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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

帰宅。

2020年03月29日(Sun) 19:10:53

由紀也が家に着くころにはもう、だいぶ明るくなっていた。
家路をたどる途中、人はほとんど通りかからなかった。
咬みつかれたお尻の痕が、スラックスに拡がったまだ生温かい血痕と、
ひりひりと疼く傷口とでひどく生々しかったから。
できれば人目を避けて、家にたどり着きたかった。

「おっは♪」
傍らからだしぬけに声をかけられたときは、びっくりして、ちょっと飛び上がってしまった。
由紀也の態度にクスクスっと笑いかけたのは、オフィスの同僚である大鳥真央だった。
真央は男性でありながら、いまはOLとして勤務している。
ショートパンツの下の生足が、ひどくなまめかしくみえた。
どうみても、女のそれだった。
「ストレス解消してきたんでしょ」
真央の目線はあくまでも、仲間を見つめる眼差しだった。
「まあ・・・そんなとこかな」
照れ隠しをするように言いよどむ由紀也に、真央は図星を突くようにいった。
「奥さんの彼氏とラブラブしてきたんでしょ」
「どうしてわかるの?」
「顔に書いてあるもん」
真央はふふふっと笑った。
「で、どうだった?楽しかった?」
「ああ、かなりね」
夕べ意識がもうろうとなりながらも、妻を犯し息子をたぶらかした男の腕に、
自分の方から縋りついていった記憶が、恥ずかしく脳裏をよぎる。
「照れてちゃダメ」
と、真央はいった。
「早くオープンにしちゃいなさいよ。楽しいのなら、女も男もないじゃない」
軽くハミングして立ち去っていった真央の後ろ姿をみて、由紀也は少し気分が落ち着くのを覚えた。

都会では到底考えられない、常識の埒外の出来事。
吸血鬼に家族全員血を吸われ、男女の別なく犯されさえしてしまっている。
そしてそのことに、恥を忘れて歓びを覚えてさえしまっている。
それでよかったのだ・・・と、ふとおもった。

玄関のドアを開けると、妻の和江はもう起きていた。
見慣れた薄いピンクのネグリジェ姿。
顔色が、ひどく冴えないように感じた。
「お帰りなさい」
シャツを破かれスラックスのお尻に赤黒いシミを拡げた夫を、和江は由紀也の予想通り、素知らぬ顔で出迎えた。
「咬まれてきたのね」
和江が訊くと、
「ああ、ずいぶん吸わせてしまった」
由紀也も当たり前のように、こたえた。
「無事にお帰りになれて良かったわ」
穏やかに潤んだ声色が、本音で安堵していることを伝えてくる。
「お前、顔色悪いな」
由紀也が妻を気遣うと、和江は正直にこたえた。
「血を吸われてしまいました」
蒼ざめた唇をきっちり引き結び、緊張に歯を噛みしめている。
人妻が吸血鬼に襲われることが、この街でなにを意味しているのか、お互いにわかっていた。
和江の首すじに、赤黒い斑点がふたつ、綺麗にならんでつけられていた。
じわっとなにかがはじけるのを、由紀也は感じた。
下腹部にたまった、マグマのようなものだった。
由紀也の喉が、カラカラになった。
「来い」
由紀也は妻の手を引いて、夫婦の寝室にまっしぐらに向かった。

一時間ほども、まぐわっただろうか。
ここ最近にない、充実した営みだった。
都会のそらぞらしい生活に疲れ果てた夫婦が、長いこと忘れかけていたものだった。
さいごの営みは、いつだっただろうか。
夫婦のきずなが離れてゆくという恐怖感から、妻に無理強いに迫った営み――
そんなものはすべて忘れ果ててしまうほどの熱い密着感に、妻も夫も満足していた。
息子の保嗣が階下に降りてきた気配がしたが、リビングの気配を察して、まわれ右して戻ってゆくのを、
横っ面で気配だけを読み取っただけで、夫婦はあるべき姿を取り戻すことに熱中した。

並んで座ったソファで、自分の方に妻が頭をもたれかけくる。
こんなことは、何年ぶりだろうか?
四十女の柔らかな肉体の感覚が、身体のそこかしこに残っている。
このところお盛んだった達也の生硬な身体つきとは違うものに、新鮮さを見出していた。

それでも由紀也は、ふと思う。
股間に残る深い疼き――
それは、吸血鬼が由紀也を、女として愛した証しだった。
達也との同性同士の関係も、ときに立場が逆転して、彼が女として犯される番がまわってくることがあった。
深々と突き入れてはじけさせる快感と。
深々と受け容れて浸し抜かれる快感と。
甲乙つけがたいものを、由紀也は感じ始めている。

たぶん。きっと。
まだあからさまに、言葉にしないまでも。
妻が情夫のもとにでかけてゆくことを、彼は妨げることはないのだろう。
そして、異性との悦びで得られない快感を得るために、きっと達也を呼び入れてしまうのだろう。

達也の父が訪ねてきた。 ~妻の仇敵との和解~

2020年03月29日(Sun) 11:02:02

1.真夜中のオフィス

オフィスにやって来た息子の親友・達也と公然と乱れ合ってから、三日が過ぎた。
初めて訪問(襲撃?)を受け逢瀬を遂げてからは、どれほど日が経ったことだろう?
なん回、いけない逢瀬を愉しんでしまったことだろう?

由紀也に対する達也の吸血行為は害意のないものだったので、
いちど由紀也を襲うと、なか三日は置くようにしていた。
由紀也の健康に配慮したのである。

いっぽう由紀也は、毎日でも欲しい快感を数日間、禁欲することになった。
禁欲はときに欲求不満を生むものだが、
由紀也はそれを、達也のために少しでも栄養価が高く活きの良い血液を愉しませるために必要な期間だと理解することにしていた。
以前より身体や健康に気を遣うようになり、美容体操まで始めた。
恋人のために美しく装おうとする女性のようでもあった。

息子のように女装の世界に足を踏み入れることは控えていたが、
そろそろ達也が現れそうなタイミングになると、
紳士用にしては艶やかすぎるストッキング地のハイソックスで、
スラックスの下から覗く足首を透けてみせることを忘れなかった。
達也が好んで咬み剥ぐのを心得ていたからである。

情夫のために化粧をする人妻のようだ――と、時おり由紀也は感じる。
けれども、達也を待つ夜に、薄い長靴下を脚に通すことをやめられない。
達也の舌を愉しませ、破かせてやるために。
それが辱めであり自分の名誉や威厳を損なうことになりかねないと知りつつも。
通勤用の靴下に達也の唾液をしみ込まされ、自分の血潮に浸し、ずり降ろされ咬み剥がれてゆくことが、たまらない快感になっていった。
自分の勤務中。
妻の和江が、吸血鬼のために艶めかしいストッキングを脚に通すのを笑えない――
このごろはまじめに、そう思っている。

息子さんを自分の”彼女”にしたい――
そんなことを告げにぬけぬけと勤務先にまで現れたこの少年に、初めて接したときのこと。
口先では「とても迷惑だ」「先生に相談した方が良いのかな」「自重したらどうかね」などといいながら、
不埒にも薄手の靴下に透き通る足首に唇を吸いつけようとしたこの吸血少年のため、
不覚にも由紀也は、達也が吸いやすいようにとわざわざ脚の向きを変えて応じていった。
たぶん――達也を吸血鬼にした男に接する妻の和江が、つややかなストッキングを脚に通してそうしているのと同じように。
けれども、いまの由紀也に、そのときの応接に対する後悔はない。
勤務が終わりに近づくと、彼は更衣室に入り、鼻歌まじりに靴下を履き替えてゆく。


案に相違して、その晩現れたのは自分より少し年配の男性だった。
もちろんふつうに、男の姿をしていた。
男は、達也の父ですと名乗った。
そういえば。
堀の深い顔だちがどことなく、達也とよく似た輪郭を持っていた。
いくぶん鋭さを失くし、生気が落ちているのは、
たんなる加齢のせいなのか。常習的な吸血を受けているためなのか。

「初めてお目にかかりますが、初めてのような気がしませんね」
間島幸雄(42)はそういってほほ笑んだ。
「そうですね、言われてみれば確かに――」
由紀也はそんなふうに応じた。
なにやら唇が、自分の意思とは離れて言葉を発している気がした。
考えてみれば。
このひととは、おなじ相手に吸血されている。少なくともその可能性が高い。
見ず知らずの他人では、ないように感じた。
彼の血液と自分のそれとが、同一人物の舌や喉を愉しませ、その干からびた血管に潤みを与えている。
不思議な関係だと思った。

いっぽうで、どことなく後ろめたい想いも、禁じえなかった。
眼の前のこの落ち着いた物腰をした紳士の愛息と戯れ合って、
いわば「食い物」にしているからだ。
どちらかといえば、色々な意味で「食い物」にされているのは、むしろ由紀也のほうともいえるのだが、
未成年である達也と働き盛りの四十代である由紀也との関係を、だれもがそうはとらないだろう。
間島は、由紀也の図星を指すように、
「息子がいつも、お世話になっております」
と、頭を下げた。
どこまでも、穏やかな物腰だった。
「いえいえ、こちらこそ――」
由紀也は後ろめたさといっしょにわいてきた、おかしみをこらえながら、
やはり鄭重に頭を下げた。
息子さんとエッチなコトを愉しませていただいて・・・
とは、さすがに口が裂けてもいえないな、と思いながら。

「うちの息子とは、どれくらいの頻度でお会いになられているのですか」
何気なくそんなふうに問われて、「数日に一回です」と思わずこたえてしまったが、
間島はそんなことは先刻ご承知なのだろう、一瞬ひやりとした由紀也の顔色の変化を受け流すと、いった。
「どうぞいつでも、逢ってやってください。しょうしょう変わったことをするやつですが、貴方にも、ご家族にも、決して悪気はないのですから」
なにもかも知り抜いた意識の持ち主が、淡々と言葉をつないでゆくのを、由紀也はぼう然として聞き入っていた。

この男性の息子を、自分は日常的に、女として接しなおかつ犯している。
けれどもあべこべに、この男の息子は、自分の靴下を咬み破り、足許からいやらしい音を洩らして、吸血をくり返している。
「どちらが上とか、下とか、決められないですね。強いて決めることもないでしょう。
 互恵的な関係というのは、そういうものですから」
男女のそれと、変わりありませんな、と、達也の父はいった。
お父さんにお嬢さんとのお付き合いを認めてもらえた――ひそかにそんな想いが、由紀也の胸をよぎった。

「はじめに、わたしのほうの恥をさらしておきますね」
なにかにつけて後ろめたい気分をよぎらせるのを察したのか、
間島はそれまでのことを、問わず語りに語りはじめた――


2.達也の父の問わず語り

ここへ来て、たしか一週間ほど経ったころのことでした――
「あなたのところも似たり寄ったりなのでしょうけれど」と前置きして、間島は語った。

最初に咬まれたのは、息子でした。
ある日、部活帰りにユニフォーム姿で襲われて、グリーンのストッキングを履いたふくらはぎに血をべっとりと着けて、べそをかいて帰宅したのです。
家内がびっくりして息子を迎え入れると、息子の背後には男がいました。
息子を襲った男でした。
男は息子の身体から吸い取った血を、まだ口許にぬらぬらと光らせていて、
唇の両端から鋭く尖った犬歯を覗かせていました。
その犬歯は、家内のことまでも狙っていたのです。
息子の血が気に入ったので、きっと家内にも興味をもったのでしょう。
自分の息子を咬んだ牙が自分の身をも狙っている――と家内が気づいたときにはもう、遅かったのです。
家内は玄関先で抑えつけられて、首すじを咬まれてしまいました。

行儀の良い家内は、家のなかにいても、スカートにストッキングを身に着けていました。
それがむしろ、あだになってしまったのです。
わが家を襲ったその吸血鬼は、礼装を着けたご婦人を好んで襲っていました。
ご承知のように、
街はずれの寺で行われる法事が、彼らのかっこうの餌食とされているくらいですからね・・・
都会育ちの人妻であり行儀のよい家内が、彼の目にとまってしまったのは、
いま考えると、いたしかたのないところ、というよりも、もっともなでした。
”運命”というやつですね。
いまではわたしも、それを受け容れています。ええもちろん、こころよく――

首すじを咬んで一定量の血液を摂取されてしまうと、もう身動きできなくなるのです。
身体的にも。精神的にも。
痺れた頭を抱え込むようにして悶える家内を抑えつけ、
吸血鬼は恥知らずにも、ストッキングを穿いた家内の脚を咬んだのです。
不埒な唇が家内のストッキングを唾液で濡らし、舌触りを愉しまれてゆくのをありありと感じながらも、
家内はどうすることもできませんでした。
そのまま男に、自身の装いを愉しませてしまったのです。
わたしは、家内が不意の客人を愉しませたことを、賢明な判断だったと思っています。
相手の好む飲み物を、身をもってもてなしたわけですからね。
客人をもてなすという、当家の主婦としての役割を、きちんと果たしたのだと思います――

チリチリに咬み剥がれてしまったストッキングを脱がされた女の運命は決まっていました。
その場で犯されてしまったのです。
そう、息子の視ているまえで。
息子はといえば、咬まれた首すじや足許を痛痒そうにこすりながら、
母親の受難に見入っていたそうです。
自分の衣装を剥いで胸もとをまさぐりはじめた吸血鬼の情欲よりも、
好奇心に満ちた息子の視線のほうが怖かった――あとで家内からは、そんなことを聞かされました。

じつは息子が咬まれたのは、この日に始まったことではなかったそうです。
はじめから、相性が良かったのでしょう。
下校途中に初めて襲われたとき、あの濃いグリーンのストッキングを咬み剥がれながら。
息子は彼とすっかり、意気投合してしまいました。
そしてそのとき、咬み剥がれたストッキングを脱がされてゆきながら、
息子は自分を襲った吸血鬼に約束をしたのです。
制服や部活のユニフォームの一部であるハイソックスを、いまのいやらしいやり方で愉しませてあげよう――と。
日常洗濯ものをしている母親に、靴下を何足も破かれていることがばれても困らないよう、
母親までも味方に引き入れたい。
息子はとっさにそう感じたそうです。
吸血鬼氏もまた、たまたまなにかの席で見かけた家内のフォーマルな装いに気を惹かれていましたし、
いま息子の血を口にして、その母親の生き血にも、当然にょうに興味をもったのです。
両者の意見はすっかりかみ合いました。
そして息子は吸血鬼と示し合わせて、母親の生き血を欲しがる彼のことを、家に呼び入れたというわけだったのです。

「ほんとうに、困った子ね・・・」
家内は声を詰まらせてそういいながらも、スカートの奥に淫らな粘液をはじけさせる情夫のやり口を、なすすべもなく受け入れていきました。
わたし以外の男は初めてだったそうです。
そんな初心な家内が、手練れの吸血鬼の求愛をしのげるはずはありません。
永年守りつづけてきた貞操を汚されてしまったことを悲しむ時間は、そう長くはなかったそうです。
家内はその場で自分の血を吸い犯した男にぞっこんになってしまって――そう、忌むべき恋に目ざめさせられてしまったのです。
「母さんが幸せになったんだから、良いじゃん」
と息子は言いますし、いまではわたしも、息子と同感なのですが――
わたしがなにも知らないでいるうちに、息子は吸血鬼のファンになり、家内は同じ吸血鬼の奴隷に堕ちていたのでした。

なにも知らない人間に、なにもかも知っている人間がどんなに愉快な優越感を覚えるか、おさっしになれるでしょう?
わが家がまさしく、そうでした。
ふたりはわたしが勤めに出かけてゆくと、示し合わせて吸血鬼を自宅に呼び入れて、
代わる代わる血を吸われ、女が男にされるように犯されていったのです。

やがて恋に落ちた家内は、吸血鬼と片時も離れたくなくなって、家を出ていきました。
「私、吸血鬼の愛人になりますから」
と、息子とわたしとに言い置いて。
わたしは家内のことを、送り出してやるしかありませんでした。
「いつでも帰ってきなさい」とくり返しながら。

家内がいなくなって数日後、勤め先から帰宅したわたしを出迎えた息子は、
驚いたことに、家内の服を着ていました。
サイズがちょうどぴったり合ったのです。
もちろん、息子の方が肩幅がありますし、ストッキングで装われた足許は、ごつごつとした男性的な筋肉に覆われていましたが――
けれどもその風情が、なんとなくむしょうに、わたしのことをそそってしまったのです。
気がついた時には、息子をリビングのじゅうたんの上に押し倒していました。
そして、家内との間につい最近まで交し合っていた熱情を、
あろうことか、家内の服を身に着けた息子を相手に、赤裸々にぶつけていったのでした。

息子は意外にも従順に、わたしを受け容れました。
さいしょから、そのつもりだったみたいでした。
男が男を愉しませるとき、どんなふうに振る舞うものなのか、
息子の身体は明らかに、覚え込まされていました。
吸血鬼に躾けられたのだと、あとで息子は教えてくれました。
息子のヴァージニティを勝ち得たのは、同性であるはずの吸血鬼だったのです。
「小父さんの身体は、素晴らしいよ。母さんがまいっちゃうの、無理ないと思うけどな」
息子はそういって、家内のことを弁護しました。
妻を奪ったわたしのことを気にした吸血鬼が、息子にわたしの相手をするよう指示したのだ――とも、きかされました。
わが家は完全に、吸血鬼の掌中に堕ちていたのです。

いつまでも家内をあのままにおいてはいけない、家庭崩壊になってしまう。
なによりも、吸血鬼に魅入られた家内を盗られっぱなしでは、世間の通りがよくないではないか――そんなふうにわたしは考えました。
姑息なやつだと、お笑いください――

「しばらくのあいだは、いいよ。ぼくが母さんの代わりを務めてあげるから。小父さんからの指示なんだ」
――長年連れ添った奥方を取り上げられたら、さぞかし寂しいことだろう。
――わしは一週間かけてきみの母さんを仕込んでおくから、
  そのあいだはきみが、お父さんを慰めておやりなさい。
吸血鬼は息子に、そう命じたそうです。
「あのひとたちは、ただ獲るだけじゃないんだ。ちゃんと考えていてくれるんだ」
息子のいいぶんをもっともだと思ったわたしは、
家内の口紅で綺麗になぞられた息子の唇に、自分の唇を恋人同士のように重ね合わせていったのです。
「しばらくのあいだ、母さんはあのひとにお預けしよう。でもいつか、きちんと迎えに行こう。そのあいだは、代役をお願いするよ」
そう囁くわたしをくすぐったそうに受け流すと、息子は言いました。
「母さんが戻って来てからも、母さんが恋人と逢うときには、いまみたいにいっしょに愉しもうね♪」

恥ずかしいお話を聞かせてしまいましたね、と、間島はいった。
けれども、由紀也は彼の告白を、恥ずかしいだけのものだとは受け取っていなかった。
むしろ、妻も息子も吸血鬼にたぶらかされ、息子との同性愛の関係を愉しみながら妻の不倫を受け容れその帰宅を待ちつづけた間島の告白が、肯定的な表現で彩られていることに驚いていた。
間島の寛容な態度にほだされるように、つい口走ってしまった。
「貴男と息子さんの関係は、よく理解できますよ。息子さん、いい身体していますよね」
「ああ」
間島の顔つきが、さらにほぐれた。
「そうおっしゃっていただけますと、嬉しいですな。どうぞ仲良くしてやってくださいね」
息子を犯されても嬉しい――間島の態度はそう告げていた。

「奥さんとは、その後は・・・?」
由紀也が問うまでもなく、間島は言葉をついでゆく――

家内がいないのはそれでも、わたしにとっては耐え難いことでした。
さほど夫婦仲がよかったわけではなく、都会を出てこの街に流れてきたときにはむしろ、冷え切っていました。
どうしてもかつての夫婦関係を取り戻したかったわたしは、時おり家内に強引に迫って、夫婦の営みの熱い刻をもとうとしましたが、
強いられた行為はますます、家内の心を遠くに追いやっていったのでした。

息子のいないある晩のこと。
わたしは、息子のまねをして、家内の服を身に着けてみました。
よそよそしくまとわりついたブラウスに、わたしの体温が行き渡ってなじんでくるのに、そう時間はかかりませんでした。
リビングのじゅうたんの上に横たわったまま、わたしはつい、うたた寝をしてしまいました。
どれほど刻が経ったものか――
ふと気がつくと、あたりは暗くなっていて、だれもいない室内で、わたしは上からのしかかる重圧感にあえいでいました。
わたしを抑えつけていたのは、この家から家内を連れ出していった、あの吸血鬼でした。
男はなにも言葉にしようとはせず、女のなりをしたわたしのことを、万力のような力で抑えつけて、首すじに牙を埋めてきたのです。

圧しつけられた唇の向こうで、わたしの血潮がはじけるのがわかりました。
ごくっ。ぐちゅうっ。
汚らしい音を立てて、男はわたしの血を飲み込んでいきました。
強制的な採血行為に、わたしは殺される!と思いました。
けれども男の意図は、そうではなかったようです。
男がわたしの血を気に入っていることが、すぐに伝わってきました。
――モウ少シ時間ガ欲シイ。達也ノ父親デアル貴方ノ血ハ、私ノ嗜好ニ叶ッタ味ダ。
そんな意思が、二の腕やわき腹にしつようにくり返されるまさぐりからも、伝わってきました。
わたしは身じろぎひとつならず、いや、身じろぎひとつせずに、彼の相手を務めつづけました。

吸血行為が終わるころには、わたしたちはもっと打ち解けた感じになっていて、
男がわたしの血を旨そうに飲むのをわたしは拒もうとはせず、
身に着けていた家内の服にしかけられた不埒な悪戯にすら、応じていったのです。
気がつくとそのころにはもう、わたしは妻の情夫に調教されてしまっていたのでした。
わたしは家内がそうされたように、ストッキングの脚を舐められ咬み破らせてゆき、
股間を狙って沈み込んでくる逞しい腰を、女のように受け入れていったのです。

物欲しげな掌が、家内のブラジャーやスリップを引き裂いて剥ぎ取ってゆくのを。
男の逞しい臀部が、スカートの奥に肉薄してきて、わたしの股間を冒すのを。
わたしはなんの抵抗も感じないで受け入れていきました。
ちょうど同じじゅうたんのうえ、息子がわたしの劣情を従順に受け止めたように。
そしてそのすこし前、家内が男の性欲に、寛大に接したように――
女役は、初めてでした。いつもは息子を女として愉しんでいましたから。
けれども初めて女として抱かれることで、限りない歓びに目ざめてしまったのです。

