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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

少年の目覚め 少女の気づき (まだ残っていました、冴島物語・・・)

2024年04月08日(Mon) 00:40:50

はじめに
さがしてみたら、まだ残っていました。冴島物語。
ふたりの人妻の行く末にはじまって、少年と少女の初体験で幕引きです。
寝取られ、プチ女装、同性愛。長いだけにいろんな要素を詰め込んであります。
自分がでぶだから血を吸うのに都合が良いんだろう――と思い込んでいる由香里さんには、少しばかりの救いがあります。


若い血をしとどに撥ねかせて。
ボクは身体を傾けながら、首すじを吸われつづけていた。
半ズボンの下に履いていた黒と青のライン入りのハイソックスは、吸い取られていった血に濡れて、弛んでずり落ちていた。
あちこちとしたたかに咬まれつづけたボクの身体は、もう痛みの感覚がまるきり麻痺してしまっていて、
刺し入れられてくる牙を無感覚に受け容れては、いいように食い入れられていった。
ゴクゴクと喉を鳴らして生き血を飲まれてゆくのが、もはや苦痛でも屈辱でもなくなっていて、
まだ十代の柔らかい皮膚を小気味よく喰い裂く牙の挿入さえもが、
まるでペニスを受け容れる女の子が感じるような充足感をもたらしてくる。
首すじをジワジワ侵してくる唇は、しつようなまでにあちこちと這いまわって、
滲み出る血の量がもの足りなくなると、牙をむき出してじっくりと食いついてくるのだった。
「早かったんだね・・・」
頭の上に降ってきた囁きの主は、由香里さんだった。
学校帰りの制服姿を惜しげもなく、飢えた吸血鬼の好色な視線にさらしている。
「ハイソックス、おそろいだね」
由香里さんは、クスッと笑った。
黒と青の二本のラインが、太目のリブを鮮やかに横切っている。
血に濡れて皺くちゃにずり降ろされたボクのハイソックスと違って、
由香里さんのそれは真新しくツヤツヤとしていて、一見しておろしたばかりのものとわかった。
若々しい足許にはハイソックスがよく似合う――そううそぶく吸血鬼のために、
わざわざ新しいハイソックスを脚に通して下校してくるところに、由香里さんの生真面目さが表れていた。
ひざ小僧のすぐ下まで行儀よく引き伸ばされたハイソックスの脛に、赤黒い舌がなすりつけられる。
規則正しく伸びるリブの上を、赤黒く爛れた舌がニュルニュルと這いまわり、いびつによじれさせていった。
几帳面で潔癖な由香里さんにとって、そんなあしらいを受けるのはきっと苦痛なはずなのに。
文句ひとついわずに、ハイソックスの足許を好きなだけいたぶり抜かせてしまっていた。
よほど彼のことが好きなんだな――と、ボクは思った。
もっともボクのほうも、負けず劣らず彼のことが好きだったけど。
そうでなければ、制服姿を血浸しにするほど血液を分けるようなことはしなかっただろうし、
将来を誓った由香里さんの純潔を汚す権利を認めるはずもなかったのだから。

吸血鬼は、由香里さんの身体を存分にいたぶった。
首すじはチロチロと舌を這わせて露骨に舐め味わっていたし、
ブラウスごしに胸のふくらみに添えられた掌にも、好色な力が込められていた。
由香里さんはもう彼の所有物(もの)だとわかっていても、それでもグッとくる眺めだった。
真っ白なブラウスのえり首には、バラ色のしずくが微かに撥ねて
首すじに絡みついた血のしずくが、ブラジャーの奥にまで這い込んでいた。
肉づきのよいふくらはぎには、もっと豪快?に食いつかれていた。
力強くガブリとやられたときに、由香里さんはさすがにちょっと顔をしかめていたけれど、
ボクと同じように、痛みには鈍感になってしまったものか、声をあげることはなかった。
そして、男が自分の血でゴクゴクと喉を鳴らすのを、じっと静かに聞き入っていた。
ハイソックスを皺くちゃにしながらせわしなく蠢くヒルのような唇の動きを見おろす視線は熱っぽく、
彼女が真心こめて自分の血を捧げているのが、手に取るようにわかった。
「ソウくんだって、そうじゃない。この人に血をあげているときの態度、心がこもっていると思う」
由香里さんに、少しばかり嫉妬交じりにそう言われるのが、くすぐったいくらい嬉しかった。

「私、でぶっちょだから、血がいっぱい獲れるから目当てにされてるんだよ」
由香里さんは口癖のように、ボクにそう囁く。
それは、彼が由香里さんにご執心なのをボクが気にする――と思っているからかもしれないし、
しんそこ自分自身にコンプレックスを感じているからかもしれなかった。
きっとその、両方なのに違いない。
もしも由香里さんが、部活を切り上げてまで早めに下校して彼に会いに来ているのに、
意地汚く辱め抜かれるとわかっていながら、彼を楽しませるためにわざわざ真新しいハイソックスを脚に通してくるほど気にかけているのに、
もしも彼のほうが由香里さんを、たんなる栄養源だと思っているとしたら、とてもサビシイ。
というか、せっかく由香里さんのことを捧げようとしたボクの値打ちまで、低くなってしまいそうだった。
じっさい彼は、どういうつもりなんだろう?

由香里さんのお母さんが抱かれるところも、ボクは視たことがある。
冴島の小父さんが、自分の妻が襲われるところをボクにみせてやろうと、こっそり招んでくれたのだ。
ふたりは影絵のようにひっそりと向かい合うと、やがてどちらからともなく身を寄せ合って、恋人同士のように抱き合った。
服の上からの愛撫にも気持ちがこもっていたし、心の通い合った口づけを交わし合っていた。
由香里さんのお母さんはその夜のために真新しいストッキングを脚に通していったという。
楚々とした足許を覆うストッキングをあからさまにいたぶられ、ビリビリと咬み破かてしまうのを、地味な顔だちに淡い羞じらいを泛べながら見つめていた。
とても大人しくて控えめなご婦人だった。
たしかに、由香里さんのときよりも、うちの母さんのときよりも、小父さんの態度は情感がこもっていて、このひとが本命なんだと思わないわけにはいかなかった。
でも、どうやらそれは違うようだった。
「私なんか序の口なのよ」
由香里さんのお母さんはひっそりと笑って、ボクにそっと告げた。
1人の吸血鬼を養うのには、どう少なくとも7人の人間が要る。
それも若い健常者で7人――というから、
冴島家の3人、うちの4人でたしかに7人ではあるけれど、実際にはもっと「スペア」を用意しているらしい。
「私が知っているだけで、他に3軒仲良しさんがいるんだよ」
由香里さんのお母さんはそういって笑った。
嫉妬しているようにも、悲しんでいるようにも見えなかった。
きっと、達観しているのだろう。
「うちのお父さんがあの人と私のことを許してくれたときから、もうわがままは言わないことにしたの」
地味な目鼻立ちによぎった笑みは、意外なくらいに華やかだった。
「あなた、うちの由香里をよろしくね。
 あの子は自分が美人じゃない、太ってるって気にしているの。
 気にすることで自分が成長するのなら、それはそれで良いことだけど、
 それがなにかをあきらめたり、尻込みしたりする結果になってはいけないと思うの。
 貴方には由香里の、たったひとりの男のひとになって欲しいと思います」
女としてのお願いです――くらいの目色で、お母さんはボクにそう告げた。

「血を吸われるのって、キモチいい?」
出し抜けに、由香里さんがいった。
「え?」
「だって――ソウくんいつも嬉しそうじゃない」
「そういう由香里さんだって、うっとり吸われているじゃない」
「アラ、ごめんなさい」
由香里さんは思わず羞じらった。
「でも――」
由香里さんは空を見上げながら、言葉を探しているようだった。
彼女の目線の彼方にある空は雲ひとつない晴れ空だったが、春の入りを含んで薄ぼんやりとくすんでいる。
「あたし、太っちょだからなー」
語尾に涙が滲んでいるのを、なんとなくボクは感じた。
「ソウくんは、どう感じているの、彼のこと」
「うーん、男同士だし、嫉妬するのって違うかもしれないけれど・・・」
ボクはちょっとだけ、力をこめていった。
「でももしもあいつが、由香里さんの血を喉が渇いているだけのつもりで飲みまくるんだとしたら、
 ぼくは彼のことをぶん殴っちゃうぜ?」


「ねえねえ、ちょっとちょっと」
家に帰ると母さんが、ボクを手招きせんばかりにしていた。
「あのひと、今夜どこいくのかしらね、聞いてない?」
子どもたちは授業中や下校の時に顔を合わせるので、夜しか自由にならない親たちよりも、彼の動向に詳しいというのだ。
「うーん、まだ決めてないんじゃない?」
ボクがいうと母さんは、
「うちに来てもらいたいのよ」
と、勢い込んで、いった。
「え?」
ボクが真顔で見返すと、さすがに照れたような顔つきになった。
それはそうだよね。
父さんに隠れて吸血鬼の小父さんに襲われて、犯してもらいたいっていっているようなものだから。
「聞いてみたら大人たちのなかで、母さんのときだけハイソックスだったんだよ。ハイソックスなんて、まるで子どもみたいじゃないの。それにこの間は不意打ちだったから、完全にふだん着――ちょっと面目ないじゃないのよ」
要は、きちんとメイクもして、ストッキングを穿いたオトナっぽい恰好で、逢瀬を遂げたいということらしい。
そうじゃないと一人前の愛人になった気がしない――というのだから、恐れ入る。
そもそもそんなことを夫や息子に相談するというのも、どうなのか?と思ったけれど。
母さんの一生けん命さはわかったので、ボクもひと肌脱ぐことにした。
父さんには、こんなふうに会社に電話をした。
「今夜小父さんを呼ぶから、父さん残業してて。あ、もちろん覗きたいのなら、ボクも一緒につき合うからね」
小父さんには、邸まで出向いて、母に逢ってほしいと頼み込んだ。
出迎えてくれた小父さんは、ほくほく顔をしている。
なんでも、下校中の女子中高生を3人も餌食にしたのだそうな。
「3人連れでな、うち2人は姉妹。
 おそろいの紺のハイソックスが可愛ゆくての、たっぷり食いついてやった。
 3人ともきゃあきゃあ賑やかに騒いで、楽しかったぞ」
なんてことだ。もう腹いっぱいじゃないか。
「で――きょうはなんの用だね?」
ボクが母さんのことを襲って欲しいというと、小父さんはにんまりと笑った。
息子が母親を襲わせる――という趣向が気に入ったらしかった。
「今夜はだれを襲おうか、まだ考えてなかった。
 お母さんはおとつい襲ったばかりだから、少し遠慮しようと思っていた。
 ぢゃが、息子さんの願いなら、聞き届けないわけにはいかないのお」
まったく、いい気なものだ。
でも、一昨日母さんが逢ったなんて、訊いていないぞ。
ボクたちが会社や学校に行ったあと、どうやら呼び入れたらしかった。
いや、「呼び入れた」のとは、少し違った。
母さんが物干し台で洗濯ものを干しているところに、朝帰りの小父さんが出くわしたのだ。
「こんどは空色のハイソックスぢゃった。いたぶり抜いての~。楽しかったワ」
あの若作りなハイソックスはたまんねぇ・・・
息子であるぼくの目のまえで、吸血鬼はおおいに悦に入って見せた。
やれやれ、なんてやつだ・・・
それにしても、母さんは二度ながら、ふだん着姿で襲われたんだ。
沽券にかかわる――と思い込むのも、もっともなことだと思う。
ボクは内心あきれながらも、それでも母さんを襲わせるプランを実行に移していった。

ひー!♡
応接間の真ん中にぶっ倒れて、吸血鬼に抑えつけられた母さんは、激しくかぶりを振り振り、悲鳴をあげていた。
内心嬉しいくせに、操を守ろうとする人妻の演技には熱がこもっていた。
引きつった首すじにはボタボタと熱い唾液がしたたり落ちて、
ふたりの影が重なると、したたりは透明な唾液からバラ色のしずくへと入れ替わった。
「恥ずかしい、恥ずかしいわ~」
心にもないことをわめき散らして、「お父さーん!」まで叫んでいた。
物陰に隠れていた父さんがズボンを濡らしちゃったのは、視なかったことにしておこう。
母さんは目論見通りふくらはぎを吸われて、振るいつけられる卑猥な舌に、薄茶のストッキングをよじれさせていった。
小父さんは、母さんのストッキングがよほど気に入ったのか、脛がまる見えになるほどチリチリになるまでいたぶり抜き、楽しんでいった。
母さんもまた、「止してください、侮辱ですっ!」とか言いながら、脚をことさらにくねらせて、
テカテカ光る真新しいストッキングの光沢を見せびらかしながら、ひと口ひと口、破り取らせていくのだった。


その夜は、冴島夫妻もうちの両親も、そろって出かけていた。
晴れて?情婦にされた二人の人妻は、より多くの吸血鬼と交流を深める義務を負わされたのだ。
そう、人妻の血に飢えた吸血鬼が集まる集会所に出かけていって、だれかれともなく襲われてくるのだという。
このいかがわしい行事のことを、「貞操開放運動」というらしい。
1人の夫によって独占されてきた人妻の貞操を吸血鬼たちのために開放し、ほしいままに寵愛させるというのだ。
10代のお嬢さんや20代30代の若妻だけがもっぱら人気、というわけではないらしく、
40代くらいの人妻には、かなりの「需要」があるらしい。
母親に「需要」があるなんて言われちゃうと、どうにもゾクッと来ちゃって仕方がない。
いけない、いけない。ボクももう、ふつうの男の子にはきっと、戻れないのだろう。
それにしても。
どうやら身体目当てで近づかれたらしい母さんが貞操解放要員に選ばれたのは納得だけど、
あんなに愛し合っているようにみえた由香里さんのお母さんまで「開放」されちゃったのは、ちょっとびっくりだった。
由香里さんのお母さんみたいな地味で生真面目なご婦人は、とりわけ人気が高いのだという。
鼻息荒く群がる吸血鬼たちにも礼儀正しく接して、地味だが楚々とした色香を漂わせたスーツを、着物のように着こなして現れた冴島夫人は、三つ指ついて挨拶するいとまもなく、取り囲まれ、押し倒されていったという。
それを教えてくれたのは、冴島の小父さんのほうだった。

冴島の小父さんとは、仲良しだった。
小父さんは通勤用にストッキング地のハイソックスを愛用していた。
吸血鬼たちの卑猥な舌なめずりに、夫として応えるための装いだった。
「彼らにあしらわれてみると、百合子がどんな想いでストッキングを咬み剥がれていくのかちょっとはわかるような気がするんだよね」
と話してくれた。
「ほんとうにうちの由香里で良いの?由香里はもう吸血鬼の牙を識っちゃっているから、処女のままお嫁入することはないと思うよ」
なんてことまで、気にしてくれていた。
母さんが犯されるのを見て以来、ボクは由香里さんが犯されるのを視るのがますます愉しみになっていたから、正直にそういうと、
「きみはうまい具合にこの街にとけ込んでいるね」と、感心された。
「うちの家内はね、ちょっときみと似ているところがあるな」と、小父さんはいった。
「きみはとにかく、相手を楽しませることばかり考えるだろう?自分が一番とかそんなことは置いといて」
そういうものなのか――正直いって、そこまでの自覚は無かった。
ただ、小父さんとの逢瀬は、ひたすら無我夢中のうちに過ぎていったのだ。
「百合子さんもそうなんですか」
ボクが聞くと、「家内もそうだね」と、小父さんはいった。
「貞操解放のときですら、あんなになん人もの吸血鬼に迫られながら、一人一人を満足させようと一生けん命だったよ」
自分の妻がまがまがしい輪姦の禍に遭ったというのに、
自慢しているわけでも、恥じているわけでもなく、ごくしぜんな感じにさらりと応えてきた。
「ボクも・・・そうなのかな・・・」
知らず知らず、ボクは自分の足許を見降ろしていた。

その日は、小父さんからもらったストッキング地の紺のハイソックスを、制服の半ズボンの下に履いていた。
男子でも、吸血鬼の牙に接した経験のある生徒は、ストッキング地のハイソックスの着用が許されていたのだ。
濃紺の半ズボンの下。
男にしては色白な太ももを挟んで、淡い毛脛の浮いた脛が、ジューシーに透きとおっている。
「紺色って不思議な色だよね」小父さんはいう。
「何となく、赤みがかって見えるんだよな。血色をほどよく映すみたいで。
 黒でもそんな感じになるけど、紺色のほうが妖しい感じに染まるんだよね」
そういう小父さんも、スラックスの下から覗く踝は、濃紺に艶めかしく染まっていた。


「あれ?小父さんどうしたの?」
驚いたことに。
てっきり「貞操解放の集い」に出向いてると思い込んでいた吸血鬼の小父さんが、街灯の下にひっそりと佇んでいる。
「きょうはやつらに分け与える日だからね」
小父さんは苦笑した。
「笑ってくれ。
 自分の女が姦られているところを、俺は視たくないたちなんだ」
小父さんはちょっぴり苦笑した。
いつもボクや冴島の小父さん、それに父さんにまで、妻や彼女を抑えつけて欲望を果たすところをこのんで見せつけるくせに、自分はそれは嫌だという。
「わがままだなあ」
ボクはのんびりと笑った。
「でも小父さん、それじゃ喉渇くよね?」
小父さんは陰鬱な顔つきをして、ボクの推測を肯定した。
「よかったら――ボクが母さんや冴島の小母さんの身代わりになるけど」
紺のストッキング地のハイソックスを履いた脚を、ボクはことさら見せびらかすようにくねらせていた。

女になったような気分だった。
冴島の小父さんがくれたハイソックスは光沢ががっていて、街灯の下だと毒々しいほどの艶が浮き上がるのだ。
まるで娼婦の穿いているガーターストッキングみたいなギラつきに、
見せびらかしたボクまでもが、軽い昂奮を覚えていた。
「じゃあ、お言葉に甘えようか」
吸血鬼はボクの手を引いて、公園に引きずり込んだ。
「いやです、イケませんよ・・・は、恥ずかしいっ」
いつの間にか、先だっての母さんの口真似になっていた。
甚だしい羞恥の色を泛べて控えめに抵抗を試みる――のが、相手をもっともそそるやり方なのだ。
母さんもそれをだれかから聞いて、この間はあんなふうに振舞ったのだ。
ボクが真似をしていけないはずはなかった。
「うふふ・・・クフフ・・・ククク・・・」
さらけ出したハイソックスの足許に、吸血鬼は露骨に舌を這わせ、唇を吸いつけてくる。
薄地のナイロン生地ごしに、なまの唇がなすりつけてくる唾液が生温かかった。
この舌に、唇に。母さんのハイソックスやストッキングは咬み剥がれていったのか。
イヤらしい舌だった。もの欲しげな唇だった。
ボクは襲われている女のひとみたいに、いやです、いけません・・・と言いつのりながらも、自分の下肢を小父さんの想いのままにゆだねていった。
「ダメです、ダメですっ・・・たら・・・っ」
首すじを咬もうとしてボクを抑えつけてくる逞しい胸を、腕を突っ張って隔てようとするが、
生き血を求めるときの本気モードの小父さんには、かなうはずがなかった。
突っ張った腕はすぐに折られて、唇が首すじに這わされてくる。
熱い呼気がうなじの皮膚を染めた。
ふと――
ボクの唇に、小父さんの唇が重ねられてきた。
えっ・・・?
戸惑うボクの頭を抑えつけると、小父さんは自分の唇で、ボクの唇を吸った。
気づいたらボクのほうも、懸命に吸い返していた。
お互い、呼気と呼気とをぶつけ合って。
肩を抱き、背中に腕を回して、恋人同士みたいに身体を擦りつけ合っていた。
半ズボンのファスナーは降ろされて、パンツを引き破られていた。
なにが起きるのか――いくら奥手なボクにもすぐにわかった。
擦り合わされてくるむき出しの逞しい胸に身を添わせて、ボクはひたすら、小父さんの所作を待ち焦がれた。

初めての吶喊は、すごく痛かった。
突き込まれたペニスからドクドクと注ぎ込まれた淫らな毒液が、すべてを押し流した。
お尻に血が滴るのを感じながらも、ボクは求められるままに四つん這いになったり、あお向けになったりして、応えつづけていた。
母さんを狂わせ、由香里さんを汚そうともくろむ鎌首の凄さを、したたかに味わわされていた。
「いいよ、いいよ、小父さん――寂しいんだよね?」
濃くて長いキスを交わし合いながら、ボクはいった。
紺のハイソックスにも、夥しい精液が撥ねて、生温かく濡らされた。
付着した精液のその温もりがいとおしくて、自分の手で薄い生地にすり込んでいった。
濡れたハイソックスのうえから、小父さんの唇が這わされた。
「匂わない?」
「匂う。だから良い」
小父さんはみじかくこたえた。
そして今度は、硬くなっているボクのペニスを口に含んでいった。
母さんの素肌を狂わせた舌が、生硬な怒張を突き崩すのは、造作もないことだった。
ボクはなん度も小父さんの口のなかで果てて、果ててはまた昂ぶりを感じていった。


「見たわよ」
あくる朝の登校中。
隣を歩いていた由香里さんが、イタズラっぽい上目遣いを向けてきた。
「えっ・・・」
思わず絶句するボクを、意外にも彼女は冷かそうとはしなかった。
「なんか――教えてもらったような気がする」
え・・・?
もう一度声を洩らすと、由香里さんはいつになく低い声で話し始めた。

だれが本命でだれがそうじゃないとか、もしかしたらどうでも良いのかもしれない。
要は、こっちがしんけんに尽くせば良いんだよね?
ほら、ソウくんもお母さんも、夢中になってたじゃん。
それに、うちの母も――
みんな、相手を悦ばせようとして、そっちに夢中なんだよね。
もう、でぶとか、そんなのどうでも良くなっちゃった。
でぶならでぶでも良いし。でぶだから、若い血をいっぱい吸わせてあげることができるんだし・・・
ね、ソウくん。
あたし、近々処女を卒業する。
だから、視て。
あたしがほかのひとを悦ばせようとがんばるところ。
応援して・・・って言うのはヘンかな?
照れ笑いを泛べる由香里さんの顔に、お母さんの百合子さんの微笑みが重なった。

由香里さんの向こうで、百合子さんが言っている。
「うちの由香里をお願いね」
ボクはそれに応えるようにして、はっきりと頷いていた。
「ウン、応援するよ。きみの処女、派手に散らしてもらおうよ」
「派手に・・・って、もう!」
よほど照れくさくなったのか、由香里さんは持っていた鞄でボクのお尻をどやしつけた。

はは、はははははっ・・・
暖かさを豊かに含んだ春の晴れ空も、ボクたちの上でほほ笑んでいるみたいだった。


あとがき
すごーく長くなりましたが。
今回は少女と少年の成長物語みたいに仕上がりました。
自分のことをでぶだと卑下する少女は、
われを忘れて相手に尽くすことがずっと大切だということに気がつきます。
このお話の数少ない「健全」な部分かも。

好夫の母 ――母親同士の味比べ。 続編――

2023年08月14日(Mon) 19:09:01

お母さん、ちょっと出かけてくるわね。
そういって母の由香里がいそいそと出かけていくのを、
好夫は横っ面で見送った。
出かけていく先はわかっている。
幼馴染の良哉のところだ。

母親たちのなかには、相手のしれない男に抱かれに行くものも多い。
それに比べれば、母親の行き先がわかっているだけでも安心だ。
まして相手が、兄弟どうぜんにして育ってきた良哉なら。
自分の血をあれほど旨そうに啜ってくれる良哉なら。
母のことを自分の前で征服して、愛し抜いてしまった良哉なら。

好夫は首すじの傷口を撫でた。
下校直前に良哉に廊下に呼び出され、咬まれたばかりの傷口だった。
まだ良哉の牙が埋まっているかのような錯覚を、好夫は感じた。
ジンジンとした疼きは、これから母が受ける咬み傷の深さを想像させた。
そしてその想像は、好夫の理性をたまらなく崩れさせていった。

優雅な名流夫人として評判高い母が良哉の餌食になってしまうことを、好夫は好もしく感じていた。
母にもそういうラブ・ロマンスがあって良い――はた目には異常なはずの状況を、ごくしぜんに受け容れてしまっていた。

良哉は彼の血管を食い破り、シャツやズボンやハイソックスを血で汚すことを愉しんでいた。
良哉の支配下にいることが、たまらなく嬉しかった。
干からびた良哉の血管のなかで、吸い取られた母親の血液と彼自身のそれとが交じり合うことを妄想し、深い昂ぶりを覚えていた。
良哉はスポーツマンだった。
好夫は彼が試合で勝つために、母親と自分の血を消費してもらいたいと切望していた。


引き伸ばしたハイソックスの上から、良哉の唇が圧し当てられる。
薄いナイロンの生地越しに、なまの唇に帯びられた熱が染みとおってくる。
きょうの靴下、ずいぶん薄いんだね。
良哉が顔をあげて、いった。
これから破く、きみのママが穿いてくるストッキングみたいだ。

これから破く・・・
いともぞうさに形容句をつけられてしまった母の装い。
母は家にいるときでも、いつもストッキングを脚に通していた。
薄っすらと透けるナイロン製のストッキングは、好夫のなかでは気品のある貴婦人の装いだった。
それを目のまえのこの幼馴染は日常的に、悪ガキそのもののあしらいで、
舌なめずりでむぞうさに汚し、咬み破っているという。
きょうも母は家を出るときに、薄い墨色のストッキングを穿いていた。
ふだんは肌色のストッキングを穿く母が、初めて良哉に襲われて以来、
良哉と逢うときには墨色のストッキングを穿くことが増えている。
襲われた女は、襲った男の好みに合せたものを身に着ける。。
母がそれを実践していることに、好夫は衝動に似たマゾヒスティックな刺激を掻き立てられている。

良哉を愉しませるために好夫がきょう履いてきたハイソックスは、じつは父親のものだった。
勤めに出るときに履いていくもののなかで、とびきり薄いやつで、気に入りなのか何足も持っている。
一足くらいならバレないだろうと、箪笥の抽斗から失敬したのだ。
ストッキングのように薄いやつだから、きっと良哉の気に入るだろう。。。
このあたりの思惑は、恋人のためにめかし込む女の子と、さほど変わりはないと思う。

「気に入った?」
「ああ・・・良い嘗め心地がする」
本気で良いと感じると、良哉には童心が戻ってくるらしい。
しんけんな顔つきになって、好夫のふくらはぎを、靴下のうえからたんねんに嘗め続けている。
生暖かい唾液に濡れそぼり、ひと嘗めごとに皺寄せられながらも、
好夫もまた自分の足許に加えられるいたぶりを、目を凝らして見おろしている。
「破っても良いんだぜ?」
そんな誘いを、自分のほうから向けてしまっている。
「ほんとうはこれ、父さんのやつなんだ――」
好夫の白状に、良哉は意外なくらいに反応した。
「え?そうなの?」
自分が寝取った人妻の亭主が愛用しているストッキングまがいの靴下を、
その息子の脚に通させて嘗めいたぶっている――
そんな状況に、ズキリと胸をわななかせたようだ。

「ウフフ なんだか面白いな・・・」
嘗めくりまわす舌の動きがいちだんとしつようさを帯びるのが、靴下を通してジワジワ、ヌメヌメと伝わってくる。
「お前――もう漏らしちまったのかよ」
良哉はそうからかいながらも、濡れたズボンのうえから好夫の張りつめた股間に手をやり、まさぐってゆく。

「お前の血の味、うちのお袋に似てきたな」
吸い取ったばかりの血で口許を濡らしながら、良哉はいった。
「人ん家(ち)の母ちゃんつかまえて、どんだけ血を吸ってんだよ」
そのまま自分自身に返って来そうなことを言いながら、良哉は好夫の頬をつねった。

こいつ、うちのお袋といつ逢ってるんだろう?
どんなふうに押し倒しているんだろう?
そしてお袋は・・・どんな顔をして、こいつにちんちんを突き込まれているんだろう・・・?
母親を自分のペニスの意のままにされている好夫の歓びが、少しはわかったような気がした。


「お待ちになりましたか?」
好夫の母親は、いつもていねい口調だ。
涼やかな服装に、いやみのない薄化粧。
肩までの黒髪は、上品に結わえてある。
背すじをピンと伸ばし、流れるような細身の身体の線を、服の下にひそめている。
派手ではないがどこかゾクッとさせる細い眉に、瞳のきれいな眼。
いつもより濃いめに刷いた口紅だけが、二人の落ち合うことの意味を告げていた。

墨色のストッキングに透ける太ももを行儀よく、朱色のタイトスカートのすそから品良く覗かせている。
相手が子供でも、この人は姿勢を崩さない。
ひとりの男として、俺に接しようとする。
良哉は時折、この女(ひと)と逢うとき、知らず知らず身ずまいを正してしまう。
貫禄負けしているとは思わない。思いたくない。
だって、襲っているのは俺だから。
呼び出して、支配しているのも俺だから・・・

「少し待った。喉、渇いた」
良哉はわざと、ぶっきら棒にこたえた。
「また、お行儀悪くなさるのね・・・?」
由香里は小首を傾げ良哉を窺った。
軽く顰めた眉が、これから加えられる恥辱への虞(おそ)れを漂わせていた。
「きょうもきかせてくれるんだろ?あんたのかわいい泣き声をさ。
 こんなにお行儀悪く楽しんじゃってるんだと、あんたのダンナに聞かせてなりたいなあ」
そんな下卑た言い草を良哉はしながら、覚え込んだ苛虐的な愉悦をあらわに、由香里ににじり寄った。
細い両肩を摑まえて、力まかせに押し倒す。
いっしょに倒れ込んだはずみに過(よ)ぎった呼気が、ほのかに生々しかった。
密やかに洩れた女の声を塞ぐようにして、良哉は女の唇に自分の唇を押し重ねた。
女が吸い返してくるのをくすぐったく感じながら、
良哉もまた女の唇をヒルのようなしつようさで吸い返していった。

