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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

母親をモノにされてしまうのは、花嫁をモノにされてしまう以上に致命的であること。

2019年11月11日(Mon) 08:09:11

きみの京子さんを、親父とふたりで輪姦(まわ)したい――
悪友のリョウタにそうせがまれて、婚約者の京子さんを連れて、彼の家に伴ったのは、結婚を翌月に控えた頃のことでした。
京子さんにはあらかじめ、言い含めてありました。
この街でひそかに伝わる風習だからと。
京子さんは潔癖そうな白い頬をちょっとだけゆがめると、意外にもクスッと笑って、面白そう、と言ってくれました。

リョウタの家でぐるぐる巻きにしばられたぼくの目のまえで。
ぼくは未来の花嫁の純潔を、悪友の親子に惜しげもなく、プレゼントしてしまいました。
さいしょはリョウタのお父さん。
それからリョウタ。
未来の夫であるぼくの目のまえでの辱めに、ひとしきり涙にくれた京子さんも、
やがて快感に目覚めてしまったものか、しきりに腰を振って二人を満足させたのでした。
ぼくもすっかり、満足してしまいました。
花嫁の肉体をプレゼントするという行為そのものに――

けれどもこのドラマには、第二幕がありました。
未来の嫁の乱行を知った母が加わったのです。
けれどもそれは、リョウタの意図するところでした。
潔癖な怒りに震える母は、
じゅうたんの上にストッキングのつま先をすべらせて、現場に踏み込んできました。
そしてそのまま、そのストッキングを脱がされて、永年守りつづけてきた貞操を、親子にご披露する羽目になったのです。
息子のぼくでさえ興奮を覚えるひと幕でした。
嫁と姑、ふたりながら脚を並べて、脚の片方ずつには半脱ぎになった肌色のストッキング。
その脚をときにばたつかせ、ときに切なげに足摺りしながら、ふたりは獲物を取り替え合う親子の生け贄にされていったのです。

花嫁をモノにされることも、ぼくにとってはもちろん衝撃だったけれど。
母親をモノにされてしまうのは、さらに致命的な出来事でした。

一連の嵐が過ぎ去ると。
母は「お父さんには内緒だからね」といって、ぼくを笑いながらにらみました。
つくづく、「女は怖い」と思った次第です。

結婚してからも、時おり夫婦でリョウタの家を訪問してます。
人妻の貞操を、デリバリーするために。
その後の母も、父に黙ってリョウタの家を訪れているそうです。
リョウタのお父さんにあらかじめ呼び出された父が、見せつけられる歓びに耽っていることもしらないで。

妻の不倫のあと始末。

2019年11月05日(Tue) 07:55:13

妻からラインが届いた。
いわく、「これから吸血鬼さんのところへ、献血に行ってきますね♪あなたは早く寝ててw」
やれやれ、今夜も朝帰りのつもりらしい。
「うちに招べばいいのに」
と言ってやったら、
「だってあなた、明日お勤めあるのに眠れなくなっちゃうじゃない」
と返してよこした。

部屋のあと始末をしなければならないのも、ネックになってるらしい。
なにしろ彼を招ぶと、じゅうたんに血はしたたる、シーツには大量の精液・・・と、
拭き取る手間ひまがかかること、おびただしい。
「それは俺が引き受けるから」
と、あるときお人好しにも、妻の情事のあと始末をしたわたし――

柱に撥ねた血。
床にくゆらいでいる血だまり。
精液がべっとりと着いたまま脱ぎ捨てられた、スカート、スリップ、ショーツ・・・
そうしたものをひとつひとつ拭い取ったり、片づけたり。
妻の秘密を隠匿する手伝いをするということは、
妻の不倫の共犯になるということ。
ひとつひとつの作業にマゾヒスティックな歓びが重なって、熱がこもってゆく。

「でもあなた、雑だからw」
妻はわたしを揶揄してやまない。
そう、半年ほど前のことだった。
拭い忘れた精液まじりの血潮をふすまの隅に発見したのは、たまたまわが家を訪れた母だった。
妻の整理整頓のできなさとかをやんわりと指摘しに来る母を、妻は苦手としていたが、
「和彦さん、これは何!?」
と口にする母に、妻もわたしも凍りついた。
解決してくれたのは、”彼”だった。
「電話するのを忘れた」という母からの連絡は、到着のわずか5分前。
わたしを目の前にして、妻は”彼”との行為の真っ最中。
たいがいのことは苦も無くやってのけるはずの吸血鬼でも、脱出は不可能なタイミングだった。

精液を裏地に塗りたくられたスカートを着けて妻は母を出迎えて、
わたしは”彼”を、奥深いクローゼットに押し隠す。
「あなたたち、いったいなにをしていたの!?」
詰問する声が怯えた悲鳴にとって代わるのに、数分とかからなかった。

息子のまえですっかりイカされて――
いまや母までも、吸血鬼にとってなくてはならないセックス・パートナーのひとりになっている。

妻からのラインが、もう一度鳴った。
「お母さまがお見えになってるw あのひとに抱かれてひーひー言わされちゃってるw あなたも来る?楽しいよww」
明日の仕事も忘れて腰を浮かせかけたわたしに、さらに追い打ちがきた。
「あのひとの家だけど、あと始末はあなたにしてもらうわね♪」

あり合わせのタオルをカバンに詰める手から、ぶるぶると震えが消えない。

身代わりになった姑

2019年10月21日(Mon) 06:50:03

あなたももう、気が済んだでしょう?
息子をたぶらかして、息子の彼女に手を出して。
お前の恋人の身持ちを確かめてやる、とかいって、処女の生き血をたっぷりと愉しんで。
お式の直前に美香さんの処女まで奪ってしまったのは、どうかと思うわ。
息子はあなたに、処女の生き血を一滴でも多く吸わせてあげようとして、ガマンしていたんですもの・・・

あなたもあなたよ?
美香さんが犯されるの、指をくわえて視ていたんですって?
自分の識らない処で奪われるよりも、いっしょにいながら見届けたから、まだ満足だなんて。
あなたやっぱり、おかしいわ。
でも夫婦のことですから、そこまで口は出しません。
でもね、ひとつだけお願いがあるの。
一人で良いから、あなたたち夫婦の子どもを作って頂戴。
その代わり――そのあいだはわたくしが、この方のお相手をしますから。

そんなに自信はないのよ。
だって母さん、お父さんのことしか識らないんですもの。
ただ、こちらのかたは身持ちの堅いご婦人の血を好まれるとか。
それなら母さん、好みに添えると思うわ。
お父さんには母さんから話しておきます。
嫁の身代わりということだったら、長年連れ添った妻を犯されても、我慢できると思うから――

このご年配の礼儀正しいご婦人ならば、いちいち頼まずとも脚に通してきてくれると思っていたよ。
吸血鬼は満足そうに、まだ若さを宿した姑の顔を覗き込んだ。
今夜の”新婦”はちょっと羞ずかしそうに、目を背ける。
ひざ下丈のスーツのすそから控えめに覗いたふくらはぎは、真新しい肌色のナイロンストッキングに、優雅に包まれていた。


婦人のたしなみとして姑が脚に通してきたストッキングは、ふるいつけられた舌にいたぶり抜かれ、唾液にまみれた。
そして、20年以上守り抜かれた貞操は、恥知らずな性欲に蹂躙されて、汚辱にまみれた。
身持ちの堅い人妻だった女は、新床のうえ、思ってもみなかった歓びを覚え込まされていた。


十数年後。
若妻は三十半ばの、熟れた女になっていた。


母さん、もう二人の仲を邪魔したりしないわ。
お好きなようにお付き合いすると良いわ。
ケンイチだって、それを望んでいるのだから。
せいぜい火遊びを楽しんでくださいね。
そして、この●●家の名誉を泥まみれにして頂戴ね。

でも母さんも、引き続きこの方のお相手することにしたわ。
父さんが言ってくれたの。
少しでも若いうちに、血を愉しんでもらうといいだろうって。
これからは若い嫁の身代わりではなくて、恋人の一人として愛してもらえることを、ぼくの望んでいるからって。
あのひとも。
私が抱かれているのをのぞき見して、すこし若返ったみたいだから・・・

姑の決断

2019年09月28日(Sat) 10:19:20

吸血鬼が若妻に横恋慕した。
彼は若妻を襲って血を吸い、犯してしまった。
若妻の夫は、最愛の妻の貞操が喪われたことを悲しんだ。
けれども妻が情夫に夢中になり、吸血鬼も妻のことを気に入っているのをみて、ふたりの関係を許すことにした。
吸血鬼は家庭を壊すことは望まず、彼女が人妻のまま犯すことを希望したからである。
妻も夫を愛していたので、夫婦はその後も仲の良い家庭を営んだ。
優しすぎる夫は、愛妻の新しい恋を祝福し、貞操の喪を弔った。

彼の母親が、息子の嫁の不倫に気がついた。
そして、息子までもが若い嫁の性交を認めてしまっていることを憂えて、関係を断たせようとした。
けれども、説得に出向いた母親は息子の家で吸血鬼に出くわして、あべこべに犯されてしまった。
いちど喪われた操は、元に戻らない。
けれども操を喪っても、夫婦愛まで壊れるとは限らない。
嫁の態度からそれと察した母親は、夫にすべてを打ち明けて、自分が嫁の身代わりに吸血鬼の愛人になりたいと告げた。
息子の血をうけた子どもの祖母になることを望んだためである。
父親は長年連れ添った妻を愛していたが、妻の決意が固いのを知り、自家の名誉が汚されるのを忍ぶことにした。

母親はまだ、四十代の女盛りだった。
それから8年の間、彼女は吸血鬼の愛人を引き受けて、その間に夫婦は愛し合って二人の子どもをもうけた。
やがて子どもたちご学校に通うようになると、吸血鬼と若妻の交際は自然に復活した。
夫や姑も、子孫を設けるというたいせつな役目を果たした彼女の恋を、もはや妨げようとはしなかった。
子どもたちは優しい息子と美しい娘に育った。
息子の花嫁と娘とは、二人ながら吸血鬼に処女を捧げ、特に娘のほうは吸血鬼の妻として結ばれた。
彼らの祖母が自らの貞操を汚すことで息子の血すじをつなぎ、なおかつ吸血鬼の花嫁をもたらすことになった。

9月27日7:58 脱稿

黒の日 赤の日 ピンクの日。

2019年09月08日(Sun) 07:01:46

「きょうは黒の日だな」
年配の吸血鬼は、志郎の母親・奈津希の首すじを咬みながら、ひとりごちた。
「たしかに黒の日ですね」
吸血鬼よりもやや若めなその片棒担ぎは、志郎の妻・美禰子のふくらはぎを咬みながら、それに応じた。
吸いつけられた唇の下、薄地の黒のストッキングが破けて、白い素肌を滲ませる。
奈津希も美禰子も、黒一色の喪服姿。
二人の夫たちも同様に、重たい喪服を着込んだまま、さっきから首すじにつけられた咬み痕を抑えながら、呻きつづけていた。

二組の夫婦は、それぞれ同じ間隔の咬み痕をふたつずつ、首すじに綺麗に並べていた。
先に夫を咬んで黙らせてしまってから、それぞれの妻を襲ったのだった。
法事と偽って呼び出されたこのあれ寺には住職はおらず、吸血鬼の巣窟と化していた。
二人の夫は、自分の妻たちを吸血の犠牲に供するために連れてきたようなものだった。

「大奥様の足許も、辱めさせていただくぞ」
吸血鬼は、奈津希が嫌そうに眉をしかめるのを無視して喪服のスカートをたくし上げると、
黒のストッキングに包まれた太ももに咬みついた。
むざんな伝線が拡がり、奈津希の太ももの白さが眩いほどにあらわになる。
奈津希は気丈にも相手を白い目で睨みつけたが、
吸血鬼はその視線をくすぐったそうに受け流しながら、さらにもう片方の脚にもかぶりついていった。
「おみ脚も美味ですな」
吸血鬼は貴婦人をからかった。

「きみたちは一体、どうしてこんなひどいことをするのか!?」
志郎の父は押し殺すような苦しげな声で、苦情をいった。
けれども男ふたりの脳裏にはすでに、吸血されたときにしみ込まされた毒がまわり、理性を喪いかけている。
女たちもまた、柔肌にたっぷりとしみ込まされた毒にやられて、気高いプライドを蕩けさせられかけていた。
彼女たちの顔色の悪さは、失血だけが理由ではなかったのである。
「ご主人、もう少しの辛抱です」
吸血鬼の返事を待つまでもなく、志郎の父はウウッと呻いて床に転がり、毒液の浸透具合を身体で告げてしまっている。
だれもが、わが身と家族の身にどんな変化が起きているのかを自覚していた。

吸血鬼たちはふたたび女たちのうえに覆いかぶさって、血を啜りはじめた。
夫たちはそのありさまを視ても、さっきほどの不平は鳴らさず、ただいっしんに妻たちの受難を見守りつづけている。
ストッキングを片方だけ脱がされて、女たちは夫たちのまえで、犯されていった――

「きょうは黒の日?どういうことだ?」
志郎の父が思い出したように呟いた。
「9月6日なのでね、それで”黒の日”」
若いほうの吸血鬼がこたえた。
「奥さんたちの貞操喪失記念日だ、よく憶えておかれるとよろしい」
年配の吸血鬼がつけ加えた。
「ああ・・・そうさせてもらうよ。志郎も忘れないように。美禰子さんの記念日だから」
「ああ、はい・・・そうします」
志郎も頭を抱えながら、いった。
女たちも、”目覚めて”しまったようだった。
自分を咬んだ吸血鬼と夫との間に穏やかな空気が流れ始めたのを感じ取ると、
再び身体を重ね合わせてきた侵入者たちに対して、自分から身体を開いて、
濃い媚態をあらわにしながら、おおいかぶさってくる逞しい背中に腕をまわしていった。

女ふたりの喪服のブラウスは引き裂かれ、剥ぎ取られていった。
きちんとセットした黒髪はほどかれて床に広がり、
吊り紐のちぎれたブラジャーは胸元から取り去られて、部屋の隅へと放り捨てられた。
腰周りから脱がされたショーツも同じように、ブラジャーの近くに放り捨てられた。
片脚だけ脱がされた黒のストッキングは、もう片方の脚のひざ下までずり降ろされて、皺くちゃにされていた。
彼らは、婦人たちの礼装を好んで辱めようとする習慣を持っていた。
理性を喪った妻たちの痴態は、同じく理性を喪った夫たちをそそりたてていた。
犯される妻を見て、ふたりの夫は明らかに欲情していた。
はしたないと思いながらも目を離せなくなっていた。
長年連れ添ったしっかり者の奈津希も、
たおやかな名流夫人と謳われた美禰子も、
吸血鬼の一時の性欲を満足させるために、娼婦のように振る舞いつづけたのだ。

