淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・
母を同伴して、乱交の宴に参加する。
2023年01月30日(Mon) 06:58:08
月に一度、ぼくの町内では、秘密の集いが開かれます。
男性は必ず女性一名を同伴することが義務付けられます。
その女性は、自分にとって大切な女性であることも義務付けられます。
そして行われることは――そう、ご想像のとおりです。
ぼくの初体験の相手は、母でした。
とある法事の帰り道、黒のストッキングに包まれた母の脚が妙に気になって、
すぐに仕事に出かけて行った父と別れて帰宅したまでは良かったのですが、
母が喪服を脱ぐのを、手伝ってしまったのです。
内実は、力づくで襲ってしまった というわけです。
「なんということをするのよ!あなたって子は!?」
と叱られはしたものの、一度肌を合わせてしまった者同士は、どうしても今までのままではいられなくなります。
母はそれ以来、毎日のようにぼくの好みに合わせて黒のストッキングを穿くようになり、
パンスト破りにハマってしまった愚かな息子のために、そのたびにストッキングを惜しげもなく、破らせてくれたんです。
ぼくたちのあいだは、すぐに街のうわさになりました。
そして、父の耳にも入りました。
けれども父は寛大にも――お前も大人になったんだなと、母を抱くことを認めてくれました。
幼馴染の悪友三人を家に招んで、代わる代わる母を抱いたこともあります。
「あんたも困った子だねぇ」と苦笑いしながらも、母はよそ行きのスーツのまま、ぼくたちの精液にまみれてくれたのでした。
そんな母でしたから、こういう集いに初めて招ばれたときも、ぼくは母を連れていくことにしました。
もちろん父にも、事前に了解を取りました。
「仕方のないやつだな」と言いながら、「母さんをたいせつにするんだぞ」といって、父はぼくたちを送り出してくれました。
紫のストッキングを穿いた母の脚が、ぼくよりはいつも半歩遅れてついてくるのを、
自分の女を伴って出かけるようで、ぼくはいつも以上の満足を覚えていました。
集いの開かれる街はずれの荒れ寺には、ムンムンと人いきれがしていました。
乱交と言っても、そこにはある程度のルールがあって、自分の相手はほぼ決められているのです。
ぼくの場合は、友だちのお母さんでした。
そう――先日母を共有した仲間の一人の母親なのです。
友達のお母さん――晴美さんと呼びます――は、ぼくの好みに合わせて、黒のストッキングを穿いてきてくれました。
それがぼくたちの、目印でした。
母は、だれかあてがあるようでしたが、口ごもってとうとう教えてくれません。
自分の妻が浮気をしているのがわかっていても、浮気相手を秘されてしまうというのはこういうものかと、妙な想像をしました。
宴が最高潮に達すると、だれもがとりどりに相手を選んでいきます。
ぼくはまっすぐに、晴美さんのところに行きました。
晴美さんもぼくをみとめると、楚々とした上背のある立ち姿を、ぼくのほうへと歩み寄らせてきました。
上背があると言っても、育ち盛りのぼくにはもう、かないません。
ぼくたちはしっかりと抱き合って、受け口になった晴美さんの唇を、熱く熱く吸いました。
母以外の女性は初めてでしたが、晴美さんはぼくの手を取って、自分から胸繰りの深いワンピースの胸もとへと導いてくれました。
いつも友人のお母さんとしてしか接していなかった晴美さん――意外にエッチじゃん、と思いました。
見ると、晴美さんの息子である昭太くんが、こっちを気づかわしそうに見ています。
悪いね、というように、ぼくは昭太くんにウィンクを送ると、
昭太くんも、頼むね、というように頭を下げて、自分のパートナーになったべつのお母さんを押し倒していきました。
晴美さんのキスは生々しいほど熱く、辟易するほどしつこかったので、ぼくの中の「男」を引き出すのもあっという間のことでした。
ぼくたちはその場で折り重なって、晴美さんの深緑のスカートに精液を撥ねかしながら、
すっかり元気になった一物を、ずぶずぶと埋め込んでいきました。
片脚だけ穿いた晴美さんの黒のストッキングが弛み堕ちてゆくようすが、夢中になって腰を上下させている間もチラチラと目に入り、悩ましかったです。
母はとみると――なんと、叔父に組み敷かれていました。
紫のストッキングはどうやら、叔父の好みのようでした。
じつの姉弟なのに、乱れちゃうのか?
ぼくは嫉妬を覚えて、そのぶんを晴美さんにドクドクと注入してしまいました。
昭太くんは遠目に、ぼくたちの愛し合うようすを見ていたらしく、
「きみがあんまりお袋に入れ込むもんだから、よけいに興奮しちゃった」と言われました。
その日を機に、ぼくは晴美さんと付き合うようになったので、
昭太くんには時々、「お父さん」と呼ばれて、冷やかされたりしています。
あとから母から聞いたのですが、叔父さんとは結婚前からの関係だったそうです。
父もそれを知りながら母と結婚して、結婚後も時おり、姉弟相姦の機会をつくってあげたいたそうです。
父は、愛する妻をほかの男に寝取られることで、母への愛を確かめるタイプの男性でした。
だからきっと、母とぼくとの関係も、寛大に受け入れてくれたのでしょう、。
「お前に抱かれた日の夜は、お父さん激しいの」
翌日母はそんなことを言いながら、ぼくの手で胸からブラウスをはぎ取られていきました。
母はもしかすると、相姦の家系のひとなのかもしれません。
それがぼくに遺伝して、ぼくは母と結ばれました。
母は自分の弟とも関係を持ちましたが、初体験は実の父――ぼくの祖父に遂げてもらったそうです。
ぼくがその後、中学にあがった妹を押し倒して、入学祝いとしてセーラー服を剥ぎ取ってしまったのも、
その妹との間に生まれた娘――結婚相手との子どもということになっています――の処女をいただいてしまったのも、
母から伝えられた「血」のせいなのかもしれません。
「あなたが助平なだけよ」
と、いまでも時おりぼくのものになってくれる母は、年老いた頬に昔と変わらないえくぼを浮かべて、笑っているのですが。
母さんとのデート。
2022年09月29日(Thu) 22:01:51
ボクの青春時代の話をしよう。
高校入学まえに、ボクは初めて女の身体を識った。
相手は母さんだった。
母さんは、ボクを最初に欲情に誘った女――
まだ小学校高学年のころ。
急に気分が悪くなって学校を早引けしたときに。
父さんと母さんの部屋から、妙なうなり声が漏れてきた。
二人が部屋のなかで、子供たちに決して見せないようにして、仲良くしているのは。
子ども心に知っていたけれど。
そのときの相手は、父さんじゃなかった。
母さんが嫁入り前に伯父さんに犯されて純潔を捧げてしまってから、ずうっと伯父さんの情婦(おんな)だということを、
ボクはまだ知らなかったのだ。
いつもの見慣れた花柄のワンピースのすそから覗いた太ももは、
肌色のストッキングの光沢を、毒々しいほどつややかによぎらせていて。
ボクは具合が悪くなったのさえ忘れて、いちぶしじゅうを見守ってしまっていた。
それ以来。
愛する人を直接愛することはもちろんのこととして、
愛する人が別のだれかに愛されるのを視て欲情する歓びを、
網膜の隅々にまで、覚え込んでしまっていた。
ボクが初めて女の身体を識ったのは、それからそう遠くない時期のことだった。
父さんの目を盗んでは、父さんと母さんの部屋のなかで、
息をはずませ合って、太ももを擦り合わせ合って、
片や愛液を力まかせに注ぎ込み、
片やまき散らされる愛液を、恥を忘れて口に含んだ。
父さんにバレたのは、とうぜんのなりゆきだった。
もちろん叱られたし、監視の目も厳しくなったけど。
人目を忍んで逢いつづける男女のことを、防ぐ手立てがないことがわかると、
父さんは潔く自分の負けを認めて、
高校の入学祝にと、母さんとの付き合いを認めてくれるようになっていた。
ボクはその晩、父さんに平身低頭してお礼をいって、
そのまま母さんをわが物顔に横抱きにすると、
勉強部屋へと引きずり込んでしまっていた。
その晩初めて母さんは、ボクの部屋で夜を明かしたのだった。
青春だった。
無軌道きわまりない、青春だった。
きょうも母さんは、家から抜け出してきて、
学校をさぼったボクとの待ち合わせの公園に姿を現した。
「タヅくん(ボクの名前は田鶴夫)、待った?」
母さんはボクの気に入りの紅色のスーツに身を包んで、ふっくらとした笑みを投げかけてきた。
「待ったよ――あそこがパンパン」
ボクの言い草に母さんは華やかに笑うと、
「じゃあ、早く行こう、ホテル」
と、ボクを促した。
「なんなら、ここでも良いんだよ?」
ボクが意地悪く笑うと、母さんはさすがにうろたえて、
「駄目、駄目、皆さんにバレちゃうでしょ」
と、いった。
もうとっくに――ボクたち母子の仲は、周りのものも、いや街じゅうでうわさになってしまっているのを、
母さんはまだわかっていないのだろうか?
「さっ、行きましょ」
スックと立った立ち姿は凛としていて、惚れ惚れするほど美しい。
紅色のタイトスカートのすそから覗く太ももが、肌色のパンストを淡くテカらせていた。
ボクは欲情を我慢できずに、母さんの手首を邪険につかんだ。
「アッ、何するの!?」
いなやはなかった。
ボクは母さんを公園の植え込みの向こうへと引きずり込んで、
煽情的に揺らぐひざ上丈のタイトスカートを強引にたくし上げていた。
・・・・・・っ。
・・・・・・っ!
「ガーターストッキング、いいよね・・・」
放心して大の字になった芝生のうえ。
軽々とした真っ白な雲が、深い青空のうえにぽっかりと浮いていた。
「穿いたままできるからね」
母さんがこたえた。
股ぐらからむしり取った黒のショーツが、まだ指先に絡みついている。
ショーツには、女の湿り気で、しとどに濡れていた。
口許に持って行って、臭いを嗅ぎ、ゆっくりと口に含む。
「こら、やめなさいよ」
口をとがらせる母さんをけだるげにあしらって、ボクはしばしの間、その行為に熱中した。
「帰るわよ、父さんももうじき帰ってくるし」
「じゃあ、急いで帰らないと」
ボクは聞き分けよく起き上がると、いっしょに起き上がった母さんのスーツに着いた枯れ草を、払ってやった。
「案外物分かりが良いのね」
とうそぶく母さんに、ボクはこたえた――
「父さんだって、母さんの穿いているパンストを他の男に破かれるの視たがると思うから・・・さ」
叔父の愛妻と恋をする(相姦日記)
2022年09月18日(Sun) 16:04:22
田鶴夫さん、着てきてあげたわよ♡ゆう子のスーツ。あなた狙ってたでしょ?
栗色のセミロングの髪を揺らして現れたのは、兄の由貴夫だった。
兄は、兄嫁のゆう子のスーツで女装している。
千鳥格子のジャケットの襟首から覗く純白のブラウスは、ふんわりとした百合の花のようなボウタイが器用に結わえられていて、
白のタイトスカートのすそからは、ツヤツヤとした光沢を帯びた、これも純白のストッキングが、血色の良い足許を輝くように染めている。
兄の女装癖は中学校いらいのことだったから、メイクもさまになっていたし、ちょっと見にはふつうの既婚女性に見えた。
もっとも――兄の場合は淫乱な三十路妻という雰囲気がありありだったが。
そう、兄はボクに抱かれに来たのだ。
激しく飛び散る精液で、ゆう子のスカートをびしょびしょに濡らしてしまうと、
ボクの腕の中で兄さんは、白い歯をみせて笑った。
すけべ。
ほんとうは、ゆう子のことも犯したがっているのでしょ?
良く輝く瞳が、そういっていた。
妻が犯されないために、妻の服を着て女装して、ボクに抱かれに来る兄も。
同性同士のセックスは楽しいらしく、きょうもノリノリで相手をしてくれた。
ボクたち兄弟は、時には兄が男、ボクが女になり、時には兄が女、ボクが男になる。そんな濃い間柄だった。
それは出生のときから運命づけられていて、兄が生まれた時も、ボクが生まれた時も、
父や伯父は、「この子たちは男にも女にもなるだろうから」と、わざと女でも通るような風変わりな名前を名付けられたのだった。
ゆう子とボクとの関係は、兄との結婚前からだった。
その日は母さんの結婚式だった。
母さんは、父さんとの結婚前に父さんのお兄さんである伯父に襲われて、処女を奪われてしまっていた。
花嫁の純潔を兄に奪われるのは、ふつうに考えて不本意なはずだったけれど――
父さんの場合は、ちょっと違っていた。
昔から。
父さんは姉のセーラー服を着せられて、兄のセックスの相手をさせられていた。
股間に一物を挿入されることで、爆(は)ぜるほどの快感が全身を痺れさせてしまうことを、
父は伯父から身をもって教わっていた。
だから許婚を犯されてしまった時も、「兄さんらしいなぁ」と、兄の凄腕ぶりに脱帽しただけだったという。
その伯父が母さんに、正式にプロポーズした。伯母が健在であるにも関わらず、である。
もちろんプロポーズと言っても、正式に夫婦となるわけではない。同居するわけでもない。
実際には、情夫・情婦の関係を公にするだけのことだった。
それでも父さんは母さんを伯父と結婚させるために離婚届に判を捺し、
伯父は母さんとの婚姻届を町役場に出して、披露宴まで挙げたのだ。
そこが、兄さんとの結婚を控えたゆう子との、なれ初めになった。
ゆう子はその日の華燭の典を、ただ「身内の祝い事」としか、兄から聞かされていなかった。
婚約者の母親が夫の兄と結婚前から不倫していて、その不倫の仲を正式に認める宴だということを、宴席で初めて知ったのだった。
招かれた宴のあまりの不道徳な趣旨に、生真面目だったゆう子は少し顔色を変えていた。
その日着てきた淡いピンク色のスーツは、ゆう子のことを華やいだ雰囲気で包んでいたけれど、
彼女の顔つきは初々しい装いとは裏腹なくらい、尖っていた。
彼女の生真面目なしかめ面が、ボクの劣情を逆なでにして、ボク自身を鬼に変えていた。
ボクは兄さんを廊下に呼び出すと、「ゆう子さんはボクが犯すから」と宣言した。
ちょうどその昔、伯父が父に向って、お前の嫁の純潔を奪うと言い渡した時と同じように。
人の好い兄さんは、「ウン、お前なら安心だ。よろしくな」と、拍子抜けするほどあっさりと、婚約者の純潔を譲り渡してくれた。
「少し空気がよどんでいますね。出ましょう」
ボクはそういってゆう子を誘い出すと、言葉巧みに宴席の隣室に連れ込んだ。
丸テーブルが一脚と、椅子が4つしつらえただけの、狭い部屋だった。
「出ましょう、ここ」
不穏な何かを感じてゆう子が出ようとするのをボクは強いて引き留めて、
「ゆう子さんのことは、ボクが女にしてあげる」
と、囁いた。
雷鳴に打たれたようにビクッと顔をあげたゆう子の表情は、恐怖に包まれていた。
それがなおさら、ボクの嗜虐心に、火をつけた。
ぞうさもないことだった。
立ち尽くすゆう子を羽交い絞めにすると、無理強いに椅子に押し伏せて、白いパンストをビリビリと引き破ってしまった。
むざんに引き裂かれた薄地の礼装から素足が露出する惨状は、若い女を黙らせるのにじゅうぶんだった。
「これ以上騒ぐと、お洋服が汚れますよ」
冷ややかな脅し文句をゆう子の耳に吹き込むと、
迫ってくるボクの身体を隔てようと気丈にも突っ張っていた腕から、力が抜けた。
ボクはゆう子の首すじに、吸血鬼のように首すじに唇を這わせた。
柔らかな体温が、しっとりと潤いを帯びた皮膚から伝わってくる。
突っ張っていたところで、そこはまだ、はたちそこそこの小娘だった。
とはいえ、ボクはまだそのころ、高校生だったけれど――
でも、その道にかけてははるかに場数を踏んでいたボクは、なんなくゆう子のタイトスカートをたくし上げ、
慣れた手つきでショーツを足首へと、すべらせていった。
ゆう子が兄さんとの結婚を破談にしなかったのは、
ボクとのセックスを不覚にも、しんそこ愉しみ抜いてしまったからだと、ボクは確信している。
ボクの一族がこんなにフクザツなことになっていたのは、地域の風習も影響していたのだと思う。
過疎化が進んでいたこの街では、どこの家も恒常的な「女ひでり」の状態だった。
だから――嫁を貰い遅れた男たちは、友人の嫁と媾合(こうごう)することを許されていたし、
兄と妹、姉と弟、母と息子、父と娘――身近な異性に手を伸ばすことには、だれもが暗黙の了解をしていたのだ。
妻を奪われた格好の父さんは、親族席の最上席にちんまりと腰かけて、終始人の好い笑いを浮かべていた。
こよない愛妻家である父さんにとって、美人で陽気な母さんはなによりの自慢であったけれど、
その母さんが嫁入り前に、偉大な兄の心を射抜き、少々強引な形にせよロマンスを体験したことも、
その後も伯父の最もお気に入りの女として、数ある伯父の愛人たちのなかでナンバー・1であり続けたことも、
いまこうして兄から正式のプロポーズを受けて、役所に婚姻届けまで提出して披露宴の主役となったことも、
すべて誇らしく悦ばしいことだったのだ。
風変わりといえば風変わりだったが、父さんは父さんなりに兄を尊敬し、母さんのことを愛していた。
母さんの披露宴の日以来、ゆう子はボクのところにひっそりと、通ってくるようになった。
そうして、まだ兄にもいちども開いたことのない身体を惜しげもなく開いて、
嫁入り前の潔(きよ)く守り抜かねばならないはずの処を、淫らな精液にまみれさせていったのだった。
兄さんと長い口づけを交わすと、ボクは義姉さんの服が似合うねと言った。
スレンダーな兄の身体に、ゆう子のよそ行きのスーツはぴったりとフィットしていて、兄を見映えの良い女にしていた。
「こんどはこのお洋服――ゆう子に着せて送り届けるわね」
女の姿をしているときの兄さんは、ずっと女言葉で、あくまで女として振舞っていた。
「で・・・こんどはだれを、引きずり込むの?」
兄さんは共犯者の含み笑いで、じっとボクを視る。
「佐奈子叔母さん」
ボクが応えると、兄さんはなるほどねと言った。
佐奈子叔母さんは、父の弟の妻で、夫婦で中学校の教師をして、倹(つま)しく暮らしていた。
身なりはいつも質素だったが、教師らしくきちんと折り目正しくしていたので、そこはかとない気品を漂わせていた。
「あんたの大好物なストッキングも、愛用しているんだものね」
兄さんに図星を突かれて、ボクは苦笑いした。
ストッキングフェチは、中学に上がる前、母さんの情事をぐうぜん目にしてしまって以来のものだった。
空色のスカートのすそをまくり上げられた母さんは、
伯父の手で肌色のストッキングをひざまでずり降ろされて、太ももを眩しく輝かせていた。
それがいまでも、目に灼(や)きついて、離れないのだ。
乱倫の嵐が吹き荒れるこの街で、佐奈子叔母さんの貞操が無事だったのは、ほとんど奇跡のようなものだった。
一家の最高権力者である伯父は、うちの母さんにぞっこんだったし、父さんも母さんにしか目のいかない男だった。
ボクたち兄弟の筆おろしは、父さんのいない夜に母さんが、
「困ったものねぇ」と言いながら、ワンピースの襟首をはだけてくれて豊かな乳房をもろ出しにしてくれて果たすことができたし、
生真面目な佐奈子叔母さんをわざわざ巻き込まないでも、帳尻が合っていたのだった。
「佐奈子叔母さま、きっと叔父さま以外の男を識らなくてよ。だったらゆう子を撃沈したあんたのぺ〇スで、きっといちころだわよ」
兄さんはそういって、ボクを力づけてくれた。
叔母を犯す算段をする弟に、うまくいくよと励ます兄。
それがボクたちだった。
思えば、とんでもない兄弟だった。
狙われた佐奈子叔母こそ、いい迷惑だっただろう。
けれどもボクは容赦なく、彼女に迫った。
子どものころから可愛がってくれたり、勉強を見てくれた叔父への斟酌も、まるきりなかった。
ボクは叔母さんが欲しい。ボクのぺ〇スも、叔母さんを汚したがってそそり立っている。
だから叔母さんを狙うんだ。
すごく明快でしょ?
善良な叔母を引きずり込むのは、たやすいことだった。
その日はたまたま叔母にとって不幸にも、叔父は教育委員会の用事で遠出していた。
父さんが話があるって呼んでいる――というボクからの誘いを、叔母はまるで疑わなかった。
ボクたちの淫らな関係もつぶさに知っているはずなのに、自分だけは無縁で済むのだと思い込んでいたのだろうか?
けれども淫らな渦の吸引力は、叔母を飲み込むことを欲していた。
それくらい。
叔母は高雅で気高くて、穢すのにもっともそそられる獲物だったのだ。
招かれた自宅に、父さんも母さんもいなかった。
母さんは伯父さんに誘われてラブホテルに行っていたし、
父さんは尊敬する兄に母さんが愛されるところを視たいといって、いっしょに出かけていったのだ。
母さん好みの派手な洋服をふしだらにはだけていって、伯父が母さんを征服してしまうことを。
逞しい兄の男ぶりを見せつけられることを。
父さんはとても、悦んでいた。
そういうわけで、叔母は一人、客間に通された。
モスグリーンのカーディガンに、グレーのスカート、足許を彩るのは、濃いめの肌色のストッキング。
素朴な装いであればあるほど、ボクの目は好奇に輝き、胸の奥底に滾る嗜虐心を募らせていった。
几帳面な叔母が、つま先とかかとの補強部がぴったりと合うように穿きこなしているのを、ボクはつぶさに見て取った。
きちんとした服装に、すみずみまで意を用いている叔母に、好感を持った。
これからモノにする女は、淑女だ。
思う存分、辱めてやろう――
「兄さんはいらっしゃらないの?」
かすかに不審の色を泛べる叔母に、ボクは告げた。
「きょうはボク、年配の女のひとが欲しいんだ。さしあたってだれもいないから、叔母さんに相手をしてほしいんだ」
えっ・・・?
