つづけた。
「――よかったら、僕といっしょに献血に応じてあげてくれないかな?」

ガマン出来なくなったら、いきなりきみのことを襲うかもしれない。
そんなふうにされちゃうのは、きみのプライドも許さないだろうし、
こいつ吸血鬼のくせに、傷つくやつなんだ。
あとできっと暗く後悔する。
そうするとまた、僕のところに来るんだよね・・・
実際にあった記憶がよみがえり、貴志はにやにやしながら良太を見た。
「いいだろ・・・」
口を尖らせる良太を、貴志が気安くどやしつけるのを目にしたときには、
少女はすっかり気持ちを落ち着けていた。
もともと気丈な娘だった。
「いいわよ、貴志くんといっしょだったら、血をあげてもいい」
ぱっと顔色を輝かせる二人の少年を交互に見比べながら、真由美は貴志に訊いた。
「このひと、血を吸うときハイソックス破っちゃうって、ほんと・・・?」

さいしょに貴志が手本を見せ、あとから真由美がそれにならった。
貴志は半ズボンの下にいつものように舌をふるいつけてくる良太を苦笑しながら見おろし、
そんな貴志を真由美は眩しそうに見つめていた。
いよいよ自分の番になると、貴志に、「やっぱり怖いから、手を握っていて」といって、自分から手をつないできた。
真由美は、濃紺のハイソックスを履いていた。
良太が真由美の履いているハイソックスのうえから唇を吸いつけたとき、
貴志はいつも自分が吸われているとき以上にドキドキしているのを感じた。
「白いやつじゃなくてよかった」
と、真由美が呟いた。
真っ白なハイソックスでは、シミが目だってしまうからだとわかったときにはもう、
良太は躊躇なく、真由美のふくらはぎに牙を埋め込んでしまっていた。

ちゅう、ちゅう、ちゅう・・・
真由美の血が音を立てて、良太に吸い取られてゆく。
こういうときは、いつもの引っ込み思案はかげをひそめて、良太はひたすら強欲に、獲物の血をむさぼるのだ。
さすがに気丈な真由美も顔色を蒼ざめさせて、貴志に促されるままに、手近なベンチに崩れるように腰を下ろした。
真由美が姿勢を変える時だけ、良太は唇を放して貴志を手伝ったが、
すぐにまた自分が初めてつけた傷口に唇をふるいつけて、血を啜りつづけた。
そのあいだずっと、貴志は真由美の細い肩を抑えつけながら、
幼なじみが目のまえの美少女の生き血を吸い取る光景を、いつになく胸をわななかせながら見守りつづけていた。

真由美は案外度胸の据わった娘だった。
すっかり大胆になった良太に求められるまま、左右どちらの脚も、ハイソックスを履いたまま咬ませてやっていた。
もう片方の脚をねだられたとき、気持ちずり落ちていたハイソックスをわざわざきちんと履き直すほど、しっかりしていた。
「すごいね、きみは」
貴志は真由美にいった。
「怖くなんてないから」
真由美は白目で貴志を睨みながら、こたえた。
その実内心はかなり怖がっているのが貴志にはよくわかっていたし、
良太のほうも吸い取った血の味で、彼女の気分を察しているはずだった。
「家まで送るから」
控えめにそういった貴志に、真由美は「ありがと」とだけ、こたえた。
貴志は良太と目線を合わせ、良太が頷くのを見て、自分のしたことがよけいな差し出口ではないことを察した。
どんなに好きでも、吸血鬼に家まで送られることを、少女が肯んじるとは思えなかったから。
「こいつさ、自分が咬み破ったハイソックス、コレクションにして集める趣味持ってるんだぜ」
良太のコアな趣味を貴志が明るい口調で暴露すると、真由美は初めて声をたてて笑った。
「そうなの?ヘンな趣味ね」
「僕のはだいぶ、ストックされちゃってる。ほんとはお前・・・真由美ちゃんのも欲しいんだろ?」
貴志が面白そうに、良太の顔を覗き込むと、良太の反応から目をそらしながら真由美がいった。
「あげるわよ。穴の開いた靴下なんて、もう履けないし」
良太が目の色を変えて、真由美の足許に取りついた。
履いているハイソックスを引きずりおろそうとする良太の手を、真由美は手厳しくはねつけると、
「ばかね、ちゃんと洗ってからにしなさいよ」
と、そこは少女らしい恥じらいをみせた。

「吸血鬼って、人間の女の子と結婚できないんだってね」
真由美は意外に、詳しかった。
母親からいろいろ聞かされていたというのだ。
まるで母娘の間の性教育みたいだ、と、貴志はなんとなく思った。
「でもあたし、ちゃんとお嫁さんになって、家庭を持ちたい人だからね」
真由美の宣言は、貴志が気づかったほどに、良太を傷つけなかった。
「わかっているさ。分はわきまえているつもりだからね」
そして、意外なことを口にした。
「貴志は、真由美ちゃんと付き合う気はないの?」
え?
完全に虚を突かれて、貴志は言葉を失った。
さっき、真由美が初めて咬まれる瞬間によぎったドキドキの意味が、やっとわかってしまったから。
真由美は貴志の目を見ずに、ぶっきら棒にいった。
「私、貴志くんとつきあってもいい」

「おまえ、結局いちばんおいしいところだけをつかまえたな」
翌日の学校帰りに、貴志は良太のことを小突いた。
真由美の血を末永く愉しむために、真由美を幼なじみである貴志の嫁にする。
寛大な貴志はきっと、若い女の血を欠かせない幼なじみのために、自分の嫁を気前よく差し出すことだろう。
「ばれた?」
照れ隠しに笑う良太はそれでも、
「俺、貴志の嫁を支配するから」
と、憎まれ口をたたいた。
二人の間に交わされる言葉の裏に毒々しさがまったくないのを、
貴志も良太も――そして多分真由美さえも――よく知っていた。

その次の日、真由美が良太のために初めて咬み破らせたハイソックスを洗って持ってきて、良太に手渡したのを、
貴志は真由美の口から聞かされた。
「こないだのハイソックス、良太くんに渡しといたから」
「これからも、良太くんに襲われて、血を吸われることにしたから――良太くんと、貴志のために・・・」
二人は寄り添い合って、初めての口づけを交わした。
長い口づけだった。
いちど離れた唇と唇は、少女の側からもういちど、重ね合わされた。
「ありがと。私初めてだったんだ。いまの記憶で、これからなにがあっても私やっていけるから」
真由美は初めて少女らしく、無邪気な笑いをはじけさせる。

二人の幼なじみの、片方の妻になって、もう片方の恋人になる――
そんな難しい役柄を、きっと演じ切って見せる。
かたく引き結ばれた少女の薄い唇に滲んだ決意に、貴志はもういちど少女のことを力をこめて抱きしめていた。

優しい伯母。

2017年11月27日(Mon) 07:36:56

高級住宅街の瀟洒なたたずまいの一角から、優雅なピアノの音色が漂ってくる。
「奥村敏恵 ピアノ教室」
そんな古びた看板が生垣に埋もれかけたお邸からは、かなり流ちょうな旋律が踊るように流れてくる。
その流れが、ふと途切れた――

「アラ、間違いよ。あなたいっつもここで、途切れるわね」
親切そうな中年のピアノ教師・奥村敏恵は、うわべだけの優しいほほ笑みを、教え子の少女の横顔に投げかける。
逃げられないように抑えつけた少女の両肩にかけた掌に、ギュッと力を込めながら。
少女の足許には、背後から近寄せられた男の唇が、もの欲しげに吸いつけられている。
白の薄地のハイソックスが、少女のひざ小僧の下までお行儀よく引き伸ばされていたけれど。
ヒルのように密着した、赤黒い唇の下。
ピンク色の脛を滲ませた白の薄地のハイソックスはむぞうさに噛み破られて、
裂け目が縦にツツッ・・・と走る。
そしてひと呼吸おいて、真新しいナイロン生地にはバラ色の血の滴りがしみ込んで、拡がっていった。
息をのんだまま硬直した少女の凍りついた顔つきを、敏恵は小気味よさそうに覗き込む。
「優子さん、もう少しの辛抱よ。
 あなたの若い血で、うちの甥っ子をもう少しだけ、愉しませてあげて」
気品のある白い頬に意地悪い笑みを泛べて、ピアノ教師は教え子に、うわべだけのいたわりを囁きつづけた。

男は少女の椅子の下、這いつくばった姿勢のまま、
喉をゴクゴクと鳴らしながら、うら若い乙女の血潮に酔い痴れている。
若いピチピチとした活力を、痩せこけた身体いっぱいに行き渡らせようとして。

白い顔になってソファに横たわる少女を、ピアノ教師は無同情に見おろした後。
「30分もすれば回復するわ」
と言い捨てて、
「由佳さん、よろしいですよ」
と、つぎの教え子の名前を呼んだ。
「あなたはあっちにいらして、この子の相手をなさい」
甥っ子にそう言い捨てると、気絶した教え子にはもう関心がないといわんばかりに、ふたりに背を向けている。

ふすま一枚へだてた向こう側。
ズズッ・・・じゅるじゅるっ。
不気味な音が洩れてくるのを、つぎの少女はことさらに無視してピアノの前に座った。
若い女の生き血を啜る音だと気づいていないわけはないはずなのに、
ブゾーニの何番をお願いします、と、お行儀よく頭を下げて、セミロングの黒髪を揺らせる。
「じゃあいつものところから」
ピアノ教師はうわべだけの優雅な笑みを湛えながら、少女の指先に奏でるようにと促していく。
ピアノ教室に出入りする少女たちは、いずれも良家の子女である。
こういう場にくるときには例外なく良い服を着て、先生に教えを請いに訪れる。
由佳と呼ばれた少女もまた、淡いピンクのワンピースの下、齢不相応にストッキングを脚に通していた。
仲の良いお友だちの優子ちゃんのつぎの獲物は自分なのだと、自覚し過ぎるほど自覚していたし、
せっかく穿いて来た大人っぽい肌色のストッキングも、
レッスンの後で見る影もなく咬み破られてしまうとわかっていながら、
心の動揺を覚られてしまうのは恥だといわんばかりに、ことさらもの静かに、優雅なメヌエットを奏でてゆく。


「ショウジさん、よかったわね。皆さん優しくて・・・
 お嬢さんたちはだれも、あなたのこと嫌がったりしなかったじゃないの。
 あなた、もっと自信持ちなさいよ。
 それから早く、あの子たちのなかから、お嫁さんを選んでね」
教え子たちが順ぐりに咬まれて、破れた靴下を穿き替えて帰宅していったあと。
敏恵は血色を取り戻した甥っ子の横顔を、優しいまなざしで見つめる。
さっきまでのうわべだけの笑みとは裏腹な、いたわりに満ちたまなざしだった。
甥っ子には甘く、どこまでも親切な伯母だったのだ。

甥のショウジに初めて襲われたときには、びっくりして取り乱してしまった。
そのままじゅうたんの上に押し倒されて、ショーツを引きずりおろされたときには、まさかと思った。
この齢になったのに、敏恵がセックスを識ったのは初めてだったのだ。

吸血鬼になった息子を姉の家に差し向けた妹は、あとからすべてを告げた。
妹の一家は家族全員が吸血鬼に襲われて、甥のショウジが吸血鬼になったということを。
後出しは卑怯だわ。
したたかな妹に、姉は冷ややかにそういった。
首すじに咬み痕をつけられた後であっても、そういうところまでは崩れ果てないらしい。
姉と同じ痕をつけられた後、すべてを崩れ果てさせてしまった妹は、
姉の気丈さとひさびさに向かい合って、さすがだと素直に思った。
「わかったわ。うちの教室に若いお嬢さんが大勢出入りしているから、私にあの子を預けるというのね?」
皆まで言わせず、露骨に言い切った姉に、妹は綺麗な女の冷酷さを見る思いだった。

それ以来。
独り住まいのピアノ教師の邸に居候を決め込んだ甥っ子は、若い好奇心のまま、
伯母の教え子たちを襲いつづけた。

同性には冷酷なこの女はしかし、甥っ子にはどこまでも優しかった。
血を欲しがって呻きをこらえる甥っ子のまえ、優雅に装ったドレス姿を見せびらかして、
すすんで押し倒されていって、股間も首すじも、ためらいもなく愉しませてやった。
女性が脚にまとう丈の長い靴下に執着するショウジの嗜好を、
「いけない子ねぇ」と優しく咎めただけで、
ストッキングで上品に装った足許を、ロングスカートをたくし上げて惜しげもなくさらけ出すと、
狂おしい本能のおもむくままに、荒々しくむしり取らせてしまっていた。
さいしょは伯母のもとに出入りする教え子たちのことを、恐る恐るのぞき見するだけだった甥っ子の好みを、優しい伯母は懇切に聞き取ってやり、
甥っ子が手を出してもよさそうな娘を択んでは、レッスン後に二人で逢わせてやるようになった。
――あなた、吸血鬼に襲われてみない?
先生にそんな誘いを受けて戸惑う教え子たちをあるときはなだめすかして、あるときは高飛車に抑えつけて、
レッスン室の隣のお座敷に送り込まれた教え子たちは、
ひとり、またひとりと、甥っ子の毒牙にかかっていった。
それが近所の評判にならなかったのは、少女たちが口が堅かったのと、
たまたま知ってしまった親たちも外聞を憚って見て見ぬふりをし、
自分の娘が吸血に狎れてしまったことに薄々気づきながらも、
ピアノのレッスンを続けたいというまな娘の願いを叶えつづけた結果だった。

良家の子女のなかには、すでに男を識ってしまった娘も、当然のようにいた。
そうした娘たちには、敏恵は容赦がなかった。
「お行儀の悪い子は、犯してもいいのよ。遠慮なくおやりなさい」
敏恵の言いぐさはひどくそっけなかったけれど、甥っ子への歪んだ愛情に満ちあふれていた。
伯母の冷ややかに澄んだ声が突き放したような言いぐさを口にするのを、
ショウジはくすぐったそうに受け流しながら、
小ぎれいなお洋服に着飾った伯母の教え子を組み伏せて、荒々しくスカートをたくし上げてゆく。
鋭利な牙を秘めた唇を柔らかな首すじにあてがうと、
どんなに気の強い少女も例外なく怯えた視線をさ迷わせながら、従順になっていった。
生き血を吸い取られてゆくあいだ。
ハイソックスの脚がじたばたと暴れ、
切なげに足摺りをくり返し、
やがて力を失ってぐったりと横たわる。
けれどもショウジの黒ずみ痩せこけた腰がスカートの奥に肉薄し、深く沈み込んでくると、
ふたたび身じろぎを始め、淫らな躍動をはじけさせてゆく――
敏恵はワイングラスを片手に弄びながら、
そんな恥知らずな教え子たちが甥っ子に組み伏せられて、
嫁入り前の娘としての名誉を奪われてゆくのを、
小気味よさそうに眺めていた。


「ありがとうございました」
丹生加奈子はお行儀よく両ひざの上で手を重ねて、レッスン後のあいさつを終えた。
ロングの黒髪を揺らしてお辞儀をする少女に、敏恵は、
「あちらにいらっしゃい。甥っ子があなたのことを待ちかねていますよ」
と、少女を促した。
加奈子はちょっとだけ羞ずかしそうな笑みを色白な童顔によぎらせると、
「ではちょっとだけ、お邪魔していきますね」
と、白い歯をみせた。そしてピアノの前から起ちあがりかけて、
「きょうのレッスンは、私が最後ですよね?」
と、忘れずに確かめていた。

