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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

母を法事に連れ出す。

2019年02月12日(Tue) 07:21:01

「どうしたの、その格好?」
待ち合わせた駅のホームで、母はわたしを見て目を見張った。
息子夫婦と待ち合わせたはずなのに、そこに肩を並べて佇んでいる2つの人影はふたりとも、婦人ものの喪服を身に着けている。
近づいてよくみると、そのうちのひとりは自分の息子だった。
それは、どんな母親でも驚くだろう。
女の自分を母に見せるのは、美奈子の田舎でひと晩過ごした後で良い――わたしはそう思っていた。
けれども美奈子は、ここを出る時から女の格好でいるべきよ、と、わたしに言った。
もしもお義母さまがほんとうに筋金入りの堅物なら、女装したあなたを見て愛想を尽かして帰るでしょう。
お義母さまがそういうひとなら、あそこには行かないほうが良い――彼女はそういったのだ。
あそこでの営みが耐えがたい辱めにしかならないというのなら、さいしょからお義母さまにそういう経験をさせるべきではない。
同じ女として、それは残念過ぎることだから。
たしかに美奈子の言い分は、もっともだった。
わたしは勇気を出して、洋装のブラックフォーマルを身にまとい、黒のストッキングの脚を駅頭の風にさらした。
申し合せたように黒のストッキングに染まった三対の脚は、そのうち一対がたじろいだように半歩下がり、
行儀よくかかとをそろえてまっすぐに立ち、それから意を決したように他の二対と同じ方角へと歩きだしていた。
実家に残してきた父の写真に、彼女は顔向けすることができるのだろうか。
ふとかすめたそんな不安を正確に読み取って、わたしと向かい合わせに座った美奈子は、確信に満ちた笑みを投げてきた。

「伺うのは美那子の実家だけれども、美奈子と同郷である前のご主人とわたしは親友なので、墓参りもする。
 それが再婚の条件だから。
 でも、わたしが男の姿でいくと前のご主人が妬きもちをやくかもしれないから、女の姿でお参りをする」
母にはそういう言い訳を用意していたけれど、どうやらわたしの女装趣味はとっくに、カンの良い彼女のアンテナに触れていたらしい。
「前からそんな気はしていたけれど」
という母のつぶやきを、美奈子も、敏感になったわたしの鼓膜も、とらえていた。

美奈子の実家の敷居に、母が黒のストッキングに包まれたつま先をすべらせるのを、わたしは胸をドキドキはずませながら盗み見ていた。
そんなわたしを、美奈子は面白そうに窺っていた。
母は美那子のお父さんに向って、「お世話になっております」と、頭を下げた。
尋常な礼儀正しさを示す母に、義父もまた田舎めいた慇懃さを表に出して、応じてゆく――
母の写真を見ていちばん昂奮した男が、表向きの礼儀正しさを完璧に装うのをみて、
やはりこの土地の人たちは油断がならないと思った――もちろん、自分のことは棚に上げて。
初めて見せた母の写真を前に、「うっ、ひと目見ただけでおっ勃っちまう!」なんて騒いでいたくせに。
もっともらしい顔をしてお辞儀をし合っていてもきっと、これは夫婦の固めの杯だとか、どうせいけすかないことを考えているに相違なかった。

夜の宴に合わせて、三々五々、周囲の者たちがなん十人となく、集まって来る。
美奈子の叔父もそのなかにいた。
彼がはじめから美奈子を目あてにしていることを知りながら、わたしは彼とも親しげにあいさつを交わす。
先方も嬉しそうに、「やあ、いらっしゃい」と、歓迎してくれた。
はた目には、縁故が濃いわけでもないのに遠来の客を新設に迎える遠縁の人にしか、見えなかったはずだ。
いや、じっさいには美奈子を通して、ほんとうに濃い関係なのだが。
美奈子が初体験を済ませた相手がこの叔父で、それ以来祐介と結婚してからも、
里帰りのたびに情交を重ねてきた間柄。
わたしもまた、彼と美奈子との関係は尊重することにしていた。
美奈子とわたしとを、ふたりながら初めて征服したのも、彼だったから。
「未来の妻となる美奈子を犯して下さい」――わたしにそんなことを口にさせて悦に入る、わたしといい勝負の変態だった。

初めてわたしを犯した祐介のお父さんも、やって来た。
彼とも初手は、ごく慇懃に挨拶を交わしてゆく。
傍らから挨拶を交し合うふたりを目にした母は、まさかこの男が息子を女として征服しただなんて、思ってはいないだろう。
もっとも彼は、別れぎわわたしのお尻をスカートのうえから勢いよくボンと叩いて、周囲を笑わせていたけれど。

わたしのときには、さいしょのひと晩はそのまま寝(やす)ませてくれたけれど、
母のときには、宴はさいしょの夜から始められた。
美奈子の父親が、母にぞっこんになってしまったからだった。

真夜中。
宴がたけなわを迎えて、灯りが暗く落とされると、いつもの組んずほぐれつが始まった。
わたしの傍らで押し倒された美奈子の叔母は、「あとで・・・ね♪」と、わたしに目配せをした。
似通った面差しの叔母と姪――この村への”帰郷”が思った以上に頻繁になったのは、彼女の存在も理由のひとつになっていた。
わたしのうえには、息せき切った祐介のお父さんがのしかかっていた。
スカートのなかに突っ込まれた節くれだった掌はさっきから、ストッキングを波立てながら荒っぽい愛撫をくり返しはじめている。
母のほうを見ると、さいしょはなにが起きたのかわからなかったらしい、ちょっとびっくりしたような顔をしたが、
迫って来た美奈子のお父さんに、そのまま押し倒されていった。
美奈子は自分の父に手を貸そうと、母の両手首を抑えつけようとしたけれど、
母は「だいじょうぶですから」と、やんわりと美奈子の干渉を拒絶した。
そして、圧しつけられてくる唇を目を瞑って受け止めると、
喪服のブラウスのうえから乳房をなぞるようにまさぐる掌を、這いまわるままにさせていった。
賢婦人といわれた母。
自分から応えることは決してしなかったけれど、動じることなく毅然として、相手の男性の劣情に、身を任せていったのだ。

翌朝、母は鏡に向かって、墓参のための化粧をたんねんに施していた。
「そろそろいいかな」と声をかけるわたしに、「エエ、いつでもよろしいわ」と、鏡を見ながら応える母。
いつもと変わらぬ凛とした雰囲気ををたたえていた。
ちょっとからかってやりたくなった。
「夕べは母さんらしくなかったね」
「そんなことないでしょう」
母は鏡から目を放さずに、こたえた。やはりいつもと変わらないトーンだった。
「うちに置いて来た父さんの写真を思い出して、父さんごめんねって手を合わせましたから」
父さんごめんねで片づけられてしまうのか――女はやはりしたたかだ。
婦人ものの喪服を身に着けているのも忘れ、わたしは思った。
まだまだ女には、なり切れていないみたいだな、と。
言葉を途切らせたわたしに、今度は母がいった。
「母さんらしくないことを言うようだけど」
「なあに?」
「今朝のお化粧、美奈子さんのお父さまのためにしているのよ」

あのかた、やもめ暮らしが長いんですって?
再婚は法的にどうだかわからないけど、まだ私もだれかに尽くしてみたい気もするのよ。
もっともああいう方だから、母さんを未亡人のまま抱きたい・・・なんて仰るかもしれないけれど。

楚々とした母の横顔に、女の表情がよぎるのを、わたしはただ立ち尽くして見つづけていた。
背後からは、朝っぱらから自分の叔父と戯れている美奈子の声が聞こえる。
淫らな静けさを漂わせた田舎の早い朝が、始まろうとしている――

親友の未亡人

2019年02月12日(Tue) 06:34:55

この世を去る間際、親友の祐介は、わたしに言い残した――美奈子をよろしく頼む、と。
祐介は学生の頃からの親友だった。
女装趣味に走ったわたしは30になっても独身をとおしていたが、祐介はそんなわたしにも分け隔てなく接してくれたし、
時には奥さん公認で、女の姿でのデートにも応じてくれた。
もっとも祐介は、奥さんを裏切ったことはなく、セックスの関係はなかったけれど。
こんなわたしでは、美奈子さんが気の毒だ。
結婚に自身を持てないわたしは言った。なによりも、親友の早すぎる死を受け入れることができなかった。
けれども祐介は言いつづけた――きっとうまくいくから。お前も幸せになれるんだから。
祐介がいなくなってから一年経っても、彼女の意思が変わらないのを確かめてから、わたしは美那子と結婚した。
初めて美奈子を抱いた夜は、祐介の命日だった。
法事のかえりに祐介の家に立ち寄り、喪服姿の美奈子にムラムラッときたときには、もう遅かった。
理性の消し飛んだわたしは、祐介の写真のまえで美奈子を抱きすくめていた。
たたみの上に抑えつけられたままの格好で、美奈子はわたしを抱きとめながら、いった。
「祐介の前で、しよ」
――わたしは美奈子の唇を、夢中になって吸い始めていた。

2時間後。
わたしたちは2人肩を並べて、祐介の写真の前で深々と頭を垂れて、将来を誓っていた。

祐介と美奈子は、同郷だった。
初めての里帰りは、祐介の墓参も目的のひとつだった。
美奈子はともかくとして、わたしまで受け入れてもらえるとは思っていなかったので、
夫婦で泊れるようで近くの街にホテルを予約していたのだが、
村の人たちはわたしにも分け隔てなく接してくれて、「いっしょに泊まっていきんさい」と、地元の言葉で言ってくれた。
もっとも方言のきつい土地なので、何をしゃべっているのか、ほとんど聞き取ることができなかった。
ただ、彼らの温和な顔つきで、わたしも歓迎されていると伝わってきた。

村に到着したのは夜だった。
美奈子の実家の人、祐介の実家の人、その近所の人、そのまた親戚の人。
あの広い祐介の実家に、いったいなん十人の人が招(よ)ばれてきたのだろう?
男たちはそろって赤ら顔で、女性たちはそろって、美奈子と同じように色白で気品があった。
四十五十のご婦人でも、えもいわえれない色気を漂わせていた。
翌日お参りに出かけるときのこと。
祐介との約束で、わたしは婦人ものの洋装の喪服姿で墓参をすることになっていた。
おおぜいの人たちのまえで、洋装のブラックフォーマルを身に着けた姿をさらすのは、ちょっと勇気が要ったけれど。
都会の通りではかかとの高いパンプスを履きこなせるほどの経験を持っていたこともあって、
いちど視線を浴びてしまうともう、ふつうに振る舞うようになっていた。
「だいじょうぶ、私も祐介も、あなたのことしゃべっているから」という美奈子の言葉も、背中を押した。

異変が起こったのは、墓参をした日の夜のことだった。
その夜も、身内の宴が用意されていた。
わたしも美奈子も、墓参帰りの洋装のブラックフォーマルのまま、宴席に連なった。
夜中を過ぎて、酔いもかなり回ったころ、突然照明が落ちた。
停電ではなかった。なぜなら、オレンジ色の小さな照明だけは灯っていたから。
けれども、影絵のようになった人影たちは、てんでに組んずほぐれつ、妖しい舞いを舞い始めていた。
それがなにを意味するのかを、わたしは瞬時に覚った。
宴がたけなわを過ぎると、既婚未婚の見境なく、相手かまわず交わる風習――
目のまえでそれを見て体験するとは、夢にも思っていなかった。
すでに美奈子のうえには、美奈子の叔父がのしかかっていた。
やめさせようとする手をさえぎった人影は、わたしを押し倒し、唇を重ねてきた。
相手は、祐介の父親だった。
「あっ・・・それは・・・」
とっさに抗おうとしたけれど、思わずあげた悲鳴は女声になっていた。
祐介のお父さんは強引にわたしの唇を奪うと、「うちの嫁と乳繰り合っておるんだな」という意味のことを土地のことばで囁いた。
地元の方言のきついかれの言葉は、それまでほとんど聞き取ることができなかったのに、この咄嗟の場での囁きだけは、ひどく鮮明に鼓膜に伝わった。
「え、ええ・・・」
不覚にも応じてしまったわたしはいつか、強引に奪われた唇で、せめぎ合うように応じてしまっていた。
黒のパンストを唇でなぶられながら脱がされてゆくのを、わたしは脚をくねらせながら応じていって、
そんなわたしの様子を美奈子は、わたしでも祐介でもない男に抱きすくめられながら、顔を輝かせて見入っていた。

宴は明け方までつづいた。
そのあいだにわたしは、祐介のお父さん、美奈子のお父さんに弟、さいしょに美奈子を犯した美奈子の叔父・・・と、
限りなくなん人もの相手をつとめ、昂ぶりながら応じてしまっていた。
美奈子もまた、なん人もの男を相手に、交接に興じていった。
「お久しぶり」「すっかり女ぽくなりおって」
切れ切れに聞き取れるそんなやり取りから、美奈子が結婚前からすでに、おおぜいの男たちと交わってきたことを知った。
「お婿さん、さいごにビシッとキメてや」
だれかに言われるままに、全裸になっていたわたしは、さいごに美奈子を抱いた。
衆目の見つめる前フィニッシュを遂げたとき、祐介の写真のまえで初めてイッた夜のことを思い出した。
「どっちもこなせるなんて、良い婿さんだな」
傍らから聞こえたその声は、明らかに称賛の意思を帯びていた。
そしてわたしは、この夜を境に、初めはひと言も聞き取れなかったこの土地の方言を、聞き取れるようになっていた。

村を訪れたときには、一対の夫婦の姿をしていたけれど。
都会への帰りは、すすめられるままに、婦人もののスーツ姿で美奈子と肩を並べていた。
「またおいでなさいや、法事のときじゃなくても良かから」
すっかり馴染みになった祐介のお母さんが、優しく声をかけてくれた。
「エエ、すぐ来ます」
私に代わって美奈子が、イタズラっぽく笑って答える。
「この人も、来たがると思いますから」
照れ笑いを視られまいとして、わたしはわざと横を向いていた。
祐介のお父さんは、いった。
「あんたのお母さん、後家さんなんだってな?よければこんど、連れてきなさい」
美奈子のお母さんも、いった。
「みんなで仲良くなりゃええからね」
母は評判の賢夫人だった。
都会育ちの気位の高い母が喪服姿をはだけられながら犯されてゆくのを想像して、
わたしはスカートのなかで思わず、股間を逆立ててしまっていた。

都会育ちの若妻、村の風習にまみれる。

2019年02月10日(Sun) 09:11:28

磯辺の息子の晴也が妻の香澄を伴って村を訪れたのは、両親がこの地に移り住んだ翌年の夏のことだった。
そして、自分の両親がこの村で体験した不思議な話を聞かされた。
香澄は遠慮しようとしたが、義父は「香澄さんにも聞いてもらって構わない」といって、
赴任してすぐ、お母さんに夜這いに協力してほしいと頼み込まれて引き受けたこと、
それでもどうしても、お母さんを本気で好いている人以外にゆだねる気にはならないと訴えたこと、
ところが意外にも、お母さんが親切に面倒を見た男の人が、お母さんのことを好きになってしまったと告白してきたこと、
ひと晩だけのつもりでその人とお母さんとを逢わせてやったが、お母さんもその人のことを好きになって、
いまでは一緒に暮らしていることを告げた。

晴也はいった。
「だとするとお父さんは、お母さんに素敵な恋をさせてあげたことになるんだね」
息子の意外な言葉に磯辺は驚いたが、「お前がそう受け取ってくれるのなら、母さんもよろこぶはずだ」とこたえた。


ひと晩両親の家に泊まると、地元の若い衆に誘われるまま、晴也はつまといっしょに山に山菜取りに出かけた。
若夫婦の目当ては地元の新鮮な山菜であったが、
若い衆たちの目当てはもちろん、磯辺の息子が伴った若妻の新鮮な肉体だった。
人目のない山奥にまで来ると、三人の若い衆は、息せき切りながら若夫婦をふるい山小屋に引き入れた。
そこは、彼らが夜這いをかけた人妻を呼び出して、ひと晩じゅう愉しむために作った隠れ家だった。
山小屋に誘い込まれた晴也はあっという間に三人がかりで縄で柱に縛りつけられて、
びっくりして声も出ないでいる香澄は、やはりあっという間に男どもの猿臂に縛りつけられるようにして、犯された。
村の若い衆たちは、都会の洗練された装いの若妻を手籠めにして、好き勝手に熱情を注ぎ込んでいった。

予定通り山菜取りを終えた彼らは、若夫婦を磯辺の家の近くまで送り届けた。
若い衆の頭だった一人は、自分の居所を描いたメモを香澄に渡して、
夫の晴也には、逃げも隠れもしない、おれのしたことが罪だというのなら、訴えてもかまわないと告げた。
そして、「急なお願いだったのにご夫婦でこたえてもらって嬉しかった」と、不思議なことを口にした。

ふたりきりになると、香澄は晴也にいった。
「ねえ、もう一度してもらおうよ。あたし、三人がかりなんて初めて。凄く感じちゃった♪」
晴也があきれていると、「あたしもお義母さんみたいな、素敵な恋がしてみたい♪」と訴えた。
そしてさいごには、「晴也が嫌なら私一人でも行く♪」とまで、言ったのだ。
晴也は仕方なく、新婚三か月の妻に素敵な恋をさせてやることにした。

妻はノリノリ、夫は渋々なのを、迎え入れた若い衆たちはひと目で見抜いた。
けれども夫の渋々は、世間体を気にしてのものだということまで、見抜いてしまっていた。
彼らは晴也に対して、「こないだは縛ってゴメンな。きょうは一緒に楽しもう♪」と告げた。
村の男衆たちが息荒く香澄に挑みかかってゆくのを見せつけられた晴也は、
自身も不可思議な昂ぶりを覚えて、彼らに促されるままに妻の身体にのしかかっていった。
意外にも香澄が抵抗したことが、晴也の性欲に、かえって火をつけた。
愛欲まみれの一日が過ぎると、彼らはすっかり、兄弟のように仲良くなっていた。
「こんどはうちの嫁を抱かせてやる」という誘いに乗る晴也を、香澄は睨みつけたけれど。
「その留守は俺たちがお邪魔するから」
という三人の申し出は、決して拒否しなかった。

「お義母さまは純情だから、お1人がいいみたいだけど――
 あたしはおおぜいの男子にモテるのがいいな。
 もしかしたらあたし、多情なのかもしれない――こんなお嫁さんでゴメンね」
そういう香澄を許すという意思表示の代わりに、晴也は熱いキスを交わすのだった。

「子どもができるまでは、ほどほどになさいね」
姑の香奈江は、嫁の香澄をそういって送り出す。
若い嫁の生き先は、女ひでりの若い衆たちの乱交の場。
夫である息子でさえ、その交わりを許してしまっている。
そして自分は――
夫の留守中に、同居している年上の男のために都会の装いを着飾って、犯されてゆく。
出かけたはずの夫は、きょうも庭先から息をひそめて、妾(わたし)の痴態を昂ぶりながら見つめつづけるのだろうか――

都会育ちの熟妻、夜這いの風習にまみれる。

2019年02月10日(Sun) 08:48:36

都会でのぜいたく暮らしの末、破産寸前になった磯辺は、勤務先の計らいで人里離れた村里へと転勤を命じられた。
その土地は会社の創立者の生まれ故郷だった。
磯辺は妻の香奈江を伴って赴任したが、その直後上司を通じて、奇妙な申し出を受ける。
この村では夜這いの風習がまだ残っているので、奥さんにも協力してほしいというのだ。
磯辺はうろたえながらも即座に断るが、上司の依頼はくり返しつづけられた。
創立者は、過疎化にさらされた生まれ故郷のことを気にしていて、
女ひでりになっていたこの村に若い女性を補充するために、自分の社員やその妻たちを移り住まわせていたのだ。

磯辺は訴えた。
「ひとの大事な妻をもてあそぶとは何事か。わたしの妻を本気で愛するつもりもないくせに!」
ところが意外にも、村川と名乗る一人の男が名乗り出た。
怪我をしているところを行きずりの奥さんに助けられた、親切にしてもらってとても惹かれたと。
村の夜這いは原則として不特定の相手と交わることになっていたが、例外的にだれかが一人の人妻を独占することも認められていた。
村川は磯辺よりも10歳も年上で、つれあいに先立たれていた。
村の衆たちは、若かったころの村川が、その妻を気前よく夜這いに差し出していたことを知っていて、
村川であれば来たばかりの都会妻さんを独り占めにしても認めると口をそろえていった。
ひととおりではない借金を棒引きにしてもらった見返りに、観念した磯辺は妻に夜這いの協力をさせることを約束した。

妻の香奈江は夫でもない男に抱かれることを嫌がり、貴方にも息子にも顔向けできなくなると訴えた。
磯辺は、いままでの義理もあるのでひと晩だけは相手をしてもらう、
そのうえで、もしもどうしても厭だったら、その時には私から断ってあげようと請け合った。
未経験の妻が抵抗することを見越した村の衆たちが、磯辺にそのようにしても良いと事前に告げていたのである。

夫が夜勤に出た夜、香奈江は初めて村川を自宅に迎え入れる。
そして戸惑い、うろたえながらも、男の腕に抱きすくめられていった――
一夜明けて帰宅した夫は、そこにいままでと変わりない妻を見つける。
ひと晩の情事のあとをきれいに拭い去った妻は、夜勤明けの夫を優しく迎え入れ、何ごともなかったかのように振る舞うのだった。
香奈江は、夕べのことはなにも語らなかった。
そして、今後夜這いを受け容れるのは勘弁してほしい――とも、口にしなかった。

それ以来、香奈江は週にひと晩の頻度で、村川を自宅に迎え入れた。
いつも、夫のいない夜だった。
そして、朝までまぐわい続けると、夜勤明けの夫を優しく迎え入れた。
朝から着飾って自分を迎える妻を見て、村川は思った。
この身体が夕べ、わたし以外の男の身体を受け入れたというのか――
得も言われぬ昂ぶりに胸を焦がしながら、磯辺は久しぶりに妻を強引に抱きすくめた。

村の衆たちは、周囲の評判を気にする磯辺を気づかって、磯辺の妻と村川の関係に、いっさい触れようとしなかった。
磯辺にも、その気遣いは伝わっていた。
村川はやもめだったが、磯辺から香奈江を取り上げようとはしなかった。
狭い村のことだから、2人が顔を合わせる機会は随所にあった。
けれども村川は終始磯辺に対して、都会の大学を出たエリート社員への敬意を忘れなかった。
磯辺は、村川を妻の愛人として受け容れる気持ちになっていた。
彼は、夜勤を週二回引き受けたいと上司に願い出た。
転任してきてから三か月経つと、香奈江と村川の逢瀬は週に3回となった。
週3回の夜勤が体力的にこたえた磯辺は、香奈江にいった。
「村川さんがお前に逢いたいと言ったら、わたしがるときでも出かけて行ってかまわない」と――
やがて村川は、磯辺の招きに応じていままでの家を引き払い、磯辺夫妻と同居するようになった。
そして、磯辺夫人の用心棒兼愛人として、夫の磯辺が不在の時はもちろん、
彼が居合わせているときでも、磯辺夫人と愛し合うようになっていた。