行為がすむと、わたしはいいました。
「家内のしたことは、正しかったと思っています」
「きみのしたことも、賢明だったと思う」
彼はおうむ返しに、そういいました。
「さいしょから相性が良いと直感したのです。ええもちろん、貴方も含めてです。
 わしは人の生き血に飢えていました。その時分は、まだ獲物が少なかったからです。
 そこに、都会から越してきたばかりの息子さんが現れた。
 息子さんのスポーツ用ストッキングのふくらはぎに、わしは一目惚れしたのです。
 しなやかなナイロン生地のリブ編みが整然と流れるストッキングを血で濡らしながら、
 スポーツで鍛えられた若い血潮に酔いしれたい――
 そんなことを熱望したのです。
 スポーツマンの息子さんは、そんなわしに同情して、若い血液を気前よくわけてくれた。
 ユニフォームの一部であるストッキングも、惜しげもなく愉しませてくれた。
 そして、わしが女好きなのを見て取ると、
 母さんを紹介してあげようか?とまで、誘ってくだすった。
 奥さんに初めてお目にかかって、貴女の血が欲しい、貴女を犯したいとお願いすると、
 息子のお友だちでしたら歓迎しますといってくだすった。
 それから、わしのことを気の毒がって、
 高そうなブラウスの胸を御自分から見せつけて、剥ぎ取らせてくだすった。
 「少しくたびれていますけど、一応都会の人妻なんですよ」と、笑いながらね――

わたしは、吸血鬼の告白のいくばくかは作り話だと感じました。
けれども、作り話であっても構わない、とも感じました。
家内も息子も二人ながら彼に血を吸い取られてしまったことを、わたしは悲しんではいない。
むしろ、いま置かれた現実を愉しんでしまっている――そんなことに気がついたのです。
女の姿で抱きすくめられ、しつような吸血を受けたわたしも、目ざめてしまっていたのです。
彼はわたしの身に着けた家内の服を、わたしの身体もろとも愉しんでいきました。
一家の長としてのプライドとか、勤め人として当然気にするべき世間体とか、もはや忘れ果ててしまっていました。
もはや、プレイのような愉しみしか、そこにはありませんでした。

わたしの血に濡れた家内のワンピースを剥ぎ取られ、せしめられてしまっても。
彼が好みの戦利品を獲たことが彼のために嬉しい――
そんな気持ちがしぜんと湧いてきました。
そしてわたしは、もう一着妻の服を箪笥の抽斗から取り出すと、それを身に着けて、彼のあとへと従ったのです。


彼の邸は街はずれにあって、鬱蒼としたツタに壁じゅうを覆われた洋館でした。
その一室一室に、拉っしさられた人妻や娘が、宿っていました。
家内もそのなかで、一室をあてがわれていました。
そのお邸のじゅうたんを初めて踏みしめたとき、わたしはハイヒールを穿いていました。
そう、白昼女の姿で家からお邸までを歩いて通り抜けてきたのです。
ご近所の目を気にも留めないで。
そしてすれ違うご近所の方々もまた、女の姿をしたわたしのことを、なんの違和感もみせずに受け入れて、いつもと同じように親し気な会釈を返してきたのです。

わたしは女としてその邸を訪れ、吸血鬼氏に囲われて、一週間を過ごしました。
隣室に宿る家内と入れ替わりに、代わる代わる、吸血鬼に生き血を捧げ、女として抱かれていったのです。
そして、約束の一週間のお勤めを終えて一足先に帰宅した家内に迎えられて、わたし自身も帰宅しました。
「ご配慮に感謝します」
家内はわたしにそう告げました。
吸血鬼氏との交際を認めたことに対する、女としての感謝なのだとすぐにわかりました。
不器用なわたしは、能弁に受け答えをすることはできませんでした。
ただ、「きみの恋に協力したい」とだけ告げたのです。
以来、お互い、自分の発した言葉に忠実に、日常を過ごしているのです。


間島の話はショッキングだったが、由紀也にとってはひどく新鮮でもあった。
「うちも、そんなふうになれるでしょうか?」
知らず知らず、由紀也はそんなことまで口にしてしまっている。
「もちろんですよ、さあ行きましょう」
間島は由紀也を唐突にさそった。
「どこへですか」
「あなたの奥さまの、情夫さんのところへ」


3.由紀也、吸血鬼と対面する。

そのあと彼の身に起こったことを、由紀也は忘れないだろう。
間島が女として棲み込んだというその邸は、真夜中でもこうこうと灯りがついていた。
迎え入れてくれた吸血鬼は、由紀也の顔見知りだった。
取引先として、日常接している男だった。
そして、薄々由紀也が、妻との関係を疑い始めていた相手でもあった。
「ご明察だったようですな」
吸血鬼は、悪びれもせずに、いった。
「奥さんと息子さんには、世話になっております」
悪びれない告白は、むしろ落ち着いた声色で語られた。
「話は伺いました」とだけ、由紀也はいった。
「貴男とはこれから、どんな風に接してゆけばよいのでしょうか?」
「いままでどおり、お仕事上の取引先だと思ってくだされば、それでよろしい」
「きょうは取引先に求められて、血液の摂取に応じる――ということで好いわけですね」
「そういうことになりますな」

吸血鬼は、由紀也に女装することを、あえて要求しなかった。
「いまのお姿が貴男の本意だというのなら、それがいちばんよろしい」
そういって、勤め帰りのスーツ姿のまま、やおら首すじに咬みついてきたのだった。
咬まれた瞬間、息がとまった。
物凄い衝撃のために である。
くらくらと眩暈がした。
ただ不快なだけの眩暈ではなく、性的なものがぐるぐると渦巻くのを感じた。
とうてい、自分が排除できる相手ではないと、実感した。
なによりも。
いまの快感からわが身を引き離すことが不可能になっていた。
男が首すじから唇を離したとき、たしか「もう少しどうぞ」と言ってしまったような気がする
男はそれに対して、「すこし違いますな」と指摘してきたはずだ。
そして自分から、「もう少し、吸ってください、お願いします」と、告げてしまっていた。
男はふたたび無抵抗な首すじに唇を這わせて、今度は別の部位を食い破った。
そしてごくごくと喉を鳴らして、由紀也の血をむさぼった。
このまま吸い尽くされてしまっても、それで良い――とまで、由紀也はおもった。

しつように吸いつけられてくる唇が、由紀也の素肌を愉しんでいると告げていた。
ゴクゴクと貪婪に鳴る喉が、由紀也の血の味に満足していると告げていた。
抱きすくめてくる猿臂が、由紀也自身に執着していると告げていた。
寝取った人妻の亭主を支配する。そんな強欲な劣情を越えた好意が、
由紀也の身体じゅうの血管を、毒液のように浸していった。

けれども彼がわれに返ると、
強い眩暈を覚えながらも、まだ意識を保っている自分自身を、訪問先の邸のじゅうたんの上で見出していた。

頭上に煌々ときらめくシャンデリアが、ひどく眩しい。
「いかがです?」
ひとしきり由紀也の身体から血を吸い取ると、あお向けになった由紀也を、吸血鬼は上から見おろしていた。
「わたしは邪魔者ではなかったのですか」
いまここで由紀也の血を吸い尽くしてしまえば、和江も保江――保嗣――も独り占めにできる。
けれどもあえてそうはしないで、由紀也の生命を、彼は奪おうとはしなかった。
「貴方には、生きてもらいます。奥さんのストッキング代と息子さんのハイソックス代を稼ぐ人が必要ですから」
吸血鬼の諧謔に、二人の男は、ははは・・・と、乾いた声でわらった。

「いつもの取引とは、だいぶ違いましたね」
「そうですね。一方的に恵んでいただいたので」
「家内と息子も、恵ことにしますから」
「それはありがたい」
すでにせしめてしまっているのですから、わたしがいまあさら 認めるもなにもないのかもしれませんが――
と言いかけると、みなまで言うな、と、吸血鬼は目くばせでこたえた。
「いまのわたしに、後悔が残るとしたら――」
「ええ」
「家内と息子を、わたしの意思で差し上げることができなかったことです」
吸血鬼はにんまりと笑った。
「イイエ、奥方とご令息とは、いま、あなたのご意思でいただいたのだと思うことにしましょう。奥さまの貞操も。息子さんのヴァージニティも」

吸血鬼が今度は、由紀也の足許にかがみ込んでくる。
達也と同じく、くるぶしの透けた足首に、眼の色を変えているのだ。
由紀也はひと息深呼吸をすると、ねぶりつけられてくる舌を這わせやすいように、脚の向きをゆるやかに変えていった。
「きょうの奥方は、黒のストッキングじゃった。あんたも黒でもてなしてくださる。
 夫婦おそろいというわけですな」
冷やかすような囁きを、由紀也はくすぐったそうな顔をして、受け流す。
ぴちゃ、ぴちゃ・・・という唾液のはぜる音が、悦んでいた。
由紀也は妻と息子の仇敵に自分の装いを辱められ愉しまれてしまうことに、じょじょに耽り込んでいった。

それからどれくらい、刻が経ったのだろうか。
だれもいなくなった薄暗いリビングで、由紀也は目ざめた。
彼は身を起こすと、血の抜けた身体をいやというほど実感しながら、あたりを見まわした。
カーテンのすき間から、夜明けの薄明が透けている。

血潮のこびりついたワイシャツに、お尻を喰い裂かれたスラックス。
ネクタイと靴下は、取り去られ持ちさられていた。

この格好で帰宅したら、妻はなんと言うだろう?
そんなことを考えながらも。
和江はきっと、なにも言うまい。
根拠のない確信が、由紀也の胸を満たしていた。

3月23日構想

女の装い 男の装い

2020年03月22日(Sun) 21:56:58

「お疲れ~♪お先っ」
畑川由紀也とすれ違いざま、そのOLは肩までかかる栗色の髪を揺らしながら軽い会釈を投げてきた。
ひざ上丈の空色のタイトスカートのすそから覗く太ももが、てかてかとした光沢のストッキングに包まれて、眩しい。
「あ、お疲れ・・・」
由紀也もまた何気なく、彼女に声を帰してすれ違ってゆく。
ぱつんぱつんのタイトスカートに輪郭をくっきりさせたお尻を軽く振りながら立ち去る彼女のしぐさから、
自分のもつ抜群のプロポーションに対する自身が透けて見えるようだ。

大鳥真央と名乗るそのOLは、実は男性社員である。
当地に赴任してすぐ、御多分に洩れず妻を篭絡された後。
女装に目ざめて、いまでは女性社員として勤務している。
少し派手派手しいOL服は、妻のOL時代の服だという。
いったんすれ違った大鳥真央は、くるりと踵を返して戻ってきて、由紀也に追いついた。
そのまま肩を並べて歩きながら、真央は由紀也にそっと告げる。
「奥さん、吸血鬼とラブラブなんですって?おめでと♪」
正体を知らなければ、それとはわからないほど。
真央の言葉遣いは、むっとするほどセクシーだった。
「ああ、ありがとう」
妻本人にもまだおおっぴらに認めていない関係を表立って祝われて、
それでもごくしぜんに受け入れてしまっている自分自身を、由紀也は訝しく思ったけれど。
いつか妻ともこんなふうにスマートに彼女の不倫を語れるといいな・・・と、ふと思った。
「お二人に気を使って、いい子にしているのね。ご褒美にこんど、あたしがセックスしてあげようか」
真央は口紅のよく似合う厚い唇に、笑みをたたえた。
艶やかだ――と、由紀也は思う。
男が視ても。男だとわかっていても――
「あ、でも由紀也クンには、若い男の子がいるんだもんね。彼、きょうも来るかしら?」
真央は由紀也をからかっただけだったらしい。
再びくるりと回れ右をすると、彼女は背すじを伸ばして後も振り返らずに立ち去ってゆく。
カツカツとハイヒールの足音を硬く響かせながら。

真央はまっすぐに、家路をたどるのだろうか?
情事に耽る真っ最中の妻がいる自宅に。
それとも――
ほかの同僚たちがそうしているように、オフィスの打ち合わせスペースを使って、訪ねてくる吸血鬼と愉しいひと刻をすごすのだろうか。
幸か不幸か、由紀也は後者に属していた。
「小父さんの血を飲みたいから、会社で待ってて」と、達也から電話があったのだ。

「待った?」
がらんとしたオフィスのなかに由紀也をみとめると、達也は白い歯をみせた。
グレーの半ズボンの下、ひざ下ぴっちりに引き伸ばされたおなじ色のハイソックスが、オフィスの照明を照り返しツヤツヤとしている。
由紀也は股間に昂りを覚えながら、達也のほうへと足を向けた。

「穿いてきてくれてたんだね?やっぱり来てよかった」
達也に近寄ると、彼は再び白い歯をみせて笑った。
由紀也のスラックスのすそから覗くくるぶしが、薄手の黒の靴下に透けているのを、目ざとくみとめたらしい。
「見せブラみたいで好いな♪」
達也は由紀也をちょっとからかいながらそういうと、けれども言葉が本音であることを証明するように、さっそくのように目の色をかえて足許に飛びついてきた。
「来てくれるのなら、愉しませてあげようと思ってね」
くるぶしにあてがわれる舌の熱さを覚えながら、由紀也は大人の余裕で達也の仕打ちを受け流す。
履き替えも持っているから、気が済むまで愉しみたまえね、と、由紀也はつけ加えた。
達也のみせた白い歯には、自分の血の色がよく似合う――
由紀也は下品な舌なめずりにゆだねた足首にヌメる舌の感触にドキドキしながら、ふとそんなことをおもった。

達也がオフィスに来るということは、妻の和江は吸血鬼の来訪を受けているということなのだろう。
もしかすると、和江のほうから彼の住処を訪問して、まだ帰宅していないことも考えられた。
「ご明察、和江さん、彼氏と逢っているよ。隣の部屋から保江とのぞき見してたんだ」
保江とは、保嗣の女子生徒としての名前だった。
本名と母親の名前とを組み合わせて作った名前――女子の制服を買うと決めたその日に、息子から教わった名前だった。
息子の名前を女の名前に変えて呼び捨てにされても、さいしょのときほどに心が波立つことはない。
なによりも。
達也は息子を恋人にしていた。
息子を達也が最愛の人にふさわしい扱いをする限り、この吸血少年のなかに由紀也父子を侮蔑する感情はわかないであろう。

「小父さん、ノリがいいから好きだよ。さいしょのときから、薄い靴下の脚を積極的に愉しませてくれてたものね」
血に飢えた少年が、由紀也の穿いている靴下と、靴下越しにありありと感じるふくらはぎの皮膚の双方に執着していることが、しつような舌遣いでそれとわかった。

妻が吸血鬼に堕落させられるのと、息子が女性化するのと。どちらが屈辱的な出来事だろう。
いや、自分自身にしてからが。
その双方に関わった呪わしいはずの少年の手にかかって、
皮膚も、その下をめぐる生き血も、玩ばれてしまっている。

ソファの間近かで組み敷かれた由紀也は、首のつけ根に痛痒いものがもぐり込むのを感じた。
引き替えに、じわっと生温かい液体が噴きこぼれ、ワイシャツのえり首を濡らしてゆく。
首すじに回り込んだしたたりが、ワイシャツの裏側にすべり込んで、
アンダーシャツまで生温かく染めてゆく。
なのに由紀也は、いっさいの抵抗を放棄して、この吸血少年の貪婪な欲望に自らをゆだね切ってしまっている。

半ズボンを脱いで濃紺のハイソックスの脚を突っ張った少年の一物が、股間を冒した。
思うさま排泄された粘液に生温かく浸されながら、由紀也の一物も逆立っていた。
そして今度は少年を組み敷くと、逆に彼の股間を冒しにかかった。
少年は薄笑いを泛べながら、わざと力をゆるめた抗いで男の劣情を逆撫でにかかった。
じょじょに相手の侵攻を許していって、最後にはしつようで力強い吶喊に身を任せていった。
この吸血少年はしたたかにも、父親と息子とを、同時に手玉に取っていたのである。

血を吸い取られる感覚に陶酔を覚えながら、由紀也はおもった。
真央のように女を装って吸われるのと、男の姿のまま吸われるのと、意味は同じなのだろうか?と。
息子は女の姿になってしまった。
けれども由紀也自身は、いまのままの姿で吸われ捧げるほうが、自分にぴったりとくるような気がしていた。

2月3日構想

ビッチと淑女

2020年03月22日(Sun) 19:38:34

この街に移り住んできたときからの友達だった。
引っ込み思案な性格で、都会では友達ひとりできなかった保嗣は、達也の存在に夢中になった。
彼がじつは吸血鬼で、クラスのだれもがその事実を知っている――そう告白されても。
保嗣の達也に対する友情は、変わることがなかった。

部活帰りに襲われて吸血鬼になったという達也は、
自分が初めて咬まれたときのように、長い靴下を履いた脚に咬みついて吸血することを好んでいた。
半ズボンにハイソックスという、この街の学校のユニセックスな男子制服は、かっこうの餌食だった。
保嗣は達也の好みを理解すると、ずり落ちかけていたハイソックスを引き伸ばすと、ためらいもなく血に飢えた友人のほうへと差し伸べていった。

吸いつけられる唇を。
咬み破かれるハイソックスを。
しなやかなナイロン生地のうえに生温かくしみ込んでゆく、赤黒い血潮の拡がりを。
息をつめ夢中になって、見つめていた。
保嗣の血潮に秘められた優しい心遣いは、達也にストレートに伝わった。
唇をうごめかして血を啜る達也は、保嗣をギュッと抱きすくめて、
その抱きすくめられた熱情が、こんどは保嗣にストレートに伝わった。
お互いの熱情を伝えあい、受け止めあいながら。
ふたりはいつか、互いに互いの唇をむさぼり合うようになっていた。

男子の姿で抱かれて血を吸い取られているその時分には。
まだしも、節度や品位といういものが、あったように感じる。
初めて女子の制服を身に着けて登校したとき。
眼の色を変えて迫ってきた達也は、
自分の恋人が吸血鬼に吸われるのすらかえりみず、
ひたすらに、保嗣を求めていった。
求められるままひざを割られ、スカートの奥深くまで、ごつごつとした太ももの侵入を受け容れて。
半ズボンを脱ぎ合って睦み合うことを覚え込んでしまった身体は、しぜんと反応を重ねていって。
ふたりの男子のまぐわいは、いまは男女のまぐわいと何ら変わらないようすで、進行していったのだ。

そのあとの授業はもう、当然のことながら手につかなかった。
教室には戻ってみたものの、
授業の最中に出ていったふたりのあいだになにがあったのか、男子生徒も女子生徒も、だれもが理解しきっていて。
もちろんそんなことはおくびにも出さず、授業に励んではいるのだけれど。
目に見えない視線が自分を押し包む感覚を、もうどうすることもできなかった。

達也も同じ思いだったらしい。
つぎの授業も、またつぎの授業も、途中で保嗣をいざなって廊下に連れ出すと、
今度は授業中のクラスのまん前の廊下で、保嗣を組み敷いていったのだ。
思わず漏らしてしまった声は、筒抜けになっていたはず。
けれどもクラスメイトのだれもがそのことを咎めもしないばかりか、
入れ代わり授業にやって来る教師さえもが、ふたりの行動に視て視ぬふりを決め込みつづけたのだった。

スカートの奥に突き入れられた衝撃の余韻に、股間を熱く浸されたまま。
保嗣は教室をあとにし、家路をたどった。

女の身なりに服装を変えただけなのに。
いったいなにが、起こったというのだろう?
もはやそこには品位も節度もなく、
ただ”ビッチ”(牝)の振舞いが、そこにあるだけだった。

いままでも男子の姿で、そういうことをしてきた。
けれども、女の姿でするそれは、なにかが根本的に違っていた。
ごくおだやかに献血をし、
もっと性的な交接の時も、息を弾ませ合った昂りはあったけれども。
女と男になってしつように手足を絡ませ合ったあのひと刻は、
それらすべてを洗い流してしまうほどの力を持っていた。

けれども、ふと歩みをとめて保嗣はおもう。
ビッチと淑女とは、なにがどれほど違うというのだろう?



保嗣が目指した自宅では。
母親の和江が、家に上がり込んできた吸血鬼との情事に、淫らな汗を流している真っ最中だった。
激しい息遣いのもとに迫られ、肌をこすり合わせた挙句。
着乱れた黒のスリップの肩紐は、片方が二の腕にふしだらにすべり落ちて、
穿いたまま姦(や)れるからと情夫を悦ばせた黒のガーターストッキングは、これも片方がひざ小僧の下までずり降ろされていた。
すでに肌色のパンティストッキングは一足残らず、情夫の牙にかけられていて。
くしゃくしゃにされてむしり取られて戦利品としてせしめられるか、屑籠のなかへと堕ちていった。
派手になったのは、下着だけではない。
いままでの装いは、薄茶とか空色とか、地味なものが多かったはずなのに。
そうしたブラウスたちは襟首に血をあやしたまま情夫にせしめられていって。
入れ代わりにあてがわれた衣装は、真っ赤やショッキング・ピンクといった刺激的な色合いが増えている。
夫のいる夕方に呼び出されたとき。
指定された真っ赤なミニのワンピースに、てかてか光る黒のストッキングのイデタチで玄関に立った時。
背後で夫がなにか言おうとしてすぐさま口を噤(つぐ)んだのを。
上首尾にも外出の許可をいただいたんだわと思い込むほど、したたかな女へと変貌し始めていた。

息子はきっと、味方になってくれるに違いない。
彼女にはそんな確信があった。
だって、初めて吸血鬼が自宅に侵入をする手引きをしたのは、ほかならぬ息子だったから。
彼は彼の友人である吸血少年を伴っていつものように下校してきて、
更にもう一人ともなった招かざる客人が、母親の貞操を清楚な衣装もろともむしり取るのを、ふすまの向こうからのぞき見していた。
息子は母親に対する凌辱行為を妨げようとしなかったばかりか、
自分の痴態を目の当たりに昂りを覚えたうえに、同伴してきた同性の親友と、男女どうぜんのまぐわいを熱っぽく交し合ってしまったのだ。

それ以来。
帰宅してきた息子が、母親が情夫との名残を惜しむ時間が少しばかり長くなったからといって、視て視ぬふりを決め込んでいた。
多くの場合は同性の恋人を伴っていて、二階の勉強部屋や、
ときには母親が情婦にされたその日と同じように隣室のふすまの陰から視線を送ってきて、昂りをより深いものにしているらしかった。

「ああ、帰ってきた・・・」
和江が鈍い声で呟くと、吸血鬼はまさぐる手を止めかけたが、すぐに思い直して、
さっきよりも濃いまさぐりを、
胸許に。わきの下に。股間に・・・と、探り入れてくるのだった。


きょうの息子の居場所は、夫婦の寝室のすぐ隣らしかった。
ドア越しにかすかながら洩れてくる物音が。
ふたりの少年が組んづほぐれつしているところを、リアルに想像させた。

かつて名流夫人と謳われた和江だが。
もはや吸血鬼との情事を恥じる気持ちさえ、忘れ果てようとしていた。

身に着けていたモノトーンのプリントワンピースは、貞淑だったころからの数少ない生き残りの衣装だった。
それが、襟首に血潮を散らし、すそを太ももが見えるほどたくし上げられて、
着崩れさせた衣装から、素肌を挑発的に露出させた、さながら娼婦の装いとなっていた。
足許を清楚に装っていたはずの黒のストッキングは、淫らな唾液にまみれ、くしゃくしゃにされて、
ふしだらな皴を波打たせてずり降ろされていた。

清楚な名流夫人のおもかげは、もはやあとかたもなかった。

いつからこのような、”ビッチ”になってしまったのだろう?
清楚な装いを淫らに堕とされて。
辱められることが歓びに変わり、
清楚な装いを不埒な情夫を悦ばせるために身に着けるようになって、
篤実な勤め人の妻としての良妻賢母の装いの下には、淫らな娼婦の血潮が脈打っている。

けれども、”ビッチ”と”淑女”のあいだに、どれほどのへだたりがあるというのだろう。
清楚な装いを剥ぎ取られ、あっさり堕ちてしまった私――
それなのに、いまは情夫を悦ばせるために、あえて清楚に装って歓心を買おうとしている私――
そう、なにもかもが、紙一重なのだ。

息子は、男と女のへだたりをさえ、とび越えてしまっている。
私が、淑女から娼婦へのへだたりを駆け抜けるくらい、なにほどのことがあるのだろう?

