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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

輪廻 ~ある家族の年代記~

2017年05月30日(Tue) 07:34:11

吸血鬼に初めて抱かれたとき、そのひとはまだ二十代。
都会から転居してきたばかりの人妻だった。
先に血を吸った夫の理性を、まず狂わせて。
伴ってきた彼の若妻の貞操をゲットする権利をまんまとせしめた直後のこと。
身体をカチカチにこわばらせて、整った目鼻立ちを終始引きつらせていた。
ストッキングを片方脱がされて、スカートの奥を侵された瞬間、
キュッと眉を引きつらせ、涙ぐんでいた。
そしてすすり泣きをくり返しながら、奪われつづけていった。

「いらっしゃい。喉渇いていらっしゃるの?」
十年後。
女はミセスの余裕たっぷりに微笑んで見せ、主人は今夜戻らないのよと教えてくれた。
それは先刻彼女の夫から聞かされていたことだったけれど、
そんなそぶりは見せないで、わざとにんまり微笑みかえしてやる。
「エッチ」
女は吸血鬼の頬を思い切りつねると、自分の感情を押し隠して、
「息子はもう寝(やす)んでいます」
とだけ、いった。
早くもくつろげかけたブラウスのえり首からは、肉づき豊かな胸が熟した血色をたたえている。

「視ちゃったのか。しょうがないやつだな」
照れ笑いする青年のまえ。
吸血鬼は彼の母親から吸い取ったばかりの血潮を、まだ口許にあやしたままだった。
ここは二階の勉強部屋。
彼の母さんはまだ、リビングの真ん中で大の字になって、へろへろになってしまっている。
訪問着のスカートの裏地を、人妻が決して受け入れてはならないはずのあの生温かい粘液でびっしょり濡らしたままだった。
「じゃあ、おいしくいただこうかな」
吸血鬼が威圧的に、牙を光らせた。
青年はウキウキとした目で、さっきまで母親を冒していたその牙に見入っていた。
「おいしくいただいてくださいね」
目を瞑った青年の足許ににじり寄り、足首を抑えつけると、
吸血鬼は青年のふくらはぎを、ハイソックスのうえから強く吸った。
自分の身体をめぐる血潮を吸い取られるチュウチュウという音にウットリと聞きほれながら、
青年はゆっくりと、姿勢を崩していった。
気がつくと、半ズボンを脱がされていて。
鎌首をもたげた男の股間が、自分の秘部に迫っていた。
ギュッと歯を食いしばって、こらえる痛み――
その苦痛は一瞬で、あとは言い知れない快楽が、じわじわと身体じゅうにしみ込んでくる。
初めて血を吸われたときといっしょだ、と、青年は思った。
男は青年の思惑などつゆ知らず、というていで、なん度もなん度も青年の股間を抉っていった。
母さんが堕ちるのも、無理ないや。
青年は心からそう思い、母と吸血鬼との仲を取り持った父に、ひそかな称賛を送る。

「中條家の長女の貴代さん、知っているな?」
夫婦のベッドで、夫人をたっぷり可愛がったあと。
ゆっくりと身を起こしながら、吸血鬼はいった。
「京太のクラスの子でしょう?」
美奈代はけだるげな表情のまま、さぐるような視線を吸血鬼に投げた。
「そのお嬢さんを、先月堕とした」
「処女を奪ったの?」
「まあ、そんなところだ」
「まあ、珍しい」
「ほかにあてができたのでね」
フッフッと吸血鬼が笑う。
「アラ、捨てられちゃうなんてかわいそうね」
「そのかわいそうなお嬢さんを、拾って欲しい」
「どういうこと」
「あんたの息子の嫁にどうか?と訊いているのだ」
「あなたにお嫁入りした子を、うちの嫁として引き取れ・・・と?」
かなり屈辱的な条件の縁談なのに、母親は面白そうに目を輝かせる。
「私だって、主人がさいしょの男だったのよ」
暗に吸血鬼の目論見を軽く非難してみせたあと、
女は血を吸い尽された後のうつろな目を、天井にさ迷わせる。
「あー、でも・・・」
男は女が言葉を継ぐのを待っている。
「私、さいしょに抱かれるのも貴男だったらよかったなぁ。私の一番いいところ、全部あなたに差し上げたかった」
女は自分の言いぐさのなかにある答えに、初めて気づいたように顔をあげた。
「私の願望を、うちの嫁で実現するというのね?」
悪びれもせず頷く吸血鬼に、女は「エッチ」といって、情夫の頬を強くつねった。

この邸に彼女を連れてくるようになって、もう何回目になるだろう?
京太は血の抜けた身体をけだるげに横たえて、
貴代を伴って吸血鬼が消えた別室のほうを見やっていた。
この街では、まだ学生のころに、婚約を済ませるという。
親たちのすすめでお見合いをさせられたのは、まだセーラー服姿の同級生。
ずっと三年間を過ごした顔なじみのその少女は、特に仲が良くも悪くもなく、気心だけは知れていた。
親の決めた縁談に、否やはなかった。
彼はその縁談を、受け容れた。
すでに吸血鬼から直接すべてを聞かされたのに、巧みに言い含められてしまっていた。
吸血鬼が純潔を散らした少女を、未来の花嫁として受け容れる。
そんな立場に、マゾヒスティックな歓びさえ、感じていたから。
京太といっしょに邸を訪問するときは。
貴代は夏ものの制服の下、いつも黒のストッキングを履いていた。
それが嫁入り前に得た情夫を愉しませる装いなのだと、容易に察しがついたけれど。
京太は「似合うね」とだけ、言ってやった。
そう――きみと小父様は、似合いの不倫カップルだよね。

「気が向けば、覗いても良い」
仲良しの小父さんは、そんなことまで教えてくれた。
いままでは、覗く勇気がなかったけれど――
今初めて芽ばえた、どす黒い衝動が。
青年のなかでむくむくと、鎌首をもたげていった。
手の震えを抑えながら、ふすまの取っ手に手をかけて。
恐る恐る細目に開いたふすまの向こう――
黒のストッキングを片方だけ脱いだ少女は、
はだけた制服からピンク色の乳首を覗かせて、
ひそめた眉に甘い媚びをたたえながら、
未来の夫を裏切りつづけている。

新妻よりも母?

2016年12月06日(Tue) 08:09:55

吸血鬼の愛人を持ち、昼間から情事に耽るわたしの新妻に。
母はいつも顔をしかめていたけれど。
そのうち、吸血鬼自身を相手に、顔をしかめるようになっていた。
そう。
妻にそそのかされて、母を吸血鬼に引き合わせてしまったから。

お義母さま、まだお若いのにもったいないわ。
きっとお義母様の生き血は、あの方のお口に合うはずよ。
あなた、しっかりなさって。
お義母様を、お幸せにして差し上げましょうよ。
私、お義母様が一日でもお若いうちに、お義母さまの生き血をあの方に愉しませてさしあげたいの。
ね、あなたもそう思うでしょう?

吸血鬼に迫られて、首すじを咬まれ「ああーッ!」と叫ぶ母の姿に。
妻とおなじくらい、いやそれ以上に股間を熱くしてしまうのは、なぜだろう?
お義父さまはお気の毒だわ。だから私が、慰めて差し上げるの。
そういって父といっしょに妻が寝室に消えたあとも。
わたしは母の受難の場から、立ち去ることができずにいる。
パンストを片脚だけ穿いたあられもないすがたで、犯され抜いていく母は。
今夜もその姿で、息子のわたしを昂らせてしまう――

こういうことは、愉しんじゃったほうがいい。

2015年03月26日(Thu) 07:00:12

すっかり姦られちゃいましたねぇ。おふたりに。
母さんは自分を犯した吸血鬼に、そういった。
いつもと変わらない、声色だった。

まあ、まあ、しかたないでしょう。このあたりの風習だそうですね。
郷に入りては・・・って、申しますものね。
自分に言い聞かせるように、そういうと。
母さんは真紀子をふり返って、こういった。
こういうことは、愉しんだほうがいいの。

真紀子はべつの男に血を吸われ、姦られているさいちゅうに。
ずうっと悲鳴を、あげつづけていた。
けれども――
涙目の顔だちに浮かんだ表情は、いままでとは別の感情を、滲ませている。
一瞬白い歯をみせた真紀子に、母さんは「それでいいのよ」と言った。
姑を犯したばかりの男が目の前に立ちはだかるのを、真紀子はぼう然と見あげていた。
戸惑う真紀子に、母さんを犯した男が迫っていって。
母さんは、嫁を犯した男に、自ら唇を与えていった。

相手を取り替えあって情事に耽る嫁姑に。
おや、おや。あいつもなかなか、やるじゃないか。
白髪頭を掻きながら。
父さんはのんきにも、そんなことを呟いている。
永年連れ添った妻が、自分以外の男を、同時に2人も受け入れてしまっているというのに。
もっともぼくも、同じ立場・・・
2人めの男を相手に腰を振りはじめる真紀子を見つめ、
目線がクギづけになって、離せなくなっている。
真紀子のあしらいは、さいきんご無沙汰がちの夫婦の営みよりも、熱っぽかった。
それでいいんだ。
こういうことは、愉しんじゃったほうがいい。
母さんと似たような言い草だった。
やっぱり似たもの夫婦なのだろうか?

唇をせわしなくうごめかせ。
ふたりの女たちから生き血を啜り取ってゆく男たち――
旨そうだね。
ぼくが呟くと。
気に入ってもらえる方が、まだしもだな。
父さんも応えてくる。

ふたりの顔色がすっかり蒼くなったころ。
宴は終わった。
まだ吸い足りなさそうな男どもに、
母さんはまたいらっしゃいよなんて言っているし。
真紀子は最初の男とメールアドレスの交換を始めていた。

ここで男どもが出ていったら、間抜けだよな。
あけすけに挨拶でも、したいのだろうか?
これからも家内をよろしく・・・なんてふうに。
でもそんな衝動、わからなくもなかった。
こちらの気分を見透かすように。
母さんは真紀子に囁いている。

だいじょうぶ。
男のひとたちもきっと、今頃覗いて愉しんでいるから。

洋館の誘惑

2013年03月04日(Mon) 06:51:43

都会の郊外にあるその洋館の奥深くにある寝室は、ルイ王朝風の豪奢な造りだった。
学生時代にヨーロッパ旅行をして以来、税所江津子がこんな室内を目にするのは、たぶんはじめてのことだった。
その彼女はいま、ベッドのうえにいる。
訪れたときのスーツ姿のまま襲われた彼女は、ブラウスやスカートをまだ身に着けたまま、犯されているのだった。
すぐ傍らにある古風な椅子の背もたれには、江津子の着てきた黒のジャケットが、きちんと掛けられている。
綺麗な洋館に伺う。
そう誘われた彼女は目いっぱいおめかしをして、此処に来たのだ。
新品のガーター・ストッキングは彼女の脛を淫靡な輝きで包んでいたが、
ストッキングのうえからするりと抜かれたショーツはベッドの傍らに落ちていて、深紅の絨毯のうえにショッキングピンクの彩りを添えていた。

初めての痛みに打ち震えながら涙を浮かべた江津子は、歯を食いしばってかぶりを振っていた・・・はずだった。
「痛い」
江津子がそういうと、
「じきに慣れる」
そんな応えがかえってきた。
たしかにそうだった。
二度三度・・・とくり返すうち、痛いだけだったはずの衝撃は、じょじょにきわどい疼きのようなものを濃くしていって、さいごに苦痛が快感にすり替えられていった。
「相性がいいようだ」
いい気な言いぐさに女は、
「そうね・・・」
仕方なくそう、応えていた。
相手の男は、日本人ではない。
銀色の髪の下の広い額、そして彫りの深い目鼻立ちがそう語っていた。
かといって純粋なアーリア人種でないことは、逞しい筋肉を蔽う褐色の肌が示していた。
齢のころは、三十くらいだろうか。いや、もっと上だろうか?案外江津子の父と、同年齢くらいかもしれない。
逞しさとしなやかさによろわれた老練な手管が、彼の年齢をわからなくさせている。

