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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

巨大蛾

2015年09月09日(Wed) 07:37:57

クヒヒヒヒヒヒヒ・・・
奇怪な唸り声を嬉し気に響かせて、わたしの上にのしかかっているのは、巨大な蛾。
真っ白な重たい翅(はね)に、背広を着たまま捕らえられて、
首のつけ根には太い管をぐさりと挿し込まれ、生き血を吸い上げられてゆく。
めまいが・・・ひどいめまいがしてきた。
巨大蛾は、人語を囁いてくる。

お前の血は、旨い。お前の血は、旨い・・・
クヒヒヒヒヒヒヒ・・・

膨れあがった下半身をなすりつけるように摺り寄せながら、やつはわたしの血を吸い取ってゆく。
たしかに自分で言っている通り、それはそれは旨そうに。

この街に転入してきたら、吸血鬼に襲われるのが通過儀礼・・・とは教わってきた。
それでも夫婦ともども都会を逃れてこなければならない事情というのを抱えたわたしに、それ以外の選択肢は残されていなかった。
しかし・・・
よりにもよって、こんな怪物に襲われるとは!

いいかな?あんただけじゃない。奥さんも血を吸われるんだぞ。それでも赴任に同意するのかね?

まえの上長はたしかに、そう念を押してきた。
まあ・・・私もあそこには赴任した経験があるのだがね・・・
と、つけ加えることも忘れずに。
わたしは意思を喪った人形のように、こっくりと頷いていた。

たしかに、生身の男に妻まで襲われるということには、正直かなりの抵抗を感じていたし、
赴任後の上司との妻を交えた面談でも、そんな話をした覚えがある。
そうだな、蛾の怪物に襲われたのだというのなら、まだしもあきらめがつくのかな・・・
薄れゆく意識の下、わたしはうすぼんやりとそんなことを考えていた。

ヒイイイッ!
妻は喉の奥から悲鳴を漏らし、壁を背にして逃げ惑う。
なんとか逃れようとするのだが、巨大蛾は長い触手を伸ばして、妻の行く手を遮りつづける。
妻にしても、血を吸い取られた夫が足許にぶっ倒れている状況のなかで、いつまでも逃げ回ることができるとは、思っていないらしい。
そうはいっても、真っ白な巨大蛾が自分の血を求めて触手を伸ばしてくる光景には、本能的に恐怖を感じ、あらがってしまうのだろう。
脳天を薄ぼんやりとさせてしまっているわたしは、不思議な昂ぶりを覚えていた。
子供のころに観ていた特撮もののドラマに、そういえばこんな感じの怪人が登場していたっけ。
あのとき、ふつうの人間が襲われて餌食にされてゆくのを、たしかドキドキしながら見守っていたっけ。
それがいま、現実のものとなって目の前にあった。
ワンピース姿を触手にからめとられた妻は、わたしのときと同じように、首すじに吸血管を埋め込まれていった。

生身の男に妻が抱きすくめられて生き血を吸い取られるというのには、抵抗がある。
たしかにそう思っていた。
この街の吸血鬼は、そんなわたしの心境をくんで、こんな化け物を吸血相手に選んだのだろう。
血を吸われて昏倒した妻は、やはり血を抜かれて意識をさ迷わせている夫の傍らで、ずっと抱きすくめられていた。
ただし巨大蛾は、いまは人間の男に姿を変えている。
正体はきっと、こっちなのだ・・・わたしは薄ぼんやりとそう自覚して、自覚しながらも抱きすくめられている妻の肢体から目を離すことができなくなっていた。
男は膨れあがった下半身を、妻の股ぐらに擦りつけていって・・・もうひとつのおねだりまでをも、果たそうとしていた。

巨大な怪人が妻を襲って、征服しようとしている。
化け物が人に入れ替わっても、そんな情景に昂ぶりを覚えつづけているわたしは、いったいなんなのだろう?

自分の心のなかに棲む怪人の存在に気づきながらも。
犯されてゆく妻を――歓びに目覚めてゆく妻を目の当たりにしながら、
わたしは不覚にも、射精を繰り返していた。

吸血沼に、遊びに行こう。

2010年12月10日(Fri) 07:48:06

吸血沼に、遊びに行こう。
えつ?吸血沼?
転校して間もないサダオは、きき慣れない地名を訊き返した。
早く来いよ。男子の秘密の遊び場なんだ。
いっしょに来なかったら、もう遊んでやらないぞっ。
まだ友だちのいないサダオにとって、そのひと言は強かった。

木立の生い茂る、沼のほとり。
半ズボンの下、色とりどりのハイソックスを履いた男の子たちの脚が、
すべりやすい足許を気にしぃしぃ、恐る恐る歩みをすすめる。
しましま模様のハイソックスのタダシと、肩を並べて進むのは。
真っ白なハイソックスのユウ。
そのすぐあとには紺に赤ラインのハイソックスのシロウ。
男子のくせに真っ赤なハイソックスを履いている、アキオ。
初めて誘われたタカヤは、折り返しに白のラインが入った、ブルーのハイソックスを履いていた。
あいつのハイソックス、美味しいだろうな。
新顔の少年を、まんまと深みに誘い込んだ少年たちは、
ひそひそ声で、囁き合う。

あっ、もういるぜ。
タダシが真っ先に、声をあげた。
ほら、と指差す足許に。
しましま模様のハイソックスに、黄緑色をしたヒルが這っていた。
あ、おれの脚にも。
おつ、ボクの脚にも。
口々に声を洩らす、少年たち。
ハイソックスの足許に、極彩色にぬめったヒルが、いつの間にか這い寄っていた。

きみのは、これ。
真っ白なハイソックスのユウは、ヒルの這うあとに微かに紅いシミを滲ませている。
え?このヒル血を吸うの?
初めて足を踏み入れたタカヤが、びっくりしたように声をあげる。
血を吸うんだよ。だってヒルだからな。
かたわらの木の幹にへばりついているやつを、ユウはむぞうさにはがすようにして。
これ、お前のぶん。
避ける間もなく、ぬるりとなま温かい感触が首すじに触れた。
痺れるような痛みに、タカヤは「ああっ!」と叫んでいた。
すごいめまいがして、タカヤはその場にくず折れる。
オレの血を吸うヒルの、弟なんだ。よろしくな。
ユウは事務的に、そういうと。
タカヤの首すじからはがしたヒルを、こんどはブルーのハイソックスのふくらはぎに這わせていった。
こいつらさ。ライン入りのやつ、好きみたいなんだ。
傍らに立っていたはずのシロウは、紺のハイソックスのふくらはぎの赤いラインにヒルを這わせていたし、
アキオの真っ赤なハイソックスにも、極彩色のヒルが粘液を光らせていた。

くらくらとしためまいから、解放されたとき。
タカヤは洋館のなかにいた。
沼のほとりの洋館は。
吸血鬼たちの巣窟だった。
男の子たちは例外なく、大人の男に組み敷かれて。
ハイソックスのふくらはぎから、血を吸い取られていた。
こいつら、血を吸うと人間の姿に戻れるんだ。
ユウはどうやら、きょうの新入りの教育係らしい。
ママにばれちゃうよ。
そうかな?でもたぶん、その方がいいと思うぜ。
ユウの言い草に、なぜか安心してしまったタカヤは・・・
真新しいブルーのハイソックスに、惜しげもなく赤黒いシミをしみ込まされていった。

どうしたの?こんな寂しいところに連れてきて。
つまんない、という顔つきの姉に。
タカヤは後ろから、忍び寄る。
お姉ちゃん、ごめんね。
手にしたヒルを素早く、姉の首すじに這わせてしまった。
きゃーっ。
学校帰りの制服姿が、のけぞって。
発色の鮮やかな赤のチェック柄のプリーツスカートを、
惜しげもなくぬかるみに、浸していった。
ボクの血だけじゃ、足りないんだ。
お姉ちゃんも、協力してね。
失血のため、目の周りに隈をにじませながら。
タカヤの姉は、ゆっくりと頷いて。
紺のハイソックスの足許にヒルを這わせてくる弟の手を、
避けようとはしなかった。

妹連れて来たんだ。
すごくしんけんな顔をしたアキオは。
きょうも、真っ赤なハイソックスを履いている。
お前のハイソックス、妹のやつかよ?
そうからかっていたものが、絶えたのは。
だれもが吸血沼に、惹き入れられてしまってから。
まだ小柄な、アキオの妹は。
おさげ髪をかいくぐって、首すじに這わされたヒルに。
ひと声「きゃっ!」って、叫んだけれど。
オレのヒルにも、いいよな?
白の編みめもようのハイソックスのうえ、タダシが這わせてきたヒルに。
さほど迷惑がらずに、脚を添わせていった。

お前、ずいぶん薄いの履いてるんだな。
しましま模様が気に入りのはずのタダシが、きょうは珍しく薄いのを履いている。
パパのやつ借りてきたんだ。ストッキングみたいに薄いだろ?
きょうはママの身代りなんだ。
脛を白く滲ませた、濃紺の薄手のナイロンのうえ。
ぴったりと密着した極彩色のヒルは。
ぶちりとかすかな音をたてて、薄いナイロンに裂け目を走らせた。
やっぱりママのストッキングじゃないと、いけないかな。
明日は法事だから。ママは黒いやつ履くはずなんだ。
パパといっしょに、連れきちゃおうか?

新入りなのに、姉をたぶらかしたタカヤは。
もうだれからも、仲間と認められていた。
姉さんのときにはすぐに、人間のかっこうに戻るんだね。
制服姿にいやらしく寄り添おうとする、その中年の男は。
なんど、姉の制服のスカートに、あのぬるぬるとした白い粘液をなすりつけたことだろう?
きょうはめずらしく。かなり長いことヒルの姿でいるけれど。
グレーのハイソックスがものめずらしいのか、すでにかなり肥大化しはじめている。
こんど。うちのママも、連れてこようよ。
えっちなこと、させちゃおっ。
姉から借りた、お揃いの。グレーのハイソックスの脚に、代わる代わるヒルを這わせ合いながら。
姉さんはさりげなく、爆弾発言をした。

吸血怪人による征服の姿。

2010年04月21日(Wed) 07:27:21

皮膚にぴったりと密着した吸血チューブを通して、自分の血のぬくもりが伝わってくる。
血を抜かれるようになって、どれほど刻が経ったのだろう?
頭がぼーっとしてきたところをみると、そろそろ生命の危険すら自覚しなければならないかもしれなかったのに。
なぜかひどく冷静で、安らかな気分だった。
隣のベッドでは、べつの吸血怪人が、妻のうえにおおいかぶさっている。
こちらは首筋に尖った嘴(くちばし)を突き立てて、花柄のワンピースが濡れそぼるくらいに行儀悪く巻き散らしている。
わるく思いなさんな。あれはあれの流儀で、奥さんの血を愉しんでいるのだから。
どうやらその気分が伝わっているらしく。
妻はさっきからへらへらと笑いこけていて、
嘴でうなじをつつかれるたび、感じたようにピクッと身を震わせているのだった。

わたしの股間に手をやった怪人は、性別で言うと女らしかった。
さっきからなにかを確認するように、わたしのペ○スを握りしめていて、
ふん、あんた。なかなかの変態だね。奥さん侵されるのがそんなに愉しいのかい?
侮蔑の言葉にも、挑発の響きがあった。
妻にのしかかっているほうのやつは、男性らしかった。
ワンピースのすそを腰のあたりまでたくし上げて、さっきから深々とした上下動を、妻の腰へと伝えていく。
淫らな排泄行為をされてしまっているのは、あきらかだった。
妻はそれでも、へらへら笑いをやめようとはしない。
むしろくすぐったげに、異形のものの凌辱を愉しんでいるのだった。

淫らな血を、ぜんぶ吸い取ってやろうかね。
それとも少ぅしは、残しておいて。
なんども襲って愉しんでやろうかね。
男の怪人は、女の怪人の夫か愛人なのだろうか。
さっきから女怪人の口調には、憎々しげな想いがこめられている。
ぜんぶ吸い取ると、つぎの供給先を探すのが大変なのだろう?
どうかね?教え込まれてしまった妻と。自覚してしまったわたしと。
両方とも生かしておいて、エネルギーの補給源にしてみたら?
その話、乗ったよ。あんた、意外に悪党だね。
その会話、隣のベッドにも届いたらしい。
男怪人は「んがぁ」と嬉しげな声をたてて、もういちど妻を深々と抉っていたし、
妻は妻で、わたしに感謝のこもった侮蔑のまなざしを向けて、
―――もうすこし、愉しませてもらうわね。
挑発たっぷりに、腰を使い始めている。

世界征服は無理にしても。
少なくとも、わたしたち夫婦のことだけは、征服することができたらしい。
吸血怪人に、歓びを―――

奴隷家族 ~怪人に堕とされて~

2010年04月16日(Fri) 07:54:00

大昔に観ていた“変身”もので、怪人が人間を襲って吸血するときには、

シュワシュワシュワシュワ・・・

という妖しい擬音がひっそりと響くのです。
あの音は・・・それなりにトラウマになったかも?^^;


シュワシュワシュワシュワ・・・
わたしの身体から、血液が吸い取られてゆく。
さいしょはもちろん、抵抗したけれど。
なにかを強引に引き抜かれてゆく感じが、なんともいえなくなって。
失血とともに弱まったのは、抵抗だけではなくて、理性そのもの。
わたしの血を理性とともに吸い取ったのは、巨大なヒルのような姿をした怪人。
キヒヒヒヒヒ・・・
嘲るような皮肉な嗤いに、わたしは薄ぼんやりとした笑みを交わしていく。
血を吸い取られる前には想像もできないようなことを口走りながら。
―――さぁ、どうか・・・わたしの家族の血も、ご賞味を。

薄暗いリビングのなか転がされているのは。
34歳の妻。まだ稚ない息子と娘。
水玉もようのワンピースに、肌色のストッキングの妻は。
―――アッ、何なさるんですっ!?
のしかかってくるヒル怪人に向かって叫んだけれど。
キヒヒヒヒヒヒヒ・・・
怪人はさも嬉しそうに含み笑いを響かせながら。
オ前ノ亭主ガオ前ノ血ヲ勧メテクレタノダ。観念スルンダナ。
そういいながら、白と黒の水玉もようのワンピースの脇腹に、
おもむろに吸血管を刺し込んだ。
―――きゃあっ。
妻はひと声、呻くと、そのまま失神した。
シュワシュワシュワシュワ・・・
さっきわたしの血を吸い取ったばかりの、あの忌まわしい音が。
妻の身体のうえにも、おおいかぶさってゆく。

洗練されたワンピース姿におおいかぶさった大ビルは。
妻のうなじにも飢えた吸盤をあてがって。
シュワシュワシュワシュワ・・・
情け容赦なく、食事に没頭する。
くねくねと床の上をくねる触手は、妻のふくらはぎに巻きついていって。
れ、令子・・・っ!?
叫ぶわたしの目のまえで。
肌色のストッキングがみるみるうちにくしゃくしゃに堕とされていった。

ママッ!! か、母さんっ!?
子供たちの声に、応じるように。
振り向いた妻の目許には、蒼白いアイシャドウ。
キヒヒヒヒヒ・・・似合いだな。
大ビルにほめられた妻は、ちょっと羞ずかしげに俯いたが。
呪わしいほどハッキリとした声で。たぶん本人が夢にも思っていなかっただろう言葉を呟いている。
どうぞ、子供たちの血も、愉しんでくださいね。

シュワシュワシュワシュワシュワ・・・
半ズボンの下、ねずみ色のハイソックスの脚に巻きついた触手を、どうすることもできないで。
息子はずり落ちたハイソックスを赤黒く染めながら、意識を喪ってゆく。
シュワシュワシュワシュワ・・・
フリルのついた真っ白なハイソックスをずり落としながら。
娘もおさげ髪の頭を、がっくり俯けていった。

だれもかれもが、目許に蒼白いアイシャドウ。
息子に似合うわけのない、まだ稚ない娘に似合うわけもない。
違和感ばかりが漂う形相を。
大ビルは好のましげに見まわした。
オ前タチノ血ハ、アトノ愉シミノタメニ、取ッテオク。
トキドキ吸イニ来ルカラナ。
妻はにこやかに、ほほ笑んで。
子供は早く寝るのよ。
母親の顔に戻っていて。
もっと血を吸われたがった息子と娘を、たしなめると。
つづきはあしたの夜に。新しいハイソックス履いていらっしゃいね。
ドアの向こうへと、押しやっていった。

私にはまだ、御用がおありなんでしょ?
別人のように冷ややかな響きを持つ、妻の声。
キヒヒヒヒヒッ・・・
大ビルの嗤いが、いっそういやらしさを帯びていった。
モノ分カリノイイ奥サンダナ。エ?
わたしの顔を覗き込んだ大ビルに。
主人のわたしも、もの分かりはいいほうですよ。
応えてやった。
妻を生かしておいたのは、そちらの愉しみもありだから・・・でしょう?って。

お気に召していただいて、夫として嬉しいです。
どうぞ妻をぞんぶんに、あしらってください。
ヨカロウ。オ前ノ望ミトアラバ、カナエテツカワソウ。アリガタク思ノダゾ。
妻は自分からぶりぶりと、血のついたワンピースを、引き裂いていって。
怪人の鉤のように太い爪が、ブラジャーの吊り紐を切り裂いていた。
全体重をかけてのしかかる大ビルの下。
緩慢にばたつく脚が、キュッと立膝になる。
脱げかかった肌色のストッキングが、ふしだらにずるずると、すべり堕ちていった。

オ前ノ妻ハ、戦闘員ノ性欲処理ニ使用スル。
ワシノ女ニナッタ特権デ、凌辱対象ハ二名ニ限ッテヤル。
オ前モ好キナトキニ、妻ヲ抱トヨイ。
放心した妻に、全身黒ずくめの戦闘員がふたり、
イィ・・・イィ・・・
怪音を発しながら、代わる代わるのしかかっていった。
略奪するような荒々しいあしらいに身をまかせながら、
妻は意識も朦朧となりながら、へらへらと笑いこけている。
イィ・・・イィ・・・
獣どもの声が、侵蝕された自宅のリビングのなか、ひどく嬉しげに響き渡った。

オ前タチハ我々ノ奴隷。
女房ハ娼婦。
毎週一度ハ、血ヲ吸イニクルカラナ。
わたしは恐る恐る、そのくせはっきりと。
頷きを、かえしてしまっていた。
知らず知らず、ぬらぬらと。
透明な粘液が、わたしの股間を浸している。
恥ずかしいようすを、すっかり見届けた妻は。
蒼白いアイシャドウの目許を、冷然と引き締めて。
優雅にウェーブした髪を、事務的にささっと掻きのけると。
では、そういうことで。
出てゆく男どもを、丁重に見送っていった。

見かけはそれからも、仲良し家族。
いつも優雅に装うおしゃれな妻に、
服を泥だらけにして帰って来た息子と、おてんば娘。
けれども週に一回は、”番組”が始まる。
照明を落としたリビングのなかは、惨劇のリプレイの場。
お気に入りのワンピースを惜しげもなく血だらけにしながら、
娘ははしゃぎながら、気前よく血を吸い取られてゆくし、
息子は怪人の吸血管や吸盤、触手に触らせてもらいながら、
解説を聞きながら、自分から胸に吸盤をあてがって、Tシャツを真っ赤に染めていく。
すごいね。ホラー映画みたいだねって、昂奮しながら。

子供たちが気を失うほど血を摂られると。
大ビルと戦闘員たちは、妻を拉致していく。
行き先は、近在のアジト。
オ前ハ妻ノフシダラナ行イヲ、トックリト見届ケルノダ。
妻は冷然と、蒼いアイシャドウの目許を引き締めて。
では、そういうことで。
素っ気ないほど他人行儀に、わたしに向かって会釈をすると。
黒の礼服に黒のストッキングの装いを、
大ビルのヌラヌラ濡れた触手にゆだねてゆく。
ぱりっ。ぶちぶち・・・っ・・・
他愛なく引き裂かれてゆく礼装のすき間から、真っ白な肌が露出した。

