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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

クラスメートといっしょに遂げた初体験

2024年01月12日(Fri) 00:19:53

娘の通っている女学校は、紺のハイソックスを履く学校だった。
地味子と呼ばれた妻をモノにした彼は、当然のように娘にも秋波を送っていった。
「せっかくだから――していただきましょうよ」
母親がそういうのだから、娘の純潔はもう、時間の問題だと観念せざるを得なかった。

彼は正面切って、平日の真っ昼間に、娘の通う女学校を訪れた。
すぐに校長室に通された彼は、来意を告げると、好意的に迎えられた。
すでにこの学校の女学生はなん人も、彼の毒牙にかかっているのだ。
「2年A組の冴島由香里さん、校長室に――」
担任の女教師に先導されて校長室に現れた娘は、自分の血を目当てに来校した吸血鬼相手に、それとは知らず尋常に初対面の挨拶をしたという。
夫婦ながら吸われたあの晩。娘はとうの昔に寝入ってしまっていた。
「この方がクラスの授業を参観されます。教室までご案内してあげて――」
担任に言われるままに娘は、彼の先に立って、教室に案内した。
彼が娘の後ろ姿を、とくに紺のハイソックスに包まれた発育のよい脚に目を留めたことを、生真面目な女学生は知る由もない。
彼の狙いは、娘だけではなかった。
さいしょに彼が引き合わされたのは、学級委員の鈴村敏恵だった。
敏恵はその日、ストッキング地のハイソックスを履いていた。
優等生で文学少女の彼女は大人びたところがあって、
十代の少女には珍しく、人前に出るときには日常的に、ストッキングを嗜んでいた。
だから通学の際にもしばしば、学校の許可のもと、ストッキング地のハイソックスを好んで脚に通していたのだ。
彼女のおしゃれな装いを、飢えた牙で喰い裂いてやろうと彼がもくろんだことは、想像に難くない。
つぎの時間は、体育だった。
女生徒たちが着替えをするなかで、彼は鈴村敏恵を隣の教室に引き入れると、
無抵抗なこの女学生の首すじを、カリリと咬んでいた。
ブラウスの襟首に血を撥ねかせながら、鈴村敏恵はずるずると姿勢を崩し、その場で尻もちを突いていった。
娘たちクラスメートが運動場で息をはずませながら身体を動かしているあいだ。
慎ましく質実に装ったストッキング地のハイソックスを咬み剥がれていった。
身体じゅうの若い血潮を舐め尽くされてしまうと、
度を失った彼女はうろたえながら、それでも気丈に背すじを伸ばして、
授業を終えて戻ってくるクラスメートたちを待ち受けていた。
だれもが十代のうら若い肢体に、運動でめぐりの良くなった血液をピチピチとはずませていたのだ。

「涼子ちゃん、いい?」
つぎの授業中。
授業の途中から教室に戻った鈴村敏恵は、隣の席の少女に声をかけた。
そして、え?え?と訝しがる華邑涼子を教室から連れ出すと、
廊下で待ち受けていた吸血鬼に引き渡してやった。
鈴村敏恵の血をあやしたままの牙が、こんどは華邑涼子の首すじに、埋め込まれていった。
「授業中だから静かにしようね」
さすがに優等生らしく、鈴村敏恵ははしたない声をあげようとしたクラスメートの口許を、掌で柔らかに覆っていった。
華邑涼子のハイソックスは、太目のリブの入った学校指定のハイソックスだった。
鈴村敏恵みたいに脛の透けるハイソックスをおしゃれに履きこなす子は、ごく一部だった。
涼子のふくらはぎのあちこちに牙を刺し入れて、ハイソックスを他愛なく咬み破りながら、
彼はうちの娘の履いているハイソックスをどんなふうにいたぶろうかと、ワクワクしていたという。
娘の身代わり、予行演習のように喰われてしまった華邑涼子こそいい迷惑だったが、
それでも彼女は初体験の吸血行為に、息をはずませて夢中になっていった。
そしてとどめを刺すように首すじに喰い入れられてくる牙をまともに受け止めると、
同級生の鈴村敏恵どうよう、白のブラウスの襟首を勢いよく撥ねる血しおに浸しながら、無我夢中で吸血されていった。

「由香里ちゃん、いいよね・・・?」
ブラウスの襟首を血に濡らしたクラスメートがふたり、肩を並べて虚ろな目で迫って来るのに、娘は戦慄を覚えたという。
それでも娘が2人の親友に請われるままに吸血鬼の待ち受ける空き教室へとためらわずに脚を向けたのは、妻に言い含められていたからだった。
「お母さんね、昨夜恋を知ってしまったの」
妻はそう娘に語ったという。
「素敵な恋よ。あなたも同じ人に、恋をして良いのよ。
 むしろそうなることを、お母さん望んでいるの。
 あのひとに、貴女の若い血をあげてほしいの。
 首すじをちょっと咬ませてあげたら、貴女も素敵な恋ができるの。
 怖がらないで大丈夫。ちょっと抓(つね)られるくらいの痛みで済むから。
 お母さんの血を気に入ってくれたひとだから、あなたの血もきっとお口に合うはずよ」
妻はそういって、玄関でもじもじと躊躇っていた娘の背中を押したという。
「冴島由香里さん だね?」
彼のくぐもった声に、娘はゆっくりと頷いたという。
傍らで2人の友だちが、娘が咬まれるのをひと目見ようと、ウズウズしていた。
自分たちと同じように、友達が制服を血濡らせながら吸血される有様を、
露骨なくらい目にしたがっていた。
「きみの脚はきれいだね」
彼はいった。
両親ともに咬まれた牙に、自分の素肌が狙われていることに、
もはや麻痺してしまった彼女の意識は無反応に陥っていた。
「ねえねえ、ほら、おじ様に咬ませてあげて。
 由香里も早く、美味しいって言ってもらおうよ」
すでに餌食にされたクラスメートたちが口々にそういうのを横目に、
娘はそう・・・っと、紺のハイソックスの脚を差し伸べていった。

彼氏にバラした、処女喪失。

2023年02月19日(Sun) 01:33:10

浩美には、彼氏がいる。
同じクラスのけんじは、自他ともに認める関係だった。
お互い初体験がまだなのが、不思議なくらいだった。
原因はどちらかというと、けんじの側にある。
浩美がなん度も大胆になるたびごとに、彼は尻込みしてしまうのだ。
まだそこまでの責任は取れないし。
それが彼の言い草だった。
身体の奥深くの疼きを覚えはじめた若い肉体をもて多少あましながらも、それでほ浩美は満足だった。
けんじが浩美のことを大切に考えている証しだと思ったからだ。

周りの女子たちは、経験者がちらほらしていた。
それ以上に、街に横行し始めた吸血鬼の毒牙にかかるものが増えてきた。
身体を許した彼氏の影響力もさることながら、
吸血鬼の支配力は、それを軽く上回った。
浩美の親友の環(たまき)は、彼氏がいるのに、吸血鬼を相手に処女を捨てていた。
おかげで、彼氏とヤルときには大胆に振る舞うことができたと、あとから聞かされた。
相手が吸血鬼じゃ、どうしようもないな。
恋人の初めての男になり損ねた彼氏は、かなり残念がっていたけれど。
環の身体を自由にできる特権を与えられたことに、より夢中になっていて。
彼女のしたことを裏切り行為とは受け取っていないようすだった。
でもねぇ、と!環は声をひそめる。
あいつに、ヘンなこと、頼まれちゃっと。
なに?
気乗りしない口調で相槌のように返すと、環は聞いて頂戴よ度言わんばかりに、なおも声をひそめてくる。

お前の処女をもらえないのなら、せめてお前がなくすところを視たかった。
今度、再現してくれよ。

ええ〜!?
冷めた性格の浩美もさすがに声をあげてしまい、
シッ!と親友にたしなめられる始末だった。
それで、、、まさかリクエストに応じたの??
環は少しのあいだ口ごもっていたが、ためらいながらも頷き返してくる。
えー!あり得ない!!
あのときは、あわてて口を抑えたものだが。。

その浩美が、公然の彼氏を差し置いて、貴之とヤッてしまった――

血を吸われていたという特殊な状況――とは言いながら。
あのとき浩美は冷静だったし、相手のことを叱ったり詰ったりさえしていた。
そのいっぽうで、相手の好みに合わせて、脛までのハイソックスをキッチリと引き伸ばして、くまなく舐め尽くさせさえしてしまっていた。
いちど咬まれた首すじにキスも許したし、自分の血の着いた唇と唇を重ね合わせて、血の香りを嗅ぎながらのディープ・キッスにまで応じてしまった。
ショーツを脱いで意思表示をしたのも、自分のほうからだった。
たかがハイソックスの丈に目をつけてきただけの男にそこまでさせて、
さいごにはキッチリと、火照りを帯びて逆立った一物を、自分でも届かない秘奥まで刺し込まれてしまったのだ。

けんじがいうように、「責任」の問題をうんぬんするのなら、
彼女は越えてはいけない一線を、あっさり飛び越えてしまったことになる。
もしもけんじのお嫁さんになるとしたら――これはやばいわよね、、、?

ちょっと付き合って。
放課後貴之をつかまえて、浩美はぶっきら棒にいった。
けじめ、つけてくれるわよね?
貴之は、頷くしかなかった。
けんじは彼にとっても、仲の良いクラスメートだったから。

貴之を伴ってきた恋人にふしんそうな目を向けるいとまもなく――
あたし、この人に血を吸われてるから。
貴之に対してぶっきら棒な彼女は、どうやら恋人に向かってもそうらしい。
「う・・・!?」
なんと返事をして良いのか見当がつかなかったらしく、けんじは喉にものでも詰まらせたようななま返事をした。
「だれかに噛まれたのは、わかるって」
睨むように迫ってくる浩美にたじたじとなったのか、窮したように彼はいった。
たしかに、お気に入りのハイソックスは丈足らずで、咬まれた痕のふたつの赤黒い斑点は、まる見えになっていた。
それを浩美は臆面もなく、だれの目にも明らかに、くっきりと外気に曝していた。
まるで見なさいよと誇示するばかりに――

「でも、相手が貴之とはな・・・」
男ふたりは困ったように顔を見合わせる。
「なん度も咬まれてるのは見て分かったし、気の強い浩美のことだから自分の意思でそうさせてるのは察しがついたけどさ。。」
浩美はなおも、挑発するように告りつづける。
「咬まれたさいしょの晩にさ、もう犯されちゃった。
 抵抗しても逃れられないはずだけど。
 この人ったら意気地なしだから、本気で嫌がったらきっと、逃げ出せたと思う。
 でも、あたしのほうからパンツ脱いだの。
 なぜだかわかる?
 あんなミステリアスな迫りかたをされて、そのまま何もなしに終わるなんて、つまらないと思ったの。
 生き血をたっぷりと啜り取られて、あたしの本音や心の底のことまで、見通されたような気分になって。
 生命の欠片を口に含まれるって、とても濃いつながりだって思えちゃって。
 けんじには、悪いことしたと思ってる。
 でもね、したことはあんまり、後悔してないかな・・・」
浩美の一方的な告白に、けんじは彫像のように立ち尽くしていた。
「あの・・・その・・・」
ヘドモドしている彼を引き立てるように、浩美はいった。
「訊きたいことわかってるんだ。
 感じちゃったのか?イカサレちゃったのか?っていうんだよね??」
「あ・・・うん」
けんじはみっともなく頭を垂れながら、肯定している。
「さいしょは血も出たし、痛かっただけ。
 ヤれて満足としか、思えなかった。
 でもね、なん度も咬まれて、なんどもヤられているあいだに、キモチよくなった。
 イッちゃうようになった」
自慢たっぷりの自分の彼女から目を離すと、けんじは貴之を見た。 
「最近オレと目を合わせないのは、そのせいか?」
「そのせいだ」
棒読み口調で、貴之はこたえる。
「さすがに悪りぃなと思ってさ――でもやめられないんだ」
「お前も、浩美が好いってことだな?」
「浩美の身体に惚れちまった」
貴之はいった。
どちらもボソボソと、暗くて低い声色だった。浩美が噴き出してしまうくらいに。
気勢をそがれたふたりは、起こった事実を確かめ合うばかり。
「で・・・?」
「で・・・」
果ては重たい沈黙で、会話さえ途切れてしまった。
「これじゃ喧嘩にならないわね」
がっかりしたように、まず浩美が重たい沈黙を破った。
「喧嘩させる気だったのかよ??」
男ふたりは、口を揃えて声をあげた。
「たしかに――もしも浩美をオレから奪うつもりなら、相手になるけど。。」
けんじが初めて、しっかりとした顔つきになった。
「いや、そんなつもりはない」
「つもりはないって――」
「浩美が嫁に行くのは、俺のところじゃなくてお前のところだろ?」
「それはそうだけど――それでいいのか?」
「俺はそれが良いと思ってる」
「オレの女に手を出すなって言うべきなんだろうな、ここは一応」
いかにも気乗りのしない口調でけんじが口を開くと、
「俺がいさぎよく手を引くよって、言うべきなんだろうけどな、ここはやっぱり」
貴之も気の抜けたようなあいさつを返すばかり。
「手を出しても構わないって言ってくれないか」
「それはさすがに、言えないな」
「でも俺はたぶん、ガマンできないぜ?」
「できる限り、ガマンしてくれないか?」
「できる限りはもちろん、ガマンするつもりだけどな」
「できない場合もあると・・・?」
「それはお互い、聞きっこなし・・・」
あ、駄目!と、浩美が割って入った。
「あたしがだれとどう付き合うかは、あたしが決めるから」
ふたりは、げっそりとした顔つきになった。

「けんじのための純潔――奪(と)られちゃったときのこと再現してあげようか?」
「あ、ウン」
思わず答えてしまったあとで、いくら両手で口をふさいでも、もう遅い。
あっという間に貴之に、がんじがらめに縛られてしまった。
くしくもそこは、彼女が初体験を遂げた教室だった。
そう――二人は自分のクラスの教室で結ばれたのだ。
「こうだったよね?」
「こんなふうだったな」
浩美が不意打ちに教室の壁に抑えつけられるところ。
目も止まらぬ速さで首すじを咥えられ、咬まれてしまったところ。
ブラウスにほとばしった血が、バラの花が咲くように拡がるところまで、けんじの前で忠実に再現される。
腕を突っ張って抵抗したけれども、失血でだんだんと力が抜けて、とうとうもう一度うなじを咬まれ、ゴクゴクとやられてしまったところ。
ハイソックスの口ゴムの少し上あたりを、すはだに唇を直接あてて咬みついて、
静かに喉を鳴らして啜り取ってゆくところ。
ふたりが折り重なって、勁(つよ)く逆立ったぺ〇スが制服のスカートの奥に忍び込んでいって、
迫ってくる逞しい胸をわが身から隔てようと、彼女は腕を突っ張り、唾を吐きかけてまで抗いつづけて、
そしてさいごに、
ずぶり――と突き刺されてしまって、声も出ないほど感じていって――。

こんなふうだったんだ・・・
こんなふうだったのよ・・・
にんまりと笑んだ浩美の唇を、貴之のそれがふたたび塞いだ。
狎れあったディープ・キッスに熱中するふたりを、けんじはいつまでも見守りつづけて、
そしてその夜ひと晩、彼の未来の花嫁がよがり声をあげつづけるのを、聞き通していた。


披露宴の最上段に。
しゃちこばったけんじと取り澄ました浩美とが、肩を並べている。
「ほんとうは。未練があったんじゃないの?」
背後からヒカルが、毒を含んだ囁きを注いできた。
「いや、これで良かったんだ」
貴之は、振り返りもせずにこたえた。
あの純白のウェディングドレスの裏側を、自分の淫らな粘液でなん度も染めたことも、
いまでは楽しい、一コマの夢――。
「落ち着いたらまた、連絡するわね」
とりあえずは彼女の、そんなささやきをアテにしてみよう。
そんなときにはたぶん、けんじはわざと出張に出てしまうのだろう。
それとも案外、あの夜みたいに、どこかの物陰から、二人が熱い吐息を交わし合うところを、のぞき見してしまうのだろうか・・・?


あとがき

いちおう前作とともに、連作ものです。
発想のきっかけは・・・
たまたま行きずりに、3人連れの女子高生を見かけましてね。
うち2人はタイツ、でも真ん中の子がこの季節に、ブラウス1枚、ミニの紺のスカートの下、黒のオーバーニーソックスを履いていたんです。
インパクトありましたね・・・

餌食になった、3人の女子生徒。

2023年02月19日(Sun) 00:54:24

紺のスカートに白のブラウスの制服を着た女子生徒が3人、うつ伏せになって気絶している。
それぞれの足許には1人ずつ、吸血鬼の男がとりついていて、彼女たちのふくらはぎに咬みつき血を吸っていた。
まん中の男が真っ先に頭を上げて、隣の男を見下ろしている。
「ホントに、オーバーニーソックスが好きなんだなお前」
声をかけたのは、抑えつけた脚の主たちとさほど変わらない年ごろの青年だった。
吸い取ったばかりの血を、まだ口許にあやしている。
揶揄を受けた男もまた、顔をあげた。
「うるせェな、放っといてくれよ」
言葉は尖っていたが、口調はそれに不似合いなくらい照れくさそうだ。
言い返すその口許も、女子生徒の血で染まっている。
ふたりとも旺盛な食欲を発揮したのだろうか、彼らの相手を強いられた少女は、とっくに白目を剝いている。
言い返した男の餌食になった女子生徒は、太ももを大胆にむき出したミニ丈の濃紺のプリーツスカートの下、
恰好の良い脚を黒のオーバーニーソックスで覆っている。
だらりと伸びた脚には、ひざのあたりまでずり落ちかけた黒のオーバーニーソックスが、ふしだらに弛んで皺くちゃになっていた。
ふくらはぎには咬み痕がふたつ、赤黒い血のりに濡れていた。
「香織のときも、そうだった。黒のオーバーニーソックスを履いていた」
さいしょに声をかけた青年は、そういって口をとがらせる。
「お前の妹だとわかりながら・・・ついムラムラ来ちまったんだ」
許せと言うように下げた相方の目線に軽く応えながら、青年は続けた。
「ま――俺も似たようなものだからな」
緩めた口許からしたたたる血が、持ち主の履いている紺のハイソックスを濡らした。
彼女のハイソックスは少し寸足らずで、脛の途中までの丈だった。
口ゴムの少し上のあたり、たっぷりとしたふくらはぎが覗いていて、そのまん中にはやはり咬み痕がふたつ、綺麗に付けられている。
「ご立派なキスマークじゃん」
オーバーニーソックスを咬み破った青年が、こんどは香織の兄を冷やかす番だった。
「お目当ての浩美ちゃんをモノにできて、よござんしたね。貴之くん」
貴之と呼ばれた青年は、照れくさそうに笑い返した。

それよりさ、と、彼は続けた。
「オイ、親父!まだやってんのかよ。ちっとは手かげんしろよな!?」
3人のなかでいちばん右側で黙りこくっていた男は、やり合う若者二人を横っ面で受け流したまま、自分の獲物のふくらはぎを吸い続けていた。
相手を強いられていた少女はもちろん、とうに白目を剝いている。
息子くらいの青年にぞんざいな言葉を投げつけられて、
さっきからしつように餌食を漁っていた男もようやく、白髪交じりの頭をあげた。
「すまねェこってす、ちいっと吸い過ぎた――」
男のおとがいの下、ひざ下までピッチリと引き伸ばされていた紺のハイソックスはわずかにずり落ち、咬み破られた一角がかすかに血のりを光らせている。
「ひとの妹つかまえて、よくやるよまったく!」
オーバーニーソックス好きな彼はどうやら、この男のために気前よく、自分の妹を襲わせたらしい。
「ヒカルお坊ちゃん、輝美子お嬢様を喰わせていただけるなんて、一生恩に着ますぜ」
そう言いながら、郷助と名乗るその年配の吸血鬼は、輝美子お嬢様から吸い取った血を拳で無造作に拭い取った。
「お前が妹に目をつけていたのは、だいぶ前から分かってた。
 うまいことたらし込んじゃえよ?
 あいつの気が向いたら、また高嶺の花の輝美子お嬢様の処女の生き血にありつけるかもね」
ヒカルは初めて、白い歯をみせた。
女子生徒を襲って生き血を漁り摂るという惨劇のあととは、思えないくらい、爽やかな笑みだった。

「血を吸う日常も、悪くないだろ?」
ヒカルは貴之に言った。
「そうだな、こういう身体にしてくれて、感謝するよ」
貴之は、素直にこたえた。
「最初はびっくりしたし、暴れたけどな」
しょうがないさ、と、ヒカルはいった。
「俺も、血を一滴残らず吸い取られたときは、死ぬほど暴れた」
ヒカルの血を吸った張本人は、どうやら彼の目線の向こうにいる年配男らしい。
「俺の血を旨かったって言うから、許してやったんだ」
ヒカルお坊ちゃまの独白を耳にして、郷助はくすぐったそうに微笑んだ。

ヒカルの父は、開業医だった。
郷助はヒカルの家の使用人で、ふとしたことから吸血鬼になって、主人の息子を襲ったらしい。
おあいこさ、と、ヒカルは苦笑いした。
その前に彼は、悪友の貴之と語らって郷助の妻を襲い、それぞれ童貞を卒業していたのだ。
それはエエです、と、郷助はいった。
「女房の仇討ちなんて殊勝なことを考えた訳じゃありません。
 むしろ女房がお二人に女の手ほどきをさせていただけたのを、ありがたく思ってるくらいですから――」
そう、、郷助は自分の妻が襲われていると知りながら、家の鍵を中から施錠して、彼らのやりやすいように手助けをしていた。
そして、自分の妻がパンストを片方だけ脱がされた脚をばたつかせ、半泣きになりながらスカートをたくしあげられてたくし上げられてゆくのを、舌なめずりをして覗き続けたのだ。
彼が吸血鬼に咬まれたのは、そのすぐ後のことだった。
「あのあと女房は吸血鬼にもやられちまったけど――お坊ちゃんがたお二人のおかげで、覚悟がついたような気がしたもんです」

郷助が身体じゅうの血を抜かれた翌日のこと。
ヒカルが学校から戻ってきたとき、家に誰もいなかったのが「ご縁」の始まりだった。
首すじを咬まれて血を吸われると、
「うちで真っ先に吸血鬼になるのが、郷助とはね」
と言いながら、気の済むまで吸血に応じていったのだ。
吸血鬼のはびこり始めたこの街で、いつまでも逃げおおせることができるとは、ヒカルにはとても思えずにいた。
むしろ、自分の血を親しいものに吸われることに、安堵さえ覚えていた。

失血でぼうっとなりその場に倒れると、半ズボンの下肢に抱きつかれ、紺のハイソックスを咬み破られながら、さらに血を吸われた。
ハイソックスが好きなのかい?と問うと、郷助は正直に頷いた。
それなら、好きなようにさせてやるよ――彼は郷助が楽しめるようにと、ずり落ちかけていたハイソックスをひざ小僧の下までギュッと引き伸ばしてやった。
飢えていた郷助がヒカルの血を吸い終えたとき、彼の体内には人間として生き続けるために必要な量の血液は喪われていた。
こうしてヒカルは、半吸血鬼になった。
二人は、縄張りを線引することで争いを避け、周囲の男女の血を手分けして啜った。
主家の一家にほのかな憧れを抱いていた郷助は、ヒカルの両親を。
ヒカルは郷助の妻に初めて自分の牙を試して、この使用人の善良な妻を首尾よくその奴隷とした。
郷助はその見返りに、院長夫人をその夫の目の前で制圧して、主家の夫婦をその支配下に置いた。

院長夫人のブラウスには、吸い取られた血潮が撥ねて華やかなコサアジュを形作り、
はしたなくも夫の前で、理性を喪失した。
着衣を引き裂かれ剥ぎ取られてしまうと、見栄もプライドもかなぐり捨てて、
日ごろ嗜んでいるガーター・ストッキングの脚をくねらせながら、使用人の強引な欲望に応えていった。
郷助は片方だけ脱がせたストッキングを指でいやらしく弄びながら、
院長夫人の身体の奥に、その夫の目の前で、劣情に滾る白濁した粘液を吐き散らしていった――

