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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

女装する夫たち ~隣家のご主人編~

2018年08月26日(Sun) 09:52:01

引っ越してきたばかりのお宅から出てきたご主人は、わたしよりも若かった。
おまけに、ミニのワンピースが良く似合う、スレンダーな体格の持ち主だった。
「どう見ても出来損ないのバーのマダムだね」
自分で化粧をしておきながら妻は、わたしの女装をそんなふうに評した。
けれども、初めて脚に通した網タイツのきわどさがツボにはまってしまったので、
わたしは妻の酷評も鼻を鳴らして軽い不満の意を表しただけだった。

ヒョウ柄のワンピースに、黒の網タイツ。
たしかにこの格好では、夜歩きするしか手はなかった。
こういうものの似合う女性が、ちょっとうらやましくなった。

隣家のご主人は、女装が初めてだと言った。
奥さんの服を借りてきたのだと言っていたが、センスの良い服だと思った。
肩幅がちょっときつい・・・というご主人のため、
わたしは胸の釦をはだけるようにとすすめた。
ちょっとためらうご主人の手を払いのけて、
胸もとのブラが露出するまで、ぐいいっとはだける。
スレンダーな体格は、そんな辱めにも耐えて、色っぽくみえた。
「このほうが、血が撥ねても服に着かないからいいですよ」と、わたしがいうと、
「そんなものでしょうか」と、少しカルチャーショックを受けているようだった。
もの慣れない感じがいっそう、初々しさをかもし出していた。

今夜の公園で待ち受けているのは、女房の浮気相手だった。
知らないうちに寝取られていたのだ。
抗議を申し込もうにも、もともとわたしの女装癖を知り抜いている相手だった。
2人の交際を認めると妻に告げると、妻はそうこなくっちゃ、と言わんばかりに、
公園であのひとが待ってるの、と、いった。
「和解のしるしに、女になって犯されてきてくれない?」
女房の言いぐさは突飛だったが、そうするのがいちばん適切なような気がした。
わたしは手慣れたメイクを施した。
服は自分のものではなく、女房のよそ行きのワンピースをねだった。
この間新調したばかりのものだったから、最初は「いやよ」と言っていたが、
夫婦にとっての重要な儀式なんだから・・・というと、渋々だったが貸してくれた。
背中のファスナーをきっちり引き上げると、少しだけサイズの小さい妻のワンピースはまるで拘束具のように、
わたしの身体を心地よく締めつけた。

闇の支配する公園のなか。
連れの女性――隣家のご主人――の声が洩れた。
わたしもほぼ同時に、声を洩らしていた。
働き盛りの血液をたっぷりと抜かれ、へろへろになってしまったわたしは、その場に倒れ込んで、
たくし上げられたワンピースの股間の奥、女房を狂わせた一物をぶち込まれてしまっていた。

ちく生。
これでは女房のやつがマイッてしまうのも、無理はない――

潔く負けを認めたわたしは、闇夜をいいことに、妻になり切って男の愛撫を受け容れていった。

女装する夫たち

2018年08月26日(Sun) 09:38:10

上半身を締めつけるブラジャーにスリップ。
身の丈に少し寸足らずなワンピース。
頬をかすめ肩先に流れるふさふさとしたウィッグ。
足許を引き締め、なまめかしく映えるストッキング。
妻が入念に刷いた化粧に要した時間は、あきあきするほど長かった。
さいごに唇に朱を刷かれたときだけ、不覚にもちょっとうっとりした。
妻に促されて鏡を覗いたとき。
男であるわたしはきれいさっぱり掻き消えていて、女の顔をした見知らぬ別人がそこにいた。

玄関を出るときは、さすがにためらったけれど。
「いってらっしゃい」
妻は感情を殺した声でそういって、玄関に敷かれたじゅうたんのうえに腰をかがめ、床に指をついて送り出してくれた。
こんなこと。
結婚して20年以上にもなるのに、初めてのことだった。

外は静かな闇に包まれていた。
それでも街灯の明るさがいつになく眩しかった。
きっと後ろめたい格好をしているから、なおさらそう感じるのだろう。
穿きなれないパンプスに戸惑いながら、脚をもつれさせるようにして、近所の公園に向けて歩き出した。

「お隣の柴川さんですね?」
隣家から出てきたワンピース姿の女性が、わたしに声をかけてきた。
だれだろう?と目を凝らすが、心当たりがない。
たしかお隣は、わたしと同年代のご夫婦の二人暮らしのはず。
美人な奥さんの妹だろうか?
それが女装したご主人だとわかるのに、ちょっと時間がかかった。
念入りに刷いた化粧と、もの慣れた感じの立ち居振る舞いが、女の雰囲気を漂わせていた。

「お宅も今夜はお出かけですか」
「エエ、そちらもお出かけなんですね」
「公園まで、ごいっしょしましょうか」
昼間であれば、すぐにそれとわかるレベルの女装のはず。
連れができたのは心強かった。
わたしたちが目指す公園は、吸血鬼の出没するスポット。
そう。わたしも隣家のご主人も、そのなかのだれかに呼び出しを受けたのだ。
わたしは棲みついていくらも経たないこの土地の風習に従って、吸血を受けるため。
隣家のご主人もきっと、そういうことなのだろう。

「うちはすこし、事情が違うんですよ」
ご主人は意外なことをいった。

長らくね。
女房が吸われているのに気づかなかったんです。
それが、ふとしたきっかけでわかってしまって・・・
こんなこと、知らずに済ませればよかったのですが。
でもわかってしまった以上、どうしようもありません。
女房を吸い殺されたくなかったら、夫婦ながら吸われつづけるしかないのですよ、ここでは。

「奥さんとその方との仲を、認めに行かれるんですね」
「まあ・・・そういうことですね。無条件降伏というやつです」
ご主人はあくまで、淡々としていた。
「あなたのお相手は誰ですか、もし差し支えなかったら」
そういうご主人に、わたしは彼も知っているであろう近所の男性の名前をあげた。
父と同じくらいの世代の人で、地域の長老格だと聞いている。
ご主人は表情を和らげた。
「ああ、あの方だったら・・・」
聞けば、若いころに夫婦ながら吸血鬼に血を吸われて、半吸血鬼になった人だという。
「ご自分の奥さまを寝取られていらっしゃるから、自分が寝取る人妻の旦那の気持ちも、ちゃんとわかる人ですよ」
風変わりなほめ方だったが、おそらくきっと正しい見解なのだろう。

そんな話をしているうちに、公園に着いた。

女装のワンピース姿のまえに黒い影がふたつ、ゆらっと漂うように揺れて、立ちはだかった。
わたしたちは立ちすくんだまま、それぞれの相手に抱きすくめられてゆく。
「お名前は?」
相手の男が訊いて来たのに答えて、わたしは妻の名前を名乗った。「浩子です」
「浩子は夫を裏切って、私のものになると誓えますか」
「ハイ、誓います。主人に貴男と私の関係を認めてもらいます。主人もきっと・・・よろこんでくれるでしょう」
「それはなによりだ」
では・・・と男は囁いて、口許から尖った歯をむき出した。
傍らでも、同じような儀式が終わったらしい。
「ひっ!」
と叫んだのは、ほぼ同時だった。
ふたりの吸血鬼は、各々の獲物の首すじに食らいつき、力ずくでむしり取るようにして、血を啜った。
働き盛りの血潮が身体から抜けて、吸血鬼の喉を鳴らしてゆくのを、わたしは声を呑んでいつまでも聞き入っていた。

「血を吸った人妻は、犯すことになっています」
仰向けに倒れたわたしにのしかかっていた男が、宣告するようにそういった。
「お願いします」
わたしが身体をくつろげると、男はわたしの穿いているストッキングをむしり取るように引き破った。
そして、黒々と逆立った一物を、わたしの股間へと埋めてきた。

これを・・・妻も埋め込まれてしまうというのか。
肉薄してくる怒張の強烈さに声を洩らすまいとしながらも、
わたしは妻の相手となる男の身体の佳さを体感せずにはいられなかった。

「寝取る男と寝取られる夫・・・仲の良い方がよくはないですか」という男に、
「まったく同感です」と応えるわたし。
「ではいましばらく、愉しませていただきますよ」
「お願いします」

ワンピースを下草だらけにしながら転げまわった夜。
わたしは妻を愛人にしようとする男の希望を、歓んで容れたのだった。

歳月。

2018年08月20日(Mon) 07:18:35

子供のころ。
真っ白なハイソックスを履いて公園にいたら、吸血鬼に襲われた。
ハイソックスを真っ赤に濡らしながらチュウチュウと吸血されていくうちに、ゾクッときて。
仲良くなった吸血鬼に、毎晩のように逢うようになっていた。

ぼくがハイソックスを脱いで家に帰るのを見とがめた母さんが、夜中にぼくのあとを尾(つ)けてきて、
あっさりと吸血鬼の餌食になった。
あちこち咬み破られてずり落ちたねずみ色のハイソックスをずり上げながら、
肌色のストッキングをびりびりと破かれながら血を吸い取られて、ウットリとなってゆく母さんのことを、
薄ぼんやりと眺めていた。

母さんは、毎晩逢うのはお止しなさい、身体に悪いから。
ふた晩にひと晩は、私が身代わりになるから――と言ってくれた。
母親らしく気遣ってくれたのだけれども。
吸血鬼の恋人にされてしまった後の乱れ髪や、はだけたブラウスから覗く吊り紐の切れたブラジャーについ目が行って、
目のやり場に困っていた。

それ以来。
母さんが貧血を起こしているときは身代わりにぼくが、
母さんの洋服を着て、ねずみ色のストッキングを脚に通して、吸血鬼に逢うようになっていた。

そのころの父さんは、ストッキングみたいに薄いスケスケの紺のハイソックスを穿いて勤めに出ていた。
ぼくは母さんの服を着ないときには、父さんのハイソックスを穿いて吸血鬼に逢っていた。
浮気がばれるのを恐れた母さんは、父さんの帰宅時間を吸血鬼に教えた。
勤め帰りの父さんは、スケスケのハイソックスをびりびりと破かれながら吸血されて、吸血鬼と意気投合してしまった。
うちの家内を紹介してあげると、彼を家にあげてやって、
母さんは父さんとは別のベッドで、ひと晩吸血鬼にかしずく羽目に遭っていた。
おかげで――母さんの浮気は、いまにいたるまでばれていない。

妹が中学にあがって、黒のストッキングを穿くようになったとき。
ぼくは母さんの言いつけで、妹の制服を着て吸血鬼に逢いに行った。
こうしてぼくは、夜だけは人妻になったり女学生になったりして、愉しむようになっていた。
妹が下校途中に襲われたのは、入学してから三か月後、冬服から夏服に切り替わる直前のことだった。
やつにしては、よくガマンしたほうだと思う。
吸い取られた生き血で冬服を濡らしながら、妹はべそを掻きながら、チュウチュウと吸血されて、
うら若い血液を奪われていった。
母さんの血が気に入ったんだもの。妹の血が好みに合わないわけはなかった。

それ以来。
ぼくたち兄妹は、おそろいのセーラー服を着て、連れだって公園に通うようになっていた。

齢の離れた兄さんが、義姉さんを連れてこの街に戻って来たのは、それから数年後のことだった。
ぼくはさっそく、義姉さんの服を着て、吸血鬼に逢った。
義姉さんは、てかてか光るストッキングを好んで穿いていた。
ぼくの脚に通された義姉さんのストッキングは、吸血鬼をいたく魅了した。
いつも以上にびりびりと破かれてしまう光景を、義姉さんが襲われる想像と重ね合わせて、
ぼくはいつも以上に昂ってしまっていた。

家への出入りが自由になっていた吸血鬼は、
父さんの親友という触れ込みで(父さんもそう認めていた)一家の団欒の席に現れて、
兄さんを強い酒でたぶらかすと、その目の前で義姉さんを襲った。
義姉さんが血を吸い取られ、犯されてゆくのを、
兄さんは男の目になって、昂ぶりながら愉しんでいた。
ぼくも男のめになって、昂ぶりながら愉しんでいた。

それ以来。
兄さんは義姉さんが誘いを受けるとこころよく送り出して、
代わりにぼくに義姉さんんの服を着せ、ベッドに引きずり込むようになっていた。

吸血鬼に純潔を汚された妹は、責任を取ってほしいとぼくに迫って、
ぼくと妹は、うちうちに結婚式を挙げていた。

男になったり、女になったり、とてもめまぐるしい日常だけど。
そんな日常を、ぼくはすっかり愉しんでしまっている。

兄さんの娘の由佳が中学にあがるころ、
ぼくは兄さんに、由佳ちゃんの服を着たいと言った。
兄さんよりも義姉さんのほうが、積極的だった。
結婚してから吸血鬼に逢うようになった義姉さんはかねてから、
処女のまま吸血鬼に抱かれる経験をできなかったのを残念がっていた。
処女のうちに血を吸われた妹のことを、羨ましいと言っていた。
兄さんのまえで、「このひとに出会う前に抱かれたかった」なんていうので、
兄さんも微妙にくすぐったそうな顔をして、義姉さんの告白に耳を傾けていた。

由佳ちゃんが吸血鬼に襲われて、高校の卒業祝いのときには女として愛し抜かれてしまったあと。
義姉さんはまな娘におめでとうと言って、由佳ちゃんも照れくさそうに、頷いていた。

それ以来。
ぼくは義姉さんの服を着るのと同じくらいの感覚で、
由佳ちゃんの服を着て、兄さんに逢うようになっていた。

義母のスカート

2018年08月16日(Thu) 08:07:11

妻が言った。
「母のスカート、穿いてみたら良い感じだったので、借りてきちゃった♪」
その時の妻の顔――なぜか白い歯しか思い出すことができないのは、なぜだろう?
女の姿になると、男モードで過ごすときの記憶が、あいまいになるのかもしれない。
妻のいない夜。
”彼”は女の姿となって、”彼女”となる。
結衣は女装子。

結衣の妻は、薄々感づいているようだ。
けれども決してそんなことは、口にしない。
なにかのときに、「人に迷惑かけなければ、たいがいのことは許されるよね?」と、真顔で言った。
あれはもしかすると、そういう意味だったのかもしれない。
そのあと妻は、私は貴方に迷惑かけるけど♪と笑って、はぐらかしてしまったけれど。

結衣には彼氏がいる。
けれどもそういう表現をするのは、妻に悪いと思っている。
でも厳密には、彼氏ではないのかもしれない。
彼は結衣の血を吸うだけで、まだ犯されたことはないのだから。

その男と初めて出逢ったのは、女の姿になって歩いた真夜中の公園だった。
女の生き血を求めてさまよっていた彼は、怯える結衣を追い詰めた。
「見逃してください!」と懇願する結衣に、
「救ってほしい」と彼は呟いた。
聞けば、夜明けまでにだれかの血を吸わないと、灰になってしまうというのだ。
重い事実を聞かされて逡巡したすきに、男は結衣の間近に近寄って、うなじを吸おうとしていた。
結衣は思わず願った。
「お洋服だけは汚さないで!」
男はみじかく「わかった」と応えると、「もう少し首すじをくつろげて」と、結衣に注文した。
結衣が目を瞑っておとがいを仰のけると、男は結衣の首すじを咬んで、血を吸い始めた――
魔法にかけられたみたい。
そう思ったときには男は、結衣の血を吸い終えていた。
「もういいの?」
しぜんと女声になって訊ねる結衣に、男は「ありがとう」とだけ、いった。
それ以来。
結衣は深夜の女装外出のときに男と密会を重ね、
請われるままに、ストッキングを穿いた脚を咬ませることまで許してしまっている。

義母のスカートは、ロング丈の花柄だった。
古風だけれども、よく見るとモダンな柄だと結衣は思った。
いまとむかしは、そんなにへだたっていないのかも知れない・・・結衣はなんとなく、そう思った。
今夜、妻は出張で家にはいない。
そして、義母からもらってきたというスカートがなぜか、妻の出かけた後のリビングの背もたれに、そっと掛けてあった。
自分の留守中に、だれかが身に着けるのを予期しているかのように。

考えすぎに違いない――結衣は自分の胸の奥に沸いたそんな想いを打ち消すように、
伸ばしかけた指先をなん度も引っ込めた。
けれども、義母のスカートをまというという背徳感の誘惑に、打ち勝つことはできなかった。
婦人用の衣装のなまめかしさの前には、結衣はか弱い女に過ぎなかった。
気がつくと、結衣の指先はスカートのウェスト部分をつまみ上げ、
ストッキングをまとった両脚を、スカートのなかへと入れていた。

自前の城のブラウスと合わせて、姿見の前に立つ。
似合っていると、結衣は思った。
もはや、羞ずかしいことをしているという意識は、きれいに消し飛んでいた。
姿見の前、玄関までの廊下。
身に着けたロングスカートをさわさわと波打たせながら、できるだけゆったりと足どりで、歩みを運ぶ。
それだけのことなのに。
結衣の胸は高鳴り、抑えきれないときめきが渦巻いた。

「似合っている」
傍らで声がした。
自分自身の呟きかと思って振り向いたら、男が佇んでいた。
「どうして??」
家に招いたつもりはなかった。
「つい、迷い込んでしまった。許せ」
結衣は顔をあげ、男をまっすぐ見あげて、いった。
「歓迎します――」

いつものように、結衣を仰向けにすると、男は結衣の首すじを咬んだ。
いつもは公園の芝生のうえなのに、今夜は自宅のじゅうたんの上――
お洋服が汚れるのを怖がらないで済むことが、むしろ結衣の気分をくつろげている。

