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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

月曜の夜のカクテルバー

2011年12月12日(Mon) 08:06:24

週末に訪れたこの店に、今夜もまた来てしまった。
ここは、まりあのお気に入りのカクテルバー。
とまり木のななめ向かいには、年配のマスターがそつない様子で、グラスの手入れをしている。
不必要に話しかけるでもなく、かといってそっけなさ過ぎもせず、
その距離感が、まりあにとっては好ましい。
構ってほしいのが、女。
でもつきまとわれたくないのも、女。

このあいだ来たときは、同年代の男性といっしょだった。
とある飲み会で盛り上がったその男性は、帰ろうとするまりあを引き留めて、
ぜひ二人きりで二次会を・・・そう申し込んできたのだった。
こんなお誘い、久しぶりだわ。
そんなことないでしょう。毎晩だれとここに来ているんですか?
まさかぁ。
他愛ないやり取りを繰り返しながらも。
すぐ隣のハイチェアに腰かけてダイキリを嚥(の)んでいる男の横顔を、まりあはそっと盗み見る。
いつも一人でくるお店のなか、変わった情景を視ているような心地がした。

きょうは独り、週末の席とはわざと離れた止まり木に腰かける。
月曜の夜。けっこう遅い時間なのに、客はだれもいなかった。
独り訪れたまりあに、マスターはおや、という顔をして。
きょうはおひとりなのですね?
そんな目色を投げてきた。
ええ、ひとりですわ。。。
まりあはそっけなく目線を外して、そうこたえたつもりだった。
先週は。
おや、お連れがいらっしゃるのは珍しい。
そんな目色だったような気がする。

いつもの。
そっけなくオーダーを入れたまりあのまえに、
甘口の香りのよいカクテルがスッと差し出される。
おなじものをもう、今夜は三杯も口にしていた。
いつの間に、近寄っていたのだろう?
気配もみせずマスターがそっと差し入れてくれたのは、
ブラディ・マリー。
いぶかしげに顔をあげたまりあは、つぎの瞬間ぴくりと眉を吊り上げた。
そんなまりあの様子などお構いなく、
マスターはもう、背を向けている。

ハイチェアに伸ばした脚を、だれかにつかまれていた。
あ…
声をあげようとすると、足首を握り締めた掌が、意思を伝えてきた。
声をださないで。
うん。わかった…
不承不承にうなずいたまりあは、ふたたび柳眉を逆立てる。
ふくらはぎのあたりに、ぬるりとなま温かい感触―――
男の飢えた唇だった。
淫らな唾液を含んだ唇が、まるでヒルのように。
薄い黒のストッキングごし、ヌメヌメと這わされてくる。
じっとりとしたよだれが、淡いナイロン生地にじわじわとしみ込まされてゆく、あの忌まわしい感覚―――

股をすぼめ、縮こまろうとする脚を、しいて押し拡げ、
大胆な大股開きを強要されて、
あっ。つうっ…
思わずあげた声に、マスターはほんとうに気づかなかったのだろうか?
いい舌触りのストッキング…ですね。
かろうじて聞き取れる低い声色は、イタズラっぽさを含んでいた。
だめ。破かないで。黒だと裂け目が目だつわ。
マスターはいちぶしじゅうを窺っている。
そういう自覚が、声をあらわなものにしていたけれど。
顔をうえにあげて、そのままカクテルを愉しみなさい。
命令口調にかわった声に、まりあは従順にしたがってゆく。

おいしいカクテルね。
リンと取り澄ました声に、
ありがとうございます。
マスターは背中でこたえて、お店のドアを半開きにすると、
すき間から器用に、「準備中」の札をさげていた。
閉店時間ですが…どうぞごゆっくり。
マスター、ぐるだったのね?
まりあの無言の睨みを、マスターは軽く受け流して、お店の奥へと引っ込んでしまった。

おいしい舌だと、言ってもらいたいね。
くぐもった低い声に込められたいやらしい熱情に。
もうっ。
まりあは本気で、身を揉んで。
背後から迫る猿臂に、身動きできなくなっていった。
ぱらり。
カウンターに乱れかかる、長い髪。
うつ伏せになってよく見えないけれど。
ブラウスははだけて、襟首からはみ出したブラの吊り紐が覗いているようだった。
身体のあちこちにしつように這わされる唇が…
まりあの理性をじょじょに、崩しはじめていった。

きみがほかの男に抱かれる夜。

2011年08月22日(Mon) 16:59:59

本ブログ史上初!
あの、「夢のひと雫」のまりあさんが、柏木との合作に応じて下さいました!
構想は、お昼前。あっぷは、夕刻前。
妖しい網の絆から生まれた妖しいおとぎ話。どうぞお楽しみくださいませ。


(柏木)
夕べおそくに、戻って来ました。
何処へ行ってたの?って?^^
吸血鬼の里を、訪問してきたのですよ。
妻と母とを、伴って。
そうしてふたりが奴隷に堕とされるところを、とっくりと見物させられたのですよ。
もちろん・・・ただの男として、たんのうしてしまいました。
こんどは愛人を連れてこい。そう言われているのです。
貞操堅固な柏木としては、さしあたっての心当たりはまりあさんおひとり。
こんどの週末など、ごいっしょにいかがでしょうか?^^

(まりあ)
こんな風にお誘いされると、危険だとわかっていながら、頷いてしまうかも。

そうね・・・あなたへの愛の証だもの。
行こうかしら。
だけど・・・もし、もしもよ。
わたしが断ったとしたら・・・・他の人を誘っちゃうんでしょ?
本当にわたしだけ?
わたしだけしか、そういうところに連れて行きたくないって、
本当よね? 絶対よ?
どんなことされちゃうの?
怖くない? 痛くされない?
大丈夫?
ね、あなたはどこにいるの?
側にいてくれるの?
わたしの見えるところ? それとも・・・見えないところからこっそり覗くの?
あぁ、わたしが襲われているところを見たら・・・
あなた、うれしいの?
本当に?

なんて・・・・逡巡して、興奮して、そしてまた迷って・・・・
押し倒されて、愛撫されながら・・・
君がこんな風に他の男にされて乱れるところを見ると
僕はたまらなくなるんだよ・・・・
耳元で囁かれたら
それまでの戸惑いもどこへやら・・・・いいわ、わかったわ、わたし行くわ・・・

(柏木)
戸惑いながら。訝りながら。
肩までかかる長い髪を、喘ぎに揺らして。
きみは「うん」って、頷いてしまった。
きみ以外に・・・いったいだれを誘え、というのかね?
いけないことと、知りながら。
最愛の女(ひと)を、魔手にゆだねる歓びに。
ぼくの胸はさっきから、
ズキズキズキズキと、疼いている。
素撮られ味わわれて、のこり少なくなった血潮が、ドクドクと。
ひからびかけた血管を、それは狂おしく駆けめぐる。

きみが逡巡して、後ろを振り向くと。
きみはかぎりなく、遠くに行ってしまいそう。
そうしてもういちど、きみがぼくのことを振り仰ぐと。
きみはいっそう、心の奥底にくい入って来る。
あの柔らかい肌に、あの鋭利な牙をむごたらしく刺し込まれて。
きみはきっと、白目をむいて、卒倒して。
ひっそり覗く、ぼくの視線を自覚しながら。
淑女として気丈に応対しようと、けんめいに振る舞って。
それでも理性を突き崩されて、淪落の淵に、堕ちてゆく。

狂おしく悶える腕、
せわしなく上下する、豊かな胸の起伏、
咬み剥がれたストッキングをまだまといながら、ふしだらな裂け目に彩られてゆく脚・・・
そのいずれもが、遠目にするからこそ目にすることができる、妖しい美―――
きみ自身がわきまえていないであろう、フェロモンを。
欲情に飢えたやからのまえ、不用意にまき散らしながら。
せぃせぃと熱した呻きは、あたかも誘蛾灯のように、やつらを惹き寄せて。
やめて・・・やめて・・・と、言葉だけは理性を喪うまいとするきみを。
彼らの逞しい腰が、順ぐりに。
踏みにじり辱め抜いてゆく。
そんな恥辱の場を、ぼくはきっと、昂りにむせびながら、感じてしまうのだろう・・・

もっと・・・もっと・・・
いやぁん。あのひとのまえでなんて・・・っ
はじける声は、意図された挑発的なもの。
きみはほかのものに辱められながら、それでもぼくを悦ばせることを忘れようとしないでくれるはず―――
きみを抱いて、愉しみ合うのも。
だれかに抱かれて愉しむきみに、昂るのも。
等しくきみを、愛することだと。
きみはわかってくれているのだから。


あとがき
真ん中の(まりあ)の部分。
冒頭に描きましたとおり、このお話のモデルになっていただいたまりあさんご自身の、肉声なのです。^^
ひょんなことからはからずも実現した、妖しいコラボレーション。
でもやっぱりこの部分が、白眉ですね♪
このお話がどんなふうに生まれたかは、ナ・イ・ショ♪(*^^)v♪

お勤めがおわったら、デパートでオーバーニーソックスを買って・・・

2011年08月22日(Mon) 13:10:15

お勤めが、おわったら。
久しぶりに、デパートに行って。ストッキング売場に立ち寄って。
若くてキャピキャピな女の子みたいに、オーバーニーソックスを手に取って。
黒無地にしようか?それとも柄ものがいいかな?
このごろは、グレーのリブタイプの子も多いよね。って。
ためつすがめつ、品定めをして。
二足も三足も、買い込んで。
丈の短いスーツの下、ストッキングを脱ぎ捨てて。
人目につかないあの場所で。
封を切ったばかりのやつを、ググ・・・ッとめいっぱい、引きあげる。
しなやかなナイロン生地が、ひざ小僧のうえまでぴったりときて。
ほどよく締めつけてくる、この密着感がなんともいえず、
ショルダーバッグを手に提げて、夜道に靴音を響かせる。
なんだか・・・若い女の子になったみたい♪

行く先は、あの公園―――
夜になると妖しい霧が立ち込めるといわれた、あの場所で。
かつて、自分の血を狙う男と、仲良くなって。
しばしばおっかない鬼ごっこを、愉しんだ場所。
ああ・・・今夜も肌が疼いてくる。
柔肌の奥に脈打つ血潮が、吸われたい・・・と、叫んでいる。

煌々と照る街灯に、スポットライトのように照らし出された芝生のうえ。
あたしはまるでスターみたいに、身体をくねらせポーズをとって。
耳の奥にだけ響き渡る妖しい調べに合わせ、ステップを踏む。
ひとりきりのダンスに、黒い影がまつわりついてくるのに。
さほどの刻は、かからなかった―――

きゃっ。エッチ!買ったばかりなのよっ。
闇にはじける、非難の声など。
かえってあのひとを、そそるだけ。
そうわかっていても、つい声を立てちゃう。叫んじゃう。ひっぱたいちゃう。
けれどもあのひとは、ぜんぜんめげないで。
あたしのことを、雑木林の隅っこに追い詰めて。
あたしだちだけのためのベンチに、無理矢理腰を下ろさせて。
なでる。なぞる。なめる。
ありとあらゆる痴態を、尽くしてしまう。

ああ・・・してちょうだい。もっと・・・して。
いつかあられもなく、はしたない呟きを洩らすあたしの唇を。
今夜もあの忌まわしい唇が、ねっとりと熱く、ふさぎにかかる。

若くてかわいらしい、まりあくんへ。

2011年08月22日(Mon) 09:34:11

若くてかわいらしい、まりあくん。
ちょっとだけ、その長めのスカートのすそをたくし上げて。
きみの太ももを、さらけ出してごらん。
そうして、きみの携帯でぱちりと撮って。この柏木に、写メしてごらん。
ピーンと低く鳴る、着信音が。
このわたしを、ドキドキさせるように。

若くてかわいらしい、まりあくん。
きみの太ももはやっぱり、ピチピチはずんで、輝いているのだね。
その生気。その色香。
すっかりクラクラさせられちまったよ。^^
こんどはその携帯を、スカートの奥に突っ込んで。
周りに聞かれないように、カメラのシャッター音を忍ばせてごらん。
スカートのなかの、暗がりでも。
ショッピングピンクのパンティが、綺麗に映るようにして。

若くてかわいらしい、まりあくん。
こんどはトイレの個室に入って、そのショッキングピンクのパンティを、おひざまで下げてみてごらん。
そうして、おひざにまつわるパンティを、携帯でパチリと撮ってごらん。
うーん、しわくちゃになった女の下着って、どうしてこうも悩ましいのだろう?
え?カメラの音が怖いって?まだまだ修行が足りないね。
シャッター音の主を知ろうとして、ひとが聞き耳たてるのが。
横顔にくすぐったく思えるようになったなら、きみもどうにか一人前だな。

若くてかわいらしい、まりあくん。
オフィスの真ん中ちかくにある、きみの席に座ったまま。
肌色のストッキングの足許に、手をやって、薄々の生地を、指でつまんで。
聞えよがしに、ピリリと破ってごらん。
ほら、だれもが視ないふり聞こえないふりを、決め込むのだろう?
そのくせきみの足許から、ねっちりとした目線を、決してはずそうとはしないのだろう?
周りの視線を一身に集めたきみは、もっといい気になってかまわないのだよ。


若くてかわいらしい、まりあくん。
ストッキングに、悩ましい裂け目を走らせたなら。
そのまま脚を、デスクにあげてごらん。
ああもちろん、てかてか光るハイヒールの、土足のままさ。
さすがに周りの連中も、しずかに息を呑むのだろう。
けれどもきみは、知らん顔を決め込んで。
社内メールの画面の裏に隠した、本命のはずの”裏番組”を、さらけ出して読むがいい。
「妖艶なる吸血」―――
きみの隠した画面のいちばん上には、きっとそう書かれてあるのだね?^^

若い女が、実家に頻繁にかえるとき。

2011年08月22日(Mon) 09:16:25

先週は、実家に帰っていたんです。
どうもメールの返事が遅い。そうおもっていたまりあからの応えは、そんな感じだった。
けれども俺は、首をかしげていた。
先週だけではない。
先々週も。そのまえも。
まりあは実家に、かえっている。

親戚のあつまりが、あるんです。
結婚した弟が家に戻って来て、久しぶりに一家がそろうので。
理由はそのときそのときで、いかにもそれらしくならんでいる。
けれども―――
ほかの眷族どもを交えた”まりあの宴”は、おかげでここ一カ月ほども、お預けになっているのだった。

週末帰宅したOLを、スーツ姿のまま自室の床にまろばせて。
怯える目のまえで、だれがさいしょにまりあをいただくか、くじまで引くのを見せつけて。
それから決められた順番どおり、ひとりひとり―――
代わる代わるに、凌辱に耽る夜。
俺はいつもまりあの脚を抑えつけながら。
勤め帰りのストッキングもろとも、まりあのふくらはぎに熱いキスを重ねてゆく。
順番待ちをしているときでさえ、まりあの肉体を愉しみながら。
おまえ、いちばん得しているな。
悪友どもにそう冷やかされても、俺は肩をそびやかして受け流すだけ。
さいしょに襲われたときには、五足でなん百円の安物だったまりあのストッキングは、
このごろすっかり、俺好みの、淡い光沢をツヤツヤ輝かせた高価なものにすり替わっている。

今週も、ご実家ですか・・・?
そんなメールに。まりあの返事はおうむ返しだった。
今週実家にお招きするのは、貴男の眷族さんばかりなの。
貴男は独りで、あたしのところに、来て―――
彼女の里帰りは、そのための準備だったのか?

家族の生き血で、ほかの連中を遠ざけてまで。
ふたりきりの時間を作ってくれた、まりあ。
週明けにはきっと、またメールが届くのだろう。

実家にはお客さまがおおぜいいらしているので、わたしは自室で独りです。
早く・・・いらして・・・

オフィス・プレイ

2011年08月19日(Fri) 07:38:29

ここは、オフィスの一室―――
だれもいない広いオフィスのなか、事務員の制服姿の女がひとり、黒い影に組み敷かれている。
こちらから見えるのは、淡いピンクのタイトスカート。
てかてか光る、黒のハイヒール。
そして、淡い光沢をよぎらせる肌色のストッキングに包まれた、しなやかな脚―――

組み敷いた男がふと、唇を放して、組み敷いた女を見おろした。
白のブラウスがバラ色のほとびに、チラチラと濡れていた。
ふふ・・・っ。
笑ったのは、おんなのほうだった。

お盆休みで、帰っちゃったと思っていたんでしょ。
薄い唇にさしたショッキングピンクの唇を。
女の血に濡れた唇が、ぴったりとふさいでいく。

生意気言わせたくないからって、そんな手は、ダメよ。
女はなおも、笑みを絶やさない。
男はなんどもなんども、女の首すじに唇を這わせて、
そのたびに。
くいっ・・・くいっ・・・と、喉を鳴らせて。
男が喉を鳴らせるたびに、女は、きゃっ、きゃっ、と、小娘みたいにはしゃいだ声をはじけさせる。

あ・・・
目先を変えて、足許に唇を忍ばせる男に、
あ、ダメッ!
女はタイトスカートのすそを、抑えようとしたけれど。
いちはやく、女のスカートをたくし上げてしまった男は。
てかてか光るナイロンの淡い被膜のうえから、
そのまま唇を、押しあててしまっていた。

いい舌触りだね、まりあ―――
はじめて口にした女の名を、男はいとおしげになんどもくり返しながら。
まりあ・・・まりあ・・・
そう、くり返しながら―――
もうっ、いやっ、ストッキング破けちゃうじゃないっ。
女がなかば本気で、なかばはしゃぎながら、脚をくねらせて避けようとするのを、
追いかけっこでもするように、唇で追いかけてゆく。

一日早く帰って来たのはね。
あなたと、オフィス・プレイを愉しみたかったからなのよ。

あしたは事務的なとげとげしい声と、そっけない雑踏に包まれるであろうオフィス。
おなじ場所にただよう静謐に、身を任せて。
女と男はいつまでも、
襲われるオフィス・レディと襲う吸血鬼とを、演じつづけていた。

女の名は、まりあ―――
神出鬼没にあらわれて、男の渇いたはしたない欲求に、惜しげもなく応えてゆく。


あとがき
ちょっと、触発されるものがありまして。
ひさびさ登場の! まりあでした。^^

真夜中のアヴァンチュール ~窓辺のまりあ~

2009年10月25日(Sun) 23:40:59

こんな夜更けにスーツなんて、おかしい・・・ですって?
真夜中だというのに。
きみは、濃紺のピンストライプのスーツを着て。
薄墨色のストッキングに装った形の良い脚を、お嬢さんのように交叉させて。
思いっきり無作法に窓からあがりこんだ俺を、
なん時間もまえから予期していたかのように迎え入れる。
時間と空間の隔たりは・・・貴方にはなんの問題もないのだものね。
ほんとうに来るなんて・・・って、内心驚いているくせに。
いっしょうけんめい余裕のあるふうを装うきみは。
まるで初めて逢ったときのように、初々しい昂りを漂わせていた。

数分後。
礼装した淑女は、露出を愉しむ娼婦に変貌していた。
着崩れしたジャケット。
わざと引き裂いてやったブラウス。
それらをうるさそうに、自分の身体からひきはがすと。
女はみずからを、柔らかな皮膚をまとった獣に変えていた。
唐突な熱情のるつぼに、冷え込んだ外気と板挟みになったガラス窓が、くもるかと思うほどだった。
濃紺に白のピンストライプのタイトスカートに、俺の気に入りの黒のガーターストッキング。
そんな下半身の装いだけは、身に着けたまま。
女はひと刻、淫らに熱し狂いまわった。
タイトスカートの裏地が、熱いほとびに濡れ濡れになるほどに。

静けさを取り戻した、真っ暗な部屋のなか。
きみはフフ・・・・・・ッと、ひそやかな笑いを洩らす。
まるで、飢えているみたいね。
あなたの周りの女のひと。だれも相手をしてくれなかったの?
図星を刺された俺は、返す言葉もないままに。
女のなめらかな肩先を、なぞるようにして。
すべすべとした背中を、いつまでもいつまでも。
それは熱っぽく、撫でつづけていた。

