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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

吸血鬼の下僕。

2017年07月30日(Sun) 05:14:09

ぼくの血を吸っている吸血鬼に。
妹を見初められ、
彼女まで見初められてしまったぼくは、
いつも短パンの下に履いている、スポーツ用ハイソックスの脚を伸ばして、
ツヤツヤとしたリブ編みのナイロン生地のうえから、血に飢えたヒルのような唇を吸いつけられて、
ふたりのまえで、生き血を吸われるお手本を見せてあげる。
若い獲物たちが、吸血鬼をまえにして、
怖がらずに自分のうら若い生き血を吸い取らせてあげることができるよう、
おぜん立てをしてあげるために。
彼を愉しませるために用意した、真新しいナイロン生地のうえ。
みるみる拡がる真っ赤なシミに、ふたりの少女は白い顔を並べて、面白そうに見入っている。

妹の履いていた、ひし形もようのハイソックスも。
彼女の履いていた、通学用の濃紺のハイソックスも。
どちらも、好色な唇をくまなく吸いつけられて、意地汚くよだれをしみ込まされて、
ずるずるとだらしなく引きずりおろされ、見る影もなく咬み剥がれていって、
さいごにつま先から抜き取られ、せしめられてゆく。

年ごろの少女たちの足許を彩るハイソックスは、彼らの絶好の餌食。
きょうもまた、妹の、彼女の履いているハイソックスが、戦利品としてせしめられて、
数多い彼のコレクションのなかに、加えられてゆく。
そんな事実に、マゾの血をドクドクと昂らせてしまうぼく――

恥知らずなぼくのまえ、
妹も、彼女も、さいしょは拗ねながら、さいしょは強がりながら、
眉を逆立て、震わせながら、生き血をチュウチュウと、吸い取られてゆく。
でもやがて、牙の切っ先に含まれた毒に、理性を麻痺させられて。
恥を忘れて、くすくす、へらへらと笑いこけながら。
なん度も首すじに圧しつけられる飢えた唇に、
われとわが身をめぐるうら若い処女の生き血を、惜しげもなく含ませてやって。
抱きすくめる猿臂が、着衣を通してしみ込ませてくるまさぐりに、
きちんとそろえたおひざを、崩してゆく。

お兄ちゃんのばかっ。妹は言った。
さいごまで責任取りなさいよ。彼女は言った。

どちらのことばも、しんけんに受け止めよう。
そう、ぼくは吸血鬼の下僕。
身内の女たちを愛でられることを、たまらなく誇らしいと感じる、忠実な下僕。

ひし形もようのハイソックスを履く妹。

2017年07月24日(Mon) 07:10:47

ひし形もようのハイソックスを履いた脚をバタバタさせながら、
妹が吸血鬼に抑えつけられて、首すじを咬まれてゆく。
発育の良い小麦色の首すじに突き立てられた牙で、クイッと咬まれた瞬間、
小さな唇からアアッ!と声をあげて、妹はバタつかせていた脚を引きつらせた。

きゅう、きゅう・・・ごくん、ごくん・・・
吸血鬼は喉を鳴らして、妹の生き血をむさぼるように飲み耽ってゆく。
「お兄ちゃん!お兄ちゃん!」
ひし形もようのハイソックスの脚を再びバタつかせながら、援けを求める声を聞き流し、
吸血鬼が獲物にかぶりつく有様を、ぼくはばかみたいにボーっと眺めてしまっていた。

部活が終わったあと、練習用の無地のストッキングから、わざわざ新品の試合用のストッキングに履き替えて。
白地に赤のラインの入ったストッキングの上から唇を這わされて、
リブ編みのナイロン生地の舌触りを、くまなく愉しまれたあげく――
むき出された牙で、がぶりとやられてしまう。
いま、ぼくのひざから下を覆っているストッキングは、わざとしみ込まされた血に、真っ赤に濡れて、
ぬらぬらと生温かく、ぼくの足許にへばりついている。

母の生き血を欲しがって、なおもしつこく下校のあとをついて来た吸血鬼は、
通りがかった妹に、目をつけた。
ミニスカートの下に履いたひし形もようのハイソックスに目がくらんで、
しきりにあの子はどこの子だ?とぼくに訊き、
「妹だよ」
言いにくそうにそういうと、それはいたって好都合!とばかりに、妹のあとを尾(つ)けて、家のなかにまであがり込んできたというわけだ。

「お兄ちゃん、この人だれ?」
怪訝そうな妹に。
「あんたの血を吸いに来た」
男はこれ見よがしに牙をむき出して、本性をあらわにする。
えっ?えっ?どういうことっ??
両手で口をふさいで戸惑う妹は、伸びてきた猿臂をかわし、
家じゅうを逃げ回る。
楽しい鬼ごっこの始まりだ。
ひし形もようのハイソックスの脚を追いかけて。
やつはわざと手かげんしながら、妹を追い詰めていって。
さいごに抱きすくめたのは、本人の勉強部屋だった。
「キャーッ!」
身を揉んで振り離そうとするさいごの努力を押し切って、
そのままたたみの上へと、抑えつけてしまったというわけだ。

「助けてっ!助け・・・」
妹はとうとう声を途切らせて、ウーッとうめいて白目をむいた。
男は妹のうえから身を起こし、ククク・・・ッと、意地悪そうに笑う。
これからが、お愉しみタイムなのだ。
やつはそろそろと起こした身体を、こんどは大の字になった足許へとかがみ込ませてゆく。
ひし形もようのハイソックスの舌触りは、いったいどんなふうなのだろう?
這わされた唇から洩れるくちゃッという音が、忌々しいほど嬉しげだった。

う~ん・・・
妹が正気づくのに、たっぷり30分はかかっていた。
そのあいだじゅう、やつはご熱心にも、しつこくも。
ひし形もようのハイソックスのふくらはぎに、くまなく唇を這わせつづけて、
妹の履いている靴下に、いやらしいよだれをなすりつけてゆく。
「エエのう・・・エエのぅ・・・オイ、数雄。きょうの獲物は愉しいのぅ」
やつが恥知らずにもくり返すうわ言に。
ぼくも恥を忘れて聞き入っていて。
気の強い妹が、それとは気づかずに、自分の履いているハイソックスを吸血鬼の意地汚い欲情のまま愉しまれてしまっている風景を、ただぼうっとして、眺めてしまっていた。

ハッとわれにかえった妹は、這わされる舌の感覚に、キッと目線を自分の足許に転じた。
あっ!という表情を泛べると、咎めるようにぼくをにらんで、歯を食いしばって、脚を男の猿臂から引き抜こうとする。
彼女が正気にかえったタイミングは、最悪だった。
まだ失血から回復していない妹は、ひし形もようのハイソックスの舌触りを、愉しませつづけるしか手がなかったのだから。
やがて男はふたたび牙をむいて、妹の強いまなざしをくすぐったそうに受け流しながら、
ひし形もようのナイロン生地ごしに、牙をズブズブと、埋め込んでいった。
アアアアッ・・・
妹は、悲痛な声をあげて、痛そうに眉を寄せる。
けれどもそれはさいしょに咬まれたときよりも、たんなる痛みとは違う感情を滲ませていた。
「痛み」をうわまわったのは、、「羞ずかしさ」。
そして、妹の本能は、正しかった。
やつの術中にひき込まれかけた妹は、なおもしつように足許をいたぶろうとする吸血鬼をまえに、
知らず知らず脚をくねらせて、やつの吸いやすいように、脚の向きを変えてやってしまっている。
身近な人が、洗脳される――
母さんが初めて襲われるのを目にしたときに感じた、あの後ろめたい従属感を。
ぼくは再び、ゾクゾクと。
震えあがってつま先立つほどの歓びを、身体じゅうにみなぎらせていった。

ふくらはぎに、むこう脛に、足首に。
くまなく吸いつけられる唇は、妹の血をたっぷり吸って、
妹はすでに相手の下心をじゅうぶんに察しながらも、
気に入ってもらったひし形もようのハイソックスを愉しませつづけてしまっている。
背後のドアの向こう、母さんが身を忍ばせてきたのにも、気づかずに。

ぼくの耳もとで、母さんが囁いた。
「ゆう子まで、襲わせちゃったの?」
「やつのほうで、勝手に目をつけたんだ」
「相性なのかね・・・」
呟く母さんに、
「相性なんだろうね・・・」
呟きかえすぼく。
気丈な母さんが、やつの気配を察して真新しいストッキングに穿き替えているのを、ぼくは見逃さなかった。
「ゆう子が気絶しちゃったら、あとで母さんの部屋に来るように言って」
言い残した足音が、ぼくの背中に遠ざかってゆく。
抱きすくめられたまな娘が、クスクス、へらへらとくすぐったそうに笑いながら。
自分の身体をめぐるうら若い生き血を、いまは惜しげもなく振る舞い始めたのを見届けたうえで。

年下の男の子に、母さんを寝取られた話。

2017年07月10日(Mon) 05:47:47

この街の学校に転校してきて、
都会の学校では行っていたのと同じ運動部に入って、
きょうが初参加の部活。
ところがそこで割り当てられたのは、小学生くらいの男のことのかけっこだった。
なんでも、部員の一人の弟さんなんだという。
本当は、もう少し入り組んだ関係だったのだが、いまはそこに触れてる余裕はない。

ぼくはもちろん、憤慨した。
だって、都会の学校では部で一番の俊足を誇っていたから。
それが、どうみても三つは年下の子供といっしょに、かけっこをしろといわれたのだから。

ところが、ふたを開けてみると、案外苦戦した。
苦戦どころか――完敗だった。
その子はぼくよりも20メートルも後ろからスタートして、
100メートル走をまだ半ばしか走っていないあたりでぼくのことをつかまえて、
ぼくは彼を振りほどくことができなくなって、グラウンドにねじ伏せられてしまったのだから。
力まかせにのしかかってくるその子――ヨウタくんという名前だった――を払いのけようと四苦八苦しているうちに、
ぼくは首のつけ根のあたりに、鈍痛を感じた。
気づいたら、ヨウタくんはぼくの首すじに、咬みついていたのだった。

チュウチュウ・・・
チュウチュウ・・・
部員全員が見守るなか。
ひとをこばかにしたような音をたてて、ぼくの血はあっけなく、吸い取られていった。

身体の力が抜けるほど血を吸い取ってしまうと、
ヨウタくんはぼくのことをうつ伏せに転がして。
短パンの下、ハイソックスを履いたふくらはぎに、ふたたび唇を吸いつけてくる。
そのころ都会で流行っていた、ライン入りのハイソックス。
こんな田舎の学校の子たちでも、みんな履いているんだ――それがちょっとした驚きだったけれど。
みんなはこの子に咬ませるために履いているんだとわかったのは、もっとずっとあとのことだった。
こいつ、ぼくに恥を掻かせるために、ハイソックスを咬み破ってる。
ぼくは侮辱を感じたけれど、それでもどうすることもできなかった。
彼がぼくのハイソックスを咬み破るのを愉しんでいるのはたしかだった。
けれどもぼくのほうでも、彼にハイソックスを咬み破られるのが、気づいたら苦痛ではなくなっていた。

続きはきみの家でやるから・・・
そう言いかけたヨウタくんを押しとどめたのは、ヨウタくんのことを自分の弟だといった部員だった。
それは今度にしようよ。
おだやかにそう説かれて、ヨウタくんは比較的あっさりと、ぼくの家への訪問をあきらめてくれた。
貧血で頭がくらくらしていたぼくにとっては、ありがたい配慮だった。
けれどもヨウタくんは、ぼくにこう囁くのを忘れなかった。
これからは毎回部活のたんびに、僕とかけっこするんだよ。
それから、ライン入りのハイソックスを咬み破られて、生き血をチュウチュウ吸い取られるんだ。
ハイソックスが真っ赤になるまで、愉しむからね。
それからね。あんまり根をつめて練習しないことだよ。
まだお兄ちゃんの筋肉は柔らかいから、咬み応えがいいからね。
これ以上硬くなっちゃったら、僕、やだよ。
いいかい?運動はね、お兄ちゃんの血が美味しくなるためにやるものなんだ。
だから、だからね。これからは。
僕に美味しい血を吸わせるために、部活をがんばるんだよ。
そんな横暴な言い分に、ぼくは素直に肯いている。

つづきは、きみの家でやりたいな。
つぎの部活のとき。
やっぱりかけっこに負けてしまって、グラウンドに抑えつけられて、血を吸われたぼくは、
ヨウタくんの言いぐさに肯いて、彼のことを家に誘っていた。
その日はヨウタくんのお父さんまで、ぼくといっしょについて来た。
うちの父さんも、喉がカラカラなんだ。
きみの血を分けてあげるって約束したんだ。いいだろ?
年下のはずのヨウタくんは、ぼくの血を吸ってから、ぼくと対等に口を利くようになっていた。

顔色を悪くしたぼくと、ぼくの後ろに控えるもの欲しげな父と子を見た母さんは、
けげんそうな顔をしたけれど、それ以上なにも言わずに、ぼくたちを家にあげてくれた。
吸血鬼をいちど家にあげてしまうと、あとはいつでも入ってこれるようになる。
この街では常識になっているそんなことすら、ぼくたちの家は知らされていなかった。

じゃあさっそく、始めようか。
勉強部屋で3人きりになると。
父と子はお互い目配せし合うと、やおらぼくにのしかかってくる。
ぼくはどうすることもできないで、
ヨウタくんのお父さんに首すじを咬まれ、
ヨウタくんにはハイソックスを咬み破かれてゆく。

あっ。
お茶をもって現れた母さんがひと声叫んで、お盆に載せたお茶とお急須を畳に落とす。
それを合図にするように。
父と子とは同時に起きあがって、母さんのことを前後に挟んで、
ヨウタくんは後ろから母さんのことを羽交い絞めにして、
スカートのうえからお尻を咬んで。
お父さんは「息子さんの血をいただいてるよ。つぎはお母さんの番だよ」って、母さんの役割を教えてあげて、
そのうえで母さんのあごをグイとそむけて首すじをあらわにすると、あっという間にがぶり!と食いついていった。

ヨウタくんはすぐに、ぼくのほうへと戻って来てくれて。
再びぼくの血を吸いはじめると、しきりにお父さんのほうを指さしてくる。
指さしたほうでは、母さんが生き血を吸い取られ、白目を剥いて、
たたみのうえにひざを突いて、それから両手もついてしまって。
四つん這いになったふくらはぎに、ストッキングのうえから、ふくらはぎを咬まれていった。

吸血鬼が大人の女性を襲うとき、相手を犯すのがマナーだということを。
その日ぼくは、ヨウタくんとお父さんから視て教わるはめになった。
白目を剥いてよだれを垂らし、気絶してしまった母さんの上に。
ヨウタくんまでもがのしかかって、自分の女にしてしまった。
きみのパパには、内緒にしといたほうが、やっぱりいいよね?
ヨウタくんの入れ知恵に、ぼくは素直に感謝していた。

ひと月後。
ふとしたスキを突いて、父さんの吸血にも成功したヨウタくんのお父さんは。
それ以来三日に一度は遂げていた母さんとの関係を、父さんに教えてあげて。
父さんも潔く、母さんがヨウタくんやお父さんと交際するのを認めてあげていた。
ぼくはぼくで。
ふたりが白昼代わる代わる母さんを犯す、ポルノなシーンに焦がれてしまい、
母さんに内緒で、のぞき見をつづけるいけない男の子になってしまっていた。

都会から来たことを鼻にかけていた、ごく短い時間。
いまは都会育ちの母さんを気前よく差し出したことを、自慢に思うようになっている。


あとがき
母親とはふつう肉体関係はないはずなのに、
母親を犯されることに性的昂奮をおぼえてしまういけない嗜好のことを、「母親寝取られ」というそうです。
多くの男の子が母親に対して、妻よりも濃厚な感情を抱いているからかもしれないですね。

装う。

2017年06月30日(Fri) 08:06:06

真っ白なハイソックスを履いたふくらはぎを、吸血鬼に咬ませてやると、
まるで服装ごと辱められる、良家の子女になったような気分になる。
姉さんの制服を着て吸血鬼に襲われると、
まるで処女を奪われる女学生になったような気分になる。
母さんのストッキングを穿いて吸血鬼に咬み破らせてやると、
まるで母さんが痴漢に遭ってるような気分になる。
母さんの花柄のスカートを穿いて、股間の奥を侵されると、
しつけに厳しい母さんまで、堕落してしまったような気分になる。

すべてが実現したとき、ぼくは満足げな吸血鬼に囁いている。
家族がいっしょに堕ちてくれるのって、とても嬉しいものなんだね・・・

姉の制服を着せられて 気に入りのハイソックスを脚に通して・・・

2017年06月22日(Thu) 05:32:08

アツシが初めて吸血鬼に出遭ったときは、もう無我夢中だった。
全速力で逃げて、それでも肩をつかまれて、首すじを咬まれていた。
その場で足腰立たなくなるまで血を吸われ、芝生のうえに転がされて。
半ズボンの下、むき出しにしていた太ももを咬まれ、ハイソックスのうえからふくらはぎまで吸われてしまった。
気絶する寸前、ふくらはぎの上でうごめく男の唇が、ハイソックスの舐め心地を楽しんでいるのを、かすかに自覚しただけだった。

次に出くわしたときには、お互い暗黙の約束が出来上がっていた。
アツシは全速力で逃げ、でも公園のなかから抜け出すまえに肩をつかまれて、首すじを咬まれた。
芝生に転がされた後は、ハイソックスのふくらはぎをいやというほど愉しまれ、
よだれまみれにされたハイソックスに、くまなく牙を刺し込まれ、咬み破られていった。

初めて言葉を交わしたのは、やっと三回目のことだった。
「ボクの血、おいしいの?」
思い切って口火を切ると、相手は無言で激しく頷いていた。
「ハイソックス、好きなんだよね?」
恐る恐る問いかけると、やはり激しく頷き返してきた。
「ボクもハイソックス、好きなんだ」
でも、小父さんに破かれるのは、そんなに苦にならない――そう告げると、
男は初めてにんまりと笑いかけてきて、いった。
わしも、きみの足許をイタズラするのが、愉しくて仕方がない――と。
ウフフ、しょうがないなぁ。
アツシは笑いながら相手を咎め、そしていつものように脚をくつろげて、ハイソックスを履いたままふくらはぎを吸わせていった。