「あ、あなたぁ~っ、ごめんなさい・・・っ」
由香里が声をあげて嘆いた。
突き込まれたペニスに応えるように腰を弾ませながら、
それでも夫のために貞操が損なわれるのを憂いつづけた。
口では詫びながら、腰は求め、脚は絡みついてきた。
女の嘆き声に反応するように、良哉のペニスの先端からは、どびゅっ、どびゅびゅ・・・っと、
濃厚な精液が間歇的にほとび出た。
それは由香里の身体の奥深くを濡らし、熱くした。
由香里は、はぁ・・・はぁ・・・ふぅ・・・と息せき切って良哉を抱きしめ、
ずり落ちかけた黒のストッキングを皺くちゃにしながら、なおも脚を絡めていった。

あんたのだんなに、いまのあんたを見せたいな――
毒づくように良哉が囁いたとき
そのときだけは、由香里は真顔になる。
「お願い。主人をおとしめるのだけはなしにしてちょうだいね」
え?と、良哉も思わず真顔になる。
「お願い」といいながらそれは、絶対の「お願い」に違いない。
「だって私も、たいせつなパパを裏切って貴男に逢っているの。
 ごめんなさいごめんなさいって言いながら逢っているの。
 きみは強いし大きいし・・・逢ってて楽しいわ。女として。
 でもね。
 エッチの相手は彼だけど、結婚するならやっぱり主人――
 そういうことも、わかってね。
 女は勝手な生き物なの――男と同じくらいにね・・・」

俺だって・・・人の奥さんを、幼馴染のお母さんを。
性欲のままに組み敷いて、スカートの裏側を精液で塗りたくったり、
ブラウスを血しぶきで濡らしながら生き血をむさぼったり、
勝手な生き物だ。まちがいなく。

勝手で良いのよ――
由香里は良哉の心を読むかのようにそう囁いて、彼の頭を抱きしめた。
愛すればいいの。
セックスを、愛しているっていうなによりの証拠にして、時を過ごすのよ。

細い腕で抱きしめられながら。
良哉はもうひとつの欲望で、ジリジリと胸を焦がしていた。
それは、由香里にもすぐ、伝わった。
「・・・明日の夜、約束があるの。
 それだけは行かせて――」
由香里はひっそりと囁き、願った。
わかったよ――
良哉は太く短い牙を、由香里のうなじに突き立てた。
ググっと力を籠めてもぐり込んでくる牙を、由香里は力強いと思った。
この子のペニスと同じくらい、強いわ・・・
白のブラウスにいつも以上に、噴き出る血潮をドクンドクンとほとばせながら。
良哉は親友の母の生き血を啖らい獲り、あさり摂っていった。

母親どうしの味比べ。

2023年08月02日(Wed) 22:57:43

はぁ・・・ふぅ・・・
うふっ・・・

ちゅるっ。ちゅるっ。
ごくりん。

柏木好夫と藤村良哉(りょうや)は息を詰めて、むき出しになった相手の素肌のそこかしこに唇を当ててゆく。
きょうの獲物は、音楽の翠川(すいかわ)先生。
「約束だよね?合唱コンクール終わるまで待ってあげるって言ったんだから・・・」
疲労困憊のていである翠川先生の顔を覗き込んで、良哉がいった。
「そんなこと言ったって、もうボクたちだいぶご馳走になってるぜ」
良哉の追及口調に比べて、好夫のいい方は困り果てた先生をかばうように穏やかだった。
ふたりとも、吸い取った血潮で口許を真っ赤に濡らしている。
背の低い良哉は裏返しにしたバケツのうえでつま先立ちをして、先生の首すじを狙っている。
なん度か咬み損ねたために、うなじからはよけいに血が撥ねて、
純白のボウタイブラウスには赤黒いしずくがチラチラと光っていた。
好夫は先生の足許にかがみ込んで、ふくらはぎを吸っている。
上背は良哉よりあるのに、どうしても脚にこだわりがあるらしい。
なん度も唇をあてがった脛の周りからは、
擦り切れた肌色のストッキングが、ふやけたように浮き上がっている。
「へっ!ご立派なことを言ったって、お前だってやることやってんじゃん」
良哉が憎まれ口をたたいた。
「ごめん、ごめんね・・・」
翠川先生はおずおずと二人にそういって、
もう耐えきれないというようすで、尻もちを突くようにして地べたにひざを降ろした。
失血のために、先生の頬は気の毒なくらい蒼ざめている。
食欲旺盛な十代半ばの、人の生き血を嗜みはじめた者たちに、二人がかりで生き血をせがまれては、
いくらふだん生徒に厳しい翠川先生といえども、こらえ切れるものではなかった。
「いいんだよ、先生。でももう少しご馳走してくださいね」
好夫は低く落ち着いた優しい声色だったけれど、先生の内ももに容赦なく牙を埋めた。
ストッキングがなおも、ブチブチッ・・・とかすかな音をたてて、裂けた。
良哉も楽しそうに、先生の肩先に、ブラウスの上から食いついてゆく。
真っ白なブラウスにまた、血のシミがバラの花のように拡がった。

「先生、いつものソプラノが台無しじゃん」
良哉はどこまでも、意地が悪い。
音楽の成績の良くないかれは、先生のお覚えがめでたくなかったからだ。
ここぞとばかりに意趣返ししているつもりなのだ。
好夫は苦笑いして、良哉にいった。
「うそだい、先生いつもアルトだぜ?」
良哉はムッとして、先生の肩先に再び牙をひらめかせようとしたが、好夫が制した。
「もうそれくらいにしておけよ。先生かわいそうじゃん」
「もうやめちまうのか?」
不平顔の良哉に、それでも好夫はいった。
「うん、もう少しで勘弁してあげようよ」

ちゅう・・・ちゅう・・・
くいっ・・・ごくん。

ひそやかな吸血の音はさっきよりも控えめに、しかし相変わらずしつように、
うずくまる先生に覆いかぶさるように、断続的にあがるのだった。


「美味しかったね、翠川先生の血」
好夫は満足そうに、口許についた翠川先生の血を舌で舐め取った。
手には、先生の脚から抜き取ったストッキングを、むぞうさにぶら下げている。
いつも吸血した相手からせしめる戦利品。
彼のコレクションはもう、なん足になっただろうか?
「ああそうだな」
良哉は好夫の声を横っ面で受け流した。
彼の首すじには、新しい咬み痕がくっきりと刻印されている。
音楽教師からむしり取るように獲たきょうの食事がいつになく性急だったのは、
いつもより蒼ざめたその顔色のせいだろう。
「良哉くん顔色悪いね」
好夫が気遣わしそうに良哉の顔を覗き込んだが、良哉はうるさそうにそっぽを向いた。
そして、そっぽを向いたまま、好夫にいった。
「オレーー半吸血鬼になったから」
「え?」
良哉の口ぶりはすこしだけ、誇らしげだった。

半吸血鬼。
もともと人間だったものが、一定量以上の血液を喪失するとそう呼ばれる。
血を吸い尽くされて死ぬわけではなく、もちろん墓地からよみがえるというような手続きを経ることもなく、
いままでと変わらず人間として生活するのだが、ほかのものと決定的に違うのは、日常的な吸血能力を備えることだった。
血を摂取されただれもが半吸血鬼になるわけではない。
吸血鬼が意図した人間を択んで血を啜り、吸血能力を植えつけていくのだ。
良哉は、数日はかかる吸血に耐えて、ついに半吸血鬼になったのだった。

「それでさ・・・」
良哉がいった。
「お前の血をもう少し吸わせてもらうからな」
え――?
ふり返る好夫の前に、良哉は立ちはだかった。
獲物を狩る獣の目をしている――と、好夫は思った。

あ・・・・・・
短い呻きを洩らして、好夫は身体の動きを止めた。
翠川先生からもらったストッキングが、砂地に落ちた。
良哉は、上背のある好夫にぶら下がるように絡みついて、その首すじに喰いついていた。
好夫はゆっくりと、ひざ小僧を地面に突いた。そして四つん這いになり、やがてうつ伏せに突っ伏してしまった。
しずかになった好夫の足許にかがみ込むと、良哉はふくらはぎに唇を吸いつけてゆく。
半ズボンの下からむき出しになった好夫のふくらはぎは、ねずみ色のハイソックスに包まれていた。
太目のリブが、陽の光を照り返してツヤツヤと輝いている。
整然と流れるリブに牙が押し当てられて、かすかな歪みが走った。

ごくっ。

良哉の喉が大きく鳴った。
その音はゴクゴクゴクゴク・・・とずうっと続いた。
切れ切れになる意識の彼方。
自分の血を飲み耽りながら、良哉が旨そうに喉を鳴らすのを、好夫は薄ぼんやりと耳にし続ける。

リョウくん、ボクの血がよっぽど美味しいんだな。
きみになら、いくらでも飲ませてやるよ。
満足するまで、ボクのハイソックスを汚しつづけてかまわないからね・・・・・・



「いつにする?味比べ」
良哉は蒼ざめた頬を歪めて、好夫に笑いかけた。
「そうだね――ボクはいつでもいいよ」
好夫の声はいつも通り穏やかだったが、顔色は別人のように良くない。
良哉のおかげで、自分も半吸血鬼になった――そう自覚せざるを得なかった。
帰宅した時、あまりの顔色の悪さに母親は色をなしたが、好夫は「いいんだいいんだ」と母を制していた。
半吸血鬼が半吸血鬼を作り出すことはほとんどなかったが、
良哉の血を吸った吸血鬼は特別に、良哉にその力を与えた。
「好夫だけは、オレが半吸血鬼にしたいんです」
自分の血を捧げ抜くとき、良哉はそういって、自分が半吸血鬼になったときの愉しみを確保したのだ。

「顔色、わるいね」
「きみもだけど」
二人は顔を合わせて、笑った。

味比べ。
二人とも半吸血鬼になったとき、ぜひやろうと約束していた。
母親を交換して、お互いに生き血を味わおうというのだ。
お互いの母親を襲って生き血を啜り、味比べをする。
それは、吸血鬼どうしの兄弟としての契りを交わすことを意味していた。
母親でなければ、妻でも良い――もとより二人はまだ若かったから妻はいなかったし、
その母親たちはじゅうぶん、美味しい生き血をその身にめぐらせている年代だった。
「うちのお袋、でぶだからな。襲いがいないだろ?」
良哉は自分の母親に対しても、仮借がなかった。
「そんなことないよ、きみ、ボクが肉づきの豊かな脚を好きなの知ってるだろう?」
好夫が取りなすようにそういった。
「太めの脚のほうが、ストッキングが映えるんだよね・・・」
好夫はウットリとして、良哉の家の方角を見つめた。

良哉は、好夫の母親を襲うのを楽しみにしていた。
好夫の家はまずまずの良家で、自営業でせわしない店舗兼住宅の良哉の家とは趣が違っていた。
彼の父親は役場に勤めていた。
もうすでに、ここの市役所に永久出向が決まっている身ではあったが、れっきとした上級官庁の出身者である。
市役所では、助役を務めていた。
助役夫人を襲う――友人の母親であると同時に、良哉のなかの彼女は、数少ないエリート一家の令夫人でもあったのだ。
好夫は、自分の母親に対して向けられた良哉の劣情に気づいていた。
もちろん息子として、彼の劣情をまともに受け止めることで母親がどんな目に遭わされるのかという危惧は持ち合わせていたけれど、
良哉にかぎってそんなに酷いことはしないだろうと考えていた。
母親同士も接点はなかったけれど、たまに学校で顔を合わせると、会釈し合う程度の仲ではあった。
お互い――相手の息子に生き血を狙われている同士という意識も、お互いに持っていた。


「良哉くんが、母さんの血を欲しがってるんだ。せがまれたら応えてあげてくれないかな・・・」
家に戻ると好夫はいった。
「いつになるの?」
好夫の母はいった。名流夫人の肩書にふさわしく、優雅で音楽的な声だった。
「近々だと思うよ。あいつ半吸血鬼になったから・・・母さんにはいろいろ迷惑かけちゃうけど・・・」
さすがに語尾を濁した息子の意図を、母親は正確に察している。
半吸血鬼とはいえ、吸血鬼となったものは皆、セックス経験のある婦人を襲うとき、なにを欲しがるのか――
この街の女たちは皆、知っている。

「お袋さあ――」
良哉がいった。
「明日、校舎の裏手。好夫の悩みを聞いてやって」
いつものぞんざいないい方に、
「まったくこの子は藪から棒に、なんなんだろうね」
と、良哉の母は小言をいった。
「わかってると思うけど、ちゃんとストッキングくらい穿いて来るんだぜ?」
怒ったような息子の声色に、良哉の母はちょっとのあいだ黙り込んで、
「それくらいわかってるわよ」
とだけ、いった。
「父さんには言うの?」
「言わなくたってどうせバレるじゃない」
「妬きもちやきそうだなぁー、あのスケベ親父」
「親のことをそんなふうに言うもんじゃないわよ!」
いつもながらの、母子げんかだった。

「アラ、柏木の奥さん」
「アーー良哉くんのお母さん」
学校の裏門の前、それぞれ反対方向からやってきた二人は、まるで落ち合うように脚を留めた。
良哉の母はいつもの一張羅ではなく、ついぞ見たことのないスーツを着込んでいる。
派手なオレンジ色のスーツは、まるであたりに夏の花でも咲いたかのように鮮やかだった。
柏木夫人は、爽やかなラベンダー色のロングスカートに、白のブラウス。
足許はこの陽気には似つかわしくなく、墨色のストッキングで包んでいる。
良哉の母とは対照的に、清楚なスタイルだった。
やっぱり奥さんは洗練されていらっしゃる――良哉の母はそう思った。
良哉の母はというと、オレンジのスカートスーツのすそから覗く太っちょな脚は、ねずみ色のストッキングをじんわりと滲ませていた。
お互いに――
ふだん脚を通すことのない色のストッキング(良哉の母などは久しぶりに穿いたはずだ)がなにを意味するのかを、お互いに読み取り合っていた。

「よう」
ぞんざいな声が、二人の婦人に投げられた。
声の主は正確には自分の母親のほうを向いていた。
さすがに親友の母親に向けた態度でないのは明らかだった。
「よう、じゃないだロ!礼儀をわきまえな!」
良哉の母は伝法に言い返した。
良哉は慌てて手を振った。
「きょうはもっとさあ、こう、ご婦人らしく・・・な?」
ほんとにもう・・・良哉の母はまだ、ムスムス言っている。
やがて良哉の後ろから、好夫も姿を見せた。
「良哉くんのお母さん、きょうはすみません」
好夫はいつもながら、礼儀正しい。
自分の母親のほうにもチラと目配りをして、動揺を悟られまいとしていた。
きょうの彼女の爽やかないでたちは、良哉のための装いなのだ。
今さらながらに、胸がどきどきした。
「行くぜ」
良哉は相変わらずぶっきら棒に、他の三人の前に立って、校舎の裏へと脚を勧めた。

校舎の裏には、小さなプレハブ小屋があった。
そこはいつも施錠されていなかった。
たまに生徒が入り込んで悪さをするのか、板の間にはいくらか、土足の足跡がついている。
「・・・ったくしょうがないな」
良哉は舌打ちした。
「こういうのは、前の日によく下調べしておくもんだがね」
良哉の母がいった。
「あたしは良いけど、こういうのって柏木の奥さんに申し訳ないじゃないの」
さすがに顔を曇らせた良哉を取りなすように、好夫がいった。
「そんなに汚れているわけじゃないし、人目をさえぎるにはここが一番良さそうですよ」
「好夫くんはいつもいい子ねえ」
良哉の母がいった。

「じゃ、始めようぜ」
良哉は目だって、口数が少なくなっている。
すでに吸血の欲求が胃の腑からはぜのぼってくるように感じていたのだ。
「うん、じゃあ・・・」
好夫もさすがに、生唾を呑み込んでいる。
女二人は目くばせし合って、それぞれが相手の息子の前に立った。
「横になってもらったほうが良いかな」
「ご婦人を最初から寝そべらすのはどうかな」
「それもそうだね」
良哉が珍しく素直にいった。
じゃ――
彼はおもむろに、柏木夫人に近寄った。
同時に、好夫も良哉の母のほうへと距離を詰めた。
女ふたりは生唾を呑み込んで、自分を獲物にしようとしている子供たちのほうへと目線を合わせてゆく。

「すこしかがむわね」
柏木夫人が良哉にいった。
上背のある柏木夫人の首すじを咬むには、良哉は少し背丈が足りなかったのだ。
「すみません・・・」
良哉は、別人のように礼儀正しい受け答えをすると、少し背伸びをして柏木夫人の両肩に腕を伸ばした。

あっ・・・
傍らから洩れた母親のうめき声に、とっさに好夫は振り向いてしまった。
母の着ている真っ白なブラウスに、早くもバラ色のしずくが散っていた。
またもや咬み損ねたらしい。
この間の翠川先生のブラウスと同じように、血潮がよけいにばら撒かれたように見えた。
母親と視線が合った。
――わたし大丈夫だから。
そう言っているようにみえた。
好夫はもう母親のほうを見なかった。
いつもがらっぱちな良哉の母が、おずおずと生唾を呑み込んで、棒立ちしていた。

すいません。
好夫はそういうと、彼女の足許にかがみ込んだ。
「こんなんで良かったかな・・・」
ねずみ色のストッキングに染めた脚を刺し伸ばしながら、良哉の母はいった。
「良い、すごく良いです・・・」
好夫は唇の周りに、唾液がうわぐすりのようにみなぎるのを感じた。
そして、彼女の足首と足の甲を抑えつけると、生え初めた牙をむき出して、肉づきゆたかなふくらはぎに咬みついていった。
ジワッ・・・と赤黒い血潮が撥ね、良哉の母のパンプスを濡らした。
破けたストッキングのそこかしこに赤いしずくが散って、ジワジワとしみ込んでいった。

ごく、ごく、ごく、ごく・・・
良哉の食欲は、すさまじかった。
柏木夫人は、目もくらむ想いだった。
ほとび出る血潮がブラウスを汚したのは、あきらめがついた。
吸血鬼の相手をすればどうしたって、服は汚れてしまうのだ。
かがんで中腰になったのが、よけい負担になった。
男はのしかかるように体重を預けてきた。
これが息子の友人のすることだろうか?
柏木夫人は畏怖をおぼえた。
夫人を畏怖させるほどに、その日の良哉はガツガツしていた。
ただひたすら、喰いついたうなじから牙を埋めたまま、
力づくでむしり取るようにして、彼女の血を飲み耽るのだ。
あ・・・あ・・・あ・・・
眩暈が夫人を襲った。
身体の平衡が失われたのを感じ、気づいたらもう引きずり倒されて、床のうえにあお向けになっていた。
自分の上から起き上がった少年の口許は、吸い取ったばかりの彼女の血潮がべっとりと着けていた。

少年はすかさず、夫人のロングスカートのすそをとらえた。
足許を覆っていたロングスカートは荒々しくたくし上げられて、空々しい外気が下肢を浸す。
「えへ・・・えへへ・・・へへへ・・・」
少年はイヤラシイ嗤いを切れ切れに発しながら、墨色のストッキングを穿いた彼女の脚を、舌と唇とで撫でくりまわした。
おろしたての真新しいストッキングに、唾液がヌラヌラとヌメりついた。
およそ紳士的ではない、無作法なやり口だった。
相手が息子の親友で、息子から相手をするように頼まれたのでなければ、毅然として「およしなさい」と言っていたに違いない。
猛犬のような牙を太ももにガクリと食い込まされて、再び血がほとび散った。
獣に襲われているようだ、と、夫人はおもった。
少年はその後なん度も、脚のあちこちに喰いついてきた。
左右かまわず、部位もかまわす、自分の牙の切れ味を試すように、夫人の柔肌を切り裂いてゆく。
ラベンダー色のロングスカートは、たちまち血に染まった。

好夫も、さすがに夢中になっていた。
差し伸べられた足許に喰いついた後、ねずみ色のストッキングのうえから唇をすべらせるようにして、
彼は良哉の母の穿いているストッキングの舌触りに夢中になっていた。
われながら、オタクっぽいやり口だと恥ずかしかった。
けれども良哉の母は、そんな好夫の想いが伝わるらしく、
「好きにしていいんだからね」と言ってくれて、彼の意地汚い欲求に精いっぱい付き合ってくれたのだ。
さいしょに咬みついたふくらはぎに熱中するあまり、良哉の母は貧血を起こして身体をふらつかせた。
彼女の身じろぎでそれと察すると、好夫は彼女を横抱きにして、床の上に横たえてゆく。
昂りきった彼女の呼気が、好夫の耳たぶを浸した。
小母さんもうろたえてるんだ――と、はじめて感じた。
いつ顔を合わせても、しっかり者の自営業主の妻である小母さんだったが、
牙をふるって迫ってくる吸血鬼の脅威の前には、ただその身をさらして欲望にゆだねるばかりだったのだ。
いくら半吸血鬼としての儀式とはいえ、幼馴染の母親を無用に傷つけたくなかった。
彼はオレンジのスーツの上半身にかじりつくようにして良哉の母のうなじに唇を寄せると、ガブリと食いついた。
首すじの太い血管を、あやまたずに断ち切っていた。

ハッ、ハッ、ハッ、
ひぃ・・・ひぃ・・・ひぃ・・・
息せき切った良哉に、喘ぎ喘ぎ肩を弾ませる柏木夫人。
すでにブラウスははぎ取られ、ブラジャーは飛ばされ、ロングスカートのなかで、ストッキングは片方脱がされていた。
ショーツの薄い生地を透して、少年はまだ童くさい息が直接、秘部にしみ込んできた。
ああ、この子に犯される・・・
夫人はさすがに、悩乱した。
彼女は夫のことを想った。
夫はいまごろ、こんなこととは知らずに市役所の奥まった部屋で執務しているに違いない。
金縁メガネを光らせた生真面目な横顔が、なぜかいまの彼女のありようを察しているような錯覚を覚えた。
太ももを伝って、柱のようにコチコチに固まった一物が、せり上がってきた。
初めて吸血鬼というものに襲われるようになってから、すでに夫以外の男性をなん人となく、彼女は識っている。
けれども――
よりによって、それが良哉くんだなんて・・・
白い歯が迷うように喘ぐのを、男の厚い唇に塞がれた。
一人前の男の呼気だと、夫人は感じた。

いいんだよ、思い切りやっちゃっていいんだからね――
良哉の母はそういって、好夫を励まし続けていた。
隣で母親が犯されているのをありありと感じながら、そうだからこそよけいに、異常な昂ぶりを覚えていた。
股間の一物が、自分のものではないように太い棒になっている。
すでにふたりの身体は、上下に合わさり、互いに互いの熱を感じ合っている。
良哉の母は思い切りの良い女だった。
入り口で惑っていた好夫の一物に手を添えると、自分の秘部へと導いて、さっきまで自分を苛みつづけた牙と同じように、
夫を裏切る行為をズブリと遂げさせていた。
良哉の母の中で、好夫の一物が白熱した閃光を放った。
破れかかったねずみ色のストッキングを穿いた脚がピンと伸びて、やがてじょじょに力を失い弛んでいった。

二対の男女は肩を並べて、息をはずませ合っていた。
四人呼気はばらばらで不協和音のようだったが、
彼らの意図するところはひとつであった。
ふたりの少年は互いの母親を相手に、見事に筆おろしを遂げていた。
そして、そのあとは好きなだけ――
大人のオンナの身体を覚えた怒張したペニスを、なん度もなん度も突きたてていっては、
初めて識った女たちの身体の秘奥へと、白く濁った体液を放射しつづけていった。


太陽は西に、傾こうとしている。
けれどもそれが、なんだというのだろう?
礼装をほどかれた女たちは、自らの血を浴びながらも、頬は嬉し気に輝いていた。
あれほどたっぷりと血を抜かれたにもかかわらず、
色とりどりに染まるストッキングに透けた素肌には、淫蕩な血色をみなぎらせていた。


「青春だな」
「まったくだな」
翌日登校してくると、良哉と好夫は顔を合わせて同時に言った。
お互いの熱した精液を、お互いの母親の体内奥深くにぶちまけ合った者同士の、奇妙な共感がそこにあった。
「オレ、洋子のことプレハブ小屋に誘った」
良哉がいった。
洋子とは、好夫の母の名前だった。
自分の母のことを呼び捨てにされて、好夫はくすぐったそうに笑った。
「じゃあボクは帰りに、きみの家に寄ることにするね」
「うちの親父、大丈夫だから」
良哉はイタズラっぽく笑った。

お互いの父親は、自分の妻が息子たちの餌食になったのを、夕刻帰宅して初めて知った。
どちらの妻も、息子も、家に戻って来ていなかった。
良哉の父は好夫の父を訪ねた。
「なんか、うちのアバズレ女は別にエエんですけれども・・・柏木の奥さまには大変なご迷惑を」
良哉の父は昔かたぎらしく、好夫の父に頭を下げた。
好夫の父はもちろんことのなりゆきに驚いていたが、
こういうときに夫がうろたえてはいけないと感じた。
「風変わりなことになってしまいましたが、これはおめでたいことなんだと思います」とだけ、いった。
そして、慇懃に頭を下げてきた良哉の父に応じるように、丁寧に頭を下げて、
「御子息の成人おめでとうございます」といった。
そのあと二人は連れ立って酒場に繰り出した。
お互いの息子たちが女の身体を識って大人になったことも、
お互いの妻の貞操が泥にまみれたことも、若い情夫が一人ずつ増えたことも、
どちらもいっしょに、祝い合った。
そして大酒をくらって、まだだれも戻って来ていない家に戻り、朝まで大いびきをかいて寝入ったのだった。



同級生の訪問。

2022年07月03日(Sun) 23:25:36

同級生のカオリさんが、ぼくの血を吸いに来た。
お兄さんのヨシトさんも、いっしょだった。
ヨシトさんは、母さんの生き血が目当てだった。
なので、半ズボンからむき出しにしたぼくの太ももをちょっとだけ咬むと、
すぐ家の奥へと入っていった。
けれどもぼくは、ちょっと咬まれたあの痛痒さにうっとりとなって、
その場にへなへなと尻もちをついてしまっていた。
両親の寝室のほうから、キャーという叫び声があがるころ、
ぼくはカオリさんに首すじを咬まれて、ほんとうにうっとりとなってしまっていた。

カオリさんの牙はぼくの首すじに食い込んで、
ヒルのように吸いついた唇が、獣じみたどん欲さで、ぼくの血を啜り取る。
けれども――
息せき切ったカオリさんの振舞いがぼくのことを圧倒して、
生命を脅かされているという恐怖さえ、忘れ果ててしまうのだ。
チュウチュウ、ごくりん・・・と、ぼくの血が彼女の喉を鳴らすのに聞き入りながら、
ヨシトさんが母さんを手なずけてゆくのを、やはり耳の奥で聞き取ってしまうのだった。

この街は、吸血鬼であふれている。
たとえば、仲良し三人組の女子のうち一人が咬まれると、
残りの二人は血管を空っぽにした親友のため、強制的に献血に応じる羽目になった。
とある球技部は、キャプテンが咬まれてしまうと、伝染(うつ)りが速かった。
上下関係が密だったから、後輩たちが先輩のため、次々と咬まれていった。
校内で行われる紅白試合では、
出場した全員が、おそろいのひざ丈のストッキングのふくらはぎに、赤黒いシミを滲ませている――なんてことさえ、起きるのだった。

先生たちはこういうとき、いつもなんの助けにもならなかった。
自分たちの教育現場には、掲げられた理想と寸分の狂いもないのだと思い込みたいらしくって、
クラスの親睦とか、年長者へに示すべき敬意とかを、ただ虚ろに説教するだけだった。

母さんはいまごろ、スカートをたくし上げられて、ヨシトさんに姦られちゃっているころだろう。
いつも上品に脚にまとっている、あの肌色のストッキングも、
むざんに破かれて、片脚にだけ通したまま、手荒い愛撫に揉みくちゃにされてしまっているのだろうか。

ぼくもカオリさんに組み敷かれて、
カオリさんはぼくの上に馬乗りになって、
制服の濃紺のプリーツスカートをユサユサさせながら、
ぼくとひとつになっている。

カオリさんは、自分のお兄さんに処女を捧げていた。
家族のなかで、まっ先に咬まれたヨシトさんは、自分を咬んだ吸血鬼を家のなかにひき込んで、
年頃の少女とその母親を襲うチャンスをプレゼントして、
首尾よくお母さんを愛人にした吸血鬼はお礼返しに、
カオリさんを真っ先に犯す権利を与えていた。

近い将来、カオリさんは、ぼくのお嫁さんになる。
けれどもきっと、ぼくは自分の花嫁に、お兄さんとの逢瀬を、許してしまうに違いない。

こういう夜、父さんの帰りは遅い。
きっといまごろ、カオリさんのお父さんと二人で、
留守宅で妻を支配されているのを苦笑いで受け流しながら、
一献酌み交わしているころなのだろうか。


あとがき
これも、蔵出しのお話です。^^;

吸血鬼の共存を受け容れた社会では、きっとこういうことが横行するんでしょうね。
わたしも、吸血鬼になりたい・・・ (笑)

女子高生とお見合い。

2021年09月09日(Thu) 07:47:53

貴志さん、女子高生とお見合いをする気はない?
母親の敏恵がそういって水を向けたとき、貴志は思わず顔をあげた。
貴志は24歳。けれども彼女はいない。いたためしがない。
女の子に対する興味がないわけではなかったけれど、いつの間にかそんなことになってしまっていた。
裕福な良家に生まれ、人並みの学歴を持ち、それほど見苦しい若者でもない。
しいていえば、得手も不得手もそんなに目立たない、ごく大人しい青年であることが、彼を奥手にしたのだろう。

