FC2ブログ

妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

アンケートをつけてみたのですが・・・^^;

2006年06月30日(Fri) 23:59:59

テンプレートがいうことを聞いてくれません。
もっとも設定できる質問もひとつきりだったので、
案外ブログバトンとかのほうが便利だったりして。(笑)
毎日のようにお越しになりながら、書き込みを遠慮されていらっしゃるかたのお声が聞けたら・・・と思ったのですがねぇ。
よければ、ここに質問を書いておきますので。
お気が向かれましたらお答えなどを・・・^^;
>管理者にだけ表示を許可する
をチェックすれば、ほかの人には見られないで済みますヨ。^^

Q1
あなたは男性?女性?年齢はおいくつくらいですか?

Q2
どのカテゴリがお気に入りですか?(複数回答可)

Q3
お気に召したお話はありましたか?タイトルまたは日付でお答え下さい。

Q4
男性の方へ
もしも身近な女性が吸血鬼に狙われるとしたら、それは誰?
女性の方へ
もしも吸血鬼に襲われているところを身近な男性に見られたいとしたら、それは誰?

Q5
登場人物でお好きな人がいましたら・・・
下記からお選びいただいても結構です。^^

蛭田    表向きは冴えないサラリーマン。じつは・・・
鳥飼女史  女重役。
        才智に長け、蛭田に血を吸わせながらあやつっている、スーパーウーマン。
奈津子   蛭田の先輩。気が強く聡明な、ミニ鳥飼。
        鬱屈するとストッキングを破られることで解消する奇癖も。
間々田   蛭田と同期のエリート。錚々たる外見の裏側は・・・
瑞枝    間々田と結婚した、ミス総務部。
        蛭田の餌食になって奔放に乱れる。
白鳥美和子 謎の美人秘書。吸血鬼に血を吸われながら、ひそかに相手の精力を奪い取る妖しい淑女。
由貴子   柏木の妻。婚約中に吸血鬼に処女の血を奪われて、
        夫を挑発しつつ淑やかに情事を重ねる。
柏木の母  日頃はきちんとした専業主婦。
        まだ幼かった息子の紹介で吸血鬼に逢い、愛人となってしまう。
ここに出ていない人物でも、もちろんけっこうですよ。^^
名前のない登場人物も、多いですから・・・^^;

Q6
こんなお話を描いて欲しい・・・というご希望がございましたら、遠慮なくどうぞ。^^

とっさに思いついた設問ですので、ヘンなものもあるかも。ですが。^^;
気の向いたやつだけ答えて下さっても結構です。

甘い・・・共同行為

2006年06月29日(Thu) 08:00:03

レ○プでイク・・・なんて、嘘。
それは小説のなかでのこと。
だいたいこちらの都合も考えずにいきなり挿入されて、
それで素直に感じてしまうほど、女の体は単純にはできていない。
生身の男とはいっぷうかわった彼に初めて襲われたときも。
ただただ怖くて。震えあがって。涙ぐんでしまっていた。
男との交わりにそれなりの心得のあるまりあにしても。
お肌を咬まれてじかに血を吸われる・・・
そんな仕打ちに慣れていたわけではない。
けれども男はまりあを優しく抱きしめて。
なだめるように。あやすように。そして、甘えるように。
いく度も、いく度も。
ウットリと酔った唇を、
恋人のように慕わせてきた。
淫らな毒液を傷口にすり込むようにして。

初めて異性としての交わりを求めてきたのは。
三度目の逢瀬のときだった。
襲われる・・・そんな行為に慣れてきて。
衣裳を剥がれ。肌を吸われ。咬みつかれ。
生き血を吸い取られてゆく・・・
それが甘い共同行為に変わりはじめていったころ。
はしたない、と思いながら。
まりあは自分のほうからスカートのなかに導いてやって、
すすんで、ショーツを引き裂いていた。
スカートの奥に荒々しく、お行儀悪くほとばされたものを。
熱くほてった秘部は、はしたないほどどん欲に、呑み込んでいったのだ。

いまはもう、草むらの中、愉悦に包まれた遊戯。
時折遠くをよぎる足音が、かえって刺激をよびさます。
見られたの?聞かれたの?
キケンな想像を織り込みながら。
撥ねた泥。散らされたバラ色を織り交ぜながら。
小憎らしいほど、小気味良いほどリズミカルな吸血の音が、
鼓膜の奥へとしみ込んでくる。
リズミカルで激しい腰の上下動に酔わされながら。
まんまと血を盗み取られてしまっている。
あ。だめ。そんなに取っちゃ。
まりあ、死んじゃうよ・・・
甘苦しい笑みを頬に浮かべて。
はだけたブラウス、ずり落ちたストッキング。
うっとうしくまとわりついてくる、濡れたスリップ。
衣裳もろとも、愉しまれながら。
まりあ自身も、愉しんでいる。
身体のあちこちに刺し込まれてくる牙が。
そそり立って突き刺してくる情欲の棒が。
かわるがわる、いとおしむように、貫いてくる。
すみずみまで、血を漁り取られて。
それが愛の証しと思えて。
甘美な酔いに身も心も委ねていく、至福の刻・・・

草むらの合い間から密やかに洩れる、くすくす笑い。
そばを通りかかったときに気づいても。
決してふり向いてはいけません。
つぎに襲われるのは、秘密を知ってしまったあなたなのだから・・・

喪失のあと

2006年06月27日(Tue) 07:32:54

おぉ、だいぶ派手にやりなすったね。
舅になる人はおおらかに笑って、迎え入れてくれた。
おめでと。じつは私もね。あのひとに嫁ぐ前の晩にされちゃったのよ。
姑になる人も夫の目を憚りながら、こっそりと囁いてくれた。
純白の衣裳のあちこちに、泥や葉っぱをくっつけながら。
夫になる人は組んだ腕を放さずに、そのままシャワールームへと連れて行ってくれた。

村のしきたりだから。たいせつな儀式だから。
誰もがそんなふうに口にして。大まじめにかしこまって。
送り出されたのは、あの公園。
いつからだろう?
就寝中の、おぼろな記憶。
ネグリジェのまま、だれかに誘い出されて。
なにをされているのか気がつくころには、
もう自分のほうから嬉々として、夜の相手に処女の行き血を吸い取らせてしまっていた。
薄暗い街灯に映し出された花園は、昼とは違う彩りを放っていて。
  愉悦の楽園。みんなそう呼んでいるんだ。ここの公園を。
告げてくれたのは、婚約者のアキオだった。
  なん回逢ったか、憶えていないの?
  仕方がないな・・・もうだいぶ、きみにご執心らしいから。
アキオさんは諦めたように呟いて。
  あしたの晩、ふたりでここに来ようね。
  きみが彼に処女を捧げるのを、ボクは見届けなければならないから。
両親を含めて、誰もが口にした。
恥ずかしがることはない。たいせつな儀式だからね。

縛られたアキオさんの目のまえで。
夫への貞節を示すため、力いっぱいの抵抗を求められて。
衣裳を裂かれ、悲痛に花婿の名を叫びながら。
それでも淫らに乱れ舞う。
そういうことを、要求された。
ためらいながら始めた行為に、いつか夢中に耽ってしまっていた。
白の衣裳に包んだ純潔を散らされてゆく忘れ難い刻が、身体のうえを通り抜けてゆく・・・

ことが果てて。股間に走る痛みと微かな疼きをこらえながら。
あちこちに散らばった衣裳を拾い集めて。
火照った塊で潔癖な理性をかき乱していった黒い影はいつの間にか、
虚ろな喘ぎをみせたアキオさんを鄭重に介抱し、去っていった。
彼に見えないように、ちょっとだけ泣いて。
薄桃色に、濃い紫に、わが身を染める初めての余韻を密かに愉しみ始めている自分を覚えながら。
草の上から立ち上がって。
照れたように笑みかける彼の横っ面に、しなやかな腕を振るって。
ぴしっ。
平手打ちを一発、お見舞いしていた。
彼は、からりと笑っている。
  ごめんなさい。
  穢されてしまいました。
深々と、頭を垂れて。
垂れた頭を、掻き抱かれて。
身を重ね、また離れ合って。
見詰め合う、眼と眼。
  行きましょう。
なにもなかったように。
白い面貌をとりつくろって。
未来の花婿の手を取っている。

ふたりのあいだに熱く通い合うものを、確かめ合って。
裏腹に、しばしば訪れるであろう情事を思い描いて。
そのどちらをも、心の奥底で愉悦していた。
ブラウスの裂け目からおっぱいがまる見えになっているのを、
ストッキングが破れてずり落ちてゆくのを、
二人して、恥じらいながら。笑いながら。
白々と明け初める公園をあとにする。
お義母さまにお尻、叩かれちゃいますね。
思わず出した白い歯に。
彼もまた、にっ、と笑みかえしてくれていた。

奥深き衣は赤く染めながら 心のなかの色はかはらず

愛する弟に

2006年06月27日(Tue) 03:47:27

娘をひとり、吸血鬼に捧げる・・・・・・
御薗家では代々、それがしきたりとされてきた。
しかし育った二人の子は、どちらも男の子だった。


次男の静哉は母親といっしょに歩いていた。
秋の色濃い街角。
ふつうならどこでも見かける一対の母子の姿であった。
いっぷう変わっていたのは、静哉の身なり。
すこし小さめな紺のブレザー、白のニットのセーターはよいとして。
むき出しの脛には、真っ赤なラインの入った白のハイソックス。
そして腰周りには、濃紺のブレザーによく映えた、赤のチェック柄のスカート
おなじ年かっこうの、女の子の服だった。
さいごにひとつだけ、望みがかなうのよ。
母親のことばに大人しく頷いた静哉は
順子ちゃんの・・・
といいかけて、ちょっと口をつぐんで。
つき合いたかったの?
もの問いたげな母親に。
彼女の服を、着てみたい・・・
うつむいたまま、そう続けていた。
うちは代々、女の子をあげるんだよね?
もっともらしい息子の言い草に、母親はごくしぜんに頷き返している。
順子ちゃん。
それは静哉がいちばん好きだった、近所に住む遠縁の少女の名前。
ほんとうは、彼女と―――。
その先はもう、決して口にするまい。
オレの血を尽くそうとするものの棲む邸のまえ。
静哉はふと足をとめて、後ろを振り返る。
ことさら笑みをつくったひとの頬の白さが、美しく夕映えに輝いていた。
今は黒一色の、喪服姿。
透きとおる黒のストッキングの脛を、静哉は眩しげに見つめて。
深く頷くと、一歩。邸のなかに踏み入れる。
好きだった少女の脚をいつも暖めていたハイソックスが心地よく、ひざ下にぴっちりと吸いついていた。


眠りの霧。
仲間うちでは誰いうともなく、そう呼んでいた。
濃い夜の帳に包まれた一軒屋。
瀟洒なたたずまいをいっそう色濃く蔽っているのは、
鈍い乳色をした重たい霧。
ふふん。
蒼白い頬を満足げにほころばせて。
クールに装った無表情から、隠し切れない才知を覗かせている。
男の名は、静哉―――。
人として生きつづけていれば、22歳の春だった。

家のなかに一人、女が眠りこけている。
餌食にするまえに。
せめてもの慈悲として与える、つかの間の眠り。
抗いようのない睡魔に落ちたその身は、時として血を吸い尽くされてしまうまで、目ざめることがない。
この術を会得するのに、七年が過ぎていた。
がさ・・・
踏み入れた足の下、踏みつけた下草をもういちど踏みにじり、
静哉が目ざすのは、御薗家。
かつて自分が生まれ育った家。
術を会得した褒美として与えられたのは。
もっとも口になじむといわれる、肉親の血―――。


ソファに眠りこけている痩身は、青一色のロングドレスに包まれている。
長い裾から覗く足首は、濃紺のストッキングに透きとおって。
淡く滲んだ燈火を受けて、妖しく艶めかしく映えている。
ナイトが女王に忠誠を誓う接吻をするように。
冷ややかに笑んだ濡れた唇が、女の足許に忍び寄る。
忠誠を誓わされるのは、この館の女あるじのほう・・・・・・
今宵を境に、長く血を支配され、娼婦に堕ちる。
かつては母と呼んだ女に、すこしだけ敬意を表して。
たくし上げたドレスのすそは、ひざ下までにとどめている。
しくっ。
吸いついた唇に、薄手のナイロンの感触を心地よく覚えながら。
なぶるように、慰むように、女の礼装に舌を重ねてゆく。
ぴちゃ・・・ぴちゃ・・・
密やかに唇を這わせ、舌を鳴らして。
女の衣裳をもてあそぶ、ドキドキ胸弾む一瞬、二瞬。
ハッと顔をあげた静哉を、濡れるようになめらかな頬が笑み返している。
笑みの主は女ならぬ身―――
悼治・・・。
静哉が口にしたのは、兄の名前だった。

頬に浮いた笑みは、消えない。
つづけろよ。
兄の声の命ずるままに、静哉は男の身にまとわれた母の礼装を舌で辱めてゆく。
母さんがどこ行ったか、オレに訊かないの?
いよいようなじに牙をおろそうとしたときに。
むしろ優しい笑みを映して弟の所行を見守りつづけた瞳が、ちょっとだけ冷ややかに輝いた。
他所の男に逢いに行っているのさ。父さんといっしょにね。
ふふ・・・っ。
イタズラっぽい兄の笑いにつられて、弟もくすくすと笑んでいた。
あいてはね、道哉叔父さん。
父さんといっしょなら、
まさか浮気だなんて、ご近所にもそう思われないだろうって。
金曜の夜になるとね、ふたり連れだっていそいそと、
それは愉しそうに出かけてゆくのさ。
面白いだろ?
和やか過ぎるほど穏和な兄の口調に乗ると。
途方もない不道徳も、愉しいイタズラに思えてくる。
遠い昔の、あの日もそうだった。
親たちに連れて行かれた遠縁の家で、
初めてあの子の下着を兄弟で悪戯したときも。


