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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

ぎょっとするような

2006年04月29日(Sat) 21:31:29

ブログを発見しました。
題して、「60歳法」。
http://sixtyslaw60.blog59.fc2.com/
目を引いたのは
>日本国籍を有するものは、個人の尊厳を守る為に満60歳の誕生日に合法的安楽死を選択できるものとする。
という条文です。
どきっとしますね。こういうの。
まだ始まったばかりで、59歳になった主人公?が、亡くなった父母の土地をどうするか・・・という第一幕がアップされているだけですが。
どういうわけか、むしょうに気になったサイトなので、ご紹介だけしておきます。
アップが速そうなので、速めにチェックをしないと乗り遅れそうなので・・・
あ、残念ながら。えろくはないですよ。(笑)

時折こんなふうに、気になるサイトを見つけられるといいなあ。

応接室

2006年04月29日(Sat) 06:33:21

訪れた家のあるじは、いんぎんな男だった。
きれいに分けた髪。シャープな感じを漂わせる銀縁眼鏡。
一見して、さばけたエリートである彼は、どうしてあの男の餌食になったのだろうか?
彼は心から吸血鬼と、私とを歓迎して。
応接間に迎え入れてくれる。

いらっしゃいませ。
楚々とした物腰で現われた若い女性は、奥さんだろうか?
それにしてはしょうしょう、若すぎるような気もする。
なによりも。
あるじとよく似た面差しが、血のつながりを感じさせた。
ちらちらとさりげなく、失礼にあたらないていどに注がれる視線を感じながら。
その柔らかさから、視線の主に悪意も警戒心もないことを察していた。
カチャリ。
よどみのなかったやり取りが一瞬断ち切られて、
テーブルに置かれる陶器がたてる、かすかな音だけが四人の男女のまん中にある。

あら。
ふたたびドアが開かれると、べつの女の声がした。
ちょっと驚いたような声色に、かすかな不平を滲ませている。
「やあ、すまないね」
気まずくなりかけた空気を、よどみのない夫の声が救っていた。
「自慢の家内、みゆきです。27歳。まだ子供は生んでいません。いい身体してますよ。^^」
「まぁ」
ちょっと諧謔味さえ帯びた夫の紹介に、妻の機嫌はすっかり直っている。
「こちらは妹の早百合。こら。抜け駆けしちゃダメだぞ。嫁入り前の処女なんだからな」
処女。
そんなことばを耳にすると。
びくりと反応するのが隣にいて痛いほど伝わってくる。
お前は手を出すなよ・・・
そんな気配が、ひしひしと。

「では、わたしはちょっと用足しでもしてきますか」
夫であり兄であるその男はたんたんとそういって。
早くも席を立ちかけた。
いや。しばらく・・・
吸血鬼は手で制した。
外はまだまだ肌寒い。そういうときの独り歩きは寂しいものですぞ。
そんな想いをさせたくはないものだ。
そういいおいて。
まず御婦人方にお目にかけねばな。
つぎの瞬間、スッと足許に忍び寄っていた。
たくし上げられたスラックスからあらわになったのは。
女ものの、黒のストッキング。
誰のもの・・・?
女たちの目が、いっせいにそそがれる。
それと察したように。
「きみ達のは小さすぎてね」
苦笑いを浮かべながら、咬まれていった。
足許からあがる異様な音に、女たちもいつか身を寄り添わせて。
ちょっと蒼ざめて、聞き入っている。

男におとずれたのは、ほどよい陶酔。
彼の目がとろんと鋭さを失うと。
女たちの運命は、定まった。
処女はわしがいただく。
吸血鬼はこちらを睨むようにそういうと。
貴方も、見届けるのがお役目ですぞ。
おだやかに、そう告げる。
これから妻と妹を犯されようとしている男は晴れやかに、迷惑そうな苦笑いを浮かべていた。

使用済みの妻

2006年04月26日(Wed) 07:24:28

楚々と装った妻は。
ふすまを隔てるまえと何ら変わりのない顔をして。
いっしょに部屋から出てきた男に丁寧にお辞儀をし、
それから私に向かっておなじくらい深々と頭を垂れた。
相手の男には、「ふつつかでした」
私に対しては、「恥ずかしゅうございました」
ベージュのスーツは、訪れたときのままのもの。
肌色のストッキングがひきつれひとつ見せていないのは、
ふすまの向こうで履き替えたから。
部屋に引き入れられたときに脚に通していたのは、黒のストッキングだった。
妻の足許を染めていたものは、見るかげもなく引き裂かれて。
いまは彼の胸ポケットをふくらませている。

表情を消していた妻を抱きとめて。
「よく頑張ったね。お疲れさま」
耳もとに吹き込んだ囁きに、身体の力が消えて、
硬くよそよそしい態度が、にわかに潤いを滲ませてくる。
「ご厚意、心から感謝する」
吸血鬼は乾いた声でそういい置いて。
振り返るともう、姿を消していた。
あわせようとした唇を、指一本で隔てた妻は。
「もう、私使用済みなのよ」
いつになく、卑下するようにそういった。
いいじゃないか。
ジャケットの裏側で、白のブラウスが赤黒く、べっとりと濡れを帯びている。
ブラウスに隠された下着は、さらに乱されている。
股間に忍ばせた掌は、真新しいストッキングの向こう側にわだかまる、なま温かい湿りを感じ取っていたけれど。
熱くほてった身体はもうとりつくろいようもなく。
じゅうたんのうえ、まろばせたスーツ姿にのしかかって、
ただの男になって。
狂ったように乱れた心をあらわにしてゆく。
久しぶりに訪れた、激しい欲情。
ことのなりゆきを見おろしているのは、寒々と冷え切った漆喰の天井ばかりだった。

おねだり

2006年04月26日(Wed) 07:08:52

あの・・・長い靴下、履いてきて欲しいんだ。いま履いているようなやつ。
当日の服装にご要望は?
そんな質問におずおずと口ごもりながら。
ああ、これね?
お姉さんはくすっ、と笑い、足許を見た。
スカートの下のふくらはぎは、透きとおるほどの薄さのストッキングにおおわれている。
いいわよ。お出かけのときにはいつも履いているから。お安い御用だわ。
履き替えのご用意、いるんでしょう?
さいごのひと言に、おもわずぞくぞくしてしまったけれど。
オトナなお姉さんはそんなボクの態度を見透かすように、もういちどくすっ、と笑っていた。

約束どおり、つぎの日曜日にやってきたお姉さんは、大人っぽくおめかししていた。
玄関を上がって廊下をすべるつま先が、グレーのストッキングに包まれているのを見て、
ボクはぞくり、と胸ふるわせる。
そんなボクの様子を愉しそうに窺って。
ふたりきりになりましょ。
いっしょに来た伯父さんや伯母さんに、そういい置いて。
散らかっている勉強部屋、もっと片付けておけばよかった。
そんなふうに思っていると。
あんな汚い部屋じゃダメよ。
傍らからするのは、母の声。
床の間の部屋、特別にあけてあるから。しっかりね。

替えたばかりのたたみのうえに延べられた、
すんなりとしたふくらはぎ。
おずおずと唇をくっつけようとして。
思いなおしてもういちど。こんどは大胆に・・・・・・
ぬるっ。
ヒルみたいに、這わせてみた。
ぴくり、と身じろぎするのを。しくっ、と筋肉が締まるのを。
ストッキングを通して、唇でありありと感じ取っている。
紙のように薄いストッキングは、思ったよりもずっとなよなよと頼りなくて。
お姉さんの足許を、ずるずるとだらしなく、よじれてゆく。
面白い・・・
子供っぽい悪戯な気分で、いっぱいになったボクは、きゅきゅっ、くちゅうっ、と、
わざといやらしい音をたてて、
姉さんが恥ずかしがる様子に興じている。

来週も来るからね。
大人びた物腰は、かわらない。
ご両親も、ホッとしているようだった。
あなた、そのままで帰るの?
ピンク色のスーツのすそまで忍び込んだストッキングの伝線を見咎めた母親に。
ウン、約束だから。
無邪気なえくぼは口やかましい母親も黙らせてしまった。
落ち着いた態度がちょっと小憎らしくて。
澄ました顔にわざとぶつけた。
また、ねぶらせてもらうね。こんどはもっとイヤラシク。
ばか。
軽くぶたれてしまったけれど。
口許のえくぼは、消えていない。


あとがき
親戚のお姉さんが穿いてくるストッキングは、オトナの証しのようで。
いままで遊び戯れていた自分とのあいだに、ひとつ垣根ができてしまったのを感じるものです。

まだ少年な彼。
いまはまだ、大人っぽいストッキングに悪戯するだけで満足していますが。
いよいよイケナイ世界に踏み込むのは、もうちょっと先のようですね。

見に来ちゃ、ダメよ。

2006年04月26日(Wed) 06:52:23

法事を終えた帰りがけ。
母さんはふと足を止めてボクを見て。
家まで、ひとりで帰れるわね?
私はおじさまたちと、御用があるの。
あなたはまっすぐ、帰りなさい。
見に来ちゃ、ダメよ。
そういって。
ボクだけを分け隔てるようにして。
叔父や従兄弟たちと連れ立って、反対方向へと歩いていった。

息を弾ませながら、
根気よく、辛抱づよく、尾けていった小屋のまえ。
入っていったなん人もの大人たちの、押し殺したような呻き声が洩れてくる。
一時間ほどもして。
ふたたび姿をみせた母さんは、何ごともなかったような、喪服姿。
ちょっと恥らうように、うつむいて。
それでも、けんめいにわが身を支えるようにして。
いつもの落ち着いた物腰で、礼儀正しく深々とお辞儀をしていた。
後ろで束ねた髪の毛がちょっとほつれていたのと、
ストッキングの濃さが違っていたのと、
あのまま真っすぐ家に戻っていたら、そんな変化には気がつかなかっただろう。

学校を途中で抜け出したり。
夜中に黙って家をあけたり。
ボクはそれから、悪い子になった。
庭先にまわったガラス戸越しに、
くる日もくる日もくり返される、
母さんと男たちとのなれ合いに。
すっかり夢中になって、見入ってしまったから。
父さんがいなくなってから。
母さんは、悪い女になった。
だから、ボクも悪い子しちゃおう。
じめじめした思いよりも、
子供っぽい悪戯心のほうがまさっていた。

はだけたブラウス。破けてずり落ちたストッキング。
女とはこういうふうにあしらうものなのか。
股間に熱いものを感じながら。
くねり合いからみ合う様子に見入っていると。
覗いているところを後ろから肩に手を置かれた。
同い年の従兄弟の、キヨシだった。
いま母さんを犯している男は、その子の父さんだった。

中学にあがったら。
トシ坊に声、かけてやれ。
父さんがトシ坊の母さんに逢っているうちに。
母さんのとこに連れて行ってやるんだぞ。
そんなふうに言われた・・・。
せっぱ詰まったような顔をして。
うちの母さんじゃ、好きくないかな?
おずおずと切り出したキヨシには答えずに。
カギは持ってるの?
そんなふうに、訊いていた。

