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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

複数の吐息重なり合う夕べ

2005年07月26日(Tue) 06:40:23

「あんたの奥さんを仲間うちでまわしたい。紹介してくれるよね?」

・・・。
時折、吸血鬼氏からそんな申し入れ。
もちろん、拒むことは許されない。
この村では、いかなる名流婦人も例外なく、彼らの一時の気紛れを充たすためにわが身の淑徳を汚されなければならなかった。
困惑しつつも承諾を与えるときの私は、たぶんほろ苦い笑みを浮かべているに違いない。
首のつけ根につけられたふたつの痕は、抗いえない愉悦の疼きをじんじんと伝えてくる。

首すじにふたつ。
右のふくらはぎにふたつ。
たくし上げられたワンピースからのぞいている左の太ももにふたつ。
綺麗に並んだ咬み痕は、吸い残した血潮を薄っすらと滲ませて。
白い肌のうえ。淫楽に堕ちたという烙印は、見せつけるほどの違和感をたたえている。
淫らな意図を持った唇が押し当てられて、
素肌にしみこむように牙で侵してゆく。
妻は虚ろな目線をあらぬかたにさ迷わせ、ゆるくかぶりを振りながら吸血に耐えようとする。
「すまないね」
本命の彼氏は着衣のうえから、妻のわき腹に牙を沈ませていく。

夜も更けて。
電話のベルが鳴った。お隣のご主人からだった。
新婚数ヶ月の、若夫婦のお宅である。
「・・・妻が、輪姦されているんですよ・・・」
困ったような声色。でも、語尾の震えにあきらかに性的な昂奮がこめられていた。
「そうですか・・・うちもなんですよ・・・」
「えぇ、やっぱりお宅もですか」
「家内は慣れていますが・・・奥さんのほうは・・・?」
「不慣れなところが初々しいって、好評なんです・・・^^;」
「お互い、苦労が絶えませんね」
「しかたないでしょうね・・・しきたりですから・・・」
お話しているうちにおだやかなゆとりを取り戻す、若いご主人。
「お宅は、なん人お相手しているんでしょうか?」
「四人です」
と、私はこたえる。
「勝った・・・^^」
受話器のむこうで、ご主人の声が得意げにはずんでいた。
「七人・・・^^v」
「お若いかたは・・・イイですね」
私も思わず、相槌を打ってしまう。
下腹部にじわりとした潤いが滲むのが、受話器を通して伝わってくる。
向こうもきっと、おなじ察しをつけているだろうか。
マゾヒズムに目ざめた血が、身体じゅうを狂おしく、ぐるぐるとかけめぐっていた。

ちょっと強引に。
それでいて、かしずかれるようにして。
かわるがわる覆いかぶさっていくる吸血鬼たちと性の交歓を繰り返す妻。
夫婦のベッドのうえで、みずからも娼婦のように乱れて淫靡な舞踏を繰り返してゆく。
激しい吶喊の末精液を思うさま注ぎ込まれつつ、荒々しい息遣いを重ねあい、からみつかせる。
ひそやかで熱っぽい吐息を弾ませながら。
執拗な腰づかいで夜の訪客から声なき賞賛を一身に浴び続けながら。

そんな風景を横目に、相変わらずほろ苦い笑みを浮かべ受話器を置いた。
ゆるやかなロープの束縛が、私とイスとを結び合わせている。
輪姦プレイはしばしば夫同席のもとに執行されるのだ。
夜の客人の征服欲を満足させるには、夫の嫉妬深い視線が欠かせないという。
そして妻もまた、視られることで恥じらいを忘れ果てるのだという。
夫たちは、客人たちの淫らな欲望を満たすため、己れの妻がうける辱めを一部始終、見届ける義務を課せられていた。
決して不快なだけではない、淫らな愉悦さえ帯びた義務。
表向きは迷惑そうに、屈辱をさえ含みながら、彼らの意に沿う私。
だが、知らず知らず妻の痴態に熱っぽい視線をからませながら、いつしか私自身、夫としては禁忌に触れるはずの被虐の悦びに耽りはじめてしまっている。

女吸血鬼の獲物

2005年07月23日(Sat) 22:37:27

女吸血鬼は満悦していた。
ずうっと狙ってきた人妻が、今宵やっと自分のものになるのだ。
「あれっ!な、何をなさいます」
何も知らずに呼び出されてきた夫人を羽交い締めにすると、ブラウスの襟首をはだけて思いっきり牙をむき出す。
貴女のお友達も何人か、牙にかけてきたのよ・・・
そう呟くとおもむろに、むき出しの素肌に牙を慕いよらせてゆく。
何着もの高価なブラウスを持ち主の血潮に彩ってきた牙が、夫人の胸許に突き立った。
「あッ!ううん…」
顔をしかめる夫人の頬に、バラ色の血潮がしぶく。吸血鬼はそのまま夫人の身体を抱きすくめ、
ちゅうっ…
生き血を吸いはじめた。
「あッ、な、なにを…ちょっと…」
制止しようとする手を払いのけて抑えつけ、唇にさらに力をこめる。
「ひいッ!」
悲痛なうめき声をあげて、夫人は身をのけぞらせた。
清楚なブラウスに包まれた身体をこわばらせて、むなしい抵抗をこころみる。
しゃりっ、しゃりっ…
絹のブラウスがシーツに擦れる音ばかりがするなかで、ふたりは声もなく争う。
そのあいだも、夫人の素肌の奥深く刺し入れられた牙は、引き抜かれることがなかった。
女ざかりの熟れた鮮血があふれ出し、干からびきっていた喉の奥へびちびちとはじける。
失血とともにじょじょに抵抗が弱まるのを覚えながら、吸血女は満悦し、さらに力をこめて哀れな犠牲者を抱きすくめた。
腕の中の華奢な女体が、力尽きたように身もだえをとめる。


とうていのがれられないと観念しながらも、夫人は抗った。
女吸血鬼は冷たい笑みさえ浮かべながらつよい力で夫人を抑えつけ、牙をむき出して素肌に迫らせる。
夫人は拒むように、かぶりを振った。
せめて、着衣を鮮血で汚したくなかった。
そんな意図が吸血女にも伝わった。
血を吸った相手の思うことは、なんでも察しがついてしまうのだ。
吸血女の顔が意地悪そうにニタリと笑った。
夫人をシーツの上に組み敷いて上から抑えつけると、
「ごめん遊ばせ。オホホホ…」
笑み崩れて弛んだ口許から、たら~り、たら~りといま吸い取ったばかりの血潮をしたたらせる。
「アアッ!ひどい、ひどいわッ…」
夫人は身を揉んで抗った。抵抗も空しく、バラ色の液体がぼとぼとと、ブラウスの上にほとび散る。
女吸血鬼は、相手が整った目鼻立ちを悔しそうに歪めるのを嬉しそうに覗き込んだ。
「ああッ…あん…あんッ…」
切なげな悲鳴が切れ切れに、夫人の口許から迸る。

音を忍ばせるように。
広間にしつらえられてあるパイプオルガンがゆるやかな調べを奏ではじめる。
奏者は氷のような頬をこわばらせ、ただひたすらに無表情に弾き進んでゆく。
鍵盤の上をなめらかに流れるほっそりとした手。
血を吸い尽くされて抜け殻のようになった上体を操られるように左右に揺らしながら、荘厳な調べのなかに身をゆだねてゆく若いオルガニスト。
夫人を組み敷いている女吸血鬼は、いつの間にか老婆の姿になっていた。
醜く老いさらばえたしわくちゃな身体を夫人のなめらかな肌に沿わせるようにして、身を重ねてゆく。
老婆の唇が夫人の首筋に吸着すると、パイプオルガンの調べがいっそう急テンポに厳かな調べをかき鳴らす。耳を聾するような音符の奔流に、きゅうっ、きゅうっ、と生き血を啜る音が不協和音となって重なった。
身体を固くして目を剥いたまま、夫人は我を忘れておぞましい吸血行為に身を委ねた。