息子夫婦にあらいざらいその話をしたのは、彼らが村に赴任してきた直後のことだった――

三つの鐘 ~祝・ご入学~

2019年01月19日(Sat) 07:08:55

不思議な風景に、貴志は胸をときめかせていた。
ひと月ほど前だったら、とても想像さえできない光景だった。
そのころはまだ、ゆう紀とは婚約をしたてのころだった。
親たちのすすめで、父親の同僚の娘さんという人とお見合いをさせられて。
十代の婚約は決して早くない、街のためにはとても良いことなのだと聞かされていた。
両親はまだ、その街に赴任したことはなかったけれど。
父親の勤務先の創業者が、不採算を承知のうえで設置したその街の営業所に勤めることは、エリートコースのひとつだとさえ、いわれていた。
「父さんもその街に赴任することがあるの?」
と訊く貴志に、
「さあ、どうだろうね?」
と、父親はちょっとだけ困った顔をしてなま返事をしたものだったが、
そのときにどうして父さんの返事がはっきりしないものだったのかは、いまの貴志にはよくわかる。

高校受験の時期が、近づいていた。
進路を母親に聞かれたときに、貴志が口にした学校名は、その街に所在する私立校だった。
大きく目を見開いた母親の美晴をまえに、「ぼくひとりでもあの街に行きたいんだ」と、貴志は告げた。
中3という若さで父親の同僚に処女を捧げた婚約者のゆう紀も、その学校に進学する予定だと、親たちも聞かされていたらしい。
「反対しにくいわね」と、貴志のいないところで美晴は夫の継田にいった。
継田家がその街のしきたりにまみれてしまう日もそう遠くないと、継田も予感せざるを得なかった。

合格通知が届くと、貴志はすぐにでも街に移りたがった。
「嘉藤の小父さんの家から通ってもいいって、言ってくれてるんだ」
息子がどうして同僚とそんな関係を結んだのか、継田にはわからなかったが、新たに費用を出して息子のためのアパートを借りるよりは安上がりだな、と、安直に思った。
まさかその嘉藤に、まな娘が日常的に汚されていることなど、そのときの継田にはまだ、思いもよらぬことだった。

貴志はいまの学校の卒業式も、セーラー服を着用して出席した。
「恥かしくないから。いまのクラスメイトとは、もう会わない関係だから」
貴志はそう言い張って、背広姿の父親と、スーツ姿の母親とともに、白のラインが三本入ったセーラー服姿で肩を並べて歩いた。
「良い時代になったってことなんだろうね」
継田は自分の気持ちを整理しかねながらも、自分自身に言い生かせるように美晴にいった。
美晴は継田よりもすこし前から、貴志が妹の制服を着て学校に行きたがっているのを知っていたし、
夫には内緒で一度ならず、女子の制服を着用して通学することを息子に許してしまっていた。
もちろんそんな彼女も、まな娘や息子の許嫁が、嘉藤に日常的に汚されつづけていることなど、思いもよらぬことだった。

その両親がいま、この街をいっしょに、歩いている。
街の学校はブレザーだったが、
貴志は同じクラスの男子生徒とはボタンのつき方が正反対のブレザーを着、
グレーのプリーツスカートのすそをひざの周りにそよがせて、
濃紺のハイソックスに包んだふくらはぎを見せびらかすように、大またで闊歩していく。
この街への転勤を希望した父親が、母親を伴ってこの街に来た時、貴志は父親の首すじに赤黒い痕がふたつついているのを発見した。
たぶんそれは、自分が嘉藤につけられた首すじの痕と、同じ間隔のはず。
父親は母親よりもひと足早く、同僚と和解をしたらしい。
嘉藤がまな娘と息子の嫁になる少女と契り、息子までも女として愛し抜いていることを、受け容れていたのだった。
そしていま父親は、まだなにも知らない母親の美晴を伴って、嘉藤の家を訪問しようとしている。
入学式の帰り道のことだったから、いつも質素な美晴も、小ぎれいなグリーン系のスーツで着飾っている。
けれども、この日のためにきちんとセットされた、ゆるいウェーブの黒髪も、
たんねんに化粧を刷かれた色白の豊かな頬も、
純白のブラウスの胸もとで清楚に結わえられたリボンも、
折り目正しく穿きこなされたベーズリ柄のスカートも、
脚に通した真新しい肌色のストッキングも、
ぴかぴかと光る黒のエナメルのハイヒールさえも、
あと10分と経たないうちに、夫よりもはるかに年上の暴漢の手にかかって、
持ち主の血潮を点々と散らされながら、弄ばれ嬲り抜かれてしまうのを、
貴志も、父親の継田さえもが、予感していた。

けれども美晴はきっと、快楽の淵に堕ちてしまうだろう。
娘や息子の血の味を通して、彼女もまた、貞淑妻の裏側にマゾヒズムを秘めていることを、読み取られてしまっているから。
折り目正しい正装に不似合いなあしらいを受けてうろたえた母さんが、
服を破かれ肌を露出させながら狂わされてゆく――
そんな光景を、父親とともに歓んでしまおうとしている自分が、呪わしくもほほ笑ましかった。
そして、堅実な良家の主婦を堕落させることを嗜好のひとつとしている嘉藤に、
永年連れ添った自分の愛妻を気前よく添わせようとしている父親の気前の良さも、呪わしくてほほ笑ましかった。
両親から受け継いだマゾの血が、いまでも貴志の全身に育まれ、脈打っている。
女子の制服を身に着けたその身に廻るぬくもりを抱きしめるように、貴志はひそかに自分の胸を抱いていた。

ボ~ン。
この街に持ち込まれた岩瀬家の古時計が、嘉藤の邸の奥で刻を告げた。
午後一時。
それは、継田夫人の貞操が喪失されると予告された時刻だった。
放恣に伸び切った白い脚には、裂かれた肌色のストッキングが、まだ切れ切れに残っていた。
自分を組み敷いている獣の欲情に応えはじめてしめてしまっている自分を呪いながらも、
美晴は夫と息子の見つめる視線を痛痒く受け止めながら、男に迫られた熟女としての役目を果たしはじめようとしている。



あとがき
「谷間に三つの鐘が鳴る」という歌があります。
ひとりの人間の人生を、生れたとき、結婚したとき、この世を去るときと、三つの鐘で表現した歌です。
素晴らしい歌とは似ても似つかない、どうにも罪深い鐘の音が、この街では絶えず聞かれるようですね。

美姉妹の葛藤を描いた前作を受けて、この三部作では妹娘の婚約者の変貌を描いてみました。
第一話では貴志の妹が添え物のように犯され、
第二話では貴志が女子生徒として犯され、
第三話では貴志の母が入学式のスーツ姿で犯されていきます。
母や妹、婚約者を寝取られてしまうことは、自身の初体験と同じくらい、深い意味をもっていると思われます。

三つの鐘 ~セーラー服の初体験~

2019年01月19日(Sat) 06:30:03

ボーン。

岩瀬家の古びた柱時計が、一時を告げた。
稚ない唇が、昂ぶりを帯びた股間の茎を、いっしんに咥え込んでいた。
たどたどしい舐めかたが、貴志を陶酔のるつぼに導いている。
その目線の先で、制服姿の遥希が、嘉藤に抱きすくめられていた。
遥希の制服は、都会らしいブレザータイプ。
薄茶のジャケットに赤のチェック柄のプリーツスカートをミニ丈に穿きこなして、
品行方正な白のハイソックスが、淫らな足摺りに翻弄されて半ばずり落ちたままふくらはぎを包んでいた。

「姉さんのときと、どっちが昂奮するの?」
自分の股間から顔をあげた上目遣いに、かすかな嫉妬が込められている。
結婚を約束した二人の間に、セックスの関係はまだない。
それはまだ、父親の同僚である嘉藤の特権であり続けていた。
フェラチオを覚えて間もないゆう紀の唇は柔らかで、生真面目なたんねんさで、恋人の一物をくまなくしゃぶり抜いてゆく。
同じ行為でも、姉の遥希とはだいぶ違っていた。
ゆう紀が抱かれている隣の部屋で遥希が貴志を慰めるときは、もっと挑発的な、なれたやり口だった。

自分の家にやってくる嘉藤は、出迎えた父親とはごくふつうに接していた。
そのなに食わぬ態度にむしろ、悪らつさを感じ取った貴志は、彼の態度に敏感になっていて、
父親が座をはずしたときに嘉藤が、母や妹をいやらしい目で盗み見るのを見逃さなかった。
まるで身体の輪郭を撫でまわすような目つきだと、貴志はおもった。
そのうち妹はすでに、両親の知らないところで、嘉藤の奴隷になり下がっている。
婚約者のゆう紀と交代でその嘉藤の家に妹を伴うという屈辱的な義務を、
それでも貴志は自分でも訝るほどの従順さで、果たしていった。
いびつな嫉妬が、この青年の感性を、鋭く育て上げようとしていた。

ソファに腰かけた貴志の前、ゆう紀はセーラー服姿のまま、姉との情事に見入る未来の夫を、唇で慰めつづける。
じゅうたんの上に拡がった、丈の長い濃紺のプリーツスカートに、貴志の目線が注がれた。
腰周りにまといつくスカートの、折り目正しい直線的なひだが、複雑に折れ曲がっているのを、薄ぼんやりと眺めていた。
「ぼくも穿いてみたいな」
「え・・・?」
顔をあげるゆう紀に、貴志がいった。
「ぼく、そのうちあのひとに、血を吸われるんだろ?」

そうね。吸われると思うわ。
嘉藤の小父さまは、父の血も吸っているの。
男の血はあまり関心がないって、口では言っているけれど。
奥さんや彼女を自分に捧げた男性の血は尊いって、いつか言っていたわ。
あなたの血にも、きっと興味あるはず。

「あなたの血にも、きっと興味がある」
ゆう紀の言いぐさに貴志はゾクッとした昂ぶりを覚え、その昂ぶりは股間を口に含んだゆう紀に直接伝わった。
「吸われてみたい?嘉藤の小父さまに」
「うん、それも、いいかも・・・」
「貴志くんも、やらしいね」
ゆう紀はクスッと笑った。
白い歯をみせて笑う白い顔はどこまでも無邪気で、まだなにも識らない十代の少女にしかみえない。
「ぼくも穿いてみたいって、なにを穿いてみたいの?」
「制服のスカート」
口にしてしまった言葉の異常さに、さすがに貴志は顔を赤らめたけど、
ゆう紀はまじめな顔をして、貴志を見つめつづける。
「ねえ、それって、私の制服?それとも、姉の着てるほう?」
はるちゃんの制服、かっこいいものね・・・と言いかけた言葉の裏にかすかに秘められた嫉妬に、貴志はうかつにも気づかなかったけれど。
彼は呼気をはやめながら、思ったままを口にしていた。
「きみの制服を、着てみたい」

貴志よりも少しばかり小柄だったゆう紀のセーラー服は、サイズがちょっとだけきつめだった。
それでも白のラインが三本走った袖は、貴志の手首を何とか隠していたし、
腰周りにギュッと食い込むスカートのウエストは、かえって少年の昂ぶりを高めた。
「制服は拘束具」だというけれど、貴志は別の意味でそうなのだと納得した。
腰の周りをユサユサと揺れる重たい濃紺のプリーツスカートは、ひざの下から入り込んでくる外気の空々しさには無防備で、
スカートの下でむき出しになった太ももを、ひんやりと撫でつける。
ひざ下までぴっちりと引き伸ばした真っ白なハイソックスの締めつける感覚にも、青年の皮膚を敏感になっていた。

「あの・・・」
女子生徒のかっこうになって嘉藤のまえに改めて立ったとき、貴志は心のなかが入れ替わるのを感じた。
身に着けたセーラー服が、彼を少女へと、塗り替えてゆく。
「恥ずかしい」
伏し目になった顔だちすらが、女の子の翳を帯びていた。
「似合っているよ、きみ」
嘉藤はそういうと、じゅうたんのうえにあお向けになった貴志の上に、荒い息でのしかかった。
セーラー服の肩をつかまれ、上衣の裾をまくり上げられ、胸を指でまさぐられる。
ゆう紀や遥希の胸をなん度もさ迷った手つきの巧みさに、貴志はわななきをおぼえた。
むき出しになった嘉藤の筋肉質で毛むくじゃらの脚が、重たい丈長のプリーツスカートを、じょじょにたくし上げてゆく。
嘉藤の荒い息に、貴志のはずんだ息遣いが重なった。
ふたりは、唇を重ね合わせていた。
ゆう紀や遥希、それに妹の彩音の素肌を這った唇――
その事実に慄然としながらも、貴志は行為をやめることができなくなった。
初体験のキスの相手が男だなどとは夢想もしていなかったけれど。
しつこく重ねられてくる爛れた唇のせめぎ合いに、なん度もなん度も、応えてしまっていた。

首すじに喰いついた牙が、自分の血を啜り上げるのを聞きながら。
股間から伸びたもうひとつの牙が、自分の股間を抉るのを感じた。
ゆう紀さんが夢中になってしまったのも、無理はない――貴志は思った。
これからもきっと末永く、ゆう紀さんはこの一物に、自分の操を蹂躙されつづけてしまうのだろう。
そして自分も、ゆう紀さんの結婚前の身体を、この男の劣情を慰めるために、悦んで与えつづけてしまうのだろう。
そして自分自身さえも、この男の情婦に堕とされて・・・女として犯されつづけてしまうのだろう。
両親がいまのこの光景を視たらどう思うのか?それは怖かったので、考えないことにした。
いまはただ、婚約者やその姉、そして彼の妹までも呑み込んだこの男の唇に、酔い痴れ続けてしまいたかった。

「母がいまいる街ではね、男子もセーラー服で通学できるんだよ」
ゆう紀がいけないことを、ささやいていた。
「ね。あたしたちも、あの街へ行こう。そして貴志くんも、女子生徒になっていっしょに学校に行こうよ」
ゆう紀のいけない囁きに、貴志は強く頷いていた。
「そうだね、ぼくもきみと同じ制服を着て、学校に行きたい」
「嬉しい!たまには気分を変えて、お姉ちゃんの制服を着ても良いからね」
いろんなことを見透かしてしまった悧巧すぎる少女の目は、それでも無邪気な輝きを失わなかった。

三つの鐘 ~少女たちの愉悦~

2019年01月19日(Sat) 05:45:16

ボーン。
岩瀬家の古めかしい柱時計が、一時を告げた。
貴志は蒼ざめた目線を、一瞬柱時計に注いだが、すぐに目線を元に戻した。
半開きになったふすまの向こう。
まだ稚ない婚約者のゆう紀が、セーラー服姿で、嘉藤に侵されていた。
これでもう、なん回目になるだろう?
すでにゆう紀は、貴志が覗いて昂っていることも、識っている。
それだというのに今は、結婚前にしてはならないことをしているところを、
未来の花婿に見せつけることに、快感を覚え始めてしまっている。

ねえ、貴志くんが見やすいように、ふすま開けておこうよ♪
そう提案したのは、ゆう紀の姉の遥希(はるき)だった。
初めて視られていると気づいたとき、さすがにゆう紀はハッと息をのんで、
両手に口を当てて貴志をまともに見つめていた。
「たっ・・・貴志くん?視ていたのっ!?」
震えて引きつった声が貴志を突き刺したとき、
まるで悪いことをしているのは自分のような気がして、貴志は顔を真っ赤にして俯いてしまった。
「いいじゃない、いいじゃない。貴志くんも愉しんでいるんだから――ふたり、お似合いのカップルよ」
貴志と自分との仲を姉が内心嫉妬していることに気づいていた妹は、
姉の言葉の真意をはかりかねて、それ以上に自分の過ちが招いてしまった状況のきわどさにうろたえてしまって、
なにをどう言っていいのか、わからないようすだった。
「ねえ、もう少しだけ、続けてみましょうよ。もうじき、煙草を買いに行った小父さまが戻っていらっしゃるから。
 そうしたらゆうちゃんは、小父さまをもういちど、満足させて差し上げるのよ」
貴志がゆう紀に向かって、ヘドモドと意味不明なお辞儀だけ残して隣室に戻ったのを見はからうと、姉はつづけた。
「貴志くん、けっこう愉しんでいるわよ。だから――ゆうちゃんも、もっと愉しんじゃおうよ」
状況を愉しんでしまっているらしい姉に、自分に対する揶揄が込められていないのを感じ取ったゆう紀は、
「そうするのがあなたの義務でしょ?」
と促す姉に、こんどはしっかりと頷きかえしていた。

再び戻って来た吸血鬼がゆう紀にのしかかるところをかいま見ながら、貴志は不覚にも股間を昂らせてしまい、
その昂った股間に、遥希の掌が、なだめるようにあてがわれた。
さいしょはズボンのうえからの愛撫だったのが、じょじょに大胆になって、
荒々しくジッパーをおろすとパンツのすき間から覗いた一物を揉みしだき、
さいごには唇を覆いかぶせて、噴き出す熱情のほとびを、慣れた口づかいで呑み込んでいった。

柱時計が真っ昼間の一時を告げたとき。
遥希はいつもそうするように、妹が犯されるのを視て昂っている貴志の股間を弄んでいた。
いつもとちょっとだけ状況が違うのは、傍らに少女がもう一人、あお向けに横たわっていることだった。
おさげ髪をじゅうたんの上に振り乱して、天井を仰いだ目は生気を失い、
それでもまだ意識がかすかに残っているのは、セイセイとせわしなく上下する細い肩からそれとわかった。
貴志の妹だった。
ゆう紀とは同級生で、なにも知らずに岩瀬家を訪れて、兄の目のまえで襲われて血を吸い取られた後だった。
おさげ髪を揺らしながらうろたえる少女の頭をつかまえて、嘉藤は獣じみた荒々しさで、そのうなじにガブリと喰いついた。
ふだん顔を合わせている同僚の娘に対する態度とはかけ離れたやり口に、
貴志の妹は目を回し、われを忘れた。
ゴクゴクと喉を鳴らしてうら若い血液を貪る男の意のままに、胸を揉まれ、股間をまさぐられながら、失神していったのだ。

美しい妹をきょうのご馳走の添え物のようにあしらわれたことに、貴志はマゾの血をよけいに昂らせてしまった。
「彩音ちゃん、だったよね?」
吸い取ったばかりの妹の血を口許からしたたらせながら、父親の同僚である嘉藤さんがかけた声に素直に肯くと、
「彩音です、よろしくお願いします」
と、神妙に頭を下げていた。

「良いのかしら?あんなに熱っぽくやっちゃって」
冷ややかに透きとおる遥希の声に、貴志はゾクッとした。
目のまえでは婚約者が、姦りまくられている。
そして、同じ危難に、妹までが巻き込まれようとしている。
もう少し大人になれば、もっと素敵な同年代の彼氏に恵まれるかもしれないか細い身体が、
父親よりも年上の男に汚されてしまうと知りながら、もうどうすることもできずにいたし、
妹の純潔が嫌らしい親父のひとときの性欲を解消するために蹂躙されてしまうという状況に、
身体じゅうの血管をズキズキとはずませながら昂りはじめてしまっている。

「よかったの?お兄さん?」
男の猿臂から解放されたゆう紀は、イタズラっぽい上目遣いで、恋人を見あげた。
「あ、ああ・・・うん・・・」
貴志の受け答えは相変わらずはっきりとしなかったが、真意は明確なのを、ゆう紀は見抜いてしまっている。

目のまえで、白いハイソックスを履いた妹のふくらはぎに、淫らな唇が吸いつけられる。
ふたたびの出血に真っ白なハイソックスを真っ赤に濡らしながら喘ぎはじめた妹の目が愉悦に狂い始めているのを、兄は見逃さなかった。

ゆう紀の手でズボンを脱がされるままに脱がされて、なん度めかの絶頂に近づいた股間の昂ぶりを、稚ない唇が包み込んでゆく。
姉を見習って、まだ不慣れな手つきがもどかしそうに、恋人の股間をつかまえた。
その手つきのもどかしさが、貴志をいっそう深い惑溺へと導いていった――

征服された妹娘

2019年01月17日(Thu) 07:18:21

お母さまはね、前に住んでいた街で恋をしたの。
お父さまは優しい人だから、お母さまがそのひとの恋人になるのを承知なさったの。
男の人がほんとうに女のひとを好きになると――
そのひとの裏切りすら、愛することができるようになるんだって。
信じるか信じないかは・・・・・・あなた次第ね。

姉の遥希(はるき)の口許からつむぎ出される、まるで呪文のようなひとり言。
妹のゆう紀は、聞くともなしに聞き入っていた。


お母さま、行っちゃったわよ。あたしたちを置いて。好きな人の棲む街に。
突き放すようにうそぶく姉の横顔を、ゆう紀はじっと見つめていた。
広いおでこの生え際を見せびらかすように、思いきりよく引っ詰めたロングヘア。
さらりと背中に流したその黒髪のすき間から、白い首すじが、これまた見せびらかすようにあらわになっていて、
その肌の白さの真ん中に、赤黒いシミのようなものがふたつ、数センチのへだたりをもって、肌の白さを翳らせていた。
「お怪我をしたの、お姉さま?」
ゆう紀の問いに遥希は薄っすらとほほ笑んでこたえた。
「怪我?・・・そうね、女の子は大人になるとき、怪我をするものなのよ」
あなたはまだ、なにも知らないのね・・・?
姉にそう指摘されたような気がして、ゆう紀はきまり悪そうに黙りこくった。

お母さまに手を出した人ね、お母さまの本命になれなかったの。
その人に悪いことをしたわ、つぐないたいのって、お母さまが仰るものだから。
だからあたしはその人に、初めての経験を差し上げたの。
あなた、あたしを悪いお姉ちゃんだと思う?
それともあなたも、あたしと同じ経験をしたいと思う?
え・・・いいの?
だってあなた、あなたには貴志くんって人がいるんでしょう?

