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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

血を吸われたことを母さんに告白する。

2024年01月25日(Thu) 00:55:53

「ぇ・・・?」
母さんは案の定、ボクから聞いたひと言に、頓狂な声を発した。
「・・・っていうことは、何?キミは吸血鬼にもう、咬まれちゃったっていうの?」
できの良くないボクのことを、母さんはよくそんな目で視る。
そして、そのつぎにおっ被(かぶ)せられる「常識を疑う――」という目つきが、
いつもならもっと、後ろめたい気分につながるはずなのに。
いまのボクが割合平気な心持ちでいられるのは、
吸い残された血液中に混入された毒素のなせるわざなのだろうか?

「やだ・・・あなたがそんなことしたら、母さんまで咬まれちゃうじゃない!いやよそんなのっ!!」
珍しく自分本位に取り乱す母さんのことを、ボクも、妹の由佳も、冷ややかに見守っている。
母さんの反応はますますエスカレートして、ヒステリックになってゆく。
「やだー!どうするのっ!?あなた子どもだからまだ知らないと思うけど――母さん犯されちゃうんだよ!?
 父さんにどんな言い訳すれば良いのよっ!?」
そういえば、たしかにそうだった。
由香里さんはボクに、「セックスの経験のある女子は例外なく犯される」って、確かに教えてくれた。
そうだとすると、ボクから吸血病を「伝染」させられた母さんもまた、犯されちゃうっていうことだ。
後先考えていなかったけど、そのときだけは母さんに、ちょっっぴりだけ済まないと思った。
ウン、そう。「ちょっっぴり」だけだったけどね・・・

なにしろボクは、花嫁の純潔を奪(と)られる覚悟で、由香里さんとの交際を取りつけたんだ。
こんなプラチナチケット――絶対に手放したりなんか、するもんか。

ふと見ると。
母さんの背後に、妹の真奈美が近寄っていった。
そして、うす茶のセーターにこげ茶のスカートを穿いた母さんの後ろで、そっと囁いたのだ。
「母さん――ゴメン。あたしももう、吸われちゃった・・・」
えっ!?
ボクたちふたりは、目を見開いて真奈美を見た。
真奈美は動じなかった。
「ウン、そうなの。咬まれちゃったの。あの公園で――」
ストレートのロングヘアを掻きのけた首すじには、たしかに咬み痕がふたつ、綺麗に並んでいる。
さっき咬まれたばかりなのか、傷口はまだ乾ききっていなくて、紅い血のりがテラテラと光っていた。

相手は・・・だれ・・・?
ボクがそう訊くと、
「たぶん、兄さんの血を吸ったのと同じひと・・・」
といった。
ボクたち家族の血を、複数の吸血鬼が奪い合う。そんなことにはならずに済みそうだ――と、ボクは少しだけホッとした。
それなら問題は簡単だよ――と、そう言いかけて、ボクはその言葉を呑み込んだ。
母さんが半狂乱になって、真奈美に向かって食ってかかったのだ。
「あなたねえっ!どうしたのよ!?なに考えているのよ!?ふたりともっ。吸血鬼に血をあげるなんて、どうなってるのっ!?」
母さんはその場に、うずくまってしまっていた。

まさかここまで母さんが、吸血行為に対して嫌悪感を示すなんて、思ってもいなかった。
お隣の奥さんだって。
父さんの友だちのご夫婦だって。
仲良く吸われているって、母さんそう言ってたよね??
他人のうわさなら気軽にできるけど、自分はヤなの??
そこまで問い詰めるのは酷なのかなって、ボクは思った。
そうしたら――女の子って容赦ないよなって、思わずにはいられなかった。
真奈美がボクの代わりに、言い放ったのだ。
「えー、だって母さん、お隣の奥さんだって飲まれちゃってるんだから、いまノらないと流行に乗り遅れちゃうよ~」

ただいまぁ・・・そのときだった。父さんが戻ってきたのは。
3人が3人とも、救われたような気がして、父さんのほうへと振り向いた。
ところが、父さんの様子は、それどころじゃなかった。
背広のジャケットは無事だったみたいだけど。
ワイシャツの襟首が真っ赤に濡れていた。
「悪い、母さん――お客さん連れてきたんだ。きみの血が欲しいってせがまれちゃって、断り切れなかったんだ・・・」

きゃー。

母さんが叫んだのは、無理もないことだった。

あー。あー。あー・・・
あお向けに組み敷かれた母さんは、こげ茶のハイソックスを履いた脚をバタつかせながら、もう首すじを咬まれちゃっていた。
唇のすき間からこぼれた血のりが床に滴るのを、ボクはしっかりと見届けていた。
その傍らで真奈美が、「あーあー♪」って言いながら、持ってきた雑巾で、床に散った血のりをむぞうさに拭き取っていった。
「母さん、こげ茶のハイソックス素敵だね。あとでたっぷり舐めまわしてもらえると良いね」
真奈美は他人ごとみたいに、のんびりとそんな独り言を洩らしていた。

「父さん・・・いいの・・・?」
さっき得た知識のままに、ボクは父さんに問いかけた。
――セックス経験のある女のひとって、犯されちゃうんだよね?
「そんなことにいちいち、念を押すものじゃない」
父さんは照れ臭そうに、笑った。
「母さんのハイソックスを、昼間から狙っていたらしいんだ。今夜は夜通しかもしれないな・・・」
苦笑しながら父さんは、首すじを濡らす血のりを掌で拭い、自分の口で舐め取っている。
母さんが好んで履いていたこげ茶のハイソックスがチリチリに食い剥かれるのも、想定内のことらしい。

「けどお前、さっき聞いたら冴島さんとこのお嬢さんと付き合うそうじゃないか?
 それは良いんだけど――」
さすがの父さんが言いよどんだ。
「わかってるって」
ボクはいった。
「あのひと――由香里さんのことを初めてヤるとき、ボクに見せてくれるって約束してくれたんだ」
そうだったんだな・・・父さんはむしろ、ほのぼのと笑った。
「父さんだって、母さんが目の前でほかのヤツと姦(や)るところなんて、もちろん初めてなんだからな」
「一緒に見学しても・・・良い・・・?」
というボクに、父さんはおうように笑って応えた。
「ああ、ぜひそうすると良い。創太の未来の花嫁は、初めてを奪(と)られるんだからな。
 もっと刺激的かもしれないぞ」
「う~ん、でも自分の母親が姦(や)られちゃうのも、かなり凹むと思うけどね~」
そんなのんきな会話を交わす親子のまえで。
母さんだけがひとり、大きな声で喚いていた。
「あ、あなたたちっ、ダメ、ダメよ、こんなところ、視・な・い・でっ!♡」
生真面目な母さんがひと晩じゅう弄ばれて、恥を忘れたことまでは――内緒にしておこう。(笑)


あとがき
これまた珍しく、書下ろしです。
お母さんの痴態が、けっこうコミカルになってしまいました。^^

追記
2月4日、ちょっとだけ改筆。

由香の彼氏。

2024年01月24日(Wed) 23:49:33

「え?私と?」
切羽詰まったぶきっちょさだらけの告白に。
由香里さんはけげんそうに、ボクのことを見つめた。
「こんなでぶっちょさんのこと、からかうもんじゃないわよ」
冗談ごかしのうそぶきの、語尾が少しだけ、震えていた。
そうじゃない――
ボクはけんめいに、言いつのった。
いつも冷静な物腰に、クラスをまとめる責任感。
だれに対しても献身的な、看護婦さんみたいな善意と情熱。
そんな優等生ぶりに惹かれたのだと――どうやってうまく説明できたのだろう?
とにもかくにも由香里さんは、ボクが嘘ん気ではないのを、わかってくれたみたいだった。

でもね――
由香里さんはなにかを、言いよどんだ。
それはたぶん、ボクの一方的な好意をはぐらかすためではなく、
本音でなにかを伝えようとしていた――と、ボクの目には映った。
何・・・?
ボクは探るような言葉を、由香里さんに投げかけた。
うぅん、なんでもない。よそうねこんなの、悪い冗談だよね・・・
由香里さんは思い直したように、そういった。
すこし冷静になって、一歩か半歩、身を引いたような言い方にきこえた。
冗談だなんて――
ボクが憤然として、もういちど言いつのろうとしたとき。
由香里さんははっとした顔つきをして、
ごめん、とだけ、ボクにいった。
「創太くん、本気で言ってくれてるんだよね、私、失礼なこと言ってしまった――」
由香里さんは心からの後悔を、独り言で返してくる。
訊いてもいい?と、ぼくはいった。
なにを・・・と言いよどむ由香里さんに、
「でもね」の続き――と、ぼくはいった。
わかった・・・
由香里さんは気おされたように、こたえてくれた。
けれどもとても、すべてを言いにくそうなのは、容易に見てとれた。
それでも「でもね」の続きを訊く権利がある・・・と、ぼくはおもった。

私ね、献血してるの。
知ってるでしょう?この街に吸血鬼が大勢いるって。
その中の1人に、家族みんなで献血してるの。
パパもママも、もちろん私も・・・
わかるでしょう?
首すじを舐められながら吸血されるんだよ?
それと、あのひとったら、ストッキングやハイソックスが好きなの。
だから、下校途中で呼び止められて、制服着たままハイソックスの脚を咬まれたりしているの。
それなのに私――学校の名誉を損ねているかもしれないのに――あのひとにせがまれるまま、その献血を続けているの。

それが由香里さんの話の、すべてだった。

えっ、それって、いけないことじゃないんじゃない・・・?って、言いかけて。
いやまてよ――と一瞬、想い留まった。
だって。
気がつかずには、いられなかった。
もしも由香里さんがボクの恋人になってくれたとして。
どうやら親ぐらいの年恰好らしいその吸血鬼に、
首すじを舐められハイソックスを破られながらの吸血を、耐え忍ばなければならないはずなのだ――ということに。
せっかく恋人になってくれるのにそんな不義理をするのは、
生真面目な由香里さんにかぎって、とてもできたことではないのだと――

そこまで言ってくれたあなただから、言わないわけにはいかないから、言うわ。
ママはね、吸血鬼に血を吸われながら、抱かれているの。
どういうことか、わかるでしょう?
そう、恋人同士みたいに、抱かれているの。
パパはそんなふたりの関係を気遣って、それ以上立ち入らないからって、ふたりのお付き合いを認めているんだ。
でも――
もしも、もしもね・・・
貴方と私が将来、結婚するとしたら――
あのう・・・セックスを経験した女のひととは、絶対そういうことをするんだって。
だから、貴方のお嫁さんになった途端に、私あの人に・・・その・・・犯されちゃう立場なんだよ。
だから・・・
いまのうちに私のことは、思い切ってくれないかな――

驚くべき事情と、決然とした態度とで。
ボクは旗を巻いて撤退するしかなかった。
いちどはちゃんと、考えてほしいな――彼女はそんなボクを責めるでもなく、独り言みたいにそういった。

一週間、ボクは考えた。
母さんが言っていた。
お隣の奥さんも、父さんのお友だちご夫婦も。
最近はみんな、血を吸われているみたい。
気味が悪いわこの街はって。
そうなんだろうか?
そういう、気味の悪い街なんだろうか?
ふと目にした窓辺の気色は、いつものように穏やかで、だれもが安心して暮らしている街そのものだった。

放課後、下校するところを待ち構えていたボクに、
由香里さんは覚悟していたらしく、まともに目線を合わせてきた。
「話・・・あるの?」
「うん」
「長くなりそう・・・?」
「うん、きみしだいで長くなる」
ボクは言葉に力を籠めていた。
それが由香里さんにも、伝わったらしい。
「じゃあ来てくれる・・・?」
むしろそっけない言葉つきで、後ろも振り向かずに家路をたどっていくのだった。

ここでね。
彼女が立ち止まったのは、自宅近くの公園だった。
ここでいつも、私血を吸われているの――
見学してく?
からかうような目つきの由香里さんに向かってボクが強く頷くと。
彼女はびっくりしたように、大きく目を見開いた。
冗談とか・・・やだよ。
由香里さんはボクのほうを見ずに、そういった。
「本気のつもりだから――」ボクはそう応えるしかなかった。

公園の隅っこにある噴水の傍らに、由香里さんは真っすぐに脚を進めていく。
真っ白なハイソックスが眩しい、まだ陽の当たる時分だった。
「あたしね」
由香里さんが、彼女には珍しい蓮っ葉な調子で口を開く。
「あのひとに楽しませてあげるときには必ず、新しいやつ履いて来るの」
彼女はじっと、自分の足許を見つめていた。
真新しい白のハイソックスは、夕陽を照り返して、太目のリブをツヤツヤと浮き彫りにしている。
吸血鬼ではないボクにさえ、それはとても美味しそうに映った。
「あたしがデブで、血をいっぱい獲れるから襲われているだけなんだ・・・けどね・・・」
彼女の声が、くぐもった。
もしかすると、そんな劣等感があるのかもしれない。
由香里さんのお母さんは、控えめで目だたないタイプだったけど、優しそうな女(ひと)だった。
あのひお母さんも、由香里さんともども血を吸われているんだ――と、ボクはおもった。
「あのひとったら、ママが本命なんだよね。私はその付けたり、おまけに過ぎないの」
由香里さんは初めて、本心をいった。
たしかに彼女よりきれいな女子はなん人もいるかもしれないけれど。
負けず嫌いで誇り高く、級長としての責任感をいつも満面に湛えている彼女が、はじめて見せた劣等感に。
ボクは脚がすくむ想いだった。

黒くて淡い煙が、辺りに立ち込めた。
ふと見ると。
背の高い顔色の良くない男が、国威に身を包んで、目の前にいた。
「この人が由香里の彼氏さんかね?」
男はいった。
「まだ、そんなんじゃないから」
由香里さんはこたえた。
「まだ」――ということは、まだボクにも見込みはあるんだろうか?と、ちょっとだけそう思った。
「あ・・・あのっ」
ボクは思わず、声をあげた。
半歩差し伸べた制服の半ズボンの脚は、濃紺のハイソックスに包まれている。
ふと見ると。
ハイソックスが脛の半ばまでずり落ちていた。
カッコ悪・・・ボクは思った。
あわててひざ小僧の下まで引き伸ばすしぐさを、男は笑いもせずに見守っていた。
「先にボクの血を吸ってください。やっぱり、女の子を守るのが男子の務めだと思うから――」
知らず知らず、ボクは彼と由香里さんとを隔てるように、立ちはだかっていた。
「けっこうな勇気だな」
男はいった。
「けれども――良いのか・・・?」
と、男は訊いた。
「ど、どういうことですか!?」
ボクはこたえた。
「血を吸われるようになったら、後戻りはできなくなる。
 いまならまだ、後戻りができる。
 彼女を諦めさえするのなら――」
男はいった。
「そんなつもりでここまで来たわけじゃありません」
ボクは本気で、口を尖らせる。
すると男は案外にも、
「すまん、すまん、そりゃそうだよな。失敬した」
と、困ったような顔つきをした。
その困惑した面ざしに、ちょっとだけ共感を覚えた。
「創太くん止しなよ」
背後から声がした。
「止さなかったら――ボクの彼女になってくれる?」
ボクはこたえた。
「信じらんないんだけど・・・」
由香里さんは、独り言(ご)ちた。
「答えて・・・」
ぼくはいった。
「わかった・・・彼女になる・・・」
背中越しにミニにする由香里さんの声が、涙声になっている。

初めて受け容れた牙は、思いのほか痛みを感じなかった。
けれどもそのまえに、ボクの履いているハイソックスをたんねんに舐め尽くす舌なめずりに、閉口するはめになった。
じっとりと這わされてくる舌が、しなやかなナイロン生地ごしに卑猥な情感を伝えてくる。
「男女問わないんだよ、わしは」
男はいった。
「わかった・・・わかったから、好きにしなよ・・・」
ボクは、そういうしかなかった。
嫌というほど繰り返した舌なめずりのあと、男はおもむろに、ふくらはぎを咬んできた。
痛・・・っ!
心のなかで叫んだのが聞こえたかのように。
男はふたたび、舌なめずりをくり返してくる。
傷口に埋め込まれた痛みが、ほどよくまぎれるのを、ボクは感じた。
チューッと音を立てて血を啜り取られるのが、音と気配とでわかった。
血液を引き抜かれるときの感覚が、無重力状態にいざなわれるようで、なんともいえなかった。
「悪い、悪いね・・・」
男がそう言いながら、なおも飽きもせずに舌なめずりをなすりつけてくるのに、
ボクはハイソックスを引き伸ばし引き伸ばししながら、応じていった。
あー・・・
貧血がにわかに、ぼくの脳裏を混濁させた。
「あー、具合悪くなったかな?無理するなよ」
吸血鬼はむしろ、ボクの体調を気遣っているようにさえ思えた。

その場に横倒しになってしまうほど尽くさせてしまうと、
ボクにはもう、由香里さんに対する吸血を妨げるための打つ手がなかった。
「次はあたしの番ね」
由香里さんが割って入るようにして、白のハイソックスの脛を彼に向って差し伸べた。
「彼女の血を吸っても良いか?」
男はわざわざ、ボクに訊いた。
「良くないよ――」
ボクはけんめいに、かぶりを振った。
「ゴメンね、創太くん。私この人に血を吸われるの、嫌じゃないの」
あの生真面目で近寄りがたい由香里さんが、制服のスカートをたくし上げんばかりにして、
白のハイソックスの脛を、男に向けて差し伸ばしていた。
見慣れた制服のハイソックスのリブの上に、ボクの血をあやした牙が突き立てられて。
ズブ・・・ッと刺し込まれてゆく。
そんな光景を、どうしてドキドキしながら、見守ってしまっているんだろう?
貧血に迷った脳裏を、真っ白なハイソックスに散る赤い飛沫が、狂おしく染めた。

いつの間にか。
尻もちを突いた由香里さんは、公園の芝生の上に組み敷かれていって。
「ああ・・・やめて・・・」と呻きながら、首すじを咬まれていった。
真っ白なブラウスに散ったバラ色の飛沫が、もう何も遠慮しないで良いのだと語っていた。
由香里さんの身体を流れるうら若い血液を、男は思う存分ゴクゴクと飲み込んでゆく。
惜しげもなく――というほどに。
由香里さんもまた、ブラウスのえり首をおし拡げんばかりにして、白い胸もとをさらけ出し、皮膚を破られていった。
男が由香里さんの血を想うさま吸い取ると、こんどはふたたび、ボクの足許にかがみこんで来る。
どうぞ・・・と呟きながら、ボクはそうっと、ハイソックスのずり落ちかけたふくらはぎを、自分から差し伸べてしまっていた。
男は無遠慮に、ボクのハイソックスを咬み破るのを愉しみながら、吸血に耽ってゆく。

ボクももう、由香里さんに負けず劣らず、吸血鬼の奴隷になり果ててしまっていた。
どうぞ・・・もっと咬んで・・・もっと楽しんで良いですよ・・・と、呟きながら。
紺のハイソックスの脚を、男の舌に、唇に、好むままに添わせていってしまっていた――


あとがき
由香里の身の上が気になっていたのですが、
最近にしては珍しく、あっという間に描けちゃいました。^^

後記
2月4日、少しだけ改筆。

吸血鬼とお母さんの鬼ごっこ

2024年01月24日(Wed) 20:33:54

淡い草色のワンピースを着た百合子が、公園のなかを逃げ惑っている。
「怖かったら逃げるね」
笑みを交えてそう応えた妻が、たしかに逃げ惑っている。
けれども、逃げ惑って――というのは、もはや適切な表現ではないかも知れない。
妻の足取りはあくまでも手加減したもので、
迫って来る吸血鬼に容易に肩を掴まれてしまうていどの緩慢なものだった。
ふり返りふり返りしながら肩までの黒髪をなびかせて、
ワンピースのすそを風にそよがせて、
すそから覗くふくらはぎを彩る淡い色合いのストッキングに、脛を適度に透きとおらせて、
巧みに吸血鬼を誘惑していた。
「あっ」
抱きつく猿臂に声をあげて、頑是ない子どもみたいに激しくかぶりを振って、
うなじに喰いついて来る牙を避けようとはするけれど。
その努力はもちろん、妻の身を守り通すことは無い。
力を籠めた猿臂に身体をギュッと固定され、否応なく咬まれてしまうのだ。
ビュッと飛び散る血潮が、ワンピースの肩に撥ねる。
妻の生き血をひと想いに吸い尽くそうとはしないで、
吸血鬼はわざとのように、華奢なワンピース姿を固い猿臂から解き放つ。