「いかが?いかがあ?」
若返った吸血女はたった今夫人の身体から吸い取った血潮を口許からしたたらせた。
重たくよどんだ飛沫が、純白のスリップの上に散らばった。
「あったかいでしょう?あなたの血なのよ。お召し物にようく、お似合いだわあ」
夫人は目を閉じたまま、かすかに頷く。しらずしらず、不埒な吸血女のいいなりになって、装った礼装に忌まわしい汚濁を加えられることに愉楽を覚えはじめている。

妻の朝帰り

2005年07月23日(Sat) 06:09:28

本当なんですのよ。私、気が進まないのよ。
よその男のかたとキスしたり、身体触られたりするの。
ただ、貴方の命令ですから、仕方なくお相手しているのよ・・・

そういいながら妻は夕べも出かけていった。
妻のいない夜。
嫉妬に昂ぶる夜に、安穏な眠りは訪れることはない。
息子が早起きしてきて、「母さんは?」と訊いてくる。
ことさら平静を装って、
「彼氏とデートにでかけたよ」
そう応えると、「そっか」と、平気で返事がかえってくる。
妻の逢引は、我が家にとって日常茶飯事の出来事。
「うちにくれば、姉さんやボクたちの血も吸えるのにね」
私と同様、幼い頃から吸血鬼に身をゆだねている彼も、吸血鬼には同調的だ。
「きょうはデートかい?」
こんどは私が訊く番だ。
「いいや」彼はみじかく応える。
「お婆さまに逢いにいくってさ」
「なぁんだ。律子さんも血を吸われているんだ」
律子さんは、息子の婚約者である。
村のしきたりでは、婚約者はごく早くに決まる。
彼女が息子と婚約をしたのは小学校五年のときだった。
「お互い、仕方がないね」
息子は利いた風なことを言う。
「喉渇いたんだけど・・・父さんも吸うんだろ?姉さんの血」
ハハ・・・
思わず虚ろな笑いを洩らしながら、気にしないで姉さんの部屋に行きなさい、と私は言った。
こうしたことで息子と張り合うのは、大人気ないので・・・

饗応

2005年07月23日(Sat) 00:35:17


しとやかに重ね合わせた両手の下で、千鳥格子のミニスカートがすそをゆらゆらさせている。
スカートの下は、濃紺のストッキングが挑発的な光沢を放っていた。
「青鞜」(青い靴下)というと、「閨秀」というのとおなじく昔から女性のインテリをあらわす言葉らしい。
しかし、実際目にするそれは明らかに、知性の透徹とは裏腹の、淫らな趣をもたたえていた。
都会の大学を出たインテリ女性の妻。
しかし夜の帳がおりると、吸血鬼の淫猥な腕に抱かれて凌辱の愉悦に耽る娼婦と化している。
もちろん、挑発的な濃紺のストッキングも彼のために脚に通したもの。
今宵も、妻の素肌を狙う唇が、夜の闇に蠢いていた。

さし寄せられる唇に、妻は迷惑そうに眉をくもらせる。
理性を奪い尽くされてしまったいまでも、淑女の装いに受ける辱めは、それなりの恥辱を覚えるものらしい。
それでも抗うそぶりを見せずに、そのまま足首をつかまれ、スカートのすそを与えてしまっている。
薄手のストッキングを通してくわえられる、舌による巧みな愛撫。
足許に密着するナイロンが、見かけの淑やかさに不似合いなあしらいをうけながら。
にゅるにゅるとねばりつくべろのいたぶりのまえに、妖しいねじれやしわを深めてゆく。
上品慣れ礼装を装ったふくらはぎになすりつけられるなまの唇から目をそむけながら、ただならぬ想いが湧き上がるのを抑えきれずにいるようだ。
妻の上体がかすかに揺らいだ。
迫ってくる吸血鬼の身体に押されたからに過ぎないのか、もっと別な感情が彼女をふらつかせたのか、判断がつかない。
妻は黙ったまま、清楚に装ったストッキングのふくらはぎを吸血鬼の卑猥な唇のいたぶりにゆだねていく。
ひざ下のあたりには、早くもぬらぬらとしたよだれをぬめりつけられていた。


私の存在は、微妙である。
彼女を独り占めさせてやるために気をきかして立ち去るときも、むろん多い。
しかし、夫の目の前でその妻をモノにするという、はなはだ不埒な嗜好を彼がもっているために、わざと同席させられるときもある。
どちらの場合も、彼が妻に対して礼を尽くして振る舞い(ないしは、淫靡にもてあそび)、妻が心づくしの饗応をする(あるいは、はしたない身なりに堕して犯される)ことに変わりはない。

ふたりの傍らから腰をあげかけると、妻が私の手首を握り返してきた。意外に強い力だった。
「行かないで、あなた。ここにいらして。心細いわ」
しかたなくもういちどソファに腰を下ろすと、妻はか細い両肩を私の胸にあずけてきた。
ブラウス越しに、静かで熱い呼吸が胸に伝わってくる。
心臓の鼓動が、私のそれと重なり合った。
寄りかかってくる妻の肢体の意外な重みが、私を迷わせる。
そのうちの何分の一かは、冷酷無慙な吸血というかたちで、ヤツの獲るところになるのだが・・・

汚らわしい両手が、肌の白さを滲ませた濃紺の沓下の周りから、妻の脚をまさぐっている。
執拗に撫でまわす掌にいかがわしい執着がたっぷりとこめられていた。
妻の足許を彩る薄衣は、執拗なまさぐりに揉みくちゃになって、繊細な糸の網目模様をいびつに歪めていく。
たまりかねたように、男の唇がひときわつよく、妻の足許に吸いついた。
「あ・・・」
口紅を刷いた薄い唇がわずかにあけて、かすかな声が洩れる。
ちゅうっ。
足許から湧きあがる、異様な音。
静かな、それでもはっきりそれとわかる吸血の音。
ちゅうっ・・・ちゅううっ・・・
押し殺すような音にこめられた卑猥な響きに、嫉妬の渦がまた、胸の底に渦巻いた。
真っ赤なマニキュアをした足の指が、ストッキングのなかですくみあがり、血を抜かれることを厭うように、ねじ曲がる。

かさかさに渇いた唇を通して、妻の体内をめぐっている血液が吸血鬼の喉の奥へと呑み込まれてゆく。
僅かずつだが確実な流れが、ふたりを結びつけていた。
屈辱をこらえて、妻の白い頬が引きつった。
しかしそれもわずかのあいだのこと。
足許を見つめる悲しげな瞳の奥にウットリとした陶酔の色を漂わせ、麻酔に酔うように、彼女の身体は私の腕のなかにくずれた。


腕の中ですこしのあいだ、力むように硬直していた妻の体が、いまでは緊張を弛めて、ぐったりと体重のすべてを私にもたせかけていた。
切なげにはずっむ息遣いが、薄手のブラウスごしに、私の胸に共鳴した。
不埒な唇が去ったあと、なよやかなナイロンの生地がちいさく裂けて、うっすらとした伝線を走らせている。
それは徐々にひろがって、涙の痕のように足許まで伝い落ち、皮膚の白さを滲ませていた。
濃紺の生地の上を走る伝線は、肌の白さをいっそう際立たせていた。
辱められた礼装のすき間からのぞく素肌が、男たちのふしだらな劣情をかきたてる。

