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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

ある女装校生の想い出。

2017年08月29日(Tue) 05:05:49

初めて吸血鬼からの誘いを受けたのは、入学してすぐのことだった。
自慢じゃないけど、クラスではいちばん早かったんじゃないかな?
つとめて無表情を取り繕った担任の先生に放課後呼び出されて、
呼び出された空き教室には、先生の代わりに白髪の吸血鬼が待っていた というわけ。
首すじも太ももも、たまらなかったけど。
いちばんこたえたのは、なぜかハイソックスを履いたまま、ふくらはぎを咬まれたときのこと。
それですっかり、はまってしまった。
毎週毎週呼び出しは続いたけれど、
ハイソックスのうえから唇を這わされて、
よだれをジュクジュクとしみ込まされて、
くまなくしつように牙をあてられて、
制服の一部であるハイソックスをみるかげもなく咬み破られてしまうのが、
なぜかむしょうに、小気味よかった。

一学期がおわるまえ、女子の制服を着て登校するようにとせがまれて。
恐る恐る母さんに相談したら、びっくりするほどすんなりと、
「じゃあ、制服屋さんで採寸しないとね」っていわれて。
父さんは黙って遠くから聞いていたみたいだったけど、
明日は女子服で登校というまえの晩、「あしたからセーラー服なんだな」って、
どこか嬉しげに、目を細めていた。

丈の長いスカートを穿いたとき、
さいしょは袴みたいだと思ったけれど。
さばさばとすそを揺らしながら歩みを進めていくうちに、
歩き方がすっかり、女の子みたいになっていて。
通りかかった近所のおばさんに、
「見慣れない子だと思ったら・・・」って、目を丸くされてしまっていた。
恥かしかったけど、ちょっぴり嬉しかった。
なによりも。
周囲の風景にとけ込むことができたのか、道行く通りすがりの人たちは、だれもがぼくに無関心で。
案外抵抗なく、学校にたどり着くことができた。
すでにセーラー服の男の子はなん人かいたから、
ぼくだけがひとり、チラ見をされるわけではなかったけれど。
時折だれかに盗み見られるのは、なんとなくわかっていて、
羨望に満ちたその視線に、ひどくくすぐったい気持ちがした。

あたし、吸血鬼の小父さまの女になるんだ――
そんなことを夢中になって口走っていたころ。
それがひとつの、幸せの頂点だった。
ぼくは女の子として日常を過ごし、
小父さんはあくまでぼくのことを、女の子として扱ってくれた。
卒業を控えたある夜のこと――
小父さまはぼくのことをいつもの空き教室に呼び出して、
セーラー服姿のぼくを床に抑えつけ、
母さんのことをなん度も征服したあのエッチな股間を、
スカートの奥深くまで、埋め込んできた。
ぼくは本物の女の子よりも、生々しい吐息をついて。
どんな女の子よりも素直に、小父さまの熱情に寄り添っていった。

小父さまが街を去ったのは、突然のことだった。
たよりを一通、それも「幸せに暮らせ」とだけ、走り書きされていた。
敵に居所を突き止められて夜逃げをしたのだと、父さんがそっと教えてくれた。
ぼくは合格していた女子大に、正体を隠して予定通り入学して、
四年間一生けんめい勉強をして、教員の資格を取っていた。

数年が経ち、ぼくはふたたび、あの学校に通っている。そう、女装教師として。
クラスの生徒の半分は、ぼくのことを本物の女教師だと思っている。
じきにうわさで、すべてがばれてしまうのだけれど。
あと一週間くらいは、だいじょうぶだろう。
小父さまと過ごしたあの空き教室には、どうしても足が向かなかったけれど。
いちど、勇気を奮い起こしてまえの廊下を歩いたとき、
寂しくて、寂しくて、涙がとめどなくあふれてきた。
あれ以来、ぼくの血を吸ったものは、だれもいない――

教師としての日常は、そんなにわるいものではなかった。
男の子たちは、ぼくの正体を知ってからも、女の先生として慕ってくれて。
なん人かの生徒は、ぼくにラブレターをくれたくらい。
返事はちゃんと書いた。
「好きなひとがいるから、お気持ちには添えないけれど・・・いっしょにがんばろう」
って、すこしは教師らしいことを書いてみたりした。

一学期が終わるころには、ほとんどの生徒が襲われていて、
女史の制服を着用して登校してくる生徒も、だんだんと増えてきた。
夏は好い季節だ。
肌の露出度が上がって、ピチピチとした太ももが初々しく輝く季節。
彼らの太ももの筋肉がまだ柔らかいうちに、
ぼくは生徒を一人でも多く、この世の天国に連れて行ってやろうとする。
きょうもまた、あの思い出の空き教室から、
初めて咬まれる少年のうめき声が洩れてくる。

きっとあの教室のなかには、ぼくも小父さまもいるんだ。
まだ若い肢体を持ったぼくは、戸惑い逃げ惑い、逃げ切れなくなって、
まだ柔らかい皮膚を破られて、若い生き血を啜られる。
小父さまは余裕で獲物をからかいながら、
「きみの血は美味しいね」って褒めることも忘れずに、
夢中になって来るとひたすら、その子の生き血を舐め尽してしまうことに熱中して、
襲われる子も、そのうちだんだんと夢中になって来て、
女の子みたいな切ない吐息を洩らしながら、相手の意のままへと、堕ちてゆく。
そんなくり返しを見守るのが、とても楽しい。
この学園は、地上の楽園。
生徒もその母親さえも吸血鬼の毒牙にかかってゆくというのに、
そのなかに気の毒な被害者なんて、ひとりもいない。
息子や妻までも寝取られてしまうお父さんさえも、
時々参観と称して、少女になった息子や、自分を裏切りつづける妻の痴態を愉しみに訪れる。

嵐のような宴が過ぎた後、
ぼくはひとりモップを出してきて、床清掃をしていった。
飛び散った若い血を、むぞうさに拭い落として。
床のうえで行われた、淫らな戯れの記憶を消し去ってゆく。
きょうの、きのうの、もっと前の。
そして、ぼく自身の記憶にさかのぼる過去のものさえも――

ふと傍らに、人の気配を感じた。
ぎょっとして立ちすくんで、薄闇を通して気配の正体を見通そうとした。
気配は生温かく、どこか柔らかなものを帯びていた。
はっとした。
懐かしい気配だった。
初めてのセーラー服にドキドキしながら登校してきたときに、
さいしょの授業さえ受けさせてもらえなくて、強引に連れ込まれてしまったこの部屋で。
初めてのキスを奪われたっけ。
薄闇の向こうでほくそ笑むのは、そんな密か事の記憶を共有する唯一のひと。
「おかえりなさい」
そういうぼくに、
「スーツが似合うようになったんだな」
あのくぐもった、もの欲しげな声色に。
ぼくはウットリとして、肯きかえしてしまっている。


あとがき
わ~、一気呵成に描いてしまった。ものの30分くらいで。
どれほどの内容か自分でもよくわからないけど、
久しぶりでサラサラとよどみなく描くことができたことに満足。
(^^)

教程

2017年08月28日(Mon) 07:02:15

春。
ブレザーに半ズボン、リブ編みのハイソックスという紺一色の制服に身を包んだ少年たちが、
ピチピチとした生気を帯びた太ももを輝かせて、学園内を闊歩する。
その身をめぐる若い血液を、学園に出没する吸血鬼の餌食にされるのだと、薄々自覚しながら。
吸血鬼を受け容れている当校では、
生徒とその家族は、献血奉仕が入学の条件になっている。
親たちは、生徒本人と自身を含む家族全員が吸血の対象となる同意書にサインをして、
その代わりに入学金の免除を得る。
与えられるのは、最高の教育。
多くの生徒たちが名門校に進学し、社会の明日を担う。
当校のモットーは関係者限りの極秘事項だから、そうしたことが可能なのだ。

入学式を済ませると。
彼らはひとり、またひとりと教職員に呼び出され、
あてがわれた空き教室のなか、淫靡な吸血の初体験を強いられてゆく。
首すじを咬まれ、太ももを咬まれ、ハイソックスを履いたままふくらはぎまで咬まれ、
身体じゅうの生き血を舐め尽されてゆく。
どこの部位を咬まれても、そうした行為に性的な意味が隠されていると。
疼くような微痛とともに、教え込まれる。
特にハイソックスを咬み破られる行為には、なぜか反応する生徒が多いという。
通学用のハイソックスを1ダースほども破かれたときには、
吸血行為に伴うマゾヒスティックな歓びに、だれもが目ざめてしまっている。

一学期。
1学期の終わりまでには、家庭訪問がひととおり完了する。
訪問を受けた母親は、担任の教師にもろもろの事情を口で説明し、
教師に同行した吸血鬼は、その母親を組み敷いて血を吸い取ることで、その心を読み取ってゆく。
建前の部分と、本音の部分と。
教師と吸血鬼とはその両方を情報交換し、生徒の指導に役立てようとする。
女教師の場合、吸血鬼と直接まぐわうことで。
男教師の場合、吸血鬼にその妻を差し出すことで。
両者は濃密な関係の共犯者になっている。

1クラスにひとり割り振られた吸血鬼は、生徒全員の血を吸って心を支配するので、
家庭訪問を受けるときの生徒は、自らすすんで母親の不倫の手引きをするという。
そして、夫婦の寝室で犯される母親を覗き見て、寝取られる歓びに目ざめてゆくという。

夏服はブレザーの代わりに紺のベストを着用する。
それまでのリブ編みのハイソックスの代わりにストッキング地の透けるタイプのハイソックスを脚に通す生徒が増えてくる。
母親を咬まれた生徒たちである。
女を欲しがる吸血鬼のための装いなのだ。
日中は女性を襲えない彼らのため、自らが女性になって生き血を吸わせる。
ストッキング地のハイソックスは、その第一歩である。


夏休み。
生徒たちは、とある山村に合宿に行く。
そこは、学園のオーナーの出身地。
早くから吸血鬼を受け容れていて、
人妻たちは全員、その愛人となっているし、
娘たちはだれもが、嫁入り前に処女を捧げるといわれている。
その地に寝泊まりすることで。
生徒たちはその身をめぐる若い血潮を、おおぜいの吸血鬼のために提供する。
母親たちも同伴するが、なかには両親がそろって同伴する生徒もいるという。
親たちは別に宿をあてがわれ、あるいはその地の住民の家に寝泊まりをして、
吸血鬼や村の住人たちの夜這いを受ける。
そんな晩、生徒たちは起き出して、いちぶしじゅうを見届けてゆく。
将来は夫人を伴って、この村をおとずれるため。
いまのうちから、予行演習を重ねるのだ。


秋。
指定の制服店には夏前からこのころにかけて、女子の制服の注文が相次ぐことになる。
当校は男子校であるが、女子生徒の指定制服が存在する。
息子たちが女性になり切って吸血鬼への接遇を果たすため、
親たちは息子を伴って、女子制服のための採寸に足を運ぶのだ。
制服は、ブレザータイプとセーラータイプの双方があって、好みで選ぶことができる。
多くの生徒は両方の制服を用意して、吸血鬼の求めに応じて使い分けているという。
文化祭を控える時分には、男子校でありながら、見かけは男女半々の共学校の外観を呈することになる。

学校に出没する吸血鬼たちは、親たちにこんな申し入れをするという。
「お宅の息子さんを、女として愛したい」
親たちはそんな彼らの願いをかなえ、自宅への夜這いを受け容れていく。
なかには吸血鬼だけではなく、教師でさえもそうするという。
なかには夜這いの先を生徒だけではなくて、その母親にも向けていくものもいるという。

冬。
多くの生徒は、スカートの下に黒のストッキングを着用する。
肌の透ける黒、黒、黒・・・
ひるがえるスカートの下。
ピチピチとした生気に透ける黒い脚たちが居並んで、通学路をたどっていく。
そして、多くの生徒たちは足許の薄絹に裂け目を滲ませて、下校していく。
道すがら浴びる好奇の視線を、むしろ小気味良げに受け止めながら。

「感染源」は、夫か息子  吸血開放家庭の知られざる日常

2017年05月05日(Fri) 11:54:08

市内の名門男子校が吸血鬼受入れ宣言を出してから、約1年が経過しようとしている。
すでに教職員は全員、特定ないし不特定の吸血鬼をその家庭に受け容れており、
同様の傾向は生徒や父兄にも拡がりつつあるようだ。

この学園の実態を密着取材している本誌は先日、生徒の家庭を任意で抽出、意識調査を行った。
その結果、すでに半数程度の家庭が吸血鬼を受け容れており、吸血鬼を受け容れた家庭のほとんどが家族全員で献血行為に応じていることが分かった。
既婚女性が吸血の対象となった場合、相手の吸血鬼と性的関係を迫られるので、男子生徒の母親の約半数は貞操を喪失していることになる。
調査の結果によると、アンケート対象となった300家庭のうち256家庭から回答を得、そのうち123家庭において吸血鬼の侵入が確認された。
うち98家庭はすでに全員が献血に応じており、残り25家庭はすべて、家族の誰かが献血に応じるようになってまだ1か月以内と回答されていたため、早晩この123家庭すべてにおいて、家族全員が献血要員となることがほぼ確実である。
家族の誰かが献血に応じるようになってから、献血者が家族全員に広まるようになるのに必要な期間は、おおむね約2週間から1か月。
最も速いもので「ひと晩」というものもあった。
いずれにしても、家族のうち誰か一人でも血を吸われてしまうと、一家の運命はおおむね一か月以内に大きく変わってしまうようだ。

吸血鬼を受け容れた123家庭のうち、一番早く吸われたのは「長男」と回答する家庭が68家庭。
次男以下を含め、息子が初めての犠牲者と回答する家は合計で88家庭にのぼる。
これは、息子の通う学校が吸血鬼の受け入れ先となっているので、むしろ当然の結果であろう。
その他の回答は、「夫」が27家庭、「妻」が5家庭、「娘」が3家庭と、「夫」の比率が圧倒的に高い。
基本的にひとつの家庭を征服するのは単独の吸血鬼である場合が多く(110家庭)、彼らが吸血の対象として最初から家族全員を想定していることがわかる。

「ある家族を吸血の対象として狙った場合、キーパーソンは多くの場合夫です」
と証言するのは、記者が懇意にしている吸血鬼のAさん(48)。
Aさんは根っからの吸血鬼ではなく、もともとこの街に共住していた一般人で、妻子ともども咬まれた後A氏だけが吸血の習慣を持っている。
「妻や娘を狙う場合、最も手ごわい障害となり得るのが夫です。
 逆に言えば、夫を仲間に引き入れてしまえば、家族全員を征服するのはかなり容易になります」
と、Aさんは説く。
Aさん自身、家族の中で真っ先に襲われた経験を持っている。
当時30代後半だったAさんには、同世代の妻、十代前半の娘がいた。
「人妻熟女とまだ男を識らない少女。吸血鬼にとってはもっともねらい目な家族構成だったんですね」
時には笑いを交えながらたんたんと語るAさんだったが、当時はむろん葛藤もあった。
「家族を守らなければならないという意識が高いのが、夫という立場。
 だから、自身が献血に応じることはあっても、家族の手引きまでするのは、ふつうの神経では無理」だという。
事実、相手の吸血鬼に、妻や娘に逢わせて欲しいと懇願されながら、何回も断っている。

「夫が、吸血鬼に家族を紹介する動機は、大きく二つ。
 ひとつは、献血の頻度が高すぎて身体に変調をきたし、家族に気づかれてしまう場合。
 もうひとつは、献血の際に伴う快感に理性を忘れて、相手の吸血鬼に身も心も信服してしまう場合です」
多くの場合は動機の両方が作用し合って、次のステージに移行するという。
「わたしの場合もそうでした。生き血を吸い取られるのが、どうにも気持ちよくなってしまって・・・
 家族にも同じ経験をさせたくなりましたし、若い女性の血で彼のことも十分満足させてあげたいと真剣に考えたのです」
思い切ってすべてを妻に打ち明けたとき、Aさんの顔色が悪くなったのを心配していた妻は、意外なくらいあっさりと面会を承諾したという。
「妻を犯されてしまうのは、夫としてはもちろん抵抗がありました。
 でもそれ以上に、妻がわたしと同じ境遇を受け容れてくれたという歓びのほうが大きかった」
と、Aさんは証言する。
いまほうぼうで侵蝕されつつある生徒たちの家庭でも、同様の事態が進行しているのであろうか。

「娘の場合は、さらに抵抗がありました。まだ将来のある若い人ですからね。
 でもこちらは家内のほうが乗り気で、さっさと主導権を握ると、娘によく言い含めて、差し出してしまいました」
相手の吸血鬼がもっとも好むのは処女の生き血。
でもすでに結婚している身では、自身でその望みをかなえてあげることはできない。
だから、自分の果たせなかった役割を、娘に期待するのではないか――と、Aさんは考えている。
「同性同士は、けっこう残酷なんですよ」
と、娘の行く末についてAさんはいまでも未練があるらしい。

息子を持たないAさんであるが、「息子が窓口になり得るという見解は、十分理解できる」と断言する。
校内でユニセックス化が進んでいるなか、生徒と男性教諭とが一種の疑似恋愛関係に陥るケースがよくあるという。
「純粋な年代なので、自分の尊敬する男性に人の生き血をあてがうことに最善を尽くそうとするんです。
 それに、母親が犯されているのを見て性に目ざめる子もいます。
 母親や姉妹の手引きをすることで、大人の入り口に一歩踏み込んだと感じるのだと思います」
「こうした男性は、結婚をする際にも、吸血鬼に紹介することを前提に相手を選びます。
 本人だけではなく、魅力的な母親や姉妹、兄嫁のいる女性を探そうとしますし、
 そうした女性を魅き寄せるための努力も怠らない。手ごわい若者になるんですよ」

吸血鬼生活を10年送った人ならではのコメントだろうか。

拡がる女装熱 吸血鬼に門戸を開放した男子校、女子制服を採用

2017年05月05日(Fri) 10:40:13

市内の名門男子校の生徒たちに、女装熱が拡がっている。
同校では昨年10月、吸血鬼受入れを宣言している。
現在ではすべての教諭が家庭内に吸血鬼を受け入れており、同様の傾向は生徒やその家庭にも広がっているという。
先月、有志の生徒による任意のアンケートが実施されたが、その結果、約7割の生徒が献血体験を経験済みだとう結果が出た。
生徒の間で女装熱が高まったのは、生徒の献血体験率が増加の一途をたどり始めてからだといわれている。
校内に出没する吸血鬼は女性の生き血を好むといわれており、一部の生徒が彼らの好みに合わせて女装して吸血に応じるようになったのがきっかけといわれている。

同校の制服は夏冬一貫して半ズボンにハイソックスのスタイルであるが、昨年10月の衣替え以後、女性用のストッキングの着用が解禁となると、
生徒の間でストッキングの着用率が急伸。11月からは、校内の購買部でも生徒向けに黒のストッキングの販売を開始した。
さらに4月からは、男子校としては初めて、女性の制服が正式に採用された。

「僕の相手の吸血鬼はいい齢の小父さんなんですが、女好きなんです。
それで、血を吸われるときくらい女の子になってあげることにしたんです。
はじめは姉のお古の洋服を黙って借りていたんです。
でも、血がついてすぐにばれてしまって・・・親には一応怒られましたけど、
姉が着なくなった服を2、3着誕生祝いにとプレゼントしてくれて、一件落着です。
僕の好きそうな服ばかりだったのに驚きましたが、『あんたのわたしを見る目つきを気にしていればすぐわかる』って言われてしまいました。
家族はごまかせませんね(笑)。
制服が解禁になったので、両親に頼んで買ってもらいました。いまは毎日女子として通学しています」
そう証言するのは、同校高等部二年の竹野六郎くん(仮名)。
「最初は僕がうろたえたり、彼が目を血走らせたりして服を汚してしまいがちでしたが、
いまではお互い慣れてきて、めったに服を汚したりはしません。
姉の服を黙って借りる癖は結局治りませんでしたが、けっきょくそれでよかったみたいです。
その後彼が僕の着てあげている服の持ち主に興味をもっちゃって・・・姉貴まで襲われちゃったんです。
それ以来、姉の服はごく一部の気に入り以外は自由に着させてもらっています」
いまでは首すじから吸われても、セーラー服の襟首にシミひとつ付けないと彼氏の自慢をする竹野君。
セーラー服姿の彼が吸血男の自慢話をしているのを目にすると、ふつうに女子高生が彼氏の自慢をする姿と重なってしまう
場合によっては命にかかわるはずの吸血行為を、奉仕活動として受け取っているという竹野君は、「このまま卒業まで、女子で通します」と、爽やかに笑う。

5月末現在、女子制服の着用率は2~3割程度と言われているが、今後「衣替えを機に一段と伸びそう(学校関係者)」というのが大方の予想である。
GW明けには女装教諭が初めて教壇に立ったこともあり、生徒の女装への意識が一段と高まりを見せそうだ。

祥太の母

2017年04月23日(Sun) 08:12:40

祥太が女子の制服で登校するようになって、さらにひと月が過ぎた。
初めてセーラー服でくぐった教室の玄関の向こうからは、予期した通り「おお~」という声があがったけれど。
冷やかすような声はひとつもなくて、「よく思い切ったね」という無言の称賛さえ伝えてくるものもいた。
男子校なのに、女子の制服も採用したこの学校で。
数はまだ少なかったけれど、自分の内面に目ざめた子たちがクラスで決まってなん人か、
半ズボンばかりだった教室のなかに、スカート姿を交えるようになっている。

ユウヤとの関係は、すでにクラス内で無言の承認を受けていた。
もちろん、育ち盛りで大量の血液を必要とするユウヤは、ほかの生徒を相手にすることも多かったけれど、
祥太は嫉妬しなかったし、それが祥太の身体を気遣うユウヤの形を変えた愛情だということも自覚していた。
そんな祥太をある日の放課後、ユウヤはやはり放課後の教室の片隅で抑えつけていた。
セーラー服の襟首に血が撥ねないようにするのは、相手が取り乱さないという前提あってのこと。
すんなりと伸びた首すじに、ユウヤは深々と牙を食い入れて、
その深さが自分に対する執着の深さだと察した祥太は、本物の女子のような淑やかさで、ユウヤの狂態を受け止めてゆく。