季節はずれの蝶が弱々しく翔ぶように、妻はふたたび弱々しい足取りで逃げ惑う。
そしてまたもや他愛なく捕まえられて、首すじを咬まれてしまう。
さほどの量を喪うわけでもないのに、男の腕のなかの妻は大仰に、
「ああ~っ」と絶望的な呻きをあげながら、生き血を啜り取られていった。
むさぼる喉が、美味そうに鳴った。
ひと口ひと口、彼は妻の生き血を愛おしむように飲み味わっている。
そして、猿臂に巻かれた妻をまたも解放し、弱々しい足取りを余裕たっぷりに追いかけてゆく。
いちどに吸い取る量をわざと加減して、この他愛ない鬼ごっこを長引かせようとしているのだ。
けれども妻のほうもまた、公園の外には出ようとはせずに、とりとめもなくパンプスの脚をもつれさせる。
そしてまた、あっけなく捕まえられて、逞しい腕のなかで切なげな呻きをあげるのだった。

なん度めか解放された妻は、よろよろとよろけて、噴水の礎石に身をもたれかけさせた。
失血で、動きが明らかに衰えていた。
立て膝をした妻の足許に、好色な唇が吸いつけられた。
ストッキングをしわ寄せながら、淡いナイロンの舌触りを愉しんでいるのだ。
妻は目許を翳らせて、羞じらうようにかぶりを振った。
めくれ上がらないようにワンピースのすそをひざ頭で抑えた掌は、
それ以上相手の不埒な愉しみを妨げようとはしていない。
じょじょに姿勢を崩す妻にのしかかるようにして、彼は妻のパンプスを脱がせ、
足の裏にまで舌を這わせた。
「あははははっ」
妻がくすぐったそうに、開けっ広げな笑い声をあげた。
男の舌は、悪魔に支配されたようにしつようだった。
ストッキングのうえからしゃぶりつけられた舌は、薄いナイロン生地を卑猥に舐め抜いた。
いやらしい舌なめずりが、妻の足許を上品に染めるストッキングに、露骨な皴を波打たせ、唾液をしみ込ませてゆく。
なん度も咬まれ、ストッキングをチリチリに咬み破られながら。
妻はじれったそうに身を揉んで、
「いけません」「やめてください」「ひどいです・・・」
と囁きをくり返し、情夫の痴態を制しようとしている。
けれども本心は言葉と裏腹であるのは、ひと目見てそれとわかるほどだった。
彼が愉しみやすいように、脚をさりげなくくねらせて、狙われた部位を舌に添わせてゆくのだ。
時おり、力を籠めて喰いつかれると。
「きゃあ~」
と大仰な声をあげて応じたが、むしろストッキングを咬み破られることに歓びを含んだような声色だった。

彼に掻き抱かれた妻は、ワンピースの前の釦をひとつひとつ外されていって、
さいごにはぎ取られたブラジャーに隠されていた胸を露出させた。
彼女が着古したこのワンピースをチョイスした理由がわかった。
前開きで、彼にとって脱がせやすい服だったのだ。
節くれだった掌が貧相な胸を愛おしむように覆い、しつような愛撫を加え揉みくちゃにしてゆく。
ピンと勃った乳首を賞玩するように唇に含むと、くちゅ・・・くちゅ・・・と卑猥な音を洩らしながら、舌で愛撫を加えていった。
もはや、つけ入る隙もないほどの愛撫だった。
乳首を噛まれる気遣いはないとわかったうえで、全幅の信頼をこめて開かれた胸は、むしろ誇らし気に舌と指とに晒されてゆく――

「パパ・・・」
娘が傍らで、上目遣いにぼくを見た。
下校中に申し合わせたようにぼくと待ち合わせ、前もってぼくの渇きを飽かしめてくれていた。
ブラウスに撥ねた血潮がその余韻となって、純白のブラウスを鮮やかに染めていた。
ぼくは娘と、視線を合わせた。
母親似の顔の輪郭が、妻のそれと重なった。
「どうやら、出る幕はなさそうだね・・・」
ぼくは情けなさそうに笑った。
「そうだけど――」
娘も、困ったように笑った。
「パパはいいの?」
「ぼくはかまわない。
 ママは嫌がっていないし、彼も楽しそうだ。
 このうえ邪魔するのは、やめにしておこう」
「ウン、わかった――」
娘の声は思いのほか、キッパリしていた。
「じゃあこのまま、さいごまで見届けようね」
逃がさない――と言わんばかりに、娘の掌がぼくの手の甲を押し包む。
ぼくは自分の掌を動かさなかった。

足摺りをくり返す脛から、片脚だけ脱がされたストッキングがじりじりと弛み堕ちてゆく。
強引な上下動に細腰をあずけながら、妻は相手の背中に腕を回し、
濃厚なキスに自分から応えはじめている。
もう、ぼくたち父娘に視られているのをじゅうぶんに、意識していた。
意識しながらも、夫婦のあいだでしか演じてこなかったであろう営みを、
人目さえも厭わずに、恥を忘れて、いや――誇らしげに、くり広げてゆくのだった。


あとがき
なん度も「逢う瀬」を見るにつけ。
ご主人も彼と奥さんとの仲を認めたようです。
めでたしめでたし。^^

鬼ごっこのシーンは時おり描きますが、
逃げては捕まえられ、逃げてはまた猿臂に巻かれ――というのは、ひとつの愛情表現のように思えます。

「怖かったら逃げても・・・」と、前作でのたまわったご主人ですが。
つかず離れずの愛情表現をスキなくくり返すふたりに、とうとう脱帽したようですね。^^

ぞんざいな扱いではなかった――

2024年01月24日(Wed) 20:29:51

ワインカラーの夕焼けが、濃紺の闇に飲み込まれようとしていた。
街灯がぽつりぽつりと点きはじめ、薄闇に染まりかけた足許が、かすかに明るくなった。
女学生たちがおそろいの制服の肩を並べて、三々五々、家路をたどっている。
血の渇きに目ざめたぼくは、娘の学校帰りを待ち伏せていた。
きょうも、由香里のハイソックスは白だった。
学校指定のハイソックスは、紺色と白とをチョイスできるようになっていたけれど。
由香里はわざと、血の色のきわだつ白を、好んで履くようになっていた。
見通しの良い小径を、由香里はこちらに向かって歩みを進めてくる。
彼らのいるあたりはまだ、夕陽に支配されていた。
そのさいごの陽の光を、真っすぐ伸びた太目のリブが、ツヤツヤと照り返していた。
若い血液をふんだんに宿した、むっちりとはち切れそうなふくらはぎの歩みが、
こちらに向かってくるのがもどかしい。
ぼくは通りがかりの女学生たちをやり過ごし、由香里のほうへと一直線に歩みを進めた。
由香里はすぐに、ぼくを認めた。
「怖い顔。目つき尖っている」
娘はそういって、ぼくをからかった。
「パパも、いっぱい吸われたんだね」
由香里は上目遣いでぼくを見た。
顔が心持ち、蒼ざめている。
そういえば。
出かける時は、紺のハイソックスを履いていたっけ。
「履き替えたのか?」と訊くぼくに、由香里は「うん」と応えると、
「いっぱい噛まれて持っていかれちゃった」と、つづけた。
半歩身を退いたぼくをみて、「でも、いいよ」と、由香里は告げた。
「パパに吸われるんなら、惜しくない」
セミロングの髪を掻きのけると、白い首すじが、うわぐすりを塗ったように滑らかに輝いている。
ぼくは、がまんできなかった。
由香里を抱き寄せて、うなじに唇を吸いつけていた。
いつの間にか備わった女の芳香が、微妙に喉を、鼻腔を刺戟する。
思わず力を籠めて、喰いついてしまっていた。
あふれ出てくる血潮に狼狽しながらも、ゴクゴクと音を立ててむさぼっていた。
囚われの女学生は、ぼくの腕のなか、むしろそうすることが自分の務めと心得ているように、背すじを心持ち反らした姿勢のまま、容赦なく突き込まれる牙を受け容れてった。

「パパもエッチだね」
由香里はそういいながら、ベンチに腰かけた姿勢で脚を咬ませてくれた。
足許を狙われていると知ると、ぼくに楽しませるためにわざと、ずり落ちかけたハイソックスを引きあげていた。
娘あいてに、はしたない――
そう想いながらも、通学用のハイソックスのしなやかな舌触りに、ぼくは少しばかり欲情を感じていた。
「気になってるんでしょ、ママのこと」
由香里は無口な娘だったが、場の空気を察するところがあった。
「ここで待とうよ、あたしも付き合う」
褪せかけた頬をいっそう蒼ざめさせながら、由香里は公園の入り口のほうを見やっていた。
そう。
妻はきっと、ここへやって来る。
妻を誘うときのデートの場所はいつもここなのだと、彼は教えてくれさえしていたのだ。

妻を待つ間じゅう。
娘の顔色の蒼さを気にかけながらもぼくは、血のりのついたうなじを吸いつづけずにはいられなかった。
傷口から漏れ出てくる血の量はおさまりかけていて。
舐め取るくらいにしか滲み出てこなかったけれど。
それでも由香里は従順に、ぼくに吸われるがままになっていた。

30分ほどもしたころだった。
辺りはもはや闇に包まれていて、公園のところどころにしつらえられたベンチのそれぞれを、街灯がスポットライトのように照らしている。
来てほしい、と思いながらも、来てはいけない・・・と感じていたそのひとが、見慣れた小柄な痩せ身を影絵のように忍ばせてきたとき、
思わず娘と目を見合わせてしまっていた。
「いつもここで百合子を愉しんでいる」
彼の言い草を確かめるために訪れた公園で、密会を観るはめになろうとは。

百合子はいつも見慣れた、茶色とオレンジの入り混じった、幾何学模様のワンピースを着ていた。
凝ったデザインのわりに地味な着映えになるのは、そういう柄なのか、本人が地味だからか――
足許に通した肌色のパンストはいつもながら野暮ったく映るけれど、
それすらも、妻にとっては精いっぱいの、彼のための正装なのだ。
肚の奥がカッと火照るような、嫉妬を感じた。
ひっそり佇む百合子に、彼は足早に近寄った。
一直線に迫って来る男の影に怯えるように、百合子が半歩後ずさりする。
「あの――」
百合子が声をかけた。
「喉渇いているんですよね・・・」
ひっそりとした声色に、優しい同情がこめられている。
彼はゆっくりと、肯いた。
「いつもみたいに、お願いできるかな・・・」と、彼は言った――
「はい、どうぞ」妻はこたえた。
妻はもう、後ずさりしようとはしなかった。

うつむき加減に佇む百合子の立ち姿を、男の猿臂がそうっと覆った。
気温が冷えて空々しくなりかけた外気から、庇うような仕草に見えた。
吸いつけられてくる唇に、百合子はためらいもせずに、うなじを添わせてゆく。
蛇のように喰いつく牙に身をゆだねたのが、かすかな身じろぎでそれとわかった。

ごくり・・・ごくり・・・ぐちゅうっ。
生々しい吸血の音が切れ切れに、薄闇を通して洩れてくる。
彼の喉が鳴るたびに。
妻はわが身をめぐる血潮を、惜しげもなく飲みむさぼらせているのだ。
彼にとっては、いまが至福の刻なのだ――と、ふと思った。
そう思うと、目を離せなくなっていた。
腕のなかの百合子は、満足そうな笑みさえ泛べて、露骨な飲血の音に聞きほれているようにさえ見えた。
あるいは、妻にとってもいまが、至福の刻なのかもしれない――と、ふと思った。
吸血行為に同情を覚えはじめたぼくの身体は、渇きかけた血管をはげしく脈動させた。
妻に対する他人の吸血行為さえ、わが身の悦びと錯覚し始めていることに。
ぼくは戸惑いを覚えていた。
脂の乗った四十代の人妻熟女の生き血に酔い痴れている彼が、羨ましいと思った。
そして、人妻の生き血に浸ることが許されることが、彼にとって好ましいとさえ、感じ始めていた。
そして、それと同じくらいに・・・われとわが身をめぐる血潮を惜しげもなく飲ませている百合子のことを、潔いと感じ始めていた。

「どうする気?」
由香里が上目遣いに、ぼくを見あげる。
「確かめてみたかったんだ」と、ぼく。
なにを――?と言いたげな娘に、ぼくはいった。
「彼に訊いたんだ。
 どうして百合子なのか?って。
 ママは見映えも地味だし、大人しいし、彼のような男をそそるタイプとは思えない。
 もっと若くて、派手めで、きらびやかな女性のほうに、どうしていかないんだろうって。
 そうしたら、言われたんだ。
 ――いつ招んでも、すぐ来てくれる。
人妻熟女の生き血に手っ取り早くありつくには、百合子にかぎる。
彼女は律義だから、俺の期待を裏切ることがない――って。
 だから、思ったんだ。
 ぞんざいな扱いをされるのなら、百合子の善意が穢されるんじゃないかって。
 でも――どうやらパパの思い過ごしみたいだね」
「そうだね」――娘もいった。
血を吸い取られてゆく自分の母親の立ち姿から、ひとときも目を離さずに。

抱きすくめられた妻は、恋人のような口づけの嵐に身を任せ、
ひと口ひと口愉しみながら血を啜られるのを、明らかに歓んでいた。

「怖かったら逃げても良いんだぞ」
なに食わぬ顔で帰宅したぼくは、妻にいった。
「ううん――だいじょうぶ。でも、怖かったら逃げるね」
妻は蒼ざめた頬に精いっぱいの笑みを泛べ、そう応えた。
ふと見ると。
茶色とオレンジの入り混じった幾何学模様のワンピースは、
不規則な水玉もようを新たに加えられる憂き目をみていなかった。
よほど入念に咬みついたのか。
首すじにふたつ綺麗につけられた咬み痕には、かすかな血のりが滲んでいるだけだった。


あとがき
半吸血鬼と化して娘の生き血を口にしながら、妻の受難を見守る夫――
取るに足らない、欲求を満足させるためだけの便利な女・・・と思われていたのなら切なかったけれど。
どうやら「彼」は、奥さんのことを本気で好きだったみたいです。
娘さんの直感の勝利ですね――

下校中の娘のハイソックスの足許を狙うなんて、お父さんエロいですよね。^^
あと、末尾は、次話へのつたない伏線です。^^

禁断の味わい。

2024年01月24日(Wed) 20:24:10

妻の百合子も。
娘の由香里も。
そして、それと同じくらいぼくまでも・・・
そろいもそろって、初めて吸われたときは。
脇役どころか、チョイ役の遂げる最期のようだった。
妻の百合子は夜の公園で、背後から羽交い絞めにされて、
ろくろく抵抗もできずに一方的首すじを咬まれてしまったし――
娘の由香里は授業中に、首すじから血を滴らせているクラスメートの子に呼び出されて、
母親に言われるままに自ら差し出した発育のよいふくらはぎを咬まれて、
紺色の通学用のハイソックスを破かれながら吸血されていった。

ふたりとも。
ろくろく抵抗もできないうちに、有無を言わさず血を吸い取られてしまったのだ。
もっともの話、そもそもが。
勤め帰りのぼくが狙われたのが、発端だった――

幸か不幸か。
相手は、人を殺めるのが嫌いな吸血鬼だった。
彼は三日にあげずわが家にやってきて、
ぼくを含め家族全員の血に舌づつみを打つのだった。
死なさない――という条件を突きつけられて。
ぼくたちはおずおずと素肌を晒し、血を吸い取られてゆくのだった。


「ただいまぁ・・・」
玄関の扉を開ける音と同時に、生気のない声が聞こえた。
でも、けだるげだったその声はすぐさま「あっ!」と短い叫びに変わり、
「ああ~っ・・・」
と、絶望的なうめき声につながっていった。
血を吸い取られるときの、か細い脱力感のこもった声色だった。

顔をあげると、玄関に佇む娘の由香里が、顔をしかめて姿勢を崩しかけている。
足許ににじり寄った彼が、制服姿の由香里の脛に、唇を吸いつけていた。
学校帰りのハイソックスがよほどお気に召したのか、
彼の唇はかなりイヤらしく、由香里の脛を這いまわった。
しなやかなナイロン生地を舐め味わうように。
舌が、唇がハイソックスに包まれた脚の輪郭をなぞり、
時おり唇に力を籠めて、喰いついてゆく。
喰いつかれるたびごとに。
脛を覆う白のハイソックスが、ビチビチと赤い血潮に染まっていった。

ちゅうちゅう・・・
ちゅうちゅう・・・
足許にあがる露骨な吸血の音に顔をしかめ、頭を抱えながら、
由香里はその場にくず折れた。

ぼくはどうすることもできずに、娘の受難を見守っていた。
つい今しがた。
娘の帰宅を当て込んで現れた彼に、スラックスを引きあげられると、
30分ほどかけて血を吸い取られたばかりだったのだ。
陶酔に似た疼痛と引き換えに、ぼくの血はそっくり、彼の干からびた血管へと移動していった。
そしていま、したたかに吸い取られた働き盛りの四十代の血液は、彼のなかで力強く脈打って、娘を襲う原動力となっている。
それに引き換えぼくのほうは、もう、起きあがる余力さえもっていなかった。
勤め帰りの薄々のハイソックスは、たしかに彼を悦ばせるために穿いたのだけれど。
思いのほかしつような舌なめずりに、妻の百合子のストッキングの脚に加えられた凌辱を重ね合わせていた。
あいつ・・・あいつ・・・百合子の脚をこんなふうにいたぶるのか・・・
嫉妬に焦がれながら血を吸い上げられて、気絶寸前まで追い込まれたところで、
ふと身体を放された。
彼の目線の彼方に、百合子がいた。

学生時代、お姫様のように憧れた女は、目のまえで男に組み敷かれ、
破られたストッキングを穿いたままの太ももを灯りの下にさらけ出し、
うなじに好色な唇を吸いつけられている。
彼はキュウキュウと、ひとをこばかにしたような音を洩らしながら、
百合子の血をさかんに口に含み、すでにかなりの量を飲み漁っていた。
彼の唇は、百合子の首すじにずうっと、貼りついていた。
百合子の首すじが、いとしくていとしくてならない――というくらいの執着ぶりだった。
たんに渇きや食欲を充たすためではなく、百合子の血の味をしんそこ楽しみ、味わっているように見えた。
しつような吸血にもかかわらず、百合子もまた、彼の腕の中で静かに目を瞑っていた。
失血のはやさに焦る様子も見せず、服に飛び散った血潮にうろたえる様子もみせなかった。
むしろ自分のほうからすすんで、彼の喉の渇きを自分自身の血液で癒そうとしているようだった。
彼が自分の血を気に入っていることを、はっきりと意識しているようだった。
自らの血潮の佳さを誇るように、背すじをピンと伸ばして、
床の上で濃厚なチーク・ダンスでも躍るかのように、身を寄り添わせているのだった。

美味そうだ――しんそこ美味そうだ・・・
彼に抱きくるまれながら吸血される百合子を見ているうちに、
そんな想いが、むしょうに湧きあがってきた。
失血が度重なるにつれて知らず知らず、
血に飢えたものたちの気持ちが、わかるようになり始めていたのだ。
こんなにも渇いた気分だったのか。
こんなにも切ない想いだったのか。
そう思うと――
目のまえで暖かい血に満たされている彼を見て、彼のためにはしんそこ良かったのだと思えるようになり始めていた。
目のまえで、妻や娘がほしいままに、生き血を吸い取られているというのに――

「あのひと、ママのこと本気で気に入ってるみたいだね」
いつの間にか傍らに、由香里がいた。
首すじからしたたる血潮が、制服の襟首をバラ色に染めている。
「ママのこと、とても気に入ってるんだと思う。
 パパ・・・ママのこと取られちゃわないようにがんばってね――」
娘はそう言うと、力尽きたかのように、ぼくのすぐそばで四つん這いになって、弱々しい吐息をセィセィと吐きつづけた。
「お前だって――気に入られしまっているんじゃないのか?」
ぼくがそういうと、娘はこたえた。
「私?私はただ、太ってて血を一杯獲れるからってだけじゃないかな・・・」
娘の言い草は、少し投げやりに聞こえた。
「気に入ってもらいたいのか・・・?」
ぼくが声をひそめると、
「どうなんだろう・・・わかんないや・・・
 でも私、血を吸われるのは嫌じゃないから、気にしないでね」
妻と娘を守れなかった情けない夫――と、ともすれば想い塞いでしまうぼくを気遣うように、娘はこたえた。
脛の半ばまでずり落ちた白のハイソックスが、血に濡れていた。
バラ色の飛沫が不規則な水玉もようとなって、真っ白な生地の表面に散っている。
ふと、渇きを覚えた。
「――いいよ・・・」
娘がそう呟いて、ハイソックスをひざ小僧の下まで引き伸ばすと、ぼくのほうへと差し向けてくる。
われ知らず、足首を掴まえていた。
ふくらはぎに、舌を這わせてしまっていた。
しなやかなナイロン生地の向こうに、温みを帯びた柔らかなふくらはぎが、息づくようなうら若さを伝えてくる。
そこからはもう、止め処がなかった。
どうやって喰いついたのか、憶えていない。
由香里のふくらはぎがキュッとこわばるのを、咬み入れた犬歯で感じていた。
唇の下で娘の履いているハイソックスが生温かく濡れるのもかまわずに、
それでもグイグイと、皮膚の奥を求めていた。
ちゅうっ・・・ごくり。
ぼくは目の色を変えて、まな娘の血潮で喉を鳴らしていた。

禁断の飲み物を得たぼくは、由香里を引き倒すと、首すじに咬みついていた。
由香里は抵抗しなかった。
むしろ自分から、荒い息を爆ぜるぼくの口許に、うなじを差し向けてきた。
じゅるっ。じゅるっ。
生々しい音を立てながら。
ぼくは娘のブラウスを、血浸しにしていった。
傍らで百合子が、スカートを腰までたくし上げられて、ひざ下までずり降ろされた肌色のパンストをしわ寄せながら、足摺りをくり返していた。


あとがき
チョイ役で血を吸い取られてしまうような人妻だって。
若いころにはいまの夫と、精いっぱいのロマンスを演じていたはず。
そんなあたりもちょっとだけ、表現してみました。

娘さん。
血を漁り獲られてしまう理由は、果たしてほんとうに、「太っているだけ」なのでしょうか・・・?