何度めか、やはり帰り道に出くわしたとき。
アツシはおずおずと、言い出した。
ねぇ、きょうのハイソックスは見逃してくれない?これ、気に入りのやつなんだ。
白地に茶色と赤のラインが走った、珍しい柄のハイソックスだった。
わかった――
男は手短かにこたえ、それでも少年の足許をねだった。
ウ、ウン・・・でも本当に、咬まないよね・・・?
男は応えずに、性急に足許をねだる。
確約の得られないまま、少年は気に入りのハイソックスを履いた脚を、男にゆだねた。

その日の舐めかたは、いままでになくしつようで、いやらしかった。
あっ・・・あっ・・・あっ・・・!
アツシはいつか、息をはずませ、声を迫らせて、男の劣情に応えはじめていた。
これってやっぱり、いやらしい・・・
ずり落ちかかった気に入りのハイソックスに、よだれをたっぷりと含ませられながら、
アツシは相手の男の熱情が、よだれといっしょに皮膚の奥深くしみ込まされるのを感じた。
破らせちゃおうか?やっぱり、破らせてあげちゃおうか?
足許に迫らせられた唇に惑いながら、アツシは男に尽くす行為を惜しみなくくり返す。
男はとうとう、ハイソックスのうえからは牙を立てないで、アツシとの約束を守った。

ねえ、きょうあたし小父さまと約束してるんだけど。
下校して家に着くなり、姉の涼子がいった。
小父さまとはむろん、アツシの血を吸っているあの小父さまのことだ。
処女の生き血を欲しがる小父さんのために、涼子をだまして公園に連れ出して襲わせたのは、つい先週のことだった。
涼子はアツシのさいしょのときと同じように、全速力で逃げ回り、肩をつかまえられて、
首すじを咬まれてしまっていた。
黒髪を搔きのけられながら悶える姉の姿に思わず発情してしまったのは、いまでも内緒にしている。
涼子もまた、アツシとほとんど交代に公園に出向いて行って、通学用のハイソックスを惜しげもなく咬み破らせる関係になっていた。

それでさ――聞いてる?
姉の話は終わっていなかった。
きょう、あたし、アレなんだよね。具合悪くってさ、気乗りがしないわけ。
弟は男のうちに入らないのか。涼子はしゃあしゃあと、生理で具合が悪いと弟に告げた。
だからさ、身代わりになってくれる?だいたい、あんたがあたしをあんなのに遭わせたのがよくないんだからね。責任取りなさいよ。
言葉の内容がきついわりに心に突き刺さらないのは、涼子が終始ニヤニヤしていて、面白そうにしていたからだろう。
ほんとうに生理で具合が悪いのか?ふとそう思ったけれど、あえて問いただそうとしなかったのは男の知恵というものだろう。
だからさ、あたしの身代わりになって――あたしの制服着て、逢いに行ってやってほしいのよ。

そうなるともう、逆らうことはできなかった。
母親の帰って来てない家のなか、姉貴は自分の制服を箪笥から持ち出して来て乱暴に折りたたみ、畳のうえに置くと、「着なさい」と命令した。
え?え?ボク女の子になるの?
さいしょのうちは目を白黒させていたアツシも、姉の制服におずおずと手を伸ばすと、あとはもう止まらなかった。
釦のつけ方が反対のブラウスを着ているときはまだ、めんどくさいなあとしか思わなかったけど。
紺のプリーツスカートを脚でまたぐようにして引きあげて、腰に巻きつけてしまうと、一気になにかが変わった。
紺のベストをかぶって、赤いリボンを胸元に拡げると、気分はもうすっかり女の子だった。
「ウン、似合う。アツシ女子の制服似合ってるよ」
さいしょはからかい口調だった姉の声色が、本気になっていた。
「あんた、たまに女の子になって小父さまとデートしたら?あたしの服貸してあげるからさ」
そこまで真顔でそういうと、姉はちょっとずるい顔つきになって、弟を視た。
「ところでさ、あいつ制服好きだからね。その格好で出かけていくと、あんたきっと犯されるよ」
え・・・?
姉貴はもう、小父さんで初体験を済ませていたの?
問いたくても問うことのできない問いを胸に抱えて黙りこくる弟を、涼子は面白そうに白い歯をみせ、さあ行きなさい、と促しただけだった。

それ、相性好いじゃない。
自分の部屋に戻ったアツシが、茶色と赤のラインの入ったハイソックスを履いて降りてくると、涼子はいった。
「お気に入りのハイソックス、咬ませてあげるんだ」
良いことだと思うよ。大事な日になるのだから。アツシの気持ちが伝わるんじゃないかな。
涼子は真顔で弟を視た。

想いはすぐに、相手に通じたらしい。
「今度は咬ませてくれるのかな?」
好奇心たっぷりに自分の足許を見つめながら身を寄せてきた吸血鬼に抱き寄せられながら、アツシは無言でうなずいている。
まさぐりの掌が太ももを這い、スカートのなかに這い込んで、股間をとらえる。
姉から借りたショーツのうえからしつようにくり返されるまさぐりに、ショーツが濡れた。
ククク・・・
男は嗤い、いつものように、少年の首すじに咬みついていった。
吸いつけられた唇の熱さに、アツシはうわ言のように、「あぁ・・・っ」と声を洩らす。
半ば開いた唇を、男の唇でふさがれて。
生温かい呼気を一気に喉もとまで吹き込まれ、目が眩んだ。
そこから先は、よく憶えていない。
ブラウスに着いた赤黒いシミを気にかけながら、男の言うなりになってうつ伏せになって。
お気に入りのハイソックスのうえから、唇を吸いつけられる。
この前と負けず劣らずの、しつこい舐めかただった。
破く前に、舌触りをたっぷりと愉しまれたことに、少年は深い満足を覚えた。
それでもことさら迷惑そうに顔をしかめて、「小父さん、きょうはちょっとやらしいよ」とわざとたしなめてみた。
それが相手の男をそそるのだという知恵は、女の知恵のはずだったのに。
いつのまにかそんなものさえ、身についてしまっていた。
脚をばたつかせながら、慕いつけられる唇をどうすることもできなくなって。
さいごには、ふくらはぎのいちばん肉づきのよいあたりに、がぶりと牙を埋められていった。
生温かい血がハイソックスの生地を濡らす感触に、少年は不覚にも射精をくり返していた――
その日、スカートの裏地に精液を吐き散らされながら、股間に男性の一物を食い込まされていった感覚を、アツシは生涯忘れないだろう。
いつか身体の動きを合わせ、女のように悶えながら。
アツシは吸血鬼の性欲に、心の底から応えはじめていったのだった。

お気に入りだったハイソックスは足許から抜き取られて、男のコレクションに加えられた。
大人になったいまでも時折訪れる吸血鬼の邸で、かつてアツシにまとわれた衣類たちが、姉の制服や、近々結婚することになった彼女のスーツに交じって、卑猥な意図で集められたコレクションの一部となって見せびらかされるのを、アツシは心の底から楽しみに感じている。

ある食物連鎖の風景

2017年05月15日(Mon) 07:34:30

学校から戻ると僕は、制服の半ズボンのまま、ハイソックスだけを履き替えて、小父さんの待つ公園に出かけていった。
小父さんは、ちょっとうらぶれた感じのする、サラリーマン。
ぼくの血を吸うために、仕事も早引けをしてくるらしかった。
きょうも小父さんは、ちょっとくたびれたような顔つきの下、同じくらいくたびれたようなネクタイを提げていた。
「ほら、履いてきてやったぜ。小父さんの好きなハイソックス」
僕はいつものように口を尖らせて、ぶっきら棒にそういった。
「どうせ吸うなら、自分の奥さんの血とか吸えばいいじゃん」
毒づく僕に、小父さんはぽつりといった。
「家内はぼくの血を吸った吸血鬼専属になっちゃったんだよ」
ええ~?
それって、まじかわいそうじゃん。
離婚しちゃったの?と訊く僕に、だいじょうぶ、離婚はしてないし夫婦仲もよくなってるから、と小父さんはこたえ、
そのうえで、でも喉をうるおすのはほかでしてくれって言われている、と、教えてくれた。
「ふーん、かわいそうなんだね」
僕の足許にかがみ込んで、ハイソックスをよだれで濡らすのを、僕はいつもより少しだけ長いこと、ガマンしてあげていた。

ハイソックスがずり落ちるまでしつっこく咬み破られながら、僕はふと思いついて、小父さんに提案した。
「今度、姉さんの制服着てきてやろうか?姉さん〇〇学園だから、学校指定のハイソックスを履いて通ってるんだ。
 それもいっしょに、くすねてきてやるから」
小父さんは僕と出会って初めて、活き活きと目を輝かせた。

初めての女装はぎこちなかったけれど。
公園で落ち合ってから別れるまで、さいしょからさいごまで、小父さんは僕のことを女子高生として扱ってくれた。
不思議な満足感を覚えた僕は、時々着てきてやるからって、約束してしまっていた。

制服を黙って借りていることは、姉さんにすぐにばれてしまった。
けれども姉さんは、もうじき卒業だしいいわよって、言ってくれた。
むしろ弟が自分の制服で女装して吸血鬼と逢っているというのが、面白くてならないようだった。

制服のスカートからにょっきり伸びた脚を大の字にして、ずり落ちたハイソックスもそのままに仰向けになっている僕の向こう、
勤め帰りの姉さんはスーツ姿を抱きすくめられ、小父さんに首すじを咬まれていた。
姉さん、処女だったのかな?って。吸血鬼の代わりに心配しながら、
僕は心地よい貧血に身をゆだね、姉さんを救い出す努力を意図的に怠っていた。

「裕子さんの献血、ぼくも認めることにしたよ」
姉婿になる人は、苦笑いしながらそういった。
「でもショックだったなー。処女まで献上する羽目になるとは」って、ただならぬことをさりげない口調でいい流しながら、
それをきき流そうとしている僕を横目に、さらに聞き捨てならないことを口にした。
「代わりに、きみに彼女ができたなら。ぼくに紹介してくれないか?」
首すじに僕と同じ咬み痕をつけたお兄さんに、僕はぶっきら棒に「いいよ」って、答えてしまっていた。

試合のあとの交流

2017年04月04日(Tue) 07:40:46

サッカーストッキングの脚をさらして街を歩くのが、いつになく恥かしかったのは。
行き先と、そこで待ち受けることがぼくの脳裏を離れなかったから。
「よう」
途中でチームメイトに声をかけられてビクッとして、飛び上がってしまったのもそのせいだった。
チームメイトのタツヤは、サッカーストッキングだけでなく、全身ユニフォーム姿。
彼女のチカさんも、いっしょだった。
「これから行くの?俺、もう済ませてきたぜ」
やつの声色は、ちょっと自慢めいていた。
どうしてこんなことが、自慢の種になるのだろう?
タツヤの履いているサッカーストッキングのふくらはぎは赤黒く濡れていた。
チカさんのハイソックスは紺色だったから目立たなかったけど、やっぱり同じことになっているらしい。
そしてぼくも――吸血鬼の待ち受ける邸に出向いて、彼らと同じように咬まれてしまうのだ。

吸血鬼チームとの親善試合に負けたあと。
グラウンドの隅に集められたぼくたちは。
もういちど、親善を深める羽目になっていた。
負けたチームの子の血を吸うのが、彼らの愉しみだったから。
どさくさまぎれに、応援に来ていた女子たちも、やつらに食われてしまったのだ。
チームメイトの彼女も大勢来ていたが、そういう子は特に狙われた。
わざわざ彼氏のまえに連れてきて首すじを咬んで、それから地べたに転がして犯してしまうのだ。
ぼくの彼女の好子もまた、そのなかに含まれていた。

そんな体験を済ませた後で、どうしてユニフォームなんか着て、ヤツらに会えるというのだろう?
だのにヤツは、連絡を取ってきた。
ぼくの血を吸ったあと、すぐそばに好子を転がした相手だった。
「好子さん、身体空いてる?もし無理だったら、ヨウタだけでも来てよ。試合のときのストッキング、必ず履いてきてくれよな」
負けたチームの選手の脚に咬みついて、ストッキングを両脚とも咬み破ってしまうのが、
彼らはたまらなく、楽しいらしい。

「そんなにしかめっ面するなって。愉しんで来いよ。好子も連れてくればよかったのに」
ぼくは黙って、彼らとすれ違っていった。

「よくきたね。あがってよ」
彼女を連れてこなかったことを咎めもせずに、ヤツは朗らかに笑ってぼくを家にあげてくれた。
家人はだれも、いないらしい。
「お袋も妹も、病院行ってる。貧血症なんだ」
どういうことなのか、すぐわかる。
それときみは、セックスをしたことのある女とはだれでも、エッチをするって言ってたよね?
「聞きたいことが顔に書いてある」
ヤツはふふっと笑った。
「図星だよ。お袋はオレにとって、初めての女なんだ。恥ずかしいけどね」
照れくさそうに笑う顔つきは、話の内容はともかく、十代の普通の男子そのものだった。
若干、顔色が悪いのを覗けばの話。
「顔色が良くないぜ」
ぼくはさりげなく、指摘してやった。

「あんまり顔色が良くないとね、周りからヘンに思われるから。
 来週、親戚の結婚式に招ばれてるんだ。
 おやじの弟がお袋に執心でね。
 着飾ったお袋を抱く代わり、娘を襲わせてくれるっていうんだ。
 奥さんも来ればいいのにって言ったけど、どうなるかな・・・
 この間襲わせてもらったときは、ちょっとうろたえていたけどね。
 でも娘のことは叔母さんも賛成みたいだから、いずれ会えると思うけど」
親戚の家庭を崩壊させたことを、さりげない口調で語る彼。
しょせん彼とぼくとでは、役者が違うのかも。
「それで、正体をごまかすために血が要りようで、ぼくを呼んだんだな?」
「すまないね」
そのときだけは、彼は本気ですまなさそうな顔をした。

「いいよ。咬めよ。好きにすればいいさ」
ほとんど捨てばちになってあお向けになったぼくの足許に、
ヤツはそろそろと這い寄ってきた。
ぞくり・・・とした。
獣じみた熱い息が、サッカーストッキングを通して脛にふりかかる。
あ・・・と思ったときにはもう、咬まれていた。
ちゅ、ちゅうううう・・・っ
勢いよく血潮を吸いあげられて、ぼくは絶句した。
きのう呼び出された好子さんも、こんなふうに吸われたのか・・・
どす黒い衝動が、ストレートに股間を衝(つ)いた。
ぼくは思わずうめき声をあげ、のけぞっていた・・・

・・・・・・。
・・・・・・。

試合と練習のときにしか着ないユニフォームを身に着けて、
きょうもぼくは、街を歩く。
傍らに寄り添う好子さんとは、いまでも仲の良い恋人同士。
でも、だれもいないヤツの家の玄関をくぐると、ぼくたち二人はふたりとも、ヤツの奴隷になり果ててしまう。

先にぼくが、サッカーストッキングのふくらはぎを咬まれて血を吸い取られ、制圧されてしまって。
そのすぐかたわらで好子さんが、いつも学校に履いて行く紺のハイソックスのふくらはぎに、唇を吸いつけられてゆく。
もーろーとなっているぼくのすぐかたわらで。
ヤツは好子さんの制服を脱がせて、プリーツスカートの奥深く、たくましい腰を突き入れてゆく。
――もういちど、あの試合のあとの風景を視たいんだ。
そんなぼくの願いをかなえてやる・・・というずるいやり口で。
ヤツは公然と、好子さんをモノにする。
全身全霊こめてぶつけられる絶倫な精力に屈した好子さんがうめき声をあげるのを、
ぼくは制止することができない。
ぼくもさっき、彼女にお手本を示すようにうめき声をあげてしまっていたから。
これ見よがしに彼女を犯されて。
ぼくはその衝撃と昂奮さめやらぬまま、彼女を連れて家路をたどる。
気がつけば、途中で見かけたチームメイトに、堂々と声をかけることまで、できるようになっていた。
きょう出会ったテルカズは、血を吸われ始めたばかりのはず。
あいつ、きのうの試合のあと彼女を抱かれて、それを血走った眼で見つめていたっけ。
「よう。これから行くの?俺もう済ませてきたぜ。彼女も連れてくれば、よかったのに」

ハイソックスのころ。

2017年02月21日(Tue) 07:12:48

遠い昔、男の子でもハイソックスを履いていたころのこと。
ハイソックスを履いたふくらはぎを咬まれて吸血鬼になってしまった僕は、
吸血鬼を受け容れることを決定したこの街で、いままで通り登校することを許可された。
学校で不用意にクラスの子を襲わないように、
母さんや担任の女教師、母さんよりもちょっと若い養護教諭の先生の献血つきで。
仲の良かった男子のなん人かも、献血に協力してくれた。
吸血鬼から伝染(うつ)されたハイソックス・フェチの性癖も理解してくれて、
血を吸っても良い日には、わざとハイソックスを履いてきてくれた。
でももちろん、中にはそうではない子も多かった。

「履いてあげる靴下考え中だから」――
そういって僕の吸血をえん曲に断ってきたのは、仲良しだったSくん。
さいしょは本気にして、いつあのお気に入りの、赤のラインの入ったハイソックスを履いてきてくれるのだろう?と思っていたけど、
それ以来、彼はハイソックスを学校に履いてこなくなった。
「悪いけど、キモチ悪い。ゴメンな」
そういって去っていった友だちもいた。
そのたびに声をかけてくれたのは、Kくんだった。
「気にすんな。こっち来なよ」
Kくんはいつもそういって、僕を後者の裏に呼んで。
毎日のように履いてきているハイソックスのふくらはぎを、咬ませてくれるのだった。
半ズボンの下眩しい、真っ白なハイソックスのうえから、僕は夢中になって、Kくんの足許に唇を吸いつけていった。
スポーツマンのKくんの血はいつも活き活きとしていて、心身ともに僕のことを力づけてくれた。
教室に帰るとき、Kくんはハイソックスをはき替えないで、
赤黒い血のシミをわざとそのままにしてクラスのみんなと親しんでいた。

まつ毛の長いやさ男のYくんも、僕に同情的だった。
いつも女の子みたいな、薄手のストッキングみたいなハイソックスを履いていて、
Kくんが部活に行ってしまった後、「ちょっと」と僕のことを呼び止めて、
だれもいなくなった教室で、ハイソックスの脚を咬ませてくれた。
貧血に翳る憂い顔がどことなく女ぽくて。
Yくんの血を吸っているときは。
なぜか、異性の血を吸っているときのような陶酔感を覚えていた。