ブラジャーの束縛から解き放たれた豊かな胸は。
それ自体意思をもったかのように、たゆんたゆんと愉しげに揺れている。
開け放たれた窓からは、こうこうとした満月。
月明かりが輪郭だけを際だたせるきみの身体は、一糸まとわぬむき出しの輝きを秘めている。
今夜って・・・満月だったかしら?
わざと取り繕った冷ややかな口調を、突き崩すように。
俺が満月を望めば、空には満月がかかるのさ。
えらそうな言葉を吐いて、女の冷たい唇を熱い口づけでほぐしてやると。
やらしい・・・
しんそこくすぐったげな囁きが、洩れて来た。
どっちが。
軽くつねった乳首に、きみは身体をしならせて反応して。
ざわり。。。
足許に乱れたシーツが、めくれ上がるほどに波打った。

互いに互いの肩を抱きながら。
あの夜とおなじようにふたり、月を見あげている。
いつか・・・こんな夜があったよね。
これからも、ありつづけるのさ。お前が望む限り。いつでも。ずっと・・・

女の名は、まりあ・・・
いつも俺の寂しいとき、人知れず気配を消しながら、俺の傍らに立っている。
時間と空間の隔たりは・・・
いつの間にか彼女は、俺の不遜な言い草を。
音も立てずにそっと、盗み取っていったらしい。

すごいんですよ。^^

2009年10月25日(Sun) 10:20:40

先日ひさびさにあっぷした「まりあのお部屋」。
「淫らな温泉宿 ~婚約者まりあが、因習に屈する夜~」
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-1880.html
が、あっという間に3拍手!
コメントはもちろんのこと拍手も少ない柏木ワールドのなかでは、堂々たる実績です。
さいしょの拍手は、あっぷしてからわずか三時間後に頂戴しました。(*^^)v
いちいち記録取ってないけど、たぶん最短記録だと思う。(・_・;)
お姫様輪姦な初夜♪という過激な設定が好評の秘訣でしょうか?
それとも、最近にしては珍しくちゃんとしたストーリー仕立てで描いたのがよかったのでしょうか?
このごろ勢いだけで描いていることが多いですからねぇ。(^^ゞ

テンションがあがってくると、周囲の情景とか目に見えるほどリアルに想像してしまうので。
こういう描きっぷりになるのです。
そのつぎにたてつづけにあっぷした「まりあのお部屋」の「雑踏のなかの幻影~まりあとの邂逅~」も、えろはありませんがかなり気に入っています。
やっぱりテンション満開で、描けましたから。
柏木は、よほどテンションがあがらないと、「まりあ」を描かないのです。
私の最愛のヒロインです。^^

雑踏のなかの幻影 ~まりあとの邂逅~

2009年10月24日(Sat) 08:50:38

はじめに~ このお話、えろくないです。(^^;) ごめんあそばせ♪

まりあ・・・
思わず口にした、その名前を聞きとがめて。
きみはまりあを、知ってるの?
ケンと名乗るその若い男は、ちょっとびっくりしたように、けれどもその実そんなに驚いてはいないみたいに、私のほうを振り向いた。
いつもの夕暮れの雑踏のなか。
唐突にあらわれた彼は、いともさりげなく私との会話に興じていて、
ほんの数分のあいだに、まるで十年以上昔からの親友みたいに仲良く肩を並べて語り始めていた。
これでもボク、もう四十なんですよ。
わざと自慢げに言う彼は、どう見てもそんな年齢にはみえない。
まだ学生っ気さえ残っているような面ざしに、やんちゃ坊主みたいなイタズラぱッぽい笑みを浮かべながら。
柏木さんは、ななつとしうえのお兄さん、かな?
嘘つけ。お前、絶対背伸びしているだろ?
言いあてたつもりが少しだけずれている年齢に苦笑しながら、私は彼に手玉に取られかかっていることを自覚していた。
案外彼自身ほんとうに、「不惑」と呼ばれているその齢に、ほど近い境地にいるのかもしれない。
ちょっと見には、二十代にさえ見える彼。
でも二十代でこの存在感は、絶対に出ないだろうから。

あっ。
ふと目を転じたその先に、私は目を離せなくなっている。
小声で「まりあ・・・」と、目に捉えた人影の主の名前を呟くと。
さすがにケンもしんけんなまなざしになって、私の視線のかなたをとらえようとした。
OLふうのスーツに身を固めた若い女がひとり、雑踏のなかにまぎれている。
肩までかかるつやつやとしたロングヘアに、お嬢さんのような軽いウェーブをかけて、ゆったりとなびかせていて。
上背のあるすらりとしたプロポーションを、あたりの雑踏にゆだねながら。
すいすいとリズミカルに、こちらに向かって歩みを速めていた。
もはや、ケンどころではない。
私は彼の傍らをすり抜けるようにして足早に階段を降りて、
立ちふさがるように、まりあのまえにあらわれている。
ケンの漂わせる不思議な若さが、私に乗り移ったかのように、息せき切って。

あら。
まりあは私を見ても、驚かなかった。
この街にいるはずのない彼女。
それなのにどういうわけか、私が日常見なれている風景のなか、
まりあは十年も棲んでいるような風情で、佇んでいた。
だれかと思えば・・・
ふふふ。とコケティッシュに笑ませた横顔が、いかにもまりあそのものだった。
いちど、逢ってるわよね。
一度なんてもんじゃない。きみとうはもう何十回、何百回も・・・
そう言いかけて。
逢っているのは、お話のなかだけなのか。
それとも、じつは現実のなかでなのか・・・
ひどく記憶が、あやしくなってきた。
いつの間にかケンは、まりあと私の傍らに立っていて。
ふたりの様子を面白そうに眺めていたが。
オレだってめったに彼女と逢えないんだぜ?
そう言いたげな顔つきで、時折私のほうを盗み見てくる視線を、私はありありと感じていた。

まりあは近くの店先に、まるで自分の家のように奥へ奥へと入り込んでいく。
私も、あとから追いかけてくるようについてくるケンも、
彼女を見失うまいとついていった。
果物、かごにいっぱいお願いね。
気さくに彼女はお店のひとに声かけながら。
「私、何時からだっけ?」
同僚の声色で、同年代らしい若い女の店員にひそひそ話をしている。
ここで働いているの?
私が訊いても、まるで取り合わないようにして。
働いているというか、棲んでいるというか、お客さんというか・・・
まるで説明になっていない応えを返してきて、
やっぱり「ふふふ・・・」と、ただ笑っているばかり。
それ以上の会話を、思い出すことができないのは。
きっと彼女が、私の記憶に封印をかけていったから。

こんどはいつ、逢えるの?
そう訊く私を、はぐらかすように。
それでもまりあは、手にした手帳をちらつかせるようにして。
そっと私に、手渡してくれた。
見てもいいわよ。メアドも電話番号も、そのなかに入っているから。
住所は・・・?って、尋ねそうになって。
なにを訊きだしてみたところで、それらはすべて変更可能で、彼女を捉えるにはなんの役にも立たないことを思い知りながら。
もどかしい手つきでぱらぱらと、手帳を、めくっていく。
まりあはわざとのように、手帳のどこにそれが書き入れてあるのかを、言おうとしない。

女性の手帳というものを。
こんなにもたんねんに、眺めてしまってもいいものなのだろうか?
うらやましいね。
ケンは相変わらず、からかうような目で、私のしぐさを見つめている。
一瞬目に入った、
ne.jpの文字。
けれどもその先頭にあるのは、「節雄」という男の名前。
ケンでも私でもない。ではいったい誰?
そもそも、メールアドレスに漢字を使えるのか?
けれどもまりあは微笑むだけで、それ以上の説明をなんら与えてくれそうにない。
落書きみたいな稚拙な字で書かれたメールアドレス。
もしかすると案外、節雄などという男はそもそも存在しないかもしれないのだ。
ふとそのページを見失うと、もう二度とアドレスらしきものを控えたページに行き当たることができなかった。
めくるページ、めくるページ、一見稚拙だが的確なタッチのイラスト。
もともと印刷してあるのか、まりあのイタズラ描きなのか。
あるページでは夏用の制服に黒ストッキングの女学生が教室じゅうにあふれていて、
べつのページをめくると少年が同世代の男の子の二の腕に噛みついて、血を啜っていた。
これ・・・柏木ワールドじゃないの?って、
問おうにも問いかけることができない。
なぜって彼女はきっと、それさえも不思議な笑みでごまかしてしまうだろうから。

ハッと、気がついた。
目が覚めた私は、独りきりの布団のうえ。
ただぼうぜんとなって、話の途中で掻き消えてしまった幻影を追い求めている。
まりあ。まりあ。
さっきまで身近にいたあの顔だちを、いまはもう思い浮かべるさえ困難になっている。
わざとのように私の記憶を消して、夢のなかから立ち去って行った彼女。
また、逢おうね・・・
私は独り呟いて、残り惜しげに床を離れた。


あとがき
今朝、じっさいに見た夢の記憶を追いながら描いてみました。
想像力豊かである柏木は、時折こういう感じのりあるな夢を見てしまうのです。^^;
なお、ケンという相棒の男性のモデルは、とあるお話から無断借用してしまいました。(^^ゞ
終始正体不明であった彼の正体は、きっとこのひとなのだろうと。
たぶん、まちがっていない自信があります。(笑)

淫らな温泉宿 ~婚約者まりあが、因習に屈する夜~

2009年10月20日(Tue) 07:17:50

ほてった素足に、ひんやりとした床の冷たさがかえって心地よかった。
ここは、すき間風のするような、ひなびた温泉宿。
露天風呂まで持っていったどてらを羽織らずにいるほどに、
湯上がりの身体はまだ熱しきっている。
窓の外は散り始めた落ち葉がいちめんに広がる、晩(おそ)い秋―――

熱いね、まりあ。
肩にしなだれかかるように腕をまわしてくるのは、
年明けに結婚を控えている彼氏のヨシオだった。
やぁだな、もう酔っぱらっているの?
そういえば彼、足取りがいつになくふらついている。
だから温泉入る前に飲むのよそうっていったのに。
いっしょに飲んだまりあはそれでもかなりイケるくちなので、一見してなんでもない。
強いな、まりあ。
冷やかすような彼の口調に、くすぐったそうにうなずいたけれど。
浴衣一枚の素肌にすっきりと、淡い酔い心地がしみ込むようにめぐりはじめているのだった。

親を紹介するよ。
ど田舎だけどね・・・まりあが気に入ったら、将来は実家に戻りたいんだ。
口ごもりながらそう告げてきたヨシオに、
まりあは少女のようにこくん、と、頷いただけだった。
都会育ちのまりあには、田舎暮らしの経験がない。
子供のころいちどだけ、遠い親戚の棲む農家に泊まった記憶がおぼろげにあるけれど。
だだっ広い古い家がなんだか不気味で、夜泣きしてしまったものだった。
そんな記憶をたどりながら彼に話すと、
ヨシオは優しく、うなずいて。
そうだね。俺には古くから棲んでいる家だけど・・・まりあには、初めてだもんな。
まりあの緊張をほぐすためにと、彼の実家にお泊りするまえの晩はちかくの温泉宿で二人きりの夜を過ごすことになったのだった。

すみません、ほんとうに気が利かなくって・・・
宿に着くそうそう、
年若な宿の主人は頭を掻き掻き、ぶきっちょにぺこぺこと頭を下げていた。
律儀で純朴な田舎ものである宿の主人には、
苗字の違う男女が一室に宿泊するという想像がわかなかったらしかった。
二人にあてがわれたのは、べつべつの。
それもすこし離れた小さな部屋だった。
まりあはそれでも、小さな湖の見えるほうの部屋を選んだ。
まだ紅い葉をまとった切れ切れな木立ちの合い間から覗く湖面もロマンチックだったけれど。
中庭を挟んで向かい側のもう一つの部屋はこんもり茂った低い山に面していて。
その山の向こうにこれから目指そうとする彼の実家があるとおもうと、
なんとなく鬱陶しかったのだった。
そんなまりあの気分を察したのか、ヨシオはちょっと気がかりそうに恋人の顔を覗きこんだのだけれど。
うん、いいよ―――
いつもの優しさで、まりあのことを包むように見つめただけだった。

遅いなぁ。ヨシオったら・・・
飲みさしの酒は、大食堂で出た地酒の残りだった。
だだっ広い古座敷の食堂をぐるりと見まわした彼は、うんざりしたような顔をして。
ここじゃ落ち着いて、飲めないや。持って帰っちゃおう。って。
持ちこんだのは、まりあの部屋のほうだった。
飲み直す。という名目で。
彼は今夜、初めてまりあの寝室に忍び込んでくるはず。
ピンクのスーツ着て、待ってろよ。
ちょっと口ごもりながらそんな要求をする彼が、なんだかかわいらしくって。
もうっ、こんなトコまで連れて来てスーツなわけっ!?
まりあはわざとふくれ面を作りながら。
それでも、初デートのときに着ていったショッキングピンクのスーツに着かえている。
ほてりのおさまった身体に、ひんやりとしたスリップが心地よかった。
うふふふふっ。奮発しちゃった。
脚に通した肌色のストッキングは、つややかな光沢がよぎるインポートもの。
いつもちらちらと、まりあの足許を窺う癖を、彼女はとっくに見抜いている。

遅いなぁ。寝ちゃったのかなあ。
案外、決心がつかなくてあの狭い部屋のなかでうろうろしているのかも。。。
オリのなかの熊さんみたい・・・
自分のした想像にプッと吹き出したものの、まりあの脳裏もまた、あらがいがたい眠気に支配されはじめていた。
かたり。
テーブルのうえに置いたおちょこが、畳に転がったのさえ。
おちょこのかたわらにうつ伏してしまっているまりあには、気がつかなかった。

ふと気がつくと。
部屋のなかが、薄暗くなっている。
やだ・・・
すっかり眠ってしまったらしい。
いま、何時なのかしら。
気だるい酔い心地のせいか、すっかりいうことをきかなくなっている身体をもぞもぞと動かそうとして。
まりあはびくっ!と、スーツ姿の身をすくめた。
部屋に誰かいるっ!
彼かしら?という想像は、すぐに恐怖に途切れていた。
気配の主は、一人ではなかったから。

頭のうえから抑えかかるように、一対の掌がまりあの肩をつかまえる。
もうひとりが、足首を。
さいごのひとりは、まりあをあお向けに転がして、ブラウスの胸にとりついてきた。
きゃ、あっ!助けて・・・
声をあげようとしたけれど、声が出ない。
身体も動かない。
酔い心地なんかでは、まったくない。
得体の知れない呪縛がまりあの動きを封じていた。
お酒のなかに、何か入っていたのだろうか?
このさいそんな詮索は無用のことだった。
無言のなかのもみ合いが、しばらくつづいた。

ヨシオさん・・・ヨシオさんっ!?どうしたの?早くまりあを助けに来てっ!
運動部出身のまりあは、決して弱虫ではなかったけれど。
三人もの村の男衆を相手にするには、都会育ちの娘の筋肉はしなやか過ぎるらしい。
たちまち攻め込まれ肉薄されて、
胸をすべる掌は、ブラウスの襟首から侵入してきたし、
肩を抑えつけてきたやつは、ヨシオにもまだ幾度も許していないキスを、強引に奪っていった。
足許のやつはどうやら、ストッキングのふくらはぎを舐めているらしい。
薄々のナイロンごし吸いついてくる唇が、ヒルのように厭わしかった。
もはや男どもの不埒な意図は、疑いようもなかった。
助けて・・・助けてっ!
彼はおろか、宿の人さえも、狭い客室のなかの異変に気づいていない。
そういえばこの温泉宿の宿泊客は、まりあたちだけだった・・・

オレガ最初ダゼ?
胸元に手を迫らせた影の主が、ほかのふたりを威圧した。
アァ・・・構ワナイサ。
肩を抑えているもうひとつの影法師が、ぞんざいに応えた。
足許のやつは応えさえ返さずに、まりあの足許を舐める舌のうごきを、さらにしつようにしただけだった。
部屋の照明は消されていたが、
侵入者が持ち込んできた特大の懐中電灯が畳のうえにいくつも転がっていて、
服の色くらいはわかるほどの薄明るさが、
羽交い絞めにされたまりあのスーツ姿を、スポットライトのように浮き上がらせていた。

ウフフフフフッ・・・悪ク思ウナ。
最初を主張した男は、意地の悪い含み笑いでまりあを嘲ると。
ブラウスのボタンをひとつひとつ、はずしていった。
慣れた手つきだった。
あなたたちこんなふうにして、女のひとをなん人も・・・
悔しいけれど、どうすることもできなかった。
幾本もの逞しい腕に、まるで展翅板のうえのチョウのように抑えつけられてしまっていたから。

すげぇ・・・
ブラジャーのストラップを断った男が、むしり取った小さな布切れを部屋の隅っこに放り投げると。
目を射られたかのように、しばし沈黙した。
どれどれ・・・
肩を抑えつけているやつも、抑えつけた手をゆるめずに、
それでもしげしげと、まる見えになったおっぱいを覗き込んでくる。
ストッキングの脚をしつように舐めつづけていたやつさえもが、
下半身からせり上がるようにして、スカートのうえのあたりまで顔を寄せてきて、
まりあの胸元を下の角度から、睨むような視線を這わせてきた。
荒い息遣いの持ち主たちは、さらけ出されたまりあのおっぱいに魅入られるように、
夢中で覗きこんでしまっている。
手に入れた獲物の素晴らしさを、改めるようにして。

だれもが、知らない顔だった。
昂りに弾んだ息遣いだけが、獣のような劣情を吹きつけるように伝えてくるだけだった。
いや、ひとりだけ。
劣情に覆われて見分けのつかないほどの目鼻が、宿の主のそれと重なりあった。
まりあの足許に魅せられた男だった。
えっ・・・
助けは来ない。
まりあは確信した。

どれ、まさぐらせろ。
ばか、俺が先だ。
懐中電灯に顔をさらした男たちは、被害者に顔を見らる恐怖を感じないらしい。
まるで競い合うように、まりあの胸にてんでに掌を這わせてきた。
豊かな丸みを帯びた乳房は、透きとおるほどの白さをたたえていて。
量感たっぷりのふたつの丘陵は、なめらかな皮膚におおわれている。
光に照らされた素肌は、うわぐすりのような微光に包まれていて。
ふんんわり。くにゅくにゅ。
まりあの身体をおもちゃみたいに撫でまわしいじくりまわしてくる掌たちに、
むぞうさにもみくちゃにされていった。

あっ、あ・・・あん・・・っ。
はしたないっ・・・っておもいながら。
皮膚を通して伝わって来るまさぐりが、淫らな疼きをもたらしてくる。
それは焦がれるほど濃く、声をあげて暴れ出したくなるほど急所を衝いていた。
未経験な素肌に、慣れた男どもの掌たちが、じっくりと迫ってきて。
彼にも許していないことを次々と、まりあの身体になじませていこうとした。
ヨシオさんっ。ヨシオさんっ・・・
知らず知らず口にした恋人の名前に、獣たちはかえって欲情をそそられたらしい。
うふふふふっ。いただくぜ。
最初を主張した男はにんまりと笑むと、笑んだ唇をそのまま迫らせてきて。
飲み込むように大胆に、まりあの乳房を唇に含んだ。
あ、あ、あっ・・・。;
はぜる唾液が、くちゅくちゅといやらしい音を洩らして。
押し戴くように隆起のふもとにまわった両の掌が、じわりじわりと、疼きを深め広めていって。
掌と。唇と。
呼応し合うようにして、まりあの乳房を責め抜いた。
ひっ、ひどい・・・っ。
非難を口にしようにも、まりあはすっかりのぼせあがってしまっている。

早く通り過ぎてほしい。
そう願うのは、かえっていけないことなのだろうか?
屈辱を逃れたい一心のまりあの心を、男どもはわざと曲げて捉えて。
早くおれたちのお○ん○んが欲しいって?
にたーりと笑みかけてきたのは、肩先を抑えた男。
もはやまりあが抵抗をあきらめたのを逆手にとって、長い髪をじりじりともてあそびはじめている。
乳房の責めはまりあの抵抗力を奪い、ついでに理性さえもむしり取っていってしまったらしい。
足許のやつは、太ももまで侵入させた掌に、いっそう力を込めてきて。
薄々のナイロンごし、しつようにまさぐられる掌の動きと、捺しつけられてくるなまの唇とが。
疼きの妖しさを、いっそう増幅させてきた。
彼のために穿いた勝負ストッキングなのに。
まりあの目じりが初めて、涙に濡れた。