女子高生とお見合い。

若すぎるじゃん・・・と表向きは母親に口を尖らせながらも、
その言葉の意味する鮮烈なイメージから、貴志は呪縛にかけられたように逃れられなくなってしまっていた。

話はとんとん拍子に進んで、
その月のおわりには、親たちがセッティングした自宅でのお見合いの席に、
気がついてみたら身長した背広を着てしゃちこばって正座していた。

お見合い相手の娘は、まだ十七歳、高校二年生。
このあたりでは名門で知られたM女子学園の制服を、折り目正しく着こなしている。
M女子学園。
この辺りではだれ知らぬものもない、地元の名家の子女が通う、お嬢様学校だった。
母の敏恵も、この学校の出身である。
地味な濃紺一色のブレザー制服は、ちょっとあか抜けない感じだったし、
美織と名乗るその少女も、貴志が想像したような水もしたたるような美少女ではなく、
どちらかというと「お芋」っぽい、ごく目立たない感じの娘だった。
堅実な校風で知られたM女子学園だったから、むしろ洗練された美少女を想像すること自体がナンセンスなのだとあとで思ったが、
むしろ近寄りがたい美少女などではなく、
穏やかでしっかり者らしいその地味な風貌に、貴志はむしろ惹かれるものを感じていた。

相手をさりげなく見つ合う目線が緊張もし過ぎず、ほどよく和んだものであるのを察した大人たちは、
「あとはお二人でどうぞ」
と、あいさつ代わりのお座なりな会話を切り上げて、そそくさと姿を消した。

そのあと、なにを話したものか、貴志はあまりよく憶えていない。
けれども、この縁談を断るという考えをまったく抱かなかったのは確かだったし、
先方も、齢の離れたこの縁談を、「先様さえよろしければ」と、受け容れるようすであることに、
ひどくわくわくとした気分を感じたのも事実である。
なによりも、
この縁談を仲人として取り持ったのが、子供の頃から親しんできた源治小父さんであることが、
彼がこの縁談から逃れ出ることを不可能にしていた。
独身であることを放棄する気になったのは、もしかすると、紹介者が源治小父さんであると聞いた瞬間だったかもしれなかった。


床の間つきの十六畳ほどもある畳部屋のまん中で、
たくし上げられた制服のプリーツスカートのすそから、肉づきの豊かな太ももをさらけ出して、
紺のハイソックスのつま先を、じれったそうに足摺りさせて、
重ね合わされようとする唇を意図的に避けながら、さいごにはそれを受け容れていって、
なん度も接吻をくり返しながら、健康に発育した太ももを、自分のほうから大きく開いてゆく。

エンジのひもネクタイをほどかれて、白のブラウスを剥ぎ取られて、
ブラジャー一枚にされた胸周りを、我が物顔にまさぐられながら、
少女は軽く背すじを仰け反らせて、
相手の男の股間に剛(つよ)く逆立った一物を、
ふっくらとした皎(しろ)い股ぐらへと受け容れていった。

初めての血が太ももに撥ねたのは、もう何か月も前のこと。
それ以来学校帰りに毎日のように立ち寄るこの邸で、少女は精液まみれにされて、飼い慣らされていた。

つい先日、相手の男の言うなりに、おずおずとした初々しさもあらわに見合いの席に侍った少女。
美織の別の顔だった。
相手の男は、見合いの仲立ちをした、源治。
四十ちかく齢の離れたこの男に初めて抱かれたのは、母親の手引きによるものだった。

「大人の女にしてもらうのですよ」
母親の囁きは、凛と取り澄ました冷やかさを帯びていて、
厳しくしつけられた娘にとって、抗いようのない響きを帯びていた。

そんなに深刻に考えなくて良いのよ。
あなたはあの方の、情婦(おんな)のひとり。
ママもあの方の、情婦のひとり。
おなじ男の情婦になるの。
そう。
あなたはあの方にとって、性欲のはけ口の一人でしかない。ママもいっしょ。
なん十人もの愛人を抱えた、この街の陰の実力者なの。
市長さんの奥さまも、学校の校長先生の奥さまやお嬢さんも、みんなあの方に抱かれているのよ。
あの方、一流の女以外には、目もくれないの。だからあなたも、名誉に思わないとね。
花嫁修業だと割り切って、励むことね。ついでに、楽しめると良いわね。
これからしていただくことは、楽しいことなの。
女と男が仲良くなるための、最善の手段なの。
お嫁入り前に、お婿さん以外の男性と仲良くなっても、それがちゃんとした人ならば、いっこうにかまわなくてよ。
だからあなたも、しっかり楽しむといいわ――


つぎの日は、土曜日だった。
土曜日には、美織は来ない。
だが、源治が退屈するようなことは、むろんない。
二六時中、いろんな女たちが、彼を慰めに訪れるからだ――美織の母も、その一人。
控えめにならされたインターホンに応じて、源治はゆっくりと起ちあがる。
鎖(とざ)された門の向こう側に、人目を避けるように佇むOLふうのスカートスーツ姿に一瞥をくれると、
源治は感情を消した顔つきで、入れとあごで促していた。

十六畳ほどある床の間付きの和室の隅っこに、
いたたまれない様子で控えた風情は、
まるで借財をするために操を売ろうとする女のような羞じらいを帯びていて、
その様子を、あとから部屋に入ってきた源治は、満足そうに見おろした。

相手の手首をだしぬけにつかまえて、「あ」とあげかけた声を、唇で封じていって、
タイトスカートの奥に手を突っ込んで、肌色のパンストを引き剥ぐようにしてずり降ろす。
あっという間の交尾だった。
よほど飢えていたものか、源治は一度抉った一物を引き抜きもせずに、なん度もなん度も突き込んでいって、
スカートの裏地が精液でびしょびしょに濡れてしまうまで、行為を止めようとしなかった。
男の激しい行為を、自分に対する寵愛の証しと受け取ったのか、
女はセミロングの栗色の髪を揺らしながら、重ね合わされる唇に応え、胸もとに迷うまさぐりに悶えていった。

ひとしきり嵐が過ぎ去ると、
源治は起きあがり、相手のことも抱き支えてやった。
部屋の隅から始まった激しい戯れは、いつの間にか、広い和室のど真ん中にまで移動していた。
ちょうど昨日、美織が果てたその場所だった。

きょうの源治の”獲物”は――女の姿をした貴志だった。
彫りの深い秀でた目鼻立ちは、悩まし気な色をよぎらせていて、
それが本物の女のように悩まし気にみえた。
「美味かったか」
「・・・はい」
「もっと欲しいんだろ」
「・・・はい」
しおらしく頷く貴志を、抱き支えた腕にからめながら、
なおも逆立ってくる一物を、こんどは貴志の唇へと、あてがってゆく――

「この間のお見合いは、よかったようだな」
はずませていた息を落ち着けた貴志は、着乱れたブラウスの胸もとを掻き合わせながら、無言のまま肯いた。
「先方も、ご満足だったようだ。よかったな」
何しろ、処女率99%。折り紙つきのお嬢様学校だからな。
結納を済ませたら、在学中に姦っても良いのだぞ。
源治は露骨なことをいって、貴志をからかった。

在学中に――
あの濃紺一色のお嬢様学校の制服姿を、自室の畳の上に抑えつけて・・・
昏く澱んだ貴志の瞳が、狂おしく昂るのを、源治は観察するような目つきで窺いながら、いった。
「お前の花嫁の純潔は、わしがいただいた」
「え?」
「処女率99%だと言ったろう?」
「じゃあ・・・美織さんは・・・?」
「三か月ほど前に、わしがたらし込んだ娘ぢゃ」
「ああ・・・」
貴志の目が、悩ましく光った。
「先方はもう乗り気ぢゃ。お前から断るわけには、いかんのう」
源治は弄ぶような目つきで、貴志を見つめる。

あの学校はの、良家の子女を厳格に躾ける校風で知られておるが、
わしのためには毎年一人だけ、女子生徒をあてがってくれるのぢゃ。
親にはむろん、言い含めてある。
表向きは上流家庭であっても、そういう家の娘のなかから、わしが選び出すのぢゃ。
美織はそうした娘の一人—―わしのめがねに叶うた娘。
ぢゃから、お前の嫁にやろうと思ったのぢゃ。
お前も、男を相手にする味を思い知ってしまった男。
ふつうの女では、お前の妻の役目は勤まらぬ。
これからは、夫婦でわしに尽くすがよい。


十年前、貴志はこの部屋で、初めて女のように犯された。
貴志は小さいころから、女性の服に執着する少年だった。
いちど、家族の留守中に母親のスカートを着けているところを、戻ってきた母親に見つかって、折檻された。
母親は、自分の母校のM女子学園の制服を貴志のためにあつらえて、
つぎの日から、女子の制服で学校に通うよう命じたのだ。
父親は、見てみぬふりをしていた。
自分の妻が源治の女にされたときと、同じように――
それいらい、貴志はM女子学園に編入されて、女子として教育を受け、
表向きはサラリーマンとして勤めに出、プライベートは女として過ごすようになっていた。
美織のような少女と結ばれるのは、むしろ必然だったのかもしれない。


あとがき
久しぶりに描いてみたのですが・・・
ひらめいたインスピレーションのわりに、生煮えになっていまいましたね。。。 ^^;
地元の名門女子校の生徒とお見合いをして、でもそのお見合い相手は別の男に姦られていて、
その男は母親の愛人でもあり、主人公を女として犯している男でもある・・・そんなプロットはインパクトを感じたのですが。
いつか改作できればと思います。
期待しないで、お待ちくだされ。(笑)

おカネで解決することは、良くないことではあるのだが・・・

2020年11月06日(Fri) 19:35:24

勤務先の事務室で。
達也は由紀也のお尻にガブリ!と食いついた。
「うう・・・っ!」
ひくくうめいて倒れる由紀也に、獣のようにのしかかって、
今度は首すじにガブリ!と食いついた。
息をのんで見守る同僚たちの目も気にせずに。
ぐいぐいと生き血を飲み漁る。
由紀也がぐったりしてしまうと、スラックスをたくし上げ、
お目当ての紺のハイソックスのふくらはぎに、ぬるぬると舌を、唇を、しゃぶりつけてゆく。

「スーツ代です」
招き入れられた由紀也の家で、達也は神妙にとり澄まして、茶封筒を差し出した。
中には5万円入っていた。
「断る!」
由紀也は断固として拒んだ。
「第一、学生のきみがこんな大金を持っているわけがないじゃないか」
「父に事情を話して叱られて、これで許してもらってこい、そうでなければ家にあげないと言われたんです」
達也は正直にそういうと、
「どうもすみませんでした」
ともう一度、神妙に頭を下げる。
由紀也は応える代わり、
「母さん、これ」
と、茶封筒を押しやっていた。

おカネを受け取った ということは。
もういちど、チャンスをもらったようなもの――それが達也の解釈だった。
夏用のスラックス一本に、5万円はかからないだろう。
とすると、5万円分の衣類の毀損を、畑川家は認めたことになる・・・
「それじゃ小父さん、まだ喉が渇いているんで・・・」
夫婦の目が、恐怖に見開いた。

「10万円で、示談にしてもらえませんか」
達也の父親の間島幸雄はそういって、茶封筒を差し出した。
既視感に苛まれながらも、由紀也はいった。
「お断りします。それでは家内に売春をさせるようなものです」
お尻を咬まれたスラックスを台無しにされた見返りに、5万円を受け取ったら。
それ相応のものをまた、奪われた。いや、相応以上に違いない。
ここでこの10万を受け取ったら、妻がどういう目に遭うかわからない――由紀也は実感としてそう思った。
「うちとしても、恥をさらすことですから、表ざたにはしません。達也君も将来のある身ですから――
 ですからこれは、どうぞお収め下さい」
鄭重に、鄭重に、懇願していた。
「わかりました。やむをえませんな」
間島はどこまでも慇懃にそういって、もう一度頭を下げた。
「親にここまで頭を下げさせたんだからな」
達也の尻を軽くどやしつけて、頭を押さえつけるようにして、下げさせた。
本人も仕方なげに、お辞儀をする。
どうも、父親のいるところでは、神妙になる子らしい。

ふと気がついたのは、間島父子が辞去した後のこと。
妻の和江がいそいそと、外出の支度をしている。
喪服に網タイツ。それは最近の達也の好みな装いだった。
お金を受け取らなくても受け取っても、妻と達也が切れることはない。
「ねえ由紀也さん」
妻は改まって何かを言うとき、夫の名を口にする。
「やっぱりお金、受け取った方がよくありません?」
「どういうことだね」
追い詰められた獣のような目をしているのが、自分でも分かった。
「やぁだ、怖い顔しないでよ。
 べつにお金が欲しいとか、そういうさもしい気持ちで言っているんじゃないの。
 決まったお金をいただいて、きちんとけじめをつけたほうが、お互い良いと思いますのよ。
 いちど、考えてみて下さらない?」
では私、行きますから――
妻はそう言って、不貞の現場へ出かけていった。
「行きます」が「逝きます」に聞こえた由紀也が、妙な昂奮のひと刻を過ごしたのは、いうまでもない。

「きみがひと月に出せるお金は、いくらくらいかね?」
達也に背中を向けて、由紀也が訊いた。
「小遣いが5千円だから、半分までかな」
「じゃあ、2千円にしようか」
「そうですね、2千円にしよう」
ふたりはにっこと笑った。

妻の貞操、ひと月2千円――
ずいぶん安い売春だと思ったが、
すじを通した和江は満足そうだった。
夫の由紀也も、満足そうだった。


あとがき
春ころに描いていた異常なシリーズですが、どういうわけかすらすらと描けます。(笑)

少年たちの会話。

2020年11月06日(Fri) 18:51:21

「最初に狙ったのは、ユッキーのほうだった」
達也は自慢そうに話し始めた。
ユッキーとは由紀也、つまり保嗣の父親のことだった。
さいきんの達也は、同級生の父親のことを、まるで友達であるかのようにそう呼び捨てにする。
これは、いくら親友でもふつうではあり得ない態度である。
「うんうん」
保嗣は興味津々、聞き入っている。
これもまた、息子としてはあり得なさそうな態度である。

達也は象げ色をした牙をむき出して、由紀也から吸い取った血がまだ滴っているかのように、その牙を舐めた。
「美味しかったの?父さんの血は」
「ああ、とても美味かった。さいきん、血の味を良くするために、タバコをやめたんだね。感心なことだよ」
「健康にもいいことだしね」
「そうそう」

達也の自慢話は続く。
「ユッキーが、奥さんの和江とふたりでいるときに、君ん家(ち)へ行ったんだ」
「それは気がつかなかったな」
父親だけではなく、母親も当然、呼び捨てである。
「和江がお茶の用意をしていて、ユッキーは独りでリビングにいたんだ」
「うんうん」
「それで、小父さん、喉渇いたんで、血をもらうねって迫ったんだ」
「父さん、嫌がったでしょう?」
「通勤のときに履いていく、あのストッキングみたいに薄い靴下が目当てで行ったんだ。
 それは彼も心得ているからね。
 きみっ!止めたまえっ!!って、注意されたんだ」
「でも、止めなかったんだろう」
「もちろんさ、首すじをガブリとやったら、たちまち目をまわしちゃったんだ」
「うわー、ひどいな」
「ソファからすべり落ちるようにしてじゅうたんの上に横になってくれたんで、
 お目当てのあのすべすべした靴下を、舌でたっぷり愉しんだ」
「うんうん」
「よだれでぬらぬらにされるのがわかるらしくって、止めなさい、よしなさいって言ってたけど、
 構わず愉しんで、それから脚にも咬みついたんだ」

「父さんの血、美味しかったの?」
「美味しかったさ。きみにわかってもらえないのが残念なくらいだよ。それから、お茶を持ってきた和江を襲った」
「父さんは、逆らわなかったの?」
「もちろんさ、だってそのまえに、ボク、ユッキーのズボンを脱がして、パンツも脱がして、
 和江にしようと思ったことをして見せてあげたからね。
 ユッキーに黙ってもらうには、あれが一番良いんだ」
達也は由紀也とは、すでに身体の関係を結んでいた。
どちらが入れる側にもなるほどの親密さではあったけれど、
こういうときには達也が自分の持ち物の味を、由紀也に思い知らせる役回りだったのだろう。

「和江はボクの命令で、いつもストッキングを穿いているからね」
「そうだね、毎日穿いているね」
「リビングに入って来るなり抱きついて、首すじをガブリ!とやったら、すぐにお膝を突いちゃった。
 せっかくのお茶をぶちまけないようにって、そっちのほうが気になったみたい」
「さすが主婦だね」
「うん、さすが主婦だよ。それで、和江の穿いているストッキングも、隅から隅まで舐めまわした」
「母さん、嫌がったでしょう?」
「ウン、でも夫の前で恥ずかしそうにしているのが、ちょっとかわいかったな」
「父さんはどうしていたの」
「ボクのことを悔しそうに睨んでいたっけ。くすぐったかったなー」
まるで鬼畜な会話である。
けれどもふたりの少年は、どこまでも無邪気な声色で、やり取りをしていた。

「和江のストッキングも、ユッキーの靴下みたいにびりびりと咬み破いてね、
 それから和江がボクの女だということを、ユッキーに思い知らせてやった」
「犯したんだね」
「そうさ、和江はボクの奴隷だから、さいしょは抵抗したけど、そのうちどうしようもなくなって、
 ボクと腰の動きをひとつにして、愉しみ抜いてしまった。
 ”家庭が崩壊してしまいます”って言ってたけど、あれどういうことなのかな」
「崩壊どころか、ボクは母さんをきみの女にしてもらえて、良かったと思っているよ」
「ありがとう。きみのお父さんも、じつはそうらしいんだ」
「そうなの?だったら僕も安心だな」
「だって、”きみも一人前になったね”って、感心してくれたんだもの」

きっと悔し気に履いた捨て台詞に違いなかったのだけれど、
少年たちはそうはとらなかった。
そしてきっと――彼らの解釈のほうがじつは、正しいのかもしれなかった。
「そのあとね、なん度もなん度も和江のことを犯したんだ。
 ユッキーはさいごまで目を離さないで、ボクたちが愛し合っているのを見ていたんだ。
 そして、ボクの気が済むと、”保嗣が戻らないうちに”って、あと片づけまでしてくれたんだ」
「そうだったんだね、僕、ちっとも気がつかなかったよ」
「それに帰り際、”今度来るときは、もっと礼儀正しい子になってから来なさい”って言ってくれたんだ。
 ということは、いつでも言って構わないってことだよね?」
「そうだね、やっぱりきみの母さんへの想いを、父さんにきちんと見せてあげるのが礼儀正しいってことなんだろうね」
「ボクもそう思う。また女が欲しくなったら、君ん家に行くからね。
 奥さんを姦られてるときのユッキーの顔つき、すごく気に入っているんだ」
「そうなんだね、きみが愉しんでいるところ、こんどは僕も見てみたいな」
保嗣は無邪気にいった。
自分の悪友が父親の目の前で母親を犯しているところを見てみたいと――

両親がじつは息子の悪友の来訪を心待ちにしていることを、彼はどこまで理解していただろうか。
けれども彼自身もまた、母親の痴態を目の当たりにすることを心待ちにしていたのである。

親友のお父さん

2020年08月01日(Sat) 20:06:36

喉が渇いた。
身体じゅうがざわざわと騒ぎたち、
ひたすら人の生き血が欲しくなった。
女も抱きたかった。
こういう時に限って、両親は熱々だった。
ぼくは家をふらふらとさまよい出て、気がついたら保嗣の家の前にいた。
保嗣は、ぼくの親友だ。
けれどもきっと部活で、まだ家には戻っていないだろう。
目当てはもちろん、保嗣のお母さんだ。

玄関の鍵は開いていた。
一家が吸血鬼に支配されてから、
保嗣のお父さんは、家に鍵をかけないことにした。
だれでも家に入ってきて、血を吸ったり、
奥さんを抱いたりすることができるようにって。
ぼくは玄関から中に入った。

ツンと鼻を衝く匂いがした。
嗅ぎ憶えのある匂いだった。
錆びたような、生々しい芳香――
数か月前、ぼくがぼく自身の体から吸い取らせた液体・・・
人の生き血の匂いだった。
「家内(を目当てに来たの)?」
傍らから保嗣のお父さんが、声をかけてきた。
ぼくはこっくりと頷いた。
「残念だったね、先客が来てるよ」
半開きのふすま越し、組み伏せられた保嗣のお母さんの姿がみえた。
ふすまを半開きにしてあるのはきっと、お父さんに見せつけるためだろう。
お母さんの相手は、背中でだれだかわかった。
そしてだれだかわかった瞬間、ぼくはあきらめた。
ぼくの血を吸った吸血鬼だった。

保嗣のお母さんは、喪服を着ていた。
ダンナさんの前で抱かれるときには、喪服のことが多いという。
悲しい気持ちを服で示しているのだというけれど、
白い肌の映える漆黒のスーツに、
脛をなまめかしく透き通らせる黒のストッキングは、
むしろ吸血鬼をそそらせるための衣装としか、思えなかった。

そういえば。
お父さんもこういうときはいつも、
スラックスの下にストッキング地の黒の靴下を履いている。
出勤するときに着用するようにと指示された、ストッキング地の靴下は、
吸血鬼を相手に女の人の代わりを務める時に必須のアイテムだった。
色は黒とコンの二色。
保嗣のお父さんは、大概は好んでコンを履いていた。
ぼくが咬み破らせてもらったのも、コンのほうが圧倒的に多い。
そう、保嗣だけではなくて、ぼくは保嗣のお母さんも、お父さんまでも”支配”していた。
いつでも血を吸える関係になることを”支配”すると呼ぶ秩序のなかで、
世間的には年上で目上であるひとも、奴隷にすることができる。
ぼくは自分の血のほとんどと引き替えに、そういう特権を得ていたのだ。

「ぼくので良かったら、吸う?」
お父さんは、いつも優しい。
保嗣の優しさもきっと、お父さんに似たのだろう。
ぼくはお礼を言って、お父さんの好意にしたがうことにした。
「きょうはどうして黒なの?」
「コンのほうが良かったかな」
「ううん、そんなことない。ただ訊きたかっただけ」
「家内が抱かれているときはね、家内の操を弔っているんだよ」
なるほど・・・
黒は確かに、弔いの色だ。
けれども同時に、人をそそるなにかを秘めている。
じゃあさっそく・・・
ぼくはお父さんの足許に、かがみ込んだ。

吸いつけた唇の下、
薄地のナイロン生地のなめらかな舌触りが愉しかった。
いつも以上にいたぶったのは、
お母さんの代役を務めてもらっているのだからという意識があったから。
お父さんはそれでも、嫌な顔をせずに、ぼくの行為を受け止めてくれる。
ずぶ・・・
犬歯を埋め込んだ時、痛いだろうな、と、おもった。
けれどもお父さんは、ちょっとだけふくらはぎを引きつらせただけで、ぼくの牙を受け容れてくれた。
ちゅうっ。
ひそやかな吸血の音があがった。
ぼくの鼻腔に活き活きとした、働き盛りの血液の芳香が、心地よく充ちた――

リビングのじゅうたんのうえ、お父さんはあお向けになって倒れていた。
ぼくに血を吸い取られたせいで、貧血を起こしたのだ。
お父さんは顔を覆っていたが、
「まだ欲しいようなら、構わないよ」
と、いってくれた。
ぼくは遠慮なく、好意に甘えた。
今度は首すじに、食いついたのだ。
ジュッと撥ねた血潮が、お父さんのシャツのえり首に撥ねた。

「したいんだろ?」
お父さんがぼくに言った。
なにを――?答えは決まっている。
ぼくは無言でうなずいた。
「わたしで良かったら、相手をするよ」
「お願い」
言下にこたえた声が、切羽詰まっていた。
じっさい、ぼくのお〇ん〇んは、爆発しそうだった。
お父さんは素早くスラックスを脱ぎ、パンツを脱ぐと、無防備な股間をぼくの腰にあてがった。
ぼくは保嗣のお父さんを、三回犯した。
引き抜いた一物をいちどウェットティッシュで拭うと、こんどは口にまでもっていく。
お父さんはそれすらも、嫌な顔をせずに受け止めてくれた。
根元まで、ずっぷりと、含んでくれて。
爆発したぼくの粘液を、残らず舐め取ってくれた。
お父さんの身体から摂った血液が、ぼくを”元気”にしていた。
ぼくはもういちどお父さんの足許に咬みつくと、
薄い靴下を見る影もなく咬み破りながら、血を吸い取っていった。
お父さんが気絶して、静かになってしまうまで。

ただいまぁ。
のんきな声が、玄関に響く。
お母さんが侵され、お父さんまでおなじ目に遭っていると知らない、のんきな声だ。
ぼくはべつの欲求が咬ま首をも経て下来るのを感じた。
そう、吸い取ったばかりのきみのお父さんの血が、きみの血を呼んでいるんだ。
はやく、リビングに入っておいで。
部活帰りのハイソックスが真っ赤になるまで、楽しんでやるから。


あとがき
5月ころまで描いていた、同性ものの後日談です。
↓このあたりから、始まっています。
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-3933.html

転入生の告白

2020年07月31日(Fri) 08:07:46

変な制服だと思った。
半ズボンにハイソックス。
およそ、中学生の男子が身に着けるものではない。
これでは小学校の低学年か、女の子みたいだ。
そんな羞恥心をよそに、親たちは、これからは生活が何もかも変わるのだから・・・と言ってきかなかった。
まあ・・・こういうことでもなければ、いまごろは一家心中をして、
既に人間ではなくなって物体になってしまっていただろうから。
別段、小学校からやり直したところで、女の子になったところで、
文句のない話だった。

それでも学校に行く道々、すれ違う人が自分のことを見てやしないかと、
羞恥心でいっぱいになりながら、学校に向かった。
迎え入れてくれた同級生たちは、みんなおんなじ制服を着ていて、
だれもがそのことに、最初から疑問を持っていないようだった。
地元の子と半々くらいの割合で、都会育ちの子もいたけれど、
今ではすっかりなじんでいる、という感じだった。
むしろ、そんなことを気にしているぼくのほうがよっぽど、おかしいのかもしれなかった。

それどころか、教室にはなん人か、女子の制服を着ている男子もいた。
希望によっては、女子の制服で登校することもできるのだそうだ。
もっともさすがに、体育の時間は、女子といっしょに着替え・・・というわけにはいかないらしかったけれど。

女子も、男子と同じねずみ色のハイソックスを履いていた。(女子のほうが選択の幅が広かったけれど、大多数がそうだった。後述)
おそろいのハイソックスの脚を並べて教室の席についていると、ぼく自身もすぐに女子に早変わりできそうな錯覚に襲われた。

男子がハイソックスを履いていたり、女子の制服を着て登校することができたりするのには、理由があった。
この街には、吸血鬼がおおぜい、棲みついていた。
学校の先生も、なん人の吸血鬼がこの街にいるのかわからないと言っていた。
無理もなかった。
吸血鬼は日々、増えていっているらしいから。
そして、その吸血鬼たちは、若い男女の血を求めて学園を徘徊しているのだけれど、
ぼくたちは彼らに血液を提供する義務を負っていたのだ。

都会に住んでいるとき、父さんがリストラにあった。
阿波や一家心中というところまで追いつめられたとき、いまの会社の求人を見つけて応募したところ、種々の性格検査だけで採用となった。
性格検査には、ぼくたち家族も対象となっていたので、すこし緊張したのを覚えている。
給料はいままでよりも高くて、仕事の負担も少なく、
まえの会社のように深夜にタクシーで帰ってきて、
タクシー代だけで家計が圧迫されたりとか、
会社に泊りになって翌々日にやっと帰ってこれたりとか、
そういうでたらめな忙しさとも無縁で、まだ明るいうちに帰ってこれて、毎日のように家族で食事をできる、夢のような生活がここにはあった。
「血液の提供義務」というのも、献血だと割り切れば良いのだ・・・と、自分に言い聞かせていた。
直接肌を咬まれて血を吸われるという不気味な方法による採血だということは、あえて考えないことにしていた――どうせそのときがくれば、嫌でも経験するわけだから。

採血される機会は、案外早かった。
それは、当地に引っ越してきて間もなくのことで、学校帰りのときのことだった。
何気なく通りかかった公園に、誘蛾灯に吸い込まれるようにして寄り道をしていたら、
キュウキュウという異様な音が生垣の向こうから洩れてくるのに気がついて、
何気なく覗いてみたら、そこにはぼくと同じ制服姿の男子が、うつ伏せになって倒れていた。
最初はその男子を、大人の人が開放しているのかと思った。
けれどもちがった。
その大人の人は、男子の首すじに唇をあてがって、生き血を吸い取っていたのだ。
キュウキュウという音は、その大人の男性の口許から洩れてくる音だった。
ぎくりとして立ちすくむぼくの気配に気づいて、男はぼくの方を振り返った。
男は初老の、風采の冴えない男で、口許には吸い取った血のりを転々と散らしていた。
血のりは、男の犯罪を訴えるかのように、無音でテラテラと輝いていた。
どうしたの?――と、その男子は起きあがり、やはりぼくのほうを見た。
ぼくはその時になって初めて、血を吸われていたのは同じクラスの江利川貴志くんだとわかった。

ふたりの様子が密会であることは、カンの鈍いぼくにもすぐわかった。
江利川くんが吸血鬼に襲われて暴力的に生き血をむしり取られているわけではなくて、
ふたりであらかじめ示し合わせて公園で落ち合って、
人目を忍んでこうして、生き血を提供しているのだ。
江利川くんはただ、「視ていく?それでもいいけど」とだけ、言ってくれた。
「何の用?」とか「邪魔するなよ」とか言われていたら、気の小さいぼくはすぐに引っ込んで、そそくさと家路に戻ったに違いない。
あとできいたら江利川くんのほうでもそう思って、ちょうど気の乗ってきたところでぼくが邪魔をしたことを、わざと咎めなかったのだそうだ。
江利川くんの問いに、ぼくはだまって頷いていた。