長女の遥希には、まだ結婚を意識した相手はいなかった。
惣領娘(男兄弟のいない長女のこと)なのだから、お前は少し待ちなさい、と、父親からはいわれていた。
そして、次女のゆう紀のほうが先に、結婚相手が決まっていた。
まだ十代同士の婚約に、周囲はあまりの若さに驚いたけれど。
あの街ではこれがふつうなんですよという娘の父親の言いぐさに、同じ勤め先を持つ者たちは、無言の納得を示していた。

さいしょのときはね、お姉ちゃんが手を握っててあげる。
少しばかり痛いけど、声を出すのはガマンするんだよ。
あの人ったらね、痛そうに顔をしかめる女の子が、白い歯をみせるのが好きなの。


結婚してから夫となった人とだけすると聞いていた、あの行為。
恋人同士なら、ほかの人としてもかまわないのよ、とお母さまが囁いた、あの行為。
それをあたしは、結婚前に遂げようとしている。
相手の男が家に姿をみせたそのときになって、ゆう紀は初めて、身震いを覚えた。
いけないことをしてしまうという罪悪感と。
お母さまとお姉さまだけが知っていて、自分だけがまだ知らない未知の領域に足を踏み入れることへの好奇心と。
いったいどちらが、まさっていたのだろう?
そして意図的に顔をそむけた側には、婚約者である貴志への後ろめたさもまた、意識するまいとしても意識してしまっている。

「いいのかな?ほんとうに、いいのかな?」
姉に対する問いは、自分に対する問いでもあった。
けれどももはや、ゆう紀の純潔の行き先は、姉によって決められてしまっていた。
「もうここまできて、そんなことは言いっこなしよ。あたしが体験した男の人を、あなたも体験するの。
 お嫌?」
そこまで言われてしまっては、大人しい性格のゆう紀はもう、がんじがらめになってしまうのだった。

怖がらないでいいのよ。
お姉ちゃんが、手を握っててあげるから。
少しばかり痛くても、声をあげちゃダメ。
ご近所に、筒抜けになってしまうわ。あの家の娘はだらしがないって。
だから、あなたが声をあげないことは、家の名誉を守ることになるの。
――いいわね・・・?がまん。ガ、マ、ン。

のしかかってくる、自分の父親よりも年上の男をまえに、ゆう紀は悲壮な顔つきで、その刻を迎えた。
握り返してくる掌の力が痛いほどギュッとこもるのを感じて、姉娘は白い歯をみせる。
同級生のたか子ちゃんやみずきちゃんのときも、こんなだった。
あたし、痛いのって、好き・・・。
父親の上司だというその男が、目のまえで妹を汚すのを。
そしてその男の思惑どおり、妹が痛さのあまり白い歯をみせるのを。
姉娘は満足そうに見届けた。


どお?よかった?
いいのよあたしは。さいしょの刻だもの。ふたりきりにしてあげなくちゃ。
遥希の白い目線の先にいる少年は、
隣室で自分の父親よりも年上の男と息をはずませ合っている婚約者の横顔に、
目線をくぎ付けにしてしまってしている。
その頬が紅潮して、昂ぶりを見せていることに、遥希は自分の見通しが正しかったことへの満足感をおぼえていた。

ほんとうなんだね。男の人が女の子をほんとうに好きになると、その子の裏切りまで悦んじゃうって。
ふつうの女の子は、結婚前にこういうことをするのを、自分の結婚相手には見せたりしないものよ。
でもあなたは特別。
だから、きょうのパーティーに、あの子には内緒で、招待してあげたの。
あの子の処女喪失、あなたも祝ってくださるわよね?
うんうん、もう夢中で、彼女のお姉さんの声なんて聞こえてないっていうことね?

代わりにあたしのことを抱く・・・?って訊こうとして。
少女はそれを思いとどまる。こたえが想像できてしまったから。
どこまでいっても、私はわき役?
自分よりも先に結婚相手を得た妹への嫉妬を認めるのが怖くて、少女は口をつぐみ、目を背けそうになる。
その場を離れようとした遥希の掌を、強い力がギュッと抑えた。
貴志の掌だった。

ほら、お姉さん、視て御覧。せっかくの妹のあで姿なんだから。
示された指先のむこう、通学用のハイソックスだけを身に着けて全裸に剥かれたゆう紀が、
男と抱き合ったまま激しく腰を振って、息せき切ってその吶喊を受け容れている。
自分自身の初めての刻を思い出し、姉は顔を赤らめた。
ゆう紀さん、とってもきれいだね。ぼくはゆう紀さんのこと、惚れ直した。
ぼくが視に来たことは、ゆう紀さんには内緒にしておいてくださいね。
よかったらこれからも、パーティーに招待してくださいね。もちろん、時々でかまわないから。
ぼく・・・ゆう紀さんと結婚してからも、こういうパーティーを許してしまうかもしれないですね。
男として恥ずかしいけれど。

恍惚とした少年の横顔に引き込まれるように、遥希は少年の掌に、自分の掌を重ね合わせて、ささやき返す。
――ほんとう、ゆう紀の晴れ姿、とってもきれいだね。かわいいね。


あとがき
前作はあれでおしまいのつもりだったのですが、愛読者のゆいさんのリクエストを受けて初めて、インスピレーションが湧きました。
父親の上司を相手に処女を喪った姉が、妹も同じ運命に巻き込もうとするお話です。
自分よりも先に婚約者を得た妹や、自分たちを置いて恋人の元に走った母親への複雑な気持ちを描いてみました。
妹の初体験を一緒に目にした妹の彼氏に、彼女は父親をみていたのかもしれませんね。

「逆」単身赴任。

2019年01月06日(Sun) 08:06:46

夫が出勤の用意をしているすぐそばで、嘉藤和香子は受話器を片手に自慢のロングヘアをブラッシングしていた。
「ええいいわ。9時にホテル松ね?間に合うように行く。
 あっ、でも喉渇いてる?吸血のほうは手かげんしてほしいの。
 夕方ね、べつの方と先約があるから・・・」
和香子が受話器を置くと、入れ違いのように嘉藤がネクタイをいじりながらリビングに戻って来た。
「うまく締められない」
和香子は「はいはい」と言って夫に寄り添うと、器用な手つきでネクタイを直してやった。
ネクタイを直されながら嘉藤は、
「おれ、今夜は帰り遅いほうがいいの?」
と、訊いた。
「貴方さえ気にならないのなら、いつ戻って来てもいいわ」
「ん、わかった」

午後2時――
「これでよしと。じゃあねえ♪」
和香子はまだベッドにいる愛人に向かって小手をかざし、おどけた様子でその手を振った。
身づくろいはきっちりできていたが、首すじを咬まれた痕は淡い血潮をまだあやしていたし、
男の手で脱がされたストッキングはふやけたようになって、ベッドの端からじゅうたんに垂れていた。
「ストッキングはおみや(お土産)。好きにしてね」
犯した女の脚からストッキングを脱がしてせしめるのが、この情夫のくせだった。
部屋を出る間際、和香子の携帯が鳴った。
「はい?」と応える和香子の声と入れ違いに、嘉藤の声がひびいた。
「あ・・・だいじょうぶかな・・・と思って」
和香子は内心チッと舌打ちをすると、いった。
「お洋服は平気。ストッキング破られただけ。ホテルのベッドで、8回したわよ」
サバサバと言い捨てると、一方的に携帯を切った。

午後4時。
家のインターホンが鳴った。
「早いわねぇ・・・」
和香子はぶつぶつ言いながら、出た。
そして、玄関の前に立った男がだれなのかを確認すると、
「はーい、もうちょっと待ってぇ。あなたのために目下、絶賛お着替え中♪」
そういって、一方的にインターホンを切った。
約束は、5時だった。
でも女は表に待つべつの情夫を、インターホンの鳴った20分後には入れてやった。

午後7時半。
近くのパチンコ屋で時間をつぶすつもりが、玉の出が悪くて中途半端な帰宅になってしまった。
この刻限だと、妻のいる家にはまだ、男がいるかもしれない。もういないかもしれない。
約束は5時だと言っていたから、2時間もあれば妻の生き血も身体も、侵入者はじゅうぶんにたんのうした後だろう。
この街で、吸血鬼が人妻のもとに通うということは珍しい出来事ではなかったし、
それを承知で当地に赴任を決めたのは嘉藤自身だったから、
ふたりきりでいる時間を長くしてやるのも夫の務めだと考えていた。

都会妻は特に人気があって、同じ事務所に赴任してきた同僚のほとんどすべては、妻を吸血鬼に寝取られていた。
吸血行為を伴う逢瀬だから、毎日というわけにはいかなかった。
多い人で週2か週3が限度だった。
ひとりの相手に忠実に尽す人妻もいれば、なん人もの吸血鬼を情夫にもつツワモノもいた。
和香子の場合は後者だった。
そもそものなれ初めが、赴任直後に開かれた歓迎会が、そのまま乱交パーティーに移行したのだ。
目のまえで輪姦される妻が随喜の声をあげるのを、嘉藤は半ば絶望を感じ、半ば安堵を覚えながら見守りつづけた。

浮気妻に気を使って帰宅を遅らす自分を卑屈だと、年老いた母にはよく詰られた。
しかし、息子夫婦を詰問に訪れた母は嫁の情夫のひとりと出くわし、返り討ちに遭うように血を吸われた。
人妻の血を吸うと例外なく濡れ場をともにするのが彼らのしきたりだったから、
嘉藤の母も例外なく、そのようにあしらわれた。
以来母は嫁の不倫を憤ることをやめて、どうやって父を説得したものか、息子の赴任先に着飾って訪れるようになった。

恐る恐るドアを開けた自宅は、真っ暗だった。
嘉藤はああやっぱり、と、ため息をついた。
まだ帰って来るべきではなかったと思った。
それでも玄関を施錠し、靴を脱ぎ、身体が意思を喪って動くかのように、夫婦の寝室の前にたどり着いた。
「あぅあぅあぅあぅ・・・」
部屋のなかからは、妻があげる露骨なうめき声が洩れてきた。
昼間に咬まれたのとは反対側の首すじから血をしたたらせ、それを夫婦のベッドのシーツにぽたぽたと散らしながら。
真っ赤なスリップ一枚に剥かれた妻は、血色のわるい皮膚をした男と抱き合っていた。
むっちりとした太ももが、かすかな灯りを受けて白く輝き、夫の目にもなまめかしい。
吊り紐が外れかかってしわくちゃになった真っ赤なスリップが、妻がふしだらに堕ちていったことを物語っていた。

午後10時半。
「すこし、弱くなったんじゃない?」
ベッドから身を起こして、和香子がいった。
シーツを取り替えた後、やっと自分のものになった夫婦のベッドに身を横たえると、
嘉藤は獣のように妻を襲っていた。
妻の情事を目にすると、不覚にも劣情がむらむらと沸き起こり、情夫がベッドを離れると、つかみかかるように妻を押し倒すのがつねだった。
さいしょのうちはねちねちと妻を責めながら、軽く数時間は行為を続け、「まるで新婚のころみたい」と妻に言わしめた嘉藤だったが、
さすがに五十の坂を越えると、あちらのほうもさほどお盛んではなくなったらしい。
そのことと妻への愛情とは、また別次元の問題だったが――

先刻、部屋を出てくる情夫とはち合わせになると、
「ゥ・・・お邪魔しました」「いえ・・・どうも」と、男ふたりはきまり悪げにあいさつを交わし、
そのようすを和香子は面白そうに見ていた。
この情夫と夫とは同年輩のせいか、気が合いそうだと思った。
いちど三人でお酒を飲みましょうよという和香子の提案は、いまのところまだ一日伸ばしになっている。

「寝たばこはだめよ」
そういって和香子に取り上げられた洋モクを残り惜し気に見送りながら、嘉藤はいった。
「転勤が決まった」
「あ・・・やっぱり」
和香子はそうひとりごちると、夫にいった。
「私、この街に残るわ。お相手さんたちが悲しむもの」
「やっぱりな、そういうと思った」
「あなた単身赴任して下さい。もちろん、いつ戻って来てもいいわ。
 もともと私、平日は”アルバイト”で忙しいし、貴方も帰り遅いでしょう?
 平日にあまり会えない夫婦が、平日は全然会えなくなるだけじゃない」
「今つき合ってる人は、なん人いるの?」
夫の問いに、和香子は3人・・・4人・・・と、指折り数えて、いった。「7人よ」
一本一本折られてゆく和香子の指に嘉藤の目が吸いついてくるのを、和香子は感じた。
「7人も悲しませるわけには、いかないよなぁ・・・」
嘉藤はどこまでも、お人好しな亭主だった。

翌週、嘉藤の送別会が地元の男衆たちによって、賑々しく開かれた。
情夫たちの間をお酌して回る和香子を見ながら、俺の選択は正解だったと、嘉藤は思い込もうとした。
振る舞われた高い酒が、あと1杯で尽くされる。
こちらが地酒を飲んだのと見返りに妻を抱かれてしまうのは、歓迎会の乱パ以来のすじ書きだった。
今夜もきっと、そうなるのだろう。
一座の間から女性の姿が一人ずつ消えていき、七人の男衆はお酌をして回る和香子の立ち居振る舞いに目線をくぎ付けにしていた。
「ご主人飲んだ?そろそろいいかな?」
部屋の照明のスイッチに手をやる男衆のひとりに嘉藤が頷くと、灯りが消えた。
きゃあっ・・・
女の叫びがひと声あがり、真っ暗になった部屋は獣たちの熱気のるつぼと化していった。

吸血児童。

2018年11月26日(Mon) 07:57:45

桜井晋也が父に招(よ)ばれてこの村に来たのは、春のことだった。
お前もそろそろ、身を固めないか?いいひとがいるんだが。
勤務先がかわって山奥の田舎に母を連れて引っ越した父と会うのも、ひさしぶりのことだったが、
その誘いを断り切れない事情を、彼は抱えていた。
教師だった彼は、教え子の女子生徒にわいせつ行為をはたらいたかどで、失職していたのだ。

意外にも、相手の女性はまだ未成年だという。
晋也もまだ二十代だから、それほど不自然な年齢差ではないだろう――と、母は取って付けたようにいった。
16歳になったら、結婚は自由だからね。制服を着た女子高生を、おおっぴらに抱けるんだぞ。
父も珍しく、そんな下世話な冗談をいった。

女子高生を抱ける。
晋也のなかで初めて、血が騒いだ。
すっかりその気になっていた。

紹介されたのは、まゆみという少女だった。
白のハイソックスは、いくらなんでも子供っぽ過ぎるだろ。
晋也はそう思ったが、濃紺のセーラー服姿でお見合いの席に現れた少女に、いっぺんに好意を抱いた。
少女は緊張しているらしく、色白の丸顔に大きな瞳をはりつめて、
ほとんど口も利かずに晋也の顔を見つめるばかりだったけれど。

学校で教師として働ける。
残念ながら、小さい子ばかりの学校だったけれど、それ以外の仕事をしたことのない晋也は気が楽だった。
この村の学校はどこも私立だから、オーナーの気に入れば入れるのさ、と、父は訳知り顔にいった。

初めて学校を訪問したとき、校庭の隅に立ち尽くした、瘦せっぽちの少年がこちらをじっと視ているのに、晋也は気づいた。
あの子、さっきから俺を見ている。
そう父に告げると、あの子は吸血鬼だよ、と、父はこともなげに言った。
え?と訊き返すと、父はいった。

ほら、視て御覧。あの子のハイソックス、真っ白なのに赤いシミがついているだろう?
あの子も吸われたばかりなのだよ。
都会から越してきて、ひと晩で家族全員血を吸い取られてしまったんだ。
お前も狙われないように、気をつけなくちゃな。

あの子はあぶないな。
ふつうは目だたないように、
髪を伸ばして首すじの咬み痕を隠したり、
ふくらはぎの傷を色の濃いハイソックスやタイツで隠したりするはずなのに。
わざとわかりやすくしているっていうことは、だれかぼくに血を下さいって言っているのと、同じことなんだよ。
目を合わせちゃだめだぞ。血を吸われたいのなら話は別だけどな。

晋也は慌てて少年から目をそらした。
けれども少年は、晋也が校門を出ていくまで、じっと見つめつづけていた。
彼が、自分の新妻の純潔を狙っているとは、夢にも思わなかった。

先生、ちょっといいですか?
授業が終わるとすぐに、その少年は晋也のほうへとやって来た。
もはや避けようがなかった。
少年は晋也の受け持ちのクラスにいた。
そして授業のあいだ、ずっと晋也を見つめつづけていた。
晋也は必死に目を合わせまいとしたけれど――授業が終わって迫って来た少年と、目を合わせずにはいられなくなった。
凄い目力だと、晋也は思った。
気がつくと、教室にはもう、だれもいなくなっていた。

喉、渇いてるんです。 少年はいった。
そ、そうかい・・・? 晋也は必死に受け答えする。
水でも飲んだら?と言い添えようとしたが、かすれて声にならなかった。
本当は先生、ぼくに血を吸われるの、愉しみにしてたんでしょ?
そ・・・そんなことはない。
少年は白い歯をみせて、ニッと笑った。
いやな笑いかただった。
教室を出ようとする後ろ姿をつかまえられて、ズボンのうえからお尻を噛まれた。
ギャッ!
ひと声叫んだ彼を制するように、噴き出した血を呑み込むゴクゴクという喉鳴りが、耳ざわりに響いた。

まゆみと結婚するんだよね?
遠慮なくそうするといいよ。
村をあげてお祝いしてくれるよ。
エッチな先生、おおっぴらに女子高生を抱けるんだね。
いろんな制服を着せて、愉しむといいよ。
でも、まゆみを最初に犯すのは、ぼくだからね。約束だからね。

全身から力が抜けて足腰立たなくなった晋也の手を取りあげて、無理やりに指をからめて「指切りげんまん」をすると、
少年は「失礼しまーす!」と、いままでにない元気な声を張りあげて、教室を後にした。

すべてを知るのに、時間はかからなかった。
帰宅してみるとあの少年が家にあがり込んでいて、母親の寝室に侵入していた。
邪魔してはいけないよ、と、たしなめる父に断って中を覗くと、
ねずみ色のストッキングを穿いた母親のふくらはぎに、あの少年が咬みついていた。
そういえば父も、へんにさえない顔色をしていた。
夫は妻を守るものだからね。父はあとで晋也にそういった。
少年の欲望を満たすため、父は妻の血液を無償で提供しているのだと、初めて覚った。
お前にもそうしてもらうために、来てもらったんだ。どうやらわが家の人間の血は、彼のお気に召したらしくてね・・・

わいせつ教師の血は、意外にイケるね。
少年は白い目で晋也を見あげた。
先生はまゆみと結婚するんだろ。
もちろんそうすればいいと思うよ。
セーラー服の女子生徒と、おおっぴらにセックスできるんだものね。
でも、まゆみはぼくのものだからね。
まゆみを最初に犯すのもぼくだし、
結婚した後もぼくがその気になったら、先生はまゆみを差し出さなくちゃいけないからね。

指切りげんまん・・・
失血で動きの鈍くなった先生に、少年は小指を差し出した。
晋也は昂ぶりに声を上ずらせて、指切りげんまん、と応じながら、自分から少年の指に自分の指をからめていった。

自分のお通夜。

2018年11月18日(Sun) 06:22:26

してやられた・・・!
男は悔しそうに、歯噛みをした。
ここは墓の中。理不尽にも生きたまま、埋められている。
だがそれは、すこし事実をはずした言いかただろう。
総身をめぐる血管が干からび切っていることが、そのなによりの証しだった。
そう、彼は血を吸い取られ吸血鬼になってしまったのだ。

やつらのこんたんは、わかっている。
ほんとうの狙いは妻なのだ。
失血に目を回してぶっ倒れてしまったあと。
やつらが口々に呟くのが、聞こえていた。
もしかすると、わざと訊かせていたのかもしれない。
俺たちは、喪服を着た女を襲うのが好きなのだ――と。

今ごろ妻は、自分の通夜を営んでいるはず。
寺のひつぎは空っぽで、夫の自分が地下で呻いているとも知らないで。
たったひとりで見知らぬ土地で、これからどうやって生きて行けばよいのか。
きっと、そんなことで頭がいっぱいになっているはず。
夫婦でこの地に移り住んで、たったひと月しか経っていなかった。

妻の心配は、たぶん無用のものなのだろう。
喪服姿を襲われて、通夜の夜が明けきらぬうち、
総身をめぐる生き血を吸い尽されて、夫のあとを追うのだろう。
もしかすると、妻のほうは生かしておく気なのかもしれない――そう、別の目的で。
やつらは口々に、女旱(ひで)りだと言っていたから。
久しぶりにありつく人妻の血に、やつらはとても、昂奮していた。悦んでいた。

こうしていてはならない。
男は自分の真上に覆いかぶさるひつぎのふたを、力任せにこじ開けた。
上にはたんまり泥がかけられていて、容易なことでは開かなかったけれど。
妻に対する執念からか、苦心惨憺、開けることに成功した。
はあはあと息をはずませながら、(死んだはずなのに息ができるものなのか)と、呟いた。
やっぱり生きているのだ、と、確信した。
死んでいない以上、夫として生きるべきなのだ。
男はふらつく足どりで、寺への道を懸命にたどった。

寺では盛大に、男の通夜が営まれていた。
どうやら参会者は、かなりおおぜいいたらしい。
勤務先の出張所の同僚たちは、たしか十人に届かなかったはず。
家族総出で来てくれたとしても、せいぜい二、三十かそこらだろうし、
そこまでしてくれる義理などないはず。
だとすると、見ず知らずの村の連中が来ていたというのか。
通夜の終わりかけた寺はほとんど人がいなかったけれど、
ついさっきまで大勢の人がいた雰囲気が、ありありと漂っていた。

もどかしい足どりで、本堂を目ざした。
参会者を受け付けるテントは、すでに無人だった。
ちょうどお手伝いらしい地元の婦人が二、三人、黒一色の姿で寺を出ていくところだった。
妻もあの格好をしているのか。
喪主の席に、独り居心地悪そうに腰かけながら、
帰らぬ夫の帰りを待ちわびて、
いまごろ自分の身体をめぐる熟れた生き血をむさぼる者たちの、強引な来訪を受けているのか――
ああっ、まがまがしい。不埒すぎるぞ!
男は歯噛みをして、足どりを速めた。

本堂の片隅の小部屋から、切れ切れに悲鳴が洩れてくる。
あそこだ、まちがいない。
本堂のど真ん中にしつらえられた祭壇に、ちょっとだけ目をくれる。
ふたの開け放たられた空っぽのひつぎのまえ、
自分の顔が白黒写真になって、無表情にこちらを見ていた。
これから妻を犯されるんですという顔をしているように見えた。
なぜか、自分とは別人のような気がした。

小部屋のドアを開け放つと、そこにはまがまがしい光景が繰り広げられていた。
半脱ぎになった喪服から、白い肩をむき出しにして、
脛をなまめかしく透きとおらせた黒のストッキングを、ひざ下まで脱がされた女が、
上からのしかかってくる礼服姿の男を相手に、ウンウンと押し殺した呻きをあげながら――激しく腰を振っていた。
悲鳴は随喜に、なりかかっていた。

目をむいて、周囲の男どもを見回した。
だれもが礼服姿を着崩れさせていて、
あるものは上半身裸、あるものは腰から下がまる見え、あるものは靴下だけを履いていた。
妻の着崩れた姿はむざんで艶めかしくさえあったけれど、
男の半脱ぎというのは、ばかみたいなものだな、と、男はおもった。
「思ったより早かったね」
男のなかの一人が言った。
見知らぬ男だった。
白髪頭に銀縁めがねをかけた、穏やかそうな男だった。
知っている顔はほとんどいなかったけれど、
勤め先の同僚が二人、きまり悪そうに隅っこに佇んでいるのが目に入った。
だれもが思ったよりも、和やかな視線を向けてくる。
「待っていた。あんたにも吸う権利があるから」
妻の上からは、男が去っていた。
おおいかぶさった男の背中に隠れていた全身を、さらけ出していた。

