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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

≪長編≫ 田舎町の吸血父娘、都会からの転入家族を崩壊させる  ~月田家の場合~ 7 目の当たりにした情事

2018年10月21日(Sun) 08:36:40

ふたりが言葉を交わしていると思い込んで踏み入れた茶の間には、だれもいなかった。
その代わり、寝室に接しているふすまが半開きになっていて、夫婦の寝間のなかが見通せた。
ねずみ色のストッキングに染まったふくらはぎがうつ伏せになって、畳の上にゆったりと伸べられていた。
侵入者は妻の片方の足首をつかまえて、ふくらはぎのうえに赤黒く膨れあがった唇を、ぴったりと這わせていた。
ねずみ色のストッキングのなかで、か細いふくらはぎの筋肉が、キュッと引きつり隆起するのが透けてみえた。
不健康に赤黒く爛れた分厚い唇は、ねずみ色のストッキングのうえからねっちりと這わされてゆく。
なよなよとか弱い感じのする薄手のナイロン生地を、男はネチネチと意地汚くねぶりまわしていた。
ヒルのようにいやらしくねぶりつけられた唇から分泌されるあぶく混じりの唾液が、肌目こまやかなナイロン生地にからみついて、チロチロと光っていた。

ピチャ・・・ピチャ・・・
くちゅ・・・くちゅ・・・

都会妻の礼装に唾液のはぜるいやらしい音が、うわべの静謐に支配された部屋のなかを淫らに塗り替えるように、深く、静かに沁み込んでいった。

「えぇ色した靴下じゃね」
長いことふくらはぎを舐めた挙げ句、男は顔をあげてそういった。
足許を濡らす唾液の薄気味悪いなま温かさに辟易しているらしい節子が押し黙っていると、応えを要求するように、男はなおもくり返した。
「えぇ色した靴下じゃね」
「お気に召したのですか」
女は取り澄まして、他人行儀な口のききかたをした。
「舌触りもえぇ。うんめぇわ」
女は男の下品な言いぐさに不快そうに眉をひそめ、再び畳に目を落とした。
こんなことをされるために脚に通したのではない、と言いたげな顔つきに、男はいった。
「わしのためにえぇ服着こんで待ちかねとっただろうが?じゃから、お前ぇの服は、わしへの馳走に違いなかろうが」
女は黙っていた。
「穿きかえあんのか?おなじやつ」
「これしかありませんよ」
女はいった。
「じゃ、噛んじまうわけにいがねぇな」
「かまいませんよ。あなたのために穿いたんだから。思い切りよく破いちゃって頂戴」
女は初めて自堕落な言葉つきをして、ストッキングの脚を自棄になったように投げ出した。
「えへへ・・・そう出られちまうとな」
男はニタニタと相好を崩して、女の足許に這い寄った。
獣じみた呼気が間近に迫るのを、女はストッキングごしに感じた。
息づかいの熱さが皮膚の奥深くに脈打つ静脈に伝わって、こらえようもないほどずきずきと疼きはじめた。
さっきからふすまの向こうに身を潜ませた人影がこちらに視線を注いでくるのに、女は気づいていた。
その視線は、情夫のそれと負けず劣らず、彼女の身体にしつように絡みついてきた。
視線の主がこっそり帰宅してきた夫であることを、女はすでに察していた。
他人行儀な言葉づかいをやめたのは、そのせいだった。
ジリジリとこの身を灼くような嫉妬の視線が、女の感情に火をつけた。
「夕べみたいに、めちゃくちゃに咬み破って、お願い」
随喜のあまりだらしなく弛んだ唇が強引に圧し当てられて、露骨な舌舐めずりが薄いナイロン生地をよだれでしたたかに濡らし、いびつによじれさせてゆくのを、女は悦んだ。
じぶんでもびっくりするくらいに、あからさまな喜色を滲ませて。
ふたりの痴態をいじましくも物陰から覗き込む夫をまえに、よそ行きの礼装がぱりぱりと音をたてて裂け、脚ぜんたいを覆っていたゆるやかな束縛がほぐれてゆくのが、むしょうに小気味よかった。

チリチリに裂けたストッキングの裂け目から露出したふくらはぎを、空々しい外気がひんやりと打った。
裂け目は面白いように拡がって、ひざ小僧までまる出しになった。
男がくまなく脚を吸えるように、わざと脚をくねらせて、いろいろ向きをかえてやって、くまなく吸わせていった。
素肌を覆っていたナイロンの被膜はもはや面ではいられなくなって、引きつれねじれた糸のかたまりに堕ちていった。


物陰でひたすら、月田は息をひそめていた。
「えへへ・・・そう出られちまうとな」
妻の言いぐさに相好を崩した男の声色が、彼の鼓膜をぐさりと刺した。
あれほどぶきっちょで、卑屈でさえあった男が。
そのうえつい今しがたまで、若やいだ彼の妻のまえで気後れをして、会話の主導権を取られっ放しだったしわがれ男が。
いまや都会育ちの妻を洗練された装いもろとも辱しめようと、舌舐めずりしてのしかかっていく。
不覚にも月田は、その場で尻もちを突いた姿勢のまま、失禁していた。
スラックスの股間を濡らす居心地のわるい温もりは、どろどろとした粘ばり気を帯びていた。
恥ずべきことだ、と、彼は思いながら、そういう自分をどうすることもできなかった。
自ら禁じたにも拘わらず、嬌声をあげてはしゃぐ妻がみすみす相手の男に組伏せられていって、作業衣を着たままの肩幅の広い背中にためらいながらも腕を巻いていく有り様から、目が離せなくなっていた。
自分よりずっと頑丈そうな背中をまさぐる妻の薬指には、結婚指輪が鈍く輝いていた。
月田は、妻がいつも結婚指輪をしていたかどうか、意識していなかった。もしかすると、ふだんはつけていなかったのかもしれない。
だとしたら、これも男のための馳走なのか?
貴男が犯しているのは人妻なのよ、というアピールのために、夫婦の誓いを果たした証しの品を、わざわざつけているのか?
その結婚指輪をはめた指が、自分ではない男の背中をまさぐり、背中に廻した両の腕を重ね合わせて、男をしっかりと抱きしめる。
妻としての自覚を忘れた女の指にはめられた結婚指輪の鈍いきらめきが、月田を悩ましく苦しめた。

破けたストッキングをまだ脚にまとったまま、妻は白のミニスカートの内股深く、情夫の逞しい腰を迎え入れていた。
スカートの脇の切れ込み(夫はスリットという語彙をもたなかった)からは、ねずみ色をしたストッキングのゴムが太ももを横切っているのが、チラチラと覗いた。
太ももの内側についた肉づきは意外に豊かで、彼女自身を刺し貫いた逸物が引き抜かれ夫の視界をよぎるたびに、悦びにはずむのが見てとれた。
ピンと伸びたつま先も、靴下の裂け目から露出してまる見えになったひざ小僧も、花びらみたいに裂き散らされたブラウスから覗くおっぱいも、半開きに弛んだ唇から覗く前歯、あの晩以来解かれたままの波打つ黒髪・・・どれもがいままで目にしたことのない女のものだった。
足首まで降ろされたショーツを自分の手で引き裂いて部屋の隅に投げた女。
薄い唇からこぼれる前歯の淫蕩な輝き。
瞳の色まで変わったかと思うほど表情豊かなウットリとした上目遣い。
妻であって妻ではない、妻とは別人の女がそこにいた。
ここは彼の家ではなくて、彼の家はべつにあって、そこには彼の本当の妻がいつものくたびれたトックリセーターを着て色褪せた頬をすぼめてなにかぶつぶつ文句を呟きながらアイロンをかけている―――そんな妄想がひどく現実味をもって彼の脳裡をよぎるのだった。
けれども、控えめな造りをした乳房はたしかに見覚えある妻のものだったし、淡いピンクの口紅を刷いた薄い唇もまごうことなく妻のものだった。
貧しい隆起は節くれだった手指に揉みくちゃにされ、黒々とした乳首は強欲な分厚い唇に我が物顔に呑み込まれ、控えめな造りをした唇が
「もっと・・・深くぅ・・・」
などと、卑猥きわまることを口走っていたとしても。
夫の見ている前での行為ということも、彼女ははっきりと自覚していた。月田のほうも、妻が気づいているのを自覚していた。
仰向けの姿勢で天井を見上げる蒼白い目が、時おりこちらを気にするように、半開きになったふすまの縁をかすめ、ふすまの向こうの月田を見据えているような気がした。
そればかりではなく、月田をぞくりと昂ぶらせるようなことを、妻はあからさまに口にし始めさえしていた。
弛んだ口許からはいちどならず、
「あなた・・・あなたァ・・・ごめんなさい。視ないで。視ちゃダメ」
そんな言葉さえ、よどみなく洩らされてくるのだった。
自ら招いた結果とはいえ・・・
萎えかけた頬を紅潮させて淫らな舞踏に息はずませる妻―――まさに白昼の悪夢だった。
けれども、その悪夢に歓びを見出してしまった男は、ひたすら失禁をくり返すばかりだった。



「献血ご苦労さん」
彼がそういって自身の妻に表だって声をかけたのは、情事のあとの身繕いや後始末が済んだあとだった。
さっきまで妻を犯していた男は、ふてぶてしくも居座って、何食わぬ顔をして自分の情婦となった人妻の身づくろいを見守っていた。
「2日続きですものね、さすがに疲れたわ」
萎えかけた頬を穏やかに和めた表情にはついさっきまでの娼婦のように奔放なセックスの名残は微塵もなく、
経口的な供血行為という、少しばかり猟奇的な地元の風習に好意的に協力した、都会育ちで健康体の四十代主婦がいるばかりだった。
「すっかり御厄介になりまして」
いまや妻の情夫となった男は、膝を丸めるように正座して、彫りの深く兇暴な顔立ちにはおよそちぐはぐな、昨日と変わらない卑屈なまでの慇懃さで、ぺこぺことぶきっちょなお辞儀をくり返していた。
彼もまた、悪鬼のように妻に挑みかかって白いミニスカートを精液でどろどろにしたことなど、おくびにも出さないふうだった。
「きょうはそんなに頂いてねえです。夕べの今日ですて」
男はどこまでもかしこまって、夫を立てる態度をとった。
「まゆみが学校に行ったあとなら、こちらから伺ってもいいんじゃないか?」
彼のほうもそういって、相手の意を迎えてやらざるを得なかった。
「奥さんが体力的に大丈夫なら、うちに来てもらってもエエです。こっちなら着替えがあるから奥さんの都合がエエかな、というだけで」
男はつい、語るに落ちるようなことをいったが、月田夫妻は気にとめることなくあえて聞き流した。
「じゃあこんどはいちど、伺わさせていただきなさい」
月田は妻を促し、妻は「そうですね。こんどぜひいちど」と、謝罪するように頭をさげた。
浮気に出向くことをすすめる夫に、それに応じて出かけようとする妻――これがわたしたちのこれからのありかたなのか。
月田は淡々とそう思った。
そして、怒りも屈辱も居心地の悪さも感じない自分に、すこしだけ驚いていた。


着替えたあとの妻は、モスグリーンのカーディガンに黒のトックリセーター、紺のひざ丈スカートに肌色のストッキングを穿いている。
朝とちがう服装をしていることをあえて夫は咎めなかったし、
妻のほうでもまた、脱衣場に脱いであったスラックスのシミが取りにくいことを話題にしようとしなかった。
男は玄関に向かうとき、洗濯機の傍らに置かれた風呂敷包みをさりげなく手に取った。
もう片方の手には、大きな紙製の手提げをぶら提げていた。
手籠めにした女の身に付けていた着衣を夫のまえから公然と持ち去るのを、月田はわざと見過ごしにした。
「クリーニングに出しときますで」
慇懃な語調は、どこまで本当なのだろう。
もっとも今朝彼が目にしたショッキングピンクのカーディガンやボーダー柄のブラウスや白のミニスカートは、その後も時おり見かけたから、男が手許においたのは初めてのときのものだけだったのかもしれない。
帰りぎわ、男を門の外まで見送った夫の耳許に、彼はぼそぼそと囁いた。まるで毒液のような囁きだった。

「奥さんが穿いてる肌色のストッキング・・・ぜんぶ咬み破っちまうけど、おおめに見てくださいよ」

うかつにも頷いてしまった自分に内心舌打ちをした彼は、それでも差し出された掌に自分の手を差し伸べて、グッと力を籠めた握手まで交わしていた。

≪長編≫ 田舎町の吸血父娘、都会からの転入家族を崩壊させる  ~月田家の場合~ 6 後朝(きぬぎぬ)~妻の変貌

2018年10月21日(Sun) 08:28:47

出勤時刻が迫っているというのに、身体のうごきが鈍かった。
すっかり寝不足だった。
夕べ、二階の部屋の灯りが消えて娘が寝静まると、スリップ一枚の妻がものもいわずに挑みかかってきたのだ。
男の吸血鬼から解放されて戻ってきたとき妻は、いつも頭の後ろで結わえてひっ詰めていた髪をほどかれいて、それをくろぐろと、両肩に波打たせていた。
夕食のときも、娘はそうした母親の変化に目ざとく気づいて「母さんいつもより女っぽいね」などと言っていたけれど、
昨晩、いつものように家に戻るまでは常識まみれの四十女に過ぎなかった妻は、髪型を崩してからどことなく雰囲気を変えていた。
夫婦の寝床のうえ、彼の上に跨がってきた妻は、そんな体位で夫婦の営みに臨むなど初めてなのに、まるでさかりのついた牝馬のように息せききって、身をはずませて、自らくわえ込んだ一物から一滴のこらず絞り取るように腰を激しく上下させた。
娘の成長とともに途絶えかけた営みはいつも正常位で消極的な受け身といういつもの妻とはうって変わって、獣じみた狂おしさをあらわにしていた。
とつぜんの椿事で体験した夫以外の男とのまぐわいが、まだ妻の身体のすみずみに余韻を秘めているのを、彼はありありと感じた。
異常な記憶が甦ってくると、彼のほうもまた、若いころでさえなかったほどの怒張をおぼえた。

外が薄明かるくなるのをおぼろげに覚えているのだから、ほぼひと晩じゅうつづいたのだろう。
血を吸う父娘を相手に夕べこうむった、したたかな失血のあとでもあった。
「あなた、無理しないほうが」
さすがに妻が気にしたくらい、彼の顔色はわるかった。
けれども強いて家を出たのは、目が覚めたときに目にした妻の服装のせいだった。
まゆみはもう出ましたよ・・・そういう妻は夜中の、そしてそれ以前の、しつように重ねられた情事の名残は気振りにもみせていなかったが、身に付けた装いは、いつもとうって変わってこぎれいなものだった。
いつもの野暮ったい着古しのトックリセーターに毛玉の浮いたパンツなどではなくて、
ショッキングピンクのカーディガンに、白地に黒のボーダー柄(もっとも彼にはそんな気のきいた語彙はなくて、「縞模様」と表現するしかなかったが)のブラウス、両脇が深いスリットで大胆に切れあがったひざ上丈の純白のタイトスカート。
いまどき珍しいねずみ色のストッキングはご愛嬌だったが、しいてよそ行きということでわざわざ箪笥の奥から引っ張り出して選んだのだろう。
カーディガンやブラウスにはかろうじて記憶があったが、あんな大胆な切れ込みのあるミニスカートなんか、持っていたのだろうか?
「似合わない・・・かしら」
夫の感想もいちおうは気になるらしく、妻は小首を傾げ、ほどいて肩に流したままの黒髪を揺らした。
「まぁ・・・まんざら捨てたもんじゃないな」
似合うよ、きれいだ。とか、見違えるね。とか、気のきいたことでも言えればよかったのだが、
ひと回りは若返った感じの妻はそれ以上ぶつぶつ文句をいうこともなく、機嫌よくその場をはなれた。

まさかとは思った。まだ、きのうのきょうなのだから。
いちどモノにした獲物ははやいうちに再び征服して、得た果実は手堅く手中に収めてしまおうというのだろうか。
「かなりご執心のようなんだな」
とだけ、夫はいった。お前たちがなにをしようと邪魔するつもりはない、といったつもりだった。

昨日渡したつもりだった彼の勤務割りが、ちゃぶ台の上にあった。
いちど四つ折りにされて、改めて開いた状態だった。
その勤務割りの、きょうのます目に深々と爪痕が残っていた。
真夜中に別人のように乱れた妻の胸の谷間に残されていた爪痕と、おなじ形をしていた。
ふたりはこんなふうにして、きょうの逢い引きを示しあわせていたのか。
あのみすぼらしく貧相な作業衣の男は、二十年連れ添った夫婦の日常に、しっかりと割り込んでいた。
淡い嫉妬がジリジリと、彼の胸の奥をとろ火で炙りたてた。
彼は素知らぬ顔で自分の勤務割りをちゃぶ台に戻すと、いつものように薄い靴下に透けた足首を革靴のなかに突っ掛けた。


出勤はしたものの、彼は事務所の席に鞄を置く間もなく、ほとんどまわれ右をするように家路につく羽目になった。
なにもかも心得ているらしい事務所長が、謹直なしかめ面をいつになく和らげて、
「きみ、顔色よくないね。きょうのとこれは仕事はいいから、いつ帰っても構わんよ」
「うちに帰ればいいことがあるんじゃないかな。ぐずぐずしていると見逃してしまうよ」
「だれもが経験していることだから・・・まぁ良かったじゃないか」
仲間が増えたことを露骨に悦んでいる様子だった。
彼の夫人は着任そうそう因習に染まり、いまは村の長老のひとりの公然の愛人になっていた。
こちらにきて三年になる年若な部下を振り返ると、これもまたなにもかもわきまえた顔をして、「所長がああいってくれてるんだから、大丈夫ですよ」と、こたえを返してきた。
これまた露骨なまでに、(許しをもらえてラッキーですね!)と、顔にかいてあった。
もはや、苦笑を浮かべたまま席を起つことしか、彼にはすることが残されていなかった。


自分の家に帰るのに、どうしてこんなにもこっそり振る舞わなければならないのか?
そう自問しながらも、月田は足音を忍ばせて庭先にまわり、いつも施錠されてないことを知っている勝手口から身を屈めて上がり込んだ。
庭先を横切るとき、背の高い生垣ごしに、すこししゃがれた男の声がした。夕べの男の声だった。
勝手口の木戸を開くと、声はいちだんと身近になった。
浴室の前まできたときには、なにを話しているのかまで、筒抜けだった。
話の内容は、ほとんどどうでもいいような天気の話しとか、いつ越してきたのかとか、ありきたりのことばかりだった。
たまたま自分の話題が出たときだけはビクッとしたが、それもだんなは何時に出かけたの?とかそのていどの当たり障りのないものばかりだった。
きのうと変わらない調子の訥々とした、ちょっと卑屈な声色がぶきっちょに途切れがちになると、沈黙を怖れるように彼の妻が穏やかに言葉をついだ。
さほど社交上手というわけではない妻も、田舎育ちの男に比べればよほどうわ手で、齢は年若な妻のほうがまるで姉のような物腰だった。
夕べ唐突に招いた客に妻がゆき届いた応対をしていることに、彼は不可解な満足感を覚えていた。
どうやらつきあい下手らしいあの男が、無器用に言葉を途切れさすたびに妻が救いの合いの手を入れるたびに、彼自身が救われたような気分がした。

ふと身じろぎをすると、手の甲に洗濯機のへりが当たった。暗い槽のなかに、吊り紐の切れたブラジャーがみえた。
洗濯機の傍らには風呂敷包みがあった。中身は衣類で、えび茶色の生地がはみ出て見えた。
ぴんとくるものを感じて風呂敷包みをほどくと、きのう妻が身に付けていた着衣がひと揃いたたんで重ねてあった。
黄色のカーディガンとねずみ色のブラウスにはところどころ乾いた血糊がこびり着いていて、釦もひとつふたつ飛んで失われていた。
いずれも、夕べの狼藉のあとを、あからさまにとどめていた。
えび茶色のスカートのすそをめくると、裏地に白っぱくれたシミが濃淡不規則なムラをつくってべっとりと付着していた。
震える指でそっと触れると、まだかすかな湿り気を帯びていた。
なにかを叫びそうになって、思わず数歩足を踏み出した。

≪長編≫ 田舎町の吸血父娘、都会からの転入家族を崩壊させる  ~月田家の場合~ 5 嵐のあと、なにも知らない娘のまゆみ

2018年10月21日(Sun) 08:24:25

月田夫妻から血を吸い取った父娘が月田家を辞去したのは、娘のまゆみが帰宅するのとほぼ入れ違いだった。
制服姿で帰宅したまゆみは、自宅から出てきた見なれない父娘にちょっと怪訝そうに目をやったが、親を訪ねてきた客人らしいと察すると、それ以上の関心を払わずに、軽く会釈をして家の門をくぐった。
男はすれ違いざま、月田家の娘の発育のよいふくらはぎが白のハイソックスに覆われて、紺のプリーツスカートのすそからにょっきりと伸びているのに目をとめると、その瞳の奥に一瞬もの欲しげな輝きをぎらつかせて、彼女の姿が玄関のなかに消えるまで立ち止まって見送っていた。
「父ちゃん欲深ね」
少女は吸血鬼の父親の脇腹を小突いた。
「生意気言うでねぇ」
男は図星を指されながらも、娘に対して減らず口を叩いた。
「あたし誘い出してこようか」
少女はこともなげにそういったが、男は口のなかでぶつぶつと、学校さ行けばええとか、その前ぇに顔役にかけあいに行くとか、生娘を犯すとあとがうるさいからなとか、あいまいに呟いただけだった。

「小母さんと仲良くなれて、よかったね。パンストもらったでしょ」
娘は父親をからかった。ついでにポケットからはみ出していた節子のストッキングのつま先を、わざとのように引っ張った。ストッキングはポケットからすっぽりと抜け落ちて、少女の指先につままれたままひらひらと風に舞った。
「洗濯して取っとくね。いつもみたいに袋作って。あ、箱もいる?」
男は、もうなにも応えずに、娘の言いぐさを横っ面で受け流していた。


「ねぇ、どうして今夜はお赤飯なの?さっきのお客さんだれ?」
なにも知らないまゆみは、久しぶりの赤飯をもりもりと口に頬張りながらいった。
その赤飯が、母親を犯す見返りにさっきのみすぼらしい中年男が持参した手土産だとはつゆ知らず。
母親は娘の問いにはこたえずに、いつになく黙りこくって単調に箸をあやつりつづけた。
「お前はなんでもよく訊くなぁ。」
父親も苦笑交じりに、娘をたしなめるようにそういっただけで、やはり単調に箸でつまんだ赤飯を口にもっていくだけだった。
ふたりとも、鼓膜にキンキンと響く娘の声に、顔色をよけいにくすませていた。
「つまんないの」
張り合いのない両親の反応にまゆみはちょっとふくれ面を作ると、ごちそうさま、と箸を投げ出すようにして、ちゃぶ台から起ちあがった。
ジーンズ生地のスカートがはち切れそうなくらいにおっきなお尻を親たちに向けて、まゆみはふすまをぴしゃりと閉めた。
学校帰りのままの白のハイソックスを履いたふくらはぎに帯びた、たっぷりとした肉づきが、父親の目に眩しく灼きついた。
血液の喪われた血管が、むやみともの欲しげに疼くのを感じた。
娘の血を欲しがるなんて、あさましい――しいてそう言い聞かせることで、月田は自分のなかに沸き起こるどす黒い感情を、躍起になって打ち消した。
「自分のお茶碗くらい片付けなさい」
といつも口うるさく追い打ちをかけてくるのを見越したように、
「お風呂入るからー」
と昇りはじめた階段からはずんだ声が響いてきたが、それにも母親は無反応だった。
浴室からシャワーの音が気持ちよさそうに洩れてくると、はじめて母親はわれに返ったように表情を動かし、夫にいうともなしに呟いた。
「あの子もそろそろね」