怪人たちの饗宴

2009年08月18日(Tue) 11:19:25

ふすまを開けはなった隣室から。
女のすすり泣きが、洩れて来る。
まだ服を着たままの女は、仰向けになったまま。
醜悪な肢体の持ち主である怪人に抱きすくめられていて。
注射針のように鋭利な吸血管の先端を、首筋にちくりと埋め込まれていた。
うぅ~っ・・・、く、くう・・・うううっ・・・
細く震えを帯びた呻吟の声に、「キヒヒヒヒヒヒヒッ」と嬉しげな声が覆いかぶさっていて。
嬉しげな響きがあがるたび、透明なチューブ状の吸血管のなか、赤黒い液体の通り抜ける速さが増すようだった。

傍らに立ったまま縛られたセーラー服姿の少女は、黒のストッキングのつま先を、居心地悪そうにたたみにつけて、
やがて自分に覆いかぶさって来るであろう運命を見せつけられるままになっていた。
恐怖に引きつるノーブルなおもざしは、目の前で難に遭っている女のそれと似通っていて。
どうやら拉し去られてきたのが母娘らしいと、容易に察することができた。

母親がぐったりとなると、深く突き刺した吸血管を、胸元からグイッと引き抜いて。
こんどは娘のセーラー服の襟首に、忍びこませてゆく。
「キャーッ!」
絹を引き裂くような悲鳴とは、こういう悲鳴を言うのだろう。
いちど空になりかかった透明なチューブ状の吸血管は、ふたたび赤黒い液体で満たされた。
はたち前の娘の、うら若い血液に。
怪人はひどく満足げに、「クヒヒヒヒヒヒヒッ」と、随喜の呻きをあげている。
一方的な吸血に、娘は表情をこわばらせて、
ちょっとのあいだ、耐えるように黒のストッキングを履いた脚をたたみの上に踏ん張ったけれど、
やがてくたくたとくず折れるように姿勢を崩して、ずるずると背中をすべらせて、尻もちをつくようにして。
ロープを巻かれたままの制服姿を、自からの作った血だまりの上に浸してしまっていた。

「命だけは、ね。お願い・・・」
三人めは、勤め帰りのOLらしい。
以前にも襲撃を受けた経験があるのか、吸血を許すのと引き換えに、必死に命ごいをしていた。
若い女の選択は賢明だった。
怪人は愉しげに三たび、透明な吸血管をバラ色の血液で満たしていくと、
それだけでは飽き足らず、接吻するように女のうなじに食いついて、スーツの肩先を汚している。
制服の少女の傍ら、女はくたりと腰を落として。
足許ににじり寄ってくる怪人の唇を避けようとして、いともやすやすと足首をつかまれて。
吸いつけられた唇の下、ふくらはぎを包むストッキングがふしだらにねじれてゆく足許から、悔しそうに目をそむけていった。

「何をしている?お前ぇもやって、かまわないんだぜ?」
怪人のそそのかす声に、わたしははっと我に返った。
はぜるような渇きが、本能的にせり上がってくる。
「ここに引き入れられた女たちは、半ば承諾済みの身のうえ。同情など無用のことだ。早く、養分をむさぼるがいい」
肩のつけ根から生えてきたばかりの吸血管が、わたしの本能をあらわにするようにしなり始めた。
むくりと鎌首をもたげたそいつは、かすかに人間の感性を宿しているわたしの意思とは裏腹に。
さいしょに倒れた女の二の腕に、ヘビのようにからみついてゆく。
吸血管の先端が皮膚に突き刺さる微妙な手ごたえが、
かすかに残った理性をあの忌まわしい悦びで否応なく塗り替えてゆこうとする。

「うふふふ・・・ふふふ・・・クククククッ・・・」
抱きすくめた母親にのしかかって首筋をなめ始めたわたしのすぐ傍らで。
怪人はOLのスーツをはぎ取り、スカートのすそを割っていた。
―――多少のことは、構わないのだぞ・・・
わたしの運命を変えた男は、訳知り顔にそう囁いて。
さいごに残った一抹の罪悪感さえ、拭い去ろうとする。
けだるそうな抗いを掻きのけて、身体のあちこちに、唇を這わせていって。
女の熟れた肢体からもたらされる暖かい体液は、すさんで棘だった気分をうっとりと和らげてくれる。
怪人が母親の脚にとりついて、OLのときと同じように肌色のストッキングを凌辱し始めると。
わたしはその娘のスカートをたくし上げて、黒のストッキングのふくらはぎに唇をあてる。
「お前の舐めかたは、念が入っているな」
怪人は、言ってほしくないことを容赦なく指摘する。
「ただの餌だと割り切るのだ。馴れればいずれは、そうなるのだから」
つい、想像してしまうのさ。
遮るようにして、わたしはつい口にする。

このブラウスは、ご主人に買ってもらったものなのかと。
この黒髪を、毎晩しかるべきひとに、めでてもらっていたのかと。
初めて制服に袖をとおすとき、この娘はどんな期待をよぎらせていたのかと。
黒のストッキングに唇をつけるとき、初めて脚に通した時の大人っぽい気分はどんなものだったのかと。

ふん。
あしらうような反応だった。
怪人は軽蔑したように、そっぽを向くと。
まず母親の身に着けていた肌色のストッキングを。
つぎに娘の履いていた黒のストッキングを。
こともなげに、はじけさせていて。
見るかげもなくなるほど噛み破り、脛までずり下ろしていった。
まずOLを。それから、母親を。腰を思い切り上下させながら、踏みにじって。
けれども娘だけは、犯そうとしなかった。
処女の生き血は、貴重だからな。
多少のことは、構わないんだが・・・

多少のことは、構わない。
そう。
わたし自身を、堕としたあと。
それとまったくおなじことを、この怪人はわたしの家族に降り注いでいった。
その記憶が、まだわたしには、残っている。
やがて、消えるさ・・・
そういう彼もかつては、やはりわたしを引きずり込んだのとおなじやり口を、仲間から受けたことがあったのだろうか。
そう、やがて消える。順ぐりに・・・
別れ際わたしは無表情に、生命だけは助けてくれた妻と娘を、週末呼び寄せてやることを約束している。


あとがき
う~ん、ちょっと長いし、くど過ぎるかも。。。 ^^;

愛しの吸血管

2009年08月05日(Wed) 07:49:47

たった今まで、わたしの胸に突き刺さっていた吸血管が。
怯える妻の胸元に、迫っている。
引き抜かれた直後の管の先端からは、まだ吸い取ったばかりのわたしの血がしたたっていた。
逃れようとする妻の行く先を、長い長い触手が封じていった。
ねばねばとした粘液を、うわぐすりように光らせた触手は、
見慣れた妻のブラウス姿をぎゅううっ・・・と、締めつけていって。
ふりかざされた吸血管が、まるでとどめを刺すように。
ずぶり・・・
ブラウスの襟首深く、埋め込まれる。
きゃあああっ。
断末魔の叫びとともに。
抜き取られてゆく妻の血が、透明な吸血管を伝わってゆく。
不思議にも。
冷え切ったわたしの身体までが、ぬくもるような錯覚を覚えて。
妻の血が抜かれてゆくありさまを、わたしはワクワクとして、見守っている。
いちど血を抜かれてしまうと。
こんどはべつのものの血で、あの吸血管を満たしたくなってくる。
恐るべき魔性を秘めた怪人だった。

からになったビールびんみたいに、わたしの傍らごろりと転がされた妻の身体。
土気色になった頬を、めいっぱいほほ笑ませて。
妻はわたしの同類になったことを、悦んでいた。
ねぇ。わたしたちの血。おいしかったようね♪
吸い残しておいてくれたら、もっと吸わせてあげたのにね。
一滴でも吸い残したら、失礼にあたるんだそうだよ。
ひと足先にあちらの世界に踏み込んだわたしは、
物知りげに妻に解説を試みていた。

つぎは・・・睦美の番ですね。
そうだな。わたしたちの血がおいしかったのだから、娘の血がまずかろうはずがない。
ふたりそろって、娘の勉強部屋に引き入れた怪人は。
真っ白なハイソックスのふくらはぎを、あの触手で撫でまわしてゆく。
ずぶり・・・
苦悶にゆがむ唇の下。
あの吸血管が、わたしたちの娘の血を、いともおいしそうに吸い上げてゆく光景を。
わたしたち夫婦は固唾をのんで見守っていた。

ママも薄情だね。
跡取り息子を放置するなんて。
さいきん色気づいてきた息子は、久しぶりに履く半ズボンに照れ笑いを浮かべながら。
すこし寸足らずな娘のハイソックスを、めいっぱいひざ下まで引き延ばしていって。
触手って、ぬるぬるとしてキモチいいんだね。
妹のハイソックスが、すねの周りでくしゃくしゃになってゆくのを、面白そうに見つめていて。
ぶすりと刺されたときには、きゃっ、と小娘みたいに。くすぐったそうな声をあげていて。
吸血管を満たしてゆくバラ色の液体に、うっとりと見とれていた。
ボクの彼女の家、母子家庭なんだ。
血が足りなくなったら、こんど手引きしてあげるからね。
こうして一夜にして、家族全員が。
怪人の奴隷に堕ちていた。


あとがき
意味のないお話になっちゃいました。(^^ゞ

怪人さん、よいお目覚めで^^

2009年07月21日(Tue) 06:56:00

けさも怪人が、闇の世界からお出ましになった。
朝の支度中の女房と、登校まえの娘をつかまえて。
ごくりごくり・・・と、血を啖らっていった。
いつもながらの、お盛んな食欲だった。
白目をむいてぶっ倒れた女房は、ごていねいにもスカートのなかまでまさぐられて。
あへあへとはしたなく、おめいていた。
ついひと月まえまでは、わたししか識らない身体だったはずなのに。

怪人保護条例がひそかに施行されているこの街では。
怪人たちに危害を加えるのは、ご法度である。
妻や娘を怪人に襲われて、血を吸われたり犯されたりしてしまう・・・とわかっていても。
一家の夫や父親たちは、自分たちの女家族に明らかに不埒な意図をもった彼らを、
すすんで自宅に招待しなければならなかった。
夫や父親たちの手ほどきで。
娘たちは処女の生き血を捧げる歓びに目ざめ、
人妻たちは、夫公認の不倫に酔い痴れる。

世界征服は、このひとたちには無理そうだけど。
我が家はすっかり征服されちゃいましたね。
妻はそんな風に、うそぶいた。
世界征服のために、養分たっぷり吸い取られちゃった。
新調したばかりのスーツごし、吸血管でぶすぶす突かれて、穴だらけにされていた。
スーツの新調、この季節に何度目かしら?って。
ちょっと嬉しそうな上目遣いをしてみせた。

透明なチューブで血を吸い取られるのは、キモチ悪いけど。
抜かれ切っちゃうと、スッとするんだ・・・
娘は、ひっそりと呟いて。
長い髪の毛を、けだるそうに掻き除ける。
ショジョの血が、お気に入りだっていうから。。。犯されるのガマンしてるんだけど。
ママの血だって、吸うもんね。
あたしも早く、犯してもらいたいな♪
彼氏の許可だって、もらっているんだもの。
さっ、早く学校行かなきゃ。遅刻しちゃうから。
セーラー服の胸元に大胆に横切るしたたりを見せつけるようにして、
なにごともなかったかのように、登校していった。

出勤まえ

2009年07月13日(Mon) 07:36:31

行ってきま~す
朝なのにちょっと気の抜けた声を投げて、登校していく娘のことを、夫婦で見送って。
さて・・・おれも出かけるかな。
やっぱりけだるい声を投げると、妻はかいがいしくスーツの上着を取り上げる。
さりげなくスッと身を寄せてきて。
意味ありげに、囁いた。
あの子もそろそろ・・・ですわね。
早い子は、中学にあがってすぐに、体験している。
隣の家に住む、娘の幼馴染みの少女も。
入学式の帰り道、父親の触手に巻かれて、黄色い声をあげていた。

そう。
どこにでもいる父親を、演じながら。
正体は、生まれもつかぬ怪人となった身。
ワイシャツのそで口から覗く手が、一瞬グロテスクな緑色の光に包まれた。
だめ、だめ。家のなかだけですよ。
妻は肩まで伸ばした髪をかきのけて、首すじのあたりをくつろげる。
齢不相応に、お嬢さんのようなウェーブのかかった髪が、つややかに揺れた。
袖から覗いた手首が不自然に伸びていって、妻のうなじにからみつく。
半透明な緑色をした触手は、ヘビのように甲羅ばっていて、
そのくせ妙にぬるぬるとした粘液に包まれている。
触手の透きとおった部分が、妻の血の色をあやしはじめて、
目のまえの女体はうっとりと寄り添いながら、しずかにその身をくねらせてゆく。

きょうもだれかを、襲ってくるのね―――?
妻の瞳のなかにある色は、嫉妬なのか哀しみなのか。
それとも、心からの愉悦なのか。
あぁ、人の血はいくらあっても、多すぎることはないのだからね。
わたしは甲羅ばった頬と触手を、素早くスーツの奥にしまい込んで。
通勤かばんを手に取った。
帰りは、遅くなるよ。夜は部長のお宅に招ばれているからね。
部長には中学と高校の娘がいるはずだ。
後輩の結婚式で顔を合わせた奥さんも、部長にはもったいないほど脂ののりきった美人だった。

怪人の棲む病院

2009年05月18日(Mon) 06:52:23

画面に映し出されたのは。
真っ黒な背景に、赤いテロップ。
題して。
「襲われるナースステーション」

たしかに、この病院の看護婦たちだった。
おそろいの白衣をひるがえして。
いちように、恐怖の色をありありとたたえながら。
三人、もつれ合うようにして、部屋の隅に追い詰められてゆく。
恐怖におびえる女たちのまえに立ちふさがるのは、グロテスクな体形をした怪人。
2メートルはあろうかという背丈。グロテスクごつごつのついた皮膚。
なによりも。指先から長く伸びた吸血管が。
女たちの柔肌を、狙っていた。
キヒヒヒヒヒヒヒ・・・
吸血管の鋭い切っ先が、白衣のすき間を狙っていた。
「お前たちの血を、おれのエネルギーにする」
芝居がかった宣告に。
看護婦たちは、度を失っていた。

ぶすり。ぎゅう~っ。
一人めの看護婦が、白衣の胸に吸血管を突き立てられた。
あうううっ・・・!
悲痛な呻きをもらして仰け反る女は、みるみる顔色を変えてゆく。
同僚ふたりは、仲間を助けることも出来ずに、ただ口許を抑えて悲鳴をこらえているだけ。
意思を喪った泥人形が、鉛色の顔をして床に転がると。
二人めの犠牲者が、毒牙にかかる。
キヒヒヒヒヒヒヒ・・・
首っ玉を抑えつけられて、うなじに吸血管を刺し込まれた。
あああああっ・・・
白目を剥いた看護婦は、別人のようにふやけた陶酔の色を浮かべながら、
透明な吸血管を、自分の血で赤黒く満たしていった。
あ・・・あ・・・あ・・・
さいごに残ったのは、いちばん若い看護婦だった。
ナースキャップを振り落して逃れようとするのを、肩をつかまえて、こぼれおちた黒髪をたぐり寄せて。
キヒヒヒヒヒヒヒ・・・
嬉しそうな随喜の声が、女の悲鳴におおいかぶさった。
若い看護婦は白衣をびりびりと引き裂かれて、むき出しにされた白い肌に、鋭利な吸血管を吸い込まれた。
ゆっくりと引き抜かれてゆくバラ色の液体が、女から顔色を奪っていった。

倒れた三人の看護婦の足許に、にじり寄って。
怪人は床に這わせた触手で、白のストッキングに包まれた脚を撫でまわしている。
どろりとした粘液をうわぐすりのように光らせた触手は、
しなしなとくねりながら女の脚に巻きついてゆく。
薄手のストッキングはねじれて波打ち、しまいにオブラアトをとろかすように引き裂かれていった。

―――どうかね?少しは面白かった?
白衣の院長は、わたしのことを冷静に観察していたらしい。
だいじょうぶ。あなたは適合するようだね。では、治療を始めよう。
そっけなく言った横顔に、冷やかな笑みがよぎった。
わたしをその部屋に導き入れるとき。
ちょっとためらいながらも、囁いてきた。
あのドラマの続きなんだが。わたしの妻もヒロインなんだ。
つぎに襲われるのは、院長夫人と令嬢。
わかるかね?いまのきみと同じなのさ。

ひた・・・ひた・・・ひた・・・ひた・・・
身体じゅうにまとわりついている粘液は、足音さえも消すらしい。
怪人が目指している病室にいるのは、わたしの妻と娘。
閉ざされたドアの向こう側。
きゃあ~っ!
ふた色の絶叫が、わたしの耳をつんざいた。

ドアからは一歩も入ってはいけない。
けれども理性を超えると、人間なにをするかわからないからね。
開いたドアの向こう側には、鉄格子が嵌められていた。
怪人はいったいどうやって、この鉄格子を抜けたのだろう?
そんな疑問は、荒々しい光景をまえに吹っ飛んでいた。

黒一色のスーツ姿の妻が、怪人の触手に巻かれている。
制服姿の娘は、両手で口を覆って立ちすくむばかり。
さっきのドラマと寸分たがわぬ光景のなか、妻と娘がさらされていた。
怪人のふりかざす鋭利な吸血管が、病室の照明にきらりと光った。
ぶすり・・・
あうううううっ!
吸血管に吸い出されてゆく妻の血は、どす黒かった。
キヒヒヒヒヒヒヒ・・・
あの忌まわしい笑い声が、病室に響いていた。

壁ぎわに追い詰められて、尻もちをついた娘は、とうとう立ち上がることができなかった。
キヒヒヒヒヒヒヒ・・・
怪人は容赦なく娘を捕まえると、セーラー服のえり首ごし、
たったいま、妻の生き血を吸い取ったばかりの吸血管を、初々しい胸許に刺してゆく。
ああ~っ!
キヒヒヒヒヒヒヒ・・・
ぬらぬらとした緑色の触手に巻かれながら、絶叫する娘。
うねうねともつれた細長い吸血管は、バラ色の液体でカーブを描く。
若い娘を相手にしているときのほうが、嬉しそうな声だった。

横たわる二対の脚。
娘は、ひざ下までの白のハイソックス。
妻は、スーツに合わせた黒のストッキング。
まだ血色の残っている足許は、しなやかなナイロンの生地ごしに、ピンク色のふくらはぎをかすかに透きとおらせている。
キヒヒヒヒヒヒヒ・・・
順ぐりに巻かれてゆく、妻の脚。娘の脚。
女たちのストッキングやハイソックスは、いとも愉しげに引き剥かれ、ずり降ろされてゆく。
スカートのなかに侵入した触手は、奥の奥まで愉しんでいた。
気丈な妻も。
年頃になって生意気になった娘も。
苦悶のなか、甘美な陶酔を滲ませて。
怪人の求めるまま、奥の奥まで許していった。

治療代は、いらないよ。
奥さんと娘さんからいただいた血で、おつりをあげたいくらいだからね。
その代り時々、奥さんと娘を、病院に連れてくることだ。
こんどは院長夫人と令嬢、四人まとめてご馳走してみようか。
妻同士、娘同士。仲良くなれそうじゃないか。
院長の含み笑いは、ひどく病的で、満ち足りたものだった。


あとがき
う~ん・・・
なんとも、無内容。(笑)

怪人の隠れ家

2008年08月04日(Mon) 07:23:39

正装した妻の背後に迫る怪人は。
シックな調度とも、棲む人の装いとも、いかにもマッチしないグロテスクな姿。
2メートルはある体長で、抱きすくめると。
下品な極彩色をした粘液まみれの猿臂のなか。
華奢な礼装姿を呑み込んでしまう。
白のブラウスに、くい入るように。
透明な吸血チューブを、ぐるぐると巻きつけて。
もだえる妻は、ブラウスごし乳房を浮き彫りにしながら。
首筋に迫らされた吸血管の先端を、指先でもてあそびながら。
自分の手で、ぶすりと突き刺してしまっていた。