「あのさ、頼みがあるんだけど」
「なあに?」
祥太の問いにユウヤは、直截にこたえた。
「きみのお母さんと、仲良くなりたい」
飛び火するって、ほんとうなんだ――祥太は素直にそう思った。
だれかの血を吸って気に入ると、血を分けた親族のことも気になっていくという、ユウヤから教わった彼らの習性。
そういえば、ユウヤは自分の母親の血を好んで吸うといっていたっけ。
それに、こんなことも言っていた。
襲った女性がセックス経験者の場合、ほぼ例外なく性交渉も遂げてしまうと。
みなまで言わなかったけれど、ユウヤは自分のお母さんまで姦っちゃってるんだ。
そのユウヤが、母さんのことを狙っている――
ふつうなら嫌悪しなければならないユウヤの感情に、祥太はなぜかゾクリと胸を震わせた。
「か・・・考えてみる」
「いい返事を期待しているよ」
「そうだね」
「それとさ」
ユウヤはなおも、油断ならないことを言った。
「きみの母さんには、うちのパパもご執心なんだ」

どうしようか?悩む家路は短くて、けれども祥太の結論も速かった。
本人にそのまま、訊いてしまおう。
そんなふうに思えたのは、彼が母親のサバサバトした性格をよく知っていたから。

「アラ、そんなこと言われたの?」
いちぶしじゅうを告げられた母さんは、大きな瞳を見開いて、さすがに驚いていたけれど。
祥太の話を、意外にまじめに受け取ってくれた。
「父さんに相談しようかな――でも、いいって言うわけ、ないよね?祥太が父さんならどうする?
 男ってこういうとき、どういう行動取るものなのかな・・・」
母さんもさすがに、すぐには決めかねたらしい。ちょっと言葉を途切らすとすぐに、
「ちょっと考えとく」とだけ、いった。
息子のまえでそれ以上の動揺を見せるのは適切じゃないと、きっとそう思ったんだろう。
でも、そこははっきりとした母さんのこと、「返事は必ずするから」と付け加えることも忘れなかった。

「ユウやくんだけなら、遊びに連れてきてもいいよ」
母さんが祥太にそう告げたのは、ある日の登校前の事だった。
「えっ?そうなの?」
出勤前の父さんに声が届かないよう、とっさに声をひそめると。
「父さんのことは気にしないでいいから」とだけ、母さんはいった。
気にしないでいい・・・って、どういうこと?
こんどは祥太が悩む番だった。
父さんは母さんが吸血鬼に咬まれるのを認めてくれた?
それとも、母さんは自分のなかだけで、物事を処理しようとしているの?
考えもまとまらないままに、祥太はその日の放課後、ユウヤを家に誘っていた。

ごくり。
生唾を呑み込みながら、つい覗き込んでしまっている。
祥太の勉強部屋のなか、母さんと2人きりにしてあげたユウヤは、
いつもクラスの子たちにするように、母さんのこぎれいなワンピース姿にも、衝動的に抱きついていった。
首すじを咬まれる時、母さんが声をこらえながら立ちすくむのがみえた。
チューッと音をたてて吸い出される、母さんの血――
忌まわしい光景のはずなのに。スカートのなかで一物を逆立ててしまっているのはなぜ?
ふさん着のデニムのスカートのなか、昂ぶり逆立つものが暴れるのを、祥太は抑えることができなくなっていた。
貧血で堪えられなくなった母さんが畳のうえに突っ伏して、
うつ伏せになった母さんにのしかかったユウヤが、母さんのふくらはぎに咬みついて、
肌色のストッキングをむぞうさに咬み破ってしまったところで、祥太の昂ぶりは頂点に達してしまった。
スカートの裏地に生温かい粘液をほとび散らしてしまいながら。
自分の醜態さえも気にかけないで。
祥太はただただ熱い視線で、吸血鬼のクラスメイトの腕のなかで悶えつづける母さんの横顔を、見つめ続けていた。

女の生き血を欲しがる吸血鬼の親友に、自分の母親を差し出してしまった。
禁断の領域を一歩踏み越えてしまったところに、もはや罪悪感も自己嫌悪も雲散霧消してしまっていた。
新調したばかりの母さんのワンピースを、「祥太のお母さんを初めて汚した記念に」と、戦利品としてせしめていったユウヤ。
さすがに下着は恥ずかしいからと回収した母さんは、ブラやスリップ、ショーツにストッキングを洗濯すると、次の日祥太に持たせていった。
「これ、ユウヤくんに渡してあげて」
汚れものを外に出すのだけは嫌だという主婦らしい感覚を母さんが捨てずにいるのが、むしょうに嬉しかった。
その翌日、ユウヤはもっと刺激的なことを、祥太に囁いていた。
「ちょっと小さかったけど、お母さんのワンピース俺でも着れるんだよね」
祥太の母親に執着していた父親のため、ユウヤは「身代わりになってあげる」といって、祥太の母親の服を身にまとい、父親の相手をしたという。
「母さん、ユウヤのお父さんに、もう間接的に犯されちゃっているんだね」
そういうことになるね・・・ユウヤの宣告に、祥太はくすぐったそうに笑い返した。

いよいよ母さんを、ユウヤの家に連れ出す日。
祥太は唖然として、母さんを見つめていた。
若いころ着ていたという超ミニのワンピース姿もさることながら、
もっとびっくりだったのは、母さんの隣に父さんまで立っていたから。
「いちど、ごあいさつをしなくちゃって、父さんも仰るの。あなた、ちゃんと紹介して頂戴ね」
いつものしつけに厳しい母さんの顔が、そこにあった。

1時間後。
ユウヤの家は、たいへんなことになっていた。
自分の妻が襲われるのを見るに忍びなかったらしい父さんは、さきに私の血を吸って意識をなくさせてほしいと願い、
ユウヤの父さんはまず、祥太の父親を咬んでいた。
けれども祥太の父親の希望は半分しかかなえてもらえなかった。
人妻を犯すシーンを夫に見せつけたがるという、けしからぬ趣味を彼は持っていたから。
倒れた父さんの首すじを、ユウヤの母さんがチロチロと舐めつづけながら、囁きかけていた。
「奥さま、きれいなショーツをお召しになっていらっしゃるのね。お洒落なひとは、そういうところから心がけが違うわ。
 えっ?いつもはそんなことないんですって?だとしたら・・・主人のために特別なのかしら。ありがたいことですわ。
 お肌も白くて綺麗・・・主人が執着するわけだわ。いつもああやって、人妻を狂わせてしまうんですのよ。
 いちど狂っちゃうともう、大変・・・お留守の時はお宅にかけるより、うちに電話するほうが奥さまつかまると思うわ。
 私ひとりで主人の面倒を見れるわけではないですから、むしろ助かるんですけどね」
祥太とユウヤは、そんな親たちのようすをかいま見ながら、ユウヤは祥太のスカートの奥に手を這わせてゆき、
祥太はそんなユウヤの欲望に応えるために、あらわになった素肌を彼の逞しい肢体へとすり寄せていった。

ともだち。

2017年04月22日(Sat) 15:23:35

この学園に潜入して、ひと月ちょっとが経った。
ミサキユウヤは、吸血鬼。
生まれつきではないはずなのだが、吸血鬼になる前のことは、あまりよく憶えてはいない。
記憶というものにあまり重きを置かなくなったのは、血を吸う性のせいだとは、なんとなく感じている。
身近な人間の脚や首すじを咬んで血を吸うなどというおぞましい行為など、いくら克明に憶えていたって仕方ないから。
それでも忘れられないのは、親たちからこの学校に転校になると告げられた時、
「安心をし。こんどの学校、吸血鬼を受け入れる宣言をしているんだって。
 クラスのお友だちの血を、好きなだけ吸えるんだよ」
と言われたこと。
ずっと人目を忍んでしてきた行為を、これからはもうおおっぴらにすることができる。
子どもらしい素直な歓びがある一方で、なにかにつけ疑いをさしはさむことを忘れない本能も、捨て去ることができずにいた。
――まてよ、そんなうまい話あるのか?
というわけで、当分は自分の正体を隠して、目立たない存在として新しいクラスにとけ込むことに腐心した。

転校生が注目を浴びるのは、最初の1~2カ月である。
目新しいうちこそいろんな人に声をかけられるけど、
もともとそんなに取り柄のあるわけではなくスポーツマンでもない彼が、人から忘れられるのは早かった。
意図してそう心がけた結果とはいえ、本人が寂しがるほどに。
――どこに行っても、居場所は教室の隅か日陰の廊下なんだな。
そのほうが、居心地はいいんだけど、と、自らを慰める。

その代わり――放課後の、だれかと2人きりになるほど遅い時間の教室は、彼の支配下に入ることになる。
その日の獲物に選ばれた少年は、なにも知らずに彼といっしょに2人きりになって、
むき出された飢えた牙を目のまえに、どうすることもできなくなって、咬まれていった。
軽度のマインドコントロールを心得ていたユウヤは、標的と決めた男子1人だけが教室に残るよう、周囲を仕向けることができたのだ。

――どうして親は、わざわざ男子校など選んだのだ?
吸い取ったばかりの血で口許をネットリさせながら、ユウヤはほんの少しだけ心で愚痴る。
それはやっぱり、どうせ支配するのなら、可愛い女の子のほうが良いに決まっているではないか。
ああ、そうだった。
ここは、吸血鬼を受け入れてくれるって宣言した学校だったっけ。
用心深くいまだに正体を隠している彼にとって、それはまだあまり実感できるありがた味を伴わないメリットだったけど。

血を吸った同級生の記憶は、その場で消すことにした。
うわさが広まるのを防ぎたかったのだ。
口封じに血を吸い尽してしまうという発想は、彼にも彼の家族にもない。
そこまですることはないじゃないか――そんな発想の持ち主である彼らにとっては、吸血鬼を受けれる街は、別天地のはずだった。
記憶を消された同級生は、翌日ほんのちょっと蒼い顔をして登校してきて、
でも仲間に向かってユウヤの存在に対して警告を発することはなかった。
そしてその日は、貧血気味の「お得意様」を除いた別のだれかと、帰りは2人きりになるよう仕向けていく。

咬まれた痕は咬まれた者にしか見えないから、彼が同級生たちに加えた犯罪の痕は、まだ当面気づかれることはないだろう。
濃紺の半ズボンに同色のハイソックスという、男子としてはマイナーなスタイルの制服も幸いした。
首すじでは目立つので、ハイソックスを引き降ろしたふくらはぎに咬みつくことで、
彼の痕跡はさらにしばらく長く、人目に触れずに済むはずだ。
もっとも――ハイソックスに独特な嗜好を持っていた彼はしばしば、衝動のおもむくままにそのまま咬みついて、
よだれをたっぷりしみ込ませながら痕を残してしまうのだが。

その日はしまった――と思った。
体育大会の翌日の事だった。
クラス一丸でがんばったすがすがしい記憶を振り払うことができなくて、その日はだれにも咬みつくことなく家に帰ったのだ。
貧血気味で迎えたその日、彼はだれかひとりを教室に残すためのマインドコントロールを取ることができなかった。

――母さんに頼んで、血を吸わせてもらおう。
脳裏に拡がりつつある眩暈を抱えながら、ユウヤはひっそりとそう思った。
母さんも吸血の習慣を持っていたが、同時にまだ体内にいくらかの血を残していた。
その点はユウヤも同じだったから、彼らは外部で獲物にありつけなかったときには、
お互いの血を吸い合いうことで当座の飢えをしのいでいたのだ。
この学校に来てから、しばらく母さんの血を飲んでいない。
女の柔肌に牙を突き立てるのは、実の母親が相手でも、ちょっとドキドキする。
ユウヤもまた、本来は青春真っただ中の中学生なのだ。

ふと顔をあげると、教室の入り口から中を覗き込んでくる生徒の姿が目に入った。
同級生の越川翔太だった。
「忘れ物?」
ぞんざいに投げた言葉に、祥太はううん・・・とかぶりを振って応えてきた。
そしてこちらに歩み寄って来ると、信じられない言葉を口にした。

もしかして、喉渇いてるんじゃない?

え・・・?
空とぼけようとして外した視線を、祥太は追いかけるようにまわり込んだ。
「朝からずっと具合悪そうにしてたけど、血が欲しいんだよね?」
祥太の質問は真正面過ぎて、応えを躊躇して黙りこくってしまった。
陰にこもった態度は相手を警戒させるから、よくない。
父から教わったことは、まだまだ付け焼刃に過ぎなかったと、いやというほど自覚する。
「だいじょうぶだから。知ってるだろ?ここは吸血鬼を受け入れているって」

祥太のことは、つい3日ほど前に一度、咬んだはず。
ほかの少年たちと同じように、ちょっと戸惑って、なんなく金縛りにかかって、唯々諾々と首すじを咬まれていったはず。
そのあと靴下を引きずりおろすつもりが、性急な衝動のままに舌を這わせて、ハイソックスをよだれまみれにしてしまったのが、いつもと違うところだった。
「ハイソックス咬み破るのが好きなんだよね?
 きょうはなんとなくきみに咬まれそうな気がしたから、新しいのおろして履いてきたんだ」
スッと差し伸べられた脚は、男子にしてはなだらか過ぎる、すらりとしたシルエット。
ひざ小僧のすぐ下までお行儀よく引き伸ばされた濃紺のハイソックスが、教室の窓から射し込む陽射しを照り返して、
真新しいリブをツヤツヤと輝かせている。
しぜんと口許を近寄せてしまい、気がついたら祥太のハイソックスに、じわじわとよだれをしみ込ませてしまっていた。
祥太はクスクスと笑いながらも、彼の行為を受け容れてくれた。
「なんか、くすぐったいな。あと、なんか、やらしいよね?」
行為の本質が伝わるのだろうか?
ユウヤはもういちど舌を這わせて、ナイロン生地のしなやかな舌触りを愉しむと、おもむろに咬みついていった。
牙の切っ先にまでよだれが伝い落ちるほど、喉の奥がはぜるほど、人の生き血に欲情していた。

あー・・・
祥太のあげるうめき声もかえりみず、ひとしきり血を吸い取ったあと顔をあげると、祥太は額を抑えて机に突っ伏していた。
だいじょうぶか?と声をかけ気づかうつもりが、もうどうしようもない衝動のまま、
座った姿勢を崩しそうになる祥太にのしかかって、教室の床の上に引きずり倒す。
そのまま身体を重ねていって、牙の切っ先で長髪になかば覆われた首すじをさぐっていった。
あ・・・
ユウヤの下で、祥太が再び声をあげた。
祥太はユウヤの邪魔をしないよう彼の二の腕に手を添えながら、いった。
「勃(た)ってるね?」
え・・・
ふとわれにかえると、おそろいの半ズボンのなかで、股間の一物が勃起しているのに気づいた。
そうなんだ。こうしているときにいつも感じるのは、この羞ずかしい劣情なのだ。
でも、待てよ。
身体を重ねた相手の変化を感じ取ったユウヤは、ニッと笑ってこたえていた。
「きみだって、勃ってるじゃないか」

「いいから咬んで」
言われるままに牙を埋めた首すじから、十代の少年の新鮮な血液を、じゅうぶんに摂取していく。
胸の奥の空しいすき間を暖かなものが埋めていくのを感じながら、
一方で股間の昂ぶりが一層熱を帯びるのも、感じないわけにはいかなかった。
2人の少年は、かたや血を吸う行為に、かたや吸われる行為に、しばらくの間熱中し続けていた。

きみ、血を吸った子の記憶を消そうとしたよね?
ぼくもだから、危うく忘れかけそうになったんだ。
でも・・・きみに咬まれるのがなぜか、ひどく愉しく思えて・・・忘れることができなかったんだ。
忘れちゃいけないって、そう思って、きみの行動に注意してたら、いつも違う子を狙って2人きりになろうとしているのに気がついて。
目をつけた子だけじゃなくって、順番に咬んでいるのは、弱らせちゃいけないって思っているんだなって思ったら、なんか怖くなくなっちゃって。
体育大会の帰り、だれにも声をかけないで帰ったから、ちょっと心配であとを追いかけたんだけど、
きみはいい顔をしていてさばさばと帰っていったから、みんなと頑張れていい気分でいるのを壊しちゃいけないと思ってあきらめたんだ。
ぼくで良かったら、時々声かけてね。獲物をつかまえられなかった時なんか特に・・・

血を吸われるのが快感で、記憶を抱え続けた子。
そんな子が、クラスにいたんだな。
ユウヤはいままでにない安ど感を、覚え始めていた。けれどもまだ、1日のブランクは埋め切れていない。
浅ましいと思いながらも、ユウヤはいった。
「もう少し、きみの血を吸ってもいい?」
祥太はくすぐったそうに笑って、いいよ、と、こたえた。
屈託のない、眩しいような笑みだった。
ユウヤは祥太の顔に唇を近づけて――気がついたら唇を重ね合わせていた。


かなりの貧血で緩慢になった足取りは、親に気づかれるほどだった。
「ショウ、疲れてるみたいだよ。早く寝たら」
気づかう母親がかけてきた声さえ、「憑かれている」って聞こえちゃうほどに。
ユウヤの支配を受け入れることにした少年は、思い切って口火を切った。
「うちのクラスに吸血鬼がいるんだ。ボク、今度から彼に血を吸わせてあげることにしたから」
母親は大きく目を見開いて息子を見、そして張りつめた視線をフッと、意図的にゆるめた。
「学校が開放されるって、そういうことなんだね」
あなたはそれでいいの?と問いかける母親に、ウン、と応えたときの顔つきを見て、
母親はちょっとだけ逡巡し、それから仕方ないかな、という笑みを浮かべて、いった。
「自分で決めたんなら、そうすればいいよ」

もうひとつ、お願いがあるんだけど・・・
祥太はちょっとだけおずおずとした声色になって、母親の顔色を窺った。
なにか出費を伴うおねだりをするとき、この子はいつもこうだから。
そう思いながら促す母親に、祥太はいった。
「うちの学校さ、四月から女子の制服も採用したでしょ?ボクこんどから、女子の制服で登校したいんだ」
ユウヤの彼女になってあげたくて・・・
うつむきながら、新たに自覚した欲求を告げると、母親は「わかった」とだけ、いった。
「父さんには私から、話をしておく」

その週の週末、祥太は母親に伴われて、入学の時制服を作ったお店に、採寸に出かけていった。

受け容れた吸血鬼の感化? 女装教諭、教壇に立つ

2017年04月21日(Fri) 07:51:28

吸血鬼受入れ宣言を出した市内の名門男子校で、このほど女装の教諭が登場し話題となっている。
同校の教諭たちのほとんどが吸血鬼を受け入れ、そのほとんどが夫人ともども吸血行為に応じていることは本誌でも折々報じてきたが、こうした傾向が同行の風紀を崩壊させる作用を持つ一方で、「一種不可思議な解放感(同校高等部3年生)」を生み出しているのもまた、確かなようである。
女装して教壇に立つようになった教諭は、3名同時に登場した。
この3名の教諭は、一時過剰な献血行為による死亡が伝えられたもののほどなく蘇生、帰宅のうえ復職を果たしている。
3名はGW明けから女装して教壇に立つことを予告、学校側はこれを受け容れ、校内の集会で生徒全員に告知された。
予告通り3名の男性教諭は爽やかなワンピース姿で登校、生徒の注目を浴びた。
生徒たちの反応はいちように好意的で、「種々の障害を乗り越えて長年の欲求を果たした先生は、尊敬に値する」「とにかく理屈抜きで、カッコイイ。夢を実現する力をもらえた」「生死の境目を乗り越えたかいがありましたね」(いずれも学園の裏掲示板より転記)と、肯定的な書き込みが目立っている。
3名はいずれも、「吸血に応じる時には、いつも女装している」と回答。吸血鬼と女装との関係は十分に明らかにされていないが、女装教師の誕生が吸血鬼の希望によるものとも、3名が自発的に希望し、学校側に吸血鬼の口添えが伝達されたともいわれている。

「このストッキング、妻とおそろいなんですよ」つややかな光沢を帯びたストッキングの足許を自慢げに披露するのは、谷口都教諭。(校内では女性風に美彌子と改名済み)
自身の血を吸った吸血鬼がストッキング・フェチだったと明かす谷口教諭は、「それがわたしにも伝染ったんです」と明かす。
やがて夫人の奈々枝さんを紹介する仲となり、親密さは一層増したという。
「わたし抜きで妻だけがデートに誘われることもありますが、むしろ誇らしい気分」という美彌子さん。「でも、女装しているときだと、女同士のような嫉妬を感じることも」と、複雑な胸中もかいま見られた。
「男性として勤務したときの習慣を徐々に忘れつつある」というのは、永村涼介教諭。教諭の事務机には教科書や参考書、出席簿などとともに、数々の香水や化粧セットが並ぶ。「女子生徒から最新の口紅を教わることもあるんです。エエ、もちろん校内でお化粧は禁止で、みんな校則は厳守しています。みんないい子ですからね」教諭によると、「学校を出たときの生徒たちのお洒落のセンスは、ここ最近ですごく進歩している」という。受け持ちのクラスの生徒の3割は吸血体験を済ませているというが、センスの向上は彼女たちの存在が大きいらしい。
しかし、ここは男子校のはず――と記者が水を向けると、永村教諭は明るく笑った。「ご存知のうえでわざわざ、お尋ねになるんですね?当校は先月から生徒たちの女装が解禁になりました。女子の制服も正式に採用され、生徒のうちまだ約2~3割ですが、女子の制服で登校するようになりました」放課後の女子率は、さらに高いという。
男性時代の記憶が薄れつつ問いいながらも、その一方で無類の愛妻家と呼ばれる谷口教諭。校内では奥さんの元美さんと似通った名前の「里美」で通しているという。
「勤務を終えると家内を伴って、お邸に伺うんです」と明かすのは、二村祥太教諭。まだお嬢さんが小さい家庭内では、夫婦ともどもの献血は子供の眼の刺激が強すぎると、「儀式」の時には必ず相手方を訪問するという。
相手方は、受け持ちのクラスの男子生徒の家庭。早い段階から吸血鬼化した一家で、二村教諭の血を最初に吸ったのも教え子だったという。
「一種の家庭訪問ですかネ」と、二村教諭はイタズラっぽく笑った。
「彼がわたしの血を吸うときには、いつも女装するようにしています。そのせいか、さいしょのうちは同性のクラスメイトだけに性的関心を示す子だったのが、女性にも関心を向けるようになったんです。女性体験も、このほど済ませました。家内が相手をして満足してもらったのです。先にお父さんが、“お手本”を見せつけてくれましたけどね」
「いまではどうやら、お父さんのほうが家内にご執心で。(笑)時々二人きりでデートしているんですよ。私の化粧の仕方や服装のセンスは家内の伝授です。だから息子さんが家内を放さないときには、わたしがお父さんとデートすることもあります。あっ、ここは書かないでね」
教室では語ることのできない、奥さんを交えた“良好”な関係をたんたんと語ってくれた。
奥さんを教え子やその父親に犯されてしまうのに、悔しくはないの?という記者の問いには、笑って答えなかった。しかし、その表情からは両家の間に流れる空気の穏やかさを感じずにはいられなかった。

