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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

吸血鬼を受け容れた街の記録。

2019年09月30日(Mon) 09:19:14

はじめに
ひところ描きためていたもののあっぷです。
上記のテーマで散発的に描きつづけていたのですが、読み返してみるとひとつのストーリーとしてそんなに破たんはしていないようなので、一括してあっぷしてみます。
吸血鬼と和解して、人命の保証と引き替えに彼らに市民の血を自由に吸わせることになった街の日常を、いろんな目線から語ってみようと思ったのですが・・・まあ似たり寄ったりの目線にしかなっていないみたいです。(苦笑)
途中途中に描いた日付を入れています。かなり前後しながらも、ぶれないお話を描こうとしていたみたいです。
「構想」としていますが、その実ほとんど変えていません。


タウン情報

○○市は、吸血鬼との共存を目指すため、来月1日から「吸血鬼親善条例」を施行、吸血鬼の受け入れを積極的に促進する。
近年吸血鬼による襲撃被害が続出していることに対応した措置。
具体的な施策は、居住地のあっせん、子女の公立学校への正式な受け入れ、暫定戸籍の整備、供給する血液を確保するための血液提供者の募集など。
吸血鬼の子女を対象とした学校への受け入れには、一部の私立学校も追随する見通し。また、血液提供の希望者には、市からの一定額の謝礼が支給される。
すでに吸血行為を体験した市民は少なくなく、市の担当課は、新規の血液提供者を大々的に募集する必要はなく、日常生活への影響は軽微であるとしている。
なお、この措置を受けて、吸血鬼側は人命を損なう恐れのある吸血行為を今後控えることを表明した。


校内だより  「吸血鬼受け入れのお知らせ」

来月1日から、当校は吸血鬼の生徒を受け入れます。
転入学に際しては、教職員、生徒及びその父兄をみだりに吸血の対象としないことが条件となっているため、生徒や父兄の皆様に必要以上に危害を及ぼす事態は発生しないものと思われます。
生徒、父兄の各位においては冷静な行動を取るようにお願いする次第です。
なお、転入者との親睦を深めるため、当校では生徒・父兄を対象に吸血鬼のために血液を提供する希望者を募集します。
年齢は13歳から60歳まで。健康な方で、男女を問いません。
面接は随時受付け、採否は本人のみに通知し、秘密は厳守されます。
生徒の安全を確保するため、各位の積極的な応募を希望します。


タウン情報 「変わる学校 父兄の協力求める市」

市内の学校では、吸血鬼受け入れについて父兄の間で不安が広がり、一部の生徒には転出の動きもみられた。
ただし、すでに吸血鬼は市内で日常的に活動しており、顔見知りの吸血鬼がいるという市民や吸血鬼の出入りを受け容れているという家庭も少なくないことから、動揺はむしろ限定的であるとも伝えられている。
反対に、「実態が不明であったものが明らかにされることで日常生活上の不安がなくなる(公立高校の父兄)」といった声もきかれ、同級生の吸血鬼のためにクラスの約半数が血液の提供を希望している学校もある。
市の担当者によると、「今回の措置は、すでに市内に浸透している少数弱者を保護するためのもので、吸血鬼と市民との平和的共存が趣旨。市民の皆さまは決して動揺することなく隣人との和解、懇親を心がけてほしい」と話している。


校内だより

当校では来月から、血液を求めて来校する方々への奉仕を充実させるため、当番制を導入することになりました。
月初以降、下記の順番で吸血鬼を対象とした奉仕を実施します。

3年1組 2組 3組 (各出席番号順)
1年生のうち希望する生徒
教職員 (担任については、生徒引率時に奉仕を行う)
2年1組 2組 3組 4組 (各出席番号順)
3年生のうち希望する生徒
教職員 (担任については、生徒引率時に奉仕を行う)
1年1組 2組 3組 4組 (各出席番号順)
2年生のうち希望する生徒
教職員 (担任については、生徒引率時に奉仕を行う)

来校する吸血鬼は日によって増減があるため、進度は未定です。
奉仕が1週間以内となった生徒を対象に、父兄の皆様には個別に通知いたしますので、
ご子息・ご令嬢の体調管理にご留意いただき、当日はストッキング・ハイソックスを着用の上登校させるよう指導をお願いします。

(描き下ろし)


タウン情報 「”被害”ではなく”親善” 微妙なケースも」 

吸血鬼親善条例が施行されて、きょうで約1ヶ月となる。一部で懸念された混乱はなく、市民の間には平穏な日常が保たれている。

去る17日、下校途中の女子中学生3名が転入したばかりの吸血鬼の集団に襲われ、吸血、暴行される出来事が発生したが、その後被害に遭った女子生徒とその家族、女子生徒と交際中の男子生徒らとの間に和解が成立。3名の女子生徒は吸血鬼との交際を受け入れた。被害に遭った女子生徒の交際相手である男子生徒は、「彼女が犯されてしまったのは残念ですか、今では状況を理解し前向きに受け容れています。彼女が血液を提供するためにお相手を訪問するときには、彼女の負担を減らすために二人で行くようにしています。母も協力してくれるので、心強いです」と話している。

また、条例が施行された当日の1日には、帰宅途中の三十代の夫婦が吸血鬼と遭遇して、夫婦とも失血のため昏倒した事案も発生している。一時、夫が全治2週間の負傷、妻が複数の吸血鬼による性的な暴行を受けたと伝えられたが、その後吸血鬼と夫婦との間に和解が成立。夫は「性的な関係は生じたが、"暴行"ではなかった」と証言し妻もそれを認めたため、これも事件として取り扱われていない。加害者の吸血鬼と夫婦はその後親しく行き来しており、大きな問題は生じていないもよう。

このようなケースは他にも少なくとも数件発生しているが、「直後に和解が成立したケースは事件として取り扱わない(吸血鬼親善対策室)」という市の方針から、深刻な紛争には至っていない。
トラブルの多くは条例の施行後に市内に転入した吸血鬼によるもので、いずれも旧来からの居住者である吸血鬼が和解を仲介しているという。こうした市の対応には、「丸投げではないか」と一部から疑問が提起されているが、吸血鬼親善対策室は「担当部署では旧来から居住している吸血鬼に協力を仰ぐため、彼らとの意思疎通に腐心している。彼らと懇親を結ぶためにほとんどの職員が自身はもとより夫人や子女の血液を自発的に提供するなど誠実に取り組んでいる」と反論、理解を求めている。


生徒の提出作文(上記男子生徒による作文。卒業文集より転載)

彼女を吸血鬼に捧げたお話

ぼくの彼女は、ぼくが3年の2学期のとき、吸血鬼に犯されました。
当時彼女は2年生。同じ課外クラブてま知り合いました。
そして、(親にも内緒だったのですがら)彼女が1年の冬休みに、ふたりは初めて結ばれました。未熟者どうしの関係だったから、文字通り"手探り"のセックスをくり返す日々。友だちには早すぎると言われましたが、毎日が夢中でした。確かに早かったかもしれませんが、お互いにお互いを"最初で最後の異性"だと、いまでも思っています。

結ばれて半年ちょっと経った9月から、市が吸血鬼との親善条例を施行して、ぼくたちの学校にも吸血鬼がおおっびらに出没するようになりました。けれども、彼らはもともと生徒や父兄、先生や職員のあいだに紛れ込んでいたし、来賓として学校に堂々と出入りしている吸血鬼までいたので、条例じたいにそんなに違和感を感じていませんでした。時おり先生がたが、あらかじめオーケーしている生徒たちを空き教室に集めて来賓の吸血鬼に応接させたり、自分たちも手本わや見せたりしていました。それも順番に予防接種でも受けるような身近な感じがしたので、彼女とも「いつか咬まれちゃうかもネ」って話したこともありました。セックスの経験のある女子は咬まれたときに犯されることも聞いていましたが、ぼくたちの学年でそうした女子がほとんどいなかったので、あまり実感がありませんでした。(なんとなくは、警戒してたけど)

彼女が友だちと連れだっての下校中に吸血鬼に襲われたときいたのは、そんなある日のことでした。教えてくれたのは、母でした。ぼくたちの学校ではPTA のつながりが強いこともあり、こういう情報は早いのだと、母は言いました。話題が話題なので、ぼくにその話を切り出すときも母はおっかなびっくり、腫れ物に触るような態度でしたが、ぼくはむしろ「とうとう"順番"が回ってきてしまった」という気持ちでした。当時の新聞を読み返すと、「彼女が犯されてしまって悲しい」と書かれてありますが、いまの記憶では、むしろ、「ずっきん♪」ときてしまった部分のほうが大きかったような気がします。

彼女がどんなふうに抵抗したのか、
どんなふうにねじ伏せられたのか、
どこを咬まれてどんな感じがしたのか、
彼女を咬んだ吸血鬼は彼女の血を気に入ったのか。
彼女のほうではどうなのか?

気になって仕方ありませんでした。
すぐに彼女に会いに行きました。
彼女の家には、彼女以外にだれもいませんでした。
彼女は一人きりで泣いていたようでしたが、ぼくを家に入れてくれると、「ヤられちゃった♪」と、照れくさそうに笑いました。それからぼくたちは、長いことセックスに耽りました。
ぼくしか識らなかった身体には、彼の痕跡がありありと残されているような気がしました。ささいな仕草とか声とかが、いつもと違っていたからです。
けれどもぼくは、恥ずかしいことにそうしたことにさえ昂奮してしまって、「ユウちゃん、あたしのこと犯されて昂奮してるでしょ?」と図星を指されからかわれてしまいました。
なによりほっとしたのは、彼女のぼくに対する態度が変わっていないことでした。
吸血鬼とのセックスが気持ち良いあまり夢中になって、ぼくとのことを忘れられてしまっていたら、それこそ悲しかったですが、そんなことは全くありませんでした。
「咬まれたり犯されたりしているあいだ、ずっとユウくんのこと考えていた。怒られちゃうかな、嫌われちゃったら悲しいなって」と、彼女は言ってくれました。やっぱり彼女は最初で最後の女(ひと)なんだと思い、やさしく抱きしめてあげました。
これからのことも、彼女とじっくり相談しました。
彼女を襲った吸血鬼とは言葉を交わすことができて、「きみは彼氏のことを本気で愛しているようだから、仲を裂くつもりはまったくない。むしろ仲良くしなさい」と言われたそうです。それでも吸血鬼は彼女のことをあきらめたわけではなくて、つぎの週のおなじ曜日に逢おうと約束していました。彼女も、その約束は守るつもりだと言いました。
彼女が犯されているあいだ、ずっとぼくのことを考えていたのは、ぼくにすまないと思ってくれたからではあったのですが、そのなん分の一かは、「楽しんじゃってごめんなさい」だったのです。
そのときぼくはほんのちょっぴりだけムッとしましたが、いまでは違います。
彼女と同じ吸血鬼に咬まれて気持ち良いし愉しいと感じてしまいましたから・・・
彼女の生き血を奪われたことに対しても、ぼくは吸血鬼に嫉妬していました。そしてなによりも、

彼女はどんなふうに抵抗したのか、
どんなふうにねじ伏せられたのか、
どこを咬まれてどんな感じがしたのか、

そんなことが、とても気になっていたのでした。
吸血鬼が彼女の血を気に入ったことや、
彼女も吸血鬼のことを憎からず思っていることは、すでに忌々しいほど、わかってしまっていたのですが。。