ふやけた顔つきの妻は、横抱きにされたまま。
束ねた長い黒髪を、じゅうたんまでぶらりと垂らしていた。
あとは・・・わかっているだろうな。
それだけは・・・よしてくれ。
震えた声の拒絶を、あざ笑いで受け流すと。
おまえの体面は、じゅうぶん取り繕ってやったぞ・・・・と、
こちらの本心を見透かすようなことを言って。
夫婦の寝室に待つ無表情な戦闘員三名に、この家の主婦を投げ渡していた。

乱れたシーツのうえ、戦闘員たちによる凌辱がづづいている。
もうガマンできない・・・切なげにひと声、洩らしたうめきが呼び水になって。
着崩れした礼装を、惜しげもなく破り取らせながら。
妻は凌辱の渦のなかに、巻かれてゆく。
淫らな血ほど、採血に適している。
怪人の声には、姿に似合わぬ深い響きがあった。
かわるがわる、犯されながら。
首筋には、吸血管を突きたてられて。
透明なチューブを、真っ赤に浸しながら。
妻はまつ毛をナーヴァスに、震えさせながら。
戦闘員たちの腰が股間に沈み込むたび、随喜のうめき声をガマンできなくなっていた。

そう、ここは怪人の隠れ家。
昼間は旧家の邸宅でも。
夜になると一転、不夜城になりかわる。
占領された邸宅は、怪人たちの饗宴の場。
初めての夜のリプレイに、わたしは危うい想いに胸を焦がしている。


あとがき
解放された罪なき市民たちが。
血管の奥深くそそぎこまれたマゾヒスティックな本能を呼び覚まされて。
退治されてしまったはずの怪人を、家にかくまって。
家族の血で、養いつづけて。
初めて襲撃された夜のリプレイをくり返されながら。
妖しい歓びに目ざめてゆく。
そんなプロット、お気に入りなのです。^^

凌辱の森

2008年07月26日(Sat) 06:47:42

夜の闇が、しらじらと明けてきた。
夏場とはいえ、高原の森に漂う透明な空気は涼やかで。
日中の濁った蒸し暑さとは、同じ場所とは思えないほど。
朝霧にけぶる彼方から。
人影が足音もなく浮かび上がり、じょじょにこちらに近づいてくる。
二人、三人、・・・五人、六人・・・
ぜんぶで一ダースほどの人影の一番後ろから姿を現したのは、異形の怪人。
両腕から垂れ下がる触手をぶらぶらさせながら、
のしのしと無造作な足取りをこちらに向けてくる。
その時分には、前のほうの人の列は、ひとりひとり見分けがつくほど近まってきて。
先頭を歩くのは、妻。
半歩遅れて歩みを進めるのは、妹。
すこし遅れて母までもが、二列に並んだ黒い影に、付き添われるように、取り囲まれるように、
おなじ歩みを進めてくる。
怪人の尖った頭が、しなる触手が。
冷酷そうな口許が。
紅く生々しく濡れているのは、彼女たちの身体をめぐっていた血潮。

「コノアタリデヨカロウ」
葬列のように無言の一行を、機械的な声がひきとどめた。
怪人の発したものだった。
まず、先頭を歩いていた妻が。
無表情に、一同のほうへと向き直る。
紺と白のボーダー柄のシャツに、濃紺のスカート。
ほとんど暗い色調の装いに、白っぽいストッキングを穿いた脚が、鮮やかに浮き上がっている。
怪人は、死刑執行人が振り下ろす鎌のように、妻の胸元に吸血管を振りかざして。
ぶすり・・・
ものの見事に、突き刺していた。
ひっ・・・
ひと声、かすかなうめき声を発しただけで。
黒ずくめの連中に両肩を抑えられた妻は。
立ったまま硬直し、透明なチューブ状の吸血管を、赤黒く充たしていった。

紅く染まった吸血管のカーブが、うねうねとしなる以外、すべてのうごきが停止していた。
制止したシルエットからにじみ出るのは、むしり取るほどの荒々しい貪婪さ。
妻は力なく、ひざを折ると。
丈のある下草にくたくたと身を沈めていった。
つぎは、妹の番だった。
純白のセーラー服の下に着けている、濃紺のスカートに黒のストッキングが。
下肢の輪郭を重たげにしていたけれど。
セーラー服の胸に突き刺さった吸血管は、うら若い血を容赦なく吸い上げる。
触手の一端が、細い首に巻きついて、妹は稚なさの残った目鼻を苦しげに歪める。
首に巻きついた触手の先端は、白い線が三本走った襟首ごしに、ぬるりと這い込んで。
純白のセーラー服の内側から、不自然な隆起を見え隠れさせた。
控えめな胸に、貪婪なまさぐり。
妹はせめて、両腕を掴まれている母親のほうだけは見るまいと。
キュッと目を瞑り、顔を背けつづけている。
もういっぽうの触手は、黒のストッキングの足許に巻きついて。
肌の透けるほど薄いナイロンに、ぬらりと光る粘液を沁み込ませていきながら。
じわじわとゆがめ、しわ寄せてゆく。
ぶちち・・・っ。
とうとう耐えかねたように、ストッキングが裂けてしまうと。
ぐいいっ・・・
力を込めて引き抜かれた吸血管からは。
赤黒い血のりがぽたぽたと、草地に垂れてゆく。

濃紺のプリーツスカートを草地に埋めて尻もちをついた妹の向こう。
黒のブラックフォーマルに身を固めた母は。
軽く頬を引きつらせていたものの。
それでも気丈に、怪人の吸血管を、黒のブラウス越し深々と受け止めていた。
三人三様、熱情を秘めた血潮が、透明で無機質の吸血管を、かわるがわる充たしてゆく。
クククククククク・・・
獣じみた随喜の声をあげながら。
母の生き血を吸い終わった怪人は、娘や嫁の隣で尻もちをついた母の足許に、なおも執着して。
黒のストッキングごし、粘液にまみれた触手を、心地よげに巻きつけてゆく。

三人の背後に忍び寄る黒い影どもは。
てんでに、ブラウスやセーラー服に手をかけて。
びりびりっ・・・ブチブチッ・・・
おおっぴらな音をたてて、むぞうさに引き裂いてゆく。
ぁ・・・
女たちは、むき出しになった両肩を、心細げに二の腕で掻き抱いて。
あらわな胸を隠そうとする努力もむなしく、両手を引きはがれ、ブラジャーの吊り紐を断たれていった。

転がされた草地のうえ。
裂かれたストッキングを巻きつけたまま。
三対の下肢は、立てひざをし、ふくらはぎの筋肉をキュッと緊張させて。
しまいに太ももに、淫靡な血潮をめぐらせながら。
一人・・・ふたり・・・
のしかかってくる黒影どもと、夫婦どうぜんの契りを交し合ってゆく。
怪人は独りたたずみながら。
随喜にくねる女たちの脚に、時おり触手をからめていって。
脚の線から浮き上がり、ずるずるとずり落ちてゆく薄いストッキングを、
たくみに裂き取り、引き剥いでゆく。

さいごに、女たちをうつぶせに抑えつけた黒影どもの促すままに。
さいしょに、母。
それから、妻、
さいごに、妹。
順ぐりに、お尻のうえから、腰を合わせていって。
逞しい臀部を、沈み込ませて。
狂わせていった。

いい眺めだな。
しじまのかなたから、声がした。
女たちのきゃあきゃあという、はしゃぎ声に似た悲鳴が、一瞬遠のいた。
そうですね・・・
声のしたほうを、振り返りもせずに。
ぼそりと応えた声色が、昂ぶりを秘めている。
そっけなく抑えた声色からそれを聞き取ったらしい背後の声の主は。
母さん、いちばん長いね。
標的に選ばれただけでも、えらいと思ったんだがね。
おなじ種類の昂ぶりに、声色を震わせながら。
自分の妻が異形のものに征服され、ぶきっちょにしがみつきながら、じょじょに応えはじめてゆくのを。
ひどく満足げに、窺っている。
漆黒のスカートからはみ出した、純白のスリップ。
制服のプリーツスカートからあらわになった、むき出しの太もも。
似通った血の味は、怪人をひどく満足させたらしく。
母のときだけが、ひどく長かった。
佐恵子さんは、一番人気のようだね。
そう・・・新婚数ヶ月の若妻は、堕とされた草むらのうえ、大胆なポーズをとりながら。
黒影どもを相手に、腰を激しく振っていた。
あからさまで聞こえよがしな声を、あげながら。
美加はまだ、かわいそうだったかな。
だいじょうぶ・・・あいつらが濡らしているのは、太ももだけだから。
いまにしんそこ、思い知らされるだろうがね。
さて・・・そろそろ戻ろうか。
女たちに気づかれないように、寝たふりをしないとな。
わたしは声のするほうを、振り向きもしないで。
背後の声が去ってからも。
ただひたすら、静かに進行してゆく饗宴に、酔いしれていた。
堕とされてゆく日常―――。
妻はきっと、なに食わぬ顔で、朝餉の支度をするに違いない。

怪人に追い詰められて

2008年07月18日(Fri) 06:32:03

あの怪人さん、あんたの奥さんに執心やな。
傍らの同僚は関西弁で、わたしにそっと、囁いてくる。
夜更けの道。
息せき切って逃走をはかる妻は、時おり後ろを振り返りながら。
家の方角へと足を速める。
薄暗い街灯の下。
白のブラウスだけが鮮やかに浮き上がっていた。

声をひそめた同僚も。
夫であるこのわたしですらも。
邪魔が入らないように、見守るだけの立場。
わたしとほぼ同年輩であるらしいその男は、
言葉のなまりから関西出身としか、わからない。
レオタードのように全身に密着する戦闘服からは。
顔かたちはもちろんのこと、体格以外のいかなる情報も与えてくれないのだった。

もうどれほど、走ったことだろう?
運動神経の鈍かった妻が、こんなに長く走れるということを。
怪人のアシスタントに身を落としてから、初めて知ったわたし。
どこまでもつづく高い塀に仕切られた迷路のなかを。
妻は紺のスカートをひるがえして、懸命に駆けつづける。
白のブラウスが浮き立った上半身とは対照的に。
足許は、暗い。
それが身に着けている黒のストッキングのせいだと気づくのに、そう時間はかからなかった。
月明かりと切れかかった街灯だけが頭上を支配する薄明のなか。
ただ、白のブラウスだけが、浮き上がって。
ブラウスだけが一枚、自らの意思でひらひらとなびいているようにさえ映る、
とても静かな光景―――。

とうとう、追い詰められてしまった。
袋小路になった無表情な壁を背に、妻は怯えて立ちすくんでいる。
内股になった両脚が、黒のストッキングに薄っすらと染まっているのが。
はじめてあからさまに、目に入った。
まんまと獲物を追い詰めた怪人は、甲殻類みたいにごつごつとした皮膚に鎧われていて。
威嚇するように触手をぶるんぶるんと振り回しながら。
その場にへたり込みそうになっている獲物をまえに、じりじりと距離を詰めてゆく。
ゆるく旋回する触手が発する鈍いうなりが、あたかも催眠術のように。
妻から抵抗の意思を奪っていった。

わざと一回だけ、逃げ切らせてやったのさ。
あるとき怪人は得意げに、こっそりそんなことを教えてくれた。
もしかすると、逃げ切れるかもしれない―――
そううい希望があれば、人は必死に逃げるもの。
だれだって、あらぬ辱めを受けたいなどとは、思わないからな。
毎週、木曜の夜。おなじ時間帯。
勤め帰りの妻を襲う受難は、定例と化していた。
怪人ものの特撮ドラマで、さいしょに襲われて血を吸われてしまう、無名のヒロイン。
妻の役柄は、まさにそれだった。
激しくかぶりを振って、いやいやをする女は。
からみつけられた触手に、くるくると全身を回転させながら、巻かれていって。
ぬるぬるとした粘液に光る触手に、着衣を乱されながら。
ブラウスの襟首に、ぐさりと吸血管を突き立てられてゆく。
「ああああああっ!」
たまぎる絶叫に、怪人はグフフフフフ・・・と、得意げな笑い声を重ねていって。
透明に輝く吸血管を、妻の血液で満たしていった。

ふふふ。一件落着やね。
同僚の男はわざとらしくぞんざいに肩をすくめて。
お役目ご苦労さん、ご同輩。
やけに親しげに、肩を叩いてきた。
さいごまで、見届けていくんやろ。
わしはこのへんで、おしまいや。
男は小手をかざして別れの会釈をすると。
ひっそりと足音を忍ばせながら、家路をたどっていった。
なぜかちょっぴりだけ、淋しげに。
きっとあいつも、わたしと同じように。
家族の生き血を、やつらに狙われているのだろう。
わたしはそう、直感した。
ふだんは深い身の上話は、お互いの間で厳禁されていた。
同僚のあいつに、今夜の犠牲者がだれなのかが告げられたのは、ほんとうに珍しい例外だった。
「今夜の獲物は、こいつの妻だ!」
せせら笑う怪人は、ほんとうに愉しそうだった。
わたしもくすぐったそうな顔をして、びっくりしたようすの同僚を窺っていた。

黒の網タイツにブーツを履いた彼の後ろ姿は、足取り速く去って行った。
それは、まるで悪役レスラーのコスチュームのようにこっけいだったが。
おなじなりをしたわたしが、口にできることではない。
さっきから。
太ももを締めつける網タイツの触感が。
まるで呪縛のように、皮膚の奥にまで食い入ってきて。
あらぬ高ぶりを、さそっているのだった。
目のまえで妻が、異形のものに生き血を吸い取られているというのに。
さいしょの夜。
ふつうのなりをしていたわたしは、縛られたまま。
触手に巻かれた妻が、生き血を吸い取られて狂わされてゆくありさまを見せつけられていた。
あのとき両腕に食い入ったロープと、いま身に着けている網タイツと。
なにがどれほど、違うのだろう?

”饗宴”は、最高潮に達していた。
白のブラウスのあちこちを、ほとばされた持ち主の鮮血で光らせながら。
妻はあえぎを深めていった。
不規則に散らされた赤黒い水玉もようが、じょじょに広がって。
そのうちブラウスの地の色が深紅と思えるほどに、染め抜いてしまうのだろう。
触手の片方は、おっぱいが浮き上がるほどつよく、ブラウスに包まれた上体を締めつけていて。
もう一方の触手は、黒のストッキングの足許を狙っていた。
エレガントな足許にしつように巻きつけられた触手は、
ぬるりぬるりと粘液を光らせながら。
ふらちな悪戯を、しつっこくくり返し、塗り重ねていって。
薄手のストッキングを蕩かすように、ぬめり尽くしていって。
しまいにブチブチと、音をたてながら。
薄々の装いを、他愛なくはじけさせてしまっている。
うなじに突き刺された吸血管を、自分の血で赤黒く満たしてゆきながら。
妻は恍惚となって、みずから血を捧げつづけている。
旨い・・・旨んまい・・・
怪人のささやきに、かすかに頷いて。
引き抜かれた吸血管を、手にとって。
自分の手で、胸元にあてがって、ブラウス越しにぐさりと突き刺していた。

ホホホホホ・・・
優雅な笑い声をころころと響かせながら。
自分の手で着衣を持ち主の血潮に染め抜いてゆく妻は。
破れ堕ちたストッキングから、むき出しにした太ももを、
街灯の下、惜しげもなくさらけ出したまま。
むたいな狼藉を、愉しみはじめている。
這いずり、転げまわったあげく、追い詰められた袋小路から抜け出した影は、
近くの川っぺりの土手までもつれあっていって。
きゃーっ!ははは・・・
あけっぴろげな声は、夜のしじまを突き破って。
ふたつの影は、からみ合いながら、土手の下に落ちていった。
背の高い草むらに見え隠れする光景を、わたしは固唾を飲んで、見届ける。
せり合わされた腰と腰が、狂った闇に沈むのを。

朝―――
早くしないと、遅刻よ~。
妻はお気に入りのストライプもようのエプロン姿。
いつものようにせかせかと、朝餉の支度に余念がない。
夕べの惨劇など、微塵も見られないほど、日常に溶け込んでいた。
ほら、あなたも。なにをぼやぼやしているの?電車に間に合わなくなりますよ。
軽く睨んだ視線を投げた後、反応をうかがうのももどかしく、そそくさと台所に戻ってゆく。
肩まで伸びた黒髪の合い間からちらと覗いた紅い痕だけが。
夕べの出来事が真実だと告げていて。
わたしはぞくりとして、現実から引き戻された。

制服姿の娘がばたばたと、玄関からあわただしく出て行こうとする。
ほんとうに遅刻寸前らしかった。
黒革のストラップシューズに、黒のストッキング。
母親似に内股をした脚つきが、一瞬とまって、
真新しく硬質に輝いた靴のすき間から覗いた脚の甲が、肌の透ける靴下ごしに、なまめかしく浮き上がるのが見えた。
娘が出て行ってしまって、喧騒が静寂に一瞬戻ると。
妻はゆっくりと後ろから近づいてきて。
わたしの想いを見通すように、囁きかける。
黒のストッキングが似合うようになりましたね。あの娘。
そろそろ怪人さんに、紹介してあげなくちゃね。
処女のうちに、血をあげないと。
怪人さん、きっとむくれてしまうわよ。
今夜はあの子、部活で遅いの。
半休、とっていらっしゃるんでしょう?
いつものように・・・ね。
着替えのコスチュームは、いつもの引き出しにちゃんと用意してありますから・・・


あとがき
どうしても夫をからませたがる、悪趣味な柏木です。(^^ゞ
昼間は日常を暮らしている家族なのに、
真夜中になると、襲われるヒロインと、襲う怪人の側に立つしもべに立場を変えています。
追われる妻。追い詰める夫。
愉しい鬼ごっこだと思います。^^

私んとこよりもはるかに妖しい怪人が出没する、舞方さんのブログでは。
みごと、三年連続アップを達成されたようです。
お祝い代わりに、こんなものをあっぷしてみました。
お祝いにならんか・・・?(笑)

触手に支配された街

2008年06月18日(Wed) 07:56:08

住民のほとんどが洗脳されて、吸血怪人に支配されてしまった街の話です。

「お引き合わせしましょう。妻と娘です。さあ、どうぞ。若い女の血を、ぞんぶんに絞り取ってください」
男はそういうと、怯える母娘を引き立てるようにして。
「さあ、おもてなしをするのだ」と、強要している。
母娘が怯えるのも、無理は無い。
初めて目にする怪人は、自分の背丈よりも体長の長い、大きなヒルのような身体つきをしていたのだから。
全身にヌメヌメとした粘液を光らせながら、すがりあう母娘を壁際に追い詰めてゆくのを。
男はフフフ・・・と、たちの悪そうな含み笑いで見守っていた。
まず母親が、折り目正しく装った和服の襟首に、触手を這い込まされた。
両手で口許をおおう娘の目のまえで。
ちゅーっ。
奇妙に機械的な音とともに、血液が抜き取られてゆく。
透明なチューブ状の吸血管を、母親の血が赤黒く充たしてゆくありさまに。
娘はその場にへなへなと、へたり込んでしまっていた。
白目を剥いて倒れ臥した母親の向こう側。
つぎはお前の番だ!
指差された触手は、ふくらみを帯びた胸元に突きつけられる。
タートルネックのセーターごしに、ズブリと突き刺さる吸血管に。
きゃあ―――っ!
少女は絶叫して、のけぞって。
けれどもやっぱり母親とおなじ経緯で、赤黒い血液を抜かれていった。

ふむふむ。
吸血管の先端にこびり着いた血液を、口に含んでいきながら。
やはり生娘の血は佳いのう・・・
父親の背丈よりもある大ヒルは、なおも物欲しげに少女にすり寄っていって。
真っ白なハイソックスのふくらはぎに、触手をにゅるにゅると巻きつけていく。
ひざ小僧の下、きりっと引き伸ばされたハイソックスは、みるみるくしゃくしゃに波打っていって。
セーターにしみ込んだのとおなじ赤黒い痕を、じわじわと広げていった。

