淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・
夜道のお目あて
2006年12月19日(Tue) 06:21:59
ぴたぴたという足音が、妙に耳につく夜道。
こういうときって、必ず・・・
そう、あいつがやってくる。
寄り添うように追いかけてくる足音から。
何とか逃れようとして、足を速めてみたものの。
やっぱり。
つかまえられたのは、狭い路地に入ったとき。
うしろから、羽交い締めにされて。
服の上から二の腕を、痛いほどギュッと握りしめてくる。
逞しい腕に、くらりとして。
灼けるような牙に、首のつけ根を抉られている。
ちゅっ・・・ちゅ、ちゅうっ・・・
心地よい眩暈に酔いながら。
密やかな音とともに、体のなかから暖かいものを抜き取られてしまっていた。
あぁ・・・
大人のような、ため息をついて。
どこかの家の勝手口の石段に、腰を落として。
わかっているんだよ。きみのお目あては・・・
あきらめたように、呟いている。
やつはぎらぎらと飢えた眼を、いっそう淫靡に輝かせて。
ハイソックスを履いたボクのふくらはぎに、
唇を忍ばせてくる。
あぁ・・・やっちゃうんだね。今夜も。
ママに見られちゃうよ・・・
がっちりとつかまれたひざ小僧は、やつの腕のなか、もうボクの脚ではないみたいに動きを奪われてしまっている。
ひざ下の凌辱が、始まった。
ぬるりとべろを、これ見よがしになすりつけられて。
ヒルのようにしつっこく、唇を這わされて。
咬まれたあとに、赤黒いものを滲ませながら。
くしゃくしゃになってずり落ちてゆくハイソックス。
整然と流れていたリブは、ふしだらにゆがんじゃっているのに。
それが愉しい・・・そういわんばかりに、なおもふるいつけられてくる、赤黒い口。
はぁ、はぁ・・・と、息をはずませているのは。
失血のせいばかりではなかった。
もっと、堕として。崩れ落ちさせて・・・
願いがかなうことを知りながら。
今夜も衣裳もろともに・・・堕とされてゆく。
いもうと 3 ~制服のすき間から~
2006年12月18日(Mon) 10:27:26
妹を、襲わせるときは。
まえもって、小父さまと相談したりします。
いつ、どこで、どんなふうに逢おうか、って。
もちろんそれは。
血を吸われたあとの妹を交えることもおおいのですが。
そのときは・・・そう。ボクだけが、小父さまの相手をしたのです。
妹のストッキングを履いた脚を、ズボンの裏側に忍ばせて。
こういうときは、新品ではなくて。
きれいに洗濯したあとの、いちどは妹が脚を通したものを身に着けてゆきます。
ちょうど母のとき、そうしたみたいに。
小父さまは、かすかな匂いも逃すまいと。
まるで嗅ぎ分けるように、妹の気配を感じようとするのです。
薄いストッキングの向こう側から。
くまなくすりつけられてくる唇や舌に。
小父さまの妹に対するなみなみならぬ執着をかんじると。
兄として、悪い気はしません。
しないほうが異常・・・ですって?
えぇ、もちろんそうでしょうとも。
あの牙を体験したことのない、ごく常識的なかたがたにとっては・・・ですけれど。
すこし強引に、襲ってくれない?
そんな大人びたおねだりに。
小父さまは、ククク・・・と笑みを洩らします。
足許に間近に近寄せられた唇から洩れる息が。
彩りに染められながらも素足に近いふくらはぎを、じんじんと刺激します。
なかなか聞いたふうなことを、いうではないか。
と、いわんばかりに、小父さまはいまいちど、笑み崩れると。
望みどおりにしてやろう。
そう、仰ったのです。
なぁに?どうせ悪いしかけがあるんでしょ?
セーラー服姿の妹はいつになくすねた口ぶりでした。
きっとボクが小父さまとふたりきりで逢ったのが、納得できずにいるのでしょう。
まぁ・・・見てて御覧。^^
イタズラな含み笑いが洩れてくるのが、どうにもとまりません。
その日の夜のことです。
妹が目論見どおり、小父さまに襲われたのは。
いまほど便利な時代ではなかったものの。
当時でもビデオ、というものはありましたし。
小父さまといっしょなら。
時をさかのぼる・・・という芸当も、わずかながら愉しむことができるのです。
過去を塗り替えることだけは、もちろんできませんでしたが・・・
ほら、よく御覧。
小父さまが指さす先あたりは、いちめんの、夜の闇。
どうやら小父さまは、妹の学習塾帰りを襲ったようです。
妹は塾通いをするときも。
きちんと制服を着用して出かけてゆくのです。
あのころは、みんなそうだったのかもしれません。
遠くからひたひたと近づいてくる、ぺたぺたという足音。
闇の向こうから現れたのは、まぎれもなく妹でした。
そぉれ・・・
小父さまは世にも愉快げに呟くと。
まるで羽が生えたようにサッと身を翻して。
妹の通り道を阻んだのです。
「きゃっ!」
妹はちいさく叫んで、飛びのこうとしましたが。
夜道に現れた怪人は、セーラー服姿の獲物をつかまえて、放しません。
「やっ、やだっ・・・」
恐怖にこわばる妹のうなじを捕まえて。
ねじりあげるように、あらわにして。
がぶり・・・
鮮やかな血潮が、きれぎれなカーブを描いて。
あたりに、飛び散ります。
ちぅちぅ・・・
きぅきぅ・・・
憎たらしいほどリズミカルな、吸血の音。
妹は悔しそうに、時おり身を揉んで、小父さまを引き離そうとしていましたが。
もちろん、どうすることもできません。
抱きつかれたまま、立ち尽くしたまま。
生き血をじわりじわりと、引き抜かれていってしまいました。
ボクが体内にやどしているのと、おなじ血を。
小父さまは、しつようでした。
セーラー服の襟首を、ちょっぴりかきのけて。
上衣をすこし、ひきあげて。
胸元やわき腹へと、食いついていって。
制服のすき間から、盗み取るようにして。
妹の血を吸い取ってゆくのです。
あぁ、いやらしい・・・
じぶんから、仕掛けておいて。
淫らな舞いに身を巻かれてゆく妹の立ち姿に、目先をくらくらとさせていたのです。
ふつうに通りかかった女の子が襲われるよりも。
それは数倍、目の眩む光景でした。
吸われているのは他ならぬ、ボクの血を分けた妹。
襲わせているのは、他ならぬボク。
きっちりと着こなした制服を、じょじょに着崩れさせながら。
妹は口許を引き結んで。
なおもフラチな吸血に耐えようとしています。
フラチな光景は、つづきます。
ここは村のはずれの、納屋の奥。
連れ込まれた妹は、制服姿のまま、柱に縛りつけられています。
清楚なセーラー服に、荒々しい縄など、似合わない。
そう、仰せですか?