コクコクと音を立てて血を吸い取られてゆきながら、
結衣は吸血鬼に襲われた娘になり切って、陶然として自宅の天井を見あげていた。
吸血鬼が自分の血を愉しんでいるという事実が、抱きしめたいくらい嬉しく感じた。
貧血をものともせずに、結衣は男のためにけなげに応えつづけた。
男は結衣の身に着けた義母のスカートをまさぐり、結衣のお尻をなぞった。
じわっと拡がる淫らなときめきを圧し殺しながら、結衣は耐えた。

ここで横たわって、侵入してきた吸血鬼に淫らな振る舞いを許しているのは、結衣?お義母さま?
それとも妻?
妖しい幻想に怯えながら、結衣は応えつづけてしまっていた。
男は結衣の足許に取りついて、いつものようにふくらははぎを咬み、
クリーム色のストッキングを無造作に咬み剥いでゆく。
彼自身の嗜虐心を満足させるように。
結衣は彼の嗜好を好意的に受け容れて、
表向きは嫌がりながらも、足許の装いに加えられる凌辱を、知らず知らず愉しみはじめてしまっていた。

男が呟いた。
「このスカートは、なにかを知っている・・・」
考え深げなまなざしで、スカートの花柄を見つめる男。
男のまなざしの向こうに、妻や義母がいるのを、結衣は直感した。
「家族には手を出さないで」
結衣の願いを男は容れてくれて、本来なら求められたに違いない要求を、完全に封じ込めることに成功していた。
男は男なりに、結衣を尊重し愛してくれているのだった。
男はもういちど、呟いた。
「このスカートは、なにかを知っている」

その「なにか」を聞いてしまうのは怖い、と、結衣は思った。
そしてなんの脈絡もなく、義母のスカートを夫にゆだねた妻は、いまごろどうしているのだろうか?と思った。
ほかの男に逢っているのかも――という妄想は、さすがにかき消していたけれど。
そうであるほうがむしろフェアなのかも・・・と思い直したりしていた。
愛し合夫婦が違う屋根の下、別々の相手と夜を更かしてゆく。
そんな夜が現実にあったほうが良いのか、良くないのか。
それはまだ、結衣の意識の向こう側の世界に過ぎなかった。

男はふたたび結衣を抱きしめて、こくこくと喉を鳴らして、
結衣の血を美味しそうに飲み耽っていった。

女装子お見合い倶楽部

2018年08月10日(Fri) 07:29:55

どうしても結婚したいと思った。
相手は、男でも良いとさえ思った。
せめて、女の格好をしているのなら。
そんな不純な想いを抱いて訪れた場所――
それは、
「女装子お見合い倶楽部」
という場所だった。

なんの変哲もない雑居ビルの二階に、それはあった。
得体のしれない世界に踏み込むことをためらう気持ちよりも、
嫁さんが欲しいという欲望のほうがまさって、
気がついたらノックをして、部屋の中に入っていた。

応対してくれたのは、穏やかそうな初老の男の人だった。
案外ノーマルな人だな、と、思った。
「いらっしゃい。こちらは初めてですね?どんな方がご希望ですか?」
名前も連絡先も訊かれなかったことに、すこし安堵した。
男の人は、そんなぼくの想いを見透かすように、
「お名前、ご住所、ご職業とかは、ご本人に入って下さればそれでよろしいです」
押しつけがましくない口調だった。
そして、お差支えあるかもしれませんからね、と、当然のようにつけ加えた。

年齢40歳くらいまで。(ぼくの年齢もそれくらい)
女性として日常を送っている人。
学歴、職業は不問。
容姿、スタイルは特に問わないが、古風な感じの人が好み。
独りで生きていける人。

自分で書いていて、かなり偏った手前勝手な条件だなと思った。
「かしこまりました。ご希望に合いそうな方とのアポイントを取らせていただきます」
初老の男性に言われるままに、携帯の番号とメールアドレスだけを教えて、その日は終わった。
アポイントが取れたのは、数日後だった。
仕事中に携帯が鳴ったらどうしようと内心どきどきしていたのを見透かすように、
それは無表情なメールでやって来た。
「お見合い相手のかたをご紹介します。ご都合のよろしい日時は・・・」

名前:ゆう子(仮名)
年齢:39歳
婚歴:未婚
職業:パートタイマー(某企業にて、女子事務員として勤務)
家族:両親と兄夫婦とは別居、日常的な行き来はあり。家族は本人の女装癖を認知している。
性別:男(男性器あり)

住所や電話番号、勤務先、年収・・・そういったものは書かれていなかった。
こちらが明かさなかったのだから、当然と言えば当然だった。
年収くらい情報交換しても良かったかな?という考えは、浮かんだ途端に消えていた。
ほんとうによい人なら、自分が養えばよい、と思った。

初対面の日は、あっという間に来た。
「初めまして・・・」
あらわれたそのひとは、白っぽいワンピースを着ていた。
肩まで伸びた黒髪に、良く似合っていた。
顔や顔の輪郭が少しだけかっちりとしていたけれど、
それは彼女の容姿を損なうものではなかった。
でも、女性のなだらかさとは少しだけ、異質なものがあると感じた。

女のかっこうをした男と、いまお見合いをしている。
その事実に今さらながらがく然となり、それが態度に現れた。
ゆう子さんはそれでも、不快そうな態度を表に出さなかった。
無理なら遠慮しないで、そう仰ってくださいね。
低くて落ち着いた響きのある声だった。
男が女のまねをするような、不自然な猫なで声などではない。
長い時間に身についたものだった。
ぼくは不覚にも、うろたえた。
自分の覚悟のなさが、恥ずかしかった。
気がつくと、いっさいがっさいを、白状していた。

女性にはまるきりもてなくて、結婚願望ばかり高かったこと。
それでもどうしても結婚したくて、女の格好をしていれば男でも良いと思ったこと。
女装の人と面と向かって話すのは初めてで、慣れない状況に戸惑ってしまっていること。

ここまでで、ご遠慮しましょうか――?
ゆう子さんはちょっと寂しげだったが、淡々とした語調で断りやすい雰囲気を作ってくれた。
そのとき自分自身をかなぐり捨てることができた幸運に、いまでも心から感謝している。

ごめんなさい。そうじゃないんです。
でも、初めてなので戸惑ってしまって。
少し、時間を下さい。
できればもう少し、あなたと一緒にいさせてほしいんです。

できればもう少しで良いから、あなたのまとうその落ち着いた空気といっしょにいたい――そんな失礼なことまで、口にしていた。
いつも浮ついていて自分勝手な自分にとって、彼女のまとう空気感が、とても新鮮だったから。
「人助けだと思って」とまで懇願したぼくに、「だいじょうぶですよ」と、ゆう子さんは笑って応えてくれた。

それからなにを話したのか、じつはあまりよく憶えていない。
ゆう子さんの行きつけの喫茶店に行って、おなじ紅茶を飲んで、言葉少なにお互いのことを話したような気がする。
なぜかお互いに聞き役になっていて、そのために会話がしばしば途切れたけれど、
なんとか言葉をつなぎたいという焦りはみじんも感じなかった。
聞いてはいけないようなことまで、聞いてしまっていた。
夜の営みはどうすればよいのですか?とか。
ゆう子さんは静かに笑って、応えてくれた。
初対面の女性に、そんなこと訊いてはいけませんよ、と、優しくたしなめながら。

どんなことをすれば良いかなんて、考えることないと思うんです。
お互い、愛したいように愛すれば良いと思うんです。
でも、私の考えだけをいうのであれば――
もしもあなたを好きになったら、女として愛します。

女として愛します。

そういったときのゆう子さんの目に帯びたものが、ぼくたちのすべてを塗り替えていた。

「男のお嫁さんをもらうから」
思い切って打ち明けたぼくの話に、両親はもちろん驚いたけど。
「陽(ぼくのこと)が良ければ、それでいいんじゃない」と、あっさりと結婚を許可してくれた。
孫の顔だけは見せられない――とわびるぼくに、「孫はあんたとちがって優秀な兄さんや姉さんができの良い孫を作っているから良いよ」と、いつもながらのひどい言葉で、ぼくのことを安心させてくれた。

ゆう子さんは貞操堅固なひとで、いままで異性とも同性とも未経験だといった。
新婚初夜のベッドのうえ。
はからずも40にもなって、ぼくは処女の花嫁を得たのだった。
愛したいように愛すれば良い。
彼女のことばは、いまではぼくの日常になっている。
夜遅く勤めから戻るぼくをねぎらうために、
ゆう子さんは小ぎれいな服を身に着けてぼくを迎え入れて、
夜遅くまで。
朝早くから。
全身に愛をこめて、互いに互いを愛し合っている。


あとがき
珍しく純愛もの?になってしまいました。
(^^)

女学生?看護婦?それとも・・・

2018年07月25日(Wed) 05:29:55

その女子生徒は彼のまえで、恐怖に顔を引きつらせ、
両手で口許を抑えて、立ちすくんでいた。

下校途中だったらしい彼女の服装は、紺のベストとグレーのプリーツスカート。
足腰の動揺に合わせて揺らめくスカートのすそからは、
緑のラインが3本入った白のハイソックスに包まれた脚が、革靴に包まれてこわばっている。

彼はかまわずその女子生徒の肩を掴まえ、手前にグイと引き寄せた。
そうはさせじと踏ん張る脚はすぐにくじけて、
あっという間に彼女の身体は彼の猿臂に抱え込まれてしまっていた。
目のまえに迫る健康そうな首すじは心持ち日焼けしていて、
ツヤツヤとした健康そうな皮膚に覆われている。
真っ白なブラウスを汚してしまうだろうな――と思ったときにはもう、
口からむき出した牙で、首すじに喰いついていた。

「ぎゃっ!」と叫んだのか。「わっ!」と叫んだのか。あまりよく憶えていない。
気がついたときには吸い上げる血液のなま温かさを心の底から抱きしめながら、
抵抗を忘れた女子生徒の身体から、生き血を喉を鳴らして飲み耽っていた。
血のない身体は引きつったように苦しく、全身を縛る干からびた血管に締め上げられるようだったが、
少女の身体からもたらされた潤いに打ち解けて、ぐっと柔らかな心地になっていた。

尻もちを突いたかっこうの女子生徒と目が合うと、良く輝く黒い瞳が怯えた。
彼はにんまりと笑い返しながら、心のなかで思った。
――そう、あんたは俺専属の看護婦なのだよ。
白衣の代わりに学校の制服を身に着け、白のストッキングの代わりにライン入りのハイソックスを脚に通した“看護婦”に、彼はなおも無慈悲な牙をひらめかせる。
ハイソックスのふくらはぎに唇を吸いつけてゆくと、女子生徒はあらかじめ予期していたかのように脚を差し伸べて、これから加えられる恥辱を目にするまいと、キュッと目を瞑った。
赤黒く爛れた唇のすき間からよだれをギラギラと滾らせた舌がヌルリと這い出て、ハイソックスの生地になすりつけられる。
しなやかなナイロン生地のしっかりとした舌触りを愉しむようにして、
舌はなん度もしつようになすりつけられ、ヌメヌメと這いまわった。
脚の線に合わせてゆるやかに流れるリブ編みが、いびつによじれた。
そうやって左右の脚を代わる代わるいたぶると、彼は靴下の上から牙を突き立てて、
少女の自尊心にとどめを刺すように、ずぶりと牙を埋めた。
「ああっ・・・」
女子生徒はなん度めか、悲しげなうめきを洩らし、突っ伏して、
いたぶられてゆく自分の足許から目を背けた。
真っ白なナイロン生地にじわじわとバラ色の飛沫を拡げながら、
彼は女子生徒の生き血を美味そうに、なおもチュウチュウと音を立てて吸い取っていった。

ふと気がつくと、腕のなかにいたはずの女子生徒の姿がなかった。
引きかえに与えられた喉の潤みと身体のほぐれとを振り捨てるように彼は起ちあがり、あわてて周囲を見回した。
グレーのプリーツスカートをひるがえして逃げ去る少女の後ろ姿を追い求めたが、それはどこからも得ることができなかった。
彼は半狂乱になって、とある民家の庭先に乱入した。
どうしてその家にしたのかは、記憶にない。
民家の縁側に面したガラス戸は開け放たれていて、なかは真っ暗闇のなか、ひっそりと静まりかえっている。
死の静けさを、彼は直感した。
たたみの部屋の中央にしつらえられた籐椅子から、だれかが起きあがる。
まるで死者が蘇生したかのようだった。
相手は初老の男性だった。
老人はだまって彼に、部屋の奥を指さした。
彼は老人に指さされるまま、部屋の奥を窺った。
薄暗闇のなか、一枚の大きな水彩画が、額縁におさまっている。
その絵の主の少女をみて、彼はあっと声をあげた。
白のブラウスに濃紺のベスト、グレーのスカート。
学校の制服を身に着けた絵のなかの少女は、こちらに目を向けて、悲しげにほほ笑んでいた。
少女の履いている白のハイソックスには、ふくらはぎのいちばん肉づきのよいあたり、ちょうど3本走った緑のラインの上あたりに、赤黒いシミが毒々しくまとわりついている。
「どういうことだ!?」
狼狽してふり返る彼に、老人は言った。
「その子にお逢いなすったね?」

もう、どれくらい前のことになるのやら。
あの子がいなくなってから、わたしの時間は止まってしまった。
学校帰りに吸血鬼に襲われて、家にたどり着くことができなかったのだ。
優しい子だった。
その時分にはもう、校内には吸血鬼がだいぶいたというのに、あの子は分け隔てなく接して、仲良くしようとした。
どうしても喉が渇いたというものには、靴下を脱いで足を咬ませて、血を吸うことを許しさえした。
靴下のうえから噛みたがるものがあると、仕方なさそうにほほ笑みながら、なん足も用意していた気に入りのハイソックスに血を滲ませながら、応えてやっていた。
だが、心無いものがあの子の血を独り占めにしたがって、あの子は家に帰ることができなくなった。
だから時々、出るのだよ。
あんたのように喉をカラカラにして、通りがかりの女の子を見境なく襲うものが街をうろつくと、
あの子は幻になって、ほかの子の身代わりになって咬まれてやるのだ。
どういうわけか、吸い取った血は本物らしく、
あの子を襲ったものはいちように、ひどく満ち足りた顔つきをして、静かに立ち去るのだ。
ちょっぴり後悔の色を浮かべて、もうこんなことをくり返してはいけないのだと自分に言い聞かせてな――ちょうどいまのあんたのように。

彼は少女の絵のまえで、がっくりとうなだれて、たたみに満ちるほどの涙を流していた。
吸い取った血潮の滴りを、その涙で償うように。

「償うつもりはできたのかの?」
そう問いかける老人に、彼は言った。
「どんな魔法をかけたのだ」
「どういうわけだか、わしにもわからんが」
老人はいった。
「あの子を無体に襲った吸血鬼は、真人間に戻ってしまうのだよ」

自前の血液が脈々とめぐる居心地の良さを体感しながら、彼は老人のいうことが正しいと認めざるを得なかった。
「どうしろっていうんだ・・・?」

こんどはあんたが、血を吸われる側にまわるのだ。
あんたが道行く少女や人妻から生き血を吸い取ったように、
通りを徘徊する吸血鬼のまえに立って、こんどはあんたが自分の血を与えるのだ。
そうだな、さしあたりきょうからは、女になって過ごすことだな。
あの子の着ていた制服を着て、明日から学校に通うがよい。
齢?どうでもよいではないか、そんなことは。
服だけではない。部屋もあの子の部屋を使い、あの子になり切って暮らせばよい。
戸籍もそのまま残っているし、学校にも連絡しておこう、あの子が再び登校できると。
食事はばあやが作ってくれるし、クラスにもちゃんと女子生徒としてとけ込めるはずだから。

翌日、彼は老人のいったことが本当だと感じた。
かつらをかぶり、女子の制服を着て、おそるおそる玄関をくぐると、
友だちらしい女子が2、3人、彼を待ち受けていた。
「さと子ちゃん、行こ」
頭だった女の子は、彼のことを「さと子ちゃん」と呼んだ。
たぶん、あの子の名前なのだろう。
それ以来、彼は「さと子ちゃん」になった。
「さと子ちゃんは、おかまちゃんね?」
白い歯をみせて笑う少女の口ぶりに、邪気はなかった。
「いいのよ、うちの学校、そういう子たちが多いから。うちのクラスにも、さと子ちゃん以外に3人いるわ。見分けがつかないと思うけど」
少女の履いている白のハイソックスが、朝陽を照り返して眩しく映った。
白のハイソックスに包まれた脚たちが通学路をたどるのを、
そのなかに自分の脚さえもが含まれているのを、彼は眩しく感じた。

授業を終えて帰ろうとすると、初めて彼を「さと子ちゃん」と呼んだ少女が、気づかわしげな顔つきをして、こちらへやって来た。
「私――きょう初めて吸血鬼さんに血を吸われるの。さと子ちゃんも来てくれない・・・?」