ひとしきり嵐が過ぎると、志郎の夫はいった。
「黒の日ではない。赤の日だ」
妻の首すじから滴る血潮が、夫の網膜を妖しく彩っていた。
「黒の日でもよろしいではないですか」
年配者の奈津希は、さすがにもとの淑やかな口調を取り戻していたけれど、
ほつれた髪と乱れた着衣とが、その努力を裏切っている。
「女のたしなみを辱めるのはおやめになって」
破れたストッキングを片方だけ脚に通したまま、気丈にもそういって吸血鬼どもをたしなめた彼女は、
ハンドバックに忍ばせていた穿き替えを脚に通すと、自分の情夫に真新しいストッキングの舌触りを愉しませてしまっていた。
嫁の美禰子も義母の振舞いにならって、穿き替えを脚に通して自分の情夫に愉しませてしまっていた。
「女のたしなみとは、ストッキングの穿き替えをハンドバックに入れることかね?」
吸血鬼は女たちをからかったが、途中で真顔になると、「むしろ感謝している」と呟いて、
モノにしたばかりの情婦たちを愛情込めて抱き返していた。

「そうか、やっぱり黒の日かな。喪服を餌食にされたのだからな」
志郎の父は謹直な性格だったので、日ごろ使いなれない言葉を口にする舌がもつれていたけれど。
そんなささいな不首尾を聞きとがめるものはいなかった。
「ぼくにとっては、ピンクの日かもしれません」
志郎はいった。
「美禰子さんのことを、以前から見染めていたのです」
若いほうの吸血鬼は、志郎の勤め先の同僚だった。
つい先日、今しがた奈津希を犯したほうの吸血鬼に夫婦ながら血を吸われ、妻を愛人の一人として加えられてしまっていた。
妻を差し出した返礼に半吸血鬼にされて、若い女性を襲い放題の身分を得ていたのだ。
「奥さまを彼の愛人にしてもらうことは、この街では名誉なことですよ」
志郎の父にそういうと、「ぼくの場合はそうでもないけど」と、申し訳なさそうに同僚を振り返った。
「ぼくはご夫婦の関係を尊重します。ぼくのときも、そうしてもらっているから」
志郎の同僚は日頃から、夫婦仲が良いことで評判だった。

「わたしはそろそろおいとまするよ。母さんもそろそろ限界だからね」
志郎の父は志郎にいった。
たしかに、提供可能な血液をほとんど吸い尽くされてしまった奈津希は、痛々しいほど顔色をどす黒くさせていた。
「途中までお送りしよう」
吸血鬼はマントを取り、奈津希の身体から剥ぎ取った下着を、マントの隠しにねじ込んだ。
きょうの記念に持ち帰るつもりらしい。
若いほうの半吸血鬼も同じように、美禰子の下着をポケットにしまい込んだけれど、志郎はそれを制止しようとはしなかった。
「父さん、ぼくはもう少しここに残ります――美禰子もいいよね?」
すんなりと頷いてしまったことに恥じる美禰子のことを、だれもが気づかないふりをした。
「きみたち夫婦にとっては、たしかにピンクの日かもしれんな」
志郎の父は息子夫婦にいたずらっぽく笑いかけると、奈津希を庇って裂け目だらけの衣装の上から自分の上着を羽織らせた。
そして、自分の妻を襲った吸血鬼と何か言葉を交わしながら、息子夫婦に背中を向けた。
「なにを話し合っているのかしら」
「たぶん、奥さまを逢わせる頻度ですよ。いくら好きでも身体の負担になる逢瀬は彼のほうで遠慮するのです」
「きみもそうなのか?」
「それが人妻をモノにした男の務めかと――」
志郎は美禰子のほうを振り向いた。
アップにしていた美禰子の黒髪は乱されて、肩に長く流れていた。
犯されたばかりの自分の妻がそこにいた。
「もう少しお邪魔して、愉しんでいこう」
「そうね」
美禰子はためらいもなく、夫の目の前で重ね合わされてくる情夫の熱い唇を受け容れていった。
「黒の日じゃなくて、ピンクの日にしようね」
息荒く組み敷かれながら、美禰子は夫に目を向けて、イタズラっぽくウィンクをした。


あとがき
「黒の日」第二作ということで。^^
人妻が喪服姿を襲われるから、「黒の日」。
吸い取られた生き血に赤く矣泥られてしまったから、「赤の日」。
でもさいごには、夫まで巻き込んで愉しんでしまったから、「ピンクの日」。
おあとがよろしいようで。^^

嫁も姑も、堕ちてゆく。

2019年09月08日(Sun) 05:49:15

組んづほぐれつの痴態だった。
男は口走った。
子供が学校にあがるのを、待ち焦がれていたんだと。
これであんたもおおっぴらに、ストレス解消できるんだと。
女もこたえた。
そ、そうね、待っててもらって良かったわ。
貴男と逢うためなら、主人を裏切るのなんて、何でもないわ。
主人を裏切るのが愉しいの、スッとするの。
あなた、許して。あたし淫乱な女なの。
と、男に股間を突かれながら、口走っていた。
すべてが夫の目のまえの出来事だった。

妻の情夫に血を吸い取られた若い夫は、力の抜けた身体に苛立ちながらも、どうすることも出来なかった。
けれどもそのいっぽうで、どうすることも出来ない状況に置かれたことに、不思議な安堵を覚えていた。
抗拒不能な状況だからこそ、妻の痴態を目で愉しんでしまっても許されたから。
妻は夫の目のまえで、主人を裏切るのが愉しいのと口走り、
夫は娼婦と化した妻の痴態を激しい嫉妬にかられながらも、
視ることで愉しんでしまっていた。

嵐が過ぎ去ると、吸血鬼は夫を介抱し、夫は妻を犯した男のために、コーヒーを淹れた。
存分に血液を摂取してしまうと、彼は人と同じ飲み食いを愉しむことができたのだ。
あんたの淹れるコーヒーは旨いな、と吸血鬼はいった。
お気に召して何よりだと夫も応えた。
情事を遂げたすぐあとには、
あんたの奥さんはいい身体をしているなと吸血鬼がいい、
お気に召して何よりだと夫が応えていた。
さっきそんな会話を交わしたばかりだった。
男ふたりのあいだには、奇妙な友情が育ちはじめていた。

夫が訊ねた。
あんたは妻のことが好きなのか?
低い声色に恐る恐るの気持ちがこめられているのを、吸血鬼は敏感に感じ取った。
自分の家から妻のことを連れ去られてしまう日が来るのを、恐れている声色だった。

違うね、と、吸血鬼はまっすぐに応えた。
たんなる身体目当てだ。
三十前後の人妻の熟れた生き血と、締まりの良いあそこが欲しいだけだと。
侮辱するようで済まないが、と、吸血鬼はつけ加えた。
夫がいちばん恐れているのが、自分の家庭から妻がいなくなることだと、わかり尽くした目をしていた。

わざと露骨な応えかたをした吸血鬼の本意は、夫に素直に伝わっていた。
夫もまた、吸血鬼の気遣いを素直に感謝しているようだった。
少しだけほっとしている、と、夫は呟くように応じた。
あんたは強いし、テクニックも最高だ。
あんたに抱かれた妻がぼくとの時以上に昂奮しているのも、はたから視ていてよくわかっている。
きっと、相性も良いのだろう。
悪い相手に出逢ってしまったと、さいしょは思った。
でもあんたは多分、ぼくに解いてやることのできない妻のストレスを、きっとなんとかしてくれているんだろう。
ぼくはあなたを認めている。
悔しいけれど認めざるを得ないという気分はあるけれど、
それでもすすんで認めようと思っている。
唯一の気がかりは、きみに妻を奪われてしまうことだった。
でも、きみにその気がないことを、夫として安堵している。
身体目当て、歓迎ですよ。
この状況は、吸血鬼に魅入られるくらい魅力的な妻を持っているからなのだと、あきらめることにしています。
ぼくは、家内がぼくを裏切り続けることを希望している と。
治子がいままでどおり、ぼくの苗字を名乗りつづけてくれるのなら――


夫の告白をすぐその傍らで、
妻は大の字に仰向けになった姿勢のまま、
失血で空っぽになった頭で、夫の告白をそれでも満足げに聞き入っていた。



真っ昼間から臆面もなくたずねてくる吸血鬼を、治子の姑、絵美の夫はきょうもおだやかに迎え入れた。
絵美はいつものように、よそ行きのスーツをきちんと着こなして、情夫の訪れを待ち焦がれていた。
田舎住まいの吸血鬼が、都会育ちの婦人のたしなみである洗練された装いを辱しめたがっていると知りながら、
きょう彼女が袖を通したのは、夫が結婚記念日にプレゼントしてくれた濃い紫のスーツだった。

夫のために永年守りと通してきたはずの貞操を喪失して、はや1年が過ぎていた。
その貞操喪失記念日に、彼女は夫が結婚記念日にプレゼントしてくれた服を着て臨んだのだ。
夫ももちろん、自分が妻のために買ったその服を、妻がことさら選んだことに気がついていた。
けれども彼は気を悪くすることはなく、むしろ妻の選択を悦んでいるようだった。
長年連れ添った妻の貞操を、親しい友人のために無償でプレゼントしたと思うことにしていたから。

たまたまその日の絵美は、身体の調子がすぐれなかった。
けれどもせっかくの記念日を空しくするつもりはなかった。
彼女は顔色のわるさをいつもより濃い化粧で補った。
そこまでの配慮には気が回らなかった夫は、色っぽいねと妻をからかった。
絵美は夫の鈍さを咎めるつもりはなかったので、イタズラッぽくほほ笑み返し、肩をすくめてみせただけだった。

自分のために着飾って出迎えた絵美をひと目みて、吸血鬼はすぐに絵美の体調を見抜いた。
そして、きょうじゃなくても良いんだよ、と気遣った。
夫は頭に手をあてて、きみたちがうまく行く理由がよくわかったよと言い、自分の鈍感さを認めた。
そして、私は早々に退散しよう、せめて夫としての体面を守りたいからね、と、妻を情夫と二人きりにしてやろうと気を利かせた。
お気遣いはありがたいが、きょうにかぎってはご主人には出かけてもらいたくないと、吸血鬼はいった。
怪訝そうに情夫の横顔を窺う妻に、吸血鬼はいった。
きょうはきみのことを征服した記念すべき日なのだから、ぜひご主人にも祝っていただこう。
え?いやですわ、そんな。
絵美は戸惑い、恥じらった。
夫のまえではいつも淑やかで奥ゆかしい婦人でいなければならないだと思っていたからだ。
うろたえる絵美を横顔で受け流して、吸血鬼は夫にいった。
きょうはご主人のまえできみの血を愉しみたい。
趣味のよくない趣向であるのはじゅうじゅう承知しているが、きょうはぜひにもご主人にお付きあいいただきたい。
いかがですかな?
仕方ありませんな、と、夫はいった。
家内が迷惑に感じないのであれば、甘んじてこの罰ゲームをお受けしましょうと。
いちおう選択の余地は認めてくれてはいるものの、こたえはひと通りしか許されていないと、察しきった声色だった。

きみの身体の具合を思いやらなかったから、罰ゲームだね。
夫はそういって、絵美に笑いかけた。
絵美も困ったようにだが、笑い返していた。
妻の貞操喪失記念日を祝うのに、これほど適切なイベントはないと、夫は思った。
そして、せめて妻の羞恥心を和らげてやるために、わざと罰ゲームといったのだった。
彼は彼なりに、自分の目の前で妻と戯れたがるというけしからぬ嗜好に、好意的に応じようとしていた。
絵美も吸血鬼も夫の配慮に感謝していた。
吸血鬼は、ではさっそくご好意に与ろうといい、
絵美もまた、貴方がそう仰るのならと、夫を前にした吸血に応じることにした。

差し伸べられた妻の首すじに、情夫の赤黒く爛れた唇が、ヒルのようにねっとりと吸いつけられてゆくのを、夫は胸をズキズキさせながら見入ってしまった。
男は絵美の血を少しだけ吸い、吸い取った血潮をわざと少しだけ、ブラウスに滴らせた。
純白のブラウスにたらたらと滴らされた薔薇色の雫の色の深さが、夫の眼を狂おしく染めた。
絵美、大丈夫か?
夫は妻を気遣った。
絵美はゆるやかにかぶりを振って、せめてもう少しだけ、お愉しみいただきたいわと応えた。
ひと口啜っただけで彼女の体調を察することのできる情夫が遠慮してしまうのを怖れているかのようだった。
彼女はひざ下丈のスカートを、ほんのすこしだけたくしあげた。
下品にならない程度にひざ小僧をあらわにして、黒のストッキングに染めた太ももを覗かせた。
都会妻のたしなみを、夫のまえで辱しめられてしまうのですね・・・?
こたえの代わりに、痴情にまみれた唇が、熱く熱く圧しつけられた。
妻の足許になん度もなん度もくり返される接吻に、夫は吸血鬼の妻に対する執着のつよさを、感じないわけにはいかなかった。
ストッキングのしなやかな舌触りを愉しみながら圧しつけられて、都会妻のたしなみとされた装いは、くまなく辱しめられていった。

一時間後。
長い長い痴態だった。
かばうような緩やかなまさぐりを全身に染み込まされて、
妻が日ごろの淑やかさをかなぐり捨てて、めろめろに堕ちてゆくいちぶしじゅうを、
夫は嫉妬に溺れながらも見せつけられつづけた。
妻と情夫とのアツアツの刻を見せつけられるのが、きょうのつとめだとわかっていたので。
体調のわるさを押して、なん度もくり返される突貫を、さいしょは控えめにやがてだんだんと熱っぽく受け入れてゆく。
妻と他の男性との愛情豊かなセックスを見せつけられることに、さいしょは辟易し、少しばかり嫉妬に苛立ち、さいごは夢中になってしまっていた。
情夫の腕のなかで夢中になっている妻と、いまの自分の夢中さかげんとは、もしかしたらいい勝負かもしれないと思うほどだった。
絵美は情夫の腕のなかで昂りつづけ、
絵美の夫は絵美を視ることで昂りつづけた。