年月が経って、わかったことがある。
もちろん、吸血鬼になった僕のことを不気味がった子もいたけれど。
離れていった多くの仲良したちが警戒したのは、僕に彼女を奪(と)られちゃうかも?ということだったらしいことを。
それと察したKくんは、自分の彼女を真っ先に紹介してくれた。
「処女の血が好きなんだろ?ぼくの彼女紹介してあげるよ」
みんなの前で僕にそういって周囲を驚かせたKくんは、
翌日みんなの前で、恋人の優子さんを紹介してくれた。
学校の成績が良くて快活な優子さんは、万年学級委員。
Kくんとは似合いのカップルだった。
「映画のヒロインになったみたい・・・」
優子さんは両手で恥ずかしそうに口を覆い、「きゃー」とおどけながら、僕に首すじを咬ませてくれた。
「ハイソックス汚したらママに怒られるから、きょうはゴメンね」
Kくんを含むみんなの前で堂々と吸血された優子さんはサバサバとした言葉づかいで、
僕のフェチな行動を封じていった。

翌日のこと。
Kくんはみんなのいないところに僕を呼んで、
隣の教室から呼び出していた優子さんと引き合わせ、「きょうだったらOKだから」といって、
紺のライン入りのハイソックスを履いた優子さんの脚を、僕に咬ませてくれた。

優子さんとは、二人きりで逢ったこともあるけれど。
妖しい関係には、とうとうならなかった。
Kくんとの友情が、それだけたいせつなものだったから。
そしてKくんがじつはだれよりも、僕に優子さんを奪(と)られてしまうのを心配していたから。

初めて性的な関係を結んだのは、同性のYくんだった。
女のような憂い顔の持ち主のYくんは、じつはいまでいうトランスジェンダーだった。
そんな言葉も認識もない時代、彼はずいぶん悩んだらしいけれど。
ある日のこと、彼女のできない僕のことを気遣って、
就職して家を出たお姉さんが高校生だったころの服を着て現れて。
真夜中の公園で、デートをしてくれた。
両親がYくんを家に残して結婚記念旅行に出かけた夜だった。
僕たちは初めてキスを交わし、Yくんのなまなましい呼気に触発されて獣になった僕は、
Yくんの穿いていたスカートの奥に、好奇心に満ちた掌を、荒々しくまさぐり入れていった。

意外だったのは、その後のSくんの行動だった。
「履いてきてあげる靴下考え中だから」と言いつづけていた彼は、
卒業間際になって、僕がずっと気にしていた赤のラインのハイソックスを履いてきて、
だれもいない教室で、こっそり咬ませてくれたうえ、こんど彼女を紹介してあげるとまで、約束してくれた。
期待しないで待っていたら、ほんとうに彼女を連れて家までやって来た。
彼女は、頑なな性格のSくんを和らげる力を持った少女だった。
Sくんの言うなりになって、僕に咬まれてしまうと。
「時々二人で、遊びに来るね」と、約束してくれた。
僕が過ちを犯したのは、寛大なKくんの花嫁の優子さんではなく、S夫人のほうだった。
一見頑なな彼が、ひそかに見せてくれた特殊な性癖に、僕は生涯かけて感謝することになる。

そのほかにもなん人か、奥さんや恋人を献血用にと紹介してくれた友だちがいた。
僕は彼らの血も吸っていたから、彼らの芯に意図するところを吸い出した血の味から読み取って、
彼らの連れてくる奥さんや恋人を、抱いたり抱かなかったりした。
でも――いまでもいちばん記憶に残る血の味は、
Kくんの彼女だった、優子さんのもの。
彼女への想いは、かなえられることのない淡い想いとして、いまでも僕の心の奥に秘められている。

父親の独り言。 ~小悪魔 後日譚~

2017年02月12日(Sun) 07:00:58

先日あっぷした、コチラのお話の後日譚です。
「小悪魔」
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-3395.html

この街に移り住んで、まだ半月足らず。
そのあいだに妻と息子は、街に棲み着く吸血鬼の手にかかって堕落させられ、その身をめぐる血液を、彼らの好餌にされていた。
わたしが大けがをしたと偽って連れ出され、その道すがら。
妻は男に、息子はその彼の娘の牙にかかって、血を啜り取られてしまったのだ。
大けがをしたのはわたしではなくて、妻と息子のほうだった。
もとより、咬まれた傷はさほどのものではない。
けれども、そのささやかな傷口からそそぎ込まれた毒液は、
彼らの理性を痺れさせて血潮を淫らな色に変え、
ふたりを淪落の蟻地獄へと、引きずり込んでいったのだった。

「あなたの奥さん、うちのパパと浮気しているみたい」
オフィスに訪ねてきたその少女は、白い目でわたしを見、唐突にそんなことを呟いていた。
長い長い黒髪の間に、一見素直そうな、大きな黒い瞳。
上品で齢以上に大人びた紺のワンピースに、白のハイソックス。
お行儀よくきちんと折り返したハイソックスの脛をきちんとそろえ、つぶらな瞳でわたしを見ていたが、
その視線は冷たく、なにかを見通そうとしているようだった。
「おじさん、うちのパパに血をあげてくれませんか」
「何を言っているんだきみは?わけのわからないことを言わずに家に帰りなさい」

いちどはそういって、峻拒してみたものの。
すでに妻も息子も奴隷になってしまったのは、白昼こっそりと帰宅したときに、たっぷり見せつけられてしまっていた。
妻はよそ行きのスーツにわざわざ着替えて、ブラウスを引き裂かれ、おっぱいをまる見えにさせながら、ひたすら首すじを吸われていたし、
息子はおどおどと、少女の言うなりになって、紺のハイソックスのふくらはぎを、じわじわと冒されてゆく。
少女だけがわたしの気配を察して、察しながらも気づかないふりをして、
そして、気づかないふりをしてあげているのよと言いたげに、ご丁寧になん度もこちらをチラチラ盗み見ながら、
息子の履いているハイソックスを、容赦なく咬み破っていったのだった。
父親のほうは、こちらのことなど眼中になく、肌色のストッキングを穿いた妻の脚に夢中になっていて、
ストッキングがしわくちゃになるほど、べろをねぶりつけさせたあげく、ブチブチと咬み破っていって、
喘ぐ妻はすっかり言いなりにされてしまっていて、ベッドのうえにあお向けに転がされると、
ストッキングを自分から片方脱いで、スカートの奥に秘めた股間を、男の侵入にゆだねていった。

「小父さんも、持っているでしょ?ストッキングみたいに薄い、紳士ものの長靴下。
あれを穿いて、パパに破らせてあげてほしいの」
ふたたび現れた少女は、やはり無表情の白い目でこちらのことを睨(ね)めあげてきて。
「降参のしるし」
そういって、クスリと笑う。
「でもね、悦んで。うちのクラスの転校生のママは、みんなパパの餌食になったけど。
あのひとがあんなに熱心につづいているの、奥さんだけだよ」
ほかの人妻たちはみんな、仲間の禿げ親父どもに分け与えちゃった・・・
黒髪の少女は、自分の母親くらいの女性たちの運命を、こともなげにそう片づけたのだ。

週に、3,4回くらいかな。
奥さんのこと、連れ歩いているの。
いつもエッチってわけじゃ、ないみたい。
大人のつきあいのことだから、詳しいことはわかんないけど。
でもね。ずうっといっしょにいるあいだ、お話ばかりしていることもあるんだって。
だんなの顔をつぶしちゃいけない。お宅の家の名誉と秘密は必ず守るって、あのひとにしては態度が殊勝なんだよね。

あくまで上から目線の少女の言いぐさは、自分の父親のことさえ「あのひと」と突き放しながらも、
そんな「あのひと」が妻にかなり真剣なことまで、淡々と伝えてきたのだった。
「降参のしるし、穿いてきてくれる?」
少女はとどめを刺すようにそういうと、黒い瞳でじいっとこちらを見返してきた。


じわり。
わたしのふくらはぎに、男の唇が吸いついたとき。
薄いナイロン生地のうえから感じる唇の熱っぽさに、どきりとした。
このひとはほんとうに、妻に執心なのだと、しんそこ実感した。
這わされた唇は容易に離されることはなく、すぐに咬もうとはしないでゆっくりと、わたしの足許をくまなく這いまわった。
ヒルのように貪欲で、妖しい唇だった。
この唇が、妻の唇を奪ったのか。
この唇が、妻の柔肌を這ったのか。
あらぬ想像が胸の奥を駆けめぐり、わたしの体内をめぐる血潮をまがまがしく染めた。
そんな想いを吸い取った血潮から感じ取ったらしい。
いつの間にか咬みついていた男は顔をあげ、わたしの顔を覗き込む。
「恥じることはありません。貴男は善い行いをなさっている」
わたしが虚ろに肯くと、男はそのままわたしの首すじに咬みついた。
ちゅうっ。
吸いあげられる血潮が、支配するされるものの体内から引き抜かれ、支配するものの喉の奥へと収められてゆく。
この牙が、息子の首すじを噛んだのか。
この牙が、息子の理性まで狂わせたのか。
吸血行為は、共同作業なのだ。セックスと同じくらいの意味で。
目ざめてしまった快感に耐えながら。
わたしはシーツがくしゃくしゃになるほど握りしめ、男の吸血にあえいでいた。
「私の胃の腑には、奥さまやご令息の血潮も満ちているんです。
家族三人仲良く、成仏なさってくださいね」
成仏という言葉はどうやら、堕落という言葉と同義語らしいと自覚しながら。
わたしは小声で「お願いします」と、呟いていた。
男がもういちど、わたしの足許にかがみ込んで。
薄地の長靴下を、思うさま咬み破ったとき。
身体の芯を突き抜けるような開放感が突き抜けて、自分が堕落したことを受け容れていた。

小悪魔

2017年02月09日(Thu) 06:08:09

長い長い黒髪で首を締められたら、どんな気分になるかわかりますか?

そんな一節。どこかの本で読んだはず。
その子のことを初めて見かけたときに、どうしてそんな言葉が思い浮かんだのか。いまでもよくは、わからない。
「そんなこと感じたの。あなた、直感が鋭いわね。女の子みたい」
あとになって僕の話を聞いた彼女は、そういってクスッと笑った――

僕が彼女に初めて会ったのは――もういいや、リサという本名で書いてしまおう――この街に越してきて10日ほど経ったある日のことだった。
「大変です。ご主人が大けがをされました」
父さんよりもずっと年上のその律儀そうな白髪頭の男が僕の家を訪れて、母さんにそう告げたのだ。
リサはその男の娘だといって、あとについて来たのだった。
不機嫌そうな怒り顔で、へどもどとあいさつをした僕には返事すらしないで、睨み返してきた。
おでこがまる見えになるほどひっつめたポニーテールの長い長い黒髪は、真っ白なカーディガンになまめかしく映えていた。
まだ、年ごろというには入り口の年代のはずなのに。
まだ、同じクラスの子として出会って、2週間もたっていないのに。

「早く行こ」
よそ行きのスーツに着替えるのに時間を取られた母さんと、先導役のはずの自分の父親を置いて、
リサは僕の手を取って、いきなり駆け出した。
つんのめりそうになりながらも、僕は必死であとを追った。
彼女の握力は強く、振り放すこともできないままに。
母さんの姿が見えなくなるほど走ったあと、さすがに息を切らしたリサは、「こっち」とみじかく告げると、
道を外れた生垣の向こうへと、僕のことをいざなった。
いきなり押し倒されて尻もちをつかされた僕は、「なっ、なにを・・・!?」って言ったきり、二の句をつぐことができなくなっていた。
首のつけ根のあたりに彼女の歯を感じて、身動きできなくなっていたのだ。
長い長いポニーテールは、こういうふうに使うのだと言いたげに僕の首に素早く巻かれ、
窒息しそうになった僕は、じたばたしながら結局どうすることもできずに、そのまま首を噛まれていった――

「吸血鬼だったの?きみ・・・」
無言の哂いで応えるリサの頬は、僕から吸い取った血を、まだぬらぬらさせていた。
「うちのパパに、あなたのママを襲うチャンスをあげてくれる?」
否応なしのお願いだった。
「ちょっとのあいだ、ここから覗いているだけでいいんだから」
え?
イタズラっぽく輝く黒い瞳にそそのかされるようにして、生垣の向こうの道に目をやると。
そこで母さんがたったまま、リサの父さんに噛まれているところだった。
さっき僕が、リサに噛まれていたのと、おなじように。
強く横抱きにされた母さんは、どうすることもできずに目を白黒させながら、首すじを嚙まれつづけて、
チューチュー音をたてて、血を吸われている真っ最中だった。
チャコールグレーのジャケットの肩先に、真っ白なブラウスに、吸い取られた血が点々と散っているのが、
ドキドキするほど・・・なまめかしかった。
なんで、「なまめかしい」なんて、感じてしまうんだろう?
訝しく思う僕の首すじに、リサはまたも嚙みついてきた。
「だれかが血を吸われているのを見ていると、こっちも欲しくなっちゃうんだから」
って、言いながら。
彼女はつねるような痛みを無遠慮にねじ込んできて、容赦なく僕の身体から血を吸い取っていった。

「すまないですね」
太い樹を背に追い詰められた母さんは、足許にかがみ込んでくる男をまえに、やっぱりどうすることもできないで、
しっかりとした肉づきのふくらはぎに、唇を吸いつけられてしまっていた。
脚に履いていた肌色のストッキングが、くしゃっと引きつれて、みるみるうちに破けていった。
貧血を起こした母さんがその場に尻もちをついてしまうと、リサは僕を引きずり出すようにして生垣から通りのほうへ引返して、
仰向けに倒れた母さんのすぐ傍らに僕のことを引き据えると、こんどは足許に噛みついてきた。
噛み破られたハイソックスに滲んだ血が、生温かく拡がった。
母さんの隣で僕が、リサにハイソックスの脚を噛まれていって。
僕の隣で母さんが、リサの父さんに肌色のストッキングをびりびりと破かれていって。
「こっち行きましょ」
リサは僕のことを引きずり回すようにして母さんの傍らから離すのと、
リサの父さんがまるで獣が獲物を漁るようにして、母さんのブラウスの胸を押し拡げるのとが、同時だった――

「うふ。お〇ん〇ん、勃ってるよね。たいがいの子が、そうなんだ。男の子って、面白いね」
半ズボンのうえからあてがった手をそのままベルトにかけて、僕の腰周りを引き剥ぐと、
リサは遠慮会釈なく、僕のペ〇スを咥えていった。
ためらいなどかけらもない、慣れたやり口だった。
まだ稚なげな唇が僕のペ〇スを呑み込んで、舌先が挑発するように、先端を刺激する。
思わず不覚にも。
びゅびゅびゅっっ・・・と、吐き出してしまった。彼女の口のなかで。
「行儀悪いね」
リサはしんそこ怒った顔つきで僕を睨み、それでもゴクゴクと呑み込んでしまった。
「ほら、あんたのママも、愉しんでいるわよ」
指さす方向でくり広げられる情景を、目にしたくはなかったけれど、やっぱり目を向けてしまった。
向けた目はそのままクギづけになって、唖然とした僕の横顔を面白そうに眺める視線に応えることさえ忘れていた・・・

「洋太のパパ、大好き!」
自宅のソファでくつろいだ父さんに、ソファの後ろからリサが抱きついたのは、その数日後の土曜日のこと。
僕と同じ経緯で、父さんはあの長い長いポニーテールの黒髪を、まんまと巻きつけられてしまって。
窒息寸前まで追い込まれながら、首すじを噛まれていった。
「お前、母さんを誘い出して噛ませたんだって?」
そう訊いてくる父さんの目は、怒っていなかった。
お互いにお互いの首すじにつけられた、同じサイズの歯形を見つめ合いながら。
「まあ、仕方ないか」と、うつろに笑い合ってしまっていた。
さっき、リサの父さんに連れ出された母さんは、夫婦のベッドに押し倒されて、切ない吐息を吐きつづけている。
気前よく咬み破らせてしまったストッキングは、早くも片方、脱がされていて。
花柄のフレアスカートは、齢不相応に逞しい腰の侵入を受けるままにくしゃくしゃにされて、
それを父さんはドア越しに、眩しそうに見つめている。
「よそで話しちゃ、ダメだぞ。父さんと母さんの不名誉になるからな」
目を白黒させながら、母さんの浮気現場から目を離せなくなっている父さんのことを冷やかすように、リサは言った。
「だいじょうぶよ。うちのクラスの転校生のお母さんは、みんなうちのパパが食っているから」

それ以来。
リサのパパと母さんの交際が、半ば公然と始まった。
「うちのパパ、あなたのママが気に入ったみたい。
 2日に一度は連れ歩いているわ。
 ほかの子のママよりも回数多いし、逢っている時間も長いみたい」
ひとをこばかにしたようにフフッと哂うリサは、つぎの瞬間悩ましい目つきで、僕に迫る――
「あなたもあたしに、噛まれてくれるわよ・・・ね・・・?」

サッちゃんと母親と。

2017年01月24日(Tue) 07:07:45

幸田貴志は公園で、吸血鬼に遭遇した。
走って逃げれば、逃げられなかったわけではない。
その吸血鬼は脚が悪く、貴志の脚力なら、振り切って逃げることができるはずだった。
けれども彼は半ズボンに紺のハイソックスの制服姿を、ベンチから起たせようとはしなかった。
じいっと見つめる目と、目。
相手はゆっくりと、近づいてきた。
逃げないんだね?
男は訊いた。
父親よりもずっと年上の、白髪の男だった。
貴志が逃げなかったのは、男に見覚えがあったからだった。
そしてその時のことが、どうしても気になったからだった。

体育館の倉庫で、サッちゃんの血を吸っていた人だよね?
ああ・・・そうだが。
見られていたんだな、と、男は呟いた。
夢中になって吸っていたからな。不意を打てば、きみは彼女を救えたかもしれなかったぜ。
貴志はかぶりを振った。
でも、サッちゃんは逃げるつもりがなかったみたいだから。
押し倒された少女の顔は、吸血鬼の肩に隠れて見えなかったけれど、
甘いうめき声は、いつものサッちゃんからは想像のつかないものだった。
ただ、立膝をした真っ白のハイソックスのふくらはぎが、ひどく鮮やかに網膜にしみ込んだ。
わざわざそのためにおニューをおろしたらしいハイソックスは、眩しい白さに輝いていたが、
ところどころ血が撥ねて、丁寧に咬まれたらしい痕は、特に毒々しく染まっていた。