ふつうの目には、そうでしょうとも。
けれどもこれが・・・絶妙に映るのです。
白と濃紺のコントラストのうえから食い入る、殺風景な荒縄。
礼譲と粗暴とが、みとごに交錯しているのです。
妹を柱に縛りつけておいて。
小父さまはさっきから、身体のあちこちに唇を吸いつけて。
妹の血を啖ってゆきます。
制服のすき間から、忍び取るようにして。
噛まれるたびに。
妹は、迷惑そうに。悔しそうに・・・
目をキュッと瞑っては、小父さまのむたいな仕打ちに耐えています。
白い頬を、ひきつらせながら・・・
とうとうスカートをめくりあげられて。
黒のストッキングの脚を、あらわにされてしまいます。
白い脛を、闇夜にしっとりと滲ませて。
まるで、大人のような風情です。
濃紺の制服に黒のストッキングを合わせるなど、どんなひとが考えついたことでしょうか?
清楚で折り目正しいはずの装いは、いま不埒な欲情をいやがうえにも増幅させる役割を果たしています。
足許に迫ってゆく、小父さまの不埒な唇。
蜘蛛の巣みたいに、破いてしまおう。
そんなけしからぬ意図が、ありありと伝わってくるのですが。
妹も、そしてもちろんボクも・・・どうすることもできないのです。
ぴたり。
とうとう・・・ふくらはぎに、這わされてしまいました。
スキもなく、ぴったりと。
もうしっかりと、飢えています・・・
ぬるぬると這い回る唇を、妹は薄気味悪そうに見つめています。
ぴりっ。
かすかな音をたてて、ストッキングがはじけました。
ひっ・・・
スカートのうえ。
すすり泣きが、洩れてきます。
こういうときは、ちょっぴり可哀想なのですが・・・
ボクの気遣いは、どうやら無用なようです。
ひとしきり。ふたしきり・・・
血を吸い取られてしまうと。
うふふ・・・ふふ・・・
さっきまでべそをかいていた妹は。
くすぐったそうな含み笑いさえ、洩らしてゆくではありませんか。
もっと、もっと噛んで。
革靴を履いたまま、黒のストッキングに覆われた足首を差し伸べて。
男の欲望のまま、ストッキングの脚をねぶらせているのです。
どお?おいしい?
妹の問いかけに。
ククク・・・と人のわるい含み笑いを洩らしながら。
小父さまもまた、どこまでも酔い痴れてゆくようです。
処女の生き血に、装いに・・・
あとがき
すこし平板になってしまいましたね。
制服の隙間を狙ってあちこちから食いいれられる牙・・・発想のもとはそのあたりです。^^;
いもうと
2006年12月10日(Sun) 15:39:30
妹のお話を、していませんでしたね。
そう、柏木には、妹がいるのです。
仲良くなった吸血鬼の小父さまが、若い女の血を欲しがったころ。
まだ妹は小さくて、はじめから考えには入っていませんでした。
そのころ母は、三十代。
今にして思えば、いちばん脂の乗った、美味しい年頃だったのかもしれません。
それでも・・・
妹が年頃になって、中学にあがるころには。
彼の毒牙は・・・妹に対してもひらめくようになったのです。
隠れパンストフェチだった私は、家族に内緒でストッキングを嗜んでいましたが。
一定の齢になるまでは・・・母や妹のものを箪笥の抽斗からこっそりと借りていたのです。
妹は勉強家でできがよかったので、隣町の中学に通っていました。
入学式や終業式といった行事のあるときには、黒のストッキングを履いて通学したものです。
いまどきの子と違って、当時の女学生の履くストッキングは、肌のほどよく透けてみえるタイプのものでした。
妹に対しては、異性のきょうだいに対するごく人並みな感情しかもっていなかったのですが。
男の子のようにかっちりとした筋肉質のふくらはぎを包むなよなよとした薄手のストッキングは、兄の私にもひどく眩しく映りました。
薄墨色のナイロンを通して蒼白く浮かび上がる肌の色は母譲りの白さをたたえていて、とてもなまめかしく見えたのです。
ある日の、下校時間。
私は妹を待って、路頭に佇んでいました。
季節はまだ春ころだったでしょうか。
中学にあがったらすぐ伺わせます。
母ははっきりと、そう約束したのだそうですが。
やはり年頃の娘をゆだねることへの、気後れからでしょうか。
じぶんが待ち合わせるときには必ず約束の時間よりも五分早く小父さまのお邸にお邪魔するほど几帳面な母が、五月に入っても娘を伴おうとはしなかったのです。
その日のまえの晩。
夜遅く、蒼い顔をして帰宅した母は。
―――あなた、静代(妹の名)を・・・あのひとのところに連れて行ってくれる?