夫婦のベッドのうえ、夫ならぬ身にすべてを許し抜いてしまったあと。
放心しきって仰向けになった絵美の傍らで、吸血鬼は夫に告げた。
わしは絵美を愛している。
けれどもおふたりが離婚することまでは望まないと。
夫もいった。
家内を愛していただき、夫として感謝している。
貴方が身体目当てでなく家内に接してくれているのは、さいしょから感じていた。
だから貴方のための献血で、家内が健康をそこねることはないのだとわかってからは、ふたりの仲を妨げようとは思わなくなった。
これからも家内のことを頼みます。
当家の名誉を汚すことを気遣うことなく、家内との逢瀬をお愉しみになってください。
これが夫としての偽らざる希望です。
嫁も姑も犯されてしまう。
けれども女たちはうろたえながらも状況に順応して、吸血鬼の娼婦と化してゆく。
嫁も姑も寝取られてしまう。
けれども夫たちは不平を鳴らすことなく状況に順応して、視て愉しむ歓びにめざめてゆく。

6月17日ころ構想

義理堅い吸血鬼。

2019年03月03日(Sun) 07:03:05

やめてください・・・止してください・・・あぁ悔しい。
沼尻の婚約者である美奈子は、三日まえと同じ言葉を口にしながら、
ストッキングを穿いた足許にすりつけられてくる吸血鬼の唇を、受け容れ続けていた。

三日前、初めて襲われたときには、
身じろぎひとつできなくなるくらい血を吸い取られた後で、ストッキングを穿いた脚に唇を吸いつけられて、
ひどく悔しげに歯がみをしながら、相手を罵りつづけていたというのに。
その夜の美奈子は、言葉だけは三日まえとおなじでも、
語調はほとんどうわ言のように虚ろで、
差し伸べてしまった脚を引っ込めようともせずに、素のまま吸わせてしまっている。
脛にまとわりついた薄地のナイロンは、意地汚く這わされる唇のひと舐めごとに、
皺くちゃに歪められ、引きつれを拡げて、太ももやひざ小僧を露出させていった。

やめて・・・止して・・・あの人が視てるの、あぁイヤラシイ・・・っ。
そのつぎに美奈子が吸血鬼と逢ったとき。
虚ろな口調は昂った上ずり声に変化して、
吸いつけられてくる唇を拒もうともせずに、むしろ相手が吸いやすいようにと、脚の角度を折々変えてやってさえしていた。

初めて二人ながら襲われて血を吸い取られた後。
吸血鬼は美奈子に覚られないよう、沼尻に耳打ちをした。

今夜限りで、灰になるところだった。きみたちの血のおかげで、命拾いをした。礼を言う。
どうやらこの街から出ていくことのできない身の上のようだな。
同情するが、きみの彼女を誘惑することを、やめることはできない。
でもその代わり、そうするときには必ず、事前にきみに伝えよう。
彼女の身が心配ならば、様子を見に来るがよい。
だが約束する。きみが来ようが来るまいが、彼女の生命は保証するから。

ふたりを襲った吸血鬼は、意外なくらい義理堅かった。
美奈子の生命が危うくなるほど量をむさぼることはなかったし、
惑う美奈子をあやしたり軽く弄んだりしながらも、太ももから上には、手を触れようともしなかったのだ。
――処女は奪わない。わしにとって、処女の生き血は貴重だから。
――これがセックス経験のあるご婦人だったら、
――きみは自分の結婚相手が、わしを相手に淫らな愉しみに耽るのを視る羽目になっただろう・・・

ほんとうならば、毎晩でも誘いたかったはずなのに。
美奈子の身体を気づかって、三夜に一夜しか、呼び出そうとはしなかった。
それと察した美奈子は、彼から誘いを受けた夜には、なにを置いても逢いにいくようになっていった。
沼尻もまた、吸血鬼が自分の婚約者と”交際”するのを、黙認の形で受け容れていた。
吸血鬼の誘いを受けて真夜中の公演を二人並んで歩む様子を見守りながら、
美奈子が媚びを含んだ上目づかいで吸血鬼を見つめるようになったことにも気づいていたし、
婚約者の脚に通されたストッキングが、エッチな意図で破かれてゆくのを、歯がみをこらえながら見つめつづけた。

密かな逢瀬を見て見ぬふりをつづける沼尻に、美奈子は多大な感謝を寄せた。
少しでも多く処女の生き血を愉しませるために、2人は相談のうえ、結婚を半年遅らせることにした。
ふたりは知っていた。
セックス経験のあるご婦人とは、必ず身体の関係を結ぶという、彼の流儀を。
どちらから言い出すともなく、2人は婚期を遅らせることを、ためらいなく選んだのだった。


いよいよ明日が婚礼という夜。
吸血鬼は美那子を、誘い出した。
処女の生き血を提供する最後の機会――
美奈子はいつもより多量の血を、彼のために与えた。
月の光に照らし出された横顔が蒼ざめているのを、沼尻ははらはらとしながら見守っていた。
ベンチの隣に腰かけた吸血鬼にもたれかかるようにして、美奈子は息を整えようとしていたが、
吸血鬼の掌がやおら、美奈子のブラウスの胸をとらえた。
そしてもう片方の掌が、スカートの奥へとすべり込まされた。
いままでにない行為だった。
美奈子はハッとして、大きく目を見開いて、相手を見あげた。
吸血鬼は初めての唇を美奈子から奪うと、「お前を犯したい」と、告げた。
沼尻は、観念した。
結婚を控えた同年代の友人のほとんどが、彼らによって婚約者の純潔を譲り渡してしまったことを知っていた。
けれども今夜のケースは、この街のルールからすると例外の部類へとすすんだ。
美奈子は迫って来る相手の胸に掌をあてがって、吸血鬼の意図を柔らかく拒んだ。
「貴男から見たら非力な人に見えるかもしれないけれど、私にとっては最愛の人なんです。
 どうかそれだけは、見逃して・・・」
吸血鬼は意外なくらいにあっさりと、美奈子の請いを容れた。
それでも残り惜し気に、彼女の頭を優しく抱きとめて、長い黒髪をいつまでも撫でさすっていた。

新婚旅行は海外だった。
勤め先の事務所もその地にあったので、そのまま逃げてしまうことも可能だった。
ようやく自分のものになった美奈子のしなやかな肢体を、ほかの者に譲り渡さずに済むはずだ。
げんに、婚約者を手籠めにされて”目ざめなかった”ある者は、そのままこの地に赴任して、街を捨てていた。
吸血鬼の棲む街は、創業者の生まれ故郷で、街に作られた事務所は、血液提供のために立ち上げられたと評判だった。
それでも、適性に欠け街を離れていくものを、無理に引き留めようとはしなかったのだ。
義理堅い吸血鬼のため、沼尻は、彼自身も義理堅く約束を守った。
新婚旅行を終えて帰国すると、お土産を携えて彼の棲み処を夫婦で訪れ、
夫の視ているまえ、美奈子は吸血鬼に抱かれた――

沼尻夫人としての守操義務を夫の前で放棄することで、吸血鬼は虚栄心を満たした。
それからはしばしば、夫婦ながら吸血された後、新妻が夫の目のまえで淫らな歓びに浸る夜が続いた。
吸血鬼は美奈子を愛し、美奈子は夫を愛していた。そして、そんな美奈子に沼尻は満足を覚えていた。
三人三様の想いを秘めて、新妻が夫と吸血鬼とに共有される関係は、円満裡につづけられた。


転機が来たのは、沼尻の母豊子が夫を亡くして、街に移り住んできたときだった。
同居した嫁と姑とは、お互いに少しずつ気まずい思いをしながら暮らしていたが、
勘の良い豊子はすぐに、嫁の日常に不倫の匂いを嗅ぎつけていた。
夫のいない夜に出かけて行って、ホテルで密会を遂げた後、
ホテルのロビーで待ちかねていた豊子が、ふたりをとがめた。
ここではなんですから――慇懃に申し出た吸血鬼に公園に誘い出された豊子は、その場で吸血され犯された。
まさか嫁の不倫相手が吸血鬼だなどとは、堅実な主婦を廿年以上続けてきた豊子には、思いもよらないことだった。

美奈子に介抱されて帰宅した豊子は、まんじりともせずに夜を明かした。
ひと晩じゅう、夫の写真をまえに、なにかを詫びている様子だった。
夜勤から戻った沼尻に、豊子はたいせつな話がありますといって、
夫を迎えるために早起きしていた美奈子とともに、自室に入れた。
そして、夕べの顛末を、つとめて淡々と、語って聞かせた。

美奈子さんのようすがおかしいと思って気になっていたが、
夕べ行き先も告げずに出かけたので、申し訳ないと思いつつあとを追ってしまいました。
美奈子さんは男のかたとホテルで待ち合わせて、そのまま部屋に入り、3時間ほどそこで過ごしました。
ふたりがどういう関係なのか、大人の殿方だったら、察しがつきますよね?ええ、私も察しをつけました。
それは、俊一(沼尻の名)の嫁としてはあってはならないことだと私は思ったので、
ロビーに出てきたお二人に声をかけさせていただきました。
でも、美奈子さんのお相手の方が吸血鬼だったとは、夢にも思いませんでした。
美奈子さんによると、俊一も美奈子さんとその方との関係を認めているというのです。
それは本当のことなのですか?
お相手がお相手ですから、きっと特殊な事情があるのでしょう。
お二人に声をかけたあと、私がどういう目に遭ったのかは、お話ししないでもわかると思いますし、
息子の貴方に聞かせることではありません。
(お義母さまはずっと気高くいらっしゃったから、あなた安心して――と、ここで美奈子が言葉を添えた)
美奈子さんの夫として、私の息子として、貴方の考えはどうなのですか。
それを伺いたくて、夜勤明けでお疲れのところ、お呼び立てしました・・・

鶴のように気位高く構えた母に、沼尻はいった。
美奈子が彼に愛されていることを誇りに思っている、
わたしたちが婚期を遅らせたのは、処女の生き血を少しでも多く分けてあげたかったからです――と。

あなたたちがそれで良いというのなら、私は何も申しません。
古風な考え方の持ち主である豊子は、意外にも素直に息子の言を受け入れた。
もしかすると、夕べの凌辱の残滓が、彼女のなかで心地よい疼きとなって残っていたのかもしれない。
しかし豊子はそのうえで、ひとつだけつけ加えた。

それでもひとつだけ、お願いがあります。
それというのは、美奈子さんには間違いなく、俊一の子を産んでいただきたいのです。
沼尻の家の血すじを、絶やしたくないからです。
わかっていただけますか?
どうしてもお会いになるというのなら、それも良いでしょう。
けれども、美奈子さんと俊一との関係も、たいせつにしていただきたいのです。
だからといって今さら、あのかたから美奈子さんを取り上げてしまうわけにもいかないようですね?
それならば、提案があります。
私が美奈子さんの身代わりを務めます。
もう、お父さんもいらっしゃいませんから、どこにも迷惑のかかる話ではありません。
夕べのことがなければ、私もここまでの勇気は湧かなかったかもしれないけれど、
お父さんには、家に戻ってからずっと、おわびをしました。
どうやら私でも、愛される資格はあるようですから、あなたたちさえよろしければ、私からあのかたに話してみます。
私があのかたのお相手をしている間に、できれば子供を二人、産んでください。
そうしたら、あのかたを美奈子さんにお返しします。
もっとも――年輩の私では、吸血鬼さんもお気が進まないかもしれませんから、
ご相談はしなくてはねぇ・・・

さいごのくだりで母親が見せたほのかな女の情の揺らぎを、息子も嫁も、見逃さなかった。
豊子の希望は沼尻から吸血鬼に伝えられ、吸血鬼は早速その日の夜には沼尻の家へと現れていた。

「お早いのですね」
敏感すぎる相手の行動に、ちょっと鼻白みながら、豊子はいった。
「善は急げと申しますから」
物腰柔らかに吸血鬼が応えると、
「学がおありのようですね」
と、豊子は感心してみせた。
いつの間にか、息子も、嫁も、座をはずしていた。
ふすま越しに聞こえる切羽詰まった息遣いをそれとなく察すると、
豊子はそわそわと、おくれ毛を撫でつけながら、いった。
「きょうを、私の命日にしたいと思います」
吸血鬼はいった。
「生まれ変わるという意味なら、それもよろしいかもしれない」

我々には、縁づいたご婦人と、記念日をもつことにしている。
そう、初めて契った夜のことです。
ちなみに美奈子さんは、〇月×日――ご成婚の前日です。
貴女の場合は――きょうを祝いの日としたい。
初めて犯したのは昨夜のうちであるが、貴女にとっては本意ではなかったはず。
美奈子さんを沼尻夫人のまま愛し抜いたように、今夜、貴女を未亡人のまま恋人の一人に加えたい・・・

未亡人だった豊子は、齢五十にして恋に落ちた。
夫のときよりも激しい恋だった。
モノにした女をその夫の目のまえで抱くことを無上の悦びとする・・・という彼のけしからぬ趣味を、豊子未亡人は好意的に受け容れた。
喪服姿に身を包んだ豊子未亡人は、夫の写真をまえに吸血鬼を迎えて、
美奈子のストッキングを好んで辱めていた吸血鬼のため、夫を弔うために脚に通した黒のストッキングを、びりびりと破かせていった。
しつけに厳しかったはずの母親が、
破けた薄地のナイロン生地から、ひざ小僧をまる見えにさせながら、
へらへらと笑いこけながら吸血鬼に犯されてゆく光景に、沼尻は昂ぶりを抑えきれなかった。
沼尻夫妻は、結婚以来もっとも濃密なひと刻を、豊子の支えで持ち続けた。
吸血鬼はその後も美奈子を夫の前で抱いたが、「体の中に精を注ぎ込まない」という条件つきだった。
義理堅い彼は、美奈子が豊子の求め通り子供を二人産むまで、約束を守りつづけた。

沼尻の長女は、中学の入学祝に初めて咬まれ、高校の卒業祝いに、彼氏の目のまえで処女を捧げた。
母さんもしないことを、私経験しちゃった――はずんだ囁きに、賢明な母親はくすぐったそうに笑み返した。
その弟は、高校に入ってできた彼女を吸血鬼に咬ませ、婚礼の前夜に花嫁の純潔をプレゼントした。
父さんがしなかったことをぼくがした――奇妙な自慢に、両親はくすぐったそうに苦笑し合った。
豊子は、齢七十になるまで”現役”だった。
現役を卒業してもなお、脚に通した黒のストッキングを目あてにかがみ込んでくる愛人を、愛想よくもてなしつづけている。

義理堅い吸血鬼に、義理堅い人間の一家。
この吸血鬼物語に、”被害者”は存在しないようだ。

賢明な母。

2019年02月26日(Tue) 08:16:10

わるい男たちの毒牙にかかって、嫁をまわされてしまった。
生真面目な質の嫁は意外にも淫乱で、ノリノリになって、応じてしまった。
悔しかったけれど、世間体もあったから、わたしは事を荒立てることをしなかった。

そんな嫁の乱行に母が気づいたときに、転機が訪れた。
おおぜいの男どもを相手に自宅で輪姦パーティーをくり広げる嫁を咎めた母は、
その場で輪姦の渦に巻き込まれてしまった。
厳格だと思い込んでいた母は意外にも淫乱で、ノリノリになって、応じてしまった。

「どうせならあの子も仲間に入れて、楽しくやろう」
母の提案に、男たちは一も二もなく従った。
それ以来。
自宅での輪姦パーティーには、わたしまでもが加えられた。
わたしは妻や母の服を身に着けて女役をつとめたり、逆に男として母を抱いたりした。

幸いにも、母はすでに未亡人だった。
父の法事帰りの喪服姿に目の色を変えた男どもが群がって来た時は、さすがに母も顔色を変えたけれど、
とうとう、永年連れ添った夫を弔うために身に着けた装いを、
淫らな遊戯のコスチュームへと、惜しげもなく堕としてしまっていった。
「まるで初めて浮気したみたい」
母は少女のように、頬を上気させていた。

悔しい思いでいたわたしも、いつか彼らとともに愉しんでしまっていた。
母までもが犯されることで、わたしはすっかり従順に飼い慣らされて、
愉しみを愉しみとして、歓びを歓びとして、受け容れてしまっていた。
苦痛に満ちていたはずの寝取られた日常は、
刺激に満ちた愉悦の日々に変化した。

わたしまでも巻き込んで輪姦パーティーに興じた母。
母はどこまでも、賢明だった。


あとがき
妻を犯されるよりも、母親を犯される方が、ある意味致命的です。
そして母親が状況を受け容れたことで、大切な女性を二人ながら汚された男もまた、素直な気分になって仕舞ったようです。
めでたしめでたし?

