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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

妻と母親の血を吸った男たちに、「エエ女にありついた。」と言われた場合。

2018年09月18日(Tue) 05:59:21

吸い取ったばかりの血を、口許からまだしたたり落しながら。
そのごま塩頭の男は、露骨に嬉しげな声をあげた。
「久しぶりに若い女の血にありついた。
 やっぱり若いひとはエエの!
 なんといっても、活きがエエ。匂いがエエ。
 それになによりも――あんたの嫁はエエ身体をしておるの」

吸血鬼の棲む田舎町だった。
それと知りながらも、都会暮らしのできなくなったわたしたち夫婦はその村に移り住んで、
予定通りと言われても仕方のないくらいすんなりと、
妻を襲われ生き血を吸い取られてしまっていた。

襲った女性は、決して死なせないという。
その代わり、女性がセックスを識る身体の持ち主の場合は、例外なく犯されるという。
そのうわさがほんとうだということは、
先に襲われて昏倒したわたし自身が、尻もちをついたまま見届ける羽目になっていた。

「ご主人、悪く思わんでくれ。
 わしらはこういうたしなみのないモンぢゃから、
 モノにしたおなごのことは、なんでもかんでも欲しがってしまうのぢゃから」
男の言いぐさは、もちろんなんの慰めにもなっていなかったけれど。
いちど股間に受け容れてしまった逸物の名残りを忘れかねた妻は、
わたしのかたわらで恥ずかしそうに寄り添いながらも、
まんざらでもない顔つきになっていた。
そしてその翌日から、
吸血鬼の誘いを受けた妻が断りかねて、小ぎれいに着替えていそいそと出かけてゆくのを、
車で送り迎えするようになっていた。

両親が村までわたしたちの様子を見に来たのは、それからひと月後のことだった。
こういう村だから来ないほうが良い・・・と、たしかに言ったはずなのだが、
ふたりともわたしの忠告を聞き流してしまったのだろうか。
果たして――かつて評判の美人だった母は、吸血鬼の目に留まってしまう。
五十代半ばになりながらも、母の容色はまだ衰えていなかった。
相手の吸血鬼は、妻の愛人となった男の兄だった。

母がどんな経緯でモノにされて、父がどんな経緯で納得させられてしまったのか、
その場に居合わせなくてもおおよその察しはついた。
夕方出かけていったふたりは深夜まで戻らず、
足音を忍ばせてわたしたちの家に戻って来ると、夕食も取らずに階上の寝室へと向かっていった。
階段を昇る母の後ろ姿だけは目に入ったが、
真っ白なロングスカートのお尻には泥が撥ねていて、
肌色のストッキングは見る影もなく破けていた。
視てはいけないものを視てしまったわたしは、
妻に手を引かれるままに足音を消してその場を立ち去り、
「視なかったことにするのよ、私のときみたいに」
と囁く妻に、意味もなく頷き返していた。

永年連れ添った妻をモノにした男は、父に言ったそうだ。
「エエ女ぢゃ、久しぶりにエエ女の生き血にありついた。
 落ち着いた味わいの、熟れた血ぢゃ。
 それに、あんたの嫁は身体もエエの・・・」

それからは。
嫁姑と連れだって、小ぎれいに装って出かけて行った。
男ふたりは家に残って、
村はずれの納屋に連れ込まれて、いけないことをされている刻限に、
黙々とコーヒーを飲んだり将棋を打ったりしていたけれど、
そのうちにどちらから言い出すともなく、妻たちのあとを追って家を出て、
お互い別々のところから、自分の妻がどのような目に遭わされているのかを、気づかうようになっていた。

都会妻が納屋で辱められるシーンを視るのは、
屈辱でも拷問でもなくて、むしろ特権なのだとわかり始めるのに、さして時間はかからなかった。

近親婚の多い村では、ほかの血は貴重だという。
他所の女が来るとてんでに手を出してはらませて、生れた子供は村の子供としてたいせつに育てるという。
その年のうちに、ふたりの都会妻は妊娠して、
父には恥掻きっ子と初孫が、
わたしには齢の離れたきょうだいと初めての子供ができたのだった。


あとがき
自分の妻や母親を襲った男に、「エエ女にありついた♪」と言われたときには、
いったいどんな顔をして応対するのが正しい礼儀なのでしょうか?
とくに配偶者や母親がまんざらではないという顔つきをしていて、
今後も関係が継続していくと見込まれるときには、慎重に配慮する必要がありそうですね。^^

ねん挫。

2018年09月18日(Tue) 05:32:02

広い校庭のなか。
ふたつの人影が、全速力で走っている。
さきを走るのは、制服姿の少女。
あとから追いかけるのは、黒衣の吸血鬼。
(このブログのなかでは、見慣れた光景である)

吸血鬼は少女の血を吸おうとし、
少女はそうはさせまいと懸命に走っているのだ。

そのうち少女のほうがあっ!と声をあげ、
その場にまろび伏した。
足を痛めたらしく、足首を抑えて痛がっている。
吸血鬼はそのまま少女に駆け寄ると、ひと言「大丈夫か」と声をかけ、
少女の足許にかがみ込むと、やおら黒タイツを穿いた脚に咬みついた。

キャッ!
少女はさらに声をあげ、抗おうとしたが、ねん挫をしてしまった激痛に耐えかねて、抵抗の力を喪った。
卑怯だわっ!卑怯だわっ!
少女は血を吸い取られながらも、切れ切れな悲鳴交じりの叫び声で、相手を非難しつづけていた。

ひねった足首を丁寧にほぐし、入念にようすをみると、吸血鬼は言った。
「とりあえず応急処置はしたけれど、だいぶひどくひねっているから、医者に診てもらうしかない」
咬んだ傷口から少女の血液に織り交ざった毒液は、痛み止めの役目を果たしていた。
それでも少女は恨みがましく吸血鬼をにらみつけていたけれど、
自分に背中を向ける吸血鬼に大人しく負ぶさって、素直に背負われていった。
「自分の血を吸ったやつにおんぶするなんて!」と、奇妙な怒りかたをしながら。

そのあいだ。
校庭を見おろす位置にある職員室からは、だれも出てはこなかった。
無責任な学校!といいたいところだが、
この学校は吸血鬼に開放されており、生徒はもちろん女性教師の血まで吸い放題となっていたのだ。

翌日。
放課後の行程を、おなじ少女が軽くびっこを引きながら、重たい鞄を下げて歩いていた。
クラブ活動を終えて、家路につくところだった。
目のまえを黒衣の男が遮ると、少女は恨めしそうな目で相手をにらんだ。
「大丈夫か」
気づかう相手に、「どうにか歩ける」とぶっきらぼうに少女が応えると、
差し伸べられた手に重たい鞄を預けていった。

すこし距離を置いてとぼとぼと歩くふたつの人影が、
少女の家の間近にある公園のまえで立ち止まり、
どちらからともなく、中へと入っていった。
「少し休む」
少女はベンチに腰掛け、男はそのベンチに鞄を置いて、さりげなく距離を取った。

きのう黒タイツを破かれた少女は、真っ白なハイソックスを履いていた。
その足許をじっと見下ろしながら、少女は吸血鬼のほうは振り向かずに言った。
「きのうのお礼なんか、言わないからね」
それはそうだ。
そもそも吸血鬼に追いかけられなかったら、しないで済んだねん挫だもの。
「足、軽く済んで良かったな」
ハイソックスに隠れた足首に巻かれた包帯の薄さに目配りしながら、吸血鬼はいった。
「ウン、軽く済んだ」
少女は足許を見おろしながら、いった。
それからもうひと言、ためらいながらつけ加えた。
吸血鬼のほうには、目もくれないで。
「脚、咬んでもいいよ」

したたかな女子高生

2018年08月29日(Wed) 07:59:44

洋太の血を吸うようになってひと月後、俺は洋太の彼女、美緒の首すじの咬み応えを知った。

「俺は美緒の履いているタイツの舌触りを知っている」
「俺は美緒の着けているショーツのブランドを知っている」
「俺は美緒の唇の柔らかさを知っている」

事後報告をするたびに、洋太は頬を赤らめ、ドキドキと昂ぶりながら頷いてくれた。
半月が経ち、俺は思い切って洋太に告げた。
「俺は美緒のあそこの締まり具合を知りたい」
洋太はちょっとだけ考えて、彼女がいいなら・・・と、応えてくれた。

「美緒はOK。いつもの公園でやるから、観に来ない?」
俺は美緒のいろいろなことを知ったけれど、
洋太はなによりもいちばん大事な、美緒の気持ちを知っている。
美緒は人間のお嫁さんになって、吸血鬼を彼氏に持ちたいのだと――

夕方6時以降の公園

2018年06月16日(Sat) 19:10:44

薄暗くなった街かどに「夕焼け小焼け」のチャイムが鳴ると、
公園で遊んでいた子どもたちはいっせいに、家路につく。
この街の子供たちは、お行儀が良い。
それもそのはず。
この街では、夕方6時を過ぎると、吸血鬼が出るのだから。

入れ違いに路地を行き交うのは、制服姿の女子中高生たち。
「みなみちゃん、いる?」
「みなみちゃーん」
時ならぬ若い声が、路地裏の一軒家の玄関のまえにひっそりと響く。
二人連れの少女たちは、おそろいの白いカーディガンに、
濃い赤と黒とのチェック柄のプリーツスカート。
革靴のなかにお行儀よく収まった白のハイソックスの脚が、
夕闇のなかで鮮やかに浮き上がる。
友だちの声に応じて玄関を出る少女の姿も同じ制服を着ていて、
セミロングの黒髪を揺らしてポーチを降りてくる。
三対の城のハイソックスの脚たちは、足並みをそろえて公園に向かった。

公園にはそこかしこにベンチがあって、
違う制服の子たちもひそひそ話を交し合いながら、
思い思いのベンチに腰かける。
みなみちゃんと呼ばれた少女も、
ほかの二人の少女とある間隔を取りながら、
それぞれベンチを選び腰を下ろした。

一陣のなま温かい風がひゅう~っと公園のなかを駆け抜けると、
それぞれのベンチのまえにはひとつずつ、
少女たちのまえに黒い影を立ちはだからせた。
「こんばんは」
少女たちはいつもよりちょっと遠慮がちな上目遣いをして、
自分の相手を値踏みするように見あげた。
影たちは思い思いに、
あるものは少女の足許にかがみ込んで、
ハイソックスの内ももに唇をすりつけてゆき、
あるものは少女をベンチのうえに仰向けにして、
うなじに唇を沈めてゆき、
あるももは少女をベンチのうえにうつ伏しにして、
ハイソックスのふくらはぎに唇を這わせてゆく。

ごく・・・っ。
ちゅうっ・・・
きゅううっ・・・

しのびやかな吸血の音がそこかしこであがり、
少女たちはシンとおし静まって、
刺し入れられる牙の痛痒さに歯がみしながら、
献血行為の陶酔に耽ってゆく――

6時以降の公園は、少女たちの秘密の場。
吸血鬼たちは自分のベンチにだれが座るかと胸躍らせながら、
夕刻の一陣の風を待ち焦がれる。

あまり美しくない少女の場合。

2018年06月11日(Mon) 04:49:26

そばかす顔に、三つ編みのおさげ。
大きくはない瞳に、特徴のない目鼻立ち。
そんな容姿の持ち主の粟井のり子は、あまり美しくない少女だった。

学校からの帰り道、喉をからからにした吸血鬼に遭ったのが運の尽き。
戸惑うばかりののり子はあれよあれよという間に公園の片隅に追い詰められていって、
頭をつかまれおとがいを仰のけられて、
首すじをガブリとやられ、白ブラウスの襟首を真っ赤な血潮で濡らしてしまっていた。

くらくらと貧血を起こすまで血を吸い取られると、
親よりも老けたカサカサの頬をした吸血鬼は少女をベンチに腰かけさせられて、
当時年ごろの少女たちの間で流行っていたライン入りのハイソックスのふくらはぎに、
にやけた唇を圧しつけられていった。
太めのグリーンのラインの上を、赤黒いシミがじわじわと拡がっていった。

個性のない容姿とかかわりなく、十四歳の少女の血は、飢えた吸血鬼の喉を心地よく潤した。
男は困り抜いている少女が戸惑いつづけるのもかまわずに、
両方のふくらはぎに代わる代わる喰いついて、
じゅるじゅる、じゅううっ・・・と、露骨な音を立てながら、少女の生き血をむさぼっていった。
けれどもこの土地に棲みつく彼らは人間に対してあまり残酷ではななったので、
ひとしきり少女の生き血を愉しんだ後は、
具合悪そうに俯くのり子のことを、学生鞄を担いながら家まで送っていった。
訪れた少女の自宅で、びっくりして娘を出迎えた母親を相手に吸い足りなかった血液を補充して、
ことのついでに、気が済むまで犯してしまうことも忘れなかったが。

それ以来、のり子は学校の行き帰りを待ち伏せる吸血鬼のため、
しばしば制服のブラウスやライン入りのソックスを血で汚した。
できの悪い少女は赤点を取りつづけ、男子にももてなかったけれど、
たぶんそれは吸血されてもされなくても、変わらない日常だったに違いない。
頭も悪く、あまり美しくなかったけれど、律儀で心の優しいところがあったので、
身体の調子がいまいちでも、「小父さん」と呼ぶ彼の喉が渇いたころと見定めると、
母親が止めるのも聞かずに、ライン入りのソックスを脚に通して、吸血鬼の待つ公園に向かうのだった。
それが「小父さん」のためにできる、精いっぱいのお洒落だと心得ていたようだった。

やがてのり子は、親の決めた相手と結婚した。
相手は同じ中学の同級生で、のり子が吸血鬼に血を吸われていることを知ったうえで結婚を承諾した。
披露宴の一週間まえ、呼び出されるままにのこのこと出かけていったのり子は、
吸血鬼の邸の奥深く、寝所に招かれて。
結婚祝いにといわれて、なん度もなん度もしつように犯された。
初めて味わう男の身体が、たんに股間を痛くするだけではなくて、たまらない快感だと思い知るほどに。

「わかってるよ、あのおっちゃんの児だろ?俺育てるからいいよ」
のり子の夫は、妻と同じくらい見映えのしない若者だったが、律儀で鷹揚な男だった。
お腹の子が自分の子ではないと知れたのに、
ひどくすまなそうな顔をして困り切った新妻を、そういってかばった。
嫁入り前も、人妻となってからも、のり子は夫に黙って吸血鬼の邸に通いつづけていたが、
のり子の夫は嫁の浮気相手のところに出かけて行って、とっくりと話し合って、
嫁が身ふたつになったらまた、逢わせてやると約束していた。
「小父さん」がただのり子の血が吸いたいだけで、自分に悪気がないのも恥をかかせたくないと思っているのも、よく心得ていて、
言ってくれれば周囲に怪しまれないように、車で送り迎えするとまで、約束して家に帰って来た。

「とんでもない嫁だ」と憤慨する母親をなだめて、
「母さんもいちど、嫁の浮気相手とよく話してみると良い」と促した。
いっしょに訪問した息子のまえ、気位の高い姑は、嫁の浮気相手に生き血を吸い取られる羽目に遭った。
「そうなるだろうと思っていたよ」
のり子の舅が苦笑しながら語りかけたのは、妻にではなく息子にだった。
気位の高い姑は、夫には黙りとおしたまま情交を重ね、
嫁や自分を目あてに吸血鬼が行き来するのを、嫁を非難するしかめ面だけはそのままに、許しつづけていた。

さいしょの息子は吸血鬼の種だったが、つぎの息子は夫婦の間の子であった。
従順な弟は、吸血鬼のお兄ちゃんが困っていると知ると、当然のことのように自分の彼女を紹介してやった。
のり子は嫁になる少女におだやかに接して、決して怖くないからお兄ちゃんのこともよろしくねと頭を下げた。

吸血鬼に生き血を吸われ、母親も、嫁ぎ先の姑も、息子の嫁さえ犯されて。
「ふつうなら家庭崩壊なのに、のり子さんだとよろずうまくいくものだね」
舅はそういって、おだやかに笑っていた。
容姿も学校の成績もぱっとしない少女は、吸血鬼に幸福を与え、周囲もあまり不幸にせずに、おだやかに齢を重ねてゆく。

「魔性の女」とは、案外こうした少女のなかに宿るのかもしれない――

部活帰り

2018年05月25日(Fri) 09:06:18

あぁ~、美味かった♪
咬んでいた首すじから顔をあげた吸血鬼は、ニンマリと笑う。
「冗談じゃないわ!とてもメイワク・・・」
いつも気の強い菜々美は歯ぎしりして悔しがったが、
失血のために語尾は弱く震えていた。
声の弱さが悔しかったのか、こちらをギュッと睨みつけてくる少女に、吸血鬼はいった。
「助かった。すんでのところ、くたばるところだった。あぶないところで、あんたの若い血にありつけた。礼を言う」
「礼なんか言ってほしくない」
少女は言い返した。
「なあ、頼むから・・・もう少しだけ恵んでくれないか?死なせたりしないから」
「イヤだって言っても、どうせやるんでしょ?」
少女はあくまでも恨めし気に、男を見あげた。
「物わかりのいい子だな」
男はふたたび少女のうなじを咥えると、さっきしたたかに血を啜り取った傷口を、強く吸った。
「あうっ・・・」
菜々美は仰向けに倒れたままのけぞって、目を瞑り、歯を食いしばる。
苦し気にうつむいて両手で顔を覆う菜々美に、男は
「すまない、だいじょうぶか」
と、口ではいいながら、言葉だけの気遣いを自分で裏切るようにして、
少女の足許にそろそろとにじり寄る。
血に飢えた状態の自分のまえで逃げもせずに身体を横たえているのは、
血をいくら吸っても文句は言わないという意思表示――
そんなふうに自分に都合よく誤解してしまう習性を、どうすることもできなくなっている。
「あッ!やだ!やめてッ!」
鋭い声を発したセーラー服姿の足許に、男はハイソックスのうえから唇をなすりつけた。
部活帰りの少女は、所属している球技サークルのユニフォームのライン入りハイソックスをそのまま履いている。
白地に赤と黒のラインが入ったハイソックスに魅入られるように、
男は唇を這わせ、舌をふるいつけて、あぶく交じりのよだれをなすりつけながら、
菜々美の履いているハイソックスの舌触りを愉しみ始めたのだ。
「イヤッ!やらしいッ!は・な・し・て・・・っ」
叫び声の語尾がまたも、弱く縮こまった。
這わせた唇の下、バラ色のシミをナイロン生地に広げながら、男はふたたび菜々美の血を愉しみはじめている。

「このあたりの吸血鬼、やらしいよ。襲われちゃうと、ハイソックスの上から脚に咬みついてくるんだよ。
 女の人の履くストッキングやハイソックスが好きで、よだれで汚して咬み破って愉しむんだよ。
 あたしも何度か襲われたけど、血を吸われるよりハイソックス破かれる方がやらしくって嫌だな」
親友の朋美がいつか、そんなことを言っていたっけ・・・
失血でぼうっとなった頭でそんなことを考えながら、
ハイソックスごしに突き入れられてくる牙が痛痒いと、菜々美は思った。