受け取ったカギは、汗ばんでいた。
鍵穴に突っ込んで。かちゃかちゃと回して。
ひんやりとした薄闇が、なかにたちこめていた。
母さんの部屋はこっちだよ・・・
手引きされるままに、あがりこんで。
黒一色の喪服を着たキヨシの母さんは、たたみの上に仰向けになって。
軽く目を瞑っている。
息を詰めて見つめるキヨシの視線が、くすぐったい。
ボクは照れたようにキヨシの視線を受け流して。
キヨシの母さんの唇に、唇を重ねてゆく・・・


あとがき
未亡人ができると、親族の男たちが代わる代わる、孤閨を慰めるしきたりがあるようです。
あとに息子が残されているときは、お母さんを頂戴した罪滅ぼしに。
自分の妻に「筆おろし」の相手を務めさせる・・・
そんな習慣を抱き合わせにして。

のどかな凌辱

2006年04月26日(Wed) 06:29:38

あら、あら。ハデにやられちゃったわね。
凄まじい身なりと裏腹に、
女房の声色はどこまでものどやかで。
いつもとまったくかわりがなかった。
ここは山奥の、小さな小屋。
夫婦もろとも連れてこられて。
われ先にあてがわれる飢えた唇に、
生き血をぎゅうぎゅうとむしり取られて。
そのうえで。
男たちの荒々しい猿臂に巻かれた女房は、
ブラウスやスカートをびりびりと引き裂かれていった。
夫である私のまえで・・・

あん。あん。あうぅん。
代わる代わる突き入れられているときも。
やたら愉しそうに振る舞う女房に。
男たちはダンナを揶揄することも忘れ、
ひたすら女房の白い肢体に群がっていった。
いまは満ち足りた声色が、小屋の外から聞えてくる。
出て行ってね。着替えたいから。
ひとしきり儀式が過ぎたころあいを見計らって女房がそういうと、
男たちは素直に従って、夫婦ふたりを残して出て行ったのだ。

もういいわよお。
子供たちのかくれんぼのときの「もーいいよ」みたいに。
女房の声はどこまでも、のどやかだった。
どやどやと上がりこんできた男たちといっしょに、猥雑な空気がもどってきた。
「仲直りはできたかね?」
頭だった髭面がそういうと。
あらぁ。もともと仲いいんですよ。
男たちは不思議そうに、顔を見合わせている。
いままでの惨劇はどこへやら。
都会風のワンピースに身を包んだ女房は、ふんわりとほほ笑んでいるのだ。

さぁ、つづきを愉しみましょ。
あなたは、縛られていないとかっこ、つかないわね。
お手数だけど、どなたか主人を縛ってくださる?
そう、そう。そうやって。
アラ。結構サマになるものなのね。
じゃあ、わたしも縛っていただこうかしら。
後ろ手に結わえて、抵抗できないようにして。
主人のまえで、すすんで抱かれるわけにはいかないわ。
かるーく、ぐるぐる巻きにしてくれればいいからね。
あんまりきつくしないでね。
痕がのこると、困るから。
あなた、女もののストッキング、お好きでしょう?
いいんですよ、照れなくて。
わざわざあなたのために穿いてあげたのよ。
破くまえに、いっぱい悪戯するといいわ。
貴方は胸、ね?えっちだわ。
おっぱい、はみ出すように縛るなんて。
あなたはどちら?
いきなり3人は、無理ね?
じゃあ、わたしか主人の血を吸って、精力をつけるといいわ。
さぁ、一番バッターは、どなたかな?

男たちはまったく気を呑まれてしまっていて。
うやうやしく女房の手の甲にキスをすると。
やっぱり荒々しく迫ってしまったけれど。
こと果てたあとは、私にまでも丁寧に会釈をして。
群がって取り囲むようにだったけれども。
ふたりを、村まで送り届けてくれたのだった。
泥だらけのワンピースを風になびかせて。
あなたとご一緒だと、とっても愉しいわ。
女房の声色は、どこまでものどやかだった。

山歩き

2006年04月26日(Wed) 06:06:45

都会の女の子たちが四人、山歩きにでかけました。
ひなびた温泉宿で一泊する予定になっていました。
そのうち一人は足が遅く、だんだん仲間から遅れてゆきます。
連れの女の子たちはあまり思いやりのあるほうではなかったので、
宿でまってるわね。
そういって、どんどん先に行ってしまいました。
あたりに広がっているのは草むらと雑木林ばかり。
人っ子一人いないところに置き去りになってしまいます。

きゃっ!!!
いきなり後ろからはがいじめにされて、女の子は必死で抵抗しました。
けれども相手は若くて逞しい男でした。
とうとうどうすることもできなくなって、
地べたに押し倒されてしまいます。
犯される・・・!殺される・・・!
そんなふうに思ったら、男は意外なことをいいました。
お嬢さん、悪いけど血をいただくよ。
男はそういうと、女の子の首筋に咬みついてきたのです。
きゅうっ・・・
若い二人が身を沈ませた草むらのなかから、奇妙な音があがります。

女の子は泥だらけ、汗みずくになって。
胸のうえに突っ張った腕を折られると、必死でいやいやをして。
それでも許してもらえないで、
しくしく、しくしく涙ぐみながら、血を吸い取られてゆきました。
ごめんよ。
男はそういいながらも、血を吸うのをやめません。
ああ、やっとありつけた・・・
どん欲なしぐさから、そんな想いが伝わってきます。
ひとしきり血を口にして落ち着いたのでしょうか?
喉、渇いているからね。つらいだろうけど、辛抱してね。
初めていたわりの言葉を口にして。
時を惜しむようにして、傷口に口をあててくるのです。
女の子のほうも、最初のうちこそ、
イヤ!イヤ!厭・・・っ。
という感じだったのに。
いまはもう、すっかり落ち着きを取り戻して。
血を吸われながら、言葉のやり取りを交わしはじめていたのです。
ほかの子たちは、どうなったの?
いまごろ仲間で山分けしてるさ。
こともなげな答えにどきり、とします。
おれは遅れていったから、あぶれちゃったんだ。
ありつけなかったのはオレだけだったけど。いつも要領わるいからね。
仕方ないからあきらめて、薪を取りにきたのさ。
連れが遅れてくるなんて、誰も教えてくれなかったしね。
わたし、死んじゃうの?
さぁ、どうかな?できれば助けてあげたいけれど。喉渇いちゃってるから。
女の子のなかで、スイッチが切り替わります。
お願いがあるの。
どうしても、イヤなんです。
こんな泥だらけで、汗みずくなまま死ぬなんて。
女の子ひとり死なせるくらい、血がお入り用なんでしょう?
貴方の家が近いのなら、せめて身体を洗いたいの。
こざっぱりとして。女の子らしい服に着替えて。
それからもういちど、吸わせてあげる。
涙も涸れるようなお願いに、男は無言で頷きます。
そうして、あちこち作ったすり傷や打ち身を気遣いながら、
女の子を家のあるほうへと送り届けてやりました。
泊まりの予定にしていた温泉宿のある村でした。

ひと晩、男の家に泊められて。
男の母親は気の毒そうに、夕餉をふるまってくれました。
首筋にはやっぱり、咬まれた痕を滲ませていたけれど。
明るくくったくのない母親の態度は、女の子を和ませてくれました。
夕餉が終わると、湯上がりの黒髪を肩に垂らしたまま、
女の子はすすんで男の部屋に入ってゆきました。
都会風ないでたちに、男は目を輝かせて。
さっきよりもずうっといやらしく、女の子に触れていきます。
不自然にしわ寄せられたワンピースの衣擦れに閉口しながらも、
荒々しい愛撫に込められた真情に、しらずしらず太もものすき間をひろげていきました。
やっぱり処女だったんだな。
夜が明けるころ、男がそんなふうに呟くのを。
女の子はくすくす笑いをこらえながら、聞いていました。

がやがやとした朝でした。
古びた公民館には、村の男たちと、そして連れの女の子たちが集められています。
おなじ目に遭ったのでしょう。
女の子たちはみないちように、蒼い顔をしていました。
失血のせいばかりではないはず・・・ですね。
男と一夜をともにした女の子も、もとの動きやすい服に戻っています。
帰ろう。
頭だった子がそういうと、村の男たちに見送られ、言葉すくなに村をあとにしました。
これにこりずにまた来いよ。
揶揄を含んだ見送りでした。


思いやりのない連れのおかげで、見境なくの野合の場だけは免れて。
やはりあぶれてしまった彼は気持ちのある男だった。
単独で襲われると生命にかかわるくらい血を抜かれてしまうこともあるのだが。
女は、男が我慢したのに気づいていた。
ひと月たって、ふたたび村を訪れた女は、
都会の女の子の服を着てあらわれて。
装いもろともわが身を男の胸にゆだねていた。
他所からもらった嫁は村じゅうの男たちと仲良くする。
そんなおぞましいしきたりにさえ、ためらいもなく頷いて。
祝言を挙げたあとは、ひとり残った母親を呼び寄せて若返らせていた。
連れの子たちのうちの一人は二度と村に寄りつかなかったけれど。
二人は祝言に現われて。
友だちの結婚を夜通し祝っていった。
そのうちの一人はやはり、村の男の嫁になっていた。
あの山歩きで初めて相手をした男だった。
見知らぬ山道には、ご注意を。

義母との一夜

2006年04月25日(Tue) 08:46:29

好夫さん、よろしいかしら?
書斎のドアを開けて顔をのぞかせたのは、義母の志津子。
旅行好きの義母は、長逗留と称してここ数日、家に居座っている。
少女のように無邪気で、ものにこだわらない。
話し好きで、話の合い間には、いとも愉しげにころころと笑う。
淑やかに低い声で。
昔の女学生のように、軽く口許を手で抑えながら。
すべすべと光る襟足が。
ほっそりとした白い指が。
時折ひどくなまめかしく、脳裏に灼きつくのだが。
そんなことなどまるで気づかない、というように。

由貴子さん、お出かけなのね。もう真夜中なのに。
天井まで届く蔵書の山を感に耐えたように見あげながら。
ちょっと、お邪魔してもよろしいかしら?
小首をかしげるしぐさに、読みさした本を仕方なく傍らに閉じると。
  今頃アノ子、血ヲ吸ワレテイルノネ?
どきりとするようなことを口にする。
  心地ヨサソウニ。目ヲとろん、トサセチャッテ。
  チュウチュウ、チュウチュウ、生血ヲ吸イ取ラレテイルンダワ。
忌まわしげな色は、かけらもない。
謡うような口調は、むしろなりゆきを愉しんでいるかのようだった。
そんな子に育てたおぼえはないのですけれど。
親のわたくしの不行き届きですわよね?
じいっと、のぞき込むように見つめてくる瞳に。
いや、そんなことは・・・
不覚にも、狼狽を覚えている。

真夜中だというのに。おめかしして出かけていきましたから。
そんなふうに、伏し目がちに口にするくせに。
真夜中だというのに。
ゆったりとした純白のブラウス。漆黒のロングスカート。
ちらとのぞいた踝を包んでいるのは、
清楚に白い肌を滲ませる、黒のストッキング。
あなたも少し、血を嗜まれるのでしたね?
無言の肯定を切り返すように。
娘のつぐないをさせていただきますわ。
ノーブルな顔だちにサッと閃いたものが、ゾクゾクするほどどす黒いものを交えて迫ってきた。
ぎくり、と身体をこわばらせると。
やだわ。襲うのは貴方のほうなのよ。
いとも愉しげにほほ笑んで。
見てのとおり、やせっぽちですから。あまりたくさんはダメですよ。
真面目な口ぶりが却って、強い誘惑を漂わせる。