クリーニング店の息子。

2021年03月28日(Sun) 15:53:50

くちゃ、くちゃ・・・
キュウ、キュウ・・・
よそ行きのスーツにいつものように血を撥ねかして仰向けになった木島彩子のうえに、
生々しい吸血の音がふた色、おおいかぶさっていた。
相手の吸血鬼は、二人。
このクリーニング店の店主と、店主の妻を襲った吸血鬼である。
妻の情夫である吸血鬼のまえでは、クリーニング店の店主である善八郎氏は、しもべ同然。
なので、妻以外にも餌食にした客のほとんどは、吸血鬼にも引き合わされていた。
店主にとって最初の獲物であった彩子も、その娘である真由美も、例外ではなかった。

真由美は店主の女になってから襲われたので、
まだうら若い体で、すでにふたりの男を体験したことになる。

隣の部屋には、ついさっきまで、
善八郎氏の妻が、着ていたワンピースを血に染めて、
やはり大の字になって、ひっくり返っていた。
さいしょは善八郎氏の細君が目当てでクリーニング店にあがりこんだのだが、
そこに彩子が来合わせたのだ。
ちょうど、吸血した後の勢いで、善八郎氏の細君を輪姦し終わったところだった。
彩子は有無を言わさずクリーニング店の奥に引き込まれ、首すじを咬まれ、脚を吸われた。
いまはふすま一枚隔てた向こう側、
善八郎氏の細君は、いつものようにカウンターに不景気な顔つきで佇んでいる。
自分の身代わりに吸血を受ける、生々しい音を聴きながら、
あくまで無表情に、佇んでいる。

その表情が、ふと動いた。
店頭に人影がよぎり、ガラス戸を開けて中に入ってきたのだ。
相手の姿をみとめて、細君は、あら、と、珍しく表情を動かした。

木島さんのご主人ですよ、と、ふすまの向こうの細君が告げた。
「入っていただけ」
吸血鬼は顔色も変えずに、善八郎氏にいった。
「どうぞぉ」
少し勢いのよすぎる声で、善八郎氏は新来の客に、ふすま越しに声をあげた。

ふすまを開けて入ってきた木島氏は、思わず立ちすくんだ。
そこでは妻の彩子が、ストッキングをずり降ろされたあられもない姿で、男二人の吸血相手をしていたからだ。
「視るのは初めてでしたな」
善八郎氏はそういって、さすがに彩子から身を放したが、
吸血鬼はなおも彩子の頭を掴まえて、首すじにがぶりと咬みついていた。

ブラウスに撥ねた血の生々しさにドキドキしながら、木島氏は来意を告げた。
妻とのことを内聞にしていただき、すまないことだった。
卑怯にも自分は、自分の体面が汚れることだけを気にしていた。
だから、妻や娘が貴兄の餌食になっても、ことが洩れさえしなければよしとしていた。
けれども、それでは一家のあるじとして責任を取ったことにはならないと感じた。
これからはきれいごとではなく、妻や娘の痴態を、夫として父として、きちんと見届けたいと思う。
当地には、「奥さまの貞操公開」という行事があるそうですね。
私も、家内の貞操を公開しようと考えています。
家内も承知してくれました。
ただ、いまの家内の所有者はあなた方であるので、
あなた方の賛成を取り付けることができれば、と家内は申します。
なので、きょうはこうしてお伺いしたのです――

「それは素晴らしい」
吸血鬼が真っ先にいった。
「貴兄が言い出さなければ、わしらが奥方や娘ごを、よそにまた貸ししてしまうところであった」
店主もいった。
では、さっそくだ。
二人の吸血鬼は目くばせをし合って、同時に木島氏に近寄った。

あっという間のことだった。
木島氏は後ろ手に縛られて、両足首も別の縄で結わえられてしまった。
立っていることができずに、部屋のすみに転がった。
「そうしてその場で、見ていなされ。わしらの男ぶりをのう」
善八郎氏は、フフフ、と、小気味よげに笑った。
「当日のリハーサルだと、思いなされ」
吸血鬼もそういって、人のわるい笑みを泛べた。

1時間ほど経って、木島家の娘の真由美がクリーニング店に来た。
帰りの遅い両親を心配したのだ。
「あなた、お客さまヨ」
カウンターに無表情に佇んでいた細君が、再びほくそ笑んで、娘をカウンターのこちら側に引き入れた。
開かれたふすまの向こうの風景に絶句した娘は、悲鳴を消して引きずり込まれた。

ことが果てて親子三人が辞去すると、奥の部屋から息子の善一がおずおずと姿を見せた。
吸血鬼と同性のあいだの関係を結んでしまった彼は、その日もスカートを穿いていた。
「あの、いいかな」
「なんじゃ、なんなりと、言うてみい」
無口な息子が珍しく口をはさんできたので、善八郎氏は意外に感じた。
息子は、さらに意外なことを口にした。
「奥さまの貞操公開、ぼくも行っていいかな」
「女としていくのかね?」
吸血鬼が念のために訊いた。
「ううん、男として出る」
善一は、意外にもはっきりとした口調だった。
「真由美ちゃんと、仲良くなりたい」
ほほう、と、ふたりは声を洩らした。
「お前、真由美に気があったのか」

卒業式帰りのハイソックスに血を撥ねかせながら父親の相手をしていた時には、もう気になっていたという。
親父が真由美の処女を奪ったときも隣の部屋にいて、すべてを視て聞いてしまって、
好きな子が父親の手でむざむざと犯される有様に、言いようのない昂奮を覚えたのだという。
「それならお前、あちらさんさえ良かったら、真由美を嫁にもらえ」
父親の言い草に「まだ早いよ」と言いながらも、善一はまんざらでもない様子だった。

もしも将来そうなったら、父さんにも親孝行させるからね――
善一はそういって、はにかんだ。

クリーニング店の母娘

2021年03月28日(Sun) 09:22:00

木島彩子は寝乱れた髪を手櫛で整えると、
けだるそうに畳のうえから起きあがった。

隣室からはすでに機材がうなり声をあげていて、
男が仕事に戻ったことを告げていた。
彩子は、自分が全裸であることに気がついた。
面倒見の良い親父のことだから、
血に濡れたスリップもきっと、クリーニングしてくれるつもりなのだろう。
枕元には、クリーニングに出すつもりで持ってきた衣類一式が、
持参したままの手提げバックに入ったまま、置かれていた。
とりあえずは、これを着て帰れということなのだ。
クリーニングに出すつもりの服は、ほんとうは着てこなければならないのか。
彩子はひとり、白い歯をみせて、声をたてずに笑った。

カウンターにはおかみさんが、いつもの不景気な顔つきで立っていた。
「毎度お世話様」
いつになく愛想が良いのは、良家の主婦が凌辱される有様を小気味よく眺めていた余韻なのだが、
彩子はそこまでは気が回らなかった。
いいえ、どういたしまして――
その場を上手に取り繕えたのかどうか、われながら自信がなかったが、
ともかく彼女はその場をあとにした。

寝物語に話してみた。
――処女の血はお好き?
そう水を向けてみたら、男はいちど収めた獣じみた目つきもあらわにして、
――あてがあるのか?
と、訊いてきた。
ひとり、心当たりがあるの。
彩子はそういって、こんど連れてきてあげる、と、いった。
心当たり――というのは、ほかでもない彩子自身の娘、真由美のことだった。
もうじき、中学にあがるんです。
どうみても三十前後にしかみえない彩子は、朱を刷いた唇をゆるませて告げた。
自慢のまな娘らしい。
母親の口ぶりから、男はそう予感した。


三日後、彩子は再び洗濯物を携えて、真由美を伴ってクリーニング店を訪れた。
「いい?これからは時々、お使いにくるのよ」
母親の顔になって娘に言い聞かせるようすを、
善八郎氏は肚の中でほくそ笑みながら窺っていた。

「いいのか?おい」
善八郎氏は少女に聞こえないように母親に囁き、小脇を小突いた。
「教え子を吸血鬼に差し出そうとする塾の先生よりかましではなくて?」
いちど、そういう形で娘が毒牙にかかりそうになった。
誘われるままに出かけようとする娘を止めて、貴男のためにとっておいたのだ。
どうせだれかに血を吸われてしまうのなら、貴男のほうが信用がおけるから――
彩子は手短にそう告げた。

娘にはもう、話してある、そういった。
さっきから娘は、聞こえないふりをしながらも、大人たちの会話に耳を傾けていた。
どうやら賢い子らしい、と、親父はおもった。
少女は真っ白なハイソックスを履いていた。
まだストッキングを穿く年頃ではない――と、母親はいっていた。
ハイソックスでも良いかしら?
女性の靴下を咬み剥いで愉しむ情夫の性癖をよくわきまえた女は、
そういって情夫の関心をそそり立てていた。

善八郎氏は、べつの意味でもほくそ笑んでいた。
ほかでもない、彩子が話した「塾の先生」のことである。
彼女もまた、この店の客だったのだ。
どのみちこの少女は、彼の手に堕ちる運命だったのだ。

「よろしくお願いします」
母親に真由美と呼ばれた少女は作りつけたように礼儀正しく、男にお辞儀をした。
「いえいえ、こちらこそ」
男もまた、人の良いクリーニング店の親父の顔つきになって、あいそよくお辞儀を返した。
「ママがついているから安心よ」
彩子はそういうと、客間に置かれた古びたソファに腰かけて、
娘を自分の脇へと呼び寄せた。
「きょうの主役はこの子よ」
先に自分の足許にすべらせてきた物欲しげな舌と唇を、
彩子はちょっとだけよけるそぶりをしながらも、許していた。
男はすぐに、真由美の足許にかがみ込んだ。

おっかなびっくり、見おろす視線がくすぐったかった。
男は真由美の足首と足の甲を抑えつけると、
ハイソックスのうえからふくらはぎに唇を吸いつけた。
しなやかなナイロン生地のしっかりとした舌触りが、男をすぐに夢中にさせた。

ぺちゃっ・・・くちゅっ・・・
ハイソックスを舐めるいやらしい音が洩れるのを耳にしながら、
少女は目を見張って男の意地汚いやり口を見おろしていた。
お気に入りのハイソックスがよじれ、ずり落ちてゆくことで、
自分が吸血鬼の奴隷に堕ちてゆくのを実感しようとしているようだった。
皴を波立てたハイソックス越しに、男は少女のふくらはぎに牙を圧しつけて、力を込めた。
じゅわっ。
生温かい血潮の生硬な味わいが、男の喉を充たした。

自分の体内をめぐる血液がむさぼられるキュウキュウという音を耳にしながら、
貧血を起こした真由美はぼう然となって母の腕のなかにもたれかかった。
ハイソックスのうえをうごめく唇は、明らかに真由美の血を愉しんでいた。
喉をカラカラにしていた半吸血鬼は少女の頭がひっくり返るほどの性急さで血を求めたが、
同時に愛人のまな娘に対する気遣いを忘れなかった。
娘がへばりそうになると、その都度唇を傷口から放し、具合を窺いながらもまた吸った。
少女の意識も、自分の愉しみも、少しでも長保ちさせようとしたのである。

「ママの愛人・・・って、どういう意味?」
朦朧となりながらも少女は、訊きにくかったことを母親にたずねた。
「パパの次に好きな人ということよ」
母親は娘の髪を撫でながら、柔らかい声でそういった。

娘が意識を失ってソファからずり落ちてしまうと、
男はじゅうたんの上に真由美を組み伏せて、
はじめて首すじを噛んだ。
柔らかな咬み応えが、男をいたく満足させた。
「こたえられねぇ」
下卑た声色で呟く情夫に、母親は誇らしげにいった。
「自慢の娘ですのよ」

【寓話】娘の味 母親の味

2020年08月06日(Thu) 08:02:46

七人の吸血鬼が女学校に侵入して、七人の女学生を掴まえて玩んだ。
女学生のうちの一人の父親が、吸血鬼のうちの一人をつかまえて叱責した。
「いったい、どうして娘を犯したのだ!?」
吸血鬼はこたえた。
「お嬢さんがすでに男を識っていたからだ」
父親はいった。
「娘の味はどうだったというのだ!?」
吸血鬼はこたえた。
「七人もいたから、よく憶えてはいない」
激怒した父親に辟易して、吸血鬼は逃げていった。

数日後、
同じ七人の吸血鬼が女学校に侵入して、学校に抗議をしに来た女学生の母親たちを襲って玩んだ。
さきに吸血鬼を叱責した父親が、同じ吸血鬼をつかまえて、またまた叱責した。
「いったい、どうして家内を犯したのだ!?」
吸血鬼はこたえた。
「人妻は犯して味見をするのが、われわれの礼儀なのだ」
父親はいった。
「家内の味はどうだったというのだ!?」
吸血鬼はこたえた。
「とても良かった。同じ男として、あんたが羨ましい」
吸血鬼は微に入り細を穿つて、妻の性癖や感度を称賛した。
父親は機嫌を直して、吸血鬼が自分の妻を誘惑することを許した。

【寓話】恋慕の証明

2020年07月17日(Fri) 20:37:04

ある男の婚約者が、吸血鬼に襲われた。
彼女は処女の生き血をたっぷりと摂られて、
そのうえ初体験まで遂げられてしまった。
彼女は婚約を解消してほしいと愛する人に願ったが、
男は相思相愛の恋人を手放そうとは思わなかった。
そして吸血鬼に直談判をして、
「婚約者の純潔はわたしのほうから差し上げたことにするから、
 これ以上彼女に構わないで欲しい」
と願った。
吸血鬼は律儀に約束を守り、第一子ができるまでは女に手を出そうとはしなかった。

二人の間に生まれた娘は、美しく成長した。
彼女は母親とうり二つだった。
吸血鬼はその娘に執着し、十六の齢に初めて血を吸った。
娘は両親に、吸血鬼に襲われたことを話したが、相手のことを嫌いではないので、どうか怒らないで欲しいと頼んだ。
母娘ながら血を吸われてしまった男は、しかし吸血鬼が心底自分の妻に恋慕していることを知り、
娘の婚約者には吸血鬼が通って来たら見てみぬふりをすることを勧めて、
自分も手本を見せるため、吸血鬼と妻との交際を許し、夜になると自由に通わせるようになった。

※昨日脱稿、本日あっぷ

吸血鬼が出入りする、とある家庭の日常

2020年07月15日(Wed) 07:28:36

吸血鬼が通りをふらふらと歩いていると、主婦の枝松花世とすれ違った。
花世は近所に住む五十代の主婦で、吸血鬼に血を摂られるようになって久しい。
おでこの広い、彫りの深い顔だちで、齢のわりには若くみえる。
彼女は自分の血を吸う吸血鬼のことを、”坊主”と呼んでいた。
「アラ、坊主じゃないの。顔色悪いわね、
 おばさんでよければ相手しようか?いまなら亭主留守だから」
亭主が留守だということは、このさいかなり重要だった。
有夫の婦人を襲うとき、彼は必ずと言っていいほど、男女の交わりをも欲するからである。
そうなると――
ふつうはやはり、亭主がいないほうが、好都合なのであった。
”坊主”は、花世の好意に甘えることにした。
「素直でよろしいね」
花世はぶっきらぼうにそういうと、先に立って家へと足を向けた。


家のリビングの真ん中で、花世はあお向けにひっくり返っていた。
向かい合わせに置かれたソファや、真ん中のテーブルは大きくずらされていて、
彼女がひっくり返るためのスペースが不自然に形作られている。
そのど真ん中に、着衣をはだけた彼女はじゅうたんを背にして、
酔っ払ったみたいな目をして天井を眺めていた。
薄茶のスカートがはだけて、あらわになった太ももに、肌色のストッキングが破れ残っている。
片方だけ脚に穿かれたストッキングを直そうとしかけて、
救いようのないほど広がった裂け目を目に入れると、
花世はあべこべにそれを引き裂いていた。
「ほんとにもう!いけ好かないんだから」
そういいながら、傍らのティッシュを二、三枚ぞんざいに引っ張り出すと、
ぬらぬらとした精液に濡れた太ももを無造作に拭った。
吸血鬼はうずくまるようにして一足先に身づくろいを済ませた後、
申し訳なさそうに女のしぐさを見ていた。
「いちいち見ないでいいから」
照れ隠しに口を尖らせると、
男はぶすっとした顔つきのまま頭だけは下げて、女に背を向けた。
「はい、さようなら」
女の言い草は、どこか「一丁あがり」といわんばかりの気安い響きを秘めていた。

女の脚から抜き取ったストッキングをぶら提げて、男が出ていったのを見届けると、
花世は奥の部屋に声をかけた。
「ほら、もう行っちゃったわよ」
「ん」
奥からくぐもった男の声。声の主は花世の夫だった。
「まったく、いけ好かないったらありゃしない。
 自分の女房がほかの男にヤられて、昂奮する男がいるかね」
鼻息荒く憤る花世に、彼女の夫は無言でのしかかってきた。
「あら、あら・・・」
当惑気な声は、すぐに途切れた。
さっきと同じくらい、いや、もっと大げさに盛った作り声が、
昼下がりの庭先まで洩れてゆく。


ダンナはぼんやりと縁側に座って、庭を見ていた。
狭い庭の向こうには通りが見える。ちょうどT字路の突き当りになるので、
庭からは人通りが良く見て取れた。
これはこの家にはちょうど都合がよくて、
浮気帰りの妻が家路をたどるのも、
勤め帰りの亭主が、自分の女房が寝取られているとはつゆ知らず家路をたどるのも、
家にいる者は容易に見とおすことができるのだ。