母のようすからすべてを察した私は、そくざに頷いていたのです。
いったん、頷いてしまうと。
そのときの光景がまざまざと、脳裡に浮かび上がりました。
小父さまの腕の中。
セーラー服の襟首に血をしたたらせた妹が、うっとりとほほ笑みながら。
おじさま・・・おじさま・・・
うわ言のように呟きながら、白いうなじを侵されてゆくのです。
ごくり・・・と、生唾を呑み込んだのに。
母は気づいたようですが、咎めの言葉を言いにくそうにかみ殺して、
―――お願い、ね。
とだけ告げて、ふらふらと寝室に消えてゆきました。
濃紺のキュロットスカートの下。
母の足許を染めていたのは・・・
妹のやつだ。
私はそう、直感したのです。
母の脚にまとわれた、通学用のストッキング。
ふしだらにねじれて裂け目を広げたありさまは、
妹が受けるであろうしつような受難を予告しているかのようでした。
妹は時間通りに現われました。
「お兄さん、待った?」
左右に結わえた長い髪。
真新しいセーラー服の、白のライン。
胸元には、ふさふさとした純白の胸リボンが眩しいばかりでした。
そして濃紺のプリーツスカートの下には・・・
薄い黒のストッキングが、足首を大人びた風情に染めていたのです。
妹も気に入っているらしい、大人びた沓下。
それがどれほど吸血鬼を悦ばせるのか。
彼女はどこまで、察していたのでしょうか?
「行こうか」
私は短くいうと、妹はウン、と素直に頷いてあとをついてきます。
―――夜やってくる小父さまが、ママの脚を吸っているのは知っているだろ?
夕べ私は、妹の勉強部屋をたずねていって。そう告げると。
―――う~ん。
妹はあいまいに、生返事を返してきます。
生娘である妹にも、母の夜なしている行為のなかに、なにか艶めいたものを覚えていたのでしょう。
はっきり嫌悪、とまではいわないまでも。
近づいてはならないなにものかを体感していたのは、間違いないでしょう。
けれども、ここで逡巡することは許されません。
大人になるとね。
うちの女たちは。小父さまに脚を吸ってもらうのがしきたりなんだ。
あした。介添え役になって・・・兄さんが連れて行ってやるからね。
妹は、横顔のまま。
じいっ・・・とにらむように、机のうえを見つめていましたが。
さいごにぽつりと、無表情にかえって。つぶやいたのです。
ウン。わかった。黒のストッキング。履いて行くね。
黒のストッキングを履くのは・・・なにか重要な行事のあるときでした。
通いなれた道のはずが。
どうやって足を運んだのか、なにも覚えていません。
気がつくと、玄関のベルを鳴らしていて。
敷居をまたいでいて。
一番奥まで通された洋室のなか、小父さまと向かい合っていたのです。
―――ようこそ。
妹を見つめる小父さまの眼が、いつもと違います。
それを薄々感じたのでしょう。
妹も、言葉少なげでした。
・・・わかっているね?
耳もとに、囁かれて。
「は、はいっ!だいじょうぶですから・・・」
気丈に答えた妹でしたが。
語尾だけはさすがに、おろおろとした震えを隠せませんでした。
―――では。
男はそういうと、私のほうをチラと見やって。
なにかを、催促しているようでした。
誰かに操られているように。
ズボンのすそに手をやって、そろそろとたくしあげていって。
ひざから下まで、ぴっちりと張りつめているのは・・・濃紺の紳士用の薄手のハイソックス。
―――妹さんに、お手本を見せるのだね。
冷ややかな声色に、無言で頷いていました。
ぬるり、と唇をあてがわれたとき。
あ・・・
薄いナイロンの向こう側。彼の唇は、ひどく熱っぽくほてっていたのです。
こ、こんな唇に、静代のふくらはぎを・・・
あまりにもむごい・・・と感じた瞬間。
灼け火箸でつつかれたような鈍痛が、ぐぐ・・・っともぐり込んできたのです。
思うさま、血を抜き取られて。
くらくらとした眩暈に、ソファからずり落ちるまで浸りきって。
じゅうたんにじかにへたりこんだ私が目にしたのは。
ひざ下まである長めのプリーツスカートを心もち引きあげた、妹の横顔。
夕べとおなじにらむような無表情が・・・ミステリアスな翳を宿していました。
まだまだ子供だと思い込んでいた少女の面差しに翳るのは、いままで目にしたこともないような濡れた憂い。
足許に落とした目線をかいくぐるようにして。
小父さまはおもむろに、薄黒いストッキングに包まれたふくらはぎに唇を吸いつけてゆきました。
くちゃ、くちゃ。
ぴちゃ、ぴちゃ。
いたぶるように、ねちっこく。
小父さまは、静代の足許を薄黒く彩る礼装を・・・辱めていました。
整然と張りつめた、ナイロンの艶。
そのうえからなすりつけられてくるふしだらな凌辱に、耐えかねたように。
少しずつ、少しずつ、ずれて、よじれて、ねじれてゆくのです。
しっかりとした、健康な肉づきに。
注射針のように突き刺さる、二本の牙。
あ・・・っ。
その瞬間。
ウッ、とかすかな呻きを洩らすと、上体を仰け反らせました。
痛みに耐えているのか。
辱めを感じているのか。
そのどちらでも、あったことでしょう。
ひきつれひとつないナイロンの薄化粧のうえ。
ヒルのようにべっとりと這わされた唇。
その唇の下・・・チリチリと音もなく、縦の裂け目が滲むように広がってゆきました。
ちゅうっ。
おもむろにあがる、吸血の音。
さても、満ち足りた・・・
そう言いたげに。これ見よがしに。
小父さまは、ごくり、としずかに喉を鳴らして・・・静代の血で爛れた渇きを潤おしてゆくのでした。
美味い・・・美味いぞ・・・
ひくく震えを帯びた、押し殺すような呻き。
男は妹の足許に、飢えた唇をいくどもしのばせていきました。
昨日まで礼儀正しい紳士だった小父さまに脚を吸われながら。
妹は目を瞑り、いとわしげに眉をひそめ、
むざんな破れを広げるストッキングのふくらはぎから、目線を遠のけています。
むざんないたぶりを受けたストッキングは、蜘蛛の巣のように引き剥かれむしり取られていって、
いびつに広がった裂け目が、見つめる私の胸の奥に、妖しい想いを掻きたてます。
妹が、壊されてゆく。穢されてゆく・・・
それがどうしてこんなに、愉しいのだろう?