どうしてあたしを?
いつの間にか覚え始めた女言葉で、彼が訊くと、少女はいった。
――この街に越してきてから、一か月になる。吸血鬼のいる学校と聞かされて、怖がってそんな学校に通いたくないと親に言ったけれど、許してもらえなかった。いろいろな事情でふつうの街に棲めなくなったから、この街に来たのだと。その引きかえに、父さんも母さんもお前ももちろん、献血をしなければならないのだと。怖がる私にまわりは優しくて、吸血鬼の相手をすることを無理強いされることはなかったけれど、一か月経った今、父さんも母さんも吸血鬼に血を吸われてしまい、母さんの血を吸っている吸血鬼に血が欲しいとねだられている。でも一人で行くのが怖いの。

じゃあ、あたしが手引きしてあげる。
彼は少女の手を取って、引っ張るようにして連れ出した。
自分のなかでなにかが目覚めたのを彼は感じた。
怯える少女たちを地獄送りにした日々の記憶が、ちょっぴりだけれどもよみがえったのだ。
自分が吸うわけではない。けれども、吸血されるというのはこんなことだと、俺はこの子に教え込んでやることがまだできる――

着いたのは、古びた邸だった。
その邸の門のまえ、少女は怯えたように、白のハイソックスの足許をすくませる。
「大丈夫よ、あたしがついてる」
彼はそういって、少女のまえに立って、訪いも入れずに門の中に入っていった。

「あんたか・・・」
うずくまっていた黒い影は振り向きざま、目あての少女をかばうように立ちはだかる女子生徒をまじまじと見て、信じられないという顔つきでそういった。
お互いに吸血鬼仲間だったから、やつのことはよく知っている。
ふたりで同じ獲物を分け取りしたこともあったし、
二人連れの女学生を襲って、獲物を取り替え合って愉しんだこともある。
悪い記憶を共有する仲間なのだ。
「あたし、さと子です。よろしくね」
一瞬で事態を把握したらしいかつての相棒は、しどろもどろに、
「ああ・・・こちらこそよろしく」
というのが精いっぱいだった。
「この子に介添えをしてほしいって言われたの」
さと子がそういうと、相棒はすぐに納得したようだった。
「さきにあたしのことを咬んで。お手本を見せるの」
「うう・・・わかった」
吸血鬼が吸血鬼の血を吸うのか?と言いたげな相棒の顔を一蹴するように、
「もう吸血鬼じゃないんだから。中学二年の女の子なんだから」
さと子はそう言い張って、履いていた白のハイソックスをひざ小僧の下まで引っ張り上げた。
相棒が、ハイソックスの脚に好んで咬みつくのをよく知っていたから。
「じゃあ、お言葉に甘えるよ」
相棒は少女を襲う吸血鬼の顔に戻ると、さと子の足許に唇を近寄せた。
「きょうの本命」の少女が、ふたりのようすをおどおどと見つめる視線を感じながら、
さと子は足許に尖った異物が刺し込まれ、ハイソックスになま温かなシミが拡がるのを感じた。
「ほんとうに女の子の血だ・・・あんたの血、美味いぜ」
相棒が手の甲で口許を拭うと、さと子は「でしょ?」と得意そうにいった。
「つぎはこの子の番。お手柔らかにね」
さと子は素早い身のこなしで少女の背後にまわり、両肩を抑えつける。
ビクッとすくむ方の怯えが、掌に伝わるのを感じた。
「平気よ。すぐ済むわ。あなたのお母さんだって生きてるでしょ?献血だって思ってあげて」
もじもじさせる足首を相棒がつかまえるのを見おろしながら、さと子は親友を落ち着かせようとして囁きつづけた。

いいこと?
困ったひとにあたし達の若さを恵んであげるの。
あなた、看護婦さんになりたいんでしょう?
看護婦さんは白衣に白のストッキングだけど、
いまのあたし達は学生だから、制服に白のハイソックスなの。
あのひとたちは淋しく飢えているから、
あたし達の着ているお洋服で慰めることもできるのよ。
大人の女のひとが穿いているストッキングとか、
あたし達くらいの年ごろの女の子が履いているハイソックスを、
破いたり汚したりしながら血を吸うのが好きなの。
イヤラシイわよね?ヘンタイだよね?
でも、気にしないで相手してあげるの。
恥かしいのは吸血鬼たちのほうよ。
あたし達は、彼の好みに合わせてあげてるだけだから、ちっとも恥ずかしくないの。
そのうちに、慣れてくるわ。
女子生徒らしい装いを辱めるのと引き換えに、彼ったらキモチよくしてくれるのよ。
あなたのお母さんもきっと、キモチよくしてもらっちゃったから、
娘のあなたにもそんなふうになってもらいたいって思ってらっしゃるの。
だから、毎日学校に着ていく制服姿を辱めさせてあげましょうよ。
これは悪魔の囁きなんかじゃないわ。親友の忠告――

あ~あ。気を失っちゃった。
あとはもう、やりたい放題じゃないの。よかったね。
真っ白なハイソックスに濁った精液がしたたり落ちるくらい、ぶち込んじゃいなさいよ。
あんたの精液、いつも濃くって臭いもきついのよね。
え?先にあたしを・・・ですって?
やらしいなぁ・・・もぅ。
でもあんたに純潔を汚されるのも、それはそれで道理なのかも。
いいよ、じゃあこの子の前で手本見せるから。
夢中になるまで、やめちゃダメだからねっ。


こうしてなん人もの少女がまた、地獄に堕ちた。
さいしょの朝に迎えに来た少女たちは、毎日代わる代わるにあの古屋敷に呼び出されて、処女を奪われた。
それは、皮切りに過ぎなかった。
さと子の手引きで、まだ未経験だったクラスの女子のほぼ全員が、男を識った身体にされてしまったのだ。
初体験を迎えて本能的に怯える少女たちを、さと子はつぎつぎと大人の女にしていった。
経験するまでは、地獄。経験してからは、天国。
ほとんどの少女が、そう感じたに違いない。
大勢の若い血液が供給されたおかげで、通りがかりの女性がいきなり襲われることはほとんどなくなり、生命を落とす例は絶えて聞かれなくなった。


さと子が家に帰ると、見知らぬ少女がじっとこちらを見ていた。
「ずいぶんおおぜいの子たちを、恥知らずにしちゃったんだね」
少女はちょっと、怒っているようだった。
「あなた、やっぱり吸血鬼のほうが向いているわ。償いをさせるために真人間にしたのだけれど、やはり私が人間に戻るわ」
制服は返してね・・・と振り返ったときにはもう、もとの優しい顔になっていた。


男の姿に戻った彼は、再び相棒の棲む古屋敷の前にいた。
傍らに、同年代の若い女性を伴って。
「いいかい?入るよ。きょうは、俺の婚約者を紹介してやろうと思ってね・・・」


※7月21日 9:38構想。
やや唐突なおわり方が気になりますが、ここまでのお話のようです。^^;

寄り添う幻 ほほ笑む面影

2018年07月16日(Mon) 16:22:49

ストッキングを穿くだけで 貴婦人になったような気がする
スリップを着けるだけで 淑女になったような気がする
ぼくは男 でも鏡のなかでは女
きょうもレディの幻影が、ぼくに寄り添いそっと囁く

ハイソックスを履くだけで 女学生になったような気がする
リボンをギュッと締めただけで 優等生になったような気がする
ぼくは男 でも鏡のなかでは少女
きょうも女子校生の面影が ぼくに寄り添いそっとほほ笑む

夕方6時以降の”少女”たち

2018年06月26日(Tue) 05:51:07

「まいちゃん、いる?」
「まいちゃ~んっ」
少女たちのひっそりとした誘い声が、夕澄真衣の家の玄関に響いた。
ギイ・・・と扉が開いて、玄関先に立つ少女たちと同じ制服を着た真衣が、怯えるように顔だけ見せた。
「来て来てっ!怖くないから!」
香坂カオルが手を振って、ひそめた声を励ますように投げてくる。
やがて玄関の扉の影から、白ブラウスの肩が、紺のハイソックスの片脚が、赤とグレーのチェック柄のプリーツスカートに包まれたお尻が見えて、少女の全貌があきらかになる。
ウィッグの黒髪はつややかだったが、その黒髪に囲われた面差しは、少女にしては強い輪郭を持っている。
「わぁ、似合ってる♪」
坂川エリカが両手を握り合わせて小躍りした。
夕澄真衣という名前は、女子の制服を身にまとったこの少年が自分に着けた、女の子の名前。
でもここではあえて、夕澄真衣という少女の名前だけを明かしておく。
玄関のポーチから小走りに折りてきた真衣は、声を潜めてはしゃぐ二人の少女と連れだって、肩を並べて歩き出した。
それまでの怯えはもはやかけらもなく、暑すぎず肌寒くもない初夏の夕暮れの街なみを、風を切るようにして歩みを進めていった。

夕澄真衣は、都会から越してきた男の子。
昔から女の子の服にあこがれを持っていて、親に隠れて女装している。
そういう少年たちの手近にある少女の服といえば、女きょうだいのそれだったりするのだが、真衣には女きょうだいはいなかった。
けれども真衣は、裕福な親からもらう潤沢なおこづかいをやりくりして、少女の服を一着、手に入れていた。
父親は会社の経営者、母親もこの街に来てからは勤めに出ていたので、学校から帰ってから夕食までの間、親の目のない時間を彼女は日常的に持っていた。
来たばかりの見知らぬ街の公園で、少女の服を着て夕涼みをしていると、
いつも人けがないと見定めて入ったはずのこの公園のなか、気配も立てずに少女が二人、
同時にベンチの両側に腰かけてきた。
「女装してるの?似合うね。あなた、3組に入った〇〇〇〇くんでしょ?」
少女の一人、香坂カオルは好奇心たっぷりの目をくりくりさせながら、真衣に訊いた。
「だいじょうぶ。あたしたち味方だから♪」
左側から囁きかけてきた坂川エリカの声は生温かい吐息となって、真衣の耳朶をほてらせた。
「この学校、女の子の服着てる男子って、多いんだよ。3組の女川さんて、じつは男子なの」
「浜口くんや鳥居くんも、よく女装して登校してくるよね」
そんなことをさもふつうのように、おおっぴらに声に出して笑いさざめく女子たちに、真衣は圧倒されたけれど、気がついたときにはもう、三人の少女の会話に興じきっていた。
「あたしの制服貸してあげる。サイズ同じくらいでしょ?予備に一着、お母さんが買ってくれてるのがあるから。学校に持っていくから、それ着て家で待ってて。あたしたち迎えに行くから」
カオルは一方的にそういうと、小指を突き出して真衣の指にからめ、強引に指切りげんまんをした。
翌日、休み時間に手提げバッグの中に入った制服のずっしりとした重みにドキドキしながら真衣は下校してきて、だれもいない部屋のなか、カオルの制服に着かえた。
女の子の、それも同級生の制服を着るという初体験の出来事に指が震えて、ブラウスのボタンをはめるのに、ひどく手間取ってしまった。
着かえが終わって、鏡を見たら、そこにはまごうことなく、少女になった自分がいた。
真衣は感動に震えた。
それから彼女たちが家に訪ねてくるまでのあいだ、どうしていたのかをよく思い出せない。
万が一、受け取らなければならない小包を携えた郵便配達がピンポンを押したりはしないか、
万が一、親たちがなにかのつごうで家に早く戻ってきたりはしないかと、
ドキドキしながら彼女たちが玄関の外から声をかけてくるのを待ち受けていた。

ドアノブをまわし、扉を開くと、そらぞらしい外気が真衣を包んだ。
解放された真衣を祝福するような、さわやかな空気感を感じながら、
真衣は踊るようにして玄関のポーチを降りる。
すぐ目の前には、おなじ制服を着た少女が二人――晴れて自分も、その仲間入りを果たしたのだ。
「行こ」「行こ」
手に手を取り合って、公園をめざす。
その公園が「お嫁に行けなくなる公園」と呼ばれつづけてきたことなど、真衣は知らなかった。

「いいこと?ベンチにはひとりひとり別々に腰かけるの。そうするとね、自分のことをいちばんだと思っている彼が、隣に座るから――あとは、そうね・・・その彼とおしゃべりしたり、とにかく絶対いいことがあるから、彼の言うとおりにするんだよ」
制服を貸してくれたカオルはまるで先生みたいな指図口調で真衣にそういったが、
真衣は自分でもびっくりするほど素直に肯きかえして、指さされたベンチへと足を運んだ。
カオルから借りた制服のブラウスが素肌にしみ込むような心地よい呪縛を伝えてくる。
まるでその呪縛に痺れてしまったように、真衣はこれから起こることをワクワクしながら待ち受けた。

気がつくと、カオルの隣にも、エリカの傍らにも、すっと音もなく、気配も立てず、男性の影が寄り添っていた。
思ったより全然年上――そう思った真衣の隣にも、父親よりももしかすると年上かもしれない男が座っていた。
男はひっそりと、それでもたしかな存在感をもって、真衣を圧倒する。
開かれた口許からは鋭利な牙がひらめき、獣臭い息をはずませながら迫って来る。
真衣は自分でもびっくりするほどもの静かに、柔らかな目線を相手にそそぐだけ。
両肩をつかまれて、ベンチの上に押し倒されて、ひらめく牙は首すじに近寄せられてくる。
じゅるっ。
隣のベンチから、異様な音が洩れた。
ふと見るとエリカがひと足早く咬まれて、首すじから血を流していた。
それからすぐにカオルの首すじからも、咬みつく音がかすかに、ズブッと洩れた。
ビュビュッと撥ねる血が、カオルのブラウスの襟首を染めた。
「やだ――またひとの制服汚すのね」
カオルはひっそりと笑い、相手の行為をこともなげに受け容れていく。
ぼう然と見つめる真衣もまた、首のつけ根に鈍痛が走るのを感じた。

ちゅう・・・ちゅう・・・ちゅう・・・
首すじに吸いつけられた唇が、さっきからもの欲しげにうごめきながら、真衣の血を吸い取ってゆく。
それでも真衣は、身じろぎひとつせずに、男の相手をつづけていた。
真衣のもの慣れないしぐさに、むしろ男は行為を感じたようだ。
吸い取ったばかりの血に濡れた唇を麻衣の唇に重ね合わせて、ファースト・キスを奪うと、
真衣の制服姿をいとおしげにギュッと抱きしめた。
相手の男が自分のことを女の子として扱って、ギュッと抱きしめてくれるのが嬉しくて、
真衣は積極的に相手のキスに応えた。
錆びたような血の匂いが鼻腔を刺したが、怖いとは感じなかった。
むしろ、冷えた男の身体がすがりついてくるのがいとおしくて、自分のぬくもりを分け与えてあげたいとさえ、本気で思っていた。
「すまないね」
「いいえ」
会話はそれだけで十分だった。
男はなん度も真衣にキスをねだり、真衣はそのたびに応えつづけた。

ふたりの少女はブラウスをはだけられていて、はぎ取られたブラジャーの下から、豊かな乳房を思い切りよくさらしている。
カオルのおっぱいはピチピチと引き締まって硬く、
エリカのそれはふんわりと白く輝き、柔らかそうだった。
真衣は彼女たちのおっぱいをきれいだと思った。
彼女たちが本物の少女であることを、羨ましく感じた。
息荒く迫って来る男のまえでおっぱいをさらすことがなにを意味しているかなど、どうでも良いことだった。
可愛いピンク色の乳首たちはもの欲しげな舌先に舐められ、火照った唇に呑み込まれる。
大またに開かれたハイソックスの脚は、たくし上げられたスカートから太ももまであらわにされて、男どもの浅黒く隆起した腰を、股間の奥へと受け容れはじめている。
少女たちが初めてではないことを、真衣は直感した。
そして少女たちの運命を自分も共有していると気づいたときにはもう、平たい胸からぽっちりと隆起している乳首を、しつように舐められてしまっていた。
真衣がその後起きあがったのは、行為のまえの一度きりだった。
「パンツ、脱ぐね」
そういって勢いよく起き上がると、真衣は潔くショーツをひと息に足首まで引き降ろし、男の手にゆだねると、再びベンチのうえに仰向けになった。
嫁入り前まで男のまえにさらしてはいけない部位をあらわにすると、なぜか度胸がついた。
自分でも経験したことがないほど烈しく逆立った一物が股間を冒しにかかったときも、これからどうなるんだろう?という好奇心しか感じなかった。
夕食まえに、それも公園のような野外で、息子が女としていたぶられているなんて知ったら母さん悲しむだろうな――と、チラと思ったけれど。
行為を中止するきっかけにはならなかった。
力まかせに突き入れられた一物が真衣の股間を抉り、抉られた股間は血を流す。
スカートの裏地に血が沁み込むのを感じたときにはさすがにあせって、
「カオル、ゴメンねっ」って、呟いていた。
自分の純潔が喪われるよりも、カオルから借りたスカートが血に濡れることのほうが重要だった。
傍らの少女ふたりはベンチのうえで、スカートのすそから太ももをあらわにして、営みに息をはずませつづけている。
ふたりの黒髪が、腰の上下動に合わせてユサユサと揺れるのをみて、「青春だなあ」とつくづく思った。
ハイソックスの脚を噛みたいとねだられたのに応えてやったり、
お〇ん〇んをしゃぶってみたいとねだられたのに応えて咥えさせてやったり、
これがきみを女にした、ぼくの宝物だよ――といわれて差し出されたものを口に含んで、根もとまで咥えてしまったり、
吐き出された精液を呑み込んでしまったとき、真衣は女になった歓びを感じていた。

これからも、自分は男として暮らしていくはず。家族の手前もあるから。
けれどもあたしはきっと、今夜の出来事を忘れない。
そして、母さんにばれてもきっと、くり返してしまう。
もしかすると母さんまで巻き込んででも、くり返しつづけてしまう。
真衣はふと、傍らで自分といっしょに犯されている少女のどちらかと、将来結婚するのだと直感した。