「こないだも、先生の脚を咬んでいたよね」
男はこたえずに、もう片方の脚にもとりついてゆく。
菜々美は知らず知らず、男の動きに逢わせて、彼が吸いやすいように脚の角度を変えてやりながら、なおも言った。
「このハイソックス、ユニフォームなんだけど」
「知っている。ライン入りのやつって、いい感じだよな。学校出ていくところからつけてきたんだが、目だっていたよ」
男はそういうと、菜々美の穿いているハイソックスの、いちばん肉づきのよいふくらはぎのあたりに唇を這わせた。
「あっ、もう・・・やらしい」
菜々美は悔し気に唇をかんだが、さっきまでより従順になったのは、失血で身体の動作が緩慢になったせいだろうか。
「部活のみんなを裏切っているような気がして、なんか嫌だ」
菜々美は言いにくそうに言った。
「あんたはなんにも悪くはないさ」
男はわざとクチャクチャと音を立てながら菜々美のハイソックスに舌を這わせ、舐めまわしながらずり降ろしていった。
「悪いね。でも、あんたを辱めることができて、楽しいよ」
男の言いぐさを耳にして、菜々美はプッと頬をふくらませ、つぎの瞬間、パシィッ!と男の頬に平手打ちを食わせていた。
「これでおあいこにしてあげる」
少女は貧血になった頭を苦し気に振りながら、あとも振り返らずに立ち去った。


「菜々美、行こ行こ」
おどけた顔で誘いをかけてきたのは、チームメイトの志保だった。
彼氏のいる志保はいつも帰りが別々で、部活のとき以外あまり口をきいたことがない。
けれども志保の顔つき言葉つきはひどく親しげで、菜々美はつい釣り込まれてあとについていった。
同じサークルの由紀も、だまって菜々美のあとをついて来た。

「メイワクなんですけど」
三人の前に立ちふさがった人影が、きのう自分の血を吸った吸血鬼だと知って、菜々美は露骨に顔をしかめた。
「まあまあ、堅いこと言わないで」
そう言ったのは意外にも、男のほうではなくて志保だった。
志保は菜々美の腕をつかまえて、身体を息苦しくなるくらい、近くにすり寄せてくる。
「この人たちさー、ハイソックスとか好きじゃない。
 だからあたしたち、部活のときのハイソックスをこの人たちにサービスしてあげてるの」
「ええっ!?」
思わず声をあげる菜々美に、あとからついてきた由紀もいった。
「だいじょうぶだよ。みんなを裏切るなんて、そんなことないから。
 菜々美はおくてだったけど、みんなしてるんだからね」
いったいどこでそんな話を聞いたのよ?と、菜々美は志保をまともに見た。
気がつくと由紀は、菜々美のもう片方の腕をしっかりと抑えつけている。
ふたりで菜々美の前後を歩いていたのは、逃がさないようにするためだったのか――
「どっちかって言うと、あたしたちが菜々美のこと裏切っちゃたかな~?」
志保が菜々美の顔をのぞき込む。
「割り切って、いっしょに愉しも♪」
志保の声を合図に、黒い影がもうふたつ、物陰から音もなく姿を覗かせる。
「さ、菜々美もあたしたちみたいに、吸血鬼の小父さまに若い血を愉しんでもらおうね」
由紀は菜々美の腕を抑えつけた手に、ギュッと力を込める。
志保も菜々美の腕をつかまえながら、お姉さんが妹に言い聞かせるような口調で言った。
「菜々美も恥ずかしいのガマンして、このひとのこと愉しませてあげようね。
慣れたらどうってことないから」
男は菜々美の前に立ちはだかると身をかがめ、ライン入りのハイソックスの足許に唇を近寄せてくる。
「ダメッ!イヤッ!あッ!」
ひと声叫ぶと、菜々美は黙りこくった。
両側からチームメイトに抑えつけられたまま、
足許に吸いつけられた唇がハイソックスを咬み破って血を吸い取ってゆくのを、
どうすることもできなくなっていた。
「あっ・・・あっ・・・あっ・・・」
怯えた震え声がじょじょに弱まって来ると、志保と由紀は菜々美の両側から頷き合って手を放す。
「あとはお2人で、うまくやってね」
そういってほほ笑む二人の背後にも、ひとつずつの人影がまとわりついて、
首すじに、足許に、思い思いに唇を這わせてゆく。
「あ、あなたたち・・・っ!?」
怯えた顔の菜々美にとどめを刺すように、志保が言った。
「彼氏には、ナ・イ・ショ。よろしくね」

三人の女子生徒は三人ながら、うら若い生き血をチュウチュウと音を立てて吸い取られて、
ひとり、またひとりと、その場に姿勢を崩してゆく。
「イヤだ、ほんとうに・・・」
「うひひ・・・クヒヒ・・・」
「好い加減にしなさいよね・・・」
「キヒヒ・・・ククク・・・」
せめぎ合う声と声だけが、夕闇の迫る路上にいつまでも繰り返されていった。


「学校のみんなを裏切るようで、嫌だ」
菜々美はやはり、駄々をこねていた。
セーラー服姿の学校帰り。
志保や由紀が学校指定の紺のハイソックスを履いたをためらいもなく咬ませてしまうのを目のまえに、
菜々美は往生際悪く脚をすくめて後ずさりした。
すぐ背後は、体育館の壁だった。
逃げ場を失って立ちすくんだ足許に、男はいつものように恥知らずな唇を吸いつけてくる。
「恥知らずッ!」
菜々美は相手を罵ったが、男は聞こえないふりをして、クチャクチャと音を立てながら、
菜々美のハイソックスをひとしきり舐めまわし、それから言った。
「わしに吸われると知っていながら、新しいのをおろしてきなすったね」
図星を突かれて菜々美は言葉に詰まり、口ごもりながら言った。
「恥掻きたくないもん」
「じゃあぞんぶんに、辱めてやる」
「しつこくしないでね」
「わしを愉しませるために、あんた来てくれたんじゃろ」
またも図星を刺された菜々美は、視線を宙にさ迷わせ、頭の上に広がる青空をじっと見つめると、
ちょっぴり唇を強く噛んで、それからいった。
「わかったわ。じゃ、お願い」
菜々美は気持ちを固めたようにもういちど「お願い」というと、
男がむしゃぶりついてくる足許を見おろした。
ひざ小僧の下まできっちりと引き伸ばしたハイソックスは、
よだれにまみれ、しわくちゃになってずり降ろされて咬み破られて、
ぬらぬらとした血のりとよだれとにまみれていった。
菜々美は、辱め抜かれてゆく足許から、決して目を放そうとはしなかった。

クラスメイト二人はもう、セーラー服をはだけられて、おっぱいまで吸わせてしまっている。
菜々美もまた、「それだけは嫌」と言いながら、
自分からセーラー服の胸当てをはずして、男のなすがままになっていった。

2018.5.20 構想
2018.5.23 加筆

保健部員の女子

2018年05月23日(Wed) 07:01:14

「きみ、だいじょうぶ?」
白いハイソックスの足が立ち止まり、気づかわしそうに声をあげた。
歩みを止めた腰周りに、アイロンのきいたプリーツスカートがゆさっと揺れる。
少女の足許には、同じ学校の制服を着た男子が一人、蒼い顔をして樹にもたれかかっている。
「貧血なの?あたし保健部員なんだけど、いっしょに養護室に行こうか?」
少年はかすかに顔をあげたが、少女と目線を合わせるのさえ、たいぎそうだった。
動いた目線の先に、少女の脚が触れた。
照りつける陽射しの下。
しっかりと立つ一対の発育のよいふくらはぎ。
真っ白なハイソックスに浮いた太めのリブと、ふくらはぎに走る二本の赤いラインとに、
少年の目がくぎ付けになる。
けだるそうな瞳に、獣の光が宿った。

歩ける・・・?と言いかけて半歩踏み出した少女の脚が、こわばった。
やおら伸びてきた腕が彼女の脚にツタのように絡みついて、
少年が少女の足許にすり寄るのと、スカートの下のふくらはぎに素早く唇が吸いつけられるのとが同時だった。
「えッ!?何を・・・!?」
少女の叫び声が、唐突に中断した。
「――――っ!」
咬まれた!と思った途端、強い眩暈にくらくらとした。
真っ白なハイソックスに赤黒いシミがほとび散って、
うごめく唇の下、脛の周りからしわくちゃになってずり落ちてゆく。
――いけない、立ってなきゃ。
逃げ出すよりも、尻もちを突くよりも、なぜか彼女はそう感じて、
少年がもたれかかっていた樹の幹に手を置いて、かろうじて身を支える。
意識の消える直前、
吸い取られてゆく14歳の血潮がハイソックスになま温かくしみ込むのを、彼女は感じた。

「ちわす」
養護室のドアが開かれ、虚ろな声が白衣の後ろ姿に投げられた。
生気のない男子の声に、養護教諭の辰野千栄はゆっくりと振りかえる。
枯れ木のようにか細い、顔色のわるい少年が、自分よりずっと体格の良い少女を、お姫さま抱っこしている。
少女のハイソックスを濡らす赤黒いシミを目にして、辰野教諭はなにが起きたのかをすぐにさとった。
「また、やり過ぎたのね?」
しょうがない子ね・・・という顔をして辰野教諭は少女をベッドに寝かせようとする少年を手伝った。
「そういうときは我慢しないで養護室に来なさいって言ったでしょう?」
優しく咎める教諭の言葉に、少年は素直にうなだれた。
「最近、先生顔色悪いじゃん」
「余計なこと気にしないの」
といいながら、教諭は自分の足許に目線を落とす少年の気配を敏感に感じ取る。
「まだ足りないの?」
「うん」
薄茶のスカートから覗いた辰野教諭のふくらはぎは、肌色のストッキングに包まれている。
少年は教諭の足許にかがみ込んで、教諭は少年の頭をいたわるように抱いた。
さっき少女のハイソックスを咬み破った牙が、教諭のストッキングをも獰猛に裂いた。
「あっ、痛ぅ。・・・手かげんしなさいよ」
教諭は教え子を咎めながらも、自分の足許に不埒をはたらく少年の吸血を許した。

「この子はね、3年A組の青沼輝子。あなたの一こ上よ。顔知らないのも無理ないね」
「あおぬま、てるこ・・・」
放心したようにつぶやく少年の掌をとって、辰野教諭は少女の名前を彼の掌になぞった。
「あお、ぬま、てる、こ。わかった?」
無言で肯く少年に、
「好きになっちゃったんでしょ」
と、辰野教諭はイタズラっぽく笑って顔をのぞき込む。
軽くウェーブした栗色の髪が白衣の肩にさわっと揺れたが、
少年の目線は蒼ざめた顔でベッドのうえに横たわる少女にくぎ付けになっていた。
「送ってってあげたらあ?一人じゃ歩けないわよー。
それに、このごろ暴走族が出て帰り道が危ないの」
教諭ののんびりとした口調に、少年は感謝するように頭をさげた。

「歩けるからいいよ」
輝子はすっかり、気の強さを取り戻していた。
「上級生を襲うなんて、いい度胸してるよね」
と、えらそうに先輩風を吹かせたのは、貧血がおさまらない自分を引き立たせるためだった。
少年のほうもそれと察しているのか、黙って輝子の傍らに寄り添って歩いている。
背後の気配にギョッとして少女が振り向こうとするのを肩を抑えて制すると、
「やべ。このごろ出没している暴走族。振り向くんじゃないぞ」
下級生の命令口調に、何よ、と言いかけた輝子は黙り込んで、少年に命じられた通り前だけを向いた。
少年はそれに反して後ろをちらと振り返り、バイクにまたがる獣たちのほうに目を投げた。
獣の影はギョッとしたように身体をこわばらせ、ブルン、ブルンと負け犬の遠吠えのようなエンジン音を轟かせ、一目散に去っていった。
「強いんだね」
輝子は白い目で、下級生の少年を見あげた。
少年はわざと輝子の目線から目をそらして、
「気持ち悪いんだろ」
とだけ、いった。
語尾が寂し気に震えるのを、感受性豊かな少女は聞き逃さなかった。
「うちに寄ってく?」
「やめとく。きみの母さんまで咬むわけにいかないだろ」
少年はさりげない口調で輝子を立ちすくませるようなことを言うと、輝子の家のまえできびすを返した。

「咬まれちゃったんだね」
玄関で迎えた母の陽子が、くったくのない笑みを浮かべて娘に言った。
「えっ!?」
血に濡れたハイソックスの足をすくませると、「靴下濡れてるじゃない」
母親はそういうと、くったくのない態度を変えずにいった。
「さあ、脱いだ脱いだ。母さんが洗っといてあげる」

「あの学校、吸血鬼がいるんだよね。昔から。
 母さんもね、学校帰りに外国人の兵隊に襲われて乱暴されそうになった時、
助けてもらったことがあるの」
え・・・?輝子は意外なことを言い出した母親の静かな横顔をふり返る。
「あのころは外国の兵隊がいばっていてね、法外なことをしでかしても、
 大人も怖がって、手出しできなかった。
 なのにあの人ったら、一撃で目くらましをかけてね、母さんのこと逃がしてくれたの。
 同じ制服を着ていたから、どうしてもお礼を言いたくて校内を探して――
 そうしたら女子の先輩が教えてくれた。あんたの彼氏の友だちだよって。
 それが、お父さんの友だちの――あんたも知ってるでしょ――兇野さん。
 感謝のしるしに、何度も血を吸わせてあげたし、父さんも賛成してくれたの。
 抱かれちゃったことだって、あるんだから」
意外な話に意外な話が積み重なって、目を白黒させているいとまもないほどだった。
それでも輝子はいった。
「家に呼んだけど、入ってこなかった。母さんのことまで襲っちゃうからって」
「こんどはちゃんと、家に呼びなさいよ」
母親の顔が少女のように若やいだように、輝子は感じた。

次の日――
後者の裏手のあの樹のまえで、輝子は少年をまえにおずおずと紙包みを手渡していた。
「これ、よかったら」
紙包みの中身は、昨日少年に咬み破られたハイソックス。
その子とおつきあいしたかったら、そうするんだよ、と、母親はいっていた。
少年が紙包みを受け取るのを「ありがとう」といって、輝子はそわそわと目をそらす。
「たまになら、献血してもいいからさ。あたし、保健部員なんだし」
ちょっとすくんだ足許が真っ白なハイソックスに包まれているのを、少年はもの欲しげに見つめ、
そんな少年の横顔に、少女はドキドキとして見入っていた。

差し伸べられた脚に、唇が吸いつけられてゆく。
しなやかなナイロン製の生地越しにヌルっと這わされる唇に、少女は「やらしい」と呟いたが、自分から脚を引っ込めようとはしなかった。
赤黒くただれた唇は、少女の履いているハイソックスのうえをもの欲しげに這いまわり、
ひざ小僧の下までお行儀よく引き伸ばされたハイソックスを、しわくちゃにしてずり降ろしていった。
このひとのためなら、堕落しても良い――
咬まれた傷口から処女の生き血を抜き取られてゆくのを感じながら、
輝子は自分から、姿勢を崩していった。


あとがき
登場する人物名・団体名は、すべてフィクションです。
このお話に限らないけど。

K学院中学校 2年E組 水越奈美の場合

2018年03月08日(Thu) 07:04:15

俺が狙った水越奈美は、一見地味な子だった。
仲良し七人組の女の子のなかではいちばん目だたない子にみえた。
でもどういうわけか、その子の面影はほかのだれよりも、俺の目をとらえて離さなかった。
どことなくノーブルで聡明そうな目鼻立ちが、俺の目のまえで血を吸われて堕ちていったお袋と、どこか似通っていたからかもしれなかった。

その子はもしかするとほんとうに、7人の仲良しグループのなかではいちばん目だたない子だったかもしれないけれど、
そんなことはまったく苦にしておらず、むしろ周りの子たちの引き立て役を、すすんで買っているようにもみえた。
きっと――友達の輪の中の居心地がとても良くて、
その中でちゃんとした自分の役割を自覚し、それに満足していたのだろう。

俺は喉の渇きをこらえながらその子の帰りを見送って、
彼女もなんとなく俺の視線に気づきながらも、わざと気づかないふりをして、
セーラー服のスカートの裾をひるがえし、通り過ぎていった。
そのうちに。
見境なく襲われることはないと踏んだのだろう。
ぐうぜん目が合ったときに、彼女は、きちんとした礼儀正しい会釈を投げてきた。
俺はいつになくどぎまぎとしてしまって、あわてて会釈を返すのが、精いっぱいだった。
心の中の危険な火がともったのは、たぶんきっと、そのときだった。
けれども、負け惜しみで言うわけではないけれど、決して喉の渇きに負けたからではなかった。
彼女の会釈に気合い負けしたわけじゃないというのは、もしかすると負け惜しみかもしれないけれど。

その日の夕方、奈美はいつになくお友だちと離れて、ひとりで家路をたどっていた。
いつも友だちに囲まれていて、ほかのだれよりもそういう機会が多い子で、なかなか近づくチャンスがなかったから、千載一遇の好機に俺の胸は不吉に踊る。
俺は相手が怯える想像にワクワクしながら、奈美の前に立ちはだかった。

案の定、奈美はビクッと立ちすくむと、細い目を驚いたように見開いて、俺を見つめた。
なにか言葉を口にしようとしたけれど、何と言っていいのか言葉を選んで逡巡している様子が、ありありとわかった。
俺は少女が言葉を探し当てるまで、意地悪く待ってやる。
「あの・・・あの・・・っ」
奈美はやっとの思いで、上ずる声を抑えかねながら俺に話しかけてきた。
「き、吸血鬼さん・・・なんですよね・・・?」
とつぜん訪れた危機に、とっさに思いつく言葉がなかったのだろう。
頭の回転が遅めなぶきっちょさが、むしろほほ笑ましくて。
俺は余裕しゃくしゃく、ゆっくりとうなずいてみせる。

「喉・・・渇いてるんですか・・・?」
少女はさぐるような視線で、俺を見る。
どんなに対等にやり取りをしたところで、お前はしょせん、掌の上に載った獲物・・・そんな余裕に、俺は物騒な満足感を満喫する。
「そうだから、あんたを呼び止めた」
「ああ・・・やっぱり・・・」
奈美は切なそうに、目を瞑る。
いままでガマンしてくれてたんだ・・・そう呟いたように俺には聞こえた。
その呟きに呼び覚まされるように、人間らしい気持ちがほんの少しだけ、戻って来た。

「あした、期末テストなんです。だからきょうは、襲わないで。
見逃してくれたら、あしたは必ず逢いに来るから。」
奈美は俺と目線を合わせるのさえ怖れるように、とぎれとぎれに、でもしっかりとした声色でそういった。
どうして俺は道をあけてやったのだろう?
この少女をセーラー服のうえから抱きすくめてやりたい。
襟首の白線に血がふきこぼれるほど、ガブリと強烈に食いついてやりたい。
そんな想いにゾクゾクしていたはずなのに。
「せっかく見逃してやるんだから、赤点取るんじゃないぞ。」
捨て台詞のようなからかいにさえ、セーラー服の後ろ姿は素直に肯きかえしてきた。

翌日。
あてにならないデートの待ち合わせに行くような気分で、俺は夕べあの子を通せんぼした四つ角に立っていた。
奈美は約束の時間に五分とたがわずに姿を現して、おずおずとこちらのほうを窺っている。
ぎらりとした目線を投げてやったら、ビクッとしてたじろいだけれど。
逃げようとはしないで、踏みとどまった。
真面目な義理堅さに、親からちゃんとしたしつけを受けた子なのだと感じさせた。
年ごろになった自分の娘が吸血鬼なぞに狙われて、今頃親どもはどんな気持ちでいるのだろう?

