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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

女ともだち♪ その2

2006年08月31日(Thu) 08:01:17

参列者は一列に並んで。
祭壇に歩みを進めてゆく。
膝丈の漆黒のスカートをひらひらと揺らしながら。
まだ暑い季節。タイツを履いている人は少なく、
薄手の黒ストッキングは、白い肌をじんわりと滲ませている
「次は誰を狙うの?」
より取りみどり・・・という目つきで、脚もとの品定めに夢中な裕美に。
華代が蒼い頬に笑みを滲ませている。
「どっちにする?」
最前列に並んで腰かけているのは、親友のみちると歌枝子。
「靴下の薄いほうにする?」
「肌のきれいな子にしようよ」
「みちるに歌枝子の血を吸わせてあげない?」
「それ、面白そう♪」
ふたりの運命は、他愛なく決められた。

えっ?えっ?えっ?
死んだはずのふたりをみくらべながら。
みちるはもう、壁を背にして追い詰められていた。
「血をくれるわね?全部吸われちゃって。切ないの」
「あなたの若~い血♪愉しみだったのよ」
二人に右と左からはさまれて。腕をとられて。
注射針のように、
ちくっ。
ちくっ。
黒のワンピースの胸ぐりに。
髪の毛をかきのけられた首筋に。
同時に牙が突き立てられる。
きゃっ。
悲鳴はちいさく、ちょっとくすぐったそうだった。

薄い靴下、気に入りなんだ。ちょっと舐めさせてね。
もうすこし、あったまりたいな。いいよね?
思い思いに食いついてくるのを拒もうともせずに。
いいわよ。思い切り破ってみて。^^;
あっ。そこはダメ。感じちゃうっ。(><)
いままでみたいに愉しげにじゃれ合いながら。
自分の血を愉しむふたりを相手に、気前よく振る舞いながら。
みちるはじょじょに、頬を蒼ざめさせてゆく・・・

女ともだち♪

2006年08月31日(Thu) 07:51:26

石畳のうえ、ヒールの音をコツコツと響かせて。
連れの友だちとも別れて独りであるく帰り道。
フッと立ちふさがったのは、女の影。
見覚えのある・・・どころか。
さっき献花をしてきた向こう側でほほ笑んでいたはずの遺影が、
リアルに髪を風になびかせている。
「裕美・・・」
そう、死んだはずの裕美が。
いま目のまえで、蒼白い頬に、冷たい笑みをたたえていた。

「参列、ありがと」
にっこりほほ笑むと。
こちらに近づいてきて。
「華代の喪服、一流ブランドのやつだよね」
誤りなく、ブランド名を口にすると。
「気に入りだったんだ~。この服。だから今夜はあなたを選んだの」
「え・・・?」
「見て、この傷・・・吸血鬼に咬まれたの。痛かったわ」
死因は失血死。そう聞いてはいたけれど。
それ以上のことは、ご家族は口を鎖して語ってくれなかった。
「母と妹は血をくれたの。あなたの血も、欲しいわ」
抗う隙さえ、あたえられなかった。
気がついたときには。
しっかりと抱きすくめられていた。
力まかせに、うなじをえぐられていた。

女どうし。それに一対一。
やめさせようとすれば、やめさせられたかもしれない。
ふりほどこうとすれば、逃れることもできたかもしれない。
けれど。
なぜか、力の込めかたが分からなくなって。
ただ闇雲に、もだえるばかりだった。
そのスキに・・・
吸血女は一滴余さず・・・とばかり。
情容赦なく、ひたすら血を吸いあげてゆく。
ちゅー、ちゅー、きゅううぅ・・・っ。
拍子抜けするほど、あっけなく。
ばかみたい・・・と思うほど他愛なく。
血はどんどん、吸い取られていった。

気がつくと。
路をはずれた草むらのなか、二人で抱き合っていた。
裕美は嬉しそうに、体のあちこちに咬みついてきて。
牙を差し込まれるたび。
くすぐったいような痛みが、ちくり、ちくりと胸をさす。
もうどうなってもいいや・・・
そんな気分に、なっていた。
わたしの血、気に入っちゃったみたい。
そんなに美味しいんだったら。
吸い尽くさせてあげても、いいかなっ?
「華代のストッキング、いい感じね。薄くて色っぽいし・・・履き心地はどうなの?」
「エ・・・わりといいのよ。安物だけど」
「そんなことないよ。こだわってるよ。・・・破っちゃって、ごめんね」
「ウウン。どうせ帰り道の心配、しなくてよさそうだし」
「そうだね。そうだよね・・・気の毒だけど、あなたの血。独り占めにしちゃいたいな」
蒼く輝く瞳に魅せられるように。
しぜんとセミロングの髪の毛に手をやって、
うなじを吸いやすいようにと、かきあげてしまっている。