いま私の体内をかけめぐるのは、マゾヒズムの血。
ゾクゾクとせり上がるように渦巻く血潮が、ただひたすらに。
おなじ血を愉しまれてゆく・・・
えもいわれぬ一体感に、歓びをはじけさせているのです。
胸の奥底に閃く、チカチカと蒼白い火花。
彼が愛して止まない母の血を受け継いだただひとりの女性――まな娘の静代――から処女の血潮を啜り取るという。
まがまがしい欲望の成就に・・・私は全身打ち震えるほどの愉悦をもって、胸焦がれさせていたのです。
妹はやがて、ソファの背もたれに全身を沈めていって、
だらしなくずるずると、すべり落ちるようにじゅうたんのうえ姿勢を崩していきました。
セーラー服の襟首に鮮やかに走る三本の純白のラインがゆっくりと咬まれた左脚のほうへと傾いていって・・・
さいごにずるりと尻もちをついたとき。
ひらりと肩からめくれ上がったのです。
肩先にきりりとまっすぐに走っていた白ラインは、いつかぐにゃりとした曲線にゆがめられていて。
小父さまはにんまりと笑みを絶やさずに。
はぁはぁという苦しい息遣いをする少女をあやすように背中をさすりながら、襟首をくつろげていきました。
がぶり。
そんな音が、聞えるはずはないのですが。
たしかに、耳にしたような気がします。
初めてうなじに受けた、鋭い牙。
むたいにも・・・深々と根元まで埋め込まれていたのです。
あぅ。
妹は目を瞑ったまま。
何度目かの呻きを洩らしましたが。
喉の奥から洩れてきたその声色には・・・あきらかに淡い随喜が含まれていたのです。
はぁはぁ・・・
せぃせぃ・・・
失血に肩で息をはずませながら。
もっと咬んで。もっとお愉しみになって。
けなげにも、我とわが血潮を振舞いはじめる妹を。
小父さまは優しくあやしながら・・・なおも容赦なく、
いつまでも、いつまでも、血潮をむさぼりつづけるのでした。
―――粗相は、なかったのですね?
気遣う母に。
―――立派な、立ち居振る舞いでしたよ。
応えのなかに無意識に秘めた充足感が、母を納得させ安堵させました。
やっと娘になったんだね。静代。
どこか淋しい、幼い日への訣別と。
明日から妖しいしきたりを共有することの歓びと。
どちらが私のなかでまさっていたのでしょうか?