重たげに垂れさがる制服のスカートの下から覗く脛は、真っ白なハイソックスで覆われている。
きっと、友だちから教わったのだろう。
思ったとおりの、良い子だった。

「きのうはほかの子を襲ったの?」
俺が無言でかぶりを振ると。
「だったら――喉、すごく渇いているんでしょう?」
怯えた上目遣いに引き込まれるように。
気がつくと俺は、奈美のことをギュッと抱きしめてしまっていた。

「恥ずかしいから、人目の立たないところでしてね」
奈美はことさら笑顔を作って、なんとかいつもの素直で穏やかな自分を手放すまいとしていた。
俺は手をつないで、少女を強引に公園に連れ込んでいた。
「お嫁に行けなくなる公園」
年ごろの少女たちのあいだでは、そう呼ばれているらしい公園だったけれど。
「無茶なことはしないから」
という俺の囁きを、彼女は疑うことなく本気にしてくれた。
「怖くしないでね。痛くしないでね・・・」
少女は俺がむき出しにする欲求に怯えながらも、俺の患いを自分の血で取り除こうとして、
まるで看護婦のように懸命になってくれているようだった。
いよいよ俺が彼女のおとがいを仰のけて、首すじに唇を近寄せると。
「キャー」
怯えながらも小声で悲鳴をあげるふりをした奈美は、
セーラー服の襟首を俺につかまれながら、素直に首すじを咥えられていった。
柔らかくて温かなうなじの感触が、飢えた唇をゾクゾクと昂らせる。
俺は夢中で奈美の首すじを咬んで、嗜虐的な牙をその柔らかな皮膚にずぶりと埋め込むと、十代の少女の純潔な血潮に、もう無我夢中で、酔い痴れていった。

「もっと・・・いいよ」
貧血で顔を蒼ざめさせ、吸い取られた血潮で頬を濡らしながらも、奈美は俺のことを促した。
まだ足りていないと顔に書いてあるのだろう。
俺は遠慮なく、少女の足許に唇を吸いつけた。
じっと見下ろす視線を頭上に感じながら、舌をチロチロ這わせながら、
ハイソックスの生地のしなやかな舌触りを愉しんでやった。
「あぁ」
ハイソックスを咬み破りながら吸血を始めたとき――少女は初めて咬まれたときよりも、羞ずかしそうにした。
靴下を破られながら吸血されることのいやらしさを、本能的に感じ取ったみたいだった。

失血による息遣いの乱れを抑えかねているのが、抑えつけた両肩から、セーラー服を通して伝わってくる。
満足のゆくまで少女の血を味わうと、俺は奈美を放してやった。
「喉渇いたら、ガマンしないで声かけてね。できれば明るく・・・」
蒼ざめた頬に浮かぶ笑みは、いつもの穏やかさがそこなわれていなかった。
もしかすると俺はこの子のことを、犯さずに吸いつづけるのかもしれない。
静かに遠ざかってゆくセーラー服姿の後ろ姿を見送りながら、俺はふとそんなことを想っていた。



あとがき
登場人物や団体名等はすべてフィクションです。
2018.2.28構想 2018.3.8脱稿

K学院中学校 2年E組 仁藤真奈美と安西優子の場合

2018年03月08日(Thu) 06:51:25

クラスでも一、二を争う美人と自負しているあたしたち。
あたしと優子はいつも、学園祭の時だけ訪れる男子の注目の的になる。
そんな二人の初体験は、
あたしたちにはおよそふさわしくない年配の小父さまたちに汚される、
無理強いなものだった。

学園祭には、家族と招待客しか招ばないはずなのに、
それとも同級生の誰かに、家族が吸血鬼化した子がいたのだろうか?
空き教室で2人だけでいたあたしと優子の目のまえに現れたその2人は、
ひと目見ただけでそれとわかる、吸血鬼だった。

あたしも優子も立ちすくんでしまって、
おそろいの夏用のセーラー服姿を抱きすくめられて、教室の床に押し倒されて。
2人肩を並べて泣きじゃくりながら、首すじを咬まれていった――

泣きじゃくった涙が随喜のそれに変わるのに、十数分とかからなかったらしい。
あとでそれをあのひとたちから聞いてあたしたちは、
「・・・恥ずかしい」
と、そのひょう変するまでの時間の短さを恥ずかしがった。
「あまり苦しめたくなかったのだ」
あのひとたちは弁解するようにそう言ってくれたし、今ではそれを信じるつもり。
だってそのとき、最悪の展開を予感したあたしたちは、
「お願い、犯さないで!まだ処女でいたいの」
って、訴えて――彼らは聞き入れてくれたから。

その代わりあたしたちは、不思議な約束をさせられていた。
こんど校外で逢うときは、ハイソックスを履いてお出で と。
三つ折りソックスが義務づけられていたあたしたちは、
下校すると途中で靴下を履き替えて、吸血鬼の棲み処へと訪ねていった。
ほかの子たちと違うソックスを履いて道を歩くことに、周囲の目を必要以上に気遣いながら。
きっとあのときの落ち着きのなさ・・・一生忘れることはないだろう。

処女のまま生き血を愉しみたかったのか、
白のハイソックスをずり降ろしながら、いやらしい愉しみに熱中したかったのか、
あたしたちはしばらくの間、犯されずに済んだ。
夏に香織ちゃんが襲われて犯されたって聞いていたから、
そのうちあたしたちもきっとそうなるって思っていたし、
どうしてあの子たちは吸血鬼さんに振り向かれないのって思うようなパンクな子たちもクラスにいたから、
セックスを識っている子は周りにふつうにいたけれど。
やっぱり大人の女になるのは、まだ怖かったから。

冬になってもまだ、あたしたちは幸い、処女のままだった。
香織ちゃんが初めて襲われたその場で女にされちゃったことは本人から聞いて知っているし、
順子がバレンタインのプレゼントに処女を差し出したことも自慢されたけど、
やっぱりあたしたちは、まだ怖い。
でも――小父さまたちは、あたしたちに囁きつづける。

こんど夏服になったら、黒のストッキングを履いてお出で。
そうしたらきみたちのことを、一人前の大人の女にしてあげる。
自分から言い出すのは、羞ずかしいだろうから、それを合図にしようね。

いけない囁きはあたしたちの耳たぶを焦がし、鼓膜の奥底にまでしみ込んで、
あたしたちはいつのまにか、うなずき返してしまうようになっている。
三年生の夏――あたしたちはきっと、黒のストッキングをずり降ろされながら、
太ももの奥に「イヤってほど痛い(by香織ちゃん)」というモノを、突き刺されてしまうに違いない。



あとがき
登場人物や団体名等はすべてフィクションです。
2018.2.28構想 今朝脱稿

卒アルに夏服で載った私  K学院中学校 2年E組 福野香織の場合

2018年02月26日(Mon) 07:40:30

卒アルに載る写真を撮るタイミングは、とても早い。
なにも2年の冬に撮ることないじゃない。
ほかの子以上にそんなふうに思ったのは。
私がそのころ、学校に通っていなかったから。
クラス全員の撮影には間に合ったけど、お友だち同士のページの写真では、
私はみんなといっしょには写れなくって、切り抜きの形で混ぜてもらった。
それもみんなとは違う、夏服の写真で――

ちょうどみんなが先生の構えるカメラに向かってピースサインをしている頃、
私は病院のベッドで、赤ちゃんを抱っこしていた・・・

さいしょの出逢いは、とつぜんだった。
学校帰りの夜道で待ち伏せしていたそのいけない小父さまは、
父よりずっと年上のはずの、その小父さまは、
ずっと私の帰りが遅い日を待ちわびていたのだと、あとで教えてくれた。
提げていた学生鞄を振り飛ばし、けんめいに逃げたはずの私は、
獣のようにすばしこい小父さまの動きのまえにはなすすべもなく、
すぐにセーラー服の襟首をつかまえられて、首すじをガブリ!と咬まれてしまっていた  

ちゅうちゅう・・・ちゅうちゅう・・・
ひとをこばかにしたような、血を吸い上げる音を耳にしながら、
私は気が遠くなって、その場にひざを突き、四つん這いになり、
とうとう我慢できなくなって、仰向けに倒れてしまった。
セーラー服を汚したくないのだ――小父さまはすぐに、私がなんとか身を支えようとした理由に気づいてくれて、
倒れる瞬間地面と私の背中の間に腕を差し入れて、支えてくれた。
その代わり、もっと強く抱きすくめられて、私はしたたかに血を吸い取られていった。

K学院の子だね?
制服見れば、わかりますよね?
私はすねて、そんな答え方しかできなかった。
つねに礼儀正しく――を教えている校風に逆らってしまったことをとっさに恥じたのが相手に伝わったのか、
「そんなことまで気にするなんて、あんたは優等生なんだな」とだけ、小父さまは言った。
K学院の制服を着た子なら、ほかにいくらもいるじゃない――
私はとっさに、そう思った。
清楚な校風で知られたわが校でも、パンクな子たちはいくらもいる。
どうしてよりによって私なの?
わざわざ私に目をつけて、何カ月も前から血を吸いたいのを我慢して、帰りの遅い日を待ったという小父さまを、私は烈しい視線で睨んでいた。
「そう睨まんでくれ」
小父さまはそういって、もうひとしきり私の血を吸うと、
「献血に感謝する」といって、昔語りを手短にした。
「きみのお母さんも、K学院だったね?」

母は17の夏、制服姿の帰り道を、この小父さまに襲われた。
じたばたと手足をばたつかせて抵抗したけれど、手近な草むらに引きずり込まれて――
いちおうは都会といわれるこの街でも、昔はそんな草むらがあったんだ・・・
あたしはぼんやりとした横っ面を向けたまま、母の身に起こった手荒な初体験の話を、聞くともなしに聞き入ってしまった。
「あんまりよかったので、つい本気になった。それがきっかけで、あんたが生まれた」
え・・・?
ということは、私と小父さまとは、血のつながった親子?
目を丸くする私に、小父さまは言った。
そのとききみのお母さんには、つき合っていた男子がいた。
本当はその子に処女をあげたかったので、お母さんはひどく悔いていた。
けれども、その男子は物わかりの良い子だった。
お母さんのことが本気で、好きだったのだろう。
わしがお母さんの血を吸うことも、お母さんがお腹に宿したきみを生むことも、承知してくれたのだ。
わしは、後継ぎが欲しい。
きみのご両親が、きみの弟さんを生んだようにな。
でもわしの後継ぎは、実の娘と交わることで、初めてできるのだ。
小父さまは――お父さまと呼ぶべきなのかもしれないけれど――は、じいっと私を見た。
しんけんな眼だった。
「わかった」
私はぽつりと、そう言った。
どうしてそんなに物わかりがよかったのか、今でもよくわからない。
もういちどのしかかってくる小父さまを、拒もうとする代わりに
合服の袖を通した腕を小父さまの背中に廻して、小父さまを迎え入れていた。
丈の長いスカートをたくし上げるのに、小父さまはちょっとだけ手間取ったのを、なぜかよく憶えている。
いちどまくり上げてしまうと、小父さまは私のパンツを引き裂いて、むき出しの男性のシンボルを、やはりむき出しにされた私の太ももの間に、強引に突き刺してきた。
首すじを咬まれたときと似た快感が、私を貫いた――
結局私は、夜が明けるまで小父さまの相手をして、最後は悦び合い愉しみ合ってしまっていた。
帰りの遅い私を心配して、母がやって来たのを私は知っている。
でも母は、物陰に隠れて初めてセックスに夢中になってる私を見ると、
そして私の相手を見ると、
ホッとしたような諦めたような顔をして、回れ右をして戻っていった。
それ以来。
私は毎日のように小父さまのお邸に伺って、
セーラー服で良い。いや、セーラー服が良い。
という小父さまにせがまれるまま、
母校の制服を辱められながら、小父さまに服従する歓びにめざめていった。

母が従兄との縁談を持ってきたのは、そのころだった。
お式は、高校を卒業してからでいいから。
その子のことは、だいじょうぶ。
だって、小父さまが引き取って下さるのだから――
初体験ばかりか、子供まで生んだ身体を、従兄のマサハル兄さんは、お嫁さんにしてくれるのかしら?
なにも知らないマサハル兄さんがかわいそう――
そんなふうに思いかけた私のことを、母はたしなめた。

男のひとは、黙りとおしたほうが良い人と、なにもかも打ち明けたほうが良い人とに分かれるの。
お父さんは、何もかも知っているけれど。
姉さん(マサハル兄さんのお母さん)も、何もかも知っているけれど――
マサハルはどうかな?
いっしょに研究してみようね。
「ウン、そうするね」
思わず答えてしまっていた、私――
うふふふふふっ。
母の白い顔が、悪戯っぽく笑う。
私も母の笑いに応えて、母譲りの白い頬を、楽しげにゆるめていた。


あとがき
登場人物や団体名等はすべてフィクションです。

バレンタインのプレゼント K学院中学校2年E組 兼古順子の場合

2018年02月26日(Mon) 07:37:48

とうとうやって来た、この季節。
女の子たちはだれもが、お友だちにも言わないナイショの店で、
とっておきのチョコレートを買い込んでくる。
あたしもそんな中の1人。
お小遣いをはたいて、とびきり上等のチョコレートを買った。
でも、他の子みたいにラッピングをしてもらわないで、家に持って帰る。
自分の手でラッピングをして、中にお手紙なんか入れる子もいるから、
お店の人もべつだん不思議がらないで、あたしにチョコレートを手渡してくれた。
ラッピングしてもらわない理由は、ほかのふつうの女の子とは、ちょっと違う。
家に持って帰ったチョコレートは、あたし自身が食べちゃうのだから。

チョコレートは好きだけど、バレンタインのチョコをわざわざ自分用に買ってまでたべるほどではない。
でも、きょうのチョコレートは、とびっきりのやつじゃないとだめ。
だって、だって・・・
きょうがあたしにとって大切な日なのは、ほかの女の子たちと、変わりないんだもの――

チョコレートを食べ終わったあたしは、ママに隠れるようにこそこそと、
「ちょっと出てくる」
とだけ言って、お家を出る。
こんどここに戻って来るときにはもう、あたしは“女”になっている。
ママは何食わぬ顔をして、
「気をつけてね」
とだけ言って、玄関で見送ってくれた。
ドアを閉める間際、ママと目が合った。
気のせいか、心の中を見透かされているような気がした。
「がんばって」
ママの唇がそんなふうに囁いたような気がした。

あたしの制服は、セーラー服。
昔ながらの名門校だから、K学院の子は自分の制服を好きな子が多い。
あたしもその1人――
だから学校から帰ってきた後、ちょっと改まったところに行く時は、
ほかの女の子たちと同じように、制服で出ることが多い。
でも、きょうあたしが行くのは、塾でもバイオリンのお教室でもなく、
親にも言えないような場所。
そう、街はずれに棲む吸血鬼の小父さまのお邸なのだ。

出かける間際。
セーラー服のリボンを新しいものに締め直して、
白のソックスを、肌の透ける黒のストッキングに穿き替える。
玄関で見送られたとき、薄黒く染まったあたしの足許を、ママにしっかり視られていた。
><
まぁいいや。
きっとママも、通り抜けてきた道だろうから。
この街に棲む男の子たちは、みんな割を食っていて、
いちばんおいしところを、吸血鬼の小父さまに持っていかれちゃうのだから。

「きょうは、なんの日だか知っているよね?」
あたしのことを背中で迎えた小父さまに、あたしは精いっぱいの声でそういった。
「この国ほど、盛んではないけどな」
きょうの小父さまは、いつになく言葉が少ない。
いつもなら、あたしがお邸にお招(よ)ばれすると、
はぁはぁと息荒く迫って来て、
小父さまのためにわざわざ履き替えていった真っ白なハイソックスのうえから足を咬んで、
真っ白なハイソックスが真っ赤になるまで、
あたしの血を吸うのをやめようとはしないのに――
「バレンタインのチョコ、持ってきた」
「それは嬉しいね」
小父さまはまだ、あたしに背中を見せている。
あたしはためらいもなく、数歩進んで小父さまのすぐ後ろに立つ。
さいしょに逢ったときは、校長室だった。
校長先生をお待ちしているものとばかり思い込んでいたあたしの真後ろに、
この人は音もなく忍び寄って、
あたしの首すじを咬んで、あたしの人生を塗り替えた。
こんどはあたしが自分の手で、あたしの運命を塗り替える番――
「チョコレート、あたし食べちゃった」
「・・・?」
「とびっきり高い、最高級なやつ。あたしチョコ好きだから、先に食べちゃった♪」
そこで初めておじ様は、あたしのほうを振り向いた。
小父さま、ほんとうはチョコレートも食べたかったの?
そう思ったらふだんみたいな明るい顔に、しぜんになれた。
「いいよ。受け取って。あたしのバレンタインのプレゼント」
大胆にキメるはずのキメ科白――ちょっとだけ声がかすれてしまったのが、残念!

小父さまはビクッと身体を震わせると、こんどこそあたしめがけて、本気で迫って来た!
そう、吸血鬼の目ではなくて、男の目になって。
そのままストレートに、壁ぎわに抑えつけられたあたし。
囚われのお嬢様はそのまま首すじを咬まれ、唇を奪われて、
小父さまの手はいつの間にか、濃紺のプリーツスカートのなかに忍び込んで、
黒のストッキングの太ももを、それはいやらしくまさぐり始めた。
折り目正しいスカートのひだを、くしゃくしゃにかき乱されながら、
あたしはもぅ声も出なくなって、ひたすら小父さまの両肩に、しがみついていた。

押し倒されたじゅうたんのうえ。
突き刺された太い筋肉の塊に、違和感をありありと覚えながら、
じわじわとこぼれ出てくる処女喪失の証しのしずくが、
スカートの裏地にしみ込まないかと、そればっかりを気にかけていた。

暗くなってから帰ったあたしを、ママは何も気づいていないような顔つきで出迎える。
「シャワーと晩御飯、どっちが先?」
いつも通りののどやかな声色も、なにも変わりがなかった。
ママ、ほんとに気づいてないかな?
そんなとき、ママが何気なくあたしに言った。
「制服のスカート、新しいの買っといたから」
え?
小首をかしげるあたしに、ママはイタズラっぽく笑みかけてきて、
「ママからの、バレンタインのプレゼント」
スカート汚したでしょ?おなじ女の目が、そう言っていた。
それに、「おめでとう」って。
あたしは照れ隠しに、「シャワー浴びるね」とだけ言って、ママに背中を向けた。
15歳のバレンタイン。
その日、あたしはちょっとだけ早い成人式を、ママに祝ってもらった。


あとがき
登場人物や団体名等はすべてフィクションです。

テルヤと紗栄子と僕。

2018年01月17日(Wed) 05:23:57

いけすかない、虫が好かん。
幼なじみのテルヤを見るたび、紗栄子は必ずそういって毒づいた。
高慢ちきな美少女にとって、村はずれの貧しいあばら家に棲むテルヤなどは、軽蔑の対象でしかないらしい。
それとは真逆に、テルヤと仲良しの僕は、大病院の院長の息子。
地元の名士の御曹司と、街で評判の美少女とは、将来を誓い合った仲だった。
そんな紗栄子のことを、テルヤがいつも遠くから、もの欲しげな目で見つめるのを、僕は見逃していなかった。


ああッ・・・
ダメだよッ・・・
この、ヘンタイッ・・・
村はずれの納屋でのことだった。
良家の子女にあるまじき口ぎたない言葉で罵りながら、
紗栄子はのしかかってくるテルヤをどうすることもできなくなっていた。
テルヤは紗栄子の上に馬乗りになると、紗栄子の首すじにガブリと喰いついて、
むさぼるように血を吸い取った。
ひいッ、何するのよッ!
美少女は声だけは手厳しく相手を叱りつけたけれど、
押しつけられた唇を引き離すことは、とうとうできなかった。
テルヤは日ごろの引っ込み思案な自分をかなぐり捨てて、紗栄子の首すじを露骨に吸って、
ちゅ、ちゅ~と聞こえよがしな音まで立てて、若い血潮を吸い上げる。
そして、紗栄子の身体から力を抜けてしまうと、藁の上にうつ伏せになったふくらはぎににじり寄って、
こんどは脚に唇を這わせた。
テルヤのような家の子がめったにありつけるものではないはずの、
いいところのお嬢さんハイソックスが、いやらしい唾液に浸されてゆく。
しばらくの間ハイソックスの舌触りを愉しむように舐めまわすと、
テルヤは吸いつけた唇にグッと力を込めた。
紗栄子の履いている真っ白なハイソックスが、たちまち赤黒いシミに濡れた。
毒々しいシミがじわじわと拡がっていくのを、ほとび出る血潮のなま温かさで感じるのか、
紗栄子は悔し気に歯がみをする。
なだらかな肉づきをした紗栄子の脚に、僕は心ひそかに執着していた。
けれどもその侵すべからざる脚に、テルヤは僕の彼女と知りながら、
臆面もなく唇を吸いつけて、
欲望のままにむさぼって、
ハイソックスの舌触りを愉しんで、
吸い取った血潮でためらいもなく汚してゆく。
これは、僕にはできない愛しかただった。