だから、わしの愉しみを邪魔しないでいてくれたのだな。
そういうことになっちゃうね。
貴志はちょっと、悔しそうだった。
サッちゃんが好きなんだね?
問いには答えずに、貴史は訊いた。
サッちゃんの血を、吸い尽すつもりなの?
そんなつもりはない。それに彼女はもう、半吸血鬼になっちゃったからな。
え・・・
さすがに貴志の顔色が変わった。
ぢゃが、人の生き血を吸えば、真人間に戻れる。
サッちゃんは、僕の血を吸ってくれるかな・・・
たぶんね。
わしがそう仕向けるさ・・・と、吸血鬼は顔で答えた。
じゃあ、小父さんに吸われても構わないや。
貴志は紺のハイソックスの脚を、黙って吸血鬼のほうに差し伸べる。
サッちゃんが血を吸われるところをいつも覗いていた貴志は、
いつも彼女が学校に履いて行く真っ白なハイソックスを咬ませてしまっているのを知ってしまっていた。
すまないね。
吸血鬼は貴志の足許にかがみ込み、ハイソックスのうえから飢えた唇を吸いつけた。
サッちゃんのハイソックスを破り、素肌を咬んだのと同じ牙が、
自分のハイソックスも咬み破り、鈍い疼痛を滲ませてくるのを、貴志は感じた。

約一時間後。
貴志は蒼ざめた顔をして、家路をたどる。
連れの男はさっきまで吸い取っていた貴志の血を、まだ口許にしたたらせていた。
すれ違っていく通行人たちは、それと気づいていながらも、見て見ぬふりをしてやり過ごしていく。
この街では、吸血鬼たちは存在を認知され、昼日中から堂々と闊歩しているのだった。

息子さんが具合を悪くしていたのでね。お連れしたのですよ。
玄関に出てきた貴志の母親は、来客の正体をひと目で知って、蒼ざめたけれど。
蒼ざめた息子がそれでも穏やかな表情をしているのを見て取って、すぐに決意を固めたらしい。
「どうぞ」とひと言だけ言って、男が敷居をまたぐのを許していた。
吸血鬼は、肌色のストッキングに包まれた貴志の母親の足許から、もの欲しげな視線をはずそうとしなかった。
畳部屋に寝かされた貴志は、わざと開かれたふすまのすき間から、
リビングに押し倒された母親がストッキングを破られながら犯されていくのを、ドキドキしながら見守った。
凌辱される母親の姿を目にしたことでもたらされた昂ぶりが、貴志の血の気をじゅうぶん取り戻していたけれど。
あのとき、白のハイソックスの脚を切なそうに足ずりしながら血を吸われるサッちゃんを助けなかったのと同じように、
母親がストッキングを片方だけ穿いた脚をゆらゆらさせながら腰を振って応じていくのを、複雑な視線を送りながら見つめ続けていた。

少年の得た自由

2017年01月05日(Thu) 08:11:30

息子さんの血が旨いから、母親のあんたの血もきっと旨いぢゃろうて。
ぢゃからわしは、息子さんにお家にあがらせてもらったのぢゃよ・・・
野卑な言葉遣いもあらわに迫る老人のまえで怯える人妻は、まだぎりぎり三十代。
干からびた老人の体格と対をなすように、小ぎれいなワンピースに包まれた肢体の豊かさが、息子の目にもなまめかしい。
少年は母親を危難から救い出す努力も忘れて、
母親の白い首すじに牙が突き立ち真紅のしずくがしたたり落ちる光景を、
ただただ見惚けてしまっていた。

ボクのときよりも美味しそう・・・
見当違いな嫉妬に胸を焦がしながら、少年は自分の母親がみすみす生き血を吸い取られてゆくのを、ウットリとした目つきで見届けた。

じゅうたんの上、くたりと姿勢を崩した母親に、吸血鬼はなおものしかかり、容赦なく血潮をむさぼった。
「ひいぃ・・・」
しつけの厳しいお母さんの怯えた声に、不覚にも少年は失禁し、制服の紺の半ズボンの股間を濡らした。
気絶した母親の、ストッキングを穿いたふくらはぎに、男はねっとりと唇を吸いつけ、よだれを塗りつけてゆく。
正気であれば、決して受け容れることのできない恥辱のはずなのに。
生き血を味わわれてしまった女は悔しそうに歯を食いしばったまま気を喪って、男の思い通りに、薄手のナイロン生地をくしゃくしゃにされていった。

ストッキングの伝線をワンピースのすその奥にまで走らせた女は、股間に白く濁った粘液を吐き散らされたまま、白目を剥いてあお向けに横たわる。
その向こうで、こんどは少年が自分の番を待ち受けて、伸ばした首すじをすんなりと、差し伸べてゆく。
ずぶ・・・
さっき母親を咬んだのと同じ牙が自分の首すじに埋まるのを、少年は嬉しそうに受け入れた。

「ホラーじゃん」
ワイシャツに派手に飛び散った血のりを鏡で見ながら、少年は面白そうに笑った。
吸い取ったばかりの血潮を、わざとほとび散らせてくる吸血鬼の下で、シャワーを吹きかけられたときみたいに、思わずきゃあきゃあとはしゃいでしまった。
「きびしいお母さんも思い通りになっちゃったから、これからはおおっぴらに愉しめるね」
「そうだね。これからもよろしくね。吸血鬼さん」
少年は男の目あてを見透かすように、ずり落ちた紺のハイソックスをひざ小僧の下までピッチリと引き伸ばした。
「いつも学校に履いて行くハイソックスに穴をあけたら、お母さんに叱られるかな」
「どうだろ・・・」
ふくらはぎを咬ませながら、少年は横たわる母親を見た。
母親の穿いている肌色のストッキングは、男の欲情のままに、みるかげもなく咬み破られてしまっている。
「あのね、お願いがあるんだけど・・・」
「え?」
「母さんのこと襲うとき、ボクも部屋にいて構わないかな。邪魔したりしないから・・・」
少年の声色が妙に昂っているのを、男は聞き逃さない。
「父さんにも、ナイショにしておくから・・・」
「いい子だ」
男はそういうと、差し伸べられた足首をつかまえて、少年のふくらはぎをもう一度咬んだ。
血で濡れたハイソックスに生温かいシミが拡がるのを、少年は含み笑いをして受け流していく。
きっとこの子は、自分の母親が目のまえで犯されたことに、昂奮を感じてしまったのだろう。
「女と男が仲良くするようすを視ておくのは、大事なことだ」
「そうだよね・・・だいじなことなんだよね・・・」
少年は震え声で応じ、男に押し倒されるまま姿勢を崩した。
半ズボンを脱がされてあらわになった腰周りが、ドキドキするほど寒々しかった。
股間にめり込んでくる、剛(つよ)い一物は、さっき母を犯したもの。
おなじモノを体験してしまう禁断の歓びに、少年は理性を喪失した。
凌辱の愉しみに目ざめた少年は、自分を組み伏せている吸血鬼の背中に、ためらいながら腕をまわしていった。

男女ともにライン入りのハイソックスを履いていたころのこと。

2016年11月24日(Thu) 06:11:25

かつて男女を問わず、ライン入りのハイソックスが流行ったころ。
ぼくたちの街に、初めて吸血鬼が侵入した。
ぼくの彼女にも、魔の手が迫った。
吸血鬼に迫られた彼女は言った。
血を吸われるのは仕方がない。でもどうしても吸われたくない時には、見逃してほしい。
ライン入りのハイソックスを履いているときは、遠慮なく襲ってね。
それ以来、女子たちは吸血鬼に襲われても良いときに、ライン入りのハイソックスを履くようになった。
やつらは女子の履いているハイソックスに欲情して、
彼女たちのふくらはぎに咬みついてはハイソックスに血を撥ねかしていった。

同じ運動部にいる男子たちが、そうした吸血鬼の好みに敏感に反応した。
ライン入りのハイソックスだったら、オレ達だって履いている。
みすみす彼女の血を吸われるくらいなら、オレ達が身代わりになろう。
もちろん、身代わりが務まり切れるわけはなかったけれど。
ぼくたちはそろって、ライン入りのハイソックスを履いて、吸血鬼たちの前に立った。
女子と同じように、ハイソックスを履いた脚を咬ませて、若い血を吸い取らせて。
ぼく達は女子と同じ愉しみや歓びを共有する。
そして、女子たちが吸血鬼に抱きすくめられ、血を吸われる光景を見ることにさえ、
いつか湧き上がる歓びをガマンできなくなっていった。

ライン入りのハイソックスを、めったに見かけなくなった現在(いま)。
あの学校の生徒たちは、男女そろってグレーや濃紺のハイソックスを履いて学校に通う。
制服のモデルチェンジもまた、いまも学校に巣食う吸血鬼たちの好みに、意図的に合わせられているのだ。
ぼく達の息子や娘たちも、例外ではない。
だれもがグレーか濃紺のハイソックスを履いて登校し、
血を欲しがる吸血鬼が校内に現れると、それが授業中でも求めに応じるのがルールになっている。

やっぱりオレ達正解だったな。
あのときのキャプテンは今なお、そういって自慢する。
だれよりも先に彼女を作ったあいつは、
だれよりも先に彼女を吸血鬼に襲わせて、
だれよりも先に彼女は大人の女になった。もちろん、初めて血を吸わせた吸血鬼の手によって。
たしかにそれは、致命的なオウンゴールだったかもしれないけれど・・・
少なくともいえるのは、そうすることで本当に困っていた吸血鬼たちを救う結果になったということ。
救われた彼らは学校に平和裏に巣食うようになり、そのためにだれも死なずに共存を果たすことができた。
ぼく達が卒業したあの運動部は、いまでも試合の時、同じライン入りのハイソックスを履いて活動している。
そして時々、グランドで吸血鬼に追い回されるだけの部活を、愉しんでいるという。

ぼくは同級生の人気者。

2016年11月21日(Mon) 07:19:06

周東、お前の血を吸わせろよ。
きょうも休み時間になると、同級生の吸血鬼たちは、ぼくの血を欲しがって群がってくる。
担任の先生も、見て見ぬふり。
だって先生も放課後には、彼らを自分の家にあげて、奥さんの血を吸わせているくらいだから。
都会から転入してきた教え子が血を吸われるくらいは、ごく当たり前のことみたいだった。
ナオキくんは、ぼくの足許ににじり寄ると、
半ズボンの下に履いている紺のハイソックスのうえから、唇を吸いつけてきたし、
ハルオくんは、ぼくを後ろから羽交い絞めにして、
首すじにぬるりと、舌を這わせてくる。
タカオくんはシャツをはみ出させて、ぼくのわき腹を。
キョウタくんは半そでシャツからのぞいた二の腕を。
立ち尽くしたぼくを取り囲むと、みんな思い思いに咬みついて、じゅるじゅると音をたてて血を啜る。

眩暈を起こしてその場に尻もちをついてしまうまで、やめなかった。
尻もちをついたぼくに、みんなは「ありがとな」「ごちそうさま」「おいしかった」口々にそうお礼を言って、
さいごにナオキくんに頭を撫でられて、解放される。
ほかの三人はぱたぱたと足音を立てて走り去ったが、ナオキくんだけは戻ってきた。
だいじょうぶかよ?といって、ぼくが起ちあがるのに手を貸してくれる。
家までついていってやるからさ。
そういって付き添ってくれるのは、半分は親切心。でももう半分は、はっきりちがう。
家にあがってく?
ぼくはナオキくんをもてなしてやる気になって、そういった。
ナオキくんもくすぐったそうに笑い返して、うれしいな、と、こたえた。

ナオキくんのお目当ては、母さんの生き血。
血を吸われるようになったぼくは、ぼくの血を吸ってくれる友だちに、母さんを紹介していた。
さいしょに吸血鬼の友だちを四人、家にあげたとき。
母さんはお紅茶を淹れてくれたけど。
彼らの目当ては、もっと濃い赤い液体――
母さんはみんなに取り囲まれて、押し倒されて。
きゃあきゃあと小娘みたいにはしゃぎながら、血を漁り取られていった。
いつもしつけにきびしい母さんが、
ブラウスをはだけて、ブラジャーをむしり取られて、
スカートのすそから太ももをあらわにのぞかせながら、
ぼくの仲良し相手に、生き血をチュウチュウ吸い取られてゆくのを、
ぼくは目を見張って立ち尽くして、いちぶしじゅうを見届けてしまっていた。
ゾクゾクとした歓びに目ざめてしまったのは、そのときだった。
脚好きなナオキくんはそのときも、いつもぼくの履いているハイソックスを咬み破くときとおなじように、
母さんの脚から肌色のストッキングをむしり取っていった。

父さんも時々、お友だちを連れて帰ってきて、母さんのことを襲わせている。
ぼくも父さんの目を盗みながら、父さんの友だちと入れ代わりに、ぼくの友だちを送り込む。
とくにナオキくんは、ぼくの母さんのことをとても気に入ってくれたみたいだった。
母さんは貧血に顔を蒼ざめさせながらも、ぼくの友だちの相手をしてくれた。
ナオキくんもそういうときは、母さんに手加減をしてくれて、
足りない分はぼくの首すじを咬んだり、ハイソックスを咬み破ったりして、お腹を満たしていく。
このごろは、そんなふうに母子ながら血を吸い取られることが、むしょうに嬉しい。
母さんの血とぼくの血が、彼らのなかで仲良く織り交ざっていくのを想像するのが、むしょうに愉しい。
きっと、そのうちに、ナオキくんたちが年頃になって色気づいたら、
ぼくの母さんを相手に、筆おろしの儀式を済ませるのだろう。
「だいじな瞬間だから、周東の母さんと姦りたい」
そんなふうに面と向かって言われても、ぼくはただ、くすぐったそうに笑い返すだけ――
ひょっとしたら、ぼくの筆おろしも、母さんが相手をしてくれるかもしれなかったから。


あとがき
もしかするとこのお話のヒロインは、前作の奥さんと同じ人かもしれません。
旦那様からも息子さんからも紹介されつづけたら、すごい貧血になっちゃいそうですが。(笑)

”女生徒”どうし。

2016年10月11日(Tue) 03:45:53

マキちゃんまた貧血ぅ?よっぽど吸血鬼の小父さまに気に入られちゃったのね♪
んー、それ、困るよぉ。ウレしくないよぉ・・・
マキちゃんと呼ばれた女生徒は、眠たそうに目をこする。
そおー?でもよかったじゃない。楽しいんでしょ?吸われてる最中って。
そうだけどさー、ヒラちゃんみたいに、あたしもスポーツとかやりたいよぉ。
マキちゃんはそういいながら、教室に向かう生徒の列を外れて、ひとり保健室をめざす。

はぁ・・・

ヒラちゃんと呼ばれた女生徒は、ちょっと立ち止まってクラスメイトの行き先を見つめ、ため息をついた。
よく見ると。
マキちゃんもヒラちゃんも、ほんとの女生徒ではない。
女装した男子生徒だった。
この学校は、じつは男子校。
でも生徒のうちの約半分は女生徒の制服を着用して登校するので、はた目には共学校とよく間違われている。
マキちゃんの本名は、牧野純男。ヒラちゃんは平岡清太郎。りっぱな男らしい名前だった。

ヒラちゃんの悩みは、まさに「男らしい」体格と風貌。
入学以来女子として振る舞っていて、念入りに化粧までして学校に来るけれど、どうしたって地は隠せない。
マキちゃんのなで肩の体格に典雅な風貌、それに持ち前のなよっとした立ち居振る舞いにはかないっこなかった。
もっともマキちゃんはそうした「女子力」のために、まえの学校ではいじめに遭っていたらしいけれど。

あー、くさくさする。

ヒラちゃんは教室に着くと、すぐさま部活のユニフォームに着替えていた。
所属しているバスケットボール部では、主力選手なのだった。
一時間目は、体育。けれども、出席率はよくなかった。
えー、あたしだけ・・・?
クラスの全員が貧血で、ヒラちゃん以外の生徒はどうやら、教室で自習を決め込むらしい。

がらんどうの体育館に、ボールのはずむ音が残響たっぷりにうつろに響く。
・・・ったく、もう!
ヒラちゃんはボールを手に取ると、いきなりダンダンダン・・・と短兵急な音を響かせてドリブルして、
ゴール前で巧みに身をくねらすと、鞭のようにしなる腕から、ボールを繰り出す。
放たれたボールはあやまたずゴールポストに食い入って、直下の床をダン!と響かせた。
きょうの授業は、教師さえもが貧血らしい。
かまうものか。独りで授業こなしてしまおう。
さらにもう一回――ヒラちゃんはボールを手に取ると、再び敏捷な動きでドリブルをくり返し、ゴールに迫る。
ライン入りのハイソックスの下、がっちりとした筋肉がギュッと隆起する。

と――

放たれたボールはあらぬかたをめざし、体育館の高い天井間近まで舞い上がると空しく落下した。
おい・・・ッ
思わず男声になって振り返ると、ムササビのように飛びかかって来た男の影は
ヒラちゃんと反対側に飛び交って、床に這うようにうずくまると、こちらを見返してくる。
目にもとまらぬ早業だった。
そいつがヒラちゃんの一瞬のスキを突いてボールに手を伸ばし、ゴールをまっすぐ目指すはずの弾道をでたらめにねじ曲げたのだ。
こんの野郎――
ヒラちゃんは闘争心もあらわに、こんどは男の妨害を許さずゴールを狙う。
けれども結果は、同じことだった。
いままで幾重の防御を縫ってゴール前に突進し、外されたことのなかったシュートは三度、みじめな放物線を描いてゆく。
気がつくと、汗だくになっていた。
挑発され、幻惑され、さいごに絶望させられる――
こいつ・・・新顔の吸血鬼じゃないか。
気がついたときにはもう、体育館の床に腹ばいになって、男にふくらはぎを咬まれていた。
どうやらこいつも、脚フェチらしい。
いままでヒラちゃんのスカートの下を狙う吸血鬼はほとんどなかったし、貧血を覚えるほど血を吸われたこともなかった。
だのにこいつは、平気でヒラちゃんのふくらはぎに食いついて、身体ぜんたいがふわぁってなるほど、したたかに血を吸いあげる。
部活のユニフォームの一部であるライン入りのハイソックスは、勝った側のご褒美といわんばかりにもてあそばれて、
くまなく舐め抜かれ、あちこちと咬み破られて、ずるずるとだらしなく、ひざ小僧の下からずり落ちていった。
・・・ったく、このっ・・・
ヒラちゃんは悔しがったが、どうすることもできない。今度の体育の時間にリベンジを誓うのが精いっぱいだった。

