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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

樹に縛りつけられた某夫人の伝説。

2019年10月06日(Sun) 07:44:39

「太さがちょうどいいのかなあ」
公園の樹の幹を抱きつくようにして抱えながら、ケイタはいった。
この樹は、近所では、

「結わえられたご婦人の樹」

と、意味ありげに呼ばれていた。

かつて某夫人がこの公園で吸血鬼に襲われて生き血を吸い取られたうえに、この樹に縛りつけられて犯されたのである。
それに――
ケイタの傍らにいる妻の美紀子が同じ目に遭ったのが、つい先週のことである。

先月引っ越してきたばかりだった。
ケイタの実家に同居したがらなかった妻との妥協点が、この街への移住だった。
街に住むこと自体には、美紀子は異を唱えなかったのだ。
「吸血鬼の棲んでいる街だよ?怖くはないの?」
夫にそう水を向けられても、
「だってあなたも此処で育ったんでしょ?」
というばかりだった。

移り住んでからひと月ほどの間は、なにごともなかった。
けれども、やっと落ち着いた今時分になって、ケイタの日課である夕方の散歩中、公園で吸血鬼に遭遇したのだった。
気絶寸前まで血を吸い取られたケイタは自宅に電話をかけさせられた。
「この身体じゃ家までたどり着けないだろう。奥さんを呼びなさい」
吸血鬼の言い草の裏の意味を知りながら、ケイタは家に電話をかけていた。
「少し時間がかかってもいいからさ・・・よそ行きのスカートにストッキング穿いてきて」
意味ありげに告げるケイタは、美紀子が危険を感じてこの場に姿を見せないことを半分願った。
けれども美紀子は落ち着いた物腰で公園に現れたし、
お約束通りに?夫の血を吸った牙を白い首すじに突き立てられて、うら若い血を吸い取られていった。
男はケイタに、
「すまないね、でもこれも何かのご縁だと思ってもらいたい」
といいながら、ケイタが昏倒しているのをいいことに、
失血でふらふらになった美紀子を目の前の樹に縛りつけて、スカートをたくし上げていった。
ひざ小僧の下までずり降ろされたストッキングのふしだらな引きつれが、いまでもケイタの網膜を狂おしく彩っている。

旧知の吸血鬼と再会したケイタは、久しぶりに血をごちそうした。
それから、妻を紹介したいといって自分から呼び出して、美紀子の血も吸い取らせた。
夫の幼なじみの牙にみせられた美紀子は自分から願って、ブラウスを剥ぎ取らせて、
夫の前での不倫のセックスに耽った。

いまでは、そういうことになっているらしい。
夫婦ともに嫌がっていないことに、それから毎日のように、逢瀬はくり返された。
貧血で体調が思わしくない日でも、不倫セックスだけは、夫の同席の上で続けられた。
「あいさつみたいなものだからネ」
吸血鬼はそううそぶいたが、ケイタもまた美紀子に「彼がきみにあいさつをしたがっている」といって、
妻を公園に連れ出していた。

「でも某夫人の話って、どうしてみんな知っているのかしら」
美紀子がいった。
意外な質問にケイタは小首を傾げながら、
「さあ・・・自然に広まったんじゃないかな?
 人の口には戸が立てられないものだからね。
 当人がひた隠しにしていても、広がってしまったんだろう。
 考えてみれば、その某夫人も気の毒なことだね」

ケイタはふと思った。
この樹に縛りつけられて犯されたという某夫人は、いまでもこの街にいるのだろうか?
悪い評判が経って好奇心の満ちた視線にさらされて、耐え切れずに人知れず街を去ったのではないだろうか?
たしかに、夫婦ながら吸血鬼に襲われた者は、この街にはとても多い。
奥さんと吸血鬼がそれをご縁につき合い始めて、それをご主人が黙認したりいっしょに愉しんだりしているケースも、とても多い。
けれども、樹に縛りつけられて・・・という”伝説”には、猟奇的な、背徳的な香りがぷんぷんと漂っている。
先週この樹に縛りつけられて犯されたばかりの妻をこの公園に連れてきて、しゃあしゃあと散歩などしていることを棚に上げて、
ケイタは恥じて姿を消したであろう某夫人のことを思ってひとしきり嘆いた。

ばかね。
傍らで美紀子がクスッと笑った。
「なんでもわかっているような顔しちゃって、やっぱりあなたは女の気持ちがわかっていないのだわ」
ケイタはあわてた。
美紀子がこういう含み笑いを浮かべて反論するときには、決まって言い負けてしまうからだ。
「そのひとね、きっと自慢したんだと思うの」
小づくりな赤い唇から洩れた囁きは、意外な説を唱えはじめた。

樹に縛りつけられて犯されちゃうなんて、それは羞ずかしいことよ。
お外で、だれが視てるかわからないでしょう?
それに、こっちのつごうも考えないで、力づくでモノにされちゃうわけだから。

ご主人だって、某夫人に求婚したときは、たいへんだったはずよ。
結婚の承諾をもらうまでには、映画に連れて行ったり、美術館にお誘いしたり、
高級レストランでごちそうしたり、色々だったと思うの。
でも、一生一度しかしないような努力を重ねてようやく勝ち得た奥さんの身体を、
行きずりの吸血鬼に自由にされちゃうわけですもの。
悔しかっただろうなー。
でも、自分のたいせつな奥さまを無償で提供しちゃえるというのは、ご主人とその吸血鬼とは、よほどの関係だったと思うの。

某夫人はそうしたこともすべてわきまえたうえで、その吸血鬼とお付き合いを始めたんじゃないかしら。
だから、浅はかに自慢したのではなくて、いろいろな意味が込められていると思うの。
もしかするとそれはご主人に対する怨みかもしれないし
――でも怨みだけだったら、離婚しちゃうかもしれないわね――きっとそうじゃない――
むしろ、結婚しながら浮気をつづけて、意趣返しをしようとしたのじゃないかしら。
ダンナの前でのセックスで、吸血鬼もダンナのことも満足させながら、ダンナに黙って秘密の逢瀬も愉しんだのじゃないかしら。
それをだれにも言わずに黙っているなんて、愉しすぎて考えられなくて。
そのうちに、あなただけに教えてあげるわねって、ごく親しい人にだけ打ち明けるようになって。
そのうちだんだん慣れてくると、「あなただけ」の「あなた」がどんどん拡大していって、
とうとう周りの人みんなが知るようになったんだわ。
だから公然の秘密みたいになって、「ご主人も嫌がっていないみたい」となって”事件性”が消えちゃうと、もうだれも話題にしなくなったのだと思うの。
きっと某夫人のご主人も含めて、みんな知っているのよ。
某夫人がだれなのか――
そう・・・たぶん知らないのは、あなただけ――

え?

ケイタは耳を疑った。
ぼくだけが知らない??
某夫人って、だれのことだ?
混乱するケイタをまえに、美紀子は無慈悲なまでによどみなく、話をつづけた。

あなたのお母さま。

ケイタは愕然とした。

初めてわたしが襲われて、ぼう然自失になって家に戻ったとき、たまたま家の近くにいらしてて、
ブラウスが破けたりスカートに泥が撥ねていたりしたのをご覧になって、すぐにお察しになったのね。
「あなただけには話しておくわ」って、ご自分が襲われたときの出来事を、こっそり聞かせてくださったの。
「ついでにあの子にも話しておいて頂戴」って、お願いされたわ。あなた知らなかったのね。
お母さま、ふつうに真面目な主婦だったから、さいしょに犯されたときにはうろたえていらしたけれど、
そのうち慣れて、お父さまの前でも平気でお相手できるようになって、
そのうちお父さまには内緒でお相手に逢うようになって。
ダンナを裏切るのって、楽しいわよって仰っていらしたわ。
どんなに仲の良い夫婦でも、お互いが嫌だって思うときってあるでしょう?
そういうときには、逢いに行くんですって。もちろんナイショで。
夫に秘密を作るとね、悪いかなって気になって、もとの献身的な主婦に戻れるのよ ですって。
私が献身的な主婦になるかどうかはわからないけれど・・・
でも、ダンナを裏切るのは、楽しいわ。

さいごのひと言を囁くとき、さすがに美紀子の瞳は張りつめたけれど。
夫の反応に安心したのが表情に出て、小づくりな口許から白い歯がこぼれた。

きのう私を犯した人のなかに、年増好きな人がいらっしゃったの。
うちの母も未亡人していて寂しそうだから、今度紹介してあげようと思ってるーー
そんな身の毛もよだつようなことをさりげなく口にすると、美紀子は夫に囁いた。

お母さま、仰っていらしたわ。
親子は似るものなのね――って。


あとがき
前々作「妻を縛りつけた樹」と、おなじ樹なのかもしれません。
一連のお話はもちろん、あくまでもフィクションです。
良い子は決して真似しないようにしてくださいね。
(^_-)-☆

世界を守った夫婦

2019年09月28日(Sat) 09:42:08

世界征服を企んだ吸血鬼がいた。
手始めに、顔見知りの夫婦を襲って征服した。
先に襲われた夫は血を吸いとられる歓びに目覚めてしまい、愛する妻が襲われるのをむしろ嬉しげに見届けてしまった。
妻は夫の前で犯されて、世間体を気にする夫ともども服従を誓わされた。
それ以来、夫婦は代わる代わる襲われて生き血を吸い取られた。
夫は快感にふるえながら血を吸われて、
貧血を起こしてその場に倒れたあとは、妻が犯されるのを視て愉しんだ。
吸血鬼は夫婦を服従させたことに満足して、それ以上の悪事を行うのを忘れた。
この夫婦は、自分たちが堕落するのと引き替えに、世界を守ることに成功した。

9月27日6:35 脱稿

ストッキング地の靴下の夫婦

2019年09月28日(Sat) 09:29:10

濃紺のストッキングがたまらなく好きな吸血鬼がいた。
彼は好んで人妻を襲い、脚にまとわれたストッキングを咬み破りながら。生き血を吸った。
ある家庭に侵入したとき、誤ってご主人の血を吸ってしまった。
彼もまた、濃紺のストッキング地の、紳士用ハイソックスを好んで穿いていたためである。
気に入りの靴下を破かれたご主人は立腹したが、吸血鬼の毒に侵されてしまい、
なおも咬みついてくる吸血鬼に、靴下をブチブチと破かせて、血を吸うのを許してしまった。
同じ色のストッキングを穿いていた妻をも目の前で襲われてしまうのも、夢見心地で許してしまい、
自身の妻がドラキュラ映画のヒロインを演じるのをたんのうするはめに遭った。
ご主人は以前から不倫の関係だったふたりの仲を許して、お揃いの色のストッキングを穿いて吸血鬼をもてなすようななった。


あとがき
ちょっと読んだだけだとわかりにくいので、時系列に描いてみます。

さいしょに吸血鬼が妻を犯して、不倫の関係を結んだ。
妻は吸血鬼のために、彼の好んでいる濃紺のストッキングを穿くようになった。
吸血鬼は妻の生き血を求めて家にさまよい込んで、濃紺のストッキングのふくらはぎを咬むが、
夫の脚を妻のそれと取り違えて咬んでしまった。
夫は妻の浮気相手に生き血を吸われたが、吸血鬼の毒に侵されて、相手の欲望を許してしまった。
妻の情事を目の当たりにさせられながらも、夫はふたりの交際を許して、
おそろいで濃紺のストッキングを脚に通して咬ませるようになった。

9月27日6:25 脱稿

恩がえし。

2019年09月28日(Sat) 09:20:47

吸血鬼がある人妻をたらし込んで、生き血を吸った。
人妻の夫は、妻と吸血鬼との不適切な関係を歓ばず、なんとかして妻の仇敵を討ち果たしたいと思った。
毎晩吸血鬼を待ち受けたが、いつもまんまとしてやられて、吸血鬼が妻との逢う瀬を愉しむことを許してしまった。
しまいに夫は寝不足で健康を損ねて、病気になった。
妻は夫を気遣って懸命に看病し、連れ添ったしんけんな態度をみた吸血鬼も、交代で愛人の夫である男の看病をした。
やがて夫は全快したが、以前の頑なな態度を捨てて、最愛の妻の貞操をきみにプレゼントすると告げ、吸血鬼に妻との交際を許した。
人妻は夫の配慮に感謝して、ますます夫に尽くすようになった。

あとがき
『沙石集』という古典に、こんな話が出ています。
自分の妻の浮気現場を押さえようとして梁の上に隠れていた夫が足を踏み外して下に落ち、大けがをした。
妻ばかりか情夫までもが気遣って、夫を介抱したところ、
夫は情夫と和解して、妻のところに自由に通うことを許した。
ちょっとそんな話を、思い出しました。

9月27日4:50 脱稿

妻を目の前で犯される ということ。

2019年09月24日(Tue) 06:33:47

妻を目の前で犯される。
それは夫にとって、相手の男との力関係をはっきりと見せつけられる儀式。
自分だけの所有物だったはずの妻の身体が征服され、突き上げる本能的な衝動に心ならずも反応し始めて、
さいごには淫らな愉悦に染まり切ってしまうころ。
奴隷に堕ちた夫もまた、妻が女として、相手の男を満足させていることに、歓びを覚えるようになってゆく。

もちろんそこには前提があって、
妻を犯す男が害意の持ち主ではなく、純粋に寝取りを好み、かつ夫への配慮を怠らない場合に限られている。
夫の体面は保証され、婚姻関係の解消も家庭崩壊も起こらず、うわべは紳士淑女の夫婦でありつづけることが可能となる。
夫はあくまで大人の遊戯として、自分の妻が寝取られ、目のまえで犯されることを受け容れ、
家庭の主要な部分を侵犯されることを許容するのである。

新妻と輪姦専科な吸血鬼たち

2019年09月22日(Sun) 16:04:11

わい雑な明るさに満ち溢れたわが家のなかに、リエさんの姿があった。
リエさんはぼくの幼なじみで、近々結婚することになっている。
ぼくの家には子供のころから遊びに来ているので、当然、吸血鬼の小父さんたちとも顔なじみだ。
彼らの正体を知ったのは年頃になってからだったけれど、
ぼくの家によく遊びに来る理由が、母さんをまわしに来ていることだと聞かされた後でも、
もともと昔から知っているどうしだったので、彼女が彼らを避けたり嫌ったりすることはなかった。
(もちろん結婚前の娘としてある程度の警戒はしていたけれど)
「エ?吸血鬼だったんですか?びっくり~」
そんなていどのかんじだった。
ぼくたちの街はとっくの昔に吸血鬼と人間とが共存して暮らすようになっていたし、
リエさんのお父さんももの分かりのよい人だったから、
彼女のお母さんもまだだいぶ若いうちに彼らにモノにされてしまっていて、
うちに出入りしている5人衆の吸血鬼に、まわされちゃっていた。
「ユウくんのお母さんと仲良しの小父さんたちが、うちの母とも仲良くなってくれて、嬉しい♪」
彼女の感想は、そのていどの能天気なものだった。