ヒカルがつぎに狙ったのが、貴之の妹の香織だった。
香織は泣きじゃくりながら彼のお目当てのオーバーニーソックスを咬まれていったが、
いまでは兄のこの悪友の誘いを受けるときには、ひざ上最低でも15cmのミニスカートに黒や紺、果ては柄物のオーバーニーソックスを見せびらかすように脚にまとい、穿き替えまで用意をしてデートに出かける有様だった。
悪友に妹を寝取られた貴之は心平かではなかったが、
その実ヒカルの牙で、香織よりも先に首すじに咬み痕を付けられてしまい、吸血される悦びにも目ざめてしまっていた。
だから、悪友が妹を弄ぶことを、正面切って咎めることはなかった。
いまではヒカルのために、貴之の母親までもが、年甲斐もなくオーバーニーソックスを脚に通して、
娘の貧血を補うために、淫らなデートに日常的に応じる有様だった。
もともとヒカルが貴之の妹を襲ったのは、たまたま履いていたオーバーニーソックスに刺激を受けただけのことなので、
早晩彼が妹を棄てるのは、目に見えていた。
けれどもきっと妹は、教え込まれた経験を身に秘めながら、
そ知らぬ顔をして婿探しをするに違いない――と、貴之は見抜いてしまっている。


そんな3人が寄り集まれば、よからぬことが起きるのは自明のこと。
教師たちは自分たちの責任逃れに躍起となっていた。
生徒を襲うならせめて、自分たちが退校した後にしてほしいとばかりに、
夜も出入りをするのに必要な鍵を、わざと「紛失」してくれたのだった。
鍵を「紛失」をした教諭も、それをそそのかしたはげ頭の教頭も、
受け持ちのクラスや顧問をしている部に所属する教え娘に手を出して、
彼らに率先して、冒すべからざるはずの教室を、淫らな濡れ場にすり替えてしまうのだった。

冒頭の、3人の乙女が犠牲となった場面は、まさにそんな日常の出来事だった。

ヒカルはオーバーニーソックスの少女を連れて、教室から出ていった。
血の気の戻った少女はすっかり洗脳されて、何ごともヒカルの言うままだった。
もちろんヒカルは、この娘を恋人にするつもりなど、さらさらない。
茶髪のロングヘアをなびかせて少女が向かうべつの教室には、悪事の片棒を担いだ教頭が待ち構えている。
この女子生徒の処女は、夜の教室を自由に使用する便宜をはかってもらった御礼にする約束になっているはずだ。
そんなことはいまの彼女の知る由もないだろう。
美男のヒカルに夢中になるはずが、似ても似つかないはげ頭の教頭の、脂ぎった卑猥な唇をあてがわれるとは、まだ夢にも思っていないはずだ。

郷助が餌食にしたのは、ヒカルの妹の輝美子だった。
彼女は羞恥に頬を染めて、弛み落ちたハイソックスをおずおずとした手つきで引き伸ばしていった。
よだれまみれにされて咬み破られると知りながら、父親ほどの年配男に当たった不運を嘆くでもなく、相手を満足させようとけなげに振る舞っているのだ。
さすがに貴之たちと同じ教室でことに及ぶのは羞ずかしいらしく、これも教室から消えていった。
吸血初体験の今夜、処女までも喪うと――きっとヒカルも想像していたに違いない。


「ひどいよね、まったく・・・」
貴之と二人きりになると、彼の相手をした女子生徒はいった。
「夜遊びしようって言うから、何かと思った。
 制服にハイソックスで来いって言うから、変態なんだと思った。
 首すじを咬まれて、初めて分かった。
 怖い世界に踏み込んじゃったって。
 あたしの血、美味しかった・・・?」
貴之はいった。
「前から思っていたんだ。
 ハイソのすぐ上のあたりをかんでみたいって。
 きみのハイソの丈がちょうど目を惹いたのさ」
女子生徒は不平そうに、口を尖らせる。
「ハイソの丈で、あたしを選んだの?」
「そういうことだね」
「ひどい・・・変態!」
少女は罵ったが、声に力はなかった。
「貧血だよ、もう。。」
くりごとのように少女は呟いた。
「それくらい旨かったってことさ、きみの血は」
貴之はいった。
少女から吸い取ったうら若い血の芳香は、まだ喉の奥に澱んでいる。
そしてその活き活きとめぐる血液は、いま貴之の血管を妖しく浸し、皮膚を潤しはじめている。
「美味しいんだったら、まあいぃか。許しちゃおう」
少女はまた呟いた。そして貴之に向って、
「こっちの脚も、噛んでいいよ。
 どうせヤだって言っても咬みつくつもりなんだろうけど」
そういって、まだ噛まれてないほうの脚も、差し向けてきた。
丈足らずのハイソックスを、キッチリと引き伸ばして。
男は制服姿の女子生徒の足許に、かがみ込んだ。
教室の窓から差し込む薄明かりに浮びあがった影法師が、ひとつになった。
もつれ合った影法師は姿勢を崩し、平らになり、激しくうごめき、ぎごちなくもじもじとした身じろぎをくり返した。

「彼氏いるんだよ、あたし」
少女は弛み落ちたハイソックスを、また引きあげた。
太ももを伝い落ちる初めての紅いしずくが、口ゴムを浸すのもためらわずに。
「生き血も旨かった。あそこも、美味しかった」
「もう!」
男の言い草に、女は本気でその背中をどやしつけた。

女子学生は、太っちょが良い。

2023年02月04日(Sat) 21:23:32

女子学生を襲うとしたら。
俺は躊躇なく、太っちょのコを選ぶ。
飢えた吸血鬼の、悲しい本能で。
獲られる血の量は、体重に正比例すると識っているから。。
いつも好んで咬みつくことにしている、紺のハイソックスのふくらはぎだって、肉づきのあるほうが咬みごたえがあるというものだ。
きょうはどのコのハイソックスを咬み破って、べそを掻かせてやろうか――?

そんなワケで。
近所に越してきた、なにも知らなさそうなご一家の長女に、オレは狙いを定めたのだ。
お人好しなご主人に接近して、言葉巧みに信用されて。
娘さんの勉強見てあげますよと持ちかけた。
場所はもちろん、オレの家。
色々な本を持っていて、教えるのに都合が良いから、、というのが、娘を招き入れるためのもっともらしい口実。
邸のなかで襲ってしまえば、キャーとかワーとこ騒ぎたてても、もはやまんまとこちらのもの。
あとは制服のブラウス濡らしながら、クイクイ血を啜り抜いて、夢中にしてしまうのは造作もないのだ。
お目当てのハイソックス?
なぁに、向こうから咬んで破って・・・って、頼み込んでくるものさ。

智恵美というこの娘は、いかにも地味でモッサリさんな太っちょで。
貫禄たっぷりのウエストに、紺とグリーンのチェック柄のプリーツスカートを膝まで垂らし、
黒いだけが取り柄の引っ詰めた三つ編みを肩先に揺らして、
色気のかけらも感じさせない黒縁メガネのなか、潔癖そうな二重まぶたの丸い瞳でこちらを注意深く窺ってくる。
父親よりもよほど、手強そうにみえた。
けれども、その豊かな身体には、健康な血液がたっぷりと、脈打っている。
頼もしい体格の輪郭を通して、血潮の気配がありありと伝わってきて――オレは痺れてしまいそうになっていた。

ピンポンを鳴らして佇む足許は、案に相違して黒のタイツをしなやかに履きこなし、ふっくらと豊かなふくらはぎをしていた。
この黑タイツを破かれながら、べそを掻き掻き吸血されてしまうともつゆ知らず、娘は出されたスリッパを履いたつま先を、冷え込んだフローリングの上にすべらせてくる。

牙をむき出して立ちはだかると、さすがに恐怖に眉をあげ、引きつった顔をして後じさりしてゆく。
さあ追い詰めた!
あとは無理無体に抱きすくめて、首すじを咬んでしまえばこっちのもの・・・と思ったら。
智恵美はしんけんな顔つきで、血相変えてまくし立てた。
 吸血鬼だなんて、聞いていません!
 私、勉強を教えてもらいに来たんです。
 人の血がお要りようなのはわかりました。
 でも、父か母と話してください。
 私がいきなり咬まれたら、父も母も悲しみます!
 お願いです、どうかそんなことしないでください!
自分の娘の生き血が欲しいとねだられて、どこの親が応じるものか。
オレは娘を横抱きにして、首すじを狙って強引に唇を吸いつけた。
やめて!お願い!よしてッ!
智恵美は懸命に身もだえをして、オレを拒もうとする。
本気で嘆き、悲しんでいた。
悲痛なすすり泣きをくり返す少女を、オレはお人好しにも抱きしめて、もう怖いことはしないからと、なだめすかしてしまっていた。

相手が吸血鬼だと分かっても、このコは感心にも、それ以上うろたえもしなかったし、逃げようともしなかった。
 約束どおり、お勉強は教えていただきます。
 でも、血を差し上げるのは、母に訊いてからにしてください。
オレは約束どおり娘に数学と古文を教えたあとで、
まだ涙目をしていり智恵美の手を引いて、彼女の家のインタホンを鳴らしていた。

お勉強はどうでした?と問う母親に、
 お母さま。
 この方、私の血が欲しいと仰るの。
 でも、両親の許可をもらってからにしてくださいとお願いしたら、血を吸わないで来てくれたの。
 ちゃんとお勉強も教えてくれたのよ。
 私、この小父さまなら信用できるから、血をあげても良いと思ってるの。
 お母さまも賛成してくれますか?
智恵美の母親は、表情を消して立ち尽くした。

賛成のわけはない。
お引取りください で、さよならだ。
オレはげんなりとして、この母娘のやり取りを眺めていた。
ところが母親は意外にも。
オレのことを穴があくほど見つめると。
娘のことを弄んだり、侮辱したりさないで扱ってくださいますか?と訊いてきた。
すかさずもちろんですとこたえると、この子が恥ずかしい想いをしないようになさってくださいねと言って、
娘の勉強部屋から背を向けた。

「よろしくお願いします」
お勉強を教わるとき同じように、娘は正座して、神妙に手をついた。
オレはわれ知らずその手を取って、手の甲に接吻していた。
貴婦人・・・みたいですね。
娘は羞じらった。
「タイツを破りたいって仰ったわね。良いですよ」
差し伸べられた脚は、健康そうにピチピチとした生気が、黒タイツを通して伝わってきた。
オレは娘の好意に甘え切って――少女の履いている黒タイツをビリビリと破りながら、吸血に耽っていった。

ドアの向こうから。
息をひそめて覗き込んでくる者がいた。
いうまでもない、彼女の母親だった。
娘の危難を気遣って中の様子を窺っていたのに、
まな娘に対するオレのあしらいに、興奮を感じてしまったらしい。

抱きすくめた首すじに食いついて、制服のブラウスを濡らしながら吸血したり。
三つ編みのおさげを片手で弄びながら、初めてのキスをディープに奪っていったり、
特にタイツを咬み破る情景は、彼女の胸に染みたらしい。
自分の穿いているストッキングを咬み破られたくて、うずうずしてしまいました――と、だいぶあとで言われた。

日を改めて訪問してきた娘は、オレの希望を容れて、今度は紺のハイソックスを履いていた。
「ハイソックスも破りたいんですか?」
娘は生真面目な問いを投げてくる。
「旨そうだからな。あんたの脚に履かれていると特に」
とこたえると、「いやらしいですね」と言いながら。
ふくらはぎ刺し込まれてくるオレの牙を、息を詰めて見おろしてきて。
あちこち食いつきたがるオレのために、脚の角度を変えながら何度も咬み破らせてくれた。

パンティを舐め抜いた挙句、処女を汚したいと囁いたとき。
娘は半泣きになって、「まだ早い」と抗議した。
そして、「お嫁さんにしてくれますか」と訊いてきた。
あいにく――彼女とオレとでは、時間軸の移ろいがまるで違っている。
それは無理だとこたえると、ちょっとだけ考えさせてくださいといって――
それでも、パンティは濡れ濡れに濡れそぼるまで、舐め尽くさせてくれていた。

母親のパンストを咬み破るときには、
ご主人よりも先に、娘のほうに相談した。
きみを裏切るわけじゃない、オレはきみたち家族が好きなのだ――と見え透いたことを囁くと。
「それ、ずるいですよね」と、けしからぬ意図をしっかりと見抜かれて、
「でも、相談してくれて嬉しかったです」
「パパを泣かせることはしないでくださいね」
といって、オレの邪まな想いを遂げるのを同意してくれていた。
ご主人はむしろ、オレと奥さんとのメイク・ラブに理解を示してくれた。
「この街に来た時から、家族の血を吸われるのはわかっていました。
 それが貴男であることは、わたしにとってそう不幸ではありません」
と、言い切ってくれたのだ。
「娘の血が気に入ったのだから、きっと家内もやられちゃうんだと観念してました。まさか事前に相談してくれるなんて」
といって、
「じゃあわたしは、気がつかないふりをしていますね」
と、妻を寝取られることに同意してくれた。
奥さんはたったのひと突きで、オレに完全に征服された。

母親までモノにされたと伝え聞いて。
娘はフクザツそうな顔をした。
「お父さんもお母さんも不潔だなんて、思わないでくれよな」
とオレがいうと、「それは大丈夫」と請け合ってくれた。
そして思いつめた顔をして、打ち明けてくれた。

こちらに来てから、クラスの男子と付き合うようになった。
もちろん、身体の関係なんてない。
でも、できれば彼と結婚したいと思っている。
セックス経験のある女の血を吸うときには、犯しちゃうって母から聞いたわ。
だとするといつか、わたしは彼を裏切ることになってしまうの――と。

すんなり伸びたふくらはぎは、しなやかな筋肉の輪郭を、ハイソックスで縁どっていた。
「これ、智恵美さんのハイソックスなんですよ」
少年は爽やかに笑いながら、半ズボンの下にまとったハイソックスを、オレのよだれに塗りたくられていた。
彼女、いつもこんなふうにされちゃってるんですね?
パンティも舐め抜くところまではお許しもらってるんだ。
オレが子供じみた自慢をすると。彼も「へえすごいな」と素直に感心する。
「小父さんは、智恵美さんの純潔を欲しいのですか」
失血に顔をかすかに蒼ざめさせながら、彼は訊いた。
「欲しいね」
「彼女もきっと、その気です」
少年は、嬉しいことを請け合ってくれた。
「お願いがあるんです。
 彼女の純潔をプレゼントしたいのです。
 あくまでボクからのプレゼントとして、小父さんに愉しませてあげたいんです。
 その代わり、そのようすを、ボクにも見せてくれませんか。
 ボク自身が得ることができなくても。
 彼女がだれかに純潔を捧げるところを目にすることができたなら――それは一生の記憶になると思うんです」
ふと見ると、彼の後ろに智恵美が控えていた。
顔を心持ち俯けて、唇を固く噛みしめているようすからは、彼女の意思は窺えない。
けれども、恋人の考えを指示しているのだということは、オレにもよくわかった。
「きょう――初めて小父さまに咬まれてからちょうど一年になるんです。
 獲物にした女を一年もモノにできないのは、小父さまの世界では残念なことだそうですね。
 なのでわたくしも、観念することにしました」

目を瞑った少女の胸もとから、赤いリボンを取り去って。
しずかにブラウスの胸をはだけ、ハイソックスに区切られたひざ小僧を崩していって。
このごろ好んで穿くようになったスケスケのパンティから透ける陰毛をなぞるようにして、舌で舐め抜き疼きをしみ込ませていって。
「できれば制服のまま」という少女の希望を容れて、それ以上は脱がさずに。
少年は自分の花嫁の純潔をムザムザと汚されてしまう歓びに打ち震えながら、いちぶしじゅうを見届けてゆく。
ギシギシときしむベッドのうえで、生真面目な少女の純潔は、シーツに散った赤いしずくとともに喪われていった。
「泣いちゃった」
べそを掻いた彼女の目許を拭うのは、もはやオレの役目ではない。
手を振って別れを告げる少年にお辞儀を返してゆくと、
「学校卒業しても、時々お勉強教えてくださいね」
彼女はそういって、イタズラっぽく笑みかけていった。

野暮ったい黒タイツ

2022年11月05日(Sat) 01:00:37

冷たく透きとおった風が吹き抜ける通りを、緑色の制服に身を包んだ女学生がこちらに向けて歩み寄ってくる。
背は寸詰まりで、ずんぐりとした身体つき。
血色のよいだけが取り柄のあまり美しくない丸顔には、赤茶けたにきびが浮いている。
真面目くさった赤い縁の眼鏡の奥には、ちょっと意固地そうな細い目が、不景気な視線をこちらに向けて、
早くも待ち伏せしている黒い影の思惑を見通していた。

濃いグリーンのブレザーに、同じ色調のチェック柄のスカート。
そんなお洒落な制服を、ほかの生徒とは別の学校のそれのように、野暮ったく着こなしている。
太ももを見せびらかすようにミニスカートをなびかせて歩く同級生たちよりも、ぐんと丈が長く、ひざ小僧が完全に隠れてしまっていた。
スカートのすそから覗く、黒タイツに包まれた脚は肉づきが豊かで、
そこだけが若い女の生き血を欲しがる性(さが)をじんわりと逆なでする。
いつものお定まりの、少女のあか抜けない佇まいに、八束はなぜか安らぎさえ感じていた。

少女が八束の前で、足を止めた。

血が欲しいんですね?

彼女はぶっきら棒に八束に話しかけ、自分よりも上背のある相手を、白い目で見あげた。
「ああ――喉が渇いている。ひどくね」
「じゃあ、すぐそこで」
感情を消した鈍い声色でこたえると、少女は傍らの公園へと革靴に縁どられた脚を向けた。

公園の奥まったあたりには、手ごろなベンチがあった。
入り口からの視界は人の背の高さほどの生垣に遮られて、閑静な住宅街の真ん中にありながら、
人の注意を惹かない死角となっている。
少女は重たそうな鞄を傍らに置くと、ベンチに腰かけて脚をくつろげた。
参考書がいっぱい詰まって変形しかかった鞄には名札が提げられていて、
「遠藤みずき」と、少女の名が整ったサインペンの筆跡で書かれていた。
「タイツ破きたいんでしょ?」
もの分かりのよい受け答えとは裏腹に、少女の声色はあくまでもぶあいそで、事務的でさえあった。
応えの代わりに八束は、少女の足許にかがみ込んで、
丈の長いスカートのすそからわずかに覗く黒タイツの脛に、唇を吸いつけた。
しつように這いまわる唇のあとを、飴色をした唾液が糸を引いてつづいた。
男が唇をなすりつけながら、自分の履いているタイツの舌触りを楽しみはじめているのを、
少女はしかめ面のまま受け止めている。
黒タイツ越しに、しっかりとした肉づきのひざ下をくまなく舐めまわすと、
八束はふくらはぎの一角を侵すように、ひときわ強く唇を圧しつけると、口の端に隠した犬歯で、おもむろにみずきの足許に食いついた。

「――っ!」
咬んだ瞬間、少女は声にならない叫びを洩らしたが、
声をあげることを恥じるかのように押し黙り、
男が吸血に耽るあいだ、じっと身を固くして、鋭い目線をあらぬ方へと投げている。
17歳の健康な血液が、吸血鬼の渇いた舌を潤して、喉に満ち、胃の腑に澱んだ。

二度三度と、男はみずきの左右の脚に代わる代わる咬みついたが、少女は頑ななまでに歯を噛みしめて、男の牙を受け容れつづける。
女学生の足許を覆うタイツやストッキング、ハイソックスを咬み破って愉しむという、
潔癖な少女には忌まわしいだけのはずの不埒な所作に、
明らかに嫌悪の情を交えながらも、彼女はひたすら沈黙を守り受け留めつづけてゆいった。

彼女の履いている黒のタイツは、艶も彩りもほど遠く、ただたんに分厚いだけの野暮ったい代物だった。
「あたしなんかを、どうして襲うの」
ある日少女は、八束に尋ねたことがある。
初めて襲われた、次の次くらいのころだった。
もっと可愛らしくて、靴下フェチな貴方が悦びそうなお洒落な靴下を履いている子がおおぜいいるのに――と言いかけたとき、
男はいった。
「あんたがクラスで一番知的な子だからだ」
少女は押し黙り、用意していた罵詈雑言を呑み込んだ。
そして、彼女の履いている野暮ったいタイツを舌でいたぶり咬み剥ぐことに熱中している男に求められるまま、
左右の脚を、ゆっくりと交互に差し出しつづけていった。

初めてのときはきっと、彼女の豊かな体形が目を引いただけだろうと、少女はおもっている。
きっとたくさん、血を獲れるから――
たしかにあの夜、男はひどく飢えていた。
塾帰りの彼女をこの公園に引きずり込むと、抗う制服姿を芝生のうえに抑えつけ、
無防備になった首すじに思い切り牙を降ろしてきた。
ジュッ!と鈍い音を立てて血が飛び散って、ブラウスの襟首を濡らすのを、彼女は感じた。
男は傷口に唇をあてがうと、ヒルのようなしつようさで彼女の血を吸い上げて、ゴクゴクと喉を鳴らして呑み込んでいった。
飢えている!とっさに彼女は直感した。殺されるのかと思った。
でもすぐに、吸血鬼との共存を受け容れているこの街では、吸血鬼に襲われても殺されることはないと教わったのを思い出していた。

この街に吸血鬼が出没するのも、
それと知りながら、窮乏した両親がこの街を選んだのも、
彼女はよくわかっていた。
だから――いずれはそうした者たちの毒牙にかかるとは、覚悟していた。
胸もとをまさぐる猿臂を拒みはしたものの、もはや逃れるすべはないと観念した彼女は、すぐに抵抗を諦めた。

結果的には、賢明な判断だった。

ひとしきり彼女の血を吸い取って落ち着きを取り戻した八束は、彼女に謝罪を告げて、彼女の生命を断つ意思はないと告げてきたのだ。
それでも、一定の凌辱行為は、忍ばなけれはならなかった。
その夜、歩みを進める彼女の足許を照らし出した街灯は、
スカートと同じ色調の濃いグリーンのハイソックスのリブを浮き彫りにしたように際だたせていて、
ハイソックスに包まれた豊かなふくらはぎは、吸血鬼をすっかり魅了してしまっていたのだ。

首すじからおびただしい血液を抜かれた彼女は、ほとんど意識もそぞろになりながら、
昼間のように明るい芝生のうえにうつ伏せにされて、
彼女の足許ををなぞるようにしつように舐めつけてくるる舌と唇で、
制服の一部であるハイソックスのしっかりとしたナイロン生地の舌触りを愉しませる羽目に陥ったのだった。

生気に満ちたみずきの血に、八束はしたたかに酔い痴れた。
豊かな肢体を脈打つ血液は飢えた吸血鬼の食欲をそそり、
食欲を満足させるとこんどは、みずきの着ている折り目正しい制服姿に劣情したのだ。
野暮ったい着こなしぶりに、吸血鬼はむしろ欲情していて、
濃い緑のハイソックスが真っ赤に染まるほど、みずきの足許に執着した。

その夜、飢えた吸血鬼を自らの血で存分に満足させた少女は、
自分の血を吸い取った男に付き添われて帰宅した。
不幸にして、父親は不在だった。
出迎えた母親は、貧血でもうろうとなった少女の傍らで抑えつけられて、
娘がハイソックスの脚を愉しませたのと同じように、薄地の肌色のストッキングを穿いた脚を弄ばれた。
みずきの野暮ったさはきっと、母親の質素な生活ぶりに影響されたに違いないと、
安ものらしいパンストを咬み剥ぐことに熱中しながら八束はおもった。
倹しい生活でもストッキングをたしなむ趣味のよさにも、好感をもった。
人肌恋しさに矢も盾もたまらなくなった八束は、みずきの傍らでその母親を犯した。
それ以来、母娘は代わる代わる吸血鬼に首すじをゆだね、血液を日常的に提供するようになっていた。


その日も下校途中のみずきを公園に引き込んで、野暮ったい黒タイツを咬み剥いでしまうと、
少女は恨めしそうな白い眼をして、あらわになった白い脛を見、タイツを破った男を見た。
「いつも思うけど、趣味よくないですよね」
ふつうなら。
吸血の愉悦に酔った少女たちや人妻たちは、こぞって彼に恍惚としたまなざしを向けるのに。
彼女には毒が効かないのか、血を吸われた後も、氷のように冷静だった。
まだ冬も浅いのに彼女が学校指定のハイソックスではなくてタイツを履いているのは、
手持ちのハイソックスをすべて、惜しげもなく咬み破らせてしまったからなのだと、八束はよく知っていた。
彼のためになん度もスカートのすそを汚すようになったみずきの母が、そう告げたのだ。

打ち解けない顔つきのまま、
それでも男に逢いつづけて、
望むほどに生き血を吸わせ、
好むほどにタイツを破らせ、
それが多分、彼女なりの心づくしなのだと――
八束は覚りはじめている。

もうじき卒業だよな。
八束はいった。
進学クラスに入ったこの娘はきっと、都会の大学を受験し、旅立ってしまうのだろう。
頼みがある――と、八束はみずきにいった。
何?
相変わらず、ぶっきら棒な相槌が返ってくる。
志望校に合格したら、いちどあんたを犯してもよいか。
男の予期に反して、少女はかたくなに、「だめ」といった。
そうか――
しんそこ残念そうに、八束はあらぬ方を見やった。

沈黙が流れた。

傍らの少女が珍しく、クスッと笑った。
がっかりしたみたいね。
求愛をこばまれたら、だれでもそうだ。
八束はこたえた。
求愛しつづけてるじゃない。
いつも求められて――そのたびにあげてるじゃない。
少女は恨めしそうに、いった。
やはり制服姿を辱められながら、うら若い血潮を吸い取られるのは、屈辱なのだろう。八束はおもった。
けれどもそれはちがった。
少女はいった。

いちどじゃ嫌。

え・・・?