つぎの日の体育の時間。
授業に参加した生徒はやはり、まばらだった。先生も来なかった。
しかし、あのいまいましい黒い影は、やはり彼のことを目あてに体育館に来ていた。
狙ったシュートは7回外され、敏捷な身のこなしは先の先まで読まれてつかまえられて、ヒラちゃんはふたたび、床に転がった。
好きにしなよッ。もうッ!
やけになって投げ出した脚に男はむしゃぶりついて、ライン入りのハイソックスのうえからヒラちゃんのふくらはぎに唇を吸いつけると、
それはおいしそうに舌をねぶり着けて、しなやかなナイロン生地に唾液をたっぷりとしみ込ませてゆく。
女生徒のかっこうをしているときには近寄りがたいと敬遠されつづけるヒラちゃんが、
体育館では恰好の餌食として狙われる。
女もののハイソックスは無傷のまま家路をたどることがほとんどだったのに、
部活用のハイソックスは毎日のように赤黒いシミに汚されていった――
ヒラちゃんが女装をやめたのは、それからすぐのことだった。

よぅ。
朝の通学路で声をかけてきたヒラちゃんは、入学前の平岡清太郎に戻っている。
おはよっ。
女声で返してくるマキちゃんは、女生徒の服装がすっかり板についていた。
元に戻ったの?でもヒラちゃんカッコいいよ。ファンになりそう♪
マキちゃんの女ぶりに、いつも以上にグッとくるのは。
ブレザーの女子用制服を脱ぎ捨てて、詰襟に戻ったからだろうか?
行こうぜ。
二人は連れだって、学校を目ざす。
俺さ、やっぱ男もいいんだよね。
ウン、ヒラちゃん男服似合うもん。
いや・・・それだけじゃなくってさ・・・
ヒラちゃんはちょっとだけ口ごもると、それでも言った。男らしく、まっすぐに。
――俺の彼女になってくれないか?
マキちゃんは一瞬立ち止まってヒラちゃんを見あげ、眩しそうに顔を見返すと、すんなりと頷いていた。

あたし、もう処女じゃないんだよ。先週、吸血鬼の小父さんに犯されちゃった。
人間の彼氏ができても、彼氏と話しつけてでもお前を放さない・・・って、言われているの。それでもいい?
もちろん・・・さ。
ヒラちゃんも、意外なことをいった。
いつもバスケでかなわない彼ね、こないだ俺のこと組み伏せて、短パン脱がされて無理やり姦られちゃった。
ライン入りのハイソックスの脚おっ拡げてさ、みんなの前で、ウンウンうなりながら、夢中になっちまった。
だからさっきも言ったろ。やっぱ男もいいって。
あいつ、いいライバルだから。俺もマキちゃんを彼女にしながら、あいつと男同士も愉しむからさ。
マキちゃんもいっぱい、小父さんにかわいがってもらいなよ。
お互い女の彼女ができたら、きっとあいつらに紹介しちゃうだろうから。
そうなるまえに、マキちゃんを寝取られても愉しめるようになっておきたいんだ。

ほんと、あたしたちってば歪んでるよねー。
マキちゃんはあっけらかんと笑った。宅まぬ笑い声が、すでに女声だった。
それをうらやましがっていたヒラちゃんが、いまは別の目でマキちゃんの女ぶりに目を留めている。
いきなりマキちゃんの行く手に立ちふさがると――
熱い唇が、マキちゃんの唇をふさいでいた。
や・・・だ・・・
マキちゃんはヒラちゃんの腕のなか、ちょっとだけ抗ったけど。
すぐに傍らの草むらに引きずり込まれて、スカートのなかに手をさ迷わされてゆく。
ヒラちゃんはどこまでも男らしく、マキちゃんを圧倒しつづけた。
そんなヒラちゃんに、マキちゃんは女になりきって、華奢な身体をすがりつけていった。


あとがき
完全な?同性同士のお話は、じつは珍しいかも知れませんね。 ^^;

妹の紺ハイソ

2016年10月05日(Wed) 06:40:04

公園のベンチのごつごつとした感触にも、もうだいぶ慣れた。
むしろここにうつ伏しているときのほうが、教室にいるよりもリラックスした気分になれる。
というも――
このベンチで腹ばいの姿勢を取っているときは、吸血鬼の小父さんに、脚を咬んでもらっているときだから。

きょうも小父さんは、ボクのふくらはぎにとりついて。
小父さんのために履いてきたハイソックスを脱がせもせずに、牙を深々と埋め込んでいる。
しっかりとしたナイロン生地の舌触りが、たまらないのだという。
さいごはハイソックスをずり降ろして、素肌の上から咬むのだけれど。
そうする前に、たっぷりと・・・ボクの履いているハイソックスを舌や唇で愉しんでいくのだった。
そんな小父さんのために、チュウチュウと勢いよくボクの血を吸いあげる小父さんのため、
うら若い血液を気前よく、分けてあげてしまっている。
血液が傷口を通り抜けるときのあの妖しい疼きが、きょうもボクを迷わせていた。

ふぅ・・・
傷口から牙を引き抜いて、小父さんが満足そうなため息を洩らすとき。
ボクも身体から力を抜いて、「ふぅ」と息をはずませる。
ライン入りのハイソックスは、運動部の部活のときのユニフォーム。
この服装で小父さんの相手をするときは、チームメイトを裏切っているような後ろめたさを感じたけれど。
うちのキャプテンが餌食になってからはみんな、小父さんやその仲間たちのため、
みんながおそろいで、ライン入りのハイソックスの脚を咬ませるようになっていた。

また女の子が相手をしてくれなかったんだね。小父さんのこと怖がって、みんな逃げちゃうんだよね?
ボクのからかい文句を、小父さんはくすぐったそうに受け流すと、いった。
こんど、きみの妹さんを連れてきてくれないか?

やらしい・・・なんだか、やらしいな・・・
兄さんに妹を紹介させるの?
みんなそんなふうにして、女子の生き血をゲットしているの?
だからさいしょに、男子をたぶらかしにかかっているの?
小父さんたちのやり口が見えてしまったとき――それでもボクは批難の言葉を慎んで、素直に肯いてしまっている。
じゃあこんど、妹の下校時間に合わせて、小父さんと逢うことにするからね。

公園の通路を横切っていく制服姿の妹を、遠目に追っていくと。
その小さな人影は、こちらを振り向いて。立ち止まって。びっくりしたように佇みながら、様子を窺っていた。
「春江、おいで!」
ボクが脚を咬まれながら声をあげると、妹の春江はもじもじしていたけれど、
くり返し名前を呼ぶと、気の進まないような足どりで、こちらに歩み寄ってきた。

「お前も脚咬んでもらいな」
ボクの命令なんかいつも無視しているくせに、どういうわけかその時だけは、春江はとても従順だった。
「お兄ちゃん。顔色悪いよ」
そういって、ちょっとだけ心配そうにボクの顔を窺うと。
ボクは無言でベンチの上から降りて、春江も無言で、ボクのいたところにそのまま腰をおろす。
「ハイソックスの上から、咬むんだね」
ぶすっと呟く仏頂面の妹に。小父さんは猫なで声で迫っていく。
「面白そうだろ?だから自分から来たんだろ?」
「そんなこと・・・ないよ・・・」
「お兄ちゃんのことが心配だったのか」
「それも・・・あるけど・・・」
言葉を交わしながら春江の横に座って、なれなれしく肩に腕を回してくる小父さんに。
いつも気の強いはずの春江は、意外にも無抵抗だった。
「紺のハイソックス、たっぷりとしていい感じだね」
「あたし、脚太いもん」
「いや、これくらいの肉づきのほうが、男子にモテるんだ。本当はね」
「そうなんだ」
春江はまんざらでもない顔になる。
「咬まれるのは初めてかい」
「まだ咬ませてあげるって、決めたわけじゃない」
そういって春江は強がるけれど、もうすっかり小父さんの腕のなかに取り込まれていて、
スカートの上から太ももをもの欲しげにまさぐる手を、どうすることもできないでいる。
さすがに、露骨にやな顔をして、さっきから小父さんをにらみつづけていたけれど。
小父さんはそんな春江の目線がむしろ好もしいらしくって、
「女子にモテない」ってボクにからかわれたときと同じように、くすぐったそうに受け流していく。
「首すじと、どっちが先がいいかね」
「だからー!まだ咬ませてあげるって決めたわけじゃない」
「安心しなさい。きみにそんな恥ずかしい決断をさせたりしないから」
「エ・・・どういうこと」
「わしが一方的に・・・咬む・・・!」
さいごは大きく口を開いて。
伸びた犬歯にあわてた春江が、両手で口をふさぐ間に。
おさげの黒髪をかいくぐり、むき出した牙を春江のうなじに埋めていた。
きゃ~っ。
時ならぬ悲鳴に、不覚にも射精してしまっい、半ズボンの裏をびしょ濡れにさせたことは、いまでもナイショ。
吸血鬼は妹を掴まえたまま、ごくり・・・ぐびり・・・とロコツな音をたてて、十代の女子の生き血を飲み耽る。
妹は座ったしせいのまま、気おされまいとするように、歯を食いしばって悲鳴をこらえる。
決して泣くまい。弱みを見せる麻衣。
そんな意地っ張りなようすが手に取るように伝わってきて、思わず「かわいいなあ」って、呟いてしまう。
春江はボクのことをにらんだけれど。
知らず知らず施してしまっている飲血の奉仕の光景を、ボクは絶句しながら見届けていた。

「もう、知らないからね」
やっとやっと首すじを放してくれた小父さんに、春江は精いっぱい強がってそういうと。
ずりおちかけた紺のハイソックスを、ひざ小僧の下まで引き伸ばす。
「ご馳走すればいいんでしょ」
どこまでも、ツンツンとした態度。
吸血鬼は、女の子のそんな強がりをまるきり無視して、
自分は自分の仕事をするといわんばかりに春江の足許にかがみ込むと、
差し伸べられたふくらはぎに、ねっとりと唇を吸いつける。
紺のハイソックスを履いたまま、春江は小父さんの牙を受け容れた。
ボクがいつも、運動部のユニフォームのライン入りハイソックスをご馳走してあげるときと、まったく同じようにして。

紺のハイソックスも、いいなあ。
ボクも脚に通して、小父さんに咬ませてあげたいなあ。
妹が生き血を吸い取られていくというのに、このけしからぬ兄はそんなことを妄想して。
吸血鬼の不埒で好色な唇の下、春江の履いている紺のハイソックスが、みるみるよじれて、くしゃくしゃになってずり落ちてゆくありさまを。
息をつめて見守って、愉しんでしまっている。


愉しんでたよね?お兄ちゃん。
小父さんと別れてしまうと、いつもの力関係が、現実と一緒に戻ってきた。
そうだね。愉しんでたかな。
ボクは頭上に広がる青空を見あげながら、ひとごとみたいにそう応えると。
そのまま空を見あげながら、いった。
紺のハイソックス、まだ持ってる?ボクも履いてみたいんだけど。
じゃあ、こんどはおそろいで――あたしのハイソックスお兄ちゃんにも履かせてあげるから。
春江は血の気の失せた蒼ざめた頬に、満面の笑みを浮かべてこたえた。
そして、イタズラっぽい笑みを切らさずに、言ったのだ。

こんどさ、ママがお兄ちゃん用に、女子の制服買ってくれるってさ。
今度から、女子になって登校するんだよ。学校でももうなん人か、そういう男子いるからさ。恥ずかしがらないでも平気だって。

妹を堕落させるのにひと役かったつもりでいたけれど。
やはり妹のほうが、一枚上手だったらしい。

鞄。

2016年09月08日(Thu) 07:42:54

ただいまぁ。
下校してきたタカシの声が、見慣れたはずの家の中でうつろに響いた。
いつもの家のはずなのに、なにかが変だ。
思わず、帰ってくる家を間違えたのか?と思って
玄関の表札を見直しに後戻りしかけたくらいに、ヘンだ。
よく見てみると、敷居を上がってすぐのところに、見慣れない鞄が投げ出してある。
それはタカシがいつもそうしているように、むぞうさに置かれていて、
我が物顔に廊下の半ばを占めて通り道をふさいでいた。
見慣れない鞄だと思ったけれど、見覚えはあった。
仲良しのリョウタの持ち物だった。
さっきまで、隣の席でいっしょにいたじゃん。
そう思いながらリビングに入っていって、アッと声をあげそうになった。

リビングのすぐ隣は、両親の寝室になっている。
いつも几帳面な母の手でぴしゃりと閉ざされているその空間が、
やはりむぞうさに半開きにあれていて、
視てはならないものがやはり無造作に、いやでも視界に入り込んできた。
見慣れたこぎれいなワンピースを着た母が、
おっぱいをたわわにさらけ出して、
ストッキングを半脱ぎにされて押し倒されていた。
半ズボンを片方だけ脱いで、母の上にまたがって、
腰を上下に動かしながら、母を夢中にさせているのは、
ほかならぬ幼なじみのリョウタだった。

たいせつなふたつのものを同時に喪ったような強烈な不信感に強くかぶりを振って、
それをとっさに拭い取ったら、
あとからあらわになったもっとどす黒い衝動が、目も当てられないほど、
あたりいちめんに拡がっていた。
認めざるを得ない二人のあり得ない関係を目の当たりにに、
股間を抑えながら昂ぶりを隠せなくなっている自分がいた。
脱がされたストッキングが母の足許でふしだらに弛んでいる光景が、
網膜に灼きついて離れなくなった。

そのまま息をひそめて、親友が母の肉体を愉しむのを見守りつづけ、
パンツがびしょ濡れになるくらいに昂奮しつづけて、
でも部屋から出てきたリョウタに、声をかけずにはいられなかった。
「おい」
ほんの呟くような小声しか発することができなかったのに、
リョウタは飛び上がるほどびっくりして、
すぐにタカシの手を引いて、「来い」というと、
廊下に置きっぱなした鞄をひったくって、
お化け屋敷から逃げ出すような勢いで門の外まで二人で飛び出していた。

お前ぇ、先生に呼ばれていたからきっと、帰り遅いと思っていた。
おれだって、帰りが遅いつもりでいた。あいつ、説教長いからな。
すぐに解放されたんだ、ラッキーだったな。
まったくだよ。あいつ急に黙って、もういいから帰れって言ったんだ。
お互い意識して、さっきまで両親の部屋で起きていたことを話題から避け、
まったく無関係なことをしゃべくり合って。
しまいに話題がなくなって、核心に触れざるを得なくなった。

長くなると形勢が不利になると思ったらしい。
リョウタはひと言、
「母ちゃんにさっきのこと言うなよ。親子の関係がヘンになったら困るだろ。
 なんにも気づかなかったふりして、絶対話すんじゃないぞ。
 話したくなったら、おれに言えば相手するから」
「相手する」の意味が、男子らしい粗暴な意味ではなくて、
どうやらたまったうっぷんを晴らしてくれるという意味らしいことだけは、なんとなく伝わってきて、
タカシはちょっときまり悪げに「じゃあな」と言い、
リョウタもちょっときまり悪げに「じゃあな」と言った。


次の日も。
リョウタの鞄は、タカシの家の廊下に無造作に投げ出されていた。
タカシは母が親友に犯される場面に、きのうと同じくらいしんけんに息をつめて、見入っていた。
少なくとも、二人が合意のうえで息をはずませ合っているという状況だけは、飲み込むことができた。
母は父と自分とを裏切って、リョウタの性欲のはけ口になっていて。
リョウタは自分の母親以上に、タカシの母に懐いて発情して、
後ろから視ているタカシの目をじゅうぶん自覚しているくせに、
タカシの感情などおかまいなしに、タカシの母のワンピースの奥に、精液を吐き散らかしていた。

おい。
あお向けで大の字になった母を置いて部屋を出て、そのまま前を素通りして帰ろうとするリョウタのまえに、タカシが立ちふさがった。
タカシは無造作に置かれたリョウタの鞄を拾い上げ、
鞄。
といって、手渡した。
鞄だけは、かんべんしてくれないかな。
タカシはぶすっとひと言、そういった。
外からも見えるし、あんまり見良いもんじゃないから。
なにも意識しないで置き捨てた鞄が親友の心に与えた意外な影響に、リョウタがちょっとびっくりしたような顔をすると。
表に出て。
タカシはやはり乾いた声で、そういった。
リョウタがタカシに従って、玄関を出ると。
門の手前でタカシはリョウタに向き直り、
一発だけ、なぐらせろ。といった。
いいぞ。
リョウタは地面に足を踏ん張った。
ばちぃん!
強烈な平手打ちに目が眩んだ。
どちらかというと大人しいタカシの一撃に、リョウタはおどけて「さすがや」というと、
タカシは「これでおあいこな」とだけ、いった。
「おれのときにはさ、脱いだ背広だった」
リョウタは意外なことを口にする。
「背広?」と、タカシが問うと、
「お前の鞄」とだけ、リョウタはいった。
家に帰ると背広の上下が母親の部屋の前に脱ぎ捨てられていて、
閉ざされたふすまの向こうから、あぁ~ん・・・という声が洩れてきた。
間違いなく母の声だったのに、立ちすくんでしまって、ふすまを開けることができなかった。
ふすまを開けることができないのに、ふすまの向こうの情景が気になって気になって、気が狂いそうになった。
しんぼうにしんぼうを重ねて待ち続けて、出てきた男に言った。
せめてふすまは開けといてくれませんか?と。
出てきた男の正体にびっくりしたリョウタに、
リョウタに視られていたこと自体にびっくりしたその男は、
つぎのときからは律儀に、ふすまを半開きにしておいてくれて、
リョウタのほうも律儀に、ふたりの愉しみを妨げようとはしなかった。
タカシが感じたのと同じ不思議な昂奮を、リョウタも感じてしまっていたから。

だからお前のときには、気を使おうと思ったんだけどな。鞄だったか。
まだまだ、間男失格やな。
リョウタは笑って頭を掻いた。
タカシは「この」と言いながら、リョウタの頭を軽くどついた。
お互いのあいだに潔い空気がよぎるのを、お互いが感じていた。