戸惑い腰を浮かしかける叔母を、ボクはあっという間に組み伏せていた。
「カーディガン破かなければ、あとはいいよね?」
そういうと、モスグリーンのカーディガンの下に着ていた黒のブラウスに手をかけて、力任せに引き裂いていた。
あっ!!
年長者の優位は、苦もなく消し飛んだ。
思いのほか白い叔母の胸が、黒のブラジャーの吊り紐一本に区切られていた。
ボクはその釣り紐も、力任せに引きちぎった。
「田鶴夫さん、いけないわ!そんなこと・・・」
叔母の顔には懇願の色があった。
「お嫁さんをもらったらどうするか、ボクに教えてくださいよ、先生」
生真面目な女教師の面ざしに小便をひきかけるような気分でからかうと、
「・・・っ」
叔母は声にならない悲鳴をこらえて、抗おうとした。
やはり母さんのほうが、こういう場に場慣れしている――ボクは素直に、そう感じた。
レ〇プどうぜんに犯されるのを好んでいた母さんに、なん人の男がまたがっていただろう?
母さんは手加減をよく心得ていて、頑強に抵抗して、徐々に力を抜いて、さいごに屈服してゆく手振り、顔つき、声色が、男どもを魅了してやまかなったのだ。
対する叔母は、ただぶきっちょにめくら滅法腕を突っ張って防戦するばかり。
気の毒なくらいのつたなさだった。
ブラジャーをむしり取り、指に吸い尽くような肌の触感をたしかめながら、乳首を唇で強く吸う。
「ああっ・・・」
夫に対して顔向けができない。家の名誉を守り抜かなければならない。
きっとこの女の頭のなかでは、そんなことがめまぐるしくぐるぐると廻っているに違いない。
ボクは彼女の思惑は一切無視して、ただ胸の柔らかさ、張りの良さを手触り、舌触りで楽しんでゆく。
豊かすぎも貧しすぎもしない、まずまずのおっぱいだと診たてていた。
ボクの掌はまるで掌じたいに意思が宿っているかのように、
もうなにも考えないでも、女を煽情するためのもっとも効果的なやり方で、叔母の素肌を手繰っていた。
首すじにキスをしたときは、ゆう子にもこんなキスをお見舞いしたっけ・・・と、なぜか義姉のことを思い浮かべていた。
ひとりの女を獲物にするのに、ほかの女のことを思い浮かべるのは失礼だ――ボクはすぐに、ゆう子の幻影を追っ払った。
凌辱という恥ずべき行為にも、礼儀もあれば、作法もあるのだ。
口づけは、濃く長く、相手の息が詰まるほどに味わった。
キスを許すと人妻はかなりの確率で堕ちる――そんなことを教えてくれたの、誰だったっけ?
でもたしかに、それを境に叔母の動きは、目だって緩慢になり、活発さを欠いていった。
お目当ての肌色のストッキングをいたぶってやろうとグレーのスカートを荒々しくたくし上げた時にも無抵抗だったし、
脂ぎった唾液にまみれた唇を太ももに圧しつけて、淡いナイロン生地をくしゃくしゃに波打たせていったときには、すすり泣きの声さえ洩らしていた。
薄紫色のショーツは、薄い生地で、唇でまさぐると意外に濃い茂みの剛毛が、チクチクとした。
叔父もこんなふうに、自分の妻の身体を愉しんでいるのか――
すでに叔母の誇り高い貞操をガードしているのは、この薄いショーツがわずかに一枚。
それもボクのエッチなよだれにまみれて、突き出した舌は、股間の秘奥の起伏さえも、つぶさになぞり尽くしてしまっている。
いまごろ妻が貞操の危機に直面しているなど夢にも思わずに、律義に執務しているであろう叔父を思い浮かべると、
なにやらくすぐったくなってきた。
待っててね。もうじき叔父さんの愛妻を、地獄に堕としてあげるからね――
謹厳な教育者である叔父の指導の甲斐もなく、ボクはしんそこ悪い子に育ってしまっていた。
「叔母さん、ごめんね、すぐ済ませるからね」
叔母の希望とは正反対のことを、引導を渡すようにして囁くと、叔母は身体の動きを止めた。
すでにパンストを片脚だけ脱がせて、ショーツは足首まですべり降ろしてしまっていた。
「どうしても、なさるというの?」
なおも言い募る叔母に、ボクは言った。
「ずっと前から、叔母さんを犯したかったんだ」
ほんとうは・・・生真面目で影の薄いこの叔母は長いこと、凌辱の対象ではなかった。
たまたまきのうきょうの思いつきで、犯すことに決めたのだった。
けれどもじつは、心の奥底ではずっと昔から、叔母を犯したかったのかも・・・と、ふと思った。
すでに主人の意思を離れてたけり狂ったボクの股間が、叔母の太ももの奥へと迷い込んでいた。
「だったら、だったら――せめて叔父さんのことをばかにしたりしないでね。あの人を悲しませるようなことはしないでね」
ボクの一物が叔母自身をえぐり抜く瞬間まで、叔母は夫のことばかり、気にかけ続けていた――
夕方。
部屋の隅で叔母は、呆然となりつつも、身づくろいを始めていた。
剥ぎ取られたブラウスは、モスグリーンのカーディガンの奥へとしっかりと押し込まれ、
吊り紐の着れたブラジャーは、ボクに戦利品としてせしめられていた。
ストッキングは幸い、少し伝線しただけだったが、これもボクにせしめられてしまっていた。
蛇のように伸びたナイロンの薄衣をボクがこれ見よがしに見せつけて、舌で意地汚く舐め抜くのを、叔母は悔しそうに視ていたけれど、
もうそれ以上怒りも泣きもしなかった。
「時々、逢って」
それは、叔母が内心もっとも恐れていた願いだったに違いない。
いちどきりのことなら、過ちで済まされる。
夫にも告げずに、墓場まで持っていこう。
きっと叔母は、そう思ったはず。
けれども、日常的な関係まで迫られてしまっては、夫に露顕するのは時間の問題だったから。
「いや!」
叔母は叫ぶようにこたえた。
反射的に、
ぱしぃん!
頬に平手打ちをくれていた。
「逆らう権利はないんだよ」
ボクは叔母にもう一度にじり寄ると、ブラウスの破れを抑える掌を取り除けて、カーディガンの襟首を強引に押し広げ、
あらわになった胸を吸った。
「聞き分けがわるいようだから、もう少し付き合ってもらうね」
ごめんなさい、あなた。ちょっと立ち眩みがしてしまって・・・きょうは祐介さんのところでお泊りさせていただきますね。
明日もお仕事早いんでしょう?きょうも――ご出張お疲れさまでした。
叔母の声色はいつもの静けさと穏やかさをたたえていて、なによりも叔父に対するいたわりに満ちていた。
こういう奥さんをもらうご主人は、きっと幸せなんだろうと、ボクは思った。
「せめて叔父さんをばかにしないでね。悲しませたりしないでね」
犯される直前の叔母の懇願が、鼓膜によみがえった。
叔母との関係をこれきりにしようとまでは思わなかったが、せめてこの生真面目な夫婦に余計な亀裂は招きたくないな、と、ふと思った。
佐奈子との関係は、週1のペースで続けられた。
いちど喪われた貞操は、元には戻らない。
佐奈子もそこは、観念したようだった。
グレーのスカートを精液まみれにしてしまったあの日を境に、ボクは叔母のことを佐奈子と呼び捨てすることにした。
だからここでも、ここからは佐奈子と名前で書く。
逢瀬はいつも、自宅の勉強部屋だった。
母さんは見て見ぬふりをしてくれていた。
むしろ――自分が相手をしなければ消し止められない息子の劣情を、
義妹が身代わりになって火消しをしてくれていることに、感謝しているふうだった。
いつも学校に着ていく、生真面目なスーツ姿がいいな。佐奈子には良く似合っていると思うよ。
すると佐奈子は、ボクの希望を容れて、スーツ持参で訪いを入れてくれるようになっていた。
そう、さいしょのときにブラウスを引き裂かれたことで懲りていたのだろう。
家を出るときと違う服装で帰るわけにはいかなかったから、
ボクと交接するために、佐奈子はわざわざ別の服を用意して、着替えてくれたのだった。
パンストを片脚だけ脱がせて、
ショーツをつま先まですべらせて、
スカートを着けたまま、秘奥をまさぐり、貫き、精液まみれに濡らしてゆく。
ボクが愛用しているハイソックスと同じ丈まで、ストッキングをずり降ろされて。
佐奈子はすすり泣きながら、ボクの欲求に応えてくれた。
けれどもそれが擬態にすぎないものになりつつあることを、ボクは知っている。佐奈子ももちろん、自覚している。
夫とはかけ離れて若々しい怒張を迎え入れた彼女の関門は熱く濡れぼそり、
怒張を押し返すように、ギュッと締めつけてくる。
こちらも負けずにと意気込んで、ぐりぐり、ざりざりと、関門を激しく往き来させてゆく。
佐奈子は身を仰け反らせて、感じていることを身体で白状してしまっている。
そんなことが、ふた月ほども続いただろうか。
佐奈子の脚から抜き取った戦利品のパンストが、もう数え切れなくなったころのことだった。
ボクが学校から戻ると、母さんがちょっと厳しい顔つきで、ボクのことをリビングに招き入れた。
そこには真っ黒な洋装の喪服を着けた佐奈子がうなだれて、黙りこくっていた。
「バレちゃったんだってさあ」
母さんはあけすけに、変事を告げた。
いつかはそうなることだった。
どこでだれがどう伝えたのかは、問題ではない。
ボクと佐奈子との仲は、叔父の知るところになってしまったのだ。
潔癖な教育者である叔父は、理由はどうあれ不貞を犯した妻を家に置くわけにはいかないと告げたという。
お前も教師として教壇に立つ資格はないから、当面休職したほうがよい、とまで、いったという。
物静かな叔父だけに、その言葉は重く、徹頭徹尾罪悪感とは無縁で過ごしてきたボクですら、冷や水を浴びせられた気分だった。
「どうするのよう」
母さんは蓮っ葉に、父さんに尋ねかけた。
ボクの不始末は、うちの不始末だった。そこはさすがに、両親だった。
「佐奈子さんのために、アパートを借りましょう。もちろん費用はうちで持ちますからね」
母さんは気前よく、佐奈子の住まいについての費用を受け持ってくれた。
もちろんボクには、こう囁くのを忘れなかった。
「あんた、わかってるんだろうね?あんたのために叔父さん、佐奈子さんを離婚してくれるんだよ。そういうことだろ?
チャンスだよ。いまのうちにあの女(ひと)を、あんたの色に染め変えちゃいなさいな」
その晩佐奈子は、わが家の客となった。
改まった重々しい喪服姿にひき立った白い肌に、欲情を覚えずにはいられなかった。
母さんに言われるまでもなく、ボクは佐奈子の寝所を襲って、喪服姿のままひと晩じゅう、いたぶり抜いてしまっていた。
黒のスケスケのストッキングにブチチッと裂け目を走らせたまま、
厳粛な場でのみ装われるべき漆黒のスーツを、佐奈子はふしだらに着崩れさせた。
その夜は、佐奈子が自ら、学校教諭夫人の貞操の喪を弔う夜となった。
叔父は佐奈子とは顔を合わせたくないそうで、代わりに母さんが叔父宅に出向いて、佐奈子の服や身の回りの品を受け取ってきた。
調度も含めるとそれなりの量になったので、引越業者を依頼することになった。
受け取りを済ませると、母さんはボクに耳打ちをした。
「叔父さんのこと誘ってみたのよ、それとなく。でもね、やっぱり佐奈子さんがいいんだって。
それに、わたしの場合佐奈子は処女で嫁に来たから、見返りは欲しくないんですって」
奪(と)られるいっぽうの立場に甘んじることを選んだ叔父を、ボクは偉いとおもった。
それにしても――そういうときに叔父のことを誘惑しようとする母さんもまた、凄いとおもった。
佐奈子のアパートは、寂しいくらいに空き間が目についた。
ぼくはその空き間を埋めるようにして、佐奈子のアパートに居座ることにした。
離婚届なるものを目にするのは、母さんのときに次いで二度目のことだった。
兄さんとの結婚を控えていたゆう子を犯したあの宴のとき、父さんと母さんとは、ご丁寧にも法的に離婚をしていた。
離婚届という書類の名前の重みに佐奈子はたじろいだようだったけれど、
ボクはさっさとペンをとると、妻の欄に佐奈子の名前を書き込んだ。
「ボクが出してきてあげるよ」というと、さすがに佐奈子はかたくなにかぶりを振って、自分で出してきますとこたえた。
結局、二人で町役場に出向いて、離婚届を出した。
「夫」の欄は、叔父の小さくまとまった整然とした字体で名前が記され、
その隣の「妻」の欄は、ボクの大ざっぱな字で、佐奈子の名前が記入されていた。
こいつを出してしまえば、佐奈子は叔父の妻ではなくなるのだ。
佐奈子は晴れて、自由になる。
その日以来ボクは公然と、佐奈子のことを自分の女として扱った。
佐奈子のアパートには毎晩寝泊まりをして、夜遅くまで元教諭夫人を苛んだ。
覚えたての縄の扱い方を試すために、佐奈子は叔父が仕立ててくれた黒留袖の上から、荒々しく縄を巻かれていった。
ギュッと縛った瞬間、「ウッ」とちいさいうめきをあげるのが、たまらなくいとおしく、可愛らしかった。
二十近くも齢が離れているなどとは、ついぞ思ったことさえなかった。
ボクは毎晩のように佐奈子を抱いたし、佐奈子もじょじょに、応えてくれるようになった。
もはや逃げ道は、どこにも用意されていなかったから――ぼくに身を任せるしかなかったわけだし、
いちど身を任せてしまった女を夢中にするすべを、ボクは十分すぎるほど、心得ていた。
佐奈子は、堕ちた。
道行く人がうわさするほどに、ボクと佐奈子が同居を始めたことは、街に知られていった。
佐奈子がボクの女であることを世間に見せびらかしてやりたくなって、
時には道端の草むらや、深夜の路上で、佐奈子の装いを剥ぎ取って、まぐわい抜くことさえした。
だれもがオシドリ夫婦だった教諭夫妻の離婚を知ったし、
妻のほうが教師を辞めてまで、恥知らずにも20も齢の若い甥に春をひさぐようになったことも知られていった。
それでもボクは、時折叔父のことが思い出されてならなかった。
生真面目な叔父は、相変わらず律義に中学に通い、生徒の指導に当たっているという。
教師のなかには教え子の男女に手を出して、体育館の裏や空き教室で、蒼い性をはじけさせる者もいたが、
叔父にかぎってそれはなかった。
このままだと、叔父の人生は彩がまったくないものになってしまう――と、ボクはおもった。
「叔父さんとこに、謝りに行かない?」
その夜も八回ほど佐奈子を貫いたあと、ボクは佐奈子に切り出した。
叔父の誂えた黒留袖に撥ねた精液を気にかけていた佐奈子は、ハッと目を見開いて、みるみる涙をあふれさせた。
「ほんとう?ほんとうにそうしてくださるの?」
佐奈子が意味のある言葉を発するのを、もしかするとここに来て初めて耳にしたような気がした。
そう――ボクはここにいる間は始終獣になっていたから、
彼女は服従の短い相槌や、苦痛に耐えかねたうめき声以外、ほとんど口にすることがなかったのだ。
「やっぱり佐奈子は、叔父さんのところに戻ってあげたほうが良い――ボクはそう思う」
でもね、と、ボクはつづける。
きみをあきらめたつもりはないからね。
きみが叔父さんと復縁することができたとしても、ボクはあくまできみのことを、ボクの女として扱うつもりだ。
ボクが強く肩を抱き寄せると、佐奈子は心もとなげに頷き、それからもう一度、強く頷きかえしてきた。
しばらく見ない間に、叔父は10歳ほども老け込んでしまったかのようだった。
小学生の息子と娘のめんどうは、長年住み込んでいる婆やが見てくれていたので、身の回りに困ることはなかったようだが、
やはりいつも寄り添っていた控えめで倹(つま)しいつれ合いが傍らにいないのは、寂しい限りだったのだろう。
「きょうお伺いしたのは――佐奈子さんを犯してしまったことをお詫びするのと、
お二人が元通り復縁することをボクが希望していることをお伝えするためです」
ボクがそういうと、叔父は目をしばたたいてボクを見返し、「それはありがとう」と、いった。
安堵を交えた穏やかな声色だった。
意外にも。
「でもきみは、それで良いのかね?佐奈子に飽きてしまったというのかね?」
むしろボクを気遣うような口ぶりに、しんそこ済まないことをした気持ちになったのだけれど――
ボクが佐奈子をあきらめるつもりがまったくなさそうなのを顔つきで見て取ると、彼は穏やかに口を開いた。
彼の言い草は、さすがのボクにとっても、意外なものだった。
「佐奈子のことはよろこんで、家に迎えよう。きみの好意に感謝する。
復縁のことも承知した。遠慮なくそうさせていただくよ。
でも、もしもきみがまだ佐奈子に欲情を感じているのだとしたら、どうか自分自身に正直になりなさい。
若いうちは女を欲しいと誰でも思うものだし、きみが佐奈子を欲しいと思ったり、
生真面目な佐奈子を辱め抜いてみたいという気持ちも、わからないわけではない。若気の至りということだからね。
もちろんわたしも、かなりの迷惑は感じたけれど――」
叔父は穏やかに笑いながら、つづけた。
「でも、そこは叔父甥の仲だから、水に流そうじゃないか。
そして、きみさえ望むのなら――きみを佐奈子の愛人として、わたしの家庭に迎え入れようと思っている」
え?
ボクと佐奈子は、顔を見合わせた。
ほとぼりが冷めたころにまた佐奈子を誘い、思う存分交わろう――そんな不埒なことを思ってはいたのだけれど。
叔父がまさか、そこまでボクのことを理解してくれているとは、夢にも思わなかった。
「きみに佐奈子を望まれて、本心をいうとわたしは嬉しかった。
あれは地味な女だが、所帯持ちがよくてしっかり者で、質素だけれど上品なひとなのだ。
きみのような若い男性が佐奈子を見初めてくれて、わたしはとても誇らしく感じていたのだ。
だから、きみが佐奈子を汚したと聞いた時、きっと一度では済まないだろうとすぐにわかった。
そして――きみに佐奈子を独り占めさせてやるために、わざと佐奈子を離婚したのだ。
佐奈子はわたしの妻という拘束から離れて、ひとりの女としてきみに仕込まれ、きみの色に染まるだろう。
妻がきみの奴隷になるのに、それは必要なことだと思ったんだ。
わたしたちが離婚したことは、学校にも知られたし、狭い世間だから、知らないものはいないだろう。
そして、きみの情婦として無軌道に愛され抜いていることも、誰一人知らないものはいないだろう。
うちの名誉はすっかり、汚れてしまった。でも、それで良いのだ。
自分から進んでそう仕向けたのだし、汚されて却ってこざっぱりするということも、あるものなんだね。
きみはわたしのことを、佐奈子の夫として認めてくれたのだから、
ぼくはその見返りに、わたしの最愛のひとの貞操を、真心こめてプレゼントしよう。
女が欲しくなったら、いつでも来なさい。妻も、きみのことをきっと、歓迎するだろう」
「お兄ちゃん、ママと何してるの?」
まだ幼い従弟の陽太は、ふすまを細目にあけて、目だけをこちらに向けてくる。
幼い目線の先には、よそ行きのスーツを着崩れさせ、セットした髪を淫らに波打たせた母親と、その母親を支配している従兄がいた。
「覗いていいよ」
とは、約束していた。
けれどもボクが佐奈子を犯しに行くと、彼は必ずと言っていいほど、母親の情事を覗き見していた。
もちろん彼の父親も、時折様子を窺いに来た。
無軌道な甥の欲求をまえに曝してしまった妻の身を案じて――というのも、むろんあったに違いない。
けれども、それとは別種の、好奇で好色な色合いが、あの謹厳な眼鏡の奥から射し込んでくるのを、
ボクも佐奈子も気づかずにはいられなかった。
彼は妻を奪われ、そして復縁を果たした。
夫婦仲は、以前にも増して濃やかだという。
そしてボクはこの家の堅実な主婦を凌辱する権利を、目いっぱい行使しつづける。
きっとそのことは――思春期の萌芽をみせはじめた従弟にも、色濃く投影されてゆくのだろう。
彼は白い歯をみせて、ボクに約束してくれたのだ。
「ボクがお嫁さんをもらうときには、お兄ちゃんに逢わせてあげる。
ママと同じくらい、仲良くしてほしいんだ」
ハイソックスのフリルに血を撥ねかして ~ある生娘の親孝行~
2022年02月01日(Tue) 08:15:31
結婚を間近に控えたころ、花嫁は幼なじみの従弟を相手に、処女を喪失。
婚礼のさ中に、妹たちは従弟の父親に襲われて、齢の順に犯される。
十年あまりを経て妻は、かつて処女を捧げた従弟との関係を”復活”。
ふたりの現場を抑えたものの、従弟やその妻の情夫という吸血鬼のために、ふたりの仲を認める羽目に――
踏んだり蹴ったりの境遇だった。
けれども不思議に、腹立たしくない。
むしろ、不思議な誇らしささえ、感じている。
過去にさかのぼって妻と従弟との関係を許し、
婚約者が不義を犯したのは、わたしのほうから彼に、花嫁の純潔をプレゼントしたかったから・・・ということにしてもらったのは、
いまでも小気味よく、胸の奥底に響いている。
血を吸われたときに注入された毒液が、潔癖な理性を奪ってしまったのか。たぶんきっと、そうなのだろう。
気が付くと、妻とその従弟との濡れ場を横目に、致死量近い血液を、吸血鬼相手に与え抜いてしまっていた。
妻の伯父という遠い縁戚の法事のために、なぜか妹たちも母までもが参列したのは、
故人が妹たちに迫って処女を奪い、見返りに女の歓びを教え込んでしまったから。
そして、故人は恥知らずにも、わたしの母にまで迫って関係を遂げ、ふたりの関係を父に認めさせてさえしてしまっていた。
因縁の親子の間には、血のつながりは実はないという。
けれどもそんなことは、もうどうでもよい。
雅恵という妻をもたらしてくれたあの一族は、忌むべき血を宿している――
今夜も雅恵は、黒の喪服に身を包んで、ひっそりと出かけていった。
法事の手伝いといっていたが、することはもう、わかってしまっている。
いったい今夜は、なん人の男を相手にしてくるのか。
自分の妻が男の目を惹くのは、好ましいことだ。
夫として誇りに思うべきことだ。
妻の従弟は、そういった。
事実、彼自身も自分の妻を吸血鬼に襲わせて、愛人のひとりにしてもらったのだと悦んでいた。
妻との現場を抑えたのに、これからも敬意をこめて雅恵を犯す、と、臆面もなく宣言された。
ふたりが真摯に愛し合うところを目の当たりにしてしまったわたしは、ふたりの交際を許すことにした・・・
お父さま?