僕はそのようすを、物陰からじいっと見つめるばかり。
どうして助けないのか?って?
僕は知っているから。
紗栄子はきょう、部活があるから先に帰ってと僕に言った。
でも、紗栄子は帰宅部で、どんな部活にも参加していない。
先に僕を帰した後、テルヤと示し合わせて、彼の家の近くの納屋で落ち合って、
生き血を吸い取らせてやっているのだ。
相手を口ぎたなく罵りながら、形だけは意に反して無礼なあしらいを受けてしまったというていをとりつくろって。
そんないけない習慣を、いつから身につけたのか。

テルヤは正直に、語ってくれた。
学校帰りに待ち伏せをして、ところも同じこの納屋に彼女のことを追い詰めて、
白のハイソックスの脚を辱め抜いてしまったのだと。
僕の彼女だと知りながら、でも僕の彼女だからこそ、征服してみたかったのだと。

きみは紗栄子と結婚すればいい。
でもできたら、きみのお嫁さんと逢わせてくれないか?時々でいいからさ。
ぼくはきみには恥をかかせないし、ぼくたちの関係を笑うやつがいたら、ぼくがただではすまさない。
だから、きみの嫁を襲わせてくれないか?
紗栄子が生娘でも、人妻になっても、ぼくは彼女の生き血を愛しつづけていたいから――

まるで恋人に気持ちを告白するような真剣な態度で、テルヤは僕にそういった。
僕は、正直に言ってくれてありがとうとだけ、テルヤにこたえた。


ふん、いけすかない。
ふたりで歩いている僕たちを気づかって、きょうもテルヤは会釈だけしてすれ違ってゆく。
たったそれだけのことなのに。
紗栄子はテルヤの存在自体が我慢できないと言わんばかりに、テルヤを嫌悪しつづける。
裏では僕には告げずに部活だと言ってはテルヤと示し合わせて、
あの真っ白なハイソックスで装ったふくらはぎを、惜しげもなく咬ませちゃっているというのに。
その想像をするたびに、僕の胸ははげしくジンジンと騒ぐのだ。
血が騒ぐって、こういうときにいうのだろうか?
未来の花嫁が襲われて、衣装もろとも汚されてゆく光景を視るといういけない歓びに、
ぼくはいつの間にか目ざめてしまっていた

きょうは部活だから。
見え透いた口実で僕を遠ざけるとき、紗栄子はちょっとからかうような顔つきで、僕の横顔を盗み見る。
彼女もまた、未来の夫に見せつけるといういけない歓びに、目ざめてしまっているに違いなかった。


あとがき
昨日あっぷした前作を描いた直後、同工異曲のお話がもう一つ泛びました。
たいとるを前作と似せているのは、そのせいです。
いまほどサッと手直しをして、あっぷ♪

良太と真由美と僕。

2018年01月16日(Tue) 08:11:21

「イヤだよ、きょうのハイソックス、白なんだもん」
僕の彼女になった真由美は、学校帰りに良太にせがまれて、血を吸われそうになっている。
それを物陰からひっそりとのぞき見している僕は、やはりいけないことをしているのだろうか?
きのう良太に血を吸われて貧血になった僕は、学校を休んでいた。
そういうときは、良太は僕に遠慮なく、真由美といっしょに下校するのが常だった。
彼氏を征服した男は、彼女を支配する権利があるんだ――良太は憎まれ口をたたくけれど、
内心しんそこぼくたちのことを好いている彼の言葉の裏には、毒はなかった。
それでも、生身の男としてもじゅうぶん真由美に恋着している彼は、よく意図的に僕の血を吸い過ぎて、僕を欠席に追い込むのだった。

「ちょっと待ってよ!白の日はダメって言ったじゃん・・・」
真由美の非難は、徐々に語勢を弱めてゆく。
すでに良太は真由美の足許にかがみ込んでいて、
プリーツスカートの下から覗くふくらはぎに、舌を這わせ始めている。
「やだ・・・みんな見てるよ、恥かしいよ・・・」
気の強い真由美がおろおろするのを面白がって、いっそう露骨に舌をふるいつけて、真由美のハイソックスの舌触りを愉しむと、
「じゃ、そこの草むらで隠れてしよ」
そういうと、大人しくなった真由美の手を引いて、肩ほどの高さのある雑草の彼方へと、身を沈めていったのだ。

ガサガサとかき分けた雑草のかなた。
真由美は四つん這いになって、それ以上の無防備な姿勢は許すまいと歯を食いしばりながら、
それでも恥ずかしいことをされる自分の足許が気になるのか、チラチラと目線だけは、泳がせている。
ほど良く発育したふくらはぎの柔らかそうな肉づきを包む、真っ白なハイソックス。
その上から良太は臆面もなく唇を吸いつけて、真由美の血を吸い始めていた。
ぼくの彼女になった真由美の血を。
履いている通学用のハイソックスを、意地汚く咬み破りながら。
そんないけない光景を目にしてドキドキしてしまっている僕は、もっといけないことをしているのだろうか?

やがて二人は、草むらから出てきた。
そして何事もなかったようなそぶりで、
良太は真由美の制服のスカートの上からおしりを触ろうとし続けて、
真由美は触らせまいとして手を払いのけ続けながら、
お互いの手と手とは裏腹なありきたりな会話をはずませながら、家路をたどっていった。
ただの仲の良いカップルの何気ない下校風景に見えたけれど、
少女の履いている真っ白なハイソックスのふくらはぎに、赤黒いシミがべっとりと着いているのがいっそう唐突で、
ぼくの網膜を狂おしく彩っていった。


そよぐスカートのすそから入り込んでくるそらぞらしい冷気。
まったく経験のなかった感覚に戸惑いながら、僕は真由美から借りた制服を、真由美の手を借りながら身につけてゆく。
サイズがひとまわり小さい紺のハイソックスは、いつも履いている自分用のものよりも強く足許を締めつけてきて、
やはりひとまわり小ぶりなサイズのブラウスが、胸元に揺れるリボンが、真由美の髪型に似せたウィッグの毛先の揺れが、
まるで真由美自身がグッと身近に寄り添うように、僕の身体を拘束する。

きのうしたたかに血を吸い取られた真由美は、白い顔をしていた。
まだ吸い足りないっていうの・・・
困り顔の真由美のために、ぼくはとっさに口走っていた。
「身代わりに僕が、きみの制服を着て良太に逢おうか・・・?」
真由美は驚いたように息をのんだが、案外いいアイディアかもね、といって、自分の制服を僕に貸すことに同意してくれた。
真由美に誘いの電話をかけてきた良太に事前にそう告げると、歓迎するよ、と、言ってくれた。
そして、傍らの真由美に聞こえないよう声をひそめて、
「実は、前からそうしてもらいたかったんだ」
と、彼はいった。
貴志なら女子の制服、似合いそうだから・・・
彼の言いぐさに内心ズキリとしたのは、いけないことだったのだろうか?
なにも知らない真由美は、「貴志ったら本物の女の子みたい♪」と、ただ無邪気に笑って僕のことをからかっていたけれど。


「責任、取りなさいよね」
真由美の声は、いつになく尖っていた。
声が尖って、当然だった。
卒業を明日に控えたその日の夕方。
村はずれの納屋でのことだった。
真由美は藁の上に組み敷かれたままの姿勢だったし、
良太は果たしてしまった後、まだ真由美の上におおいかぶさったままの格好だった。
行為に及ぶ前にしたたかに血を抜かれたぼくは、ただ惚けたように、納屋の一番隅っこで、ふたりのいちぶしじゅうを見せつけられていた。
「僕、責任取るから」
弱々しい声色だったけど、われながらきっぱりと言い切ることができた。
そう、お嫁入りまえの娘が男と仲良くすることは、この村では厳しく禁じられていた――そう、表むきだけは。
真由美は僕の声にはっとすると、素直な声色になって、「ごめん」とだけ、いった。
僕はかぶりを振って、真由美に応えた。
「そんなことない。僕も内心、こうなると良いと思っていたから」
それは真由美のためについた嘘だったけれど、どこまで嘘だったのか、いまでも確信を持てなかった。
でも案外、それは本音だった。
つい最近知ったことだけど、良太はすでに女を識っていた。
相手が僕の母だと知った時、良太にすべてを支配されることが、ひどく心やすいもののように感じることができた。
それに――
真由美の身代わりに、真由美の制服を着て、真由美になり切った僕と逢ったとき。
良太はいつもよりたっぷりと僕の身体から血を吸い取って、もちろん真由美のハイソックスもくまなく咬み破ったあと、
逆立った股間を真由美のスカートの奥へと、沈み込ませてきた。
自分でもびっくりするほど素直に受け止めてしまった僕は、彼のお〇ん〇んの剛(つよ)さをしんそこ味わわされて、
この快感を真由美にも体験させてやりたいと感じていた。
なぜかとても素直に、そう感じることができたことにも、歓びを覚えることができた。
吸血鬼に恩恵を与えるためだけではなくて、人間の男子として真由美を良太と共有できることが、嬉しいと感じた。
そのために、僕は今日、女になったのだ と・・・。

「罰としてあたし、結婚してからも良太と逢うから」
制服を着崩れさせて藁まみれになったまま、真由美は不貞腐れたような声色で、僕に毒づいた。
「いいよ、できればそうしてあげてほしい」
僕はドキドキを抑えながら、そう応えた。
「ウン、わかった。これ、貴志の嫁の務めだと思うことにする」
真由美はぽんぽんと男のように受け答えする。
「きみを良太と分け合うことができて、嬉しいよ」
良太はさすがに、ちょっとのあいだ言葉をさしはさむのを遠慮していたが、
ふたりのやり取りがおだやかにおわると、おずおずと言った。
「ありがと、貴志。ところで、もう一度だけしても、良いかな?」

何事もなかったように納屋から出てきた三人は、
真由美をはさんでいつものように仲良く、どうでもいいやり取りをしながら家路をたどった。
道行く人は、真由美のスカートから覗く太ももに血が垂れ続けているのに気がつくと、いちようにぎょっとしたが、
ぼくたちが気にせずに歩いて行くのをみると、なにも見なかった顔をして通り過ぎていってくれた。

卒業式前夜の納屋ではじけた情熱を、ぼくたちはきっと、生涯忘れることはないだろう。


あとがき
爽やかな青春日記・・・ではない、ですかね・・・? ^^;

同級生のハイソックス

2018年01月15日(Mon) 08:26:07

その当時貴志の学校では、
半ズボンにハイソックスといういでたちは、良家の令息のステータスだった。
貴志も毎日、詰襟の制服の代わりにブレザー姿で登校していた。
校則は、とくに良家の子女にはゆるやかだった。

貴志の幼なじみの良太は、幼いころから吸血鬼だった。
吸血鬼と人間とが共存しているこの街では珍しくない、半吸血鬼の家系だった。
貴志は良太の母に頼まれて、学校で良太が飢えたときに自分の血を吸わせてやるようになっていた。
本人同士はもとより、母親同士が仲が良かったのも幸いした。
色気づいて来た良太のために、貴志の母親が筆おろしの相手になってやったことを、このころの貴志はまだ知らない。

良太は、ハイソックスに執着する性癖を持っていた。
喉が渇くと貴志のいる教室に行って、授業中でも構わず貴志のことを呼び出すと、
鼻息荒く貴志の足許に唇を迫らせて、ハイソックスの上から唇を吸いつけてきた。
そんなときでも貴志は、
「授業中に、やだなあ・・・」
と苦笑いしながらも、担任の先生に断って教室を出、手近な空き教室や裏庭で、吸血に応えてやっていた。
良太が自分の服装を気に入ってくれているのが、むしょうにうれしかったのだ。
貴志は、露骨に舌をふるいつけてくる良太のために、気の済むまでハイソックスを舐めさせてやり、
ふくらはぎに食いついてくる牙で、ハイソックスを惜しげもなく破かせてやっていた。
貴志が咬み破られて血の撥ねたハイソックスを履いたまま教室に戻って来ても、だれもが見て見ぬふりをした。
吸血鬼に関係のあるものも、そうでないものも、その程度の配慮はわきまえていた。

「気になる女の子がいる」
良太が出し抜けにそう言い出したのは、やはり授業中に貴志を呼び出して吸血に及んだあとのことだった。
組み敷かれた格好のまま貴志は、「そうなんだ」とだけ、こたえた。
良太は口許からぽたぽたと、さっき吸い取ったばかりの幼なじみの血をしたたらせてくる。
それをわざと、真っ白なワイシャツの胸に受け止めながら、
「こら、こら。着替えないと教室に戻れないじゃん」
といった。
手足をだらりとさせた大の字の格好で、足許ににじり寄って来る幼なじみを見るともなしに見守りながら、
「誰なんだい?」
と、さっきの話の続きを促した。
「きみのクラスの真由美ちゃん」
以外に素直に帰って来た返事に良太の欲求の強さを感じた。
ふくらはぎに這わされた唇の両端から、牙がチクチクと滲んでくる。
2本の牙が、ずぶっと、貴志のふくらはぎに刺し込まれる。
じわじわと滲んできた血潮がハイソックスになま温かくしみ込むのを、貴志は感じた。
「わかるよ」
咬まれる快感に夢中になって置き去りにしてしまったこたえを、貴志はいまさらながらに口にした。
「彼女、美人だものなあ」
「貴志は、好きな子はいないの」
「僕?うん、とくにいないけど」
「頼みがあるんだ」
「わかってるよ」
「そうなんだ」
「彼女のこと、呼び出してくれっていうんだろ?」
「いいの?頼んでも」
貴志は良太がまだ真由美と同じクラスになったことがなく、
同級生の女子にさえろくに口をきけない良太がまだ真由美と言葉も交わしていないことを知っていた。
「僕が紹介してやるよ。仲良くなれるといいね」
「でも――」
良太がちょっとだけ、言いよどむ。
そう、吸血鬼の家に生まれたものは、人間の娘とは結婚できないしきたりになっていた。

入れ替わってやれるとよかったんだけどなあ――と、貴志は思う。
まだ若すぎるのかもしれないけれど、貴志には女子に対する思い入れがあまりなかった。
良家の子女にふさわしい美貌を備えた貴志は、その実クラスの女子の注目の的だったのだけれど、
そんなことは彼には、どうでもよいことだった。
あの内気なやつが、どうやって真由美に挑むというのだろう?
モテる男子が、モテない男子をからかうような優越感は、彼にはなかった。
むしろ、幼なじみが意中の子にうまくアタックできるのかどうかが、気になるだけだった。

「ご対面」は、さっそく次の日の放課後に行われた。
「話があるから来て」とだけ言って誘い出した真由美は、
ある種の期待を込めた女子の顔つきをして、言われるままに学校の裏庭にやって来た。
そしてそこに貴志だけではなく、良太の姿をみとめて、露骨に眉をひそめた。
良太が吸血鬼だということは、校内のだれもが知っていたので、
ふつうの女子としての潔癖さを、彼女も同じように表に出したに過ぎない。
「僕の幼なじみの良太。いつも僕の血を吸わせてやっているんだけど――」
戸惑う真由美を前に、ちょっと酷だなと思いながらも、貴志はストレートに言った。
「彼、きみの血を吸いたがっているんだ」
口に出した瞬間、酷だったのは真由美に対してではなく、良太に対してだと初めて気づいた。
良太はギクッとして顔色を変えて、その場から逃げ出すように足を半歩引いていた。
貴志は良太の手をさりげなく抑えながら、つづけた。
「――よかったら、僕といっしょに献血に応じてあげてくれないかな?」

ガマン出来なくなったら、いきなりきみのことを襲うかもしれない。
そんなふうにされちゃうのは、きみのプライドも許さないだろうし、
こいつ吸血鬼のくせに、傷つくやつなんだ。
あとできっと暗く後悔する。
そうするとまた、僕のところに来るんだよね・・・
実際にあった記憶がよみがえり、貴志はにやにやしながら良太を見た。
「いいだろ・・・」
口を尖らせる良太を、貴志が気安くどやしつけるのを目にしたときには、
少女はすっかり気持ちを落ち着けていた。
もともと気丈な娘だった。
「いいわよ、貴志くんといっしょだったら、血をあげてもいい」
ぱっと顔色を輝かせる二人の少年を交互に見比べながら、真由美は貴志に訊いた。
「このひと、血を吸うときハイソックス破っちゃうって、ほんと・・・?」

さいしょに貴志が手本を見せ、あとから真由美がそれにならった。
貴志は半ズボンの下にいつものように舌をふるいつけてくる良太を苦笑しながら見おろし、
そんな貴志を真由美は眩しそうに見つめていた。
いよいよ自分の番になると、貴志に、「やっぱり怖いから、手を握っていて」といって、自分から手をつないできた。
真由美は、濃紺のハイソックスを履いていた。
良太が真由美の履いているハイソックスのうえから唇を吸いつけたとき、
貴志はいつも自分が吸われているとき以上にドキドキしているのを感じた。
「白いやつじゃなくてよかった」
と、真由美が呟いた。
真っ白なハイソックスでは、シミが目だってしまうからだとわかったときにはもう、
良太は躊躇なく、真由美のふくらはぎに牙を埋め込んでしまっていた。

ちゅう、ちゅう、ちゅう・・・
真由美の血が音を立てて、良太に吸い取られてゆく。
こういうときは、いつもの引っ込み思案はかげをひそめて、良太はひたすら強欲に、獲物の血をむさぼるのだ。
さすがに気丈な真由美も顔色を蒼ざめさせて、貴志に促されるままに、手近なベンチに崩れるように腰を下ろした。
真由美が姿勢を変える時だけ、良太は唇を放して貴志を手伝ったが、
すぐにまた自分が初めてつけた傷口に唇をふるいつけて、血を啜りつづけた。
そのあいだずっと、貴志は真由美の細い肩を抑えつけながら、
幼なじみが目のまえの美少女の生き血を吸い取る光景を、いつになく胸をわななかせながら見守りつづけていた。

真由美は案外度胸の据わった娘だった。
すっかり大胆になった良太に求められるまま、左右どちらの脚も、ハイソックスを履いたまま咬ませてやっていた。
もう片方の脚をねだられたとき、気持ちずり落ちていたハイソックスをわざわざきちんと履き直すほど、しっかりしていた。
「すごいね、きみは」
貴志は真由美にいった。
「怖くなんてないから」
真由美は白目で貴志を睨みながら、こたえた。
その実内心はかなり怖がっているのが貴志にはよくわかっていたし、
良太のほうも吸い取った血の味で、彼女の気分を察しているはずだった。
「家まで送るから」
控えめにそういった貴志に、真由美は「ありがと」とだけ、こたえた。
貴志は良太と目線を合わせ、良太が頷くのを見て、自分のしたことがよけいな差し出口ではないことを察した。
どんなに好きでも、吸血鬼に家まで送られることを、少女が肯んじるとは思えなかったから。
「こいつさ、自分が咬み破ったハイソックス、コレクションにして集める趣味持ってるんだぜ」
良太のコアな趣味を貴志が明るい口調で暴露すると、真由美は初めて声をたてて笑った。
「そうなの?ヘンな趣味ね」
「僕のはだいぶ、ストックされちゃってる。ほんとはお前・・・真由美ちゃんのも欲しいんだろ?」
貴志が面白そうに、良太の顔を覗き込むと、良太の反応から目をそらしながら真由美がいった。
「あげるわよ。穴の開いた靴下なんて、もう履けないし」
良太が目の色を変えて、真由美の足許に取りついた。
履いているハイソックスを引きずりおろそうとする良太の手を、真由美は手厳しくはねつけると、
「ばかね、ちゃんと洗ってからにしなさいよ」
と、そこは少女らしい恥じらいをみせた。