しだいに意気投合し始めた江津子はしかし、(これでいいはずはない)と、思っていた。
結婚するまでは肌を許さない・・・いまどきではないかもしれない保守的な感覚がそうさせていたこともあったのだが、
それ以上の理由として、もうひとつのっぴきならない事情が、隣室でくり広げられていたから。
廊下をへだてた真向かいの部屋。
この部屋とまったくおなじ造りらしい其処には、木藤喜美恵がべつの男とふたりきりでいた。
喜美恵は江津子の兄の婚約者で、挙式を来週に控えているのだった。
誘いをかけてきたのは、喜美恵のほうからだった。
―――お兄様と婚約している身なのに、これでは不倫ではないか。
―――許せない。あたしをこういう立場に追い込んで、自分の不倫を通そうなんて。
そんな想いが江津子の胸の奥に、澱のような不純物となってむくむくと湧き上がっていた。

「兄嫁のことを考えているな」
男はすべて、見通しているようだった。
「不純だわ」
「ははは。いいじゃないか。あんたはあんたで、愉しめば良い」
「そんな・・・そんな・・・」
露骨な言いぐさに腹を立てて、江津子は暴れた。
けれども彼女の四肢は、展翅板に拡げられたチョウのように自由を失っていた。
力いっぱいの抵抗は、わずかな身じろぎに抑え込まれて、シーツの皺を深くしただけだった。

男の唇が、江津子の首すじを這った。
唇の下には、一対の咬み痕が疼いていた。
なにも知らない江津子をこの部屋に招き入れた男は、彼女をベッドの傍らに立たせて背後から忍び寄り、さいしょに首すじを咬んでいた。
尖った二本の犬歯に皮膚を冒された江津子は、激しい眩暈を覚えて、そのままベッドに倒れ伏したのだった。
ちゅう・・・っ。
江津子の血を吸い上げる音が、静かな昂ぶりのこもった室内に洩れた。
ひいっ・・・
体内をめぐる血潮が傷口を抜ける感覚のおぞましさに、江津子は声を洩らして縮みあがった。
「じきに慣れる」
男はさっきとおなじ言葉をくり返した。
「そんな・・・」
江津子は悶えたが、男は放さなかった。
ちゅうっ・・・ちゅうっ・・・ちゅうっ・・・
静かになった女の身体に覆いかぶさった黒い影は、女の二の腕をしつようなくらい撫でていた。

ブラウスに散ったなま温かい飛沫が、サテンの生地にじょじょにしみ込んでいって、その下に着けたブラジャーを濡らし、さらにその下に秘めた乳房を浸す。
着衣のうえからのまさぐりは、すでに十分に、その豊かなふくらみに熱を与えていた。
江津子は無念そうにキュッと目を瞑り、それからゆっくりと、ガーターストッキングを穿いたままの脚を、披いていった。
「お嬢さん、なかなかタフだね」
男はクスッと笑い、女は「ばか」といって、顔をそむけた。
なん度めかの吶喊が、江津子の局部を冒した。


部屋を出たときちょうど、向かいの部屋のドアも開いた。
江津子の真向かいには、来週から兄嫁になるはずの女が、蒼い顔をして佇んでいた。
振り乱された長い黒髪。
血色を喪いやつれを帯びた頬。
肩ひもが片方二の腕に落ちた、ふしだらに着崩されたブルーのワンピース。
青みがかったグレーという珍しい色のストッキングはむざんに引き剥かれて、ひざのあたりまで破れ落ちていた。
江津子は自分自身を鏡で見ているような気分がした。
「ブラウスに血が撥ねているわ」
義姉になる女の指摘に、
「真っ赤なブラウスだから目だたない」
江津子は意地を張るように、ぶっきら棒にこたえた。

え・・・?
わが目を疑う思いだった。
江津子の傍らにいた男が、義姉を抱きかかえるようにして、隣の部屋に入った。
喜美恵の隣にいた男は、入れ替わるようにして、江津子を抱えてもとの部屋に後戻りさせた。
両方のドアが、ほぼ同時に閉じられた。
向こうの部屋のドアが閉まる寸前、ベッドに投げ入れられた義姉の陶然とした表情が白い顔に浮かぶのが見えた。
「愉しみましょう、マドモアゼル」
洋風の顔をした男が口にすると、ちっとも気障に聞こえなかった。
そのうえ男は、真顔だった。
さっきの男よりやや老けているものの、うり二つの顔だち。
一見して兄弟とわかる関係だった。
有無を言わせず追い詰められたベッドのきわで、江津子はあくまで拒絶のことばを口にし続けたけれど。
抵抗する意思を失った身体はそのままシーツに沈められていって、二人めの男を体験させられていた。


白百合のような。
そう表現したくなるほど、広間にひかえていた二人の婦人は、色が白かった。
アーリア系の肌の白さに、江津子は目のくらむ想いがした。
ふたりは薄紫とピンクの、色違いのロングドレスに身を包み、
アップにした金髪の下にむき出しになった首すじには、今夜の女の賓客ふたりとおなじ、赤黒い咬み痕を滲ませていた。
「姉妹なんです、妾たち」
年かっこうから見て姉らしい、薄紫のドレスの女がそういった。
「あたしたち、どうなるんですか?」
性急すぎる問いに、ピンクのドレスの女がこたえた。
「くり返し、いらしていただくことになるでしょう」
「そんな・・・」
江津子は身を揉んだ。
ちょうど真上の部屋では、喜美恵が男ふたりを相手に、宴のつづきを演じていた。
「どうすれば抜けられるの?」
「さあ・・・それがわかっていれば、妾たちも抜け出していることでしょう」
江津子の目のまえが真っ暗になったのは、貧血による眩暈ばかりではなかった。


「ここでお別れしましょうね。ひとりで帰れる?」
兄嫁らしい気遣いは、この洋館の玄関をくぐる直前と変わりなかった。
江津子は24歳。
喜美恵は27歳。
一本気な江津子を、喜美恵は洗練された優雅さと計算し尽くされた話術とで、かんたんに籠絡していた。
「じゃあね。お兄さんによろしく」
まったく悪びれずに別れのあいさつを口にする喜美恵を遮るように、
「わたしが送る」
さいしょに江津子の相手をした弟のほうが、冷然とした語調でいった。
「夜は危ないからな」
あなたほど危ない男はいないのに。
自分より頭ひとつ背丈のすぐれた男を、江津子は上目づかいでにらんだ。
江津子自身は気がついていなかったが、まるで恋人を見あげるまなざしになっていた。



「いつまでお寝み?」
透きとおったきれいな声が愉しげに響いて、目覚めたばかりの江津子を弄りものにした。
はっとして起き上がったのは、自室のベッドだった。
あれは悪夢だったのか?
断りもなく部屋に入り込んできた喜美恵を咎めることも忘れて、江津子は頭を抱えた。
目もくらむような貧血に、夕べの出来事が事実なのだと思い知らされた。
喜美恵はゆったりとほほ笑んで、上品な紫のスーツがよく似合うすらりとした肢体をくつろげている。
「もう夕方よ。初めてだったから、しかたないでしょうけれど」
喜美恵のおとがいのすぐ下には、ふたつ綺麗に並んだ痕が滲んでいる。
白い皮膚の底だけがむざんに抉られて、赤黒い痣になっていた。
そのコントラストは、醜さよりもむしろ、もっと蠱惑的なものがただよっていて、江津子はついうっとりと、見とれてしまった。
「あなたにだけ、いいこと教えてあげる」
喜美恵は愉しげな微笑を絶やさずに、ウフフ・・・と白い歯をみせて肩をすくめた。

いちど帰宅した喜美恵は、肩先に血のにじんだ青のワンピースを脱ぎ捨てると、
ベッドにつくこともなくシャワーを浴び、紫のスーツに着替え、
かねて約束していた婚約者の輝夫とその両親との待ち合わせ場所に急いでいた。
朝の10時。
待ち合わせ場所は、あの洋館のすぐ前だった。

「晩御飯ですよ」
母の声が、階段の下からした。
いつになく、疲れたような声だった。
江津子は喜美恵の脇をすり抜けるようにして、部屋を出た。
喜美恵は相変わらず含み笑いを絶やさずに、江津子のあとにつづいた。

「きょうは皆さん、早く寝ましょう」
母はまだ、和服姿だった。
いつもお茶会やお招ばれのときに見慣れた、濃い紫の和服だった。
蘇芳色の帯も、きちんと締めたままだった。
けれどもどこかに、違和感があった。
和服の時にはいつもきりりと結い上げているはずの黒髪が、妙に乱れていた。
ほつれた後れ毛がいくばくか、頭の輪郭からはみ出している。
面やつれもひどく、頬がこけているように見えた。
なによりも、和服の感じが変だった。
着くずれした襟元が微妙に曲がっていて、見慣れない赤い斑点が付着していた。
なによりもその首すじにふたつ綺麗に並んだ痕に―――江津子は危うく声をあげそうになった。
黙々と箸を動かす父や兄の首すじにも、おなじものがついていた。
ふたつの傷口の間隔は、母のそれに比べてひと周り狭かった。
「吸血鬼なの。あのひとたちも」
身を寄せ合うように怯えた顔をしていた薄紫とピンクのドレス姿が、記憶の彼方でかすんでいた。


週明けの出勤のあわただしさは、江津子の気分を入れ替えてくれた。
けれどもどうしても、みんなのまえに出るのに気後れがあった。
父も兄も、送り出す母も、だれひとり気にかけていないようだったけれど。
だれもが首すじに帯びている、あのふたつの痕―――
問いただされたら、なんと応えればいいのだろう?
始業まえトイレでいっしょになった同期の江藤沙希に、「ちょっとちょっと」と、江津子は手招きをしていた。
「ここ、変じゃない?」
自分の首すじを指さして、思い切って、訊いてみた。
「え・・・?」
沙希からは、薄ぼんやりとした反応しか、かえってこなかった。
「なんともなってないけど」
え・・・?
鏡を見直す江津子の目には、咬まれた痕がありありと滲んで見えるのだった。


白のタキシードも凛々しい兄。
そのあとを楚々とつき随う、青のカクテルドレス。
俯きがちな面差しにかすかな羞じらいさえ浮かべて、喜美恵は初々しい花嫁を完璧なまでに演じていた。
江津子は終始、落ち着かなかった。
彼女を含む家族全員がまだ首すじに滲ませているはずの咬み痕は、だれの目にも触れないらしい。
それは一週間の勤務を経て、じゅうぶん自覚はしていたけれど。
鏡を見るたびに目に入るくっきりとした痕は、あの狂おしい一夜の記憶と結びついて、江津子をひどく苦しめた。