「白のカーディガン、汚れが目立たないかしら」
首すじを咬まれたあとの血のほとびを気づかわれたと知りながら、少女は笑みを絶やさない。
「だいじょうぶ。彼、優しくしてくれますから」
加奈子が白い服を着てくるときには、血が撥ねないようにソフトに咬んでくれるのだという。
「きっときょうは、優しく咬まれたい気分なのね」
心優しい伯母は、甥っ子の相手をためらいなくつとめてくれる少女のことを、そう判断した。
リビングのドアが開いて、ショウジが顔を出した。
「やあ」
おおぜいの女の子を組み敷いて来た彼には珍しく、よそよそしいはにかみを泛べているのを、伯母はほほ笑ましく見守る。
つぎの教え子が控えているときには、
イスの下にもぐり込んでハイソックスのふくらはぎをひと咬みするだけで、
レッスンを終えた少女をすぐに連れ出してしまうショウジが、
加奈子がいちばんさいごにレッスンに訪れるときだけは、レッスン室に長居をするのだ。
加奈子もショウジの抱いている好意を、それとなくわきまえているらしい。
「おニューのタイツ履いて来たの。楽しんでね」
笑くぼを滲ませて人懐こく笑うと、こげ茶のスカートのすそを抑えながら、
「失礼」と先生にひと声かけて、じゅうたんの上に身を横たえていく。
真新しい黒タイツに包まれた発育のよいふくらはぎが、しなやかなナイロン生地ごしにピチピチとした生気を滲ませていた。
ウウ・・・
吸血鬼としての本能を目覚めさせてしまったらしい甥っ子が、
少女の足許に性急に唇を圧しつけてゆくのを、
心優しい伯母は「あらまあ、ホホホ・・・」と、嬉し気に見つめていた。

少女が純潔を喪ったのは、それから小一時間ほど経ってからのことだった。

濃い紫のドレスに身を包んだ伯母は、最愛の甥っ子が自分の教え子を女にしてゆくのを、そむけた背中越しに感じつづけていた。

相手の女がすでにセックスを識っているとき、甥っ子は必ず彼女を犯した。
けれども相手が身持ちの良い少女の場合には、生き血を吸い取っても犯すことはなかった。
相手が処女でも犯してしまうとき、彼が本気なのだということを、
敏恵は自分の身体で識っていた。

加奈子さんのご家族には、ご挨拶に伺わないとね。
お母さまはおきれいな方だし、お父さまは物わかりのよい方よ。
中学にあがったばかりの、可愛い妹さんもいらっしゃるの。
あの子もきっと、ピアノを習うようになるわ。才能あるから。
あなたは特別な子なんだから、お嫁さんはなん人ももらうといいわ。
伯母はどこまでも、甥っ子に甘く優しかった。


あとがき
このお話に登場する人物・団体名は、他のお話同様架空のものです。
・・・なんて断り書きを入れるのは。
だいぶ前のことですが、たまたま同姓同名だったらしい方から「私のことを知ってるの?」と問い合わせられたのを思い出したからなのでした。

さいごに加奈子さんの妹さんを「才能あるから」と評価した伯母さまは。
妹娘のどんな才能に注目したのでしょうか?
気になるところではあります・・・

初めておじ様に逢った夜

2017年10月30日(Mon) 05:14:19

「キムスメ・・・って、なに・・・?」
まだ〇〇歳の小娘だったあたしには、100歳にもなる吸血鬼とお話するにはボキャブラリイがなさすぎた。
「生娘というのはの、お前のような可愛い娘のことをいうのじゃよ」
吸血鬼のおじ様は、あたしが逃げようとするのをさりげなく封じながらも、わかりやすく説明してくれた。
あとで考えたら、その説明はあまり正確ではなかったのだけれど、
〇〇歳のあたしには、その説明だけでじゅうぶんだった。
美女が吸血鬼に抱かれるシーンはなん度となく、パパといっしょに映画館で観たことがあったから。
「生命はほんとに、助けてくれるんだよね?」
ちょっぴり心配になったあたしは、知らず知らず怯えた表情を作り、媚びるような上目遣いをして、おじ様を見あげたけれど。
おじ様は「よしよし」とあやすようにあたしの肩を抱いて、
「嬢やはそんなこと、心配しなくてだいじょうぶ」
とだけ、いった。
「ちょっとだけなら・・・いいよ・・・」
キムスメの血を吸いたいとおねだりされたあたしは、
いつもは親におねだりばかりしているわがままな女の子だったのに、
いつもとあべこべなんだけど・・・って思いながらも、
おじ様のわがままを聞いてあげる気になった。
どうしてそんな気分になったのか、いまでもよくわからない。
たしかにおじ様の片手は、あたしの二の腕を強くつかんで離そうとしなかったし、
逃げられないのはいやというほどわかっていたけれど、
あたしがおじ様のいうことをきいたのは、そんなことのせいじゃなくって、もっと別な理由からだと、いまでもはっきりそう思っている。
「そんなに欲しいのなら、マミの血を吸わせてあげる」
あたしは自分がちょっとだけやせガマンをしていると感じながらも、
パパといっしょに観たドラキュラ映画のヒロインみたいに、
おとがいをわずかに仰のけて、目をつぶる――
「あんまり痛くしないでね」って、小声でつぶやきながら。

首すじに食い込んだ牙は、さいしょのうちだけは予防注射と同じくらい痛かったけど、
あたしは涙をガマンして、吸血鬼に抱かれる美女になりきろうとした。
気がつけば、貧血で頭がくらぁっとするほど、生き血を吸い取られていた。
首すじから牙を引き抜くと、
おじ様はあたしの血を吸い取ったばかりの唇を、耳たぶに触れるくらいまで近寄せて、
「ありがとう。嬢やは強い子だね」
って、ささやいた。
どうせなら、そんな子どもをあやすような言いかたじゃなくって、
もっとロマンチックなことをつぶやいてくれればいいのにって、
ちょっぴり不満に思った。

あたしの履いている真っ白なハイソックスをイタズラしたいといわれたとき、
すっかり、彼の餌食となっていたあたしは気前よく、
「ウン、いいよ。マミ、イヤらしいの大嫌いだけど、おじ様だったらガマンする」
そんな言い方がおじ様をそそるのだと、あたしはなんとなくだけど、わかってしまっていた。
おじ様がさいしょにあたしを見たときから、
ミニのワンピースからのぞく太ももと、
ひざ小僧の下までお行儀よく引きあげたハイソックスとをとても気にして、
なん度もチラチラ盗み見るのを、ママといっしょにいるときから気がついていたから。
おじ様はあたしのハイソックスのうえから唇を吸いつけて、
その唇の奥から、舌をぬめらせてきた。
上から下まで、脚の線をなぞるようにして舌を這わせてきて、
よだれのたっぷり浮いたべろで、あたしのハイソックスを汚すことに夢中になった。
なま温かいよだれがハイソックスにしみ込んできたとき、
あたしは初めて「イヤラシイ」って感じたけれど。
「女に二言はないもん」と、おじ様に聞こえないようにつぶやいて、
知らん顔をしたまま、おじ様の好きなようにさせてあげていた。
やがておじ様は、ふくらはぎのいちばん肉づきのいいあたりに牙を突き立てて、
ハイソックスを咬み破ってあたしの血を吸い始めた。
ごくっ、ごくっ・・・という音が生々しくって、あたしは思わず肩をすくめたけれど。
おじ様はあたしのひざ小僧や太ももをあやすようにまさぐりながら、
あたしの生き血で喉を鳴らすのをやめなかった。
あたしもいつの間にか夢中になって、
もう片方の脚に唇を近寄せてくるおじ様のため、
おじ様がよだれをなすりつけやすいようにと、
ハイソックスの脚をちょっぴり優雅にくねらせてみた。

気がついたら、あたしは貧血を起こしていて、じゅうたんの上にあお向けに倒れていた。
咬み破られてずり落ちかけたハイソックスは両方とも、それもあちこち咬み破られていて、
しみ込んだ血潮のぬくもりにまみれてしまっていた。
頭のうえで、「きゃあッ・・・」と、ママの悲鳴が聞こえた。
バタバタッとあわただしい物音がして、それからゴクゴクッ・・・と、おじ様の喉が鳴る音がした。
あたしと同じように貧血を起こして尻もちをついたのも、気配でわかった。
いつもはきびしいママが、
「あうッ・・・あうッ・・・」
と、べそをかいたみたいな声をあげながら、ストッキングを穿いた脚を咬まれているみたいだった。
おじ様はあたしのときと同じくらいしんけんにママを襲うのに熱中して、
そのあいだじゅう「ゴクゴク」と、喉を鳴らしつづけていた。

いちばんえらいと思ったのは、お兄ちゃんだった。
逃げようと思えば逃げられたのに、
「ボクだけ無傷なの、カッコ悪いから」
といって、たるんで履いていたハイソックスをきっちりと引き伸ばして、
「母さんのストッキングほど面白くないだろうけどさ」っていいながら、
白のラインの入ったあざやかなブルーのハイソックスに血潮が赤紫ににじむのを、
「楽しそうだね」っていいながら、静かな目をして見つめていた。

それからあたしたち兄妹は、ママのことが好きになってしまったおじ様が、
倒れて気絶寸前のママのうえにのしかかっていやらしいことをするのを、
表情を消して見守っていた。
しばらくしてママが声をあげはじめて、おじ様の背中に腕を回すのを見たお兄ちゃんは、
「仲良くなったみたいだから、もう視ちゃダメ」と、あたしにいった。
そのくせ自分はずうっと、ママがおじ様と愛し合ういちぶしじゅうから、目を離そうとはしなかったんだけど。

その夜ママがおじ様としていたことのすべてを識ったのは、大人になってからのことだった。
高校を卒業してからは、ハイソックスをストッキングに穿き替えて、
ママと代わりばんこにおじ様のお相手をした。
「お嫁入り前なのに、男のひととそんなことをしてはダメ」
って、ママは言うけれど。
パパの目を盗んでおじ様と逢うときにウキウキとしているママがそう言っても、あまり納得出来はしなかった。
いまはもう、結婚する彼がいるくせに、あたしはおじ様と逢いつづけている。
きっと結婚してからも、おじ様の恋人でいつづけてあげると思う。

あの夜。
初めておじ様にハイソックスを履いた脚を咬ませてあげたとき。
ママは「母」から「女」に逆戻りをして、
あたしは「子ども」から「少女」に成長したのだと。
だいぶあとになってから、そう自覚した――

少女たちは、ソックスを濡らして家路をたどる

2017年10月14日(Sat) 08:19:08

放課後の空き教室で、貧血を起こしてへたり込んだ優奈は、
吸血鬼に抱きすくめられて泣きべそをかきながら、生き血を吸い取られていった。
咬まれつづけた首すじには、いくつもの咬み痕が、セミロングの黒髪に見え隠れしながら、赤い斑点を濡らしていた。
クラスメイトの澪に、話があると誘い出された教室で。
襲いかかってきた吸血鬼に、あろうことか澪は手助けをして、
じたばた暴れる両腕を抑えられ、どうすることもできずに首すじを咬まれていた。

ひどい、ひどいよ澪ったら・・・っ!
抗議の叫びも空しく、優奈の血はゴクゴクと喉を鳴らして飲みこまれていって、
視界を薄れさせた優奈はひざの力が抜けて、身体のバランスを失った。

「この教室でおひざを突いちゃうとね、罰ゲームが待ってるの。
 どんな罰ゲームか、知りたい?
 訊きたくなくても教えてあげるね。
 脚をね、咬まれるの。ハイソックスを履いたまま。
 いやらしく、ねちっこく咬まれて、
 ハイソックスに血とよだれがたっぷりしみ込むまで、くり返されちゃうの。
 あたしも昨日、やられちゃったの。
 優奈も、仲間になろっ☆」

耳もとに唇を近寄せて囁きかける澪の声色は、しっとりと、ネチネチと、優奈の鼓膜に突き刺さってきた。
――あなたが汚され辱められてゆくのを視ているのが、あたしとっても愉しいの。
小憎らしく笑う白い顔に、ありありとそう描いてあった。

「うぅぅ・・・たまらない!あたしも咬まれたくなっちゃった」
意識が朦朧となった優奈の前、
澪は大胆に髪の毛を自分で掻きのけて、赤黒く爛(ただ)れた咬み痕を吸血鬼の目の前にさらしてゆく。
吸血鬼は澪を抱きすくめて、優奈に襲いかかった時と同じように、がぶりと食いついた。
欲情もあらわな食いつきぶりに、優奈は悲鳴を忘れ、澪は随喜の声をあげる。
ぐちゅっ・・・ぐちゅっ・・・
生々しい吸血の音が、男の口許からあふれた。

「見て見て。お手本だよ。優奈もこんなふうに、脚を咬まれちゃうんだよ」
澪は嬉しそうに優奈に笑みかけると、弛んでずり落ちたハイソックスをぴっちりと引き伸ばした。
「ほら・・・ほら・・・見て・・・やらしい・・・ほんっと、意地汚いっ」
言葉とは裏腹に、澪は露骨に嬉し気な顔をして、優奈に視つづけるように促した。
ハイソックスごしに吸いつけられた赤黒い唇から、飴色をしたよだれが糸を引き、澪の足許を汚した。
「うう~、たまらない・・・たまらなくいやらしいっ」
「んもうっ、恥知らずっ!」
「侮辱だわっ・・・汚らしいわっ・・・」
口ではさんざん相手を罵りながらも、澪は男の非礼な仕打ちをやめさせようとはしていない。
失血でへたり込んでしまった優奈も、涙も忘れてクラスメイトの痴態をただ見つめるばかりだった。

吸血鬼が澪の履いているハイソックスを見る影もなく咬み破ってしまうと、
澪は白目を剥いてその場に倒れ、吸血鬼は射すくめるような目で優奈を見据えた。
伸びてくる猿臂を、避けようもなかった。
足首をつかまれて引きずり倒された優奈は、ハイソックスの上から男の唇がふくらはぎに吸いつくのを感じた。
生温かいよだれがじわじわと、優奈のハイソックスにしみ込まされてくる。
いやらしい・・・いやらしい・・・やめて・・・よして・・・
優奈は声にならない声をあげて、男を制止しようとしたけれど、
男は優奈の無抵抗をいいことに、ただひたすら彼女の足許を辱める行為に熱中しつづける。
ハイソックスごしに感じる男のなまの唇がいやらしくぬめるのを、
優奈は眉をひそめて耐え忍んだ。

這わされた唇の両端から、尖った異物がにじみ出て、優奈のふくらはぎの一角をハイソックスのうえから冒してきた。
あ・・・咬まれる・・・
そう思ったけれど、痛いほど抑えつけられていて、身じろぎひとつできなかった。
「お嬢さん、ご馳走になるよ」
男は優奈をからかいながら、ハイソックスのうえから牙を埋めた――

数刻後。
ふたりの少女は椅子に腰かけ、机に突っ伏しながら、
破かれてずり落ちたハイソックスのふくらはぎや、
スカートをたくし上げられてあらわにされた太ももを、
飽きもせずに這わされてくる男の唇に、
恥知らずにもぬめりつけられてくる男の舌に、
惜しげもなくさらしつづけた。

「キモチわるーい!ハイソックス、びしょ濡れだよ・・・」
さいしょは嫌がっていた優奈の声も、いまは明るい。
「ほんとだ、優奈お行儀悪いよ、学校に履いて行くハイソックスに、よだれつけられてるよ」
「澪だって、ひとのこと言えないじゃないっ」
「フフフ、愉しいでしょ?優奈も、愉しんじゃってるでしょ?」
優奈は照れ笑いを浮かべながら、なおも舌を這わせてくる男の仕打ちを許しつづけていった。
「濡れ濡れのハイソックス履いたまま帰るわけ?」
「だいじょうぶだよ。もう暗いし、紺のハイソックスだからシミも目立たないよ」
そういう問題じゃないと思うけど――そういいかけた優奈は、裏腹のことをいった。
「ママにばれないうちに脱いじゃえばいいんだよね?」
それから、チャームポイントのえくぼを可愛くにじませながら、いった。
「仲間、増やそ。」

おそろいのライン入りハイソックス

2017年10月14日(Sat) 05:07:43

ったく、吸血鬼のくせに小心者なんだなお前は――
志郎は口をとがらせて、レイジを責めた。
レイジには、気になる女の子がいる。
同級生のアヤコのことだった。
けれども、レイジはアヤコに話しかけることもできず、
まして正体を明かして血を吸わせてほしいなんて、死んでも告白することができないでいた。
親友の志郎に打ち明けると、志郎は「まったくお前らしいな」と言い、
アヤコと同じ柄のライン入りの靴下を履いているときに吸血をねだられると、
仕方なさそうに靴下をひざ下まで引き上げて、咬み破らせてやっている。
きょうも体育の授業のあと、
志郎が短パンの下に履いていたライン入りの靴下に目を輝かせたレイジは、
体育館の裏手に志郎を誘って脚を咬んだ。
本人にお願いすることって、できないの?
志郎は咬ませてやりながらレイジに訊いたが、
レイジはひたすら首を横に振って、「無理無理」と言うばかり。
「わかったよ、じゃあ俺が話をつけて、連れて来てやるから」
志郎は仕方なさそうに、自分の足許にむしゃぶりついてくるレイジを見おろした。
「え?ほんと?ほ・・・ほんと?」
目を輝かせるレイジに、志郎はいった。
「でもさ、ほんとうのこというと、アヤコはぼくの彼女なんだ」