「初美は遅いな」
と、娘の帰りを気にして呟くダンナの背中越し、
「初美だって、友達と遊ぶでしょうよ」
と、ふだんの声に戻った花世は、洗濯ものをたたみながらこたえた。
えり首に血の着いたブラウスはすでに着替えて、
襟なしの半袖のTシャツの胸を横切るボーダー柄が、乳房のうえを豊かな曲線を描いて横切っていた。
「それとさあ、あの話は和樹にしたの?」
妻に背中を向けながら、ダンナが訊いた。
「できるわけないでしょ、そんなこと」
「でも、彼は欲しがっているみたいだけどな」
「彼が欲しくたって、和樹だって朋佳さんだって、嬉しくないはずよ」
花世は口を尖らせてそう応えた。
吸血鬼との情事のあと、ダンナに挑まれたときと同じくらい、ぶあいそだった。
隣町に棲む長男の和樹が嫁の朋佳を連れて家に来たのを見かけた吸血鬼が、
新婚妻の朋佳を欲しがったのだ。
和樹とも知らない仲ではなかったけれど、
新婚三か月の新妻を面と向かって欲しいとは言いづらかったらしく、
あとからダンナに本音を洩らしたのだ。
「あたしや初美ならともかく、他所の家のお嬢さんにそんなこと言えないわよ」
というのが、花世のもっともな言い分だった。
他所の家のお嬢さんだから、やつは欲しがるんじゃないか――
そう言いかけて、ダンナはむっつりと黙り込んだ。
なんとなく、自分がなにも手を下さないでも、
自分と無関係なところで事態は進行して、
やつはお望みのものを手に入れる――そんな気がしたからだ。

「あっ」
だしぬけにダンナが、声をあげた。
ただならない声色だったので、思わず花世も振り返ってくらいだ。
声をあげるわけだった。
「おいっ、あいつ、初美まで狙いやがって」
ふたりの視線の彼方には、通りを連れ立って歩く制服姿の女子生徒たちの姿があった。
おそろいのセーラー服を着た彼女たちは、困ったようにほほ笑みながら、顔を見合わせ合っている。
それもそのはず、さっき花世を犯した吸血鬼が、白のハイソックスに包まれた彼女たちの足許を狙ってかがみ込んでいるのだった。
やがて男は、初美ひとりに狙いを定めたらしい。
ハイソックスの上からふくらはぎに唇を吸いつけると、初美は困ったような顔をして俯いた。
彼女の周りにいた女の子たちは薄情にも、バイバイをして離れてゆく。
初美は泣き笑いとも照れ隠しともつかない顔つきで、
足許に吸いつくけしからぬ誘惑に眉をしかめながらも、
友人たちのお別れに手を振って応えた。
そして男と2人きりになると、彼の頭を宥めるようにして撫でると、
男は得心したらしく顔をあげ、初美を公園の中へと促していった。
足許にじゃれついた飼い犬を手懐けるような、もの慣れた態度だった。

「あいつぅ・・・」
女房を抱かせたときにはむしろ率先したくせに、
こと娘の場合となると、ちょっと違うらしい。
ダンナは頭から湯気を立てんばかりにして起ちあがった。
「しょうがないでしょ、ほら、行ったらだめだってば」
と、奥さんが口だけで制止するのも構わずに、玄関にまわった。
「・・・っとにまったくもう・・・っ」
花世は洗濯ものをたたむ手を止めずに苦笑して、ダンナの背中を見送った。

初美が父親に伴われて帰宅したのは、それから30分もしてからだった。
「ったくもう、しつこい野郎だった」
ダンナが負け惜しみを口にするのを、娘のほうが
「父さん、もういいからさぁ」
と、むしろ自分が親のようになって、父親をたしなめていた。
素足に革靴は、首すじやふくらはぎの咬み痕よりも痛そうにみえた。
真っ白なハイソックスに赤黒いシミは親たちには濃すぎる見ものだと思っていたので、
脱がされてきたことに花世はむしろほっとしていた。
「いじましい野郎で、こいつ初美のハイソックスをねだって、脱がそうとしやがるんだ。
 汚れて履けなくなったやつだから仕方なしにやったけど、なんか悔しいなあ」
正直すぎる本音に、花世も初美も笑った。
「なにがおかしいんだ!?」
照れ隠しな大きな声は、ふたりに無視された。
花世が予期したとおり、初美のスカートは精液に汚れていなかった。
高校にあがるくらいまでは大事にしといたら?と忠告したのを、忠実に守っているらしい。
花世はお風呂湧いてるわよと初美に告げた。
「お疲れ様」のつもりだった。
賢い娘だから、母親が先に湯に浸かったことで、家でなにがあったのかを察することだろう。
父親の屈折した好みを知らせるのは、十四歳の小娘にはまだ早すぎるかな?と花世は思った。
「母さんのエッチなところ、視たがるんだぁ」と、案外平気で受け止めるかもしれないけれど――


おいおい、いくら長い靴下が好きだからって、男のやつにまで手を出すやつがあるかよ。え?
いや、べつにかまわないけどさ、初美のやつのに手を出されるほど悔しかないから。
でもよ、俺の脚にしゃぶりついたって、つまんねぇだろ。な?
なに、女房を寝取った亭主を襲うから愉しいだと?
ったく、お前ってやつは、どこまで性根が意地汚いんだ?
働き盛りのお琴の血は精がつくだと?
お前――このあとまた、花世を襲う気でいやがるな?こんちく生。
ひとの女房をなんだと思ってやがるんだ!?
花世はお前の餌でも、女を姦りたくなったときのはけ口でも、ないんだぞ!?
行いのちゃんとした、課長夫人なんだ。
え?わかってるって?だからよけいに愉しいだと?
で、口うるさい俺を黙らせるために、俺にまでちょっかいを出すんだと?
やめろ、やめとけって。こら!
そんなに気を使って、くまなく舐めるこた、ねぇだろ?え?



あとがき
さいごはおまけです。(笑)
つい先日ですかね、通りを歩いていて、ちょっとこぎれいな50がらみの主婦さんをお見かけして、
ふとお話のきっかけが頭に浮かびまして。
きのうの朝に、あらかた描いたのです。
とくに盛り上がりのあるお話ではないのですが、
この家の日常をありありと思い浮かべながら、つらつらと気分よく描いてしまいました。
でも、もう少し描き込みたくて、夕べと、今朝、手を加えて、あっぷしてみました。

奥さんの肌色のストッキング、娘さんの白のハイソックス、ダンナの通勤用のハイソックスと三足せしめて、
そこまでやって初めて満足がいったらしく、嬉し気にその家から出ていったようです。

都会の母娘のストッキング。

2019年03月03日(Sun) 09:04:34

都会のオフィスで穿きこなしたストッキングを、
田舎の嫁ぎ先の義父に咬み破られながら、うら若い血潮を啜られて、

婚家に遊びに来た母親に目をつけた吸血鬼は、
嫁の父親が秘めていた、娘と姦りたいという願望をかなえてやって、
その引きかえに、母娘の味比べをしたいと持ちかける。
あんたが娘を姦って、わしが奥方をモノにすれば、お互い等しい立場に立つのだからと。

娘と姦りたい願望と、妻が犯されるところを覗きたい願望とがいっしょくたになって、
律儀な日常を生きてきた父親は、初めて色香に惑った。
そして話し合いの末、永年連れ添った愛妻の貞操を、娘の舅に明け渡してゆく。

専業主婦が脚に通したストッキングは古風に柔らかで、
年配者である吸血鬼の唇を、優しくくすぐる。

息子の嫁が脚に通している、張りつめたサポートタイプのストッキングと。
息子の姑がふくらはぎを染める、なよやかなウーリータイプのストッキングと。

奥さんの穿いているストッキングは、ひと味ちがうねと、戸惑う姑の耳もとに囁いてみる。
いやらしいことは仰らずに、早く済ませて下さいと恥じらう姑に、
そんなに急いでいるのかね?ともう一度からかって。
さあ奥さん、いよいよ年貢の納め時ですよ、と、田舎ならではの表現で、迫っていった。

夫以外の男を初めて受け入れる姑は、
見て見ぬふりをしますといった人が、その実ふすまの影から覗いている気配をありありと感じつつ、
破けてふとももがまる見えとなったストッキングを穿いたまま、
齢以上に強烈な吶喊に、身も心も狂わされていった。

村を出るころには、もう幾晩も契りを重ねて、
手持ちのストッキングを全部破かれて、穿き替えをとって来るという名目で、初めて夫とともに解放された。
でもきっと、彼女は戻って来るだろう。律儀すぎる夫とともに。
融かされた貞操は、もう元には戻らないけれど。
夫に合わせる顔がありませんと訴えるほどのたしなみは、終生捨てることがない。
妻として振る舞うことでいっそう、物陰の夫が昂ることを。
夫に見せつけることで、身体じゅうの血が熱く燃えたぎることを。
女は識ってしまったから。

都会育ちの母と娘。
地味なストッキングと、光沢よぎるつややかなストッキング。
二対の脚は競い合うように、夫たちの見守るまえ、吸血鬼の唇のまえに差し伸べられる。

密会する婚約者

2019年01月04日(Fri) 10:18:48

薄茶のスカートの後ろ姿が、背すじをしゃんと伸ばして、まっすぐ前へと歩みを進めてゆく。
スカートの裾から覗く、ちょっと肉づきのよい脚は、スカートと合わせたおなじ色のパンプスが、アスファルトの路面に硬質な足音を刻んでゆく。
まるでお見合いにでも行くように、改まった服装で、しかもウキウキと。
こちらに後ろ姿をみせる穂香さんは、わたしのお見合い相手。近々婚約しようというほど、話はとんとん拍子にすすんでいた。

その穂香さんがだれかと密会している――そんなうわさを拾ってきたのは、母だった。
穂香さんの棲む街とわたしの住む街とでは、駅が三つほど離れている。
うさわなど、伝わりそうな、伝わらなさそうな、そんな距離感。
けれども、相手の男は弟さんとは別人で、ずっと年上らしいのに、身内どうぜんに打ち解けている。
なんか怪しいっていう話だよ。
母は見てきたようないいかたで、未来の息子の嫁をくさした。
案外、母自身が見たのかもしれない、と、わたしは思った。

さっそくわたしの探偵がはじまった。
さりげなく訪問を断られた土曜日の朝。
わたしはさりげなく彼女の家の近くを徘徊し、彼女が家を出るのを目にした。
彼女が家を出たのはお昼前、両親が外出した後だった。
薄茶のジャケットに白のブラウス、ジャケットと同じ色のタイトスカートに、やはり同じ色のパンプス。
決して派手めではないけれども立ち姿がひきたつのは、穂香さんの気品のゆえだろう。
足音を忍ばせてあとをつけるわたしのほうを、彼女は一度としてふり返らなかった。

意外にも。
彼女が訪れたのは、地元のホテル――ふたりがお見合いをした場所だった。
そしてさらに意外にも、そこには先に家を出た両親が、待ち受けていた。
穂香さんを迎えたご両親は、さらに別の男性を席に迎え入れ、娘の隣に座らせる。
そこはわたしの場所のはずだ!
叫びたい気持ちを、かろうじてこらえた。
四人はしばらくのあいだ、談笑していた。
ごく打ち解けた相手のようだった。

ホテルのなかにも、表通りにも人影はほとんどなく、ガラス張りのレストランの店内のようすは、
ホテルの庭園にほどよくしつらえられたベンチに腰かけたままでも、手に取るようにつぶさにうかがえた。
男性はどうやら、お母さんといっしょにレストランに入ってきたようだった。
お父さんはひとりで先着して皆を待ち、お母さんと男性、それに娘の穂香さんのために席をとり続けていたらしい。
男性がやがて、奇妙にも、お母さんの足許に身をかがめた。
恥かしがるお母さんがすくめる足許に唇を吸いつけて、足首からふくらはぎをたんねんに吸いつづけている。
よく見ると。
お母さんの穿いているストッキングはむざんに咬み破られて伝線を拡げ、ふくらはぎの輪郭から剥がれ落ちていくのだった。
彼の行為は、それだけでは終わらなかった。
つぎは、並んで腰かけている穂香さんの足許にまで、唇を吸いつけていったのだ。
穂香さんは恥ずかしそうに顔を上気させながらも、どこかウキウキとしていて、イタズラっぽい笑みさえよぎらせている。
そして、彼が本当に咬みつくと、くすぐったそうに白い歯までみせたのだ。

お父さんはどこまでも、淡々としていた。
足許を卑猥なよだれに濡らされ、ストッキングを目のまえで咬み破られるというのは、ご婦人たちにとっては恥辱であるべきなのに、
母娘とも嬉々として男にストッキングを破らせ、お父さんまでもが妻や娘に対する非礼な仕打ちを、おだやかにやり過ごしている。
レストランのなかのウェイターやウェイトレスたちも、気づいていないはずはないのに、咎めようともしていない。
わたしは、室内でくり広げられる奇妙な儀式から、目が離せなくなっていた。

やがて男は、穂香さんが笑いをおさめるのを見はからって、彼女だけを促して席を起った。
そして、ご両親にちょっとだけ会釈をすると、
まるで恋人にそうするかのように穂香さんの肩に手をかけて、レストランの出口へとエスコートしてゆく。
ご両親は鄭重に礼を返して、ふたりを見送るばかり。

いったい、彼女の婚約者はだれなのか?
怒りと混乱とで、わたしは頭のなかが昏(くら)くなった。
そして、母娘の足許からストッキングが噛み剥がれてゆく有様が、網膜から離れなくなっていた。

われにかえったときには、レストランのなかにいた。
ご両親はまるで、わたしの出現を見越していたかのようにおちついていて、わたしをふたりが腰かけていた席に促した。

ご覧になりましたね?
あのひとは、穂香と結婚することはできません。吸血鬼だからです。
彼は家内と結婚前からのご縁があって、家内に生き写しの穂香にも、ご好意を持たれたのです。
でも、吸血鬼はなん人もの女性から血をもらわなければ生きていけません。
ですから多くの場合、彼らは独身を通すのです。
そして、彼らの愛した女性は人間の男性に嫁ぎ、新しい家庭をかげながら守ろうとします。
ええ、折々若いご夫婦から血をもらいながら・・・ですが。
家内の場合もそうです。
初体験のお相手は私ではなく、さきほどの彼とでした。
以来ずっと血を吸われつづけ、私と結婚してからも、関係を続けました。
私も、そうすることを望んだからです。
初めて家内が襲われて生き血を吸い取られるところを目の当たりにしたときに、不覚にも昂奮してしまいましてね。
そういう男性は、この地では歓迎されるのです。
うちは代々、そういう関係を続けていく家柄なのです。
この街では、こんなふうに選ばれた女から生まれた長子は必ず女で、そして美しく育つ――といわれています。
家内も評判の美人でしたし、幸い娘もそうでした。
そして幸か不幸か、あなたのおめがねにとまった――
でも、逃げ出すなら今のうちです。
一切合切、吸い取られてしまいますからね・・・

わたしは躊躇なく、席を起った。
やはり行かれるのですか・・・お父さんの目が、悲しそうな色を宿したが、
わたしが穂香さんがいまいる部屋の番号を教えてほしいと告げると、表情を改めた。

さいしょの子供は、女の子がいいと思っていましたし・・・
新妻を寝取られる夫という立場も、愉しむことができるような気がしています。
お父さんと同じ立場を、引き継いでみたいと思います。
問題は、わたしの母です。
婚礼のおりにいちどだけ、彼に誘惑させてみませんか?
母も大人の女性です。それに未亡人です。
恋をしてもまだおかしくない年代だし、そうすることでどこにも迷惑は掛かりません。
父も――息子の嫁の浮気相手と母が交渉したと聞いたら、面白がるかもしれないですね・・・

母さんの帰り道

2019年01月04日(Fri) 09:42:07

あうぅぅ・・・

家の外から、うめき声がきこえた。
うめき声はどことなく陶酔を帯びていて、
しばらく切れ切れに聞こえた後、
「ひっ・・・」と声を引きつらせ、途切れてしまった。

こういうことは、この近所ではよくある。
吸血鬼の出没する森や公園やらがそこかしこにあって、
ぼくの家でも、家族全員が咬まれた経験を持っている。
それでもぼくは、声のしたほうをチラチラと落ち着きなく見やってしまった。
母さんの帰宅がまだだったからだ。
そんなぼくの様子を見た父さんは、「気にせんでええ」とみじかく言って、再び拡げていた新聞に目を落としてゆく。
ぼくはやはり落ち着かない気分を抑えることができなくなって、ジャケットを取りに部屋に戻った。

隣の部屋から姉が顔を出した。
「うめき声でしょ?」
図星を指されたぼくはちょっと悔しくなって、
「そうだけど」
と、わざとぶっきら棒にこたえた。
「行かないでいいんじゃない?」
姉はしかめ面を崩さずに、いった。
「やっぱ気になるじゃん」
「男の子ってやっぱりそうなのね」
いけすかない・・・という目でぼくを見る姉に、心外だという気持ちをこめて、こたえた。
「母さんがまだなんだ」
「知ってるわよ」
姉はどこまでも、ぼくの上手を行く。
「だから行かないほうがいいでしょって言ってるの」
無言でジャケットを羽織り背中を向けるぼくに、姉はとどめを刺すようにいった。
「行きたきゃ行ってもいいけど、もう少し間を置いてからにしなよ」
ふり返ると姉は相変わらず怖い顔をしていて、(親のそういうところを視るものじゃないでしょう)といいたげだった。
「とにかく・・・心配だから」
口ごもるぼくに、姉はいった。半ズボンの足許に目を止めたまま。
「ハイソックスくらい、履いて行ったら?」

けっきょく、家を出るのに30分近くかかった。
玄関のドアを開けるぼくのことを、父も姉も見送らなかった。
サンダルをつっかけて、声のした家の裏手のあたりに足を向ける。
声の主は、やはりそこにいた。

母さんは夕方、みんなの晩御飯を用意すると、ひっそりと出かけていった。
出かけるときに穿いていたこげ茶のパンプスが、歩道の隅っこに転がっている。
その数メートル奥の草むらに、パンプスの脱げたつま先だけが見えた。
母さんの脚は、かかととつま先のついた肌色のストッキングに包まれたまま、
泥まみれになりながら、じりじりと足摺りをくり返していた。

先に草むらから姿を現したのは、黒い翳だった。
翳の主はとても色褪せた肌をしていて、グロテスクな容貌をしていたけれど、
顔なじみのぼくを認めると、ちょっと会釈を返してきた。
人間らしい応対に、ぼくはにこりともせずに応じた。
「母さん、そろそろいいだろ?」
ぶっきら棒にぼくがいうと、男はにんまりと笑った。
口許を、吸い取ったばかりの母さんの血でヌラヌラと光らせたまま。

「来ないでいいから」
草むらの奥から声がした。
男が下腹部も濡らしているのをみて、草むらの影でなにが起きていたのかは察しがついた。
ほんとうは、もう十分以上まえに来るべきだった――と、けしからぬ考えがちらと頭をかすめた。
「もう少しつづけてやろうか?」
男がいった。
「いいよ、そこまでしなくて」
母雄あのヌードで昂奮する妄想にかられたぼくを見通したような言いぐさに、
ぼくは照れ隠しにそっぽを向いた。
「きみの父さんが迎えに来た時は、つづきをしたんだがな」
男はただならぬことを聞こえるように呟きながら、路上に落ちていたパンプスを拾い、草むらのほうへと投げてやった。
ぼくよりも、母さんを襲ったやつのほうが、よほど身づくろいの役に立っていると思った。
でも、よくよく考えてみれば、彼らは自分たちのしたことの後片付けをしたに過ぎないのだから、
ぼくが済まながる必要はないのだった。
「まだ喉渇いてるの?姉さん呼んでこようか?」
草むらのほうにも聞こえるように、ぼくは男にいった。
「姉さんのことはきのう吸った。なか三日は置かんと旨い血が吸えぬ」
身勝手なやつだと思った。
母と姉と――2人ながらこの男の誘惑に屈し、血を吸われていた。
「それに、せっかくきみが来たんだし・・・」
え?と思う間もなく、強い力のこもった猿臂に引き寄せられた。
生臭い息が耳たぶをかすめる。
身じろぎ一つできないほどきつく抱きすくめられたまま、首すじにチクリと鋭い痛みが走った。