朝の七時。
行ってまいります・・・
きょうは、日曜日。
もちろん、学校は休みです。
それなのに、妹は濃紺の制服姿に身を引き締めて。
「お母さま。きょうはお約束で・・・小父さまのところに血を差し上げに行って参ります」
いままでにないほど礼儀正しく、母に一礼すると。
あっけに取られた母を尻目に、玄関に向かいます。
黒革のストラップシューズにくるむのは。
薄墨色に冴えたストッキング一枚の脚。
「履き替え、持った?」
念を押す母に、「三足、持って行くわ。処女の血をたくさん、あげてくるわね♪」
昨日と変わらないのは、無邪気なえくぼ。
ところが豊かな黒髪はつややかに輝くようになって。
制服の着こなしも、どこか洗練された眩しさに包まれていました。
なにかが、変わった。
兄である私ですら、認めざるを得ないほど。
一夜にして・・・妹は少女から娘になっていたのです。
がんばれよな。腰が抜けるほど。
私の無造作な励まし?に。
もうっ!と、おどけて鞄をふりかざしたのは。
おきゃんないままでの妹そのままでしたが・・・
あとがき
村はずれのお邸に、初めて妹を伴ったときの思い出です。
母の血を吸っている吸血鬼の小父さまに、味のよく似通った処女の血を与えるために。
なよやかな薄衣
2006年05月04日(Thu) 00:22:28
それはまだ、サポートタイプのストッキングが出回るまえのころだった。
息子をたぶらかせて、母親を紹介させる。
そんな手口で手に入れた人妻。
舌なめずりをして、すり寄って。
さすがにあわてて、抗ったけれど。
いままで襲ってきた女どもと変わりなく。
わが身をへだてようとして突っ張った腕をへし折るようにして。
かぶりついたうなじからほとばしった血潮は、ひどく若々しかった。
取り乱したのはほんのひとときのこと。
女はつとめて平静を装って。
素肌に唇を圧しつけられるままに。
かいがいしく血潮を振る舞うようになっていった。
息子の目のまえで堕としてしまうのは、たやすいことだったけれども。
つかの間とはいえ仲良くなった少年が、
ちょっと悲しげに見守る目線が気になって。
子供はもう寝る時間ですよ。
母親に、そんなふうにたしなめさせて。
子供部屋のドアがきちんと閉ざされる音を耳にしてから、
改めてのしかかっていった。
昂ぶる淫らな衝動のままに、熱情のほとびを注ぎ込んでしまうと。
意外にも女は声を忍んで、すすり泣いていた。
ちりちりに引き剥いたストッキング。
そのうえからもういちど、唇を這わせると。
礼節を辱められるのを厭うようにして、
女は身をよじって避けようとしたけれど・・・
圧しつけてやった唇の下。
なよなよと頼りない舌触りのナイロンは、
いとも他愛なく裂け目を広げてゆく。
お袋のときもこうだったっけな。
ふと過ぎらせたセピア色の面影に。
歯を食いしばって耐える面差しが重なっていた。
まだ若かったお袋は、そうすることで息子をかばえるものと信じ込んで。
すすんでわが身を魔の抱擁にゆだねていった。
一滴余さずむしり取られてゆく横顔は、
なぜか恍惚とした陶酔を漂わせて、
己の若さと魅惑を誇るかのように、まるで別人のように美しく輝いていた。
なよなよとしたナイロンの手触りに、
血潮を豊かにめぐらせた人肌のぬくもりが重なって。
肩を上下させる苦しげな息遣い。
懸命な生が、ひどく愛らしい。
お袋に逢えた・・・
錯覚に決まっているのだが。
フッとそんな想いがよぎるとき。
夜明けまでごゆっくり、お愉しみになっていってくださいね。
目のまえの女はせいせいと弾む息を抑えながら、
けなげにもオレをもてなそうと心を砕いていた。
奪い取られた操を惜しむ涙を秘めながら。
それをおくびにも出そうとはしないで。
息子の悪友に尽くそうとしてくる。
いじらしいやつだな。血は争えないものだ。
あの子もオレにはひどく、親切だったっけ。
満たされた猿臂は、ひとりでにゆるんでいる。
あくる朝少年が母親をとり戻すことができるように。
あとがき
かな~り、支離滅裂になってしまいましたね。(苦笑)
サポートタイプのストッキングが普及する以前。
ストッキングはもっと破れやすい履き物でした。
なよなよと頼りなく、羽毛のように軽く。
まだストッキングが貴重品だったころを髣髴とさせるような、高貴な透明感。
いまでもそれを手にするときは、まだ若かった頃の母親に出逢うような、
ドキドキとした初々しさを覚えることがあります。
褥のお供
2006年05月03日(Wed) 22:50:49
すまないね。ありがたく頂戴するよ。
箪笥の抽斗からこっそりと抜き取ってきたママのストッキングを手渡すと。
吸血鬼のおじさんはひどく相好をくずして、なんども感謝のまなざしを投げてきた。
ボクからくすね取ったばかりのストッキングは、しっかりと。
素早く懐深くにしまい込まれてしまっている。
この前キミと歩いているところをお見かけしてね。
あのとき穿いていた黒のストッキングをおねだりしたいな。
悪戯っぽくにんまりと笑みながら。
そんなふうに言い寄ってきて。
血を吸われたあとの、ぼうっとした感覚のままに、ボクはしぜんと頷いていた。
黒のストッキングを履くことは、あまりない。
きっと先週の、法事の帰りのことだろう。
黒のスカートからのぞいた黒ストッキングに透けた白いふくらはぎは、
子供心にもなまめかしくて。
数日間、忘れることができないくらいだった。
あのときのストッキングを・・・ね。
欲しいだろうな、それは・・・
ママのストッキングを盗んでくる。
そんな、他愛のないイタズラに。
ふたりは息を詰めて熱中してしまっていた。
ばれないかな。
だいじょうぶさ。
ママはけっこう、几帳面なんだよ。
でも、キミが持ち出すなんて、夢にも思わないだろうさ。
そうだよ・・・ね?
囁きを交わしあいながら。
しぜんと、そうするときの情景を思い描いて。
またのあたりがムズムズとむず痒くなってくるのを覚えていた。
なんに使うの?
そう問い詰めるボクに。
無粋なことだな。
おじさんは、苦笑しながらも。
褥のお供にするのさ。
そんなふうに、教えてくれた。
褥のお供。
しとね、という言葉がねぐらを意味することも。
単なる場所として、だけではなくて。
もっと、ちがう含みをもっていることも。
ボクにはもう、わかっている。
お供・・・ということは。
本人の身代わりに、引き入れるというのだろうか?
どんなふうにして・・・?
塗り込められたような闇に息づく、熱っぽいものを想像して。
そんなことに使うのかい?
思わずボクは、訊いていた。
かまわないだろう?