ぼくは彼女に、これからすぐに彼に逢おうと言いました。
ぼくもいっしょに咬まれてあげると言ったら、彼女はホッとしたように頷きました。
びっくりしたのは、ふたりで出かけるときに彼女が、それまで着ていた目だたない普段着からよそ行きの服に着替えたことでした。
気になる男性のまえでは、すこしでも綺麗でいたいという女心を、意識しないてまはいられません。
ぼくとのデートのときも、彼女はいつもおめかししていました。だから、その日の彼女のおめかしも、ぼくといっしょに出かけるためではあったはずですが、同時に自分を咬んでモノにした吸血鬼のためなのだと感じたのです。

そんなぼくの気分を、彼女はしっかり見抜いていました。
わざわざ、「あなたたち二人のためにおめかしするんだよ」と、言ったのです。
その上には、「これからは」の接頭語がついているの?とぼくが訊くと、
「ヤーダ、国語の優等生!」とからかわれて、はぐらかされてしまったけれど。。

彼女のうら若い血を奪われたことに嫉妬を覚えたぼくは、当然のことながら、彼女を犯されたことにも嫉妬を感じていました。
けれども、好奇心のほうがまさってしまったのです。
ぼくは、ぼく以外の男に彼女がどんなふうに反応するのか、気になって仕方がなかったのです。

目のまえで彼女を咬まれ、犯されたときの感想ですか?
それはちょっと勘弁してください。(この作文を読んだ皆さんが、一番知りたいことだろうけど)
いま、ぼくにそのときの心境を正直に描きとめる力はありません。
ただいえることは、彼女が吸血鬼に咬まれに行くときにはなるべくぼくがエスコートして、2回に1回はその場に立ち会っている・・・ということだけです。
それでも、時には彼女はぼくに内緒で彼と逢ったりしているらしく、そのことをあとで彼から聞かされたりすると、かなり妬けてしまうのですが・・・

(ここまで7月28日~8月3日構想)



地元新聞

「ハイソックスを着用している健康状態の良好な男女生徒、若干名を募集します。該当する生徒は、302教室に集合してください」
「ストッキングを着用している健康状態の良好な女子生徒、若干名を募集します。女子の制服とストッキングを着用した男子生徒もOKです。該当する生徒は・・・」
授業中の教室に流れる校内放送に、教師も生徒も一瞬発言を控えて聞き入る姿が、地元の中学・高校で頻繁に見受けられるようになった。
校内に来賓として現れる吸血鬼に向けての対応である。
中学2年のクラスを受け持つ鹿村京子教諭(32、仮名)は語る。
「こういうとき、教師も指定されている場合には、率先して生徒を引率するんです。初体験の生徒や経験の少ない生徒の不安を取り除くために指示されました」
引率する教諭は、応接前に生徒の服装をチェックすることが定められている。
ストッキングを穿き慣れない女子生徒の足許を入念に点検し、ストッキングのねじれを直す姿などがよく見受けられるという。

鹿村教諭の受け持ちのクラスの生徒は、すでに全員が吸血鬼への応接を体験している。
「最初に漏れのないよう、出席番号順に呼び出されましたから、全員が体験者です。担任はその都度生徒を引率しました。クラス持ち回りだったので、貧血で倒れることはかろうじてありませんでした」
セックス経験のある女性が吸血の対象とされるときには、性的関係も結ぶことになる。秋に結婚を控える鹿村教諭にそのあたりの事情を取材すると、
「質問は生徒の引率のことだと聞いたのですが」と、やんわりと回答を拒否された。
ちなみに生徒たちに取材すると、鹿村教諭の最近のあだ名は「娼婦」だということである。

●●高校2年の林田直樹君(17、仮名)と井尾谷佳織さん(17、仮名)は、周囲にも認められた相思相愛のカップル。林田君によると、
「募集の放送がかかったときには、彼女と2人で行くようにしています。知らないところで何をされているのか心配しているよりも健全なので・・・エエ、井尾谷さんは処女なので、そちらのほうは心配ないので。ただ、彼女は吸血鬼の間でも人気があるので、目のまえで吸血されると嫉妬しますけどね」と、はにかむ。
井尾谷さんによると、最近彼女を特に指名する吸血鬼が2~3人できたという。
「”またあの人だね”って、彼と言い合いながら教室に行くんです。犯される心配はないのですが、ブラウスを脱がされたりハイソックスをずり下ろされたりといったことは普通にあるので、彼がやきもちを妬くんです。彼氏の前で乳首を舐められたときにはさすがに恥ずかしくて、対応に困りました」と、こちらも照れ笑い。
嫉妬しているところをばらされた林田君は笑って彼女を小突いていた。
「好きですから、嫉妬するのは当たり前です」と、笑いにも屈託がない。
「高校を卒業するまでには処女を卒業します」という井尾谷さん。「お相手はどちらに」という記者からの質問に、「微妙ですね」と意味深な反応が返ってきた。
「彼女の初体験を見せつけられるほうにも、最近興味があるんです」と語る林田君。
井尾谷さんの純潔の行方は、たしかに「微妙」な状況にあるようだ。

市内の中学・高校の中には当番制を採用している学校もあるが、詳細の対応については「市では一元的な指導は行わず、学校ごとに一任している(吸血鬼親善対策室)」としている。

(ここまで8月25日構想)



地元新聞 「冠婚葬祭の実態も一新 吸血鬼向けにリニューアルされる施設」

市内の結婚式場「しあわせホール」は施設を一新、来月1日から再オープンした。
今回の新装の眼目は、吸血鬼の出席者への対応。花嫁が披露宴の席上ウェディングドレス姿で襲われるケースが多発していることから、ホールのスペースを従来よりも2割~3割程度拡張し、出席者全員が吸血され犯される花嫁のあで姿を展観できるよう配慮された。
新郎、新婦の母親や新婦の友人代表も同時に襲われて交接を遂げられるケースが多いため、ホール中央に男女数組が交接できるスペースを設ける。吸血鬼の出席者を多数受け入れる披露宴の場合、交接の対象者が拡がり宴がエスカレートするケースもあり、「中央スペースの広さは従来の披露宴での実例を参考に設計したが、様子をみてさらに拡げることも検討する(式場担当者)」という。
失血により体調を崩した出席者のための応急対応に備えた救護室や、披露宴で生まれたカップルのための個室も用意される。披露宴で吸血の対象とされるのは既婚女性が多いため、カップル用の個室には夫など家族の控え室も用意されているという。「吸血鬼と二人きりになった奥さんのことが心配というご主人は毎回多いので、控え室付きの個室は1ホールにつき40室と多めに設置している。野外での交接を希望するカップルや、個室が行き渡らない場合には庭園をご利用いただけるよう、外部との境界には高い壁と植え込みを設けている(同)」
実際に野外の庭園の利用頻度は高く、「皆さんに視られながらのセックスで、いままでのマンネリ気分が一掃された(結婚歴10年以上のご夫婦)」や、「開放的な気分になって、彼氏以外に抱かれても抵抗なく受け入れることができた(来月結婚を控えた彼氏と同伴した独身女性)」といった声もきかれている。
「吸血鬼が増えたこの街でも、年配者の方々を中心に"妻を吸血されたり犯されたりするのは恥ずかしく不名誉なこと"ととらえる人がほとんど。ご令室やご令嬢を吸血の対象として提供を強いられるそうした方々への配慮も怠らず、吸血鬼と人間との親善が生まれる場となるよう努めたい(式場担当者)」といわれるように、まだ意識の古い男女も少なくないが、そのぶん「個室の利用頻度は予想以上に高い(同)」ともいわれ、新規の設備は有効に稼働しているようである。
当日の花嫁と花婿以外にも、多くのカップルが結ばれる場として、地元結婚式場の果たす役割は大きい。

(ここまで7月27日構想)


地元新聞 「吸血鬼に支配された結婚式場 ”歓び”に目ざめる招待客」

「しあわせホール」で、市外からの利用が増えている。
市民の結婚式に参列した経験のある男女がリピーターとして訪れているようだ。
その中の一人である園かなさん(23、仮名)は語る。
「初めて来たのは、友人の結婚式でした。その場で吸血鬼に襲われて以来、病みつきになってしまって、あまりつきあいのない人の結婚式にもすすんで出席しています。彼氏はいますが、ここの存在はまだ秘密にしています。将来結婚するときには、ぜひ利用したいです。彼氏のお母さんが厳しい人なので、ぜひここの流儀に慣れてもらいたいと思っています」
「複数の吸血鬼と関係ができてしまったので、言いにくくって」と本音を漏らしたかなさんは、屈託なく笑う。
すでに性的な関係を結ぶ特定の吸血鬼も複数いるというかなさんの顔に、曇りはない。

都会で大手企業の重役を務めるFさん(53)も、知人の披露宴に出席して被害に遭ってから、家族ぐるみで式場を積極的に訪問するようになった一人だ。
甥の結婚式に家族で参列したことが、Fさんの運命を変えた。
Fさんの過去を長男のHさん(27)が代弁する。
「従兄の結婚式には、わたしも妻を伴って参列しました。当時新婚三か月だったのですが――ご承知の通りの展開となりまして、妻も披露宴に居合わせた8人の方に犯されました。吸血するのは当然吸血鬼の方々なのですが、乱交タイムになると普通の人間の参列者も加わるんですね(笑)。そのうちのなん人かとは、妻がわたしの時よりも燃えている感じで・・・かなり妬けました。
母は厳しい人なのですが、それでもお1人だけ経験しました。吸血鬼のなかに仕切っている人がいて、”大勢は駄目”というタイプの女性を見抜くんだそうです。たしかに、妻が体験したようなことは母には不似合いというか――ですから父の隣に座っていた人(あとで吸血鬼だとわかりました)がしきりに父にお酒を勧めていて、日ごろ気難しい父が意気投合しているのが意外でした。
人妻を狙うときの最適任者は、ご主人とウマの合う人だそうですが、母の相手は父との相性で選ばれたみたいです。そのまま奥の部屋に手を引かれていって・・・ですから、”決定的瞬間”を目にしたのは、父だけなんです。
妻がなん人めかの男性と夢中で交わるのを前に目のやり場に困っていると、その前に妻をモノにした別の男性から声がかかって、奥であなたを呼んでいるからと・・・披露宴の広間に隣り合わせにいくつも小部屋があるのですが、母はその中のひとつにいました。ちょうど入れ違いに出てきた父が、”あまり視るものじゃないよ”とたしなめるように呟いたのは憶えているのですが、そこで母が父とは別の男性に抱かれていました。よく気づかいをする人で、心のつながりができているなと感じるようなセックスでした。身持ちの堅い母までもが堕ちてしまうのだと思うと妻の行状にも初めて納得がいきました。
それから妻のところに戻ると、わたしも乱交の仲間に加わったのです。妻の両肩を抑えつけてほかの男性に促したり、わたし自身もまたがっちゃったり・・・妻にはあとで軽く叱られましたけどね」
さいごは照れくさそうに首をすくめたHさんも、奥さんともどもかなり楽しんだようだ。
その時のご縁で吸血鬼1人、人間の男性2人と親密になったHさんの妻は、いまや「しあわせホール」の常連。交際相手の男性と示し合わせて、直接関係ないカップルの結婚式にも参列してお祝いをするという。「人の少ない披露宴だと、私たちのようなエキストラの招待客も歓迎されます。人数が多いとその分、場が華やぐからだそうです。私も若い女性の中にカウントしてもらえるので、そこそこうれしいですね。そこでお嫁さんが犯されるのを鑑賞してから、ダンナを裏切るんです(本人談)」という。
それでも夫婦仲が安泰なのは、「しあわせホール」への参列がいつも夫婦同伴であるところに現れていた。
息子夫婦の暴露を受けて、Fさんもようやくひと言だけ、重い口を開いた。
「遺憾ながら、家内のお相手は家内ととてもお似合いです。それが、重役夫人の名誉を汚すことを認めた理由です」