傍らから伸びてきた吸血鬼の猿臂が、ぬうっと私と妻の間に割り込んでくる。
私の腕のなかから妻を攫おうとしてふたりのあいだに侵入してきたのだ。
枯れ木のような腕にこめられた、不釣合いなくらいつよい力。
それが抗いがたい力をこめて、私の抱擁の中から華奢な肢体を抱き取った。
いただくよ。
挑発するように私を突き放す腕にこめられたのは、心からの親愛の情。
たいせつな宝を奪い去られるという惧れが、一瞬にして。
愉しみを分け合おう・・・という。共犯者の愉悦に、すり替えられる。
「ア・・・」
ひくく呻いて、妻はうっすらと目をあけた。
ゆるく身もだえして、吸血鬼の腕からのがれようとしたが、
勢いあまってふらふらとよろめくと、まるで腑抜けになったように、絨毯のうえに仰向けになってしまった。

水晶のように澄んだ瞳が、無表情にシャンデリアを見あげている。
「いかが?」
放心したように呟く妻。
「なかなか」
吸血鬼はなおも、薄い靴下の上から妻の足許に唇を這わせる。
いやらしいしぐさをまだ厭うように、足許に眼をやる妻。
非難にみちた目線をくすぐったそうに受け流し、ストッキングに装われた脚を凌辱することに熱中する吸血鬼。
「どうぞ、ごゆるりと・・・」
意思を失った人形のようだった。棒読みするようにそう呟いた。
顔を覗き込んでくるあいてに応えるように、ブラウスの襟元をくつろげて、うなじを仰のけていった。
開かれた胸はレエスつきのブラジャーにぴったりとガードされていたが、シルクの下着の輝きは、かえって情夫の劣情をかきたてるようなものだった。
うっすらとした笑みを浮かべた生気のない薄い唇の端から、褐色の牙がのぞいた。
妻はちょっとだけ怯えたようにまなざしをふるわせる。
目線が真っすぐに、いましも己が肌を切り裂こうとする牙に注がれている。
おおきく開かれた口許から伸びる一対の牙は、半透明の唾液をあやして、生々しく光っている。
諦めきった哀切な面差しのまま、妻は目を閉じた。


うなじに牙を突き立てて、静かに喉を鳴らしながら妻の血潮を呑み耽る吸血鬼。
ゆっくりとしたスピードで、妻の体内から暖かい血液を抜き取ってゆく。
妻は心持ち身をこわばらせ、淡い恐怖の色を浮かべながら、抱擁に身をゆだねている。
相手に生き血を吸い取られていることを実感させ続けながら、じょじょに血液を奪ってゆくやり口を好んでいた。
あいつ、持つのかな・・・
かすかな不安が胸をよぎる。
逞しい猿臂のなかで、小柄な妻の肢体はいっそう華奢に映った。
そう思い直したところで、彼の好色な腕のなかから妻を救い出すことはもはや不可能なのだが。

あっ・・・あっ・・・アアッ・・・
哀切な呻きが、妻の口許から洩れつづける。
けれども彼の腕のなか、悶える反り身は隠すことのかなわないある律動を秘めはじめていた。
厭わしげに寄せられた眉が。あらぬ方をさ迷う目線に帯びた翳が。
ねじれるようにくねる脚が。
あらわになりかけた柔肌の下秘められた血潮に、淫らな色が織り交ざってゆくのを告げている。
妖しく乱れ始めた舞踏は罪の意識を残しながら、抗いがたく愉悦を漂わせ、
乱れ舞う身はいっそう悩ましく、淫靡な色を深めてゆく。


・・・以前書いた記録です。
ややくどいところがあるのですが、ほとんど直さずに掲載してみました。
「心細いわ」
そういいながら身を寄り添わせてくる妻。
その体温を感じながら、同時に血液を抜き去れらてゆく喪失感も共有する。やがて己の腕の中から妻を奪い去られ、人形のように玩ばれてしまう・・・
そんなシーンには、いまでも萌えます。^^;

O型血液の味

2005年07月22日(Fri) 06:21:21

白一色の服だった。
純白のプリーツスカートのすそを軽やかにそよがせて、彼女は歩みを進めてくる。
ひざ下まできっちりと引き上げられたハイソックスが、踊るような足取りを包んでいる。
たっぷりとした感じの白いハイソックス。
すらりとした脚にとてもよくマッチしていた。
恥ずかしい欲求を告白する私にクスリと笑みを洩らして、悪戯を許してくれた彼女。
差し伸べられた脚もとに、きょうも私は接吻を繰り返していく。

しばらくすると彼女はスッと私のほうへ顔を近寄せる。
無言のうちに交わされるキス。
ときにはかさかさに乾いている彼女の唇――そういうときの彼女はとても執拗だった――が、きょうはみずみずしくうるおっている。
蜜のように甘美な口づけを繰り返し繰り返し交し合う、忘我のひととき。
キスを重ねるうちに、その蜜の内奥に秘められたべつの芳香を感じ取る。
怪訝な視線を彼女も感じたらしい。
「わかる?」
と、訊きかえしてくる。
まちがいなく、血の匂いだった。
「あなたのお母様にお目にかかって、血を頂いてきたのよ」
どこかのお店でおいしいデザートを食べてきた、というような軽い口調で彼女は私にそう告げた。
「どうだった・・・?」
息を詰めて問いかける私。
「美味しかったわ。nice taste・・・」
流暢な発音の英語。きっと彼女は優等生だったにちがいない。
「あなたのことも、お話したの。無事でいるって・・・私とおつきあいしてくださるのって話したら、『世間ずれしてない子ですから物足りないでしょうけれど、よろしくね』って、おっしゃっていたわ」
「そう・・・」
この期に及んでそんな気遣いをされてしまっている私。
きっと母は。
己の血も。息子である私の血さえも。
ともどもに尽くされてしまうことを予感しているに違いない。
それでいて。
まるで、息子の恋人に接するような物腰で。
しずかに対峙している。
「『息子とおなじO型なんです。お口に合って何よりですよ』ですって。」
彼女はくすっ・・・と笑った。
素敵なお母様。気に入ったわ。あなたとおなじくらい。
そう、言いたげに。

かわるがわる、吸ってあげるわね・・・
身をゆだねた唇が、いつも以上に欲情している。
いま私のなかに埋め込まれている牙が、ついさっきまで母のうなじも侵していたのだ。
母の血と、私の血。
ふた色の血がいま彼女のなかで、ひとつに織り交ざっているのだろうか・・・
マゾヒスティックな歓びに、知らず知らず下半身がいつもより剛く、鎌首をもたげはじめている。

好み

2005年07月22日(Fri) 05:57:11

二十歳になるこの歳まで、女の子とつきあった経験がほとんどない。
高校は男子校、中学のころはおくてだった私にとって、女子生徒は遠い憧れでしかなかった。
初めてつきあった少女は、皮肉なことに私の生命を枯らそうとしている女吸血鬼。
透きとおるような蒼白い肌に清楚な黒髪。
薄い眉毛の下に、控えめだがノーブルな目鼻立ち。
地味だが清潔で娘らしい服装で現われる彼女だった。
初めて会ったときよりも、今のほうがより私の好みに適っている。
聡明な彼女は敏感に私の気持ちを察知するらしい。

「こういうタイプ、お好みに合うんでしょう?」
からかうように私を窺う彼女。
潤んだ瞳に吸いこまれそうなくらいゾクゾクしている私。
初めて体を許してくれたとき。
「処女じゃなくて、ゴメンネ」
ちいさく、彼女は呟いた。
私はゆっくりとかぶりを振る。
きっと、若い男の血を吸いながらも、彼女はその時々の恋人たちの欲求に我が身をさらしてきたのだろう。