何度も抱いてくれるというなら、愛されてもいい――少女はめずらしく羞じらいながら、告げている。

白いハイソックスの同級生

2022年09月10日(Sat) 00:58:09

はじめに
これも、煮詰まってしまったお話です。^^;
やはり、そのまま捨ててしまうのももったいないので、あっぷしてみます。
おひまなときにどうぞ。^^


京子さんが真っ白なハイソックスに包まれた脛を大またに、こちらに向かって駈けてくる。
背後からは吸血鬼が迫っていた。
夕べ、ボクの血を吸い取った男だった。
一夜にして身体じゅうの血を舐め尽くされてしまったボクは半吸血鬼となって、いまは隠れて徘徊する身。
でも、京子はボクのそんな境遇を、まだ知らなかった――

セーラー服の両肩に、吸血鬼の掌が伸び、やつの体重が等分にかかった。
ボクの時と同じだった。
そのあとすぐに引き倒されて首すじを咬まれ、あとはされたい放題にされてしまった――
京子さんもきっと、同じ目に遭ってしまうのだ。

なのになぜか、ボクはドキドキと、乏しくなった血液を身体じゅうに駆け巡らせて――昂奮をおぼえている。
恥ずべき昂奮だった。
ボクの血を吸い尽くした吸血鬼は、ボクを家まで案内させて、迎えに出てきた母さんのことまで、咬んでしまった。
半ズボンの下に履いていたハイソックスをぞんぶんにいたぶったその男は、
それだけでは飽き足らずに、母さんの穿いているパンティ・ストッキングまでも愉しみたいとせがんだのだ。

肌色のパンストを咬み破られながら吸血される母さんの姿に、ボクはやはり昂奮を覚えて、
穿いていた半ズボンのなか、勢いよく射精してしまっていた。
やつはきっと、京子さんの履いている真っ白なハイソックスにも欲情して、おなじ狼藉をはたらく魂胆に違いない。
なのにボクはもう、自分の彼女がセーラー服姿を泥まみれにされながら辱められてゆく光景を想像して、
すでに半ズボンのなかが窮屈になるくらい、怒張をエスカレートさせてしまっている。
恥ずべき昂奮だ。忌むべき昂ぶりだ――
ボクはそう呟きながらも、いま現実に校庭の泥のうえに引き倒されてゆく京子さんの姿に、目をくぎ付けにしてしまっていた。

「やめてっ!ああッ!」
魂ぎるような悲鳴があがったが、周囲にはだれもいなかった。
男は構わず、京子さんを抱き寄せて、首すじを咬んだ。
強烈な一撃だった。
セーラー服の肩先に赤いしずくが撥ねて、真っ白な半そでと、紺色の襟に走る白のラインをまだらにした。
やつは京子さんのショートカットの黒髪を慣れた手つきで掻きのけると、
飢えた唇を健康そうに陽灼けした首すじにぴったりと吸いつける。

ちゅうっ。

折り目正しく着こなされたセーラー服姿から、十四歳の処女の血潮が啜り取られる――
ここまで音が、響いてきた。それがぼくの鼓膜を、淫らにくすぐった。

ちゅちゅちゅっ・・・

そそられる音だった。
ボクの彼女が生命の源泉をむしり取られ、14歳の健康な血液を奪い取られてゆく光景なのに――
空っぽになった血管をただズキズキと昂らせ、胸を妖しくわななかせてしまっていた。
美味しそうな血――
そんな想いが激しく去来して、ボクはわれ知らず起ちあがっていた。

植え込みから身を起して憑かれたように突き進んできたボクを見上げると、吸血鬼はいった。
「お前の彼女の血は、旨い」と。
「そう言ってもらえて、嬉しいよ」
目を丸くしている京子さんをまえに、ボクは嬉し気に、そう答えてしまっている。
うふふふふふっ。
吸血鬼は満足そうに目を細めると、ふたたび京子さんの首すじにつけた傷口を吸った。
「ああッ――」
彼女は白目を剥いて、仰け反った。

ムズムズと疼く唇をこらえかねたように開くと、ボクは自分でも予想しない言葉を口走っていた。
「ボクにも・・・分けて・・・」
「良いだろう」
吸血鬼は気前よく、京子さんの身体をボクのほうへともたれかけさせた。
ショートの黒髪がユサッと揺れて、汗ばんだ体温がずっしりとした手ごたえといっしょになだれ込んできた。
首すじには、むざんな咬み痕がふたつ、並んでつけられていた。
恋人に対するむざんな仕打ちを呪うゆとりもないままに、
血がたらたらと流れ出る咬み痕に、わななく唇を圧しつけていった――
恥ずべき渇きが、ボクを支配してしまっていた。

渇いた唇を、ねっとりとした血潮が生温かく浸す。
黒い衝動のままに、ボクは京子さんの血を、喉を鳴らして飲みつづけた。

「タカシくん・・・?タカシ・・・!?」
京子さんはかすかに身じろぎをして、顔をあげた。
ほとんど同時にボクも、吸いつけていた首すじから顔をあげた。
「えっ・・・?えっ・・・?タカシくんまで、あたしの血を吸ってるのっ!?」
我にかえった京子さんは声を尖らせて、それから腕を突っ張って、傷口を吸おうとするボクを拒もうとした。
ボクは彼女の腕を取り除けて、なおも血を吸い、また吸った。
恋人同士のせめぎ合いを、やつはじいっと見ているだけで、どちらにも加勢しようとはしなかった。

立ち去ってゆく吸血鬼の背中を横目に、ボクは京子さんのことを強く抱きすくめて、
生前には果たせなかった接吻を、淫らに遂げてしまっている。
泥濘にまみれた制服姿のうえにのしかかって、真っ白なハイソックスのふくらはぎに唇を吸いつけて、
白のハイソックスが真っ赤に染まるまで、京子の生き血に酔いしれてしまっていた。
初恋の女を獲物にするチャンスを与えてくれた吸血鬼に、心の底から感謝をしながら、
生え初めた牙を恋人の血潮に染めて、生気にあふれたピンク色の素肌を、淫らに染め変えていったのだった。


一週間後。
ボクは吸血鬼の邸へと、京子さんを伴っていた。
並んで歩く制服姿のスカートの下。
きょうも真っ白なハイソックスのふくらはぎが、大またに歩みを進めてゆく。
先週母さんのパンティ・ストッキングを咬み破った、あの恥知らずな唇が。
京子さんのハイソックスを愉しみ尽くしてしまうありさまを想像して、ボクはズボンの中身を張りつめさせてしまっている。

これから訪問する年配の男が、自分の血液を得たいと願っていると知りながら。
「ぜひ、お連れして♪」と、彼女は手を合わせ、つま先立ちして、願っていた。
淡い嫉妬がボクの胸を刺し、いびつな焔(ほむら)をかきたてるけれど。
ボクの血液を存分に吸い取ってその身に脈打たせている彼のため、
たいせつな恋人の血を、もう一度愉しませてあげたくて、
ボクは京子さんを伴って、吸血鬼の邸を訪問する。

「どうぞ、お好きになさってくださいね」
ためらいもなく揃えて差し伸ばされたふくらはぎに、
やつは目の色を変えてむしゃぶりついていったけれど。
ボクは自分の生き血を吸い尽くされたときと同じように惜しげもなく、京子さんの脚を咬ませていった。
キリッと装われた白のハイソックスの足許に、恥知らずなよだれをなすりつけられて、
整然と流れる太目のリブをいびつによじれさせてゆきながら、ずり降ろされてゆくのを見せつけられて、
嫉妬と妖しい昂ぶりとで、干からびた血管をゾクゾクと慄(ふる)わせていた。

捧げ抜いた血潮の量が度を越して、気絶してしまった少女が、静かに瞼を閉ざした下で、
首すじにつけた傷口に舌をふるいつけてゆく吸血鬼が、
穢れを知らない彼女の血潮を淫らに変えてしまうのは、きっと時間の問題――
けれどもきっと、ボクは、彼の誘惑を妨げようとはしないだろう。
むしろ。
真っ白なハイソックスの両脚が放恣に開かれた、濃紺のプリーツスカートの奥、
未来の花嫁の純潔が汚辱にまみれてしまうのを、
目を見張って見届けてしまうだろう。

肉づきたっぷりな脚が、まとうもの。

2022年07月22日(Fri) 00:34:20

「あのひとに、血を吸わせてあげるわね。あなた、妬きもちやくのはアウトだからねっ!」

彼女はそういって、セーラー服姿をひるがえして、ぼくに背を向けた。
そして、ひざ下丈のプリーツスカートをいさぎよくさばいて、大またで歩き去っていった。
濃紺のハイソックスをひざ下まで引き伸ばした、肉づきたっぷりなふくらはぎが、いつまでも目に灼(や)きついていた――

あのハイソックスを、惜しげもなく咬み破らせてしまうのか。
ぼくはしんそこ悔しかったし、彼女の履いているハイソックスを咬み破る権利を勝ち得た男を、しんそこ羨ましく感じていた。


それからどれだけ、刻が経ったことだろう?
「あのひとに献血してきますね。いまさら妬きもちなんか、妬かないでしょうけど・・・」
きみはそういって、よそ行きのスーツ姿を、あのときと同じように背けて、歩み去ってゆく。
えび茶のタイトスカートに狭められた窮屈な歩幅を、もの慣れたようにさばきながら、
奥ゆかしい足取りで、淫らな情事の待ち受ける邸へと、歩みを進めていった。
肌色のストッキングが張りつめたふくらはぎは太く、けれども薄地のナイロン生地のなまめかしさをいっぱいに張りつめさせていた。

あのストッキングを、惜しげもなく咬み破らせてしまうのか。
ぼくはしんそこ惜しいと思ったし、彼女のストッキングをいたぶる権利を勝ち得た男を、しんそこ妬ましく感じていた。

刻が経っても。
齢を重ねても。
変わらぬ想いが、そこにある。
けれどもぼくは、そのつど最愛の彼女を送り出し、
彼女はあの男の欲求を満足させるため、いつもの装いを目いっぱい引きたてて、
背すじを伸ばして、歩みを進める。

彼女が伏せるベッドのうえくり広げられるのは――まごうことなき不倫。
けれどもぼくは、彼女とあの男との営みに、苦情を言いたてるつもりはない。

むしろ思う。
彼女を想うさま、愛して欲しい。
彼を思うさま、抱きとめて欲しい。
ふたりの営みがぼくを裏切る、ぼくの家名を汚す行為だったとしても。
ぼくはふたりの愛の交歓に、心からの拍手を送るに違いない。


あとがき
濃紺のハイソックスに包まれた、健康な輝きに満ちた女子校生のピチピチとしたふくらはぎ。
薄手のストッキングに包まれた、大人の色香を漂わせた人妻の、むっちりと熟れたふくらはぎ。
いずれ劣らぬ脛であっても、齢を隔てれば同一人物の脚――そういうこと、きっとあるのでしょうね。^^

彼女のハイソックス 彼氏のハイソックス

2022年07月11日(Mon) 23:12:10

学校帰りのセーラー服の乙女たちが吸血鬼に襲われて、
ひとり、またひとりと噛まれて、地べたに膝を突いてゆくのを、この街ではだれも、止めようとはしない。
さいぜん品定めされながら血を吸い取られていった少女たちの親たちすらも、
娘たちがそのうら若い血で、吸血鬼の喉を悦ばせているのを、よしとしているようだった。

この街が、吸血鬼と共存を約してから、もう何年も経っている。
いまどき彼らのために、血を愉しまれたことが1度もない女など、たぶん一人もいないだろう。
どうしても妻や娘を穢されたくない。そう考える男たちは、とっくの昔に街から姿を消していた。
残った男たちはだれもが、生命の保証と引き替えに、
妻や娘や母親、それに自分自身の血液さえも、提供することを受け容れている。
妻や娘をかばうため――
夫や父親たちのなかには、自らの妻や娘の服を身にまとい、彼女たちの身代わりとなって血を吸われる者も少なからずいた。


瀬名田少年は、そうした家に育った少年たちの一人だった。
濃紺の半ズボンに、同じ色のハイソックス。
同学年の少女たちと似通った制服の着用が義務づけられていたので、
男子なのにハイソックスを履くことには、なんの抵抗も感じていなかった。

半ズボンから覗くピチピチと輝く彼らの太ももは、しばしば彼らの好餌となった。
「彼ら」は、男女わけ隔てなく、若い血液を求めていた――


学校帰りに立ち寄る公園の、片隅で。
同級生が3人、吸血鬼に迫られている。
おそろいの紺のハイソックスを履いたふくらはぎに、代わる代わる唇を吸いつけられて。
つぎつぎと顔色を蒼ざめさせて、その場に倒れ伏してゆく。
瀬名田少年はその日も、昼さがりの街なかでくり広げられるそんな光景を目にしていた。
いつもの光景・・・
そう見逃してしまうことができなかったのは。
その中の1人が、瀬名田少年の婚約者である波満子だったからだった。

波満子は真っ先に咬まれて、急速な失血に身もだえしながら、紺のハイソックスを咬み破られていった。
残る二人が互いの体温を確かめるかのように身を寄せ合って、それでも順ぐりに足許に唇を這わされて、
飢えた唇がまさぐるように蠢く下で、おそろいのハイソックスを咬み破られて、しなやかなナイロン生地に血を滴らせてゆくのだった。
同じ制服を着た少女たちが、まるで物まねでもしているかのように、
うり二つなしぐさで身を仰け反らせ、ふらつかせ、その場に倒れ伏してゆくのを、
少年はむしろ無感情に、見流している。
彼にとってはだれよりも、真っ先に倒れ伏して身じろぎひとつできなくなっている波満子の様子に、心を100%持っていかれているのだった。

獲物を3人モノにした吸血鬼は、そのうち2人を帰したあと、残るひとりを念入りにいたぶるという。
運わるく、その日残されたのは、ほかならぬ波満子だった。
遠目に注がれた、嫉妬に満ちた熱い視線を。
男は獣のような敏捷さで、察知していたに違いなかった。

ひざ下丈のプリーツスカートは、ユッサリと重く、ひだを豊かに拡げている。
女らしいしなやかさを帯びた下肢を遮る通学用の制服をまさぐりながら、
男はみるみる、波満子の太ももをあらわにしてゆく。

うふふふふふっ・・・

われに返った波満子が尻もちをついたまま後じさりをするのを、
狡猾な蛇のように地を這いながら追いつめて、
怯える足首を掴まえて、とざそうとするひざ小僧をおし拡げて、
これ見よがしに牙をむき出すと、濃紺の制服に包まれて白く映える太ももに、がぶりと食いついてゆく。
さっき彼女のクラスメイトを相手にみせた貪婪さをあらわにして、
キュウキュウ、グイグイと、波満子の血をむさぼり喰らう。
「あ・・・あ・・・あ・・・っ」
うろたえる波満子は再び訪れた急激な失血に目を眩ませて、
まっ白なセーラー服の夏服に泥を撥ねかせて、その場にうつ伏せに倒れ伏した。

ククク・・・
波満子の身体から引き抜いた血潮を牙から滴らせたまま、
男はむぞうさに、波満子の脚を引っ張りあげて、
さっき咬みついたのとは別の脚に、もの欲しげな唇を吸いつけていった・・・


視てるね・・・?
眠るように気絶した少女の、セーラー服の胸もとから顔をあげた吸血鬼は、
生垣の向こうからこちらを窺っている瀬名田少年に、透視するような鋭い視線を送った。
瀬名田少年がおずおずと顔を出すと、彼はいった。
「素直でよろしい」

「もっと視たいのじゃろ?こちらに来るがよい」
吸血鬼は、少年が波満子の許婚であることを知っていた。
「わしが憎いか?」
吸血鬼の問いに、少年はかぶりを振った。
そのしぐさはどうやら本気らしいと、吸血鬼はおもった。
「この娘を気の毒に思うのか?」
それも違う、と、少年はやはり、かぶりを振った。
そう。波満子は嫌がってはいない。
むしろさいしょのひと噛みは、狙われたふくらはぎを自分のほうから差し伸べていた。
「この子のしたことを、お前に対する裏切りと思うのか」
それもやはり違う。少年はまたも、かぶりを振った。
好ぅく、心得ているようじゃな・・・
吸血鬼は、初めて目を細めて、少年に向けた視線を和らげた。

忌まわしいんです。
若い血潮を、身体じゅうから舐め尽くされてしまうだなんて。
でも、貴男がたがぼくたちの血を欲しがっているのも、わかるんです。
だって吸血鬼なんですから。人の血を吸って生きているんでしょう?
いっしょに暮さなければならないとしたら、ぼくたちはやはり、貴男がたに血を提供する必要があるんです。
波満子さんもそう思っているし、ぼくもわかっているんです。
だから――波満子さんはぼくの希望を入れて、ご自身の血で貴男を愉しませているし・・・
ぼくもやっぱり、それを熱望しているんです。
変だと思われますよね?
ほんとうは、人間は吸血鬼と、闘わなければおかしいですよね?

吸血鬼は、少年の背中に腕をまわした。
少年は、拒まなかった。
「きみの脚も、見映えがよろしいね」
「そう思ってくだすって、嬉しいかもしれないです・・・」
「わしに襲われて生き血を吸われる乙女の気持ちが、少しはわかるかの?」
「ハイ、わかります・・・」
「乙女は未来の花婿を裏切ってでも、己の若い血潮を吸わせたがるのじゃ。
 この街の花婿たちは、花嫁が吸血鬼を受け容れるのを、許容しなければならぬ」
「ぼくは、あなたを許容します――」
「許容するだけかの?」
「いいえ・・・」
その・・・その・・・と、少年は言いよどんだ。
自分はいったい、何を言おうとしているのだろう。
男としての誇りを忘れ、伴侶を守る義務を放棄して・・・
瀬名田家の跡取り息子は、家の名誉を穢すような振る舞いを、吸血鬼に許してしまってよいのだろうか?
けれども、少年の理性を支えようとする潔癖さは、すぐに崩れ果ててゆく。
まるで紅茶の中に放り込まれた、角砂糖のように、たあいもなく――

若い女の血を差し上げたくて――
父さんはそういって、母さんを親しい吸血鬼の邸に伴った。
母さんはその晩ひと晩、家に戻ってくることはなかった。
その後も母さんが、父さんに隠れてお邸を訪問しつづけて、
瀬名田夫人としての誇りを放棄するようになったのは、
夫が最愛の妻の貞操を気前よく恵んだ相手だからだったはず。

ぼくは・・・ぼくは・・・
ためらいもなく、父さんの歩いた道を踏み出してみる。
差し伸べた脚から、ひざ下までぴっちりと引き伸ばされた濃紺のハイソックスを、みるもむざんに噛み剥がれてゆきながら。
少年はいつか、恍惚とした笑みを漏らしていた。
失血からさめて、もういちど起きあがった恋人が、セーラー服に着いた泥を気にも留めずに、
おそろいのハイソックスをいたぶられ若い血を啜られる未来の花婿に賞讃のまなざしをそそぐのを。
彼は気恥ずかしく、けれど誇らしく受け止めて。
彼女の花婿をも恋人として篭絡した吸血鬼は、くすぐったそうに受け流すのだった。


あとがき
セーラー服の少女たちが、通学用のハイソックスを他愛もなく咬み破られながら、生き血を愉しまれてゆくのを。
親たちは、そして少女の彼氏たちは、どんな気分で盗み見るのでしょうか?
あり得ない設定であるとはおもうのですが。
この少年のように、そしてこの街の親たちのように、
恋人や娘が吸血鬼との逢瀬を遂げて、処女の生き血への渇望を成就させてしまうのを、
気恥ずかしく誇らしく見守ることも、時にはあるのではないでしょうか・・・

三人(みたり)の乙女を嚙む男

2022年07月11日(Mon) 22:13:40

お揃いのセーラー服の肩を並べて、少女が三人こちらへと歩み寄ってくる。
ゆらゆらと揺れる濃紺のプリーツスカートのすそから、白い脛、小麦色の太ももを覗かせて、
彼女たちは道行く人の目を、眩しく射止めていた。
発育の良い三対の脚たちは、すらりとした脚、太っちょな脚――
さまざまな輪郭を、紺のハイソックスに包んでいる。

「小父さん、来たよ♪」
いちばん背の高い子が、公園の隅のベンチにうずくまるように腰かけた、影のような男に声をかけた。
彼女の胸もとには、学級委員の徽章が、誇らしげに輝いている。
影はぬらりと起ちあがると、紺のハイソックスの脚たちを目にして、ほくそ笑んだ。
痩せぎすでみすぼらしく、こけた頬と枯れ木のような肌の色の持ち主は、
ゆらり、ゆらりとよろめきながら、少女たちのほうへと近寄ってゆく。

「もう、やだなぁ。また脚を狙うのね?」
クラス委員の波満子は、三つ編みのおさげを照れくさそうに肩先に揺らしながら、
それでも足許にかがみ込んでくる男の唇を、妨げようとはしなかった。
男は臆面もなく、紺のハイソックスのふくらはぎに、唇を吸いつけた。
クチュッ・・・と、唾液のはぜる音が、ひそかかに洩れた。
「あ・・・あ・・・」
波満子は遠くを見つめながら、みるみるうちに目の焦点を曇らせてゆく。

第一の少女がくたりとくず折れると、男は顔をあげて、残る二人の少女を見た。
二人は「女史」と呼ばれたクラス委員がみるみるうちに目をまわしてしまうのを息をのんで見守るばかり。
男の口許に、波満子の血が滲んでしたたるのを認めると、
ちょっとだけ怯えた顔つきになって、お互いの身を寄り添い合わせた。
「さあ、つぎは早苗かな?それともかの子の番かの?」
男はたっぷりと獲た生娘の血潮を嬉し気に舐め取ると、
舌なめずりをして、二人のほうへと這い寄った。

ちび助の早苗は、おかっぱ頭の下に伸びた秀でた眉をしかめながらも、
「じゃあ次はあたしかな」と、自分から紺のハイソックスの脚を差し伸べた。
「きょうのやつはちょっと寸足らずだね。ゴメンね~」
と笑うのは。
男がひざ下ぴっちりに引き伸ばした長めのハイソックスを露骨に好んでいるのを揶揄したかったから。
男は「どれどれ」と、早苗の足許ににじり寄ると、
脛の半ばまでしか覆っていないハイソックスを、ちょっとだけ引き伸ばすしぐさをした。
男の悪戯心を敏感に察した早苗は、きゃあきゃあはしゃいで飛びのいた。
寸足らずなハイソックスの口ゴムのすこし上のあたりの、いちばん肉づきのよいふくらはぎに唇を這わせると、
吸血鬼はその唇を、強く吸いつけた。
「アッ、もう!」
さいしょに咬まれた波満子が、男の好みに合わせて脚に通した長めのハイソックスを血で濡らしたままうつ伏している傍らで、
早苗は小柄な体躯を仰け反らせながら、むき出しのふくらはぎから血潮を啜り取られてゆく。
男の口許から洩れた血潮が、ハイソックスの口ゴムを濡らすのを感じると、
早苗は「やったわねえ」と呟いて、男を白い目で睨(ね)めおろした。
ハイソックスを血で汚されまいとした彼女の意図は、彼の痴情を妨げることができなかった。

早苗が失血のあまり尻もちをついてしまうと、一人残ったかの子は、
「もぅ、いつもあたしが最後なんだからあ」と、鼻を鳴らした。
それは不平を鳴らすようでもあったが、同時に得意そうでもあった。
太っちょなかの子のふくらはぎは、吸血鬼の大好物だった。
なによりも。
だれよりもふんだんに血液を供給できる大きな身体を気に入っていたのだ。

わざと身を背けて逃げようとしたかの子を、吸血鬼は後ろから羽交い絞めにして、肉づきの豊かなうなじにガブリと食いついた、。
ピチピチとした小麦色の皮膚が鋭い牙に切り裂かれて、
ドクドクとあふれ出る血潮が男の口許からこぼれて、ぼとぼとと地面を打った。
「あ・・・もったいない飲み方しないで!」
少女は声をあげて抗議した。
吸血されることじたいは、拒まないという態度だった。
男は背後から腕をまわして、セーラー不育の胸もとを引き締める紺色のリボンを揉みくちゃにしながら、
かの子の血を飲み耽った。
自分の体内をめぐる血潮がゴクゴクと男の喉を鳴らすのを、かの子はうっとりと聞き惚れていた――