≪長編≫ 田舎町の吸血父娘、都会からの転入家族を崩壊させる  ~月田家の場合~ 4 月田夫人の堕落

2018年10月21日(Sun) 08:19:53

四十路を半ばすぎた月田節子は、色褪せた頬に珍しく頬紅を薄っすらと刷いて、
ややくたびれた黄色いカーディガンに地味なねずみ色のブラウスを着て、
それでも彼女には珍しくいちおうスカートを着けていた。
えび茶のスカートの下には肌色のストッキングを穿いていたが、それは先週娘の学校のPTAの会合で脚に通して以来のものだった。

「なんだ、よそ行きのいいかっこしておけって連絡したのに」
帰宅した夫はすこし不満そうに顔をしかめたが、妻は
「急にそんなこと言われたって・・・」
とぶつぶついった。それでも見慣れない新来の客人たちには丁寧に
「ようこそ初めまして、むさ苦しいところでなんのお構いもできませんが」
と、敷居の板の間にひざを突いて神妙な顔をして改まった声色をした。

夫からは改まった説明はなに一つなかったけれど、彼女はなにもかも察しているようだった。
すべては暗黙の諒解のうちに、夫婦は見ず知らず同然の父娘に、家の敷居をまたぐことを許していた。
吸血鬼にいちど家の敷居を跨がせてしまうと、彼らはいつでも自由に出入りすることができるようになって、その家の家人の血を獲ることができる――
人事担当者から聞かされたはずだったが、それと知りながら、夫婦はその父娘に、まんまと家につけ入る隙を与えてしまったのである。
彼らの訪問はどんなに突拍子のない刻限でも許されたし、かりに家主が彼らを拒んで堅く施錠をしたとしても可能だった。
懐柔した家人を操って手引きをさせることもできたし、ひとの助けを借りないでも「いつの間にか入り込んでいた」ということもふつうにあった。
夫が父娘を自宅に招いて、妻がふたりを何気なく奥に通したことで、村に棲む吸血鬼に対しての唯一の結界は容易に破られていた。

人間の夫婦と吸血鬼の父娘は、人間の家のお茶の間で立ったまま向かい合った。
緊迫しかけた空気を気づかうように、節子が夫に訊いた。
「あなたはどちら」
夫婦のどちらが、父娘のどちらを相手にするのか、という露骨な問いを、未経験ながら発してしまったのを、節子は意識していなかった。
月田は、わたしは娘さんに吸われているから・・・と応えると、妻に背中を見せてのそのそと沓下を履き替えにかかった。
夫の勤務先に顔を出したことのない彼女は、事務所の掲示板をみたことはなかったが、業務連絡用の月間予定表に唯一書かれてある内容だけは心得ていた。

   供血希望者はストッキング地の膝下丈のハイソックス(紳士用可)
または婦人用ストッキングを着用の上勤務すること。

夫が出勤のときに穿いて出かけるあのストッキングみたいに薄い沓下は、帰宅のときには大きな穴をあけているか違うものに穿き替えられていた。
きょう夫が脱ぎ捨てた靴下にひきつれひとつないことに、彼女はわるい予感を持った。
「薄い靴下がお好きなんですよね?」
彼の妻は呟くようにそういうと、肌色のストッキングを穿いた自分の脚を改めて見おろした。
「さいしょは首すじだから」
夫は赤黒い痣の滲んだ自分の首すじを指差して、穏やかにほほ笑みながらいった。
共犯者のほほ笑みだった。
部活や補習に明け暮れる娘のまゆみがいつも下校してくる刻限には、まだ相当の間があった。

まだ顔なじみすらろくにいないこの村で。
いつかちかいうち、にわかな客人の来訪を受けて吸血されることを、彼女は夫のようすで実感していた。
まだ都会にいるときに、赴任の条件を夫の会社の人事担当者から告げられたときからそれは納得ずくのことだったが、
夫の何気ないしぐさのひとつひとつにまがまがしい背景が生じたのを感じて、それはひどくうそ寒い予感を、彼女の胸の奥に植えつけていた。

夫を見捨ててひとり都会に戻ることもできないわけではなかったのに、彼女はそうする意思をまったく持たなかった。
周囲のだれもが受け入れている習慣を、いずれはこの村のだれかを相手に許さなければならないのだ・・・と、無気力な彼女は、なかば諦めているようだった。
せめて娘を守る配慮は女親としてしなければならなかったはずなのに、そうした配慮さえ放棄しているふうだった。
「あなたは寝室を使って下さい。私はお茶の間で」
さすがにおなじ場所は避けたいところだったが、ひと部屋しかない階上の部屋は娘の勉強部屋になっていて、そのほかに部屋らしい部屋といえば、隣り合わせになっている寝室と茶の間のふた部屋しか、この家にはなかったのだ。
夫人が茶の間を選んだのには、わけがあった。
玄関に近いほうの茶の間に彼女がおれば、娘がいつもより早い刻限に急に戻ってきたとしても、なんとか取り繕うことができると思ったのだ。

ふすま一枚隔てた向こうとこちらで、夫婦はお互いの振る舞いを意識しあいながら、行為に及んだ。
夫は勤め帰りのネクタイをとり、スラックスまで脱ぎ捨てて部屋の隅に押しやると、濃紺のストッキング地の長沓下一枚の脚をうつ伏せに投げ出した。
自分の血をいつも吸っている少女が、四つん這いになってうつ伏せになった彼の足許ににじり寄り、幼いが獣じみた呼気を薄いナイロン生地ごしにふくらはぎに当ててくるのに、いつにない昂りを覚えていた。
「おじちゃん、おっきくなってるね」
少女は笑った。
気がつくと、ブリーフごしに、小さな掌が両方とも、彼の股間をまさぐっていた。
妻にも聞こえている・・・そう感じて彼はぎくりとしたが、少女はかまわずにつづけた。
「いいんだよ。そのほうがあとあと、楽になれるから」

いままでなん組みの夫婦を、こうやって堕としてきたのか。
少女はあくまであっけらかんとしていて、ひどくもの慣れているようだった。
彼女はもう一度彼の股間に、こんどはブリーフのなかにまで掌をすべらすと、
「ガマンしなくていいからね」
と、彼だけに聞こえる声で囁いた。
彼はふすまの向こうの気配に耳を澄ませたが、なにも伝わってこなかった。


夫の月田とふすま一枚隔ててしまうと、節子はすくなからぬ気詰まりを覚えた。
初めて差し向かいになってみると、相手の男は年配こそ夫と似たり寄ったりではあるものの、
塗料や脂で薄汚れた草色の作業衣といい、ボサボサの白髪交じりの頭といい、陽灼けで赤茶けたシワだらけの頬といい、
どれもがスーツ姿にネクタイの夫を見なれた都会妻の目には、予想よりも見劣りするものばかりだった。

隣家に住む夫の上司夫婦のところに夜這いをかけてくるのは、みすぼらしい鼻垂れの不良少年だったし、
いつも2、3人連れだって現れてはお向かいの若奥さんを近くの納屋に連れ出して輪姦どうぜんのあしらいをくり返していくのが、
節子の父親以上の年恰好の野良着姿だったり―――

そういうところを見てきた彼女のまえに、若くて気分のいい男性が訪れるとは、さすがに期待してはいなかったけれど。
もう少しなんとかなったひとはいなかったのかしら?と自分の相手をみつくろってくれた夫に不満がよぎった―――と思う間もなく、汗臭い作業衣がいきなりのしかかってきた。

相手が長いこと節子に手を触れずにしげしげと眺めているばかりだったのは、たんに自分の獲物としてあてがわれた女の品定めに時間をかけていただけだったらしい。
ひきつった節子の喉もとに黄ばんだ前歯が性急に突き立ち、つけられた擦り傷のあとに紅いものが滲んだ。
ひりひりとした疼痛が、抗う人妻を苛立たせた。
組んずほぐれつ、互いに無言のまま、熱っぽい息づかいの応酬がつづいた。
ふすまの向こうの夫を刺激すまいと悲鳴をこらえたままの節子を、男はたたみの上に押し倒した。
そして意地汚く舌をふるって、擦り傷に滲んだ血をピチャピチャと舐め取っていった。

茶の間の雰囲気の急変に月田が気づいたのは、少女の巧みなまさぐりに負けて、ブリーフをしたたかに濡らしてしまった直後だった。
なま温かいいやな感触が、股間に気味悪く広がった。
どろりとした粘液を畳にこすりつけまいとして、あわてて自分の腰を畳からへだてようとすると、少女が上からのしかかってきた。
畳に貼りついた粘液の塊を、上から抑えつけられた彼の下腹部や腰骨が踏みしだき、念入りに畳に擦り込んでいった。
う、ふ、ふ、ふ・・・
少女は白い歯をみせてイタズラっぽく笑いながら、「わざとそうしてるのよ」と言いたげに、彼の鼓膜に自分の熱した呼気だけを注ぎ込んだ。
娘よりもずっと幼い少女相手になんという不覚・・・そんな想いが胸を噛んだ矢先、ふすまの向こうからなにかを耐えかねたような女のうめき声があがった。

あううううっ!

もう何年も、夫との営みさえ忘れかけた主婦は、強引に唇を奪われることで,自分のなかの女を否応なく呼び覚まされていた。
生臭い口臭にむせ返りながら、女は強引に重ねあわされた唇を、はずすことができなかった。
それどころか、粗暴に圧しつけられてくる分厚い唇に、つい自分のほうから応えてしまった。
胸許に擦り傷をつけられたすぐあとに、したたかに咬まれた首すじからは。
なま暖かい血がタラタラとしたたり落ちて、くたびれかかった黄色のカーディガンや地味なねずみ色のブラウスのえり首をべっとりと赤紫色に濡らしはじめていた。
けれども節子は、それをあまり苦には感じなくなっている。

男は節子のブラウスを引きちぎるようにはだけ、ブラジャーを剥ぎ取った。
ブラジャーの吊り紐がバチッ!と音をたててはじけ、むき出しの肩を鞭のように打った。
女の胸のふくらみはあまり豊かではなく、むしろ貧しげだった。
羞じらう乳房を男は掌をひろげて、たしかな手触りを確かめるようにくまなくまさぐり、支配していった。
あらわになった乳首は性急な唇に含まれて、クチュクチュと露骨な音をたてて、いまだかつて経験したことがないほど、下品に責められた。
「そこは咬まないで」
月田夫人はそういって相手を制しながらも、かりにそんなことをされてしまってもかまわないような気がしていた。
不思議に、痛みはほとんど感じなかった。
柔肌のうえから咬み入れられてくる牙の痛痒いような感触が、むしろ小気味よかった。
それは彼女の脳裏の奥深いところをジリジリと焦がれさせ、彼女の持っている常識や理性を突き崩していった。
さして美しいわけでもない中年女に過ぎない自分に、この貧相な作業衣の男は魅了されたように息荒くのしかってきて、欲情もあらわに迫ってくる。
夫さえ見捨てたかも知れないこの身体に。
女冥利―――ふだん使ったこともないそんな言葉が思い浮かんだのは、なにかのメロドラマの影響だろうか?
自身のそんな心の変化に戸惑いながら、節子はたたみの上に、展翅板の上の蝶の標本のように抑えつけられて、なん度もなん度も咬まれていった。
咬まれるたびに、古ぼけた畳には、この家の主婦の血潮が飛び散り、しずくを拡げていった。

えび茶のスカートから覗く脚にも、容赦はなかった。
肉づきのいちばん豊かなあたりに、男は目の色を変えて、力任せにかぶりついてきた。
「あぁ・・・」
かなりつよく咬んだのに、女の反応は鈍かった。
どこか鼻にかかったような、甘い媚びを含んでいた。
肌色のストッキングには、あぶく混じりのよだれが滲み、食いついた牙の下で他愛なくほぐれていって、ジリジリと裂け目を拡げていった。
節子は男が彼女の穿いているストッキングを愉しみながら咬み剥いでいるのを感じた。
夫の電話を受けてストッキングを脚に通したとき、ふと都会女に戻った実感が彼女の胸をよぎったが。
いまは、その都会女のシンボルのようなストッキングをよだれまみれの唇に汚され無残に破かれてゆくことに、不思議な快感をおぼえていた。
この男が愉しいというのなら、破かせてしまってもいい――そんな気分になっていた。


いつの間にか、ふすまは開け放たれていた。
お茶の間にいた節子の側の大立ちまわりのおかげで、しぜんと開いたのかもしれなかった。
着衣を着崩れさせながらねじ伏せられた月田夫人が、むざむざとストッキングを咬み破られていくのを目の当たりに、夫はなん度めかの射精をした。
みじめだという気は、不思議としなかった。
「ごめんなさい、あなた。我慢できなくなっちゃった。階上に行きますね」
妻が俯いて彼の視線を避けながらそういったときも、ああやっぱりあいつも女なんだな・・・と、そんなことをぼんやりと思っただけだった。

たたみの上に精液を散らした夫の様子になど全く関心を払わないで、節子は夫と少女のいる寝間を横切って、箪笥の抽斗からショーツの穿き替えを取り出すと、すぐにまわれ右をして情夫にひきたてられていった。
着ていたカーディガンやブラウスは、袖を片方脱がされて背中の後ろにだらしなくぶら下がり、ぶらぶらと揺れる片袖ごしに、半ばあらわになった貧相な背中が見え隠れしていた。
妻の白いふくらはぎの上で裂けた肌色のストッキングが、夫の目にはなせまかむしょうに艶かしかった。

彼の視界の届かないところでふたりがなにをするのかは、だれにでもわかることだった。
新婚以来二十年ちかくのあいだ、妻に浮いた噂などなかった。
長年連れ添った妻の婦徳が汚される。
夫人を強姦どうぜんに辱しめられることで、彼自身の名誉や体裁も損なわれる・・・そうした自覚はたしかにあったはずなのに、彼は自分の妻を凌辱の猿臂のなかから救いだそうとは、思わなかった。
階上は娘の勉強部屋のはずだった。
娘が戻ってくる前に、臭いや粘液などの後始末はつくのだろうか?どうせなら庭でやればいいのに・・・と、むしろ見当ちがいなことばかりが、彼の気になっていた。

頭の上で、古びた木目の天井がギシギシと軋んでいた。
天井の軋みは間断なくつづき、そのあいだじゅうずっと、彼の妻がひとりの女として振る舞っていることを伝えてきた。
彼にとって、決して名誉なことではないはずだった。
けれども彼にすれば、その軋みが長続きすればするほど、むしろ誇らしい気分になるのを自分に禁じることができなくなっていた。
だって、軋みが長ければ長いほど、今夜の客人が自分の妻のもつ魅力に満足しているということなのだから。
どうせ凌辱を遂げられてしまうのなら、自分の妻を魅力的な女として扱ってくれるるほうが、よほど歓ぶべきことではないか?

少女はそのあいだも、月田の身体のあちこちに取りついて、首すじや肩先、わき腹、お尻、太ももやふくらはぎ、それに足首にまで咬みついて、身体じゅうから血を抜き取っていった。
そのたびに、つねられるような疼痛が、彼の理性を挑発するように、皮膚の奥にまで沁み込んだ。
実の娘よりも幼い少女に支配されながら、情けないとは感じていなかった。
「良い子だね。おじちゃんの血でよかったら、もっとおあがり」
彼は優しい声で少女に呟き、少女は遠慮会釈なく与えられた権利を行使した。
二階では妻が犯されている。
そういう異常な情況におかれた彼が本来感じなければならないはずの救いようもない屈辱を、少女は嘲ることもなく、むしろ理解さえ示していて、彼女の幼い牙が、それを抑えがたい妖しい歓びにたくみにすり替えていくのがわかったから。

まだ天井ごしの物音が途切れないうちに彼が始めたのは、階下の部屋の後始末だった。
寝間に散らばった彼自身の血や体液は、少女がすでに丹念に拭い取って、きれいに隠滅してしまっていた。
父娘連れだってのこうした悪事に慣れているのだろう。手慣れたものだった。
身を起こすと軽い目眩がした。
「小父ちゃん、いつもよりがんばったもんね」
少女は屈託なげに笑った。
失血の眩暈に身体が痺れるのを感じながら、這うようにして隣の茶の間に向かうと、すべてが乱雑にひっくり返されていた。
ちゃぶ台は隅に押しやられて斜めになっていたし、差し向かいに置かれていたはずの二枚の座布団もてんでんばらばらに散らかって、二つ折れになった一枚にもう一枚が折り重なっていた。
少女が、雑巾を手渡してくれた。
雑巾は多少の汚れならそれ一枚で拭き取れてしまいそうな大きさで、きつめに絞ってあった。
畳には、まだ乾き切っていない血糊が不規則に幾すじとなく延びていた。
どちらかの身体がその上に乗っかったらしく、所々擦りつぶされていた。
おぞましいことに、白く濁った男の体液らしきものが、茶の間のそこかしこに付着していた。
それは、妻の身になにが起きたのかを、いやがうえにも想像させてくれた。
いや、この場ではまだ、妻の名誉は決定的な汚辱を受けていなかったはずだ・・・彼はそんなことを呟きつつ、しつように覆いかぶかさってくる妄念とたたかいながら、ちゃぶ台の脚にはね畳のへりに沁み込んだ体液を、不器用な手つきで拭っていった。
妻が生き血を吸われ弄ばれた現場に遺された血糊を拭き取るという卑屈な作業に、いつかマゾヒスティックな歓びを感じはじめていた。
いま雑巾にしみ込んでゆく赤黒い液体は、ついさっきまで妻の体内に脈打っていたはずだった。
妻はいったいどんな気持ちで、この深紅の血液を抜き去られていったのだろう?
少女は彼が妻を弄ばれた痕跡を隠滅する作業を手助けしながらも、時々ニタニタと薄笑いを浮かべては彼のことをちらちら盗み見ていた。
そして、飛び散った血潮のしずくに指先を染めては、チュッと行儀のわるい音をたてて舐め取っていた。
ふたりは無言のまま、畳やちゃぶ台や家具、ふすまや壁から血糊や体液を拭き取る作業に熱中した。
たまに交わされるのは「そこは?」「こっちも」「あぁ、こんなとこまで」と、拭い残しがないか確かめ合うための手短かに端折った言葉だけだった。
その間もずっと、顔を俯けて雑巾でこすり続けるふたりの頭上では、古びた木目の天井が重苦しい音をたてて軋みつづけていた。


階下の後始末がほぼすんだ頃、ふた色の足音が階段を降りてくるのが聞こえた。
降りてくるふたりの間に、そこはかとなしに通いあうものがあるのを、階下のふたりは感じた。
少女のほうはしてやったりという得意そうな色を一瞬あらわにしたが、すぐにあわててそれを押し隠した。
月田のほうは月田のほうで、ああやっぱりという諦めに似た想いと、なにかがうまく成就したあとの不思議な安堵と充足感とを同時に覚えていた。

さきに部屋に入ってきたのは、男のほうだった。
作業衣のズボンのベルトを、歩きながら締めなおしていた。
草色をした薄手のジャケットは、もともと塗料や脂で薄汚れていたが、情事のさなかに散らされた女の血が、それとわかるほどに上塗りされて、乾き切らないままにこびりついていた。
あとから男の背中に隠れるようにして現れた彼の妻は、さすがに後ろめたそうに目を伏せていた。
ざっと身づくろいをしてきたのだろう。夫人の着衣は、夫が懸念したほどには乱れていなかった。
階上にあがっていくときに片袖だけ脱がされていたカーディガンもブラウスも、いちおうはもとの通り着込んでいたし、失血のせいでさすがに顔色はよくないものの、蒼白く萎えた素肌の色は、いつもより濃いめに刷き直された化粧に紛れていた。
足許だけは、破れ落ちたストッキングがそのままになっていて、乱暴狼藉の痕をはっきりととどめていたのだけれど。

嵐が通り抜けたあとの夫婦は、互いにどう言葉を交わして良いのか口を開きかねて、しばらく気まずそうに視線をそらし合っていた。
吸血の習慣をもつこの父娘は、こうした夫婦ものをあしらうのに慣れていて、互いに困惑し合う夫婦の気分もほぼ正確に察しをつけていた。
旦那は女房に意気地無しと思われたくないだろうし、女房は女房でふしだらな淫乱妻と見なされて離婚でもされたら・・・などと余計な心配をすることなども。
どうやらこの夫婦はとくに、そんな感じがした。
生真面目で小心者どうしだったから、自分の恥ずかしい立場を誤魔化すために互いに相手を責めて修羅場を演じるほどの度胸も厚かましさもないのだ。
そして―――そうした小心者の善良さこそが、彼らにとっては何よりも好都合だった。

男はここの敷居をまたいだ直後の、あの冴えないウッソリとした様子に戻って、ぶきっちょに口ごもりながらいった。
「すいません。つい長居しちまって・・・世話んなりました」
平身低頭された夫のほうは、妻を犯した男がごく下手に出てきたことに軽い狼狽さえ滲ませながら、
「ああ、いえいえ・・・こちらこそ何のお構いもできませんで」
と、こちらもまたへどもどとした間抜けな返事を返していた。
かなり見当ちがいな挨拶ではあったけれど、状況を穏便に済まそうとする夫の事なかれな態度に、妻が少なからず安堵を覚えたのは間違いなかった。
あれだけ明白な事態になったのに、夫は献血行為以上のことはなにもなかったことにしてくれようとしている。
お互いを責めるよりも、いま崩されかけている日常の体裁をなんとか取り繕うことのほうが、この夫婦にとってはずっと重要なのだった。

なによりも、部活動帰りの娘の帰宅時間が迫っていることが、夫婦にとっての最優先の懸念事項になっていた。
ちゃぶ台まで蹴転がすようにして立ち去った茶の間がとにもかくにも片付けられているのに初めて気がつくと、
「後片付けまで・・・すみません」
節子はそういって伏し目がちに夫のすぐ脇をすり抜けて、そそくさと台所に立ち、ボールに浸された雑巾を手に取ると、それをギュッ、ギュッ、と手際よく絞った。
作業を始めると気分がすこし落ち着いたらしく、おなじものをふたつ用意すると、
「ごめんなさい。ここと、ここと、あとこっちにも」
と、階下に残った夫と少女が見落とした、当事者にしかわからないような場所に残されたシミや汚れを、くまなく拭き取っていった。
夫婦が身を寄せ合うようにうずくまって共同作業に熱中し始めるのを、吸血鬼の父娘は、虚ろな目をして見つめていた。

拭き掃除が終わると男は節子を手招きして彼女のまえに蹲り、両手で自分の肩につかまらせると、
節子の脚にまとわりついていた肌色のストッキングを片足ずつ丹念に脱がせていった。
彼女の夫は、その様子を、黙って見ていた。
妻を強姦した男が、妻の装身具を戦利品としてせしめていくところを。
節子が脚を代わる代わる上下させる拍子に、太ももやスカートの裏側が見え隠れした。
えび茶色のスカートには、裏地にべっとりと男の体液がこすりつけられていた。
もちろんそれは夫の目にとまったはずだし、節子もスカートの裏側に夫の視線が這うのを自覚したが、
男が否応なく動作を強いたので、立ち止まることはできなかった。
節子は夫のまえ、凌辱を受けた明らかな痕跡をさらけ出しながら、身繕いをすませていった。

節子の穿いていたストッキングを脱がせてしまうと、男はそれを押しいただくようにして口づけすると、
くしゃくしゃに丸めたまま作業衣の上着のポケットにねじ込んだ。
都会育ちの婦人の装いには不似合いな無造作なあしらいに、夫はズキリと胸を衝かれた。
塗料や脂の染み込んだ作業衣のポケットから、ねじ込まれた妻のストッキングのつま先がはみ出してひらひらと漂っていたが、男は気がつかなかった。