そのうえ、きょうの会場の新婦側の席には、あの兄弟がひっそりと腰かけていた。
ふたりはそれぞれ、あの姉妹を傍らに随えていた。
どういう関係なのかいまだに判然としないけれど、はた目には二組の夫婦にみえた。
彼らは部屋の片隅で気配を消すようにひっそりとしていたが、会場のすべてを見渡していた。
そうして、足音も立てずに狙いを定めた夫婦の傍らに佇むと、夫の側にお酒を注ぎ、
連れ立った女のほうが、夫人の側にお酒を注いだ。
ほんの数秒歓談したかと思うと、女は夫のほうを、男は夫人のほうを伴って広間を出、しばらくのあいだ戻ってこなかった。
用を足しに席を立ったとき、ふと気になって辺りを伺うと、宴席のちょうど隣室に小部屋があるのに気がついた。
ちょっとのあいだためらったけれど、好奇心が理性にまさっていた。
見てはならない光景に、江津子は息を呑んで、そして見とれてしまっていた。
金髪の女は、ソファに横たえた夫君の首すじに、吸い取った血を滴らせて、
褐色の男は、絨毯に組み敷いた夫人のスカートの奥に、ひたすら吶喊を試みていた。


披露宴の会場を後にすると、江津子は両親と別れ、まっすぐ洋館を目ざした。
出迎えたのは、金髪の婦人の姉のほうだった。
あの晩とおなじ、薄紫のドレスを着ていた。
披露宴の会場では、どんな服装だったのか・・・どうしても思い出せなかった。
たぶん、こんな時代がかったドレスなどでは、なかったはずなのに。
女は「やっぱりいらしたのね」という表情をありありと泛べながら、江津子をなかに招じ入れた。
「きょうはおひとりなのですね」
「はい」
「二人同時に、相手をする羽目になりかねませんのよ」
からかうような女の口調に、江津子はことさら感情を消して、
「はい」
と応えていた。
女に招き入れられた寝室で、待ち時間はほとんどなかった。
うり二つの兄弟が肩を並べて、江津子のまえに立ちはだかった。

はぁ。はぁ。はぁ・・・
江津子の髪は黒々として、豊かだった。
汗を含んだその髪が、ひどく重たくユサユサと揺れるのを感じた。
ひとりは首すじに、ひとりはふくらはぎに唇を吸いつけていた。
あるいは二の腕に、あるいは手首に。
着衣のまま、かぶりついてきた。
披露宴会場で、あれほど多くの人を毒牙にかけていたのに。
このひとたちは、まだ渇いているというのか・・・
ブラウスの袖が裂け、二の腕がむき出しになっていた。
力を込められた筋肉がキュッとしなやかに浮き立ち、すぐに弛んだ。
咬まれるたび、抵抗は徐々に和らいでいった。
着衣越しに密着させられてくる逞しい胸についドキドキと胸を高鳴らせ、背中に腕を巻いてしまっていた。
ガーターストッキングごしにすり合わされてくるごつごつとした太ももに欲情を覚えて、脚までからめ合わせてしまっていた。


血の抜けた身体が、ひどくけだるい。
意識を取り戻した江津子の傍らには、だれもいなかった。
頭が重たい。視界が霞んでいた。
帰らなければ―――
江津子はこのまえの晩とおなじように椅子の背もたれに掛けられたジャケットを手にすると、
裂けたブラウスを覆い隠すように袖を通した。
なぶり抜かれた足許には、ストッキングの裂け目が縦横に滲んでいた。
すでに外は暗くなっていた。
肌色のストッキングの裂け目は、夜目には見えないだろうか?
江津子はフフッと口許に笑みを泛べた。

ああ・・・ん・・・っ。
向かいの部屋の閉ざされたドア越しに、女のうめき声がした。
喜美恵が招ばれていたのか?江津子はどきりとした。
けれども悩ましいその声色は、喜美恵のものではなかった。
もっと年かさの女性のものだった。
はっとして、江津子はドアノブをまわしていた。ドアは音もなく開いた。
細目に開いたすき間の向こうには、さっきまでの江津子自身がいるようだった。
母の孝枝が、男ふたりの相手をしていたのだ。

披露宴では黒留袖だった母は、黒一色の洋装に着替えていた。
正装の礼服は、ルイ王朝の寝所のなか、黒光りしているようにみえた。
ひざ丈のスカートは腰までたくし上げられていて、黒のパンティストッキングは引き破られて、やはり引き裂かれた真っ赤なショーツを露出させていた。
漆黒のブラウスの裂け目からは、娘の江津子さえ目を背けたくなるほど、乳房が露出していて、
黒ずんだ乳首はふたりの男の唇にしつようにとらえられ、唾液を光らせていた。
母は悶え、喘ぎ、汗みずくになって・・・むしろ積極的に腰を上下させていた。
「どうして着替えてきた?きょうならではの装いではなかったのか?」
男の問いに母は臆面もなく答えていた。
「だってあなた、このあいだは和服だったから、こんどはお洋服がいいって、仰っていたじゃないの」
むっちりと肉のついたふくらはぎは、薄黒いナイロンに淫靡に染まっていた。
ひとりが母を犯しているあいだ、もうひとりは黒ストッキングの脛をねぶり抜いていた。
評判の賢妻のすがたは、もうそこにはなかった。
いつの間にか、部屋のなかに入り込んでいた江津子を、男のひとりがふり返った。
「視て・・・いたね?」
江津子はだまって、うなずいていた。
「愉しい・・・だろう?」
江津子はやはりだまって、うなずいていた。
「仲間に加わろうね」
江津子はもういちど頷くと、しっかりとした足取りで、ベッドに近寄った。
母娘はじゅうたんの上に並べられて、相手を取り替え合っていた。

ギシ・・・
ドアの向こうの廊下がかすかにきしむのを、江津子は耳にした。
あの姉妹のどちらかが来たのか?と思った。
気がつくと、だれかが江津子の手の甲を抑えていた。
体温の冷えかかった、母親の掌だった。
「視ちゃダメ」
母が囁いた。
「え・・・?」
「お父さん、家に帰ったわけじゃないのよ」
それ以上は母も、なにも応えずに。
のしかかってきて吶喊を試みる男にうごきを合わせて、スカートの裾を自分からたくし上げていた。


一年後。
江津子は、真っ赤なカクテルドレスに身を包んでいた。
兄のときとおなじ披露宴会場で。
いっしょに腕を組んでキャンドルサービスをする彼女の新郎は、あくまでにこやかだった。
彼女にしか見えない、幅の小さな咬み痕を、首すじに滲ませながら。
ふたりを拍手で迎える新婦の両親はやはり、おなじ痕を滲ませていた。
やはり拍手をし続ける新郎の両親も同じく、咬まれた痕を滲ませていた。

お義母様は、きれいな方。
ほかに兄夫婦と、高校生の妹がふたり。
妹さんは、仲良く分け合ってね。
彼のお母様と兄嫁は、どちらがどちらの相手をするの?
あたしのときみたいにまた、くじ引きで決めるのね?

先週、彼氏と新しい両親を洋館に招く前の晩。
江津子は白い歯をみせて、笑みを絶やさずに過ごした。

義父は一瞬顔をしかめ、すぐに穏健な微笑を取り戻して。
羞じらう妻が堕ちてゆくのを、薄紫のドレスに身を埋めながら横目で見守りつづけていた。
ほどかれてゆく黒留袖は、男が念願していたものだった。
深紅の絨毯に拡がる長い黒髪がとぐろを巻くのを、女の江津子までが見とれてしまっていた。

義兄は顔を真っ赤にして、これでは強姦だ、侮辱行為だ・・・と、口では罵りながら。
覆いかぶさってくるピンクのドレスを避けようもなく受け止めていた。
手だれの女吸血鬼の身体と引き換えに。
真っ赤なスーツを着込んだ夫人が、首を咬まれて大人しくなって。
ピンと張ったふくらはぎが、グレーのストッキングをぴっちりと密着させたまま、ゆっくり開かれてゆくのを、
固唾をのんで視つづけていた。
一児の母はきっと今夜、子種を授かって帰宅するのだろう。

ふたりの妹たちも、セーラー服の胸元を引き締める純白のタイを取り去られて。
それぞれべつべつの部屋で、犯されていった。
黒のストッキングに走った伝線をチリチリ拡げながら足摺りをくり返していた姉も。
真っ白なハイソックスを太ももを伝い落ちる血に浸してしまった妹も。
パートナーを取り替え合ったときにはもう、夢見心地になっていた。

供血の連鎖は、どこまで続くのか。
江津子はただ陶然となって、夫の家族が破滅してゆくのを見守っていた。
寝室の姿見に映る、ゆったりとした含み笑い。
そこに映っていたのはもしかすると、あの晩の兄嫁そのものだったのかもしれない。

コレクションのおすそ分け

2012年03月01日(Thu) 07:57:16

おすそ分けだよ。^^
こっちがきみの奥さんの。
こちらはきみのお母さんの。

テーブルのうえいちめんに、ところ狭しと広げられた、色とりどりのショーツたち。
やつはヌケヌケと、自慢する。

どちらもセンスが、よろしいね。^^
ベッドのうえで脱がせるのがまた、たまらないのだよ。

いっぱい集まったから、きみにもおすそ分けしておこう。
あとは自分で愉しむなり・・・本人に返すなり・・・お好きなように。^^

・・・・・・。
わたしはこれらを、どうしたものか?

女三景。

2012年02月29日(Wed) 05:13:42

妹は、胸のおおきくあいたパーティドレスの肩に滲ませた血を、
顔をしかめながら、じわじわと吸い取られてゆく。
床まであるスカートの中に隠した白のストッキングには、
いくすじもの裂け目を走らせたまま。

その傍らで身を横たえた母は、父に介抱されながら。
白目をむいて、肩でぜぇぜぇと喘ぎをくり返している。
ワンピースの肩先を濡らした血は、あらかじめ脱いだジャケットで隠れるからと父に慰められて。
でもこれは、隠しようがないわね・・・と。
薄墨色のストッキングに鮮やかに走った伝線を、しきりに気にかけていた。

ゆう子さん素敵ね。処女の生き血を召しあがれるのは、ゆう子さんの身体だけなんですもの。
妻は嬉しげに、妹をほめながら。
ひざ小僧の下までずり落ちた肌色のストッキングを、けだるげに引き上げてゆく。
ストッキングのあちこちに撥ねた精液の、濁った輝きをふしだらにてからせたまま。

話す姑 話さない嫁

2011年12月28日(Wed) 08:00:49

はじめてあのひとに、咬まれたのは。
嫁が”献血活動”に励みはじめてすぐのころ。
夫ともども、咬まれてしまった。

嫁の若い肉体を目当てに家に出入りするようになったあのひとは。
わたしの熟れた血も、あてにするようになっていた。
咬まれていくうちに、ジンジンとした疼きがとまらなくなって。
気がついたら夫に、きょうは献血活動に行くから・・・そういって。
嫁と連れだって、お出かけするようになっていた。
もちろん、おめかしをして。

エッチな要求があることは、察してもいたし、覚悟もしていた。
主人のまえで血を吸われているときも。
あのひとはブラウスごしに、それはいやらしいまさぐりを忍ばせてきたから。
そして、さいしょのお出かけで、なんなく操を奪われてしまっていた。
主婦相手に、遊び慣れたひとだった。

わたしは夫に話をして、それから出かけていく。
きょうも、あのひとの好みの、薄い黒のストッキングを脚に通して。
帰宅した時、足許に妖しく流れるストッキングの伝線を、
夫は見るともなしに、視るのだろう。

嫁は息子に、なにも話していません、という。
羞ずかしいらしいのだ。
そういうものなのか。
わたしが齢をとったからなのか。
嫁のほうが純なのか。
わたしが夫に正直すぎるのか。
嫁は裏表のある人間なのか。

なにも知らない息子は、きょうも愛する妻に手を振って出勤していく。
そして、息子の足音が遠ざかったのを合図に、女ふたりは着かえをはじめる・・・

姑の見立て。

2011年06月21日(Tue) 08:21:52

お向かいの柴造さんに、美奈子を姦らせちゃった。
息子はいとも潔く、あっけらかんと。
羞じらう嫁を、かたわらに。
わたしたち夫婦に、そう宣言する。
移り住んだばかりのこの土地は、吸血鬼の棲む村だった。

ええーっ!?だいじょうぶなのっ?
身を揉むようにして案じた妻も、打って変わって。
ウン、あのひとなら、だいじょうぶ。
どうしてだい?って訊くのは、愚問に属するのだろう。
あれ以来。
嫁のことだといいながら、柴造さんと面会をくり返す妻。
どうやら、嫁と姑。ふたりのスカートは。
おなじ色の精液で、染め上げられているらしい。

母さん、これからホテル?