抑えつけたじゅうたんの上。
うずたかく積まれた書物だけが、周囲から見おろしてくる。
どうぞ、召し上がれ・・・
気兼ねなくおやりなさい、とでも言わんばかりに。
ピンと張った長いまつ毛が、大きな瞳をとざしていった。
うなじにつけた唇に、豊かに潤った皮膚が心地よい。
もうがまんできなくなって。
甘えるように両肩を抱いて。
ひと息に、食いついてしまっている。
どろりと喉にみちてきたものは、ひどくなまめかしく、妖しいほどに若々しい。
毒牙にかけた女を味わいつくすのは、吸血鬼としての礼節。
相手が義母であっても、たがえることはない。
ブラウスの下の身体から力が抜けるのを確かめると。
劇場の緞帳を引き上げるように。
はぐりあげてゆく、黒のロングスカート。
唾液をたっぷり含ませた唇を、ヒルのように貼りつけて。
楚々と装われた黒ストッキングを、くまなくあてがう唇で穢してゆく。

純白の襟元を赤黒く滲ませたまま。
下からじいっと見あげてくる瞳。
失血に迷いかけた声色を、励ますように。
  パパのことも、誘ったのよ。
ピクニックに誘うみいな口ぶりだった。
戸惑うこちらの反応を、愉しむように。
  でもね、やなんですって。奥さんが貴方に抱かれるのを見るなんて。
  貴方くらいに、大物になればいいのにね。
どこまで本音かわからないことをいいながら。
部屋に入るときさりげなく置いた黒い箱のようなものを、ごく間近に据え直す。
  ソノクセ・・・ネ。びでおニ撮ッテオイデ、デスッテ。
  構ワナイカシラ?アトデ貴方ニモ見セテアゲルカラ。
操を汚しにきたのよ、わたし。
綺麗に犯してちょうだいね。映りがいいほうが、パパも歓ぶから。
由貴子の身代わり、とでも。
ただの娼婦、とでも。
どちらでも、都合のよいほうに思し召せ。
そういうと。
いつものように、肩をすくめて。
少女みたいにくすっ、と笑った。
ひしと抱きすくめた腕のなかで。
白い面差しがぐっと若返っている。

本当は誰を

2006年04月25日(Tue) 07:54:09

もう、いいわよ。あなた
半開きになった扉の向こうから、妻の佐知子が顔を出す
いつもと変わらないきびきびとした身のこなしをうつして、
ぎゅっと縛った長い髪の毛がゆらり、と揺れた。
おそるおそる覗き込んだ、夫婦の寝室。
彼はもうあらかた、身づくろいを済ませて・・・とみえたのだが。
よくみるとまだ、下半身をむき出しにさらしたままだった。
佐知子にいたっては、ほとんど全裸。
わずかに足許に、破れてひざ下までずり落ちたねずみ色のストッキングをひらひらさせているばかり。
淑女の装いの切れ端をふしだらにたるませている情景は、
全裸よりも却ってイヤラシク映る。
ボックスティッシュから二、三枚ティッシュを引き抜いて。
太ももについたぬらぬらとした粘液を、慣れた手つきで拭い取った。
たくさん、吸い取られちゃった。逆さに振っても、鼻血もでないわよ。
くすっ、と笑んだ白い顔には、かけらほどの邪気もない。
そんな佐知子に、彼は音もなく忍び寄って。
後ろから抱きすくめ、うなじに唇をあててゆく。
あ・・・。
ちょっと痛そうに顔をゆがめながら、妻は軽く仰け反った。
結び合わせたようにキュッと閉じた瞼に、淫らな翳を過ぎらせながら。
ちゅうっ・・・
かすかに洩れる、吸血の音。
妻の真情をさえ吸い出すように、血潮を引き抜いてゆく。
まるで己の血をも吸い取られてゆくような錯覚に、くらくらと理性が揺らいできた。
むき出しの肩に、赤黒いしずくがひとすじ。
乳房のあいだの深い谷間を伝い落ちてゆく。
己の所行に、ふたたび昂ぶりを覚えたものか。
腕の中の裸体をぐるりと向きを変えて。
へし折るほどの強い力で抱いたまま。
展べられた褥のうえにもういちど、その身を沈めてゆく。
踏みしだくような荒々しさで。
それでもありのままの熱情をあらわにした愛撫には、
可愛がっている。
そんな形容のほうがぴったりとくる。
すべすべとした皮膚におおわれた牝の獣は、頬に笑みを含んだまま。
へらへらと笑いこけながら。
逃れようもない猿臂のなかで、ひたすら愉悦しつづけていた。

妻の身体から引き抜かれたものは、
うわぐすりのような濡れを光らせている。
怒張を含んだままの逸物を、ほっそりとした指が押しつつんで、
そそり立つ先端を、朱を刷いた薄い唇が軽く含み、
そしてためらいもなく、根元まで呑み込んでいた。
しごくように強く吸い、うわぐすりを拭い取るように引き抜くと。
妻は力尽きたようにぐったりと褥に身を沈めて、
かすかな寝息をたて始める。
彼はわたしのほうをちらと窺って、ため息交じりの苦笑を送ってきた。
げんきんなものだな。
そう言いたげに。

いつ用意したのだろうか。
ぬるま湯に浸したタオルが、一糸まとわぬ裸体にあてがわれる。
淫らなものの残滓を、片鱗さえもとどめぬように、
きゅっ、きゅ・・・と、拭ってゆく。
すみずみまで、いとおしむように。
いとおしみを、すりこむように。
磨きあげられた裸体が白い輝きを放つのを、眩しげに見つめると。
部屋の隅に脱ぎ捨てられていたネグリジェを、それは丁寧に纏わせて。
きれいだよ・・・
ひくい声で、囁きかけて。
眠りこけている額に、かすかな口づけをすると、素早く身を離してゆく。

造作をかけます。
家を訪れたときあれほど欝蒼と立ち込めていた翳が、わずかながら晴れている。
すこしは、お役に立ったようですね・・・
そういいながら、スラックスを軽く、たくし上げてゆく。
ストッキング地の紳士用の長靴下のうえから這わされた唇は、
まだ濃厚な熱を含んでいた。
妻のストッキングがそうされたように。
脚周りに加えられてゆく、放恣な凌辱。
男の身にも、おなじようにくり返される。
刺し込まれた牙はいとおしげに肌の奥深く食い入って。
ほとび出る深紅の液体を、悦びにむせぶ唇の奥へと抜き去ってゆく。

不思議なものですね。
あなたのなかで、妻と私が織り交ざっているなんて。
まじまじと見つめる目に、照れたような笑みが返ってきた。
御婦人に優しく接する貴方ゆえにか、
ちっとも、腹が立たないのですよ。
母も、妹も、妻までも犯されているというのに。
なによりだ。
彼はわたしの肩をつかまえると、ふたたび身を寄せてきて。
かりり・・・
うなじのつけ根に、鈍い痛みを滲ませてくる。
ほんとうは、奥さんよりも、誰よりも。
じつはあなたのことが好きなのかもしれないな・・・
あなたに近づきたいために。
あなたの身近な女たちをともにしたくなるのかも。
そういう彼は、来訪のたびごとに。
いつもわたしをさいごの獲物にして。
彼のために装った、女のようにつややかに肌を染める薄い靴下を。
いとも嬉しそうに咬み剥いでゆくのだった。


あとがき
ちょっとアブない関係の男どうし・・・ですな。^^
柏木、そのケはまるでないのですが。
妄想のなかではつい、大胆になってしまいます。^^;
たんなる血液供給源ではなく。まして性欲処理の具でもなく。
ぬくもりを求め、いとおしむために女たちを訪れる吸血鬼。
母を、妻を、妹を。
つぎつぎと毒牙にかけながら。愛し抜いてゆくのですが。
案外彼女たちの夫であり息子であるひとに惹かれての行為・・・なのかもしれませんね。

インモラル・バー 4

2006年04月24日(Mon) 07:56:36

こんな遅いお時間に、まだ飲んでいらっしゃるの?
いけないひとね。
奥さんに愛想、尽かされてしまいますよ。
ええ、いい気分だったわ。
血を吸われるとね、どういうわけか、スッとするんですの。
ほら、痕もほとんど残らないし。
(うなじのあたりを撫でるように、すっと指先をすべらせて)
ほぉら、私の血。綺麗でしょ?
まだぬらぬらと、若々しくって。
少し、自信が取り戻せるわ。
あのひとたち、とても強欲なんですの。
思うさま、漁り取るようにしたあげく、なかなかおねだりをやめてくれないんですの。
抵抗はないの?ですって?
男のひとのまえで乱れちゃうこと?
わかっていらっしゃらないのね。
胸がズキズキするんですよ。それはもう、痺れるくらい。
こんな感覚がまた戻ってくるなんて。信じられないわ。
でも若い頃だったらここまで愉しめなかったかな。羞恥心もつよいほうだったし。
いろんなものがね、心の奥のたがを弛めてゆくものなんでしょうね。歳をとると。
そのうちに、安全さえ、世間体さえつくろうことができるのなら、
ぜーんぶ、さらけ出しちゃえ、って。
・・・キケンかしら?
さぁ、もう一杯だけお酒いただいて。
血の気がもどったらも少し、サービスしてあげようかな。
ああ、ありがと。ストッキングの穿き替え、とってきてくれたのね。
この場で穿いても、お行儀わるくないかしら?
じゃあ、失礼するわね。
男のひとって、いいわね。ストッキングなんか穿かないですむのだから。
とてもきゅうくつ、なんですのよ・・・
えっ?
なかなかいい眺め、ですって?
しょうがない方ね・・・
じゃあ、穿くのをちょっと、手伝っていただこうかしら?
そう。そうやって、引き上げて。
ちょっとくらい強く引っぱっても、だいじょうぶ。
わざと破いたりはしないで頂戴ね。(微苦笑)
そう、そう。どお?似合うかしら?ガーター・ストッキング。
わたしがこんなもの持っているなんて、ダンナは御存知なかったりするんですよ。
ちょっと、娼婦になった気分。
さいしょはね、穿き替えるのに、スカートまくりあげるのが恥ずかしくって。
パンストは貞淑女房やめた時点でバイバイかなあ・・・なんてね。
ダンナといるときにはパンストなんだけど。
じゃあ、もうひと踊り、してくるわね。
そうしたら、貴方に家まで送っていただくわ。
明日の朝は何ごともなかったように、目ざめますから。
時間通りに起こしてね。あ・な・た。♪


あとがき
酔ったようで、なにもかもお見通しな奥様。
冒頭に現われて餌食にされた人妻さんと、同一人物でしょうか?