いずれはぼくも吸血を受ける立場なのだと、わかっていた。
ただそれがいつで、だれから吸血されるのかはわからない――と、父さんが教えてくれていた。
父さん自身も、だれかに吸血されるはずだけれども、それがいつで相手がだれなのかもわからないのだそうだ。
ぼくは、江利川くんさえよければ、いま江利川くんの血を吸っている男でも良いと思い始めていた。
いちど起きあがった江利川くんはふたたびうつ伏せになって、男は今度は江利川くんの足許にかがみ込んでいって、ねずみ色のハイソックスのうえから、ふくらはぎに唇を吸いつけていた。
その様子は、ひどくSexyに、ぼくの目に映った。
ユニセックスな印象を与えるハイソックスごしに唇を吸いつけられて吸血される――
自分が女の子になって襲われているような錯覚に襲われたのだ。
男は暫くの間、江利川くんのハイソックスの舌触りを愉しむように、ハイソックスの脚をくまなく舐め抜いていた。
そしておもむろに、ふくらはぎのいちばん肉づきのよいあたりに、牙を埋めていったのだ。

「どう?感想は」
江利川くんが乾いた声でふたたびぼくに話しかけたのは、
ひとしきり吸血行為がすぎたあとのことだった。
ぼくたちは3人、草地に腰を下ろして車座になっていた。
襲うほうと襲われるほうとの関係なのに、
吸血鬼の男の人も、どこかそんな状況を許せるような、ひっそりとした印象を受けた。
「どうって訊かれても困るか」
ははは・・・と、江利川くんは笑った。
邪気の無い笑いに釣り込まれて、ぼくもちょっとだけ、笑った。
「きみも知っているだろうけど、ここの生徒はみんな、吸血鬼の彼氏がいるんだ。
 男女を問わず」
「そうなんだね」
ぼくも相づちを打った。
ぼくの相づちに、吸血鬼の男の人は、ほっとしたような気配を泛べた。
彼のことをぼくが、一方的に忌み嫌うかと思っていたらしい。
「ぼくたちは若い血で、彼らをなんとか癒してあげようとしているんだけど、
 彼らの仲間もこの街のことを聞いて集まって来るから、
 街はいつでも血液不足――」
江利川くんは謡うようにうそぶいた。
「彼らひとりを養うのに、健康な大人がだいたい七人くらいつけば、
 人間も死なず、吸血鬼も穏やかに暮らせる。
 ――あ、そうそう。彼らは人を殺めないからね。基本的に。
 それで、ぼくの彼氏のこのひとのばあい、まだぼくとぼくの両親だけしか、
 ”お客さん”がいないんだ」
”お客さん”って、どういう意味か分かるよね?
もちろんわかるよと、ぼくはこたえた。
江利川くんの説明は分かりやすかったし、落ち着いた声色にも好感が持てた。
それに、自分が勝手に話すだけではなくて、ぼくのわかり具合にまで気をまわしてくれるのが、無性にうれしかった――都会では、ぼくには友達らしい友達がいなかった。
「3人だとたいへんだね」
「よかったら――」
そのときだけ少し口ごもった江利川くんのあとを、ぼくが引き取った――自分でもびっくりするくらい、すらすらと。
「ぼくも、この人の”お客さん”になることはできるのかな」

その晩ぼくたちは、おそろいのねずみ色のハイソックスの脚を並べて、
二人して吸血鬼の小父さんを満足させた。
少し貧血で眠くなったりしたけれど。
初めて体験する頭の重ささえ愉快に思えるほど、ぼくは満足を感じていた。
小父さんと江利川くんとの、記念すべき出逢いの夜だった。

3人の花嫁候補

2020年07月29日(Wed) 08:27:00

パパが吸血鬼の小父さんと仲良くなって、
ママが小父さんの恋人になると、
小父さんにサービスしてあげてきたハイソックス代を、出さずに済むようになった。
いつものお小遣いとは別枠で、ママが出してくれることになったからだ。
これは、じつにラッキーだった。

ママがパパ以外の男の人の恋人になることを、
まだ子供だったぼくは、軽く考えていたけれど。
それでもパパのことを、ちょっと気の毒だと感じたものだ。
けれどもパパは、小父さんとすっかり打ち解けた関係になっていて、
人間の血と女の人の身体に飢えていた小父さんのために、
最高のプレゼントをしてあげたんだとぼくに語った。

けれども、それで問題のすべてが解決したわけではなかった。
吸血鬼と人間が、お互い健康に共存するためには、七人の人間が必要らしい。
ぼくたちは、まだ三人だった。

けれども、ぼくの周囲の人間に、ぼくたちと同じ体験をさせてあげる作業は、とても楽しかった。
パパは勤め先の若い女の子を小父さんに紹介したし、
ママは子供の頃からのお友だちで未亡人している人を択んで、
母娘ともに遊びに来てもらって、そこで小父さんの遊び相手を務めてもらった。
ぼくはといえば、ぼくより少し遅れて同じクラスに転入してきた男子を誘惑して、
半ズボンのすその下の太ももに、小父さんの牙をざっくりと埋め込んでもらうことに成功した。

その子はぼくのいちばんの友達になってくれて、
お姉さんのことをぼくに紹介してくれた。
ぼくのガールフレンドに ということだった。
自分に彼女もできないうちに・・・?と思ったけれど、
ぼくはよろこんで彼の好意を受け取った。
自分に彼女もいないのに?というぼくの疑問は、すぐに解けた。
ほんとうは、彼はかなりのシスコンで、
お姉ちゃんがだれかに姦られちゃうのを視てみたいという願望の持ち主だったのだ。
ぼくは自分の彼女を小父さんに紹介し、
小父さんはパパやママの紹介した子に引き続き、三人目の処女の生き血をゲットした。
吸血鬼に生き血を吸い取られて目をまわしてゆく制服姿のお姉さんを見て、
ぼくの親友が大いに昂奮してくれたことは、いうまでもない。

ところで、ひとつだけ問題が残った。
パパが選んだ勤め先の女性は、ぼくの花嫁候補だったのだ。
ママの選んだ未亡人の娘さんも、ぼくの花嫁候補だったのだ。
親友のお姉さんはすでに、ぼくの恋人になりかかってくれていた。
みんなみんな、ぼくのことを考えてくれているから、いいんだけど。
ぼくの花嫁がだれであれ、吸血鬼に狙われて犯される運命なのだと、
今さらのように思い知ったぼくは、
マゾな心をゾクゾクと昂らせてしまっていた。


あとがき
カテゴリ的には「嫁入り前」あたりなのですが、前々話から引き続いての話なので、「少年のころ」に分類しました。

「素晴らしき日常」一人称バージョン

2020年07月28日(Tue) 07:55:22

前作「素晴らしき日常」を、夫目線の一人称バージョンで描き直しました。
表現も多少、こちらのほうがこなれているかも。
読者の方には、どちらのほうが、共感いただけるでしょうか?


その日は日曜日でした。
週末、金曜の夜にわたしとわたしの家族全員が自宅近くの公園で吸血鬼に血を吸い取られると、
わたしは二日酔いのようにガンガンとくる頭痛を抱えながら食卓に向かいました。
そして、血を吸われたものにして初めて見分けがつくという傷口の咬み痕を、妻と息子の首すじにもくっきり浮いていることを認めたのです。
お互い、だれもが無言でしたけれども、各々が各々の首すじの咬み痕を確かめ合って、
お互いの身になにが起きたのかを察し合ったのです。

吸血鬼は、わたしたちの健康に一定の配慮をしていました。
いや、獲物を「もたせる」ことを考えていただけかもしれません。
いずれにしても、彼はわたしたちから生き血を得るのに、「なか二日」を置くようにしていたのです。
けれども、”中毒”してしまったわたしたちは、その「なか二日」を待ち遠しく感じる身体にされてしまっていたのです。
彼の渇きは、「なか二日」を待つことなくピークに達し、
わたしたちの忍耐力もまた、限界に達していました。
どうやらわたしたち意外に生き血の提供源を持たないらしい彼のために、
わたしたちは順繰りにでかけていって、すすんでその餌食となっていったのです。

吸血鬼もわたしたちも、お互いの思惑で悶々とした土曜日の夜を過ごすと、
その忍耐は早朝のわが家に鳴り響く電話の呼び出し音で中断しました。
「すぐに来てもらいたい」
受話器を握りしめるわたしは、家族が寝静まっているのを確かめると、そそくさと用意をして、自宅を出ました。
足許は、彼の好むストッキング地の薄い靴下で薄墨色に染めていました。

真昼間に血を吸われることに、抵抗は感じませんでした。
むしろ日光が彼に害をなさないと聞いて、ほっとしたくらいです。
「すまぬが血をいただく」
吸血鬼は手短かにそういうと、わたしの首すじに、否応なく咬みきました。
「ああああああ!」
あまりにもだしぬけだったので、わたしは思わず叫びました。
牙の食い込んだ傷口から、血潮がヌルヌルっとほとび出てきて、
執念を熱く滾らせた唇が、そのほとびに覆いかぶさりました。
働き盛りの血潮が、容赦無く吸い上げられるのを、
身体じゅうの血が傷口めがけて逆流するのを、わたしは感じました。

吸血鬼はベンチに腰かけたわたしのスラックスを引き上げると、足首に咬みついてきました。
そして、靴下の舌触りを上から下までくまなく楽しむと、
スラックスをさらに引き上げて、
貧血でその場に突っ伏したわたしのふくらはぎのあちこちに食いついて、
筋肉の咬み応えを愉しみながら、
四十代の働き盛りの血を漁り尽くしていったのです。

向こうから、妻がやって来るのが見えました。
いつの間にやら、彼に呼び出されたのです。
彼女はたちまち、貧血を起こしてぶっ倒れているわたしのすぐ傍らに抑えつけられ、
わたしと同じような経緯で、首すじをがぶりと咬まれてしまいました。
「アアーーッ!」
彼女もまた、わたしと同じように叫び声をあげながら、血を吸い取られていったのです。

妻が貧血を起こしてその場に倒れ臥してしまうと、
吸血鬼は彼女の足許に這い寄っていきます。
わたしが薄い靴下を穿いてきたのと同じように、
彼女もまた、吸血鬼の目を惹くようにと、
ツヤツヤとした光沢を帯びたストッキングを脚に通していました。

吸血鬼は、わたしの靴下にそうしたように、
クチャ、クチャ、ピチャ、ピチャと、生々しい音を立てて、
ストッキングをよだれで意地汚く濡らしながら、その舌触りを愉しんでいきました。

半死半生となったわたしのまえ、
妻のストッキングはみるもむざんに咬み破られ、脱がされて、
無防備に開かれた股間に、吸血鬼の逞しい腰が沈み込んでいきました。
すべてが、わたしの眼の前で行われたのです。
わたしは恥ずかしいことに、激しく射精しながら、
妻がその肉体を愉しまれる有様から目線を離せなくなっていきました。

吸血鬼はこれ見よがしにわたしの妻を愛し抜いたのですが、
私はむしろ、その様子に不思議な満足感をおぼえていました。
妻を通して、あるいはわたしに対する吸血行為を通して、
彼とは不思議な友情と好意とが、育っていたのです。
わたしは彼が夫婦の生き血を愉しみ、妻の貞操をも共有することに、
深い歓びを覚えるようになっていたのです。

夫婦ふたりの血が仲良く織り交ざりながら、
いまは親しい友となった吸血鬼の干からびた血管を潤してゆくことに、
わたしたちは、限りない満足を感じていました。

自分の妻を寝取った男は仇敵ではないのか?という疑問は、ごもっともだと思います。
しかしわたしは、妻の生き血を吸い、犯しまでした男が、
実は妻をしんそこ愛し、彼なりの敬意を交えて鄭重に扱っていることを感じ取っていました。
彼の敬意は、その真剣さと同じくらい手荒に妻を組み敷いて、
がつがつと性急にその血を求め、
衣装を荒々しく剥ぎ取りながら凌辱するという、荒っぽいやり方で発揮されました。
さいしょのうちは妻の惨状を心配しぃしぃ窺っていたものですが、
妻に対する彼の荒々しさは、恋情と敬慕の情の裏返しなのだとわかると、
むしろ安心して、最愛の妻を彼のなすがままに委ねていくようになりました。
妻自身も、本能的に、自身が激しく愛されているのを感じ取っていたようです。
そして、あえて手出しをしようとしないわたしのほうを、申し訳なさそうにチラチラと盗み見ながらも、
本能的に発してしまう随喜のうめきを、どうすることもできなくなってゆくのでした。

男二人は、妻を通して結ばれていました。
同じ女性を好きになったもの同士の連帯が、そこにはありました。
わたしは、江利川家の名誉が妻の不貞で損なわれることを厭わなかったし、
彼もまた、わたしのもとから妻を完全に奪い去ってしまうことはせずに、
あくまでわたしの妻であることを尊重しながら、
妻のことを江利川夫人として犯しつづけたのです。

金曜の夜、男でありながら彼に犯されたとき、
彼が股間に秘めた一物がわたしのそれよりもよほど大きく、大きいという以上にいかに歓びを含ませるものなのかを、体験してしまっていました。
その一物の物凄さのまえには、いかに貞操堅固な人妻であっても、いちころになってしまうと、わたしは確信していたのです。

彼がわたしたち夫婦をわざわざ公園までよびだしたのは、意味がありました。
真昼間の公園で妻を犯すことで、周りにわたしたち夫婦が彼の支配下に置かれたことを広めてしまおうとしたのです。
当家の恥はたった半日にして周囲に公になり、自家の不始末をさらけ出す羽目になりました。
けれども、そうした”事情”を抱えた家はじつに多かったので、
わたしたちは無責任な好奇の視線にさらされることは、ほとんどありませんでした。

吸血鬼は、わたしを不愉快にしない配慮をするために、
わたしが自宅を不在にしているときに奥さんをいただくと告げていた。
いわば、妻と密会を遂げると宣言されたのです。
わたしはそれを、受け容れざるを得ませんでしたし、むしろ厚意を感謝しつつ諒解を与えたのです。
けれども逆に、彼がわたしに、ふたりの熱々なところを見せつけたいと願うときにはいつでも、
これ見よがしに妻の放埓な痴態、媚態を目の当たりにさせられる羽目になりました。

吸血鬼氏の邸には、一家のだれもが自由に出入りすることができました。
たちのよくない含み笑いを泛べた彼に、わたしが招待されたときには、
妻と密会を遂げたときに必ずもらい受けるというショーツやストッキングのコレクションを見せつけられる羽目になりました。
その量の多さにへきえきさせられましたが、
同時にそれは、吸血鬼の妻に対する寵愛がひととおりではないことを示すものであったので、
わたしはむしろ満足を覚えました。
自家の名誉を破たんさせてまで与えた妻の貞操を好もしく思われていることで、
犠牲を払った甲斐があると感じたのです。

「素晴らしき日常」

2020年07月28日(Tue) 07:19:17

その日は日曜日だった。
金曜の夜に江利川家の家族全員が自宅近くの公園で吸血鬼に血を吸い取られ、
土曜の朝には各々が、首すじの咬み痕を確かめ合って、お互いの身になにが起きたのかを察し合った。
吸血鬼は自分の獲物を「もたせる」ために、生き血を得るのになか二日を置くことにしていた。
けれども彼の喉の渇きは、このころピークに達していた。
街に来て日がない吸血鬼を救うための血液を提供しているのは、まだこの家族だけだったからである。

吸血鬼は土曜日の夜を悶々とした気分で過ごし、朝が明けると、
まず主人である江利川氏を例の公園に呼び出した。
白昼のことだった。
江利川氏は、会社から支給されていた薄い靴下を脚に通して、公園に向かった。
「すまぬが血をいただく」
吸血鬼は手短かにそういうと、江利川氏の首すじに、否応なく咬みついた。
「ああああああ!」
働き盛りの血潮が、容赦無く吸い上げられた。
身体じゅうの血が傷口めがけて逆流するのを感じた。
江利川氏は強いられた血液提供を、声をあげながら受け止めた。
けれども、彼は彼なりに、妻を寝取った吸血鬼にじつは好意と友情を感じていたので、
彼のなすがままになっていった。

吸血鬼は江利川氏のスラックスを引き上げると、足首に咬みついた。
そして、靴下の舌触りを上から下までくまなく楽しむと、ふくらはぎのあちこちに食いついて、逞しい筋肉の咬み応えを愉しみながら、四十代の働き盛りの血を呑み耽った。
江利川氏は、吸血鬼が自分の血に満足していることを感じ、
むしろすすんで気前よく、生き血を振る舞いつづけた。

やがて江利川氏の妻も呼び出され、
貧血を起こしてぶっ倒れている江利川氏のすぐ傍らに抑えつけられ、首すじを咬まれた。
江利川夫人は、吸血鬼の好みを慮って、
夫が薄い靴下を穿いて家を出たのと同様に、
ツヤツヤとした光沢を帯びたストッキングを脚に通してきた。
吸血鬼は夫人の好意をありがたく受け止めて、
さっき彼女の夫のストッキング地のハイソックスにしたのと同じように、
ストッキングをよだれで意地汚く濡らしながら、その舌触りを愉しんだ。

半死半生の夫のまえ、夫人のストッキングはみるもむざんに咬み破られ、脱がされて、
無防備に開かれた股間に、吸血鬼の逞しい腰が沈み込んでいった。
夫は激しく射精しながら、夫人がその肉体を愉しまれる有様から目線を離せなくなっていった。
吸血鬼はこれ見よがしに夫人を愛し抜いたが、江利川氏はむしろ満足気であった。
夫婦ふたりの血が仲良く織り交ざりながら、
いまは親しい友となった吸血鬼の干からびた血管を潤してゆくことに、
限りない満足を覚えていた。

自分の妻を寝取った男は仇敵ではないのか?という疑問はもっともである。
しかし江利川氏は、妻の生き血を吸い、犯しまでした男が、
実は彼の妻をしんそこ愛し、彼なりの敬意を交えて鄭重に扱っていることを感じ取っていた。
彼の敬意は、その真剣さと同じくらい、手荒に妻を組み敷いて、がつがつと性急にその血を求め、衣装を荒々しく剥ぎ取りながら凌辱するという、荒っぽいやり方で発揮された。
さいしょのうちは気づかわし気に妻の惨状を窺っていた江利川氏であったが、妻に対する彼の荒々しさが、恋情と敬慕の情から来ることを察すると、自身の愛妻を彼のなすがままに委ねていった。
妻自身も、本能的に、自身が激しく愛されているのを感じ取っていた。
そして、あえて手出しをしようとしない夫に申し訳なく思いながらも、本能的に発してしまう随喜のうめきを、どうすることもできなくなっていった。

江利川氏は、妻に対する吸血鬼の好意を、認めることにした。
ともに同じ女性を好きになった同士として認め合い、
江利川氏は妻の不貞で損なわれる家の名誉を犠牲にすることをいとわなかったし
吸血鬼は彼の夫としての立場を尊重し、彼から妻を奪おうとはせず、
彼の妻をあくまで江利川夫人として犯しつづけた。

もしかすると、金曜の夜に男でありながら吸血鬼に犯されたことも、小さくはなかったのかもしれない。
吸血鬼が股間に秘めた一物が彼のそれよりもよほど大きく、大きいという以上にいかに歓びを含ませるものなのかを、体験してしまっていたから。
その一物の物凄さのまえには、いかに貞操堅固な人妻であっても、いちころになってしまうことを、彼は知り抜いていたのだ。

吸血鬼が江利川夫妻をわざわざよびだしたのは、意味があった。
彼はすでに夫人や息子の手引きで、江利川家には自由に出入りできたのだが、
ふたりをあえて白昼の公園で襲うことで、
近所のものたちに彼がこの両名を支配下に置いたことを広める意図があったのだ。
江利川氏は自家の不始末が公になる羽目に陥ったが、
そういう恥――というよりも事情――を抱えた家は実に多かったので、江利川氏が懸念したほど、彼や彼の家族は、無責任な好奇の目にさらされて不愉快な思いをすることはなかった。

吸血鬼は、江利川氏を不愉快にしないために、彼のいないときに夫人をいただくと告げていた。
いわば、密会を遂げると宣言したようなものだった。
けれども逆に、江利川氏に見せつけたいと願うときには、
江利川氏の意向は顧慮されることなく、
これ見よがしに夫人の放埓な痴態、媚態を目の当たりにさせられる羽目になった。

一家のだれもが吸血鬼の邸に自由に出入りすることができた。
江利川氏が招かれたときには、夫人と密会を遂げたときに必ずもらい受けるというショーツやストッキングのコレクションを見せつけられる羽目となった。
江利川氏はその量の多さにへきえきさせられたが、
同時にそれは、吸血鬼の夫人に対する寵愛がひととおりではないことを示していたので、
江利川氏はむしろ満足を覚えた。
自家の名誉を破たんさせてまで与えた妻の貞操を好もしく思われていることで、
犠牲を払った甲斐があると感じたのだ。

お約束の営み

2020年07月25日(Sat) 21:43:55

カーテンを開けると、アサヒがやけに眩しい。
ドラマなら、わたしも吸血鬼になって、灰になって崩れ落ちてしまうところだろう。
けれどもわたしは相変わらず人間であったし、しかも夕べからひどい貧血に悩む人間だった。

妻はわたしの隣のベッドにいた。
私たちが手分けして、ふたりを家まで運んだのだ。
最初は私が息子を、彼が妻を介抱した。
彼は妻をお姫様抱っこして、キスをしたり傷口を舐めたりしていた。
嫉妬でじりじりとしてきたわたしは、代わってほしいと彼に願った。
彼はふたつ返事で引き受けると、今度は息子にキスをしたり、傷口を舐めたりしていた。
彼は、彼流のやりかたではあれど、間違いなくわたしの家族を愛していた。
迷惑なやり方に違いなかったけれど

妻は、夕べの記憶がほとんどないようだった。
けれども肝心のことは覚えているらしく、わたしの前では後ろめたそうに、言葉を控えていた。
ただ、朝の支度があるので、彼女はそそくさと逃げるように、キッチンへと向かっていった。
息子もまた、どんよりとした顔をして降りてきた。
すでに制服に着かえていた彼は、首すじに咬み痕をくっきりと滲ませていた。
咬まれた者だけが見える傷口・・・と、吸血鬼は言っていた。
息子の傷口が見えるということは、息子もわたしの傷口がみえるということ。
妻にしても同じだった。
向かい合わせに食卓に着くと、
「いただきます」の前に、お互いがお互いを窺って、
それぞれの首すじに自分のものと同じ痕を見出すと、
それ以上なにも言わずに、黙って朝ご飯に取りかかった。


「どこまでご存じなの?」
息子が学校に行ってしまい、夫婦の部屋で二人きりになると、妻が訊いた。
「きみに恋人ができたことまでさ」
わたしはいった。
「あなたがとりもってくれたというわけね」
「・・・そういうことだ」
事実と違うことをいうときにどもる癖を、わたしはこのときも発揮した。
「ありがと」
妻はわたしの癖にはおかまいなく、言葉だけを素直に受け取った。
「あくまできみは、ミセス江利川だと言っていたぞ」
「そうね、江利川家の名誉を穢す不貞妻・・・」
妻は薄っすらと、誘うように笑った。
わたしは妻に飛びかかった。
ベッドのうえに押し倒された妻は、ちいさく叫んで、そのまま無言になった。

体験譚・目撃譚

2020年07月25日(Sat) 21:11:22

ワイルドな飲みっぷりだった。
足許からあがるキュウキュウという生々しい吸血の音に、わたしの鼓膜は痺れた。
傷口に蠢く唇の触感がじわじわと痛痒く、脳裏の奥までも伝わってきた。
それ以上に、体内の血液が急速に減ってゆくのが、身を刻むような感覚でわかった。

わたしだけは吸い殺されてしまうのか――そんなまがまがしい想像が胸を占めたが、
男はちがうと断言した。

牙を通して意思が伝わってくるのだ。
同時に、吸い上げられる血を通して、わたしの意思も伝わってゆくのだ。
嘘をつけない。けれども、いまさらその必要もない。
狂わされたわたしの理性は、家族と自分の血が等しく愉しまれることを、強く望んでいた。
わたしははっきりと、声に出して告げていた。妻の操を差し上げます――と。

それからは、一転して、吸血鬼映画がポルノ映画に早変わりした。
男は身じろぎひとつできないほどに失血したわたしを放り出すと、
倒れている妻のほうへとにじり寄った。
なんと間の悪いことか――妻はちょうど血を回復して、目覚めたところだった。
鼻息荒くのしかかってくる男がなにを求めているのか、彼女は瞬時に察した。
決して勘の鈍い女ではなかったから。
そして、腕を突っ張って、男の身体を引き離そうとした。
けれども、血の失せた細腕は、男の劣情を支えきることはできなかった。
気丈に突っ張った腕はあっさり折られ、妻は唇を奪われた。
彼女はわたしが気絶していると思ったらしい。

したら、助けてくれるの?と、小声で訊いた。
しなくても、もちろん生命は奪らないと、彼はいった。
主人に悪いわ、と、妻。
そんなことは良いではないか、と、男。
でも、どうしてもだめ、と、妻。
だが、どうしてもいただく、と、男。
言葉が切り結ぶあいだにも、腕と腕とはせめぎ合い、男はずいずいと勝ちを占めてゆく。
妻はとうとう、ブラウスを引き破られて、胸をあらわにされてしまった。
そして、ストッキングのガーターが丸見えになるほどスカートをたくし上げられ、犯されていった。
「あああ!あなたぁ!」
断末魔のような叫び声に、わたしは恥ずべきことに射精していた。

体験譚 ~ ご主人も。^^ ~

2020年07月25日(Sat) 21:00:37

息子のタカシが吸血鬼を愉しませるために
半ズボンの下に穿いていった妻のストッキングを脱がされて。
妻が手渡した、通学用のハイソックスに履き替えて。

ふたりは息せき切ってはずむ肩を並べて、手近な芝生の上にうつ伏せになって。
妻は艶やかな光沢を帯びたストッキングのうえから、
息子は通学用のねずみ色のハイソックスのうえから、
それぞれ、吸血鬼の欲情衰えぬ唇を、容赦なく吸いつけられてゆく。

ふたりは各々、唇をふるいつけられるたび、
顔をあげて足許を省みては、眉を翳らせ唇を歪めて、
自分たちの足許を辱め抜く吸血鬼の意地汚いやり口に、非難のこもった目線を送った。
けれどももはやそれ以上は抵抗をせずに、
その喉の渇きを癒すため、自らの生き血を許しつづけて、
その嗜虐心を満足させるため、足許を辱め抜かれて、
やがてどちらからともなく眠そうに目をこすり始め、
深い眠りに落ちていった。

さいごに妻が、頭をガクリと垂れてしまうと。
わたしは生垣から顔を出し、吸血鬼のほうへとまっすぐに歩みを進めた。
息子が何度もこのような奉仕をしているのだから、
ふたりが血を吸い尽くされたわけではない――と、わかっていた。
男はふたりの上に、なおも代わる代わるのしかかり、
獣が自分の児をいとおしむようにその身をなぞるように撫でながら、
なおも血潮を舐め、生々しい音を洩らして啜り取っていた。

どうやら彼は、わたしの家族を、彼なりのやりかたで愛している――
わたしはそう思わずに、いられなかった。


家族が吸血鬼に生き血を吸われているとき、夫や父親がなすべきことは、
まず家族を彼らの魔手から、救い出すことだろう。
それができない場合にはどうすべきか?
家族のために死を選ぶ・・・という道も、否定はしない。
けれどもわたしが選んだのは、
家族ともども血を吸われ、妻や息子の強いられている負担を分かち合う――ことだった。


「やっと出てきてくださったな」
吸血鬼はわたしにいった。
わたしが様子を窺っていることを、先刻承知のうえだったらしい。
それでいながら。これ見よがしに。
彼は息子の制服姿を、文字通り足のつま先まで愉しみ尽し、
妻のブラウスを持ち主の血で彩り、ストッキングを咬み剥いで愉しんでいた。
「妻と息子はだいじょうぶなのか?」
わたしは訊いた。
その気遣いを承りたかった――男はいった。
そして、奥さんも息子さんも、勿論だいじょうぶだ、と、彼はこたえた。
「まだ血を吸い足りないのか?」
わたしは訊いた。
「まことに申し訳ないのだが――」
男ははじめて、わたしのほうへと、向き直った。
「息子さんにはすでにたびたび、奥さんにはきょうはじめて、
 喉の渇きを助けていただいた。
 ぢゃが、今夜に限ってどういうわけか、ひどく喉が渇いてならんのだ。
 いましばらく、お目こぼしをしてくださるまいか」

男はあくまでも、慇懃だった。
そして、体調が切迫していることは、平静を装いながらも急迫する息遣いでそれと知れた。
彼はそれでも、二人に対する気遣いを忘れてはいないらしい。
いとおし気に、気づかわし気に、息子の頭を撫で、妻の肩をさすった。
ふつうの献血のときでも、たまに貧血を起こすものがいる。
そうした場合、しばらく横になっていると血が戻ってきて、元気を取り戻すのがつねだった。
吸血鬼も、それを期待しているのだろう。
わたしはいった。
「貴男の獲る血に、わたしのものも加えてもらえないだろうか?
 男の血ではつまらないだろうけれども、
 夫として、父親として、ふたりのの負担を、少しでも減らしたいのだ」
わたしは恭順のしるしに、スラックスのすそを引き上げた。
男は目を光らせて、墨色に染まるわたしの足許に見入った。
わたしがその晩、妻の後を追って家を出る時脚に通したのは、
会社から支給されていたストッキング地のハイソックスだった。

勤務中はこれを着用するようにと渡されたときは、なんのことかわからなかったけれど。
事務所にも出没する吸血鬼は、しばしば社員の生き血を狙った。
その都度会議室や打ち合わせスペースに連れていかれた社員たちは、
首すじはもちろん、薄いナイロン生地を咬み破られながら、ふくらはぎからもしつような吸血を受けて気絶し、
しばしば救急車のお世話になるのだった。