引き裂かれたブラウスのすき間から、豊かなおっぱいがまる見えになっていた。
夫婦の交わりは、このところたえてなかった。
まして、あからさまな灯りの下で妻の胸もとなど見ることなど、何年ぶりのことだろう?
さっきまでくり広げられていた痴態の名残りで、妻の胸もとは軽く上気して、肩でセィセィと息をはずませていた。
妻が牝になったのを、男はかんじた。
信じられないという顔で男を見つめる妻を、男はまともに見返した。
なにかを言うべきだと思ったが、言葉は出てこなかった。
「好きにおやんなさい」
めがねの男が耳打ちした。
言われるまでもなかった。
妻の首すじにはふたつみっつ、すでに咬み痕がつけられていた。
おのおのの咬み痕にあやした血潮が、男の欲情を激しくあおった。
男は妻をその場に組み敷いて、胸もとをがりッと噛んでいた。

錆びたような血の芳香が、鼻腔の奥をツンと突いた。
口許にこぼれ落ちた妻の血が、喉を伝って、胃の腑に落ちる。
干からび切った唇が、喉が、身体の芯が、胃袋が。
四十代の人妻の熟れた血潮に、心地よく浸された。
男は吸血行為をやめようとはしなかった。周りも止めようとはしなかった。
妻は最初のうちは抗って、なんとかその場を逃れようとしたが、
男たちの輪にさえぎられて、果たせなかった。
そしてすぐに、あきらめきったように身体の力を抜くと、
夫の新たな欲情に、わが身を投げ出し、さらけ出していた。

胸もとに一か所。首すじに一か所。喉笛にも喰いついた。
黒のストッキングを脱がされてしまったことが今さらながらに悔しくて、
半脱ぎになったストッキングをわざわざ履き直させて、食い破った。
妻は夫の欲望にかしずくように、咬まれるままに咬まれ、吸われるままに吸われ、犯されるままに犯された。
8回も貫いたあと、さすがに息が切れて、妻の裸体のうえに突っ伏したら、
周囲の男たちから、拍手がわいた。

「おめでとう。これであんたも、一人前の吸血鬼だな」
めがねの男がいった。
そうかも知れない――男はおもった。
喉の渇きは心地よく充たされていたし、干からび切った血管には、妻から吸い取った血液がふたたび脈打ち始めていた。
「奥さんの血は、あんたのものだ。わしら、味見はしたが、大した量は吸うておらん」
どういうことだ?と問う男に、めがねの男がぼそぼそと告げた。

この村は、吸血鬼と仲好う暮らしている。
妻や娘の血を自由に吸わせ、吸血鬼と懇意になった村人のなかには、自分持ちを吸い取られて吸血鬼になるやつもおる。
だが、だれもそうしたことを咎めようとは思っていない。
吸血鬼になった者は、家族の血を与えたものに限られていたから、
その男が望んだ女がいれば、彼女の夫も父も、妻や娘が押し倒されるのを、見て見ぬふりをして受け容れる。
あんたの場合はよそ者だから、つい後先が逆になったけれど。
たいがいはだんなの了解を得てから奥さんを襲うのだ。
ここにいるあんたの勤め先の同僚どもも、
片方は持っていった地酒に酔いつぶされながら、奥さんをモノにされるところを夢中で覗いていたし、
もう片方は自分が先にたぶらかされて、わしらを家に招いてくれた。
そうなったあとは、だれもが奥さんと交際できるし、もちろん奥さんにも選ぶ権利がある。
ご主人は優先的に奥さんの血を吸うことができるけれども、
内輪のあいだでは通い合うのは自由だから、このなかのものの妻や娘ならだれでも、気軽に声をかければよい――

「私の知らないところでやってくださいね」
男の妻は男にそういうと、夫の浮気を咎める妻の目になって、軽く睨んだ。
ふつうの夫なら、こういう妻の睨みには辟易するものだけれども。
目のまえでおおぜいの男どもとの痴態をさらけ出してしまったあととなっては、その威力は半減以下だった。
あれ以来。
男どもは代わる代わる、妻を訪ねて自宅にやって来る。
外出嫌いだったはずの妻も、足しげく出かけて行って、どこのだれとも知らない男に抱かれてくる。
”初七日”のあいだは、喪服を着通すのだという妻は、
「それが貞淑な未亡人の証しなんですって」といいながら、
きょうも不倫の床に熟れた血潮をあやしている。

同僚だったふたりの男も、妻と逢っていた。
一人は誘い出したし、一人は家までやって来た。
「〇〇さんからお誘いを受けたの」
しらっと告げる妻に、「行ってお出で」と返す夫。
とてもヘンな関係だと、さいしょのうちは思った。
こころよく送り出した相手の男も、家にやって来てのぞき見させてもらった男も、自分の妻を襲わせてくれた。
だから、おあいこだった。
いちばん若い同僚は、自分の奥さんが一番訪問が多いと口先では嘆いていたけれど、
それがあくまで口先なのは、よく心得ている。
少しだけですよ、乱暴はよしてくださいよ――そう言いながらその男は、妻を襲われるリビングに、ことが終わるまでずっといた。
もうひとりの同僚は、自分より年輩だったけれど、年増の女もいいものだと初めて思った。
年増女の夫もまた、ちょっとだけですよ、あんまり奥まで入れないで、あっ、そんなに乱暴に胸を揉んじゃ・・・といいながら、
夫婦のベッドをギシギシさせてなん度も射精して、事が果てて立ち去るまで、必ず妻といっしょにいた。
もっとも、ふたりの夫を詰る資格など、彼の側にもなかった。
恥かしがる妻を強引に巻き込んで、夫の前での輪姦プレイを提案したのは、ほかならぬ彼自身だったから。

やっぱりあの晩は、お通夜だったのかもしれないとふと思う。
それまでのどこにでもいそうな自分は、吸血という名の変態プレイに焦がれて堕ちた。
ついでに、寝取られプレイという、ある意味もっとまがまがしい遊戯にも。
妻もまた、貞淑だった過去をあっという間に散らしていた。
夫の目のまえで見せつけるプレイにも、「刺激感じる!」とはしゃぐようになっていた。
「あの晩は、夫婦そろってのお通夜だったのよね」
妻はくったくなく笑いながら、そういった。
抵抗したのよ、信じてね――そう言いながら。
夫がその光景を想像して昂奮するのさえ、いまのこの女のなかでは、計算済みなのだろう。
投げ出されたふくよかな脚にまとったパンストは、今夜もだれかの手で破かれるはず――

なに不自由ない生活を手に入れた男は、早すぎる退職をした。
彼の勤め先では、そうするものがかなりいた。
そしてその空席を埋めるために再び、なにも知らないものが赴任してくる――妻や娘を伴って。
「こんどの人は五十代だけど、奥さんは上品できれいで、娘は高校生だそうだ」
「独立した息子は結婚したばかり――早くご夫婦でたぶらかして、息子夫婦も巻き込もうよ」
村のものたちも、村に居ついたかつての同僚たちも、口々にそう言って、彼らの移住を待ち焦がれている。

夫婦の生き血と地酒

2018年09月05日(Wed) 07:30:12

あー、地酒が旨いや。
引っ越してきたばかりの田舎町の夜、そんなのん気なことをほざいていたら。
せっかくだから、嫁さんも呼んだら?
と誘いをかけてきたのは、馴染みになったばかりの白髪頭の村の衆。
さっそく妻を呼び寄せた。
妻も呑ん兵衛だったから。

一時間後。
あー、あんたらの血は旨いや。
ぶっ倒れた俺たち夫婦を見おろしながら、そんなのん気なことをほざいていた。
この村が吸血鬼の棲む村だと初めて知ったときには、もう遅かった。
男が俺の首すじに埋めていた牙を引き抜くと、
吸い取ったばかりの血がたらたらと垂れた。
それからやはり首すじから血を流している妻のほうへと這い寄って、
淡いグリーンのスカートから覗いたふくらはぎに、ぬるりと舌を這わせていった。
肌色のストッキングを波立てながら、ぱりぱりと音を立てて咬み破って、
キウキウと音を立てて、妻の生き血を吸い取った。

 すまんのう。しきたりでの。
 初めてモノにした人妻さんとは、仲良くなることになっとるんじゃ。
 あんたの前じゃ気の毒じゃから、向こうに連れてってからするでの。
男は申し訳なさそうにそういいながら、
傍らで大の字にぶっ倒れている妻の腕を引っ張って、
半開きのふすまの向こうへと、さも重たそうに、引きずっていった。
全身から血を抜かれた俺は、身じろぎひとつできないままに、
処刑場に引かれてゆく妻の足許を見送っていた。

ようやく血の気が戻って這い寄った、ふすまの向こう。
妻はとっくによみがえって、素肌をピンク色に染めて、男とまぐわい続けていた。
はあっ、はあっ、はあっ・・・
せぃ、せぃ、せぃ・・・
髪を揺らし、腰を振り、目もとを蒼白く輝かせながら。
さいしょは強いられていたはずのセックスを、恥を忘れて歓びはじめていた。

朝になって、ふすまの向こうから男に伴われて現れた妻は、
はだけたブラウスを気にかけながらも、男のほうをふり返り、
ぱしぃん!と一発、平手打ちをくれた。
 帰りましょ、あなた。
女はそういって俺を引き立てるようにして起こして、そそくさとパンプスにつま先を突っ込んでいった。

それ以来。
週末には男の家に夫婦で招ばれて、酒を酌み交わす日常が始まった。
酔いつぶれたぶっ倒れた俺の目のまえをはばかって、
妻はふすまの向こうへと引きずられていって、
俺はそろそろと這い寄って、妻が地元の男と仲良くなるのを、見物して愉しんでいた。
別れぎわにはいつも、妻は男の頬ぺたに平手打ちを食わせて、
 帰りましょ、あなた。
といって、俺の手を引いて家路をたどるのだった。

妻は絶対、怒っていない。
その証拠に、男の招きを受けると必ず、小ぎれいな服に着替えて、
肌色、黒、ねずみ色と、色とりどりのパンストを脚に通しすのだった。
――男の舌を愉しませるために。

あんたら夫婦の血は、やっぱり旨い。
男は今夜もほくそ笑んで、俺に囁く。
あんたの血はマゾの味がするな。そこを見込んで誘ったのじゃよ――と。

駐在の妻の務め

2018年08月26日(Sun) 10:04:04

この村には、淫らな風習が存在した。
歴代の駐在はだれもが例外なく、この風習にまみれることになった。
そのほうが、村の治安を守るには好都合だったから。
彼らは長老たちに面会して自分の妻を差し出すと約束をして、妻の説得にかかった。
駐在の妻たちはだれもが最初は拒みながらも、職務に忠実でいたいという夫の願いをかなえないわけにはいかなかった。
そして、ひと月以外には、どの駐在の妻も、長老たちに抱かれ、愛人のひとりに加えられていくのだった。

わたしがこの村に赴任して半月。
喪服を着て長老の元に出かけていった妻は、夜遅くに戻って来た。
「操を亡くするわけだから、喪服を着ていきます」
その日の妻の装いは、せめてもの抗議のつもりだったらしい。
けれどもわたしは知っていた。
彼らは正装した婦人を汚すのが好みだったのを。
妻の礼装は、これから自分たちの奴隷になると決意した婦人の心づくしだと勘違いをされる羽目になったのだ。
長老たちの心証が良くなるのであればそれでもかまわない、と、わたしはあえて妻の意思を変えさせようとはしなかった。
予想以上の歓待に困り果てながらも、さいごには雌になって奉仕に耽ってしまった・・・とは、妻の帰宅前に電話を寄越した長老の弁。
「奥さん、ええ身体しとるのお」
長老は飾り気のない言葉で妻を賞賛し、わたしは「恐縮です」とだけ答えるのが精いっぱいだった。

翌朝。
長老が駐在所を訪ねてきた。
お目当ては妻だという。
夕べの奉仕の熱心さが忘れられず、顔を見に来た、というのだ。
「顔を見に来た」というのはつまり、「貸しなさい」ということなのだと、教えられずにも察することができた。
「行ってきなさい」というわたしに、
「では、そうさせていただきますね」と、悪びれなくなった妻。

ふたり連れだって駐在所から遠ざかる後ろ姿が、それまでとは距離感が違っていた。
露骨に手をつなぐわけでもなければ、肩に腕を回しているわけでもない。
すこし離れて並んで歩いているだけなのに、この距離感の親密さはなんなのだろう?
わたしが初めて居心地の良い嫉妬に充たされたのは、ふたりの後ろ姿を目にしてからだった。


あとがき
しっくりとくる後ろ姿。ふたりでいるときのたたずまい。
案外そういうふつうの風景のほうが、ふたりの関係を雄弁に語るのかも知れないです。

虎口に出戻る。

2018年08月21日(Tue) 07:44:18

命からがら都会の家まで逃げ延びることに成功したのは、わたしと妻だけでした。
その村に出かけていったもの全員が、囚われの身になってしまったのです。
囚われの身というのは、不正確かもしれません。
「囚われた」夫婦3組のなかの1組だった両親からは、手紙と電話で、
自分たちの意思でこの村に転居すると連絡がありました。
おそらく本音でOKしたのだ。ふたりとも、洗脳されてしまったのだ――と、
父の語気からすぐにわかりました。
電話をかけてきた父は、むしろ落ち着いた声で、母さんの浮気を認めてやることにした、と告げたのです。
従妹の嫁いだその村は、吸血鬼の棲む淫らな風習に彩られた土地でした。

都会で挙げられた従妹の披露宴には、新郎側からはほとんど出席者がありませんでした。
田舎のものなのでかえって恥を掻くから遠慮したい・・・という彼らのために、二度目の披露宴が村で挙げられたときのこと。
招かれたのは新婦の両親である伯父夫婦、わたしの両親、そして兄夫婦とわたしたち夫婦の8人でした。
あとから聞いた話では、当初兄夫婦までは招かれる顔ぶれに入っていなかったのですが、
都会の披露宴で兄嫁を見初めた新郎の兄が、とくに加えるようにと希望したというのです。
なにも知らない4組の夫婦は村に招かれ、お座敷での婚礼の席上吸血鬼と化していた村人たちに襲われたのでした。
年輩の男に組み敷かれた妻を救い出すのが、精いっぱいでした。
男は後じさりする妻の足首をつかまえて、ふくらはぎにヌメヌメと唇を這わせようとするところでした。
一瞬唇が吸いついて、すぐにわたしが引き離しました。
男はわたしを押しのけて妻に迫り、なおも首すじを吸おうとしましたが、わたしに蹴られてたじろぐところを危うく救い出したのです。
わたしはともなく、パンプスだった妻がよくあそこまで走れたものだと思います。
ほかの三組の夫婦と違い車で来ていたのが幸いしました。
宿に戻るとすぐにわたしたちは車に乗り込み、都会の自宅をめざしたのです。
男はしつようにあとを追いかけてきて、どうしても奥さんと話をしたい、といいました。
耳も貸さずにアクセルを踏んだのは、いうまでもありません。
都会も間近になったとあるドライブインで休憩をしたとき。
妻の穿いているストッキングに、あの男の粘り気のある唾液が沁みついているのを発見して、
むやみに嫉妬したのを憶えています。

3組の夫婦の転居届は、すべてわたしが手続きを済ませました。
彼らからの要望だったのです。
兄の手紙は、理解に苦しむものでした。
あの都会の披露宴の席で自分の妻が吸血鬼の目に留まり、村での婚礼の席で首尾よく征服されてしまったことを、
むしろ嬉し気に書いて寄越したからです。
父もまたかの地で、複数の男性を交えて痴情に耽る母のことを、むしろほほ笑ましく見守っているという文面でした。
父の手紙には、「私たちに義理立てして、わざわざ再訪する事は無い」と、再三書かれてありました。

ところがどうしたわけか、それからひと月と経たないうちに、
わたしの脳裏にべつの感情が芽生えてきたのです――
やはりほかの親類たちと同じように、あの村に行った方が良いのではないか?と――
父の手紙には、あのとき妻を逸した吸血鬼が、いまだに不遇をかこっていると、ごくひかえめにしたためてありました。

「やっぱりぼくだけ、行ってくるよ」
そう言い出したわたしを、妻は強いて止めようとはしませんでした。
両親が貧血になって身体を壊さないか気になるから・・・という口実に、手向かえる反論を持ち合わせていなかったからかもしれません。
さいしょは一回だけのつもりでした。
わたしは妻を狙った吸血鬼と面会し、身代わりに血液の提供を申し出ました。
男は意外に紳士的でした。
あのようなやり方で突然迫られたら、どんなご婦人でも身の危険を感じて逃げるでしょう、あさはかでした、といい、
わたしの好意を素直に感謝し、くつろげたワイシャツの襟首に尖った歯をあてがって、そっと吸血していったのです。
意外なくらい、ひっそりとした吸血でした。
父は「もうあまり来ないほうがよいのではないか」とわたしをたしなめ、
母は真逆に「こんどは佳代子さんも連れてらっしゃいよ」と、積極的なことをいいました。
連れてきたら犯されてしまうんでしょう?というわたしの問いに、
母はあっさりと「ええそうよ」といい、
でも芳子伯母さんは吸血鬼にモテモテになって若返っちゃってるし、伯父さんもそんな芳子伯母さんに満足しているし、
真菜子さん(兄嫁)はご執心の吸血鬼と夫婦どうぜんに暮らしているけれど、
お兄さんとも一緒に暮らしていて、男どうしもうまくやっているみたいだし・・・と、
やはりわけのわからないことを口走るのでした。

一回だけのつもり、と、書きました。
そうなんです。そのはずがいつの間にか回を重ねて、わずかふた月のあいだに、6回も通い詰めてしまったのです。
妻が思い詰めたように、言いました。
「こんど行くなら、私もいっしょに連れて行って」

あのとき私に迫った方は、不自由しているそうね。
もうちょっとで私に咬みつけたのに、貴方に邪魔されて、果たせなかった。
なのに貴方とはすっかり仲良くなって、打ち解けて下さっているそうね。
それなら私も――もういちど、よそ行きのストッキングを穿いて、あの方の唾液に濡らされてみたいの。

一週間後。
わたしは妻を伴って、あの村に来ていました。
都会の女たちをことごとく呑み込んでゆく、忌まわしい村に。
そのくせ妻を奪われる夫たちを惑乱させて、むしろ奪わせてしまうという、忌まわしい村に。

その晩。
あの婚礼の夜の情景が、再現されました。結論だけは真逆になって。
男にすっかり血を抜かれて手も足も出なくなったわたしのまえで、
妻はあのときと同じ薄茶色のスーツを着て、足許をてかてか光るよそ行きのストッキングに包んでいました。
男の唇は、今度こそあやまたず妻のふくらはぎに吸いついて、這いまわって・・・
なまめかしいストッキングがチリチリになるまで、いたぶり抜いていったのです。
都会の装いもろとも辱められてゆくことに、さいしょのうちこそ悔し気に身をすくめていましたけれども。
妻の態度が打ち解けて、甘くほぐれてゆくのに、時間はかかりませんでした。

いちど逃れたはずの虎口はわたしを捕えつづけて、
結局妻の手を引いて、舞い戻る羽目になってしまったのです。
けれども、後悔はありません。
都会の装いに身を包み、セイジさん、セイジさん・・・と、わざとわたしの名前を呼びながら犯されてゆく妻。
すべてを喪うのと引き換えに得たいまの歓びを、たいせつにしていきたいと願っているのです。


あとがき
妻を襲われかけて危うく難を逃れたのに、なぜか違う結論を観たくなった夫。
都会の装いを着乱れさせ、ストッキングを男の劣情に満ちた唾液で濡らされながら、堕ちてゆく妻。
そこを描きたかっただけなんですけどね。 つい長くなってしまいました。

街のタウン情報――春山さん宅で『人妻狩り』が行なわれました。

2018年06月28日(Thu) 07:34:34

当村の法事に都会の奥様が招ばれるときに、決まって始まるのが「人妻狩り」です。
6月27日に行われた春山家の法事でも、「人妻狩り」が行われました。
ターゲットは春山家の三男坊のお友だちの奥様という、当村からは遠い関係のご婦人です。
もちろん、当村にこうしたしきたりがあるということは、ご夫婦ともに聞かされていません。

「法事の最中から、『人妻狩りだ』、『人妻狩りだ』・・・と村の方たちが口々にそう呟いているのが聞こえてきました。初めのうちは、なんのことかわかりませんでした。まさかうちの妻が狙われているなどとはつゆ知らず・・・ですね」
そういって苦笑するのは、晴れて奥様を村の男衆たちの性奴隷に捧げて気前の良さをみせた夫の深山さん。
遠縁の法事ということで招かれたこの村で、奥さまの翠さん(36)が、逞しい村の男衆たちの生贄にされるのをみすみす見せつけられる羽目に遭ってしまいました。
「そりゃとてもメイワクでしたよ。どうしてボクの妻がそんなことにならなきゃならないのか?って、抗議もしましたし、やめてほしいとお願いもしました。でも、断り切れなくなっていったんです」
最初はそんなふうに、奥様と村の男衆との性交を拒んだ常識的な深山さんだったのですが・・・
「いまでは後悔していません。妻がヒロインの淫らな宴を実見するという貴重な機会に恵まれたと感謝していますし、妻ともどもこの村への移住を考えています」
深山さんは都会育ちのサラリーマン。もちろん自分の妻をほかの男性たちに提供するしきたりに巻き込まれたのは初めてです。
「妻を愛していましたし、いまでも愛しています」という深山さん。
いったいこのようにひょう変することができたのは、どういうことだったのでしょうか?

