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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

夫の心得。

2017年02月28日(Tue) 06:33:38

この街に棲み着く吸血鬼たちは、寛大な心の持ち主です。
狙った相手の生命を奪うことは、まずありません。

血を吸うために襲った後は、物騒な夜道を、家までエスコートしてくれます。
飲む血の量も、かなり手かげんしているはずです。
もしも奥さんがお勤め帰りの夜道を襲われて、襲った相手に伴われて戻って来たら。
奥さんの着ているブラウスがはだけたり、スカートのすそが乱れたりしているのは見て見ないふりをして。
奥さんの体調が戻ったら、今度は貴男が奥さんを連れて、彼の許に送り迎えをしてあげましょう。

狙った本人をいきなり襲うとは、かぎりません。
吸血鬼が人妻を狙うとき、まず夫のほうにアプローチしてくることもあります。
もしも奥さんに求愛されたなら、
気前よく、誘惑するチャンスを与えてやりましょう。
そして奥さんが相手の魔手に屈したなら、
いさぎよく、二人の仲を認めてやりましょう。
「わたしが家にいないときだけにしなさい」とか、
「わたしが家にいるときは、行き先をいちいち告げずにお出かけなさい」とか、
それだけ伝えれば、じゅうぶんです。

寛大なご主人には、特典が与えられます。
ふたりが仲良くしているところをのぞき見することが許されるのです。
かりにも奥さんが、吸血鬼に生き血を吸い取られるのです。
夫として、気にならないはずはありませんよね?
血を吸われてしまった後、ふたりが自然の摂理に身を任せることに、寛大になりましょう。
見返りに、奥さんがヒロインの淫らな劇場に、ただひとり招待されることが許可されます。
浮気に励む奥さんを覗くのが楽しい――なんて、いちいち言わなくてもだいじょうぶです。
貴男に覗かれているのを感じた奥さんは、いっそう貴男をそそるために、
ふたりの熱い仲を見せつけてくるでしょうから。

奥さんが自分の浮気相手に吸血鬼を選んだときは。
ご家族全員で、献血しましょう。
まだお若いお母さま。
お嫁入り前の妹さん。
年ごろになったお嬢さん。
活きの良い血液を提供できる人たちは、すぐ身近にいるではありませんか。

妻の愛人に、夫である貴男の血を求められたら、気前よく差し出してやりましょう。
その分奥さんの負担が減るし、彼が奥さんを愛する時間も、長続きするのだから。
あなたの奥さんの浮気相手が、男の血には低い関心しか示さないなら、
女の服を着て、応接しましょう。
そうすることで。
襲われる快楽に目ざめてしまった奥さんの気持ちが、いっそう伝わってくるはずだから。

いや、気の毒とも限らない。

2017年02月28日(Tue) 06:17:23

どうしても尾(つ)いていってしまう、妻の密会現場。
わたしの血をしたたかに吸って、ダウンさせたことのあるその吸血鬼は、
夫も黙認する妻の不倫相手。
今夜も喉が渇いたのか、妻のことを呼び寄せて、
ひとしきり血を吸い取ると、逆立てた股間もあらわに、妻を襲う。
二重の意味で襲われる妻は、物陰からのぞき見る夫を意識して、
わざとのように声をあげる。
「あなた・・・あなたぁ・・・ケンイチさんっ・・・許してえ」
自分の名を呼ばれることで最大の昂奮を呼び起こさせると知った妻。
その妻の演技にまんまと引っかかる、愚かな夫。

「ヘンなダンナだと思ってるでしょ?」
上目づかいで愛人を見あげる妻に、吸血鬼はいった。

そうでもないさ。
遠い昔、わしが血を吸われる番だったとき。
目のまえで妻を襲われるのを、やっぱりあんたのご亭主どののように、昂ぶりながら見遂げちまったくらいだからな。

――やつにも、いまのわたしとおなじ番だったことがあるのか。そして、相手を許したのか。
やつの身体に残っているわずかな血は、きっとわたしの血と同じ色をしているのだろう。
ふとそう思ったとき。
首すじに着けられた咬み痕がじわじわと疼き、わたしはある体験をせつじつに求めはじめる。
わたしの血は、やつの体内に吸収されたがっている。
そしてやつもまた――
妻の首すじにもういちど咬みついて、したたかに血を吸い取って気絶させると、
こちらのほうへと性急に、身を近づけてきた。

気の毒なことをした。

2017年02月28日(Tue) 06:07:26

かなりたっぷりと、血を吸ってしまった。
ご主人明日も、仕事なんだろう?
気の毒なことをした。

そういって、主人のことをしきりに気にかけるこの吸血鬼。
あたしを強引に愛人にしてしまってから、三か月後のことだった。

どうしてそんなになるまで吸ったのよ?美味しかったの?
そうじゃないけど、彼が抵抗をやめなかったんだ。ぶん殴られるのが怖くって、ついやりすぎたんだ。
ばかねぇ・・・
どちらの男に対してもそう呟いているあたしは、きっと悪い女。絶対、悪い妻。

彼は薬瓶をひと瓶、夫のために飲ませるようにと置いて行った。
翌朝、あたしに言われるままに薬を飲んだ夫は、けっこう元気を取り戻して、出勤していった。

うちの家の名前に泥を塗るやつを許すことは、とうていできないけれど。
喉が渇き過ぎたら、悪いことをするんだろう?
お前が献血して慰めてやらないと、そういうことになるんだろう?
だったらわたしが留守の時に家に招(よ)ぶか、わたしがいるときには出かけていって、献血すればいいじゃないか。
でもいちいち、わたしに断らなくていいから。
そんなこと――夫として許可するわけにいかないだろう?

まわりくどい寛大さをぶきっちょに示す夫に、あたしは妻としての最大の感謝を示す。
あとからついてきて、のぞき見する夫のまえ、ポルノ女優みたいによがってみせて、
ふたりの熱い関係を見せつけてあげることで。

お互いを気遣い合う、男ふたり。
きっとふたりは、同じような血の持ち主なのだろう。

通い合う村

2017年02月28日(Tue) 05:53:31

ある村では、家長だけが人妻に通う資格を持つという。
そして、その家の長が人妻のもとに通う夜、ほかの者がその家に住む人妻に通うことができるという。

「お宅のお父ちゃん、夕べはうちに来たんだぜ」
幼なじみの健吉にそういわれて、富美也はちょっと照れくさかった。
一家の長が夜だれかのお宅にお邪魔するというのがどういう意味なのか、もちろんよく知っているから。
そして夕べは、一家の長のいない家として、自分の妻がよその男に抱かれた夜だから。
「そっか。うちには伯父貴が遊びに来た」
富美也もさりげなく、健吉にそういった。
「そうか。お互い様みたいだな」
健吉は人ごとのようにそういうと、ひと呼吸おいてから呟いた。
「ああいうのって、つい視ちゃうよな」
「お前も?」
驚いて振り向く富美也の反応は、健吉にとって予想外だったらしい。
けれども見つめる目と目がお互いに対する共感を認め合うと、
ちょっとだけ照れくさそうに、健吉は笑った。
「うちでよかったらいつでもどうぞって、お父ちゃんに伝えといて」
どうやら富美也の父にとって、健吉の若妻はお得意先になっているらしい。
「ウン、わかった」
つとめて明るく返すと、健吉はなおも言った。
「でもさ」
「なに?」
「お前のお父ちゃんのほんとの狙いって、じつは貴和子さんなんじゃない?」
貴和子は、富美也の妻である。

そうかもしれない、と、富美也は思う。
戯れに若い嫁のお尻を触るくらい、ごくふつうの日常のように思っていたけれど。
父の貴和子に対する戯れは、執拗なところがあった。
スカートの奥に手を入れられたことも、二度や三度ではない。
それも、富美也の見ているまえでのことだった。

「今夜、貴和子が健吉のとこに泊まることになったから」
勤めから戻った富美也は、父の聞こえるところで母にそういった。
「おやまあ、急な話だねえ」
母親はなんの疑念も持たない声で、返してくる。
「あちらの冬子さんとは、昔から仲良しだもんねえ」
疑念のない声色は、それでもじゅうぶんに、耳をそばだてる夫の気配を意識していた。
そう――富美也が「開花」したのは、母がまだ若いころ夜這いを受け容れているところを目にしてしまったのがきっかけだった。
時代はくり返すんだな、と、富美也は思った。

案の定お父ちゃんは、夜になるとどこかへと、いそいそと出かけていった。
母は母で、だれかのところに電話をかけている。
久しぶりに、若い衆を呼び込むつもりらしい。
富美也は居場所のなさを感じたが、さりとて父が妻に通う図を見たいとは、さすがに思わない。
健吉はたぶん、夫婦の営みを交わすのだろう。
義父と嫁とが密通する部屋とは、部屋を隔てて。
一見なんでもないはずのひと晩が、富美也にとっては、とてもとても長かった。
あくる朝、晴れ晴れとした顔で、時間差を置いて帰宅した父と妻とを、富美也は腫れぼったい顔で出迎えていた。

以来折々、妻の貴和子は夜健吉の家に出かけるようになった。
そのあとを追うようにして、父もまた、そわそわと家を空けるようになった。
母は母で、昔なじみの若い衆を、家に引き入れるようになっていた。
「あんたも、覗きに行けばいいじゃないか」
母はあっけらかんと、息子に笑いかけてくる。
のどかな土地だ、と、改めて富美也は思う。

そのうちに。案の定。
健吉の家では、男どうしが獲物を取り替え合っていると、聞こえてきた。
もともと父は、健吉の若妻と好い仲だった。
富美也の妻の貴和子が健吉の家にしばしば泊りに行っていることは、もう近所では評判になっていたから、
貴和子と健吉の仲が取りざたされるのも、ごくしぜんな成り行きだった。
健吉はいまでは、手持無沙汰な夜を過ごすことはない。
幼なじみと新妻とが乱れ合う夜は、うぶだった健吉にとって刺激の強すぎる眺めだったが、
父と母から受け継いだ血が、それを歓びに塗り替えていくのに、そう時間はかからなかった。

健吉の父もまだ健在だったから、人妻に通う権利をもたなかった。
けれども、
夫が承知している場合は、自由に人妻と逢って構わない。
そんな便利な不文律も、この村には伝わっているのだった。

義父を迎えるため、貴和子が初めて外泊をした夜。
表むきは、健吉と貴和子が通じ合うのを、貴和子の夫が承知した――そういうことになっていたから。

ひとつ夜。
父は息子の幼なじみの若妻と、息子自身の新妻を代わる代わる抱く。
その家の若い夫は自分の妻が抱かれるのを目の当たりにしながら、自分は幼なじみの新妻に息荒く挑みかかる。
まだなんの権利も得ていないもう一人の若い夫は、けれどももっとも貴重な権利を手にしたかも知れなかった。
妻が時間差でまわされるところを、夜通したんのうする羽目になっていたから。

主婦の日常

2017年02月25日(Sat) 07:48:18

もう、女引退かと思っていたころなのに。
そんな私のことを”女”として遇してくれたのは、主人のお友だちの吸血鬼だった。
とっくに咬まれていた主人にいわれるまま、”進呈”されてしまった私――
セックス経験のあるご婦人を襲うとき、抱かれちゃうということまでは、主人もその時初めて知ったみたい。
んん~~・・・むむっ。
貧血で尻もちをついたままのかっこうで。
心臓の発作でも起こしたのかしら?って心配になるくらい青筋立てて、
それでもスカートの奥をまさぐられてしまっている私のことから目を離せなくなって、
とうとうしまいまで、まんまと見せつけられちゃっていた。

それ以来。
うう~ん。むむっ。
でも相手があいつだったら、まぁ仕方がないか・・・って。
浮気つきの献血訪問は、夫婦のあいだでのお約束になってしまっている。

こんなんで、良いかしら?
玄関に入ってすぐ、よそ行きに装った足許を、靴も脱がずに見せてあげる。
ああ、嬉しいね。あがんなさい。
そういわれて初めて、敷居をまたぐことを許される。
たまに・・・靴の感じが良いからと、庭先に連れていかれて咬まれたことがあるから。
あのときは。
新調したスーツのジャケットの、背中じゅうに枯れ葉がくっついて。
帰りの身づくろいが、たいへんだった。

きょうみたいに、すんなりと家にあげてもらうと。
すぐには咬みついたりせずに、お紅茶タイム。
私が紅茶好きだということは、主人に逆に教えてあげたみたい。
好みの銘柄までちゃんと抑えてくれていて、
私はしばらくのあいだ、素敵な老紳士と知的な会話のティー・タイムを愉しむ特権を与えられる。