挿入までは、あっという間だった。
仲間ふたりをどかせると。
かしらだった男はまりあの肩を抑えつけながら。
ひざでスカートを腰までたくし上げていって。
まりあの穿いているのがガーターストッキングなのを見届けると。
都会の女ごは、ええものを穿くのう・・・って。
まるで爺さまみたいな言葉を発すると。
唇にまみれたよだれをなすりつけるようにして。
ストッキングのうえから太ももをなぶり抜いて。
いただくぜ・・・
なぜか仲間たちとは反対側のほうを向いてそうつぶやくと。
おもむろに身体を、重ね合わせてきた。
だ・・・だめ・・・
彼のために装った衣装を、いともむぞうさにはぎ取られて。
彼のために守り抜いてきたものを、いまこんなふうに無造作に蹂躙されようとしている。
女としての危機を乗り越えるには。
もう・・・耐え抜くしかなかった。

今夜受け容れるはずだったヨシオの抱擁は、もっと優しいものであるはずなのに。
汗臭さにまみれた村の男衆の骨太な筋肉は、まりあを荒々しく掻き抱く。
パンティを裂き取られてあらわにされた秘部が、そらぞらしい外気にさらされた。
それと入れ替わりに、逆立った男の一物が迫ってきた。
か、硬いっ。
まりあがヒクッ・・・と、身をのけぞらせようとすると。
傍らから伸びてくる二対の掌が、それを妨害しようとする。
構ワネェ、ヤラシトケ・・・
まりあの上の男の声は、機械的なものに変わっていて。
二対の掌が引くと同時に、
衝きあげてきた。
ごりごりとする酷い痛みと。かすかな出血の感覚―――。
おしまいだ・・・
さいごに残された理性のかけらが、ひとたまりもなく押し流された。

あっ・・・厭ッ!・・・うう・・・んっ。
入れ代わり立ち代わり。
獣どもは、まるで獲物を分け合うように。
じゃれ合いながら、まりあの身体を分け取りにしていった。
痛みと引き換えに、すっかり覚え込まされてしまった愉悦。
相手が入れ替わるたび。
まりあはさいしょのときとまったく同じような羞じらいとためらいをあらわにして。
処女を捧げることのできなかった恋人への申し訳のように、
あらわになった胸を、両手で押し隠そうとして。
それを荒々しく、取り除けられて。
厭、厭、厭・・・っ、って。
かわいく呻きつづけながら。
もう、どうすることもできないまさぐりに、全身をゆだねきっていって。
さいごは、しつようなまさぐりに、耐えかねたみたいになって。
血を撥ねかせたままの股間を、熱く疼かせていくのだった。
むしろこの場に彼がいないのが、ありがたいくらいにまりあは感じていた。
脱ぎ棄てられたスーツは、あちらにジャケット、向こうにスカート。
ストッキングにすっかりご執心らしい宿のあるじは、
持ち主の脚から片方だけ脱がせたやつを、嬉しそうにぶら下げている。

さっきから。
気になり始めていた。
男どもが入れ代わり立ち代わり、まりあを犯そうとするときに。
いただくぜ。
ご馳走さま。
どうして、仲間とは反対側のふすまの向こうを気にするのだろう?
むたいな輪姦を受けながら。
男どもと呼吸をひとつに合わせていって。
そのうちに。
彼らがかえりみるふすまの向こうに、はっきりと。
ひとの気配を察していた。
ヨシオが息を詰めながら。
なかの様子を、窺っている―――?
まさかっ!!!
ひやりとしたものが、まりあの胸によぎった。
さいしょの男が、まりあの上にいるときだった。
分かるか?
上から見おろしてくる目が、そう語っていた。
さあ、もう少し愉しもう・・・な?
胸を隠そうとした両手を荒々しく押し広げながら。
侵入してきたとき。
えっ、あたしったら・・・
彼に覗かれながら、ほかの男に悶えちゃうっ。
閃くどす黒い衝動に、まりあは全身を貫かれていた。
入れ代わり。立ち代わり。
荒々しくまりあを犯し、蹂躙していく男衆を相手に。
まりあはなによりも、ヨシオの視線に酔っている。

さ。さ。夜が明けたぜ。お嬢さん、露天ぶろはいかが?
昼間の律儀な態度はどこにもなく、宿のあるじは一同を露天風呂に案内する。
きゃ~っ、お風呂。ですかぁ?
ふすまの向こうに、聞こえるように。
まりあは能天気な明るい声を、張り上げていた。

うわ・・・きれいだな。
山の端から覗いた暁が、湖面をよぎるように照らしていて。
寒々とした秋の夜明けの、しんしんと侵すような冷気に取り巻かれながら。
四人男女のほてった肌には、むしろ心地よいくらいだった。
ええっ~?ここで・・・ここで犯されちゃうんですかっ!?
全裸のまりあは、もはや解放された天使。
ざぶっとお湯に浸かって、汗ばんだ身体を浸し抜いて。
男どもがかわるがわる、綿あめみたいなシャボンを、豊かな素肌にこすりつけてゆく。
ゆったりとしたお湯が身体の隅々にまで、しみ込んできて。
湯気の向こうから、きっと覗いているだろうヨシオに、心のなかで手を振っていた。

―――翌日。
法事だったんだよね?
まりあはもういちど、ヨシオに問い返している。
親戚も知人も、みんな集まるし。
ちょうどよいころ合いだから、みんなにまりあをご披露したいって。
ご披露・・・か。
清楚な黒の礼服姿のまりあが、ヨシオの目にはいままでになくノーブルに映る。
放埓な一夜が、明けた後。
まりあはもはやためらいもなく、村に足を踏み入れていた。
そこに待っていた厳粛な空気は、まりあに心地よいほどの緊張感をもたらしていた。

いい嫁をもらったな。ご先祖さまも、およろこびじゃろう。
皆口々に、そういってくれた。
一同のなかには、まりあの処女を奪ったあいつも。
まりあの脚から二足目のストッキングをねだり盗った、宿のあるじも。
まりあの二人めのご主人さまになったあと、
露天風呂に浸かりながらまりあを犯し抜いたのは、ほかならぬヨシオの実の弟だった。

温泉宿の愉しみは、昼までつづいた。
昼食どき、照れくさそうに現れたヨシオは、
ゴメン、すっかり酔っ払っちゃって。
わざとらしい言い訳に、まりあは仕方なさそうに、微笑み返している。
さいごに真っ暗にされた部屋のなか。
入れ代わり立ち代わりの相手が、いつの間にかひとり増えていて。
新顔の一人のセックスがいままで以上に激しかったのを。
まりあの全身が、憶えていた。
口に出しちゃ、なんねぇぞ。それが村の掟だからな。
あいつが、亭主。俺は間男。いいな?
さいしょにまりあを奪った男が、手短かに訓えてくれたしきたりに。
まりあは深々と、うなずいている。
村では仲睦まじいどうしのあいだで、花嫁を取り換え合っていた。
まりあと出逢う、ずっとまえから。
ヨシオはその男に、祝言を挙げるまえ、未来の花嫁を彼に譲り渡すことが決まっていて。
つつがなく儀式を果たしたまりあは、いま晴れて村の女として迎えられる。
よそから来た嫁は、みんなと仲良くしなくちゃ、なんねぇぞ。
花婿に無断で、その花嫁をまた貸ししようともくろむ間男の言い草に、
まりあはまるで、彼の嫁になったみたいに。
しおらしく、頷いていた。

夕べのことは、内緒。今夜のことも、もちろんナイショ。
でも彼は、未来の夫は、なにもかも心得ていて。
まりあの悶える姿を覗き見て、みずから昂っている。
都会育ちのお嬢さんは、それまでの理性や常識を、とうにかなぐり捨ててしまっていて。
あのひと晩のうちに覚え込まされた、
彼のまえで悶える愉しみに、すっかり目ざめてしまっていた。
夜が愉しみだね。
えっ!!?
どぎまぎする未来の夫の反応を、愉しむように。
地酒とお料理が・・・ですよっ。
くすぐったく笑いながら、はぐらかす。
喪服のスカートの下、黒のストッキングが薄っすらと映えたなまめかしい足許を。
彼のまえ、見せびらかすようにさらしながら。
彼と同時に、さっきから。
こちらを盗み見ている温泉宿の若い主は、
今夜もまりあの黒のストッキングを、ねだり盗っていくのだろうか。

肩、重いなぁ・・・

2009年03月04日(Wed) 07:34:50

肩、重いなぁ・・・
一人っきりのオフィスのなか。
まりあはそうっと、ため息をつく。
年度末のハードスケジュールが、折り重なって。
とうとう疲れ果てて早退してしまった、金曜日。
それでも残った仕事が気になって、たまの休みだというのに、きょうも出社してしまっている。
いつも、ご精が出るねぇ。
オフィスのカギを受け取るとき。
年配の守衛さんがかけてくれた気さくな声が、まだしもの救いだった。
パソコンのディスプレーに吸い寄せられるように視線を釘づけにし続けて。
またたく間に過ぎてしまった、数時間。
さすがに、肩がこってきた。
肩、重いなぁ・・・肩、重い、重い・・・
「肩、重いよ」
いつか、それは背後のなにものかへの呼びかけになっていた。
そう。さっきから。
両肩に掌をおいてのしかかってくるのは、誰?

肩、重いッ!
思わず肩に置かれた掌を振り放すようにして、叫んでいた。
“片想い“
落ち着いた低い声色が、かえってきた。
な、何よ・・・?
耳朶をくすぐってくるくだらないだじゃれに憤然として、まりあは振り返ろうとしたけれど。
振り向きかけた首は、意外なくらい力のこもった指先に押し返されて、
無理にグイッとパソコンの画面のほうに向きなおらされていた。
「さあ、お仕事をつづけるんだ。たまっているんだろ?」
吸血鬼は意地悪く、まりあに囁きかける。
「わたしも、たまっているんだがね。もちろん別な意味で・・・」
忍び寄るように延べられた腕が、ミニスカートから覗くまりあの太ももを、すべるように撫ではじめる。
「この寒いのに、ミニスカートか。がんばるね。」
「ちょっと・・・やめてっ!」
まりあの抗議に男は耳を貸さないで、返事の代わりにまさぐる掌にグッと力を込めてきた。
「あなたのために穿いてきたわけじゃ、ないもんっ!」
半分本気で拗ねてみせたら。
どこかで聞いたような科白が、かえってきた。
―――ご精が出るね、まりあくん。
守衛のおじさんのねぎらいとおなじ言葉なのに。
こいつの口から洩れると、どうしてこうも憎ったらしく響くのだろう?

男はますます身を寄り添わせてきて。
首筋にちゅうっ・・・と、キスをした。
;;;;;;;;;
まりあは、あわてた。
相手はなにしろ、吸血鬼なのだ。
いままでなんリットル、血を吸い取られ来たかわからない。
濡らされた下着、破かれたストッキングの枚数は・・・
「年度合計」
パソコンのディスプレーに映し出されたしかつめらしい集計表までが、まりあの眼にはイカガワシイものに映り始めてきた。

ちょっと、ちょっと、ちょっとオ・・・
じたばたと足踏みをするまりあの抵抗を愉しむように。
男はまりあの首筋を唇でなぶりながら、
まさぐる手を太ももにすべらせ、二の腕をなぞり、ブラウスのえり首からブラの内側にまで侵入する。
似合うよ。ミニスカート。
なにを言われたって、もうなぶりものにされているとしか思えない。
男の吐息はますます熱苦しく耳朶を染め、着衣を通してのまさぐりはいっそう妖しく素肌の奥にまで染み込んでくる。

―――あと、尾(つ)けてきたんでしょ!?
心のなかの問いにまで、忍び込むようにして。
―――なに。真冬なのにミニスカートで、恰好のよい脚をさらけ出している女がいるから、だまってあとをついてきたのさ。
くぐもった声色の向こう側、にたにた笑いまでが目に浮かぶようだった。
憎ッたらしい・・・
まりあは悔しそうに歯噛みをし、足踏みをしたけれど。
太ももを撫でくりまわす男の掌の動きは、とめることができない。
太ももからひざ小僧、向い合せに並んだ内太もも、それにひざ下、くるぶし・・・と。
薄手のナイロンごしに、じわあっとしみ込まされてくる愛撫は、すっかり敏感になってしまった女の柔肌には濃すぎる誘惑だった。
強いてパソコンのキーの上にすべらせた指先が、ヒクヒクと震えた。
だ、だ、だめ・・・っ
お仕事に、ならない・・・っ
「手伝ってくださる・・・とでも、おっしゃるのっ?」
あくまで強気なまりあの言葉を、熱い唇がおおっていた。
「吸血鬼は仕事など、しない」
男は威厳たっぷりに、そう応えた。
―――さしあたって手伝えるのは、お前の性欲処理だけだな・・・
男はわざとまりあを苛立たせるようなことを口にしながら、
まりあを椅子から抱き上げて、傍らの会議用テーブルの上へと運んでゆく。

さあ・・・おとなしくするんだ・・・
いや・・・
お仕事が、たまっているの・・・
たまっているのは、性欲。だろう?
違うッ!

激しくかぶりを振ったのに。
うごきにあわせて、男は巧みに唇を重ね合わせてくる。
唇のすき間から洩れてくる熱い男の芳香に、まりあは「いやあっ!」ひと声叫んで、すべての抵抗力を喪っていた。

くちゅ、くちゅ。
くちゅ。くちゅ・・・

せめぎ合う唇と唇が、ひとりでになにかを交わしはじめる。
両腕から力が抜けていくのを、はじめて感じた。
男が余裕たっぷり、まりあの足許にかがみ込んでくる。
足許に這わされた唇が、まりあのグレーのストッキングを意地汚くいたぶってしわくちゃにしてゆくのを覚えながら、
まりあは、じんじんとほてってくる身体をもてあましていた。

――― ・・・ ――― ・・・ ―――
――― ・・・ ――― ・・・ ―――
――― ・・・ ――― ・・・ ―――

がやがや・・・がやがや・・・
ふと、気がつくと。
まりあの周囲は喧騒に包まれていた。
あたりを見回すと、そこに繰り広げられているのは、平日のオフィスの風景。
やり手のY課長が、いつものように腕組みして、若手社員たちを叱責している。
しかつめらしい白髪頭のT部長は、やっぱりおなじくらいいかめしそうなR次長を相手に、なにやら込み入った打ち合わせに没頭している。
おなじ課の若手の男の子たちは、いつものようにながら仕事をしながら、談笑している。
いつもとまったく、おなじ風景。
まりあだけが、会議用テーブルのうえ、男を相手にみだれている。
えええええっ!!!

タイムスリップでも、してしまったのか。
それとも週明けになるまで、この場でやりまくっていたのか。
がた、がたがたがた・・・
人がおおぜい、動く気配がして。
皆がこの会議用テーブルに集まってくる。
どうやらミーティングが、はじまるらしい。
ちょ、ちょ、ちょっと・・・っ!
まりあは焦った。
だって、だって。
みんながわたしの寝そべっているところを取り巻くようにして、会議の席に着き始めたのだ。

それでは、会議を始めます。
いつもぶっきらぼうで無表情な総務課長が、議事の進行を始めた。
え、え、えっ、そんな・・・
ばらばらと広げられる書類が指先や脚のつま先にかぶさってくる。
えー、まず営業課から・・・
ええとですね。
さっきまで部下を叱責していたY課長が、部長のまえでは打って変った神妙さで資料をめくりはじめる。
まりあの同僚たちは、上司の態度に気圧されたように黙りこくって、同じくならって資料のページをめくっていく。
だれもがテーブルの上のまりあを無視して、会議に没頭し始めた。

ところが。
ちらり。
同僚のNくんが、こっちを見たようだ。
そういえばさっきから、あのいかめしそうなR次長も、あたしの顔をちらちら窺っている。
書類に手を伸ばすふりをして、あたしの手を握り締めたのは、ほかでもないあこがれのU主任。
それに白髪のT部長までもが、まりあのミニスカートのすそから、さりげなく手を入れてきている!

それで・・・ですね。
けれども・・・ですな。
言葉を交わすたび、伸びてくる手。まさぐりはじめる掌。
つま先を濡らす唾液。
うなじに這わされる唇。
えっ、えっ、えっ・・・!
みるとさっきまでまりあを虐げていたあの憎い男は、中空に漂いながら、
周囲の男たちの無遠慮なまさぐりに侵蝕されていくまりあの様子を、面白そうに眺めている。
そんな!そんな!そんなああぁぁぁぁぁぁぁ・・・っ!

――― ・・・ ――― ・・・ ―――
――― ・・・ ――― ・・・ ―――
――― ・・・ ――― ・・・ ―――

まりあさん?まりあさん?
背中を叩かれて、ハッと起き上がった。
あたりはもう、薄暗い。
背中を叩いてくるのは、あの年配の守衛さん。
ビル内の見回りに立ち寄って、まだ残っているまりあに気づいたらしかった。
ぐっすり眠っていましたよ~。根を詰めすぎなんじゃないの~?
もう遅いから、そろそろうちに帰ったほうがいいですよ~。
善人そのものの守衛さんは、小太りなお腹を揺すぶりながら、では・・・と制帽をちょっとあげて会釈すると、立ち去って行った。
夢だったのか・・・
まりあはパソコンをリセットしようとして、ふたたびディスプレーに向き合った。
作業途中のエクセルファイルを保存して「×」をクリックすると。
四角四面なデータが姿を消して、もうひとつ表示されていたインターネット画面が現れた。
たしか、なにかを検索しようとしてネットにつないだんだっけ。
朝方の記憶が、もうだいぶ遠くにある。
画面を閉じようとして、それが検索画面ではなくなっていることに、まりあは初めて気がついた。
暗黒の画面に表示されたタイトルは、
「妖艶なる吸血」
ありありと、そう表示されていた―――


あとがき
珍しい時間帯のアップです。^^
深夜出勤のみな様。休日出勤なさるみな様。
たまには良い夢を御覧になれますように。
そして・・・あまり無理をなさいませんように・・・。

お姫様抱っこの帰り道

2009年01月19日(Mon) 17:06:52

たまには化粧けのない女を、襲ってみたい。

バス停のちかくにスッと佇んだその少女は。
長い黒髪をいともむぞうさに、肩にそよがせていて。
からかうような眼をして、こちらをじいっと見つめていた。
濃紺一色の地味な制服姿は、清楚というよりも。
質素というふぜいで、少女らしい丸みを帯びた肢体の線を隠していて。
ただ・・・プリーツスカートの下ににょっきり伸びた発育の良い脚だけは、
薄手の黒のストッキングに透けて、ひどくなまめかしい白さを滲ませていた。
オレが足許にかがみ込んで、衆目の視線をいとわずに少女の脚を舐めはじめると。
少女は初めて、脚をすくめて。
「やだ。」
やけにはっきりした声を、頭上に浴びせかけてきた。
う、ふ、ふ、ふ、ふ・・・
見て見ぬふりをする通行人たちを、尻目にして。
初々しい脚もとを彩るぬらりとしたオブラートを、いともむぞうさに剥いでしまうと。
少女は初めて、口尖らせて。
「恥ずかしくって、歩けない」
黒の革靴の脚で、オレを蹴るまねをした。
蹴りにきた足を、ぐいと受け止めると。
オレは少女の身体にツタのように腕をからみつけていって。

―――歩けないのなら、お姫様抱っこしてやろうじゃないか。
もうだれもいなくなった、日暮れの道で。少女の肩と膝裏を抱きかかえていた。
もうっ。
少女はまだ、口をとがらせていて。
すりむけてしまった黒のストッキングの脚もとを、恨めしそうに見おろしていたけれど。
オレがキッスをした額を、さっと撫でつけると。
はじめてオレの首根っこを、抱きすくめてくる。
少女の名は、まりあ。
いつもオレが飢えているときに。
オレを誘うようにして、オレ好みに装って、目の前に立つ女。