結婚、するんだよな?
そのときだけは。
弟の口調が、険悪に尖っている。
首すじに薄っすらと血の帯を描いたまま、悼治はそんな弟を憐れむように見返していた。
結婚するんだよな?
もういちど責めた静哉は、つづけるはずの言葉を言い出せない。
順子ちゃんと・・・
そう。いまは街の誰もが知っている。
かつて密かに憧れたあの少女。
一滴残らず血を吸い取られてしまうその日にまとった洋服の持ち主。
すっかり娘らしくなったその女は、近く兄の嫁になる。

え・・・っ。
静哉は目を瞠っていた。
さっきまで一方的に吸う側だったというのに。
兄の血を吸い取り玩んだその唇に。
血潮の主の唇が重ねられていく。
温かい呼気が、血に飢えた弟の暗鬱な緊張を解きほぐした。
シズがいなくなって、寂しかった。
つよく抱きしめてくる腕が。押し重ねられてくる濡れた頬が。
なによりも率直に、兄の言葉を裏づけていた。

あ・・・っ、はぁ・・・・・・っ・・・
兄さん。本当に初めてなの?
弟が戸惑うほどに熱烈な抱擁だった。
シーツを濡らす、ふた色の熱情のほとび。
ねばねばと互いの太ももにまといつき、
淡く散らされた汗とともに、引き締まった筋肉のうえを、
うわぐすりのように、コーティングしてゆく。
女もののタイツより、似合いだね。
股間に満ちた粘液を弟の口許に滑らせながら。兄はそういってほほ笑んだ。
幼い頃じゃれ合った昔に返って、
薄闇のなかまぐわいを深める、均整のとれたふたつの肢体。
逆立った先端を湿った唇に呑み込まれて。
ちゅ、ちゅう・・・っ。
先刻兄貴の血を吸い上げたときとおなじくらい熱っぽく。
とろけるようにほとび出てゆく、罪深い体液。

いい味だね。
満ち足りたものを滲ませながら。
兄は口許をぬぐって、眩しそうに弟を見あげる。
こっちのほうの牙で、さ・・・
悪戯を相談するときの、人のよくない笑みを含みながら。
兄はまだ、剛くそそり立った弟の茎をなでまわしている。
うん。
幼い昔にかえって、兄の命令に耳を傾けていた静哉が。
フッと、笑みを途切らせた。
兄の瞳はもう、笑っていない。
もういちど、さっき耳にした言葉を、心のなかで反芻する。
順子の処女を、穢して欲しい―――。


順子を嫌いなのか?
母の押しつけた縁談が気に入らないのか?
いずれの問いにも、深くかぶりを振る悼治。
愛している。
深く、愛してしまっている。
弟の思いを知りながら己れの想いを吐き出して。
ごめんな。
兄はもういちど、弟思いの瞳に還ってゆく。
じぶんのものにするよりも。
昂ぶるんだ。そうしてもらうほうが。
それも他ならぬお前に、ね・・・
七年前、ボクの身代わりに血を差し出したお礼とか、
そんな、せせこましい気分じゃなくて。
最愛の婚約者の純潔を、ほかの男に捧げる。
昂ぶるんだ。そういう想いに・・・
引き受けてくれるだろう?お前なら・・・


行ってきまぁす。
順子は間延びした、放り投げるほどぞんざいな声を奥の茶の間に送りつけると。
長い黒髪をサッと翻して、玄関を出る。
許婚者である悼治さんとのデート。
そうは言っても行き先は、ほんの近所にある古びた邸。
知る人ぞ知る名所なんだというけれど。
順子はまだ、その正体を明かされていない。
都会の空気に憧れる若やいだ想いは、そういう辛気臭い場所をあきらかに拒否している。
きょうの服だって。
まっ白なブラウスに、濃紺の無地のスカート。
悼治さんったら、どうしてこんな地味な服を要求するんだろう?
もっといま風の服を着て、都会の街角を闊歩したい気分も察しないで。
求められるまま何気なく脚に通した黒のストッキングのつま先を、ぴかぴか光るエナメルのハイヒールに差し入れて。
カツン、と冷たい音を響かせて、勢いよく玄関を閉めていた。


あ・・・・・・。
氷のような無表情に覆われたその面差しに、
微かな記憶がよみがえる。
さいごに会ったとき、私の服をねだった子・・・
お気に入りの服は彼もろともに、二度と彼女のところに戻ってこなかった。
そんな想いも、つかの間―――。
少年の面影を残した蒼白い顔はすぐ目のまえをよぎると、
もっと間近かに、すり寄ってきて。
そのままうなじにずぶりと、硬く尖ったものをもぐり込ませてきた。
迫ってくる両肩を隔てようとして突っ張った細い手が、震えを帯びて、やがて弱々しく肩からすべり落ちている。
きゅ・・・っ。ちゅう・・・っ。
ぐったりと静かになった肢体から抜き取られてゆく、神聖な処女の血潮―――。
婚約者が処女の生き血を啜られるのを面前に。
彫像のように立ち尽くした悼治は、
ズキズキ、ズキズキとどす黒いものを胸によぎらせながら。
冷然と振る舞う弟の所行に、食い入るように見入っている。

嫉妬、した・・・?
見返してくる女の瞳が、挑発的に輝いた。
純白のブラウスを深紅に濡らした、未来の花嫁―――。
その微笑みには、もはや嘲りの色はなく、
三人の共犯者たちに共通の、悪戯っぽい翳りを秘めている。
深く頷き返したふたりのあいだに芽生えた、もはや断たれることのない絆。
兄弟ながら愛される身を、女はとても誇らしげに輝かせていた。

黒のストッキングのうえからなすりつけられてくる唇に。
もっとよ。もっと下品にいたぶって。あのひとのまえで・・・
なにかに憑かれたように、のびやかな肢体をさらけ出した小悪魔は、
かつての恋人と婚約者とを、ともどもに挑発し続けている。
堕とされてゆく、淑女の装い。
姑の耽った道に、いつか嫁も魅せられていた。
若い目許を悩ましく、潤ませながら。


鮮やかに裂き散らされた、花嫁衣裳。
昨日まではたしかに、いまどきのOLだった。
祝言を挙げる、まえの晩。
親たちの前、けなげに三つ指を突いて。
清楚な白一色のドレスに身を装って。
いでたちに酔うように、女は淑女になった。
裏にどす黒い娼婦を滲ませた、ホワイト・ダーム。
取り澄ませて繕った、婚礼の席。
祝いに席を後にする身内のなかで、あとの宴を知るものは限られていた。
初夜の床を前にして。
花婿は弟に、花嫁の手を譲り渡す。
裾から下腹部までぴちーっと縦に走る裂け目から、思いのほかに豊かな太ももをさらけ出して。
激しく身をそらし、泣き叫んで。
手足をじたばたさせて、思い切り抗って。
それが夫となる人への、貞節の証。
弟の手で椅子に縛りつけられた花婿は、
兄弟で交わしあったほとびにぬらぬらと脛を輝かせて。
花嫁の艶姿から目を離せなくなっている。
咬み破られ、脛まで破れ堕ちた、純白のストッキング。
長く鋭い爪に裁たれたショーツは、ガードすべき腰周りから脱落して。
白づくめの衣裳が、バラ色の飛沫に彩られてゆく。

薄明かりに影絵のように照らし出された、躍動するふたつの肢体。
花嫁を凌辱する逞しい身体は、股間を雄々しくそそり立たせて。
慎ましく結ばれていたはずの口許から、いまはあからさまな喜悦を滲ませていく。
穢し抜き、辱めぬくことが兄への礼節だと教わった、初夜の夜。
順子はもう、静哉さんのもの。
花嫁から獲た誓いを兄の前、誇りながら。
ふたりへの想いをいっそう、股間の奥へとそそぎ込んでゆく。

ほんとうは、血を喪ったきみがすべてを獲ることになるのだよ。
ボクが手にするのは、すべて名義上のもの。
御薗家当主の座と、夫という地位。
花嫁の純潔も。次代の胤すらも。
ほんとうはさいしょから、きみのために用意されていたんだよ。
だから、きみに順子の服を着せて、邸の門をくぐらせたんだ。
愛しいきみに、すべてを譲り渡すために。
ママとふたり、相談ずくで・・・ね・・・

執拗な接吻

2006年06月19日(Mon) 19:45:17

のしかかっているのは、初老の男。
白髪交じりの髪をふりたてて、さっきからうなじにしゃぶりついている。
餌食にされる。
それが快感になったのは、いつのころからだったろう?
身に着けているのは、ママのスリップ。
レエス柄のスリップは、艶を帯びた黒の光沢を散りばめて。
娼婦のように、わが身を彩っている。
男の子なのに・・・
そんな照れや恥じらいとは、とっくにご縁が切れていた。

スリップ越しにまさぐる掌が、歪んだ熱を伝えてきて。
さらさらとした薄い生地の下、小さな乳首を密かに逆立てているのは、
きっとバレているに違いない。
あぁ・・・
思わず洩らす吐息が微かな呻きとなって。
彼の鼓膜を心地よく震わせている。
くすぐったそうに笑みながら。
臆面もなく、唇を重ねてくる。
男どうしで・・・
かつてはそれが、どんなに不思議だったことか。
狎れ・・・とは、怖いもの。
もうなんの違和感もなく。
重ねられた唇を、すすんで吸って。
荒々しい呼気を互いにむさぼり始めていた。

あ・・・っ・・・はぁ・・・。・・・っ。
声にならない、熱情のせめぎ合い。
息苦しいほど吸われつづけて。
やっと唇を離した彼。
  さぁ、言って御覧・・・
求められるままに。
  ウン。気持ちいい・・・
それから?・・・・と、促されるままに。
  もっと、ボクのことを食べて・・・
くすぐったそうな満悦を笑みに交えながら。
小父さんはふたたびかがみ込んできて。
ボクの首すじに、べろを這わせてくる。
しつような嬲りを、心地よく耐えながら。
ズキズキと熱している股間の衝動は堰を切るばかり。
  洩らしちゃうよ・・・
思わず呟いたボクに容赦なく。
小父さんは半裸に剥いたボクの下肢に、
蛇のようにしなやかな脚を巻きつけてくる。
脚に着けているのは・・・
ママがいつも穿いている、黒のストッキング。
しなやかな肌触りの向こう側から、ざりざりと。
脛が、腰が。掌が。そして、唇が。
散々に嬲りを加えて、母の礼装もろとも凌辱を加えてくる。
あ・・・っ。
洩らしてしまった。
  洩らしたね・・・?
小父さんは悪戯っぽくほほ笑むと。
  お仕置きだね。
にんまりと笑んだ唇を、ボクの喉元に圧しつけていた。

ちゅ・・・っ。くちゅう・・・っ。
密かに洩れる、吸血の音。
吸って、吸われて。嬲られて。歓んで。
組んづ、ほぐれつ。
じゃれ合うようなせめぎ合いの彼方にひそむ、背徳の欲求に。
ボクはしんから随喜の声を洩らしながら。
小父さんの欲求に、ぞんぶんに応えてゆく。
ママから受けついだはずの、誇り高い血潮・・・
それすらを、辱められ、嬲り抜かれながら。
  さぁ、言って御覧。
彼はなにを望んでいるのか。
子供のふりをしたところで、ちゃんとそんなことはお見通し。

若い女の血が、欲しいんだろ?
ママの生き血を、狙っているんだろ?
嬉しそうに頷くしたり顔を、小面憎く見あげながら。
それでも服従の快楽は、被虐の愉悦を覚えこまされた血潮を極彩色に彩って。
どくん、どくん・・・
もぅ、あえぎたくなるほどの淫らな鼓動が、
渇きかけた血管を圧し破るばかりに、みなぎっている。

もういちど・・・
そのときだけ、小父さんは少年のように純真に頬を染めながら。
ボクのキスをねだってきた。
己の母親を捧げるという、誓いのキス。
熱情を圧し重ねてくる数瞬、数刻・・・
あぁ・・・
契約成立だ。
あした、連れてくるね。
名残りを惜しみながら身体を離す彼に、精いっぱい媚びを見せながら。
股間を濡らした液体をすくい取る。
捧げ尽くした純粋な血液と引き換えに行儀わるくほとばされた、淫らな白い液。
あしたの今ごろは、ママの身体のなかにそそぎ込まれ、
確実にママを堕とし、狂わせる、魔性の媚薬。
それをいとおしむように、すくいあげ。
接吻を繰り返すように、舐め取ってゆく。
キケンな予感みなぎる、ほろ苦い芳香を噛み締めながら。


あとがき
あるかたにおねだりされて無理して描いた、同性のお話です。^^;
まぁ、ご愛嬌ということで。(笑)

キスと吸血の神秘

2006年06月19日(Mon) 18:49:15

ノーマルな性愛に於いても、キスというものは神秘的な意味合いを持っているようです。
言い寄られつづけた主婦が、キスを許したとたんに落ちた・・・という話。
ほかの男性と戯れる妻や恋人を見て、そのキスシーンに一番嫉妬した・・・という話。
キス・・・それは胸に秘めた呼気を、想いを吸い取られる行為。
何かを吸い取られる、あるいはなにかを伝える重要な手段。
情愛や性欲を覚えたとき、古今東西を問わず訪れる衝動。

吸血鬼が血を吸うとき。
相手を抱きすくめ、うなじを吸います。
秘めたるものを奪い取る行為。
それはキスと表裏のもの。
そうすることによって、拒み恥らう相手のすべてを嗅ぎ取って。
魂を引き寄せ、支配する。
人であれ。人外のものであれ。
唇というものは、物質を超えたなにかを吸い取る魔性の力を秘めているようです。

お見合い相手

2006年06月17日(Sat) 08:01:52

その女性は掘りの深い、エキゾチックな顔だちで。
そのくせひどく古風に、楚々とした風情をたたえていた。
落ち着いたたたずまいに、引き込まれるように。
いつか話しに興じていた。
女に魅かれることも、女に恋われることもなく過ぎた青春。
いつか母に結婚をせっつかれる年齢になってしまっていた。

「誰にもいわないでくださいね」
女はひどく気遣わしげに、そういった。
もうこれっきり、お目にかからないご縁かも知れませんから。
有名女子大を卒業し、一流企業の本社勤務。
サラブレッドな外見とは不似合いな翳を帯びた美貌を見て。
このひとも、隠している己を持っているのだ。
そんな共感が、ますます女との距離を近くした。
なんなりと・・・
促すぼくに、女は意外なことを口にする。
「吸血鬼に、血を吸われているんです。わたくし」
え?と問い返すぼくに、ちょっとためらう風情が、ドキドキするほどなまめかしい。

わたくしの家では、代々女たちがあるお方に処女の血をさしあげることになっているんです。
それに、いずれは純潔もそのかたにおささげするしきたりなのです。
ですから、貴方とおつき合いしても。
挙式のまえに、その方に。
処女を差し上げなければならないんですの。
婚約者の処女を、ほかの男性に盗み取られてしまうなんて。
とても、耐えられないことですよね?