インモラル・バー 3

2006年04月24日(Mon) 07:56:11

おたくのパートナーさんは、どちらかな?
あぁ、あちらの真っ赤なドレスをお召しになっているお方ですな?
まだ、お若いようですな。46?いえいえ、ちょうどお年ごろですよ。
ストッキングも、派手に破かれてしまって。愉しんでいますね。お相手のかたがたも。
ドレスをたくし上げられて、おみ脚をおがめるというのがなによりですな。
おっと、失礼。他人のわたくしがまじまじと拝見してはご迷惑でしょうね。
  こういうお店ですからね。
なるほど。
お若いのに、感心なかたのようだ。乾杯。
(チリン、とグラスの触れ合う音)
濃い紫のストッキングですか。なかなか趣味がよろしいようですな。
さいきんとんと見かけない色ですが。
ほほぅ・・・母上がお越しの時に召されておいでだった・・・
お姑さんとお嫁さんと、二代続けてのご入来、というわけですな。
いや、私も古い客です。
今はすっかり、改心しましたが。(苦笑)
若い頃はこれでも、人妻を食うほうの側にいたのですよ・・・
もしかしたら、貴方の母上を頂戴したこともあったかもしれませんな。(笑)

そうそう。
長年連れ添っていても。
女たちには夫に見えないものをいろいろと、しょい込むようですな。
さらけ出すことのできる場を、こさえることができればまだ紛れるのですが。
すすんで外に求めることのできない不器用ものも、けっこう多いのですよ。
嫁入り前に遊んでおって、そんな感覚はいくらでも身につけていたはずの女でも。
忘れちまうんでしょうかな・・・私にはわかりかねるのですが。
家内もね。
主婦なんて、無期懲役刑みたいなものなのですよ。
優しそうな顔しながらね。そんな怖ろしいことを口にするのですよ。
いつもの穏やかな、思いやりたっぷりな声色でね。
今夜ですか?
お恥ずかしい話なのですが。
事業がいささか左前になっておりましてな。
取引先に、抱かせてしまったのですよ。それでちゃらということで。
情けない夫です・・・
お互い気持ちよく踏ん切りつけられるように。
抱かせるまえにいちど、こちらにお邪魔しましてね。
もうこれきりで、商売から足を洗うことにしました。
今夜は、廃業パーティなんですよ・・・
どうやら、常連客になりそうです。こんどは夫婦ともどもに。
家内は処女のまま嫁入ってまいりましてね。
浮気のひとつも、なかったようです。
本当に、こもりきりの専業主婦でしたから。
それが先日こちらにお邪魔して。初めて操を喪って。
あくる朝家に戻るときの横顔が、妙にすっきりとつやつやしていましてね。
取引先に逢いに出かけるまえに、
終わったら、あそこ行きましょうね。
そんなふうに、云われましてね。
家内がわたしになにかをねだったのは、あれが初めてのことだったのですよ・・・

インモラル・バー 2

2006年04月24日(Mon) 07:55:44

くぐもるようなベースの音に、シンバルの焦げついた音色がおおいかぶさって。
時折、淫靡な輝きを帯びたトランペットが紫煙に満ちた薄闇を切り裂く。
ジャズ・・・のような。クラシック・・・のような。
ジャンル不明な音楽は、まるで楽器の織りなす呪文のように、
淫猥なものをじわじわと人々の鼓膜に沁み込ませてゆく。
ハイチェアの下は、色とりどりに装われた、淑女たちの脚。
トーンを落とした照明をうけて、毒々しい光沢をてからせている。
清浄とはいいがたい空気のなか。
ざわめくというほどの喧騒までは至らない、囁きの輻輳は。
互いの話の内容をつぶさに耳にすることはできないほどの錯雑を交えている。
低くくぐもった声色は、
いずれも歳を経た女のみがもつ、奥深い響きを帯びていた。
気の早い女たちが、ひとりふたりと。
思い思いに、床にまろび臥してゆく。
小奇麗なワンピース姿を、惜しげもなく。
テーブルと椅子のあいだに淪めてゆく。

午前二時―――。
夜通し続くかにみえた宴は、とうに下火になっている。
猥雑な音楽は、とうにやんでいた。
そもそもほんとうに、音楽は流れていたのか?
人々のささやきをかき消すための小道具は、とっくにレコード・プレイヤーから取り除けられて、
知らん顔を決め込んで、店の奥まったケースに戻されていた。
店の外には、閉店の立て札。
それ以前に。
店の前から、人通りは絶えてひさしい。
妙なる音色は、まだつづいている。
淫らなヴォーカル。
思い思いにまろび臥した女たちが奏でる、宵越しのアリア。
あちらはアルト。
向こうはメゾ・ソプラノ。
密やかな響きは高く低く、不ぞろいな音色はどこかで折り重なって。
協和音となって、想いのたけを歌い抜く。
カウンターの奥には、いく人かの聴き手がいた。
それぞれに適度な間隔を持って。
影のようにうずくまって、
時折黙々と強い酒を口にもってゆく以外の動作をいっさい控えている。

ギイ・・・
閉店のはずなのに。
扉がおもむろに、開かれた。
女たちはそれでも人ごとのように、演技の披露を中断しようとしない。
  遅くなってしまいましたね。
入ってきた初老の紳士は、伴ってきた同年輩の婦人を手招きしてなかに引き入れる。
新来の女はちょっとためらったように立ちすくんだが、
じゅうぶんにいい含められていたらしく。
淡く滲ませた悩ましい翳を、すぐさま口許からかき消していた。
  こんばんは。
小首をかしげるように、会釈して。
軽くステップを踏むような足どりで、カウンターのハイチェアに腰かける。
うずくまっていた黒い影のいくつかが、
静かになったパートナーのうえから身を起こし、
新客の足許へと這い寄ってくる。
女は、はじめてではないらしい。
  まぁ、まぁ。おイタさんね。
そんなふうにおどけながら。
膝から腰へと無遠慮にせり上げられてくる腕をはらいのけるそぶりをした。
お洒落なワンピースのすそをくしゃくしゃにたくし上げられて。
よだれを光らせた唇を、ストッキングのうえからなすりつけられて。
  あらまぁ、お行儀わるくってよ。
口では咎めながらも、闇たちの歓迎をきらってはいないらしく、
後ろから回されてきた猿臂に、しつような胸のまさぐりをゆるしてしまっている。

ちゅ、ちゅうっ・・・
きゅうううぅ・・・っ
カウンターに突っ伏したパートナーのうえから奇妙な音があがると、
初老の男性はマスターのほうをむいて、
おどけたように肩をすくめてみせる。
  奥さんでしたね?
いつものように低く穏やかな、マスターの声。
傍らで始まった吸血を横目に、新来の紳士に歓迎の辞を口にする。
  エエ、三十年連れ添った家内です。
  今夜は、ご褒美をあげたくてね・・・
がたり。
なにかが崩れ落ちる音を背中で聞きながら。
すこし離れた、同伴者の振る舞いがよく窺えるあたりに腰をおろした。
  どこからかの、お帰りですか?
  エエ、まぁ・・・
男が口を濁すと、マスターはそれ以上関与しようとしないで、
いつものリキュールとチェーサーを置いて、まえから立ち去った。
傍らに置かれた重たそうなスーツケースにもたれかかるように姿勢を崩して。
妻におおいかぶさってゆく凌辱を目の当たりにする瞳は、
面立ちのくもりとは裏腹に、濁りひとつない澄んだ輝きをたたえている。
チャッ、チャッ、・・・
ぴりり・・・
地面に散った花びらのように引き裂かれてゆく、ワンピース。
はだけた柔肌が淪落の渦に巻かれてゆくのを見つめながら。
小気味よげに薄笑いを浮かべた口許に、強い酒をあてがってゆく。

カレンダーをつけました。

2006年04月23日(Sun) 00:51:36

カレンダーがないですよ~
あるかたから、ご指摘を受けました。
たしかに前はあったような・・・
なんて思いながら。
あっちこっちいじっているうちに、やっと出ました。(笑)
旧ブログ崩壊以来久々に陽の目をみたカレンダーさんに拍手。

部署をうつされて

2006年04月21日(Fri) 07:43:59

カツン、カツン、カツン、カツン・・・
廊下に響くハイヒールの硬質な音が、こちらに向かって近づいてくる。
蛭田は心臓がとび出そうなくらい胸をズキズキと弾ませて、物陰にひそんでいた。
軽くもたれたスチール製のロッカーの真横を通り過ぎる人影をやり過ごす。
女はひたと前を見すえるようにして。
背筋を格好よくピンと反らせていた。
颯爽と歩みを進める足許を彩るのは、濃紺のストッキング。
女王の風格・・・というべきか。
そんな威厳に気圧されるようにして。
のそのそと追いかける足どりは、我ながらひどくぶざまに思えた。

「あの・・・失礼します・・・」
不覚にも喉がひきつって、舌が回らない。
オフィスきっての美人である奈津子をはじめ、幾人も女たちを毒牙にかけているというのに。
いつになってもオドオドと萎縮してしまうのは、最年少重役の鳥飼女史ただひとりのような気がする。
「そんなことはないわよね?」
目のまえに立ちふさがった若い吸血鬼に、不敵に笑う。
えっ?なにが?
想いを読まれたことに愕然とする蛭田をからかうように。
「いつだって、おどおどしているくせに」
嘲りの言葉にこめられた親しみに、蛭田はぼうっとノボセあがってしまう。
こんな未熟者が、このごろ殊勝に語ること・・・
心のなかでそう思いつつ、
「来なさい。渇いているんでしょ?」
硬質に輝くエナメルのハイヒールと、なめらかな光沢を帯びるストッキング。
そんな風景をこれ見よがしに見せつけながら。
女史は飢えた吸血鬼にためらいもなく背中を向けて、ふたたび歩みを速めてゆく。

どっしりと腰を下ろしたアームチェアのまえに立たされると。
どうしてこうも、萎縮してしまうのか。
目のまえに惜しげもなくさらけ出されたふくらはぎは、
かっちりとした輪郭をしなやかでなまめかしい薄手のナイロンでコーティングしている。
手の届くところにありながら、侵しがたいものに遮られているかのようだった。

ああ、部署のことね?ご不満なわけね?
それはそうでしょうとも。
春になったら営業部は新入の女子社員であふれかえるんだもの。
あなたなんか危なっかしくて。とても置いてはおけないのよ。
職級のこと?ばかをおっしゃい。どうして間々田といっしょに進級できるなんて思いこめるの?
身の程をしることよ。
リンと響き渡る女史の声。
まるで氷の結晶みたいに冷たく澄んでいた。
鞭のように鋭くしなやかな叱声に、小気味よく切り裂かれながら。
蛭田はいつか、陶然となっている。

まぁ、そうはいっても。
男だけの部署じゃ、お気の毒よね。
同期のフィアンセに、声かけたくもなるわよね。
・・・どうしてそれを知っているんですか?
丸田重役に見初められるほどのお嬢さんですもの。大事になさいね。
・・・どっ、どうしてそんなことまで知っているんですか?
もう手も足も出ない蛭田のまえで、
女史はチラとタイトスカートをせり上げていた。

くちゅ。くちゅ。にゅるり・・・
シャープで男勝りな、俊秀のひと。
それほどの存在にはおよそ不似合いな卑劣な音を忍ばせながら。
母親に甘えるようにしてひざ小僧にすがりついてしまっていた。
女史はとろんとした目をしてほほ笑みながら。
ストッキングの凌辱に熱中する蛭田の痴態を見おろしてくる。
もうこうなると、女史の目線は怖くない。
むしろ、痺れるほどの快感を疼かせながら。
蛭田は精力をみなぎらせた唇を、執拗になすりつけてゆくのだった。
唇の下でねじれてゆくストッキングは、妖しい光沢を過ぎらせて。
男の劣情を焙りたてるように、そそってゆく。