輪廻 ~ある家族の年代記~

2017年05月30日(Tue) 07:34:11

吸血鬼に初めて抱かれたとき、そのひとはまだ二十代。
都会から転居してきたばかりの人妻だった。
先に血を吸った夫の理性を、まず狂わせて。
伴ってきた彼の若妻の貞操をゲットする権利をまんまとせしめた直後のこと。
身体をカチカチにこわばらせて、整った目鼻立ちを終始引きつらせていた。
ストッキングを片方脱がされて、スカートの奥を侵された瞬間、
キュッと眉を引きつらせ、涙ぐんでいた。
そしてすすり泣きをくり返しながら、奪われつづけていった。

「いらっしゃい。喉渇いていらっしゃるの?」
十年後。
女はミセスの余裕たっぷりに微笑んで見せ、主人は今夜戻らないのよと教えてくれた。
それは先刻彼女の夫から聞かされていたことだったけれど、
そんなそぶりは見せないで、わざとにんまり微笑みかえしてやる。
「エッチ」
女は吸血鬼の頬を思い切りつねると、自分の感情を押し隠して、
「息子はもう寝(やす)んでいます」
とだけ、いった。
早くもくつろげかけたブラウスのえり首からは、肉づき豊かな胸が熟した血色をたたえている。

「視ちゃったのか。しょうがないやつだな」
照れ笑いする青年のまえ。
吸血鬼は彼の母親から吸い取ったばかりの血潮を、まだ口許にあやしたままだった。
ここは二階の勉強部屋。
彼の母さんはまだ、リビングの真ん中で大の字になって、へろへろになってしまっている。
訪問着のスカートの裏地を、人妻が決して受け入れてはならないはずのあの生温かい粘液でびっしょり濡らしたままだった。
「じゃあ、おいしくいただこうかな」
吸血鬼が威圧的に、牙を光らせた。
青年はウキウキとした目で、さっきまで母親を冒していたその牙に見入っていた。
「おいしくいただいてくださいね」
目を瞑った青年の足許ににじり寄り、足首を抑えつけると、
吸血鬼は青年のふくらはぎを、ハイソックスのうえから強く吸った。
自分の身体をめぐる血潮を吸い取られるチュウチュウという音にウットリと聞きほれながら、
青年はゆっくりと、姿勢を崩していった。
気がつくと、半ズボンを脱がされていて。
鎌首をもたげた男の股間が、自分の秘部に迫っていた。
ギュッと歯を食いしばって、こらえる痛み――
その苦痛は一瞬で、あとは言い知れない快楽が、じわじわと身体じゅうにしみ込んでくる。
初めて血を吸われたときといっしょだ、と、青年は思った。
男は青年の思惑などつゆ知らず、というていで、なん度もなん度も青年の股間を抉っていった。
母さんが堕ちるのも、無理ないや。
青年は心からそう思い、母と吸血鬼との仲を取り持った父に、ひそかな称賛を送る。

「中條家の長女の貴代さん、知っているな?」
夫婦のベッドで、夫人をたっぷり可愛がったあと。
ゆっくりと身を起こしながら、吸血鬼はいった。
「京太のクラスの子でしょう?」
美奈代はけだるげな表情のまま、さぐるような視線を吸血鬼に投げた。
「そのお嬢さんを、先月堕とした」
「処女を奪ったの?」
「まあ、そんなところだ」
「まあ、珍しい」
「ほかにあてができたのでね」
フッフッと吸血鬼が笑う。
「アラ、捨てられちゃうなんてかわいそうね」
「そのかわいそうなお嬢さんを、拾って欲しい」
「どういうこと」
「あんたの息子の嫁にどうか?と訊いているのだ」
「あなたにお嫁入りした子を、うちの嫁として引き取れ・・・と?」
かなり屈辱的な条件の縁談なのに、母親は面白そうに目を輝かせる。
「私だって、主人がさいしょの男だったのよ」
暗に吸血鬼の目論見を軽く非難してみせたあと、
女は血を吸い尽された後のうつろな目を、天井にさ迷わせる。
「あー、でも・・・」
男は女が言葉を継ぐのを待っている。
「私、さいしょに抱かれるのも貴男だったらよかったなぁ。私の一番いいところ、全部あなたに差し上げたかった」
女は自分の言いぐさのなかにある答えに、初めて気づいたように顔をあげた。
「私の願望を、うちの嫁で実現するというのね?」
悪びれもせず頷く吸血鬼に、女は「エッチ」といって、情夫の頬を強くつねった。

この邸に彼女を連れてくるようになって、もう何回目になるだろう?
京太は血の抜けた身体をけだるげに横たえて、
貴代を伴って吸血鬼が消えた別室のほうを見やっていた。
この街では、まだ学生のころに、婚約を済ませるという。
親たちのすすめでお見合いをさせられたのは、まだセーラー服姿の同級生。
ずっと三年間を過ごした顔なじみのその少女は、特に仲が良くも悪くもなく、気心だけは知れていた。
親の決めた縁談に、否やはなかった。
彼はその縁談を、受け容れた。
すでに吸血鬼から直接すべてを聞かされたのに、巧みに言い含められてしまっていた。
吸血鬼が純潔を散らした少女を、未来の花嫁として受け容れる。
そんな立場に、マゾヒスティックな歓びさえ、感じていたから。
京太といっしょに邸を訪問するときは。
貴代は夏ものの制服の下、いつも黒のストッキングを履いていた。
それが嫁入り前に得た情夫を愉しませる装いなのだと、容易に察しがついたけれど。
京太は「似合うね」とだけ、言ってやった。
そう――きみと小父様は、似合いの不倫カップルだよね。

「気が向けば、覗いても良い」
仲良しの小父さんは、そんなことまで教えてくれた。
いままでは、覗く勇気がなかったけれど――
今初めて芽ばえた、どす黒い衝動が。
青年のなかでむくむくと、鎌首をもたげていった。
手の震えを抑えながら、ふすまの取っ手に手をかけて。
恐る恐る細目に開いたふすまの向こう――
黒のストッキングを片方だけ脱いだ少女は、
はだけた制服からピンク色の乳首を覗かせて、
ひそめた眉に甘い媚びをたたえながら、
未来の夫を裏切りつづけている。

新妻よりも母?

2016年12月06日(Tue) 08:09:55

吸血鬼の愛人を持ち、昼間から情事に耽るわたしの新妻に。
母はいつも顔をしかめていたけれど。
そのうち、吸血鬼自身を相手に、顔をしかめるようになっていた。
そう。
妻にそそのかされて、母を吸血鬼に引き合わせてしまったから。

お義母さま、まだお若いのにもったいないわ。
きっとお義母様の生き血は、あの方のお口に合うはずよ。
あなた、しっかりなさって。
お義母様を、お幸せにして差し上げましょうよ。
私、お義母様が一日でもお若いうちに、お義母さまの生き血をあの方に愉しませてさしあげたいの。
ね、あなたもそう思うでしょう?

吸血鬼に迫られて、首すじを咬まれ「ああーッ!」と叫ぶ母の姿に。
妻とおなじくらい、いやそれ以上に股間を熱くしてしまうのは、なぜだろう?
お義父さまはお気の毒だわ。だから私が、慰めて差し上げるの。
そういって父といっしょに妻が寝室に消えたあとも。
わたしは母の受難の場から、立ち去ることができずにいる。
パンストを片脚だけ穿いたあられもないすがたで、犯され抜いていく母は。
今夜もその姿で、息子のわたしを昂らせてしまう――

こういうことは、愉しんじゃったほうがいい。

2015年03月26日(Thu) 07:00:12

すっかり姦られちゃいましたねぇ。おふたりに。
母さんは自分を犯した吸血鬼に、そういった。
いつもと変わらない、声色だった。

まあ、まあ、しかたないでしょう。このあたりの風習だそうですね。
郷に入りては・・・って、申しますものね。
自分に言い聞かせるように、そういうと。
母さんは真紀子をふり返って、こういった。
こういうことは、愉しんだほうがいいの。

真紀子はべつの男に血を吸われ、姦られているさいちゅうに。
ずうっと悲鳴を、あげつづけていた。
けれども――
涙目の顔だちに浮かんだ表情は、いままでとは別の感情を、滲ませている。
一瞬白い歯をみせた真紀子に、母さんは「それでいいのよ」と言った。
姑を犯したばかりの男が目の前に立ちはだかるのを、真紀子はぼう然と見あげていた。
戸惑う真紀子に、母さんを犯した男が迫っていって。
母さんは、嫁を犯した男に、自ら唇を与えていった。

相手を取り替えあって情事に耽る嫁姑に。
おや、おや。あいつもなかなか、やるじゃないか。
白髪頭を掻きながら。
父さんはのんきにも、そんなことを呟いている。
永年連れ添った妻が、自分以外の男を、同時に2人も受け入れてしまっているというのに。
もっともぼくも、同じ立場・・・
2人めの男を相手に腰を振りはじめる真紀子を見つめ、
目線がクギづけになって、離せなくなっている。
真紀子のあしらいは、さいきんご無沙汰がちの夫婦の営みよりも、熱っぽかった。
それでいいんだ。
こういうことは、愉しんじゃったほうがいい。
母さんと似たような言い草だった。
やっぱり似たもの夫婦なのだろうか?

唇をせわしなくうごめかせ。
ふたりの女たちから生き血を啜り取ってゆく男たち――
旨そうだね。
ぼくが呟くと。
気に入ってもらえる方が、まだしもだな。
父さんも応えてくる。

ふたりの顔色がすっかり蒼くなったころ。
宴は終わった。
まだ吸い足りなさそうな男どもに、
母さんはまたいらっしゃいよなんて言っているし。
真紀子は最初の男とメールアドレスの交換を始めていた。

ここで男どもが出ていったら、間抜けだよな。
あけすけに挨拶でも、したいのだろうか?
これからも家内をよろしく・・・なんてふうに。
でもそんな衝動、わからなくもなかった。
こちらの気分を見透かすように。
母さんは真紀子に囁いている。

だいじょうぶ。
男のひとたちもきっと、今頃覗いて愉しんでいるから。

洋館の誘惑

2013年03月04日(Mon) 06:51:43

都会の郊外にあるその洋館の奥深くにある寝室は、ルイ王朝風の豪奢な造りだった。
学生時代にヨーロッパ旅行をして以来、税所江津子がこんな室内を目にするのは、たぶんはじめてのことだった。
その彼女はいま、ベッドのうえにいる。
訪れたときのスーツ姿のまま襲われた彼女は、ブラウスやスカートをまだ身に着けたまま、犯されているのだった。
すぐ傍らにある古風な椅子の背もたれには、江津子の着てきた黒のジャケットが、きちんと掛けられている。
綺麗な洋館に伺う。
そう誘われた彼女は目いっぱいおめかしをして、此処に来たのだ。
新品のガーター・ストッキングは彼女の脛を淫靡な輝きで包んでいたが、
ストッキングのうえからするりと抜かれたショーツはベッドの傍らに落ちていて、深紅の絨毯のうえにショッキングピンクの彩りを添えていた。

初めての痛みに打ち震えながら涙を浮かべた江津子は、歯を食いしばってかぶりを振っていた・・・はずだった。
「痛い」
江津子がそういうと、
「じきに慣れる」
そんな応えがかえってきた。
たしかにそうだった。
二度三度・・・とくり返すうち、痛いだけだったはずの衝撃は、じょじょにきわどい疼きのようなものを濃くしていって、さいごに苦痛が快感にすり替えられていった。
「相性がいいようだ」
いい気な言いぐさに女は、
「そうね・・・」
仕方なくそう、応えていた。
相手の男は、日本人ではない。
銀色の髪の下の広い額、そして彫りの深い目鼻立ちがそう語っていた。
かといって純粋なアーリア人種でないことは、逞しい筋肉を蔽う褐色の肌が示していた。
齢のころは、三十くらいだろうか。いや、もっと上だろうか?案外江津子の父と、同年齢くらいかもしれない。
逞しさとしなやかさによろわれた老練な手管が、彼の年齢をわからなくさせている。

しだいに意気投合し始めた江津子はしかし、(これでいいはずはない)と、思っていた。
結婚するまでは肌を許さない・・・いまどきではないかもしれない保守的な感覚がそうさせていたこともあったのだが、
それ以上の理由として、もうひとつのっぴきならない事情が、隣室でくり広げられていたから。
廊下をへだてた真向かいの部屋。
この部屋とまったくおなじ造りらしい其処には、木藤喜美恵がべつの男とふたりきりでいた。
喜美恵は江津子の兄の婚約者で、挙式を来週に控えているのだった。
誘いをかけてきたのは、喜美恵のほうからだった。
―――お兄様と婚約している身なのに、これでは不倫ではないか。
―――許せない。あたしをこういう立場に追い込んで、自分の不倫を通そうなんて。
そんな想いが江津子の胸の奥に、澱のような不純物となってむくむくと湧き上がっていた。