彼女を紹介して、血を吸わせてくれる――破格の好意だった。
でも、思春期で喉をしじゅう渇かせているレイジは、「悪いね・・・」とためらいながらも、志郎の好意にすがることにした。

「ぼく、あいつ(アヤコ)に告っといたから」
志郎の浮かない顔を見て、親友想いのレイジはちょっと心を痛めたけれど、
「ほんとうに来てくれるの?」
思わず飛び出た言葉は、嬉しさに満ちていた。
「さいしょはさ、お前のことが吸血鬼だって知って、あいつ“うそ~”って驚いてた」
「そうだよね・・・クラスに吸血鬼がいるなんて、やっぱ不気味だろうなあ」
「さいしょは怖がっていたけどさ、“でも志郎は彼と仲好いんだよね?”って気づいてくれて、“あいつ、お前の血を吸いたがってる”って言ったら、”志郎はいいの?“って言うから、”ぼくは構わないし、むしろ吸わせてほしいと思ってる“って言ったら、”志郎がいいなら私逢う“って応えてきた。まんざらお前のこと、嫌いなわけじゃないみたいだな」
でもその感情は、間に志郎が介在してこそ初めて成り立っているのだと、レイジはよくわきまえていた。
志郎の彼女を奪(と)るつもりはなかったし、たまたま彼女と同じ柄の靴下を履いていたのを見てあつかましくもねだった吸血に応えてくれた彼のことをないがしろにするつもりもなかった。

翌日の放課後、約束した校舎の裏手に、アヤコは現れた。
紺のプリーツスカートの下には、あのライン入りのハイソックスを履いている。
きりっとした縦のリブが走った白地のハイソックスは、発育のよい肉づきたっぷりなふくらはぎ――そういわれるのを彼女は好まなかったが――の印象を、ほどよく引き締めていた。
「やっぱり二人きりは怖いから、志郎そばにいてくれる?」
アヤコの希望を容れて、志郎は終始ふたりの傍らにいて、視線だけは逸らしつづけていた。

ライン入りの白のハイソックスに赤黒いシミを拡げながら、
アヤコは気前よく、若い血液を吸い取らせてゆく。
「だいじょうぶ?」
つかまえた足許から時折口を放してレイジはアヤコの顔を見あげたが、
「ううん、平気」
アヤコは気丈にもそう応えて、はらはらしながら見守る彼氏には、
「血を吸われるのって、意外にキモチいいね」
と、余裕の態度をみせていた。
やがて少女は顔色を変えて脚をふらつかせたけれど、
こんどはレイジのほうが夢中になってしまい、
めまいを起こしたアヤコが尻もちをついてしまうまで、彼女の脚を放さなかった。
うつ伏せになったアヤコの制服姿に、レイジはわが身を重ねていって、
左右の脚に代わりばんこに咬みつきながら、憧れていた靴下破りに熱中しつづけていた。

「やり過ぎたかな・・・」
われに返ったレイジは翌日、志郎に礼を言った後アヤコのことを気づかった。
「だいじょうぶ、うまく話しておいたから」
あの日現場で彼女が血を吸い取られてしまうのをはらはらしながら見つめていた親友は、
すっかりいつもの優しさを取り戻している。
「あいつ、言ってたぜ。
“あたしの血が気に入ったから、レイジはなかなか放してくれなかったんだね”
ってさ。
案外物わかりが良かったな。
まあ、俺の彼女だから、俺に似ているのかもしれないな。
お前の牙との相性も、なかなかいいみたい」
彼女の生き血を気前よく振る舞ってくれた親友は、意外にさばさばとした声色で、レイジにそういった。
「でもさ、お前・・・」
ちょっぴりだけ眉をひそめた志郎の顔を、レイジは怪訝そうにのぞき込んだ。
「血を吸った後、犯すだろ・・・?
 このあいだは、そんなことしないでいてくれたけど」
母親の血をレイジに吸わせるため家に招んだ志郎は、自身もしたたかに血を吸い取られたあげく、母親の首すじにかじりついたレイジがそのあとなにをしたのかまで、しっかりと見届けてしまっていた。
「ああ、あのときね・・・」
レイジは苦笑いしながらつづけた。
「大丈夫。アヤコが処女のあいだは、そういうことはしないから。」

ちょっとだけ安心した志郎は、レイジと別れた後にふと気がついた。
いつか俺がアヤコと結婚したら、アヤコは処女じゃなくなる。
そのときもしもレイジとつき合いつづけていたら――というか、そういう可能性が高いのだけれど――レイジはアヤコを抱くことになるの・・・?

一週間後。
志郎はレイジにねだられるまま、制服姿のアヤコを伴って放課後の教室にあらわれた。
「こいつのこと、咬んでやってくれないか?」
え?と、親友を見あげるレイジに、志郎はつづけた。
「お前、こいつの素肌に毒をしみ込ませたろ?
 あれ以来、彼女お前に襲われたがってるんだ」
たしかに――吸血鬼の習性として、牙から分泌する毒液がいくばくか、彼女の体内に流れ込んだのは間違いない。
毒液を植えつけながら、レイジがこう願いつづけたのも、間違いない。
――アヤコともう一度逢いたい。クラスメイトとしてではなく、吸血鬼として。

俺のことなら気にすんな、と、志郎はいった。
「お前が初めてアヤコのことを咬んだ時、異常にドキドキして昂奮しちまった。
 これっていったいなんなんだろう?って思った。
 お前が度胸をつけて、うちの母さんを襲ったとき、それが初めて分かった。
 ぼく本当は、おまえがアヤコを犯すのを視てみたかったんだ。」
アヤコは志郎の話を傍らで聞きながらも、頬を真っ赤にしながら俯いていた。
そして志郎に「ごめんね志郎、あなたの恋人のまま、この人に咬まれつづけるから」
というと、レイジの胸に飛び込んでいった。

その日この空き教室で行われたのは、決してレイプではなかった。
恋人まで認めた、彼の親友による女子生徒の処女破りの儀式。
明日もきっと、ふたりはおそろいのライン入りのハイソックスの脚を並べて、
渇いた喉を抱えた彼氏の親友に若い血液を振る舞うために、連れだって訪れることだろう。


(10月4日構想、今朝脱稿)

親友の吸血鬼に、「きみの彼女を襲いたい」とせがまれたとき。

2017年08月23日(Wed) 08:11:21

「田村の血を吸いたいんだけど」
親友の垣本にそういわれて、ぼくはドキリとした。
吸血鬼と人間とが同じ学校に通っているうちの高校では、垣本が吸血鬼だということはみんな知っている。
クラスの女子もなん人か、垣本に血を吸われているらしい。
だれとだれがだれの相手をしているのか・・・クラスのみんなはなんとなくわかっていても、決して口に出したりはしない。
どこか、男女の関係のようないかがわしいものを、みんな本能的に感じ取っていたから。

その垣本が、同級生の田村まよを襲いたいと、ぼくに相談を持ち掛けてきた。
どうしてぼくに?
それは、まよがぼくの彼女だって、みんな知っているからだ。

きのう下向したときにたまたま見かけたまよに発情して、危うく襲うところだったという。
というか、いままでの場合だと、確実に襲ってモノにしているはずのシチュだった。
でも彼がそこをこらえたのは、まよがぼくの彼女だと知っていたから。
「リョウジにだまってヤるの、良くないと思ってさ」
彼はそう言ってぼくのことを気遣ってくれたけれど。
ぼくはそれに対して、どうこたえればよいのだろう?
ただ・・・誰もが知ってる事実として、入学以来ぼくは、彼に血を吸わせてやっていた。

「垣本に血を吸わせてやってくれないかな」
翌日の放課後、ぼくは垣本と連れだって、まよのことを誰もいなくなった教室に残して、そんなことを言っていた。
まよの反応は、意外にノーマルなものだった。
「え・・・垣本くんに血をあげるの?リョウくんも、たしかそうしているんだよね」
体育の時間とかに、ぼくのことを呼び止めて、グランドの隅で短パンの下、ぼくの太ももを咬んでいるのを、
まよはなん度となく目にしている。

まよの脚に咬みつきたいんだって
まよの履いているタイツを、びりびり咬み破りたいんだって。
Hだよね?イヤだよな?
ぼくはいつしか、まよと垣本の仲を隔てたい気分になっていたけれど。
まよは薄っすらとほほ笑みを浮かべると――
黒タイツの脚をスッと、垣本のほうへと差し伸べてしまったのだ。

タイミングを合わせたように、そう、絶妙のタイミングで。
垣本のやつは、まよの足許にかがみ込んで。
まよのふくらはぎに、唇を吸いつけていた。
いつも、ぼくの履いているハイソックスを咬み破るときと同じように――

ちゅうっ。
唇が音を立てて擦りつけられる。
咬まれた瞬間。
まよはさすがに、ウッとうめいて目を瞑る。
長いまつ毛がピリピリと、ナーバスに震えた。
ちゅうっ・・・ちゅうっ・・・ちゅうっ・・・
重ねられてゆく吸血の音に、ぼくは本能的にうっとりとなる。
まるで自分が吸われているときみたいに。
まよの様子はと見ると、まよもウットリとした顔つきになって、
ところどころ咬みついてくる垣本が、脚を吸いやすいようにと、
黒タイツの脚をくねらせて、向きを変えてやっていた。
え。そんなことまで・・・
戸惑うぼくはそれでも、垣本が自分の彼女の血を吸い取るのを、やめさせることができなかった。
血を吸い取られてゆくまよの、ウットリとした顔つきから、目が離せなくなっていたのだ。

処女の生血をことのほか好む彼らは、吸血相手を軽々しく犯したりはしない。
でも、セックス経験のある女性は別だった。
げんに垣本は、うちに遊びに来た時に、母さんのことを襲って血を吸って、
腰を抜かして見つめつづけるぼくの前、母さんのスカートを腰までたくし上げて、
グイグイと力強く、征服してしまったくらいだから。
母さんを目のまえでモノにされたぼくと、垣本との力関係は、そのときから決定的に変わっていた。
でも彼は、あくまでぼくの意思を尊重して、決してぼくのことを貶めたりはしなかったし、
ぼくも彼の意思を尊重して、中学に通うようになった妹を呼び出して、セーラー服姿で襲わせてやったりしていた。

いずれ、まよとぼくとは、結ばれるだろう。
けれどもそれから少しだけ間をおいて、垣本もまよのことを犯してしまうのだろう。
その時まよは、いまみたいにウットリとした顔つきになって、
ぼくは目の前で犯される恋人の横顔を、やはりぼう然として、見守りつづけるのだろう。

紺のハイソックスを、咬み剥がせて・・・

2017年07月24日(Mon) 07:50:38

Y子とつき合うようになって、もう3か月になる。
つき合うようになってからは、毎日帰り道を一緒に帰っている。
下校途中にいつも立ち寄る公園は、ひっそりとした木陰が、そこかしこにあった。
公園の隅っこの木陰のひとつの下に入ると、
ひんやりとした空気の向こう、黒ずくめの男の影が、ぼくたちを待ち受けていた。

やつと待ち合わせるようになったのは。
つき合うようになって、二週間ほど経ったあの日のことだった。
初めてのキスを交し合った後。
お互い相手の目線を気まずそうに避け合って、
なにを話題にしていいかと戸惑っているときに。
「あんた、吸血鬼でしょ」
Y子が尖った声をだして、ぼくとは別の方角に出し抜けに話しかけた。
振り向いた向こうにいたのが、やつだった。
色っぽい雰囲気がかもし出されると、本能を呼び覚ましてしまう男――
その日家に帰って、初めて聞かされたのだ。
彼が出没したのは、母さんがまだ娘のころからで、
それ以来この公園が
「お嫁に行けなくなる公園」
って呼ばれるようになったのを。

「あんた、吸血鬼でしょ」
周囲の空気をがらりと変えるほどの尖った声に、男はくぐもった声でこたえてきた。
「すまないね。喉渇いてるんだ」
ぼくはとっさにY子のをかばうように立ちはだかって、でも目線をとらえられてしまっていた。
身動きできなくなったぼくは、そのまま首すじを咬まれて血を吸われて、
息をのんで立ちすくむY子のまえで、
短パンの下に履いていたスポーツ用のストッキングのうえから、ふくらはぎまで咬まれていった。
真っ白なリブ編みのストッキングのうえ、赤黒いシミが、じわっと拡がる。
つぎは、Y子の番だった。
「なによ」
白い目で相手をにらみ返すと、それでもやつはたじろがず、彼女との距離をつめた。
失血のあまり尻もちをついてしまったぼくは、もう手も足も出なかった。
ちく生。ちく生。やめろ。やめるんだ・・・
心の叫びは、通じない。いや、やつは明らかに気づいているのに、まったく無視された。
Y子は制服のブラウスの両肩をつかまれて、無抵抗に首すじを咬まれた。
やつが咬みついた瞬間、肩までの黒い髪がゆらっとするのを、ぼくは見た。
ちゅう~っ・・・
Y子の血を吸いあげる呪わしい音が、ぼくの理性を狂わせる。
やつはしんそこおいしそうに、Y子の血を吸い取っていった。
こんどはY子が、尻もちをつく番だった。
尻もちをついた後に狙われるのは、ハイソックスのふくらはぎだと、自分の経験でわかっていた。
けれども、どうすることもできなかった。
通学用の、濃紺の無地のハイソックスのうえ、やつの呪わしい唇が、忌々しいほどしっくりと、密着してゆく。
Y子は気丈にも、表情を変えずにやつのことを睨みつづけていた。
哀切な声で助けを求められるよりか、ずっとましだった。
彼女は自分にふらちな行為を働く吸血鬼をさいごまで睨みつづけながら、
紺のハイソックスを恥知らずな唇にいたぶり抜かれ、咬み剥がれていった。

「週に二回だけ、きみの彼女をお借りする。待ち合わせ場所は、ここ」
男が手短に、これからの三人の関係について説明するのを。
失血で身動きできなくなったぼくたちは、ただ虚ろな目になって、聞き入っていた。
「わしのことは、周りの人間に話してもよいし、話さなくてもよい。
だれの自慢にもならないし、だれの恥にもならない。
きみたちの履いている靴下を愉しませてもらうが、弁償はしてあげよう」
「弁償なんか、いらないから」
Y子がぶっきら棒に、初めて口を開いた。
咬みたければ、咬めばいいじゃん――いつもの突き放したような言い方を、取り戻していた。
「それから、あんた」
Y子は吸血鬼に対するのと同じくらい尖った目線を、こちらに据えた。
「あたしのこと、守れなかったんだから――責任取りなさいよね」
「責任って・・・」
「あたしのことを必ず、ここまで連れてくること。
 貧血になったらちゃんと介抱して、家まで送り届けること。
 こいつがあたしにやらしいことをしても、妬きもちをしないで受け入れること――
 いいわね?」
一方的な申し渡しを、やつはクックッと笑いながら聞き、
「そうするがいいだろう」
と、ぼくに言った。
女に逆らうな――男どうしの忠告なのだと、ぼくは悟った。