ふたりの少女の後ろ姿が、セーラー服の襟首を並べて、公園の出口を目指している。
きょうの「ご指名」は、さいしょに餌食となった波満子らしい。
「おうちに帰るまえに――悪りぃがもう少し、楽しませてもらうぞ」
男はにんまりと笑った。
波満子もまた、白い歯をイタズラっぽく覗かせて、笑っていた。

遠い昔の追憶

2022年01月09日(Sun) 20:41:27

なん年、なん十年昔の記憶だろうか。
白く乾いた路上を、セーラー服の冬服を着た女学生がひとり、こちらに向けて歩いてくる。
三つ編みのおさげを肩に揺らして、良家の子女らしい楚々とした足どりだ。
丈の長めな、ひざ下まである濃紺のプリーツスカートが、微かな広がりをみせて足どりに合わせて揺らぎ、
スカートのすそから覗く脛は、肌の蒼白く透ける薄黒のストッキングに包まれている。

そのころは、黒のストッキングは女学生のステータスだった。
そして、まだ稚なかった彼にとって、年上のお姉さんの足許に舌を這わせるのは、なによりも楽しいイタズラだった。
「お姉ちゃん、お帰り」
彼はわざとらしく神妙な顔を作って、彼女を迎えた。
三つ編みのお下げに挟まれたおとがいがほのかに笑んで、少女はイタズラっぽく白い歯をみせた。
「また、あたしの足許狙ってるのね?」

人間の少女にとって、いかに年下とはいえ、吸血鬼の少年は脅威のはずだった。
処女の生き血を吸い取られ、いいように弄ばれてしまいかねないのだから。
ところが彼女はそうした分け隔てなく、まるで姉弟のように彼と親しんだ。
そして、色気づいて彼女の履いている黒のストッキングをイタズラしたがる彼の前、
むき出された稚ない牙に、黒ストッキングの脚を圧しつけるようにして、惜しげもなく破らせていった。

年上のお姉さんの履いているストッキングを咬み剥いでいくのは、
色気というものをなんとなくわかりかけた少年にとって、冒瀆的な愉悦をもたらした。
誇り高く気高いナイロン生地は、ほんのちょっと触れただけで、パリパリと裂け目を拡げ、
白々と滲んだ素肌をいっそう、妖しく引きたてるのだった。
「やだ、またすぐ破っちゃうのね?」
少女は批難を籠めて彼を睨んだが、その目線に毒気はない。
「こんなこと、他の子に無理やりしちゃダメだよ」
とたしなめながらも、軽い貧血にぼうっとなりながら、見る影もなく破り取らせてしまうのだった。

若い女性が節操を重んじた時代だった。
彼女はやがて大人になり、近隣の街の開業医の跡継ぎのもとに、嫁いでいった。
齢の離れた彼女の妹がセーラー服を身に着けるようになったのが、ちょうど入れ違いだった。

「いけないお兄ちゃん、またあたしのストッキング破きたくて、待ち伏せしてたのね」
姉とよく似た言葉遣いと声色で、少女は白い頬を潔癖そうにこわばらせたけれど、
それでも健気にも黒のストッキングの脚を差し伸べて、
引っ掻くように圧しつけられる牙の好むまま、薄地のナイロンを引き破らせていった。
少女が脚に通すストッキングをなんダース台無しにしたことか、もはや記憶にない。

妹娘は街に残って、短大を出ると地元企業のOLになった。
その勤め帰りを、彼はしばしば待ち伏せをした。
就職した彼女の帰りは遅く、しばしば深夜になったけれど、
彼はそれをもいとわずに、獲物を待ちつづけた。

「まだいたの?だれも獲物にできなかったんだ~」
妹娘はパッドの入ったスーツの肩をそびやかし、自分を待ち伏せた吸血鬼をからかいながらも、
ショッキングピンクのスカートのすそから覗く、肌色のストッキングに包んだ脚を、むぞうさに差し伸べてゆく。

ほんの数年の違いだったが、その間に技術は進歩して、サポートタイプのストッキングが全盛を迎えていた。
カリカリと引っ掻く牙を通して伝わってくるナイロン生地の感覚が、目だって硬質なものになっていて、
淡い光沢をよぎらせたルックスともども、男を刺激的な想いへと駆り立てた。

「あっ、イヤだ・・・」
昂奮のあまり押し倒した彼女に馬乗りになって、首すじにがぶりと食いついてしまったとき。
うっかり、白いブラウスにバラ色のしずくを撥ねかしてしまっている。
「いけねぇ――」
吸血鬼は自分の撥ねかした血潮に、頓狂な声をあげた。
「ばかじゃないの?」
女はいった。
どちらが吸血鬼かわからないような不敵な目線が、押し倒された下から睨(ね)め上げてくる。
「あなた吸血鬼でしょ?血が怖くてどうすんの」
「怖いわけじゃない」
吸血鬼は弁解した。
「新調したばかりだろ、そのブラウス」
「新しく買えばいいわよ」
景気の良い時代だった。
勤めていくらも経たないOLでも、かなりの贅沢が許されていた。
「そういう問題じゃないだろう」
男はなおも言い募った。
どちらがブラウスを汚したのかも、もうよくわからない。

「いっそ、さぁ・・・」
女はいった。
「このままもっと、しちゃっても好いんだよ」
女は白い歯をみせて、笑った。
スカートに圧しつけられた股間が、びっくりするほどの勁さを帯びつつあるのを、女は敏感に感じ取っている。
「あたし、6月には結婚するんだ」

そうなのか?男は女を抑えつける手をゆるめた。
ではなおさら、そうはいかないだろう・・・
男がそう言おうとしたのを、女の掌が制した。
したたかに血を吸い取られた女の掌は、冷たかった。
その冷たさに男が言葉を失っていると、女はいった。
嫁ぎ先は、姉の弟のところなのだと。
弟は都会住まいの勤務医で、嫁いだらとうぶん、ここには戻れないという。
「しかし、嫁入り前の身で・・・」
男がいいかけると、女はいった。
「ばか律儀もほどほどにしなさいよ」
応える代わり、男は女のブラウスを、剥ぎ取っていた。
二人はどちらからともなく身体をからめ合い、ひとつになっていった――
――女がむぞうさに、処女を捨てる時代だった。


渇いた道はいつか舗装道路となり、周囲の邸はみなお二階をあげ、やがてマンションに建て替わっていった。

吸血鬼でも年老いるのか。
男はすでに、孫がいてもおかしくない齢だった。
その後人間の娘と恋愛し、両親の許しのうえで結婚した。
吸血鬼と人間との婚礼の席がどうなるか、両親ともに承知しながら。

一族同士の懇親を兼ねた華燭の典は、後半は淫らな絵図へとなだれ込んでいく。
新婦の母親の貞操は、吸血鬼の客たちのための、いちばんの引出物とされた。
参列した人間の身内の既婚婦人たちは例外なく、同じ憂き目を見た。
晴れ着を脱がされ、ストッキングを片脚だけ脱がされた格好で犯されてゆく妻たちを、
すでに妻の仇敵と意気投合してしまった夫たちは、うわべだけは制止しようとしながらも、いちぶしじゅうを昂りの目で見守っていた。
やがて歓びに目ざめた妻たちが、自分から腰を振って夫を裏切るようになるまでを。
その席には隣町の医者の兄弟も連なっていて、

その夜はかろうじて新郎に純潔を捧げ得た新妻の肉体も、新居を構えるそうそう、仲間うちで分かち合われた。
獣の兄弟が獲物を分け合うように、和気あいあいと、ピンクのスーツを剥ぎ取られていった。
街並みは現代的になったが、この街には吸血鬼が増え、人間と交わるものもまた、増えていた。

「おかえりなさい」
ふと投げられた声色は甘く、おだやかないたわりに満ちていた。
振り向くと、声の主がいた。
かつての姉妹がそろって、佇んでいた。
「あ――」
と声をあげかけると、
「しーっ」
とふたり、似通った顔を並べて、イタズラっぽく笑み返してくる。
進歩ないね、どこまでも律儀なんだから。
「あなたのために、取っておいたの」
二人はそれぞれの方角に、小手をかざしておいでおいでをした。
母親たちの手招きに従って現れたのは、いまどきのブレザー制服姿の少女たち。
「この子は姉さんの娘、今年中二になるの。こっちはうちの娘、中学にあがったばっかりなのよ」
それぞれ違う、都会仕立ての制服は、かつての女学生とは違ってスカートの丈も短めで、
色とりどりのチェック柄のプリーツスカートの下には、
姉の娘は濃紺のハイソックス、
妹の娘は黒のオーバーニー、
引き締まった脚のラインをびっちりと縁どる長靴下が、欲情に満ちた男の目を射た。
「この子たちは、街の子じゃないから。あなたが独り占めしていいんだからね」
「でも召し上がる順番は、齢の順にしてくださいね。この子たちにも、プライドあるから♡」
自慢の娘を差し出す姉妹は口々にそういって、ではごゆっくり、と、その場をはずしていった。
残された二人の少女ははにかみながらお互いを見つめあい、
姉の娘のほうが、「では私からお先に――」と、
紺のハイソックスの脚を差し伸べてくる。
いきさつはすべて、母親から言い含められているのだろう。
「大人の女にしちゃっても、かまわないのかね?」
吸血鬼の言い草に、「やだ・・・」と、羞ずかしそうに口を掌で覆いながら、
「ご自由に」といったのは、妹の娘のほうだった。
あのときの強気な白い頬を、男はもういちど、思い出していた。


あとがき
新春の一話は、ずいぶんと遅くなってしまいました。
でもまあ、少しは華やかなお話になったかどうか?
いや、相変わらず、歪んでおりますね・・・ 苦笑

姪の血の味 ~愛娘と同じセーラー服を、処女の血に濡らして~ (本文篇)

2021年12月06日(Mon) 08:10:50

~はじめに~
本話は、本文篇と挿絵篇の二本立てであっぷいたします。
挿絵篇も、こうご期待。
※追記 やっぱり本文のなかに添えてみることにしました。^^

このえがほしい93468045_p12

変わった少女だった。
小学校4年生のころから、「あたし、吸血鬼に血を吸われたい」と言っていた。
親たちがあわてて、「由梨ったら、何を言い出すの!?」と咎めても、平気なようだった。
ただ顔をまっすぐにあげて、澄んだ瞳をきらきらさせながら、
「あたし、吸血鬼に血を吸われたい」
と、言いつづけるのだった。

001 001 93468045_p13

それは、この街にかぎっての、特異な現象だった。
なん年か前、この街に吸血鬼が棲みついて、多くのものが毒牙にかかってきた。
中には吸血鬼と意気投合して、自分の妻や娘の血を与えて、自らも吸血鬼化する市民まで現れるほどだった。
それでも事件とならなかったのは、生命を落としたものが一人もいなく、
なおかつ被害届も出ないからだった。

名家の令嬢や令夫人が、真っ先に、次々と襲われていった。
少なからぬ令嬢が嫁入り前の身体を汚され、令夫人もまた夫に顔向けのできない辱めを受けたのに。
そんなことがあってさえ、夫や婚約者を含めただれからも、被害届は出されないのだった。


その日も由梨は、夕やみ迫る公園を、一人歩いていた。
いったん家には戻ったので、手ぶらだった。
読書家だった彼女はそんな風に散策をして、
いままで読んだ本とか、これから描いてみたい小説の筋書きとかを、気分に任せて空想するのが日課だった。
小説の筋書きには、むろん吸血鬼に襲われるお話も含まれていた。

伯父の一人が家族もろとも血を吸われて吸血鬼になったと聞かされたとき。
入学祝いに訪れた伯父の前、紺のハイソックスに包まれた大人びた脚を見せびらかすように体育座りをして、
「あたし、伯父さまに血を吸われてみたい」
などと、口走ったものだった。
そのときはさすがに、親たちがあわてて止めに入ったし、
伯父さんももちろん、年端もいかない由梨のことを咬もうとはせず、
目を細めて笑い、おだやかに引き下がったものなのだが。

「伯父さま、家族もろとも血を吸い取られたんだ――」
由梨の想像力は、五月晴れの空にむくむくと湧き上がる積乱雲のように、どんどん広がってゆく。
だとすると、香子伯母さまも、香織姉さんも、吸われてしまったにちがいない。
いったいどんなふうに、伯母さまや香織姉さんは咬まれて、うら若い血を吸い尽くされてしまったのだろうか?
そんな想像をすると、由梨はついゾクゾクと、胸を昂らせてしまうのだった。

彼女の妄想する吸血鬼は、決して水もしたたるような若い男ではなくて、
どちらかというと醜く老いさらばえた、血の気も失せて干からびたようなみすぼらしい男だった。
そういう男に羽交い絞めにされて、強引に迫られて、
干からびた血管をうるおすために、由梨のうなじを咬んで生き血をゴクゴクとむさぼる――
そんな光景をなん度も思い描いては、不可思議な昂りに震えるのだった。
なので、山名の伯父さまなどは、彼女の妄想では格好の主役になっていたのだ。

山名の伯父さまみたいな、齢の長けた吸血鬼に襲われて、
首すじを咬まれ、由梨の若い血をじんわりと味わわれてみたい。
ぐいぐい、ぐいぐいと、美味しそうに飲み味わわれて、足腰立たなくなるほど血を吸い取られてしまいたい――
制服のスカートに隠された由梨のまだ稚なすぎる秘密の園が、じんわりと潤いを帯びてくる。
どうしてこんな想像をすると、昂ってしまうのだろう?
由梨は不思議でならなかった。
けれども、妄想を止めることは、思いもよらないことだった。


おや――?
由梨はふと、足取りを止めた。
だれかがこちらに、視線を送ってくる。
そんな気配を感じたのだ。
少女の六感は、とても鋭い。
まして、想像力豊かな由梨はとりわけ、そうしたことに鋭いほうだった。
どうしたのかしら?もしかして、吸血鬼・・・?
彼女のなかに、期待とも恐怖ともつかないものが、黒雲のように湧き起こる。
それは、他人が吸われたときに想像をめぐらすときのような積乱雲ではなくて、
梅雨入りしかけたこのごろには珍しくなくなった夕立のときの黒雲のように妖しく、物騒な気配を秘めていた。

002 001 93468045_p14

ひゅるるる・・・
生温かい風が、由梨の頬をかすめる。
ふくらはぎを包む紺のハイソックスのゆるやかな束縛感が、しなやかに皮膚を這うのをおぼえた。
制服は、〇学生の女の子にとって、ひとつのファッション。
ハイソックスも、年頃の女の子の足許を引きたてる、大人びたアイテム。
そんなふうに思っていた。
そうした服装が、血に飢えた吸血鬼をそそることもまた、彼女はハッキリと自覚していた。

003 001 93468045_p15

ざわ・・・
背後で人の気配がした。
さすがの由梨も、ビクッと立ちすくんだ。
こわごわと背後をふり返ると――
そこには、山名の伯父が、うっそりと立ちはだかっていた。


「伯父さま――」
由梨は無理に笑おうとした。けれども、その努力は由梨の頬を、不器用に引きつらせたに過ぎなかった。
なぜなら伯父は、ふだんとはちがって、ひどく蒼白い顔をしていたから。
飢えている。飢えているんだ。伯父さま、あたしの血を狙っているんだ――
由梨は恐怖で立ちすくみながらも、そのいっぽうで、血が騒ぎ立つのを抑えかねていた。
由梨の瑞々しい皮膚の下に脈打つ血管を、若い血潮が昂りを帯びて、めまぐるしくめぐってゆく。
飲まれたい。伯父さまに、飲まれたい。
飲んで欲しい。この身体に脈打つ娘ざかりの血潮を、ゴクゴクと強引に、奪ってほしい――
由梨は恐怖と期待とで喉をカラカラにしながら、
自分を見すえる山名の伯父もまた、干からび切った喉をカラカラにしているのを感じ取っていた。
伯父さま、飲んで。由梨の血で、カラカラになった喉を潤して。
もう、十四歳なんだもの。由梨の生き血、きっと伯父さまのお口に合ってよ。

伯父が両腕を振りかざして、由梨に迫ってくる。
由梨は頬に手を当てて、当惑げにあたりを見回し、
「伯父さま?あら、まあっ・・・」
と、言葉にならない声を発しつづけた。

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目の前の少女がうろたえているのが、吸血鬼の目には悦ばしく映ったらしい。
山名の伯父は由梨の背後にするりと回り込むと、怯える姪娘の耳もとに唇を近寄せて、囁いた。
「由梨ちゃん、こんばんは。きょうはきみの血が欲しくて、公園をさまよっていたのだよ――」

怖い。怖いわ・・・
身体じゅうの血をザワザワと騒がせるほどの恐怖に怯えながら、由梨は縮みあがっていた。
怖いのだ。怖くてたまらないのだ。
けれども、脚が根の生えたように動かない。
咬まれたらどうしよう。きっと痛いに違いない。
それに制服が汚れちゃう。
ハイソックスの脚も咬みたがるんだよね?
エッチだ。ぜったい、えっちだよ・・・
血を全部啜り取られたら、もう学校に行けないし、パパやママにも会えなくなる。
どうしよう。どうしよう・・・
由梨は惑い、怖ろしげな上目遣いで、伯父を見た。

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「由梨ちゃんは・・・わしに血をくれるんだよね?前からそうお約束していたよね・・・?」
伯父さまの言葉遣いは、あくまで丁寧だった。
そして、由梨に怖い想いをさせまいと、彼なりに注意を払っているようだった。
そのことが、由梨をほんの少しだけ落ち着かせた。
そうだわ、あたし――吸血鬼に血を吸われたかったんだもの。
香織姉さんだって、仲良しの弥生ちゃんだって吸われたのに、
あたしだけまだだなんて、悔しいんだもの。
そうだわ、伯父さまに咬んでもらおう。
どうせだったら、ガブリと力強く食いついて、ゴクゴクと強引に飲んでもらおう――
だって、どうせ飲まれちゃうんだもの。美味しく飲んでいただいたほうが、嬉しいわ――

由梨の妄想は、突然途切れた。
山名の伯父が突然、由梨の首のつけ根に咬みついたのだ。

ぎゅうっ・・・
力づくで圧しつけられた尖った異物が、強引に皮膚を破って食い込んでくる。
ジワッとはじけ鮮血が、どす黒い音とたててヴュッ!と撥ね、
セーラー服の襟首と由梨の頬とを、同時に濡らした。
痛い・・・痛い・・・容赦なく食い込んでくるッ・・・
由梨は初めての痛みに、顔をしかめた。

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由梨の白い肌をしたたり落ちる血潮が、セーラー服の胸当てを濡らすころ。
由梨はふたたび、上目遣いで伯父を見た。
伯父は由梨の首すじに取りついて、あふれ出る血潮を、夢中で啜っている。
怖い。怖いわ・・・
由梨は視線を、あらぬかたへと向けていた。
パパやママは、いまごろどうしているだろうと思った。

パパは役場でお勤め。
ママはきっと、いまごろ由梨のために夕食の献立に取り組んでるさい中だろう。
きっと由梨がこんなふうに、吸血鬼に迫られて、生命の泉を涸らしてしまう危機に陥ってるなど、夢にも思ってないに違いない。
(じっさいには、由梨の母親はすでに山名の毒牙にかかり、娘の血の味を想像させる役割を果たしてしまっていたのだが、由梨はそんなことは夢にも知らない)
どうしよう。どうしよう。血を吸い尽くされたら、もうお家に帰れなくなっちゃう・・・
由梨は惑い、悶えた――

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姪娘の稚ない肢体を腕いっぱいに感じながら、
由梨がその腕のなかで身をよじり、ゆるやかに抗うのを抑えつけながら、
山名はにんまりと、ほくそ笑んでいた。
予想通りだ。いや、予想以上の味わいだ。
由梨の血は、美味い。母親の茉莉恵の血と、良い勝負だ。
この子ならきっと、なん度でも楽しめる。
きっとこの子は、お家に帰れないと心配しているに違いない。
怯える心を落ち着かせ、まずは安心させてやろう。
そしてそのあとの愉しみも、たっぷりと味わってしまおう――

まだ味わったことのないまな娘の香織や、愛妻・香子の血も、似たような香りに彩られているのか。
ならばわが妻や娘を狙った吸血鬼の気持ちも、わかろうというもの。
きっとやつは、いまのわしと同じような気分で、香織や香子を我がものにしていったのだろう。
今宵はこの可憐な姪娘を、妻や娘と同じ目に遭わせてやろう。
お前の母親も、わしの欲望に屈して餌食になったのだ。
それはたんに、お前の血の味をわしに報らせて、味見をさせてくれたに過ぎないものだったけれども、
彼女は彼女なりに、夫に捧げた操を、わしに踏みにじらせてくれたのだ。
(少なくとも、嫁入りのあとには、ほかの男を識らぬ身体であったはずだ)
由梨よ、おまえはわしに生き血を啜り尽くされるために、十四年間育ってきたのだ。
さあ、今こそそのうら若い生き血で、わしを夢中にさせておくれ。
美味い。美味いぞ。
お前の血は、じつに美味い・・・

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由梨がこん睡状態に陥るのに、数分とかからなかった――ようにさえ、山名には思えた。
じっさいには、30分くらいは、吸い続けていたはずなのだ。
ヒトが意識を失うほどに血液を喪失するには、それくらいは時間がかかるはず。
わざと急所を外して食いついたのは、この少女がうら若い肢体に秘めた血液を、ゆっくり味わうためだったのだから。
山名は自分の腕の中で眠りこけている少女を抱きかかえると、傍らの樹にもたれかけさせた。
少女のずっしりとした重みは、そのまま彼の獲る血液の量が豊かであることを意味していたが、
両腕でその身を支える必要がなくなると、自由になったその両腕で、
少女の身体を征服の上からなぞるように愛撫をくり返し、
それからそろそろと、足許へと唇を近寄せていく――
紺のハイソックスは、大人びた少女たちのおしゃれなアイテムであったけれど、
同時に吸血鬼の唇を悦ばせるための装いでもあった。

ちゅうっ。
しなやかなナイロン越しにふくらはぎに吸いつけられた唇の強引さが、
少女をほんの少しだけ、われに返らせた。
伯父さま・・・あたしのハイソックスを愉しんでる・・・
制服の一部である紺のハイソックスを、ひざ小僧の下からずり落ちるくらいに意地汚く舐(ねぶ)りまわされながら、
由梨のハイソックスを伯父さまが愉しみやすいように、無意識に足をくねらせ、向きを変えていった。
くまなく舐め尽くしてもらうために――
そして、ほんの少しだけ意識を取り戻しかけた少女は、
ハイソックスを咬み破られてまたも執拗な吸血を受け意識を夢見心地にされていきながら、
たまたまきょう履いてきたハイソックスがおニューで、伯父さまを悦ばせることができてラッキーだった・・・
そんなことをありありと、感じていた。


由梨が吸血鬼の両腕に抱き上げられて公園の森の奥深く連れ去られ、
夕靄(もや)の彼方で受けた儀式――
制服の重たいプリーツスカートをたくし上げられて、
ショーツをつま先まですべらせられて、
まだ柔らかすぎる蕾のような秘所を、手慣れた掌にまさぐり当てられて、
まだお嫁に行くには早すぎる身で、
初々しくも淡い茂みを翳らせながら、
逆立った伯父さまのもうひとつの「牙」に、ズブズブと侵されてゆく――。
口許に生えかけた牙をチラチラ覗かせながら、
由梨は息をはずませ、すすり泣きをし、そのくせ時おりくすぐったそうな笑い声さえ洩らして、
股間から洩れた血潮が太ももを濡らすのも構わずに、
初々しい痛みの彼方にある愉悦に目ざめていったのだった。

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あとがき
今回は絵があまりにも素敵だったので、却ってお話を作るのに時間がかかってしまいました。
なのに、いったん描きはじめると、際限なく妄想が止まらなくなり、かなりの長い話なってしまいました。
つまんなくなければ、よろしいのですが・・・。 A^^;

闇夜の逢瀬

2021年11月15日(Mon) 12:16:21

盟友・霧夜さまから頂戴した画に絵詞を入れて、一篇のお話に仕立てました。
前作・「有馬由梨(14)を襲った吸血鬼のひとりごと」の前日譚(そんな言葉あるのか?)となります。