「だんなさんを女装させたんですよ。このテを使うと、けっこうな確率で夫婦ともに墜とせます」
というのは、村の長老格の花地アキラさん(58)。
「じつは、わたしもこのテで堕とされちゃった旦那の1人なんですがネ」
アキラさんは、そういって照れ笑いをしました。
そう――ご自身も都会育ちの身でありながら、数年前、奥様を伴われて当村に移住、「人妻狩り」を体験したご主人なのです。
じつはアキラさんも、移住後一週間で奥様ともども堕とされてしまった1人です。
「人妻狩りに遭った奥さんのご主人は、その晩のうちに強制的に女装させられて犯されるんですが、なんだか本当の女にされた気分になって、物凄い昂奮してセックスしてしまいました。男相手に――それも全員が、妻を犯した相手でした。でもそれ以来、女として犯されることにはまってしまったんですね。その晩以来彼らと意気投合しましてね。この村に棲みついて、妻を日常的に提供するようになったのは、自然の成り行きでした。妻も男衆たちにうまいこと言い聞かされてしまって――それ以来、村で夫婦ながら調教を受けることになったんです。家内を最初に犯した長老様とはいまでも夫婦ともどもねんごろなお付き合いですし、身内の奥さん連中も、少しでも若いうちに紹介してあげようと思いました。それで、娘夫婦や弟の一家まで巻き込んだのです」
都会で暮らす身内を紹介して人妻を3人奴隷に堕とした功績?から、アキラさんは都会出身者としては異例の抜擢?長老格に収まっているのです。

アキラさんのお話はあとのお愉しみとしまして――昨夜最愛の奥様を淫らな宴のヒロインとして提供された深山さんの話に戻ります。
アキラさん曰く――
「犯した人妻のご主人は、たいがいそんなふうに、強制的に女装させちゃうんです。女装したご主人は、たったいま奥さんを犯した男衆たちに、女として犯されます。つまり、夫婦で同じペ〇スを体験するんですね。この効果はけっこう絶大です。夫は妻に対して尊敬されるように振る舞うものですが、自分自身まで女にされて犯されてしまうと、そんな薄っぺらい羞恥心というかプライドは、吹っ飛んでしまいます。特に女装に目ざめてしまうご主人の場合だと効果は絶大ですね。いままでなん人もこのテで、ご主人を味方につけています」

村の男衆の逞しい身体に代わる代わる妻を蹂躙されるのを目のまえに、自身も女の姿にされて凌辱されてゆくご主人――嵐が過ぎ去ったあと、ご夫婦は目線も合わさず、声を立てる気力もなく、しばらくは四つん這いの格好のまま、その場に座り込んでいたそうです。

「まず奥様を、別室に連れて行きました。そこではもちろん、乱交パーティーの再開です。ご主人も自分の奥様がなにをされているのか、わかっていらっしゃる。わたしもあえて否定しない。奥さんと仲良くさせてくれてありがとう――くらいは言ったかな。それから、諄々とお説教です。深山さんも、ぼくの話をさいごまで素直に聞いてくれましたよ。それで、こんなふうにお話したんです――」

「いちど打ち解けちゃうと、もう元には戻れない。奥さん男の身体を覚えてしまったからね。ご主人がいくら邪魔したところで、奥さんは男に逢いに行く。ご主人に隠れてでも逢って、抱かれてくる。そんなことで夫婦の間に秘密ができたら、却ってよくないじゃありませんか。観念して交際を認めてあげたほうが、賢明ってもんですよ」

「この時肝心なのが、『わたしも経験者ですから』って言ってあげることです。同じ経験をしたもの同士の共感がここで生まれますからね。あくまで意地を張っていたご主人も、『あなたもそうなんですか』となってしまう。それで、こちらも言うんです。『恥ずかしいけれど、妻が犯されるのを見て昂奮してしまいました。だからもう何年も、この村に棲みついてしまったんです。貴男もここにお住まいになりませんか?奥様の恥も外には洩れませんし、恥ずかしい昂奮もこの村の人たちはわかってくれますからね』――このへんが、まあとどめといったところでしょうか」

「頃合いを見はからって、奥様を連れ戻してきます。相手は皆、気心が知れていますからね。なにしろ、ぼくの妻も『人妻狩り』にかけた連中ですから――それで、夫婦で晴れてご対面です。奥様は全裸の状態で、乱れ髪、あられもない姿です。ちょっとのあいだご夫婦はお互いの視線を避けていらしたのですが、奥様のほうから、思い切って口火を切りました――『私、この方たちの愛人になります。それでもあなたの妻でいさせてもらえませんか?』たいがい女性のほうが度胸が据わっていますから、こんな極限状態でもイニシアチヴをとれるんです」
ご主人はなんと?
「エエ、もの分かりよくなっておられましたよ。ご主人はまだ、女装姿のままなんです。『きみがそうしたいのなら、仕方がないな』って、理解のあるところをお示しになりました。でも、それだけでは済まされません――」
「ぼくね、言ってやったんですよ。『ご主人、さっきの話と違うじゃありませんか?それでは奥様だけが悪者になってしまいます』お2人で仲良く暮らしていくには、ご主人が許すだけでは十分ではないのです」
では、どんなふうに?
「『ぼくの言うとおりに、仰って見て下さい――わたしもきみと同じように女になって、きみを抱いた男たちに抱かれたい。それから、きみがわたしを裏切ってほかの男のものになっていくところも見届けたい。ほかの男と昂り合ってるきみをみていると、ドキドキするんだ』――そう言って御覧なさい」
「奥様は息を詰めて、ご主人がぼくの言った科白をなぞるのを聞いておられました。無理に言わされている感じではなかったですね。ちゃんとした情感がこもっていました。これでOKなのです。そこでその場で、儀式の再開です。奥様もご主人も、いったん別々に身体を洗ってきてもらって、着替えてもらいます。奥様は自分がもってきた喪服を着せられるとき、ひどく恥かしがっていました。服を着るともとの深山夫人の気分に戻りますから、羞恥心が高まるんですね。ぼくたちのつけめもそこにあるんです。そしてご主人はもちろん、女装です。ご主人もまた、喪服を希望されました。仲間うちに服屋がいましてね――たいがいのサイズの婦人服はあつらえてくれるのです。
それでさっそく、女2人――奥様と女になったご主人と――を取り囲んで凌辱パーティーです。夜が明けるまでには、お2人の気持ちはすっかり、変わってしまっていましたよ」

深山さんは記者の取材に応えて言いました。
「さいしょはなんてことをと思ったのですが、朝になるころにはアキラさんへの感謝の念でいっぱいでした。妻もノリノリになってしまって、その日の夜には『もういちどしてもらおうよ』と、大人しい妻のほうから言い出したのです。びっくりしましたけれども、嫉妬と昂奮とで、ズキズキしてしまった自分がいました。それで、妻を連れてアキラさんの家に伺ったのです」
ちょうどアキラさんの奥様は、別の男性との逢瀬に出かけていました。そしてアキラさんはさいしょに翠さんを犯した男性のほか数名に声をかけ、ご夫婦を交えた乱交を再び、朝まで愉しんだということです。

「人妻狩り」が別名「人妻借り」と呼ばれるのは、きっとこうした村の衆とご主人との平和な関係があるからではないでしょうか。

悪い予感・良い予感

2018年05月08日(Tue) 07:54:35

なんの前ぶれもなく、ハイヒールのかかとが取れた。
転びそうになるのをかろうじてこらえながら、
晴子は、いやな予感がした。
一時間後、夫の辰夫が吸血鬼に襲われて血を吸われ、
命を落としたという連絡が入った。

あわただしく昼食を済ませようとしたら、ブラウスにケチャップが撥ねた。
手早く拭き取ったあとにかすかに残ってしまったシミを気にしながら、
晴子は、いやな予感がした。
お寺に向かう途中、彼女は吸血鬼に襲われて、
漆黒のブラウスを目だたないシミで濡らす羽目になった。

お通夜に出るため家を出る間際、ストッキングを伝線させてしまった。
晴子は、いやな予感がした。
しめやかに終えられたお通夜の席で。
弔問客を送り出し独り本堂に残った彼女は、再び吸血鬼に襲われた。
変態!変態ッ!と、罵りながら。
穿き替えた黒のストッキングを卑猥な舌でいたぶられ、飢えた牙に裂き散らされるのを、
我慢して耐え忍ばなければならなかった。

地域の風習で土葬に付された夫の墓に詣でるために出かける間際、眼鏡を割ってしまった。
晴子は、いやな予感がした。
コンタクトなしで詣でたお墓の前で、彼女は吸血鬼に襲われて、犯された。
焦点の合わない視界の隅に、墓からよみがえったばかりの亡夫の辰夫の姿が映ったが、
夫は犯される妻の様子をただ、昂ぶりながら見つめているだけだった。

カーテンを開けたら、そこには晴れやかな朝の風景が広がっていた。
晴子は、良いことが起こりそうな予感がした。
夫の仇敵である吸血鬼に襲われて血を吸われ、犯されてしまったのに。
夫の仇敵であるはずの吸血鬼のまさぐりに反応して、感じてしまったのに。
女は立ち直りが、早いのだ。
彼女は服を喪服に着替え、きのうと同じように夫を弔うためにお墓に出かける。
セットしたばかりのセミロングの髪を緩やかに揺らし、軽くハミングをしながら。

自分の仇敵であるはずの男が妻を犯すのを、夫はむしろ昂ぶりながら見守っていた。
晴子を救い出そうとする行為が、彼女の歓びを奪うのをわきまえているかのように。
そんな貴方に感謝♪
晴子はそう呟きながら、夫の墓前に花を供える。

背後に立った翳に晴子は振り向いて、晴れやかにおはようございますと挨拶をした。
翳の主は挨拶を返さずに、やおら晴子を抱きすくめた。
きょうは眼鏡をかけているんですよ、という晴子に、それでかまわない、と、翳は返した。
吸血鬼なのに、お陽さまが出た後も人を襲うのね、という晴子に、その通りだ、と、翳は返した。
首のつけ根に食い込んだ牙が太い血管を食い破り、喪服の襟首と真珠のネックレスを濡らすのを、晴子は感じた。
全部吸い取ってもかまわないわ。
でも少しだけ、主人の分も残しておいてくださらない?
女の言いぐさに翳は頷き、応えの代わりに女の頸動脈を食い破った。

墓前で発見された皎(しろ)い肢体は、喪服を心地よげにくつろげて、黒のストッキングに伝線を幾すじも走らせていた。
快楽に酔い痴れた後のような惚けたような笑みを湛えて、それでも口許は淑やかに閉ざしていた。
尖った犬歯を押し隠す賢明さを、彼女は冷たくなった後も忘れずにいた。


なんの前ぶれもなく、パンプスのかかとが取れた。
転びそうになるのをかろうじてこらえながら、
晴子の母の詩乃は、いやな予感を覚えた。

報せをきいてあわただしく昼食を済ませようとしたら、ブラウスにケチャップが撥ねた。
晴子の妹の乃里子は、いやな予感を覚えた。

お通夜に出るため家を出る間際、ストッキングを伝線させてしまった。
辰夫の母の光江は、いやな予感を覚えた。

同じお寺の本堂で、深夜。
弔問客を送り出し、通夜を守ろうとした3組の夫婦は、吸血鬼たちの不意の来訪を受ける。
夫たちの血は、辰夫と晴子の生命を奪った吸血鬼が吸い取った。
そして、晴子の母の詩乃、妹の乃里子、辰夫の母の光江の順に、首すじを咬んでいった。

詩乃は、おろしたばかりの新しいパンプスを穿いて帰宅できなくなることを残念に思った。
永年連れ添った夫が血を抜かれながらも、嫉妬と羨望に満ちた目で身体を開いていく妻のことを見つめている事実よりも、
新しいパンプスをもう一度穿くことのほうが、彼女にとっては重要だった。

乃里子は、喪服が間に合わずに着けてきた白のブラウスに血が撥ねるのを厭わしく思った。
さっきのケチャップと一緒じゃない――ぐったりとなった夫が、恥を忘れて痴態に耽り始めた妻のことを目の当たりにしている状況よりも、
新調したばかりのブラウスに撥ねた血がクリーニングでも消えないことのほうが、彼女にとっては重要だった。

光江は、恥知らずな唇が自分の穿いている薄墨色のストッキングをよだれで濡らしていくことを恥ずかしく思った。
出がけに伝線させたストッキングは今ごろ、平穏を保った自宅の屑かごに放り込まれたままになっている。
そのほうがどれほど良いことか――
長年連れ添った夫の前、初めて識る他の男の肉体を味わい尽してしまったことよりも、真新しいストッキングで装った脚を辱められることのほうが、彼女にとっては重要だった。

弔いは済まされたが、弔われた者たちはすでに墓場から抜け出していた。
お義兄さま、意外にいい男じゃない。時々浮気するから、貸してね。
晴子の妹の乃里子は夫と姉の前、そういって肩をすくめてみせたし、
あなたの不始末を、私からも辰夫さんにお詫びしないとねえ。
晴子の母の詩乃は夫と娘の前、もっともらしくうなだれながら、2人の顔色を窺ったし、
息子とデキちゃったなんて、恥ずかしいですね。でも、家族で仲良くしなければなりませんね。
辰夫の母の光江は夫と息子の前、そういってふたりの顔色を見比べた。

ひと晩、妻たちのあで姿を見せつけられた夫たちは、なにも言わなかった。
彼らは故人を弔うために集まった女たちのなかから、喪服の似合うご婦人たちを選び抜いて、
半吸血鬼となった自分たちのため、いっしょに身内を弔ってくれないかと誘いをかけ始めている。
妻たちはそんな夫たちの所行を苦笑しながら見守り、
夫たちは浮気に走る妻たちの所行を苦笑しながら、見て見ぬふりを決め込んでゆく。

「すみません、靴のかかとが取れてしまって・・・」
弔問客の1人で40代の綺麗なご婦人が、顔いろの蒼い傍らの男性に、肩を貸してほしいと頼んだ。
彼女の夫はなにも気づかずに、顔いろの蒼い婦人たちに伴われながら、同じ色の喪服姿を埋没させてゆく。
肩を貸してほしいと頼まれた男性は、こころよく肩を貸してご婦人がわが身を支えるのを助けながら、訊いた。
「故人とはどのような関係で?」
「晴子さんの高校時代からの友人なんです。彼女、まさかこんなことになるとは」
「ご主人のことはご存じないのですね」
「エエ、結婚式にも都合で出られなかったものですから、お顔も存じませんの」
「ご夫婦とも、首すじに咬み痕がついていたそうですよ。もしかして吸血鬼にやられたんじゃ――って、地元の人たちは言っているんです」
「まさか、吸血鬼なんて」
「そうですよね?でも、吸血鬼に血を吸われると、気持ちよくなっちゃって、やめさせることができなくなるというんです。じつは私の妻も吸血鬼に襲われましてね・・・まあおかげさまで、いまでも元気で、ぴんぴんしてるんですけどね」
「また、ご冗談を」
「ご当地かぎりの話なんですよ。だから奥さまも内緒にしておいてくださいね。
吸血鬼の彼も、気の毒なんです。
毎晩のように、若い女の生き血を吸わないといけないので――
だからわたしも、彼が妻の血を吸うのを、見て見ぬふりをしてやっているんです」
「まあ、そうなんですか?」
「それよりも、これから先歩けますか」
「そうなんですの。主人は先に行ってしまいましたし、どうしましょう?」
かかとの取れたパンプスを手に、これ以上歩けないとご婦人は途方に暮れた。
彼女にはまだ、悪い予感を自覚していなかった。
男は言った。
「お墓に行くのはあきらめて、お寺でゆっくりしていきませんか?そこまでなら、彼女のご主人を差し置いてで恐縮ですが、お姫さま抱っこしてあげますよ」

顔いろの蒼い男は、不運なご婦人を抱きかかえた。
事情をよく心得ている地元のものの目には、
吸血鬼が獲物のご婦人を抱きかかえて、血を吸うためにねぐらに戻るところにしか見えなかったけれど。
ご婦人は、これからわが身に降りかかる災難など夢にも思わずに、行きずりの男に感謝の言葉を口にした。
数分後には、自分の血をしたたらせた口許から、おうむ返しに感謝の言葉を受けるとも知らないで。

両腕にずっしりとくる重みが、これから獲られる血の量を想像させて、
男は唇の奥に隠した牙を疼かせながら、良い予感にうち震えていた。
女は男の良い予感を予知することができないで、折れたパンプスのかかとのことを、いつまでも気にしていた。
パンプスを穿いて帰宅するチャンスがもうないことなど、まるで予想をしていなかった。

月にいちどのお務め。

2018年01月17日(Wed) 07:42:00

月にいちど。
村はずれの荒れ寺に、都会妻たちが集められ、村の男衆に奉仕をする。
都会に棲めなくなった夫婦ものを引き受ける、村の出張所が主催する、お愉しみ行事なのだ。

熟女・若妻・新婚妻までも取り交ぜて、
パーティードレスにワンピース、よそ行きのスーツや着物、果ては喪服姿まで、
思い思いの衣装に着飾った都会妻たちは、
自宅に夫たちを残して、さりげなく家を抜け出して、
ウキウキとしたようすなどおくびにも出さずに、三々五々集まって来る。
そのくせお互いさぐり合うように、
あの人嫌々来ているのかしら。
ほんとうは目あての男がもういるのじゃないかしら。
そんなふうに、互いに互いの顔色を窺いながら。

お寺の本堂に集められた女たちがなにをされるのか、
おめかしして出かける妻を送り出した夫たちを含めて、だれもが知っている。
女たちは皆、
着物の襟足をくつろげて、
ブラウスのボウタイをほどかれて、
ロングスカートを腰までたくし上げられて、
ストッキングをひざまでおろして、
ショーツを自分から、つま先まですべらせて。
息荒くのしかかって来る男どもを、それとは劣らぬ熱い吐息で迎え入れてゆく。

夜明け近くになったころ。
その晩あったことなどはおくびにも出さず、
私は貞淑なのよといわんばかりに楚々として、妻たちは帰宅の道をたどる。
ふだんとは違う眼の色をした夫たちをまえに、
妻たちは見え透いた弁明をくり返す。
私だけはなにもなかったの。だれにも挑まれたりしなかったの。
危なかったけど、さいごまで貞操を守り抜いたの。って。

でも夫たちは、知っている。
目のまえの妻の着崩れした衣装が、
ほつれた乱れ髪が、
破けて引きずりおろされたストッキングが。
必要以上のことまで、白状してしまっているから。

そうでなくても、夫たちの一部は、もっとよく知っている。
そういう夫たちは、素知らぬ顔で妻を送り出した後、
自らもこっそり、妻のあとを尾(つ)けてお寺に出向いて、
本堂の向こう側から、覗いて見届けてしまっているから。
妻たちがどれほど積極的だったのか、
どれほど不熱心に、身に降りかかる恥辱を振り払おうとしたのか、
そしてどれほど熱っぽく、彼らの劣情に接しつづけたたのかを。

そうした夫たちを持つ妻たちもまた、
夫に覗かれていると知りながら、清楚な衣装とはおよそ不似合いな、これ見よがしな痴態に耽り抜いて、
あなたごめんなさい感じちゃってるのとか、
主人のものよりおっきいわあ、あなたのほうが素敵♪とか、
あらぬことまで口にする。

そうした妻たちをモノにする村の衆もまた、情婦の夫をそそのかして、
女房の様子が気になるんだろ?
思い切って覗きに来いよ。
あんたの目のまえで、母ちゃんよがり狂わせてやっからよ。
見届けるのも、夫の務めってもんだぜ と。

それでも夫たちは、いそいそと妻のあとを追う。
ひっそりと、妻の帰りを待ちわびる。
月にいちどのお務めが済んだあと。
そこにはいまだかつてないほどの、熱っぽい夫婦のまぐわいがあるのだから。

村の回覧より~先日の美野家ご一家の婚礼について

2018年01月17日(Wed) 07:12:55

皆さまご承知の通り、去る9月×日、田貫家において、
令息要之助様と美野家令嬢の美織様との婚儀が、滞りなく挙げられましたことを改めて報告します。

夜の披露宴には、
新婦美織様のご母堂規矩子さま並びにご夫君の富晴様、
ご令兄の辰夫様と夫人の雅恵様、
叔父市晴様と夫人の由香里様もご臨席賜り、盛大を極めた席となりました。

ことに都会のお美しいご婦人方の黒留袖姿に村の男衆は魅了され、
お三方のご令室様はお1人の例外もなくその場を去ることなく、くり返しの凌辱を受けられました。
先に献血を済まされたご夫君たちは、他の男性と打ち解けてしまったご令室様のご様子を目にして潔く観念をされ、
意気投合した男衆たちのため、ご自身から改めて、永年連れ添ったご令室様の貞操を譲り渡すと申し出られたのでした。

一夜明けて、ご一家はお召し物を直されたあと長老の染谷瓢右衛門氏の来訪を受け、
お祝いのご挨拶をお受けになられました。
特にご令室がたの奥ゆかしい応対にはご褒詞があり、ご夫君方はいたく恐縮されたよし。
また、お三方のご令室様は乱れたお着物の着付け直しを受けられ、行き届いた応対に感謝されたよし。
村独特の荒っぽいあしらいに、ご一家は最初のうちこそ驚いたご様子でしたが、
すべてが親愛の情によるものだとすぐにご理解をされ、
あとは潔く、永年連れ添われたご令室様を自然のなりゆきにゆだねられていきました。

白日の下、はだけられた黒留袖の装いからさらけ出された白い柔肌に男衆たちは驚喜し、
その後のお召し替えでは、都会ならではのモダンな洋装に思い思いに装われたご令室様に、いちように称賛を送りました。
もとより通りいっぺんの称賛ではなく、
そのあと三人ながら納屋に引きずり込まれて、心のこもった歓待を受けたのはいうまでもありません。

「まるで母と妻の貞操を処刑されているようでした」とは、辰夫さんの弁。
まさに言い得て妙、この儀式を済まされたご令室様がたは、都会の日常の合間を縫って当村を訪れ、
都会妻でありながら村の男衆の気持ちを込めた愛撫を受ける日々をお過ごしになられることでしょう。

新婦美織さんのご令妹である沙織さんは、まだ未経験の乙女であるため、大人の席には加えられず、
けなげにも村の長老様につききりで、うら若い血潮を吸い取られるご奉仕を尽されました。
美織さんの兄嫁である若妻の雅恵さんは、お名前の通り優雅な恩恵を村の男衆に与え尽されましたが、
都会のご実家に小さいお子様を置いてのご来訪。
これからもお子様を都会において、夫の目を盗んで泊りに来るとのことでした。
ご親戚のご令室である由香里様は、「今度は息子の嫁を連れてきますね」と明るくお約束をしてくださいました。
「まだ息子以外の男を識らないようだから、早く愉しませてあげたい」との、頼もしい弁。

今後は当村を訪れる都会妻がまた、増えることが期待されます。
ご令室様方のご健勝と、理解あるご夫君方のご活躍を、当村の男衆一同、心から願うものであります。

晩夏の挽歌~婚礼の翌朝

2018年01月17日(Wed) 06:46:49

まだ暑さののこる時分のことだった。
美野辰夫はさっきからぼう然と座り込んだまま、庭先にかしましい蝉しぐれを、聞くともなしに聞き入っていた。
広い座敷の奥からは、木立ちの豊かな庭の野趣あふれる風情を見通すことができた。
眩しい朝――しかしそこには、清々しいばかりではないなにか不健全に澱んだ空気が、そこかしこに漂っている。
さっきまで。
この部屋で行われていたことがただならぬ狼藉であったことは、
周囲に散らばった髪飾りや黒留袖、金襴の帯などが、露骨なほどに物語っていた。
散らばされた衣装のあるじである辰夫の妻の雅恵は、白の襦袢だけを羽織らされたまま、
やはり放心状態で、夫とはやや距離をおいて座り込んでいた。

ふたりの首すじにそろってつけられた、二つの赤い斑点。
吸血鬼による咬み痕の周りには、吸い残された血潮が数滴、まだ生々しく滲んでいる。
ふたりがぼう然としているのは、失血のせいもむろんあったが、それ以上に奪われたものが大きかったのは、周囲の状況から明らかだった。
この村に棲む吸血鬼が人妻を襲うとき、獲るものは生き血だけではなかったから。

ふすま越しにこちらに人が歩み寄って来る気配を感じ、辰夫は背後のふすまのほうに目を移した。
妻の雅恵も同じように、夫以上にビクッとして、ふすまの向こうを見通そうとした。
足音の主に害意がないのは、歩み寄る気配の穏やかさでそれと分かった。
足音の主は、二人だった。
彼らが居ずまいを正す間もなくふすまが静かに開けられた。
そこには辰夫の両親の姿があった。
父の富晴は紋付きを、母の規矩子は黒留袖を着つけている。
もっとも母の黒留袖はなんとなく着ずれしている感じだったし、
昨日美容院で数時間かけてセットしたという髪は、乱れ髪をかろうじて抑えたというふうであった。
二人とも、首すじには若い夫婦と同じ赤黒い痕を、毒々しく滲ませていた。
「だいじょうぶ?」
規矩子は母親らしい気遣いを、息子に投げた。
雅恵のほうをわざと見なかったのは、恥辱の名残りをまだありありとさせている嫁に対する、別の意味での気遣いだった。
雅恵も姑とは目を合わせずに、かすかに会釈を返しただけだった。