3月15日構想

女装で登校。

2020年03月15日(Sun) 00:35:11

しゃなり、しゃなり、と。
音がまとわりつくように感じた。
初めて女子の制服を身に着けて、玄関を出たときのことだった。
母親の和江に見送られて家を出ると、保嗣はほうっと息をついた。
深呼吸で吸い込んだ冷気が、肺の奥まで沁みとおった。
達也は校門の前で待っている約束だった。
そこまでは、女子のカッコウで一人で歩く。
羞恥プレイみたい・・・と思いながらも。
独り言さえ女言葉になっている自分に気がついて、ちょっと嬉しかった。

いつもの半ズボンと同じように太ももを外気に曝しながらも。
まとわりついてくるスカートのすそが、ひざ小僧のあたりをひどく刺激していた。

見慣れた通学路が、別世界にみえる。
すれ違う人たちのなん人かは、保嗣の正体に気がついたのか、チラと目線を投げてくる。
そのたびにちょっとビクビクしてしまったけれど。
校門で待っている達也のことだけを考えて、保嗣――いや保江は、いっしんに通学路をたどった。

「よう」
達也がにんまりと笑って、こちらに向かって手を振った。
思わず淑やかに、お辞儀で返していた。
揺れるウィッグが頬に触れて、女の姿をしていることをいっそう実感させる。
「似合うじゃん。期待以上♪」
達也のピースサインに「そお?」と、保江は満足そうに笑った。


「起立!」「礼!」で始まる朝礼とホームルームは、いつも通りだった。
暮らしメイトのなん人かは、きのうまでと様変わりした保江のイデタチに、ちょっとびっくりしたように目を見張ったが、傍らの達也を意識してか、からかうものもおらず、声をかけてくるものもいなかった。
周囲の無反応が少しもどかしいくらいに感じていたら、
隣席の田中将人が声をかけてきた。
「やるじゃん。女子になったんだ」
「ああ・・・うん」
ちょっとだけ男言葉に戻りかけながらも、保江はウィッグを揺らして頷いた。
「親とか、反対しなかった?」
「ううん、意外にね、もの分かりよかったよ」
すっかり女のクラスメイトに戻って言葉を返すと、将人もまた、女子と話しているときと同じ態度に終始してゆく。
そのようすを遠くから見守る達也がにんまりするのを背中で感じながら、
彼氏以外の男子とおしゃべりをしているところを視られた気分になっていた。
「ほかの男子とも、どんどんしゃべれよ」
達也が声をかけてきた。
「そうなんだ」
「女子になったのをもっと感じて欲しいからな」
「わかった」
ちょっとだけ湧いた後ろめたい気分が、前向きに回れ右をした。
達也には短い返事だけを返して、保江は傍らの友人に声を投げてゆく。
「城田くーん!」


「よっ」
背中をたたかれて振り向くと、見慣れない男子生徒。
よくみたら、月川ヨシ子が笑っていた。
ショートカットの黒髪がよく似合う十四才。達也の彼女だった。
スポーツマンの達也は、女子にもてた。
そのなかで達也の彼女の座を勝ち取るのは、女子のあいだでも至難だったはず。
もしかすると”恋がたき”になるかもしれない彼女のことを、保江は眩しく感じる。
よく見ると、ヨシ子は一層眩しく見えた。
彼女が身に着けているのは保江とちょうど正反対――男子の制服だったのだ。
「これ、あなたのよ」
意外なことを、ヨシ子はいう。
そういえば。
達也にひとそろい、自分の制服をあげたことを思い出した。
抱かれた後に、着ていた制服をプレゼントしたのだ。
「時々借りてるの。悪く思わないでね」
ヨシ子はクスッと笑い、保江も思わず笑い返していた。
彼女は保江のことを、”恋がたき”ではなく”同志”だと思ってくれているらしい。
伸びやかな脚を覆う紺のハイソックスが、さらに眩しかった。

「行こうか」
かねて約束していたような顔をして、いつの間にか傍らに立っていた達也が声をかけてくる。
声をかけられた範囲に、保江もヨシ子も入っているらしい。
ちょうど授業が始まる間際だった。
他の生徒が着席するなか、廊下に出ていく3人のほうを、教師はわざと見ずに済ませた。

「どこに行くの?」
と問う保江に、
「いいところ」
女子の姿をしている保嗣――保江にすっかりいままで以上の親近感を抱いたらしいヨシ子が、スカートのお尻を叩いた。

誘い入れられた空き教室は、冷え冷えとしていた。
がらんどうな空気の支配しているモノトーンな教室のなか。
ずらりとならんだ机といすが、後ろのほうだけ不自然に片寄せられている。
「あそこがあたしたちの遊び場・・・なのよ」
ヨシ子が保江に耳打ちした。
案の定。
教室の隅に佇む黒い翳は、あの吸血鬼だった。

「やあ」
達也は健全なスポーツ少年の笑顔で吸血鬼に会釈をした。
吸血鬼は眩しそうに、会釈を返した。
「真っ先はぼくだよね?」
そういって半ズボンの下から差し伸べる脚は、球技サークルのユニフォームである、モスグリーンのストッキングに装われている。
「ククク・・・まあそうだね」
吸血鬼の浮かべた笑みに、ヨシ子が「やらしい」と、声をあげる。
少女の呟きを横っ面で受け流しながらも、吸血鬼は目でこたえてゆく。
どうやらヨシ子と吸血鬼も、遠い関係ではないらしい。
それ以外はほとんどわき目もふらず、
吸血鬼は達也の足許にかがみ込むと、運動部のユニフォームの一部に唇を吸いつけ、牙を埋めた。

う・・・っ
達也の眉がこまかく震える。
軽く食いしばった歯がキリキリとなるのが、聞こえるようだった。
吸いつけられた唇の下。
モスグリーンのストッキングにじわじわとしみ込んで拡がってゆく達也の赤い血に、ふたりの少女は目を奪われた。
愛する人の身体に脈打つ血――それはふたりにとって、特別なものだったから。
達也が尻もちをついてしまうと、吸血鬼はふたりの少女を振り返った。
吸い取ったばかりの血が、むき出された牙にあやされていて、それがチラチラと生気を帯びた輝きを秘めていた。
きれい――
少女はふたりとも、異口同音に声をあげた。
ヨシ子は催眠術にかけられたようにふらふらと脚を踏み出して、吸血鬼のほうへと歩み寄った。
そんなヨシ子をしっかりと抱きすくめると。
男はヨシ子の白い首すじに、彼氏の血のついたままの牙を咬み入れた。
じわっ・・・と噴き出す血潮が、ひどく鮮やかに、保江の網膜を染めた。
ブラウスの襟が赤黒く浸されるのもかまわず、少女は吸血鬼に生き血を捧げてゆく。
彼氏である達也は、尻もちをついたまま、恋人が吸血されてゆく様子を、うっとりと見上げてしまっていた。


自分の彼女を吸血鬼に襲わせて、処女の生き血を提供している男子がなん人もいるという。
そのひとりが達也だということを、保江は初めて知った。
両刀使いの達也は、ヨシ子のことも保江とおなじくらい、愛しているに違いない。
そうした愛情と、吸血鬼との仲を認める行為とは、きっと矛盾するものではないのだろう。
ヨシ子を愛しながら、愛するヨシ子を吸血鬼に吸わせる。
保嗣を愛しながら、その保嗣が吸血鬼の毒牙を享ける道すじを、整えてゆく。
愛するがゆえに、吸血鬼に捧げたくなるのだろう。
自分の恋人を吸血鬼に誇ることと、吸血鬼に襲わせることと、
たぶん達也のなかでは矛盾がないのだろう。
「ああーっ」
吸血鬼の腕のなか、ヨシ子が切なげに叫びをあげた。
わざとのような声色に、達也をそそろうとする努力を感じ取った。
けれどもその声色に、本音の快感が秘められていることを、達也も保江も感じ取っている。

「こんどはきみの番――吸い取られてしまったぶんは、きみがくれるんだよ」
達也が生えかけた牙をむき出して、保江に迫る。
「うん、いいよ・・・」
保江は陶然となって、ブラウスの釦を二つ三つ外し、達也の牙を待った。

ちゅうちゅう・・・
きうきう・・・
ふた色の吸血の音が、競い合うように、空虚な教室に響いた。
ひとつはヨシ子を相手にした吸血鬼の口許から。
ひとつは保江を吸いつづける達也の口許から。
お揃いの制服を着た女子生徒――ひとりは男子――は肩を並べ手をつなぎ合って、
吸血鬼たちの貪婪な欲望に、わが身をゆだねていった。


気がつくと。
傍らのヨシ子の姿がなかった。
吸血鬼も、いなくなっていた。
ふたりの行方を気にする間もなく。
「さあ、これからが本番♪」
達也が嬉しそうに、白い歯をみせた。
彼の下肢からは制服の半ズボンが取り去られて、
血をあやしたモスグリーンのストッキング一枚になっていた。
保江はふらふらと起きあがると、達也の太ももを抱いて、股間の一物を口に含んだ。
「ああ・・・いいなぁ・・・夢だったんだ・・・女になった保江に咥えてもらうのが」
恋人の行方など眼中にないように、達也はあらぬことを口走る。
口の中ではじけた一物が、巻きつける舌に応えるように、熱く圧してくる。
ほろ苦い粘液を口に含み、喉に流し込みながら、保江はなおも夢中になって、吸った。

気がつくと、教室の床に組み伏せられていた。
真新しい制服のスカートのすそが拡がり、
そのすき間から、達也のごつごつとしたひざ小僧に脚を押し広げられて、
熱く逆立った一物が、太ももをすべるようにして、スカートの奥へと侵入してくる。
ひざ小僧の下に巻きついたハイソックスの口ゴムの感触を、妙に生々しく感じながら、
保江はその逆立つ一物を、従順に迎え入れた。

いままでもなん度となく重ねてきた行為――
けれども、女子の制服を身に着けての営みは、また別次元のものだった。

ああ。いまこそ達也くんに、あたしの処女を捧げる――
保江は幸福感に充ちた瞳を瞑り、股間への熱い侵入を、淑やかに迎え入れた。

3月13日構想。

吸血鬼たちによる、少年たちへの教室内乱交。

2020年03月08日(Sun) 08:00:30

ひとりの少年は、ハイソックスのうえから脚を咬まれた。
もうひとりの少年は、ハイソックスをずり降ろされて、脚を咬まれた。

ハイソックスの舌触りと。
生の素肌の舌触りと。
どちらを愉しむほうが、よりいやらしいのだろう?
吸うほうも。吸われるほうも。そんなことを考えながら――
体内から抜き取られる血の量を省みることなく、ふたりの少年は献血に夢中になってゆく。

やがて血に飽きると吸血鬼どもは、少年たちの制服姿にのしかかる。
ハイソックスをずり降ろされた二対の脛を輝かせながら、少年たちは犯される。
白い歯のすき間から、随喜のうめきを洩らしながら。
腰を振って、応えてゆく。

犯される少年たちは手をつなぎ合って、言葉を交わす。
まるで娼婦になったみたいだね と。
そして、獲物を取り替え合う吸血鬼にこたえて、覚えたてた愛技で、彼らの欲望に応えて、
いけない遊戯に耽り込んでゆく。
女のようにあしらわれたふたりの少年は、放心状態で放課後を迎える。
そして、情事を終えた頃合いの母親たちの待つわが家へと、下校してゆく。

制服店にて

2020年03月03日(Tue) 07:56:42

中学生の息子を連れた母親が入店してくるのをみて、制服店の小母さんは、
「ああ、制服ですか?」
と、声をかけた。
「あ、はい、そうなんです・・・」
生真面目な母親がちょっぴり口ごもるのを、保嗣は心のなかでくすっと笑う。
「あのぅ、じつは、女子の制服でお願いしたいのですが」
決まり悪げに口火を切る母親を、ちょっといとおしくさえ感じた。
少なくとも、いまの言動のうえでは、和江は自分の側に立ってくれている。
そんな共感が、母に対するシンパシーを生んだのだろう。
父に黙って吸血鬼の情夫と逢いつづける母を、許しても良いと保嗣は感じた。

少女のように戸惑う安江を相手に、制服店の小母さんは、意外なくらいさばさばと、
「あ、そうなんですね?最近、そういう生徒さん多いんですよ~」
と明るく受け答えを返してきた。
一瞬、保嗣のほうにも目線を合わせてにっこりすると、
「採寸しますので、こちらへどうぞ~」
と、自ら先に立って母子を店の奥のほうへと案内した。
照明の弱いお店の一番奥のほうに、カーテンの下がった試着室がひっそりと佇んでいた。

保嗣が試着室のまえでちょっとのあいだまごついていると、
小母さんは早くも制服を一着両手で抱えてくると、いった。
「きみならA体でだいじょぶそうだね」
男子の制服である半ズボンから伸びた豊かな肉づきの太ももに、小母さんはふと眩しそうに目を留めた。
「スカート、履き方わかる?」
と問う口調には、からかいや冷やかしの色はまったくなかった。
これから女の子になるんだね、と、しぐさで伝える様子は、
これから中学生になるんだね、と、去年の春にしぐさで伝えてきた様子と、変わりなかった。
用意が整うと、小母さんは気を利かせるようにして、試着室から離れていった。
カーテンの向こうに保嗣を押し込みながら、
「きみ、ハイソックス似合うね」
と、ひと言添えるのを忘れずに。

お店の小母さんの好意的な物腰は、少年をひどくくつろいだ気持ちにさせた。
ちょっと動いただけで肘や肩の触れそうな密室のなか、
スカートを腰に巻き、ウェストのホックを留めると、つぎはジャケットを羽織ってゆく。
制服のスカートの重たい生地が、ひざ小僧の周りでさわっと揺れた。
迫ってくるほどの狭いスペースのなか。
真新しい制服の生地の香りが、保嗣の鼻腔を浸した。
血が騒ぐのを感じた。
少年の血ではなく、少女の血が目覚めたように、保嗣の身体の隅々まで脈動し始めた。

もとの姿に戻って試着室を出ると、小母さんは脱いだままの制服を大事そうに抱えた。
「お母さん、買ってくれるみたいだよ」
と小声でいうと、やはり大事そうに、丁寧にたたみ始めた。
初めてそでを通した女子の制服が、そのままそっくり自分のものになる。
そんな光景に、保嗣は胸をわなつかせた。
自分でも滑稽だと感じながらも、いまの瞬間を大切にしたい――と、そう思った。
あの服を着て、達也に抱かれる。
初めてそんな想像をすると、脚のつま先まで真っ赤になったかと思うくらい、のぼせてしまった。
小母さんは、そんな保嗣の様子に気づかぬようにして、ひたすら作業に没頭していた。

「スカートはミニ丈のもありますよ。最近は男女問わず人気があるみたいなんですよ」
さりげなく売り込みをかけた小母さんに、和江は「どうする?」と息子を振り返り、
保嗣はちょっと考えて、
「じゃあ、ミニもお願い」
とこたえた。
ミニ丈のスカートには、タイツかストッキングが好いな、とふと思ったのに応えるように、
「タイツとストッキング、買っておいたから」
と、傍らから和江が囁いた。
「余分めに、ね♪」
和江は、イタズラっぽく笑っていた。

保嗣の身体のあちこちにメジャーをあてがった小母さんは、職人のような目つきになって値踏みをするように少年と制服とを見比べた。
「袖をちょっと出しますね。1時間ほどで終わりますから、きょうじゅうに受け取れますよ」
「受け取りは自分でできるわね」
畳みかけるように尋ねる和江のほうはふり返らずに、保嗣は「わかってるよ」と、うるさそうにこたえた。
それが照れ隠しなのだと、和江も、小母さんも、保嗣自身も、分かり合っている感じだった。

「念のため二着いるかな」
さすがに制服店にまでは姿をみせなかった父親の助言に従って、
同じサイズの制服を二着、スカートはひざ丈とミニ丈をそれぞれ二枚ずつ購入した。
いったん制服店を出て他の買い物を済ませると、和江と保嗣はふたたび制服店へと戻ってきた。
どうしても早く受け取りたい、と、保嗣がせがんだためだった。
さいしょは一人で受け取らせるつもりだった和江もいっしょについてきたのは、買った制服が二着だったためだった。

二着の制服はそれぞれ立派な紙製の箱に入れられていた。
小母さんはその両方をひとつずつ開けて中を確かめるようにとすすめた。
しわひとつない真新しい制服に、保嗣は胸をずきん!とさせた。
明日から髪を伸ばそうと思った。
しばらくのあいだは、さっき買ったウィッグのお世話になるけれど。
いずれ地毛で女生徒としての髪の長さを蓄えて、学校に通うのだ。
母親は「お祝いね」と言い添えて、制服店で黒のストッキングを何足か買い求めてくれた。
たぶん・・・今週中にはすべて、吸血鬼の小父さんと達也とによって、咬み破かれてしまうだろうけど。
心のなかでほろ苦く笑いながら、保嗣は母親の振舞いに”同性”どうしの気遣いを感じて、神妙にありがとうと言った。

お財布のなかから一万円札を何枚も取り出す母親に、さすがにちょっと済まない気になりかけた保嗣だったが、
「来週はこれを着て女子になるんだよね」
と、和江が白い歯をみせると、嬉しそうに笑い返した。
母子とも葉の輝きが生き生きとしていると、制服店の小母さんは思った。
そして、いつも以上に心を込めて「ありがとうございます」を告げた。

2月20日構想 3月3日脱稿

月光奏鳴曲  ――ムーンライト・ソナタ――

2020年02月11日(Tue) 06:24:58

開け放しになった窓の向こうには。
闇になりたての空に、銀色の月が済んだ光を放っている。
ステレオのスピーカーが呟く低音のチェロの唸りが、
淡い闇のわだかまる畳の部屋に、ひっそりとわだかまっている。

ふたりの少年は、むき出しの胸を合わせて、互いに抱きすくめ合って、
互いに互いの体温を確かめるように、皮膚をこすり合わせている。
時おり重ね合わせる唇は熱く、周囲の冷気を忘れさせて、
はぜる呼気を呼び合うように重ねて、すれ違う乳首をじんじんと疼かせていた。
前を大きく開いた半ズボンに、ひざ下までぴっちりと引き伸ばされたハイソックス。
暑苦しく火照った足許から、少年たちは制服の片割れを取り去ろうとはしない。
唯一全き形で身体にとどめた衣類をいとおしむように、
それこそが最後に残された礼儀だと心得ているかのように脚を絡み合わせて、
互いに互いの、しなやかなナイロンの感触を確かめ合っている。

合わせた身体を放すと、少年たちは互いに相手の脚を吸った。
逞しいほうの少年は、女のような餅肌を持つ少年のなまめかしさを恋い慕い、
たおやかなほうの少年は、スポーツで鍛えられたしなやかな鎧のような筋肉に圧倒された。

逞しい少年がたおやかな少年の足許を吸うときは、
ハイソックスのうえから犬歯を埋め込んで、うら若い血液を喫った。
たおやかな少年は、相手の非礼を咎めることなくその行為を受け容れて、
制服の一部にじんわりと滲む血潮の生温かさに心を浸した。

たおやかな少年が、お返しの行為に耽るときには、
ハイソックスの足許からしなやかな太もも、それにその奥の股間までをも、
器用に慣れた唇で、くまなく舐めた。
逞しい少年は、自分のほうが犯されているかのように背すじを仰け反らせ、
促されるままに思うさま、半透明の熱情を、同性の恋人の喉の奥へと吐き散らしていった。

たおやかな少年は血を啜られることに、相手に尽くす歓びを覚えて胸を弾ませ、
いいよ・・・もっと吸ってとせがみつづけて、
逞しい少年は心優しい恋人のかいがいしい振舞いに胸震わせて、
きみが好きだと熱く囁く。

性別を同じくする者同士の性愛は、どこの世界でも忌まれることが多い。
けれども、子供をなすだけが性愛のすべてなのか。
不器用に交わされる気遣いと気遣いは、ふたりを照らす月の光と同じくらい、澄み透っていた。


オフィスの窓越しに覗く月は、フロアの住人たちに省みられる機会をほとんど持たない。
けれども、とり澄ました希薄な人間関係がお疲れさまの声を交えて立ち去ってしまい、
人影がふたつになり、照明までもが消え去ると。
窓に射し込む淡い輝きは、にわかにその存在感を増す。

「待ってたぜ、来ると思ったよ」
生き血に飢えた大人になりたての吸血鬼と、男盛りの血液に充ちた働き盛りのビジネスマン。
奇妙な取り合わせは当人同士も意外なくらいしっくりと組み合って、
ぶきっちょな手がネクタイをほどき、アンダーシャツを引き裂くと、
手練手管を帯びた腕が、むき出しの太ももに巻きつけられてゆく。

「よその息子さんに、不埒なことを教え込んでも良いのかな」
少年が男をからかうと、
「きみこそ、親友の父親を誘惑してるんだぜ?」
と、相手は恋人に交ぜ返した。

少年は制服のハイソックスの足許をツヤツヤと輝かせ、
男はスラックスの下に隠したストッキング地の靴下にくるぶしを透き通らせていた。
互いに互いのために装った足許に、うっとりと目を向けあって。
男女の交わりがシックスナインの姿勢を描くように、
互いに互いの足許に、唇を吸いつけ合ってゆく。

「小父さんの靴下、色っぽいね」
と、少年がビジネス用のハイソックスを舌でずり降ろすと、
「きみこそ、こんななりをして勉強がはかどるの?」
と、男は学生用のハイソックスをくしゃくしゃに波打たせてゆく。

セックスに長けた大人は、少年を難なく陶酔の淵に引きずり込んだ。
熱情に優る少年は、ひと足先にむき出しにした裸体をオフィスの床のうえに仰け反らせ、悶えながら応えてゆく。