街の意識調査

2017年04月20日(Thu) 08:03:07

当市に所在する名門男子校が吸血鬼受入れ表明をしてから、約1か月。
このほど市による校内の意識調査が実施された。
その結果、同校に在籍する25人の教諭のうち20%にあたる5人が、すでに献血行為を体験したことが判明した。
また、5人全員が「夫婦双方で献血行為を行っている」と回答。
既婚の女性が吸血の対象となった場合は、例外なく肉体関係を伴うとされていることから、
同校の教諭夫人たちの貞操が危機にさらされている現状が明らかとなった。


当市に所在する名門男子校が吸血鬼受入れ表明を射てから、約3か月。
このほど市による校内の意識調査が実施された。
前回の調査対象となった教諭は25名であったが、今回は22名と3名減少した。
これは、過剰な献血行為によって死亡者が出たためである。
もっとも先週の報道で知られるとおり、3名の教諭の未亡人は記者会見の席上「現在置かれている境遇に満足している」と表明、注目を浴びた。3名の教諭宅には引き続き同じ吸血鬼が出入りしているといわれ、「夕方来て明け方に帰っている」(被害教諭宅の近所に住む男性、40代)」という証言もあることから、遺族との間に円満な交際が成立している様子がうかがわれる。
今回の調査では、22名のうち約半数に当たる10名が献血行為を体験したと回答。うち8名は「日常的に献血している」という。
また、前回の調査同様、献血行為経験者の全員が「夫婦双方が献血行為に応じている」と回答。前回同様の傾向を示している。


一時死亡が伝えられた市内の名門男子校教諭3名が全員蘇生して復職していることが市の調べで明らかになった。
3名の教諭は、同校が吸血鬼受入れ表明を出した直後から献血行為に協力するようになり、1か月後に同校教諭を対象に実施された調査において夫婦ながら献血行為を行っていると回答。その後過剰な献血行為が原因で死亡したと報道された。
その際記者会見に応じた3名の教諭の夫人たちはいずれも「現在置かれた境遇に満足している」と表明、周囲の驚きをかっていた。
教諭夫妻の交際相手である吸血鬼は、教諭の死亡後も教諭宅への訪問を継続しており、その夫人や娘を吸血の対象としているといわれていた。
被害教諭の夫人たちが夫の仇敵であるはずの吸血鬼との交際を継続した結果、夫たちの帰宅が実現したようである。
復職した3名はいずれも30代から40代の男性教諭。記者会見に応じた夫婦三組はいずれも「(自身の・夫の)帰宅が実現してとても嬉しい」と表明。夫人が吸血鬼との交際を受け入れて以後も、夫婦仲が円満であることをうかがわせた。その一方で教諭たちはいずれも「妻と吸血鬼が交際を継続することを希望している」とも表明。
同校では教諭たちが夫婦で献血行為に応じていることから、その夫人たちの貞操の危機が懸念されていたが、ここで吸血鬼と教諭の家族たちが平和裏に共存している姿が明らかとなった。
昨今、同校の教諭に限らず、夫婦ながら献血に応じる家庭が市内で急増している。
しかし、一時的にせよ死亡例も報告されていることから、市民課では吸血鬼と交際する場合には注意するよう市民に対し警戒を促している。


当市に所在する名門男子校が吸血鬼受入れ表明を出してから半年が経過した。
このほど市による校内の意識調査が実施された。
調査対象となったのは、同校に在籍する26名の教諭。
前々回と人数が同数になったのは、一時死亡が伝えられた3名の教諭が蘇生して従来通り勤務を続「けていることが判明したため。
今回の調査では26名全員が「日常的に献血行為に応じている」と回答、調査開始以来初めて献血経験100%を達成した。
これで、同校に勤務する教諭の夫人全員の貞操が吸血鬼によって獲得されたことが判明した。
乗田恭作校長は同日、「教諭たちが本校の方針を理解し身をもって実践したことに深い意義を感じる」と表明した。


当市に所在する名門男子校が吸血鬼受入れ表明を出してから1年半が経過したが、
このほど市による校内の意識調査の結果が公開された。
同校に在籍する27名の教諭を対象としたアンケートによると、全員が夫婦ながら日常的に献血していると回答。
先月の調査では1名が未経験と回答しているが、4月に他県から転入した教諭が1名いることから、同人が新たに献血に応じたためと思われる。

「枠」。

2016年02月19日(Fri) 05:45:13

入学直後に応接をした吸血鬼は、自分の父親よりも年上だった。
濃紺の半ズボンに、同じ色のハイソックス。
そんな制服姿で、旧校舎の空き教室に呼び出しを受けて。
表情を消した担任に引率されるまま、教室の扉はとざされていった。

二人きりになったとき。
ごま塩頭のその男は、顔見知りだった。
目を細めて値踏みをするように、アツヤの仕種や顔つきをひとしきり観察すると。
やおら腕を伸ばしてアツヤの肩をつかみ、引き寄せた。
思ったより逞しい猿臂に、引き込まれるまま抱きすくめられて。
気がついたときにはもう、首すじを咬まれてしまっていた。

ひとしきり血を吸いあげられて。
軽いめまいを振り払おうとしながらも、頭を抱えていると。
教室の床に、腹這いになるように言われて――
こんどは、紺のハイソックスを履いたふくらはぎに、唇を吸いつけられていた。

ひとしきり行為が済むと。
男は血の滴ったままの唇を、アツヤの唇に圧しつけてきた。
自分の血の、錆びたような芳香に、むせ返りながらも。
いつの間にか自分のほうから応じるようになってしまったことに、気がついていた。
男はアツヤの半ズボンのチャックをおろして、
むぞうさに手を、突っ込んできた。
咥えられた分厚い唇の向こう側。
不覚にも吐き散らしてしまった若い粘液を、男はさも旨そうに、啜り取ってゆく。

毎年ね、わしはこの学校で、「枠」を持っているんだよ。
学年が変わるたびに、「枠」に入る子も原則入れ替わるんだ。
サッカー部で、2人。
ラグビー部で、3人。
文化部枠は、あんた1人だ。
ほかにもなん人となく、血をくれる若いひとがいるおかげでね。
わしのようなもんでも、生き永らえさせてもらっとる。

文化部なんかより、運動部の男子のほうが、パワー摂れるでしょ?
自ら発してしまったきわどい質問で、自分が行為にすっかりなじんでしまったことを自覚して。
アツヤは少しだけ、頬を赤らめた。
頬が赤らむ程度には、早くも回復していることが。
目のまえのこの老人が自分たち生徒に求める”若さ”というものなのだと。
眩し気に細めるまなざしを前に、いやでもそう、自覚させられる。
文化部の男子には、知性的な彼女がおるからの。
男の言いぐさに、アツヤは顔をさらに赤くする。
そう。
親の決めた婚約者ができたのは、入学直前の春休みのことだった。
同級生のヤスヨさん。
おさげ髪をきりっと結わえた、評判のしっかり者だった。
わしは二刀流じゃ。
女子のハイソックスも咬むと愉しいのを、よぅ知っておる――
アツヤはちょっとだけ戸惑って、ためらって。
けれどもすぐに、なにかを決心したような、くっきりとした顔つきになった。

もっと飲みたいの?
アツヤのしんけんなまなざしを、男はまともに見返していって、こたえた。
ああ、嬉しいね。

教室の床に、こんどは自分から腹ばいになっていって。
まだ咬まれていないほうのふくらはぎを、そっと差し伸べる。
よだれをたっぷり含んだ男の唇がなすりつけられるのが、
そのよだれを、入学したての真新しいハイソックスにじわじわとしみ込まされてゆくのが、
なぜだかむしょうに、小気味よかった。

ヤスヨさんの履いている紺のハイソックスも、こんなふうにいたぶられちゃうんだね。
僕はそういうことを、前もって経験させられているんだね。

彼女を寝取られる気分は、どうかね・・・?
そうだね。悔しいけど・・・恥ずかしいけど・・・悪くないかもしれない。
相手が小父さんだったら・・・歓迎しちゃっても・・・いいかな・・・?

1週間後、アツヤはヤスヨを同じ教室に連れてきて。
さいしょは嫌々に。やがて積極的に。
ヤスヨもまた、処女の生き血を啜り取られるようになっていた。
セーラー服の襟首を走る、白のラインに紅いしたたりを散らせながら――
ヤスヨが初めての過ちを犯すところは、卒業前までとっておく。
ふたりの卒業祝いに、わしが奪うところを覗かせてやるからな。
身体を結ばれた男ふたりは、そんないけない約束で、指切りを済ませていた。

少年の太ももと、母親のうなじと。

2013年08月03日(Sat) 21:43:36

制服姿で家に戻ってきた息子のタカシが、着替えもせずに紺のハイソックスだけを履き替えるのを、洋子は薄ぼんやりとした目で眺めていた。
夕べ洋子を襲った、嵐のような凌辱。あれはいったい、ほんとうに起きたことだったのか?
もしもそうだとしたら・・・
その嵐をこの家に持ち込んだのは、ほかならぬ彼女の息子だったのだ。

見知らぬ初老の紳士を連れて勉強部屋に籠り切りになった息子の様子が、気になって。
お紅茶を淹れて部屋のドアをノックしたが、返事はなかった。
思わず開けてしまった扉は、まるでパンドラの箱の扉のようだった。
彼女は、視てはならないものを視てしまったのだ。
タカシが血を吸われている・・・?
机に突っ伏した息子から顔をあげた男は、素早い身のこなしで彼女の傍らにまわり、お紅茶のお盆を受け取ると、中身をこぼさないように傍らに置いた。
「ど、どういうことですの・・・?」
怯える目線を捕らえたのは、加虐を好みとするものだけが持つ、兇暴な瞳―――
気がついた時には、両肩をがっちりと掴まれていて。
いやいやをするうなじに、鋭利なものの切っ先がカリリと突き立つのを感じた。
それがすべてだった。
身体の力が抜けるような陶酔は、いましがた息子が味わったのとおなじものなのだろうか?
畳の上に横倒しにされた洋子の目のまえにあるのは、まだ机に突っ伏したままの姿勢でいるタカシの足許―――制服の濃紺のハイソックスは半ばずり落ちて、ふくらはぎのいちばん肉づきの豊かな部位には、くっきりと浮いたふたつの痕。
今しがた自分が首すじにつけられてしまったものと、おなじ痕だった・・・

ちゅうちゅう・・・
くいっ。くいっ。
ぐびり。ごくりん。

露骨なもの音とともに、意識が遠のいてゆく。
わたしたちの血を、どれだけ吸い取るつもりなの?
どうやら、死なせるつもりはないのだけが、意識の奥まで伝わってきた。
吸血鬼は、血を吸いながら自分の意思を伝えるのか・・・
洋子はただただもうろうとなって、相手の求めるところの己の血潮を、ひたすら吸い取られてゆくしかなかった。畳のうえに、抗う力の抜けた手足をだらりとさせた姿勢のまま、ただただ無抵抗に・・・
それをいいことに、普段穿きのスカートのすそをそろそろとたくし上げられてゆくのを、もうどうすることもできなかった。
気絶したふりをしている息子が、突っ伏した腕のすき間から、チラチラ覗き見しているような気がしたのは、ほんとうにただの錯覚だったのだろうか?
あなた、あなた、ごめんなさいっ!
吶喊の瞬間には、思わず夫の名前を、口走っていた。
歯を食いしばってかぶりを振って、辱めに耐える人妻を演じたのは、つかの間のこと。
ストッキングを降ろされた彼女は、太ももを撫でる外気を空々しく感じながら、ウンウンとうめき声を洩らして、男に降伏を告げていた。
そのときの疼きが、まだ股間に滲んでいる・・・



夕風がひっそりと、老いた頬を撫でていた。
待ち合わせた公園の一隅にしつらえられたベンチに、彼はひっそりと腰を下ろしていた。
ここからなら、公園の入り口から誰が入ってきても、俯瞰できる場所。
男は赤らんだおとがいをあげ、入り口からまっすぐにこちらに向かってくる人影を捕らえていた。
濃紺のブレザーに、白のワイシャツ。半ズボンもハイソックスも、濃紺だった。
まだ少年というべき年恰好の彼は、丘のうえのベンチに求める人をみとめると無邪気に白い歯をみせて、足取りを一層軽くした。

「小父さん、待った?」
速足になって丘を昇りつめたタカシは、軽く息をはずませていた。
その生気が―――渇いてささくれ立った本能を、心地よく逆なでする。
伸ばされた猿臂に応じるように、少年は小父さんのすぐ隣に腰かけた。
「ほら、新しいやつに履き替えて来てやったよ。きょう、ママがたくさん買い置きしてくれたんだ」
少年は、ずり落ちかけたハイソックスをむぞうさに、ひざ小僧のあたりまで引っ張り上げた。
ハイソックスのゴムがピチッとかすかな音を立てて皮膚を打つ。
「ふふふ・・・」
少年はくすぐったそうに、含み笑いをする。
「よかったね。ママを仲間に引き入れといて。きょうもボクが小父さんと待ち合わせているって知りながら、行ってらっしゃい、って、送り出してくれたんだよ。まるで登校するときみたいにね」
自分が仕組んだ冒険が収めた成功に、彼は鼻高々のようだった。
いったいどこまで、昨日の仕儀を心得ているのだろう?
老人はちょっぴり訝りながらも、傍らの骨細な身体をグイと引き寄せた。
「あっ、もうっ!意地汚いんだからっ」
口では憎まれ口をたたきながらも、少年は小父さんにしんそこ参っているらしい。
首すじに突き立ててきた牙のまえに、すなおに素肌をさらすと、グイッと食い込んでくる太い牙に、「あーっ」と声を洩らしながらも、目を細めて耐えている。

「ひ、貧血ぅ・・・」
頭を抱える少年の様子にはお構いなく、老人は紺のハイソックスの足許にかがみ込んでゆく。
少年も、もはや血を与え惜しむつもりはないらしい。
陽射しを受けてツヤツヤとリブを輝かせた真新しいハイソックスのふくらはぎをすらりと伸ばして、老人の欲求に応えようとしている。
「制服のハイソックス咬み破られちゃうのってさ・・・さいしょは抵抗あったんだよ。なんだか、クラスのみんなを裏切ってるみたいな、後ろめたい気分がしてさ。でもいまは、平気。ボクの仲間は意外に多そうだし、制服汚すのって小父さん好きなんだろ?」
すこしだけ蒼ざめた頬を夕風にさらしながら、少年はうわ言のように呟きつづけた。
じじつ、彼の親友のユウタくんも、タカヤくんも、紺のハイソックスを毎週、自分の仲良しの小父さんに咬み破らせてしまっていた。

「ひとつ、訊いてもいい?」
少年の問いに、老人はかすかに頷いた。
口許に散ったうら若い血潮を、手の甲で拭いながら。
少年は苦笑しながらポケットからハンカチを取り出して、老人の手の甲を拭いた。
「ママの血を欲しがったのは、ママが女だから?やっぱり血を吸う相手って、女のひとのほうがいいのかな」
老人は即座に、一笑に付した。

なんだ、そんなことを気にしていたのか・・・
お前の母ごを襲ったのは、お前の太ももをおおっぴらに咬みたくて仕方が無かったからじゃ。
自分の息子が、太ももに咬まれた痕をつけて帰ってきて、気にしない母親はいないだろうからな。

少年は、老人の応えに満足したようだった。
「じゃあ、もう片方の脚も、咬ませてあげる」
じゅうぶん貧血になった頬をあらわにしながら、少年は老人がまだ潤いきっていないのを知っていた。
すまないね。
老人は少年の心遣いをどこまでわかっているのか、まだずり落ちていないほうのハイソックスのふくらはぎに、もの欲しげな唇をすりつけていった。



ほんとうは、女ひでりだったのだ。
性欲のはけ口になる女が、欲しかった。
たまたま自家薬籠中のものになった少年が、自分の母親を紹介してくれるというその好意に甘えて家に訪ねていったまでだった。
相手はほんとうは、だれでもよかったのだ。

息子のハイソックスを存分に濡らした唇が、その母親のストッキングを、ふしだらにあしらっていた。
女のあしらいは、みごとなものだった。
もちろんそれは、素人女性である専業主婦としての振る舞いだった。
清潔なものを汚すのが、彼の好みだったから。
彼女の示した羞じらいも、ためらいも、うろたえた表情も、見ごたえがするものだった。

「さすがはタカシくんのお母さんだ。佳い血をお持ちになっている」
ぐったりと横たわった母親に対する、吸血鬼らしいそんな賞賛を耳にしたタカシは、嬉しいような、照れくさいような、くすぐったそうな笑いを浮かべていたけれど。
じっさい母子の血の香りは、よく似通っていたのだった。
老人はタカシの目の前で、彼の母親の太ももの奥に、煮えたぎった己の欲情をどくんどくんとたっぷり吐き出した。
そうすることが、きょうの機会をセッティングしてくれたタカシにたいする、なによりの返礼だと思い込んでいるように。
彼女の腰周りに巻きついたスカートのなかに、果たしたこととはいえ。
どろどろとした粘液は、すこしはタカシの目を捕らえたに違いない。
けれどもタカシは、そのあいだずうっと、呆けたような笑みを湛えて、母親の受難をへらへらと笑いながら見過ごしにしたのだった。

女が脚に通していた、なよなよとした薄手のナイロンストッキングは、息子がしばしば破かせてくれているハイソックスのしなやかなナイロン生地と同じくらい、吸血鬼を魅了した。
代わる代わる、可愛がってやるからな。
声にならないそんな呟きが、タカシの母親に伝わったのだろうか?
気のせいか、気を喪ったはずの彼女が、かすかに頷いたような気がした。



長い長い口づけのあと―――
タカシは抑揚のない声色で、呟いた。
「今夜、ママが待ってるよ。パパ、夜遅くに帰って来るんだ」
吸血鬼はニヤニヤとほくそ笑みながら、少年に訊いた。

パパの帰りとかち合ったら、どうするのだ?

