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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

義母との一夜

2006年04月25日(Tue) 08:46:29

好夫さん、よろしいかしら?
書斎のドアを開けて顔をのぞかせたのは、義母の志津子。
旅行好きの義母は、長逗留と称してここ数日、家に居座っている。
少女のように無邪気で、ものにこだわらない。
話し好きで、話の合い間には、いとも愉しげにころころと笑う。
淑やかに低い声で。
昔の女学生のように、軽く口許を手で抑えながら。
すべすべと光る襟足が。
ほっそりとした白い指が。
時折ひどくなまめかしく、脳裏に灼きつくのだが。
そんなことなどまるで気づかない、というように。

由貴子さん、お出かけなのね。もう真夜中なのに。
天井まで届く蔵書の山を感に耐えたように見あげながら。
ちょっと、お邪魔してもよろしいかしら?
小首をかしげるしぐさに、読みさした本を仕方なく傍らに閉じると。
  今頃アノ子、血ヲ吸ワレテイルノネ?
どきりとするようなことを口にする。
  心地ヨサソウニ。目ヲとろん、トサセチャッテ。
  チュウチュウ、チュウチュウ、生血ヲ吸イ取ラレテイルンダワ。
忌まわしげな色は、かけらもない。
謡うような口調は、むしろなりゆきを愉しんでいるかのようだった。
そんな子に育てたおぼえはないのですけれど。
親のわたくしの不行き届きですわよね?
じいっと、のぞき込むように見つめてくる瞳に。
いや、そんなことは・・・
不覚にも、狼狽を覚えている。

真夜中だというのに。おめかしして出かけていきましたから。
そんなふうに、伏し目がちに口にするくせに。
真夜中だというのに。
ゆったりとした純白のブラウス。漆黒のロングスカート。
ちらとのぞいた踝を包んでいるのは、
清楚に白い肌を滲ませる、黒のストッキング。
あなたも少し、血を嗜まれるのでしたね?
無言の肯定を切り返すように。
娘のつぐないをさせていただきますわ。
ノーブルな顔だちにサッと閃いたものが、ゾクゾクするほどどす黒いものを交えて迫ってきた。
ぎくり、と身体をこわばらせると。
やだわ。襲うのは貴方のほうなのよ。
いとも愉しげにほほ笑んで。
見てのとおり、やせっぽちですから。あまりたくさんはダメですよ。
真面目な口ぶりが却って、強い誘惑を漂わせる。

抑えつけたじゅうたんの上。
うずたかく積まれた書物だけが、周囲から見おろしてくる。
どうぞ、召し上がれ・・・
気兼ねなくおやりなさい、とでも言わんばかりに。
ピンと張った長いまつ毛が、大きな瞳をとざしていった。
うなじにつけた唇に、豊かに潤った皮膚が心地よい。
もうがまんできなくなって。
甘えるように両肩を抱いて。
ひと息に、食いついてしまっている。
どろりと喉にみちてきたものは、ひどくなまめかしく、妖しいほどに若々しい。
毒牙にかけた女を味わいつくすのは、吸血鬼としての礼節。
相手が義母であっても、たがえることはない。
ブラウスの下の身体から力が抜けるのを確かめると。
劇場の緞帳を引き上げるように。
はぐりあげてゆく、黒のロングスカート。
唾液をたっぷり含ませた唇を、ヒルのように貼りつけて。
楚々と装われた黒ストッキングを、くまなくあてがう唇で穢してゆく。

純白の襟元を赤黒く滲ませたまま。
下からじいっと見あげてくる瞳。
失血に迷いかけた声色を、励ますように。
  パパのことも、誘ったのよ。
ピクニックに誘うみいな口ぶりだった。
戸惑うこちらの反応を、愉しむように。
  でもね、やなんですって。奥さんが貴方に抱かれるのを見るなんて。
  貴方くらいに、大物になればいいのにね。
どこまで本音かわからないことをいいながら。
部屋に入るときさりげなく置いた黒い箱のようなものを、ごく間近に据え直す。
  ソノクセ・・・ネ。びでおニ撮ッテオイデ、デスッテ。
  構ワナイカシラ?アトデ貴方ニモ見セテアゲルカラ。
操を汚しにきたのよ、わたし。
綺麗に犯してちょうだいね。映りがいいほうが、パパも歓ぶから。
由貴子の身代わり、とでも。
ただの娼婦、とでも。
どちらでも、都合のよいほうに思し召せ。
そういうと。
いつものように、肩をすくめて。
少女みたいにくすっ、と笑った。
ひしと抱きすくめた腕のなかで。
白い面差しがぐっと若返っている。

侵される喪服

2005年07月20日(Wed) 07:06:00

半開きになった扉の向こう側に、壁にかけられたハンガーがかすかに揺れていた。
ついさっきまで義母にまとわれていたワインカラーのブラウスがかけられている。
部屋の中の照明はやや落とされていたが、ブラウスにあやされたかすかな翳はここからでもよく見えた。
不規則な放射状の翳が、義母の身に何が起こったのか、すべてを語っている。

手の届くところにあるチェアの背中には、濃い紫の薄衣。
鬼に吸い殺された人妻が梁にかけられている。そんな風情。
私の傍らからゆったり伸びた白くほっそりとした腕が、その薄衣をつかまえる。
義母が身につけていたストッキングは、みるかげもなく伝線を走らせている。
それを妻はおしいただくようにして、目を細めた。
「母も、もうすっかり狂っているわね」
母譲りのえくぼを口許にうかべながら、彼女はニッと笑う。

着替えた喪服姿にからみついている黒い影。
かつて私の母がそうされていたように。
そしてごく最近から彼女の娘がそうされているように。
義母もまた、黒いマントにくるまれて、ウットリとしている。
そこにあるのは、スキもなく装う、凛とした風情の喪服姿だったはず。
はだけかかった襟首から。ブラウスのはみ出たわき腹から。
そこかしこのすき間から忍び込む、吸血の牙。
そのたびにみじかい呻きを洩らしながら、身を仰け反らす義母。
すでに理性を奪われ、応えはじめているのだ。
夫を弔うために装われたはずの礼装は、いつか吸血鬼を愉しませるための衣裳と化してしまっていた。

「ストッキング、お好きなんですね・・・」
義母はそういいながら、奥ゆかしく装った薄黒いストッキングのふくらはぎを卑猥な唇にゆだねていく。
執拗にいたぶる唇の下、くしゃっとゆがめられ、すねの周りをねじれるナイロンの皮膜。
「まぁ、いやらしい」
清楚な衣裳に不似合いなあしらいにほろ苦い笑みを浮かべながらも、そのまま相手の行為を許してしまっている。
さっき妻が私の舌を受けたように。
吸血鬼にとりつかれ、ストッキングによだれをあやされて笑う義母。
そんな様子にウキウキと見入る妻。