若い女なんか、メじゃないんですよ。女史。
いまどきのコはストッキング似あわなかったりしますからね。
力の抜けた脚もとに、思い切り研ぎ澄ませた牙を埋めながら。
意識の落ちた肢体をいたわるように、いつまでもいつまでも撫でつづけている。


あとがき
前作にひきこまれるように。
突然再来しましたね。鳥飼女史。^^
新入社員との不祥事を気遣う女史。
でもそれは取り越し苦労だったようで。
蛭田くんにはどうやら、ちょっとオトナな年上の女性のほうがよろしいようですね。^^

浮気なフィアンセ

2006年04月21日(Fri) 07:02:56

あちらへいそいそ。
こちらへいそいそ。
一見手当たり次第のようでいて。
彼女の選ぶ男はだれひとり、
その行為ゆえに未来の夫を莫迦にするようなことはしなかった。

情事の果てに戻ってくるのは、決まって婚約者の腕のなか。
あなた、こうすると愉しいのよ。
こんなふうにすると、もっとキモチよくなれるのよ。
女嫌いだった男をそんなふうにしつけてしまっていて。
浮気相手から教わってきた性技のすべてを、身を寄り添わせながら教え込んでゆくのだった。
重たい鎧を脱ぎ捨てるように
いつもの堅苦しいほどの謹厳さをふり捨てて。
ベッドのうえ男は苦笑しながら、相手の女に主導権をゆだねている。
浮気とか。不倫とか。
そういう不埒なことをなによりも受けつけられなかった男。
女づきあいになじめずに、30近くまで童貞でいた男。
かたくなに閉ざされた扉をこじ開けるようにして。
女は男の懐に器用に入り込んできて。
男自身をも閉じ込めていた殻を、いともむぞうさにつき崩してしまっていた。

素晴らしい奥さんになるだろうね。
男として羨ましいよ。
できれば結婚してからも、奥さんを開発させてもらえまいか。
彼女にもっとも好意を寄せる重役は、礼儀を尽くして。
それでも男らしく、面と向かってそう申し入れた。
  おつきあいは、ご自由に。
  そういう妻のプライベートには立ち入らないことにしていますから。
昇進と引き換えにすることをきらった男に、重役はよけい好意を持ったようだった。
謹厳な面持ちのまえにさらす言葉ではないと遠慮したものの。
籍を入れたあとは中に出すことはするまい・・・などと。
部下の女を抱くくらいなんとも思わないはずの彼さえも、
三歩さがりたい気分になっていた。

春に受け取った辞令は、融通のきかない彼にとってまたとないほどの配置。
いいのかな。不当な優遇を受けるのは、かえってプライドが傷つくな。
そう独りごちる彼に、蛭田は言った。
相性だろうよ、なにごとも。
ボクにそれをやれといわれたら、間違いだらけで目も当てられないさ。
たしかにな・・・
軽く苦笑を浮かべる頬に、落ち着いた安堵があった。
妻になる女を、蛭田にだけはおおっぴらに抱かせている。
あいてが魔物じゃ、しょうがないしな。
そういいながら。
女の肌に牙をうずめて、いそいそと栄養補給している親友のようすを、
まるで昆虫の生態でも観察するような目つきをして
面白そうに見つめている。
見せものじゃないんだぜ?
困惑する蛭田をからかうように。
もっと吸いなよ。須美子のやつ、今夜のために下着をぜんぶ新調したんだぜ?
扉を開きかけたとはいえ。
誰にも見せないほどの悪戯な笑みさえ浮かべて。
今夜のブラを、見せてやりなよ。
それとも、ガーターのほうがこいつ悦ぶのかな?
そんなふうにフィアンセをけしかけたりしてしまっている。

きれいだなあ・・・
ロングスカートからさらけ出された脚線美を目のまえに。
蛭田は切なそうに、ため息をした。
落ちる夕陽を眺めても。
野辺に咲く名もない花を目にしても。
おなじようにうっとりと目線を迷わせる。
哀しげな翳さえよぎらせて。
そういうやつだから、許せるんだろうな。
笹山は同僚の肩を抱くように引き寄せると。
あとはよろしくな。
そう言い置いて。
二人になりたがっていた須美子の下心を見透かすように、片頬で笑んでみせる。
マタ教エテアゲルワネ・・・
はじけ合う二人の目線を羨ましそうに眺めながら。
蛭田は自身が昂ぶりはじめるのを抑えかねていた。


あとがき
久しぶりのoffice編です。
蛭田と同期の笹山はぶきっちょで潔癖な男。
初登場は、去年の12月27日でした。
かたくなな性格ゆえに周囲からも認められず、女とも縁遠かったのですが。
処女を奪わないことを条件に婚約者の血を吸うことを認めてしまってから、運命が変わります。
とうとう我慢できなくなって初めて抱いた須美子さんは目ざめてしまい、
嫁入り前の体をあちらこちらでさらけ出すようになってしまいます。
処女を得たことで満足したためなのか。
男女の悦びを知ることで、もっと深いものにも目覚めてしまったせいなのか。
そんな彼女の振る舞いを寛大に許すようになった彼。
彼女とは、与えられた役職以上に相性がよかったようです。

正体

2006年04月21日(Fri) 06:05:44

身の丈ほどもある大ビルに襲われて、
若い女はひと声、きゃあっ!と悲鳴を洩らしたけれど。
すぐに目を伏せ押し黙ってしまって。
そのまま仰のけたうなじに、細く鋭利な吸血管を刺し込まれてしまっている。
ぎゅうっ・・・
無慈悲にナマナマしい音を洩らしながら。
半透明の吸血管は、抜き取られてゆく赤黒い液体に満ちている。
体じゅうについている吸盤を、体液を唾液のようにてらてらと光らせながら、
若い女の身体じゅうにぬめりつきながら、吸盤を吸いつてゆく。
うら若い潔癖な素肌に不潔な体液をしみ込まされて。
厭うようにけだるげに、しばしはかぶりを振っていたけれど。
やがて身をゆだねきるようにうっとりとして。
女は体の力を抜いていた。
貼りつけられた吸盤の下、肌色のストッキングがぶちぶちと裂けてゆく。

恍惚として目を瞑った女の顔から、みるみる血の気が失われてゆくと。
傍らで様子を窺っていた年配の和装の婦人はたまりかねたように
大ビルの上におおいかぶさるようにして、そいつの体を娘から引き離し、
まるで身代わりになるように、
無慈悲な吸血管を訪問着の胸許に自ら突き立てていった。
アアッ・・・
抑えかねた叫びを切なげに散らして。
年配の女もまた、半透明な吸血管を己の血で赤黒く染めてゆく。
壁に抑えつけられて吸血されながら。
和装の女はこちらを向いて。
つぎはあなたの番よ。
そんなふうにほほ笑んでいた。

姉さん、かんにんね。
弟に背中を押されるようにして。
前に二、三歩踏み出すと。
そいつは避けるすべも与えずに、やおらおおいかぶさってくる。
苦もなく押し倒された床が、ごつごつと背中に痛かった。
そうこうしているうちに、大ビルの執拗な吸着に、抗うすべを奪われてしまっている。
物慣れたように機械的に、あの鋭利な吸血管がうなじに迫ってきた。
ずぶり・・・
力ずくに突き刺されていた。
皮膚を破った尖った異物は、滲むようにくい込んできて。
ぎゅうっ・・・
体内をめぐる血液を、強引に抜き取ってゆく。

あまりの強欲さに軽い眩暈を起こしながら。
取りすがる二対の掌が、むしろ抗いを抑えようとしているのを感じていた。
ねばねばとした吸盤だらけの巨体は、すがりつくように執着してくる。
直感した。
正体は、あのひとだ。
わたしを抑えるふたりにとって、兄であり息子であるひと。
飢えた大ビルに押しやった弟の、親友であるひと。
機械的なまでに無慈悲な吸血に、濃密な想いを込めて。
男はわたしの血を吸いあげてゆく。
いいのよ。もっとお吸いなさい。
あなたが人に戻れるまで、私処女のままで待っているから・・・

妻を迎えに

2006年04月21日(Fri) 05:23:06

ざく、ざく、ざく、ざく・・・
霜を踏みしめて。白い息を凍らせて。
青白く明けかけた夜空にせかされるように。
訪れたのは村はずれにある、大きな邸。
夕闇が濃くなるころ。
足音を忍ばせて書斎にやって来て
許しを乞うように、目を伏せて
出かけてまいります。
そう告げる妻に。
気をつけて言ってくるのだよ。
言葉少なな応対に、むしろ感謝を滲ませて。
夕暮れを塗りこめた闇に隠れるようにして、
人目をしのんで、出かけていった妻。

携えていた妻の着替えは、
小脇に抱えた腕のなか、ふわりとした軽さと、しっとりと落ち着いたしなやかさを伝えてくる。
妻が出かけるまえに、じぶんで用意していたものだった。
明け方を迎えるころには、衣裳をしどけなく乱されしまっているわが身のために。
夜が明ける前に。
お迎えにいらしてくださいませんか?
人目にたつことだけは、いたしたくありませんから。
控えめに、いいにくそうに。
けれども確かな声色で、そう告げていった。

出迎えた彼はいつになくにこやかで。
立ち居振る舞いさえきびきびとしていた。
握りしめられた掌を伝わってくる、いつにないぬくもりは、
妻の体内から抜き去ったものから獲たものだった。
私から受け取った妻の衣裳と引き換えに。
手にしたものは、それまでの装い。
ところどころ引き裂かれたワンピースと、ストッキング。
しつように唇を当てられた証拠に、
裂け目の広がった黒のストッキングは、蜘蛛の巣のようにちりちりになっている。
あんなことも。
こんなことも。
そんな妄想に彩られてしまった目のまえに、
引きたてられるようにして連れてこられた妻。
改めた装いにすべてを押し隠して。
血の気の失せた白い顔は、夫と目を合わせまいとして、
萎えた百合の花びらのように伏せられている。
どれほどのあしらいを受けたのか。
口にするには残酷すぎる問いであろう。
手渡されたワンピースの奥に描かれた熱情の残滓には、
目がいかないそぶりをつづけている。

あなたがたのご厚意に感謝する。
ご夫婦がきょうも幸いに包まれるように。
邪淫の神父のたれる祝福に、妻も私も神妙にかしこまってしまっている。
さあ、失礼しましょうか。
お互い目交ぜをかわし合って。
しらじらとしてきた東の空をはばかるように辞去を告げる。
人目を忍ぶ道行きを、寒々と重たい冷気が包んでゆく。

毎朝の散歩に出る隣家の老夫婦。
間に合わなかった。ちらりとかすめたものを察するように。
軽く会釈したふたつの白髪頭は
だいじょうぶですよ。
そう言いたげに、穏やかにほほ笑んだ。
お帰りなさい。
存じていますよ。大変でしたね。
早く、お宅にお戻りなさい。
そんな目線に送られて。
素早く閉ざした扉のなか。
抱きしめた妻の唇は訴えるように、切なげな呼気を洩らしつづけている。

村に秘められた、隠微のしきたり。
名指された家のあるじは、若い女をひとり、夜伽にはべらすことを求められる。
そのたびごとに、生娘のような若作りに身なりを変えて。
妻はいそいそと奉仕に向かう。
年老いた隣家の夫も、かつてはそうして妻を送り出していたのだろう。