地元新聞 「黒のストッキングはお好き? 冠婚葬祭場でも”吸血・不倫の舞台”を演出する”ダミー法事”が続出」

市内の結婚式場「しあわせホール」の隣接施設で冠婚葬祭場である「やすらぎホール」が、18日に改装を終えた。
従来通り実際の冠婚葬祭の場としても利用されるが、今後は「ダミーの法事」を軸に営業を展開するという。
同ホールを経営する「かしこ祭典」の梶間代表はいう。
「吸血鬼が街に侵入するようになってから、礼装姿のご婦人が襲撃を受けるケースが増えた。彼らは特に黒のストッキングを着用したご婦人の脚に好んで咬みつく習性をもっているので、喪服姿のご婦人が大勢集まる当ホールで吸血鬼向けの営業を企画した」という。
一部には「不謹慎だ」という声もあがるが、同社では「実際の式典とは別日に企画される等一定の配慮をしている(梶間代表)」と強調、受注件数も順調に伸びているという。
最初に企画されたのは、喪服女装の愛好会によるもの。
「淡い毛脛の浮いた男性の脚が黒のストッキングに装われて、独特ななまめかしさを帯びており、吸血鬼たちにも相当の人気のある企画(同社)」といわれる。
実際の法事の二次会としても活用されている。
「親族間では血の味が似通うことから、吸血鬼の間でも需要がある」といわれる。昨今では親戚同士の集まりは敬遠されがちであると伝えられるが、妻を寝取られる嗜好を持つ夫たちの間では喪服姿の夫人を同伴して活動するケースが少なくなく、「親戚づきあいは苦手ですが、やすらぎホールだけは別。今は”聖地”です」と断言する利用客も増え始めている。

(描き下ろし)


地元新聞 「市の経済にも大きな好影響」

市の経済状況をはかる市内経済白書がきのう公開された。白書によると、一部衣料品店の売上が対前年比20~30%増と、目立って好調である。
特に婦人服はフォーマルウェアを中心に対前年比40%と異例の伸びを示した。
「吸血鬼に襲われるご婦人が増えたことが大きいですね」と語るのは、創業70年のA洋服店。街の中心街のアーケード化から年々売上不振にあえいでいたが、ここにきて完全に息を吹き返したという。
「吸血鬼親善条例ができてから、ご婦人が真っ昼間から大っぴらに襲われるケースが目立って増えました。彼らはよそ行きのきちんとした服装の女性を好むので、勤め帰りや冠婚葬祭帰りのご婦人が好んで襲われるようです。学校帰りの途中を中高生が制服姿で襲われることも多いですね。ご婦人方がご主人や親御さんに内緒で親密な関係になった吸血鬼と逢う場合、事前に服を買うことが多いのですが、出先で唐突に難に遭い破れたブラウスの胸を抑えて駆け込んでくるご婦人も少なくありません。服はかさばるから持ち歩くわけにもいかないし、襲うときにはできれば前もって報せてほしいというのが本音ではないでしょうか(同)」
長期的に低迷してきてストッキングの売上も大幅に伸びた。ストッキングの売上が前年同期比50%増となったB用品店では、「吸血鬼がご婦人を襲うときには、ストッキングを穿いた脚に好んで噛みつくので、今では予備のストッキングを2~3足持ち歩いているご婦人がほとんどです。公立学校でもストッキングの着用を推奨しているので、一時は皆無に近かった女子中高生の需要も増えました」と語る。
「OLさんが愛用している着圧式のハイソックスも人気があるようです。また、学生さんの間ではハイソックスの人気も根強く、"毎週3~4足は破かれてます"という強者もいます。男子生徒の間でもハイソックスが流行していて、彼女を同伴して血液の提供に行く生徒さんが履いているようです(同)」と、ハイソックスの売上も順調だという。
意外にも、ストッキングを買う男性も増えているという。襲われた妻のために購入するケースばむろん多いが、それ以外にも"好んで穿いている男性が増えている"という。「奥さんを庇って身代わりに女装して血液を提供しているうちにはまってしまって、奥さん以上の頻度で身なりを整えて出かけて行くご主人もいるみたいですよ(同)」
ストッキングの嗜好が、市民の性嗜好にも大きな影響を与えつつあるようである。

(ここまで8月25日構想)

【タウン情報】 夫たちの血液提供は、「時間かせぎ」?

2017年05月15日(Mon) 06:28:18

昨年吸血鬼の受け入れを市が表明してから、夫婦ながら吸血鬼との交際を受け容れる家庭が増加している。
その実態は不明ながら、本誌はそうした家庭のいくつかから取材することができた。

町野元政さん(29、仮名)は、昨年秋に中学からの同級生だった章子(29、同)さんと結婚した。章子さんとは幼なじみで、十数年の交際を実らせた結婚だった。
その章子さんが吸血鬼に襲われたのは、結婚を間近に控えた去年の夏のこと。
デート帰りを襲われた元政さんはとっさに章子さんを逃がしているあいだに吸血されたという。
「彼女が逃げおおせるまでの時間かせぎのつもりだった」という元政さん。その場は章子さんを逃がすことに成功したものの、以後章子さんには告げずに吸血鬼との会合を重ねたという。
「わたし自身が病みつきになっちゃったんですね」そう苦笑いする元政さんはその1か月後、自分から章子さんを吸血鬼に紹介している。
「わたしの顔色が悪くなっていくのを、だいぶ心配してくれていたみたいなんです。
 ですから彼との面会を継続していると打ち明けたとき、”早く本当のことを言って欲しかった”と言われました」
生真面目な交際だったためそれまで処女だったという章子さんだったが、度重なる逢瀬から章子さんの魅力に目ざめた吸血鬼は、供血者に対する以上の好意を抱くようになる。
婚約者の純潔を求められた元政さんは、吸血鬼の希望を「好意的に受け容れた」という。
「最終的には、彼女と相談して決めました。処女を奪われても愛情は変わらないというのは、交際期間が長かったからかもしれませんね」
婚約者の供血行為は結局、恋人を救うことにはならなかった。しかし、と、元政さんはいう。
「妻は今でも、あの時わたしが身代わりになって血を吸われたことに感謝してくれています。やはり、最愛の女性を身をもって守るという行為は、むだにはなっていないと思うのです」。

高野常春さん(36、仮名)と妻の豊子さん(32)が吸血鬼に遭遇したのは、ちょうど結婚10年を迎えたころのこと。
「吸血鬼が夫のいる女の人を好きになった場合、まず夫にアプローチするんですね」と、常春さんはいう。
「なん度も妻を提供するよう求められました。でもわたしは断固として反対しました。妻を奪われたくなかったからです」
という常春さんは、その後十数回も吸血鬼との面会を遂げながらも、妻へのアプローチを拒み続けたという。
「でももちろん、それで彼があきらめてくれるわけがありません。とうとうわたしが貧血症になって倒れ、見舞いに来た妻を目のまえで襲われてしまいました」
豊子さんの首すじを咬んで、美味しそうに血を飲み耽る吸血鬼をまえに、さすがの常春さんもどうすることもできなかったという。
「結局、わたしが妻を襲われまいとして血を提供したのは、ただの一時しのぎにしかならなかったのです」
以後豊子さんは吸血鬼との交際を強いられたが、「本当は心惹かれるようになってからも、わたしのまえでは嫌々出かけてゆくそぶりを見せる妻のことを、潔く送り出すようにした」という。
「頼もしかったのは、妻が主婦としての務めを片時も忘れなかったことですね。
 浮気に出かけても、夕食の支度をするころにはちゃんと家に戻ってきてくれるんですよ」と、常春さんは明かす。
「”夫がいますので”と言っても、許してくれないんです。でも、御飯時になるからと言うと、ちゃんと帰宅を許してくれました。そういうときには、”夫がいますので”と言うとちゃんと聞いてくれるんですよ」と、豊子さんは笑う。
「自分自身が空腹で人を襲うから、でしょうか」とは、豊子さんの想像だが、「意外に相手のことを気にするんですよね。だから主人のことも思いやってくれたのかもしれません。」
もっとも、――どんなふうに思いやるのですか?――という記者の問いに豊子さんが
「エエ、私と逢っている時に、とても主人のことを気にするんです。
 ”いまごろご主人は悶々としているだろうね”とか、”夫がいるのにほかの男に股を開くのは屈辱なんだろう?”とか・・・」
と言いかけた豊子さんに、「それはからかわれているだけだよ」と、常春さんは突っ込んでいた。
しかし、御飯時や子供が帰宅する時間を気にする吸血鬼の習性は街の住民には広く知られており、豊子さんの理解もまんざら的はずれというわけではなさそうだ。
「いまでは、”結婚十周年を機に、妻に愛人をプレゼントした”って、割り切ることにしたんです」
そういって笑う常春さんに、重苦しい嫉妬の影はない。そういう豊子さんも、愛人との交際開始一周年を、間近に迎える。

取材に応じた二組の夫婦の共通点は、どちらの場合も夫が身代わりとなって、吸血鬼に自身の血を吸わせていること。
その動機は、自分が身代わりになって妻を守るという夫の務めを果たそうとしたことにある。
最終的には妻も襲われてしまうので、夫たちは「しょせん時間かせぎに過ぎなかった」といちように洩らす。
しかし、果たしてそれは、単なる時間かせぎに過ぎなかったのだろうか。
恋人の目の前で純潔を奪われてもなお婚約者への愛を失わなかったり、
浮気に出かける妻が夫の御飯支度を気にかけたり、
吸血鬼と不倫をつづける妻たちは、いちように「夫を一番愛している」と告げる。
時間かせぎで消費されたはずの夫たちの血は、きっと時間かせぎ以上の効用を持ち得たと感じるのは、記者だけだろうか。

【タウン情報】初体験の効果は絶大 処女で吸血された女性の回帰率は9割

2017年05月15日(Mon) 05:31:57

市が吸血鬼の受け入れを表明してから20年となるのを機に、本誌は当時処女であった女性80名を対象にアンケート調査を行った。
独自に入手したリストによれば、80名の女性の当時の年齢は、14歳から28歳。うち未成年は約2割であった。
初体験年齢が比較的高いのは、当時は市が吸血鬼を受け容れたばかりであったため、結婚間際の女性が多く狙われたためと思われる。

こんにちでは、吸血体験を遂げた処女の約8割が家族を介して初体験を遂げている。
つまり、すでに血液提供を経験している両親や兄弟姉妹といった家族の紹介で、血を吸われているのである。
一方、20年前に初めて血を吸われた処女たちは、うち6割が初対面の吸血鬼を相手に初体験を遂げていた。
当時はまだ血液提供行為が浸透し切っていなかったことから、親密な関係を築いた吸血鬼に処女の血液を提供するという行為も行きわたっていなかったことが窺えた。