2011年06月20日(Mon) 04:10:22

キキキッと、タイヤのきしむ音がして。
一台の車が、聡太のまえで停車した。
びぃーんとかすかな音がして、窓が開く。
なかから顔を出したのは、母の和代だった。
あら、ソウちゃん?おかえりなさい。
家は車の来た方角にあって、数十メートル先にかすかに軒先がみえる。
運転席の男に聡太はちらっと目をやりながら。
これからお買いもの?と言わんばかりにさりげなく、行く先を聞いている。
母さん、これからホテル?

よう。
運転席の男が、わざとらしいなれなれしさで、聡太に小手をかざして応えてくる。
よう。
聡太もイタズラっぽく笑いながら、男に応えていた。
これからホテル?
うん、そうだよ。
男はてらいもなく、情夫の息子にそう答える。
年輩だが精力家らしい彼の、ロマンスグレーの髪が、ひどくツヤツヤと輝いていた。
やるねぇ。
聡太が冷やかすように、男に応える。
ふつうに、同性の目線だった。
パパはきょうから、出張だよね?
そおね。お勉強して、待っていてね。
お母さんはわざとらしく「お勉強」に力を込めてそういうと、運転手を促している。
がんばれよー。
走り去る車に、聡太はご近所にきこえるような大きな声で手を振ると。
ちょっぴり自棄になったような顔をして、半ズボンの下のハイソックスを、勢いよく引っ張り上げた。

キキキッ。
タイヤの音がきしむ音がして、聡太の目のまえに停まっている。
三十すぎになった聡太は、背広姿の身をかがめて、わざとらしく助手席を覗き込む。
窓のひらいていたい助手席に座るのは、まだ二十代の妻である孝枝だった。
運転席にはあの男が、ふさふさとした真っ白な髪の下、血色のよいおでこをてかてかさせている。
よう。
男が小手をかざしてあいさつをすると、
よう。
聡太もまた、小手をかざしてこたえている。
これからホテル?
妻にではなく、男への問いに。
ええ、そうよ。
聞えよがしに、応える妻。
お母さん、じゅうたんのうえに、転がってる。
男はイタズラっぽく、ウィンクを投げてきた。
姑を凌辱して気絶させ、若い嫁を拉致して犯そうとしているんだね?
聡太の咎め口調は、どこか愉しげだった。
スカートの裏、ぬらぬらよ。お義母さま。
助手席の孝枝は、隣席からなれなれしく伸びてきた腕に、心地よげに抱かれながら、婉然と咲(わら)う。
またがっちゃおうかな。
あたしが留守の間だけよ。
てらいもなく受け答えする妻が、我が家の性風俗にすっかりなじんでいるようすを見届けると。
うふふふふふっ。
男ふたりは、共犯者の笑みを浮かべている。
走り去る車のけたてる砂煙に、聡太はうるさそうに目を細めると。
年甲斐もなくイカされちゃった母の介抱をしに、自宅へと足を向けた。
案外と。
父が先回りして、介抱を始めているかもしれなかった。
けれどもきっと、彼女をベッドに送り届けるのは、息子の役目。
十数年前、流儀を教えてくれた父はきっと、そしらぬ顔をしながら、部屋の外からようすをうかがうにちがいない。
父さんね、先にホテルに着いていたのよ。
あのときの母の、誇らしげな横顔が。
いまの孝枝に、二重写しになっていった。


あとがき
母と妻を、嫁姑ながら。
年配の男性にモノにされてしまう。
寝取られのひとつの理想像 でしょうか?^^

あんたのお袋さんに、惚れちまったよ・・・

2011年02月20日(Sun) 09:23:47

新婚初夜のベッドの上。
花嫁の純潔を奪った褥から、降りもしないうちに。
あいつはぬけぬけと、言ったものだ。
あんたのお袋さんに、惚れちまったよ・・・
あの留袖姿。たまんねぇな。
許せない言葉のはずなのに、つい受けとめてしまったのは。
あいつがしんそこ、母にぼう然となってしまったらしかったから。
それから、
母が汚される。
そのことに、いま汚され抜いて愉しみはじめてしまったゆう子の姿が、二重写しになったことに。
ひどく昂奮を覚えてしまったから。

親父がなかなか、許してくれないと思うよ。
話しあって、仲良くやってくれよ。
ともかくさ。
今夜はゆう子に、専念してくれよ。

ゆう子がちょっと、不快げだったのは。
夫を裏切る行為を強要させられた、ということよりも。
自分の相手をしながら、ほかの女のことを言いだす男が、許せなかったからだろう。
その晩ゆう子は、狂わされて、花婿よりもひと足先に、獣になっていた。

ひと月後。
俺のいないウィークデーの真っ昼間に、毎日足しげく新居に通ってくる彼は。
どこでどう時間をつごうするのか、親父とすっかり意気投合しちゃっていて。
ふた月後。
お袋とベッド・インしたそのホテルに、親父に着替えを持ってこさせる関係になっていた。
週末は、あんたら夫婦のために取っておくんだ。
恩着せがましくそう抜かしたあいつは。
こんどはゆう子の両親にまで、すり寄っていって。
お嬢さん、お母さん似なんですね。とかなんとか、言いながら。
義父のまえ、義母のスカートを体液でぬらぬらにしていった。

苦笑いする男三人に、横っ面で会釈をしながら。
女ひでりと称する逞しい肉体で、三人の人妻を辱めてゆく男――――
セックスそのものよりも愉しめるかもしれない快楽が、
平穏な三つの家庭を、毒液のように浸していった。

嫁を淪落に堕とすとき。

2011年01月25日(Tue) 08:15:31

ひとりで着付けができるのは。自慢のうちに、なるらしい。
帯をきっちりと、締め直しながら。
妾(わたし)は障子ごしに、隣室の気配をうかがった。
たったいま。
妾(わたし)の婦徳を、小気味よいほどに汚し抜いた男が。
息子の若い嫁の肉体を、愉しんでいる。
障子一枚隔てた、向こう側。
切なげな吐息が、露骨なほどに。昏(くら)い歓びを滲ませていた。

おぼこ娘のように、おずおずとしていた若い嫁は。
長襦袢を着乱したままの妾(わたし)の介添えに、素直に従って。
洋装の礼服を、一枚一枚、脱がされていった。
取り去られたジャケット、スカーフ、ブラウスと。
部屋の隅に、順々に投げ出されていって。
徐々にあらわにされてゆく、やわ肌の輝きに。
羞じらいを隠せずに、両手で顔を覆いながら。
さいごにスカートを取り去るときには、
さりげなく自分から、脚を引き抜いていった。
黒のストッキングに映えた、嫁の白い脚が。
そのときほど淫靡に映ったことはない。

当家のしきたりですからね。嫁である以上、貴女にもしたがっていただきます。
冷たく言い放ってやるつもりの、その台詞が。
なぜか昂りに、震えるようになっていた。
それでは―――
男は冷徹な処刑人のように。
むき出しになった嫁の両肩に、手をかけて。
器用に畳のうえに、まろばせていった。

あれほど大人しやかだった嫁が。
絶頂に昂って、別人のようにはしたなく身体を開いていくのを見届けて。
足音をひそめるように、廊下を歩いていくと。
母さん―――?
背中から、息子が声を投げてきた。
離れでなにが起きているのか、知らぬ息子ではないはずだった。
あちらには、お近づきになりませんように。
しっとりとした声が、意外なくらい落ち着きを取り戻していた。

ふり返ると、古びた離れはなにも起きていないようにひっそりと、庭の隅にうずくまっていた。
その昔。
まだ若妻だった妾(わたし)の理性を呑み込んでいった、あの妖怪のような古宿は。
さりげない静けさを、とりつくろいながら―――
いま、新たな獲物に満足しきっているのだろう。


あとがき
代々伝わるいけないしきたりに、若い嫁を引きずり込んだお姑さんのお話です。^^
前作のあとがき描いているうちに、「描けそうだ」と感じたので、一作を。

女房の浮気癖

2011年01月25日(Tue) 08:02:45

妻の浮気章には、ほとほと困っていましてね。
その若い旦那と知り合ったのは、とある地下街の酒場だった。
旧家の出の御曹司の、お忍びの夜遊び―――
俺はひと晩、男につきあってやった。
もちろん、俺流のやり方で。
男の血など、めったにたしなまないのだが。
この街に流れてきたばかりの俺に、選択の権利はまだなかった。
旧家の血というやつは、多かれ少なかれ、饐(す)えている。
けれども、男の首すじから唇を放したとき。
俺はすでに、はっとするものを覚えていた。
たぶん、母親の血だろう。
豊かに優れたものが、男の体内にしっかりと息づいていた。

で・・・俺にどうしろと?女房の浮気癖を治せとでも?
きみならできるよ。
育ちのよいぼんぼんらしい無責任さを、男は並びの好い白い歯にきらきらさせていた。
できるんだろう?
覗き込んでくる目つきに思わず、
図星だよ。
俺はうっかり、応えてしまっている。

若妻の浮気癖は、ぴたりとおさまった。
なにしろ女房殿は、出逢ったばかりの俺にぞっこんになって。
一も二もなく、俺のオンリーになってしまったのだから。
だんなを立てろ。そうすればたいがいのもめ事は収まるのだ。
美しいけれども思慮のなさげなその若妻は、素直さだけは持ち合わせていた。
だんなの留守宅に俺をあげて、ワインを注いで。
ことのついでに自分の体内に流れている甘い美酒まで、振る舞いながら。
女は言ったものだった。
こないだ家をあけたとき、あのひと一睡もしないで待っていたんですって。
男の心の裡に、ある種の歪んだ昂奮のあることを。
俺はとっくに、見抜いてしまっていたけれど。
この女の言い草もきっと、いくばくかの真実を含んでいるのだろう。
女はしゃあしゃあと、語りつづける。
それいらい、浮気しちゃうのかわいそうかな・・・って、思えるようになったの。
だからこれからは、あなたひとすじでイクからねっ。
あんたに座布団一枚。
そういう思いを込めて、俺は女をソファから払い落し、じゅうたんのうえに組み敷いた。

男の母親は、まだ五十そこそこだった。
女学校の時に、見合いして。十九の春に息子を産んでいた。
横暴な旦那は、すでにこの世とおさらばしていたけれど。
ひととおりでなかったはずの苦労を、顔の小じわにして刻み込むことがなかったのは。
天性の賢明さのせいなのだろう。
息子に引き合わされた俺をひと目見て。
いけないかたのようですけど・・・息子を幸せにして下さっているのでしょうね。
俺のいけない正体を、さりげなく上品な言葉でくるんでいきながら、
挨拶の接吻をするそぶりを見せた俺のため、
ほっそりとした手の甲を、差し出してくれた。
俺が久しぶりの恋に落ちたのは、その瞬間だった―――