それ以来。
ぼくたちは、公園の寄り道をくり返している。
「履いてきてあげたわよ。紺のハイソックス。咬まれるの迷惑なんだけど」
いつもぶっきら棒な口調で、相手を見あげるY子。
すすんで自分からベンチに腰かけて。
ぼくのことも、すぐ隣に腰かけさせて。
スッと伸ばしたふくらはぎのうえ、ずり落ちかけていたハイソックスを、きちっと引き伸ばして。
「好きにしなさいよ」
まるで脅しつけるような単刀直入な声色で、やつを見あげる。
やつは恥知らずにもぼくの前、ククク・・・ともの欲しげな含み笑いを洩らしながら、
Y子の足許にかがみ込んでゆく。
よだれの浮いたべろが、Y子のハイソックスになすりつけられるたび。
ぼくはその様子を、ドキドキとして見入っていて、
Y子がそんなぼくの横顔を盗み見るのも構わずに、
濃紺のハイソックスのうえを這いまわる唇のあとを、半透明のよだれが尾を引いてゆくようすを、目で追いかけてゆく。
さきに咬まれたぼくの前、
貧血で手も足も出なくなった傍らで、
制服姿のY子は、濃紺のハイソックスをくしゃくしゃになるまで咬み剥がれていって、
それでも表情を変えずに、やつのいやらしいやり口のいちぶしじゅうを見届けてゆく。

やつが立ち去ったあと。
Y子はじっとぼくを見あげて、いった。
「ね。どっちがさきにあたしを抱くの?」
え・・・?
「あなた、さいごまで責任取るんだよね?」
あ、ああ。もちろん・・・
応えかけたぼくに、Y子はなおも、たたみかける。
「だったら、あなたが決めなさいよ。
あなたが先にヤるのか。
自分の目の前で、あいつにあたしの処女を奪わせるのか」
Y子の言葉は、短刀のように、ぼくの心臓をぐさりと突き刺した。
ぼくが先にヤるのか。
やつにさいしょにヤらせるのか・・・
Y子の処女を、目の前で奪われる――
その想像にぼくは目をくらませる。
グレーのプリーツスカートのすそからにょっきり覗く、Y子の太もも。
紺のハイソックスに包まれたふくらはぎも。
むき出しになった太ももも。
もう、大人の女の肉づきを帯びていた。

制服を着崩れさせて・・・

2017年07月01日(Sat) 05:33:48

「着崩れしてないかな、制服」
振り乱した髪を掻きのけながら、きみはぼくにそう尋ねる。
微妙に曲がった胸元のリボンや、ブラウスのえり首を直してやると、
その傍らできみは、ずり落ちかけたハイソックスを、きちっと引き伸ばしている。
女の子の身体を欲しい。
そうせがんだぼくのために、髪振り乱し、制服を着崩れさせて、応じてくれた、きみ。
「どお?よかった?」
初めてぶつけ合った情熱に息はずませるきみのことを。
かぎりないいとおしさに、部屋を出際にギュッと抱きしめていた。

「着崩れしてないかな、制服」
振り乱した髪を掻きのけながら、きみはぼくにそう尋ねる。
ブラウスのえり首につきそうになった血を、ハンカチでそっと拭い、はだけたブラウスの釦をひとつひとつはめてやると、
その傍らできみは、真っ赤に染まったハイソックスを、きちっと引き伸ばしている。
きみが吸血鬼に襲われるところを視たい。
そうせがんだぼくのために、髪振り乱し、制服を着崩れさせて、吸血鬼の欲望に屈していった、きみ。
「どお?愉しめた?」
ちょっぴり不安げに、曇ったほほ笑みをうかべるきみのことを。
やはりどこまでもぼくのものだ・・・そう囁きながら、ギュッと抱きしめていた。


あとがき
困った嗜好の持ち主だった彼。
そんな彼でも、とことん愛されているという自負があるから、
ほかの男に抱かれても、彼女は彼の目の前でも、はじけることができてしまう。

まな娘の吸血。 2

2017年06月06日(Tue) 04:34:53

娘さんに、お手本を見せたいのぢゃろう?
うろたえる美香を相手に、吸血鬼は余裕たっぷりだった。
美香を抱きかかえた腕はそのまま彼女の胸に伸びて、
さりげないまさぐりを、さっきからくり返している。
男が30代の人妻の生き血以外のものまで欲していることが、
居合わせたカツヤの目にも、露骨に伝わった。

「奥さんと仲良くさせていただく。よろしいね?」
男の問いにカツヤが目を背けると、
「いや失礼、野暮な問いでした」
と、意外にさっぱりと矛を収めた。
だが、美香の理性に対する挑発については、男はさっぱりとしてはいなかった。
ひどくネチネチとして、とにかくしつっこかった。
はだけたブラウス越しに。
たくし上げられたタイトスカートの奥に。
巧みなまさぐりを揉み込まれて。
美香はさっきから不覚にも、ちいさな声をあげつづけている。

吸いつけられた唇の裏側に隠れた牙が、美香の穿いているストッキングを咬み破るのを目の当たりにしながら。
「きっと楽しいんだろうね。すぐ破けるしね」
真理はしらっとした目をして、母親の受難を見つめつづけていた。
「ママの穿いているストッキング、あのひと最初から狙っていたんだね」
少女の目線は冷静で、しかも的確だった。
「あたしのハイソックスよりも、おいしいのかな」
そう呟いたときだけは、ちょっと不満そうに、唇をすぼめて自分の足許に目を落とす。
「そんなことはないよ――そこは別腹だって、あいつが言っていた」
「ふうん・・・やっぱりいやらしいんだ」
冷ややかな目線の持ち主になった少女は、言葉づかいさえ大人になっている。

「ストッキング穿くような大人になるまで・・・がんばるんだぞ」
いったいなんをがんばれというのだろう?自問するカツヤに、少女はいった。
「ウン。お父さん、真理がんばるよ。がんばって大人になって――あたしママみたいに不倫するから」
どきりとしてわが娘をふり返るカツヤに、少女はフフッと笑ってみせた。
傍らで犯され、不倫の愉しみに耽っている母親のことなど、眼中にないといわんばかりに。

まな娘の吸血。

2017年06月05日(Mon) 07:53:01

きれいなお花がいっぱい咲いているお庭の真ん中に、白いテーブルとベンチ。
ピンクのトレーナーにデニムのスカート姿の真理は、トランプ遊びに興じている。
相手の男は祖父よりも年配にみえる、顔色の悪い吸血鬼。
ふさふさとした黒髪から覗く真理の白い首すじを、
男がもの欲しげにチラチラと盗み見ているのが、父親の目からも露骨にわかった。

真理がこちらに気づいて、白い歯をみせる。
無邪気にはしゃいだ笑顔だった。
「パパ~?紹介してあげる。真理が仲良くなった吸血鬼の小父さん。
 この街に来て初めて仲良くしてくれたのよ。
 お礼に、トランプに負けたら血を吸わせてあげる約束したの。
 パパは真理のこと、応援してくれるわよね?」
少女の口ぶりに、切迫感は少しもなかった。

「やだー、勝っちゃった。小父さま弱いのねぇ」
意図せぬ勝利に戸惑いながら、少女はちょっとだけ、吸血鬼の小父さまに同情の視線を送る。
小父さまはどうやら、本気でトランプの勝負をしていたらしい。かなりがっかりした顔をしている。
真理は、そんな小父さまをいっぺんで力づける方法を心得ていた。
「いいわ、勝たせてくれたお礼に、真理の血を吸わせてあげる♪」

ちょっとだけだよ。痛くしちゃイヤよ。
真理はこちら側のベンチに移って来た小父さまを、ドキドキとした流し目で見つめる。
「じゃあお父さん、いただくよ」
住むところをなくして、流れ流れてたどり着いた、この街には。
妻も娘も彼らのために生き血を餌食にされるというのを、承知のうえで訪れたはず。
「いいわよ。仕方ないものね」
妻もそういって、仕方なしに頷いていたはず。
真っ先に彼の毒牙にかかった父親は、理性をすり替えられて、家族の血を悦んで捧げると誓ったはず。
けれども、やはり――
飢えた吸血鬼にか細い肩を抱き寄せられる娘を前に、心平らかではいられない。
吸い残されたわずかな血が、身体じゅうを駆けめぐり、
干からびかけた血管のなかで、毒々しい脈動をはずませる。
同じ血を宿すまな娘もまた、あの牙を埋め込まれてしまうのだ――
そうと知りながら、カツヤは地に根が生えたように、動くことができなくなっていた。
あれよあれよという間に・・・真理は魔性の猿臂にギュッと抱きすくめられて、
首すじを咬まれていった――

ほんのふた口、み口・・・
そんな吸血だった。
それでも真理は頬をほてらせ目を輝かせて、「すごい。すごい・・・」と、くり返していた。
男がなおも飽き足らず、真理の太ももを咬もうとして、デニムのスカートを引き上げると、
さすがに少女らしい潔癖さで、「ダメ!エッチ!」と、スカートを抑えたけれど。
にょっきり伸びたふくらはぎに、ねずみ色のハイソックスのうえから吸いつけられてくる唇は、こばもうとはしなかった。
「脚イタズラするの、好きなんだね・・・?」
お気に入りのハイソックスによだれをジュクジュクとしみ込まされるのを、顔をしかめながら見おろしていたけれど、
ひと言「いいよ・・・」と、囁いて。
真新しいハイソックスを、惜しげもなく咬み破らせてしまっていた。
圧しつけられた唇の下、赤黒く染まるシミが拡がるのを、面白そうに眺めていた。

「こんどは私の番・・・ね?」
カツヤの傍らには、いつの間にか妻の美香が佇んでいる。
「そう・・・だね・・・」
煮え切らない夫の態度に、美香はわざとイタズラっぽく笑うと、夫の頬をつねりながら、いった。
「奥さんの浮気も、潔く認めなさい」
ミセスの女を相手にするとき、吸血鬼は“男”としても振る舞うときいていた。
けれどもいま、まな娘の吸血を実見してしまった男には、もう理性は残されていなかった。
「・・・はい。」
妻の言いぐさに素直に呟きかえすと、美香はウフフンと満足そうに笑う。
「なにも感じないでいてあげるつもりだけど・・・乱れちゃっても許してね」
カツヤの胸のなか、妖しい翳りがザワザワととぐろを巻いていた。

きみはよくがんばった。

2017年05月27日(Sat) 07:33:22

放課後の学校の廊下をふらつきながら、直子はできるだけまっすぐ歩こうと努めていた。
すぐ傍らには、自分の親よりも年配の、男の吸血鬼。
それが直子の制服姿に抱きつかんばかりにしてまといつき、折々抱きすくめては、飢えた唇を首すじに吸いつけてくる。
そのたびごとに。
少女の素肌は蒼白く透きとおり、歯がみをする唇の奥は、キリキリと軋んだ。
「良い加減、観念したまえ」
諭すような囁きをいっさい拒否して、少女は決然とかぶりを振りつづけ、
ひと吸いされるたびに鈍くなる足取りを保とうと、懸命に足を踏ん張りつづける。

「きょうはきみの血を吸わせなさい。それから小父さんと、賭けをしよう。
 床におひざを突いたら、きみの履いているストッキングをイタズラさせていただくよ。
 さあ、きみは途中でおひざを突かずに、家まで戻ることができるかな」
すでになん人ものクラスメイトがその賭けに一方的に応じさせられて、
校門にすらたどり着くことができずに廊下にひざを突いてしまっていた。
賭けに勝つと、吸血鬼はそれ以上女の子を責めたりせずに、「お姫さま抱っこ」をして空き教室に連れ込むと、
黒のストッキングに透きとおる足許に息荒く唇を近寄せていって、
あげくの果てには、ひざ小僧がまる見えになるまで、むざんに咬み剥いでしまうのだった。

直子は今週になって二度、彼女のクラスメイトが連れ込まれるのを耳にした。
ふたりきりの教室は、立ち入り禁止の札が教師によって降ろされていて、少女たちにはどうすることもできなかった。
しばらく経つと、吸血鬼だけがひとり教室から出てきて、
相手の女子生徒の脚から抜き取ったストッキングをぶら提げて、ほくほくとした顔つきで立ち去ってゆき、
直子は息の細くなったクラスメイトをほかの生徒たちと一緒に抱えるようにして、保健室に連れていったのだ。
それが、月曜と水曜のことだった。
一日おき・・・
そしてきょう、金曜には、直子自身の番がまわってきてしまったのだ。

いやだ・・・いやだ・・・そんなふうにもてあそばれたくないっ。
逃げるのよ。応じないのよ。相手にしないのよ。
なんとしても、せめて校門までは、たどり着いてみせるから・・・
意地になって歩みを止めない少女に、吸血鬼はなおもしつようにまとわりついて、
首すじを吸われるたびに、強い眩暈を感じながらも、献血にだけは応じないわけにはいかなかった。
この学校は吸血鬼を密かに受け容れていて、生徒たちの献血行為をむしろ後押ししているくらいだったから。

けれども、喪われた血液の量がかさむにつれ、直子の歩みは目に見えて鈍くなって、
この放課後の遅い時間――早く帰ろうとしたのに、教師が直子に自習を命じて、意図的に遅くまで残らせたのだ――人通りもまれな廊下を舞台に、絶対に不利な賭けをつづけるのは、困難をきわめていた。
「きみはよくがんばった。ほんとうにえらかった。でも、あきらめも肝心だよ」
男はしたり顔を近寄せて、直子をいたぶるようにそんなことを囁きかけてくる。

くっ・・・悔しい・・っ!どうして私なのよっ。
少女は歯噛みをして、泣きべそを掻いて、それでもとうとう一歩も歩けなくなっていた。
「さあ、約束どおりだ。薄地の黒のストッキング、たっぷりと愉しませていただくぞ」
「お願いやめて!」
少女の願いも空しく、男は卑猥な唇を、ひざ丈のプリーツスカートの下に吸いつけてゆく。
スカートの下に身に着けた黒のストッキングが、不埒な唇を這わされて、いびつな弛みを走らせた。
「イヤだっ、イヤだっ、まだ歩くんだからっ。こんなことじゃ、お嫁に行けなくなっちゃうっ」
少女は泣き叫びながら、意識を彼方に持っていかれて、引きずり込まれるように姿勢を崩していった。
男のなまの唇が、なにかのご褒美にありつくように、それは嬉し気に、ストッキングを履いたふくらはぎを撫でまわす。
その忌まわしい感覚に打ち震えながら、直子の意識は遠くなっていった。


ふと目が覚めると、直子は自分がひどく不安定な姿勢でいることに気がついた。
身を横たえて、脚をぶらぶらさせている。
いったいどういうこと?
状況を理解するのに、数秒かかった。
直子はさっきまで彼女の血を吸い取っていた吸血鬼の腕に抱かれて、「お姫さま抱っこ」されていたのだ。
「ちょ、ちょっと!どういうこと!?恥ずかしいわ・・・ここ、街の商店街じゃないのっ!!」
うろたえる直子を、男はたったひと言で黙らせている。
「声をたてるとみんな振り返るぞ」

お姫さま抱っこの状態は、直子の家の前までつづけられた。
けれども貧血がよほどこたえたのか、いちど黙ってしまうともう、直子は口を開く気力もなく、ただ男の腕に身をゆだねて、脚をぶらぶらさせつづけているしかなくなっていた。
ようやくおろしてもらえたのは、玄関の前。
意外にも。
直子のストッキングは、裂け目ひとつ走らせてはいなかった。
「あんまり嘆き悲しむんでね、気がそがれた」
吸血鬼はむしろ、迷惑そうな顔をした。
「迷惑なのは、私のほうです」
直子は自分の血を吸った相手のことをまともに見つめ、そう詰った。
「わかっている。感謝している。ありがとな」
意外なくらいにすらすらと吐かれた感謝の言葉にどう答えていいかわからずに、直子が口ごもっていると。
吸血鬼は直子に背を向けて――あっという間に姿を消してしまっていた。
「来週も賭けをしような」
耳の奥にそんな囁きが、こびりついている。


「私の番は金曜って、決まっているのかな?」
ちょっぴり皮肉を交えて投げた言葉を、吸血鬼はごくまじめに受け止める。
「火曜と木曜は塾。予習と復習が大変なんだよな?」
いちおう、こちらの都合は勘定に入れてくれているらしい。
「毎日、お友だちと帰ることにしてるのよ」
「きょうは、だれもいないようだな」
そう――いつも帰りがいっしょの京子も里美も、何やかやと用事をかこつけて、先に帰ってしまっていた。
「きっと、気を利かせてくれたんだな」
「あなたの差し金ね、ひどい!」
直子は懸命な声で相手を詰ったが、手を引かれるままにいつの間にか、空き教室に引き入れられてしまっている。