「べつにいいんじゃない?パパとも仲良くしてくれるんだったら・・・
 ママと仲良くしているところ、パパにも見せてあげるといいよ」

図星をすべて言い当てられて。
吸血鬼は気を喪った少年の黒髪を、幾度もいとおしげに撫でつづけていた。

妖しい学園 ~涼太の青春~

2011年09月03日(Sat) 06:10:01

学生寮の畳は、折からの陽射しを吸い込んで、ひどく暖かだった。
涼太は半ズボンの脚を思い切り伸ばして、俯せに横たわっている。
隣には同級生の満夫と一年先輩の貴也が同じ姿勢を取って、やはり半ズボンの制服のまま横たわっていた。
陽射しを浴びた紺色のハイソックスの真新しい生地が、ツヤツヤとしたテカりをよぎらせている。
少年たちの足もとには、老いさらばえた女の、飢えた唇。
いやらしく弛んだ口許からは、早くもよだれがしたたり落ちていた。

老女がさいしょに手をかけたのは、一年先輩の貴也の脚だった。
足首を抑えつけられ本能的によじった身体を、うす汚れた着物の袂がなかばを覆い隠す。
紺色のハイソックスのうえからむぞうさにあてがわれた唇が、それは嬉しげになすりつけられてゆく。
ククク・・・
下品な含み笑いに、隣の満夫が、潔癖そうに頬を歪めた。
じぶんの番が廻ってきたときのことを、想像したのだろう。
涼太もわれ知らず、頬の引き攣りを覚えていた。
老女は貴也の足もとをたんねんになぶり抜くと、いやらしいよだれをたっぷり染み込ませたあげくのハイソックスのうえから、剥き出しにした牙を、そのままズブズブと埋め込んでゆく。
一瞬苦痛に歪んだ貴也の目鼻に、つぎの瞬間甘苦しい笑みが浮かんだ。
キュウキュウと生き血を吸い上げる音が、狭い密室に満ちた。

老女の欲情の矛先が涼太を飛び越して隣の満夫に向けられたのを、慣れた少年ならば屈辱と受け取っただろうか?
いやおそらくはきっと、いちばんのお愉しみがさいごにまわされたのだと実感し、ひそかな満足をおぼえたにちがいない。
それくらい老女の唇に秘められた毒は妖しく、少年たちの理性を浸蝕してしまうのだった。
まださほどの経験をつんでいるわけではなかった涼太にすれば、さいごの番にあたったことは厭わしさがしきにたつもはずだった。
けれども、厭わしさといっしょにじわじわと胸の奥底をあぶりたててくるもの狂おしい衝動めいたものに、彼は戸惑いを感じるばかり。

両隣りの少年たちが、静かになると。
いよいよ涼太の番だった。
老女の手がそろそろと伸びてきて、ひざ小僧のあたりを撫でまわす。
干からびて、節くれだった指だった。
それがものほしげに涼太のひざをまさぐり、きちんとひき伸ばされた紺色のハイソックスをずりおろしてゆく。
ほかのふたりの少年は、ハイソックスをなかばずり降ろされていたが、脛の途中までたるまされたまま噛み破られていた。
―――まだ親御さんは、そもじを未体験と思っておるのじゃろう?
顔を覗きこんでくるばかりの老婆の、ぶしつけな問いに涼太がうなずくと・・・
むき出しになったふくらばぎをチクリとした痛みが染み込んできた。
ぬるっ。
なま温かい血潮を抜き取られる感覚に、涼太は肩をすくめてみせた。老女は獲物にした少年が己の術中にまんまと堕ちるようすに、満足そうにほくそ笑む。
う、ふ、ふ、ふ、ふ、ふ、ふ、ふ・・・
少年の微かな呻きと老婆の下品な舌舐めずりとが、互いに呼び合うように、絡みあった。

いっしょに吸血されたふたりの少年と別れ家路をたどりながら、
おぼろげになりかけた記憶を涼太はたどっていった。
肌のきれいな男の子はハイソックスをずり降ろされてなまのふくらばぎを愉しまれるというのは、ほんとうなのだろうか?
家が同じ方向のほかのふたりが、噛みあとをありありとつけられたハイソックスのまま足取りを揃えてゆくのが、ちょっぴり羨ましかった。
噛み破られていない真新しいハイソックスの下。
仲間たちとおなじ深さの噛み痕が、ジンジンと疼きを深めていた。
いけない、いけない。いまからこんなことに目覚めてしまって、どうするというんだ?
涼太の意識には、厳格な母親であるリツエの顔がうかんでいた。

むこうからセーラー服の三人つれが、白いスカーフをたなびかせてくる。
おかしいな?ここはまだ学校の敷地内で、男子校の校内に女子が入り込むのは秋の学園祭だけのはず・・・しかし近づいて彼らの顔をよく見ると、涼太はなぁんだと言ってしまった。
濃紺の襟もとに白のラインが三本鮮やかに走ったセーラー服は、たしかに近在の女学校のものだったが、おそろいのセーラー服の主たちは見慣れた同級生のものだった。
おつとめだよぉ。
三人のなかでいちばん仲の良いシゲルが、それでもすこしは照れくさそうに、こちらにてをふった。
はじめは戸惑ったり吹き出したりした校内女装に、いまはするほうも目にするほうも、すっかりなじんでしまっていた。
うちの斜め向かいに棲んでるはげオヤジ、俺とお袋の血で養っているんだせ。
シゲルはいつだか、吐き捨てるようにそういったものだが、吸血好意が日常茶飯事な地元では、むしろ自慢話の部類に属するのだった。
女の子に化けた同級生たちは、申し合わせたように、いつも紺色のハイソックスで覆っている足もとを、薄々の黒いストッキングに染めている。
オヤジの趣味だよ。なんかやらしいよなぁ。
口ではそんなふうにうそぶきながら、シゲルも満更ではなさそうだ。
むしろ黒のストッキングを特権のように、同級生に見せびらかして通りすぎていく。
女の子のたしなみですぅ。
クラス一のひょうきん者の悟郎が、おどけた声でそういうと、サッと敬礼を投げてきた。
どうやら、装うということは、性差を超えるものらしい。

連れ立って歩み去る黒ストッキングの脚たちを見送って、ちくりと胸を刺す衝動がわきあがった。
母親のリツエが日常、黒ストッキングを嗜んでいることを思いだしたのだ。

いつものようにただいまを言って、いつものようにお小言を頂戴して。
そのあいだずっと、涼太は紺色のハイソックスの裏に隠した老女のよだれのヌラヌラが気になっていたし、母親の足もとを染める黒いストッキングの薄々ぐあいからも視線をはなすことができなかった。
学生寮のあの狭い密室のなか。母親とふたり俯せに脚を並べて。
紺色のハイソックスと黒いストッキングのふくらばぎを老女の飢えた視線にさらしながら、代わる代わる愉しまれてゆく・・・そんないけない想像が、涼太をとらえてはなさなかった。

ユウおじさまには、気をつけてね。あなたの血を狙っているかもしれないから・・・
母親の注意は、上の空だった。
ユウおじさまというのは、父親の弟で、四十を過ぎてまだ独身。
母親は父親に勧められるままに、嫌々ながら身をゆだね、いまでもそぶりだけは嫌々そうに、誘いに応じたり、真っ昼間に家に招いてたりしているのを、涼太ひ気づいていないことになっている。
そのじつ仲の良い叔父さんと結託して、父親の帰宅をそれとなく教えてやったりしているぬだが。
息子を浮気の共犯者にしながら、表向きの顔だけはどこまでも厳格で生一本な母親だった。
もちろん黒いストッキングを一足おねだりするなんて、まずあり得ない想像
だった。

ユウおじさまには気をつけてね。母親がそう口にしながらもひとこと飲み込んだのを、涼太は気づいていない。「あなたにその気があるのなら、母さん気にしないけど」


あとがき
このお話。
じつは4月17日に描いたのです。
出先で思い浮かんで、ケータイ片手にぱちぱち打ち込んで、PCのメールに送り届けたのでした。
その後推敲してからあっぷするつもりだったのが、一日伸ばしにしている間に、このタイミングに。
(^_^;)
かわいそーな作品です。(^^ゞ
読み返してみたらほとんど手直ししないでもよさそうな感じだったので、ちょっとだけ手を加えただけであっぷしました。
さいごのくだり。
余韻を残していますが。
残し過ぎだったかな。叔父さんの登場が、ややとーとつになっていなければいいんですが。

追記
さっきからずっと探してたんですが。(^^ゞ
このお話のインスピレーションのもととなったのは、こちらです。↓
http://manndokusai.blog77.fc2.com/blog-entry-677.html
「着たいものを着るよ」
お話とは多少シチュエーションが違いますが、濃紺のハイソックスを履いてうつ伏せに寝そべっている少年をみて、ひそかに妄想していました。
こちらの管理人さまは吸血フェチではございませんが、寛大にも弊ブログとのリンクをご承諾くださっております。
stibleさま、ちょっぴりご無沙汰になりましたが、ご好意感謝しております。m(__)m
&なにか問題がありましたら、リンクは即はずさせていただきます。

放課後の日常。

2011年05月16日(Mon) 08:23:57

運動部の男の子たちを教室に集めて、
ライン入りのハイソックスを履いたふくらはぎに、噛みついて。
酔い酔いにしちゃったあと、彼女を呼び出してもらって。
黒のストッキングのふくらはぎを、舐めまわす。
リブハイソックスの、ざらっぽい舌触りと。
薄々のストッキングの、なよなよとした舐め心地を。
代わる代わるに、愉しむために。

こたえられない日常。^^

クラスメイトを手伝って。

2010年10月25日(Mon) 16:59:14

カナちゃん~援けてぇ~
通りかかった空き教室のなかから、聞き覚えのある声がする。
香那子はふと、足を止めた。
がらんどうの教室には、場違いなソファが一対。
そのうちの片方に、クラスメイトのなみえが、半ば身を淪(しず)めかけていた。

ソファの背中が邪魔をして、よく見えなかったが、
まわりこんでみるとなみえは、ふたりの男の相手をしている。
ふたりとも、ふつうの人間ではない。吸血鬼だった。
ひとりはなみえの首すじに食いついて、セーラー服の襟首に血を滴らせていたし、
もうひとりは黒のストッキングを履いた足首を、べろで舐りまわしている。
どちらも彼女たちの親の年配の、白髪交じりの男どもだった。
あたし一人じゃ、身が持たないよ~。
なみえの言い草も、もっともだった。

ん。
香那子は軽い頷きをかえして、三つ編みを背中におしやると、
なみえのいるソファとは向かい合わせの、空いているソファに腰かけた。
どうぞ。
さりげないひと声に、なみえの足許をいじくりまわしていたほうが応じて、
すかさず香那子の足許に、にじり寄ってくる。
どうやら、女学生の履いている黒ストッキングが気になるらしい。
なみえの足許を見やると、ふくらはぎには鮮やかな伝線が走っていて、
彼女が脚をばたつかせるたびに、それはじりじりと広がっていった。

どうぞ。
相手の嗜好を知り尽くしているように。
香那子はそっと、黒のストッキングの脚を差し伸べた。
男は「わるいね」とひと言洩らしたようだったが、
会釈もそこそこに彼女の足許に、ナマナマしいべろを這わせてきた。
薄いナイロンの生地を通して、男のなまの唇と、生ぬるい唾液とが、少女の素肌を穢しはじめる。
なよなよとした頼りない感触のする通学用のストッキングは、
少女の皮膚を擦りながら、ふくらはぎの周りを、他愛なくねじれていった。

ちゅう、ちゅう、ちゅう・・・
きゅうっ、ごくん。
貪婪な欲求に身をさらして、制服の胸に赤黒いほとびを撥ねかしながら。
ふたりの少女は無表情に、男どもの相手をつづけている。
校内での性行為はさすがに禁じられていたので、
大人しく血を吸わせてさえやれば純潔は守られることになっていた。
ちゃんと彼氏のいる香那子が、ほとんど抵抗もなく男に身をゆだねたのも、そういう決めごとがあるからなのだ。

女学校に出入りするのは、女生徒の身うちが主で、ほかには村の顔役や先生がたなど、顔ぶれはだいたいかぎられていた。
なみえの上にのしかかっているのは、彼女の叔父。
母の弟だという彼は、遠い昔の実姉への憧憬を、母親似の姪に投影させているらしい。
つい最近吸血鬼になったばかりの彼は、身うちの血を飲み耽ることで、本能の渇きをまぎらすのに夢中だった。
相棒の男は、その彼の血を吸って仲間に引き入れた男。
女学生ふたりの足許の装いを蹂躙するという愉しみは、格上のものならではの余裕なのだろう。
血を吸われたほうの男は、酔い酔いにされたあと。
すすんで彼を自宅に引き入れて、妻や娘を嬉々として襲わせてやったという。
濃い関係・・・
抑えつけられたソファのうえ。
香那子の冷めた視線は、空き教室の天井の不規則な木目を、ひたすらたどっている。

ストッキングにぬらぬらとしみ込まされた唾液が、ひどくうっとうしい。
けれども男は少女の思惑などお構いなしに、重たい制服のプリーツスカートをまさぐりあげて、
太ももにまで舌をなすりつけてくる。
エッチはしない。そういう約束でも。
きわどいところまでは、彼らの自由にされるしかないのだ。
しょうがない・・・なぁ。
香那子の冷めた声色は、目のまえで彼女の制服姿に凌辱を加える男だけではなく、
もうひとり、教室の外にいる登場人物にも注がれている。

女の園であるこの校舎に入れる男子は、むろん限られている。
出入りを許された吸血鬼以外には、女生徒の家族か婚約者にかぎられていた。
彼とはつい先月、結納を済ませたばかり。
ごく若くして結婚をするこの村では、学生のうちに結納を交わすことは、決して珍しくない。
結納を交わしたその足で、彼女は未来の花婿に連れられて、村はずれの古びた邸に連れていかれた。
それがいま、相手をしている男の棲み処―――
ほかならぬ彼氏の叔父であった。

やらしい・・・なぁ。
凌辱される制服姿にからみつく、しつような視線。
香那子はいちどはうっとうしげに目をそむけ、
それからおもむろに、そむけた顔の向きを元に戻した。

やっ、やっ、嫌ああああっ!
テルオさんっ、助けてぇ・・・
絹を裂くような悲鳴と、助けを求める悲痛な叫び。
創られたものとわかっていても。
教室の外の人影は、昂りにわが身を揺らしていた。
血を吸うなんて、エッチ。エッチだわっ。
少女の非難はそのまま、べつの言葉になって少年の胸に突き刺さる。
覗くなんて。ほかのひとに襲わせるなんて。あなたっ、恥知らずっ!
まつ毛を震わせて抵抗する少女に失禁した、さいしょの刻の記憶が、にわかに鎌首をもたげる。

はぁ・・・っ
テルオ少年は、みずからの股間を抑えていた。抑えかねていた。
太ももを伝い落ちる粘液が、ヌルヌルとした温みを皮膚にしみ込ませた。
ズボンじゃなくてよかった。
帰り道が、みられたものではなかっただろう。
慣れないスカート姿に、照れを隠しながら。
少年はスカートのすそを揺らしながら、自慰に耽る。
女学校に入る時。
男の子は女子の制服に、着替えさせられる。
校舎のなかを歩くのは、女生徒だけに限られていたから。


あとがき
どうも中途半端なてんかいに。(^^ゞ
さいしょはクラスメイトに吸血鬼の相手を頼まれた香那子が、こともなげに応じていくだけのお話だったのです。
それだけじゃつまらないからってキーを叩いていたら・・・
まぁまぁ。 苦笑
男の子が女装するから、「妖しい学園」に入れておきます。

ストッキング地のハイソックスで、校舎に向かう朝

2009年12月10日(Thu) 07:46:32

ストッキング地のハイソックスを履いて、
初めて校舎に向かった朝。
クラスメイトのユウイチが、めざとく俺の足許に目をつけて。
―――おっ、似合うな。だれの奴隷になったんだよ?
うちの男子の制服は、冬でも半ズボンだったから。
どんな靴下を履いているのか、すぐばれてしまうのだ。
通常は、濃紺の半ズボンに、おなじ色のハイソックス。
太めのリブのやつが、指定になっている。
けれどもだれかの”奴隷”になると。
その証しに、ストッキング地のやつを履いていくのが、ならわしになっていた。

”奴隷”って、何?
この学園には、吸血鬼が棲んでいるのさ。何人も。
彼らは教師の姿をしていたり、先輩だったり、下級生だったりする。
そのなかのだれかに目をつけられて、血を吸われると。
それが”奴隷”になったということ。
あとはそいつの気の向くまま、血をあげなくちゃならない。
けれどもだれも、拒むものがいないのは。
唇を吸いつけられて、きゅううっ・・・っと飲(や)られるそのときが。
夢みたいにキモチイイからなのだった。

場合によっては、女家族を紹介してやることもある。
彼らはどういうわけか、長い靴下が大好きで。
ストッキング地のやつに、履きかえるのも。
脚に吸いつけてくる唇に、すべすべとしたナイロンの触感を愉しませてやって。
ついでにめりめりと、咬み破らせちゃうためなんだ。
ママや姉さんや妹を。
場合によっては彼女さえ、紹介してしまうのは。
彼女たちが履いている婦人もののストッキングを、愉しませてやるためだったりもする。

俺を”奴隷”に堕としたのは。
下級生の男の子。
あぁ、あいつなんだ。
ユウイチがちょっと羨ましそうに目を細めたのは。
自分の”相手”が初老の白髪の教師だったからだろう。
先生、ボクのママにご執心だったからね。
ボクは経由地に、過ぎないんだよ・・・
そうはいいながら、ユウイチのやつ。
夕べはたっぷりと、愉しまれたらしい。
補習だからといって、独り放課後に呼び出されて。
今朝になってもまだ、蒼い顔色をしている。

ほら、おいで。
放課後を、待ちきれなくて。
俺は呼び出されるまま、校舎の裏に身を隠して。
色白のその子は、頬にちょっぴり残忍な笑みを浮かべると。
甘えるように、足許にすり寄ってきて。
ぬるり・・・
這わされた舌が生温かく湿っていて、熱さえ帯びていた。
いいんだぜ、破っても・・・
囁く間もなく、ぶちぶち・・・っと。
薄いナイロンがはじける、かすかな音。
妖しい束縛感が、ふくらはぎの周りからほぐれてゆくのが、
なぜかむしょうに・・・心地よかった。

いつお母さんを、紹介してくれるの?
吸い取った血を口許に光らせたまま、訊いてくる彼に。
そうだなぁ。こんどの父兄会のときがいいかな。って。
母さん、未亡人しているんだ。
こんどは黒のストッキング履いてきてもらうよう、それとなく頼んでみるからね。
俺が頭を撫でてやると。
まだ無傷のもう片方の脚にまで、彼は唇を這わせてくる。

男の子がストッキング地のハイソックスを外の風にさらすのは。
かなり気恥ずかしいことなのに。
周囲の肌寒さに、却って気分を心地よく昂らせて。
俺はきょうも、校舎に向かう。
犠牲者がきっと、増えているはず。
クラスではなん人、ストッキング地のハイソックスを履いて出席してくるやつが増えているだろう?

夜になると。
一部の生徒は、スカートの着用を許される。
家族の血を、学園内の吸血鬼に与えたものだけが許される特権。
俺が夜彼に呼び出されるとき。
姉貴のスカートを履いて出かけるようになったのは。
それから二週間と経たないころだった。
足許がすーすーするな。
俺が居心地悪そうに、太ももをすくめると。
兄さん、こんどからストッキング履くといいよ、って。
彼はオトナのように慣れた手つきで、俺の太ももに掌をすべらせた。

卒業式のころに、もういちど。
うちの学校に、来て御覧。
どの生徒も、例外なく。
ストッキング地のハイソックスを履いているから。
三ヶ月後に控えたその日には。
半ズボンの下に黒のストッキングを履いていくって。
俺は約束させられている。
彼だけではなく、ママや姉さんまで、愉しみにしているんだから。

男子学生のハイソックス

2009年11月01日(Sun) 11:16:58

うちの制服、小学生みたいだよなぁ。
ため息交じりにユウイチがつぶやくと。
連れだって歩いていたサダオも、まったく・・・と言いたげに相棒の足許を見おろした。
白のワイシャツに濃紺のブレザーは、いいとして。
彼らの足許は、濃紺の半ズボンの下、むき出しになっていて。
初冬の肌寒い風から身を守るように。
ひざ下ぴっちりの、半ズボンとおなじ色のハイソックスを。
ひざ小僧が半分隠れるくらいに、引き伸ばして履いている。
羞ずかしくって、街歩けないや。
ひとりごちるユウイチだったが、そういう気遣いはほとんど無用のことだった。
なぜなら広い敷地を誇る学園は、全寮制だったから。
親元に戻るとき、制服の着用は義務づけではない。
それでも。口先では羞ずかしい・・・って、いいながら。
スラックスの下に好んでハイソックスを履いて帰る男の子も、少なくないのだった。

よぉ。
向こうから歩いてきた同級生が、ちょっと声のトーンを落として、さりげなくすれ違ってゆく。
いつになく人目を避ける風だったのが気になって、ふと目を転じた足許は。
ひざより上まで、ぐーんと長い、黒の薄々のストッキングに染められていた。
ふたりの級友は、それを見てもさして驚くこともなく。
暖ったかいらしいぜ?
連れのサダオなどは、むしろ関心ありげな視線を、背後に立ち去る後ろ姿に注いでいた。

息せき切ってこちらに走ってくるのは、ユウイチの弟シュウジだった。
中等部に在籍のシュウジは、おなじ濃紺のブレザー、半ズボンに、濃いグリーンのハイソックスを履いている。
兄貴、ハイソックス交換しない?
ああ、いいけど・・・
理由も告げずに見上げてくる弟に。
理由も質さないで、応じていく兄。
その場で脱いだハイソックスを、むぞうさにぶら下げて。
手渡されたグリーンのやつを、ずるずると行儀悪く、すねの上へと引き伸ばしていく。
折り返さないで履いたら、ちょうどいいくらいかな。
横にひとすじ入った黄色のラインを、級友に見せびらかすように、ユウイチはグリーンのハイソックスの脚を持ち上げてみせた。
兄貴のやつ、女の子の長いやつみたいだ。
濃紺のハイソックスが、上背の伸び切っていないシュウジの太ももまでかかっている。
ははは。ズボンもスカートに、履き換えたら?
笑ってからかう兄に、弟も気まり悪げに笑い返している。

吸血鬼に、噛ませてやるんだ。兄貴の血を吸いたいんだってさ。
ただならぬことを、口にするのだが。
そうかい?俺の友達も、お前の血を欲しがっていたぜ?
代わりに噛ませちまおうかな?
互いに靴下を取り替えあって、互いの悪友に噛ませてしまう。
そんなけしからぬ意図に、ユウイチはふふふ・・・と笑って、
グリーンのハイソックスを見せびらかすように、脚をくねらせてみせた。
履き換えたばかりのグリーンのハイソックスは、どうやら新品らしかった。
あちらも、兄弟同士らしいね。ボクの血を欲しがってるやつと、これから逢うやつと。
澄まして答える弟は、なにもかも知っているらしかった。
ほんとうはボクたちの母さんや、兄さんの彼女がお目当てらしい・・・けどね。
母さんのことは、ボクが紹介するから。兄さんは千恵美さんをちゃんと引きあわせてあげないとね。
冷やかすような囁きを残して、シュウジはじゃね・・・って、軽く手を振って、さっきと同じように駆け出していった。

あちらの兄貴が、うちの弟を。
弟のほうが、俺のことを。
取り換えっこして、襲うんだってさ。
そのうち彼女というか、お嫁さんのことも。
代わりばんこに襲いに来るんだろうな。
人ごとのように愉しげに呟くユウイチに、サダオは歩調を合わせながら。
いつもは齢の順番なんだね?
もっぱら聞き役のサダオにしても、身に覚えのないことではなかった。
ひざ下まできっちりと引き伸ばしたハイソックスの下。
夕べ噛まれた痕が、まだじんじんと、疼いている。
俺も姉貴のスクールストッキング、あいつのために履いてきてやろうかな?
このごろ色気づいてきたらしくって、さっきから女もののストッキングのことばかり、気になるらしい。
こんどお前といっしょに校舎の裏に呼ばれる時は。
黒のストッキング、履いてきてもいいかな?
くすぐったそうに頷き返してくる悪友に、初めて笑みを返しながら。
これから襲われるんだろ?お前の彼女狙っているやつに。がんばれよ。
軽いエールを、振っていた。


あとがき
ときどきむしょうに、描きたくなるんです。
ヘンなプロットだと、わかりきっているのですが。

同級生の家庭問題について

2009年01月26日(Mon) 18:31:00

小父さん、来てる?
夜の公園のなか、ひときわ闇の濃い暗がりで、中腰になって。
タツヤは声をひそめて、問いかけた。
がさ・・・
彼方で、かすかな気配がした。
ああ。やっぱり来ていたんだね。
もう、ふた晩もご無沙汰してたから・・・喉渇いちゃってるよね?
ごめんね。
ほら。小父さんが前に気に入ってた、ねずみ色のハイソックス。
履いてきてあげんたよ。
さぁ、遠慮なく・・・
噛・ん・で。
ベンチに座って、むぞうさに脚を投げだすと。
黒い影はそろそろとにじり寄って、それでもすぐには近づいてこない。
あっ、やだなぁ。この子のことかい?
だいじょうぶ。ボクの親友だから。
吸血鬼を見てみたいっていうから、連れて来てやったんだよ。
ケイタっていうんだ。よろしくね。
タツヤがケイタを促すと、未知の少年は礼儀正しく会釈をしかけてきた。
どうやら、しつけのいきとどいたうちの子のようだった。

男は初めて、手を差し伸べて。
タツヤの足首を、ギュッと握りしめると。
おもむろに、唇を近寄せてきた。
公園の街灯が、かすかに届いていて。
あざやかな太めのリブが、しなやかな筋肉に沿ったカーブを描いているようすを、ツヤツヤと浮かび上がらせている。
くちゅっ。
男の唇が、ハイソックスのゴムのすぐ下のあたり、いちばん肉づきのよいあたりに吸いつくと。
タツヤは身体をヒクッとこわばらせて、黙り込んでしまっていた。
ちゅう~っ。

ずり落ちたグレーのハイソックスは、赤黒い血のりをべっとりと光らせていた。
まだ、吸う・・・?
上目遣いになっていたのは、ベンチからすべり落ちてしまったから。
そのまま組み伏せられていった少年は。
無地のブルーのTシャツを、赤黒い不規則な水玉もようを散らされてゆく。

はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・
さすがに息が、荒くなっている。
やはり三日間もほうっておいては、いけなかったのだ。
ごめんよ。なかなか来れなくて。
タツヤはしんそこすまなさそうに男にわびると、
男はいたわるように少年を抱きかかえて、その場から立ち上がるのに手を貸してやっていた。
沙紀ちゃんは、カゼ引いちゃって。
月曜日に、代わりに母さんがきただろう?
でも、がんばり過ぎちゃったみたい。
ボクもどうしても、抜けられなくって。
ついふた晩も、あいちゃった。
ケイタくんは、都会から越してきたんだけど。ちょっと変わっているんだ。
村のひとでもないのに、吸血鬼に関心があるんだってさ。
どう?ちょっとだけでも・・・吸われてみない?