それからは。
リョウタが目配せすると、タカシはリョウタより一拍遅れて学校を出、
リョウタが母を相手に行う儀式を、タカシはふすまのすき間から、息をつめて見守っていた。
母を間男されているリョウタは、タカシの気分をよくわきまえていた。
タカシが視たがるときには、ほかの予定をあと回しにしてでもタカシの家に行ったし、
タカシがほんとうに切ないときには、タカシの家に行くのを控えるようになった。
母はとっくに気づいていたようだった。
けれどもそのことを、母も息子も、口にすることはなかった。
リョウタがふつうに遊びに来たときの帰り際、母がリョウタと二人きりの時間を持つのも、
三人の間では、ごくあたりまえのことになっていた。
それでも母と息子のあいだで、そうしたことが口にのぼることはなかった。

やがてリョウタは、自分の母親の間男を連れて、タカシの家に来るようになった。
大人同士のセックスは、ふたりの少年を夢中にさせるのにじゅうぶんだった。
タカシはリョウタの家に呼ばれて、リョウタの母がその男と交わるようすを見せてもらった。
リョウタの母は美人だったし、乱れ方もひととおりではなかったけれど、
やっぱり自分の母親の時のほうが昂奮できるとひそかに思った。
ふたりの母親の間男をしたのが、ほかならぬあのがみがみ親父の先生だったことは、
ふたりをよけいに、昂奮させた。
「あいつ知能犯やな」と、リョウタがいった。
あの日、タカシを叱ろうとして教室に残し、
タカシの帰りが遅いのを見越したリョウタがタカシの家に出向くのを見極めて、
わざと中途半端な時間だけタカシを残して家に帰して、
ちょうどのっぴきならない状況のときに、帰宅するように仕向けたのだろう。
「まさかタカシの母さんまでモノにできるとは、あいつ思っていなかったみたいだけど」
リョウタはいっぱしのワルめかして、へへっと笑った。


二十年後――
ただいまぁ。
タカシが家に戻ると、家のなかは真っ暗だった。
廊下には、無造作に投げ出された通勤鞄。
あいつ、悪い癖が抜けないな――
また帰る家をまた間違えたのか。
リョウタは律儀にも、あらかじめタカシに仁義を切っていた。
きれいな嫁さんやな。こんどいっかい、ユーワクさせてくれへんか?
箱入り娘だった嫁は、おぼこだった。
もらったばかりの嫁は、そうしたことにはまったく無防備で、
リョウタのトライにあっけなく屈すると、
夫の帰りの遅い夜には、リョウタに連絡するようになっていた。
来月から単身赴任。そして、リョウタはまだ独身。
すでに三人もいる子供のうち、ひとりは間違いなくリョウタが父親だった。
帰ってくる頃には、二番目の子とうり二つの子がもうひとり、増えているかもな。
そんな想像に昂りながら、タカシはいつもの場所にいそいそと陣取っていった。

真夜中の公民館

2016年08月29日(Mon) 01:12:12

月に一度のその夜は。
吸血鬼と人間とが共存するこの街では、お決まりの夜。
男たちは妻や娘、姉や妹を家に残して、公民館で宴を張る。
家に残った女たちは、よりどりみどり。吸血鬼の餌食にされる。
もちろん、生命の保証はあっての好意――でも、貞操は無事では済まされない。
血を吸った女の操は犯すのが、彼らにとっては礼儀なのだという。
襲った女が魅力的だったことの証しとして、愛していくのだから。

少年のころ、父に連れられて宴会に行った。
そこでは大人たちがお酒で顔を赤くしていて、ぼくたち子供は隅っこで小さくなっていた。
父はしばらくの間、口数少なくその場にいたが、やがて堪えられなくなったらしい。
留守宅で母と姉とが、ムザムザと吸血鬼の餌食になることが。
「おまえはここにいなさい」そう言い残して、父は家へと取って返した。

よせばいいのに・・・という人と。
そこは気になるだろうさ・・・という人と。
父の背中に投げられた囁きがそう冷たいものではないことに、ぼくは安堵を覚えていた。
黙認の形で公民館まで逃げてくれば、まだしもかっこうはつく。
けれども吸血鬼たちに侵蝕されている真っ最中のわが家に戻れば――そこから先は、どうなるのだろう?

やがてぼくも、ガマンできなくなって、
「ぼくも気になるから」
大人の人に、そう告げてそこを出た。
よしなよ・・・という声と。
まあまあ・・・と、その声の主を引き留める声とを、
さっき父が出ていったときと同じように、背中で聞いた。

家に着くと、そこは真っ暗だった。
電気をつけようか・・・と思ったけれど、なぜかそうしてはいけないような気がして、手を引っ込めた。
洋間の手前で父が倒れていた。
父はかろうじて意識はあったけれど、寝ぼけたような顔をしていて、なんかとりとめもないかんじだった。
母と姉とをかばってさいしょに血を吸われ、理性を引き抜かれたうえで、すべてを見届けてしまったのだと――あとで知った。

奥の部屋には布団が二対敷かれていて、それぞれの布団のうえに、母がいて、姉がいた。
どちらも吸血鬼が一人ずつのしかかって、必死で腕を突っ張る母娘のうえに、黒い影をおおいかぶせていた。
ドキドキしてきたのは、そのときだった。
いつも厳しい母が。
いつもきちんとお行儀のよい姉が。
見慣れたよそ行きの服を着崩れさせて、おっぱいや太ももをちらつかせながら、
眉をひそめているのに、どこかキモチよさそうで、止めてほしくないようすで。
吸血鬼を相手に、ぼくの識らないひと刻をともにしている。
そのことへの嫉妬と悔恨と、正体不明の不思議な昂ぶりとが、
半ズボンのなかに押し込んであるものを、勃ちあがらせていった。

あの。
ぼくはどちらの吸血鬼にともなく、言っていた。
昂ぶりに震える声で――
ぼくの血も、吸ってください・・・

母におおいかぶさっていたほうが、起きあがって、ぼくのほうへと向きなおった。
母は布団のうえにあお向けになって、首から血を流したまま息をぜーぜーさせていた。
「来ちゃダメじゃない」
母親らしく洩らした声が、咎めながらも受け入れてくれていた。

ハイソックス履いているんだね。女の子みたいでいいな。
吸血鬼はそういうと、ぼくを畳のうえに抑えつけて、首すじを咬んだ。
ちゅうっ・・・
ほかのみんなと同じようにされて、ぼくは我を失っていった・・・
男の手は、半脱ぎにされた半ズボンのなかにまで、伸びてきて。
お尻に突き込まれてきたものの正体はぼくにもよくわかったけれど、
しまいまでわからないふりを、し続けていた。

その夜からのことだった。
ぼくが姉の服を借りて女装をして、家にとどまって吸血鬼の相手をするようになったのは。

そのころからのことだった。
家にとどまった夫たちが、知人たちにも家にとどまることをすすめて、
だれもが家に居るようになって、公民館での宴会が途絶えたのは。

子供のころの作文  「吸血鬼の小父さんとお母さん」

2016年04月04日(Mon) 08:02:03

ぼくのお母さんは、吸血鬼の小父さんと仲良くしています。
毎晩お父さんが帰ってくる前に、お母さんはおめかしをして、
小父さんの待っている公園に出かけていきます。
そこで小父さんに首すじやあしをかまれて、血を吸い取らせてあげています。
小父さんは、お母さんの肌に口をつけて、チュウチュウ音を立てて、
それはおいしそうに、お母さんの血を吸うのです。
お母さんはいつも足にパンストをはいているので、
小父さんに足をかまれると、破けてしまいます。
でもお母さんは気前が良いので、いつも小父さんにせがまれるまま、破かせてあげています。

これはナイショだっていわれているんだけど、お母さんの血を吸ったあと、
小父さんは、お母さんのスカートをめくって、いやらしいことをします。
お母さんはかまれている時よりも顔をしかめて、ハーハーと息をもらして、小父さんのしたいようにされていきます。
たまにはおっぱいが見えたりして、そう言うときにはボクまでドキドキしてしまいます。
いやらしいことが終わると、お母さんは起きあがって、スーツについた泥をたんねんに落とします。
お父さんに、ばれないようにするためです。
ボクはかくれてそのようすを見ているのですが、いつもお母さんにばれて、見つかってしまいます。
お母さんは、そういうときにはあまりボクのことを怒りません。
「いけない子ね。いま見たことは、お父さんに言ったらダメよ」
といって、ボクと一しょに、手をつないで帰ります。

小父さんは、ボクの血を吸うときもあります。
長いくつ下が好きなので、半ズボンの下にハイソックスをはいて行くと、
お母さんのパンストのときみたいに、足をかまれてビリビリ破かれてしまいます。
小父さんは、ボクの血を「うまい、うまい」と言って吸います。
お母さんを迎えに来たごほうびだ、とも言ってくれます。
そういうときには、てれくさいような、うれしいような、不思議な気分になります。
そういえば、さい近は、お母さんのあとをついていく時には、
ハイソックスをはいていくことが、多くなりました。

お母さんは、夜公園で吸血鬼の小父さんに会っていることはお父さんには内緒にしているみたいです。
でも、お父さんは、お母さんと小父さんのことを、ちょっぴり知っているみたいです。
「あの小父さんは、お父さんの仲良しだから、お母さんとも仲良くしているのだよ」
なにかのときに、そんなふうに言っていました。
でも、小父さんが夜公園にお母さんを呼び出してお母さんの血を吸ったり、いやらしいことをしたりするのを、お父さんが知っているというのは、お母さんにはナイショにすることになっています。
お互いわかっているのにナイショにするなんて、大人ってむつかしいなって思います。
おしまい

ユニセックス。

2016年03月31日(Thu) 07:51:49

妻の貞操と引き替えに。
吸血鬼にあてがわれたのは、男子生徒とその家族。
わたしが教諭を務めるその学校では、
男子も半ズボンの下、女子と同じハイソックスを履く。
男女の生徒が入り乱れる教室では、脚たちに男女の区別はほとんどなかった。

少年は、初体験を済ませたばかりだった。
相手は、わたしの妻を吸った男――
人の血を吸うなんて、あんたも初めてだろうから。
お互い不慣れだと、良くないケガをするからな。
もっともらしい言いぐさだったが、間違いではないのだろう。
彼はわたしに感謝されながら、わたしの同性の恋人の純潔を奪っていった。

わたしに初めて求められたとき。
少年は大きく目を見開いて、「先生が・・・?」とだけ、いった。
「そう」とわたしが言うと、「よろしくお願いします」と言って、素直に頭を下げていた。
母さんはすでに、毒牙にかかっていたから。
自分も時間の問題だと、感じていたらしい。
わたしは教え子の首すじをいとおしげに抱き寄せて、咬んでいた――

きょうも少年は、保健室にやって来て貧血を訴えて。
わたしも気鬱を訴えて、保健室にやって来る。
年老いた養護教諭はすべてを察しながら、座をはずす。
少年がうつ伏せになる、掛布団のないベッドににじり寄って。
濃紺のハイソックスがぴっちりと引き締める足許に、わたしは牙を忍ばせてゆく。
枕を掴まえる少年の掌に力がこもるのを横目に、
わたしはググ・・・ッと、牙を埋める。
至福のひと刻――
愛の交歓に、男女の別はないことを、わたしは少年の身体を通して、識ってしまった。

調和。

2016年03月31日(Thu) 07:36:08

血を吸われるなんて、理不尽だと思っていた。
少なくとも、不自然だと思っていた。
転入許可の条件として、校内に来賓として訪れる吸血鬼に、血液を無償で提供することが条件に入っていたことも。
制服が半ズボンに、女の子みたいに紺のハイソックスを着用することが義務づけられていることも。
PTAの席では母さんも血を吸われて、吸血鬼の愛人にされちゃったことも。
いちいち理不尽だと思っていた。

自分から吸われに行くなんて、非常識だと思っていた。
身体がムズムズするのも、咬まれた痕がジンジンと疼くのも。
気がついてみたら、ボクをひいきにしてくれる吸血鬼の目のまえで手を合わせて、
お願いだから血を吸ってくださいって懇願しているときだって。
引き抜かれた血液と引き換えにあいつがボクの身体のなかに注入した毒液のせいだけだと思っていた。

身体も心も、調和していく。
週1回の吸血の義務は、週2~3回の愉しみにすり替えられて。
家に戻るとたいがいくり広げられている母さんの情事は、
のぞき見をする後ろめたさと半々の、やっぱり愉しみにすり替えられていた。

こんどはきみの彼女を紹介してくれる番だぞ。
そう囁く小父さんに。
ボクは精いっぱいのしかめ面を作って、応えている。
紹介するだけだぞ。なんにもさせないぞ。
彼女だって、身持ちの正しい子なんだから。
お前なんかの自由にされないぞ。
彼女の純潔をかけてもいいから・・・って。

男の吸血鬼に、血を吸われる。

2016年02月15日(Mon) 07:01:46

ここは、街はずれにある古い洋館の大広間。
ボクはじゅうたんの上、うつ伏せになって。
あの男に生き血を、吸い取られている。
もう・・・なん回めになるだろう?

わが母校は崇高なる人類愛を標榜して、
街に出没する吸血鬼を受け容れた。
通学するおおぜいの男女生徒の血液を、彼らに無償で提供することで、
人と吸血鬼との共存を図ろうというわけだ。
学校の意図は、成功しているんだそうだ。
だって、ほとんどの生徒が血を吸われたというのに、生徒の死亡例が皆無だからだ。

男の吸血鬼は、好んで女子生徒を襲った。
それが人情というものだろうから、気持ちはわかる。
彼女の麻利絵さんまでが毒牙にかかったときは、さすがに悔しかったけれど――
だからといって、どうすることができるわけでもない。
首すじに咬み痕をつけた彼女は、自ら望んでお相手と密会を続けている。

麻利絵さんの血を吸っているやつが、ボクのことを襲ったのは。たぶん偶然だ。
でも、その事実を知ったとき――なぜかむしょうに、嬉しかった。
ヤツの体内で、ボクの血は彼女の血といっしょになる・・・そんなふうにも思えたし。

いまヤツは、ボクの首すじに唇を当てて、
チュウチュウといやらしい音を立てて、血を吸っている。
麻利絵さんのときにもきっと、そうしているのだろう。
心地よげに目を半ば瞑りながら吸いあげてゆくのが、傍らの姿身に映っている。
首すじの次は、脚だった。
そろそろとふくらはぎに這い寄って、
紺のハイソックスのうえから、ヤツはボクのふくらはぎに牙を立てる。
そう――ボクがいま身にまとっているのは――女子の制服。
そのほうが気分が乗るから・・・とせがまれて、
学年がひとつ下の妹のやつを、無断で拝借している。
ハイソックスは何足、穴をあけてしまっただろう?
ボクは素知らぬ顔をしていたけれど、妹のやつはきっと、気づいているに違いない。

吸血は性行為だという。
彼女も時々、そんなことを口にする。
ゴメンね・・・って、いいながら。
彼女はイタズラっぽく笑って、ボクの顔を盗み見る。
キミ以外のひとと、浮気してるみたい。でも許してね。
言っている内容はシリアスなのに、きみの口調はどうしてそんなに愉し気なんだい?

吸血が、性行為だとしたら。
たまたま自分の血を吸う吸血鬼が男だと、どういうことになるのだろう?
男に血を吸われた男子は、かなりの確率で同性愛に目覚めるという。
女子の制服を着ながら、息をはずませちゃって・・・
ボクもそんなひとりに、なってしまうのだろうか・・・?
ゴメンね・・・と囁く彼女の幻影に。
ゴメンな・・・と応えてしまっているボク――
彼女とはきっと、長続きするに違いない・・・。

オリのなかのウサギ。

2016年01月26日(Tue) 06:56:32

ライオンとウサギがおなじオリの中に入れられたら、ウサギがライオンに食われるという結果しか考えられないように。
吸血鬼と勤め帰りのサラリーマンが夜の無人駅で出くわしたら、人間が吸血鬼に血を吸い取られるという結果しかあり得ないだろう。
その不運な若いサラリーマンは、無人駅の駅舎のなか、接続の悪いバスを待ちくたびれていた。
当地に赴任して間もなかった彼も、このかいわいで吸血鬼が出没することは知っていたので。
待合室のベンチで向かい合わせに座っている黒衣の老紳士が吸血鬼だということは、直感でわかった。
というよりも。
夜とはいえはた目にも目だつ長々とした黒マントを羽織り、顔色は鉛色で、目つきばかりギラギラ光っているやつを見かけたら、それは普通じゃないと受け取るのが常識というものだろう。
やなやつといっしょになっちゃったな・・・こっちのこと、あまり気にしないでいてくれると助かるんだけどな・・・
どんな種類の人間でも、想いは同じです。
けれども残念なことに、この吸血鬼は喉をカラカラにしているようだった。
なにかを我慢したげに、手にした水筒をしきりにいじりまわして、
ふたを開けては中身を飲み干そうとしている様子。
なかに入っているのは、携行用の生き血?
それをもしかすると、飲み干しちゃったということ?
自分がうら若い乙女なんかじゃなくてよかった・・・などと安堵するのは、早計というものだろう。
男の血なんか味気ないなんて贅沢を言っているゆとりは、相手にもあまりありそうになかった。
救いが少しでもあるとしたら――吸血鬼とおぼしきその男は、脳みその欠落したモンスターみたいなやつではなくて、いちおう理性だの知性だのも備えていそうな老紳士にみえること。
けれども見かけと中身がいっしょだなどと、このさい自分に都合の好すぎることは、考えないほうが身のためらしい。
バスはまだか。早く来ないか――この駅ではいつも、30分以上待たされる。
男は持っていた文庫本を、読みふけっているふりをしたけれど。
やはりどうしても気になるのは、向かいの男。
しかもあちらも、どうやらこちらのほうを、チラチラと窺っている様子。
そしてうっかり、目を合わせてしまっていた!