披露宴は、たけなわだった。
新婦の控え室に行くと。
ウェディングドレスを着飾った花嫁に、黒い影が寄り添っていた。
人目を忍ぶように、ひっそりと。
影はぼくのほうへと向き直ると。
紳士が紳士に対するような礼儀正しさで。
おなじ一人の女性を愛するものどうしの共感を込めて。
鄭重に、会釈をして。
それでもごく控えめに。
音もなく、幻のように、姿を消した。
花嫁はあでやかにほほ笑んで。
スッと腕を差し伸べて。
しっかりと、組み合わせる。
ふたりを羨望する視線の待つ大広間にゆくために。

拍手のなかで、母も妹もほほ笑んでいる。
着飾った二人の襟元には、目だたぬようにつけられた赤黒い痣・・・
夕べ目にした、あられもない艶姿とは無縁のように。
花嫁はそんなふたりの祝福に、初々しく頬を染めている。
純白のドレスに隠された、白いストッキングの脚。
ガーターのあたりにほんの少し、夕べのなごりをとどめているのは。
ふたりだけの、みそかごと・・・・・・

逢って・・・

2006年06月17日(Sat) 07:48:17

はじめて遭ったその吸血鬼の男の子は、ひどく内気な感じのする子だった。
公園のブランコで揺られていたら。
木立ちの向こうに、ごく目だたなく、立ちすくんでいるように見えた。
ごく遠慮がちに、というか、おそるおそる、こちらのほうへとやって来て、
「お姉ちゃん、血を吸ってもいい?」
口ごもりながら、そう話しかけてきた。
もう逃れられないと感じた少女は、ずっと年下のその子に姉の顔になって笑いかけて。
恐怖にドキドキと胸をはずませているのをつとめて押し隠しながら、
三つ編みのおさげをかきのけてやっていた。
甘えるように。
肩を抱かれて。
初めて受けた洗礼は、ちょっぴり痛みを伴いながら。
柔らかい皮膚の奥へと、ぐぐっ・・・ともぐり込んできた。

彼の口のはたを濡らしている自分の血に、なぜかウットリと見とれながら。
求められるまま、脚を差し出して。
白のハイソックスをひざ下まで、きっちりとひきあげていた。
「長い靴下、好きなのね?」
純白の生地のうえ、鮮やかに散ったバラ色の沁みが広がるのを。
ふたりして、じいっと見つめながら。
すこし心を開いてくれたらしいその子は、今度こそはっきりと頷いていた。
「いいよ。また会ってあげるから」
人を襲って血を吸っておきながら、まだおずおずとしている少年に、
少女は姉の余裕を取り戻している。

たそがれ時の公園で。
少女はいつも、ブランコをこぎながら、少年が現れるのを待っていた。
毎晩のように逢いたがる少年に。
毎晩のように少女は逢いにきた。
少しずつだけど、許してね。
そういってうなじを傾ける少女に、甘えるようにすがりついてきた。
血に飢えている、というよりも。
ぬくもりに飢えていたのだろう。
ほんのちょっぴり、少女を酔わせると。
少年は謝罪するように、目を伏せながら。
美しく彩られた少女の足許にかがみ込んでゆく。
学校帰りの、黒のストッキング。
勤め帰りの、肌色やグレーのストッキング。
何足、チリチリにされてしまったことだろう。
けれども少女は幼い弟をあやすように、応えてやった。
いけない悪戯をしかけてくる彼のまえ、小娘にかえって、はしゃぎながら。

明日は嫁にいくという晩のこと。
別れを告げる少女を組み敷いたとき。
すっかり丈の伸びた少年に、初めて男を感じていた。
「ぜんぶ、吸っちゃうの?」
いつになく切なくつよい吸いかたに、なかば怯えをかんじながら。
それでも少女は、
そんなふうにされてしまってもかまわない・・・
血を吸い取られていきながら、どこかでそう想いつづけていた。
重くのしかかっていた体重が去ったとき。
少年は感謝の呟きを口にして。
ちょっと離れがたいように、もういちど少女の肩を抱いて。
やがてすうっと、体の重さと、そして気配まで、塵のように消していった。
少女の頬に、熱い涙だけを残して。
披露宴のときに履いていくはずだった白のストッキングにはひきつれひとつなく、
初々しい光沢をしずかにたたえていた。

なん年経ったことか。
少女は母親になり、あのころの自分とおなじくらいの娘がいた。
「ストッキング、履きなれなくって」
娘はぶつぶついいながら、黒のストッキングをきょうも伝線させて帰ってきた。
さいきん娘が学校に履いて行くストッキングが薄くなったのは、
陽気がよくなったせいばかりではないのだと、母親はとうに、見抜いている。
「逢っているのね?」
反射的に頷いて、ハッとした娘に、母親は優しくほほ笑んで。
「いいのよ」
差し出したのは、古びた白のストッキング。
「こんど逢うときに、これ履いていってくれるかな」

初めて身に着けるツヤツヤとしたストッキング。
大人の彩りに染まった脚を恥じらいながら、少女はブランコに揺られている。
おそるおそる這わされた唇が、ハッとしたように動きをとめた。
「どうしたの?」
「ん・・・なんでもない」
白髪混じりになった頭を垂れたまま、
かつての言葉遣いについ戻ってしまう。
なつかしい、あのひとの気配。
「私はもう逢えないの。代わりにこの娘を大切にしてね」
鈴をふるような少女の声の幻が。
くすぐったそうに脚をばたつかせている娘の声と重なっていった。

あとがき
ひさしぶりのあっぷです。^^;
ここんとこ、忙しくって。^^;
「遭う」が「会う」になり、やがて「逢う」になる。
そんな雰囲気、出ているでしょうか?
でも、「合う」になるには、彼はまだ幼すぎたのでしょうね。
さいごの逢瀬に、ウェディング・ドレスの下に合わせるつもりだった白のストッキングを破らなかったのは。
お嫁にいくお姉さんが手の届かない存在になってしまうことを強く感じてしまったせいでしょうか。

処女だと思って、いいですか・・・?

2006年06月13日(Tue) 07:01:44

いま少し、いっしょにいてもらえないですか?
思い切って口にした言葉を、まとも受け止めて。
その女(ひと)は静かにほほ笑んで。
背筋を、しっとりと伸ばして。
よろしいですよ。
たったひと言、そういった。
いまならまだ、終電車の間に合う時刻―――

なぜか足音を忍ばせてゆく、
人影のない暖色の空間―――。
いつも女を誘い込む秘密の宿は、今宵も不夜城と化す。
開いた扉の隙間から、滑り込ませるように誘い込む、一夜の恋人。
壁に圧しつけるようにして両肩を抱きしめて。
思わず口走ってしまった。
処女だと思って、いいですか?
そんなはずもない年頃のその女(ひと)は、
ちょっとびっくりしたように私の顔を見つめて。
それでも、鮮やかに朱を刷いた口許をはじけるようにほころばせ
よろしいですよ。
一瞬白い歯を交えた唇をふたたび引き締めて。
おりてくる接吻を待ち受ける。

臆することなく褥に腰かけたその女は。
黒のストッキングに包まれた足許をさし寄せて。
王女様のように接吻を受け容れる。
清楚な礼装にふさわしくない、ふしだらないたぶりを。
ごく当然のように受け流して。
見あげた花の顔(かんばせ)は、シャンデリアのつくる朧のなか。
たしかに雅びな“華”であった。

優婉―――
使い慣れないそんな文句さえ。
シーツの傍らほどに身近に思える一瞬、二瞬。
奇蹟。
だろうか。
迷い児のように覚束なくまさぐる肌も。
すがりつくほどに鼻腔に溶ける淡い髪の香りも。
かすめるように吸い取った、バラ色の血潮も。
まさに処女そのままだった。
もの問いたげに見おろした横顔は。
すこし照れたように瞼を伏せて。
すいっとさりげなく、目線をそらしてゆく。


あとがき
こんな問いかけは無作法の域に入るかもしれないのですが。
この女(ひと)はためらいもなく身をゆだね。
パートナーの乞いに応えるように、
純潔を捧げる乙女を演じたのす。
妖精のごとく、ミステリアスに。純粋に・・・

夜道で呼び止めて

2006年06月13日(Tue) 06:58:35

「喉が渇いているんですか?」
夜道で呼び止めた、あの女。
折からの風のなか、勤め帰りのワンピースがひるがえる。
「辛いんですよ。吸われるほうも」
諦めたような口調にそこはかとなく漂う諦めが、
かえってわが身をぞくぞくさせる。
すまないね・・・
そういいながら、華奢な身体を電信柱に抑えつけ。
そうっ、と牙をおろしてゆく。
柔肌に護られたぬくもりが、ちくりと突き刺した牙に沁み込むようだ。
つい・・・っ。
吸い出した血潮は切ないほどに甘く、
震えを帯びた上体をつい、きつく抱きしめている。
すまないね。すまないね。
謝罪をどこまで本気にしてくれているのか。
飢えたる者の慈悲などあてにはすまい。
なよなよと頼りない肢体の裡に宿るぴんと張りつめたものが、
侵しがたいなにかを伝えてくる。
逢瀬はつかの間―――
軽く身づくろいをすませると。
「おやすみなさい」
女は何事もなかったような顔をして、そそくさとその場を逃れてゆく。
臥所の嗚咽をたとえ思い描いたとしても。
そんな気ぶりをあらわすのは、むしろ彼女のプライドを傷つけるのだろう。
マンションの玄関に消えてゆく白い姿を目で追いながら。
女を想うよすがをあれほどたっぷりと身に秘めたはずなのに。
早くも渇きを帯び始めたどん欲な喉は、新たな疼きを伝えてくる。
夜道の徘徊はいましばし、終わりそうにない。

夫婦ながら。

2006年06月13日(Tue) 06:54:21

「おや、また買ってきたんだね」
家に戻るなり放り出した紙包みを当然のように開くと、
女房はどす黒い写真に彩られたその本をむぞうさにぱらぱらとめくった。
「ふ~ん、SMか」
まるで男のようにそういいながら、
「あっ、これなんかいいよねぇ」
理解や順応がよ過ぎるのもどうか・・・なんて思っていると、
「後ろにも、妙な人連れてるね」
帰り道に出くわした男は、いつもわが家に血を吸いに来る異形の輩。
「血が欲しいってこと?」
女房は本から顔をあげて、客人をじろりと振り返る。

夫婦ながら食われちまうなんて、情けねぇよな・・・
オレの言い草をふふんと聞き流して。
女房はいそいそとおめかしなんかを始めている。
亭主のオレがいうのもなんだが、
これでもばっちりとメイクすると、まんざら捨てたものでもないのである。
「ダンナの前なんだからね。せめて縛ってよね」
すでに縛られちまっているオレのまえ。
女房は臆するふうもなく、吸血鬼にそんな要求をしている。
ぎゅぎゅっ・・・と巻かれた荒縄が、しなしなとした純白のブラウスのうえから食い込んで。
締まったウェストとたっぷりとした胸とをきわだたせる。
淫靡に輝く黒のストッキングの脚が、やたら鮮烈に視界を彩った。
目のまえにくり広げられる、突極のSM劇―――。
オレはいつものように息を殺して、
別人のようになったヒロインの艶姿を、食い入るように見守っている。

招く服

2006年06月12日(Mon) 07:43:16

「この服、イカスねぇ、叔母さん」
わざと昔の流行り言葉でからかうと、
叔母は小娘みたいに悪戯っぽい笑いを返してきた。
若い頃の服を整理し始めた叔母。
あたりには昔かすかな見憶えのある服たちが、
冷たい畳の上、とりどりな色合いを誇るように横たえられている。
「これなんか、どうかしら?真佐子さんに」
真佐子は私の妻である。
差し出された服はちょっと地味だったけれど。
それだけに、古さが感じられない。
叔母がよそ行きに着ていたのがつい先週・・・
そんな錯覚を覚えるほどに。
きれいな白髪を薄青く染めた女(ひと)は、
あまりおばあちゃんをからかうものじゃありませんよ、
なんて。
笑みばかりは、古きよき頃の少女のように純心さに輝いている。

ワインカラーのブラウス、こげ茶のフレアスカート。おなじ色のハイソックス。
若い女の子の誰もが好んでハイソックスを履いていた時代は、過去にもあった。
叔母はそのころはもう人妻で、女の子、と呼ぶにはちょっと失礼なオトナの女性。
それでもこのイデタチだけを妙にはっきりと憶えているのは、どういうわけだったのだろう。

「ふぅん。なかなか「イカス」よね」
妻の真佐子はぴったりサイズの合ったその服を身に着けると、
ちょっと得意そうにほほ笑んで。
私のまえでくるりと一回転してみる。
「似合うかな?普段着に、ちょうどいいみたい」
叔母にとってはよそ行きのおめかし用の服も、
お洒落な妻にかかっては普段着に格下げか。
ちょっぴり寂しさを覚えながらも。
あまりにもしっくりとくるシルエットに、
目のまえの女性が本当に妻なのか、それとも若い頃の叔母なのか。
あやしいくらいに、ふたつのシルエットはぴったりと重なり合った。