似通った面差しが、血の近さを感じさせる。
少年は男とその息子とを、羨ましいと思った。
生気に満ちた血潮を慢心に湛えて、ふたりは父子ながら少年の渇いた喉を、惜しげもなく潤した。
自身のなかで織り交ざる父と子の血潮を、干からびた血管に漲らせることが。
いまは少年の生命力の源となっている。

手練手管に長けた四十男は、しばしば息子と同い年の少年を圧倒した。
吸血鬼が人間を支配するという単純な方程式は、ここでは成り立たない。
股間に擦り合わされてくる舌は、まだその種の営みの経験が浅い少年に、
淫らで奥深い技を教え込んでゆく。
彼の息子の不器用な振る舞いが、血に飢えた恋人に甲斐甲斐しくかしづくのとは、裏腹な振る舞いだった。
父親は技を教え込み、息子は真心を尽くした。
どちらがより尊いというものではない、と、少年はおもった。
そして少年は、父親には真心を伝え、その息子には技を教え込んでゆく。
中和されることの無い不均衡が、むしろ三人を三様に愉しませ悦ばせる。

行為を尽くして恋人たちの胸から身を放した少年は、
放心した父親の足許から薄い靴下を抜き取り、
気絶したその息子の足許から、自分のとお揃いのハイソックスを抜き取って、
意地汚くポケットにねじ込んでゆく。
彼らの衣類を几帳面に整えたその妻と母親とは、まだ夫婦の寝室に留まっていて、
数百年鍛えたといわれる牙を祖の柔肌に試され、熟れた血潮を愉しまれている時分だろうか。

すべての営みを、月だけが視ていた。


あとがき
夕べは”スノームーン”だったそうですね。
透き通る満月の冷たい輝きが、むしろ優しく思えるこのごろです。

朝帰りの母。女子の制服をねだる息子。

2020年02月02日(Sun) 09:57:54

「やっぱり朝帰りはまずいよ、母さん」
翌朝、父が出勤していったあとまで家に残っていた保嗣は、
9時をまわったころにけだるそうな顔をして戻ってきた和江に、そういった。

夕べ。
息子から女子の制服をねだられた和江は、息子の帰宅直前まで耽っていた吸血鬼との情事を思い出して、
股間を再び疼かせながらエプロンをはずした。
主婦を辞めて娼婦を始める――はた目には、そんな宣言のようにもとれるしぐさに、
息子の保嗣が胸を「ずきん!」と弾ませていたことに、和江は気がつかないでいた。
きっと母さんは朝帰りになる。
そうなると見越して、近所のおばさんの相談に乗っているとかなんとか・・・うまく口裏を合わせたとは言いながら、保嗣は母親をからかい半分にたしなめた。
「父さんと母さん、いつまでたっても、行き違いだよね。
 早く父さんに、ぼくに女子の制服を買ってくれる件を相談してほしいんだけど」

昨晩。
保嗣の父(和江の夫)である由紀也が、保嗣の親友である達也を相手に勤務先の無人のオフィスで情事に耽っていたころ。
母の和江は和江で、吸血鬼の誘いを受けていた。
半吸血鬼となった達也は、「ヤスくんとの交際をお父さんにも認めてもらう」と言い捨てて、保嗣の血を喫ったその足で由紀也のオフィスを訪れて、
保嗣の父を黙らせるため、そしてそれ以上に彼と睦み合うのを愉しむために、一夜を過ごしていた。
そして、保嗣の父の帰宅を遅らせることで、達也の大好きな吸血鬼の小父さんと和江との逢瀬に邪魔が入らないようにも画策したのだ。
オフィスでの情事には、さまざまな意味があったのだ。

保嗣は、達也が父と逢っていることも聞かされていたし、達也の意図も大体は理解していた。
和江がやすやすと吸血鬼にモノにされてしまったことに、
さいしょは控えめながら不満を鳴らした保嗣だったが、
いまでは自分の血を初めて喫った吸血鬼が、
母親の血を気に入ってくれていることに満足を覚えるようになっている。

初めて自分の血を喫った吸血鬼が、母と。
同性の恋人になった同級生が、父と。
生き血を吸い吸われて仲良く交わっていることが。
保嗣にえもいわれない幸福感をもたらしていた。

「一体夕べはどこにいたの?」
そう訊かれて和江は、少女のようにもじもじとしながら、言いにくそうに告白した。
家の様子が気になるからと、庭の隣に停めてあるマイカーの中で過ごしたという。
「匂いでばれない?」
息子のツッコミに、和江はさすがに慌てた顔をした。
「あとできれいにしておくわ」

昨晩父親の由紀也が帰宅してきたのは,真夜中過ぎのことだった。
父親の勤め先でなにが起きているのかを保嗣は知っていたし、
保嗣がなにかを察しているだろうことを、由紀也も薄々勘づいていた。
さすがに息子と顔を合わせるのは後ろめたかったらしく、
「母さんお友達が相談があるからって出かけた、今夜は戻らないかも」
という曖昧な説明にも気もそぞろに受けて、そそくさと独りの寝室に向かっていた。

そんな由紀也も、まさか自宅のすぐ裏手で自分の妻がほかの男に精液まみれにされているとはつゆ知らずだっただろう。
別々の場所で吸血鬼との情事に耽った夫婦は、別々の場所で一夜を過ごした。

朝帰りの母親と学校をさぼっている息子とが会話をやめたのは。
時ならぬインタホンの音のためだった。
玄関の扉を開くと、そこには由紀也がいた。
話を聞かれた?と一瞬思いぎくりとした和江だったが、すぐに自分を取り戻して、どうなすったんですか?と夫に訊いた。
「具合がよくないので会社を休むことにした」
という夫を安江は本気で気遣いながら――彼女もまた、夫の身になにが起きているのかを薄々知っていた――かいがいしく床の用意をし始める。
床の用意ができるまでのあいだ、由紀也はぐったりとなって、ソファにもたれかかるように身を沈めていた。
リビングに戻ってきた安江は、床の用意ができましたよ、と夫に告げると、盗み見るように息子のほうを見た。
「お父さんに、話したの?」

いざとなると保嗣は、年端も行かない幼な児のようにもじもじしていた。
都会で暮らしていたころには、厳しい父親だった。
両親ともに厳しいプライドの高い家庭で育てられた保嗣は、気弱な少年として成長した。

保嗣の様子をみた安江は、仕方ないわね、というように、ちょっとだけ顔をしかめ、それから言葉を改めて由紀也に言った。
「保嗣が明日から、女子の制服で登校したいというんです。あなたどう思います?」
失血で力の失せた父親の反応は、もどかしいくらいに鈍かった。
由紀也はちょっとだけ顔をあげ、訝しそうに息子のほうを窺った。
安江は保嗣を促すように、つづけた。
「お友達の達也くんと、おつきあいを始めたのよ、ね?」
保嗣はちょっとの間唇を噛んでいたが、首すじの疼きをこらえかねるようにして、思い切って口を開いた――。
「ぼくに、女子の制服買ってくれないかな。ぼく、同級生の達也くんの彼女になることにしたんだ」

口走ってしまうことで、自分を束縛しているなにかが破れたような気がした。
自分をさらけ出す小気味よさが、ふさぎ切っていた彼の心を解放したのだ。

「うん、まあ・・・いいだろう」
意外なくらいあっさりと、父親は息子の願いをかなえる言葉を口にした。
曖昧な返事は、息子の親友と契ってしまったことへの後ろめたさからくるものだったが、それは母子どちらも、まだあずかり知らないことだった。
保嗣はむしろ、父の「まあ・・・いいだろう。」は、吸血鬼と母との逢瀬に対しての感想のようにも受け取れて、仕方がなかった。
もしそうだったらいいのにな・・・保嗣はどうしようもない妄想にとり憑かれて、ひとりごちた。
「何か言ったか?」
「ううん、何も」
それが父と息子との会話のすべてだった。

「では、きょうにも制服店に行って、採寸してもらいますね」
安江はたたみかけるように、言った。
夫が黙って頷く姿に、なにかを赦されるような錯覚を安江はおぼえた。
頷いた夫は、同時に吸血鬼と自分との不倫の関係までも許してくれたように感じたのだ。
母と息子の願望が、どこまで由紀也に届いたのか――
けれどもまず家族で解決しなければならないのは、保嗣と達也の関係についてだった。

「女性生徒として通学するには、学校で何か手続きが要るんじゃないのか?」
由紀也は初めて、息子の環境が変わることについて、父親らしい気遣いをした。
「エエ、だいじょうぶみたいです。ここの学校は理解があって、前の日に担任の先生に連絡を入れておくくらいですって」
母親がすかさず、適切な返しをしてくれた。

「女子生徒としての名前は、決まっているのか?」
意外なくらい物分かりよく、由紀也は保嗣に訊いた。
保嗣もいまは淡々と、父の質問に応えてゆく。
「ヤスエにしようと思います。母さんの字をもらって」
「保江と書くのか。ちょっと古くさくはないか?」
「でも、達也くんがその名前を気に入ってくれているんだ」
「なら、それで決まりだな」
由紀也は無表情に哂った。
そして傍らに控える和江に、「着替えも要るだろうから、二、三着買いそろえてやりなさい」と告げ、「寝るから」とひと言残して寝室へと姿を消した。

布団にくるまっても由紀也は、なかなか寝つかれなかった。
妻と息子が「よかったね」とひそめた声を交し合うのも、いそいそと外出の支度をして女子の制服を買いに出かけてゆくのも、表に出た二人の足音が遠ざかってゆくのも、耳にしていた。
都会で暮らしていたころは貞淑だった妻と、おとなしすぎてはいたものの健全だった息子――のはずが。
自分の家族は娼婦がふたりと化してしまった――
ほろ苦い従属感に痺れながら、失血に疲れた身体を布団にもたれかけさせて、由紀也は眠りに落ちていった。

勤め帰り。

2020年02月02日(Sun) 09:30:01

勤め帰りの真夜中の道を、独り歩く。
頬をよぎる風は意外に冷たかったが、身体のほてりがそれを程よく中和してくれている。

口の奥に残る精液の匂いが、ほろ苦い。
精液の持ち主は、息子の悪友――もとい、彼氏になる少年。
同性同士で結ばれた関係を認知してもらおうと願う少年の訪問を受けて、
オフィスを穢すようにして、乱れあった余韻が、軽くはぜる息遣いにまだ、残っている。
吸血癖を持つ彼にオフィスで襲われたのは、これが二度目のことだった。

同性愛など異常な営み――と、つい一週間前までは、おもっていた。
まさか自分がそのようなことの虜になるなど、夢想だにしていなかった。
けれども、吸血されてわれを忘れた後のこととはいえ、意識も、記憶も、鮮明に残っている。

熱っぽく求められたことも。
求められることで身体の奥に潜むなにかが燃えあがったことも。
われを忘れて夢中で求めてしまったことも。

相手が息子の同級生であることも忘れて、
半ズボンにハイソックスの制服姿に夢中でのしかかっていって、
相手の好みに合わせて履いた、ストッキング地のハイソックスを、思う存分舌でいたぶらせ咬み破らせて――

一体あの嵐は、なんだったのだろう?
身も心も空洞が空いたようになって、いまは鬱積したものが余さず抜き取られたあとの不思議な爽快感だけが、
四十を過ぎた四肢と脳裏とを、居心地よく浸している。

辿る家路に行きつく先で。
妻は吸血鬼に犯されているはず。
犯される、という言葉には、強制力があるけれど。
じつは妻も同意のうえの関係なのだということもわかってしまっている。
けれども、夫である由紀也の知らないところでなされている行為は、夫の身にとっては「犯されている」のと同じこと。
けれども「妻を日常的に犯される」ということに、奇妙な昂りを覚えてしまっていることもまた、たしかだった。

脚に通した薄い靴下を達也に咬み破られたように。
妻の脚に通されたストッキングもまた、情夫の舌を悦ばせ、剥ぎ堕ちていったのだろうか?
スラックスの下、破かれた靴下が脛の途中までずり落ちているのを、口ゴムの締めつけで感じながら、
ひたすら家までの歩みを進める。
「何食わぬ顔で、洗濯機に放り込んでいくといいよ。和江さんは洗って持たせてくれるから。
 そうしたら、小父さんの靴下、ぼくにくれないか?
 記念に、コレクションさせてもらうから」
餌食にされた靴下を、息子の悪友にコレクションされる――
そんなことにどうして、ドキドキしてしまうのだろう?

由紀也は、家人のだれもが就寝していることを願いながら、ゆっくりとした足取りで家路をたどった。

交錯する交わり。

2020年01月24日(Fri) 05:38:39

若い血を求めてむらがる吸血鬼たちに身をさらして、
わが身をめぐる血潮を捧げることに、えもいわれない歓びを感じる。
仲良しの達也と誘い合わせて、同じ吸血鬼の舌を悦ばせ喉を癒す日常に、保嗣もまた歓びを覚えていた。
濃紺のブレザーに半ズボンの制服姿で肩を並べてうつ伏せになり、
おそろいのハイソックスを順ぐりに咬み破られながら吸血されるとき。
制服を汚すことを悦びながら足許を冒されてゆくことを。
吸血鬼の小父さんの体内で達也の血液といっしょになることを。
ひどく悦ばしく感じた。
ふたりの熱い血が仲良く織り交ざって、小父さんの干からびた血管を潤すようすを、ありありと想像することができたから。

破けたハイソックスを履いたまま下校してきても、母親の安江はなにも言わなかった。
たぶん、ご近所の奥さん仲間から、息子の身になにが起きるのかを聞かされているのだろう。
父もまた、そういう土地だと知りつつ、暮らせなくなった都会を捨ててこの街に身を投じたはずだ。

やがて保嗣は、達也を伴い自宅にもどるようになった。
息子の親友として家に上がり込んでくる若い吸血鬼のことを、安江はさいしょのうち、気味悪そうに遠目に窺うばかりだった。
女の本能は、するどい。
きっと彼が、女としての名誉を汚す行為に関与することを、本能的に悟っていたのだろう。

案の定、達也の手引きで安江を訪れた吸血鬼は、彼女を襲って血を吸い、犯した。
そのありさまを保嗣は、隣室で達也と乱れあいながらのぞき見して、ひたすら昂りつづけていた。
いけない息子だ、と、保嗣はおもった。
けれども、うちでもそうだよと耳打ちしてくる達也に、乳首をまさぐられながら、頷き返してしまってもいた。

躾けに厳しい母親が、保嗣の血を吸った吸血鬼を相手にうろたえながら、
保嗣の穿いている通学用のハイソックスを咬み破ったのと同じ牙に、肌色のストッキングを咬み破られてゆく光景が、ひどく小気味よく網膜を彩った。
やがて理性を奪い尽くされた母親が、あられもなく乱れてしまうありさまに、ゾクゾクしながら見入ってしまっていた。

保嗣は、自分の血を吸った男が母親の生き血に満足することを嬉しく思い、誇りに感じた。
保嗣の血を気に入った吸血鬼の小父さんは、保嗣の母親にも興味を抱いたのだろう。
母親の生き血の味は、きっと小父さんの期待を裏切ることはなかったはず。
――小父さんが母さんの血を気に入ってくれて、嬉しい。
保嗣は自分のうえにのしかかってくる同性の恋人に、そんなふうに熱く囁いていた。

吸血鬼の小父さんが、親友の達也とぼくの血を飲み比べしてくれる。
そしていまは、母さんとぼくの血を、いっしょに味わってくれている。
今ごろ達也が父までも襲って、親子ながら血を愉しんでいるなどとは、さすがに想像が及ばなかったけれど。
幾重にも重なり合う吸血の交わりを、保嗣はとても好ましく感じていた。

独り寝の夜

2020年01月24日(Fri) 05:37:31

独り寝の夜だった。
静かな夜が保嗣に訪れるのは珍しい。
たいがいは。
吸血鬼の小父さんか、最近は達也がしのんできて、
保嗣の身体におおいかぶさり、ひっそりと血を吸い、股間をまさぐり、冒してゆく。
お互い熱気を弾ませ合って、嵐が過ぎ去った後、安らかな眠りに落ちてゆく。

今夜は母の安江が、吸血鬼の小父さんに逢うために、エプロンをはずして出かけていった。
どうやら達也も、訪れないらしい。
まさか保嗣自身の父親と勤務先のオフィスで乱れあっているとは、さすがに思いもよらなかったけれど。

今夜はわが身に脈打つ血液を大切に過ごそう。
明日存分に、愉しんでもらうために――


父の帰りが、遅かった。
いっそ、帰ってこないほうが望ましいとさえ、おもった。
母が浮気に出かけている最中に帰宅してくるというのも、なんだか気の毒な気がした。
もしも自分が父さんの立場だったら――
けれども理性を汚染されてしまった保嗣の脳裏には、妻の浮気さえ悦んでしまう異常な夫の姿しか、思い描くことができなかった。

血が騒ぐのを抑えきれない夜。
明日吸血鬼のために捧げる血液がわが身のうちでうずめくのを、保嗣はけんめいに鎮めようとしていた。

ふたたびオフィス。

2020年01月20日(Mon) 07:30:46

きょうも全員、帰りが早いな・・・
がらんとしたオフィスのなか。
畑川由紀也は、空々しく明るい室内の照明のなか、独り立ち尽くしていた。
独りきりになると。
夕べの”情事”の記憶が、ありありとよみがえってくる。
息子の親友を相手に、息を弾ませ交し合ったあの熱情の交錯は、
やはり”情事”と呼ぶべきものだったのだろう。
齢に似ない手練手管にひかかって、親子ほど離れた齢の差はあっけなく崩れ去り、
理性のたがをやすやすとはずされてしまった。
まるでレ〇プされたあとのような。
けれども、後味の悪い記憶では、本人もびっくりするほど、なかった。
爽やかな敗北感というものがあるということを。
妻を犯されたことで、初めておぼえたけれど。
今回の記憶も、同じ種類の匂いがあった。

ふと振り返ると。
自分を犯した少年が、そこにいた。
夕べと全くおなじように、ひっそりとした雰囲気をたたえて。
濃紺の半ズボンに、おなじ色のハイソックス。
きのうのハイソックスは、たしかねずみ色だった。
色を選べることは、息子の足許からそれとわかってはいたつもりだったが。
きのうとはわざと色違いのハイソックスを履いてきた理由が、彼なりにあるのだろう。
それは由紀也のことを意識してのものではなかったか――?
寒気に似た昂りが、ぞくりと背すじを突き抜けた。

「小父さん、いい?」
ツカツカと革靴の足音を響かせて近寄ってきた少年は、そのまま由紀也の方に腕をまわして、唇を圧しつけてきた。
なんのむだもない、ごく自然なしぐさだった。
由紀也も同じくらいすんなりと、達也と唇を重ね合わせてゆく。
接吻は、長時間続いた。
舌でなぞる歯のすき間から、錆びたような芳香が洩れた。
なんの匂いだか、察しがついたけれど。
由紀也は憑かれたように、その芳香を愉しみだした。
彼の舌は達也の歯茎をなん度も行き来し、ついさっき彼が体験したばかりの交歓の残滓を探りつづけた。
「わかる?」
唇を離すと、達也が笑った。
由紀也も笑った。
「息子の血を、喫ってきたのだね?」
「はい、そのとおり」
会話の内容のおどろおどろしさとは裏腹に、白い歯をみせたその笑いは、爽やかで人懐こくさえあった。
「息子さんの血の香り、いいでしょう?」
「なんのことか、よくわからないな」
「じゃあ、そういうことにしておきましょう」
達也はあっさりと譲ったが、媚びを濃厚に滲ませたしぐさで由紀也にすり寄ることはやめなかった。
「座りたまえ」
「エエ」
向かいのソファを進めたのに、達也が腰かけたのは由紀也のすぐ傍らだった。
「ぼくの”也”と小父さんの”也”――同じ名前なんですよね、ご縁を感じるな」
「ひとの家の息子の血を吸っておいて、あつかましい」
口の利き方が対等になってきたのを感じながらも、由紀也は達也の差し伸べる太ももをさすり始めた。
半ズボンの舌から覗く達也の太ももはツヤツヤとしていて、女の子の膚のように滑らかな手触りがする。
運動部で鍛え抜かれたことは、滑らかな素肌を傷つけることがなく、むしろ輝きを増す結果をもたらしていた。
吸い取った血液が達也の膚の輝きに作用していたのだが、まだそこまでのことを由紀也は知らない。
「手触りの良い肌だ」
「小父さんに触られるのは愉しい」
達也も拒否しなかった。
むしろすり寄るように身を寄せて、太ももを中年男の欲情にゆだねていき、
年端のいかない子供が頑是なくおねだりをするようなしぐさで、彼の口づけをせがんだ。
熱い口づけが、なん度もなん度も交わされた。

「息子の血はお口に合ったかね」
由紀也が訊いた。
達也はそれには答えずに、鞄から紙包みを取り出した。
包みのなかには、ハイソックスが二足入っていた。
どちらも履いたあとのもので、少年の指につままれて、ふやけたようにだらりと床を指してぶら提げられる。
片方はねずみ色の、息子が朝登校するときに履いて出たものだった。
もう片方は濃いグリーンに黄色のラインが入った、達也のユニフォームの一部だった。
こちらも由紀也には見覚えがあった。
息子といっしょに観戦した試合で、達也は短パンの下にこのストッキングを履いていた。
「どちらもヤスくんの血ですよ」
達也はニッと笑う。
「ぼくのストッキングも、ヤスくんに履いてもらったんです」
自分の愛用しているストッキングを保嗣に履いてもらい、ふくらはぎを咬んだのだという。
「そういうことをして、楽しいの?」
真面目な顔をして問う由紀也に、達也は声をあげて笑った。
「やだなあ、小父さん。楽しいに決まってるじゃん。ぼくとヤスくんとがいっしょになった記念に、永久保存するつもりなんだから」
息子の恥ずかしい証拠が、目のまえの少年の手に握られている。
「これをねたに小父さんを脅迫して生き血をねだる――なんて、どう?」
達也の顔は笑っていたが、目にはしんけんな輝きをたたえている。

さっきから達也は、息子のことを「ヤスくん」と呼んでいた。
由紀也はまたひとつ、達也との距離が近まったのを感じた。
「じゃあ、悦んできみの脅迫を受けるとしようか」
由紀也が寛大にもそう告げると、達也は「やったぁ」と、無邪気な声をあげた。

「まだ家に帰らないほうがいいですよ」
達也はいった。
「吸血鬼の小父さんが、和江のところに行っているから」
耳もとに囁いたみそかごとが、由紀也の鼓膜を妖しくくすぐる。
自分の妻を呼び捨てにされたことにも、不愉快を感じない。
それだけ彼との距離が近まったということなのだろう。
いまわしいはずの事実をむしろつごう良く受け止めた彼は、達也を抱きしめながら、こたえた。
「じゃあ、すこしゆっくりしていこうね」
「悦んで♪」
達也は由紀也にしなだれかかるようにして、なん度めかの接吻をねだった。