また、初体験後1年未満で結婚した女性が4割を占めた。
学校が吸血鬼によって解放されているこんにちでは、初体験の年齢は低年齢化の一途をたどっており、
20代でしょ体験を遂げる女性の9割が、他市からの転入者である。
市に定住して間もない頃の吸血鬼たちが、結婚を控えた女性を性急に襲ったことが窺える。

初めて性的関係を結んだ相手が吸血鬼である割合は5割強と、昨年の調査とほぼ変わりがなかった。
そのうちの8割以上が、恋人・婚約者の同意を得て結ばれた関係であり、婚約者の純潔はいまもって吸血鬼に捧げられるグレードの高いプレゼントとして若い世代に認識されていることがわかる。
残り5割の女性は予定通り?吸血開始当時から交際していた人間の婚約者と初めての性的関係を結んでいることになる。
吸血鬼は女性の妊娠・出産を機に、一時関係を断つと言われている。育児による大きな負担を考慮しての対応と考えられているが、問題はその後である。
処女のうちに吸血された女性のうち吸血鬼と性的関係を結ばばなかった女性44名のうち、じつに41名が、婚姻後に同じ吸血鬼と性的関係を結んでいるのである。
夫の同意を得て(28名)、最初は気が進まないながら(25名)性的関係を遂げ、以後は夫婦円満に吸血鬼と共存している(41名)というパターンが一般的なようであるが、本人の意思で自発的に吸血鬼と再会している人妻も16名にのぼることから、処女のころの体験の影響力が深いことがわかる。

婚約者の純潔を守り通した世の夫諸君にとって油断ならない結果が判明したが、彼らの名誉のために言い添えると、どの家庭でも吸血鬼を円満に受け容れており、トラブルが皆無であるあたりはさすがであるといえよう。

吸血鬼の棲む街☆裏のタウン情報

2017年04月08日(Sat) 11:04:49

吸血鬼を迎え入れる家庭が密かに急増? 世帯の6割が「歓迎」

当市に吸血鬼の出没が報告されて、はや一年を迎える。
その後、市街地・郊外を含め昼夜を問わず吸血鬼が街出没するようになり、
道ばたの草むらで吸血鬼と人間の恋人同士による和気あいあいの吸血シーンを目にすることも珍しくなくなっている。
本誌はかねてから、当市に居住する10代から50代の男女を対象に意識調査を継続してきたが、このほどその結果の一部が明らかにされた。
もっとも注目されたのは、実際に吸血鬼と接触を持った人たちの受け入れ度。
調査を開始した昨年5月のデータでは、「迷惑に思う」が90%。「仕方なく受け入れている」が10%。
それが夏を過ぎた頃から好意的な見解がにわかに増加して、初めて「好意を持って受け入れている」が5%と低率ではあるが出現した。
さらに年末になると「迷惑に思う」は65%に減少。20%は「仕方なく受け入れている」だったものの、10%が「好意を持って受け入れている」となり、「歓迎する」が5%と初お目見え。
このほど公開された4月の統計ではその傾向がされあに拡大。
「迷惑に思う」はわずか8%にとどまり、「仕方なく受け入れている」も15%。そして「好意をもってけ入れている」「歓迎する」を合計すると、じつに77%の高率を記録し、吸血鬼と人間との関係性が様変わりしているところを見せつけた。
このうち、「迷惑に思う」と回答した8%のすべてが、吸血されて一週間以内であった。
なん度も吸血されるうちに親しみが生まれ、受け入れ度が高まることを示している。

特に夫婦ながら同じ吸血鬼を受け入れているケースが目立ち、「妻が吸われているところを視ると昂奮を感じる」という意見が多く見られた。
限定公開されている当サイトならではの、人々の本音を反映したものといえよう。
吸血鬼筋によると、配偶者の受難の光景を目にして性的昂奮を覚える男性は、「無類の愛妻家がほとんど」。
その情報が拡散したこともあって、愛妻家を自称する夫、夫に愛されていることを自覚したい妻が、すでに吸血鬼を受け入れている知人を介して相手探しをするケースが増えているという。

                  ―――

「なかなか刺激的な記事だね」
ぼくの背後で吸血鬼が笑う。
パソコンに向かうぼくの後ろで、やつに抑えつけられ血を啜られているのは、妻の裕子。
そう、ぼく自身が、吸血鬼を「好意をもって受け入れている」夫の一人なのだ。
さいしょはもちろん、抵抗があった。
けれども、夫婦ながら血を啜られつづけているうちに奇妙な愛着がわいて、
いつの間にか三日に一度と決められていた訪問が待ち遠しくなり、
こちらからお願いをして二日に一度――夫婦で血液を提供する場合、健康を損なわないぎりぎりの頻度――まで頻度を上げてもらい、
さらに今では、彼を居候の一人として養うまでになっていた。
「あんたが妙なサイトを立ち上げてくれたおかげで千客万来、わしらは大助かりぢゃ。心から感謝するぞ」
男は感謝のしるしに・・・と、自分のものにしてしまった人妻に、劣情に熱っぽく濁った粘液をありったけそそぎ込んでゆく。
なにが感謝のしるしなのだ?
いや、やっぱりこれは、感謝として受け入れるべきものなのだろう。
だってぼくは――マゾになってしまったから。
そんな自問自答をしながら、ぼくは部分的には真実も含まれる記事をつぎとぎと、アップしていく。

「知人を介して・・・か。言い得て妙だの」
失神した裕子をそのへんにころがしてしまうと、男は興味津々、ぼくのPC画面をのぞき込んでくる。
「おかげであんたのご両親も、お兄さん夫婦も、わしらに献血してくださるようになったんだからの」
ぼくの頭のなかで、どす黒い悪夢が旋風のようによみがえる。
法事と称して呼び出した肉親の女性たちは、だれひとり洩れることなく吸血鬼の餌食にされ、犯されていった。
居合わせて夫婦ながら血を吸われた夫たちもまた、惑溺の彼方に。
吸血鬼がその鋭利な牙から分泌する淫らな毒に理性を冒されてしまうと、
夫たちは彼らに若い女の生き血を吸わせるため、自分の妻や娘を悦んで差し出すようになる。
いまでは彼らの欲望を満たすための奉仕を、当番制で代わる代わる務めるために妻たちが着飾って出かけてゆくのを、止めるものはいない。
そう。たしかにぼくの周囲に限っては、「好意を持って受け入れている」「歓迎する」といった人たちばかりになっているのだ。
そしてきょうも――

コン、コンと控えめな音でノックされるドアを、ぼくはおそるおそる開けた。
ドアの向こうには、来月結婚する親友の和樹が、彼女の舞を伴って、恥ずかしそうなニヤニヤ笑いを泛べている。
「ブログ、読んだよ。吸血鬼に奥さんや彼女の血を吸わせるのって、愛している証拠なんだって?」
彼女のほうにせがまれちゃってさあ・・・と、言わない約束になっていた事実をぼろっと口にして、彼女にブッ叩かれた。
「やだ!もう!言わないって言ったじゃんっ!」
活きの良い若い声が玄関先ではじけるのを、やつが聞き洩らすはずがなかった。
若さは強さでもある。
貧血から目ざめた裕子のうえに、またも馬乗りになっていた男を指さして、ぼくはいった。
「このひと、女房の彼氏なんだけど、和樹がヤじゃなかったら――」
「そうね。相手のいるひとのほうが安心かも」
結婚を控えた女子らしい慎重さで、舞はやつを値踏みした。
未来の夫の親友が妻を犯されている現場に居合わせているというのに動じないのは、
いまどきの子だからなのか。それとも、可愛い顔に似合わずドライな感情の持ち主だからなのか。
あやまった値踏みだとも知らないで、舞は「この人と吸血体験する」と、和樹にいった。
和樹もひと目みて、やつのことが気に入ったらしい。
「舞がよければ」と、異存はないようだ。
もちろん、和樹も自分の選択がおおいに誤っているとは夢にも思っていないし、
ぼくはぼくで、みすみす罠に堕ちようとしている親友に警戒するよう忠告することを故意に怠ってしまっていた。

「さあ、お嬢さん、くるんだ」
先に血を吸われてめろめろになってしまった和樹をまえに、舞はさすがに怯えた声で彼氏をふり返る。
「いいのかな・・・和樹?」
不安げにゆがむ口許のすぐ下、柔らかい首すじに、やつの淫らな牙が、容赦なく突き立った――

あとは、ぼくの前でまだ結婚前だった裕子がもてあそばれたときと、まったく同じ再現だった。
結婚を控えた彼女が処女を散らす光景をまのあたりに、禁断の歓びに目ざめてしまった親友は、称賛の声をあげる。

共感。

2017年03月08日(Wed) 06:27:25

ハイソックスを履いたぼくの脚をギュッと床に抑えつけて、
カツヤくんはぼくのふくらはぎを咬んでいた。
きつくつねられたみたいな痛みを帯びて、
カツヤくんの唇が、ぼくの血を吸いあげてゆく。
真新しい紺のハイソックスは、ぼくの血潮で生温かく染まっていった。

眩暈を感じても。
頭痛を訴えても。
カツヤくんはぼくの脚を放してくれようとはしなかった。
そのうち意識が遠くなって、ウットリしてきても。
それでもカツヤくんはぼくの脚に執着しつづけた。
ぼく、死んじゃうの?
放った質問の意味と、われながらシンとしたその言葉の響きとに、
ぼくは内心どきりとして、そしてなぜだかわくわくしていた。

なん度呼びかけても応えてくれないカツヤくんに、なん度めか。
われ知らず、ちがう質問を放っていた。
――ぼくの血が、おいしいの?
カツヤくんは初めて顔をあげ、口を開いた。
――ウン、おいしいね。
しんそこ嬉し気な声だった。
カツヤくんは口許に、ぼくから吸い取った血潮を、べっとりと光らせている。
ふだんだったら卒倒しそうなその光景をみて、ぼくは思わずつぶやいていた。
――きみの頬っぺたには、ぼくの血が似合うんだね。
カツヤくんはぼくに向けて、初めて笑いかけてきた。
――気に入ってくれて、よかった。
あり得ないやり取りを口にしながら、ぼくはなぜか満ち足りていた。
カツヤくんもとっても、満足そうだった。

きみのパパの血は、僕のママが。
きみのママの血は、僕のパパが。
いまごろたっぷりと、吸い取っているさ。
きっとそれぞれ、仲良くなって。
いまごろは、打ち解けた関係になっているはず。
そう――家族ぐるみで仲良くなるって、そういうことさ。
この街で暮らしていくにはそのほうが、居心地よく暮らせるんだから。
カツヤくんの言いぐさは、まだ子供だったぼくには、意味が半分しかわかっていなかったけれど。
そう・・・って、ごくしぜんに相づちを打ってしまっていた。