天真爛漫な彼女の性格は小父さんたちにも気に入られていて、ぼくの友だちの中でも以前から別格扱いだった。
まして、恋人となり結婚相手となる過程では、しばしばたちの良くないアドバイスをくれたし、それが善意の応援のあらわれだということも、ぼくはよく承知していた。
だから、彼女を招いてのわが家に、彼らが彼女の顔を見たさに集まって、わい雑な明るさをかもし出すのも、もっともというものだった。
「オイ、夕太。いまのうちにしっかり、リエさんに穴をあけとけよ。いずれ、だれの嫁だかわからないくらいに人気者になっちゃうんだからな」
そんな露骨な冗談にも、リエさんは声をたてて笑い興じるのだった。

やがてぼくたちは結婚し、処女と童貞で新婚初夜を迎えた。
一週間の新婚旅行から帰ると、彼らへの”手土産”は、「新妻の貞操」――。
ほろ苦い現実を受けいれるため、ぼくは事情をリエさんに話して聞かせた。
「そのつもりでいたからだいじょうぶ」
とウィンクで返す彼女に、ちょっぴり想いはフクザツだったけれど。
それでも、あの5人に吸血されまわされてしまうという運命を、彼女がごくにこやかに受け止めてくれたことに、ぼくは大いなる安堵と満足とを感じていた。

「リエさんを真っ先に抱かせてくれ」
そう囁いてきたのは、一座の中でも比較的年配の、顔色の悪い男だった。
サキオと呼ばれるその小父さんは、母さんといちばん親しいようすだったが、
あるときひっそりと言われたことがある。
「お前の本当の父親は、わたしだ」と――。
彼は吸血鬼のなかでは半吸血鬼と呼ばれる存在で、もとはこの街のふつうの住人だった のが、街が受け入れた吸血鬼に血を吸い取られて彼らの仲間になった人物。
輪姦マニアの彼らのなかでは唯一の妻帯者で、サキオさんが初めて輪姦を経験したのは、ほかならぬ自分の奥さんだったという。
つまり、半吸血鬼となったお祝いの宴に、自分の奥さんを差し出したというわけだ。
彼はぼくのことを初めて咬んだ吸血鬼だったけれど。
ぼくは彼の言を、素直に信じた。
彼こそが、ぼくのほんとうのお父さん。
だから、自分の嫁を真っ先に捧げることが、親孝行なのだと。

彼にしてみれば。
自分の妻をまわした男たちに、息子の嫁まで獲物として与えることになるはず。
そこには独特の、マゾヒスティックな歓びがあるのだろう

リエちゃんが処女のうちから、じつはたっぷりと吸い取らせていただいていたのさ。
きみのお嫁さんは、とっくの昔からわしらの共有財産というわけだ。

「お母さんからは、抱かれてらっしゃい、すごいわよって言われてきました」
直前までそんなことを言っていたリエさんだったけれど。
いよいよコトに及ぶ・・・というだんになると、にわかに恥ずかしがって、
夫婦の寝室のふすまを開けたままサキオさんにのしかかられると、
「夕太、視ちゃダメ~!」
と、両手で顔を覆って絶叫していた。
もちろんそんなことが許されるはずもなく、
記念すべき新妻の貞操喪失シーンはみんなの記憶に残るよう、ふすまを開け放ったままの状態で、
夫であるぼくを含めた5人の男たちにも共有された。

次から次へと、順々にソファから起ちあがる男たち。
だれもが全裸で、あそこをビンビンに振り立てて、リエさんに挑みかかっていった。
さいしょのうちこそぼくの前であるのを気にして、なんとか貞操を守ろうと腕を突っ張ったりして抵抗していたリエさんも、
二人め以降になるともう、ほとんど無抵抗に受け容れてゆく。
ぼくはふと思った。そして、サキオさんに囁いた。
「リエさん、吸血されるの初めてじゃないよね?」
「わかるかね?」
サキオさんは、にやっと笑った。
実はまだ彼女が女子高生のうちから、制服姿に目のくらんだ彼らは自分たちの邸のなかに彼女を引きずり込んで、処女の生き血をたんのうしていたという。
「えっ、じゃあもうとっくに、寝取られていたの??」
「でもちゃんと、新婚初夜には処女だっただろう?」
「それはそうだけど」
彼らはリエさんがぼくの未来の花嫁なことを尊重してくれていて、犯すことはなかったけれど。
やっぱり処女の生き血には目のない、ただの吸血鬼だったのだ。
リエさんは制服姿のまましばしば彼らの住処に連れ込まれて、素肌を吸われ舐められながら、きゃあきゃあはしゃぎながら、生き血を吸い取られていったという。

不思議に、怒りは沸いてこなかった。
むしろ、リエさんが処女の生き血をたっぷりと彼らに愉しませることで、
わが家の嫁としての務めを果たそうとしてくれたことに対する感謝の気持ちがわいてきた。
「さあ、婿さんも加わるぞ~」
傍らでサキオさんが声をあげる。
「エエ~ッ!?」
いちばんだれよりも大声をあげたのは、ほかでもないリエさんだった。
みんなの前での夫婦エッチは想定外。
リエさんはのしかかってゆくぼくに目いっぱい抵抗して、すぐにねじ伏せられて、征服された。
周りじゅうの拍手などもう耳にも入らずに、ぼくは嫉妬心のかきたてるいびつでエッチな感情の虜になって、なん度もなん度も彼女を愛し抜いてしまっていた。


あとがき
多分ここに出てくる夕太くんは、17日にあっぷした「貞淑だったはずのお隣のご夫婦も・・・」で生まれた息子さんだと思います。
(^^)
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-3842.html

法事帰りのご婦人たち

2019年09月22日(Sun) 15:41:46

法事が良いのだ、と、彼はいった。
お弔いだと、悲しみの度合いが大きすぎて、十分楽しむことができないから と。
エッチなビデオなどで、通夜の席で乱れる未亡人なんてやっているが、多くの場合あれはうそだ ともうそぶいた。
そういいながら彼は、法事帰りのご婦人たちの、黒のストッキングに包まれた足許を盗みるのも忘れない。
そのうちのひとりが、足許に注がれる視線を見とがめて、こちらに歩み寄ってきた。
すっかり白くなった髪をきちんとセットした、老婦人。
躊躇いがちに書けてきた言葉は、
「あの・・・喉渇いていらっしゃるのですか?」
少々ならお相手しますよ・・・という老婦人の善意を、彼は鄭重に断った。
「それよりも貴女、少しお疲れのようですな。ご自宅に戻られたらすぐに、砂糖水を飲まれると良い」
お気をつけて・・・と慇懃に頭を垂れる彼に、
老婦人もまた善意を漂わせた気品ある目鼻立ちに、いっそうおだやかな色をたたえて、ごきげにょう、と声を送った。

しばらくして通りかかったのは、40代くらいの落ち着いたマダム。
「あの…先日は見逃していただいて助かりました」
どうやら獲物を狩りに出かけた公園で出くわした彼女を、体調が悪そうだからといって襲わずに帰宅を促してやったらしい。
どうにも律儀なやつだ。
マダムはその折の好意を恩義に感じていて、わざわざ遠い縁戚の法事に出向いてきたのだと告げた。
「きょうは身体の調子がよろしいので、少しならお相手できますわよ」
マダムの善意を、彼は断らなかった。
「きょうは”本命”がいるから、ご主人に必要以上の迷惑はかけませんよ」
と言い添えた。
ご主人同伴だろうが何だろうが、ふだんなら見境なく、襲ったご婦人の貞操を奪って悦に入るやつなのに。
彼女は同伴のご主人のところに戻って二言三言囁くと、
ご主人は遠目にこちらに軽く会釈を送ってきて、
それからこちらに背中を向けたベンチに腰かけて、煙草を取り出しはじめた。

「すまないですね・・・じゃあちょっとだけ」
喪服のスカートのすそを心持ちたくし上げたマダムの足許に、彼は唇を近づける。
薄いナイロン生地ごしに清楚に浮いた白い脛に、脂ぎった唇が、ぬるりと這わされた。

ちゅうっ・・・ちゅうっ・・・ちゅうっ・・・
吸血されるあいだじゅう、マダムは目を瞑っていた。
放された唇のあとは、鮮やかな伝線がひとすじ、スカートの奥にまで這い込んでいる。
「主人は侮辱だと憤慨するでしょうけど・・・これくらいのことはおおめにみてもらいますからね」
マダムはイタズラっぽく笑うと、さっきからじりじりしているご主人の後ろ姿へとパンプスの脚を駆け寄らせていく。
立ち去る夫婦連れのご主人のほうが、破れたストッキングを穿いた同伴者の足許を始終気にかけ続けているのを遠目に見送りながら。
彼は口許を拭うとうそぶいた。
「どうやら、本命がご来臨のようだ」
微かな足音だけで、それが聞き分けられるのだ。
わたしにはとうてい、その足音が妻のものだと聞き分けることなどできない・・・

曲がり角から現れた喪服姿は、まさしくわたしの妻――
わたしとはあえて視線を合わせることなく、彼に向って礼儀正しくお辞儀をし、彼もまたそれに劣らぬほど恭しく会釈を返してゆく。
そろそろわたしの立ち去るべきときがきた。
そう思って腰を浮かそうとすると彼は、
「どこへ行くつもりかね」
と訊いた。
「きょうの法事には、見届け役が必要なのだと、察しをつけてもらいたかったな」
彼はイタズラっぽく、にんまりと笑んだ。
そして、あくまでもわたしとは目を合わせようとしない妻の腕をとって、お寺の本堂へと足を向ける。
どうやらきょうもまた、わたしは目の前で犯される妻の、貞操の喪を弔うことになりそうだ。
まだ咬み破られていない妻の黒ストッキングが、いっそうなまめかしく、わたしの網膜を彩った。

正当化された不貞行為

2019年09月17日(Tue) 07:04:51

妻の愛人は3人いる。
ひとりは、初めて夫婦ながら相手をした吸血鬼。
もうひとりは、そのあとわたしの母を襲った吸血鬼。
いまは嫁も姑も抱かれるという、濃い関係。
そしてもうひとりは、わたしの同僚――。
わたしと同じくらい早い段階で奥さんを犯されて、自身も血液のほとんどを奪われて、半吸血鬼になった男。
本人がそんな身になったのは。
じつは妻に焦がれていたからだという。
ふだんは謹直で、結婚も誰よりも遅かったけれど。
シャイで濃い愛情の持ち主は、
自分の奥さんとはラブラブなくせに。
人の妻にまで手を出す男。
ときにはセックスだけで呼び出され、妻も応じていると知りながら。
わたしはきょうもなに食わぬ顔で、友達と逢いに行くと告げる妻のことを、やさしく送り出していく。

妻と同僚との不貞は、献血行為の名のもとに正当化されている。
妻のなかでも。
わたしのなかでも。

どうしてこうなるの? または、賢明なる差別待遇

2019年09月17日(Tue) 07:01:32

街が吸血鬼との共存を始めてから、一年が経った。
それ以来、多くの人妻が襲われて、血を吸い取られたり犯されたりした。
本人も夫たちも、犠牲になったものの生命が保証されることと引き替えに、その状況を受け容れていた。
夫のなかには妻の仇敵であるはずの吸血鬼に自身の血も献血する、協力的なものさえ、一定数存在した。

それでも襲われない夫婦というのも、一定数存在するらしい。
生真面目すぎて、かりそめにもそのようなことを試みたら、どちらか一方、もしくは両方が、自殺しかねないという夫婦だった。
お隣のご夫婦も、そんな選ばれ方をしているらしい。
吸血鬼たちは、見向きもしなかった。

わたしの場合?
ほとんど真っ先に夫婦ながら襲われて、妻はわたしの目のまえで首筋を咬まれ、ブラウスを剥ぎ取られて犯されていた。
複数の吸血鬼を体験した妻は、そのなかで相性のよいもの3人と、おおっぴらに交際していて、
彼らはわたしが在宅しようとするまいと、見境なくやってくる。
むしろわたしが在宅しているときにこそ好んで訪れて、妻との情事を見せつけていく。

いったい、この違いは何?
妻のまえで、いちどだけ愚痴ったけれど。
そのあと、決まってこうなるからじゃないの。
と、あっさりといなされてしまった。
きょうも訪れた吸血鬼どもと戯れた肢体は、いまはわたしの腕のなか。
複数の精液に濡れた股間は、勢いよく注ぎ込まれたわたしの粘液に、いっそう濡れを帯びていた。

喪服に網タイツ。

2019年09月05日(Thu) 07:39:03

ある街のご婦人たちが、いっせいに網タイツを穿くようになった。
それは、この界隈では、吸血鬼の愛人になったことを意味していた。
夫たちは頭を抱えたが、どうすることもできなかった。
そしてほとんどの夫たちが、妻と吸血鬼との交際を、すすんで受け容れるようになっていった。


ある法事に参列した母親と娘が、そろって網タイツを履いてきた。
母娘は生活の糧を得るために、いちはやく吸血鬼たちに自らの血を差し出したのである。
多くのご婦人たちは、顰蹙の目でふたりを見た。
「吸血鬼を相手に娼婦のようなふしだらなことをした」という、非難の視線でもあった。
けれどもつぎの瞬間、縮みあがったのは、黒ストッキングのご婦人たちのほうだった。
母娘の連れの数名の男たちが吸血鬼であることを、ひと目で気づいてしまったらである。
ストッキングを穿いたご婦人の脚に好んで咬みつくという、けしからぬ趣味を持った彼らにとって、
ご婦人がたのだれもが黒のストッキングを脚に通してくる法事の席は、獲物を手っ取り早く手に入れる格好の狩り場だった。
奥ゆかしい喪服姿の参列者たちは、格好の餌食となったのだ。