ママ・・・。カオリお姉ちゃん。
つぎつぎと生き血を吸い取られてゆく光景を、窓越しに目の当たりにして。
マサル少年は、急いで玄関に回りこんでゆく。
とうてい間に合わないとわかっていながらも。
けなげにも、ふたりを救い出そうとしたのだった。
ママーッ!?お姉ちゃーんっ!
声張り上げて叫んだ玄関先。
けれども部屋の奥はシンと静まり返っていて。
マサル少年は、惨劇の起きた部屋のまん中に立ち尽くして、ぼうぜんとなっていた。
三人とも、影も形もなかったのだった。

どこだろう?
隣室に立ち去ろうとしたとき。
シューッ。シューッ・・・
押し殺すような音が、畳のうえを這い回るのに、少年は気がつかなかった。
薄暗い室内。
ねずみ色のハイソックスの足許に、少年の背後に、触手が忍び寄っていく。

あああああっ・・・
気がついたときには、もう遅かった。
少年の脚にしなやかに巻きつけられた触手は、じわじわと血を吸い出してゆく。
血に濡れたハイソックスのうえ、触手は少年の血の色を滲ませていて。
触手の活き活きとした彩りとは裏腹に、半ズボンの太ももはどす黒い紫に変色していた。
助けて。殺さないで・・・
けんめいの命乞いを、触手の主は寛大にも聞き届ける。
よかろう。その代わり、今夜はお前が母親と姉を連れ出してくるのだ。

ひたひた・・・ひたひた・・・
夜道を並んで歩く、三対の脚。
まぶたに別人のような翳りを帯びた少年は、先頭に立って。
母と姉をうながしてゆく。
たどり着いたのは、街はずれの沼。
三人の人影が水面に映ると。
それまで死んだように静かだった沼は、にわかにざわざわと波立ちはじめた。
さあ。おあがりよ。ママとお姉ちゃんを連れてきてやったから。
大蛇のように鎌首をもたげた触手たちは。
沼辺のベンチに腰かけた脚たちに、そろりそろりと迫ってゆく。
さいしょに、少年の脚が。
ハイソックスに血のりを滲ませた。

少年がうつろな目になって、失神すると。
ずり落ちて尻もちをついたすぐ隣。
制服姿の姉が、黒のストッキングの脚を触手にゆだねてゆく。
うふふふ・・・ふふ・・・
くすぐったそうな含み笑いを、うつろに響かせながら。
足許に加えられる凌辱を、愉しげに見おろしている。
巻きついてくる触手が、脛を蒼白く透きとおらせている黒ストッキングをくしゃくしゃにしていって。
しまいにブチブチと音をたててはじけさせてゆくと。
脚の白さを切れ切れに滲ませた下肢を、草地にじかに横たえて。
セーラー服のわき腹に。
白のラインも鮮やかな首周りに。
折り目正しいプリーツをくしゃくしゃに折り曲げたスカート越しに。
ヌルヌルと這い寄ってくる触手に、わが身をゆだねていった。

母親のほうは、さっきから。
紫のタイトスカートの下、肌色のスッキングの脚を狙われて。
唇噛みながら、足許に加えられる辱めから、視線を離せなくなっている。
巻きつけられた触手の下。
かすかな光沢を帯びた肌色のストッキングは。
ねじれ、ゆがんで、裂けていって。噛み剥がれ、堕ちてゆく。
ああ・・・
絶望のうめき声を、なぜか甘美に震えさせて。
まな娘と脚を並べて倒れ臥す。
キュウキュウ・・・キュウキュウ・・・
あからさまな吸血の音が、倒れた三人の人影におおいかぶさっていって。
闇がすべてを、支配してゆく。

数年後。
こんど、結婚する人だよ。
すでに大人びた翳をもった青年は。
かつて母や娘を生贄にしたように。
未来の花嫁を、沼地に伴っている。
ええっ?どういうことっ!?
怯えきった白タイツの脚は、立ちすくんだまま動けなくなっている。
ボクの友だち。
生娘の生き血が、好物なんだ。
ごちそうしてあげてくれるよね?
いつものように優しく語りかけてくる恋人の声色が、かえって怖ろしくくぐもっていた。

恋人に抑えつけられたか細い肩は。
これから加えられるしつような吸血に耐えられるのだろうか?
草地に怯える足許には、すでに触手がにじり寄っていて。
初々しいふくらはぎをまえに、もの欲しげにとぐろを巻いている。
さあ・・・破って御覧。
女のコの履いているタイツ・・・お好みなんだろう?
マサルは少年のころのように、声震わせて。
触手を恋人の脚に、巻きつけてゆく。
アア―――ッ!
魂切るような叫びを残して、髪振り乱した恋人が草地に倒れ臥すと。
少年は翳らせたまつ毛を、いっそうもの憂げにひそませながら。
手にしたヒルを、透きとおるうなじに貼りつけてゆく。
ううっ・・・
まつ毛を震わせて気を喪った恋人を。
軽く抱き寄せて。額に接吻をして。
首筋に貼りついたヒルが、みるみる赤黒く、醜く膨らんでゆくありさまを。
うつろに笑いながら、見守っていた。

寂しい夜道の口裏合わせ

2008年05月25日(Sun) 06:11:40

彼女を、紹介してやるよ。約束どおり。
いつもキミと待ち合わせているあの公園に、連れてきてやるから。
そう、やっぱり裏道がいいのかな?
キミは意外と、恥ずかしがりやさんだから。
あそこは、ボクの血を、キミにすっかり抜かれちゃった場所。
いまでも血管が渇きに疼くとき。
あの晩のことを思い出して、つい胸をずきずきさせてしまうのさ。

彼女、きっとおめかししてくるよ。
なにしろ、ボクとのデートだからね。
いつ抱かれてもいい・・・って、とっくに覚悟を決めているんだよ。
悔しいなぁ。
キミにはいちばんおいしいところを、もって行かれてしまうんだね。
黄色いワンピースが、彼女の一番のお気に入り。
ぴちぴちした太ももが覗くくらい、短い丈で。
今夜はボクだけじゃなくて。キミも・・・きっと目を奪われちゃうんだろうな。
デートのときにはいつも穿いてくる、肌色のストッキング。
きみ、むぞうさに破っちゃうんだろう?

どうやって、引き合わせようか?
彼女・・・まだキミやボクの正体を知らないんだ。
やっぱり、定番どおり・・・
ふたりとも襲われちゃう・・・って筋書きで、お願いしようかな。
さいしょに襲われるのは、もちろんボク。
きみはあの晩と同じように、彼女の目のまえで、ボクの生き血を吸い尽くす。
ごく短時間で、すませるのだろうね。
ボクの身体のなかに、血はもうほとんど、残っていないから。
さいしょは、痛そうな叫び。それからだんだんトーンを落としていって、さいごに和ませる。
そうすれば・・・彼女もどんなふうにキミの相手をすれば気に入られるのか、すぐに察しをつけるだろうから。

た、す、け、てーっ!
彼女はきっと、叫ぶだろう。
けれどもあたりは、人っこひとりいない、草ぼうぼうの寂しい夜道。
きみが彼女の血をまる呑みにしちゃうまで、助けはきっと、間に合わない。
えっ?ひと晩で吸い尽くすのは、もったいないって?
ボクもいま、そういおうと思っていたんだよ。

ボクの血に濡れた牙を、首筋に突きたてられて。
ぶちゅっ!って、唇を這わされちゃって。
いくらもがいても、キミの腕のなか。
彼女は抜け出すことができない。
くんずほぐれつ・・・の愉しい抗いのなか。
黄色いワンピースの肩先は、持ち主の血に濡れる。
腕から抜け出すほうが先か。
血を吸い取られて身動きできなくなっちゃうほうが先か。
もちろん勝負は、見えているんだよね?
キミはこういうとき、手加減しない人だから。
あー!早くもタイムリミット。
想像のなか、彼女は抵抗を弱めていって。
じょじょに姿勢を、崩していく。

うら若い女の生き血は、さぞかしおいしいことだろうね。
ほかならぬボクの彼女の生き血だから。
キミはさぞかし、気に入ってくれるだろう。
じゅるじゅる、ごくごく・・・って、いやらしい音を立てて。
せいぜいボクを、悔しがらせることだね。
いっぺんに吸い取っちゃ、いけないよ。約束だよ。
ボクは冷たい地面に頬を浸して。
彼女の血に酔いしれるキミを、羨望の目で見守りつづけているから。
あ・・・恨みっこなし・・・だったよね?
もちろんさ。
キミは彼女を、この世の極楽に堕としてくれるのだから。

身体のなかをめぐる血を、キミにぬるぬると吸い出されちゃって。
くたくたと力をなくして、地べたにひざ小僧を突いちゃって。
でもキミは、ボクを抑えつけたあの逞しい腕で、彼女の身を支えてくれるんだよね。
肌色のストッキングが、それ以上汚れないように。

ベンチに寝そべった彼女は、もう覚悟を決めちゃっている。
そう・・・捧げる相手が変わるだけで。
彼女は予定どおり、女になる。
もうすっかり、キミとは打ち解けちゃっていて。
支えてくれたお礼に・・・って、むっちり肉のついた太ももをさらけ出して。
泥をつけずにすんだ肌色のストッキングを穿いたまま、キミを愉しませちゃう。
あなただけよ・・・って、くすくす笑いながら。
彼氏の仇敵の飢えた唇に、柔らかい白い肌を惜しげもなく吸わせちゃって。
ストッキングを汚さずにすんだお礼だから・・・って。
黄色のワンピースの胸に、思い切りよく血を撥ねかせていく。

丈の高い草むらに、キミは彼女を投げ込んで。
狭い小道に脚だけ覗かせて。
彼女はキミの、エジキになる。
真夜中の婚礼は、満月だけが招待客。
嫁入り道具は、うら若い生き血と裂かれた着衣。
ちりちりに破けたストッキングは、ハイソックスみたいな丈になって、ひざ下までずり落ちていて。
堕とされたレディは、へらへら笑いながら、着衣を着崩れさせていく。

あたりに散らばった、ハンドバックの中身。
口紅、手鏡、ハンカチーフ。
ぴかぴか磨かれた、白いエナメルのハイヒールは、向きを変えて転がって。
花びらが散るように、浅ましくさらけ出された下着類。
ブラもパンティもおなじレエス柄の白なのを、ボクはどうしてか知っている。
そう。だって。
彼女のたんすの引き出しから抜き取ったストッキングを、身代わりに脚に通して。
キミに何回か、プレゼントしたんだったっけ。
脱ぎ捨てられたストッキングは、うつろな抜け殻みたいになって、草の穂先に引っ掛けられていて。
彼女がまだレディだったとき、足許を魅きたてていたあの光沢を、わずかな灯りに滲ませている。

黄色のワンピースだけは、脱ぎ捨てられずに、身に着けていて。
服のすき間のあちらこちらからチラチラこぼれる素肌は。
いっそ全裸より罪深く美しい。
彼女をモノにされちゃったボクは、情けないほど股間を昂ぶらせながら。
汚されて堕ちてゆく恋人の変貌を、毛すじひとすじ見逃すまいと、見守っている。
振り乱された栗色の髪の妖しいほつれも。
泣き濡れた頬に時おりよぎる、淫らな翳も。
太ももを伝い落ちる、バラ色の血も。
なにひとつ、見逃さないで。

え?そういうことだったの?
彼女は怒ると、頬をかわいく膨らませるんだ。
頬っぺたについた泥と、バラ色の血と、草の葉っぱを拭ってやって。
とっさにそむけた頬によぎった安堵の色を、ボクは見て見ないふりをする。
静脈の透ける白い肌にしみ込まされた淫蕩を、ボクはつぶさに見届けて。
これからもこんなふうに・・・愉しまないか?って、囁きかけて。
もぅ。
ツンとすました彼女の、柔らかなおっぱいに手をやると。
もうふりほどかないで、くにゅくにゅさせてくれちゃっている。
順番・・・だぜ?
キミのいけない囁きに、彼女は初々しく頬染めて。
けんかしないでね・・・って、いいながら。
抜き身の裸身をいさぎよく、濡れた泥にまみれさせてゆく。

週末のデートは、公園の裏道。
愉しい口裏あわせに、彼女も一枚くわわって。
きっと・・・そう。
こんどはきっとキミのために、女友だちを用意してくることだろう。

ワンピース40

花嫁たちの純潔

2008年04月25日(Fri) 20:21:02


ふーっふっふっふ・・・
笑い声に、エコーがかかっていた。
まるでテレビの子供向け番組に出てくる、怪人みたいだった。
壁ぎわに追い詰められて恐怖に震えているのは、新妻の緋紗代。
さっきまでおおぜいの親類友人に囲まれて、紺のカクテルドレスを着てはしゃいでいたのが嘘のように。
怯えて、縮み上がってしまっている。
部屋の外から斜めに射し込んでくるおぼろげな照明が、侵入者の影を長く引き伸ばしていて。
人間離れしたその人影は、ピンクのスーツ姿にゆっくりとおおいかぶさってゆく。
ただならぬ光景のはずなのに。
彼女を救うため足が前に出ないのは,いったいどうしたことだろう?
それもそのはず。
新郎の範彦はひと目侵入者と視線を合わせた瞬間、どうやら催眠術にかかってしまったみたいなのだ。

きゃっ。
緋紗代が恐怖に引きつった声をあげた。
抱きすくめられた腕の中。
ピンクのスーツに、不自然なしわが走った。
荒い息とともに解かれてゆくブラウスのタイ。
首すじにあてがわれた唇は、しつようなくらいつよく、女の肌を吸った。
うーっ。
顔をしかめて目を瞑り、なおも痛そうに眉毛がピンと吊りあがる。
吸いつけられた唇のすき間からは、ぽたぽたと赤いしずくがしたたり落ちた。
ちゅう~っ。
人をこばかにしたような、あからさまな音をたてて。
目のまえで緋紗代が、生き血を吸い取られてゆく。
吸血鬼だっ!
範彦はけんめいに、声をあげようとしたけれど。
カラカラになった喉はこわばって、ひくいうなり声を洩らしただけだった。
満面・・・いや身体じゅうがほてったようにのぼせていて、いつもとようすがひどく違っていた。
あ。オレ・・・どうかしてる・・・
昂奮してるんだ・・・って、気がついたときには。
新妻は、「うーん」とひと声呻いて、ベッドのなかに埋もれかかっていた。

く、ふ、ふ、ふ・・・
ピンクのスーツのすそからにょっきりと覗く緋紗代の脚は、黒のストッキングに包まれている。
薄手のナイロンごしに透ける白い脛に、惹きつけられるように。
怪人の唇が、ヒルのように吸いついた。
ナイロン製のしなやかな生地のうえからにゅるりとなすりつけられた唇は、そのままもの欲しげな唾液を光らせながら、脚線美をなぞるようにぬめりあげてゆく。
ストッキングに走るひきつれやたるみが、足許を彩る気品を猥褻な色香にかえていった。
ぐ、ふ、ふ、ふ、ふっ。
もはや、疑いなかった。
範彦の花嫁に向けられた欲望は、吸血だけにとどまらなかったのだ。
侵入者は肌脱ぎになると、新婦のスーツ姿のうえにのしかかってゆく。
はだけたブラウスやスカートのすき間から、生身の裸体をすべり込ませる。
あ、あっ!やめろ。やめてくれっ!
範彦の叫びは、むなしかった。
ブラウスの切れ端が、むしり取られた花びらのように床に散らばった。
力なくだらりと伸びた脚。
太ももまでのストッキングが、淑やかにも淫らにも映る薄墨色に、凌辱される女の下肢を彩っていた。
侵入を許した瞬間。
抗う手は動きをとめて、目じりからつつっ・・・と、涙がしたたり落ちる。
キュッと結ばれた口許からチラと覗いた歯の白さを、範彦は終生忘れないだろう。


ふーん。
姉さんそれで、落ち込んじゃっているのかな。
義兄からいちぶしじゅうを聞かされた和美は、声がわりした低いトーンで、まるで人ごとのようにつぶやいた。
自室のベッドのうえ、自堕落に寝そべりながら。
義兄も義兄で、そうシンコクな顔つきをしていたわけじゃない。
―――ねえねえ?姉さん処女だった?初夜のときの姉さんて、どうだったの?
無邪気にあからさまな質問を投げてきた新妻の弟に、新婚旅行の土産話みたいにして、初夜のようすをごくかいつまんで説明したのだった。
―――それがさー。緋紗代さん確かに処女だったんだよ。
―――義兄さんが犯すまではね?(笑)
―――いーや、さいしょに犯したのはボクじゃなくて、吸血鬼。
―――え、えー?
和美は面白いねたをつかまえた、という顔をして、次の義兄の言葉を待ち受けた。
ー―ー処女の生き血が好物なんだ。だから緋紗代さん、気絶するまで吸われちまったんだよ。
―――ウソだ。^^
―――どーして?
―――だってー。ボクが吸血鬼だったら、意識のあるうちに犯すよね。
鬼畜だなぁ。範彦は苦笑いをした。
やつの放った毒液でいくら麻酔をかけられていたとはいえ、痛そうに顔をしかめたあのときの緋紗代の面差しは、いつまでたっても忘れることはないであろう。
けれども彼は、もうひとつ「ねた」を持っていたのだ。

どうやって生きて帰れたか、わかるかい?
うーん、まさか吸血鬼氏と仲良くなっちゃったの?
図星なこたえに、内心びっくりしながら、範彦はあとをつづけた。
やっぱり乾いた口調のままだった。
まあ・・・そんなところかな。家にきたときは緋紗代の血を吸わせてやるって約束なんだ。
でもあいつ、処女には目がないからな。
言うんだぜ?
オレが征服した処女は、おまえの花嫁で12人めだ。13人目を紹介する権利をおまえに与えてやろう。
ってね。
それでボクは・・・キミと絵里ちゃんを推薦したんだ。
えーっ!?