だしぬけにあがった声に振り向くと、娘の佳世がそこにいた。
ピンクのブラウスに真っ赤なスカートは、娘のお気に入りだと、妻から聞いている。
こんな夜遅く、彼女はどうしておめかしなどをしているのだろう。
もしや・・・
不吉な予感を打ち消しながら、わたしは何だね?と、目をクリクリさせている佳世に、応じていた。
お母さま、どこに行ったのかしら?
佳世は、なにもかも識っているような顔つきをしている。
さあね、と、しらばくれると、佳世はひたとナイフを突きつけるような言葉つきで、いった。
今ごろ――吸血鬼のおじ様と、仲良くなっちゃっているのかな??
どうしてそれを!?
思わずあげそうになった声を、素早くにじり寄ってきた佳世は手で制した。
口許にあてがわれた柔らかい掌が、初々しい温もりを帯びている。
干からびた血管が疼き、そのなかに充たされるべき暖かい血潮を求めて身体じゅうを震わせた。
佳世はなにも識らない生娘の顔をして、あとをつづける。
でもお父さまは、お母さまが夜遊びするの、とがめないのね。優しいんだね。
それはきっと、お父さまも血を欲しがっているから、吸血鬼のおじ様の気持ちがわかるからなんだよね?
今夜は佳世が、相手してあげてもいいんだよ――
白々しく目をクリクリとさせながら、佳世は母親譲りの黒髪をむぞうさに首許から取り去った。
フリルのついた白のハイソックスは、もはや齢不相応になっていた。
どこから咬むの?ブラウスの襟を汚しても、ハイソックスを破っちゃっても、良いんだよ。
これから先は、お父さまとあたしとの、ナイショの世界――
押しあてた唇で娘の体温を感じながら、妻もこんなふうに情夫を誘っているのかと、ふと思った。
血のつながったひとの血のほうが、美味しいんでしょ?
処女の血を吸いたいって、ずっと思ってたんでしょ?
あたしなら――両方とも叶えてあげられるから。
娘は明らかに、吸血鬼の相手の仕方を識っていた。
わたしの欲求を逆なでするように、
ピチピチとはずむ伸びやかな肢体をいっぱいに拡げて、
その身をめぐる血液で、喉の奥にはぜる渇きを、満たそうとしてくれる。
剥ぎ取ったブラウスの裏に秘められた、まだなだらかな乳房のつけ根に、歯を食いこませると。
白い歯をみせて、くすぐったそうに笑った。
フリルのついた真っ白なハイソックスのうえからふくらはぎに食いついて、
しなやかなナイロン生地の舌触りを愉しみながら吸血をはじめると、
やらしい・・・と声を洩らして笑った。
ハイソックスを咬み破られるこの行為がなにに結びつくのかを、識っているようだった。
吸血鬼のおじ様に、襲われたの。
でも、お父さまのために処女でいたいって言ったら、いい子だねって許してくれた。
だからあたしは、おじ様からお父さまへのご褒美なの。
お母さまの初体験を譲ってくれたお礼に、あたしとしてイイって言っていたわ。
今夜は、素敵な夜にしようね――
スカートの裏側を血に浸しながら、
娘はなおも、わたしの飢えを満たそうとする。
なん度もつけられた咬み痕を手鏡に写しては、佳世、吸血鬼に襲われちゃったといってきゃあきゃあとはしゃぎ、
なん足めかに脚を通したストッキング地のハイソックスに血を撥ねかされながら、パパいやらしいよといって、またはしゃいだ。
はしゃぎきった小娘をきつく抱き寄せて、罪深い交尾を、夜が明けるまで愉しんでいた・・・
招く喪服。~穏やかな竜巻。~
2022年01月31日(Mon) 23:24:50
そのつぎに雅恵と会ったのは、父の四十九日のことだった。
虚しい四十九日だった。
なにしろ、弔われているはずの本人は、とうに墓場を抜け出して、半吸血鬼として”大活躍”をしているのだから。
もともとの寝取り魔、犯し魔が、さらにパワーアップしただけじゃないか。
口さがない親族は皆、そういった。
彼等のだれもが、妻や娘を父に犯されていたし、
彼女等のだれもが、父にスカートを脱がされていた。
半吸血鬼になった父は、モノにした女たちの巡礼を始めて、
情婦にした女たちを一人残らず、生き血を味わってしまったのだ。
わが父ながら――もうどうしようもなかった。
通夜の晩、唇をかんで泣き腫らしていた母は、父との別離が悲しかったわけではなかった。
ひとしきり弔いが済んだ後、妻の仇敵、娘を犯した男と怨みを抱いた男どもに償うために、
夜這いを挑んできた男どもの相手を、義理堅くも一人残らずし尽くして、
夫を弔うために装った漆黒のブラウスやスカートを、劣情にまみれた掌に引き裂かれたくし上げられて、
比較的堅固であった貞操を、恥知らずなあしらいにゆだねることを余儀なくされたからだった。
償うと決めたのは母だったから、息子のわたしがどうこう言うことはできなかった。
「あんたも視るんだ。視る義務がある」
母の肉体を欲しがる男どもに要求されるままに、婦人ものの喪服姿で縛られたまま、
凌辱を耐え忍び、戸惑いながらも感じはじめ、さいごにはよがり狂ってしまう母のありさまを、逐一見届けさせられたのだ。
「あたしも償わせてもらうわね♪」
すっかり淫らに堕とされてしまった妻までもが、黒のハンドバック片手に現場に現れて、
喪服のうえからむしゃぶりついてくる男どもの花息の荒さにあきれながらも、
「お義母様おすそ分けをいただきますね」
と母にことわりまで入れて、淪落の淵に溺れていった。
乱脈の悦びに耽った父の報いを受けて、自分の妻と息子の嫁とが償わされるのを、父はどう思っただろうか。
あのでたらめな父のことだから、案外悦んでふたりの痴態に見入ってしまったかもしれない。
前置きが長くなった。
そういう父の四十九日に、雅恵は夫と娘を伴ってきていた。
故人がそういう人物だとは、雅恵の夫もよもや知るまい――と思っていたのだが。
不義の血がつながった娘の婚礼を、
父はあろうことか、雅恵の義妹になる少女たちを犯して祝ったという。
うちの一族、きっと伯父さんのおかげで吸血鬼に狙われるようになったのよ。きっと。
雅恵は、いつものどこまでも穏やかで怜悧な言葉つきで、おそろしいことを口にした。
因縁ね。
そうつづける雅恵の言い草を、わたしは否定しなかった。
どうして本人に報いないんだろう?
そういうわたしの問いを、彼女は鼻で笑って受け流した。
世の中、そういうものじゃない。
私ね――と、雅恵はつづけた。
目線の向こうでは、まだ幼い彼女の娘が、夫の妹たちにお洋服を褒められて無邪気に笑っている。
娘が大きくなったら、あのひとに襲わせてあげようと思っているの。
ゆくゆくはあの学校に行かせたい――そんなふうな、ごくしぜんな口ぶりで、雅恵はまな娘に、呪わしい未来を与えようとしている。
無邪気に跳ね回る足許は、フリルのついたアミアミの白のハイソックスが、稚ない脚の輪郭を華やがせていた。
あのひと――って、どっちの?
わたしの問いをもっともだと思ったのか、雅恵は真顔でこたえた。
もちろん、吸血鬼のほうよ。
そう言いかけて――そうか、お父さんも吸血鬼になっちゃったのよね。と、つづけた。
ふたりで話しているとき、雅恵は父のことを、「お父さん」と呼ぶようになっていた。
血のつながっている父親だから、無理はない。
夫ばかりか、どうして夫の妹たちまで連れてきたのか?
もちろん、義妹たちは故人に、処女を捧げた関係だから。
あなたはどうするの?子供ができたら、やっぱり襲わせてあげるんじゃなくて?
真綿で首を絞めるような問いを発する雅恵の声は、しかしどこまでも優しげで、穏やかだった。
怖い女だ、と、はじめて思った。
けれども雅恵は、そんなわたしの顔色にはとんじゃくなく、つづけた。
でも、真紗湖さんたら、彼の子どもを産んじゃうかもね。
なにもかもを、知っている口調だった。
真紗湖――わたしの妻――が吸血鬼の子を産んで、彼がその子を襲ったとしたら・・・
それは近親相姦じゃないのか・・・?
わたしが問いを発する前に、それと察したのか、雅恵はいった。
むしろ悦ぶかも知れないわ・・・ね?
こないだ、母が襲われたわ。
あたしと似ているから、どうしてもモノにしたいって頼まれて、
逢引きのときに、母も誘ったの。
娘と同じひとと、セックスしない?そう誘われて応じる母も母だと思うけど――でも、相性はとても、よろしかったわ。
母娘で、真紗湖さんのライバルになっちゃったわね。
ライバルはいくらいても、構わないんだろう。
彼の喉の渇きは、たった数人の善意では、癒しつづけることはできなかった。
あたし、招く人なのかもしれない。
雅恵はいった。
嫁入り前に、貴男を招いて。
主人と結婚して、主人の妹さんたちを、お父さんのために招いて。
女物の喪服を着た貴男を、あたしのなかに招いて。
だから母を招くことも、娘を招くことも、たぶん許されていると思うの。
そういえば――
人の生き血を好むあの男までも、招いてしまったわね。
貴男との逢瀬の、すぐあとに・・・
咬まれる喪服。~不倫の逢瀬の、忌むべき帰り道~
2022年01月31日(Mon) 22:49:17
雅恵は、通夜の席にひとりでやって来た。
夫は仕事の都合で、来れないという。
誘いかけられた――そう感じたわたしの感覚は異常だったかもしれないが、
それは、雅恵の思惑を外さないものだった。
女学校に通っていた雅恵のところに、遊びに出向いた時。
わたしはいつも、彼女の下向よりも少しだけ早く、雅恵の家を訪れていた。
まだ少年だと見なされていたわたしは、雅恵の部屋に自由に出入りすることができた。
そこでわたしは、雅恵のスカートを腰に着け、
いつも雅恵が学校に穿いていく黒のストッキングを脚に通して、
しばしいけない昂奮に耽るのだった。
ある日、わたしは雅恵の帰宅に気づかずに、雅恵の服を身に着けて、自ら戯れていた。
つい昂りすぎて、雅恵の気に入りのチェック柄のスカートに、白濁したしずくを滴り落としてしまったとき。
わたしは細目に開かれたドアのすき間から、怜悧な視線が静かに注がれていることを初めて自覚した。
冷や水を浴びせられたように慄(ぞっ)と身をこわばらせたわたしに、雅恵は「シッ!」と鋭い囁きを放って、
「声をあげたらだめ」とだけ、いった。
そしてスカートに落ちたしたたりを素早くぬぐい取ると、
「悪戯は良いけど、汚されるのは困るから」とみじかくいうと、
「いまからその恰好で、おうちに帰りなさい。その代り、その服はあんたにあげるから」
潔癖な批難と嫌悪を籠めた視線の代わりに、
事態を面白がっているような悪戯っぽい笑みが、彼女の控えめな目鼻立ちをよぎっていた。
「あれで懲りたと思ったんだけど」
さいしょの通夜の席で、雅恵はいった。
結婚を控えたあたしを押し倒すくらいだもの、そっちには絶対、いかないと思い込んでいた――と。
両刀使いかもしれないわよ。
わたしはわざと女言葉をつかって、雅恵の耳を囁きでくすぐった。
そのときにはきっと、雅恵はわたしに抱かれる気持ちになっていたに違いない。
なにも、親のこういう日を択ばなくたって。
咎めるわたしの囁きを、雅恵は軽く受け流した。
熟しかけた女の不純な手際の鮮やかさを、頼もしいと感じた。
これではまるで、百合の園だわ。
言い得て妙だった。
お互い婦人もののブラックフォーマルを着崩れさせていたし、
二着のスカートは見境なくしぶいた透明な粘液をほとばしらせて、
謹直な衣装の意図と正反対の、淫らな彩りに濡れていた。
時々逢いましょ。
雅恵の提案に、わたしは無言で肯いていた。
結婚しなければ、問題ないから――
なぜか女は寂しげに、ぽつりとつぶやいた。
情欲にやつれた蒼白い頬が、ひっそりと輝いていた。
着崩れた喪服を身に着けたまま、雅恵がふらふらと家の裏口から抜け出してゆくのを、
わたしは二階から見送っていた。
「ああッ!!」
だしぬけな叫び声が突如、雅恵の口を突いて出た。
あっ、とおもった。
あいつが。
妻を弥陀fらな情婦に塗り替えてしまったあの男が、
背後から忍び寄って、雅恵を咬んだのだ。
この街では、夜に女の酒ぎ声が聞こえても、だれも助けに行こうとしない。
なにが起こったのかを、察するからだ。
夫でさえも、行こうとしない。
妻に向けられた吸血鬼の恋情を受け容れさせられて、
長年連れ添った妻の肉体を、無償で提供させられてしまう。
それがこの街に残った夫たちの務めだから――
夫ならぬ愛人であるわたしが、雅恵と彼のためにするべきことはひとつだった。
首すじを咬まれ、喪服を血潮に濡らしながらうろたえよろめいてゆく雅恵が路上で犯されてゆくのを、
わたしは昂りながら、見届けてゆく。
かつて、自分の母親が、雅恵の父に迫られて、そうされていったときのように・・・
告げ口をする喪服。~絡まり合う、相姦の糸。~
2022年01月31日(Mon) 22:26:42
雅恵につぎに会ったのは、父の通夜の席だった。
街に棲みつく吸血鬼に魅入られた父は、血を吸い取られたうえに吸い尽くされて、いまは腑抜けのようになってひつぎのなかに収まっている。
――あのひともきっと生き返って、半吸血鬼におなりになるだろう。
だれもがそう、囁き合っていた。
父は好色家だった。
通夜の席に参列した女性のいくたりもが、彼にブラウスを剥ぎ取られ、ストッキングを脱がされた経験を持っていた。
有夫・未婚の見境もなく、父は目に留まった女性に手を伸ばし、
未婚の娘を親たちの前で犯すことも、
堅実な主婦を夫の前で蕩かすことも、
まるでそれがライフワークでもあるかのように、余念がなかった。
それが親族や友人の妻や娘であっても、むしろそのことにそそられるようなひとだった。
もしもかりに吸血鬼にならなかったとしても、じゅうぶん充たされた人生といえた。
母は目を腫らして祭壇近くに侍っていたが、父を想ってのっことだったかどうか。
夫の艶福は妻の禍い――そのことで親族のなかでも、友人たちにも、責められたことがたびたびあった。
見返りにあんたとやらせろ――そんなふうに迫られたこともあったという。
堅実で、貞操堅固な母は、めったなことではそうした欲求に応じることはなかったが、
ただいちどだけ、許してしまったことがあるという。
それも、雅恵に聞かされたことだった。
父は実の妹を犯していた。
初心だった彼女は、父に完全にイカされてしまい、
もとめられるまま、学校帰りの三つ編みのセーラー服姿を抱きすくめられて、
嫁入り前の身体を、恥を忘れて淫らな血潮に火照らせていったという。
新妻のなした一人娘が、義兄の胤だと知ったとき、叔父は怒り狂ったという。
血相を変えて義兄の家に向かったとき、不幸にもわたしの父は留守だった。
披露宴の席で見染めた姪の同級生を、押し倒しに出かけていたのだった。
叔父は母に迫って、父に妻を犯されたほかの男と同じ要求をした。
そのときにかぎって、迫ってくる叔父の手を逃れることができず、母はスカートを脱がされていった。
あなたのお母さんとね、あたしのお父さん――あなたの生まれる前からずっと、仲良しなのよ。
あなたのお父さんと、あたしのお母さん――ふたりもずっと昔から、仲良しなのよ。
そう、それってとっても、いいことじゃない。
まだなにも識らなかったころのわたしは、雅恵の囁きにそんな無邪気な反応しかしていなかった。
けれども色気づいてきたころには、すべてを知ってしまっていた。
雅恵の告げ口という緩衝材がなかったら、わたしはどれほど傷ついていただろう。
けれども彼女の囁きは、毒液のようにわたしの心の奥底にわだかまり、潔癖な理性を痺れさせて、
厳しかった母がみせる”女”の刻を目にしたい願望を募らせるようになっていた。
父の留守を狙って、母を口説いて、組み敷いていく叔父と、
ふすまのすき間から、なかの様子を垣間見ながらも、父へは告げなかったわたしとの、
淫らな黙契が成り立つのと並行に、
父の度重なる悪業に、罪悪感を消した母が、叔父の欲求にすすんで応えるようになったことを、
わたしはむしろ、悦んでいた。
なにしろ――生の濡れ場を、観覧料を支払うことなく目の当たりにできるのだから。
妻が吸血鬼に襲われても良いと告げたあの晩に。
わたしの情夫となった吸血鬼が、うら若い人妻の生き血を欲することを妨げなかったのは。
もしかすると――そのころの記憶がわたしの背中を押し、理性の力を奪ったからかもしれなかった。
オフィスに行って、男の子の生き血を吸った記録。
2020年08月05日(Wed) 07:16:10
「男の子の血に興味はありませんか
室長補佐はそういって、えせ笑いを浮かべた。
この男は、あまり好きになれない。
自分が血を吸われたくなさに、おためごかしにほかの者のことを紹介したがる。
もとより、彼から血を獲ようなどとは思ってもいなかったが、
大人ばかりの職場に男の子がいるというのが気になって、「逢ってみよう」といった。
室長補佐は私に相づちを打つのさえ省略して、
「ああきみ、タカヤくん連れてきて」
と、若い女の子に指図をしていた。
紹介すると言いながら、連れてくるのさえ人任せである。
こんな男とは早く別れたいと念願しながら、その男の子とやらの出現を今や遅しと待っていると、
こっちの気分を見透かすかのように、室長補佐がいった。
「待ち遠しいですか?」
ことごとに、嫌な奴だ。
だがこの男は知るまい。
私と自分の妻とが、好い仲になってしまっているのを。
そのうえ、長男が私に、女のようにして愛されてしまっているのを。
二人は室長補佐の悪い性格を補って余りあるくらい、善良な人たちだった。
連れてこられた少年は、まだローティーンもいいとこだった。
清潔な感じのする五分刈りの髪型の下に、人懐こそうな整った目鼻立ちがあった。
グレーと白のボーダー柄のシャツにデニムの半ズボン、
ひざから下は、グレーとピンクのボーダー柄のハイソックスを履いている。
泥で汚れた運動靴なのが、バランスを欠いていて、しょうしょう惜しまれた。
「運動靴なんだね」
うかと口に乗せてしまうと少年は笑って、
「逃げるのに便利だから」
といった。
「誰から逃げるのか」と訊くと、「嫌な吸血鬼には、血を吸われたくないもの」と、正直にいった。
「嫌な奴もいるのかね」
「ママの血を吸ってるやつ。あいつ、ママの事イジメるから嫌いなんだ」
ほんとうにいじめているのだろうか?と、私は反芻する。
性行為のときのある種の体位が、年頃になりかけた子供たちの目には、女をイジメているようにみえるという。
「でも小父さんはいい人ぽいから、構わないよ」
どこまでも、人の考えていることを見透かす子だな、とおもった。
そういえば、室長補佐もさっき、待ち遠しいですかなどと、人の先回りをするようなことをほざいた。
どうやら、わかりやす過ぎる私の態度にも、問題があるらしい。
「どうぞ、どこからでも」
男の子はそういって、脚をぶらぶらさせた。
首すじか、足許か。
彼は吸血鬼の性癖を良く心得ているらしい。
私は迷わず、彼の足許に唇を吸いつけた。
ボーダー柄のハイソックスのツヤツヤとしたリブが、目に眩しい。
靴下の生地のしっかりした舌触りが私を夢中にさせて、不覚にも洩らした唾液が、少年の靴下をよけいに汚した。
「あ、気にしないで」
男の子はそういうと、私の両肩を抑え、なぞるように掌をせり上げて、私の頭を抱いた。
「ぼくのことは気にしないで、楽しんでね」
どこまでもサービス精神旺盛なやつだった。
気がつくと私は、少年の履いている女の子が履くような色のハイソックスを、
すみからすみまで舐め抜いて、辱め尽くしてしまっていた。
気がつくと、ハイソックスごしに牙を埋めていた。
こんなに夢中になったのは、久しぶりだった。
喉がさほど渇いているわけではないのに。
一時間前に襲った室長補佐の夫人は、自宅のリビングでまだ、あお向けに伸びていることだろう。
少年の靴下を汚しながら摂る血の味は、ひどく良く喉になじんだ。
両方の脚からかわるがわわる、血をいただくと、身体をせり上げて少年の頭を抱き、首すじに舌を這わせていた。
「ぁ・・・」
さすがに少年は声をあげ、けれどもなんの抵抗もしようとはしない。
私は少年を床に押し倒して、柔らかな首すじにずぶりと牙を埋めた。
この子の血は身体に良くなじむ。きょうの出逢いは良き出逢いだ。
少年が静かになってしまうまで血を摂ると、
私は血の気の失せた唇に、自分の唇を重ねていった。
少年はまだ意識が残っていた。
そして、嗅がされる自分の血の匂いに敏感に反応して、少しもだえた。
けれども、頭を撫でながら接吻を続ける私のいうなりになって、
自分のほうからも舌を入れてくるほど積極的に、私の欲望に応えてきた。
帰り際、受付の女性に訊いた。
あの子はどこの家の子なのかね?と。
女性は入社十数年のベテランで、首すじにはお約束のように、咬み痕を露出させている。
女性は艶やかに笑った。
そして、笑ったことについて失礼しましたと丁寧に詫びて、名前と連絡先ですといって、一片のメモ用紙を手渡してくれた。
どうして彼が親しげで、血の味が舌になじんだのか、やっとわかった。
十年間顔を合わせていなかった、私自身の息子の名前が、そこに書かれていた。
【寓話】一家の歴史
2020年07月17日(Fri) 20:48:21
同性愛の嗜好を持った青年がいた。
彼は父親に人を愛するすべを教わったので、しぜんとそういうことになった。
青年は一人息子だったので、両親はともに、婦人にも目を向けるようにと息子に願った。
息子は唯一、自分の母親となら寝ても良いと告げた。
一番身近な女性になら、自分をさらけ出すことができるというのだった。
父親は少しばかり躊躇を覚えたものの、
息子の婦人に対する好みが自分と同じなのだと割り切って、
妻に息子の寝室に行くように勧めた。
妻はめでたく妊娠し、第二子を、その翌年には一人娘を生んだ。
次男坊も、同性愛の嗜好を持って育った。
彼もまた、父親に人を愛するすべを教え込まれてしまっていたのだ。
やがて成長すると、両親は彼に結婚することを望んだ。
年配になっていた長男は、自分の嫁と寝ても良いとまで言ってくれた。
兄もまた、父が弟にそうしたように、年の離れた弟に人を愛するすべを教えていたのである。
次男は兄の好意を鄭重に断ると、妹となら寝ても良いと告げた。
一番身近な女性になら、自分をさらけ出すことができるというのだった。
周囲は少しばかり躊躇を覚えたものの、
血を分けた妹がいちばん相性が良いのだろと割り切って、兄妹で寝室を共にすることを許した。
父親は長男が自分の妻のところに通ってくるときには、
長男の嫁のところに行くようにしていた。
三組の夫婦は互いに行き来して、幸せに暮らした。
※中世西洋の説話集に”エプタメロン”というのがあります。
そのなかで、こんなお話があります。
侍女に通おうとした息子をたしなめようとした未亡人が、侍女の身代わりに寝所に入ったまでは良かったのですが、
迫ってくる息子を相手に欲望に負けて、息子と契ってしまい、
息子は武者修行に旅質せ、生まれた娘は他所へ預けたのですが、
武者修行から戻った息子が連れてきた美少女は、なんと自分と息子との間に生まれたあの娘!