「おじちゃんはこの日なら会社にいるんだよ」
月田は、勤務先から持ち出した勤務割りを、少女に手渡した。
夜勤もあるし、せっかく来てくれても無駄足になったら可哀想だからねと夫がいうと、妻のほうもまた優しい小母さんの顔になって、
「お嬢ちゃん、よかったわね。小母さんもよかったらお相手してあげるから、よかったらうちにも遊びにいらっしゃいね」
などと、猫なで声を出した。
「あなたの参考にもなりますかね」
彼が男に遠慮がちに声をかけると、男はむしろ卑屈そうに身を屈め、すまんこって、あとでゆっくり見させてもらいます、というと、
その受け答えとは裏腹に、娘の手から取りあげた勤務割りに視線を落とした。
最初だから3、4日休むとして・・・男は小声で呟きながら、考え深げに目を細めた。
「日中お越しになれるんでしたら、私も娘もおりませんよ」
「ハハァ、たしかにそうですな」
「夜勤明けには家におりますから・・・その日だけはかんべんしてもらえたら」
月田はそう言いかけたが、男がちょっと不快そうな顔色になるのを見越すとすぐに、
「いや、どうしてもというのなら、無理には願いませんけれど」
と、言い直した。月田の協力的な態度に、男はあきらかに、心証をよくしたらしい。
「なに、いまさっきとほとんど変わりはしませんよ・・・せっかく仲良くなったんだ、奥さんに逢いたくなったら、いつでも来ますで」
とぼけた口ぶりで、夫の言いぐさに応じた。
男ふたりは声をあわせて低く笑った。
節子は茶の間に背を向けて台所に立ち、男ふたりの笑い声を背中で聞きながら、自分たち夫婦の血のついた雑巾を洗っていた。

≪長編≫ 田舎町の吸血父娘、都会からの転入家族を崩壊させる  ~月田家の場合~ 3 月田氏、吸血娘の餌食になる。

2018年10月21日(Sun) 08:03:29

「あー、お嬢ちゃん、もぅ少し手加減してくれないかな?おじちゃん貧血になっちゃうよ。」
月田はきょうも、濃紺の薄手の沓下を履いていた。
彼はさっきから足許にうずくまっている少女に、まるで近所の顔見知りの女の子に対するように親しげに話しかけたが、
そのじつ彼女の素性については、村に棲む血を吸う習性をもった女の子という知識しかないのだった。
何しろ顔を合わせるのは、きょうみたいに血を吸い取られるときだけだったから。

少女は案外もの分かりよく顔をあげて、吸い取った血に染まった口許から白い歯をみせ、ニッと笑った。
「ああそうね。おじちゃんトシだもんね。いいよ、きょうはこれくらいで勘弁してあげる」
彼女は、男の履いている沓下の破れ目にもう一度口をつよく吸いつけて血をもうひと啜りだけすると、
たくし上げていたスラックスをあきらめ良く降ろして口を拭った。
「お嬢ちゃん、聞き分けがいいね。いつも私なんかのまずい血を吸ってもらって、すまないね」
しんそこそう思っているらしく、彼の言葉つきは、少女の小さな背中を撫でるようないたわりに満ちていた。
少女は、今年中学二年になる彼の娘よりも、まだずっと小さかった。

少女がこの事務所にくるようになって、1週間くらいになるだろうか。
それともすでに、10日ほどにもなるのだろうか。
記憶のほうもさだかではない。
執務中首のつけ根のあたりにチクリとかすかな痛みが走ったのが始まりだった。
噛まれた首すじを抑えて振り返ると、いつの間にそんなことをしたのだろうか、彼の席のすぐ後ろにわざわざ椅子をひとつ持ってきて、その上によじのぼって背伸びをして、少女は彼の首すじを吸いはじめていたのだった。
気がついたときにはもう、咎めることさえできない状態になっていた。
彼女はがんじがらめにした獲物の首すじに取りついて幼い歯で皮膚を咬み破ると、おもむろに血を吸いつづけたのだった。
くいっ・・・くいっ・・・と、猛禽類が獲物を漁るときのような、獰猛な音を立てて。
それが、月田の供血体験のはじまりだった。

少女が事務所に現れるようになって数日後のことだった。
吸い取られる血の量はさほどでもなかったけれど、毎日ともなるとさすがに、疲労が累積する。
きょうは退勤まで来なかったなと内心ほっとしながら、それでも半分は拍子抜けして通勤鞄を手にすると、スラックスのすそを引っ張られた。
事務所のまえには彼女の父親らしい、自分とほぼ同年輩のごま塩頭の男が、草色の作業衣姿で佇んでいた。
「おとうさん」少女はひと言そういって、あとは目で訴えている。
どうやら父親の目当ては彼の血ではないらしい。
ああそうか。彼はすぐに気がつくと、自分の察しのわるさを恥じるように頭を掻いて、「どうも」と相手の男に会釈した。
男もぎごちなく挨拶を返すと、これも一言だけ「よろしく」と低い声でいった。
不器用なもの同士の共感がお互いのあいだに流れ、ちょっとだけ打ち解けた雰囲気が漂った。

それでじゅうぶんだった。

月田は、この男なら妻を襲わせてもよいという気になった。
この村に越してからもいまだに都会妻としてのプライドを捨てず、いつもこぎれいに装っている妻と、
薄汚れた作業委姿の貧相な男とが、なぜかとても似合いなように感じられた。

「行こう、ね?」
ナギは得意げに、ニッと笑った。
三つの人影は都会から越してきたばかりの彼の宿舎――なにも知らないその妻が待つ――を、まっすぐ目指した。

≪長編≫ 田舎町の吸血父娘、都会からの転入家族を崩壊させる  ~月田家の場合~ 2 黒沓下の男の身の上

2018年10月21日(Sun) 07:57:02

黒沓下の男の妻が長老の愛人の一人に加えられたのは、着任そうそうのことだった。
老人の家の法事の手伝いという名目で寺に集められた婦人たちの中に含められた彼女は、そこが初めての供血の機会になることを薄々予感していた。
むろん彼女も、夫が彼女を伴って赴任するという土地の風習を、あらかじめ聞かされていたのだった。
そうまでしてまでいままでの日常を捨てざるを得なかった理由は、ひととおりでないものがあるはずだったが、彼女は決してそれを語ろうとはしなかった。
寺に集められた婦人たちは、黒の礼服の着用を義務づけられていた。
彼女もまた他の婦人たちと同じように、薄黒の沓下に足許を染めて、よく磨かれた本堂の床につま先をすべらせた。
そこには仕事らしいものはなにも用意されてなく、広間に居並んだ彼女たちは一人一人、それぞれ別々の男女に手を引かれ、小部屋へと引き入れられていった。彼女はそこで初めて血を吸われた。
首すじを咬まれ痛痒く疼きはじめた傷口を抑えた彼女は、どうして黒の礼服なのか覚ることになった。
たたみの上に彼女の脚を抑えつけた吸血鬼は、黒のストッキングのうえから存分に舌をふるって欲情もあらわに辱しめをくわえ、挙げ句にブチブチと咬み破っていったのだ。
彼女は、弔いのための装いがそのまま、彼らのふらちな欲情を満たすための馳走になることを知った。

礼服を着崩れさせながら、当然のように犯された彼女は、
齢不相応に旺盛な老人の性欲に戸惑い、辟易し、そしてさいごに、積極的に応えてしまっていた。
別れ際投げられた、夫に黙って呼び出しに応じるように・・・という誘いに、目を瞑ったまま頷いていた。

老人には六、七人ほどの専属の愛人がいた。
それ以外に、不特定の吸血鬼の相手をする一般の住人たちからも、時々血の提供を受けていた。
ひとりの人間から採れる血の量には限度があり、善意の供血者の健康を損ねないために、老人は愛人たちのあいだを順繰りに往き来しているのだった。
老人は、みずからの干からびた血管を、この都会育ちの人妻の血潮で浸すことに満足を覚えた。

妻が密会をしているという事実を黒沓下の夫が知ったのは、長老本人からだった。
寺での密会の直後、事務所にあらわれた長老は、着任そうそうというだけの理由で、中年でさして血の美味そうなわけでもない彼を指名した。
大物のご指名ということで周囲から驚きと称賛のどよめきを勝ち得た彼は、他の同僚がそうしているように、会議テーブルに移ってスラックスのすそを引き上げ、まだ履きなれない薄い沓下の脛をあらわにした。
沓下の色は、老人が指定した。
さっきこの男の妻の脚から咬み剥いだストッキングと、同じ色だった。
夫婦で同じ色の靴下を履かせてそのふくらはぎに咬みつくことに、老人は異常な歓びを覚えた。
夫はまだその時点では知らないことではあったが、妻が経験したのとおなじ初めての疼痛を、足許に染み込まされていった。
相手の男がさっき妻を犯してきた男とはつゆ知らない夫の体内から獲た働き盛りの血液は、老人の体内で妻から吸い取った熟れた血液と交じり合った。
夫婦の血からもたらされる温もりに、老人は目を細めた。

「いい人に見込まれましたね」
同僚たちは、真顔で彼を祝ってくれた。
初めて供血をしたその日は、事務所内でビールが振る舞われ、ふくらはぎに疼痛の余韻をじんじんさせながら、本人だけは特別にと、祝い酒の盃まで用意された。
帰宅した夫の沓下が破れていたことに、妻はなにもいわなかった。
もちろん彼女は、何もかも弁えたうえで黙っていたのだが、
自分の身になにが起きたのか言葉を交わすことなく事情を伝えることができたことを、彼は好都合だと感じた。

早くも翌日には二度目の御成りがあった。地位の高い吸血鬼の来訪は、とくにそう呼ばれていた。
さっそくスラックスをひきあげた片脚に咬みついて、ストッキング地の沓下をはでに破いてしまうと、
もう片方の脚にも取りついて、薄い沓下の生地をクチャクチャと露骨に舌を鳴らしてしわ寄せながら、彼のことをにんまりと見上げていうのだった。
「奥さんの沓下とはまた違った、エエ舌触りじゃ」
え?と怪訝そうに首を傾げた彼は、すぐにすべてを理解した。
男が黙って差し出した紙片には、こう書かれていた。

貴方のご令室には何月何日に当家の法事にご列席賜り、
その席上で格別のご厚意を頂戴した。
当村の仕来たり上、吸血の際は夫婦同然の縁をとり結ぶことになっているが、
ご令室には忝なくもご快諾いただき、その場でことの成就に及んだ次第。
夫君におかれては本来、事前のご承知おき賜るべきところであるが、
時宜やむを得ず次第が前後した。
まげてご承引ありたい。

なお、貴兄の好むと好まざるとにかかわらず、
今後、貴兄のご令室がその身に宿す血液を日常的に摂取することを申し添える。

                   (署名)

貴殿の有難いお申し出とご配慮に感謝し、
ここに改めて、貴殿と妻との交際を認め、
最愛の妻の貞操を貴殿に無償で進呈することを誓約します。


よく見ると紙は、視たこともないほど上質のものだった。
注がれる鋭い視線に辟易しながらも、夫は持たされた筆で、さいごにかかれた三行のすぐあとに、自分の氏名を書き込んでしまった。
書き込む瞬間、男に咬まれた傷口が狂ったように疼き、異様な歓びに胸の奥が打ち震えるのを、はっきりと感じながら・・・

黒靴下の男がほろ苦い笑みを含んで見せた誓約書の内容に、新来の同年配の赴任者である月田は、濃紺に染まった足首を震わせて、自分たち家族のまがまがしい行く末を、はっきりと予感したのだった。

≪長編≫ 吸血父娘、都会からの転入家族を崩壊させる  ~月田家の場合~ 1 勤め人たちの献血

2018年10月21日(Sun) 07:45:57

はじめに。
今回は珍しく、長編です。
しばらくまえに病気をしたときに書きためたものを、すこし直してあっぷしてみました。

じつは、まだ完結していません(ほぼ完結状態なのですが)。
そのおつもりで、お愉しみください。^^


「お互い、情けないことになりましたな」
「いや、まったくそうですな…」
向かい合わせに腰かけて、背中を丸めて愚痴りあっているのは、ほぼ同年輩の五十に手が届こうかという分別ざかり。
しかし交わされる言葉の内容のわりには、彼らの語調には卑屈さも悲壮感もなく、職場の片隅でひっそり語られる世間話のような穏やかさに終始していた。
二人ともスラックスを片方ずつ、ひざのあたりまでたくしあげていて、淡い毛ずねの浮いた脛は、ひとりは黒、ひとりは濃紺の、ストッキング地の長沓下に包まれている。
傍らの壁に掲示されている月間予定表の罫線の引かれた業務連絡用の黒板はすべて空欄になっていて、注意事項が一箇条だけ黄色のチョークでおおきく書かれていた。

   供血希望者はストッキング地の膝下丈のハイソックス(紳士用可)
または婦人用のストッキングを着用の上勤務すること。

濃紺の沓下の男の足許には小学生くらいの女の子が、もうひとりの黒沓下の男のほうには野良着姿の老人がむしゃぶりついて、薄黒いナイロン生地にしわを寄せている。
この村に棲む吸血鬼たちは、ストッキングを穿いた女の脚に好んで咬みつく習性をもっていた。
すね毛の浮いた中年男の脚などに咬みついて頂くには、“みば”だけでも良くするのがエチケットとされていたのだ。

吸血鬼たちは、働き盛りの男性の持つ活力のある生き血を求めてこの事務所に出入りしては、馴染みになった職員をつかまえて、日常のご馳走にあずかっている。
事務所内に立ち入ってきた吸血鬼にひっそりと手招きされると、職員たちは執務中でもペンをおいて席を起ち、この打ち合わせスペースにしつらえられた会議用机の席に移ってきて、自分の血を目あてに現れた顔色のわるい老若男女のために、スラックスのすそをむぞうさに捲りあげるのだった。
濃紺の靴下の主も、黒靴下を履いた男も、いつもと同じ相手に手招きされると、片手間のような不熱心さで取り組んでいた事務仕事を放りだして、こちらの席に移ってきた。
ふたりとも、咬まれるまえのすこしの間、小首を傾げしかめ面をつくった。
ストッキング地の薄手のナイロン生地ごしに、なま温かいべろがねっとりとしつこくなすりつけられて、ぬるっとしたよだれをジュクジュクと沁み込ませてくるのを感じたからだ。
自分の父親ほどの齢と思われる男が、同性である自分に欲情している――そう思わざるを得ない状況に、黒沓下の男はゾクリと胸をわななかせた。
足許に這いつくばったみすぼらしい老爺は、都会帰りの息子の嫁をモノにしたと自慢していたが、同じ年恰好をした自分の妻もモノにされてしまっていることを改めて思い出す。
彼らは寝取った人妻の夫までも、愛する性癖をもっていた。

表情を消した中年男たちは、向かい合わせに座ったまま、
互いの視線をさけるようにして、足許からチュウチュウとかすかにあがる吸血の音に、薄ぼんやりと耳を傾けていた。



濃紺の長沓下の男は月田といって、この春当地に転任してきたばかりだった。
それまではずっと、都会の事務所を転々としてきた。
妻も娘も、都会生まれの都会育ち。この村とはなんの縁故もなかった。
しいていえば―――この会社のオーナーが、この村の出身だった。
入社してすでになん十年ともなると、任地についてのぜいたくは禁句というのが常識だった。
まだしも、彼の場合は恵まれているというべきだった。
かなり込み入った性格試験や何回にもわたる面談のすえ、秘密厳守という誓約書にサインまでさせられた上ここのポストを打診されたのだから。

不思議な部署だった。
仕事らしい仕事はとくに与えられず、そのくせ彼のキャリアや年齢からすると、びっくりするほどの高給。
ただし家族を帯同することが義務づけられていた。
この部署の人間にしいて仕事があるとすれば、それは地域との交流・親睦活動だった。
この村には、外部には固く秘された風習があった。
一部の村人の間に吸血の習慣があり、それは直接皮膚を咬んで経口的に行われるという。
この村の赴任者が要求されたのは。
村に棲みつく吸血鬼たちに血液を提供することであり、家族を帯同するのもまさにそのためであった。
山あいの小さな村に棲む住民たちの限られた血液提供者だけでは、吸われるべき血液の量が不足がちになることを憂慮した会社のオーナーが、
過疎化で慢性的になりつつあった血液不足を解消するために、自社の社員や家族で埋め合わせをはかろうとしていたのだ。
家族全員が血液提供者の輪にくわわると、その社員はぶじ職責をはたしたものと見なされるのだった。

田舎の歪んだ風習に染まって、自分ばかりか家族までもが土地の者たち相手に生き血を吸われる―――
なんとも異常でおぞましいはずの部署だったが、会社の打診に応じて赴任してくるものも、細々とではあるものの、あとがたえないのも事実だった。

月田の場合、身内の金銭トラブルで巨額の借金を抱えていた。
娘は引きこもりになりかかっていた。
生命の保証付きときいて、なにかに追われるような日常に疲れきった彼の妻も、気抜けのした顔で賛同した。
娘さんにはあとからの説明でじゅうぶんでしょう、という人事担当者のいうことを鵜呑みにして、めんどうなことは後で考えることにした。
というよりも、いまの出口のない状況を考えると、ほかにもっとましな選択肢は、ないように思われた。
しかしその見込みがやや甘かったことを、彼は薄々ながらさとることになる。
ほかならぬ目の前に向かい合わせに座って、せっせと地域交流に励んでいる男の送る日常が、彼とその家族の未来を憶測させてくれたのだ。

いま彼の向かいに座っていて、老人の農夫に黒靴下を噛み破らせてやっている男は、妻を帯同していた。
息子はすでに成年に達していて同居もしていなかったので、帯同の義務は生じていなかった。
月田よりも半年ほど前に着任した彼の妻には、すでに公然の愛人ができていた。
妻の情夫は村の長老のひとりで、現にいま、夫である彼自身の黒沓下の脚に噛みついている男だった。
そう、いま彼は、自分の妻を日常的に犯している男のために、血液まで提供している・・・

ウチに棲む女たちは、全員網タイツです。

2018年06月28日(Thu) 06:38:18

ウチに棲んでいる女どもは、全員網タイツですよ。
母に姉、それにわたしの妻の3人です。
3人とも未亡人なので、いつも喪服で暮らしています。
喪服にはふつう、黒のストッキングを合わせます。
でもある時期から、彼女たちは3人とも、黒のストッキングを脱ぎ捨てて、網タイツになってしまったんです。

え?わたしの妻も未亡人というのはおかしい、ですって?
わたし・・・死んでいるんです。吸血鬼に血を吸われて。
表むきは病死になっているのですが、ほんとうは・・・エエ、こうしてちゃんと、生きています。
全部吸い取られた生き血を戻してもらって、半吸血鬼として暮らしているんです。
生き血を戻してもらう代わりに、妻を性奴隷として差し出しました。
妻も納得づくで、夫の仇敵に抱かれています。
毎晩のように抱かれているので、きっと愛されているのでしょう。
自分の妻が魅力的な女性として愛されていることについては、夫としては満足を感じます。

この街が吸血鬼と共存する街とは知らないで。
事業に失敗してすべてを失ったわたしは、夫婦でここに流れてきました。
そして、この街でさらにすべてを喪うことになったのです。
わたしは夜の通りでたまたま遭遇した吸血鬼――実は妻目あてで夫のわたしを待ち伏せていたのですが――に襲われて、
その場で生き血を一滴残らず、吸い取られてしまいました。
彼はわたしの血も美味しかったと言ってくれます。
それは、せっかく捧げた血液ですから、不味いと言われるよりは幸せなことだと感じます。

お通夜の晩、こんどは妻が襲われました。
喪服妻の黒ストッキング姿に、彼が魅せられてしまったからです。
借金取りから逃れて隠れ住んでいる身の上、身内は呼ぶことができませんでした。
それでも周囲のものたちは総出で妻を援けてくれていました。
弔問客を送り出してひとりになった妻のもとへ、彼はやってきました。
夕べわたしの身体から吸い取った血を、口許にあやしたままの姿で――
妻は声をあげ、抗議し、夫を返してと泣き叫び、
しまいに抱きすくめられて、わたしのときと同じように、首すじを咬まれてしまいました。
妻は夫の血を吸い取った男の喉の渇きを紛らわせるため、その身をめぐる血潮を提供させられる羽目に遭ったのです。
失血のあまり目まいを起こし、黒のストッキングのひざ小僧を床に突いてしまうともう、彼の思うままでした。
うつ伏せに横たわる妻の足許に這い寄って、ふくらはぎを、太ももを、足首を、あちこち咬んで血を吸い取っていったのです。
妻がみすみす、ストッキングをブチブチと破られながら吸血されてゆくのを、わたしはありありと記憶しています。
ひつぎの中でもわたしには意識が残っていて、
妻が彼の恋人にされてゆくいちぶしじゅうを、見届ける羽目になりました。
けれども、妻が第二の結婚を遂げるのを見届けることができたのは、いまでは得難い経験だったと感じています。

全身の血を漁り取られたわたしのために、妻は夫を生き返らせてほしいと、新しい愛人に願いました。
犯されてほかの男のモノにされてしまった後も、妻はわたしのことを愛してくれていたのです。
――ご主人が生き返ったら、ご自分の愛妻が吸血鬼相手にむざむざとむさぼられてゆく日常を見せつけられる羽目になるのだが。
彼は妻にそう警告しました。
けれども妻は、いいました。
――私を守ることのできなかった主人に、見せつけてやりたいんです。
妻は、わたしのすべてを心得ていたと感じています。

ふたたび血液を注入されて生き返ることのできたわたしは、彼の申込を受け容れて、妻を彼の愛人として提供することに同意しました。
毎日のように逢いに来て、三日に一度は妻の生き血を吸って、愉しんでゆくのです。
彼は自分が妻に逢いたいと感じたときにやって来るので、わたしの在宅中でも構わずに、我が物顔で妻に接するのです。
そういうときにわたしは、隣室から様子を窺うばかり。
立ち去ることも許されず、妻がわたしの目を気にしぃしぃ抱かれてゆくのを、強制的に見せつけられるのです。
けれども――自分の愛妻がヒロインのポルノビデオを目にすることのできる夫は、まれだと思います。
わたしは、彼が妻を愛し抜いていくことに、感謝の気持ちを感じています。

夫婦ながら奴隷になったわたしたちは、もっと血が欲しいとせがむ彼のため、姉夫婦を招ぶことにしました。
そして、密かにこの街を訪れた姉夫婦もまた、都会の生活を放棄することになるのです。
さきに義兄が生き血を吸われ、それから姉が襲われました。
義兄は薄れゆく意識と戦いながら、迷惑だ・・・迷惑だ・・・と、呟きつづけていました。

義兄と姉の弔いに、両親を招ぶことにしました。
喪服姿でかけつけた母に、彼はぞっこんになりました。
そして驚くべきことに、父に向って母への気持ちを告白し、交際を希望していると告げたのです。
いちぶしじゅうを聞かされた父は、立派でした。
娘も息子も血を吸われ、その血が気に入ったというのなら、きっと家内の血もお気に召すことだろう。
永年連れ添った妻を売り渡す気にはなれないが、きみとの交際を勧めてみよう――と応えたのです。

さいしょのうち母は、息子と娘を牙にかけた吸血鬼など、仇敵ではありませんか・・・と、父の言を肯んじなかったそうです。
けれどもすべてを支配されてしまったことは認めざるを得ず、
くり返される娘の不倫を娘婿に償わなければならないこと、
くり返される嫁の不倫を認めて、わが身で手本を示さなければならないことを自覚して、
自ら夫のために数十年秘めつづけてきた素肌を、忌むべき吸血鬼の毒牙にさらすことを決意したのです。
父が望むなら――と、さいしょは嫌々咬まれていった母でしたが・・・
ひと晩で、堕ちてしまいました。
女の操というのは、あっけないものです。
いえ、たとえ夫のいる身でも、ほかの男に捧げた操は、もうその男のものなのでしょう。
わたしは、女3人が彼の気に入ったことに、満足を感じています。
そのうち2人は血のつながった母や姉であり、もう1人は他ならぬ最愛の妻だからです。