由梨嬢の受難についてはいずれ触れたいと思っていますが、
前作の主人公は、その由梨嬢を襲った吸血鬼です。
吸血鬼といっても、首すじに咬み痕があるということは、もとはふつうの人間だったということです。
いまは吸血鬼でも、かつては自身も吸血体験をもっている――ということになります。
いったい、どういう経緯で吸血鬼になったのだろう?という疑問が、柏木の場合常について回ります。

霧夜さまが描くこの吸血鬼、血の気の失せた青緑色の顔をしているので、柏木は勝手に「青鬼さん」と呼んでいるのですが、
「青鬼さん」はもともと、妻と年頃の娘を持つ一般人の男性でした。
ところが、娘を吸血鬼に襲われ、吸血鬼化した娘が自分の血を吸った吸血鬼(赤鬼さん、と柏木は呼んでいます。赤ら顔をしているので)に母親―「青鬼さん」の妻―を引き合わせて、やはり血を吸い取らせてしまいます。
その一連のお話しの発端となる、「青鬼さん」令嬢と「赤鬼さん」との出逢いが、今回のお話です。

以下、霧夜さまから頂戴した画に絵詞を入れた形で、当時の状況を再現してみます。

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ヒロインである山名香織さん、17歳の女子校生です。
クラシックな黒のセーラー服といい、恐怖に満ちた顔つきといい、
どことなく、映画館に飾られる、「昭和のスリラー映画」の宣伝の画のようなオモムキがあります。
右のほう、闇の彼方から伸びてくる手も、不気味ですね。。


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画像では、咬まれるのは首すじだけですが、画の外で彼女は、短めのスカートから覗く太ももや、ハイソックスに包まれたふくらはぎも咬まれ愉しまれたとおもいます。
そんな彼女の運命を暗示させるような文章にしてみました。
「スカート丈が短いことを母親が注意した」という文面、さいごのシーンへの伏線となりますので、ご記憶ください。


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少女の横顔を描いたこの画が、柏木をもっとも惹きつけました。
可憐でもの堅く、たぶん奥手な少女――そんな感じが伝わってきます。
昭和な雰囲気も満載です。
大人になったら、尽くすタイプの女性になりそうです。
さっそくに齢17にして、みずからの生き血を吸い「尽くさせる」ことで、吸血鬼に「尽くして」しまいます。


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吸血鬼氏は、遠慮会釈なく、山名家令嬢の首すじに咬みつきます。
前の画から脈絡もないほどな、急展開です。
なので、「熱烈に咬んだ」と表現しました。
「熱烈に咬」まれたことをむしろ、香織嬢は嬉しく感じ、誇りに思っているようすさえ窺えます。
もしかすると、吸血され洗脳されたあと、吸血鬼のつごうの良いように記憶を塗り替えられたのかもしれませんが、
「咬まれ初め」が恐怖や屈辱の記憶として残るよりも、そのほうが幸せなのかもしれません。

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「せっかく捧げた血ですもの。美味しいといわれるほうが嬉しいですわ――」
香織嬢がそういったかどうかはわかりませんが、吸われた血が相手を救うことにつながっているか、愉しんでもらっているかは、
「尽くす」タイプである香織嬢にとっては、重要だったようです。
たとえ彼女がいま、正気を失うほどの恐怖のなかに置かれていたとしても――


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初体験を遂げた少女がしばしばそうであるように、彼女も快楽を感じつつも、涙を流します。
有頂天のるつぼにあってもやはり拭えないのは、母親に対する後ろめたさ というところでしょうか。
「パパとママからもらったこの若い血で、渇きを癒してあげたい」と念じた、健気(けなげ)な少女はこうして、
自らの吸血鬼化を予感し、喪われた血液は母親から補おうと密かに誓うのです。
香織嬢は吸血されるまえから、みずからの血のなかに両親とのつながりを意識しています。
自分が吸われることは、両親も吸われることに直結することをどこまで意識していたかは謎ですが、
空っぽになった血管を満たすのは、やはり母親の血でなければならないことは、明確に意識していたことになります。


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身体をもつれ合わせるようにしながらも、香織嬢は気丈にも、立ち尽くしたまま生き血を吸い尽くされていきました。
このあと、短いスカートからむき出しになった太ももや、紺のハイソックスのふくらはぎにも牙を享(う)けたと思われます。
そしてさいごは、セーラー服姿のまま、犯されていったのでしょう。

正気の状態であれば、お嫁入するまでは慎むべきこと――と認識していたはずのこの古風な少女は、
血を抜かれることで、また抜き取られた血が吸血鬼の血管を浸すことで、みずからの血を男と共有する関係になることで、
ためらいもなく制服を剥ぎ取られ、
玉のように守り抜いてきた純潔を汚辱にまみれさせていったのです。
めでたし、めでたし――

さいごに、「あたしのスカート丈を咎めたママの警告は正しかった」で〆ました。
娘のスカート丈を気にするお母さんは、これまた保守的で、気丈な女性なのでしょう。
しつけの行き届いた娘に、良妻賢母の母親。似合いの母娘です。
けれども、娘が吸われたのと同じ経緯で、母親までもが同じ運命をたどることも、
この一行で示唆したつもりです。

山名家の一家のその後の運命については、前作をお読みください。^^

うら若い娼婦たち

2021年11月07日(Sun) 01:18:26

お揃いの紺のハイソックスに包まれた脚たちが、まっすぐに学校を目指すなか。
末尾にいた三人の足取りが、ふと立ち止まる。
「行こうか」「いいよね?」
目配せし合い、イタズラっぽく笑う三人は、通学路をはずれて別方向へと歩みをすすめた。
すらりとした脚。スポーツで鍛えた脚。肉づきたっぷりの脚。
三人三様の脚たちは、お揃いのハイソックスをお行儀よく、ひざ小僧のすぐ下まで引き伸ばして、
大またでさっそうと、歩いてゆく――

「おはよう~♪」
ドアを開けるなり能天気な高い声をあげたのは、陸上部のまゆみ。
あけっぴろげなまゆみの後ろで、
大人しい晴美はお行儀よくお辞儀をし、おっとりとした桃子はほんのりとほほ笑む。
ドアの向こうに待ち構えているのは、三人の吸血鬼。
つい先日この街に流れて来、吸う血にこと欠いていた連中だった。

仲良し三人組が三人ながら、吸血鬼の餌食になって。
けれども、三人が三人とも、つい最近親の転居で住みついたばかりだった。
ヒーヒー泣きじゃくりながら血を吸い取られた三人だったが、
つぎの日には恐る恐る、紺のハイソックスのつま先を、吸血鬼どもの住処へと差し向けていた。

「喉渇いているんでしょ?どうぞ、ガブッと豪快に・・・」
まゆみはあけっぴろげに、自慢のロングヘアを大胆にユサッと背中に流し、
大人しい晴美はおずおずと、
「あの・・・あの・・・」
と口ごもりながらも、自分のふくらはぎに目の色を変えている吸血鬼のまえ、
すらりとした脚を差し伸べてゆく。
おっとりとした桃子は早くも壁に圧しつけられながらも、
「好きに咬んでね♡」と、上目遣いに相手を見あげる。

鋭い牙が首すじに埋まり、むき出しの二の腕に咬みつき、ハイソックスのふくらはぎに食いついてゆく――
女の子たちはそれでも、きゃあきゃあとはしゃぎながら、うら若い肢体をめぐる血液を、惜しげもなく吸い取らせていった。

だれもが和気あいあいと、若い血をひさぐ風景は、
この街では決して、珍しくない。
定刻どおり登校した生真面目な生徒たちも、
あるものは女教師に引率されて、
あるものは授業中に空き教室に連れ込まれて、
無垢であるべき柔肌にもの欲しげな唇を這わされ、
紺のハイソックスを、惜しげもなく咬み破らせてゆく。
そう、彼女たちのおかげで、血を吸われることを好まない女性たちの安全と平安とが保たれているのだ。

お見合いしないかね?
クラスで一番陰気な少年たちは、クラスメイトの生き血を滴らせた吸血鬼たちに誘われるまま、
半ズボンの下に刷いている紺のハイソックスを咬み破らせるのと引き換えに、
女の子たちと交際するチャンスを得る。
血の味比べをしているうちに、相性が分かるのだとかいう。
事実、そうして引き合わされたカップルは、仲睦まじい青春を過ごしている。
なかには吸血鬼に処女を捧げた娘たちも、少なからず含まれているけれど。
むしろ陰気な少年たちは、そうした彼女たちの奔放さに惹かれて、
未来の花嫁と決めた彼女たちが、その後も情夫たちとの逢瀬を愉しむことを妨げようとしない。

血の娼婦として振る舞う娘たちは、淫乱な新妻となり、夫も情夫をも、満足させる。

【サプライズ】
盟友・霧夜さまから、オリジナル画像を頂戴しましたので、追加あっぷいたします。^^
霧夜さま、いつもありがとうございます!

うら若い娼婦たち35

大人になろうとした少女。

2021年03月28日(Sun) 09:26:29

すこし背伸びして、黒のストッキングを穿いていった。
空色のブラウスに白のカーディガン、その下は赤のチェック柄のプリーツスカートだった。
スカート丈が短めなのを母親は時おり気にするが、
いまさらそれが何だというのだろう?
吸血鬼の毒牙に無防備な肌をさらしてしまった少女は、
人の良いクリーニング店主のまえでだけは、大胆になれるようになっていた。

黒のストッキングを穿いてきたのは、初めてではない。
あがった中学は、入学式と卒業式のときだけ、黒のストッキングを穿く学校だった。
その入学式帰りのストッキングを、母親同伴で愉しませにきたのが、最初だった。
母親の穿いている肌色のストッキングのすぐ隣で、
大人びた色に染まった自分の脚が大人の扱いを受けることに、
少女はドキドキと昂りつづけていた。

卒業式のときにも、クリーニング店への寄り道を忘れなかった。
このときも、母親同伴だった。
卒業式帰りのハイソックスを、善八郎氏が切望したためだった。
自分のハイソックス姿が大人の目をそそることに、
女の子として悪い気はしなかった。
それだけ大人に見られていることだと、少女はおもった。
真っ赤に濡れたハイソックスは、いちおうクリーニングされたけれど。
少女の手許に戻ってくることはなかった。
さいしょのときのハイソックスと同じように、親父のコレクションにされてしまったのだ。・
そのこともまた、少女をいたく満足させた。
自分が脚に通した装いをせしめられることに、
ふつうの少女なら嫌悪感を催すかもしれなかったが、
体内に脈打つ血潮を舐め尽くされてしまった少女にとってはむしろ、誇らしいことに思えたのだ。

きょうの真由美は、ひとりでクリーニング店を訪れた。
以前にも何度となく、ひとりで来ることはあった。
お使いで、わざわざ真新しいハイソックスを履いて、洗濯ものを出しに来たのだ。
帰り道の少女は、真っ白なハイソックスに映えたバラ色のシミを、あえてひと目に曝しながら帰宅していった。
きょうもきっとそうなる――と、真由美はおもった。

善八郎氏は、いつものようににこやかに、真由美を迎え入れた。
「クリーニングだね?一人できたご褒美に、きょうはおまけしておくよ」
そういっていつものように、料金を少しだけ負けてくれるのだった。
少女の足許に露骨に目を這わせた善八郎氏の目の色が変わった。
薄黒いナイロン生地の濃淡が縁どる少女の脚の線に欲情を覚えたのだ。
「はやくあがって」
店主は手短にそういった。

ちゅうっ・・・
大人びて上品なストッキングごしに、親父の唇がいやらしくヌメった。
入学式のときも、そうだった。
あのときは、横に肌色のストッキングを穿いた母親がいた。
きょうは、ひとりだった。
ふたりきりの密会に、少女は背伸びした初々しい昂りを覚えていた。

――――
――――

「破けたストッキング、このまま穿いて帰るから」
ちょっぴり口を尖らせた少女の意図を、善八郎氏は妨げなかった。
「入学して一週間で、大人になっちゃった」
少女は白い歯をみせて笑った。
どこか母親のそれと似通った笑いかたにみえた。
股間に突き込まれたヒリヒリとした痛みにぎごちなく起きあがりながら、
少女はそれでもしっかりと、自分の足で歩いていた。
「きょうのストッキングも、あとで小父様にあげるわね」
帰りぎわ少女はふりかえって、そういった。
親父は「待ってる」と、若い青年のように目を輝かせてこたえた。

年下の少年吸血鬼に、彼女の血を捧げてみた。

2020年12月20日(Sun) 18:23:38

いつも学校に履いていく黒のストッキングの上に、
恵は紫のラインの入った白いハイソックスを重ね履きしていた。
その重ね履きをしたハイソックスを、丁寧にずり降ろし、
少年Aはストッキングに透けるふくらはぎに唇を近寄せる。
ぼくはだまって、恵に対する彼の仕打ちを見守るだけ。
それが、その場に居合わせるための条件になっていたから。

すでにぼくも、Aによって血をたっぷりと抜かれてしまっていた。
体操着の襟首にはどろりとした血潮が付着していて、
脛の半ばまでずり落ちたハイソックスは、
ふくらはぎのあたりをなん度も咬み破られて、やはり真っ赤に染まっている。
痛みはない。
むしろじんじんとした疼きが、心地よいくらいだった。

吸血されることに慣れてしまったぼくが回数を重ねることを、
彼女の恵は心配してくれた。
そしてなん日か経ったある日、恵のほうから言い出したのだ。
「あたしもAくんに、血をあげようかな」
「え?そんなことする必要ないよ」
ぼくはいった。
けれどもぼくは、彼女の言い分を渋々認めざるを得なかった。
「だって、彩輝(あやき)くんが血を吸い尽くされちゃったら嫌だもの」

この街の吸血鬼は、人の生き血を吸い尽くさない。
適度に吸って快感を与え、献血を習慣化させてしまうのだ。
そんなことは彼女も百も承知のはずだったけれど、
彼女を介さない濃密な関係を、
たとえ同性同士であっても女の本能が許せなかったのだろう。

「ぼくの彼女の血を吸うかい?」
おずおずと訊ねるぼくに、Aはこともなげに「ぜひ欲しい」と応えを返してきた。
きみだけだと量が足りないから助かる・・・という本音に、
ほっとしたような、彼女の血をぞんざいに扱われたような、複雑な気分になった。

それが、目のまえの光景にいたるまでの経緯だった。

ぼくはふらふらとする酩酊感を愉しみながら、
同時に彼女を吸血されるほろ苦い苦悶を愉しんでいた。
すでに彼女のふくらはぎには深々と、ぼくの皮膚をも切り裂いた牙が埋め込まれていた。
太くて尖った牙は、圧しつけられた唇に隠れて見えなかったけれど、
その唇は彼女の皮膚にヒルのように貼りついて、
キュウキュウという生々しい音を立てて、十四歳の血潮を吸い取ってゆくのだった。

ひとしきり恵の血を吸い取ると、少年Aは牙を引き抜いてひと息ついた。
「美味い?」と、ぼくが訊くと、
「旨い」と即座にこたえた。
そして、ぼくのほうなど目も合わせようともせずに、
すねの半ばまでくしゃくしゃにずり降ろしたハイソックスを、
こんどは丁寧にひざ小僧の下まで引き伸ばした。
咬み痕に、かすかに紅いシミが滲んだ。
Aはちゅるり、と、舌なめずりをすると、
そのシミを目印にするかのように、もういちど恵のふくらはぎに食いついた。
同じ年恰好の子どもが、トウモロコシにかぶりつくように、無造作に。

恵は思わず脛を引きつらせた。
けれどもAは許さなかった。
彼女の太ももを抑えつけると、なおも縫いつけるようにして、牙を埋めた。
ちゅううう・・・っ
忍びやかな吸血の音に、恵の抵抗が熄(や)んだ。

もう片方の脚にも、同じ“儀式”が執り行われた。
重ね履きをしたハイソックスを丁寧にずり降ろし、
ストッキングに透けるふくらはぎに唇を近寄せる。
吸いつけられた唇の下、淡い墨色のストッキングはぱりぱりと頼りなげに破れ、
その破れを面白がるように、Aはなおも恵の脚に喰らいつく。
ヒルのように吸いつけられた唇のすき間からは、キュウキュウという生々しい吸血の音。
恵はその音が上がるたび、
発育の良い十四歳の身体をくねらせ、悶えさせる。
みるかげもなくなるほどにストッキング破りを愉しんでしまうと、
すねの半ばまでくしゃくしゃにずり降ろしたハイソックスを、
丁寧にひざ小僧の下まで引き伸ばした。
まっしろなハイソックスに赤いシミがかすかに滲むと、
にやりと冷やかな笑みを泛べて、そのシミのうえへと唇を重ねる。
始めは咬まずに、しっかりとしたナイロン生地の舌触りを愉しむように、
なんども舌でいたぶってゆく。
太めのリブがしなやかに流れるハイソックスに唾液が沁みつけられてゆくのを見ていると、
まるでぼくもいっしょに侮辱されているような感覚が、
マゾヒスティックな歓びとなって、
ぼくの胸の奥をどす黒く蝕んでゆく。
やがてかれが我慢できずに咬みつくと、
白いハイソックスに真っ赤なシミが、じわじわ、じわじわと、拡がってゆく・・・
しっかりした性格の恵の理性さえ、侵蝕してしまうのが。
ハイソックスに拡がるシミの妖しさが、そう告げていた。

帰る道々、ぼくは恵の足許が気になってしょうがなかった。
だって彼女は、ハイソックスの重ね履きをそのまま続けていたから。
真っ白なハイソックスは、紫のラインを塗り込めるように、赤黒いシミで汚れていた。
汚された彼女を伴って歩くぼくのことを、
すれ違う街の人たちは、なにが起きたのかを察しているらしい。
からかわれているような気がする。
同情されているような気がする。
いけない男子ねぇ、と、咎められているような気がする。
いすかない男の子だねぇ、と、薄笑いされているような気がする。
じつはぼくも経験あるんだよ、という顔をして通り過ぎていく人がいる。
まるで宙を歩いているような、おぼつかない足取りになっていた。
初めて恵と2人きりで歩いた時と、同じような気分だった。

ぼくはいった。
「今度から、レッグウォーマー持って来いよ」
「レッグウォーマーは関心ないんだよね」
恵は屈託無げにこたえた。
張りのある声色に、喪われた血の量が深刻なものではないことを知り、
ぼくはちょっとだけ、安堵した。
「でもいいよ、あたしも血の着いたハイソックス履いて、アヤくんと歩く」
気がついたら、ぼくの足許も、吸い取られた血潮に濡れたままだった。

謎のハーモニー 2

2020年09月28日(Mon) 19:02:24

フランスのサン・モール侯爵家に古代から伝わる、不可思議な宗教曲。
それは”封印された哀歌”とも、”禁じられた哀歌”とも呼ばれる。
なによりも不思議なのは、
さいしょはソプラノ、アルト、テナー、バリトンの四声であるのに、
曲の後半からワンパートずつ減っていって、最後はソプラノの独唱で終わるのだ。
「え、それって大役じゃないですか」
引っ込み思案な下級生でソプラノの水橋日奈が思わず尻込みすると、
「曲を知った人が尻込みして歌わないと、世にも怖ろしい辱めを受けて殺されちゃうらしいよ」
と、部長は後輩を脅かした。
「そ、そうなんですか・・・?」
「そうらしいけど、あいつが言ったことだから、よく知らない」
部長は横着にも、しらばくれた。
「でもいい曲じゃない。さっそく歌ってみようよ」
「パート練習が先よ」
部長はどこまでも、堅実だった。

どのパートも、それぞれ一曲の曲として独立していて、謡い映えがすることがわかった。
それぞれの部員が、自分のパートを気に入ったのも、練習に熱の入る原因になった。
だれもが気になったのは、やはり風変わりな終わり方だった。
まずバリトンが歌いやめて退場、それからアルト、テナー、ソプラノの順で歌が終わり、
歌い終えたパートは舞台から退場して、さいごはソプラノ一人の独唱で終わるのだ。
「13世紀には間違いなく存在した曲らしい」
部長はもっぱら吸血鬼の受け売りで曲のことを語るのだが、
自分なりに情報を整理しているらしく、
曲の理解を深めるためタイムリーにほかの部員に情報を伝えることができていた。
なによりも。
吸血鬼が彼女たちの練習に多大な協力をしてくれたことが、仕上がりの進度を速めてくれた。
毎日一人ずつ餌食にしていた吸血行為を、二日に一ぺん、二人ずつにしてくれたのだ。
全員が声を合わせる機会は、ウィークデー5日間のうち3日にものぼった。
「いままでの3倍練習できるね」
数学が得意の佐奈川百合絵が、そういって笑った。


9月21日着想
あとが続きそうにないのですが、取り合えず、あっぷしてみます。^^;

謎のハーモニー

2020年09月28日(Mon) 18:58:23

部室のドアを開くと、妙なる歌声が折り重なって、
いままで聞いたことの無いハーモニーをかもし出していた。
きょうは週一回、四人の部員が全員そろう日。
だれかが週一で吸血鬼のお相手をつとめて、
その次の日は学校を休むほど若い血を気前よく振る舞ってしまうこの合唱部では、
四人全員がそろうのは、水曜日しかなかったのだった。
きょうはきっと――やつはどこか別のクラスで女の子漁りをしているに違いない。
合唱部の部室で女の子の妙なるソプラノやアルトを響かせることの好きな男は、
教室で「ひー」とか「きゃー」とかいう叫びをあげさせるのも、大好きなのだから。

それはともかく、先着の三名が醸し出している、妙なる歌声のほうである。
いままで聞いたこともない、風変わりな和音だった。
前衛的な現代曲?それともどこか外国の土俗信仰の産物?
いやいや、この研ぎ澄まされたような清澄な和音は、もっとかけはなれたもののよう。
古い宗教曲かもしれない、と、水橋日奈はおもった。

遅れて入ってきた水橋日奈に、部長の日高晶子が声をかけた。
「ああよかった、やっとソプラノが来た」
これで全員で音合わせができるね、という顔つきだった。
ソプラノ、アルト、テナー、バリトンの四声の楽曲を女子だけで歌うには、無理がある。
ひとりだけ1年生の水橋日奈がソプラノ。
副部長の佐奈川百合絵がアルト。
部長の日高晶子がテナーの代わり。
そして、もと男子の餘部貴恵がバリトンの代わり。
どこの学校の合唱部でも、男子不足が構造的な問題になっているので、
貴恵のような子はこういう世界でも歓迎されることがある。

それにしても、
どういう曲――?
みんながいちように、日高晶子のほうをみた。
この曲をもちこんだのは、彼女だったから。
日高晶子は、暗誦するように、曲の由来を説明し出した。

フランスのサン・モール侯爵の邸宅に古くから伝わる曲集、プルミエ写本のなかで、
一曲だけ楽譜を袋詰めにされ、厳封された形で発見された曲。
題名は楽譜に書き入れられていない。
発見された状態から”封印された哀歌”とも、”禁じられた哀歌”とも呼ばれる。
古代ケルト語か古代アラム語で描かれたと言われているが、
歌詞の内容は一切不明。
そして、内容があまりにも異端的であるので、翻訳することを禁じられているという。
もしも翻訳をした場合には、悪魔が現れて居合わせた全員を取り殺すとさえ伝わっている。
吸血鬼がヨーロッパ大陸に滞在していた時、
不遜にもそれを写し取ってきて、ここにもたらして来た――

「あいつ、ろくなことしないよね」
副部長の佐奈川百合絵が思わず口走ると、
「だめだって」
と、餘部貴恵がたしなめる。
「いけねぇ」
部長の尽力?に敬意を表することを忘れた副部長は、
大げさに舌を出して自分の失策を恥ずかしがった。
「これ、こんどの文化祭で四人で歌うから」
「えーっ!?」
全員が、声をあげた。
文化祭まで、あと一ヶ月もない。
「ただし、訳しちゃだめだよ」
日高晶子が三白眼になって、念を押した。

「だいじょうぶだよ、あたし、英語だって苦手だし」
「ほんと、何語なんだろうね」
「発音は、ローマ字読みでかまわないそうよ」
「でも、独特でいい曲じゃん」
いちばん積極的なのは餘部貴恵で、
早くもエキセントリックな曲調に興味を覚えたらしかった。
「この楽譜、家に持って帰ってもいい?」
「だめ、部室からは持ち出し禁止だから」
部長はあくまでも、曲の取り扱いには厳しかった。
家での練習も禁止と言われて、副部長がいった。
「時間ないじゃん~」


9月21日着想

入学の条件

2020年09月21日(Mon) 08:45:17

ぼくが女学校に入ると決まったのは、
小学校六年の、秋のことだった。
中学にあがるのに制服を作ることになったとき。
何年もまえからの願望を、両親のまえ、つい口走ってしまっていた。
女子生徒の服を着て学校に通いたい。