どうしてこんな、男には不似合いに薄い靴下を身につけさせられるのか、
いまにしてやっとわかった。
支給された靴下の色は、紺と黒だった。
ふだんは紺を身に着けていたが、
今夜にかぎって黒を履いてきたのは、
決して間違った選択ではなかったはず。
喪を弔うとき、女たちは黒のストッキングを脚に通す。
妻の貞操の喪を弔うには、男にも黒のストッキングが必要なのだ。
有夫の婦人が吸血鬼の相手をするときは、貞操までもものにされるのだから――

男は例を言うのもそこそこに、わたしの足許に這い寄ると。
足首を抑え、くるぶしに唇を吸いつけて、
牙でくるぶしをこすると、噴き出た血を啜り始めた。
妻と息子の血に浸された淫らな喉を、こんどはわたしの血が浸していった。


飢えた吸血鬼を救うのに、さいしょに息子が血を与えた。
息子の貧血を救うために、妻もその身代わりとなった。
ふたりの健康を損ねぬために、夫のわたしも男の渇きを自分の血で救おうとした。


快感が、牙を通して伝わってきた。
根元まで刺し込まれた牙を、どうか抜かないで欲しいと、本気で願った。
息子と、そして妻までもが、
唯々諾々とうら若い血液を惜しげもなく吸い取らせてしまった理由(わけ)が、
身に沁みるように納得できた。

目撃譚2 ~妻の献血~

2020年07月22日(Wed) 07:22:45

その晩は、ひどく静かな夜だった。
傍らを見ると、隣のベッドに妻の姿はなかった。
息子の後をついていったに、違いなかった。
わたしはすでに、知っているのだ。
息子の血が、吸血鬼によって愛されていることを。
けれども妻にとっては、まだそれは疑念に過ぎないはずだ。
なにが妻をかりたてたのかはわからないが、
息子の行動に疑念を持った妻は、
その疑念を解決する試みをためらわなかった。
そこに邪悪な罠が待っているということを、
彼女はたぶん、まったく意識していなかった。
わたしはひと呼吸、ふた呼吸、そしてもう少しだけ――間をおいてから、
わたしはベッドを抜け出した。

妻がどこに脚を向けたのかは、よくわかっていたから、
わたしは真っ暗な一本道を通り抜けて、なんなく公園にたどり着いた。
夜の公園は、先日訪れたときと同じように、周囲の暗黒の中でただそこだけが、
まるでナイターか劇場の舞台のように、街灯にこうこうと照らし出されていた。
生垣の外から、公園のなかを窺ったとき、一歩遅かったと思わずにはいられなかった。
妻はあの男に抱きすくめられて、首すじを咬まれ、
ちょうどわたしが”舞台”の上を覗き込んだとき、
純白のブラウスに赤黒い血のほとびを撒き散らしてしまっていたのだ。

二人の姿は、映画のラヴ・シーンのように、わたしの網膜を染めた。
それくらいぴったりと二人は寄り添い合って、
片方はひたすら慰めをむさぼり、
もう片方は望まれるままに施していた。
それが血液の採取という、おぞましい手段によるものだったとしても。
あの瞬間二人はすでに愛し合い、いたわり合い、求め合っていたのだ。
もはや夫であっても、出る幕はない――わたしはそう観念した。
そして、目線をはずすことさえ忘れた夫の前、
視られていることに気づかない人妻は、口づけさえも交えながら、
吸血鬼の欲するままに、三十代の人妻の生き血を採られつづけていったのだった。

愛する妻と一人息子の生き血をむざむざと、吸血鬼の喉の渇きのままに吸い取られてしまいながら、
わたしは彼の所業を妨げることができなかった。
夫であり父親であるわたしとしては、
まず妻や息子の体内をめぐる血液を抜き取られてゆくその現場に割り込んででも、
そのおぞましい行為を止めさせるべきだった。
ところがわたしときたら、二人が代わる代わる献血に励むのを目の当たりに、
家族の生き血が彼を慰め愉しませることに誇りと歓びさえ感じながら、
むしろ、夫としての責務を放棄することで、彼らの献血に間接的に協力してしまっていたのだ。

なんとでも、罵ると良い。
あの場に居合わせたことのないものに、いまのわたしの心情は、とても理解できないだろうから――

目撃譚・1 ~息子の献血~

2020年07月22日(Wed) 07:22:32

あのとき、どうして表に出ようとしなかったのか。
目の前で、息子が吸血鬼に生き血を吸い取られようとしているときに――
目の前で、同じ吸血鬼に、わたしの妻が犯されようとしているときに――
わたしの不作為は、父親として、夫として、男として、きっと恥ずべき行動だったに違いない。

たしかに、赴任する際に説明はうけていた。
息子はなにも知らないでいたが、妻は明らかに知っていた。
けれどもそれは、言い訳にはならないだろう。
いったいどうして、わたしはあのとき、不作為に徹することができたのだろうか?

その晩は、けだるい湿気に支配された闇が、どこまでも広がっていた。
取引先に引き留められて、思いのほか遅くなった帰り道。
いまだかつて、暗くなる前に家に戻れない日はないほどだったので、
あらゆることが勝手が違っていた。
自宅に通じる田舎の真っ暗な一本道を、
微かに指す遠方の光をたよりに足許を確かめながら歩きつづけると、
家の近くまで来た証拠に、見覚えのある公園の生垣が若葉を光らせているのが見えた。
公園のなかには街灯があり、そこだけがまるでスポットライトに照らされた舞台のように、明るく浮き上がって見えた。
その”舞台”のいちばん奥まった隅っこにベンチがしつらえられていて、
人影がひとつ、ベンチに腰かけているのがなんとなく目を惹いた。
息子だった。
息子は一人ではなかった。
背後の、ベンチの背もたれごしに、寄り添うようにして。
黒い影がひっそりと、息子を羽交い絞めに抱きすくめていた。
わたしはぎょっとして、足を止めた。
黒影の主の目線がわたしをとらえ、わたしも彼と目線を合わせ、
そして、痺れたように、その場に立ち尽くしてしまったのだ。
男はわたしを金縛りにかけてしまうと、
そろそろと息子のシャツのえり首からむき出された首すじに目線を転じ、
転じたかと思った刹那、食いついていた――

ちゅう・・・っ。
ひそやかにあがる吸血の音にわたしが感じたのは――あろうことか、恍惚と陶酔だった。
わたしと同じ血が、吸血鬼によってむさぼられている。愉しまれている。
そんな彼の感情が、ありありと伝わってきたのだ。

息子はといえば、甘苦しい翳りを帯びた眉をピリピリとナーバスに震わせて、
ただ、相手の意のままになっていた。
決して歓迎しているわけではないけれども、
決して忌み嫌うわけでもないのだった。
ひざ小僧をギュッと合わせ、ハイソックスの脚を女の子みたいに内またにして、
えもいわれない快感がわきあがり、それに歯噛みをして耐えていた。

ひとしきり血を啜り取ると、息子はぐったりとなった。
黒影は息子をいたわるように後ろから撫で上げて、しばらくのあいだ様子を窺っているようだった。
獲物の弱り具合を見つめる獣のような冷酷さはそこにはなく、
身内の容態を気にかけるいたわりに満ちた目線がそこにはあった。

やがて息子が落ち着きを取り戻すと、
黒影はベンチの陰から這い出てきた。
男は、吸血鬼はこういうものだ、と、いわんばかりの、クラシックな黒マントを帯びていた。
彼は息子の足許にかがみ込むと、息子は白い歯を見せて笑った。
打ち解けた笑いだった。
もうすでに、なん度もこうした逢瀬を愉しんでいるのだろう。
灰色の靴下ごしに唇を吸いつけてくる男を拒もうとはせず、
靴下の舌触りを愉しんでいるのか、学校の制服を辱めて愉しんでいるのか、
きっとその両方に違いないのだが、
男はひたすら夢中になって、息子の下肢に唇や舌をふるいつけていった。
そうして、しばらく間が経って、息子の顔に血色が戻ると、
靴下のうえから唇を這わせて、グイッと牙を埋め込んでいった。
「ぁ・・・」
息子がひそかな声を洩らした。
そのうめき声には、間違いなく随喜の色が含まれていた。

ちゅう・・・っ。

ふたたび吸血の音が、今度は息子の足許からあがった。
黒影の男は夢中になって息子の血を吸いつづけたが、息子を吸い殺す意図を持っていないのが、今までの振舞いから察することができた。
わたしは力の抜けた足取りで、その場を離れた。

どうして吸血鬼の、息子に対するいかがわしい行為をやめさせなかったのか?
どうして息子の、吸血鬼のための献血を押しとどめなかったのか?
わたしにはごく当たり前のその問いに、うまく応えることができない
けれどもーー
あの時息子は、明らかに悦んでいた。
二人の間には、通い合い想い合う温もりを持った感情が行き交い、余人の入り込む余地はなかった。
いまでもそれは、確かにいえることだった。
もとより、父親としての応えにはとうてい、ならないだろうけれど――


黒影の主とはその後いちどだけ、顔を合わせた。
そう、赴任先の数少ない取引先のオーナーとして。
男は初対面のころからの乾いた無表情を年老いた目鼻立ちに漂わせ、
いつも通りに契約書にサインをして、律儀なぶきっちょさで契約書を折りたたみ、封筒に入れて渡してくれた。
永年ひとりで営業してきた印刷工場の一角でわたしと向き合うその男は、
一国一城のあるじの矜持と、仕事に対する謙虚な律儀さと、隣り合わせに座っていた。

さいしょは私も、気づかなかった。
度重なる労働で擦り切れかけたような古ぼけた作業委を着て、齢不相応に老け込んだ初老の男と、
大時代的な黒マントを羽織り、年頃の息子を手玉に取って、つややかな唇でその生き血を口に含んでいった男と、
まさか同一人物だとは、思いもよらなかったのだ。
その男があの言葉を囁かなかったら、わたしはわからずじまいでその工場を立ち去っただろう。
男が黙っていなかったのは、わたしを愚弄するためではなくて、ただ律儀だったからに違いなかった。

息子さんは、佳い血液をお持ちだ。
いつも感謝しております。

ただそう告げると、ぼう然となったわたしを置いて、輪転機のけたたましくまわる、彼の持ち場へと戻っていった。
男は作業衣の下に、齢不相応に半ズボンを履いていた。
半ズボンの下、ひざ下までの靴下は、息子のものと同じ柄だった。
男は息子からせしめたハイソックスを見せつけながら、わたしの前から姿を消した。


〇△事務所に、転勤を命ずる。
・赴任地での業務 休養および自己の趣味に基づいた活動
・支給される手当 血液提供手当
 見返りに、赴任地に棲む吸血鬼を相手に、血液の提供を義務づける。
・必ず家族を帯同されたい。
 血液提供の対象は、家族全員が含まれる。
【備考】既婚女性および性行為の経験のある者は、
     血液を提供する際、吸血鬼との間に性的関係を結ばなければならないことを諒解すること。

都会で暮らせなくなったわたしたち一家は、
すんでのところで一家心中の危機を脱した、
その代わりに与えられた辞令は、妻にも事前の閲覧を義務づけられ、自署で諒解の回答を提出している――
都会で生活の場を失ったわたしは、自分と家族の血液を提供することを、了解していた。
もちろんそれが、これから語るわたしの振舞いを弁解するものにはならないだろう。
わたしはどこまでも、妻を、息子を、守るべき存在なのだから――

塗り替えられた記憶に基づく日記。

2020年07月20日(Mon) 07:38:47

7月15日 曇
(中略)
夜22時、約束を守って外出。(制服着用)
いつもどおりに、ご奉仕。
人助けをする満足感。そして、えもいわれない快感。
制服着用にまつわる、ほんの少しの後ろめたさ。(詳しくは書けない)
自分の血をその人と共有することに、不思議な歓びを感じる。

深夜の未成年の一人歩きは、法律的に良いことではないらしい。
後ろめたいことはなにもないつもりだけれど、家の近くまで送ってもらう。
家に入れてもらいたいと言われるが、深夜なので謝って断る。
あとで調べたら、いちど彼を家にあげてしまうと、いつでも出入りできるようになるらしい。

家族を起こさないように部屋に戻り、就寝。


7月18日 晴時々曇 この季節にしては涼しい一日。
(中略)
夜22時、小父さんと約束した公園に行く。ぼくの生き血を愉しんでもらうために。
こんなふうに、日記にもあからさまに書くことができるようになったのが、心から嬉しい。
詳しくは書けないでいたけれど、今夜はすべてを描いてしまおう。
もはや、ママにこの日記を見られてもだいじょうぶなのだから。

このところずっと、3日に一度、
この街に棲みついて間もない吸血鬼の小父さんを相手に、
ぼくは献血活動を行っていた。
家族に心配をかけたくなかったので、黙って深夜に家を出て、小父さんに逢っていた。

小父さんはぼくの通っている学校の制服を気に入っていたので、
いつも制服を身に着けて、いつも学校に履いていく通学用のハイソックスを履いた脚を咬ませてあげていた。
小父さんは、首すじも大好きだけれども、
丈の長い靴下を履いたふくらはぎや太ももを咬むのも好きだから。

ハイソックスを咬み破られることは、クラスメイトを裏切るような、後ろめたい気がしたけれど、
逢瀬を重ねるにつれて、それがえも言われない快感になっていた。
むしろ、禁忌を侵すことが小父さんを満足させることで、
ぼくも歓びを覚えるようになっていた。
ママに知られないようにハイソックスの入手先を調べたことも、
少しばかり社会勉強になったかも。

そして今夜は、小父さんが以前から欲しがっていた、
ママが一度脚に通したストッキングを制服の半ズボンの下に穿いて、逢いに出かけた。

夜風が薄々のストッキングの脚にそらぞらしくて、歩いているだけでドキドキした。
ママのストッキングにまつわる後ろめたさと、初めて脚に通した薄地のナイロンのしなやかさとが、
ぼくの心のなかで、きょうの行為をよしとするかどうかの、綱引きをしていた。
どこかで、ママといっしょに夜歩きをしているような錯覚も芽生えて、ゾクゾクとした昂りさえ感じていた。

小父さんはぼくが貧血を起こすと、自分がまだ満足していなくとも、しいて血を摂ろうはしない。
自分の顔色が蒼いままでも、ぼくをかばおうとするのだった。
だから、小父さんの希望は可能な限りかなえてあげたくなるのだ。
ママのストッキングを咬み破らせてあげることは、
ママを小父さんに売るようでドキドキしたけれど、
むしろそんな気分が、言葉に言い尽くせないほどの快感になった。

このごろのママは、ぼくが内緒で小父さんに献血しているのを、なんとなく感づいているような気がした。
小父さんに若い血を愉しんでもらう行為は慈善事業だとぼくは思っているけれど、
ママに打ち明けることはできずに、心の中でひっかかっていた。
不行儀なことを嫌うママのことだから、夜の外出を禁止されてしまいそうで。。

いくらぼくのお小遣いで買っているからとはいえ、
学校指定のハイソックスに赤黒い血のまだら模様を着けてしまうことには、
きっと露骨に顔をしかめるだろう。
あのじんわりと血が滲むときのなま温かさですら、いまのぼくには快感になっているのだけれど。

小父さんは小父さんで、どうやらママに逢いたがっているようだ。
あからさまに口に出してはまだ言われていないけれど。
それできっと、ぼくにママのストッキングを穿かせて、愉しんでみたくなったのだろう。
ぼくはママの身代わりになったつもりで、ストッキングの脚を小父さんのまえに差し伸べた。
小父さんは舌をふるいつけて、ママのストッキングを唾液で濡らし、
くまなく唇を吸いつけて、ヒルのように蠢かせて、薄地のナイロン生地をよだれまみれにしていった。
ぼくたちはふたりして、ママを辱める遊戯に熱中した。

血を吸い取られた後、ぼくたちは初めての口づけを交わした。
ぼくの身体から吸い取られた血潮の錆びたような芳香が、ぼくの鼻腔の奥まで浸して、
小父さんはこんな味のするぼくの血を愉しんでいるんだと実感した。
いい匂いだね、と、ぼくがいうと、小父さんは嬉しそうに笑い、きみにもそれがわかるようになったのだね?と、いった。
ぼくはぼくの血をいちど吸ってみたいと、ふと感じた。
男女を通じて、キスをするのは初めてだった。
ファースト・キスの相手が小父さんであることに、ぼくは誇りと嬉しさと、両方を感じた。
まるで恋人同士の男女の口づけのように、ぼくたちはなん度も、口づけを交わした。
小父さんも、きっと、夢中になっていたと思う。
それは血を吸われるのにもまして、ぼくたちにとって至福のひと刻だった。

「あなたたち、なにをなさっているの!?」
誰何の声が、鋭い稲光のように耳を突き刺したのは、そんな最中のことだった。
振り向くと、そこにママがいた。
ママは目を吊り上げていて、明らかに怒っていた。
ぼくはヒヤッとして、小父さんの背中に回していた腕を慌ててほどいた。
そのときはじめて、ぼくは小父さんの背中に腕をまわしていたことに気づいたほど、ぼくは夢中になっていたのだ。

小父さんの動きは、素早かった。
すぐさま身を起こしてママに飛びかかると、黒マントでママを包み込むようにして、抱きすくめてしまったのだ。
ママはいつも家で着ている純白のレエスのブラウスに、空色のロングスカートを穿いていた。
その姿がすっかり隠れるくらい、小父さんのマントは大きかった。
まるで、ママの姿ぜんたいが、闇のなかに埋没したようだった。
小父さんは目にもとまらぬ素早さでママの首すじを咬んで、じゅるうッ・・・と音を立てて血を吸った。
そして牙を引き抜くと、バラ色のほとびがびゅうッと飛び散った。
ママの身体から吸い取られた血潮は、純白のブラウスに点々と散って、不規則なまだら模様を描いた。

ママは口許を抑えてうろたえたが、小父さんは容赦しなかった。
もういちど、首すじにつけた傷口に唇を吸いつけると、さらにキュウッ・・・と音を立てて、ママの血を吸った。

キュウッ、キュウッ、キュウッ・・・

ひとをくったような音をたてて、ママの生き血は吸い上げられ、むしり取られた。
小父さんはさりげなくママの立ち位置を移していって、
貧血を起こしたママが尻もちをつくと、そこはベンチの上になっていた。
「お召し物を汚すといけませんからな」
小父さんはいつもの落ち着いた、紳士の声色に戻っていた。

ぼくは、ママに手を出さないで!死なせないで!と、小父さんの背後に取り付いて訴えていた。
けれども、その心配はなかったのだ。
小父さんは、ママを死なせるどころか、着ている服を汚すことにさえ、気を遣ったのだ。

「でも、ブラウスは汚れてしまいましたわ」
「赤の水玉もようが、チャーミングだ」
小父さんの言い草は詭弁だと思った。
真っ白なブラウスに不規則に散らされた血潮はむしろ毒々しく、ホラーな感じがしたからだ。
けれどもママはゆったりとほほ笑んで、
「貴男がそうおっしゃるのなら、きっとそうなのでしょうね」
と、あえて異を唱えようとはしなかった。
いつもの気が強くて潔癖で、少しでも気に入らないことがあると眉を逆立てるママだったけれど、
この穏やかさ、従順さはきっと、よそ行きの態度に違いないと思った。
親戚の結婚式などでは、別人のように優雅にほほ笑んで、やさしい声色でころころと笑ったりするくらいだから。

ママはぼくのほうを振り返ると、破けたストッキングを通したままの足許を見つめた。
ぼくはどぎまぎとしてしまった。
けれどもママはそれでもゆったりとしたほほ笑みを消さずに、いった。
「いいのよ、タカシ。ストッキングがよくお似合いね。時々ママのを穿くと良いわ」
いいの?と、ぼくが訊くと、
「その代わり、ママの箪笥の抽斗に、黙っておイタをするのは止して頂戴ね」
といった。ぼくは、一言も無かった。

「あなたは学生らしく、ハイソックスを。
 ママは女らしく、ストッキングを。
 脚に通して、その脚を並べて、しばらくご奉仕しましょうね。」
ママは用意の良いことに、通学用の真新しいハイソックスを携えてきていた。
破けたストッキングは、小父さんが脱がせてくれた。
自分がせしめるために――とわかっていたけれど、ぼくはありがとうを言いながら、唯々諾々と脱がされていった。

ママと2人、肩を並べて芝生にうつ伏せに寝転がると、ママはぼくの掌を、自分の掌で包み込むようにして、握った。
温かな体温が伝わってきた。
「冷たい手をしている」
と、ママはいった。
「まだ大丈夫?」
とも、気遣ってくれた。
「ぼく、小父さんにぼくの血をあげたいんだ」
ぼくがそう応えると、
「あのひとも、そのつもりのご様子ね」
と、いった。

さいしょに、ぼくのハイソックスのふくらはぎに。
それから、ママのストッキングの足許に。
小父さんのしつような唇が吸いつき、舌が這いまわる。
空色のロングスカートをゆっくりとはぐり上げ、ママの足許に唇を吸いつけるのを目にして、
そしてその唇が、薄いナイロン生地を咬み剥いで、裂け目が上下に走り、拡がってゆくのを目にして、
ぼくは失禁しそうなくらいに、昂りを覚えていた。
ぼくがはっきりと記憶しているのは、そこまでだった。

まさかとは思うけれど。
そのあと、ぼくはたしかに、
ママのはだけたブラウスのすき間から、
なだらかな乳房の隆起をかい間見たような気がする。
そんなはずはないと思いながらも、いまもその幻影に悩まされている。

小父さんは、それから先、ママになにをしたのだろう?
けれどもぼくはいつの間にか家のベッドのなかにいて、
階下のリビングに降りてゆくと、ママがいつものように、パンケーキを焼いていた。
「早くおあがりなさい。学校に遅れてしまうわよ」
という口調も、いつものままだった。
確か夕べも、「たっぷりとおあがりください」と、小父さんに言っていなかったっけ?
でも、新聞を片手に無表情に朝ご飯を食べているパパの様子をみていると、
とてもそんなことは口にすることはできなかった。

パパが出勤してしまうと、ママがその時だけは、いつもと違うことをいった。
「さっきもパパの前でなにも仰らなかったから、わかっているとはおもうけど――
 夕べのことは、パパには内緒ですよ」
ママは艶やかに笑っていたけれど、目だけは笑っていなかった。

善意が生んだ”悪果”

2020年07月19日(Sun) 14:39:15

デートに誘われた女の子が、彼氏を悦ばせるためにミニスカートを穿いていくというのは、よくあることだろう。
同性愛嗜好の男子生徒が、やはりパートナーを悦ばせるために学校に申請をして、女子生徒として通学することも、
まあ良いだろう。
ところで、ぼくの場合、相手は吸血鬼。
彼が欲しがる若い血を摂らせてあげるのに加えて、その時彼の気に入るように制服を着ていくことは、
前の二者と同じように褒めてもらうことができない行動なのだろうか?

幸いぼくのパートナーは、ぼくの制服姿を気に入ってくれていて、
その制服も日常身に着けているものだったから、
ぼくはただ学校帰りに彼に咬ませるための真新しいハイソックスを鞄にしのばせて下校の道をたどるだけでじゅうぶんだった。

あれからひと月が経とうとしている。
ぼくは通学用のハイソックスを家族に隠れて入手する手づるを覚えて彼と逢瀬を重ね、
血を吸われる愉しみ、制服姿で辱めを受ける歓びを覚え込まされてしまっていた。

彼はそのうちに、もっと違うことをぼくに要求し始めるようになっていた。
妹さんの紺のハイソックスも、美味しそうだね・・・と、
なにも知らない妹が公園でボール遊びをやっているのを横目に見て囁きかけてきて、
あの細っそりとした首すじや、発育のよろしい太ももに咬みついてみたいものだと、おねだりに近いことを呟いたり、
ママのストッキングも、面白そうだね・・・と、
法事の帰りにぼくだけ家族と別れて公園に行って、制服姿を愉しませてやったときも、
黒一色の喪服のすその下から覗く、薄墨色に染まったふくらはぎを遠目に見やりながら唸ったり、
そんなことがつづいたのだった。

べつだん、ぼくに飽きたから、目先を変えてやろうという魂胆ではなかったらしい。
彼はぼくの健康には必要以上に気を使っていて、
どんなに頻度が高くても、三日にいちどしか、吸血の機会を創ろうとしなかったのだ。
そして彼自身はこの街に来てからそう長くは経っていなかったので、
ぼく以上に協力的な血液提供者にはまだ、恵まれていなかった。
若い血液を得るのにぼく以外をあてにするとしたら、
ぼくに最も近い、ぼくの家族くらいしか、お互いに思いつかなかったのだろう。

「お互いに」――そう、本当に「お互いに」だった。
ママは持ち前の勘の鋭さから、ぼくの背後に誰か胡散臭い人影を見出すようになっていた。
ハイソックスの数が減っていないというだけでは、ママの目をごまかすことはできなかったのだ。
始終ぼくと接して、食べるものの多い少ない、疲れの深い浅い、すべてを知っている相手だったから、
心の中まで見通せるほどに鋭く、ママはぼくのことに感づいていた。

ぼくは小父さんにせがまれるままに、
ママの留守中夫婦の寝室にある箪笥の抽斗を開けて、ストッキングを一足盗み出していた。
それは残念ながら法事の時に脚に通していた黒ではなく、ふだん履きの肌色のものだった。
ママはふだん家にいる時も、スカートの下にはストッキングを着ける習慣を持っていたのだ。
「いちどは母御がおみ脚を通されたものがよい」というコアな条件がつけられていたので、
心臓をドキドキさせながら、震える手で引き出すことのできた唯一の成果だった。

震える手で、脚の形をした薄い肌色の薄絹を手に取って、
ぶきっちょなやり口でつま先をたぐり寄せて、
爪の先とストッキングのつま先とをぴったりと合わせると、じわりじわりと引き伸ばす。
ぼくの脚は一瞬にして、淡い光沢を帯びた薄地のナイロン生地のしなやかさに、なまめかしく染まった。

くくくくく・・・
小父さんは嫌らしい含み笑いを泛べると、ぼくの足許に這い寄って、ちゅうっ・・・と唇を吸いつけた。
ママのストッキングが唾液に濡れるのを感じて、ぼくは股間を昂らせてしまった。
いけない、変な粘液で汚してしまったら、取り返しがつかなくなる――
けれども小父さんはそんなぼくの懸念にはお構いなく、ぼくの足許に夢中になっている。
前歯で甘噛みをしながら、薄地のナイロン生地をサリサリと歯がかすめた。
アッ、いけないッ・・・
と思う間もなく、ストッキングの生地が破けた。
じわっと裂けた薄い生地は、ぼくが焦って身じろぎするたびに、無音で裂けめを拡げてゆく。
あとはもう、お構いなしだった。
いつもと同じように、彼はぼくの脚のあちこちに咬み痕をつけて、吸血というよりも、”凌辱ごっこ”を愉しんでいたのだ。


ママが汚される。
ママが辱めを受ける。
足許にまつわりつく、いちどはママの脚に接したナイロン生地が、
吸血鬼の小父さんのあくなき容赦ない責めに耐えかねて、
引き破れ、咬み剥がれ、唾液に濡れてゆく。
ぼくは自分の下肢を見おろす視線を、それでもそむけることができなかった。
いま一度、背徳の実感がぼくの胸を衝(つ)いた。
――ママが侵される!!

小父さんの身体がぼくの下肢からせりあがってきて、
たちの悪い意地悪そうなほくそ笑みを泛べて、迫ってきた。
口許といわず、頬ぺたといわず、
ぼくの身体から吸い取った血潮が、テラテラと光っている。
くくくくくく・・・っ
小父さんはたち悪く笑みながら、ぼくの血で血塗られた唇を、ぼくの唇に重ねてこようとする。
いちどはそむけようとした唇は、なんなく捉えられてしまった。
軽く離され、ふたたび重ねられてきた唇に、
こんどは自分から応じていった・・・
錆びたような血の芳香がぼくを酔わせ、夢中にした。

「あなたたち、何をなさっているの!?」
厳しく鋭く尖った声が、闇のなかに響いた。
声の主を同時に見すえた視線の彼方に、いてはならない人がいた。
見慣れた白のレエスのブラウスに、薄青のロングスカート。
肩先に優雅にウェーブする栗色の髪を逆立てんばかりにして、
その人は憤怒の様相で、ぼくたちを見すえていた。
ママだった。


小父さんの行動は素早く、容赦なかった。
ぼくの上にのしかかっていた体重がだしぬけに去るのを感じた。
なにも知らずにぼくたちのいけない行為を厳しく咎めようとしたママに、
小父さんはムササビのように飛びかかった。

そのあとの記憶は、きっとどこかで歪められているような気がしてならない。
記憶そのものが頼りなく、たどたどしく、自分にとって好都合に展開し過ぎているような気がする。
けれども、それならそれで、いまは構わない。
ともかくも、記憶するままを、描いてみる。

小父さんはママに飛びかかると、黒いマントで白ブラウス姿のママを押し包んでしまった。
そしてなにが起きたのかも自覚できないまま、抵抗する事すら忘れたママの首すじに咬みついたのだ。
ググッと刺し込まれる牙を。
アッと叫ぶ赤い唇を。
口許からほとび出る血しぶきを。
キュウッと吸い上げられる吸血の音があがるのを、
ぼくは茫然となって、見つめていた。
ぼくは恍惚となって、見守っていた。

ママの首すじに吸いつけられた唇が離れ、
ほとび散る血潮がママの白いブラウスを真っ赤に染めるのをみて、
ぼくは、はっとわれに返った。
「だめ!だめ!だめだったらっ!!」
ぼくは叫びながら飛び出して、小父さんの背後に組みついた。
「ママには手を出さないで!」

小父さんはぼくを突きのけた。
ぼくは腰砕けになってその場に倒れそうになった。
かろうじて持ちこたえてふり返ると、
小父さんはもういちど、ママの首すじを咬もうとしていた。
「だめだったらっ!」
ぼくはもういちど、小父さんの背後にかじりついた。

「いいのよ、タカシ」
思いのほかゆったりと落ち着いた声が、ぼくの動きを麻痺させた。
声色にはいつものケンの鋭い棘がなく、表情を失った声だと思った。
そうだ、ママは咬まれちゃったんだ。
だとすると、いまのぼくと同じように、小父さんに尽くすことを最善だと感じているのかも――

小父さんはママを放した。
ママは貧血を起こしたらしく、ちょっとだけよろけたけれど、すぐに気丈に立ち直った。
小父さんはうやうやしくママの手を取って、手の甲にキスをした。
紳士の貴婦人に対する振舞いだと、ぼくはおもった。
「唐突に、まことに失礼しました」
小父さんはいった。
慇懃な謝罪に、ママは立ち直る余裕を掴んだようだ。
「あの・・・うちの大事な息子に、どういうことなんですの?」
ママらしい切り口上が戻ってきた――
でも、安堵してはいけない。
ママが正気を取り戻した以上、ぼくもまた小父さんといっしょに、咎めを受ける立場なのだ。
「この街は吸血鬼と共存しているとききましたが――」
「え、あ、はい」
ママが小娘のように、たじたじとなった。
「じつはこの街に来て間がないのです。
 そこで、たまたま通りかかったご令息に無理を申し上げて、血を頂戴するようになったのです」
「ずいぶん、お仲がよろしくなられたようね」
キスをしているところを視られたのだ。ぼくは腹の底がヒヤッとするのを感じた。
「最初は当然厳しく拒まれましたが、いまは事情を分かって下すって、寛大に接してくださっております」
「そ――そうですか」
ほんのちょっとの間だったけど。ママはまたも、小娘のようなうろたえを見せた。
「おつきあいを続けるつもりなのね?」
そういってぼくを見つめる眼差しには、悩ましい翳りを帯びていた。
その翳りがなにを意味するのか――ぼくにははかりかねた。
とまどい?うろたえ?
失望?怒り?
屈辱?悲しみ?
これから自分を襲う運命へのあきらめ?それとも――

歓び・・・?