ではそろそろ・・・と言い出すタイミングも、このごろはなんとなくだけど、わかってきた。
私はソファから起ちあがり、楚々とした足取りで、隣の日本間に向かう。
最近はいつも、彼の好みに合わせて、ストッキングは黒を穿くようになった。
肌の透けるような、なまめかしい薄い黒――
いやらしいですよね?って、念を押してあげたら。
くすぐったそうにクスッと笑い返してきたっけ。悪いひと。

いちど、法事の帰りに喪服のまま立ち寄ってみたら、すごいことになってしまった。
そのまま夜通しになっちゃって。さすがに心配した主人が迎えに来てくれて。
主人まで血を吸われて、目を回して寝そべってしまった隣で、獣のようにむさぼられてしまった。
かわいそうに、主人はかた無し――でも、自業自得よ。あのひとに私のことを襲わせて、血を吸わせちゃったのはあなただから。

日本間にうつ伏せになろうとしたら。
後ろからとつぜん、羽交い絞めにされていた。
いつの間にそんなものを用意したのか?手にしているのは荒縄だった。
慣れた手つきでするすると、私の身体に回していくと。
小鳥を罠にかけるように、ギュウウッ・・・とつよく、縛り上げられてしまった。
やだ・・・こんな趣味持ってるの?
思わず蓮っ葉な言葉遣いになって、お里が知れてしまった私のことを。
舌なめずりをしながら、眺めまわして。
ウヒヒヒヒッ・・・と、下卑た笑いを口許に含ませて、彼もまたお里の知れる行為に耽りはじめる。

薄い墨色のストッキングを通して。
ぬるぬる・・・ぬるぬると。ねばりつけられる唇と、舌。
私はひたすら、「やめて・・・よして・・・」と、くり返す。
やめてくれるわけなど、むろんない。
私自身、そんなことなど期待してない。
嫌がる女を征服したがる私の愛人のための、リップ・サービスに過ぎないのだ。
いちど主人が同席しているときに、私が「やめて、イヤよ」をくり返したとき。
「妻がいやがっている」と、間に入ってくれたけど。
あれはほんとうに、見当違い。
彼は主人に遠慮して、私を放してくれたけど――
そのあとおわびにこっそりと、主人に黙って彼を家に引き入れて。
ぐるぐる巻きにされた主人のまえ、たっぷり留飲を下げさせてあげたこともあったっけ。
「空気読めなかった罰ですからね」
そう宣告する私を前に、主人は小さくなって、
「降参、降参ですよ・・・」と、情けない声を洩らしながら、
やっぱりさいごまで、目を放さずに。
永年連れ添った妻の情事を、見届けてしまっていた。

ふくらはぎにチクリ、と、牙を突き立てられるとき。
私はえもいわれない解放感を味わう。
ブチブチとかすかな音をたてて、縦に裂け目が走るとき。
足許の薄地のナイロン生地の束縛感がほぐれてゆくのが、むしょうに小気味よかったりするから。
女って、どうしてストッキングなんか穿かなければならないのだろう?
まだ若いころ。
それが、知的な職業婦人のシンボルだったころでさえ、
反骨精神豊かな(単にお転婆なだけだった?)私は、そんなふうに抗議していた。
吸血鬼の奴隷に、すすんで堕ちたいまでは、そんなにまで忌避したストッキングを好んで穿いて、
憎ったらしい愛人のため、見せびらかして愉しませている。
主人も案外、私がストッキング姿を辱められる光景を、愉しんじゃっているみたい。

脚と首すじとに咬みついて。
五十女の生き血をしたたかに吸い取ったこの男は。
いつも目の色をかえて、私に迫る。
「主人が・・・」
「いけません・・・ッ」
たしなめたり叱りつけたりする私のことを、腕づくで抑えつけ、果たしてしまうのが。
彼はとっても、好みらしい。
その昔。
吸血鬼になってすぐのころ、さいしょに血を吸ったのが、しつけに厳しかったお母様だったのが。
このひとの好みを決めたに、違いない。
だから私は、本音も交えて、叱ってやる。罵ってやる。
ちゃんとしたレディを、面白半分に辱めるものじゃないわ!って。

2~3時間は、楽に過ぎる。
主人が家で待ちわびていても。
私は主人に気を使って早く帰ろうとは思わない。
どうしても私のことが心配になったら、そのうちに。
主人のほうから、やって来て。
あの、法事帰りの夜帰れなくなった時みたいに、
見せつけられる愉しみに、目ざめていくに違いないから。
迎えに来た主人が、付き添ってくれるか。
彼が車で送ってくれるか。
どちらにしても、私がひとりで家路をたどることはない。
夫か間男か。
かならず、どちらかのエスコートつき。
車に乗らない主人が迎えに来てくれるときは、
私は裂けたストッキングをはき替えないで、夫と歩く。
この男の女房は吸血鬼に寝取られたのよ・・・って、すれ違うひとに言いふらすため。

人を好きになると、むしょうにものをあげたくなるらしい。
主人が私をあのひとにプレゼントしたみたいに。
私は結婚前の娘と、息子の嫁までプレゼントした。
処女の生き血をあげられるのは、娘だけだったし、
息子にはちょっと、気の毒だったけど、
新婚妻の生き血は、あのひとも十二分に、たんのうしたみたい。
いまでは嫁姑仲良く連れだって、犯される順番をくじ引きして、
後釜になるほうは、先客の済むのを別室で待ち遠しく待って。
先客になるほうは、後釜の済むのを別室であくびをこらえながら待って。
お義母さま、長いんですね。
京子さんも、しつこかったようね。
お互いあけすけな悪口を言い合って、
それぞれの夫の迎えを待って、スッキリした気分で、家に帰る。

大企業に勤めてストレスたっぷりの日常を過ごす息子は、
妻と妹、それに母親までも吸血鬼に寝取られているという、情けない立場のはずなのに。
なぜかそういう立場にいることを、内心悦んでいるようだ。
父子ともども、ヘンタイだ。
親子二代だねって苦笑するヘンな父子は、それでも自分の妻に寛大で。
その寛大な夫を持ったために、私たちは堕ちて、そして愉しんでいる。

喪服フェチ

2017年02月15日(Wed) 08:11:18

わたしの血を吸った男は、喪服フェチだった。
彼は、妻に喪服を着せたいというそれだけのため、その場でわたしの血を吸い尽す。
男の血にはフェチを感じないらしく、ごくごく事務的な、吸いかただった。
ギャーと叫んで倒れたわたしの意識は、その後も継続を強いられた。
お通夜の晩、だれもいなくなったその席で、男は妻に迫って、喪服姿を掻き抱く。
アアーッ!と叫んで倒れ伏した妻は、黒のストッキングをブチブチ咬み破られながら、ふくらはぎまで侵されていった。

その場で犯された妻は、そのまま吸血鬼の愛人に。
墓場送りになったわたしは、吸血鬼に血を吸い尽されたもののつねとして、吸血鬼として生き返る。
吸血鬼になった夫と、夫の血を吸った男の情婦になった妻。
男はわたしに妻を抱かせ、自分もわたしの目の前で、妻を相手に欲望を果たす。

しまったな。よけいなことをした。仲間を増やすのは、どうにも損だ。
男はそう愚痴りながら、わたしの同僚の妻をさらってきた。
同僚の妻は、わたしの法事のためにと、喪服姿でお寺に来ていて・・・それが運の尽きだったのだ。
なにも亭主が死ななくても、喪服を着るのは勝手だろう?
男は同僚の妻の首すじを噛んで、足許にも咬みついた。
苦痛と屈辱に震える女を目のまえに、
「抱いてもいいぞ。本当は、この女のことが気になっていたんだろう?」
男は文字通り、悪魔のささやきを口にする。
「いいのよ、あなた。想いを遂げても――」
吸血鬼の情婦になり切ってしまった妻まで、わたしのことをそそのかす。

思いを遂げたわたしのかたわらで。
ロープをぐるぐる巻きにされた同僚は、見せつけられた凌辱を目の当たりに、恥知らずな射精をくり返してしまっている。
どうやら、わたしも同僚も、隠れた喪服フェチだったらしい。
同好の男三人は、ふたりの人妻を交えて、その後も仲良くつき合いつづけた。

寸止め。

2017年02月12日(Sun) 06:35:35

いいな?寸止め・・・だぞ。
わかってる。もちろん、寸止め、だ。
男ふたりはまるで合言葉のように、寸止めと念を押し合って、
ひとりは部屋を出て、ひとりは部屋に残って、人待ち顔にソファに背中をもたれさせる。
入れ違いのように入って来たのは、この家の主婦。そして、さっき部屋を出ていった男の妻だった。

いけすかない。
男の妻は口を尖らせて男を睨み、
けれども伸びてくる猿臂を避けようともせずに、そのまま抱きすくめられてゆく。
親友の妻の首すじに牙を突き立てたとき。
男は初めて、本性をあらわにした。

あぁ~っ・・・
血を吸い取られてゆく女のか細い声に満足するかのように、
男は女をギュッと、抱きしめる。
この街に出没する吸血鬼は、血を吸った相手は必ず犯すという。
男もその例外では、なかったはず。
吸血鬼になってしまった親友に、「お前の奥さんの血が欲しい」と告白された男は、善意の持ち主だった。
「でも妻は、ほかの男には抱かれたくないと思う」
そんなふうに妻の身を案じる男に、親友は言った。
「約束する。必ず寸止めにするから」
スカートのなかにペ〇スを突っ込むまでは、赦してくれ。
そのまま吐き散らかして、太ももを濡らすまでなら、ガマンしてもらえるだろうか?と。
妻には言い含めておく、と、善意の夫は言った。

目のまえでくり広げられているのは、明らかに愛し合う男女の痴態。
善意の夫は隣室から息をつめて、情事に耽る妻と親友とを見つめつづける。

一時間後。
寸止め、だったよな?
ああもちろん、寸止めだ。
男ふたりは念を押し合うように言葉を交わし、
夫は気絶した妻をお姫様抱っこして、夫婦の寝室に連れ戻る。
我に返った妻は、今夜も強調するのだろう。
エエもちろん、寸止めだったわよ・・・と。

見返り。

2017年01月11日(Wed) 08:06:45

吸血鬼に、妻の血を吸わせることを余儀なくされたとき。
家を訪ねてきた妻の吸血相手は、手土産に現ナマを、携えてきた。
わたしは言った。
「妻に売春をさせる気はない。なにも受け取らないよ」
彼女と同等の見返りなんて、わたしにとってこの世にあるはずがないのだから・・・って。
男は感に堪えたようにわたしを見ると、
「せめて、寝酒だけは受け取ってほしい。苦痛に感じるのなら、少しは気分がまぎれるだろうから」

毒を含んだ甘美な酒は、妻とわたしの頭のなかを、ほんの少しだけすり替えてくれた。
「なによりの見返りだったよ」
妻が初めて襲われて2、3日経って、ふたたび喉をカラカラにして彼がやって来ると、
わたしはそういって彼を快く迎え入れていた。

究極のエロビデオ

2017年01月04日(Wed) 08:04:18

「またこんなの隠し持って!!!」
夫のコレクションのエッチなビデオを手に、佐代子は潔癖に叫ぶ。
傍らでそれを見ていた男は、そっと佐代子に囁いた。
「どんなに気に入らないものでも、ご主人のものを勝手に捨てたりしたらいけませんよ。
私に好い考えがあります」
「アラ・・・どんな?」
夫と同じ男である来訪者の言にあまり期待しない口調で佐代子は言い捨てると、
「お紅茶淹れますね」
といって、席を起った。
ウェーブのかかったセミロングの栗色の髪が、軽くハミングをしながら遠ざかってゆく。
誘われるように、男も席を起った。
ポケットに手を入れてカメラを自分の映る方角に置き、足を速めて若い人妻との距離を縮める。
伸びた両手が背後から、佐代子の両肩を掴まえた。

「エッチなビデオ、全部捨てましたよ」
佐代子の夫は目を充血させて、男からの贈り物のDVDの光芒が支配する画面に見入っている。
「あんたがくれたこちらのほうが、グッと刺激的なので・・・ほかのものでは昂奮できなくなってしまいましたから」
「お気に召して、なによりでした」
「いえいえ、うちのほうこそ」
夫は初めて画面から目を離し、男に真正面からお辞儀をしてみせる。
「妻の生き血がお気に召して、なによりでした」
画面に映っているのは、押し倒されたじゅうたんのうえ、首すじを咬まれながら喘ぐ佐代子の姿。
「あ、ちょっと待って――いいところなんで」
夫はふたたび、DVDの画面に目をくぎ付けにする。
画面のなかの佐代子は、着ていた花柄のワンピースのすそに手を突っ込まれ、しわくちゃにされてたくし上げられていく。
「女の血を吸うときって、いつもこんな感じなんですか」
画面に目を離さず、虚ろな声で夫が呟く。
「エエ。もちろんそうですよ――礼儀としてね」
「そうですよね。あくまで礼儀上・・・ですよね・・・?」
「エエ、あくまで礼儀です」
「じゃあどうぞ。妻が貴男のことを待ってますから」