やや遅れて、着物姿の老女が一人、そそくさとした足取りで現れた。
気が利いているのか利いていないのか、乱暴狼藉の痕跡もあらわな若い嫁のようすを目にすると、
「あっ、これはどうも・・・」
と、少し耳障りな声をあげて、
「では、若奥様もお直しを・・・」
と、こんどは事務的な声色になって、雅恵の手を取った。
容赦ないほど事務的な扱いに、むしろ雅恵はすんなりと応じて、少しよろけながらも、ともかくも起ちあがる。
老女は周囲に散らばった雅恵の衣装を手早くかき集めると、
「では、しばしのあいだ、ごゆるりと・・・」
と、目立たぬ含み笑いで残りの三人を見比べて、雅恵を促し、奥の部屋へと消えていった。
まるで雅恵自身がもとからいなかったかのような鮮やかな姿の消し方だったことに、辰夫はなんとなく安堵を覚えた。
老女のやり方は、明らかに慣れていた。
きっとこの屋敷では、過去にもこうしたことがしばしば、起きているのだろう。

父親の富晴が息子になにか言いかけたとき、
縁側の廊下から一人の老人が姿をみせた。
夕べ行われた華燭の典を取り仕切った、この村の顔役だとすぐにわかった。
老人は、すでに齢は還暦をはるかに越えて、人の好い枯れきった爺様という穏やかな風情をしている。
瓢右衛門と名乗るその老人は、折り目正しく正座すると、三人の前で三つ指をついて深々と頭を垂れた。
老人のあくまで律儀で恭しい態度に引き込まれるように、富晴も、規矩子も、辰夫までも、いちように座り直してきちんとした会釈を返していく。
彼は、初めて彼ら一家のまえに現れたときと寸分たがわぬ、もしゃもしゃとした老人特有のしわがれ声で
「おはようございます。瓢右衛門でございます。よきお目覚めでしょうか。
 このたびは、まことにおめでとうござりました」
といった。
「ありがとうございました」
ついそんな返事を返して、三人はいちように「しまった」という表情をした。
老人が言っているのは、夕べの婚礼に対してではないと直感したのだ。
三人の思惑を態度で察したらしく、瓢右衛門氏はすぐに言った。
「いや、いや、ほんとうにおめでたいのですよ。
 都会のご婦人方のご来訪など、この村ではめったにないこと。
 皆の衆も、たいそうな悦びようでしてな・・・
 花嫁の美織様はたいそうな気に入られようで、まだ殿方のお相手に励んでおいででございます。
 当地の嫁入りのしきたりでしてな、他所の土地から嫁にくるおなごはだれもが通る道なのでございます。
 ふた晩、三晩かけてでも、皆の衆と仲良うなってから、ここでの暮らしが始まるのですぢゃ」
「あの・・・沙織のほうはどうしているのです?」
さっきから気づかわしそうにしていた規矩子が、花嫁の妹の名を口にした。
老人はおうむ返しにこたえた。
「ご安心めされませ。沙織様はまだ殿方のご経験がないとわかりました。
 お若いお身体ですから、献血のほうはそれ相応にお願いいたしましたが、
 ご心配されておられるようなことは、なにもございませぬ。
 当村では、処女のおなごは貴重ですのでな」

「あの・・・由香里叔母さんと市晴叔父さんは・・・」
辰夫がいっしょに都会から来た叔父夫婦のことを気づかうと、
「ご安心めされませ。市晴様は当地の男衆たちとさっそく意気投合されましてな。
 ご令室の由香里様の晴れ姿を、いまでもあちらの離れでご一緒にお愉しみになられておいでです。
 お盛んな方のようで・・・村の女衆も交えてですから、お互い恨みっこなしということでしょうかの」
老人のこともなげな応えで知った弟の態度に、富晴はさすがにあっけにとられたようすだったが、
傍らの規矩子が囁くように、意外なことを言った。
「郷に入りては・・・ということかもしれませんね・・・」
「まさかお前!?」
富晴はびっくりして、永年連れ添ったはずの妻を、見知らぬ別の女でも見るような目で視かえしたが、
規矩子はそれには構わずにつづけた。
「ひととおりのごあいさつをしなければ、この村から出ることもできないのでしょう?」
続けはしたものの、そこまでが規矩子の限界だった。
「でもちょっと私・・・恥ずかしいわ・・・息子だっているのに」
妻の悩まし気なためらいように、今度は富晴がいった。
「いや、ごもっともです。それにしても、こう申してはなんですが、変わったお土地柄ですな。
 ふだんからこのようなことをくり返しておられるのでしょうか?」
「エエ、そうですな。身内の恥を申すようですが、かくいう私も新婚そうそう、家内を寝取られましてございます。
 嫁入り前の身体から生き血を啜り取られて、すっかり参ってしまったのでしょうな。
 彼らは夜這いの時には、地酒を持ってまいりましてな、亭主殿にしたたかもてなして、酔いつぶしておいて、
 それから嫁御に挑むのですな。地酒と引き替えに、嫁の身体を・・・というわけでございましてな。
 エエ、娘も、息子の嫁も、皆々そんなふうにして、夜は姿かたちを変えるのですぢゃ。
 誰もが恨みっこなしで、人の嫁を、娘をと、群がり集いましての。
 婚礼などのような晴の席は、おなご衆も着飾ってまいりますから、そうしたことの格好の場なのですぢゃ」

ひとしきり話が済んだころに、黒留袖を着つけ直してもらった雅恵が現れた。
どことなく着ずれしていて、髪型も不自然にまとめられているのは、姑と同じだったが、
とにかくも宿までは歩いて帰れそうな感じだった。
「お身の回りのものは、お宿から引き払って当屋敷でお預かりしておりますぢゃ。
 後ほどお部屋にご案内いたしますでの。
 落ち着かれたらまた・・・ここにお出でなさいませ。
 なに、いきなり男衆がおおぜい群がるような無作法なことはございません。
 そういうことは、得心がゆかれてからのほうがお愉しみいただけるものですからの。
 お気持ちが据わられたら、このお座敷で、お昼のご用意などさせていただきますでの」
――要は、昼前に腹を据えて、妻たちを差し出す気持ちを固めろ・・・ということなのであった。

結局、富晴も辰夫も、自分たちの妻を村の男衆に提供することに同意した。
女たちはいちようにためらいを見せ、恥じらったが、
「できれば少しでもお手柔らかに」とまで言う夫たちに逆らうこともできず、
着付け直された黒留袖のまま、渋々のように男衆の待つ席へと足を向けた。
男衆どもが、都会の奥様方の着物姿をもう一度おがみたいと望んだためだった。
夫たちも、ためらいながらもその場に立ち会った。
そして、夕べと同じ落花狼藉が、真昼間の庭先で再現されるのを、息をのんで見守った。

「母と雅恵の貞操を処刑されているうようだった」と、あとで辰夫は語る。
むき出された白い柔肌が黒留袖に映えるありさまが、母ながらなまめかしかったと。嫁ゆえに悩ましかったと。

「まさに、晩夏の挽歌でしたな。しゃれにもなりませんが」と、凌辱の現場で富晴もひとりごちた。
「お察ししますよ」老人は応じた。「でも、良い眺めでござんしょ?」
老人の言いぐさに富晴はちょっとためらいをみせたものの、素直に肯きかえしていた。
女たちは今や恥を忘れて、夫たちに見せつけるようにして、
身につけた礼装にはおよそ不似合いな、露骨な痴態に耽っている。

受話器。

2017年11月26日(Sun) 08:29:25

「お義母さまにも、いい想いをさせてあげましょうよ。すこしでもお若いうちに」
妻のそんないけない囁きにそそのかされて、受話器をとったわたし――
ここは吸血鬼の棲む村。
村の衆は誰もが彼らのいうことを聞き、妻や娘さえも捧げることを、むしろ誇りとし悦びとしていた。
そんな土地だと知りながら、都会に住むことができなくなったわたしたちはこの村にやって来て、
いまではわたし自身すらが、妻が愛人をつくることに同意してしまっていた。

母をこの土地に招ぶ――
多少の罪悪感と後ろめたさを感じながら、わたしは受話器をとった。
受話器の向こうから聞こえてくる声色は落ち着いていて、
それでも熟れた美味しい血を宿した女が放つ声だと自覚してしまうのは、
この土地に慣れ親しんでしまったものの身につける忌まわしい感覚なのだろうか。
母は、紅葉の見ごろになったら父といっしょに遊びに来ると、約束してくれた――

身体が埋もれるほど積み重なった紅葉のうえで。
それまで気丈に振る舞っていた母は、
帯を解かれ襟足をはだけられ、眩しいほどの裸身を輝かせながら、
息荒く群がる男衆たちを相手に、気丈に振る舞い抜いていった――

数か月後。
母は父を連れて、この村に移り住むようになった。
うわべは渋っていた父もまた、母と村の衆との交際を認めないわけにはいかない仕儀となったらしく、
いまは潔く?妻の貞操を荒々しい抱擁と吶喊とに、譲り渡してしまっている。

握りしめた受話器の向こうから聞こえてくる、母の声は。
ひどく若やいではずんでいて、
きっとよそ行きのスーツを奥ゆかしく着込んでいるはずなのに、
そのスーツのすそを腰までまくり上げられて、
ストッキングを脛まで引きずり降ろされて、
後ろからズンズンと突き抜かれつづけているらしく、
「あなたもっ・・・典子さんにきをつけてッ・・・あげなさい・・・ネッ・・・!?」
と、声の抑揚もどことなく、おぼつかなくなっていた。

数か月前の老成しきった、もの静かで冷静な声色とは、20歳は若返ったかのように、はずみきっていた。

受話器の向こう側はどうやら、収拾がつかないことになってしまったらしい。
やがて母の手から受話器をひったくったらしい父が出て、いった。
「もういいから、かんべんしてあげなさい。あとは父さんが面倒見ておくから」

振り返ると妻は、ベッドのうえに片脚だけもたれかけさせながら、床のうえに大の字になって気絶している。
口許からは、だらしなく垂れたよだれがしたたり、
ベッドのうえに無造作に投げられた脚は、ひざ小僧までずり降ろされたストッキングが、ふしだらな光沢を放っていた。

目のまえには、抜け殻どうぜんになるまでむさぼられた妻の裸体。
受話器の向こう側からは、理性を塗り替えられた両親の声。
そのどちらもが、わたしの理性をも狂おしく塗り替えてゆく。

戦利品 その2 ――蟻地獄――

2017年11月26日(Sun) 07:54:12

「嬉し恥ずかし」の初応接の時期が過ぎると、妻と交際を続ける男衆の頭数はぐっとしぼられてくる。
犯す側と犯される側とのあいだには、必然的に「相性」というものが生まれてくるからだ。
いまは、2~3人の特定の男衆が代わる代わる妻をあの藁納屋に誘い出して、
時には一対一で、時には複数で、辱め抜いてゆく。
「辱め」といっても、人妻本人にもその夫にすらも苦痛を感じさせることがないのは、こういう村ならではのことなのだろう。
わたしもまた、妻ともども彼らに誘われたときには、できるだけ応じるようにしている。
彼らは獲物にした人妻を夫の目のまえで弄びたがるというけしからぬ趣味を持っていたので、彼らの願望を好意的にかなえてやるために――
都会育ちの人妻の淫らな遊戯は、夫までも巻き込んで、明け方までつづくのだった。

妻の身体からはぎ取られ、せしめられていった洋服や装身具たちは、
その後交際から遠ざかった男の手から、交際を続ける男の手へと移っていって、
さいごはひとりの男が、あのときの服装のすべてを手にすることになる。
それを見せつけられた夫は、妻と間男との交際に、三人で乾杯をして、
「おめでとう、末永く妻をよろしく」と言って、すべてをゆだねることになっている。

妻の父親もわたしの父も、わたしと同じように寛大な夫になるのに、そうは時間がかからなかった。
さいしょに妻を咎めたのは、実の母親だった。
けれども彼女はすぐに、母娘もろともあの納屋で輪姦されて、すっかり大人しくなってしまった。
身ぐるみ剥がれてムシロ一枚の「お菰さん」なんかにされてしまっては、それまでの人生観など無に等しいものになってしまったとしても、あながち本人を責められない。
「娘に関心があったら、お袋のことも抱きたくなるもんだね」
妻の洋服ひとそろいをの所有者になったあの男衆は、そういいながら、
さっきわたしの義母を犯してきたという一物を、ズボンのうえから自慢げに撫でさするのだった。

彼がふたたび自分の一物をズボンのうえから自慢げに撫でさするのを見たのは、それからひと月あとのことだった。
相手はわたしの母だった。
ぐうぜん妻の濡れ場を目撃して、姑として厳しい咎めだてをしたときのことだった。
そのときも。
嫁と姑はひとしく男衆たちの餌食にされて、納屋の中で衣装ひとそろいをせしめられて、
引きかえにムシロを一枚渡されて、家に帰されたのだった。
そのときの妻の機転で、母は自らの裸体を通行人にさらす機会をあまり多く持たずに済んだ。
自分の母親の時もそうだったから、もう慣れたものだった。
母は自分が咎めようとしたはずの嫁の機転に、後々まで感謝することになる。
そして息子に隠れて――息子であるわたしは、すべてを知ったうえで黙認したのだが――毎朝毎昼毎晩情事にいそしんで、いままで厳しく守り抜いていたあそこをゆるゆるにされて、都会の自宅に戻っていった。
そして次の訪問のときには、父のことも連れてきた。
「どうして父さんまで連れてきたの?」と訊くわたしに、
「だって、お父さんだけのけ者じゃ、かわいそうじゃない」と、彼女は答えたものだった。
母の不始末をネタにやんわりと脅された父は、脅しに屈することなく――しかも彼らの好意的な真の意図をきちんと見抜いたうえで――自発的に妻の貞操をプレゼントすると彼らに約束した。
彼らが都会妻たちと関係を取り結ぼうとする強引なやり口から、独特の好意を汲み取ることができる才能は、もしかしたら“血”だったかもしれない――
彼らはきっと、その血を口にすることで、獲物に見合った待遇を決めるのだろう。

もう、還暦を過ぎてしまったのに――
そういって恥じる母に父は優しく、「魅力と年齢とは関係ないのだよ」と諭し、
若い肉体を持て余す男衆の待つ藁納屋へと、促してやっていた。
楚々としたワンピースも、なまめかしいストッキングも、一枚のムシロにひき変えられてしまうと知りながら――

村の男どもの棲み処にまた、女もののよそ行きの衣装がこれ見よがしにとひるがえる。
落ち着いた年輩の婦人が好んで身につける、洗練された衣装たち――
それは花柄やベーズリー柄のワンピースだったり、高価なシルクのブラウスだったりする。
スカートハンガーに丁寧に吊るされた丈長のスカートたちは、その裏側に、
忌まわしくも淫らな粘液をたっぷりと吐き散らされて、
裏地が白茶けるほど濡らされているのだろう。
なん足も引きむしられたストッキングは束にされて、持ち主が犯された回数を誇示するように、夫たちの目のまえにぶら提げられる。
夫たちはそれを見あげて満足げに、こう呟く――
「家内のことを気に入ってもらえて、嬉しいですな」と。

村を中心にして親族知人を巻き込む“蟻地獄”は、こうして今回も平和裏に、都会の家族を呑み込んでいった。


あとがき
人妻が堕ちてしまったあとにどうしてもつけ加えたくなるのが、その母親や姑の濡れ場です。
悔しがり、歯がみをし、羞じらいながらも欲望に勝てずに、それまでの気丈さをかなぐり捨てて耽ってしまう彼女たち。
村の男衆と永年連れ添った妻たちとの関係を快く受け容れる、寛大な父親たち。
あり得ない風景かもしれませんが、どういうわけか鮮明に妄想することができてしまうのです。

戦利品。

2017年11月26日(Sun) 07:32:44

村の男衆たちの手で、納屋に引きずり込まれるまえ。
妻が着ていたよそ行きのスーツの代わり、
納屋からふらふらとさ迷い出てきた妻がまとっていたのは、一片のムシロ。
むき出しの腕や藁にまみれた裸足を隠しかねながら、
まだ息荒く、それでもあたりのようすを憚るように身をかがめながら、
こちらへと戻って来た。
いつもの気の強さには不似合いな、オドオドとした目線をあたりに配りながら。

出し抜けに首すじに貼りついたヒルのような唇が、欲望を果たし切ってしまうまで、
とうとう離すことができないままに、
くらくらと貧血を起こしてその場に倒れたわたし。
そのわたしを気づかうような、昏い視線だけを残した妻は、
吸血の習癖を持つ男衆の手で、納屋に引きずり込まれていった。
妻がようやく解放されて、貧血から立ち直りかけたわたしの許に戻ってくるまでに、
小一時間が経過していた。

生き血を吸い取られる意外になにをされたのかは、明白だった。
けれども、わたしにはどうすることもできなかった。
彼らがそういう性癖を持つことまで知りながらこの村を訪れたのは、
他に行く場を失ったわたしたち夫婦の意思だったから。

妻のあとをついてくるようにして、男衆たちも納屋から姿を現した。
手に手に妻の身体からはぎ取った衣類を、戦利品としてぶら下げながら。

ブラウス。
ジャケット。
ネックレス。
スカート。
スリップ。
ブラジャー。
ショーツ。
ストッキング。
ハイヒール。
どれもがひとつひとつ、別々の男の手に持たれて、せしめられている。
見返りに妻に手渡されたのは、かろうじて身を覆うことができる大きさの、一片のムシロだけ。
妻は怯えたように彼らを見回し、
彼らはなれなれしい目で、自分たちが支配した女を眺めまわす。

「真面目な奥さんなんだな。ずいぶん手こずったぜ」
若い衆のひとりが言った。
「んだんだ。でも、エエ身体しとるのぅ」
もうひとりが応じるようにして、そう言った。
「こんな女優さんみたいな嫁さんもろうて、羨ましいのぉ」
べつの男がしんそこ眩し気に、わたしたち夫婦を見る。
「気ぃつけて」
さいごに口を開いた頭だった男の声色は、奇妙な親しみといたわりに満ちていた。

道行く人たちは皆、見て見ぬふりをしてくれた。
こちらの異変に、明らかに気づいていながらも。
自分の妻を捧げた夫を、侮辱してはならない――そんな不文律に支配されているかのように。
村に迎えられるためにだれもが通らなければならない荒っぽい通過儀礼は、
こうしてわたしたち夫婦の間を、嵐のように通り過ぎた。


「早くしよ。遅れたら失礼よ」
そういってわたしを促す妻は、真っ赤なスーツに黒のブラウス。
足許を染める薄地の黒のストッキングは、肉づきのよいふくらはぎをなまめかしく染めて、
淡いピンク色をした脛が、ジューシィに透きとおっている。
休みの日ごとにかかるお誘いに、きょうも夫婦そろって出かけるのだ。

迎える男衆はたいがい、独り者だ。
夫婦者の場合には、自分の妻がほかの男の相手をしに出かけていったときに、声をかけてくる。
女っ気のない寒々とした部屋に妻を呼び入れる彼らの目的は、わかりきっている。
熟れた人妻の生き血と、その血を宿す瑞々しい肉体――
身につけたスーツを突き通すように鋭い男どもの視線は、
夫であるわたしの目の前であるにもかかわらず、露骨に鋭くもの欲しげだった。
応接間には、これ見よがしに掲げられた、女もののジャケット、ブラウス、ストッキング――
初めてのとき、納屋のなかで組み敷いた妻からせしめた戦利品が、あの日の出来事を鮮明に蘇らせる。

男どもの接待は、それは念が入っていて、
土地の料理からここでしか口にすることのできない地酒にいたるまで、至れり尽くせりなのだ。
わたしはわざとのように途中で酔いつぶれ、
あとは妻と相手の男との痴態が、夫の目の前もはばからずくり広げられる。
夫公認の浮気にすっかり狎れてしまった妻は、
いけませんわ、いけませんわ・・・あなた、助けてえっ!
と、相手とわたしの気を引くような声をわざとあげながら、息荒い欲情のもとに、組み敷かれてゆく。

目のまえの凌辱を愉しむことができるようになったわたしにとって、
こうしたお呼ばれに、苦痛を感じることはない。
若い血液と都会妻の肉体を、男どもと分かち合う歓びだけが、
狂った鼓膜と網膜とを痺れさせてゆく――

かつては妻の地位と品性とを彩っていたネックレスが、ブラウスが、スカートが。
愚かな痴態に耽るわたしたちを見おろすように、ハンガーにかけられてぶら下げられている。
なにもかもが初めてだった妻の身体からはぎ取られ、せしめられた戦利品たちが、
わたしたちの和解を祝っているのか、呪っているのか、
ただ無表情に、わたしたちのことを見おろしている。

「だめダンナ」

2017年10月14日(Sat) 04:32:50

オフィスの中でいつもいかつい顔をして肩をいからせている部長が、
めずらしく照れくさそうに笑っている。
部長のデスクには、いつも威厳たっぷりに置かれている「〇〇部長」のプレートの代わり、
「だめダンナ」と大きく書いたプレートが。
いったいあれはなに?
この職場に来て間もないわたしが周りに訊いても、だれもがニヤニヤ笑うだけ。
だいじょうぶ、すぐわかるから。だれもが順番に置いてもらえるから。
同僚の一人はそう言って、自分のところにも月2か3くらいで置かれるんだといって、
部長と同じように、照れくさそうに笑った。

その晩自宅に戻った私は、この街に棲むという吸血鬼の訪問を、初めて受けた。
首すじにつけられた咬み痕が、ジンジンと妖しく疼いた。
相手は父親よりも年老いた、100に近いのではという老人。
それがまだ吸われていない妻のまえ、わたしに言った。
ご夫婦の寝室はどちらかな?
こっちです。もう布団を敷いてありますけど。
恐る恐る、妻がこたえた。
では、わしはその部屋で寝(やす)むとしよう。
吸血鬼はつづけていった。
奥さんを小ぎれいに着替えさせて、わしの部屋に連れて来てくれ。
寝苦しかろうが、あんたはそこのソファで寝ると良い。
首すじの疼きは、わたしの理性をあっさりと奪い、
どうぞお気の済むようにと会釈を返すと、ためらう妻を促していた。

「だめダンナ」
きのう部長の机に置かれたプレートが、今朝はわたしのデスクに置いてある。
臨席の同僚が、そっと囁いた――おめでとう、と。
職場のだれもが、見てみぬふりを決め込んでいる。
そしていつもと変わらぬ日常が、くり返されてゆく。
帰りぎわ。
プレートはいつの間にか、なくなっていた。
そして、向かいの同僚の席に置かれていた。
「彼のところがいちばん多くて、週1くらい。
そのつぎがぼくで、月2か3くらい。
やっぱり若い奥さんのほうが、彼としてもいいらしくって。
部長はきのうが初めてだったから、あんなに照れくさそうにしていたんだ。
あの人、部下の奥さんのことをあっせんするのは、得意なんだけれどもね」
彼の口調にちょっぴり非難の色があったのは。
彼の奥さんも部長にあっせんされてしまったからだろうか?