ただいまー。
範彦が家に戻ると、迎えに出てお帰りなさいを言ったのは緋紗代ではなくて母の美登里だった。
実家と新居とはそう離れていないとはいえ、やたらと姑が新居に出入りするのは好ましくない。
範彦はちょっとだけ、顔をしかめた。
太り肉で迫力満点の美登里の脚は、てかてか光る肌色のストッキングのなかで、はち切れそうに見える。
母さん、珍しいね。光るストッキング履くなんて・・・思わず口にしようとしたら、思わぬ返事が返ってきた。
お宅の怪人さんが、光るやつ履いて来いっていうのよ~。
そんなストッキング、いつものスーパーに売ってないから、わざわざ街なかのデパートまで行ってきちゃった。
えー!?
よく見ると、てかてかのストッキングはあちらこちらぶちぶちと破けていて、目映いほどの光沢も、裂け目のあたりだけは途切れている。
ちょっと蒼ざめた頬の下、珍しく髪をアップにしてあらわに魅せた首筋には、ぽっちりと二つ、紅い咬み痕が綺麗に並んでいた。
お父さんには、しゃべっちゃダメよ。あの人ったら気が小さいから、気絶しちゃう。

あとから緋紗代に訊いたところだと、母親の振舞いは至極開けっぴろげで能天気なものだった。
きゃ~!どうしましょ。
ウキウキとはしゃぎながら怪人の猿臂に巻かれていって、うなじをちゅうちゅうやられてしまうと、
他愛もなく白目になって、たたみの上に仰向けにぶっ倒れたというのだ。
犯されているあいだも、おほほほほ・・・って。それは愉しそうに笑っていらしたわ。
緋紗代は自分よりも愉しんじゃっているようすの姑に、ホッとしたような困ったような、フクザツな顔をしていたけれど。
だってお義母さま・・・長いんですもの。
母の情事を語るさいちゅう、しじゅう不満げな顔色をしていた理由の大部分は、案外そんなあたりにあるのだろう。
そう。
新婚旅行帰りの彼女が元気がなかったのは、夫以外の男のために純潔を奪われたショックなどではなくて、たんなる失血と度重なる情交によるものだったのだ。

母さん頼むよ。破けたストッキング履いたまま帰るのだけは、よしてくれよ。
だって~。このストッキング高かったのよ。四千円もしたんだもの。
値段の問題じゃない。
いちど破かれ脱がされてしまったストッキングを、どうしてわざわざ履く気になるのだろう?
節約主義にも、ほどがある・・・
範彦は見当ちがいなところで、ぶつぶつ文句を言っている。
で・・・?
辺りを見回すと、妻の姿がない。
息子の顔色を察したように、母親はどこまでも能天気に言い放ったものだった。
あらー。察しがわるいわね。
母さんなんか、ほんのオードブルなのよ。本当のお目当ては、あなたの奥さん♪
緋紗代さん、張り切ってたわよ~。
ばっちりとおめかししちゃって、新婚旅行のときに着てったピンクのスーツ着込んでいたわ。
愉しげに息子を挑発する姑の声に応えるように、夫婦の寝室のほうから声が洩れてきた。
き、効くぅ~と言っているらしいのを、勤め帰りの夫はかろうじて聞き流している。


夫婦のベッドのうえ、緋紗代はスーツ姿のまま、荒縄でぐるぐる巻きにされていた。
あーあー。
お袋のことを、咎められない。笑うことさえできない。
範彦じしんも、もう能天気になってしまうしか、手がないようだった。
初夜の床を襲った吸血怪人は、女ふたりの血を吸って、鼻筋のとおったいい男になっていた。
水もしたたる・・・とはいうけれど。
母や妻の身体から吸い取った生き血を口許からしたたらせている侵入者は、整った白皙の面貌を輝かせて、憎らしいほどの二枚目ぶりである。
ようこそ。
しらけ切った範彦の声を気にするふうもなく、
怪人は、やあ・・・と気軽に会釈をかえしてきた。
妻が無事ですまなかったのは。
なかば剥ぎ取られた黒のストッキングの裂け目に滲んだ透明な体液からそれと知れた。
悪いが今夜ひと晩、緋紗代はオレの奴隷だぜ?
怪人は範彦の妻の名前をわざと呼び捨てにし意地悪く笑むと、女を促して、おとがいを仰のけさせる。
正座して待ち構える面前に、男は股間をさらけ出して、さっきまで存分な振舞いをしてのけた一物を、受け口になった唇のすき間に割り込ませてゆく。
うう・・・う。
夫のまえでの戯れに、さすがに緋紗代は顔を背けていたけれど。
唯々諾々と相手の意に従うようすと、嫌がっていない唇のうごきとが、すべてを裏切っていた。
妻の口許を濡らしているのは、自分の唾液なのか、男にしたたらされた精液なのか。
ぬらぬらとした淫蕩な輝きは、唇と陰部との区別を難しくしている。

和美くんには、言い含めてきたんだろうな?
自分の意思が通らないわけがない。
そう決めてかかっているような口ぶりにわざと水をさすように、
いちおう、話はしてきたよ。でも、決めるのは本人だからね。
で・・・?いつ、彼女をオレのところによこすつもりだ?
怪人はどこまでも、楽観的である。
そうした楽観的な態度だけは、ガマンならなかった。
なんとか、突き崩してやろうと思った。
まさか・・・どこの世界に自分の婚約者を連れてきて「さあ処女を奪ってください」っていう男がいるものか。
うーん・・・
怪人は腕組みをした。
しんそこ不可解なように首をひねっているようすに、範彦は思わず笑い出してしまった。
怪人の逆立った先端は、いまだに妻の唇に咥えられている。


そうかねそうかね。ぶじ、もどってきたのかね。
ああ・・・ああ・・・よくわかった。和美には私たちのほうからもよく言っておくよ。
それにしても・・・いまさらなことだけど。
わざわざあのホテルを結婚式場に択ぶなんて・・・ねぇ。
白髪交じりになった頭を時おり掻きながら、誠一郎は受話器を握ったまま、妻のほうをチラチラと盗み見ている。
会話の半分しか聞き取れないのに、妻のスミ子はおおよその内容を察してしまったらしい。
電話がまだつづきそうだと見て取ると、夫のほうをチラと見て、そそくさと立ちかけた。
受話器の口を抑えた夫の声が、あとを追いかける。
スポーツ・ジムに行くにしちゃ、ずいぶんとめかしこんだんだね。
夫の冷やかしをさりげなく受け流して、スミ子は黒のストッキングに透ける形のよい脚を玄関へと向けた。

行ってらっしゃい。
玄関先から、表向きだけのにこやかな表情を貼りつけて妻を送り出す夫に、
電話、切っちゃったんですか?
わざと小首をかしげて、訊いてみた。
さぐるような上目遣いをくすぐったそうに受け止めると。
スポーツ・ジムなら汗かいて、化粧直したりシャワー浴びたりするんだろうね?
ええ。髪の毛が濡れていても、ヘンじゃないですからね。
―――浮気に出かけるのよ。
ありありと顔に描きながら、スミ子はしゃあしゃあと応えていた。
この夫婦、仲はいいのだが・・・
合わないセックスだけが悩みの種で、子どもから手が離れてからはなかば黙認のかたちで、スミ子は夫よりもずっと年上の男のもとに入れ込んでいるのだ。
送り出すときに、こうした軽い詮索をして。
それに対して、ミエミエなウソをお返しして。
帰宅を迎えるときには、かすかな痕跡をさりげなく口にして。
迎えられるほうは、アクセサリイのように、情事の痕跡をこれ見よがしに身に着ける。
それが、夫婦のあいだでの儀式になっている。


出ていらっしゃい。遠慮はいらないのよ。御覧になっているんでしょう?
リンと響いた、よどみない声色に。
かなわないなぁ・・・和美は頭を掻き掻き、クローゼットのなかから姿をあらわした。
はは・・・お母さんのほうが、一枚うわ手だったね。
母の浮気相手はベッドのうえで、おうように笑っている。

中学二年生のときだった。
和美が初めて、母の浮気の現場を眼にしたのは。
いつも学校の父母会や授業参観のときに着てくる深緑のワンピースをはだけながら、
見知らぬ男にお尻を腰でつつかれながらアンアンともだえている母。
その光景は、それまでの人生が完璧に塗り変わってしまうくらいに衝撃だった。
黙ってるよ。ボク・・・
ママに優しい小父さんは、無条件にボクの味方。
じじつ、小父さんは引っ込み思案でいつも独りでいた和美の、よい遊び相手になってくれていた。
パパのことは尊敬しているし、キライじゃないけど・・・
でも、小父さんとママのことは黙っているね。
口止め料がわりなのか、濡れ場となる夫婦の寝室は、いつもドアが開けっぱなしになっていた。

女の子の服の着方や化粧の仕方を教えてくれたのも、小父さんだった。
和美は、女の子でも通用する名前だね。
小父さんは男の子にしてはさらさらとしたロングヘアを撫でながら、スカートを巻いた少年の腰を、逞しい自分のひざに乗せてあやしている。
それ以来。
姉の制服や母が浮気現場で着替えたあとのワンピースは、和美の”女の子ごっこ”のかっこうのねたになっていた。
和美の秘密のすべてを握っている小父さんは、いまではだいぶ闊達になった彼にとって、まだ救世主であり王様だったのだ。

範彦くんのお嫁さんは、とうとう頂戴できなかったなー。
王様のあけすけな言い草に、和美は目をぱちくりさせてしまった。
ママはおっぱいをぷりんとさらけ出したまま、小父さんのとなりに正座して、かしこまって耳を傾けている。
えっ?このひと、姉さんのこと狙っていたの?
そういえば。
姉の制服を和美に着せるときの小父さんの顔つきは、ただごとじゃなかった。
お互い同性愛の趣味はかなったから、どうのこうのということはなかったのだけれど。
緋紗代のハイソックスを履いた和美の脚への執着は、かなり濃いものがあった。
たたみのうえに寝そべらされて、長いこと、ハイソックスのうえからふくらはぎを吸われつづけたのだったのだ。
たんなるフェチじゃ、なかったんだー。
母親似だった緋紗代に関心がいったのは、母にそそがれた濃い愛情と無縁のものではなかっただろう。
そして、和美も母親似だったのだ。

こんどは、和美くんのお嫁さんを世話してもらおうかな?
予期したとおりの言葉に、和美はスカートの奥で勃ってくるものの気配を消そうと、やっきになっている。


お嫁さんを世話する。
ふつうは、独身男性のために花嫁候補を見つけてくることをいうはずだ。
まだ世間の狭い和美にも、さすがにそれくらいの言葉の知識はあった。
ところが親切な小父さんのお邸で呟かれた「世話」は、それとは正反対のもの。
だって和美には絵里という、同い年の婚約者がもういるのだから。
「こんどは、和美くんのお嫁さんを世話してもらおうかな?」
それは、すでに定まっている婚約者に、暗に逢わせろと言われたのとおなじこと。
母親の例からして、逢わせる以上ただですまないことは、わかり切っていた。
そして、いつも親切な小父さんは、和美にとって王様なのである。
でも。
じぶんからすすんで、花嫁の純潔を食い散らされたいなどと願う男の子なんて、はたしているんだろうか?
和美にはまだ、いっさいがナゾである。


ようこそ。
和美が連れてきた絵里をまえに、小父さんはとても鄭重だった。
まるで上流階級の家が他所のお宅の嫁入り前のお嬢様を迎えるような物腰に、ボーイッシュな絵里はすごく恐縮して、仔猫みたいに小さくなっていた。
気をつけて気をつけて。
コーヒーを淹れてあげましょう、と親切な小父さんが引っ込むと。
和美は小声でそういいながら、絵里の横腹を小突いた。
えー?だって・・・
絵里の声は、必要以上に大きい。
いい小父さまじゃないの。貴族みたいにエレガントだし~。和美も見習ったらぁ?
そ、それはたしかに、否定しないけど・・・
和美はまだ、ごもごもと口ごもっている。
ツタのからまるお邸なんて、めったに入れないもんね。和美が連れてきてくれなかったら、お母様にお願いしてつれてきてもらおうって思ってたんだけど。
えー!
よかった。
ママはいちばん、信用できないや。
なにしろ、小父さんとぐるなんだもんな・・・
和美はひそかにほうっと安堵の吐息をついた。
女の子の純潔を守る・・なんて。なんて大変なことなんだろう?
と、ともかくここ来る時は、かならずボクにことわって。あと、ボクといっしょのときじゃないと、絶対ダメだからねっ。
隣室に引き取った小父さんに聞えないように、絵里の耳もとに、吹き込むような性急さで囁いたけれど。
いちばん信用のおけないの、じつはボク自身だったりして・・・
このあいだ、母の浮気現場で「お嫁さんを世話してほしい」って小父さんに迫られた時。
スカートのなかで勃ってしまったことを、ありありと思い出してしまっていた。


ボクのお嫁さんの純潔を、ふたりの男が狙っている。
ひとりは、姉さんの初夜を襲った怪人。
こいつは、義兄さんのお母さんまでモノにしてしまった「前科」をもっている。
もうひとりは、親切な小父さん兼和美の王様。
こちらも、ママをたらし込んで、一家の日常に侵食している・・・という「実績」がある。
でも、姉さんのことは狙っていたのに、とうとう挙式当日まで手を出せないで。
けっきょく怪人に、おいしいところをさらわれてしまっている。
かわいそうだな。小父さん。
やっぱり小父さんにしようかな。
それとも、記念すべき13組めのカップルになってみようかな・・・って、迷いかけて。
ふとわれに返る。
冗談じゃない。絵里ちゃんの純潔は、ボクのものなんだ。

10
和美くん。和美くぅん。
表のドアをどんどんと叩いているのは、範彦義兄さん。
和美?かずみぃ!?
隣の部屋までようすを窺いに来ているのは、ママとパパ。
はさみ打ちだ。絶体絶命だ。
ようやく逃げ込んだはずの絵里の家は、もう無防備同然だった。
和美は絵里とふたり、手を取り合いながら震えを抑えきれないでいる。

夕べのことだった。パパまで意外なことを言い出したのだ。
お前、絵里さんのことどうするつもりなんだ?
どうするつもり・・・って?
なにげなく訊きかえしてみたら、いかにも愚問だといわんばかりに。
絵里さんをどなたに差し上げるのか、もう決めたのかな?
パパは惜しいことをしたんだよ。
ママと結婚したのは、都会だったから。
この村の風習どおりなら、ほんとうは真っ先に小父さんに逢わせてあげるところだったんだけど。
じぶんでスルのよりも・・・はたで観ているほうが。じっくりと、観察できるものだよ。
え?え?え?
するとパパは、小父さんの味方なの?
少なくともママを犯されちゃっていることは、小父さんとのあいだになんの溝も生んでいないらしい。
いや・・・ちょっと・・・それは・・・
いい加減にごもごもと返答をあいまいにして、そうそうに自室に引き取ってしまったのだ。

朝起きてみると。
裏庭の植え込みには、例の怪人が。
パパとママの寝室には、小父さんが。
息を潜めるようにして、ボクの部屋を見あげているのだった。
逃れるようにして、家を出た。
でも、どこへ行けばいいんだろう?
足は知らず知らず、絵里の家の方角へと向かっていた。

けれども、追っ手に容赦はなかった。
絵里の家には、あっという間に二人の標的にされていた。
止めを刺したのが、絵里の母親だった。
絵里ちゃん、出ていらっしゃい。だいじなご相談があるの。
襲われる・・・という本能的恐怖も、母親の命令にはかなわなかった。

択ぶ必要は、ないのですよ。
絵里の母親は、優しく笑っている。
けれども絵里によく似た彼女のうなじにつけられた赤黒い痕に、和美は油断のない視線を這わせている。
あ・・・キズのことですね?
よく気のつくたちの絵里の母親は羞ずかしそうに笑みながら、娘のほうをかえり見て、
ママも、お嫁入りまえに済ませたことなのよ。
怖ろしい言葉を、口にしていた。
左右に控えていたはずの怪人と小父さんが、影を薄ぼんやりと滲ませあってゆく。
ふと見ると、ふたりはおなじ姿になっていた。

そういうことなのだよ。
和美の父親は、息子の肩をぽんと叩く。
お前の負け、といわんばかりに。
昼間はツタのからまるお邸の主人。
夜になると街を徘徊する怪人。
どうやら分身の術も、心得ていられるようだから・・・同時にふたりの女を愛することもできるのだよ。

11
行ってくる。
ウン、気をつけて。
血をあげてくるだけだから、だいじょうぶよ。
そうだよね。もちろんだよね。
くどいほど念押しをして、指きりげんまんまでして。
和美は絵里と見つめあう。
分かれ道の行き先は、むろんツタの絡まるあの邸。

処女の血が欲しいんだって。
だから、お嫁入りするまでは、安全なんだって。
ぜんぜん信用できない、そんな言い草を。
あえて鵜呑みに信用して。
和美は絵里を送り出している。
制服のスカートの下。
真っ白なハイソックスに滲んだ赤黒い血のシミだけで、ひどく昂ぶってしまったけれど。
昂ぶりがおさまる気配は、まったくない。
きょうの絵里は、夏もののセーラー服に、黒のストッキングを合わせていた。
黒のストッキング。
姉さんが新婚初夜に穿いていたもの。
ママが男と逢いに出かけるとき、きまって脚に通してゆくもの。
薄黒いナイロンは、絵里のすらりとした脚を、じんわりとなまめかしく染めている。

絵里がお邸をさがるとき。
絵里の母親は和美に電話をかける。
娘の御用がすみましたので、迎えに行ってくださいね。
ハイ、お母様。
和美はよい子の見本みたいな素直な受け答えをすると、受話器を置いて、両親に行ってきますを告げに行く。
ママは庭先で服を着崩れさせて、地べたに仰向けになったまま、若い男たちの相手の真っ最中。
パパは縁側に出て、妻の所業など目に入らないような顔つきで、新聞を読んでいる。
将来はパパみたいにならなくっちゃ。
和美はひそかに、そう思っている。

ツタの絡まるお邸の奥深い部屋のなか。
絵里は白いセーラー服に、吸い取られた血をぼとぼとと落とされて。
夢見心地になっている。
処女でいられたのは、小父さんが処女の生き血を獲るあてをべつに見つけるまでのことだった。
絵里が、太ももまでのストッキングを着けるようになりました。
彼女の母親がそんな報告に訪れたとき。
両親はおめでとう。これで絵里さんも一人前の女ね、って祝福してくれた。
嬉しいのか、羞ずかしいのか・・・
立ちするほど勃ってきた一物が、ズボンのなかできゅうくつそうにヒクヒクとしていたっけ。
いまは、甘酸っぱい想い出だった。

お邸に着くと、たいがい客まで独り待たされる。
かなり長いこと待たされることもあった。
几帳面な絵里だったが、こういうときだけはさんざん待たせてもわびひとつ言わない。
髪の毛が濡れてるね。
シャワーを浴びたのよ。
首筋のキズ、広がっていないかい?
ええ、ヘイキ。だいじょうぶ。
スカートのすそが濡れてるよ。すこし匂うね。
レディに失礼な質問だわ。
別れぎわ、なにを渡されたの?
パンティよ。ベッドのうえに忘れてきたの。
え・・・ベッド?
やだわ。なに想像しているの?疲れたから、ほんの少し休憩しただけよ。
だけど、パンティを脱ぐなんて・・・
暑いから、脱いじゃったのよ。
そう。もうじき夏。
お邸の裏庭も、雑草の丈が高くなってきていた。
半ズボンに白のハイソックスという、子どものような身なりの和美。
ハイソックスのあちこちに泥が撥ねているのを、絵里は決して咎めようとしていない。


あとがき
えらく長くなりました・・・
それもあんまり、面白くないかも。
すらんぷです~(><)

処女の生き血を狙うもの

2008年04月22日(Tue) 07:54:11


だっ、だれだっ!?
紅いじゅうたんの敷かれた、ホテルの廊下。
エイイチの目のまえに現れたのは、干からびたミイラのような長身の男。
特撮ものに出てくる怪人のようなグロテスクな姿に、さいしょは着ぐるみかな?とさえ思ったのだが。
意識を飛ばされる瞬間、これは本物の怪人なのだ・・・と気がついた。
けれどもすでに遅かった。
目のまえのドアノブの向こう、さっき披露宴を終えたばかりの新妻・もと子に危険を報せるいとまは、残されていなかった。

もと子さん?入るよ。
いつもと変わらないエイイチの遠慮がちな声色に、もと子は苦笑しながら、腰かけていたベッドから立ち上がった。
もう・・・いつまでたったら「さん」づけをやめるのよ?
気軽に押しあけたドアの向こう、エイイチさんのほかにもうひとりの人影をみとめて、もと子はちょっとびっくりした。
新婚初夜の部屋を訪れようというのは、よほど図々しい人なのか、親しい人なのか、それとも・・・?
紹介するよ。ボクのお友だちなんだ。もと子さんも、仲良くしてくれると嬉しいんだけど・・・
何気ない口調の向こうに立ちはだかっているのは、どうみてもミイラそのものとしか思えない、干からびた長身の男。
獣じみた瞳を、らんらんと輝かせて、もと子のほうへと迫ってきた。
うぅん・・・
男の視線に射すくめられるようになって、もと子はその場で気を失った。

これから先を見届けるのか、廊下で待っているのか。それはお前が決めることだ。
侵入者のくぐもった声に、エイイチは無表情に「はい」とだけ応えている。
ミイラ男の目力に、すっかり洗脳されてしまっているのだ。
そのままその場を去ろうとしない新郎に、「よほど愛しているのだな」ミイラ男はニヤリと笑んだ。
そうだからこそ、いただきがいがあるのだぞ。
ミイラ男が取り出したのは、ムチのようにしなるワイヤーだった。
しなやかなワイヤーをスーツのうえから巻きつけられながら、エイイチはいつまでも無表情だった。
ベッドに横たえられた、純白のスーツ姿。
眠るように目を瞑っているもと子に、兇悪な意図を含んだ影が迫る。
  助けを呼ばなくちゃいけないのに。
  花嫁を救い出さなくちゃいけないのに。
  なぜ・・・ゾクゾクするのだろう?
薄ぼんやりとなってしまった理性は、胸のおくでひそひそ声を洩らすだけだった。