賢明な母親は事実を告げずに、息子は妹でも娘でも恋人でもある女性と、仲良く暮らしました。
めでたしめでたし。
こんかいのお話は、たぶんこの”エプタメロン”の一挿話が無意識に下敷きになっているような気がします。
話の出所をばらすのは墓穴を掘るようなものですが、
お話そのものが面白いので、紹介しておきます。
※昨日脱稿、本日あっぷ
処女の生き血に飢えている。
2019年12月09日(Mon) 06:24:08
処女の生き血が吸いたくなった。
クラスの子をおおっぴらに襲うわけにはいかないし、
遠くに棲んでいる従姉とはお正月か法事のときくらいしか顔を合わせない。
手っ取り早く処女の生き血を吸うには、妹に限る!
そう思ったとたん、隣の勉強部屋へと直行していた。
学校帰りの妹は、まだ制服姿。
濃紺のスカートのすそから覗く薄黒いストッキング姿が、妙にそそった。
抑えつけて首すじを咬んで、チュウッと吸った。
・・・・・・処女じゃなかった。
・・・・・・思いきり凹んだ。
妹は妹で、おっかない顔をして俺を見ている。
この街の吸血鬼が、処女ではない女の血を吸った後、なにをするのか知っていたから。
「・・・・・・どうするの?近親相姦になっちゃうよ?」
恐る恐る訊いてくる妹の怯えた顔が、さらにそそった。
俺は有無を言わさず、妹を組み敷いていた。
初めての感覚がどうだとか、わかったものじゃなかった。
女の子を犯すのは、初めてだったから。
妹にしたって、俺にしたって、経験豊富というわけではない。
兄を相手のセックスを、俺の両肩にしがみつくようにして、ひたすら耐えた。
「良いとか悪いとか、ぜんぜんわからなかった」
あとで妹は、俺にそう告げたものだが――正直な感想というものだろう。
それでも俺は、なん度も妹を犯していた。
昂奮したというよりも、悔しかったほうが大きかった。
そういうセックスはよくないと、そのときしんそこ思ったから。
以後セックスをするときには、自分も愉しみ相手も愉しませることにしている。
とにかく妹とは、こんなふうに期せずしてねんごろな関係になった。
お袋は二人の関係にすぐ気づいて、
「佐代子ちゃんを犯すのはよしなさい」
といって、自分が身代わりになろうとした。
二度目の近親相姦に、さすがの俺もたじろいだけど――
やはり衝動には勝てなかった。
俺はお袋の生き血を吸って、そのうえ吸血鬼の習性まで発動してしまった。
「最初のころは、乱暴なだけで良くなかったわよ」
だいぶ関係を重ねたあとでお袋がそういったのは、思いやりというものだろう。
それを言われたのは、回を重ねた末にお袋が、本気で声を洩らすようになったころのことだった。
お袋には悪かったけど、それからも妹との関係はひそかに続いた。
お互いに衝動をこらえ切れなかったからだ。
いや・・・こらえ切れなかったのは、俺のほうだけだったはず。
少なくとも最初のうちは。
「彼氏に悪いよ」
といって、妹は時々抱かれながら泣いた。
けれども一度肌を重ね合わせてしまうと、男女の関係になるものだ。
しらふのとき(吸血衝動のないとき)には、仲の好い兄妹だったし、
こういう関係になってからも、それは変わらなかった。
お袋も二人の関係が続いているのに薄々気づいていたけれど、もうなにも言わなかった。
守り通してきた操を無駄に捨てさせてしまったことを、俺はちょっぴり後悔している。
けれども初めて覚えた熟れた身体の記憶を、俺はずっと大事に抱き続けるのだろう。
親父には、ある時期正直に話した。
さすがに罪悪感もあったから、殴られてもしょうがないと思った。
けれども親父は、「自分の息子を殴れるか」といっただけだった。
殴られることで罪ほろぼしをしようとする俺の姑息さを、見抜いていたのかもしれない。
「母さんや佐代子を抱くときには、すこしだけ思い出すと良い。どちらにもちゃんとした相手がいるということを忘れるな」
と、親父は不良息子を諭した。
殴られるよりもずっと、あとを引いた。
女への衝動をそうかんたんに乗り越えられないことを親父は知っていたから、
それ以上俺が自分の妻や娘を抱くことに、とやかく口にすることはなかった。
ヘンな形だったとしても、俺がふたりを愛していたことを、わかってくれていたのかもしれない。
妹の彼氏は、じつは俺の親友だった。
学校帰りの妹を家に誘って、部屋で話しているうちにむらむらと来てしまい、人目を避けて関係をつづけていたのだという。
「処女の生き血が欲しいのなら、うちの美香なんかどうかな?」
彼は俺を咎めるどころか、むしろそういって、俺のために処女の生き血を用意しようとさえしてくれた。
美香というのは、彼の妹のことだった。
吸血鬼に妹を襲わせてくれようとした好意はとてもうれしかったけれど――
俺は真っ暗な顔をして、首を横に振った。
だって、お前の妹、処女じゃないから。
俺が女にしちゃっているから。
「一発殴ってもいい?」
そういった親友は、むしろにやにやと笑っていた。
「お互いに妹を交換して、犯し合っていたんだな」
俺たちは、声をあげて笑っていた。
彼は妹のことをまじめに考えていてくれていて、将来は結婚したいといった。
俺はむろん、大歓迎だった。
「佐代子ちゃんはいい子だし、ご両親も寂しがるだろうから、時々里帰りさせるよと彼はいった。
「そのときは、血を吸ってもいいから」
と、薄っすらと笑っていった。
「そのときには、俺覗いてもいい?」
ふたりはもう一度、声をあげて笑った。
そういうわけで、俺はまだ、処女の生き血に飢えている。
だれか、良い人知りませんか・・・?
性欲の強い男の子
2019年09月28日(Sat) 10:05:59
性欲のとても強い男の子がいた。
十代のうちから自慰だけでは飽き足らず、セックスを楽しむのを結婚するまでがまんできないと母親に訴えた。
母親は夫と相談したうえで、自分が息子の相手をすることにした。
実母の手ほどきを受けて、彼は性技の達人になり、やがて実母を夢中にさせるまでになった。
彼の兄が嫁をもらうと、兄の新居に出向いて兄嫁を犯した。
友人たちが結婚すると、そのたびに新居に押しかけて、新妻たちを片っ端から犯した。
けれども女たちは彼の性技に屈してだれ一人抗わず、
父や兄を含めた夫たちもまた「あいつの女好きはしょうがない」と、笑って済ませていた。
やがて彼も嫁をもらった。
ところがそれまで人妻ばかり楽しんできた彼は、処女である花嫁にどうしても関心を持つことができなかった。
困り果てたあげく、彼は自分の花嫁を、他の男に抱かせることにした。
最初に選んだのは、父親だった。
息子の初体験のために、自分の愛妻の操を犠牲にしてくれたことを感謝していたためである。
けれども父親は、息子の嫁を犯すわけにはいかないと、花嫁の処女を奪う役目を引き受けなかった。
つぎに彼が相談に出向いたのは、兄のところだった。
新婚そうそう新居に上がり込んできた義弟に犯されて以来、兄嫁は夫公認で彼の恋人になっていたからだ。
けれども兄もまた、義理の妹を犯すわけにはいかないと、その役目を断った。
新居を襲わせてくれた親友たちも、同じだった。
だれもが常識的な人たちで、彼らが好意から自分たちの妻を襲わせてくれたことを彼は知った。
とうとう彼は、新妻の実家に出向いた。
新妻の父親は、自分の一人娘をものにしたいという願望を、かねてから抱いていた。
そして、娘婿のすすめるままに、里帰りをした娘の寝室に忍び込んで、犯してしまった。
それと引き替えに、彼が義母を奴隷にしたのは、いうまでもない。
晴れて男の経験を持った新妻に、彼は初めて欲望を覚えた。
そして、父親に捧げた操を守ろうとして必死に抗う妻に息荒く迫って、彼女が夢中になるまで愛し抜いた。
妻の父親は娘婿が長年連れ添った妻を気に入ったことを悦び、娘と妻の婿として彼のことを迎え入れた。
母娘ながら、彼の女となったのである。
義理の親子は時おり妻を交換し合って、楽しく暮らした。
9月27日7:30 構想
結納のあと、ラブホテルの隣室で。
2019年04月28日(Sun) 07:22:05
雅恵さんとの結納がすんだあと。
まず雅恵さんのご両親が退出し、しばらく残っていた雅恵さんも、そろそろ帰りたそうな顔を泛べた。
父さんは、私が雅恵さんを駅まで送っていくから、きょうはここで解散にしようといった。
雅恵さんをお前の嫁にどうかと勧めたのは、ほかでもない父さんだった。
取引先の娘さんだということで、終始縁談を主導したのは父さんだった。
うちはいろんな意味で、父さん主導の家だった。
母さんもぼくも、父さんの言うなりに、ではきょうはこれでお開き・・・ということにした。
父さんが雅恵さんを連れて出ていくと、母さんが表情を改めて、ぼくにいった。
「雅恵さん、父さんとできているからね」
母さんの言いぐさは、結婚を控えた息子にとってはただならぬものだったけれど、
ぼくは表情も変えずにこたえた。
「知ってるよ。でも、今さらそれを言っても、仕方ないよね」
「そうじゃなくてさ」
母さんは、ぼくと2人きりのときにだけ泛べるイタズラっぽい表情になって、いった。
「あとを尾(つ)けてみない?面白いかも」
ぼくもくすぐったそうな顔になって、肯いていた。
ふたりはぼくたちよりも100mほど前を連れだって歩いていた。
駅とは反対方向だった。
「Mホテルのほうだよね」
ぼくが母さんにいうと、
「・・・ったく、しょうのないひとね」
と、母さんもぼくに応じた。
息子の嫁になる女が、夫と浮気をしている――
そんな事実が、母の女の部分を刺激しているのを、なんとなく感じた。
雅恵さんは、恰好よく着こなしたよそ行きのスーツのスカートをさばいて、大またに闊歩していた。
肌色のストッキングに包まれた健康そうな肉づきのよいふくらはぎが、初々しくも、淫らにも、ぼくの目に映った。
父さんは、雅恵さんのパンストを、どんなふうに脱がすんだろう?
ふと浮かんだ妄想が、ぼくのことを苦しめるどころか・・・むしろ昂らせてしまっていた。
そう、ぼくは昔から、母さんの浮気現場をひっそり覗き込んで、昂奮してしまうような子だった。
父さんはぼくのそんな性癖を知ったうえで、自分の愛人を息子の嫁にと仕向けたのだろうか?
「あんたのこと、父さんにもバレバレなんじゃない?」
母さんも傍らで、ぼくの心のなかを読み取ったようなことを囁いて、白い歯を見せて笑った。
ぼくも照れくさそうに、白い歯をみせて笑い返した。
Mホテルに入る直前、雅恵さんは後ろを振り返り、ちょっとだけ警戒の視線を周囲に投げた。
眉間を止せた険しい表情をした雅恵さんを、ぼくは初めて目にした。
女が後ろめたいことをするときには、こんな険しい顔をするのだ――ぼくは改めて、思い知った。
父さんがぼくの未来の花嫁を伴ってラブホテルにしけ込んでいくところを、
ぼくは恥知らずにも、ドキドキと胸をときめかせて、見守っていた。
母さんが、傍らからぼくのわき腹を小突いて、いった――
「あたしたちの入ろうよ、あのホテル」
え?と見返る間もなく、母さんはぼくのわきの下に腕をすべらせた。
にわかカップルでも、母さんは見た目が若かったから、周囲には愛人同士で通るかもしれないと、ぼくはおもった。
もっとも・・・
ほんとうは、にわかカップルでもなんでもない。
ぼくと母さんの関係は、父さんさえも認める仲だった。
「母さん、きょうは魅力的だね」
30代独身のキャリアウーマンといっても通りそうな、さっそうとしたいでたちの母さんを、ぼくは今更のように褒めた。
「きょう”も”でしょ?」
にこやかにやり込める母さんの顔つきは、もう年上の愛人のそれに変貌している。
女のひとが良からぬことをするときは、決して険しい顔つきばかりをするものではない、と、ぼくはおもった。
息遣いをはずませての交接は、ひどく長く、そしてしつように、ベッドのシーツを乱しながらつづいていた。
「隣の部屋で父さんが雅恵さんを抱いていたとしても、ぼくはなんとも思わない」
強がるぼくを、「嘘おっしゃい」とからかいながら、
母さんはストッキングを片方だけ脱いだ太ももを見せつけてくる。
「今ごろ雅恵さんも、父さんにこんなふうにさせられていると思うわ」
かんたんな挑発にひっかかって、ぼくはなん度めか、母さんのうえに馬乗りになってゆく。
結婚した後も、きっとぼくは、雅恵さんが父さんと外で密会することを黙認するだろう。
父さんも、そういう留守宅にぼくがあがりこんで、自分の妻を抱かれてしまうのを、きっと黙認してくれるだろう。
こんな関係を、雅恵さんはどこまで知っているのだろう?
「だいじょうぶ、あのひと、なにもかも知ったうえで、うちに嫁いでくるから」
母さんはまたもや、ぼくの心のなかを見抜いて、いった。
不覚にもほとばしらせてしまった粘液がストッキングを濡らすのに顔をしかめながらも、
「雅恵さんのことも愉しませてあげて」
と、ぼくのペ〇スをいとおしげに撫でさすった。
みすみす
2019年04月08日(Mon) 07:44:54
つきあっている人がいるんです。
まだ処女だけど、初めての体験はそのひとと済ませます。
私、こんな女ですけど・・・それでも結婚してくれるんですか?
そんな風変わりなことを告げたお見合い相手に、ぼくはすっかり虜になっていた。
彼女は予告どおり、交際していた男性と婚前交渉を済ませて、ぼくのところに嫁いできた。
そして時折実家に戻っては、実の父親にまで抱かれていた。
彼女の兄ふたりも、結婚前から妹の肉体を識っていた。
それでもそんなことはお互い口にせずに、ぼくたちは親戚づきあいをつづけていた。
妻が近親相姦を遂げている。
嫁入り前から自分の父親や兄を識っている。
そうと知りながらぼくは彼女と結婚して、
自分の新妻が公然と耽る近親相姦を黙認している――
どうしてそんなことを、口にすることができるだろう?
けれどもあるとき義兄さんが、ぼくにいった。
カズ子にはいつも、満足させてもらっているよ。
あいつ、いい身体しているだろう?
ぼくは思わず、こたえていた。
――ぼくの家内、いい身体をしているでしょう?
義兄さんはそれ以上なにも言わなかったが、くすぐったそうに笑った。
ぼくも、くすぐったそうに笑い返していた。
縁結びを好む娘
2019年04月08日(Mon) 07:37:13
娘は自分の友達を、息子に紹介した。
それからべつの友達を、わたしに紹介した。
ふた組のカップル(片方は不倫カップル♪)が成立したのを見届けると、
自分の処女を捧げた男に妻を紹介した。
わたしの恋人は次男の嫁になり、
我が家の嫁におさまってからも、夫の目を盗んで義父へのセックス奉仕を怠らなかった。
妻が愛人とデートに出かけるときは、
嫁いだ娘も実家に戻ってきて、
すっかり成長した若妻の肉体で、わたしを慰めた。
新妻の純潔を父親に捧げた次男は、
嫁と妹とがわたしを取り合うのを、胸をズキズキとわななかせつつ、覗いて愉しんでいた。
時空を超えた男
2019年03月14日(Thu) 07:00:30
目を疑った。
行き交う電車の色が、ウグイス色一色だった。
いつも見慣れているステンレスの地の色がぴかぴかとした、あの電車ではなかった。
新型の電車なのか?それにしてはやけに古くさく、やぼったい。
ふと周りを見回すと、数秒前まで見ていたはずの景色が一変していた。
自分の住まいであった無機質で真四角な高層マンションは跡形もなく、
せいぜい高くて二階建ての古びた木造の商店が軒を連ねている。
道路の輪郭だけが、数秒前の記憶と完全に重なり合っていた。
タイムスリップ?
そういうことか・・・
なぜか、すんなりと納得してしまった。
だとしたら、一体これから、どうやって暮らしていけばよいのだろう?