画面のなかで悶える妻に、夫は昂奮して視線を食い入らせる。
妻は夫のいやらしい趣味に、終止符を打たせることに成功する。
吸血鬼は悩める人妻を征服に成功し、平和裏に欲望を成就させる。
三人が三人とも、おいしい想いをする。
それを、三方一両得と呼んだとか呼ばなかったとか。

襲われる喪服妻

2016年12月06日(Tue) 08:01:53

吸血鬼に血を吸われて、死んでしまったはずなのに。
意識はなぜか、ハッキリと残っている。
それこそが吸血鬼のしわざなのだと気づくのに、長い刻は要らなかった。

お通夜の席で。
わたしを襲った吸血鬼に、妻までもが襲われた。
きっとやつの狙いはさいしょから、妻だったのだ。
夫の仇敵に迫られた妻は、嫌悪に顔を引きつらせ、必死になって身を護ろうと抗ったけれど。
わたしさえ敵わなかった相手を前に、みるみるうちに羽交い絞めにされ、首すじを咬まれてしまう。

アアアーッ!
ほとばしる叫びは弔問客の立ち去った我が家に空しく響き、
彼女はひたすら、夫のかたきの喉の渇きを飽かしめてゆく。
力なくくずおれる喪服姿にのしかかられて、
畳のうえに伸びるなまめかしい黒のストッキングのふくらはぎに舌を這わされて、
悔し気に歯を食いしばりながら、ストッキングを咬み破られ、ふくらはぎを牙で侵されてゆく――

見せつけるつもりなのだ。
意識の残ったわたしのまえで、妻はむざむざと食い散らされて、凌辱を受け容れていった。

三日後。
妻は自分を襲った吸血鬼の家を、喪服姿で訪れて、深々と頭を垂れる。
もはや征服されきってしまった女は、奴隷になり下がるため、やって来たのだ。
わたしのまえと知りながら。
妻は喪服をくしゃくしゃに着崩れさせながら生き血を吸われ、素肌を愉しまれ、そして堕ちてゆく――
主人のよりも、おっきいわあ・・・
そんなあからさまな言葉さえ口にしながら、堕ちてゆく――

すべてを奪い尽されたあと、わたしは生き返らされ、ふたたび一家の主人として我が家に戻る。
妻はわたしの生還に驚喜して、以前にもまして尽くしてくれる。
そんな妻が、妻ではなくなるとき。
わたしが生き返ったあとだというのに喪服を身に着けて、たったひと言、
「行ってまいりますね」
と、三つ指を突く。
週に一度、妻を奴隷として差し出すことで。
わたしは平穏な日常を取り戻していた。

インモラル・バー ~馴染み客の妻たち~

2016年12月04日(Sun) 07:51:00

カウンターで飲んでいるわたしの後ろを、着物姿の女将がススッと通り抜けていく。
なんでもないすれ違い。
けれどもそこには、背中合わせの意味深なやり取りがある。
女将が向かったのは、地下にある奥座敷。
そこで女将は帯をほどき、襟足をくつろげて。
上客たちのまえ、素肌をさらしてみせるのだ。

上客のメンバーのひとりは、会社重役。
そんないかがわしい会合が、夫の行きつけのバーで交わされている。
ある人からそんなことを知らされた重役夫人は、果敢にもその場に乗り込んでいった。
それが重役夫人にとって向こう見ずな行動だったと本人が知ったときにはもう、手遅れだった。
苦笑いを泛べる重役のまえ。
彼の悪友たちはこぞって鼻息荒く夫人に迫っていって、
彼女が永年守り通してきた品行方正な貞操を、むぞうさに分け取りしてしまったのだから。
それがほんとうは、彼女にとって正しい選択だと本人が知ったのは、だいぶあとになってからだった。
以後重役は、夫人同伴でバーを訪れるようになり、
そういう日に限って、バーは繁盛するのだった。

バーテンは気の良い年配男。
女将が地下の奥座敷に消えるのを見送ると、
お客さんは、よろしいのですか?
と、こちらに誘いをかけてくる。
ああ、もうちょっとしてからね。
わたしがあいまいに応えると、バーテンは黙って、卓上の高級酒のお代わりを注いでくれた。

背後の格子戸が、がらりと開いた。
着飾った女が3人、表情を消して、わたしの背後を通り過ぎてゆく。
格子戸を閉めるとき。
あとを尾(つ)けるものがいないかと後ろを振り返ったのは、見知らぬ人妻。
それ以外の二人は、あとも振り返らずに、取り澄ました顔つきで、
バーテンとわたしが向かい合わせになったカウンターのまえを、通り過ぎていく。

ご紹介がまだでしたね。
バーテンは誇らしげな照れ笑いをしながら、わたしに話しかけた。
ひとりめの女は、うちの女房なんです。
ラメの入ったストッキングの脚が、地下に通じる階段に隠れていった。
自分の妻が店の上客たちを相手に、どういう接待をするのか知っているはずなのに。
彼は穏やかな面差しに感情を隠して、淡々と業務をこなしていく。
そう。
わたしは注がれた高級酒を口に含み、それからいった。
ふたりめの女は、俺の家内だ。

バーテンはにっこり笑い、そしていった。
今夜はもう、看板にしましょう。
お客さんもよかったら、地下へ。

彼は馴染みの客の妻を抱き、
わたしはどこのだれとも知れない人妻を抱き、
妻はわたしの悪友たちの誘惑を受ける。
そんな夜もたまには、いいじゃないか・・・?

最低限の愛情

2016年11月23日(Wed) 22:24:52

妻が吸血鬼に襲われた。
生き血をがつがつと飲まれ、荒々しく強姦までされた。
「ひどいことをする」
白目を剥いて横たわる妻をまえに抗議をするわたしに、吸血鬼はいった。
「だが、わしが本気で奥さんに惚れて、奪われるよりはましだろう」
「それはそうだが・・・せめて敬意をもって接してもらうわけにはいくまいか」
「わかった。こんど襲うときには、最低限の愛情をもって接しよう」
食欲と性欲処理と割り切って妻を襲った吸血鬼は、次からは対応を変えていた。
さりげなく妻の通りかかるのを待ち伏せて、礼儀正しく公園に誘った。
妻も目を伏せながらも、従順にお辞儀をし、彼の誘いに従った。
草の褥のうえ、礼装に身を包んだ妻は、
ブラウスをはだけられ、ブラジャーをはぎ取られ、
スカートをたくし上げられ、ストッキングを引き破られて、
髪振り乱しながら、犯されていった。
脱がす手間を惜しんで交接を遂げるため、ひざ小僧の下までずり降ろされた黒のストッキングが、妻が堕落してしまったことを告げていた。

愛情は終生、あなたのもの。
でも熱情は、時々彼のものになるかも。
そんな私を許して――

目を背けながら囁く妻。
きみを護り切れなかったわたしなのに、彼女は切々と、謝罪をくり返す。
彼女を支配する後ろめたさが、彼と遂げる逢瀬でもたらされた悦楽なのだと気づくのに、時間はかからなかった。

11月15日構想。

寝取らせ話。 ~ホストの彼。~

2016年11月08日(Tue) 07:06:04

同性愛にハマってしまいました。
ふたりでいるときのわたしは、女の姿になっています。
勤め先のベテランOLが着ているようなスーツ姿で男に抱かれ、
スカートの奥が粘液でぬらぬらになるくらい、愛し抜かれているんです。
相手はわたしよりずっと年上の、ベテランのホスト。
パトロンの女性にはこと欠かず、収入はわたしよりもはるかに上。
だから衣装代もクリーニング代も、ホテル代も・・・いっさいが彼持ちです。
女にはこと欠かないけど、女になってくれる同性にはこと欠いている。
“両刀使い”の彼の、口癖なのです。

そんな彼が、ある晩わたしに囁きました。
きみの奥さんを征服したい。
わたしは夢中で、頷いていました。
自分のもので彼の気に入るものならなんでも、歓んで彼に捧げたかったのです。

結婚して二十年ちかくになる妻とは、このごろすっかりご無沙汰でした。
あらいざらい話したわたしに、妻は言いました。「いちどだけよ」
そしてある週末に、わたしたち三人は、彼の家で初めての夜を過ごしたのです。
彼はわたしの服を脱がせると、丁寧な手つきでわたしの手首にロープを巻きつけました。
そして、ロープのもう一端を、ベッドから離れた柱に巻きつけたのです。
これで、ベッドのうえで彼が、わたしの妻にどんな狼藉に及んでも、わたしの手は届きません。
そのうえで、彼は妻のことを、自分のものにしていったのです。

開業医の奥様や社長夫人をつぎつぎとモノにしていった彼のことですから、
ただの素人女に過ぎない妻は、あっけなく陥落していきました。
わたしに接するときとおなじ熱烈さで彼は妻との交接をなん度もくり返し、
すっかり妻を手なずけ、飼い慣らしてしまったのです。
「つぎはいつにする?」
「主人の空いている日なら、いつでもいいわ」
ふたりきりのベッドのなか。
たしかに「いちどだけよ」と約束したはずの妻は、夫婦の約束をあっさりと反故にしていました。

服を脱がされた理由は、再び服を身に着けた妻にロープをほどかれたとき、やっと気がつきました。
激しい射精で、足許までしたたかに濡らしてしまっていることに、やっと気がついたのです。

それからは週末ごとに、三人での逢瀬がつづきました。
わが身をホストの情婦にすり替えた妻は、素人めかしくこぎれいなふだん着やよそ行きのスーツに身を包み、
わたしの目の前で服をはぎ取られ、荒々しく犯されていったのです。
四つん這いの恥ずかしいかっこうで、排泄行為のように露骨なセックスに、妻はすっかりイカされてしまったのでした。
妻のつぎは、わたしです。
妻の目のあることもはばからず、女の姿になったわたしは、無我夢中で彼にしがみつき、
さっき犯した妻に接したときと同じだけの熱量を、全身に感じつづけていったのでした。

妻はわたしに黙って、彼に逢うようになりました。
「家庭はこわさない」という約束を彼は守ってくれましたし、
彼女もまた、「ホストの妻になるつもりはない」と言っていました。
まき散らすほどの金を持った人妻を飽きるほど愛人に抱えている男が、
いまは妻との時間を、もっとも大切にしているようでした。
「あちらは、よそ行きのセックスなんだよ」と、彼はよく言います。
「あちらのセックスが高級レストランのフランス料理なら、
 あんたの奥さんは心づくしの手料理なんだ」とも。
素人妻の素人ぶりが、彼にとってはたまらない魅力だったのです。
そしてさいごに、言うのです。
「素人妻ならどこにでもいるけれど、きみの奥さんだからこそ犯したかった」

妻とのいとなみが少しずつ頻度をあげていったのは、
妻が彼の愛人になってからしばらく経った頃からでした。
わたしも彼とおなじように、両刀使いになり果てていたのです。

寝取らせ話。 ~親友の手引きで妻を襲われた夫と、親友の妻を手引きして襲わせた男~

2016年11月07日(Mon) 06:34:15

夫婦ながら血を吸われました。
さいしょに吸われたのが、わたし。
わたしのほうは、一滴残らず吸い尽されちゃったんです。
どうしてか・・・?って、それはあとになってからわかりました。
やつは、家内のほうがお目当てだったんです。
たまたまわたしの血を吸う前の週、家内の姉の血を吸いまして。
それがどうやら、お口に合っちゃったらしい。
それで家内の血も吸うことになった。いい迷惑ですね。(笑)
で、邪魔な旦那には消えてもらう・・・というようなことだったのでしょう。
わたしのほうはあっけなく、チューチューとひと息に吸い取られちゃいました。
ごく事務的にね、あっけなく。それでもうお陀仏。ジ・エンドです。
家内ほうは、わたしのお通夜の晩に、喪服姿で吸われました。
ええ、衣装のほうも、愉しみだったそうです。
家のなかに入るには、あらかじめ自分も招待されなければ入れないという、厄介なルールがあるそうですが。
そこは、わたしの友人が使われました。
坂谷というその男は長年の友人だったのですが。
彼のところも夫婦ながら吸われちゃっていて、弱みを握られていたんですね。
それでおめおめと、自分の奥さんの仇敵に取り持つために、
未亡人になりたての家内のところに手引きをしたというわけですな。
エエわたしも、ひつぎのなかから内証で引き出されまして、見届けさせられる羽目になりました。
自分で引き込めばよかっただろうって?まだそのときには、そんな気分にはなっていなかったのですよ。
そこは、坂谷にやってもらうことにしました。