おずおずとした尻ごみは、すぐに封じられてしまっていた。
ふらつく足取りに似合わず、タツヤは素早くケイタの後ろに回り込んでいて。
軽く両肩に、手を添えただけだったのに。
ケイタは拍子抜けするくらいあっさりと、抵抗を放棄してしまっている。

だいじょうぶかな?
ママにばれちゃうから・・・ハイソックスの上からはかんべんしてよね。
初めての吸血に戸惑いぎみの声に、男は案外と素直に応じて、
半ズボンの太ももの、目だたない内側のほうへと、牙を埋め込んでゆく。
痛っ・・・
かすかに声をあげ、少年が顔をしかめると。
ちゅっ・・・
ひと呼吸おくれて、かすかにはぜる吸血の音が洩れてきた。
いつ聴いても・・・いい音だよね。
同級生が血を吸われる音にうっとり耳を傾ける少年は、すでにすっかり吸血鬼の虜になってしまっている。

いいよ、いいよ・・・って、いいながら。
けっきょく家まで、送ってもらってしまった。
ほとんど足腰立たなかったのは。
きっと・・・失血よりもショックのほうが大きかったのだろう。
無理もないよ。さいしょはだれだって、そうなんだから。
タツヤがわきから、言葉を添えてくれていた。
まだ・・・出会ってひと月にしかならないのに。
いい友だちに、なれそうだ。
そんな予感が、胸を浸した。
なにしろ・・・
血を吸われるのが、愉しい。
そんな秘密を、共有してしまったのだから。

夕暮れ刻の教室のなか。
ふたりきりになって、襲われて。
おおいかぶさってくるあからさまな食欲に、辟易してしまって。
思わず・・・悩乱してしまったのは。
つい、数か月まえのことだった。
いまのこいつが、おんなじ気分になっていたからって。
だれも、笑えやしないよね?
上目遣いでかえり見る小父さんは、ふふふ…と笑み返してくるばかりだった。

初めて訪れたケイタの家は、夕食どきだというのに、真っ暗だった。
きょうはママは、留守なんだ。
こんなに遅くまで、お仕事なのかい?
うぅん。
口ごもる雰囲気が、ちょっと不自然だった。
父さんは今夜は、夜勤だっていっていたよね?
う…ウン。
なま返事をくり返して、口ごもっていたけれど。
ケイタはやっと、口火を切った。
ママは、浮気しに出かけているんだよ。

相手は父親の、同僚だといっていた。
父親も薄々、気づいていながらも。
どうやら黙認しているらしかった。
それは・・・困ったものだね。
吸血鬼の小父さんは、しんそこ困ったように小首をかしげる。
なんとか役に立ってやりたい。
そういう殊勝な気分ももちろん、持ち合わせてはいたのだが。
それ以上に・・・ケイタの母親目あてでここまできたのは、タツヤの目にはみえみえだった。

ねぇ。
ケイタが声を、投げてくる。
まだ、部屋のなかは、真っ暗だった。
するすると、ずり落ちかけたハイソックスを引き延ばす気配がすると。
小父さん、噛んでもいいよ。
畳のうえに、自分からうつ伏せになってゆく。
さっきくらくらしたのは、失血のせいじゃない。
そのまえに、タツヤが襲われているんだし。
吸血されるのは初めてだというケイタには、じゅうぶん手かげんしているはずだった。
まだまだボクの血、吸わせてあげられるよね?
今夜はママも、戻らないし。
かまわないんだよ。好き勝手にやっちゃって。

暗闇のなか。
小父さんの大好きな組んずほぐれつが、始まった。
無言のまま、熱っぽく―――。

はぁ。はぁ。はぁ・・・
灯りのついたリビングは、置時計が真夜中過ぎを告げていた。
そろそろ寝ないと・・・と促す吸血鬼に。
あしたはお休みだから・・・と、あべこべにさえぎって。
つぎはまだ噛んでないほうの太ももだね。
わき腹なんかも、愉しいかな?
こんどは首筋ね。
思い思いに、姿勢を変えて。
失血のほどなど、頭にないかのように。
あちらこちら、食いつかせて。
来ているTシャツも、半ズボンも、ハイソックスにも。
赤黒い血潮のシミを、広げていって。
かえってそれを小気味よさげに、時おり姿見のまえに立っては、薄笑いしながら眺めていた。
ママを、懲らしめてくれる・・・?
都会育ちの少年の誘惑に、男は現金なくらい嬉しげに首を縦に振っている。

あああーっ!
首根っこをつかまえられて、かぶりと牙を突き立てられたら。
どんなに気丈な女でも。
悲鳴をあげてしまうだろう。
着飾った正装のブラウスを、真っ赤に染めながら。
ぽたぽたとしたたる血潮を、点々と床にばら撒きながら。
ケイタの母親は、それでも目の前に迫る災難を振り払おうとして。
細い腕をむなしく、あらぬかたに泳がせている。
男はすがりつくように、女の肩を抱きすくめていって。
うなじを噛み、わき腹を噛み、スカートのうえからお尻まで噛みついていって。
彼女の息子にそうしたように、身体のあちこちに、思い思いに牙をうずめ込んでゆく。

どうかね?お洒落な柄だろう?
ブラウスに散らされたバラ色のほとびにも。
うふふふふっ。今夜は罰として、その破れたストッキングをひと晩じゅう穿いていなさい。
ちりちりに噛み剥がれたねずみ色のストッキングにも。
女は姿見のまえに立って、つま先まで見おろして。
いとも愉しげに、へらへらと笑いこけている。
こんどはあんたの浮気相手の奥さんを、ここに呼び寄せてもらおうか?
なぁに、修羅場になったりはせんはずだ。
わしがたぁんと、手なずけてしまおうほどに。
いまのあんたと、おなじやり口でな・・・

これから夜勤ですか?ご苦労さまです。
いえいえ。今夜は家内を、よろしくです。
訪れたのは、浮気相手。
迎え入れたのは、ケイタの父。
お互いくすぐったそうに、気まり悪そうに顔見つめあって。
それでもひとりの女を共有することに、一種のくすぐったさを実感し始めている。
お宅の奥さまは、今夜のご予定は?
あいつ、血を吸われたくって、うずうずしていやがるんですよ。
さいしょに教え込んでくれたあのお人いがいにも。
大勢、妻に執心の男性がおりましてね。
それは・・・それは。
ときに、ご主人だけが損をしていますね。
息子さんはどなたかに、血を吸われ放題。奥さんは私に犯され放題・・・
ふふふ。
それこそが・・・とても愉しく、そそられるのですよ。
迎え入れたほうの男は、妻の手を取って客人の掌に重ねてやると、
ひっそりと、出勤していった。
ほんとうは今夜は夜勤などないのを。
妻も間男も、息子さえもが心得ていた。


あとがき
引きずり込んでしまった息子さんの家庭問題まで、めでたく解決?
本当かな・・・

向かい合わせの妹

2009年01月26日(Mon) 17:47:24

ひざ下までぴちっと引き伸ばされた靴下は、ストッキングのように薄くって。
さらさらとした触感に、なぜか胸がドキドキとする。
向かい合わせの妹は、学校帰りの制服姿で・・・椅子に縛りつけられていた。
うつむく視線が舐める足許は、清楚に透きとおった黒のストッキング。
彼女のストッキングと、ボクのハイソックスと。
どちらのほうが、薄いのだろう?―――
いまの場合、そんなことはどうでもいいはずなのに。なぜか想いにふけってしまう。
それもそのはず。
ボクはとっくの昔に、たぶらかされてしまっていて。
まだ傷口の乾ききっていない首筋の痕は。
ひっそりとしみ込んでくる疼きを、いまでもじんじんと伝えてくる。

いまから兄さんが、手本を見せるからね。
沙紀ちゃんはじいっとしていれば、それでいいんだからね。
なぜか声だけは、もの慣れた口調を帯びて。
ボクの口許から、よどみなく流れ出てくる。
そっと差し伸べた足許に。
小父さんはぐうっ・・・と、かがみ込んできて。
薄い靴下ごし、あてがわれた唇は。
ぞっとするほど、冷たかった。

ゾクゾクと昂っている、ふくらはぎの筋肉に。
尖った異物を、圧しつけられて。ぐいいっ・・・と、食い入らされて。
薄い靴下は他愛もなく、ぱりぱりとかすかな音をたてて、はじけてゆく。
ボクはもう、薄ぼんやりとなっちゃって。
足許から洩れてくる吸血の音に、聞き惚れている。

お兄様、怖いッ!
口をふさごうとした両手は、自由を喪っていて。
妹は羞じらいのまま、激しくかぶりを振っている。
小父さんは彼女の首筋に、食いつきたがったけれど。
初めからそれは、かわいそうだよ・・・
ボクの言うままに、それはあきらめて。
おもむろにそろそろと、足許ににじり寄って。足首をつかまえて。
黒のストッキングのふくらはぎに、唇をゆっくりと近寄せてゆく。
ちょうど・・・ボクの足許に、そうしたように。

くちゅっ。
よだれのはぜるかすかな音が、ボクをどれだけ昂らせたことだろう。
さいしょはたんに、唇を吸いつけただけだった。
いったん放して。
唾液を光らせた薄手のナイロン生地の表面に、人のわるそうな笑みを浮かべて。
もういちど、唇を吸いつけたとき。
きゃっ。
妹のちいさな叫びが、ボクの胸をずきりと衝いた。
ヒルのように吸いついた唇の下。
薄いストッキングが、ちりちりとはじけていった。

ちゅうちゅう・・・ちゅうちゅう・・・
きゅうきゅう・・・きゅうきゅう・・・
ごくっ、ごくっ・・・ごくり。
ナマナマしい吸血の音は。
まるで甘美な拷問のように、ボクの胸を締めつける。
いちどは引きつらせた頬を、妹はもう弛めきっていて。
黒のストッキングの足許にしつように吸いつけられてくる唇に、わざとふくらはぎをおしあてていって。
女学校の制服の一部を、惜しげもなく。
男の不埒な愉しみに、ゆだねている。

床に落とした視線が、にわかに輝きを帯びていて。
思いがけない囁きが、ボクの胸をもういちど、ずきん!と昂らせる。
―――母さんのストッキングも、あたしのみたいに破ってもらおうよ。
ちょうどそのときだった。
いつの間にか戻ってきた母さんが、開け放ったドアの向こう側、スーツ姿をこわばらせたのは。

あっけない鬼ごっこだった。
勝つに決まっている力比べだった。
あいつはボクたちの目の前で、母さんを床に組み敷いていって。
必死に抗う両手首を、ゆうゆうと抑えつけると。
わざとのように、鎌首を振りかざして、
高い位置から牙をひらめかせて、
うなじのつけ根を、ずぶりと冒した。

びゅうっ。
紅い体液が、勢いよくほとび散る。
ボクたちの足許にまで、かかるほど。
妹とボクとは、互いに顔見合わせて。なぜかほほ笑みあっていて。
ああっ、ああっ、ああっ・・・
悲痛な呻きをあげながら生き血を吸い取られてゆく母さんのことを、チラチラと横目で盗み見る。
おおいかぶさられた上半身は、男の肩越しにさえぎられていて。
ただ、丈の短いタイトスカートから覗く太ももが、じたばたと往生ぎわ悪く、床を蹴りつづけていた。
薄っすらとした肌色のナイロンが、うわぐすりのように。
部屋に灯された薄明かりに、てかてかとした光沢をよぎらせていた。
案外、カッコイイ脚だよね・・・
光沢に縁どりされた、肉づきのよい太ももに。
思わず渇きに似た衝動を覚えたのは。
たぶんボクも・・・血を吸われ過ぎちゃったからだろう。

仲良しの吸血鬼さんなんだ。
薄い靴下が、大好きなんだ。ヘンだよね。
たまたま学校で薄いハイソックスを履いていたら、狙われちゃって。
それから、仲良くなったんだ。
それからはいつも、薄い靴下を履いて。脚から吸わせてあげていたんだけど。
ボクの血だけじゃ、足りなくなっちゃって。
沙紀ちゃんのこと、紹介してあげたんだ。
いつも学校行く時、薄い黒のストッキング履いているからね。
そういえば母さんも、よそ行きのときには肌色のストッキングだったよね?
交替で、吸わせてあげようよ。ね・・・?

ボクのとほうもない言い草に、抗弁するいとまもなく。
小父さんは言ったものだった。
お母さんには、ちょっと変わった趣向があるんだ。
たしか未亡人だと、言っていたよね。
それならどこにも、迷惑のかかる話じゃないよね。
よーく見てなよ。
仲のよい女と男がどんなことをするのか、きみたちはまだ、見たことがないだろう・・・?

その晩母さんは、淑やかに着こなしたスーツ姿を、まる裸にされちゃって。
じゅうたんの上、転げまわるようにして。
女はどういうふうに、男のひとをもてなすのかを。
身をもって、沙紀とボクとに教えてくれた。

男子の園

2009年01月26日(Mon) 06:38:53

~ご注意~
このシリーズは、同性愛ぽい表現があります。
理解できないかたは、閲覧しないことをおすすめします。

教室はいつになく、がやがやとざわついていた。
濃紺のジャケットに、白のワイシャツ。紺一色のネクタイ。
半ズボンの足許は、やはり濃紺のハイソックス。
きりっとした輪郭のふくらはぎが揺らぐように行き交っているようすが、どこかユニセックスな妖しささえ帯びていた。
斜めに照らす陽のなかで、ハイソックスの太めのリブを浮き彫りになっている。
男子生徒ばかりの教室のなか。
それとほぼ同数の未知の訪客たちは、まるで品定めでもするように。
手当たり次第、生徒たちに声をかけ、言葉を交わし、またべつのあいてを求めていく。

タツヤはそのなかでも、ひときわ長身で目だった生徒。
肩にかけられた手に、ふと振り返ると。
じぶんよりもさらに長身の初老の紳士が、にこやかにほほ笑んでいる。
部屋をかえませんか?
男のいうままに、隣の教室に足を向けると。
そこはさっきまでの喧噪がうそのように、ひっそりとした静寂が、カーテンのように降りていた。
もう・・・日が暮れる。
寄宿生ばかりのこの学校で。
それはたいした意味をもっているわけではなかったけれど。
なにかを早く切りあげたい・・・そういう気分になるのは、おなじことだった。

手早く済まそうな・・・男はそんなふうに呟いたような気がする。
肩先で呟いたはずのその唇が、そのままさし寄せられてきて。
タツヤの首筋に、ぬるりと這った。
同性どうしの関係は、男子ばかりのこの学校で、決して珍しいことではない。
―――だいじなお客様なので、そそうのないように。
そう告げる担任の重々しい注文も、どことなくそんなセクシャルな予感を漂わせてはいた。
両肩をしっかりとつかまれたまま、
ぐぐっ・・・
食い入ってきた牙に、ああやっぱり・・・そう思わずにはいられなかった。

吸血されるのは、初めてだった。
かれの学年のなかでは、おくてのほうだった。
周りの生徒の半分ちかくは、すでになんらかの形で、体験を済ませていた。
だから・・・自分の身に起きたことを、わりあい冷静に受け止めることができた。
けれど・・・ぶつけられてくる相手の食欲は、並大抵ではなさそうで。
辟易せざるを得なかった。
くらっ・・・と眩暈が、おおいかぶさってきた。

やめて・・・やめて・・・
うわ言のような囁きを、追いかけるようにして。
尻もちをついた床のうえ。
二個の人影は這いずりまわりながら、悩ましい鬼ごっこをつづけてゆく。
むき出しの太ももの周りをさ迷う牙は。
時おりかするようにあてがわれ、そのたびに生硬な皮膚がなま温かい唾液をよぎらせた。
あっ、ダメだよ。ダメだってば・・・
じわんじわんとおし寄せる眩暈と、闘いながら。
タツヤはけんめいに、かぶりを振った。
来て御覧。
老紳士は青年の肩に身を添わせるようにして、抱きかかえて。
さっきの教室に、戻ってゆく。

陽の落ちたあとの教室は。
二人きりの教室も。
おおぜいの教室も。
いちめんの闇に、包まれている。
どうかね・・・?
したり顔の呟きを、聞くまでもなかった。
だれひとり、ふつうに立っているものはいなかった。
あるものはさっきまでのタツヤとおなじように、組み伏せられて覆いかぶさられていたし、
べつのやつはうつ伏せになったまま、ハイソックスを履いたままのふくらはぎを咬まれているらしい。
たったひとり、黒板に向かい合わせに立っているやつも。
黒板に両手を突いて、両足を突っ張るようにして。
ずり降ろされた半ズボンを踏みつけながら。
不自然な結合に、随喜の呻きを洩らしていた。
さっきまでのざわつきは、熱っぽく沈黙して。
時おり洩れる、ひくく押し殺した悩ましいだけが。
闇にからみくようにして、漂っている。

ふ、ふ、ふ・・・
老紳士はタツヤの肩に手を置いて。
つづきを・・・愉しむとしようか?
背後にしゃがみ込むと、やおら掌を延べてきて。
濃紺のハイソックスのふくらはぎを、たんねんに撫ではじめている。
ストッキング地の薄いナイロン生地ごしに、じわーんと伝わってくる掌の感触に。
股間にあらぬ昂りを覚えた青年は、ちょっと羞じらうようにもじもじとして。
さっきの教室に、戻ろうよ・・・
語尾がちょっぴり、震えている。
応えるようにあてがわれてくる唇は。
しなやかな筋肉におおわれたふくらはぎを、しつようになぞりはじめている。
こんど、家に招んであげようか?
未亡人している母さんと、中学にあがったばかりの妹がいるんだ・・・
闇に響く青年の声は、いっそうの震えを帯びてゆく。

父兄会

2007年09月04日(Tue) 07:37:57

新学期が始まると、なぜか恒例のように開かれる父兄会。
平日に行われるそれに集うのは、いつもお母さんばかり。
もう夏も終わり・・・というころになると。
スカートの下の生足も、いつか薄っすらとしたストッキングにコーティングされはじめていって。
とくに父兄会にやってくるお母さんがたは。
そろいもそろって、真新しいストッキングを脚に通してくる。
まるで子どもに制服規定を守らせるような熱心さで。
色とりどりのストッキングを、競うように装ってくるのだった。

あら、あら。まぁ~っ。
いたるところで、再会のあいさつと、夏休みの話題に花が咲く。
かしましい光景は、隅っこに隠れている影たちを、オーラのように圧倒するほどだったのだが。
一堂に集められた、体育館。
扉の影や、楽屋裏。体育用具置き場の物陰、と。
影どもはさっきから、値踏みをするように、広場のようすをうかがっている。

一年生のお母さんがたは、黒のストッキングが多いようだ。
照りつける舗道のうえでは、まだまだ場違いな色なのに。
きょうにかぎってやたらと目だつのは。
そう、もちろん。暗号だったりする。
ーーー今夜初メテ、主人トハ別ノ人ニ抱カレルンデスノ。
密かな決意表明を、足許の彩りで示す人妻たち。
シックで淫靡。
そんな風情を盗み見ている、上級生のお母さん方は。
やはり場違いに映る濃紺のストッキングの脚を、
夏ものの淡色なワンピースの裾から、誇示するようににょっきりさせている。
ーーーアラ、ワタクシ。ソンナ境地ハトックニ卒業シテオリマスノヨ。
幾度となく、娼婦に堕ちて。
しっかりと、経験を積んでいるのだと。
足許によぎる光沢さえも、これ見よがしだったりする。
今年で卒業・・・という生徒を抱えたお母さん方は。
もっと余裕しゃくしゃくで。
ちょっと見には違和感のない肌色のストッキングだったりするのだが。
どぎつい光沢をさりげなく、シックなスカートの下に輝かせていたりする。
もうこれくらいになると、わざわざ色をかえて主張するまでもなく。
ーーーイツデモOKナンデスヨ。私達・・・
おっとり構えた横顔に、余裕の風情を漂わせている。