故人に敬意を表して、彼らはお焼香が終わるまではおとなしくしていたが、
ひととおりのことが済んでしまうと、法事は吸血鬼の支配を受けることになる。
夫たちは、妻や娘たちが次々と吸血鬼に襲われ咬まれてゆくのを、なすすべもなく見守るばかりだった。
この街ではこういう場合、妻や娘を守ることを禁じられているのだ。

既婚の婦人が吸血鬼に襲われた場合、ほぼ例外なく犯されることになっていた。
体裁を気にする夫たちは、その場をはずすしか、採る道はなかった。
そして、ふすま一枚向こう側で、妻や娘がムザムザとうら若い血液を彼らの養分として吸い取られてゆくのを、
はらはらしながら、やがて昂りを交えて、覗き見するばかりだった。

家族の生命を脅かされることを気遣う夫たちは――実際にはこうした場合その危険は皆無なのだが――その場に留まり、
吸血鬼たちの荒々しい男ぶりを見せつけられる羽目になった。
貞操堅固だった妻たちがあっという間にイカされて、夢中になって、娼婦のように大胆に振る舞うようになってしまうのも。
多くの妻たちは、そんなところを夫に視られたくないはずなのに、
妻の凌辱現場に同席した夫たちは、寺に入ってくる時よりも仲睦まじそうに、寺を去っていった。

生真面目なご婦人たちが漆黒の礼装はふしだらにはだけられ、
薄墨色のストッキングをみるかげもなく咬まれみ剥がされてゆくかたわらで、
すでに堕ちてしまった網タイツの女たちは、こればかりはほかのご婦人たちと同じ漆黒のスカートを大胆にたくし上げ、
網タイツを半脱ぎにして、まがまがしい輪姦に身をゆだねてゆく。
厳粛なるべき法事の場は、娼館のような猥雑な喧騒に満たされた。

法事が終わるころに、夫も妻も、だれもが服従しきってしまっており、
夫たちは自分の妻と吸血鬼との交際をすすんで受け容れて、
妻たちは礼装をしとどに濡らされたお相手に、しなを作って別れを惜しみ、
早い機会の逢瀬を情人と夫とに、恥を忘れておねだりするのだった。

6月17日ごろ構想

似合う・似合わない

2019年08月28日(Wed) 03:53:07

夫婦ながら生き血を吸われた夫が、吸血鬼を見て言った。
「似合うね」
もうろうとなった視界のかなた、吸い取られた妻の生き血が、口許や頬をべったりと濡らしていた。

妻の血が吸血鬼の頬に似合う・・・と告げることは、
夫が妻と吸血鬼との仲を認めたことを意味してしまう。
それと察した妻は憤然として、家から出ていく、と夫に告げた。
「似合わないね」
吸血鬼は妻に、そう告げた。

思い直した妻は、だったら見せつけてやろうと思い、自分から吸血鬼の猿臂に巻かれていった。
「似合っているわ」
妻は夫に告げた。
妻を恋するあまり、夫は妻の服を身にまとい、いちぶしじゅうを見守っていた。

夫婦が吸血鬼の夜這いを受け容れた、さいしょの夜のことだった。

妻が喪服を着るとき。

2019年05月19日(Sun) 06:16:32

妻は日常でも、時々喪服を身に着ける。
わたしがいちど、吸血鬼に襲われて、血を吸いつくされて死んだとき。
お通夜の席で黒のストッキングの足許を狙われて、喪服のまま吸血されて犯されて以来、くせになったのだという。
妻を犯されたとき、わたしはひつぎのなかにいたはずなのに。
なぜかそのときの状況を、鮮明に記憶している。
そして、忌まわしいはずのその記憶を呼びさましては、昂りを覚えてしまういけない自分がそこにいる。

妻が喪服を着ているときは、犯されても良いという意思表示。
もちろん夫のわたしが抱いてもよいし、案外吸血鬼の訪問を受ける下準備のときもある。
わたしが挑もうとして拒まれたときは、
1時間以内にわたしは、妻の不倫現場をのぞき見して、別の形で性欲を満足させている。
妻が応じてくれた時には、
この見事な肉体を彼にも自慢したくなって、
妻を派手なスーツに着かえさせ、吸血鬼の邸に連れてゆく。

強奪される妻。

2019年04月21日(Sun) 06:12:06

喉がカラカラだった。
吸血鬼に襲われて、夫婦ながら血を吸われるようになって、半月が過ぎていた。
妻の目を盗んで訪れた吸血鬼の屋敷のなか。
いいように吸い尽されてしまったわたしは、吸血鬼と同じ渇きを体験している。
あんたは相性が良い。半吸血鬼になる素質はあるな。
男はうそぶいた。
半吸血鬼とは、どういうことです・・・?
眩暈にあえぎながら、わたしはやっとの思いで訊いた。
人間として生き、人間として我らに血を吸われるが、時には吸血鬼のように人の生き血を口に含みたくなる。
そういうことさ、と、やつはいった。

インターホンが鳴った。
待ってろ、と、男はいって、足早に玄関に近寄った。
おもむろにドアを開くと、ドアの向こうから叫び声があがった。
聞き覚えのある声だった。
「ど、どうしてっ!?」
ドアの向こうで妻がうろたえている理由が、なんとなく想像がつく。
いちど誘いを受けてしまうと、あらゆる理性を乗り越えて足が向いて、ここにたどり着いてしまう。
先刻わたしが受けた念波を、妻も受信したというに過ぎなかった。
――わたしの血だけでは、飽き足らなかったのだ。

「キャー」
ひと声叫んで、ドアの向こうの喧騒が止んだ。
チュチュ・・・ッ、じゅるうっ。
露骨な吸血の音にわたしは慄然とした――けれども、ドキドキしながら聞き入ってしまった。
わたしはすでに、半吸血鬼だったから。
やつが妻のことを羽交い絞めにして、脂の乗りきった生き血にありついていることを、悦ばしくさえ感じていた。
その場に倒れ込んだ妻にのしかかって、やつは容赦なく生き血をむしり取ると、
両手で妻のことをお姫さま抱っこして、部屋のなかへと引き込んでいた。

両目を瞑った妻は土気色の顔色で、それでも肩で息をはずませていた。
吸い尽さなかったのだな――わたしは少しだけ、ほっとした。
衝動のままに血をむさぼって、いちどは絶息しかかったこともある。
わたしの懇願を容れて、やつはせっかく獲た血を妻の身体に戻し、ことなきを得たが、
ことなきを得た代償として、わたしは妻の貞操を差し出す羽目になった。
着衣をはだけ素肌をあらわにしながら犯される妻の身体は、明らかに本能的な愉悦に喘ぎつづけていた。

すこしほっておけば、顔色もよくなるだろう。
やつはうそぶいた。
そのこともよく、知っている。
ものの30分もすれば、妻はわれにかえることだろう。
どうして彼が手かげんをしたか?
もちろん、べつのお愉しみを期待してのことだった。
わたしの同意を得ようとするような無粋は、さすがにかれは慎んでくれた。

差し出されたコップは、赤黒い液体で満たされていた。
渇きのままに口をつけると、生温かいぬるっとした感触が、唇を心地よく浸す。
妻の身体から獲られた血だ。
そうと知りながらも、わたしはコップを口から離さずに、そのままひと息にコップの中身を飲み干した。
旨いか?
すぐ傍らに、ほくそ笑んだやつの顔がある。
共犯者の笑みだった。
ああ・・・
わたしは虚ろに応えると、やつは満足そうに笑い返してきた。
蔑みや嘲りの感情は、そこにはなかった。
おなじものを旨いと感じるどうしの連帯感が、そこにはあった。

じゃあ、愉しませてもらうぜ。
やつは妻のほうに顎をしゃくって、わたしの同意を求めた。
ベッドのうえに投げ込まれた妻の顔色は、じょじょに血色を取り戻しつつある。
肌色のストッキングを穿いた両脚は、放恣に開かれていた。
男ふたりの視線が、淡い光沢を帯びた薄いナイロン生地に包まれた太ももに、それぞれの想いをこめて絡みつく。
好きにするさ、と、わたしはいった。
男は、もうひと声、と、せがんだ。
仕方なしに、わたしはいった。
家内を目のまえで犯してほしい。あんたの言うなりになった家内を視て、征服されたことを実感したいので・・・

それから一時間。
妻はたっぷりと、弄ばれた。
薄々は、わたしに視られながらの行為と、感づいているようだった。
恥じらい拒みながらも、侵入を受け容れざるを得なくなった股間の怒張に理性を狂わされて、
妻は目の前で、堕ちてゆく――
そしてわたしも、そんな妻を目のまえに、堕ちてゆく。


あとがき
誘い出された妻が、心ならずも吸血鬼の毒牙に屈して、生き血を吸い取られてゆく。
同じ吸血鬼の本能を植えつけられた夫は、
むしり取られてゆく妻を助けることもかなわず、
妻の仇敵と共有してしまった本能のまま、
男が妻を相手に好餌にありついている様子に昂奮してしまう。
強奪される妻を悦ぶ夫――
不謹慎です。あまりにも、不謹慎です・・・

譲歩。

2019年04月19日(Fri) 07:22:09

吸血鬼に襲われても、吸い尽されてしまうことはない――ときかされた。
だから譲歩がたいせつなのだと。

最初に望まれたのは、素肌に直接口をつけない採血だった。
妻もわたしも、注射針で採血をされ、
わたしたちを狙っていた吸血鬼は、ビニールパックに入った赤黒い液体を摂取した。
彼の生命をつなぎとめるためだけだったら、それでじゅうぶんのはずだった。

採血は、なん度となくつづけられた。
わたしたちはその都度譲歩して、注射針に腕をさらした。
むやみに襲われるよりは、はるかにましだと思っていた。

「仕方ないから、直接咬まれてくる。一度だけだと言われたから」
釈明を擦る妻は、わたしと目を合わせなかった。
そしてよそ行きのスーツ姿でひっそりと出かけていった妻は、ひと晩じゅう戻らなかった。
明け方になって髪を振り乱して帰宅した妻を、わたしは強く抱きしめた。
なにが起こったのかは、言わせなかった。
人の素肌に直接口をつけて吸血する場合、
相手が人妻だったら必ずそういうことをするのだと、なん度も聞かされていたはずだった。

彼はわたしの血も、肌に口をつけて直接吸いたがった。
むしろ文句を言ってやりたい気分で、わたしは彼の求めに応じた。
玄関まで見送ってくれた妻は、終始気づかわしそうにしていたけれど、
なぜか少しだけ、安堵しているようにみえた。
妻がどうして堕ちてしまったのか――身をもって思い知る羽目になった。
それ以来。
「直接咬まれてくるわ」と言って出かけようとする妻のことを、引き留めようとは思わなくなった。
妻はなん度も彼と逢い、逢瀬を重ねるようになった。

血が欲しかったら、わたしから先に咬んでくれ。
あるときわたしは、そう願った。
妻を守り切れないまでも、せめて身代わりになるべきだ――そう思ったからだ。
なにもしないで妻の帰りを待つことは、心に悪いと感じていた。
せめてその時は、失血で動けなくなっていて、彼女を守る力は残されていなかったのだと、そんな言い訳がほしかった。
願いはすぐに、聞き入れられた。
結果的に、吸い取られたわたしの血は、彼が妻を征服するときのエネルギーに振り替えられた。
わたしは彼と妻との逢瀬を、間接的に手助けしたに過ぎなかった。

時にはご主人のまえで、奥さんを犯したい。
男は無遠慮にも、そんな願いを口走るようになった。
「いちどくらい、かなえてあげましょうよ」
そう囁いたのは、妻のほうだった。

恥じらって拒もうとする妻は、
さきに血を吸われて身じろぎひとつたいぎになったわたしの前で抑えつけられて、
強引な吸血に声をあげ、
よそ行きのスーツ姿のまま犯されていった。
恥じらいながらも夢中になってゆく妻を見せつけられて、
わたしまでもが、かつて体験したことのない昂ぶりのるつぼに放り込まれた――

それ以来。
夫婦連れだっての献血を、なん度もなん度もくり返している。
わたしの家の名誉はそこなわれてしまったけれど――もう、後悔はしていない。

若妻の訪問。

2019年04月18日(Thu) 07:41:56

こんにちは。
門の向こうに佇んだのは、二十代後半の若妻だった。
ロングの黒髪を風にたなびかせ、
真っ白なカーディガンをゆるやかに着こなして、
胸もとを包むのは淡いグリーンのブラウス、
腰から下は、純白のひざ下丈のフレアスカート。
白のサンダルの脚はいまどき流行りの素足ではなく、ちゃんとストッキングまで穿いている。
なによりも。
面長で彫りの深い面差しに、白い歯をみせてにこやかに笑んだ唇が、彼女の訪問の意図を疑わせるほどに健全だった。

ここは「輪姦(まわ)され小屋」と呼ばれる古びた住居。
もとのあるじは妻を輪姦されて、ショックのあまり家を出た。
妻はそのままこの家に留まって、輪姦まみれの日常を、むしろ愉しみながら暮らしていた。
やがて夫も戻ってきて、べつの家で暮らすようになった。
もちろん妻を目あてに夜這いを掛けてくる者たちを出入り禁止にするような、無粋なまねはしなかった。
あとは自由に使ってほしいということで気前よく提供されたこの家で、
いったいなん人の女が、犯され抜いたことだろう。
メンバーの誰もが、互いに互いの妻の肉体を知っていた。
性欲の対象は、まず自前の女たちでまかなったのだ。
妻を犯してほしいという変わった願望を持つ夫というのは、意外に絶えないものだった。
だからこの家には、納得づくで訪れる女たち、夫婦者が、あとを絶たない。

わけてもきょうの若妻は、絶品だった。
都会育ちの洗練した身のこなし。
愛想の良い、上品で伸びやかな受け答え。
そして押し開いた太ももの奥の締まり具合。
なにからなにまで、最高だった。
ご主人のまえで初めて犯したあの晩は、いまだかつてないほど盛り上がった。
すっかり目ざめてしまったご主人は、度重なる交接にさすがに頬を蒼ざめさせた奥さんをいちどは連れ出したものの、
その夜のうちには改めて訪問してきて、
居合わせた男たちは、若妻の身にまとうよそ行きのワンピースを、自分たちの精液にまみれさせたのだった。