不治の病にかかっていて、余命いくばくもないと宣告されていた父は、自ら望んで吸血鬼に首すじをゆだね、
血液を全部吸い取らせていきました。
けれども彼は、わたしが尊敬している父を、母が愛している夫を、死なせることを好みませんでした。
――きみも息子や婿どうよう、最愛の妻が辱め抜かれるのを愉しむ余生を送るがよい。
重々しくそう告げた吸血鬼の宣告に、父は神妙に聞き入っていました。
そして母のことをふり返ると、淡々と言ったのです。
「今夜からは、喪服の下に彼のお好きな網タイツを穿いておやり」
それ以来――3人の未亡人は、喪服の下に網タイツを穿くようになったのです。

かっちりとした礼装の下、網タイツに毒々しく染められた脚を連ねて、
未亡人たちは吸血鬼の邸を訪れます。
吸血鬼の正体を受けた夫たちは、自分の妻を清楚に装わせて帯同し、すすんでその欲情にゆだねるのです。
吸血鬼は彼一人のときもあれば、3人の女のために3人で待ち受けていることもありました。
いずれも彼の気の置けない仲間たちで、自分の愛するものを躊躇なく委ねることのできる間柄のようでした。
大理石の大広間のうえ、喪服を着崩れさせながら悶え始める女たち――
自宅の畳の上で悶えるその姿とはまたひと味ちがった趣があるのです。

かりに事業が成功していたら、借金が無かったら、この街を訪れることはなかったことでしょう。
けれどもわたしは、この街を訪れたことを後悔していません。
父も、義兄も、きっとそう思っていることでしょう。
もっとも義兄は、さいしょに襲われたあの夜以来、妻を襲われるたびに「迷惑だ、迷惑だ」とくり返していますが・・・

いかがですか?貴男もこの街にいらっしゃいませんか?
なにも知らない奥様を連れて・・・
貴男が奥様ともどもたどられる淪落の通が、貴男にとってもっともふさわしいと、強く感じるこのごろです。

夏休みの自由研究

2018年02月11日(Sun) 06:42:10

ぼくたちは、青木先生からもらったヒントをもとに約一か月、吸血鬼に関する自由研究に取り組みました。
メンバーはAくん、Bくん、それにぼくCの3名です。
ぼくたちはまず、街に棲みついているという吸血鬼と接触を図るために、濃紺の半ズボンお制服を着用して夜の街を歩きました。

(Aくん)娼婦になったみたいな気分になって、ちょっとドキドキしました。(笑)

その晩襲われたのは、ぼくとAくんでした。
Bくんだけは、ハイソックスを履いていませんでした。
それで、次はBくんもハイソックスを履いてみたところ、ぼくたちを襲ったのとは別の吸血鬼が洗われて、脚を咬まれて血を吸われました。

(Bくん)あくまで実験だったので、条件を変えてみたのです。AくんとCくんが吸われた時点で、ぼくだけが無事でした。もしかしてぼくだけ真人間で帰れるかも・・・って正直思いましたが、ぼくだけ仲間外れになっちゃうのがやはり怖くて、すぐに血をあげました。数人でいるところを吸血鬼に襲われた場合全員咬まれてしまうというのは、そういう仲間意識が影響しているかもしれないと、あとで3人で話し合いました。

こうしてぼくたちは3名とも、さいしょの夜に吸血体験を遂げたのです。
3名全員が咬まれてしまうと、彼らは獲物を取り替え合って、ぼくたちの血を吸いました。
あとで吸血鬼の人たちに直接ヒアリングしたところ、血の味には個体差があるので、もっとも好ましい血を択ぶための作業だということでした。
でも、その後も彼らは分け隔てなくぼくたちを取り替え合って血を吸っていたので、嗜好にかかわりなく血液の摂取は行われることがわかりました。
全員が均等に吸血を受けるもうひとつの理由としては、血液の喪失量を同じにするためで、1人に負担が片寄らないための生活の知恵ではないかという意見が出ました。

でもそういう状態はさいしょの一週間だけでした。
初めのうち彼らがぼくたちを均等に分け合っていたのは、喉がカラカラの状態だったからでした。
ある程度飢えを満たされると、彼らはそれぞれにパートナーを決め合いました。
それはぼくたちの意思とは関係のないところで決められていて、
いつの間にかそれぞれの男子のところには決まって同じ人が来るようになりました。


次にぼくたちは、彼らに女子の血を吸わせてみることにしました。
実験に協力してくれたのは、Aくんの彼女のαさんと、ぼくの彼女のγさんでした。
Bくんにはまだ彼女がいないので、βさんを誘って自由研究の仲間になってもらいました。
彼らと相談したところ、ぼくたちみたいに3人同時にではなく、思い思いに襲いたいということでした。
あくまで実験なので、襲うときには事前にぼくたちに連絡をするようにお願いをしました。
彼らもぼくたちの自由研究には協力的で、αさんたちを襲うときには必ず教えると約束してくれました。
さいしょに咬まれたのは、γさんでした。
彼女は学年が三つ下で、女子たちのなかでは最年少でした。
襲った吸血鬼は、おもにCくんの血を吸っていた男でした。
彼がぼくをパートナーに選んだとき、すでにぼくがγさんと付き合っていることを知っていたそうです。
さいしょからγさんを目あてに、ぼくを選んだことになります。
γさんを襲った吸血鬼は、仲間の吸血鬼から、「こいつ、ロリコンなんだよ」って笑われていましたが、彼は苦笑いするだけで怒ることはありませんでした。
3人の間柄は、ぼくたちと同じように、円満だったのです。
彼がγさんを狙ったのは、彼自身が吸血鬼に家族ともども血を吸われたとき、娘さんがいまのγさんと同じ年頃だったことを聞かされました。

γさんが襲われた直後ぼくが介抱をしている間、彼女の感想を聞くと、「さいしょは怖かったけど、血を吸い取られていくうちにぼーっとなって、しまいには夢中になってしまった」ということでした。
異性のパートナーのいる女子の場合、パートナーに対する軽い罪悪感が芽生えることもわかりました。
次の日に襲われたAくんの彼女のαさんの場合も、ほとんど同じ感想を得ることができました。
罪悪感を持った理由は、「血を吸われているときに、キスしているときみたいな昂奮を感じてしまったから」であることを、二人の女子から聞き出すことができました。
(「お前ら、もうそこまでイッているんだな」との野次が、しきりにあがる)
興味深いのは、彼女ではないβさんも、Bくんに対して同じような感情を抱いたということです。
状況を遠くから観察していたBくんは、公園の草むらでβさんが血を吸われながら、「Bくん、ゴメン」と口走るのを聞いています。
βさんを介抱している最中にBくんがそのことについてβさんに訊くと、
さいしょのうち彼女は自分の発言を思い出せなかったようですが、やがて記憶が回復すると、
「なんとなくBくんに悪いような気がした」ということでした。
女子たちには全員ハイソックスを着用してもらいましたが、男子のときと同じように両脚とも咬まれていました。
女子たちの履いていた真っ白なハイソックスが血でべっとり濡れているのを見て、なぜかぼくたちもドキドキしてしまったのを憶えています。

興味深いのは、それまでつき合っていなかったBくんとβさんが、自由研究の期間中からつき合い始めたことです。
βさんはメンバーに加わった最初から、「Bくんのために自分の血をだれかにあげている」という意識を持っていました。
一方Bくんのほうは、さいしょはβさんに特別な感情は特になかったそうですが、
βさんが初めて咬まれるのを見て昂奮を感じてしまったそうです。
「責任取らなきゃっていうマイナスな感覚よりも、もっと彼女が咬まれるところを見たいという恥ずかしい感情のほうが大きかった」そうですが、βさんはそういうBくんの感情にも寛大で、お互いの気持ちを打ち明け合うことで、距離が縮まったと話しています。


さいごの実験は、1人の吸血鬼がひとつの家族を征服するのにどれくらいの時間がかかるか?というものです。
Aくんの家の家族構成は、Aくんとお父さん・お母さん・妹さんの4人家族。
Bくんの家は、両親のほか、離れに独立したお兄さんが半年前に結婚したお嫁さんと同居していて、さらに隣には叔父夫婦と従妹が住んでいます。
ぼくの家は両親と、近所に叔母夫婦が住んでいます。ちなみにγさんは叔母夫婦の娘です。
このように、それぞれの家族の人数は、Aくんが本人を含めずに3人、Bくんが同じく2人、近所の親類まで含めると7人、ぼくのところが2人もしくは4人です。

それぞれの家庭で頭数は違ったのですが、家族全員が吸血されるのに要した期間は、ほとんど同じでした。
従って、1人あたりの襲われた回数はAくんのところがもっとも頻度が高く、Bくんのところが低いという結果になりました。
いちど咬まれてしまうと気持ちの上でほぼ征服されてしまうことが経験上分かっているので、家族全員を支配下に置くにはそれでじゅうぶんだということが、両親の行動をみてもわかりました。

セックス経験のある女性が襲われた場合、性的関係を結ぶと言われていますが、この点の確認は取れませんでした。
親たちがいちように口を閉ざして、教えてくれなかったためです。
でもそれは、学校の課題よりは重要度の濃い話題であることだけは、確認することができたように思います。
3人の家庭を侵食している吸血鬼と父親たちとの関係性は必ずしも悪くなく、Aくんのお父さんは吸血鬼をゴルフに誘っています。父親が吸血鬼を伴って帰宅した際、履いて行ったロングホース(長靴下)に赤いシミが付着しているのを、Aくん自身が確認しています。
Bくんのお父さんも、自宅に居ついてしまった吸血鬼とBくんのお母さんとの交際には寛大で、2人でドライブに出かけたり、ホテルで待ち合わせをして2人きりで献血を行なうことにも、不機嫌になった様子はないということです。
ぼくの家でも吸血鬼が母とひとつ部屋で2人きりでいるときには、
「2人のじゃまをしないで、親子で将棋を指す」ことが習慣になっています。

A家、B家、C家のどの家庭でも、両親は吸血鬼の侵蝕を受ける以前よりも仲良くなったように感じられ、父子の関係も円満な形で経過しています。
状況証拠としては、日常的に吸血を体験している家庭の主婦は、吸血鬼と恋愛関係になっている可能性が大であると推測していますが、お互いの母親の名誉に関する部分でもあり、深く踏み込むことができなかったというのが今回の実験結果です。
吸血鬼が人妻とどんな関係を結んでいるかについての解明は、今後の課題です。
ぼくたちにとっても、自分や彼女の血を吸った吸血鬼によって、母親の貞操がどんな扱いを知るのはたいせつなことだと思うので、今後も観察を継続していくことで3人の意見が一致しました。
これで発表を終わります。



その晩生徒A・B・C3名の担任の教師(男性、43歳)が自宅でまとめたレポートの一部――


吸血鬼による家庭侵蝕の実態を探るため、良家の子弟であり身許の信頼できる生徒3名を抽出、吸血鬼に関する研究を夏休みの課題とするアドバイスを与えることに成功した。

彼らとその家族を被験者として実験を開始して1か月が経過し、このほど彼らの手による研究成果がクラスで発表された。
結果、生徒3名の家族を含む全員が吸血行為を体験するに至ったが、死亡した例は皆無である。
3名の吸血鬼はそれぞれの被験者の自宅に棲みついて、家族全員を対象に血液を日常的に摂取するようになった。
被験者の自宅に棲みついた時点で、彼らの吸血対象はほぼ固定化したと考えられる。

しかし、例外は非常にしばしば発生している。
その1は、生徒Aと交際しているαが塾からの帰り道に生徒Cと同居している吸血鬼(丙)に襲われたケース、
その2は生徒Bと同性愛関係に至った吸血鬼(乙)が、吸血鬼(甲)と共謀して、甲が自分の棲みついている生徒Aの自宅からその母親を誘い出し、街はずれの公園で輪姦に及んだケースである。
彼らの間では独占欲といったものはあまり存在せず、むしろ楽しみを共有することに意義を見出しているという印象を受ける。
もともとは彼らも人間であり、自分たちを襲った吸血鬼に妻を与えた経験もあり、そうした過去から仲間との強い共有意識が醸成されているのかもしれない。

3家庭及びその近在に住居する叔父・叔母夫婦や兄夫婦もまた、家族ぐるみで吸血の対象とされ、献血に応じている。
生徒Bの自宅近くに居住する叔父夫婦には娘がいる。
当初のうち両親は娘を吸血鬼にゆだねることに拒否反応を示していたが、
やがて母親のほうから「早めに体験させたい」という意思を持つようになり、
最終的には夫婦で相談をしたうえで娘の初体験の相手を選んでいる。
両親が自分の意思で選んだ相手は、生徒Aの血を吸っている吸血鬼であった。
最も縁の深い生徒Bのパートナーを択ばなかったのは、彼が生徒Bが実験を通して得た恋人の血を日常的に摂取していることと関係があるようだ。
3人の生徒が選んだ女子のパートナーもいずれも、自分の意思で相手を選んではおらず、男子の指示に従って吸血鬼との関係を結んでいる。
未婚の女子については、本人の意思よりも周りの意思によって吸血相手が選ばれる傾向が感じられる。

各々の家庭を構成する主婦たちは全員、最初に咬まれた段階で貞操を喪失し、
なおかつ1か月以内に3人の吸血鬼すべてと性的関係を結んでいることが確認されている。
夫たちが不平を鳴らさないのは、吸血鬼が彼らと主婦たちとの結婚生活を維持したまま自らの欲望を遂げ続けているためと推察される。
夫婦間も吸血鬼との距離感も円満裡に経過しているのは、従来よりも濃厚な夫婦生活に満足を感じた夫たちが、妻たちの不倫行為についてとやかくいわないことを決め、見て見ぬふりを決め込んでいるためであると思われる。

これらのレポートをまとめるにあたり、妻・華恵の献身的協力に謝意を示すことを許されたい。
生徒たちがさぐり得なかった夫婦の事情を本人たちから聞き出すことに成功したのは、ひとえに彼女の功績である。
生徒及びその家族を被験者として抽出する以前に、わたしは吸血鬼に妻を紹介し血液の摂取を許した。
そうすることで研究成果の実が深まると確信していたためである。
妻は当初、常識的な日常を送る健全な女性としての羞恥心から、吸血鬼と関係を取り結ぶことに躊躇していたが、
わたしが自宅に3人を連れてくると、「私はどうなってもあなたの妻です」と言って、求められるままに首すじをゆだね、
その晩のうちに3人の吸血鬼全員と交合を遂げた。
いまでも彼女はわたしの最愛の妻であり、吸血鬼の欲求の良きはけ口として振る舞いつづけている。
今後の研究に彼女の協力は不可欠であるし、妻を汚された経験を持つ夫として、同様の運命をたどる人妻を1人でも多く増やしたいと熱望しているところである。


あとがき
生徒たちが自分自身を始め、彼女や家族まで巻き込んで行う吸血鬼研究。
それがじつは教師の陰謀であったというオチでまとめてみました。

淫らな関係を客観的で乾いた文体で表現すると、不思議な妖しさを帯びるように感じます。

乱倫な家庭。

2017年09月25日(Mon) 07:43:42

妻の美緒が着ている薄紫のスーツを身にまとい、
毒々しい光沢のよぎる黒のガーターストッキングを脚に通して、
あお向けに横たわるたたみの上、
息せき切ってのしかかってくるのは、息子のタツヤ――
太く逞しく育った茎が、志郎の臀部を犯し、さっきから熱いほとびをはじき散らしていた。

激しく交し合う息遣いだけの無言のやり取りに、
いまはなんの不自然さも感じない。
ふたりの意識は、抱き合っている相手と等分に、ふすまの向こうにも注がれていた。
妻の生き血を求め続ける吸血鬼のために、身代わりに妻の服で女装して、
生き血を吸い取られたうえに、男の身でありながら淫らな欲求にも応じていって、
けれども隣室では、息子が吸血鬼にそそのかされるまま、妻のうえにおおいかぶさっていって、
不覚にも妻は、声をあげながら応じてしまっていた。
ひとしきり行為をおえると、男ふたりは相手を取り替え合って、
妻のうえには、吸血鬼が。志郎のうえには、タツヤが。
相手選ばず息荒く、身体を重ねて迫ってきた。

犯す悦びと犯される歓び――
いま息子の胸を染めているのがその両方なのだと、気づかずにはいられない。
いっぽうで自分の胸を染めているのは、
妻を犯される歓びと、自身が犯される悦び――
息子が女装していたこのあいだとは立場が逆の行為に、
昂ぶりにむせ返りながら耽ってしまっていた。

ちょっとのスキを突かれて首すじを咬まれ、生き血を吸い取られて、
息子、妻、夫の順に狂わされて、
お互いうかつな家族だったとため息をつき合いながらも、
しかたがないね、せっかくのご縁だから大切にしようねと、
夜な夜な訪問をくり返す吸血鬼のため、それまでの枠組みを突き抜けた交わりを遂げ合うようになっていた。

父さんがだらしないから、母さんが犯されちゃうんだ。
父さんがうかつだから、ボクまで母さんとできちゃったんだ。
ふたりしておかしいから、こんなふうになるんだね――
そう囁きながら責め言葉でイカせつづけたタツヤが、唇を重ねてくるのに応じてやると、
どこで覚え込まされたのか舌まで入れてきて、からみあわせて応えてゆく。

たしかにうかつな一家にちがいなかった。
男女どちらにも長けてしまったタツヤは数年後、良家の子女である珠美と結婚した。
珠美の処女を獲る代わりに、タツヤは吸血鬼と姑との仲を取り持つことになる。
人妻好きな吸血鬼が、タツヤの嫁とその母とを餌食にするのは明白だったから、
タツヤは美母娘を堕落させる行為に、すすんで協力したのだ。
すべてが仕組まれた結納の席――
珠美の母親は結納の引き出物がわりに、夫の前で貞操を侵奪される。
前もって首すじに咬み痕をつけられた珠美の父親は吸血鬼の求愛をこころよく許して、
永年連れ添った妻との交際を
夫を愛している。だから離婚はしない。
夫がいる身のまま、愛していただけるのなら――と、珠美の母親はもっとも賢明な選択をして、娘に模範を示していた。


独りの部屋のインターホンが、明るくはずんだ音色で鳴った。
美緒が吸血鬼の邸に入り浸っているあいだ。
だれかしらが、志郎を慰めることになっていた。
あるときは、息子の嫁が。あるときは、その母親が。
妻を寝取らせた夫が独り身で暮らす家をひっそりと訪れて、夜通しの奉仕をつづけてゆく。
開いたドアの向こうに佇むのは――
妻の服で装った、タツヤだった。
「今夜は屋敷をハレムにするんだって。
お義父さんはお義母さんのことが気になる~って出かけていったけど、
じゃあ父さんを慰めるのはボクの役目だねっていって、
美緒と珠美にオーケーもらって来たんだ」
愛人にしてしまった美緒のことを「母さん」と呼ばず、呼び捨てにするのに、志郎はどきりとしたけれど。
ドアを閉めるなりタツヤの唇を自分のそれで密封するようにして、息苦しいほど熱い口づけを交し合うと、
まるで妻が帰宅したかのように夫婦の寝室に引きずり込んで、
しなやかな若い肢体ともつれあうようにして、ベッド・インしていった。
歪んだ家族が性愛に耽る夜は、今夜も長く深い――


あとがき
後日談まで入れたところで、本シリーズはいちおうの「はっぴぃ・えんど」でしょうか。
当ブログでも最も乱れた部類のお話になってしまいましたが、どういうわけか筆が進みました。
たまには、はっちゃけたお話を描きたくなるモノですナ。
(^^ゞ

靴下交換  ~第二夜~

2017年09月24日(Sun) 09:16:26

貴男のいつも勤め先に履いて行くハイソックス、履き心地がちょっといやらしい。
女のひとが履いても、見映えがしそうね。
妻の美緒がそういいながら、自分の愛用しているストッキング地のビジネスソックスをまとった脚を見おろしている。
妻が吸血鬼の相手をする前に、志郎はあらかじめすっかり血を抜かれて、部屋の隅に転がされていた。
薄ぼんやりとした視界の目の前に、ペルシャじゅうたんの幾何学模様が迫っている。
さいしょのころは、二日酔いのような不快さがあったものが、
いまではこの無重力状態がもたらす陶酔感が、たまらなくなっていた。
きっと自分が倒れてしまった後、目の前で妻と息子が支配を受けて、
唯々諾々と振る舞って志郎のことを裏切ってゆく光景に、歓びを覚えてしまって、
その歓びが失血に伴う無重力状態と二重写しになっているからなのだろう。

志郎が履いているのは、息子が初めて咬まれたときに履いていたのと同じ、真っ白なハイソックス。
先週は妻の美緒がまとい、高校時代の制服まで着込んで、犯されながらくねる脚を眩しく彩っていた。
その光景が網膜に灼(や)きついてしまった志郎は、「こんどはぼくの番だね」と妻にいい、
妻もまた「そうね。でもタツヤから借りるのは、自分でしてくださいね」と返してきた。
「タツヤのハイソックスを履いて、あのひとに会いたい」
父親としては口にするべきではないはずの振る舞いも、いまはすらすらとデキてしまう。
それがむしょうに、小気味よかった。
いままで彼のことを縛りつけてきたあらゆる束縛が断ち切られた開放感が、
彼の胸を少年のようにドキドキさせているのだった。
働き盛りの血潮は若返って、いっそう活き活きと彼の血管をかけめぐって、
淫らな鼓動をドクドクと脈打たせながら、妻の情夫の渇いた喉をうるおす機会を欲していた。

息子のタツヤが、青春の活力を生き血もろとも惜しげもなく自身の身体から抜き取らせてしまうのも、心から共感できた。
これは献血なのだ。決して堕落ではない。
志郎はそう自分に言い聞かせ、妻が奴隷のように犯され、吸血鬼の性欲のはけ口として貞操を汚されてゆくのを、歓びをもって受け入れるようになっていた。

あッ!やめてッ!
靴下破かれたら、通勤できなくなっちゃうわッ!
〇〇重役や××局長に叱られるぅ・・・
実在の夫の上司の名前まで口にしながら、半分夫になり切りながら、
足許を狙われた美緒は、夫の愛用の靴下を咬み剥がれてゆく――
片方はくしゃくしゃになって、くるぶしまでずり落ちて、
もう片方も吸われた痕跡を伝線も鮮やかに走らせながら、剥ぎ堕とされてゆく。
あらわになった脛は、淫らな血色を帯びてピンク色に輝いていた。

妻があっさりと股を割られて男の侵入を受け容れてしまうのを、
夫は息子と2人ながら見届ける羽目になった。
自分の靴下を履いたまま犯されてゆく妻――
先日男のためにビジネスソックスを脚に通して愉しませてやったその後の記憶が、志郎のなかで二重写しになっていた。
俺はこんなふうにして、男に犯されてしまったのだ――
妻のまえでくり広げてしまった異常な痴態が、まっとうだった家庭の枠組みを瞬時に変えてしまったのだけれど、
もう、後悔は感じていなかった。

息子はセックスを視るのが初めてだったらしく、自分の母親だった女の裸体を、舐めるような目線を這わせてゆく。
危険な予感が志郎の胸をよぎったが、このさい深く考えないことにした。
だって息子はいま、妻の黒の礼服を借りて女の姿になってしまっているのだから。

「どれでも好きな服を選んでいいのよ」
美緒は寛大にも、息子のまえで色とりどりの衣装で満たされたクローゼットを開け放って、
吸血鬼を迎えるときに着る服を選ばせていた。
真っ赤なワンピースやショッキングピンクのミニスカートはちょっと見ただけで、
意外にも息子が選んだのは、地味な黒の礼服だった。
伯父さんの法事にお寺に行ったとき、美緒が着ていたのが気になったのだという。
そして、ストッキングには、この種の衣装につきものの黒のストッキングを、
上ずった声でリクエストしていた。