意外にも。
両親は理解を示してくれた。
ママはぼくに言った。
「ママの交際相手のかたがいらしている学校でもいい?」

ママが吸血鬼と浮気していることは、だいぶ前から知っていた。
パパも薄々感づいていて、でもそのことには触れないようにしているみたいだった。
ママはお行儀がよくて、家のなかでもスカートにストッキングを穿いていた。
上品な身なりだなあと、子供心に思っていた。
そのストッキングを、片脚だけ脱がされて。
夫婦のベッドのうえ、吸血鬼の小父さん相手にはぁはぁと息を弾ませていた。
浮気とはどういうものか理解できなかった年頃のぼくにさえ、
それがイヤラシイ行為なのだと、察しが付くほどだった。
それ以来、ママのストッキングは、ぼくの中では、イヤラシイ装いに変化していた。

あのイヤラシイ、ストッキングを穿いて学校に通いたい。
女学校のお姉さんたちが腰に巻いている、
濃紺の、あるいはカラフルなスカートを、
ぼくも腰に巻いて、通学したい。
街の女学校には吸血鬼が出るというけれど。
吸血鬼に制服姿を襲われてもかまわない。
ぼくは女子生徒として、女子の制服を着て通学したい――

念じつづけていたら、吸血鬼の小父さんが我が家にやって来た。
パパも顔見知りだったから、「やぁ、いらっしゃい」なんて、親し気に声までかけている。
自分の妻を浮気に誘う男と知りながら。

「いくつか条件があるよ」
小父さんはいった。
「女学校に入ったら、必ず女子の彼女を作ること」
「彼女ができたら、まだ処女のうちに私に遭わせること」
「私が彼女になにをしても、きみは手を出さずに一部始終を見守ること」
「私ときみの彼女がデキたあとは、きみも彼女を好きにして良い」
「けれども、彼女にアプローチをしてくる男子がいたら、彼女の浮気を応援すること」
「彼女を男に寝取らせたら、すべての条件を満たしたことになる」
一気に話す内容が、いちいちぶっ飛んでいたけれど。
「ぜひそうなさいよ」
と、ママもパパもすすめてくれたから、
ぼくはウンと頷くしかなかった。

制服を作りに制服店に行ったときの記憶は、まだ鮮明だ。
「男子の制服ですね」
肩にメジャーをぶら提げたおばさんが事務的にそういうと、
ママが口添えしてくれた、
「イイエ、男の子なんですけど、制服は女子なんです」
おばさんは一瞬あっけにとられたような顔をしていたが、
保護者同伴で堂々と、男の子だけど女子の制服を希望していると聞かされると、
納得したような顔つきになって、
「ああ、そうだったんですね。わかりました。ではご用意しますね」
そういって倉庫に行きかけると、ぼくに耳打ちをした。
「きみ、良かったね、お母さんがわかってくれる人で」

その日に買ったのは、標準服と呼ばれるブレザーとジャンパースカートの組み合わせだった。
けれども、たまにはお洒落をしたいでしょうと言い出したママは、
入学祝いにと、カラフルなスカートのついたブレザーの制服も買ってくれた。
そして、入部した合唱部がセーラー服の着用を義務づけていたので、
セーラー服も買ってもらった。
「だいぶ出費がかさんだわね」
ママはそういいながらも、もの分かりの良い主婦を演じてくれた。
その日もベッドのうえで、吸血鬼の小父さんとはぁはぁ息を弾ませていたから、
お願いするタイミングが偶然、よかったのかもしれなかった。

学校に入ったぼくは、合唱部に入って、そこの副部長格の子と仲良くなった。
明るくて屈託のない、良いトコ出のお嬢さん――佐奈川百合絵さんだった。
「そろそろ紹介してもらおうか」
小父さんがそう言いだしたのは、
「もう一ヶ月待って!」
と言いたいタイミングだった。
でも、その一ヶ月が過ぎたときには、なにもかもが終わっていただろう。
男ふたりはそれを分っていたから、ぼくはつぎの日の放課後、佐奈川百合絵を体育館の裏へと連れ出した。

騒ぎにはまったく、ならなかった。
処女の勘は鋭いらしい。とくに吸血鬼に対しては。
相手の正体に一瞬で感づいた百合絵さんは、アッとちいさく叫んで口許に両手をあてて怯えたけれど、
小父さんはそんな彼女のセーラー服の肩を容赦なく掴まえて、
白い首すじに赤黒く爛れた唇を吸いつけると、がぶりと咬みついていった――

着用を指定された黒のストッキングに、いくすじもの伝線を走らせながら、
百合絵さんはいつもの快活な少女に、戻っていた。
「きょうのストッキング、穿き古しなんだからね、恥かいちゃったじゃないの!」
彼女はぼくの背中をどかん!とどやしつけ、
破けたストッキングをねだる吸血鬼には気前よく振る舞って、
スカートのなかに手を入れられて、脱がされるままにくしゃくしゃにしわ寄せながら、
ストッキングを引き下ろされていって、
しまいに脚から抜き取られていった。

彼女は処女だった。
吸血鬼の小父さんは、甘い果物にありつくように、
三日にいちどは彼女のまえに現れた。
合唱部の副部長は逃げ惑いながらも部室を出ようとはせず、
部室のなかで頭を掴まれ、肩を抑えつけられて、
激しく食いつかれた首すじから撥ねた血で、襟首を赤黒く汚されていった。

養護教諭に耳打ちされたのは、それから一週間後のことだった。
百合絵さんが養護教諭に匿われた保健室のベッドのうえ、
小父さん相手にはぁはぁ息を弾ませているのを目の当たりに、
ぼくは不覚にも、スカートのなか、自分のショーツにびゅうびゅうと射精してしまっていた。
彼女の浮気にも、腹は立たなかった。

やがて彼女の上に乗っかるのが小父さんだけではなくて、
運動部のキャプテンが、のしかかるのも、見せつけられていた。
百合絵さんの黒のストッキングは破かれ引きずりおろされて、
薄々の黒のストッキングの脚は、
運動部のユニフォームの真っ赤なリブ入りハイソックスの逞しい脚に挟まれ蹂躙されていった。

ぼくは、男の子としてはもう、終わってしまったのかもしれない――
そう思ったとき、百合絵さんはいつものように、背中をどかん!とどやしつけてくる。
なに黄昏てるのよ。あたしたち、彼氏と彼女なんでしょ?
そして小声でささやくのだった。
あんただって、愉しんじゃってるくせに――

8月19日 8:12構想

第四の部員

2020年09月21日(Mon) 08:39:06

あたしの通う学校は、制服が自由である。
自由というのは、制服の着用義務はあるけれど、
制服であればどこの学校の制服でもOKということ。
セーラー服も、ブレザーも、ジャンパースカートもOK。
さすがに姉さんの通勤している信用金庫の制服を申請した子がいたけど、それはNGだった。
きょうもあたしは、ブレザーの制服にハイソックスを履いて、学校に通う。
ふだんどおり授業に出て、発言も積極的にやって(発言するのがとても楽しい)、

それからおトイレでセーラー服に着替え、ハイソックスを黒のストッキングに穿き替える。
所属している合唱部では、セーラー服に黒のストッキングの着用が義務づけされているのだ。
歌はそんなに上手じゃないけれど、あたしにしか出せない低音のおかげで、部員のみんなは重宝してくれる。
それがとても嬉しい。

濃紺のプリーツスカートを穿いた後、
黒のストッキングをつま先から脛へとグーンと引き伸ばすとき、ふと思う。
薄っすらとした墨色のナイロンに包まれたふくらはぎを見るのが、あたしは好きだ。
透け具合がなんともいえず、なまめかしい。
ひととおり身づくろいを済ませて、おトイレの鏡に自分の姿を映し、
納得がいくと、両掌で頬ぺたをピンと抑える。そう、あたしは合唱部の女子部員。
あたしは胸を張って、胸もとのリボンを心地よく揺らしながら、部室へ急ぐ。

部室に入ると、部屋を圧するような機械的な発声練習の代わりに、
白髪交じりの小父様がふふっと笑って声をかけてくれる。「よく来たね」
あたしはにっこりとほほ笑んで、お姫様めかして、
太ももがチラ見するていどにさりげなく、
スカートのすそをちょっとつまんで見せた。

「ほかの子はまだなの?」
あたしが訊くと小父様は、「帰ったよ」と、意外な返事。
でも、考えてみれば意外でも何でもない。
いつもは練習の後にすることを、喉の渇いた小父様はちょっとは辞めてみたくなったのだ。
あたしは目を大きく見開いて、わざと怯えたふりをする。
「じゃ・・・すぐに血を吸うのね・・・?」
「ご明察」
小父様はにんまりと笑んで、あたしのほうへと近寄ってくる。
でも、それでいいんだ。
このセーラー服は襟首のラインに血を撥ね散らしてもらうため着てきたのだし、
黒のストッキングは破けた蜘蛛の巣みたいになるまで存分に咬み剥いでもらうために穿いてきたのだ。
小父様は女子生徒として入学した元男の子のあたしを、女の子扱いして襲ってくれるのだから。

四重唱(カルテット)

2020年09月18日(Fri) 08:59:18

ひざ下まで丈のある濃紺のプリーツスカートのすそから、
黒のストッキングに艶めかしく染まった発育のよい脚が、にょっきりと伸びている。
スカートのすそは少女の機嫌を損ねない程度にちょっとだけたくし上げられて、
肉づきのよい太ももが、ちらっと覗く。
その太ももを掌で軽く抑えつけ、
もう片方の掌で、足首をやはり軽く抑えつけ、
男はふくらはぎのいちばん肉づきのふっくらとしたあたりに唇を吸いつけて、
少女の血をチュウチュウと吸い上げていた。

少女は、正気である。
おかっぱに切りそろえた黒髪の前髪に見え隠れさせた濃い眉の下、
黒く大きな瞳を見開いて、男の狂態をまじまじと見つめている。
体内から喪われてゆく血液よりもむしろ、
他愛なく破かれてしまったストッキングのほうが気になるようだ。

男が「あぁ」とウットリとした声を洩らし、少女の脚から唇を離すと、
少女は初めて身体から力を抜いて、「あぁ」と声をあげた。
気の強い少女だった。
プライドのほうも、一人前以上らしい。
「どうしてくださるのよ」
破けたストッキングに縦に走ったいびつな裂け目は、
蒼白い肌を鮮やかに滲ませていた。
相手が無法にも自分の身体から血を啜り取った男でも、丁寧語を使うあたりに、
少女は育ちのよさを滲ませている。
顔をあげた男は、漆黒の黒髪をツヤツヤさせている。
たしか、少女の脚に咬みついたときには、総白髪だったはずだ。
若返った男は、きげんがよかった。
「こうするのは・・・どうかね?」
と応えるやいなや、少女の脚を掴んで、破れ残ったストッキングを余さず引き剥いでゆく。

少女は男の狂態を、やはり冷やかに見守っていた。
男がスカートの奥に手を突っ込んで、腰周りに手をまわして、
ストッキングを脱がそうとしても抵抗ひとつせず、
むしろ腰を浮かせて脱がせやすいようにしてやった。る

「用が済んだら、帰っ下さる?わたしもう疲れました」
少女はどこまでも丁寧で、しかし冷やかな口調であった。
それでも男が素直に部屋のドアを外から締めようととするとき、
目線を合わせてクスッと笑い、「じゃね」と軽く手を振った。

ふたたび閉ざされたドアを、少女は睨みつけていた。
そしてさっきとは違うぞんざいな声をあげて、
「そこのだれか。こそこそしてないで入ってきなさいよ」
といった。
叱りつけられた相手はおずおずとドアを開けて、顔だけを覗かせた。
同じ年恰好の少女だった。
「ばれてた?」
「当たり前じゃん」
ちょっとはリラックスした声色にかえって、室内の少女は横っ面で応えた。
「サナ、入りなさいよ」
「ごめんネ、あきちゃん」
サナと呼ばれた少女は部屋の中に入ってきて、
ドアの外で聞き耳を立てていたことをさほど反省していない口調でそういった。

「身づくろいするくらいの時間は欲しかったな」
日高晶子は首すじの傷を撫でながら、いった。
「入って来いって言ったのは、どなた?」
佐奈川百合絵はすかさず、一本取った。
「来てたんだったら、助けてくれればよかったのに」
この場合助けるとは、いっしょになって血を吸われることだと、百合絵は良く察していた。
「やだもん。だって、あしたはあたしが当番なのよ」
百合絵は親友の急場を救うよりも、自分の体調を優先したのだ。

「破けたストッキング、良く似合ってるよ」
と、晶子の足許をまじまじと見ながら、いった。
真新しいストッキングを穿いた脚を、これ見よがしにぶらぶらさせて。
まんざら、からかっているわけではなさそうだ。むしろ本音なのだろう。
晶子の足許を覆っていたストッキングは、むざんに咬み剥がれて、
縦縞の伝線を幾筋もいびつに走らせ、ひざ小僧がまる見えになっていた。
「レイプのあとみたいだね」
百合絵はふふっと笑った。
釣り込まれて晶子までもが、はははっと笑った。
二人の少女はしばらく、虚ろな声をたてて笑いこけていた。

ドアの廊下側には、「合唱部」という表札が出ている。


その表札を見あげた第三の少女は、おずおずと軽くこぶしを握り、
やっと聞こえる程度の音でドアをノックする。
「日奈でしょう?入んなさいよ」
晶子が新しいストッキングに片脚だけ突っ込みながら、ぞんざいに声をあげた。
水橋日奈はおとなしい少女だった。
下級生らしく「失礼します」と敬語を使って、やはりおずおずと部室に入ってくる。
「なあに?どうしたの?」
鉄火な調子の晶子にとりなすように、百合絵が声をかけた。
そして、日奈の足許を見てアッと声にならない声をあげた。
日奈は真っ白なハイソックスを履いていた。

合唱部の部員は、部活の時には黒のストッキングを着用することになっていた。
だから、晶子も百合絵も、夏服の白いセーラーの足許を、薄地の黒のストッキングで墨色に染めている。
(真冬でも、「黒のストッキングは女学生の本分」といって、彼女たちは肌の透ける薄地のストッキングで通していた)
だから、部室にハイソックスで入ってくるということは、あり得ないのだ――部員であれば。

「私、合唱部辞めます」
日奈がそういうのをさえぎるように、
百合絵は両耳をふさいで、「あ~聞こえない聞こえない!私なんにも聞こえない!」
といって、同級生の退部の意思を拒もうとした。
晶子は対照的に冷静だった。
「そ。じゃ、退部届、そこに置いてって」
とだけ、いった。
「やだ!晶子ったら、止めないの??1人減ったら部員が4人から3人になるのよ?
 アルトはだれが歌うのよ?」
「いいじゃないのよ、なるようになるわ」
晶子は部の将来など無関心なように言い放ち、そっぽを向いて外の景色を眺めた。
「は~、部長がこれじゃ、しょうがないわ。気が変わったらまた戻って来てね」
百合絵はとうてい意思を変えそうにない硬い表情の日奈に優しく声をかけて、
「受け取りたくないけど、あずかっとくね」
と、日奈の持ってきた退部届(大仰にも筆で書かれていた)を受け取った。

「ばかな子ね」
晶子がいった。
「そんな言い方、するもんじゃないわ」
百合絵が返した。手にはまだ、日奈から受け取った退部届を未練がましく持っている。
手放したら日奈が永久に戻ってこないような気でもしているんだろう、と、晶子は思った。
「だいたい、わかってる。血を吸われるのが厭になったんでしょう?」

合唱部の部員は4人いて、4人が交代で、学校に出没する初老の吸血鬼に血を吸わせていた。
黒のストッキングの着用義務も、その吸血鬼の好みに合わせたものだった。
吸血鬼が少女たちの身体から吸い取る血の量はわずかで、
そのかわり制服姿をたっぷりと愉しむのがつねだった。
さいしょ20人いた合唱部員は次々と辞めて、いまや4人が残るだけだった。
もうひとりの部員、餘部貴恵は、昨日”お当番”をつとめ、きょうは体調不良で学校を休んでいる。

10人目が辞めるくらいまでは、「また1人死んだ~!」と面白がっていた部員たちも、
だんだんと”絶滅”の恐怖に駆られてきて、
とうとう4人になったとき、
ただひとりのアルトになってしまった日奈が辞めようとしたのを、
3人がかりでなだめすかして翻意させたのがついこのあいだだった。

「でもどうするう?日奈辞めちゃったら、ワンパートの歌しか歌えないよ~」
百合絵はのんびりとした口調でいった。
「そうねえ・・・でもその心配はたぶんご無用よ」
どこまでものんびりしている百合絵に対して、晶子はどこまでも、冷静だった。


白のハイソックスの足取りは、来るときと同じくらいおずおずとしていた。
もうこれからは、部活で放課後残ることはない。
そう思うとちょっと寂しかったし、空白になった時間を手持無沙汰にも感じる。
これからいったい、なにをしよう?受験勉強?
そう思いながら教室に鞄を取りに行く途中のことだった。
空き教室から人影がふらりと現れて、日奈の前に立ちふさがったのは。

「っ!」
日奈は口許を抑えて、怯えた。
吸血鬼だった。
さっき吸い取ったばかりの晶子の血で、まだ口許を濡らしていた。
むき出した牙も、晶子の血に濡れていた。
その、クラスメイトの血に濡れたままの牙が、日奈の白い首すじを狙ってむき出しになって迫ってきた。
「うそっ!」
立ちすくむ日奈がなにもできずに、猿臂に巻かれてゆく。
「部活を辞めれば、狙われずに済むと思っていたのかね?」
吸血鬼の声は押し殺すように低かったが、からかうような笑みを含んでいた。
三つ編みのおさげをかいくぐるようにして、
セーラー服の襟首から覗いた白い首すじに、黄ばんだ犬歯がずぶりと突き立った。
「ああーッ」
廊下に悲鳴がこだましたが、だれも日奈のことを救いにかけつけることはなかった。

30分後。
おずおずと軽く握られたこぶしが、
やっと聞こえる程度の音で、ドアをノックする。
「日奈でしょ?お入んなさいよ」
晶子がさっきと寸分たがわぬぞんざいな口調で、ドアの向こうの下級生を招き入れた。
日奈は相変わらず白のハイソックスだったが――
ふくらはぎのところどころに血を滲ませていた。
「あら、あら」と言いかけて、百合絵は口をは。
「遅れちゃってすみません」
日奈はいつもの従順な下級生に戻っていた。
「部活のときは、黒のストッキングだよね?」
晶子がいった。
「あ、すみません、きょうお当番じゃなかったんですけど、
 吸血鬼さんが喉をカラカラにしていらして、
 たまには気分が変わるからって、ハイソックスを履くようにおねだりされちゃったんです」
日奈の言うことは、180度変わっている。
首すじには吸い残された血があやされて、セーラー服の襟首には、撥ねた血が白のラインに点々と散っていた。
目つきはしょうしょうラリっていて、健康的な白い歯がやけに眩しかった。
「いまごろあのかたの血管に、晶子先輩の血とあたしの血が織り交ざってめぐっているのかと思うと、ちょっと嬉しいです♪」
日奈はニコニコと笑って、百合絵の隣に腰を下ろした。
百合絵はいまとは別人だったころの日奈が書いた退部届をまだ手に持っているのに気づき、
みんなに見えるように両手に掲げると、ばりばりと音を立てて破り捨てていた。

老婆を訪問。

2020年08月21日(Fri) 07:22:21

放課後。
友達同士でいっしょに帰ろうと声を掛け合うもの。
運悪く掃除当番で、掃除用具入れからホウキやちり取りを引っ張り出すもの。
運動部の部活に出るために支度をするもの。
てんでんばらばらの動きになる雑然とした空気の中で、
ぼくはまだ薄ぼんやりと、前の授業の板書の残った黒板を、見るともなしに見つめていた。

そんなぼくの傍らに、すっと人の気配が立った。
あのときいっしょに血を吸われた彼女だった。
色白の頬。長い黒髪。
他の生徒よりもぐっとあか抜けた、女の子のファッションとは無縁のぼくが眺めても洗練された服装。
その子のまなざしはあくまでもそっけなく、気品にあふれた冷やかさで、暗い色をしていた。
そのどす黒くて暗いまなざしが、獲物を狙う鷲のように、ぼくに照準を定めてくる。
「連れてってくれるんでしょう?」
高飛車な語気。虚ろな声色。
それを教室のみんなが聞いている。
なにしろ彼女は、学年で一、二を争う美少女だったから。
虚ろな声が、まだも続いた。
「おば様の住処――道はあたしが知ってる」
いったい、どちらが連れていくのだろう?
戸惑うぼくをさらに戸惑わせて愉しむかのように、少女はスカートの下の足許を見せびらかした。
「ライン入りのやつ。あなたとおそろいにしたのよ」
彼女のひざ下には、ぼくと同じ黄色と黒のラインが入ったハイソックスが、
ぴっちりとお行儀よく引き伸ばされていた。

「うひひひひひっ。約束をたがえずに来たわいの」
老婆は相変わらず、下品だった。
「彼氏さんに、彼女さん。そういうことでよかろうの?」
さあ、ぼくたちの関係はどうなのだろう?
戸惑うぼくを打ち消すように、彼女はいった。
「そう、あたしの彼氏。自分の彼女の生き血を吸血鬼の婆さんに吸わせに来たのよ」
ぼくを無理に引き寄せるように腕を組んだかと思うと、
「もう、あなたったら、最低!」
と、不意打ちの平手打ちが、ぼくの頬を横切った。
「ふはは。痴話げんかは他でおやりなされ。で、どちらが先に喰らわしてくださるのかな」
「もちろんぼくです」
ひりひりする頬をガマンしながら、ぼくは彼女と老婆のまえに立ちはだかった。

お揃いのハイソックス越しに、老婆の汚らしい唇が圧しつけられる。
そいつはヒルのように意地汚く這いまわり、しなやかなナイロンの舌触りをたっぷりと愉しんで、
さいごに、ふくらはぎの肉づきのいちばんよいあたりに、
黄色く薄汚れた牙をあてがって、
縫い針を刺し込むように、グイッと食い込まされてくる。
貧血を起こしたぼくは、姿勢を崩して尻もちをついたまま、
お揃いのハイソックスを辱められてゆくありさまを、ただぼう然として見守っていた。

「行きましょ」
彼女はそっけなく、ぼくに声をかけた。
老婆に辱められた悔しさが、乾いた語気ににじみ出ているような気がした。
実際、どう感じているのだろう?
すでに彼女は、ここに来て老婆に咬まれるのを習慣にしていた。
衣装もろとも辱められて、ハイソックスやストッキングを穿いた脚をいたぶられるのも、
二度や三度の経験ではないはずだった。
でも、老婆にいわせると、男連れは初めてだという。
でも、終始そっけない態度は、ぼくを戸惑わせ、怖気づかせさえした。
ぼくは彼女にとって、どういう存在?
何やら自信がなくなってきた。

「送ってくれるんでしょ?」
彼女は「家まで送りなさい」という代わりに、ぼくにうつろな声をかけた。
お揃いのライン入りのハイソックスは、老婆のさもしい手つきで、脚から抜き取られてしまっていた。
ぼくは通学用の紺のハイソックスを、彼女は白の無地のものを別に用意して、
もういちど老婆を欲情させて、ようやく解放されたのだった。
ぼくはともかく、彼女の真っ白なハイソックスには、派手な赤い斑点が、大小いびつに滲んでいる。
「家まで送ってって頂戴」
ぼくの尻込みをあくまで鉄火な調子ではね返すと、
彼女は後をも振り向かず、すたすたと歩きだした。
「くふふふ。ご苦労なことだね。しっかりおやり」
老婆はぼくを応援してくれるのか。いやきっと、からかわれているだけなのだろう。
ぼくは老婆に一礼すると、あわてて彼女の後を追った。

「昂奮、してたでしょ?」
「・・・え・・・?」
「昂奮してたよね?」
説明抜きでの問いかけの後、今度はわざと露骨な言い方をした。
「あたしがハイソックスの脚を咬まれて悔しそうな顔してるとき、あなた昂奮してたでしょう?」
あ・・・ごめん・・・
声に出す間も与えずに。
ぱしぃん!
平手打ちが再び、ぼくの頬を鋭く横切っていた。

廊下越しの誘惑。

2020年08月20日(Thu) 18:47:46

だだだっ・・・と、廊下を駆け抜ける足音がした。
教室はいつになく、静まり返っていたから、寒々とした窓ガラスひとつ隔てた向こうの物音は、よけいに響いた。
かなり走ったところで、「アアアッ」と声があがった。
あー・・・
教室の中で、だれかがため息をした。
つかまっちゃったみたいだね・・・と、前の席の女子二人が、囁き合った。
そう。この学校には、吸血鬼が出没する。
直太くん、興味あるんだったら、見てきたら?
前の席の女子の一人が、そういってぼくのことを焚きつけた。
え?でも授業が・・・と言いかけた途端、チャイムが鳴った。