くちゅっ。
かさかさした唇が、もと子のみずみずしい唇を呑みこんだ。
ウ・・・
嫉妬に胸が焦げるようだ。
花嫁の唇をねっとりと揉みしだくと、ミイラ男の唇はかすかなぬめりを帯びて、柔らかなうなじへとすべりおりてゆく。
きゅうっ。
首筋の一角にひときわつよく、吸いつくと。
かさかさの唇を浸すように、赤い血液がどろりとしたたった。
あ・・・
男の正体を知った時、エイイチの胸をどす黒い閃きが貫いた。

あ、は、は、は・・・
花嫁の血に唇を血浸しにしたまま、ミイラ男は吸い取ったばかりのうら若い血を、花嫁のブラウスにしたたらせてゆく。
ぼた、ぼた、ぼた、ぼた・・・
バラの花びらが、散らされるように、
純白のブラウスは、紅いしずくの水玉もように彩られた。
男はそのまま身をすべらせるようにして、こんどは女の足許にかがみ込んでゆく。

ぬるり。
肌色のストッキングのうえから這わされた唇は、ぬらぬらとしたよだれを含んでいた。
かさかさの膚を、じょじょにうるおわせながら。
もと子の血を吸ったミイラ男は、すこしずつ生身の男へと変容してゆく。
飢えた唇にいたぶりを受けるたびストッキングの表面をよぎるひきつれが、エイイチの目に灼きついた。
なまめかしい。ひどく、なまめかしい・・・
そんなこと、想っている場合ではないのに。
痺れた理性は半開きの瞳で、花嫁に向けられた欲情を、妖しい歓びとして胸の奥まで浸してゆく。
パチパチッ。
薄いストッキングが、男の唇の下ではじけた。
う、ふ、ふ、ふ・・・
男がさらに淫らな意図を抱いていることを、察しないわけにはいかなかった。

もと子は、処女だった。
シーツのうえの紅い痕跡が、その証しだった。
放恣に開かれた太もものあいだ、痕跡は残酷なほど生々しく、花婿の胸を染めている。
見るかげもなく引き裂かれた肌色のストッキングをまつわりつかせたまま。
女は目を剥いて、それでも初めての歓びに、本能を震わせていた。
お前の花嫁は、支配した。時おりわが身を、満たしに来る。心から歓迎するように。
「歓迎します」エイイチの声は、どこまでも無表情だったけれど。
頬にはかすかな愉悦を、滲ませている。
どす黒い渦巻きが、妖しくひたひたと、男の理性をつき崩していたのだった。


ナオキが親友のエイイチの誘いを受けたのは、エイイチが新婚旅行からもどってきてひと月ほど経ったころだった。
結婚間近なカップルばかりを招いているときいて、そろそろお呼びがかかる頃かな?とは想っていたが。
親友の誘いになんの疑念もなく、ナオキは恋人のめぐみを連れて、新居を訪れた。
新居は都会の郊外の真新しい一戸建てだった。
通されたリビングはこぎれいにととのえられていて、新妻のセンスのよさと初々しい気張りを感じさせる。
もと子さん、きれいになったわね。
冷やかすようなめぐみの言葉に、もと子は羞じらうように目を伏せていた。
こいつ、すっかり色っぽくなっただろう?
エイイチの底抜けの自慢に、日ごろ屈折した彼のことを知るナオキは開けっぴろげな笑い声をたててしまった。

女たちが長い話に花を咲かせ始めると。
エイイチはそれとなく、ナオキを別室に呼んだ。
ここにくるカップルは、きみたちで10組めになるんだけど。
ボクに恥をかかせないでくれるよね?
え?なにかまずいことがあった?
いや・・・これから起こるんだよ。まずいことかどうかは・・・きみ自身が決めることに属するがね。
謎めいた親友の言い草に、ケゲンそうになったナオキだが。
突き出された写真をひと目みて、ああそういうことかと合点がいった。
まだ彼女のいない友だちに、お見合い写真を突きつけるように見せられたのは。
ミイラのように干からびた、瞳だけはらんらんと輝かせた男の写真。
びっくりしないんだね。
いままでのやつはみんな、びっくりして、彼女や奥さんを連れて立ち去ろうとして、後ろ姿を襲われちゃったんだけど。
え?襲われた?
そういえば。
彼の家に招かれてから行方不明になったカップル2組もあると聞いていた。
そうだろうね。
いがいなナオキの応えに、エイイチはちょっと意外そうに首を傾げた。
よく知っているんだ。彼のこと。
そう。
彼は一人ぼっちだったころのナオキの、ほとんど唯一の幼馴染み。


公園のブランコに揺られていたナオキは、この街に越してきて間もない少年だった。
引っ込み思案で、友だちひとり作れなくて、きょうも一人ブランコで所在なげに揺られていたのだった。
現れた怪人のグロテスクな姿に、ナオキはなぜか驚きを感じなかった。
じぶんを支配する人間を、本能で察したのかもしれない。
噛まれるままに、うなじを噛ませてしまっていた。
ちゅ~っ。
血を吸い取る音に、くすぐったそうな笑い声をたてると。
お前は、いい子なんだな。
男は別人のようにみずみずしく冴えた頬を輝かせて、少年を見つめた。
差し出したねずみ色のハイソックスを履いた足許に、危険なキスを受け入れて。
ねずみ色のハイソックスが赤黒く染まるのを、面白そうに眺めていた。

何度も逢ううちに。
ボクの血だけじゃ、足りないんだよね?
そういって、つぎの夕方には、ママを連れて公園に行ったのだった。
草むらのなか、仰向けに倒されたママは。
肌色のストッキングに裂け目の広げながら、脚をばたつかせて。
そのうち、静かになってしまった。
吸血怪人に、血を吸い尽くされちゃった?
そんな心配をしていると。
ひどく心地よげな、いままで耳にしたこともないような呻き声が。
苦しくないのよ。気持ちいいだけよ。
無言の報せが、少年を安堵させていた。


あれから十なん年たったのだろうか?
あー!それにしても。
よりにもよって、彼女まで襲われちゃうなんて!
ナオキは男ふたりの部屋のなか、ぐるぐる、ぐるぐる、いつまでも歩き回っていた。
ほら、落ち着くぜ。
エイイチが差し出したカクテルグラスには、紅い酒が充たされている。
中身の正体を訊きもせずに、ナオキは一気にあおっていた。
それでいいのさ。
振り返ったエイイチの顔がぼやけ、にじんで、いつの間にかミイラ男のそれとすりかわっていた。
久しぶり。
ナオキの頬に、少年のような微笑が浮かんだ。

高校に入って、彼女ができたころ。
怪人は街を追われて、立ち去っていた。
正体がばれて、棲むことができなくなったのだ。
さいごの晩、ママのところに現れた怪人は、ほほ笑むパパに迎えられて、夫婦の寝室をあけてもらって。
明け方になるまでママとふたりきり、別れをたっぷりと、惜しんでいった。
おなじようにしなくちゃならないね。
彼女・・・まだ処女だと思うから。お手柔らかにね。
ほほ笑みを投げられたミイラ男は、深く深く頷いている。

キャーッ!た・す・け・て・ぇ!!
ビデオ画面のなか、めぐみは満面に怯えをみせて、じりじりと壁ぎわに追い詰められてゆく。
やだぁ。
この場面になると、いまだに羞じらうめぐみは。
いまはもう、二児の母。
子どもの手がかからなくなって、こういうものを夫婦で真昼間から観られるようになるのに、ずいぶんと時間がかかったものだ。
ブラウスの二の腕を、かさかさの掌がつかまえて。
そのまま力づくで、抱きすくめて。
細いうなじに、食いついて。
ちゅーっ!と、処女の生き血を吸い出してゆく。
きゃあっ。
画面のなかの声と、傍らの妻の声が、重なった。
ふふふ・・・
いまのところ、もういちど。
巻き戻そうとするナオキに、
あっ、いやぁん。
肩をぶっつけ合いながら。
それでもめぐみの視線は画面に釘づけだった。
ちゅう~っ。
きゃあっ。きゃあっ。ナオキさん、助けてぇ。
空色のブラウスに血を撥ねかせたまま、くたりと姿勢を崩して、
めぐみはひざを、突いている。
う、ふ、ふ、ふ。
あの晩、花嫁のストッキングの脚を狙った時とおなじ目で。
ミイラ男は、若返った頬に欲情を募らせて。
白いハイソックスを履いためぐみの足許に、かがみ込んでゆく。
あぅぅぅ・・・
こんどうめいたのは、ナオキの番。
初めて会った公園で、自分の血をしみこまされたねずみ色のハイソックス。
そのときの記憶と、彼女を初めて襲われた時の記憶が、おりまぜになってゆく。
はい。きょうはここまでね。
玄関に聞えてきた子どもたちのはじける声に、
奥さんはわれにかえって、テレビ画面を消してゆく。

変容  ~怪人との逢瀬~

2008年04月10日(Thu) 06:48:52

どこかの国ではね。
かなり年上のその友人は、いつものように。
年配らしいおだやかな声で、語りはじめた。
娼婦をとるときにはこんなふうに、ヒルに娼婦の血を吸わせるというのだよ。
目のまえで、体調10cmはあろうかという半透明の軟体動物が、ヌルヌルとした粘液をうわぐすりのように光らせて、彼の手のなかで不気味にうごめいている。
娼婦・・・?
わたしは彼女と目を見合わせた。
彼女はなぜか羞じらうように、目を伏せてゆく。
さあ・・・
男は彼女のほうへとにじり寄ると、手にしたヒルをおもむろに突き出して、
彼女の首筋に這わせてゆく。
ひっ・・・
ぬるりとした感触に、縮みあがるように。
その瞬間彼女は座ったまま、白いハイヒールの爪先を立てていた。

白いうなじに這う半透明のヒルは、淫靡なうごめきをつづけながら。
じわじわと、その身を彼女の血潮の色で滲ませてゆく。
あ・・・あ・・・あ・・・
肩を抑えられ、首筋をとらえられながら。
押し殺したような呻き声をあげる女は、
肩先まで流れる長い黒髪を、かすかに震わせて。
首筋に這わされたヒルをもぎ離そうとした手指は、
いつかいとおしむように、自分の血を吸う軟体動物を包むように覆っていた。
一瞬走った嫌悪の翳は、いつか甘い苦悶に浸されている。

さぁて・・・と。
彼はおもむろに手を伸ばして、彼女の首筋からヒルを引き剥がした。
あ・・・うっ。
よほど強烈に吸いついていたのだろう。
彼女はとっさに、上半身を波打たせた。
振り乱された黒髪が、白一色のスーツの肩先にゆさっと揺れる。
しばらくのあいだ。傷口を抑えながら、荒い息を吐いていた。
瞳に滲む蒼い焔。
それは彼と出逢っからというもの、こうして過ごすひと刻だけに宿される情欲の焔。

つぎは、きみの番だね?
穏やかな上目遣いが、逃がさないぞと告げていた。
彼女の血を吸って膨らんだ、忌むべき軟体動物が。
こんどはわたしの首筋に、あてがわれる。
そいつの冷ややかな体温が、わたしの皮膚に伝わってきた。
痺れるような痛みが、皮膚の奥までしみ込んでくる―――
にじみ出た血潮が、ヌメヌメとうごめく軟体に吸収されてゆくのを覚えながら。
彼女の血とわたしの血が、そいつの体内で交わることに、なぜか陶酔を感じはじめていた。
皮膚を破られて生き血を吸い取られながら、わたしは変容を遂げてゆく。
彼はブランデーグラスを傾けながら、冷ややかにわたしの顔色を観察し、
彼女はくすくすと笑いながら、まるで引力でひきつけられるように、彼に身を寄り添わせてゆく。
妖しくなってきた視界の彼方。
人の形をしていた彼の輪郭が、滲むようにかすんでいって。
やがて不自然に鮮やかな黄緑色をした、巨大な軟体動物になりかわってゆく。
薄暗い密室のなか。
彼は大ビルに変容し、わたしは心のなかを変容させてゆく。
彼女も、微笑を振りまきながら。
変容して、娼婦に変わる。

ふ、ふ、ふ。
大ビルは彼の声を含ませながら、触手をあやつって。
純白のスーツに身を固めた彼女の身体に、巻きつけてゆく。
透明なチューブに似た触手は、折り目正しいスーツのジャケットをところどころしわ寄せながら、ゆっくりと巻きついていって。
かんじがらめに、緊縛してしまう。
ううっ・・・
傍らの柱ごと、立ったまま巻かれた彼女は、わたしのほうを見るまいと目をそむけ、
振り乱した黒髪が、頬をおおってゆく。
触手の先端が、ブラウスの襟首にもぐり込んでゆく。
あ・・・あ・・・あ・・・
彼女を征服される。
それも、人間ばなれした怪人に。

ちくり。
触手の鋭い先端が、彼女の豊かな乳房を突いた。
はだけられたブラウスのすき間からのぞく胸元は、青白い静脈が透けるほど白く、
柔肌の下脈打つ血液を、触手が欲しているのは、目に見えるほどあからさまだった。
触手の先端は、そのままぐぐ・・・っと、埋め込まれて。
ちゅーっ。
人をこばかにしたような、あからさまな音といっしょに。
彼女の血潮が、抜き出されてゆく。
真っ白なスーツのうえ巻きつけられた、透明なチューブが。
赤黒い液体に、ゆっくりと充たされていった。
長いチューブを、這うようにして。
彼女の血が抜き取られてゆく、残酷な光景。
純白のスーツの周り。
縛りついたチューブは、紅い紐のように、彼女をがんじがらめに緊縛している。
あ・・・あ。。。ア・・・っ。
生命の源泉を搾り取られる、甘美な苦痛。
喉からほとばしる呻き声が、なぜか扇情的にわたしの鼓膜にしみ込んできた。
わたしにからみついたままのヒルは、わたしたち二人の血を吸って、数十cmにも成長していて。
シャツの上から吸いつけた吸血口が、皮膚に擦りつけられてくる。

くたり。
触手をほどかれた途端、彼女は肌色のストッキングに包まれたひざ小僧を床に突いて。
四つん這いになって、突っ伏している。
かすかに上下するおとがいが、喪われた血の量をものがたっていた。
大ヒルに化けた男は、なおも容赦なく、かすかな澱を残した透明な触手を、
ストッキングを穿いた彼女のふくらはぎに巻きつけてゆく。
かすかなてかりをよぎらせた肌色のストッキングは、透明感を滲ませていて。
締めつけるように巻かれてくる触手にいたぶられて、くしゃくしゃになっていって。
オブラアトのように他愛なく、チリチリになって剥ぎ堕とされてゆく。
ふ。ふ。ふ。
大ヒルはふたたび、男の姿に戻っていた。
とうとう堕ちたな。
あとは人の身に成り代わって、喰ろうてやろう。

我が物顔に彼女に迫り、衣裳を剥いでいって、堕としてゆく。
身体も心も痺れさせられてしまったわたしのまえ、
堕ちてゆく婚約者は、悩ましくまつ毛を翳らせていた。
半脱ぎになったズボンからむき出しになった筋肉質の脚は、
破れたストッキングをまつわりつかせた白い太ももの間に分け入って、
逞しく筋肉を浮き上がらせた臀部を、スカートの奥へと沈み込ませていった。
あぁあ・・・
引きつるような呻きを喉からほとばしらせて。
その瞬間、彼女はキュッと、唇を噛んでいた。

ふふ・・・ふふ・・・ふふふ・・・
くすぐったそうな含み笑いを、虚ろに響かせながら。
黒髪に隠されていた白い頬は、いつか淫蕩な笑みを浮かび上がらせていた。
ホホ・・・ホホ・・・ホホホ・・・
もはやつつしみをかなぐり捨てた女は、未来の夫のまえ。
公然と夫を、裏切りつづけてゆく。
純白のスカートのすそに散らされた、ぬるぬるとした粘液は、
彼女を身体の裏側から支配している。

一週間後、またここに来るのだぞ。
こんどはお前の妹も、連れてこい。
生娘のうちに、味わっておく。
おだやかな声色は、もとのままだったが。
気づかいに満ちていたはずの言葉は、いつの間にか命令形に変わっている。
くぐもった声に、拝礼するように。
わたしたちは黙って頭を垂れて。
手に手を取り合って、部屋を出る。
ここに入るまえとおなじように、さも仲睦まじげに。


あとがき
くろすさんと吸血三葉虫のやり取りしていたら、昔のことを思い出してしまいました。(^^ゞ

魔性の遊戯 怪人に犯された夜

2008年02月08日(Fri) 06:42:53

少ーし、こあかも。^^;

おしゃれなワンピースに、鮮血の帯をよぎらせて。
純白のブラウスの肩先に、血のりを輝かせて。
婚約者とその母は、並べられたじゅうたんの上。
知性も、気品も、世間体までも、かなぐり捨てて。
くすぐったそうにへらへら笑いこけながら、転げまわっている。
女たちにのしかかっている怪人どもは。
ひどく醜悪で、グロテスクで。
それでもうら若い母娘は、そんなことおかまいなしに、じゃれ合ってしまっている。

未来の花婿である、ボクのまえ。
深夜呼び出された婚約者とその母親は。
あっという間に怪人どもに、たぶらかされて。
ワンピースやブラウスの胸元深く、残忍な吸血管を刺し込まれていった。
柔肌を奥深くえぐった兇悪な牙は、貪婪な食欲を発揮して。
めまいがするほど多量の血を、あっという間に抜き出してゆく。
身体の変化に、理性はついていくことができないで。
突然娘のほうがけたたましい笑い声を上げたとたん、
母親のほうも、慎み深さを忘れて。
ころころと笑いほうけてしまっていた。

見て見て。綺麗・・・
妹のリサが、指さしたのは。
母娘の胸元にぐさりと突き刺さった、吸血管。
ルビー色をした吸血管の中身は、女ふたりの若さを魅せつけるように。
官能的なまでの艶と輝きを秘めている。
女たちの熱情が込められた血液は。
ひたすら、怪人どもの喉をうるおしていって。
それでも女たちは、じぶんの魅力と若さとを愉しまれることを誇るように。
この遊戯が生命を落とす危険と隣り合わせだということさえ、忘れ果てて。
きゃあきゃあとはしゃぎながら、相手をつづけてゆく。
血の奴隷と呼ばれる、娼婦たち。
良家の子女は、鮮血に染まる通過儀礼とともに、
今宵、そのなかの仲間入りを遂げる。

平和な夜のリビングに、怪人どもを招きよせた悪友のレイジは。
とうに、本性をさらけ出していて。
ボクのまえ、婚約者と腰をひとつにしていた。
処女の生き血が、好物なんだぜ。
だいじにいただこうぜ。
たしか、そんなふうに言っていたはずなのに・・・

母は、黒のスーツを着崩れさせて。
妹のリサは、真っ赤なチェック柄のスカートの奥まで、
怪人のひとりの腰をすり寄せられて。
ふたりながら、犯されている。
グロテスクな仮面のなかにあるのは、生身の人間。
いや、もと生身の人間だった魔性のもの。
血に飢えた男どもは。
男の子を介して、こんなふうに夜のお宅にお邪魔して。
貴婦人たちの貞操を盗み取ってゆく。

今宵は、宴。
妹と婚約者の純潔と。母の貞操までもが堕とされた、忘れがたい喪失の記念日。
娼婦になり果てた女たちは。
ただひたすらに、じゅうたんの上。
小娘にかえって、笑い転げている。
姦られちゃったね。
傍らで呟くのは。
未亡人になった母の孤閨を慰めていた、情夫。
こんどはわたしの家内も、仲間に入れていただこうかな?
うっそりとした呟きが。
深く深く、胸を侵してくる。
母の情夫。嫁と姑。婚約者を寝取った悪友。
ほんとうなら、言葉を交えることさえ忌むほどの関係が。
信じられないほど、打ち解けていて。
吸血という魔性の遊戯に、ただひたすらに、耽り合う。
いつか、血を吸われすぎて、肌を蒼ざめさせていたボクも。
仰のけられただれかの胸の谷間に、生え初めた牙を心地よく突き立てていった。

凄いヤツが、いっぱい!