・・・ウン。
頷くしぐさが熱っぽさをもったのは、きっとおじさんのせいだと思う。
いったん貸し与えたストッキングが戻ってくることはまずなかった。
それでもボクは訪れるたび、ママのストッキングを手にしていた。
ひそかに抽斗をあける手が震えをもたなくなったころ。
おじさんは、我がものにするなん足めかのママのストッキングを、
直接持ち主の脚からはぎ取るようになっていた。
保険の先生
2006年02月02日(Thu) 07:32:18
保健室の郁子先生は、若くてきれいで、そしていつも優しい。
いつも草色のベストの上から白衣を羽織っていて、
看護婦さんみたいに白のストッキングを履いている。
「まぁ、Kクン、また貧血なの?」
授業中具合が悪くなったボクがたずねてゆくと、
いつも優しい笑顔で振り向いてくれる。
だれもいない廊下を一人で歩く孤独感は、病弱な子供にしかわからない独特の寂しさ。
そんな寂しささえも笑顔ひとつで癒してくれてしまう。
ボクをベッドに寝かせると先生は大きな瞳でのぞきこんできて、
束ねた長い黒髪を背中に追いやるようにしてうなじをあらわにしてくれる。
「午後の授業があるから、少ぅしだけね」
そういいながら、途中で拒まれたことはいちどもない。
先生のうなじは意外なくらい肉厚で、
こぼれてくる血潮の味もしっとりと落ち着いていた。
ピンク色をしたふくらはぎがいっそう際だつ、薄手の白のストッキング。
ボクが唇を吸いつけようとすると、いつも飛び跳ねるようにしてかわされてしまう。
「いやです」ってまじめに見つめられると、どうしても牙をすくませてしまうのだ。
あるとき保健室に行くと、そんな先生が自分のほうから脚を伸べてきてくれた。
体育のT先生との結婚を控えたすこし前のことだった。
肉づきのいいふくらはぎの周りをよぎる薄っすらとした光沢に初めてきがついて、ボクは思わず生唾をのみ込んでいた。
いつもこんなテカテカするの履いていたっけな?
そんなふうに思いつつ吸いつけていった唇に、すべすべとした薄手のナイロンの感覚が痺れるくらいに心地よかった。
ぱりぱり・・・ぱりぱり・・・
他愛なく引き裂いてしまう、白のストッキング。
先生は足許に加えられる狼藉をちょっと悲しそうに見ていたけれど。
「新婚旅行から帰ってきて、味が変わっていたらゴメンネ」
なんて、言ってくれていた。
旅行からもどった先生は、しっとり落ち着いた感じのする黒ストッキングを履いて学校にやってくる。
だれの口の端にものぼらなかったようだけれど。
それからは先生のストッキングはいつも黒だった。
「T先生には絶対ナイショよ」
結婚してからも先生はそういいながら、
血をねだるボクに時々うなじを傾けてくれた。
大人の感じがする黒のストッキングも勢いにまかせて、
時折ぱりりと咬み破って愉しんだ。
困った子ねぇ・・・
先生は苦笑しながら、そんなボクを許してくれている。
先生が学校を辞めると、新居にも時々お邪魔した。
もちろんT先生がいないときだけだった。
T先生には恩もうらみもなかったけれど。
お嫁にもらったばかりの郁子先生をとっちゃって、悪いかなぁ・・・
と、バクゼンと思いながらも通いつづけた。
夫であるT先生の目を盗むようにして。
それでも母親を慕う子供のような気分で足繁く通う先生宅。
たたみに押し倒した先生は、血を吸い取っているあいだじっと身じろぎしないで、
時折慰めるように、背中を撫でてくれた。
「もうそろそろ帰ってくるわ」
そう囁かれて飛び出した、肌寒い屋外。
ふと目に入ったT先生は、電信柱の陰から自分の家の灯りを見あげている。
いつもいからせた目に、涙が浮いていた。
さようなら、郁子先生。
やっぱりボク、来るのやめにするからね。
夜光虫
2005年06月11日(Sat) 23:12:52
初めて母のストッキングを身につけて吸血鬼に破らせてしまってから。
母が寝に入ったあと、母の居間に侵入するようになった。
母の洋服を一そろい、手に入れるためだった。
「母さんの代わりに、ストッキング履いてきてやろうか?」
そういう私に、吸血鬼は血走った面をあげて、にやりとした。
「できるなら、そっくりお母さんの格好で遊びにこれないかね?」
胸の奥をぴーん!と刺されたような感じがした。
「いいね、それ…」
ボクの声は、ふるえていた。
それ以来、ボクは深夜、母の衣裳を身に着けて、彼の邸を訪れるようになった。
見慣れたはずの街が、まるで別世界のように電燈の明かりに照らされている。
穿きなれないハイヒールになんども躓きそうになった。
風が吹くたびにさやさやと揺れるブラウスや、その下に身に着けているスリップのしなやかな感触が皮膚を微妙に刺激する。
スカートから入り込むよそよそしい冷気が、なよなよととたよりないストッキングの履き心地に、日常とは別世界の密かな愉しみを満喫させされながら。
カツンカツンというハイヒールの足音が妙に耳障りだった。
人目を気にして明るいところを避けながら歩いていった。
吸血鬼のまえで母を演じて、襲われる…見慣れた母の衣裳をくしゃくしゃに乱されながら…
薄いナイロンの神秘
2005年06月05日(Sun) 21:14:06
少年時代。
母は、いつも小ぎれいに装っていた。
家にいるときでもスカートを履いて、ストッキングを身に着けている。
スカートとストッキング。
子供のころからそれは私にとって、女性のシンボルだった。
婦人ものの衣類のなかで、ストッキングほど艶めかしく、もろい素材でできたアイテムはすくない。
なよなよとたよりない薄い生地を脚に通すことによって、どうしてこれほどの変化が起きるのであろうか?