密室のみそかごと

2009年01月02日(Fri) 23:39:47

外に出ると、満天の星。
寒風に凍えるように、心細げにまたたく星を一瞥すると。
まりあはふう・・・っ、と吐息をついた。
年の変わり目・・・といったところで。
じつは、なにが変わるわけでもない。
そんな思いは、歳月を経るごとに、実感として積み重なってくる。
ばさっ。
湯あがりの長い髪を、むぞうさに肩に流すと。
たった一枚身にまとったバスローブを、むぞうさに室内に投げ込んだ。
凍りついた空気に、いさぎよいほどに裸身をさらし。
くるり。くるり。
洗い髪をひるがえしながら。
しばしの間。だれも観客のいないはずの、ベランダ上の舞い。
星たちが、見ている。
空を流れる雲が、覗きこんでいる。
冷え切った空気が、素肌を侵してくる。
寒い。けれども、スッとする。
すべてをさらけ出すことへの快感が、女にすべてを忘れさせた。
でも・・・やっぱり寒いっ。
白い裸体を、あたりの暗闇に溶けるほどなじませてしまうと。
まりあはサンダルを脱いだ素足を逆戻りさせて、
そそくさと居間のじゅうたんへとすべらせた。

さっきから身にまとわりついた、不健全に暗い気分は、
きのうまでぶっ続けだった仕事が投げかけた影のせい。
それを、振り払おうとして。
シャワーにつかり切り、暗闇に浸かりきり・・・
しなやかに腕を振り、腰さえくねらせて。
それでも。あー、なにをやっても、振りきれない。
まりあの足は、しぜんと玄関へと向かっていた。

人どおりの絶えた、マンション前の道―――
ベランダ上の再現をしてみようかと、一瞬思いさえしたものの。
さすがに結婚前の女の理性と本能が。
そうした狂おしい衝動を引きとめた。
なにを羽織ってみようか・・・?
数分後。
毛皮のコートに身を包んだまりあは、重たい鉄のドアをばたんと閉ざして、
ハイヒールの足音を、だれ聞くひともいない夜道に響かせていた。

まりあが目指したのは、街はずれにあるネットカフェ。
いつも通勤途中に、横目で通り過ぎていたので。
入るのは、きょうがはじめてのことだった。
雑居ビルのエレベーターを、最上階まであがっていって。
開いたドアの向こう側から流れ込んできたのは。
かすかな煙草の匂いと、雑然とした人いきれ。
それに、ひそやかな喧噪。
ベランダから見おろした街は、あれほど静まり返っていたというのに。
ここには信じられないほどの、人影、人影。
だれもが互いに無関心を貫いて。自らへの無関心も、要求する。
たがいに視線を避けあって、己の世界に没頭する人の群れ。
いらっしゃいませ。
蝶ネクタイをした若い男性の店員が、おはじめてですか?と問いかけてくるのを。
まりあはわざとぶあいそうに、無言で首を縦に振っている。

両隣のボックスには、人はいないようだった。
満席になってしまえばともかくも。
わざと、席を離しているようだった。
見あげるほどのスチール製の壁が、左右と、目の前に。
向かい合うデスクには、特大ディスプレーの最新式のパソコンと。
背後には彼女をガードするような、やはり左右と同じ高さの壁―――。
密室空間は、牢獄のような居心地のよさを保証してくれる。
まりあは、それだけが旧式の、ひもつきマウスを手に取って、
狭いデスクのスペースのうえ、くるりくるりともてあそんでみる。
ひもつき―――。
自分で呟いてみて。
古臭い。けど・・・いい響き。
小悧巧に上向いた格好のよい鼻を、ツンと取り澄ましてみるのだった。

使い勝手の違うパソコンは、意外にいうことを聞いてくれなかったりする。
まして、つい最近バージョンアップされたらしい機能は、ちょっと戸惑うほどのものだった。
見たいサイトが、すぐにどうしても出てこないのだった。
まぁいいか。いっそタイトルで検索かけちゃおう。
まりあはわざと一本指で、サイトのタイトル名を検索画面に打ち込んでゆく。
「よ、う、え、ん、な、る、吸血」。

画面はなかなか、切り替わらない。
いつまでも、じ―――っと、真っ白なまんまでいて。
おかしいわね。フリーズしたのかしら?
ひもつきマウスのひもを所在無げに指に巻きつけながら。
まりあはそれでも、画面が変わるのをじっと待ちわびた。

人を呼ぼうかしら?
それもいっそ、めんどうな・・・
店内は一面の、薄闇のなか。
かすかな人の気配は、その薄闇の彼方に埋没していて。
なにをしているのか。互いに互いを明確にし合わないことが、ひとつの黙契にさえなっているようだった。
周囲に誰もいないらしい解放感が、さっきからまりあのことを、ひとつの衝動に導こうとしている。
そう。毛皮のコートの下は・・・一糸まとわぬ、研ぎ澄まされたような白い裸身。

女はゆっくりと、コートを脱いでゆく。
かぎられたスペースのなか、重たいコートを音もたてずに脱ぐのは、案外手間だった。
脱ぎ終わるのと。画面が切り替わるのと。どちらが、先?
反応の遅いパソコンを、からかうように。
まりあはちらちらと、まだ切り替わらない真っ白なディスプレーを盗み見ながら。
そう・・・っと、身をかがめて。
ゆっくりと、肩をゆすぶって。
身じろぎするたび、コートの重さが両肩からずり落ちてゆく。
コートを脱いでしまうと。
豊かなおっぱいが、むき出しになったままぷるんと震えた。
う・ふ・ふ。
見える?見えないわよね?
か・し・わ・ぎ・さん?

女がことさらに、笑んだのは。
唯一身に着けた、黒のガーターストッキングのせい。
それとも貴方だったら・・・見えるかしら?
貴方の好みに合わせて、装ってきたんだから。
見えるものなら。御覧になって。気の済むままに・・・
お行儀悪く、ストッキングの両足を、画面のまん前に載せてみる。
これ見よがしに。ディスプレーの向こう側に人がいたとしたら、よ~く見えるようにして。
座り心地のよいアームチェアに。女社長見たいに、ふんぞり返って。
ハイヒールのつま先で、つんつんと突いてみたくなる、ようやく現れた、サイトのタイトル文字。
ゆらっ。
なにか薄べったいものが、おもむろにまりあの全身を包んでいた。

う、ふ、ふ、ふ・・・。
そんなにわが身が、恋しいか?
押し殺すような低い声は、たとえ隣のボックスに人がいたとしても、聞きとることはできなかったろう。
薄べったいものは、目に見えない透明色のまま。
肩の上で、あごの形になり、
胸の周りで、腕の形になり、
ディスプレーのまえに載せた脚の周りですら、別の腕の形をなしている。
あごはあざ笑うように、カクカクとした上下動を肩の筋肉にしみ込ませてきて、
胸を抱きすくめた腕は、それぞれ掌のなかに抑えつけた乳首を、
五本ずつの指で、なだらかに撫でまわしてきて、
足許にまとわりついたほうの腕たちは、しつようなまさぐりに薄いナイロン生地をひきつれに波立てている。
あ・・・あ・・・あ・・・
まりあは喉の奥から出かかったうめきを、けんめいにこらえている。

いつの間に・・・っ!?
心の叫びは、くぐもった囁きになってかえってくる。
ベランダの上からずっと、あとを尾(つ)けてきたのさ。
ベランダの・・・うえ・・・?
だれも目にしていなかった筈の舞い。
話はすでにそこから、はじまっていたのか?
年の移り変わりなど、なんの意味もないって?
そう。たしかに・・・時間と空間の隔たりは、われわれの間になんの問題ももたらさないのだよ。
話をすり替えないで・・・
力のない抗議は、すでに説得力をもっていない。

くすぐったい。くすぐったい。とても、とても、くすぐったい・・・
まりあをまさぐる腕は、何本になるのだろう?
あわてて羽織りなおそうとした毛皮のコートは、あっけなく手から離れて、ご丁寧にもデスクの下に折りたたまれて。
何対になるのかさえ定かでなくなったあの腕、この腕、その指、この手のひらが。
まりあの素肌をじんわり責めて、声あげそうになるほどの疼きを、しみ込ませようとしてくる。
ゆるゆるとした誘惑の彼方に閃く、稲妻のような衝動に。
まりあは何度も耐えかねて、声あげそうになって。
店内にじつはかなりいるらしい人の耳の存在を意識して、
必死になって、歯を食いしばる。
それが、囁きの主のつけめだったのか。
まさぐりは首筋や脇の下、それに太ももの奥へとエスカレートしていって。
まるで意地になったみたいになって、まりあの声を要求する。

うっ、ううっ・・・あぁぁぁぁぁんっ。
いちど、あからさまな声色をほとばしらせてしまうと。
あとはもう、とめどがなかった。
あっ、あああん。ダメ。だめえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ・・・
ざわざわとした店内。耳に迫る人いきれ。
背の高かったはずの周囲の壁は、意外なほどに低く、その壁ごしに、周りじゅうから、人の目がそそがれる。
まりあはただ、瞳をめぐらして。
男たちの好奇の視線を一身に浴びながら。
食い込んでくる視線さえもが、心地よくなって。
股間の奥深く、とどめを刺すようにまさぐり入れてきた指先に。
悲鳴に似た歓喜を、口にし続けてしまうのだった。

切望。

2008年12月17日(Wed) 03:12:54

あー。
また、やってしまった・・・
どうしてオレは、こうもどじなんだ。
出張行程は、どたばたになるし。
かんじんの打ち合わせは、さんざんになるし。
不幸中の幸い、周りのだれもがおだやかな人ずくめだったことさえも。
かえって、申し訳なさを増幅するばかり。

オレは柏木。
ふだんは名もない万年平社員。
正体が吸血鬼・・・だなどというヤバすぎる真相は、
つねに、平凡すぎる外貌の下に無理やり押し隠して生きている。
真夜中になると否応なく発揮してしまう、超能力。
その見返りというか、なんというか。
昼間は正体を隠すという必要以上に、どじの連続なのだった。

きょうもオレは、めまいのするほどの自己嫌悪に包まれながら、
苦い思いに胸を噛みながら、たったひとりの自宅への帰り道をたどっていた。
あのぅ・・・
背中越し、若い女の声がおずおずと投げられてきたのも。
さいしょの二度三度は、まさかオレのことではあるまいと。
よけいに背中を丸めて、通り過ぎようとしたのだった。

いつの間にか。
女の影は、目の前に回り込んでいた。
うっそりとしたさえない目をあげると。
そこには闇夜に透けて、優しげでなだらなかプロポーションが浮かび上がっている。
ふたりの真上にそびえる電信柱。
さびれた灯りに照らされて、まるで幻のように。
眩しすぎるほどの脚線美が、すぐ目のまえにあらわにされる。
オレ好みの、薄々の黒のストッキングに映える白い脛が。
ちょっと照れくさそうに、娼婦のようになまめく絶妙なくねりを描いていた。

ふふっ。
無邪気すぎるほどの、ほほ笑みが。
―――また、しくじっちゃったの?
軽い揶揄を含んでいたけれど。
親しげな冷やかしの下、かぎりないほど暖かいいたわりが、
冷え切った胸を柔らかいオブラアトのようになって押し包んでくる。
座りましょ。
灯りの下、しつらえられた公園のベンチに。
かの女はすらりとした腰つきを、軽やかにすべらせる。

やっぱり・・・
女はくすくすと、笑っている。
自分の隣に座らないで、まん前にかがみ込んでくるオレのことを。
明るいいたわりのこもった視線が、冷えた首筋に。こわばった肩に。
暖かくそそがれる。
オレがいま、いちばん欲しがっているもの。
疼く牙が求めるものも。
乾いた心が欲するものも。
ぬくもり―――。
ただその一点だけなのだと、女は慧眼にも見抜いている。

ぬるりと這わせたべろの下。
ノーブルな輝きを秘めた薄手のナイロンが、かすかなひきつれを走らせる。
すぐに破かないで。
たっぷり舌で、愉しんで。
せっかく貴方のために、装ってきたんだから―――
すらりとした脚を、かすかに揺らすようにして。
オレの吸いやすいように、さりげなく角度を変えてくる。
すがりつくように握りしめた掌のなか。
ハイヒールの脚は踊るようにして、軽く組み替え、しなやかな筋肉をキュッとはりつめる。
どちらがいたぶっているのか。それともじゃれ合っているのか。
わからなくなるほどの、至福のひと刻。
オレはいつか、すべり込むようにして女の傍らに身を添わせていって。
背中越し腕を回して、女の遠いほうの肩をつかまえていた。
こんどはオレが、女の身体を暖めるようにして。

ブラウス、汚してもいいんですよ。
ストッキング、破いてもかまわないんだよ。
女はしつよう過ぎるオレの抱擁のなか。謡うように、口ずさんでいる―――。
いつか、しっとりとしみ込むようにして。
オレの胸が、手足が。喉の奥さえも。
女の温もりに、満ち満ちたとき。
女はいつの間にか、スッと背筋をそらせて。
がんじがらめにしてやったはずの猿臂から、いともやすやすと抜け出している。
少しは元気になった?
また、来るからねね。
こんどは鬼ごっこ、愉しもうね。
女の童顔からこぼれる笑みに、オレは深々と頷き返していた。
掌に残る、あのたっぷりとしたおっぱいの感触が。
滲むぬくもりのなか、まだありありと残っていた。

女の名は、まりあ―――
時間と空間のへだたりは、オレにとってはなんの問題もない・・・なんて。
エラそうにうそぶくオレのお株を、時おり奪うようにして。
オレが切望するまさにその瞬間をたがえずに。
時も空間も、いともやすやすと超えてくる。
どちらが、超えてくるんだか。どちらが、「魔」を備えているのだか。
オレはやっと、いつもの落ち着きを取り戻して。
誰も待っていないはずの我が家へと、ちょっぴり浮ついた足取りを向けるのだった。


あとがき
北国の雪のように降り積もった業者サンの熱心な宣伝カキコに埋もれたわけではなかったのですが。
「魔」の囁きがさっぱり訪れないままに、つい日を過ごしてしまいました。
そんな私の眠りを、とんだ刻限に呼び覚ましてくれたのは。
まりあさん。やっぱり、貴女だったのですね。^^
いつもよりちょっと落ち込みトーンなのは・・・実生活の反映?(苦笑)
それもまた、彼女がしっとりと秘めたエロ・・・もとい活力が、
妖しいほどの恢復力で補ってくれたようです。
感謝♪

看護婦まりあの「受難」

2008年05月19日(Mon) 10:18:34

∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
某病院の廊下。院長が白衣姿のまりあを追いかけて呼び止める。

院 長 まりあ君、大変だ!病院に収容していた吸血鬼が逃亡した!
     きみも気をつけて、早く帰りなさい。
まりあ えっ!?吸血鬼?そんなキケンな人が入院していたんですかっ!?
院 長 病院の最高機密だったのだ。きみに報せなかったことを、おわびする。
まりあ わかりました!早く・・・早く逃げます!
     (恐怖に頬を引きつらせる)
院 長 うん。そうしなさい。わたしもほかの患者の安全を確かめてから退去するから・・・
     (まりあ、駆け足であわてて去る)
院 長 (無線機らしきものを取り出して)うん。いま裏門から出て行った。
     たぶん帰り道は公園を横切るはずだ・・・
∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
公園。新緑に包まれた木立ちと、青々とした草むらの真ん中に、細くて白く浮かび上がった小道。
向こうから駆けてくるまりあを、お約束どおりの不穏な生温かい風が包み込む。

まりあ  (あたりを窺いながら)どうしたの?どうしたの?気味の悪い風・・・
     (まりあの前に立ちはだかる、黒衣の人物)
まりあ  きゃあっ!だ、だれ・・・っ!?
吸血鬼 院長に聞いて知っているだろう?私が入院加療中の吸血鬼だ。
まりあ  あの・・・あの・・・お願いですから、見逃してください・・・っ!
吸血鬼 なにをあつかましいことを。お前、看護婦だろう?
      看護婦が患者を治療しないで、だれを治療するというのだ?
まりあ  えっ!?わたしは若い男性を専門に・・・なに言わせるんですか!
吸血鬼  ほら見ろ。私は十分若いぞ。まだたったの四百歳だ。
      がたがた抜かしているひまがあたら、さっさと服を脱げ!
まりあ  それって、治療じゃないと思います・・・
吸血鬼  うるさい!つまらんところで冷静な指摘をするな。
      私の治療には、若い女の生き血がたっぷりと要るのだ。
      お前の血をアテにして、こうして待ち構えていたのだぞ?人の期待を裏切るもんじゃない!
まりあ  そんな・・・勝手に期待されても困ります!それに看護婦だけじゃ治療はできません。
吸血鬼  院長はとっくに逃げちまった。なんなら院長の奥さんを呼んで来い。院長の代理ということで・・・
まりあ   医療行為は資格がないとできないんですよ~
吸血鬼  若い女の生き血があれば、あとは勝手に自力でよみがえってみせるわい。
      (まりあをつかまえて、いきなり首筋に噛みつこうとする)
まりあ  やだっ!やだっ!だめーーーっ!
      (公園じゅう追いかけまわす。カメラ、ばかみたいに早まわりをつづける)
吸血鬼  そーら、つかまえたっ!
まりあ   あああぁ・・・(かなり真に迫った、絶望のうめき)
吸血鬼  (まりあの目の前にロープを突きつけて)その樹に縛りつけて、血を吸い取ってやる~
まりあ  あ・・・わたし、縄を見るとうっとりしちゃって・・・(目がとろんとして、うっとりと縄を見つめる)
吸血鬼  変わった女だな。さては処女ではないな?よ~し、望みどおりにしてやるぞ。感謝するがよい。
      結婚前にいけない遊びにふけるやつは、私がこうしてこらしめてやるのだ!
      (とても嗜虐的な笑いを満面に浮かべながら、まりあをぐるぐる巻きに縛りつける。
      ギュッと締めつけるロープ、まりあの白衣に食い込んで、身体の線が浮き上がる)
吸血鬼  (目を細めて)うーん、なかなかよい眺めじゃ。
まりあ   患者さん、いやらしいです。ちっとも病気っぽくありませんっ。
吸血鬼  (いきなり首筋に噛みつこうとする)
まりあ   きゃあっ!
吸血鬼  往生際のわるい娘だ。
まりあ   だって首筋怖いんですもの。
吸血鬼  それなら、脚から噛んでやろう。
まりあ   え・・・?それ、なんかやらしいです・・・(白のストッキングの脚をすくめる)
吸血鬼  誘い上手だな、お前・・・
      (まりあの足許ににじり寄り、ストッキングの上から、くちゅっと唇を吸いつける)
まりあ   ああ・・・ん。いやらしいっ!
吸血鬼  すべすべ舌触りの良いストッキングを穿いているね?
まりあ   いやらしい・・・です・・・っ。
       (まりあ、思い切りもだえる。ロープ、ぶちりと切れる。ずいぶん弱いロープである)
まりあ   ラッキー!いち抜けたっ!(あわてて走り出す)
吸血鬼  あっ!待てっ!おおーいっ!
      (黒マントを引きずりながら追いかけるが、ロープの呪縛が解けたまりあの逃げ足は速く、
       追いつけない)
吸血鬼  うー、なんてことだ。待て、待てっ!もう少し、ナースストッキングの脚を舐めさせるのだ!
まりあ   (一瞬だけ戻ってきて)待ってあげるから、ちょっぴりだけサービスするわね♪
       (気前よく脚を差し出す)
吸血鬼  うふっ。ごちそうさん・・・
       (白ストッキングの脚ににゅるりと舌を這わせる。肌の透けるストッキングにヌラヌラと光る唾液)
まりあ   じゃね♪かけっこ、再開!(逃げ去る)
吸血鬼  あっ!待て・・・!

∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞

吸血鬼  ふう。逃げ足の速い女だ。とうとう逃げられてしまった。こんちくしょう!院長め!
      まりあの逃げ足が速いという情報はなかったぞ・・・(文句を百万遍くり返す)
      (まりあ、切れたロープをぶら下げて現れる)
まりあ   あの・・・忘れ物です。
吸血鬼  えっ!?戻ってきたのかお前?
まりあ   だって、ロープがないと女の子縛るのに困ると思って・・・
吸血鬼  切れたロープ持っててもしょうがないだろうが。
まりあ   それはそうですけど・・・いらなくなったら、きちんと分別ごみに出しておいてくださいね。
吸血鬼  吸血鬼がごみを分別するのか!?ええい、戻ってきたのを幸い、お前を噛んでやる。
まりあ   あの・・・ほんとうは、噛まれに戻ってきたんです。
       血が要るんでしょう?やっぱり私看護婦ですから・・・
       私の高い職業意識が、患者さんを見捨てるなっていうんです。
吸血鬼  ほんとか・・・?
まりあ   その代わり、殺さないでくださいね。(必死のまなざし)
吸血鬼  ばかな女だ。看護婦なら人体にどれくらい血液があるのか、わかるだろう?
       あんなに大量の血を、ふつうの人間がひと息で飲みつくせるわけがないだろうが。
まりあ   だってお芝居や映画では・・・
吸血鬼   あれはお芝居だお芝居。私が血を吸ってやると、愚かな人間どもは夢中になって
       過度に供血を習慣化させるから、勝手に血をなくしすぎて死んでしまうのだ。
まりあ   でもやっぱり、最初に血を吸うひとがいちばんよくないと思います。
吸血鬼   まあよい・・・(首筋に噛みつこうとして、思い直して)首筋は怖いんだったな?
まりあ   え、ええ。(脚にかがみ込んでくるのをよけて)でも脚はやらしいです。
吸血鬼   ぜいたく言うな(早くも白のストッキングを唾液で汚している)
       しんねりとして、噛み心地のよさげなふくらはぎをしておるの・・・
       (牙をむき出して、ストッキングの上からまりあの脚を噛む)
まりあ   痛いっ!あ、あ、あ・・・!だめ・・・だめぇ・・・っ
       (ちゅうっ・・・と、まりあの血を吸い上げる音。まりあ、その場にくたくたと尻もちをつく)
       (吸血鬼、なおもまりあの脚を放さずに血を啜りつづける)
まりあ   あ、あ、あ~ん。ひどいっ!ストッキング破けちゃった~(泣く)
吸血鬼   (吸うのをやめて)そういう問題か?もう少しガマンしろ。
       (もういちど脚を吸う。吸い始めるともうわれを忘れて、
        ストッキングがちりちりになるのも構わずに、しつようにいたぶりつづける。)
       (ひっきりなしにつづく、吸血の音。周囲を踊り子が取り巻いて、
        酔ったように手をかざし卑猥に腰を振って、意味のない舞踏をくり返す)

∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
草むらの穂先を、風がゆるやかに揺らしているなか、うずくまっているふたつの影法師。
まりあはうっとりと甘えるように、吸血鬼に寄りかかっている。

吸血鬼  いい子だ。気づいていたのか?吸血鬼はひと思いに人の血を吸い尽くすことができるのを。
       たしかに「ふつうの人間」にはひと息で吸い尽くすことはできまいが、私は吸血鬼なのだからな。
まりあ  でもおじさまは、まりあのこと助けてくれたのね?
吸血鬼  (しんみりとした目になって)もう少し、いっしょにいてくれるな・・・?
まりあ   うん。まりあ、おじさまが大好きよ。
       (二人、草むらのなかで抱き合う)
まりあ   処女じゃなくって、ゴメンね・・・
       (白衣の前をはだけ、あらわになった腰を振りはじめる。
        泥の撥ねたガーターストッキングを気にしながら、ゆっくりと脚を開いてゆく)
       (正常位、騎乗位、バック・・・と、体位をかえながら、二人は熱っぽい息を交し合う)
       (まりあ、さっきまでのぎこちなさはどこへやら、じつに扇情的に腰を振りながら、
        もっと・・・もっと・・・と声を洩らして、吸血鬼との情事に耽っている)
(どちらからともなく)うう・・・ん。
∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
まりあ  もうこんな時間。病院に帰らなきゃ。いかれたおじさまも、再入院ね。
      (飛んだナースキャップをかぶり直したり、はだけた白衣を直したり。
       まりあは身づくろいを始めているが、いけないおじさまの方は昂奮からさめやらず、
       裂けた白ストッキングの脚をまだいじくりまわしている。)
院 長  まりあ君、ここにいたのかね?とにかく無事で、よかった、よかった。
      今後はきみに、この患者の専属看護婦を命じる。よく面倒をみてあげてくれたまえ。
まりあ  ええっ!?だってこの人吸血鬼なんですよ!?
      わたし一人だったら、血を吸い尽くされちゃいます~っ。
院 長  だいじょうぶ。きみにはおおぜい、分身がいるだろう?
      OLまりあに、女医まりあ。女学生まりあに女教師まりあ。
      人妻まりあは、ダンナのOKが必要だろうが、
      女学生まりあはこの患者にぴったり適合する処女の生き血をもっているはずだね?
      毎日かわりばんこに相手をすれば、需要と供給のバランスがつり合うのだよ。
まりあ  そんな。そんな~っ!先生ひど過ぎますっ!
      (躍起になって抗議するが、後ろから抱きついてくる吸血鬼にとうとう首筋を噛まれてしまう)
まりあ  あ・・・あ・・・あ・・・(気を失って倒れる)
      (腕の中抱きすくめたまりあは、白衣のあちこちにバラ色のしずくを散らして、
       うっとりとなっている。吸血鬼、牙をゆっくりとまりあの首筋から引き抜く。
       引き抜かれた牙の切っ先から、血潮がほとび散り、
       いく筋ものしたたりとなって、まりあの白衣をきらきらと伝い落ちる。
       ちょっぴりホラー。)
吸血鬼  う、う、うぅむ・・・やっぱり若い娘の生き血は旨い・・・
       (こっちもうっとりしている。うら若い犠牲者の胸から身を起こすと、
        気を失ったまりあを、お姫様抱っこする。
        もちろん、あてがわれた病室のベッドに投げ込むためである)
院 長   じゃあ、あとは頼むよ。きみの病室にはもうひとつ、ベッドを用意しておいたから。
       (薄情にも、まりあを置き去りにして帰ろうとする)
吸血鬼  おっと待った。まりあ一人に責任を押しつけるのは酷だろう?
      今夜はお前の女房と娘を連れて来い。
      まりあを死なさないための中継ぎにするのだ。
       生命は保証するが、貞操と純潔の保証はいたしかねるがね。(たち悪くせせら笑う)
まりあ  (とたんに気がついて)だめーっ!浮気したら。
      (おっかない顔になって、吸血鬼の頬をつねる。)
      (吸血鬼と院長、引く。)
まりあ  病室の用意はOKね?じゃあ行きましょう。
      分身のみんなで、交代で面倒見てあげるから・・・ね♪
      そうそう。生命の保証をしてくれれば、貞操の保証はナシでもいいからね~♪♪♪

                            ―END―

あとがき
あんまり「受難」じゃなかったような・・・。(^^)

ねぇ。まりあ

2008年05月13日(Tue) 07:55:27

ねぇ。まりあ。
そこに立って、服を一枚一枚、脱いでいってごらん。
そのようすを、わたしが逐一、写真に撮ってあげるから。
そう。そうして、地味めな服で。
取り澄ました顔をして。
ちょっぴり、羞じらいながら。
髪の毛をほどいて、肩に流して。
ブラウスのリボンをほどいて。
ブラにガードされたおっぱいを、レエスごしにちらちらさせて。
ブラウスを思い切り脱いで。
おっぱいを隠しているブラまで、取り去って。
下は折り目正しいスーツのスカートに、肌のツヤツヤ透ける黒のストッキング。
上は一紙まとわぬ裸身。
どうかね?
ちょっぴり、昂奮してこないかね?
さあ・・・つづきをやるんだ。
なに。羞ずかしがることはない。
観ているのは、私と・・・そう。このカメラだけなのだから。
つぎは、スカートだね。
横を向いて、顔をうつむけて。
ジッパーを、おろすんだ。
え?はずかしい?
かまわないさ。いつもしていることじゃないか。(パシャ)
それからまず、片足だけ、引き抜いて。
そう。そこでいったん止めて。(パシャ)
こちらを向いて。ひざをそろえて。(パシャ)
それからすとんと、スカートを落とすんだ。(パシャ)
足許に広がったスカート、なかなか見ものだね。^^
そう。やっぱりガーターを穿いてきたんだね?
じゃあ、片方ずつ、脱いでもらおうか。
もちろん・・・ゆっくりと・・・ね。
なに?恥ずかしい?
じゃあ・・・脱ぐのは片方だけに、しておこうか?
もう片方は、わたしがたっぷり、いたぶってあげるから。
ごほうびに・・・
今夜は思い切り、狂わしてあげるから。

きみのまりあを、襲わせてくれ。

2008年04月30日(Wed) 06:45:26

透きとおるような蒼白い肌に、憂鬱そうなまなざし。
幼馴染みのリョウタが、そんな表情をするときは。
クラスメイトの男の子たちは、みんな彼のまえを避けて通る。
それは・・・欲望のシグナル。
彼の視線をさえぎるものは、だれかれ問わず獲物にされる。

つかつか・・・っと、ボクのまえに突き進んできたときは。
もう遅かった。
リョウタは半ズボンの脚を引き寄せるように、すりつけてきて。
ボクの股間に、ギュッと腕を回してきた。
矢のように鋭く射込まれた言葉に、黒い戦慄をおぼえた。
きみのまりあを、襲わせてくれ。
依頼でも、まして懇願でもなくて・・・要求だった。
はぜるような息遣いの向こう側。
抑えきれない欲情が、渦を巻く。

まりあはボクの、婚約者。
そうだと知りながら、リョウタは彼女を犯したいという。
ボクにはひと言も、しゃべらせないで。
ズボンごし、股間の昂ぶりをたしかめると。
もういいよ。なにも言うなよ。羞ずかしいだろ?
いいざま、スッと身を離して。
半ズボンの下、紺色のハイソックスの脚を見せびらかすようにした。

まりあからもらったんだぜ。これ。
えっ?
もう・・・そういう仲なの?
まりあのものだというハイソックスは。
男の子の脚には、丈がすこしだけ足りなくて。
脛の途中で、とまっている。
女の子が、自分の履いているハイソックスを、好きでもない男に渡すわけがない。
いかにもほんとうらしい、作り話に。ボクはまんまと、乗せられてしまった。

こんどはお前が、盗んでくる番だぞ。
詰問口調でそういわれて。
ふたり、連れ立って、まりあの家をたずねていった。
なにも知らないまりあは、男の子の来訪にテレながら、
お茶を出すわね・・・そういって、しばらくのあいだ座をはずす。
さあ。いまのうちだ。
リョウタに命じられるまま、まりあのタンスを引きあける。
ふんわりと香る、女の匂いにつつまれて。
思わずうっとりしていると・・・すぐにわき腹を小突かれた。

行儀よくたたまれた紺のハイソックスを、一足。
震える手で、取り出すと。
リョウタはひったくるように、ボクの手から取り上げて。
サンキュー。
口笛鳴らして、囁くと。
素早く、ポケットのなかにねじ込んでいた。

すまねぇな。
あれ・・・ウソだったんだよ。
毒液のような囁きを耳にそそぎ込まれたのは、まりあの家を出たすぐあとのこと。
えっ?
訊きかえすボクに、もういちど。
ハイソックスの脛を見せびらかして。
これ・・・お前ん家(ち)の隣のお姉さんのやつなんだ。

モノにした娘のハイソックスを、剥ぎ取って。
自分の脚に、身に着ける。
男のくせに・・・だなんて。怖くてだれも囁けなかった。
まんまと取り上げられたまりあのハイソックスを。
あいつが自慢げに人前にさらすのは。
きっと・・・そのころには・・・もう・・・
ズボンの奥。ボクはもういちど、股間を震わせている。

春の陽射しが奥まで入り込む、街はずれの廃屋で。
あっ・・・うふん・・・あうぅぅぅぅん・・・っ
ふすまごし、洩れてくるのは、女のコの切なる吐息。
ふだんのまじめさをかなぐり捨てた少女は、思いっきり身体をのけぞらせて。
ボクが聞き耳立てている・・・そう知っているくせに、聞こえよがしに声洩らしている。
ちゅ、ちゅう~っ。
吸血の音、響かせて。
さいしょはボクを、それからまりあをたらし込んでしまった憎い男は。
いま、我が物顔に振舞って。
ボクの未来の妻を、征服してゆく。

ゾクゾク・・・ズキズキ・・・
この昂ぶりは、なんだろう?
まりあも男と示し合わせたように、まるでボクを挑発するように、声洩らしつづけてゆく。
奪るんじゃないよ。盗むんだよ。
お前のフィアンセのまま、まりあをモノにしたいんだよ。
いちばんおいしいところを、もっていかれたはずなのに。
ドキドキ羞じらいながら、初めての刻を迎えるまりあのことを。
ふすまごし、じいっと見つめつづけてしまったボク。

これから毎日のように、犯してやる。
たまには仲間を集めて、まわしてやる。
お前の未来の嫁さんを、みんなで愉しむんだ。
とってもゾクゾクするだろう?お前・・・
羞ずかしがることはないぜ。
意外に多いんだ。そういうやつ。
いつか・・・やってみたかったんだ。
仲良しのやつの未来の花嫁をモノにしちゃうのって。

犯されたくなったら、紺のハイソックスを履いて来い。
まりあには、そういい含めてある。
だから・・・紺のハイソックスは、オレを欲しいというシグナルだ。
毎日、街はずれの廃屋で、待っているから・・・
お前が連れて来るんだぞ。
あいつの命令どおり・・・まりあはそれまで毎日履いていた白のハイソックスをやめて、
毎日、紺の靴下で脛を染める。

あはっ。
嬉しそうな、吐息。
息はずませて、もういちど・・・って望まれても、ためらいなく、腕投げかけて。
けれどもボクのまえでは相変わらずケッペキなまりあは。
まだキスさえも・・・交わしていない。
廃屋に連れて行って。
ふすま一枚へだてて。
はじめて淫乱になりかわる・・・ボクのまりあ。
あはっ。うふん・・・あはっ。あはっ。
聞こえよがしに声あげながら、よがり狂って。
きょうもボクを、昂ぶらせてしまう。

終わったぜ。
リョウタがふすまをあけると。
まりあはこちらからわざと目をそらして、身づくろいをしている。
ブラウスで隠そうとした一瞬、ぷるんとしたおっぱいが目のまえをよぎって。
見られてしまったまりあも。見てしまったボクも。
お互い視線をそらし合って、ドキドキしている。
そんなふたりを、面白そうに見比べながら。
じゃあ、あとはよろしくな。
まりあの脚から抜き取った紺のハイソックスを、みせびらかすように。
大またで、通りすぎてゆく。

いちど閉ざされたふすまが、ふたたび開いた時。
そこに佇んでいるのは、一週間まえと寸分変わらない、清純な女学生。
脚に履いているのは、先週までと変わらない、真っ白なハイソックス。
小首かしげて、もの問いたげに・・・じいっとボクを見つめて。
許してくれる・・・?
え・・・許す、だなんて。
いいの。それよりまりあを、許してくれる・・・?
たちの悪い誘惑をさえぎることのできなかった、ボクの恥ずかしい欲情に。
まりあはわざと、気づかないふりをしている。

帰ろ。
まりあの差し出した掌を、痛いほどギュッと握り締めて。
掌の暖かさを、いっぱいに感じ取って。
つよく握ってくる掌を、もういちど握り返す。
キスさえも交わさないふたりの、唯一の身体的接触。
もう・・・
甘えるように寄せてきた肩に、長い髪がさらさらと流れた。
ほんのちょっとだけ、わざとくっつくと。
結婚するまでは・・・、だ・め・よ♪
くすっと洩らした笑みは、初々しい羞じらいを含んでいる。

廃屋の門を出るとき。
まるであるじに見送られているように。
ふたり、ちょっとだけあの部屋のほうに会釈をして。
恋人同士、手をつないで立ち去ってゆく。
脚が埋もれるほどの雑草をかき分ける脚は、ひざ下まで。
真っ白なハイソックスにおおわれていた。

抱いて。

2008年04月29日(Tue) 06:26:16

いつも顔をあわせるあの女は、その身にたっぷり、オレの好物をしみ込ませている。
香りに魅かれるようにして、オレは女につきまとい、
女はいやそうに顔しかめながら、電信柱によりかかる。

背中、痛くない?
圧しつけた電信柱の感覚が、女の身体を通してこちらまで伝わってくる。
女はぷいと、そっぽを向いていて。
吸い出した血潮の生温かさだけが、オレの心を染めた。

感謝してるよ。
オレがうそぶいたって、女はとっくにオレのウソなんかお見通しで。
どうせ空っぽにした酒樽にくらいにしか、想っていないんでしょう?
そういって、ひねくれてみせる。

くたびれちゃった。やなことばっかりだよな・・・
珍しく、女に愚痴ってしまった。
女は大きな瞳を見開いて、かわいそうね、と慰めてくれる。
珍しいいたわりに、ざわざわと胸ゆらめかせて。
抱きついた腕に、いつにない力がこもっていた。

弱いのね。
オレのことか・・・?
誰だってさ。
女はだまって、オレをみあげて。さいごにひと言、ささやいた。
抱いて。


あとがき
書きつづっているうちに、女の正体がわかりました。^^

守ってあげる。

2008年02月29日(Fri) 00:10:37

たしかにさいしょは、公園で襲った少女。
いやがるのを、ねじ伏せて。
力づくで、うなじを噛んで。
いやおうなく、言うことをきかせてしまった女。
けれども女は、毎晩のように。
初めて襲われたあの公園に、じぶんからやってきて。
いちど通るときめた帰り道を、がんとして変えようとしなかった。
オレがだまって、道を譲っても。
喉、渇いているんじゃないの?って、首をかしげて。
だいじょうぶだ・・・って、強がったときも。
ダメよ。ガマンしちゃ・・・って。
むりに頭を、抱きかかえてくれた。
唇の裏に秘めた牙を、いつか本能のままにむき出しにして。
彼女のセーラー服を、汚してしまったのに。
いいのよ・・・って、ただひと言洩らして。
隠した涙を、笑みに変えてゆく。
女の名は、まりあ。
挑むように、胸を張って。背すじをぴんと伸ばして、背伸びをして。
わたしがあなたを、救ってあげる。
一方的に襲われて、辱められてしまう立場のはずなのに。
なぜか、襲っている俺以上に、毅然としていて。
オレが後ろめたさに視線をおとすときも。
真正面から、ひたと視線をすえてきて。
ガマンしないで。わたしが救って、あげるから。
私が救って、あげるから。
私が救って、あげるから・・・
うなじを噛まれて。
血を啜られて。
それでもただひたすらに、呟きつづけている。
意地汚く啜る音が、いつかすすり泣きをまぎらすためになったと知りながら。
とうとうひと言も、オレに恥をかかせまいとして。黙りつづけていた女。
今宵もその優しい影を。
ひっそりとあの公園に佇ませているのだろう。
襲っているはずなのに、守ってくれている。
ふしぎなあの女(ひと)を恋いながら。
今夜もオレは、公園へと足を向ける。

まりあ?公園に来てくれる?セーラー服を着てきてくれる?