ママはくすっと笑った。
そして、小父さんを見あげると、いった。
「息子の血を気に入っていただいて、育てた親としてはとても名誉に感じますわ。
 でも、大切な一人息子なので――大丈夫とは存じますが――死なさないでやってくださいませ」
もちろんです、と、小父さんはいった。
私にとって、この街で得られたまだ唯一の理解者ですからね、と。
「唯一ではございませんよ」
ママは意外なことを言った。
「わたくしも、理解者の一人に加えさせていただきます」

ママはぼくにいった。
「いけないじゃないの、ひとりでこの人の相手をするなんて――とてもじゃないけど、吸い殺されてしまうわ
 三日に一度以上吸われたら、体を壊します。
 だから三日経つと、呼び出されてここに来ていたのね。
 この方は、学校に届けも出されて、校長先生にもお会いにになっています。
 ちゃんと手続きを踏まれている方だから、安心して大丈夫。でも、一人ではだめ。
 ママが協力しますから、これからは軽はずみは慎むように」
「ママ、ごめんなさい」
素直にうなだれるぼくの頭を抱くようにして、ママは囁いた。
「キスくらいなら、構わないけど」


どうやらぼくは、ママを巻き込んでしまったらしい。
それが良いこととは、とても思えない。
さいしょは人の生き血を欲しがる小父さんに、善意の献血をしているつもりだった。
それが、多少エッチなやり方であったとしても、ふたりで愉しめる分には、内緒のいたずらで済むと思っていた。
けれども今、それがママの目に触れて、二人の関係を継続するのに突然の危機が訪れて。
ぼくを手放すまいとした小父さんはたぶん、催眠術のようなものをママに施すことで――たぶらかしてしまった。

あの一瞬、間違いなくママは悪役だった――ぼくたちふたりの仲を引き裂くという。
けれども小父さんの熱情は、ママの張った倫理的な予防線を、力ずくで突破してしまった。
小父さんのやったことはフェアではなかったかもしれない。
けれどもママは穏やかに状況を受け容れて、協力を約束さえしてくれたのだ。

ぼくの献血という善意は、ママの堕落という悪果を生んだ。
小父さんのママに対する悪意は、ママの寛容と宥恕、それに三人の関係から緊張を取り去るという善果を生んだ。
なにが善で何が悪なのか。
哲学的な命題は、十四歳のぼくにはあまりにも難しすぎた。
いやきっと、四十ちかいママにすら、難解過ぎるのだろう。
ぼくとママのするべきことは、厳粛な命題を放棄して、どうやらいまを愉しむことのようだった。

風変わりな”愛”

2020年07月19日(Sun) 09:19:13

一週間が経った。
ぼくは約束通り、前回逢ったあの公園に、制服姿で佇んでいた。
ねずみ色の半ズボンの下に、同じ色の真新しいハイソックスを、ひざ小僧のすぐ下まできっちりと引き伸ばして。
天気の良い一日がくれようとしていた。
夕方の弱々しい陽射しを受けて、ぼくのハイソックスはリブをツヤツヤと輝かせていた。
吸血鬼の小父さんが咬みたがるのも無理はない――と、不思議な共感に囚われていると、
背後から人の気配がした。
「目をつぶって御覧」
背後の気配が囁いた。
相手が小父さんだということがすぐにわかったので、ぼくは素直に目を瞑った。
デートを待ち合わせた恋人の指図に従順に従う、年頃のお嬢さんみたいに。
首のつけ根の一角に冷たく研ぎ澄まされた牙が突き立ち、ググッ・・・と刺し込まれてきた。

さいしょにひと咬みでぼくのことを酔い酔いにしてしまうと、
小父さんはぼくを促して、芝生のうえにうつ伏せに横たわらせた。
先週初めて脚を咬ませたときは、うつ伏せになった木製のベンチがごつごつと痛かった。
草地に寝転んで、制服が汚れないかと気になったけれど。
乾いた草地には意外なくらいに泥がなく、
帰宅したときにもまったく、家族によけいなことを知られるということはなかった。

お目当てのハイソックスのふくらはぎを、小父さんは愛でるように数回、手でなぞると、
こんどは容赦なく、唇をなすりつけてきた。
ぼくは覚悟のうえだったから、むしろ積極的に小父さんの愉しみに協力した。
ハイソックスのうえからふくらはぎを、くまなく舐められていったのだ。
ぼくの脚を舐め尽くすと、小父さんが牙をむき出しにしたのが、気配で分かった。ぼくは目を瞑った。
右のふくらはぎに、さっきぼくのことを咬んだ牙が突き立てられて、
ハイソックスを破ってずぶりと刺し込まれてきた。
ちゅうっ・・・
さっき首すじを吸ったときよりも、いやらしい音がした。
小父さんはぼくのハイソックスを、いやらしく愉しんでいる――そんな様子がいやでも伝わって来たけれど。
ぼくは小父さんの好きなように、通学用のハイソックスを愉しませてしまっていた。
どこか、同級生を裏切るような後ろめたさも感じないではなかったけれど。
そんな後ろめたささえもが刺激に変わってしまうほどの歓びが、ぼくの胸を占めつづけた。

いったいどうしてなのだろう?
制服を辱められることが、嬉しいだなんて。
ぼくが通っていた学校は、当地では名門校で通っていた。
だれでも着られる制服ではなかったのだ。
特に男子生徒の履くハイソックスは、良家の子女のシンボルのようなものだったから、
私服の時でも誇らしげに半ズボンの下に履いている男子がけっこういた。
ユニセックスな色気を感じた先生に告白をされて、教師と生徒との間で付き合っている・・・なんてうわさも、再三耳にしてきた。
同級生が誇りにしているものを、こんな辱めに曝してしまっていながら、
ぼくはなぜか、誇らしい気分になっていた。
彼の好意がたんなる喉の渇きを満足させるためだけではなくて、
また、ぼくの若い身体だけに執着しているわけではなくて、
ぼくの態度に感応して湧き上がったいたわりと、行きずりの吸血鬼に若い血を振る舞った潔さへの敬意とが、
彼の胸を満たしているのを実感していた。

彼は必要以上に、ぼくの体調を気遣ってくれた。
顔色があまりにも変わると、どんなに欲していても吸血行為を中止して、ぼくが落ち着くのを待ってくれた。
ぼくは彼の顔色で
――先週満足しきったときにどれほど彼が恢復を遂げたかを知っているので――
まだ満たされていないのを知っていたから、
もっとぼくの血を吸って、と、ぼくのほうから頼んでいた。
彼の罪悪感は救われて、ぼくの善意はうら若い血の流れとなって、彼の干からびた血管を充たしていった。

吸血鬼と人間の間柄であったけれど。
同性同士であったけれど。
ぼくたちは確実に、愛し合っていた。


あとがき
昨日、この章を相当長く書いたのですが、不注意によって全文を消してしまいました。
それはもう、どこにも残っていません。
なので、構想も全く改めて、描き直しました。
消してしまった話では、主人公に共感を覚える美少年が登場しますが、まだそこまでもたどり着いていない感じです。

お話の展開は展開として(続くという保証も、じつはありません・・・笑)、
人と吸血鬼。
男性同士。
そうした障壁を乗り越えての愛情を描いてみたかったのだと思います。
彼はハイソックスを履くのが好き。
彼はハイソックスの脚を咬んで吸血するのが好き。
不思議なご縁で結ばれているようです。

”決して悪知恵ではない。”

2020年07月18日(Sat) 05:52:16

さいわい、素足に革靴で歩いているところを、ひとに見とがめられることはなかった。
ぼくは家に戻ると、大急ぎで箪笥の抽斗から履き古しの通学用ハイソックスを一足取り出すと、
朝からそれを履いていたような顔をして、脚に通していった。
ママが戻ってきたのは、それからしばらく経ってからのことだった。
いつものようにだしぬけに勉強部屋に入ってくると、
ぼくがちゃんと勉強しているか?姿勢や行儀はよろしいか?身なりはきちんとしているか?を厳しくチェックする視線で見回して、
それから、学校に履いていくハイソックスを早く脱ぎなさいといった。
学校指定のハイソックスは1足2千円もするとかで、ふだん履くことを禁じられていたのだ。
それでもぼくは、くるぶし丈の普通の靴下よりも、ハイソックスを好んで履きたがったので、
ママの目を盗んでは、学校帰りのハイソックスをなるべく長いこと脱がずにいるのがつねだったのだ。
ぼくは不承不承、ママの命令に従うふりをして、ハイソックスを脱いだ。
完全犯罪をやり遂げたような密かな充実感が、あとに残った。

けれども、しまり屋のママはそのうち、ハイソックスが一足少なくなっていることに気がつくだろう。
遅くともあす中くらいまでに何とかしなくちゃいけないと、ぼくは思った。
課せられた2時間の家庭学習を終えると、そのあとのぼくは比較的自由だった。
ぼくは遊びに行ってくるからといって家を出ると、学校に戻り、購買でハイソックスを買った。
校内には頻繁に吸血鬼が出没していたし、
そのなかにはハイソックスを履いた男子の脚に好んで咬みつくやつも多かったから、
履き替えを持ち歩いていない男子生徒が購買でハイソックスを求めるのは、珍しいことではなかった。
購買のおばさんは、おや●●君珍しいわねと言いながら、Lサイズのハイソックスをふつうに売ってくれた。
1足2000円は痛かったけれど、裕福な家の息子として潤沢なお小遣いをもらっているぼくに、払えない金額ではなかった。

それからぼくは、制服を創るときに言った覚えのある制服専門店と、友達が制服のシャツを受け取りに行った百貨店とをまわった。
そして、そのどちらでもハイソックスを手にいれることができると分かると、
今度からは学校の購買だけでなく、交互に購入しようと考えた。
それを悪知恵だとは、ぼくは思わなかった。
喉の乾いた吸血鬼に血液を振る舞うときに、彼の好みに合わせてハイソックスをイタズラされる。
ママに余計な心配をかけないために、その事実を内緒にする。
だれもが不幸にならず、丸く収まるためにぼくは動いているのだ。
もしかすると――だれかのために物事を筋道だって考えたのは、これが初めてかも知れなかった。
ぼくはその気づきに、独りで満足を覚えた。

吸血鬼出現経緯

2020年07月15日(Wed) 19:24:45

若い兄弟がいた。
二人は年頃になると、異性には興味を示さずに、兄弟で男女のように愛し合うようになった。
兄が女になって弟が男になることもあれば、
弟が女になって兄が男になることもあった。
どちらの場合でも、ふたりはそれぞれに、満足することができた。

やがて二人の関係は、両親の知るところとなった。
常識的な両親のだれもがそうであるように、彼らもまた、兄弟の関係を忌んだ。
兄は24歳、弟は19歳のころだった。
父親は、嫁を持たせてしまえば、男に興味がなくなるだろうと安易に考え、兄に嫁を持たせることにした。
弟はまだ未成年だったので、学業に専念するように命じた。
けれどもこの安直な思惑は、かんたんに裏切られることとなる。
実家から独立した兄は、むしろ弟との時間を作りやすくなり、二人はしばしば逢瀬を遂げた。
兄は新妻の服を持ち出して身に着けて、弟の嫁替わりをつとめてやった。
弟はこの兄の心遣いを悦んで、しばらくのあいだは兄が女、弟が男になって愛し合った。
街に出没する吸血鬼が兄弟を狙ったのは、そんなときだった。

その夜はいつものホテルが満室で、ふたりは愛し合う場所を探しあぐねて、
弟の乗ってきた車のなかでことに及んでいた。
吸血鬼は最初、本物のカップルだと思って、助手席を倒して折り重なる兄弟の弟のほうの首すじに、まず咬みついた。
手ごわい男を先にわがものにしてしまおうと思ったのである。
弟はあっという間に血を吸い取られ、その場に倒れ伏した。
弟の様子の変化に驚いた兄が顔をあげると、目のまえに吸血鬼が牙を光らせ、たった今弟から吸い取った血を滴らせていた。
なにが起きたのかを知った兄は、弟を殺さないで欲しいと願い、自ら進んで首すじをゆだねた。
行為の途中から、吸血鬼は相手が女装した男性で、ふたりが兄弟だということを血の味で知ったが、
それでも女装した兄のことを終始女として扱った。
彼が既婚婦人やセックス経験のある女性を襲うとき、必ず男女の交わりを遂げる習性を持っていたが、
兄に対しても同じようにしたのだった。

もっともこの吸血鬼は、男の血も、男の身体も好んでいた。
そのため、交わりを持ったのは兄のほうだけではなく、弟も同じように行為をされたのだった。
弟はそのうえでなおかつ、生き血を吸い尽くされてしまった。
吸血鬼はこの街に来て間がなかったので、非常に飢えていたのである。
弟の体内に脈打つ血液をすべて吸い取ると、吸血鬼は初めて満足を覚え、その場を立ち去った。

弟の葬儀を兄は、婦人ものの喪服を着て弔った。
両親も兄嫁も、本心はともかくとして、ふたりの関係をよく心得ていたので、
兄の意思を尊重することにした。
弔いが終わると、兄は独りにしてほしいといって、喪服姿のまま自宅近くの公園に出かけていった。
そこは、まだ二人がホテル代にこと欠いていた時、愛し合うために使った場所だった。
生垣を終えて公園のいちばん奥まった雑木林に入り込むと、兄は愕然として脚を止めた。
夕べの吸血鬼が、あとをつけてきたことに、初めて気づいたのだ。
吸血鬼は、兄の足許を染める薄墨色のストッキングに欲情していた。
そして、見境なく兄に襲いかかった。
弟の仇敵を相手に兄は抵抗したが、みるみるうちに羽交い絞めにされ、押し倒され、地面に抑えつけられた。
首すじにはたらたらと、熱い唾液がふりかかった。
牙から分泌する毒が、若い皮膚を痺れさせてゆく。
この唾液が、弟の血管に入り込んだのだ。
そして理性を喪った弟は見境なく自分の血潮を気前よく与え続け、致死量をわきまえずに吸い尽くされてしまったのだ。
弟の仇敵に咬まれることに、兄は不思議な歓びを感じていた。
どうせ吸血鬼の牙にかかって最期を遂げるのならば、弟を咬んだ男にわが血を捧げたいと感じたのだ。
やがて首すじに飢えた唇がヒルのように吸いつき、這いまわり、鋭利な牙がその柔らかな一角に突き立てられた。
太い血管を断たれたのを感じ、兄は観念して目を瞑った。

ほとび出た血潮が、頬を生温かく濡らした。
同じ温もりを、のしかかってくる獣が悦ぶのが、躍動する身じろぎとして伝わってきた。
身じろぎひとつできぬように抑えつけられ、さも旨そうに血を啜り取られてしまうことに不思議な歓びを覚えた。
自分を支配する男の血管のなかで、弟の血と自分の血とが織り交ざって脈打つのが、無性にうれしかったのだ。

ふと気がつくと、傍らに弟がいるのに気がついた。
ここはあの世なのか?と問う兄に、そうではない、と、弟はこたえた。
兄はなによりも、弟が無事なのを悦んだ。
兄さんが僕を土葬にしてくれたおかげだよ、と、弟はいった。
吸血鬼が弟の血を吸い尽くして立ち去る間際、
土地の風習に従って弟を必ず土葬をするようにと念押しをしたのを、
兄はよく憶えていたのだ。
ぼくたちは吸血鬼になったんだ、と、弟が教えてくれた。
ただし一家で二人が真正の吸血鬼になることはできないので、
まだ体内に血が残っている兄さんはこのまま家に帰れるのだという。
兄は初めて、自分の役割を自覚した。

弟が生家を襲ったのは、それから数日後のことだった。
真夜中の訪客に父親は玄関を開き、
息子が妻を襲うのを止めようとはしなかった。
母親もまた、息子のことを温かく迎え、
喉をカラカラにした息子のために自分の生き血を惜しげもなく与えた。
相手が母親でも、吸血鬼が既婚婦人に行う行為に変わりはなかった。
父親は長男によく言い含められていたのでそれとなく座をはずし、
母親は夫のために永年守り抜いてきた貞節を、息子のためにためらいもなく散らせていった。

つぎの週末は、兄の家の番だった。
吸血鬼は訪ねたことのない家に入り込むことができなかったので、弟は玄関を叩いて、兄を呼び出した。
兄は妻の服を身にまとい、弟に誘われるままに庭に出た。
そして、女どうぜんに弟に愛されて、生き血を吸い取られていった。
兄は弟に、妻を紹介してやろうといった。
いままでお前がぼくを女として愛したときに身に着けていた服の持ち主だ――と告げて。
兄の妻もまた、夫によく言い含められていたので、その若い肉体を吸血鬼の前に惜しげもなくさらけ出した。
そして、夫の両親とは違って、愛する夫の前でこれ見よがしに不貞に耽った。

それ以来。
二人は吸血鬼として、行動を共にした。
兄弟が母親を共有することを、父親はこころよく許してやった。
ふたりの関係に安易な態度をとったことを、負い目に感じていたためだった。
兄嫁もまた、兄弟の共有物となった。
彼女はやがて身ごもったが、父親がどちらであるのかはわからなかった。
ただ、間違いなくこの家の跡取りに違いないと、舅も姑も、彼女の妊娠を心から祝った。

兄弟は手始めに、街の少年たちを狩り、学校帰りを狙っては半ズボンの制服姿を押し倒し、
ピチピチとしたむき出しの太ももや、ハイソックスのふくらはぎを愉しんだ。
そして気に入ったなん人かとは、男女のように愛し合う仲となった。

少年たちを手なずけてしまうと、母親や妹を連れ出して来させ、餌食にした。
目の前で侵される母親やブラウスを濡らして生き血を吸い取られる妹たちの姿に、
少年たちは昂奮を覚え、こんどはガールフレンドを紹介してあげると約束するのだった。

兄のほうは冒される嫁の姿に昂奮した夜が忘れられず、好んで若妻を襲った。
さもなければ、好みの若妻を弟に襲わせて、視て愉しんだ。
弟のほうは初めて犯した母親との夜が忘れられず、好んで年配の婦人を襲った。
さもなければ、好みの年配女性を兄に引き合わせて、視て愉しんだ。
そして最後は、息も絶え絶えになった獲物を傍らに、ふたりながら熱くなった体を交え、愛し合うのだった。


あとがき
つい先日、数か月がかりでこさえた同性愛ものの長編で登場した吸血鬼が、
どんなふうにして吸血鬼となったのか?を描こうとして、頭の中に構想だけがあったのが、
今ごろになって突然噴出しました。
さいごのほうでは、達也の母と祖母とに、吸血鬼の兄弟が迫っていましたが、
もしかしたら兄と弟が、このお話とは逆かもしれませぬ。(笑)
独立したお話として描きましたので、どちらともお好きなように解釈してください。^^

ほけつ

2020年07月01日(Wed) 08:44:50

グランドの隅っこで、レギュラー部員たちがまるでスクラムを組むように、円陣を作っている。
まだ練習前の白と紺のユニフォームが、ひどく眩しい。
短パンから覗いた太ももは誰もが、鍛えあげられた筋肉に鎧われて、ぱんぱんに腫れ上がったように隆起している。
ひざから下を覆う白のストッキングには、濃紺のラインが三本、鮮やかに走っていた。
そこからかなり離れたところにぼくは、同学年のタカシと2人で、手持無沙汰に用具の手入れをしていた。

「おぉーーい!補欠ぅ!頼むわぁ!」
先輩方の円陣のほうから、声がかかった。
見ると、円陣から少し離れたところに人影が二つ、漂うようにふらふらとうろついていた。
まるで酔っ払ったように、足許もさだかではなかった。
「うわ!”お当番”だよ。参ったな・・・」
先に反応したタカシは頭を掻き掻き、円陣のほうへとダッシュをした。
ぼくも遅れまいと、全力疾走する。
運動部にしてはどちらかというとユルいうちの部でも、
先輩に呼ばれたらダッシュが鉄則だ。

「この人たちの相手、頼む」
キャプテンが先輩らしからぬ神妙な顔つきでぼくたちを見つめ、両手を合わせる。
あーあ、しょうがないな・・・という気分が、ぼくたちだけではなくて、
円陣を崩さずにこちらを視ている先輩たちの、同情に満ちた視線からも漂ってきた。
二個の人影は、年配のみすぼらしい男のなりをしていて、
指さされたぼくたちのほうを、物欲しげに見つめていた。
この学校に出没する、吸血鬼たちだった。

この学校が吸血鬼のために解放されて、はや一年が経っていた。
そのあいだに、目ぼしい生徒も先生も、いちように咬まれて生気を喪って、その支配下に甘んじている。
けれども試合前のレギュラー部員だけは、”お当番”と呼ばれる彼らへの奉仕を免除されていた。
彼らの逞しい両肩には、母校の名誉がかかっているのだ。
対するぼくたち補欠は、もしかすると母校の不名誉かも知れなかった。
力の強さも体格も段違い。
なにしろぼくたちは、レギュラー部員を吸血鬼から守るための、血液提供用に入部を認められた部員なのだから。

「坊ちゃん、いつも済まないねえ」
取り残されたぼくたちを見て、ふたりの吸血鬼は気の毒そうに哂った。
虚ろな哂いだった。
彼らの笑い声が虚ろであればあるほど、摂られる血の量は多い。
ぼくたちは仕方なさそうに観念した。

もっともぼくたちは、完全な被害者ではない。
ハイソックスフェチなぼくがこの部を択んだ理由は、ひざ下まであるストッキングをおおっぴらに履けるから。
神聖なユニフォームの一部を吸血鬼の欲望のために提供するのは、
筋金入りの部員たちにとっては耐え難い屈辱だったけれど。
その部分をぼくたちがしっかり担うことが、入部の条件だったのだ。

「すまないねえ」
「すまないねえ」
彼らは虚ろにけたけたと哂いながら、
ベンチに腰かけ神妙にストッキングの脚を伸ばすぼくたちの足許に、かがみ込んでくる。
足首を掴まれ、太ももを抑えつけられて、
そこだけはギラギラと脂ぎった唇を、ストッキングのうえからヌルリとなすりつけられる。
あ、うっ。。。
傍らのタカシが痛そうに声をあげた。
咬まれたのだ。
見ると、タカシの履いているライン入りの白のストッキングに、飢えた唇が圧しつけられて、
その唇の周りが早くも、赤黒いシミが拡がり始めている。
そちらに気を取られた瞬間、ぼくの足許にも尖った異物がずぶりと刺し込まれていた。
痛痒い感覚がじわじわと、理性を狂わせてゆく。
彼らの持つ牙に秘められた毒液が、十六歳の血液に、織り交ざってゆく刻一刻。
やがてぼくたちは、彼らの毒液に、理性を支配されてしまう。

彼らの言い草によると、レギュラー部員たちよりもぼくたちのほうが、好みなのだという。
発達し過ぎた筋肉は咬み応えがあり過ぎてかなわんというのだ。
もっとも、キャプテンの生き血だけは飛びぬけて美味いらしく、
オフになると時々、お呼びがかかるのだ。
もっともその時には、ぼくたちも強制的に同伴させられて、
彼らを満足させるための”量”の部分を補うはめになる。

「あはあっ・・・」
先に咬まれたタカシのほうが、毒の廻りが早かったらしい。
声が上ずって、能天気な明るさを帯びている。
「やだ!やだ!やめてくれよお!」
言葉では拒否しながらも、まだ咬まれていないほうのふくらはぎも、惜しげもなく咬ませてしまっている。
ぼくも同じことだった。
左右の脚に代わる代わるに咬みついてくるのを避けようともせずに、むしろ脚を差し伸べて誘ってしまっていた。
眼の前をぐるぐると、目まぐるしいどす黒いものが渦巻いている。
ぼくたちはタカシ、ぼくの順に、ベンチからすべり落ちるようにして尻もちを突くと、
今度は首すじを咬まれてしまっていた。
勢いよく撥ねた血潮が、ジュワッ!と生温かくユニフォームを染めた。
ちゅうちゅう。
ちゅうちゅう。
ひとをこばかにしたような吸血の音が、あお向けになったぼくたちの上におおいかぶさっていった。

なん年か後。

2020年06月14日(Sun) 11:56:01

なん年か後。
保嗣が、とびきりの美人と結婚した。
相手は、畑川家よりだいぶあとにこの街に赴任してきた家族の長女・優香である。
披露宴の日。
新郎新婦に真っ先にビール瓶を持って行ったのは、いうまでもなく達也だった。
「おめでとう。とうとうミス●●を花嫁にしたね」
達也に少し遅れてお酒を注ぎに来たのは、達也の次に親しい友人と、彼に連れられたそのまた友人。
いずれも父同士が同じ勤務先という間柄だ。
新来の彼は、達也とは初対面である。
保嗣は気楽に、達也を紹介する。
「こちら、間島達也君。中学から同級でね、じつは花嫁の純潔も彼がゲットした」
「え・・・?」
不得要領な顔をした新来の彼はとっさに保嗣の隣席を見やったが、新婦はお色直しのため中座していた。
「お色直しの最中はね、高校時代の同級生にお祝いされているんだよ」
「純白のウェディングドレスに憧れるやつは、やっぱり多いからな」
達也は物分かりの良い顔つきをした。

「支配するみたいに、強引に迫りたい」
保嗣の花嫁の純潔を欲しがる達也は、そういって親友に迫った。
さいしょは保嗣が未来の花嫁として達也の家に同伴したときのこと。
ピンクのスーツを半脱ぎにされながら、優香は強引に達也に血を吸い取られ、虜にされた。
それからしばらくの間は、保嗣に同伴されながら、達也に処女の生き血を捧げ続け、
時には保嗣に黙って二人きりで逢瀬を共にした。
処女喪失は、血を吸い取られた保嗣の眼の前で。
それが、保嗣が花嫁の純潔を譲り渡す条件だった。
「きみの花嫁だからこそ、襲いがいがあるんだよ」という達也に、
「きみが彼女を犯すところをぼくが視ていれば、三人で初体験を共有できるね」とこたえる保嗣。
さいしょは女装姿のまま達也の嫁になろうとさえ想っていた彼にとって、
男として結婚式を迎える前に未来の花嫁の純潔を彼に捧げることに、なんの抵抗も抱かなかった。

保嗣の結婚相手は、二転三転している。
さいしょは達也。
達也の嫁として、支配されながらの新婚生活を夢見た時期もあった。
ところが達也が、「保嗣の嫁を寝取りたい」と言い出したことから、計画は変更に。
つぎに白羽の矢が立ったのは、達也の彼女だった月川ヨシ子だった。
すでに達也の彼女だった段階で、吸血鬼に処女を捧げていた。
もちろん、達也のはからいだった。
もとは達也の彼女。
達也が吸血鬼に捧げたあと自分のものにして、
そのうえで保嗣のところに嫁入りをする――
結婚後はもちろん、吸血鬼とも達也とも、不貞関係を継続する。
そんな隷属的な立場に、保嗣はマゾヒスティックな歓びを覚えた。
「楽しい新居になりそうだね」
そういって目を輝かせたけれど。
ヨシ子はどうしても達也に責任を取らせたいと言い張って、つい先日達也と婚礼をあげたばかりだった。
やがて保嗣の前には、決定的な女性が姿を現す。
それが優香だった。
※月川ヨシ子・・・前作「女装で登校。」(3月15日あっぷ)に登場。

吸血鬼が達也の未来の花嫁の処女をいただき、
達也が保嗣の未来の花嫁の処女を愉しむ。
「まるで食物連鎖だね」――そういいながら、目のまえでくり広げられた、目のまえの花嫁の処女喪失の儀式。
昂りのあまり鼻血を抑えながら、
「おめでとう。すっかり見せつけられちゃったよ」
という保嗣に、
「少し硬いけど、優香さんはいい身体してるよ」
と応える達也。
嬉し、羞ずかしの初体験に舞い上がっていた優香は、細い腕を達也の肩に回して、
「私、もっと花嫁修業したいわ、保嗣くんのまえで見せつけてあげて」
と、自ら大胆に誘っていった。

新郎新婦の席に挨拶にやって来た新来の彼は、そんなことは夢にも知らない。
けれども新来の彼を連れてきた高校の同級生は、あらかたを知っている。
達也と保嗣が男女の契りを結んでいることも。
保嗣が達也に、未来の花嫁を捧げたことも。
そして新婚生活も、不貞の連続に彩られるだろうことも。
なぜなら同級生のほうの彼は保嗣に、自分の彼女を紹介してしまっていたから。