「兄嫁のことを考えているな」
男はすべて、見通しているようだった。
「不純だわ」
「ははは。いいじゃないか。あんたはあんたで、愉しめば良い」
「そんな・・・そんな・・・」
露骨な言いぐさに腹を立てて、江津子は暴れた。
けれども彼女の四肢は、展翅板に拡げられたチョウのように自由を失っていた。
力いっぱいの抵抗は、わずかな身じろぎに抑え込まれて、シーツの皺を深くしただけだった。

男の唇が、江津子の首すじを這った。
唇の下には、一対の咬み痕が疼いていた。
なにも知らない江津子をこの部屋に招き入れた男は、彼女をベッドの傍らに立たせて背後から忍び寄り、さいしょに首すじを咬んでいた。
尖った二本の犬歯に皮膚を冒された江津子は、激しい眩暈を覚えて、そのままベッドに倒れ伏したのだった。
ちゅう・・・っ。
江津子の血を吸い上げる音が、静かな昂ぶりのこもった室内に洩れた。
ひいっ・・・
体内をめぐる血潮が傷口を抜ける感覚のおぞましさに、江津子は声を洩らして縮みあがった。
「じきに慣れる」
男はさっきとおなじ言葉をくり返した。
「そんな・・・」
江津子は悶えたが、男は放さなかった。
ちゅうっ・・・ちゅうっ・・・ちゅうっ・・・
静かになった女の身体に覆いかぶさった黒い影は、女の二の腕をしつようなくらい撫でていた。

ブラウスに散ったなま温かい飛沫が、サテンの生地にじょじょにしみ込んでいって、その下に着けたブラジャーを濡らし、さらにその下に秘めた乳房を浸す。
着衣のうえからのまさぐりは、すでに十分に、その豊かなふくらみに熱を与えていた。
江津子は無念そうにキュッと目を瞑り、それからゆっくりと、ガーターストッキングを穿いたままの脚を、披いていった。
「お嬢さん、なかなかタフだね」
男はクスッと笑い、女は「ばか」といって、顔をそむけた。
なん度めかの吶喊が、江津子の局部を冒した。


部屋を出たときちょうど、向かいの部屋のドアも開いた。
江津子の真向かいには、来週から兄嫁になるはずの女が、蒼い顔をして佇んでいた。
振り乱された長い黒髪。
血色を喪いやつれを帯びた頬。
肩ひもが片方二の腕に落ちた、ふしだらに着崩されたブルーのワンピース。
青みがかったグレーという珍しい色のストッキングはむざんに引き剥かれて、ひざのあたりまで破れ落ちていた。
江津子は自分自身を鏡で見ているような気分がした。
「ブラウスに血が撥ねているわ」
義姉になる女の指摘に、
「真っ赤なブラウスだから目だたない」
江津子は意地を張るように、ぶっきら棒にこたえた。

え・・・?
わが目を疑う思いだった。
江津子の傍らにいた男が、義姉を抱きかかえるようにして、隣の部屋に入った。
喜美恵の隣にいた男は、入れ替わるようにして、江津子を抱えてもとの部屋に後戻りさせた。
両方のドアが、ほぼ同時に閉じられた。
向こうの部屋のドアが閉まる寸前、ベッドに投げ入れられた義姉の陶然とした表情が白い顔に浮かぶのが見えた。
「愉しみましょう、マドモアゼル」
洋風の顔をした男が口にすると、ちっとも気障に聞こえなかった。
そのうえ男は、真顔だった。
さっきの男よりやや老けているものの、うり二つの顔だち。
一見して兄弟とわかる関係だった。
有無を言わせず追い詰められたベッドのきわで、江津子はあくまで拒絶のことばを口にし続けたけれど。
抵抗する意思を失った身体はそのままシーツに沈められていって、二人めの男を体験させられていた。


白百合のような。
そう表現したくなるほど、広間にひかえていた二人の婦人は、色が白かった。
アーリア系の肌の白さに、江津子は目のくらむ想いがした。
ふたりは薄紫とピンクの、色違いのロングドレスに身を包み、
アップにした金髪の下にむき出しになった首すじには、今夜の女の賓客ふたりとおなじ、赤黒い咬み痕を滲ませていた。
「姉妹なんです、妾たち」
年かっこうから見て姉らしい、薄紫のドレスの女がそういった。
「あたしたち、どうなるんですか?」
性急すぎる問いに、ピンクのドレスの女がこたえた。
「くり返し、いらしていただくことになるでしょう」
「そんな・・・」
江津子は身を揉んだ。
ちょうど真上の部屋では、喜美恵が男ふたりを相手に、宴のつづきを演じていた。
「どうすれば抜けられるの?」
「さあ・・・それがわかっていれば、妾たちも抜け出していることでしょう」
江津子の目のまえが真っ暗になったのは、貧血による眩暈ばかりではなかった。


「ここでお別れしましょうね。ひとりで帰れる?」
兄嫁らしい気遣いは、この洋館の玄関をくぐる直前と変わりなかった。
江津子は24歳。
喜美恵は27歳。
一本気な江津子を、喜美恵は洗練された優雅さと計算し尽くされた話術とで、かんたんに籠絡していた。
「じゃあね。お兄さんによろしく」
まったく悪びれずに別れのあいさつを口にする喜美恵を遮るように、
「わたしが送る」
さいしょに江津子の相手をした弟のほうが、冷然とした語調でいった。
「夜は危ないからな」
あなたほど危ない男はいないのに。
自分より頭ひとつ背丈のすぐれた男を、江津子は上目づかいでにらんだ。
江津子自身は気がついていなかったが、まるで恋人を見あげるまなざしになっていた。



「いつまでお寝み?」
透きとおったきれいな声が愉しげに響いて、目覚めたばかりの江津子を弄りものにした。
はっとして起き上がったのは、自室のベッドだった。
あれは悪夢だったのか?
断りもなく部屋に入り込んできた喜美恵を咎めることも忘れて、江津子は頭を抱えた。
目もくらむような貧血に、夕べの出来事が事実なのだと思い知らされた。
喜美恵はゆったりとほほ笑んで、上品な紫のスーツがよく似合うすらりとした肢体をくつろげている。
「もう夕方よ。初めてだったから、しかたないでしょうけれど」
喜美恵のおとがいのすぐ下には、ふたつ綺麗に並んだ痕が滲んでいる。
白い皮膚の底だけがむざんに抉られて、赤黒い痣になっていた。
そのコントラストは、醜さよりもむしろ、もっと蠱惑的なものがただよっていて、江津子はついうっとりと、見とれてしまった。
「あなたにだけ、いいこと教えてあげる」
喜美恵は愉しげな微笑を絶やさずに、ウフフ・・・と白い歯をみせて肩をすくめた。

いちど帰宅した喜美恵は、肩先に血のにじんだ青のワンピースを脱ぎ捨てると、
ベッドにつくこともなくシャワーを浴び、紫のスーツに着替え、
かねて約束していた婚約者の輝夫とその両親との待ち合わせ場所に急いでいた。
朝の10時。
待ち合わせ場所は、あの洋館のすぐ前だった。

「晩御飯ですよ」
母の声が、階段の下からした。
いつになく、疲れたような声だった。
江津子は喜美恵の脇をすり抜けるようにして、部屋を出た。
喜美恵は相変わらず含み笑いを絶やさずに、江津子のあとにつづいた。

「きょうは皆さん、早く寝ましょう」
母はまだ、和服姿だった。
いつもお茶会やお招ばれのときに見慣れた、濃い紫の和服だった。
蘇芳色の帯も、きちんと締めたままだった。
けれどもどこかに、違和感があった。
和服の時にはいつもきりりと結い上げているはずの黒髪が、妙に乱れていた。
ほつれた後れ毛がいくばくか、頭の輪郭からはみ出している。
面やつれもひどく、頬がこけているように見えた。
なによりも、和服の感じが変だった。
着くずれした襟元が微妙に曲がっていて、見慣れない赤い斑点が付着していた。
なによりもその首すじにふたつ綺麗に並んだ痕に―――江津子は危うく声をあげそうになった。
黙々と箸を動かす父や兄の首すじにも、おなじものがついていた。
ふたつの傷口の間隔は、母のそれに比べてひと周り狭かった。
「吸血鬼なの。あのひとたちも」
身を寄せ合うように怯えた顔をしていた薄紫とピンクのドレス姿が、記憶の彼方でかすんでいた。


週明けの出勤のあわただしさは、江津子の気分を入れ替えてくれた。
けれどもどうしても、みんなのまえに出るのに気後れがあった。
父も兄も、送り出す母も、だれひとり気にかけていないようだったけれど。
だれもが首すじに帯びている、あのふたつの痕―――
問いただされたら、なんと応えればいいのだろう?
始業まえトイレでいっしょになった同期の江藤沙希に、「ちょっとちょっと」と、江津子は手招きをしていた。
「ここ、変じゃない?」
自分の首すじを指さして、思い切って、訊いてみた。
「え・・・?」
沙希からは、薄ぼんやりとした反応しか、かえってこなかった。
「なんともなってないけど」
え・・・?
鏡を見直す江津子の目には、咬まれた痕がありありと滲んで見えるのだった。


白のタキシードも凛々しい兄。
そのあとを楚々とつき随う、青のカクテルドレス。
俯きがちな面差しにかすかな羞じらいさえ浮かべて、喜美恵は初々しい花嫁を完璧なまでに演じていた。
江津子は終始、落ち着かなかった。
彼女を含む家族全員がまだ首すじに滲ませているはずの咬み痕は、だれの目にも触れないらしい。
それは一週間の勤務を経て、じゅうぶん自覚はしていたけれど。
鏡を見るたびに目に入るくっきりとした痕は、あの狂おしい一夜の記憶と結びついて、江津子をひどく苦しめた。

そのうえ、きょうの会場の新婦側の席には、あの兄弟がひっそりと腰かけていた。
ふたりはそれぞれ、あの姉妹を傍らに随えていた。
どういう関係なのかいまだに判然としないけれど、はた目には二組の夫婦にみえた。
彼らは部屋の片隅で気配を消すようにひっそりとしていたが、会場のすべてを見渡していた。
そうして、足音も立てずに狙いを定めた夫婦の傍らに佇むと、夫の側にお酒を注ぎ、
連れ立った女のほうが、夫人の側にお酒を注いだ。
ほんの数秒歓談したかと思うと、女は夫のほうを、男は夫人のほうを伴って広間を出、しばらくのあいだ戻ってこなかった。
用を足しに席を立ったとき、ふと気になって辺りを伺うと、宴席のちょうど隣室に小部屋があるのに気がついた。
ちょっとのあいだためらったけれど、好奇心が理性にまさっていた。
見てはならない光景に、江津子は息を呑んで、そして見とれてしまっていた。
金髪の女は、ソファに横たえた夫君の首すじに、吸い取った血を滴らせて、
褐色の男は、絨毯に組み敷いた夫人のスカートの奥に、ひたすら吶喊を試みていた。


披露宴の会場を後にすると、江津子は両親と別れ、まっすぐ洋館を目ざした。
出迎えたのは、金髪の婦人の姉のほうだった。
あの晩とおなじ、薄紫のドレスを着ていた。
披露宴の会場では、どんな服装だったのか・・・どうしても思い出せなかった。
たぶん、こんな時代がかったドレスなどでは、なかったはずなのに。
女は「やっぱりいらしたのね」という表情をありありと泛べながら、江津子をなかに招じ入れた。
「きょうはおひとりなのですね」
「はい」
「二人同時に、相手をする羽目になりかねませんのよ」
からかうような女の口調に、江津子はことさら感情を消して、
「はい」
と応えていた。
女に招き入れられた寝室で、待ち時間はほとんどなかった。
うり二つの兄弟が肩を並べて、江津子のまえに立ちはだかった。

はぁ。はぁ。はぁ・・・
江津子の髪は黒々として、豊かだった。
汗を含んだその髪が、ひどく重たくユサユサと揺れるのを感じた。
ひとりは首すじに、ひとりはふくらはぎに唇を吸いつけていた。
あるいは二の腕に、あるいは手首に。
着衣のまま、かぶりついてきた。
披露宴会場で、あれほど多くの人を毒牙にかけていたのに。
このひとたちは、まだ渇いているというのか・・・
ブラウスの袖が裂け、二の腕がむき出しになっていた。
力を込められた筋肉がキュッとしなやかに浮き立ち、すぐに弛んだ。
咬まれるたび、抵抗は徐々に和らいでいった。
着衣越しに密着させられてくる逞しい胸についドキドキと胸を高鳴らせ、背中に腕を巻いてしまっていた。
ガーターストッキングごしにすり合わされてくるごつごつとした太ももに欲情を覚えて、脚までからめ合わせてしまっていた。


血の抜けた身体が、ひどくけだるい。
意識を取り戻した江津子の傍らには、だれもいなかった。
頭が重たい。視界が霞んでいた。
帰らなければ―――
江津子はこのまえの晩とおなじように椅子の背もたれに掛けられたジャケットを手にすると、
裂けたブラウスを覆い隠すように袖を通した。
なぶり抜かれた足許には、ストッキングの裂け目が縦横に滲んでいた。
すでに外は暗くなっていた。
肌色のストッキングの裂け目は、夜目には見えないだろうか?
江津子はフフッと口許に笑みを泛べた。

ああ・・・ん・・・っ。
向かいの部屋の閉ざされたドア越しに、女のうめき声がした。
喜美恵が招ばれていたのか?江津子はどきりとした。
けれども悩ましいその声色は、喜美恵のものではなかった。
もっと年かさの女性のものだった。
はっとして、江津子はドアノブをまわしていた。ドアは音もなく開いた。
細目に開いたすき間の向こうには、さっきまでの江津子自身がいるようだった。
母の孝枝が、男ふたりの相手をしていたのだ。