2008年02月28日(Thu) 07:48:13

どうしたの?
制服を着てきて・・・だなんて。
目のまえのまりあは、いつもとおなじ人なつこい笑みをうかべていて。
けれども昔からよく知っている、子どもっぽい少女ではなくなっていて。
白い肌は、まるでうわぐすりをかけたような艶を帯びていて、
薄いピンクの口紅を淡く刷いた口許には、コケティッシュな色香が漂うようになった。
けれどもそれとおなじくらい、ボクの胸をじんじんと疼かせているのは。
うら若い、活き活きとはずんだ生気。
そう、夕べ。
ボクはひと晩にして吸血鬼になってしまっていたのだ。
なによー。ひとのこと、じろじろ見ちゃって。
イタズラっぽく笑うまりあは。
長い髪を清楚な濃紺の襟首のあたりにさらさらさせて。
さっきから。
まるで誘うように、白いうなじを見せつけてくる。
淡い血色を秘めた、白い膚。
からからに渇いた喉には、とてもこたえられない液体を秘めた肉体。
ボクはもう、ジリジリと焦がれてしまって。
ガマンできなくなって。いたたまれなくなって。
思わずつい・・・と、手を伸ばしている。
純白のセーラー服の夏服の下。
豊かに実ったおっぱいが、意外に間近に感じられる。
あっ!なにするの・・・っ!?
半ば予期していた事態に、それでもまりあは本能的に、抗って。
その抗いが、かえって劣情の焔を昂ぶらせた。
ツタのように巻きつけた猿臂のなか。
うっ・・・ううっ・・・
きみはかすかに苦悶を浮かべて、眉をぴりぴり震わせたけど。
さらさら流れる髪の毛をかいくぐって、
ぴったりと唇寄せた首筋は、ひどくしんなりとしていて、人肌のぬくもりが心地よかった。
飢えた唇を、なだめるように。
ひとしきり。ぬめぬめと這わせゆく。
あん、だめっ。ダメッ!なにするのよぅ。
ボクの真の意図に気づいていないまりあは、本気で抗っているわけではない。
腕のなかではずむ、ピチピチトした肢体に。
ボクはもう、すっかりゾクゾクとなってしまって。
熱い唇の裏に秘めていた牙をむき出しにして。
ぐいっ。
しゃにむに、圧しつけてしまっていた。
きゃあっ・・・

ぐったりとなったセーラー服姿は。
ベンチに腰かけたボクのおひざの上。
さあ、まりあはきょうから、ボクのおもちゃになるんだよ。
なにをされても、じっとこらえているんだよ。
イヤそうな顔してもいいからね。
うん、そのほうがかえって、昂奮するかな。
熱に浮かされたようになって。
うわついた口からは、引っ込み思案だったボクからは想像もつかないような声が洩れてくる。
セーラー服の胸の谷間にしたたりおちてゆく、バラ色のしずく。
ボクはそれを指に絡めて。
まりあの目のまえ、見せつけるようにして。
チュッ!と下品に、わざと音を立てて吸っている。
血を、吸うの?まりあの血を、吸い尽くしちゃうの?
たったひと晩で・・・だなんて。
そんなもったいないこと、できるわけがないだろう?
でもこれからきみは、毎晩、学校帰りにこの公園に寄り道をして。
ボクに襲われなければいけないよ。
約束してくれるよね・・・?
う・・・うん。怖いけど。
怖い?そう?じゃあ・・・もっと怖がって。
わざと腕を解くと、まりあは跳びあがって。
ばたばたと逃げ足をたてたけれど。
それはほんの、数歩のことだった。
たちまち抱きすくめられて。
まえよりもっとつよく、うなじを吸われてしまったから。

草地に尻もちをついて。
はぁはぁと、息はずませて。
キミ、まりあよりも足遅いんだったよね?
ふふっ・・・と笑って、ボクの顔を覗き込む。
逃げちゃったら、かわいそうだと思って。
ね。脚、気になっているんでしょう?
まりあの均整のとれた脚は。
濃紺のプリーツスカートの下、真っ白なハイソックスに包まれている。
穿き替えたばっかりなんだよ。
練習で泥だらけになっちゃったから。
すっ・・・とさし寄せられる足許に。
ボクはためらいもなく、唇を吸いつけている。

ママにばれちゃうかなあ。
でもなんとなく、ばれても黙っているような気がするなあ。
長い髪を、じぶんでもてあそびながら。
いいよ。毎晩、逢ってあげる。
でも・・・死なせないでね?だいじにしてね?
ちょっとだけ翳りを帯びた横顔が、ひどくいとおしくて。
セーラー服に包まれた、か細い肩を抱き寄せて。
ふたり、初めて牙を交えないキスを交し合っている。

吸血少女 まりあ

2008年02月16日(Sat) 12:59:29

ダメよ。逃がさない・・・
逃げちゃったら、もう逢ってあげないんだから。
そのひと言が、ボクを釘づけにした。
まりあと、逢えないなんて。
そんなこと、とても考えられなかったから。
たとえ彼女が、吸血鬼だったとしても。

薄茶色に染めた長い髪を、肩先に揺らしながら。
まりあはかわいらしいピンク色の唇を、さし寄せてくる。
うっとりと、まつ毛震わせながら。
キスをねだる恋人のように、身を寄り添わせてくる。
けれどもその口許から洩れている犬歯は鋭利に研ぎ澄まされていて。
過去にどれだけの人の皮膚を切り裂いてきたのか、
残忍な輝きに彩られている。
けれどもボクは、身じろぎひとつしないで。
じっと、まりあの牙を待っている。
彼女のせつじつな情欲に、応えるために。
日々のおやつに、チョコレートを欠かさないボク。

ボクの着ているしまもようのTシャツを、くしゃくしゃにしながら。
まりあは目の色を変えて、抱きついてくる。
いつもエレガントに装っているのは。
ボクを魅せるため。
黒のストッキングの、濃密な色香が。
きょうもボクのことを、誘蛾灯のように引き寄せた。
ああ、おいしい・・・
無言の声を、唇に滲ませて。
ボクの血を、いっしんに飲み耽る少女。
いまのこの刻だけは。
きみを独り占めにできる。
華奢な背中を、抱きしめて。
どちらが襲っているのか、わからないときすらある。
牙で貫かれながら。まりあの股間に割り込んで。
ひくひくと昂ぶった怒張が、ぬらりとうるおいを帯びた肉襞に、のめり込んでゆく。

だいじょうぶだから。
きみがいちばん欲しがるものを、いつでもいくらでも、あげるから。
浮き立たない気分のときも。人恋しい焔をかきたててしまう夜も。
いつでも、ボクのところに来ておくれ。
ボクはこうして、ボク自身のぬくもりで。
きみを心から、暖めてあげるから。

まりあの尾行者

2008年02月16日(Sat) 12:49:36

だれかに、尾けられているみたい。
まりあは心配そうに、声翳らせて。
マコトの横顔を上目遣いに窺った。
え?そんなこと、ないだろう?
マコトはいつもと変わりなく、爽やかに笑んで。
怯える恋人を、なだめている。
まるであやすように、長い髪の毛を撫でながら。

だって・・・
ほら。あそこのブロック塀の陰。
だれかいるでしょ?
ほらっ。
電信柱に隠れて。
こっち、見ているでしょ?
だいじょうぶ。だいじょうぶだって。
マコトはまりあが怯えるたびに、髪を撫で肩を抱き寄せながら、なだめつづける。

そんなに気になるなら、近道して表通りに出ちゃおうか?
いつもの散歩道を切り上げるのがさももったいないという顔に。
まりあはちょっとのあいだ、ためらったけれど。
背後から忍び足が、ひたひたと迫ってくるような錯覚に襲われて。
同意の頷きをかえしていた。
こっち。こっち。
マコトは痛いほど握り締めたまりあの手を引っ張るようにして。
両側をブロック塀が迫る人けのない狭い道を、小走りになってかけてゆく。
さあ。もうだいじょうぶ。
ようやく追いついたまりあが、表通りに通じる道に折れようとしたとき。
ゃだ・・・っ
声が、引きつっていた。
目のまえに立ちはだかったのは、不気味な黒衣に包まれた、得体の知れない男。
背の高さにまかせて、おおいかぶさるようにして、まりあに迫ったきたのだった。

だいじょうぶ。だいじょうぶ。
マコトはまりあの背中を、押すようにして。
恋人を怪人の猿臂のなかに追いやった。
あまりにもむぞうさな、なれた手つきで。
まりあのおとがいを、仰のけると。
怪人はまりあのうなじに唇を這わせて、
ちゅ・・・っ
つばのはぜるような音をたてていた。
鋭い痛みといっしょに鋭利な異物が皮膚を侵すのを、まりあは感じた。
ちゅうっ、ごくん。ごくん・・・
おいしいジュースを、飲み干すように。
黒衣の怪人は、まりの血を吸い取ってゆく。

上出来、上出来。
黒衣の男は、倒れたまりあの上から起き上がると。
息の合う相棒のことを、ほめたたえた。
いやぁ。
照れくさそうに笑うマコトは、恥らうまりあの胸を押し広げると。
どうだい?ボクの彼女。いいおっぱいしているだろう?
うらやましいね・・・おすそわけにあずかりたいな。
仲の良い友だちは、最愛の恋人の胸を、気前よくまさぐらせている。
あ、あ、あ・・・っ!なにするの?いや、イヤ!いやぁん・・・
道路に身体を、横たえながら。
まりあはブロック塀の向こう側の民家に、頭上を通り過ぎてゆく表通りの足音に。
ひどく気後れしながら、それでも知らず知らず身体を開いてゆく。

通りを歩いていると、気づかない路地があったりします。
其処に隠れて、愉しみに耽っている人たちをみても。
邪魔をするのは、大人げないですね。
気づかないふりをして、そのあまま通りすぎてしまいましょう。
ちょっとだけ、盗み見るくらいなら。
恋人も、そのお相手も。
そう、気にはかけないでしょうけれど。

人妻まりあの饗応

2008年02月16日(Sat) 12:34:23

身体にぴちっと密着した、ショッキングピンクのワンピース。
広い胸ぐりからあふれそうなおっぱいを、見せびらかすように揺らしながら。
まりあはわたしと客人のまえ。
ワイングラスをふたつ、お盆に載せて現れた。
おい、おい。
身体のライン、強調し過ぎだよ・・・
思わず声をたてそうになったのは。
まりあのセクシィすぎるワンピース姿を、客人に食い入るように見入られたから。
舐めるように、眩しげに・・・

まりあを欲しい。
妻が座をはずすや否や。
予期したとおり、おねだりがはじまった。
仲良しのこの男の正体は、吸血鬼。
彼を家に招くことがどれほどキケンなことなのかは。
子どものころ家に招んだとき。
それまで貞淑だった母と、まだ女学生だった姉さんとが体験してしまったことで。
じゅうぶん立証済みだったのだ。

ひとの女房を、いきなり呼び捨てにするんだね。
彼の無作法を、さりげなくたしなめながらも。
彼の要求そのものをたしなめることができなくなっていく。
ねぇ、頼む。頼むよ。
ほんのちょっとだけ、うなじを吸わせてくれたら。
もうそれだけで、放してあげるから。
そんな見え透いたウソを、お互いにウソだと分かり合いながら。
さいごにわたしが、堕ちてしまったのは。
きみの一番たいせつな女(ひと)だから、欲しいんだ。
そんなひと言。
わかった。じゃあちょっとだけ、席をはずすから。
わざとドアを半開きにしたまま出た廊下は、ぬらりと妖しい薄闇に包まれていた。

あっ!なにするんですっ!?
妻の声が、夜の静寂を切り裂いた。
けれどもそれは、一瞬のこと。
ちゅっ・・・
奇妙な音が、すべてを沈黙させたのだ。
胸が張り裂けるような、無音の緊張。
そのなかで、ただひとすじに・・・
ちゅ―――――っ・・・
途切れることなくつづく、吸血の音。
わたしは不覚にも、胸をドキドキとわななかせて。
妻の受難のいちぶしじゅうを、覗き見ている。

触手のように、長い腕が。
ショッキングピンクのワンピースのうえ、迷うように這い回って。
もどかしげなまさぐりに、さいしょは抗っていたまりあの手も、
いつか緩慢になってゆく。
それはたぶん、失血のせいばかりではない。
服の上からじわりとしみ込まされた、甘美な誘惑に。
ヤツの優美な獲物は、たちまち姿勢を崩していった。
横たえられたふくらはぎを、ゆるゆるとなでさすりながら。
肌色のストッキングの上から、咬みついてゆく。
きれいな光沢だね・・・って、ほめながら。
舐めるように唇を吸い着けられて。
薄手のナイロンの光沢ごし、ふくらはぎの筋肉がシクッと引きつるのを。
わたしは胸ズキズキとはずませながら、ただの男として、光景をたんのうし尽くしてしまっている。

深夜。
夫婦のベッドのうえ。
まりあは失血のあまり、放心状態で。
手足をだらりとさせたまま、横たわっている。
一件がすんだあと。
ハッと我に返ったまりあは。
アラッ?どうしたの私・・・?
吸血されたことは、記憶に残されていなかった。
客人のまえ、無作法に寝転がっていたじゅうたんからあわてて起き上がると、
そそくさと一礼して、リビングから立ち去っていったのだ。
今宵、まりあを私のものにする。
くぐもった声色が、わたしの鼓膜を妖しく震わせていた。
いま。儀式が始まろうとしている。
灯りの消えた夫婦の寝室で。

糸を引かれたマリオネットが、起き上がるように。
まりあはゆらりと、身を起こす。
乱れ髪を、けだるそうにかきあげて。
ふらふらと、ベッドのうえからすべりおりた。
まるでなにかに吊り上げられるような、不自然な動きのままに。
けだるそうに身じろぎをつづける、豊かな肢体は。
タンスの引き出しから取り出したナイロンストッキングを、
するすると手際よく、脚に通してゆく。
まるで娼婦が、身づくろいするように。
ひそやかな衣擦れを、身体の周りにまとわりつけながら。

黒のシースルーのネグリジェ姿が、足音を消して廊下をすすんでゆく。
こんななまめかしいなりを、まりあがするのは。
夫婦のセックスがマンネリになってからは、たえてないことだった。
まりあが真っ先にめざしたのは、玄関。
玄関先の土間に、かがみ込んで。
すぐに立ち上がって、くるりと回れ右をしたときは、
一瞬目が合ってしまって、どきりとしたけれど。
わたしに尾けられていることなど、まるで意に介するふうもなく。
まりあは無表情に、わたしの目のまえを通り過ぎてゆく。

ゆらゆらと、長い髪をたなびかせながら。
ぴかぴか光る、黒のエナメルのハイヒールをぶら下げて。
まりあはひたひたと、足音を消して。
そう。客人にあてがわれた一室をめざしている。
かちゃり。
冷たく響く、ドアノブの音に。
ひやりとしたものを、覚えた瞬間。
ばたん。
開かれたドアは、まりあの姿をのみ込んで。
あっという間に、鎖されていた。

おそるおそる半開きにした、ドアのむこう。
素足になったまりあは、黒のストッキングに脚を通してゆく。
さっきまで穿いていたストッキングは、男の手のなかで嬲りものになっていて。
べつに用意した、真新しいやつに穿き替えているようだった。
さっきまでまりあが脚に通していた薄絹は、男の掌のなか、くしゃくしゃになって。
節くれだった指先が、まさぐるように。
ひどくいやらしく、もてあそんでいた。
男はわたしの妻がストッキングを穿くようすを、にやにやと愉しげに盗み見ながら。
自分もむき出しの脚に、手でもてあそんでいたまりあのストッキングをまとってゆく。
まりあの脚線をのこした薄黒いナイロンが、男の逞しい脚の輪郭に重ねられて。
ごつごつした筋肉に鎧われた太ももを、じんわりと包んでゆく。
わずかに丈が、足りなかったのか。
ストッキングのゴムは、男のひざのすこし上あたりで、留められた。
アンバランスな光景だったけれども、それはひどくそそられる眺めだった。
さっきまで、まりあの脚を優美に彩っていたものが。
男の荒々しい肉づきに、蹂躙されていた。

まりあは丸いすのうえ、カッコウの良い脚を片方乗せて。
足許にかがみ込んでくる男に、誇示するように見せびらかした。
脛を彩る黒のストッキングは、薄くなまめかしく透きとおっていて。
ぴかぴか光る硬質なエナメルのハイヒールと、好対照をなしていた。
男は女の脚をめでるように、両方の掌ではさみ込むようにして。
ねっちりとした手つきで、さすりあげてゆく。
なよなよと薄いストッキングは、そのたびに
ひどくふしだらに波うちよじれを加えていった。
ククク・・・
含み笑いを浮かべた唇を、なすりつけるように這わせていって。
まりあがちょっと顔をしかめたとき。
鋭い伝線をひとすじ、ぴちっと走らせて。
流れるような脚線をせり上がった裂け目は、ネグリジェのすその奥にまで、しのび込んでゆく。
ァ・・・
喉の奥から、引きつるようなうめきを洩らして。
まりあが姿勢をくずしたのは、そのときのことだった。

じゅうたんのうえ繰り広げられる、淫靡な舞踏。
黒のストッキングに包まれた男女二対の脚は、淫らに交わり、乱れあって。
擦れあう脚と脚のあいだ、薄いナイロンが妖しいしわを波だてていく。
さいしょは正常位、それからバック、騎乗位と。
ぴったり息合わせたふたりは、あらゆる体位を交えてゆく。
娼婦に堕ちた女は、ただひたすらに情夫の情けをもとめつづけて。
硬く怒張した逸物を、喉の奥まで突き刺さるほどに、迎え入れて。
わたしのときとは比べものにならないほど、ていねいに、たんねんに、
貞潔を穢した兇器を、ねぶり抜いてゆく。
侵される両の太ももを彩る黒のストッキングは。
ぎらぎらと毒々しい光沢をよぎらせて。
やがてふしだらに、脛からすべり落ちるようにして、堕ちていった。
あん、あん、あん・・・あぁぁぁぁぁぁぁぁん・・・っ!

しずかになったまりあから。
いまいちど、生き血をズズズ・・・と啜り取ると。
男は礼拝するように、恭しく。
まりあの手をとって、手の甲に接吻を重ねてゆく。
放恣に伸びきった脚もとから。
するり、するりとストッキングを抜き取ると。
にまにまと、いやらしい笑み浮かべて満悦しながら。
女をお姫様抱っこして。
廊下で待つわたしになど、目もくれないで。
情婦にした人妻を、夫婦のベッドに投げ込んでゆく。

チチチ・・・
チチチ・・・
鳥の声。眩しい朝日。
すべては、夢だったのか?
妻のまりあは、エプロンを着けて。
かいがいしく、朝の用意に余念がない。
けれども盗み見たノーストッキングの足許には。
綺麗に並んだ、ふたつの痕。
ふくらはぎに浮いた、赤黒い痣のような痕は。
きっとスカートのなかにも、もっと奥にも、つけられているはず。
夫婦のベッドをひと晩譲ったわたしは、けっきょく廊下に寝るはめになって。
じんじんとする頭を抱えながら、やつの残した置手紙をまさぐっている。

ごちそうさま。
これからは、きみの留守を狙って襲うことにする。

たった二行が、わたしの胸を、またも烈しく疼かせていた。
留守でなくても、留守にするのだぞ。
やつはきっと、そう囁くのだろう。
あるいは、わざわざわたしのいるときを狙って。
まりあを公然と支配するのだろうか。
十時にビジネスで面会予定のあの男。
ズボンの下にはきっと、妻のストッキングをこれ見よがしにまとっているのだろう。


あとがき
情事のときに身に着けていたものを、情夫に与えて。
情夫はそれに応えて、自分の脚に通して。
まっ昼間から、夫に見せつける。
おまえの妻を、とうとうここまでモノにしたのだぞ・・・と、宣言するように。
ひとつの支配の形態だと思えます。

まりあの番

2008年02月16日(Sat) 10:49:32

とうとうくじに、当たってしまった。
今年吸血鬼に捧げられる乙女を選ぶくじ。
去年当たった親友のりまちゃんは、あれから家に戻っていない。
いっしょに住んでいたお母さんもろとも、がらんどうの家を残して、消えてしまった。
ふたりに何が起こったのか、だれも教えてくれないけれど。
教えてもらわなくたって、だいたいの察しはついている。
まりあはぶるっと、身を震わせて。
じぶんでじぶんの胸を、いとおしく抱きしめていた。
こんなにかわいいのに。
こんなにきれいなおっぱいなのに。
まだ、彼氏もできない身空で、生き血を吸い尽くされてしまうのか。
約束の夕暮れ刻、吸血鬼の待つお邸に行く途中、
まりあはりまちゃんの家に足を向けた。

開きっぱなしのくぐり戸を抜けて。
やはり開きっぱなしの玄関を通り抜けて。
靴のまま、廊下に足を踏み入れて。
幼い頃追いかけっこをした柱の周り。
晩ご飯をごちそうになったとき、いっしょに囲んだテーブル。
なにもかもが、去年のままなのに。
なにもかもが、記憶のなかとおなじように色あせていた。

お邸に着くと、まりあは革靴を脱いで。
精いっぱいおめかしした、黒のストッキングのつま先を、冷たい廊下にすべらせる。
人の気配のない、がらんどうの広間。
それはどこか、りまちゃんの家のリビングを思わせた。
まりあは所在なげに、部屋の隅っこにしつらえられたソファに腰を降ろして。
目のまえのテーブルにむぞうさに置かれた雑誌を手に取った。
雑誌にはさまっていた紙が、はらりと落ちて。
拾い上げる手が、ふと止まっていた。
見覚えのある筆跡。りまちゃんの字だった。