三々五々、散ってゆくお母さん方は。
ふたり、三人の組になって。
発展家のお母さんは、たったひとりで。
息子の教室や、目だたない廊下の暗がりに、歩みをすすめていって。
黒や濃紺、肌色のストッキングのふくらはぎを。
闇から覗く飢えた唇に舐めさせはじめてゆく。
時おり示し合わせた生徒たちが。
じぶんの母たちが、いかに女として振舞うかを見届けにくることなども、とうに承知で。
工作室の節くれだった広い机のうえ。
これ見よがしに、放恣に脚を開ききっていたりする。

母さん、後ろ・・・
家にもどった母と子は。
さすがに言葉すくなになりながら。
背中についたかすかな泥や、インクのシミを。
息子にさりげなく指摘されると。
めずらしくあわてたように、身づくろいをはじめたりする。

教室の同窓会

2007年07月09日(Mon) 07:53:25

やあ、しばらく。
何年ぶりかなぁ。
口々に懐かしさをあらわにするのも、無理はない。
卒業して、ちょうど十年。
お互いに世間なみのサラリーマンの顔を見出して。
それでも態度や口ぶりが、もとの悪ガキにもどってしまうのは。
ここがかつての教室だから、なのだろう。
相変わらずここの照明、薄暗いや。
誰かがいった。
真夜中の校舎は、深い闇に包まれていて。
かつて寝食をともにした寄宿舎の灯りだけが、木立ちの合い間にかすんでいる。

申し合わせたように。
現れた三人が三人とも、昔の制服姿。
わたしは夏服のグレーの半ズボン。
白のハイソックスは、わざわざ早めにここに着いたとき、購買で買い求めたものだった。
ふたりは冬用の濃紺の半ズボンの下。
キミオは濃紺の薄手のハイソックス。
セイジは黒のストッキング。
明らかに女もののストッキングは、薄暗い照明を滲ませていて、
なまめかしい光沢を放っている。
オイ、誰のやつだよ?
キミオがからかうようにして、セイジの肩を小突いた。
あれ、お前だって・・・
お洒落な子は、その当時から。
リブタイプの指定のハイソックスの代わりに、ストッキングやストッキング地のナイロンハイソックスで脛を染めていたのだが。
童貞のまま卒業した三人は三人ながら、
ほとんど薄い靴下に脚を通すことがなかった。
例外だったのは。
入学して初めての頃。
じぶんの母親が父兄面談にあらわれた次の日だった。
堕とされた母親が礼装の下から素肌を覗かせるのをかいま見て。
オトナになったような気分になって。
ついふらふらと、脚を通していたのだった。
同室の三人で、一足だけ買った紺のナイロンハイソックスを。
三人で、使い回しして。
面談の日程のさいごに当たったのは、わたし。
ほら、履けよ。一日早いけど。
キミオはイタズラっぽく笑って、ぞんざいにそれを手渡してきたのだった。

濃紺のハイソックスは、家族のだれかを吸血鬼に差し出した証。
黒のストッキングは、いよいよこれから・・・というシグナル。
だれが決めたのかわからないけれど。
履いている靴下の色や長さで、クラスの誰かの事情をあて推量して。
まるで噂好きな女の子みたいに、くすくす笑いあっていたっけ。
どうしたの?
わたしはそのころに戻った笑みで、ふたりに問いただしている。
新妻を・・・ね。
キミオは口ごもって、濃紺に包まれた脚をもじもじすくめ、
秋に結婚するんだけど・・・週末に逢わせちゃうんだ。
セイジも黒ストッキングの太ももを、自分ですべすべと撫でている。
彼女、まだ出来ないの~?
ふたりの目線が、白のハイソックスに注がれる。
大きなお世話・・・といいたいのだが。
母を堕とした吸血鬼は、いまだに母を恋人にしていて。
ボクはまだ、ウキウキとそれを覗き見している日常。
いますこし、童貞を守るがいい。
母の情夫のうそぶくままに。
けれどもそろそろアイツも・・・
ボクの彼女を寝取りたいと思うようになるのだろうか?
来年の同窓会にわたしが履いてくるのは。
黒のストッキング?それとも、濃紺のハイソックス?

制服を取り替えて

2007年05月25日(Fri) 09:40:52

弟は、純白のセーラー服。
姉から借りた制服は、すこし大きかったけれど。
ほのかに姉の香り漂う、かっちりとした着心地のなか。
いつもとちがう自分を意識した。
女の子の服を着てるときはね。女の子になりきるのよ。
おぼつかない手つきで制服を着る彼のことを手伝ってくれた姉さんは、
甘くてひくい声色で、とうてい無理なことを囁きかけてきた。

初めて脚にとおす、黒のストッキング。
脛の白さをなまめかしく滲ませて、遠目にも眩しかった装い。
吸いつくように寄り添ってくる、じわりとした密着感が。
決まり悪げにすくめた脚を、ゆるい束縛で締めつけていた。
噛ませちゃうのよ。あ・な・た。
姉はいつもとちがう色を、甘い声色に混ぜて。
白いラインを三本走らせた襟首のうえから。
しっとりとした重みを、両肩にもたせかけてきた。

そういう姉は、いまはボクの制服に身を包んでいて。
すらりとしたふくらはぎを。引き締まった足首を。
紺色のハイソックスが、キリッと引き立てていた。
男のボクが身に着けるより、姉さんの男装は、ずっと凛々しく映えていた。
あなたのハイソックス、けっこう履き心地いいんだね。
からかうように顔をのぞきこんでくる姉さんから、思わず目をそらせてしまったのは。
姿見に映る自分の女装姿が恥ずかしかったからだろうか。
姉さんの放つ凛々しい色気に、毒気をあてられたからだろうか。
制服を取り替えあって。
ママにナイショで、血を吸われに行く夜。

しゃなり、しゃなり、という表現が。
いかにも、ぴったりくるのだった。
腰周りにまといつくスカートは、ちょっぴりうっとうしくって。
紙のように薄くて頼りない感じのストッキングを、もののはずみで破けやしないかと始終気にしながら。
姉さんと寄り添うようにしてたどる、夜道の記憶。
胸ときめくほどの、昂ぶりは、いつか記憶さえも途切れ途切れにさせて。
影をふたつにしておおいかぶさってくる異形の友は。
ボクと姉さんとを、並べて押し倒し抱きすくめていって。
同時にうなじに唇這わせて。
ちゅうちゅう、ちゅうちゅう、お行儀悪く音をたてながら、
姉弟ながら、生き血を吸い取られてゆく。

セーラー服のなか、ほてる素肌は、女の子のような艶を帯びて。
半ズボンとハイソックスのすき間からむき出す素肌は、男の子のような生硬さを秘めていて。
すがるように吸いつけられてくる唇も。
えぐるように滲まされてくる鋭い牙も。
はぜる唾液の音。
ほとぶ血潮のひびき。
秘められたかすかな音に、淫らなまでの欲情を交えながら。
薄闇のなか、狂い咲きする忘我のもだえ。

ずいぶん、吸われちゃったね。
女学生の姿に戻った姉さんは、けだるそうに長い髪の毛をなでつけて。
ゆったりとした流し目をして、自分の身体から吸い取ったばかりの血をまだあやした男の口許を軽くにらんだ。
男はわざと行儀悪く、舌なめずりを繰り返しながら。
おいしかったよ。ごちそうさま。
唾液のはぜる音に、姉さんも、ボクも、どきりと胸をときめかせる。
また、こんどね。
指きり、げんまん。
そんなときだけは、姉さんは子どものころみたいに。
ニッとえくぼを滲ませて。
こんど襲われる日取りを、指折り数えている。

男の姿に戻ったボクも、さっきまでの余韻がまださめやらない。
ひざ下までぴっちりと引き上げた、通学用のハイソックス。
さっきまで姉さんが脚を通していたぬくもりが、
ボクの脛を、妖しく包んでいるのだから・・・

姉さんを連れてきな。媚薬を飲ませて・・・

2007年05月25日(Fri) 08:48:52

姉さんを・・・連れて来たよ。
少年は息を詰めたまま、黒い影に囁きかけた。
濃紺の半ズボンに、おなじ色のハイソックス。
少しユニセックスな制服のすき間から覗いた太ももは。
ツヤツヤとした輝きを秘めていて。
少女と見まごう色香を漂わせる。
男はフフ・・・とほくそ笑むと。
ではさっそく、紹介してもらおうか?
少年と、彼よりすこし背の高い少女のまえに、ヌッと姿をあらわにした。

ふつうの人。なのね?
少女は小首を傾げて、男をすみずみまで見まわした。
あくまでも姉らしく、弟の悪友を観察するしっかりとした目線。
流れる黒髪の下、襟首に走る三本の白いラインが。
男の目には、なぜか大人びて映った。
  姉、近野紫織。十七歳。清華女学院三年生です。血液型はO型。
  ボクにとっていちばん身近な処女・・・です。
決められたルールどおり、姉を紹介する少年は。
時おり言葉をたどたどしくもつれさせながら。
どうにか課せられたつとめを果たしていた。

なにされるのか、聞いているね?
ええ。
きみにも異存は、ないのだね?
・・・ええ。
少女の応えは、よどみがない。
おどおどしながら姉を窺う弟よりも、よほどしっかりしているようだ。
  薬は、飲ませてきたのだろうな?
ひらめく男の目線に。
  もちろんだよ。
少年は心外そうに、咎めをはね返してきた。
  そうでなければ、こんなこと・・・
それはそうだな。男は心で頷いた。
姉を連れてくるときに、飲ませるように。
少年に渡した薬には、ほどよく理性を喪うほどの媚薬が含まれていた。
いま目のまえで応対している姉娘は、彼女であって彼女ではない。
  紫織。いい名前だ・・・
姉の名前を、呼び捨てにされて。
なぜか少年は、昂ぶったように目をあげた。

ボクだけでなく。
姉さんまでが、血を吸われちゃう。
いけない。やめるんだ・・・
心のなかの叫びが、声にならないのは。
小心ゆえの恐怖心ばかりではなくって。
心のどこかで、そうなってもらいたいという密かな願望が。
かすかにあがる焔となって。
きっと、男はそれを目ざとく、見抜いたのだろう。
半ズボンとハイソックスのすき間から覗く太ももに、
牙をゆるやかに食い込まされるたび。
少年は随喜を秘めて、血潮を吸われていったのだった。

あの。
不覚にもおずおずと、声を洩らしていた。
姉を襲うのは、やめにしてください。
少年は、喉がカラカラになっている。
どういうことかね?
咎めるような目線に。
ただ、お願いなんです・・・
あと戻りできない。
そんな想いが。
彼から近親を遠ざけようとしたのだろうか。
男はあまり愉快ではなさそうに、少年を見つめていたけれど。
無理強いしてまで、姉をモノにするつもりはないようだった。
きみが私を、信用できないというのなら。
それは、しかたのないことだね。
どことなしに、寂しげな微笑を浮かべながら。
すまなかったね。
間近に迫らせた牙を素早く隠して、姉娘を受け流そうとした。
少年は、それまでよりももっとうろたえて。
おじさん、血を吸うあてはあるの?
おどおどと、声をあげた。
ないさ。きみの姉さんをあてにしていたのだから。
あとはいい。お前の心配することではない。
男の影は、早くも夕闇に消えかかっている。

いいのよ。
男を遮るように、呟いたのは。意外にも姉のほうからだった。
わたし、自分の意思で来たから。
え?それは・・・だって・・・
少年は、戸惑った。
どこまで酔わされているのか。姉を酔いから醒まさなければ。
だってわたし、薬飲んできていないもの。
え・・・?
あなたの仲良しのお友だち・・・なんでしょう?
わるい人のはず、ないものね。
姉はくすっ・・・と、笑みを洩らして。
自ら、黒影のほうへと影を重ねてゆこうとする。
ァ・・・
遮ろうとする少年を、べつの影が遮っていた。
ふふ。
かわいいな。きみ。
影は、男そのものだったが。
自分を抱きすくめている影と、寸分違わぬ影が。
同時に姉をも、抱きすくめてゆく。
ふたりながら、いっしょに愉しんでやるよ。
どちらも・・・きみなの・・・?
ひとりの彼は、ふたつの影になって。
姉弟ながら、それぞれの腕に抱きしめて。
髪の毛をかきのけて、うなじをあらわにしてゆく。
かりり・・・かりり。
ほとんど同時に刺し入れられた牙に。
姉も、弟も・・・
かすかなうめきを重ね合わせる。
ちゅうっ・・・
血潮をひと口。そして、またひとしずく。
啜りあげる唇が、笑むほどに愉しんでいる。

少年は、さっきまでの狼狽などすっかり消して。
いまはひたすら、男の牙に酔い痴れている。
首筋を。太ももを。そして、もう片方の太ももを。
かわるがわる押し当てられる唇の下。
鋭利な牙を、深々と滲まされて。
しみ込んでくる疼くような鈍痛に。
いつか我を忘れて、酔い痴れてしまっていた。
ハイソックス、破ってもいいね?
悪戯っぽく唇を這わせてくる男の求めに、われ知らず頷いて。
差し出したふくらはぎに、牙を埋められるのを感じながら。
姉もまた、すぐ傍らで。
たくし上げたスカートの下、黒ストッキングの脚に、なまの唇を許してしまっていた。
薄っすらと滲まされた伝線が、縦にぴちっと延びてゆくのを。
面白そうに、くすぐったそうに、見つめている。

声もなく。耽るように。
並んで腰かけたベンチのうえ。
姉も弟も、人外の身にわが身をゆだねて。
肌の奥底の熱情を、涸れるほどに捧げながら。
礼装を惜しげもなく、汚されてゆく。
また、来ようね。
こんどは制服、取り替えっこして来ようか?
姉の誘惑に、少年は夢中で頷いてしまっている。

靴下をずり下げて・・・

2007年04月26日(Thu) 08:05:05

制服の濃紺の半ズボンの下。
ひざ下までぴっちりひきあげていた紺のハイソックスを、ずり下げて。
ほてるほど、飢えた唇を這わされて・・・
ずずっ。じゅるうっ・・・
老婆はほくそ笑みながら。
少年の生き血に酔い痴れる。

つぎの日のこと。
少年が連れてきたのは、セーラー服の少女。
真っ白な夏用セーラー服に、黒の襟章。
三本走った純白のラインが初々しいモノトーン。
黒のプリーツスカートの下、のぞいているひざ小僧は。
薄墨色のストッキングに、なまめかしく染まっている。
老婆は舌なめずりしながら、足許ににじり寄って。
にゅるり・・・にゅるり・・・
恥らう少女の足許に、舌を這わせてゆく。
兄さんが、ついていてあげる。
甘いささやきに、かすかにうなずき返しながら。
オトナっぽい装いに加えられる凌辱を、
ウットリしながら、見守っている。
破っても、いいですよ・・・
少女はそう、囁いたけれど。
母御に知れるじゃろう。
老婆はニタニタ笑みながら。
少女のおさげをかきのけて。
白いうなじに唇を這わせてゆく。
きっちりとしたプリーツスカートの直線を、いびつに乱されながら。
生き血を吸い取られ、淫らにあしらわれてゆく妹に。
兄はドキドキと、胸とどろかせ。
ひそかに、ちゅうっ・・・と、反対側のうなじを吸っている。

そのつぎの日のことだった。
おさげをほどいて、肩先に髪を流した少女は、
清楚な黒のフォーマルスーツに身を包んだ、
じぶんと瓜ふたつの母親を連れてくる。
後ろから忍び寄ってきた息子と。
傍らからしなだれかかってくる娘と。
ふたりにはさまれた女は、老婆にうなじをくわえられて。
肩先に散らした、バラ色のコサアジュに。
困ったかたね・・・とほほ笑んでいる。

えぇの。順番じゃ・・・
老婆はニタニタと、ほくそ笑みながら。
芝生のうえ、母娘、そして少年を転がしていって。
まず、少年の履いている、濃紺のハイソックスを。
母親の目のまえで、辱めてゆく。
きょうの靴下は、ずいぶん薄いのね。
ウットリとした目線のかなた。
息子のふくらはぎの周りを染めるのは。
ストッキング地のハイソックス。
チリチリと滲まされた伝線に。
少年は薄っすらと笑みくずれながら。
ダメだよ、おばさま。
イタズラっぽく、白い歯を輝かせている。
つぎは、どちらの番じゃの?
おそろいの黒ストッキングの足許に。
老婆と少年は、顔を並べて、近寄せて。
どちらがどちらの脚に噛みついたのか。
それは、おぼろな靄のかなた・・・


あとがき
おさげのままだと、ママに噛み痕を見られちゃうわ。
少女はクスリ・・・とイタズラっぽく笑んで、母親をつれてきたのでしょうか。
靴下を破っていただくのは。
そう、お叱りになるお母様が、ごじぶんからストッキングを破らせてから。
母親みずからが許してしまったいけない悪戯を。
緑の芝生の上、
傍らで息子も娘も愉しみはじめてしまう。
そんなお話です。

妹からの借りもの

2007年04月19日(Thu) 21:31:46

垣根を隔てた向こう側。
お兄ちゃんのセイジは、半ズボンの高等部。
妹のあゆみは、セーラー服の中等部。
兄は寮生活。妹は家からの通学。
たまに学校のなか、兄妹で顔をあわせるたびに、
お兄ちゃんはずんずんと背が伸びてくような気がする。
だんだん大人びていっちゃって、あゆみの手の届かないところに行っちゃうのかな?
いっぽう兄のほうは。そんなことにはぜんぜん疎くて。
妹の白い肌がだんだん透き通っていって、色香を漂わせ始めていることに、
いっこう、気づいているようすはない。

どうしたの?
珍しい呼び出しに、小首をかしげるあゆみをまえに。
うん。ストッキング、破っちまった。
兄貴は情けなさそうに、半ズボンを履いた自分の脚をさし伸ばす。
あら、あら・・・
あゆみがお兄ちゃんの足許を見ると。
濃紺の半ズボンの下、びちっと縦に走るしま模様。
半ズボンの下に黒のストッキングという、男の子の制服としてはあり得ない取り合わせ。
けれども寮制のしかれた学園のなかは、別世界。
こんな制服規定が、しばしば好んで守られているけれど。
どうやら男の子のごつごつとした太ももに、薄いナイロンのストッキングはなかなかなじまないものらしい。

また、暴れたんでしょ?
同情なのか、あきれているのか。
あゆみの口調はどこか妹ばなれして、まるで母親みたいな口調になっている。
こういうときは、どちらが年上だかわからなくなるのだが。
セイジは頭をかきながら。
これからすぐに、部活なんだ。一足、貸してくれないか?
まるでノートや鉛筆を忘れてきたときのように、こともなげな頼みかたをしている。
ウン、。いいよ。ちょっと待ってね。
あゆみは面白そうにクスッ、と笑うと。
生垣に身を寄せるようにして、。
お兄ちゃん、ちょっと通せんぼしていてね。
軽く腰をかがめると、履いているストッキングをためらいもせずに、自分の脚から抜き取ってゆく。
えっ?おい、おい・・・
さすがの兄貴も、焦っている。
いいよ、あたし。素足でも平気だから。
それにあたしも。履き替え、持ち合わせていないのー。
とりあえずこれで代用しておいて。
少女はちっとも騒がず振舞うと、静かな瞳で兄をじいっと見つめている。
手渡された黒いナイロンの塊は、セイジの掌のなか、頼りなく縮こまっていたけれど。
かすかなぬくもりが、しみ込むように残されていた。
いくらなんでも・・・なぁ。
セイジはことさらにガキくさく頭を掻きながら。
それでもよほど困っていたらしく、妹と代わりばんこに生垣に隠れて、ストッキングを脚に通してゆく。

くふふふふふふふっ。
老婆が、まるでいまにもよだれの垂れそうな意地汚い笑みを浮かべて立ちはだかったのは。
妹が立ち去ったすぐあとのこと。
足取りを見られなかったのが、救いだったけれど。
あ。これから部活が・・・って、すり抜けようとしたセイジは軽く肩を抱きとめられていた。
おいしそうな靴下をお召しじゃな。しょうしょう悪戯させていただこうかの。
老婆はところどころ歯の抜けた口を半開きに弛めながら。
いかにも不都合だ、といわんばかりに頬をふくらませた少年行く手を、しっかり遮っている。

ぬるり・・・ぬるり・・・
濃い黒に包まれた足首を。ふくらはぎを。ズボンのすそからのぞいた太ももを。
せり上げるように舐め尽くしてゆく老婆は、時おり随喜の笑みを洩らしながら。
それでも容赦なく、唇を吸いつけ舌を這わせてくる。
お若いのに、ふしだらなこと。おなごの味がするのぅ。
口許からだらしなくよだれをしたたらせながら。老婆はずばりとそう言った。
どっ、どうしてっ?
思わず妹の立ち去った彼方に目をやってしまったセイジをみて。
語るに落ちたようじゃのぅ。
老婆はなおも、だらしのない舌なめずりに相好を崩して、
なれなれしく少年の背中ごし、肩に腕を回してゆく。
え?どこのおなごと、契られた?
すみに置けぬのう。たいそう、妬けるのぅ。
老婆のさぐるような舌をあてられながら。
ぞくぞくと鳥肌立つような閃きが。
素肌になにかを語らせていた。
そぉか。そぉか。よぅ、わかったぞえ。
老婆は毒蛇のように、長い舌をひらめかせながら。
やはり痛いところを、衝いてきた。
妹ごが、おるはずじゃ。いちど、たまわることはできまいかの?
あぁっ、そんな・・・
老婆にたいする拒絶は、うなじに埋め込まれた牙に、封じられていった。

生娘、じゃろうの?
老婆のまなこが、ぎらぎらと。
じぶんの妹に注がれるのを。
セイジはズキズキしながら、うなずいている。
血の喪われた血管が、じゎんじゎんと、ほてるような昂ぶりをおびていて。
目のまえの少女は妹とは別人で、おいしい生き血をたっぷり宿したエモノのように思えてくる。
では・・・しばし独り占めにさせていただくぞい。
分け前はそもじにも、つかわそうほどに。
老婆は言い捨てるようにして、少年から視線を移すと。
それでもあゆみはゆったりほほ笑みながら。
老婆に近寄るように、遠ざかるように、ゆっくりと、脚をはこんでいる。
ストラップシューズにお行儀よくおさまった足の甲が、薄墨色のナイロンにくるまれているのを、
老婆がいとももの欲しげに見つめてくるのをわかっていながら。
まるで誘うように、ゆっくり、ゆっくりと、思わせぶりに歩みをすすめてゆく。
フウッ・・・
老婆は耐えかねたように、獣じみた息遣いをひと息洩らすと。
目にもとまらぬはやさで、少女の足許ににじり寄っていた。