犯され抜いた妻がその場にへたり込んで、伸びてしまうと、
男の魔手は、女の姿になったタツヤへと向けられた。
「ひっ」
タツヤは女のように声をあげ、飛びのこうとしたけれど、吸血鬼の猿臂を避けることはできなかった。
そのまま首すじを咬まれ、ひと重に巻かれた真珠のネックレスに若い血潮をしぶかせながら、
男のあくなき渇きを、自身の身体をめぐる血潮でうるおしていく。
その姿に、いつか吸血鬼と心理を同化させてしまった志郎は、
「息子が気の毒」というよりも、「やつは美味しそう」という思いで受け止めていた。
目のまえで妻を犯されることが照れくさく、誇らしいと感じてしまう志郎としては、きっとそれがもっとも自然な感情だったのだ。

ああーッ・・・
息子は悲痛なうめき声をあげてその場であおむけに倒れ、
黒のストッキングのふくらはぎに飢えた唇をくまなく当てられ、
ところどころ気まぐれに咬まれながら、ストッキングをチリチリに引きむしられてゆく。
女の衣装を身にまとい、男の欲情に奉仕する――
母さんの身代わりになりたい。
というタツヤの気持ちに嘘はないはず。
でもその裏返しに、
女になってあのひとに奉仕したい。
そんな想いも強くあることが、キスを交し合い手足を巻きつけ合って息をはずませ合うふたりをみて、いっそうひしひしと感じられた。

先週。
志郎が妻の服を着て吸血鬼と初めてのセックスを交わしたとき、
美緒はそのすぐ傍らで、乱れた制服姿で息子に組み敷かれ、制服のプリーツスカートのすそを、ふたたび乱していった。
美緒は息子のことを名前で呼び、息子も母親のことを美緒と呼んだ。
交し合う息遣い。
巻きつけ合う手足。
それらが新しい家族の関係を、志郎のまえに見せつけていたのだった。
きょうはどんな組み合わせが、待っているのだろう?
男どうしで交し合うすべは、先週たっぷりと教え込まれていた。
まだいちどしか冒されていない息子のお尻は、まだ瓜のように硬いのだろうか?
父親として持ってはならない危険な感情におののきながら、志郎もまた、罪深い欲望を抑えきれなくなっていった。


あとがき
かなり背徳的なお話になってしまいました。^^;
このお話、前作と同じ日に描き上げていたのですが、あっぷするのが時間切れになってしまいました。
今朝読み直して若干直したうえであっぷしました。

靴下交換

2017年09月20日(Wed) 07:56:34

はじめに
前々作「少年のハイソックス、お母さんのストッキング、ご主人のビジネスソックス・・・」のコメントで、
ナッシュ・ド・レーさんに、ソックス、ストッキングを交換して家族で吸われるストーリーを提案されました。
ちょっとドキドキしたので、発作的にあっぷしてみました。



父さんが通勤のときに履いている紺のハイソックス、
ふつうのおじさんが履いているやつよりずっと薄くて、ストッキングみたいなんだね。
脛が透けててちょっと恥ずかしいし、
肌触りがジワリと素肌にしみ込んで、ちょっといやらしい気分になりそう――

息子のタツヤが半ズボンの下、吸血鬼に見せびらかした足許には、
父親の志郎がいつも履いている、通勤用の薄手のハイソックス。
薄っすらとした光沢を帯びた薄手のナイロン生地が、
紳士用とは思えないくらいなまめかしく、少年のふくらはぎを妖しく染めている。

さぁ、咬んでよ。父さんにしているときみたいにさ。
しつこくいたぶっても、いいからね。
きょうは父さんの代わりに、イヤらしいハイソックスを履いて相手をしてあげる。
タツヤがそれらしく、ちょっとだけぎこちなく脚をくねらすと。
吸血鬼は目の色をかえて、若さを帯びたふくらはぎにとりついていった。
ククククククッ・・・
吸血鬼はたちまち少年の身体の自由を奪うと、みずみずしい下肢に辱めを加えてゆく。
薄手のナイロン生地のうえから、にゅるッとなすりつけられる恥知らずな唇が、
いつも以上にいやらしい。
物陰からいちぶしじゅうを窺っていた志郎は、
息子が吸血鬼を相手に娼婦のように振る舞って、
自分の愛用している靴下を凌辱させる様子に、不覚にも昂ぶりを抑えきれなくなっていた。


いつも息子が貴男に咬み破らせている白のハイソックス、
あたしもためしに、履いてみたの。
白なんて、学生のころに履いて以来だわ。
だから、古い制服を出して、着てみたの。
おばさんが女子学生のかっこをしても、はじまらないかしら?

大人の女性が女子高生の制服を着ると、
現役生とはちがった趣に、つい視線を惹きつけられる――
夫の志郎は、視られているとも知らずに吸血鬼との密会を遂げようとする妻の姿に嫉妬した。

なんだか不思議だなあ。少女のころに戻ったみたい。
妻の美緒は、自分でしかけた演出に自分で昂奮しながら、
モデルさんみたいにくるくると回って見せた。
美緒の動きに合わせて起ちあがった吸血鬼の猿臂が、まるでムチのように美緒の身体に巻きついて、
しっかりと羽交い絞めにして、抱きすくめてゆく。
あッ!制服汚れちゃうわっ。首すじ吸うのは止しにしてッ!
あたしまだ、お嫁入りまえなのよッ!!
美緒はすっかり少女になり切って、吸血鬼に襲われる乙女を演じつづける。
ククククククッ・・・
吸血鬼はにわか作りの人妻女子高生に露骨に発情して、
豊かな首すじに牙を突き立て、真っ白なブラウスにバラ色のしずくをほとばせ始めた。
ああ――ッ!
初めて襲われたとき、まだ正気だった妻は冥界に引きずり込まれるのを忌むようにして、おなじ悲鳴をあげたはずだが、
あざやかに朱を刷いた小づくりな唇から洩れるうめき声には、もっと甘美で淫らなものが混ざり込んでいた。

生き血を吸い取られて貧血を起こし、半ば意識を奪われて、じゅうたんの上に転がる――
いつもと同じ経緯で、美緒は堕ちてゆく。
うひひひひひっ。
恥知らずな唇が、白のハイソックスを履いた美緒のふくらはぎに吸いついて、
しなやかなナイロン生地に浮いたまっすぐなリブ編みをねじ曲げながら、
グニュグニュとうごめきつづける。
その唇の下、白一色の生地が赤黒いシミを拡げてゆくのに、ものの一分とかからなかったはず。
息子と妻と、ふたりながら同時に辱められる想いを、志郎は屈辱としてではなく、陶酔として受け止めはじめていた。

妻が完全に気絶してしまうと、こんどは志郎の番だった。
・・・済んだの・・・?
思わず女声になっているのは――彼自身がまとっている衣装のもつ魔力のせい。
いつも美緒がPTAのときに着ていくので見慣れている、深緑のスーツ。
首もとをふた重に取り巻く、真珠のネックレス。
淡い光沢を帯びた肌色のストッキングは、
「きっとあなたが気に入るだろうから」と、
美緒が特別に貸してくれた、それこそ結婚式のときにしか脚に通さないような華やいだもの。
そのストッキングの足許に、妻と息子の生き血に濡れた唇が、無作法に吸いつけられてゆくのを、
美緒になり切った志郎は、
「いや・・・っ・・・」
と、女になり切った声色で拒んだ。

無力な抵抗は相手の劣情を逆なでするものだと、
女になり切ることで芽ばえた本能が、初めて教えてくれた。
志郎は心の底の声に教えられるままに、
無器用に脚をくねらせて、妻の情夫が執拗に吸いつけてくる唇に、応えつづける。
さっき息子が、志郎の愛用のハイソックスを履いて、吸血鬼をもてなしたのと同じように。

女の衣装が似合うとか、似合わないとか、そんなことはもう、念頭になかった。
その身に寄り添ってくる女の衣装がもたらす奥ゆかしい支配力が、
彼の意思を麻痺させ、彼を女に変えてゆく。

おまえはもう、わしのものだ――男はいった。
ハイ、わたしはもう、あなたのもの。主人のことは裏切るだけ――女はいった。
それを物陰から、証人のように見届けながら、
妻が凌辱され征服されてゆく光景に、さいごまで見入っていた。
妻が奴隷に堕ちたときのシーンの再現なのだと自覚した志郎は、
あのときの美緒のように振る舞ってゆく。

おまえはもう、わしのものだ――男が囁いてくる。あのとき妻にそうしたように。
エエ、わたしはもう、あなたのもの。妻の裏切りが嬉しいです――女になった志郎は囁き返す。
ふとかたわらをみると、意識を取り戻した妻がじいっと、こちらを視ている。
まるで家族の淪落を見届ける証人のような目で。
志郎が頷くと、美緒も頷き返してくる。
視線を相手の男に移した志郎は、媚びを含んだ上目遣いで妻の情夫を見あげ、いった。
いっぱい、辱めてくださいね。
初めての密会のとき、妻は確かにそういったはず――
志郎の履いている光沢ストッキングは、太もも丈だった。
――パンストと違って、穿いたままできるのよ。
あのとき妻がいつかそういっていたのを、
パッケージを切っていないストッキングを手渡されるときに思い出した。
すその短めなスーツのすそがめくれあがって、あらわになった太ももを隠そうともせずに、
太ももの奥を帯のように区切るストッキングのゴムまであらわにして、
志郎は妻の情夫を自らの股間に受け容れた。

初めて体験する激しい吶喊に、さすがにしんけんなうめき声を洩らしながら、志郎は思った。
こんなに硬い、こんなに剛(つよ)いモノを刺し込まれたら、だれだって狂う・・・と。
夫のしんそこの堕落を証人のように見つめる妻の目線が、かえって小気味よかった。
きみが犯されるのを昂奮しながら視つづけたぼくのまなざしも、
きみはこんなふうに小気味よく受け止めていたのか・・・
しつようにくり返される交歓は、熱を帯び、男女の別を越えて、志郎を狂わせた。
すごい・・・すごい・・・凄いッ!
志郎は少女のように、妻と自分と(そしてたぶん息子も)を狂わせた一物に、いつか夢中で称賛を口にしていた。
恥かしいとも、悔しいとも、惨めだとも感じない。
むしろ妻が堕ちたことに共感し、
妻を辱められたことに誇りを覚え、
息子を教え込まれてしまったことにまで歓びと受け止めて、
家族ぐるみの奉仕を誓いつづけてしまうのだった。

少年のハイソックス、お母さんのストッキング、ご主人のビジネスソックス・・・

2017年09月15日(Fri) 06:22:42

あッ、何すんだよッ!?
尾上タツヤはあわてて身をすくめたが、
学校帰りの路上に立ちはだかった吸血鬼の欲望を抑えることはできなかった。
ああああああッ・・・
必死の叫び声もむなしく、タツヤはたちまち地面に抑えつけられて、首すじを咬まれてゆく。
ちゅうっ・・・ちゅうっ・・・ちゅうっ・・・
ひとをこばかにしたような吸血の音とともに、少年の体内をめぐる若い血液は
吸血鬼の渇いた喉をぞんぶんにうるおし、むさぼり取られる。
顔をあげた男の頬には、吸い取った血しおがテラテラと光った。
そして我が意を得たようににんまりとほくそ笑むと、
うつぶせに倒れた少年の足許ににじり寄って、
こんどはハイソックスを履いたふくらはぎに牙を埋め込んでいった。
タツヤの足許をぴっちりと引き締める真っ白なハイソックスのリブ編みの生地に、
赤黒いシミがじわじわと拡がっていった。

きみの血が気に入ったのだから、なん度も吸いたくなるのは当然だろう・・・?
吸血鬼の無茶苦茶な論法に、それでもタツヤは黙って頷き、
今後は彼に咬み破らせるために毎日ハイソックスを履いて登校すると約束した。
母さんにはくれぐれも、内緒だからね。
そんなふうに囁く少年の頬は、いつか淫靡な昂ぶりに輝きを帯びていた。

タツヤが毎日好んでハイソックスを脚に通して吸血鬼に逢いに行き、
発育のよいふくらはぎを惜しげもなくさらして、
真新しいハイソックスを気前よく咬み破らせるようになったのは、
それから数日経ってからのことだった。


あッ、何をなさるんですッ!?
タツヤの母、尾上美緒は怯えて縮みあがったが、
息子の手引きで自宅にあがり込んできた吸血鬼の欲望を抑えることはできなかった。
ああああああッ・・・
必死の叫び声もむなしく、美緒はたちまちたたみの上に抑えつけられて、首すじを咬まれてゆく。
ちゅうっ・・・ちゅうっ・・・ちゅうっ・・・
ひとをこばかにしたような吸血の音とともに、人妻の体内をめぐる熟れた血液は
吸血鬼の渇いた喉をぞんぶんにうるおし、むさぼり取られる。
顔をあげた男の頬には、吸い取った血しおがテラテラと光った。
そして我が意を得たようににんまりとほくそ笑むと、
うつぶせに倒れた主婦の足許ににじり寄って、
こんどはストッキングを履いたふくらはぎに牙を埋め込んでいった。
美緒の足許をなまめかしく染める肌色のストッキングの生地に、
妖しい裂け目がじわじわと拡がっていった。

息子さんの血が気に入ったのだから、お母さんの血が気になるのは当然だろう・・・?
吸血鬼の無茶苦茶な論法に、それでも美緒は黙って頷き、
今後は息子が彼に咬み破らせるためのハイソックスの買い置きをしておくと約束した。
あんたの穿くストッキングの買い置きのほうも、忘れずにな。
そんなことまで囁かれても、羞ずかしそうに俯き、頷くだけだった。
お父さんにはくれぐれも、内緒にしてくださいね。
そんなふうに囁く母親の頬は、いつか淫らな娼婦の輝きを帯びていた。

美緒が毎日好んでストッキングを脚に通して吸血鬼に逢いに行き、
肉づきたっぷりなふくらはぎを惜しげもなくさらして、
真新しいストッキングを気前よく咬み破らせるようになったのは、
それから数日経ってからのことだった。


うッ、何をするッ!?
美緒の夫、尾上志郎はうろたえて立ちすくんだが、
勤め帰りの自宅で妻の上におおいかぶさる吸血鬼の欲望を抑えることはできなかった。
ああああああッ・・・
随喜のうめき声をあげながら生き血を吸い取られてゆく、最愛の妻――
しかしそんな光景から志郎は目を離せなくなっていた。
恥を忘れた美緒が自分からスカートのすそを乱して、
吸血鬼の逞しい腰つきが股間に侵入するのを受け容れてしまうありさまを目の当たりにして、
マゾヒスティックな歓びに目ざめてしまったのだ。
ちゅうっ・・・ちゅうっ・・・ちゅうっ・・・
ひとをこばかにしたような吸血の音とともに、妻が生き血を吸い取られたあと。
志郎もまた、自分から組み敷かれていって、首すじを咬ませてしまっていた。
ちゅうっ・・・ちゅうっ・・・ちゅうっ・・・
ひとをこばかにしたような吸血の音とともに、働き盛りの四十代の血液が
吸血鬼の渇いた喉をぞんぶんにうるおし、むさぼり取られる。
顔をあげた男の頬には、吸い取った血しおがテラテラと光る。
そして我が意を得たようににんまりとほくそ笑むと、
スラックスのすそを自分から引きあげてゆく志郎の足許ににじり寄って、
こんどはハイソックスを履いたふくらはぎに牙を埋め込んでいった。
くるぶしの透けた薄地のナイロン生地に、エロチックな裂け目がじわじわと拡がっていった。

奥さんや息子の血が気に入ったのだから、あんたのことが気になるのは当然だろう・・・?
吸血鬼の無茶苦茶な論法に、それでも志郎は黙って頷き、
今後は彼に咬み破らせるために毎日長めのビジネスソックスを履くと約束した。
奥さんのストッキングや息子のハイソックス代、しっかり稼いでくれよ。
そんなことまで囁かれても、困ったように俯き、頷くだけだった。
妻と息子のことを、よろしくお願いしますね。
そんなふうに囁く父親の頬は、いつか少年のようなイタズラっぽい好奇心を、恥を忘れてあらわにしていた。

志郎が妻の不倫や息子の火遊びを愉しげに黙認して、
自身もストッキングのように薄いビジネスソックスに包んだふくらはぎを差し伸べて、
潔く吸血鬼の凌辱にゆだねるようになったのは、
それから数日経ってからのことだった。

吸血鬼の支配を許し受け容れた父、母、息子の血潮は吸血鬼の体内で入り混じって渦を巻き、
欲情に満ちた彼の牙を今夜も淫靡に染めるのだった。



あとがき
少年が、人妻が、その夫までもが。
三人三様に、そしてまったく同じような経緯で餌食になってゆく――
そんなお話を、ちょっと童話調に描いてみたくなりました。

息子と2人して夫に内緒で血を吸わせる妻の行為は、
どことなく不倫や母子相姦を連想させますし、
妻子の生き血を吸い取られるのを許したうえで自身の生き血まで提供してしまう夫の行為は、
どことなく同性愛の要素をはらんでいるような気がしています。

母さんから

2017年05月12日(Fri) 07:59:45

ヨシくんへ

父さんから聞いたかもしれないけれど、母さんは父さん以外の男のひととお付き合いをすることになりました。
相手は、いつもヨシくんの血を吸っている吸血鬼の小父さんです。
ヨシくんの血を気に入ってくれて、よく血を吸わせてあげているんだよね。
このごろ毎日のようにハイソックスを汚して帰って来るから、変だなって思っていたの。
でも、理由がよくわかったから、母さん怒らないからね。

今度スーパーに行って、ヨシくんが小父さんのために履いてあげるハイソックスを、買いだめしておくわ。
ついでに母さんのストッキングも、買いだめしなくちゃいけないし。
ハイソックスを履いたヨシくんの脚を咬むのと同じくらい、
小父さんはストッキングを穿いた母さんの脚を咬むのが好きになっちゃったみたい。

ヨシくんが貧血になっちゃといけないって、父さんと2人で心配していたの。
でも小父さんと逢って、よくわかったわ。
小父さはヨシくんのことを想いやってくれていて、やっぱり心配していたんだって。
だから、父さんと母さんは、小父さんに献血するって約束したの。
でも母さん女だし、やっぱり怖いなって思っていたら、父さんが勇気を出して、さきにお手本を見せてくれたわ。
やっぱり父さん、えらいよね。
それから母さんも咬まれました。
吸血鬼は女の人を咬むとき、エッチなことをするの。
でも小父さんは、母さんのことを本気で好きになっちゃったみたい。
だから、母さんもあまり嫌な思いをしないで、相手をしてあげることができました。

ほんとを言うと、母さんも小父さんのことが、ちょっと好きになりました。
父さん以外の男の人を好きになっちゃうのは、ルール違反なんだけど。
父さんも小父さんと仲良くなったから、あの人とならいいよって、許してくれました。
お父さんに感謝♪

ですからこれからはときどき、おめかしをして小父さんのところに遊びに行ったり、デートしたりします。
父さんも母さんも小父さんに協力するから、
これからはヨシくんも、貧血にならなくて済むからね。
あと、どんなに楽しくても、2日に1回以上小父さん2逢ってはいけませんからね。
どうしても小父さんに逢いたくなったら、母さんもいっしょに行ってあげる。
そういうときには、ヨシくんが先に吸われていいからね。
母さんの番になったら、気絶しているふりをするのよ。
そのほうが男の人にとっては名誉を守れるからね。
(男の人は本当は、自分のお母さんや奥さんを守らなければいけないから!)
ちなみにきょうの場合、
母さんがエッチなことをされているときには、父さんも気絶した振りをしていました。 (笑)

そういうわけで、明日父さんとヨシくんがお勤めや学校に出かけた後、さっそく小父さんを家に呼んであげることにしました。
小父さんとの関係を、あんまり冷やかしたりしないでね。
あと、傷ついたりもしないでね。
学校でも、お友だちに自分から話しちゃダメよ。
父さんと2人で、母さんの2度目の青春・2度目の恋を、暖かく見守ってくださいね。

父さんから

2017年05月12日(Fri) 07:44:35

ヨシ坊へ

父さんと母さんはきのう、吸血鬼に血を吸わせてあげたんだ。
相手は、いつもヨシ坊の血を吸ってくれている小父さんだよ。
ヨシ坊の血を気に入ったからこれからも末永くお付き合いしたいって、ご挨拶に見えられたんだよ。
ヨシ坊のときもいつもそうだと言ってたけれど、仲良くお話をしながら2人で咬まれました。

さいしょに父さんが咬まれたんだよ。
母さんはちょっと怖がっていたから、お手本をみせてあげようと思ったからね。
ちょっとめまいがしたけれど、気持ちよくゴクゴクと飲んでもらったよ。
そのあと母さんのことを咬んだんだ。
さいしょのうちは母さんもちょっと顔をしかめていたけれど、すぐに仲良くなったからね。
ヨシ坊が父さんと母さんにナイショで咬んでもらったことも、もう叱られることはないからね。

それから、だいじなことなんだけど。
吸血鬼の小父さんは、女の人を咬んじゃうとき、エッチなことをするんだ。
でもね、母さんの相手をした小父さんは、女の人をあやすのがとっても上手で、母さんもすぐに打ち解けていたよ。
それで母さんも小父さんのことが気に入って、これからもお付き合いをしたいって言ったんだ。
嬉しいことに、小父さんも母さんのことが気に入って、時々でいいから片目をつぶってほしいってお願いされたんだ。
父さんはこころよく、OKしたからね。

本当は、男の人にとって、自分のお嫁さんが他の男の人と付き合うのって、あまり名誉なことじゃないんだ。
でも、小父さんが母さんのことをおもちゃにしたわけじゃなくって、本気で好きになっちゃったって、父さんにはすぐにわかったから、
ヨシ坊や父さんとの時間を、母さんも小父さんも大切にするって2人とも約束してくれたから、安心していいからね。
きっと小父さんも母さんも、約束を守ると思うよ。夫婦だから、よくわかるんだ。


だから母さんがおめかしをして小父さんのところに出かけていく時に、さわいだり冷やかしたりしては、いけないよ。
2人で母さんの恋を、しっかり見守ってあげようね。

夜想曲 ~勤め帰りの夫と吸血鬼の対話~

2017年03月21日(Tue) 01:31:55

だんな:ただいまぁ・・・おや、家のなかが真っ暗だ。
吸血鬼:お帰りなさい。^^
だんな:なんだ、あんた来てたのか。食事は済んだの?
吸血鬼:ああ、奥さんからたっぷりと、頂戴した。

よく見ると吸血鬼の口許からは、吸い取ったばかりの妻の血がしたたり落ちている。
その足許には、手足を不自然にくねらせ、あお向けに倒れた妻。白目を剥いて気絶している。
大の字になった脚は、ストッキングを片方脱がされている。
片脚だけ残ったストッキングは吸血鬼の咬み痕を太ももに残し派手に裂け、
乱れたスカートのすそは、白く濁った半透明の粘液で、しとどに濡れている。

だんな:やれ、やれ。ずいぶんとハデにやりなさったね。
吸血鬼:ああ、景気よく暴れてくれたからね。ご馳走さん。
だんな:ところで娘は、まだ帰ってきていないようだね。
吸血鬼:留守電に、終電になるって入っていたよ。
だんな:だとするともうすぐか・・・こんな有様を見せたくないな。
吸血鬼:わしに任せなさい。(意味ありげににんまりと笑う)
だんな:「まかせなさい」じゃなくて、「咬ませなさい」の間違いだろう?(露骨に嫌な顔をする)
吸血鬼:何でもよいから、あと始末を早くね。
だんな:娘は女子大に行く時、ピンクのスーツだったよ。あんたの好きなグレーのストッキング穿いてな。
吸血鬼:う、ふ、ふ。そいつは愉しみ。^^
だんな:さっさと出ていけ。おとといお出で。
吸血鬼:おお怖。お嬢さんのほうは、ブラウスが汚れないよう手際よく咬んでやるからな。
だんな:娘のほうは、よろしくね。気絶したら介抱して。ちゃんと身体を洗って、、寝かしつけてくださいよ。
吸血鬼:お互いに・・・ね♪