「ぼくの血を吸いに来たんだろう?」
「小父さん、鋭いな」
達也がわざとらしく由紀也をもち上げた。
「きのう小父さんの血を吸って、ヤスくんの血がどれほど美味しいか、想像がついたんだ。親子の血は似るからね」
「それはなによりだった」
「あと、小父さんの靴下の咬み応えも♪」
達也はウフフと笑った。
「じゃあ、今夜も咬み剥いでもらおうかな。きみが来ると思って、新しいのをおろしてきた」
さりげなくたくし上げられるスラックスから、愛用しているストッキング地のハイソックスに透けた脛を覗かせた。
きょうのハイソックスは、黒だった。
「色違いだね」
「黒は嫌いだったかな?」
そんなことはない、と、達也はつよくかぶりを振った。
「小父さんの靴下の色と合わせようと紺を履いてきたけど、行き違いだったなって思って」
「それは残念なことをした」
由紀也は、いつか達也と示し合わせて同じ色の靴下を履こうとおもった。
「でも、きょうの和江さんも、黒のストッキング穿いてたよ、夫婦でおそろいだね」
達也はこんどは、由紀也の妻のことを和江さんと呼んだ。
そんな濃やかな気遣いにもかかわらず、無邪気に笑う達也が打ち解けた表情と裏腹なおそろしいことを告げるのを、由紀也は聞き流すふりをしようとした。
けれども想像力が彼の努力を突き崩した。
目のまえで神妙に控えているこの息子の親友は、吸血鬼が妻を犯すときの手引きをし、吸血後の後始末までするアシスタントを勤めているという。
「どんなふうにやっていたか・・・きみは視たの」
「うん、ヤスくんといっしょに」
「じゃあ、どんなふうにしたのか、再現してみてくれる・・・?」
由紀也がたくし上げたスラックスを、ひざ下を締めつける口ゴムがみえるまでさらにいちだんとたくし上げると、達也はフフっと笑った。
「じゃあ、するね」
「ウン、どうぞ」
淫らな唾液を帯びた唇が、通勤用に履いた薄手のナイロン生地越しに圧しつけられるのを、由紀也はぞくぞくとしながら見守った。
圧しつけられた唇は、たんねんに唾液をしみ込ませながら、薄いナイロン生地のうえを這いまわり、いびつに波立てて、くしゃくしゃにずり降ろしてゆく。
くるぶしまでずり降ろされた靴下を、由紀也がふたたびひざ下まで引き伸ばすと、達也の唇がふたたび、凌辱をくり返してゆく。
二度、三度とつづけられた前戯のすえ、由紀也のハイソックスは破られた。
「なるほど・・・いやらしいね・・・」
ぽつんと呟く大人の声に、「もっと・・・」とせがむ囁き。「いいよ」と応える呟き。
ふたつの影はひとつになって、じょじょに姿勢を崩してゆく。
ジッパーをおろされて前を割られた半ズボンから、赤黒く逆立った茎をつかみ出すと、由紀也は唇で押し包むように咥え、露骨にしゃぶりはじめた。
「ああああああ・・・」
眉を寄せて呻きながら、達也は由紀也のなかに白熱した粘液を放出した。
親友の父親に対する遠慮は跡形もなく消し飛んで、びゅうびゅうと勢い良く、注ぎ込んでいった。

女子の制服を買ってほしい。

2020年01月20日(Mon) 07:09:32

「女子の制服を買ってほしい」
保嗣からそう打ち明けられて、母親の和江は戸惑った。
「女子の制服なんか買って、どうするの?」
「達也君のために毎日着ていく」
え・・・?
どういうこと?と問う目線のなかに保嗣は、
すでに和江が答えを理解していることを直感した。
「ぼくは、達也君の恋人になる。だからこれから毎日、女子の制服を着て登校するんだ」
思いがけない息子の言葉に、和江は息をのんだ。
息子の通う学校に、そういう生徒がなん人かいることを、和江は知っている。

女子になりたくて、女子の制服を着て通学することを、この街の学校は許容していた。
吸血鬼と同居するこの街で、女子生徒の生き血は不足ぎみである。
ある男子生徒が、自分の彼女の身代わりに彼女の制服で女装して身代わりに咬まれたのが発端らしいが、
それが男子生徒たちの女装熱に火をつけて、彼女の身代わりだけではなく、いろいろな事情から女装する子が増えたのだという。
学校が女装生徒に優しいのには、そんな事情も見え隠れしているらしい。

けれどもそれは、身近な話と聞かされながらも、どこか別世界のことのように、和江は感じていた。
まさか目の前の息子の口から、そのような言葉が発せられるとは、思ってもいなかった。
こちらに越してきたすぐのころから友達付き合いをしている達也という少年が、
息子と男女交際のような関係になっていることも、薄々察していたはずなのに。

「お父さんがなんて仰るかしら」
和江はけんめいに逃げ道を探しているようだった。
けれども保嗣は追いすがるようにして、いった。
「案外、だいじょうぶかも」
「どうして」
「だって父さん、母さんと吸血鬼の小父さんが交際しているの、薄々知っているみたいだもの」
和江は痛いところを突かれた、とおもった。

彼女が吸血鬼に襲われたのは、この街に来て間もないころ、まだひと月と経たないうちのことだった。
脚を咬むのが好きな吸血鬼だった。
首すじを咬まれて貧血を起こし昏倒すると、
穿いていた肌色のストッキングをみるかげもなく咬み破られながら吸血されて、
理性を奪い尽くされた彼女は、夫のいる身であることも忘れ果て、恥を忘れて乱れあってしまった。
それ以来。
手持ちの肌色のストッキングを破り尽くされて、
夫の稼いできた給料のなかから高価な黒のストッキング代を差し引くようになって、
相手の望むまま、毒々しく輝くストッキングを何足愉しませてしまったことだろう?
けれども逢瀬を遂げる日に限って夫の帰りは遅く、ちょうど情夫を送り出し、身づくろいを終え、周囲の痕跡を消し去った直後に、夫の帰宅を迎えるようになっていた。
夫の不在はむしろ彼女にとって都合が良く、吸血鬼に促されるままに情事を重ねていった。
「もしもご主人が途中で帰ってきても、わしを愉しませてくれるかね」
そう囁かれたときにためらいもなく、「もちろんそのつもりです」とこたえてしまったのは、つい昨日のことだった。
息子が咬まれるようになったと知っても、息子を咎めることも、いまは情夫となった吸血鬼を制止することもなく、新しいハイソックスを何足も用意してやるなど協力的に振る舞っているのは、夫に対する後ろめたさからか。
それとも、吸血鬼が息子の血までに気に入ったことに歓びや満足を覚えたためか。

「わかったわ。保嗣の制服のこと、父さんに相談してみましょうね」
和江はそう言わざるを得なかった。
げんにきょうも、息子が下校してくる直前まで、夫を裏切る行為を続けてしまっていて、
息せき切った交歓の残滓が、スカートの奥深く押し隠された秘所の周りに、まだとぐろを巻いている。
まだやり足りない――浅ましいと思いながらも、その想いを振り切れなかった。
和江はソファから起ちあがると、エプロンを外しながら、いった。
「母さん、用事を思い出したから、ちょっと出てくる。制服のことは任せて頂戴」
「いいよ。父さんが戻ってきたら、上手く口裏を合わせておこうね」
物分かりのよい息子は、なにごともなかった都会のあのころのように、爽やかすぎる笑みを返してきた。

一見物分かりの良い息子だったけれど。
そのくせ夫婦の寝室までついてきて、彼女の着替えを見たいとせがんだ。
情事を遂げるまえにおめかしするところを、見せてやるのが習慣になっていた。
彼女はわざと寝室のドアを開けっぱなしにして、息子の好奇の視線をまとわりつかせながらふだん着を脱ぎ、おっぱいをさらしながらブラジャーを真新しいものに取り替え、スリップを取り替えてゆく。
きょうの息子の目線は、好奇心だけのものではないのを和江は感じた。
女性の着替えのお手本を見せるつもりで、余裕たっぷりに彼女は着替えた。
おっぱいをさらす時間を少し長めて、いちばん視良い角度でさらすことも忘れずに。

「制服を女子用にするなら、下着も女の子のものをそろえなくちゃね」
一瞬主婦の声色にもどってついた独り言に息子が露骨に喜色を泛べるのを横目に、
黒のストッキングをひざからスカートの奥へと引き伸ばしていった。
息子も明日から同じしぐさで、女になってゆく――
自分が吸血鬼の情婦となるために装うように、息子も同性の親友の恋人となるために、装ってゆく。
そういえば、息子の彼氏にも、嗜血癖があるらしい。
母子で肩を並べて互いの恋人を取り替え合いながら血液を捧げ抜く。
そんな日も、もしかしたら訪れるのかもしれない。
年頃になってから生じた息子との距離感が、べつの意味で縮まろうとしているのを、和江は直感していた。


あとがき
どこまで続くかわからない、柏木には珍しい同性のシリーズです。
12日掲載の「競技のあとで」以来続いています。
ほぼ同性の絡みしか出てこない。なのに、不思議とすらすらと描けます。

親友の父親。

2020年01月14日(Tue) 08:09:30

畑川くん、ちょっと。
畑川由紀也(40、仮名)を表情を消した上司が呼び止めたのは、その日の夕刻だった。
「息子さんの友だちという人が、きみを訪ねてきているよ」
そう言い捨てて立ち去った上司の陰に隠れていた少年は、由紀也を見てうふふ・・・と笑った。

ふたりはもちろん、面識がある。
達也はしょっちゅう、保嗣の家に遊びに来ていたから。
息子の親友と名乗るこの少年がじつは半吸血鬼で、息子の血を狙っていることを、由紀也は知っている。
都会育ちの畑川家に、周囲の人たちは遠慮がちだったけれど。
吸血鬼社会では畑川家の家族全員の血液をだれが獲るのかは、すでに転居した時点では決められてしまっていた。
もちろん、本人たちの同意もなしに。

達也は息子の保嗣と仲良くなると、友人の一人として家に上がり込むようになり、
やがてその手引きでまず妻の和江が吸血鬼に襲われてたらし込まれてしまったことも、由紀也は視て視ぬふりをしていた。
この街に棲む以上、妻を吸血鬼に襲われて犯されることは、避けては通れない道だった。
家族の血と引き替えに安穏な日常を得ていることに、由紀也は一片の後ろめたさを覚えている。
けれども、都会での暮らしに失敗した彼には――いや、彼の家族全員にとっても――もはや今の安穏さだけが、この世で唯一の居場所になっているのだ。

眼の前に現れた達也は、学校帰りらしく、制服姿だった。
半ズボンにハイソックス――年端もいかない子供の服装だと思い込んでいたけれど。
背丈の伸びた年頃の少年が身にまとうと、こんなことになるのか・・・
由紀也は、ハイソックスに包まれた達也の、女の子のようなしなやかな足許に、ふと欲情をおぼえた。
達也は由紀也の顔色を、気になる男の子の些細な態度の変化を見逃さない女子生徒のような目線で見守りつづけていた。

「どうしたの?まだ仕事中なんだけど」
こうした訪問で、吸血鬼が留守宅に上がり込んでくるタイミングをさりげなく教えてくれることを、由紀也は今までの経験で知っている。
きょうも和江は冒されるのか――
淡い諦念を噛みしめかけると、達也は意外なことをいった。
「きょう伺ったのは、ご挨拶です」
「え?どういうこと?」
「保嗣くんを正式に、ぼくの彼女にすることに決めました」
「えっ」
「明日、保嗣くんの血を吸って、ぼくの奴隷になってもらいます」
息子さんを奴隷にする前に、お父さんに御挨拶に伺ったのです・・・という目の前の少年に、由紀也はいっぺんで理性を奪われた。
いずれはそうなる・・・と、わかってはいたつもりでも。
息子が同性の同級生に彼女にされると宣言されるのは。
魂を抜かれるほどの衝撃だった。

「それはとても迷惑なことだね」
由紀也はわざと傲岸な態度でこたえた。
「きみもよくわかっていると思うけど、保嗣は男の子なんだ。ゆくゆくは彼女ができるものだと思っている。
 なのに、きみも男子だろう?息子を女の子扱いされるのは好ましくないね、先生に相談した方が良いのかな。
 保嗣はうちの跡継ぎなんだし、きみも自重したらどうかね?」
彼のもっともらしい意見を、達也はしゃあしゃあと受け流した。
「きょうはそのお礼に、ぼくが小父さんの相手をしに来てあげたんですよ。上司の人も・・・ほら、帰っちゃったみたいだし」
気がつくと。
勤務先のオフィスにいるのは、由紀也と達也だけになっていた。

ワイシャツの釦を自分から外しはじめた達也の手許を抑えつけて「やめたまえ」といったはずだった。
所がいつの間にか、達也を腰かけていたソファから引きずりおろしてしまっていて、
床のうえで組んづほぐれつをくり返してしまっている。
制服の濃紺の半ズボンを自分の股間から分泌した粘液で濡らしてしまったとき。
息子を犯しているような錯覚を覚えた。
その錯覚が、むしろ由紀也を罪深く刺激した。
彼は女性に対するのと同じような吶喊を、息子の親友であるこの少年に対してくり返していった。

「お掃除、手伝うよ」
達也は気品のある少年の顔つきに戻ると、自分を女として扱った中年男にそういった。
「モップと雑巾はどこ?あ、知ってるわけないよね?ぼく探すから」
そういって達也は素早くモップと雑巾を探してくると、床に散った粘液と血液とを、器用に拭き取っていった。
慣れた手つきだった。
この手で息子の血も拭われたのか。
情事を済ませた後の妻の血も、自宅のフローリングから拭い去られたのか。
この少年が、吸血鬼が和江を犯すときにしばしば立ち会って、アシスタントをしていることも、彼は当の吸血鬼から聞かされていた。

粘液は彼自身のもの。
そして、血液もまた、彼のものだった。
欲望を果たしたあと。
ひと息ついている由紀也にのしかかってきた達也は、首すじに咬みついて由紀也の血を吸った。
由紀也がその場に昏倒すると、スラックスをたくし上げられる感覚を覚えていた。
ふくらはぎを覆う、ストッキング地の濃紺のハイソックスが、淡い毛脛に包まれた中年男の脚を覆っている。
そのうえからまだ稚なさの残る唇が吸いつけられて、舌触りを愉しみ始めるのを自覚すると。
あろうことか彼は、達也が少しでも愉しめるようにと、自分から脚の向きを変えて、応えはじめていったのだ。

貧血になるほど血を吸い取られながらも。
喪われた血の量に、彼は満足を覚えた。
「だいぶ、口に合ったようだね」
「なにしろ、保嗣君のお父さんの血ですからね」
悧巧そうな目の輝きが、いっそう妖しさを増していた。

「いちど、小父さんの靴下を破ってみたかったんです。ストッキングみたいに薄い紳士用の靴下って、初めてだったから」「
「どうだったかね」
「いい感じです。息子さんにも履いてもらいたいです。彼がお父さんの箪笥の抽斗をさぐっても、視て視ぬふりをしてあげてくださいね」
白い歯をみせて笑う少年に、由紀也も笑い返していた。
「気に入ってもらえたのなら、破らせてあげたかいがあるかな。よかったら、もう少し愉しむかね?」
由紀也は用意よく、カバンのなかから穿き替えを取り出しかけている。

引き揚げられたスラックスのすその下。
筋肉の起伏を艶めかしい濃淡に彩ったストッキング地の長靴下が、中年男性の足許を染めている。
笑み崩れた少年の唇が、通勤用の靴下の上を這いまわり、牙で侵して、容赦なく裂け目を拡げてゆくのを、
由紀也はただ、へらへらと笑いながら、嬉し気に見入っていた。
家族で彼の奴隷に堕ちるのも悪くない――
薄れてゆく意識を愉しみながら、彼はさいごまで、口許から笑みを絶やすことはなかった。

授業中。

2020年01月14日(Tue) 07:30:09

授業の最中に、先生の声を遮るように、挙手の手が一本静かに挙げられる。
教師が無表情に目を向けると、達也がいった。
「気分が悪いので、保健室行きます。畑川君に、付き添いをお願いしたいです」
ああどうぞ、と、教師は目で応えると、もうふたりの方への注意を消して、無味乾燥な授業へと戻ってゆく。
「あ、ここで済ませますのでだいじょうぶです」
後を追うように上がった保嗣の声に、教師はもう振り向かなかった。

真後ろの席に座る達也が自分の足許にかがみ込んでくるのが、がたがたという物音でわかった。
保嗣が脚に通しているのは、濃紺のストッキング地のハイソックス。
父親の箪笥の抽斗から、通勤用の靴下を一足、無断で借りてきたのだ。

「保嗣の父さんの履いている靴下、色っぽいよね」
いつだか達也がそういっていた。
紳士ものとは思えないくらいの透明感、光沢。いったいどういう意図で履くのだろう?と、息子の保嗣も感じていた。
指定のハイソックス以外を着用して登校してくる生徒は、意外に多い。
だから教師たちも、彼の足許に気づいても、生徒の異装を咎めようとはしなかった。
そんな保嗣の足許に、達也は欲情したのだ。
そうしたことは管轄外と言いたげな顔つきで無表情な授業を続ける教師の態度をよそに、
咬む者と咬まれる者とは、身を引き寄せ合ってひとつにある。

ずずっ・・・じゅるうっ。
露骨な吸血の音を、クラスメイトのだれもが聞こえないふりをしてくれたけれど。
さすがに保嗣は席を起って、教師にいった。
「やっぱり保健室行きます」

2人が保健室までがまんできないのを、誰もが知っている。
隣は幸い、空き教室だった。
「お掃除はちゃんと済ませておいてね」
教師の声を背後でやり過ごしながら。
床に散らされる真っ赤な血潮と白く濁った粘液のヌメりの生々しさとを予感して、
ふたりは抱き合うように手を取り合って、空き教室へと身を沈めてゆく。

初会。

2020年01月14日(Tue) 07:20:50

授業中の保嗣を空き教室に呼び出した吸血鬼は、きょうは彼のことを咬もうとしなかった。
保嗣を引率してきた教師がへどもどと媚びるような薄哂いを残して立ち去ると、
彼は一歩だけ保嗣のほうへと近寄って、紙包みをその手に手渡した。
吸血鬼はなにも言わなかったが、いつもよりもすこし厳粛な顔つきが、保嗣はなにが起きたのかを察することができた。
「ここで待ちなさい」
そう言い残して吸血鬼は立ち去っていった。

きょうはぼくの代わりに、だれを襲うのだろうか?
両刀使いで知られた彼のことだから、相手が男子生徒とは限らない。
同級生の女子生徒だろうか?それとも隣のクラスの担任を受け持っている女教師だろうか?
よけいな想像は、入れ代わりに開かれる教室の引き戸の音で破られた。
引き戸の向こうには、達也が立っていた。
ひどく顔色が悪かった。

保嗣の足許を彩るのは、達也の履いていた濃いグリーンのスポーツ用ストッキング。
脚のラインに沿って流れるリブはまだ真新しく、教室に射し込む陽の光を受けてツヤツヤとした微かな輝きをよぎらせている。
色白で豊かな肉づきの太ももが、血に飢えた達也の欲情をそそった。
アッと声をあげるいとまもなく、達也の唇は保嗣の太ももに吸いつけられていた。
唇の裏に隠された鋭い牙が、白い皮膚を切り裂いて、奥深く埋め込まれた。
達也の自分にたいする情愛と執着とを自覚しながら、保嗣は親友の吸血行為を受け容れてゆく――

数刻後。
うつ伏せの姿勢のまま、保嗣は呟いた。
「満足できた?」
達也が無言でうなずくのを気配で察すると、また訊いた。
「ぼくの血は美味しい?」
やはり無言の肯定がかえってきた。

自分の履いていたスポーツ用のストッキングを保嗣に履かせて、咬んでゆく。
一種のナルシシズムだろうか?
保嗣にたいする形を変えた執着だろうか?
多分その両方なのだろう。
達也の愛用のストッキングを履いた保嗣に自分の影を重ねて、保嗣の血を吸う。
そうすることで、自分自身の血を吸っているような錯覚に囚われたのだろう。
それと同時に。
装いを変えることで達也に近寄せた保嗣を抱くことで、ふたりの距離感をいっそう縮めようとしたのだろう。

もっと・・・
保嗣はうめいた。
達也の唇が保嗣のむき出しの素肌に這い、再び吸いはじめた。
唇はじょじょに身体の上のほうへと這い進んでいって、
さいごに保嗣の唇をとらえていた。
ふたりはむさぼるように互いの唇を吸い合った。
まるで吸血鬼の兄弟のように。

親友の血。

2020年01月14日(Tue) 07:06:12

「顔色、良くないな」
背後から吸血鬼の声がした。
達也がふり返ると、彼は口許から、まだ吸い取ったばかりの血のりを生々しく滴らせている。
保嗣を襲ってきたのだろう。
「顔色良くなったね、小父さん」
達也はそういって、吸血鬼をからかった。
吸血鬼は乾いた笑い声で、達也の揶揄に応じてゆく。
ふたりの間に流れる気安い空気が、そこにはあった。

「昨日は吸い過ぎだよ」
達也は人間の血を好む同性の恋人をたしなめた。
試合の直後に襲われて、思う存分むしり取られたのだ。
「プレー中の動きが凄く良くてな、つい、試合後のプレイにまで、熱が入ったのだよ」
草むらに引きずり込まれて、濃いグリーンのストッキングの脚をじたばたさせながら、自身も快楽の坩堝に溺れていった記憶が、
小気味よく脳裏によみがえる。

「ちょっと唇を貸せ」
吸血鬼はいった。
接吻をするときのぞんざいな言い草に、達也は従順に応じる。
迫ってくる口許には、まだ保嗣の血の芳香がほのかに漂っていた。
うっ・・・
むせ返るような衝動に、達也はうめいた。
そして、重ね合わされてくる唇を、夢中になって吸い返していた。
圧しあてられた唇を通して、吸い取られていったばかりの保嗣の血が含まされてくるのを、達也は陶然としながら飲み込んでいった。

初めて喫った保嗣の血は、ひどく美味に感じられた。
「今度は、本人から直接もらうと良い――許可は得ているのだろう?」
エエもちろんですよ。
悧巧そうな瞳に艶やかな輝きをよぎらせながらそう応える達也は、すでに別人のように生き返っている。

親友からのプレゼント。

2020年01月14日(Tue) 06:43:45

時おり達也から、吸血鬼を通じてプレゼントがある。
いつも紙製の袋に包まれていて、中を開くとスポーツ用のストッキングが一足、入っている。
達也が部活のときに履いている、試合用の濃いグリーンのストッキング。
口ゴムの近くに鮮やかに引かれた黄色のラインが、人目をひいた。
手渡されるストッキングはほぼ新品に近かったが、いちどや二度は達也の脚に通されたものだった。
達也はプレゼントを受け取ると、吸血鬼のまえでそれを脚に通し、餌食になってゆく。
若い血液をむしり取られてゆきながら、足許になん度も牙を刺し込まれるのを感じる。
チクチクとした程よい痛みが、保嗣のマゾヒスティックな気分に彩りを添えた。