教室でふたりきりになると、男の目つきが獣のそれに変わっていた。
激しく抱きつかれ、おとがいを仰のけられて、つぎの瞬間ガブリとやられてしまっていた。
アッ!
声をあげるいとまもなく、直子の血はゴクゴクと音をたてて飲まれ始める。
幸い、制服のえり首に血は撥ねていないようだった。
手近な椅子に腰を落とし、その椅子にも座りつづけかねて、いつしかひざ小僧が床すれすれになっていた。

ハッと気づいて体勢を立て直し、薄地のナイロンに包まれたひざ小僧が床に突くのを回避する。
けれども、男の吸血は、以前にもましてしつようだった。
目が眩み、身体の力が抜け、知らず知らずひざを突きそうになる。
逃げられる見込みは皆無――もうどうしようもない。
直子は悔し気に唇を歪め、教室の床にひざ小僧を突いていた。

一時間後。
窓の外は、薄暗くなりかけていた。
吸血鬼は仰向けになった直子のうえになおものしかかり、首すじに着けた傷口にあやされた血潮を、意地汚く舐め取っている。
なん度も気を喪いかけたけれど、そのたびに男は手かげんをしてくれて。
時にはひと休みをしながら、すこしでも少女のしなやかな身体からうら若い血液をむしり取ろうとしてか、
なん度もなん度も唇を吸いつけてくる。
意外にも。
男は、直子のストッキングを咬み破ろうとしなかった。

初めてひざ小僧を突いてしまったときには、ほんとうに観念した。
じじつ、男はすんなり伸びた直子のふくらはぎに唇を吸いつけてきて、ストッキングの上からふくらはぎをチュウチュウといたぶり始めた。
無作法なやり口に直子は悔しそうに歯がみをしたけれど、
ストッキングを破かれるのを嫌がるのを察してか、男が舐めるだけに終始しているのに気がつくと、
口では相手を罵り、露骨に嫌がりながらも、ストッキングを履いたままの脚を、くまなく舐めさせてしまっていた。
やがて男は落ち着きを取り戻し、ふたりのあいだのつかの間の静寂が訪れた。

直子がおずおずと口を開いた。
「ストッキング、破かないでくれたのね」
「あんまりあんたが、嫌がるんでな」
「少しは見直した」
「それは嬉しいね」
あの・・・直子はもっとおずおずと、口を開いた。
「他の子のときには、いつも破ってるの?」
吸血鬼はウフフ・・・と、思い出し笑いを泛べた。
質の悪そうな含み笑いだったが、いままでほど怖くは感じないと、直子は思った。
「きのうは京子、おとついは里美が破かせてくれた」
「えっ」
ふたりとは、大の仲良しだった。
「仲良し三人娘を三人ながらモノにしたくてね、あんたのクラスの担任に頼み込んだんだ。なんとか仲良くなりたいって」
「ふーん、じゃあ、京子とも里美とも、仲いいんだ」
「そうだね。もう2~3足破らせてくれてるくらいだからね」
直子はちょっとの間だけ、押し黙った。
そして、いままでよりはちょっとだけ強い口調で、いった。
「こんどからあたしのも、破っていいから」

う、ふ、ふ、ふ、ふ。
有頂天な含み笑いが、少女の耳の奥に、忌まわしく満ちた。
男の術中にまんまとはまって、気前よくストッキングを破らせるはめになりながら。
相手の下品なやり口に、精いっぱいの罵り文句を思い浮かべながら。
それでも少女は、脚を引っ込めようとはもうしなかった。
皮膚の奥まで突き入れられてくる牙が、むしょうに小気味よい。
なよなよとした薄地のストッキングを容赦なく咬み剥いでいかれて、皮膚が外気にふれてすーすーするのさえ、不思議な解放感になっていた。
堕落させられた。でも、それも悪くない・・・か。
直子は不覚にもへらへら笑いながら、足許をなまめかしく染めていた黒のストッキングがいびつによじれてゆく有様を、面白そうに見つめ続けていた。

博愛。3

2017年05月27日(Sat) 06:38:46

「最終的には僕、塔子さんを奪(と)られてしまうんだよね・・・?」
タカシはいつものようにハイソックスを履いたふくらはぎを吸血鬼に咬ませながら、訊いた。
声がここひと月かそこらで、ひどく虚ろになっている。
自分自身の生命力さえ吸い尽されかねなかったのに、彼が気にしているのはもっぱら、同級生との行く末だった。
「きみが僕の血を吸い尽して、僕の代わりに塔子さんをモノにする・・・そういうことなんだよね・・・?」
「きょうは、やけにこだわるね」
老吸血鬼は少年の足許から牙を引き抜くと、自分を見おろしてくる視線と正対した。
まだ拭われていない口許には、吸い取ったばかりの血潮がチラチラと輝いている。
「若ぇひとの血は、旨めぇ」
男は下世話な口調になって、吸い残したタカシの血を、手の甲で無造作に拭った。
「盗(と)りはするが、奪(と)りはせぬ」
男の言いぐさがタカシに通じなかったのは、もっともなことだった。
「そんなことよりもお前、塔子にひどいことを言ったそうだな」
陰にこもった声色に、少年はどきりと胸を衝(つ)かれた。

「きみはいつから、そんなにふしだらになったんだ?」
投げつけた言葉は意外に深く、塔子の胸に突き刺さったらしい。

少年が訪れる少し前、塔子は独りこの邸を訪れて、
「好きなようにしてください!」と、言ったそうだ。
好きなように・・・しちゃったんです・・・か・・・?
少年は恐る恐る、怖い答えの待ち受けていそうな問いを口にする。

阿呆。
吸血鬼はうそぶいた。
「きょうのあの子の血は、不味かった」
「どういうことですか」
少年はやや憤然として、訊いた。
恐怖心をなだめすかして一人この邸を訪問し、
苦痛をこらえてせっかく血液を提供したのに、その言いぐさはないだろう、と、少年の顔が言っている。
「不味さの原因を作ったのは、お前だ」
なぜだかわかるな?――これ以上言わせるなと言わんばかりに、吸血鬼は少年を睨んだ。

「お仕置きだ。あの子から摂れなかったぶんの血も、あんたからいただく」
チュウチュウと音をたてて吸い取られる血液が傷口を通り抜けてゆくむず痒さに、少年は歯噛みをくり返した。
それでも彼は、いつも以上に気前よく、美味いと褒められた若い血液を提供し続けている。
どうやら塔子にとって、自分は必要な存在らしい、ということだけは伝わったから。

嫉妬は血の味を不味くする。失望や不安もまた、血の味を不味くする。
どうせなら、吸い取る血が美味な状態にわが身を保て。
お前はあの子と結婚する。
そのあとでわしに――
みなまで言わせずに、少年はただ、強くかぶりを振りつづけた。

十年後。
華燭の典をあげたふたりのまえから、吸血鬼は姿を消した。
処女のうちは犯すことなく血を吸いつづける吸血鬼は、セックス経験を持った婦人には容赦なく襲いかかり、肉体関係まで遂げてしまうという。
その機会が訪れる前に、彼は乙女ではなくなった女と、嫉妬深いその夫の前から立ち去ったのだった。


あとがき
さいごは、「博愛」ではなくなったような。。 (^^ゞ
処女のあいだは犯されることなくその生き血を吸われつづけたとしても、
結婚後初めて逢ったときには、犯されてしまう運命――
吸血鬼はもちろん、少女も少年も、そうなることは察していたはず。
ふたりの愛を壊すことになりかねない立場を知った吸血鬼は、自ら身を引きます。
このお話が「博愛」として完結するためには、やや時間が必要なみたいです。

博愛。2

2017年05月26日(Fri) 07:54:40

血を抜き取られた若い身体と心とは、心地よい空っぽ状態。
タカシは床に尻もちを突いたまま、窓の向こうの青空を見あげる。
背後のドアの向こうで行われている行為から、ひたすら注意をそらすために。

かな子と2人連れだってやって来た、吸血鬼の館。
クラスの男女が1人ずつ、当番で行われる献血行為は、すでになん回になったことだろう?
「博愛の献血行為、なんですよね?」
両家の育ちで人の汚れなどこれっぽっちも意識にないらしい連れの少女は、
制服姿の肩を並べてここを訪れるたび、確かめるように彼に訊いた。
温かな人柄をたたえた柔らかなまなざしがひどく眩しくて、少年はそのたびごとに無口になる。

彼女とつきあうようになったのは、この訪問がきっかけだった。
もしかすると感謝をしなければいけない相手だったが、
さっきまでタカシの血をしつように吸い取った吸血鬼に対して、少年は複雑な思いを抱いている。
たんなる栄養摂取にしては、男が少女の素肌に執着するようすは、明らかに不自然だったから。

それでも少女は博愛の行為をやめようとはしなかった。
男のあらぬ想いを薄々察しながらも、賢明にもそれに気づかないふりをして、応接をくり返す。
連れの少年が心に秘めた複雑な思いに対しても、きっと同じように察しながらも、気づかないふりをしているのだろう。
ドアの向こうで、制服姿を凌辱されている少女はそれでも、礼節を尽くして男と接し続けているに違いない。

男とふたりだけのとき、彼は少年に囁いた。
――身をもってわしのことを救ってくださるのじゃ。あのひとの名誉はなんとしても、わしが守る。
同じように。
僕は彼女の名誉を守ることができるのだろうか?
タカシがそんな想いを胸にふたたび青空に目をやったとき、
あぁ・・・
少女が不覚にも洩らした声が、ドアの向こうから洩れてきた。

博愛。

2017年05月26日(Fri) 07:40:27

「献血に伺いました」
制服姿の少女は、おっとりとほほ笑んで、礼儀正しく一礼する。
相手は醜悪な、老年の吸血鬼。
けれども少女は、博愛を旨とする学園の優等生らしく、ひたすら礼節正しく相手に接しつづけていた。
その身に宿す若い血潮が、この老人の損なわれた心身を癒すことを、信じて疑わなかったのだ。

「ストッキング、今日も破かれてしまうのですか?」
その問いを発したときだけ彼女は、ちょっとだけ眉を顰めた。
処女らしい羞じらいと潔癖な嫌悪感が、彼女の意思を裏切ってその整った目鼻立ちをよぎる。
応えない相手の態度に、自らの質問のはしたなさを感じてか、少女は顔を赤らめながら、ベッドのうえにうつ伏せになっていった。
制服のプリーツスカートの下、黒のストッキングの薄い生地越しに、大人びた白い脛がなまめかしく映える。
吸血鬼は目の色を変えて少女の足許にかがみ込んで、好色な唇を吸いつけていった。

自らの行動が博愛の精神に通じると、信じて疑わない少女。
相手の純真を知りながらも、己の劣情を抑えかねる老吸血鬼。
小父様、お行儀よくないわ――
そう言いたいのをこらえて歯がみをする少女の脚を抑えつけて、
チュウチュウと音をたてて少女のふくらはぎを吸いつづける吸血鬼は、
薄手のナイロン生地に淫らな唾液をヌルヌルと、しみ込ませていった。

「りくつ子」。

2017年03月08日(Wed) 07:16:29

りく子という名前を「りくつ子」と陰口たたかれるほど、その子は理屈っぽい子だった。
万年学級委員の優等生。
どこのクラスにも、必ず一人はいる女子生徒。
グレーのブレザーの制服が、ほかの子の着ている制服とはべつの生地でできているのかと思うくらい、
そのたたずまいはいつもモッサリとしていて、齢不相応な分別くささを漂わせていた。
黒ぶちメガネの奥の瞳は深い輝きを秘めていて、
左右にくっきりとわけたおさげの黒髪は、年ごろの少女らしいつややかな輝きを帯びていたけれど、
そんなことすら、周囲のものの目には留まらなかった。

学校が吸血鬼に占領されて、クラスの女子が1人ずつ、咬まれていったときも。
りく子の番は、なかなか回ってこなかった。
そのりく子に目を留めたのは、吸血鬼のなかでも頭だった、50年配の男。
りく子の両親よりも年上だった。
担任の女教師はもちろん、校長夫人さえモノにしたとうわさされた彼は、
放課後そそくさと下校しようとした彼女を、あえて教室に引き留めていた。
授業の終わったあとの教室は毎日、血を吸い取られる女子生徒のうめき声に満たされていて、
さながら吸血鬼のためのハーレムと化していた。
そんな光景を、堅物のりく子が目にしたがらないのも、当然といえば当然のなり行きだったが、
男はそんなりく子のわがままを、決して許そうとはしなかった。

クラスメイトたちが教室の床に組み敷かれて、
制服のスカートのすそを乱しながら首すじを咬まれてゆく光景に、
決して視線を向けまいとかたくなに目を背けながら、
彼女もまた、白い首すじを咬まれていった。

りく子が「りくつ子」なのは、じつは照れ隠しだったのだと、クラスのみんなが知ったのは、その日以後のことだった。

休みの日に出かける時さえ制服を着ているという彼女は、
週末になると咬まれる以前と同じように制服姿で外出をして――行き先はいつもの図書館や美術館ではなくて、男の邸だった。
男が制服姿の少女を好むと知って、やはり外出は制服で通した彼女。
分別くさいしかめ面をかたくなに崩そうとはせずに、
「あたしのは慈善事業だから」
そういってはばからなかったという。

しかめ面のまま、男の邸を訪れ、
吸血行為が終わると礼儀正しく一礼して、来た時のまんまのしかめ面で黙々と辞去していく彼女。
そんなかたくなな態度を咎めもせずに、男は三日にいちどはりく子を呼び寄せたし、
りく子も唯々諾々と、呼び出しに応じていった。

結婚前に男に肌身を許すなど、想像さえしたことのなかった彼女が、
なぜかクラスでの処女喪失第一号の栄誉に輝いたとき、みんながびっくりしたけれど。
自分の秘密がクラスじゅうに知れ渡ったと気配で察した彼女はやはり、言い放っていた。
「だって、慈善事業だから」

同じ種類の体験?