「ちょっと、寝不足みたい」
妻は今夜も、夜の営みを遠慮した。
こういうときは、寝室すらも別になる。
触れ合うとき。べつべつのとき。
はっきり分けたい・・・妻はそういう性格だった。
独りで過ごす寝室の廊下。
夜更け、みしりみしりという忍び足が行き交うようになったのは、
妻が体の不調を訴えるようになったころからだった。

予期したとおり。
足音の主は、妻自身。
いつも背筋をしゃんと伸ばして、しゃなりしゃなりと歩みを進める彼女が、
まるで夢遊病者のような覚束ない足取りで。
独り向かうのは、玄関の彼方。
足が棒になるほど歩きまわった尾行のはてに、
妻を待ち受ける黒い影。
信じられないことに。
夜風にたなびくネッカチーフをほどくと、
妻は自分から、身を投げかけていった。
あきらかにまがまがしい意図を秘めた、その影に―――。

うっ、う・・・うう・・・っ・・・
遠くに響く潮騒のように。
耳の奥をくすぐるような、秘めやかな囁き。
からみ合うふたつの影はとうに、人並みな親密さ以上の接点を得て、
草むらのなか、ひと目も憚らず、乱れあっている。
影はその唇をいく度も妻のうなじに吸いつけてゆき、
ワインカラーのブラウスに、持ち主の生命の破片を散らばしてゆく。
踏みしだかれたお花畑のように乱されたスカートのすそ。
その奥の奥まで、淫らな侵入を不覚にも許してしまっている妻。
ちょっとずり落ちたこげ茶色のハイソックスが、
私になにかを思い出させたのはそのときだった。

見たわね?
誰にも言っちゃ、ダメよ。
ついさっきまで泥濘(ぬかるみ)のなかで戯れていたその女(ひと)は、
白い頬に泥をべっとりとまま、笑んでいる。
子供心に無気味な妖しさを感じ取っていた、あの夜。
まだ若く美しかった叔母は、たしかにそのいでたちだった。
両親にも、もちろん叔父にも、黙っていながらも。
その光景を見たさに家を抜け出して。
しばしば訪れた、秘密の場所。
覗き見する私が抱いていたのがたんなる子供っぽい好奇心以上のものだったことを、
叔母はきっと、感づいていたのだろう。
わざとことさら洩らした声は。
か細くも熱っぽく、淫らな息吹きを胸の奥まで吹きかけてきた。
「見るのが、好きなのね。ずっと見せてあげられたらいいけれど」
叔母夫婦が村を離れたのは、それからいくらも経たないころだった。
叔父がいなくなって、叔母がひとり古い家に戻るまで。
封印されたように、住む人もなかった家―――。
妻がかつての叔母のように。
髪振り乱し、理性を忘れ果ててゆくこの場所は。
いまにして思えばちょうど叔母の家のすぐ裏手だった。

あ、そろそろ時間。^^;

2006年06月11日(Sun) 06:57:35

「あっ、そろそろ時間・・・」
娘のめぐみが居間の時計を見あげて呟いた。
「アラ」
凍りつくような、妻の声。
そんな語調をかき消すように、ことさら明るく
「じゃあ、支度をしなくちゃね♪」
長い髪をさらりとかき分けながら、娘といっしょに勉強部屋へと向かった。

「行ってまいりますわね」
ピアノのお稽古かい?
私はのどやかな声色で、ふたりに問いかける。
「エエ・・・まぁ」
曖昧に頷く二人。
―――ご存知でしょ?
―――ああ、わかっているさ。^^;
夫婦で交わす、暗黙のやり取り。
深緑のスーツや真っ赤なチェック柄のプリーツスカートから覗く母娘の、
肌色のストッキングやまっ白なハイソックスに包まれたふくらはぎを、もの惜しげに見送っている。

夕映えが消え果るころ。
「ただいまぁ・・・」
ちょっと気抜けしたような声が、玄関に響く。
ガタガタ・・・
靴をそろえる、複数の音。
パソコンから顔をあげ、玄関まで迎えに出ると。
妻はちょっと蒼い顔をして、それでも気丈にニッとほほ笑んだ。
若い頃のお転婆娘が、つかの間よみがえったように。
娘もちょっぴり、蒼い顔。
それでも悪びれもせず
「ただいま」
ぴょこんと頭をさげた拍子に、初々しいツインテールが肩先に踊った。

「見せて御覧」
そういと。
娘は初めて羞じらうように、ちょっと泣きべそな顔をした。
「だいじょうぶ」
そういう妻の足許にかがみ込むと。
大きく裂けた肌色のストッキングのすき間から、綺麗な痕がふたつのぞいている。
ちゅっ。
思わず這わせた唇に。
妻は戸惑いながらも、許してゆく。
ちょうどそんなふうに、従順に。
あの男のものになっていったのか。
じりじりと胸を焦がし打ち震えながら。
じわじわと傷口にべろをなすりつけてゆく。

ほんの数秒のことだったろう。
つぎは娘の番だった。
まっ白なハイソックスには、赤黒いものが滲んでいる。
震える手でハイソックスをひざ下から引きおろすと、
妻とおなじようにつけられた、ふたつの痕。
唇を這わせると。
きゃっ。くすぐったい・・・
肩にかかる手に、力がこめられた。
ほろ苦い、血潮の香り―――。
やつが味わっていったであろう、処女の芳香・・・・・・。
それをいとおしむように、舌で撫で着けてやりながら。
いつまでもそっと、娘の両脚を抱きすくめていた。

まっ・・・。
私の横を通り過ぎた妻。
つけっ放しのパソコンのディスプレイに己の姿を認めて、
小娘みたいに顔を赤らめる。
面白そうに輝く目線を魅きつけるのは。
半裸に剥かれた白い肌。
ぐるぐる巻きにされた荒縄の食い込んだ、訪問着。
交互にふくらはぎに這わされる、飢えた唇。
裂かれてゆくストッキング。赤いシミを滲ませてゆくハイソックス。
抱きすくめられうなじを吸われる恍惚の顔―――。
待つのはとても、永かったのだよ。
妻は、あなたのせいよ、といわんばかりに私を優しく睨んで。
それでも、うなじの傷口に唇を重ねられるままにして立ち尽くしていた。

待ち合わせ

2006年06月11日(Sun) 06:38:01

学生たちでがやがやとさざめく喫茶店。
きょうも六、七人ほどの男女が、店の入口近くの座席を占めている。
ぎいっと扉が開いて。
扉を開けた女子学生に、視線が集中する。
「あ・・・ゴメン」
おそくなっちゃった。
そう言わんばかりに肩をすくめて、サッと一座のなかに加わって。
ちゃっかり彼氏らしい男の隣に座っている。
「どうだった~?」
あけっぴろげに聞かれるのを恥ずかしがるように曖昧にかぶりを振ると、
「まぁまぁ、いいじゃん」
一座の頭だった男が、気を利かせてやんわりと諭している。
新来の女は彼氏を引っぱっていって、みんなと別の窓際に移っていった。
そちらのほうを、チラチラと窺いながらも。
一座はまたにぎやかな雑談に戻っていった。
「じゃ、そろそろあたしかな?」
別の女の子が、ショルダーバックを抱えてそそくさと立ちあがって、
やっぱり彼氏らしい男の子に、
「行ってくるねっ」
ちいさく手を振った。
彼氏のほうは苦笑いしながらも、
「じゃあな。待ってるから早く戻れよ」
照れたように目線を逸らして、ことさら仲間の会話のなかに入り込んでゆく。
窓際の女の子が、しきりにうなじのあたりをまさぐっている。
「かゆいんだろうね」
「そうだろうね」
雑談はちらちらと、女の子のほうに戻るのだが。
誰かがべつの話題を振ると、みんなすぐに彼女から念頭を離すのだった。
窓際のテーブルの下、組まれた脚から。
一時間ほど前に店を出るときにはきちんと履いていた肌色のストッキングが、
みるかげもなくチリチリに裂き取られている。

誰もが知っている。というよりも、しぜんに受け止めている。
女の子は誰でも、中学にあがるとお邸に出向いて血を吸われる。
邸の主が母親のもとに通ってくる家では、
それよりも早い年頃で、吸血鬼の応接をさせられる。
お手伝いを言いつけられるように、さりげなく・・・
男の子もたいていが、吸血の経験を持っている。
そして、早くに決められた自分の婚約者が、邸の主に処女の血を与えつづけるのが、ごくとうぜんの習慣になっている。

まだ彼氏のいない妹たちが。
喫茶店の奥のほうのハイチェアに腰かけて。
脚をぶらぶらさせながら、若い男女の語らいを眩しそうに見つめていた。
制服のプリーツスカートの下。
白のハイソックスに撥ねかったばら色のしたたりを、
お互いくすぐったそうに、見せびらかしながら。


あとがき
なんてことのない描写になってしまいました。^^;
もうひとひねり、欲しいところです。(笑)

真夏の吹雪

2006年06月10日(Sat) 09:27:00

「どうしたのよ?」
「どうしたんだろう?」
フロントガラスの前に写るのは、まぎれもない雪。
それも相当の降りである。
さっきまでぎらぎらと輝いていた太陽は、鉛色の雲の彼方でしばらくのあいだ弱々しい輝きを保っていたが、それもやがて吹雪のなかに巻き込まれるようにして途絶えた。
「待ってよ、今って夏でしょう?」
悲鳴にも似た女の文句をよそに、男はブレーキをかけようと必死になっていた。
対向車もほとんどない、山間のスカイライン。
ほどほどに曲がりくねった舗装道路は適度なアップダウンを交えて、スピードを出すにはもってこいの状態だったのだ。
夏タイヤに吹雪を巻き込みながら、時にスリップするときのいやな音をけたてながら、じょじょに減速してゆく。
車がやっととまったとき。男はほう・・・っと始めて安堵のため息をついた。
傍らの女は、もうくたくた・・・といわんばかりに、助手席のシートにのけぞっている。
目のまえには、古びた一軒家があるばかり。
雪はどんどんと降り積もり、瞬く間に信じられないほどの嵩に積み重なっていた。
しばらく待ったものの、とうていやむ気配はない。
あたりはだんだんと、暗くなってきた。
「どうしよう?家に連絡しないと」
女はさっきからしきりに携帯電話をいじくり回しているが、つながらないらしく、しまいに苛立たしそうに電源をぶちりと切っている。
「どうするのよ?こんなところで野宿したら凍え死んじゃうわ」
女はまるで吹雪も男のせいだといわんばかりに、彼に詰め寄った。
ドライブの雰囲気が台無しになったどころか、本当に生命にかかわる寒さがしんしんと夏の薄着のなかに沁み入ってくる。
男ははじめて、目のまえの一軒家に助けを求めようと腰をあげた。

インターホンに応えて細めに開かれた扉ごしに、深い猜疑に包まれた男の眼があった。
子供のように背が低く、さながら矮人のようだった。
「吹雪だって?」
濁った声色が、冷たく鈍く、雪よりも冷たい鋭さで男の胸をさした。
「このあたりでは、よくあることさ」
無関心に閉ざされようとする扉をこじ開けるようにして、男は必死に助けを求めた。
「お願いだ。助手席には妻もいる。このままだと、ふたりとも凍え死んでしまうんだ」
妻・・・ときいて。矮人の反応がちょっと変わった。
「そうか・・・奥さんもいっしょなんだな?」
「ああ、そうだ。雪がやむまでのあいだ、いやひと晩厄介になれないか?もちろんお礼はする」
「お礼をするって?本当か?」
「ああ、もちろんだ」
「あんた。自分が何をいっているのか、よくわかっていないんじゃないのか?」
あざ笑うような矮人の声。吹雪はなおも背中に冷たい。
「どういうことだ!?」
苛立たしげに問い質す男に、
「このあたりでひと晩泊めるお礼というのはね。あんたの奥さんをおれに抱かせる・・・そういうことなのさ」

「いい。覚悟する。しょうがないでしょ?」
そういうなり、女は紫色になった唇をキュッと閉ざした。
早く私をもっと快適なところに連れて行って。
ただそんな思いしか、豊かに熟れた胸の底にはないようだ。
男はあきらめたように、助手席側のドアにまわって、女のためにドアを開けてやった。

開かれた扉の向こう側は、暖色に包まれた楽園だった。
忌まわしく冷え切った黒と白を視界の外に追いやると、
矮人はさっそく「お礼」を要求した。
「いますぐにか?」
「ああそうだ。お前の食事はここに用意してある。好きなだけ食うがいい。代わりに奥さんを・・・」
伸ばされた不潔な手に、女はさすがに眉をひそめていちどは振り払ったけれど。
しつように求めてくる掌に、女はほっそりとした白い手を与えてしまっている。
「行ってくるわ」
そっけなく言い捨てる女に、男は言葉を失った。
「わるく思うな」
矮人はちょっと気の毒そうに男を見た。
初めて示された、かけらほどの同情。
それにすがろうとした目線をはね返して、一対の男女は奥部屋へと消えていった。
体当たりして開けようとした扉は、堅く鎖されて、こゆるぎもしなかった。

「ぁ・・・つ。ひ・・・ッ・・・ぅぅ・・・っ」
切れ切れに洩れてくる、女の声。
それは苦痛だけではなく、じょじょに愉悦をさえ滲ませはじめてゆく。
子供ほどの背丈しかない矮人が、女の豊かな肢体のうえに身をうずめている。
そんな想像が男を嗤(わら)うように、ありありと想念を侵していった。
ああ・・・!
行為のあいだ、男は狂おしく、窓の外の吹雪を呪いつづけた。