あんた、この寒いのに薄い靴下穿いているんだねえ。
老紳士は唐突に、そんなことを話しかけてきた。
え?
若い男は思わず、自分の足許に目をやった。
ああ、これですか・・・
彼はちょっと言いにくそうに、言い添える。
僕もちょっぴり、恥ずかしいんですけどね。
透ける靴下なんて穿いているの、周りにはまずいませんでしたから。
でもここに赴任することが決まると、父さんがくれたんですよ。穿いてくといいって。
父さん、いま僕が勤めている会社にいたんです。
というか、不景気で済んでのことで就職しそびれるところを、コネで拾ってもらったんです。
そういえば、父さんも若いころ、こんな靴下穿いていたんですよね。
いまどきこんな靴下穿く人いないし、意味よくわかんなかったんですが、
夏場は涼しいし、うちの事務所の男性はたいがい、こういうの穿いているんですよ。
都会では、よほどの年寄りしか、穿いているの見たことないんですがね・・・
いつになく饒舌になっている自分を訝りながら、それでも会話をしていると恐怖を忘れることに、少し安堵していた。
案外、世間話で切り抜けられるかもしれない――と。
けれども見通しは、甘くはなさそうだった。
老紳士は気の毒そうにいった。
そうそう、バスね、急に運休になっちゃったらしいよ。運転手が急病で、代わりがいないんだってね。
え・・・?
男は凍りついたように、老紳士を視た。

そういうわけで、きみはわしに血を吸われるしかないみたいだ。気の毒だったね。
えっ・・・あの・・・あの・・・そんな・・・えぇと・・・
恐怖で腰が抜けてしまったのか、若い男は身動きもできなかった。
気のせいか、ワイシャツの襟首から入り込む冷気が、スースーと肌寒い。
俺もこいつみたいに、冷たく鉛色の肌にされてしまうのか――
にじり寄ってくる老紳士を目のまえに、若い男はみじろぎもできず、拒否の意思を伝えるためにただ激しくかぶりを振るばかりだった。

首すじからは、やめておこう。
きみは初めてのようだし、暴れると血がワイシャツに撥ねるからね。
わしも、派手なまねは慎みたいんだ――
老紳士はそういいながら、若い男の足許にかがみ込むと、スラックスのすそをつかんで、ゆっくりと引き上げていった。
薄い靴下に透ける脛が、じょじょにあらわになってゆく。
濃紺の薄地のナイロン生地は、駅舎の照明を照り返して、微妙な光沢を放っていた。
男ものにしちゃ、ずいぶん色っぽいんだね。
老紳士は、フフフと笑う。
どういうんですかね・・・仰る通りですね。
若い男はかろうじて理性を保った応えを返しながら、ふと思い出す。
このあたりで吸血鬼に襲われるのは、老若男女区別がないけれど、不思議な共通点があることを。
吸血鬼は好んで、脚に咬みつくという。
襲われたのは、サッカー少年や学校帰りの女子高生。
勤め帰りのOLに、買い物途中の主婦、お通夜帰りのおばあちゃんまで。
ライン入りのサッカーストッキングに、通学用の紺のハイソックス。
肌色やねずみ色、濃紺や黒のストッキング。
だれもが老若男女の区別なく、穿いているストッキングやハイソックスを、咬み破られていたという。
この吸血鬼がその本人だとしたのなら――自分の穿いている靴下は、じゅうぶん条件に合いそうな気がした。
そんなことがきっかけで、狙われちゃったのか?
若い男の思惑などとんじゃくせずに、老紳士は薄い靴下のふくらはぎを目のまえに、舌なめずりをくり返している。
あの――血を吸われると、死んじゃいますよね?そのあと吸血鬼になっちゃうんですか?
ばかばかしい。
老紳士はほくそ笑んだ。
口許から洩れる呼気が、薄いナイロンを通して脛に当たる。
そんなことをしたら、エサはなくなる、競争相手は増える、ろくなことはないではないか――
なるほど。若い男は妙に納得した。
そういえば。
襲われた連中はなにひとつ変わりなく、なにごとも起きなかったような顔をして、いつもの通勤通学の車内で、顔を合わせているではなかったか。
迷惑だろうけど、ちょっと愉しませていただくよ。
上目づかいにこちらを見あげる吸血鬼に、もはや逆らうすべはなかった。
あ・・・よかったらどうぞ――
震える声で、思わずそう呟いてしまうと。
すまないね。
有無を言わさぬ強い語気で老紳士は呟いて、薄手の長靴下のうえから、舌を這わせてきた。
ぬめり・・・ぬめり・・・
生温かい舌を、いやらしく擦りつけられてきて。
薄手のナイロン生地はじわじわと、いびつなたるみを走らせてゆく。

気がつくと、もう片方のスラックスも、すそを引き上げられていた。
先に咬まれたほうの脚は、ずり落ちかけた長靴下に、裂け目をいく筋も、走らせてしまっている。
老紳士が愉しんだ痕だった。
なすりつけられた唾液がまだ生温かく、生地に沁みついている。
もう片方の靴下も、舌触りを愉しむようにして、いたぶり抜かれていった。
血を吸うのと。靴下をいたぶるのと。こいつにとってはどちらも、愉しいのだろう。
そう思わずには、いられなかった。
すまないね。悪いね・・・
老紳士は呟きをくり返しながらも、薄い靴下に舌を這わせ、牙をあてがい、咬みついてくる。
チクチクと刺し込まれてくる尖った異物が、いつの間にか快感を帯びた疼きを滲ませるようになっていた。
痛くないぢゃろ?
上目づかいの老紳士に、知らず知らず頷き返してしまう。
口許には、吸い取られたばかりの自分の血が撥ね散らかされているというのに。
むしろそんな光景さえ、眩しく映る。
ああ、どうぞ。こっちからも・・・
男が吸いやすいように、時折脚の角度を変えて、内ももやふくらはぎを、交互に咬ませてしまったりしている自分を訝りながら、若い男は自分も愉しみはじめてしまっていることを、いやでも自覚した。

そういえば父さんも、この街にいたときには顔色が悪かった――ふと思い出した過去の事実。
ほかに行き場はないのか?そうも訊かれたっけ。
仕方ないわねぇ。母さんが眉を寄せて父さんと顔を見合わせたのは、きっとすべてわかっていたからだろう。
この男はかつて、父さんの血を吸ったんだろうか?案外母さんも、吸われていたんだろうか?
仮にそうだったとしても、口の堅そうな老紳士が過去の交友関係を軽々と明かすようには、思えなかった。

悪いね。靴下チリチリにしてしまって。
老紳士は長靴下をみるかげもなく咬み破ってしまったことにはわびを言ったけど。
彼の血を吸い取ったことには、謝罪のかけらもみせなかった。

どうやら、オリのなかのウサギにはならずに済むらしい。
会話の通じる相手。共存できる相手。
都会の冷酷な上司や同僚たちよりも、どれだけましか、知れやしない。
父さんもそう思ったから、この土地に長くいたんだ。
僕が年頃になるまえに都会に戻ったのは、希望してそうしたんじゃない。
たぶん――僕に選択の余地を残したんだろう。
真人間として都会で生きるか。自分と同じように、吸血鬼の奴隷になり下がるのか。
でも彼はもう、いまの気持ちを恥ずかしい選択だとは感じていない。
奴隷じゃなくて――友だちってことでも、いいですか?
いつもの爽やかな目つきに戻って、白い歯をみせる青年に。
吸血鬼はゆっくりと、頷いている。
そのうち、きみの父さんや母さんも、連れてくるといい。
そうですね。それ、いいかもですね・・・
若い男は無邪気に、頷き返していた。
セックス経験のある女性とは、性交渉まで遂げてしまう――
そんな話も、わかっているはずなのに。


あとがき
長いわりに色気のない話で、ごめんなさい。(^^ゞ

世代は移る。

2016年01月24日(Sun) 09:55:17

子供のころに血を吸われて、吸血鬼になった。
父さんも母さんも血を吸わせてくれたけど――それだけではまだ、もの足りなかった。
だってその年ごろは、食べ盛りなんだから。
クラスの子を襲うなら、男の子だけにしなさいね。
いつも僕に血を吸われるたびに、スカートをめくられパンツまで脱がされてしまう母さんは。
恨みを買わないように――と、いつもそうつけ加えていた。
父さんのことは、だいじょうぶだから。相手が息子なら、まだ耐えられるって言っていたから。
破けたストッキングを脱ぎ捨てて、くずかごにむぞうさに放り込むと、あとから取り出して、裂け目を確かめて愉しんでいた僕は、
はやく中学に上がって、周りの女の子たちが黒のストッキングを履くのを、楽しみにしていたけれど。
それはあっさりと、おあずけになった。
その代わり。
クラスの男子たちはだれもが親から言い聞かされていて、協力的だった。

男の子は、だれもが半ズボンにハイソックスを履いていた時代。
だからといってべつに、女っぽいやつなんかいなかった。
だれもがいさぎよく、ハイソックスの脚を差し出して。
きょうはお前に咬まれると思って、履いてきたんだ・・・って、いいながら。
赤のラインが2本入った、ねずみ色のやつとか。
白地にひし形もようの入った、ちょっとおしゃれなやつとか。
なかにはストッキングみたいにスケスケの、真っ白なのを履いているやつもいた。
僕に咬まれるまえには、だらしなくたるませて履いていたハイソックスを、
だれもがきりっと引き伸ばして、見映えがするようにって、教室や廊下やベンチのうえにうつ伏せに寝そべって。
しなやかなナイロン生地のうえから、よだれの浮いた唇を吸いつけて、
その唇の両端からむき出した牙を、ズブズブと埋め込んでいった。

この街では、うんと若いうちに、結婚相手を親が決める。
友だちのなん人かは、そうして決められた彼女を連れて、おずおずと僕の前にやって来る。
女子の履いているストッキング、関心あるんだろ?俺の彼女でよかったら・・・
だれもがそういって、未来の花嫁を僕と二人きりに置き去りにしてくれた。
さいしょはむっつりと押し黙っていた彼女は、
上目づかいで怖々と僕のことを窺って。
足許にすべらせる唇を、うろたえながら避けようとして。
いやらしいよだれの浮いたべろを両脚になすりつけられてしまうころには、もう観念して目をつむって。
しまいには、ブチブチ、ぱりぱりと音を立てて、薄手のストッキングを見る影もなく咬み破られていく。

大人になったころ。
僕にはなかなかお嫁さんは来てくれなかったけど。
子供だけはもう、なん人もできていて。
その子たちが大きくなると、
男の子はサッカーストッキングを履いて、
女の子は学校に履いていく紺のハイソックスを脚に通して、
息をはずませて、僕の家へとやって来る。
父さんや母さんには、黙っていてね。
そういいながら、善意と共に差し出される脚たちに、
僕は淫らな接吻を、くり返してゆく。

やだ。近親相姦になっちゃう。
僕の腕のなかで、なん人の女の子がそういって、口を尖らせたことだろう。
はだけたブラウスから覗く、ピンク色をした乳首を。
くしゃくしゃにたくしあげられた制服のスカートのすき間から覗く、真っ白な太ももを。
息をつめて見守る、婚約者の男の子たち。
じつは半分血のつながった兄妹だと、どこまで気づいているのだろう?
僕はそんな男の子たちのまえ、我が物顔で腰を使って。
少女たちはされるがままに、激しい動きに応えてくれて。
男の子たちはひたすら股間を抑えて、場の雰囲気を愉しんでしまっている――

吸血接待業。 2 若い既婚のビジネスマン

2015年12月07日(Mon) 07:53:42

「ストッキング地のハイソックスをたしなむ、既婚の若いビジネスマンの方。
(40歳位まで)
 お気が合えば奥様を紹介いただける方なら、なお可」
そんなオーダーが斡旋者からパスされてきたのは、金曜の夜のことだった。
早めに帰宅していたわたしはサッとシャワーを浴びると、妻に告げた。
「アルバイト行ってくる。帰りは遅いか朝になるから、寝てていいからね」
妻が感情を消した顔で頷くのを横目に。
ふだん穿きのスラックスをたくし上げると、黒の薄手のハイソックスを、するすると脚に通していった。

やあ、いらっしゃい。
ホテルのロビーでわたしを出迎えた吸血鬼は、思ったよりも若い感じがした。
わたしの表情を読んだのか、男はきまり悪そうに言った。
切羽詰まってしまってね。
通りがかりのメイドを一人、襲ってしまった。
まあここでは、そんなアクシデントはもみ消されることになっているようだけど。
吸血鬼の定宿として知られる、このホテル。
外見はふつうのホテルで、一般の客ももちろん受け入れるのだが、
吸血プレイのための場として、特定の客室を持っていた。
若いメイドの血と、もはやみすぼらしい中年男になり果てたわたしの血とが、彼のなかでいっしょに織り交ざるというのか。
あまり、美味しくありませんよ。
わたしは苦笑しながら、言った。「口直しが必要になるかも」と。
吸血鬼は笑って、「ご謙遜を」と、言ってくれた。

ベッドに仰向けになったわたしは、腕に献血チューブを挿し込まれる代わりに、首すじに男の唇を吸いつけられていった。
チクリ、と刺し込まれた牙が容赦なく皮膚の奥を抉り、あふれ出てくる血潮を舌をふるいつけて啜り取ってゆく。
意外なくらい熱っぽく、男はわたしの首すじにからみついた。
わたしたちは愛人どうしのように、狭いベッドのうえに身をひしめき合わせながら、熱っぽく吸い、吸われつづける。
薄い靴下、穿いてきてくれたんですね。
男がそうささやくと、わたしは「御覧になりますか」と応じ、スラックスを引き上げた。
照明の下、肌の透ける脛が妖しい光沢に包まれて、ごつごつとした筋肉の隆起を浮き彫りにした。
ククク。
男は獣じみた含み笑いを、そのままふくらはぎへと圧しつけてくる。
あ・・・
わたしの声に応じずに、男は、薄いナイロン生地の舌触りを愉しむよう、にゅるにゅると唇を這わせはじめる。
しばらくの間。
わたしはうつ伏せになり、ストッキング地の靴下の舌触りを、男にサービスし続けた。
やがて牙が圧しつけられ、熱烈な口づけをしながら、咬み入れてくる。
あ・・・
わたしの声色もまた、熱を帯びてきた。
多重債務者の日常を隠すため、血液提供者として登録されて半月、いつか血を吸われることに快感を覚えるようになっている。
本来は苦痛であるはずのことが、苦痛を和らげる本能によって快感に変換される――きっとそういうことなのだろう。
咬み破られた薄い靴下に、生温かい血のりがしみ込むのを感じながら、わたしはすすんで献血に応じていった・・・

今度は、女もののストッキングを穿いてきてあげましょうか?
もう一度逢いたいと感じた吸血鬼は、彼が初めてだった。
面白そうですね。ぜひお願いしましょう。
男は快諾してくれた。
熱っぽい吸血プレイは、本心からのものだったらしい。
打ち解けた笑いが、お互いの頬にあった。
胸の奥がズキリ!となるようなことを言われたのは、そのすぐ後だった。
奥さんのストッキングも、ぜひこんなふうにしてみたいものですね。
男はわたしから吸い取った血潮を、まだ口許にテカらせていた。
妻の血が、この男のあごや口許を、こんなふうに彩る・・・
とっさに湧いた想像は、ひどくリアルだった。
「口直しが必要になるかも」
咬まれる直前、自分で口走った言葉を、わたしはありありと、思い出した。
「口直しなんかじゃ、決してありませんよ」
気遣う男に笑顔を向けて、わたしは携帯を手に取った。
「友里江?ちょっと出てこれないか?すこしおめかししてさ。着替えを一着、あとストッキングの穿き替えも、持っておいで」

吸血鬼の親心。

2015年12月01日(Tue) 08:04:11

すべての財産を失った桐原は、死を覚悟した。
それは、家族もろともの死であった。
けれどもそのとき、見知らぬ男からの電話が、すべてを変えた。
受話器の向こうから聞こえる、正体不明の声は、とある郊外の村に来るよう、桐原を誘っていた。

桐原は早速、声の主の求めに応じ、息子を伴って村に向かった。
もはやそうするよりほか、道はなかったからである。
どうして息子がいることを知っているのかなどと、考える余裕もなかったのである。
彼とその家族は、予期せぬ歓待を受けた。
相手は、電話の声の主だった。
しわがれた声色通りの年配の男は意外なくらいに物柔らかな紳士だった。
その背後には、ひとりの少年がいた。
引っ込み思案な暗い瞳が、同年代である桐原の息子に注がれた。
この子は病気だから、普通の食事ができないのだと、電話の主の老紳士は説明した。

久しぶりに、腹いっぱいの食事だった。
桐原の息子も嬉しそうに、ステーキをほおばった。
老紳士とその息子らしい少年とは、押し黙って二人の様子をうかがっていた。
息子が嬉しそうにごちそうをほおばっているのは、親として嬉しい限りです。
桐原はそういって、礼を述べた。
老紳士は、まったく同意という顔つきだった。
しかし、その直後だった。
様子が一変したのは。

気がつくと、老紳士は桐原のことを、羽交い絞めに抱きすくめていた。
桐原の首のつけ根には、深々と、老紳士の剥きだした犬歯が、食い込んでいた。
かすれた視界の向こう、息子もまた、自分と同年代の少年に襲われていた。
真っ白な半ズボンの下から覗いた太ももが、みるみる血色を喪ってゆく。
ひざ小僧から力が抜け、息子は硬い床の上に姿勢を崩した。

御覧なされ。
うちの息子・・・あんたのとこの息子の生き血を、それは美味しそうに飲んでいるじゃろう?
息子が嬉しそうにごちそうにありついているのは、親として悦ばしいかぎりなのじゃよ。
老人の囁きに、桐原はなにかに屈したように、頷き返すだけだった。

な?後悔はないじゃろう?
そういう老人のまえ、ふたりの少年は、血を吸うものと吸われるものと、正反対の立場にいながらも、
笑い声を交し合い、首すじを吸い、吸われていった。
血を吸うものばかりではなく、
血を吸われるものさえも、歓びに目覚めていったのだ。
そんな息子を咎める資格など、桐原にはもうなかった。
老人に完全に堕とされた彼もまた、自身の生き血を、惜しげもなく振る舞い始めていたのだから。

ふたりの少年は、じゃれ合い、転げ合って、血を吸い、吸い取られてゆく。
今度は、奥さんの番じゃな。
夜にお連れなされ。息子さんもごいっしょに。
父子ふたりがかりで妻を、母親を吸われる歓びは・・・もう察しが付くじゃろう・・・?
男の言いぐさに、桐原はまたも、頷いてしまっている。
明日をも知れぬ生活だったのが、いまは安住の地を見出した想いだった。