譲一は途方に暮れて、夕焼け空を仰いだ。
さいごの記憶は、妻の華恵といっしょにいるところだった。
華恵のほかに黒い影のような男がひっそりと佇んでいた。
そいつとはつい先日、知り合ったばかりだった。
初対面のはずなのに、どこかで逢ったことのあるような気がした。
そんなはずはないのだ。
彼は自分の父親よりもずっと齢が上で、そんなに高齢な知り合いはほとんどいなかったのだから。
けれども彼とは、妙に急速に打ち解けていった。
まるで蟻地獄に蟻が落ちてゆくように、引きずり込まれるような感じだった。
同性のくせに、まるで恋人のように譲一の首すじに唇を吸いつけてきた。
かすかな痛みとともに、血を吸い上げられる感触を覚えたが、なぜかそのまま許してしまった。
逢うたびにそうされていって、時には貧血を覚えるほどだったのに、吸血を許しつづけた。
なん度めかに吸われたとき、彼は「きみの奥さんの血も吸いたい」と囁いた。
ふつうの理性が働いていたら、とうてい許すはずはないのに、
なぜか彼になら、華恵の血を吸わせてやってもいいような気がして、気軽に頷いてしまっていた。
「人妻の血を吸うときには、恋人同士のように睦んでしまう」とさえいわれたのに、
心配だからと目のまえで華恵の血を吸ってもらい、結婚してまだ間もない若妻の血は、たっぷりと抜き取られていった。
ことのついでにと彼が華恵にのしかかってゆくのを、制止するすべを忘れていた。
華恵もまた、長年の恋人を受け入れるようなたやすさで、いともあっけなく堕ちていった。
その後の記憶が、妙にぼやけている。
華恵を独り占めにしたい――そういわれて、同意してしまったような記憶がかすかにあった。
同意してふたたび血を吸われ、気がついたら異世界にいた。
これからどうすればよいのかのあてもないのに、うろたえることもなく、自分の選択を後悔していない自分が不思議だった。
「きみ、どこに行くの?」
声をかけてきたのは、若い男だった。
肩までかかる長髪が、やはりなんとなく古くさくて、やぼったい。
着ているTシャツも、ファッションなどにほとんど興味のない自分の着ているもののほうが、まだしものような気がした。
スラックスの下からのぞくくるぶしが、紺の靴下を通して透けている。
ストッキングのように薄い靴下を履いているなあと、何気なくおもった。
そういえば昔父が、勤めに出ていく時にこんな靴下を履いていたっけ、と、ふと思い出した。
「どこから来たかよく憶えていない?記憶喪失か?困ったな」
その若い男は当惑しながらも、譲一とかかわってしまったことをさほど苦にしていないようだった。
古い商店街を抜けたところが、譲一の時代とは同じ広さの公園があって、砂場の奥にはベンチがあった。
当時はやっていたらしい炭酸飲料の名前が、ベンチの背もたれに派手派手しく描かれていた。
どことなく丸みを帯びた、古くさい字体だと譲一はおもった。
公園の真ん中には時計台があって、すでに6時をまわっていた。
そういえばあの老人は、今夜は華恵と過ごすと言っていた。
いまごろ華恵はまた、あの老吸血鬼に抱かれているころだろうか、と、ふと思った。
嫉妬も怒りもわいてこないのが、不思議だった。
この時代の子供たちは皆良い子だったらしく、公園にはすでに人影がなかった。
「少しずつ思い出してみて、きみの名前はなんていうの?お昼はどんなご飯を食べた?」
ベンチで隣り合わせに腰かけたその若い男は、偶然行き会った同年代の男のために、稚拙な親切心を示してきた。
さすがに、妻の生き血を吸血鬼に吸わせていたなどとは、口にできなかった。
こんどこそ、「き〇がい病院」に通報されてしまうだろう。
「やれやれ、困ったな・・・」
青年は何気なくスラックスをたくし上げて、靴下を引っ張り上げた。
脛まで丈のある紺の靴下が、淡い体毛の浮いた脛をじわりと染めた。
譲一は、喉が引きつるのを感じた。
気がつくと青年の足許に四つん這いになって、足首をつかまえて、ふくらはぎを吸っていた。
薄い靴下の感触が、サラサラと唇をよぎった。
「う?何すんだよ?」
青年はさすがに怪訝そうに眉をしかめたが、譲一の行為を強いてやめさせようとはしなかった。
それが命取りだった。
譲一の犬歯が、まるで勃起するように突き出して、尖った牙に姿を変えた。
犬歯の切っ先がじりじりと疼き、その疼きに耐えかねるように、譲一は牙を青年のふくらはぎに埋めた。
「ああッ!!」
青年は低くうめいた。
引き抜いた牙にも、口許にも、生温かい血が散っている。
青年の履いている薄地の紺の靴下は、縦に大きな裂け目を走らせていた。
薄地のナイロンに透ける蒼白い皮膚が、譲一の渇きをそそった。
譲一は青年の足首をもう一度つかまえると、ふたたび牙をふくらはぎに擦りつけた。
薄地のナイロンの舌触りを、ひどくしなやかだと感じたときにはもう、容赦なく再び喰いついていた。
したたかに吸い取った血液は、美酒のように譲一の身体を熱くした。
靴下を見る影もなく咬み破ってしまうと、もう片方のスラックスも引きあげて、血に濡れた唇を紺の靴下の上から擦りつけた。
なよなよとした薄いナイロン生地の舌触りをぞんぶんに愉しむのを、それでも青年は止めようとしなかった。
時折、「あー」と声をあげながらも、譲一の気が済むまで、血を吸われつづけていた。
「気分、落ち着いた」
譲一がようやく行為に耽るのをやめたとき、青年は力の抜けた声を投げてきた。
「すまないです」
決まり悪そうに譲一はいった。
けれども、口に残る青年の血の味に陶然としてしまうのを、抑えることができなかった。
「吸血鬼だったんだね」
「どうやらそうみたいです」
「自分のことを憶えていないわけだ」
「そういうことなのかもしれません」
「もう吸わないの?足りたかな?」
青年はベンチに浅く腰かけたまま、身体の力が抜けたようになっていた。
「どうやら、気が済んだみたいです、ありがとう」
青年は、「いいえ」と言っただけだった。
苦情を言い立ててもおかしくないはずなのに、想像をかけ離れて穏やかな態度だった。
「このへん、吸血鬼が出るらしいんだよね、ぜんぶきみの仕業なのかな」
人を襲ったのは初めてだと、譲一は正直にこたえた。
「だとすると、きみたちはドラキュラ映画と違って、そんなにたくさんの血を必要としていないんだろうね」
青年はいった。
彼によると、吸血鬼が出没するようになったのは、かなり以前からのことらしい。
ここは下町だから、だれがなにをしているのかがすぐにわかってしまう、
だから、タバコ屋の娘が襲われて血を吸われたのも、八百屋のおかみさんが配達の帰りにこの公園に連れ込まれたのも、
街じゅうが知ることになるのだという。
けれども被害届は一件も出ていないし、もちろん死んだ人もいない。
むしろ街の人は、変わった病気の持ち主なのだろうと、吸血鬼に同情をしているらしかった。
「きみがよそから来たのだとしたら、居心地よく過ごせると思うよ」
青年はそういって、もしも寝る場所もないのなら、うちに泊めてやるから――と言ってくれた。
彼女と一緒に暮らしているんだけど、できれば無理強いしないでほしい、血はぼくがあげるから、と、青年はいった。
青年の彼女だという君枝がバイト先から戻って来たのは、ふたりが家に着いて30分ほど経ったころだった。
「アラ、お客さん?」
そういって譲一を眺めるまなざしには、無警戒な親しみが籠められていた。
譲一は、すこし後ろめたい気がした。
そんな気分を察したものか、青年はすぐにいった。
「さっき仲良くなったばかりなんだけど、この街に来た吸血鬼、きみのことはいきなり襲わないって約束したから大丈夫」
「君枝。ぼくの彼女です、よろしくね」
君枝さんは、相手が吸血鬼だと聞かされても、さほどびっくりしなかった。
吸血鬼のうわさが広まっているからかなと思ったが、
君枝さんは彼のことを愛していて、彼のいうことは100%信じているからだとあとで知った。
君枝さんは色白で、長くて豊かな黒髪をむぞうさに肩に流していた。
輪郭のはっきりした面差しに、太い眉、細い目、丸い小鼻。
決して美人ではないが、和やかな性格が顔に出ていた。
好きな同士は、顔つきまで似るのだろうか。ふたりはどことなく、似た雰囲気を帯びていた。
バイト帰りという君枝さんは、黄色のトレーナーに濃紺と緑のチェック柄のスカート、紺の透けるハイソックス。
このころの流行りなのだろうか、大人の女性というよりは、女子大生のような雰囲気だった。
服装も、髪型も、和やかな目鼻立ちにしっくりと似合っていた。
「おっと、あぶない」
青年は君枝さんにおどけてみせた。
「ハイソックス履いていると危ないよ、彼、ハイソックスを履いた脚に咬みつくのが好きなんだ」
自分の習性をあっけらかんとばらされて、譲一はひどく決まり悪いものを感じた。
3人の不思議な共同生活は、けっこう長く続いた。
譲一は君枝さんと2人きりになることを避けて、青年がいないときに君枝さんがバイト先から戻ってきたときには、
入れ違いに公園でぶらぶらすることにした。
公園には若いお母さんが子供を連れてきていた。
小さな子供とはなるべく距離を置こうとしたけれど、顔見知りになった30代のおばさんは、
「あんた吸血鬼さんだろ、遠慮しないでうちの子の血を吸いな、いつもこの公園にいるなら、この子と仲良くくしてね」
といって、息子を引き合わせてくれた。
彼女の息子は下町の子にしては育ちがよさそうで、いつも半ズボンの下に白のハイソックスを穿いていた。
譲一がハイソックスを履いたままのふくらはぎに咬みついて、白のハイソックスを真っ赤に濡らしてしまうと、
「おやまあ、行儀の悪い」と口を尖らせたけれど、
血を吸われた男の子もお母さんも、彼を嫌悪するそぶりはみせなかった。
初めてモノにした人妻も、このおばさんだった。
長い靴下を履いた脚に魅かれるという譲一の習性を察すると、
つぎの日からはスカートの下に肌色のストッキングを穿いて公園に現れた。
息子が友だちと砂場遊びに夢中になっている傍らのベンチの裏、
彼女は咬み破られたストッキングを穿いたままの脚をばたつかせながら、スカートの奥を熱い粘液で濡らされていった。
そろそろ青年が仕事から戻ってくる頃だと見はからって公園からもどったある日の夕方。
思惑が外れて、青年の帰宅はまだだった。
「彼、今夜は帰りが遅いんだって」
いつものように和やかに迎え入れてくれた君枝さんは、
初めて会った時の黄色のトレーナーに緑のスカート、それに紺のハイソックスを履いていた。
「ハイソックスを履いていると脚を咬まれちゃうからね」
と、恋人にさりげなく禁じられた装い――敏感な目線を足許に感じて、君枝さんはちょっとどぎまぎしていた。
初めては首すじにした。
敬意を込めた接吻にしようとしたけれど、やはり気持ちが上ずって、昂ぶりながら喰いついてしまった。
抱きすくめた腕のなか、君枝さんは「あっ!」と声をあげ、あげた声に自分で戸惑いながら、
全身であらわすうろたえを、抑えかねていた。
チュウチュウと音を立てて血を吸い始めると、
「ゴメン、タカシ、ごめんね・・・」と、恋人の名前を呼んだ。
いよいよお目当てのハイソックスの脚もとにかがみ込んでゆくと、君枝さんはいっそう、そわそわと落ち着かないようすになった。
ハイソックスを咬み破られるという行為に、いかがわしさ、いやらしさを本能的に感じているようだった。
タカシのハイソックスは硬質な舌触りでかすかな光沢を滲ませていたが、
君枝さんのハイソックスは同じ透ける靴下でも、地味なタイプだった。
そんなところにさえ、君枝さんの地味な性格が出ているような気がしたし、
自分のためにわざわざおニューのハイソックスをおろして脚を通してくれた気遣いに感謝しながらも、
恥知らずにも、その真新しいナイロン生地にくまなく唇や舌を擦りつけて、
同居を許してくれた青年の恋人の足許を、恥知らずなよだれで濡らしてゆく行為に熱中してしまっていた。
長いこといっしょに暮しているふうなのに、君枝さんはまだ処女だった。
「あなたに処女の血を吸わせるために、彼は私に手を触れないの」
と君枝さんは言ったけれど、少なくとも半分は事実だった。
それからさらにしばらくのあいだ、譲一は君枝さんとタカシとの共同生活を楽しんだ。
タカシはさいしょの夜と同じように、意図的に帰りを遅らせて、譲一を君枝さんと2人きりにしてくれた。
そういうときには君枝さんは必ず譲一の好きなハイソックスやストッキングを穿いて、
うら若い血を心ゆくまで吸い取らせてくれた。
それでもタカシへの想いは一途で、タカシが帰宅してくると約束した時間が近づくと行為をやめようといって、
何事もなかったかのようにきれいに部屋を掃除して、恋人の帰宅を迎えるのだった。
タカシが君枝さんへの吸血を許してくれたのは、譲一が無理無体に自分の恋人を犯したりはしないとわかったからなのだろう。
譲一はタカシの信頼を裏切るまいと思った。
タカシはそれからもしばらくのあいだ、君枝さんには手を触れないでいて、
同居している吸血鬼のために処女の生き血を愉しませてくれた。
「いつかは結婚するんだろう?」
2人を前に譲一が無遠慮に訊いたとき、タカシは「もちろんさ」とはっきりと答え、
そんなはっきりとした答えを初めて聞いたらしい君枝さんは、嬉しそうに誇らしそうに、タカシのことを見つめるのだった。
「きみ、人妻が相手の時には必ず犯す習性をもっているんだよね?」
タカシの質問に、譲一はそうですと答えると、タカシは言った。
「君枝と結婚してからも、彼女の血を吸っていいからね」
ふたりのやり取りを、タカシの傍らに控えていた君枝さんは、感情を隠した顔つきで、ただ黙って聞いていた。
新婚旅行から帰って来た二人とは、しばらく疎遠になった。
いつまでも同じアパートで暮らすわけにはいかないから、譲一はタカシに保証人に立ってもらって、別にアパートを借りて住んでいた。
公園で知り合ったお母さんや、成長して年頃になった少年少女を家にあげては、餌食にしていたのだ。
だれもが、吸血に耽る彼のことを、とやかくはいわなかった。
処女の子には、本人が望まない限りそれ以上手を出さなかったし、
貧血でつぎの日に学校を休む子もいなかった。
彼の存在は公然のものだったが、さほど苦にはされていないのだった。
タカシと結婚した君枝さんが、そんな譲一のアパートを独りで訪れたのは、新婚一か月経ったころのことだった。
薄茶のよそ行きのサマースーツが、スリムというにはちょっとだけ豊かな体格を、引き締めてみせていた。
土間に滑らせたつま先は、肌色のストッキングに包まれていた。
君枝さんが大人の女性になったのを、譲一はなんとなく実感した。
「来てくれないから、来ちゃいました」
おどけた口調だったけれども、語尾が緊張に引きつっているのを、譲一は敏感に聞き分けた。
「あっ、タカシも逢うこと賛成してくれたから」
新婚そうそうに妻に浮気をされちゃうのって、キツいんじゃないかな・・・譲一はふと言いかけたけれども、
言葉にすることのむごさを感じて、言いかけたセリフを呑み込んだ。
けれども君枝さんは、彼が思っていたのと同じことを口にした。
「新婚早々の奥さんに、浮気されちゃうの、あのひともかわいそうね」
おだやかで、落ち着いた声だった。
「子どもが欲しいの。でも事情があって、あたしたちの子というわけには、いかないの。手を貸して」
君枝さんは小手にかざした両手を合わせて、懇願してみせた。
ほとんど男性経験のない身体は初々しく、却ってそそられてしまった。
初めてハイソックスを履いて脚を咬ませてくれたときと同じように、彼女はぶきっちょに振る舞って、
「タカシ、ごめん」と呟いて目を瞑る。
不器用さがかえって相手をそそり立てるのを、たぶん彼女は自覚していない。
薄茶色のスーツに身を包んだ若妻を畳のうえに組み敷いて、譲一はスカートの奥になん度も果てた。
いままでなん人もの女を抱いたけれど、これほど愛した女はいないと感じた。
向こうの世界に置いて来た華恵のときでさえ、どうだろうか。
彼女の素肌が、彼の肌によくなじむのを感じた。
同じ血が流れている――そう感じたのはきっと、彼女の生き血をそれだけふんだんに、わが身に摂り込んだためだろう。
咬み破られた痕を幾すじも走らせたストッキングを穿いた脚が、古びた畳のうえを、淫らにくねった。
君枝さんは明らかに、昂奮していた。
何年かが過ぎた。
その後譲一は、処女の味を覚えた。
処女は華恵一人にしておくつもりだったが、男としての欲求には勝てなくなっていた。
公園で襲った少女たちのなん人かは、彼の手で大人の女になった。
そのときの様子を、あとで生唾を呑み込みながら聞き入っていた男の子たちのなかには、
譲一が犯した少女と付き合って、結婚したものもいた。
そういう新婚家庭には、譲一は遠慮なくあがりこんだ。
時にはそうした新妻たちと旧交を温め合うこともあったが、亭主たちはとやかくいうことはなかった。
あとから話を聞いて昂奮していたかつての少年のころと同じように、夫たちは生唾をのみ込んで、
妻がヒロインの不倫ビデオを生の演技で愉しんでいた。
そんなとき、ひとりの男の子を連れたお母さんが玄関先に現れた。
「来てくれないから、来ちゃった」
そのひとは、あのときとおなじ言葉を口にした。
「うちの子の血を吸ってくれるかな、良く言い聞かせてあるから、仲良くしてね」
そういってパートに出かけていった女は、数時間後に戻って来ると、
紺のハイソックスを血で濡らしたまま気絶している息子の傍らに寝そべって、
息子のハイソックスを咬み破った牙に自分の穿いているストッキングを気前よく咬み破らせてしまうのだった。
譲一は、気がついていた。
君枝とタカシとは、実の兄妹だったのだと。
それでも愛し合った二人は、二人で暮らしていく道を選び、
子どもの不幸を恐れたために、自分たちの育てる子の父親は、別の男性をと願ったのだと。
そして、いま目のまえで、ハイソックスの足許を晒し、気前よく咬み破らせてくれている少年は、かつての自分自身なのだと――
やがて少年は大きくなって、華恵という名の恋人を連れてきて、処女の生き血を吸わせてくれるのだろう。
そして結婚してからも、ふたりの関係を許してくれて、やがて最愛の妻を自分が独り占めにすることを許してくれて、時空の彼方に旅だつのだろう。
自分はこれから華恵と、いつまでいっしょに歩いていくのか。
きっと自分と華恵との間に子供が生まれ、その子を愛することで、吸血鬼から人間に戻っていくのだろう。
かつて迷子になった自分を、靴下を破らせて血をあてがってくれた父親と、
身をもって女の身体を教えてくれた母親を想って、
譲一は知らず知らず、過去の世界に放り出されたあのときのように、天を仰いでいた。
身近なところで・・・
2019年02月25日(Mon) 06:56:11
未亡人とヤりたい!
ふとわれにかえれば、うちの母も未亡人だった・・・
法事の帰り道、助手席に伸びた黒ストッキングの脚に欲情を覚えて、
気がついたら車をラブホテルに乗り入れていた。
母はなにも言わずに車を降りて、そこで2時間いっしょに過ごした――
社長令嬢とヤりたい!
ふとわれにかえれば、俺は社長の息子だった。
19歳の妹は、披露宴帰りの着飾った姿――
馬子にも衣裳とは、よくいったもの。
気がついたらその披露宴のあったホテルに、チェックインしていた。
妹は両親に、兄さんと寄り道して帰るからと告げ、俺は彼女の新婚初夜を奪っていった――
人妻の情事を覗きたい!
ふとわれにかえれば、浮気の常習犯になっていたうちの家内。
相手はわたしの親友だった。
ふたりの交際を黙認する代わり、覗かせてくれと頼み込んだ夜。
自分が留守のときの自宅が濡れ場となることに、いままでにない昂奮を覚えていた――
祖母への夜這い。
2018年08月27日(Mon) 22:29:44
14歳の孫が56歳の祖母に夜這いをかけた。
祖母は孫の成長をよろこんで、そのまま孫の欲望を受け入れた。
祖父は目を覚ましていたが、終始眠ったふりをしていた。
翌朝祖母は娘に訊いた。
「あの子にはあなたが教えたの?」
エエ私が教えましたと答える妻に、夫は内心仰天したけれど、娘婿の顔色を察した祖母は、
「よくやったわね、秀一さん(婿の名)にも感謝しなさいよ」
と娘にいって、彼の反発に機先を制していった。
クラスに気になる子がいるので練習したかったという孫のため、
祖母と母とは代わる代わる、彼の練習に手ほどきをして、
夫たちは賢明にも、終始見てみぬふりを決め込むのだった。
ひと夏が過ぎて、都会に戻った孫は、秋には気になるあの子を誘い出し、
首尾よく本懐を遂げたという。
披露宴のホテルにて
2018年08月26日(Sun) 09:12:01
披露宴の時間が迫っていた。
ここはホテルの一室。
姪の結婚式に一家で招待されて、遠方から来たこともあってあてがわれた部屋だった。
礼服に着替えて隣室の息子の部屋のドアを開けると、
そこでは妻の弘美がベッドの上で、息子の康太とセックスの真っ最中だった。
「オイ、そろそろ好い加減にしないと、遅れるぞ」
私の声に弘美は振り向きもせずに肯きかえしてきて、
「わかってる・・・もうちょっとで、お、わ、る、か、らっ・・・」
と、返してきた。
息子のほうは返事をする間も惜しんで、妻との行為に熱中している。
はぁ・・・はぁ・・・
せぃ・・・せぃ・・・
せめぎ合う声にならないあえぎ声がふた色、部屋に満ちた。
30分後。
弘美と康太はおなじ部屋から、それぞれ着かえを済ませて姿を見せた。
「ちょっと・・・」
ジャケットの襟を直してやるその姿は、母親そのものの仕草だったが、
すべてを知っているわたしの目には、愛人に対する気づかいのように映る。
康太はさっきから、すこし前を歩く弘美の足許に、視線を集中させていた。
「きれいだね、母さんの脚」
康太は母親に聞こえないよう声をひそめて、わたしに囁いた。
てかてか光る肌色のストッキングに彩られたむっちりとしたふくらはぎが、
ホテルの廊下を颯爽と歩みを進めてゆく。
康太は披露宴の済むのを待ちかねているに違いない。
新郎新婦が新床を共にするのと同じ刻限、彼はわたしの妻を礼服姿のまま犯しているに違いないのだから。
弘美と康太の関係を知ったのは、長期の出張から戻ってすぐのことだった。
弘美は康太のことを「あなた」と呼び、康太は弘美のことを呼び捨てにしていた。
「おい、母さんを呼び捨てにするなんて」
わたしがそう咎めると、彼は羞ずかしそうにしながらも、
「でももう、そういう関係なので」
といった。
大学から戻ったときにムラムラとしていて、居合わせた妻に挑みかかったのがきっかけだった。
「母さんとはどうなんだ」
わたしが訊くと、
「いい身体しているよ、あと優しいし」
と、てらいもなく言ってのけた。
弘美は聞こえないふりをして、台所で洗い物をしていた。
「さいしょからさっきみたいに、仲良くなっちゃったのか?」
多少の嫉妬と悔しさを込めて、わたしは訊いた。
風呂あがりのあと、夫婦の寝室で乱れ合っている2人の痴態をふとのぞき見してしまったのを、それとなく告げたのだ。
「ううん、さいしょのときはすごく暴れた」
「終わったあとは、ぼくにわからないようにちょっと泣いたみたい」
「そのつぎに母さんを抱いたのはいつ?」
「その夜すぐに」
「母さんどうだった」
「”どうしても我慢出来ないの”って訊かれた」
「我慢できないって答えたんだな」
「ウン、そしたら、絶対内緒にするんだよ、外では人に迷惑かけないようにって」
母親らしい訓戒を垂れたあと、弘美は目を瞑り、すべてを息子にゆだねたのだった。
それまでは身なりにあまり気を使わなかった弘美が、
出張から戻って来てからはいつも、こぎれいに装うようになっていた。
たまたま康太が帰宅したとき、弘美も法事から戻ってきたところだった。
黒一色の礼服にひざ小僧の透ける黒のストッキング姿。
息子が欲情するのも無理はなかった。
それ以来。
弘美は康太の奴隷に堕ちていった――
披露宴が滞りなく済むと、康太は弘美の手を引くようにして、そそくさと会場をあとにした。
「若い人同士の二次会があるみたいだけど」
わたしがそう言っても、康太の耳には入らなかった。
「母さんのほうが良い」
そう告げると、今夜の弘美はぼくが独り占めにするからね、と、わたしに宣言した。
「好きにしなさい、わたしはちょっと出てくるから」
久しぶりの都会だった。顔を出したい店のいくつかを頭に描きながら、
わたしは妻と息子の二人きりの時間をつくってやろうとしていた。
どうしてこんなに、妻と息子の情事に協力的なのか?