しなやかな薄手のナイロンは、同時に恐ろしくもろい。
ちょっとひっかけただけでも、すぐ伝線してしまう。
色の濃い目のストッキングほど、その効果は絶大だ。
そんな繊細でなよなよとした薄絹の向こう側から、ぬるりとしたなまの唇が吸いつけられる。
ナイロンの舌触りを愉しむように、そいつはヒルのようににゅるにゅると這い回る。
清楚な装いに、およそ似つかわしくないあしらい。
潔癖で感じやすい若い女の子だったら、毛虫のように忌み嫌うであろう感触。
脚の線に沿うように整然と流れるナイロンの繊細な網目模様はじょじょにゆがめられ、不潔な唾液に濡らされてゆく。
いちど伝線してしまうと、細いストライプはちりちりとかぎりなく伸びつづけ、裂け目を広げてゆく。
肌の透けて見えるような、紙のように薄い黒のストッキング。
その表面にひとすじのびた白い縦縞模様。黒と白の鮮やかなコントラスト。
破られて、脛からずり落ちたストッキングは、ふしだらにたるみ、くしゃくしゃになってゆく。
穢されて、堕とされた淑女のように、凌辱されたあとのストッキングは妖しく、なまめかしい。
あれから二週間後。
母はうっすらと笑いを浮かべながら、裂けたストッキングを静かにずり降ろし、つま先へとすべらせる。
目の前で自分の身体から吸い取った血潮を滴らしている吸血鬼に向かって、鮮やかに刷いた口紅のすき間から白い歯をのぞかせた。
レエスに縁取られたブラジャーをつけたまま、素肌に牙を圧しつけてくる吸血鬼のために、ブラウスの襟首をくつろげる。
純白のブラウスと、その下に敷いたシーツとを不規則な真紅の水玉模様で彩るために・・・
夕暮れ時の公園にて
2005年06月05日(Sun) 20:49:07
ふくらはぎにぴっちりと密着していたストッキングのうえからあてがわれる、唾液に濡れた唇。
あきらかに不埒な意図をもった唇に、清楚で透明なナイロンの皮膜にいびつなひきつれが走った。
執拗にいたぶりを続ける唇の下で、屈辱に耐えかねるように、ぱりっというかすかな音とともに縦に入る鮮やかな裂け目。
みるみるうちにチリチリになったストッキングは、ふくらはぎの周りから浮き上がって、だらしなくたるみ、くしゃくしゃになってずり落ちてゆく。
週末にあった法事のとき、母が黒の礼服の下に身に着けていた装い。
清楚でオトナっぽい彩りのなかにどこかエロチックなものを感じていた私は、吸血鬼に初めてご馳走するママのストッキングに迷わずそれを選んでいた。
それが変わり果てて、いまはむざんに咬み剥がれ、ひざから下にまで破れ落ちてしまっている。
足許には「吸血鬼のおじさん」と、みすぼらしい老婆の吸血鬼。
両方の脚に腕をからみつけ、ふくらはぎに牙を埋めている。
はじめてひざ下のあたりに唇を吸いつけられたとき、
「あぁ…ママが辱められてゆく・・・」
そう直感した。
すねの周りに密着している女物のストッキング。
ママが脚に通していたナイロンの装飾は、圧しつけられてくるなまの唇にいたぶられて、いびつにゆがみはじめる。
凌辱、などというオトナの言葉はそのころ、まだ知らなかった。
でも、そのときの私がありありと感じたのは、まさに凌辱そのものだった。
ママのストッキングは、持ち主の意思にかかわりなく、ふしだらなあしらいにさらされている。
「うふふぅ…すべっこい沓下じゃのぅ…」
古びた着物に身を包んだ老婆はヌルヌルと薄気味悪くよだれをひからせたべろを、いともむぞうさにねばりつけてきた。
「もったいない…」
身をすくめ、屈辱に歯噛みする。
ママがこんなやつらに侮辱されるなんて…
でも、血を吸い取られて夢見心地に意識をさまよわせ始めた私は、もうどうすることもできないで、身に着けたママのストッキングをむざむざといたぶり尽くされ、裂け目が広がるのを見守るばかり。
その様子は、折り目正しい衣裳を泥まみれにされてふしだらな侮辱にさらされるママ本人を想像させた。
堕とされる淑女。
本能がその有様をまざまざとリアルに描き、刺激的な映像を形づくる。
汚れたオトナがもつような恥ずべき欲望が、私のなかでそろそろと音もなく頭をもたげ始めていた。
後記
前段までは子供言葉。
ここではややくだって、大人になってからの回想として描いてみました。
箪笥の抽斗(ひきだし)
2005年06月05日(Sun) 19:59:33
家に誰もいないとき、母の部屋に忍び込み、箪笥の抽斗をあける。
防虫剤のかすかな匂いが、ツンと鼻を刺す。
最初に開けた抽斗には、見覚えのあるスーツやワンピース。
つぎの段には、ビニール袋にくるまれた、冬物のコートやセーター。
お目当てのモノはなかなか見つからない。
端から開けていって、ストッキングや肌着は一番上の抽斗にあることがわかった。
おそるおそる、震える手で、たたんでしまってある黒のストッキングの一足をつまみ上げる。
覚束ない指の間からつま先の部分がはらりとすべり落ちて、長々と垂れ下がる。
あ…
声にならない声。
取り出すまえ、どんなふうになっていたっけ。
もう、たたんで元に戻すことはできない。
ついこの前までのノーマルな日常から、一歩、また一歩と逸脱してゆく、軽い恐怖を伴った罪悪感。
あと戻りできなくなる…そんな思いとは裏腹に、ボクはぎこちない手つきももどかしく、ストッキングのつま先をさぐっていた。