2008年02月08日(Fri) 02:37:58

うちにお出でよ。凄いヤツがいっぱいいるからさ。
クラスの中でも、とびきり目だたなくて。
いつもひっそりとしているレイジが。
あるときぼそっと、呟いたとき。
瞳の奥に秘められた、稲妻のような輝きに、
ボクは目をまん丸にしてしまっていた。

約束どおりお邪魔したレイジの家は。
古びたごたいそうなお邸で。
濃い紫のロングドレスをエレガントに着飾ったレイジのママが、
それはにこやかに、迎えてくれた。
テーブルのうえに広げられたのは。
テレビでおなじみの、怪人たちのフィギュア。
全長数cmしかないとは思えないくらい、真に迫った迫力があった。

いいだろ?
いいなあ・・・
ねぇ。
うん?
いいかい?今夜、キミん家(ち)へ遊びに行っても。
あんまり遅いと、ママに叱られるなあ。
だいじょうぶ、だいじょうぶ。
ママもリサちゃんも、怒ったりなんかしないって。
今夜は月夜だから。
こいつら、本物になって甦るんだぜ?
ええー?
レイジはときどき、ウソみたいな話をする。
時にはだれにも相手にされなくって。
でも、そういう状況におかれることを予期しているらしくって。
いっつも片頬で、ほくそ笑んでいるんだけど。
ボクがひとりでついていくと。
ほんとうに、彼のいうとおりだった・・・そんなことが、何度もあったのだ。
何時に、来るの?
ボクはいつしか、頬を紅潮させて。
時間の約束を、してしまっていた。

九時。
約束の時間だった。
りぃん。ろぉん。
時ならぬインターホンに、けげんそうなママを尻目にして。
ボクは一目散に、玄関に向かっていた。
こんばんは。
のそっと顔を出したレイジに、ママはふしんそうに小首をかしげたけれど。
相手が顔見知りのボクの仲良しだと知ると、
あら、こんばんは。
おうむ返しに、声を返した。
遅い時間に、どうしたの?
少し咎めるような声色を、気にするようすもなく。
お邪魔しまぁす。
レイジはまるで、自分の家みたいに馴れ馴れしく。
一人で先に立って、ボクの勉強部屋めざして階段を上っていった。
お茶、淹れるわねぇ。
ママはいつになく、薄ぼんやりとした声をして。
いがいに物分かりよく、まだ洗いものが残っている台所へ顔を引っ込めてくれた。

勉強部屋に入ると、レイジは窓を開け放った。
くろぐろとした街なみのかなたには、こうこうと輝く満月。
満月の夜。満月の夜。
レイジが呪文のように、くり返すと。
ベランダの手前の屋根瓦のあたりの闇が、いちだんと濃くなって。
むくむくと、黒々とした奇怪な影を形作っていた。
ごらんよ。すごいだろ?みんな連れてきたんだぜ?
レイジの声とともに、ぞろぞろと現れたのは。
昼間にみたフィギュアが等身大になった姿だった。

見れば見るほど。
どいつもこいつも、奇怪なカッコウをしていた。
全身赤黒くて、グロテスクなブツブツのついているやつ。
ぬるぬると黒光りしていて、触手を八本も持っているやつ。
ひょろりと上背があって、首から上がそげていて。切断面が吸血口になっているやつ。
どれひとつとして、まともな人間の形をしていない。
みぃんな、吸血怪人なんだぜ?
ちょっと得意そうなレイジに、ボクも「ふーん」と引き込まれている。
やっぱり等身大だと、迫力が違うよね?
そうさ。本物みたいに、血を吸うこともできるんだぜ?
えー、そうなの?
タツヤの血で、試してみるかい?
面白そう♪
不思議と、怖さは感じなかった。
ボクは半ズボンの太ももを、手近な怪人の前に近寄せていく。

そいつの手は、平たい吸盤みたいなカッコウをしていて。
平らな面にはレンコンみたいな穴ぼこが、いくつもあいていて。
見ろよ。この穴ぼこが、吸血管なんだぜ?
レイジに言われるまでもなく、ボクは「そんなこと、知ってるさ」って、強がりを言って。
平たい吸盤を思い切りよく、太もものあたりに貼りつけられていた。
きゅうっ。
奇妙に間延びした音がして。
ボクはクラッと、めまいを起こしていた。
ひんやりとあてがわれた吸盤からにじみ出るような、しびれるようなムズムズが。
いつかたまらない疼きになって。
なま温かいぬるぬるが、太ももをぬらり・・・と、伝い落ちてくる。
血を吸われている・・・ありありと感じるほどに。
ボクは足許を、ふらつかせてしまっていた。

キミ・・・だいじょうぶ?
だいじょうぶさ。
えぇと、こっちのやつは、触手を巻きつけるんだよな?
ボクはまだまだ、強がりを言って。
もうひとりの怪人の触手を、わきの下にくぐらせてゆく。
すごい。すごいな。本物そっくりだ。
浮ついた声を、かすれさせていると。
もうひとりの怪人が、後ろから。
ボクの首筋に、ぬるりとしたものをあてがってくる。
じゎん・・・
めくるめくような、陶酔。
ふらっとなった身体は、そのまま吸血怪人たちに、抱き取られていった。

うぅん・・・
目をこすりながら、起き上がると。
どうだい?
レイジは得意そうに、ほほ笑んで。
自分も怪人ふたりに、はさまれて。
奇怪な吸血管を、胸やお尻に突き刺されて。
Tシャツや半ズボンを、真っ赤に濡らしている。
キュウキュウ・・・キュウキュウ・・・
人をこばかにしたような、あからさまな音といっしょに。
レイジも面白そうに、怪人たちの触手を皮膚にすりつけて。
生き血を、吸い取らせていったのだ。
子どもの血は、イキがいいんだってさ。
そうだ。リサちゃんの血も、吸わせてやろうよ。
レイジはさもいいアイディアが浮かんだみたいに、声をあげて。
ボクにいなやも言わせずに、妹の名前を呼んでいる。

きゃあっ。
リサはさすがに、女の子らしく。
怪人たちの奇怪な姿に、半べそになって。
すぐに助けを呼ぼうと、スカートのすそをひるがえしたけれど。
そのときにはもう遅く、怪人の一人に触手を伸ばされていた。
そいつはさいしょにボクの血を吸った、あのレンコン怪人で。
ボクのときとおんなじように。
真っ赤なチェック柄のスカートの下から覗いた太ももに。
レンコンの形をした吸盤を、ぴったりとあてがわれてしまっている。
きゅうっ・・・
ボクのときと、おなじように。
ボクとおなじ血が。
パパとママから、もらった血が。
おいしそうに、吸い取られていった。

おさげの髪を、ふり乱して。
リサは強くかぶりを振って、抗ったけれど。
背後から伸びたべつの吸血唇に、うなじを吸われて。
激しい首振りは、少しずつ緩慢になってゆく。
うふふふふっ。女の子の血は、おいしいんだね。
レイジはくすぐったそうに、壁を背にして姿勢を崩してゆくリサの受難を見つめていたけれど。
ボクのほうを、振り返って。
だいじょうぶ。
キミひとりに、ソンはさせないぜ。
夕べはボクのママや姉さんも。
こいつらに、血を吸われちゃったんだから。
そんな怖ろしいことを、人ごとみたいに囁いている。

レイジは半ズボンの下、濃紺のハイソックスをねじれさせて、
ボクはねずみ色のハイソックスを、赤黒く汚していて。
リサも、真っ白なハイソックスに、ぬらぬらとしたよだれを光らせている。
三足のハイソックスは、それぞれの持ち主の脛をすべり落ちて。
くしゃくしゃにたるんで、バラ色に染まってゆく。
ちゅうちゅう・・・キュウキュウ・・・
入れ替わり、立ち代わり。
怪人どもは、たたみの上にころがったボクたちの上にのしかかってきて。
思うさま、吸血を愉しんでいた。

キモチいいだろ?血を吸われるのって。
ウン。なかなかいい具合。
頭がスッと冴えたようになって。
身体のなかでもやもやとしたものが、いっさいがっさい抜き取られてしまったような。
突き抜けるほどの、爽快感。
じゃあ、キミのママにも体験させてあげようよ。
しずかになったリサのうえには、赤黒い吸血怪人がのしかかっていて。
真っ白なハイソックスのうえから、ふくらはぎに吸盤を這わせていた。
カチャカチャ・・・カチャカチャ・・・
近づいてくる、ティーカップの触れ合う音に。
レイジもボクも、にんまりと笑みを交し合う。

えっ?どうしたの?
吸血怪人と、遊んでいるんだ。
怪人?ですって・・・?
ボクたちの血を、ご馳走してあげてるんだよ。
キモチいいんだ。ママも試してみる?
なにをいっているの?あっ、リサっ!?
半ば気を喪いかけたリサが、真っ赤なチェック柄のスカートをはねあげられて。
へらへらと笑いながら、グロテスクな怪人の触手を手にして、自分からうなじに巻きつけていた。
ほら。こいつら、おばさんの血も欲しがっているんだよ。
ボクたちの血だけじゃ、足りないんだって。
タツヤやリサちゃんの血が、気に入ったみたいだから。
おばさんの血も、きっと好みに合うはずだよ。
がんばって、いっぱいご馳走してあげてね。

あれよあれよ・・・と戸惑うママを横目にして。
アブナイ遊戯に耽ってゆく。
やめさせようとしたときには、もう遅くって。
ママも・・・吸血怪人の相手をさせられていた。
相手は、首から上がそっくり吸血管になっているやつ。
あいつは、しつっこいんだ。
先週なんか、ボクに巻きついて。ひと晩じゅう放してくれなかったもんね。
レイジは面白そうに、ママが取り乱すありさまをうかがっている。
きりっとした黒のスーツが、着崩れしていって。
スカートのすその奥まで這い込んだ触手は、ママの太ももをなぞるように撫でている。
そろってずり落ちてしまった、ボクたちのハイソックス。
けれどもママの履いている黒のストッキングがちりちりに裂けてゆくありさまは。
もっともっと、エロチックだった。

あっ、あっ、あっ・・・
眉毛を八の字にして。白目をむいて。虚空を引っ掻いて。
しまいにのけぞって、たたみの上に大の字になっていた。
ママのスーツ姿の上、怪人どもがなん人も、おおいかぶさっていって。
胸といわず、わき腹といわず、太ももといわず。
思い思いに、吸血管を刺し込んで。
ちゅうっ・・・ちゅうっ・・・ちゅうっ・・・
規則正しい、リズミカルな吸血の音に。
ママの生き血も、抜き取られていった。
いい眺めだね。
おばさんも、たっぷり血を吸われるんだよ。
ママの耳もとに、レイジが囁きを吹き込むと。
正気じゃなくなったママは、無表情に頷いてしまっていた。

七恵伯母さんや、美奈子ちゃんも呼んで御覧。
きみ、美奈子ちゃんと結婚するんだよね?
こいつら、女の生き血に目がないんだ。
気前よく、ご馳走しちゃおうよ。
怪人だって、一ダースもいるんだから。
二匹にひとりくらいは、獲物を用意してあげたいからね。
電話機をプッシュする指先を、震わせながら。
ボクはママとおなじく未亡人している伯母さんの声をあいてに。
パーティをやっているから、着飾って来てくれる?
思いつく限りの甘い誘い言葉を、触手のように巻きつけて。
うら若い二人を、呼び出していた。

着くまでに、まだ三十分はかかるよね?
そうだね。おめかししてくるだろうからね。
レイジに、ボクに、ママに、リサ。それに女ふたりが加われば。
6対12。
まあまあ・・・いい割合なんじゃないかな?
絵の具の混ぜ具合でも確かめるようにむぞうさな口ぶりの向こう側。
胸元に吸血管を刺し込まれたママとリサが、
代わる代わる、心地よげなうめきを洩らしはじめている。
夜はまだまだ、長い。

飼われている吸血怪人

2006年11月05日(Sun) 23:06:27


包丁を持った強盗が夜、四人家族の住居を襲った。
両親と息子、息子の嫁の四人を順繰りに縛ると、いちばん若い息子の嫁に、よだれをたらしてすり寄った。
「悪く思うな。女ひでりなんでね」
男は若い夫に向かって嘲るようにうそぶくと、着飾った奥の和室へと引っ立ててゆく。
あ、あ・・・
男たちの戸惑いのうめきを背に、強盗がにまにまとしながら嫁の首筋を吸おうとしたそのとき。
ぎゃっ。
顔を引きつらせて魂切るような悲鳴をあげたのは、強盗のほうだった。
部屋の奥からぬっと現れたのは、身長二メートルにもなろうかという怪人。
姿かたちはすでに人間のそれではない。
大ビルのような胴体に、カマキリのような頭。
爬虫類の獰猛さと毛虫のキモチ悪さとをミックスしたようなグロテスクなやつである。
そいつが強盗の頭部をぶぅんと横殴りにすると、
うわあああっ!
強盗はあっさりと、その場に伸びてしまった。
大ビル怪人は強盗のうえにうずくまると、胸のうえから吸血管をぐさりとさしこんだ。
半透明な管には、たちまち赤黒いものが満ちてゆく。
ケケケ・・・
怯える家族を卑猥に嘲った強盗を無気味な声で嘲りかえすと。
大ビルは家族ひとりひとりにかけられた荒縄やビニールテープをこともなげに断ち切ってゆく。
いましめを解かれたお父さんは真っ先に、
ありがとう。助かったよ。
怪人にお礼を、言っている。
まるで懇意な知人に話しかけるような口調で。
怪人は家族とは長いあいだの顔見知り・・・いやもっと深い間柄だった。
「家内を犯すだけなら、許してやってもよかったんだけどなぁ」
トンデモナイことを呟くにやけたご主人を、奥さんが後ろからぶっ叩いたのは当然として。
怪人もまた、たどたどしい言語で反論する。
「ダメ、ダメ。ゆう子。誰ニモ触ラセナイ。コイツ許セナイネ」
器械のような声でフンガイしながら、
「コイツノ血、マズカッタ」
血を抜かれて呆けてしまった強盗を、憎ったらしそうに足で蹴転がす。
「サ、オ父サン。早ク、早ク。ヒャクトーバン、ネ」
逆にお父さんをせっついている。

一件落着すると。
とうぜんのように、おねだりが始まった。
さっきはあんなに嫉妬深いところをみせたくせに、自分がひとの女房を取るのは問題ないらしい。
父も息子も、いなやはない。
妻たちが怪人に奥の居間に手を引かれてゆくのを、苦笑しながら見守るばかり。
いつもはトシの順、なのにね。
先に招ばれた嫁の後ろ姿に、お母さんがちょっぴり不平そうに口を尖らせる。
あいつが襲われそうになったのをみて、きっと発情しちゃったんだよ。
息子がなかば困り顔で、母親をなだめていたが。
ふすま越しに「きゃっ」と声がすると、
「あー・・・刺されちゃった」
蚊に食われるのとでは、わけがちがうのだが・・・
キュウ、キュウ・・・くちゅ、くちゅ。
悩ましいもの音がつづいた30分後。
「サァ、ツギハ順子ノ番。用意ハイイネ?」
嫁とおなじくお母さんまで、これまたなれなれしく呼び捨てである。
お母さんはまだ若さのじゅうぶん残る頬を輝かせ、ミスコンテストで指名をうけたときのようにウキウキと立ち上がる。
「あなた、ごめんね。ちょっと浮気してくるからね」
夫をかえりみてイタズラっぽいウィンクをすると、手を引かれるまま、部屋に引きずりこまれてしまう。
「ああぁ・・・」
押し殺すような呻きが洩れてくると、彼女の夫も息子も、くすぐったいのをこらえるような渋面になっている。

ほら、母さんのほうが長いだろう?
得意気に鼻をうごめかせているのは、お父さん。
さっきから奥さんは、はだけられたワンピースから豊かな白い肌をのぞかせて、吸血管を刺し込まれている。
鋭く尖った管の先端が皮膚に突き刺さるときだけは、ちょっと顔をしかめていたけれど。
そのじつ、あんまり痛そうではない。
痛そうではないどころか・・・くすぐったいのか、疼くのか。
脚をばたつかせて跳ねまわりそうになるのを、どうやら必死でこらえているようす。
お母さんの生き血で吸血管をたっぷりと充たして。
怪人は、ククク・・・と嬉しそうに吸血をつづけている。
吸血しながら、胸とかお尻とか。もっとキワどいところとか、ヌルヌルとした触手で触りつづけているのだが。
お母さんはそれを苦にするどころか、
「イヤぁ、もぅ」
悪戯っ子のわるさを咎めるような、甘い口調。
となりに転がされている嫁は。
ブラウスに血を撥ねかせたうえ、どうやらスカートもめくられたようだった。
たくし上げられた紺色のキュロットスカートからあらわになった太ももからは、グレーのストッキングがぱちぱちと裂け目を広げていて。
ヌルヌルとした触手で、しつようになぶられた痕をはっきりと残していた。
目ざとい夫はそのまた奥に白く濁る粘液が鈍く輝きながらゆらゆら揺らいでいるのを発見しているのだが。
情交の痕跡ありありな奥さんを、面白そうに観察して。
怪人でも、精子は白いんですねぇ・・・
合いの子ができなけりゃ。すこしくらい、構わないよな?
とんでもない父子である。

街から強盗が姿をひそめて、もう何年にもなるだろうか。
表立っては忌まれながらも。
闇夜にひそむ兇悪なやからの血を餌にしていた怪人は、どうやら餌には不自由していないらしい。
あるとき迷い込んできた怪人を、暖かく迎える家庭がいくつもあるという。

怪人と逢ってみたいの。
そんなおねだりをした、お隣のお嬢さん。
気遣って同伴したお母さんも戸惑いながら、母娘ながら吸血に応じていった。
ふたりながら、脚に触手を巻かれていって。
苦笑いしながら、真新しいストッキングをチリチリにされて。
まずお手本に、お母さんが、スカートの奥まで触手を忍び込まされて。
そいつが娘のスカートの、お嫁入りまでだいじにしなくちゃならない処にまで入り込んでいくのを、いまは忍び笑いをこらえながら、見守っている。

浮気の張り番、頼みますね。
悪戯っぽくそういいおいて単身赴任していった夫のかわり、向かいの家で寝ずの番をしながら。
許された少量の血と引き換えに、寂しい奥さんのため・・・夫の代役を果たすときもある。
留守だといいながら。・・・隣りの部屋に通じるふすまがこっそり細めに開いていて。
けしからぬ昂ぶりを帯びた目が、もだえる奥さんを見つめつづけているのも。
怪人はよく、心得ていたりする。
きみになら・・・いっとき妻を奪られてもいいかな・・・って。
少年のころ、独りぼっちだった彼。
ただひとり、心を開いていたのが・・・公園で独り寂しく遊んでいる彼のまえに現われ、いっしょに遊んでくれた怪人だった。
優しい奥さんが、夫を愛しながらも。
風変わりな客人と賢明に接してゆくことに・・・密かな満足を覚えていた。

一見なにごとも起こらないような、閑静で平和な住宅街。
けれども不思議な共存関係は、街の裏通りに潜んでいて。
見たい人にしか、見ることはできない。


あとがき
なんともまあ、奇妙奇天烈なキワモノになってしまいましたが。(^_^;)
特撮ものの吸血怪人のようなものをイメージしてもらえるといいと思います。
彼らから受けた影響は決して小さくないのですが。
「幻想」時代のはじめのころに、そんなエッセイを描いた覚えがあります。
・・・って、まだ再あっぷしていなかったっけ?(^_^;)