披露宴では黒留袖だった母は、黒一色の洋装に着替えていた。
正装の礼服は、ルイ王朝の寝所のなか、黒光りしているようにみえた。
ひざ丈のスカートは腰までたくし上げられていて、黒のパンティストッキングは引き破られて、やはり引き裂かれた真っ赤なショーツを露出させていた。
漆黒のブラウスの裂け目からは、娘の江津子さえ目を背けたくなるほど、乳房が露出していて、
黒ずんだ乳首はふたりの男の唇にしつようにとらえられ、唾液を光らせていた。
母は悶え、喘ぎ、汗みずくになって・・・むしろ積極的に腰を上下させていた。
「どうして着替えてきた?きょうならではの装いではなかったのか?」
男の問いに母は臆面もなく答えていた。
「だってあなた、このあいだは和服だったから、こんどはお洋服がいいって、仰っていたじゃないの」
むっちりと肉のついたふくらはぎは、薄黒いナイロンに淫靡に染まっていた。
ひとりが母を犯しているあいだ、もうひとりは黒ストッキングの脛をねぶり抜いていた。
評判の賢妻のすがたは、もうそこにはなかった。
いつの間にか、部屋のなかに入り込んでいた江津子を、男のひとりがふり返った。
「視て・・・いたね?」
江津子はだまって、うなずいていた。
「愉しい・・・だろう?」
江津子はやはりだまって、うなずいていた。
「仲間に加わろうね」
江津子はもういちど頷くと、しっかりとした足取りで、ベッドに近寄った。
母娘はじゅうたんの上に並べられて、相手を取り替え合っていた。

ギシ・・・
ドアの向こうの廊下がかすかにきしむのを、江津子は耳にした。
あの姉妹のどちらかが来たのか?と思った。
気がつくと、だれかが江津子の手の甲を抑えていた。
体温の冷えかかった、母親の掌だった。
「視ちゃダメ」
母が囁いた。
「え・・・?」
「お父さん、家に帰ったわけじゃないのよ」
それ以上は母も、なにも応えずに。
のしかかってきて吶喊を試みる男にうごきを合わせて、スカートの裾を自分からたくし上げていた。


一年後。
江津子は、真っ赤なカクテルドレスに身を包んでいた。
兄のときとおなじ披露宴会場で。
いっしょに腕を組んでキャンドルサービスをする彼女の新郎は、あくまでにこやかだった。
彼女にしか見えない、幅の小さな咬み痕を、首すじに滲ませながら。
ふたりを拍手で迎える新婦の両親はやはり、おなじ痕を滲ませていた。
やはり拍手をし続ける新郎の両親も同じく、咬まれた痕を滲ませていた。

お義母様は、きれいな方。
ほかに兄夫婦と、高校生の妹がふたり。
妹さんは、仲良く分け合ってね。
彼のお母様と兄嫁は、どちらがどちらの相手をするの?
あたしのときみたいにまた、くじ引きで決めるのね?

先週、彼氏と新しい両親を洋館に招く前の晩。
江津子は白い歯をみせて、笑みを絶やさずに過ごした。

義父は一瞬顔をしかめ、すぐに穏健な微笑を取り戻して。
羞じらう妻が堕ちてゆくのを、薄紫のドレスに身を埋めながら横目で見守りつづけていた。
ほどかれてゆく黒留袖は、男が念願していたものだった。
深紅の絨毯に拡がる長い黒髪がとぐろを巻くのを、女の江津子までが見とれてしまっていた。

義兄は顔を真っ赤にして、これでは強姦だ、侮辱行為だ・・・と、口では罵りながら。
覆いかぶさってくるピンクのドレスを避けようもなく受け止めていた。
手だれの女吸血鬼の身体と引き換えに。
真っ赤なスーツを着込んだ夫人が、首を咬まれて大人しくなって。
ピンと張ったふくらはぎが、グレーのストッキングをぴっちりと密着させたまま、ゆっくり開かれてゆくのを、
固唾をのんで視つづけていた。
一児の母はきっと今夜、子種を授かって帰宅するのだろう。

ふたりの妹たちも、セーラー服の胸元を引き締める純白のタイを取り去られて。
それぞれべつべつの部屋で、犯されていった。
黒のストッキングに走った伝線をチリチリ拡げながら足摺りをくり返していた姉も。
真っ白なハイソックスを太ももを伝い落ちる血に浸してしまった妹も。
パートナーを取り替え合ったときにはもう、夢見心地になっていた。

供血の連鎖は、どこまで続くのか。
江津子はただ陶然となって、夫の家族が破滅してゆくのを見守っていた。
寝室の姿見に映る、ゆったりとした含み笑い。
そこに映っていたのはもしかすると、あの晩の兄嫁そのものだったのかもしれない。

コレクションのおすそ分け

2012年03月01日(Thu) 07:57:16

おすそ分けだよ。^^
こっちがきみの奥さんの。
こちらはきみのお母さんの。

テーブルのうえいちめんに、ところ狭しと広げられた、色とりどりのショーツたち。
やつはヌケヌケと、自慢する。

どちらもセンスが、よろしいね。^^
ベッドのうえで脱がせるのがまた、たまらないのだよ。

いっぱい集まったから、きみにもおすそ分けしておこう。
あとは自分で愉しむなり・・・本人に返すなり・・・お好きなように。^^

・・・・・・。
わたしはこれらを、どうしたものか?

女三景。

2012年02月29日(Wed) 05:13:42

妹は、胸のおおきくあいたパーティドレスの肩に滲ませた血を、
顔をしかめながら、じわじわと吸い取られてゆく。
床まであるスカートの中に隠した白のストッキングには、
いくすじもの裂け目を走らせたまま。

その傍らで身を横たえた母は、父に介抱されながら。
白目をむいて、肩でぜぇぜぇと喘ぎをくり返している。
ワンピースの肩先を濡らした血は、あらかじめ脱いだジャケットで隠れるからと父に慰められて。
でもこれは、隠しようがないわね・・・と。
薄墨色のストッキングに鮮やかに走った伝線を、しきりに気にかけていた。

ゆう子さん素敵ね。処女の生き血を召しあがれるのは、ゆう子さんの身体だけなんですもの。
妻は嬉しげに、妹をほめながら。
ひざ小僧の下までずり落ちた肌色のストッキングを、けだるげに引き上げてゆく。
ストッキングのあちこちに撥ねた精液の、濁った輝きをふしだらにてからせたまま。

話す姑 話さない嫁

2011年12月28日(Wed) 08:00:49

はじめてあのひとに、咬まれたのは。
嫁が”献血活動”に励みはじめてすぐのころ。
夫ともども、咬まれてしまった。

嫁の若い肉体を目当てに家に出入りするようになったあのひとは。
わたしの熟れた血も、あてにするようになっていた。
咬まれていくうちに、ジンジンとした疼きがとまらなくなって。
気がついたら夫に、きょうは献血活動に行くから・・・そういって。
嫁と連れだって、お出かけするようになっていた。
もちろん、おめかしをして。

エッチな要求があることは、察してもいたし、覚悟もしていた。
主人のまえで血を吸われているときも。
あのひとはブラウスごしに、それはいやらしいまさぐりを忍ばせてきたから。
そして、さいしょのお出かけで、なんなく操を奪われてしまっていた。
主婦相手に、遊び慣れたひとだった。

わたしは夫に話をして、それから出かけていく。
きょうも、あのひとの好みの、薄い黒のストッキングを脚に通して。
帰宅した時、足許に妖しく流れるストッキングの伝線を、
夫は見るともなしに、視るのだろう。

嫁は息子に、なにも話していません、という。
羞ずかしいらしいのだ。
そういうものなのか。
わたしが齢をとったからなのか。
嫁のほうが純なのか。
わたしが夫に正直すぎるのか。
嫁は裏表のある人間なのか。

なにも知らない息子は、きょうも愛する妻に手を振って出勤していく。
そして、息子の足音が遠ざかったのを合図に、女ふたりは着かえをはじめる・・・

姑の見立て。

2011年06月21日(Tue) 08:21:52

お向かいの柴造さんに、美奈子を姦らせちゃった。
息子はいとも潔く、あっけらかんと。
羞じらう嫁を、かたわらに。
わたしたち夫婦に、そう宣言する。
移り住んだばかりのこの土地は、吸血鬼の棲む村だった。

ええーっ!?だいじょうぶなのっ?
身を揉むようにして案じた妻も、打って変わって。
ウン、あのひとなら、だいじょうぶ。
どうしてだい?って訊くのは、愚問に属するのだろう。
あれ以来。
嫁のことだといいながら、柴造さんと面会をくり返す妻。
どうやら、嫁と姑。ふたりのスカートは。
おなじ色の精液で、染め上げられているらしい。

母さん、これからホテル?

2011年06月20日(Mon) 04:10:22

キキキッと、タイヤのきしむ音がして。
一台の車が、聡太のまえで停車した。
びぃーんとかすかな音がして、窓が開く。
なかから顔を出したのは、母の和代だった。
あら、ソウちゃん?おかえりなさい。
家は車の来た方角にあって、数十メートル先にかすかに軒先がみえる。
運転席の男に聡太はちらっと目をやりながら。
これからお買いもの?と言わんばかりにさりげなく、行く先を聞いている。
母さん、これからホテル?

よう。
運転席の男が、わざとらしいなれなれしさで、聡太に小手をかざして応えてくる。
よう。
聡太もイタズラっぽく笑いながら、男に応えていた。
これからホテル?
うん、そうだよ。
男はてらいもなく、情夫の息子にそう答える。
年輩だが精力家らしい彼の、ロマンスグレーの髪が、ひどくツヤツヤと輝いていた。
やるねぇ。
聡太が冷やかすように、男に応える。
ふつうに、同性の目線だった。
パパはきょうから、出張だよね?
そおね。お勉強して、待っていてね。
お母さんはわざとらしく「お勉強」に力を込めてそういうと、運転手を促している。
がんばれよー。
走り去る車に、聡太はご近所にきこえるような大きな声で手を振ると。
ちょっぴり自棄になったような顔をして、半ズボンの下のハイソックスを、勢いよく引っ張り上げた。

キキキッ。
タイヤの音がきしむ音がして、聡太の目のまえに停まっている。
三十すぎになった聡太は、背広姿の身をかがめて、わざとらしく助手席を覗き込む。
窓のひらいていたい助手席に座るのは、まだ二十代の妻である孝枝だった。
運転席にはあの男が、ふさふさとした真っ白な髪の下、血色のよいおでこをてかてかさせている。
よう。
男が小手をかざしてあいさつをすると、
よう。
聡太もまた、小手をかざしてこたえている。
これからホテル?
妻にではなく、男への問いに。
ええ、そうよ。
聞えよがしに、応える妻。
お母さん、じゅうたんのうえに、転がってる。
男はイタズラっぽく、ウィンクを投げてきた。
姑を凌辱して気絶させ、若い嫁を拉致して犯そうとしているんだね?
聡太の咎め口調は、どこか愉しげだった。
スカートの裏、ぬらぬらよ。お義母さま。
助手席の孝枝は、隣席からなれなれしく伸びてきた腕に、心地よげに抱かれながら、婉然と咲(わら)う。
またがっちゃおうかな。
あたしが留守の間だけよ。
てらいもなく受け答えする妻が、我が家の性風俗にすっかりなじんでいるようすを見届けると。
うふふふふふっ。
男ふたりは、共犯者の笑みを浮かべている。
走り去る車のけたてる砂煙に、聡太はうるさそうに目を細めると。
年甲斐もなくイカされちゃった母の介抱をしに、自宅へと足を向けた。
案外と。
父が先回りして、介抱を始めているかもしれなかった。
けれどもきっと、彼女をベッドに送り届けるのは、息子の役目。
十数年前、流儀を教えてくれた父はきっと、そしらぬ顔をしながら、部屋の外からようすをうかがうにちがいない。
父さんね、先にホテルに着いていたのよ。
あのときの母の、誇らしげな横顔が。
いまの孝枝に、二重写しになっていった。


あとがき
母と妻を、嫁姑ながら。
年配の男性にモノにされてしまう。
寝取られのひとつの理想像 でしょうか?^^

あんたのお袋さんに、惚れちまったよ・・・

2011年02月20日(Sun) 09:23:47

新婚初夜のベッドの上。
花嫁の純潔を奪った褥から、降りもしないうちに。
あいつはぬけぬけと、言ったものだ。
あんたのお袋さんに、惚れちまったよ・・・
あの留袖姿。たまんねぇな。
許せない言葉のはずなのに、つい受けとめてしまったのは。
あいつがしんそこ、母にぼう然となってしまったらしかったから。
それから、
母が汚される。
そのことに、いま汚され抜いて愉しみはじめてしまったゆう子の姿が、二重写しになったことに。
ひどく昂奮を覚えてしまったから。

親父がなかなか、許してくれないと思うよ。
話しあって、仲良くやってくれよ。
ともかくさ。
今夜はゆう子に、専念してくれよ。

ゆう子がちょっと、不快げだったのは。
夫を裏切る行為を強要させられた、ということよりも。
自分の相手をしながら、ほかの女のことを言いだす男が、許せなかったからだろう。
その晩ゆう子は、狂わされて、花婿よりもひと足先に、獣になっていた。

ひと月後。
俺のいないウィークデーの真っ昼間に、毎日足しげく新居に通ってくる彼は。
どこでどう時間をつごうするのか、親父とすっかり意気投合しちゃっていて。
ふた月後。
お袋とベッド・インしたそのホテルに、親父に着替えを持ってこさせる関係になっていた。
週末は、あんたら夫婦のために取っておくんだ。
恩着せがましくそう抜かしたあいつは。
こんどはゆう子の両親にまで、すり寄っていって。
お嬢さん、お母さん似なんですね。とかなんとか、言いながら。
義父のまえ、義母のスカートを体液でぬらぬらにしていった。

苦笑いする男三人に、横っ面で会釈をしながら。
女ひでりと称する逞しい肉体で、三人の人妻を辱めてゆく男――――
セックスそのものよりも愉しめるかもしれない快楽が、
平穏な三つの家庭を、毒液のように浸していった。

嫁を淪落に堕とすとき。

2011年01月25日(Tue) 08:15:31

ひとりで着付けができるのは。自慢のうちに、なるらしい。
帯をきっちりと、締め直しながら。
妾(わたし)は障子ごしに、隣室の気配をうかがった。
たったいま。
妾(わたし)の婦徳を、小気味よいほどに汚し抜いた男が。
息子の若い嫁の肉体を、愉しんでいる。
障子一枚隔てた、向こう側。
切なげな吐息が、露骨なほどに。昏(くら)い歓びを滲ませていた。