えっ?えっ?着たままするんですか!?
こちらの流儀はよくわかっているくせに、奥さんはわざと戸惑った声をあげ、
伸びてくる猿臂を払いのけようとしたけれど。
淡いグリーンのブラウスを破かれると、すぐにおとなしくなった。
大の男が三人、なかには彼女の父親よりも年配の男さえ交えて、
奥さんは無抵抗で、息をはずませて迫って来る男たちの交接を受け容れつづけた。
「セイジさん、セイジさん」
夫の名を呼びつづけたのは、本当に夫に対する謝罪だったのか、それともたんに周りの男たちの気をそそるためだったのか。

2時間後。
破けたブラウスの胸を、ボタンを締めたカーディガンの奥深く押し隠して、
それでも奥さんは何事もなかったかのように、帰っていった。
あのにこやかな笑みも、ここの玄関先に立った時のままだった。
さらさらとしたロングヘアをそよ風にたなびかせ、
ショルダーバッグを優雅に肩から提げて、
ストッキングを剥ぎ取られた生足を眩しく輝かせた歩みはよどみなく、家路をたどっていった。

主人の名誉は守って。
そう口にしたときだけは、しんけんだった。
そして、男どもが約束するとこたえると、わが身を獣たちの肉薄から隔てようとして突っ張った腕から、力を抜いた。
都会妻はこうして、村の男衆の性欲を満足させるために、わが身をゆだねていった。

いちど、亭主どのにお礼を言いに行かなくちゃな。
だれ言うともなくそう言って、俺たちは顔を見合わせ、ウフフと笑い合って、
互いの胸に泛んだいけない想いをまぎらせていった。

2時間もかかってしまいました。

2019年04月17日(Wed) 07:57:18

2時間もかかってしまいました。あなたの奥さんを犯すのに。
部屋から出てくると、男はそう言って頭を掻いた。
奥さんの抵抗はすごかった。ご主人も見ておくべでした。
きっと、ご主人しか識らないお身体だったのでしょうね。
女の操を守ろうとするお姿は、気高くてご立派でした。
でも、3人がかりでしたからね。^^
結論的には、たっぷり頂戴してしまいました。
奥さんも、さいごはノリノリでいらっしゃいました。
それに、また逢ってくれる約束をしてくれました。
ですんで私たち、また奥さんとエッチしちゃいます。
いいですよね?2時間もかかったんです。苦労しました。
ご褒美に奥さんの肉体を頂戴する資格があると思います。
けんかしないで、みんなで仲良く分け合いますから。^^
それにしても、奥さんいい身体してますね。ご主人が羨ましいです。
これからは、わたし達も愉しませてもらいます。
悦びは分かち合わないと・・・ね。
エエもちろん、秘密は厳守します。ご主人の名誉にも配慮します。鉄則ですから.
でもその代わり週2か3くらいは、お借りしますよ.^-^
だって、お勤めのあいだは、良いでしょう?わからないから。
でもたまには、ご在宅のときにも伺います。
きっとご夫婦のセックスの、刺激になります。
ではこれからも、よろしくお付き合いいただきますね。
それから2時間に、もう少し時間延長させてもらえませんか?
ありがとう、ご主人気前良いですね。
長年守り抜いて来た貞操を惜しげもなく振る舞って下さった奥さんと同じくらい、気前良いです。
ありがとう、ありがとう♪
では、もういちど、いただきま~す♪♪♪


あとがき
前記事のたいとるに刺激されて、口走ってしまいました。(^^ゞ

恋。

2019年04月10日(Wed) 06:54:43

どうしてうちの家内だけを襲うんだ!?
路上で襲われそうになった妻をかばいながら、照也はいった。
・・・あんたの奥さんの血が旨いからだ。
男は、ちょっと口ごもりながら、そうこたえた。

照れ隠しの強がりがみえみえだと、翠はおもった。
そして女の直感で、このひとは私のことが好きになったのだ、と、見抜いていた。
照也は照也で、同じ男として、目の前の吸血鬼が妻に恋していると感づいていた。
夫婦は顔を見合わせた。

私、恋をしてもいいかしら?
わざと独り言のように呟かれた言いぐさに、照也はあわてて聞こえないふりをした。
そして相手の男をにらみ返すと、「絶対死なせないでくれよ」と言い残して、近くの公園のほうへと立ち去っていった。
顔を見つめ合った一対の男女は、夫に少し遅れて、公園に入っていった。
そして、だれもいない公園の片隅で、むつみ合っていった。

嵐が過ぎ去ると、女はしずかに身づくろいをして、起ちあがった。
男は女に手を貸してやり、よろけた女を抱きとめて、優しく優しく腕に力を込めていった。
女は男のなすがままになっていた。
半脱ぎになったストッキングを男が欲しがると、女は脱がされるまま脱がされていき、
丁寧にたたんで男の掌のなかに収めてやった。

それ以来。
翠は誘われても良いというときにはストッキングを脚に通して男を待ちわびて、
照也はそんな妻のいちぶしじゅうを気づかわし気に見届けるようになった。

ひとつのありかた。

2019年03月22日(Fri) 08:25:37

吸血鬼との情事に耽る妻。
そのありさまを覗いて昂る夫。
最低の夫婦かもしれない。
けれどもそんなわたしたちを、吸血鬼は恩人だという。
たしかに――わたしたちの血を吸うことで、彼は生きながらえているのだから。
夢中なところを見せつけることに生きがいを感じる妻。
最愛の妻が辱め抜かれるところを覗いて、ストレスを忘れる夫。
変態夫婦と吸血鬼とは、良きセックス・パートナー。

人妻ふたり

2019年02月12日(Tue) 05:10:28

よっぽど飢えているのか?こいつ・・・と、正直俺は思った。
男のくせに俺を襲うとは。
勤め帰りに路上で襲われて、首すじに牙をぐいぐいと突き立てられながら、
どうしてそんなふうに余裕をかませることができたのか?これはいまだに謎である。
でも少なくとも、男はまるきりの獣ではなかった。ちゃんと会話が成り立っていた。
「あんた、よほど飢えているのか?」俺はいった。
同じ勤め帰りでも、スーツ姿のOLがわんさと通りかかるはずなのに。
よりにもよって男を択ぶとは、同性愛者なのか?とさえ思ったから。
けれどもそれは違った。
男はいった。
「あんた有森優子の旦那だろう?わしは優子に惚れてしまった。
 想いを遂げる前に、あんたを仲間に引き入れておきたくてな」
どうりで・・・さっきから・・・目つきがトロンとして来て、傷口が妖しく疼き始めている。
この街に棲む吸血鬼が人妻を狙うとき、しばしば先に夫を狙って口説くというのを、ふと思い出した。
そういうことなのか?と訊くと、あつかましくも、わかっているなら話が速いな、ときた。
契約を結ぶ際、相手に不利な重要事項は事前通知するのが建前だ。
だから俺は、言ってやった。
「あいつ、浮気してやがるんだぜ」
「え?どういうことだ?」
「夫公認の彼氏がいるって言っているんだ」

人妻を襲うとき、夫への事前通告をするというルールは存在するらしいが、
通告の対象に浮気相手は含まれていないらしい。
やつは、あんたの彼氏の了解は要らない、と言い切った。
優子のまえで、少なくとも俺の優位性を認めてはくれたというわけだ。
俺はその事実になんとなく納得して、そのまま血を与え続けた。

そんなふうにして二度逢って、それから優子を紹介するために、自宅に誘ってやった。
結婚式帰りのその夜、優子はやつの注文通り、若づくりに着飾っていた。
人妻を襲うときには、その装いもろとも辱める。
そんなけしからぬ嗜好を、俺は好意的にかなえてやることにした。
晴れ着を泥まみれにさせながら、妻が堕ちてゆくところを視たかったのかもしれない。
予定通り、優子はブラウスを真紅に染めながら生き血を吸い取られ、
陶然となって堕ちていった。

吸血鬼の奴隷に堕ちたあとも、日常に変化はなかった。
夫婦関係とか日常生活とかを壊さないのが、やつらの鉄則らしかったから。
俺は優子と今までどおり、なにも起こらなかったかのように暮らしつづけて、
優子は今までどおり、浮気相手との逢瀬を重ねた。
そのくせ吸血鬼との情事も、愛人に断りなく、だれにもまして乱れるようになっていった。
そのうちに優子は、したたかなことを思いついた。
「貴方は私の浮気な性分を理解してくれるけれど――あのひとの奥さんはだめね」
「あのひと」というのはもちろん、優子の愛人である酉葉雄介である。
彼は同じ勤務先の同僚で、妻とは社内パーティーで知り合っていた。
そして、同僚の妻であるということにも考慮を払わず、見境なく優子を犯し、夢中にさせた。
けれども彼の妻である里美は根っからの堅物だった。
見合い結婚したという里美は重役の娘で、箱入り娘だったのだ。
そして、浮気性な夫の浮気を敏感にかぎつけては、夫の不埒を詰り倒しているという。
「あのひとの奥さんを、あいつに襲ってもらうってどう?」
浮気相手の妻を陥れL計画を、どうして夫に相談するのだろう?
優子の寄せる変な信頼感に、それでも俺はこたえていった。

「あたしが行くのはまずいから、代わりにあなた行って」
自分の妻を襲わせることに、酉葉はかなりの抵抗を示したが、
日常的に犯している人妻の旦那である俺のまえで、強く出ることはできなかった。
「同僚と取引先の社長を酉葉の家でもてなす」という俺のアイディア(その実優子の発案だった)を、酉葉は渋々呑んだ。
女房を寝取られる旦那の気持ちが、今ごろわかったか――俺はちょっとだけ、意地悪な気分を楽しんでいた。

優子の新しい情夫である吸血鬼は、表向きは如才ないビジネスマンだった。
彼はたくみに酉葉の妻である里美にもお酒をすすめ、言われるままに里美も杯を重ねた。
アルコールに和らいだ席は次第にしどけなくなって、
吸血鬼は首尾よく?招かれた家の主婦をモノにしていた。
悪酔いして身体を傾けたまま、妻の痴態を渋面を作って見つめる酉葉に、俺は胸のすく想いだった。

ある晩家に戻ると、意外にも玄関のまえには、里美が佇んでいた。
いつもより仕事が早く片づいて、夕暮れの名残りが残る時分だった。
薄闇に透けて見える里美は、初めて堕落を経験したあの晩と同じように、小ぎれいに着飾っていた。
「うちの主人がお邪魔しているんです」
え?と問い返す俺に、
「あと、この間のあの方は、娘さんのお部屋で家庭教師をしているそうです」
言われるままに娘の勉強部屋の灯りを見あげる俺は、きっと間抜けな顔をしていたと思う。
「口うるさい私を首尾よく黙らせたご褒美ですって――あのかたたち、処女の血がお好きなんですものね」

落ち着かないですね、よかったらうちへ来ませんか?
返事も聞かずに先に立って歩き始めた里美は、黒のストッキングを穿いていた。
いかにも地味なよそ行きのスーツはきっと、堅物らしい彼女のチョイスなのだろう
ひざ下までも丈のあるスカートの下、黒のストッキングを通してピンク色に透きとおるふくらはぎが、なまめかしかった。

誘われるままに俺は、酉葉夫人に連れられて、彼女の家にあがりこんだ。
それから先のことは、もう言うまでもないだろう。
「あんなふうに、お宅に戻りにくい夜は、うちで休んでいってくださいね」
奥さまの代わりに、私お相手しますから――
しおらしく目を瞑った彼女の生真面目な横顔は、少女のようにウブだった。

生き返らされた夫

2019年01月31日(Thu) 07:51:34

ある男が吸血鬼に襲われ、血を吸われて死んだ。
男は死後も意識があって、その後のことを見聞きすることができた。
男の妻は通夜の席で襲われて、吸血鬼の餌食となった。
親族の者たちは怖れて逃げ散ってしまい、だれも妻を救おうとはしなかった。
男の妻は喪服姿のままその場で犯され、吸血鬼の言いなりに振る舞ってしまった。
男は悔しがったものの、どうすることもかなわなかった。
しかし、妻が吸血鬼と接し続けるうちに、徐々にほだされてしまい、やがて打ち解けあってまぐわいを深めてしまうのを、男は不覚にも、淫らな気持ちで見届けてしまった。

妻はひとしきり吸血鬼に血を与え、身体でも悦ばせてやると、どうにかして夫を生き返らせることはできないかと懇願した。
妻は夫を愛していたし、同時に頼りにしていたのである。
吸血鬼は男と意思を交わしあうことが、できたので、男に生き返りたいかと尋ねてみた。
男は即座に、生き返って再び妻と暮らしたいと願った。
吸血鬼は男と出会った夜に、だれかの血を吸わないと灰になるところだったので、男に恩義を感じていた。
そこで、吸血鬼は男とその妻の希望を容れて、男の身体に血を戻して生き返らせた。
夫婦は、吸血鬼に身体中の血を舐め尽くされながらも、元通りに暮らすことができるようになった。

吸血鬼は、人の生き血を欲していたが、相手を死なせるほどの血の量は必要としていなかった。
だから吸血鬼は、この街に留まるあいだは夫婦から血をもらえないかと持ちかけた。
男が吸血鬼に血を与えたのは、もとより本人の意思とはかかわりのないことであったが、男も吸血鬼の事情を聞かされると、いくらかの同情を覚えた。
そこで、妻と相談して、交代で吸血鬼に血を与えることにした。
妻は夫の通夜の席で吸血鬼に犯されたことを忘れられなかった。
話の通じる相手であることは、夫を生き返らせてくれたことでそれと分かったが、
もしもこれからも夫婦ながら献血行為に応じるとしたら、性交は避けられないのではないかと気がかりだった。
けれども、羞恥心から、そうしたことを夫と相談することができなかった。

まず夫が血を吸われ、いよいよ妻の番になると、果たして吸血鬼は血を吸うだけではなく、身体の関係を求めた。
最初のときは、夫の知らないところで関係を結んでしまった。
妻は思い悩んだ挙げ句、夫に真実を告げずに関係を続けることにした。
誰も悲しませたくなかったからである。
夫は一度死んだときに吸血鬼が妻を襲って犯したところを視ていたので、
妻を吸血鬼に逢わせることに同意したときすでに、二人が肉体関係を結ぶことを予想していた。
吸血鬼はもとより、妻もまた自分の情夫との営みに惑溺を感じていたので、関係を絶つことはできなかった。
夫はふたりの関係を、しばらく見守ることにした。
妻は吸血鬼に身体を求められると、夫への貞節を思い吸血鬼を拒もうとしていたが、
やがて回を重ねるたびにほだされてしまい、大胆な逢瀬を重ねるようになっていった。
一方で夫のほうはといえば、ふたりの密会の有り様を覗き見することに、淫らな昂りを覚えるようになっていった。
妻はやがて、夫が自分たちの逢瀬を覗き見していることに気がついた。
初めは戸惑い、夫のしていることを恥ずかしく感じたが、もはや成り行きにゆだねるしかなくなっていた。
夫婦は吸血鬼を家庭内に受け入れて、長く満ち足りた関係を続けた。

絵を好む吸血鬼

2019年01月20日(Sun) 08:26:35

絵画の鑑賞を好む吸血鬼がいた。
還暦近くの吸血鬼だった。
彼の棲む街には美術館がなかったので、隣接する都会の美術館に、よく出かけていた。
そこであるとき、一組の夫婦と知り合いになった。
お互い好みが合い、会話はとんとん拍子にはずんだ。
晩ご飯はいかがですか?と問うご主人に、吸血鬼は思い切ってこういった。

実は私、吸血鬼なんです。隣の街に棲んでいて、ガールフレンドがなん人もいるんです。と。

そうだったんですね。ご夫婦はそう言って驚いたが、すでに吸血鬼の人柄が分かりかけていたので、いった。

家内に急に咬みついたりは、なさいませんよね?そういう方だとお見受けします。
そうだったら、べつに吸血鬼だろうが人間だろうが、関係ないのではありませんか?