来月も。
若い社員がひとり、この職場に赴任してくる。
たしか新婚三か月だときいている。
事態は薄々、事前にきかされているはず。
でも、断り切れないなにかを抱えて、この職場にやってくる。
みんな都会にいられなくなった事情を抱えながら、
きょうも自分の机のうえにプレートが乗るのを、
なぜかドキドキしながら、待ち焦がれている。

(10月6日構想)

村の吸血鬼に捧げた妻

2017年10月04日(Wed) 07:00:49

薄いピンクのスーツに、黒の網タイツ。
そんないでたちをお出かけ姿にした妻は、
立派に「都会育ちの淫乱妻」。
そういう役柄を望んだのは。
望んできたわけでもないこの片田舎の任地で、
妻を見初めた村の衆。
相手は妻の父親よりもずっと年上な、みすぼらしい爺さまだった。

むしろそういうひとのほうが、気楽だわ。
妻がそう言ったのは、男が妻を組み伏せて、無理やり想いを遂げたあとのこと。
前もって首すじを咬まれて血を抜かれてしまったわたしは、
むざむざと征服されてゆく妻のありさまを、ただ見せつけられることしかできなかった。
植えつけられてしまった妖しい昂ぶりを、歯を食いしばってこらえながら。

行為が済まされてしまうまでのあいだ、わたしが歯を食いしばっていたのを、
屈辱をこらえていたのだと誤解した妻は、
はだけたブラウスを直そうともせずに、わたしのほうへとすり寄って、
あなたごめんなさいを、ひたすらにくり返していたけれど。
男との取引はその場で成立して、妻を安心させていた。

夫を愛しているから、離婚するつもりはない――と、妻。
妻を愛しているから、離婚するつもりはない――と、わたし。
離婚してもらうには及ばない。家族を壊すのも嫌だし――と、爺さま。
そして爺さまがそっと囁いたひと言に、わたしはゾクッと昂ぶりを覚える。
あんたの奥さんを、志藤夫人のまま辱め抜きたいのぢゃ。

でも二人が望むなら、お付き合いに応じさせても・・・と言いかけてしまったら。
妻があとを継いで、つつしんでデートのお供をつとめさせていただきますと言い出して、
あなたの妻のまま、あなたを裏切らせて――そう囁く妻に、無言で肯きかえしてしまっていた。

都会に住んでいたころ、肌色のストッキングしか穿かなかった妻は、
いまでは男の好みに合せて、妖艶な黒のストッキングや、けばけばしい光沢タイツ、網タイツを穿くようになった。
そして逢引きをする時には、わたしの送り迎えを望むようになった。
だって、貧血になるんですもの。
頭をかかえながら一人で帰るのはいやだわ。
だって、お洋服をくしゃくしゃにされてしまうんですもの。
おっぱいをまる見えにさせながら一人で帰るのは困るわ。
妻の言うなりに、送り迎えのつとめを果たすことに、
辱めよりも歓びを感じはじめてしまった、わたし――


きょうもまた、わたしの隣を歩く妻は、
網タイツの脚をおおまたに、歩みを進めてゆく。
発育のよろしい肉づき豊かなむっちりとしたふくらはぎに、
水商売の女みたいな妖しい網タイツを穿いて。
大またで歩いてゆくその先には、
年老いた情夫の待ち焦がれる、恥知らずな不倫のベッド。

娘よりも若い女を迎え入れた爺さまは、
おぅ、おぅ、きょうはいちだんと、あでやかぢゃの――と、妻のことをほめたたえて、
どうせ、血をたっぷり獲るには太い脚のほうがいいって仰るんでしょ――と、妻はこれ見よがしなふくれ面をして、
どうぞごゆっくり――と、わたしは気をきかせて、座をはずす。
うかうかしているとその場で血を抜かれて、いちぶしじゅうを見せつけられる羽目になる。

そ知らぬふりをするわたしの背後、
爺さまは恥知らずに妻にすり寄って、網タイツの脚にしゃぶりつき、
妻は恥を忘れてきゃあきゃあとはしゃぎながら、つま先立ちをしてもの欲しげな唇をなすりつけられてゆく。
黒の網タイツをびりびりと咬み破かれながら、生き血を吸われ、犯されてゆく――

人妻を口説く。

2017年09月04日(Mon) 05:19:02

民俗学の本みたいな描きかたで、描いてみました。^^


この村は、人妻を口説く行為に寛容である。
夫の親友がその妻を。
舅が息子の嫁を。
息子の幼なじみがその母親を。
親しい同士で口説き、夜這い逢っているという。

節操というものは大切にされていて、
村の少女たちは年ごろになる前からそうしたことを母たちから教わっているほどであるが、
同時に大切である節操を与えるということもまた、陰では奨励されているのである。
なによりも、当の母親たちが夫の親友や舅、それに息子とまで通じ合っているのだから。

人妻を見初めた男はその家に言って、その女の夫に地酒を振る舞う。
夫のほうでも相手の下心はよく心得ているが、
よほどのことがなければその地酒を飲んでひと寝入りを決め込む。
そうなる以前から間男のほうから夫に申し入れがしてあって、
夫はそれとなく、妻に言い含めておく。
相手の間男のことをことさらに褒め、
その男との関係は自分にとって大切であること、
であるから妻である貴女もまた、彼と親しくなることが務めであることを告げるのである。
それだけで妻の側もいっさいを承知して、
夫がその男を迎える日には、身なりを整えきちんとした服装で応接をする。
妻を口説かれるということは、その妻を持つ夫を称賛することだと見なされている。
だから間男は人妻を征服しても夫の名誉を傷つけようとはしないし、
夫もまた同じ女性を愛する男性として、間男の好意を容認するのである。

夫が地酒によってひと寝入りしてしまうのを見はからって、
間男は妻に言い寄り、夫婦の布団のうえで彼女を組み敷いてゆく。
さいしょのときの抵抗が長ければ長いほど称賛の対象となるが、
どこかでは必ず力を抜いて、夫の友人の好意に応え、応接しなければならない。
その夜は、妻にとっても夫にとっても、長い夜になる。

まぐわいはひと晩つづけられ、その間夫は別室にこもり時を過ごす。
なかには友人が愛妻に親しむところをかいま見て、興じるものもいるという。
友人や身内が自分の妻を犯すところを視るのは、夫の特権とされていて、
視ることを望まれた間男は、その妻をことさらに猛々しく征服し、
妻もまた気丈に振る舞いながらも、熱情をこめてまぐわいを受け容れる。

一夜が明けると夫が起きる前に間男は家から姿を消し、
妻はいつものように朝の炊事に精を出す。
もちろん、なにごともなかったように。
夫のほうも夕べのことはおくびにも出さず朝食を採り、仕事に出かけてゆく。

夫が仕事に出かけてゆくと、間男は再び戻ってきて、その妻と通じる。
そして妻を家から連れ出して自分の家に引き入れ、一日じゅうまぐわいを続ける。
まぐわいはその次の日の夜明けまでつづき、妻は間男に連れられて帰宅する。
妻の朝帰りは近所のだれもがそれを知るような刻限に行われるが、
夫が妻と間男とをこころよく迎え入れることで、周囲に二人の関係をそれとなく知らせるのである。

一週間以内にその家では近所や身内を招んでの宴が開かれ、
宴の趣旨は公にされないものも、だれもがそれを実質的な披露の宴と心得ている。
その席では夫は末席にいて、妻と間男とが上座についているからである。
このような形で認知されると、夫と間男は今まで以上に親身な関係を築き、生涯助け合うという。

あいさつ

2017年08月01日(Tue) 06:39:16

まだ、引越しのあいさつがないね。いちど奥さん連れて、うちに来なさい。
あんたにも、いい地酒を飲ませてあげる。

隣に住むそのごま塩頭の男は、そういってわたしたち夫婦を誘った。
田舎の人間が「あいさつがない」と言い出すと、
どこか頑なで横柄なものをイメージするかもしれないけれど、
彼の場合はごくおだやかで、
「ここのしきたりを、まだよくはわかっていないのだね。教えといてあげるよ」
と言いたげな親切心さえ感じられた。
男に言われたことを、帰ってすぐに妻に告げると、
「アラ、そうでしたわねぇ。でも、何も持っていくものがないわ」といった。
男はそうした妻の困惑にさえ気持ちが行き届いていて、
「そんなものは要らんから、身ひとつでお越しになってください」とまで、いってくれていたのだった。

翌日の晩、わたしたち夫婦は、彼の屋敷を訪ねた。
隣家といったが、彼の家は大きな古屋敷だった。
実際、周りの人間のあいだでも、彼の家は「古屋敷」という呼び名で通っていた。
男はその家に、独りで棲んでいるようだった。
古びてどす黒く汚れた床に、淡い色のストッキングを穿いた妻の脚が、寒々と映えた。

男は「さ、さ、奥へどうぞ」といって、わたしたちをいざない、
迷路みたいに曲がりくねった廊下を通り抜けて、中庭に面した和室へと案内してくれた。
なにもない座敷だったが、真ん中のちゃぶ台のうえには、待ってましたとばかりに一升瓶が置かれていた。
酒を嗜まない妻のためには、冷えたジュースが用意されていた。

どこから来なさった?
不景気で離職、借金・・・それは大変だったねえ。
それであの会社の社長さんと知り合って、ここに赴任した。そうかね、そうかね。
わたしたちはもっぱら、この田舎に流れてくるまでの過去について話し、
男はもっぱら聞き役になって、わたしたちの話しに同情に満ちた相づちを打って来る。
わたしたち・・・といっても、妻は時折言葉をはさむ程度だったが、
その控えめな態度に、男は明らかに好意を持ったようだった。
すすんでお酌をしたのも、男の心証をよくしたのかもしれない。
妻は地味な性格で落ち着いていたが、そういうところはしっかりしていた。

酒がまわってきた。それも出し抜けといえるほど、急激に――
そしてわたしは身体をふたつに折るようにしてその場に突っ伏し、
同時に男は、傍らに控える妻の細い肩へと手を伸ばした。
「あっ、何をなさるんです!?」
妻の叫び声がした。
どたばたと抗う物音もした。
けれどももう、わたしの身体は痺れたように動かなくなっていて・・・
男のいった「あいさつ」の本当の意味を、理解するはめになっていた。
田舎のみすぼらしい家屋には不似合いなくらい、妻の身なりは洗練されていた。
そんな都会育ちの衣装を揉みしだかれて、はだけたブラウスから覗く乳首を口に含まれて、
千鳥格子のタイトスカートを、腰までたくし上げられて、
ツヤツヤとした光沢を帯びた肌色のストッキングを、むざんに剥ぎおろされて、
身動きできないわたしのまえで、妻は恥知らずな凌辱に素肌をさらしていった――


「今夜も、ごあいさつに伺いましょうよ」
「明日も、お勤め帰りにごあいさつに伺いましょうよ」
「あたし・・・きょうは一人でごあいさつに伺ったの」
妻は罪のない大きな瞳を輝かせて、きょうも「ごあいさつ」を口にする。
「アラ、あなたお隣で振る舞われたお酒、お口に合うって仰ったじゃないの」
けげんそうに言いかえしてくる妻の言うとおり、たしかにあの家の酒は美味だった。
美味な地酒と妻の貞操を交換することに、いつか嫌悪感を忘れかけてしまっていた。
男はわたしたちの頻繁な訪問を悦んで、いつも慇懃に奥の間に通してくれて。
そこでわたしは貴重な古酒を振る舞われ、
足腰立たなくなってしまってから、男は妻に襲いかかる。
妻は男から受ける凌辱を予期しながらも、いつも都会ふうに着飾って、男の家を訪れる。
古くさくみすぼらしい屋敷のたたずまいに不似合いなくらい洗練された衣装は、
男の節くれだった指にむしり取られ、裂き散らされてゆく。
乱れ果てた衣装のすき間から覗く、白い裸体――
そんな情景にわたしは不覚にも昂奮を覚え、
男はそんなわたしの恥ずべき嗜好をあらかじめ知っていたかのように、
都会育ちの人妻然として着飾った妻に、我が物顔でのしかかってゆく。

古屋敷にごあいさつに伺う。
それは、周囲でも公然となっている、地元の風習。
わたしたち夫婦だけではなく、
古くから男を識っているものも。
つい数年まえに転入してきた都会の夫婦も。
定期異動で不運(幸運?)にも当地に赴任してきた教諭夫妻も。
必ず夫婦連れだって、ごあいさつに来るという。
当地に赴任して一年が過ぎた頃、都会の本社から、赴任を継続するかどうかの意向伺いがきた。
妻は大きな瞳でわたしを見つめ、わたしが黙って肯くと、
自分でペンを取って、「可」の欄に大きくマルを書き加えていった。

「うちの父さんが、沙耶ちゃんの血を吸いたがってる」

2017年07月18日(Tue) 06:29:38

「うちの父さんが、沙耶ちゃんの血を吸いたがってる」
同級生のハルオくんがぼくにそう持ちかけてきたのは、
ぼくが彼に吸血されるようになってから半月くらい経ってからのことでした。
なんでも、下校途中の沙耶を見かけてすっかりご執心になったとか。
そういうときって、いちいち親族に断って紹介させるものなのかい?
って、ぼくはハルオくんに訊きました。
ぼくのときは、体育の時間にふと気づいたら二人きりになっていて、
ライン入りのハイソックスを履いたふくらはぎを咬まれてチューチューやられたのがきっかけだったから。
ハルオはそのときのことを訊かれているのだとわかったのか、ちょっときまり悪そうにしながら、
「うちの父さんはシャイだから」
と、いいわけにもなりそうにないいいわけを、してきたのでした。

沙耶ひとりでは怖がるだろうからと、さいしょは本人の前でぼくが、ハルオくんを相手に吸血されるところを、お手本に見せることになりました。
夕方沙耶を連れ出すとき、母さんはぼくの意図を薄々察していたようですが、止めようとはしませんでした。
いずれ自分の番が回って来る・・・と、わかっていたからです。

この街は、父さんの勤める会社の創立者の出身地で、吸血鬼と人間とが平和に共存しています。
都会からこの街に越してきたぼくたちは、父さんの勤め先の人事担当者から、そうしたことを聞かされていましたし、
ぼくたちがこの街に送り込まれる理由も、血液を提供するためだと言われていました。
いろいろな事情で都会に住めなくなったぼくたちは、献血の協力と引き替えに、安住の地を得ることになっていたのです。

なにも知らない沙耶は、暗闇迫る公園で、兄妹で二人きりになって、
彼方から二人が姿を現したときにはじめて、なにが起こるのか気づきました。
「やだ、お兄ちゃん怖い」
怯える沙耶をなだめすかして、ぼくのまえにかがみ込んでくるハルオ君を相手に、
いつものように足許をくつろげて、ハイソックスを履いたふくらはぎを咬ませていきました。

「痛くないの?平気なの?」
なん度もくどいほど訊いてくる沙耶の背後に、ハルオくんのお父さんがまわり込んで、
後ろから抱きすくめると、否応なしに首すじを吸って、牙でガブリとやってしまったのです。
「あぁあーっ!」
沙耶はかわいい悲鳴を上げて、ベンチの隣に座るぼくとおなじように、チューチューと血を吸いあげられていったのです。
兄妹の身体から、競い合うように吸いあげられる血の音を、ぼくたちのことを気にかけて様子を見に来た母さんは、息を殺して聞き入っていた――あとでそんなことを打ち明けられて、家族3人でにっこり笑い合ったのは、もっとずっとあとのことでした。

ハルオくんも、沙耶の血を吸いました。
お父さんから分け前をもらえたのです。
ハルオくんはお父さんと入れ替わりに、沙耶の後ろにまわり込むと、
ベンチの背もたれに身体をもたれかけさせた沙耶の首すじを咬んで、
さっきお父さんがやっていたみたいに、沙耶の血をチューチュー吸いはじめたのです。
咬んだのは、お父さんが咬んだのとは逆側でした。
お父さんは「生意気だ」と苦笑いしながらも沙耶の足許にかがみ込んで、
沙耶の履いているハイソックスを咬み破りながら血を吸いはじめます。
真っ白なハイソックスには、みるみる赤黒いシミが拡がりました。
ぼくの履いているライン入りのハイソックスは、ハルオくんに咬み破られて、
やはり赤黒いシミをべったりとつけて、たるんでずり落ちかけていました。
沙耶のハイソックスも同じように弄ばれて、くしゃくしゃにずりおろされてしまうのを、
ぼくはなぜか胸をドキドキとさせながら見つめつづけてしまいました。

それ以来。
ぼくたち兄妹は、学校帰りにハルオくんの家にお邪魔して、
兄妹ながらハルオくん親子に血を吸われるようになったのです。
ほとんどの場合ハルオくんがぼくの、お父さんが沙耶の血を吸ったのですが、
たまに獲物を取り替え合うことがありました。
一人の人間を襲って生き血の味が気に入ると、家族の血も気になるのだそうです。
血のつながった家族の血は、味も似ているらしいから・・・
お父さんがぼくたちの母さんを襲ったのは、きっとそういうことだったのでしょう。
その前にお父さんは、ぼくたちの父さんを勤め先まで訪ねていって、咬んだそうですから。
貧血になるほど血を吸われ、病院経由で父さんが帰宅したときは、
こんどは母さんが血を吸われている真っ最中で、
父さんはハルオくんのお父さんに遠慮して、母さんが吸血されているリビングには入らずに、
隣の部屋からいちぶしじゅうを見守っていた――と、ハルオくんから後で聞きました。
母さんが襲われているあいだ、「視ないほうがいいよ」といわれたぼく達兄妹は、
妹の勉強部屋で3人でいて、交代でハルオくんに首すじや脚を咬ませてあげていたのでした。


その夜の出来事がきっかけとなって、
母さんはハルオくんのお父さんと、父さんとは内緒でおつきあいをするようになりました。
「子どもは知らないほうが良い」とハルオくんは言いましたが、
ぼく達だってそこまで言われたら、母さんがハルオくんのお父さんに何をされているのかは、おおよそ察しがついてしまいます。
ですからぼく達は、知らないふりをしつづけることにしました。
母さんがいつものようにキビキビと立ち働いて、ぼく達を早く学校に行かせようとするのを、沙耶とふたりこっそり目くばせし合っては、クスクス笑いをこらえていました。
なにしろ、ぼく達と入れ替わりに、大人のお愉しみが始まるのですから――

母さんがハルオくんのお父さんの餌食になってしばらく経って、ハルオくんがぼくに自慢しました。
「俺、大人の女の味を識ってしまった――雄太の母さんで」
予期してたことではあったけど、ちょっぴりショックでした。
そう、ハルオくんは、ぼくの母さんを相手に、いわゆる「筆卸し」、つまり初体験を済ませたのです。
ショックでしたが、なぜかドキドキしてしまいました。
ハルオくんはそんなぼくのようすをなにも言わないで見ていましたが、
それ以来、ぼくは母さんか沙耶のどちらかに付き添うことをお願いされました。

ハルオくんのお父さんが沙耶を呼び出したときには、
よそ行きの服に着替えた沙耶をハルオくんの家に送り届けて、
先にお父さんに血を吸われて、元気になったお父さんが沙耶のうえにのしかかります。
さやがおめかしをしてきたのは、お父さんに襲われるためだったのです。
だからお父さんの節くれだった掌が、
沙耶の着ているブラウスを荒々しくくしゃくしゃに着崩れさせたり、
折り目正しいプリーツスカートを、パンツが見えるまでたくしあげられたりするのを、
沙耶はくすぐったそうな笑い声をあげながら、受け容れていったのでした。

ハルオくんが母さんを訪ねて家にやって来るときは、
よそ行きの服に着替えた母さんはウキウキと台所に立ってお紅茶の用意をし、
ふたりでいる勉強部屋に、お紅茶を3杯淹れていそいそと現れます。
ハルオくんは色気づいた気分になると、父さんがいる日でも構わず家に来るので、
そういうときには3人で、ぼくの部屋にこもり切りになるのです。
ぼくはハルオくんの分のお紅茶も余分に飲みながら、勉強に熱中するふりをして、
ハルオくんがお紅茶の代わりに母さんの首すじやストッキングを穿いた脚を咬んで生き血を啜るのを、チラチラ盗み見ていたのです。
一定量の血を吸って渇きが満たされると、ハルオくんは母さんにのしかかって――ぼくのまえでセックスまでしていったのです。
さいしょはぼくのまえではかっこをつけようとしていた母さんも、
ハルオくんの来るのが度重なると、もうガマン出来なくなって、
聞こえよがしに声をあげるようになってしまいました。
ぼくはそれでも勉強に熱中した振りをしながら、
半ズボンをぬらぬらとした粘液で濡らしてしまうのでした。
母さんの不倫体験――まさかこんなふうに目にすることがあるなんて、思ってもいませんでした。

沙耶のほうも、大きな変化が起こりました。
ぼくが沙耶をハルオくんの家に連れていったある日のこと、
ブラウスのうえからおっぱいをまさぐったり、
パンツのなかに手を入れたりしていたハルオくんのお父さんは、
とうとうガマン出来なくなって、沙耶のことを犯してしまったのです。
居合わせたぼくは貧血でぶっ倒れていたので、あわてる沙耶を助けることもできずに、
たださいしょから終わりまでを、しっかり見届けさせられてしまったのです。
妹の初体験――まさかこんな形で目にするなんて、思ってもいませんでした。


いまお話したのは、10年ほどまえの出来事です。
ぼくたち家族はこの街で、元気に暮らしています。
父さんは同じ勤め先で働いていますし、
母さんは浮気に励んでいます。
沙耶はハルオくんのところにお嫁に行って、ハルオくんとお父さんの面倒を見る毎日です。
ハルオくんのお嫁さんになっても、初体験の相手はハルオくんのお父さんですから、
そうした関係も、ハルオくん公認で続けているみたいです。
「身体の隅まで識られてしまうとね、亭主の親が齢取っても、きちんと面倒をみるものなのだよ」
ハルオくんのお父さんはもっともらしい顔をして、そんな自慢をぼくにします。
たしかに――沙耶はいい嫁になっているのかもしれません。
ハルオくんのお母さんはべつの吸血鬼の恋人なので、
姑の身代わりの役も、それは熱心に果たしているらしいです。

花嫁を父親に寝取らせているハルオくんにも、今年良い話がありました。
ぼくが結婚することになったからです。
結婚相手は、父さんの勤務先の同僚の娘さんで、都会育ちのなにも知らないお嬢さんです。
結婚を控えた彼女を連れてハルオくん親子の家にあいさつに行ったのはつい先週のこと。
そして昨日――ハルオくんはぼくの婚約者に迫って、とうとう処女をゲットしてしまったのです。
「初めての女の人は初めて」と悦ぶ、ハルオくん。
未来の花嫁の初体験を目の当たりに、妖しい歓びに目ざめてしまった、ぼく。
彼女がぼくを裏切って、べつの男性に処女を捧げるシーンはとても悩ましく、
母さんや沙耶が襲われるところを目にして植えつけられてしまったマゾヒズムを、大きく開花させてしまったのでした。

これからはきっと、ぼくもこの街の良き住人として、花嫁の治子さんともども仲良く暮らしていくのでしょう。
築いた明るい家庭では、優しい心を持った息子や娘が育ち、
娘は年配の吸血鬼――たぶんいい齢になったハルオくん――を相手に純潔を捧げ、
息子は妹を初めて犯した同じ吸血鬼に、自分の未来の花嫁をゆだねるのでしょう。

あなたも、この街で暮らしませんか?
ご家族と一緒に。


あとがき
友だちの妹に目をつけた父親のため、吸血鬼の少年が吸血相手の友だちに妹を連れ出させる――
父親が妹を犯すところまで見届けるながらも、さいごは彼女を妻にすることに。
結果的に、自分の結婚相手を父親に襲わせ処女まで与えてしまう というのを描きたかったのですが。
友だち目線にした結果、
「妹の吸血初体験を協力させられて、妹の血を気に入った相手に母親まで襲われて、
妖しい歓びに目ざめてしまったあげく、結婚相手の処女まで奪わせてしまった」
という、別の形の寝取られ話になってしまいました。
^^;

延命された貞操

2017年07月10日(Mon) 06:37:09

貞淑な主婦が犯されそうになったとき、必死で抗って。
相手が自分の心を読んで、暴力で彼女を犯そうとする意図を諦めて、見逃してくれたとしたら。
彼女はどれくらい、感謝するでしょうか――?