こうして達也の履いていたストッキングをまといながら咬まれていると、
達也といっしょに咬まれているような錯覚を覚える。
それは保嗣にとって、幸福な錯覚だった。

試合の直前とか、吸われ過ぎて貧血を起こしたとき、保嗣は達也のストッキングを引き継いで脚に通し、
身代わりのように吸血鬼に咬まれてゆく。
ぼくといっしょに咬まれたかったのか。
身代わりのぼくを慰めようとしているのか。
それとも本当は、ぼくの身体を通して、自分が咬まれたかったのか。
どれもが本心なのだと思う。

文化部所属の保嗣にとって、グリーンのストッキングを履くことは、運動部の生徒の特権だった。
運動部の生徒しかおおっぴらに履くことのできないグリーンのストッキングを履いて吸血鬼の牙に侵されるとき。
彼は異常な昂りを感じた。
その昂りに身を弾ませながら、彼はひたすら、自身の体内をめぐっている若い血液を、惜しみなく捧げ尽くしていった。
親友のストッキングを身代わりに履いて、足許を辱め抜かれながら。

文化部生徒の献身。

2020年01月12日(Sun) 10:00:46

「ゴメン、明日試合なんだ」
間島達也(17、仮名)は、自分の血を欲しがって現れた吸血鬼を前に、手を合わせた。
「明日だったか――それではしょうがないな」
吸血鬼はあきらめ良く、懇願する少年から目線をはずした。
「すまないね、明日の試合のあとなら、相手するから」
達也は手にしていた紙袋を吸血鬼に押しつけると、足早に立ち去っていった。

「振られちゃったね、小父さん」
穏やかで温かい声色が、背後からあがった。
吸血鬼が振り向くと、そこには達也のクラスメイトの畑川保嗣(17、仮名)がいた。
保嗣は制服姿だった。
濃紺のブレザーに、グレーの半ズボン。その下は半ズボンと同じ色のハイソックスといういでたち。
この街に吸血鬼が現れるようになってから、学校の制服が一新されて、男子もハイソックスを着用するようになっていた。
文化部所属の保嗣の足許は、肉づきがたっぷりとしている。
達也のもつ無駄のないしなやかな筋肉とは違って、女のようなふくよかさをたたえていた。
――この子なら、女子の制服も似合いそうだな。
吸血鬼はふと思った。

「教室、行こうか」
「いや、君の家がいいな」
評判の美人である保嗣の母親を思い浮かべて、吸血鬼はにんまりと笑う。
色白で透き通った皮膚は、母子共通のものだった。
「いやらしいね、小父さん」
保嗣は露骨に顔をしかめたが、いやだとは言わなかった。

「ただいまぁ」
間延びした息子の声色の背後に、黒影のように付き従ってきた男の姿を横目にして、
保嗣の母はただ、おかえりなさい、と返しただけだった。
「あとでお部屋に、お紅茶持って行くわね」

「紅茶が入るのに、数分くらい・・・か」
保嗣の勉強部屋でひとりごちる吸血鬼に、「15分かな」と、さりげなく訂正した。
数学の得意な彼は、こういう訪問に慣れてくると、献血をしながら頭上の壁時計に目をやって、平均時間を測っていたのだ。
自分の体調と提供可能な血液の量、それに一分間あたりに吸い出される血液の量を割り算して、所要時間を計算する。
几帳面なのかもしれないが、その几帳面さはどこかいびつだ――と、吸血鬼はおもった。
もちろん、自分のことは棚にあげて。

「さ、いいよ。十代の男子高校生の生き血、たっぷり愉しんで・・・」
保嗣は腹這いになると、グレーのハイソックスの脚を吸血鬼の前に差し伸べてゆく。
放課後、真新しいハイソックスに履き替えたらしい。
脚のラインを映して微妙なカーブを描く真新しいリブが、ツヤツヤとしている。
うふふふふふっ。
男はくすぐったそうに笑み崩れると、笑みに弛緩した唇を、ハイソックスのうえから擦りつけてゆく。
足許を緩やかに締めつけるしなやかなナイロン生地に、生温かい唾液がおびただしくしみ込んでくるのを、
少年は苦笑いしながら迎え入れた。
達也のやつも、こんなふうにされているんだな――と、吸血鬼のもう一人の恋人のことを思い浮かべながら。

20分後。
保嗣は失血に蒼ざめて、息も絶え絶えになっていた。
ひざ下までぴっちりと引き伸ばされていたハイソックスは半ばずり落ちて、吸い残された血潮に濡れている。
あちこちにつけられた咬み痕は、赤黒い斑点をあやしていて、吸血鬼のしつようさを母親の視線にあますところなくさらけ出している。
息をのんだ母親は、すでに首のつけ根に食い入る牙のために、ひと言も口をきけなくなっていた。
侵入者は、息子のハイソックスだけではなく、自分がいま脚に通している肌色のストッキングまで狙っている――
そうわかっていながら、もうどうすることもできない。
「ヤスくん、視ちゃダメよ・・・」
ひそやかな声を無視して、保嗣は姿勢を崩していく母親から、目線をそらそうとはしなかった。

競技のあとで。

2020年01月12日(Sun) 09:41:23

競技場へ入っていく女学生たちの、グレーのハイソックスに包まれピチピチはずむふくらはぎよりも。
交通整理に熱中するスタッフのお姉さんたちのタイトスカートのすそから覗く、肌色のストッキングの脚たちよりも。
きょうの”彼ら”の興味を惹くのは、グラウンドを駆け回る選手たちの、短パンからむき出しになった脚、脚、脚。
当校のユニフォームは、緑。相手校のそれは、赤。
どちらにも目移りするのは、ユニフォームカラーと同じ色のストッキングに包まれた、筋肉質の脚だった。
脚に咬みつく習性をもつ吸血鬼たちの嗜好に従う相手は、男女を問わなかった。

よく見ると。
選手たちは当校の生徒だということがわかる。
逞しさのなかにもどこか童顔を残した目鼻立ち。
ストッキングに包まれた筋肉も、どこか伸びやかで柔らかそうだ。
それを彼らはすでに、口許の奥に隠した牙で識っている。
行き交う彼我の選手たちへの喝さいをよそに、
スポーツに鍛えた身体をめぐる血潮に飢えた喉が欲望にはぜるのを、彼らはじりじりとしながらこらえている。

「だれがお目当てなんだね?」
間島幸雄(42、仮名)は、傍らの吸血鬼を振り返る。
スラックスの下に履いた通勤用の薄手の長靴下は、すでに彼の餌食になって、
肌の透けるほどの裂け目をつま先まで走らせてしまっている。
軽い貧血を憶えながらも、間島は相棒をからかわずにはいられなかった。
「もちろん、あんたの息子さんさ」
吸血鬼はくぐもった声でそう応えると、にやりと笑った。
間島は露骨に顔をしかめてみせる。
「泥だらけのストッキングにご執心とは思わなかったな」
「いや――履き替えてくるよ、きっと。俺に咬まれるのを予期しているからな」
選手たちのほとんどは、すでにいちどは咬まれた経験を持っている。
そして、自らの足許に注がれた熱い視線を、試合の合間合間に露骨に感じ取っては、スタンドを振り返り、尖った視線を送り返すのだ。
「試合の邪魔はしないでくれ」と言いたげに。

試合後。
間島は連れだって歩く悪友の目が異様にぎらつくのを感じ取った。
向こうから、ユニフォーム姿の息子が歩いてくる。
ジャージに着替えることもなく、短パンから覗く太もももあらわに陽の光に曝して、帰り道を急いでいた。
吸血鬼の予言どおり、少年が脚に通したストッキングは、真新しいリブを陽に当てて、ツヤツヤと輝いていた。
「じゃあな」
吸血鬼は間島に一瞥をくれると、待ちかねたように少年の方へと走ってゆく。

視界の遠くで、少年をつかまえた吸血鬼が性急になにかを囁くのを、
囁きを耳にした少年が、露骨に嫌そうな顔をするのを、
そのくせ促されるままに、近場の物陰へと姿を消してゆくのを、
間島はじいっと見つめ、それからため息をつく。
家にまで行く気だな――と、間島は直感した。
吸血鬼が彼の留守宅を訪れるようになって以来妻は彼に対して優しくなり、
冷え切っていた夫婦の関係に、好転の兆しが訪れている。

競技場の近くにそびえる廃工場の裏庭は、かっこうの場所だった。
すでに先客が何組か、一定の距離を隔てて横たわったり抱きすくめたり、絡み合ったりしていた。
そのなかの半数はチームメイトであるのを見届けると、間島達也(17、仮名)は、男を見あげた。
「なかなか良いプレイだった」
「小父さん、スポーツのことわかるの?」
「いや、全然」
「なんなんだよ」
「フォームがきれいかどうかは、スポーツなど知らなくても、観ればわかる」
なおもなにか言おうとした少年の唇を、吸血鬼の飢えた唇がふさいだ。
長い口づけは、どのカップルにも共通らしい。
すでに横たわっている傍らでも、すこし離れた立ち姿も、秘めやかな沈黙を保っている。

毒気に当てられたような少年の顔つきを面白そうに見守ると、
「横になってもらおうか」と、吸血鬼はいった。
「こう、かい・・・?」
陽の光を吸った草地が、背中に暖かかった。
少年があお向けになると、それを追いかけるように、吸血鬼が覆いかぶさる。
ユニフォームのシャツをたくし上げると、下に着ていたランニングを性急に引きちぎり、乳首に唇を這わせてゆく。
「アッ、ひどいな・・・」
抗議しようとした少年は、ふいに黙った。
そして、長い沈黙が訪れた。

「小父さん、家に来るんだろ。母さんも待ってるよ。おめかしして家にいるからって言ってた。
 欲張りだよね?母さんのストッキングも、咬み剥いじゃうんだろ?
 そのあとなにをしているのかも、ぼくはよく知っているからね。
 今度、いつかは、父さんに言いつけちゃうからね・・・」
小さくなっていく抗議をくすぐったそうにやり過ごしながら、
すでにじゅうぶんに舌触りを楽しんだストッキングをもうひと舐めすると。
擦りつけた唇に隠した牙を、しなやかなふくらはぎの肉づきに、グイッと力を込めて刺し込んでいった。

家族を吸い合う。

2019年12月09日(Mon) 07:14:10

悪友の良太が、吸血鬼に血を吸われて吸血鬼になった。
誰か一人だけ吸血鬼にできる能力を得た良太は、ぼくのことを咬んで吸血鬼にした。
2人で街を徘徊して、だれかを襲って血を吸おうとしたけれど、なかなかよいきっかけを得られなかった。
道行く大人たちはだれもが恐そうだったし、年下の子たちは襲ってはいけないような気がしたのだ。

とうとう咬む相手にあぶれたぼくたちは、途方に暮れながら夕方を迎えた。
良太は、「いっしょにうちに来て、お袋の血を吸わないか」と、ぼくを誘った。
良太のお母さんは顔見知りだったし、友達のお母さんを襲うのはちょっと抵抗があったので、しり込みをしたけれど。
お互い喉の渇きには、あらがうことができなかった。

「先に家に帰って待ってる」
という良太にいわれるままに、門限をとっくに過ぎた時間に、ぼくは良太の家のインタホンを鳴らした。
良太が出てきた。
「親父は今夜は夜勤でいないから」と、ひくい声でいった。
良太のお父さんは、良太が吸血鬼になったのも、お母さんの血を吸いたがっていることも知っていた。
息子に妻の血を吸わせるために、良太がお母さんを襲いたいときには必ず、夜勤を入れて家を空けるのだった。
忍び足で良太の家に上がり込もうとするぼくに、良太は、
「お袋はおれが先に咬んだから、もう気絶しちゃってるよ」と笑った。

良太のお母さんは、リビングであお向けになって倒れていた。
白目を剥いて、大の字になって、首すじに生々しい咬み痕をつけていた。
「よっこらしょっと」
2人で良太のお母さんを抱き上げて、ソファに移した。
ぼくは良太の咬んだ傷口に唇を吸いつけて、良太のお母さんの血を吸った。
人の生き血を吸うのは、初めての経験だった。
初めて味わうたっぷりとしたのど越しに、ぼくはすべてを忘れて夢中になった。
良太はお母さんのひざ小僧を抑えつけて、ふくらはぎをしきりに咬んでいた。
肌色のストッキングをびりびりと咬み破りながら、チュウチュウと音を立ててお母さんの血を吸い取っていた。
ぼくも負けないくらい、チュウチュウと音を立てて、良太のお母さんの血を吸いあげていた。
2人は昔から、良きライバルだった。

「お袋の生き血を、タカシと2人で吸いたかった」
良太は手の甲で血のりを拭いながら、ぼくにそういって笑った。
たいせつにしているものをタカシにあげたかったし、いっしょに歓び合いたかった――良太はそういうのだった。
タカシの前なら、恥ずかしいことをしていても笑われないからね、と、照れくさそうに口にした。
お母さんの血は美味しかったと正直にいうと、「ありがとう」と感謝してくれた。

セックス経験のある女性を獲物にしたときには、セックスもしてしまうのがこの街の吸血鬼の習性だった。
良太もためらうことなく、自分のお母さんにのしかかっていった。
少し意識が戻ってきたお母さんは、自分が息子になにをされているのかもおぼろげにわかりながらも、
ウンウンとうなりながら、スカートの奥にまさぐりを受け容れていった。

「こんどはきみの番だぜ」
良太に促されて、ぼくも良太のお母さんの上にまたがった。
セックスは初めてだったけれど、びっくりするほどスムーズにできたのは。
目のまえで良太がお手本を見せてくれたのと、母子相姦を見せつけられた異常な昂奮のおかげだった。
この晩ぼくは、良太のお母さんで、女の身体を識った。

ひとしきり嵐が過ぎ去ると、良太のお母さんは起き上がって、
「まあまあ、あとの掃除が大変じゃないの」
と言いながら、フローリングに撥ねた血や粘液を、モップ掛けし始めていた。
さっき良太やぼくに犯されながら見せた”女”の顔はきれいにしまい込んで、
きれい好きな主婦の顔つきに戻っていた。
そして、息子とその悪友が自分の血を吸ったことも、犯したことも、ひと言も咎めだてはしなかった。

「こんどはきみの番だぜ」
どこかで訊いたことのある科白を再び耳にしたのは、その三日後のことだった。
良太のお母さんの血は腹持ちが良くて、三日間ぼくたちを飢えさせないでくれたのだ。
けれどももう、限界だった。
そして、道行く人から獲物を選び出すことのできなかったぼくたちは、今度はぼくの家へと脚を向けたのだ。
幸か不幸か、ぼくの母は未亡人だった。

「礼儀正しいんだねえ」
ぼくが精いっぱいの皮肉を口にしたのは、
ひと通りことを済ませてしまった後、良太が父のお仏壇にお線香なんかあげていたから。
2人がかりで襲われた母さんは、左右の首すじから血を流して、
それから肌色のストッキングを穿いた脚にも、あちこち咬み痕をつけられていた。
めくれ上がった花柄のロングスカートのすそには、2人ぶんの精液が、べっとりと粘りついていた。
良太のお母さんを2人で襲ったとき、良太の胸の奥に根差した家族を獲物にする歓びを、なんとなく理解する事が出来た。

三日経ってぼくたちはまた良太の家に行って、良太のお母さんを襲った。
良太のお父さんはやっぱり、夜勤で家にいなかった。
今度はぼくも、良太のお母さんの首すじに咬み痕をつけさせてもらった。
そのときもやっぱり、良太はお母さんの穿いている黒のストッキングをびりびりと咬み破りながら、ふくらはぎを咬んで愉しんでいた。
そういえばぼくの母さんのときも、ねずみ色のストッキングって珍しいと言いながら、母さんの穿いているストッキングを見る影もなく剥ぎ堕としていたっけ。
良太はどうやら、ストッキングマニアらしかった。

それから三日後のこと。
つぎの獲物は、ぼくの妹だった。
良太を家に招んで、2人がかりで母さんを襲っている最中に、妹が下校してきた。
「ただいまー」
のんびりした声を残してまっすぐ勉強部屋へとあがってゆく足音を聞きつけると、
良太は、胸元の咬み痕を気にかけながらも放心状態の母さんのうえから起きあがって、
やおら後を追いかけていった。
二階からキャーという叫び声がしたけれど。
ぼくは目の色を変えて母さんの上にまたがって、
スカートの奥にびゅうびゅうと精液を穿き散らすのに夢中にjなっていた。
高本家の女ふたりは、こうして同時に吸血鬼の餌食になった。
二階の勉強部屋では長女が。
リビングでは奥さんが。
若い2人の吸血鬼の飢えた欲求を、自分たちの身体をめぐる血潮で満足させていた。

母さんが静かになったのを見届けて、二階の勉強部屋へとあがっていくと、
したたかに血を吸い取られた妹は、息も絶え絶えになっていた。
「すまん、やり過ぎた」
良太は恥ずかしそうに、頭を掻いていた。
そして、
「でも、処女の生き血ゲット♪」
といって、ピースサインを送ってきた。
ぼくも、首すじから血を流して喘いでいる妹を横目に、ピースサインを返してやった。

処女の生き血は初めてだったと正直に告げる良太を、
「お口に合ったようで良かった」と、ぼくは祝福してやった。
妹の履いている真っ白なハイソックスのふくらはぎには、赤黒い血がべっとりと着いていた。
ふくらはぎを咬んで血を吸う――そこまでキメないと、気が済まないらしかった。

「きみの母さんは?」
と訊く良太に、「静かになったよ」というと、良太は横たわる妹に毛布をさっと掛けてやると、見に行こうといってくれた。
2人で階下におりると、母さんはまだ意識がないまま、じゅうたんのうえに転がっていた。
「だめだなあ、ちゃんと介抱しないと」
そういいながら良太は、父さんと母さんの寝室に入って布団を敷き、ぼくに手伝わせ、
「よっこらしょっと」
と、母さんのことを布団の上に寝かせた。
そして額に手を当てて母さんの身体の血の無くなり具合を確かめると、
「もうちょっとしたら気がつくよ」
といってくれた。
「それまでいっしょにいてやるといいよ」
と言い残すと、再び二階にあがっていった。
また妹の血を愉しむつもりだろうと思った。
気を利かせて二人きりにしてやろうとは思ったけれど、好奇心がまさって、ぼくは足音を忍ばせて階段をあがった。

案の定彼は、妹を布団に寝かせて、時おり「だいじょうぶ?」と声をかけながら、丁寧に介抱していた。
妹は布団のうえで、かすかに頷いているようだった。
「靴下汚しちゃって、ゴメンね」
という良太に、
「母さんに買い置きしてもらうから、いい」
と、気丈な顔つきでこたえていた。
そして、良太がぬけぬけと、
「この靴下記念にもらうね」
と、自分の脚に手をかけてハイソックスを脱がそうとするのを咎めもせずに、そのまま引き抜かれていった。
そういえば。
母さんの破けたストッキングも、コレクションと称して持ち帰っていたっけと、薄ぼんやりと思い出していた。

お互いに家族の血を吸い合って、ぼくたちは懇親を深めた。
やがて妹は良太の嫁になり、ぼくも当時の同級生と結婚した。
ぼくの妻となった人は、在校生のころから、良太に血を吸われていたから、秘密を共有できる関係だった。
結婚してからも良太に血を吸わせていたので、必然的に2人は不倫の関係になった。
妹は時おり里帰りをして、ぼくに若妻の生き血を愉しませてくれた。
必然的に2人は不倫の関係になった。
兄妹の関係は、近親相姦といって忌まれるのだけれど――そんなことはもう、どうでもよかった。
ぼくは良太の嫁となった妹を抱くことで、2人への愛情を益々深めたし、
良太がぼくの妻を抱くことで、秘密の愉しみを共有する歓びを、さらに深めていった。
お互いにお互いの妻を交換し合う関係に、良太はとても満足している。
ぼくも、すごく満足している。

2019.12.8構想
2019.12.9脱稿

ハイソックス男子の呟き。

2019年10月01日(Tue) 06:48:43

初めて襲われたとき、ぼくは思わず口走っていた。
「死なさずに血を吸うことって、できないんですか!?」
どうしてそんなことを言ったのか、いまでもよくわからない。
けれどもぼくを追い詰めたその男は、それこそしんけんな顔つきで、
「もちろんそうするつもりだ」
といったのだった。
そして、答えの意外さにびっくりしているぼくをつかまえて、首すじを思い切り強く咬んだのだった。

初めての吸血に、うっとりとなってしまったぼくは、
そのままその場に倒れて、足許を舐められるのを心地よく感じながら、気絶した。
高校生にもなって、ぼくは半ズボンにハイソックスのスタイルを好んでいた。
ふとわれに返ったときには、気に入りのチャコールグレーのハイソックスは血に濡れて、あちこち咬み破られていた。
ぼくが露骨に迷惑そうな顔をすると、彼はすまないね、と言ってくれて、
それでもあつかましくも、もう片方の脚にまで、咬みついてきた。
ハイソックスが好きなんだ――そう直感したぼくは、
狙われたほうの足許からずり落ちかけていたハイソックスをとっさにひざ小僧の下まで引き上げて、
好きなだけ咬み破らせてしまっていた。

その日以来、ぼくはその公園で男と、待ち合わせるでもなく待ち合わせるようになった。
足許には、彼を悦ばせるために、色とりどりのハイソックスを、代わる代わる履いてきた。
彼はぼくのコレクションを誉めながら、一足一足、くまなく舐めて愉しんでから、咬み破っていった。
ぼくもまた、惜しげもなく脚をさらして、彼の欲望に応えていった。

彼女ができるとぼくは、まるで恋人同士のように定期的に逢っている吸血鬼のことを打ち明けた。
美奈子さんは面白そうに瞳を輝かせてぼくの話に聞き入って、
貧血になるといけないから、私も寄付しようかな・・・と、言ってくれた。
ふたりを引き合わせると彼は、似合いの彼女だね、といって、ぼくのために慶んでくれて、
それから脚を咬んでもいいという彼女の足許にかがみ込んで、彼女のふくらはぎに咬みついていった。
その日の彼女は、黒のダイヤ柄の、着圧ハイソックスを脚に通していた。
「痛くないように咬んでくれるんですね」
彼女が感心していると、
「礼儀ですから」
と、彼は奥ゆかしくこたえる。
「じゃあもう少し、良いですよ」
と、なおも吸血をすすめる彼女の足許から、
彼は無遠慮にびりびりと、着圧ハイソックスを破り取っていった。

こと果てて、「ごちそうさま」をしたあとに、
「いつもハイソックスなんですか」と問う彼に、
「イエ、ストッキングと半々ですね」と応える彼女。
そのやり取りを面白がって聞いているぼく。
この三人は、きっとうまくいく。ふとそんなふうに感じた。
「今度はストッキング穿いてきますね」
別れ際のひと言に、彼はとても嬉しげだった。