吸血鬼を前にした家内は、やはり吸血鬼になりたてのわたしの目にも、とても美味しそうに見えましたね。
ヴェール付きの帽子をかぶった頭から、黒のストッキングのつま先まで、満艦飾の喪服姿。
まだ夏の時分でしたから、黒ずくめの洋装の喪服は重苦しく映りましたが、
ストッキングは薄々で、かっちりとした喪服のスカートによく映えました。
坂谷は、吸血鬼氏をよくたしなめてくれましてね。
発色のよい黒ストッキングになまめかしく染まった家内の足許に生唾を呑み込む吸血鬼に、
「奥さんはあんたをそそるためにあれを穿いているんじゃない、ご主人を弔うためなんですよ」
って、言ってくれていましたが。もちろんやつの耳にまともに入るわけはありません。
やつの不確かな記憶力では、坂谷のやつは、
「たっぷりとした肉づきのおみ脚ですね。ストッキングを穿いたまま辱めてあげると良いですよ」
ってそそのかしたことになってるんです。(苦笑)
どうやら、自分のつごうの良いようにしか、記憶しないことにしているみたいですね・・・

エエ、家内はもう、まな板の上のコイでした。
たちまちつかまえられて、首すじをがぶり!です。
立ち尽くしたままチューチュー血を吸い取られていって、その場で貧血を起こしておひざを突いちゃいました。
おひざを突いて姿勢を崩した・・・ということは、やつにいわせると、
残りの血は好きなように愉しんじゃって構わないという意思表示のあらわれだ、というんです。
勝手な話でしょう?
かわいそうに家内は、四つん這いの姿勢のまま、愉しみ尽くされちゃったんです。
黒のストッキングのふくらはぎに、ぞんぶんに舌をふるいつけられて・・・
足許をガードする淡いナイロン生地が、パチパチとかすかな音をたてて咬み破られていったとき、
家内はあまりの情けなさに歯がみをして、声を忍んですすり泣きをしていました。
エエ、わたしのほうはもう、意思を喪失させられてしまっていて・・・
家内のことを護ってやることもできずに、物陰で立ち尽くしているだけでした。

既婚の婦人を相手にやつが思いを遂げるとき、なにをどうするか?はご存知ですよね?
家内も、例外ではありませんでした。
いちど咬まれてしまうともう、やつの意のままにされちゃって。
わたしの写真のまえで、わたしのことを弔うための装いを、こともなげにむしり取られていったのです。
色白の裸体は黒の着衣によく映えるのだ・・・と、身に沁みて知りましたね。あの晩に・・・

それがやつと家内との、なれ初めでした。
ほどなくわたしは蘇生させられ、いちど死んだことさえうやむやになって、
いまでも彼女の亭主として我が家でふんぞり返っています。
もちろん、やつが訪れる夜は、その地位を譲り渡されてしまうのですが・・・
でもそういうときは、無償で譲り渡すことにしています。
奪ったあとは与えるのが、やつのモットーだそうで。
やつのおかげで、わたしは自分の好みの女を公然と誘惑する権利を得ていました。
もちろん最愛の家内をモノにされてしまった身の上としては、埋め合わせには程遠いのですが・・・
まだしも、多少は溜飲が下がるというものです。
あの坂谷も。
家内のことを手引きしたご縁で――「ご縁」というのも妙ですが――
自分の奥さんのことを、吸血鬼として真っ先に餌食にすることを承諾してくれました。
エエ、正直、美味しかったですね。彼の奥さんはまだ若かったし。
彼の視ている前でやらせてもらったのですが。
その時初めて、亭主のまえで女房の生き血を吸い取ることの痛快さを思い知りました。
いまでは・・・やつに家内を襲わせてやってよかったな、と、思っています。



いつもながら強引だなあとは、思ったんです。
なにしろ、ご主人の血を吸い尽しておいて、その血がまだ胃の腑に満ちているはずなのに、
奥さんの喪服姿にそそられた・・・って、言うんですよ。
お前も手伝え、と言われて、いちどはお断りをしたのですが――だって相手は、親友の奥さんでしたから――結局、手引きをさせられるはめになりました。
亭主の血を吸い尽した以上、彼女の血を吸う権利があるっていうんです。
まったく、無茶苦茶な理屈ですよね・・・
もっともうちの場合も、まずわたしが彼に吸われて、それから妻の番でした。
知らないうちに恥をかかせるのは気の毒だから、すじを通してわざわざお前に案内させたのだ・・・と、本人は大きな顔をしていますが。
血を吸われて貧血を起こし、理性を喪わさせられてふらふらになったわたしは、
招待者がいなければお目当ての獲物が住む家に侵入できないという彼のために、
彼を伴って帰宅したのです。
妻はちょうど、よそ行きのスーツ姿でした。
そう、浮気帰りだったんですね・・・いまにして思えば。
玄関から上がり込むなり、やつは妻にむしゃぶりついて、細い首すじに咬みついていったのです。
キャーとひと声悲鳴をあげると、妻は他愛なく、あっけなく、戸惑うわたしの目の前で、チュウチュウと生き血を吸い取られていきました。

妻の身持ちのほどは、いちいち彼が解説してくれました。
「お、お、奥さんほかの男もたっぷり識ってるね?・・・勤め先で二人。ご近所と二人。
なかなかお盛んなようだよ。ま、このルックスなら、モテるよね?
ご主人、どこまで知ってたの?どこまで許してるの?
みんなご主人よりも、だいぶ年上のようだね。・・・
立場を守ってくれる役員さんとかも、いるようだね。・・・
自分の若さを武器に、打算やそろばん勘定で相手を選ぶのは、ちょっと不誠実じゃないかね?・・・
ご主人は生まれの良さと大人しい性格で選んで、相手の男たちは地位とおカネで選んだんだね?・・・
わしもご主人よりはだいぶ年上だし、わしの世界ではそこそこ実力もあるから、愛人の資格ありだね?
勝手なことを言い尽していくうちに、妻は貧血になって、敢え無くその場に昏倒。
あとはもう、吸血鬼のおもちゃです。
舌なめずりをする卑猥な唇を、肌色のストッキングを穿いた脚になすりつけられて、
高価なストッキングに裂け目をいく筋も拡げられながら、咬まれていったのです。
はい、あちらのほうのお愉しみも、とうぜん・・・
わたしは指をくわえて、視ているハメに遭ったのです。

そんな弱みもありましたから、未亡人の喪服姿に目の色を変える彼のために手引きをするくらいは、わけなくやらされてしまったのです。
趣味のわるいことに、彼はあらかじめ親友のことも目を覚まさせておいて、隣室からいちぶしじゅうを見届けさせたりしたものですから、
「やっぱり止しましょう。お気の毒です」
「黒のストッキングは、あなたが咬み破って愉しむために穿いているわけじゃない。ご主人を弔うための装いなんです」
「奥さんにとってあなたは、夫の仇なんですよ。わきまえてください」
思いつく限りの制止をしたのですが、むしろわたしの表現が、彼のことをよけいにそそってしまったようです。
わたしの妻のときと同じように、親友の奥さんもまた、喪服姿のまま他愛なく、彼の餌食になっていったのでした。

今夜は奥さんを、独り占めさせてもらうよ。あんたは・・・坂谷くんのところに泊めてもらうとよい。
坂谷くんの奥さんは、若いぞ。初めて血を吸うにはふさわしい相手だぞ。
おためごかしな彼の言いぐさで、妻の運命も決まりました。
わたしはすべてを諦めて、親友を我が家に誘ったのでした・・・

そこでの惨劇?は、いちいち描くまでもないでしょう。
死んだはずの夫の親友を目のまえに、妻はすべてを察してわたしに言いました。
「きょうはリビングで寝んでください。くれぐれも、こちらのお部屋を覗かないでくださいね」
婦人としての苦情をわたしの胸に突き刺すと、妻は伏し目になってひと言、「どうぞ」というと、
彼のことを夫婦の寝室にいざないました。
「うちの家内も、こんなふうになるのかな」
一瞬夫の顔に戻った親友はそれでも、「悪いがご馳走になるよ」とだけ言い残して、妻と二人、夫婦の寝室に消えました。
それからの懊悩の一夜――わたしはみすみす、妻の浮気相手の一人に、親友を加えてしまったのでした。

エエ、いまではもう、恨みも敵意も貸し借りもありません。
彼が家に帰りはぐれてやってくる夜は、
わたしはひと晩じゅう家の外で煙草をふかすか、リビングのなかをうろうろしながら、妻の肉体を譲る一夜を過ごすのです。


あとがき
しょうしょう、ややこしい設定ですね。
喪服妻を目のまえによだれを垂らす吸血鬼と、その様子を見守るご主人の気持ちを描いてみたいだけだったんですが・・・
(^^ゞ

斡旋。

2016年10月18日(Tue) 07:55:09

わたしは、吸血鬼専用の女の斡旋屋。
手近な女をやつに紹介して血を吸わせ、悩乱するありさまを観て愉しむのが役得。
きょうはだれを、堕とそうか?

向坂くん、ちょっと打ち合わせ室に。
きょうの獲物は、同じ課にいる若いOL・向坂京子。
個室の打ち合わせスペースに呼び出すと、そこには吸血鬼が待ち構えている。
「アッ、あなたは・・・吸血鬼・・・!!」
相手の正体をすぐに察して棒立ちになり、
壁ぎわに追い詰められて悲鳴をあげそうな口許を両手で抑えるスキに、
やつは彼女の足許にかがみ込んで、
肌色のストッキングに縁どられた脚線美を、唇で冒してゆく――
ちゅうっ・・・
口をひん曲げ、白目になって。
向坂クンは、たちまち貧血を起こしその場に倒れ伏す。
「きみ、まだ嫁入り前なのに、いけないお遊びをしているね・・・?」
吸血鬼は彼女の寝顔に悪戯っぽく笑いかけ、ピンクのタイトスカートをまくり上げる。
ぁぁぁぁぁぁ・・・
声にならない声を、半開きになったドアのすき間から窺って、ひたすらたんのうしてしまった。


脇本さんの奥さんですね?
ご主人のことで、折り入ってお話が。個別にお越しくださいませんか?
ひたすら紳士的な丁寧語をあやつって呼び出したのは、同僚の脇本の奥さん。
40代の熟女の血を吸いたい。そんな吸血鬼のねがいをかなえるための処置だった。
脇本さんには、もちろんナイショ。
約束の夜、公園に現れた脇本夫人の目の前を、吸血鬼の黒マントがさえぎった。
「えっ?ええっ!?あなた吸血鬼・・・!?」
両手で口許を抑える脇本夫人に迫ったやつは、彼女の足許にかがみ込んで、
黒のストッキングごし、ふくらはぎに唇を吸いつけて、ヒルのようにしつっこく、ねばりつけてゆく――
ちゅうっ・・・
口許を弛め、白目になって。
脇本夫人はそれでも、傍らの街灯にすがりつづけて、立ったまま血を吸い取られてゆく。
「気の毒だが、エッチの経験のあるご婦人とは、そちらも愉しむことにしているんでね」
貧血を起こして倒れ伏した脇本夫人のスーツ姿に覆いかぶさって、
濃い紫のフレアスカートをたくし上げると、やつはせわしなく、腰を動かしていった。


喉が渇いた。血が欲しい。今夜は熟女がいいな。
血を吸わせる女の心当たりが尽きかけた夜、やつはまたもわたしに、おねだりをくり返す。
ええ、ままよ。仕方がない・・・。
今夜はうちの妻しかいませんが・・・
恐る恐る切り出すと。やつはヌケヌケと、言ったものだ。
「さいしょからそいつが、お目当てだった」
連れて帰った、深夜の自宅。
お客を連れて行くから、ちょっといいかっこして待っていなさい。
そんなわたしの言いぐさに、妻は口を尖らせて、
「なによ、こんな時間にどうしたのよ。着替えるなんてめんどうくさい」
その代わり食べたり飲んだりの用意はいらないから・・・と、なだめすかして納得させる。
それはそうだ。やつの飲み物は他ならぬ、あんたの血なんだからね。
不承不承の顔つきを押し隠して、よそ行きの顔でやつを出迎えた妻は。
玄関先で思わず「きゃー!」
だって、いきなり首すじに咬みつくんだもの・・・
そのままその場でチュウチュウ吸われ、ノックダウン。
お姫様抱っこされて、夫婦の寝室に直行させられてしまった。
肌色のストッキングのふくらはぎに、やつの唇がそれはしっくりと吸いついてゆく。