母や姉が屈するのも、無理はない・・・
そんなふうに薄ぼんやりと思ったときにはもう、ぼくはすっかり貧血になって、草むらの傍らに長々と寝そべっていた。
男は、「靴下も愉しませてもらおう」といって、ぼくの了解も待たずに足許にかがみ込み、
履いていた白のハイソックスのうえからチロチロと舌を這わせ始めている。
母さんは身づくろいを終えて、薄ぼんやりと佇んでいた。
息子が自分と同じように血を吸われているというのに、助けもせずに、見守っていた。
もっともぼくだって、母さんが襲われるところをのぞき見して昂奮しようとしていたくらいだから、
母さんを責めることはできなかったけれど。
やがて男の牙がふくらはぎに食い入って、白のハイソックスに赤黒い飛沫が飛び散り、
生温かい血のりがじわじわとしみ込んでいった。

「ただいま戻りました」
疲れ切った母さんは、気の抜けた声で帰宅を告げた。
お茶の間からは「ああ」という父さんの、やはり力のこもらない相づちが返って来た。
こげ茶のスーツはどうにか身に着けていたけれど、
髪は振り乱しブラウスの襟首は大きくはだけ、破れたストッキングはくるぶしまでずり落ちて、皺くちゃになっている。
情事の名残りをありありととどめた姿をみたのは、ぼくだけだった。
「母さんシャワー浴びるから、あなたはもう上にあがって」
ぼくの顔をまともに見ないでそういう母さんの脇をすり抜けて、言われるままに階段に向かう。
すれ違いざま、生々しい女の気配が、ふわっとぼくを包みかけた。
なにか鋭いものに、ズキッと胸の奥を衝かれるような気がした。

「なか3日だってさ。すぐにお呼びがかかるんじゃない?」
二階に戻ったぼくは、隣の部屋から顔を出した姉に、憎まれ口をきいた。
姉は血に濡れたハイソックスを履いたぼくの足許を、じっと睨んだ。
吸血鬼は、丈の長い靴下のうえからふくらはぎに咬みつくのを好んでいた。
だから、母さんが着込んだスーツの下に穿いていたストッキングも、狙われたのだ。
運動部のユニフォームのストッキングを穿いて行ってもよかったけれど、
チームメイトを裏切るような気がして、わざと姉のタンスから一足おねだりをした。
自分のタンスを漁る弟の背中を、姉は白い目で睨んでいたけれど、自分のハイソックスを弟がせしめることには文句をいわなかった。
「代役ありがと。これお駄賃」
ご念の入ったことに100円玉を1枚掌に圧しつけようとしたのを、かろうじて突き返した。
「しょうもない」
姉弟同時に同じ言葉を口にして、お互い相手を見、初めてクスッと笑った。
「父さんによけいなこと、訊くんじゃないわよ」
姉はそういって、部屋の扉をぴしゃりと閉めた。
訊くな――ということは、よくお訊き、ということにちがいない。
あまのじゃくな姉らしかった。

靴下を履き替えて下に降りると、父さんがまだリビングにいて、テレビを見ていた。
見ているといっても、薄ぼんやり目をやっているだけで、そこで時間をつぶしているというていだった。
「きょうはテレビで徹夜しようかな」
父さんがいった。
「そこまで気を使うことないんじゃない?」
ぼくはいった。
「どこまで知ってるんだ?」
「いまのことならたいがい」
「昔のことは?」
「さあ・・・」
どちらの側も躊躇をしながらも、父さんはすべて語ってくれた――

この街には底知れぬ森がある。
そこには吸血鬼が住んでいて、若い娘や人妻をたぶらかしていた。
吸血鬼たちは、襲った人間を死なせない代わり、街に棲むものたちの血を自由に吸えることになっていた。
なにも知らずによその土地からやってきた父さんはそこで母さんを見初めた。
結婚生活は幸せだったが、ある日、家が吸血鬼の襲撃を受けて、ふたりながら血を吸われた。
ほんとうは、吸血鬼は、父さんのことは殺してしまってもよいつもりだった。
血を吸われ犯される母さんを見て不覚にも昂奮してしまったことが、父さんの命を救った。
じつは、母さんは代々母から娘へと血を提供しつづけてきていた家の一人娘だった。
父さんを愛していた母さんは掟を破って父さんと結婚したので、怒った吸血鬼が新居を襲ったのだ。

さいしょは母さんは、父さんに隠れて血を提供しつづけることで、うわべの幸せを守ろうとした。
年ごろになってすぐに、血を吸われ始めた母さんは、吸血鬼の寵愛を受けていたし、
女としての初体験も吸血鬼相手に済ませていた。
すべての過去を押し隠したままこの土地に住み続けることに、無理があったのだ。
自分の嫁がもともと吸血鬼の情婦だったと知っても、父さんは母さんと別れようとしなかった。
父さんは吸血鬼と逢瀬を続ける母さんを許し、母さんは父さんを愛しつづけ、ぼくたちが生まれたのだった。

姉さんはきっと、母さんを見習って、この土地の女として生きるのだろう。
そしてぼくも案外、父さんのように・・・もらった妻を吸血鬼に差し出してしまうのかも知れない。
そんなことを考えていると。
血を吸われてウットリしている母さんをのぞき見していた時に昂った不埒な股間が、
いままで以上に逆立って来るのを、抑えることができなくなっていた。

制服に黒タイツ。

2018年02月14日(Wed) 07:41:44

「じゃあ俺はここで」
吸血鬼仲間で連れだって歩く道すがら、中学校の校門にさしかかると、
俺は一方的に別れを告げた。
処女の血を獲るには、ここに限る。
もう何年も通い詰めている、採血スポット。
それがこの、名門と言われた女子中学校だ。
「お前ぇも好きだな」
「ロリコン」
彼らは親しみを込めた揶揄を投げて道を分かれると、
それぞれの愛する人妻や恋人や姪っ子の待つ家へと、足を向けてゆく。

制服を着た真面目な少女たちのふくらはぎに咬みついて、黒タイツを咬み破りながら血を啜る。
乙女たちにしてみればおぞましい限りのそんな行為を、俺はこの学校で日常的に続けていた。
校長は俺たちと気脈を通じていて、担任の教師に受け持ちの生徒たちを調達させて、
出席番号順に生徒を呼び出しては、飢えた吸血鬼にあてがってくれる。
おとといは午前中に1人、午後に1人。きのうは1人。きょうは3人まとめて――
あしたはなん人の生徒の首すじに、牙を埋めようか?

連れてこられた生徒たちは、みんな真面目なおぼこ娘。
両親に愛され、手塩にかけて育てられて、
がんばって受験勉強をしてこの学校に合格をして、
献血という博愛行為を実践する学校という美名に惑わされた親たちの了解のもと、
校内に出没する賓客たちに、うら若い血液を啜り取られる。

娘の身の上を心配した母親たちが、俺にあてがわれた控室に姿を見せることもある。
娘を同伴してお手本を強いられた人妻たちは、真っ先に娘の前でうなじを咥えられ、
貧血を起こして姿勢を崩し、あげくの果てによそ行きのスーツの裾をたくし上げられて、
ストッキングをむしり取られながら辱めを受ける。
もっとも本番は、娘が気絶した後だ。
母親の受難を目の当たりに立ちすくむ黒タイツの足許に、卑猥な唇を這わせると、
生真面目な彼女たちは卒倒せんばかりにうろたえて、ずぶずぶと牙を埋め放題にされるまま、
体内をめぐる若い血液を啜り取られて絶息する。
発育のよいピチピチとした生気を帯びたふくらはぎは、俺の絶好の餌食――
黒タイツを破り放題に破りながら、俺は若い血潮に酔い痴れる。
娘が気絶してしまうと、こんどはもういちど、お母さんの番。
そう、いよいよ本番だ。
「服は破らないで、お願い」
そう懇願する従順なお母さんには、無用な恥は掻かせない。
ブラウスの釦をひとつひとつ丁寧に外し、
「嫁入り前の娘に、良い手本をみせなくちゃな」とか耳もとに囁いて、
ブラの上からおっぱいを撫で撫でしながら、まな娘のまえでお寝んねいただく。
身持ちの良いはずの良家の主婦は、いくつも若返ったように顔を輝かせ、娘のころに戻って、
昂ぶりに頬を染めながら、禁じられたはずの行為を夢中になって受け容れる。

名門とうたわれたこの女子中学校は、俺のパラダイス。
きょうもロリコンと笑われながら、俺は処女の生き血を漁りに校門をくぐる。


あとがき
連れだって歩く当校の道すがら。
黒タイツに包まれた脚たちを目のあたりによぎる、妖しい妄想は何故?

結婚祝い。

2017年07月04日(Tue) 07:20:58

姉さんが帰って来るよ。
アツシはさっきから自分の血を吸っている吸血鬼を見おろしながら、いった。
吸血鬼は、自分の父親よりもはるかに年配の、ごま塩頭。
それがアツシの足許にとりついて、紺のハイソックスをくしゃくしゃにしながら、ふくらはぎに舌をふるいつけている。

姉さんはずるいと、アツシは思う。
高校を出るまでは、吸血鬼相手のプレイをしっかり愉しんで、それからすぐに都会の大学に入り都会で就職して、都会の男と結婚するのだという。
生まれ育ったこの田舎町に残ったアツシは、いまでも日常的に吸血鬼に咬まれて貧血な日常を送っているというのに。
母さんは母さんで、父さんやぼくの目の前で小父さんに抱かれて、「わー」だの「きゃー」だの、叫んじゃっているというのに。
彼女は彼女で、やっぱりぼくの目の前で日常的に犯されて、「あなただけよ、あなただけよ・・・」とか、「アツシに見せつけるのが愉しい♪」なんて、宣わっちゃっているというのに。
まあ、そんな日常も、いまは悪くないと思ってはいるけれど。
やっぱり姉さん、ずるいよ。
ひとりでまっとうな人生を送ろうなんて、ずるいよ・・・

アツシの心情が伝わったのか、伝わっていないのか、
吸血鬼の小父さんはいつも以上にアツシの足許にしつようにからみついて、
紺のハイソックスに生温かなよだれを、ジュクジュク、ジュクジュク、しみ込ませていった。


「懐かしいだろ?姉さん。逢いたかったんだろ?姉さん」
くすぐったいほどの嬉しさも隠さずに言いつのるアツシのまえで、
姉の涼子は声もなく立ちすくんでいた。
「まさか結婚するのに、小父さんにあいさつなしって、ないよね?」
そうだけど。もちろん、そうだけど・・・
「これからも付き合うつもりなんだろ?小父さんと」
えっ、そんな・・・そんな・・・あたし結婚するんだよ?
「だったら今のうちに、これからの関係性について相談しとくべきなんじゃないかな、って」
か・・・関係性って・・・なによ・・・
「姉さんが卒業したときに、小父さんは姉さんの制服をコレクションにしたけれど。
 いま着ている服も、コレクションしたいんだってさ」
だからって・・・だからって・・・あなたまでが私の服を持ち出して、
このひとの前で着ることないじゃない・・・あっ、ブラウス汚してるっ。
姉の抗議を聞くものは、だれもいない。
涼子の成熟した身体に、男の影が覆いかぶさり、あますところなく飲みこんでいった。


十数年が過ぎた。
涼子はぼう然として、夫の言いぐさに耳を傾けている。
夫の言葉は風のように、彼女の左の耳から、右の耳へと抜けていくようだった。

きみの処女をゲットした男が、きみとぼくとの結婚直前にもう一度きみのことを抱いたんだって?
それに、里帰りの時はいつもそのひとと逢っていて、ぼくのことを裏切りつづけていたんだって?
――なんて素敵なんだろ。

娘たちの純潔も、そのひとに食べてもらおうよ。
夫のささやきは、毒液のような効き目をもって、涼子の鼓膜に流れた。
きょうは上の子の誕生日。
誕生祝に、小父さまを招待してある。
下の子はまだ、スイミングから戻ってきていない。
妹娘が戻って来るまえに、お姉ちゃんは大人の女にされていることだろう。
なにもしらされていない長女は、親たちの思惑など夢にも思わずに。
卒業式の時に買ってもらった女子高生ファッションに身を包んではしゃぎながら、
紺のハイソックスに包まれたピチピチとしたふくらはぎで、ぱたぱたと駆けずり回っている。
あと数分も経たないだろう。
この娘が泣きじゃくりながら、ハイソックスを咬み破られて血を啜られるのに。
そして、あと数十分も要らないだろう。
同じ娘がきゃあきゃあとはしゃぎながら、スカートの奥をまさぐり抜かれてしまうのに。


あとがき
すでにお気づきの方もいらっしゃるでしょうが、このお話は、6月22日以来描き継いできたものです。
第一回は、「姉の制服を着せられて 気に入りのハイソックスを脚に通して・・・」です。
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-3490.html

よかったら、初めから読み通してみてください。^^

母娘

2017年02月12日(Sun) 06:48:46

母娘ふたり暮らしの家だった。
先に血を吸われたのは、母親のほうだった。
だいじょうぶ?母さんまで死んじゃ、ヤだよ・・・
母親似の大きな瞳を張りつめて案じる娘に、
死なされるわけじゃないみたいだから、だいじょうぶだよ。
母親は気丈に、そう応えた。

つきあいが深まるにつれ、娘は母親の情夫と顔見知りになった。
母親が男を、家に入れるようになったから。
知ってるよね?
母親は何気なく、娘に訊いた。
知ってるって、なにを・・・?
訝し気に訊き返した娘は、母親の問いの真意をすぐにさとった。
父さんのこと忘れないでくれるなら、いいよ・・・
娘はちょっとだけなにかをこらえるような顔をして、そうこたえた。
吸血鬼が娘のことを襲ったのは、それから数日経った頃だった。

どうなっちゃうのかな。
結婚を控えていた娘は、吸血鬼の求愛を受けて、戸惑っていた。
悪いよね?ゼッタイ、彼に悪いよね?
母親は、娘の恋人が薄々状況を知っていることに、気づいていた。
彼はきっと、娘の過ちで心を変えたりしないだろう――そう確信した彼女はこたえた。
彼氏のことを忘れないでいられるなら、いいんじゃないかな?
背中を押された娘はその晩、花婿ならぬ身に、愛し抜かれていった。

難しいんだね。
娘の問いに、母親はなにが?と促した。
父さんのこと忘れないでいても、できちゃうんだね。
言いたいことを知り抜いていた母親は、そっと答えた。
じきに慣れるわよ。
そっか。
娘は食べかけたパンにもうひと塗り、甘いジャムを塗りつけていった。

母と娘と

2016年12月01日(Thu) 07:36:25

この子の母親を抱いているとき。
不倫をしているような、スリリングな気分になる。
この子の母親の首すじを吸っているとき。
化粧と香水の濃厚な香りが、鼻腔を刺激する。
この子の母親の、ストッキングを穿いた脚を咬んでいるとき。
すべすべ、ツヤツヤとしたナイロン生地に、うっとりとさせられる。

この子を抱きすくめているとき。
初心な少女を堕落に誘う、いけない気分になる。
この子の首すじを吸っているとき。
長時間追いかけっこをした後のかすかな汗臭さが、初々しく鼻先をよぎる。
この子の、黒のストッキングを穿いた脚を咬んでいるとき。
知的でまじめな清楚さと、大人びてなまめかしい淫靡さとが、かわるがわる交錯する。

おなじ家の母と娘なのに。
身に着けた衣装の風情も、身に添わせた熱情も、別人のように違う。
けれども、その身に秘めた血潮の熱さは、通い合うものがある。

「母のお相手ですよね?」
初めてこの子と接したとき。
彼女はセーラー服によく映えた色白の目鼻立ちを、かすかに不快げに険しくした。
「侮辱を感じます」
制服のプリーツスカートの下、にょっきり伸びた足許から、
黒のストッキングを咬み剥いでやったとき。
頭のうえからそんな言葉が、凛とした響きをもって降ってきた。
「でも・・・あなたですから許します」
そのつぶやきに、どれほど救われた思いを抱いただろう。
心ばかりのお礼にできたことは、
もう片方の足許を染めるストッキングを、見る影もなく咬み破って、
ぴちぴちと輝くひざ小僧を、まる見えにしてしまったことだけだとは、情けない。
「仕方のないひとですね」
彼女は大人びた微苦笑を口許に含んで、
「もう気が済みましたか」
と、相手の満足を確かめると。
靴下をはき替えて家路につくため、立ち去っていく。
そっと涙をぬぐう後ろ姿は、きっと気づかれたくないに違いない。
俺は低く口笛を吹き、彼女の足許から抜き取った黒のストッキングをもてあそびながら、
そんな彼女を横面でやり過ごす。

「侮辱ですよ」
あの子の母親が優しくたしなめながらも、惜しげもなくストッキングの脚を差し伸べてくれたのと同じ顔つきで。
一女の母となった彼女もまた、俺を優しく睨みながら、ストッキングを咬み破らせてくれる。
目の前のペルシャじゅうたんの模様が、ふと涙に滲んだ。
俺はまったくの、果報者――

自分の情夫に、母親を手引きした娘。(父親の告白)

2016年11月24日(Thu) 07:51:58

挙式の1週間ほどまえのことでした。
娘の理佐子がいつになくやつれて、蒼い顔で帰宅したのは。
そのときに気づくべきでした。
娘は吸血鬼に遭ったのです。
お相手のタカシくんの家が、家族ぐるみで吸血鬼を受け容れていたと知ったのは、それからあとのことでした。
あとは、芋づる式でした。
妻が吸われ、息子夫婦も吸われました。
とくに妻の血は、ことのほか悦ばれたみたいです。
娘の血が気に入った相手ですから、妻の血もお口に合ってしまったのでしょう。
わたしは、どうすることもできませんでした。

真相を告げてくれたのは、先方のお父さんでした。
タカシくんの母親が吸血鬼に血を吸われるところを、こっそりと見せてくれたからです。
これが自分の奥さんだと、いっそう愉しめますよ。
ご主人の言を強く否定することがなぜかできずに、家路をたどったのを覚えています。
貴男はなにもしなくくていいです。ただ、妨げさえしなければ・・・
そんな囁きを毒液のように鼓膜にしみ込まされて帰宅したわたしは、
いつの間にか首すじに咬み痕をつけられていることに、自宅の鏡を見るまで気がつきませんでした。

手引きしたのはすべて、娘の理佐子。
悪い娘になっちゃったね。
娘は悪びれもせずそういうと、にっこり笑ってわたしのほうへと近寄ってきます。
隣室では長年連れ添った妻が、複数の吸血鬼を相手にうめき声を洩らしつづけています。
そんななかで、どうしてわたしひとりが、理性を保っていられたでしょうか。
娘はブラウスをはだけ、ブラジャーをはずすと、硬直したわたしの掌を、自分のスカートの奥へと誘い込ませていったのです。
タカシくんに悪いじゃないか?
父娘相姦に対する罪悪感は、なぜか感じませんでした。
そういえば。
妻を犯されてしまったことへのショックも、意外なくらいに受け入れることが出来ました。
咬まれちゃうとね、なんでもヘイキになっちゃうんだよ。
娘がそう囁いてきたときにはもう、わたしはいけない交わりをすでに三回も、遂げてしまった後でした。
タカシくんは娘とわたしとの関係を、知っているのでしょうか?
知っているとしたら、どう思っているのでしょうか?
案外平気なものですよ――タカシくんのお父さんの言が、わたしのなかで肯定的によみがえります。
帰宅していたはずなのにずっと姿をみせなかったタカシくんは、帰りがけにだけ顔を見せて、玄関まで送ってくれました。
いつも通りにこやかな表情がそこにありました。
また、いつでも来てくださいね、お義父さん。
白い歯をみせてニッと笑ったとき。
なにかが伝わってきました。

また、いつでも来てくださいね。じぶんの娘を抱きたくなったら・・・
彼の顔にははっきりと、そう書いてあったのです。

おじゃましました。また近いうち、来るからね。


あとがき
前作を、新婦の父親目線で描いてみました。^^

父が夫となった話。

2016年08月14日(Sun) 17:02:29

長く単身赴任をしている男がいた。
男は親友に妻子を託していたが、その親友は独身だった。
というのも、親友は男の妻とも幼なじみで、ごく若いころから彼女を見初めていたからである。
親友である男は、貧家の出であった。
だから、女を幸せにすることができないと思い、想いを告げることなく身を引いたのだった。
男は、そうした事情をすべて知りながら遠地に赴任し、親友に妻と娘とを託した。
夫が長く家を留守にしているうちに、親友がその妻と通じるようになったのは、ごく自然ななりゆきだった。