これから泊りがけで、都会に行ってくる。
先月まできみの住んでた、あの街に行って、
きみの彼女のこずえさんの血を吸ってくる。
どう?うらやましいだろ?
きみはまだだけど、ぼくは彼女の血が吸えるんだぜ。
きっと――なにも知らないこずえさんは、見ず知らずのカツヤくんに征服されてしまうのだ。
彼女を征服される。
そんなおぞましいはずの想像に、なぜかぼくはふたたび、胸をワクワク昂らせてしまっていた。
こずえさんのうら若い、温かな血潮が、いまのぼくと同じみたいに、カツヤくんに吸い取られてしまう。
カツヤくんのことをうらやましと思えるのは、なぜ?
血を吸ったこともないぼくが、自分自身がこずえさんの血を味わったような気分になっているのは、なぜ?
その問いに対する答えが与えられるのには、すこしだけ時間がかかった。

おはよう。
ぼくの家の玄関のまえ、いっしょに都会に住んでいた時と全く同じように、
こずえさんは制服の肩先に三つ編みおさげの黒髪を揺らして、いっしょに学校に行こうと声をかけてくる。
幼い頃から仲の良かった、こずえさん。
将来はいっしょに結婚するんだと、ごくしぜんにそう思い込んでいた。
それが、父さんの借金のおかげで、住み慣れた街を夜逃げどうぜんに出ていくはめになって、
お別れも言えない永遠の訣(わか)れに、ぼくは胸を暗く閉ざしていたものだ。
それなのに。
都会の制服からこの街の女学校の制服に衣替えしたこずえさんは、いまぼくの前にいる。
顔色をちょっとだけ蒼ざめさせてはいたけれど。
イタズラっぽく覗かせる白い歯の輝きは、ひと月まえまで見慣れていたそのままだった。

ぼくはカツヤくんに、週1回血を吸われる。
こずえさんもカツヤくんに、週1回血を吸われる。
カツヤくんはこずえさんの血を欲しがるときにはいつも、ぼくにエスコートを頼むことになっていた。
ママがカツヤくんのお父さんに呼び出されるときと、同じように。
ぼくはカツヤくんの家の閉ざされた玄関のドアのまえ、1時間ほども待ちぼうけを食わされて、
彼女が咬まれる光景を想像しながら、じりじりとした刻を過ごす。
そのじりじりが、なぜか愉しくて。
こずえさんが吸われる木曜日が、ひどく楽しみになっていた。

「ヘンなひと」
こずえさんはぼくの態度にちょっぴりあきれながらも、イタズラっぽく輝く白い歯を、隠そうとはしない。
咬まれた後の白いハイソックスに撥ねた血を街じゅうに見せびらかしながら、
ぼくにエスコートされて、古びた商店街をおっとり歩くのが、いつか彼女の習慣になっている。
きょうもこずえさんは、濃紺のプリーツスカートの下、
真新しい真っ白なハイソックスのふくらはぎを、初々しく輝かしている。
ぼくはぼくで、彼女と同じ色のの半ズボンの下、濃紺のハイソックスのリブをツヤツヤとさせて、彼女の前に立つ。
こずえさんがぼくにナイショで、ひとりきりでカツヤくんのおうちにお邪魔して、
ふたりきりで逢っているのは、お互い口にしないことにしている公然の秘密――
でもぼくは、なかば血のなくなりかけた身体じゅうに、淫らに走り抜ける快感のなかで。
カツヤくんがこずえさんの血を吸い取ることにたいする共感を、なんら違和感なく受け止めてしまっている。
――将来はきみも、こずえさんの血を吸える身体にしてあげる。
もしかしたら空手形かもしれないそんな彼のささやきに、
ぼくはウンウンと嬉しそうに、うなずき返してしまっていた。

ベースキャンプ

2017年01月04日(Wed) 07:29:11

何年ぶりかで、血を吸われた。
都会に出てきてからは、無縁の悦楽だった。
封印していたはずの快感が身体のすみずみにまで行きわたって、
終わるころにはもう、自分から身体を離すことができないまでになっていた。
相手は幼なじみのリョウタ。
もちろん同性である。
身を起こす間際にもう一度、首すじに這わされた強烈な口づけに、思わずときめいてしまっていた。

これからしばらく、きみのところをぼく達のベースキャンプにさせてもらうよ。
一方的な言いぐさに、すぐに頷いてしまっている。
「妻は巻き込みたくないな。何も知らないんだ」
「そうか」
リョウタは案外と素直にそういうと、
「無理強いはしないから」
と、あまりあてにならない約束をしてくれた。
約束はむろん、その晩のうちに破られた。

泊めるだけで構わないといわれ、三人分の布団を急きょ母の家から調達した妻は、
それでも来客への心遣いなのか、綺麗にお化粧をし、よそ行きのスーツまで着込んでいた。
もちろん、幼なじみたちの、絶好の餌になってしまった。
死に化粧とならなかっただけ、マシと思わなければならなかった。
過去にはそうした時代もあったのだと、親たちから聞かされてはいたけれど。
吸血鬼と共存するようになって久しいこのごろでは、血を吸われて死ぬということは、絶えて聞いたことがなかった。

「ちょっとたばこを買ってくる」
そういって外出した十数分のあいだに、妻はあっけなく、狩られてしまっていた。
血を吸い取られ輪姦を受け、洗脳されてしまった妻は。
客人たちの世話を頼むというわたしに、ホッとしたように最敬礼する。

都会の女を狩りに来た吸血鬼たちは、あの街の出身者の家をベースキャンプに指定する。
居合わせた妻や娘は否応なく、血液を提供することを強いられて、
夫や父親たちは、彼らの滞在中妻や娘をその支配下にゆだねることに同意させられる。

「無理強いはしないから」
という彼の約束が正しかったことを、ぼく達夫婦は、自分たちから証明してやることにした。
好奇心にとりつかれて、血を吸われてみたいとせがむ妻の願いをかなえるため、
夫に依頼された彼らは、妻をウットリさせてくれたのだった。
ぼくはぼくで、久しぶりにやって来た彼らにせめてものもてなしをするために、
たばこを買うのにかこつけて、妻を襲うための時間を作ってやったことにした。
もしかすると、ほんとうにそうだったのかもしれないと、あとで思った。
血に飢えた彼らのため、ぼくはうら若い人妻の生き血を毎晩、捧げることに同意した。

出勤するわたしを見送る妻は、よそ行きのワンピース姿。
このあとすぐに、彼らへの餌として惜しげもなく破かせてしまうのだろう。
それだのにウキウキしている妻は、いままでとは別人だった。

吸血鬼のベースキャンプ。
その家に住まう主婦は、獲物のないときの客人に、自らを獲物として差し出してゆく――

支配された街

2016年12月06日(Tue) 07:37:05

勤務先の病院の口うるさい婦長が、白衣の下にラメ入りの白タイツを穿くようになった。
それ以来。
看護婦の半数はスカートを着用し、その下にラメ入りの白タイツや網タイツ、
地味なひとでも白の薄々のストッキングを穿くようになった。
院内を女主人の顔をして闊歩する院長夫人も、いつものパンツスタイルをかなぐり捨てて、
優雅なフレアスカートの下、薄手の肌色のストッキングに包んだ肉づきたっぷりのふくらはぎをさらすようになり、
見舞客の女性たちすら、そのほとんどがよそ行きのスーツ姿で訪れるようになる。

道行く女性たちも着飾った姿が目だつようになり、
女学生たちの足許も、地味な白のソックスから大人びたハイソックスやなまめかしい黒のストッキングに、すり替わってゆく。
気がつくと。
未亡人している母も、いつも身に着ける喪服の下を、黒の網タイツで彩るようになっていた。
そのだれもが帰り道をたどるとき、なまめかしいストッキングに裂け目を走らせて、家路につく。
「白だと血のシミが目だつわ」
と愚痴る看護婦も。
「アラ、黒のほうが裂け目が目だつんですよ」
と、鮮やかな裂け目を妖しく拡げたストッキングの足許を自慢げに見せびらかす母も。
きちんとセットした髪を振り乱し、はだけたブラウスすらも小気味よげに外気にさらす院長夫人も。
首すじには等しく、ふたつ綺麗に並んだ咬み痕を滲ませている。

吸血鬼が支配してしまったこの街で。
わたしもいつの間にか咬み痕をつけられて、母を愛人の棲み処へと送り迎えをくり返している。

娘の身代わり。

2015年12月26日(Sat) 07:52:51

忍田が足音をひそめて近寄ると、そこには女の影が佇んでいた。
濃い夕闇が視界を奪って、影の主がたれなのか、すぐに判別できない。
きょう待ち合わせているはずの少女は、16歳。
ふた月ほどまえから血を吸うようになった、県立の高校生だった。
案に相違して。
そこに佇んでいたのは、少女よりもはるかに年上の女だった。
面差しがどことなく、少女のそれと似通っている。
女はおずおずと忍田を見、気まずく口ごもりながらも、話しかけてきた。
「優香が・・・娘が体の具合を悪くして・・・」
みなまで言えずに言いさした言葉を、忍田は無遠慮に継いだ。
「お母さんが身代わりに、わしに血を吸われにおいでなすったのか」
女は凍りついたように、立ちすくむ。
赤いバラをあしらった小ぎれいなワンピースに、ぴかぴか光る黒のエナメルのハイヒール。
肩先に波打つウェーブの栗色の髪は、美容院でセットしたばかりのように鮮やかな輪郭を持っている。
女というものは、こういうときでさえ、己をひきたてようとするものなのか。
忍田の胸の奥で、なにかがぶるりと慄(ふる)えた。

優香と呼ばれる少女が血を吸われ始めたときには、週一回の約束だった。
それが週二になり、週三になり・・・いまではほとんど、毎日のように逢っている。
身体の具合も悪くなるわけだ。
それほどまでに、彼の牙から分泌される毒は、無防備な素肌に色濃くしみ込まされたのであろう。
ここは吸血鬼の支配する街。
逃げるだけの理性を持ったものたちはすでに逃げ、
残っているのはひたすら、支配を甘受しようとする者たちだけだった。
忍田はきょうの日の来るのを予期しながら、少女の血を容赦なく啜りつづけた。

今朝のことだった。
少女の家から出勤してきた背広姿の男が、目ざとく忍田をみとめた。
彼女の家のものには、面が割れていないはず。
それなのにいち早く彼を、娘の生き血を吸う吸血鬼だと察したのは、親というものの持つ本能なのか?
男は人目の立たない近所の公園へと忍田をいざない、真剣な顔つきで懇願した。
「娘の血を吸うことについては、なにもいわない。でもせめて、死なせないでくれ」
代わりに自分の血を吸ってもらえないか・・・?男の申し出は、要するにそういうことだった。
忍田は言われるままに優香の父親の首を咬み、ほんの少しだけ血を啜った。
けれどもやっぱり、無理だった。
「悪いが、どうしても男の血は受けつけないのだ」
身を挺してまで娘を守ろうとした父親に、忍田は衷心から頭を下げた。
けれどもそのあとには、血をほしがる本能が、忍田に冷酷な囁きを強いていた。
あんたの奥さんに、そう伝えてくれ―――――と。

自分の妻の血を吸おうとする男に、協力する夫などいるのか・・・?
そう問いたげな視線に、忍田はいった。
力を貸してくれたら、恩に着る。
もちろんふたりとも、殺(あや)めたりはしない。
最愛の妻とまな娘の生き血をみすみす啜らせた恥知らずな男だなどと――――
この街ではあんたのことをそう思うものはだれもいないし、
俺もそんなことを考えたりはしない。
ただ俺には、血を吸う相手がもうひとり、どうしても要りようなのだ  と。