吸血鬼の棲む街☆コミュニティ情報 ~「ぼくたちは、彼らのロマンスの受け皿なんです。」吸血鬼と交渉を持つ少女を花嫁に迎える夫たち

2017年03月21日(Tue) 00:53:19

成村ちさよさん(29、仮名)は、中学二年のときに吸血鬼との初体験をして以来、十数年にわたって交際をつづけた。
処女を捧げたのは高校の卒業式前夜、「卒業祝い」と称してセーラー服のまま抱かれたという。
以来十年以上の関係になる吸血鬼とは、一生を誓い合った関係だったが、彼はほかの女性からの採血行為もしており、すれ違いが続くのも事実。
やはり結婚相手は人間から選ぶとお互いに決めて、白羽の矢が立ったのが、高瀬元晴さん(27、仮名)だった。
おくての元晴さんは、新婚当時から花嫁が処女ではなかったことに気づかなかったという。
不審を感じたのは、ちさよさんの勤め帰りがいつも遅いことと、朝の出勤の時とストッキングの色が違うときが多いことだった。
「よく破けちゃうのよ」と笑って打ち消したちさよさんだったが、やがて勤め帰りの公園で彼氏と逢引きを重ねているところを夫に目撃されてしまう。
「びっくりしましたね。街灯がこうこうと照っている真下なのに、男にのしかかられた妻がスーツのすそを乱して脚を開いているんですから。でも、その場で事を荒立てることができなくて、妻には声をかけずにその場を立ち去りました」
ちさよさんが帰宅したのは、それから1時間も後のことだったという。
「その1時間、どんなことをしていたのか?って、想像が頭のなかをかけめぐってしまいましてね」
その夜の夫婦の営みは、別人のように長かったんです――元晴さんは恥ずかしそうに苦笑しつつそう告白する。
「さすがにびっくりしました。でも、裏切られたという思いは、意外なくらいありませんでした」と語る元晴さん。
じつはちさよさんの処女を勝ち得た吸血鬼は元晴さんが兄と慕う男性だったからだという。
「兄貴にとってもちさよは大切な人、そのちさよの夫が私で良いのか?って逆に感じてしまいましたね。それで、二人きりで逢ったんです」
そこで「兄貴」は初めて元晴さんの血も吸い、二人の関係は「とても親密になった」という。

嫁の「乱行」をもっとも糺すべき立場にあるはずの元晴さんの母親もまた、吸血鬼を恋人に持つ人妻の一人。
「父も、母が愛人の吸血鬼とデートに出かけるのを、おだやかに送り出しています」という元晴さんは、「そういう家庭環境は、妻と兄貴との関係を受け容れる素地になった」という。
少女の純潔を勝ち得たあと、その嫁ぎ先にまで心を配る吸血鬼。その想いを大切にしようとする少女とその夫たち――
その裏には吸血鬼が複数の人間を吸血の対象にしなければならないという事情が横たわる。
愛する女性の健康に留意して、相手を増やそうとする吸血鬼。
パートナーの配慮に感謝しながらも、別の女性と逢瀬を遂げている彼のことを想う孤独な刻をしのばざるを得ない女性たち。
そうした気遣いの重なり合いが、彼女たちに人間の伴侶を選ぶという結論を与えたのだ。
吸血された彼女たちを花嫁に迎える夫たちもまた、吸血鬼と日常を共にする両親や兄や兄嫁、姉たちを見て育つという家庭環境で成長してきた人々。
「私が受け皿になることができてよかったです」
きょうもちさよさんは彼と逢っている――そう語る元晴さんの顔に、曇りはない。

未来の花嫁が、嫁入り前に吸血鬼に襲われること、処女を奪われること、その後も関係を結ばれてしまうこと。
そうしたことに夫である自分自身が甘んじること。
吸血鬼と共存する家庭環境に育った夫たちが禁断の関係の受け皿になることで、周囲のだれもが納得を得ている一例といえるだろうか。


追記
記者は三か月後、結婚を来年に控えた婚約者を伴い街を再訪した。

吸血鬼の棲む街☆コミュニティ情報 ~少年のころから親しい父子に、婚約者の純潔を――半吸血鬼となった青年の選択

2017年03月21日(Tue) 00:40:07

庄司悦治さん(29、仮名)が半吸血鬼になったのは、まだ学生時代のことだった。
「男の子目あてに学校に出入りしている吸血鬼たちがいたんです。部活のときに履いているライン入りのハイソックスが彼らの目をひいたらしくって。
卒業前にはチームメイト全員が咬まれちゃっていました。運動部の部員は体力があるから、学校でも率先して献血に励むよう指導されていたんです」
と語る。相手は学校周辺に住居を構える、40~50代の男性たちだった。
「父より年上の人たちでしたね。でも全員、夫婦で献血歴があるんです。
ご存知だと思いますが、セックス経験のある女性が咬まれると、性関係も結ばされます。
だから、もっとあからさまに言ってしまうと、夫婦ながら咬まれた上に奥さんを日常的に、お相手の吸血鬼に犯されている人たちなんですよね。
でも、それを彼らは嬉しそうに語るんです」
さいしょのうちこそ違和感を覚えたものの、咬まれる機会を重ねるうちに「血を吸われるのが愉しくなっちゃった」。
「そのうち彼らに、同情を感じるようになったんです。たしかに彼らはぼくたちの血を吸ったり咬んで愉しんでいるけれど、そのまえには奥さんを襲われちゃっているんだよなって。だからぼくたちも気持ちをこめて相手をしてあげるようになっていました」

なかには同性愛に目ざめてしまったものもいたという。
「短パンにハイソックスを履いた脚を見ているうちに見境がつかなくなったって言うんですけど、どうなんでしょうね。ぼくは太っちょでしたから、ダメでした。血液を大量に摂れるので、彼らの開く吸血パーティーにはしょっちゅう招ばれましたが」
悦治さんは笑って当時を回想する。

卒業後も関係の続いた吸血鬼の一人に、古雅芙美夫さん(58、仮名)がいた。
長男の武治さん(32、同)も半吸血鬼になっていて、父子ともども妻の生き血をほかの吸血鬼に与えているという
「同情しちゃいましてね。奥さん取られている間は寂しいだろうなって。たぶん、ぼくの血を一番吸ったのは彼らだと思っています」
奥さんが浮気に出かけた留守宅に招かれて、奥さんの服を着て抱かれながら血を吸われたこともあるという。
「同性愛ではありませんでしたが、近い感情は持っていたかもしれません」
と、悦治さんは告白する。

将来お嫁さんをもらったら、真っ先に彼らに紹介して犯してもらおう――と思いつづけている中、降ってわいたように縁談が。
お相手は、親同士が同じ勤務先というご縁の定村貴和子さん。(25、仮名)――いまの庄司夫人ある。
「そのときにはぼくも、半吸血鬼にされてしまっていましたから・・・彼女が処女かどうか、味わって試してみようと思ったんです。『あとはお二人で』と言われて二人きりになるとすぐに、彼女の足許にかがみ込んで、ふくらはぎを咬んじゃったんです」
当時貴和子さんは22歳。
肌色のストキングに包まれた初々しいふくらはぎに夢中になって、ひたすら血を吸い取ってしまったという。
「さぞかしびっくりしたことだろうと思うんですが、彼女は声もたてずにそのまま脚を差し伸べて、吸わせてくれたんです」
ストッキングに裂け目が拡がり脛を露出させてしまってもなお、われに返ることなく飲み耽り、よそ行きの礼装をくしゃくしゃにしていったという。
「びっくりしました。でも、親からも、もしかしたらそうかもって聞かされていたので」
いまは悦治さんの妻となっている貴和子さんはそう明かす。
「不思議と怖くはありませんでした。ご縁だったのでしょうか。ただ、貧血を起こして身体が斜めになったとき、吸うのをやめて抱き支えてくれたんです。それで、この人でもいいのかな・・・と」
さいごのくだりはどうやら、おのろけのようだった。

お店の人の目があるからしきりに気にする貴和子さんを、悦治さんは庭園に誘った。
「お勘定を済ませる彼を待っている間、破けたストッキングを穿いたまま、足許がスースーするのを感じて、お店の人に気づかれないかとヒヤヒヤしていました」
と、貴和子さんは笑う。むしろ庭園のほうが人目がなくて、おおっぴらに脚を咬ませてしまっていたという。
二人の相性はよく、縁談はとんとん拍子に進展。交際一年で挙式にこぎつけた。
当時悦治さん25歳、貴和子さん21歳の春だった。

結婚が決まったとき、悦治さんが真っ先に報告したのが、古雅家の親子である芙美夫さんと武治さん。
武治さんも当時新婚だった妻を、自分の血を吸った吸血鬼にはもちろん、実父にも吸わせ始めていた時分だという。
お世話になってきた人たちに、きみがまだ処女のうちに血を吸ってもらいたい――そんな悦治さんの申し出を、貴和子さんは戸惑いながらも応じた。
「さすがにびっくりしました。けれどもそのころにはもう、父も母も、庄司の両親を通じてこの街の吸血鬼の方たちを紹介されてしまっていましたから・・・進んで状況を受け容れる気になっていました。じょじょに外堀を埋められて、慣らされてしまったのでしょうね」
結納を交わしたその足で二人は古雅家を訪問し、その場で体験させられてしまったという。

「悦くんの婚約者がせっかく貴重な処女の生き血を下さるというので、父子で楽しみに待っていたんですよ。さいしょはなん度かに分けて彼女の血を吸って愉しむつもりだったんですが・・・」
悦治さんとは兄弟のように育ったという武治さんは、ちょっとだけ語尾を濁す。
「もののはずみとはいいながらね」と、悦治さんもまた、遠慮しがちに貴和子さんの横顔を窺う。
それもそのはず、体験させられたのは吸血行為だけではなかったからである。
セックス経験のある婦人がほぼ例外なく、自分の血を吸った相手から性的関係を結ぶのは習慣として定着しつつあるものの、
処女がみだりに犯されることは禁じられており、未来の花婿が希望した場合に限られている。
貧血に蒼ざめた顔をしかめ、身をよじりながら吸血に耐える貴和子さんを目のまえに悦治さんは、「本能がゾクゾクと騒ぐのをこらえきれなくなった」という。
貴和子さんのブラウスを吸い取った血潮で濡らしながら、しきりに乱れたスカートのすそから覗く太ももを窺う芙美夫さんに、悦治さんはためらいなく、未来の花嫁のスカートのすそをあずけていった。
「はっとしたときには、もう遅かったのです。主人が私の着ていたブラウスの釦をすべて外してしまっていたのです。だからもう、身体の隅々まで、お父さんの掌がすべり込んできて・・・」
本能の赴くままに頬をほてらせていたのは、どうやら悦治さん一人ではなかったようだ。

肌色のストッキングを片脚だけ脱いだまま犯されてゆく貴和子さん。
「容赦なかったです。モノにされたって、直感しました。それくらい痛かったし、あからさまでした」
立て続けに三回突かれたと洩らす貴和子さん。しかしその語調にはなぜか誇りのようなものさえ感じられる。
初めての痛みが去らないうちに、こんどは武治さんが貴和子さんにのしかかっていった。
「自分の嫁の純潔も父に差し出していたので、今回も二番目で良いと感じていました。悦治さんよりも先で嬉しかったかも。もちろん、すまない気持ちもちょっとはありましたけど・・・花嫁の純潔をほかの男に食われちゃうのって、結構悪くない体験なんですよ。それを悦くんに経験させてあげることができたのは、とてもよかったし、我々父子を選んでくれたのが何よりうれしかった」と、武治さんは当時を語る。

花婿である悦治さんは、貴和子さんにとって三人目の男性に甘んじることを余儀なくされた。
「自分の親しい男性に婚約者の血を吸わせるとき、どちらが彼女の純潔を勝ち得るかをあらかじめ決めておくケースは多いんです。でも、うちみたいにどちらとも決めかねてなり行きに任せちゃう場合もあるし、決めておいても予定通りにならないこともある」と、悦治さんは語る。
「そのときのムードがすべてですね」と呟く悦治さんに、貴和子さんは「成り行き任せって無責任ですね」と指摘しながらも、夫の選択自体には不満はないという。
「お相手がよかったんですね。ふつうの関係じゃない、主人の血をいちばん吸った親子ですから。行きずりの相手に処女を奪われる娘さんも多い中、夫にとって重要な存在である男性たちとたいせつな刻を過ごすことができたのは、夫にとっても私にとっても貴重な経験でした」と結論づけた。
「時々、夫を交えて輪姦パーティーをやるんですよ。あのときを再現しようって」と、貴和子さんは悪戯っぽく笑う。

未来の花嫁の純潔を親しい知人にゆだねた経験は、生真面目一方だった悦治さんの人生観も変えた。
街の青年会のリーダーを務める悦治さん。
「婚約者の身持ちを確かめるため、新婚生活を豊かに深めるため、未来の花嫁の初体験を信頼できる知人男性に」
そんな悦治さんの呼びかけに応えて、すすんで婚約者を連れてきた後輩もいるという。
親しい後輩に希望された場合には、婚約者の処女破りにも積極的に応じているという悦治さん。
すでに今年だけでも、結婚を控えた3人の若い女性を陥落させている。
「婚約者の処女喪失体験を共有するという体験で、同性同士の親密な関係がいっそう深まる」と説く悦治さん。
結婚を来年に控えた記者自身もまた、悦治さんの誘いを受けたことを告白しておく。

吸血鬼の棲む街☆コミュニティ情報 ~兄の好意で兄嫁をゲット。義弟への献血と輪姦に耐えた、気丈な主婦

2017年03月21日(Tue) 00:23:34

市内に住むサラリーマンの原埜靖幸さん(28、仮名)も半吸血鬼の一人である。
先年、兄の定幸さん(32、仮名)の許可を得て兄嫁の血を吸ったときの体験を明かしてくれた。
半吸血鬼になった理由は、「同じクラスに吸血鬼の同級生がいて、面白半分に自分の血を吸わせていたら病みつきになった」というもの。
自分の血を吸って半吸血鬼にした幼なじみに自身の母親や妹を紹介した頃には、すでに兄の定幸さんは都会の大学を出て市外の女性と結婚していた。
「兄が里帰りしたときのことなんです。通りすがりの吸血鬼に、兄が血を吸われちゃいましてね。真相をいえば、ただの通りすがりではなくて、例の幼なじみですです。里帰りした兄について来た兄嫁の華代さんが狙われちゃったので、まずその夫を・・・というわけです」
都会育ちの華代さんの洗練されたファッションが、吸血鬼の目を惹いたのだと靖幸さんはいう。
週末には近在の荒れ寺に一家で出向いて献血奉仕をしている原埜家の一員として、華代さんもデビューを迫られた。

吸血のしきたりは外部に洩らさないというのが、この街の不文律。
妻の口を封じる必要に迫られ渋々OKを出した定幸さんは、「妻のパートナーにはぜひ弟を」という条件を出した。
「身内なら、あまり酷いことはしないと踏んだんです。せめてもの護身術ですかね。でも果たして相手が身内でよかったのかどうか・・・いまが円満に過ごせていますので、うちの場合はまあ良かったとしているんですよ」
とは、結果的に妻と弟との交際を許した定幸さんの弁。
さっそく夫の両親や靖幸さんに伴われた華代さんは、義父母がそれぞれのパートナーを相手に献血を始めるなか、はじめて義理の弟の抱擁を受けた。

既婚女性に対する吸血行為はセックスを伴うのが常識なのを、華代さんも夫からそれとなく聞かされて、薄々知っていた。
「それでもいいの?」って訊き返そうとして、やはりあからさまには訊き返すことができなかったと、華代さんは言う。
でも、淡々としきたりを語る定幸さんの態度から、弟の靖幸さんを信じ切っているし、しきたり通りのことが義弟との間にあっても黙認するということだろうと思うことにした。
「そこは身内ですもの。皆まで語らせるのは酷なことだってありますものね」
妻への愛情としきたりとの板挟みにあった定幸さんを、華代さんはそういってかばう。
「相手が身内であれば家の体面も保てるから、夫も安心。若さを持て余していた靖幸さんも、気になる兄嫁を抱けて満足。私も逞しい靖幸さんとの不倫を愉しめてラッキー。添う割り切ることにしたんです」
小声でそう打ち明けた華代さんも、なかなか隅にはおけないようだ。

当日は、洋装のブラックフォーマルで参加したという華代さん。
「若い同士じゃないですか。やっぱりドキドキしてしまいますよね。そのうち靖幸さんも、ガマンできなくなっちゃって・・・」
いまでもそのときのドキドキ感が去らないらしい華代さんは、恥じらいながら当時のことを明かす。
夫からは、街で流行している「血なし病」の治療と聞かされていた。弟もその病気にかかって苦しんでいるから、救ってやってほしい、と夫から頼まれたのだ。
素肌をじかに咬まれて血を吸われるということに、本能的な警戒心を感じたものの、「義理の弟を救う」という使命感をふるいたたせて寺に向かったという。
「けれども、いざというときにはやっぱり、身体がすくみました。夫に対して申し訳ないと・・・そこを靖幸さんがうまくリードしてくださったんです」
ふくらはぎを咬まれたときに破れたパンストを片脚だけ脱いだ華代さんは、羞恥心と罪悪感にかられつつも、遠慮会釈なくスカートの奥に腰を擦りつけてくる靖幸さんに迫られるまま、夫の前ですこしずつ脚を開いていった。

夫の定幸さんはその光景を、さいごまで見届けたという。
妻が初めて献血行為を体験するときには、夫が付き添いさいごまで見届けることが義務づけられているという。
明るくなったらその種の話題を家族でするもしないもその家の判断に任せることになっていたし、定幸さんはむしろ日中はその話題は封印するつもりだった。
しかしそうだとしても、一度は必ずあからさまに見届けることで、両者の関係の成就を確かめ合わなければならないのだ。
「やっぱり、なんともいえない気分でしたね。自分で言い出したこととはいえ、妻が目のまえで弟を相手に、そういう行為に熱中してしまうわけですから」
熱中してしまったのですか?といういささかぶしつけな記者の問いに、華代さんは恥じらいながらも「はい」と、はっきりこたえてくれた。

兄嫁の貞操をゲットするという幸運に恵まれた靖幸さんは、
「やっぱりドキドキでしたよ。相手は兄貴のお嫁さんですからね。でも、いちど抱いちゃうとあとはもう、欲望の渦で・・・」
と笑う。
組んずほぐれつするうち男と女として打ち解けあってしまった二人に、もう怖いものはなかった。
華代さんは夫以外の男性を初めて識ってしまったその場で、ほかの吸血鬼たちの輪姦も進んで受け入れ、一夜にして娼婦となり果ててしまったという。

輪姦のメンバーの中には、華代さんを見初めて靖幸さんの兄の血を吸った地元の吸血鬼も含まれていた。
「しつこかったんで、すぐわかりました」と、華代さんは苦笑する。
もともとは、華代さんにご執心だったのは靖幸さんの幼なじみのほうなので、靖幸さんはむしろふたりの媒介役を買って出たまでだったのが、いつか義姉・義弟間の熱愛に変わっていたのだ。
もとより兄弟同然に育ち、自分の血を昔から吸っていた幼なじみのことだったから、かち得たばかりの兄嫁の貞操をすすんで分かち合ったのは言うまでもない。
「たぶんぼくが嫁をもらうときにも、彼に堕としてもらうつもりでいます。彼とはほんとうに、近しい関係でいたいので」
兄嫁を共有する悪友を思う靖幸さんの笑顔に、屈託はない。
もともと華代さんが堕ちた原因を作った幼なじみ氏もまた、この都会育ちの若妻のお相手の一人として、同家に迎えられている。

めでたく?結ばれた妻と弟を、先に帰宅した夫の定幸さんは寛大に迎えた。
「二人が帰って来た時、どんなふうに声をかけようかと、ちょっと悩みました」定幸さんは当時のことを思い出して、まるでその時に戻ったかのような困り笑いを泛べる。
「でも、案ずるより生むがやすしでした。妻は帰りに商店街に寄り道をして、バーゲンセールでたくさん買い物をして戻ってきたのです。弟は体よく荷物持ちをやらされて・・・かなりハードな体験だったはずなのに、帰宅したときにはもう、すっかり主婦の顔に戻っていました。女は強いですね」
定幸さんは「身内同士なんだし、仲良くしてもらってかまわないから」と二人の交際を認め、
自身が在宅していない時には弟との情交を自由に許しているという。
「喉が渇いた、血が欲しい――といわれると、どうしても譲らないわけにはいかないですよね?兄弟ですから」
淡々と笑う定幸さんに、どす黒い憎悪や嫉妬の影はない。
嫁を堕とされる歓びに、夫として目ざめてしまった――と語るときにみせた、はにかむような微笑が印象的だった。
身内に吸血鬼を抱えた一家が道徳観の喪失と引き替えに得た、ひとつの正解と言えるかもしれない。

吸血鬼の棲む街☆コミュニティ情報 ~夫人の生き血を吸わせた学校教諭

2017年03月21日(Tue) 00:04:21

公立中学校の教諭を勤める永村和生さん(48、仮名)は、市が吸血鬼の受入れ政策を打ち出した当初から、吸血鬼の校内受入れに積極的に対応してきた。
「率先垂範」を教育のモットーとする永村さんはその手始めとして、夫人の和代さん(46、同)を親しくなった吸血鬼のA氏に紹介、
永年連れ添った妻の生き血を惜しげもなく吸い取らせてしまっている。
「いきなりの求愛でびっくりしました」
と、今では笑顔で語る和代さんも、襲われた最初は「恐怖の渦」だったと回想する。
まだ三十代だったころの若い血をゴクゴクと呑み込まれた浅ましい音は、いまでも鼓膜に残っているという。
「きっと喉渇いていたんだなあ・・・って思ったときにはもう、レ〇プされたあとでした。ことのついでに、そういうこともするんですよね。仲良くなりたい一心でそうしたって言われましたが、単にエッチなことなさりたかっただけだと思っているんですよ」
告白される体験の生々しさとは裏腹に、和代さんの口調はなめらかで軽い。
「考えてみたら、あと一週間で四十歳というタイミングでした。少しでも若いうちに、主人はあのひとに私の血を吸わせたかったんだと思います」
さいしょはかたくなだった和代さんも、その場で男女の関係を結んだ相手にほだされるままに交際を継続、いまでは夫も認めるステディな関係に。
「主人とあの方と、お互いが尊重し合っていることが長い良いおつきあいにつながった」と、夫人は語る。

永村さん自身は、夫人の貞操と引き替えに「永年の夢だった」という半吸血鬼になっている。
半吸血鬼とは、吸血鬼に血を吸われることで吸血鬼同様の嗜血癖を身に着けてしまった人のこと。
多くは、夫婦ともに吸血された夫のほうが罹患し、半吸血鬼となる。
吸血鬼となる以前と変わりのない日常を継続するので、はた目にはそれとわからないという特徴がある。
妻の生き血を目あてに自宅に侵入してくる訪客とも、仲良く獲物を分け合う習性をもつといわれている。
「うちの場合は、まったくそうですね。昼はあの方、夜は夫・・・両方かけもちで相手をするので、よく貧血になるんですよ」
和代さんは笑って語る。
「本人は血を吸い尽されて半吸血鬼、妻も血を吸われて犯されて・・・って、一方的にやられ放題なんですけどね」と、永村さんは笑う。
その満ち足りた笑いからは、言葉通りの「一方的」な受難ではなかったことが窺われる。