おぼこ娘のように、おずおずとしていた若い嫁は。
長襦袢を着乱したままの妾(わたし)の介添えに、素直に従って。
洋装の礼服を、一枚一枚、脱がされていった。
取り去られたジャケット、スカーフ、ブラウスと。
部屋の隅に、順々に投げ出されていって。
徐々にあらわにされてゆく、やわ肌の輝きに。
羞じらいを隠せずに、両手で顔を覆いながら。
さいごにスカートを取り去るときには、
さりげなく自分から、脚を引き抜いていった。
黒のストッキングに映えた、嫁の白い脚が。
そのときほど淫靡に映ったことはない。

当家のしきたりですからね。嫁である以上、貴女にもしたがっていただきます。
冷たく言い放ってやるつもりの、その台詞が。
なぜか昂りに、震えるようになっていた。
それでは―――
男は冷徹な処刑人のように。
むき出しになった嫁の両肩に、手をかけて。
器用に畳のうえに、まろばせていった。

あれほど大人しやかだった嫁が。
絶頂に昂って、別人のようにはしたなく身体を開いていくのを見届けて。
足音をひそめるように、廊下を歩いていくと。
母さん―――?
背中から、息子が声を投げてきた。
離れでなにが起きているのか、知らぬ息子ではないはずだった。
あちらには、お近づきになりませんように。
しっとりとした声が、意外なくらい落ち着きを取り戻していた。

ふり返ると、古びた離れはなにも起きていないようにひっそりと、庭の隅にうずくまっていた。
その昔。
まだ若妻だった妾(わたし)の理性を呑み込んでいった、あの妖怪のような古宿は。
さりげない静けさを、とりつくろいながら―――
いま、新たな獲物に満足しきっているのだろう。


あとがき
代々伝わるいけないしきたりに、若い嫁を引きずり込んだお姑さんのお話です。^^
前作のあとがき描いているうちに、「描けそうだ」と感じたので、一作を。

女房の浮気癖

2011年01月25日(Tue) 08:02:45

妻の浮気章には、ほとほと困っていましてね。
その若い旦那と知り合ったのは、とある地下街の酒場だった。
旧家の出の御曹司の、お忍びの夜遊び―――
俺はひと晩、男につきあってやった。
もちろん、俺流のやり方で。
男の血など、めったにたしなまないのだが。
この街に流れてきたばかりの俺に、選択の権利はまだなかった。
旧家の血というやつは、多かれ少なかれ、饐(す)えている。
けれども、男の首すじから唇を放したとき。
俺はすでに、はっとするものを覚えていた。
たぶん、母親の血だろう。
豊かに優れたものが、男の体内にしっかりと息づいていた。

で・・・俺にどうしろと?女房の浮気癖を治せとでも?
きみならできるよ。
育ちのよいぼんぼんらしい無責任さを、男は並びの好い白い歯にきらきらさせていた。
できるんだろう?
覗き込んでくる目つきに思わず、
図星だよ。
俺はうっかり、応えてしまっている。

若妻の浮気癖は、ぴたりとおさまった。
なにしろ女房殿は、出逢ったばかりの俺にぞっこんになって。
一も二もなく、俺のオンリーになってしまったのだから。
だんなを立てろ。そうすればたいがいのもめ事は収まるのだ。
美しいけれども思慮のなさげなその若妻は、素直さだけは持ち合わせていた。
だんなの留守宅に俺をあげて、ワインを注いで。
ことのついでに自分の体内に流れている甘い美酒まで、振る舞いながら。
女は言ったものだった。
こないだ家をあけたとき、あのひと一睡もしないで待っていたんですって。
男の心の裡に、ある種の歪んだ昂奮のあることを。
俺はとっくに、見抜いてしまっていたけれど。
この女の言い草もきっと、いくばくかの真実を含んでいるのだろう。
女はしゃあしゃあと、語りつづける。
それいらい、浮気しちゃうのかわいそうかな・・・って、思えるようになったの。
だからこれからは、あなたひとすじでイクからねっ。
あんたに座布団一枚。
そういう思いを込めて、俺は女をソファから払い落し、じゅうたんのうえに組み敷いた。

男の母親は、まだ五十そこそこだった。
女学校の時に、見合いして。十九の春に息子を産んでいた。
横暴な旦那は、すでにこの世とおさらばしていたけれど。
ひととおりでなかったはずの苦労を、顔の小じわにして刻み込むことがなかったのは。
天性の賢明さのせいなのだろう。
息子に引き合わされた俺をひと目見て。
いけないかたのようですけど・・・息子を幸せにして下さっているのでしょうね。
俺のいけない正体を、さりげなく上品な言葉でくるんでいきながら、
挨拶の接吻をするそぶりを見せた俺のため、
ほっそりとした手の甲を、差し出してくれた。
俺が久しぶりの恋に落ちたのは、その瞬間だった―――

なん回もなん回も、夫の写真にわびていた。
きっと、幸せの「し」の字も与えてくれなかったであろう夫のため。
守りとおしてきた女の操を、それはいとおしみながら。
夫婦の寝室から身勝手にも俺を締め出した若妻の、身代りにと。
いつも身に着けている黒のドレスを、妖艶に映えさせてくれたのだ。
猿臂を背中にまわした、そのときに。
吸血以外の目的で、卑猥に昂る唇を、彼女の首すじにあてたときに。
(すでに彼女は俺に献血をしてくれるようになっていた)
そして、スカートの奥に、ただれた肉剄を衝き入れた、その瞬間に。
女は不意にしゃくりあげ、身を震わせて涙ぐんだ。
その楚々とした、奥ゆかしさに。
けしからぬほど夢中になってしまった俺は、ひと晩じゅう―――
夫を弔うための清楚な装いを、汚れた粘液に浸しつづけてしまっていった。

美南子に、子供ができたらしいよ。
若旦那は嬉しげに、俺にウィンクを投げてきた。
すっかり女遊びの身についたこの男は、身重の妻を残して夜遊びに出かけていく。
たいがいにしなさいよ、お坊ちゃん。
からかうように、そういうと。
どちらの子なんだか。
そういいながら、月の計算だけはおこたりなくしたふたりとも。
子供が夫の種であることを、知っている。
ほんとうは。
この家の血を、きちんと残すには―――
俺がきみ母さんをはらませるほうが、適切だったのかもしれないな。
鼻歌交じりに遊びに出かける若旦那の背中を横目に、俺は首から提げるようになったロケットを、開いてゆく。
淑やかに透きとおるほほ笑みの主は、齢を感じさせない若々しさを、写真のなかでも誇っていた。


あとがき
そっちかい・・・な展開のお話だったかも。(^^ゞ
たいがい若い嫁のほうが淫乱で、引き止め役の姑は貞淑で。
戸惑いながら、欲情にまみれるようになっていく。そういうパターンが多いのですが。
時にはもの慣れた姑に、初々しいおぼこ娘のような新妻が巻かれてゆく みたいなお話も、愉しいかもしれませんね。
・・・と、いけないひとりごとを、ひとくさり。 笑

真っ赤なドレスと黒の礼服

2011年01月18日(Tue) 07:14:40

ゆう子さん、いけないわ。
血を吸うかたのまえで、真っ赤なドレスなんて。
口を尖らせる姑は、夫を弔うための黒の礼服。
けれどもふたりは、知っている。
真っ赤なドレスの下、てかてかと輝く肌色のストッキングも。
漆黒のスーツの下、清楚に透きとおる黒のストッキングも。
血に飢えたものの目には、ひとしく淫靡に映える ということを。

ゆう子さん、だめじゃないのっ。そんなにいやらしい声立てちゃ・・・っ。
お義母さまこそ、そんなにふしだらに脚をじたばたさせちゃって・・・っ。
思い思いに群がってくる、複数の吸血鬼を前に。
嫁と姑とは、お互い口を尖らせながら。
夜の訪問客の欲望に、自ら正装を乱してゆく。

出ていきにくいね。
たしかにそうですね。
首すじに痕を残した、父と子は。
お互いの妻が乱れ堕ちるさまに、昂りの目を添わせてゆく。

分け前をくれるって、ほんとうですか?
さあ・・・話半分のほうが、賢明だろうね。
訝る息子に、肩をそびやかす父。
部屋から出てきた獣たちは、指先についた血を、
ふたりの唇に、しみ込ませてやった。
ま・・・たんのうしましたよ。
苦笑交じりの父子に、ひと言「すまないね」と言い捨てて。
来な。これから隣のお宅で二次会だ。
其処ではきっと、ほんとうに分け前にあずかれるだろう。
姑に兄嫁に弟の許嫁に女学生の娘。
吸われるべき血液は、たっぷりと用意されているのだから―――

若いひとは・・・

2010年08月04日(Wed) 08:03:45

若いひとは・・・思い切りもいいものですね・・・
ストッキングをずり降ろされた脚をばたつかせ、妻が乱れるのを目の当たりに。
母は迫って来る男どもに、ちょっとのあいだ、ためらいを見せていたけれど。
やがて苦笑いする父を前に、羞ずかしそうにブラウスのタイをほどかれていった。
他愛ないものだね。
グラスを片手に、妻の痴態を見守る父。
嫁につづいて、姑までが。
思い切りよくなるのに、そんなに時間はかからなかった。

裸足になったつま先。
脱ぎ捨てられた二足のストッキングは、部屋の隅っこでとぐろを巻いている。


あとがき
状況をあまり考えずに、描いてみました。
たぶん父と息子は、男どもの共犯です。
より仲良くなるために、自分たちの妻を分かち合う気分になったのでしょうか?

靴下三色

2010年08月04日(Wed) 07:51:06

妻が脱ぎ捨てたパンストは、サポートタイプ。
母の脚から抜き取られたのは、昔ながらのなよなよパンスト。
わたしのひざ下を覆っているのは、紳士用のナイロンハイソ。
紳士用だって?ずいぶん派手な光沢だね。
ベッドから抜け出してきたばかりのあいつは、そんなふうにわたしのことを冷やかした。

おまえの靴下が、いちばんエロいな・・・って、いいながら。
妻のみならず母まで狂わせた一物を。
わたしの足許に、なすりつけてくる。
薄いナイロンごし。
逆だった剄(つよ)さに、ゾクッとした。

きれいにしてもらおうか。
妻と母を辱めた、魔性の肉を。
唇でたんねんに、ぬぐってみる。
饐えたような芳香―――
いつか屈辱は、鳥肌立つほどの愉悦になってゆく。

最愛の女たちに注がれる、熱い粘液を。
口で味わう愉しみに耽る。
羞恥心を忘れるのに、そう時間はかからなかった。
こんどはいつ、来てくれる?
そう願うわたしの恥ずかしい仕草を。
物陰から窺う、裸体に剥かれた牝たちの視線が、ひどくくすぐったい。

一夜の差。

2010年07月22日(Thu) 06:54:16

妻は強姦され、母まで操を奪われた。
一夜明けて。
嫁と姑は、嬉々として。
苦笑いを浮かべる夫たちを横目に、
共犯者同士のくすくす笑いを交わし合いながら。
今夜お相手をする順番を、くじ引きしている。


あとがき
ジャンルは「短文。」にしようかとおもいました。(^^ゞ

母の嫁入り。

2010年07月20日(Tue) 06:57:02

おばあちゃん、みたいなものでしょうね・・・
父の言い草に、男はゆっくりとかぶりを振った。
妻をものにし、いままた母までも毒牙にかけた男は。
わたしたちに屈辱を強いながら。
どこかで慰めも、もたらそうとしている。
楚々とした風情が、たまらないのですよ。

夫婦のベッドにむぞうさに投げ込まれ、ひと晩じゅう凌辱のかぎりを尽くされた妻は。
いまは白目を剥いたまま、あお向けになって静かになっている。
大奥様にも、そろそろ静かになっていただきましょうか?
男の含み笑いに、仕方ありませんね・・・父はいつものように、寛大な夫として振る舞っている。
永年連れ添った妻が、無理強いに強いられて、畳のうえにはじめて操を散らしたとき。
縛られた父は、視ることを強いられていた。

泣くことは、ないのだよ。
泣きじゃくりながら犯される母を、なだめながら。
忘れてしまいなさい。
忘れることが、できなければ。
むしろ、愉しんでしまいなさい。
そんな練れた言葉を、父の口から聞こうとは。
強がりに、口にしたのだろうか。
屈辱をあらわにしたくないばかりでは、なさそうだったが。
そこから先は、息子のわたしの知るところではなかった。

おや、きょうはお出かけにならないのですね?
男は冷やかすように、父を見て。
父はくすぐったそうに、肯定の頷きをかえしていく。
ありのままをおっしゃい。
イタズラっぽい夫の声色に、母は顔を赫らめている。
あなたは来ないで。
さすがにわたしのことを、遮る母は。
瑶子さんの介抱、してあげるんですよ。
取ってつけたように、そんな言い訳を口にする。

ふふふ・・・
喪服姿って、いいですね。
両親の部屋から、そんな声が洩れて来る。
いまごろ母は、喪服のスカートをたくしあげられて。
うら若ささえ秘めた、楚々とした黒靴下の脚を。
なぞるようにねぶりつけられる唇に、ためらいながらもゆだねていっているのだろうか。


あとがき
三連休のときには、すっかりお休みで。
連休明けに、四連発。
われながらみごとなまでに、正直な反応です。(^^ゞ

選択肢。

2010年07月20日(Tue) 06:47:07

やだーッ!えっち・・・
妻の非難は、男ふたりに等分に向けられている。
夫のまえで自分を犯そうとする、情夫にも。
それを目の当たりにして、昂りはじめているわたしにも。

こういう関係になって、どれくらいになるのだろう?
男はわたしたちの日常に、ひっそりと入り込んできて。
いつの間にか侵蝕を広げていって、すべてを塗り替えてしまっていた。
たぶらかされた若夫婦は、
妻はうら若い血潮を好んで男に啜らせて。
夫は初めておぼえる異形の昂りに、男への服従を誓っていった。

箱入り娘で、嫁に来て。
苦労しらずの、良家の若妻となって。
いつも淑やかで、控えめな妻が。
そのときだけは、別人のようになる。
花柄のワンピースを、腰までたくし上げられて。
背後からずぶずぶと、侵されながら。
逆立ちするほどそそりたった、夫以外の一物を。
根元までずっぽりと、受け容れていって。
腰のうごきを、ひとつに合わせていく。

あっ、いやらしい。そんなとこ・・・
イヤだ。主人のよりも、大きいじゃない・・・
あ~、イッちゃう。イッちゃうっ!
そんな言葉、
わたしとのベッドのうえでは、ついぞ口にしなかったはず。

夫婦のベッドのうえ。
脱げかかった肌色のストッキングの脚を、ばたつかせて。
やがて大きく押し拡げられた脚のすき間に、浅黒く逞しい臀部を、沈み込まされてゆく。
そんな恥辱以外のなにものでもないことを。
わたしはいつから、恥知らずにも見つめるようになったのか。

そういえば。
嫁の乱行を留めるはずの、彼女の姑は。
黒の礼服を、着崩れさせたまま。
隣室であお向けになったまま、気絶しているはず。
男を受け容れる、大またを開いた姿勢のまま。
戯れに剥ぎ堕とされた、黒のストッキングは。
帯のように太くなった裂け目を、スカートの奥にまで走らせていて。
つい先日まで夫にしか許していなかった白い肌を、あられもなく露出させている。
父は永年連れ添った妻があきらめたように目を瞑ると、
なにも視なかったていにして、外套片手に出かけていった。

視さえしなければ、
そこにいるのは、昔どおりの貞淑な妻。
視てしまえば。
そこでほほ笑んでいるのは、妖艶な娼婦と化した、ひとりの女。
いずれの選択が、賢明なのだろうか―――?