男が勤務先から自宅へ、どんな連絡をしたのか、忍田は知らない。

優香の母親は相変わらず、こわばった視線で忍田を見あげている。
肉づきのよい身体つきをした彼女だったが、上背は忍田よりもずっと劣り、
彼女が体内に宿す血液の全量をもってしても、忍田を満足させられるとは思えなかった。
「わしは処女の生き血が大好きじゃ。だから娘さんには、手加減して愉しませてもらってる。
 しかしあんたは、大人の女だ。手加減はせん。
 どういう目に遭うのか、わかったうえで来なさったのか」
母親はこわばった顔つきをさらに凍りつかせたが、やっとの思いで、いった。
「主人と相談したうえで、伺いました」
忍田はちょっとだけ気の毒そうな顔をして、女を見た。
けれどもその口から発した言葉はみじかく、さらに容赦がなかった。
「わかった。来なさい」
忍田は門柱にもたれかかるようにして彼が通りかかるのを待っていた女の背中を邪慳に押し、
門の中へと追いやった。
硬く施錠されているはずの玄関は、忍田が手を触れると苦も無く押し開かれ、
ふたつの人影は鎖された古びたドアの向こうへと消えた。

「横になるかね?」
忍田の問いに、女はかぶりを振るばかりだった。
見通しの良い庭に射し込む夕陽は、門前の暗さとは裏腹な明るさをまだ持っていたが、
女はその情景に目をやろうともしない。
「わしの好みは知っていような?」
スイッと傍らにすり寄り、囁きかけてきた男の気配に女はビクッとして顔をあげた。
けれども、伸ばされた猿臂に両肩を抱かれ、身じろぎひとつできなくなっている。
「あんたの名は・・・?」
「美穂・・・永黒美穂といいます」
美穂さん・・・か。
名前を識ってしまうと、妙な親近感がわくものだ。
そこには人格があり、親族知人の係累がある。
かつてはその身に温かい血潮を宿していた時だってある。
忍田は相手のおびえを、なんとかして落ち着かせようと思った。
女の言葉が、忍田に一歩先んじた。
「ふくらはぎを咬むんですよね・・・?それから首すじ」
「娘さんから聞いたんだね」
「は、はい・・・」
「じゃあさっそく、お世話になろう」
忍田は並んで腰かけたベッドから腰をあげ、すぐにその場に四つん這いになると、
美穂の足許にそろそろと唇を近寄せてゆく。
「ひっ」
思わず避けようとした脚を掴まえると。
忍田は美穂のふくらはぎを吸った。
くちゅっ。
生温かいよだれを帯びた唇が、美穂の穿いている肌色のストッキングをいやらしく濡らした。

美穂はベッドのうえ、仰向けに寝かされていた。
男はさっきから、表情を消した美穂のうなじに咬みついて、
キュウキュウ、キュウキュウ・・・生々しい音をたてながら、生き血を啜りつづけている。
放恣に伸ばされた美穂の脚に、パンティストッキングはまだまとわれていたが、
あちこちに咬み痕をつけられて、むざんな裂け目を走らせている。
着衣ごしにまさぐられる胸が、恰好のよい輪郭を、くしゃくしゃにされたワンピースに浮き彫りにしていた。
「優香と同じ香りがする」
男は女の耳元で、彼女の娘の名前をわざと呼び捨てにした。
「家に・・・帰してください・・・」
「あの子もさいしょのときには、そう言っていた」
吸い取ったばかりの美穂の血をあやした唇が、彼女の唇まで求めてきた。
避けようとしたが、すぐに奪われてしまった。
二度、三度、重ね合わされてくるうちに。
舐めさせられた血潮の、錆びたような芳香が鼻腔に満ちて――――
いつの間にか女のほうから、忍田の唇を求めはじめていた。
どういうことなの?いったいなぜなの?
女は自問しながらも、忍田とのディープ・キッスを、やめられなくなっている。
男の手がだしぬけに股間に伸び、ショーツとパンストとを、いっしょに引き破った。

あっ・・・!と思ったときにはもう、遅かった。
男は目にもとまらぬ速さで女の股間に自分自身を肉薄させて、
怒張を帯びた硬い肉棒が、女の秘部にもぐずり込んでいた。
あっ・・・あっ・・・あっ・・・
女は有無を言わさず、犯された。
白濁した精液がどろどろとそそぎ込まれるのを、もうどうすることもできなかった。
征服・・・された?こんなに、あっけなく・・・?
脳裏に戸惑いを漂わせながら、女はなん度も吶喊を許し、不覚にも応えはじめてしまっていた。

こぼれた粘液がシーツをしとどに濡らすころ。
男はふと、呟いた。
――――我慢づよいご主人だ。
半開きになったドアの向こう。
忍ばせた足音がかすかに床をきしませながら遠ざかるのを、美穂は確かに耳にした。

街の婚礼

2015年09月07日(Mon) 06:52:23

この街の婚礼は、いっぷう変わった風習を持っている。
宴たけなわになると、招待客のうち男性だけが、帰ってゆくのだ。
それと入れ替わりに、どこからともなく、蒼白い顔つきの男たちがふら~っと現れ、宴席にさ迷い込んでゆく。
閉ざされたドアの向こうには、黄色い悲鳴が華やかに満ち溢れる。

薄いピンクに、濃い紫。淡い茶色に、深い濃紺。
色とりどりの光り物のスカートの下。
追い詰められた女たちは、新婦の友人、新郎の妹。それに新婦の兄嫁。
だれもがスカートの裾からにょっきり覗くふくらはぎを、真珠色に輝くストッキングに彩っていて。
それを目当てに、飢えた男の指が、唇が、迫ってゆく。

立ちすくんでいるのは、拒んでいない証拠。
はち切れんばかりのおっぱいの隆起は、揉んでほしい証拠。
拒絶の哀願は、姦ってほしいという意思表示。

なにもかもを、おのれの都合よいように受け取って。
顔の蒼い男たちは、うら若い女たちへと迫ってゆく。
衣装の下に隠された、うら若い柔肌を求めて。

ねじ伏せられた赤いじゅうたんの上。
女たちは競うように、肌色のストッキングに包まれたふくらはぎをさらして、
薄いナイロンの舌触りを愉しまれ、辱められながら咬み破かれてゆく――
引き裂かれたパンストをまだ脚に通したまま、その両脚をゆっくりと開いていって、
堕ちる瞬間の昂ぶりを、諦めのため息に織り交ぜてゆく。

主賓席では、新郎新婦の母親たちが。
黒留袖の帯をほどかれていって。
いずれ劣らぬ珠の肌をさらけ出しあって、
肩を並べて淑徳を散らしていって。
永年連れ添った夫たちを、その目の前で裏切ってゆく。

純白のウェディングドレスをまくり上げられた新婦は、
ツヤツヤとした光沢に包まれた城のストッキングの脚をばたつかせながら、
抑えつけられた円卓のうえ、テーブルクロスをくしゃくしゃにしながら、はやくもなん人めかの男を迎え入れて、
うろたえる新郎のまえ、花嫁修業に耽ってゆく。

そう。一部の男性は、退席を許されない。
この佳き日の主役を勤める男性と。
その種の歓びを自覚できるものたちは。
招待客の男性の多くが席を立ったあとも、宴席にとどまるという忌まわしい特権を与えられる。
妻が、娘が、妹が組み敷かれ、
よそ行きのスーツのすそを乱し、
ブラウスをはだけられ、
ブラジャーの吊り紐を切られながら、
家族の前であることも忘れて、吸血鬼どもの支配を受け容れよがり狂ってしまうまで、
しっかりと見届けさせられ、たんのうさせられる。

宴は、真夜中まで尽きることがない。
この式場では、披露宴の部屋の借り切りは、真夜中までとなっているから。
昂ぶり切った夫たちは、さいごには相手を取り換えあって、交わってゆく。
新郎は、新婦の友人代表と。
新婦の父は、新郎の母と。
新郎の父は、自分のまな娘と。
見境なく襲いかかって、身体を交え息を弾ませあってゆく。
それが、夫たちの払った代償に対する対価――
吸い取った血潮を口許に光らせたまま。
”彼ら”は、吸い取った血潮の持ち主である親族たちが、淫らに堕ちてゆくのを、愉しげに見届ける・・・

秋まつりの予定。

2012年09月15日(Sat) 07:09:28

干からびたような細腕が、さっきからせわしなく携帯をいじっている。
もはや老女といっていいほどの年かっこうのその女は、去りかけた色香をまだ、顔の輪郭にとどめている。
白髪交じりのは見の生え際から覗く首すじは、不ぞろいに陽灼けしていて・・・
そして、夕べつけられたばかりのものらしい赤黒い咬み痕をふたつ、鮮やかに滲ませていた。

ふん。まったくうちの子らときたら・・・

なにか言いたげに口をもぐもぐさせながら、
老女は年かっこうに似ず慣れた手つきで、携帯をまさぐりつづけていた。

長男に宛てたメールには、こう書かれてあった。

今年の秋まつりは、ぜひいらっしゃい。
お隣の源治さんが、珠代さんに執心なのよ。
リョウくんは、大学で彼女出来たかしら?
梨佳も高校に入学できたから、今年は来れるよね? 母


つづいて次男宛てのメール。

今年の秋まつりは、どうするの?
瑤子さんの誕生祝い、するんだよね?
女旱(ひで)りの村の男衆5~6人声かけとくから、覚悟しなさいよ。 笑
佑香もさとみも、そろそろ男を覚えてもいい年頃だね?期待してるから。 母


それから三男宛てのメール。

今年の秋まつりは、来れるかな?
彼女はできた?
まだお付き合いが始まってなくても、村まつりに連れてお出で。
連れてさえ来たら、母さん話をまとめてあげるからね。 母


長男の返信は、速かった。

ビビッ・・・と鳴った着信音に、老女はうたた寝を中断して、
さっそくもの欲しげな手つきで、携帯をまさぐった。

家族そろって、伺います。
源治さんには、どうかお手柔らかにとお伝えください。
息子に彼女できました。
ご両親と一緒に来ると言ってくれているそうです。
梨佳は2年前のことがショックだったので今年は遠慮しましたが、
優しい人がいたら今年もお願いします。


ほほ・・・さすがに孝行息子だこと♪
老女は嬉しげに、ほほ笑んだ。
口許から覗く犬歯が、ちょっぴり尖っている。
おととし孫娘の首すじに、初めて突き立てたときのことを愉しげに思い出しながら、
彼女は指先で、犬歯の切っ先を撫でている。
肉親なら、襲って血を吸ってもいいことになっているのだった。


今年は、リョウくんで我慢しとくか。
彼女を襲われているときには、気が気じゃないだろうからね。

よからぬことを口にしながら老婆は、つづいて鳴った着信音に気を奪われた。

次男の返事―――

ご承知のとおりわたしは、今年の春から単身赴任です。
瑤子は子供たちの受験準備で忙しいし、佑香は高校受験、さとみも中学お受験の真っ最中です。
留守宅には言い含めておきますので、都会まで出てくるお人があったら、お報せください。
その際には、あまり家のなかで物音を立てないようお伝え願います。

まあ、冷たい子だこと。
老女は不平そうに頬をふくらせたが、

物音くらい、どうってことありゃしない。
女に飢えた村の衆を5、6人、入れ代わり立ち代わり送りつけてやる。
夜這い自体は容認なんだから、ご近所への顔は立つか・・・

三男の返信は、かなり遅かった。


上司の紹介で親類の娘さんとお見合い中ですが、どうも僕自身引っ込み思案のせいなのか今回もうまくいきそうにありません。村のお祭りの話をしたら興味を持ってくれたみたいで、ご一緒しましょうか?って言ってくれてはいるのですが、ご両親が娘さん想いなのでいっしょにくるといってききません。二人きりにならないとお互いの意思を確かめることは難しいと思うし、ともかくいつもご両親同伴なのでつい気を使ってしまいます。村への帰郷のことはもう少し待ってください。彼女の好意をもう少し確認できるまで待ったほうがいいように思うのです。いつも慎重すぎて婚期を逃すと、上司のかたにもお叱りを受けているのですが

改行もしないでずうっと打ち続けた文面は、世見苦しいことおびただしく、老女も顔をしかめて目を細めて文面を追った。
文章の途中で間違えて送信してしまったのか、ここで終わりなのかさえも定かでない優柔不断な文章を見て、老女は怒りに目をあげた。
やおら携帯を取り直した彼女は、直に電話をかけていた。

ばっかも―――んっ!
ぐずぐず言わんで、親もろとも、連れて来―――いっ!!!