「私は半吸血鬼ですから、死んだりお弔いをしたりというおおげさな手続きを踏まないで、人間を卒業しました。戸籍も職業もありますから、日常生活も、まったくいままでどおりです。でも、いままでと違うのは、世間体を気にしたりしないで気になった教え娘を誘惑していることですかね」と笑う。

父兄の評判も、上々である。
在学中に娘を襲われたという父兄のひとりは、
「面倒見のよい先生。性教育のほうも面倒見られてしまったけれど、娘を疵(きず)ものにされたといって文句を言いたいとは思わない」
と明かす。
「この街に棲んでいる限り、いつかは吸血鬼に襲われます。むしろ担任の先生など身近な大人に上手に引き入れてもらったほうが、親としては安心なんですよ」
そんな永村さんがもっとも好む血は、今でもやはり妻の和代さんのものだという。
「吸血鬼になり替わって、べつの愛し方を見つけることができました」
晴れ晴れと笑うご夫婦を見ていると、吸血鬼に襲われることが必ずしも悲劇につながるとは限らないことを実感させられる。

家族ぐるみの濃い関係。 ~同級生が母さんを そのパパが妹を~

2017年02月21日(Tue) 07:15:29

同級生のナオヤくんに血を吸われ始めて半月経った頃。
きみの家に招(よ)んでとせがまれて。
家に着く前に僕のハイソックスを血だらけにしてしまったナオヤくんは、
びっくりして立ちすくむ母さんの首すじに腕を巻きつけて、咬みついていた。
その場で尻もちをついた母さんは、
ナオヤくんに脚を咬まれて、穿いていた肌色のストッキングを咬み破られていった。

ハイソックス、いっぱい買い置きしとこうね。
母さんは自分のことをモノにしちゃったナオヤくんのほうはわざと見ないで、
僕にそんなふうに告げることで、明日からの服従を誓ったのだった。

きみの母さんを、ウチのパパに逢わせたいんだ。
ナオヤくんにせがまれるまま、僕は父さんが出張に行く予定を彼に伝えて、
妹が寝入ったころを見計らって、
僕たち母子はナオヤくんとお父さんのナオジさんとを、家に招いてあげていた。
子供は視ないほうがいいよ。
ナオヤくんに諭されるまま、夫婦の寝室に引きずり込まれた母さんのことは気にしないで、
僕は新調したばかりのライン入りのハイソックスを履いた脚を、ナオヤくんに咬ませてあげていた。

ナオジさんは、ロリコンだった。
母さんのことをモノにしただけでは満足せずに、僕の妹にまで、目をつけていた。
まだ中学にあがるまえなのに。
妹の奈緒美のことを小父さんに目をつけられてしまったことが、なぜか楽しくて。
僕は父さんのいない日を、ナオヤくんにまたも教えてしまっていた。
べそを掻きながら血を吸われた奈緒美をなだめるために、
小父さんはお祝いのケーキを用意してくれていて。
機嫌を直してケーキにぱくついた奈緒美の履いているハイソックスに、もういちど舌を這わせていった。

奈緒美が小父さんにお嫁入りしたのは、それからたった三日後のことだった。

子供は視ないほうがいいよ。
母さんのときにはそういって僕のことを遮ったナオヤくんは。
その日は自分のパパが奈緒美の穿いているよそ行きのスカートをめくりあげるのを、
息をつめて見つめていた。
パパとの昔からの約束。
ボクがお嫁さんをもらうときには、先に抱かせるってことになっているから。
そういってナオヤくんは、奈緒美に対して責任を取ると告げてくれた。

十数年の刻がすぎた。
母さんとナオジさんとの仲は、意外にも父さんがすんなりと認めてくれて。
そういう楽しい会には、父さんのことも呼びなさい、って言われて。
ナオヤくん親子に心からの奉仕をする母さんのことを、
僕たち父子はふすまのすき間から、息をつめて見守る日常がやってきていた。
僕の結婚が決まったとき。
わがことのように悦んでくれたのは、ナオヤくんだった。
僕が結婚するときには、先にやらせてあげるって、約束をしていたから。

奈緒美のときに・・・もっと楽しめればよかったんだね。
ナオヤくんは僕と2人きりのとき、こっそりとそう呟いた。
まだあのころは幼かったから、パパが奈緒美を犯すのが、ちょっと以上に悔しかったんだ。
僕もナオヤくんに、告げていた。
もうすっかり大人だけど、きみが晴美さんを犯すのは、ちょっと以上に悔しいんだぜ。

首すじから血をしたたらせ、息せき切って。
はだけたブラウスのすき間から、切れたブラジャーの吊り紐と、初々しく輝くピンク色の乳首を覗かせながら。
晴美さんは僕の目の前で、ナオヤくんに犯されていった。
僕たち新婚夫婦が、吸血鬼の親子に服従を誓う、記念すべき夜だった。
自分のお嫁さんの純潔を、パパに譲ってしまったナオヤくん。
こんどは僕の花嫁から、純潔をむしり取っていくんだね。
処女をゲットするのは、楽しいかい?
相手が幼なじみの花嫁だと、さらに格別だっていうんだろう?
でも僕は、きみに彼女の純潔を捧げるのが、たまらなく慶ばしい気分なんだ。
わかってくれるかな?
でも、半分はわかっているよね?
奈緒美がきみのパパに犯された夜。
きみだって、あそこを力いっぱい、逆立てていたんだから。

娘の彼氏。

2017年02月15日(Wed) 08:02:02

娘の彼氏は、気の毒だ。
彼女が吸血鬼にとりつかれてしまったばっかりに、
三日にいちどは、吸血鬼のお邸に娘を送り迎えする羽目になっている。
けれどもそんな屈辱的な状況に、彼があえて甘んじてしまっているのは、
庭先からのぞき見することを許された室内の光景に、いけない昂ぶりを覚えてしまったから。

処女の生き血を好む吸血鬼のために、
彼は娘と一線を越えることを、禁じられている。
ガマンをつづける彼が報われることは、たぶんない。
いずれ・・・よそで適当な処女を見繕うことができたあかつきには、
娘の純潔は、吸血鬼の手でむしり取られてしまうだろうから。
いや、たぶん。いや、きっと。
彼のガマンは、報われるのだ。
未来の花嫁の処女喪失シーンを、吸血鬼と共有することで。
わたしも彼の気持ちを、じゅうぶんに汲むことができている。
人にはいえない、マゾヒスティックな歓びに目ざめた同士なのだから。

娘も献血。

2017年02月15日(Wed) 07:49:02

娘が学校から、帰ってきた。
ただいまぁ・・・という張りのある声が、満ちた血潮を連想させる。
わたしも、半吸血鬼になってしまったのか。
おそらくそれくらいの貢献は、とっくに果たしているはずだ。
廊下に響くばたばたとがさつな足音が、このリビングへと近づいてくる。
両親が不埒な愉しみに耽ってしまっている、忌むべき空間に。
ドアが開かれた。

・・・・・・。
目を見張る娘。
そこには、すでに見慣れてしまった光景。
わたしは首すじから血を滴らせ、足許に伝線を走らせ、恥知らずな射精にじゅうたんを濡らしてしまっている。
妻も首すじから滴らせた血潮にワンピースを濡らし、伝線したストッキングを片方だけ穿いて、
わたし以外の男の侵入を股間に受け容れてしまっている。
靴下フェチな吸血鬼が、白いハイソックスを履いた娘の発育のよいふくらはぎに、目を留めないわけはない。
わるいね、ご主人。娘さんもいただくよ。
あれよあれよという間に、娘は学校帰りの制服姿を、抱きすくめられてゆく。
潔癖そうにひそめた眉をピリピリと震わせながら、娘もまた両親と同じように、首すじを噛まれていった。

ちゅうっ・・・
忌まわしい吸血の音が、薄暗いリビングに、陰気に響いた。
白のブラウスに血を撥ねかしながら、娘は目つきをトロンとさせて、男の吸血行為に身をゆだねる。
じゅうたんにひざを突いて四つん這いになってしまうと、
眩暈を起こした娘を男は嬉し気に見つめ、ハイソックスのふくらはぎに、唇を這わせていった。

脱がされた薄手の紳士用ハイソックスが、じゅうたんのうえにとぐろを巻いた。
脱がされた肌色のストッキングが、ふしだらにふやけたまま、そのうえに折り重なった。
真っ赤に濡れた白のハイソックスが、さらにそのうえに・・・
男は増えたコレクションを手に、我が家をあとにする。
務めを終えたわたしたちは、互いに目を背け合いながら、
何ごともなかったかのように身づくろいを済ませて、日常にもどっていった。

夫婦で献血。

2017年02月15日(Wed) 07:37:24

あはぁ~・・・うんめぇ。
男はうつ伏せになったわたしの足許から唇を離すと、うわごとのようにそう呟いた。
男の好みに合わせて穿いていた、スケスケに薄い長靴下には、くまなくよだれがしみ込まされて、
いくつもの咬み痕と伝線を走らせている。
脳天がけだるい感じ・・・でも決して不快ではなくなった無重力状態に漂いながら、
わたしはつぎの状況を克明に想像してしまう。そしてその想像は、狂うことがなかった。

ご主人、悪いね。今夜も奥さんと仲良くさせてもらうよ。
男はそう言うと、傍らのソファに腰かけて、痴態に似た吸血行為のいちぶしじゅうを見守っていた妻のほうへと振り返る。
クククククッ・・・
くぐもった嗤いに怯えた表情を浮かべた妻は、すがるような目線をこちらに向けてきたが。
血を抜かれてしまった身体は、もういうことを聞かない。
妻はわたしの見つめる前で背中越しに抱きすくめられ、羽交い絞めにされて、
首すじをがぶり!とやられてしまった。
素肌に吸いついた好色な唇は、ギラギラと劣情をたぎらせて、熟れた血潮をひたすら旨そうに吸いあげつづける。――
やがて妻は目つきをトロンとさせて、その場に突っ伏してしまった。

うふふふふっ。すべっこい靴下を穿いていなさる。
妻の穿いている肌色のストッキングに舌を這わせながら、男は満悦の笑みを浮かべ、
薄手のナイロン生地をなおもいたぶりつづける。
妻の身に着けた礼装をむざむざと辱められてゆく光景を目の当たりに、
ジリジリとした嫉妬がとろ火のようにわたしの胸を焦がしていった。

ご婦人を相手の吸血行為のあとは、濃密なセックスと相場が決まっている。
そして妻も、例外ではなかった。
嫉妬はどす黒い刺激になって、わたしは恥知らずにも、激しい射精をくり返してしまっていた。
そして妻は、そんなわたしを横目に窺いながら、これ見よがしな媚態を、あらわにしてしまっていた・・・

母さんは、賢夫人と呼ばれている。

2017年01月10日(Tue) 04:49:09

【賢夫人】
けんふじん。
しっかりした、賢い夫人。

朝。
父さんの寝室とは別の部屋から出てきた母さんは、みじかく「おはよう」というと、
朝ご飯の支度をするため、すぐに台所に立ってゆく。
紫とグリーンのしま模様のタートルネックのセーターを着て、ジーンズのすそからは白とねずみ色のしま模様のソックスが覗いている。
たしか夕べ、客人の泊まるあの部屋に入っていくときは、よそ行きのライトブルーのスーツに、ふんわりとしたタイのついた真っ白なブラウスを着て、
脚にはチャコールグレーのストッキングを穿いていたっけ。
ほとんど前後不覚、モーローとなった記憶なのに、なぜだか母さんの服装だけは、しっかり憶えている。
セミロングの黒髪は寝ぐせとはちがう乱れ方をしていたけれど、それを指摘するのはやめておいた。
以前同じ愚を犯したとき、「よけいなことを言うんじゃないの!」って、こっぴどくドヤされたから――

そう。
あの部屋に半月ほど前から滞在しているのは、父さんの親しい知人だと名乗る男。
歓迎をしたその晩に、彼の正体が吸血鬼だということを、身をもって思い知らされていた。
男ふたりからしたたかに血を吸い取って、ふらふらにしてしまうと。
不意の来客のためにわざわざ着替えたよそ行きのスーツ姿のまま、
立ちすくんだまま両手で口を抑えて、かろうじて悲鳴をこらえていた母さんのことを、彼は自分の寝室に引っ張り込んだ。
その後母さんがなにをされたのか――とてもひと言では、言いきれない。
這うようにして追いかけた部屋のまえ、ドアを半開きにすることまでは、かろうじてできたけれど、
父さんも僕も、そこから一歩たりとも、中に入ることはできなかった。
そのかわり、まるで返り討ちにでも遭うように。
部屋の中で遂げられた彼のお愉しみのいちぶしじゅうを、
息子も夫も、瞼の裏に灼(や)きつける羽目になったのだ。

あれよあれよという間に抱きすくめられて、首すじをガブリ!とやられてしまった母さんは、
あっという間にいちころだった。
気絶してうつ伏せに倒れた足許に男は這い寄って、母さんの脚を吸っていた。
肉づきのよいふくらはぎから、肌色のストッキングを咬み剥がれてゆくありさまを、父さんも僕も、息をつめて見守るだけだった。
そのあと男は、はぁはぁ息をはずませながら、まるで飢餓に苛まれた者がやっとご馳走にありつくような顔つきをして、
母さんの身に着けていたブラウスをはぎ取り、スカートをたくし上げて、コトに及んでいったのだ。
そんなこと――エッチなビデオのなかだけのことだと、思い込んでいたはずなのに。
こうこうと照り渡る灯りの下で、母さんの身の上にあからさまにおおいかぶさっていったのだ。
ひざ下まで脱がされたパンストを片脚だけ穿いたまま、
母さんはひと晩じゅう、男を相手に強制された浮気に夢中になっていった――

「家庭が崩壊するかと思ったわ」
大きな瞳で見つめられると、息子の僕ですらどきりとする。
けれどもそんなことには全然無自覚な母さんは、すぐに目線を転じて彼を見た。
「ところかまわず襲うのだけは、やめてくださいね。お部屋が汚れると、あとのお掃除がたいへんなの」
自分の血を吸った吸血鬼を相手にこともなげにそう言ってのける母さんは、すっかり主婦の顔に戻っていた。

初めての夜のあと、開けっ放しになった夫婦の寝室から、それとなく漏れてくる気配と声に、
失血で空っぽになりかけた頭のなかで、知覚と理性とを総動員させて、僕は全神経を集中させていた。
母さんは父さんのまえ、正座して俯いて、時々ハンカチで目許を拭っていたけれど。
父さんにいろいろと囁かれると、「わかった。じゃあ申し訳ないけどそうするわ」と言って・・・
あとは、父さんに肩を引き寄せられるままになっていた。
吸血鬼とのセックスは凝視してしまった僕だったけれど、ふたりのそのあとのことは視るのを遠慮して、スッと二階に上がっていくだけの理性を取り戻していた。
どうやら僕の家庭は崩壊しないで済むらしいことに、ひどく安堵を覚えながら、眠りに落ちていった。
父さんが、すべてを許すのと引き替えに、
母さんが当分うちに滞在するという吸血鬼の相手をすることを承諾したのを、二人の態度からあとで知った。

初めはもちろん、しぶしぶだった。
貧血で気絶してしまうことも、しょっちゅうだった。
けれども僕たちに対する男の態度は終始一貫友好的で、
寝室で母さんと接する時ですら、おおむね紳士的な態度を貫いていた。
もちろん、セックスの最中は、昂奮のあまり母さんのことを必要以上に虐げてしまうことはあったけれど・・・
気絶した母さんの身体にのしかかって、よそ行きのブラウスやワンピースにバラ色のしずくを撥ねかせながら母さんを襲っているときも。
流れる血潮を惜しむように、素肌の隅々にまで唇を這わせて、それは美味しそうに吸い取っていた。
もちろんそれは、母さんの素肌を愉しみたいという、卑猥な欲求の表れでもあったはずだけれど。
母さんの血を吸いあげるチュウチュウという音にさえ、好意がこもっているようにさえ聞こえた。
忌まわしいはずの音にさえ好意を感じることができたのは。
メインディッシュである母さんが襲われるまえ、僕たち親子が相手をして、したたかに血を吸い取られて理性を奪われてしまうせいもあったのだろうけれど。
正気の時でさえ、彼と気分よく接することができたのは。
きっと、そうした力ずく以外のなにかを、僕たちが感じることができるようになっていたから。

男ふたりは、彼の渇きを補完するため、母さんよりも先に血を吸われた。
僕たちがぶっ倒れてしまったあと、さいごに母さんのことを寝室にひき込んで、じっくりと料理してしまうのだ。
そのうちに母さんも、コツを覚えてしまったらしい。
毎晩気絶していたはずの母さんは、さいごまで目を開けたまま、男の相手を果たすようになった。
気絶したまま犯されてしまっていたのも、自覚しながらのセックスになっていったということでもあるけれど――
そういう生々しい表現を、息子の立場でしてしまうのはちょっと気が引ける程度には、僕の理性はまだ残されている。

自分の喪う血液の量が、なんとなくわかるようになった・・・あるとき洩らした母さんの呟きは、本音だったかもしれない。
相手が満足するだけの量の血を与えたうえで、自分の受けるダメージも限られるように。
彼女は自分の体内をめぐる血液を、相手に過不足なく摂取させることができるようになった。
それだけ、吸血鬼のあしらいに長けてしまった――ということなのだろう。
彼女は僕たちに栄養のバランスのとれた朝ご飯や晩ご飯を用意するように、彼にも好物を惜しげもなく愉しませることができるようになっていった。
相変わらず、よそ行きのスーツやワンピースを身に着けて、気前よくはぎ取らせてやりながら。
彼女はどこまでも堅実な主婦であり、賢夫人としての評判を崩すまいと振る舞ったのだ。

評判の賢夫人とうたわれた母さんは、家族と彼しかいないわが家でも、立派に賢夫人を演じつづけた。

「将来結婚するときには、母さんのような人を嫁にしなさい」
最近父さんは、そんなことをよく口にする。
たまたまそれを耳にした母さんは、「いやぁよぉ、そんなこと言ったら」と、柄にもなく照れていたけれど。
どうやら父さんにとって、それは本音らしかった。
「よかったら、父さんがいい娘を紹介してやろうか?」
思わず頷いていた僕は、明日お見合いをする。
きっと・・・我が家の秘密を知った家のお嬢さんで、我が家に棲み着いた客人をもてなすすべも、それとなくわきまえているのだろう。
彼女が提供できるのは、彼にとって究極の好物である、処女の生き血。
婚約期間は、見合い結婚としては異例なくらい、長引くに違いない。
そしてその娘が、晴れて僕の花嫁になったとき。
僕はきっと、言い含めてしまうのだろう。
「相手が満足するまで、お相手するように」
って――

美味しすぎる残念賞

2017年01月04日(Wed) 06:42:27

夜道をパタパタと駈け去る足音がきこえた。
足音の主の後ろ姿を見送る男は、追いかけることもできず、立っていることもおぼつかないようすで、
薄ぼんやりと佇んで、その後ろ姿を見送っていた。

逃げられちゃったね。

イタズラっぽい声が、男の背後でクスッと笑う。
振り向くとそこには、真冬には珍しい半ズボン姿の少年。
首すじには、彼がつけた咬み痕が、まだくっきりと浮いている。
「我慢し過ぎたみたいだ」
男が本来の能力を発揮できなかったのは、人から血を吸い取るという行為を、遠慮し過ぎたためらしい。
「ぼくのせいかな」
「そうかもね」
「じゃあ、お礼をしなくちゃね。今夜のヒロインに逃げられちゃった残念賞をあげるから」
少年はこともなげにそういうと、「ついてきて」とだけ、みじかくいった。
「そのまえに」
後ろにまわり込んだ吸血鬼が自分の足許にかがみ込むのを気配で察すると、
少年は傍らの電柱に身体をもたれかけ、ハイソックスを履いた脚をピンと伸ばした。
ねっとりと吸いつけられる唇に力が込められて、
口の両端から覗いた牙が、しなやかなナイロン生地ごしにズブリと刺し込まれるのを、少年は感じた。

ドアの開かれた家のなかは、暖かだった。
「連れてきちゃった」
少年の背後にいるのが吸血鬼と知りながら、お母さんは、やはり首すじに咬み痕をつけられてしまっている。
「まあ、まあ」
お母さんはまるで少年の友だちを家にあげるような気やすさで、男をリビングへと招き入れた。
「あれ、いらしたの?」
少年の妹が、ギョッとしたように男を見つめ、そして兄のことを軽く睨んだ。
「おや、みえられたの?」
少年の父は、困ったような笑みを泛べ、それでも起ちあがると男を手招きして、自分の座っていたソファをすすめた。

「んもう!おニューのハイソックスおろした日に限って、来るんだからっ」
少女は案内した自分の勉強部屋のすみに追い詰められながら、男に首すじを差し伸べていた。
抱きすくめられて圧しつけられた唇から、チュウッという音が露骨に響いた。
半開きになったドアの向こう、お兄ちゃんが息をつめて、妹の受難を見守っている。
いけない趣味だ、と、少女は思ったけれど。
あえてドアを閉めることも、悲鳴をこらえることもしなかった。
「ああああああっ・・・」
息のはぜる音を交えながら、少女の呻きは随喜の色を深めていった。

「お父さん、たばこ買いに行っちゃった」
いつの間にかよそ行きのワンピースに着替えたお母さんに、吸血鬼はものも言わずに迫っていって。
リビングの外の廊下から覗いている視線を意識しながらも、お母さんは首すじに吸いつけられてくる唇を、避けようとはしなかった。
さっき、まな娘の生き血を吸い取ったばかりの唇が熱く押し当てられるのを、お母さんは息をはずませて受けとめる。
男は、お母さん以上に息を荒げて、迫ってきた。
数分後。
じゅうたんの上にうつ伏せになって倒れたお母さんに男が馬乗りになって、スカートの奥に熱情こめてなにかを発散してゆくのを、
少年はやはり、息をつめて見守りつづけていた。
半ズボンの股間がテントのように張りつめているのを見たものは、だれもいない。


「逃げたらダメだって、彼に言われた」
ぶっきら棒にそう呟いて、男を睨むように見つめたのは、あの日後ろ姿をみせた少女。
傍らにいる少年は、やはり半ズボン姿で、少女をかばうように佇んでいた。
四人家族全員の血液を吸い取って、すっかり精力を取り戻した男は、自信満々、雪辱戦を挑もうとしていた。
「まさか、あのときのわしの失敗を取り替えそうとして、この娘とつきあうようになったわけじゃあるまいな?」
念を押すような口調で間抜けな質問をする男を、少年は軽く笑っていなした。
「でも、あのときのことが話題になったのがきっかけになったのは、確かだよ。感謝のしるしに、こうして連れてきてやったんだからね」
「あたしも、咬まれてみたくなった」
少女の声色には、少年に教え込まれた通りを棒読みするようなぎごちなさがあった。
「残念賞だけじゃなくって、優勝も獲得できちゃったようだね」
少年はあくまでも、父親よりも年上のその男をからかうことをやめようとしない。

数分後。
じゅうたんのように綺麗に刈りそろえられた芝生のうえ、少女は仰向けに倒れていた。
首すじにはまだ、男のしつような唇が貼りつけられている。
キュウキュウと露骨な音をたてて、少女の血が吸い取られてゆくのを、少年は愉しそうに見守った。
「この子の血、美味しい?」
「処女だな、この子は」
「ウフフ。気に入ってくれて、よかった」
少年は満足そうに白い歯をみせ、爽やかに笑う。
好んで人をつかまえて血を吸う本能を備えてしまった男と。
好んで身内を逢わせ、血を吸わせる歓びに目ざめてしまった少年。
少年の目の前で愉悦をあらわにすることを覚えてしまった少女は、ふたりを少しでも愉しませようと、悩ましいうめき声を洩らしつづける。