甥っ子の生き血。

2015年11月19日(Thu) 08:09:28

やだっ!やだっ!だめだってばっ!
省吾少年は必死になって抗い、首すじを求めてくる吸血鬼相手に、抗っていた。
相手は叔父の誠二。四十を過ぎてまだ独身だった。
人が良くて物知りな叔父に省吾はなついていたが、母の峰子は弟の性癖をよく心得ていたから、
「誠二叔父さんは吸血鬼だから、気をつけなきゃダメよ」と、よく息子をたしなめていた。
その母親の警告がいまさらながらのように、省吾の耳によみがえる。
でもどうやら、手遅れのようだった。
「血を吸わないでっ!血を吸われるなんて嫌だよ・・・っ」
そんな省吾の哀願に、誠二はふと手を停めて、いった。
「わしは生きつづけては、いけないかね?」

交し合わされる目と目に、省吾は悟った。
そうだ、叔父さんは血を吸って生きているんだ。
思わず力の抜けた腕をすり抜けて、叔父が首すじに唇を吸いつけるのを、
省吾は黙って耐えた。

ちゅう―――っ・・・
ひさびさにありついた活きの良い血にむせ返りながら、誠二は甥の身体を抑えつづけた。
観念し切って目を瞑った省吾には、傷口を這う叔父の唇が、ひどくくすぐったく感じられた。
悪いね、少し愉しませてもらうよ。
そういう叔父が、ハイソックスを履いたふくらはぎを求めていると自覚しながら、省吾はうなずくともなくうなずいていた。
真っ白なハイソックスに赤黒い血を滲ませながら、足許をくすぐる吸血の感覚に、省吾は笑みをこらえかね、白い歯を見せている。
セクシャルにからみついてくる叔父を愉しませようと、軽く抗ったり悲鳴をあげたりして愛咬をくり返し受け容れながら、
まるで永年の愛人のように従順に献血に応じはじめている自分自身を、省吾少年は誇らしく感じ始めていた。

半ズボンの下の礼装をしっかりと凌辱されつくしてしまうと、省吾はいった。
「次はいつ?」

翌日。
省吾は再び叔父の家を訪れていた。
きょうの半ズボンはグレーで、ハイソックスも同じ色。
「母さんが、ハイソックス買い置きしておいてくれるってさ」
わざとぶっきら棒にそういうと、いきなりじゅうたんの上に腹ばいになっていた。
太ももやふくらはぎにあてられる熱い呼気が、化け猫の息遣いみたいに生々しくて、省吾少年は肩をすくめた――

きみの筋肉がもっとたくましくなったら、こんどはいまのきみみたいに肌の柔らかい女の子を連れてきておくれ。
そんな叔父の言葉にうなずきながら、重ね合わされてくる唇を、省吾少年は避けようとはしなかった。

おそろいのサッカーストッキング

2015年11月10日(Tue) 06:42:32

知ってますか?須藤先生ってホモらしいですよ。あっ、両刀使いか♪
いきなりそんなことを話しかけてきたのは、息子のユウタの友達のお父さん。
彼の息子のタカユキくんは、ユウタと同じサッカーのクラブチームに所属している。
息子たちふたりは、おそろいの白のユニフォームに、白地に黒ラインのサッカーストッキング。
日焼けした太ももの下を覆う真新しい白の長靴下が、親の目にも眩しかった。

さいしょはね、チームの子を狙うらしいです。もちろん同意でね。
そのあとは、お父さんとお母さん。
モノにしちゃったお母さんは、目印に、チームの子と同じサッカーストッキングを履くらしいんです。
そういえば。
タカユキくんのお母さんは、デニムのショートパンツの下から覗く格好の良い脚に、
息子たちと同じ、白地に黒ラインのサッカーストッキングを履いている。
そして、いっしょに並んで歩いているタカユキくんのお父さんも、同じサッカーストッキングを履いていた。
お父さんはそこまでいうと、照れくさそうに笑った。

その日の試合は、圧勝だった。
決勝点を入れて有頂天だったユウタは、先生にお祝いをしてもらうんだと言って、
親たちと別れてみんなといっしょにグラウンドを去っていった。
結局、その日に独り住まいの先生の家まで行ったのは、ユウタ一人だったらしい。

つぎの週の練習日。
家族で家を出るときに。
いつもキビキビと身支度の早いはずの妻が、いちばんあとから玄関を出た。
なぜか照れくさそうにしている妻の足許は、白地に黒ラインのサッカーストッキング。
たまにはいいでしょ?と見せびらかす脚に。
なにもかも知っているらしいユウタは、「母さん似合うよ♪」といって、笑った。
わたしもなぜか潔く白い歯をみせて、妻のことをからかっていた。「たまにはいいじゃないか」
意味深な言葉の意味を理解したらしい妻は、いつもの裏表のない笑顔にやっと戻って、「そうね」とだけ、いった。
練習のある平日に、彼女はいつも穿いていた肌色のパンストを、先生の前で脱ぎ捨ててしまったらしい。

そのつぎの週の練習日。
家族三人で、おそろいのサッカーストッキング。
夕べ強引にこすり合わされた股間が、まだひりひりと疼いていた。
たしかに――あの一物でゴールされたら、妻も息子も、ひとたまりもなかっただろう。
「きょうもしまっていくぞ!」
精力絶倫な監督さんの明るいどら声が、きょうもグラウンドに響き渡った。

未亡人、堕ちる。

2015年09月11日(Fri) 05:18:43

だめ!だめ!だめ!それだけはダメ!
ほかのことは何でもいうことをききますけれど、それだけはダメ!

男に迫られた母さんは、そんなふうに頑強に、最後の一線を守り抜いたという。
そう、ほかのことは何でも、いうことをきいちゃったんだけれど。

首すじをガブリとやられるのも。
ワンピースのわき腹に、かぶりつかれるのも。
新調したばかりのよそ行きの服に、吸い取られた血潮をボトボトとしたたらされるのも。
スカートを脱がされ、戦利品としてせしめられてしまうのも。
ふくらはぎを咬まれて、穿いているストッキングをチリチリに咬み破らせてしまうのも。

ストッキングを咬み破る――という行為は、
この街に棲みつく吸血鬼たちの習性からすると、

隷属的に屈従する。

という意思表示をしたのとおなじことになるはずだったのに。
そこまでのことを許しながらも。
母さんは、セックスだけはどうしても、許さなかったのだ。

男が母さんの意思を尊重して、それ以上迫ることを思いとどまったとき。
母さんは唯一、ディープ・キッスだけは、許してしまったのだけれど。
それは男に対する信頼の証し・・・だったらしい。
下着1枚に剥かれながら、母さんは男と会話を交わし、
男は着衣を剥ぎ取られた母さんのことを侮辱することもなく遇していた。

少しずつ。
男と母さんの距離が縮まったのは。
きっとそんな、ひとすくいの配慮からだったと、いまでも思う。

だんだんと。
母さんは大胆になって、許容範囲を拡げていった。
ディープ・キッスに加えて、ブラジャーを取り去ることも。
取り去られたブラジャーから覗いた乳首を、唇に含まれることも。
スカートの奥に、濡れた精液をまき散らされて、スカートの裏地を汚してしまうことも。
そして、フェラチオまでも。

真っ昼間、ボクたちが下校してくると、母さんは男を夫婦の寝室に招き入れていて、
男の一物を根元まで口に含んだ母さんの横顔に、
ボクは思わずちく生!と呟いて若菜に笑われて、
そのくせ、貞淑な主婦が堕ちてゆくのを目の当たりに、ズキズキとした昂ぶりに目覚めていった。

そんなころだった。
若菜が父さんを家にあげて、首すじを吸わせるようになったのは。

真っ先に気づいたのは、母さんだった。
女親とは、鋭いもの。
ふたりが逢瀬を愉しんでいる真っ最中に、娘の勉強部屋に乗り込んでいって。
「まあっ!?」
娘の相手がまさかかつての夫だったとは。夢にも思わなかったみたいだった。
それきり小娘みたいにもじもじとして、きまり悪そうに引き下がって。
父さんと若菜とを二人きりにして立ち去ってしまうという不覚をおかしたのは。
きっと――父さんがいながら男との関係を深めつつあることに、強い後ろめたさを感じてしまったからに違いなかった。
ちょうどその翌日のことだった。
母さんは街なかの、ホテルに誘われていた。

家を数歩出て、母さんは真新しいストッキングを穿いた脚を、ぴたりと止めた。
そしてくるりと回れ右をすると、まっすぐ家に戻ってきた。
若菜と父さんがいる部屋のドアをほとほとと叩いて、昼間からくんずほぐれつしているのを、咎めようともしないで――
わたし、あのかたとお付き合いを始めたんです。
父さんにむかって、そう”宣言”したのだった。

そう?
父さんは相も変わらず、あっけらかんと他人事みたいだった。
あのひと、母さんを大事にしてくれている?
エエ、だいじにしてくれているわ――あなたの次くらいに。
母さんがどぎまぎしながらも、そう答えると。
そう。
父さんはこっくりと、頷いていた。
だったらよかった。気を付けて、いってらっしゃい。
友達と遊びに出かける妻をふつうに送り出す、夫の態度だった。
行っても・・・いいの・・・?
むしろ躊躇する母さんの、背中を押すようにして。
母さんだって女なんだから。たまには好きな人のために、大胆にならなきゃ。
父さんは悪戯っぽく笑って、母さんの脇腹を小突いている。
ちょうど初めて咬まれた日にかぶりつかれたあたりを突かれて、母さんはちょっとなまめかしくうめくと、
すぐにさばさばとした、いつもの母さんらしい顔つきに戻ってゆく。
じゃあ行くわ。若菜をよろしくね。
ああ、彼によろしく。
ふふふ。
ふたりは声を交えてちいさく笑い、開かれていたドアがバタンと閉ざされてゆく。

キリッとしたタイトスカートに包んだ貞操を、これから捨てにいく母さんのことを。
ボクは玄関まで、送っていった。
浮気に出かける母さんを、こんなふうにサバサバと送り出すことができるのは。
父さんと母さんのおかげなんだと思いながら。
ボクは手にしたものを、母さんに差し出している。
ボクが手にしていたのは、封の切っていないパッケージ入りのストッキング。
どうせ破かれちゃうんでしょ?穿きかえ用に。
生意気ねぇ。
母さんはそんなふうに苦笑しながら、それでもボクからの浮気成就の祝福のしるしを、ハンドバックにしまい込んでゆく。

門がガチャリと閉ざされると。
ボクの背中を小指で突くやつがいた。
イタズラっぽく笑っている、若菜だった。
若菜の後ろには、父さんが。その傍らには、カツヒロが。すこし離れて、優衣さんが。
愉し気にフフフ・・・と、笑いあっている。
あと、尾(つ)けちゃお。
そういって白い歯をみせる若菜に、みんな同意らしかった。
母さんの貞操喪失、みんなで愉しまなくちゃな。
父さんはあっけらかんとしていて、どこまでも他人事だった。

父さんのことは、忘れてほしくはないけれど・・・

2015年09月11日(Fri) 04:38:11

母さんの血を、このひとに吸わせてあげようよ。
虚ろな声で、若菜がいった。
いつものように、通学用の白ブラウスの肩先を、血のりでべっとりと濡らしながら。

血を与えるのは、ボクたち兄妹にとって、日課になりかけていた。
日課にしちゃうと、血がなくなっちゃうよ。
そうカツヒロにからかわれては、相手役を代わってもらったり。
木戸原くん、貧血だよね?
そう気遣う優衣が、男とボクの間に立って、淑やかにお辞儀をすることもあったけれど。
男にとって本命は、どうやらボクたちの血のようだった。
口に合うんだ。
男は淡々と、そういったけれど。
ボクはしらっとして、横目で男を睨んでいた。
ほんとうは、母さんが目当てだったんだろ?父さんの血を吸ってたさいしょの頃から・・・
図星。
男はニヤリと、昏(くら)く嗤った。

母さんの血を、吸わせてあげようよ。
あたしたちの血が口に合うんだもん。父さんの血だって、吸っていたんだもん。
きっと母さんの血も、気に入ると思うなあ。
若菜はうわ言のように、そんなことをいう。
自分の母親を吸血鬼に襲わせ、血を吸わせる。
そんなことをしていいのか?
そんなことにこだわるのは、ボクが息子で相手が女親のことだから?
でも、父さんが血を吸い取られちゃったのは、小気味よかったなあ。
若菜は時折、とんでもないことを口にする。

きみはどうなんだい?
カツヒロの問いかけに、ボクは本音をするりと洩らした。
父さんのことは、忘れてほしくはないけれど・・・母さんが愉しいのなら、それもアリかな・・・って。
ボクたちは知っていた。
セックス経験のある女の血を吸う場合、ほとんど例外なく犯されてしまうのだと。


かんたんなことだった。
家に上げてしまえばよかった。
もともと、ボクの部屋も若菜の部屋も、すでに男の根城と化していた。
ボクたち4人は、息を詰めて隣の部屋から、様子を窺う。
白地に黒の水玉もようのワンピースを着た母さんが、男に迫られていた。
気丈にも細腕をふるって、男を拒もうとしたけれど。
とうとう抱きすくめられちゃって、うなじを咬まれちゃって・・・
眉を顰めて、瞼をキュッと瞑って、悔しそうに歯を食いしばって・・・
生き血をチュウチュウと、吸い取られていった。
父さんのためだけの、貞淑な妻でいようとする努力を、男は完璧なまでにねじ伏せてしまっていた。

おかしいな。
そろいもそろって、あるシーンを期待していたボクたちは。
ちょっとだけ、顔を見合わせた。
母さんは男に、しきりとなにかを懇願している。
男はそんな母さんの哀願を受け流しては、
首すじをがぶりと咬んだり、
ワンピースのうえからわき腹に食いついたり(血がきれいに撥ねて綺麗だった)、
ディープ・キッスを奪ったり、
肌色のストッキングのうえから、ふくらはぎを咬んだり、
しまいにワンピースをはぎ取って戦利品にしてしまって、
母さんのことを、スリップ1枚にしてしまったり。
ありとあらゆることを、し尽くしたのに。
とうとう母さんのことを、犯そうとはしなかったのだ。
さいごには母さんの手を取って、手の甲に接吻までして、サッと身をひるがえして、立ち去ってゆく。

その場に取り残された母さんは、血の付いたスリップを屑籠に放り込んだり、
あたりに飛び散った血のりを丹念にぬぐい取ったり、
レイプされたあとみたいにほつれた髪の毛を、しきりに気にかけたりしていたり、
長いこと、身づくろいに余念がなかった。
どうやら男は柄にもなく、父さんを忘れたくないという母さんの気持ちを尊重して、犯すのはあきらめたらしかった。

つぎの日曜日。
母さんがウキウキとよそ行きのスーツに装って、出かけてゆくのを、
ボクたち兄妹は、素知らぬ顔をして見送った。
母さんのいなくなった部屋の中。
若菜は屑籠から、風の着られたストッキングのパッケージを取り出して、
新しいストッキングおろしたのね?って、白い歯をみせていた。
初めて襲われたあの日には、母さんがシャワーを浴びているすきに、やはり屑籠をあさって、
あのひとにプレゼントしようよ♪って、血の付いたスリップをねこばばしていたっけ。

あの晩母さんを犯さなかったことで、男は母さんから一定の信頼を勝ち得たらしい。
それからも、ふたりの清い?交際がつづいた。
もちろん、彼のために装った衣装は、いつも見る影もなくはぎ取られ、紅いまだらもように染められてしまっていたけれど。
母さんは惜しげもなく、父さんから買ってもらった洋服を、男の慰み物に供していった。


えっ???
息が止まるかと思うくらい、びっくりしたのは。
そこに立っていたのが、父さんだったから。
生き返ったの?
ああ、そういうことみたいだな。
父さんは以前と同じ、すっとぼけた口調で、ひとごとみたいにのんきな感じでそう言った。
へえー、父さん血を吸えるの?
若菜までもが興味津々に、父親にすり寄った。
もともとお父さん子だった若菜は、父さんが蘇生したのは大歓迎だったらしい。
自分たちが母さんを吸血鬼に襲わせたことなんか、おくびにも出さずに、お帰りなさい♪なんて、嬉しがっちゃっている。
うーん、血は吸えるみたいだけど、まだ吸ったことがないや。
父さんは、うら若い匂いをぷんぷんさせて迫ってくる娘に、辟易しちゃっていたけれど。
若菜はいっこうに、かまわないらしかった。
処女の生き血だよ?父さんにも吸わせてあげようか?なんて。
カツヒロが聞いたら卒倒しそうなことまで、こともなげに言いだしている。

父さん、あの、ボク・・・
やっぱり親の前では、つい正直になってしまう。
バカねえ・・・と顔をしかめる若菜のことは、横っ面で受け流して。
ボクはくちごもりながら、母さんと、あいつとが・・・って、言いかけていた。

父さんの反応は、意外なくらいさばさばしていた。
ああ、わかってるわかってる。
母さんの血をあいつに吸わせるために、キューピッド役を買って出たっていうんだろう?やるじゃないか。
ボクも若菜も、目を丸くして父さんを見た。

たぶんね、私が復活したのは、そのせいなんだよ。
あのままこちらに戻ってくることはできないはずが、
自分の女房が貞操の危機を迎えたってんで、舞い上がっちゃったんだろうな。
でも私は、もう少しおとなしくしていることにするよ。
母さん、あいつにどこまで本気になるかな?
さいごのひと言の呟きは、イタズラっぽく声を弾ませていた。


折々出没する父さんの影にも気づかずに。
母さんは男と、みるみる距離を縮めていった。
映画に行き、ドライブに誘われ、夕食もいっしょに出かけて行った。
そう、男はふつうの人間のように飲み食いも、するのだった。
父さんは、そんな母さんの変化を、賞賛すべき忍耐力で見守っていた。
むしろ、二人の交際が深まっていくのを、悦んでいるふしさえ感じた。
そんなことで、いいのかな・・・息子のボクのほうが、ちょっと焦っていた。
母さんを襲わせて、男に血を吸わせてしまった張本人のくせに。

ねえ、母さん、あのひととお付き合いをしてもいいかしら?
母さんがウキウキと、ボクにそんなことを口走ったのは、それから半月と経たないころだった。
再婚・・・するの?
おそるおそる訊くボクに、母さんは「まさか」と笑い、お付き合いをするだけよ、とこたえた。
わたしの夫は、父さんだけよ。父さんだけは別格なのよ。
ああ・・・そのひと言があるから。その気持ちがあるから。父さんは母さんのことを、許せるんだ。
初めて納得のいったボクは、母さんの好きにしていいよ、とこたえ、それから心を込めてつけ加えた。
「おめでとう」。