吸血鬼は分け隔てをしない夫婦の態度に目を見張り、慇懃に頭を垂れて、いった。
できれば長く、おつきあいをしたいものですな、と。

それから彼はその夫婦と連れだって、月に2回は絵画鑑賞に出かけた。
夜は食事を共にして、気分良く別れていった。
もちろん、彼が奥さんを襲うことはなかった。
彼の棲んでいる街には、そういうけしからぬ欲求に応えてくれるガールフレンドが、なん人もいたからである。

それからしばらく経って、街にいた彼のガールフレンドが2人、同時に街を出ていった。
2人は転勤族の妻と娘で、ふたりながら彼の餌食になっていた。
娘の進学の関係で、避けられない転居だった。
ご主人は妻の浮気相手である吸血鬼に理解のある男で、
時折妻の服を着て女装して、逢ってあげましょうと約束してくれたけれど、
彼の欲求を満たすためのローテーションに、狂いが生まれた。
吸血鬼は献血してくれるガールフレンドたち――そこには好意的なご主人も含まれていた――が健康を損ねないように、綿密なスケジュールを組もうとしたが、どうしても一人足りないことに変わりはなかった。
彼は都会の夫婦に連絡を取って、しばらく会うのをやめましょうといった。

一か月後、吸血鬼の邸に、都会の夫婦が訪ねてきた。
驚きつつも夫婦を出迎えた吸血鬼は、邸のなかに入れるわけにはいかないから、そこのお店でお茶でもしましょうといった。
「あなたがいないと会話がはずまないものですからね」と、ご主人が笑っていった。
それ以来、人目のある喫茶店やホテルのロビーで短時間会話を共にすることで、彼らの交際は復活した。
そんな会合のなん度目かのこと。
街でいちばん大きなホテルのロビーで会合したときに、ご主人がちょっとだけ席を外した。
不運にも、突然の訪問と吸血鬼の渇きの刻とが、重なってしまっていた。
吸血鬼は欲求をこらえ切れなくなって、テーブルの向こう側にまわり込み、さっきまで夫の腰かけていたソファに腰を下ろすと、
戸惑う夫人を引き寄せて、首すじを咬んでしまった。
アアーッ!
奥さんがひと声叫ぶと、ご主人が慌てて駆け戻って来た。
吸血鬼は、好ましい交際が終わったと観念した。
せっかく彼らは分け隔てなくかかわってくれたのに・・・
ところがご主人の対応は違っていた。
奥さんにひと声、「だいじょうぶか?」と声をかけた。
奥さんが、「私はだいじょうぶ」と応えると、ご主人は、このホテルで部屋を取りましょうと言った。
幸い、空き部屋はすぐに見つかった。
そのあいだ吸血鬼は、奥さんを鄭重に介抱して、首すじにつけた咬み痕に滲む血が、服につかないよう気を配っていた。


ホテルの部屋に移った吸血鬼は、なおも奥さんの介抱を続けた。
ご主人はいった。

貴男はいつも紳士的で、喉が渇いているときも我慢をして、家内に接してくれていましたね?
だからわたしたち、相談したんです。
もしも貴男がどうしても我慢できなくなった時には、家内の血を吸わせてあげよう・・・と。
子供たちは独立しましたし、わたしに関するかぎりたいがいのことはお許ししますよ。

健全な清遊が、夫婦と吸血鬼とのあいだを、知らないうちに近いものにしていた。
吸血鬼はご主人に深く感謝をして、奥さんの首すじを咬み、うっとりとして血を吸われる妻の様子を見守るご主人に、
あなたに恥をかかせるわけにはいきませんからな・・・と告げると、ご主人の首すじにも咬みついた。
そして、酔い酔いになったご主人を隣のベッドに寝かせると、奥さんを組み敷いたまま、男女の愛を注いでいった。


月に2度の美術館通いは、その後も続いた。
そういうときには、いままでどおりの清遊だった。
吸血鬼はどこまでも紳士的に振る舞い、夫婦は思いやり深く接した。
そして、それ以外の逢瀬が週に1度、つけ加えられた。
時にはご主人も同席して、夫婦ながらの献血に応じていった。
血を吸い取られて仰向けになった奥さんにのしかかって、吸血鬼はけだもののように荒々しく彼女を愛したが、
ご主人は朦朧となりながらも妻のあで姿を見届けて、絵のように綺麗だよと告げるのを忘れなかった。

黒沓下の男。

2018年11月26日(Mon) 07:13:33

ロングホースを履くのは、ビジネスマンのたしなみなのですよ。
男はそういって、きょうもスラックスの下にひざまである丈の長い沓下を履いてくる。
貴男もお好きだとは、嬉しい限りですね。
ふつうはすね毛を見せないために履くものなのですが・・・
足許にかがみ込んでくるみすぼらしい老人のまえ、
折り目正しいスーツ姿が身をかがめて、スラックスをたくし上げた。

ツヤツヤとしたリブタイプのもの。
水玉もようの入ったもの。
しゃれたストライプ柄のもの。

この老人のために、いままでなん足履いてきたことだろう?
老人は彼の足許に唇を吸いつけて、自慢のロングホースを咬み破りながら、血を啜る。
老人は、吸血鬼だった。

都会暮らしが長かった男は、かなり高価なものもたしなんでいたけれど。
劣情もあらわに唇を這わせてくる老吸血鬼のため、すべて気前よく咬み破らせていた。
きょう、彼のために履いてきたのは、ストッキング地の、肌の透けるタイプ。
老人も、男も、もっとも気に入りのタイプだった。


さっきから。
横たわる男の足許にのしかかるようにして。
老吸血鬼は、ふくらはぎを包む薄地のナイロン生地に、舌を這わせつづけている。
なめらかな舌触りに、ひどく満足したらしい。
なん度も舌をヌメらせて、よだれを上塗りしていった。

さっきまで。
老人が自分の妻を犯していたのを、男は察している。
初めて誘い出したときと同じ喪服姿で、妻は老人の誘いに応じていった。
丈の長い漆黒のスカートのすそからのぞく足首を、ふくらはぎを、足の裏まで。
くまなく舐められたうえ、咬み破られていった黒のストッキング。
老人は、犯した人妻が穿いていたのと同じ色の沓下を、その夫が脚に通すことを望んだ。
男は苦笑いしながら、老人の嗜好をかなえていった。

ぱりぱりとかすかな音を立てて、靴下の生地が裂けてゆく。
チクチクと素肌を侵す牙の、痺れるような疼痛に酔いながら、男は軽く歯がみをした。
女房を辱められるのが悔しいのか?
老人が囁いた。
イイエ、と、男はこたえた。
家内の生き血が貴男のお口に合って、嬉しいと思っていますよ。
あんたの血も、なかなかのもんだ。
どうぞ、気の済むままに――
男はしずかにこたえながら、足許に目を落とす。
肌の透ける、なまめかしい光沢を帯びた沓下が、意地汚い唇と牙に、凌辱されてゆくありさまを。
男も目で、愉しみはじめていた――

妻の穿いているストッキングも、こんなふうにあしらっておいでなのですね・・・?
辱められる自分の脚に、妻を凌辱する唇が、想像のなかで重なり合った。
男は股間が勃(た)つのを感じた。
裂かれたブラウスのすき間から、つり紐の切れたブラジャーの胸をチラチラさせながら、帰宅していった妻。
こういう帰り道は危なくて、二次災害もよく起こる村だった。
都会育ちの人妻たちは、女ひでりの吸血鬼のために、夫とともにこの村に招(よ)ばれたのだから。
もっとも、妻に限って帰り道が安全なのも、男はよく心得ている。
老人は村の有力者で、彼が自分のオンリーだと宣言した女に、手を出すものはいなかったから。

妻は毎日、老人と逢っていた。
妻は毎日、夫を裏切りつづけていた。
きちんとした他所いきのスーツを着こなして。
老人のもっとも好む、喪服を身に着けて。
生真面目な妻は、息を詰めて老人の邸のドアを叩き、声を忍ばせて半裸に剥かれた身体をくねらせていた。
貧血で顔色のわるいときにも、妻は出かけていった。
老人の性欲を満たすために。
なるべくなら、主人が出勤した後にしてほしい。そう願ったこともあるけれど。
夫が在宅しているときも、老人の誘いは絶えなかった。
そういうとき、夫はおだやかに妻を送り出し、あの方によろしくと言づけるのを忘れなかった。
そして、妻のあとを尾(つ)けて老人の邸に赴いて、
裂けたブラウスから胸をのぞかせ、伝染を太く走らせたストッキングから脛をのぞかせながら立ち去った後、老人に抱かれた。
先刻犯された妻と同じ色の、黒沓下を履いた脚を、咬ませていった。


あとがき
しばらくぶりに描くと、まとまりのないものになることが多々ありますね。
(^^ゞ

吸血私娼窟~幼馴染の母親~その後

2018年09月03日(Mon) 05:23:00

洋司が噛んだのとおなじチューイングガムは、苦かった。
身づくろいをしている母親、美代子の傍らで。
ツヨシはかたくなな顔つきで、ひたすらガムを噛んでいた。
「洋司のママも、きょうだったよね」
息子の言いぐさに「さあどうだったかしら」と美代子は受け流したけれど、
顔にはありありと「そのとおり」と、書かれてあった。
「あなたも、ここに来る権利あるんだからね」
ニッと笑った母親から目を背けて、ツヨシは黙って母の部屋から出ていった。
「お次のかた――」
息子に聞こえるようにあげた声には、事務的な響きがあった。

きょうは、知ってるひとばかり来るんだから。
夫の腕のなか、美代子は軽く拗ねてみせる。
診療を終えてまっすぐここに来たのだろう。
4時半という時計の針が、美代子にそれを教えてくれている。
「4時終了なんて怠け過ぎじゃない?」
そうたしなめる若い妻に「親父の代からの方針なんだ」と答えたのは、もう十年以上も前のことだった。
「ほかにだれが来たの?」
そう訊く夫に憶えきれないほど来たわよといって、美代子は元同僚の医師の名前をひとりだけ告げた。
「あいつか・・・」
夫は苦い顔をしてすこしのあいだ黙りこくったが、
「でもあいつも、奈穂さんをだれかに奪られたってことだよな?」と、妻に同意を求めた。
「なによそんなこと」
お互い様だっていうことで自分を納得させようとする夫を笑い飛ばしながら、
今日はもう一人予約が入っているの、と、彼をドキリとさせるのも忘れなかった。

それはだれ?
問いを重ねる夫を「業務上のヒ・ミ・ツ♪」と受け流した美代子は、
「次の方~♪」
と、夫を無視して声をあげた。
入って来たのは、美代子を初めて犯した吸血鬼だった。
「美代子は元気なようだね」
部屋の隅に夫がいるのを認めた吸血鬼は、すぐに声をかけてきた。
「そのせつは、どうも・・・」
へどもどとわけのわからないあいさつを返す夫に慇懃なお辞儀を返しながら、吸血鬼はいった。
「初めての日にご主人が客として来てくれるというのは、美代子が愛されている証拠だね」
そういうものなのか?と自問する夫を見抜いて、
「だって気になるだろう?」
「エエもちろん」
「でもあなた、もうお時間よ。これがさいごのお客様――今夜は帰らないから、ツヨシと一緒に晩ごはんを済ませてね」
さいごに投げられた所帯じみたひと言が、かえって夫の胸にどす黒くしみた。

夜道を帰りながら夫は思う。
きっとこれからも、妻のこうした振る舞いを許しつづけてしまうのだろうと。
そして、妻と息子との関係も、このまま許しつづけてしまうのだろうと。
今夜は妻を犯した息子と、家で食事を摂る。
きっとお互いに、美代子の帰宅が遅いことさえ話題にもせずに・・・

さっきはさりげなくそうしたけれど。
あとの客に譲った行為――それは妻をほかの男に公然と譲る行為だったのだと初めて気づくと、
夫は独り苦笑して、自分が来た道をもう一度、ふり返った。
闇に包まれた道の彼方、艶めかしい夜が更けてゆくのを見届けるように。

吸血私娼窟~幼馴染の母親~

2018年09月03日(Mon) 05:02:53

アラ、洋司くんじゃないの。ひとり?
声をかけられて振り向くと、通りかかった大きな屋敷の玄関のまえで、美代子がニコニコしてたたずんでいた。
美代子は洋司の親友、ツヨシのお母さんだった。
病院の院長先生の奥さんで、ふくよかな色白の美人。
いつもこぎれいな格好をしていて、洋司はこの親友の母親にひそかに憧れを抱いていた。
もちろんそんなこと、ツヨシにはおくびにも出さなかったけれど。