男は妻と親友との関係を知ると、それを快く許した。
そして、そうなるまでのまる一年ものあいだ孤閨を守り夫に操を立てようとした妻をねぎらい、
むしろ二人が逢瀬を遂げられるよう、すすんで仕向けるようにさえなっていた。
親友である男は、幼い娘に対しても、養い親同然に尽くしていたので、母娘どちらからも慕われていた。
ただし、親友の家が貧しいことに変わりはなかったので、彼は自分の粗末な家に分かれて住み、
表だって男の家に居るときにも、使用人のように振る舞い、奥の座敷に入ることはなかった。

やがて、男が任期を終えて、家に帰ってきた。
親友はもとの粗末な貧家に戻ろうとしたが、娘は彼を強く引き留めた。
娘は父親の親友を、実の父のように慕っていたからである。
遠くからやって来たあの人は、自分の父ではない――と、娘は言った。
娘はごく幼いときから父親と別れていたので、父親というものがどのようなものなのか、わからなかったのである。
戻って来た実の父に娘が懐かないことは、二人の男を当惑させた。

親友は男に言った。
父親は敬われるものであり、夫は愛されるものである。
だから、私はあの娘に、あなたをきちんと敬うように仕込もうと思う。
その代わり、すでに愛されてしまっている私はあの娘の夫となって、ずっとあの娘のそばにいようと思う。
男は、妻につづいて娘をも親友に与えることを、躊躇しようとはしなかった。
託したものをすべて返してくれた親友を、心から信頼していたのである。
親友は、男の娘と契りを結び、娘は実の父を敬い、夫を愛するようになった。

男は自分の留守中に親友が男の家を訪れて、ときどき妻を抱くことに気づいていたが、
あえて咎めようとはしなかった。
最愛の二人の女性を二人ながら親友に与えることを、むしろ歓びとしたのである。
親友の妻となった娘もまた、夫が母のもとに通うのを知っていたが、
あえて咎めようとはしなかった。
もともと幼い頃から、彼が母とむつまじく共寝するのを知っていたからである。

四人の振る舞いを不貞であるとか、不道徳であるとか批評することはたやすいが、
彼らは皆、自分の務めを良く果たしただけである。
夫は遠地で務めを果たすことで妻と娘を養い、
親友は彼の最愛の妻と娘を護り、そして愛し、
妻は身近にあって自分と娘に尽くす男に、最も大切にすべきものを与えてこれを慰め、
娘は大人たちの訓えをよく守り、父を敬い夫を愛したのだから。

もしも最も称賛されるべきものをひとり挙げるとするのなら、それは遠地に赴いた夫ということになるだろう。
不自然に離れ離れになってしまった家族が、本当にばらばらになってしまわないために、
彼は賢明にも妻の不貞を許し、妻を慕う親友を留守宅に迎え入れて、
愛する者たちが好んで行うところを、快く許し受け容れたのだから。


あとがき
大昔の説話みたいなものが思い浮かんだので、フッと思い立って描いてみました。
どこか・・・おかしいでしょうか・・・? (^^ゞ

不味い。 2

2016年03月30日(Wed) 07:57:38

不味い。
不味い。
どいつもこいつも、どうしてこんなに不味い血をしているのだ!?

男は怒っていた。
不当な怒りだと思ったが、どうすることもできない。
きょうは甥の婚礼の日。
挙式が終わったあと見知らぬ男に家族もろとも別室に招ばれたわたしは、まっさきに咬まれた。
それから妻が。そして、娘までも。

つぎつぎに首すじを咬まれた妻と娘は、
身じろぎ一つできないほど血を吸い取られたわたしの前、ふらふらとその場に倒れ伏して。
男はそれでも、許さなかった。

スーツ姿の妻の足許に這い寄ると、肌色のストッキングに包まれたふくらはぎに唇をあてて、
ちゅーっ。
制服姿の娘のチェック柄のスカートの下、白のハイソックスに包まれたふくらはぎに、唇を這わせて、
ちゅーっ。
それはそれは小気味よく、生き血を吸い取っていった。

そこまではよかった。(決して良くはないのだけれど・・・)
そのあとやつは、言ったのだった。

不味い。と。

妻も娘も、血を吸われたことよりも、吸われた血を不味いといわれたことのほうが、悔しそうだった。

数刻後。
男は用意していた車にわたしたちを乗り込ませ、自分は最後列に陣取って、運転手にゴーを命じた。
わたしたちの向かったのは家ではなく、立派なマンションの一室。
やがて数日後、そこには家財道具が運び込まれてきた。
もとのアパートは解約したという。
きみたちはここで暮らすのだ。
あてがわれた一室には、豪奢な日常が待っていた。

これだけ良いものばかり食べさせられたら、血も美味しくなるわよね。
妻は血色のよい頬を輝かせ、以前よりも十歳は若返っていた。
娘も親に隠れて吸っていたタバコをやめて、やはりみずみずしい肌を輝かせていた。
順ぐりにやつに呼ばれ、血を吸われセックスにまで応じさせられる日常――
けれども誰もが、不幸せになっていなかった。

夫であり父親であるわたしですら――
日夜くり返される、妻と娘が主演のリアルなポルノドラマに、鍵穴を通して食い入るように見入ってしまっている。
誰もが幸せになったのなら、それでいいんじゃない?
妻はそういうと艶然とほほ笑んで、やつの好みのけばけばしいスーツに着替え、きょうも浮気に出かけてゆく。

カレーライス

2016年01月09日(Sat) 07:38:50

夕風と夜風の境目は、あいまいだけれど。
それはほのかに暖かく、なまめかしい。
薄闇に透けて見える、制服姿。
紺のスカートの下から覗く、真っ白なハイソックスに包まれた、発育の良い脚。
豊かな黒髪に縁取られた白い首すじに咬みついたら、どんなにか歯ごたえがよいだろう?
けれども俺は、そんな少女の舌なめずりをしたくなるような様子を、
目もくれないで受け流す。
なぜって・・・あの娘は、すでに仲間の恋人になっているのだから。
お互いの獲物には、手を出さない。それは俺たちの鉄則だった。

ふと鼻先をよぎるのは、カレーの匂い。
ほのぼのとした温かみを含んだ、香ばしいその匂いは。
家庭のぬくもりを感じさせ、俺などですらふと、人恋しくさせてしまう。
匂いのもとはどうやら、俺が目ざす家らしかった。
訪いもいれずに開け放った玄関。
俺をいちど受け容れてしまった家は、たとえ施錠していたとしても、出入りは自由。
案の定施錠をされていた扉は、なんなく開いていた。
ぱたぱたとスリッパの足音を響かせて現れたのは、この家の一人娘。
結花(ゆいか)という名前のとおり、咲き初めた花びらのようなその頬は、いつもより少し、色あせてみえる。
それはそうだな。夕べまでで三晩つづけて――俺に抱きすくめられたのだから。

下校してすぐに夕食を作り始めたのか、真っ赤なエプロンの下は、まだ制服を着ていた。
足許を引き締めるのは、先刻の少女と同じ、真っ白なハイソックス。
けれども少女の頬は、血を吸う側のこちらさえ気の毒になるくらい、色あせている。
「お願いきょうは堪忍」
少女は俺に向かって、目をキュッと閉じて両手を合わせる。
俺はきつい目で少女を睨んだが、どうやらこの立ち合いは俺の負けらしい。
具合悪そうだな――言いたくもないことを口にする俺に、少女は深々と頭を下げる。
「ほんとうにごめんなさい」
いつも無条件に俺に首すじをゆだねるこの娘が手を合わせるのだから、よほどせっぱつまっているに違いない。
「カレーでよかったら、食べていく?」
罪滅ぼしにもならないことを言う。吸血鬼の俺が、カレーなんか食えるか。
そう言いたいのをこらえて、「呼ばれよう」
俺はひと言そう応えると、少女はほっとしたように、廊下を進む俺に道を譲った。

居間に入ると、この娘の母親が、やはり痩せこけた蒼い顔をして、俺を迎える。
「ほんとうにごめんなさい。わたくしもお相手はちょっと・・・」
みなまで訊かなくてもわかる。三晩続けて少女を抱いた夜、この女の寝室も襲っていたから。
処女はみだりに犯したりはしない。その新鮮な生き血の芳香を愉しむために。
けれどもセックス経験のある女の場合、そうはいかない。それがよけいに、この女の体力を奪った。
娘をかばう母親は、うっとりさせられた三晩のまえも、まるまる一週間、俺に抱かれ続けていた。
「娘には言わないでね」と、母親らしい気遣いをみせながら。

スプーンのなかに満ちたカレールー。俺はひと思いに啜った。
旨い。
まったりとしたルウのなかを、ほど良い大きさに刻まれた肉やニンジンやジャガイモが、仲良くひしめいていた。
どうということもない平凡な味つけ――しかしそれは、俺が血を吸われる前に、最も好んだ味だった。
受け取ったぬくもりは、冷え切った心の裏側にまで流れ込み、血を吸い取った時にほど近い満足感を伝えてくる。
傍らで立ったまま、息をつめて俺を見つめている少女を、「あんたも食えばいい」と、席に座らせた。
少女はほっとしたように、自分のために盛ったカレーを、口に含んでいった。
ていねいに盛りつけられたカレーを、皿を舐めでもしたかのようにきれいに、俺は平らげた。

「ごめんね。ほんとうにごめんなさいね」
自分の血を吸うことを、俺に与えた正当な権利と認めているのか。
少女は立ち去ろうとする俺のまえ、なん度も手を合わせていた。
俺はだしぬけに少女の頭を抱くと、掌を彼女の首すじにすべらせた。
穢れを知らぬ素肌には、かすかなぬくもりを帯びていた。
少女は俺の掌を握ると、ブラウスのボタンを二つ三つ外して、そのまま脇の下へと導いていく。
下品に胸を揉みながら、吸血するときだってある。
けれども俺は、彼女をいたわるように、ブラジャーのうえからそっと輪郭を撫ぜるだけにしておいた。
素肌のぬくもり恋しさに、二度三度と重ねてはしまったけれど――

「ごめんなさい」
そう謝罪をくり返しながら。
少女もその母親も、きちんとした服装に身を包んでいた。
好んでふくらはぎに咬みつく俺を応接するために、ストッキングやハイソックスまで脚に通していた。
もしも俺が強いたなら、無理にもその意に従うつもりなのだろう。
たとえ相手が吸血鬼でも、礼儀知らずな応対はしたくない――そんな母娘の心意気がそこにあった。
「帰る」
さいごまで不安げに、いちぶしじゅうを窺っていた母親に、俺はそっけなくそう言い捨てる。

外に出ると、こうこうとした満月が、冴えた空気に映えていた。
くろぐろと静まり返った住宅街。
吸血鬼の支配に堕ちたこの街の、きょうは何軒の家が、悲鳴や嬌声に包まれるのか。
でも少女の家だけは、安心だ。
獲物を奪い合わない俺たちの支配下で、当の俺が訪問をあきらめたのだから。
今夜は平和な眠りを得るがいい――
獲物になった者をいたわる癖は、いったいいつから俺を蝕んだのか。
人の情けが、すすけ立った心のなかで復活したとでも?
それは誇っていいものか。蔑まれてしかるべきなのか。
それとも――何も考えずやり過ごすのが賢明なのか・・・

さて、と。
考えるのをやめた俺は、足音を消して歩みを新たにする。
活力に満ちた血液をたっぷり持った人間が、通りかかるのを期待しながら・・・


あとがき
新年第一作にしては、かなり時間が経ってしまいました。 (^^ゞ
それも、吸血鬼が女漁りを派手にやらかすような景気の良い?話ではなくて、
体調不良な獲物たちを気遣って、血を吸わないで帰ってゆく・・・みたいなストーリーで。
(^^ゞ
なんともさえない話?
でもきっと、今夜のお月さまはたぶん、柄にもない殊勝さに対するご褒美であったような。
たぶん、そんなお話なんだと思いますよ。
(^_^;)

吸血接待業。

2015年12月07日(Mon) 04:31:15

吸血接待業。
この街なかにはそういう職種が、ひっそりと存在する。
血に飢えた吸血鬼に癒しの場を与え、犠牲者が生命を落とす危険を回避するために生まれた職種。
特定の者だけに知らされた連絡ルートをたぐると、相手が姿を現して、
吸血鬼を受け入れる定宿で、血を提供する。
風俗業とよく似たシステムのおかげで、事情を知らないものが大半のこの都会でも、
本性をひた隠しにして隠棲しているものたちは、飢えずに済んでいる。

デパートの雑踏のなか、俺はさりげなく、俺の相手を待ち受けた。
濃紺のセーラー服に黒タイツの少女は、どちらかというと地味な造りの顔だちをしていた。
学校帰りに親と待ち合わせをしている優等生。まさにそんな感じだった。
「お待たせ。行こ。」
少女はニッと白い歯をみせ、まるで実の父娘のように、俺の傍らに寄り添った。

吸血鬼の定宿にも、なじみがあるらしい。
少女は黒のローファーに黒タイツの脚を、大またにして、
俺のまえに立つような歩調で歩みを進めた。
ドアを閉めてふたりきりになると、
少女はセーラー服の胸元のリボンをほどいて、手早く上衣を脱いでゆく。
いさぎよいほどの身のこなしだった。
「制服汚すと、やばいですから」
彼女はさっき作ったのとまったく同じ笑顔で、俺をふり返った。
真っ白なスリップだけは脱ごうとせずに、少女はベッドのうえに横たわる。
「どうぞ」
とだけ、少女はいった。
シーツを汚しても、ホテル内でクリーニングされる。
すべては完璧に、隠蔽されるのだ。
俺は息をつめて、目を瞑る少女の上へと、のしかかっていった――

ごくっ・・・ごくっ・・・ぐびり。
喉が渇いていた。汚らしい音をどうすることもできなかった。
露骨なもの音に、少女は顔をしかめながらも、吸血プレイに応じてくれた。
点々と血潮が散ったスリップのうえから、まだ控えめな胸の隆起を、俺はゆるやかにまさぐっていたが。
少女は気づかないようにして、腕をだらりとシーツのうえに伸べているだけだった。

静かになった少女の身体から身を起こすと。
濃紺のプリーツスカートの下を、掻きのけてゆく。
黒タイツに包まれたたっぷりとしたふくらはぎが、俺の好色な目を誘惑する。
「あ・・・」
気配に気づいた少女は、タイツを破らせまいとして脚をくねらせた。
それでもすぐに足首をつかませてしまうと、いった。
「タイツ破くの好きなんですか?」
「ええ、迷惑かな?」
「迷惑ですけど・・・お客様のお好みなら、しかたないです」
「そうか。すまないね」
俺は躊躇なく、少女の履いている黒タイツのうえからふくらはぎの一番肉づきの良いあたりに唇を吸いつけると、
口の両端から伸びた犬歯を突き立てて、ひと思いにタイツを咬み破った。

両方の脚にそうさせてしまうと、少女は無抵抗のまま、俺の行為を受け容れつづけた。
相手が処女の場合、みだりに犯すことは許されない。
俺もかろうじて理性を抑え、それでもぎりぎり許されている唇だけは、重ね合わせてしまっていた。
少女はこんなことにさえ、慣れているらしい。
むしろ積極的に、応えてくると。
「つぎはありそうですか?」とだけ、いった。
相手を気に入ると、またご指名が来る。
この少女もまた、家庭の事情か何かで、こうした客を取らなければならない境遇にいるのだろう。
「あるけど、身体もたないだろう?」
さりげなく気遣うほどに、少女に対する親近感が芽生えていた。
「そうですね。一週間くらい、いただけますか?」
「ああ、それくらいに来てもらえると、こちらも助かるよ」
「じゃあ、お約束」
指切りげんまんをしているときだけ、少女の横顔は幼げに映った。


一週間後――
おなじデパートの雑踏のなか、少女はこっちに向かって手を振った。
先日のビジネスライクな雰囲気とは変わって、人懐こい笑顔がそこにあった。
少女の傍らには、面差しのよく似た中年女性。
「母が心配だからって、いっしょに来てくれたんです」
少女は白い歯をみせながら、俺にそういって母親を紹介した。
「お嬢さんには、お世話になっております」
いささか悪のりが過ぎたあいさつに、お母さんは礼儀正しく応じてくれた。
「イイエ、こちらこそ娘がお世話になりまして」
まさに、”ご婦人”と呼ぶのがふさわしい受け答えだった。
「母もついてきます。喉、渇いているんでしょ?」
少女はイタズラっぽく、笑った。

部屋に3人きりになっても、少女はセーラー服を脱がなかった。
「スカーフが汚れるくらいなら、だいじょうぶですから」
俺は少女の首すじに食いついて、チュウチュウと音をたてて血を吸い取った。
お母さんの目のまえで、少女の発育を悦んでいることを、生き血を味わうことで見せつけていた。
「ア、ほんとにスカーフ汚したぁ」
わざと一滴したたらせた血潮に、真っ白なスカーフがシミをつくるのを、
少女はあっけらかんと受け入れていた。
「タイツも破る?」
たくし上げられたスカートの下、俺は這いつくばって脚を咬んだ。
「あー、もぅ・・・」
牙をチクチクと刺し込まれながら、脚のあちこちに咬みついて穴をあけられてゆくのを、
少女は面白そうに見おろすだけ。
やがて眼をとろんとさせてその場にへたり込んでしまうと。
彼女のお母さんが、覚悟を決めた顔つきで、ベッドの端に腰をおろした。
「薄いパンストは、もっと面白そうですね」
気絶した少女のすぐ目の前で。
気丈に振る舞うスーツ姿のお母さんを、俺は躊躇なく押し倒していった。


追記
おとといショッピングモールの雑踏のなかで、発想を得ました。^^

「怖ろしい吸血鬼に、生き血を吸い取られてしまうんですよ・・・」

2015年12月07日(Mon) 01:27:30

その子さん。いますぐ逃げましょう。
おうちのなかに、吸血鬼がいます。
ぐずぐずしていると、怖ろしい吸血鬼に、生き血を吸い取られてしまうんですよ。
お父様はもう、血を吸われてしまいました。
さあ、急がなければ。

あたくしの勉強部屋にはいってくるなり、お母様は息せき切って、そう仰いました。
けれどももう、遅かったのです。
あたくしは平然と、お答えしました。

アラお母様。吸血鬼さんをお招きしたのは、あたくしですのよ。
あたくしの血を差し上げたのに、足らないらしくって。
お父様とお母様の血が欲しいって。
やっぱり、お父様の血だけでは、足りなかったのね。
そんなに喉が渇いていらしたのなら、お母様の血もあげるべきだわ。

えっ!?その子さん、あなたはなにを仰っているんですか!?

日頃厳しいお母様のうろたえようが面白くって、
あたくしはけらけらと、笑いこけてしまったのでした。
そのあいだに、吸血鬼の小父様は、あたくしの部屋にいらっしゃいました。

その子さん?その子さんっ!?

お母様はますますあわてていらして、小父様とあたくしのことを、等分にみくらべていらっしゃると、
吸血鬼の小父様が背後からお母様に近寄って、両肩をつかまえてしまったのでした。
お気に入りのよそ行きのワンピースに、みるみるしわが走ります。
小父様のほうへと向きなおろうとしたお母様の二の腕を、こんどはあたくしが抑えました。

アッ!その子さん、なにをなさるんですっ!?