2017年02月27日(Mon) 08:03:55

お願いだから・・・お願いだから、痛くしないでね。
そう呟きながら。
キュッと目を瞑って、眉をピリピリと逆立てながら、彼女は吸血鬼に咬まれていった。
おんなじように、いまばぼくの腕のなか。
キュッと目を瞑って、眉をピリピリと逆立てながら、彼女は初めての刻を迎えようとしている。
お前のしようとしていることと、わしがいましていることと、どれほど違うというのかね?
ヤツはたしかに、そういった。
ぼくは今、ヤツの欲望を否定できない。
ヤツもきっと、彼女を征服することが、たまらなかったにちがいない。
ぼくの目の前で・・・・という、付加価値までついていたのだから。
ぼくは今、同じ本質の体験を彼女と遂げて、やっと彼に同意できるようになった。
きっと彼女は、目ざめてしまったもうひとつの歓びを求めて、彼と逢いたいとぼくにせがむのだろう。
気になるのなら、覗きに来てもかまわないから・・・と。
ぼくはたぶん、その濃い誘惑を、拒否できない。

真冬のデート

2017年02月12日(Sun) 06:24:17

やっぱり、いやらしいよぅ。
セーラー服の少女は天を仰ぎながら、ため息交じりにそう言った。
けれども、足許にかがみ込んできた吸血鬼が、黒のストッキングのうえから唇を吸いつけてくるのを、それ以上咎めようとはしなかった。
色白の頬に、ルージュを刷いていないのにまっかな唇が、齢不相応になまめかしい。
細い眉毛を、ちょっとだけ悔しそうに逆立てて。
よだれに濡れた唇が、クチュッと音をたてて薄地のナイロン越しに圧しつけられてくるのを、
ベンチの座席の端をギュッと握りしめて、目をつぶってこらえた。

あー・・・
眩暈をこらえながら。
少女は上半身を頼りなさそうにぐらぐらと揺らつかせていた。
黒のストッキングは両脚とも、派手な裂け目を走らせてしまっている。
男はよほど、少女の履いているストッキングに執着しているらしい。
それでもまだ、好色な舌を擦りつけるのをやめようとせずに、薄地のナイロン生地をふしだらに皺寄せてゆく。
いよいよ少女の身体がバランスを喪った瞬間――
おっと。
目にもとまらぬ素早さで男は身を起こし、少女の傍らに座り込んでその身を受け止めた。
分厚い掌にがさつな手つきで髪を撫でられながら。
少女は口を尖らせて、「ばか」と言った。

連れだってたどる家路。
少女の足許はふたたび、真新しいストッキングで、隙なく染められている。
貧血が収まるまでベンチで横になっている間。
舐めるのはいいよ。でも、破かないで。
ちょっと切なげな顔をした少女の願いを容れて、男はチロチロと舌を這わせつづけていた。
はた目にはわからないけれど。
知的な墨色をした薄地のナイロン生地には、男の好色なよだれがたっぷりと、しみ込まされている。

家の玄関のまえで、男はコートの襟を立てたまま、言った。
じゃあね。
うん。
少女は濡れた瞳で、男を見あげる。
男はそんな少女のか細い肩を、優しく優しく抱きしめる。
黒マントの吸血鬼が、獲物を包み込んでしまうように、身体と身体を寄り添わせて。
少女はこの時を待っていたかのように、幸せそうにほほ笑んで、男に身をゆだねた。
木枯らしが控えめに吹き抜けるなか、ふたりはじっと佇んで、しばらくのあいだ、そうしていた。娘の帰りを待っている家族の立ち居振る舞いが、気配となって外に伝わってくる。
それはは、外でのふたりのようすを知りながら、わざと知らぬふりをしているかのようだった。

おいしかった。
男がぬけぬけと言うと、
女は白い目で男を睨みあげ、もういちど「ばか」と、言った。
けれども、玄関のドアを開けるときもういちどだけ振り向いた少女の目は、「またね」と本音を呟いている。

顔見知りの少女。

2017年02月09日(Thu) 06:25:57

女の子のハイソックスをイタズラしたいなんて・・・あなた相当、ヘンタイね。
優奈は白い目で、俺を見つめた。
血に飢えた喉がはぜるように、目の前の少女の生き血を求めていた。
いいわよ。咬ませてあげる。あたしのでよかったら――あんたみたいなヘンタイ、相手にする女の子なんていないだろうから。
ぞんざいに投げ出された、紺ハイソの脚に。
俺は無我夢中で、むしゃぶりついていた。
大人を軽蔑したい少女の仕掛けた、稚拙な罠にわざとはまって。

濃紺のハイソックスのうえから、舌をロコツに這わせると。
しなやかなナイロン生地の向こう側、しっかりと発育したふくらはぎの生硬さが伝わってくる。
強気な少女のふくらはぎは、意固地な剛(つよ)さを秘めていた。

どお?楽しい?
優奈の声が値踏みをするように、頭のうえから降りそそいでくる。
愉しいし、ありがたい。それから、小気味よい。
続けざまに、思い浮かんだ言葉をつなげると。少女はいった。
小気味よい、だけ、賛成。
大人をばかにし切った声――
あと、嬉しい。
不意に口をついて出たつづきに、少女は不意打ちを食ったように、すこし黙って。それから、いった。
ヘンタイ・・・

濃紺のハイソックスを履いた脚はそれでも引っ込められることはなく、
ピチャピチャと音をたててねぶりつく俺のワイルドな欲情に曝されるまま、よだれまみれになってゆく。

こんどはいつ逢うの?
くるぶしまでずり落ちたハイソックスをもう一度ひざ小僧のすぐ下まで引っ張り上げながら、優奈は訊いた。
また、逢ってくれるの?
もちろんよ。あなた、モテないだろうから。
こちらをふり返る頬が、失血に蒼ざめ透きとおっている。
少女から獲た血の量は、上気した頬でじゅうぶん、実感できていた。
さっきまで。あれほどカサカサに干からびていたのに――
けっこうなダメージだったはず。
じっさい少女は、自分のダメージを素直にあらわにするように、腰かけた椅子からずり落ちて、すとんと尻もちをついた。
すこしは遠慮しなさいよ。
悪りぃ。きょうのところは、無理だった。
謝る俺に、
モテないもんね。
女は念を押すようにそういって、フフッと笑う。
大人びたその冷笑に、なぜか報いてやりたくて。
俺は少女の肩を引き寄せ――唇を吸っていた。
強烈なビンタが、お返しで飛んできた。
これで、おあいこにしてあげる。じゃあまた、金曜ね。
自分のつごうを一方的に押しつけると。
少女は起ちあがり、こちらに背を向けて歩み去る。
いちども、ふり返らずに――

こんなことをほざいたら、たちまちぶっ飛ばされるだろうけど。
貧血を起こしたよろけ気味の足どりだけが、ちょっとだけ痛々しかった。

ケーキ屋の娘 (女吸血鬼)

2017年01月24日(Tue) 06:01:48

平日の午後のケーキ店の店頭は、いつものように客がまばらだった。
水川貴代美(50、仮名)はきょうも、閉店の時間を気にしながら、
「きょうの売上はいまいちね」と、心のなかで呟いていた。
娘の千代(14、仮名)は、学校帰り。
制服のうえにエプロンをつけて、いつものようにかいがいしく母親の手伝いをしていた。
三角頭巾といっしょにかすかに揺れる黒髪が、子供ばなれしたつややかさに輝いていた。
「人手がふたりも、いらなかったわね」
貴代美は心のなかで、もういちど呟いた。
定期試験は、再来週のはず。
これなら試験勉強でもさせてやればよかった・・・などと思っていると。
不意の来客は黒い影をおおいかぶせるようにして、ショーウィンドー越しに母娘を見つめていた。
もの欲しげな舌なめずりは、母親の視界に入らなかったけれど。
殺気を帯びた雰囲気は、ガラス窓を通してひしひしと伝わってきて、
貴代美は思わず店外に目を向けた。

客人は自分の母親よりもよほど齢のいった老婆だった。
身に帯びたみすぼらしい着物には、ところどころ、赤黒いシミが点々と散っている。
そのシミの正体を貴代美は、ひと目で察していた。
この街は、吸血鬼と同居しているのだった。

「いらっしゃい。ケーキをお求めですか?」
貴代美は通りいっぺんの笑顔を見せて、客人に近づいた。
娘と客人とをへだてるように、わざわざ大まわりをするようにして。
「甘いものは好きだから、ケーキもいいのだけれど」
老婆は思ったよりも上品な声色で母親にこたえ、目はいっしんに、娘のほうへと注がれている。
娘の千代は出来たてのケーキをショーケースに移している最中で、作業に夢中になってこちらを振り向かなかった。
老婆は「イチゴのショートケーキを」と頼むのと同じ気軽な口調で、いった。
「あのお嬢さんの生き血が欲しいわ」

あの・・・あの・・・
貴代美は立ち尽くし、口ごもる。
14年間精魂尽して育ててきた娘だった。
もちろん、彼らが思ったよりも友好的なことは、知っている。
自分の身体で、知っている。
けれども、娘だけはなんとか、そういう体験をさせずに済ませて、いずれは都会の大学にでも進学させようと考えていた。
「お気の毒だけれど」
老婆は貴代美の未練な態度にとどめを刺すように強い口調でいった。
「この街からは逃げれないわ」
思ってよりも意地悪な目つきではないのが、かろうじて救いだった。
けれども老婆の瞳はギラギラと異様に光り、若い女の生き血にしんそこ飢えているのがありありと伝わってくる。
こんな獣じみた欲望のまえに、初心な娘をさらせるものか――貴代美は屹(きっ)と、老婆を睨んだ。
老婆の視線が、ふと和らいだ。
「ごめんなさいね」
間合いをはずされた貴代美が絶句するあいだ、老婆は謡うようによどみなく、呟きをつづけてゆく。

男のひとに吸われるよりも、よくはなくって?
皆さん、処女の生き血は貴重だから、むやみと辱めたりしないけれど。
その点は、しつけが行き届いていますからね。
でもそうはいっても、年頃の娘に男の身体がのしかかるんですよ。
お母さんだって、気が気じゃないでしょう?
その点私ならだいじょうぶ。
あなたの血の味だって、いかほどのものか、知っているし。
だからこうして、訪ねてきているんだし。
あんまり怖くしないから。
千代ちゃん怖がらせたら、可愛そうだものね?
小さいころから、優しい子だったものね?
だから私が本性見せたら、怖がって気絶しちゃうものね?
安心して。
私だって若い子の生き血を口に含んだら、どんな気分になるかわからないけど。
これだけは、約束してあげる。
あの子の生き血を、たんねんに美味しく、味わってあげるから――

老婆の囁きは微妙な周波を伴って、貴代美の鼓膜を圧してゆく。
いけない、術中にはまってしまう・・・そう感じたときにはもう、手遅れだった。
囁きの声は痺れ薬のように鼓膜にしみ込んで脳幹に伝わり、
貴代美の理性のありったけを、麻痺させてしまった。

母親は残された意識を振り絞って、訴える。
「せめて、私が身代わりに――」
「ありがとう」
老婆は貴代美を引き寄せて、首すじを咬んだ。
かすかな疼痛と淡い眩暈が、貴代美を襲った。
お店の床を踏みしめる足許が、ぐらぐらと揺れる。
「でもね」
老婆は貴代美の変化を愉しむように顔を覗き込みながら、いった。
「きょうは、若いお嬢さんじゃないとだめなの」
わかってくれる?老婆の顔には、懇願の色があった。
その場にうずくまった貴代美は、かすかに肯くと、眩暈を振り払うように勢いよく起ちあがった。

「千代ちゃん、こっちに来てぇ」
母親は声を張りあげて、娘を喚(よ)んだ。
「はぁい」
控えめで穏やかないつもの声で、千代は母親の声に振り向いた。
張りのある若やいだ声色に、みずみずしい黒髪。
それに、活きの良い血潮をたっぷりと含んだ、白くて細い首すじ――
貴代美はふと、自分自身も渇きを覚えた。

「こちらのお婆さまがね、喉がからからでいらっしゃるの。
 あなたの生き血を吸いにいらしたの。
 きょうはお店のほうはいいから、ちょっとの間家に戻って、あなたお相手してあげて」
さっきまでの必死の抵抗はどこへやら、貴代美は嬉々として娘にそう言いつけた。
千代の顔色はサッと蒼ざめ、老婆を見た。
みすぼらしく薄汚れた浅黄色の着物は、襟足に点々と赤黒いシミを散らしている。
そのシミの正体をひと目で察した処女は、怯えて立ちすくむ。
「だいじょうぶ。怖くはないの。あなたもしっかり、体験するのよ」
母親の見当はずれな励ましに、娘は健気に肯くと、エプロンをはずして二人の女に背を向ける。
通用口の向こうは、住居になっていた。
そこへ戻って応接する、ということなのだろう。

「こんにちはぁ、ハイ、ショートケーキを4つですね?」
働き盛りのはずんだ声が、店頭から伝わってきた。
いつもの和やかな声に、これからまな娘が血を吸われるという悲壮感は、欠片も感じられない。
「あなた、処女?」
老婆の問いに、大きな瞳がまっすぐに応えた。
「ホホホ。頼もしいわね」
手の甲を軽くあてた口許には、バラ色のしずくが散っている。
さっき吸い取られた母親の血が、老婆の頬を濡らしているのだ。
「お母さんもね、よく識ってるの。だから安心してね」
それで若い娘が安心して首すじを吸わせるのかと疑問に思うようなことを口にしつつ、
老婆はもの欲しげな表情もあらわに、千代に迫ってきた。
「あ・・・あのっ・・・」
切羽詰まった声は、おおいかぶさってくる老婆に圧倒されて、消え入るように震えた。
カサカサに乾き色褪せた唇が、真っ白なハイソックスを履いた千代のふくらはぎに、ねっとりと這わされた。

飢えた牙が素肌を食い破り、深々と埋め込まれるのを感じ、千代は眩暈を起こしてその場に崩れた。
カサカサな唇を濡らす自分の血が、ハイソックスの生地に生温かく、じんわりとしみ込んでゆく。
足元を抑えつけて喉を鳴らす老婆が、ひと口ひと口、丁寧に血を啜り取り、
千代の生き血をそれは美味しそうに味わっているのを、彼女は感じた。

30分後――
カナカナカナ・・・と、秋の虫が虚ろな鳴き声を響かせている。
真っ白なハイソックスを赤黒いシミでしたたかに濡らしたまま、
千代は自分の勉強部屋で大の字になって、白目を剥いて口を半開きにしていた。
意識はかろうじて保っていたが、理性は宙に浮いている。
首すじにも深々と、二本の牙を埋められた痕がくっきりとつけられ、
周りには吸い残された血のりが、チラチラと輝いている。
脚は両方とも、ご丁寧にあちこちと咬まれていたし、
そのあと押し倒されて、首すじを咬まれたのも、おぼろげに憶えている。
ゴクリゴクリと、それは美味しそうに、老婆は彼女の生き血を飲み耽っていった。
なんだか素敵――
思わず頬をほてらせて、相手をしてしまっていた。
その頬のほてりがじょじょに冷めていき、身体の芯が冷たくなってきても、
少女は自分の身に秘めた若い血液を啜り取らせる行為を、やめられなくなっていた。

もっと・・・とせがむ少女をなだめすかして、
「また今度ね」
老婆はそういって、立ち去っていった。
襟足に撥ねた血を、ヌラヌラと光らせたまま。
お婆さまのお着物を、汚してしまってごめんなさい。
いつものように控えめな声で詫びる少女の髪を撫で、老婆はいった。
「そうね。あなたのしたこと、とても無作法だわ。こんどお仕置きをしてあげなくちゃね」
「は・・・ハイ。いつでもお仕置きしてください」
「じゃあ、また今度ね。指切り」
老婆の差し出した枯れ木のような小指に、少女はみずみずしい指をからめてゆく。

指切り げんまん うそついたら 針千本 飲~ます♪

お婆さまが飲むのは、針なんかじゃないわ。
あたしの血を美味しく飲んでくれて、ありがとう――
翳りゆく視界のなか、吸血鬼の影がぼやけてゆく。
少女の理性は、昏く堕ちていった。


あとがき
女吸血鬼のリクエストを受けたせいか、女吸血鬼が描けてしまいました。 (^^ゞ
もっと短くまとめるつもりだったのですが、
最近になく情景の細部までもが脳裏に浮かんできまして、収拾がつかなくなったのでした。(笑)

柏木のところに出没する女吸血鬼は、多くの場合みすぼらしい老婆なんですよ。
このお話では比較的上品ですが、ふだんは下品で卑猥で、アブないやつなのです。 ^^;

村に帰る。

2017年01月10日(Tue) 05:32:34

パパのふるさとだというその村に初めて行ったのは、中学2年の夏だった。
都会の家に帰るとき、あたしは貧血でめまいを起こしていた。
だって、その村には吸血鬼がいたから・・・

村の人たちは、吸血鬼と仲良く住んでいて、お互い助け合っている感じだった。
同じクラスでもいがみ合っている都会とは、ぜんぜん違う雰囲気だった。
なにがどこにあるのかもいちいち人に聞かないとわからない、勝手の違うところだったけど。
終始あたしは、気分良く過ごすことができた。最近こんなに気分がよかったのは、いつだっただろう?って思うくらいに。

ただ、その人と会うときだけは、災難だった。
首すじを咬まれるのを怖がったあたしに、パパの幼なじみだというその小父さんは、優しかった。
たたみの上にうつ伏せになってごらん。悪いけど、ハイソックスをイタズラするのだけは、目をつぶってくれるかな?
小父さんはあたしをなだめて寝かしつけてしまうと、ハイソックスを履いたふくらはぎに、にゅるりと舌を這わせてきた。
夏なのにどうしてハイソックスなの?ってママに訊いても、笑って答えてくれなかったけれど。
その日あたしがハイソックスを履いたのは小父さんのリクエストをママが好意的にかなえたのだと、そのとき知った。

チュウチュウと血を吸いあげられる音を聞いているうちに、眠たくなってきて。
あたしはついウトウトと、してしまった。
吸血鬼といっしょにいるときにウトウトしちゃいけないんだって、そのときには知らなかった。
気がついたときには、制服のスカートは履いていたけれど、パンツはしっかり脱がされていて、
おっぱいをまる出しにしたまま、あたしは小父さんとひとつになっていた。
経験したことのない痛みを、太ももの奥にジンジンと感じながら。
あんまり乱暴にしないでって、あたしは心から懇願していた。

都会に戻って新学期が始まって、あたしはますます学校がいやになった。
そんなとき。
ママがひっそりと、囁いてきた。

パパのふるさとにいたあの小父さまが、もういちどまーちゃんに逢いたがってるの。

あたしは瞬間的に、こっくりとうなずいていた。
ママはたたみかけるように、あたしに訊いた。

ずっと行きっきりになっちゃっても、まゆみは耐えられる?