ああ・・・
やっぱり妻のときが、一番昂奮してしまった。

よそ行きのセックス

2016年09月18日(Sun) 03:38:42

女房を、吸血鬼に寝取られてしまいましてね。

そんな深刻なことを畑中は、こともなげににこやかに告げる。

でも、家庭を壊さないことを条件に、交際を許してやることにしました。
気づいたときにはもう、完全に支配されちゃっていました。
セックスの相性が凄くいい。でも一番愛しているのはあなた。だから、別れたくない・・・
って、言い張るんですよ。
面と向かって「愛している」なんて言われたの、新婚以来じゃないかな。きっと。
それで、彼と逢うときは私が、送り迎えしてやることにしたんです。

いつもね、こぎれいなカッコして、出かけていくんですよ。あいつ。
でも帰りは、みるかげもなくよれよれです。
エエ、だって、相手が吸血鬼でしょ?
血を吸い取られて貧血にはなるし、あっちのほうもしつようならしいんです。
女房のやつ、そこがまたいいとか抜かしやがるから、困ったもんですよ。
よほど、ぞっこんなんでしょうな。
一人で歩いて帰れないから、私が迎えに行かなきゃならないんです。
私にナイショだったころは、彼が家まで送ってくれたらしいんですがね。
吸血鬼がこう、街なかにあふれるようになってからは、やっこさんもお相手が増えたらしくって。
女房の番が終わるとすぐに、べつの女が相手するんです。
ちょうどお互いのつごうが、うまくかみ合ったわけですね。

迎えに行く時はね、部屋のなかのようすを、覗いていいことになってるんです。
よそ行きの服を着てると、気分もひきたつんですかね。
家の布団のうえで義理マンセックスをやるときとは、大ちがいなんです。
私が視てるの知ってるくせに、よけいに燃えやがっていたりして。
でも、それ視て昂奮しちゃう私も私なんですけどね・・・
ともかくね、自分の女房が、まるでAV女優みたいな、よそ行きのセックスをしているんです。
よそ行きの服着てるときは、セックスもよそ行きになるんでしょうかね。
エエ、きょうもこれから、お迎えです。

そういえば、さっきから奥さんの姿をお見かけしませんね。お出かけなんですか?
え、さっき出ていった。行先も言わずに?
奥さん、最近顔色悪くありませんか?
いえね、女房のやつと入れ替わりに来ている女の人って言うのが、なんとなくあなたの奥さんと似てるんですよ。
大きな帽子を目深にかぶって、顔はヴェールで隠してるんで、なんともいえないんですけどね。
女房はそのご婦人とすれ違うたび、言うんですよ。「あの人強敵」って。
どうです?これからごいっしょして、確かめてみませんか?
よけいなお世話でしたら、とりあえず一人で行ってきますけどね。
では・・・のちほどアチラで。^^

悪友の部屋。

2016年08月29日(Mon) 00:09:55

悪友の部屋はいつも、黴(かび)臭いような、精液の匂いに充ちている。
四十過ぎても、まだ独身。そのくせ女にはこと欠かない。
妻子持ちのこちらとしては、うらやましくなるような身分だが。
きょうの悪友は、ただならぬことを口にした

――きょうここに来るの、お宅の奥さんだから。

って。

えっ?えっ?
信じられない。いつからそんなことに??
矢継ぎ早のわたしの問いを、くすぐったそうに受け流しながら。
やつはひと言だけ、応えてくれた。

――でも安心しな。ちゃんと避妊はしてるから。ほら。

たしかに枕元のティッシュの隣に置いてあるのは、数個の避妊具。
一個ではなくて、数個。
あんた、いい奥さんもらったな。
奥さんのときだけは、ほかの女のときよりも多く用意してるんだぜ?
羨ましそうにわたしを見る悪友の視線を、まともに見つめ返すことはできなかった・・・

時ならぬ車のエンジン音に、やつは色めきたつ。
――ほら、ほら。奥方のお出ましだ。さっさと隠れた隠れた。
窓越しに外を見ると、たしかに妻の車。
そして運転席には、ごく見慣れた横顔が、そこにあった。
やつはわたしをせきたてて立たせると、
隣の部屋には覗き穴があって、ここから覗けるようになってるからと、
口早に告げながら、隣室へと促した。

起ちあがりざま、わたしはベッドのうえに手をやって、避妊具一式を取り払う。
――できちゃったらさ、ウチで育てるから。

たいへんなことを口にしてしまったくせに、なぜか声が上ずるのを抑えることができなかった。

あなたも来ない?

2016年08月08日(Mon) 04:43:41

あなたも来ない?血を吸われるのって、楽しいのよ。
ランチの後そんなふうに気軽に声をかけられて。
どうせいつかは吸われるのだから・・・と、ついていってしまったあの日。

そこには男たちがおおぜい待ち構えていて。
よく見ると、自分を入れた女性の数と、同じ頭数だった。
助かるわ。来てくれて。ひとりあぶれちゃうところだったのよ。
私は数合わせで連れてこられたのか?
そんなことを抗議するゆとりは、すでになかった。
女たちはだれもが、血に飢えた吸血鬼たちに自分から組み敷かれていって。
あれよあれよ・・・という間に、自分も畳のうえに抑えつけられていた。
首すじに走る初めての疼痛は、チクリと胸まで届く鋭い痛み。
それは甘美な痛痒さに変わっていって、いつか夢中になって、血潮を舐め尽されていた。

その場で犯されてしまうのは、この街の主婦のあいだでは常識――
その場に居合わせた女たちは皆、夫の同僚の妻たちだった。
お互いさまね。きょうのことはご主人たちには、内緒、ナイショ・・・
さいしょに声をかけてくれた、夫の上司の奥さんは。
まるで呪文みたいに、そんなことを囁きかけてきて。
ほかのひとたちも皆、その奥さんに同調するように。
申し合せたように、頷きあっているのだった。

それからは、娼婦のような日常――
夫を会社に送り出すと、
だれかれと言いだすまでもなく、いつものランチのお店に集まり合っていて。
だれかれと言いだすまでもなく、あの場所に脚を向けていた。

だれもが申し合せたように、小ぎれいな格好をしていて。
だれもが申し合せたように、真新しいストッキングを脚に通していた。
鼻息荒く迫ってくる男たちに、身に着けたよそ行きのブラウスやワンピースをはぎ取られて。
ストッキングを穿いたまま、ふくらはぎや太ももや、もっと上までも――熱い唇を吸いつけられていった。

それが慈善事業でもあるかのように、
だれもが唯々諾々と、むしろすすんで男どもの相手をしてやっていて。
めくるめく輪姦の場に、身をゆだねていった。
まるで不倫ドラマのヒロインになったように、夢見心地になりながら。

夫がそれを知るのは、時間の問題。
けれども、吸血鬼と人とが共存して暮らすこの街では、それはたいした問題ではない。
慣れていないのは、都会育ちの私たちだけ。
夫は戸惑いながらも状況を受け容れてゆき、黙認することを約束してくれる。
それを良いことに私たちは、夫の勤務中に逢引きを遂げる。
娼婦よろしく、小ぎれいな服を身に着けて。

夫たちが顔つき合わせて
打ち合わせをしたり、
書類を作ったり、
取引先に会ったりしている時に。
私たちは夫たちと同じ顔触れで、
ブラウスをはだけられたり、
スカートをたくし上げられたり、
ストッキングを破かれたりするのだった。

あなたも来ない?血を吸われるのって、とっても楽しいのよ。
吸われ過ぎて具合を悪くしたご夫婦の代わり、新たに赴任してきた人の奥さんを。
きょうは私がそういって、楽しいサークルに引きずり込んでゆく。

或子爵家の崩壊

2016年06月21日(Tue) 06:17:22

大きなボストンバックを両手に抱え、敏江は追われるように家を出た。
きのうまでは平穏に暮らしてきた家。
古風で気位の高い姑の、多少厳格な圧制があるにしても、自分が理屈抜きで折れることで、かろうじて家族の平安を支えることができた家。
そんな家を彼女は失うことになる。

他行先で引き留められて遅くなった帰り道を吸血鬼に襲われて、
生き血を吸いとられたばかりか、あまつさえ凌辱まで受けてしまったことが、敏江の生活を一変させた。
舅や姑の怒りをかい、夫さえかばう側には立ってくれなかった。
それどころか、報せを受けた実家までもが、体面を気にするあまり、彼女の里帰りを拒んだのだ。
帰る家とてない、行き先のない旅路に彼女は就くことを余儀なくされた。

見上げれば、鉛色をした空からは無情の雪。
その雪のなかを行き倒れるまて歩み続けるしかないのか。
悲嘆を通り越して感情をなくした彼女は、見送る人のない門出を独りとぼとぼと歩き始めた。

婚家だった家の門が、時おり振り返る視界から消えたとき。
目の前をひっそりとした人影が遮った。
この感覚――思い出した。彼のおかげで妾はすべてを喪ったのだ。
きっと睨んだ視線を軽く受け流して、男は慇懃に会釈した――奥さま、きょうはどちらまでお出かけかな?

お出かけですって?お出かけですって?
みなまで言えずに敏江は不覚にも嗚咽を洩らした――自分の操を劣情のままに奪い、こんにちの非運を招いた男にれんびんをかけられるなど、恥辱の上塗りに過ぎないはずなのに!
しかし男の態度はどこまでも変わらない。
敏江がこうして住み処を喪うことまでもあらかじめ予期していたかのように。
「奥さまがこうなった理由の大半は私にあるようだ。責任をとらせていただこう。ついていらっしゃい。ほかに行くところもないご様子だから」

あてがわれた一室は広々としていて、家具調度まで行き届いていた。
ボストンバックの中身はあたかも予定されていたかのようにすんなりと、それら調度のなかに吸い込まれていった。
滞在費はいっさい、男がめんどうをみてくれるという。
仇敵同然の男の好意など受けるわけにはいかないと言っても、聞き入れてもらえなかった。
男は言った。
「その代わり、奥さまのお情けをいただきたい」
と。
それがなにを意味しているのか、大人の女性ならわからないわけはなかった。
まして一度は「お情け」を受けてしまった身――
男がわざわざ立場を入れ替えて、献血を求める言い回しをしてきたことが、敏江の自尊心をかろうじて救っていた。
敏江は男に、無言の承諾を与えた。
夫に仕えて二年。親どうしの決めた縁組みで、さして愛情豊かとはいえない夫だった。
それでも一生添い遂げる覚悟で敬意を尽くして仕えつづけ、心の支えとしてきたはずだった。
そんな夫さえ、世間体と実母の機嫌を憚って彼女を見放した。
もはやここで生きていくしか、途はないのだ。

吸血鬼は意外なくらい、敏江に敬意をもって接した。
敏江の部屋に現れると手の甲に接吻をし、それからおもむろに首すじを咬んだ。
初めてのときのような荒々しい振る舞いは見せずに、上質のワインを賞玩するようにして敏江の血を嗜んだ。
敏江が貧血を覚え身体をふらつかせると危なくないようにと支えてくれて――それからやおらベッドに押し倒していった。
そして明け方にいたるまで、敏江を愛しつづけるのだった。

身体の調子が思わしくないときには、あえて敏江を酷使しようとはしなかった。
広い邸内には、敏江と同じような女たちが、なん人も囲われているらしい。
当面の欲求はべつのだれかを相手に選ぶことで、満たしているようだった。
むろん嫉妬など感じなかった。
奴隷ではない代わり、妻や愛人にされた実感も乏しかったから。
恐らく自分は、彼の特殊な嗜好を満足させる対価として、制約はあるものの恵まれたくらしぶりという優遇を受ける関係なのだと、敏江は理解した。

外部への連絡は自由だったし、外出を禁じられた覚えもなかった。
けれども敏江はどこにも連絡を取らなかったし、出かけようとも思わなかった。
婚家からばかりか実家からも縁を切られた女が、今更どこに行くというのだろう?