「吸血鬼って、人間の女の子と結婚できないんだってね」
真由美は意外に、詳しかった。
母親からいろいろ聞かされていたというのだ。
まるで母娘の間の性教育みたいだ、と、貴志はなんとなく思った。
「でもあたし、ちゃんとお嫁さんになって、家庭を持ちたい人だからね」
真由美の宣言は、貴志が気づかったほどに、良太を傷つけなかった。
「わかっているさ。分はわきまえているつもりだからね」
そして、意外なことを口にした。
「貴志は、真由美ちゃんと付き合う気はないの?」
え?
完全に虚を突かれて、貴志は言葉を失った。
さっき、真由美が初めて咬まれる瞬間によぎったドキドキの意味が、やっとわかってしまったから。
真由美は貴志の目を見ずに、ぶっきら棒にいった。
「私、貴志くんとつきあってもいい」

「おまえ、結局いちばんおいしいところだけをつかまえたな」
翌日の学校帰りに、貴志は良太のことを小突いた。
真由美の血を末永く愉しむために、真由美を幼なじみである貴志の嫁にする。
寛大な貴志はきっと、若い女の血を欠かせない幼なじみのために、自分の嫁を気前よく差し出すことだろう。
「ばれた?」
照れ隠しに笑う良太はそれでも、
「俺、貴志の嫁を支配するから」
と、憎まれ口をたたいた。
二人の間に交わされる言葉の裏に毒々しさがまったくないのを、
貴志も良太も――そして多分真由美さえも――よく知っていた。

その次の日、真由美が良太のために初めて咬み破らせたハイソックスを洗って持ってきて、良太に手渡したのを、
貴志は真由美の口から聞かされた。
「こないだのハイソックス、良太くんに渡しといたから」
「これからも、良太くんに襲われて、血を吸われることにしたから――良太くんと、貴志のために・・・」
二人は寄り添い合って、初めての口づけを交わした。
長い口づけだった。
いちど離れた唇と唇は、少女の側からもういちど、重ね合わされた。
「ありがと。私初めてだったんだ。いまの記憶で、これからなにがあっても私やっていけるから」
真由美は初めて少女らしく、無邪気な笑いをはじけさせる。

二人の幼なじみの、片方の妻になって、もう片方の恋人になる――
そんな難しい役柄を、きっと演じ切って見せる。
かたく引き結ばれた少女の薄い唇に滲んだ決意に、貴志はもういちど少女のことを力をこめて抱きしめていた。

優しい伯母。

2017年11月27日(Mon) 07:36:56

高級住宅街の瀟洒なたたずまいの一角から、優雅なピアノの音色が漂ってくる。
「奥村敏恵 ピアノ教室」
そんな古びた看板が生垣に埋もれかけたお邸からは、かなり流ちょうな旋律が踊るように流れてくる。
その流れが、ふと途切れた――

「アラ、間違いよ。あなたいっつもここで、途切れるわね」
親切そうな中年のピアノ教師・奥村敏恵は、うわべだけの優しいほほ笑みを、教え子の少女の横顔に投げかける。
逃げられないように抑えつけた少女の両肩にかけた掌に、ギュッと力を込めながら。
少女の足許には、背後から近寄せられた男の唇が、もの欲しげに吸いつけられている。
白の薄地のハイソックスが、少女のひざ小僧の下までお行儀よく引き伸ばされていたけれど。
ヒルのように密着した、赤黒い唇の下。
ピンク色の脛を滲ませた白の薄地のハイソックスはむぞうさに噛み破られて、
裂け目が縦にツツッ・・・と走る。
そしてひと呼吸おいて、真新しいナイロン生地にはバラ色の血の滴りがしみ込んで、拡がっていった。
息をのんだまま硬直した少女の凍りついた顔つきを、敏恵は小気味よさそうに覗き込む。
「優子さん、もう少しの辛抱よ。
 あなたの若い血で、うちの甥っ子をもう少しだけ、愉しませてあげて」
気品のある白い頬に意地悪い笑みを泛べて、ピアノ教師は教え子に、うわべだけのいたわりを囁きつづけた。

男は少女の椅子の下、這いつくばった姿勢のまま、
喉をゴクゴクと鳴らしながら、うら若い乙女の血潮に酔い痴れている。
若いピチピチとした活力を、痩せこけた身体いっぱいに行き渡らせようとして。

白い顔になってソファに横たわる少女を、ピアノ教師は無同情に見おろした後。
「30分もすれば回復するわ」
と言い捨てて、
「由佳さん、よろしいですよ」
と、つぎの教え子の名前を呼んだ。
「あなたはあっちにいらして、この子の相手をなさい」
甥っ子にそう言い捨てると、気絶した教え子にはもう関心がないといわんばかりに、ふたりに背を向けている。

ふすま一枚へだてた向こう側。
ズズッ・・・じゅるじゅるっ。
不気味な音が洩れてくるのを、つぎの少女はことさらに無視してピアノの前に座った。
若い女の生き血を啜る音だと気づいていないわけはないはずなのに、
ブゾーニの何番をお願いします、と、お行儀よく頭を下げて、セミロングの黒髪を揺らせる。
「じゃあいつものところから」
ピアノ教師はうわべだけの優雅な笑みを湛えながら、少女の指先に奏でるようにと促していく。
ピアノ教室に出入りする少女たちは、いずれも良家の子女である。
こういう場にくるときには例外なく良い服を着て、先生に教えを請いに訪れる。
由佳と呼ばれた少女もまた、淡いピンクのワンピースの下、齢不相応にストッキングを脚に通していた。
仲の良いお友だちの優子ちゃんのつぎの獲物は自分なのだと、自覚し過ぎるほど自覚していたし、
せっかく穿いて来た大人っぽい肌色のストッキングも、
レッスンの後で見る影もなく咬み破られてしまうとわかっていながら、
心の動揺を覚られてしまうのは恥だといわんばかりに、ことさらもの静かに、優雅なメヌエットを奏でてゆく。


「ショウジさん、よかったわね。皆さん優しくて・・・
 お嬢さんたちはだれも、あなたのこと嫌がったりしなかったじゃないの。
 あなた、もっと自信持ちなさいよ。
 それから早く、あの子たちのなかから、お嫁さんを選んでね」
教え子たちが順ぐりに咬まれて、破れた靴下を穿き替えて帰宅していったあと。
敏恵は血色を取り戻した甥っ子の横顔を、優しいまなざしで見つめる。
さっきまでのうわべだけの笑みとは裏腹な、いたわりに満ちたまなざしだった。
甥っ子には甘く、どこまでも親切な伯母だったのだ。

甥のショウジに初めて襲われたときには、びっくりして取り乱してしまった。
そのままじゅうたんの上に押し倒されて、ショーツを引きずりおろされたときには、まさかと思った。
この齢になったのに、敏恵がセックスを識ったのは初めてだったのだ。

吸血鬼になった息子を姉の家に差し向けた妹は、あとからすべてを告げた。
妹の一家は家族全員が吸血鬼に襲われて、甥のショウジが吸血鬼になったということを。
後出しは卑怯だわ。
したたかな妹に、姉は冷ややかにそういった。
首すじに咬み痕をつけられた後であっても、そういうところまでは崩れ果てないらしい。
姉と同じ痕をつけられた後、すべてを崩れ果てさせてしまった妹は、
姉の気丈さとひさびさに向かい合って、さすがだと素直に思った。
「わかったわ。うちの教室に若いお嬢さんが大勢出入りしているから、私にあの子を預けるというのね?」
皆まで言わせず、露骨に言い切った姉に、妹は綺麗な女の冷酷さを見る思いだった。

それ以来。
独り住まいのピアノ教師の邸に居候を決め込んだ甥っ子は、若い好奇心のまま、
伯母の教え子たちを襲いつづけた。

同性には冷酷なこの女はしかし、甥っ子にはどこまでも優しかった。
血を欲しがって呻きをこらえる甥っ子のまえ、優雅に装ったドレス姿を見せびらかして、
すすんで押し倒されていって、股間も首すじも、ためらいもなく愉しませてやった。
女性が脚にまとう丈の長い靴下に執着するショウジの嗜好を、
「いけない子ねぇ」と優しく咎めただけで、
ストッキングで上品に装った足許を、ロングスカートをたくし上げて惜しげもなくさらけ出すと、
狂おしい本能のおもむくままに、荒々しくむしり取らせてしまっていた。
さいしょは伯母のもとに出入りする教え子たちのことを、恐る恐るのぞき見するだけだった甥っ子の好みを、優しい伯母は懇切に聞き取ってやり、
甥っ子が手を出してもよさそうな娘を択んでは、レッスン後に二人で逢わせてやるようになった。
――あなた、吸血鬼に襲われてみない?
先生にそんな誘いを受けて戸惑う教え子たちをあるときはなだめすかして、あるときは高飛車に抑えつけて、
レッスン室の隣のお座敷に送り込まれた教え子たちは、
ひとり、またひとりと、甥っ子の毒牙にかかっていった。
それが近所の評判にならなかったのは、少女たちが口が堅かったのと、
たまたま知ってしまった親たちも外聞を憚って見て見ぬふりをし、
自分の娘が吸血に狎れてしまったことに薄々気づきながらも、
ピアノのレッスンを続けたいというまな娘の願いを叶えつづけた結果だった。

良家の子女のなかには、すでに男を識ってしまった娘も、当然のようにいた。
そうした娘たちには、敏恵は容赦がなかった。
「お行儀の悪い子は、犯してもいいのよ。遠慮なくおやりなさい」
敏恵の言いぐさはひどくそっけなかったけれど、甥っ子への歪んだ愛情に満ちあふれていた。
伯母の冷ややかに澄んだ声が突き放したような言いぐさを口にするのを、
ショウジはくすぐったそうに受け流しながら、
小ぎれいなお洋服に着飾った伯母の教え子を組み伏せて、荒々しくスカートをたくし上げてゆく。
鋭利な牙を秘めた唇を柔らかな首すじにあてがうと、
どんなに気の強い少女も例外なく怯えた視線をさ迷わせながら、従順になっていった。
生き血を吸い取られてゆくあいだ。
ハイソックスの脚がじたばたと暴れ、
切なげに足摺りをくり返し、
やがて力を失ってぐったりと横たわる。
けれどもショウジの黒ずみ痩せこけた腰がスカートの奥に肉薄し、深く沈み込んでくると、
ふたたび身じろぎを始め、淫らな躍動をはじけさせてゆく――
敏恵はワイングラスを片手に弄びながら、
そんな恥知らずな教え子たちが甥っ子に組み伏せられて、
嫁入り前の娘としての名誉を奪われてゆくのを、
小気味よさそうに眺めていた。


「ありがとうございました」
丹生加奈子はお行儀よく両ひざの上で手を重ねて、レッスン後のあいさつを終えた。
ロングの黒髪を揺らしてお辞儀をする少女に、敏恵は、
「あちらにいらっしゃい。甥っ子があなたのことを待ちかねていますよ」
と、少女を促した。
加奈子はちょっとだけ羞ずかしそうな笑みを色白な童顔によぎらせると、
「ではちょっとだけ、お邪魔していきますね」
と、白い歯をみせた。そしてピアノの前から起ちあがりかけて、
「きょうのレッスンは、私が最後ですよね?」
と、忘れずに確かめていた。

「白のカーディガン、汚れが目立たないかしら」
首すじを咬まれたあとの血のほとびを気づかわれたと知りながら、少女は笑みを絶やさない。
「だいじょうぶ。彼、優しくしてくれますから」
加奈子が白い服を着てくるときには、血が撥ねないようにソフトに咬んでくれるのだという。
「きっときょうは、優しく咬まれたい気分なのね」
心優しい伯母は、甥っ子の相手をためらいなくつとめてくれる少女のことを、そう判断した。
リビングのドアが開いて、ショウジが顔を出した。
「やあ」
おおぜいの女の子を組み敷いて来た彼には珍しく、よそよそしいはにかみを泛べているのを、伯母はほほ笑ましく見守る。
つぎの教え子が控えているときには、
イスの下にもぐり込んでハイソックスのふくらはぎをひと咬みするだけで、
レッスンを終えた少女をすぐに連れ出してしまうショウジが、
加奈子がいちばんさいごにレッスンに訪れるときだけは、レッスン室に長居をするのだ。
加奈子もショウジの抱いている好意を、それとなくわきまえているらしい。
「おニューのタイツ履いて来たの。楽しんでね」
笑くぼを滲ませて人懐こく笑うと、こげ茶のスカートのすそを抑えながら、
「失礼」と先生にひと声かけて、じゅうたんの上に身を横たえていく。
真新しい黒タイツに包まれた発育のよいふくらはぎが、しなやかなナイロン生地ごしにピチピチとした生気を滲ませていた。
ウウ・・・
吸血鬼としての本能を目覚めさせてしまったらしい甥っ子が、
少女の足許に性急に唇を圧しつけてゆくのを、
心優しい伯母は「あらまあ、ホホホ・・・」と、嬉し気に見つめていた。

少女が純潔を喪ったのは、それから小一時間ほど経ってからのことだった。

濃い紫のドレスに身を包んだ伯母は、最愛の甥っ子が自分の教え子を女にしてゆくのを、そむけた背中越しに感じつづけていた。

相手の女がすでにセックスを識っているとき、甥っ子は必ず彼女を犯した。
けれども相手が身持ちの良い少女の場合には、生き血を吸い取っても犯すことはなかった。
相手が処女でも犯してしまうとき、彼が本気なのだということを、
敏恵は自分の身体で識っていた。

加奈子さんのご家族には、ご挨拶に伺わないとね。
お母さまはおきれいな方だし、お父さまは物わかりのよい方よ。
中学にあがったばかりの、可愛い妹さんもいらっしゃるの。
あの子もきっと、ピアノを習うようになるわ。才能あるから。
あなたは特別な子なんだから、お嫁さんはなん人ももらうといいわ。
伯母はどこまでも、甥っ子に甘く優しかった。


あとがき
このお話に登場する人物・団体名は、他のお話同様架空のものです。
・・・なんて断り書きを入れるのは。
だいぶ前のことですが、たまたま同姓同名だったらしい方から「私のことを知ってるの?」と問い合わせられたのを思い出したからなのでした。

さいごに加奈子さんの妹さんを「才能あるから」と評価した伯母さまは。
妹娘のどんな才能に注目したのでしょうか?
気になるところではあります・・・

初めておじ様に逢った夜

2017年10月30日(Mon) 05:14:19

「キムスメ・・・って、なに・・・?」
まだ〇〇歳の小娘だったあたしには、100歳にもなる吸血鬼とお話するにはボキャブラリイがなさすぎた。
「生娘というのはの、お前のような可愛い娘のことをいうのじゃよ」
吸血鬼のおじ様は、あたしが逃げようとするのをさりげなく封じながらも、わかりやすく説明してくれた。
あとで考えたら、その説明はあまり正確ではなかったのだけれど、
〇〇歳のあたしには、その説明だけでじゅうぶんだった。
美女が吸血鬼に抱かれるシーンはなん度となく、パパといっしょに映画館で観たことがあったから。
「生命はほんとに、助けてくれるんだよね?」
ちょっぴり心配になったあたしは、知らず知らず怯えた表情を作り、媚びるような上目遣いをして、おじ様を見あげたけれど。
おじ様は「よしよし」とあやすようにあたしの肩を抱いて、
「嬢やはそんなこと、心配しなくてだいじょうぶ」
とだけ、いった。
「ちょっとだけなら・・・いいよ・・・」
キムスメの血を吸いたいとおねだりされたあたしは、
いつもは親におねだりばかりしているわがままな女の子だったのに、
いつもとあべこべなんだけど・・・って思いながらも、
おじ様のわがままを聞いてあげる気になった。
どうしてそんな気分になったのか、いまでもよくわからない。
たしかにおじ様の片手は、あたしの二の腕を強くつかんで離そうとしなかったし、
逃げられないのはいやというほどわかっていたけれど、
あたしがおじ様のいうことをきいたのは、そんなことのせいじゃなくって、もっと別な理由からだと、いまでもはっきりそう思っている。
「そんなに欲しいのなら、マミの血を吸わせてあげる」
あたしは自分がちょっとだけやせガマンをしていると感じながらも、
パパといっしょに観たドラキュラ映画のヒロインみたいに、
おとがいをわずかに仰のけて、目をつぶる――
「あんまり痛くしないでね」って、小声でつぶやきながら。

首すじに食い込んだ牙は、さいしょのうちだけは予防注射と同じくらい痛かったけど、
あたしは涙をガマンして、吸血鬼に抱かれる美女になりきろうとした。
気がつけば、貧血で頭がくらぁっとするほど、生き血を吸い取られていた。
首すじから牙を引き抜くと、
おじ様はあたしの血を吸い取ったばかりの唇を、耳たぶに触れるくらいまで近寄せて、
「ありがとう。嬢やは強い子だね」
って、ささやいた。
どうせなら、そんな子どもをあやすような言いかたじゃなくって、
もっとロマンチックなことをつぶやいてくれればいいのにって、
ちょっぴり不満に思った。

あたしの履いている真っ白なハイソックスをイタズラしたいといわれたとき、
すっかり、彼の餌食となっていたあたしは気前よく、
「ウン、いいよ。マミ、イヤらしいの大嫌いだけど、おじ様だったらガマンする」
そんな言い方がおじ様をそそるのだと、あたしはなんとなくだけど、わかってしまっていた。
おじ様がさいしょにあたしを見たときから、
ミニのワンピースからのぞく太ももと、
ひざ小僧の下までお行儀よく引きあげたハイソックスとをとても気にして、
なん度もチラチラ盗み見るのを、ママといっしょにいるときから気がついていたから。
おじ様はあたしのハイソックスのうえから唇を吸いつけて、
その唇の奥から、舌をぬめらせてきた。
上から下まで、脚の線をなぞるようにして舌を這わせてきて、
よだれのたっぷり浮いたべろで、あたしのハイソックスを汚すことに夢中になった。
なま温かいよだれがハイソックスにしみ込んできたとき、
あたしは初めて「イヤラシイ」って感じたけれど。
「女に二言はないもん」と、おじ様に聞こえないようにつぶやいて、
知らん顔をしたまま、おじ様の好きなようにさせてあげていた。
やがておじ様は、ふくらはぎのいちばん肉づきのいいあたりに牙を突き立てて、
ハイソックスを咬み破ってあたしの血を吸い始めた。
ごくっ、ごくっ・・・という音が生々しくって、あたしは思わず肩をすくめたけれど。
おじ様はあたしのひざ小僧や太ももをあやすようにまさぐりながら、
あたしの生き血で喉を鳴らすのをやめなかった。
あたしもいつの間にか夢中になって、
もう片方の脚に唇を近寄せてくるおじ様のため、
おじ様がよだれをなすりつけやすいようにと、
ハイソックスの脚をちょっぴり優雅にくねらせてみた。