なん回もなん回も、夫の写真にわびていた。
きっと、幸せの「し」の字も与えてくれなかったであろう夫のため。
守りとおしてきた女の操を、それはいとおしみながら。
夫婦の寝室から身勝手にも俺を締め出した若妻の、身代りにと。
いつも身に着けている黒のドレスを、妖艶に映えさせてくれたのだ。
猿臂を背中にまわした、そのときに。
吸血以外の目的で、卑猥に昂る唇を、彼女の首すじにあてたときに。
(すでに彼女は俺に献血をしてくれるようになっていた)
そして、スカートの奥に、ただれた肉剄を衝き入れた、その瞬間に。
女は不意にしゃくりあげ、身を震わせて涙ぐんだ。
その楚々とした、奥ゆかしさに。
けしからぬほど夢中になってしまった俺は、ひと晩じゅう―――
夫を弔うための清楚な装いを、汚れた粘液に浸しつづけてしまっていった。

美南子に、子供ができたらしいよ。
若旦那は嬉しげに、俺にウィンクを投げてきた。
すっかり女遊びの身についたこの男は、身重の妻を残して夜遊びに出かけていく。
たいがいにしなさいよ、お坊ちゃん。
からかうように、そういうと。
どちらの子なんだか。
そういいながら、月の計算だけはおこたりなくしたふたりとも。
子供が夫の種であることを、知っている。
ほんとうは。
この家の血を、きちんと残すには―――
俺がきみ母さんをはらませるほうが、適切だったのかもしれないな。
鼻歌交じりに遊びに出かける若旦那の背中を横目に、俺は首から提げるようになったロケットを、開いてゆく。
淑やかに透きとおるほほ笑みの主は、齢を感じさせない若々しさを、写真のなかでも誇っていた。


あとがき
そっちかい・・・な展開のお話だったかも。(^^ゞ
たいがい若い嫁のほうが淫乱で、引き止め役の姑は貞淑で。
戸惑いながら、欲情にまみれるようになっていく。そういうパターンが多いのですが。
時にはもの慣れた姑に、初々しいおぼこ娘のような新妻が巻かれてゆく みたいなお話も、愉しいかもしれませんね。
・・・と、いけないひとりごとを、ひとくさり。 笑

真っ赤なドレスと黒の礼服

2011年01月18日(Tue) 07:14:40

ゆう子さん、いけないわ。
血を吸うかたのまえで、真っ赤なドレスなんて。
口を尖らせる姑は、夫を弔うための黒の礼服。
けれどもふたりは、知っている。
真っ赤なドレスの下、てかてかと輝く肌色のストッキングも。
漆黒のスーツの下、清楚に透きとおる黒のストッキングも。
血に飢えたものの目には、ひとしく淫靡に映える ということを。

ゆう子さん、だめじゃないのっ。そんなにいやらしい声立てちゃ・・・っ。
お義母さまこそ、そんなにふしだらに脚をじたばたさせちゃって・・・っ。
思い思いに群がってくる、複数の吸血鬼を前に。
嫁と姑とは、お互い口を尖らせながら。
夜の訪問客の欲望に、自ら正装を乱してゆく。

出ていきにくいね。
たしかにそうですね。
首すじに痕を残した、父と子は。
お互いの妻が乱れ堕ちるさまに、昂りの目を添わせてゆく。

分け前をくれるって、ほんとうですか?
さあ・・・話半分のほうが、賢明だろうね。
訝る息子に、肩をそびやかす父。
部屋から出てきた獣たちは、指先についた血を、
ふたりの唇に、しみ込ませてやった。
ま・・・たんのうしましたよ。
苦笑交じりの父子に、ひと言「すまないね」と言い捨てて。
来な。これから隣のお宅で二次会だ。
其処ではきっと、ほんとうに分け前にあずかれるだろう。
姑に兄嫁に弟の許嫁に女学生の娘。
吸われるべき血液は、たっぷりと用意されているのだから―――

若いひとは・・・

2010年08月04日(Wed) 08:03:45

若いひとは・・・思い切りもいいものですね・・・
ストッキングをずり降ろされた脚をばたつかせ、妻が乱れるのを目の当たりに。
母は迫って来る男どもに、ちょっとのあいだ、ためらいを見せていたけれど。
やがて苦笑いする父を前に、羞ずかしそうにブラウスのタイをほどかれていった。
他愛ないものだね。
グラスを片手に、妻の痴態を見守る父。
嫁につづいて、姑までが。
思い切りよくなるのに、そんなに時間はかからなかった。

裸足になったつま先。
脱ぎ捨てられた二足のストッキングは、部屋の隅っこでとぐろを巻いている。


あとがき
状況をあまり考えずに、描いてみました。
たぶん父と息子は、男どもの共犯です。
より仲良くなるために、自分たちの妻を分かち合う気分になったのでしょうか?

靴下三色

2010年08月04日(Wed) 07:51:06

妻が脱ぎ捨てたパンストは、サポートタイプ。
母の脚から抜き取られたのは、昔ながらのなよなよパンスト。
わたしのひざ下を覆っているのは、紳士用のナイロンハイソ。
紳士用だって?ずいぶん派手な光沢だね。
ベッドから抜け出してきたばかりのあいつは、そんなふうにわたしのことを冷やかした。

おまえの靴下が、いちばんエロいな・・・って、いいながら。
妻のみならず母まで狂わせた一物を。
わたしの足許に、なすりつけてくる。
薄いナイロンごし。
逆だった剄(つよ)さに、ゾクッとした。

きれいにしてもらおうか。
妻と母を辱めた、魔性の肉を。
唇でたんねんに、ぬぐってみる。
饐えたような芳香―――
いつか屈辱は、鳥肌立つほどの愉悦になってゆく。

最愛の女たちに注がれる、熱い粘液を。
口で味わう愉しみに耽る。
羞恥心を忘れるのに、そう時間はかからなかった。
こんどはいつ、来てくれる?
そう願うわたしの恥ずかしい仕草を。
物陰から窺う、裸体に剥かれた牝たちの視線が、ひどくくすぐったい。

一夜の差。

2010年07月22日(Thu) 06:54:16

妻は強姦され、母まで操を奪われた。
一夜明けて。
嫁と姑は、嬉々として。
苦笑いを浮かべる夫たちを横目に、
共犯者同士のくすくす笑いを交わし合いながら。
今夜お相手をする順番を、くじ引きしている。


あとがき
ジャンルは「短文。」にしようかとおもいました。(^^ゞ

母の嫁入り。

2010年07月20日(Tue) 06:57:02

おばあちゃん、みたいなものでしょうね・・・
父の言い草に、男はゆっくりとかぶりを振った。
妻をものにし、いままた母までも毒牙にかけた男は。
わたしたちに屈辱を強いながら。
どこかで慰めも、もたらそうとしている。
楚々とした風情が、たまらないのですよ。

夫婦のベッドにむぞうさに投げ込まれ、ひと晩じゅう凌辱のかぎりを尽くされた妻は。
いまは白目を剥いたまま、あお向けになって静かになっている。
大奥様にも、そろそろ静かになっていただきましょうか?
男の含み笑いに、仕方ありませんね・・・父はいつものように、寛大な夫として振る舞っている。
永年連れ添った妻が、無理強いに強いられて、畳のうえにはじめて操を散らしたとき。
縛られた父は、視ることを強いられていた。

泣くことは、ないのだよ。
泣きじゃくりながら犯される母を、なだめながら。
忘れてしまいなさい。
忘れることが、できなければ。
むしろ、愉しんでしまいなさい。
そんな練れた言葉を、父の口から聞こうとは。
強がりに、口にしたのだろうか。
屈辱をあらわにしたくないばかりでは、なさそうだったが。
そこから先は、息子のわたしの知るところではなかった。

おや、きょうはお出かけにならないのですね?
男は冷やかすように、父を見て。
父はくすぐったそうに、肯定の頷きをかえしていく。
ありのままをおっしゃい。
イタズラっぽい夫の声色に、母は顔を赫らめている。
あなたは来ないで。
さすがにわたしのことを、遮る母は。
瑶子さんの介抱、してあげるんですよ。
取ってつけたように、そんな言い訳を口にする。

ふふふ・・・
喪服姿って、いいですね。
両親の部屋から、そんな声が洩れて来る。
いまごろ母は、喪服のスカートをたくしあげられて。
うら若ささえ秘めた、楚々とした黒靴下の脚を。
なぞるようにねぶりつけられる唇に、ためらいながらもゆだねていっているのだろうか。


あとがき
三連休のときには、すっかりお休みで。
連休明けに、四連発。
われながらみごとなまでに、正直な反応です。(^^ゞ

選択肢。

2010年07月20日(Tue) 06:47:07

やだーッ!えっち・・・
妻の非難は、男ふたりに等分に向けられている。
夫のまえで自分を犯そうとする、情夫にも。
それを目の当たりにして、昂りはじめているわたしにも。

こういう関係になって、どれくらいになるのだろう?
男はわたしたちの日常に、ひっそりと入り込んできて。
いつの間にか侵蝕を広げていって、すべてを塗り替えてしまっていた。
たぶらかされた若夫婦は、
妻はうら若い血潮を好んで男に啜らせて。
夫は初めておぼえる異形の昂りに、男への服従を誓っていった。

箱入り娘で、嫁に来て。
苦労しらずの、良家の若妻となって。
いつも淑やかで、控えめな妻が。
そのときだけは、別人のようになる。
花柄のワンピースを、腰までたくし上げられて。
背後からずぶずぶと、侵されながら。
逆立ちするほどそそりたった、夫以外の一物を。
根元までずっぽりと、受け容れていって。
腰のうごきを、ひとつに合わせていく。

あっ、いやらしい。そんなとこ・・・
イヤだ。主人のよりも、大きいじゃない・・・
あ~、イッちゃう。イッちゃうっ!
そんな言葉、
わたしとのベッドのうえでは、ついぞ口にしなかったはず。

夫婦のベッドのうえ。
脱げかかった肌色のストッキングの脚を、ばたつかせて。
やがて大きく押し拡げられた脚のすき間に、浅黒く逞しい臀部を、沈み込まされてゆく。
そんな恥辱以外のなにものでもないことを。
わたしはいつから、恥知らずにも見つめるようになったのか。

そういえば。
嫁の乱行を留めるはずの、彼女の姑は。
黒の礼服を、着崩れさせたまま。
隣室であお向けになったまま、気絶しているはず。
男を受け容れる、大またを開いた姿勢のまま。
戯れに剥ぎ堕とされた、黒のストッキングは。
帯のように太くなった裂け目を、スカートの奥にまで走らせていて。
つい先日まで夫にしか許していなかった白い肌を、あられもなく露出させている。
父は永年連れ添った妻があきらめたように目を瞑ると、
なにも視なかったていにして、外套片手に出かけていった。

視さえしなければ、
そこにいるのは、昔どおりの貞淑な妻。
視てしまえば。
そこでほほ笑んでいるのは、妖艶な娼婦と化した、ひとりの女。
いずれの選択が、賢明なのだろうか―――?

狡い大人の言い訳?