それからは二人連れだって彼のところに遊びに行って、
さいしょにぼく、それから彼女。
いつもその順番に、咬まれていって、
ウットリするほどもうろうとなった目線の先で、吸血鬼に襲われる彼女の姿に陶然となって見入っていた。
ただひとつだけ、気になったのは。
彼が、既婚女性を咬んだ時にはセックスまで遂げてしまうという習性を持っていること。
「結婚したら、ちょっと遠慮しますね」
思慮深い彼女はそういってくれたし、彼も引き留めたりはしなかった。
そして結婚後はぼくだけが、彼にハイソックスを咬み破らせてやる習慣をつづけるようになった。
少し習慣の中身が変わったとしたら、
半ズボンの下に穿いていく靴下が時おり、妻がいちど脚に通したストッキングに変わることだった。
「不倫するわけにいかないけど、気持ちはあるから」と告げた妻の、せめてもの心遣いだった。

その均衡が崩れる日が訪れた。
ぼくが長患いをして、彼のところに行けなくなった時のことだった。
「私行ってくる」
美奈子は意を決したように起ちあがり、
「その気のない人が襲われたらよくないでしょ」
といった。
ストレートな言い方に、言い訳がましさは微塵もなかった。
「彼によろしく」
ぼくはせめてものことと、明るくいって、彼女を見送っていった。

どうしても心配だったぼくがそのあと彼女を尾(つ)けて彼の邸に入り込み、
いちぶしじゅうを見届けてしまったことは、いうまでもなかった。
彼の腕の中、妻はちょっとだけ泣いて、涙を見せまいとしてすぐに指先で拭うと、
彼はその指を唇に持って行って、軽く含んだ。
そしてこんどはいとおしむように、しっかりと妻のことを抱きとめた。
その瞬間、ふたりは本当に結ばれたのだとぼくは感じて、
妻の貞操が喪われたことよりも、むしろ二人の心の絆を慶んでいた。

二人合わせたら、なん足の靴下を、彼に愉しまれてきたことだろう?
まだまだ愉しませてあげようね・・・
夫婦で交し合った笑みに、曇りはない。
ぼくがあとを尾(つ)けたことを咎めもせず、話題にも出さない妻――
二人の間では表向き、妻はいまでも貞淑だということになっている。
たぶんきっと、それが真実なのだと、いまでは思う。
ひとがきいたら、笑うかもしれないけれど。


あとがき
夫の親しい吸血鬼に理解を示す婚約者というのが思い浮かんで、キーをたたいてみましたが、少し散漫になってしまったかも。

母と姉と悪友たちと

2019年09月01日(Sun) 06:04:29

十代の男の子が考えていることといえば――ヤることだけだ。
そんな十代の男の子が三人、女なしで集っているとき。
そのなかのひとりがいった。
――ウチのお袋、未亡人してるんだ。
えっ!?
ほかのふたりは顔見合わせて、言い出しっぺの少年の顔色を窺った。
――みんなで姦(や)っちゃわない?ヒロシの母さん。
――姦っちゃっても、いいの・・・?
男の子たちはすでに、息が荒い。
ヒロシくんはちょっぴり辟易しながらも、いった。
――オレ、お袋が姦られているところ、覗いてみたかったんだ。
――お前は姦らなくても、いいの?
一人がいった。
ほかのやつらはじっと、ヒロシを見る。
――い、いいのかな・・・だって、親子だぜ?
いちばんワルそうなのが、いった。
――俺たちが姦ったあと、かけ合わてやるよ。
ワルのひと言に、ヒロシを含むほかの全員が、瞳を昏く輝かせた。

――あなたたち、どうしたの?
男の子たちのただならぬ雰囲気をそれとさっして、ヒロシの母さんの玉枝は声を尖らせた。
――俺たち、女と姦りたい・・・
一人が切羽詰まったようにつぶやいたのをきっかけに、ほかの全員が玉枝にとびかかった。
抑えつけられた玉枝の服が、一枚一枚、むざんに剥ぎ取られてゆく。
――およしなさい、止しなさいったらっ、こらっ!
ばたつかせる脚を抑えつけたやつが、玉枝の脚を舐めた。
肌色のストッキングに滲むよだれに、ほかのやつらの目も狂っていた。
大人の女を犯すんだ――だれもがそういう目をしていた。
こういうときのチームワークは、抜群だった。
抗う玉枝に、ワルが真っ先に玉枝にのしかかった。
乱されたロングスカートの奥に腰を埋めて、ワルは玉枝を犯した。
――ちょ、ちょっと・・・!ちょっとお!!
群がる少年たちの下で玉枝はなおも咎めつづけていたが、やがてその声も熄(や)んだ。
少年たちはかわるがわる、ヒロシの母親のうえにのしかかって、稚ない欲望を満たした。

ヒロシはさっきから、股間を逆立てて、母親の受難を見守っている。
予想以上の派手な展開に、わずかな罪悪感はきれいに消し飛んでいた。
――お前の母さん、いい身体しているな。
傍らに座ったワルが、ヒロシの股間を握りしめて、いった。
ヒロシは股間をさらに怒張させて、無言でうなずいた。
――約束通り、かけ合わせてやるからな。
ワルの瞳は、昏く輝いていた。
きょうの主役のヒロシ君が、お母さんに挑戦します!
ワルのひと言で、みんなが玉枝の手足を抑えつける。
玉枝の穿いていたストッキングはいたぶり尽くされて、くるぶしまで破れ落ちていたが、
誰かが太ももまで引き上げた。
――ふだんの感じになるべく近いほうが、昂奮するだろ?
ワルがいった。
――お前の母さん、セクシーだなっ。
だれかがからかうのを、ワルが止めた。「大事なとこなんだから」
――ヒロシ、ヒロシったらっ!親子でだめでしょ!こんなことっ。
叫ぶ玉枝をみんなで抑えつけ、ヒロシの応援をしていた。
いちど受け入れてしまうと、玉枝は夢中になって、積極的に腰を振りはじめていた。
狂乱のるつぼのなかで、主婦は娼婦に堕ちていった。

こと果ててしまうと。
――もう、ばかじゃない?あなたたち。
咎める玉枝に、一同形ばかりは神妙だ。
けれども全員が、知ってしまっている。
玉枝のほうだって、一度犯されてしまうともぅ、すっかりノリノリになっていたのを。
つぎ、あなた。ここだから、ね。
二度目の順番がそれとなくできあがると、玉枝は手短かに手ほどきを加えて、
ウンウンとうなりながら、
猛り立つ竿の一本一本に、女の身体の丁寧な扱い方を、教えていったのだ。
息子の番がまわってきても、分け隔てはなかった。
――そう、そう。しっかりね。
やっぱりウン、ウンとうなりながら、びゅうびゅうと撥ね散らかされる白く濁った粘液を、股の奥へとためらいもなく、注ぎ込ませたのだ。
――ふつうは男が教え込むもんだけどな。
そんなことをうそぶいたいちばんのワルも、じつは女の身体を識ったのは、きょうがはじめてだった。
――でもさいしょは、女のひとに教わらないとね。
玉枝のいれた合いの手に、みんな素直に頷いていた。
こんどはいつ来るの?という玉枝の問いで、男の子たちとの愉快なさよならにたどり着いた。
――小母さんありがと、また来るね。
少年たちの目はだれもがキラキラとしていて、
礼儀などかけらも教わっていないはずなのに、
「ヒロシ、ありがとな」と、母親を襲うチャンスをくれた友達を前向きに気遣うのだけは忘れなかった。


帰る道々。
――あのあとどうなるのかな、あの親子。
――ばか、決まってんだろ。
いちばんのワルにたしなめられて、言いかけた少年はエヘヘと笑う。
帰ってゆく彼らの想像を裏切らずに、
母と息子とはふたたび、身体を重ね合わせてゆく。

それからは。
メンバーのだれもが順ぐりに、自分の家族のだれかを紹介していった。
意外にも、真っ先に手本を見せたのは、ワルだった。
ワルのお母さんは風俗の経験もあったから、息子の悪友たちを前に慣れたように服を脱いで、ヒロシの母親以上に適切に手ほどきをしたのだった。
ワルもさすがに、自分の母親の娼婦ぶりを目にするのは初めてで、さいごには息荒く、母子相姦に挑んでいった。
息子の悪友たちに群がられて、つぎつぎと犯されていったお母さんたちのなかには、
夫以外とのセックスに明らかに慣れているのもいれば、
「お父さん以外は初めてなのよ」という純情なのもいた。
そういう身持ちの堅いお母さんのほうが、束縛がほどけたあとの落差もひどかった。
「大人の女性の洋服を剥ぎ取って犯すのが好き」とワルがいうと、
「困った人たちネ」といって、
つぎに待ち合わせをするときには、結婚式帰りのスーツや法事帰りの洋装の喪服を着て、少年たちと交わっていった。
「だんなにばれたら大変だよね?」と囁くワルに、
「うちは共働きで苦しいから、離婚なんてできないの」と笑ってこたえた。
ワルたちはバイト代を出し合って、その夫人には洋服代を渡していた。
案外、そういうところもある連中だった。
だんな達は、自分の妻と息子の悪友たちとの密会に、それとなく気づいていたようだったが、
彼らの間に流れる空気の和やかさを察すると、気づかぬふりを装って、彼らが性体験を重ねるのを見守っていた。
結果的にそのことが、彼らがそれ以上の非行に走ることから救っていた。
そして彼らのなかから、離婚した夫婦は一組も発生しなかった。


布団のうえで玉枝は、裂かれたワンピースをまだ身にまとったまま、熱く熟れた血潮が鎮まるのを待っていた。
きょうの相手は、ワル単独だった。
どうやらヒロシの母さんに真面目にほれ込んでしまったらしいワルは、
ヒロシのいないときにひっそり現れては、家事にいそしむ玉枝の背後に息荒く迫って、
羽交い絞めに抱きすくめるのが習慣になっていた。
十代の男子の性急な欲情に戸惑いながらも、
「女のひとのこぎれいな服を破きながら犯すと昂奮する」と告白したワルのために、
玉枝は気前よく服を破らせ、素肌を熱く貪欲な唇にゆだねていった。
「俺、性欲強すぎるのかな」
「そんなことないわ、十代の男の子だったらふつうでしょ」
「ヒロシもそうなの?」
「いっしょに住んでいるから、お父さんのいないときにはしょっちゅうよ」
「そいつは羨ましいな」
「あなたはお母さんとはしないの?」
「姉貴がいるから、家ではちょっと無理」
「お姉さんに手を出しちゃだめよ」
「いつか姦っちゃいそう」
「嫁入り前の子はだめよ、結婚できなくなっちゃうかもしれないでしょ」
「それはそうか・・・」
仲間のなかでは母親以外に、妹を”紹介”してくれたやつもいる。
世代の近い肌は、よけいに身近に感じられたっけ――
ちょっと考え込んだワルに、玉枝は優しく笑う。
「経験のある女の人だったら、さいしょは無理やりでもなんとかなっちゃう場合もあるけれど、あんまり無理強いはだめよ」
「わかった、気をつける」
「どうせあなたのことだから、もう若い娘さんともやっちゃっているんだろうけど・・・少しは気をつけなさいね」
玉枝はワルの行動をすっかり見抜いていながらも、さりげない忠告にとどめておいた。
「あなたは手だれだから、ヒロシに好きな子ができても、先に姦られちゃいそうね」
そうつけ加えるのも、忘れなかった。
――それでもヒロシもあたしも、許しちゃいそう。
イタズラっぽく笑った瞳が、そう告げていた。
玉枝の留守中あがりこんだ彼らが、ヒロシの姉に迫ってよってたかって姦ってしまい、
母娘で代わる代わる”お得意様”になっているのも、知っている顔つきだった。


「ちょっとあなたたちっ!?なにするつもり!?」
ワルの姉は、弟といっしょで強気だったけれど。
当の弟を含む悪友連中に囲まれて、明らかに度を失っていた。
「若い娘さんはやめときなさいよ」
お袋には、そう注意されていたけれど。
ほかのやつの妹や姉貴、それに彼女まで毒牙にかけてきた手前、俺も提供しなくっちゃ。
そんな自分本位なことを、ワルは本気で考えていた。
仲間を大切にするんだ。本気でそんなことを考えていた。
ヒロシが抑えつけて、ワルが真っ先にのしかかる。
ワルの姉さんの制服のブラウスは年下の少年たちの手で引き裂かれて、
発育のよいふくらはぎを包んでいた紺のハイソックスは、淫らな指に性急にずり下ろされていった。

8年ほどあとのこと――
すっかり美しくなったワルの姉さんの披露宴に、弟とその悪友たちも招かれていた。
「ヒロシのやつ、さいしょから姉貴のことが好きだったらしいんだ」
新郎の席に座るヒロシのタキシード姿を見やりながら、
ビールを注ぎに来たワルが、かつての悪友たちに囁いた。
「あいつ、それとわかっていて自分の嫁の処女を俺たちに捧げたのかな」
「ウン、あいつ、ちょっとマゾっぽかったものね」
だれもが母親を犯される姿を目の当たりにして勃起していたくせに、そこは棚に上げて酒の肴にしてしまうらしい。
ワルを含めだれもが、いまはふつうに仕事に就いていて、地道に汗を流している。
それでも無軌道な性欲はまだまだ健在で、こないだも先月結婚したやつの新居にみんなで遊びに行って、夫婦のベッドで新妻をまわしてしまったりしているのだが――
以前と少しだけ違うのは、本人の了解をあらかじめ取ったうえでの行為だった。
お互いの家族を襲い合った新郎を経由して申し込んでみたら、
花嫁の方が、彼氏にもいえない輪姦願望を告白してきたのだった。

近親相姦で姉の処女をむしり取ったワルは、それからもしばしば姉弟で関係を結んでいたけれど。
ヒロシの本当の気持ちに気づいてからは、手を出すのをやめた。
ふたりがつき合っている間もずっと、ほかの女とのつかの間のストレス発散で紛らわしていた。
純白のウェディングドレスに包まれたヒロシの姉の肉体を、招待されただれもが識っている。
けれどもそれはもう、言わぬが花のことだった。
「初々しい花嫁」というお決まりの誉め言葉に、あそこが真っ黒な新婦はしきりに照れている。

彼らが手にした招待状には、添え書きがあった。
新婚初夜のホテルの部屋にお越しください。新婦がウェディングドレス姿でお待ちしています。
ヒロシはかつての悪友たちに、嫁姑ながら差し出すつもりらしい。

2019.8.8構想

おそろいのライン入りハイソックス。

2019年05月19日(Sun) 06:46:13

ライン入りのスポーツハイソックスが、中高生の間で流行っていたころ。
僕は毎日のように、黒や赤のラインが鮮やかなハイソックスを履いて、学校に通っていた。
彼女の理香も、僕と好みがいっしょだった。
時には示し合わせて同じ柄のハイソックスを履いてきて、
合同の体育の時間には、お互いの短パンの下に履いた同じ柄のハイソックスを見せ合うように、目配せしあって楽しんでいた。

さいしょに咬まれたのは、ぼくのほうだった。
体育会の帰り道、短パン姿のまま下校したのがまずかった。
学校の周囲に出没している吸血鬼のことは、知らないわけじゃなかったけれど――
どこかで、「襲われてもいい」という想いが、もしかすると根差していたのかも。
道端の草むらに引きずり込まれた僕は、ふくらはぎを咬まれて血を吸われ、
お気に入りの赤と黒のラインが入った白のハイソックスを真っ赤に濡らしながら、吸血される快感を埋め込まれていった。

ハイソックスを3足咬み破らせてしまったころにはもう、その行為に夢中になっていて、
同じ経験を理香にも、ぜひさせてあげたいと願っていた。
ぼくの呼び出しにこたえて、放課後校舎の屋上にあがってきた理香は、
さきに吸血された僕が咬み破られたのとおそろいの、紺のラインのハイソックスを履いてきていた。
理香は僕を置き去りにして逃げ去ろうとしたが、校舎の屋上でくり広げられた鬼ごっこは、あっという間に終わっていた。
首すじを咬まれキャーと叫んだ彼女は、白のブラウスにバラ色の飛沫を撥ねかせながら、初めての吸血を受け入れていた。
白のハイソックスを赤黒いまだら模様で濡らした僕をみとめると、
「同じようにしたいのね」と、ちょっとだけ肩を落とした。
成績の良い理香は、察しも良いほうだったのだ。

理香のふくらはぎの一番たっぷりしたあたりに、吸血鬼が咬みついて、
紺のラインのうえに赤黒いシミを広げていくありさまを、僕はただドキドキとしながら、見届けてしまっていた――

それ以来。
僕と理香とはそれまで以上に仲睦まじく、連れ立って学校を行き来するようになった。
周りも認めるカップルは、時折吸血鬼の家に招かれて、ふたりながらの献血を果たした。
おしゃれな理香は、時折ストッキング地のハイソックスを履いてきて、
僕の目の前で臆面もなく咬み破らせて、状況のあまりのなまめかしさに、僕が目の色を変えるのを、面白そうに窺っていた。

やがて理香はハイソックスを履く世代を卒業して、通勤用のスーツの下にストッキングを穿くようになった。
それでも吸血鬼宅への連れ立っての訪問は続いていて、
華燭の点を挙げる前の晩、理香は咬み破かれたストッキングを脱がされて、僕の目の前で大人の女性にさせられた。
未来の花婿の目の前での初体験に、さすがに半べを掻いた理香だったが、
彼の好物だった処女の生き血を10年以上も、目いっぱい与えたことに満足そうだった。
――これからは、奥さんの不倫も愉しもうね。
ニッと笑った白い歯にドキドキしながら、僕は思わず強く肯いてしまっていた。


あとがき
さわやかな青春の記憶は、いつか妖しい大人の恋の日常に埋没していくのかも知れません。
ライン入りのハイソックスが流行したのは、相当昔のことですが、
男女同じような柄のハイソックスを履いての体育の時間に、ユニセックスな妖しさを覚えたのは、柏木だけではなかったはず。^^

10足め。

2019年05月12日(Sun) 09:19:10

吸血鬼に、学校帰りのハイソックスを狙われた。
相手は中年の変態で、脚フェチだった。
彼は半ズボンにハイソックスを履いた少年たちの足許に見境なく咬みついて、
ハイソックスを咬み破りながら血を吸う行為を好んでいた。

走って逃げたけれど、あとを追いかけてきて、街はずれの公園でとうとうつかまえられてしまった。
ふくらはぎに咬みついた男は、ねずみ色のハイソックスを赤黒く血浸しにしながら血を吸い上げて、
貧血でめまいを起こすまで、放そうとはしなかった。
餌食にされた少年は、ハイソックスの脚を両方とも愉しまれてしまった。
そしてさいごには正気を失って、咬み剥がれずり下ろされてゆくハイソックスを、うすぼんやりと見つめていた。

いちど血の味を覚えられてしまうと、二度三度と学校帰りを襲われた。
さいしょの三足は、学校の名誉を汚されるような気がして、罪悪感におびえながら血を吸われた。
つぎの三足は、汚されても良いから愉しませてあげなきゃと思って、厭々ながら咬ませていった。
そのあとの三足は、汚される歓びに目覚めてしまって、自分から足を差し伸べて、破らせてしまっていた。

十足めを破かれたとき。
半ズボンを脱がされて、初めて女として愛された。

ふたりの少年

2019年05月12日(Sun) 08:07:32

学校の近くに吸血鬼が棲んでいて、
下校中の少年たちを襲っては、ハイソックスを履いた脚に咬みついて、血を吸っていた。
人を殺めることはなかったので、少年たちは戸惑いながらも脚を咬まれていったし、
親たちも見て見ぬふりをしていた。
この街は、吸血鬼と平和に暮らしていた。

幼馴染のタケシとヒロシは、一日ちがいで吸血鬼に襲われた。
後からヒロシが襲われた日、ふたりが塾で顔を合わせたとき、
お互いのハイソックスに咬まれた痕と赤黒いシミが浮いているのを確かめ合って、
照れくさそうに笑いあった。

それ以来、ふたりは咬み破らせたハイソックスの数で競争するようになっていた。
「もう、3足も咬み破られちゃった」
「ぼくはきのうで4足めだよ」
吸血鬼は二人を交代で襲ったので、抜きつ抜かれつしていたけれど、
数の少ないほうの少年は差を縮めようとして、
夜になるとわざわざハイソックスを履いて、吸血鬼の潜む公園に出かけて行った。
吸血鬼は「遅いのによく来たね」と少年の頭を撫でて、
貧血になりすぎないかと身体の様子を気にかけながら、
それでもハイソックスの足許にいやらしい舌なめずりをくり返していった。
脚の線に合わせてなだらかに流れるハイソックスのリブが、じょじょに歪められ、いびつに折り曲げられて、
血に濡れながらだらしなくずり落ちてゆくのを、少年たちは面白そうに見おろしていた。

やがて、タケシのほうが一方的に、破かれたハイソックスの数を伸ばした。
なぜなら、ヒロシは血を吸いつくされて、吸血鬼になってしまったから。
自分の血が尽きてしまって、もう血を吸ってもらえなくなったのを残念がるヒロシを、タケシが慰めた。
そして、今度からはぼくの血を吸えよと、親友を誘った。

学年があがると、吸血鬼はひとつ下の子たちを狙うようになった。
自由の身になったタケシは、上級生になってもハイソックスを履き続けて、
喉をからからにして自分の血を欲しがる級友のため、
きょうもハイソックスを濡らしながら、若い血潮をあてがっていった。

再来。

2019年04月23日(Tue) 07:26:46

やあ、こんばんは。
声をかけられた顔をあげた吸血鬼は、驚きと戸惑いをうかべた。
目のまえで無邪気に笑っているのは、半ズボン少年――つい先月まで日常的に血を吸っていた相手だった。

夕暮れ刻の公園で独りで遊んでいたところをつかまえて、首すじを吸い、失神させると、
ふくらはぎを咬んでハイソックスを咬み破りながらの吸血を愉しんだ。
彼が半ズボンの下に履いていた、紺地に白のラインが入ったハイソックスに、目を惹かれたからだった。
以来、2,3日に一度は念波で抗いがたく呼び寄せて、
首すじを咬んだりハイソックスの舌触りを愉しみながらの吸血に耽る日々がつづいた。
ハイソックスのふくらはぎに唇をなすりつけてくる吸血鬼に、
少年は「なんだかやらしいネ」と、彼の意図を見抜いたことを言ったけれど、
彼は少年の足許にいやらしく舌をぬめらせて、ハイソックスをふしだらにずり降ろすことに熱中した。
やがて彼らの関係は、母親の知るところになった。
帰宅してくる少年が、ハイソックスに血をつけていたり、素足のまま戻ってきたりすることに疑念を抱いた彼女は、
夕刻の公園に少年を迎えに行き、吸血の現場を目撃し、自身も難に遭った。
首すじを咬まれた彼女は、息子の前で失神した。
ひざ下丈のスカートの下に穿いていた肌色のストッキングは、
息子のハイソックスと同じあしらいを受けていたぶり抜かれ、ふしだらに剥ぎ降ろされていった。
そして、息子がすでに股間に受け容れてしまっていた一物を、スカートの奥に突き入れられて、
良家の主婦は一瞬にして吸血鬼の奴隷に堕ちていった。