気がついたら、あたしは貧血を起こしていて、じゅうたんの上にあお向けに倒れていた。
咬み破られてずり落ちかけたハイソックスは両方とも、それもあちこち咬み破られていて、
しみ込んだ血潮のぬくもりにまみれてしまっていた。
頭のうえで、「きゃあッ・・・」と、ママの悲鳴が聞こえた。
バタバタッとあわただしい物音がして、それからゴクゴクッ・・・と、おじ様の喉が鳴る音がした。
あたしと同じように貧血を起こして尻もちをついたのも、気配でわかった。
いつもはきびしいママが、
「あうッ・・・あうッ・・・」
と、べそをかいたみたいな声をあげながら、ストッキングを穿いた脚を咬まれているみたいだった。
おじ様はあたしのときと同じくらいしんけんにママを襲うのに熱中して、
そのあいだじゅう「ゴクゴク」と、喉を鳴らしつづけていた。

いちばんえらいと思ったのは、お兄ちゃんだった。
逃げようと思えば逃げられたのに、
「ボクだけ無傷なの、カッコ悪いから」
といって、たるんで履いていたハイソックスをきっちりと引き伸ばして、
「母さんのストッキングほど面白くないだろうけどさ」っていいながら、
白のラインの入ったあざやかなブルーのハイソックスに血潮が赤紫ににじむのを、
「楽しそうだね」っていいながら、静かな目をして見つめていた。

それからあたしたち兄妹は、ママのことが好きになってしまったおじ様が、
倒れて気絶寸前のママのうえにのしかかっていやらしいことをするのを、
表情を消して見守っていた。
しばらくしてママが声をあげはじめて、おじ様の背中に腕を回すのを見たお兄ちゃんは、
「仲良くなったみたいだから、もう視ちゃダメ」と、あたしにいった。
そのくせ自分はずうっと、ママがおじ様と愛し合ういちぶしじゅうから、目を離そうとはしなかったんだけど。

その夜ママがおじ様としていたことのすべてを識ったのは、大人になってからのことだった。
高校を卒業してからは、ハイソックスをストッキングに穿き替えて、
ママと代わりばんこにおじ様のお相手をした。
「お嫁入り前なのに、男のひととそんなことをしてはダメ」
って、ママは言うけれど。
パパの目を盗んでおじ様と逢うときにウキウキとしているママがそう言っても、あまり納得出来はしなかった。
いまはもう、結婚する彼がいるくせに、あたしはおじ様と逢いつづけている。
きっと結婚してからも、おじ様の恋人でいつづけてあげると思う。

あの夜。
初めておじ様にハイソックスを履いた脚を咬ませてあげたとき。
ママは「母」から「女」に逆戻りをして、
あたしは「子ども」から「少女」に成長したのだと。
だいぶあとになってから、そう自覚した――

少女たちは、ソックスを濡らして家路をたどる

2017年10月14日(Sat) 08:19:08

放課後の空き教室で、貧血を起こしてへたり込んだ優奈は、
吸血鬼に抱きすくめられて泣きべそをかきながら、生き血を吸い取られていった。
咬まれつづけた首すじには、いくつもの咬み痕が、セミロングの黒髪に見え隠れしながら、赤い斑点を濡らしていた。
クラスメイトの澪に、話があると誘い出された教室で。
襲いかかってきた吸血鬼に、あろうことか澪は手助けをして、
じたばた暴れる両腕を抑えられ、どうすることもできずに首すじを咬まれていた。

ひどい、ひどいよ澪ったら・・・っ!
抗議の叫びも空しく、優奈の血はゴクゴクと喉を鳴らして飲みこまれていって、
視界を薄れさせた優奈はひざの力が抜けて、身体のバランスを失った。

「この教室でおひざを突いちゃうとね、罰ゲームが待ってるの。
 どんな罰ゲームか、知りたい?
 訊きたくなくても教えてあげるね。
 脚をね、咬まれるの。ハイソックスを履いたまま。
 いやらしく、ねちっこく咬まれて、
 ハイソックスに血とよだれがたっぷりしみ込むまで、くり返されちゃうの。
 あたしも昨日、やられちゃったの。
 優奈も、仲間になろっ☆」

耳もとに唇を近寄せて囁きかける澪の声色は、しっとりと、ネチネチと、優奈の鼓膜に突き刺さってきた。
――あなたが汚され辱められてゆくのを視ているのが、あたしとっても愉しいの。
小憎らしく笑う白い顔に、ありありとそう描いてあった。

「うぅぅ・・・たまらない!あたしも咬まれたくなっちゃった」
意識が朦朧となった優奈の前、
澪は大胆に髪の毛を自分で掻きのけて、赤黒く爛(ただ)れた咬み痕を吸血鬼の目の前にさらしてゆく。
吸血鬼は澪を抱きすくめて、優奈に襲いかかった時と同じように、がぶりと食いついた。
欲情もあらわな食いつきぶりに、優奈は悲鳴を忘れ、澪は随喜の声をあげる。
ぐちゅっ・・・ぐちゅっ・・・
生々しい吸血の音が、男の口許からあふれた。

「見て見て。お手本だよ。優奈もこんなふうに、脚を咬まれちゃうんだよ」
澪は嬉しそうに優奈に笑みかけると、弛んでずり落ちたハイソックスをぴっちりと引き伸ばした。
「ほら・・・ほら・・・見て・・・やらしい・・・ほんっと、意地汚いっ」
言葉とは裏腹に、澪は露骨に嬉し気な顔をして、優奈に視つづけるように促した。
ハイソックスごしに吸いつけられた赤黒い唇から、飴色をしたよだれが糸を引き、澪の足許を汚した。
「うう~、たまらない・・・たまらなくいやらしいっ」
「んもうっ、恥知らずっ!」
「侮辱だわっ・・・汚らしいわっ・・・」
口ではさんざん相手を罵りながらも、澪は男の非礼な仕打ちをやめさせようとはしていない。
失血でへたり込んでしまった優奈も、涙も忘れてクラスメイトの痴態をただ見つめるばかりだった。

吸血鬼が澪の履いているハイソックスを見る影もなく咬み破ってしまうと、
澪は白目を剥いてその場に倒れ、吸血鬼は射すくめるような目で優奈を見据えた。
伸びてくる猿臂を、避けようもなかった。
足首をつかまれて引きずり倒された優奈は、ハイソックスの上から男の唇がふくらはぎに吸いつくのを感じた。
生温かいよだれがじわじわと、優奈のハイソックスにしみ込まされてくる。
いやらしい・・・いやらしい・・・やめて・・・よして・・・
優奈は声にならない声をあげて、男を制止しようとしたけれど、
男は優奈の無抵抗をいいことに、ただひたすら彼女の足許を辱める行為に熱中しつづける。
ハイソックスごしに感じる男のなまの唇がいやらしくぬめるのを、
優奈は眉をひそめて耐え忍んだ。

這わされた唇の両端から、尖った異物がにじみ出て、優奈のふくらはぎの一角をハイソックスのうえから冒してきた。
あ・・・咬まれる・・・
そう思ったけれど、痛いほど抑えつけられていて、身じろぎひとつできなかった。
「お嬢さん、ご馳走になるよ」
男は優奈をからかいながら、ハイソックスのうえから牙を埋めた――

数刻後。
ふたりの少女は椅子に腰かけ、机に突っ伏しながら、
破かれてずり落ちたハイソックスのふくらはぎや、
スカートをたくし上げられてあらわにされた太ももを、
飽きもせずに這わされてくる男の唇に、
恥知らずにもぬめりつけられてくる男の舌に、
惜しげもなくさらしつづけた。

「キモチわるーい!ハイソックス、びしょ濡れだよ・・・」
さいしょは嫌がっていた優奈の声も、いまは明るい。
「ほんとだ、優奈お行儀悪いよ、学校に履いて行くハイソックスに、よだれつけられてるよ」
「澪だって、ひとのこと言えないじゃないっ」
「フフフ、愉しいでしょ?優奈も、愉しんじゃってるでしょ?」
優奈は照れ笑いを浮かべながら、なおも舌を這わせてくる男の仕打ちを許しつづけていった。
「濡れ濡れのハイソックス履いたまま帰るわけ?」
「だいじょうぶだよ。もう暗いし、紺のハイソックスだからシミも目立たないよ」
そういう問題じゃないと思うけど――そういいかけた優奈は、裏腹のことをいった。
「ママにばれないうちに脱いじゃえばいいんだよね?」
それから、チャームポイントのえくぼを可愛くにじませながら、いった。
「仲間、増やそ。」

おそろいのライン入りハイソックス

2017年10月14日(Sat) 05:07:43

ったく、吸血鬼のくせに小心者なんだなお前は――
志郎は口をとがらせて、レイジを責めた。
レイジには、気になる女の子がいる。
同級生のアヤコのことだった。
けれども、レイジはアヤコに話しかけることもできず、
まして正体を明かして血を吸わせてほしいなんて、死んでも告白することができないでいた。
親友の志郎に打ち明けると、志郎は「まったくお前らしいな」と言い、
アヤコと同じ柄のライン入りの靴下を履いているときに吸血をねだられると、
仕方なさそうに靴下をひざ下まで引き上げて、咬み破らせてやっている。
きょうも体育の授業のあと、
志郎が短パンの下に履いていたライン入りの靴下に目を輝かせたレイジは、
体育館の裏手に志郎を誘って脚を咬んだ。
本人にお願いすることって、できないの?
志郎は咬ませてやりながらレイジに訊いたが、
レイジはひたすら首を横に振って、「無理無理」と言うばかり。
「わかったよ、じゃあ俺が話をつけて、連れて来てやるから」
志郎は仕方なさそうに、自分の足許にむしゃぶりついてくるレイジを見おろした。
「え?ほんと?ほ・・・ほんと?」
目を輝かせるレイジに、志郎はいった。
「でもさ、ほんとうのこというと、アヤコはぼくの彼女なんだ」

彼女を紹介して、血を吸わせてくれる――破格の好意だった。
でも、思春期で喉をしじゅう渇かせているレイジは、「悪いね・・・」とためらいながらも、志郎の好意にすがることにした。

「ぼく、あいつ(アヤコ)に告っといたから」
志郎の浮かない顔を見て、親友想いのレイジはちょっと心を痛めたけれど、
「ほんとうに来てくれるの?」
思わず飛び出た言葉は、嬉しさに満ちていた。
「さいしょはさ、お前のことが吸血鬼だって知って、あいつ“うそ~”って驚いてた」
「そうだよね・・・クラスに吸血鬼がいるなんて、やっぱ不気味だろうなあ」
「さいしょは怖がっていたけどさ、“でも志郎は彼と仲好いんだよね?”って気づいてくれて、“あいつ、お前の血を吸いたがってる”って言ったら、”志郎はいいの?“って言うから、”ぼくは構わないし、むしろ吸わせてほしいと思ってる“って言ったら、”志郎がいいなら私逢う“って応えてきた。まんざらお前のこと、嫌いなわけじゃないみたいだな」
でもその感情は、間に志郎が介在してこそ初めて成り立っているのだと、レイジはよくわきまえていた。
志郎の彼女を奪(と)るつもりはなかったし、たまたま彼女と同じ柄の靴下を履いていたのを見てあつかましくもねだった吸血に応えてくれた彼のことをないがしろにするつもりもなかった。

翌日の放課後、約束した校舎の裏手に、アヤコは現れた。
紺のプリーツスカートの下には、あのライン入りのハイソックスを履いている。
きりっとした縦のリブが走った白地のハイソックスは、発育のよい肉づきたっぷりなふくらはぎ――そういわれるのを彼女は好まなかったが――の印象を、ほどよく引き締めていた。
「やっぱり二人きりは怖いから、志郎そばにいてくれる?」
アヤコの希望を容れて、志郎は終始ふたりの傍らにいて、視線だけは逸らしつづけていた。

ライン入りの白のハイソックスに赤黒いシミを拡げながら、
アヤコは気前よく、若い血液を吸い取らせてゆく。
「だいじょうぶ?」
つかまえた足許から時折口を放してレイジはアヤコの顔を見あげたが、
「ううん、平気」
アヤコは気丈にもそう応えて、はらはらしながら見守る彼氏には、
「血を吸われるのって、意外にキモチいいね」
と、余裕の態度をみせていた。
やがて少女は顔色を変えて脚をふらつかせたけれど、
こんどはレイジのほうが夢中になってしまい、
めまいを起こしたアヤコが尻もちをついてしまうまで、彼女の脚を放さなかった。
うつ伏せになったアヤコの制服姿に、レイジはわが身を重ねていって、
左右の脚に代わりばんこに咬みつきながら、憧れていた靴下破りに熱中しつづけていた。

「やり過ぎたかな・・・」
われに返ったレイジは翌日、志郎に礼を言った後アヤコのことを気づかった。
「だいじょうぶ、うまく話しておいたから」
あの日現場で彼女が血を吸い取られてしまうのをはらはらしながら見つめていた親友は、
すっかりいつもの優しさを取り戻している。
「あいつ、言ってたぜ。
“あたしの血が気に入ったから、レイジはなかなか放してくれなかったんだね”
ってさ。
案外物わかりが良かったな。
まあ、俺の彼女だから、俺に似ているのかもしれないな。
お前の牙との相性も、なかなかいいみたい」
彼女の生き血を気前よく振る舞ってくれた親友は、意外にさばさばとした声色で、レイジにそういった。
「でもさ、お前・・・」
ちょっぴりだけ眉をひそめた志郎の顔を、レイジは怪訝そうにのぞき込んだ。
「血を吸った後、犯すだろ・・・?
 このあいだは、そんなことしないでいてくれたけど」
母親の血をレイジに吸わせるため家に招んだ志郎は、自身もしたたかに血を吸い取られたあげく、母親の首すじにかじりついたレイジがそのあとなにをしたのかまで、しっかりと見届けてしまっていた。
「ああ、あのときね・・・」
レイジは苦笑いしながらつづけた。
「大丈夫。アヤコが処女のあいだは、そういうことはしないから。」

ちょっとだけ安心した志郎は、レイジと別れた後にふと気がついた。
いつか俺がアヤコと結婚したら、アヤコは処女じゃなくなる。
そのときもしもレイジとつき合いつづけていたら――というか、そういう可能性が高いのだけれど――レイジはアヤコを抱くことになるの・・・?

一週間後。
志郎はレイジにねだられるまま、制服姿のアヤコを伴って放課後の教室にあらわれた。
「こいつのこと、咬んでやってくれないか?」
え?と、親友を見あげるレイジに、志郎はつづけた。
「お前、こいつの素肌に毒をしみ込ませたろ?
 あれ以来、彼女お前に襲われたがってるんだ」
たしかに――吸血鬼の習性として、牙から分泌する毒液がいくばくか、彼女の体内に流れ込んだのは間違いない。
毒液を植えつけながら、レイジがこう願いつづけたのも、間違いない。
――アヤコともう一度逢いたい。クラスメイトとしてではなく、吸血鬼として。

俺のことなら気にすんな、と、志郎はいった。
「お前が初めてアヤコのことを咬んだ時、異常にドキドキして昂奮しちまった。
 これっていったいなんなんだろう?って思った。
 お前が度胸をつけて、うちの母さんを襲ったとき、それが初めて分かった。
 ぼく本当は、おまえがアヤコを犯すのを視てみたかったんだ。」
アヤコは志郎の話を傍らで聞きながらも、頬を真っ赤にしながら俯いていた。
そして志郎に「ごめんね志郎、あなたの恋人のまま、この人に咬まれつづけるから」
というと、レイジの胸に飛び込んでいった。

その日この空き教室で行われたのは、決してレイプではなかった。
恋人まで認めた、彼の親友による女子生徒の処女破りの儀式。
明日もきっと、ふたりはおそろいのライン入りのハイソックスの脚を並べて、
渇いた喉を抱えた彼氏の親友に若い血液を振る舞うために、連れだって訪れることだろう。


(10月4日構想、今朝脱稿)

親友の吸血鬼に、「きみの彼女を襲いたい」とせがまれたとき。

2017年08月23日(Wed) 08:11:21

「田村の血を吸いたいんだけど」
親友の垣本にそういわれて、ぼくはドキリとした。
吸血鬼と人間とが同じ学校に通っているうちの高校では、垣本が吸血鬼だということはみんな知っている。
クラスの女子もなん人か、垣本に血を吸われているらしい。
だれとだれがだれの相手をしているのか・・・クラスのみんなはなんとなくわかっていても、決して口に出したりはしない。
どこか、男女の関係のようないかがわしいものを、みんな本能的に感じ取っていたから。

その垣本が、同級生の田村まよを襲いたいと、ぼくに相談を持ち掛けてきた。
どうしてぼくに?
それは、まよがぼくの彼女だって、みんな知っているからだ。

きのう下向したときにたまたま見かけたまよに発情して、危うく襲うところだったという。
というか、いままでの場合だと、確実に襲ってモノにしているはずのシチュだった。
でも彼がそこをこらえたのは、まよがぼくの彼女だと知っていたから。
「リョウジにだまってヤるの、良くないと思ってさ」
彼はそう言ってぼくのことを気遣ってくれたけれど。
ぼくはそれに対して、どうこたえればよいのだろう?
ただ・・・誰もが知ってる事実として、入学以来ぼくは、彼に血を吸わせてやっていた。

「垣本に血を吸わせてやってくれないかな」
翌日の放課後、ぼくは垣本と連れだって、まよのことを誰もいなくなった教室に残して、そんなことを言っていた。
まよの反応は、意外にノーマルなものだった。
「え・・・垣本くんに血をあげるの?リョウくんも、たしかそうしているんだよね」
体育の時間とかに、ぼくのことを呼び止めて、グランドの隅で短パンの下、ぼくの太ももを咬んでいるのを、
まよはなん度となく目にしている。

まよの脚に咬みつきたいんだって
まよの履いているタイツを、びりびり咬み破りたいんだって。
Hだよね?イヤだよな?
ぼくはいつしか、まよと垣本の仲を隔てたい気分になっていたけれど。
まよは薄っすらとほほ笑みを浮かべると――
黒タイツの脚をスッと、垣本のほうへと差し伸べてしまったのだ。

タイミングを合わせたように、そう、絶妙のタイミングで。
垣本のやつは、まよの足許にかがみ込んで。
まよのふくらはぎに、唇を吸いつけていた。
いつも、ぼくの履いているハイソックスを咬み破るときと同じように――

ちゅうっ。
唇が音を立てて擦りつけられる。
咬まれた瞬間。
まよはさすがに、ウッとうめいて目を瞑る。
長いまつ毛がピリピリと、ナーバスに震えた。
ちゅうっ・・・ちゅうっ・・・ちゅうっ・・・
重ねられてゆく吸血の音に、ぼくは本能的にうっとりとなる。
まるで自分が吸われているときみたいに。
まよの様子はと見ると、まよもウットリとした顔つきになって、
ところどころ咬みついてくる垣本が、脚を吸いやすいようにと、
黒タイツの脚をくねらせて、向きを変えてやっていた。
え。そんなことまで・・・
戸惑うぼくはそれでも、垣本が自分の彼女の血を吸い取るのを、やめさせることができなかった。
血を吸い取られてゆくまよの、ウットリとした顔つきから、目が離せなくなっていたのだ。

処女の生血をことのほか好む彼らは、吸血相手を軽々しく犯したりはしない。
でも、セックス経験のある女性は別だった。
げんに垣本は、うちに遊びに来た時に、母さんのことを襲って血を吸って、
腰を抜かして見つめつづけるぼくの前、母さんのスカートを腰までたくし上げて、
グイグイと力強く、征服してしまったくらいだから。
母さんを目のまえでモノにされたぼくと、垣本との力関係は、そのときから決定的に変わっていた。
でも彼は、あくまでぼくの意思を尊重して、決してぼくのことを貶めたりはしなかったし、
ぼくも彼の意思を尊重して、中学に通うようになった妹を呼び出して、セーラー服姿で襲わせてやったりしていた。