お母様の問いにお答えしている余裕は、もうありませんでした。
あたくしがお母様のことを抱きすくめると、小父様はお母様の頭をつかんでおとがいを仰のけると、栗色に染めたショートカットの髪を掻きのけて、あらわになった首すじに、がぶり!と咬みついたのです。

くちゃっ、くちゃっ、じゅるう・・・っ。

汚らしい音を立てて、小父様はお母様の生き血を、啜り取っていきました。
あたくしの血を吸い取った時と同じ、あの忌まわしい音を立てながら。
つま先立ちしたくなるような慄(ふる)えが、あたくしの身体に走ります。
小父様がひと口、お母様の生き血を飲み味わうたびに、あたくしまでもが渇きをうるおされるような・・・そんな錯覚がしたのです。

あっ・・・あっ・・・あっ・・・

あたくしの腕の中、お母様の抵抗がじょじょに弱まっていくのを感じました。

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やった!やったわ!
あたくしは心の中で、快哉を叫びました。
だって、なにかをなし遂げたときには、どうしたって、嬉しくなってしまうものではありませんか。
やがてお母様は、ご自分の身体を支えることができなくなって、
肌色のストッキングを穿いたひざを、じゅうたんの上に突いてしまいました。
そのままぐったりとうつ伏せになるお母様の足許に、小父様はなおもいやらしい舌を這わせていきます。
そう、学校帰りのセーラー服姿を初めて襲われたとき、貧血を起こして倒れたあたくしの足許に這い寄って、白のハイソックスをよだれで汚していったときのように。
お母様の穿いていらした肌色のストッキングは、小父様の舌や唇にいたぶられて、しわくちゃになりながら、咬み破られていったのでした。

うふふ。

あたしは満足そうな含み笑いを泛べて、小父様に言いました。

これで、お母様も大人しくなってしまわれたわ。
さあ、あたくしの残りの血も、吸ってちょうだい。

小父様は、お母様の身体から吸い取った血をしたたらせたままの唇をにんまりとさせながら、仰いました。

そうだな、もう少しだけ、いただくとするか。

あたくしは、まだ咬まれていないほうのハイソックスを、ひざ小僧までぴっちりと引き上げると、小父様の前へと差し伸べていきます。

くちゅっ。

よだれのはぜる音に、あたくしは顔をしかめて、「下品だわ」と思わず口走ると、
小父様はちょっとだけ顔をあげて、「嬉しいくせに」と仰います。
そうです――今ではもうすっかり、小父様の虜。
あたくしの血で喉を鳴らす小父様のことを、うっとりとしながら見おろしているばかりだったのでした。

意識が去りかけたあたくしの傍らで、小父様はもういちど、お母様の上へとのしかかってゆかれます。
お母様がなにをされているのか――生娘のあたくしにも、それは容易に察しがついたのでした。

夕べお母様になさったこと、あたくしにはしてくださらないの?

あくる朝、登校途中を待ち伏せしていた小父様に、あたくしはお尋ねしたのですが。

わしがなにを好んでおるのか、ようわかっておるくせに。

とだけ、仰いました。
そう、小父様がもっとも好まれるのは、処女の生き血だったのです。
あたくしはくすぐったくなって、思わずくすりと笑いました。

じゃあ、あたくしの代わりに処女の生き血をもらえる女の子ができたら、犯していただけるのね?
あたくしのお友達のなかで、なるべくかわいい子を、こんどご紹介するわ。

あたくしの問いに、小父様は笑うだけでした。

もしもし?かな子さん?あしたはお時間あるかしら?
うちに遊びにいらしてくださらない?
お見せしたいものがあるの。エエ、貴女だけに・・・

そんなお誘いのお電話を、同級生のかな子さんにしたのは、
その日の夕刻のことでした。
さいしょにお電話口に立たれたかな子さんのお母様、よもや娘を襲う悲運を、お察しになれるはずもございますまい。
そしてご自身の操さえ、やがて汚されていってしまわれるのも――
娘の学友が、そんな悪魔の囁きを口にするなど、よもや思い到りもなさらずに、
電話口の向こうから、行ってらっしゃいよ、というお声がするのを、
あたくしはにんまりと笑い、白い歯をみせながら、聞き入っていたのでした。


追記
ことさら、昭和のお嬢様テイストに仕上げてみました。^^

真夜中の庭先で。

2015年12月04日(Fri) 08:03:20

薄闇に包まれた縁側に、白い素足が映えた。
ピンクのネグリジェを着た少女は、庭先のかすかなもの音に耳を澄ませ、
豊かでつややかな黒髪を揺らして、音のしたほうを振り返る。
さっきまでだれもいなかったはずの庭に、人影がひっそりと佇んでいた。

「あ・・・来てくれたのね?」
少女はひっそりとそう呟くと、素足のまま庭先に降りた。
冷気を含んだ地面が足の裏に染みたが、少女はかまわず歩みを進め、人影との隔たりを詰めていった。
「すまないね」
影の主はそういうと、目を瞑って寄り添う少女の耳朶に、唇を近寄せてゆく。
ひそひそと囁かれる声色に、少女はくすぐったそうに応えると。
「どうぞ」
と、ひと言だけ呟いて、肩までかかる髪の毛をサッと掻きのけた。
男の赤黒い唇が、少女の白いうなじに、ヒルのように這った。

ちゅうっ。
薄闇のなか、生々しく洩れるのは、おぞましい吸血の音――
少女は自分がなにをされているのかをはっきりと自覚しながらも、影に託した身体を離そうとはしない。

ちゅーっ。ちゅーっ。
心地よげな吸血の音が、どこまでもつづいた。
ひとしきり少女の血を吸うと、吸血鬼はか細い身体をいとおしげに抱きしめて、
もと来た縁側へと、少女を促した。
少女は従順にこっくりと頷くと、半開きになった雨戸の向こうへと、足音を消して身をすべり込ませてゆく。
とざされた雨戸のほうへと、男は両手を合わせて伏し拝むしぐさをすると、踵を返して家の敷地を出ようとした。

「あの」
ためらいがちにかけられた声を、予期していたかのように、男は声のほうをふり返る。
声の主は、さっき彼に対して事前行為を施していった少女の母親だった。
昼間のようにブラウスとスカート姿の彼女は、少女とよく似た面差しをしていた。
「うちの子は、あとどれくらい、身体がもつんですか」
女の声が、かすかに震えている。
「安心しなさい。死なすつもりはない。そうするには、あの子の血はとても美味しいからね」
処女の生き血が大好物であることを、少女の母親はよく心得ているらしい。
「あの」
彼女はもういちど、声を励ました。
「もしよろしかったら、私に代わりが務まらないでしょうか?――あの子が不憫で」
「べつだん、気の毒がることはない。あの子はあの子で、愉しんでいる」
男はよどみなくそういったが、ふと女の顔つきに目を留めた。せっぱつまった顔をしていた。
「既婚の女を相手にするとき、わしがなにをするか知っているね?」
「あ・・・はい」
女はうろたえて声を返すと、
「主人は、知らないことにすると申しております」
とだけ、いった。
「心得た」
男はにんまりと笑うと、初めて女のほうへと歩み寄り、
だしぬけに猿臂を伸ばして抱きすくめた。
「あ!」
不用意にあげた声を恥じる女に肉薄すると、もう首すじを咬んでいた。
地味なモスグリーンのカーディガンが、赤黒いシミに濡れた。

狭い縁側のうえ、窮屈そうに腰を振る女を組み敷いて、男は荒い息をたてている。
獣のような無言の呻きは、時折女の切なげな吐息と折り重なって、深い口づけとなっていった。
破けてずり落ちたストッキングが、少女の母親が堕落したことを、如実に物語っている。
「あんた、だんな以外の男は、初めてのようだね」
下品な囁きに、女は無言の頬を染めて、肯定していく。

安心するがいい。
あの子はそれなりに、愉しんでいる。
奥さんもそれなりに、愉しめるようになった。
あんたは見て見ぬふりを続けるがよい。
うわべの安穏を守っておれば、時というものはさりげなく、流れてゆくものなのだから。

庭の茂みから注がれる熱っぽい視線に、男は心のつぶやきを返してゆく。
いちど彼に血を吸われたものだけに伝わる、心のつぶやきで・・・


あとがき
庭先で妻が生き血を吸い取られるシーンを愉しめるようになっているだんな様も、
しっかり血を吸われてしまっているようです。^^

娘の謝恩会

2015年11月10日(Tue) 07:06:53

この学校のPTAに所属すると、お母さん方のファッションセンスが抜群になる。
そんなうわさがほんとうだとわかったのは。
娘の恵里香が、最終学年にあがった年のことだった。
その年、いままでPTA役員をやっていなかった妻に、白羽の矢が立ったのは。
一部の先生方からの、強い推薦があったからだという。
先生方にしてみれば、妻を狙う最後のチャンスだったかも。
そんなふうに思えるのは・・・夫のわたしまでもが、共犯になってしまったからなのだろう。

いっしょに役員に新任したほかのお母さんたち二人といっしょに、妻は体育館に呼び出されて。
6人の先生方のお相手をしたという。
どの先生もが、三人のお母さん方の推薦者だった。
びりびりに破かれた肌色のパンストは、どうしようもなかったけれど。
スカートの裏地を、とりどりの精液にどっぷりと浸していたはずの妻は、
そんな事実をとうとう、その日一日わたしに対して、隠しおおしていた。

担任の先生とは、義理で数回。
その後は相性の良い特定の先生2~3人と、学校に呼び出されるたびに空き教室や体育館で。
ごつごつした教室の床のうえや、あまり寝心地のよくない体育館のマットのうえで。
着衣もろとも精液まみれにされた妻は、スーツを何着も買い替える羽目になった。

覗いてもいいんですよ・・・
先生方の囁きが、甘い毒液のように、わたしの鼓膜を浸したとき。
わたしは妻が新調するスーツ代のために、残業を続けることを決意していた。


お父さんが一番ですよ。
だから離婚もしないし、家庭を壊すこともしないわ。
でも・・・セックスは先生方のほうが、愉しめるの。
しばらくのあいだだけ、目をつぶっていてちょうだい。
妻の身勝手な言いぐさは、彼女なりのフォローだったのかもしれなかった。

もうじき恵里香、卒業ね。
体育の武藤先生がね、恵里香にご執心なの。
卒業するまでに、一度でいいからモノにしたいんですって。
あなた、どう思う?

そんな相談を、妻に持ちかけられたのは。
秋も終わりのころだった。
武藤先生は、妻を気に入ってくれていて。
いちばん交渉が頻繁な先生だった。
鍛えられた厚い胸板と逞しい腕が、たまらないのだと妻はいう。
どちらも、貧相な体格のわたしには、持ち合わせのないものだった。

わたしは憤然と応えた。
そんなの、絶対だめだよね。
・・・せめてきみみたいに、末永く面倒を見てもらうつもりじゃなくっちゃ。
一度でいいからって。モノにして愉しんだら、それきりってことだろう?

じゃあ大丈夫。一度でいいから・・・なんて、遠慮しているだけだから。
妻はイタズラっぽく肩をすくめて、ヘヘッ、と笑った。

卒業式の日。
謝恩会には父親と娘で出席した。
この日とばかりにおめかしをした娘の恵里香は、やはり女の子なのだろう、
日頃のむっつり顔もどこへやら、いつになくウキウキとしていた。

宴たけなわになるまでいると、謝恩会の席は乱れて、乱交パーティーになるという。
特定のお相手のない子たちは、その場で処女を喪うのだと。
だからわたしは、責任をもって、娘の恵里香を自宅までエスコートした。
武藤先生がお祝いをしてくれるから・・・と告げた娘に、真の意味まで心得ている少女たちはいちように、うらやましそうな顔をした。

覗いてもいいんですよ。
鼓膜にしみ込まされた毒液は、この場でも威力を発揮した。
妻がスッと半開きにしたふすまの向こう。
白と濃紺のチェック柄のプリーツスカートのすそから、白い脚を放恣に伸ばして、
娘は仰向けに、組み敷かれていて。
足擦りをしながら、「痛い!」「痛い!」と、ちいさな声で、くり返し叫んでいた。
じたばたとくり返される足擦りのたびに、白のハイソックスがじりじりと、ずり落ちてゆく。
その白無地のハイソックスに浮いた縄模様が、なぜかひどく心に灼きついた。

静かになった娘のうえにおおいかぶさって、武藤先生がなおも欲望を吐き散らしているのを背に、
わたしは娘のお祝いのためのケーキを買いに、玄関を出た。

おめでとう。ケーキ食べようね。
シャワーを浴びた娘は、つややかに濡れた洗い髪に、少女らしく火照った頬。
汚されるまえと変わらない態度で、それでも「お尻ムズムズする」なんて、呟いている。
先生は満足そうに、自分のモノになった母親と娘とを、等分に見比べていた。

今夜は恵里香が、先生のお相手よ。
久しぶりに・・・夫婦で愉しもうか♪
妻の言いぐさにわたしの一物までもが、荒々しい鎌首をもたげ始めている。

老婆のひとりごと。

2015年09月11日(Fri) 03:17:52

昨夜はひさびさに、エエ獲物にありついた。^^
脂ののり切った人妻の熟れた生き血に、娘のほうは生娘ぢゃった。

奥方は、気丈なお方。
わしが娘に手を伸ばしたら、必死に庇いおった。
そのうえで、おびえた娘ごに手本を見せようとして、
すすんでわらわのまえに、肌身をさらされた。
そこまで誘われて、わらわが黙っていられようか?
首っ玉にかじりついて、うなじをガブリと喰ろうてやった。
随喜の悲鳴が、なんともくすぐっとうてのお。

娘ごは、親孝行なお子ぢゃった。
母親が、自分ひとりだけいい思いをしとうて、娘ごを逃がそうとしおったに、
そんな人の気も知らんで、母を見捨てて逃げられないと訴えおった。
ぢゃによって、望みどおりにしてやった。
あの真っ白なハイソックスも、わらわに咬み破らせとうて、わざわざおニューを履いてきたのぢゃろうて。
そうそう。奥方のストッキングも愉しかった。蜘蛛の巣みたいに、チリチリにしてしもうたぞえ。

奥方は、礼儀正しいお方。
あれほどの目に遭(お)うてもなお、こぎれいなお召し物で夜道を出歩いて見えられる。
よそ行きのスーツやワンピース姿をわらわの悪戯にさらして、血のりに濡らしてもらいとうて、ウズウズしておるのぢゃ。
娘ごは、素直なお子ぢゃ。
母ごにせがんで、制服をなん着も買うてもろうて、
白のブラウスも、ハイソックスも、わらわの慰み物にさせてくださる。
そのうえチェック柄のきりっとしたプリーツスカートまで、行きずりの男どもの精液で裏地をべとべとにしたがっていらっしゃる。

人の生き血を吸う老婆

2015年09月11日(Fri) 02:50:46

夜道の街なかは、街灯が明るくても危ない。
街のように、人の生き血を吸う老婆が出没するようなところでは。
その晩餌食になったのは、40代の母親と、10代の娘。

宝井喜和子は、帰り道を急いでいた。
娘の彩菜の通っている学校で親子面談があり、それが意外なくらいに長引いたのだ。
まさか教師たちまでがぐるになって、母子の帰り道を昏(くら)くしたなどとは、その時点での彼女は気づいていない。
なにしろ宝田家は、つい先日夫の仕事の都合で都会から引っ越してきたばかりだったのだから。
夜道に吸血鬼が出没する・・・そんなうわさだけが、喜和子の耳に届けられていた。

ハッとして顔をあげると、痩せこけた着物姿の女が、ひっそりと佇んでいた。
彩菜をかばうように、胡散臭げに通り過ぎようとしたら、呼び止められた。
ククククク・・・ッ。そもじ、だまって素通りするつもりかえ?

よく見ると、ほつれた白髪に、ところどころシミの浮いた、みすぼらしい着物姿。
顔色は悪く、眼窩は落ちくぼんでいて、色あせた薄い唇はしまりなく弛み、ケタケタと人のわるい薄哂いを漏らしている。
どっ・・・どちら様でしょうかッ!?
喜和子はおびえる娘をとっさに身で庇いながら、声だけは気丈に尖らせていた。
どちら様もこちら様も、ねぇもんだ・・・
歯のほとんど抜けているらしい口許は、ひどくだらしなく、呟くようなだみ声は、ひどく聞き取りにくかった。
え・・・?
喜和子が目を細めて老婆の声に耳を傾けようとしたとき――その一瞬だけみせたスキが、命とりだった。

がばっ。
着物の裾を広げて、老婆が襲いかかってきた。吸血蝙蝠が、羽を拡げるようにして。
ああっ、なにをなさいますッ!
喜和子がとがめだてするのも聞かずに、老婆は痩せこけて色あせた唇を、喜和子の首すじに素早くあてがった。
ほとんど抜け落ちているかとみえた歯だったが、犬歯だけは健在だった。
不潔に黄ばんだ歯が、喜和子の白い首すじに突き立った
がぶり!
白のブラウスに赤黒い血がほとび散り、キャアッ!という悲鳴が、喜和子の唇からほとばしった。

老婆は喜和子を羽交い絞めにすると、うなじにかぶりついて、生々しい音をたてながら生き血を啜り取った。
じゅるっ・・・じゅるっ・・・じゅるっ・・・じゅるうっ。
汚らしい音が、きちんと装われたスーツ姿におおいかぶさってゆく。
気位も高そうな都会妻にのしかかり、むぞうさに啜り取ることで、喜和子の血を辱めてゆく。
あ・・・あ。。。ァ・・・っ。
喜和子はクタクタと姿勢を崩し、その場に尻もちをついて板塀でかろうじて背中を支えた。
傍らに立ちすくむ彩菜が、両手で口元を覆っているのを、老婆は見返った。

不吉な予感におびえた声が、老婆を娘からさえぎろうとした。
娘は・・・娘だけは見逃してください・・・
老婆はふたたび喜和子を見返り、ニタニタ哂いながらゆっくりとかぶりを振った。
なんねぇな。

老婆は母親から吸い取った血のりで頬をべっとり濡らしながら、少女のか細い影に迫っていった。
彩菜は中学の制服姿をひるがえそうとしたが、白のハイソックスを履いた両脚は、地面に根づいたように動かなかった。
恐怖と、母親を見捨てて逃げることへの懸念と後ろめたさが、彼女を棒立ちにさせたのだ。
ほほお、逃げんのか?
からかうような口調の老婆に、少女はおずおずと口を開く。
母を見捨てて・・・逃げられないです・・・

ククク。親孝行な娘ごよのぅ。褒めてやるわい。
老婆はニタニタとした哂いを消さずに、少女との距離を詰めてゆく。
親孝行だろうが親不孝だろうが、どうでも良い。
ただ、彩菜がこの場から逃げようとしないという、求める生き血を獲るのに都合のよい態度をとったことが、
老婆をご機嫌にさせた過ぎなかった。
クヒヒヒ。母ごに負けぬよう、たっぷりとめぐんでくだされや。
娘を咬ませまいと焦る母親が、失血のあまり起ちあがることもできずに地団駄踏むのをしり目に、
老婆は娘のおとがいを仰のけた。
白くて細い首すじが、頼りなげに闇に泛ぶ。
ホホホホ・・・
老婆の哂い声が、いちだんと高くなった。
そして笑みを泛べた唇を、まっすぐに少女のうなじに向けて近寄せて、
ツヤツヤとした黒髪を手早く掻き退けると、あっという間に吸いつけていた。
キャーッ!
第二の悲鳴が細く鋭く、夜道に響いた。

くちゃ・・・くちゃ・・・くちゃ・・・っ
少女のうら若い血潮もまた、汚らしくむさぼる音に辱められた。
やめて・・・よして・・・
母親はまな娘の受難の場から目をそらしながら、うわごとのように呟きつづけ、
いやっ・・・いやっ・・・
娘もまた、目を瞑りかすかにかぶりを振りながら、震える声で訴えつづけた。
老婆は彩菜の懇願に耳を貸す気などさらさらない、と言いたげに、処女の生き血を辱める音を、重ねつづけていった。

彩菜が母親がそうしたのと同じように、喜和子とは向かい合わせになって、道の向こう側に尻もちをついた。
よいな?真っ白なお召し物には、真っ赤な血潮がよう似合うでの?
老婆は彩菜にささやきかけ、彩菜はあいまいに頷いている。
よし、よし・・・
あやすように制服姿の肩先を撫でつけると、彩菜の胸元を引き締めていた紺のひもリボンを、サッとほどいた。
少女の胸元からせしめたリボンを着物のかくしにしまい込むと、
老婆はふたたび、少女のうなじに唇を這わせてゆく。
やめて・・・やめて・・・娘を放して。。。
喜和子はまだ、うわごとを呟きつづけていた。