事態を変えたのは、少年の兄だった。
正義の味方のスーパーマンのように現れた彼は、弄ばれる母親と弟のありさまに顔をしかめて、
一撃のもとに吸血鬼をやっつけた。
重い傷を負わされた吸血鬼は追い払われて、もう二度と彼の家族の前に姿を見せぬと誓わされた。

まじめな母と子とをたぶらかしたのは、確かによくなかったと、吸血鬼は恥じた。
彼にしては、珍しいことだった。
この街を離れるか、いっそこのまま飢え死にしてしまおうかと思い詰めたとき、
あの母子が不良の青年たちに道を阻まれているのを見た。
もともと、ひどく治安の悪い街だった。
吸血鬼は最後の力を振り絞って、”気”を投げた。
”気”は青年たちの乗るオートバイのタンクに命中し、誘爆を起こし、燃えあがった。
あわて騒ぐ彼らに襲いかかると、ひとりひとり首すじを咬んで、血を吸った。
心底から悪いやつの血はまずかったが、エネルギーにはなった。
吸血した後、どす黒い液体を吐き散らす吸血鬼を見て、駆け寄って来た少年が訊いた。
「なにをしているの」
こいつらの体にたまった毒を吸い取って、吐き出しているのだと吸血鬼はこたえた。
どうしようもないくらい悪いやつは、体内にこういうどす黒い粘液をため込んでいる。
それをすべて吸い出してしまえば、いちおうの真人間には戻ることができるのだと。

一か月後には彼らのだれもが改心して仕事を持ち、吸血鬼のところにお礼のあいさつに訪れた。
自分の彼女や妹、それに母親といった、”手土産”を持って――
彼らの血を片っ端から吸い取りながら、吸血鬼は、この街にもう少し長居するのも悪くない、と思った。
ほかの街に行っても、どうせ人を襲うわけだし、
相手が真面目な人間だったら、またぞろあの少年と母親のようなことになりかねないのだから――と。

この日もそうした手土産に、ありつくつもりだった。
相手は、かつての不良青年の一人の妹だった。
この種の若い女たちのなかでは、数少ない処女だったから、きょうも彼は舌なめずりをして、彼女の訪れを待ちかねていた。
あらわれた女をしゃぶりつくようにして抱きすくめて、いよいよ首すじに唇を吸いつけようとしたとき、女が苦しげにいった。
――逢うのはこれきりにして。好きな人ができたんです。彼に悪いから、もうここには来たくないんです。
以前なら、四の五の言われようが耳も買わずに、ずぶりと牙を埋め込んで、いうことを聞かせてしまうところだった。
けれども吸血鬼は脱力してしまって、昂ぶりを込めた牙をおずおずと引っ込めていた。
女はごめんなさい!と最敬礼をして、足早に立ち去っていった。

やあ、こんばんは。
あの少年が声をかけてきたのは、そんな失意の時だった。
あたりはそろそろ、闇に包まれようとしていた。
そっちこそ、どうしたんだ?もう遅いんだから、帰んなさい。
ご近所の口うるさい小父さんのようだと思いながら、吸血鬼はいった。
少年はいつものように半ズボン姿で、ねずみ色のハイソックスをひざ小僧のすぐ下まで引き伸ばして履いている。
肉づきのよいふくらはぎが描くなだらかなカーブに、吸血鬼は視線だけを吸いつけた。
「いいんだよ、咬んでも」
え?と、吸血鬼は訊き返した。
「ボクそのために、履いてきてあげたんだから」
このごろは、半ズボンもハイソックスも、流行りではないのだという。
だから学校にも履いて行く機会がないので、小父さんに会いに来るのに久しぶりに履いてきたのだと。
しかし・・・と、吸血鬼はおもった。
俺が少年の脚に唇を吸いつけるときには、欲情にまみれたよだれをたっぷりとしみ込ませてしまうときなのだと。
「わかっているよ、小父さん、やらしいものね」
少年はくすりと笑った。
「ほら、母さんも連れてきたよ」
たしかに――少年の背後には、あのときのご婦人が、奥ゆかしげな物腰で佇んでいる。

すでに彼らの体内から、吸血鬼の毒は抜けきったはずだ。
彼の唾液のもつたぶらかす力は、せいぜい一週間しか、もたないはずだった。
「だいじょうぶですよ、お気遣いなさらなくても――主人にも話してきましたから」
母親もまた、ほほ笑んでいった。
セックスの経験のあるご婦人を襲うとき、人間の男女と同じ交わりを結ぶのがつねだった。
そうすることが、相手のご婦人に対する礼儀なのだと、思い込んでいた。
吸血鬼に襲われていた当時、彼女は自分の夫に自分が受けた不名誉、自分が繰り返した裏切り行為を告げることをためらい、唇をかんでいたはずだった。
どうしても小父さんに血をあげたい――そんな言い張る少年の主張を容れざるを得ないと感じたとき、
彼女の背後にいた夫がいった。
「この子ひとりでは心配だから、きみもついていっておやりなさい。無事に戻ってこれるのなら、それだけで良いから」と。
そして、吸血鬼に逢っているあいだは、この家の主婦だということは忘れていてもかまわないから、と、つけ加えた。

「ほら、遠慮するなって」
少年親しげに笑いかけると、ねずみ色のハイソックスを引き伸ばして、吸血鬼の目のまえに片脚を差し出した。
真新しいハイソックスに流れる太めのリブが、街灯の光を受けてくっきりと浮き上がっている。
なまめかしい妖しさに魅かれるように、吸血鬼は少年の足許にひれ伏すようにしてかがみ込み、唇を塗りつけた。
「やっぱ、やらしいね」
少年が白い歯をみせたときには、ねずみ色のハイソックスは、吸血鬼の淫らな唾液でぐしょ濡れに濡れそぼり、
ふくらはぎにキリッと流れた太めのリブは、ふしだらによじれ、折れ曲がっていた。
街灯に輝く白い太ももや、首すじにまで牙を埋めて、吸血鬼は少年の血をしんそこ美味そうに味わった。

息子が夢見心地な顔つきになってベンチに寝そべってしまうと、こんどは母親の番だった。
「さ、どうぞ、お気の済むように」
そっと差し伸べられたふくらはぎは、ひざ下丈のスカートの下に慎み深く隠されていたが、
肌色のストッキングの丈の長さが、すくなくとも少年のハイソックスよりもあることを示していた。
ご婦人の足許に接吻をするときには、ちょっとだけ控えめに唇を吸いつけたつもりだったが――
吸着させるときに不覚にも洩らしたチュッという音は、間違いなく彼女の耳にも届いていた。
うろたえて戸惑っているのが、唇を通して伝わる彼女の身じろぎでそれと知れたから。
ストッキングの上から這わされた魔性の唇からは、淫らな唾液が分泌されて、
良家の人妻の無防備な素肌を、侵蝕してゆく――
夫人は限りなくうろたえ、恥じらった。
少年が薄眼をあけて見つめる前で押し倒されて、スカートをまくり上げられるときも、
行儀悪く半脱ぎになったストッキングをまだ足許に残しながらのセックスに、
彼女はうろたえ、恥じらいつづけた。

母親と弟が自分の意思で再び吸血鬼の友だちとなったことは、少年の兄を再び激昂させることにはつながらなかった。
むしろ彼は、逆の行動をとった。
彼は弟が血を吸われた翌日の夕暮れ刻に、吸血鬼のいる公園を訪れて、いった。

さいきん、この街から悪いやつがいなくなった。
俺は悪いやつをこらしめることしか考えていなかったが、あんたは自分の能力を善用して、悪いやつをふつうのやつに変えてしまったんだな。
紹介するよ、俺の恋人だ。将来結婚することになっている。
時々連れてきてやるけれど、あんまり失礼な態度を取らないでくれよな。
なにかあったら、彼女から聞いて、ぶん殴りに来るからな。
彼女が気に入ったら、自分で来ることもあるだろう。
忙しい仕事をしているひとだから、貧血にならない程度で手かげんしてくれよ――

そう、正義の味方のスーパーマンは、吸血鬼に自分の恋人を紹介してしまったのだ。
少年の兄の”手土産”に、吸血鬼が満足したのはいうまでもない。
彼の恋人は真面目な女性で、まだ処女だった。
ふたりは結婚前に結ばれたけれど、それからも恋人は自分の意思で、夕暮れの公園にやって来た。
セックス経験のあるご婦人と時間を共にするときに彼がどういうことをするのかを、スーパーマンは知っていたはずなのだが、
どうやら吸血鬼がスーパーマンにぶん殴られたといううわさは聞こえてこなかった。
彼女が黙っていたのか、彼氏が許していたのか――
たぶんその、両方だったのだろう。


あとがき

最初は抵抗しながらも吸血鬼の意のままにされてしまった人たちが、
呪縛が解けたはずの時期になって、もう襲われなくてもよいいはずなのに、
自分を襲っていい思いをしていた相手のことを気づかって、ふたたび訪れて意のままにされてゆく。
こんどはお互いに、気づかい合い、愉しみ合いながら――

どういうわけか、惹かれるプロットです。

寵愛。

2018年11月18日(Sun) 08:34:52

不思議な街だ、と、俊哉はおもった。
田舎街なのに、どこか洗練されていて、透きとおった空気とこぎれいな佇まいとが同居していた。
通っている学校は、男子もハイソックスを履く学校だった。
大多数の少年たちは、私服でも半ズボンに色とりどりのハイソックスを履いていた。
かつて、少年たちがおおっぴらに、女の子みたいな真っ赤なハイソックスを履いていた時代があった――
いつだか父さんが、そんなことを言っていたっけ。
俊哉がそんなことを考えていると、背後からガサガサと複数の足音が近づいて来た。

急な接近にびっくりして顔をあげると、そこには同じクラスの少年が5~6人、俊哉を見おろしていた。
都会から引っ越してきた俊哉を、目の仇のようにしていた少年たちだった。
両親の生まれ故郷というこの街で唯一なじめないのが、彼らだった。
けれども、いつも敵意に満ちた視線を送ってきた彼らの態度が、あきらかにちがった。
頭だったタカシという少年が、俊哉にいった。
「お前、親方に寵愛されているんだって?」
「寵愛」という言葉をこの年代の少年が使うのを、俊哉はこの街に来て初めて知った。
寵愛――・・・って・・・?
問い返す俊哉に、親方のお〇ん〇んを、お〇りの穴に容れられることだよ、と、タカシはかなり露骨な表現を使った。
タカシの態度からは、俊哉と親方の関係を皮肉るというよりも、手っ取り早く意思を疎通したいという思いの方を、より強く感じた。
「そう・・・だけど・・・」
戸惑いながらもはっきりと肯定した俊哉の顔を、タカシはまじまじと視た。
「お前ぇ、えらいな」とだけ、彼はいった。
「だったら俺たち仲間だから」
ぶっきら棒にタカシは告げた。
これから血を吸われに行くんだけど、相手がまだいないんならお前も連れてこうと思ってたんだ。
でも、親方が相手じゃ、邪魔できないな――タカシは口早にそんなことをいうと、
仲間を促して、あっけに取られている俊哉に背中を向けて、立ち去っていった。
少年たちは、ひとり残らず、ハイソックスを履いていた。
この街に棲む吸血鬼が、ハイソックスを履いた男子の脚を好んで咬む――
そんなうわさを移り住んですぐに俊哉は耳にし、それからすぐに、実体験させられていた。

少年たちが”親方”と畏敬をこめて口にした男は、60代のごま塩頭。いつも地下足袋に薄汚れた作業衣姿だった。
もともとは、女の血だけでは満ち足りなかったので、少年たちを埋め合わせに襲っていたのだが、
いまでは少年も、女たちと同じくらい愉しみながら手籠めにするのだ、と、その老人は俊哉に語った。
初めて襲われた日のことだった。

その日俊哉は担任に残されて、遅くなった帰り道を急いでいた。
その前に立ちふさがったのが、親方だった。
避けて通ろうとした俊哉の手首をつかまえると、傍らの公園に強引に引きずり込んだ。
あれよあれよという間に、首すじを咬まれていた。
この街に吸血鬼がいるといううわさがほんとうだったのだと、俊哉は思い知らされた。
シャツをまだらに汚しながら、俊哉は若い生き血をむしり取られた。
親方の目あては、俊哉の履いている濃紺のハイソックスだった。
通学用に指定されているハイソックスはまだ真新しく、街灯に照らされてツヤツヤとした光沢を帯びていた。
舌なめずりしながら足許に唇を近寄せ吸いつけてゆく吸血鬼に、失血で力の抜けた身体は抵抗を忘れていた。
ちゅううっ・・・
口許から洩れる静かな吸血の音の熱っぽさが少年に伝染するのに、そう時間はかからなかった。
俊哉はもう片方の脚も気前よく咬ませ、クスクス笑いながら吸血に応じていった。
別れぎわには、見るかげもなく咬み剥がれたハイソックスを、唯々諾々と足許から抜き取られていった。

母親を連れて来いという親方の要求にも、もちろんこたえた。
素足で返って来た息子を、母親のみずえは咎めることもなく、息子に連れ出されるままに親方の家を訪問していた。
母親はなぜか、すべてを予期したように、よそ行きのスーツで着飾っていた。
その日初めて、少年は男が女を犯すところを目の当たりにした。
裂き散らされたストッキングをまとい残したままの脚が、地下足袋を履いたままの逞しい脚に、絡みついていった。
それが、父親を裏切る行為だということを、少年はなんとなく直感したけれど、
「父さんには黙っているから」
とだけ、母親に告げた。
(だからまたお招ばれしようというのね?)と言いたげにみずえは俊哉を見つめ、
母親を連れてくる代わりに覗くことを黙認すると息子に親方が約束したのまで、見抜いてしまっていた。
見抜いたうえで母親は、親方のところに通っていったし、息子もそのあとをついていった。
母親が都会から持ってきた洋服がすべて破かれてしまうのに、たいした日数はかからなかった。


「だんな、すまんですね。ちょっと寄り道していきますで」
透一郎と肩を並べて歩いていた農夫は、すれ違った学校帰りの少年たちをふり返ると、ニタニタと笑いながら足を止め、
ちょっと会釈を投げて、きびすを返していった。
似たような手合いが数人、少年たちを取り囲むようにして近づいて行くのを、透一郎は見た。
お互いに同数だと確かめ合うと、少年たちはなにも抵抗するそぶりもなく、彼らの意図に従った。
あるものは傍らのベンチに座り込み、あるものは塀に押しつけられるように立ちすくみ、あるものはその場にうつ伏せになって、
むき出された牙に、首すじや胸もとをさらしていった。
半ズボンの下から覗くピチピチとした太ももや、おそろいの紺のハイソックスに包まれたふくらはぎも、例外ではなかった。
紺のハイソックスを履いた少年たちのふくらはぎに、飢えた吸血鬼の唇がもの欲しげに這わされてゆくのを、
透一郎は遠くからじっと見守った。
吸われる彼らのなかに息子がいるような気がした。
吸っている彼らのなかに親方がいるような気がした。
「あっ・・・ちょっと・・・」
口ではたしなめようとしながらも、自分たちに対するしつような吸血を止めさせようとはしない彼らの姿に、息子のそれが二重写しになった。

「息子に手を出すのはやめてくれませんか?」
いちど透一郎は、家族にも黙って、親方のねぐらを訪れていた。
「そのつもりで帰って来たのではないのかえ」
親方は野太い声で応じていたが、透一郎を見る目は息子を見る父親のようないたわりに満ちていた。
「すっかり都会の水になじんじまったようだな」
といいながら、親方は少し待て、と、透一郎にいった。お前の息子をきょうここに招んであるから――と。

父親が物陰に隠れていちぶしじゅうを視ているとはつゆ知らず、
俊哉はいつものようににこやかに親方のねぐらの薄汚れた畳のうえに、通学用のはいハイソックスのつま先を滑らせて、
まるで恋人同士のように口づけを交わすと、
服の上から二の腕や胸、腰周りを撫でまわされながら、なおもディープ・キスをねだっていった。
太ももに思い切り喰いつかれたときには、さすがに声をあげていたが、その声もどことなくくすぐったげで、嬉しげだった。
親方が随喜の声を洩らしながら息子の生き血を吸い取るのを、透一郎は息を詰めて見守っていた。
父親として止めさせることもできたはずだが、あえてそれをしなかったのは、
少年時代の自分と二十年以上まえの親方とが、むつみ合う二人の姿に重なり合っていたためだった。

        ―――――

透一郎の母は、息子に誘い出されるままに親方の餌食になって、熟れた生き血をふんだんに振る舞うはめになっていた。
そして、男女の交わりがどんなものなのかまで、息子に見せつけてしまっていた。
はじめのうちは、自分の意思に反して。それからやがて、自ら肩を慄かせ昂ぶりに夢中になりながら――
母の不始末を知った父は、親方を咎めに出かけていったが、帰宅した時には別人になっていて、
あのひととは家族ぐるみでのおつきあいをすることになったから、とだけ、ふたりに告げていた。
それ以来、学校帰りには体調の許すかぎり、親方の家へと立ち寄った。
両親の血を吸った親方が、自分の血に興味を示すのは当然だ、と、子ども心に思っていた。
おふたりの血がブレンドされたお前の血はとても美味だという奇妙なほめ言葉を、肩を抱かれながらくすぐったく耳にしていた。
そして、結婚相手が決まったらわしに紹介しろ、良い子を産めるかどうか、血の味で確かめるから――といわれるままに、
みずえをねぐらへと連れて行った。

みずえは親から土地のしきたりを言い含められていたので、こういうときにどうすれな良いのかを知っていた。
婚約者である透一郎の手前、形ばかり抗ったのち抱きすくめられて、首すじを咬まれていった。
新調したばかりのブラウスに血が撥ねて、クリーニング代がかかるわねと思ったときにはもう、正気をなくしていた。
こぎれいな訪問着を着崩れさせながら抱きすくめられ生き血を吸い取られてゆく婚約者をまえに、息を詰めて見守る透一郎の視線を怖いと思った。
華燭の典の席上、純白のウェディングドレスに包まれた新妻は、前夜に呼び出されて犯された余韻に股間を深々と疼かせながら、意義深い刻を過ごしていた。

        ―――――

息子が帰ったあと、透一郎は親方を見つめた。
親方は、透一郎が子供のころの目に戻ったと感じた。
透一郎は勤め帰りのスラックスをそろりとたくし上げると、かつて親方に賞玩された足許をさらけ出した。
彼の足許は、ストッキング地の黒の長靴下に染まっていた。
「なまめかしいの」
親方は目を細めた。彼が露骨に示した好色そうな色に、透一郎は満足した。
押しつけられてくる唇の下、なよなよと薄い沓下はふしだらに皺寄せられて、
力を込めて咬み入れられた牙に、ブチッと裂けた。
顔をあげた親方は笑った。透一郎も笑っていた。
透一郎は親方の背中に両腕を回し、親方は刈り込んだ髪の生え際に唇を這わせた。
ワイシャツの襟首を濡らしながら、久しぶりの陶酔に、透一郎はため息をもらした。
身体がバランスを失って、背中に畳を感じながら、靴下一枚だけをまとった下肢をめいっぱい拡げる。
物陰に隠れた妻の視線をありありと感じながら、透一郎はむしろ昂ぶりを覚えていた。
夫の前で抱かれるみずえの歓びも、きっとこんなふうなのだろう――
息子をさえも犯した逸物に狂おしさに息を詰まらせながら、透一郎はふとそう思っていた。


あとがき
思いきり、男物でした。^^;

吸血私娼窟~息子たち~

2018年09月08日(Sat) 06:22:26

ぼくのママを抱いたんだろう?
ツヨシの眼差しはまっすぐだった。
洋司は無言で肯いた。
どうだった?
よかったよ
つい正直に応えてしまってから、しまったと思った。
ああやっぱり・・・と、ツヨシはかなり無念そうな顔をしたから。

きみは自分のママのことを抱かないの?
ツヨシは訊いた。
ボク、視ているだけでじゅうぶんだよ。
ふーん、そんなものなのかな。
感じ方は、人それぞれじゃない?
それはそうだよね。
これからも、ぼくのママを抱くつもりなの?
ツヨシの目つきは、せつじつだった。
どう応えたものかと、洋司はちょっぴり迷った。
迷ったあげく、訊いてしまった。
ツヨシのパパにも迷惑だよね。
洋司の問いは、ちょっとした反撃になった。
ツヨシは洋司から目をそらして、口ごもりながら、いった。
あの人は、ママのことを吸血鬼に譲った人だから。。
そういう言い方は良くないよ。
そうだね、ところで、ぼくがきみのママを抱いたって言ったら、怒られる?
こんどはツヨシの言葉が、洋司への反撃になっていた。
お互い、対抗意識を自覚しないまま、やり取りを深めていた。
ウウン、そんなことないよ。で、どうだったの?
洋司はつとめて事務的に応えた。
ウン、よかった。
ツヨシの答えは、実感がこもっていた。
なら、よかった。
洋司の相づちにも、共感が込められていた。
あっさりしてるんだね。
たいせつな母さんを犯されたんだ。せめて悦んでもらわなくっちゃ。
ツヨシはちょっと考え込んでから、いった。
そういう考え方もあるんだね。勉強になったよ。
勉強って・・・
洋司は笑いかけたが、ツヨシのしんけんな目線に打たれて、それ以上の笑いを引っ込めた。
そしてただ、「視ているだけっていうのも、案外いいよ」とだけ、いった。
そういうものなんだね。
ツヨシは案外、素直だった。
こんど、ぼくもやってみるよ。ガマンできるかどうかわからないけど・・・
そうだね、おススメだから。
そうなんだ。おススメなんだ。
ふたりは初めて、笑いあった。

こんど、うちへおいでよ。うちに来て、ぼくの前でママのことを誘惑してみてよ。
ママが堕ちたら、抱いてもいいから――遠慮しなくていいからさ。
こんどは、視ているだけにするから――

ツヨシの顔を見て、洋司は無邪気に笑い返した。
ウン、ぜひ、行くね。
そして、忘れずにつけ加えた。

ガマンしなくても、いいからね。


9月3日構想 8日脱稿

あとがき
妄想が複数からまり合うと、お互い邪魔し合うわけではないのですが、どれもこれもモノにならなくなって困ります。
ひとつひとつの妄想は、お話にするほどのパワーがないのかもしれません。
ただ、ほんのささいな表現とか言葉とかしぐさとかが、わたしのことを魅了してやまないから、そこから動けなくなるのです。
いまがちょうど、そういうときなのかも。