まえの男の血を吸い尽くすまでは、別のタイプの女の子だったのよ。

イタズラっぽい含み笑いを浮かべながら、彼女はそういった。

そうやって、好みのタイプに合わせてあげるの・・・相手の男の子がわくわくしているときのほうが、おいしく血をいただけるから。
そういう女の子なのよ、私・・・

そういいながら彼女はきょうも容赦なく、私の首筋に唇を這わせてくる。

たとえ私を骨抜きにするために過ぎないとしても。
おいしい・・・
笑みを浮かべた唇に、私の血――生命の源泉――を含みつづける娘。
想いを伝えたい・・・せつじつに思う。
その希いはおそらく、かなっているはずだ。
けなげに私の恋人を演じてくれる彼女への愛が。
情容赦なくぐいぐいと抜き去られてゆく血液に、いくばくかでも融け込んでいるだろうから・・・

お腹が空いたの

2005年07月21日(Thu) 08:50:01

邸に軟禁されている私。
その少女は、毎晩のようにかよってくる。
私の血を吸うために。
ごく普通の会話を交わしながら、首筋に牙をつきたててくる少女。
柔らかで生温かい唇がヒルのようにぬるりと這いつき、その裏側に隠された牙が皮膚を破る。
静かな音を立てながら抜き去られてゆく血液。
血を吸われているあいだ。じつは、そんなに悪い気分ではない。
むしろウットリとなりながら、血を吸い取らせてしまっている。
「いっときだけ、夢を見させてあげる」
少女はイタズラっぽく私に笑いかけてくる。
そうして、小悪魔のように身をすり寄せてくる。
そこには敵意も侮蔑も感じられない。
ひとつの行為を表と裏から共有し、愉しみあえるパートナー。
彼女の私への想いはそういうことにあるらしい。

少女は私の身体を思いやりながらも、喉が渇くと容赦なく私の血を求めてくる。
そういうときの彼女は、お小遣いを要求してくる援助交際の女の子よりも露骨である。
躊躇なくそれに応じてゆく私。
命乞いは許されないのか?
幾度か少女に、そう尋ねた。
答えはいつも決まっている。
「あきらめたほうが賢明よ」
と。
真顔で、気の毒そうに。
けれども、すべての希望を断ち切るような、ハッキリした口ぶりで。
仕方ないね・・・
力なく微笑みながら首筋を彼女の唇にゆだねていく。

供血

2005年07月21日(Thu) 08:37:21

「血を吸いたい」
愛する人にそう告げられたら、あなたはどうしますか?

夜更け、外からドアをノックする吸血鬼。
中から鍵がかかっているはずなのに、なぜか吸血鬼は侵入に成功しています。
一度家に招かれたことがあるから?
でも、生前に受けた招待はすでに無効になっているそうです。
真相は。
なかの住人が自分から鍵をあけて、吸血鬼を部屋に引き入れているんです。
どうしてか?
それは、外からドアをノックしているのが、かつての夫や息子だったりするためです。
血を吸われてしまうと分かっていながらドアを開いてしまう妻たち、母親たち。

死後もあなたのことが忘れられない・・・
自発的な供血は、そんな彼女たちによる愛の表現。

朝食

2005年07月20日(Wed) 07:49:09

ダイニングルームの顔ぶれは賑やかなものになった。
私の両親、私、妻。そして義母。
「咬まれましたね?」
父は悪戯っぽく笑って、義母をそうからかった。
髪をあげて上で束ねた生え際に、鮮やかにつけられた赤黒い痕。
白一色のワンピースは、夕べの痕跡をそれとなく目立たせるための装いにさえ映る。
「美味しかったみたいですよ」
すこし照れながらも、どこか嬉しげな口調。
「若返りそうな体験ですね。時々遊びに来ようかしら」
「いつでも、歓迎ですよ」

「あんまりキモチよかったから、母のこと紹介しちゃったんです」
悪戯を見つかった子供のようにウキウキと肩をすくめる妻。
「上手く襲って頂戴ね、って」
はしゃぐ娘の傍らで、義母はビデオに見入っている。
部屋に備え付けられていたカメラに隠し撮りされた、夕べの出来事のすべて。
自らがヒロインを演じる、ドラキュラ映画。
画面のなかで激しく抗う、ワインカラーのブラウス姿。
堕とされてゆく貴婦人の抗いが、画面のなかで妖しく舞っている。

喪を破る

2005年07月20日(Wed) 07:21:05

「私の血なんか、お笑いぐさでしょうね・・・」
義母はそう苦笑しながら、吸血を受け容れていく。
きゅうっ・・・
むざんな吸血の音が、崩れる肢体におおいかぶさった。
「あぁ・・・」
陶然としているのが、遠目にもそれとわかる。
「お母さま、よかったわねぇ」
足許に唇を吸いつけられてストッキングをちりちりにされている母親のようすに、妻は無邪気な笑みをみせた。

「由貴子にはナイショよ、ね?」
上目遣いに訊く義母に、
「由貴子さんの純潔は、私が頂戴いたしました」
「まぁ・・・そうでしたの」
「素晴らしいお嬢様ですね」
「お褒めにあずかれて、嬉しいわ・・・ふつつか者ですからお手数をおかけしたのではありませんか?」
「エエ。貴女とおなじようにね」
貞淑な婦人としてかなり抗ったらしい義母は、決まり悪げに微笑む。
「じゃあ好夫さんにはナイショ」
「イエイエ・・・どういたしまして」
吸血鬼はにんまり笑う。
「彼は幼いころから私になついていましてね・・・花嫁の純潔をプレゼントしてくれたのは、ほかならぬ好夫くんなんですよ」
そうだったの・・・
うなじに慕い着けられる唇に呻きながら、義母は異端の倫理観を植えつけられていく。
「喪を、破らせていいただきますよ」
ブラウスを剥ぎ取り乳を吸いはじめる吸血鬼に、観念したように女は頷く。
「ええ・・・」
「好夫くんのお母上も、ご主人しか知らない体だったんですよ」
吸血鬼に組み敷かれていた義母は、ストッキングのなかのショーツをじぶんから引き裂いた。

侵される喪服

2005年07月20日(Wed) 07:06:00

半開きになった扉の向こう側に、壁にかけられたハンガーがかすかに揺れていた。
ついさっきまで義母にまとわれていたワインカラーのブラウスがかけられている。
部屋の中の照明はやや落とされていたが、ブラウスにあやされたかすかな翳はここからでもよく見えた。
不規則な放射状の翳が、義母の身に何が起こったのか、すべてを語っている。

手の届くところにあるチェアの背中には、濃い紫の薄衣。
鬼に吸い殺された人妻が梁にかけられている。そんな風情。
私の傍らからゆったり伸びた白くほっそりとした腕が、その薄衣をつかまえる。
義母が身につけていたストッキングは、みるかげもなく伝線を走らせている。
それを妻はおしいただくようにして、目を細めた。
「母も、もうすっかり狂っているわね」
母譲りのえくぼを口許にうかべながら、彼女はニッと笑う。

着替えた喪服姿にからみついている黒い影。
かつて私の母がそうされていたように。
そしてごく最近から彼女の娘がそうされているように。
義母もまた、黒いマントにくるまれて、ウットリとしている。
そこにあるのは、スキもなく装う、凛とした風情の喪服姿だったはず。
はだけかかった襟首から。ブラウスのはみ出たわき腹から。
そこかしこのすき間から忍び込む、吸血の牙。
そのたびにみじかい呻きを洩らしながら、身を仰け反らす義母。
すでに理性を奪われ、応えはじめているのだ。
夫を弔うために装われたはずの礼装は、いつか吸血鬼を愉しませるための衣裳と化してしまっていた。

「ストッキング、お好きなんですね・・・」
義母はそういいながら、奥ゆかしく装った薄黒いストッキングのふくらはぎを卑猥な唇にゆだねていく。
執拗にいたぶる唇の下、くしゃっとゆがめられ、すねの周りをねじれるナイロンの皮膜。
「まぁ、いやらしい」
清楚な衣裳に不似合いなあしらいにほろ苦い笑みを浮かべながらも、そのまま相手の行為を許してしまっている。
さっき妻が私の舌を受けたように。
吸血鬼にとりつかれ、ストッキングによだれをあやされて笑う義母。
そんな様子にウキウキと見入る妻。