廊下の彼方から、キウキウ・・・と、血を吸う音と思しき音が続いていた。
獲物を掴まえた吸血鬼は空き教室で愉しむつもりらしい。
ガラガラと、机やいすを移動する音が聞こえた。
男女を問わず、ハイソックスの脚に咬みつく習性をもっているから、
きっと獲物を教室に横たえて、足許を愉しむつもりなのだろう。
この街に越してきて三か月ほどになるぼくにも、それくらいの知識はついていた。

おっかなびっくり、物音や声のするほうに行ってみた。
やはり空き教室がひとつ占拠されていて、
違うクラスの女子が一人、吸血鬼に組み敷かれている。
意外なことに、吸血鬼は男ではなくて、白髪交じりの老婆だった。

くふふふふふうっ。旨え。旨え生き血ぢゃあ。

女はひとりごちて、女子の首すじにつけた傷口に、唇を吸いつけてゆく。
ちゅうっ。ごくり・・・
際限のない吸血――けれども決して、死なせることはない、という。
でもこのままでは・・・と戸惑うぼくのことなどてんで無視して、
老婆は女子の足許に這い寄った。
薄いピンク色のハイソックスを愉しむつもりなのだろう。

ぼくが仕方なく教室に入っていったのは、
老婆が少女のハイソックスをくまなく舐め尽くし、かぶりついて血浸しにしてしまってからのことだった。
それ以上吸ったら、危ないから。
振り向いた老婆に、ぼくはやっとの想いでそういった。
ぢゃあ、わしの命が尽きてもエェと?
ぼくは、二の句が継げなかった。
血を吸わせ放題にしておいたら、人が。
人が血を吸うのを禁じてしまえば、吸血鬼が。
どちらか片方が滅びてしまうのが、世の習いだったはず。
でもこの街の習慣は、そうではなかった。
ぼくは、母さんまでが随いはじめたこの街の習慣に、初めて身をゆだねることにした。
代わりにぼくの血でよかったら・・・
多分老婆は、良い返事をくれるだろう。
だってそのときのぼくは、制服の半ズボンの下に、
スポーツ用のライン入りのハイソックスを履いていたから。

くふふふふふっ。
老婆はいやらしい含み笑いを泛べると、
ぼくの足許へと這い寄ってきて、すぐに足首を掴まえると、ハイソックスの上からふくらはぎを咬んだ。
「ああッ!」
思ったよりも痛かった。そして、遠慮がなかった。
ちゅうううううっ。
血液が急速に逆流して、老婆の口許へと含まれてゆく。
目の前が真っ暗になって、ぼくはその場に倒れてしまった。
「そもじの脚も、美味じゃぞい」
老婆はそういうと、今度はぼくの上半身にのしかかってきた。
首すじを狙われているのがひしひしと伝わってきたが、身体が痺れてどうすることもできない。
老婆はぼくのうなじを口に含んで、いちばん柔らかそうなところを探り当てると、
ぎゅうっと牙を埋め込んできた――
ぼくの周りの床は、血浸しになった。
ちょうど、少女が静かに横たわっている周囲の血だまりのように。
「ああーーッ!」
絶望的な叫びは、ぼくの教室まで届いたはずだが、だれも助けに出ては来なかった。

「美味しかった?よかったね。
 あたし以外にも、モノにできちゃったね。ラッキー」
あどけない少女の声が、ぼくの鼓膜を酔わせていた。
「わざとでしょ?この子、あたしのこと気にしてたんだもん。
 教室の前で声あげたら、絶対出てくるって。
 あたしが咬まれているところを視たら、絶対昂奮しちゃうって」
なにを言っているんだろう?
これはこの少女の狂言だったのか??
「わしはそもじを襲うことしか頭においておらなんだ」
老婆はそう独り言ちて、少女の首すじに指先を圧しつけると、
まるでマニキュアのようにして、赤く輝く血のりを爪に塗り込んでゆく。
そのうちぼくのほうにも手を出して、
首すじの傷口をさっと撫でると、撫で取った血を同じ爪に塗り込んでゆく。
「そもじら、相性はよさそうじゃの」
「爪でわかるの?」
少女は訊いた。
「うんにゃ、腹具合でようわかる」
そう、老婆の貪欲な胃袋は、いま彼女の血とぼくのとで、充ち満ちているはずだ。

「オイお前、わざわざ授業中の教室を出て身代わりになろうとは、男気があるの。
 いっそこの子の、彼氏にならんかの?
 彼氏になって、この子をわしの家まで送り届けるもんが要るんぢゃ。
 時おり正気にかえって、わらはに血を摂られるのを嫌がって尻込みすることがあるでのう」
老婆の誘惑に、ひどくそそられた。
「よいご返事ぢゃわい」
老婆の手が、半ズボンの股間に添えられた。
幸い、少女はその方面は奥手ならしく、老婆の言い草を理解していなかったのが、救いだった。

派手な嫁と地味な娘

2020年08月19日(Wed) 21:12:00

娘は、母親よりも祖母に似ていた。
臆病そうな真ん丸で小さな目を持ち、容色は母親に各段に劣るけれども、
むしろ祖母やわたしに似た、豊かな黒髪と色白の肌をもっていた。
少なくとも、吸血鬼に血を吸われるまでは処女だった。
そして、処女の生き血を貴重品扱いする彼らのおかげで、
きっとまだ身持ちを正しく守っているはずである。

自室で初めて襲われたとき。
真っ白なハイソックスを血浸しにしながらも、歯を食いしばって献血に応えていた。
母親の留守中に訪れた吸血鬼の応接を言いつかったからだ。
ゆかりにとって、母親の言いつけは絶対だったので、う
ら若い血を啜られるというおぞましい行為さえ、耐えなければいけないものになっていた。

二度目に逢うとき、彼女はやって来た吸血鬼に、ロープで縛ってくれと懇願した。
痛さのあまり暴れてしまいそうなので――というのが、彼女の言い分だった。
吸血鬼は舌なめずりをして、まだ稚なさの残る少女を縛った。
縛られた少女の怯えた顔つきも、その好むところだったからである。
そして娘が甲斐甲斐しくも自分で用意したロープでブラウス姿をぐるぐる巻きにしてしまうと、
首すじに食いつき、二の腕に食いつき、太ももに食いついて、血を啜った。
さいごに、彼女が吸血鬼への馳走にと脚に通した、
気に入りのハイソックスのふくらはぎに唇を吸いつけて、
思う存分ハイソックスを舐めいたぶり、舌触りを愉しんで、
それからじっくりと咬み破った。
ハイソックスを血浸しにしながらの応接は先日につづいてのことだったが、
少女はべそを掻き掻き、吸血鬼の欲望に従った。

後出しをするようだが、この吸血鬼は女だった。
嫁と姑を食い散らしている兄弟の、そのまた叔母にあたる女性で、
兄弟に襲われて吸血鬼になったのだった。
女は稚ない女の子の血をことのほか悦び、兄弟が獲物をモノにしたと聞くと、
当然のように分け前を主張した。
処女の生き血は貴重だから、
あとで回し飲みをする条件で、
兄弟は少女を女に襲わせることにした。

女は気絶した少女の傍らで、
首すじからしたたり落ちる血をマニキュアのようにして爪に塗り、
傷口になん度も口を着けてはチュウチュウと血を吸い取った。
そして少女の服を脱がせると、わざとスリップだけをせしめて、帰っていった。
ああもちろん、血に濡れたハイソックスも、ついでのようにぶら提げて――

娘が兄弟に処女の生き血を啜られる日がやって来た。
朝から兄弟は、わたしに挨拶に出向いてきた。
夕方には迎えの馬車がやって来て、
怯えて戸惑う娘は吸血老婆に手を引かれて、無理強いに馬車に乗せられていった。
母親は、味方になってくれなかった。
むしろ、自分の血を半分享けた子が生き血を愉しまれるのを、歓びに感じていたためである。

帰宅したわたしは妻から事情を聞くと、家にあがることなく吸血鬼の邸に出向いていった。
渇いた吸血鬼三人を相手に、
すでに娘は身体じゅうの血潮を舐め尽くされて、
哀れ正気を喪っていた。
「帰らない!残る!もっと吸ってもらいたいんだもん!」
迎えに来たわたしのことを邪険に振り放そうとした娘はしかし、
「今度うちに泊ろうね」
と、親切なおばさんごかしに宥める吸血老婆の言に従って、渋々帰りの馬車に乗り込んだ。

一夜明けて目が覚めると、娘は正気に戻っていて、
「父さんが迎えに来てくれて、本当にほっとした」
と言ってくれたので、まだしも泛ばれたのだが。

けれども迎えの馬車は毎週のように週末わたしの家を訪れて、
娘は怯え戸惑い、尻込みしながらもその馬車に乗り込んで、
ひと晩じゅうもてあそばれ、血を啜られて、
明け方になると送りの馬車で朦朧となったまま、帰宅してきた。
「お父さまただいま」
と、礼儀正しくわたしにお辞儀をする娘は、
母親にはツンとして、あいさつひとつ投げようとはしなかった。
「じきにわかるわよ」
妻は泰然として、時代遅れになりつつある光沢入りのストッキングの脚を、ツヤツヤと輝かせていた。

少女ヴァイオリニストの”受難”

2020年08月09日(Sun) 17:26:06

追い詰められたホテルの一室の隅で、ひろみはそれでも相手を睨んで、「だめ」と言いつづけていた。
相手の正体は分かっていた。吸血鬼なのだ。
吸血鬼の多いこの街では、ひろみの母もすでに、その毒牙にかかっていた。
信じたくない噂だが――おなじヴァイオリンの学校に通う本条洋子がいうには、
ひろみの母はひろみがまだ幼いころ、浮気相手の吸血鬼に、邪魔な夫を始末させたのだという。
その吸血鬼と同じやつではないことは、わかっていた。
ひろみは母の浮気相手の顔を、なん度も見ていたから――


母の浮気相手がまだひろみを襲わないでいるのは、理由があるはずだ。
ひろみの母親がいっていた。
私が襲わないようにって頼んでいるから、あなたは大丈夫――
そんなこと、あてになるものか。
ひろみは思っていたし、自分の直感は正しいと感じていた。処女の直感は、鋭いのだ。
きっと、卒業祝いか入学祝いを名目に、あたしのことを母親に無断で襲うつもりに違いない。
一定の年頃にならないと、血の味が熟成しないのだと、そいつは閨がたりに、母親にうそぶいていたっけ。


「すまないが、少しだけ吸わせておくれ」
ホテルの一室で、その年老いた吸血鬼はひろみに懇願した。
「やだって言ったら・・・?でもどうせ吸うんでしょう?」
ひろみはすっかり、意地悪い気持ちになっていた。
覗き見した母親の情事を通して、ひろみは彼らのやり口を知っていた。
ストッキングを穿いた脚に食いついて、ストッキングを破りながら吸血するのだ。
おおかた、ひろみが履いているストッキング地の真っ白なハイソックスが、男の目を惹いたに違いない。
「勝手になさって」
ひろみは大胆にも、自分からベッドのうえにうつ伏せになった。
「この街で吸血鬼が人間にどんなことをするか、知らない女の子はいないんだからっ」
男の掌が自分の太ももと足首を抑えつけてくるときに、どうしてドキドキしてしまったのか。
ひろみは自分の醜態を恥じた。
冷たい唇が、薄地のハイソックス越しに圧しつけられて――
けれども彼は、必要以上に少女を辱めようとはしなかった。
ほんの少し滲んだ唾液に、彼女はとび上がるほど動揺したけれど、
その動揺を唇で感じると、すぐに牙が彼女の素肌に埋め込まれた。
緊張に硬直したふくらはぎを、たんねんにほぐすように、毒液を含ませて力を抜かせて、するりと忍び込ませるようにして。
破けたハイソックスに、うら若い血のりがじわっとしみ込むのを、ひろみは感じた。

「テスト・・・」
「え・・・?」
思い出したように呟いたひろみに、吸血鬼は顔をあげた。
ひじ掛け椅子に行儀よくおかれたヴァイオリンのケースに、ひろみの視線がいった。
「ヴァイオリンのテストがあるのかね?」
「え?あ・・・はい・・・」
温かで穏やかな声色に、ひろみは自分でもびっくりするほど従順に、肯定の意をつたえていた。
「それは、いつなのかね?」
「明日の午後」
「しまったな」
吸血鬼はそう呟くと、少女にいった。
「待ってて御覧、もう少し」
そして、少女のふくらはぎにつけた咬み痕にもういちど唇を吸いつけると、
吸血鬼の唇を通して、暖かなものが戻ってくるのをひろみは感じた。

「吸った分、ほとんど返してくれたんじゃない?」
「明日の試験はがんばりなさい」
吸血鬼は、父親のようなことを言うと、少女を促して部屋を出た。

「ハイソックス、汚しちゃったね」
自分でそんなことをしておいて、今さら何をと思ったが、ともあれ彼女は
「うん」
と言って、うなずいた。
「小父さんが代わりを買ってあげようか」
といわれたが、もうこれ以上いっしょにいたくなかったので、
「ううん、このまま帰る」
といった。語尾が自分でも驚くくらいはっきりしていたのは、
吸血鬼といっしょにいたくないというよりは、
血の着いたハイソックスを母親や彼氏に見せつけてやりたいという気持ちになったからだ。

もともと、吸血鬼はそのつもりだったのだろう。
真っ白なハイソックスに血が撥ねた状態で少女を帰すことをためらうのなら、
最初から履き替えのハイソックスの用意をしておくだろう。
急にそんなことを言い出したのは、
少女に情が移ったのか、
少女と少しでも同じ刻を過ごしたかったのか――


十年の月日が流れた。

追い詰められたホテルの一室の隅で、ひろみはそれでも相手を睨んで、「だめ」と言いつづけていた。
相手はあのときの、吸血鬼だった。

十年前のあの日の夕刻、血の着いたハイソックスを履いて帰宅した娘を、
愛人との情事に耽っていた母親は驚いて迎え入れ、
「この子に手を出すな」というメッセージを読み取った母親の愛人は、
年頃になった娘をみすみす横目で見逃しながら、母親との情事だけに耽っていった。

十年のあいだに、ひろみの姿恰好も、別人のように変わった。
ただ、気の強そうな大きな瞳と、抜けるような白い肌だけは、あのときと同じだった。
そのときも、彼女はレッスンの帰りだった。


「わかりました。喉が渇いているんですよね!?」
ひろみはやけくそな言葉を相手に投げつけると、自分からベッドのうえにうつ伏せになった。
そして、つぎの瞬間、しまったと思った。
この街の吸血鬼は、セックスを識っている女のことは、吸血したあとに犯す習性があったからだ。
(ツトムくん、ごめんなさい・・・)
彼女は胸の中で恋人の名前を反芻し、キュッと閉じた瞼を震わせながら切実に詫びた。
そして、無駄だと思いながら、男にいった。
「できれば、犯さないでほしいんだけど――彼氏を悲しませたくないの」
吸血鬼は意外にも、
「安心しなさい、その気はない」
というと、ひろみを起きあがらせ、優しく抱いた。
男女の関係を迫るような、強引な抱き方ではなかった。
そして、立って抱かれたまま、ひろみは首すじを咬まれていった。
あのときも実は感じていた官能の疼きを、
恋人に対する後ろめたさも忘れて、ひろみは陶然と受け止めた。
相手を充たしているということへのえもいわれない歓びが、身体に満ちるのを覚えた。

「あ・・・」
吸血鬼の腕の中、ひろみは声を洩らした。
官能の声色ではないことに、吸血鬼は気づいた。
「何かね?」
と問う吸血鬼に、
「演奏会・・・」
と、ひろみがこたえた。
牙を引き抜いた吸血鬼の口許に目をやる遑もなく、
ひろみの視線はひじ掛け椅子に行儀よく置かれたヴァイオリンのケースに注がれていた。
「ヴァイオリンの演奏会があるのかね?」
「はい。チケットいっぱい売っちゃったから・・・どうしよう」
「いつなんだね?演奏会は」
「今夜の6時から・・・少し休ませてくださいませんか?」
「ああ、構わないよ。いや、それよりも――」
吸血鬼はひろみをベッドに腰かけさせると、
ひろみの首すじにつけた咬み痕にもう一度唇を吸いつけると、
あのときと同じように、ひろみの身体に暖かなものを戻してゆく。

「二度とも、吸いそこなっちゃいましたね」
ひろみはすまなさそうに笑った。
「きみの血が、わしの干からびた血管をひとめぐりしただけで、もう充分なのだよ」
吸血鬼は静かにこたえた。
首すじの傷は・・・咬まれた人しか見えないから良いか。
いや、聴衆の中にも、きっとそういう人はいる。
ファンを失望させないために、髪型で隠そう――
そんなことを思いながら、
「お礼、させてくださいな」
ひろみがいった。
「ストッキング、破いても構いませんよ」
え――?
と怪訝そうに訊きかえす吸血鬼の前、ひろみは自分から、ベッドのうえにうつ伏せになった。
ためらいは、数秒に満たなかった。
本能のままにこみあげてくる随喜に満ちた唇が、ひろみのふくらはぎにあてがわれた。
発達した筋肉に沿って食い込まされる牙の痛みは、引き抜かれたとたんに消えるだろうと直感した。
女の子の脚を咬み慣れた牙は、さしたる痛みを与えずに、引き抜かれてゆくに違いない。
その時履いていたストッキングが安物の消耗品ではなくて、
演奏会のために穿いてきた、とっておきのものだったことに、ひろみは安堵していた。
吸血鬼を十分に愉しまてやれるだろうということが、ひろみを満足させたのだ。
本番には、予備のストッキングに穿き替えていけばいい――

吸い取られた血は、ごく少量だった。
そして吸血鬼は、ひろみを犯すことなく、彼女を外へと促していた。

「穿き替えてきますね」
トイレに向かったひろみを吸血鬼はデートの後の恋人のためにそうするように、
さりげない距離をおいて待った。
「恥を掻かせなかったかな」
演奏会のことを気にする吸血鬼に、「脚はドレスに隠れるから大丈夫」とひろみはこたえ、
ありあわせの紙袋に入れたストッキングを手渡した。
「これからも付きあってほしい吸血鬼には、こんなふうにするんでしたよね?
 彼氏にも話します。時々なら、逢ってあげてもいい」
ひろみは少女のころの目線に戻って、あっけにとられる吸血鬼を眩しげに見つめた。
「演奏会、がんばるからね――お父さん」


あとがき
ひろみがまだ幼いうちに、お父さんはお母さんの浮気相手に血を吸われ、吸血鬼になっていた――という設定です。
吸血鬼さんが大人になったひろみを犯そうとしなかったのは、
父娘姦になってしまうからなんですね。
でも、ひろみのほうでは、そういう関係を必ずしも嫌がっているふうではありませんでした。
まだ生硬な少女だったころ、父親は不在、母親は不倫という孤独の中で、
ヴァイオリンだけを頼みに生きていた少女は、
彼女の都合を優先して、せっかく得た血を戻してくれた好意を忘れなかったのかもしれません。

少女のころはテストのことを、
大人になってからは演奏会のことを、
自分の渇きよりも優先してくれたとき、
彼女は吸血鬼と自分との縁故に気づいたようです。

今回は珍しく、ちょっとストイックな吸血鬼像になりました。

雨の日のホームルーム

2020年07月14日(Tue) 05:20:14

梅雨時というのは、うっとうしいものである。
人間にとっても。吸血鬼にとっても。

雨の中学校に出てきた少年たちは、半ズボンの下の太ももまで濡らすほどの雨に、すっかり閉口していた。
クラスのだれもがそう感じていたらしく、ホームルームの始まる前の空き時間の喧騒は、ほとんど雨の話題だった。
女子の多くは、履き替え用の白のハイソックスを持ってきていた。
たしなみのある子はいつのまにかトイレや物陰に立って行って、
そうでない子はその場でハイソックスを履き替えていた。

輝夫はふたつ後ろの席に座っている加奈のほうを振り返った。
几帳面な加奈のことだから、もちろんのこと穿き替えを用意しているだろうと思ったのに、
いっこうに座をはずす気配がなかったからだ。
案に相違して、加奈の足許にはまだ泥が撥ねたままだった。
濡れの激しい白のハイソックスは、彼女のピンク色の脛を、容赦ないほどに透き通らせてしまっている。
風邪をひかないか?と、むしろそちらのほうが気になった。

加奈の眼の前に、一人の男子がおずおずとやって来た。
輝夫の幼なじみの、ヨウタだった。
ヨウタは吸血鬼の生まれだったけれど、てんからの意気地なしで、いつも血液不足で顔色がわるかった。
人一倍周りのものに気を使い、人一倍報われないタイプの男子だった。
輝夫が、加奈をヨウタに紹介したのを、クラスのだれもが意外に思ったけれど。
加奈の貞操の危機を予感するものは、だれもいなかった。
気の強い加奈とヨウタとでは、男女の感情は生まれようもないと誰もが思っていたからだ。

加奈のまえに現れたヨウタは、手にした紙袋をおずおずと加奈に差し出した。
「よかったら、これ・・・」
加奈はじろりとヨウタを見あげると、いった。
「一足だけ?」
「え?ああ・・・そうだけど・・・」
ヨウタは自分が気の利かないことをした理由を、よく呑み込めないでいた。
「ちょっと!」
癇の強さを整った顔だちに走らせると、加奈はじゃけんにヨウタの手を引いて、教室の外に出た。
「おいおい、お二人さんまたケンカかよ」
だれかが冷やかそうとしたが、「よしなって」と、べつのだれかにたしなめられていた。
クラスのだれもが弱いものにいたわりを持っていることに、輝夫はほっとする想いになった。

ヨウタは加奈の足許を心配して、ハイソックスを携えて学校に来たのだろう。
けれども加奈に言わせれば、
用意してくれたハイソックスを履いてお礼に脚を咬ませてしまったら、何にもならないではないか?
ということなのだろう。
せめて二足用意しておくくらいの配慮はできないものか?というのが、加奈の言い分。
気になったので、輝夫は廊下に出た。
ちょうど、ヨウタがひと言呟くところだった。
「俺、その濡れたほうので良いから」

え?こんなんで良いの?
こんどは加奈が、うろたえる番だった。
輝夫はみなまで聞かず、まわれ右をして教室に戻った。
加奈とヨウタだけが、廊下に残った。

ふたりが教室に戻って来るのに、十分くらいかかった。
加奈の足許は、乾いた真新しいハイソックスに包まれていた。
ヨウタが手にした紙袋をカバンのなかに大事そうにしまい込んだ時、加奈が小さな声で「ばーか」というのが、聞こえた。
どっちもどっちだよ、と、輝夫が思ったとき。
先生が教室に入ってきた。
「起立!礼!」
級長の輝夫の声がいつになく大きかったのは、なんのせいだったのだろう。
輝夫の声の調子に敏感過ぎる反応を示して、ヨウタが直立不動の姿勢をとって、
あまりにもしゃちこばった姿勢のせいで周りの失笑を買っているのを背中で感じ、
輝夫も思わず「ちゃくせき・・・」と声を揺らしてしまっていた。

【寓話】太っちょな少女の純情

2020年07月14日(Tue) 04:25:43

クラスに吸血鬼になった男子がいた。
彼の親友の一人が、血に飢えた幼なじみのために、自分の彼女を提供した。
ふたりはまだ清い交際で、彼女は処女だったから、犯される危険がなかったのだ。
その少女はきちんとした娘で、恋人の親友と逢瀬を重ねても、心を動かすことはなかった。

同じクラスに、もうひとりの少女がいた。
彼女は太っちょで、自分の容姿に自信を持てずにいた。
けれども、親しくしている美少女の悩みを打ち明けられると、心から同情するようになった。
美少女は近々、彼氏と結ばれるとになっていた。

吸血鬼になった少年が、ハイソックスを履いた女子の脚に好んで咬みつくのだと聞かされると、
太っちょの少女は心を決めて、真新しい真っ白なハイソックスをきっちりと引き伸ばして、吸血鬼の少年に逢いに行った。
そして、私は美しくもないし、スタイルも悪いけれど、太っているぶん貴男によけいに血をあげることができますといった。
彼女の必死な面持ちを見て、吸血鬼の少年はすべてを察した。
そして、親友の恋人と別れると、彼女だけを愛するようになった。
第二の少女の暖かな心遣いが、彼の冷えた心に温もりをよみがえらせることができたためである。