応えることは難しい。
けれども息子は言っていた。
「(さいしょのときは)すごく暴れた。ぼくにわからないよう、ちょっと泣いた」
それでじゅうぶんだった。
弘美はわたしの妻として操を守ろうとして、果たせなかった後はちょっと泣いてすべてを入れ替えた。
涙の乾いたあと、弘美はわたしの妻から康太の愛人に変わったのだ。
長く絶えていた夫婦の営みが復活し、以前よりも熱っぽくなったのも、それ以来だった。
夫婦としての義理を果たしながら、息子との愛の時間もそれ以上に頻繁につくった。
「母さんはもう、貴男の持ち物なんですからね、しっかり愉しませてちょうだいね」
母親に背中を押されて、寝室に入っていく息子の後ろ姿。
ちょっとだけ愉しむつもりだった覗きが、いちぶしじゅうを見届ける結果になった。
これで良いのだ、と、思う。
息子は結婚するまで、母親を相手に性欲を満たし、
わたしはそんな息子の成長を慶びながら、妻の痴態を覗くという隠微な歓びにもめざめていった。
いもうと
2018年07月07日(Sat) 08:23:09
「死んじゃう、死んじゃう・・・」
吸血鬼になった俺に血を吸われるとき、妹はいつもそう呟きつづけていた。
ぐびりぐびりと喉を鳴らして、情け容赦なく血をむしり取ると、
貧血になって体重を預けかかった妹を受け流し、そのままたたみのうえに横たえてゆく。
空色やピンクのハイソックスのしなやかさに引き込まれるように、唇をふくらはぎに吸いつけると、
「イヤ・・・イヤ・・・」とべそを掻きながらも、素直に咬まれていった。
少年時代、もっとも多く吸い取った処女の生き血は、妹のものだった。
卒業式のあと、謝恩会から1人で戻った妹を、
俺は喉をカラカラにしながら待ち受けていた。
立ちすくんだ白のハイソックス姿が眩しくて、気がついたらもう、首すじを咬んでしまっていた。
大人びた晴れ着を汚されまいとした妹は、首すじに密着してくる飢えた唇を、引き離すことができなかった。
それをよいことに、俺は妹のブラウスを引き剥ぎながら、喉を鳴らすのを止めなかった。
叱責する母親の怒声を正座しながら受け流して、傍らの妹をかえりみると、
太ももの奥から垂れた血で白のハイソックスを汚した妹が、
べそを掻き掻きこちらを見ていた。
お前はもう、俺の女だからな――
チラッと送った視線にそんな想いをこめてやると。
――わかってる。
と言いたげな黒い瞳が、まだ憂いを帯びていた。
中学に上がった妹の制服姿は、俺の好餌になっていた。
吸血鬼になってしまった俺が妹を襲うのを、母は見て見ぬふりをするようになった。
俺がさいしょに識った女の身体は、母親のものだった。
父の写真のまえで、なん度も愛し合ってしまうと、
母親はそれ以上もうなにも言わずに、俺が実の妹を犯すのを、見て見ぬふりをしたのだった。
それ以来。
怖いもののなくなった俺は、道行く女子高生や主婦を、手当たり次第に襲っていって、
家に引きずり込んでは生き血を吸い、犯していった。
周囲は体面を気にする旧家や良家ばかりだったので、
俺の悪行は被害者の家族たちによって隠蔽されて、表に出ることはなかった。
ひとつだけ自慢できるとしたら、襲った女のだれひとりとして、本気で愛さない女はいなかったことだろう。
もてあそぶつもりなど毛頭なく、俺は彼女たちに真剣に恋をしていた。
追い詰められた彼女たちは、だれもが迷惑そうに顔をしかめながらもスカートの奥をさらけ出していって、
ときにはしんけんに抱き返して、言葉にならない意思を伝えてくれるものもいた。
妹は美しい女に成長して、やがて結婚が決まった。
母親は、兄妹姦をくり返す俺たちを、正しい道に引き戻そうとしたらしい。
「いつかはそうなることだから」と諭された俺は、やむなく妹の結婚に同意した。
妹ほどのパートナーはついにいなかったので、喪失感は半端ではなくて、
結納のあと帰宅した妹を、スーツ姿のまま押し倒し、
パンストを引き裂いて、ブラジャーをはぎ取って、
熱く滾る粘液をほとび散らしながら、婚約祝いを果たしていった。
妹の結婚相手は、母親の勤め先の上司の息子だった。
母親がその上司とずっと以前から付き合っていたのを、俺はずっと前から知っていた。
生活を支えるのに仕方がなかったとはいえ、母親が許せなかった俺は、
そいつと同じようにして、父親の写真のまえで母親のブラウスをはぎ取ったのだった。
――母娘ともども、親子でものにしてやったのだ。
上司親子のせせら笑いが聞こえるような気がして、
その晩はずっと、母親と妹の寝室を行き来しつづけて、
代わる代わる生き血を吸い取り、抱きすくめていった。
その日から、俺の復讐が始まった。
――母娘ともども、愛してやるよ。
そんなふうにほくそ笑まれた俺は、やつらの女家族を愛することにした。
さいしょに襲ったのは、上司夫婦だった。
母親を犯した相手の血を吸うのはいけすかなかったけれど、足腰立たなくなるまで吸い取ってやって、
へたり込んだ男の前で、その妻を襲った。
これ見よがしにブラウスをはぎ取って、スカートの奥を露骨にまさぐりながら、
辱めるためだけに抱きすくめたこの年配の人妻が、意外に味の良い生き血を持っていて、いい女だということを感じはじめていた。
俺は女に、女の夫と俺の母親との醜聞を告げて、こんどは入れ替わりに俺があんたを愛人にするのだと宣言した。
外聞を憚る夫は黙って夫婦の寝室を後にして、
体面を気にする妻はなすすべもなく俺に身をゆだね、やがて本能の教えるままに、応えはじめてきた。
結婚してからも妹は、よく実家に戻ってきて、
「血が足りないんじゃなくて?」といっては、新妻のワンピース姿をくつろげてくれた。
不倫で奪われた母親と、権力で奪われた妹とを、俺はこうして取り戻していった。
嫁ぎ先の家で、妹と戯れ合っている最中に、だんなが家に戻ってきて、だんなを交えて近親婚を愉しんだり、
女学生の妹が下校してきたときに兄嫁のいけないところを覗いてしまっただんなの妹を引きずり込んで、
初体験を無理強いしてしまったり、
妹の婚家で俺は、やりたい放題に振る舞った。
だんなの妹はなかなか賢い女で、義姉さんの弟さんと結婚したいと言い出して、俺の妻になった。
これ以上ほかの男に抱かれたくないというのなら、じつに賢明な判断だった。
いまでも彼女は、初めて犯されたときの制服に身を包んで、襲われる女学生になり切って、俺を愉しませつづけている。
嫁いだ娘に会いたがる両親は、しばしば俺の新居を訪問した。
もちろん、娘のいないときだった。
義父を別室に待たせながら、俺は義母の礼装をはぎ取って、強姦した。
人妻としての名誉を守りたがる義母は、俺のものになるまえに、必ず抵抗するのを習慣にしていたから。
お互い相性の良さを自覚し合っている義理の母子は、昼下がりの情事を目いっぱい愉しむと、
こざっぱりとした顔になった義母は、サバサバとした口調で義父に、お待たせしましたと礼儀正しい会釈をして、
夫婦仲良く帰っていくのだった。
不思議なことに。
義父は義母が俺を訪問する意図を知り尽くしながらも、彼女の送り迎えを義理堅く果たしつづけている。
「死んじゃう、死んじゃう・・・」
かつての妹のように身を揉んで、俺の腕のなかでたっぷりとした肉感を伝え続ける少女は、
妹そっくりの面差しをして、白い頬に憂いをよぎらせる。
首すじを、胸を、ふくらはぎを。
順ぐりに咬んでいって、弱らせていって。
貧血を起こしてソファにしなだれかかる少女のふくらはぎに喰いついて、ハイソックスを咬み破ってやる。
妹のまな娘は、どうやら俺の種らしい。
俺は父娘姦の愉しみに胸をわくつかせていたし、
送り迎えをしている少女の父親は、娘を吸血鬼に捧げる歓びに、やはり胸をわくつかせているらしい。
「卒業祝いに、犯してやるからな」
隣室に聞こえるような声でつぶやく俺に、少女は「うん」と応えてくる。
やはり隣室に聞こえるように、はっきりとした声色で。
あとがき
「死んじゃう、死んじゃう・・・」という科白。
昔妹を相手に吸血鬼ごっこをしたときに、血を吸われる女を演じた妹が発した言葉です。
吸血鬼ごっこをしていた時分は、妹の血を全部吸い尽してしまっていたのですが、
いまならきっと、こんなふうに、なん度も血を吸いつづけるほうを選ぶでしょう。
伯母の生き血を狙う甥
2018年06月03日(Sun) 09:06:34
晶恵伯母さんの血を吸いたい。
甥のケンゴがそういったと、義弟のタカヒロがわたしに告げた。
タカヒロとケンゴは、吸血鬼の親子。
もともとタカヒロはわたしの幼馴染で、年ごろになってから妹に近づいた。
色気づいてくると、こんどは母にまで近づいた。
わたしは中学にあがるまえから彼に血を吸われていたから、それがふつうだと思い込んでいた。
妹婿になったタカヒロは、わたしたちの隣に住んで、
以来日常的に、母のところに夜這いにやって来た。
色気づくと、自分より年上の女を欲しがるのは、どうやら父子で似たらしい。
妻の晶恵も、タカヒロの身体を識っている。
わたしと結納を済ませた晶恵をタカヒロが見初めて、
処女の家に生き血が欲しいとねだられたわたしは、晶恵を引き合わせてやって、
まんまと晶恵の生き血をせしめたタカヒロは、
嫁入りまえの晶恵の身体に、男の肉体を教え込んでしまっていた。
以来ふたりの関係は、途切れたり続いたり。
そこに、タカヒロの息子が色気づいて、晶恵に色目を使うようになったのだ。
晶恵はおしゃれなワンピース姿で義弟の家に招ばれていって、
帰りはわたしの運転する車内で、赤黒いまだらもように染められたワンピース姿で、あらぬことを口走っていた。
世代はくり返すらしかった。
以来ケンゴはわが家に夜這いをするようになって、
わたしは真夜中の散歩に、街をさまよった。
ケンゴよりすこしだけ年下の息子は、自分の母親が首すじを咬まれ犯されるのを、
物陰から胸をドキドキはずませながら、のぞき見するようになっていた。
どうしてそんなに協力的になれるのかって?
いちど、熟れた女の生き血の味を覚えてしまうと。
相手がそれを獲ることでどれほどの満足を得られるのかわかってしまうから。
だからわたしは、彼らが求めるときには進んで、自ら協力者になり下がってゆく。
――あの子ったら、食べ盛りなのよ。もう貧血・・・
妻はそんなふうに愚痴りながらも、今夜もこぎれいなワンピース姿で、義弟と甥のためにおめかしをする。
――伺うときにはきちんとおしゃれしなくちゃね。競争相手が多いもの。
なにしろあの子ったら、担任の先生も同級生の女の子も、たぶらかしちゃっているんだから。
うそぶく妻の肩を抱いて、わたしは今夜もハンドルを握る。
彼らの獲物の送り迎えをするために。
ふしだら母さん ~スリップ一枚の寝乱れ姿~
2018年01月24日(Wed) 06:31:48
「アー、夕べは楽しかったわ~」
寝室から現れた母さんはスリップ一枚のあられもない姿。
乱れた髪の毛を手串で解かしながら、洗面所にむかった。
真っ赤なスリップ一枚に、びりびりに破けたねずみ色のストッキング――
このごろすっかり見慣れてしまった、寝起きのスタイルだった。
父さんがいなくなったすぐ後に、母さんは吸血鬼に襲われた。
喪服のスカートの下に穿いていた黒のストッキングに、相手の吸血鬼が目の色を変えたのだ。
さすがに母さんはちょっとだけ抵抗したけれど、
スカートの中にまさぐり入れられた淫らな指に、あっという間にマイッてしまう――
父さんの写真のまえで散々に犯された母さんは、以来情夫を真っ昼間から家にあげる、淫乱女に堕落していた。
「なにひとのことじろじろ見てんのよ。さっさとあんたも支度しなさい」
洗面所から出てきた母さんは、上からバスロブを羽織っていて、母親の尖った眼をちょっとだけ取り戻していて、真っ赤なスリップからはみ出そうなおっぱいを無意識に目で追った高校生のぼくを、叱りつけていた。
自分はふしだらにも、「あぁ極楽極楽」なんて言いながら、それでも朝ごはんのまえには父さんの写真のまえで律儀にお線香をあげ、手を合わせることだけは忘れない。
吸血鬼が真夜中しか出没しないなんて、嘘だ。
母さんの情夫である吸血鬼の小父さんは、いつも我が家に真っ昼間から出没する。
彼とぼくとの間には、ちょっとした黙契があって――ぼくが勝手にそう思っているだけかもしれないが――母さんがスリップ一枚で小父さんを迎えるのを見て見ぬふりをする代わり、ぼくが時々二人が淫らにまぐわっているのをのぞき見するのを、そ知らぬ顔してやり過ごしている。
案外母親との情事を息子に見せつけて愉しんでいただけなのかも――って気づいたのは、だいぶあとのことだった。
「視てたでしょ」
一戦終えた吸血鬼が立ち去ったあとも、寝室のふすまのこちら側でぼうっとしていたぼくを見とがめ、母さんは睨みつけた。
「あぁ、視てたよ、良い眺めだったから」
平然と答えてしまったぼくもまた、母さんのアブノーマルな血を受け継いでいるのかも。
そう思ったときにはもう、覆いかぶさって来た母さんの下敷きになって、
真っ赤なスリップからはみ出かけた母さんのおっぱいを、夢中になって揉みつづけてしまっていた。
いつも穿いているねずみ色のストッキングは太ももまでの丈だったと、スリップの裾に手を入れたことで初めて知った。
毒を喰らわば皿まで――そんなことしか頭になくなって、
「濡らしてもいいから思い切りしなさい」
と囁く母さんの言うままに、白く濁った粘液をびゅうびゅうと吐き散らして、スリップを浸してしまっていた。
「ほら、父さんも悦んでいるじゃない」
ぼくに抱かれた格好のまま、母さんは楽しそうな上目遣いで、父さんの写真をふり仰ぐ――
不覚にも、とんでもない場所でしてしまったと知ったぼくを、母さんは逃がさなかった。
手慣れた手管でぼくの腰を抱いたまま、ぼくの精液をしぼり取るようにして、
なん度もなん度も、果たさせていった――
吸血鬼以外にも、ぼくの家にやって来る男たちがなん人もいた。
彼らはいちように、吸血鬼の小父さんに妻を寝取られた夫たちだった。
連れ添った女をモノにされた代償に、母さんとのエッチを許されたという。
母さんの貞操は、完全に吸血鬼の私物と化していた。
ぼくは母さんと彼らとのセックスも、半ば公然とふすまのすき間から覗いて愉しむ、いけない息子になっていた。
「好きにしなさい。気になるんだったら、別に覗いてもいいよ」
自分の情事を隠そうとしない母さんは、ぼくにもあけすけにそんな風に言って、
「するのも愉しいけど、視るのも愉しいもんなんだね」
と、ぼくのことをからかった。
そういうときの母さんは、かつてしつけに厳しかった母親の目ではなく、
熟女の情婦の目つきだった。
「ね、あんた結婚しなさいよ」
真っ赤なスリップ一枚の母さんは、今朝も寝乱れた髪を手串で解かしながらリビングに現れて、だしぬけにそんなことを切り出した。
「エッ、急にどうしたの?」
訝るぼくに、母さんが言う――
うちに出入りしている男のひとの親類でね、良い娘さんがいるの。
お母さんも、きれいな人なの。
それで、あんたと婚約したらさ、小父さんに襲わせてあげようよ。
処女だったら、処女の生き血を愉しめるし、
もう男を識っていたら、すぐにその場で犯しちゃうし。
そうしたらさ、その子に知られても、母さんとあんたで、堂々とエッチできるじゃん。
どのみち小父さんはあんたのお嫁さんをモノにする。
お嫁さんが小父さんと浮気している間は、母子で楽しもうよ。
そのうちお嫁さんも小父さんにたぶらかされちゃって、
きっと自分のお母さんのことも、手引きするようになるから。
あたし、先方のお父さんを引き受けてもいいって、小父さんに言っといたから。
あんた、視る愉しみのほうも、増えるからね・・・
母さんは狂っている。
そんな母さんと同じ布団のうえで寝物語をして、頷いてしまっているぼくも、やっぱり狂っている――
もとは人間だった吸血鬼
2017年10月30日(Mon) 06:17:40
この街に棲みついている吸血鬼は、二種類いる。
ひとつは、この街を征服した、齢何百年になるかわからないという吸血鬼と、その親族。
もうひとつは、そうした吸血鬼に咬まれて吸血鬼になった、もとはふつうの人間だった人たち。
吸血鬼になるには、根っからの吸血鬼に咬まれないと駄目なので、そこに一定の歯止めはかかってはいるものの、
吸血鬼になった元人間も、かなりの数棲息しているのはたしかだった。
邑田タツヤもまた、そうした一人だった。
若いころ、妻ともども咬まれた彼は、ほどなく吸血鬼になった。
彼の妻を狙った吸血鬼は、自分の恋人を独り占めにするために、夫のことも咬んだのだ。
お弔いをされて墓からよみがえるまでの一週間くらいの間、
吸血鬼は、恋した人妻に対する欲望を、気の済むまで成就させていた。
望まれた妻もまた、夫の仇敵であるはずの男にほだされてしまって、
それまで夫以外の男を識らない身体を、放恣に開いていくようになっていた。
墓場から泥だらけになって出てきて帰宅を許された夫は、寛大な夫になった。
吸血鬼に促されるまま、彼は自分の妻だった女の血を吸った。
身体じゅうから血液を抜かれて空っぽになった血管を、自分の妻の血潮で充たしたのだ。
欲するだけの血液を妻から獲ることができた夫は、
妻と吸血鬼のと交際を認め、最愛の妻が吸血鬼の情婦に堕ちることを許した。
いちど弔われた事実さえも意図的に消され、
それまでと同じように妻とは夫婦として暮らしたけれど、
夜な夜な訪れてくる吸血鬼と妻とを二人きりにしてやるために家を空ける雅量を備えていた。
同時に彼は、自身の欲求を満たすために、
妻の情夫の手を借りて、そこかしこの人妻に手を伸ばして、次々と射止めていった。
もと人間の吸血鬼は、周囲にあまり迷惑をかけないために、自身の欲する血液はまず身内からまかなうのが不文律だった。
母親が若いうちは、母親が。
それから、その母親に説得された兄嫁が。そして、弟の婚約者が、
齢の順に毒牙にかかった。
父親も、兄も弟も、吸血鬼になった家族を餓えさせないために、
息子が、ないしは兄弟が、自分の妻に不義を働くのを、
さいしょは見て見ぬふりをして、
やがて妖しい歓びに目ざめていって、
すすんで献血に協力し、ひいては不倫の交際の手助けをするようになっていった。
夫が長じてからは、
結婚前の娘に手を出してはらませてしまったり、
息子の嫁をたぶらかしてしまったり、
姪娘はもちろん、甥っ子の結婚相手にまで手を出していった。
ついでにいうと、姪娘のひとりは、彼自身の種だった。
それでも、毒牙にかかった女の夫たちは苦笑しながら、
自分の嫁が押し倒されてわがものにされてゆくのを、見て見ぬふりを決め込んでいた。
そんな彼がもっともたいせつにしているのは、自分の妻との逢瀬だと、知っていたから。
吸血鬼の寵愛を得た妻は、在宅はしていても、めったに自分の身体を空けることはできなかった。
月に一夜か二夜――吸血鬼が浮気に出かけた晩、男は自分の妻との逢瀬を遂げる。
そんな夜がいちばん長いのだと、だれもが知っていた。
そうした夜、どの家の夫たちも、どんな重要な用事も放り出して自宅に帰り、
自分の妻との本来の営みに、明け方まで没頭するという。
強制された別離は、かえって愛情を深めるものだと。
吸血鬼になったものも、そうでないものも、等しく自覚していたのだった。
血の輪廻
2017年10月29日(Sun) 04:36:39
きょうは母さんといっしょに、街はずれの小父様の家に行ってきなさい。
知っているだろうが、小父様は人の生き血を吸って暮らしていらっしゃる。
だからお前も、母さんといっしょに生き血を吸わせておあげなさい。
男の子は女のひとを守らなくてはいけないから、
お前が先に吸われなくちゃいけないよ。
父さんにそんなふうに諭されて、まだ半ズボンを穿いていたころのぼくは、
好んで脚を咬みたがるという街はずれの小父様のため、
紺のハイソックスを履いて出かけていった。
母さんはよそ行きのスーツのすそから、真新しい肌色のストッキングを穿いた脚をすらりと伸ばして、
ぼくといっしょに出かけていった。
リョウちゃん、お母さんのことを守ってね。
母さんはひっそりとほほ笑みながら、決して泣くまいと歯を食いしばるぼくのことを見守って、
そのうち咬まれることに慣れたぼくが、もう片方の脚を進んで差し伸べるのをみて、さらにひっそりと笑っていた。
それから自分も、肌色のストッキングの脚を差し伸べて、ぼくの血を吸ったばかりの唇を、苦笑いしながら吸いつけられていった。
貧血でぼうっとなった意識の向こう、母さんが小父様に抱きすくめられたまま、
ブラウスをはだけられ、おっぱいをまる見えにさせながらさらに強く抱かれるのを、
なぜかドキドキとしながら、見つめてしまっていた。
もぅ、お兄ちゃんなんだから、奈々枝のことをちゃんとエスコートしてね。
小父様に逢ったら、お母さんからもよろしくって、伝えてね。
お兄ちゃんは妹にお手本を見せなくちゃいけないから、
リョウちゃんが先に咬まれなくちゃいけないわ。
母さんにそんなふうに諭されて、初めてセーラー服を着た妹を連れて、
やはり初めて脚に通した黒のストッキングのなまめかしさにウキウキしている妹を連れて、
ぼくは街はずれの小父様の屋敷へと出かけていった。
ぼくのお手本をなぞるように、黒のストッキングの脚を差し伸べていった妹は、