2010年07月07日(Wed) 07:43:54

寝取られではないのだよ。寝取らせているんだよ。
寝取らせは、崇高な奉仕の精神なんだよ。
父のそんな言い草を、狡い大人のいいわけだと思っていた。
ずっとそう、思い込んでいた。
けれども父に伴われて出かけていく母は。
よそ行きのスーツに、ひきつれひとつないストッキング姿。
好んで装っているようで。
愉しげな含み笑いは、大人の色香を秘めていて。
明けがた、やはり父に付き添われて家に戻ってくるときは。
素足になったふくらはぎに、白く濁った粘液をぬらぬらしたたらせているのが、なまなましかった。
視てはならないものを視てしまったような、罪悪感のなかに。
なぜか心奪われるときめきを、覚えたわたしは。
さらなる罪悪感に駆り立てられていた。

それからなん年、経ったのだろう?
そんなわたしも、いつか同じ行為に目ざめていった。
しげ子さんを紹介するなら、早いほうがいいよ。なるべくなら処女のうちが―――
云いさした父は、途中で言葉を飲み込んだけれど。
いまではわたしの一家にまといつく黒影の主の正体を、察してしまっているわたし。

彼はまず、父を襲って、首筋に痕を残して。
そんな父はためらいもなく、十なん年連れ添った最愛の妻を、彼に引き合わせていた。
血に飢えた唇を、若い女の生き血で濡らすために。
寝取らせは、奉仕なのだよ―――
母を愛していればいるほど、その行為はきっと値打ちのあるものなのだろう。
しげ子さんを伴って、初めてお邸にあがるとき。
父は愛用しているハイソックスを、そっとわたしに手渡した。
ぬらりとした光沢は、紳士用のそれとは思えなかったけれど。
わたしはためらいもなく、ぴっちりひざ下まで、引き伸ばしていく。

これから献血に行くの。しげ子さんもどう?
母はさりげなく立ち上がり、父も無言のすすめをまなざしで送る。
しげ子さんは戸惑いながら、これから姑と呼ぶべきひとの、あとに従う。

いかがでした?
エエ、お母様。
言葉を濁す未来の嫁に。母は意地悪く問いを深める。
この子にも、きかせてやってちょうだい。
しばらくためらったあと。
・・・宜しい感じです。
照れ隠しにあてがった掌が、うなじにつけられた痕を隠していた。

寝取らせなんだよ。奉仕の気持ちだよ。
父の諭す声が、いまでは救いに聞こえる日々。
すぐ隣に肩を並べるしげ子さんは、こざっぱりとしたワンピース姿。
肌色ストッキングのふくらはぎに唇近寄せてくる男への戸惑いを、まだ捨てきれなくて。
わたしに寄り添って、ギュッと痛いほど、掌を握りしめてくる。
ヌルヌルと吸いつけられた、不埒な唇が。
きょうもチリチリと、未来の花嫁の装いに、辱めをくわえていった。


あとがき
ストッキングを破かれる=肌を許す
この方程式は、短絡的?

告白と嘘と

2009年11月17日(Tue) 07:57:50

こんや、あなたを裏切ってきてもよろしいかしら?
夕暮れ刻。猫のようにすり寄って来る妻に。
わたしはわざと聞こえないふりをしていると。
さりげなく股間を擦ってくる掌をズボンのうえに感じて。
ふふふ・・・
妖しい笑みが、通り過ぎてゆく。
若いひとたちは、ほんとうに露骨なんですね。
母はちょっと咎めるような、内心羨ましそうな、そんなため息をつきながら。
隙なくおめかしをして出かけてゆく息子の嫁の後ろ姿を、見送っている。
黒のジャケットのなかを彩る、濃い紫のサテンのブラウスも。
黒のタイトスカートの下を彩る、薄墨色のストッキングの光沢に包まれた脚も。
裏切ってまいりますわね。
そう告げるほどに、妖艶だった。

いやですわ。あなたったら。ほんとうに、なにもなかったんですよ。
ええ、ええ。誓ってあのかたとは・・・
あなたに対してやましいことは、なにもございませんでしたのよ。
必死で言い募る母は、それでもうろたえを隠すことができないでいる。
―――きみ。いつもより色っぽいじゃないか。
―――これから浮気に行くんだね?
―――おや、だいぶ遅いお帰りだね。
―――もしかして、浮気してきたの?
明らかに面白がっている父は、露骨にからかい口調なのに。
そんなことにさえ気づくゆとりを失っている母。
お義母さま。案外純情なのですね。
ふつうは、よその男性に逢いに出かけて朝帰りをしてきたら。
髪の毛に藁なんか、つけてきたら。
ストッキングを伝線させたままにしていたら。
ばれてしまいますのに・・・ね?
ひっそり笑う妻の足許も。
鮮やかな伝線がひとすじ、つつっ・・・っとスカートの奥にまで忍び込んでいる。

正直な告白と、嘘と。
どちらがより夫を守り、あるいは昂らせるものなのだろう?


あとがき
―――あなた、今夜浮気してきてもいいかしら?
奥さんにそんなふうに持ちかけられて、どきり!となさった御経験、ございませんか?^^

ストッキングのつま先に

2009年07月11日(Sat) 18:59:30

あっ、うう・・・っ・・・オオウゥ・・・ッ
さいごのひと声は、獣じみてさえいた。
細めに開けた障子の向こう。
喪服姿の母は、相手の男に抱きすくめられながら。
じょじょに、ゆっくりと、姿勢を崩していった。
男の唇は、母の首筋にしっかりと吸いつけられていて。
口許からはひとすじ、紅いしたたりが。
帯のように、ブラウスの襟首に流れ込んでいた。
尻もちをつきながらも、母は気丈にも、男をへだてようとして。
突っ張った両手で、逞しい肩を抑えつづけていた。
長めの黒のスカートから覗いた脚は、薄い黒のストッキングに包まれていて。
足指を落ち着きなく、折り曲げたり伸ばしたりしていた。
つま先を包む薄手のナイロンにところどころ走る、かすかな引きつれが。
なぜか酷く鮮やかに、網膜に灼きついていた。

母の生き血は、男の口に合ったらしい。
父の写真のまえ、コクコクと喉を鳴らしながら、
うまそうに呑み込まれてゆく音が、
子供心にも、昂りが伝わってきた。

それからどれほど、刻が過ぎただろうか。
コクコク・・・コクコク・・・
ひそやかな音をたてて目のまえでむさぼられているのは、最愛の妻の生き血。
写真たてのなかにあるわたしの顔は、取り乱す妻の痴態を、ひどく冷やかに眺めていた。
あお向けの姿勢のまま、開いた脚は。
母のときとおなじくらい薄い、黒のストッキングに染められていて。
ヒクヒクと昂る足指も、母のときとおなじように、せわしく折られ伸ばされていた。
つま先を横切る、ストッキングの引きつれさえも、おなじようになまめかしくて。
妻は羞じらいながら、男の唇を礼装の貼りついた太ももに許してゆく。
ぴりっ。
鋭く広がった裂け目とともに。
あらわになった白い肌は、すでに情夫の侵蝕にゆだねられていった。

わたしの血を吸い取ったにくい男が、わたしの代役を演じはじめているというのに。
この昂りは、なぜだろう?
傍らに、幻影のように浮かびあがる、半透明の影。
影の主は、なつかしい輪郭を描いていて。
男のほうは、苦笑を浮かべながら。
うまくでかしたね。と、囁きかけてきて。
女のほうも、薄っすらと笑みながら。
沙紀さん、案外いやらしいのね・・・
息子の嫁の痴態に、あからさまに眉しかめていた。
嫁と姑とは、世界をへだててもこういう応酬をするのだろうか。

特別なお客様

2008年08月04日(Mon) 06:48:07

お母様には、、お目どおり叶いません。特別なお客様をお迎えです。
女中頭のきわが、鄭重に頭を垂れる。
小柄な着物姿に、真っ白な髪。
ほっそりとした身体つきが弱々しくさえ映る年バイの女中頭。
相手が若主人であるとはいえ、一歩も退かない断固とした態度が、頭を垂れた小柄な体つきに輪郭から、ありありとにじみ出ていた。
そう・・・
少年はちょっぴり口をすぼめて、それでも聞き分けよくまわれ右をした。
階上の書斎で、お父様がお待ちでございますよ。
いつもの気さくな声色にもどったきわに、振り向きもせずに頷いた少年は、
けだるそうに俯きながら階段をあがっていった。

書斎のドア越しお父様にただいまを告げると、とおりいっぺんなおかえりが、無関心そうな背中からかえってくる。
勉強部屋に戻ると、留守中とどいたらしい新刊の学習雑誌が、
これを読みなさいとばかりに、机のまん中においてあった。
少年はそれを取り上げると、無関心にぱらぱらとめくって、すぐじ自堕落に放り投げた。
まっ更になった机の上に、真っ白なハイソックスの脚を載せる。
そんなお行儀のわるいこと。
お母様が見ているまえでは、決してしないことになっていたのだが。

あぁ・・・
部屋の隅っこから、だれかの声がする。
ななめ下の、声のしたほうをじいっと凝視した少年は、いすから飛び降りて、
長い廊下越し書斎のようすが変わっていないのを確かめると、
足音を忍ばせて階段をおりた。
きわは、どうやらべつの仕事に自分をかり出したらしい。
とざされた母の部屋から少年をへだてる空間に、邪魔者はいなかった。

充血した目は一点を見つめたままクギづけになっていて。
手はしぜんに、半ズボンの股間に伸びていた。
ひざ小僧まで伸ばしたハイソックスの脚をもじもじさせながら、
少年はそれでも、ドアの隙間から見える光景から目を離せないでいた。
いつもきりりと装った母が。
漆黒の洋装を着崩れさせて、白い胸をあらわにしている。
豊かな乳房に這わされた男の手は、指を埋めるばかりに、もっちりとした肌をとらまえている。
母ははぁはぁと苦しげな息遣いに肩を震わせながら、
ひそめた眉にも、食いしばった口許にさえも、愉悦をありありと滲ませていた。
薄墨色のストッキングが、ふしだらにずり落ちて、くしゃくしゃになってたるんでいた。
息子の靴下がちょっとずり落ちていても厳しく叱る母親は、そこにはいない。

ぽん、と肩の上に置かれた掌に、ぎょっとして振り向くと。
父は蝋人形のように、白い顔をしていた。
こっちへ来なさい。
犯罪を見つけられたようにすくんでしまっていた少年を、父親はとがめない。
覗いたの。初めてでは、なさそうだね。
素直にこっくりと、頷くと。
父は「落ち着くよ」といいながら、まだ飲んだことのないコーヒーをすすめてくれた。
苦い薫りのする湯気がけむったくて、少年はちょっとむせ込んだ。
ははは・・・
乾いた声で笑いながら、父はひと言囁いて、部屋から立ち去った。
―――ばれるとお母様に、お叱りを受けるからね。
そうか、ばれなきゃいいんだ・・・

ひとつひとつ外されてゆく、ブラウスのボタン。
少しずつせり出してくる、胸元の白い肌。
きちんとセットした髪を、惜しげもなく振り乱して、あられもなく恥らう横顔。
白くほっそりとした脛をいつも清楚に透きとおらせている薄墨色のストッキングが。
貪欲な指にまさぐられ、欲情たぎる舌になぶり抜かれる。
あぁ・・・
ベッドのうえで寝返りをくり返しながら。
むき出しの太ももに、熱い粘液で浸している。
少年は時を経て、大人びた青年に成長していた。

婚約者の真央さんは、お昼すぎから家に招ばれていた。
けれどもお昼すぎはおろか、夕陽が空を淡く染める時分になっても、あらわれない。
いつも日傘を差して、古風な花柄のワンピースに装われた華奢なシルエット。
それが門前に現れないかと、わずかな音にも耳を澄ませていたのだが。
どちらへおでかけですか?
女中頭のきわが、あとを追いかけてきた。
職務に忠実なこの老女は、たとえ相手が館のあるじだったとしても。
自分の目論見に反する行動をとるものには、しつこいほどの追及を投げてくる。
青年は癇癖のある細面を、いつになくいらだたせて。
好きにさせてくれないか?
いつものように、素直には。行き先も用件も、告げようとしなかった。
けれども老女は正確に、若主人の行き先を察していた。
真央さまですか?真央さまでしたら、ご面会はかないません。
今夜、特別なお客様をお迎えになるのですから。
思わず口をすべらせてしまった老女は、めずらしく狼狽をあらわにして、後ずさったけれど。
青年は、老女をそっと行く手から押しやると、だまって帽子をかぶり、玄関に足を向けた。
顔色ひとつ、変えないで。