驕慢な娘(ひと)の身代わり

2020年07月02日(Thu) 08:12:24

「身代わりになって血を吸われてくださるんですって?」
唐突に声をかけてきたのは、同級生の御園薫さん。
クラス一の美人で、ぼくが所属する運動部のキャプテンであるユウスケ先輩の彼女だった。
ほんとうなら、決してぼくになど声をかけてくれるはずのない人。
それが、何の間違いだろう?ぼくに声をかけてくるなんて。
なんの間違いだろう?彼女の身代わりになるなんて。

ぼくは運動部の補欠選手。
ハイソックスやストッキングが大好きで、
柄にもない運動部に所属した理由(わけ)は、
チームのユニフォームであライン入りのストッキングをおおっぴらに履けるから・・・という不純な動機から。
以来、学校に出没する吸血鬼が部員の首すじや足許を狙うとき。
レギュラー部員の身代わりになって、ストッキングの脚やうなじを差し伸べて、
皮膚を破られ、うら若い血を啜られて――
いまは、吸血される歓びに目ざめるようになってしまっていた。

「服を貸したら、身代わりになってくださるんですって?」
馨さんの質問は、容赦なくあからさまだった。
並みいるクラスメイトたちが、聴き耳をそばだてているのを、十分意識しながら。
「女子の履いているストッキング、お召しになりたいそうね?」
責めるような鋭い語調が、冷やかな響きを帯びて、
――恥ずかしい趣味をお持ちだこと!
むしろ目の前の無抵抗な獲物をいたぶる愉しみに酔うように、言葉を続けてゆく。
じゃあ、趣味と実益ということで・・・わたくしの身代わりになって下さらない?
とどめを刺すようにそう言うと、勝ち誇ったような麗しい笑みを、満面に湛えてぼくを睨んだ。

狙われているのよ。校内を徘徊する奴らの一人に。
初めて真顔になって声をひそめると、ああおぞましい・・・と言わんばかりに身をすくめた。
わたくし、ユウスケさんのために、操を守らなければならないの。
言っている意味、わかるでしょ?
そこは、だれにたいしても大秘密であるはず。
いつの間にか廊下に引っ張り出されていたぼくだけが、初めて耳にする真実。
馨さんは、ユウスケ先輩とは「できて」いた――

襲った相手が処女ならば、処女の生き血を愉しむだけ。それも、目いっぱい愉しむ――
襲った相手が処女でなければ、男女の交わりまで遂げてゆく――
それが、彼らのやり口だった。
すでにユウスケ先輩に処女を捧げていた馨さんは、絶対に彼らに襲われるわけにはいかないのだ。

そんな大秘密まで、口にして。
ハッキリとした目許を蒼ざめさせた真顔は、ドキドキするほど真に迫って美しい。
男子ならだれでも、いともやすやすと彼女の虜になるだろう。
そのしんけんな眼差しに、射すくめられるようにして――
ぼくは周りで聞き耳を立てているものがいないのを確かめてから、いった。
「ストッキングは、きみがいちどは脚を通したものにしてくれる・・・?」

つぎの日は、半日授業の土曜日だった。
家で朝食をすませると。
ぼくは自分の部屋に引き取って、大きな紙箱に収められた馨さんの制服一式と差し向かいになる。
夕べ、馨さんのお邸の使用人の人が持ち届けてきたものだった。
開けられた紙箱にはお行儀よく、濃紺のセーラー服と、その下にアイロンのきいたプリーツスカート。
スリップやショーツ、ストッキングといった、人目に触れさせたくないもの一式は、
無地の紙袋に収められて、宛名を書くようにして、
「蒼川美紀也様」
と、きれいな字で書かれてある。
いつもなら、名前なんか呼んでもらえず、ただの「補欠君」なのに。
(彼女はぼくのことをあくまで、彼氏であるユウスケ先輩の目線でしか、見ていなかった)
改まったフル・ネームと、几帳面に書かれた字体とが、彼女の本気度を物語っていた。
彼女のしんけんな眼差しの行く先は、ぼくではない。
ユウスケ先輩という、校内のヒーローである恋人に操を立てるという目的だけためのしんけんな思いに、
ぼくは誠実に応えなければならなかった。


ミニ・スカートみたいな丈のスリップを身体に通して。
可愛らしいフリルとリボンの柄とに、彼女の隠れた趣味を視た思いに駆られた。

サイズが小ぶりなショーツも、いちどは身に着けたものらしく、
彼女の痕跡がそこはかとなく残されているのに息をのんで。
ちょっぴりきつめの腰周りの感覚が、
これでがんじがらめに彼女の意図に服さなければならないと、ぼくに告げる。

太もも丈のストッキングには、ふっくらとした優美な脚周りの輪郭がありありと写されていて、
ひざ上丈にしかならない寸足らずのサイズで、そのぶんきつめの束縛感で、足許を引き締めて、
淡い脛毛を薄闇のようにまぎらせて、別人の脚のようになまめかしく染め上げた。

腰に巻いたスカートのすそが、重たくユサユサと揺れる感覚。
セーラー服をかぶったとき、鼻腔によぎる生地の芳香。
胸元に巻きつけるスカーフの結び方がわからなくて、いまひとつ決まらないもどかしさ。
用意したかつらをつけ、マスクで顔の下半分を隠すと、
箪笥の開き戸の鏡の中を、恐る恐る覗き込んでいた。


教室に入ると、みんながいちように、チラチラと振り向いて、
ぼくの様子を見るとクスッと笑いをこらえて、そっぽを向くようにして前に向き直る。
馨さんだけが、しゃなりしゃなりとこちらに歩みを進めてきて、蒼川さんおはようと声をかけてきた。
彼女がぼくに朝の挨拶などをするのは、同じクラスになって以来初めてのことのはず。
馨さんだけではない、女子のだれもが、ぼくのことなど問題にしていなかった。
これも、彼女の制服のまとう魔力だろうか?

なみいる女子のなかでも、出色の容貌を誇る馨さん。
彼女が身にまとう制服さえも、生地の造りがほかのだれとも違うのではという錯覚さえ起こさせる。
同じ制服を身に着ける誇らしさを、羞恥心を忘れて、初めてかけらほどに感じた。

馨さんはだまってぼくの胸もとに手を伸べると、
「こうではない」と言わんばかりに、純白のスカーフをいちどほどいて、それから丁寧に結び直してくれた。
――きょう一日は、わたくしの身代わりなんですからね。きちんとしていただかないと。
そう言わんばかりの白い目でぼくのことを睨(ね)めあげると、くるりと背中を向けて、自分の席へと戻ってゆく。
これで身代わりに対する一定の礼儀は果たした、といわんばかりに。


吸血鬼は、いつ出没するかわからない。
喉が渇いたら、学校の裏門から侵入して、授業中といわず休み時間といわず、廊下や校庭を徘徊するのだ。
授業は滞りなく、いつもと同じように進められた。
ぼくの身なり以外、なにも変わったことはないのだ。
先生方は、教室に入ると、異装届を受け付けた担任経由であらかじめ聞かされているらしい――
ぼくのほうをチラと見ると、ちょっとだけ表情を変え、
そして表情を変えたことを気取られまいと不自然に元の顔つきに戻り、
ことさらに表情を消すと、「起立、礼」の号令を級長に求めるのだった。

そのあいだじゅう。
視界の片隅をよぎる純白のスカーフのふんわりとした感じと、
起立、礼のたびにユサッと揺れるスカートの重たいすそと、
授業中も始終感じる、足許を引き締めるストッキングのしなやかさと、
それらすべてに支配されて、むせ返りそうになっていた。


やがて、”彼”はやって来た。
2時限と3時限のあいだの、10分間の休み時間。
声にならない声を洩らして道を避ける女子生徒たちの動きで、それとわかった。
馨さんはぼくのほうへと駈けてきて、
救いを求めるようすなど気振りほども示さずに、
「お願いするわ」と冷ややかな囁きをぼくの耳に流し込むと、
罪人を引きたてるような性急さで、ぼくを廊下へと導きだした。

隣の教室は、空き教室だった。
”彼”は馨さんの制服を着たぼくを認めると、まっすぐにこちらへと歩み寄ってきて、
無造作にぼくの手をとると、空き教室へと促した。
狙いが自分でなかったと知ったものたちの安堵のため息を背中に感じながら、
ぼくは狙われた乙女がそうするように、観念したようにうなだれて、手を引かれるままに空き教室の入口をくぐった。
隣の教室がシンと静まり返るのがわかった。
クラスメイトとしての同情心をいちおうは持ってくれていることが、なんとなく伝わってきた。

”彼”は、ぼくが身代わりなのだと最初から気づいているようだった。
よしよし、よく来たといわんばかりに、あやすようにセーラー服の二の腕に触れると、
席の一つに腰かけるようにと促した。
促されるままに席に着くと、”彼”はぼくの背後にまわった。
あくまでもぼくのことを、女子生徒として扱う意思を感じながらも、
打ち首になる罪人のように身を縮めて、ぼくは”彼”からの一撃を待った。

おずおずとした腕が背後から回り、セーラー服の胸を求めるようにして、巻きつけられた。
いちおうこれは、愛情表現なのだということを伝えようとするかのように、
まるで本物の女子に与えられるような接吻が、首すじに吸いつけられた。
ヒルのような唇は、皮膚の下の鼓動を確かめるかのように念入りに這わされて、
けれども下品な感じはまったくなかった。
しいていえば。
獣が自分の子を舐めてあやすような・・・そんな感じが伝わってきた。
かつらを通して優しく撫でる掌に黒髪をゆだねたときには、
これが本物の髪の毛でなくて惜しいことをしたとさえ、感じていた。

そろそろ始める気になったらしい。
”彼”は足許にかがみ込むと、「楽にしていなさい」と低い声で話しかけてきて、
それから脚の甲をギュッと抑えつけた。

馨さんになり切りかけたぼくは、
この教室にひとりでいるのがぼくではなく本物の馨さんのような錯覚に陥っていた。
クラス一の美人が、喉をカラカラにした吸血鬼に狙われて。
空き教室に呼び込まれて、セーラー服姿を襲われている。
だれもさえぎるものもなく、制服姿を自由にされて、
知的で上品な黒のストッキングの足許に、無作法で物欲しげな舌を這わされ、侵されてゆく――
その想像が思わず、ぼくのことを昂らせた。

行為が果てたとき。
ぼくは仰向けに倒れたまま、頭上の古びた天井と向かい合わせになっていた。
片方だけ立て膝をした脚が、視界に入った。
黒の薄々のストッキングに、ひとすじ太い裂け目が走り、
ふくらはぎの肉づきがいちばん良いあたりに、赤い斑点がふたつ、つけられている。
首すじにもおなじものが、一対――そのふたつに由来するけだるさと、頭の重さとが、ぼくの理性をへんにしていた。
「三日後のこの時間」
”彼”は短くそういうと、ぼくに背を向けた。
「身体をいといなさい」
と、父親が息子をいたわるような言葉さえ、口にして。

”彼”が立ち去ったあと。
馨さんから預かった大きな紙箱の片隅に忍ばされた紙袋を手に、ぼくはやっとの想いで起きあがった。
紙袋には、封を切っていないストッキングが二足。
一足は、履くのに失敗したときの予備のつもりだろう。
「ご褒美よ」
心の中に泛んだ馨さんが、驕慢な顔つきでそういうと、嘲るように声をたてて笑った。
嘲りながらも、小気味よげで、愉快そうな笑いだった。
きっと彼女は、こんなふうにされているぼくを想像して、いまごろそんなふうにほくそ笑んでいるのだろう――
優等生の神妙な顔つきでカムフラージュすることを忘れずに。

咬み破られたストッキングは、家で洗って、次に会うときに”彼”に手渡すのが習いだという。
それで彼の好意を承諾したことになり、交際が始まるのだ。
乙女のだれもが、おぞましいと感じる交際が。
ユウスケ先輩に処女を捧げた馨さんにとっては、ぜひとも避けなければならない関係が。

だれかの身代わりになって女学生に扮し、吸血鬼の餌食になる男子生徒が、この学校にはなん人もいるという。
明日から、いや、この時間がすぎたあとは、
クラスのだれもが、セーラー服を着ているときのぼくのことを、女子として接するようになる。
それは案外、ぼくが心の奥底で求め願っていたことに違いなかった。

売春女学校  ――ホテルで春を売るときは、黒のストッキングを穿いてゆく。――

2019年12月11日(Wed) 07:33:24

はじめに

以下の一連のお話は、6月ころに構想したものです。
そのころは長期連載をやっていたので、それ以外のお話はいったんお蔵入りに――
そんなふうに眠り続けてきたお話ですが、
同じ学校を舞台にしたお話とはいえ、どうにも不揃いな感じがして、
その後もお蔵入り状態がつづいていました。
とはいえ、どうしても忘れられないお話でもあったので、
不揃いなのを承知のうえで、あえて一括掲載してみます。
それでは、はじまり、はじまり――




♪某女学校のドレスコード♪

ホテルで春を売るときは黒のストッキングを穿いてゆく。
それが当女子校の、ドレスコード。
そんなふしだらな生徒たちのため、
校内の購買では、薄手の黒のストッキングを常時置いている。
売れ行きは上々だとか。


♪生徒たちの囁き♪

愛菜ちゃんは朝から、黒のストッキングを履いてきた。
午後になったら授業を抜け出して、隣のホテルに春を売りに行くつもりだよ。

まじめだったゆう子ちゃんもこのごろは、
放課後になるとハイソックスを脱いで、黒のストッキングに履き替えるようになったね。
春を売る味、どこかで覚え込まされちゃったみたい。

輝美と真優のお相手は、どうやら同じ人みたい。
最初は二人とも気がついていなかったらしいけど、
いつだかはちあわせしちゃって、二人ともまとめて姦られちゃったんだって。
そういうときの順番決めるのにくじ引きしたのがくせになって、
たまーに二人連れだって教室抜けていくんだよ。
勿論、黒のストッキングに履き替えて♪


♪クラス間格差の是正について♪

入学式のときには全員、おそろいの白のハイソックスだった。
それが1学期が終わるころには、黒のストッキングを履く子がちらほらし始めた。
夏服に黒のストッキングなんて変だよね?って、照れながら。
そういう子たちは恥ずかしがるふうもなく、朝から黒のストッキングで登校してくる。

夏休みが終わるころには、
夏服に白のハイソックスの子と、黒のストッキングの子が半々くらいになっている。
奥手の子が多いクラスでは、まだほとんどが、汚れを知らない白ハイソ。
おませな発展家の多いクラスは、もぅほとんどか、足許を艶かしい墨色に染めてくる。

そういうクラスは担任の女教師までもが、率先して黒のストッキングをたしなんでいて、
彼女は教え娘たちを、自分の情夫やその悪友たちに、売り渡すバイトに励んでいる。

白ハイソの子が多いクラスの担任は、新卒の女教師だったりするのだが。
服装検査で黒のストッキングの生徒を咎めたとばっちりで、自分の純潔まで泥まみれにされる羽目に遭う。

問題の生徒の家に家庭訪問をすると言い出したら、
仲間たちがみんなで先回りをしていて、潔癖さと正義感とをもろ出しにした女教師をよってたかって組み敷いていく。
教育熱心な先生は、哀れ白い胸元とおっぱいまでももろ出しにさせられて。
淡いピンクのタイトスカートを巻いた腰を激しく振りながら。
スカートの下に穿いた純白のスリップを初めての血で染めていった。
両の瞼に滲んだ涙は、悔し涙から随きの涙に早変わりして、
3人めあたりからはもぅノリノリになっちゃって、教え娘と肩を並べて息をはずませ合っていた。

脱がされ抜き取られていった地味な肌色のストッキングの代わりに、てかてか光るハデな光沢入りのストッキングを穿いて教室に現れた先生に、生徒一同どよめいて。
時ならぬ拍手喝采にびっくりした先生は、はきなれない真っ赤なミニスカートの腰を、いつまでももじもじさせていた。
それからは。
そのクラスでも、黒のストッキングの着用率がアップしたとかしないとか。
生徒たちがホテルで稼いでくるバイト代のいくらかは、担任の先生がたの副収入になるという。


♪先生方のお小遣い稼ぎ♪

はい先生、今月のお手当て。
身に覚えのない現金入りの茶封筒を手渡されて、野田教師ははっと顔をあげた。
クラスのみんなから。
年配の女教師は意味ありげにそう囁くと、ほんの一瞬思わせ振りな笑いを口許に滲ませて、
すぐさま向こうを振り返って、こんどは、坂野先生!?とべつの同僚教師を呼び止めている。
三万八千円。
少なくはない金額だ。
これに目がくらんで教え娘たちに春売りを勧める教師があとを絶たないというのは、わかるような気がする。
受け持ちのクラスの女子生徒たちがパンツを脱いだ報酬。

では私も、このお金で教え娘を交えた乱交パーティーに着ていく服を買おう。
男たちの目をひく、大胆なスリットの入ったお水系のスーツが良いかも。
秋に結婚を控えた彼には悪いけど。
どっぷりと浸かりきってしまった情欲の密林から、いまさら強いて抜け出そうとは思わない。。
目の前にある鏡に映る、自分の姿。。
控えめな空色のジャケットとチャコールグレーのロングスカートは、教師として勤務することが決まってから買いそろえたものだった。
控えめなメイクに清楚に映えた、われながら地味めな目鼻立ち。
肩先に流れる、緩やかにウェーブのかかった、栗色の髪。
見た目はここに赴任してきたときと、さほど変わりばえはしないはずなのに。
真面目な新任教師だった数ヵ月前までとは、すっかりちがう人間に入れ替わってしまっていた。
なかにはそういう自己変革を外見でも表そうとして、
それこそ昼日中から、真っ赤なスーツとか、てかてか光るストッキングとかを身にまとう女教師もいるけれど。
でもあえて、いまのこの教師らしい外見を、変えようとは思わない。
まじめっぽい教師だからよけいにそそられる――そんな人気を大事にしたいから。


♪男子生徒の告白♪

ぼくの彼女が犯されちゃった報酬も、先生の小遣いになってるんですね?
端野君の問いに堂々と言い返す理屈など、どこにもなかった。

先生、るみ子ちゃんが男のひとと寝たお金で、服を買うの。
その服を初めて着るときに、端野君の相手をしてあげる。
言い返すようにしてそう応えたとき、きっとあたしは、娼婦のような顔つきをしていたはず。
端野君、ちょっとたじろいでいたから。

先生、婚約者いるんでしょ?そんなことしても良いの?
彼とはまだなの。それなのに先生は、もぅなん人もの男子とセックスしちゃっているし。
もぅ、まともな結婚なんて、する価値ないかもって思ってる。
ばれてもいいんだ、もぅ。

野田教師はそういって、拗ねた顔を作ってみせた。
端野君は、複雑な顔をした。

先生も結婚しなよ。ぼくもるみ子を許すから。
るみ子が先生の紹介する男の人たちの相手をしても、さいごはぼくが面倒みるから。
端野君、優しいんだね。
ふと漏らした本音に、恥ずかしそうな本音がかえってくる。
意気地がないだけかもね。。
端野君はすこしだけ、弱々しく笑った。
るみ子ちゃんがだれだかわからない男のひとに抱かれちゃって、嫌じゃないの?
嫌じゃないことはないけれど。。
端野君は言いよどんで、それから思いきったようにいった。
だれかとつるんだすぐあとにぼくと顔を合わせてもね、
るみ子はちっとも、動じないんだ。
まるでなにごともなかったように振る舞うんだ。
そんなるみ子を見ててなぜだか興奮しちゃって、それがかなり恥ずかしくって。

先生の未来のお婿さんに、ぼく同情するよ。
学校のみんなで、先生の身体をおもちゃにしちゃって。
ぼくだって、先生とこんなことしちゃって。
会話の延長はいつの間にか、職員室の隣の空き教室にもつれ込んでいて。
教え娘たちの”あがり”で買ったお水スーツを、端野君のためにふしだらに着崩れさせていた。


♪レンタル教室♪

現役の女子生徒を、教室で犯したい。
そんな大人たちの、いけない願望を果たすため。
当女子校では空き教室を貸し出している。
隣の教室では、ふつうの授業。
先生の板書するチョークの音や、生徒の英語の教科書を朗読する声が漏れるなか。
教育施設に囲まれた密室で、ふたりは情交の息をはずませる。
女子生徒は学業に励む同級生たちの声を耳にしながら、いけない遊戯に耽るスリルにドキドキして。
そんな初々しい昂りに震える少女たちのセーラー服姿に、獣たちは荒々しくのしかかる。
授業中の生徒たちも。
隣の教室でなにが行われているのか、大半の生徒が知っている。
だから、授業も上の空。。
そんな空き教室の予約は、今月いっぱい埋まっている。


♪彼女を犯される男子生徒たち♪

隣の教室で犯される彼女。
そんなシチュエーションに興奮をおぼえる男子がいる。
そういう男子と話をつけたおっさんたちは。
これ見よがしに彼氏の彼女を空き教室に引き入れてゆく。
自分の彼女を大人たちの欲望に提供したい男子と、
彼氏以外の男に興味のある女子とのカップルは、
教師たちの閻魔帳にリストアップされていて。
そんなカップルは意外に多いと、職員会議でもひそかな話題になっている。


♪卒業セレモニー♪

卒業式の謝恩会。
どこの学校でもふつうなら、卒業生の女子たちは、いつもより大人びた服装で参加する。
けれどもこの学校では、そうではない。
誰もがほとんど例外なく、いつもの制服姿で集まってくる。
水泳部の子はインナーにスク水を着込んでたりとか、
球技部の子はライン入りのハイソックスを履いていたりとか、
お金持ちの家の子は、この日のためにわざわざ制服を新調していたりとか、
そんなふうに、そこそこ個性を出す子はいるけれど。
とにかく全員が、制服姿。
だって。
この学校で現役生として、おおっぴらに制服姿で犯されるのは、
きょうがさいごのチャンスだから。

2019.6.17頃構想


あとがき
読んでわかるとおり、タイトルは「売春女学校」なのに、舞台は女子校だったり共学校になったりしています。
何日も書けて描いていると、だんだんと設定がぶれてくるんですね。^^;
そんなところも、今回はあえて描き直したりしていません。
それぞれのお話として、愉しんでいただければと思います。

ちなみにそのタイトルは、いま考えました。^^;
たいとると内容が食い違うのは、かの名画「女吸血鬼」と同じだと思ってください。



【注】
「女吸血鬼」
その昔上映された和製吸血鬼映画。
吸血鬼に美女たちが次々と襲われる映画だが、タイトルのわりに女吸血鬼が出てこないことでも有名。

靴下を履き替えたのを、親友に見とがめられて。

2019年12月09日(Mon) 06:34:49

どうしたの初子ちゃん、さっき履いてたのと違う靴下履いてるわよね?
彼氏の家にでも行ってたの?独り暮らしな彼を慰めすぎちゃったとか?
表向きはみんな処女なんだから、評判落とさないように気を着けなよね。

同級生の光江に見つかっちゃったけど。
ほんとうのことは言えない。
吸血鬼に脚を咬まれてハイソックスを履き替えただなんて――

彼の箪笥のなかには、穴の開いた靴下がたくさんある。
けれどもだれもが、彼の良い加減さを咎めない。
だってそれらは、おうちに遊びに来た女子高生たちの脚を咬んだ後抜き取った、学校指定のハイソックスばかりなのだから。
そして私も、彼にコレクションをさせている女子高生の一人なのだから。

女子高生のハイソックスは、最強だ。

2019年12月02日(Mon) 06:24:37

女子高生のハイソックスは、最強だ。
こちらがなにもしなくても、男子たちが寄ってくる。

女子高生のハイソックスは、最強だ。
寄ってきた男子の顔つきが、無防備になる。
そして、積極的に声をかけてきたあいつよりも、
あいつにくっついてきた男友達の、
恥ずかしくて声も出せないやつのほうがましだということを、教えてくれる。

女子高生のハイソックスは、最強だ。
けれども、気になるほうの彼の勇気を奮い立たせることはできない。

女子高生のハイソックスは、最強だ。
先に声をかけてきた男子に、一線を越える勇気を与えてしまう。

女子高生のハイソックスは、最強だ。
強引に抑えつけられ大またを開いてしまうあたしの脚を、
気になるほうの彼は、ただぼう然と見つめていた。

女子高生のハイソックスは、最強だ。
太ももから初めての血を流したまま放心していたあたしに彼が声をかけたのは。
真っ白なハイソックスに血が付きそうだったから。

女子高生のハイソックスは、最強だ。
街灯に照らされた脚に、彼の目が欲情する。
そしてあたしのことを、別の暗闇の中へと、引きずり込んでゆく。

女子高生のハイソックスは、最強だ。
ひと晩でふたりも体験してしまったあたしのことを、
あの娘はまだ処女に違いないと錯覚させてくれている。


あとがき
2019.6.3構想。
衣替えしたばかりの、まだ夏服が眩しかった頃のこと。