しまったと思ったときには、もう遅かった。
彼女は嗜血癖を身に着けた保嗣の腕にその身を巻かれ、
あっという間に首すじに忌むべき接吻を受けていた。
そのまま親友のまえで、彼女の血をチュウチュウと音を立てて吸い取ると、
「このひとを誘惑する権利をぼくにください」と、目力で親友を説き伏せて、
「い・・・いいだろう」と言わせてしまっていた。
ぐるぐる巻きに縛りつけた親友のまえ、純白のスーツ姿の彼女を犯したのが、つい先週のことだった。

何も知らない新来の彼も、近々結婚が決まっている。
「彼の花嫁の身持ちも、確かめないとね」
親友は、保嗣にそっと囁く。
「今度は、達也にまわしてあげなよ。彼、このごろ処女旱(ひで)りだから」
保嗣の言うとおり、達也は同級生や親友の彼女、従姉妹や従兄弟の婚約者と、
ありとあらゆるつてをたどって処女の生き血を獲てきたけれど、
手近につかまえられる範囲の女性たちは、どうやら姦(や)りつくしてしまったという。
「ウン、そうだね。彼はなんにも知らないみたいだから」

キャンドルサービスで友人席をまわったとき。
達也はそっと、囁いた。
「彼女のカクテルドレス、お似合いだね」
「式が終わったら、襲わせてやるよ」
友人代表と新郎との、おだやかならぬやり取りを、新婦は黙って聞き流してゆく。

「なにも知らない人なら、経験豊富な人の方がいいわよ」
来客の見送りのために立った金の屏風のまえ。
だしぬけに新婦が保嗣にいった。
どうして話を知ってるの?
びっくりしている保嗣はこたえずに、新婦はいった。
「私を篭絡する前に、父も母も達也さんが支配してしまうんだもの。
 言うこときくしかないじゃないの。
 でも、いけない貴方の願望どおり、貴方の眼の前で処女を奪われたとき、
 なんだかちょっと、スッとした。
 だから許してあげるの。
 これからは、いいお嫁さんになってあげる。
 不貞の許可と引き替えに・・・ね♪」
さいごのひと言をきいたのは、真っ先に出てきた達也だった。そして、
「新床で待ってる♪」
という保嗣の囁きに軽く頷いて、素知らぬ顔をして通り抜けていった。

間島夫人(嫁)の愛人契約

2020年06月13日(Sat) 20:37:19

(作者より)
ついでに悪い嫁の契約も曝しておきましょう。^^

    ―― 間島夫人さと子の体内に蔵せる血液と貞操に関する契約 ――

第一条 (総則)
 この契約は、間島幸雄(以下甲と呼ぶ)・さと子夫妻(以下乙と呼ぶ)および(吸血鬼、以下丙と呼ぶ)との間に適用される。

第二条 ~ 第五条
 (間島浩之・柳子夫妻と同内容)

第六条 (夫の隷属)
 ①甲は、丙が望む場合には、女性の衣裳を着用し、その身を丙の欲望に委ねなければならない。
 ②甲は、自身の妻であるところの乙を、丙の愛人として認め、かつ自身も丙の愛人として奉仕しなければならない。
 ③甲は、自身の希望により、日常的に女性の衣裳を着用し、女性として生活する事が出来る。
 ④③の場合、甲は、父親、兄弟、息子等家族を含む男性に対して女性として接し、性的交渉を持つことを妨げない。
 ⑤甲がその生活の全部ないし一部を女性として生活する意思を有する場合、乙を含む周囲は甲の意思を
  尊重し、これを妨げてはならない。

第六条 (貞操の公開)
 ①乙は丙との交際を開始する以前から淫乱であったと見做されることにかんがみ、乙は月1回以上、丙の指定する
  不特定の男性と性的関係を結ばなければならない。
 ②丙が自身以外の男性と乙とを関係せしめる場合、甲に対する事前の承諾を要しない。
 ③甲は、丙の求めに応じて、妻であるところの乙を、書面による予告を伴って地域の男性に公開し、
   乙の血液を提供し、また貞操の提供を行わなければならない。
 ④甲が妻であるところの乙の貞操を公開する場合、吸血鬼・人間ともにその対象としなければならない。
 ⑤上記貞操公開において乙を支配する恩恵に浴する権利を得るものは、
  すでに自身の母、姉妹、妻、処女である婚約者、娘等、自己の家族およびそれに準ずる者一名以上を
  吸血鬼の欲望に従わしめた男性に限ることとする。

第七条 (妻の娼婦化)
 ①甲の妻であるところの乙は、自身の責において、月最低四回は町内に所在する予め指定された公共施設に赴き、
   既婚婦人との性行為を求める男性の欲求に無償で応える義務を有する。
 ②上記公共施設において娼婦として勤務する婦人と性的関係を結び得る者は、
  すでに自身の母、姉妹、妻、処女である婚約者、娘等、自己の家族およびそれに準ずる者一名以上を
  吸血鬼の欲望に従わしめた男性に限ることとする。

第八条 (輪姦の許容)
 ①第六条における貞操公開および第七条における娼婦化において、乙が同時に複数の男性と性的関係を
   結ぶことを妨げない。
 ②甲は、第六条・第七条によって、自身の妻であるところの乙が、自身以外の男性と交わる現場に立ち会うことができる。
   当該立合い行為は、月2回を義務とし、それ以上は甲の希望によってこれを行う。

第九条 (不倫の許容)
 ①第六条・第七条によって甲の妻であるところの乙と性的関係を結んだ男性は、乙と継続して性的交渉を遂げる
  ことを妨げない。
 ②①における性的関係の継続の可否は、乙の意思によって決定し、甲は乙の決定に同意を与えなければならない。
 ③乙は、複数の男性と不貞関係を結ぶことができる。この場合、甲は乙の意思を妨げてはならない。

第十条 (特則)
 丙と乙との関係は、甲に事前に周知される以前である昭和××年11月9日に生じたため、
 上記規定と反する一部事象につき、下記のとおり定める。

 ①甲はその妻であるところの乙の体内に蔵する血液および貞操を、自発的意思に基づき丙に
   無償にて譲渡したものと見做す。
 ②甲による丙に対する、乙の貞操に関する権利の譲渡は、丙と乙との関係が生じた時点に
  さかのぼって行われたものと見做す。
 ③上記①・②によって、丙による、乙に対する強姦類似行為は正当化され、当該行為は
  夫であるところの甲の希望により行われ、なおかつ乙も歓び受け容れたものと見做す。
 ④当該行為が初めて行われた11月9日をもって、乙の貞操喪失記念日とし、
  甲が乙に対する丙および丁の権利を認めた12月13日をもって、丙と乙との結婚記念日とする。

間島夫人(姑)の愛人契約。

2020年06月13日(Sat) 19:16:32

(作者より)
これはさっき思い付きで書きました。
もっともらしい正式な文章って、時にエロティシズムを誘発すると思うのです。^^


      ―― 間島夫人柳子の体内に蔵せる血液と貞操に関する契約 ――

第一条 (総則)
 この契約は、間島浩之(以下甲と呼ぶ)・柳子夫妻(以下乙と呼ぶ)および(吸血鬼、以下丙と呼ぶ)との間に適用される。

第二条 (乙の婚外交際について)
 ①甲は妻である乙と丙との間の交際を許容する。
 ②甲は乙と婚姻関係を維持することを得、またこれを義務とする。
 ③乙は甲の夫人の立場のまま、丙の吸血・性交を受け容れるものとする。
 ④甲は自身の妻と丙との交際を認め、妻であるところの乙を丙の食欲および性的欲求に供する
  ことにより、丙への友誼を結ぶこととする。

第三条 (丙の乙に対する血液摂取、および性的行為について)
 ①丙が乙の血液を摂取することを望んだ場合、甲は無条件でその要求に応じなければならない。
 ②丙は乙の体内に蔵せる血液を、その致死量未満まで獲る権利を保障される。
 ③丙が乙に対して吸血行為を行う際、丙が乙との性行為を望む場合には、
  甲は妻であるところの乙の貞操を丙の欲求に委ねることに応じなければならない。

第四条 (許容された行為の無償性)
 乙による丙のための血液および貞操等の供与は、無償で行われる。

第五条 (乙の着衣の毀損・汚損について)
 ①甲は妻であるところの乙に対し、一定以上の品質の衣装を与え、清楚に装わせなければならない。
 ②甲は妻であるところの乙が丙と交際を遂げる際、その衣装の毀損・汚損された場合、
   丙に責めを負わせることができない。
 ③丙が自己の嗜好に基づく衣裳を乙に供与する場合、甲は乙が甲と営む家庭内において
   乙が丙に供与された衣装を着用することを妨げない。

第六条 (乱交の禁止・乙が吸血・性交される者の範囲)
 ①乙が丙との交友を開始するまで貞淑な婦人であったことに鑑み、乙は不特定の男性との性行為を
  強要されてはならない。
 ②丙が自身以外の男性と乙とを関係せしめることを欲する場合には、事前に書面により、
  甲の承諾を得るものとする。
 ③甲は、丙が自身以外の男性と乙とを関係せしめることを欲し、書面による要請を行った場合、
   これを拒むことはできない。
 ④丙は、甲の承諾に依らず、一名に限り自己の代わりに乙への吸血行為・性的行為を結ばせることができる。
 ⑤丙が認めたもの(以下丁)は、丙と同等の権利を有する。

第七条 (夫の協力)
 ①甲は、丙が乙に対して欲するいかなる行為についても、拒んではならない。
 ②甲は、丙と乙との間に結ばれる不貞関係に関し、善良な協力者となるべき義務を有する。
 ③甲は、妻であるところの乙の健康状態を維持するため、丙および丁のために、自己の血液を提供
  する事が出来る。
  なお、 経口的な吸血行為を希望しない場合、「輸血パック」による献血行為を行うことができる。

第八条 (特則)
 丙と乙との関係は、甲に事前に周知される以前である昭和××年3月22日に生じたため、
 上記規定と反する一部事象につき、下記のとおり定める。

 ①甲はその妻であるところの乙の体内に蔵する血液および貞操を、自発的意思に基づき丙および丁に
   無償にて譲渡する。
 ②甲による丙および丁に対する、乙に関する権利の譲渡は、丙および丁と乙との関係が生じた時点に
  さかのぼって行われたこととする。
 ③上記①・②によって、丙および丁による、乙に対する強姦類似行為は正当化され、当該行為は
  夫であるところの甲の希望により行われ、なおかつ乙も歓び受け容れたものと見做す。
 ④当該行為が初めて行われた3月22日をもって、丙および丁と乙との貞操喪失記念日とし、
  甲が乙に対する丙および丁の権利を認めた6月13日をもって、丙および丁と乙との結婚記念日とする。

吸血されてきた妻を迎える夫の呟き。 ~姑崩し。~

2020年06月13日(Sat) 18:27:32

今回も長いですね。。
なん日もかけると、表現したいことが山ほど出てきて困ります。
息子宅で吸血され犯された姑さんが、玄関からあがらずに夫に許しを請い、
すべてを聞き尽くしたご主人は奥さんと吸血鬼との交際を受け容れることにした・・・という、いつもながらの(笑)お話です。


十数年前に、息子の幸雄が独立するとき。
「人さまに迷惑をかけるようなことはしないように」
といって、送り出した。
息子の幸雄はそれ以後、ほうぼうに迷惑をかけ、都会にいられなくなって、遠くの街に引っ越した。
そしてさいごに、これから告白するように、わたしさえもが、多大なる迷惑をこうむった。

つい先月、家内が幸雄の家を訪問するとき。
「気をつけて行ってらっしゃい」
といって、送り出した。
家内は息子の住む街に二度も出かけて行って、
二度目にひっそり戻ってきたときには、
よそ行きのスーツの裏地にほかの男の粘液のシミを隠す、はしたない女になっていた。
自分の不貞を夫に認めてもらおうと試みる、妖しい女になっていた。


三度目に息子の家に向かうとき。
「行ってきますね。2、3泊のつもりだけれど・・・もっと長くなるかも」
洋装のブラックフォーマルを着込んだ家内はそういって、イタズラっぽくわたしに笑いかける。
私も同じように笑いかえして、応えてやる。
「衣裳が足りなくなったら、連絡しなさい。送ってあげよう」
「貴方の血も、忘れずに持って行くわ」
家内のバッグのなかには、わたしの身体から採血された血液が、ずっしりと重く匿われている。
経口的に摂取されることをためらいながらも、家内の負担を少しでも軽くするために、
いまは血液の提供にも応じる身。

行き先は、息子夫婦の住む遠くの街。
その街では吸血鬼が人間と共存していて、息子夫婦もすっかり彼らとなじんでいるという。
息子と親しい吸血鬼が、
「喪服を着た年増の女の血を吸いたい」
そんなリクエストがあったから。
家内は喪服を着けて、遠くの街へとでかけてゆく。

既婚の婦人が彼らに生き血を吸われるときは。
ほぼ例外なく、男女の契りを結ぶという。
さいしょに出かけていったときの家内も、やはり例外ではなかった。
その時は無断で。
今回からは公認で。
妻は嬉し気な照れ笑いを泛べながら、不倫相手の待つ街へと向かうため、
ぴかぴかに磨いた革靴に、ストッキングに包まれたつま先をすべり込ませた。

嫁の手引きで挑まれた家内は、わたしに操を立てるため、必死に抵抗したという。
それだけで、もう充分――。
彼女は夫に対してさいごまで忠実だったわけだし、
わたしの間男は、貞淑な女の操を勝ち得たのだから。

         ――――――――――――――――――――

二度目の訪問から戻っきたとき。
家内は玄関からあがろうともせずに、迎え入れたわたしに言いました。
「貴方、ご報告と、おわびを申し上げなければなりませんの」
「アア、何だね?」
気軽に応えたわたしに、家内はストレートにこう告げました。
「わたくし、幸雄の家で、吸血鬼に血を吸われてしまいましたの」
えっ・・・と愕(おどろ)くわたしの様子にはお構いなく、家内は一気にこんな風にまくしたてました。

「幸雄の街には、吸血鬼が棲んでいます。でもその方たちは、人間と仲良く暮らしています」
「幸雄にも吸血鬼のお友達がいて、家族ぐるみで血を飲ませてあげているんですって」
「あちらの殿方はミセスの女性の血を吸うときは、肉体関係も望まれます」
「さと子さんもその方とそういう関係になっているけれど、幸雄が自分から結びつけてあげたそうですよ」
「咬まれて痛い想いをしてまで血を吸わせてくれるそのご婦人がいとおしい、そういう趣旨とはきかされたものの――」
「わたくしも、お相手した殿方のお情けを、否応なく頂戴することになってしまいました」
「貴方しか識らない身体だったのに、本当にごめんなさい――
 もちろん初めて奪われたときは腕づくでしたし、貴方への申し訳なさやためらいもございました。でも・・・」
「最初の一度だけでしたら、行きずりの過ちとして、
 貴方にも御報告をせずわたくし独りの胸に収めるつもりだったのですが――」
「二度目に伺ったときには、とうとう身体を手なずけられて、しまいには心まで奪われてしまいました」
「先方は、貴方とわたくしとの離婚は望んでおりません。
 ふつうであれば、ものにした女性は自分の独り占めにしたいもの――けれどもあのかたはそうではないと仰います。
 吸血鬼ですから、なん人ものご婦人を牙にかけなければ生きていけないお身体――
 ですからわたくしは、先様にとって、そうした情婦のなかのあくまで一人に過ぎなくて、
 むしろ間島夫人の立場のまま、献血を伴う交際とを続けたいとお望みです。
 わたくしも――それが最良の道だと思っています。
 そうすることで、貴方も世間体を保つことが出来、だれも傷つくことはございませんもの。
 けれども貴方の許しも得ずにほかの殿方と情を交わしたことは、貴方の妻としてどこまでも申し訳なくおもので、
 こうして玄関をまたぐことを、ためらっているのです」

もう、わたしときたら、仰天するやら、混乱するやら。
吸血鬼がこの世にいるという話を信じるのにも時間が要りましたし、
幸雄はいったい、自分の母親の貞操の危機に立ち会いながら、いったいどうしていたことかと思ったのです。
わたしの混乱を、家内は正確に察しました。
「幸雄はすでに、吸血鬼の仲間です。
 イエあの子が吸血鬼になったわけではないですが、
 すでにさと子さんも、とっくにその方と、夫婦どうぜんの関係になっていて、
 幸雄もそれを、歓迎しているそうですわ。
 達也も含めて、一家三人で、その方に血を差し上げているそうよ」

そのうえで家内は、いいました。
貴方に対しては、まことに申し訳なく思っている。
当家の名誉を穢す行為だということも、自覚している。
貴方には私を、一方的に離婚する権利があるし、
もしも貴方がわたしの不貞を咎め夫婦の縁を切るのであれば、もはやこの家の敷居をまたがずこのまま家から出ていく と。

唐突な家内の申し出に愕然としながらも、
そのいっぽうで、なんとまあ、潔いことかと思い、しょうしょうあきれながら、詳しい事情を訊くことにしました。
もちろん、躊躇う家内を家にあげて、リビングでくつろいでもらいながら。


さいしょに襲われたときには、必死で抵抗したそうです。
けれども相手は壮年の男で、どうにも抗いがたくて、つい許してしまったのだと。
股間を冒されるという物理的行為を伴いながらも、その時点では家内の気持ちはまだ堅く、しっかりしていました。
その時には、気持ちまでもを許したわけではなかったから、
狂犬に咬まれたと思うことにして、息子の顔も見ないで帰ってきたというのです。

けれども咬まれた首すじの痕――これは咬まれたもの同志にしか目に入らないのだそうです――が、
夜になるとじんじんと疼いて来、ついに我慢が出来なくなって、
あくる朝わたしに、「忘れ物を取りに戻りたい」と嘘をついて、再度息子の家に出向いたのでした。
そこでは嫁のさと子さんがしっかり手をまわしていて、
――何しろ彼女はすでに夫である息子を裏切って、息子も納得のうえで吸血鬼の情婦の一人になっているわけですから――
あらかじめ家内から連絡を受けた刻限に合わせて、
家内がお相手をしたという吸血鬼と、その兄さんだという半吸血鬼とを呼び寄せておいたというのです。

半吸血鬼というのは、ふだんは普通の人間として暮らし、望まれれば吸血鬼に血を与えることもあるけれど、
嗜血癖をもっていて、しばしば好んで人を襲い生き血を愉しむ習性があるのです。
咬まれた人のうち、一家に一人くらいの割合で、そうした人が出るということです。
半吸血鬼には、その街の人たちは寛大で、
望まれれば自分の妻女や娘、はては自分自身までも、惜しげもなく咬ませることになっているとか・・・

家内はまず、先日自分の血を吸った吸血鬼に首すじを咬まれ、昏倒して、
なんと十三回も犯されて、
十二回までは理性を保っていたものの、さいごの十三回目には、家内の口を借りれば、
「身も心も焦がれてしまい、とうとう夢中になってしまった」
という仕儀に陥ってしまったのです。
吸血鬼氏には、
「十三回も粘った奥方は、この二十年で貴女が初めてだ」
と、お褒めの言葉を頂戴したとのこと。
気丈な家内の事ですもの、それは懸命に抗って、
相手が自分の劣情を成就させているあいだといえども、しっかり気持ちを保っていたに相違ありません。

けれどもお相手は、無体に貞操を奪い取ったことを除けば、存外紳士だった――と、家内は申します。
着ているものに襲われた痕跡を残したくないと望めば、
襟首にも血が撥ねないように入念に咬んでもらえたし、
どうして辱めまで受けなければならないのか?と問えば、
さきの告白通り、痛い想いまでしながら血を与えてくれたご婦人がいとおしく思えるため と返されたし、
滞在中は街を案内されたり、お邸に招待されて上質なワインをご馳走になったり――と、
ごく行き届いた、紳士的な扱いだったとか。

それでついほだされて、
ストッキングを穿いた脚を咬みたいというお相手の望みを容れて、
脚に通していた肌色のストッキングを咬み剥がれながら吸血させたり、
貴女を手に入れた証しに、どうしてもお召し物を汚したいという意向に従って、
スカートの裏地を男の吐き散らす粘液にまみれさせることを許してやったり。
そんなことまで許し始めたころにはもう、家内の心は一方的に、相手の吸血鬼へと、傾いてしまっていたのです。

「そうなんです。
 わたくしの身体はもう、あのかたのもの。
 わたくしの心ももう、あのかたのもの。
 その気持ちに、もう変わりはございませんわ。
 首すじに残された咬み痕が消えないように、あのかたとの営みの記憶も、もはや消えることはございませんの。

 さいしょにお逢いしたとき血浸しにされたブラウスは、あの方のためにはわたくしの婚礼衣装。
 あの方もきっとそのつもりで、念入りにわたくしの血で染められたのですわ。
 さいしょは気味が悪かったはずの胸許の血溜まりは、濃ければ濃いほどあの方の愛情のまま。
 もっと浸して・・・もっと汚して・・・と、口走るべきでした。
 存分に汚されてしまうと、真っ赤に染まったブラウスを、あのかたに求められました。
 持ち主の血に浸ったブラウスは、戦利品としてせしめるのがならわしなんですって。
 エエもちろん、惜しげもなく剥ぎ取らせて差し上げましたわ。
 嫁のさと子さんのブラウスをせしめたときから、姑であるわたくしのものもせしめるつもりでいらしたそうよ。
 だから、さいしょに帰宅したときのブラウスは、さと子さんが貸してくれたものなのよ。
 貴方の目を誤魔化すために――

 たまたまでしたけど。
 そのとき穿いていたストッキングは、新しくおろしたばかりのものでした。
 穿き古しだったりしたら、とんだ恥を掻いていたはず。
 わたくしは、足許にふるいつくあの方の前、
 間島夫人としてのたしなみを忘れて、
 薄手のナイロン生地の舌触りを試され、くまなく唇を這わされ、よだれをしみ込まされて、
 さいごはみるかげもなくなるまで、裂き取らせて差し上げたのですよ――

 貧血になった後に抱かれてしまったけれど。
 あの方の愛し方は、最高――!
 胸を掴まれたときの掌の強さ。
 初めて沈み込まされた腰の逞しさ。
 恥ずかしい処(ところ)をなん度も抉り抜くしつようさ。
 お互い身体に浮いた汗を吸い合い舐め合って、そうしてなじませ合った唇を重ね合わせて。
 男の匂いを喉の奥まで嗅がされて、わたくしの匂いも嗅いでもらって。
 なにからなにまで、素晴らしい記憶ですのよ」

家内の言い草はどんどんエスカレートしていきました。
恥辱に充ちていたはずの初めて吸血されたときの記憶さえ、いつか露骨に美化されていたのです。

 「わたくしの不貞を貴方が許して下さるのなら、
 そのことを一生の恩に感じて、終生妻としての務めを果たします。
 けれどもわたくしは貴方の妻のまま、あの方に生き血を捧げ、人妻の操を愉しむことを許します。
 あの方とわたくしの交際を、どうぞお許しくださいな」

家内の告白は、常識をわきまえた良家の夫としては許しがたいものでした。
けれども、その声色と、その話自体とは、えも言われずわたしを惹きつけずには、おかなかったのです。

「きみはその男に、無礼をはたらかれたとは感じていないのか?」
と、わたしが問うと、
「素肌を食い破って喉を鳴らして生き血を啜られたり、
 恥ずかしい関係まで強いて結ばされたり、
 もちろん、あの方の仕打ちは、無礼だったと思います。
 けれども今思えば、あのかたはそうすることが必要だったし、
 渇きに火照った喉を潤すのに私の血が役に立ったのならば、やむを得なかったとも思いますわ。
 そのあと強いられた男女の交わりをも含めて、わたくしはいっさいを受け容れました」
「きみの名誉と同時に、わたしの名誉も汚されたのではないのだろうか?」
「エエ、きっとそうですわ。
 間島家の名誉は泥にまみれたのです。
 貴方の想いに同感ですわ。
 そのうえわたくし、すすんで身体を開いて、愉しんでしまいましたもの。
 そうしたことで、間島家の名誉には、さらに傷が付いたと存じますわ」
「お相手のあしらいを、きみ自身の意思で進んで受け容れたというのだね?」
「ハイ。さいごはほだされて、悦んで受け容れてしまいました。
 最初に貴方に謝りたかったのは、まさにその点なのですよ」
「彼の暴力に馴らされて、生理的に快感を覚えてしまったと?」
「身体が反応したのもそうですけれど――
 あのかたがわたくしを慈しまれているお気持ちに、ほだされてしまったことのほうが、重要ですの」
「きみは、わたしの妻でありながら、わたし以外の男と身体をなじませることに罪悪感を感じないというのかね」
「罪悪感はございます。けれども、止めることができない身体と心になってしまいました。
 結婚前も含めて、わたくしが存じ上げた殿方は貴方お一人でした。
 四十年間守り抜いた節操を汚されて、初めのときはとても悔しうございましたが、
 けれどもいまでは、大切に守り抜いた貴いものをあの方に捧げることが出来たことを、誇りに感じておりますの」

もう少し詳しく話してくれないか――震える声で伝えると、家内はもちろん、と、深くゆっくりと頷きました。


「咬まれるのは、さほど痛くはないのですよ。ちょっとむず痒いかんじかしら。
 さすがにあれほど尖った牙ですもの、初めは痛かったと思いますけど・・・記憶があいまいなのです。
 新婚旅行先のホテルで初めて夫に抱かれ、処女を捧げた痛みは、いまでも記憶に残っているけれど――
 ただ、吸血鬼氏に初めてお逢いした後、帰宅してからの傷口の疼きは、ただごとではありませんでした。
 そのひりひりと疼く場所に、もう一度あの尖った牙を埋めてもらいたい。
 疼きが自ら牙を差し招いているような、不思議な感覚に囚われながら、わたくしは眠れない一夜を過ごしました。
 そしてその晩のうちに、忘れ物を取りに息子の家を再訪したいと嘘をつこうと、
 夫の寝んでいるすぐ傍らで決めてしまったくらいです。
家内はなおも、つづけます。
「白状してしまいますと、操を奪われた悔しさと敗北感に苛まれたのも、その晩かぎりのことでした。
 わが身に刺し込まれた牙が分泌する毒液は、
 良くも悪くも、傷つけられた自尊心や怒り、屈辱感を和らげ、宥め、誤魔化していったのです。
 そう、いまではわたくしにはもう、歪曲された記憶しかございません。

 初めて咬まれたときのことを、もう一度思い出してみましょうか?
 あの日、わたくしは息子に招ばれて、息子夫婦の家に参りました。
 すでにその家が、吸血鬼に屈服させられてしまったとは、夢にも知らないで。
 さいしょに中学生の孫が咬まれ、仲良くなったそうです。
 通学の時半ズボンの下に履く紺のハイソックスや、部活の時に履くストッキングの脚に欲情する性癖を持つと知ると、
 学校の行き帰りや部活帰りのときに待ち合わせ、唇で吸わせ咬み破らせてやるようになったそうです。
 男子中学生の長靴下に欲情する吸血鬼は、その母親が脚に通すストキングにも関心がありました。

 孫が咬まれ、さと子さんが咬まれ、息子まで咬まれてしまうと、
 彼らは仲間を増やすことに夢中になりました。
 孫は後から越してきた同級生やその家族を、
 嫁は自分の母親を、
 そして息子はわたくしに、狙いを定めたのです。

 そういえば、その昔――
 女学校のころ、はしたなくも嫁入り前に殿方と過ちを犯してしまった子が、
 ”痛いんだよ、でも、愉しいんだよ”と囁いて、仲間を殖(ふ)やそうとしていたことがありますの。
 いまの彼らは、そのひとと同じ気分になっているのかもしれません。
 ちょうど、わたくしもそうなってしまったように。

 息子の家に着くと、息子は不在にしておりました。
 嫁のさと子さんはぬかりなく、自分の情夫を家のなかに引き入れていらして、
 わたくしがソファに落ち着くや否や、あのかたをリビングに招いたのです。
 2~3日、貧血に顔をしかめる周囲をおもんぱかって禁欲してきたというあの方にとって、わたしは絶好の獲物でした」

「彼の獲物となったことに、後悔はないのだね?」
わたしは念を押すように、訊きました。
「エエ、後悔はございませんし、むしろ誇りに感じてますわ」
わたしは肩を落として、自分の敗北を認めざるを得ませんでした。
けれども、いったんわたしの耳朶を浸した毒液は、鼓膜に沁み込み、脳裏に沁みわたり、
いつかわたしの身体じゅうを支配していました。
わたしは意を決して告げました。
「きみが自分のしたことに誇りを感じたというのなら、ぼくもそのことに誇りを感じよう」
「と 仰いますと・・・」
「潔く負けを認めて、きみたちの交際を認めようと言うのだよ」
家内の顔に、安堵の色と、欣びの輝きがうっとりと泛びました。
こうして彼女は、わたしの家に留まることを択んだのです。


6月4日 19:23:32 原案
6月13日 18:27 あっぷ

選択肢 ~姑崩し。~

2020年06月13日(Sat) 17:36:38

まえがき
何日もかけて描いていたら、しょうしょうくどくなりました。^^;
飛ばして次に移っても差し支えはありません。(笑)
要約して言っちゃえば、帰宅した姑さんの意思形成にかかわるくだりです。


久しぶりに息子夫婦の家を訪問してみれば、
そこは吸血鬼に支配された家庭と化していた――

中学にあがった孫の達也が真っ先に咬まれ、
その達也の手引きで嫁のさと子が咬まれ、
さと子は年端も行かぬ息子の意のままに、
当家の嫁としての名誉を振り捨てて吸血鬼の情婦となり果てて、
いっとき吸血鬼の館に略奪されたあと、
さいごに一家の主人であるべき息子の幸雄までもが、
妻敵(めがたき)の毒牙に淫して、
恥を忘れて愛妻の貞操喪失を歓び、
帰宅した妻と間男との交際を追認する血の奴隷に堕ちていた。