ふたたび現れた女は、蒼白くなりかかった肌をふたたびバラ色によみがえらせていた。
シャワーを浴びたのだろう。濡れた洗い髪が艶やかな輝きを放っている。
「ご馳走さま。なかなかいい締まり具合だな。久しぶりにたんのうしたよ」
矮人の嘲りに男は髪の毛が逆立つほど逆上したが。
彼の様子を見つめるパートナーの冷ややかな態度に、振り上げた拳を一瞬とめた。
「殴れよ」
矮人が要求した。
つぎの瞬間。どす黒い感情が、矮人の頬を横殴りしていた。
矮人はちょっとよろけたが、口許に血を流したまま男のほうをふり向いた。
「気の毒したな。だが今晩ひと晩、奥さんのこと借りるぜ」
矮人の瞳のなかに、予期された侮蔑や嘲りを見出すことはできなかった。
暗い瞳のなかにある、もっと深いなにかが、催眠術のように男を縛りつけていた。
スッと身を寄せてきた矮人を、避けることができなかった。
首筋にチクリと針を刺すような軽い痛み。
髪を結い上げてあらわになった女の白い首筋にふたつ、奇妙な痕があるのに気づいたときには、すうっと意識が遠のいていた。

それからあとは、幻影の谷間だった。
「いい腰つきだ。美味しい肉だ」
女を犯しながらうわ言のように女を讃美している矮人を傍らに、
男もまた、酔い痴れていた。
捲り上げられたスカートから、白いお尻をさらけ出した姿勢のまま。
女は朱の唇を半ば開いて、陶然となって。
下肢にとりついた矮人に支配されている。
「気に入ったか?」
「ああ。気に入った・・・」
「じゃあ、もっと愛するがいい。夜が明けるでの約束だぞ」
女の血を吸いながら犯してゆく光景が、朧に包まれている。
まがまがしい光景のはずなのに。
男はもう、咎めることさえ忘れて、パートナーの痴態に見とれてしまっている。
「なかに出すぞ。はらませてやるぞ・・・」
我がもの顔に女のうえにのしかかった矮人は、蜘蛛のように長い手足で女を包んでゆく。
いつか矮人が、女と等身大になっているような錯覚を、男は覚えた。

スッと差し込んできた陽の光が、男をわれに返らせた。
手にしたスパナで、女におおいかぶさっている矮人の頭をいく度も強打していた。
「やったね?」
矮人はふり向くと、なぜかにんまりと笑った。
友だちの悪戯をみつけたような、得意そうな笑みだった。
無気味に歪んだ笑みを、男は何度もスパナで殴りつけた。
女の手を取って扉を押し開き、外に出ると。
そこには朝露に濡れた高原が、見渡す限り広がっていた。
雪など、どこにも、ひとかけらたりとも、見つけることはできなかった。

都会に戻ってきて、じつはもう何日も経っていると知って。
男も女もがく然とした。
女は人妻だった。
日帰りのドライブをかねた、アバンチュール。
幾晩もほかの男と泊まり歩いた妻を、夫は当然許さなかった。
その幾晩もが、あの矮人に捧げられたものだったとしても、
言い訳する権利など、男にも女にもあろうはずはない。
吹雪に降り込められて・・・
思わず口走ってみたものの。
きみはなにを言っているんだ?いうにこと欠いて、真夏に雪かね?
かえってきたのは嘲笑だった。
その日、その地方は雲ひとつない晴天で、雪はおろか雨一滴降ってはいなかったのだという。
ひとり車を飛ばしてふたたび訪れた現場には、
古い一軒家などもちろんどこにも見あたらなかった。
離婚された女はやがて、男の妻となった。
おなかが大きくなっていたのは、あの晩の果実だとわかっていたけれど。
男は子を生ませ、育てることにした。

「ちょっと、いい?」
今夜も息子は夫婦の寝室をノックする。
仕方ないわね・・・
もう寝巻きに着替えていた妻は、そのためにわざわざワンピースに着替えて、ストッキングまで脚に通してゆく。
「眠れなくなっちゃった・・・」
扉の向こうの声は、ひどくか細く、弱々しい。
「まぁまぁ・・・じゃあママがいっしょに寝てあげる」
息子が怯える夜。妻はいつも優しく、幼な児をなだめるように肩を抱いてやる。
いいわよね?
こちらをふり向く妻と、目を合わせ。
いつものように、頷いている。
もう、十代になった息子。
ふたりでおなじベッドに寝て、なにもないわけはなかったけれど。
ワンピース姿の陰から顔をのぞかせた息子は
「パパ、ありがとね。ママをかりるね」
神妙な顔つきでそういうと。
母親が自分の勉強部屋さして足音を遠のけてゆくのをちらと見て。
もうひと言。
「ごめんね。でも、ママって、とってもいい腰つきしてるよね」
笑んだ顔は、あのときの矮人そのものだった。


あとがき
いつになく、ダークなお話に・・・^^;
不倫カップルを襲った吸血鬼。
殺められたあとは犯した女のなかでよみがえり、息子となって復讐をつづける・・・そんなかんじのお話です。

許す。

2006年06月05日(Mon) 07:29:53

ひどい・・・・・・。
枯葉のなかに、押し倒されて。
男は荒い息づかいを頬にぶつけてきて。
首のつけ根に、かぶりついてきた。
お嫁に行くまできれいでいよう・・・
そんな想いで、せっかく守り続けてきた純潔をむしり取るように。
吸い出された血潮が、飢えた喉に悲鳴のようにはじけてゆく。
こんな愉しまれかたをするなんて・・・
心外だった。
そんな少女の想いなど眼中にないように。
男はにたりと笑むと、こんどは足許ににじり寄ってくる。

制服のプリーツスカートを、くしゃくしゃになるまでたくし上げられて。
ぬるぬるとぬめりつけられてくる、よだれに濡れた唇。
薄い生地をした黒のストッキングの、しなやかな舐め心地を。
あきらかに愉しんでいた。
大人っぽいかんじのするストッキング、とても気に入っていたのに。
欲情もあらわな、なまの唇を。じかに受けるなんて・・・
羞恥とおぞましさに、胸が慄っ、と震えていた。
やめて・・・やめて・・・
けれども少女の希いは、聞き届けられることがない。
一陣の突風が吹き過ぎるまで。
恐怖に満ちた恥辱が通り過ぎるまで・・・

週にいく度も。
少女の身体にふたたび血が満ちたころを見計らうように。
男は通学の帰り道を待ち伏せていた。
来る日も来る日も。
純白のブラウスを汚され、黒のストッキングを咬み破られる日常。
それでも少女は衣裳の質を落とすこともなく。
きょうも真新しい黒のストッキングを脚に通して、家路をたどる。

性懲りもなく・・・。
私が黒のストッキング穿いてくるのを。
きっとそんなふうに思っているんでしょう?
いつものように組み伏せられた腕の中。
少女はおもわず、口走っている。
きょうもまた。下肢をもてあそばれながら。
黒のナイロン糸に清楚に縁どられた輪郭を、不埒な牙に侵されてしまっていた。
とろけたオブラアトのように。
ちりちりに破けて、見るかげもなくなってゆく、薄い沓下。
犯されてはならない嫁入り前の素肌をガードしていた繊細な網目模様は、いびつに歪められていた。
男は応えもせずに。
ひたすら、女の下肢に唇を慕わせてくる。
一片あまさず裂き取ってしまわないと、気が済まないのか・・・
少女は大人びたため息をして、
男の狂態がおさまるのを待った。

お似合いだね。黒の沓下。
男は、女を揶揄するような口調を投げてくる。
性懲りもなく・・・とは言わないが。
貴女の毎日の装い、とても愉しませていただいているのだよ。
感謝している。
さいごのひと言だけ、ひどく真顔になっていた。
べつにあなたを愉しませるために、
真新しい靴下を穿いてくるわけじゃないのよ。
ただ、きちんとした女の子でい続けていたいだけなのよ。
でも・・・
どうせ血を吸われちゃうんだったら。
少しでも愉しませてあげたほうがいいのかな・・・
私って、お人よしで、バカだよね・・・

応えの代わりに。
すがるようにしっかりと抱きすくめてくる猿臂。
切々と伝わってきたものに。
少女は息を呑み、ホッとため息をついて。
すこしだけ、迷ったけれど。
もう、ためらいもなく。
枯葉の褥に身を横たえて。
しずかに、両脚をひらいていった・・・


あとがき
お人よしでバカだよね。
案外そんな少女が、男を昂ぶらせ、狂わせ、そして救っていったりするようです。^^

時を経て 見つめつづけるまなざしに

2006年06月05日(Mon) 06:53:22

どうそ。お気に召すままに・・・
黒マントの男のまえ。晴枝は深々と頭を垂れた。
濃紺のセーラー服の胸元を。
ふんわりとした純白のネッカチーフが引き締めていた。
当時の少女たちにとっては、女学校の制服が何よりの礼装だった。
まだ洋装が珍しいころのこと。
  西洋のかただから。お洋服がお好きなんですね。
少女はせい一杯明るい声をつくって、対手の男を見つめる。
これから己の身から生き血を吸い取ろうとする男のことを。

俯いて恥らう少女の肩をつかまえて。
ほっそりとした白いうなじに唇を吸いつけてゆく。
男のなまの唇など、許したこともない肌に。
ぬらぬらとした唾液をたたえた唇を、我がもの顔に這わされて。
つぎの瞬間訪れる、針で刺すような痛み。
思わずはしたなく声をたてそうになるのを、少女はかろうじてこらえていた。

お願い。私だけにして。妹は見逃して・・・
せつせつとした訴えに、つい耳を貸してしまったのは。
少女の願いがあまりにも純だったから・・・
抱きすくめた腕のなか。
自分の欲求に応えるにはあまりにもか細い少女の身体が、
日に日に弱ってゆくのを覚えながら。
それでも身代わりに妹を供しようとすることを、
姉は断固として肯んじなかった。

熱くほとび出る、処女の生き血―――。
今宵もつい夢中になって、味わい尽くしてしまった。
少女はうっとりとなって、嫁入り前の身を大胆なまでにゆだねてきて。
我にかえると、きっと羞じらいのあまり身をすくめてしまうはずだった。
エレガントな足許を淑やかに包む、黒のストッキング。
なぶり抜かれる愉しみを、少女は知らず知らず覚えはじめている。
淫らな戯れにすっかり慣れるころ。
少女は生命の終りを予感すると、きっとこの世の名残りに純潔を捧げてくれるに違いない。
ああ、しかし・・・
死なせてはいけない。
両親も許す褥のうえ。
ぐったりと眠りこける少女の頬に。
不覚にも、熱い涙をしたたらせていた。


夫がいなくなって、もう二年にもなる。
喪服姿に身を包んだ晴枝は、とぼとぼと公園の小径を歩いていた。
あのころと同じ、黒のストッキング。
女と靴下は・・・と揶揄された時代も遠くなった。
当時のそれよりはぐんと強靭になったナイロンの糸は、
ともすると妖しいほどの触感を伴って、婦人たちの足許をゆるやかに締めつける。
それでもなお、あのころのなよなよと頼りない履き心地が時折懐かしく思えるのは・・・
追憶の彼方。
夜な夜なおおいかぶさってきた、厭わしかったはずの影。
一陣のなま温かい風が、にわかに晴枝を包んでいた。

やっぱり、あなただったのね。
ずっと、お待ちしていたんですよ・・・
あなたにとってはつかの間の刻だったでしょうけど・・・
そのあいだに私、もうすっかりおばあちゃんよ。
懐かしい疼きをうなじの奥に感じながら。
あのときと同じように、ブラウスを濡らす振る舞いに口を尖らせてしまっている。
まずい血でしょう?恥ずかしいわ。
しかし、影はあのときと同じように、それはいとおしげに女の髪を撫でつづけている。
あのひとに、遠慮していたの?
夫のことなら、お気になさらないでもよろしかったのに。
そう。
私の嫉妬が、怖ろしかったのね。
あの頃の私、とても純なお嬢ちゃんだったから・・・
ただあなたに、ずっと、そばにいて欲しかっただけ。
でも、あのままだと私、きっと死んでしまっていたんでしょうね。
それがあなたには、耐えられなかった。
だから、私だけを・・・と訴えた私から、
あなたは音もなく姿を消してしまった・・・
寂しかったんですよ。
寂しさのなかで、女を磨いて。
ほんのつかの間だったけど、輝いて。
あなたに見てもらいたい・・・
ずっとそう思っていたのですよ。
けれども今はもう、満足。
遠いところから、ずっと見つづけてくれていたんですものね。
娘を紹介してあげましょうか?
それとも、息子がもらった嫁のほうがいいかしら?
みんな、あなたのことをよく知っているのよ。
聞き分けのよい子ばかりだから。
もっと若い血を愉しむことができるはず。
ぶじに引継ぎをすませたら。
もういいのですよ。
私のこと、お連れしてくださるわよね?
あの子たちの血のなかに、私の名残り、きっと感じていただけるでしょうから・・・


あとがき
なんか、わかりにくかったですね。^^;
少女のころ、妹をかばって逢いつづけた吸血鬼。
いつか想いが深まって、彼を独り占めにしようと思いつめて。
でも吸血鬼は、恋人の生命が絶えるまえに、姿を消してしまう。
数十年も経って。彼女の夫がいなくなったあと。
そっと彼女の側に佇んだ・・・
そんなお話のつもりです。^^;
きっと彼は、世を忍ぶ仮の姿で、
彼女の古い顔見知りの一人のなかに埋没していて。
正体を知った彼女は、彼がずっと彼女を見つめつづけてきたことに気がついたのでしょう。

あのころは自分だけを・・・と思いつめていたかつての少女は、
血を獲たい・・・という彼の欲望を満たすために、
寛大?にも娘たちを引き逢わせようとしています。
成功?するかどうかはともかく・・・ですが。
そうすることで、かれらの血のなかに彼女のおもかげを末永く遺そうとしているようです。

女と靴下は強くなった。そんな言い回し、ご存知でしたか?(笑)