唯一違和感を覚えるのは、すっかり自らの専有物にしてしまったはずの敏江を、彼がいまだに「奥さま」と呼びつづけていることだった。
それが奇妙な背徳感を敏江に覚えさせた。
自分はまだ婚家の真名川子爵家の人間で、子爵夫人のままこの邸に留め置かれ、生き血を弄ばれ貞操を冒されつづけている――そんなあらぬ錯覚に敏江は戸惑い、そして乱れた。
吸血鬼を自室に迎えると、彼から性急にせがまれる献血行為は受け入れてもそのあとに必ず求められる淫らな振る舞いを、拒み通そうとするのがつねだった。
子爵夫人としての誇りもあらわに、凌辱という不名誉からわが身を守ろうとする――飢えた牙と同じくらい容赦なくつき入れられてくる、あのなにもかも忘れて敏江を夢中にさせてしまう淫らな硬い筋肉の棒を、股間の奥ふかくにまで受け入れてしまうまでは・・・

数ヵ月が過ぎ、敏江は意外な人の訪問を受けた。
かつての夫、真名川子爵だった。
引き合わせてくれたのはほかならね吸血鬼自身だった。
敏江のことが忘れられず、両親との縁を切り家を棄ててきたという。
子爵家は弟が嗣ぐことで決着をつけ、再び二人で暮らしたい――と。
いちでは喪った、平穏で常識的な日常の記憶が、敏江の胸を一息に満たした。
やはり妾が心から望んでいたのは、人並みな暮らしだったのだ。
「あなたのことを奥さまといいつづけた訳がわかったかね?」
吸血鬼は微笑んでいた。
血を吸いつづけていればわかる。どちらの世界が似合いなのかと。あんたはやはり、人の世界に生きるべきなのだ・・・

でもー敏江は反芻する。わたし、元どおりには戻りきれない。
吸血鬼は子爵をみた。あんたはどうなのかね?というように。
「ここの執事をさせていただこうと思うのだよ。ほかに仕事ということをしたことがないのでね。なにもかも、一から教わろうと思っている」
敏江は値踏みをするような目でかつての夫を見、そしてゆっくりと頷いた。
「このかたに召されているときだけは、子爵夫人であることを忘れてもよろしいですか?」
「お前はどこにいてもわたしの妻だ。たとえこの方の腕のなかでも・・・」
熱に浮かされたように不徳を語る夫の首すじに、ひっかき傷のような痕を認めた敏恵は、夫の真意を理解できたような気がした。
同じ痕を持つもの同士の連帯が、夫婦のあいだを初めて行き来する。
夫は話しやめなかった。彼は吸血鬼に言った。妻の生き血を吸い操を汚した、仇敵であるはずの男を相手に。
「妻が貴方のお目に留まったことを誇りに思います。
 このひとの操を初めてむしりとった、貴方の男ぶりにも敬意を表します。
 その証しに、わたしの家の名誉を汚す権利を、子爵夫人の貞操もろとも、謹んで進呈いたします。
 貴方がお望みになるのならいつでも、夫婦のしとねを悦んで明け渡すでしょう。」
世間体のすべてを振り落とすことができた夫を、敏江は眩しげに仰ぐ。
すべては決まった。
かつての夫は再び、敏江の夫としてこの邸に住み込み、自分のすべてを支配する男のために奉仕する。
おそらくは。
夫の前で抱かれる日常が、待ち受けているのだろう。
そのときには誠心誠意、汚される子爵夫人を演じるのだ。
そうすることが吸血鬼に歓びをもたらし、おそらくは夫にも・・・べつの歓びを与えるのだと。
敏江は本能で察していた。

数か月後。
子爵家は投手の不行儀により爵位を剥奪された。
どういうルートを通じてか、現当主が吸血鬼と友好関係を結びその夫人を捧げたといううわさが、上流階級の社交界に広まったのだ。
新当主である夫の弟が、婚約者である華族令嬢を伴って邸を訪れたのは、そうしたころだった。
未来の花嫁の純潔な血を捧げるために。
兄嫁の身体的負担を軽減するために。
まことしやかな文句を口にする子爵の弟の首すじにも、夫や敏江が帯びているのと同じ引っ掻き傷が浮かんでいた。
新当主の婚約者はその夜、羞じらいながらも吸血鬼の腕に抱かれていった。
花婿の面前での破瓜の儀式が厳粛に熱っぽく執り行われたのは、いうまでもない。
そして、その一週間後。
あの厳格な姑までもが、夫に伴われて吸血鬼の軍門に降った。
三人の女たちのなかで、夫のまえでの行為をもっともあらわに羞恥したのは、もっとも年配の姑だった。
すでに吸血鬼の情婦となった嫁たちは、羞じらいに満ちた姑の振る舞いを、嬉し気に見守る。
これからは、妾たちの不義密通も、黙認されるのだ――そんな安心感が、ふしだらに堕ちた女たちを満たしていた。

いま、吸血鬼館は表向き、元子爵家として近隣に通っている。
吸血鬼は家を彼らに譲り、自らはその邸の奥まった離れに棲まいながら、表向きは以前と同じ権勢を帯びた貴族の血すじを、陰で支配している。
おそらくはこれがもっとも平穏なありかたなのだと、邸に棲むだれもが自覚していた。

吸血鬼の部屋から辞去すると、敏江は姑と行き会った。
齢がらには不似合いに派手な柄の着物に袖を通した姑は、ふた回りも若く、嫁の目にも映る。
姑はにこやかに言った。
「わたくし、これからお招(よ)ばれなのですよ。貴女も――そうね、近々ご実家と仲直りできるとよろしいわね。
 その気になればいつでも、仲介の労を取らせていただきますからね。
 なにしろいちばん怒っていたわたくしが、貴女とあるじ様との仲を認めているんですもの。
 仲直りできないわけが、ございませんわ。
 貴女のお母様も、一日でもよりお若いうちに、お血を味わっていただけると、よろしいわね・・・」

不味い。

2016年03月30日(Wed) 07:49:06

不味い。
男の放った第一声は、はなはだ無礼だった。

家のなかにさ迷い込んできたその吸血鬼に、
夫婦ながら首すじを咬まれて。
血を抜かれて身じろぎひとつできなくなった、わたしの前。
抑えつけられた首すじに、やつはがぶり!と食いついて。
ひとしきり妻の生き血を吸い取った挙句、そう言ったのだ。

吸血鬼は人妻の血を吸うと、例外なく犯すという。
夫の目のまえで遂げられた屈辱の儀式を、妻は歯噛みして耐えた。


くやしいったらないわっ。もうっ!
あんなにひとの血を吸い取っておいて、「不味い」だなんて!
妻はプンプン怒って、半裸に剥かれた身を起こし、
身づくろいを、というよりもシャワーを浴びに浴室に駆け込んだ。
犯されたことなど、犬に咬まれたほどでもないらしかった。


それから妻の精進が始まった。
エステサロンに通ったり。
スポーツジムに通ったり。
血が美味しくなる・・・と思われるあらゆることに手を出して。
ある晩勤め先から、嬉々として帰宅してきた。

やったぁ~!美味しいって言わせたっ!
飛び跳ねるばかりにしてはしゃいだ妻の首すじには、新たな咬み痕が。
真っ白なブラウスに、バラ色の血をしたたせたまま。
スケスケのパンストを、ブチブチに咬み破られたまま。
でもそんなことは、惜しくもないらしい。
美味しいって言わせたっ!
美味しいって言わせたっ!
はしゃぐ妻の背後には、あのとき妻をモノにした、あの男が。

もう少し、お邪魔をするよ。夜道を歩く奥さんが、あまりに魅力的だったのでね。
こないだのひと言は、謹んで訂正させていただく。
はい、どうぞ。
妻の名誉回復に機嫌を直したわたしは、つい応じてしまっていた。
なにかがおかしい――そう感じながらも。
じゃあごゆっくり。
わたしはそういって、書斎に戻る。
帰宅そうそうの妻のスーツ姿を土間に抑えつけ、のしかかってゆく吸血鬼に、妻を独り占めにさせてあげるため。

吸血鬼の屋敷のまえに佇む妻。 娘の身代わり(夫目線編)

2015年12月29日(Tue) 13:32:50

逃げるだけの理性のあるものは、街から逃げた。
逃げることのできないものだけが、あとに残った。
あとに残ったものは、街を支配した吸血鬼たちに、つぎつぎと血を吸い取られていった・・・


その男は、忍田という名前でした。
勤め帰りの夜、とつぜん前に立ちふさがって。
「忍田といいます」
とだけ名乗ると、すぐにすれ違って・・・振り返るともう、姿はありませんでした。
口許についた真っ赤な血のりだけが、記憶に残りました。
家に戻ると、咬まれたばかりの娘が、妻に介抱されていました。
真っ白なハイソックスに、赤黒い斑点が散っていて・・・
男の口許に光る血のりと、すぐに符合しました。

「あなた、優香についていらして下さいな。せめて当校の時だけでも」
妻の希(ねが)いは、残酷なものでした。
血を吸われる習慣を持ってしまった娘のあとを尾(つ)けていって、
近くの公園で首すじやふくらはぎを咬まれるのを見届ける日常。
娘が貧血に耐えて、無事登校するのを見届けてから、わたしは通勤の道に戻るのでした。
あれ以来。
娘が真っ白なハイソックスを履くことはなくなりました。
首すじはもちろん、好んで脚にも咬みつく吸血鬼。
紺のハイソックスにガードされたふくらはぎは、
その発育の良い脚線をなんども侵されて・・・
そんな光景を、さいしょは週一、その後は二日にいちどくらいのペースで見せつけられたわたし。
いつか、不思議な昂ぶりに息をつめて、様子を窺っている自分に気づいていました。
娘は慈善事業のような気分で、うら若い生き血をサーヴィスしているのだ。
時にはほほ笑みさえ泛べながら紺のハイソックスのふくらはぎを咬ませてゆく娘を遠目に見やりながら、ことの真相をかぎ分けてしまっていたのです。

「代わりに、わたしの血を吸ってくれ」
忍田にそう願い出たのは、娘が家を出る間際、貧血を起こしてその場にへたり込んだ日の朝でした。
ところも同じその公園で。
男はわたしの首すじを咬んで、すこしだけ血を吸いました。
けれども男は言いました。
「悪いが、どうしても男の血は受けつけないのだ」と。
そしてもうひと言、わたしに囁いたのです。

あんたの奥さんに、そう伝えてくれ・・・

軽くひと咬み、そしてほんのわずかな血。
それを許してしまったことが、わたしの心の内部を、裏腹に変えてしまいました。

ああ、そう・・・
わたしは虚ろに呟くと、振り向いた視線のかなたに、もう男はいませんでした。
近くの公衆電話から。
わたしはなぜかドキドキしながら、家に電話をしました。
「あなた・・・?」
切迫した妻の声が、なぜか快く耳に響きます。
追い詰めた獲物の息遣い。
どうしてそんなことを、思ってしまったのでしょう?
けれどもわたしは、口を開きました。
自分が従属を誓った獣に、妻の生き血をあてがうために。
「やっぱり、きみが逢ってくれ。あちらのご希望なんだ」

夕刻――
わたしは忍田の屋敷のすぐ前にいました。
ご丁寧にも、勤務先に電話がかかってきて。
(娘から聞いたのでしょうか・・・)
教えてくれたのです。
ご厚意に甘えてご馳走になるから、念のため教えておきます という前置きで。
わたしは会社を早退し、すべてを心得ているらしい上司も、無届の早退を黙認してくれました。

忍田の背中の向こうに、妻がいました。
以前なら、なにをおいても間に割って入るつもりになった、切迫した情景です。
それが今では。
血に飢えた悪しき友人の目のまえに供えられた、美味しい獲物。
妻の怯えさえ、わたしの狂った網膜には、そんなふうに映っていたのでした。
妻は、怯えきった表情をしていましたが、
娘を護るために一歩も退かない母親の決心が彼女を支えているようでした。
忍田にもそれが伝わったのか、すこしきまり悪げに頭を垂れていました。
今朝、わたしの血を吸うようにと請いを入れたときとおなじ態度でした。

みすぼらしい初老の男の前に、花柄のワンピース姿の妻が、輝いて見えたのは、夕陽のせいばかりではなかったはず。
血に飢えたものと、健康な血潮を身体いっぱいに宿したものとの対比が、妻をなおさら眩く見せたのでしょう。
生き血を吸われる側ではなく。
生き血を吸わせる側に立ってしまったわたしには。
妻の怯えさえもが、鳥肌の立つような快感に思えてしまっていたのです。

忍田は妻に言いました。
娘さんは処女だから、手加減をして愉しませてもらっている。
しかし、大人の女には、手加減はしない。
どういう目に遭うのかわかったうえで来ていなさるのか と。
妻は恐怖にこわばった表情から、かろうじて感情を消しながら、言ったのです。
――主人と相談したうえで、伺いました――

「わかった。来なさい」
忍田は引導を渡すように、妻にそう告げました。
妻の運命は決まってしまったのです。


いちど鎖された扉には、鍵がかかっていませんでした。
――娘さんのときのように見届けたいのなら、勝手に上がってもらって構わない。
忍田は電話口でそうわたしに告げましたが、約束を守ってくれたのでした。
敷居をまたぐときの、わずかな床のきしみさえ気にしながら、わたしは男の屋敷に上がり込みました。