いずれ、まよとぼくとは、結ばれるだろう。
けれどもそれから少しだけ間をおいて、垣本もまよのことを犯してしまうのだろう。
その時まよは、いまみたいにウットリとした顔つきになって、
ぼくは目の前で犯される恋人の横顔を、やはりぼう然として、見守りつづけるのだろう。

紺のハイソックスを、咬み剥がせて・・・

2017年07月24日(Mon) 07:50:38

Y子とつき合うようになって、もう3か月になる。
つき合うようになってからは、毎日帰り道を一緒に帰っている。
下校途中にいつも立ち寄る公園は、ひっそりとした木陰が、そこかしこにあった。
公園の隅っこの木陰のひとつの下に入ると、
ひんやりとした空気の向こう、黒ずくめの男の影が、ぼくたちを待ち受けていた。

やつと待ち合わせるようになったのは。
つき合うようになって、二週間ほど経ったあの日のことだった。
初めてのキスを交し合った後。
お互い相手の目線を気まずそうに避け合って、
なにを話題にしていいかと戸惑っているときに。
「あんた、吸血鬼でしょ」
Y子が尖った声をだして、ぼくとは別の方角に出し抜けに話しかけた。
振り向いた向こうにいたのが、やつだった。
色っぽい雰囲気がかもし出されると、本能を呼び覚ましてしまう男――
その日家に帰って、初めて聞かされたのだ。
彼が出没したのは、母さんがまだ娘のころからで、
それ以来この公園が
「お嫁に行けなくなる公園」
って呼ばれるようになったのを。

「あんた、吸血鬼でしょ」
周囲の空気をがらりと変えるほどの尖った声に、男はくぐもった声でこたえてきた。
「すまないね。喉渇いてるんだ」
ぼくはとっさにY子のをかばうように立ちはだかって、でも目線をとらえられてしまっていた。
身動きできなくなったぼくは、そのまま首すじを咬まれて血を吸われて、
息をのんで立ちすくむY子のまえで、
短パンの下に履いていたスポーツ用のストッキングのうえから、ふくらはぎまで咬まれていった。
真っ白なリブ編みのストッキングのうえ、赤黒いシミが、じわっと拡がる。
つぎは、Y子の番だった。
「なによ」
白い目で相手をにらみ返すと、それでもやつはたじろがず、彼女との距離をつめた。
失血のあまり尻もちをついてしまったぼくは、もう手も足も出なかった。
ちく生。ちく生。やめろ。やめるんだ・・・
心の叫びは、通じない。いや、やつは明らかに気づいているのに、まったく無視された。
Y子は制服のブラウスの両肩をつかまれて、無抵抗に首すじを咬まれた。
やつが咬みついた瞬間、肩までの黒い髪がゆらっとするのを、ぼくは見た。
ちゅう~っ・・・
Y子の血を吸いあげる呪わしい音が、ぼくの理性を狂わせる。
やつはしんそこおいしそうに、Y子の血を吸い取っていった。
こんどはY子が、尻もちをつく番だった。
尻もちをついた後に狙われるのは、ハイソックスのふくらはぎだと、自分の経験でわかっていた。
けれども、どうすることもできなかった。
通学用の、濃紺の無地のハイソックスのうえ、やつの呪わしい唇が、忌々しいほどしっくりと、密着してゆく。
Y子は気丈にも、表情を変えずにやつのことを睨みつづけていた。
哀切な声で助けを求められるよりか、ずっとましだった。
彼女は自分にふらちな行為を働く吸血鬼をさいごまで睨みつづけながら、
紺のハイソックスを恥知らずな唇にいたぶり抜かれ、咬み剥がれていった。

「週に二回だけ、きみの彼女をお借りする。待ち合わせ場所は、ここ」
男が手短に、これからの三人の関係について説明するのを。
失血で身動きできなくなったぼくたちは、ただ虚ろな目になって、聞き入っていた。
「わしのことは、周りの人間に話してもよいし、話さなくてもよい。
だれの自慢にもならないし、だれの恥にもならない。
きみたちの履いている靴下を愉しませてもらうが、弁償はしてあげよう」
「弁償なんか、いらないから」
Y子がぶっきら棒に、初めて口を開いた。
咬みたければ、咬めばいいじゃん――いつもの突き放したような言い方を、取り戻していた。
「それから、あんた」
Y子は吸血鬼に対するのと同じくらい尖った目線を、こちらに据えた。
「あたしのこと、守れなかったんだから――責任取りなさいよね」
「責任って・・・」
「あたしのことを必ず、ここまで連れてくること。
 貧血になったらちゃんと介抱して、家まで送り届けること。
 こいつがあたしにやらしいことをしても、妬きもちをしないで受け入れること――
 いいわね?」
一方的な申し渡しを、やつはクックッと笑いながら聞き、
「そうするがいいだろう」
と、ぼくに言った。
女に逆らうな――男どうしの忠告なのだと、ぼくは悟った。

それ以来。
ぼくたちは、公園の寄り道をくり返している。
「履いてきてあげたわよ。紺のハイソックス。咬まれるの迷惑なんだけど」
いつもぶっきら棒な口調で、相手を見あげるY子。
すすんで自分からベンチに腰かけて。
ぼくのことも、すぐ隣に腰かけさせて。
スッと伸ばしたふくらはぎのうえ、ずり落ちかけていたハイソックスを、きちっと引き伸ばして。
「好きにしなさいよ」
まるで脅しつけるような単刀直入な声色で、やつを見あげる。
やつは恥知らずにもぼくの前、ククク・・・ともの欲しげな含み笑いを洩らしながら、
Y子の足許にかがみ込んでゆく。
よだれの浮いたべろが、Y子のハイソックスになすりつけられるたび。
ぼくはその様子を、ドキドキとして見入っていて、
Y子がそんなぼくの横顔を盗み見るのも構わずに、
濃紺のハイソックスのうえを這いまわる唇のあとを、半透明のよだれが尾を引いてゆくようすを、目で追いかけてゆく。
さきに咬まれたぼくの前、
貧血で手も足も出なくなった傍らで、
制服姿のY子は、濃紺のハイソックスをくしゃくしゃになるまで咬み剥がれていって、
それでも表情を変えずに、やつのいやらしいやり口のいちぶしじゅうを見届けてゆく。

やつが立ち去ったあと。
Y子はじっとぼくを見あげて、いった。
「ね。どっちがさきにあたしを抱くの?」
え・・・?
「あなた、さいごまで責任取るんだよね?」
あ、ああ。もちろん・・・
応えかけたぼくに、Y子はなおも、たたみかける。
「だったら、あなたが決めなさいよ。
あなたが先にヤるのか。
自分の目の前で、あいつにあたしの処女を奪わせるのか」
Y子の言葉は、短刀のように、ぼくの心臓をぐさりと突き刺した。
ぼくが先にヤるのか。
やつにさいしょにヤらせるのか・・・
Y子の処女を、目の前で奪われる――
その想像にぼくは目をくらませる。
グレーのプリーツスカートのすそからにょっきり覗く、Y子の太もも。
紺のハイソックスに包まれたふくらはぎも。
むき出しになった太ももも。
もう、大人の女の肉づきを帯びていた。

制服を着崩れさせて・・・

2017年07月01日(Sat) 05:33:48

「着崩れしてないかな、制服」
振り乱した髪を掻きのけながら、きみはぼくにそう尋ねる。
微妙に曲がった胸元のリボンや、ブラウスのえり首を直してやると、
その傍らできみは、ずり落ちかけたハイソックスを、きちっと引き伸ばしている。
女の子の身体を欲しい。
そうせがんだぼくのために、髪振り乱し、制服を着崩れさせて、応じてくれた、きみ。
「どお?よかった?」
初めてぶつけ合った情熱に息はずませるきみのことを。
かぎりないいとおしさに、部屋を出際にギュッと抱きしめていた。

「着崩れしてないかな、制服」
振り乱した髪を掻きのけながら、きみはぼくにそう尋ねる。
ブラウスのえり首につきそうになった血を、ハンカチでそっと拭い、はだけたブラウスの釦をひとつひとつはめてやると、
その傍らできみは、真っ赤に染まったハイソックスを、きちっと引き伸ばしている。
きみが吸血鬼に襲われるところを視たい。
そうせがんだぼくのために、髪振り乱し、制服を着崩れさせて、吸血鬼の欲望に屈していった、きみ。
「どお?愉しめた?」
ちょっぴり不安げに、曇ったほほ笑みをうかべるきみのことを。
やはりどこまでもぼくのものだ・・・そう囁きながら、ギュッと抱きしめていた。


あとがき
困った嗜好の持ち主だった彼。
そんな彼でも、とことん愛されているという自負があるから、
ほかの男に抱かれても、彼女は彼の目の前でも、はじけることができてしまう。

まな娘の吸血。 2

2017年06月06日(Tue) 04:34:53

娘さんに、お手本を見せたいのぢゃろう?
うろたえる美香を相手に、吸血鬼は余裕たっぷりだった。
美香を抱きかかえた腕はそのまま彼女の胸に伸びて、
さりげないまさぐりを、さっきからくり返している。
男が30代の人妻の生き血以外のものまで欲していることが、
居合わせたカツヤの目にも、露骨に伝わった。

「奥さんと仲良くさせていただく。よろしいね?」
男の問いにカツヤが目を背けると、
「いや失礼、野暮な問いでした」
と、意外にさっぱりと矛を収めた。
だが、美香の理性に対する挑発については、男はさっぱりとしてはいなかった。
ひどくネチネチとして、とにかくしつっこかった。
はだけたブラウス越しに。
たくし上げられたタイトスカートの奥に。
巧みなまさぐりを揉み込まれて。
美香はさっきから不覚にも、ちいさな声をあげつづけている。

吸いつけられた唇の裏側に隠れた牙が、美香の穿いているストッキングを咬み破るのを目の当たりにしながら。
「きっと楽しいんだろうね。すぐ破けるしね」
真理はしらっとした目をして、母親の受難を見つめつづけていた。
「ママの穿いているストッキング、あのひと最初から狙っていたんだね」
少女の目線は冷静で、しかも的確だった。
「あたしのハイソックスよりも、おいしいのかな」
そう呟いたときだけは、ちょっと不満そうに、唇をすぼめて自分の足許に目を落とす。
「そんなことはないよ――そこは別腹だって、あいつが言っていた」
「ふうん・・・やっぱりいやらしいんだ」
冷ややかな目線の持ち主になった少女は、言葉づかいさえ大人になっている。

「ストッキング穿くような大人になるまで・・・がんばるんだぞ」
いったいなんをがんばれというのだろう?自問するカツヤに、少女はいった。
「ウン。お父さん、真理がんばるよ。がんばって大人になって――あたしママみたいに不倫するから」
どきりとしてわが娘をふり返るカツヤに、少女はフフッと笑ってみせた。
傍らで犯され、不倫の愉しみに耽っている母親のことなど、眼中にないといわんばかりに。

まな娘の吸血。

2017年06月05日(Mon) 07:53:01

きれいなお花がいっぱい咲いているお庭の真ん中に、白いテーブルとベンチ。
ピンクのトレーナーにデニムのスカート姿の真理は、トランプ遊びに興じている。
相手の男は祖父よりも年配にみえる、顔色の悪い吸血鬼。
ふさふさとした黒髪から覗く真理の白い首すじを、
男がもの欲しげにチラチラと盗み見ているのが、父親の目からも露骨にわかった。

真理がこちらに気づいて、白い歯をみせる。
無邪気にはしゃいだ笑顔だった。
「パパ~?紹介してあげる。真理が仲良くなった吸血鬼の小父さん。
 この街に来て初めて仲良くしてくれたのよ。
 お礼に、トランプに負けたら血を吸わせてあげる約束したの。
 パパは真理のこと、応援してくれるわよね?」
少女の口ぶりに、切迫感は少しもなかった。

「やだー、勝っちゃった。小父さま弱いのねぇ」
意図せぬ勝利に戸惑いながら、少女はちょっとだけ、吸血鬼の小父さまに同情の視線を送る。
小父さまはどうやら、本気でトランプの勝負をしていたらしい。かなりがっかりした顔をしている。
真理は、そんな小父さまをいっぺんで力づける方法を心得ていた。
「いいわ、勝たせてくれたお礼に、真理の血を吸わせてあげる♪」

ちょっとだけだよ。痛くしちゃイヤよ。
真理はこちら側のベンチに移って来た小父さまを、ドキドキとした流し目で見つめる。
「じゃあお父さん、いただくよ」
住むところをなくして、流れ流れてたどり着いた、この街には。
妻も娘も彼らのために生き血を餌食にされるというのを、承知のうえで訪れたはず。
「いいわよ。仕方ないものね」
妻もそういって、仕方なしに頷いていたはず。
真っ先に彼の毒牙にかかった父親は、理性をすり替えられて、家族の血を悦んで捧げると誓ったはず。
けれども、やはり――
飢えた吸血鬼にか細い肩を抱き寄せられる娘を前に、心平らかではいられない。
吸い残されたわずかな血が、身体じゅうを駆けめぐり、
干からびかけた血管のなかで、毒々しい脈動をはずませる。
同じ血を宿すまな娘もまた、あの牙を埋め込まれてしまうのだ――
そうと知りながら、カツヤは地に根が生えたように、動くことができなくなっていた。
あれよあれよという間に・・・真理は魔性の猿臂にギュッと抱きすくめられて、
首すじを咬まれていった――

ほんのふた口、み口・・・
そんな吸血だった。
それでも真理は頬をほてらせ目を輝かせて、「すごい。すごい・・・」と、くり返していた。
男がなおも飽き足らず、真理の太ももを咬もうとして、デニムのスカートを引き上げると、
さすがに少女らしい潔癖さで、「ダメ!エッチ!」と、スカートを抑えたけれど。
にょっきり伸びたふくらはぎに、ねずみ色のハイソックスのうえから吸いつけられてくる唇は、こばもうとはしなかった。
「脚イタズラするの、好きなんだね・・・?」
お気に入りのハイソックスによだれをジュクジュクとしみ込まされるのを、顔をしかめながら見おろしていたけれど、
ひと言「いいよ・・・」と、囁いて。
真新しいハイソックスを、惜しげもなく咬み破らせてしまっていた。
圧しつけられた唇の下、赤黒く染まるシミが拡がるのを、面白そうに眺めていた。

「こんどは私の番・・・ね?」
カツヤの傍らには、いつの間にか妻の美香が佇んでいる。
「そう・・・だね・・・」
煮え切らない夫の態度に、美香はわざとイタズラっぽく笑うと、夫の頬をつねりながら、いった。
「奥さんの浮気も、潔く認めなさい」
ミセスの女を相手にするとき、吸血鬼は“男”としても振る舞うときいていた。
けれどもいま、まな娘の吸血を実見してしまった男には、もう理性は残されていなかった。
「・・・はい。」
妻の言いぐさに素直に呟きかえすと、美香はウフフンと満足そうに笑う。
「なにも感じないでいてあげるつもりだけど・・・乱れちゃっても許してね」
カツヤの胸のなか、妖しい翳りがザワザワととぐろを巻いていた。

きみはよくがんばった。

2017年05月27日(Sat) 07:33:22

放課後の学校の廊下をふらつきながら、直子はできるだけまっすぐ歩こうと努めていた。
すぐ傍らには、自分の親よりも年配の、男の吸血鬼。
それが直子の制服姿に抱きつかんばかりにしてまといつき、折々抱きすくめては、飢えた唇を首すじに吸いつけてくる。
そのたびごとに。
少女の素肌は蒼白く透きとおり、歯がみをする唇の奥は、キリキリと軋んだ。
「良い加減、観念したまえ」
諭すような囁きをいっさい拒否して、少女は決然とかぶりを振りつづけ、
ひと吸いされるたびに鈍くなる足取りを保とうと、懸命に足を踏ん張りつづける。

「きょうはきみの血を吸わせなさい。それから小父さんと、賭けをしよう。
 床におひざを突いたら、きみの履いているストッキングをイタズラさせていただくよ。
 さあ、きみは途中でおひざを突かずに、家まで戻ることができるかな」
すでになん人ものクラスメイトがその賭けに一方的に応じさせられて、
校門にすらたどり着くことができずに廊下にひざを突いてしまっていた。
賭けに勝つと、吸血鬼はそれ以上女の子を責めたりせずに、「お姫さま抱っこ」をして空き教室に連れ込むと、
黒のストッキングに透きとおる足許に息荒く唇を近寄せていって、
あげくの果てには、ひざ小僧がまる見えになるまで、むざんに咬み剥いでしまうのだった。

直子は今週になって二度、彼女のクラスメイトが連れ込まれるのを耳にした。
ふたりきりの教室は、立ち入り禁止の札が教師によって降ろされていて、少女たちにはどうすることもできなかった。
しばらく経つと、吸血鬼だけがひとり教室から出てきて、
相手の女子生徒の脚から抜き取ったストッキングをぶら提げて、ほくほくとした顔つきで立ち去ってゆき、
直子は息の細くなったクラスメイトをほかの生徒たちと一緒に抱えるようにして、保健室に連れていったのだ。
それが、月曜と水曜のことだった。
一日おき・・・
そしてきょう、金曜には、直子自身の番がまわってきてしまったのだ。

いやだ・・・いやだ・・・そんなふうにもてあそばれたくないっ。
逃げるのよ。応じないのよ。相手にしないのよ。
なんとしても、せめて校門までは、たどり着いてみせるから・・・
意地になって歩みを止めない少女に、吸血鬼はなおもしつようにまとわりついて、
首すじを吸われるたびに、強い眩暈を感じながらも、献血にだけは応じないわけにはいかなかった。
この学校は吸血鬼を密かに受け容れていて、生徒たちの献血行為をむしろ後押ししているくらいだったから。

けれども、喪われた血液の量がかさむにつれ、直子の歩みは目に見えて鈍くなって、
この放課後の遅い時間――早く帰ろうとしたのに、教師が直子に自習を命じて、意図的に遅くまで残らせたのだ――人通りもまれな廊下を舞台に、絶対に不利な賭けをつづけるのは、困難をきわめていた。
「きみはよくがんばった。ほんとうにえらかった。でも、あきらめも肝心だよ」
男はしたり顔を近寄せて、直子をいたぶるようにそんなことを囁きかけてくる。

くっ・・・悔しい・・っ!どうして私なのよっ。
少女は歯噛みをして、泣きべそを掻いて、それでもとうとう一歩も歩けなくなっていた。
「さあ、約束どおりだ。薄地の黒のストッキング、たっぷりと愉しませていただくぞ」
「お願いやめて!」
少女の願いも空しく、男は卑猥な唇を、ひざ丈のプリーツスカートの下に吸いつけてゆく。
スカートの下に身に着けた黒のストッキングが、不埒な唇を這わされて、いびつな弛みを走らせた。
「イヤだっ、イヤだっ、まだ歩くんだからっ。こんなことじゃ、お嫁に行けなくなっちゃうっ」
少女は泣き叫びながら、意識を彼方に持っていかれて、引きずり込まれるように姿勢を崩していった。
男のなまの唇が、なにかのご褒美にありつくように、それは嬉し気に、ストッキングを履いたふくらはぎを撫でまわす。
その忌まわしい感覚に打ち震えながら、直子の意識は遠くなっていった。