足ぐせ

2011年12月09日(Fri) 07:14:41

じわじわと生き血を吸い取られていくとき。
母はじれったそうにして、しきりに脚で床を踏み鳴らしていた。
妹はもじもじと、足指をねじっていた。
未来の妻は、切なそうに摺り足を繰り返していた。

田舎に着任して。
その土地に棲む年配の男に、血を吸われるようになって。
もう何回も、都会の実家に招いていた。
母はすでに血を吸われることに慣れ、
父は同年輩の彼と、飲み友達になっていて。
目のまえで長年連れ添った妻が、気に入りのロングスカートのなかに、むぞうさに手を突っ込まれて。
ズロースを降ろされていくのを、息をつめて見守っていた。
ブラウスをはぎ取られて、おっぱいをまる出しにして。
女の操をむしり取られてゆくところさえ、ひと晩がかりで見届けていったのだった。

その日も、羞じらう母を、押し倒して。
齢不相応の派手なワンピース姿のまま、脚を踏み鳴らしながら、血を吸われて。
グラス片手に息を詰める父のまえ、
男の好みに合わせてたしなむようになった、太ももまでのストッキングを。
太ももを横切るゴムまで、じんわりと見せつけながら。
踏み鳴らす足の音が絶えたあと―――
忍ばせたうめき声は、妹が下校してくるまで、つづいたのだった。

吸血鬼なんか、家に連れてきて・・・
根暗でぶあいそな妹は。
白い目でわたしを、睨みつけると。
ピチピチと輝く太ももに這わされるもの欲しげな目つきを避けるように、
デニムのスカートのすそを、抑えつけていた。

お勉強、教えて下さるんですって。
取り繕うように言葉を添える母の言いぐさを、無言で黙殺しながら。
来たければ、来れば?
男にぶあいそな声を投げつけると。
白のハイソックスに履き替えた脚を、ぴ多ぴたと鳴らしながら。
二階の勉強部屋へと、あがっていった。
はしたないほどどたどたと階段を上がる足音が、そのすぐあとにつづいていった。
視てきてちょうだい。
母に目で促されたわたしも、あとにつづいた。
部屋に入ることは、許されない。
半開きになったドアの向こうから、覗き見するだけだった。

机のまえに腰かけた妹の後ろにまわって、
男はしきりに、拡げられたノートを指さしていて。
ほんとうに、勉強を教えているようすだった。
妹は幾度となく、男の言葉にうなずいて、ノートに鉛筆を走らせている。
それも、、つかの間のことだった。
男の影が背後から、白のカーディガンを着た妹の影に寄り添うようにして。
首筋に唇を、吸いつけてゆく―――
アー・・・
みじかく叫んだ妹は。
血を吸われながらも、机にしがみつくようにしていたけれど。
やがて椅子に腰かけたまま、ちょっとずつ姿勢を崩していって。
さいごに行儀悪く、たたみの上に転がった。

たたみの上に横たわる妹を。
男はまじまじと、観察をして。
やがておもむろに、ふたたび首筋に、唇を這わせていった。
きゃー。
こんどはくすぐったそうな声が、あがっていった。
机にしがみついていたときも。
たたみの上で、エビのように身体を折り曲げているいまも。
白のハイソックスのつま先のなか、足首をうねうねとねじりながら。
目をつむり歯を食いしばって、吸血に耐えていた。

ティー・カップを手に取って。
無表情を取り繕った母は、
スカートに撥ねた淫らな粘液と、ストッキングの伝線を気にしながらも。
目のまえの絨毯のうえに身を横たえた自分の娘が、
乙女の血潮を捧げるようすを、見守っていた。
父が母の時、そうしていたように。
真っ白なハイソックスには、バラ色の血がべっとりと撥ねていて。
真新しい靴下に包まれたつま先はやはり、もじもじとした足指のうねりをつづけていた。
真っ赤なチェック柄のプリーツスカートを、太ももまでたくし上げられた妹は。
自分の父親ぐらいの齢かっこうの男に組み敷かれたまま、
股ぐらを開かれて、そのうえに強引に沈み込んでくる逞しい腰に。
稚拙に動きを合わせていった。
妹が、大人になっていく―――わたしよりも先に。
その事実を目の当たりにさせられて。
まぶしいような。照れくさいような。誇らしいような。羞ずかしいような。
基本的には我が家の汚点となるはずのあしらいに、
股間がむしょうに、じりじりと疼いていた。

ひどいじゃないですか。
村での知人の結婚式に、都会から招いた婚約者は。
髪をふり乱したまま、まだ息を弾ませていた。
ここは、村でたった一軒のモダンなホテル。
知人の結婚式という名目で、呼び寄せた未来の花嫁は。
口実を設けて狭い密室で、あの忌まわしいごま塩頭と、ふたりきりにさせられて。
母や妹のときと、おなじように、不意に背後から迫られて。
華やいだクリーム色のワンピース姿を、抱きすくめられていった。
吸血される歓びに、はしたないほどあっけなく目覚めてしまった彼女は。
それでも、ワンピースのクリーム色に撥ねかったバラ色のしずくを、
しきりと気にかけていた。

しばらくは、おぼこのまんまだぞ。
妹の純潔を、あっけないほどかんたんに踏みにじった男は。
わたしの花嫁に対しては、時間をかけるつもりらしかった。
お前えはここで、観ておるんだ。あっちさ行っちまっちゃ、なんねぇぞ。
彼女さんが、気の毒だがや。
洗練された都会の装いにはおよそ不似合いな声の持ち主は。
彼女の手を引くと、そのまま隣室に引きずり込んで。
古びたせんべい布団のうえに、背中を突いてまろばせた。
白のストッキングのつま先を高々とあげてひっくり返った彼女。
きゃあっ!ひどいっ!
華やぎを隠そうともしない声色に、わたしはチカリと嫉妬を覚える。

そんなに私の血がお好き・・・?
女の問いには応えもせずに。
男はがつがつと、うら若い血を貪り啜った。
女はもう、あん・・・あん・・・って、嬉しげな声さえたてながら。
クリーム色のワンピースが赤黒いまだらもように染まるのを、厭いもせずに、相手をし始めて。
もう・・・わたしなど眼中にないかのようだった。
あくまであんたの女房のまま、ええとこだけ頂戴するんだ。
振り向いた男は意地悪そうに目を輝かせて、悪童のようにイタズラっぽく笑いかけてきて。
わたしは知らず知らず、男の言うなりに深いうなずきを返してしまっている。

首筋につけられた深い傷口が、じんじんとした疼きを秘めていた。
じんじんとした、疼き。
じんじんとした、嫉妬。
じんじんとした、えもいわれない歓び―――
たいせつなものが無造作に汚されてゆくことが、どうしてこうも、むしょうな歓びを秘めるのだろう?
わたしは、恥ずべき人間なのか?
人はだれでも、そういうマゾヒズムを心に秘めているものなのか・・・?

週末は田舎通いを始めた彼女に、いつもわたしは誘いを受ける。
都会の洗練された装いを、男のために身に着けて。
きりっとした、通勤用のスーツ。
フェミニンな、お招ばれ用のミニドレス。
ふだん用のえび茶のフレアスカートに、薄いピンクのブラウスという、何気ない装い。
それらすべてを、順ぐりに。
わざと血浸しにされながら。
彼女は摺り足を、繰り返す。
それはそれは、切なげに。

あしたは祝言という夜。
彼女の母は、彼女の父のまえ、操を奪われていった。
両親がいたわり合いながら、久しぶりの夜を貪る隣室で。
彼女は明日着るはずだった純白のスーツを装って。
わたしが息を詰めるまえ。
白のストッキングを、ずりおろされていった。
ふしだらなしわをたるませて、くしゃくしゃになってずりおろされたストッキングを、まだ脚に残したまま。
彼女の脚は、摺り足を繰り返す。
ちょうど妹が、稚ない血を太ももに散らせたように。
バラ色のしずくの輝きが、すらりとしたむき出しの太ももを、伝い落ちていく。
粗野で強引な上下動に、あらわになった白い臀部が、じょじょに動きを合わせていって。
そのあいだわたしは、
羞ずかしいような、照れくさいような。誇らしいような。
自分の身に加えられた恥辱が、どうしてこうもむしょうに悦ばしいのか。
理性の崩壊した、考えのまとまらない頭のなかで、
えもいわれない官能の歓びだけが、わたしの常識を塗り替えていった。

「まみちゃん」

2011年10月24日(Mon) 06:50:59

都会に潜入して初めてあてがわれたのが、「まみちゃん」という少女のいる一家だった。
「あてがわれる」というと、聞こえはいい。
しかし吸血鬼の存在を認知していない都会にあっては、あとはわが道を切り開くしかない。
だれかがなんらかの口実で、出入りを許された家庭。
その者になり代わって、ひたすら自力で侵蝕していくしかないのだった。

「まみちゃん」は、おさげ髪の似合う、無邪気な少女。
俺が吸血鬼だと正体を明かしても、びびらなかった。
姉ふたりを差し置いて彼女を狙ったのは、なんとなく彼女がそう接してくれるだろうと感じたから。
子供に近い心の持ち主は、意外なくらい純真で柔らかい心を持っていた。

吸血鬼のおじさん、まみちゃんの血を吸いたいの?
まだ稚ない彼女は、じぶんのことを「まみちゃん」と呼んでいた。

ああ、吸いたいね。
その可愛らしいブラウスを、きみの血で汚してみたいし。
真っ白なハイソックスを汚すのも、愉しいだろうから。
きみの首すじやふくらはぎは柔らかくって、
とても噛み応えがいいだろうね。

わざと露悪的にならべたことばに、
まみちゃんは怯えるようすもなく、
ただほんのりとほほ笑みながら、耳をかたむけていた。

じゃあ、いいよ。
まみちゃんの血を、吸わせてあげる。
でも―――ほかのひとには、手を出さないでね。
上のお姉ちゃんは結婚をひかえているから、お婿さんがかわいそうだし。
下のお姉ちゃんにも彼氏がいるから、彼氏さんかわいそうだし。
ママにはパパがいるから、パパがかわいそうだから。
まみちゃんがたっぷり、血をあげるから。
気の済むまで、生き血を吸ってね。