あとがき
このお話は一週間くらい前、途中まで描いてタイムリミットになり、今朝ほど仕上げたものです。
どこから描き継いだかはナイショですが、当初思い描いていたのより大胆に描けたような気がしています。

亡き妻になりきった夫

2018年05月04日(Fri) 06:17:47

「私が死んだら、女になれば?」
妻はそう言って、せせら笑った。
結婚後すぐにわたしの女装癖を知った彼女は、わたしのことを冷ややかに嗤った。
それ以外は、ごく円満な夫婦だった。
見栄っ張りな彼女はだれから見ても幸福な夫婦を演じ切ろうとしていた。
賢明でもある彼女は、わたしに対する内心の軽蔑を抑え込んで、
少なくとも家庭という共同経営者としては強調し合える、理想的なパートナーだった。
彼女が穏やかでさえいてくれる限りでは、わたしにとって彼女はどこまでも、最愛の妻だった。
しかし、わたしたち夫婦の間に、子どもを授かる日はついに訪れなかった。

四十手前という若すぎる死期を覚ったとき。
病床を訪れた裕福そうな老紳士をわたしに引き合わせて、
「この人よ。20年前、私が処女を捧げたのは」
妻はそう言って、またせせら笑った。

貴方とお見合いをしているときも、しょっちゅう逢ってたの。
結婚も、彼に相談して決めたわ。
それから――結婚してからも、よく逢ってたの。
怒った?
優しいのね?
こんな悪い奥さんでも、怒らないでいてくれるのね?
じゃあ私から、ご褒美をあげる。
あなた、私がいなくなったら、女になればいいわ。
女になって、この男(ひと)に抱かれるといいわ。
もしそうしてくれるなら、私の服をぜんぶ、貴方にあげる。
私がいなくなったら、どうせそうするつもりだったんだろうけど――
貴方が気に入っていた青紫のスーツも、濃い緑のベーズリ柄のワンピースも、
これからは好きに着られるのよ。
ちょうどサイズも、あつらえたようにぴったりだし。
どお?
女になって、貴方の奥さんを犯しつづけた男に抱かれるなんて。
あなたそういうの、好きそうじゃないの――

妻がいなくなってから、男はしばしばわたしたちの家を訪れて、
わたしとはひと言も言葉を交わさずに、静かにお線香をあげていった。
そんなことが三度続いたあと、
わたしは意を決して、線香をあげに訪れた彼のことを、妻の服を着て出迎えた。
彼はちょっとびっくりしたようにわたしを見つめ、ただひと言、
「加代子さんにそっくりですね」
とだけ、いった。
わたしにとっては十分すぎる、褒め言葉だった。

さいしょに選んだ服は、洋装のブラックフォーマル。
わたしは妻を弔うためにその服を着て、初めて男性の抱擁を受け容れた。
息荒く迫る男のまえ、乙女のように心震わせて目を瞑り、
お仏壇の前で彼に抱かれて、いっしょに妻のことを弔った。

喪服のスカートの裏地と黒のストッキングとを、彼の精液で濡らしながら、
不覚にも、昂ぶりの絶頂を迎えてしまっていた。
抱きすくめる猿臂の主を、逞しい背中に廻した腕でギュッと抱き返しながら、
妻のことを日常的に犯したという一物を、未経験の股間に迎え入れた。
「加代子が狂ったの・・・わかります」と呟いて、
無条件の奉仕を誓ってしまっていた。
男はわたしの頭を抱いて、「あなたは加代子だ」といい、
わたしは彼の耳もとで、「はい、わたくしは加代子です」と囁き返していた。
せめぎ合う息遣いを思いきり昂らせて、
わたしたちはなん度も果て、愛し合った。
同じ女性を愛した男性同士――わたしは最愛の加代子になり切って、
これからもあなたの最愛の加代子でいつづけると、男に誓っていた。

つぎはおめかしをして、都会に出かけよう。
こんどは喪服ではなくて、あの花柄のワンピースにしないか。
きみはご主人が結婚記念日にプレゼントしたというあの服を着て、
いっしょに映画を見て、お食事をして、ホテルにまで行ったのだよ。
あの日が戻ってくることを、わしは心から望んでいる――
妻の愛人はわたしの耳もとでそう囁いて、
わたしはただ、「加代子になって貴男に逢います」と、囁き返していた。

わたしは妻になり替わって彼の愛人になり、加代子という名前でこれからを暮らす――


あとがき
言ってるそばから、”魔”が降りてきました・・・。
^^;

惑い。

2018年02月22日(Thu) 06:42:22

夫が、セーラー服姿で帰宅した。
女装趣味をもつ夫は、このところ帰りが遅い。
夫の正体を知ったのはごく最近のことだったが、
内心戸惑いを覚えつつも、賢明な彼女は夫の感情を逆なですることはなく、
「周りに迷惑はかけないで」とだけ告げて、ほぼ黙認状態で表向きは平穏な日常を過ごしている
夫の帰宅を気配で感じた彼女は、ちょっとだけため息をついて、
そしていつものように黙って夫を迎えるために、座を起った。
彼女は、夫が帰宅するまでの間いつも、よそ行きのスーツを身に着けていた。

木内夫人は玄関まで夫を出迎えて、その背後にひかえる黒い影をも同時に見た。
それが、木内夫人と吸血鬼との初めての出逢いだった。
黒影の持ち主は、夫よりもずっと年上の初老の男だった。
表情の少ない彼の顔だちからは、初めて木内の妻を目にしたことによる感情の動きを、全く読み取ることができなかったし、
女装の夫と2人連れだった真夜中の散歩がどんな雰囲気だったのかすら、みじんも感じられなかったけれど。
どちらかというと陰性な夫の表情はいつになく晴れやかで、長時間の散歩が睦まじい会話で充たされていたことは容易に読み取ることができた。
木内夫人はそんな夫の顔を見て、かすかな嫉妬を覚えた。

男は木内の妻を見て、無表情に目礼しただけだったけれど。
目が合った瞬間、木内夫人は、着ていたよそ行きのスーツを突き刺すように、胸の奥にずきりとするものを覚えた。
男は木内の妻を、獲物としては見ていなかった。
夫の友人としての控えめな好意だけを表に出して、「ああこの人は・・・」と夫が彼を紹介するのさえ拒むように、夫妻の視線に背を向けて、つと立ち去ろうとしたのだった。

「あの・・・」
木内夫人は、思い切ってその背中に声を投げた。
歩み去ろうとした黒い影は夫人の声に足をとめたが、振り向きはしなかった。
「今夜は、主人がお世話になりました」
夫人は瞳を伏せて、折り目正しく頭を下げた。
吸血鬼は木内の妻をふり返ると、いんぎんな黙礼だけを与えて、去っていった。
相手が異形のものと知りながら、夫の友人として遇してくれた感謝がそこにあったように、木内夫人は感じた。

「着替え?それから、お風呂?」
男が去ると、彼女は夫に必要最小限な言葉を投げて、
木内はそんな妻にちょっとはにかんだ微笑で応えて、素直にその指図に従った。
夫の女装姿は、いまだに木内夫人の目になじみ切ってはいない。
男にしてはなで肩の夫だったが、それでもセーラー服には不似合いな肩幅だったし、
ウィッグの下にあるまぎれもない夫の顔も、女子生徒の初々しさとは異質なものを持っていた。
けれどもふだんの姿の夫にはない華やぎのようなものが、身にまとう女の服と違和感なくとけ込んでいることもまた、認めないわけにはいかなかった。

浴室からシャワーの流れる音が洩れてくる。
その音を聞きながらも、木内夫人はまだ、胸のドキドキを抑えることができなかった。
夫の女装姿に、いまさらうろたえたわけでは、むろんない。
生れて初めて目にする吸血鬼の姿に、恐怖を覚えたのか?
木内夫人は自分の異常な昂ぶりに戸惑いながらも、その理由を反芻する。
わからない。
男の投げたまなざしに、獲物を見るものの獰猛さはかけらもなく、彼女に恐怖を与えるなにものも帯びてはいなかった。
夫を送ってくれた妻からの感謝の言葉にこたえ、ただたんに、礼儀正しく黙礼して、去っていっただけ――
夫の友人としてのごく控えめな好意を滲ませたほんの一瞬の行動からは、
彼女に対するどんな思惑も、感じ取ることはできなかった。
少なくとも、相手は彼女を、獲物とはみなしていない。それは女の直感でそうとわかった。
しいて言えば、夫の散歩相手が吸血鬼であることに彼女が露骨な恐怖をみせないという賢明な態度に対する敬意を、ほんの少しだけ滲ませただけだった。
――やだ。どうしてこんなにドキドキしているの。
夫がシャワーを浴びている間、木内の妻は、答えのない反芻をくり返しつづけた。
きっと今夜は夫を優しく責めながら、自分が主導でベッドのうえでの営みを遂げてしまうはず。
それもおそらくは、いつになく熱っぽく――
得体のしれない胸の昂ぶりをなかばいぶかしみ、半ば怯えながらも、木内夫人はそんなことを思い描き、つい顔を赤らめた。

木内夫人は、心の奥底でわかっている。
胸が昂り血が騒いだのは、
今夜迎えた男が、いずれ彼女の血潮を啜り取ることを予感したから。
カサカサに干からびた年配男の唇が、彼女の誇るみずみずしい柔肌をナメクジのように這いまわり、
豊かに熟れた女ざかりの熱い血潮で唇の渇きをうるおしながら、喉を鳴らして酔い痴れるだろうことを。
彼女はそれを女の本能で直感し、啜り取られる運命を察した血液を人知れずたぎらせてしまったのだと。

「きみも良かったら」
貧血に悩む夫がそれを妻に打ち明けて、彼が自分の親友に愛妻の血液を提供することを望んでいると告げたとき、
木内夫人はためらいのない同意を与えたのだった。
――あのひとと2人きりで逢うのは心細いから、そこにはあなたもいて。
自分の願いに二つ返事の承諾を受け取りながら、木内夫人は自分の受け答えに慄きを感じる。
夫が意図した結末を、じかに夫の目のまえにさらしたい。
そんな悪魔的な意図を、わざと心細げな声色で伝えた自分のささやかな復讐心を、初めて自覚することで。


あとがき
女の心裡は、ときにエロいです。
でも同時に、ちょっぴり怖いかも・・・です。^^;


絵詞なし0052bubunじ04

※挿絵は手持ちのものを、ちょっと加工しました。^^

≪りんく≫
★前作
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-3570.html

★イラストPart1
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-3575.html

★イラストPart2
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-3578.html

【ビジュアル版】交わりが拡がってゆく。 by霧夜様

2018年02月12日(Mon) 13:22:50

弊ブログを愛読してくださっている”霧夜”さまから、嬉しいプレゼントを頂戴しました。
先日こちらにあっぷした小説「交わりが拡がってゆく」の冒頭部分を、なんとビジュアル化してくれたのです。

せっかくなのでなにかひとひねりを・・・と考えはしてみたものの、そんなことよりも早く皆様にお見せしたいという衝動のほうが上回りましたので公開しちゃます!
(もちろん、ご本人の承諾つきです)

”霧夜”さまは数年前、柏木がたまに投稿しているpixivで知り合いました。
テイスト的に相通ずるものを感じてお声をかけてみたところ、なんと私のブログを時々見てくれていると知りまして・・・
以来、よきおつきあいを願っております。

しかし、自分の描いた妄想話をこうやって人さまにビジュアル化してもらえるのって、すごく嬉しいものですね。
”霧夜”さま、ありがとうございました☆


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★原作はコチラ↓
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-3570.html

★画像集Part2をあっぷ↓
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交わりが拡がってゆく。

2018年02月07日(Wed) 08:00:52

木内には、女装趣味があった。
そして、長年の親友に吸血鬼がいた。
初めての出逢いは、真夜中の散歩のときだった。
吸血鬼は木内のことを女性として接し、生き血を求めた。
木内は自分を女装者と知りながら自分に分け隔てなのない態度で接してくる吸血鬼に好意を感じて、
求められるまま首筋を咬ませた。
その時木内が着ていたのは、セーラー服だった。
彼は血を吸い取られることよりも、大事にしていたセーラー服かを汚されないかを気にかけていた。
そして、それと察した吸血鬼が襟首を汚さずに吸ってくれたことに、さらに好意を覚えた。

木内には妻がいた。
彼女は夫の嗜好に、常識的な婦人としてはまことに当然な嫌悪感を抱いていた。
血液を吸い取る代償に、女装をしての深夜の散歩のエスコートをするというふたりの関係にも、
女性としての直感から、胡散臭さを感じていた。
けれども彼女は人並みに夫を愛していたし、
ふだんは紳士的な物腰である夫の親友にたいして、会釈を交わす程度の間柄にはなっていた。
賢明な彼女は、相手が吸血鬼だというだけでむやみと相手に垣根を作ろうとはせずに、
実害の及ばない範囲では夫の親友に対する礼儀を忘れなかったのだ。

3人の間にあった均衡が破れたのは、木内が妻に、
「きみも良かったら」と、自分の親友のための血液の提供をもちかけたときだった。
木内夫人はいずれ自分の番がまわってくる予感をかねてから抱いていたので、
自分でも意外なくらいあっさりと、夫の提案を承知した。
夫と親友との親しすぎる関係が、やや過度すぎる献血を夫に課するようになっていて、
彼女は妻として、夫の健康に気遣いを感じるようになっていたからだ。
あるいは、ふたりの男性の関係に、ある種の嫉妬を感じ始めていたのかも知れない。

夫人は夫の親友と二人きりで逢うのは心細いと訴え、そのような折りには夫にも同席してほしいと懇願した。
木内は親友の意向を訊いたが、もとより無理をお願いしたのは私であるから、奥方のもっともなご意向に沿いたいと応えた。
木内はある種の予感を胸に、罪悪感とえもいわれぬ歓びとにゾクゾクしながら、当日に臨んだ。
彼はまず夫人に手本を見せるため、女性の姿で夫人の前にたち、自らの首筋を咬ませた。
木内は洋装の喪服姿だった。
やがてそれが、夫人の貞操を弔う衣裳となることを、彼はすでに十分予感していたのだ。

貧血を起こして昏倒した木内の傍らで、吸血鬼は木内夫人の首すじに噛みつき、血を吸った。
彼にとっては念願の、熟れた人妻の生き血だった。
吸血鬼の親友が最愛の妻を相手に嬉しそうに血を啜るのを、木内もまた嬉しげに見守った。
夫人は気丈にも、恐怖の念を押し隠して夫の親友の相手をつとめ、
白い素肌に夫ならぬ身の唇を這わされながら、40代の人妻の血潮をふんだんにあてがったのである。

木内夫妻の心尽くしを悦んだ吸血鬼は、その場で木内夫人を犯した。
夫人は唐突な求愛に戸惑いながらも、夫の目の前での行為を受け入れた。
夫がそうすることを望んでいると、直感したからである。
初めての交わりは夜明けまで続き、男ふたりはひとりの女を代わる代わる愛し抜いた。
一見すると輪姦でしかなかったかもしれないその行為を受け容れながら、夫人は、
いま自分の身に行われていることが、ひとりの女を二人の男が共有するための儀式なのだと直感した。
そして、その直感は正しかった。
木内夫人もまた、日ごろの賢夫人としての振る舞いを取り戻して、
予期していなかった関係をためらいなく受け入れていた。
賢明な彼女は、今後は夫の親友のために、自らの生き血を過不足なく提供することを約束し、
寛大な夫はその際必然的に生じる男女の関係を許容すると誓った。
親友が望んでいるのは、彼の妻を木内夫人のまま犯し続けることだと、熟知していたからである。


ひとつの関係はさらに別の関係の糸口となり、それはさらに新たな関係の契機となる。
吸血鬼と木内夫妻との関係が、まさにそれであった。
木内夫人は子をもつ母親としてのたしなみと遠慮を持っていた。
夫に対してもそうであった。
木内は妻の身代わりの献血行為を率先することで妻の身を庇おうとし、
夫人は夫の親友に接するときには、自分が希望しているのはあくまでも夫への貞節を守ることであり、
いまは心ならずも彼の欲望に従っているという態度を取り続けた。
それでも内心まで偽ることのできなかった彼女は、自分でも不思議に感じるある願望を抱くようになった。
時を遡って処女の頃に吸血鬼と出逢って、自らの純潔さえ捧げたかったと熱望するようになったのだ。
その願いは夫である木内の知るところにさえなったが、
親友である吸血鬼に進んで最愛の妻を与えた彼は、妻が吸血鬼に抱いた気持ちをむしろ尊重さえしているのだった。

実現不可能にみえた夫妻の願望を、別の意味でかなえたのは、彼らの一人娘だった。
夫妻は自分たちの大人同志としての関係を子供たちと分かち合うことを避けていた。
人並みな親として、息子や娘の将来に、人並みの幸福を期待していたのだ。