ふと目が覚めると、直子は自分がひどく不安定な姿勢でいることに気がついた。
身を横たえて、脚をぶらぶらさせている。
いったいどういうこと?
状況を理解するのに、数秒かかった。
直子はさっきまで彼女の血を吸い取っていた吸血鬼の腕に抱かれて、「お姫さま抱っこ」されていたのだ。
「ちょ、ちょっと!どういうこと!?恥ずかしいわ・・・ここ、街の商店街じゃないのっ!!」
うろたえる直子を、男はたったひと言で黙らせている。
「声をたてるとみんな振り返るぞ」

お姫さま抱っこの状態は、直子の家の前までつづけられた。
けれども貧血がよほどこたえたのか、いちど黙ってしまうともう、直子は口を開く気力もなく、ただ男の腕に身をゆだねて、脚をぶらぶらさせつづけているしかなくなっていた。
ようやくおろしてもらえたのは、玄関の前。
意外にも。
直子のストッキングは、裂け目ひとつ走らせてはいなかった。
「あんまり嘆き悲しむんでね、気がそがれた」
吸血鬼はむしろ、迷惑そうな顔をした。
「迷惑なのは、私のほうです」
直子は自分の血を吸った相手のことをまともに見つめ、そう詰った。
「わかっている。感謝している。ありがとな」
意外なくらいにすらすらと吐かれた感謝の言葉にどう答えていいかわからずに、直子が口ごもっていると。
吸血鬼は直子に背を向けて――あっという間に姿を消してしまっていた。
「来週も賭けをしような」
耳の奥にそんな囁きが、こびりついている。


「私の番は金曜って、決まっているのかな?」
ちょっぴり皮肉を交えて投げた言葉を、吸血鬼はごくまじめに受け止める。
「火曜と木曜は塾。予習と復習が大変なんだよな?」
いちおう、こちらの都合は勘定に入れてくれているらしい。
「毎日、お友だちと帰ることにしてるのよ」
「きょうは、だれもいないようだな」
そう――いつも帰りがいっしょの京子も里美も、何やかやと用事をかこつけて、先に帰ってしまっていた。
「きっと、気を利かせてくれたんだな」
「あなたの差し金ね、ひどい!」
直子は懸命な声で相手を詰ったが、手を引かれるままにいつの間にか、空き教室に引き入れられてしまっている。

教室でふたりきりになると、男の目つきが獣のそれに変わっていた。
激しく抱きつかれ、おとがいを仰のけられて、つぎの瞬間ガブリとやられてしまっていた。
アッ!
声をあげるいとまもなく、直子の血はゴクゴクと音をたてて飲まれ始める。
幸い、制服のえり首に血は撥ねていないようだった。
手近な椅子に腰を落とし、その椅子にも座りつづけかねて、いつしかひざ小僧が床すれすれになっていた。

ハッと気づいて体勢を立て直し、薄地のナイロンに包まれたひざ小僧が床に突くのを回避する。
けれども、男の吸血は、以前にもましてしつようだった。
目が眩み、身体の力が抜け、知らず知らずひざを突きそうになる。
逃げられる見込みは皆無――もうどうしようもない。
直子は悔し気に唇を歪め、教室の床にひざ小僧を突いていた。

一時間後。
窓の外は、薄暗くなりかけていた。
吸血鬼は仰向けになった直子のうえになおものしかかり、首すじに着けた傷口にあやされた血潮を、意地汚く舐め取っている。
なん度も気を喪いかけたけれど、そのたびに男は手かげんをしてくれて。
時にはひと休みをしながら、すこしでも少女のしなやかな身体からうら若い血液をむしり取ろうとしてか、
なん度もなん度も唇を吸いつけてくる。
意外にも。
男は、直子のストッキングを咬み破ろうとしなかった。

初めてひざ小僧を突いてしまったときには、ほんとうに観念した。
じじつ、男はすんなり伸びた直子のふくらはぎに唇を吸いつけてきて、ストッキングの上からふくらはぎをチュウチュウといたぶり始めた。
無作法なやり口に直子は悔しそうに歯がみをしたけれど、
ストッキングを破かれるのを嫌がるのを察してか、男が舐めるだけに終始しているのに気がつくと、
口では相手を罵り、露骨に嫌がりながらも、ストッキングを履いたままの脚を、くまなく舐めさせてしまっていた。
やがて男は落ち着きを取り戻し、ふたりのあいだのつかの間の静寂が訪れた。

直子がおずおずと口を開いた。
「ストッキング、破かないでくれたのね」
「あんまりあんたが、嫌がるんでな」
「少しは見直した」
「それは嬉しいね」
あの・・・直子はもっとおずおずと、口を開いた。
「他の子のときには、いつも破ってるの?」
吸血鬼はウフフ・・・と、思い出し笑いを泛べた。
質の悪そうな含み笑いだったが、いままでほど怖くは感じないと、直子は思った。
「きのうは京子、おとついは里美が破かせてくれた」
「えっ」
ふたりとは、大の仲良しだった。
「仲良し三人娘を三人ながらモノにしたくてね、あんたのクラスの担任に頼み込んだんだ。なんとか仲良くなりたいって」
「ふーん、じゃあ、京子とも里美とも、仲いいんだ」
「そうだね。もう2~3足破らせてくれてるくらいだからね」
直子はちょっとの間だけ、押し黙った。
そして、いままでよりはちょっとだけ強い口調で、いった。
「こんどからあたしのも、破っていいから」

う、ふ、ふ、ふ、ふ。
有頂天な含み笑いが、少女の耳の奥に、忌まわしく満ちた。
男の術中にまんまとはまって、気前よくストッキングを破らせるはめになりながら。
相手の下品なやり口に、精いっぱいの罵り文句を思い浮かべながら。
それでも少女は、脚を引っ込めようとはもうしなかった。
皮膚の奥まで突き入れられてくる牙が、むしょうに小気味よい。
なよなよとした薄地のストッキングを容赦なく咬み剥いでいかれて、皮膚が外気にふれてすーすーするのさえ、不思議な解放感になっていた。
堕落させられた。でも、それも悪くない・・・か。
直子は不覚にもへらへら笑いながら、足許をなまめかしく染めていた黒のストッキングがいびつによじれてゆく有様を、面白そうに見つめ続けていた。

博愛。3

2017年05月27日(Sat) 06:38:46

「最終的には僕、塔子さんを奪(と)られてしまうんだよね・・・?」
タカシはいつものようにハイソックスを履いたふくらはぎを吸血鬼に咬ませながら、訊いた。
声がここひと月かそこらで、ひどく虚ろになっている。
自分自身の生命力さえ吸い尽されかねなかったのに、彼が気にしているのはもっぱら、同級生との行く末だった。
「きみが僕の血を吸い尽して、僕の代わりに塔子さんをモノにする・・・そういうことなんだよね・・・?」
「きょうは、やけにこだわるね」
老吸血鬼は少年の足許から牙を引き抜くと、自分を見おろしてくる視線と正対した。
まだ拭われていない口許には、吸い取ったばかりの血潮がチラチラと輝いている。
「若ぇひとの血は、旨めぇ」
男は下世話な口調になって、吸い残したタカシの血を、手の甲で無造作に拭った。
「盗(と)りはするが、奪(と)りはせぬ」
男の言いぐさがタカシに通じなかったのは、もっともなことだった。
「そんなことよりもお前、塔子にひどいことを言ったそうだな」
陰にこもった声色に、少年はどきりと胸を衝(つ)かれた。

「きみはいつから、そんなにふしだらになったんだ?」
投げつけた言葉は意外に深く、塔子の胸に突き刺さったらしい。

少年が訪れる少し前、塔子は独りこの邸を訪れて、
「好きなようにしてください!」と、言ったそうだ。
好きなように・・・しちゃったんです・・・か・・・?
少年は恐る恐る、怖い答えの待ち受けていそうな問いを口にする。

阿呆。
吸血鬼はうそぶいた。
「きょうのあの子の血は、不味かった」
「どういうことですか」
少年はやや憤然として、訊いた。
恐怖心をなだめすかして一人この邸を訪問し、
苦痛をこらえてせっかく血液を提供したのに、その言いぐさはないだろう、と、少年の顔が言っている。
「不味さの原因を作ったのは、お前だ」
なぜだかわかるな?――これ以上言わせるなと言わんばかりに、吸血鬼は少年を睨んだ。

「お仕置きだ。あの子から摂れなかったぶんの血も、あんたからいただく」
チュウチュウと音をたてて吸い取られる血液が傷口を通り抜けてゆくむず痒さに、少年は歯噛みをくり返した。
それでも彼は、いつも以上に気前よく、美味いと褒められた若い血液を提供し続けている。
どうやら塔子にとって、自分は必要な存在らしい、ということだけは伝わったから。

嫉妬は血の味を不味くする。失望や不安もまた、血の味を不味くする。
どうせなら、吸い取る血が美味な状態にわが身を保て。
お前はあの子と結婚する。
そのあとでわしに――
みなまで言わせずに、少年はただ、強くかぶりを振りつづけた。

十年後。
華燭の典をあげたふたりのまえから、吸血鬼は姿を消した。
処女のうちは犯すことなく血を吸いつづける吸血鬼は、セックス経験を持った婦人には容赦なく襲いかかり、肉体関係まで遂げてしまうという。
その機会が訪れる前に、彼は乙女ではなくなった女と、嫉妬深いその夫の前から立ち去ったのだった。


あとがき
さいごは、「博愛」ではなくなったような。。 (^^ゞ
処女のあいだは犯されることなくその生き血を吸われつづけたとしても、
結婚後初めて逢ったときには、犯されてしまう運命――
吸血鬼はもちろん、少女も少年も、そうなることは察していたはず。
ふたりの愛を壊すことになりかねない立場を知った吸血鬼は、自ら身を引きます。
このお話が「博愛」として完結するためには、やや時間が必要なみたいです。

博愛。2

2017年05月26日(Fri) 07:54:40

血を抜き取られた若い身体と心とは、心地よい空っぽ状態。
タカシは床に尻もちを突いたまま、窓の向こうの青空を見あげる。
背後のドアの向こうで行われている行為から、ひたすら注意をそらすために。

かな子と2人連れだってやって来た、吸血鬼の館。
クラスの男女が1人ずつ、当番で行われる献血行為は、すでになん回になったことだろう?
「博愛の献血行為、なんですよね?」
両家の育ちで人の汚れなどこれっぽっちも意識にないらしい連れの少女は、
制服姿の肩を並べてここを訪れるたび、確かめるように彼に訊いた。
温かな人柄をたたえた柔らかなまなざしがひどく眩しくて、少年はそのたびごとに無口になる。

彼女とつきあうようになったのは、この訪問がきっかけだった。
もしかすると感謝をしなければいけない相手だったが、
さっきまでタカシの血をしつように吸い取った吸血鬼に対して、少年は複雑な思いを抱いている。
たんなる栄養摂取にしては、男が少女の素肌に執着するようすは、明らかに不自然だったから。

それでも少女は博愛の行為をやめようとはしなかった。
男のあらぬ想いを薄々察しながらも、賢明にもそれに気づかないふりをして、応接をくり返す。
連れの少年が心に秘めた複雑な思いに対しても、きっと同じように察しながらも、気づかないふりをしているのだろう。
ドアの向こうで、制服姿を凌辱されている少女はそれでも、礼節を尽くして男と接し続けているに違いない。

男とふたりだけのとき、彼は少年に囁いた。
――身をもってわしのことを救ってくださるのじゃ。あのひとの名誉はなんとしても、わしが守る。
同じように。
僕は彼女の名誉を守ることができるのだろうか?
タカシがそんな想いを胸にふたたび青空に目をやったとき、
あぁ・・・
少女が不覚にも洩らした声が、ドアの向こうから洩れてきた。

博愛。

2017年05月26日(Fri) 07:40:27

「献血に伺いました」
制服姿の少女は、おっとりとほほ笑んで、礼儀正しく一礼する。
相手は醜悪な、老年の吸血鬼。
けれども少女は、博愛を旨とする学園の優等生らしく、ひたすら礼節正しく相手に接しつづけていた。
その身に宿す若い血潮が、この老人の損なわれた心身を癒すことを、信じて疑わなかったのだ。

「ストッキング、今日も破かれてしまうのですか?」
その問いを発したときだけ彼女は、ちょっとだけ眉を顰めた。
処女らしい羞じらいと潔癖な嫌悪感が、彼女の意思を裏切ってその整った目鼻立ちをよぎる。
応えない相手の態度に、自らの質問のはしたなさを感じてか、少女は顔を赤らめながら、ベッドのうえにうつ伏せになっていった。
制服のプリーツスカートの下、黒のストッキングの薄い生地越しに、大人びた白い脛がなまめかしく映える。
吸血鬼は目の色を変えて少女の足許にかがみ込んで、好色な唇を吸いつけていった。

自らの行動が博愛の精神に通じると、信じて疑わない少女。
相手の純真を知りながらも、己の劣情を抑えかねる老吸血鬼。
小父様、お行儀よくないわ――
そう言いたいのをこらえて歯がみをする少女の脚を抑えつけて、
チュウチュウと音をたてて少女のふくらはぎを吸いつづける吸血鬼は、
薄手のナイロン生地に淫らな唾液をヌルヌルと、しみ込ませていった。

「りくつ子」。

2017年03月08日(Wed) 07:16:29

りく子という名前を「りくつ子」と陰口たたかれるほど、その子は理屈っぽい子だった。
万年学級委員の優等生。
どこのクラスにも、必ず一人はいる女子生徒。
グレーのブレザーの制服が、ほかの子の着ている制服とはべつの生地でできているのかと思うくらい、
そのたたずまいはいつもモッサリとしていて、齢不相応な分別くささを漂わせていた。
黒ぶちメガネの奥の瞳は深い輝きを秘めていて、
左右にくっきりとわけたおさげの黒髪は、年ごろの少女らしいつややかな輝きを帯びていたけれど、
そんなことすら、周囲のものの目には留まらなかった。

学校が吸血鬼に占領されて、クラスの女子が1人ずつ、咬まれていったときも。
りく子の番は、なかなか回ってこなかった。
そのりく子に目を留めたのは、吸血鬼のなかでも頭だった、50年配の男。
りく子の両親よりも年上だった。
担任の女教師はもちろん、校長夫人さえモノにしたとうわさされた彼は、
放課後そそくさと下校しようとした彼女を、あえて教室に引き留めていた。
授業の終わったあとの教室は毎日、血を吸い取られる女子生徒のうめき声に満たされていて、
さながら吸血鬼のためのハーレムと化していた。
そんな光景を、堅物のりく子が目にしたがらないのも、当然といえば当然のなり行きだったが、
男はそんなりく子のわがままを、決して許そうとはしなかった。

クラスメイトたちが教室の床に組み敷かれて、
制服のスカートのすそを乱しながら首すじを咬まれてゆく光景に、
決して視線を向けまいとかたくなに目を背けながら、
彼女もまた、白い首すじを咬まれていった。

りく子が「りくつ子」なのは、じつは照れ隠しだったのだと、クラスのみんなが知ったのは、その日以後のことだった。

休みの日に出かける時さえ制服を着ているという彼女は、
週末になると咬まれる以前と同じように制服姿で外出をして――行き先はいつもの図書館や美術館ではなくて、男の邸だった。
男が制服姿の少女を好むと知って、やはり外出は制服で通した彼女。
分別くさいしかめ面をかたくなに崩そうとはせずに、
「あたしのは慈善事業だから」
そういってはばからなかったという。

しかめ面のまま、男の邸を訪れ、
吸血行為が終わると礼儀正しく一礼して、来た時のまんまのしかめ面で黙々と辞去していく彼女。
そんなかたくなな態度を咎めもせずに、男は三日にいちどはりく子を呼び寄せたし、
りく子も唯々諾々と、呼び出しに応じていった。

結婚前に男に肌身を許すなど、想像さえしたことのなかった彼女が、
なぜかクラスでの処女喪失第一号の栄誉に輝いたとき、みんながびっくりしたけれど。
自分の秘密がクラスじゅうに知れ渡ったと気配で察した彼女はやはり、言い放っていた。
「だって、慈善事業だから」

同じ種類の体験?

2017年02月27日(Mon) 08:03:55

お願いだから・・・お願いだから、痛くしないでね。
そう呟きながら。
キュッと目を瞑って、眉をピリピリと逆立てながら、彼女は吸血鬼に咬まれていった。
おんなじように、いまばぼくの腕のなか。
キュッと目を瞑って、眉をピリピリと逆立てながら、彼女は初めての刻を迎えようとしている。
お前のしようとしていることと、わしがいましていることと、どれほど違うというのかね?
ヤツはたしかに、そういった。
ぼくは今、ヤツの欲望を否定できない。
ヤツもきっと、彼女を征服することが、たまらなかったにちがいない。
ぼくの目の前で・・・・という、付加価値までついていたのだから。
ぼくは今、同じ本質の体験を彼女と遂げて、やっと彼に同意できるようになった。
きっと彼女は、目ざめてしまったもうひとつの歓びを求めて、彼と逢いたいとぼくにせがむのだろう。
気になるのなら、覗きに来てもかまわないから・・・と。
ぼくはたぶん、その濃い誘惑を、拒否できない。

真冬のデート

2017年02月12日(Sun) 06:24:17

やっぱり、いやらしいよぅ。
セーラー服の少女は天を仰ぎながら、ため息交じりにそう言った。
けれども、足許にかがみ込んできた吸血鬼が、黒のストッキングのうえから唇を吸いつけてくるのを、それ以上咎めようとはしなかった。
色白の頬に、ルージュを刷いていないのにまっかな唇が、齢不相応になまめかしい。
細い眉毛を、ちょっとだけ悔しそうに逆立てて。
よだれに濡れた唇が、クチュッと音をたてて薄地のナイロン越しに圧しつけられてくるのを、
ベンチの座席の端をギュッと握りしめて、目をつぶってこらえた。

あー・・・
眩暈をこらえながら。
少女は上半身を頼りなさそうにぐらぐらと揺らつかせていた。
黒のストッキングは両脚とも、派手な裂け目を走らせてしまっている。
男はよほど、少女の履いているストッキングに執着しているらしい。
それでもまだ、好色な舌を擦りつけるのをやめようとせずに、薄地のナイロン生地をふしだらに皺寄せてゆく。
いよいよ少女の身体がバランスを喪った瞬間――
おっと。
目にもとまらぬ素早さで男は身を起こし、少女の傍らに座り込んでその身を受け止めた。
分厚い掌にがさつな手つきで髪を撫でられながら。
少女は口を尖らせて、「ばか」と言った。

連れだってたどる家路。
少女の足許はふたたび、真新しいストッキングで、隙なく染められている。
貧血が収まるまでベンチで横になっている間。
舐めるのはいいよ。でも、破かないで。
ちょっと切なげな顔をした少女の願いを容れて、男はチロチロと舌を這わせつづけていた。
はた目にはわからないけれど。
知的な墨色をした薄地のナイロン生地には、男の好色なよだれがたっぷりと、しみ込まされている。

家の玄関のまえで、男はコートの襟を立てたまま、言った。
じゃあね。
うん。
少女は濡れた瞳で、男を見あげる。
男はそんな少女のか細い肩を、優しく優しく抱きしめる。
黒マントの吸血鬼が、獲物を包み込んでしまうように、身体と身体を寄り添わせて。
少女はこの時を待っていたかのように、幸せそうにほほ笑んで、男に身をゆだねた。
木枯らしが控えめに吹き抜けるなか、ふたりはじっと佇んで、しばらくのあいだ、そうしていた。娘の帰りを待っている家族の立ち居振る舞いが、気配となって外に伝わってくる。
それはは、外でのふたりのようすを知りながら、わざと知らぬふりをしているかのようだった。

おいしかった。
男がぬけぬけと言うと、
女は白い目で男を睨みあげ、もういちど「ばか」と、言った。
けれども、玄関のドアを開けるときもういちどだけ振り向いた少女の目は、「またね」と本音を呟いている。