初めての痛みにべそを掻き掻き、しっかりお相手をつとめていた。
さいしょはおずおずと、片方の脚を差し出したあと。
貧血に蒼ざめた頬に、母さんゆずりのひっそりとした笑みを絶やさぬまま、
「こっちの脚も咬ませてあげるね」
妹は気丈にもそういうと、涙の痕のように拡がるストッキングの伝線を、
こんどはクスクス笑いながら、いくすじもつけられていった。
葉子さんを連れていくのは、結婚前になさいね。
あのかたは隣町だから、葉子さんもご両親も、小父様のことは知らないの。
だからあなたが、うまく引き合わせてあげて。
母さんも都会から父さんのところに嫁いでくるまえに、
父さんが上手に逢わせてくれたから――あなたもうまくやるのよ。
母さんはひっそりと笑いながら、そんないけないことを平然とぼくにすすめる。
ぼくも母さんと同じくひっそりと笑いながら、ごく平然とそれに応える。
「あの小父様なら、だいじょうぶだね。きっと葉子さんも、いちころだろうね」と。
ぼくはよく心得ていた。
既婚のご婦人の場合、血を吸うときには男女としても仲良くなってしまう小父様の性癖を。
そして相手が未婚でも、男を識っている場合は男として抱いてしまうということも。
妹は処女だったけれど、慣れ親しむうちに打ち解けていって、
お嫁入り前に、鼻を鳴らしながらスカートのすそを引き上げられていった――
「小父様の態度ひとつで、葉子さんが身持ちの正しい娘さんか、ふしだらなお嬢さんなのかもわかるわね」
母さんはそういってひっそりと笑い、
ぼくも頷きながらひっそりと笑った。
「ぼくは平気だよ。どのみち結婚したら葉子さんも小父さんに抱かれるようになるんだし、順序がちょっと、後先になるだけさ」
ぼくの花嫁は処女だった。
初めは戸惑った葉子さんも、お洋服の襟に血のシミひとつつけずに首すじから血を吸い取った小父様の腕前に感心をして、
その場ですっかり、心服してしまったようだった。
「これからは、良太さんといっしょに咬まれに来ますね」
そういって羞ずかしそうにほほ笑んだ彼女は、つぎの訪問のとき、着替えの服を用意してきた。
なにも知らない両親に気づかれないようにと、いちどぼくの家に立ち寄って、
別の服に着替えると、ぼくといっしょに小父様に逢って、
さいしょにぼくが咬まれ、それから彼女が咬まれて、
ブラウスをしとどに濡らしながら、葉子さんは処女の生き血で相手を満喫させてあげていた。
結婚式の三日前、葉子さんは思い切った表情をして、ぼくにいった。
「大切なものを――あなたよりも先に小父様にあげたいの」
ぼくはもちろん、異存はなかった。
葉子さんが身持ちの良い娘さんなら、ぼくが先――
なんとなくそうは思っていたけれど、
花嫁の純潔をプレゼントするのも悪くないなって、ふつうに感じるようになっていたし、
美しい血管に毒液を注ぎ込まれてしまった葉子さんも、まったく同じように感じていたのだった。
真っ白なスーツ姿で目を瞑った葉子さんのうえから身を起こした小父様は、
「リョウくん、ありがとう。お礼にきみにもいつか、処女の子を抱かせてあげるよ」
って約束してくれたけど。
ぼくは葉子さんひとすじでいくから、そんな気遣いしなくていいよって、笑ってこたえていた。
未来の花嫁の純潔を勝ち得た小父様は、長いことずっとそのことを、気にしてくれていたらしい。
十数年も経った頃、妻を抱きに来た小父様はひっそりと囁いた。
「今夜はお嬢さんの勉強部屋に行くといい。貴恵ちゃんには葉子さんから、話してあるから」
熟妻になった葉子さんを小父様が抱いているあいだ、ぼくは自分のまな娘の勉強部屋のドアをノックする。
妹のときもこうだった。
なにも知らない男のところに嫁いだ彼女にとって、実の兄のぼくは、二番目の男だったから。
夜なのにまだセーラー服を着ていた貴恵はぼくを迎え入れて、
母さんや妹のときのように、ひっそりと笑った。
あの夜の妹の白い顔が、二重写しになったまま、重たい制服のスカートを、
まるで少年のころみたいな震える手ももどかしく、太ももがまる見えになるまでたくし上げていった。
こういう関係はもう断とう。
小父様に思い切ってそう切り出すと、意外にも小父様は納得したようにこたえてきた。
そうだね、貴恵ちゃんのお婿さんは、なにも知らない土地の人だものね。
けれども血というものは怖いものだった。
それから十数年も経ってもこまめに実家に顔を出していた貴恵は、
年ごろになった娘たちを連れて、泊りに来た。
そしてふたりの娘を齢の順に、小父様に咬ませてしまっていた。
妹の場合、義理の弟の家は遠く、妹はまっとうな世界へと埋没していったけれど、
娘の貴恵の場合はそうではなかった。
やがて、どう説得したものか、貴恵の婿も実家に泊まるようになった。
「うちの場合も、いつもわたしが先に相手をするようにしてるんです。
男の子は女のひとを守らなければならないですからね」
どこかで聞いたことのある科白を口にした義理の息子は、
どこかで見覚えのあるひっそりとした笑いを、口許に浮かべる。
しょせん血の輪廻はつづくのか――
そう思ったわたしのことを見透かすように、彼はいった。
「ぼくは娘の純潔は、欲しがりません。妻ひとすじでいきますから」と。
有言実行の男
2017年10月04日(Wed) 07:57:01
有言実行な男だった。
この街に移り住んですぐのころ、やつは面と向かってわたしに言った――
きみの嫁を、征服する、と。
吸血鬼と人間とが共存する街、とはきいていたけれど。
当時の思いのまま、それは気が進まない、と、わたしはこたえた。
一週間後。
身体じゅうの血をすっかり抜かれたわたしは部屋の隅に転がったまま、
妻までもがむざむざと首すじを咬まれてゆくのを、視ているしかなかった。
吸血鬼が人妻をモノにするとき、身体の関係まで結んでゆく。
そして愛情を抱いた相手のことは、決して生命を奪わない――という彼らの掟を、
わたしは目の前で、見せつけられた。
翌朝のこと。
今夜も遊びに来るという彼に向って、
歓迎するよ。ふたりは似合いのカップルだ。家内をモノにできておめでとう――
思わず口走った祝福に、妻はほっと胸をなでおろしていた。
孕ませてやるよ――
有言実行な男は、目の前で妻を抱きながらそういった。
でも第一子は、あんたの子だ。
生れてくるのが男の子なら。
手なずけて、彼女を紹介してもらう。ちょうどあんたのときみたいにね。
生れてくるのが女の子なら。
俺が犯す。
つぎに生まれてくるのは、俺の子だ。
生れてくるのが息子なら。
きっとあんたの息子の嫁か、自分の姉を犯すだろう。
生れてくるのが娘なら。
やっぱり俺が犯す。
気の長い話だな。
そんな軽口をたたくくらい、やつとはすっかり打ち解けた関係になっていた。
妻の浮気相手という事実も、
おなじ女を好きになったもの同士の連帯感にすり替わっていた。
妻の母親や、わたし自身の母親を紹介したときは、
やつと妻、それにわたしとは完全に、共犯者の関係になっていた。
あなたも母のことを抱いてみる?
妻はイタズラっぽい流し目で、わたしのことをいともかんたんに、篭絡していった。
息子の嫁の火遊びに、この世で最も厳しいはずの母は、嫁と同じ男を愛人として共有して、
「昼間はあなた、夜はあたし」と、嫁姑で夫を裏切る共同戦線を張るようになった。
父はわたしのときと同じ経緯で、寛大な夫になっていた。
長年連れ添った愛妻に向けられた老いらくの恋を認めてやって、
新たな恋に夢中になった母の浮ついた振る舞いに、見てみぬふりを決め込んでいた。
気の長い話は、ほんとうに実現した。
わたしは長男と長女に恵まれた。
息子は彼女ができたとき、真っ先にやつに紹介をして、
セーラー服の襟首から、処女の生血を吸い取らせてやって、
律儀な男だったので、責任をとってちゃんと結婚をして、
花嫁が披露宴を迎えるまえの晩、親しんだ小父さまを相手に処女を捧げるシーンまで、しっかり見届けてしまっていた。
父親ちがいの弟は、実の父親に似て、有言実行の男だった。
父さん、ぼくはぼくのほんとうの父さんみたいにして、この家族を乗っ取るからね。
でも許してね。優しい母さんや素敵な姉さんたちを与えてくれた父さんには、心から感謝するから――
そう宣言したその夜に、彼は息子の嫁を相手に筆おろしをして、
そのつぎの晩には、やはり父親ちがいの姉を襲って処女を奪った。
弟に犯された娘はそのつぎの夜、母親の情夫に誘惑されて、二人目の男を経験した。
けれどもこの父親ちがいの弟は、実の父に似てべつの意味で律儀な男で、
嫁入り前の身体を汚されてしまった姉のため、自分が作った人間の親友を紹介してやって、
結婚後も姉弟がつき合うのを承知のうえで、娘を娶ることを承知した。
親友の母親が口うるさい姑だったら、きっと吸血鬼の親子に犯されてしまうのだろうね。
そういうわたしのまえ、
妻の情夫と血のつながっていない息子とは、似通った面差しを並べて笑う。
父さん、だいじょうぶ。もう征服しちゃったから――
ふたりとも本当に、有言実行の男たちだった。
男と女が仲良くなる、最高のやり方
2017年08月25日(Fri) 05:56:08
この村には、いろんな形の愛がある。
嫁が旦那の口利きで、舅と愛し合っている。
兄と妹が、夫婦のように暮らしている。
お互いの嫁に、夜這いをしかけ合っている。
村の長老が妻の寝室に夜這いに来ているのを、幼い息子が視てしまった。
あれはね、いけないことではないのだよ。
お前はまだ小さいから、わからないだろうけど。
男と女が仲良くするのの、いちばん最高のやり方なんだ。
あのお爺さんは、父さんと仲良しなんだから、
母さんとそういうことをするのを、特別に認めてあげているんだ――
とっさに思いついたそんな言い訳を、息子は真に受けて育っていった。
母さんがお爺さんと抱き合ってるのを見ると、僕なんだかドキドキするな。
そんな言いぐさをするのが、ちょっとだけ気になったけれど。
十数年後。
息子は照れ臭そうに報告する。
母さんと、仲良くなっちゃった。
父さんのいう、男と女が仲良くなる、最高のやり方でね。
わたしは当惑しながらも、台所からはらはらしながら聞き耳立てている妻を意識して、鷹揚に受け答えした。
それはよかったね。おめでとう。
でもいつまでも、母さんとしているんじゃないぞ。お前も早く、嫁を見つけないとな。
世代は性懲りもなく、くり返すのだろうか。
息子は自分の新婚家庭に幼なじみたちを招き入れて、
毎晩のように夜這いを許して、
嫁が自分の親友たちをもてなす姿を目の当たりに、
「なんだかドキドキするんだ」
と、くり返し呟きつづけている。
兄妹たちの、濃い関係
2017年08月25日(Fri) 05:26:24
この村には、いろんな形の愛がある。
嫁が旦那の口利きで、舅と愛し合っている。
兄と妹が、夫婦のように暮らしている。
婚礼の席は、乱交の場――
法事の席は、乱交の場――
そんな常識が、この村ではまかり通っている。
そういう席にはだれもが珍しく、改まった服装でやって来るから、
下手をするとだれがだれだか、見違えてしまうときがある。
きっとそんな、いつもとはちがう非日常の時間だから、
そういうことが起きるようになっていったのだろう・・・と、だれかがうそぶいていた。
桜井和也(仮名)が初めて妹の裕香(同)を襲ったのは、そういう場での出来事だった。
和也はかねてから、器量よしの妹を自慢に思っていたけれど。
そんな感情を妹に抱く兄がもくろむことはひとつであるはずなのに、
ほかの妹持ちの同輩たちが婚礼や法事の席で、次々と近親相姦を遂げていったというのに、そういうことになかなか、踏み切れないでいた。
そういう奥手な理性が堰を切ったのが、裕香が勤めに出るようになって初めての婚礼の席でのことだった。
地味なスーツに身を包んで友人たちと笑い合っていた輪のなかに割って入った和也は、
なにが起こるのか予感した友人たちがスッと身を引くのさえ目に入らずに、裕香の前に立ちはだかった。
「え?」
目を丸くする裕香の手を強引に引いて、宴席のしつらえられた大広間の隣室に引きずり込むのを、だれもが見て見ぬふりをした。
あそこのお兄ちゃんは、妹にご執心――それはだれもが知る公然の事実だったから。
大広間の周りには、芋に小芋がつくように、隣り合わせに小部屋がいくつも並んでいた。
すでにほとんどの部屋が、埋まりはじめていた。
嫁入り前の姪と、その叔父。
久々に里帰りした息子と、その母親。
息子の計らいで義父の相手をする、都会育ちの嫁。
そんなカップルたちが、熱い吐息を交し合っていた。
やっと空き部屋を見つけると。
男は中からカギをかけ、
女は観念したように目を瞑る。
都会ふうのタイトスカートのお尻に伸びた手が、
さいしょはおずおずと触れてきて、
スカートを通して感じた丸みと質感にそそられたのか、
手つきが荒々しくなるのに、時間はかからなかった。
硬いスチールの床のうえ。
スーツ姿のまま組み敷かれた妹は、その場で女にされていった。
それ以来。
兄と妹とは、ひとつ屋根の下、夫婦同然に暮らすようになった。
そういうことは村ではよくあることだったので、親たちも咎めようとはしなかった。
父親は見て見ぬふりを決め込んでいた。
彼はそうやって、母親の不倫も、嫁が義父に抱かれるのも、ずっと見て見ぬふりで通していた。
母親は息子にひと言、
「子どもだけは作らないでね。お嫁に行けなくなるから」
と、そこは母親らしく、娘の将来をちょっとだけ、気づかっていた。
妹の裕香に、縁談が舞い込んだとき。
さすがに和也も観念した。
いずれは長男として嫁を取らなければいけない身だったし、
血の濃い結婚が実生活にいい影響をもたないのも、理屈ではよくわかっていたから。
縁談の相手は、和也の幼なじみだった。
ふたりの関係を重々承知したうえで、和也の妹との縁組みを申し入れてきたのだった。
ふつうなら。
縁談を持ってくるのは、村のしかるべき顔役だった。
けれどもそのような手続きを通さずともよいほど、両家の仲は密であった。
顔役の代わりに和也の前に現れたのは、中学二年になる幼なじみの妹の照美だった。
照美はさいしょに、義姉になる裕香に礼儀正しく頭を下げて、
「兄から縁談をことづかってきました」
と、単刀直入にそういった。
十歳以上齢の離れた女ふたりは、目交ぜですべてをわかりあったようだった。
「裕香お姉さんの代役、私ではつとまりませんか?」
初々しくてか細い笑みが、きちんと着こなした制服姿に、よく似合っていた。
しばらく見ないうちにすっかり年ごろの娘になっていた幼なじみの妹に、和也は目の色を変えた。
照美のか弱い腕を引いて、制服姿にはおよそ似つかわしくない納屋に引きずり込んでゆくのを、
「お兄ちゃんあんまりね」
と、裕香はわざとのように口を尖らせた。
女に目がない兄貴に愛想をつかして縁談を承知する――そんな段取りを。
兄の和也も、妹の裕香も、きちんと踏まえていった。
薄暗い納屋のなか。
藁まみれにされる制服に包まれた、十四歳のか細い身体は、和也をいたく満足させた。
和也に正式な縁談がわいたのは、数年後のことだった。
相手は照美ではなかった。
村では指折りの素封家の娘である婚約相手は、村の長老を相手に処女を捧げたうえで嫁入りしてきた。
照美は事情を知らない他家へと嫁いでいった。
和也の嫁は、夫の許しを得て長老との交際を続けていたし、
和也の母も、嫁の不行跡には目をつぶっていた。自分も身に覚えのあることだったから。
裕香は時折、婚家から実家に戻ってきて、嫁を公然と寝取らせてしまった兄を見舞った。
和也は幼なじみの愛妻となった実の妹を、熱情をこめて掻き抱き、
物わかりのよい幼なじみは、最愛の妻が近親相姦の歓びを尽くすのを、見て見ぬふりを決め込んだ。
実をいうと、照美も時々実家の親に会って来ると称して里帰りして、
実家を素通りして和也の家に入り浸った。
照美の夫は妻を寝取られることに昂奮を覚える質だった。
新婚生活のなかで、夫のそういう嗜好を見抜いた照美は、「あたし浮気してあげる」と夫をたきつけて、
時には夫同伴で里帰りをくり返した。
夫の目の前でその妻を犯すという趣向は、和也の気に入るところだった。
自分自身も長老に命じられて、妻の不義の場面を見せつけられていたから、
相手の気持ちがよくわかるのだ。
息をつめて見つめる都会育ちの夫のまえ、
和也は照美に敬意と愛情をもって接し、密にまぐわい続けるのだった。
親孝行――舅と嫁との交際録
2017年08月25日(Fri) 04:50:26
この村には、いろんな形の愛がある。
嫁が旦那の口利きで、舅と愛し合っている。
兄と妹が、夫婦のように暮らしている。
宝井秀馬(46、仮名)は、やもめになった父(73)に、妻の里美(44、同)を抱かせている。
きっかけはすでに、新婚のころからあった。
秀馬の留守中、父が里美を強姦したのだ。
都会育ちの里美は結婚後も、隣町のオフィスにOLとして勤めていた。
義母の登美子はたまたま外出していて、夫の秀馬は農協に勤務していたから、
家には義父しかいなかった。
その義父から、「体調が急変した、早く帰ってきてほしい」と連絡があったのだ。
里美は勤務先の上司に事情を話し、会社を早退して帰宅した。
スーツ姿で務めから戻った里美に、義父は目の色を変えて襲いかかった。
体調不良は嘘だった。
いや、体調が変になっていたのは、嘘ではないのかもしれない。
彼は女に飢えていた。
その欲情を満たすべき妻の登美子は、外出していた。
里美は泣いて抗ったが、どうすることもできなかった。
若々しい張りのあるバストを包むブラウスは引き裂かれ、ブラジャーの吊り紐は引きちぎられて、
押し倒されてじたばたさせた脚からは、ストッキングを引き剥がれていった。
それでも、義父の道ならぬ激しい吶喊に、里美の腰は本能的に応えつづけてしまっていた。
きっと。
義父娘の身体どうしは、相性がとても良かったのだろう。
ふたりの関係はしばらくの間、夫にも姑にも秘密のままつづいた。
里美は会社の早退をくり返し、やがて退職せざるを得なくなった。
ひとつ屋根の下にいる時間が長くなったことは、ふたりにとってもっけの幸いだった。
夫が農協に出勤し、姑がなにかの用事で家を空けると、
ふたりは待っていたかのように、むさぼり合っていた。
そのころ授かった男の子の父親が、夫だったのか、義父だったのか、里美にも確信が持てずにいる。
しかしやがて、それと察したのは姑だった。
彼女は出かけると見せて突然帰宅し、濡れ場の最中の現場に踏み込んだ。
修羅場にはならなかった。
くんずほぐれつしているふたりを凝視すると、
「落ち着いたら茶の間に来てな」
と呟いて、スッと姿を消した。
不義をはたらいた舅と嫁とが、舅の部屋から出てきたのは、それから一時間後のことだった。
舅は数々の不行跡で、もともと姑には頭が上がらなかった。
「秀馬も薄々、感づいている。この一件は妾(わたし)に預けてもらいます」
姑の登美子はそういうと、里美は蒼くなってうなだれた。
それでも舅はしたたかにも、「別れを惜しみたいから」といって妻を別室に去らせ、
もういちどだけ、嫁を自室へと引きずり込んだ。
やはりあんたが気づいていたように、里美さんはお父さんとデキていた。
でもとりあえずふたりを引き離して、お父さんにはきつく言っておいた。
たぶんふたりは、別れるだろう。妾のひと睨みは、あのひとにとって絶対だからね。
お父さんのめんどうは、あたしが見る。
悦次叔父さんもいなくなったからね。
あとはあんた次第だよ。
父さんに親孝行するつもりなら、それもいいだろう。
でも、離婚だけは家の恥だし、幼い冬馬のためにもならないから、絶対にお止しなさい。
秀馬は母親のいうままに、妻にはなにも問わず、いままでの日常を素知らぬ顔で重ねつづけた。
それから十数年が経った。
登美子はもはやいなくなり、父親はほんとうに独りになった。
いなくなる少し前、秀馬は登美子から色ざんげを聞かされた。
あたしが嫁いできてすぐのとき、お父さんに言われてね。
お前はもう憶えていないかな、お祖父さんの相手をさせられたんだ。
いちどきりじゃなくって、なん度もなん度もだった。
週に3度は抱かれたかな。
そのときにはいつも、お祖母さんはいなくなっていたし、お父さんは勤めに出てた。
この家は、どうやらそういう家らしい。
そのうちあたしも割り切って、お祖父さんとつき合うようになった。
お祖父さんがいなくなった後は、お祖父さんの遺言で、
一生独り身だった悦次叔父さんのところに行くようになった。
女ひでりだったからね。しつこかったよ叔父さんは。
でもあんたもあの叔父さんには懐いていたしね、それでよかったんだよ。
あのひとも、お祖父さんも、あたしを辱めようとしてしたことじゃない。
血のつながってない家族どうしで、仲良くしたかっただけなんだ。
形はちょっと、変わっていたけどね。。
お父さんも、きっとそうだ。
あのひとが里美さんを襲ったのは、あたしが悦次叔父さんの家に行った日のことだった。
あたしが叔父に抱かれるのがたまらなかったのか、
もしかしたらそういうことに昂奮できる質(たち)だったのか、
たぶんそっちのほうだと、あたし思うけどね――
まあ、そんなことはどうでもいいや。
だからあたしがあの時あなたに、親孝行をちょっとだけすすめたのは、そういうわけだったんだ。
あたしもお父さんには、ちょっぴりすまないと思っていたからね。