均衡が破れたのは、ある冬の日のことだった。
○学校の卒業を控えた娘が帰宅したとき、幸か不幸か親たちは家を留守にしていた。
待ち受けていたのは、喉をからからにしていた父親の親友だった。
彼女は彼の正体を親から聞かされていて、あまり近寄らないようにと注意さえ受けていた。
しかし彼女は苦しんでいる年上の親しいおじ様の苦境に同情して、自分のことを咬んでも良いと告げた。
少女は吸血鬼のもてなしかたを、かねてから垣間見ていた母親の振る舞いから、よく心得ていたのだ。
透き通るストッキングを穿いて脚を差し伸べる母親に倣って、その場にうつ伏せになると、
よそ行きのときだけに履く真っ白なハイソックスのふくらはぎに、唇を吸いつけられていった。
少女は自分の生き血をおいしそうに吸い上げられるチュウチュウという音にうっとりと聞き惚れながら、
真新しいハイソックスの生地になま暖かい血潮をしみ込まされてしまうのを、ドキドキしながら感じ取っていた。
親たちが帰宅したときにはもう、すべてが終わっていた。

少女はパパのお友だちでママのナイショの恋人でもある小父さまに、処女の生き血をプレゼントすることを、
指切りげんまんをしてお約束してしまっていた。

木内夫妻の長男は都会の大学を出て、就職先も都会の会社だった。
重役の娘に見初められて、結婚間近だった。
血は争えないもので、彼もまた父親と同じく婦人の装いを嗜んでいた。
そして、そのことを未来の花嫁に知られることを、ひそかに恐れていた。
彼は両親の口から意外な近況を聞かされると、その週の週末には恋人を伴って、実家に姿をみせた。
将来を誓いあった男性の実家に招かれて、重役令嬢はなんの疑いもなく、婚約者に帯同されてこのひなびた街へと脚を踏み入れた。
透き通った白のストッキングに包まれた初々しいふくらはぎが、垣間見る者を魅了したなどとはつゆ知らず。

その日、都会育ちの善良なお嬢様は、桜色のスカートスーツのすそを深紅に染めて、
自らの体内に宿した、うら若く健康な血潮を、気前よく振る舞う羽目になった。

荒っぽい歓迎ぶりに、さすがに顔色をなくした彼女だったが、
しつように吸いつけられる卑猥な唇に素肌を馴染ませてしまうのに、さほどの時間はかからなかった。
吸血の因習を避けて都会暮らしを選んだはずの長男だったが、
いったんあきらめをつけてしまうと、すでに母と妹を堕落させてしまった吸血鬼と互いに打ち解けあって、
いまは婚約者に告げずに逢瀬をくりかえすようになった未来の花嫁のあられもないありさまを、
ワクワクしながら覗き見するようになっていた。
重役令嬢は、恋人の貧血を補うために身代わりになるという婚約者のために、彼が彼女の服をねだることを許した。
日ごろの悩みを解消することができた青年は、妖しい儀式の待ち受けるお邸に、
理解ある婚約者と2人肩を並べて出入りするようになった。

幼かった妹にも、彼氏ができた。
まだ年端もいかぬ少年でしかないはずの彼は、自分の恋人と吸血鬼の関係を受け入れることに同意して、
その証しに未亡人である母親を吸血鬼に紹介した。
吸血鬼が母親の首すじに唇を迫らせて、喪服を脱がしてゆくありさまのいちぶしじゅうを見届けてるはめになった彼は、
自慢の母親が堕ちるのを目の当たりに、未来の姑が嫁の不倫の頼もしい共犯者になると確信したのだった。

このようにして、ひとつの好意はいくつもの好意を呼び寄せた。
世間なみの幸福を子どもたちに望んだ親たちは、自分と同じ道に堕ちた彼らといままで以上に交わりを深め、
そうした交わりは妖しい歓びをともにできる者たちの間だけで拡がりつづけた。

おおぜいの人間から血液の提供を受けるようになった幸運な吸血鬼は、仲間に自慢したという。
俺は夫と妻、その息子と娘、その婚約者や恋人とその母親たち――合わせて8人もの女をモノにしているのだ、と。


【付記】
冒頭部分を、弊ブログの読者である”霧夜”さまがビジュアル化されています。
詳細はコチラ↓
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-3575.html

【付記2】
木内の妻が夫に伴われて吸血の場に臨むまでのシーンが、”霧夜”さまによってビジュアル化されています。
詳細はコチラ↓
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-3578.html

吸血鬼になったお兄ちゃん

2017年12月07日(Thu) 07:32:58

豊畑数雄は吸血鬼に襲われて、生き血を吸われ、犯された。
男子でも犯されることってあるんだと、数雄は初めて身をもって知った。
けれども結局彼は、自分を犯した男に、19歳の生き血を一滴余さず、気前よく、吸い取らせてしまっていた。
ボクって気前がいいんだな・・・
そんなふうに思えたのは、自分の生き血と引き替えに、数雄自身も吸血鬼になってしまったからだった。
彼の身体はそのまま自宅の勉強部屋に安置されて、ひつぎのなかに置かれた。
「かわいそうなお兄ちゃん。お供えに、あたしの制服着せてあげるね」
数雄の女装癖を知っていた妹の真衣が、自分の制服を着せてくれたのが、むしょうに嬉しかった。
真衣の制服は紺のブレザーの制服だった。
ごく普通の、普通すぎるくらい普通の制服を、真衣は「ダサダサの制服」だといって気に入っていなかったけれど、
お兄ちゃんが隠れて麻衣の制服を着て愉しんでいるのに気づいてからは、自分の制服をちょっとだけ見直す気持ちになっていた。
真衣は母さんに頼んで、制服をもう一着作ってもらった。
いままで着ていた制服をお兄ちゃんにあげちゃった麻衣には、
もう一着、自分が学校に着ていく制服が必要だったから。
けれども麻衣はやがて、三着目の制服が要りようになった。
若い女の子の生き血を欲しがるお兄ちゃんのために着てあげる制服を。
はた目には、おなじ制服を着た女の子同士が抱き合って、片方がもう一方の生き血を吸っているようにしか見えなかった。
華奢な身体つきのお兄ちゃんはそれくらい、真衣の制服になじんでいた。
そして血を分けた実の妹である真衣の血は、カラカラに干からびたお兄ちゃんの喉に、とてもしっくりとなじんでいった。

娘の血を吸い尽させるわけにはいかないと、お母さんはときどき、息子のために吸血を受け容れるようになった。
自分の生き血を吸わせるときに、数雄はお母さんに、いつもPTAの会合に着ていくよそ行きの黒のスーツを着てほしいとおねだりをした。
お母さんは息子にねだられるままに、よそ行きのスーツを着て、息子の相手をした。
吸血鬼が既婚の女性の血を吸うときに、ことのついでに犯してしまうという習性を、お母さんは自分の身体で識るはめになった。
息子想いのお母さんは、それでも献血を止そうとはしなかった。
気丈にもお父さんにすべてを話し、そのうえで息子の相手をつづけて、
懸命にも理性を保ちながら、40代の人妻の生き血を、過不足なく息子に与えた。
遠い日に自分の母乳で子供たちを育てたときのように――

母娘ふたりの血では、数雄一人を養うには足りなかった。
足りない分は、数雄が自分で調達することになった。
彼は真衣の制服姿で夜な夜な自宅をさ迷い出て、声をかけてくる男や、同じ制服を着た女子を、片っ端から襲っていった。
そのうちに。
麻衣の学校の女子生徒の間で、「吸血クラブ」という同好会が生まれた。
会員は、真衣を筆頭に、真衣のクラスメイトやお兄ちゃんが襲った女子生徒が、全部で8人いた。
彼女たちは2人ずつ交代で夜道を歩き、同じ制服を着た麻衣のお兄ちゃんと待ち合わせて、
真っ白なブラウスの襟首を真紅に濡らしながら、生き血を吸われた。
ハイソックスを履いた脚を咬みたがる数雄のために、だれもが学校に履いて行く白のハイソックスを脚に通して、
連れ込まれた公園でスカートをたくし上げて、ハイソックスの脚を見せびらかして、
真っ白なハイソックスが真っ赤になるまで、愉しませてあげるていた。
親たちは娘の異変に気づきながらも、見て見ぬふりをしていた。
すでに街じゅうに、同じような目に遭う若い男女が増え始めていたから、
自分の娘が吸血されるということが、ごくありふれたことになっていた。
血を吸われた若者たちのお母さんたちもまた、数多く餌食になっていた。
首すじに、息子や娘たちと同じ赤黒い痣を浮かべたお母さんたちは、
娘の血を吸いたがる吸血鬼を自宅に手引きしていたし、
女のこの服を着て真夜中の街を歩きたがる息子たちのために、娘や自分の服を着せてやり、メイクまでしてやるようになっていた。
理性を毒された夫たちは、妻たちが吸血鬼に襲われるのを、見て見ぬふりをしていたし、
誘惑に屈した妻たちは、自分を襲った吸血鬼に熱をあげていた。
夜ごとにひっそりと自宅を抜け出して愛人との逢引きを愉しんだり、
夜ごとに訪う黒い影を自宅に引き入れては、不倫の恋に耽るのだった。

「吸血クラブ」の面々は、クラスメイトの真衣がお兄ちゃんに吸血されていく、近親相姦みたいなシーンを興味津々でのぞき見しながらワクワク、ドキドキしていたし、
男子のなかには自分も吸血鬼になって、気になってる女子の血を吸いたいと願うものまで現れた。
数雄の親友の珠樹も、そのひとりだった。
数雄は珠樹の妹の血を、日常的に吸っていた。
妹同士が、クラスメイトだったから、真衣が真っ先に自宅に招いて、お兄ちゃんに襲わせたのだ。
妹が親友の餌食になるという自分の立場を、珠樹は昂奮をもって受け容れた。
けれどもそのうちに、自分自身も、妹といっしょに兄妹ながら、親友の餌食になりたいと願うようになった。
彼は数雄を自宅に招び寄せて、数雄が吸血鬼化したときと同じように、全裸にハイソックスだけを履いた姿で、数雄に首すじを吸わせた。
年ごろの青年ふたりは、お互い肌を合わせるうちに昂奮を感じ合って、
珠樹は数雄に犯されていた。
珠樹のお母さんは、その様子を物陰から、ドキドキしながら見守っていた。
そして、数雄が珠樹のことを首尾よく吸血鬼にしてしまうと、
血に飢えた息子とその親友にわが身までも襲わせて、自分自身の血を与えるのだった。
「自分も吸血鬼になりたい」と息子に相談されたとき、彼女は息子のために真っ先に餌食になろうと決意していた。
子ども達が吸われたのと同じように、自分も血を吸い取られながら、
「珠樹くんや裕子ちゃんと味が似てるね」って囁く数雄の言いぐさに、ウットリと肯きかえしていた。
愛息の吸血鬼化を祝うため、実の息子とその親友であるふたりの青年にかわるがわる犯されて、
心優しい母親は、ふたりの若い吸血鬼を祝ってやった。

それ以来。
夜な夜な街をさまよう制服姿が、2人になった。
地域の公立中学の女子の制服に身を包んだふたりは、学校帰りや塾帰りの女子生徒を襲って、
首すじを咬んではブラウスの襟首を真っ赤に汚し、
ふくらはぎを咬んでは真っ白なハイソックスを赤黒いまだら模様に染めあげていった。
けれども彼女たちは白のハイソックスを履くことをやめないで、
手近な公園や道ばたで襲われた後、靴下を濡らしたまま家路についた。

きょうもウキウキとして、女子生徒たちは白のハイソックスを履いて、夜の街へと出かけてゆく。
「帰り道に気をつけてね」
そういって娘を気づかう母親たちもまた、首すじに赤黒い痣を浮かべて、
色とりどりのストッキングには、派手に破けた痕を、スカートの奥まで忍び込ませてしまっている。


※この物語はフィクションであり、登場する人物・団体等はすべて架空のものです。

女装校生のための 安全な通学のための手引き ~吸血鬼の出没する街編~

2017年07月31日(Mon) 06:19:14

1. 女装校生になりたいという希望を、親に告げる。
親御さんの許可は、さいしょの関門です。
真摯に説得して親御さんの理解を得、女装校生としての一歩を踏み出します。

2. 女装校生にふさわしい服を買いそろえる。
中高生の立場では予算に限りがありますから、親御さんにそろえてもらいます。
通学用の制服・私服、お出かけ用の服、それにふだん着も女の子用のものをそろえます。

3. すすんで集団登校に参加する。
なによりも気恥ずかしいのが、みんなに視られること。
けれどもそれは、避けては通れない道です。
集団登校に参加して、身近な生徒・児童たちに自分の置かれた立場を態度で示しましょう。

4. からかわれても、へこたれない。
付き添いのお母さん方のよそよそしい態度。
周囲の女子の白い目。
それに、男子のからかいに屈しないこと。
特に年下の男子は天敵です。
「おかまだぁ」と露骨に言われても、笑ってスルーできるようになりましょう。
いずれ、彼らのうちの何割かは、あなたと同じ道をたどります。
お手本を見せるつもりで接しましょう。
集団登校では横断歩道の誘導などの役割をすすんで引き受けるのも良いでしょう。
一週間も経つと、周囲の目も自然になじんできます。

5. 吸血鬼に遭遇したら、進んで応接を引き受ける。
街には若い生き血を求めて、吸血鬼が出没します。
もしも集団登校の列が吸血鬼に遭遇したら、すすんで応接するようにします。
あなたのおかげで見逃してもらえた女子には、感謝されるはず。
吸血鬼と接するときは、礼儀正しく潔癖な女の子として振る舞い、誇りを忘れないこと。
この街の吸血鬼は、心優しい魂の持ち主なので、
ひとしきり乱暴狼藉をして欲求を満たした後は、紳士としての気遣いを示してくれます。

気高く振る舞えば、慇懃な気遣いがかえってくるもの。
レディとして、上手におつきあいをしましょう。
彼らは女の子の気をひくために、悪戯をしかけてきます。
吸い取ったばかりの血をわざとブラウスにしたたらせたり、
ハイソックスのふくらはぎによだれをたっぷりとなすりつけて、あげくの果てに咬み破って愉しんだりします。
服を汚されたら可愛く眉をひそめ、顔をしかめて、軽い抗議を示しましょう。
彼らは女の子の迷惑そうなそぶりに、いっそうそそられます。
あまり意地悪が過ぎたときには、泣きまねで応えます。
きっと、家まで送り届けてくれるでしょう。

6. それでもいっしょにいた女子を求められてしまったときは・・・
吸血を迫られた不運な彼女といっしょにいてあげて、相手の気が済むまで血を吸わせてあげます。
彼女が初体験で怖がっている場合には、先に咬まれてお手本を見せてあげましょう。
複数の女の子を同時に襲うとき、彼は代わりばんこに血を吸う習性があります。
あなたの次には彼女、彼女のつぎにはあなたです。
彼女が「吸血されるのも悪くないな」と思うことができるよう、愉しげに振る舞いましょう。

おなじ吸血鬼に襲われたもの同士は、独特の連帯感や共犯意識をもつことになります。
彼女とは深いおつきあいができるかも。
帰り道を待ち合わせて、ふたりで登下校する関係になります。
並んでベンチに腰かけて。
代わる代わる首すじを咬まれて。
おそろいの色のハイソックスを履いた脚を並べて、恥じらいながらもくまなく咬ませてあげて、
うら若い血潮でバラ色のシミを、たっぷりとつけてもらいましょう。
どっちのシミが派手かしら?なんて言葉を交わせるようになったら、
彼女は心の底まで理解し合えるいちばんの親友、そして恋人になってくれるはず。

7. ドキドキの初体験。そしてさいごは、「男」らしく。
吸血鬼は処女の生き血を好みます。
それと同じくらい、女の子とはもっとエッチな体験をしたがります。
進級や卒業は、ひとつの節目。
新たに入学してくる女の子たちと入れ替わりに、処女を卒業することになります。
初めて犯されるときも、彼女と一緒♪
さいしょにあなたが。それから彼女が。
同じ腕に抱かれて、夢中になって。
親御さんに買ってもらったスカートの裏地を、
親御さんにはナイショの儀式の証しで、真っ赤に濡らします。
ワクワク、ドキドキの初体験。
そして、嫉妬にズキズキ胸を疼かせながら、彼女が犯されるのを見届けましょう。

さいごは「男」らしく、責任を取ります。
あなたは吸血鬼の過ちの責任を肩代わりして、彼女と結婚の約束を交わします。
それからも、ずっと・・・
吸血鬼に抱かれる彼女を目の当たりに、
支配される幸せ、嫉妬のときめき、そして辱められる歓びを深めてゆくのです。

女子生徒5人の人間模様。

2017年07月09日(Sun) 08:46:05

グレーのスカートに、紺のハイソックス。
おそろいの制服を着た女子生徒が5人、内緒話の輪を作っている。

あの5人、どういう関係かわかるかい?
親友のヒロシが、傍らから声をかけてきた。
知っている顔は2人くらい。
2人とも同級生の女子だったから。

高尾みなみに眉川直子だろ?
そうこたえるぼくに、ヒロシはただならぬことを言った。

2人の隣にいるのは、彼氏だよ。

彼氏・・・?
だって、女子の制服着てるじゃないか。

とっさにそう言いかえそうとして、それが愚問であることにすぐに気がつく。
そう。この学校では、男子生徒も女子の制服を着用することがよくあるのだ。
そうしたことに理解のある学校として定評のある、この学校。
けれども、そうした理由だけで女装する生徒ばかりではない。
女子の制服を着た男子ふたりの首すじには、かすかな赤い斑点がふたつ――
吸血鬼の欲望の痕に、違いなかった。

この学校は、吸血鬼も受け容れているんだ。彼らにも生きる権利を認めているからね。
生徒の中にも。父兄のなかにも。そうした人はいるわけだし。
女子生徒の若い生き血目あてに入り込んでくる、ご近所のエッチな小父さんとかまで、受け容れちゃっているんだから。