お姉さま

2006年06月05日(Mon) 05:54:51

喜美恵は覚束ない足取りで、とぼとぼと歩いていた。
母にいわれるままに、村はずれの邸へと赴く途中だったのだ。
そこで何をされるのか。
よく、いい含められてはいたのだが。
つい先月まで現実だらけの都会で育っていた彼女には、
とても実感のわかないことだった。
  あそこのお邸には「魔」が棲み着いているの。
  私たちは「魔」の方々に、血を差し上げなければならないの。
母親はいつになく浮わついた、虚ろな声をしていて。
それでいて、娘にいやとはいわせない強さがこめられていた。
濃紺のブレザーに、チェック柄のスカート、濃紺のハイソックス。
着慣れた都会の学校の制服。
そのいでたちで、「魔」に抱かれてくる・・・
付き添いでさっきまでいっしょだった母はいま・・・

「どうしたの?」
背後から呼び止めたのは、自分より二、三年上にみえる少女だった。
古風なセーラー服に、胸元に漂うたっぷりとした純白のネッカチーフが眩しい。
都会ではなかなか見ることのできなくなったきちんとした着こなしが、
いっそう彼女を大人びて見せている。
濃い眉の下。凛とした黒い瞳が冴えた輝きを放っていた。
「あ、あの・・・」
口ごもる喜美恵に、
「このへんじゃ見かけない顔・・・と思ったら。こないだ都会から転入してきたひとね」
くすり・・・と洩らした含み笑いが、とても落ち着いていて。
おぞましい予感にわななく胸騒ぎを、つかの間忘れたほどだった。

「・・・そう」
喜美恵の話を逐一聞いて。
それでも未知の少女は顔色を変えない。
ここではよくあることなのよ。
ありありと、そんな雰囲気を滲ませている。
「やっぱり私、行かなくちゃ」
「そうね」
思い切って口にした言葉に、少女は初めてにっこりとした。
「いいわよ。私。つきあってあげる」
「えっ」
少女は腰かけていたベンチから軽々と立ち上がった。
でも・・・それじゃ、あなたまで・・・
「いいじゃないの、べつに。あたし、馴れているから」
お手本を見せてあげる。
そんな口ぶりが、これから未知の体験をしようという喜美恵にはとても頼もしくて。
巻き添えにしちゃいけない。
そんな気遣いを、つい念頭から消していた。
「お母さまは?」
「あの・・・母は・・・」
思わずかえりみた、背後の納屋。
開けっぱなしになった入口の闇に、かすかな呻きが混じっている。
「・・・そう。そういうことなら、心配いらないわ」
少女はあくまで顔色を変えずに、
黒のストッキングとストラップシューズに包んだ足首を、
惜しげもなく雑草の中に踏み入れた。
「近道なの。いらっしゃい」

少女の足は、信じられないほど速かった。
いままでの歩みが遅かったのかもしれない。
だって、気が進まなかったんだもの・・・
喜美恵のためらいなんかまるっきり無視して、
少女はずんずんと雑草だらけの急な坂道を登っていった。
生い茂るツタに覆われた裏口。
ギイ・・・ッ
門扉の錆びた金具が、耳ざわりな音をたてる。
独りだったら、どんなに怖かっただろう。
行きずりなのに、
こんなおぞましい受難の世界にためらいなく踏み込んでくれた少女。
喜美恵はいつか、姉に覚えるような心地よい甘えを感じはじめている。

邸のなかは薄暗く、人の気配もなく無気味に静まり返っている。
しつらえられた調度は格調のあるもので、
無駄な装飾を削ぎ落としたぶん、どこか離宮のような威厳を秘めていた。
立派なお邸ねぇ・・・
場合が場合でなかったら。
喜美恵も少女らしい賛嘆の声をあげたにちがいない。
「お連れしたわよ。可愛いお客さんを」
怜悧に響く、少女の声。
彼方の薄闇に挑むような強さがあった。
応えるように。
うずくまっていた影が、むくり、と動いた。
ひとつ、ふたつ、みっつ・・・・六人。
喜美恵はさすがにすくみあがった。

「平気よ」
少女はそっけなく言い捨てると、濃紺のプリーツスカートのすそを思いきりよくさばいて、
黒のストッキングに透けた白い脛を、スッと差し伸べていた。
男たちはかわるがわる、少女のまえにかがみ込んで。
まるで姫君に対して礼を尽くすようにして、
少女の足許に接吻を加えてゆく。
ぴちゃ・・・ぴちゃ・・・
ストッキング越しに重ねられてゆく唇の、密やかに淫靡な響き。
少女はもの怖じひとつしないで。
じぶんの足許に加えられる、辱めに似た礼節を受けつづけた。
接吻を加えられるたび。
薄墨色のストッキングが少しずつよじれ、歪められてゆくのを。
じいっと睨むようにして、見守っているのだった。

「いかが?」
挑むような目線に、男どものほうが却ってもの怖じするかのようだった。
少女はまるで王女さまが忠誠を誓った騎士たちにするように、
恭しく跪いた男たちの頭に触れてゆく。
順ぐりに。赦すように。いとおしむように。
男たちは魔法をかけられたように顔をもたげ、
あるものは立って少女の背後にまわり、
あるものは正面に跪いたまま、薄黒く彩られた脚もとにかがみ込む。
襲おうとしているのか。護ろうとしているのか。
どちらとも見まがうまでにたゆたう影のうごきに、
少女は上背のある背筋を反らし、目を瞑って身を任せている。
まるでからみつくツタのように、少女のことを取り囲んでしまうと。
あるものは胸に。あるものはうなじに。そしてあるものはふくらはぎに。
静かに、牙を埋めていった。

細く震えるように洩れてくる、吸血の音。
おぞましいはずの光景は、喜美恵を怯えさせるどころか、
むしろうっとりと痺れさせてしまっている。
少女が心もち顔を蒼ざめさせて、影たちの抱擁から解放されると。
じゃあ次は、私の番・・・
濃紺のハイソックスの脚をぴんと爪先立てて、
喜美恵はむしろ嬉しげに、影のなかへと割り込んでいった。
ちくり・・・ちくっ・・・つぅん。
制服越しに身体のあちこちに埋められてくる鋭利なものが、
却ってくすぐられるように心地よい。
すうっと血潮を抜かれてゆく無重力状態に、陶然と身をゆだねてしまっていた。

「お嬢さん、ありがとう。怖かったろう?」
影たちは心からの感謝をこめて。
少女のことをかわるがわる、いとおしげに抱きしめる。
「いいのよ。もっと吸って頂戴。平気だから・・・」
応対する身のこなしが重く鈍いものになってきて。
切れがなくなってくるのがむしろもどかしくて。
喜美恵は気丈にも、わが身をめぐる血潮を影たちに与えつづけている。
都会で仲良しのクラスメイトたちと交えていた紺のハイソックスは、
すこしばかりずり落ちていていたけれど。
もう、惜しげもなく、よだれの浮いた恥知らずな唇にイタズラさせてしまっていた。

いとおしむように。甘えるように。
かわるがわるなすりつけられてくる唇。
それらを厭うどころか、却っていとおしむように。
彼女はすすんで肌を許していた。
心配そうにかがみ込み、のぞき込んでくる黒い瞳。
深い色をたたえた瞳の奥に、いさぎよい自分のふるまいへの賞賛を感じると。
喜美恵の意識は、昏い闇に堕ちていた。

「お嬢さん、すまないね。つい吸いすぎてしまったよ」
いたわるような口調にふとわれにかえると。
じぶんの周りを漂っていたいくたりもの男どもは姿を消していて。
のこるただひとりが、横たわる喜美恵の足許にまだかがみ込んでいて。
ずり落ちたハイソックスをなおも意地きたなく、ねぶりつづけているところだった。
「いいのよ」
遠慮してためらう唇に、もうひとしきり許してやると。
男はほっとしたように唇を慕わせて。
うってかわって、それはいやらしく、制服の一部をいたぶり抜いた。
怯えを忘れた少女は、そんな男のしぐさをさえ、心地よげに受け流している。
「家まで送るよ」
男はぽつりとそう呟くと、少女を解き放した。

ブラウスのえり首に沁みついたわずかなしたたりと。
ハイソックスにしつようにすりつけられた、なま温かい粘液と。
それ以外に、着衣の乱れはなかった。
安心しなよ。
おれたちは、処女の生き血が大好きなのだから。
影は優しく、囁いている。

影のようにおぼろな身を喜美恵の周囲に漂わせながら。
家路をたどる足どりは小気味良いほどしっかりしている。
「また来てあげるね」
別れ際ほほ笑んだ少女に感謝のまなざしを投げて、
最後の影も消え果てた。

あ。そうだ・・・
どこ、行っちゃったんだろう。お姉様。
眩暈のような混濁のなか。
気丈に励ましてくれた、あの慕わしい少女の幻影に。
お姉様、お姉さま・・・
いつかそう囁きかけては、心を励ましつづけていたのだが。
あれほど馴れている人だもの。もう家に戻ったに違いない。
そう思い切ると、
いつものようにちょっとがさつに、玄関のドアを開けていた。
出迎えた母は何事もないように、
おかえり。
ひと言そういうと、
今夜のおかずは、喜美恵の大好きなものよ。
いつもとなんの変わりなく、いそいそと台所へ立ち戻ってゆく。
大好きなもの。
処女の生き血?
少女は肩をすくめてくすっと笑う。

祖父母も住んでいた古びた廊下を、
現代ふうのハイソックスの脚が小気味よくきしませて、
勉強部屋に戻る途中。
ひっそりと静まりかえった、がらんどうの部屋。
このお部屋には、入らないようにね。
母はそういっていたけれど。
珍しく開けっぱなしになっている扉ごしになかを覗くと。
はっとした。
白い布の広げられた机のうえ。
セピア色の写真のなかでほほ笑んでいるのは。
さっきまで姉のように喜美恵をいたわり励ましつづけていた、あの少女―――。

お姉さま。
思わず口にした言葉。
いつの間にか背後にいた母が、あとを引き取っていた。
知っているの?
お父さまのお母さまのお姉さま。
あなたにとっては大伯母さまよ。
まだ若かったお義母さまをかばい通して、血を吸われすぎて。
早くに亡くなってしまったの。
いまでも時折、村におりてこられるというわ。
もしもこのひとを見かけて、血をねだられたら。
きょうみたいに気前よく、差し上げるようにしてくださいね・・・

公園の植え込みから。

2006年06月04日(Sun) 11:39:35

行きずりを襲われた、ふたりの女性。
白目を剥いて、仰向けになっている。
なかば草地に埋もれながら。
ばらばらに手足をだらりとさせている様子が。
なぜか妖しい艶めかしさを漂わせている。

若い吸血鬼がひとり、向こう側の女のうえにかがみ込んだ。
ちっ・・・
傍らからあがった舌打ちは、彼女のダンナのものだった。
うなじに貼りつけられた赤黒い唇に、キュッと力がこもり、
ぎゅうぅ・・・っ。
あからさまな吸血の音が、やつの妻のうえにおおいかぶさる。

ほとんど同時に。
手前に横たわる女に、べつの唇が這わされる。
白いタイトスカートからさらけ出した、しっかり筋肉のついたふくらはぎ。
「柄物のストッキングはあまり好みじゃないんだがな・・・」
年配の男は愚痴っぽくそう呟くと。
それでもぶちゅうっ・・・と、女のふくらはぎを吸い始める。
強く圧しつけられた唇の下。
ぱりぱりっ、ぶちっ。・・・とかすかな音を立てて、
ふくらはぎを包むナイロンが裂けた。
女は他ならぬ、オレの女房。
隣のヤツとおなじように、思わず苛立たしい舌打ちをしてしまっていた。
好みじゃないんなら、吸うなよな。
そう言ってやりたくなる。
ひとの女房つかまえて、吸い放題に生き血を吸い取っておいて。
見ろよ、女房のやつ、ひどく辛そうじゃないか・・・
あんなにたっぷりと吸われちまって。
あいつめ。そんなこと、気にもしないで。
女房の脚にしゃぶりついて、しつっこく舐めくりまわしていやがる・・・

「そっちはどうだい」
女房のうえから起き上がると。
そいつは女房の血をべっとりと口許につけたまま、相棒のほうを振り返る。
「まぁまぁだね」
のどかな声に、隣のダンナがまたもや反応する。
「まー、若いからもうちょっと漁れるかな」
もう、膝をガクガクさせてやがる。
度胸の無いヤツだ。
・・・オレも、度胸には恵まれていないほうだが。
「この女の血も、悪くないぜ」
人の女房を「この女」呼ばわりか。
あつかましい野郎だ。
まぁ、好みじゃない柄物のストッキングの脚もとに、
あれだけしつこく吸い着けていたのは。
女房の血もまんざらじゃなかったってことだな。
(なぜかちょっと満足。)

「取り替えようぜ」
まだ吸う気かよ・・・
隣のヤツは、身を震わせている。
おいおい、ズボンが濡れてるぜ・・・
昂奮、しちまっているんだな。
この期に及んでかっこつけても、もう手遅れだろ。
あぁしかし・・・
女房のこと、引きずっていって。
あぁあ・・・白のスカートが泥だらけだ。
いつもあんなことされていて。
なに食わぬ顔で戻ってきて。
クリーニング代だって、ばかにならないのよ。
なんて、ぐちぐち文句を垂れるんだろうな。

こんどは若い方のやつのお相手か・・・
手加減、しろよな。してくれよな。
あいつ、見栄張って若作りしてるけど。
もう見かけほど若くないんだからな・・・
あっ、首筋に咬みつきやがった。
ちく生。
ちゅうちゅう、ちゅうちゅう、ひとの女房の血を、
あんなに旨そうに啜りやがって。
向こうの女も、肌色のストッキング引き剥かれているけれど。
もう、女房しか眼に入らねぇ。
おいおい、何するつもりなんだ?
スカートなんか、たくし上げて。
まさか・・・その・・・おいっ!