妻の悪戯

2005年07月20日(Wed) 01:52:15

妻がまだ若妻だったころ。
その晩は珍しく吸血鬼氏の来訪もなく、ふたりは水入らず?の夫婦生活を営んでいた。
着衣プレイに密かに憧れていた私は堂々と?そのことを口にし、妻もまたそれを羞ずかしそうに受け容れてくれている。
その晩の妻のいでたちは、黒と白のプリントワンピースに光沢のテカテカした肌色のストッキング。
「いいんですのよ、あなた。遠慮なく汚して下さいね」
新婚のころの妻はちょっと他人行儀なくらい上品な言葉遣いをしながらワンピースのすそをちょっとだけたくし上げ、片方の脚を差し出して、私を誘惑する。
つややかな光沢に包まれたふくらはぎに唇を近寄せてゆく私・・・
妻の素肌に魅入られたように唇を這わせてゆく吸血鬼氏と同じように、私もまた妻のふくらはぎを吸っていた。
「ウフフ・・・」
くすぐったそうに妻が笑う。
すこしでもふしだらに汚してやろうとべろをあてがう私を、さながら悪戯者の弟でも抱きしめるように両肩へと腕をまわしてくる。
ゾクゾクするひととき――
ぴちゃ。ぴちゃ。くちゅっ。
清楚に装う妻を相手に痴態に耽る夜更けの寝室。
そのとき。
妻が思い出したように口を開く。
「アノネ、私ッタラ・・・」
え?
思わず顔を上げ、妻を仰いでいる私。
薄明かりのなかに浮かび上がる妻の横顔は光と影の濃淡に縁取られ、彫像のように犯しがたいものにみえた。
「吸血鬼サンニ母ノコト、紹介シテシマッタノヨ・・・」
深い微笑に無言で頷き返してしまっている私。
「今頃・・・彼、母ノトコロニイルワ」
妻の母親は都会から遊びに来て、今夜は私の実家に泊まっているはずだ。
ついさっきまで夕食をともにしていたばかり。
エレガントなワインカラーのブラウス姿がよみがえる。
妻は私の頭を撫でながら、
「オメカシシテタデショ?アレヲ見テ、彼ッタラ、舞イアガッテシマッタノ。母モ満更、捨テタモンジャナカッタトイウワケネ」
お母さんは濃い紫色のストッキングを履いていた。そんな私の想念を見越したように、きっといまごろ、ちりちりにされているわよ、と、妻は私に告げた。
いたぶるかのような声色が、心地よく胸を刺す。
「未亡人シテイルシ・・・ドナタニモゴ迷惑ノカカルオ話デハナイシ。私ノシタコト、悪クナイデスヨネ」
私はゆっくりと頷きながら、ふたたび妻のストッキングを唾液で濡らす作業に熱中し始めた。
母と娘。
更けゆく夜、ふたりの女の淑徳が同時に辱められてゆく・・・

恵の献身

2005年07月13日(Wed) 05:52:31

1 座敷牢

ちゅ―――・・・
さいげんなく続くかのような吸血の音を、十四歳の村迫恵はけだるそうに顔をしかめながら聞き入っている。
その響きは決して不快なものではない。
なぜならそれは、自分の体内をめぐる血液が兄の喉を潤おす音なのだから。
夏服の袖のうえから二の腕をしっかりつかまえている手のひらがいとおしそうになでさすり、うなじのつけ根を侵している牙も、慕い寄るようにもぐり込んでいるような感じがする。
吸血鬼とはいえ肉親同士の奏でる親近感が、吸血というむざんな行為に甘美な翳を落としている。
おなじ種類の血。
それは兄の喉にもっともなじむはずのものだった。

離れに作られた座敷牢。
重なり合ったふたつの影はやがてそろそろと起き上がる。
「満足した?」
「もう少し・・・」
「ウン、いいよ」
血の気を失った頬にほろ苦い笑みをたたえたまま、恵はたたみの上にうつ伏せになる。
入れ替えたばかりの青畳の湿った匂いがツンと鼻腔を刺す。
濃紺のプリーツスカートの下に身に着けた黒のストッキング。
兄の目当てがなまめかしい感じのする女ものの長靴下だと知っても、恵は嫌な顔ひとつせずに、兄の好みに合わせてゆく。
薄手のストッキングごしによだれを帯びたなまの唇が吸いつくのを感じながら、恵は頬を緩めていった。
「いかが?」
「あぁ・・・とてもいいね」
兄の声が、ひきつっている。
ストッキングごしに、ヒルのようにまといつく濡れた唇。
しなやかなナイロンの感触がじわりと少女の素肌にしみ込んだ。
困ったお兄様・・・
くすっと、少女は忍び笑いをする。
イタズラされているときはまるで齢が逆になったような気分になる。
色っぽい。オトナになったね。
そういってもらいたくて装う、清楚な衣裳。
やがてはむざんに咬み剥がれてしまうとわかっていても、存分に愉しませてあげたい一心で、いつも真新しいのを身につけて兄の前に現われる。


2 初夜

初めての夜。
若い女の生き血を求めて深夜、妹の勉強部屋に忍び込んだ兄。
渇いた血管がズキズキと疼いて、ひたすら潤いを求めている。
喉が引き攣ったようにヒクヒクしている、我ながら浅ましい様子をさとられまいと、エモノ=妹の後ろ姿へと音もなくじりじりと距離を縮めてゆく。
恵はまだ制服を着たまま、期末試験の勉強をしていた。
下校してからずっと、勉強に夢中になっているらしい。
セーラー服の肩先に、白のラインの襟章に手をかけられて振り向く恵に、飢えた牙が迫った。
恵は、兄思いだった。兄の様子からすべてを察すると、
「兄様、救ってあげる」
そういうと、兄のまえでセーラー服のリボンを解いて襟首をくつろげた。
もうガマンできない・・・
飢えに耐えかねたように、ひからびた唇が細くて白いうなじにヒルのように吸いつけられる。
すうっともぐり込んでくる牙に、恵はゾクゾクと震えた。
畳の上に崩れるセーラー服姿に、兄の裸形がおおいかぶさってゆく。
「お気の毒な兄様。冷え切った身体、恵の血で暖めて頂戴ね」
セーラー服の胸元に血潮をかすかに散らしたまま、恵はウットリとなって兄に抱かれていった。

「取り返しのつかないことを・・・!」
異様な吸血の音に気がついた母親が止めにはいったときには、恵は兄の腕の中でぐったりとなって気を喪いかけている。
母親は息子を散々に打ち据えた。そんな母を娘がなだめる。
「あたしのことなら、いいのよ母さん」
もう意識もうつろになりかかっているのに、けなげにも兄をかばおうとする娘の態度に、母親も言葉を失った。
それからは親の目を盗んで兄と逢う毎日。
下校途中に納屋に立ち寄り、人目を忍んでセーラー服の胸当てをはずす。

幸い、彼の家は裕福だった。
母親は座敷牢をしつらえて息子をかくまい、その部屋に女中たちを行かせるようにした。
もちろん、固く口止めをして。
恵も、二日に一度は顔を出す。
やはり、兄妹の間柄、恵の生き血がいちばん口に合うらしい。
「お嬢様まで血を差し上げているのだから・・・」
女中たちもやがて、「おつとめ」をいやがらなくなっていた。