そう。ヒロシの言うとおりだった。

あの2人のことは、よく知ってるよ。
高尾も眉川も、彼氏に誘われて吸血されたんだ。
それからもう一人いる女子は、眉川の彼氏の妹だ。
たしか、学年はひとつ下だったかな。
もちろん、彼女も吸血されてる。
高尾はまだ処女だけど、眉川は卒業しちゃったんじゃないかな。
吸血鬼に襲われるまえから、彼氏とできちゃっていたからね。
だから、初吸血のときに姦られちゃったらしいよ。彼氏の前で。
彼氏は俺の親友で、本人が言うんだから間違いないよ。
けっこう昂奮するんだって。ちょっと信じられないけど、案外そういうものかもしれないね。
それで眉川の彼氏は、彼女の恋敵に処女の生き血をプレゼントするために、妹まで紹介しちゃった、っていうわけ。

高尾の彼氏もね、
高尾が自分の血を吸った吸血鬼に抱かれて血を吸い取られるのを見ていると、ドキドキしちゃうっていうんだ。
むろん彼は、高尾の初体験は自分で・・・って、ふつうに考えているはずだけど。
もしかしたら、眉川のときみたいに、吸血鬼に姦られるのを視るのも楽しいかなって。
高尾とできたらそうするつもりだし、
初体験を許しちゃうのも・・・案外・・・なんて、言っていたな。
もしかすると、半分以上本気かも。

眉川の彼氏って、その吸血鬼と仲いいの?自分の彼女を犯されちゃったのに?
ああ、二人仲良く、学校帰りに遊びに行ってるくらいだからな。
高尾の彼氏も、彼女の純潔をあげちゃうかもって思うくらい、仲いいの?
そうらしいね。高尾も「どっちがいいかな??」って、マジで迷ってるみたい。

不思議だ。じつに不思議な関係だ。
ぼくはぼう然として、ぶつぶつ独り言をつぶやいてしまう。
そんなぼくのようすをみて、ヒロシはたしなめるように言った。

だってここでは、それが普通なんだから。
むしろ、信用できる相手に彼女の血を吸ってもらったほうが、安心できるんじゃないかな。
相手の吸血鬼にしたって、自分の女だったら、真剣に守ってくれるだろうしね。
ここのシステム、俺はけっこう納得してるんだけどね。

さあ行こうぜ。
ヒロシはぼくのまえに立ち、ぼくを先導するように、まっすぐと歩きはじめる
――グレーのスカートをそよがせながら。
運動部で鍛えたふくらはぎの、しっかりした筋肉は、女子用の紺のハイソックスにしなやかに包まれていて、
男が女子の制服を着ている というよりも。
ボーイッシュな女子が、か弱い男子を引っ張って行っているようにさえ見える。

おい、待て。待てったら・・・!
そういうぼくも、早足になって。
グレーのスカートに紺のハイソックスの格好を、もはや恥じることなく人目にさらしていった。

女子の制服を着て。
自分の彼女の身代わりに吸血されて。
首すじに埋められた牙のもたらす毒液に、それまでの常識や倫理観を麻痺させられて。
彼女を呼び寄せて、血を吸わせる。
彼女が処女だったら、しばらくのあいだは処女の生き血だけを愉しまれて。
すでに彼女とエッチな関係になっていたなら、相手の吸血鬼もまた、そのエッチな関係の輪のなかに入ってもらう。
そんな学園生活にとけ込みつつあることに、ぼく自身、むしょうに小気味よさを感じはじめてしまっている。

わたしはおかま。

2017年04月20日(Thu) 05:35:28

わたしはおかま。
女の人が穿くストッキングが大好きで、
それがきっかけで、こんなふうになった。
わたしはおかま。
醜いおかま。
分は心得ているから、お出かけするのはいつも真夜中。
こんなふうだから、結婚もあきらめて、もう四十過ぎになるけれど、決して後悔してない。
真夜中に出歩くわたしは、もうひとりのわたし。
女の姿をしているわたしと、ほんとうのわたしは、寄り添うようにして、
ふたりきりの真夜中のデートを愉しんでいる。

そんなわたしの目の前に、黒い影が立ちはだかった。
ビクッとしたわたし。
逃げようとするわたし。
でも、おぼつかない足取りを強いるハイヒールは、わたしの動きを封じていた。
うしろから抱きすくめられて首すじを咬まれたとき、相手の正体をやっと察した。
そういえばこの街では、夜は吸血鬼が出没するのだと、薄ぼんやりと思い出していた。
その夜のわたしのお相手は、わたしの血をたいそう美味しそうに、チューチュー音をたてて吸い取っていった。

目まいを起こしてわたしがその場にうずくまると、
男はそれでもしばらくの間、わたしの血を美味しそうにチュウチュウとやって、
それからおもむろに、わたしのスカートをたくし上げ、太ももにまで咬みついてくる。
わたしは思わず、願っていた。
やめて。やめて。このストッキング高いのよ・・・
男の唇が容赦なく、わたしの足許に吸いつけられる。
這わされた舌が、それはしつっこく、わたしの足許をねぶり抜いて、
それからおもむろに、囁いてきた。
あんたの穿いてるストッキング、いい舌触りだな。

もう少し舐めさせてくれという男の願いに、わたしは無言でコクリと肯いていた。
貧血でけだるくなったというのも、もちろんあったけど、
かたちは違っても、男がわたしの足許に魅せられていると、わたしのなかの女心が囁いたから。
そして近場のベンチに腰かけて、貧血にあえぐ上背を、背もたれにしなだれかけながら、
男の求めるまま、薄々のストッキングを穿いたふくらはぎを、好きなように吸わせてしまっていた。

ぴちゃ・・・ぴちゃ・・・くちゃ・・・くちゃ・・・
情けない音にしどろもどろになりながら、男がむしょうにわたしの脚を咬みたがっているのが伝わってきて、
どうしても咬みたいの?って訊いていた。
薄いナイロン生地越しにしつように這わされてくる相手の舌先から、わたしが抱えているのと同じコアな欲求を感じたから。
男は恥も外聞もなく、せわしない舌づかいで応えてきた。
でも、やっぱりストッキングを破かれるのは気が進まなくて、わたしは切り札を使うことにした。
男だって、気づいてる・・・?
おそるおそるの問いかけに、男はいった。
あんたが女のかっこうをしている限り、俺にとってはレディだから。
それ・・・わたしがいちばん聞きたかった言葉。
じゃあいいわ、咬ませてあげる。
わたしの唇は、しぜんに動いていた。

クフフ・・・ククク・・・
含み笑いの下、わたしの穿いているストッキングがむざんに破かれていくのを見おろしながら。
わたしは思わず、呟いている。

いやらしい。

すまないね。
男はそういいながらも、ストッキングを咬み破る行為に熱中しつづけて、
わたしはただ、本物の女のように恥じらいながら、男の行為を許しつづけた。

それ以来。
わたしの夜道歩きは、頻度を増した。
三日にいちどくらいにするんだよ。
男の言いぐさにもかかわらず、毎晩のように、真新しいストッキングを脚に通して、
男の欲求に応えつづけた。
血を吸われるのも、ストッキングを咬み破かれるのも、さいしょは気が進まなかったけれど、
尽くしたい一心の女心が、わたしの心のなかを塗り替えていった。
男は毎晩尽そうとするわたしのことを気遣って、血を吸う量を加減してくれた。
わたしは男の気遣いに応えるために、毎晩真新しいストッキングを穿きつづけた。
穿き古しでもかまわないのだぞ。
男はそういって気遣ってくれたけど。
女の心意気ですからね・・・と囁き返すと、嬉し気にニマリと笑って、なめらかなナイロン生地の舌触りを愉しみつづけた。
せっかく穿いてきたんですもの。気の済むように愉しんでくださいね。
わたしたちはいつか、心を通わせ合っていた。
化粧が上手になり、しぐさも女らしくなって、
気づいたときにはもう――夜だけは完璧なレディに生まれ変わっていた。

わたしはおかま。
醜かったおかま。
それがいまでは、昼間街を歩けば人も振り返るほどの、魅惑的なレディになっている。
血を吸わせ、コアな欲求に応えつづけたお礼にと、吸血鬼がわたしにかけてくれた魔法。
わたしは今夜も、最高の装いで、彼をもてなすために出かけてゆく。

悪妻のささやき

2017年03月01日(Wed) 07:58:49

あたしたち、お似合いの夫婦だと思わない?
女装趣味の夫に、吸血鬼に寝取られた妻――

あのひとに、貴男の生き血をそっくり、分けてあげてほしいの。
だいじなものをあげるのは、最高の愛情表現だから。
そうよ。貴男はあのひとと、愛し合うの。女と男になって。
最愛の妻の貞操をプレゼントした相手だもの。
たいせつな血だって、惜しげもなく吸わせてあげられるわよね?
それでも貴男は、死なないわ。
恥かしい趣味の持ち主の貴男――
ずうっと生きて、あのひとに抱かれるあたしを、見つめつづけてほしいから。

あのひとね。
黒のストッキングを履いた脚を咬みたがるの。
だからあたし、なん足も咬み破らせてあげたの。
もう1ダースにも、なったかしら?
でもあのひとのお仲間は、おおぜいいらっしゃるんですって。
あたしひとりの血だけでは、足りないんですって。
だからね、あたし考えたの――

貴男が吸血鬼に遭って、血を吸い尽されて死んだって、
嘘の報せを皆さんにお伝えするの。
皆さん、悲しみながら、お式に参列してくださるでしょう。
そう、黒の喪服の下、あのなまめかしい黒のストッキングに脚を通して。
あのひとたちの大好物の、黒のストッキングの脚たちが、
お寺の本堂を埋め尽くすわけ。
黒のストッキングを履いた脚を、吸血鬼に咬ませるための集いだなんて、つゆ知らずに。

偽りの弔いの場は、すぐにあの人たちの狩り場になる。
貴男も参列するのよ。
周りにばれないよう、女の弔問客になって。
女の喪服を着て、自分のおそうしきに参列するの。
其処で貴男は、”貴女”になるの。


さあ、下準備を愉しみましょう♪
貴女をご希望通り、婦人服店に連れてってあげるから♪
そこで試着室に貴女を閉じ込めて、
一着の喪服といっしょに、置き去りにしてあげる。
アラ とっても似合うわよ♪
あたし必ず、そういってあげるから。
嘲り交じりの称賛にも、貴女は勃起するのでしょうね。
婦人ものの喪服に秘めた胸震わせて。

あたしの情夫は、咬み上手。
あなただって、いちころよ。
自分の妻を汚した男に、貴女も征服されちゃうの。
黒のストッキングをパリパリと咬み破られて、
恥にまみれたよだれで、たっぷり礼装を辱められながら、
貴女も堕ちてしまうのよ。
オホホ。あなたったら。
喪服のなかを、ほてらせているのね?
まぁ、なんて恥知らず。
奥さんに強制的に女の服を着せられて。
あなた、昂奮なんか、しちゃっているのね。

そうよ。
あたしのときと、おなじように
貴女も羞じらいながら、ショーツをおろすの。
男らしく(笑)、いさぎよく 貴女も貞操を差し出すのよ
あたしがためらいもなく、そうしたみたいに。
そうね、お式の当日は
あなた、ガーターストッキングを履くといいわ。
あたしがいつも、あのひとのために履いているのと、同じブランドを。
舌触りがとっても、よろしいそうよ。
貴女はあたしと同じストッキングを脚に通して、あのひとに辱められてゆくの。
あたしを汚した同じお〇ん〇んで、弄ばれてしまうのよ。
そして、あのひとの好きな黒のストッキングを脚に通したままの姿で、
辱めを受け容れさせられてしまうのよ。

安心してね
着せるのも脱がすのも、あたしが手伝ってあげるから。
あなた、ワンピースの後ろのチャック、上げ下げすることできないでしょ。
安心してね
あなたが堕ちるときには
お義母さまも
妹の沙織さんも
姪の加奈ちゃんも、いっしょだから。
あたしはもの分かりの良い伯母さまになって
あなたや皆さんの、記念撮影をしてあげる。
加奈ちゃんのお父様の富男さんが、奥様の痴態に昂奮してるところも、
シャッターチャンス逃さず撮らなくちゃね。


お式が済んで、みんな奴隷に堕ちたなら
あなたと一緒に奴隷になるわ
あたしが操を捧げたあのひとに、夫婦一緒にかしづくの。
こんなあたしの悪だくみを許してくれて、
協力までしてくれるあなたが夫で、あたしとっても嬉しいの。


あとがき
前作の翻案です。
この倒錯し過ぎたプロット、けっこう気に入りました。
さいごの一節でわかるように、この奥さんはご主人にぞっこんなのですよ。^^

喪服選び。

2017年02月28日(Tue) 06:50:25

ねぇねぇ、いろんなのがあるわよ。
婦人服店の一角、それもブラックフォーマルのコーナーで、妻はウキウキしながら服選びを始める。
自分の服ではない。
夫であるわたしに、婦人もののブラックフォーマルスーツを買おうとしているのだ。

あなた、こんなのどうかしら?ブラウスにフリルがついているわよ。
それとも、こういうシンプルなのも、初めてならいいかな。
あっ、これもいいかも。腕が透けててセクシーよ。

片手間を装い、おざなりにウンウンと肯きながら、実は熱っぽい目線で服たちを見比べているわたし。
わたしの女装趣味に、妻はとても寛大だ。
女の服になじんだのは。
親しい友人である吸血鬼が妻の血を欲しがるのを抑えるために、
女の服を着て彼の相手をしたのがきっかけだった。

けっきょくわたし一人の血では足りずに、妻を襲われ征服されてしまったいま。
わたしたち夫婦は、夫婦そろって女の服を着て、彼の家へと足を向ける。
おそろいのストッキングを穿いたつま先を、若い血潮をふんだんに欲する男の家へと向ける。

そんな彼が、ひとつの提案をした。
わたしが血を吸い尽されてしまったと、わたしの身内全員に告げることを。
お式にはみなさん、黒のストッキング穿いてくるわよね?
妻が意味深なことを呟いて、自分の情夫を軽く睨んだ。
この街ではしばしばくり広げられる、吸血鬼たちのカーニバル。
偽装された弔いの場は、すぐに彼らの狩り場に変わる。

あなたも、参列しなくっちゃ。
でも、あなただってばれたらいけないわ。
女の喪服を着て、自分のおそうしきに参列するのよ。
そんなきわどい思いつきに妻は夢中になり、妻の愛人もまた、渋るわたしの背中を押した。
面白そうじゃないか、やって見せてよ。

この婦人服店に来る男性客は、意外に多い。
わたしのような寛大な夫たちが、多く住む街だから。
男性用の試着室へと妻に伴われ、狭い試着室のなか、真新しい喪服といっしょに置き去りにされる。
ワンピースの脱ぎ着は、どうしても背中に手が届かなくって、妻に手伝ってもらった。
漆黒のブラジャー、漆黒のスリップ、漆黒のショーツ。
そして、深い深い黒一色のワンピースにボレロ。
足許はもちろん、薄墨色のストッキング。

女の服を着た夫をまえに、妻は無邪気にはしゃぎながら。

いいわあ。いいわあ。とっても似合う♪
このカッコであなた、吸血されるのよ。
あのひとの牙は強烈よ。あなた、いちころで参っちゃうはずよ。

わたしの記憶では。
咬まれて、いちころに参っちゃって、妻まで紹介してしまったのは、わたしのほうのはず。
でも、そんな順番は、いまではもう、どうでもいい。
偽りの弔いの席には、兄夫婦も妹夫婦も呼んである。
もちろん、彼らのあいだの年ごろになりかけた娘たちも来るだろう。
それに、この女にとっては目の上のこぶである、自分の姑もそのひとりのはず。
しつけに厳しかった気丈な母が、全身から血をむしり取られて淫らに堕ちる光景を、わたしは目にすることになるのか。
あらぬ妄想がつぎからつぎへとわいて出て、黒の喪服に包まれたわが身は、妖しくほてり始めてくるのだった。

お見合い相手。

2017年02月23日(Thu) 08:03:09

そのひとをひと目見て、
グッと引き込まれるような、引力を感じた。
若い女性と接することで、そういう気分になったのは、ぼくにとっては初めてのこと。
栗色のロングヘアに包まれた、かっちりとした輪郭の細面。
細いけれども秀でた眉の下、大きな瞳が魅力的に輝いていた。
けれどもぼくを一瞬にしてひき込んだのは、そういう表むきの美しさだけではなかった。
なにか得体のしれない、独特のかもし出す雰囲気が、
寄り添うほどの親近感をもって、しなやかに柔らかく、迫って来たのだ。
さいしょの数秒だけで、このひとと結婚しても良いかな?と思えたのは。
その場がお見合いの席で、その女性――里美さんが当のお見合い相手であった以上、
これほど幸せな瞬間はなかったことになる。

父の知人のえらい人という仲人夫婦も、先方のご両親も、
どうやら頭のあがらない相手らしい仲人に、終始気を使いつづけた両親も退席して、
ふたりきりになっている――と気づいたのは、話がはずんで二時間ほども経った頃のことだった。
「もういいでしょう、私の秘密をお話しますね」
しっとりと落ち着いた口調で、里美さんはそう切り出した。
その秘密とは、もしも結婚を考えてくれるのなら、そのまえに話さなければアンフェアになることで、
ふつうなら、じゅうぶん結婚の障害になり得ることでもあるという。
危うく里美さんにひと目惚れしかかったことが、彼女に通じたというのか。
いや、それだけでは、きっとないはず。
秘密というのは、自分にとって重要な存在になるかもしれない相手と認めて、初めて打ち明けるべきもののはず。