お中元♪

2006年08月31日(Thu) 07:39:00

単身赴任している夫から、大きな荷物が届いた。
「お中元」
と、かかれてあった。
何だろう?
と、包みを解いてみたら。
「ドラキュラの棺おけ」
と、かかれてあった。
へぇ~。新種のおもちゃかしら?
直美は何気なく、ふたを開いた。
きゃ~っ!
思わずその場で気を喪って。ノビてしまっている。

なかからのそっ、と。
腕が伸びて。体を起こしてきて。
のそのそっ・・・と。
棺おけから姿を現わしたのは。
お約束どおり、黒いマントを羽織った吸血鬼。
やれ、きゅうくつだったわい。
ため息混じりにうそぶくと。
さっそく・・・
うつ伏せになってノビている奥さんの足許に、かがみ込んでゆく。
家のなかだというのに、奥さんはブラウスにスカート姿。
ふむふむ。お行儀のよいお内儀じゃ・・・
吸血鬼はちょっと感心したようにうそぶいて。
ふくらはぎに唇を吸いつける。
肌色のストッキングのうえ、唾液をぬらぬらと光らせて。
ゆっくりと、べろをなすりつけていった。

奥様のお目覚めは、夕暮れ刻。
アラ、私としたことが。どうしちゃったのかしら?
棺おけはふたがぴったりと、閉じている。
えっ?閉じている・・・
直美はぞうっ、となって。ふと足許を見返ると。
パンティストッキングのふくらはぎに、よだれがぬらあっと。ねばりつけられている。
きゃっ。
も一度気絶しそうになったけれど。
ぶつぶつ文句を言いながら棺おけを片づけにかかって・・・
じぶんのベッドの隣に安置した。

「1回め。」
画面のなか。
吸血鬼のやつ、茶目っ気たっぷりにウィンクをして。
女房の脚に吸いついてゆく。
あっ。吸われちまった。女房のやつ大丈夫かな?
意外なことに。
いきなり咬んだりしないでさっきから。
ストッキングを穿いたままのふくらはぎに。
ぬめぬめ、ぬめぬめとべろを這わせている。
肌色のストッキングはべろにいたぶられるまま、どんどんねじれていって、
ふしだらなしわが、波打ち始めている。
どういうわけか、腰のあたりがしくっ・・・と疼いてきた。
「今日のところは、このへんで」
あいつ、喉渇いていなかったのかな。ずいぶん長旅だったはずだけど。

「2回め。」
画面のなか。
ヤツは前よりもいっそうたち悪そうに、にんまりと笑んでいる。
「さぁ奥さん、ご馳走になりますよ^^」
女房はまたヤツをみて、気絶してしまったらしい。
まえと寸分違わぬうつ伏した姿勢のまま。
すんなり伸びたふくらはぎに、べろをあてがわれてゆく。
にゅるっ。くちゅう・・・
ねばりつけられてゆく唇が、舌が、どうしてこんなにイヤらしく見えるのだろう?
たんに血を欲しがっているわけじゃないことは。
きのうのやり口で察しがついてはいたけれど。
おいおい。なんてことを。
ひとの女房に、そこまでなれなれしくするもんじゃないぜ?
あっ!噛んだ。噛み付きやがった。
きゅう・・・っ。
血を吸い上げる音がする。
あっ、あっ・・・・。
どんどん血を吸われてゆく。吸い取られちまっている。
きゅうっ、きゅうっ、きゅうっ。
ちくしょう。人をくったような音、立てやがって。
おい、直美?気がつかないのか?
そんなに平和な顔して眠り込んじまっていたら。
ヤツに全部、むさぼられちまうぞ?
ちゅうっ、ちゅうっ、ちゅうっ、ちゅうっ・・・
だいじょうぶかな?
女房の血で、足りるかな?
あいつ、小柄だからな。あんまり血は獲れないはずだぜ?
困った、困った。画面のこちら側からじゃ。助けにいくこともできやしない。
ちゅ、ちゅう~っ、ちゅ――――――・・・・・・
手加減、しろよな。本当に。
あ、あー・・・。
ストッキングがすりむけて、どんどんずり降ろされていく。
あいつ、わざとやっているな?
やれやれ、とんだ災難だ。すっかり魅入られちまったらしい。
ごくり、ごくり、ごく、ごっくん。
あぁ。まだ飲んでいる。飲み耽っちまっている・・・
そんなに女房の血が旨いのか?
ちくしょう。ちくしょう。これ見よがしに、愉しみやがって。