でも、どうしてこんなところにいるんだろう?
ツヨシの家はここからはだいぶ、離れているはずだ。
変な顔をしている洋司に気がつくと、美代子はいった。
「小母さんね、ここに遊びに来ているの。洋司くんも寄っていかない?」
そういわれて、洋司はとっさにしり込みをした。
見あげると、色付きのガラス窓が周囲の住宅街とは不釣り合いにお洒落で、建物のたたずまいも不自然に洗練されていた。
得体の知れない妖しい雰囲気を、洋司は直感的に感じていた。
「ああ、ここね・・・」
ツヨシのお母さんはちょっと苦笑いをした。
大人の秘密を覗いてしまったような・・・どこかただれた匂いが、彼女の笑みから感じ取られた。
いつも優雅ですこし世間ばなれした美代子小母さんがこんな表情をするのを、洋司は初めて見た。

「知ってるわよね?ここ、私娼窟って呼ばれているのよ。
 あなたはまだ、知らなくても良いか。
 大人の男の人と女の人とが、いけないことをする場所なの。
 でも洋司くんだったらいいわ。
 あなたも、咬まれちゃったんでしょう?」
耳もとに口を寄せて囁く美代子のひそひそ声が、柔らかな呼気となって洋司の耳たぶをくすぐった。
洋司は思わず美代子を見あげた。
美代子の首すじには赤い斑点がふたつ、綺麗に並んでいる。
それは、つい数日前、洋司がつけられたのとおなじものだった。
学校帰りが遅くなった夜8時ころ、洋司は一陣の黒いつむじ風のようなものに巻かれた。
目まいを覚えてその場に尻もちを突くと、つむじ風は人影となって、洋司の首すじを咬んでいた。
うなじに突き刺さる尖った異物が柔らかな皮膚を破り、どろりとほとび出た血潮を吸い取るのを感じたときにはもう、身体じゅうが痺れていた。
30分後。
洋司はふらふらと起ちあがり、家に戻った。
出迎えた洋司の母親は、息子が連れてきた黒い影をけげんそうに見つめた。
一時間後、洋司の家族は全員、生き血を吸い取られていた。

美代子にも、そんなひと刻が訪れたというのだろうか?
くったくなげに笑う白い顔を見つめる洋司の視線に、熱がこもった。
――できれば美代子小母さんのことは、ぼくが咬みたかった。
自分の胸の裡にわいた感情に、逆らうことはできなかった。
目のまえの美代子は、いつものようにこ洒落た洋服姿だった。
清楚な白いカーディガンに淡いピンクのブラウス、ひざ丈のスカートは濃紺で、真っ赤なバラがあしらわれていた。
その花柄のスカートのすそから覗く太ももは、肌の透きとおる黒のストッキングになまめかしく映えていた。
洋司は思わず、ゾクッとした。
美代子はそんな洋司の心中を見抜いたかのように、いった。
「いいのよ、ツヨシには内緒にしてね」
洋司を幼いころから知っている美代子は、子供をあやすように洋司の頭を撫でると、私娼窟の洋館へと彼を誘い入れていた。

良い匂いが部屋じゅうに満ちていた。
不自然なくらい強い芳香に、さいしょはとまどったけれど、すぐに慣れた。
「喉渇いて来たんじゃなくて?」
上目づかいの大きな瞳に、大きく頷いて応えていた。
「たまに母さんが吸わせてくれるけど・・・」
「お腹いっぱいは、無理よね」
長いまつ毛の目許に翳りを帯びて、美代子は同情に満ちた視線を注いでくる。
彼女の白い指がブラウスの胸の釦をひとつ、ふたつと、外していって、
自分から押し拡げた胸元には、ドキッとするような黒いブラジャーの一部が覗く。
洋司の目のまえをどす黒い翳が覆って、彼は美代子を引きずり倒していた。

唇を吸いつけた皮膚のしっとり湿った感覚と、
喉を鳴らして呑み込んだ血液のどろりとした艶めかしさが、
すすけだっていた少年の心を充たした。
喉の渇きが収まるだけで、どれほど人は救われるのだろう?
そう思ったときにはもう、洋司のむき出しの脚に、美代子の黒ストッキングの脚が巻きついていた。
薄地のナイロン生地のさらさらとした感触が、洋司を夢中にさせた――
相手が親友の母親であることも忘れて、洋司は美代子とディープ・キッスを交し合った。

――ここはね、大人の男のひとと女のひととが、いけないことをする場所なの。
美代子は確かに、そういった。
これはいけないことなのか?
女のひとのパンツを脱がせたのも初めてだったし、
こんなに息せき切った口許と唇を合わせたのも初めてだった。
まして、いつも股間の奥にわだかまる感じだったあのどろどろとしたものを、女のひとの股ぐらに注ぎ込むなど、想像さえしていなかった。
美代子は幼な児をあやすように、洋司の頭を撫でつづけていた。

「ここに名前を書いたからね、あなたはもう私の馴染み。
月、水、金の3時から5時まではここにいるから、いつでも来て頂戴ね。
あと、家では習いごとをしていることになっているから、そういうことにしといてね。
それから、くれぐれもツヨシには内緒だからね」
別れぎわ美代子さんは、洋司の頭を撫でながら、チューイングガムをくれた。
洋司はぶっきら棒に黙って美代子に背中を向けたが、
それが照れ隠しなのは美代子にまる見えなのだということは、洋司自身にもよくわかっていた。
「もうこんなところへは来ない」
顔でそう答えたつもりだったけれど、きっと明後日にはここに来てしまうのだ。
ツヨシの顔、明日からまともに見れないな。きょうのことはどうやって押し隠そうか・・・
少年らしいずる賢さに満ちてきた胸の裡こそ恥ずべきなのだと思い直して、
まずは自分に正直になることから始めようと、洋司は改めて思い直した。
洋司の母すらが、この私娼窟に三日にいちどは訪れているのを、
家族のだれよりも先に気づいていた。


洋司を送り出すと美代子は、別人のようなしらっとした顔になって、
自室に使った寝室の奥の扉に向かって声を投げた。
「もういいわよ、出ていらっしゃい。洋司くん帰ったから」
狭いクローゼットの扉がおずおずと開かれて、そこから窮屈そうに抜け出してきたのは、
美代子の息子だった。

――ばかね、ママがほかの男のひとに抱かれているところを視たいだなんて。
そんなもの、視るものじゃないのよ、と、美代子は息子を優しく咎めながらも、
――だれに抱かれれば気が済むの?
と、夫にはとても聞かせられない質問を、ツヨシに向かって投げていた。
そして息子がとてもいいにくそうにしながら洋司の名前を告げるのをきくと、
美代子はふふっと笑っていった。
――そうね、パパのお友だちに抱かれちゃうよりは、ツヨシとしてはそのほうがいいのかな。
洋司くんいい大人になりそうだし・・・と言いかけた母親に、
「そんなこと言わないでいいから」
と口を尖らせながら、これが嫉妬というものなのだと、ツヨシは実感していた。
ママが自宅で吸血鬼に襲われて咬まれるのを目にしたとき、
さきに血を吸われてじゅうたんのうえに転がされていたツヨシは、手も足も出なかった。
いつものようにこぎれいに装ったママが、白髪頭の吸血鬼に抱きすくめられて、
細い眉を逆立てながら血を吸われ、おなじじゅうたんのうえに姿勢を崩してゆく光景が忘れられない。
美代子がたおれこんだのは、ツヨシの手の届かないところだった。
そのまま衣装を着崩れさせながら犯されていったママを見て、
ツヨシは半ズボンの奥が窮屈なくらい逆立つのを感じた。
それは親がつけてくれた名前を裏切る感情だと自覚しながらも、
止め処なく湧きあがる歓びを止めることはできなかった。

辱められる母親を視てそんなふうに感じてしまったことを恥じるツヨシを、
「ママが好きな証拠だから、いけないことではない」
とパパはなだめてくれたけれど、
それはパパ自身の自己弁護だということも、わかってしまっていた。
だってパパはだれよりも真っ先に咬まれていて、
ほかならぬその吸血鬼を家に連れてきた人なのだから。
そう、ママやボクの血を吸わせるために――

もっとも、だからといってツヨシはパパのことが嫌いになったわけではもちろんない。
おなじ性癖をもった男として、毎日のようにやって来る吸血鬼がママと密会を遂げるところをのぞき見して愉しんでしまったのはよくないことだとわかっていたけれど、
パパが優しい夫として、だれよりも美しいママのことを紹介したがった気持ちには、深い共感を感じていたから。
ママを堕落させた吸血鬼は移り気な男で、すぐにちがう獲物を見つけるとこんどはそちらのほうに入りびたりになってしまって、
ママは勧められるままに、街はずれの私娼窟に身をうずめた。

そこでいろんな男のひとに抱かれて女を磨くのだとパパは教えてくれたけれど、
最初の客になるのが見ず知らずのいけ好かない親父などであってはならない、と、ツヨシは強く感じていた。
「だれならいいのかな?」
ツヨシの頑是ない態度に、親たちはどこまでも親身に接してくれた。
夫には聞かせることのできないはずの質問をママはしてくれたし、
妻の口から聞きたくない言葉をパパは穏やかに聞き流してくれた。
かなりながいこと考えて、心の奥のもやもやとしたその向こう側に洋司のことを見出して、
ツヨシは初めてときめきを覚えた。
「洋司だったらいい」
小さな声だったが、その声の響きの強さに、親たちは頷き返してくれていた――

「どうだった?洋司くんとママ、もしかしたらつきあっちゃうかもよ」
美代子は息子からちょっと離れたところで、彼の反応を面白そうに窺っている。
ツヨシのなかにいままで以上のどす黒い感情が、ムラムラと湧きあがった。
「あ!なにするのよッ!」
母親が声をあげたときにはもう、ツヨシは美代子をベッドのうえに抑えつけていた。
片脚脱いだ黒のストッキングの脚をばたつかせながら、
美代子は2人目の客を受け容れる覚悟を決めた。
それが息子であってよかったと、不思議な感情で受け止めていた。


あとがき
たまたまひょんなことから、「私娼窟」という言葉に接し、すぐにこの話のおおすじが湧いたのが、土曜日のことでした。
すぐに描けるな・・・と思いながら、描く時間がとれたのがいまごろです。^^;
思った通りに描けた感じがします。

嫁の浮気帰り

2018年08月21日(Tue) 06:59:48

「お早う。瑤子さんまだ帰ってないの?」
リビングに降りてきたぼくを気づかわしそうに見あげる母は、なぜか紋付を着ていました。
「ウン、まだだよ」
ぼくはつとめて平静に、こたえました。
「かかっているのかねぇ・・・」
思わず露骨なことを口にする母を、「静枝」と父がたしなめます。
「だってねぇ・・・落ち着かないじゃないの」
母の気づかいは、却って気づまりでした。
そう。
妻の瑤子は夕べ、ぼくの親友の良太のアプローチを受けて、浮気に出かけたのです。
「瑤子が良いといったら」といって、ぼくが与えたアプローチのチャンスを、
女たらしで有名だった良太は、逃さずモノにしたのです。
ホテルに出かけていった瑤子は、夕べひと晩家には戻りませんでした。

やがて家の玄関がガタガタと音を立てて、瑤子が帰ってきたのがわかりました。
きっかり6時。
良太と約束した通りの時間でした。
ぼくが妻を貸すと約束した刻限ぎりぎりまで、良太は瑤子のことを弄んだのです。

リビングに顔を出した妻は、ぼくと両親の三人が三人とも起きていることに意外そうに目を見開いて、
それから後ろめたそうに視線をそらします。
「やあ、お帰り。お疲れだったね」
父がフォローのつもりでかけた声にも、瑤子はますます身を固くします。
「さあさあ、シャワー浴びてくると良いですよ」
母の言葉ももちろん、逆効果。
「あの・・・疲れていますので・・・寝(やす)ませていただきますね」
しいて浮かべようとした笑みは中途半端に引きつって、すぐに廊下へと取って返していきました。
きっと、シャワーを浴びてそのまままっすぐ寝室に向かうのでしょう。
「疲れているんですって」
小声で耳打ちしてくる母を父は目でたしなめました。
「ちょっと・・・わたしたちは出かけてくるから」
場を取り繕うようにそういうと、父は母を連れてそそくさと、さっき瑤子が帰って来たばかりの玄関を出ていきました。

遠くからシャワーの音が聞こえました。
シャワーの音が終わると、脱衣所で身づくろいをする気配がして、やがて階段をあがっていきました。
リビングから覗く廊下に一瞬映った瑤子の姿――驚いたことに瑤子は、夕べでかけて行ったときのスーツを着けていました。
うっかり着替えの用意を忘れてシャワーを浴びてしまった・・・と後で聞きましたが、それくらいうろたえていたのでしょう。
わたしは黙って、瑤子のあとを追って夫婦の寝室に入りました。
鍵を閉めるスキを与えずに。

わたしと向き合った瑤子は、洗い髪を波打たせ、白い顔をしていましたが、
わたしが近寄りキスをすると、恐る恐る応じてきました。
いままでの積極的な瑤子にはみられない振る舞いでした。
良太と2人きりの部屋でも、こんなふうにキスに応じたのか――
その場の空気を想像すると、ぼくは欲情を感じて、瑤子をスーツ姿のまま押し倒していったのです。
「良太さんも・・・こうだった」
瑤子の囁きは、良太がキリッとしたスーツ姿のまま弄んだことを告げていました。
ぼくは、その囁きを封じるように瑤子の唇をキスでふさぎ、
夫婦の刻は、いままでになく熱っぽく、過ぎていきました。

お昼近くになって、リビングに降りてゆくと、ちょうど両親が帰ってきました。
わたしたちに気を使う最善の方法は家からいなくなることだ――と決めていて、夫婦で出かけたはよいものの、
行き先に困ってしまい、けっきょくホテルの喫茶室でお茶をして帰って来たというのです。
「夕べのことは忘れさせてやりましたから、もうだいじょうぶ」
ぼくはわざと明るい声で、両親にそう告げました。
「忘れさせたといってもねえ・・・」
母がにこやかにぼくと瑤子とを等分に見比べて言いました。
「瑤子さん、すぐにまた思い出しちゃうわよ」
ホホホ・・・と笑い声を残して台所に向かう母を追って、
「お昼私が作りますから」
と、いつもの主婦の顔に戻った瑤子も台所に向かいます。