「私、トランスジェンダーなんです」
はっきりとした口調で、さりげなく綴られた告白。
気後れすることのない語調を吐いたそのひとは、まっすぐな瞳で、ぼくのことを見つめ返してくる。
トランスジェンダー。
かつてこの女(ひと)は、男性だったという事実――
「そんなふうには、とても見えません」
思わず口走ったぼくは、坂道を転げ落ちるように言いつのろうとした。
もしもあなたがそうだとしても、そんなことはなんの障害にもならないこと。
両親がどういうか、そこだけはちょっとだけ気がかりだったけれど、
何よりも自分たちがもってきた、ほぼ無理やりの縁談だったはず。
仮に反対があったとしても、押し切るつもりがあるということ。
そのうえ、なによりも・・・
ぼくの言いたいことを彼女はさえぎるように、さらに口調を強めていた。
「もうひとつあるんです」

吸血鬼の存在って、信じますか?
いえ、ムリにお信じにならなくてもいいんです。
私、吸血鬼に血をあげつづけているんです。
相手は親よりも年上の男性・・・私、そのひとのために、女になったんです。
でも彼は、おおぜいの女性を相手にしないと、生きのびられない。
そして私は、私をたった一人と思ってくれる男性と、添い遂げたいと望んでいる・・・
どうすればいいんでしょう?私。

言いたくないことを口にせざるを得なかった人のもつ、
寂しく、恥ずかしく、後ろめたい想いをめいっぱいよぎらせて、
里美さんは身をよじらせるほどに顔つきを翳らせ、うつむいた。

あの、ひとこといいですか・・・?
こんどはぼくが、打ち明ける番だった。

ぼく、女装趣味があるんです。
物心ついたころから、女のひとの服を身に着けたいという願望があって、
母のスカートを内緒で履いているところを見つかって、物凄く叱られて、それがトラウマになって。
それでも、女装することをやめられなくって。
思い詰めた両親は、ぼくを結婚させることで、そういう世界から断ち切ろうとしているんです。
でもたぶん、ぼくにはそれができない・・・

「わかりますよ」
里美さんはもとの落ち着いたほほ笑みを取り戻し、ぼくのことを見つめている。
そして彼女は、悪魔のような囁きを、ぼくの耳の奥にこびりつかせたのだ。

――もしもこんな私とご縁を続けてくださるつもりがあるのなら。もういちど、逢っていただけませんか?
・・・・・・こんどは女の服を着て。

「まあ、素敵」
長身の里美さんは、ぼくとさして変わらない高さの目線で、柔らかな瞳を輝かせた。
服の選択にはポリシーがあったけど、メイクにはあまり自信がないぼくのことを、包み込むような優しい視線。
「女どうしとしても、お友だちになれそう」
そういう彼女とは、服の好みも似ていたのかも。
楚々とした立ち姿の里美さんは、ワインからのボウタイブラウスに、紺のロングスカート。
人前に女装姿をさらすのが初めてのぼくは、純白のボウタイブラウスに、ライトイエローのタイトスカート。
申し合せたように脚に通した黒のストッキングのつま先を並べて、行く先は仲人夫妻のお邸だった。

案に相違して、仲人夫妻は不在だった。
代わりにその邸で待ち受けていたのは、里美さんの血を吸っているという吸血鬼――
案に相違して、ごく穏やかなジェントルマンだった。
「映画に出てくるような化け物を連想していましたか?」
ご期待に添えなくてすみません、と、老紳士は快活に笑った。

ぼくの女装姿は、あるべき女性の理想像だった。
じゅうたんのうえにあお向けになって。
首すじに、そのひとの唇を受け容れたとき。
ぼくの胸の奥に棲みつづけていた理想の女性は、彼のものになっていた。
そして、女としてのぼくを捧げることに、ぼくはぼくなりの歓びをひたひたと感じていて、
そんなぼくのようすを、里美さんは目を潤ませて見つめつづけていた――

彼女と結婚します。
婚約期間は、1年――
ちょっと長いかもしれませんが、理由はわかりますよね?
貴男に、里美さんの血を処女のまま、長く愉しませてあげたいから。
そしてぼく自身も、ぼくの婚約者が貴男と密会をつづけることを、愉しんでしまいたいから・・・

婚礼の席で。
母も、姉も、妹たちも、吸血鬼の小父さまの縁類たちに、淫らなお祝いをされていった。
そうなるまえに。
母も、姉も、妹たちも、順ぐりに。
里美さんをモノにした小父さまの毒牙にかかって征服され、堕とされていたから、
父も、妹の彼氏たちも、姉婿までもが。
その状況を受け容れて、ただの男として、愉しんでいた。

幸せのるつぼ。
婚礼の最初は、タキシードだったぼくは。
お召し替えのときに、里美さんとおなじ純白のウェディングドレスに着替えていて。
誓いのキスのあと、衆目の見つめる中、里美さんと代わる代わるに、小父さまの熱い唇を首すじに受け止めていったのだった。

タウン情報 吸血鬼を受け容れた街に新現象――ひっそりと広まる女装熱

2017年01月24日(Tue) 06:57:19

「来週から、女子の制服を着て学校に行きなさい」
高校二年生のとき、岸村裕美さん(仮名)は父親からそう言い渡され、面食らった。
翌日母親に付き添われて町内の制服販売店に行って採寸してもらい、
数日後にはできあがったばかりの女子の制服を着用して登校するようになったという。
受け入れ側の学校は、事前に父兄からの届出を受理しており、担任を通じて周知もされていたため、
同級生をはじめとした学校関係者は、女子の制服を着用した裕美さんを違和感なく受け容れたという。
「うちの学校の制服はブレザーだったので、まだ違和感は少なかったと思います。
 セーラー服の学校の子は、登校初日の緊張感がハンパじゃなかったみたいですよ。
 でも、私のときも、スカートの下がスースーして、慣れるのに何日もかかりました」
裕美さんは、笑いながらそう語る。

女子の制服を着用して登校する男子生徒は、同校ではそれほど珍しくないという。
街は数年前から吸血鬼と共存を開始しており、女性の家族や知人の身代わりとなるために女装をする男性が増えたためである。
市内に三店舗ある制服販売店にもこうした現象は認知されており、男子生徒が女子用制服の採寸をするための試着コーナーを設けているところもある。
制服販売店を経営して30年になる「尾釜制服店」の店主(55)は、
「数年前、それまで売れ残っていた大きい子用の制服の在庫が一掃されて大助かりだったのですが、
その後も注文が相次ぎ、問屋さんにも事情は話せず困りました」
と笑う。

斜陽化著しかった呉服店も、息を吹き返しつつある。
「この数年、成人式のお振袖を着たいという男性が目だっています。特に赤や紫など、普段は着られない色が好まれているようです」
創業百二十年以上という「須木物和装店」の店主(70)も、そういって目を細める。
「いまの若い人は、いいですね。私のころには考えられなかったことです」
レンタルよりも買取が圧倒的に多いのは式後に恋人の吸血鬼に振り袖姿を披露し、血を吸ってもらうからと言われているが、
日常も好んで婦人物の和服に身を包む男性が増えるなど、
「家族の身代わりに吸血されるため」という本来の意図を越えたかかわり方をするケースも増えてきたようだ。

最初に取材した裕美さんは言う。
「私は男女どちらでもありそうな名前だったので不自由していませんが、明らかに男の名前という人は、名前を変えちゃう人もいるようですよ」
最初は「息子を生んだはずなのに」と嘆いたという両親は、自身も吸血を体験してからは裕美さんの立場に理解を示すようになり、
誕生日には婦人物のスーツをプレゼントされることもあるという。
市内の企業にOLとして勤務する裕美さんは、近々市内に住む20代の男性とお見合いをする。
「いまでも正式な場での着付けは、母に見てもらっているんですよ」
と恥じらう裕美さん。良縁に恵まれることを記者も願っている。

女装OLとして献血。

2016年12月06日(Tue) 07:47:01

出勤前には毎朝シャワーを浴びて、肌に念入りにみがきをかける。
まるで恋人に逢いに行く女のように、念入りに。
ボタンの向きがいつもと逆のブラウスを着込んで、穿きなれないスカートを腰に巻きつけて。
薄々のストッキングのしなやかな肌触りを脚ぜんたいに帯びていく。
短い髪の頭にロングヘアのウィッグをかぶり、妻の手で施される念入りな化粧に目を瞑り、
さいごに真っ赤なルージュを引く。

どうみたって男かも知れないけれど。
後ろ姿は少なくとも、立派なOL。
こんなふうにして、勤め先では男子社員が交代で、OLとして勤務している。
そんな日は、重役室に呼びこまれて、一日じゅう、来客として訪れる吸血鬼を相手に、身をゆだねていく。
首すじを咬まれ、スリップ越しに身体をなぞられ、股間に一物を受け容れさせられたりさえしてしまいながら。
一日を、吸血鬼に襲われるOLとして、演じ抜く。

その夜は。
自分の血を吸った男を家に招び入れて。
夜の客人の相手をつとめるのは、妻の役目。
まるで結婚式にお呼ばれをしたときみたいに着飾った妻は目の前で、
ドラキュラ映画のヒロインを演じる。
ストッキングを片脚だけ脱がされて、
もう片方もひざ下までずり降ろされたストッキングの脚をばたつかせながら。
貧血でもうろうとなった夫のまえ、妻は不倫の情事に耽ってゆく。

ほんとうのお目当ては人妻の生き血なのだと知りながら。
それでも男たちは、目ざめてしまった女装の罠から、逃れることができない。
きょうもまた。
わたしは妻に見送られながら、ロングヘアのウィッグを外気になびかせて、通勤路をたどっていく――

成長、もしくは忌むべき連鎖

2016年11月27日(Sun) 08:32:22

「こんにちは。入ってもいいですか?」
硝子戸の向こうから、男の子の声がした。
「ああ、どうぞ」
仲間の一人が、声にこたえる。
声にこたえて、硝子戸がガラリと開いて、その向こうから制服姿の少年が3人、ぞろぞろと入ってきた。
紺のブレザーに半ズボン、同じ色のハイソックス――地元中学の生徒たちが、
折からの寒気に頬を赤くして、部屋にあがってくる。
「ようこそ、きょうの身体の具合は?」
仲間の問いにこたえて、先頭の一人がいった。
「絶好調です!」
それはなにより――部屋にいた三人は顔を見合わせ、笑みを交し合う。
三人が三人ながら、そろいもそろって顔色を蒼くした吸血鬼だった。

一人ずつ相手を選んで、相手の男の子を畳部屋に寝そべらせ、まろばせてゆくと。
あるものは男子にしては白い首すじに、
あるものは半ズボンのすそから覗いた太ももに、
あるものは紺のハイソックスを履いたふくらはぎに、
飢えた唇を吸いつけてゆく。
ちゅうっ・・・ちゅうっ・・・
ずずっ・・・じゅるっ。
ごく、ごく、ごく、ごく・・・
三人三様の音をたてながら、ひたすら飢えにまかせて、若い血潮を味わっていった。
少年たちは慣れているのか、欲情にまみれて迫ってくる年上の男たちから目をそらしながらも、
無抵抗に身体の力を抜いて、訪れる陶酔に身を任せてゆく。

「おっと、少し吸い過ぎたかな」
少年のひとりが起きあがりざまよろけると、吸血鬼たちはとっさにその少年をかばうように手を差し伸べる。
真智くんの血は、美味しいからねえ。
微妙なほめ言葉に、それでも真智君と呼ばれた少年は照れ笑いを泛べる。
吸血する側も、される側も、ふだんは顔見知り同士の、小さな街。
血を吸う側は少年たちの親たちとも交流がある。
親たちは彼らの所行を見て見ぬふりをすることで、彼らの生存を間接的に手助けしているし、
容赦されていることを知っている吸血鬼たちは、感謝をこめて少年たちの首すじに牙を埋める。
調子に乗って多少吸い過ぎてしまうことはあっても、悪意をぶつけるような襲いかたは決してしない。
まして、死なせてしまうことなどもない。
だから少年たちは安心して、近所の家に遊びに行くような気軽さで、彼らの棲みかとなっている小屋を訪れるのだ。

彼らは学年が進むと、吸血鬼がほんとうに欲しがっているのが女子の血であることを悟ってゆく。
「ぼくはこれから、女子の制服を着て学校に行く」
息子がそう親に告げると、親はなにが起きているかを言外に察して、
地元の制服専門店で、女子の制服をしつらえる。
少年たちの通う学校は男子校だったけれど、かなり以前から女子の制服も制定されていた。

男子校のはずなのに、女子の制服を着ているものが半分を占める、不思議な私立校。
スカートに半ズボンのちがいはあっても、例外なく紺のハイソックスに包まれた足許は、男女の区別がつかないほどだ。
男の子たちはやがて、そのほとんどが、自分の意思で女子の制服を選択するようになって、
放課後、吸血鬼の待ち受ける小屋へと足を運んでゆく。
「ぼくが襲われているのか、ほかの女の子が襲われているのか、時々わかんなくなることがある」
ある少年は、そういった。
事実彼らはそのうちに彼女ができると、それぞれ彼女を伴って、ふたたび小屋を訪れるようになる。
「制服汚されたら、困るんですけど」
男子生徒に伴われた女子生徒たちは、だれもがはにかみながらそういうと、
イタズラっぽく笑いながら、紺のハイソックスの脚を、飢えた唇のまえに差し伸べてゆく。
一時間ほどもすると。
女の子たちは白い顔をして彼氏に連れ出され、そして恋人に囁くのだ。
「こんどはストッキング穿いた脚を咬みたいんだって。いっしょに来てくれるよね?」
優しく睨みあげる女の子の目線をくすぐったそうに受け流して、
でも少年たちは彼女の意向に逆らうことができなくなってゆく。

これを成長と呼ぶのだろうか。たんに忌むべき連鎖と片づけるべきなのだろうか。
きょうもまた、いろいろな想いを抱えた生徒たちが、古びた小屋へと連れだってゆく。

母さんは夜汽車に乗って

2016年11月24日(Thu) 05:55:20

母さんは夜汽車に乗って、吸血鬼に抱かれに行く。
そんな夜、父さんはぼくに、母さんの喪服を着せて、いっしょに寝(やす)む。
ぼくは女になり切って、父さんの相手をする。
母さんになり切りながら、吸血鬼に抱かれる母さんのことを想像し、
ぼくは父さんの昂ぶりに、波長を合わせていく。
きっと父さんも同じ想いなのが、素肌をすり合わせることで、伝わってくる。

きっと将来、ぼくのお嫁さんも、吸血鬼のいるあの村に、連れて行くことになるはず。
未来の花嫁が吸血鬼に処女を捧げる寝室のすぐ隣で、
ぼくはやっぱり彼女の服を着て、だれかに犯されていくのだろう。
そんな想像に、むしろ歓びを感じてしまう。いけないぼく――

男と浮気妻

2016年10月23日(Sun) 17:59:53

性には淡泊なほうだった。
30過ぎで結婚して、2年ほど経つけれど、セックスの回数はどんどん疎遠になっていって、
妻も内心の不満を抑えつつも、子供をあきらめかけているようだった。
そんなわたしが、こともあろうに、”男”にハマってしまった。
相手は取引先の、年齢不詳の男。
たまたま出張先で同室に泊まり合わせて、いっしょに酒を飲んで部屋に戻って、気がついたら抱かれていた。
その晩ひと晩のあいだに、わたしはすっかり作り変えられてしまっていた――

来る夜も来る夜も、彼との激しい情事なしに帰宅することはなかった。
そして疲れ果てたわたしは、妻を抱くこともなく眠りをむさぼった。
そんなあるとき、彼からのおねだり――奥さんの服を着て、逢ってくれないか?
わたしが小柄で、妻と同じくらいの背格好であることは、彼はとっくに知っている。
もちろん、ふたつ返事でOKした。

わたしが狙ったのは、季節外れの夏物の服。
クリーニングして戻しておけば、たぶん気づかれないだろう。
というよりも。
そんな配慮以前に、わたしは彼に尽くすことに夢中になって、後先考えることなく行動に移してしまっていた。

純白のボウタイブラウスに薄紫のタイトスカート、肌色のストッキングを身に着けたわたしに、
男はいつも以上に息荒く、のしかかってくる。
初めて気がついた。
妻になり切って犯される。
男の要求している趣向は、まさにそういうことなのだ。
わたしはいままでにないエクスタシーに喘ぎながら、女になり切って、朝まで辱め抜かれていった。
別れぎわ、男は言った。こんどは奥さんを連れて来い。
いつにない命令形に、強引にされる快感さえ覚えたわたしは、奴隷になった女のように、頷いていた。

無断外泊をしたわたしに、妻は目を尖らせた。相手の女に会わせて頂戴。渡りに船とはこのことだった。
わたしはさっそく男と連絡を取って、奥深い森のに隠れたその住処へと、妻を伴って訪問した。
すでになん度も訪れたことのあるその家は、わたしにとっては勝手知ったる場所だったが。
妻はもとより不案内で、勢い込んで来たのはよかったけれどと、きょろきょろと滑稽なまでにあたりのようすを窺っていた。
そんな妻を男と二人きりにすると、わたしはいちぶしじゅうを隣室で見届けていった。
すでに男を識ってしまったわたしにとって、もはや彼がすべてと思えるほどだったから。
セックスの対象ではなくなった妻が抱きすくめられるのは、思ったほどの痛痒さえ、伴わなかった。