あっ。
思わずすくめた足許に。
老婆は化け猫みたいなナマナマしい息遣いを吹きかけて。
きちんと履かれた黒のストッキングを、しわくちゃに波立てようとする。
いけませんわ。おばさま・・・
戸惑いに揺れる少女の上体は、純白の夏服に包まれていて。
きちんと着こなしたモノトーンの制服に、ポニーテールの黒髪がはげしく揺れる。
整然と足許を遮っていた黒のプリーツスカートを、強引にたくし上げられて。
ヒルのように飢えた唇を、むたいにぎゅうぎゅうとなすりつけられて。
それでも少女は気丈に振舞って、手近な樹にもたれかかったまま。
とうとう、老婆にストッキングを破らせてしまっている。

ちぅちぅ・・・きぅきぅ・・・
ごくり・・・ごくり・・・ごくりん。
いともうまそうに、制服姿の妹から、生き血をむさぼる老婆。
老婆は時おり、うす汚れた着物のたもとで口をぬぐいながら。
甘露・・・甘露・・・
熱に浮かされたようにそう呟きながら。
なおも血を獲ようとして、傷口に唇をねぶりつかせる。
セイジは痺れたようになって、妹の受難を見守るばかり。
あゆみはかわいい唇で、ふしぎな言葉を洩らしていた。
いいんです。いいんです。もっと、もっと、ごゆっくり、召し上がれ。
おかげであたし、あなたのなかで・・・兄とひとつになれるんですもの。
ぐらり。と、なにかがセイジのなかで平衡を喪った。
その瞬間からだった。かれが獣に変わったのは。

じゅうたんのような芝生のうえ。
じゃれ合うように転げまわる老若二個の女体のあいだに割って入って。
老婆のうでのなかから、もぎ取るように妹の身体を奪い取ると。
セーラー服の襟首に手をかけて、たてにあざやかに引き裂いていた。
えっ?
一瞬、信じれらない、という顔をした少女は。
なおも肉薄してくる兄の身体に、剥かれてあらわになった白い肌をしぜんに合わせていって。
兄の衝動に従うまま、丈の長いプリーツスカートをさばいていって。
剥ぎ堕とされたストッキングに彩られた太ももの奥、
逞しい臀部が沈み込んでくるのを。
みずから誘うようにして、受け入れてしまっていた。
う、ふふふふふふふっ・・・クククククッ。
老婆が化鳥めいた哂いを洩らしたのは。
ふたりが身体を抜きあうことができぬほど。ひとつに交わったときだった。

どれほど刻が、経ったのだろう。
濃紺のスーツ姿に寄り添っている、濃い紫のロングのワンピース姿。
くるぶしだけが見え隠れする足許は。
申し合わせたように、ストッキングのように薄い濃紺の靴下。
腕を組んで歩みを進める公園の隅。
待ち構えているのは、古びた着物姿の老婆ひとり。
ウフフ。
一対のカップルはイタズラっぽく笑みあって、並んでベンチに腰かけると。
うずくまる老婆のまえ、すそをちょっとずつ、たくし上げて。
薄手の靴下に走る縦じまもようを、面白そうに見つめている。
夫婦どうぜんに暮らす兄妹を。
老婆はいつまでも、祝福しつづけていた。


あとがき
これは、けさ浮かんだお話だったのですが。
時間がなくて、あっぷできなかったのです。^^;

妹のストッキングをねだる兄。
ひそかな想いを込めて、自分の脚から抜き取る妹。
好色な老婆にとらえられて、妹のストッキングを履いたまま脚をいたぶられる少年。
妹を狙う老婆を見守るうち、いつか淪落の渦に引きずり込まれてゆく兄妹。
そんな構想が捨てがたくて、あっぷしてみたのですが。
いちど情熱をくぐり抜けてしまうと・・・たいそうな凡作になってしまうのですねぇ。A~^;
次回に期待しませう。--;)

そうとう妖しいシリーズですね。(^^ゞ

2007年04月02日(Mon) 07:52:44

「連作:妖しい学園」を、立ち上げてみました。
いまのところ、犠牲者は男子生徒ばかりです。(笑)
なわけで、そういう属性のないかたは、読まないほうがベターかも。です。^^;

寮母さんをしている老婆が吸血鬼でして。
寮生の若い男の子を片っ端から襲っていくとか。
血を吸われて同類になっちゃった男の子が、友だちの血を吸っちゃうとか。
そんなお話が多いみたいです。
近々、女子生徒編を・・・と、考えています。^^

ここ。男子生徒はほとんど寮に入るのですが。
制服がちょっと、奇抜なんです。
白のワイシャツに濃紺のジャケット・・・まではごくふつうですが。
下はおなじ濃紺の半ズボンに、紺のひざ丈のハイソックスを履くんです。
ハイソックスは、無地のリブタイプ。
夏になると、ストッキング地のショートストッキングになります。
文化系の生徒は、ツヤツヤとした薄手のナイロンに脛を染めるのですが。
運動部の子は筋肉質な脚に似合わない、って不評だったりしまして。
任意に、リブタイプをそのまま着用することが認められているそうです。
校則はほかにもいろいろあるようですが、それは追い追い・・・ということで。(笑)

活発な血 インテリな血

2007年04月02日(Mon) 07:42:14

制服規定
男子制服(夏用)
白の開襟シャツ、濃紺の半ズボン、紺のハイソックス(ひざ丈)
※運動部所属の生徒は厚手のリブタイプのものを着用しても可。

~ある生徒の談話~
うちの学校では、夏になると、靴下が薄くなるんですよ。
購買で売っているんですけど、女の子のストッキングみたいに薄いやつです。
長髪のやつなんか、後ろから見たらほとんど女の子ですよねー。
でも、運動部の子は脚が肉太で、とても似合わなかったりするんで・・・
そのまま冬用のハイソックスを履いたり、サッカー部の連中みたいにライン入りのリブタイプのやつとかを履くんです。
どちらもお婆さまに、いちどは噛まれちゃうんですけどね。(笑)

筋肉質のふくらはぎに、ストッキング地のハイソックスなど似合わない。
けれども運動部に入ったきみは、いつも体操着に身を包んでいて。
ひざまで覆っているのは、ほかの子が履いているようなスポーツ用のハイソックスではなくて。
真っ白に眩しい、ストッキング地のハイソックス。
いまどき女の子ですら、あまり見かけない。
けれども、なよなよとした薄い靴下は。
きみの筋肉を映して、ひどくなまめいた輝きを魅せている。

あらわにした太ももに、まともに陽射しを受けて。
キュッと引き締まった筋肉が、薄手の靴下に滲んでいて。
妖しいなまめかしさを覚えるのは、どうやらボクばかりではないらしい。
クラブ活動がすんだあと。
校舎の裏手の片隅に、ひっそりと茂る植え込みのかげ。
老婆はきみのことを誘い込んで。
きょうも、妖しい休息へと、誘ってゆく。
クフフフフフッ・・・
にたにたと、たち悪くほくそ笑みながら。
唇を押しあてるのは・・・ストッキング地に包まれたふくらはぎ。
内側に秘めたはちきれるほどに逞しい筋肉を、ことさらキュッと引きつらせて。
それでもキミは、唯々諾々と噛まれてゆく。
甘くほろ苦い、陶酔の笑みをたたえながら・・・

べっとりと赤黒いものを、行儀悪くしたたらせて。
老婆はなおも、おおいかぶさって。
太もも、胸元、首筋・・・と。ところかまわず、啖らいついてゆく。
物陰から見ているボクも。
薄青いストッキング地のハイソックスに。
ぴちっと鮮やかに、裂け目を滲ませていた。
抜き取られた血液は、いまごろ老婆の胃の腑におちて。
キミの血潮といっしょに、仲良く織り交ざっているのだろうか?

にたにたと嬉しげに老婆が立ち去ったあと。
植え込みの陰は、しばらくのあいだ動かない。
ボクはあわてて駆け寄っていって。
短距離走のあとみたいに、肩で息をしているキミを抱きかかえる。
だいじょうぶ?
スポーツしている子の血は旨いんだってさ。
蒼ざめながらも、くすぐったそうに応えるキミ。
ずるい婆さんだな。
キミには、そう告げているんだね。
ボクには・・・インテリの血は美味だってささやくんだよ・・・

学生寮にて ~父兄の訪問~

2007年04月02日(Mon) 07:26:41

イスにもたれかけたふくらはぎから。
濃紺のハイソックスを、じょじょにずり降ろしていって。
ぬらりと輝く生硬な肌に。
老いさらばえたしわくちゃの唇を、ヒルのように吸いつけていって。
喉、あえぐように、引きつらせ・・・
口許からむき出した、尖った牙を。
かりり。
って、突き立ててゆく。
その瞬間。
キミは、アッ・・・ってかすかにうめき声を洩らして。
ちょっぴり痛そうに。メイワクそうに。眉をしかめて。
お婆さまが、黒ずんだ唇をひくつかせながら、
ごく、ごく、ごく、ごく・・・
ほとび出る血潮を、飲み味わってゆくのを、見つめている。
イスに片脚を載せたまま。
背すじをピンと張り詰めた姿勢を、崩さずに・・・

お婆さまが唇を離すと。
解放してやれ。
ボクにそう、命じておいて。
じぶんひとり、廃墟のようにひっそり静まる学生寮に引き返してゆく。
なにも知らない彼のお母さんが、面会に来るのを迎えるために。
だいじょうぶ?キモチよかったろ?
正気じゃなくなった証拠に、高部くんは目を白黒させていて。
母さん、血を吸われちまうのかな・・・って。
声が嬉しそうに、震わせているんだね?

よかったじゃないか。
いくら長靴下で、痕を隠したって。
夏になって、薄い靴下を履くようになったら。
目だってすぐに、ばれちゃうからね。
学校のなかでなら、かまわないけど・・・
親に会うときには・・・言い訳に、困るよね。
でもいまさら・・・もう、だいじょうぶだよ。
ママにばれたって・・・
キミのママは、もうとがめたりすることはないんだから。
引きずり下ろされたハイソックスを、ひざ下までキュッとひき上げてもらうと。
やおらそのうえから、唇を吸いつけてしまっている。
あ・・・破くの?ダメだよ。ダメだったら。
キミの声。キモチよさそうに、上ずっているね?

半分ずり落ちたハイソックスは。
わからないほどに、赤黒く濡れていて。
足許に滲む濡れた輝きだけが。
吸血のあとをみせている。
けっきょく、ばれちゃうね。
吸血の痕をハイソックスの下に隠して、親に会う。
それが、ここでの決まりだったのに。
でも・・・もうだいじょうぶ。
ほら、ガラス戸ごしからでも、よく見えるだろう?
きみのママがお婆さまに迫られて、首を噛まれて血を啜られているのが。
綺麗だね。綺麗に襲ってもらっているね。
素敵だよ。
バラの花をあしらった、ワンピース。
くしゃくしゃになってずり落ちた、肌色のストッキング。
ママの履いているストッキング、息子のハイソックスとおなじくらい気に入ったみたいだね。
ほら。あんなに嬉しそうに、剥ぎ堕としていくんだから。
おや、引きつっているね。固まっているね。それに・・・昂ぶっちゃっているんだね?
母さん相手の吸血シーンなんて。
そんなに目にできるものじゃ、ないからね。
ほんとはそろそろ、わざともの音をたてて、お婆さまの注意をそらして。
人目を避けて逃れていったあと、正気をなくしたママを救い出すお仕事があるんだけど。
もうすこし・・・もう少しだけ。
お婆さまの、好きにさせてあげようよ。
キミの生き血は、お婆さまの大好物。
そのキミを生んだお母さんの生き血なんだもの。
きっと、気に入ると思っていたんだ。キミにしたって、そう思うだろ?
もう少し。もう少しだけ。
見ていようよ。
すっかり昂ぶってしまった、キミの股間に手をあてながら。


~ある生徒の談話~
親がうちの学校の正体を知らないことも、たまにあるんです。
そういう場合には、学校のほうからレクチャーをするんです。
ひとりひとり、親が面談に呼ばれまして・・・
面談のまえ、生徒と面会できるのですが。
生徒ももちろん、口止めされているので、なにも教えません。
でも、面談のまえには、だいたいわかっちゃっているみたいなんです。
だって、たいがい生徒の前で、お婆さまに襲われちゃうんだもの。(笑)

6月からは制服が夏用に代わって、ハイソックスも薄いのを履くようになるんです。
そうなると・・・噛まれたふくらはぎの痕がまる見えになってしまうので。
そうなるまえに、親は全員、いちどは呼ばれるみたいですね。

学生寮にて 同室の男の子

2007年04月02日(Mon) 07:10:54

再掲:制服規定~生徒手帳に記載の校則より~

男子生徒(冬服)
白のワイシャツ、紺色のネクタイ。
濃紺のブレザーに、同色の半ズボン・ひざ丈のハイソックス。
※寒いときには、ハイソックスの代わりに黒のストッキングを着用してもよい。

ボクの名前は、ロウ。
蝋燭の、蝋って書く。
誰だい?ろう人形のロウだろ?って言うのは・・・
たしかにボクの顔、ろう人形みたいに蒼白い。
だって。
パパやママが、お婆さまに一滴 あまさず血を吸われたとき。
ボクもおなじように、されちゃったから。
いまごろふたりは、どこの街で。
どこの家のご夫婦をたぶらかしているんだろう?

血をなくしたすぐあとに。
ボクは寮に、入れられた。
13人いる同級生で、たったひとり。個室をもらっていた。
やがて。やはり相部屋がいいだろう・・・って。
高部クンと笹原クンの部屋に入れられた。
ふたりは毎日、学校に黒のストッキングを履いてくる。
まるで申し合わせたようにそうなった、そのまえの晩から。
おチン○ンを合わせっこしているんだって。
誰もが口にしなくても、察しをつけてしまっている。
妖しい学園だって?
そんなこと、ないよ。
だってみんな、若いんだから。

ふたりは入室させられたボクを見て。
困ったね・・・って、顔を見合わせた。
きみのぶんのベッドが、ないんだよ。
たしかに部屋にあるのは、二段ベッド。
かまわないじゃないか。
どちらかのベッドに、いっしょに寝るから。
ほんとはふたりで、寝たいんだろ?
それでもいいけど。ゼッタイ、代わりばんこだよ。
水もしたたる美少年なふたり。
醜いボクは、ふつうならナカマに入れてもらえないのだけれど。
授かった不思議な特性を発揮して。
まだ、制服を着ている時分から。
ふたり、かわるがわる、ベッドのうえに押し倒して。
うなじをかぶり・・・と。噛んでしまっている。
ワイシャツの下、セイセイと息遣いする、薄い胸と。
半ズボンのなか、ピチピチとはずむ太ももと。
全身で、感じながら。
かすかに汗を含んだ髪をかきのけて、
熱い血をはぜるほど求める、よだれの浮いた唇を、
ぴったりとヒルみたいに、這わせてゆく。
ボクだって・・・とてもドキドキしながら・・・

おはよう。おはよう。
足りたかい・・・?
ふたりは気遣うようにして、ボクの顔をのぞき込む。
だいじょうぶ。
キミたちの太ももから、たっぷりと。
朝のごちそうは、いただいたよ。
それよりも。だいじょうぶかい?授業に出れる?
蒼い顔、しているぜ?ふたりとも。
紺のハイソックスや、黒のストッキングを。
まるで女の子がそうするみたいに、愉しげにひきあげていって。
ごくり・・・と飲み込む生唾に。
いいんだぜ?無理すんなよ。血が欲しいんなら、履いたまま咬んでもいいんだよ。
好きなだけ、破らせてやるから。
すぐ履き替えれば、授業にも間に合うしね。
わるいね・・・
ボクはとうとうこらえきれなくなって。
さし伸ばされたふくらはぎに、かわるがわる唇を吸いつけていって。
濃紺のハイソックスの、しっかりとした舌触り。
薄手のストッキングの、なよなよとした舌触り。
どちらも、ぞんぶんに、這わせていって。
ピチピチとした皮膚もろとも、破ってしまう。
ウフフ・・・
ふふふ・・・
くすぐったそうな、ふた色の含み笑いに。
ボクもくすぐったく、応えている。

寮母の老婆

2007年04月02日(Mon) 06:15:58

制服規定~生徒手帳に記載の校則より~

男子生徒(冬服)
白のワイシャツ、紺色のネクタイ。
濃紺のブレザーに、同色の半ズボン・ひざ丈のハイソックス。
※寒いときには、ハイソックスの代わりに黒のストッキングを着用してもよい。

女性には、気をつけてね。
学生寮に入るまえの晩。母のミツエは気がかりそうに眉を寄せて。
モトオにそういったけれど。
本人はそんなこと、さらりと聞き流していた。
ほんとうに、うかつにも・・・

寮は、二人部屋だった。
進級すると、一人部屋が与えられるのだが。
寮になじむために、新入生は二人ひと組にわけられていた。
同室になったのは。
サヤトという少年だった。
色白の額には、細いけれども刷いたように鮮やかな眉。
大きな瞳に、生き生きと輝く頬。
紅顔の美少年、といってもさしつかえなかった。
モトオは少し、嫉妬をおぼえた。
かれ自身も、美少年ともてはやされてきたからだった。
早熟だったかれの身体はしなやかな筋肉に鎧(よろ)われはじめていて、
すこし頬骨の張った横顔は、いままでの童顔とは違った精悍さを秘め始めていたのだが。

寮母は、背中の曲がったの老婆だった。
猫ばあさん、とも呼ばれていた。
それくらい背中がまるく、いつもうずくまるような格好で歩いている。
そんなようすから生まれた、陰ながらの呼び名だった。
老婆は歯の抜けた口をあけて、にたにたと笑いながら、同時に寮にあらわれたふたりを出迎えた。
ようこそ。ようこそ。よくお出でになられたな。
古風な口調が、まるで墓場から迷い出てきたかのような印象を与える。
ふたりの少年は顔を見合わせて、肩をすくめ合っていた。

真っ白なワイシャツに、紺色のネクタイ。
濃紺のジャケットに、半ズボン。
やはり濃紺の靴下は、ぐーんと長く、ゆうにひざ丈まであった。
それが、モトオたちが春からまとう制服。
女みたいな制服だよね、
サヤトが呟くように、そういった。
たしかに。
半ズボンがスカートだったら。
完全に、女子高生の制服だった。
おまけに真新しいハイソックスは、
陽の光を浴びるとにわかにツヤツヤとした光沢を、うわぐすりのように帯びるのだった。
夏には薄いのも、穿くみたいだぜ?
女の子のストッキングみたいじゃない。
サヤトの紅い唇は、しだいに自嘲を帯びてゆく。
こいつにいわれたくない。
女みたいな白い顔に、ピンク色の頬っぺをしているくせに・・・
モトオは知らん顔をしていた。
淡い嫉妬が、まだ苦々しく腹のなかによどんでいる。
お望みなら・・・黒のストッキングを履いてもいいようだぜ。
何気なく口にした言葉に、サヤトがびくっとして顔をあげる。
え・・・?
知らないのか?たしかにお前のいうとおりだよ。女みたいだ。
声が皮肉を帯びるのを、どうすることもできない。
恥ずかしい。。。
女の子みたいだ。。。
さいしょはそんなふうにしり込みしているのだが。
上級生にもなると、すこし肌寒い日などは、平気で黒のストッキングを着用して、教室を出入りして。
学校の外をあるくときも、当たり前のように、
半ズボンの下、薄墨色に染まった脛をさらけ出して闊歩するようになるという。
それでいて。
ここの制服は、その実男の子たちのあいだで、口にされることのない憧れをよんでいるのも確かなのだ。

学校の新学期は、あわただしい。
一日に入学式があると、桜が散るのを待たずに本格的な授業が始まり、寮生活が始まる。
新入の寮生は、13人。
真新しい制服に、いちように戸惑いながら。
顔を見合わせては半ズボンの太ももを寒そうにすくめ、紺の長靴下をひざ下まで引っ張りあげていた。
さすがに、黒のストッキングを着けているものは、皆無だった。
見ろよ、あれ。
始業式の朝。
誰言うともなく目を向けた上級生の列には、半分以上の生徒の脚が、薄っすらとした黒のストッキングにおおわれている。
群れ集った太さも長さもとりどりな脚は、ひとしく薄手のナイロンに包まれて。
まるで呪縛にかかったようななまめかしさに、だれもが胸の奥をずきりと疼かせたのだが。
ヘンなの。
だれもがそう、口にしていた。
そう。上級生たちが去年の今ごろ、そうだったように・・・

消灯になっても騒いでいるのは、どこの学校の生徒も同じだろう。
けれども。寮母の猫ばあさんが夜まわりにくるときは。
皆布団のなかで、息を潜めて。
ひたひたという足音が通り過ぎるのを、待っていた。
猫ばあさんが手にしているのは、古びた燭台。
しずしずと。大奥の奥女中のように。小高くかざして。
そのときだけはまるで別人のように、背すじをしゃんとさせているのだ。
なによりも。
ゆらゆらとした焔に浮き彫りになった老婆の顔は、まるで鬼婆か化け猫のように不気味なもので、
最初の夜個室に戻ろうとしない新入生たちのいる大部屋を覗き込んだとき、だれもがぎょっとして立ちすくんでしまうほどだった。
早う、寝なされや。
老婆は歯の抜けた口許をもちゃもちゃとさせて。
聞き取りにくいひくい声で、たったひと言そういっただけだったが。
だれもが気おされるように、自室に引きこもってしまったのだ。