特別なお客様。
そのひとの来訪が告げられると。母はいつも、小娘のようにはしゃいでいた。
父はひっそりと書斎にこもり、訪客が辞去するまで、姿をあらわすことはなかった。
いま―――そのときの父の役割を果たそうとしている。
不義にあたります。あのかたをわたくし、裏切っているのです。羞ずかしい・・・
いつもの花柄のワンピースを、しどけなく着崩れさせて。
うら若い令嬢は、姑とおなじ行為に耽っている。
熱中しはじめている・・・その証しに、透きとおるほど初々しい肌は、生気に満ちたばら色に染まっていた。
お嬢さん。
素肌をおがませていただくのは、はじめてではないが。
突き刺すのは今宵が・・・初めてですな?
露骨な囁きに、羞じらいながら俯いた瓜実顔に、淫靡な輝きがよぎるのを。
少年のころにかえった青年は、いちずな視線で見つめつづけている。

特別なお客様。
今宵はどちらのお宅に、お邪魔するのでしょうか―――。

ラブホテル

2007年07月22日(Sun) 08:21:16

パパはラブホテルに行ったことがないけれど、
ママはラブホテルに行ったことがあるらしい。
と、いうことは・・・
ママがパパ以外の男のひととつきあったのは。
結婚するまえのこと?
それとも、結婚してから?
案外、ボクが生まれたあとのこと?

花嫁さんは処女じゃなければいけなかったのは、昔のことだというけれど。
ママの時代って・・・どうだったんだろう?
パパに訊いたら、さすがに苦笑いして。
そんなこと、パパに訊くのはどうかな?って。
なんのヒントももらえなかった。
思い切って、ママに聞いてみた。
ねぇ。ラブホテルって、どんなとこ?

ママはゆったりと、微笑んで。
そうね。あなたももう、識っておいたほうが良いお年頃ね。
あそこはね。
女のひとと男のひととが、いい夢を結ぶ、秘密の花園。
人目を忍ぶ関係のほうが。
こっそり愉しむ愉しみを、うんと愉しむことができる場所・・・
ママはいつになく、考え深げな面差しをして。
遠い目線は、庭のほうに向けられていたけれど。
咲き乱れている真っ赤なバラを見ていたのだろうか?
それともまったくべつの、過去の幻を見ていたのだろうか?

御覧なさい。お祖母さまよ。
まだ、お若いでしょう?
姑の写真を、いとも愉しげになぶりながら。
ママは遠い夢を追っている。
セピア色の写真のなか、嫁と姑とは仲睦まじげに、並んで立っていた。
ママは華やかな色づかいのスーツ姿。
お祖母さまは正反対に、黒づくめの礼服姿。
ふたり申し合わせたように脚に通した黒のストッキングだけは。
お祖母さまのほっそりとノーブルな足許も。
ママの健康そうなむっちり脚も。
薄っすらと妖しい艶に彩っている。

お祖父さまが、いらっしゃらなくなってから。
わたくしがお連れしたのよ。
お祖母さまは、昔かたぎで、貞淑でいらしたから。
一周忌を迎えて、ようやく思いきってくださったのよ。
ママは自慢そうに、愉しそうに。
じぶんの情夫にお祖母さまの相手をさせて。
美しい未亡人の淑徳を、不倫の渦に堕としたてんまつを語るのだった。
まだお若かったから。もったいなかったのよ。
一日でも早く、堕として差し上げたかったのよ。
それからは。
わたくしもお祖母さまのお咎めなしで。
ときには嫁姑で、連れだって。
お出かけするようになったわ。真夜中に。
そう。
ボクがたしか、中学生のころだったっけ。
ママがいそいそと、黒のストッキングを履いて。
真夜中にドアの音をしのばせるようになったのは。

まなみちゃんをホテルに連れて行ったのは、
あの子が高校にあがったころだったかしら。
ママが口にした姉さんの名が。
濃いルージュのすき間から、甘美な響きを帯びている。
まなみちゃん、初めてだったのよ。
それでもママの彼氏のおかげで・・・いちころだったの。
いまはもう、結婚しているまなみ姉さんは。
いまでもときどき、義兄さんにことわって、ラブホテルに通っている、という。
姉さんにべた惚れの義兄さんは。そんな姉さんをとがめもせずに。
こんど、覗いてみたいな、だなんて。
嘘とも本気ともつかない口調で戯れているらしい。
ママはちょっぴり、目線をとがらせて。
吸血鬼さん。若いひとが好きなのよね。
あの子、わたしに似てグラマーだし。
脅威だわ。
くすっ、と。うわべは、笑みながら。
ボクをひたと見すえる黒い瞳が。
さっきから、妖しい輝きをよぎらせている。

さっきから。
どき、どき、どき、どき・・・
胸の鼓動がはずんでいるのは。
きっと・・・きっと・・・。そう。きっと。
次に出されるのは、貴美さんのもののはずだから。
秋には、ボクと結婚することになっている貴美さんは。
ママの同級生の娘さんだった。
そんなボクの様子を、面白そうに窺いながら。
順を踏んで・・・という顔つきでママが差し出したのは、貴美さんのお母さんの写真だった。
麻美とは、学生時代から。
お互いの彼氏とラブホテルに通う仲だったのよ。
でも、わたしの彼氏にかかったら。
ほーら。
ベッドのうえ、抱きすくめられたスーツ姿の麻美さんは、
うっとりとなったまま。
彼氏というひとに噛まれた痕を、唾液と血潮に妖しく光らせていて。
麻美さんの上、得意げに笑んだ口許からは。
バラ色のしたたりがひとすじ、白い肌を濡らしていた。

もうお写真は、おしまいよ。
ママは面白そうに、ボクの顔色をうかがいながら。
秋までに、済ませないとね。
えっ、なにを?
見え透いた問いを、かるく受け流しながら。
だってあなた・・・昂奮してたじゃない。
刺すような目線に、痺れたように射すくめられて。
ボクはあいまいに、頷き返してしまっていた。
貴美さん、まじめなかただから。
まだきっと、処女のはずよ。
あのひとも、処女の生き血がお好きだから。
さいしょにあなたの姉さんを引き合わせて。
そのとき、約束したのよ。
息子にお嫁入りするお嬢さんのことも、必ずお連れしますからね・・・って。


あとがき
結婚前からつきあっている吸血鬼な愛人のために。
まず、親友を。
さらに、姑を。
それから、まな娘までも。
つぎつぎと、ラブホテルに連れていって。
さいごの狙いは・・・そう。息子の許婚だったのですね。^^

光と影のなかで

2007年07月02日(Mon) 05:32:51

向かい合わせに立たされた、ふたりの女。
影絵のように浮かび上がるのは、
黒一色の礼装の、かっちりとしたシルエット。
めいめいが、背後に男の影を受け入れて。
首筋に吸いつけられてくる淫らな唇を、向き合う相手のうえにみとめながらも。
あらがいひとつ、見せないで・・・
かりり・・・と噛まれたその瞬間だけ。
うっ。
うめきをひくく、洩らしてゆく。
きゅう・・・っ。
ひと呼吸遅れて、洩れてきたのは。
女たちの生き血を啜る音。
じゅるっ。じゅるっ。じゅるう・・・っ。
押し殺したような露骨な音が、鼓膜に狂おしく渦を巻く。
舞うような身もだえは、光と影のモノトーンに彩られて。
じょじょに緩慢になって、ひとり、またひとりと、じゅうたんの上、ひざを突いてゆく。
多くの女性の血がしみ込んだ、じゅうたんの上。
ふたたび起き上がるとき、女は淑女ではなくなっている。

ちゅう・・・ちゅう・・・
ごくり・・・くいっ。
ひたすら呑み込まれてゆく血の音に。
女たちは眉ひきつらせながら、耐えつづける。
随喜のうめきをさとられまいと、必死に歯を食いしばり、身をすくませて。
けれども男たちが相手を取り替えて、のしかかってくるころには。
こらえ切れない震え声が、呪わしいほどに狭い部屋を満たしてゆく。
啜り取られてゆく血潮の主は、ほかならぬ妻と母。
ヘビのように妖しくくねる、黒のストッキングのふくらはぎに。
淫らな光沢を、ツヤツヤとよぎらせながら。
しどけなく乱されてゆく礼装のすき間から、真珠色をした素肌がチラチラとこぼれる。
臆面もなく吸いつけられる唇に。
女たちはひときわ、狂おしいうめき声を洩らしてゆく。
更けゆく夜。
狂宴はまだ、はじまったばかり・・・

血を、吸われちゃった。

2007年07月01日(Sun) 07:38:39

血を、吸われちゃった。
つきあっていた佑子が、いつもの罪のない笑みをうかべながら。
だまって、ブラウスのボタンをひとつはずした。
胸元につけられた、赤黒い痕。
整然とした肌理に不自然に毒々しくつけられた痕は、ひどく痛々しかったけれど。
オレはなぜか、目を離すことができなかった。
ウットリと、見ているんだね。
白目の多い佑子の目線が、冷ややかな口調と裏腹に、悪戯っぽく輝いている。
いちど、血を吸われちゃうとね。
そのひとの、奴隷になるしかないの。
お嫁入りまえに、犯されちゃうの。
結婚してからも、夜になったらそのひとの処に抱かれに行くの。
あなたそんなこと、ガマンできる・・・?
わたしと別れて。
いつもの薄っすらとした眼が、はじめて切実な光をはなっていた。

離さない。
堅く抱き締めた腕のなか。
だって。
女はまだ、呟いている。
あなたまで、危ない目に遭うんだもの。
女は激しくかぶりを振って、
それでも甘えるように顔をすりつけてくる。
そのときだった。
ひやりとしたものが、首筋に押し当てられたのは。

うふふふ・・・ふ。
初めて耳にする、佑子の含み笑い。
ひっそりと囁くような笑みに、妖しさが秘められていて。
声の洩れる口許には、たったいま吸い取ったばかりのオレの血を、チラチラと輝かせている。
正面からは、佑子が。
背後からは、佑子の情夫が。
オレを挟み込むようにして。
かわるがわる、啜る音をたててゆく。
じゎん・・・
意識が薄れて、視界が滲んでゆく。

お嫁入りまえに、犯されちゃうの。
結婚してからも、夜になったらそのひとの処に抱かれに行くの。
いつも控えめな佑子は。
あたりが暗くなると、娼婦に変わる。
血を吸い尽くされたオレに操を立てると称して、我が家の人となった佑子。
いつも黒のブラックフォーマルに身を包んで、男たちの誘惑を寄せつけないくせに。
オレを弔うために装ったはずの衣裳を、惜しげもなく。
血を吸う情夫のまえ、ふしだらに着崩れさせてゆく。
お袋はそんな嫁に付き添って。
申し合わせたように装った黒の礼服のスカートを、夜風になまめかしく靡かせて。
薄く透きとおった黒ストッキングのふくらはぎが。
コツコツと響くハイヒールの音が。
夜の闇に吸い込まれてゆく。