・・・・・・。
・・・・・・。

あーあ。
とうとう、姦られちまった。
人のことは、言えねぇな。
オレもズボン、濡らしちまった。
しっかしなぁ・・・
あいつ。ふーふー、満足そうに、息ついてやがる。
さいごのほうは、せがんでいたな。間違いなく。
それにしても、よそ行きのおめかしが台無しだ。
頬っぺたにまで、泥撥ねかせて。
ブラウス破かれて、おっぱいまる出しにされちまって。
ストッキングは、ひざ下どまり。
まぁ、ハイソックスみたいに見えなくもないが。
どうやって帰ってくるつもりなんだ?
おや、あいつら。付き添ってくれるつもりらしいな。
心強いガードマンというわけにはいくまいが。
どうせ街中、連れまわして。
さっきモノにした女だって、吹聴してまわるつもりなんだろうから・・・
となりの奥さんも、ひどいていたらくだ。
綺麗にセットした髪の毛くしゃくしゃにして。
両肩むき出しで、ブラのストラップが切れちまってるのまでまる見えだ。
ストッキングは、女房のやつよりも気に入られちまったようだし。
あとが大変だね・・・
泣いてないのが、おなぐさみだが。
気丈な女っていうよりか。
あちらもどうやら、愉しんぢまったくちのようだな。

オレもあいつも、きょうは遅くに帰って。
なに食わぬ顔でいるんだろうな。
それとも。
公園で強姦事件があったって、ちょっと水を向けてやろうかな。
どんな顔しやがるかな。あいつ・・・


あとがき
助けにいけよなー!
と、突っ込みたくなります。^^;
作者に突っ込まれないぶん、
奥さんに突っ込まれちゃってるみたいですが。
見せつける愉しみを味わいたくて。
彼ら、よくこうやって。理解のあるご主人を仕事中に引っ張り出しているようです。
あとはもう、仕事にならんでしょうな・・・

街中で。

2006年06月04日(Sun) 11:08:51

先日、珍しい色のストッキングの女性を見かけました。
紫がかったグレー、というのでしょうか。
ほんのりとつややかで、とても新鮮でした。
白のスカートとの取り合わせは必ずしも洗練されたものではないのかもしれませんが、
かえって脚の線が強調されていて、目を惹きました。
あれはなに色というのだろう?
一瞬のすれ違いだったのに。
かならずしも恰好のいいとはいえない年配の女性の脚。
しばしのあいだ、脳裡に灼きついて、離れなかったのです。

有婦の男性

2006年06月04日(Sun) 11:07:21

将を射んとすればまず馬を・・・などといいますが。
あなたがたはまさに地を行っていらっしゃるのですね。
聞いていますよ。

有婦の男性と仲良くなりなさい。
意気投合すれば、夫人をものにできるでしょう。
そのご家庭に息子さんがいたら、やはり仲良くなさい。
きっと、彼女や許婚を引き合わせてくれるでしょう。

みんな、あなたにたぶらかされて。
喜んで、身近な女性を差し出すようになるのです。
ご近所の藪原さんも。
新婚三か月の若妻を、惜しげもなく貴方にお与えになりました。
夜ごと忍んでくる貴方との逢瀬を、庭先の窓から覗いているんだそうですね。
夜中にがさがさとおとがするので、なかなかの評判です。
知らぬはご本人ばかり・・・のようですが。
その真向かいの家嶋さんも。
長年連れ添った奥様と、お年頃のお嬢様を。
母娘だと、やはり血の味も似るものなのですか?
真面目な奥様は、ご主人以外の男性は初めてだったとか。
貞淑な女性の血の味は、格別だそうですな。
おそろいの黒のストッキングを装わせて。
かわるがわる、年の順に愉しんでいらっしゃるとか。
妬けますねぇ・・・

おまけに、ご主人まで吸血鬼の仲間に引き込んで、
奥様の血を分け取りされていらっしゃるとか。
公平なご配慮だと思いますよ。
え?
公認というのも興ざめなこともある・・・ですと。
意外ですな。
逢瀬の障害となるのは、なんといってもその家のあるじの存在でしょうに。
それをたぶらかせて、味方につけてしまう。
これほど巧妙な手段がほかにありましょうか。
なになに?^^
気づかれずにこっそりいただくのも、なかなかスリルがあるのだ、と。
まぁ、いやらしい。
そんなことをおっしゃって。
うちの家内の貞操をこっそりと召し上がっておいでなの、どなたですかな?
しっかり、ばれておりますぞ。^^
見て見ぬふり・・・というのも、こちらの側からとくと愉しませていただきましたが・・・ね。

魔性のトランプ

2006年06月04日(Sun) 10:54:21

父はハート。兄はダイヤ。義父はクラブ。そして私はスペード。
配られたトランプのカードを目をこらして見つめると。
キングは自分の、クイーンは妻の顔に見えてくる。
スッと差し出された、ハートのジャック。
瀟洒な髭をたくわえた横顔に、哀れむような愁いを帯びている。
カードの主は、隣家の青年。
私たちの首すじに、あの忌まわしいどす黒い痣を刻印した張本人。
村に移り住んでまだひと月と経っていない。
そのわずかのあいだに、四組の夫婦はいもづる式に堕とされていた。

ジャックが何を意味するのか。
知りすぎるほど、知り抜いている。
彼がスペードのジャックを引き当てたのは。
私たちが村のとある一戸建てに入居したその日だった。
もちろん私の知らない処で。
青年たちは息を詰めて、トランプのカードを引いたという。
なにも知らずに挨拶まわりに訪れた私たちをそ知らぬ顔で慇懃にもてなして。
数十分後。私も妻も、ひとしくつけられたうなじの傷をまさぐりながら。
この村のしきたりである歓迎の宴を受ける承諾書に、うきうきとサインしていた。

ご近所に住まうすべての男性に妻の血が等しく行き渡るように。
夜ごと夜ごと、見知らぬ訪客が玄関口に立つ。
ほんの少しの吸血と。それに伴う執拗な凌辱。
いつか、妻ばかりか、私までも。
この異常な儀式を愉しみはじめていた。
声をひそめて身をよじる妻を背にして。私は受話器をとって。
私の実家と妻の実家。それに若い妻をもつ兄のもとへと村への誘いを向けていた。

「すべて、お前のせいだぞ」
口では私を責めながら。
兄も、父も、にやにやと笑っている。
妻と娘、二人ながら堕とされた義父すらも。
傍らにはべる自分の妻の、なまめかしく装ったブラックフォーマルをちらちらと見やる目線に、妖しい期待を滲ませている。

ジャックの主に、クイーン札を。
手渡すと同時に、青年は礼儀正しく会釈をして。
背後に控えていた妻の腕を取って。
真後ろの扉を押し開ける。
真っ赤なロングドレスに身を包んだ妻の後ろ姿が、
まるで引きずり込まれるような強引さで、扉の向こうへと消えていた。

「御覧になっても、かまわないのだよ」
そそのかすような声色は、傍らで様子を窺っていた黒衣の男。
ジャックの主の青年が役得で、妻の貞操を真っ先に奪ったあと。
すぐさま妻のうえにおおいかぶさって、妻をしんから狂わせてしまった男。
残された三人の女たちは彼のほうを窺うと、
みな等しく眉をひそめ、頬を染める。
年の順に征服されていった、かつての母、義母、兄嫁たち。
いまは娼婦のように美々しく装って。
色とりどりのストッキングに足許をなまめかしく染めている。
黒衣の男は、手にしていたカードを差し出すと。
こともなげにテーブルのまん中にぽんと放り投げた。

ひらひらと舞い落ちるカードはへりから落ちて、
かたりと音を立てて仰向けになった。
ハートのジャックだった。
母と隣り合わせに腰かけていた父は苦笑いして、
席を彼に譲ろうとしたけれど。
動きを封じた鄭重な腕はそのまま伸びて、
濃い紫のイブニングドレスの胸元をぐいっとつかんでいた。
「あ・・・」
恥らうように目を伏せて。
脚をすくめて。
けれども母は夫や息子たちの前、
どうしようもなく悩ましい翳を頬によぎらせていた。
エレガントな肌色のストッキングが、
妖しい光沢を、きっちりと合わせた膝頭に滲ませて。
不埒な指を誘うように、なまめかしく輝きつづけていた。

母が去るのを見届けると。
父は同情したように兄を見つめて。
手にしたカードをつきつけた。
ダイヤのジャック。
え?
意外そうな兄も、ようやく察しをつけたようだ。
父は兄嫁をひどく気に入って、かわいがっていたのだ。
「あ・・・では・・・」
とっさのことに口ごもりながらも。
ベージュのスーツ姿の兄嫁は、いそいそと腰を浮かせてゆく。
上背のあるスーツ姿を抱きすくめて、おおいかぶせた唇は。
嫁に対するには少し濃厚な熱を含んでいた。
その場にかがみ込んで、ストッキングの脚に唇をねばりつけてゆく父の横顔を見つめる兄の眼が、それ以上に熱っぽい。

あぁ・・・
背後から洩れてきた呻き声に。
私の背筋に電流が走る。
魔性の抱擁から、最愛の妻を救い出すことは許されない。
震えを帯びた声色に、どうしようもないほどの随喜を滲ませていて。
目の合った義父や義母は、謝罪するように私に黙礼をしていたが。
うつむけた顔には、どこか誇らしげなものを漂わせているのを見逃すことができなかった。

1から10までの札は、手許にない。
いずれ劣らぬ競争率。
村の掲示板に張り出された四人の女の顔写真は、
男たちのあいだにあっという間に広まって。
合わせて40枚のカードには、かなりのプレミアがついたという。
カードを引き当てた幸運なものたちが、
日暮れとともに三々五々、集まってくる。
すべてが吸血鬼、というわけではない。
むしろ、ま人間のほうが多かった。
ま人間でありながら、吸血鬼のしもべとなって。
妻や娘や母親を与えつづけている者たち。
そうした人々のナカマとなるために。
今宵この宴が催される。
妻たちがヒロインを演ずる、凌辱の宴・・・。

眼を輝かせてスペード札を見せびらかすのは。
馴染みになったばかりの職場の後輩。
「先輩の奥さん、好きだったんです」
あまりにもあけ広げな様子に、罪悪感を覚えるいとまもなく。
私を責めるべき人々も、それぞれのカードの持ち主に取り巻かれ、
妻たちの貞操をせがまれていた。

濃紺の半ズボンに、同じ色のハイソックス。
きりっと背筋を伸ばした少年は、父親にカードを差し出した。
義父は年端もいかない息子を穏やかに見おろして。
ただ一人残った女である自分の妻を息子のほうへと促した。
「しっかり教えてもらいなさい。いちばんいいパートナーを引き当てたね」
妻と息子と、ふたりながら祝福を与えて。
背後の部屋をさして脚を向けかけて。
ふと気づいたように、息子をかえりみて。
「きみがお嫁さんをもらうとき、やっぱりこんなふうに気前よくしなくちゃならないよ」
イタズラっぽい問いかけに、頬を上気させた少年は強く頷いている。

恋盗人 ~兄妹相姦の果てに

2006年06月03日(Sat) 09:09:59

あっ・・・はあっ・・・はあっ・・・
いい・・・とってもイイよ・・・
お兄ちゃん。
腕のなかにいるのは、妹の美希。
黒髪を振り乱す女学生は、はぁはぁと息をはずませながら、
ピチピチとした肢体をなおもすがりつけてくる。
くしゃくしゃになった濃紺のプリーツスカートからのぞいた太ももは、
夜目にも白く輝いていた。
さいごのフィニッシュ・・・
奥深くまでもみ入れた怒張から、どっと解放されたように、
白く濁った熱い液体がびゅっとほとび出る。

はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・
心地よい余韻に浸りながら、頭の奥がすうっ・・・と白くなった。
半ズボンの下のふくらはぎに、なにかがもぐり込んでくる鋭利な痛みを覚えながら。
もうなにもできないまま、昏い混濁に堕ちてゆく・・・

ふと気がつくと。
さっきまでおおいかぶさっていた影が、ちょうど去ろうとしていた。
軽い疼痛。眩暈。そしてなにかを引き抜かれたあとの、奇妙な爽快感。
重苦しい体重から解き放たれるのと同時に開けた視界の隅に、
恐怖の色をうかべてたたずむ美希の姿があった。
にじり寄ってくる影に、
「や、やめて・・・」
震える涙声が、青年を我にかえらせた。
「やめろっ!妹になにをする・・・!?」
影は初めて、ふり向いた。
口許にしたたらせているのはたしかに、
今彼の身体から吸い取ったばかりのもの。
蒼ざめた頬をきらきらと彩る生命の破片に、なぜか一瞬、視線を吸い寄せられながら。
「やめろ・・・っ!何をするんだ?」
兄として当然の言葉を口走っている。
「妹さん・・・か」
吸いつけようとした唇を離して、影は少女をまじまじと見つめた。
「恋人どうしにしては、いやに面差しが似ていると思ったが。・・・そういうわけだったのか」
じいっと考え込んだ口ぶりにも、妹を「さん」づけで呼ぶ態度にも、敵意らしきものは含まれていない。
しかし今、彼の身体に唇をつけ、血液を吸い取っていたことにかわりはない。
「誰なんだ?お前・・・」
「わかっているだろう?吸血鬼さ」
影はこともなげにそう応えた。
若い娘さんの血を欲しくてね。
さいしょに目に触れたのは、あんたの脚だったのさ。
男のくせにハイソックスを履いていたのでね。
隣の娘さんを草むらに押し倒すまでは、女の子の二人連れだとばかり思っていたのだが。
たしかに、血の味が似ていたな・・・
己をかえりみる影と目線を合わせた美希は、なおもがくがくと震えていた。
うなじのあたりにきらきらとしたたるものと、セーラー服のえり首に黒っぽく滲んだものとが、
妹がすでに「されて」しまっていることを報せていた。

「どうしようっていうんだ?」
影は応えずに美希のうなじをつかまえると、
ぐいっ・・・
ふたたび牙をもぐり込ませている。
ひい・・・っ
絞りだすようなかすかな呻きが、なにかが体の芯をキュッと引き締めるのを覚えて、
「や、やめろ・・・っ!
もっと強い言葉を投げつけてやりたかった。
かわいそうに、美希は涙もかれるばかり。
「あっ、あっ・・・ああ・・・っ」
固く抱きすくめられた腕のなか、身をよじらせて吸血に耐えている。
吸血鬼が少女を放すと、ふたりとも顔をうつむけて、ひとしく荒い息を吐いている。