姫はじめ。

2017年01月02日(Mon) 06:09:14

訪客を報せるインターホンに出た嫁の初美が戻ってくると、おずおずとしながら訪客の来意を告げた。
「あの・・・姫はじめだそうです」
「あら。あら」
とにこやかに応じるのは、なん十年も連れ添ったわたしの妻。
「なん人いらしたの」
妻の問いに、嫁は答える。
「3、4人いらしているみたいです」
「まあ、まあ」
妻は面白そうに相槌を打って、腰かけていたソファからそそくさと起ちあがる。
「じゃあ、女性軍みんなで、お相手しなくちゃね」
そうして妻は、わたしや息子、居合わせた妹夫婦までも見回して。
「吸血鬼さんが、大勢いらしたわよ。姫はじめをなさりたいそうよ。うちのおなご衆、総動員ですよ」

あがり込んできたのは、だれもが顔見知り。
それは隣のご主人だったり、息子の幼なじみだったり、彼らの妻の交際相手だったりする。
そしてひとりとして、自分の妻を吸われていないものはいない。
幸いにして家族全員がその身に血液を宿しているわたしたちの義務は、彼らのために女の生き血を提供すること。
わたしたちは素知らぬ顔をしてリビングに戻り、女たちは全員、隣室の客間にかしこまって、男たちを出迎える。

きゃあ・・・。
あれえ・・・っ。
女たちの短い悲鳴は、聞こえなかったふりをするのがルール。
自分の妻の声を聞かされる男どもはいたたまれなくなり、一人また一人と、自室へと消えてゆく。
都会から新年のあいさつに来た娘婿は、宿泊のためにあてがった二階に上がりかけ、
ちょっとだけためらってから戻って来て、
吸血の行われている部屋のまえに立つと、ひっそりとふすまを細目に開ける。
この街に生まれ育ったわけでもないのに、もの分かりのいい男だった。

注意してみると、娘婿とは反対側のふすまも、そっと細目に開いている。
ふすまの裏側では、立膝でしゃがみこんでいる息子が、ジリジリとした視線をそそぎ込んでいる。
息子の視線の彼方にあるのは、さっきまで小さくなってしゃちこばっていた新妻の初美。
去年の秋に、結婚したばかりだった。
この街で祝言をあげれば、娶った妻はたちまち吸血鬼の餌食になって、あげくの果ては寝取られてしまう。
そんなしきたりを知りながらも、この街での挙式を選択した息子。
他所から嫁いでいた女の血で、幼なじみたちの喉の渇きを助けてやりたい。
そんな殊勝な言葉の裏に、寝取られる歓びに目ざめてしまったものの“渇き”を感じてしまったのは。
父親のわたしが、そうした嗜好を息子と共有していたからだろう。
遺伝をもたらしてしまったのかと悩むわたしに、心優しい嫁は健気に、息子やわたしたちの嗜好を受け容れると囁いてくれた。
もしかすると妻同様、不倫の愉しみに目ざめてしまっただけかもしれなかったけれど。
いまは息子同様、妻たちには頭が上がらないでいる。
獲物を取り換え合って、情痴に耽る吸血鬼の下にいるのは、母親や新妻、それに妹――
こんな状況に感じることができるのは、いまはこの街では羨望を呼ぶ徳目になりつつあった。

「終わりましたよ」
何事も起こらなかったような顔をして、部屋から出てきた妻は。
ほつれた髪をさりげなく整えて、家事に戻っていく。
いずれも妻同様、スカートの裏を濡らした娘と嫁とを公平に指図して、
今夜のお雑煮の用意に、取りかかっていった。

なだれ込む「彼ら」。

2016年08月09日(Tue) 00:58:45

家の外には、多数の吸血鬼たちがうごめき、われわれの様子を窺っている。
それをだれもが警戒していたのだけれど――
さいしょに狙われたのは、妹だった。
縁側に出ていた妹は、わずかのスキを突かれて彼らの餌食になった。
廊下でのたうちながら血を吸われて、気づいて駆けつけたときにはもう、彼らは去ったあとだった。

ピンクの浴衣に着かえた妹は、その夜ひっそりと家を出た。
「あなた、未華子さんが家にいないわ」
妹の姿が見えないことに妻があわてて、わたしのところに駆けつけた。
わたしはすぐに、妹のあとを追った。

ピンクの浴衣の後ろ姿が見えたとき。
妹の周囲には何匹もの吸血鬼が、すでに徘徊を始めていた。
「妹を返してほしい」
わたしは言った。
「もちろんそうするつもりだ。だが条件がある。家に入れてくれ」
「それは困る。妻や母まで襲うつもりなのか」
「もちろんだ。妹さんの相手はこの男が、あんたの相手はわしがする。お母さんの血を吸うのはこの男だ
 そうだ、奥さんの血もわしがいただく」
「そんなことまで決めているのか」
「我々は仲が好い。獲物は分かち合うことにしている。だが、さいしょに咬む相手だけは決め合っているのだ」
「そんな勝手なことは許さない」
「だが・・・見てくれ。妹さんはもう、我々と仲良くなりはじめているぞ」
男に促されて傍らを見ると、妹は吸血鬼どもに取り込まれて、ひたすらうっとりとなっている。
ひとりは妹の首すじを、ひとりはピンクの浴衣の襟足から胸もとを、
もうひとりは手の甲から、ほかのひとりは足許を・・・
一瞬みせたスキを突かれて、わたしも首すじに疼痛を覚えていた――

「なかに入れてあげようよ」
玄関までたどり着いたとき、妹は蒼い顔をあげて、わたしにそう訴えた。
「そんな・・・」
「いいの」
妹は問答無用とばかりに、玄関をからりと開ける。
妹を抱きかかえるようにして玄関に入ったわたしは、彼らの侵入を妨げようとしたが、
彼らはいっせいに、家のなかへとなだれ込んできた。

ああッ・・・!
仏間から聞こえるのは、母の悲鳴。
予告したあの男が、いまごろ母を咬んでいるのか。
妹もまた、浴衣の袖を振り振り、数匹で群がる男どもの餌食に、若い血を散らしてゆく。

妻の手を引いて夫婦の寝室に逃れたけれど、そこがわたしたちにとっての修羅場になった。
「あなた、あなた、なんなの?この人たち」
わたしは手を振って彼らを阻止しようとしたが、多勢に無勢だった。
さっきわたしの血を吸った男が、妻に迫って首すじに牙を突き立てる。
ほかのやつらは左右からわたしに迫り、腕といわず脚といわず、食いついて来る。
あ――ッ!
ひときわ強い悲鳴が、わたしの鼓膜をつんざいた。妻の声だった。

わたし自身も、むざんな吸血に身をさらしながら。
その場にうずくまった妻が頭を抱えて、ムザムザと生き血を吸い取られてゆくのを、見せつけられていった――

夜は深い。
その晩ひと晩じゅう、わたしたち家族全員は、芋虫のように身を転がしながら、彼らの欲望に身をさらし、
死なされはしなかったものの、ひたすら全身の血を舐め尽されていったのだった――


あとがき
縁側に出ていた妹が、まっさきに血を吸われた。
一人でお祭りに出かけた妹を追いかけて家に出ると、わたしまで食われてしまった。
そいつらはしつこくわたしたちにつきまとい、家の中にまで入ってきた。
母も妻も、食われてしまった。
じわじわと痛痒い食われた痕をひっ掻きながら、妻はこぼす。
――この夏はほんとうに、蚊が多いわねぇ。

おあとがよろしいようで。^^

一体感。

2016年08月04日(Thu) 06:41:11

ごくっ・・・ごくっ・・・ごくっ・・・ごくっ・・・
いつもながら彼は、豪快な音をたてて。
わたしの生き血を、飲み耽ってゆく。

首すじに牙を突き立てて。
両肩を、ギュッと抱きすくめられて。
身じろぎひとつできないほどに、がんじがらめにされながら。
わたしは体内をめぐる血液を、グイグイと力強く、抜き取られてゆく。
彼は支配欲もあらわに、わたしをがんじがらめにし、
わたしは彼の支配欲をそのまま受け入れて、わが身を心地よくゆだねていく。

気が向けば。
半ズボンからむき出しになった太ももにも。
ガブリ!と派手に、喰いついて来る。
いっそ小気味がよいくらいの咬みっぷり。飲みっぷり。
そんなふうに彼のわたしに対する仕打ちを、肯定的に感じるようになったのは。
たぶんわたしのなかに・・・人知れず嗜血癖が芽生えてきてしまったためだろう。


実際に、人の生き血を吸ったことは、ほとんどない。
首すじについた、吸い残された血を指先で拭って、
自分で自分の血を、チュッと唇に含んだくらいはあるけれど。

でも――なんとなく彼の気持ちが、わかるような気がする。
ねっとりと充実した、暖かいバラ色の液体を。
頬に撥ねかし口に含み、喉に流し込み、胃の腑にわだかまらせる歓びを。

人の生き血は、吸わないけれど。
彼にもっと血を吸わせてやりたい・・・そんな気持ちはとても強い。
だから、多少の貧血をいとわずに、彼に逢いに出かけてしまう。
家族に隠れてさえも。
けれどもそのうちに、そんなことをする必要はなくなってきた。
若い女の血を吸いたい。
そんな彼の願いをかなえるために、わたしは妹を逢わせてしまった。


ごくっ・・・ごくっ・・・ごくっ・・・ごくっ・・・
白目をむいて気絶した妹の、足許にとりついて。
着ている制服を汚すまいと、彼はもっぱら妹の脚に唇を吸いつける。
履いているなハイソックスを脱がそうともせずに、ふくらはぎに咬みついて。
真っ白なハイソックスが真っ赤になるほど、彼が飲み耽るのを見届けたとき――
あの充足感は、なんなんだろう?
まるで自分自身が吸血鬼で、やっと活きの良い血にありつけたような、
そんな充足感が、身体のすみずみにまで行きわたる。

気がついたときには、気絶からわれに返った妹を助け起こして、
これからこの人に毎晩血を吸ってもらうんだよ・・・って、納得させていた。

わたしの血と、妹の血と。
それだけでも足りなさそうな彼をまえに。
妹は囁いたのだった。
――母さんの血も、吸わせてあげようよ。


ごくっ・・・ごくっ・・・ごくっ・・・ごくっ・・・
白目をむいて放心した母のうえにのしかかって。
彼女のご自慢のワンピースに、持ち主の血をふんだんに撥ねかしながら。
咬みついた首すじのうえ、彼はいつも以上にせわしなく唇をうごめかせてゆく。
母の生き血を吸いあげる勢いの良さが、どうしてかむしょうに、小気味よく耳をくすぐる。
――よかった。母さんの血も、気に入ったみたいだね。
飼いはじめたペットが餌を勢いよく食べるのを見てほっとしたときの妹を思い出す。
いまも同じ顔つきで、目を細めて満足そうに。
自分の血を美味しいと言ってくれた男が母を生き餌(え)にする有様を、見守っている。
控えめだった妹の、べつの顔を見たような気持になったけれど。
いっぽうで。
共犯者の連帯感を、安堵とともに噛みしめていた。
母が咬まれて、生き血を吸い取られていくという、シリアスな状況のはずなのに。
そう。
まさに共犯者だった。
抵抗する母の手足の動きが、じょじょに緩慢になってゆくのを、
妹とふたり、肩を並べて見入っていて。
妹なんかは小声で、がんばれ、がんばるんだ吸血鬼さん・・・って、
自分の母親を組み敷いて血を吸う男の肩をもっていたくらいだから。

気がついたときには、気絶からわれに返った母は妹を助け起こされていて、

母さんも捨てたもんじゃないんだね。
これからはこの人に毎晩血を吸ってもらうようがんばらなくちゃね

・・・と、気丈な納得ぶりを、まだ立ち去らないでいる情夫の耳に届けるように、そういった。
自慢のワンピース、着れなくなっちゃったから。記念にあなたにあげるわね。
血の撥ねたワンピースを、初めて襲われた相手に渡す行為は。
相手のすべてを受け容れることを意味していた。
ワンピースの肩先に撥ねたのは、母の血潮だったけれど。
すそをどっぷりと濡らす、生温かい半透明の粘液には、
母も息子も娘も、気づかないふりをしつづけていた。

母のワンピースをもらえる彼が羨ましいと、半分は嫉妬を覚えたけれど。
母のワンピースをあげたいと、もう半分は私自身も熱烈に思っていて、
まるで私じしんが受け取ったかのようなうれしさを覚えてしまったのは。
私が彼になり、私が母になり切っていたからなのかもしれない。
そういえば妹のときも。
私じしんが妹の制服を着て襲われているような――奇妙な一体感が、そこにはあった。


わたしの血と、妹の血と。母の血と。
それだけでも足りなさそうな彼をまえに。
妹は囁いたのだった。
――真由子さん、襲わせてあげようよ。まだ処女なんでしょ?

婚約者の真由子は、会社勤めのOLで。
ふっくらとした豊かな肢体の持ち主だった。
もちろん、彼の相手として、なん度夢想したかわからない。
だって、彼女の豊かな肢体をめぐる血潮が、彼の気に入らないはずはないのだから。
妹のそそのかしに、われを忘れたわたしは、翌日真由子を、いつもの公園に呼び出していた。

目と目を見つめ合った瞬間から。
真由子は相手の正体を察したらしい。
ちょっと顔を蒼ざめさせて。
わたしの首すじにつけられた咬み痕に、目を見張って。
ものも言わずに、駆け出した。
はじめから勝ち負けの決まっている鬼ごっこを、
わたしはどちらにも手を貸さず、佇んだまま見守っていた。

彼は獲物がわたしの婚約者だと知りながら、
獣が獲物を掴まえるような荒々しさで、
後ろから追いついた真由子の肩を引き寄せたのも。
勤め帰りのスーツ姿を引きずり倒して、泥まみれにさせたのも、
わざと粗っぽく、牙を叩きつけるようにして、彼女の首すじをガブリとやって、
真っ白なブラウスにバラ色のしずくをふりかけたのも。
脚をじたばたさせて彼女が抗い、その抵抗を力ずくで抑えつけていったのも。
チュウチュウとあからさまな音を立てて真由子の血が吸われ、
音が深まるにつれ、脚のじたばたが弱まっていったのも。
妹のハイソックスをみるかげもなく咬み破ったように、
真由子の履いているテカテカとした肌色のストッキングも、
むぞうさにブチブチと、咬み剥がれてしまうのも。
わたしはまるで自分がしているかの錯覚をおぼえながら、
ゾクゾクとした昂ぶりもあらわに、
妹や母をも汚した男が、わたしの婚約者を征服していくいちぶしじゅうを、見守っていた。

ごくっ・・・ごくっ・・・ごくっ・・・ごくっ・・・
真由子の血を、彼が旨そうに飲んでくれているのを。
ああよかったと感じているわたしがいた。
彼が活きの良い血液にありつけたことを、ああよかったとだけ感じていた。
まるで自分自身が、血で満たされた吸血鬼のように。
彼が彼の胃の腑を、わたしの未来の花嫁の血で満たしてゆくのを、
ひどくうれしく感じていた。

彼女が生命を落とすことはない。
だって、彼は若い女の生き血を継続的に欲していたから。
くり返し突き入れられた牙は、彼女の理性を見る見るうちに麻痺させていって。
彼女はぼーっとなって、
奪われるまま、生き血を飲み耽られていった。
自分の身体をめぐる血液が、相手の男の渇きを満たしていくのを、
ただただぼう然として、寄り添いつづけていた。

白目をむいて仰向けにぶっ倒れ、満天の空をうつろな目で仰ぐ真由子を。
わたしはあろうことか、彼が真由子の血を吸いやすいようにと手助けをしてやっていて。
勤め帰りのジャケットのうえから、彼女の両肩を抑えつづけていた。
ブラウスをはぎ取られ、ブラジャーをむしり取られて、
乳首を含まれ、ぞんぶんに舐められて。
でも、彼女の裸体をまだ目にしたことのないわたしは。
まるで、自分自身が彼女を犯そうとしている気分になって、
彼の所業を妨げもせず、視つづけていた。
彼と手を組んで、ふたりがかりで彼女をねじ伏せようとしていた。

ストッキングを片方だけ脱がされて。
彼女はふたたび、足摺りをくり返していた。
初めて受け容れる男の肉に、恐怖と期待とを滲ませながら。
受け容れなければならない男の肉が、婚約者のそれではなくて、
そうしたことを、婚約者自身が望んでいて、
自分自身さえもが、血を吸われてしまった以上は・・・と、
あきらめと観念と無念さと、ひそかに感じはじめた好奇心を秘めながら。
彼女はゆっくりと、自分から脚を開いてゆく――

突き入れられたものが引き抜かれる瞬間、彼女はすすり泣き交じりの吐息を洩らし、
それから言った。
ケンくん、ゴメン・・・っ。
きっと感じてしまったのだろう。
彼はそんな真由子になおものしかかって、
草の褥のうえで、なん度もなん度も彼女を犯し、辱め抜いてゆく。

婚約者の純潔が散った夜。
わたしも、わたし自身の「初夜」を過ごした。
彼女のうえにおおいかぶさる吸血鬼は、もうひとりのわたし。
わたしは今、自分の血を共有する男といっしょになって彼女を犯し、血を抜き取ってゆく。
妹や母さえも、そうしたように・・・


あとがき
昨日から構想し、やっと書き上げました。
頭のなかでわだかまっていた二作があっぷできて、すこし安堵。

ご夫君の勤務中に犯された奥方は、意外に冷静である。

2016年08月04日(Thu) 05:54:49

下校してきた娘たちのハイソックスは真っ白なままで、
いつもみたいに血のりを赤黒く撥ねかしたりはしていなかった。
あのひと律儀なんだなあと、幸恵は思う。
明日はふたりともテストだから襲わないでねってお願いをしたら。
娘たちのことを見逃してくれたようだった。
さすがに母親の私は、その埋め合わせとばかりに、
朝っぱらから襲われて、たっぷりと血を吸われてしまったけれど。

夫の生き血も、気に入ったらしい。
まだ吸い足りないから居場所を教えろというので、勤務先を教えてやった。
夫も仕事中に、娘たちの埋め合わせを果たしてやったに違いない。

初めて襲われたときにはびっくりしたけれど、すぐに慣れた。
夫婦ながら、襲われて。
先に咬まれた夫の目のまえで、それは美味しそうに吸血されて、
鼻息荒く押し倒されたにはもう、すっかりその気になっていた。
どさくさまぎれ?ことのついで?
そんなふうには思ったけれど。
パンストをむしり取られてあらわにされた股間に、
猛り狂った肉棒というもうひとつの太い牙を突き入れられた瞬間、
夫の目のまえだというのに、恥も外聞もなく、おおっぴらに叫んでしまっていた。
ずずんと肉薄された衝撃は、最後に残った理性のひとかけらまで吹き飛ばして、
つづきをおねだりされた幸恵は、自分から促すようにして、
夫の目の届かない隣室へと、引きずり込まれていったのだった。

それからは。
父親よりもはるかに年配の老爺を相手に、春をひさぐ日常――
熟れた人妻の肉体に、老爺は鼻息荒くむしゃぶりついてきた。
かりにその場に夫が居合わせても見境なく、
むしろ見せつけるのを愉しむかのように鼻息荒く、おおいかぶさってきて。
スカートを荒々しくたくし上げ、パンストをむぞうさにむしり取って、
はしたないほど熱した肉棒を、股間に割り込ませて来るのだった。
そんなとき、プライドの高かったはずの夫は、ただおとなしく、
気まずそうに目を背けたり、気を利かせたように座をはずしたり・・・
さいしょはふがいないひとと思っていたけれど。
その場から立ち去ったように見せかけて、
物陰からじっとりと幸恵の痴態を覗く視線にきづくころにはもう、
――夫も夫なりに、愉しんでいるのだ。
そう理解して。
いまでは真昼間から、ご近所にまる聞こえになるくらいおおっぴらに、
・・・よがり狂ってしまっていた。

娘たちの血を吸いたがるので、ふたりの登下校の刻限や道順を教えてやったり、
あの子たちも吸われはじめたのよって、夫の機嫌の良いときを見計らって伝えたり、
いろいろ便宜をはかってきた。
魚心あれば水心なのか。
ほんとうに体調が良くない時とか。
大事な行事を控えているときとか。
血を吸われながら家族のそんな情報を伝えてやると、
律儀に襲うのを控えてくれるようになっていた。

家族みたいなもんじゃからのぉ
老爺はそんなふうに幸恵の耳もとで囁いたが、
案外本気でそう感じてくれているのかもしれない。
たしかに、「家族みたいなもん」には、ちがいはないのだ。
なにしろ、老爺も体内に、自分や娘と同じ血を宿しているうえに、
幸恵自身は、夫にしか許していないできたことさえ、許してしまっているのだから・・・

初めて血を吸われたときには、あまりにも多量の血を漁られて、
目をまわしてその場で昏倒してしまったけれど。
血に飢えた相手のまえで気絶してしまうというのは、
自分の血を残らず飲まれてしまってもよいという意思表示ととられかねない
・・・と、老爺から教わったとき。
相手は命の恩人かもしれないと思ってしまった。
セックス経験のある女性は、その場で凌辱を免れないときいていたし、
老爺が案の定、ブラウスのえり首から手を突っ込んで、胸をまさぐりはじめたときも、
案外と惜しげもなく、夫しか識らない身体を開いてしまっていた。
さいごのほうでは――不覚にも、息をはずませて応えてしまっていたっけな。
たまの浮気もいいなぁ・・・と。
血に濡れたブラウスをまといながらぼう然と、そんなことまで思っていたっけ。

今朝もまた・・・襲われてしまったけれど。
思うさま血を漁り取られたり。
お洋服に派手に血を撥ねかされ、しまいにはぎ取られてしまったり。
ストッキングをブチブチ破かれながら辱めを受けたり。
そんなことがむしょうに――小気味よくさえ思えるようになっていた。


夫が戻ってきた。私は出かけてゆく。
そう、あの薄汚い老爺に抱かれるために、小ぎれいに装って。

お呼ばれしちゃった。献血してくるから、ひと晩帰れないわ。
あの子たち。明日はテストだから、かまわないであげてね。
え?あなたも吸われちゃったの?どうりで蒼い顔なさっているわね。
私も朝いちど吸われちゃったけど。
知ってる?あのひとの精液を飲ませてもらうと、恢復早いのよ。
こんどあなたも、試させてもらうといいわ。

精液――その言葉を耳にすると、夫は獣になっていた。
荒々しく自分の妻を押し倒し、ワンピースを引き裂き、ブラジャーをむしり取ると、
乳首を我が物顔に口に含んで、チュウチュウとやり始めた――まるで吸血鬼みたいに。
あなた、二階には娘たちがいるのよ。
そういって、たしなめようとしたけれど。
階段の上の人の気配は、いちどは踊り場ごしに玄関へと目線を注いできて、
すぐに二人顔を見合わせて、引っ込んでいく。
まったくっ、もうっ。
じれったそうに足摺りをしたふくらはぎからは。
破れ落ちたストッキングがじりじりと弛みを深めてゆく。

わかりやすいひと。
嫉妬に引火した性欲もあらわに迫ってくる夫の吐息が、
まるで新婚のころのように、熱っぽい。
――だんなさんとも仲良うまぐわうのじゃぞ。
老爺はニタニタと笑いながら、そういっていた。
ごめんなさいね。お約束の時間に間に合わないわ。
そうだ。その代わり今夜は夫に車を出してもらって、送り迎えをしてもらおう。
浮気妻を、浮気相手のところに送り届けて。
息をひそめて、お家で大人しく待機してもらって。
そのうえ、半裸に剥かれた着衣の乱れを、ご近所さまの目にさらさぬように。
また車で、迎えに来てもらおう。
迎えに来た夫には、ちょっとだけ待ちぼうけをしてもらって。
そのあいだ、夫の待たされている部屋に聞こえるように、
おおっぴらに声、あげちゃおう。


あとがき
前作を描いてすぐに構想が始まったのですが、どういうわけか完成はいまごろに。
頭のなかでわだかまっているお話がうまくモノにならないと、どうにもスッキリしないものです。