残された男2人は、苦笑を交し合うしかありませんでした。
「思い出しちゃうだろうね」
父が気の毒そうにぼくの顔を観ました。
「きっと、そうでしょうね」
ぼくも正直に応えました。
良太のいままでの所行を知っている以上、公平に見てそう観念するしかありませんでした。
妹のときも、兄嫁のときも、良太が飽きるまで二人の関係は続いたからです。
捨てる権利はもっぱら、良太のほうだけにあったのです。
「でも、気持ちよく送り出してやりますよ」
ぼくは胸を張ってこたえました。
良太が手を出すのはいい女ばかり・・・その好みのうちに瑤子が含まれていたことが、
瑤子を弄ばれたのとは別に、なぜかくすぐったいほど嬉しかったのです。

父は穏やかにほほ笑みながら、いいました。
「女はいちど覚えた男の味は、忘れないものだよ――母さんだって、そうだったんだから」


あとがき
幼なじみの悪友に妻を抱かれたあくる朝。
家族仲良く不器用に気づかい合いながら、嫁の朝帰りを出迎える――
あり得ない風景ですが、ちょっと描いてみたくなりました。^^

乳色の肌に、網タイツ。

2018年08月17日(Fri) 04:00:31

乳色の肌、栗色の巻き毛、太い眉に大きな瞳。
まるでハーフのような彼女は、体格も良い。
ぼくの若妻、23歳のメイは、デパートに勤めている。

勤め帰りにどこかのレストランで食事をして帰ろうと待ち合わせ、合流したまさにそのとき。
ふら~っと現れた、いびつな黒い翳。
あーっ、なんてことだ・・・
目のまえでにやにやとほくそ笑んでいるのは、ぼくの馴染みの吸血鬼。

ひと月前に初めて襲われて、貧血で家に戻ったぼくを、
メイは心配そうに介抱してくれた。
吸血鬼と共存するこの街では、決して珍しくはないアクシデント。
傷口の血を拭き取りながら、メイはいった。
「だいじょうぶ?でも、これからもきっと襲われるよ。きつかったら、あたしもいっしょに吸われてあげるから」
冗談じゃない。
ぼくは強くかぶりを振った。
人妻を襲うとき、やつらは必ず犯すのだから。

「Hai、セイタ。この子はユゥのワイフかね?可愛いナイスバディだね」
ああ、なんてよけいなことを・・・
目を合わせずにしいて無視しようとしたぼくの意図をまるきり無視して、
やつはしゃあしゃあと、ぼくたち夫婦の間に割り込んできた。
How do you do?
How do you do?
好色なしわがれ声と若い女の張りのある声が、折り重なるように同じ言葉を発する。
やつはほんとうに、英語圏の人間なのか。
ドラキュラというのはてっきり、ドイツ語だとばかり思い込んでいた。(これまた間違い)
なんて素晴らしい、輝くような肌をしているね。いちどユゥのことを噛んでみたいね
――と、やつは得意満面。
セイタの血だけじゃ足りないときなら、私相手するわ
――と、メイはちょっぴり気づかわしげ。
そんなに眉を寄せて、シンコクそうな顔をしないで。
やつは女の子の困った顔つきが、大好物なんだから!

やつがぼくにすり寄って来るときは、100%間違いなく喉が渇いているときだった。
所かまわず人の首すじに食らいつくのがつねなのに、やつはいつになく遠慮をした。
「どこか近場の公園に行こう。ユゥのワイフに恥を掻かせたくないからね」
そして、オレンジ色のミニスカートから覗く、網タイツを穿いたメイのむっちりとした太ももに、もの欲しげな視線をからみつけていった。

十分後。
貧血を起こしたぼくは、公園のベンチに持たれて、ぐったりとなってぶっ倒れていた。
視界の彼方では、首すじを咬まれたメイが、
ちょっと切なげに口を半開きにして、やつのしつような吸血に耐えている。
のしかかってくる男を前にぺたんと尻もちを突き、傾きかけた上半身をかろうじて両腕で支えていたが、
やがてくたりと力を抜いて、芝生のうえに倒れ込んだ。
地面に投げ出された脚を包んだ網タイツは、ところどころ破れて、吸い残された血を滲ませている。

冒されてゆく乳色の肌に、ぼくは不覚にも欲情していた。
最愛の妻をこれから犯されてしまうというのに、ズボンのなかに隠した股間を熱くしていた。
「それでいい、自然な感情だ」
やつはぼくの恥ずべき衝動を肯定すると、ズボンの上に掌を置いて、ギュッと握りしめる。
それからふたたび、夢見心地になってしまったメイに取りついて、豊かな胸もとに咬みつくと、
夫婦のベッドのうえで洩らすあの悩ましい吐息を勝ち取っていた。
結び合わされる唇と唇。
せめぎ合う吐息と吐息。
突っ張る腕。立膝をする網タイツの脚。
むき出しの二の腕にも、網タイツのふくらはぎにも、身体のこわばりを映してしなやかな筋肉が盛りあがる。
やつはメイの発育のよい身体を、思う存分、愉しんでいった――

2人で公園を出るとき。
メイはさすがにべそを掻いていた。
すがって来る身体がひたすらいとおしくて、ギュッと力を込めて、横抱きに抱きしめていた。
豊かな肉づきが確かな手ごたえで、応えてきた。
「家に戻ったら、やり直そうね」
メイの言葉に、ぼくは無言で肯きかえす。
守ってやれなかった後ろめたさと、密かに愉しんでしまった後ろめたさ。
守ることのできなかった申し訳なさと、密かに愉しんでしまった申し訳なさ。
お互いの葛藤は、沈黙のうちに処理することにした。

きっとこのあと、いつもより濃密な夫婦の交わりで、ぼくたちはすべてを忘れようとする。
きっとこのあとも、メイは襲われつづけ、ぼくは愉しみつづけてしまうだろうけど。
日本人の両親を持つメイは、ルックスのとおりの混血だった。
実の父親は吸血鬼だったという。
血が血を呼んだのね、Sorry,Seita.
照れ隠しに発した英語の発音は、やけに正確だった。


あとがき
今夜のヒロインは、ちょっと異色な容貌の持ち主ですね。^^
彼女の日本人離れした容姿と立派な体格とは、なぜかありありと想像することができました。^^

夜明けの路上で獣に出遭ったら

2018年08月14日(Tue) 06:46:15

その吸血鬼は、かなり兇暴なやつだった。
道行く女性を見境なく襲っては生き血を吸い、路上で犯すのがつねだった。
街が吸血鬼に汚染され始めたころのこと、
ようやく吸血鬼どもの判別が、人間のなかでできつつあった。
情のある吸血鬼や、咬まれて半吸血鬼になった者のなかには、
いちどは犠牲者として咬まれながら心を通い合わせるようになった者や、
家族のために忍んで献血を習慣に取り入れる者も出始めていたけれど。
この兇暴な吸血鬼の相手を好んで買って出るものは、さすがにいなかった。

夜明けの路上で、本庄佐恵子(42)はその吸血鬼に追い詰められていた。
若作りの花柄のワンピースに、てかてか光るエナメルのパンプス。
兇暴な吸血鬼の嗜虐心をあおるには、じゅうぶん過ぎるいでたちだった。

袋小路に追い詰められた女は言った。
「こんなおばさんの血なんか吸ったって、美味しくないわよ!!」
投げつけるような罵声だった。
これから凌辱されようとしているのだから、彼女の言動は当然だった。
男はそれでも目の色を変えて、女に取りつこうとした。

手首を取られ、振り放し、
肩をつかまれ、振り放し、
抱きすくめられて、もがいた。

咬もうとして押しつけた唇をかろうじてうなじから引き離そうとしたとき、
のしかかってきた体重を受け止めかねて、
脚がもつれて路上に倒れた。
男は女を抑えつけて、こんどこそ首すじを咬もうとした。
女はとっさに叫んだ。
「けだものの餌食になりたくないっ!!」
男の動きが熄(や)んだ。

男は抑えつけた獲物をまじまじと見つめ、
女は必死のまなざしで睨み返す。
やがて男は抑えつけた腕から力を抜いて、
這いずったまま後ずさりしようとする女を、もうそれ以上追い詰めなかった。

助けを求めて声をあげ走り去る女をしり目に、
男は重い顔をして起ちあがり、去ってゆく。


佐恵子が男とふたたび出遭ったのは、その翌日のことだった。
兇暴な吸血鬼はふたたび女のまえに立ちふさがったが、
瞳の色が暗いのを女は敏感に見て取った。
「どうしたのよ?よほど切羽詰まっているんでしょう?」
女は訝しげに男を視た。
「すこしだけ、解消した」
「どういうことよ」
男は言った――
吸血鬼と共存することを決めた街が、飢えた同族のために作った施設がある。
金に困った女が自分の血を売るための施設。
そこではどんなにがつがつと啖(くら)っても、文句をいうものはいないのだと。
「その人たちだって、怖いはずよ」
男を咎める目線の強さを変えずに、女は言った。
「そうだと思う」
男は言った。
でもそれがわかるのは、われに返ったあとのことなのだ、と。
満たされているときには、人並み程度には行き届く思いやりというものも、
飢えてしまえば見境がなくなる。
吸い取った血潮をあごからしたたり落すとき、時々虚しくなってくるのだ、と。
「あなた、この街に来て間もないの?」
女の問いに、男は素直に肯いていた。

じゃあ、今朝は私が襲われてあげる。
だって、あなたみたいな乱暴な人と通り合わせたほかの女の人がかわいそうだもの。
どうせあなた、私をやり過ごしたところで、きっとまただれかを襲うんでしょう?
それにその施設――知ってるわ。募集かけてもまだあまり人が集まらないって。
うちの主人、市役所なの。
さいごの告白は、小声になっていた。

俺の流儀は心得ているんだな?
好きになさいよ。
声色を陰湿に翳らせる男にむかって、女はうそぶいた。
あんた、やけになったりしてないよな?
余計な心配しないで。
女は薄い唇を噛みしめて男を見あげると、自分から路上に腰を落とし、姿勢を崩していった。

きのうの夜明けと、おなじ体位だった。
でも、きのうは袋小路だったのに、きょうはそこそこ広い道だった。
住宅街の真っただ中。
女は咬まれ、犯された。

まだ薄暗い町並みに人の行き来は少なかったが、まったく途絶えているわけではなかった。
通りかかった新聞配達や早朝勤務のサラリーマン、ごみ捨てに出てきた近所の主婦など、
時折姿を見せるそうした人々は、凌辱される佐恵子を目にしては意図的に視線をそらし、
けれども男どものいくたりかは、歩調を変えずに立ち去るまで、
ふたりの様子から目を離せないでいるものもいた。

男は好んで女の脚からストッキングをむしり取る癖があったが、
息荒く迫って来る男を満足させるため、
女は身に着けているワンピースまで、気前よく引き裂かせていった。

「気が済んだ?」
栗色の髪を振り乱した女が蒼ざめた顔をあげ、男に薄笑いを向けたときにはもう、通学時間帯にかかり始めていて、
路上でくり広げられる痴態に、かなり遠くを歩いていた男子高校生が、目のやり場に困っていた。
市役所勤めだというこの女の亭主もきっと、そろそろ出勤する刻限だろう。
「いいの。あたし浮気してきた帰りだから。悪い奥さんは、罰として兇暴な追い剥ぎに遭ったの」
そういうことにして、と女は言い捨てると、路上から起ちあがった。
裂けたワンピースを繕おうとしたが、無理に押し拡げられた襟首から覗く下着を押し隠しかねていた。
「送る」
男はぶっきら棒にそういうと、女を抱きかかえ、お姫さま抱っこしたまま家の道順を訊いていた。

「ここまでで良いわ。これ以上恥かかさないで」
家の近くまで来ると女は、自分の足で歩くといった。
顔見知りだらけのご近所で、主婦が他の男にお姫さま抱っこでご帰館あそばすわけにはいかなかったから。
男は女をおろすと、女はあとも振り返らずに家の門をくぐった。
ちょうどはち合わせるように、夫らしい中年の男がスーツを着て、玄関のドアを開いた。
派手に裂けたワンピースをまとった妻の凄まじい帰宅姿を、
夫はびっくりりしたような顔をして迎え入れたが、
女がちょっと囁くとこちらを見て、律儀すぎる会釈を送って来た。
「危ないところを助けてもらって、ここまで送ってもらったの」
きっとそんなふうに言い繕ったに違いない。
夫はそれから30分も遅れて出勤していき、
妻は入れ違いに、まだ外にいた男に目配せをして、家のなかへと誘い込んだ。
出勤姿の夫は、すべてを聞かされていたのだろうか?
曲がり角のところで立ち止まり、妻が自宅に吸血鬼を引き入れるところを見届けると、
もういちど、男に対して律儀すぎる会釈を送っていった。


佐恵子が勤めに出るようになったのは、それからすぐのことだった。
勤務先は、夫が担当する吸血鬼保護施設。
血を吸わせてくれる人間にめぐり会えなかった吸血鬼の救済施設であるここには、
数少ない女性が待機していて、来客があるとあてがわれた部屋に客人を案内し、
そこで自分を好きなようにさせるのだった。

だれもが、ガツガツとした客だった。
ふつうの主婦という属性は、ここでは意外なくらい受けが良かった。
待機している女性たちは、夫に内緒で来ているものもいたが、だれもがふつうの主婦だった。
けれども市役所の職員を夫に持った佐恵子は、
「堅い職業のお宅の奥さん」という名目をさらに人気が高く、ご指名が絶えなかった。
「おばさんの血なんか美味しくないでしょう?」
と、さいしょのころからの言いぐさを絶えず口にしていたけれど、
だれもが彼女の熟れた血潮に癒されて、
ついでによそ行きの小ぎれいなスカートの奥のもてなしに満たされて、
良い気分になって施設から出ていくのだった。

あの男も、時折施設に現れた。
「なんだあなた、まだなじみができないの?」
女は男をからかったが、無言で挑みかかって来る男に唇を重ねて応えてやって、
ストッキングを破かれ、ブラウスをはぎ取られていった。
ときには男の気分を引き立てるため、わざわざ路上に出ていって、
衆目のまえ裸身をさらしていった。