マンションのなか

2007年07月01日(Sun) 05:45:09

りぃん、ろぉん・・・
どこか遠くから、インターホンが緩慢な響きを伝えてくる。
今夜は、お二階のようね・・・
母がしずかに呟くと。
あら、でもきっと、お見えになるわ。
妻はウキウキと、瞳を輝かしている。
ふたりとも。
きちんとセットしたショートカットの髪に、銀色のイヤリングをして。
すっきり伸びた首筋は、申し合わせたようなブラックフォーマルに透きとおるほどに映えている。
二対並んだ黒のストッキングの脚は、
ジューシィなピンク色をした脛を、なまめかしく浮き上がらせている。

もうすこし、待ってみましょうか。
やや間をおいて、母がひっそりと呟くと。
そうですねぇ・・・
妻はかいがいしく、淹れたてのお茶を三つ、わたしたちの前に並べてゆく。
あなた。もうお寝みになったら?明日もお仕事、早いんでしょ?
気づかう声を、苦笑いしながら受け流していると。
チリリリリリリリ・・・
携帯電話のけたたましい着信音が、耳ざわりに響き渡った。
母は携帯電話を、ぴったりと耳にあてて。
そうですよ。お母さんですよ。今夜はいらっしゃるのね?
そう・・・じゃ、ゆっくりしてからおいでなさい。
さっきとは打って変わって、落ち着きなく声をはずませた。
いらっしゃるそうよ。
喜色を滲ませた母に、妻も嬉しげに、ウフフフ・・・と笑んだ。
片づけなきゃ・・・ね。
飲みさしのお茶を、嫁と姑は仲良く手分けして、惜しげもなく片付けははじめる。
脚がくねるたびによぎる、ストッキングのじわりとした光沢が、
きちんと装われた礼装と、ひどく裏腹だった。

じゃ、おれは寝むよ。
そうね。おやすみなさい。
おやすみなさい・・・
ほんとうのお愉しみは、これからだった・・・
吸血少年と呼ばれる彼は、おなじマンションの住人だった。
年配の女性は、彼にとってはすべて「お母さん」。
より若い女性は、「お姉さん」。
母は彼に呼ばれると、憐憫の情もあらわにブラウスの胸元をくつろげてゆき、
妻も彼に呼ばれると、小娘みたいに恥らっている。
かわるがわる、白い首筋に唇を這わされて。
ちぅちぅ・・・
ちぅちぅ・・・
ふすまごしに洩れてくる、熱情を秘めた吸血の音。
うっとりと姿勢をくずしたふたつの影に。
年の順に、おおいかぶさっていって。
黒のストッキングは、よりいっそう濃い艶をよぎらせて。
淫らに熟れた豊かな脛を、染めあげてゆく。
細めにあけたふすまの間から覗き込むわたしは。
母の息子、妻の弟になりすます客人の振る舞いを、
昂ぶりながら、見守っている。
つけられた痕を、じんじんと疼かせながら・・・

ツタのからまるお邸の奥の間で・・・

2007年07月01日(Sun) 05:26:43

父は母を送り出し、自分もこっそりあとを尾ける。
わたしは妻を伴って。
息子は婚約者を、誘い出す。
行き先はおなじ、ツタのからまるお邸。
ところも同じ、その奥まった一室で。
母は父以外の男性に初めて目ざめ、
妻は礼装の裏地を、淫らな液でしとどに濡らし、
息子の未来の花嫁は、嫁入り前の裸身をさらす。

いつのころからか、受け継がれてきたマゾの血は。
おなじ牙に啜り取られ、賞玩されて。
理性を忘れた夫たちは。
娼婦と化した嫁たちの振る舞いを、ただいっしんに見つめている。
きみが恥ずかしがるのが、愉しいのさ・・・
おなじ囁きに、くすぐったそうに肩をすくめる女たちは。
今宵もしなやかな黒のストッキングを脚に通して、
蒼白く艶めいた脛を、薄っすらと透きとおらせて、
淫らに輝く淡い灯火の下、淑やかなシルエットを淫らに堕としてゆく。

明け方の風景

2006年11月06日(Mon) 07:24:28

がたがた ごとごと
明け方のしじまを破るもの音が。
女たちの帰宅を告げる。
戻りましたね。
戻ったな。
父と息子は、等分の大きさにつけられた痕に、まだ血潮をしたたらせたまま。
意味ありげな目配せを交わし合う。
ふたりが喪った血液を、女どもはまだふんだんに、体内に宿しているはずだった。

乱交に似た交わりは、つかの間の嵐のように通り過ぎていた。
女たちは、そこかしこに撥ねた血と、着衣の乱れを気にしながらも、
けだるげに乱れ髪を取り繕って。
ふたり並んで、きちんと正座をして。
男たちに、報せを告げる。
あれから・・・
ユリ子さんはつつがなく・・・貞操を喪失いたしました。
息子の嫁が不義の床を契ったことを。
姑は顔色ひとつ変えないで、夫と息子に告げていた。
ユリ子はさすがに羞じらいをにじませながら。
ごめんなさい。
夫のまえ、深々と頭を垂れる。
息子は妻の手を取りあげて、押し戴きながら。いたわるように、その手の甲に接吻をして。
妻の過ちを咎めまい・・・そんな意思をあらわにしている。
夜更け。
唐突に現れた迎え。
ふたつの影は、それぞれ父と息子のうなじを噛んで、
ほとんど瞬時に、生き血を吸い取ってしまった。
人ではなくなってしまうほど。
くらくらとする眩暈の向こうに連れ去られてゆく妻たちを。
男どもはウットリとした目つきで、ただ見送るだけだった。

つきものに憑かれたように。
無表情の姑は、口をつくまま呟きをつづけ、
嫁は息を詰めたまま、眼を伏せながら姑の口許を窺っている。
お邸に連れてゆかれて。
そう、無理無体に、組み敷かれてしまいましたの。
わたくしのお相手は、三人ですよ。
お前は、慣れているだろう?
そんな言い草、なさるんですの。
もう・・・抗いようも、ございませんでしたわ。
ユリ子さんのお相手は・・・
そう。わたくしを初めて凌辱なすった方。貴方はよく、ご存知ですね?
若夫婦のころから、ずっとのお付き合いですものね。
母親のイタズラっぽい含み笑いに、照れ笑いで応える夫は、ただの悪戯坊主にしか見えない。

今晩・・・もういちど、あのかたがお見えになります。
あなたたちご夫婦で、お迎えしなくてはなりませんよ。
あとは三人でよく話し合って、行く末をおきめになるように。
厳粛に言い渡されてはみたものの。
結論ははじめから、きめられている。
吸血鬼の支配を受ける家。
夜ごとの訪客は、妻の愛人として迎えられる。

親たちは、夫婦ふたりきりになると。
さきほどは・・・ユリ子さんを押し倒して。あんまりななさりよう。
本当は、若いひとの血のほうが、美味しいんじゃなくて?
媚びるような目線を流しながらも怨ずる妻を。
なに、一家の長として・・・嫁の身持ちが気になったのだよ。
そういいながら、夫はひしとかき抱いている。

つぎの晩が過ぎると。
息子は昂ぶりの余韻を、まだあらわに残したまま。
ひと晩寝ずに控えていた両親の部屋を訪れた。
悔しいけれど、おめでとう。
そう、言ってやりました。
あのかたに、ユリ子の愛人になっていただくよう、私のほうからお願いしたのです。
いまは・・・そう。邪魔しないであげてください。睦み合っている最中ですから。


あとがき
なかば強引に連れ去られ、吸血と情交を強いられた嫁と姑。
ふたりは帰宅すると、こんどは血に飢えた夫たちに迫られていきます。
息子は、母と。
父親は、嫁と。
互いにパートナーを取り替えあって。生き血を啜りあって。
「儀式」を終えると、ようやく語り合いの場にたどり着くのです。

嫁と姑

2006年08月20日(Sun) 06:49:20

まんまなタイトルですが。(笑)

おそろいの黒のストッキングに包んだ脚を連ねて、
ふたり連れだって夕闇の路をたどる嫁と姑・・・
そんなシーンを妄想します。
艶めかしく装った脚を。
なめらかに輝くうなじを。
競い合うように、差し出して。
夫に、息子に隠れて愉悦に耽る、ふたりの女。
娼婦のさがに目ざめ、女にかえった嫁と姑は。
つつしみをかなぐり捨てて乱れ果てる、互いの肢体を見つめあいながら。
共犯者の笑みを交わしあい、互いの不貞を許しあってゆく。

ひとりの男をはさんだ微妙な対立関係と、おなじ女としての連帯感。
そんなものを巧く描ければ・・・と思います。

どちらが先に、餌食になるのか?^^
家に伝わる淫らな因習を嫁にも伝授する・・・ということであれば。
姑さんが率先して、自らの貞操を嫁の前で散らしながら。
おなじ行為を強いてゆき、
嫁が夫にすら隠れて家の作法を従順に受け容れてゆくことで、ふたりの間に共犯関係が成立する・・・みたいなお話になりますし。

穏やかな日常に妖しい影を入り込ませて、貞淑な姑をたぶらかす淫乱な嫁・・・という方向であれば。
自らの不貞を認めさせ、思い切り酔わせてしまって。
息子の仇敵であるはずの存在に、さいごには嬉々として己の貞操を捧げさせる・・・みたいなノリになりますし。

どちらが、よろしいでしょうか?
どちらも、歪んでいますね・・・

あら、時間・・・。

2006年08月20日(Sun) 06:35:47

あら、時間・・・。
妻のサトミは腕時計に目をやって。
こちらを振り返ると、薄っすらとほほ笑んで。
お約束の時間なんです。ちょっと、出かけてまいりますわね。
まっ白なワンピースに包んだしなやかな肢体が、ドアの向こうへと。
すべり込むように消えてゆく。
同居している母のシズエは、もう先刻。
なにかに呼び出されたようにハッと顔色をあらためて。
わが身を紛れ込ませるようにして、夕闇の彼方へと姿を消していた。

夜更け―――。
玄関先でドアを開けたてする音が、にわかに聞えてきた。
ふたり一緒に、戻ってきたようだ。
開けっ放しの寝室のまえを横切ってゆく、ふたつの影。
白のワンピースの下は、ノーストッキング。
たしか家を出るときは。
肌の透ける黒いストッキングが、ひざ小僧に刺激的なまでの光沢を滲ませていたはずなのだが。
黒のスーツの下には、やはり黒のストッキングがきちんとまとわれていたけれど。
よく見ると薄っすらと、縦に伝線を滲ませている。
ふたりの襟首からのぞくのは、断ち切られたブラジャーのストラップ。
不埒な手が、ふたりの衣裳の奥深くまで侵入したのを裏づけていた。
そんなものがはみ出したままの恰好で。
ふたりは家路をたどってきたのだろうか?
誰見咎めるものもない夜更けの道とはいいながら。

あらお義母さま、あまりしつこくされなかったんですね。
とにもかくにも、まだストッキングを履いている母を、
妻はさりげなく冷やかしている。
いえいえ。履き替えを二足も、用意していったのですよ。
あら。まぁ。
秘めやかに戯れ合う、柔らかい声色たち。

どうやら気づかないふりをして、寝ていたほうが賢明だ。
そう思って向こうに寝返りをうったとき。
ママ・・・
か細い泣き声が、妻のほうへとかけ寄っていった。
あぁ、いい子いい子。
声色はすぐに、優しい母親のそれにすり変わっている。

さして手を焼かせずに子供部屋のドアが閉じられると。
あの子も、いずれ・・・
そうね。中学にあがる頃かしら。
悪い大人たちは、そんな囁きすら交し合っている。