3 人身御供

若い女中は蒼白になって、ぶるぶる震えている。
新入りの彼女は、「奥のお座敷」のおつとめは初めてなのだ。
しかし、肩をつかまえているお嬢様の手は意外に強く、引きずられんばかりにして「奥のお座敷」に連れ込まれていた。
お嬢様のほうが二、三歳年下なのだが、はむかうことなど思いもよらない。
控えている古顔の女中たちの白い視線を受けながら、ずるずるとお座敷に引きずり込まれてしまった。
「奥のお座敷」の主は思いのほか線の細そうな、若い男。
「兄様、きょうはわたくし、具合がよくないの。代わりを連れてきたから、堪忍ね」
恵はそういうと、女中を兄のほうへと押しやった。
扉を閉めて外から閂を締めた向こう側から、あらがう物音と呻き声がかすかに洩れる。
やがて。
きゅうっ・・・
と、いつも聞き慣れた吸血の音があがって、若い女のすすり泣きに重なった。
兄が新入りの女中をまんまとねじ伏せて欲望を遂げているらしいのを察して、お嬢様はニッと笑う。
古顔の女中が二人、傍らに控えていた。
首筋には申し合わせたように、痕が二つ・・・
恵は二人をかえりみると、命令し慣れた声色で、
「あとはよろしくね」
そういって、もとのとおりの軽やかな足取りで離れをあとにする。

病臥している母を見おろしながら、
「母様、がんばり過ぎたのね」
恵が呟く。
兄に最も近しい血を持った女。母もまた折々「奥のお座敷」へと忍んでいき、我と我が身を毒牙にかけている。
うっすらと目ざめ、虚ろな目を向ける母に
「新入りのおゆきを兄様のところにやってきたの」
娘はそう、報告した。
「そう・・・あの子は身寄りがなかったんだよねえ」
「だから、いいんでしょ?」
冷酷なことを口にしながら、少女は無邪気に笑う。
病気の兄に美味しいお菓子でも差し入れてあげたような態度だった。
「そうそう。あなたには大事なお話があるのよ」
白い目で天井を見上げる母の乾きかけた皮膚が、一瞬艶を帯びたように映った。


4 縁談

「兄様、私に縁談が起きているの」
母の話を聞いた恵は、すぐに兄の部屋に取って返した。
板張りの壁には、さっき散らされた血潮がまだぬらぬらと、妖しい光をたたえている。
そんな有様には目もくれず、恵は言い募る。
「そうだろうね・・・」
女学校を出るころには、祝言を挙げるお約束ができている娘がいくたりもあった。
兄もそれはよく承知している。
「来るものが、来たんだね」
「あたしがいなくなったら、兄様がお困りになる・・・お嫁になんか、行きたくない」
「そうは言ってもなぁ・・・」
このところ具合が悪く臥せっている彼。古びた天井の木目が滲むように、さざ波のような波紋を浮かべている。
相手は大きな娼家の若旦那だった。
娼妓を多数抱えて、いまでは村でも有数の素封家である。
妹が恵の同級生で、家に遊びに来たときに見初めたのだという。
「まぁ、芸妓さんのおうち?」
士族の出である母は目を丸くするが、いまはもうそういう時代ではない。
まして先方は恵にたいそう執心で、家族にも経済的に不便はかけない、というのだ。
跡取りを喪った斜陽の家としては、むしろありがたい縁談というべきだった。
「生娘じゃ、なくなっちゃうんだよ?」
兄の腕の中で恵がつぶやく。しんけんなまなざしを受け止めかねて、兄の眼は少女の首筋を取り巻く制服の襟章を見つめていた。
純白のラインがあざやかに、濃紺の襟章のうえをまっすぐに走っている。
兄の喉が引き攣った。
しかし、恵の蒼い素肌に戸惑いを覚え、牙を立てることを躊躇している。
(恵の血を吸いたがっているのに、我慢していらっしゃる・・・)
募り始めた想いがせきあげてくるのを、恵はどうすることもできなくなっていた。
「しちゃいけないこと、しちゃおうか」
白い目で上目遣いに兄のことを見上げると、背中に回った腕にグッと力がこもるのをかんじた。
猫がじゃれ合うようにして、ふたりは布団の上に身を投げ出していた。
強く抱きしめた腕の中で、恵は華奢な身体を思いきり、しならせる。



5 嫁入り

兄妹の不義を耳にしても、若旦那のたっての願いはかわらなかった。
毎日肌を吸わせていて、そういうことにならないわけがないだろうと思っていた、祝言の前の日までそうしていても構わない、なんなら月に幾度かは里帰りもさせてやってもいい。
そこまでいわれるともう、断る理由もなくなっていた。
「そこは娼家の旦那だから、物分りがいいのかねぇ」
母までが自堕落なことを口にするようになっていた。
由緒あるこの旧家から家名もろとも、一人娘を取られることにはかわりないのだが・・・

「ねぇ、あんた聞いた?こんどくる若奥様の実家って・・・」
古手の芸妓が仲間に声をかける。
「知ってる知ってる・・・鬼を飼ってるんだって?」
「鬼?まさかぁ」
そういう若い芸妓に
「体じゅうの生き血を、吸い取られてしまうんだそうだよ」
「えええっ!?それじゃあまるで化け猫・・・」
「夜逃げしたらつかまえられて、連れてかれるんだって」
「夜な夜なお女中がお相手しているんだと」
「あちらのお女中にはなりたくないよねえ」
「えぇぇ・・・!? 怖!」
「し――――――っ・・・」
若い芸妓は身震いして、おおげさに襟元をかたくした。
身代の大きくなった霧雨屋は、抱える娼妓の数もいちだんと増えている。
どこの娼家でもつきものの夜逃げは、霧雨楼にかぎってはぱったりと途絶えていた。



6 若旦那の妹

若旦那の妹のまどかが恵と連れだってやって来た。
まだ洋装の珍しいころだったから、女学校の制服姿は広い邸のなかでも目を引いた。
女中たちがひそひそと噂話をしていた。
「お嬢様のお友達だねえ」
「あれあれ・・・お座敷に案内するつもりだよ」
「いいのかねぇ・・・他所のお宅のお嬢さんを・・・」

「あの、このようなものでよろしかったのでしょうか?」
新顔の少女は戸惑いながらも、ちょっと控えめにスカートをたくし上げる。
濃紺のプリーツスカートの重たいすそから、初々しいふくらはぎがあらわになるのを羞じらいながら、少女はひざ小僧が見えるまでスカートを引き上げる。
青白いふくらはぎが、薄墨色のストッキングになまめかしく染め上げられている。
妹がいつも履いているのよりも、ちょっと色が濃いなと思った。
実は白い素肌をすこしでも目だたせまいと、いつもよりもやや濃い目のストッキングを履いてきたのだが・・・
そうした彼女の努力?を裏切って、黒の薄衣に透きとおる白い素肌はいっそう大人びて清楚な風情を漂わせている。
ごくり、と兄が唾液を呑み込む音に恵が眉をひそめたのは、親しいクラスメイトのみを気遣ったからではなくて、彼女に兄のいやらしい正体を気取られたのではないかという心配からだった。
血を吸われさえしてしまえば、もう気にすることはないんだけど。
物騒な想いを描きながら、
「あたしの大切なお友達。兄様のことをお話したら、同情してくれたの。だから、手加減してあげてね」
恵はクラスメイトが兄のエジキになってゆくのを、ワクワクとしながら見つめていた。
じっとり吸いついた唇の下で、黒のストッキングがいびつによじれてゆく。
少女は息を詰め、それでも辱めを受けてゆく自分の下肢から目を離そうとしなかった。