きょうもあのひとに、血を吸われる。
夕べもあのひとに、血を吸われた。
だのにどうして・・・
こんなことがキモチいいんだろう?
だんだんあたし、ヘンになってゆく。

ぞっとして、紙を元通りにたたんで、テーブルに置こうとしたそのときに。
くくくくくっ。
人の悪そうなくぐもった含み笑いが、足許から聞えてきた。
あっ!と思うまもなく、まりあは足首をつかまれてしまっている。
いつの間にか、じゅうたんの上腹ばいになって。
まりあににじり寄っていた黒い影は。
おびえるまりあのすくんだ脚を、べろでなぞるように舐めあげる。
ぬるっとした生温かい感触が、薄いナイロンを通して素肌にしみ込んだ。
やっ、やめて・・・やめて・・・
嫌悪の情に、まりあはまつ毛をピリピリ震わせながら、抗って。
けれどもいちど、スカートのすそを黒影に明け渡してしまうと。
黒影は容赦なく、スカートを腰までずりあげてしまった。
あっ、ダメ!
スカートを抑えようとする手。もっとはぐりあげようとする手。
手と手のせめぎ合いに、きりっとしたプリーツスカートはもみくちゃになってゆく。
ダメ。だめ。だめ・・・・だめ・・・・・・
太ももに、ぬるり。
ふくらはぎに、ぬるり。
ストッキングごし、パンティラインをなぞるように、ぬるり。
たちのわるい舌の誘惑は、まりあの抵抗をすこしずつ、そぎ落としていた。
あっ、あっ、あっ・・・
りまちゃんも、こんなふうに堕とされていったのだろうか?
じんわりと痺れてしまった頭のなかで、そんな想いが薄ぼんやりとよぎってゆく。
牙が、目のまえに迫っているというのに。
りまちゃんの肌を、容赦なく切り裂いたであろうおなじ牙が。

ひっ。
悲鳴を飲み込んで。脚をすくませて。
まりあはうなじを噛まれていた。
ちくっと刺し込む、牙の感触に。
まりあは縮みあがって、身を硬くして。
まるでそうすることで、血液を一滴でもよけいに体内にとどめようとするかのように。
血を吸い取られてゆくあいだ、じいっと身体をこわばらせていた。
ひとしきり、まりあの血を吸うと。
影は吸いつけた唇を、まりあから放したけれど。
痛いほどつかんだ両肩は、決して手放そうとはしていない。
うふふふふふっ。
蒼ざめた唇に、いま吸い取ったばかりのまりあの血が、バラ色の輝きを散らしている。
わざと見せつけるように、妖しいぬめりを帯びた舌が、口許に着いた血を舐め取って。
影は白い歯をみせて、ひと言「うまい」と、呟いた。
いひひひひひひひひっ。
影はなおもたちのわるい含み笑いをおさめずに。
まりあの着ているブラウスを、びりびりと破いていって。
青いブラジャーのストラップを、長い爪で断ち切った。
ストラップと肩の肉のあいだにすべりこんだ爪は、ナイフのような切れ味で。
ストラップを断つときの、ぶちりという音を耳にすると。
まりあはへなへなと、ソファの下に尻もちをついてしまった。

いい子だ。いい子だ。
黒影は、まりあの髪の毛を、あやすように撫でつけると。
もういちど、まりあのうなじに噛みついていって。
ちゅうっ・・・
聞こえよがしな音をたてて、まりあの血を吸い上げた。
ああ。
吸われちゃう。
ママからもらった、たいせつな血・・・
ぬくもりとともに、生命力まで抜き出されてしまうような、うっとりとした感覚に。
まりあは我を忘れて、吸血鬼にしがみついていた。
よし、よし。
すこしのあいだの、しんぼうだ。
今にこういうことが、気持ちよくなってしまうのだよ。
おじさんが、たっぷり教え込んであげるから。
まりあを自家薬籠中のものにした吸血魔は、まりあをしんそこいとおしげに抱きしめると。
こんどはあらわになった胸に、食らいついていった。

あっ、そこはイヤ・・・
お手入れを欠かさなかった胸元を、鋭利な牙で切り裂かれるとき。
まりあはしんけんにかぶりを振って、いやいやをしたけれど。
影はあざけるように、思い入れたっぷりに、ゆっくりと。
ぷりんと張ったまりあの胸に、牙をしずかに沈めてゆく。
きゃっ。
いやん・・・
ちくりと刺すような痛みは、痺れるような疼きを含んでいて。
疼きはまるで毒液のように、まりあの柔肌にしみ込んでゆく。
あっ、だめ・・・
言葉とは、裏腹に。
まりあの腕は、影の背中にツタのように巻きついていて。
自らの身体を、不埒な暴漢の身体に、ぴったりと密着させてしまっている。
そう、そう。
きみはなかなか、素質があるね。
影はなおも、まりあのことをあやしながら。
それでも情け容赦なく、まりあの血を吸い取ってゆく。

おじさま。おじさま。
殺さないで。死なせないで。
まりあ、ずっといっしょに、いてあげるから。
きっと、仲良くなれるから。
いつまでも、いいお友だちでいられると思うから・・・
若い肢体から血潮を抜き取ってゆく、憎いはずの吸血鬼に。
まりあはあらぬ声を洩らしつつ、懇願している。
うふふ・・・ふふふ・・・ふふふ・・・
小気味よげな男の哂いに。
ふふ・・・ふふ・・・ふふふ・・・
柔らかな女の声が、くすぐったそうに交わってゆく。
胸元を大きくはだけ、スカートのすそを振り乱して。
黒のストッキングを、男の劣情のおもむくまま、破り取らせてしまった女は。
いまはみずから、好むように。
むさぼるような吸血を、受け容れはじめていた。

しばらくね。
ロングの茶髪をなびかせた少女が、ソファに腰かけて。
ミニスカートから覗く、流れるようにすらりとした脚を。
惜しげもなく、人前にさらしている。
まりあがびっくりしたのは。
それが、行方不明になっていたりまちゃんだったから。
ここでの暮らし。愉しいよ。
あたしの身体には、血がほとんど残っていないけど。
おじさま、いやらしいから。
ぜんぶ吸い尽くさないで、いつまでも取っておくんですって。
まりあもきっと、選ばれちゃうだろうなあって思ったから。
一年間我慢して、ここで待っていたの。
ここでの暮らしに慣れたら、ママも連れてくるといいよ。
あっ、ママまで連れて行かれちゃったら、まりあパパがかわいそうか。
うちはママしか残っていなかったから、よかったけど。
だから、ママは通いで遊びに来るんだろうね。
それからひとつ、お願い
りまにも、まりあの血を吸わせてね。
少しだけでいいから。
いま・・・すぐに♪


あとがき
美少女ふたりのたわむれは、言葉にできないほど眩しいです。^^
幼い頃みたいに、柱の周りで追いかけっこして。
無邪気にかえったまりあは、はしゃぎながら襲われていくんでしょうね。^^

駅で待つ女

2007年12月30日(Sun) 09:56:47

駅のホームで待つきみは。
いかにも手持ち無沙汰に、柱に寄りかかっていて。
黒のハンドバックを、ぶらぶらと、
それは自堕落に、もてあそんでいた。
オレがうっそりと、姿を見せると。
あら。
みちがえるほど表情を、活き活きとさせて。
足取りさえも、浮き立つばかり。
まっすぐとこちらへ、歩みを進めてくる。
きみの足許を彩るのは。
薄墨色のストッキング。
礼節と知性とをたたえながら。
流れるような脚線美を、淫らに染める。

ホテルに行こう。
アラ、まだ早いのに・・・
早くなど、あるものか。
もうとっくに、陽は暮れている。
さあ・・・
引き立てるような強引さに。
きみは苦笑いひとつ、チラとよぎらせて。
仕方ないわね、って、いいながら。
オレのわきの下に、するりと腕を忍び込ませる。

女の名は、まりあ。
いつも、とつぜん現れて。
あくる朝には、夢のように去ってゆく。
見知らぬ街の、見知らぬ通り。
いつもなんの前触れもなく。
ずっとあなたを待っていたのよ・・・と言わんばかりに、姿を見せる。
ほんとうに久しぶりに、現れたのに。
傍らのまりあは、活き活きと笑いさざめいて。
きのうもきょうも。あしたもあさっても。
ずっと居続けてくれているかのように、ヒールの音を響かせてゆく。

指先で さえぎって。

2007年11月04日(Sun) 07:29:31

朝。
冴え冴えとした青空が、どことなくうっとうしく思えるのは。
それが出勤途中の風景だから。
まりあはいつものように、長い髪を秋風にたなびかせて。
駅までの道を、急いでいた。
ほんのちょっと、化粧に時間をついやしたら。
いつもの電車に間に合わなくなりそうになったのだ。
夜は必ず避けて通る、あの公園。
いいや。もう明るいし。近道しちゃえ。
夕べの雨がのこった地面は、しっとりと湿っていて。
いつもよりよけいに、ヒールのかかとが沈むようだ。
芝生の真ん中を、まっすぐに横切って、
ベンチのかたわらを通りかかったとき。
足元にひやりとした指先が当たるのを感じて。
まりあはきゃっ!と、縮み上がった。
私だよ。
見あげる視線が眩しそうなのは、太陽がまぶしいから?それとも・・・
こんなに明るいのに・・・待っていたっていうのっ!?
思わずあからさまな声を立ててしまったのは。
公園にたまたま、だれも通りかからなかったから。
通して頂戴。急いでいるの。
なに・・・きょうは出勤しないでもかまわないさ。
男は泰然と、うそぶいた。
うちの会社の社長さんでもあるまいし。
まりあはむしょうに、腹が立って。
だいじな会議があるのよ。
わざとそっけなく言って、通り過ぎようとしたけれど。
どうしても職場に行きたいというのなら、むりに引止めはしないけれど。
すこし、ゆっくりしていかないか・・・?
誘う声は自信たっぷりで、人のわるそうなからかい口調になっている。

すこし、ゆっくりしていこうね。
そう。十年まえ。この公園を通りかかったとき。
まりあは化粧っけなしの女学生で、
足許をさえぎった指先にあたったのは、通学用の黒のストッキングだったっけ。
あのときも。
きょうのお勉強は、ここでしようね。
なんて、言われちゃって。
黒のストッキングを、破かれちゃって。
制服姿を、愉しまれちゃって。
そのまま。お昼になるまで、放してもらえなかったんだ・・・
相手は、人の生き血を吸う吸血鬼。
そんなにしてまで、血を吸い取られているというのに。
いとおしげに這う唇は、まりあの生気をそこねることなく。
かえってその肌を、みずみずしい輝きで磨きあげているのだった。

おとなしくなったね。
わかっているんだよ。
お化粧に、時間がかかったのは。
私のために、装うつもりだったからだろう?
なにもかも、知っているのだよ。
そう言わんばかりの得意げな口調に、わざとそっけなく、
早く済ませて頂戴。
突き放すように、口を尖らせてみたけれど。
男はますます調子づいていて。
早く抱いてもらいたいのだろう?
まりあが厭がるように、わざとなれなれしく、方に腕を回してくる。
回りきった腕は、そのままブラウスのえり首に差し込まれて、
ブラジャーのストラップを伝って、乳房の周りにまさぐり入れられてゆく。
あっ!ああ・・・っ。
ストッキングの脚を、つま先立てて。
まりあは思わず、のけぞっていた。
そうそ・・・いいかね・・・?
男は意味不明の言葉の切れ端を、つなぎ合わせながら。
とぎれとぎれにかすめる指先は、ほどよくまりあの急所に刺激をにじませて。
妖しい疼きは、うら若い血を熱っぽく沸きあがらせてしまっている。
どうかね?ご気分は・・・
だまってかぶりを振るばかりの、まりあの横顔を、いとおしげに見つめながら。
ご褒美をくれるね?
太ももを這う掌が、ストッキングごしに熱く迫ってきた。

ああっ、いやぁん。厭らしいっ。
ストッキングの脚をつま先立てて。
てかてかの光沢を塗りつぶすように舐めあげてくる舌を、避けようとしたけれど。
もう、足首を捕まえられてしまっていて。
男の欲するまま、ナイロンのすべすべとした舌触りを愉しませてしまっている。
昔・・・通学用の黒ストッキングをいたぶったときと、まったくおなじやり口で。
笑み崩れる唇が、ふくらはぎをなぞるように、這いまわって。
柔らかいふくらはぎを、めでるようにくまなく、にゅるにゅると。
舌と唇とで、いたぶってゆく。
これから出勤なの。大事な会議があるの。
いくら言い募ってみても。
足許をくすぐる誘惑は、絶えることがない。
出勤なの・・・
会議が・・・
途切れ途切れになる声が、淫らな揺らぎを帯びてくる。
だめ、だめ、ダメぇ・・・
まりあは甘えるような声を震わせながら。
とうとうベンチからすべり落ちるようにして、芝生に身を横たえてしまっていた。

草って、クリーニングでも落ちないのよ。
口を尖らして、悪態をついたけど。
男はくすぐったそうに、うけ流しながら。
肩先に流れる長い髪を、いとおしげに撫でつづけてゆく。
はずんだ息づかい。
量感豊かな胸の震え。
そしてなによりも、全身からにじみ出るぴちぴちとした色香が、
むんむんと上気するほどに、まりあを包み込んでいる。
愉しい朝餉。い・た・だ・く・よ。
笑みを含んだ囁きに、まりあはむっとしたように顔を背けたけれど。
ふたたびまさぐり入れられてくる掌と指に。
スーツに泥がつくのも忘れて、
う、ううん・・・っ!
って、のけぞってしまっている。

真夜中のお芝居

2007年10月19日(Fri) 09:59:27

いつも現れるとは、かぎらない。
わたしが徘徊するあの公園に、まるで夕風のように現れるあの女。
ときには足しげく、それこそ毎晩毎晩かよってきて。
体は強いほうなのよ。私・・・
フッ、とささやきながら、甘えるようにしなだれかかってきて。
伸ばした腕を、まるで首飾りのように両肩に伸べてきて。
口許にクールな笑みをたたえながら、身を任せてくる。
けれどもいちど来ないと決めたなら。
くる晩も、くる晩も、わたしがいくら狂おしく待ち焦がれても、
影さえ見せず、音も立てない。
気が向くと、脚ふらつかせ、頬蒼ざめるまで、来るくせに。
来ないとなると、ぱったりと。
それこそ死んだように、音信を断ってしまう。
わたしの気など、おかまいなしに。
思うがままにふるまう、気まぐれ女。
それでもなぜ・・・こうも気になり忘れられないのか?
女の名は、まりあ。
彼女について知っているのは、そう。本名かどうかも知れない名前だけ。

公園への道順を忘れてしまったのかと思えるほどに、
すっかりご無沙汰になったある晩のこと。
ひそり・・・と吹いてきた、一陣の甘い風。
懐かしさに、ふっ・・・とこうべをめぐらすと。
長い髪を夜風になびかせ、女はひそとたたずんでいる。
口許にはあの謎めいた、薄っすらとした笑みをたたえながら。
感謝してちょうだいね。
わざわざ穿いてきてあげたのよ。
黒いワンピースのすそを、大胆にたくし上げ、
見せびらかすようにした太ももは。
素肌を薄っすらと透き通らせる、黒のストッキングに彩られていた。
あ・・・やめて・・・
性急に後ろから抱きついて。女の自由を奪ってしまうと。
甘えるように、うなじに唇近寄せて。
吸いつけた素肌はしんなりとみずみずしく、かすかな脈動が熱を秘めていた。
くねくねと頼りなくなった足許を、しっかりかばうように抱き上げて。
ベンチにもたれかけさせた足許に。
不埒な唇を這わせると。
女はひくくうめきながら、拒絶の意をつたえてくる。
ふん。知るものか。
ひとをこんなに、待たせおって。
わたしはわざとべろを長くして。
女のストッキングを意地悪く波立ててゆく。

もう・・・
黒のストッキングに、縦に走ったストライプもよう。
女は薄笑いを浮かべたまま、裂け目をなぞるように撫であげてゆく。
そうしてゆったりと、とろんとした目でわたしをみおろすと。
単刀直入に、びっくりするようなことをささやきかけてくる。

彼氏のまえで、わたしを抱いて。

と。

どういうつもりなのだ?
彼氏がいるなど、聞いた憶えはなかったが。
わたしはそのこと自体には、驚かなかった。
女の血潮のあえかな香りは、いつもべつべつの男の影を秘めていたから。
わたしが驚いたのは、ひどく唐突な女の希み。
好きな男がいながら。身の危険を冒してわたしとの逢瀬に足を運んで。
そのうえ男の前で抱かれたい・・・などと。
あしたの晩・・・ベランダで待っているわ。
家がどこかも、告げないで。
女はひどくコケティッシュな笑みを投げてくる。
待て。
立ち去ろうとする女の肩を抱きすくめ、
わたしは荒々しく、道端の草むらに押し倒していった。

レディを下着一枚で、歩かせるつもり?
引き裂かれたワンピースを、惜しげもなく脱ぎ捨てながら。
女は泣きもせず、不敵な笑みを投げてくる。
猫のようにしなやかな肢体を彩るのは、ぴっちりとスキのない、スリーインワン。
月明かりに浮かぶ見事な輪郭は、ほんとうにそのまま歩かせてみたいほど。
けれどもわたしは、気前よく。
身にまとっていた黒マントで、女の肢体を隠してやった。
ほかの男の目に、触れさせたくなかったから。
女は軽々とマントをまとい、イタズラっぽくくるりと一回転すると。
じゃあ、これが目印ね。
あとに残ったのは、いかにも愉しげな含み笑い。

翌晩のこと。
わたしは高層マンションの一角を、目にみえないすがたで漂った。
女が住まう、九階の部屋。
そこにはまだ、淡い灯りが窓辺に滲み、
灯りの下には、人影がふたつ。
必ずしも仲睦まじくなさそうなのは。
滲んだ人影を見ただけで、瞭然だった。
「何時だと思ってるんだ」
片方の影が、男の声で。
もう片方の影を、なじっている。
「ごめんなさい」
女の影は、神妙に。
わたしと逢っているときとは、比較にならないほど神妙に。
男のいうなりになっている。
まったく・・・わたしが歯がゆくなるほどに。
けれども幾度か繰り返される同じやり取りに。
女のしんねりとした芯の強さを覚えたのは。
決してわたしの聞き違いではなかったはず。
そう。
女の心はもう、男から離れかかっていた。

ざ、ざざあ・・・ざざあ・・・・・・
シャワーを浴びる音。
心地よげに響く湯のしぶきは。
その実男の影を流し落そうとしているかのようだった。
シャワーの音が尽きると、ユーティリティで体を拭く気配。
スキのないはずの身のこなしの、そこここから洩れてくる虚しい吐息を、
わたしが聞き逃すはずはない。

女は男の待つベッドルームには、まっすぐ向かわずに。
謎をかけるような、お芝居がかった女優さんみたいな足取りで。
ひとりベランダに、現れた。
さらりと肩に流れる長い髪を、
気持ちよげに、夜風にたなびかせて。
なにかを待ちわびるように、星空を仰いだ。
ククク・・・
わたしはこらえきれなくなって。
まりあの背後のソファーから、忍び笑いを洩らしている。
振り返った女は、ちょっとびっくりしたように。
一瞬、立ちすくんでいたけれど。
窓辺にさげていたわたしのマントを取り上げると、
さっ。
と、こちらに投げてきた。
それが合図だった。
わたしはまりあの背後に忍び寄って、
夕べとおなじように、荒々しく抱きしめる。

あぁ、ダメ、ダメよ、いけないわ・・・・
まりあは、うわ言のように呟いた。
隣室に待つ男に、聞かせるように。
隣のベッドルームで婚約者がわたしを待ってるの・・・
ふふふ。そんなことは先刻ご承知さ。
わたしは調子を合わせて、恋盗人を演じはじめる。
まさぐり入れた股間は、かすかに湯のしずくをあやしていた。
しとどに濡れていたのは・・・きっとお湯のせいだけではなかったはず。
わたしは得たり・・・と笑みながら。
すぼめて秘めようとする花びらを、力づくでさらけ出してゆく。
アンッ、アァッ・・ダメッ・・・・わたし・・・・結婚、するの、よ・・・・
うふふふふふっ。
禁じられた肉体ほど、甘美なものはないのだよ。まりあ。
わたしは息荒く、昂ぶりを押し殺した声を耳もとにそそぎ込んでやる。
アッ、ダメ・・・ダメえっ・・・
めまぐるしい火花があたりにはぜて、
わたしはまりあを頂点に導いてしまっていた。