狡い大人の言い訳?

2010年07月07日(Wed) 07:43:54

寝取られではないのだよ。寝取らせているんだよ。
寝取らせは、崇高な奉仕の精神なんだよ。
父のそんな言い草を、狡い大人のいいわけだと思っていた。
ずっとそう、思い込んでいた。
けれども父に伴われて出かけていく母は。
よそ行きのスーツに、ひきつれひとつないストッキング姿。
好んで装っているようで。
愉しげな含み笑いは、大人の色香を秘めていて。
明けがた、やはり父に付き添われて家に戻ってくるときは。
素足になったふくらはぎに、白く濁った粘液をぬらぬらしたたらせているのが、なまなましかった。
視てはならないものを視てしまったような、罪悪感のなかに。
なぜか心奪われるときめきを、覚えたわたしは。
さらなる罪悪感に駆り立てられていた。

それからなん年、経ったのだろう?
そんなわたしも、いつか同じ行為に目ざめていった。
しげ子さんを紹介するなら、早いほうがいいよ。なるべくなら処女のうちが―――
云いさした父は、途中で言葉を飲み込んだけれど。
いまではわたしの一家にまといつく黒影の主の正体を、察してしまっているわたし。

彼はまず、父を襲って、首筋に痕を残して。
そんな父はためらいもなく、十なん年連れ添った最愛の妻を、彼に引き合わせていた。
血に飢えた唇を、若い女の生き血で濡らすために。
寝取らせは、奉仕なのだよ―――
母を愛していればいるほど、その行為はきっと値打ちのあるものなのだろう。
しげ子さんを伴って、初めてお邸にあがるとき。
父は愛用しているハイソックスを、そっとわたしに手渡した。
ぬらりとした光沢は、紳士用のそれとは思えなかったけれど。
わたしはためらいもなく、ぴっちりひざ下まで、引き伸ばしていく。

これから献血に行くの。しげ子さんもどう?
母はさりげなく立ち上がり、父も無言のすすめをまなざしで送る。
しげ子さんは戸惑いながら、これから姑と呼ぶべきひとの、あとに従う。

いかがでした?
エエ、お母様。
言葉を濁す未来の嫁に。母は意地悪く問いを深める。
この子にも、きかせてやってちょうだい。
しばらくためらったあと。
・・・宜しい感じです。
照れ隠しにあてがった掌が、うなじにつけられた痕を隠していた。

寝取らせなんだよ。奉仕の気持ちだよ。
父の諭す声が、いまでは救いに聞こえる日々。
すぐ隣に肩を並べるしげ子さんは、こざっぱりとしたワンピース姿。
肌色ストッキングのふくらはぎに唇近寄せてくる男への戸惑いを、まだ捨てきれなくて。
わたしに寄り添って、ギュッと痛いほど、掌を握りしめてくる。
ヌルヌルと吸いつけられた、不埒な唇が。
きょうもチリチリと、未来の花嫁の装いに、辱めをくわえていった。


あとがき
ストッキングを破かれる=肌を許す
この方程式は、短絡的?

告白と嘘と

2009年11月17日(Tue) 07:57:50

こんや、あなたを裏切ってきてもよろしいかしら?
夕暮れ刻。猫のようにすり寄って来る妻に。
わたしはわざと聞こえないふりをしていると。
さりげなく股間を擦ってくる掌をズボンのうえに感じて。
ふふふ・・・
妖しい笑みが、通り過ぎてゆく。
若いひとたちは、ほんとうに露骨なんですね。
母はちょっと咎めるような、内心羨ましそうな、そんなため息をつきながら。
隙なくおめかしをして出かけてゆく息子の嫁の後ろ姿を、見送っている。
黒のジャケットのなかを彩る、濃い紫のサテンのブラウスも。
黒のタイトスカートの下を彩る、薄墨色のストッキングの光沢に包まれた脚も。
裏切ってまいりますわね。
そう告げるほどに、妖艶だった。

いやですわ。あなたったら。ほんとうに、なにもなかったんですよ。
ええ、ええ。誓ってあのかたとは・・・
あなたに対してやましいことは、なにもございませんでしたのよ。
必死で言い募る母は、それでもうろたえを隠すことができないでいる。
―――きみ。いつもより色っぽいじゃないか。
―――これから浮気に行くんだね?
―――おや、だいぶ遅いお帰りだね。
―――もしかして、浮気してきたの?
明らかに面白がっている父は、露骨にからかい口調なのに。
そんなことにさえ気づくゆとりを失っている母。
お義母さま。案外純情なのですね。
ふつうは、よその男性に逢いに出かけて朝帰りをしてきたら。
髪の毛に藁なんか、つけてきたら。
ストッキングを伝線させたままにしていたら。
ばれてしまいますのに・・・ね?
ひっそり笑う妻の足許も。
鮮やかな伝線がひとすじ、つつっ・・・っとスカートの奥にまで忍び込んでいる。

正直な告白と、嘘と。
どちらがより夫を守り、あるいは昂らせるものなのだろう?


あとがき
―――あなた、今夜浮気してきてもいいかしら?
奥さんにそんなふうに持ちかけられて、どきり!となさった御経験、ございませんか?^^

ストッキングのつま先に

2009年07月11日(Sat) 18:59:30

あっ、うう・・・っ・・・オオウゥ・・・ッ
さいごのひと声は、獣じみてさえいた。
細めに開けた障子の向こう。
喪服姿の母は、相手の男に抱きすくめられながら。
じょじょに、ゆっくりと、姿勢を崩していった。
男の唇は、母の首筋にしっかりと吸いつけられていて。
口許からはひとすじ、紅いしたたりが。
帯のように、ブラウスの襟首に流れ込んでいた。
尻もちをつきながらも、母は気丈にも、男をへだてようとして。
突っ張った両手で、逞しい肩を抑えつづけていた。
長めの黒のスカートから覗いた脚は、薄い黒のストッキングに包まれていて。
足指を落ち着きなく、折り曲げたり伸ばしたりしていた。
つま先を包む薄手のナイロンにところどころ走る、かすかな引きつれが。
なぜか酷く鮮やかに、網膜に灼きついていた。

母の生き血は、男の口に合ったらしい。
父の写真のまえ、コクコクと喉を鳴らしながら、
うまそうに呑み込まれてゆく音が、
子供心にも、昂りが伝わってきた。

それからどれほど、刻が過ぎただろうか。
コクコク・・・コクコク・・・
ひそやかな音をたてて目のまえでむさぼられているのは、最愛の妻の生き血。
写真たてのなかにあるわたしの顔は、取り乱す妻の痴態を、ひどく冷やかに眺めていた。
あお向けの姿勢のまま、開いた脚は。
母のときとおなじくらい薄い、黒のストッキングに染められていて。
ヒクヒクと昂る足指も、母のときとおなじように、せわしく折られ伸ばされていた。
つま先を横切る、ストッキングの引きつれさえも、おなじようになまめかしくて。
妻は羞じらいながら、男の唇を礼装の貼りついた太ももに許してゆく。
ぴりっ。
鋭く広がった裂け目とともに。
あらわになった白い肌は、すでに情夫の侵蝕にゆだねられていった。

わたしの血を吸い取ったにくい男が、わたしの代役を演じはじめているというのに。
この昂りは、なぜだろう?
傍らに、幻影のように浮かびあがる、半透明の影。
影の主は、なつかしい輪郭を描いていて。
男のほうは、苦笑を浮かべながら。
うまくでかしたね。と、囁きかけてきて。
女のほうも、薄っすらと笑みながら。
沙紀さん、案外いやらしいのね・・・
息子の嫁の痴態に、あからさまに眉しかめていた。
嫁と姑とは、世界をへだててもこういう応酬をするのだろうか。

特別なお客様

2008年08月04日(Mon) 06:48:07

お母様には、、お目どおり叶いません。特別なお客様をお迎えです。
女中頭のきわが、鄭重に頭を垂れる。
小柄な着物姿に、真っ白な髪。
ほっそりとした身体つきが弱々しくさえ映る年バイの女中頭。
相手が若主人であるとはいえ、一歩も退かない断固とした態度が、頭を垂れた小柄な体つきに輪郭から、ありありとにじみ出ていた。
そう・・・
少年はちょっぴり口をすぼめて、それでも聞き分けよくまわれ右をした。
階上の書斎で、お父様がお待ちでございますよ。
いつもの気さくな声色にもどったきわに、振り向きもせずに頷いた少年は、
けだるそうに俯きながら階段をあがっていった。

書斎のドア越しお父様にただいまを告げると、とおりいっぺんなおかえりが、無関心そうな背中からかえってくる。
勉強部屋に戻ると、留守中とどいたらしい新刊の学習雑誌が、
これを読みなさいとばかりに、机のまん中においてあった。
少年はそれを取り上げると、無関心にぱらぱらとめくって、すぐじ自堕落に放り投げた。
まっ更になった机の上に、真っ白なハイソックスの脚を載せる。
そんなお行儀のわるいこと。
お母様が見ているまえでは、決してしないことになっていたのだが。

あぁ・・・
部屋の隅っこから、だれかの声がする。
ななめ下の、声のしたほうをじいっと凝視した少年は、いすから飛び降りて、
長い廊下越し書斎のようすが変わっていないのを確かめると、
足音を忍ばせて階段をおりた。
きわは、どうやらべつの仕事に自分をかり出したらしい。
とざされた母の部屋から少年をへだてる空間に、邪魔者はいなかった。

充血した目は一点を見つめたままクギづけになっていて。
手はしぜんに、半ズボンの股間に伸びていた。
ひざ小僧まで伸ばしたハイソックスの脚をもじもじさせながら、
少年はそれでも、ドアの隙間から見える光景から目を離せないでいた。
いつもきりりと装った母が。
漆黒の洋装を着崩れさせて、白い胸をあらわにしている。
豊かな乳房に這わされた男の手は、指を埋めるばかりに、もっちりとした肌をとらまえている。
母ははぁはぁと苦しげな息遣いに肩を震わせながら、
ひそめた眉にも、食いしばった口許にさえも、愉悦をありありと滲ませていた。
薄墨色のストッキングが、ふしだらにずり落ちて、くしゃくしゃになってたるんでいた。
息子の靴下がちょっとずり落ちていても厳しく叱る母親は、そこにはいない。

ぽん、と肩の上に置かれた掌に、ぎょっとして振り向くと。
父は蝋人形のように、白い顔をしていた。
こっちへ来なさい。
犯罪を見つけられたようにすくんでしまっていた少年を、父親はとがめない。
覗いたの。初めてでは、なさそうだね。
素直にこっくりと、頷くと。
父は「落ち着くよ」といいながら、まだ飲んだことのないコーヒーをすすめてくれた。
苦い薫りのする湯気がけむったくて、少年はちょっとむせ込んだ。
ははは・・・
乾いた声で笑いながら、父はひと言囁いて、部屋から立ち去った。
―――ばれるとお母様に、お叱りを受けるからね。
そうか、ばれなきゃいいんだ・・・

ひとつひとつ外されてゆく、ブラウスのボタン。
少しずつせり出してくる、胸元の白い肌。
きちんとセットした髪を、惜しげもなく振り乱して、あられもなく恥らう横顔。
白くほっそりとした脛をいつも清楚に透きとおらせている薄墨色のストッキングが。
貪欲な指にまさぐられ、欲情たぎる舌になぶり抜かれる。
あぁ・・・
ベッドのうえで寝返りをくり返しながら。
むき出しの太ももに、熱い粘液で浸している。
少年は時を経て、大人びた青年に成長していた。

婚約者の真央さんは、お昼すぎから家に招ばれていた。
けれどもお昼すぎはおろか、夕陽が空を淡く染める時分になっても、あらわれない。
いつも日傘を差して、古風な花柄のワンピースに装われた華奢なシルエット。
それが門前に現れないかと、わずかな音にも耳を澄ませていたのだが。
どちらへおでかけですか?
女中頭のきわが、あとを追いかけてきた。
職務に忠実なこの老女は、たとえ相手が館のあるじだったとしても。
自分の目論見に反する行動をとるものには、しつこいほどの追及を投げてくる。
青年は癇癖のある細面を、いつになくいらだたせて。
好きにさせてくれないか?
いつものように、素直には。行き先も用件も、告げようとしなかった。
けれども老女は正確に、若主人の行き先を察していた。
真央さまですか?真央さまでしたら、ご面会はかないません。
今夜、特別なお客様をお迎えになるのですから。
思わず口をすべらせてしまった老女は、めずらしく狼狽をあらわにして、後ずさったけれど。
青年は、老女をそっと行く手から押しやると、だまって帽子をかぶり、玄関に足を向けた。
顔色ひとつ、変えないで。

特別なお客様。
そのひとの来訪が告げられると。母はいつも、小娘のようにはしゃいでいた。
父はひっそりと書斎にこもり、訪客が辞去するまで、姿をあらわすことはなかった。
いま―――そのときの父の役割を果たそうとしている。
不義にあたります。あのかたをわたくし、裏切っているのです。羞ずかしい・・・
いつもの花柄のワンピースを、しどけなく着崩れさせて。
うら若い令嬢は、姑とおなじ行為に耽っている。
熱中しはじめている・・・その証しに、透きとおるほど初々しい肌は、生気に満ちたばら色に染まっていた。
お嬢さん。
素肌をおがませていただくのは、はじめてではないが。
突き刺すのは今宵が・・・初めてですな?
露骨な囁きに、羞じらいながら俯いた瓜実顔に、淫靡な輝きがよぎるのを。
少年のころにかえった青年は、いちずな視線で見つめつづけている。

特別なお客様。
今宵はどちらのお宅に、お邪魔するのでしょうか―――。