人妻が吸血鬼の相手をするときは、
いかなる貞淑な婦人であれ、吸血鬼の愛奴に堕ちるこの街で。
さと子もこの街の主婦としての人並みの役割を果たしていた。

そんな事情を夢にも知らずこの街を訪れた姑は、
未だ微かに若さを秘めた生き血を求められ、
折り目正しく着こなした正装を無体に弄ばれて、
この街の主婦が強いられる義務を、心ならずも果たす羽目に陥った。

いちどはすべてを秘して帰宅を果たしたものの。
人知れず首すじに残された痕は妖しく疼き、
恥知らずにも二度目の逢瀬を欲する想いに抗し得ず、
一週間と経たぬ間に、良人に偽り街を再訪。
嫁に侮られまいと取り繕った高飛車な態度とは裏腹に、
別人のようにおどおどとした物腰で想い人と再会を果たし、
夫に対する後ろめたさにためらいつつも、
素肌に許した牙にすべてを忘れ、陶酔の淵に酔い痴れてゆく――

女の残された選択肢は、ただふたつ。
吸血鬼はその机下に女をいざない、唆す。
眼の前に拡げられた紙片に、恥ずかしいほどハッキリ描かれる選択肢に、
良人に対して犯した罪に怯える女は、半ば目を覆いつつも、応じていった。

①都会に帰る貴女についていってご主人の血を吸って殺害、
 弔う貴女の喪服姿をもう一度襲う。
②やはり、ご主人は生かしておく。

柳子はためらいなく、①を棒引きして、②にマルを付けた。
「柳子さんは、やはりご主人想いなのだな――身体は奪われても」
「よけいなことをおっしゃらないで」
柳子は柳眉を逆立てたが、
力づくなやり取りが過ぎた後、ふたりのあいだではかろうじて会話が成立している。
「では、つぎの選択肢と参ろう」
さっきのメモ紙を吸血鬼は惜しげもなく破り捨て、つぎのページにペンを走らせる。

①ご主人には黙秘して、熟女の血を愉しまれ犯されるという服従関係を、
 このまま楽しく継続する。
②やはり、黙って良人を裏切りつづけるのは、良くないと思う。

柳子はためらいなく、①を棒引きして、②にマルを付けた。
「”楽しく”は、よけいですわ」
「事実であろう」
露骨な指摘に女は諾とも否とも答えなかった。
「貴女は善い方なのですネ。ここはご婦人によって、考えが分かれるところなのですよ」
吸血鬼はいった。
修羅場になるのが怖いご婦人、気の小さいご婦人は、話さないほうを択ぶのだと。
そういうご婦人は自分の期の血ささに逃げ込んで、良人に対する不実を重ね、
最初は少額だった借金が利子をつけて支払い不能に至るように、
戻れない下り坂を転げ落ちてゆくものなのだと。
さりげなく口にした言い草だったが、
意外に真心がこめられているのを、敏感になり過ぎた鼓膜が感じ取った。

けれども――と、彼はいう。
②を択ぶものには、別の試錬があるのだと。
「ご主人は健在。
 そして愛する妻の不貞行為を告げられている。
 しかもその不貞行為を受け容れ承知しながらも、
 妻が自らを裏切りつづけることを、阻むことは許されぬ。
 これはひとつの、生き地獄ではありますまいか」
吸血鬼はにんまりと笑う。
「あまり露骨なことをおっしゃらないで」
柳子がふたたび柳眉を逆立てるのを、吸血鬼は完全に無視した。
反対に、柳子の厚くのぼせ上った脳裏には、
吸血鬼の冷やかな声色が、なぜか心地よく沁み透る。
柳子の動揺には目もくれず、吸血鬼はまたも選択肢を書き出した。

①ご主人には自分の口から話をする。
②自分で言うのは恥ずかしいので、だれかに告げ口してもらう。

柳子はしばらくためらってから、②を棒引きして、①にマルを付けた。
「そうだとすると、ご主人の判断が問題だ。いったいどう出てくるだろうか」
吸血鬼はそういうと、さらに選択肢を書き出した。

①ご主人は立腹、柳子は家を出てこの街に移り、献血奉仕をする娼婦となる。
②なんとかご主人に納得してもらうような努力をする。

柳子はもはやペンを握っていなかった。
「もちろん、主人に承諾していただきますわ」
とっさに出た声だった。
「さすれば、ご主人に御身の重ねる不倫を納得させると仰せになるのだな」
「エエ勿論でございます」
売り言葉に買い言葉。
思わず返した切り口上に、さすがに言い過ぎたと後悔しながらも。
その後悔の念のよぎる面差しを面白げに見つめる視線に、尖った視線をぶつけ返していた。
もう、後には引けそうにない――
そう思い詰める夫人に救いの手を差し伸べるように、吸血鬼は口を開く。
「もしも不幸にして、ご主人の説得が不首尾のときには――どうぞこの街にお戻りになって、此処にお住まいになられるがよい」
吸血鬼はおだやかに、女の逃げ場所を確保してくれた。

姑凌辱。

2020年05月27日(Wed) 09:31:33

広いリビングの壁際に、きちんとした洋装の婦人二名が、二人の吸血鬼に迫られていた。
間島達也(14)の母さと子(40)と、その姑・間島柳子(63)の二人である。
柳子の前には、いつもの吸血鬼が。
さと子の前には、彼の兄が。
兄弟で、嫁と姑に迫っているのだ。

すでにこの光景が家庭内に受け入れられてしまっているのは、
リビングの二面を鍵の手に仕切る廊下に、
さと子の夫で柳子の息子である幸雄(42)・さと子の息子である達也(14)の両名が
息をひそめていることからも、それと知れる。

「な、なにをなさるんです・・・っ」
初めて咬まれてからまだ日も浅い柳子は、
気位の高そうな整った面差しに恐怖と嫌悪の色を泛べ、
自身と、自身の嫁との前に立ちふさがる吸血鬼たちに、
気丈にも制止の声をあげた。
けれどもそのきつく眉を顰め批難の色をありありとよぎらせた頬のすぐ真下には、
赤黒い咬み痕がくっきりと泛んでいて、
彼女がいちどは彼の欲望に屈してしまった明らかな証拠となっていた。

「奥さん、もうよくご存じでしょう・・・?」
眼の前に立ちふさがる吸血鬼が、自らがつけたその咬み痕に、
彼女にわかるようにあからさまな視線を送りつつ、
余裕たっぷりに柳子をたしなめる。
「御婦人がたの熟れた生き血で、からからに乾いた喉を潤していただきたくて、こちらに伺ったのですよ」
なれなれしく肩に回された腕を一度は振り払ったものの、
もう一度巻きつけられた猿臂は、柳子夫人を捩じ上げるように密着してきて、
もう振り放すことはできなかった。

「あ、あなたは幸雄の取引先の社長さんでしょう!?」
なんとか相手の理性を取り戻させようと、吸血鬼と息子との関係性に訴えかけたが、
化けの皮を自ら剥いだ吸血鬼には、痛くもかゆくもなかった。
「先日初めて口にした貴女の血が、忘れられない――」
男はそう言うと、女との距離をさらに詰め、鶴のように細い首すじに、無遠慮な唇を圧しつけていった。
「ああッ!」
女の絶叫とともに、薄茶のスーツ姿の彼女の肩先に、赤黒い血潮が撥ねた。

ちゅうっ・・・ちゅうっ・・・ちゅうっ・・・
露骨にあがる吸血の音に、柳子は鼻白んだ。
圧しつけられてくる男の頭を抑え、なんとか引き離そうともがいたが、
もがけばもがくほど、男の牙は皮膚の奥へと刺し込まれていった。
「ああああああっ・・・」
目を瞑り、白い歯をみせ、女はもだえ苦しむ。

その様子を傍らから見やっていた嫁のさと子が、姑に声をかけた。
「お義母さま。平気よ。いっそのこと、慣れてしまえば良いんだわ」
「あ、あなたは・・・っ。幸雄の嫁ではありませんか!?それがあのようにふしだらな・・・ッ」
痛みをこらえつつ抗弁する姑の切羽詰まった口調とは裏腹に、
嫁のほうは、ごくおだやかなたしなめ口調になっていた。
「いっしょに堕ちましょ、お義母さま♪」
若いさと子のほうはなんの抵抗もなく情夫の兄の牙を受け容れると、
白のブラウスの胸に惜しげもなく、自身の体内をめぐるバラ色の液体を、撥ねかせてしまっている。

ああああああああ・・・
ふた色のうめきが徐々に弱まり、肩を並べた二対の洋服姿は
抑えつけられた壁に沿うようにして、姿勢を崩していった。


「うまく撮れているか?」
「バッチリだよ、パパ」
父親は正面から。
息子は横合いから。
ひそめた声を交し合う。
手ブレしないように三脚に立てたカメラのファインダー越しに、
嫁と姑が吸血鬼相手に気前よく血液を振る舞うありさまを見守り、昂ってゆく。

ずるずると姿勢を崩した二個の洋服姿は、
スカートからひざ小僧をあらわにし、
ギュッと閉じていた両ひざを割られていって、
さと子の穿いている黒のストッキングも、
柳子が脚に通した肌色のストッキングも、
じわじわと舌で辱められながら、剥ぎ降ろされていった――

達也の化粧はこのごろ、だいぶ板についてきた。
母親の服での女装姿も、たいそう似合っていた。
幸雄は達也を引き寄せると、達也は拒もうともせず、
ワンピースのすそから侵入した卑猥な掌のまさぐりに、早くも股間をゆだねてしまっている。

リビングでは、獲物を取り替え合っての凌辱行為が。
廊下では、父子相姦の変態行為が。
いつ果てるともなく、続いてゆく――


間島家の変態的な日常に、姑の柳子が巻き込まれてしまったのは、ごく最近のことだった。
発端は、嫁であるさと子からの提案だった。
さと子は、自分の母親の貞操をつい先日、
吸血鬼の凌辱に惜しげもなくゆだねてしまったのであるから、
もうどっぷりと浸かり切っているといって、過言ではなかった。

さいしょはどこの主婦も、吸血鬼と情交するなど、気の進もうはずはない。
まさに生命がけの恋になってしまうからだ。
けれども、都会で暮らすことができなくなって流れ着いたこの街で、
ほかならぬ夫の手引きで手際よく咬まれ、犯され、堕とされてしまうと、
彼女は夫ともども、情夫たちの最良の協力者となっていた。
本来人妻の婚外恋愛に対して、
最も過敏にしてかつ非協力的な立場をとるべきはずの夫が、
最愛の妻であるはずの彼女の貞操を吸血鬼どもに貪り食わせてしまったことに、
彼女は女として感謝していた。
そして、同じ女としての歓びを、実母だけではなく姑とも分かち合いたいと思った。
姑という存在は、夫以上に、嫁のふしだらに対して、
実に過敏にしてかつ非協力的な立場をとるべき存在だったためである。

街は、慢性的な血液不足に陥っていた。
50代までの女性で自ら血液の提供を希望するものは、ひととおり「総なめ」状態だった。
彼らの牙にかかった女性の大概は、
吸血鬼と恋に落ちるか、
夫によって貞操もろともプレゼントされてしまうか、
先に牙にかかった息子や娘の身代わりとなるべく辱めを忍ぶかした者たちだった。
案外そうした息子や娘はいち早く吸血鬼にたぶらかされていて、
母親が決然と身代わりを申し出るよう仕向けたりしているのであったが。

彼らは血液提供者――つまり自分たちの仲間――を増やすのに、躍起となっていた。
あるものは隣町の知人を”輪”のなかに引き入れようとし、
あるものは勤務先に、理解のある夫婦者の転入を打診しようとした。
そのような中、さと子が実母を血液提供者の仲間に引き入れようと考えたのは、
街の雰囲気としてごく自然な成り行きだった。
そして、さらにさと子が姑を血液提供者の仲間に加えようと企てたものまた、
この歪んだ家庭の雰囲気としてごく自然な成り行きだった。

「うちからもう一人、年増の美人をお仲間に加えるの。万事私が取り仕切るけど、よろしいわよね?」
さと子は実母を吸血鬼に紹介したときと同じように
夫の実母を彼らに凌辱させてしまうことを提案したが、
幸雄は自身の母親が生け贄に選ばれることを、望みこそすれ拒もうとはしなかったのだ。
「けど、父さんが気の毒だな――」
唯一、長年連れ添った妻を寝取られることに対する父親への同情も、
「いざとなったら、あたしが相手してあげる♪」
という妻の言い草に、なんなく遮られてしまうのだった。

折しも、近隣での会合に招ばれた母の柳子が、久しぶりに息子と嫁の顔を見たいから・・・と連絡してきたとき、
たまたまアポイントなしで知人が訪ねてきたていを繕って、幸雄は吸血鬼を家にあげた。
この不埒な客人は、きっと母の血を気に入るだろう、と、幸雄はおもった。
なにしろ、幸雄やその息子の達也の血を、彼はたいそう気に入っているのだから――
初対面のご婦人に対する吸血鬼は、いつものように礼儀正しく振る舞って、
たちまち堅物の賢婦人として知られた柳子の警戒心を解いた。
それから、彼女をひと目見るなり幸雄を物陰に呼んで、いった。
「最初の一発めは、だんなさんは御覧にならないほうが良いよ」

幸雄は、彼のアドバイスにはつねに従うことにしていたので、
吸血鬼に言われるままに、幸雄は用を思い出したと曖昧な口実を告げると、
母を招んだ自宅から逃げるように立ち去った。
そのわずか数分後、息子の立ち去ったリビングで、
どたばたと派手な物音があがって、
その物音の熄(や)んだとき――
間島柳子六十三歳は吸血されたうえ、たっぷりと犯された。
夫しか識らない身体に吸血鬼は満足を覚え、なん度もなん度も彼女を愛し抜いて、
とどめを刺すように激しい十三回目の吶喊で、柳子はぐったりと力を抜いた。
令夫人が夫以外の男に心を許すまで、じつに十二回もの挿入に耐えたのだ。

「すごいわあ、お義母さま」
さと子が賞讃の声をあげた。
「私、ほんの数回でイッちゃったのに」
吸血鬼は自分の情婦となった人妻があげる嬌声を横っ面で聞きながら、
嫁のふしだらすぎる言い草に姑が腹を立てるのを感じた。
この生真面目な女は、こうなるまでにじたばたと悪あがきをくり返し、
腕を突っ張り身体を捻じ曲げ、さんざん抵抗をつづけたのだ。
突っ張った腕をへし折るように胸を合わせ、
スカートを着けたままの細腰に自分の腰を狂ったように沈み込ませ、
12回もの恥ずかしい想いをして、やっとその気になったのだ。
この貞淑な令夫人の抵抗が凄まじいものであり、
お人好しな息子が目の当たりにするものではないという予想は的中したのだ。
そして、抵抗が激しければ激しいほど、勝ち得たものの貴さを実感することができるのだった。
さらに、これほどまでに激しく抵抗するような女は、
却ってそのぶんふつうの人妻よりもずっと従順になるものだと確信していた。

一泊の予定だった柳子は、着替えをあまり携えていなかった。
だから吸血鬼は、その首すじを狙うときも、
襟首に血が撥ねないようにと入念に咬んで、生き血を啜った。
貞操観念の強いご婦人を襲うときにいつもそうするように、
着衣のまま手際よくことを果たしてしまうと、
あまりのことにぼう然自失したスーツ姿にまたがって、
己の勝利を確かめるように、なん度もなん度も挿入行為を繰り返した。
あまりにも手際よく犯されてしまったので、
自分の身になにが起こっているのかを自覚するより早く、快感を覚え込まされてしまったのだ。

こと果ててしまうと、われに返った婦人が最も気にするのは、自身の身づくろいだった。
わが身に起こった出来事を、帰宅後に夫に悟られてはならない。
柳子の懸念をいち早く察した吸血鬼は、彼女を姿見の前に連れてゆき、
襟首から離れたところにつけられた咬み痕が、血浸しになっていないこと、
着崩れしたスーツが、血も汗も体液にも浸されていないことを指摘してやった。
帰宅してきた息子までもが、白い歯をみせて、母に訊いた。
「良かったでしょ?」
思わず頷いてしまってから恥じらう姑を前に、嫁は初めてこのひとと仲良くなれると実感した。

そのあとの柳子は、じつに賢明に振る舞った。
持ち前の冷静さを取り戻すと、だれもが不幸せにならない道を正しく選択したのだ。
今夜のことは内密にする。
さしあたって、夫には告げない。
嫁の不貞も許す。息子の意思なのだから、尊重する。
自分自身との関係はこれ以上勘弁してほしいが、
どうしてもと請われるのであれば、この家限りでの内密のこととする条件で、応じる――

彼女はこの件について息子が一枚かんでいると悟ると、何食わぬ顔で帰宅した息子に向かって、
「婦人の貞節というものを軽く考えてはならない」
と、型通りの訓戒を与えたうえで、
「けれども母さんに限っては、きょうの貴方の配慮を、悦んで・・・ではないけれど、受け容れる」
と約束した。
吸血鬼と仲良く暮らすことで、だれも死なずに済むというこの街の仕組みを理解すると、
私も時々血を差し上げに伺いますと告げて、吸血鬼を欣(よろこ)ばせた。

柳子は吸血鬼と和解すると、なにも知らずに自宅で待つ夫に電話をかけて、
一泊の予定だったが、少しゆっくりしてきますと伝えていた。
座布団の上に正座しながら電話を掛ける姿を、
吸血鬼は
「行儀の良いご婦人だ」
と称賛した。
自分の勝ち得た獲物が貴婦人であることはとても悦ばしいといって、
実母の貞操を差し出した夫を悦ばせた。

着衣のまま人を襲うことを好む吸血鬼のため、
柳子は着用してきた千鳥格子の柄のスーツと、持参した薄茶色のスーツとを代わる代わる身に着けて、
惜しげもなく情夫の体液に浸し抜いた。
目ざめてしまった歓びに戸惑いながらも、柳子は破倫の渦にわが身をゆだね、狂っていった。

若返った柳子が、夫のために永年守り抜いた貞操を惜しげもなくかなぐり捨てて、息遣い荒く振る舞うありさまに、
息子の幸雄はもちろん、孫の達也までもが昂っていたのは、いうまでもない。
いつも威厳あふれるお祖母さまが、女になってる――
達也はむしろ、祖母に対する畏怖が親しみに変わるのを感じていた。

嫁の服を借りて帰ってゆく姑を送り出すとき、さと子は言った。
「またいらしてね」
「エエよろこんで」
おうむ返しに応えた姑は、息子の結婚以来初めて、嫁と声を合わせて笑った。
そしてその誘い通り、
柳子は律儀にも、よそ行きのスーツを用意のうえ、息子の家を再訪した。
そのときのありさまが、冒頭のくだりである。



「お義母さま、だいじょうぶ?」
口では姑を労わりながら、さと子は同じ歓びを共にしたものの目になっている。
「お夕飯の支度を――」
言いかけた姑の口を封ずるように、さと子はいった。
「お義母さまの手を煩わせるわけには参りませんわ。そちらは私が受け持ちますから、お義母さまは引き続き・・・」
あとはウフフと笑いでごまかして、さと子はいままでになく軽い足取りで台所にむかった。

「~♪」
鼻歌交じりに家事にいそしむ台所まで、物音は十分に届いた。
真っ暗になったリビングでは、女としては一人取り残された柳子が、着崩れしたスーツ姿のまま、
吸血鬼、その兄、息子の幸雄、孫の達也までもに囲まれて、
四人の男がのしかかり代わる代わる性欲を吐き散らしてゆくのを、相手にしていった。

数時間前まで夫とともにいたときから身に着けていたスーツの存在が、
さいしょのうちこそ彼女の理性を苦しめたけれど。
ストッキングごしに舐め着けられる舌や、
ブラウス越しに荒々しく揉み込まれる掌や、
ブラジャーのストラップを無造作に断ち切る尖った爪や、
複数同時に素肌のうえを這いまわる唇たちが、彼女の理性を蕩かしていった。

「御飯ですよ~♪」
嫁の明るい声が頭上に響いた時。
柳子はまだ、ストッキングを片方だけ穿いたまま、
息子のなん回目めかの吶喊を、しっかりと受け止めている最中だった。



≪街の広報誌から≫
血液提供者の対象年齢拡大へ  献血者の負担緩和狙う

二十四日、市は吸血鬼有効政策の一環として、血液提供者の対象年齢を拡大すると発表した。
従来のガイドラインでは、十代から五十代の男女を吸血の対象としていたが、六十代男女のうち健康な者も含める。
実施は即日。

中高生の血液提供者を持つ家庭では、
その両親が子女の体力負担軽減を願って血液提供を希望するなど、
家族単位での浸透がさかんであるが、
既婚女性に対する吸血行為が性行為を伴うケースも報告されており、
「嫁の乱倫行為に発展しかねない」との声がその親世代からあがっていた。

反面、「息子夫婦が正常な夫婦関係を維持させたい」との希望から、
進んで血液提供を希望する初老の夫婦もおり、
市の決定を待たずにガイドラインを越えた年齢の男女が自発的に血液の提供に応じたケースも報告されている。

―街の声ー
「姑に黙ってもらうにはいい機会だと思います」
そう語るのは、間島聡子さん(仮名)。
聡子さんは昨年市に転入後すぐに、夫である幸夫さん(同)のすすめられて、
幸夫さんと親しい関係にある吸血鬼に血液の提供を始めた。
「一回に吸われる量が多くて、日中もくらくらする日がありましたけれど、
 事情を知った母が父を説得して血液を提供してくれることになってから、
 体がだいぶ楽になりました」
聡子さんと吸血鬼との親密な関係を夫の幸夫さんは承知しているが、
「最近、主人のお母さまが感づきだしたみたいで・・・ちょっとはらはらしてるんです」
幸夫さんの母・龍子さん(同)は近々同家を訪問する予定。
良き嫁である聡子さんは今、姑を堕とすためのシナリオ創りに余念がない。


5月27日9:31構想 6月1日20:44加筆・あっぷ

義父母を交えての乱倫

2020年05月15日(Fri) 11:23:14

母娘で、肩を並べて犯されていた。
もっとも――女性の意思に反して交わりを遂げられてしまうことを「犯される」というのであれば、
娘のほうは、必ずしもそうではなかった。
娘は人妻で、娘が相手をしている男は、実の父親だった。
母親のほうは、傍らで獣と化した夫と同じくらい危険で兇悪な吸血鬼を相手にしていた。
娘は父親との近親相姦を、積極的に腰を振って愉悦していたが、
母親はまだ新婚初夜の花嫁のように動きもぎこちなく、戸惑いながら相手の欲求に応じ続けていた。
けれども手練れな吸血鬼が貞淑な年配妻を飼いならすのに、さほどの時間はかからなかった。
そして、「犯されている」はずの母親のほうもまた、頬を赤らめながら、ためらいながらも腰を振り始めていった。


「パパは昔からあたしのこと、犯したがってるの♪」
夫婦のベッドのなかで、妻のさと子が囁いた言葉は、
まるで毒液のように夫の幸雄の耳朶を染め、胸の裡をどす黒く染めていった。

「こんどのお誕生日のプレゼントは、あ・た・し♪」
実家の電話口に出た父親に娘はそう囁いて、
父親の胸の裡をも、同じ色で塗り替えていった。
「代わりにね、ママに恋をさせてあげようよ♪」
愛娘の悪だくみに、父親は即座に協力すると確約した。

娘の婚家に現れた夫婦を初めて目にした吸血鬼は、丁寧な会釈を交し合ったあと、娘夫婦に耳打ちをした。
「さいしょの一発めをだんなに見せるのは良くない」
と。
「貞淑で生真面目なおかみさんだ。しんけんに抵抗するだろう」
「だからいいんじゃない♪」
あくまで能天気に言い寄る女を、吸血鬼はいつになく気難しい顔つきで遮った。
「本気の抵抗って、見ていて面白くはないものだぜ」
あくまで、実地を知っている者らしい発言に、娘も娘婿も服従の頷きを返してゆく。

娘が父親を誘って散歩に連れ出し、
よそ行きのスーツを連れ込んだ納屋の藁にまみれさせているとき。
貸し出された夫婦の寝室では、貞淑な年配妻の貞操喪失劇が、どたばたとくり広げられていた。
介添え役の娘婿だけが、固唾を呑んで隣室から覗き見して、すべてを見届けた。
引き裂かれたワンピースに、吊り紐を断たれたスリップ。
そのすき間から覗く、意外に若々しい柔肌。
肩になだれかかる乱れ髪が、黒々と蛇のようにしなやかに、豊かな乳房をユサッと撫でた。
永年守りつづけてきた操を不当に汚された貴婦人は、ぼう然としてあらぬ方を見つめていた。


情事のあとは、 喉が渇くものだ。
「お義母さん、お疲れさまでした。さあどうぞ」
そういって飲み物をすすめるはずが、じっさいにあてがったのは、気付け薬だった。
はっとわれに返ると、姑は呟くような小声でいった。
「幸雄さん、私、なにをされてしまったの?」
目許はまだ、戸惑いに充ちている。
なるべく早く、落ち着かせることが肝要だった。
「お義母さんは、恋をなすったのですよ」
「恋!?」
生来の生真面目さを取り戻しかけて、姑が娘婿のほうを振り返り、そして初めて娘婿が女の姿をしていることに気がついた。
「ゆ、幸雄さん、どうなさったの!?」
「情事のあとは、喉が渇くものです。彼にも飲み物をあてがわないと」
幸雄はゆうゆうと、肩まで伸びた地毛を見せびらかすようにそよがせながら、吸血鬼のほうへと歩み寄った。
そして、さっきふたりが乱れたベッドに腰を下ろすと、吸血鬼に肩を抱かれながら、いった。
「この方は、美人しか襲わないんですよ」

ふたりの首のつけ根には、くっきりと咬み痕がつけられている。
姑の菊代と、娘婿の幸雄。
ふたりながら同じ部位に同じ痕をつけられてしまうと、菊代はあきらめがついたようだった。
身づくろいをしなければならない――菊代が腰を浮かしかけると、幸雄が言った。
「だいじょうぶですよ。お義父さんはまだまだかかります。今夜はもう、戻らないかも」
幸雄は、永年ご執心の女を手に入れた男が朝帰りになることを、手短に姑に告げた。
「ですからお義母さんも、朝まで恋に励んだらよろしいでしょう」
「あなたはそれでよろしいの!?」
ふたたびベッドに組み敷かれてゆく菊代に、娘婿はいった。
「お義父さんにさと子さんを渡すのは、親孝行だと思っていますよ。
 そしてお義母さんに恋人をつくってさしあげるのも、やはり親孝行――」
娘婿に抑えつけられた腕を振りほどくことができないままに、
菊代は歯を食いしばって男の唇を拒み、それでも否応なく、夫以外の雄の匂いを喉の奥へと流し込まれ、むせ返っていた。


あくる朝、朝帰りした父娘を、菊代と幸雄は何食わぬ顔で出迎えた。
娘の着ていったよそ行きのスーツに藁がたくさん付いているのを菊代がわざと見逃すのを、
男たちは含み笑いをして見過ごした。
その次の夜のことだった。
母娘が2人ながら、肩を並べて組み敷かれたのは。


「アッ!なにをなさいます!?」
やって来た吸血鬼は、菊代を見るなりいきなり羽交い絞めにして、リビングのじゅうたんの上に転がした。
「識らない仲でもあるまいに――ご主人がおられると恥ずかしいのかね?」
救いを求めるようなまなざしは、あっさりと裏切られた。
「菊代、おとなしくしなさい」
「こ・・・今夜は・・・結婚記念日なのよッ」
泣き悶える菊代の細腕を、夫は力任せに抑えつけた。
「吸血鬼さん、さあどうぞ。自慢の家内です。気の済むまで愉しんでください」
「あああ、あなたあッ!」
年配妻の悲鳴の上に、吸血鬼の淫らな欲望が覆いかぶさった。

長年連れ添った女房が往生するのを見届けると、義父は愛娘と目交ぜをする。
「パパ、よろしくね♪」
母親とは裏腹に娘は自分から、体を開いていった。
「お義父さんは、さすがに男らしいですね」
妻を寝取られながらも、幸雄は義父の精力の強さに驚嘆するしかなかった。
この恥知らずな年配男は、最愛の妻の貞操を気前よく提供した見返りに、
娘のうら若い肉体を自由にする権利を、娘婿の目の前で堂々と行使したのだった。


「お祖母ちゃん、すごいね。あんなに激しく腰振っちゃって、明日起きられるのかな」
「夢中になってるときに、明日の心配なんかしないものだろ」
女ふたりのプロ顔負けな男あしらいを隣室から覗き見しながら。
幸雄はワンピース姿の達也を引き寄せて、
達也は父親の言うなりになって、重ね合わされてくる唇を、けんめいに吸い返していた。


数日後。
情事の数々を重ねて、菊代夫妻は都会に戻っていった。
お土産は、菊代の”初夜”のときに隠し撮りをした、ビデオテープ。
「コピーを取ってありますからね」
吸血鬼は菊代に聞こえるように、彼女の夫をわざとらしく脅迫した。
脅迫された夫は、
「だいじょうぶ、我が家の恥は内聞に願いますからね」
と、にんまり笑い返してゆく。
ビデオの内容は、物を投げたり、引っ掻いたり・・・
実に初々しい内容だった。
なによりも。
菊代が貞操を守り抜くために最後まで生真面目な抵抗をしたことを、証明する内容でもあった。
夫は妻の忠実さに満足し、これからはその義務をあの男に限って解除すると妻に告げた。
永年忠実で貞淑だった妻も、女に返って愉しみはじめた――
ビデオを最後まで観て、実感したからだ。
あの夜、さいごにベッドを離れる時の菊代の眼差しはひやりと冷めていて、
口許にはしたたかな充足感が漂っていた。

「菊は、季節を問わず咲くものですな」
永年遊び慣れた年配男の言い草は、妻を犯された後も悠々としていた。