女は知っていた。
男は以前のように切羽詰まって来ているわけではなく、自分に逢いに来てくれているのだと。

道行く女性たちが不意打ちに遭うのを予防するために、夫が作った施設。
そこで働く道を択んだのは、おなじ女性の名誉を少しでも守りたかったから。

こんな施設を作った夫への面当てもあったけれど、
夫は快く許してくれて、それまでまるで意に介していなかった妻の健康管理に心を砕くようになっていた。
勤務の最中に差し入れを持ってきたときには折あしく男と真っ最中で、
妻を初めて犯した相手の男っぷりのよさをしたたかに見せつけられる羽目に遭っていたけれど。
特に苦情を言うでもなく、たったひと言「妻をよろしく」と言って立ち去っていった。
そんな夫の態度に、女は伝法にも、ちッと舌打ちをしたけれど。
男は夫の後ろ姿に手を合わせ、拝むように頭を垂れた。

施設が健全にまわり始めると、男は女を身請けするようにして、棲み処のアパートに引き取った。
かねて夫と打ち合わせていたように、女を自分専用の通い妻にするために。
女は、浮気相手と手を切っていた。
詳細はここでは略するが、浮気相手も自分の妻ともども、男に隷属する立場に堕ちていた。
浮気相手の妻は単なる性欲のはけ口としてあしらわれたが、
女は男の本命として長く愛された。
かつて、なん人もの女たちを路上に転がし辱め抜いていった男は、
こうして市役所職員の妻を堕落させたが、
彼女から獲た血潮の暖かさは、逆に男を清めたのかも知れなかった。


あとがき
このお話に登場する施設・登場人物は、すべて架空のものです。

親友の愛妻をゲットした幸運な男のひとり言。

2018年08月06日(Mon) 07:49:55

親友の奥さんに、恋をした。
かわいいというよりは、美人。
上品で落ち着いた物腰に、思わずグッと来た。
母と似ている、と、思った。
そうだ――俺はもしかしたら、母を犯したかったのかもしれない。

旦那である親友とは、もうながいつきあいだった。
書斎の人である親友と、アウトドア派の俺とでは、住んでいる世界が違ったけれど、
それでも仲の良いことに、なんの差し障りもなかった。
むしろ、違うからこそ良かったのかもしれないし、いまでも良いと思っている。

なにも知らない善良な男の妻を寝取るのは、少しばかり心苦しかった。
なん度も想い切ろうと思ったけれど、奥さんを見るたびに想いは募り、もうどうにもならなかった。
俺は本来、女に対して臆病なほうではなかった。(そのへんは親友は正反対だった)
彼が結婚したのに俺がまだ独り身でいるのは、たんにいろんな女を愉しみたかったから。
俺がアウトドア派を自称していることを彼は良く知っているけれど、
どんなふうにアウトドア派なのかまでは、まったく知っていなかった。
それで俺は、この夫婦をドライブへと連れ出した。

奥さんは、空色のブラウスに緑のスカート。
爽やかないでたちだったが、アウトドアにはそぐわない服装だった。
この服を着た彼女を、およそ似つかわしくない草むらの中で泥まみれにする想像で。
俺はちょっとだけ、胸を痛めた。
奥さんを愛しているらしい親友に対しても、胸を痛めた。
それでいながら、奥さんをひと目見たとき後戻りできないと考えた。
ほんとうは、後戻り「できない」ではなく、「しない」に過ぎなかったのだけれども。

惨劇?は、ごく短時間で済んだ。
「俺は奥さんに恋をした。悪いがちょっとだけこらえてくれ」
俺は親友をふり返ると手短かにそういって、みぞおちに一発ぶち込んだ。
ついでに唇が切れる程度のパンチを一発お見舞いして、彼を草むらのなかに沈めた。
つぎに草むらに沈むのは、奥さんの番だった。
あっと叫んだ奥さんは、立派なことに、殴り倒された夫のほうへと駆け寄ろうとした。
けれども俺の魂はそのときにはもう、獣の魂と入れ替わってしまっていた。
手足をばたつかせて暴れる奥さんを抑えつけて、想いを遂げてしまったとき。
親友は恨めしそうに俺を睨んでいたけれど、
不覚にも射精をしてしまった痕が股間にしみ込んでしまっているのを、俺はしっかりと見届けていた。
脅かして黙らせる手は、いくらもあった。
けれども俺は、いちばん口走りそうにない言葉を、親友に向かって口走っていた。
――すまないが、もう少しだけ、目をつぶっていてくれ。
俺は奥さんをもう一度犯し、そのいちぶしじゅうを彼は、手出しもせずに見つめつづけていた。

俺が奥さんを放すと、奥さんは目を伏せて、旦那の後ろに隠れた。
もっともな振る舞いだった。
まだセックスに狎れていない新妻の反応はぎこちなかったけれど、
じゅうぶんに相性が良いらしいことを、お互いの身体で確かめ合ってしまっていた。
でも、それとこれとは別だった。
俺は彼女を、じゅうぶん過ぎるほど、怯えさせてしまったのだから。
――きょうはこれくらいで・・・
妻よりもひと足早く我を取り戻した親友は、俺たちふたりの間に立って、そういった。
お互いを取りなすような穏やかな口調だった。
きっと、そうでも言うしかなかったのだろうけれど。
俺は救われたような気になった。
いつもの趣味で、服を破ってしまった奥さんが、まだ恨めしそうな目で俺を見る。
俺はとっさに、できるだけ彼女をこれ以上傷つけないよう言葉を選んで、ふたりを家の玄関まで送ると約束をした。

だまって車から降りていったふたりの後ろ姿を胸にハンドルを握る俺は、
身体の満足を忘れてしまうほどのかなりの後悔を覚えた。
いままでいろんな女とセックスをした。
そのなかには人妻も、結婚を控えた女もいたけれど、きょうのような後悔はなかった。
訴えられても仕方がないと思った。
けれども最悪のことは回避できるだろうとなんとなく思えたのは、
親友の人となりをよく心得ていたからなのか、
それともたんに俺がしたたか者である証しに過ぎなかったのか。
親友は穏やかだが、決して意気地なしではなかった。
意気地なしではなかったけれど、穏やかに事を収めるすべをよく心得ていた。

親友と奥さんが連れだって、ふたたび俺の前に姿をみせたのは、翌週末のことだった。
来てくれる・・・ということは、月曜の夜の電話で親友から聞かされた。
どちらかというと、受話器の背後に気遣いをするような固い声色に、
車を降りた後の夫婦がどういう修羅場を演じたのだろうか?と悪い想像だけが先に立った。
約束どおり二人が家に来たときには、小躍りするほど嬉しかった。
なにしろ、惚れた女が目のまえにいるのだから。
奥さんはいった。
わたしは主人だけのために生きます。だから、貴男とは結婚できません。

いったいどこまで夫婦で話し合ったのだろうか?
たった一度犯されただけの間柄の男のために、夫と離婚する女はそうはいない。
妻としての務めが果たせなかった・・・とか、そんな想いを抱きそうなくらいに真面目なのだろう。
奥さんの真面目さと、かりそめにも結婚まで考えてくれたこととが、素直に嬉しかった。
俺は真面目な女が好きなのだ。
その真面目な女(ひと)に、俺はこうも言わせてしまった。
――主人も愉しめるように抱いてくれるのなら・・・貴男に抱かれてもいい。
本来は、夫の前でほかの男にそんな科白を吐ける女ではなかったはず。
俺がこの女(ひと)のなにかを、塗り替えてしまったのか。
せめてもの礼儀を示そうと、俺は彼女の手を取って、王子が王女にするように、
手の甲に接吻をした。
彼女は意外なくらい優雅にそれを受けてくれて、小声で「ありがとう」と言ってくれた。

それでもこの女(ひと)が、自分らしさを失くしていないことを、俺は数分以内に思い知る。
「いけません!なにをなさるんです!?」
「あなたは・・・あなたは、無作法ですっ!」
「し・・・失礼なっ!」
奥さんはあくまでも気丈に頑張り、あくまでも女の操を守り抜こうとした。
突っ張る腕をへし折って、
抗ううなじを引き寄せて、
こぎれいなワンピースを引き裂いて、
ストッキングをふしだらにずり降ろして、
俺は親友の目のまえで、その愛妻を犯していった。

激しい身じろぎに衣擦れを身体のあちこちに作りながら、
きちんとセットした髪を振り乱しながら、
歯茎を舌で拭われながら、
たくし上げられたワンピースの奥深くを、辱め抜かれていった――

夫を愉しませるため。
そんなふうに割り切った女は、
「主人に抱かれるつもりで貴男に抱かれる」という思い込みを満面に泛べていたが、
やがて互いの身体の相性の良さを否応なく思い出さされて、
夫の前で自分のほうから、腰を激しく振り始めていた。
――すべてあなたのせいなのよ。
声で言わずとも、迎え入れた膣がそう呻いていた。
――わかっているとも。
俺は激しい射精で、女の非難を塗り消していった。

親友の目が、俺に訴えた。
――わたしの妻も、ほかの女と同じようにあしらうのか?
俺の息遣いが、彼に応えた。
――違うね、本気で惚れたんだ。
親友の目が、また注がれた。
――彼女と結婚したいのか?
俺の息遣いが、また応えた。
――違うね、彼女の意思を尊重して、きみの妻のまま犯しつづけるんだ。
親友の目が、なお追ってきた。
――ぼくたちは、共存できるというのか?
俺の息遣いが、さらに応えた。
――それがきみの望みでもあるんだろう?
親友の目に、歓びの色がよぎった。
――そういうことなら・・・妻を愛し抜いてくれ。夫としてお願いする。
俺の息遣いが、なお荒くなる。
――よろこんで、そうさせてもらうとも。
深く深く沈み込んだ一物を受け止めかねて、俺の下で組み敷かれた女(ひと)が、切なげなうめき声を洩らしていた。


結婚は、しなくちゃダメですよ。私が信用できる娘さんを紹介するから。
あなたみたいな立派なモノをお持ちの殿方が独身でいらしたら、周りの人たちが困りますから。
おすすめの子がいるの。逢ってみない?
そういって奥さんが紹介してくれたのは――奥さんの妹だった。

あたしといっしょで、堅物なの。
だから、さいしょはきちんとお付き合いしてみて。
いきなりドライブに誘って犯したりしたら、ダメよ。
そういうと彼女は、イタズラっぽくフフッと笑う。
結婚しても私のことが忘れられなかったら、いつでもいらしてね。
主人といっしょに、待っていますから――

言葉と振る舞い。

2018年08月06日(Mon) 06:53:22

親友に、妻同伴でドライブに誘われて、
だれもいない草むらのなかで妻の貞操をプレゼントする羽目になったあと。
わたしたちは意外にも、円満な交際をつづけている。

毎週週末になると、わたしたち夫婦は連れだって、彼の許へと訪れる。
その日の彼の気分によって、ドライブになったり屋内でのプレイになったりするけれども、
どちらの場合でも必ず、彼はわたしのまえで妻を襲って、服をびりびりに引き裂いてゆく。
妻は彼のことを罵り、目いっぱい抗い、わたしに助けを求めながらも、
さいごは力づくで抱きすくめられ、犯されてゆく。
「ひどい!なんてことなさるの!?」
「だめ、ダメ、ダメッ!・・・」
「あなた、あなたあっ。助けてぇ・・・っ」

最後のひと言は、ぼくのリクエスト。
「そう言われると昂奮する?」って訊かれ、思わず強く頷いてしまった。
「正直でよろしい」
妻はいつものように、フフッと笑った。

いちどモノにされてしまうと。
妻の態度が少しだけ変わる。
それまではわたしだけの貞淑な妻として振る舞って。
女の操をひたすら守り抜こうと努めるのだが。
股間の一物を突きさされてしまうと、「アアーッ!」とひと声叫んで、そこから先は娼婦になる。
娼婦になりながらも、男を罵ることはやめようとしない。
「なんて無作法な!主人の前なのにッ!」
「貴方、視ないで、視ちゃダメッ!」
「く・・・悔しい・・・悔しいッ!」
悶え、呻き、歯がみをしながらも。
妻の股間は相手を受け容れ、応えはじめている。
強引な上下動に支配されながら、
そのうち自らも積極的に腰を振って。
スカートの奥にくり返し突き入れられる一物を、みずから咥え込んでゆく。
息遣いも荒く、大汗を掻きながら、妻は目の前の夫を裏切って、快楽のるつぼへと引きずり込まれてゆくのだった。

言葉で罵りながら、身体で応える。
妻はふたりの男に、同時に礼儀を尽くそうとしている。

来週の予定。

2018年08月06日(Mon) 06:43:01

さいしょのドライブの後、帰宅そうそう妻はいった。
「来週、行くつもりなんでしょ?」
え・・・?問い返そうとするわたしの機先を制するように、妻はいった。
「貴方も、しっかり愉しんでいたみたいだし」
ズボンのなかで昂り過ぎてしまった痕跡に妻はチラと目をやると、なにも気づかなかった顔をして、
「そういうの、恥ずかしがることないから。あのひと、貴方の親友なんでしょ」
そう言い捨てると、妻はさっと髪をひるがえして、そそくさと浴室に向かった。

男まさりな気性の妻だった。
もしも浴室で1人になってそこで泣いたとしても、涙をシャワーできれいさっぱり洗い流すはず。
そのあとは、なにごとも起こらなかった顔をして、いつものように台所に立つのだろう。


いつもどおりにお互い振る舞った夕食のあと、台所を片づけ終わってリビングに戻って来た妻はいった。
「よけいなことは言いっこなし。彼はきちんとした人だとか、守れなくて済まなかったとか、聞きたくない」
尖った口調と怒り顔とをおさめると、彼女はわたしをまっすぐに見て、またいった。
「来週行くの、気が進まない?気が進む?」
「気が進む」のほうに黙って頷くわたしに、妻はなおもいった。
「男らしくないなー。負けを認めなさい負けを。自分の考えをちゃんと口に出して言ってみて」
わたしはこたえた。

来週末――きみが彼に襲われるところを、もういちど見たい。

妻は一瞬目を丸くし、肩をこわばらせたけれど。
すべてをのみ込むように頷くと、いった。
「それでいいわ。あたしも愉しむから」
お茶淹れるわね・・・そういって妻が、髪を揺らして起ちあがるのといっしょに、わたしもトイレに起った。
股間の昂ぶりが収まらなくて。
重症ね・・・心のなかで妻が、フフッと薄笑いする。
このひと、女の操をなんだと思っているのかしら。
いたってノーマルな妻のことだから、きっとそうも言うだろう。
けれどももっと間違いなく、言われそうな囁きがある。

貴方のそういうところ、結婚するころからなんとなくわかっていたの。