しょうしょう手間取りながらつま先を合わせると、ストッキングをくるぶしからひざ下、そして太ももへと、じょじょに引き上げてゆく。
抽斗の狭いスペースのなかで萎縮していたナイロンがぐーんと伸びる。
ハイソックスよりも長い靴下を穿いたのは、タイツを穿いて幼稚園にかよっていた時分以後記憶がない。
なまめいた透明な薄衣が、しなやかな感触とともにボクの脚にぴっちりと密着する。
子供のころのボクの脚に、ママのストッキングはちょうどぴったりのサイズだった。
女の脚みたい…
別人のようになったふくらはぎに、我ながら見とれてしまう一瞬。
でも、そのうえからズボンをはいて家をあとにしたときには、ボクはもうすっかり落ち着きを取り戻している。
子供のころの作文 2
2005年06月05日(Sun) 19:41:40
初めてのときから、ボクは「吸血鬼のおじさん」になついていた。
ハイソックスの脚を咬まれたり、血を吸われたりするのはちょっととメイワクだったけれど、それでも週に二回くらいは、Y君といっしょにお邸に遊びに行って、二人そろってハイソックスを破らせてあげていた。
5、6足破らせてしまったころ、いつもハイソックスをなくして家に戻ってくるボクのことを、ママが疑いだした。
Y君にそれを話すと、Y君は自分のハイソックスをボクに貸してくれるようになった。
「吸血鬼のおじさん」は、ボクが行くといつも歓迎してくれた。
「いつも悪いね」
といいながら、ボクの脚や胸に咬みついて、キモチいい気分にさせてから血を吸ってくれた。
そんなふうにキモチよくしてもらえるのが嬉しくて、
ボクは自分のほうからかませていって、ゾクゾクするような快感に夢中になった。
けれどとうとう・・・ボクの血だけではガマンできなくなったらしい。
ある日、ママのストッキングをねだられたのだ。
さりげなく、
「お母さんのストッキングも、面白そうだね^^」
と。
子供のころの作文
2005年06月05日(Sun) 19:27:01
吸血鬼のおじさんは、どういうわけか長い靴下が好きだった。
同級生のY君に誘われて初めてお邸にいったとき、Y君は紺色のハイソックスをはいていた。
あとできいたら、ボクがたまたま、新しいねずみ色のハイソックスをはいていたので、吸血鬼にかませてやりたくなって、声をかけたといっていた。
お邸の奥のうす暗い部屋に通されると、Y君は、ぼろぼろの着物を着たおばあさんの吸血鬼のために、すすんでズボンをひきあげて、ハイソックスの脚をかませてあげていた。
家でわざわざはき替えてきた真新しいハイソックスに、おばあさんはよだれをしたたらせながら、唇を押しつけていた。
ボクは、50さいくらいの男の吸血鬼の相手をさせられて、Y君とおんなじように、ハイソックスの上からそのままかまれて血を吸われちゃっていた。
ちょっとチクチクしたけれど、思ったよりも、痛くなかった。
ちゅうちゅうと血を吸い取られていくうちに、頭がぼうっとなって、夢を見ているようないい気分になってしまった。
おじさんはやさしくて、痛くない?とか、加減はどうだい?とか、気をつかってボクにきいた。
ボクが本当に具合悪そうになったら、どんなに血が欲しくてもガマンしてくれるといってくれた。
慣れると血を吸われるのが気持ちよくなってきたので、もっと吸ってもいいよといったら、すごく嬉しそうにしてボクの首すじにかみついて、勢いよく血を吸いあげたので、ちょっとくらくらしてしまった。
ボクの血を吸い終わると、吸血鬼はボクの脚からハイソックスを引きずりおろして、脱がせてしまった。ハイソックスを引き伸ばすと、ちょっぴりついた血のシミをみて、嬉しそうに笑った。
欲しそうにしていたので、ハイソックスはあげてしまった。
ママには、はだしで遊んでいるうちになくしてしまった、とウソをついた。
Y君は、お母さんの言いつけで、三年生くらいのころから、よくお邸に遊びにきているといった。
この村で生れたY君は、男の子は中学に上がる前にこのお邸におじゃまして血をあげるのがこの村のしきたりだと、お母さんから教わっていた。
Y君のおかあさんも、よくここに血を吸われに来るらしい。
都会育ちのママはきっと、そんなことは知らないと思う。
吸血鬼のおじさんは、ボクの血がおいしかったといって、ボクに礼を言ってくれた。そして、来週また来て欲しいといわれた。
オーケーするとき、なぜかとっても、ドキドキした。
誰の代わりに・・・?
2005年06月05日(Sun) 17:45:49
戯れに、妻のストッキングを脚にとおすことがある。
ふだんは世間並みの潔癖さを持ち合わせている妻はもちろん、いい顔はしない。
書斎で半ズボンの下に黒のストッキングを履いているときに、
突然ドアを開けられたことがあった。
淹れてくれたお茶を、落っことしそうになっていた・・・^^;
夜更けだと、ストッキングを穿いたまま、外出をする。
こういうのを、短パン外出、というらしい。
近くの公園で、吸血鬼が待っている。
「ご主人、すまないね。夕べはちょっと、吸いすぎたものだから」
木陰で足元の隠れるベンチに腰をかけて、妻の代役を務める私。
遠い日には、母の代役を演じていたこともある・・・
※「身代わり」から改題