半開きになった扉のまえ。
ここから先は、入ってはいけない
扉は開いていながらも、そう告げているようで・・・わたしはなにもかもが終わるまで、そこで佇みつづけたのです。

ベッドの上に腰かけて、床に伸べたふくらはぎを、ストッキングのうえから舌でいたぶられながら、眉を顰める妻。
男はそんな妻の気配を背中で感じているくせに、くくく・・・うひひ・・・と舌なめずりをくり返しながら、ピチャピチャと露骨な音をたてて、淡いナイロン生地を波立てていました。
ストッキングを穿いた脚をくまなくよだれで濡らしてしまうと、
忍田は妻に見えないように、ふくらはぎのいちばん肉づきのよいあたりに、牙を突き立てていきます。
こちらからはわざと見えるような角度――これから咬むぞ、と、わたしに告げてきたのです。
じわり。
うそ寒い部屋のなかで佇むわたしは、冷たい汗を噴き出していました。
妻が咬まれて、顔をしかめつづけているあいだじゅう・・・

よそ行きの花柄のワンピースを着たまま、バラの花をしわくちゃにさせながら。
ワンピースのすそをお尻が見えるまでたくし上げられて、犯されてゆくありさまを。
足に根が生えたようになったわたしは、一部始終を見届けていたのです。
妻主演のポルノドラマを、ただの男の目線で愉しんでしまいながら・・・


やつは、妻の生き血を気に入ってくれている。
やつは、妻の身体を気に入ってくれている。
やつは、妻のことを愛してくれている。

妻は、戸惑いながらも、やつのことを受け容れてしまった。
妻は、歯噛みしながらも、やつに凌辱を許してしまった。
妻は、心ならずも、やつの奴隷に堕ちてしまった・・・

いろいろな思いが交錯する中、わたしは玄関へと足を向けていました。
むつみ始めたふたりが、気を散らさないように。
やつが妻のことを、独り占めできるように。
成就された一方的な恋情が、深められてゆくために――


あのかたと、お付き合いさせていただきます。
でも、あなたと別れるつもりは、ありません。
あなたの妻として、あのかたに抱かれたいと思います。

わたしよりも二時間もあとになって帰宅した妻は、
謝罪するように無言で三つ指を突いた後、棒読みするような抑揚のない声色でそう告げました。
そして、わたしの返事もまたずに、台所に起っていって・・・いままでと寸分違わぬ日常が、再開されたのです。


週に二、三回、妻は娘と入れ替わりに、忍田に呼び出されて出かけていきます。
よそ行きのスーツやワンピースに装い、きっちりとメイクをキメて、
いつもより数段見映えのする風情で、不倫の宿へと脚を向けるのです。
破かれると知りながら、真新しいストッキングを通した脚で、大またな歩みを進めて――
あれほど嫌がっていた、足許へのいたぶりも。
あれほどためらっていた、首すじからの吸血も。
あれほど忌んでいた、吸い取られた血潮で装いを濡らされる行為までも。
妻ははしゃぎながら、嬉々として受け入れてゆくのです。
わたしに視られていると知りながら、
あえてわたしに見せつけるようにして・・・


恐怖の面差しのまま、初めて男の屋敷のまえに佇んだ妻の影を。
毒蜘蛛の仲間に堕ちたわたしは、体液を吸い尽されてしまえと願っていました。
あのときから――
わたしとわたしの家族とは、崩壊を免れるのと引き換えに、違う彩りに染められていたのでした。

いやらしいです。迷惑です・・・

2015年12月14日(Mon) 02:29:33

いやらしいです。迷惑です・・・
そういいながら。
スーツ姿の妻は、ふくらはぎを咬まれていった。
穿いていた肌色のストッキングを、むざんにびりびりと、破かれながら。

いやらしいです。迷惑です・・・
そういいながら。
ブラウスのえり首のすき間から、妻は首すじを咬まれていった。
赤黒い血潮をぼとぼとと、真っ白なブラウスに散らされながら。

いやらしいです。迷惑です・・・
そういいながら。
妻は素肌を、吸われていった。
はだけられたスーツの合間から、素肌をチラチラ覗かせながら。

いやらしいです。迷惑です・・・
そういいながら。
妻は下着を、はぎ取られていった。
小娘みたいな恥じらいで、頬を桜色にほてらせながら。

こうなることを、本能で予期していたのか。
生き血を吸われる最初から。
妻は恥じらいつづけていた。
ブチリ、ブチリと、ブラジャーの吊りひもを引きちぎられて。
サリサリ、パリリと、ストッキングを引き裂かれて。
はぁはぁ、セイセイ、あははははぁん・・・っ。
切なげな吐息に、媚びをいっぱいにまみれさせながら。
妻はわたしのまえで、堕ちてゆく――

いやらしいです。迷惑ですよ。
困惑の色をわざとらしく滲ませながら。
わたしは吸血鬼に、抗議をしたけれど。
もうふたりとも、聞いてはいない。
ただひたすらに、乱れ合って――
服従を悦んで受け容れる妻に、征服された妻を視て歓ぶ夫――
わたしたちは互いのまえで、堕ちてゆく――

呼び出された妻のつぶやき。 ~吸血接待業。 3~

2015年12月07日(Mon) 08:14:29

そんな怖いこと止めて・・・って、あたしは言ったんですよ。
いくら多重債務があるからって、吸血鬼の相手をするなんて。
でも支払いが明日に迫った数百万円をどうすることもできないで、主人は出かけていきました。
あくる朝支払いを済ませて主人が家に帰ってくると、久しぶりに抱き合いました。
生きてくれていてよかった って。
身体に無理がないよう、依頼が来るのは多くて週に一度。
それでどうにかやっていけるからって。
主人はあたしまでこの商売に身を浸さないで済むようにと、考えてくれているようでした。
あたしで良かったら、いつでも代わりをするからと。
そうあたしが声をかけたとき。
主人は怖ろしいことを、言いました。
セックス経験のある女性の血を吸うときはね、セックスまで強要されちゃうんだよ。
あたしは、主人しか識りませんでした。

そんな主人から電話がかかってきたのは、アルバイト先から。
「アルバイト」というのは、自分の血を吸わせるという、本業よりも収入の多いあの副業のことを口にするときの、夫婦だけにわかる隠語でした。
そろそろ寝ようという刻限でした。
出てこれないか?着替えの服と、ストッキングの穿き替えをもって。
主人の言わんとしていることは、すぐに察しがつきました。
「気が合えば、奥様を紹介頂ける方ならなお可」という、主人を指名した人の条件を思い出しました。
わるい人ではないのだろう。
主人の声色からそう判断したあたしは、よそ行きのスーツに着替え、地味な肌色のストッキングを脚に通して、家を出ました。

主人の前でしたからね。
独りで待ち合わせるよりも、心強かったです。
初めて首すじを咬まれる時も、主人があたしのことを後ろから抱きとめて、介添えしてくれました。
主人の前でしたからね。
二人きりでお逢いするよりも、昂ってしまいました。
すっかり血を抜かれた主人は、犯されてゆくあたしのことを、どうすることもできないでいるようでした。

あなた、視ないで・・・視ないで・・・っ!って、言いながら。
いちど感じてしまうともう、止め処がなかったんです。
あなた、視て・・・視て・・・御覧になって・・・
あなたの奥さん、牝になっちゃうわっ。

それ以来のことでした。
夫婦そろってアルバイトに行く機会がグッと増えたのは。
お相手があの方に、ほとんど限定されていったのは。

協力の風景。

2015年11月27日(Fri) 08:07:12

「奥さんのパンスト脚を、愉しませてくれないか」
村に赴任して初めて打ち解けたその男は、わたしと同じパンストフェチだった。

わたしは嫌がる妻の両肩を抑えつけて、
男はタイトスカートから覗く、肌色のストッキングを着けた妻の脚を、
隅から隅までくまなく、舐めくりまわしていった。

くしゃくしゃによじれてゆくストッキングの脚に、つい昂奮してしまったわたしは、
同じく昂奮をオーバーランさせた男が妻を犯しにかかったのに、
両肩を抑えつけた掌から、力を抜くのを忘れていた。

二度、三度・・・
くり返される吶喊に、いつか妻の身体も、熱っぽく反応していった・・・

共存の風景。

2015年11月27日(Fri) 08:00:53

「セックスは素晴らしいけど、主人のことを愛しています。離婚までする気はありません」
妻はきっぱりとした口調で、自分のうえにのしかかっている男に、そういった。
男は半裸。
妻ははだけられたブラウス姿。
腰から下は、スカートをはぎ取られた下肢がむき出しになっていて、
びりびりに破かれたストッキングだけを、まだ足許にまといつかせていた。

夫の前での強姦は、夫婦ともにこたえたけれど。
わたしよりもはるかに逞しい身体に圧倒された妻は、
いつの間にか激しく腰を振って応えてしまっていたし、
真っ先に風呂上がりのまま縛られたわたしは、
そんな妻の痴態に昂った証拠を、じゅうたんのうえに粘液として吐き出してしまっている。

「そういうわけですから」
妻はわたしと初めて目を合わせ、少しだけ口ごもる。
「わたし、このひとと時々、お逢いしますから」
「ああ、いいよ。ぼくも歓迎するから」
思わず口にしてしまったひと言に、妻は「うれしい」と口にした。

わたしのまえの一対の男女は、再び無言で、熱いまぐわいに戻っていった。

妻の浮気を許した夜。
それは、結婚記念日のつぎに、夫婦のあいだで記憶される夜となった――

和解の風景。

2015年11月27日(Fri) 07:53:45

妻を隣室に引きずり込んだその男は、
ぴたりと鎖されたドアの向こうで、
ひぃひぃ・・・
はぁはぁ・・・
声だけを熱く洩らして。
一時間後素っ裸の姿で、ひとりで部屋から出てきた。

ストッキング破いちまった。弁償するからね。
男はわたしに、札束の入った封筒を渡した。

これで家内に、あんたの家に伺わせるときのスーツを買わせましょう。
わたしはそういうと、さいごの夫の意地を見せたくなった。
一発だけ、あんたのことを殴ってもいいですか?

男はいさぎよく、無言でわたしのまえにスッと立った。
手加減したつもりだったけれど、男はわたしに一発叩かれると、
部屋の隅まで吹っ飛んだ。
だらしなく尻もちをついた男が起ちあがるのに手を貸しながら、
わたしはひと言、「おめでとう」と、いってしまった。
男は悪びれもせず、「ありがとう」と応えた。

部屋からやっと出てきた妻は、スカートだけを着けていて、
自分をモノにした男に向かって、「ふつつかでした」と頭を下げた。
「ごちそうさま。おいしかったですよ」
男はそういうと、妻のお尻をスカートのうえから撫でつけた。
手つきがひどく卑猥だったけれど、わたしは精いっぱいの寛大さを表情にして応えていた。
「お口に合って、なによりでした」

「お茶淹れますね」
むき出しにされたおっぱいを揺らしながら、
打ち解けた男ふたりを背にすると、
妻はいそいそと、台所に立ってゆく。

固めの杯は、妻の淹れた玉露茶だった。



あとがき
コチラのほうがあとから浮かんで、先にかけてしまったのでした。
A^^;
10分くらいで描いたかな?
どこかに似たようなお話が、あるかもしれないですが・・・
^^;

妻と結婚していただけませんか?