血脈

2006年04月21日(Fri) 04:46:12

人妻のもとに通い詰めて。
迫って、追い詰めて、ほどよく堕としてやって。
せいせいと胸弾ませる背後に忍び寄って。
うなじをがりり・・・と噛んでやる。
ほとび出る血潮はひどく熱くて。
女もまた、切ない吐息を洩らしながら、
おれの本能を充たしてゆく。

あの人には言わないでね。絶対に、言わないでね。
そんなことはとうにわかっているのだが。
それでもおれの心を疑うように。
求めるままに血を許してゆく女。
同居している姑のことをひどく怖がっているので、
おれは一計を仕掛けて、姑のほうも襲ってしまった。
血を吸い取って乱れさせた和服姿につい、そそられて。
返礼に白く濁った毒液をたっぷりと、注ぎ込んでしまっている。
そんな有様をお内儀は、物陰から息をひそめて見つめつづけていた。

ごめんなさい。ごめんなさい。
顔を隠して姑にわびるお内儀に。
意地悪そうに見えた姑は意外なくらい、もの分かりがよかった。
仕方のないお嫁さんね。
薄っすらと苦笑を浮かべて、身づくろいをすませると。
ご存分に、お愉しみなさい。あの子には黙っててあげるから。
そんな言葉にそそられて。
黒のストッキングの足許に見境なくべろを這わせて。
地味めな白のブラウスの胸許を、力づくで押し広げていった。

孫娘ですのよ。
さぁ、ご挨拶なさい。お母様のお友だちよ。
あなたも血を吸っていただくとよろしいわ。
優しい祖母の口ぶりになんの疑いもはさまずに。
少女はそれでもおずおずと、
白のハイソックスのつま先を、ごく控えめにさし伸ばす。
この家で初めて口にする処女の血は、とても甘くて熱っぽかった。

毎日のように、通い詰めて。
ひとりひとり、犯してゆく。
年端もいかない少女さえもが、
祖母や母親の行状を、見よう見まねにまねようとして。
チャコールグレーのプリーツスカートを、ぶきっちょにたくし上げている。
嫁、姑、娘・・・と。三人ながら衣裳を乱し、皮膚を破って。
むさぼるように啜り取ってゆく。
甘美に赤黒い液体は、互い互いに混ざり合って。
媚びるようにねっとりと、喉の奥まで沁み込んでくる。
清楚なような。淫らなような。
控えめなような。したたかなような。
女たちの生き血はうっとりするほどどんよりと。
干からびたおれの血管をめぐってゆく。

パパ、ゴメンネ。
アノ人ニ、申シ訳ガ立タナイワ・・・
息子ヲ苦シメナイデアゲテネ。悪イ子ジャナイノダカラ。
女たちが想いを寄せているのは、ただひとり。
息子であり、亭主であり、父であるひと。
せめぎ合うほどに妖しく織り交ざる女たちの血潮は
それまで冷ややかにしか認めていなかった亭主の存在すら和ませてゆく。


あとがき
前作の続編です。
というか、さいしょに浮んだのがこちらでした。
母、妻、娘と。三人ながら寝取られてしまった男に対して、
もともと彼は憎悪や軽蔑を向けてはいなかったのですが。
冷ややかな無関心を暖かなものに変えてしまったのは、
息子であり夫であり父である存在への、女たちの想いゆえだった・・・
ということのようです。(笑)
もとはといえば吸血鬼と亭主とは敵同士の関係で、
そんなとげとげしいかかわりを、女たちの血が和ませてゆく・・・
みたいなお話にするつもりだったのですが。
どうも力不足で、そこまで筆が及びませんでした。(苦笑)

拒みながら。

2006年04月21日(Fri) 04:21:18

亭主の目をかすめて、お内儀を失敬する。
これほどの愉しみはそうそう、見あたらないだろう。
亭主に対してべつだん、悪気があるわけじゃない。憎いわけでもない。
どちらかというと顔を合わせずにすませたい。
そのていどにしか、意識にのぼらない関係。
壁に押しつけたお内儀は黒の衣裳に秘めた柔肌の色香をむんむんとさせて、
却っておれのほうに身体を寄り添わせてきた。

べつだん、淫乱というわけでもない、
どこにでも見かける、ごく人並みにまじめな主婦。
訪ねていくといつも伏し目がちにおれを出迎えて、
早く帰ってほしいようなそぶりさえするというのに。
いったん迫って、堕としてしまうと。
別人みたいにあられもなく取り乱して、
娼婦さながらの媚びを見せてくる。

露骨に乱れる女は、好みではない。
お前ら夫婦はいったいなんなんだ、とさえ思ってしまう。
だがこの女がみせる媚態はひどく禁欲的で。
感じていることを見せることを厭う本能を持ち合わせていた。
乱れまい、スキなど与えまい。
不埒な女と思われまい。
そんな意思さえありありと伝わってくるほどに。
拒んでくるしぐさのすべてに、罪の意識に対するおののきを伝えてくる。
それでももっと奥深い本能は、女の意図を裏切って。
つねに禁忌を犯しつづける。
抗いのなかにたくまぬ媚態を秘めながら。
もみくちゃにされる衣擦れの下。
豊かな素肌に透きとおる青白い静脈を、
いつか赤裸々に毒々しく弾ませてゆくのだった。

あのひとが戻ってくる・・・
そう訴えれば、おれがやめると思っているのかい?
いけねぇ。また、そそられちまった。
拒もうするそのやり取りが、おれを却って惹き込んでいるの、
あんたはどこまで承知しているんだね?
真っ黒なスカートにくっつけられた、白く濁ったぬらぬらとしたものを。
あんたはまたさりげなく巧みに押し隠し、
もの静かで控えめないつものお内儀に戻ってゆくというんだね?

麻酔のように

2006年04月20日(Thu) 22:38:22

その来客は決まって、夜更け我が家を訪れる。
態度は慇懃、あくまでも主人である私をたてるジェントルマン。
巧みな話術に酔うように、いつか睡魔が訪れて。
話の途中で必ず寝入ってしまうのだが。
そんな私を咎めたり、まして揺り起こすような無礼をはたらくこともなく、
彼はいつの間にか、姿を消している。

アラ、オ帰リニナラレマシタヨ。
オ父サマ、マタ寝チャッタノネ?
妻も娘も、そんな私に苦笑いする。
良家の子女にふさわしく、
必ず着飾って訪客を迎えるならわしだったのだが。
脚周りを染める色とりどりのストッキングはふしだらにゆるんでいて、
スカートのすそからあらわに裂け目をのぞかせている。

はじめはさして不思議にも思わなかったけれども、
たび重なる粗相を見咎めると、
二人はフフフ・・・と、謎めいた笑みを交わし合うばかり。
たまたま目ざめの早かったとき。
謎はすぐさま氷解した。

身体にのしかかる体重が去って、
そらぞらしい空気に取り巻かれるのを覚えて。
ふと我にかえった私が目にしたものは、
うっとりとするばかりの絵空事。
妻はにこやかに笑んだまま、
口許から赤黒いひと筋のしたたりを帯びた唇を、
まるで無抵抗に吸いつけられてゆく。
ぱりり・・・
かすかな音をたてて破られるストッキング。
乱された衣裳のすき間から洩れてくるのは、
まごうことになき、吸血の調べ。
娘もイタズラっぽく笑いながら、
いつも学校に履いてゆく黒のストッキングに包んだつま先を、
ためらいもせずにすべらせてゆく。
ぶちちっ・・・
こんどは娘の番だった。

きゃっ。きゃっ。・・・。
ふたりながら、脚をつま先立てながら。
男の淫らな欲情に、装った脚をいたぶらせてしまっている。
こと果てるまで、薄目をしながら見届けてしまったわたしは、
彼の立ち去った後、もっともらしく、のびをする。
どれ、今夜も寝過ごしてしまったようだね。

アノ方、今夜モ見エルソウヨ。
ジャア、オ料理、気張ラナクッチャネ。
妻も娘もウキウキと台所にたつ夕べ。
いつものようにから眠りをする私。
いつものように脚を伸べてゆくふたり。
いつものようにふしだらに乱される、女たちの衣裳。
誰もがとうに、気づいている。
気づきながらも、けっして口にはのぼらない。
不面目や不名誉を却って愉しみのスパイスにしながらも。
今夜もわが家は客人を待ち受ける。

賭け 2

2006年04月19日(Wed) 08:00:58

女を抱かしてやるよ。お前、そういうこと初めてだろう?
俺たちなれているから、さきにヤッちゃって。
大人しくなってから、お前に譲ってやるからな。
そう、言い含められて。
ようやく、声がかかったようだ。
もうガマンできないくらい、ボクの喉はカラカラだった。

あぁ・・・!だめぇ・・・!よして頂戴ッ。
切れ切れな叫びと悲鳴。
階上から洩れてくる声だけでも、初めてのボクには刺激的。
かわいそうだ、と思うよりも。
愉しそうだ、とい感じるのはなぜだろう?
先客の二、三人がどたどたと降りてきた。
どうやら、ボクの番らしい。
イキのいい、奥さんと娘だよ。まだまだたっぷり、吸えるぜ。
口許に紅いものを散らした少年たちの声は、生き返ったみたいに活き活きと弾んでいる。

早く、あんなふうになりたい。
別人のように喜色に輝いていた顔を思い出し、ふすまをあける。
ふたりの女のうえには、まだ数人の少年たちがむらがっている。
ちゅう、ちゅう。きゅう、きゅう。
こく・・・・・・っ
ナマナマしい音を洩らしながら、
女たちの体内から洩れる血液を無言で啜り取ってゆく少年たち。
昏い欲情が、すべてを忘れさせた。

さいしょは年配の女のようだった。
破れかけたねずみ色のストッキングが、ムラムラとした昂ぶりに火をつけた。
母さんもこんな色のストッキング、よく履いていたっけ。
思わずふくらはぎを吸っていた。
ひきつる皮膚を破って。どろどろと温む液体を口に含んで。
初めて人心地がついた・・・と感じたのは、娘のほうから身を起こしたときだった。
すでに、射精してしまっている。多くは少女の体内に吸い込まれていったようだ。
ハッと合わさった目線に、ボクはずきん!と胸をわななかせた。
ありがとな。
隣の少年は肩に手をあてて、立ち上がる。
感謝の言葉は切実で、嘲りや諧謔とは遠いものだった。
ほかの少年たちもまた、敬意とねぎらいを目線に滲ませながら、去ってゆく。
取り残されたのは、実の母と妹だった。

いいのよ。あなたに会えたなら、それだけで。
遠慮なく飲んで頂戴ね。いちばん飲ませてあげたかったのはあなたなんだから。
いたわりあうように身を寄せ合う、三つの影。
せりあげられるワンピースやスカートのすそといっしょに、
第二の舞台が、しずかに幕をあげてゆく。