だいじょうぶ。今よりはいい。
あたしはそう、答えていた。なんのためらいもなく。
あの村に棲んだらあたし、いつでも小父さまに血を吸わせてあげられるんだよね?
小父さま、あたしの血を気に入ってくれたんだよね?
だれかに肯定されたい――そんな思いがこみ上げてきた。
ママはそんなあたしを優しく抱きしめて、言った。
あのひとね。まあちゃんのすべてが好きなんだって。きっとそうなんだよ。だから本性を、すぐにさらけ出したんだよ。
村には、ママが仲良くしている男の人がなん人かいるらしい。
昼間っからキスしてるの、視ちゃったもの。
パパも薄々知っているみたいだけど、それでもお引越しに反対しないのは、
男の人たちがママのことを、真面目に好いているからなんだって。
小父さまもきっと、真面目につき合ってくれるに違いない。

葉っぱが色づいてきたころ、パパは村役場に転職して、あたしたち一家は村に引っ越した。

ひさびさに逢った小父さまは、あたしを見ると嬉しそうに目を細め、
人目もはばからずにいつも逢っていた裏の納屋へと、あたしのことを連れ出した。
貧血になるのはヤだよ。
あたしはわざとむくれてみせて、
貧血になるくらい、かわいがってあげるよ。
小父さまはからかうように、そう応じた。
貧血のときは、学校行かなくてもいいんだって?
ここなら友だちも、すぐできるさ。まあちゃんみたいないい子だったら特にね。
小父さまはどこまでも、親切だった。
さあ、あたしも小父さまが望んでいることを、してあげなくちゃいけない。
これだけは好きだった都会の学校の制服を身に着けた身体に、
あたしは小父さまの逞しい腕を、巻きつけられるままになっていった。

丸ぽちゃの少女の初体験

2016年11月30日(Wed) 07:38:23

「2年D組、近藤美幸さん。近藤美幸さん、旧校舎8番教室まで来てください・・・」
校内放送にいわれるまま、近藤美幸は人けのない旧校舎へと足を向けた。
後ろでむぞうさに縛っただけの黒髪に、白い丸顔がよく映えていたが、
それが本人のなかでは唯一の自慢。
丸っこすぎる目も、小さいだけの唇も、もちろんぽっちゃりした体形も、本人はとても気にしている。
この学校で生徒が突然旧校舎に呼ばれる理由は、ただ一つ。
吸血鬼と共存しているこの街の中学校は、彼らの来訪を受け容れていて、
生徒も教職員も、吸血の対象とされていた。
でも・・・
あたしなんかじゃ。
そう、あたしなんかに白羽の矢が立つわけがない。
そんなふうに卑下してしまうのが、美幸のわるい癖だった。

「ア、小父さん・・・」
教室のドアを開いた美幸の視線の向こうには、よく見知った顔。
父の遠縁の関係にあたるその人は、両親よりもずっと年上で。
よく家に出入りしては、母の血を吸っている人だった。
「美幸ちゃんの血が、どうしても欲しくって」
「・・・どうしてあたしなんですか・・・」
クラスにはもっとかわいい子がおおぜいいるのに。
だれとだれが吸われたのか、ちゃんとわかっているわけではなかったけれど。
中二の女子の吸血体験の割合はまだそんなに高くなくって、
5人に1人か2人くらいらしい。
もちろん、かわいい子のほうがずっと、体験率は高かった。
「どうしても、あんたじゃなくちゃいけないんだ」
小父さんは子供のように言い張った。
「母も知っているんですか」
「じつは、お母さんから頼まれた」
「やっぱり・・・」
すこしがっかりしたらしい美幸をみて、小父さんはちょっとため息をついた。
「あ~あ。そんなだから母さん美幸ちゃんのこと心配するんだ。もっと自分に自信をもって」
「言われなくったって、わかってるんだけど・・・」
あくまで暗い美幸の背後に、しかし小父さんは抜け目なく、
退路を断つようにして、しっかり後ろにまわり込んでいる。
チカリ、とひらめく牙の気配に、さすがに美幸はぞっとなる。
けれども小父さんは素早く、美幸の肩を抱いたまま、首のつけ根に牙の切っ先を埋め込んでしまっていた。

ちゅうっ・・・

忘我のひと刻――
数分後。
少女は目つきも顔つきも、見違えるほど大人びていた。
「あとで鏡を見て御覧」
そういう小父さんにむかって、
「ブラウスに血がついてるの?」
と、見当違いな返事をした美幸は、すこし気持ちの余裕が出てきたらしい。
「もっと吸ってもいいわよ」
と、こんどは自分のほうから、脚を差し伸べている。
いつもこのひとが、ストッキングを穿いた母さんの脚に、好んで咬みついているのを知っているのだ。
美幸の足許は、真っ白なハイソックスに覆われている。
濃紺のスカートの丈はひざ小僧の下まであって、ちょっと見にはハイソックスかタイツかわからないくらいだった。
「おいしそうだね」
と、舌なめずりをする小父さんに、
「いけすかない」
と、少女は口を尖らせた。
けれどもいちど狙われた足許を、引っ込めようとはしなかった。
真っ白なハイソックスのふくらはぎに、小父さんの赤黒い唇がもの欲しげになすりつけられてくるのを、
美幸は唇をキュッと引きつらせ息をつめて見おろしていた。

ちゅうっ・・・

ふたたびあがる、吸血の音。
美幸はこんどこそ、貧血を起こして、その場にぶっ倒れていた。
吸血の音はそれでも長いこと、廊下の外までキュウキュウと、断続的に洩れつづけていた。

「ただいま」
「おかえりなさい。アラ、顔色悪いわね」
なにもかも知っているはずの母さんは、下校してきた美幸のことをなに食わぬ顔をして出迎える。
「吸血されたー。ばっちり貧血ー」
美幸にしてはめずらしく、うじうじせずに、ストレートにそういうと。
「しばらく寝るから」といって、母の顔を見ようともせずに二階に続く階段をあがっていく。
母さんは、娘の後ろ姿を、苦笑いして見送りながら小声でつぶやく。
「あらあら、あの子ったら・・・」
真っ白なハイソックスのふくらはぎには、血のりがべっとりと沁みついている。
「今度から、履き替え持ってくように、言わなきゃね」
母さんの呟きはトーンをかえて、娘に呼び掛けていた。
「今夜はお赤飯にするあからね」
「はーい」
意外なくらい、明るい声が、返ってきたのを聞き届けると。
「小父さんに、あとでお礼を言っておかなくちゃね」
と、また呟いていた。

少女が大人への道を一歩踏み出すとき。
母親はお赤飯を、炊くものらしい。


あとがき
登場人物の氏名は架空のものであり、実在の人物とは関係ありません。念のため。

合唱コンクールの朝

2016年11月29日(Tue) 07:11:48

見慣れない制服に黒のストッキングを履いた女学生がおおぜい、後者の外に列を作っている。
そんな情報を聞きつけて、黒い影が群がるように、学校に集まってきた。
ふだんなら。
こういう情報はいち早く、教職員を通じて流されるはず。
はて、いったいどうしてかほどの良い話を黙っていたのか?
教職員どもはあてにならぬ・・・影たちは職員室は素通りをして、
開錠された玄関から空き教室に入っていく見知らぬ乙女たちを求め、あとを追った。

きゃーっ。
教室に悲鳴が花を開いた。
影たちは濃紺のセーラー服の制服姿をつかまえると、いっせいに首すじを吸おうとしたのだから、無理はない。
真っ先につかまえられた、頭だった少女は、けんめいに抗いながら、
「やめてください!待ってください!」
と、身を揉んで叫んだ。
「待て」
影たちの頭の声が響くと、彼らは一滴も吸うことなしに、狼藉をやめる。
すでになん人かは首すじを咬まれ血を吸われ始めていたが、
そんな忘我の境地にあるはずのものたちも皆、獲物と定めた女生徒たちから手を引いた。
得体が知れないけれど規律は正しい一団であることは、少女たちにも伝わったらしい。
見慣れぬ制服の女生徒たちも、それ以上取り乱すことなくいっせいに沈黙する。
「あれを見ろ」
頭が指さした黒板には、几帳面な字でこう書かれていた。

「歓迎 八坂東高校合唱部さま 親善合唱コンクールへようこそ」

そういえば。
きょうはこの学校では、合唱コンクールが開かれる予定だった。
合唱コンクールはこの学校でも力を入れた行事で、どのクラスも数日前から懸命な練習期間に入る。
吸血鬼の側も、女生徒たちがとくに希望しない限り、直前の3日間は彼女たちを襲うのを遠慮していたのだ。
だからこそ――このところよけいに、「女学生欲求」が高まっていたのだろう。
八坂東高校といえば、全国でも有数の合唱で知られた名門校。
どうやら、コンクールの審査中に一曲披露するため、姉妹校として招かれたらしい。
「しまったですな」
影たちのナンバー・2が、間抜けな声をあげた。
危なく、両校の親善に水を差すところだった。
「なしにしてもらいましょうよぉ」
ナンバー・3にいたっては、泣きべそを掻いている。
どうやら、この学校の合唱部の子に、好きな子がいるらしい。
頭は、怯えから立ち直ろうとしている少女たちに、いった。
「悪く思わないでほしい。当校の生徒たちと我々は、仲良しなのだ」
「この学校・・・吸血鬼と仲が好いのですか?」
ちょっとだけ血を吸われかけた少女が、首すじにつけられた咬み痕を掌で隠しながら、疑わしそうに訊いた。
セーラー服の胸元に輝く校章の下には、「副部長」と書かれたバッヂがさげられている。
「この学校の名誉のためにいうが、我々が生き延びているのは、ひとえに生徒さんがたの好意によるものだ。
 だからわしらも、学校の不利益になることは絶対しないことにしている。
 コンクール前の3日間断食をしていたので、見慣れない制服を着たあなた方のお姿を見て、ついてきてしまったというわけだ」
「ここの学校の子たちは、怖がっていないの?」
丸顔の部員は、まだ咬まれていなかったが、この学校の生徒たちとは親しくしているらしい。
他校の友人への気遣いが、まなざしにあふれている。
「死なせない、邪魔をしない、本人の許しなく辱めない。そういう約束になっている」
「わたしたちに害意はないって証明してくださるって仰いましたね?」
これは、部長からの質問。
「たしかに、そう申し上げた」
「では、どうやって証明を?」
その問いにこたえるように頭が一同に目配せすると、
彼らは少女たちの間から身を離し、素直にぞろぞろと教室から出ていった。
「あなたがたのリハーサルを悲鳴に塗り替えるわけにはいかない。皆さんの安全は保証します。ではまた後ほど」
時ならぬ拍手が、少女たちの側から沸いた。
あまりにも潔く引き上げたので、ちょっと拍子抜けした顔つきの子もいる。
「でも・・・後ほど・・・って・・・?」
慎重な性格らしい副部長が、部長を見返す。
部長は生徒たち全員を見返ると、「いいわよ・・・ね?」と囁いた。
全員がしんけんな顔をして、頷きかえす。
みんなの反応に満足したらしい部長は白い歯をみせると、出ていこうとする影たちを呼び止めた。
「あの・・・ちょっと」
振り返る頭に、部長がいった。
「“後ほど”、またいらっしゃる・・・ということですか?それだと、緊張して歌えない子が出てしまいます」
ははは・・・
頭は明るく笑った。手厳しいな、とひとりごちたが、「どうしてもお嫌なら、無理強いはしない」

2時間後。
招待された合唱部員たちは全員、もとの教室に控えている。
控えめな音をたてて開かれた扉の向こうから、影たちがちょっとびっくりしたように、少女たちを覗き込んでくる。
「どうぞ」
部長がおさげ髪を揺らして、彼らをいざなった。
「合唱部の子たちから、くわしい話を聞きました。こちらの部長さんから伝わったと思いますけど、わたしたちも献血のお手伝いをさせていただきます」
リンとした潔い声に、影たちは、ホウ・・・と感嘆の声を洩らす。
「しっかり首すじ咬まれちゃった子もいるのに、だれも制服汚れてないのよね」
副部長が、周りの子たちと笑みを交し合う。「咬まれちゃった子」たちもはにかみ笑いをしながら、部長の笑みに応えていく。
どうやら、部員たちは仲が好いらしい。
「ふだんはうちの学校、ストッキング履かないんですよ。こういう特別な時だけは、申し合わせて履いてくるんです」
「でもまさか、それが吸血鬼の気を引いちゃうなんてね」
「人間の男子だったら、よかったんだけど」
「こら、こら」
無邪気に交し合わされる声色は、だれもがそろってまだ浄い身体の持ち主であることを証明していた。
「みんな黒のストッキング履いてますけど、咬み破ってもいいんですよ。ちゃんと全員のOK取りましたから」
ゆったりと笑う部長は、みんなにお手本を示すように、影たちの頭のまえ、自らの脚を差し伸べた。
では・・・と頭は呟くと、少女の足許に跪き、姫君に忠誠を誓う騎士のように、足許に接吻した。
さいしょは礼儀正しく、そのつぎはややねっとりと、そしてさいごは、しつように。
部長のふくらはぎへの執着が、本性を現しかけたころにはもう、
合唱部員たちと同数の影たちは、それぞれに相手を選んで、身体を寄り添わせてゆく。
さっきは警戒心あらわだった副部長もまた、先刻自分を咬んだ男を相手に、親しみのこもったまなざしを向ける。
「さっきの続き・・・ですよね?」
そして、首すじにつけられた咬み痕を男が容赦なく牙で抉るのを、くすぐったそうに受け止めてゆく。
自分たちを襲おうとした吸血鬼に臆せず質問をした丸顔の部員も、黒のストッキングの足許に舌を這わせてくる吸血鬼の相手をし始めて、
黒のストッキングがパリパリと咬み破られて裂け目を拡げてゆく有様に、目を見張りつづけていた。
隣の子も。またその隣の子も。
ふくらはぎに唇を吸いつけられて、おそろいの黒のストッキングを、他愛なく破かれてしまってゆく。
きゃっ。・・・きゃっ。・・・
少女たちの控えめな悲鳴が、まるではしゃぐように軽やかに、教室前の廊下に洩れた。

約1時間後。
教室に両校の合唱部員が全員顔をそろえると、人いきれで息苦しいくらいだった。
どの生徒も、濃紺のプリーツスカートの下、ストッキングに伝線を走らせてしまっている。
でも彼女たちはそんなことは意に介さず、振る舞われたジュースやお菓子を手に、懇親を深めていた。
さっきまで彼女たちを襲った嵐のことなど、そもそも存在しなかったかのように。
「女子たちは、たくましいですな」
影のナンバー・2が頭にいった。
「惚れちまったりしなかったのか」
「あくまでこの場限りって、約束ですからね」
「あとから戻ってくるような子は、おらんかな」
「たぶん全員、もうここには来ないでしょう」
しっかりした理性を持った子たちばかりでしたからな。
頭も、ナンバー・2と同じ感想を持ったらしい。
「それは奥ゆかしいな」
遠い地に棲む他校の少女たちをたたえながらも、頭はちょっとだけ惜しそうな顔をする。
ほかの影たちも同感らしかった。

都会に戻っていった彼女たちは、姉妹校に棲み着く吸血鬼たちのことを、決して口外しなかった。
そしてだれ一人、吸血されることを目的にこの地に足を踏み入れる生徒は、いなかった。
いちどは獲物を諦めて退場した影たちの潔さに、
彼女たちも彼女たちなりの潔さで応えていった。
自分たちの出番が済むと吸血に応じ、黒のストッキングを破かせるという潔さで。
そして思い切りよく、その場限りの関係を守り通した。
「一人くらいは、戻ってきてほしかったな」
息をつめて見守る仲間たちのまえ。
黒のストッキングの脚を、お手本を示すように真っ先に差し伸べてくれた部長の面影を、頭はまだ忘れていない。