まみちゃんはにっこりほほ笑んでいた。
俺が迫っていくのを受けとめるような、力のあるほほ笑みだった。
柔らかいうなじに唇を近寄せたとき。
さすがにちょっと、顔をしかめたけれど。
無防備なうなじの肉を、引きつらせることもなく。
柔らかいままに、噛ませてくれた。
刺し込んだ牙が包み込まれるような、しっとりと潤んだ肌をしていた。

ちゅ、ちゅー・・・と血を吸いあげたとき。
まみちゃんはちょっぴり、べそをかいたけれど。
あたし、良い子だから。強い子だから。
力んで強がるわけでもなく、自分に言い聞かせるように。
じゅうたんの床を踏みしめて立つ白のハイソックスの両足は、
意外なくらいにしっかりしていた。

バラ色の血に濡れたハイソックスをぶら提げて、まみちゃんの部屋を立ち去ったのは。
もう土曜日の明け方になっていた。
さすがに耐えきれなくなって、ベッドにあお向けになった少女は、
傷口についた血がシーツにかすかなシミを作るのを厭うように、立てひざをしていて。
また来てね。
小手をかざして、俺を見送ってくれた。

それからは。
約束どおり、この少女だけを襲うことにした。
まみちゃんは言ってくれた。
遠慮しないで吸ってね。
でも、ほかのひとは駄目だからね―――
さいごのひと言は、ひときわ強かった。
あなたのことは、あたしひとりでせき止めてみせるから。

けれども俺の貪婪な食欲を支えるには、
まみちゃんの小さな身体には負担が大きすぎた。
一週間と経たないうちに、まみちゃんはみるみる蒼ざめていった。
ふっくらとしていた頬からは、血の気がひいて。
頼りないほどか細い手足は、
いまでもほんとうに血がめぐっているのかと思うほど、冷えてしまった。

まみちゃん、もう無理だ。降参しな。
俺に負けたからって、きみの不名誉にはならないよ。
たったひとりで、よくがんばったね。
そう言って、まみちゃんの頭を撫でて、褒めてあげたけど。
まみちゃんは激しくかぶりを振るばかり。
だめ。お兄さんたちがかわいそう。パパがかわいそう。
泣かんばかりにして、あたしひとりを狙って・・・そうくり返すのだった。

動いたのは、周囲が先だった。
夜更けの末娘の勉強部屋に漂う異様な空気を、まず敏感に察したのは母親だった。
俺がまみちゃんとふたりきりでいる勉強部屋に入ってきたとき。
彼女は子供の友だちを迎える母親よろしく、お紅茶をふたつ淹れたお盆を手にしていた。
あなたの正体は、娘からきいてしまいました。
娘は、あなたを裏切ったわけではありませんの。
親の言うことをきいたまでですわ。
わたくしは娘の懇願に、負けました。
主人と相談して、三夜にひと晩は、身代りを勤めさせていただきます。
だからそのかわり・・・どうぞ娘を、わたしたちから取りあげないでくださいね。
・・・・・・。
たしなむ習慣を持たなかったお紅茶は。
せっかくだから、淹れてくれたご本人に飲んでもらうことにした。
俺はもっと甘美で濃い飲みものを、このひとの身体から味わうのだから。
さいごまで渋っていたまみちゃんも、
「わたしを幸福にしてくれるのは、あなたなのだから」
お母さんにそう言われてはじめて、ふたつ並べられたティーカップを手に取った。

毎夜噛み破ってきた白のハイソックスの脚の代わりに差し出されたふくらはぎは、
肌色のストッキングで、薄っすらと覆われていた。
長い靴下をお破きになるご趣味があるそうね。
まず、好い趣味とは思っていただけないでしょうが―――
そうですね。あまり好ましいことではございませんけれど。。。
できれば回避したいという本心をちらりと覗かせながら。
それでもお母さんは、俺の意を受け容れてくれた。
まみちゃんも、大きくなったらママみたいに、ストッキング穿いてくれるかな?
明け渡す地位をあくまで惜しもうとするまみちゃんは。
それと引き換えに、俺と指きりげんまんをしてくれた。
それでもやはり、肌色のストッキングを穿いた脚にいやらしくぬめりつけた唇のうごくさまから、彼女の視線がはなれることはなかった。
お母さんの穿いていた肌色のストッキングは、他愛なく破けてしまったけれど。
彼女が淡い嫉妬を寄せるほど、とてもしなやかで、色っぽかった。

お兄さんたちと仲良くなるのは、意外にかんたんだった。
少なくとも彼らには、まみちゃんの目は光っていなかったから。
下のお姉さんの彼氏さんとはすぐに仲良くなって。
彼の好む球技の秘密練習の相手を、じつにうまくやってあげたら、
ひざ丈まであるスポーツハイソックスのふくらはぎを、差し伸べてくれて。
どうぞ遠慮なく・・・って、噛ませてくれた。
太めのリブがはっきり浮いたハイソックスは。
まみちゃんの履いているものみたいな柔らかさはなかったけれど。
しっかりとした舌触りを愉しみながら、
逞しい脛を覆う鮮やかなリブを、ぐねぐねとねじ曲げていった。
スポーツで鍛えられた熱い血は、同性の俺さえもドキドキさせてくれた。

上のお兄さんがひた隠しにしていたのは、女装趣味。
あるきっかけで突き止めてしまうと、話はうそのように早かった。
婚約者にうまく話して、あんたの趣味を認めさせるよ。
そのかわり―――
彼女の血を欲しいのか?
警戒に息を詰める花婿氏に、俺はゆっくりとかぶりを振った。
女装したまま、俺の相手をしてくれる・・・?
脚に通した舶来もののストッキングは。
お母さんのそれよりも、すべすべしていた。

わたしの理性を、奪ってください。
まみちゃんのお父さんの招きを受けて。
慣れない酒の相手をさせられたあと。
家族の寝静まった家の、リビングで。
彼は怒ったように、そう言った。
あなたはなにも、喪っていない。
詭弁だろう。
そうでもないさ。
俺はうそぶきながら、グラスを傾ける。
俺が欲しいのは血液と、しいて言えばご婦人たちの身体かな・・・
それ見ろ。
でも、みんなあんたを気遣っている・・・
ふと洩らしたそのひと言に、かれは長いこと黙っていた。
献血だと割り切れば良い。つごうの悪いことには片目をつぶれば、みんな察してくれるさ。
男の子たちは、俺に彼女や婚約者のバージンをプレゼントしてくれる約束をしてくれたんだぜ?
彼はしばらく、だまっていたが。
俺はふと、洩らしていた。
この酒美味いな。
酒が美味いって・・・?
ああ。どうしたわけか、初めてそう感じるような気がするな。
酒が美味いんじゃ、しょうがないな。
男は初めて、上機嫌になった。
ズボンのすそを、まくってみな。
ぶっきら棒に言われるままに、スラックスの裾を引きあげて。
俺は思わず、呟いていた。
これが、いちばん欲しかったかもしれないな―――
彼の脛を覆っていたのは、ストッキング地の紳士用の長靴下。
精いっぱい、俺の趣味に合わせたのだろう。
俺は遠慮会釈なく、薄っすらと白く滲んだ彼のふくらはぎを、がぶりと噛んだ。
働き盛りの血は意外なくらい口に合って、
気づいたときにはもう、顔が蒼ざめるほど、吸い取ってしまっていた。

みんな、小父さんにたぶらかされちゃったんだね。
まみちゃんはちょっぴり、ご機嫌ななめのようだった。
無理もなかった。
一家全員そろった夜は、結納のあとのことだった。
上のお兄ちゃんの婚約者が連れてきた両親とは、すぐに仲良くなって。
奥さんが和服の襟あしをくつろげるのを、先方のお父さんは手ずから介添えしてくれていた。
そのあとはお定まりの、落花狼藉―――

お父さんが視て視ぬふりをする傍らで。
まっさきにお母さんが、奥ゆかしい洋装を着崩れさせて、
娘たちに手本を見せてくれた。
上の娘から純潔を奪い取っているあいだ、
片時も離れたくないという花婿は、血の気の失せた頬を妖しく歪めながら、花嫁の手を握りつづけていた。
いちばん気に入りの紺のハイソックスを穿いてきた彼氏さんは、
これじつは、彼女のおさがりなんだ。
そういって、彼女の視てるまえで噛ませてくれて。
彼女の部屋の片隅で、尻もちをついたまま。
素っ裸になった俺を、制服姿で迎えた恋人が。
制服姿のままお尻に尖った一物を突っ込まれて、
四つん這いになってはぁはぁ息を切らすのを、ドキドキしながら見つづけていた。

みんなひと晩で、始末しちゃうなんて。
まみちゃんね、お兄さんたちにおわびをしなくちゃいけないわ。
「おわび」の具体的方法を、いまはすっかり心得てしまった彼女だった。
そんなことを、思う必要はないのだよ。
俺はまみちゃんの両手を握りしめて、そう囁いた。
きみにもちゃんとした彼氏が、いずれできるのだから―――
まみちゃんはビクッとして、顔をあげた。
小父さんが彼氏になってくれるんじゃなかったの?
瞳には、せつじつな輝きが込められているのを知りながら、
俺はわざと、目をそらせた。
小父さんは齢だし―――それに、独りであとなん百年も生きつづけなければならないんだ。
まみちゃんをほんとうに俺のものにするには、まみちゃんも吸血鬼にならなくちゃならないよ。
きみはでも、人間として生きていたいのだろう?
まみちゃんはこっくりと、素直に頷いていた。
少女のうなじの動きに合わせて、おさげ髪がユサッと揺れた。

あたしの未来の彼氏さんに、乾杯♪
未来の彼氏さん、赦してね。
まみちゃんは髪をサッと撫でつけて。
真っ白なハイソックスをひざ小僧のすぐ下までキリリと引きあげると。
用意はできたわよ。
そう言いたげに、真顔で俺を視る。
ひと晩かぎりの花嫁だった。

たしかにほかの女たちも抱いたけれど、それは肉欲だけのこと。
研ぎ澄まされた劣情が、ほどほどになるまでにふるい落として。
いちばんいやらしい部分は、お母さんやお姉さんたちに遠慮なくふりかけてきた。
まみちゃんが身を張って、彼らの血を守ろうとしたように。
女三人は俺の劣情が優しく和むまで、俺と肌をすり合わせてくれた。

あんまりいやらしく、しないでね。。
まみちゃんもいざとなると、さすがに怯えを顔に浮かべる。
ああ、まみちゃんに嫌われたくないからね・・・
俺はいままでになく優しくほほ笑んで、
ウットリするようなキスで、唇を結び合わせると。
股間に秘めた鎌首をひそかにもたげて、少女の身体に、挑んでゆく。
押し倒されたまみちゃんは、ちょっぴり痛そうに顔をしかめながら。
せっかく引き伸ばしたハイソックスが、たるんでずり落ちていくのを。
お母さんに買ってもらったばかりのチェック柄のスカートのすそが、お行儀わるく乱れるのを、
ずっとずっと、気にしつづけていた。