影が、ふたたびおおいかぶさってきた。
否応なく、うなじを吸われて。
ぎゅう・・・っと抑えつけられる感覚に、彼は抵抗する意思を奪われていた。
ぎゅうっ・・・きゅうっ・・・
押し殺すような吸血の音。
しかしそのなかに、さっきまで気づかなかったものが、破れた皮膚を通してありありと伝わってくる。
愉悦と、敬意。親しみと、哀しみ。
彼が予感していたような、嘲りや低劣な快楽は、どこにも感じられなかった。
「真っすぐな男、なんだな・・・」
吸血鬼の囁きに、男は激しくかぶりを振っている。
「妹に手を出すような男だぞ・・・」
頭上の男はしずかに首を横に振ると、
「真っすぐだから。好きになってはいけない人を好きになることができるのだ」
共感と憐れみのこもった視線が、心地よく注がれてくる。
「赦してくれ。いま少し・・・」
影の乞いに、青年は知らず知らず、頷いてしまっていた。

ふたたび身を起こした吸血鬼が、妹の足許に影を投げかけてゆくのを、青年はとめようとしなかった。
「少しくらいなら・・・いいよね?」
美希のほうも、兄と打ち解けたらしい男から、警戒心を解いていた。
薄黒いストッキングから浮き上がる白い脛の一角を影が侵すのを、
青年もまた、なぜかドキドキ胸をはずませながら、見入ってしまっている。
美希が・・・妹が・・・未知の男に血を吸い取られる。
男の唇が、愉しんでいた。
美希の若さを、愉しんでいた。
美希もまた、それに応えるように、身をしならせ、眉をひそめながらも許してゆく。
ボクだけのものだった美希。
いまは吸血魔の腕のなかにいる美希。
恍惚となって、夢見るようにして、血を捧げてゆく美希。
その光景はまるで月影のもたらす幻影のように、
青年の網膜を狂おしく彩るのだった。


ひと月がすぎた。
ここは兄妹の住む邸。
母の帰りは、今夜も遅いはずだった。
兄の部屋は、がらんどう。
妹の部屋からは、くすぐったそうにはしゃいだ声。
「女学生凌辱・・・なんてね」
兄は愉しそうに腰を沈めてフィニッシュすると、
すぐに起き上がって、もうひとりの男に場所を譲った。
「きゃっ」
愉悦のはじけた声色だった。
はずんだ胸。からみ合う脚。
血を吸われながら、犯される。
そんな異常な行為に、いつかめざめてしまった妹。
青年はうっとりとしながら、少女の痴態に見入っていた。

美希がイタズラっぽく、囁いた。
「もうじきママ、帰ってくるよ」
どういうわけか、彼女のカンはよく当たる。
ふたりの男はスッと声をひそめたが。
同時にたちのよくない含み笑いが部屋を支配している。
「愛人さんとの、デートがえりね・・・母娘でおなじ時間に、イヤラシイことしちゃってるんだわ」
母さんは未亡人だったね?
そんな問いに。
「ウン、未亡人してるんだ」
青年の勉強部屋の片隅に、未亡人もののビデオが沢山匿されているのを、悪友はよく心得ている。
「あの筋書きで・・・いいんだね?」
ほくそ笑む影に、青年もにやりと笑みを返している。
「さいしょは痛いからねー。ママ泣いちゃうかも」
美希まであっけらかんとそういって、これから母の身に訪れるはずの受難にわくわくしているようだった。
「今夜からはママに遠慮しないで愉しめるんだね」
無邪気にはずむ声が、内容のおぞましさを忘れさせる。
玄関のほうから、がたがたという音が聞えたが。
美希はいつものようにあわてて身づくろいするでもなく、
はだけた制服からおっぱいをまる見えにしたまま、ベッドに尻もちをついていた。

家庭教師

2006年06月02日(Fri) 08:07:01

家庭教師と生徒。
いちおう、そういう関係のはずなのに。
勉強机のまえ。
椅子に座った満智子はなぜか、後ろ手に縛られてしまっている。

「血が欲しいんですか?」
黒い瞳をしずかに輝かせて、問いかける。
ええ・・・
ちょっと恥じるように。
家庭教師の青年が口ごもると。
「どうぞ」
表情を消したまま、少女は不自由そうに身をねじる。
吸いやすいように、垂れ下がるスカートの丈を縮めようとするしぐさに、
知らず知らず青年は、彼女の足許に這い寄っている。
濃紺のプリーツスカートの下は、清楚な黒のストッキングが。
すっかり女らしさを帯びた脚のラインをなまめかしく縁取っていた。
濡れた唇を、しっくりと這わされて。
恥じるように身じろぎするのは、少女の番だった。

なよなよとした薄手のナイロンの向こう側。
男の子のようにぴちぴちはずんだ、生硬な肌。
大人びて装われたふくらはぎに唇を、舌を這わせながら。
恥らう下肢を、いとおしげに弄ぶり抜く。
疼いた牙をむき出して。
かりり・・・
と噛んだとき。
柔らかな筋肉が、びくっとこわばって。
なおも力を込めて、皮膚を破ってしまっていた。
まるで悪戯を愉しむ少年のころを思い出しながら。
震えを帯びた少女の肩を、いとおしげに撫でさすり、
こんどはうなじへと、牙をおろしてゆく。

畳に横たわる、夢見心地の少女。
そのうえからのしかかって、
うなじ、わき腹、太ももと。
順繰りに咬みついてゆく。
ぞくぞくとするような愉悦に慄えながら。
清浄な身に淫らな切っ先を忍び込ませる忌まわしい振る舞いを、
自ら禁じることができなかった。

ふすまの開く音にも構わずに。
想いのたけを初々しい身体に這わせてゆくと。
頭上から降ってきた、母親の声。
  お手柔らかにね。
青年は我に返ったように顔をあげて、
  ありがとう。恩に着ます。
ひと言、呟くと。そのいとまさえ惜しむように。
ふたたび少女のうえに影を投げかけてゆく。
横目にみる母親の足許に、
さっき忍ばせた牙の痕が、
ストッキングに走るひとすじの伝線になって、淡く滲んでいる。

夏服の季節

2006年06月02日(Fri) 07:22:04

夏服の季節になった。
涼やかな白の夏服を、ゆう子は気に入っている。
軽やかにそよぐ薄手のスカートに、脚取りも軽い。
降り注ぐ陽の光のなか、眩しく輝く白。
うなじを縁どる黒の襟章や、真っ黒なスカート・ストラップシューズすらも、
その白のまえには圧倒されがちである。
頭上には、太陽の光を受けてぎらぎらと輝く若葉。
この葉が色づくころ。
夏服を脱いで。
もういちど冬服に着替えて。
そのあとはきっと、どこかの会社に就職をして。
母のように、スーツを着る一人前の女になるのだろうか。

家にいるときすら身に着けている、漆黒のスーツ。
礼装といわれるその衣裳ほど、ゆう子にとって大人の表裏を感じさせるものはなかった。
改まった席では、身にまとう礼装にふさわしく淑やかに振る舞う母。
しかしいったん奥に引っ込むと。
スーツの下を清楚に彩る黒のストッキングは、淫靡な光沢を放つのだ。
蛇のように妖しく、淫らにくねる脚。
パートナーは、異形の男たち。
吸血行為に耽る相手に、惜しげもなくわが身をさらし、恥ずべき欲望に酔い痴れてゆく。
相手すらもしばしば、入れ替わりながら。
母はまだ若いうなじを男に吸わせ、嬉々としてブラウスを朱に染めている。
それをいく度、ゆう子は目の当たりにしたことか。
父親はゆう子がまだ幼い昔に、いなくなっていた。
美しい母を狙った吸血鬼のしわざなのだ・・・誰かにそう聞かされたのは、いつのころのことだったろう。

いまゆう子がスカートの下に履いているのは、黒のストッキング。
ふだん、夏服と合わせることはないのだが。
きょうにかぎって、
これを履いてゆくように。
封を切っていない薄い靴下を渡しながら。
母の顔はいつになくおごそかだった。

履き慣れない薄手の靴下が、妙になよなよとして。
しっとりと食い入るように、肌を押し包んでいる。
母さまが黒のストッキングを穿くとき。
あらぬ想像が、かま首をもたげる。
わたしも娼婦の仲間入りをすることになるのだろうか?
まだボーイフレンドもいないゆう子にとって、
そこから先はまだ未知の世界であった。

指定された邸は、いかにもそれらしい、人けのない処にあった。
見るからに陰気な古びた壁を見あげると、
ざざざっ・・・
時ならぬ風が生温かく、おさげに結った長い黒髪をくぐり抜けてうなじをかすめた。
脚をすくませていると、
ぎい・・・
扉が開いて、奥の闇をのぞかせる。
招き寄せられるように・・・
少女は闇へと吸い込まれていった。

ぽた・・・ぽた・・・
水道の蛇口が、洩れているのだろうか。
冷たく寂しいしずくの音だった。
男は闇をまとったまま。
それでも少女の姿を見透かすことができるらしい。
闇夜に舞う人たちなのだ・・・
目の利かない自分がなぜか、もどかしかった。
口ひげの下から、ふふっ・・・と笑みが洩れる。
嘲りや玩弄とはほど遠いものを覚え、少女の気分を和らげる。
少女の成長を心から歓んでいるような、穏健な紳士の匂いをかぎ分けていた。
吸血鬼だもの。ゆう子が年頃の娘なのが嬉しいんだわ。
ゆう子はちょっと、反撥してみるのだが。
さりげなく持ち上げた手の動きから彼の欲することを読んで。
知らず知らず、片手を差し伸べてしまっている。

手の甲への接吻。
初めて受ける、レディに対するあしらいに、
ゆう子はちょっと、どぎまぎとした。
たとえ吸血シーンのヒロインだとしても。
男は自分を高貴なヒロインにしようとしている。
母に言われてうかがいました・・・
言葉遣いさえもが、いつもより丁寧になっていた。

男は少女を引き寄せると。
なにか聞き取れない、許しを請うような囁きを口にして。
そのままスッとさりげなく身を寄せてきた。
抗ういとまもないうちに、ギュッと抱きすくめられて。
ちく・・・・・・っ
まるで、痛くない予防注射のようだった。
血を吸われている。
その感覚は、無音のうちに体内からなにかを吸い取られてゆくたよりない無重力状態から初めてそれと察しただけだった。

いとおしむような・・・
吸血鬼の腕のなか。
少女はしっかりと抱きしめる腕に、
拘束される・・・という感覚よりも。
護られている・・・という想いをすら覚えていた。
父さま・・・・・・?
たくまず洩れた少女の問いかけに、男はびくっと身を震わせて、
それでもなにも応えずに、少女の血を啜りつづけた。
  ゆう子が大きくなったの、歓んでくれる?認めてくれる?
  みっともない娘で、もの足りない?
うなじから吸い上げられる血に託したそんな思いに応えるように。
すりつけられた唇は、熱い韻律を伝えてくる。
  いい娘になったものだ。お前は自慢の娘なのだよ。
  こんなことをしている私を、どうか赦してほしい。
少女はゆっくりと、かぶりを振る。
  ううん。いいのよ。もっと吸って。
母の行為から、少女は異形の影たちの性癖を心得ていた。
  黒のストッキング、父さまのために履いてきたの。召し上がれ・・・
スッと差し出したつま先のなめらかな動きに、そう振る舞った本人がどきりとしている。

しつようになすりつけられる唇に、まるで厭わしさを覚えない。
母が見知らぬ男たちに許している行為。
おぞましいとしか、感じることのできなかった仕打ち。
そんなあしらいを、彼にはいともむぞうさに許してしまっていた。
  やらしいわ。お父さま。
少女はくすり、ときゃっきゃとはしゃぎ、イタズラっぽく笑いながら。
くすぐったそうにつま先立ちをして、
ぬらぬらとした唾液をねばりつけようとする唇の不埒な意図を封じようと軽く抗っていた。
逢うこともなかった父が。
自分を若い娘としてあしらおうとしている。
軽い小気味よささえ覚えながら。
不埒に迫る唇に、己の若さを誇るように。
少女は男に接しつづける。
とうとうつかまえられちゃった・・・。
いまわたしは、母さまとおなじような顔しているんだろうか?
よだれをたっぷり含んだ朱色のヒルに、大人っぽい黒ストッキングをねじりまわされてしまうのを、
クスクス笑い声さえ洩らしながら、戯れ合ってしまっている。

また、来てくれるね?
エエ。でも・・・
洩れてくる光に白い頬を滲ませて。
ゆう子は小悪魔の笑みをたたえていた。
母さまの愛人にも、抱かれてしまうかも。
くらくらするほど血を吸い取られて、へたり込んじゃって、歩いてこれないかも・・・ね。
でも父さまならゆう子の悪戯、赦してくださるわよね?
よかったら、父さまのほうからうちに来て。
だって、父さまの家なんだもの・・・


あとがき
娘が初めて相手する男はあのひと・・・と。
もしかすると母親はそう決めていたのかも。
母親はそれと知りながら、娘をかつての夫のもとに送り出す。
父はすっかり大人びた少女を、抱き寄せて。
一人前の女として接して。
いとおしむような吸血に耽る。
優しい抱擁のなか、娘は父に己の若さを誇り、許してゆく・・・

早いもので

2006年06月01日(Thu) 07:44:39

昨年5月29日に「吸血幻想」としてスタートしてから、はや一年が経ちました。
やってる本人もちょっと念頭から離れていて、今ごろ気がつきました。(^^ゞ
さいしょの感じでは、反響もあまりなさそうだし、三ヵ月もさらしたらやめようか。なんて思っていたのですが・・・
前シリーズで約500作以上、現シリーズに移行してからも160作ほどになってしまいました。
見に来てくださる皆様のおかげでしょうか。
今日もお越しいただき、誠にありがとうございます。m(__)m