賭け

2006年04月19日(Wed) 07:49:11

迫ってくる吸血女たちを目のまえに。
「あの・・・あの・・・どうぞ、お手柔らかに」
年配の婦人はそういいながら、落ち着きを失うまいとけんめいになっている。
かいがいしい立ち居振る舞いは、自分の後ろに隠れるようにしている娘を怯えさせないため。
  エエ、わたくしのほうから先に、召し上がってくださいませ。
  淫乱なのかもしれませんね・・・
ちっとも似合いではない言い回しをあえてしたのは、
注意を自分ひとりに振り向けようとする空しい試みのため。
見るからに淑女な人妻は、服従のしるしに、
ワンピースのすそをおそるおそるたくし上げた。

太ももを包んでいるグレーのストッキングは、光沢もなく地味なもの。
けれどもなよなよとした薄さだけは、じゅうぶん色香を放っていた。
血を吸われることに同意した女が課せられた、衣裳のルール。
清楚に装い、穢される。
そのための演出と察しながらも、
求められるまま身に着けた、スカートとストッキング。

おしとやかなのね・・・
吸血女はくすり、と笑った。
ツーショットで、お相手するわね。ときどき、獲物を取り替えて。
ひっ・・・
背後から洩れる声を、淑女は手を握り合ってたしなめる。
ためらう女たちはひとり、またひとりと、引き入れられてまろばされる。
恥知らずな劣情をおおっぴらにさらけ出して。
吸血女たちはしんそこ嬉しげに笑いさざめく。
その笑いに巻かれるように。
若作りなワンピース姿も、濃紺の制服姿も、淫らな褥に沈められてしまった。

二人並べて、うつ伏せにして。
女吸血鬼たちは、にたりと笑った。
花柄のワンピースからのぞく、グレーのストッキング。
濃紺のプリーツスカートからのぞく、黒のストッキング。
女どもは思い思いに相手を選んで。
ウキウキしながら、ふくらはぎに唇を這わせてゆく。
どちらが先に、ストッキングを破いてしまうか。
お互いのガマン強さを賭けたはずなのに。
けっきょく、競い合うようにして、清楚な薄絹をぱりぱりと咬み破ってしまっていた。

さあ。あなたたちの賭けは、これからよ。
失血にぼうっとなってしまった母娘を引き立てるように。
女たちは声をはげました。
男の子たちが、乗り込んでくるわ。
ぐずぐずしていたら、お嬢さんは純潔を。お母さんは貞操を。
むたいに辱められてしまうのよ。
そんなのって、お厭でしょう・・・?
だから早く、逃げるのよ。
逃げられたら・・・のお話だけど。
もう、私たちに血を吸われて、ぐったりしちゃっているんでしょう?
無理かなぁ。でも、逃げられるといいわね。
もしもダメだったら。
思い切って、愉しんじゃいなさい。
みんな、お母さんや妹さんの血を吸われちゃった、気の毒な男の子たちだから。

女吸血鬼たちが立ち去ると、
母と娘は懸命になって、逃れようとする。
けれどもいうことを聞かなくなった身体は重く、
少年たちがやって来たときには、ようやく身を起こそうとして四つん這いになったところだった。
Aちゃんのお母さんと妹だ・・・
そのなかのなん人かが、口々に呟いた。
だから見逃してくれる・・・というわけではなさそうだった。
求めていた獲物に群がるように、男の子たちは
くらくら眩暈を起こしている母娘にのしかかっていった

みんなで可愛がってあげてね

2006年04月19日(Wed) 07:34:20

「嫁さん、連れてきたよ。みんなで可愛がってあげてね」
そんなあいさつが抵抗なく言えるようになったのは。
身体じゅうの血のほとんどを、吸い取られてしまってからのこと。
  いいじゃん。相手が吸血鬼なんだから。
無茶苦茶な理屈だったけれど。
イタズラっぽく笑う妻は、ちょっぴり肩をすくめた。
まだ22歳の若妻は、飢えた少年たちにとって絶好の獲物だった。

「そろそろお出かけの時間ね」
ウキウキと弾んだ口調で。
お洒落なワンピースの肩に、ショルダーバックをひるがえす。
「似合ってるじゃん、思いきり」
茶目っ気たっぷりに輝く瞳は、仕掛けた悪戯の効果を満足そうに振り返る。
  血を吸われるのも犯されるのもかまわないけど。
  あなたも女装して、いっしょに襲われて。服貸してあげるから。
妻のつけてきた条件は、刺激を含んで鼓膜の奥に入り込んできた。

群がってくる彼らのまえで、妻はすっかりアイドル気取り。
「こんばんわぁ。今夜もうんと、愉しもうね」
ポニーテールの黒髪を揺らして、かわいく肩でお辞儀する。
ふたり並んで仰向けにされて。
思い思いにかがみ込んでくる少年たち。
妻がされているのとおなじように、
ワンピース越しにちくちく刺し入れられてくる、牙の感覚。
「奥さんとおなじブランドだね」
生温かいべろを足許にぬめりつけてきた少年は、ひどく舌が肥えていた。

きゃあっ!きゃあっ!
隣で妻が、はしゃいでいる。
  みんなに可愛がっていただくの。
  今夜ももてちゃいそう♪
彼女はどこまでも他愛がなくて。
もう何人目かの恋人と熱く乱れあってゆく。

兄嫁

2006年04月19日(Wed) 07:02:17

暗くなった夜道を抜けて。
ぶらりと家に上がりこんできたのは弟だった。
頬にちょっぴり、泥を撥ねかして。
「とうとう相手、見つからなかった」
ぶあいそな言葉遣いが照れ隠しからくるものだと、誰もがとっくにわかっていた。
まだ肌寒い春先の夜に、のどかな散策を愉しむ若い女は少なかろう。
「義姉さん・・・招んでくれる?」
兄をみあげたとき、少年はちょっとはにかんだような童顔になっている。

表情を消して現われた兄嫁。
飾りけのない白のブラウスに、黒のキュロットスカート。
伏し目になって遠くから、儀礼的な無言の会釈をかえしてくる。
「ごめんね。兄さん」
無言の裡に交錯する、謝罪といたわりと。
少年は自分よりも背の高い義姉の手をひいて、
床の間のある部屋のふすまをしめた。

灯りを消すことは禁じられている。
「何するか、わからないからな」
油断のならないやつだ、と言いたげに弟を睨んだ目つきは
それでもどこか親しみを含んでいた。
ふたりの間の近すぎる間合いにとまどうように、
兄嫁は不意に合わせてしまった視線をそらそうとする。
腰を抱かれて。のがれられなくなって。
黒のストッキングに包まれたひざを崩してゆく。

ふくらはぎにねっとりと這わせた唇に、
さらさらとした薄手のナイロンが心地よい。
ねじれたストッキングの向こう側、かたくなに張りつめた皮膚に牙を刺してゆく。
服、脱がせるのはカンベンな。
兄貴はたしかに、そういった。

むしょうに、くすぐったかった。
ふすまの向こう側から注がれてくる、しつような視線。
義姉もそれとなく察しているのか、時折かすかにためらうしぐさを見せてくる。
けれどもそんなことは許さずに、むしろいっそう嗜虐心を昂ぶらせて。
少年は義姉を抑えつけていた。
うなじのあたりに漂う、ほのかな体温と香水がつむぎだす大人の香り・・・
疼いた牙をもういちど、拒みつづける両肩を抱きすくめて埋めてゆく。
兄への義理は、そこまでだった。

ふすまの向こうから洩れてくる、荒い息遣い。
それは和室の外からのものだった。
「弓恵ちゃん、ね?」
囁きかけてくる義姉の声に、どこかせっぱ詰まった妬みの色を読み取って。
しかたなかったんだよ。三人兄妹のなかで、弓恵だけが女の子だったから。
真っ先に襲われちゃったんだ。
いまでも兄貴のことを慕っていて、ああやって突然現われるんだよ。
口先でなだめられたって、納得できるものじゃないわ。
義姉がにわかに見せた人くさい感情が、かえってむしょうにかわいらしくて。
少年はさっきから結び合わせてしまっているスカートの奥に、若い熱情の残滓を思うさま降り注いでゆく。

あの世に捧げる操

2006年04月18日(Tue) 07:48:27

申し訳ございません。
貴方のご好意は、まえからずっと存じておりましたの。
けれども女のわたくしから、胸に秘めた心のたけをお伝えするわけにはまいりません。
ですからずっと、お待ち申しあげておりましたの。
それなのに・・・
そんなわたくしの心になど、なんの心配りもないあの男は、
さっさとわたくしの両親に話をつけて、
穢れをしらないこの身を、汚れた褥に放り込んでしまったのですわ。
こうなってしまいましてはもう、貴方に合わせる顔はございません。
悲しいさだめではございますが。
しきたりどおり、初めて操を捧げたかたのもとへ参りとう存じます。

瞼の裏に隠した熱いものをけっして滴らせまいとして。
俯きかげんの令嬢を、じいっと見つめていた。
乱れのない、静かに落ち着いた声色。
昨日までと変わらない、透きとおるような白い肌。
そんな造られた静謐を裏切るかのように、
白いスカートの膝のうえ、ギュッと握りしめられたハンカチーフだけが、
持ち主になりかわるようにして。令嬢の乱れた意思を告げている。
お別れに、そのハンカチーフを・・・
青年のさいごの願いに、令嬢は初めて我に返ったように、
恥じらいに染めた頬を見られまいとして顔をそむけていた。

明け方に、あの子は亡くなりました。
上品な和服姿が、生まれついての貴婦人らしい物腰にしっとりと寄り添っていた。
ハッと見開かれた令嬢の眼に閃く、悲痛の色。
追い打ちをかけるような悲報だった。
どこで手に入れたものか、毒蛇に咬まれて・・・いえ、自ら咬ませて。
あの子はなにも語らずに、黄泉路に旅立ってゆきました。
心を抑えた声色を、握りしめたハンカチーフが裏切っている。
ことさら告げられなくても。
昨日までの持ち主が他ならぬ自分であったことを、令嬢はよく知っている。
あの子がこの世に遺したさいごの名残りです。
さし広げられたハンカチーフの片隅に、赤黒い飛沫がかすかに滲んでいた。

本来でしたらお伺いするところなのですが。
わざわざお越しいただきましたのは・・・
いったい、どうしたことでございましょう。
もう貴女さまは・・・当家とはなんのかかわりもない方なのに。
ですからどうぞ、これからさきなにかを目にされたとしても、
見なかったことにして、お邸にお戻りあそばせ。
そしてどうぞわたくしどものことなど一日も早くお忘れになって、
お幸せにお暮らしになって下さいませ。
老婦人はすうっと立ち上がり、痩せこけた身体を隣室に忍ばせる。
もしかしたら母になったかもしれないそのひとは、
足音を消したきり、とうとう戻ってこなかった。
はしたないと思いながらも、令嬢は隣室の様子を窺った。
倒れた和服姿の傍らに、極彩色をした蛇が、ぬらぬらと輝く肢体を誇るように、とぐろを巻いていた。

おかあさま・・・っ
我知らず叫んだ令嬢の声に、意識も遠くなりかけた老婦人は満足そうに微笑んだ。
母と呼んでくださるのですね?かりそめにも・・・
貴女のそのお気持ちを耳にできたこと、嬉しく思いますわ。
あの世で息子に伝えたら、さぞや喜ぶかと存じます。
薄っすらとなってゆく目の前に。
令嬢は蛇をわしづかみにして、差し出していた。
うなじにあてがった蛇の頭部から伸びた舌は、
ちろちろと妖しく、柔らかなうなじをくすぐっている。