不気味なやつだよな。
モトオがいうと、
そうだね。
サヤトが相槌を打つ。
さいしょにいだいた反感は、いまは消えうせて。
ようやくウマの合うようになってきたのだが。
このときだけは、ふたりの意見は食い違っていた。
え?ばあさんのことじゃないのか?
サヤトの口から洩れたのは、ロウという名の同級生のことだった。
13人いる新入生のなかで独りあぶれて、彼だけが個室。
いつも無口で、蒼白い顔でじろじろあたりを伺っている。
陰気なやつだ。
モトオの嫌いなタイプだった。
けれども。不気味・・・とまでは感じていなかった。
かれにとってだれよりも不気味なのは、あの老婆。
うずくまるような猫背は、擬態なのか?
おなじクラブの上級生におそるおそるきいてみても。
あぁ・・・あの婆さん・・・ね。
と。なま返事のようああいまいな応えがかえってきただけだった。
ロウと老婆。
ふたりには、共通点がある。
真夜中、足音を忍ばせて徘徊することだった。
新入生にありがちな夜歩きは、ぱったりと途絶えている。

コツ、コツ・・・
ぎし、ぎし・・・
ふたつの足音が、真っ暗な廊下を今夜も徘徊する。
サヤトがたまりかねたように、布団をはね上げて、
二段ベッドの上段で寝んでいたモトオのところに転がり込んできた。
怖い・・・
いきなり身体を押し付けてきたサヤトは、モトオの胸のうえ、ほんとうにぶるぶると震えている。
おい、おいったら・・・
声を抑えて咎めたけれど、サヤトはとうてい自分のベッドに戻りそうにない。
困ったな・・・
ひんやりとした闇のなか。
当惑を抱えたじぶんの胸に圧しつけられてくるサヤトの胸が妙に暖かだった。
おい・・・
サヤトは腕を伸ばしてきて、わきの下から背中へと回してくる。
怖い・・・
ひたすら怖じてすがりついてくる暖かな身体を、しばしどうすることもできないでいた。

夜が明けた。
寒そうだな。
四月だというのに。
ガラス窓はすりガラスのように曇っている。
びっしりついた水滴ごしに見える外の景色は、霜が降りているかというほどに凍えてみえた。
履いていこうか?黒のストッキング。
え?きょう?
恥ずかしいのか?
うぅん。そんなこともないけど・・・
じゃ、いっしょに履いていこう。
そういえば、隣室の高部と笹原も。
きのうは申し合わせたように、黒ストッキングに脛を染めていた。
どうやって履くか、知らないのかい?
サヤトがからかうように、モトオを見た。
パッケージの封を切ると、ぶきっちょにも、いきなり脚に引き伸ばそうとしたからだ。
いけねぇ。
寮に入る前、母さんに履き方を教わってきたのだ。
二人とも、時おり顔を見合わせながら。
なよなよとした薄手の黒のストッキングのつま先をたぐり寄せ、足首に通し、脛にひき上げてゆく。
夕べ。
なにがあったわけでもない。
小一時間ほどモトオのベッドで震えていたサヤトは、やがて、すまなかったね、と呟いて、じぶんのベッドに降りていった。
あとに、温もりだけが、残った。
その温もりを、抱いたあと。
体温の低そうな薄い白い皮膚に流れている血潮の、思いのほかの熱さを。
知らず知らず、さとっていたのかもしれない。

おや。おそろいだね。
先生はにやにやとして、ふたりの足許を無遠慮にじろじろと眺め回したけれど。
それ以上、なにもいわないで、授業をはじめた。
十三番目の席だけが、空席だった。
ロウは風邪らしいぜ。
どこから聞いてきたのか、誰かがそっけなく、そう教えてくれた。
授業中。
まとわりつくようにぴったりと密着してくる黒のストッキングが。
なぜかひどく、心地よかった。
ほどよい密着感がそらぞらしい外気をさえぎっていて、心地よく露出させていた。
涼やかな翳を帯びた脚を、見せびらかすように伸ばしてみる。
しばらく会わない母親か、誰か優しい女のひとが寄り添ってくれているような感覚が、
授業をうわのそらにさせている。

ああ。やっぱり・・・
呪わしいうめき声を、あげながら。
闇に包まれたベッドのうえ、モトオは身じろぎひとつならないで、
上からのしかかってくる影法師に身を巻かれていた。
旨い。旨いね・・・
影法師の正体は、ロウだった。
窓の外から滲んでくるわずかな街灯の明かりが、陰気なほほ笑みを照らし出す。
口許に散っているのは、モトオじしんの血・・・
ロウはなおも、ぬくもりを求めるように。
うなじにつけた傷口に舌先を這わせて、滲んだ血潮をぴちゃぴちゃと舐め取ってゆく。
助けを呼ぶことは、難しかった。
下の段のベッドでは。
うずくまる影の下、サヤトがウットリとなって、世迷言を呟いている。
お婆さま・・・もっと血を吸って・・・と。
あの、暖かい体温を。薄い皮膚から奪い取られてゆくというのか。
競い合うように抜き去られてゆく、ふた色の若い血が。
暗闇を深紅に染めている。

母のミツエが寮を訪ねてきたのは、翌週のこと。
父兄面談のかえりに、ちょっと立ち寄ったのだ。
折あしく、まだ授業がつづいているらしい。
人けのない古びた寮は、まるで廃墟のようだった。
ごめんください。
白のパンプスが踏み入れた玄関は、ひどく埃っぽいかんじがする。
どなた・・・?
ぎい・・・と、扉が開いたとき。
ミツエはすこし、ぎょっとした。
木乃伊のように痩せこけた老婆が、背すじをぴんとさせて、睨むようにこちらを見据えている。
あの・・・○○の母ですが。いつも息子がお世話になっております。
ほほぅ・・・モトオさんの、お母さん。
息子のことを、親しげに名前で呼ばれて。
ミツエはすこし、ホッとする。
さ、おいでなされ。
老婆はにたにたとほくそ笑むようにして。
ミツエを手招きした。
パンプスを脱いだ肌色のストッキングの脚がスリッパをつっかけて、ひやりとした廊下に踏み入れた。

ここが息子の部屋ですの?
見覚えのある筆箱や、見慣れた筆跡でなぐり書きされたノートが数冊、机のうえに散らばっている。
外には洗濯物がぶらさがっているのが、ふだん家で洗濯などしたことのない息子を思うともの珍しい。
さっそく履いているのらしい黒のストッキングが長々となん足か、萎えたようにぶら下がっていた。
こちらへ・・・
老婆に促されるまま、つぎに母親が通りかかったのは、階上へとつづく階段の踊り場だった。
お隠れなされ。
老婆はしわがれた頬には不似合いにイタズラっぽく笑うと
ミツエの腕をとって、ぐい、と引き寄せた。

老婆とは思えないほどの力だった。
背中越しに腕を回された肩先を、痛いほどギュッとつかまれて。
まるで羽交い絞めにされるようにして、階上の廊下を見あげると。
蒼白い顔をしたひとりの少年が、ぽつねんと立ち止まっているのが見えた。
跳び箱の台が一段だけ、廊下にしつらえられていて。
少年はそのうえに片脚を載せていた。
台をはさんだ真向かいには、もうひとり。
やはり陰気に蒼白い横顔の、同年代の少年が面を伏せてうずくまっている。
わるいね、サヤト。
うつむいて表情のみえない口許から洩れたのは、クラスメイトの名前だろう。
サヤト・・・聞き覚えがある。息子と同室の少年だ。
でも・・・紅顔の美少年といわれた彼は、あんなに顔色がわるくなかったはずだ。
サヤトと呼ばれた少年は、薄っすらとほほ笑んだ。
どこか力の抜けて、少年ばなれした虚無的なうすら哂い。
ほっそりとした指が、すこしたるんだ濃紺のハイソックスをひき上げていって。
いいんだよ。ロウ。
うずくまる少年の名前を口にすると。
お前も、好きだな・・・
苦笑いしながらも。
陰気な友人がハイソックスのふくらはぎに唇を這わせてくるのを、くすぐったそうに見つめている。
かりり・・・
遠目でよくわからなかったけれど。ふくらはぎを噛んでいるみたいにみえた。
見間違いではなかった。
なんどか、しつように押しつけられた唇のあとに、かすかな破れ目が白い肌を滲ませている。
もうすこし暖かくなったら。薄いやつも吸わせてやるよ。
うふふ・・・
ロウと呼ばれたうずくまっていた少年のほうも。
やっと打ち解けたように、ひくい笑い声をあわせていった。
モトオは?
ああ、今ね・・・
唐突に出た息子の名前に、ミツエはぎくりとした。
息子も、あんな顔色にされているのだろうか?
教室の扉が、重たい音を立てて開かれた。

ぬっと突き出された、カモシカのような脚。
ぴちっと張り詰めた濃紺の長靴下が、射し込んで来る陽の光をうけて、さえざえとした輝きを帯びている。
逆行になって、顔色は良くわからなかったが。
目のまえでどうやら血を吸われたらしい色白の少年ほど、肌を透き通らせている様子はない。
サヤトがロウに、耳打ちした。
こいつのお袋さん、学校に来ているらしいぜ?
ミツエがはっとするまでもなく。
老婆は肩をつかんで、離さない。

手加減しようか?
気遣う友人に、かぶりを振って。
おんなじくらい、吸ってくれよ。
モトオがハイソックスを履いたまま、ロウの唇にふくらはぎをあてがおうとすると。
待って。
にじり寄ってきたサヤトが、引き剥がすようにして、ハイソックスをずり降ろしていた。
なにするんだよ・・・
きみの母さんに、ばれないようにさ。
しょうがないね・・・
モトオはそれ以上さからわずに、むき出しになったふくらはぎを、ロウに差し出していった。
熱っぽく這わされた唇の痕から。
赤黒いものがじわりと滲むのを・・・ミツエは見た。
ああっ。
こらえ切れずにあげた声が、命取りだった。
「おのれ・・・」
ひくく唸るような、ただならぬ声に振り向くと。
傍らで彼女をグッと抑えつけていた老婆が。にわかに歯をむき出して、迫ってくる。
歯の切っ先は、映画で見た吸血鬼のように硬く尖っていた。

莫迦だね。母さんも・・・
目が覚めたのは、息子の部屋。
ふたりの少年の姿は見えなかったが。
ぎしぎしと音をきしませる二段ベッドの上段には、ふたつの身体が戯れあっている。
血を吸っているのか。愛撫をしているというのか。
おなじ部屋の男同士で仲良くなっちゃうとね。
黒のストッキング、いっしょに履いて行くんだよ。
窓辺の物干しには、洗いあげたストッキングが何足も、折からの風にあおられていた。
母さんのストッキングも、ここで干すことになっちゃうね。
足許に、なま温かいものを感じる。
それが老婆の舌で、さっきからストッキングを破ろうとウズウズしているのを。
ミツエは肌で感じている。
さすがは、モトオの母ごじゃ。ええお味の血だぞい。
老婆のほめ言葉に、くすぐったそうに応えながら。
モトオもまた、けだるそうにじぶんの足許を撫でつけている。
半ズボンの下、脛を薄墨色に染めあげた薄手のナイロンは、
薄っすらとひとすじ、裂け目を滲ませていた。
母さんのストッキング、いい舐め心地だろう?
フフッ・・・と笑んだ息子の横顔が、ひどく大人びて映ったが。
ちくり―――と刺し込まれた鋭利な感触が、彼女の理性を一瞬で奪った。
ああ、息子とおなじようにされてしまう。
太もものまわり、薄手のナイロンのゆるやかな束縛がちりちりとほぐれてゆくのが、妖しい安堵感となって女の胸を浸してゆく。


あとがき
中身のない割りに、長くなっちゃいました。(^^ゞ
やはりこの分野、そんなに得意ではないですワ。

男子生徒の制服

2007年03月30日(Fri) 08:19:22

いつのころからだったろう。
ケンのパパが、ボクのママのところに。
ケンのお兄さんが、ボクの姉さんのところにかようようになったのは。
夜更けにパパとママの寝ているはずの寝室が。妙に騒がしくって。
眠れない夜は、ときどきこっそり覗きに行って。
ママはいつも、昼間みたいにひらひらしたワンピースを着ていて。
ケンのパパと、じゃれ合いながら、笑いこけていた。
ケンのパパは、噂どおり、口の両端から鋭い牙をむき出していて。
バラ色をしたママの血を、紅い糸みたいにしたたらせていた。
まるで、ドラキュラ映画を観ているような気分になって。
ボクは、ウットリ抱かれるママの姿を、腰のあたりをジリジリさせて、覗き見していた。
覗きを見つけたパパは、こら、とボクを小突いて。
外で話したら、いけないよ。
うなずくボクに、苦笑いをしながらも。
ボクと代わりばんこに、ドアの隙間を覗き込んでいた。

ときどき相手を、取り替えっこしているらしくって。
姉さんの部屋にケンのパパがいたり。
ケンの兄さんが、ママのスリップをぶら下げて帰っていったり。
そうした夜明けも、しばしばだった。
そんなふたりを、パパはいつもとがめずに。
妻と娘を犯しに訪れる深夜の客を。
くすぐったそうに迎え入れて、送り出していた。
かんじんのケンは、自分のパパや兄さんみたいに、うちに通ってはこなかったけど。
夕べは、ミナオのところに行ったんだろう?
ちょっとは、聞きたそうにして。
ボクが話し始めると。うんうんって。身を乗り出すようにして、聞き入っている。
いいんだぜ?
ほんとうは、マサコのところに行きたいんだろう?
ボクは内心おそるおそる。中学にあがったときに決められた、未来の花嫁の名前を口にした。
きみはちょっとだけ、びくりと身じろぎしたけれど。
それっきり、マサコのことには触れないで。
独り言みたいに、呟き返した。
うちのひと。みんな、吸血鬼になっちゃったからね・・・
昏い微笑が、いつの間にか。
同い年の気安さのなかにいたきみとボクを、引き離すように。
きみをすっかり、大人びさせている。
怖いね・・・そのオトナっぽさ。
正直に、告白すると。
ボクも正直にいうね、と、小声になって。
今夜、キミのところに行ってもいい?
・・・ドキドキしながら、うなずいていた。

真っ暗にした、勉強部屋で。きみは別人のように、息荒く、迫ってきて。
ボクを力ずくで、押し倒して。
あれよあれよ・・・と思うあいだに。
首のつけ根のあたりに、唇をつけられていた。
ひやりと濡れた唇に。
冷たいね。
ボクがささやくと。
暖めてね。
きみの声は、ひくく上ずっていた。

生暖かく濡れたワイシャツを、さっぱりと脱ぎ捨てると。
ひとを襲ったときはね。あいての服を記念にもらうことになっているんだ。
持ち主の血が、ちょっぴり滲んだやつをね。
このワイシャツ、もらっていくよ。
そういいながら。
きみに求められるまま、身につけていた、学校の制服の、紺色の半ズボンの下。
じりじり飢えた唇を。
ひざ丈の長靴下ごしに、吸いつけてきて。
ふくらはぎの周り、ハイソックスがずり落ちるほど。
たんねんに。しつっこく。いたぶり抜いていった。

男子生徒制服(夏服)
白のワイシャツに、学校の指定する濃紺または白の半ズボン。
靴下は半ズボンと同色のひざ丈のものを着用する。
原則として、体育系サークル所属の生徒は厚手のリブタイプのものを、
文化系サークル所属の生徒は、ストッキング地のものを着用する。

貴族のような品格を・・・って、校則には書かれていたけれど。
風変わりな制服に、ボクがはじめて実感したのは。
ちょっぴり不埒な、きみの仕打ち。
長い靴下に欲情するやつが、いるんだなっ、て。
いつもの気弱な男の子に戻って、ごめんね・・・とつぶやくきみの頭を、まるで兄のように撫でながら。
ボクのハイソックスが、気に入ったなら。いつでも、イタズラしに来るんだよ。
そんなふうに、囁いている。
今夜、行ってもいい?
きみがそう囁くたびに。
ボクは、黙ってうなずいて。
いつも学校に履いていく紺色のハイソックスや、サッカー部のストッキングを履いたまま、きみの唇に、気の済むままに、イタズラさせて。
太目のリブを、よじれさせていった。

今夜、行ってもいい?
いつになく、せつじつな目で。
後者の裏に呼び出したボクにつげたとき。
あぁ、いよいよきたな。そう思った。
今夜のきみの行き先は。ボクの家じゃないはず。
思いつめた唇が、おずおずと遠慮がちに開かれて。
マサコさんの血が、欲しいんだ。行ってもいい?こんや・・・
彼女には、話してあるの?という問いに。きみは悲しげにかぶりを振って。
とても告白する勇気がないよ。
泣きそうな顔して、うつむいている。
魔法に、かけちゃうつもりだね。
うん。そうだね。きっと。そのほうが、お互いにいいのかも・・・
告白されたって。困ると思うよ。まじめな子なんだから。
無理やり血を吸われちゃったっていうほうが。ボクへの申し訳もたつだろうしね。

常緑樹が夜風に揺れる庭先で。
ボクはちょっぴり寒そうに、身をすくめながら。
部屋のなか、かすかに灯された常夜灯ごし、
影絵のように浮かぶ、ふたつの影を。
目をこらして。息をつめて、見守っていた。
ケンの腕のなか。
マサコさんの、頼りないほどほっそりとした身体つきが。
意思のない人形みたいに、従順に。
うなじに口をつけてくるひとの、意のままになってゆく。
開け放たれた窓越しに。
ずずっ。じゅるうっ。
ほんとうに、飢えていたんだね・・・
きみは意外なくらい、露骨な音をたてながら。
彼女のうえ、獣のように、のしかかって。
ボクの許婚の生き血に、酔い痴れている。
彼女の魂を吸い取るほどに。
新鮮な処女の生き血と、引きかえに。
肌の奥深く沁み込まされていった、きみの毒液は。
彼女をどこまで酔わせ、狂わせたのだろう?
その日の朝からだった。
学校に履いていく濃紺のハイソックスを、厚手のリブタイプからストッキング地にかえたのは。
運動部の子は、リブタイプじゃないの?
そんな校則が、じつはあったのだけれども。
ウン。写真部にも、入ったから。
ボクは平然と、応えている。
真夜中の写真部。被写体は、ただふたりだけ・・・

マサコのとこと、キミのとこ。代わりばんこに通うからね。
でも、彼女のとこに行くときは。たまにはいっしょに、付き合ってね。
それ以上なにも悪いことしていないって。キミにみていてほしいから。
ボクにじゅうぶんな思いやりをみせながら。
いつか、彼女を呼び捨てにするようになっていて。
そのことに気づいたボクも、なぜか憤りを覚えずに。
ふたりきりに、なりたいときは。ボクにナイショで通えばいいさ。
ゾクゾクと慄えながら、声をうわずらせていた。

そんな夜が、幾晩訪れたことだろう?
ボクはどきどきしながら、きみの通い路を見守り、
控えめながら、もだえ、のけぞる婚約者の姿を目にしてゆく。
たまに・・・ボクの知らないあいだに逢っていることも。
彼女がもう、じゅうぶんに彼を意識して。
ボクの目を盗んで、逢瀬の時間をもっていることも。
それでいて、ドキドキするほどにきわどい一線を、かろうじて守りきっていることも。
すべてをそれとなく、知りながら。
綱渡りににた、危うい関係に、息が詰まるほど、昂ぶってしまっている。

血を吸ったひとからは、記念品をもらうんだ。
きみは逢うたび、マサコさんの着衣を剥いで。
つぎつぎと戦利品を、ものにしていった。
得意そうに、見せびらかされたものだけでも・・・
ピンクのネグリジェ。制服のネッカチーフ。真っ白なパンティ。
ストラップの切れた、真っ赤なブラジャー。
それに、黒のストッキング。
どお?服の下に隠された彼女の秘密まで、ボクもう覗いちゃっているんだよ。^^
かつてパパが、ママを犯されちゃったときみたいに。
ボクは苦い含み笑いで、愉しげに応えてしまっていた。
薄い靴下に履き替えたボクのひざ下と。
もともと薄手だった、マサコさんのストッキングと。
きみは夜ごと、代わりばんこに、舌を這わせて。
吸いつけた唇の下、ちりちりと裂け目を滲ませてゆく。

夕べは、彼女のところに行ったね?蒼い顔、していたぜ?
ウン。とても、美味しくて。ついもらい過ぎちゃったんだ。
てらいもなく、ほほ笑むきみは。
やおらボクの肩に腕を回して。
今夜はキミのとこ、行くからね。
ウン。彼女のストッキング履いて、待ってるから。楽しみにしておいで。
意外そうな顔で、ボクを見つめるきみに。
うっかり破っちゃったって、一足借りたんだ。ほんとうは履き替え、もってきてたんだけどね。

男子生徒(冬服)
濃紺のブレザーに、同色の半ズボン。白のワイシャツ。
寒いときには、半ズボンの下に黒のストッキングを着用してもよい。

そんな風変わりな校則が、ボクたちの学校には存在していた。
女みたいだ。
男の子たちは、口々に恥ずかしそうにいいながら。
それでもクラスでなん人かは、決まって黒ストッキングを履いているやつがいる。

いつもおなじ手で。マサコさんから黒のストッキングをせしめて。
彼女はどこまで心得ていたものか。
おニューじゃなくても、いいかな?って。
いちどは脚をとおしたやつを、ボクに渡すようになっていた。
二度、噛まれちゃってるみたい。
クスリ、と洩らした笑みに。
すっかり、ばれているかな?
って、思ったけれど。
ある晩。きみが訪ねて来たときは。
えっ?
ほんとうに、びっくりした。
鼻高々に、おおきな紙袋の口を開いて。
中から取り出したのは、女子生徒の夏用制服がひとそろい。
着てみてくれる?キミなら、着てくれるよね?
マサコさんから、借りてきたんだよ。

おそるおそる袖を通して。頭からかぶるようにして。
生まれて初めて着た、セーラー服。
鼻先をツンとよぎるのは、防虫剤のほのかな香り。
この季節に、夏服なんだね?
そのほうが、血が映えるだろう?
ウフフ・・・って。含み笑いを滲ませて。
きみは牙をむき出しにして、いつになくワイルドに迫ってくる。
逃げてみても、いいんだよ。抗っても、いいんだよ。
そういうきみの言葉に、踊らされるように。
ボクは部屋じゅう、転げまわって。凌辱されていった。

あのときのあなた・・・じぶんが襲われてるみたいにドキドキしたわ。
キミがイタズラっぽく笑って、告げてくれたのは。
結婚して、もうなん年も経ってからだった。