すまないと思ったのは、愉しんじゃっていたから――
でも、あんたが親孝行だと割り切ることができて、お父さんが嫁と仲良くしたくてしていることだって得心できたら、親孝行させてあげてくれないかな。
つぐないは、いまなら、ちょっとだけなら、してあげる気持ちがあるけれど。
あんたに、その気があるんなら――
その夜、秀馬は初めて、実母の登美子を両親の部屋で抱いた。
すべて言い含められていたらしい父親は、書斎にこもり切って、ひと晩じゅう、出てこなかった。
親孝行、してやりたいんだよな。
母さんいなくなったら、親父もさびしいだろうから。
前みたく、仲良くしてやってくれないかな。親父と。
母を送って一年が過ぎたころ、秀馬はそういって里美を口説いた。
里美にいなやはなかった。
法事の席でのことだった。
喪服に映えた里美の白い首まわりや、黒のストッキングになまめかしく透ける脛に、
チラチラと露骨な視線を這わせていた義父は、そ知らぬふりで聞き耳を立てていた。
じゃあ俺は、仕事に戻るから。
秀馬はわざとらしく父親を一瞥すると、
「お父さん、行きましょう」
里美もぴったりと息を合わせて、夫に応じた。
秀馬は勤め先とは見当ちがいの方角へと足を向け、
義父と嫁とは家とは反対方向の、村に一軒きりのラブホテルへと足を向けた。
母を弔うための装いに身を包んだふたりが、不倫のねぐらへと向かう後ろ姿を、
秀馬はなぜか昂ぶりながら見つめていた。
黒のストッキングに清楚に透ける足どりは、あと十分もしないうちに、淫靡なくねりを見せるのだろう。
それ以来。
ひとつ屋根の下、素知らぬ顔で書斎にこもる夫をしり目に、
舅は嫁にしなだれかかり、
嫁は恥を忘れて、スカートのすそを乱し、ストッキングを引きずりおろされていった。
「親孝行なんだから」
自分で自分にそう言い聞かせていた夫は、不倫の汗を流したままの妻を、ありのままの姿で押し倒していった。
「祖父さん、元気そうだね」
息子の冬馬が、悧巧そうな顔だちに笑いを浮かべ、白い歯を見せる。
母親の里美に生き写しの白い頬が、きょうは妖しい翳を宿していた。
「これからちょっと、仕事に出かけてくるからね。凜々花の話し相手にでも、なってやってくれないかな?」
都会暮らしの冬馬は、去年もらったばかりの新妻の凜々花を伴っての里帰りだった。
すべてを言い含められているのか。
凜々花はまる見えといっていいくらいの羞じらいをみせていた。
いまどきの若い女性らしくいつも生足だという凜々花は、その日に限ってストッキングを脚に通している。
「父さん、そういう雰囲気って好きなんだろ?」
冬馬の言いぐさは、少しばかり露骨に過ぎたけれど。
秀馬は息子の好意に、正直に甘えることにした。
どんなに取り繕っていても、ズボンのなかの一物が、すでにはじけそうになっている。
飢えた狼のまえに新妻を残して出かけていく殊勝な息子が、
玄関で革靴を履くのに手間取っているのさえもどかしいほど、
秀馬は自分のなかの劣情が、はしたないほど露骨に鎌首をもたげてくるのを、どうすることもできずにいる。
妻の里美が、息子夫婦の顔をひと目見たそのすぐ後に、
舅といっしょに公然とデートに出かけていったのも、
もしかしたら秀馬と凜々花とに、気を使ったのかも知れなかった。
母さんって案外、いい女じゃん。
2017年06月06日(Tue) 07:01:54
母さんって案外、、いい女じゃん。
村はずれの荒れ寺の奥深く、閉ざされていた本堂の扉から、人目を避けるようにして逃れ出てきた奈美子を見て、タツヤはグッときていた。
本堂のなかに入る前にはキリッと着こなしていたスーツを、ふしだらに着崩れさせて。
はだけたブラウス、乱れ髪。
眉には悩ましい翳を滲ませた奈美子は、息子の前に女の顔をさらしていた。
本堂の中でなにがあったのかは、もはや子供ではないタツヤには、察しがついている。
この村に棲み着いた都会の人妻たちは、この荒れ寺にひとりひとり呼び出されて、
村を支配している吸血鬼に襲われて生き血を吸われ、そして犯される――
そんな暗黙のルールを聞かせてくれたのは、ほかならぬ父親だった。
「母さんを迎えにいっておやり」
どうして父さんじゃいけないの?という問いは、飲みこまざるを得なかった。
そんなふうにして父親は、すでになん度も犯された母親の出迎え役を引き受けていたから。
自分の妻が犯されて戻って来るのを送り迎えするということが、夫にとってどれほど残酷なことか、と、タツヤは思う。
けれども、自分もそのひとの息子なのだと、思わずにはいられない。
そんな気分を抱えて寺に着いたとき、ほとんど出会い頭に犯された直後の母親に遭遇して。
タツヤの理性は跡形もなく、吹っ飛んでいた。
幸か不幸か、奈美子はタツヤに気づいていない。
本堂を出た縁側で、しきりに身づくろいをしかけていた。
その合い間にも――
はだけたブラウスのすき間からは、ブラをはぎ取られてあらわになった乳房が見え隠れして、
豊かにウェーブした乱れ髪は、女が身じろぎするたびにユサユサと妖しく揺れた。
われ知らず、タツヤは母親に向かって、一直線に歩みを進めていた。
「あっ・・・タツヤ・・・」
母親の顔つきを取り戻すのが一歩遅れたことを、悔いるゆとりはもうなかった。
奈美子は息子の手で縁側から荒々しく引きずりおろされて、
雨あがりの苔に覆われた庭先で、組み敷かれた。
獣の息をしている。
タツヤは自分で自分のことをそう思った。
けれども、いったん暴走し始めた衝動を、もう抑えることはできなかった。
息荒く奈美子のうえにのしかかり、ブラウスを引き裂き、ピンと突き立った乳首を唇に含む。
「よ・・・っ!!よしなさいっ!」
奈美子はかろうじて母親の理性をみせて、息子を制止にかかった。
けれども、タツヤの唇は奈美子の乳首をふくんだまま、それを舌先でクチュクチュとしごくように弄んでゆく。
「いけないっ!い・・・け・・・な・・・い・・・」
息をはずませて声を途切らせる奈美子に、タツヤはますます欲情を募らせた。
ああああああっ。
ひざ小僧まで弛み堕ちた肌色のパンストをまとったままの脚が強引に押し開かれて、
奈美子はなん度も絶叫をくりかえした。
「これで良かったんですかね・・・」
アツシは住職のまえ、翳った横顔を向けたまま呟いた。
「エエ功徳を施しなすったと思いますだよ」
住職は田舎言葉で、妻を息子に犯させている夫に囁き返した。
「ともかくも、きょうはおめでとうございます」
住職は不幸な夫のまえで深々と頭を垂れ、
不幸なはずの夫は、実の息子を相手に小娘みたいにきゃあきゃあとはしゃいでしまっている妻を、眩し気な視線を送って見守りつづける。
住職は、さっき犯したばかりの女が、若い息子の衝動に抗しかねて、目覚めてしまった歓びに耽り抜くのを目の当たりに、慇懃に合掌をすると、
母子のまぐわいを恍惚として見入ってしまっている男を残しそそくさと立ち去っていった。
相姦家族
2017年05月25日(Thu) 07:44:29
啓一郎が勤めから戻ってくると、娘の華菜が制服姿のままリビングで頬杖をついて、父親の帰りを待っていた。
「父さんお帰りぃ」
華菜はいつもの自堕落な口調で、父親の帰りを迎えると、両親の寝室のほうをあごでふり返って、いった。
「母さんは今、熱烈浮気中だよぉ」
啓一郎もさるもの、「あ、そう」と軽く受け流して、妻の作った晩御飯をレンジに持っていく。
「長次郎のやつ来てるんだ」
ちゃんと浮気相手のことも、よくわかっているのである。
長次郎とは幼なじみの仲で、若いころから嫁を交換したりするほど親しかった。
「ちょっとー、だらしないじゃん~。奥さんに浮気され放題なんてー」
華菜は頬杖を突いたまま、からかい口調で父親をなじる。
啓一郎はそんな娘をふり返りもせずに、「仲いいんだったら、いいんじゃないの」と、取り合わない。
両親の愛情が冷めきっているわけではなくて、父が母とのセックスを毎晩のように欠かさないことも、娘はしっかり把握していた。
「お2人、今夜はアツアツだったよ~。今夜はあたしが、母さんの代わりに相手してあげようか」
娘はどきりとするようなことを、父親にいった。
啓一郎はさすがにあわてた。
「ば、バカ。いくらなんでも父娘でそんなことできるかよ!」
華菜は格好の良い脚をぶらぶらさせながら、しゃあしゃあと応えた。
「だってー。父さんがしてくれなかったらあたし、このあと長次郎小父さんに姦(や)られることになってんだもん」
初めてはやっぱり、父さんがいいな・・・と、華菜は笑った。
男をいちころにするような、あどけない媚び笑いで。
やがて奥の寝室から、長次郎が頭を掻き掻き出てきた。
「悪りぃ、悪りぃ、今夜は帰り、早かったんだな」
啓一郎は咎めもせずに、いつから来てるの?と訊いた。お昼過ぎからと答えがかえってくるとさすがに、「よくがんばるなあ」と感心している。
妻の浮気相手は娘を指さして、啓一郎にいった。
「華菜ちゃん、どっちが先に女にする?」
長次郎はちょっとだけしんけんな顔になっていた。
啓一郎が華菜の手を邪慳に引っ張ると、「それがええ、それがええ」と、納得したようにうなづいている。
どうやら、華菜の処女にはそんなに、執着していないらしい。
妻と浮気相手、父親と娘がそれぞれ別の部屋で戯れ終わると、どちらからともなくリビングに戻ってきた。
夫婦はそこで初めて、顔を合わせる。
「おかえりなさい、早かったわねえ」
妻がなにごともなかったかのように夫をねぎらうと、
「んー、今夜はみんな早上がりだったんだよな」
と、夫もふだんと変わらない口調で、妻に応えた。
妻の華子は娘の華菜に、そのときだけは母親らしい気づかわし気な顔になって、「痛かった?」と訊き、
「んー、けっこうキモチよかった」と娘がしゃあしゃあと応えると、「この子ったら、まあ」と、ちょっとだけ口を尖らせた。
翌晩啓一郎が家に戻ってくると、妻の華子がリビングで頬杖をついて、夫の帰りを待っていた。
「おや、華菜は?」
夕食時に姿を見せない娘を父親が気づかうと、華子はいった。
「長次郎さんと仲良くしてる」
夕べあのあと相手を取り替え合ってセックスに耽ったが、どうやら長次郎は娘のことも気に入ったらしかった。
「ふた晩続けておんなじ人とだなんて、あのひとにしては珍しいね」
華子はぼそりとそういった。
やがて華菜の勉強部屋から、長次郎が頭を掻き掻き出てきた。
「ロリコン男~」
啓一郎が長次郎をそういってからかうと、あとから出てきた華菜が「父さんだっていっしょじゃん」と、やりかえした。
「相談があるんだけどさ」
ひとの家の娘を犯しておいて、長次郎は啓一郎の真横に座るとずばりと切り出した。
「華菜ちゃん、うちの誠太の嫁にくれないかな」
啓ちゃんとの仲はそのままでいいから・・・と、長次郎は寛大なところをみせてくる。
「いちおう父親として味見をしたけど、華菜ちゃんいい身体しているワ。こんな子がウチの嫁になってくれたらエエなあって夕べ思ったんよ」
息子の誠太にも、ぜんぶ話してあるという。
「父ちゃんが未来の嫁の味見をしたことまでか?」
さすがに啓一郎が訊き返すと、「もちろんね」と、長次郎とこたえた。
家族の間で秘密はなしってことにしてるから――と、真面目な口調になっている。
誠太が初めて識った女が実の母親だということも、啓一郎は長次郎からきいて知っていた。
「あいつは優しい子だからな、華菜ちゃんがお嫁に来てくれるなら、父さんも時々抱いてもかまわないよって言ってくれたよ」
娘の新婚家庭はいったいどういうことになるのだろう?と、啓一郎はおもった。
「あいつ、俺の子じゃないことも、ちゃんと知ってるんだ」
長次郎はまたしても、どきりとするようなことを言った。
もともと啓一郎のところは、ごく普通の真面目な家庭だった。
しかし長次郎の家は、母子や父娘のセックスを、ふつうに交わす家だった。
生まれ育った家の習慣をむしろ誇りに思っている長次郎は、「そのほうが楽しいぜ?」と、啓一郎をそそのかした。
十代のころは同性愛の経験もある幼なじみに誘われるまま、啓一郎は妻の華子を誘惑するチャンスを与えてやり、
長次郎はまんまと、幼なじみの愛妻をたらし込んでしまっていた。
「おれだけいい想いしたら悪りぃから」と、長次郎は義理堅いところをみせ、啓一郎には自分の嫁を紹介していた。
長次郎の嫁の雅江もまた、義父に抱かれることで目ざめてしまっていて、
ふた組の若夫婦はしばしば嫁を取り替え合って夜を過ごしてきた。
長次郎が息子の誠太を啓一郎の家に連れてきたのは、その次の日のことだった。
誠太と華菜とは、知らない仲ではない。
けれども、電車で2時間かけて都会の名門校に通うようになった華菜を目にするのは、久しぶりのことだったに違いない。
このかいわいで着ている子も少ない名門校の制服を着た華菜のことを、誠太は眩しそうに見つめた。
「ほんとにいいの?あたし、こっちの父さんとも、うちの父さんともご縁のある子になっちゃったんだよ」
自分の素性をあっけらかんと暴露する娘に、
「平気だよ、うちそういうの慣れているから」
妙に明るい瞳をした青年は、さわやかな口調でこたえていた。
「ボク、父さんの子じゃないからね。父さんも知ってるけれど」
啓一郎は、夕べ長次郎が同じことを言っていたのを思い出した。「いったいどういうこと?」
「橋のたもとに掘っ立て小屋を建てて棲んでる爺さん、いるだろ?」
長次郎はこのかいわいに永年棲み着いている浮浪者のことを話題にした。
「雅江のやつが俺のところに嫁に来るすこし前に、あいつに犯されちまったんだ」
どっちかというと俺さ、変態だからドキドキしちまって。
弱みを握られた雅江がやつのところに呼び出されてあの掘っ立て小屋のなかで抱かれてるのをのぞき見して、愉しんじまっていたんだ。
たまたまさ、勤め帰りのスーツを着崩れさせて出てきた雅江と鉢合わせしちまって、
それからはさ、デートのあとに爺さんのところに立ち寄って雅江を抱かせて、そのあと二人で草むらで姦(や)るのが習慣になってたんだよな。
誠太はそのときの子。
「あら」
華子がちょっとびっくりしたような声をあげた。
「どうしたの、母さん」
長次郎小父さんの打ち明け話に興味津々で聞き入っていた華菜が母親をふり返ると、華子がいった。
「だってその人にあたしも、この人と結婚するちょっと前に襲われて犯されちゃったのよ。
華菜はそのときの子。
・・・ってことは・・・。
父親ふたりは、顔を見合わせる。
誠太と華菜はじつの兄妹?
婚約者の純潔を同じ浮浪者に奪われた男ふたりは、「なあんだ」と、苦笑し合った。
華菜が真っ先に反応した。
「じゃああの小父さんも、あたしたちの結婚式に呼ぼうか」
だれもがいちように、頷き合っていた。
「あのじいちゃん、まだお盛んなんだよ。華菜の友だちも二人やられた」
「ボク、爺さんに逢いに行く時華菜のことを連れてってやる」
「実の娘でも抱くかな」
「関係ないんじゃない?ああいうひとは」
「雅代がやられたときには、勤め帰りのスーツ着ていた」
「あたしが啓一郎さんより先に犯されちゃったときも、新調したばかりのスーツ台無しにされたのよ」
「お友だちがやられちゃったときは2人とも、学校帰りだったんだって」
きちっとした服を着ている女を襲いたがるんだな・・・男たちはいちように、納得していた。
「ボクといっしょに爺さんのところに行く時には、制服着て来てね」という誠太に、華菜はあっさりと「ウンいいよ」と、こたえていた。
「チョウの家の人たちは、みんな強いな」
啓一郎がそういうと、
「華子さんも華菜ちゃんも、強くなったじゃん。俺の感化で」
と、長次郎は妙な自慢をした。
「どっちの父さんも さ」
誠太がいった。
「僕たちが結婚してからも、華菜ちゃんとつき合ってもいいからね。むしろそのほうが、まともな子が生まれたりして」
きらきらと虚ろに輝く瞳が、ひどくさわやかだと華菜はおもった。
あとがき
倫理観がかけ離れた家族の日常を淡々と描いてみたいな と思っていたら、
これでもかこれでもかというくらい、変なお話になってしまいました。 (^^ゞ
啓一郎の一人娘も、長次郎の一人息子も、お互いの妻が浮浪者に犯されてできた子・・・ということは、
どちらの男も子孫がいないことになるんですね。
ふたりが子孫を残すチャンスは、華菜に託されているみたいです。
ひし形もようのハイソックス 2 ~相姦の巻~
2017年05月19日(Fri) 06:14:50
思いもかけない凌辱劇だった。
気がつくと姉さんは吸血鬼の猿臂に巻かれ、デニムのスカートをたくし上げられて、
明るい陽の光の下、白い太ももを露骨なまでにまる見えにさせて、押し拡げられていった。
「あああっ!京太あっ!見ちゃダメッ!」
姉の言いつけでも、素直に従うわけにはゆかなかった。
周りの草葉を揺らしながら犯されてゆく姉は、食いしばった白い歯を薄い唇から覗かせながら、激しくかぶりを振りつづける。
「見ちゃダメ!見ちゃダメ!お願い視ないでッ!」
はじき散らされた言葉とは裏腹に、姉の受難をじーっと見つめる弟は、
貧血で身体が痺れているのを良いことに、吸血鬼の呪わしい抱擁から姉の純潔を救い出す務めを放棄している。
「やだっ!やだっ!だめえっ!イヤ・・・厭・・・厭っ。お願いっ」
必死の懇願もむなしく、乱されたデニムのスカートの奥に、男の逞しい腰が沈み込んで、
激しい上下動に姉の細い腰が無理やりつき合わされて、
強引なその動きとひとつになってゆくいちぶしじゅうを、少年ははっきりと見届けてしまった。
姉は弟の視線を意識しながら、薄い唇を半開きにして、それでも歯がみをし続けていた。
気がつくと。
姉のうえにのしかかっているのが自分であるのを、京太は自覚した。
抑えつけた手首をはずそうとして身をよじる姉の面差しに激しくそそられて、
京太は自分が吸血鬼になったかのように、正美の首すじに唇を吸いつけていた。
吸血鬼が吸ったのとは、反対側の首すじだった。
女の匂いがムッと少年の鼻腔を満たし、目をくらませる。
視界の向こうには、脱ぎ捨てられた半ズボン。
ひし形もようのハイソックスを履いた正美の脚に、同じ柄のハイソックスの脚をからみつかせながら、
少年は激しく昂った股間を、自分の下で開かれた太ももの奥へ、押し当てようとしていった。
そうはさせまいと必死で抗う姉は、「京太やめて!」と叫びながらも、
急に身体の力を抜いて静かになって、
激しくぶつけられてくる弟の性欲のまえ、わが身をゆだねていった。
どちらが男、どちらが女。
ひし形もようのハイソックスの二対の脚たちは、いずれとも判別できないほど密にもつれ合って、
脚と脚とが重ね合わされもつれ合うにつれて、
ふたりきりで暮らしていた姉と弟との関係が、恋人同士のそれにすり替わっていった。
「きみは血に飢えたわしに同情して、生き血をくれるようになった。
ハイソックスを履いた脚を咬みたがるわしの習性を知って、姉さんのハイソックスを履いてきてくれるようになった。
処女の生き血を欲しがっているわしの願いを察して、姉さんをここまで連れてきてくれた」
「あんたは弟の身を気遣って、身代わりに血を吸わせようとしてここに来てくれた。
処女の誇りを守り通そうとして、必死に公園じゅうを駆け回って、さいごまでわしに抵抗をし続けた。
けれどももとより引き返すつもりはなくて、さいごのさいごまでわしのために尽くしてくれた」
「きみは姉さんに恋をしたわしの気持ちを察してくれて、わしが姉さんを誘惑するのを邪魔しようとはしなかった。
そして姉さんを怖がらせないようにと自分からお手本を見せてわしに血を吸われて、
あとはわしの自由にさせてくれた」
そういうことで構わないだろう?
男の勝手な言いぐさに、眼の輝きを失った姉弟は、うつろな表情でうなづき続けた。
「それに違いないよね?姉さん」
「そうね。これからもわたしたちの若い血で、小父様を助けてあげないとね」
お嫁入り前の純潔を守ろうとして抵抗し続けたあの張りのある叫び声はどこへやら、
姉は打って変わって低い声色で、弟にこたえる。
「ありがとう」
散々な乱暴狼藉の末勝ち得た快楽が吸血鬼の兇暴さを鎮めたものか、
姉弟のうら若い血をまだしたたらせている牙の持ち主の声さえ、低く落ち着いていた。
言葉少なに告げられる感謝の呟きに、意外なくらいの真実味が込められているのを、
姉も弟もなんとなくであるが感じ取っていた。
「じゃあこれからもきみは、姉さんをわしのために連れてきておくれ。
お礼にきみのまえで、姉さんが悦ぶところを見せつけてあげるから」
「ウン、お願いね」
京太はいつもの少年言葉に戻っていて、
「いけない子ねぇ」
正美も弟の悪戯を優しくとがめるだけの姉に戻っていた。
「今度、べつの街に移ったときは、姉弟じゃなくて恋人同士で入居しようよ」
「そうね。私たち、きっと周りをだまし通せるわね」
風変わりな弟の求婚を、姉は風変わりな返事で受け入れる。
「それがいちばんよろしい」
若いふたりの証人になってくれた吸血鬼に、京太はぽつりとつぶやいた。
「きょうのボクは、自分のお嫁さんが処女を奪われるところを視ちゃったんだね」
「ウフフ。参った?」
突きあげる昂奮に、弟が不覚にもつつっと鼻血を滴らせるのを見て、姉は笑った。
「いつでも新居に遊びに来てね。そうしたら、ボクのお嫁さんを寝取らせてあげるから」
肯く吸血鬼に、京太は笑った。正美もほほ笑んでいた。