戯れに令嬢を傷つけ、哀れな母子ともども死に追いやった男は、それからも栄達の道を歩みつづけた。
幸運というものにもっともふさわしくないはずの男は、
不当な利益をむさぼり続けるかに思われた。
あの令嬢の親たちも、自分たちの軽率な決定を悔やみながら、とうの昔にいなくなっていた。
男はそれからいくらもたたないうち、とある大富豪の令嬢と結ばれて、
そのあいだに生まれた一人娘は前途有望な青年の婚約者となろうとしている。
青年は旧家の出で、妻の実家に負けず劣らずの大富豪であるという。
青年にも、その身内にも、会うのはきょうが初めてだった。
男の母親も、妹も、かなりの美人と聞いている。
うまくすればまたいい女が抱けるかもしれない・・・
いままで権力ずくで奪ってきた女たちがそのたびに抱えて帰った怨みや屈辱になど思いも及ばずに、
男はそんな空想に満悦していた。
娘は幸運と獲物を招き入れてくる。
許婚の母と、妹とを。
丁寧なお辞儀の下からみえる美貌にズキズキとした期待を押し隠していた男は、
アッ!と叫んでいた。
あのとき自害した老女と、そして令嬢。
そして娘の許婚はほかならぬ、己が死に追いやったはずの男だったから。
振り返ると奇妙な薄笑いを浮かべた自分の娘は、うなじに奇妙な咬み跡を滲ませている・・・

あとがき
娘さんももしかしたら、過去に無理やり抱いた女だったのかもしれませんね。
凌辱、という言葉はこういう場合、なんの愉悦も含まないようです。
(8月14日、一部を改作)

握手

2006年04月18日(Tue) 06:50:52

ゆったりとした花柄のワンピースを着た妻は、
いつもと何も変わらないような面差しで。
目のまえの男と言葉を交わしている。
いつもとすこし違うのは、
お嬢さんみたいな若々しい柄のワンピースのすそが、
くしゃくしゃになるまでたくし上げられていて。
ひざまでずり下ろされた肌色のストッキングがまる見えになっていることだった。

ふたりの腰は深く合わさって、
まるで握手をしているように結び合ったまま
おしくらまんじゅうでもしているように前へ後ろへと揺れている。
お国はどちら?
あら、まぁ、そうなんですの?
受け応えする優雅な声は、かわらない。

男はそれだけでは飽き足らず、
飢えた唇をうなじへと、近寄せてゆく。
ふつうの男女の場合とは違って、こちらのほうがはるかに致命的な意味をもっているのだが。
それでも妻は動じるふうもなく、
求められた接吻にゆったりと応えはじめている。

皮膚の下に埋め込まれる毒針に、
かすかな吐息を洩らしたけれど。
己の若さを誇るように、
妻は花柄のワンピースをひきむしるようにして、むぞうさに裂け目を入れてゆく。
踏み荒らされた花園のすき間からのぞく白い肌。
白すぎるほど透きとおった素肌から、
深紅の液体が、少しずつ。
まるで拷問を愉しむかのように、引き抜かれてゆく。

数日前この男のために血を全部ご馳走した私が人として死んでしまったように。
私だけの妻としてのこの女も、死んでゆく。
開けっぴろげな嬌声を、高らかにけたてながら。

染められて。

2006年04月17日(Mon) 07:37:31

淑やかに伸べられた足許に手を這わせ、
透きとおるような薄手の黒ストッキングに包まれたふくらはぎを愛でてゆく。
きみはちょっと恥らいながら、うつむけた目線を足許に注いでいた。
肌を青白く浮かび上がらせた清楚な礼装のうえから、
くまなく掌をあて、唇を吸いつけて。
淫らなものを沁み込ませてゆく。
すべすべとしたしなやかなナイロンは、
掌を、唇を、奥深い優しさで挑発し続ける。
太ももの奥がしとどに濡れて、礼装さえも汚すとき。
深い彩りを帯びた血潮が素肌に満ちて、
青白い脛はいつかジューシイなピンク色を滲ませている。
淫らな輝きを帯びた、娼婦の脚。
それまでの淑やかさは、どきりとするほどに変貌を遂げる。
さぁ。
心のヴェールをはぎ取るように、素肌のガードも取り去ってしまおう。
爪先立てた指の先、ちりちりと描き始める、堕落の模様。

団欒・・・?

2006年04月17日(Mon) 07:27:59

ママに教えてもらったことを。
妹にも教え込んでみたくなって。
このごろすっかり大人びてきた濃紺の制服姿に、
気がつくと自分の身体を重ね合わせてしまっていた。
ママと違って妹のスカートの奥はとても硬くって、
とうとうこじ開けるようにして、奪っていった。

あの娘だって、ご近所の評判くらい気にするのよ。
ママのお叱りはそこまでだった。
ご近所迷惑にならないようなら、存分にお振る舞いなさい。
勉強部屋のふすまは閉ざされていた。
ふすま一枚隔てたこちら側で妹のことを思う存分可愛がると。
ボクはなにかを感じ取って。
ふすまの向こうに歩み去ったはずの肌色のストッキングをすぐ間近に追い求めていた。

じゅうたんの上。
ボクの上にはママが。
妹の上にはパパが。
またがって、静かな息を押し殺している。
兄さま、兄さま・・・
妹が囁きかけてくる。
父さま、とても素晴らしいわ。義姉さまになられるあのひとも、
さいしょは父さまにお願いしてみるとよろしいわ。
めぐる妄想に眩暈をかんじて、
ボクは苦笑いするパパのまえ、お行儀悪くママのスカートを濡らしてしまう。

家族の血

2006年04月17日(Mon) 06:51:02

きゅうっ・・・
ネグリジェ一枚の母におおいかぶさって、
うなじに這わせた唇から、異様な音が洩れてくる。
きゅうっ・・・きゅうっ・・・
血を吸いあげるときの音は、ひどく嬉しげでリズミカルで、
鼓膜の奥深くまで、奇妙な疼きをつたえてくる。
両手で顔を覆った母がけだるそうに姿勢を崩すと、
つぎは妹の番。
濃紺の制服姿の妹は、いとわしそうに眉をひそめながら。
それでも抗いひとつみせないで、素直に抱き寄せられるままになって。
三つ編みのおさげをかいくぐるようにしてつけられた唇に、うなじをさぐられてゆく。
ちゅううっ。
またひとつ洩れてくる、吸血の音。
まがまがしい音色に身をゆだねた妹は、
だんだんうっとりと目線を迷わせて。
プリーツスカートをせり上げられてゆくころには、眠そうに目をこすっている。
通学用の黒のストッキングの上から、ふくらはぎに吸い着いて。
なおもしつように妹をなぶり続ける、飢えた唇。
ネグリジェ姿の母のほうはもうとうに、
肌色のガーターストッキングをむざんに伝線させてしまっている。

我が家に代々課せられた、忌むべき儀式。
そのなかで女たちは無抵抗に身をゆだね、
この血統の血が気に入りだという彼のため、
素肌の奥にめぐるものをむぞうさに、ほとばせてしまっている。
ほんとうに旨そうに血を啜る彼のために装った、
清楚な衣裳をしどけなく乱しながら・・・

先月結納を交わしたばかりの許婚は、そんな光景に魅入られたように立ちすくんでいたけれど。
わたくしも・・・
そっと私に言い置いて。
花柄のワンピースのすそをちょっとだけたくし上げ、
グレーのストッキングのふくらはぎを、惜しげもなく彼の前にさらけ出してゆく。
気品ある翳に縁どられた脚線美に、ぬるりとべろを慕わせると、
ヤツは絡みつくツタのように身をせり上げて。
あっ、痛うぅ・・・っ。
首筋に走る痛みに目をキュッと閉じ、許婚は初々しい肌をヤツにゆだねていた。
ワンピースのすき間から縫い針のように忍び込まされる、鈍い銀色に輝く牙。
ちゅう・・・っ。
ふたりにおおいかぶさったのと同じ音色が、いま許婚の身にもふりかかる。
ゆるく身もだえしながら血を抜かれてゆく、ワンピース姿。
たしかに血はつながっていないけれど。
処女の生き血はさぞや、彼の口に合ったことだろう。

花びらのように、ワンピースを引き剥かれ。
蜘蛛の巣のように、グレーのストッキングを散らされて。
たたみを濡らすのは、ぽってりとした赤黒い血だまり。
咬まれて迸った鮮紅色のシャープなほとびとは違う部位から洩れ出たものは、
甘い敗北感をちりちりと焙りたててゆく。
ご家族のなかのひとりに加えていただくわけですから・・・
そんな殊勝な心がけは、偽りではないだろう。
おなじく血を吸われ、おなじく犯されて。
淫らな上下動に等しく身をゆだねながら。
女たちは愉しげに、目配せし合っている。

狙われた綻び

2006年04月17日(Mon) 06:22:16

あのひとが、破くんですの・・・
黒のストッキングの膝に走った、ひとすじの伝線に。
悦子未亡人は苦笑しながらも、すぐに履き替えようとはしなかった。
ちいさな裂け目から、脛が青白く透けている。
そのうえをまるでいとおしむように撫でさすりながら、
女はわざと裂け目を広げてゆくのだった。
あのひと、とてもエッチなんですよ・・・
そんなふうに、とても愉しげな笑みを浮かべながら。

ひとり立ち去る未亡人を、物陰の鋭い目線が狙っていた。
ほんとうにひとりきりになると、目線の主は喪服姿の前に立ちふさがって。
怯えたように見あげる瞳にいっそうそそられたようにして。
荒々しく女の腕を捉えると、崩れかけた塀をくぐり抜け、
塀のなかの草地に黒のワンピース姿をまろばせていた。
ふたたびおおいかぶさってくる男から、逃れるすべはない。
女は無理無体に衣裳を乱されて、堕とされていった。
誰も見ていない昼下がり。
あからさまに降り注ぐ陽の光のなかで、白い裸身をむき出しにして。

はぁ、はぁ、はぁ・・・
男は荒い息を、女の首筋にふりかけていた。
女は薄っすらと目をひらくと、
お気が済んだ?
そういって、咎めるでもなく、自分の奥を刺し貫いた凶器をじいっと見つめている。
男は、目線に反応するように。
みるみる、怒張をあらたにしていったが。
女はごく自然なしぐさで、男の要求に応じていった。

不思議な奥さんだな。
取り乱しもせずに、とつぜんの凌辱に身をゆだねた女。
淫乱なのかね?
からかうように顔をのぞき込んできたときだけは。
ちがいます。
きりりとした声色に、怖気をふるったのは男のほう。
すまない。侮辱するつもりはなかった・・・
わかっていますよ。
女はすぐに険しい色をおさめると、
貴方がお困りのご様子だから。誘ってさしあげたのですよ。
そういって、もとのにこやかな温顔に立ち戻っている。
お困りでしたら、いつでも救ってあげますよ。
あのひとだって、かげで愉しんで見ているかもしれないですから・・・


あとがき
裂けたストッキングをわざと履き替えずに、男を誘惑した未亡人。
彼女の名誉のために、ですが。
けっして都合のよい女、ではないようです。
行きずりに強姦されて黙っている女なんか、いるわけないですからね。(笑)
どうしても男を救わなければならない事情があったのでしょう。
ここでは深くは触れませんが・・・