妻がよそ行きのスーツを着崩れさせて、いともあっけなく陥落して、アヘアヘとだらしなく乱れてしまうのを、
わたしはしらっと眺めていたが――そこでふたたび、変化が起こった。
男の腕に抱かれているのは、わたし・・・?
そんな想いが兆したとき。
わたしのなかで、彼の腕のなかにある妻とわたし自身とが、瞬時に入れ代わっていた。

脱げかかったストッキングをひらひらさせながら、大胆に脚を開いて応じてゆく妻は、わたし自身。
もっと・・・もっと・・・そうせがむ妻の喘ぎは、わたしの声。
妻の痴態とわたしの願望とは、ぴったりひとつに重なっていった。

男が立ち去ったあと。
乱れた着衣をわたしの前でごまかしようもなくなった妻に、わたしは獣と化して飛びかかっていた。
男はわたしたちを、車で送り届けてくれて――その晩ひと晩じゅう、わたしたち夫婦は、いままでにないセックスに入りびたりになっていった。

男がスッとわたしの前から姿を消したのは、それから間もなくのことだった。
けれども妻はひそかに、男と逢いつづけているらしい。
わたしの留守中には男と逢瀬を愉しんで。
わたしが戻ってくると、セクシィに着飾って、夫婦の営みに応じてゆく。
ひところ男にはまったわたしは、いまは浮気妻に乗り換えていた。
浮気帰りの妻が、男と交し合った汗の匂いをぷんぷんさせながら、夫婦のベッドで大の字になるそのうえに、
わたしは鼻息荒く、のしかかる。
妻に子供が授かったのは、それからいくらもしない頃だった――

お見合いの条件。

2016年10月21日(Fri) 07:29:50

じつはわたし、女装者なんです。
職場にも、離れて暮らす家族にも、内緒なんですが。
オフのときにはいつも、女性の恰好をしています。
性対象は女性だけですよ・・・たぶん。
でもね。
結婚しても、女装はやめられないと思うんです。
夫婦なのに女ふたりの外見で出歩く夫婦なんて・・・おかしいでしょう?
そういうのがどうしても耐えられない・・・というのなら、
どうかこのお話はなかったことにしてください。

女装がお好きなんですね。かまわないじゃないですか。
私は気にしませんよ。家にいるときくらい、リラックスなさればいいと思います。
あなたとは服のサイズが近そうだから、着れる服が合ったら貸してあげてもいいですよ。
では、私の事情も話しますね。
じつは私、つき合ってる人がいるんです。
相手は結婚している方で・・・でもセックスの相性がよくって、結婚しても別れられそうにありません。
あなたの留守中にその人に逢いに行ったり、時には家にいるときでも出かけてしまうかもしれません。
結婚したばかりなのに日常的に浮気されるなんて耐えられない・・・というのなら、
どうかこのお話はなかったことにしてください。

このお二人は、結局いっしょになったようです。
奥さんはご主人に見送られて浮気に出かけていって。
そんなときでもご主人は、女の姿で見送ったり、送り迎えをしてあげたり。
そのうちに、奥さんの浮気相手に、ご主人のパリッとしたスーツ姿が目に留まって、
夫婦ながらひとりの男性に愛されるようになって。
いまでは二人連れだって、女ふたりでその男性のところに心ウキウキと通う週末を過ごしているということです。


あとがき
こんなカップルがいてもいいかな・・・と思い、描いてみました。

交際それぞれ

2016年10月11日(Tue) 07:59:52

麻利絵ちゃんは、すでに経験者。
彼氏と初エッチしたあと、彼氏の悪友の吸血鬼のところに連れていかれて、血を吸われちゃったそうです。
ほんとうは、エッチのまえに血を吸わせるものだって、彼氏怒られていたけれど。
そのあと、吸血鬼はセックスをしたことのある子の血を吸うときには、エッチもしちゃうって聞かされて。
彼氏の前で、エッチまでされちゃったみたい。
一日でふたりの経験しちゃって、いいのかなーって、麻利絵ちゃん言ってたけど。
そのわりにあんまりシンコクそうじゃなかったのは、
麻利絵ちゃんが犯されるのを見た彼氏が昂奮しちゃって、
それからも二人がしているところを見たがって、すすんでふたりを逢せるようになったからなんだって。


百合香ちゃんはつき合っている男の子はいるけれど、エッチはまだ未経験。
やっぱり怖いって言っていたら、彼氏がセックスの話題を明るく話してくれて。
「さいしょは痛いけど、あとからだんだん、キモチよくなるんだよ」って、教えてくれて。
なんのことかと思ってついて行ったら、其処には吸血鬼が待ち構えていて。
百合香ちゃん、ガブリッ!って、咬まれちゃったんだって。
でも、百合香ちゃんはそれから、咬まれるのにはまっちゃって。
また逢わせて・・・って、彼氏にお願いしているんだって。
彼氏が逢わせてくれたのは、彼氏の叔父さんで、処女の生き血を欲しがっていたらしくって。
それからというもの、週に1~2回の割合で、叔父さんのところに連れて行ってもらってるんだって。
彼氏に連れて行ってもらうのは週1か2だけれど、
それ以外に2、3回こっそり叔父さんと逢っているのは、まだ彼氏にはナイショにしているらしい。

結衣ちゃんは、うちの女学校に女装して通学している、おませさん。
制服が大好きで、うちは女学校なのに30倍の競争率を越えて入学を許可されたんだって。
うちの学校に棲みついている吸血鬼さんも、制服が大好きで・・・同じ趣味で、気が合っちゃったみたい。
だから結衣ちゃんは、いつも吸血鬼の小父さんの好みに合わせて、紺のハイソックスを履いてきて、
「あなたに愉しんでもらうために履いてきたの。咬み破られても泣かないからね」って、お約束しているんだって。
咬み破ってもらったハイソックスは、その場で脱がされちゃうんだけど。
脱がされたハイソックスが1ダースになったら、今度はつき合っている同級生の若菜ちゃんを、紹介してあげるんだって。
おそろいの制服で、おそろいの紺ハイソの脚を、順ぐりに咬ませてあげるのが夢なんだって。
結衣ちゃん、若菜ちゃんのことよろしくね。しっかり、導いてあげてね。
そして二人で愉しく妖しく、堕ちるんだよ~っ☆

某男子校の学校案内より。

2016年10月05日(Wed) 07:57:52

【女子制服の着用について】
当校では、情操教育の一環として女子の制服の着用を認めています。
希望者には指定のセーラー服もしくはブレザーを頒布しています。
入学段階から女子の制服を着用して登校する生徒は、全体の約1割程度ですが、
学年によってばらつきはあるものの、卒業時にはほぼ半々になっています。
そのために、当校は共学校と誤解されることもあるようです。
キャンパスライフは自由を旨としており、詰襟の男子生徒と女子の制服を着用した生徒との疑似的な男女交際も盛んです。
自由な気風の中で、生徒たちはマイノリティへの共感や自由の中の責任といったことを学んでいきます。

【地域との連携~血液提供を目的とした、吸血鬼の受け入れについて】
当校の所在する〇〇市は、「吸血鬼と人間の共存」を目指しています。
そのため、当校も市の方針に従って、若い血を求めてさまよう吸血鬼の来校を、積極的に受け容れています。
来校した吸血鬼には、生徒や父兄、教職員に対する吸血を行う権利を付与しております。
吸血鬼に対する献血行為に協力することは、入学許可の必須条件となっておりますので、ご注意ください。
献血行為に協力する義務を有するのは、生徒本人及びその家族を含みます。
ご子息の入学が決定次第、ご本人様及び父兄の方々全員に、誓約書の提出をお願いしております。

なお、この種の来校者は、女性に対する吸血を好む習性があります。
生徒のお母様、姉妹のかたの来校を、極力歓迎します。
女子の制服着用を希望する生徒は、特に好んで吸血される傾向にありますので、体調管理にご留意をお願いします。

男子生徒を対象に吸血する場合も、来校者が好んで脚を咬む習性をもつことに対応し、男子生徒の制服は季節を問わず半ズボンを指定しております。
ハイソックスの着用が義務づけられていますが、婦人用ストッキングの着用も可とします。
靴下を着用したまま吸血されるケースが多々発生しますが、通学用のハイソックスは校内の購買でも頒布しますので、ご活用ください。

PTAの会合でも、随時、来校者に対する歓迎行事が開催されることがあります。
保護者(特にお母様)の協力が必須となります。ご理解ください。
PTAの会合にご出席の際は、スカート・ストッキングの着用が奨励されております。ご協力ください。
生徒の姉妹の参加が歓迎されるのはもちろんのこと、お父様、ご兄弟の方々の婦人服(女子制服)着用によるご参加も歓迎しています。

結衣の通学路

2016年10月04日(Tue) 07:52:28

朝からヘンな気分にさせられちゃって、もぅぅっ・・・
制服姿の結衣は勉強机に頬杖を突きながら、
さっきから足許にかがみ込んでいる吸血鬼を見おろし、にらみつける。
尖った視線がよけいにうれしいらしくって。
男は結衣の足許に忍ばせる唇を、余計せわしなくうごめかせた。
唾液のたっぷり浮いた舌でなぞられた紺のハイソックスは、だらしなく脛の半ばまでずり降ろされて。
あぐぅ・・・
と嚙みついてくる牙に、裂け目を拡げた。

あぁぁぁぁ・・・っ
結衣はマジな声になって、椅子から転がり落ちるように、畳に横倒しになってゆく。
くくく・・・
それが思うつぼだったらしい。男は、こんどは結衣の上体にのしかかった。
肩までかかる黒髪を掻きのけて、首すじをたんねんに噛んでゆくのだ。
あっ・・・あっ・・・あっ・・・
声をあげてあえぎながら、結衣は思う――きょうは学校休もう。

ホラ、遅刻するぞ。
男は貧血と眩暈に立ち眩む結衣を引きたてるようにして、玄関に向かわせる。
台所からは、結衣の母親の声。
ほら、結衣ちゃん、遅れるわよ。早く学校行きなさい!
当たり前の日常の、当たり前の母の𠮟り言葉。
でも母は知っている。
結衣がほんとうは男の子で、学校公認で女子の制服を着て通学していることを。
吸血鬼が宿るこの家で、結衣がすでに大人の女になって、同性の彼氏を裏切りつづけていることを。
今朝も結衣といっしょに学校に行こうと誘いに来た彼氏が、物陰に隠れて、
結衣の吸血シーンを、息をつめ昂ぶりながら見守りつづけていたことも。

学校をさぼって、きのうで三日。そうだ、きょうは学校行かなきゃ。ノリくんが心配する。
結衣にとって学校の価値は、彼氏のノリくんとイコールだった。
数学は苦手でも、そういう方程式だけは得意である。

家を出たとき、吸血鬼はもう追いかけてこなかった。
きっといまごろ、ママを襲っているころだろう。
あ いけない。
結衣は一瞬、立ち止まる。
だって・・・咬まれてよだれで濡らされたハイソックス、そのまま履いてきちゃったから。
でも・・・もう行かなきゃ。遅刻しちゃう。

よう、待ったぞ。きょうも休みかよって思っていた。
そういって寄って来たのは、彼氏のノリくんだった。
ノリくんとはまだ、セックスしてない。本人も童貞だって、照れずにそう告げていた。
いつか・・・ノリくんに教えてあげよう。あたしが吸血鬼のおっさんから教わったセックスを。
渦巻く想いを笑顔の裏側に押し込めて。結衣はにっこりと笑み返す。
ウン、行こっ。
勢い良く踏み出した紺のハイソックスの足許を、彼氏がチラチラ盗み見るのをくすぐったく感じながら。
結衣はわざとらしいほどら明るい話題で、通学路を華やがせていった。

真夜中のデート

2016年09月12日(Mon) 07:53:54

街に出没する吸血鬼は、夜な夜な乙女の生き血を求め歩く。
狙われた彼女の身代わりに、彼女の制服を着て夜歩くボクは
たちまち彼の、餌食になった。
女装に目ざめたのは、はるか前――
彼女にはいえない願望を、人知れず遂げたボクは、
乙女を襲いたいという彼の願望を、半分だけかなえてしまっていた。

彼は幸いにも、ボクを男と気づきながら。
血を吸い終わる最後まで、ボクを女の子として扱ってくれた。

それ以後は、感謝の気持ちさえこめて、彼に血を吸わせる日々――
きみの彼女を襲いたい。
いつの間にか魅入られてしまったボクは、
そんな彼のいけない願望を、ついにかなえてあげてしまう。

ボクの目のまえ、抱きすくめられて。
セーラー服のえり首の、三本走った白のラインをバラ色のしずくに浸しながら、
彼女はうっとりと、吸い取られてゆく。
その姿をうっとりと見つめるボク。
そんなボクのことを彼は、下僕としてではなく親友として遇してくれた。

きょうもボクたちは、真夜中のデートを愉しんでいる。
いつしか彼女のスカートの奥までむさぼるようになった彼は、
ためらう彼女を、花嫁修業なのだといって騙し、
たかぶるボクは、上手になってからお嫁に来てねといって背中を押した。

彼女がセックスされてしまうのをのぞき見するのは、
彼女とセックスするのと同じくらい、昂ることができるのだと知ってしまったボクは、
おそろいのセーラーの襟首並べて、
おそろいの紺のハイソックスのふくらはぎを吸わせて、
同じようにスカートをたくし上げられ、股間を侵されて、
互いに互いの痴態を見つめ合って・・・
いつしか真夜中のデートを、やめることができなくなっていく――

ぼくの純潔。 名門校のハイソックス

2016年09月03日(Sat) 06:12:13

公園に足を踏み入れた途端、しまったと思った。
この刻限だと、ここには間違いなく、吸血鬼の小父さんがぼくを待っている。
若い血潮を吸い取りたいと、喉をカラカラにひからびさせて。
気に入ってもらえたぼくの制服姿もきっと、彼の期待値のなかに含まれているのだろう。
それはもちろん、かまわない。
だって、そのためにここに、やって来たのだから。
ところが、なんと不覚だったことか、今夜にかぎって脚を通してきたのが、
大事にしている某有名校の指定もののハイソックスだったのだ。
ネットでン千円でせり落とした値段もさることながら、入手そのものが難しい品物で、
特別のときじゃないと履けない代物。もちろん、咬み破らせてしまうわけには、いかなかった。

でも、すでに公園の入り口を通り抜けてしまった後のこと。
いままでになん足、小父さんにハイソックスを履いたまま脚を吸わせて、咬み破らせてしまったことだろう?

おや、きょうはいつになく、おどおどしているね?
ぼくの怯えたようすが好ましかったのか、小父さんは我が物顔に、ぼくのことを引き寄せて、首すじを吸った。
鋭利な牙が、首のつけ根にチカリと咬み入れられてくる。
皮膚をじわじわと冒される感覚に、ぼくはゾクゾクしながら佇みつづけた。

ひとしきり、血を吸わせてあげると、ぼくはおずおずと切り出した。
  お願いがあるんだ。きょうのハイソックスは破かないで。
  めったに手に入らない、名門の女子高の指定ものなんだ。
本物の小娘みたいに手を合わさんばかりにして懇願するぼくに、吸血鬼は寛大だった。
寛大というか、同好のものの目になって、訊いてきた。
  へえ、どこの学校のやつだね?よく見せてくれないか?
ぼくはいつものようにベンチに腰かけて、そっと脚を差し伸べる。
視線を集中させられた足許が、微妙にくすぐったい。
  んふぅ・・・なるほど。学校名の頭文字がワンポイントになってるんだね。
  これはたしかに、気になる靴下だね。いくらしたんだい?
ネットで落とすのがたいへんだったこと、すんでのところ制限時間ぎりぎりでせり落としたことなどを、
ぼくも同好者の言葉で、彼に伝えていた。
彼もまた、それをくすぐったそうに、耳を傾けてくれている。

破かない代わりに、たっぷり舐めさせてあげることにした。
いつもより念入りに、しつように、彼は舌を這わせてくる。
名門女子校のハイソックスは、誇らしげな学校名のイニシャルの縫い取りもろとも、
唾液をたっぷりなすりつけられ、しみこまされて、
ふさわしくないあしらいに耐えかねるように、くしゃくしゃになってずり落ちてゆく。

凌辱される女学生――そんな言葉がふと、頭に浮かんでいた。
もちろん――名門校のハイソックスを履いたままの脚は左右に割られ、
ひどく熱っぽいやり口で、ぼくは股間を侵されていった。
お互い、よほど昂奮したときじゃないと、ここまでたどり着かないはずなのに。
その夜にかぎって、二度も三度も、ぼくの貞操はむさぼられていった。
ぼくもまた、名門校の女学生になり切って。
彼に加えられる凌辱を受け止めて、身体のすみずみにまで、恥ずかしい快感をいきわたらせていた。

三足落札したら、一足だけ破らせてあげる。
そう約束するぼくに。
この学校の子をひとり襲って、学校の購買で買わせよう。
たしか、近場にあるんだよな?
そうすればきみ、なん足でも履けるぞ。
小父さんはたちの悪そうなにたにたとした笑みを泛べながら、いけない約束をし返してきた。