彩菜がガクリと頭を垂れてしまうと。
老婆は耳元に口をあてがうようにして、意識をもうろうとさせた少女に囁きかけた。
白のハイソックス。美味そうぢゃの。咬ませてたもれ。破いてみとうなった。。
彩菜が童女のような素直さで頷くのを目にして、喜和子は目をそむけた。
くひひ・・・クヒヒヒ・・・
自家薬籠中のものになった少女の姿勢をくつろげると、
老婆は化け猫のような息遣いをはずませて、彩菜の足許に唇を近寄せた。
白のハイソックスに包まれたふくらはぎは、年ごろの少女のふっくらと丸みを帯びた脚線を、まぶしくひきたてている。
どうやら、おニューのようぢゃね?
老婆はぐったりとなった少女の顔をもう一度のぞき込むと、「ハウッ!」と声を漏らして食いついた。
くちゅ・・・くちゅ・・・ぐちゅうっ。
血潮を飲まれる音を洩らしながら、白のハイソックスに赤黒いシミが拡がっていった。

眠りこけた娘のうえから顔をあげた老婆の唇に、まな娘の身体から吸い取った唇がてらてらと光るのを、
喜和子は嫌悪と屈辱のまなざしで見返した。
けれども、どうすることもできなかった。
無抵抗の気丈さは、老婆の加虐心をそそりたてただけだった。

聞いておろうの。わしはおなごの履く長靴下が好みでな。
娘ごのハイソックスも、愉しませていただいたというわけぢゃ。
そもじの穿いている肌色の薄々のストッキングも、面白かろう?
チリチリにひん剥いてくれようの。

喜和子は激しくかぶりを振り、手をあげて老婆を制しようとした。
そんな喜和子の狼狽を愉しむように、老婆はニタリニタリと薄哂いを洩らしながら、ハイヒールの脚を抑えつけた。
黒のエナメルのハイヒールの硬質な輝きに、淡い光沢を帯びた肌色のストッキングが、なよなよとたよりなげに映えている。
うひひひひひひひっ。
老婆は卑猥な哂いをこらえ切れずに喜和子の脚にむしゃぶりつくと、赤黒く爛れた唇をヒルのように這わせていった。
ああああああっ!
嫌悪にかき乱された悲鳴を、街灯が無同情に照らした。

くっくっくっ。ケッケッケッ。
老婆はニタニタ哂いを、おさめていない。
意地汚く抱きかかえているのは、少女の脚から抜き取った血のりに濡れたハイソックス。
その母親が着ていたジャケットにブラウス、それにひざ丈のスカートまで、ひん剥いていた。
あの夜道で真っ裸でいたらどうなるか。
居並ぶ家々のあるじたちは皆、きょうの母娘のように、妻や娘、それに息子までも喰われたものたちばかりだった。
彼らはその見返りに、老婆の餌食になって道に身を横たえた女たちを、見境なく犯す権利を与えられていた。

なにも知らない足音が、むこうからこちらへと歩みを進めてくる。
足音の主は、喜和子の夫、彩菜の父親。背広を着ての勤め帰りだった。
老婆は人が変わったように愛想のよい哂いを泛べて、すれ違おうとする男の足音を止めた。
おや、おや、ご主人様、遅いお帰りで・・・お仕事、ご苦労様ですねえ。
そうしてわざとのように、痩せこけた頬をべっとりと濡らしている彼の妻や娘の血を着物のたもとで拭い取り、
ついでにわざとのように、両腕に抱えた女たちの衣類を取り落とした。
おや、おや、いかんの、せっかくの手土産。
持ち主の血に染まった白のボウタイブラウスが、くしゃくしゃにまくられた海老茶のスカートが。
学校の制服の一部だったひもネクタイが、しつような咬み痕をいくつもつけられた白のハイソックスが。
いぶかし気に地面に視線を落とした男は、せわしなく拾われてゆく衣類に見覚えがあるのに気がつくと、
顔色をかえてまっしぐらに、老婆がたどってきた道を駆け出して行った。

ホッホッホ。遅い遅い。遅すぎるでのお。でもだんな様も、たんまりお愉しみなされや。
女房や娘が喰われるところなぞ、そうそう目にすることはできぬでのお。

息せき切って走り抜けた終着点。
街灯の下、仰向けに転がされたふたりの女のうえに、いくつもの人影がのしかかり、息を弾ませていた。
妻はすっかり娼婦になり果てて、夫以外の男と悦楽の吐息を洩らしつづけていたし。
娘はさっき流したのとは別の意味の血潮を太ももにあやしながら、初体験の昂ぶりにわれを忘れかけている。
夫は立ちすくみ、茫然とし、初めて自覚する妖しい歓びに胸を染めてゆく――
そして、妻と娘とがヒロインを演ずるレイプシーンを、その場で尻もちをついたまま愉しみ始めていった。


あとがき
うーん。。。
老婆は、いつも唐突に現れます。^^

信じてる。信じてるから・・・

2014年12月18日(Thu) 18:39:00

「信じてる。信じてるから・・・」
縄村朋美は呪文でも唱えるようにそう呟きつづけながら。
学校帰りの制服姿を、自ら襲わせていった。
白のハイソックスの足許ににじり寄る、黒い影は、少女の足首をつかまえると、
しっかりとした感じのするナイロン生地に包まれたたっぷりとしたふくらはぎに、唇を吸いつけてゆく。
がりっ・・・と。力まかせに噛まれたときは。
さすがに少女も、顔をしかめたけれど。
濃紺のプリーツスカートのうえから、すぼめた膝を抑えながら。
なにかをこらえるように、歯がみをした。

大丈夫。あたし知ってるから。
あなたに襲われて、気絶しちゃったこともなん度もあるのに。
あたしの血を吸い尽さないで、生命を助けてくれたことを。

少女は心のなかで呪文を唱え、
男は吸い出した若い血潮を通して、彼女の心の奥を正確に読み取ってゆく―――

数刻・・・
少女は肩で、息をしていた。
セイセイと小刻みにはずませる肩を、男は恋人のように、じっと抱き支えていた。
このごろ、飲み方が荒っぽい。
それはお互いに、感じ合っていた。
激しく求められることに、少女はもう抵抗を感じていない。
むしろ歓びと誇りさえ、感じているのだった。
男の胸中は、もう少し複雑だった。
自分の身体のなかに、何が起きているのかを。わかっていたから。

吸血鬼ひとりを養うのには、七人の人間が要るという。
血を吸い尽されてしまったとき、相手の吸血鬼から聞かされたことだった。
それを、ひと月のうちに目星をつけなければならないという。
そうでないと、自分を信じてついてくるようになった者から、よけいに奪うことになって。
相手を死なさなければならないはめになりかねないから・・・と。

信じてるわ。
そう囁いてくれる少女の言葉がふと重荷になりかけたとき。
俺が生きるのをやめればいいのか・・・?とさえ、自問しかけていた。

妻は、すでに吸血鬼の所有物になっていた。
邪魔者になった夫は、妻に裏切られるようにして、
人もあろうに妻を寝取った間男に生き血を吸い尽されてしまったのだった。
半吸血鬼と化した妻は、いまは自分の女友だちを呼び寄せて、情夫の渇きを飽かしめている。
けれどもそんな妻も、かつての夫に悪いと思ったのだろうか。
自分の妹夫婦を呼び寄せたときには、夫に機会を与えたのだった。
なにも知らずに招かれた妹と義弟、それにふたりの娘。
酒に酔わされた義弟は、邪悪な牙に真っ先にかかって、スポーツで鍛えた生き血をむさぼられて。
酔い酔いになった夫にすすめられるがままに、その妻も真っ赤なワンピースに、己の血潮を浸していった。
怯えきったふたりの娘たちは、まだ幼かったけれど。
思った以上に従順に、伯父の牙が自分たちの血をあやしていくのを、拒み切れずになっていった。

あとふたり。
前妻の心づくしを味わい切ったあと。
男は再び、街にさ迷い出ていた。
学校帰りで遅くなった少女が、自分の目の前を横切ったのは、そんなときだったのだ。


信じてる。信じてるよ―――
少女は死の翳を漂わせながら、まだ呪文を呟きつづけている。
このまま死んでしまっても良い。
そうとさえ、思っているかのようだった。
そうはさせまい。俺が死んでしまった方がまし・・・
そう思いながらも、男はせりあがってくる欲情を、どうすることもできないでいる。

少女の唇が、ふと歌うような呟きを口にした。
妹を呼んであげる―――と。

もしもし?まあちゃん?今出てこれる?
え?お夕飯のお手伝い?まだ早いじゃん。ちょっとだけ、出てきてくれる?
姉の誘いに何の疑念も持たないらしい妹娘の、切れ切れな声が、くすぐったく鼓膜を刺す。
吸血鬼が求めてやまないピチピチとした生気が、はしばしに感じられた。
十分とかからなかった。
真っ赤なミニスカートの下、にょっきりと伸びた黒のストッキングの脚が、夕闇の向こうにもの問いたげにたたずむまでに。


きゃーっ!
逃げまどう少女が行き止まりの路地に追い詰められて、電信柱にくぎ付けになるのに、そう時間はかからなかった。
朋美は崩れそうになった姿勢を、腕と背中で支えながら、うっとりとした目線をおくって。
妹の真奈美が首すじを咬まれて、キャッとちいさく叫ぶと、身じろぎもならず抱きすくめられてゆくのを。
面白そうに、見守っていた。
数日前の自分を、見ているようだったから。

美味しいよね?まあちゃんの血、美味しいよね?
ちゅうちゅう、ゴクゴク・・・いい音立てちゃって。
あたしがご馳走しきれない分は、まあちゃんからもらってね・・・
あっ、ひざが折れそう・・・そう、優しく救い上げて頂戴ね。
お気に入りの紺のセーター、血で濡れちゃうけど・・・はじめての記念なら、まあちゃんも赦せるわよね?

どうやら話が通じたらしい・・・
男は妹を抱き支えながら、こちらへと促して。
真奈美はべそを掻きながらも、しっかりとした足取りで、姉のほうへと歩み寄っていった。

ごめんね、まあちゃん。
ウン、だいじょうぶ。
痛かったー?よくガマンしたね。
お姉ちゃん、ハイソックス真っ赤・・・
まあちゃんも、脚を咬んでもらったら?黒のストッキングせっかく履いてきたんだから。
えっ・・・?えっ・・・?
この人、女の子の靴下破くの好きなの。つきあってあげて。
エエ、エエ、そうするわ。本当はあたし、咬ませてあげてきて履いて来たの。
そうこなくっちゃ♪

しつような吸いかたに、辟易しながら。
真奈美は広がる闇空を、見あげていた。
真新しい黒のストッキングに走る裂け目はもう、ひざ小僧までまる見えになるほど、拡がっていたけれど。
もう、いくら破かれちゃっても、かまわない・・・
そんなことをごくふつうに、感じてしまっている。

ねえ。
うん?
母さんのことも、紹介してあげようよ。
そうね、あたしもいま、それ言おうと思ってた。
あたしたちの血が美味しいんなら、母さんの血も美味しいよね。
未亡人なんだし、父さんも赦してくれるよね?
ねえ、どうする?いま行ってみる?まあちゃんもお夕飯のお手伝いあるっていうし。
そのまえに、済ませちゃわない・・・?

口々に言葉を重ね合わせる少女たちの言い草を、くすぐったくうけとめながら。
これで七人目か。
姉妹のうら若い血潮に濡れた唇を、満足げに撫でつけていた。
真奈美が親しげに、笑いかけてくる。
家出てくるときね、母さん紺色のスケスケのパンスト、穿いていたんだよ・・・

母さん、ごめんね。あたしのあとは、お願いね・・・

2014年12月17日(Wed) 07:47:51

16歳の友近優紀は、セーラー服の胸もとの白いリボンを揺らしながら、人っこひとりいなくなった学校の廊下を歩いていた。
古びた木造の廊下が、ひと足歩むごとにギシギシときしむのにも、もう耳が慣れてきた。
ここは片田舎の学校―――”村”と呼ばれる世界は排他的だときいていたけれど。
都会から越してきた優紀のことを、周囲はむしろ歓迎してくれているようだった。
担任は初老の女教師。
それがどういうわけか、きょうにかぎって優紀のことを職員室に呼び出して、長い長いお話を始めたのだった。

うちの学校には「接遇」と呼ばれる授業があること。
そこでは女の子が昔ながらに女らしく振舞うことが義務づけられること。

そんなとりとめのないことを、しっかりとした口調で、けれどもくりごとのようにとりとめもなく、彼女は訥々と語っていて・・・そのうちに、校内の誰もが下校してしまっていた。

いけない、塾に遅れちゃう。

優紀が教室のドアを開いてなかに入ろうとした時―――
白のハイソックスの足許を、ハッとすくませていた。
見馴れない男がうっそりとうずくまるようにして、優紀の席に腰かけていた。
四十代くらいの、顔色のさえない中年男だった。

悪いね。きょうからきみの血を吸わせてもらうことになったんだ。

この村には吸血鬼が棲んでいるというから、気をつけなさいね。
そんなばかなと聞き流していた両親の言い草が、ありありと記憶に蘇る。
優紀の頭から、血の気が引いていた・・・・・・

相手がこんなおっさんでは、不服なのかな・・・?

男の呟きが、自分の首すじに迫ってくるのを感じながら。
優紀は金縛りにあったように身じろぎひとつしないで、佇みつづけていた。
白三本のラインが走るセーラー服の襟首を、がっしりと掴まれたとき。
担任の女教師の囁きが、耳の奥に蘇る。

あなたの礼儀正しさが、求められるのですよ。

首すじにふきかかる吐息が、ひどく凍えているように、優紀は感じた。
優紀は目を瞑り、うなじをスッと仰のけていた。
首のつけ根に硬い異物が圧しつけられて、グイッと喰い込んできた・・・・・・


いったいどれほどの時間が経っただろう?
数時間ということは、ないはずだ。
表はまだ、明るいのだから。
案外、ほんの数分間のことだったかもしれない。
首すじにちくりと刺し込まれた男の犬歯が、生温かい自分の血をチューっと吸い上げるのを、
恐怖と戸惑いの想いを抱えながら、聞き入っていた。
教室の天井に這う古びたシミを、薄ぼんやりと眺めながら・・・

ふたたび廊下に出たとき、向こうから小さな影がひとつ、こちらに歩み寄ってきた。
担任の女教師だった。
彼女はいつものように、ゆったりとほほ笑んでいた。
男は礼儀正しく、優紀の傍らに立ったまま会釈をした。

どうやらうまくいったようね。
おかげさまで。

そうか、この男とわたしを二人きりをするために、先生はわたしのこと呼び止めたんだ・・・
女教師の謀りごとに、けれども優紀は腹立たしさを感じていない。
担任の先生の視線が、自分の足許に注がれるのが、くすぐったかった。
男に求められるまま、気前よく咬ませてしまったふくらはぎ。
白のハイソックスには、派手な赤い飛沫が、散っていた。

お似合いよ。

ゆったりとほほ笑む先生に、「ええ」とか、「はい」とか、しどろもどろのあいさつになってしまったのだけが、ちょっぴり不覚だった。


ただいま・・・
玄関のまえ、いつものように声をかけようとして。
優紀は自分の声を、引っ込めていた。
彼女は母にドアを開けてもらうことをやめて、鍵を取り出して玄関のドアを開けた。
物音に気がついて優紀の母親が玄関に出てきたときに。
連れの男はもう、敷居をまたいでしまっていた。

おろおろとする母親に、優紀は棒読みのように呟いている。

母さん、ごめんね。
吸血鬼の小父さんなの。
家にあげちゃうと、どうなるか知っているよね?
いつでも好きなときに、うちに出はいりできるんだったよね?
罰として、まずあたしが血をたっぷり吸われるの。
あたしの番が済んだら、あとは母さんお願いね。

戸惑うように娘を見送った母親がしたことは、
招かざる客を力づくで押し返すことでも、
自分が身代わりになるから娘を話してほしいと懇願することでもなくて、

娘の勉強部屋から、「アッ」というちいさな叫びがするのと。
どうやら従順に身を横たえてしまったらしい娘のうえに、チュウチュウとなまなましい吸血の音が覆いかぶさるのと、
男の満足げなうめきと、どうやら夢中になってしまったらしい娘の「もっと・・・もっと・・・」という繰りごととを、
しっかり自分の耳で聞き届けると。

グリーンのタートルネックのセーターを、真っ白なブラウスに。
くたびれた紺のジーンズを、よそ行きの黒のフレアスカートに。
履き古したソックスを、真新しい肌色のストッキングに。

おもてなし服に、着替える行為だった。

勤め帰りの夫を迎えるとき。
妻も娘も、襟首を汚した服を着たままで。
娘は白のハイソックスを真っ赤にして、
妻は肌色のストッキングを、ひざ小僧があらわになるほど咬み破られたままでいて、
精液のしたたり落ちるスカートを揺らしながら、台所に立つことだろう。
すべてを心得た夫は、気づかないふりをして。
なにごともなかったように、夕餉の食卓に着くのだろう。
自分の妻と娘とが、すでに食されてしまったことを、むしろ誇らしく胸に刻みながら。

ちゅぱちゅぱ・・・ぢゅるうっ。

2014年04月14日(Mon) 04:57:57

学校からお家に戻ると。
あたしはママが招(よ)んでいた小父さまに、引き合わされた。
小父さまは学校の制服を着たあたしを引き寄せると、いきなり首すじを咬んで。
ちゅぱちゅぱ・・・ぢゅるうっ。
って。
汚らしい音をたてながら、あたしの血を吸い取った。
ママはびっくりして、うろたえて。
さいごは悔しそうな顔をして。
あたしが身体のあちこちを咬まれながら血を吸い尽くされちゃうのを、
どうすることもできないで、見守っていた。


つぎは、ママの番だった。
小父さまは、薄いピンクのカーディガンを着たママのことをつかまえると。
あたしの血をつけたままの牙をむき出して、ママの首すじを咬んでいた。
ちゅぱちゅぱ・・・ぢゅるうっ。
さっきあたしの血を吸った時と同じくらい、汚らしい音を立てながら。
ママの血を吸い取ったっていった。
ママが悔しそうに歯噛みをしていたのは。
お気に入りのカーディガンに血のりが跳ねたのが悔しかったのと。
血を吸い取られるときの音が、あまりにも汚らしいことに、腹を立てていたんだって。


あたしのときも。

ちゅぱちゅぱ・・・ぢゅるうっ。

ママのときも。

ちゅぱちゅぱ・・・ぢゅるうっ。

吸血鬼に血を吸われるのって、もっとロマンチックだと思っていたあたしたちは。
ヒルみたいにうごめく飢えた唇を、身体のあちこちにお行儀悪く吸いつけられて。
豊かに脈打つ生き血を、一滴余さず吸い取られていった。


あたしは真っ白なハイソックスに、赤黒い血をべっとりと撥ねかしていて。
ママは肌色のストッキングに、ビチッと派手な伝線を、つま先まで走らせていた。
スリップ越しにわき腹を咬まれるときに、ひどく嫌そうな顔をしたのは。
新調したばかりの高いスリップを破かれちゃうのに、腹を立てていたからだったんだって。
そんなふうにしてあたしたちは、
身体をめぐる血潮を一滴余さずむざむざと、
献血する羽目になっていた。


ちゅぱちゅぱ・・・ぢゅるうっ。

ちゅぱちゅぱ・・・ぢゅるうっ。

血を吸い取られるときの、あの汚らしかった音が、ママはよほど悔しかったらしい。
会社から帰って来たパパの首すじに咬みついたときも。
ちゅぱちゅぱ・・・ぢゅるうっ。
あたしたちが吸い取られたときと同じくらい、汚らしい音を立てて。
パパの生き血を、吸い取ってしまっていた。


あれっきり、あの小父さまとは逢っていない。
血のなくなった身体のあたしたちには、もはや用がないのかも。
そう思うのは、ちょっぴり寂しいけれど。

ちゅぱちゅぱ・・・ぢゅるうっ。

あんなふうにして吸い取ったあたしたちの血の味を、まだ憶えてくれているといいなって。
時々そんなことを、ふと思う。


ちゅぱちゅぱ・・・ぢゅるうっ。

お友だちをだまして家に連れて来て。
ママと一緒に生き血を愉しむときも。

ちゅぱちゅぱ・・・ぢゅるうっ。

近所のおばさんを家に招(よ)んで、母娘で生き血を分け取りするときも。
あたしたちはいつも、あの汚らしい音を立てて。
一滴余さず吸い取っちゃうのを、マナーだと思い込んでいる。