吸血鬼と共存しているというこの街に赴任して、一か月ほど経ったときのことでした。
妻の生き血を、特定の吸血鬼にプレゼントする羽目に陥ったのは。

その日は、わたしの所属する地元のクラブ・チームの試合の日でした。
都会出身の職場の同僚に同好の人がいて、メンバーに加えてもらったのです。
対戦相手は、吸血鬼のチームでした。
締まっていこうぜ。負けると試合のあと、血を吸われちまうからな。
同僚の囁きにもかかわらず、結果は惨敗でした。
吸血鬼チームのメンバーは、けた違いの馬力を発揮して、吸血する権利を手にしたのでした。
彼らは思い思いにわたしたちのチームの選手を一人ずつ選んで、血を吸ったのです。

奥さんが応援に来ているチームメイトも、おおぜいいました。
彼らは促されるまま奥さんともどもグラウンドの向こうの草むらに脚を向けて・・・
立ち去りぎわに振り返ると、彼らは顔が土気色になるまで血を吸い取られて草むらの中に転がっていて、
そのすぐ傍らで、こんどは奥さんまでもが襲われていたのです。

――――――

エッ、奥さん姦られなかったの?
職場のみんながいっせいにこちらを振り向いたのは、週明けのことでした。
その前の日には、職場対抗のスポーツ大会があって、
わたしの所属するチームは吸血鬼のチームに惨敗してしまったのです。
吸血鬼のチームに負けると、選手は全員血を吸われてしまうことになっていました。
丈の長い靴下が好みだという吸血鬼たちにとって、わたしたちの身に着けたユニフォームは美味しいご馳走だったようです。
短パンの下は、白のラインが三本走ったブルーのストッキング。
試合後選手は全員、相手チームの吸血鬼に呼び集められて、
短パンの下に履いているストッキングのうえから、ふくらはぎを咬まれて血を吸い取られたのです。
奥さんが応援に来ていたチームメイトは、奥さんまで血を吸われ、おまけに犯されてしまっていました。
まるで、自分の奥さんの血を吸わせるために招んだようなものでした。
(いま考えると、事実そうだったのかもしれませんが・・・)

負けるとそういうことになるときいていたので、わたしはわざと1人で参加したのですが、
それは無駄な努力に終わりました。
わたしのことを獲物に選んだ男は、にんまりと笑って言ったのです――きみの血は、きみの家で愉しませてもらうから。
彼の目あてがなんなのかは、訊かなくてもわかります。
でも、断り切れなかったわたしは仕方なく、彼を自宅へと伴ったのです。
そう。この街で吸血鬼に魅入られたら、逃れるすべはない。
それと知りながら赴任を承諾したのは、私たちがもう、都会にいられない事情を持った人間だったからでした。
――この土地は、どんなに負い目のある人間でも、分け隔てなく仲良くしてもらえる土地柄なのだよ。
わたしに転任を薦めた上司はそう言って、自身もかつて数年間、その街にいたのだと告白してくれました。
(彼も既婚者でした)

ほかのチームメイトは全員奥さんを招んでいたので、グラウンドに残っていました。
試合のあとのグラウンドで、チームメイトの奥さんたちは、
よそ行きのブラウスやワンピースを泥だらけにしながら、
生き血を吸われ、犯されていったのです。
きゃあきゃあとはしゃぎながら、それは愉し気に。


家に着くと、妻がびっくりしたように、わたしを出迎えます。
相手チームの吸血鬼を連れ帰るとは、もちろん聞かされていません。
それでも――どういう意図で家まで来たのかは、薄々察しがついたようすでした。
妻もまた、自分の置かれた立場を、よく心得ていたのです。
試合のあとに人を――それも相手チームの吸血鬼を――家に招ぶ予定はなかったし、
途中から妻に連絡するようなこともしなかったので、おもてなしの用意などなにもありません。
でも、そんなことは初めから必要ないのです。
妻は相手の望むままに、妻自身の生き血を振る舞えば、それで済むのですから。

この街で、吸血鬼が既婚の女性を襲うとき、例外なく相手の女性を犯すと聞いていました。
自宅を舞台にした落花狼藉――それはもう、避けては通れないものになっていたのです。
けれども彼は、意外にも紳士的でした。
彼の言によれば、彼が妻のことを見初めたのは、
わたしたち夫婦が赴任のあいさつで初めて出社したときだったそうです。
彼はわたしの同僚たちに、宣言したそうです。
――あの奥さんの脚を咬んで、ストッキングを破りながら血を吸いたい――と。
その望みが、きょうかなえられるのです。
わたしは仕方なく、「おめでとう」と、言ってやりました。
それを真に受けて、素直にありがとうを返されて。
わたしは初めて、まず自分の血を提供するために、ライン入りのストッキングのうえから、牙で冒されていったのです。
太めのリブのツヤツヤした真新しいナイロン生地ごしに、唾液にまみれた唇の熱さが、じかに伝わってきました。

チクリ、と突き刺す、かすかな鈍痛。
じわっと滲む、生温かい血。
チュウチュウと小気味よく吸い取られる、働き盛りの血。
貧血で頭がくらくらするまで、吸いつづけさせてしまっていました。
この唇が。この牙が。
これから妻の素肌を侵すのだ――そう思うといても立ってもいられない気持ちになるのですが。
そのいっぽうで。
こんな唇に誘惑されて、
こんな牙に咬まれてしまったら。
妻だって、ふつうの気持ちでいられるわけはない・・・などと。
感じはじめた罪深い陶酔に、わたしはいつの間にか、夢中になってしまっていました。
なんとか妻の素肌を咬ませたい。
男の相手を初めてわずか数分後には、すっかりそんな想念にとりつかれてしまっていたのでした。

妻が真新しいストッキングに穿き替えて、彼の前に現れたとき。
わたしはもう、貧血のあまり頭を抱えて、じゅうたんの上に転がっていました。
ちょうど――グラウンドを去り際に、同僚の一人が土気色の顔をして草むらのなかに横たわり、
その傍らにねじ伏せられた奥さんが、羽交い絞めにされながら犯されていったときのように。

妻はソファに腰かけて、息をつめて男を見あげます。
男は妻の手を取り、手の甲に接吻すると、ひと言「落ち着いて」と囁き、
それからおもむろに妻の足許にかがみ込んで、
わたしの血を吸い取ったばかりの唇を、ストッキングを穿いたふくらはぎに吸いつけていったのです。
わたしの履いていたスポーツ用のストッキングも、その唇に冒されたばかりです。
まして妻の穿いているパンティストッキングはひどくなよなよと頼りなくて、
ちょっといたぶったらすぐにでもほつれてしまいそうな代物でした。

くちゃっ。
圧しつけられた唇の下。
真新しいナイロン生地にかすかな唾液が散って、
唇のしつようないたぶりにつれて、いびつによじれていきます。
なん度もなん度も、男はその行為をくり返しました。
そしてなん度めかの接吻を、ただの接吻で終わらせずに、そのまま牙を埋め込んでいったのです。
妻の整った横顔がキュッと引きつるのを見て、「咬まれてしまったな」と、実感しました。

チュウチュウ・・・
キュウキュウ・・・
ひとをこばかにしたような音をたてて、妻は生き血を吸い取られていきました。
緊張に包まれた妻の表情がやがてほぐれて、目の焦点が合わなくなって。
口許にはへらへらとした薄笑いさえ泛べて、
やがて姿勢を崩して、ソファからじゅうたんのうえにすべり落ちる――
しかし、男は意外にも、その場で妻を犯そうとしませんでした。
貧血で顔を蒼ざめさせた妻を引きたてるようにすると、もう一度首すじに唇を這わせ、ひとしきり血を吸って、優しく抱きしめると、そのまま解放してくれたのです。

意外な展開に、妻は首すじにつけられた咬み痕に手を添えながら、じっと男を視ています。
男も妻のことを、じっと視かえしていました。
まだ決心がつかないようだね。
男のひと言に、妻はほっとしたように表情を和らげます。
そう、潔癖症な妻はどうしても、この場で、夫の目の前で犯されるという現実に、耐えることがまだできずにいたのです。
男は血を吸いながらも冷静にそんな妻のようすを見極めて、
妻が立ち直れないほど打ちのめされてしまうのを避け、あえて状況を寸止めにしたのでした。

わしらがあんたがたを犯すのは、恥を掻かせてやろうとしてそうしているわけじゃない。
生命と同じ値打ちのあるものを飲み物にさせてくれたお礼に、敬意を表したいだけなのだ。
だがそんなことを言われても、いきなり信じられるものじゃない。
ふつうの奥さんなら、強引に迫って落としてしまったほうが、踏ん切りがつくこともあるのだが。
だいぶ、潔癖なひとのようだから。
奥さんを人間なみのやり方で抱くのは、つぎの楽しみに取っておくよ。

男は朗々とした声色で、そう告げたのでした。
破いたストッキングを弁償したいとまで、男はいって、わたしに一万円札を差し出しましたが、それは断りました。
妻のことでお金をもらうわけにはいかないから――そう言って、そこは鄭重に辞退をしたのです。
「受け取っておけばよかったのに」
妻は後で、あっけらかんと言ったのですが。
もしかすると受け取ってしまったほうが、妻がわたしにたいして感じる罪悪感を、目減りさせることになったのかもしれません。

男は代わりに無心したのは、妻の穿いているストッキングでした。
見るかげもなく破けて血の滲んだストッキングに、どんな値打ちがあるというのでしょう。
でも彼が「ぜひに」と欲しがるのを、拒むすべはありませんでした。
わたしは妻に目配せをし、妻も黙って肯きます。
破れ落ちたストッキングは、男の手で妻の脚から抜き取られて、彼のポケットのなかにせしめられていきました。
辱めを免れた妻にとって、それくらいはお安い御用だったみたいです。
裂けたストッキングを戦利品にされたのを恥じらいながら、妻は上目づかいで好意的な照れ笑いをしてみせました。
きっとあの瞬間――男は妻の心をつかんだのでした。

えっ、姦られなかったの?
職場の人たちがいちように驚いたのは、じつにもっともなことでした。
彼らのだれもが、初対面の段階で妻を襲われ、血を吸われたばかりか犯されてしまっていたからです。
いや、うちも危なかったんですよ――わたしはそう弁解しながらも。
――この街では、吸血鬼に襲われた女が犯されないのは、魅力がないと思われてしまう。
そんな事実を実感せざるを得ませんでした。
彼のいうように、血を吸った女を犯す行為が敬愛の情の表れだとしたら、
それを受けることのできなかった女は一段低く見られたことになり、
女の身体に称賛を与えなかった男のほうも、非難の対象となる――きっとそういうことなのだろうと。

けれども、妻の貞操が生き延びることができたのは、そこまででした。
なぜなら、彼は三日にあげず自宅にやって来て、妻の血を吸いつづけたからです。
首すじに、ふくらはぎや太ももに、なまの唇をじかに這わされて。
スリップを真っ赤に濡らし、ストッキングを咬み破かれながら、
妻はその素肌にくまなく、もの欲しげな舌なめずりを這わされつづけ、
あげく、パンティストッキングをひざまでずり降ろされたうえ、
ショーツの奥にまで舌を這わされてしまっていたのでした。
度重なる訪問に耐えかねて。
妻は少しずつ、肌身を許しはじめていったのです。

もはやわたしも、潔い夫として振る舞うしかありませんでした。
わたしはつぎの週末、男を自宅に招いて、妻のことをたいせつにすると約束をさせたうえで、二人の交際を認めるといってやりました。
先週はスポーツ大会で惨敗したわたしは、今度は妻をめぐる競争でも惨敗したことになるのでしょうか。
「勝ち負けではないですよ」
男はわたしに、言いました。
貴男の最愛の奥さんをまんまと手に入れた私も、勝ち。
最愛の奥さんを潔くほかの男と共有することに決めた貴男も、勝ち。
旦那よりもずっとストロングな男を情夫に持つことになる奥さんも、勝ち。
どうですか――?
多少わたしの分が悪いような気もしないではありませんでしたが、
もっともらしく肯きかえす妻を傍らに、わたしもただ無言で肯きかえすばかりでした。

返礼は派手なものでした。
わたしはその場で提供可能なかぎりの血液を吸い尽されて、
意識が朦朧となって、ぶっ倒れてしまって。
男はそんなわたしの目の前で、妻を羽交い絞めにし、じゅうたんのうえに組み敷いていったのです。
こぎれいなワンピースに装った妻の華奢な肢体は、逞しい彼の下敷きになって、見るからにか弱げだったのを、いまでもよく憶えています。
そのワンピースは、このあいだの結婚記念日にわたしがプレゼントしたものでした。
貞操を喪失するという記念すべき刻に彼女が選んだ装いは、夫から贈られた服。
彼女も非常な決意で、きょうのこの場に臨んだのでしょう。

男は顔を妻の顔に近寄せると、飢えた唇をいつものように首すじに吸いつけようとはしないで、そのまま妻の唇に重ねていったのです。
永遠の愛を誓うキス――
私はそれを見せつけられながらも、ただ「おめでとう」と妻を相手に想いを遂げる男を祝ってやることしか、できませんでした。

見慣れた花柄のワンピースのすそがじゅうたんのうえいっぱいに拡げられて。
それまで脚を通したことのないガーターストッキングの留め具を覗かせるほど、太もももあらわなポーズを取って、
良家の子女だった妻は、いままでとは別の世界へと足を踏み入れていきました。
ええもちろん、わたし自身も――
目のまえで妻を寝取られてしまうことに、もう心臓を高鳴らせながら。
妖しい昂ぶりの虜になって、その場の状況を見守るばかり。
母がこの場に居合わせたなら、「なんというばかなことを」と、たしなめたに違いありませんけれど。
わたしはそのときの選択を、いまでも間違っているとは思いませんし、むしろ誇りにすら感じています。

恥を忘れて娼婦になり果てた妻――
わたしのまえですらさらしたことのないほどのはしたない喘ぎと媚態とをあらわにして、
彼の欲求に心から応えていったのです。
添田家の主婦が堕ちた、記念すべき瞬間を、わたしは非常な満足とともに見届けたのでした。


あとがき
だらだらと長くなっちゃいましたね。^^;
心の中では犯されたくないと願う人妻の心を汲んで、いちどは見逃してやって。
その意気に感じた夫婦が、夫は夫としての自尊心を忘れ、妻は妻としての貞操観念を自ら泥まみれに濡らしてゆく。
そんな心理を描いてみたかったのですが・・・

この街に棲むようになった夫たちのための手引き。

2017年05月27日(Sat) 10:57:01

相手がほんとうに兇悪なやつで、きみの妻や恋人、娘や母親に危害を加えようとするのなら、
断固として戦うか、それが難しければ逃げるべきだ。
けれどもこの街に出没する吸血鬼は、決してそういう存在ではない。

まず彼はひっそりときみの日常に、居心地よく入り込んできて、
さりげなくきみの背後に佇んで、そっと首すじを吸うだろう。
気づいたときにはもう、彼の奴隷。
けれども彼は、そうして獲た正当な権利を、決して強引に行使しようとはしない。

礼節を尽くしてきみに接し、きみの健康を害しない範囲で、
自分の生命をつなぐのための最小限の血液を、きみの身体から欲するだろう。
その願いをかなえてやるだけの寛容さを、彼の牙がもたらした毒液は、きみに確実に植えつける。
それでもいずれ、きみの血液の量だけでは、彼の食欲をまかない切ることができないと気づくだろう。
彼はきみにそれを気づかせるために、ふだん彼のために血液を供給してくれる人たちとの交わりを断って、きみだけにかかり切りになるだろうから。

きみは初めて、焦りを感じる。
しかしそれは、身に危険が迫ったための単なる本能的な恐怖心からくるものではなくて、
むしろ彼に与える血液にこと欠いている状況が気になるだけだ。
きみは彼の渇きを癒すため、自分の妻を紹介することを、ごくしぜんに思いつく。

彼とは事前に、よく話をつけておくとよい。
彼がきみの妻に対して、どの程度の、そしてどんな種類の想いを抱いているのかを。

もし彼が、きみの妻に対して、刹那的な性欲を満足させるためだけの欲求を感じているのなら。
ためらうことなく、妻を紹介すると良い。
きみの妻がどれほど貞淑であろうとも、きっといちころでイカされてしまうだろうから。

もし彼が、きみの妻に対して、継続的なセックスフレンドとして遇するつもりがあるのなら。
ためらうことなく、妻を紹介すると良い。
ふたりはきみに迷惑のかからないやり方で、意気投合した交際を続けるだろうから。

もし彼が、きみの妻に対して、夫に近い愛情を感じはじめているのなら。
ためらうことなく、妻を紹介すると良い。
こと果てて骨の髄まで侵されてしまいさえすれば、きみの妻はきみに対して、感謝の念しか抱かないだろうから。

もし彼が、きみに対して、永遠の仲間に加えたいという意思を抱いているのなら。
ためらうことなく、自身の血を吸い尽させて、そのうえで妻を紹介すると良い。
彼はきみの家庭に入り込み、妻も娘も支配してしまうだろうけれど。
その見返りにきみは、この街で気になった女性を、未婚既婚問わずにモノにする権利を得られるだろうから。

奥さん、よくもつな。

2017年05月22日(Mon) 07:38:09

「奥さん、よくもつな」
同僚にふと声をかけられて。
そんなものかと思ってしまう。

妻がこの街に棲む吸血鬼に襲われて、はやひと月になる。
この街に転居してきたのがひと月半ほどまえのことだから、
たったの2週間で襲われたことになる。
もう――真人間として暮らすより、長い時間を過ごしてしまったことになる。

セックス経験のある女性を相手にするとき、吸血鬼はきまって肉体関係まで迫ってくるという。
「お願い。それだけはしないで」
妻の懇願を容れてくれたというのは、当地ではかなり珍しいことらしい。
「うちのやつなんか、ぼくのいる目の前でヤられちゃったんですよ」
若い社員のひとりはそんなことを、いともあっけらかんと口にする。
そう。
吸血鬼に妻を姦(や)られるという事態がふつうに存在するこの街では。
妻や娘を吸血鬼に犯されることは、必ずしも不名誉なことと見なされていない。

さいごまで気丈に振る舞った妻。
献血には理解を示し、相手の渇きを見定めると、過不足なく自分の血を与えるようになっていた。
「たまには、あなたに言わないで出かけることもあるけど、心配しないで」
吸血鬼と2人きりで逢っても吸い殺されることはない。
それはお互いが暗黙の裡に交わした、信頼感の賜物なのか。

相手の男は妻を襲った翌日、わびを入れにわが家を訪れ、
自分から首すじを与えて、妻の味わった貧血をわたしも味わってしまうと、
妻がこの男に狂わされた理由をすぐに察して、
貧血がさほどでもないことを良いことに、ほんの少しの間だけ、家を空けてやったのだった。
帰宅したとき、妻のスカートは透明な粘液に彩られ、裏地まで浸されていたけれど。
「そこから奥には入り込んでいないから」という説明を、わたしは全面的に信用することにした。

「奥さん、よくもつな」
そんなことがあってからひと月たって、言われた言葉。
そう――妻はいまだに、吸血鬼に身体を許していない。
貞淑ぶりを発揮した妻は、いまでは羨望と畏敬の念で、わたしの職場で語られる。

つい先週、2人きりで逢ったとき。
奮発して、インポートもののストッキングを穿いて出かけた妻。
ひざ小僧までまる見えになるほど咬み剥がれたストッキングもそのままに帰宅した妻は、
「いつものやつでも十分嬉しいって言われた」と、
ちょっと嬉しそうにそういった。
「ストッキング代くらい、わたしが稼いであげるから」
わたしがそう耳もとで囁くのを、まるで恋人同士だったころのように、ウットリと頷き返す妻。
嫉妬は昂ぶりを生むものなのか。
そのあと二人の身体がバランスを崩していったのは、理の当然というものだろう。

「ストッキングを破る行為は、セックスの代わりらしいね」
村の長老の老いらくの恋を好意的にかなえてやったという上役は、
おだやかな声色でそういった。
「だから奥さん、奮発して高いストッキング穿いて行ったんじゃないかな」
そうかもしれませんね、と相槌を打つわたし。
いまでは、妻の貞操をなんとしても守り抜こうとは、必ずしも思っていない。
なりゆき次第で、妻を犯されてしまっても。
彼はわたしのもとから妻を奪い去ろうとまではしないことも、
妻が彼に従って家を去ったりもしないことも、
十分に伝わってくるから。

必要とする血の量が、かせとなって。
ひとりの女だけを追い求めることのできない身。
それは男としても悲しいことだと彼はいう。
でも――そうした宿命だから、あんたから奥さんを奪えずにいて、
あんたの幸せをすべて壊してしまうことがないんだろうな。
いつだか彼は、そういっていた。

ある晩わたしは、出かけてゆく妻の耳もとで、そっと囁く。

好きにしていいんだよ。

妻ははっとしてわたしを見返ると、しんけんなまなざしをこめて、いった。
じゃああなた、今夜私についていらして。
初めて犯されるところ――夫として見届ける義務があるわ。

ジャケットを通すのにひどくまごついているわたしを見て、
「うろたえないで」と、たしなめるきみ。
そう、きみは今夜、最愛の夫の見守るまえで、二度目の恋を成就させる。


あとがき
コチラのお話と、ちょっとだぶっているかも。
「間もない同士」
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-3467.html
ストッキングを奮発するくだりが、どうも頭に残っていて。
このお話を描いてすぐ、こんなメモをとっていました。
「奥さん、よくもつな」
「奮発して、高いストッキングを穿いて行った」
「セックスの代わりになっている?」

たった3行のメモから作ったお話です。