ほかのお話と飛び飛びになりながら、昨年の7月13日から22日にかけて連載されたものです。
未完に終わったのはなぜでしょうか。飽きただけかも。(^^ゞ

紳士用ナイロンハイソ

2005年07月13日(Wed) 05:08:45

吸血鬼を家庭に招くとき。
気の利いた夫たちは、ストッキングやハイソックスを好む客人のために自らも長い靴下を身に着ける。
サッカーの選手だった幼馴染みの父親は試合のときに穿くライン入りの真っ白なストッキングをよく履いていたし、なかには奥さんのストッキングを借りて脚に通すものもいる。
「女房のパンスト、履いてやってもよかったんだけれど」その家のダンナがいう。
「オレの脚じゃ、入りきらないよなあ」
「アラ、そんなことないかもよ。けっこう伸びるんだから。ためしてみる?」
そんなやり取りが深夜の客間で交わされる、異形の夜。
吸血鬼のために夕べ脚に通したのは、紳士用のナイロンハイソックス。
男物とは思えないくらい、つややかな光沢をもっている。
「なかなか色っぽいね」
すべすべしたナイロンの表面をべろでなぞりながら、吸血鬼氏はご機嫌な様子で私をからかった。
そして、そういいながら思いっきり、ふくらはぎに牙を沈めてきた。
妻の生き血に比べれば、私の血などオードブルにもならないだろう。
しかしよほど飢えていたのだろうか。気がついたら頭がぼうっとなるほどに血を抜き取られてしまっていた。

フィアンセは女学生

2005年07月12日(Tue) 17:08:10

1 ストッキングと女学生

大昔の少女マンガみたいなタイトルですね。^^
昔の女学生はいまよりもオトナに見えました。
私が最もオトナを意識したアイテムは、彼女達が通学のときに履いている黒のストッキングです。
いろいろな人にきいてみたところストッキングの濃い薄いには時期や地域差があるようですが、
私の目にしたスクールストッキングは薄手の、肌の透けてみえるものでした。
制服のプリーツスカートの下で、それは実に鮮やかでなまめかしく映りました。
小学校でおなじ教室にいた彼女達が、まるで別人のように見えたのです。
いつの間にか大人びて、知的で、上品に・・・
それがある年頃から妙にいやらしく、淫靡なものに思えるようになったのは、
あるいは彼女達がちょうど処女を喪失した頃だったのかも知れません。


2 掟

吸血鬼の箴言
子供のいる家庭を狙うべし。
お嬢さんなら処女の生き血が期待できる。
息子の場合でも、仲良くなれば恋人や婚約者を連れてくる。

小さい頃からケンイチは吸血鬼と仲良しだった。
吸血鬼は痩身白皙、初老の男性。おじだといわれたその男に、ケンイチは昔からなついている。
知らず知らず血を吸わせるようになったのは、中学に入る頃。
高校に入ってから、おなじ村の娘と婚約した。
古くからのしきたりに従って、親が決めた相手だった。
中学にあがったばかりの、まだおさげ髪の似合う少女だった。


3 訪問

ケンイチは許婚の少女を吸血鬼の邸に伴う。
軽快な半ズボン姿が、しなやかな身体つきを凛々しく引きたてている。
ひざ下までぴっちりと引き伸ばした白のハイソックス。
つれの少女を促すようにして、開かれたドアの向こう側へと踏み入れる。
少女は夏物のセーラー服。濃紺のプリーツスカートの下には、少年に言われるままに身に着けて来た黒のストッキング。
発育のよいぴちぴちとしたふくらはぎを柔らかく包む薄く透き通るナイロンが、少女の足許をなまめかしく染めている。
大人びた装いは、少女にとっても特別なもの。
夏には履かないストッキングを箪笥の奥から取り出して、履きなれない手つきももどかしく。
こわれものを扱うような手つきでつま先をたぐり寄せ。ねじれたりしないか気をつけながら。
そうして脚に通してきたに違いなかった。



4 紹介

ケンイチは婚約者を紹介する。
にこやかに、ちょっぴり得意そうな顔つきで。
三つ編みのおさげにした黒髪が、清楚なセーラー服が、ストッキングに透けているツヤツヤとしたふくらはぎが、舐めるような視線にさらされている。
もう、それだけで充分、ゾクゾクしてくる。
おじさん、彼女のこと気に入ってくれるかな・・・

吸血鬼はおもむろに、口を開いた。
――オ母サンモ、サキホドゴ挨拶ニ見エラレタヨ。モウ、何ヲサレルノカ、オワカリダネ?
そんな囁きを口にする歯のすき間には、少女の母親の生き血がまだうっすらと、あやされている。
大きな瞳を見開いて、黙って頷く少女。
アナタハモウ、アチラノオ嫁サンニシテイタダクノダカラ、オ約束ハ早目ニスマシテイラッシャイネ。
そう、親からは言い含められていた。
「は、はいっ・・・!あたし、大丈夫ですから・・・」
気負って張りつめた声色も初々しく、少女は大人びた物腰で黒ストッキングの脚をさりげなくさし伸ばす。

もったいないなぁ・・・ケンイチはちらりとそう感じた。
けれどもそれは、いっときのこと。
やがて、進行していく吸血の儀式に、いつか夢中になって見入ってしまっている。


5 接触

紙のように薄いナイロンに縁取られたふくらはぎの輪郭を、飢えた唇がじわじわと侵しはじめる。
少女はさすがに息を呑み、婚約者のほうを振り返る。
笑みを返した少年の足許は、すでに真っ白なハイソックスをバラ色に濡らしていた。
「お手本どおりに、やるんだよ」
耳元に吹き込まれる囁きにくすぐったそうに白い歯を見せながら、少女は足許につねられるような痛みを覚える。

大人びた制服の一部を穢される瞬間。
規律ずくめの日常が根こそぎ崩れてしまうような不思議な解放感が、彼女の胸に灼きついた。
むたいに圧しつけられた唇の下で、なよやかなナイロンの被膜に鋭い裂け目が走り、重たいプリーツスカートの奥にまで忍び込んでいく。

抑えがたい恐怖にひきつる足首を握り締め、清楚な衣裳に身を包んだ少女から生き血を吸い取ってゆく吸血鬼。
ついさっき少女の母親の血潮が通り過ぎたばかりの喉越しに、清冽な処女の生き血が流れ込む。



6 うたげ

きゅうっ・・・きゅうっ・・・
少年の耳には聞きなれた、人をくったような吸血の音。
それがいま、婚約者の足許から洩れつづけている。
自分だけのものになるはずの女性。
それがいま、永年親しんできた吸血鬼の抱擁のなかにある。
支配されるように抱きすくめられるセーラー服姿。
少女の持っている服の中ではいちばんあらたまった、大人びた服装。
せいいっぱいのおめかしで、我が身をめぐる血潮で吸血鬼をもてなす、
未来の花嫁の甲斐甲斐しい姿・・・

失血にふらつく意識の中で広がるのは、えもいわれない帰属感。
これでやっと、この子もおじさんののものになる・・・
ゆがんだ理性はふたり並んで等しく味わわれることにゾクゾクするような悦びを伝えてくる。
若い鼓動に淫靡な響きが重なり合う瞬間。
――よかったぁ。美味しそうに吸ってくれてる。
少年は陶然として、稚ない婚約者の受難を見守り続ける。
彼の気にしていることはただひとつだけ。
少女の華奢な身体に宿る血液は、はたして充分な量を提供できるのか。
――おじさんの喉の渇き、おさまるかなぁ・・・
きちんと着こなしたセーラー服の白いラインが入った襟章が、すうっと傾いていった。