あとがき
引率の先生がいるはずなのに、生徒だけで来たの?とか、
口外されちゃったらすべてがおじゃんになるのに、口止めしなかったの?とか、
そもそもどうして、理性を奪って奴隷にしなかったの?とか、
いろんなツッコミどころがあるのですが。
こういうその場限りの関係というのも、奥ゆかしいなあ、と、おもうのです。

あと、学校名は架空です。
仮に似たような名前の学校が存在したとしても、このお話とは一切無関係です。

気丈。

2016年10月22日(Sat) 07:28:41

公園の朝もやのかなたから、濃紺の制服姿がのろのろと、こちらに向かって歩みを進めてくる。
足許を引き締めるのは、真っ白なハイソックス。
グレーのひだスカートとぴかぴかの黒の革靴にしっくりと似合う、絶妙のアンサンブル。

少女の歩みが遅いのは、ほとんど俺のせい。
夕べも吸った。その前の日も吸った。たぶん、そのまた前の日も――
なのに彼女は、俺の求めに応じて、今朝もこうして通学路をはるかにはずれ、来てくれる。
牙の毒でたぶらかしたわけじゃない。
そんなことだけでここまでいうことを聞いてくれるような、自分のない子じゃない。
いや、ほんのすこしはたぶらかしたか・・・
けれども強い意志を秘めた瞳は、まだあんなに遠くにいるというのに、
しっかりとまっすぐに、俺を目ざして近づいてくる。

遅れてごめんなさい。
きょうは、どうしても学校に行かなければならないの。
言いにくそうな謝罪の言葉。
そして、自分の事情を説明するには、あまりにも言葉足らずな言い訳。
ほんらいは、人に頭を下げることなど大嫌いな、高慢で気の強い少女。
それがいまは、俺の隣に腰をおろして、「どこから噛んでもいいわよ」って顔をしている。
すまないね。
俺はひと言囁くと、そろそろと彼女の足許にかがみ込む。
真新しいハイソックスに浮いた細めのリブが、ゆるやかなカーブを帯びて、たっぷりとした脚線に沿っている。
整然としたリブの流れは、「これから学校に行くのよ」という少女の凛とした気合を伝えるように。
まっすぐとしたカーブを描いていた。
俺はどうにもならなくなって、爛れた欲情でいびつに膨らんだ唇を、ブチュッと圧しつけていた。
恥知らずな唇を吸いつけて、しなやかなナイロン生地の感触をたしかめるように、ふくらはぎをなぞってゆく。
お行儀よくきちんと履かれたハイソックスを微妙によじらせて、
じょじょにずらしていった唇のあとを、よだれの痕が拡がってゆく。
そのあいだ。
彼女はじいっと何かをこらえるように、地面の一点を睨みつけて。
そして、俺のほうへは目も向けようとしない。
目の前の屈辱が、そもそも最初からありはしないのだと言わんばかりに。

いつもなら、そのままガブリといくところだったが。
きょうはなぜか気が引けて、彼女のハイソックスによだれの痕だけを残して起き上がる。
横抱きにして引き寄せると、彼女はなんの抵抗もなく、俺の腕のなかに落ちた。
咥えたうなじのなめらかな皮膚は、かさかさに干からびた俺の唇に、初々しい体温を心地よく伝えてくる。
俺はとうとう我慢できずに、ググッ・・・と牙を沈めていった。
じわじわとにじみ出るうら若い血潮を、じゅるじゅると汚らしい音をたてて、吸い取っていった。
そのあいだもずっと、彼女の目線は、おぞましい吸血行為を全く無視するかのように、地上の一点を睨みつづけていた。

今朝は少なくて、ゴメンね。
俺が手かげんしたのを、この子はとっくに見通していた。
かまわない。ちゃんと学校行けよ。
俺も瘦せ我慢をして、そう応えてやる。
明日は学校お休みだから、帰りにまた寄るね。
無理するんじゃないぞ。
無理なんか、してない。あなたこそ、無理しないで。
生意気な少女は、どこまでも減らず口をやめなかった。
ふと気がつくと。
彼女のことをしっかりと、抱きしめていた。

制服越しに伝わる体温が、彼女の心意気をありありと、伝えてくる。
だいじょうぶ。きょうもこの子は、がんばれる。きっとこの子だから、がんばれる。
帰りを愉しみにしているぞ。
虚勢を張った負け惜しみを、彼女はすぐに見抜いたはず。
けれどもそんなことは色にも出さず、しつようだった抱擁からスッと身を離すと、
期待しててね。
そっけなく言い捨てて、歩みを進めていく。
今朝はまだらもように彩られることのなかった白のハイソックスの歩みが、
整然と、ゆったりと、朝もやの彼方に消えていった。

見あげれば、天井が一段高くなったような青空――
気がつけば、周りは秋一色に彩られていた。

娘の純潔 ~べつの視点から~

2016年10月01日(Sat) 16:10:25

この街の風習で、年頃になった女子は純潔を、親たちの知人相手に捧げることになっている。
だから、クラスの女子の大半は、一人また一人と、処女を卒業していった。
この街では、婚約を結ぶ年齢はとても若い。
ボクが同級生の城崎ミホと婚約したのは、もう半年も前のことだった。
同年代の男子と婚約して後で処女を卒業する。
それも、婚約者とは別の、親と同じくらいの齢の男を相手に。
そういうことになるのも、決して珍しいことではなかった。
そしてボクも――婚約者のミホを目のまえで、寝取られることになっていた。

わし、ミホちゃんを抱くことになったからな。
そう囁いて来たのは、父さんの親友の尾崎だった。
尾崎は父さんの悪友だったが、同時に母さんの浮気相手でもあった。
中学に上がる前から、ボクは母さんが尾崎を相手に、夫婦のベッドでくんずほぐれつしているのをのぞき見しながら、育っていった。
母親の浮気相手と息子とは、奇妙な共犯関係にある。
父親にばらさない代わり、母親のエッチをのぞき見する特権を得られるのだから。
そういういけない子の一人に、ボクはいつの間にか育っていた。
そして今――婚約者の純潔まで、同じ男に獲られようとしているのだった。

尾崎の小父さんの言いぐさに、しぶしぶめかしてOKしてしまったのは。
彼のいけない囁きに背中を押されてしまったから。
小父さんは囁いたのだ。
相手がわしでOKだったらその代わり、ミホを抱くところ見せてやっから。

ミホが自宅のリビングで、ほかの女子と一緒に組み敷かれていったとき。
小父さんはボクやミホの父さんが見つめるまえで。
ぬけぬけといったものだった。
「おおー!あんたが城崎の娘かあ?すっかりおっきくなったなー」
尾崎は制服姿のミホの、おっきなおっぱいばかりをじろじろと見て。
「ミホちゃんがわしの相手してくれるンか。ほんとに娘らしくなったなー。
 わし、女子高生抱くのが夢だったんじゃ。その夢をミホちゃんが、かなえてくれるんかー」
尾崎の小父さんは手放しで、ひとの婚約者ににじり寄り、物陰から見つめるボクの視線を受け流しながら、ミホを抱きすくめていった。

女子校生抱くのが夢――それはボクだって、同じこと。
でも尾崎の小父さんは、そんなボクの正当な権利を無視して、ミホのスカートをたくし上げていった。
ミホは紺のハイソックスの脚をばたばたさせながら。
それでもきゃあきゃあとはしゃぎ切っていて。
慣れた手つきでスカートの奥に入り込んだまさぐりを、まともに受け止めてしまっている。

痛い!痛い!痛あいいっ!!
ボクが聞いているとも知らないで。
あたりかまわずわめき散らしながら、ミホは純潔を汚されていった。
ゾクゾク。ゾクゾク。恥ずかしくていけない昂ぶりに目ざめてしまったボクは。
小父さんが何度も何度もミホのお尻に大きなおCHINCHINを突っ込むのを、
ただぼう然として、眺めつづけてしまっていた。

建前では、その場限りで終わる関係。
でもミホは相変わらずボクと親しみながら、ボクにはナイショで小父さんと逢いつづけていて。
ボクも相変わらず小父さんとうらでつながりながら、ミホとナイショの逢瀬を遂げる現場に招待されて。
制服姿で抱かれる婚約者の痴態を、のぞき見しつづけている。
このごろは、ミホも薄々気づいているらしい。
「やだあっ!やだあっ!小父さんやらしいッ!」と叫んでいた少女は、
「ユウくん!ユウくん!ゴメンねッ!ゴメンねッ!」って、ボクをそそる声をあげ続けるようになっていた。


あとがき
おっさんたちが、女子高生の純潔をゲットできるということは。
その少女の未来の夫は、花嫁の処女喪失を強いられるワケですな。
たいがいは、そんな過去を知らずに結婚するのでしょうが、
どうしてもそのあたりの機微や心理が気になってしまう私。。。
^^;

娘の純潔。

2016年09月29日(Thu) 08:15:07

この街の風習で、娘たちは純潔を、親たちの知人相手に捧げることになっている。
みんなでやれば怖くない――
我が家で行われた儀式には、娘の友だち数名も、親たちと同年代の小父さま相手に純潔を喪っていった。
うちの娘に当たったのは、悪友の尾崎だった。
尾崎はてかてか光る禿げ頭もあらわに、娘に挑みかかってゆく。
「おおー!あんた城崎の娘かあ?すっかりおっきくなったなー」
とか、言いながら。
「ミホちゃんがわしの相手してくれるンか。ほんとに娘らしくなったなー。
 わし、女子高生抱くのが夢だったんじゃ。その夢をミホちゃんがかなえてくれるんかー」
やつは手放しで、ひとの娘ににじり寄り、親の目もかえりみず抱きすくめていった。
制服姿の娘は、紺のハイソックスの脚をばたばたさせながら、
それでもきゃあきゃあとはしゃぎながら、スカートの奥をまさぐられていった。

まったくもって、ヘンな気分だ。
妻の純潔を提供した男が、いままた娘の純潔まで、汚し抜いていくのだから・・・

発表会の帰り道

2016年09月29日(Thu) 08:08:33

「お願い!今夜は襲わないで!あたし、明日が発表会なの!」
いつものように路上の壁ぎわに追い詰められながら、優佳子は手を合わせて懇願する。
半年に一度の発表会なのだという。

優佳子の血が目当てで、週三回のレッスンのすべてを待ち伏せているその吸血鬼は。
いまはすっかり彼女の生き血に魅せられていて、
いっぽう優佳子のほうもまた、彼のことを憎からず思っているものか、
せっかくのよそ行きの服をくしゃくしゃになるほど弄ばれながらの吸血を、
うつむいて目をつむり、従順に受け容れているのだった。

懇願する少女をまえに、男はかろうじて自制して、獣じみた息遣いを、無理に抑えつけていた。
「ありがとう。ごめんなさい。お礼はきっとするから・・・」
こういうときの感謝の言葉が、往々にしてただの言い逃れになることを知りながら、
男は少女の夢を壊すことを、かろうじて控えるのだった。

逃げ去った少女と入れ違いに、視界の彼方から近寄ってくるのは、少女より少し年上の娘だった。
着ているセーラー服は、近在の高校の制服だった。
男は見境なく少女のまえに立ちはだかり、つぎの瞬間強引に抱きすくめていた。
首すじに牙を埋められた少女の叫び声が、あたりにこだました。

翌日のこと。
ご自慢のピンクのワンピースを着た優佳子は、両親に連れられて誇らしげに、教室の門を出た。
どうやら発表会は、上々の出来だったらしい。
お邸を出てすぐ、物陰に隠れている男を、優佳子は目ざとく見つけると、
両親になにごとか囁いて、跳ねるような足どりで男のほうへと歩み寄る。
「きのうはありがと。おかげで演奏うまくいったわ」
「そいつはよかった」
「お礼するわね。おニューのハイソックス、小父さんのために履いてきたのよ」
優佳子はイタズラっぽく、小父さまにウィンクをする。

向こうでは、父親の手を母親が引いて、向こうへと促していた。
「先に帰りましょ。あのひともガマンしてくれたみたいだから、きょうは二人っきりにしてあげたいの」
小父さまと手をつないで、スキップをしながら離れていく娘を見やりながら。
「大人になったわね、あの子」
母親は薄っすらと、ほほ笑んでいる。

薄闇の彼方に消えてゆく、真っ白なハイソックスに包まれた軽やかな足どりは。
一時間もしたら、小父さまに抱き支えられながら、ふらふらと後戻りしてくるのだろう。
真っ白なハイソックスの足許を、赤黒いまだら模様に彩りながら。
しつように愛された痕跡に、夫は今夜も昂るのだろうか。

まな娘を送り出す親たちの立場

2016年09月29日(Thu) 07:55:58

吸血鬼の待ち伏せする夜道と知りながら、まな娘を音楽教室に送り出していく親たちは。
たいがいが、その教室の卒業生。
女先生は、当時から今と変わらない年恰好で。
音楽だけではなく、行儀作法や教養まで、教えてくれて。
そして、上品にほほ笑みながら、送り出してくれる。
「帰り道を気をつけてね」と、いいながら。
そのあとどんなことが起きるのか。わが身にしみて知っているくせに。
なぜか――結婚をして娘ができると、やはり自分の時と同じように、娘を送り出してしまうのだった。

自分の帰り道を襲ったあの吸血鬼に、娘の成長ぶりを確かめてもらいたい。
そう公言する親もいるという。
娘たちは、かつてその母親たちがそうだったように、こぎれいに装って、教室に通う。
初めて襲われたときには泣きべそをかいていても
不思議と、「教室に行くのはイヤ」という子は、ひとりもいないという。

親たちは競わせるように、わが子にかわいい服をあてがっていく。
夜道の吸血鬼を愉しませ、もてなしてやるために。

親たちの過去

2016年09月29日(Thu) 07:48:01

「優佳子をどうしても行かせるのか?あの教室に」
父親の真純は、母親の沙織にそう問いかける。
「だってもう、あの子も年ごろじゃありませんか。
 ご近所のお嬢さんで目ぼしい子たちはみんな、あのお教室に通っているわ」
沙織は何気なく、夫の問いに応える。
音楽教室に通わせるという、ただそれだけのことが。
夫婦の会話で、深い意味を持っていた。

その昔、男の子もハイソックスを履いていた時代。
真純はその教室に通っていたから、教え子たちが帰宅の途中でなにをされるのかをよく知っていた。
気に入りのひし形もようのハイソックスを無造作に噛み剥がれていったとき。
なんともいえない小気味よさが、悪寒のように襲ってきて。
もう片方の脚も、自分から噛ませてしまっていた。
それからというものは、自分を襲いに来る吸血鬼にハイソックスの脚を愉しませるのが面白くて、教室通いをつづけていた。
沙織と出会ったのも、その教室でのことだった。
二人して、複数の吸血鬼のために献血行為をくり返して。
代わる代わる覆いかぶさってくる獣たちを相手に、うら若い血を惜しげもなく、振る舞いつづけていた。

「だからあの子も――そうさせてあげましょうよ」
妻は妖しく、フフッと笑った。
夫は仕方なさそうに、目線を宙に泳がせた。

あんなふうに悩んだ振りをして。
明日は勤めを早引けして、優佳子の帰り道を見に行くくせに――
そううそぶく沙織でさえ、まな娘の帰り道を保護者として見守ろうと、心づもりをしているのだった。

「おかえりなさい。よくがんばったわね」
お教室のレッスンで先生に褒められたあとのように、
母親はかいがいしく、帰宅した娘の身づくろいをしつづける。
真っ白なハイソックスには赤黒いシミがべっとりと貼りつき、
薄いピンクのカーディガンにも、おなじ色のしずくがあちこちに、撥ねかっていた。
べそを掻いた痕がくっきり残る目じりを隠そうとせずに、
優佳子はきっぱりと、母親に告げる。
あたし、あの教室に通うから――その代わり、きれいなお洋服をいっぱい、買って頂戴ね。