2015年11月17日(Tue) 08:02:37

妻と結婚していただけませんか?
青葉さんの申し出は唐突だったが、
置かれた状況を考えると、さほど乱暴なものではないともいえた。
ここは病院の個室。
青葉さんはベッドのうえで、死病を相手に、もうじき決着のついてしまう戦いをつづけていた。

申し出を受けたとき。
奥さんの鵜紀乃さんも同席していた。
思い詰めた大きな瞳が、わたしのことをまっすぐに見つめている。
美人というものは、悲嘆さえも魅力にすり替えてしまうらしい。
看病疲れのやつれさえもが、かえってなまめかしかった。

断ってくれてもいいんですよ。
あなたは信用できる方のようだから申し上げるが、
妻には吸血鬼の愛人がいます。
それは夫のわたしにしか見えないが――
妻と結婚してくださるのなら、彼のことも引き受けていただくことになるのだから。

ほんとうに、よろしいのですか?
思い詰めた大きな瞳は、先刻の病室でと同じくらい、ひたむきにわたしに向けて注がれている。
ここは二人きりのホテルの一室。
ひんやりとした畳の感触が、薄暗い室内のなかで、かえって身体のほてりを伝えてくる。
初婚でいらっしゃるんですよね?
女の口調は念を押すような気づかわしさを漂わせていた。
それはわたしのことを値踏みするとか、
婚前から続いているほかの男との不倫関係を認めてほしいというようなあざとさとかとは、遠いものがあった。
はい、だいじょうぶです。
わたしは彼女の懸念を押しのけるように、自分でもびっくりするほどはっきりとした声で、こたえを返していた。

では・・・
鵜紀乃さんは起ちあがると、ブラウスの胸元に手をやって、ボタンをひとつづつ、はずしてゆく。
それからストッキングを片方脱いで、ショーツをつま先まで滑らせると、丁寧に部屋の隅へと脱ぎ捨てていった。
はずませ合う呼気が、部屋の冷ややかな空気を熱く染めた――

すべてを吐き出して、仰向けに横たわるわたしのかたわらで。
鵜紀乃さんのうえに、影が舞い降りた。
影は鵜紀乃さんを包むように覆いかぶさると、ミイラのように痩せこけた猿臂で、彼女を抱きすくめてゆく。
わたしはどうすることもできなかった。金縛りにあって痺れた身体は、わたしのいうことをきかなかった。
どうすることもできないでいるあいだに、鵜紀乃さんは抱擁を受け入れて、
さっきよりもいっそう熱っぽく、息をはずませ始めた。

はぁ・・・はぁ・・・
ぁう・・・うぅん・・・っ

悩ましい声色にわたしの股間は逆立ち、鎌首をもたげ、畳の上におびただしい粘液をまき散らす。
そのあいだじゅう鵜紀乃さんは、わたしの傍らで乱れ、身に着けたままのスカートの裏側を、わたし以外の男の粘液に染めていった。
影が去ったあと。
しなやかな腕がスッと伸びてきて、鵜紀乃さんはわたしの掌を握りしめた。
わたしも彼女の掌を、ぎゅっと握り返していた。

翌日、ふたりで病室を訪れると。
青葉さんはにこりと笑って、「お似合いですね」とだけ、いった。
少し寂しげな、けれども満足そうな笑みだった。
それからしばらくのあいだ、わたしたちはホテルで密会を続け、その足で鵜紀乃さんの夫の看病に通っていた。
青葉さんは満ち足りた静けさのなかで、永遠に目を瞑った。

鵜紀乃さんとの新婚生活は、幸せそのものだった。
新居の壁のシミが浮き上がるようにして、夜中に彼女の肩をひっそりと抱く影を、
わたしはもう、妨げようとはしなかった。
夫にだけ見える吸血鬼。
そいつは鵜紀乃さんをうっとりとさせ、新調したブラウスを惜しげもなく持ち主の血潮で彩らせてゆき、
わたしの目のまえで、わたしを裏切る淫靡な舞いをくり広げさせてゆく。
そのあいだじゅう。
わたしは股間を逆立てて・・・恥ずかしい熱情を、新居のじゅうたんのうえに吐露していった。
青葉さんもかつては、きっとそんなふうに振る舞っていたのだろう。
重病人の研ぎ澄まされた勘がわたしの本性を見抜き、生前に妻の婚外性交を受け入れてまで、自分のあとがまを確保したのだ。
わたしの妻となった鵜紀乃さんは、満足そうに、淫靡な吐息を吐き散らしながら、
わたしだけに見せる淫蕩な振る舞いを、それは愉し気にくり返していった。


あとがき
重病人の夫の承諾付きで、つぎの夫となる男と性交をくり返す妻。
吸血鬼の愛人がいると知りながら、彼との共存を受け入れて、女を受け入れる夫。
そんなところを描きたかったみたいです。 ^^;

美味しいようなら、それがなにより。

2015年09月09日(Wed) 07:52:46

男の血に目覚めたことなんて、いままでなかったんですがね・・・
彼はそう言いながら、わたしの両肩にしがみついて。
首すじにあてた唇に力を込めて、血を飲み耽ってゆく。

いや、旨い。じつに、旨い。
そんな呟きをうわごとのようにくり返しながら、彼はわたしの肩を放そうとはしなかった。
失血に脳天を痺れさせながら、わたしもうわごとを折り返してゆく。
わたしの血、そんなに美味しいんですか。それはなによりですね・・・
他人事のようにそういってしまうと、いっそ潔い気分になれた。
ほんとうは、家内の生き血がお目当てなんでしょう・・・?
あれほど避けていた話題を、自分のほうから切り出していた。

わたしの血なんかを美味しがってくれる、あなたがいい。
家内の相手は、あなたがいい。
わたしはそういうと、傍らに落ちていた携帯を手に取って、妻のナンバーを指先ではじいていた。
――よそ行きの服に着替えて、待っていなさい。そうそう、ストッキングを穿くのを忘れないように・・・
彼の趣味に合わせて脚に通していた薄々の長靴下は、しゃぶるようにいたぶられてチリチリに咬み破かれていた。


痛ーッ!
首すじに牙を埋め込まれた妻は、
半袖のワンピースの両肩をつかまれたまま、うめき声をあげた。
ワンピースの半袖は、彼の掌の下でくしゃくしゃになっていた。
傾きかけた身を支えようと突っ張っていた、むき出しの二の腕が力を喪って、くたりと折れた。
彼はしんそこ嬉しそうににんまりと笑って、肌色のストッキングを穿いた妻の足許ににじり寄った。
わたしのときよりも、しつように。
妻の穿いている肌色のストッキングはしゃぶるようにいたぶられ、よだれに濡れて、引きずりおろされてゆく。
吸血劇の第二幕は、凌辱――
お手本を見せるために生き血を抜かれた身体は重く、身じろぎひとつできないでいる。
妻を魔手から救い出すどころか、わたしの下半身は、恥ずかしい昂ぶりに染まっていた。
謝罪の一瞥をくれた妻は、わたしのほうから視線をそらし、敗れ堕ちたストッキングを穿いたままの足を、ゆっくりと開いていった・・・

妻の身体、そんなに気に入っていただけましたか。
美味しいようなら、それがなによりですね・・・

結婚式場の控えの間

2015年07月16日(Thu) 07:30:29

ここは、某結婚式場の控えの間。
クリーム色の壁や淡いピンクのじゅうたんは、ほかのフロアと共通のもので、結婚式場らしい華やぎを醸し出してはいるものの、
およそ十畳ばかりの狭い部屋のなかは、テーブルひとつにいすがふたつしつらえてあるだけの、簡素というよりはむしろ殺風景なたたずまい。
そこには一対の男女が、にらみ合うような面相で向き合っていた。
ふたりが夫婦でないのは、間に流れる他人行儀な雰囲気でそれと知れる。
女は真っ赤なスーツに黒のブラウス、足許を染める薄手の黒のストッキングが、肉づきのよいふくらはぎを蒼白く透き通らせていた。
男は漆黒の――時代がかった黒マントまで羽織っている。マントの裏地は、真紅――男が欲する生き血の色だった。

女は妍のある上目づかいで、男を睨み、そして言った。
咬むなら早くしてくださる?主人、私があなたに咬まれていること、まだ知らないんですのよ。
男はククク・・・と、獣じみた嗤いを洩らしただけだった。
けれどもこの化け物にも人間の言葉が通じるのは確かなようで、くぐもるような低くスローモーな声色で、こう言った。
いつも、すまんねぇ。あんたには、迷惑をかける。これでもうひと晩、長生きができるというものだ。
女は毒づいた。
いけすかない。長生きなんかしてもらいたくもない。あんたが長生きしたって、そのぶんこううして迷惑をこうむる女が増えるだけなのよ。
そう言いながらも女は、テーブルの上にお尻を乗せ、片方のいすをハイヒールの脚で自堕落に踏まえていった。
咬むんだったら、早くなさい。あの子のカクテルドレス見たいんだから。
まったくだ――男はほくそ笑んで、女のひざ小僧を抑えると、差しのべられたふくらはぎにかがみ込んでゆく。
ちゅっ。
唾液のはぜるなまなましい音が、狭い空間のなか卑猥に洩れた。
圧しつけられた唇の下。
墨色のストッキングにひとすじ、細い裂け目が白く、ツツーッと伸びた。
ちゅうっ・・・ちゅうっ・・・ちゅうっ・・・
女の脚に咬みついた男は、喉を鳴らして血を吸い取ってゆく。
ストッキングの裂け目はじわじわと拡がって、女の脛の白さを露呈させた。
ったく・・・っ。もう・・・っ。
女は忌々しそうに歯噛みをしながら、自分の足許に加えられる恥辱に憤ってみせた。
ひとしきり血を吸うと、男は女の血潮に濡れた唇をもういちど甘えるように、女の脚に擦りつけた。
緊張の緩んだ薄手のナイロン生地が、男の唇の動きに合わせて、ふしだらなしわを寄せた。
破いただけじゃ、気が済まないのね?お行儀悪い。
男が濡れた唇をぬぐったのを見抜いて、すかさず女が悪態をつく。
男は澄ました顔をして、もう片方の脚も頂戴しようか?と、ニヤニヤしながら応じた。

じゅうたんの上は、凌辱の場になった。
新調のスーツを汚すまいと、女は四つん這いになって丈の短いタイトスカートをたくし上げられていった。
ストッキングをひざの下までずり降ろされて、むき出しになった太ももが眩しい。
女のうら若い生気をめでるように、男は女の首すじを吸い、ブラウスに血潮をしたたらせながら、血を啜った。
マントの合間から覗く青白い腰は意外に逞しい筋肉を持っていて、怒張した一物をスカートの奥に忍び込ませると、何度も何度も吶喊をくり返し、礼装の裏地に汚液を吐き散らしてゆく。
そのいくばくかが点々と、ピンクのじゅうたんにシミをつくった。

出てってちょうだい。着替えるんだから。
女はぷんぷん怒って、男を追い出した。
満足しきった男は口許を拭いながら、出がけに鄭重なお辞儀を忘れなかった。
女はそれをわざと無視して、身づくろいにかかった。
破れたストッキングを脱ぐと、しつように咬まれた脚をハンカチで拭い、首周りもおなじようにたんねんに拭った。
拭ったハンカチは丁寧に折りたたんで胸ポケットに差し、傍らの姿見に向かい合って、セットした髪が乱れていないかたんねんに点検した。
ひととおり満足するのに、かなりの時間を費やした。
新郎新婦の入場は、とうに終わったことだろう。
女がバッグを手に部屋をあとにすると、ひと呼吸おいて男がもう一度、部屋を覗き込んだ。
そして、部屋の灯りを消すと、小声で囁いた。

ご主人、もう出てきてもいいよ。
女房が襲われているところを覗きたいなんて、あんたいい趣味しているね。
その趣味に、わしはおおいに敬服するよ。
今夜は、ご夫婦で睦みあうがいい。
人妻を独りにしておくには、危ない夜だ。
披露宴の広間は夜中じゅう貸切で、招び出された女どもがわしの仲間の相手をする場になるでの。
もっともわしは、そちらのほうは遠慮するつもりだが。
代わりにあんたのお嬢さんを、いただくことになっているのでね。
きょうのカクテルドレスを取り寄せて、わしのためにわざわざお召くださるそうぢゃ。
お婿さんには、とうに話をつけてある。
お嬢さんは、正真正銘の処女だ。
前もって、生き血の味で確かめておる。
花嫁の処女喪失を覗きたければ、新床の部屋まで来るがいい。
留守ちゅう、新婦の母親が広間に出向いて、招待客の接待をするのを承知の上ならね。
それともご夫婦で、花嫁が一人前になるのを見届けるかね?
わしとしては、気の強い奥方が参戦されないことを希望するがね・・・

イイ気なヤツ・・・

2015年05月07日(Thu) 07:26:38

家の近くを歩いていると、妻の彼氏と行き会った。
「悪りィです。〈^人^) これから奥さんに逢うんですけど、〇ンドーム切らしちゃってて・・・」
ふつうこういうときに、そういうものを、ダンナに買わせるものかいな・・・
家を目指して背を向けるアイツのために。
当時街なかでもひっそりと佇んでいた「明るい家族計画」と銘打たれた自動販売機を前にする。

「悪りィです。(^人^) ガマンできなくなって、先ヤッちゃいました。。。(^^ゞ 」
照れ笑いするアイツに、ふくれ面の妻。
「せっかくですから、これ・・・ダンナさん使うと良いですよ」
そんなよけいなお世話まで、やかれるものかいな・・・
彼氏の代わりに〇ンドームを使いはじめた私。

妻の妊娠が発覚したのは、その数か月後のことだった。
(-_-;)


あとがき
こういうまぬけなお話、時々描いてみたくなるんです・・・