「あら、ご免なさい・・・」
姿勢を崩したことを恥じるように、自分の血を吸った相手に対して丁寧にわびる少女。
もう力の抜けてしまった少女は尻もちをついたまま、乱れかけた三つ編みをかきのける。
――他所ノ人ニオ目ニカカルトキニハ、キチントシテイナイト失礼デスヨ。
母の訓えどおりに振舞おうとして懸命に身繕う少女に、吸血鬼は執拗に迫ってくる。
少女の胸には母の訓えがもうひとつ、浮んでいた。
――今日オ目ニカカルノハ特別ナ方ダカラ、何デモオ気ニ召スヨウニシナイトイケマセンヨ。
ひざから下はちりちりに破けたストッキング。
気に入ってもらえた証拠だわ。
少女は蒼ざめた口許に、得意そうにニッと笑みを浮かべる。
おニューのストッキングが大好物だったなんて。
たくさん、吸い取られちゃった。もう、頭がふらふらするくらい。
でもまだ大丈夫。
もうちょっとだけガマンして、ご馳走してあげちゃおう。
少女は吸血鬼の愉しみのため、けなげにももう片方の脚まで差し伸べていった。

仕上げは、首筋からの吸血。
仰向けに押し倒された少女に、吸血鬼は執拗にのしかかってきた。
「制服、汚さないでくださいね」
そういうと、少女は観念したように目を瞑る。
うなじにしっかりと這わされる唇に、ちょっとだけ眉をひそめながら、
夏服の白い袖のうえから、二の腕を痛いほどにつかまれた。
ちくっ・・・
かすかな痛みとともに注射針のように食い入ってくる二本の牙。
ほとび出る血潮が生温かく、少女の皮膚を浸した。
ごくり。
自分のうえにいる吸血鬼が喉を鳴らした。
あ・・・
とっさに開いた口許も、少年があやすように触れてやると、和むように閉ざされる。
そのまんま。くぐもったような吸血の音に少女は我が身をゆだねる。

翌日。
真新しい制服に身を包んで、少女はいつものように登校していった。
そして、すこしだけ赤黒いシミのついた少女の襟章だけが、母親の手でクリーニングに出されていた。

密会の痕

2005年07月11日(Mon) 07:12:36

婚約中の由貴子さんはよく私のところに遊びに来る。
「由貴子さん、お見えになったよ」
母にそういわれて、玄関まで迎えに出る私。
時計を見ると、朝の五時。
白っぽいスーツを着た由貴子さんは、門の向こうでにこやかに笑い、礼儀正しくあいさつを返してくる。
しっかりしていて育ちのよい、都会のお嬢さん。
そんな両親の評価がぴったりの彼女。


カラン、と音を立てて錠をあける。
由貴子さんは私の脇をすり抜けるようにして白のパンプスを履いた脚を玄関に踏み入れた。
ちょっと濃い目の香水が鼻先をよぎる。
洗練された都会の香りに、大人の女性を感じる一瞬。
「朝早くに、ごめんなさい」
彼女は白い歯を見せて、私につぶやく。
「いいんですよ・・・」
つぎにでかかった言葉を思わず呑み込む私。
それを言わせずに、彼女は囁くような小声で、
「また、咬まれちゃった・・・」
イタズラをみつかった子供みたいにはにかみながら、私にそう告げた。
彼女の朝帰りは、夜勤のときばかりではない。
濃い目の香水を漂わせるときは、目だたぬほどに衣服に散らされた血の芳香をまぎらわせるとき。


「安心してくださいね。それ以上ヘンな関係にはなっていないですから・・・」
言い訳がましく口を濁す彼女。
よくわかっていますよ・・・
そう。
いまはまだ、彼女の宿す処女の生き血を愉しむ段階。
しかし20代初めの初々しさは、どこか危険な匂いをはらんでいる。
「貴方には、なにがあったのかすべてお話しするつもりでいますから」
純潔を信じてほしい・・・
そんな想いがこめられているのか。
上ずった声色と、いちずに見つめる上目遣い。
私が頷くと、謝罪するようなまなざしが目許をゆるめ、ノーブルな薄い唇がおもむろに開かれる。
「アノネ、夕ベハオ邸ニオ呼バレシテネ・・・」
なぜかきらきらと目を輝かせて、とり憑かれたように語りはじめる彼女。
鮮やかな口紅を刷いた唇のすき間からのぞく並びのよい白い歯が、なぜか酷薄な輝きを見せたように思えた。
アナタニハ、聞ク義務ガアルノヨ・・・
どこかで、そういわれているような。

いまは、本気で恨んでいるわけではない彼女。
それでも私の表情に走る嫉妬の色を愉快そうに窺いながら、わざとたきつけるようなリアルさで話を進める。
優しい復讐。
お行儀の良い口調が、却っていやらしさをきわだたせる。
コンナフウニ、コウ、四ツ這イニサセラレテネ・・・
思ハズ、うぅーんッ!、ッテ、ウナッテシマイマシタノヨ
ストッキングノ脚モネチネチト吸ワレテ。気持チ悪カッタワ・・・アノ方、トテモシツコインデスノ
非難めいた口ぶり。愉しそうな声色。どちらが彼女の本音なのだろう?
ソレハソレハ、シツコク、しつぅこく、咬マレテシマイマシタノ・・・ほら・・・ねっ?
むぞうさに引き上げられた真っ白なタイトスカートからのぞく太ももに、綺麗にふたつ並んだ傷口。
毒々しい臭気を放つ唾液と、吸い残した血潮とを、まだてらてらと光らせている。
欲情を滾らせて彼女の肌を吸った痕跡。どんなふうに迫って、咬みついたのか、それをこと細かに訴える由貴子さん。
そんなふうに語らないで。
見るかげもなく破け堕とされたストッキングが、貴女がどれほどいやらしくあしらわれたのかをいやというほど見せつけてくれているのだから。

2005年07月09日(Sat) 23:34:14

ヘンな夢をみた。
吉野さんに宮間さんという若い女子社員二人が転勤することになった。
ふたりとも知的な感じの美人である。
社内で送別会を開いている最中に、私宛に男の声で電話がかかってくる。
「お二人を迎えに行くので、あなたに連れてきてもらいたい」
冷ややかな命令口調が気になって、部署と氏名を訊いた。相手はそれには答えずに
「お二人を連れてきてくださいね」
もう一度くり返して、電話は一方的に切れた。
嫌な予感がした。
吉野さんのほうをそれとなく呼び出して、こんな電話がかかってきた、と告げると、
控えめで知性的な目鼻立ちをこわばらせ、怯えた表情になった。
その人なら知っている、というのだ。
それ以上詳しいことは語ろうともしないくせに、いかにももっともらしく、
「約束の時間になったら、宮間さんといっしょについていかなくちゃならないし、上司からも許可をもらっている」
いつも冷静なはずの彼女の態度が疑問だった。
本当に、新しい部署の人間なのか?
そう訊くと、意外にも、違う、とこたえがかえってくる。
私は混乱した。
彼女たちの上司はしっかりとした常識人である。
得体の知れないものについていくことに承諾を与えることはないはずだ。
よく訊いてみると、上司には親しい知人だという説明しかしていないという。
そして、
「血を吸われることだけは、秘密になっているので話せない」
・・・!
いつの間にか宮間さんも傍らにきていた。色は浅黒く目鼻立ちのくっきりとした、健康的な美人である。
肌色のストッキングを履いた吉野さんの脚と、黒の濃い目のストッキングを履いた宮間さんの脚。
いまは夏だというのに、すらりとした二対の脚がうそ寒く震えている。
「そんなことされて、平気なの?」
思わず口調を乱す私の様子にさらに怯えながら、それでも二人は、
「殺されるわけじゃないですから・・・」
口を濁しつつ、ついていく意思にかわりはないようだ。
そんなところに、行っちゃいけない・・・
そう叫ぼうとしたとき、外から半裸の男性が多数、送別会の席になだれ込むように入り込んできた。
みな、口の両端に短い牙を生やし、なかにはなりたての吸血鬼らしいのが、自分がなにをしようとしているのか腑に落ちない、という態度で、小首をかしげながら、それでも本能の赴くままにこちらへと歩み寄ってくる・・・

目が覚めたときにはホッとしました。かなり怖かったです。^^;