あっ、だめっ、だめっ・・・
声では禁忌を装いながら。
身体は歓喜に震えていた。
犯される愉悦と、視られる昂ぶりに。
男の目は、まがまがしい嫉妬に満ちながら。
それでも広間へは出てこようとせずに、
のけぞりしなる恋人の肢体に、いつまでもいつまでも釘づけになっている。
  おまえ、わたしを試したな・・・
疑念たっぷりに、太ももの奥に昂ぶったものを割り込ませてゆくと。
  さあ・・・どうかしら・・・ね。
女は不敵に笑みながら、なおも禁忌の声を洩らしつづける。
あなた・・・あなた・・・許して・・・っ。
この女・・・
わたしは女の術中にはまるのを、ありありと感じながら。
それでも昂ぶりを、もうとめることができなくなっている。
許して・・・許して・・・いけないわっ。
こらえ切れずに堰を切った奔流が、まりあの奥へとなだれ込む。
びゅびゅびゅ・・・っ、ととめどなくあふれるしぶきは、
じゅうたんさえも、濡らしてゆく。
狭い部屋に、気が交錯した。
わたしがまりあから離れるのと。
隣室の影が、リビングに入り込むのとは、ぴったり同時だった。
まるで兄弟のように、ぴったりと息が合っていた。
男は全裸の恋人に、おおいかぶさるように。
声にならない声を洩らしながら、荒々しく抱きついてゆく。
虐げるような、凌辱にも似た愛撫だった。
まりあはいっそう息荒く、応えていって。
男と一体に、なっていた。
二度、三度・・・
さいごの一度を、果てたとき。
もう、息も絶え絶えになっていた。
男はすっかり、覗いていたのだろう。
ちょうどわたしより・・・いちどだけ、多かった。
男が蹌踉(そうろう)として、寝室にもどってゆくと。
わたしはふたたび、まりあのもとに降りてゆく。
あの男・・・くたばってしまったようだね。
いま少し。今夜の駄賃を頂戴するよ。
駄賃、だなんて・・・
いやらしい、といおうとする唇を、
わたしはしっかりと唇でふさいでしまって。
二対の唇は、結びついたようになって。
闇夜の夢を結んでゆく。

あくる朝。
夜の淫らな一幕は、名残さえもあとかたもなくなっていて。
男はいつものように、ぶすっと口数少なく、
女の家から勤めに出てゆくのだろう。
けれども女が秘めた艶だけは。
永く男の胸を突き刺しつづけるに違いない。
悪い女。賢い女。
そして、いとおしい女(ひと)・・・

公園に棲む魔物

2007年08月03日(Fri) 06:48:01

真夜中に、だれもいない公園を通りぬけるのは、ちょっと怖くはないですか?
でも、それがどうして怖いか・・・ごぞんじですか?
それは。
あの闇のなか、どんな魔物がひそんでいるのか、なかなか察しがつけられないからなのです。
もしも棲んでいる魔物の正体があらかじめわかっていれば、あそこまで怖いものではないかもしれません。
魔物だって・・・ただ人をとって食おうというばかりのものではないのですから。

深夜。午後十時。
まりあは勤め帰りのスーツ姿で、その公園を歩いていた。
かかとの高いヒールでは歩きにくい地面のうえ。
アスファルトの舗道では硬質な音を立てるハイヒールも、
ここではサクサクと草を踏みわけるかすかな音をたてるばかり。
こうこうと照りわたる街燈から遠ざかって、
暗闇のいちばん濃いあたりに歩みを進めると。
まりあは、声を忍ばせて。
  魔物さん。魔物さん。ご機嫌いかが?
しっとり落ち着いた低い小声で洩らしたことばは、
まるで呪文のように、あたりの闇に吸い込まれてゆく。

ざわ・・・
公園の隅の植え込みがかすかに揺れて、背の高い黒い影がヌッと闇の置くから姿をあらわした。
まりあは、怖れるふうもなく。
  うふふ。そんなとこに、隠れていたの?
悪戯ッ気の抜けない小娘みたいに小首をかしげて、じぶんのほうから影にむかって歩み寄ってゆく。
まるで、永年親しんだ身内のような気安さで。

十なん年も、まえになるだろうか。
そのころの帰り道、まりあはまだセーラー服を着ていた。
部活で遅くなった帰り、近道をしようとして、
つい、禁忌を犯してしまったのだ。
お嫁にいけなくなる公園。
そう呼ばれる公園を、乙女と名のつく少女は決して横切ってはならないという。
はたして、影はあらわれた。
  ひっ。
はじめて遭う怖ろしい影に、さすがのまりあも立ちすくんで。
大木を背に、追い詰められて。
うなじをつかまれ、間近に迫ったきらめく牙をもうこれ以上目にすまいと、両手で顔を覆ったとき。
がぶり・・・
影は遠慮会釈なく、まりあのうなじをえぐっていた。
  きゃ。
ひと声あげて。立ったまま、意識を失って。
思う様血を吸い取ると、影はまりあをそう・・・っと、横たえて。
  うふふふふっ。
いやらしい笑みを浮かべた口辺を、ハイソックスをはいたまりあのふくらはぎに近寄せてゆく。
まじめな女の子ならだれでも履いている、リブタイプの真っ白なハイソックスは、
校名のイニシャルの飾り文字をあしらっただけの無地のもの。
笑み崩れた唇が、いたぶるように、ハイソックスごしにふくらはぎをなぞっていって、
お行儀よくきちんとひざ下まで引き伸ばされたハイソックスは、じりじりとふしだらにずり落ちていった。

その晩いらい。
まりあは毎晩、公園に通ってきて。
近道をしようとして。黒い影に襲われて。
けれども影はけっして、まりあのことを殺めようとはしなかった。
まりあもけっして、道を変えようとはしなかった。
血を吸ったあと、ハイソックスのふくらはぎに、不埒な悪戯をされると分かっていても。
毎晩履いてくるハイソックスは真新しく、影は旨そうに、舌をふるいつけてくるのだった。
公園の近くでわざわざ履き替えてくるのだと、察していたのだろうか。
血を吸うものと、吸われるものと。
そんな関係のはずなのに、お互いに、敵意を抱くことがなかったのだ。
そんな関係が、もう十数年。
影は今夜も、公園の隅の植え込みをざわつかせる。

魔物さん。魔物さん。
すこしエッチな魔物さん。
まりあは呪文を唱えるようにして、魔物が足音もなく近づいてくるのを待っていた。
そうして手が届くほどのところまで、黒い影が近寄ると。
スーツのすそから、にょっきりと。
ピチピチとした太ももを、さらけ出して。
  ほ~ら、あなたの好物の黒ストッキング。今夜も履いてきてあげたのよ。
白い皮膚をなまめかしく透かせた脚を、見せびらかすようにくねらせる。
影は終始、無言。まりあもそこからは、無言。
差し出された足許に、黙ってかがみ込んできて。
ちゅうっ・・・
慕い寄った唇が、いとおしむように密着してくるのを。
まりあは面白そうに、見おろしている。
薄手のナイロンを、ふしだらによじれさせてしまう魔物のおじさまを。

来る日も来る日も、通って来た。
ハイソックスの女学生時代。
ストッキングを選びはじめた、女子大生のころ。
てかてか光る薄手のナイロンに包まれた足首を、眩しそうに見つめる影の前。
ロングスカートを大胆に、腰まで捲り上げていた。
処女を捧げた相手は、生身の人間だったけれど。
影とはいつも、つかずはなれず、過ごしてきて。
  今夜は思い切り犯して。
  また、振られちゃったの・・・
淋しい夜。影ははじめて、まりあの股間を抉っていた。
  あぁ。あぁ・・・あああぁぁぁぁぁ・・・っ・・・
通りがかりのOLを襲って生き血を吸い取り、あげく犯してしまうやり口は、
じゅうぶんに、魔物そのものだったけれど。
まりあの淋しい夜を、情欲の渦に巻き込んで、極彩色に塗り替えてしまうのは、
果たしてほんとうに、悪事・・・だったのだろうか?

草むらから起き上がって。
まりあはのんびりと、ため息をつく。
  スカートにまた、泥つけちゃったね。
  彼氏がいるんだろ?
  エエ、いるわよ。
  妬かれないか?
  それが、愉しいのよ。
  わるい女・・・
影は、まりあの頬をつねりながら。
  わるい女。わるい女。・・・いとしい女。
こんどは影が、呪文を唱える番らしい。

挑発。

2007年07月26日(Thu) 23:14:45

茶髪の髪を、肩までおろして。
ピンクの口紅を刷いた悧巧そうな唇と、挑発的な瞳を輝かせて。
きみはウキウキとして、ブラウスの胸元に手をやって。
思い切りよく、まえを開いた。
眼前に広がる絶景は。
満月が闇夜を遠ざけるように。
オレを現実から引き離す。
薄く透ける青白い静脈は、うら若い血液を活き活きと脈打たせるかのように。
ツヤツヤと輝く素肌の奥。オレの牙を疼かせる。
ふと見ると。
ストライプ柄の制服のスカートは、とうの昔に持ち主の腰から解かれていて。
傍らの椅子の背中に垂らされている。
いつもの柄もののストッキングではなくて。
俺の好みを察したように、飾り気のない無地の黒ストッキングが。
なまめかしい薄墨色の濃淡に、脚の筋肉のしなやかな起伏を、うっとりするほどたくみに包み込んでいる。
噛んで。
え?
噛・ん・で♪
生命の源泉を啜り取られる吸血という行為を。
きみは物怖じひとつしないで、受け入れようというのか。
服をはだけて、輝く胸をあらわにして。
上目遣いに、挑戦的な光を秘めて。
キッとにらむように見あげるまなざしは、どこかせつじつな濡れを帯びている。
俺は、はじめて女のひとにそうしたときのように。
恐る恐る、きみの両肩に手をおいて。
分厚いジャケットの生地が、俺の手を拒むように、きみの素肌からへだてるのを感じると。
きみはそれを察したかのように。
俺の片手をギュッと握りしめて。
そのまま、太もものすき間へと、導いてゆく。
むっちりとした柔らかな肉のはざまに、導かれて。
迫るほどのぬくもりが、冷え切った掌を、表と裏から暖めて。
サリサリとしたナイロン製のストッキングの感触の向こう側。
ピチピチとはずむ、なめらかな皮膚。
俺は思わず、ストッキングをくしゃくしゃに揉みしだき、引き剥いで。
舐めくりまわすように、きみの太ももを愛玩している。
えっち。
薄い唇から覗く白い歯が、挑発的に輝いていて。
俺はきみの前歯を覆うようにして。
唇に唇を、噛むように重ねてゆく。
うっ・・・
獣じみた息遣いを。
互いに互いの喉の奥まで吹きかけながら。
いつか身体は平衡を喪っている。
すっ裸よりも。
脱げかけた服が、そそるね。
俺の囁きに、きみはもういちど。えっち・・・と囁きかえして。
言葉と裏腹に、露骨な愛技を投げかけてきた。
照明の落ちた、広いオフィスのなか。
はぜる息遣いは、夜明けまで絶えない。

女学生の受難

2007年07月21日(Sat) 10:22:31

学校からのかえり道。
16歳の女学生まりあは、公園の芝生をゆっくりと横切っていきました。
入学したばかりの真新しい制服を、そよ風になびかせて。
ふと気がつくと。
だれかがじいっ・・・と、まりあのことを見つめているようです。
せつじつに迫った視線です。
そんな視線。
一人前の娘なら、だれだってたびたび受けているはず。
道行く大人たちのそんな視線に、ウブだったまりあもようやく一人前の娘らしく、慣れはじめてきたこのごろです。
黒のストッキングを履くようになってから、見違えるほど大人びてきたまりあの肢体。
注がれる目線に、さいしょは戸惑い、そのうち慣れて、やがては見せつけるような挑発に走るようになるのですが。
良い子のまりあは、まだまだそんなおイタを知りません。
けれどもきょうはほんのちょっと、悪い子になっているのかもしれません。
だって。
夕暮れ刻になってからは。
乙女は決して通ってはならない。
そういわれた公園を。
もうそろそろ薄暗くなりかけようという刻限に、横切ろうとしているのですから。
そう。
その公園は、密かにこう呼ばれていたのです。
お嫁に行けなくなる公園・・・と。

女学生まりあは良い子なので、そんな公園には近寄りません。
けれどもきょうは、クラブ活動が遅くなって、塾に遅れてしまいそうになったので。
つい、近道をしてしまったのです。
注がれる視線は、どんな大人よりも熱くて濃くて。
おぼこ娘のまりあにも、それがただならぬ人からの視線だと、容易に感じることができました。
びくっ、と。
黒ストッキングの脚が、震えます。
だって。
ほら、目のまえに・・・
妖しい黒い影がむくむくと、わき出るように現れたではありませんか。

逃げてもむだだよ、お嬢ちゃん。
影はむしろやさしく、まりあのことを呼び止めます。
はっ、はい・・・
まりあはもう、すっかりすくみあがってしまって、声もろくろく出てきません。
わたしがどんな生き物だか、きみにはよくわかっているね?
はっ、はい・・・
わたしがきみに、どうしてもらいたいかも、わかっているね?
は・・・はい・・・
では、首筋を噛ませておくれ。
あっ・・・は・・・はい・・・っ。
決して言ってはならないのです。「はい」だなんて。
禁じられていた言葉をつい、口にしてしまったまりあ。
いよいよ男が近寄ってくると、すくみあがってしまって、声も出ないでいるのです。

男はまりあの両肩を抑えつけるようにしてベンチに座らせると。
まりあはわなわなと震えながら、哀願を始めます。
お願い、やめて。おうちに帰して・・・
うふふふふっ。
あまりにもかわいらしいまりあの怯えように、影はにんまりとほくそ笑むと。
お嬢ちゃん。聞き分けよくしないと、いけないよ。
わたしは吸血鬼。
若い女の子の生き血が、なによりも好物なんだ。
わかってくれるね?
だからきみは、このきれいな身体のすみずみにめぐっているうら若い血を、
ほんの少しだけ、わたしに分けてくれなければならないのだよ。
それがこの公園の、通行税。
あとは・・・もうわかっているね?
この公園が、なんて呼ばれているのかも・・・

嫌。厭。イヤよ、わたし。血を吸われるだなんて。
なにもしないで、おうちへ帰して。
まりあはもうすっかり震えあがってしまって、それでも血を吸われまいと、けんめいに哀願を繰り返します。
吸血鬼のおじさまは、そんなまりあの長い髪をやさしく撫でながら。
聞き分けのないお嬢ちゃんだね。
気の毒だが、そうはいかないよ。
せっかく、おいしそうな血をやどしているんだもの。
きみは、わたしにとっておいしい獲物。
逃してはならない、たいせつなひと。
たっぷり噛んで、生き血を吸い取らせてもらわなくちゃね。
なぁに。痛いのは、さいしょだけ。
ほんの少し、おじさまを慰めてくれれば。
そのうち慣れて、心地よくなってくるものなのだよ。
ぶじにおうちに帰りたかったら。
おじさまと仲良く愉しんだほうが、お悧巧さんというものだよ。
どこの家の娘さんも、ここを通りかかったら。
みぃんな、そうして。わたしと仲良しになってくれるのだから。
初めのうちは、怖かろう。
よし、よし。安心おし。とくべつに、手加減してあげるから。
あまり痛くないように、噛んであげるよ。

吸血鬼のおじさまの、あまりの言い草に。
まりあは涙も涸れんばかりに、許して、やめて・・・とかき口説いていたのですが。
やがて暗くなりかけた公園のベンチのうえ、
きゃあ・・・っ。
悲痛な呻きがただひと声、だれもいない公園の薄闇に、こだましたのでした。

ちぅちぅ・・・きぅきぅ・・・
おじさまは、それは美味しそうに、まりあの血を吸い取ってゆきます。
まりあはすっかり夢見心地になっていて。
それでもまだ、哀願をくり返していましたが。
お願いの内容は、すこしずつ違うものになっていきました。
おじさま、許して。痛くしないで・・・
お願い、吸い尽くしたりなさらないで。
おうちに帰してくれるって、お約束してくれたなら。
わたし、おじさまと仲良しになってあげる。
吸血鬼のおじさまは、とても嬉しそうな顔をして。
さっき噛みついたときの、無慈悲な強引さとは裏腹に。
まりあの長い髪を、優しくなでてくれました。
それから、まりあの制服のスカートをちょっとめくると、脚を吸いたい、とおねだりをしました。
え?じゃあ、ストッキングを脱がないと・・・
まりあが戸惑うようにしながらも、太ももまでのストッキングをひき下ろそうとすると。
おじさまはまりあの手の甲を静かに抑えて。
そのままで良い。
ひと言囁くと。
訝しそうにしているまりあに、ふふ・・・と笑いかけて。
笑みを浮かべたままの唇を、黒のストッキングの上から、じわり・・・と吸いつけてゆきました。
ぬるぬるとした唇が、まるでヒルみたいに、ストッキングごしに這い回るのを。
まりあはわなわな震えながら、ただ見守っているばかり。
オトナっぽい感じのするストッキングは、まりあのお気に入りだったのですが、
いまはおじさまに、いいようになぶられてしまっているのです。
おじさまは、こうしたあしらいに慣れているのか、
まりあのストッキングの舌触りを愉しむようにして、べろをさんざんふるいつけて、
薄くてなよなよとしたナイロンを、さりさりと波立てると、
おもむろに、ぐい・・・っ、と、噛みついてきたのです。
びちちっ。
かすかな音をたてて、薄手のナイロンが噛み破られます。
他愛なくちりちりと広がってゆく伝線を、いまはまりあも面白そうに見つめるばかり。
うふふふふっ。
初々しい少女の血管にそそぎ込んでやった毒液の効き目に、満足そうにほくそ笑みながら。
おじさまは、ちゅうっ・・・と、まりあの血を吸い上げたのです。

ベンチのうえ。
まりあはまだ、囁きつづけています。
いけないおじさま。
ひどいいたずらを、なさるんですね・・・
でも、かまわないわ。
おじさまが、愉しいのなら。
これからも夜の公園に遊びに来て、
黒のストッキング、イタズラさせてあげるから。
それともこんど来るときは、白のハイソックスがいいかしら?
ふ。ふ。ふ。
かわいいねぇ。まりあ。
いい心がけだ。
白のハイソックスも、愉しませていただくよ。
きみの血で真っ赤になるまで、いたぶってあげるから。
お礼にきみを、処女のままここから出してあげよう。
そのかわり、週に三日は、かならず公園を横切って。
清楚な制服姿で、おじさまを誘惑するのだよ。
いつまでも、いい子にしておいで。
きみの処女は、きみがいちばんかわゆらしくなるころまで、取っておいて。
そのうちおじさまが、奪ってあげるから。
まだ制服を着ているうちに、犯してあげるから。
そのときは・・・黒のストッキングを、忘れずにね。


なん年も経ったころ。
おなじベンチのうえ。
OLになったまりあは、ウェーブさせた髪を肩先に揺らしながら。
吸血鬼のおじさま相手に、素肌を妖しく覗かせていました。
巧みにくねる脚にまとわれた、無地の黒ストッキングは、
あのころの通学用の黒ストッキングよりも、グッとひきたつなまめかしい光沢に彩られていて。
吸血鬼のおじさまの悪戯心を、いやがうえにもかきたてていました。
先週の網タイツと、おとといのダイヤ柄と。
どれがいちばん、お気に召して?
夢見心地で問うまりあに、
この無地の薄々が、素敵だね。
なおもぬるりと、唇を這わせてきます。
えっち。
まりあはくすぐったそうに、肩をすくめながら。
今夜もうら若い血を、たっぷりと。
ちょっぴり自慢げに、舐めさせてあげるのでした。
おじさまの手で、初めて女にしてもらえたお礼をこめて・・・