正体

2006年04月21日(Fri) 06:05:44

身の丈ほどもある大ビルに襲われて、
若い女はひと声、きゃあっ!と悲鳴を洩らしたけれど。
すぐに目を伏せ押し黙ってしまって。
そのまま仰のけたうなじに、細く鋭利な吸血管を刺し込まれてしまっている。
ぎゅうっ・・・
無慈悲にナマナマしい音を洩らしながら。
半透明の吸血管は、抜き取られてゆく赤黒い液体に満ちている。
体じゅうについている吸盤を、体液を唾液のようにてらてらと光らせながら、
若い女の身体じゅうにぬめりつきながら、吸盤を吸いつてゆく。
うら若い潔癖な素肌に不潔な体液をしみ込まされて。
厭うようにけだるげに、しばしはかぶりを振っていたけれど。
やがて身をゆだねきるようにうっとりとして。
女は体の力を抜いていた。
貼りつけられた吸盤の下、肌色のストッキングがぶちぶちと裂けてゆく。

恍惚として目を瞑った女の顔から、みるみる血の気が失われてゆくと。
傍らで様子を窺っていた年配の和装の婦人はたまりかねたように
大ビルの上におおいかぶさるようにして、そいつの体を娘から引き離し、
まるで身代わりになるように、
無慈悲な吸血管を訪問着の胸許に自ら突き立てていった。
アアッ・・・
抑えかねた叫びを切なげに散らして。
年配の女もまた、半透明な吸血管を己の血で赤黒く染めてゆく。
壁に抑えつけられて吸血されながら。
和装の女はこちらを向いて。
つぎはあなたの番よ。
そんなふうにほほ笑んでいた。

姉さん、かんにんね。
弟に背中を押されるようにして。
前に二、三歩踏み出すと。
そいつは避けるすべも与えずに、やおらおおいかぶさってくる。
苦もなく押し倒された床が、ごつごつと背中に痛かった。
そうこうしているうちに、大ビルの執拗な吸着に、抗うすべを奪われてしまっている。
物慣れたように機械的に、あの鋭利な吸血管がうなじに迫ってきた。
ずぶり・・・
力ずくに突き刺されていた。
皮膚を破った尖った異物は、滲むようにくい込んできて。
ぎゅうっ・・・
体内をめぐる血液を、強引に抜き取ってゆく。

あまりの強欲さに軽い眩暈を起こしながら。
取りすがる二対の掌が、むしろ抗いを抑えようとしているのを感じていた。
ねばねばとした吸盤だらけの巨体は、すがりつくように執着してくる。
直感した。
正体は、あのひとだ。
わたしを抑えるふたりにとって、兄であり息子であるひと。
飢えた大ビルに押しやった弟の、親友であるひと。
機械的なまでに無慈悲な吸血に、濃密な想いを込めて。
男はわたしの血を吸いあげてゆく。
いいのよ。もっとお吸いなさい。
あなたが人に戻れるまで、私処女のままで待っているから・・・

従姉

2005年11月05日(Sat) 20:31:35

グレーのハイソックスを履いたボクのふくらはぎに、吸血鬼のおじさんはさっきから、牙を埋め込んでいた。
すべてに慣れてしまったボクにとって、ちゅうちゅうと旨そうに血を吸われるのは、決して悪い気分ではない。
少しだけ、くらくらと眩暈がするのを覚えながら、ボクは彼をそそるようなことを口にしてしまっていた。
「週末、いとこのお姉さんが遊びに来るんだけど・・・」

薄いピンクのスーツに白のブラウス。
ゆったりとウェーブした黒髪に、乳色の肌。健康そうな歯並びの良い歯。
薄手のグレーのストッキングに、白のパンプス。
はたちを過ぎたか過ぎないかの従姉の夕子さんは、とてもきれいで、まともに見つめることがなかなかできないでいた。
いっしょに街はずれの公園に散歩に行くといったボクに、ママは、
「あんまりあぶない所に行っちゃダメよ」
といいながら、ちょっと顔をしかめていた。

忽然として現われた黒衣の男に、お姉さんはふるえあがって、
きゃああっ!と、叫び声をあげた。
お姉さん、怖いっ。
そういいながら、ボクは夕子姉さんさんの腰にしがみついて・・・逃げられないように抑えつけていた。
「あっ!うう・・・」
かすかな身じろぎと呻き声とで、吸血鬼が夕子姉さんのうなじに、ぐいっと牙を埋めたのがわかった。
キュウキュウ・・・くちゅうっ。
聞き慣れた血を吸うときのナマナマしい音が、綺麗に着飾った夕子姉さんにおおいかぶさる。
やがてお姉さんはくたくたと、その場にしゃがみこんでしまっていた。

吸血鬼のおじさんは、お姉さんを縁側に腰かけさせて、グレーのストッキングの上からふくらはぎを舐めている。
お姉さんは息も絶え絶え、心持ち仰のけた顔をふらふらさせて、喘ぎながら、おじさんのやり口に眉をひそめていた。
失礼なやり口に抗議をしたくても、もう思うように体が動かなくなっているらしくって。
とても悔しそうに、おじさんがストッキングの脚をにゅるにゅると汚らしくいたぶりつづけるのを見つめつづけていた。
その目つきがいっそう気に入ったらしくって。
おじさんはさぁ御覧、とばかりにいっそう、意地汚く、夕子姉さんのストッキングを辱めていくのだった。

血を吸い取られたあとの傷口は赤くはれあがって、吸い残した血潮がまだてらてらと光っている。
ボクはさりげなく白いうなじに触れてゆき、
ちゅるっ。
ちょっとだけ口に含んだ夕子姉さんの血は、錆びたようなつぅんとした香りに包まれていた。

ぱりぱりっ。つつつぅー。
ふくらはぎに、ストッキングの伝線が走る。
夕子姉さんがとてもイヤそうに顔をくもらせるのを、吸血鬼のおじさんはとても嬉しそうにうかがっていた。
―――さぁ、こっちへおいで。
吸血鬼のおじさんは、まえにママを連れて行った植え込みの陰に、夕子姉さんを引きずりこんでいく。
怯えたような白い顔に、おじさんの銀髪がワサワサと乱れかかった。
たくし上げられた薄いピンクのスカートから、かっこうのいい脚がにょっきりと伸び、草むらに横たえられる。
破けたグレーのストッキングが、夕子姉さんの脚を、まだひざ上まできれいに染めていた。
ツヤツヤとした感じが、ひどくなまめかしい。
姉さんの白い脚が。
くすぐったそうに。むず痒そうに。ヘビみたいにくねるたび、
ストッキングはだらしなく、ずるずるとずり落ちてしまった。
オトナっぽい感じのするストッキングが。
きれいな脚の輪郭から、たるんで。浮き上がって。
みるかげもなく、くしゃくしゃになってゆく。
子供心にも、とてもふしだらに映るそんなありさまを。
ボクは息をこらして、あまさず見つめつづけてしまっている。

姉さんがお勤めの引けると毎週のように公園に出かけるようになったのは、それからのことだった。

数年後。
叔父さんが亡くなったあと、夕子姉さんはさと子叔母さんとふたりで帰郷してきた。
お墓参りに訪れたふたりは、そろって薄黒いストッキングを履いている。
ところもおなじ、公園の東屋で。
夕子姉さんは破けたストッキングに白い肌を滲ませながら、ボクのほうへと近寄ってくる。
「見ちゃ、ダメよ。見ても、忘れてちょうだいね」
東屋のなか、叔母さんの白い肌がはだけた黒のワンピースになまめかしく映えていた。
そのうえにおおいかぶさっている黒い影が、なにをしているのか、むくむくとうごめいているのが見える。
さと子叔母さんはその黒い影の下で、ちょっとつらそうに、でもどこかキモチよさそうに、顔をしかめていた。
ちょうどあのときの姉さんと、おなじ顔つきになっていた。

夕子姉さんはもう、血を吸われたあとだった。
白いうなじにふたつ、咬まれた痕がどす黒く、刻印されている。
おなじものを、さと子叔母さんもつけられちゃったに違いない。
「お父様もいらっしゃらないんですもの。すこしでも若くて、きれいなうちに・・・逢わせてあげたかったのよ」
そう口にする夕子姉さんの頬に乱れかかった髪の毛はちょっぴり栗色に染められていて。
夜の巷の女みたいに、すさんで見えた。

つぎの日。
吸血鬼のおじさんは、叔母さんだけを誘って、お邸に連れて行った。
きっと、夕子姉さんみたいに洗脳してしまうつもりなのだろう。
一人残ったお姉さんは、あの公園へとボクを誘った。
白のブラウスに、千鳥格子のスーツ。
黒のパンプスを履いた脚は、あのときとおなじ、グレーのストッキングに包まれている。
ストッキングには、いままでになくツヤツヤとした光沢がじんわろと滲んでいた。

小さい頃から憧れていた、優雅な二重まぶた。
目じりにすこししわが浮いていたけれど、夕子姉さんはまだ独身だった。
「母もわたしも、あのかたに食われつづけるんだわ」
すこしもイヤそうでなく、姉さんは言った。
「責任、取ってくれるわね?」
うかつなことに。
それが従姉からのプロポーズだと、すぐには気がつけないでいた。
従姉弟でも結婚できるということは、本を読んで知っていたのだけれど・・・。
なん年もまえ。
吸血鬼のおじさんと示し合わせた悪戯は、ほかならぬボクの花嫁を犯す儀式だったのだ。


あとがき
少年の回想という形を取ろう、と思ったのですが。
ちょっと平板にながれてしまいましたね。(^_^;)

あとがき 2
再あっぷ後、すこし直してみました。^^;

素材としての吸血怪人 3 吸血怪人、大活躍(?)

2005年06月27日(Mon) 08:04:06

吸血怪人の悪口ばかり書いてしまいましたが、過去の記憶から密かに萌えたシーンの話などを。

其の一 教会の吸血怪人

古びた教会に巣食う悪の組織が、花嫁を次々と餌食に・・・
そんなストーリーだったと思います。
たったのワンシーンでしたが、バレリーナが舞台で襲われて逃げ惑い、さいごに首のつけ根を咬まれるシーン。
頭上からのアングルで、戸惑い、つまづき、抱きすくめられ、ふりほどき、またつかまえられて・・・
かなりリアルなシーンが、脳裡に灼きついています。
肩先にピンと張りつめた、コスチュームを吊るストラップのあたり。
豊かな肉づきに獰猛な牙が突き立って。
瞬間、場面は黒一色に転じて、その上を真っ赤な塗料(血潮?)がドバッと・・・
稚拙なぶん、かえって妖しいエロチシズムが漂います。
生れて初めてみた、ストッキング姿の女性が血を吸われるシーンとして貴重な?記憶です。
ほとばしるような急テンポで流れるパイプオルガンのBGMも雰囲気を盛り上げていました。

其の二 吸血三葉虫

なんともおどろおどろしいタイトルです。
楚々とした和服姿の教授夫人の首筋に這わされた三葉虫の化石が、夫人の血を吸って怪人に・・・
これを、夫である教授の目の前でやるんですね。今にしてみればかなりSなシーンだったような。
和服の襟足からのぞく、キュッと引き締まった首筋に這う三葉虫。
血を吸い取られた夫人はしばらくのあいだ、自宅でぼう然となっています。
なにもかも抜き取られからっぽにされた夫人の虚ろな無表情が、支配されたものの虚脱感を体現していました。
幸い教授夫人は生還しますが、夫婦にとってトラウマにならなかったんでしょうか?

其の三 ヒルゲルゲ

名前はうろ覚えです。
雑木林で遊んでいる少年たちの頭上からヒルの大群がふってきます。
ヒルゲルゲは気絶した少年たちにおおいかぶさって、吸血管を胸元に差し込むと血を抜き取っていきます。
赤黒い血液が、透明な管にすごい速さでかけめぐるシーンが連続。
後日そこを訪れたお父さんまでやられてしまいます。
ここでも透明な管に血液が満たされるシーンが。(きっとおなじ映像だと思います)
これが娘とお母さんだったら、もっと萌えたかも。^^
でも、残されたお父さんがかわいそうかな。

其の四 追いかけっこ

獰猛な吸血管を持つ怪人が、男の子を連れた若いお母さんを追い回します。
お母さん、色白でぽっちゃりしていて。
はた目にも、とても美味しそうなんですね。(笑)
なんどか、吸血管を突き立てられそうになるのですが。
そのたびに、危うく回避。
とうとう人妻の美味しい血にありつけないまま、怪人は正義の味方に敗れて惨死を遂げます。(カワイソウ・・・)
あんなふうになるのなら。せめてひと口だけでも、吸わせてやりたかったな。^^

このお母さん、怪人に襲われたあと悪の組織につかまって、人質にされて柱に縛りつけられたりします。
どうにも嗜虐癖のある組織です。(笑)
縛っている時間的余裕があるのなら、怪人に血を吸わせてやることもできたはず。
お母さんは無事生還するのですが。
うがった見方をするならば、さいしょから殺害の意図はなく、ただ虐めて愉しむだけのつもりだったのかもしれません。(そんなワケないって・・・(^_^;))
怪人がとうとうお母さんの血を吸えなかった要因は、虐めかたについて、怪人と幹部とのあいだに見解の相違があったためと思われます。(違)
生き血にありつけずパワーダウンした怪人はあえなくノックアウトされて、悪の組織はまたも、めでたく(笑)野望を挫かれたのでした。

素材としての吸血怪人 2 抱擁の意味

2005年06月27日(Mon) 06:57:27

吸血怪人たちは、多くの場合女性に抱きついて生き血を吸います。
女性からすると、身動きもできないで、生きながら血を吸い取られてゆくわけですが、
人生最後に彼女たちが受けた抱擁には、残念ながら愛情のかけらも感じることができません。
ちょうどそのあたりも、レイパーと似ています。
行きずりのレイパーは、相手の女性に同情や思いやりをもつことはないでしょう。

レイプ願望のある女性がいるそうです。
でもそれは多くの場合擬似レイプです。
激しく犯されてしまう。
強引にモノにされてしまう。
そうした部分だけを切り取って、愉悦するのです。
男性の側は相手の女性に対して、恋人同然の気遣いや思いやりをもって接していきます。
複数の男性を相手にするケースすらあるようですが、それは「輪姦」という言葉がイメージするような陰惨なものではなく、
多くの男たちにかしずかれるようにして、愛撫を愉しむひとときのようです。
なかには夫や恋人を交えることもあるそうです。
理解できる人はまだ少数派でしょうが、性を享楽する一形態といっていいと思います。

愛情の有無という一点において、
擬似レイプやロマンチックな部類のドラキュラものにおける抱擁は、
本物のレイプや吸血怪人のそれとは似て非なるものがあります。
レイパーや怪人のそれは、たんにエモノの抵抗を封じるための手段でしかないようですから・・・

妻を襲ったあとの吸血鬼に訊きました。
抱きすくめながら血を吸っているとき、なにを思っているのかと。
いとしい思いでいっぱいなのだ、と、てらいもなく応えが返ってきました。
彼の特異な欲望を満たすために暖かい血を振舞い、はしたなく衣裳を濡らす妻のことがいとおしくて、愛情を込めて抱きしめるのだ、と。
いとしくもなるだろう?いっしょに莫迦になって、いっしょに愉しんでくれるのだから・・・

単なる食べ物扱いではなく、妻を淑女として遇してくれていることに夫として感謝しているよ、と伝えると、
珍しく済まなさそうに微笑を浮かべていました。

素材としての吸血怪人 1

2005年06月27日(Mon) 06:37:35

少年時代から特異な心象世界を形作った素材のひとつにまちがいなく数えることができるのは、「仮面ラ○ダー」など一連の特撮ものに出てくる吸血怪人たちです。
襲われる犠牲者は、きちんとした身なりをした若い女性だったりします。
とびきりの美人ではなく、ごく身近にいそうなそこそこ小ぎれいなくらいの女性です。
着ている服も、ご近所の大人の女性とそう代わり映えしないのが、かえってリアリティを感じさせます。
襲う側の怪人は、多くは極彩色の、醜怪な姿をしています。
人というよりも・・・花や昆虫、動物に似せた醜悪なフォルムは、襲われる美人たちと好一対な?対称をみせています。

さながらお嬢さんとレイパーのように。
怪人は女性に抱きつくと、首筋に牙を突き立ててアッという間に血液を吸い尽くしてしまいます。
無残にも、女性は力なく倒れてあっけなく絶命。
かいつまんでいうと、そんなシーンです。
なんの罪もない一般市民の女性が、突然げてもののような怪物に襲われて一瞬にして命を奪われてしまうわけですから、いまにして思うと残酷そのものなシーンです。
それでも、
「キャアーッ」
と叫ぶ女性の表情に、恐怖以外のものをみるのは・・・コアな私の読み過ぎでしょうね・・・
なんとなく、恐怖にはしゃいでいるようにみえるときすら、あるのですが。

お化け屋敷とかジェットコースター、好むのは圧倒的に女性といわれます。
そこには「おイモを食べたい」みたいな、女性特有の生理的欲求があるような気がします。
心の深い部分では、恐怖や嫌悪の感情に、それとは裏腹な快感を覚えるときがあるのかもしれません。 (完全な誤解かもしれませんが・・・・)
もちろん、実際に危害を加えられたり、まして殺されたりするなんてもってのほかですが。
(残酷趣味には、嫌悪しか覚えません。あと、スプラッタとかもイヤだな。)

さて、首尾よく?若い女性の血を獲た怪人は、はたして満足を味わうのでしょうか。
あまり、おいしそうに飲んでいるようすは感じられません。
吸血時間?も極めて短かく、一瞬で吸い尽くすケースが多いみたいです。
大人の女性の体内に流れる血液すべてといえばかなりの量のはずですが、どうやってあんなに素早く吸い取ることができるのでしょうか?
どうやら怪人にとって吸血とは、殺害の一手段にすぎないような気がします。
人生の最後の瞬間をこのような無惨な形で迎えなければならなかった女性たち。
それでも、大人になってから目にする彼女たちの最期のシーンは、子供の目にも恐怖とは別次元の異形の感興を呼び起こすようです。
両親は私の傍らで、どんな感想を持ったでしょうか・・・


あとがき
今にすれば似て非なる世界ですが。
「幻想」のごく初期に描いた、吸血怪人についての雑文です。
ちょっぴり、残酷趣味ですね・・・^^;

原風景

2005年06月13日(Mon) 07:09:08

ここに書いているのはもちろんすべて妄想です。
ある人に言われました。
「もしかして、子供のころお母さんエッチしてるところ見ちゃったとか・・・?」
たしかにそういうトラウマ、ありがちですね。
でも、まったく記憶にありません。
母も妻も、貞淑で堅実な主婦だと信じています(笑)。

ドラキュラ映画のほかにもし原風景があるとすれば、「仮面ライダー」とかの子供向け番組のシーンでしょうか。
若い女性とかお母さんとかが怪人に襲われるシーン。
変身ものは一応実写なので、かなりリアリティがあります。少なくとも子供にとっては。
怪人が等身大であることも、重要な要素かも。
スーツ、ハイヒールにストッキングという、どこででも見かけるようないでたちで、怪人に襲われる女性たち。
大人っぽく上品な服を着た女性が恐怖におののきながら、醜怪な化け物に抱きすくめられ、首すじを刺されて血を吸い取られてゆくシーンは、大人になってから見てもかなりの迫力があります。
どんなに堅実で善良な市民でも、こういう超常的な手合いにはかなわないです。たあいなく、ねじ伏せられてしまいます。
無惨に殺害された女性はからからにひからびてしまって、うら若い血液だけが怪人の体内に吸収され、悪のエネルギーに転化されていきます。
原風景は案外これなのかも。

一人一人こんなに時間かけて殺していって、ほんとうに世界征服なんてできるのだろうか?という素朴な疑問はさておいて、
彼ら邪悪な組織が殺人を楽しんでいる卑劣な集団であることは疑いありません。やはり、健全な社会から抹殺されるべき存在であることは間違いないです。
でもきっとそれ以上に若い女の血はおいしかった筈・・・
若い女の血に魅せられることがなければ、ああいう怪人は開発されなかったはずです。
怪人が倒されても、殺害されてしまった女性たちは家族のもとに帰ることはありません。
こんな非効率的な方法で世界征服ねらうくらいなら、ずっと地下に潜伏していて、美しい女性たちを生かさず殺さず飼育して、エキスを吸い続けるほうが成功率高いし、愉しいのでは?
・・・などと思うのは、不健全な不良中年のゆがんだ欲求ですね。