「3回め。」
画面のなか。
話しかけてくるのは、直美のやつだ。
「あなたぁ?酷いお中元もあったものだわ。この人、すっかり私の血が気に入っちゃったみたい。
  今夜も、襲われちゃいそうですよ~」
イタズラっぽく、ウィンクを投げかけてくる。
そんなクセ、まえにはなかったはず。
ヤツからうつされたんだろう。
黒のストッキングを履いた脚を色っぽくくねらせて。
これ見よがしに、くねらせて。
「ダメですよ。主人見ていますもの」
ウットリするような流し目で、吸血鬼を優しく睨む。
吸血鬼のヤツ、得意気にこっちを見ると
「では今宵も・・・失敬させていただきますぞ」
あ。あ。女房の首筋に牙を迫らせていって。
がぶり・・・
あ。あ。あ・・・
直美のやつ、ウットリしちまって・・・
愉しみも、たいがいにするんだぞ?体によくないぞ?
「もう、お行儀悪いんだから」
ブラウスに撥ねた血に、女房のやつはほんのりと、微苦笑して。
自分の血のついた指を唇でチュッ!と吸い取った。
ひどく、蓮っ葉なかんじで。
「あ、ダメ・・・」
黒ストッキングの脚に絡みついてくる吸血鬼を。
口では拒んでいるくせに。
脚では誘っていやがる。
あんなにくねくね、くねらせたら。
ほら見ろ。発情してきたぞ?
スカート自分からたくし上げていって。
ガーター見せびらかすのはちょっと、サービスし過ぎだぞ?
あっ!こら!ひとの女房にのしかかって・・・
うわっ!ブラウス引き裂かれちまった。
きゃーってお前・・・いまさら叫んだって手遅れだって。
脚ばたつかせて。あらがって。
ほんとは欲しいの・・・って顔しながら。
「あなた、あなたぁ・・・!助けてっ!わたし犯されちゃうっ」
嬉しそうな悲鳴、あげちゃって。
どたん。ばたん。どしん。
えっ、いつの間に?
ダメだ。腰なんか使っちゃ。ダメだ!ダメだったら・・・

裕美→華代→みちる→歌枝子

2006年08月30日(Wed) 07:12:47

カッ、カッ、カッ、カッ・・・
ヒールの脚が三対、歩みをすすめてゆく。
色は申し合わせたように、黒。
ストッキングの色も、濃淡取り混ぜながら、黒。
そう。ここは永久(とわ)の別れの場。
裕美ちゃん、きれいだったね。かわいそうに。
女たちは口々に、同僚の若い女の死を悼む。
黒い衣裳に包まれた影はしばらく寄り添うように交わるように歩みを連ねていたが、
やがて、三々五々散ってゆく。

カツン、カツン、カツン・・・
ヒールの脚は、きょうは二対。
控えめだがとりどりのデザインをもった黒いワンピースが、
せわしなげに歩みをすすめる。
華代ちゃんまで・・・ねぇ・・・。
女たちは声を忍ばせて。
ついこの間連れだっていた親友の死を惜しんでいる。
見た?
裕美ちゃんときとおんなじで。
首に針で突いたみたいな傷、あったよね?
もうそんなお話、やめましょ。
相方に遮られて。もう一人のほうも黙りこくってしまう。
黒の衣裳は先日の分かれ道まで来ると。
さよならもいわずに右と左に別れていった。

コツ、コツ、コツ・・・
黒のストッキングに包まれた恰好のよいふくらはぎ。
スカートのすそをさばくように、やや大またに歩みを進めてゆく。
女は、ひとり。
薄手のストッキングに透ける白い肌は冷えた空気のなか、
いっそう冴えるように輝いている。
さいしょのときは、真夏。
このまえは、晩夏。
いまはもう、葉が色づきはじめている。
これほどの短いあいだに、とうとう一人になってしまった。
さよならも言わなかったよね。みちる。
女は来た道を振り返り、独り呟いた。
睫毛の長い瞳がハッと見開かれ、
薄く口紅を刷いた唇が、かすかにわなないた。
折から立ち込める霧の彼方。
喪服姿の女の影が三つ、前途を遮るように立ち尽くしている。


「裕美!華代!みちる・・・?」
どうして?死んだはずなのに・・・
ホホ・・・
三人の女たちは、申し合わせたように喪服を着ていて。
蒼白い頬にかすかな笑みをたたえながら。
遺されたはずの歌枝子を取り囲むように立ちはだかった。
ひとりは歌枝子の腕を、もうひとりは肩をつかまえて。
まえに立ったのは、さいしょに死んだはずの裕美だった。
「ぜんぶ、吸われちゃったんだ」
何を?
問い返すまでもない。
生前と変わらぬ美しさをたたえながら。
血の気の失せた素肌だけが異質だった。
「で、それから華代ちゃんからそっくり頂いたのよねー」
イタズラっぽい口調も、もとのまま。
裕美に肩をつかまれた華代もイタズラっぽい笑みで応えて、
ちょっと身をすくめて見せた。
「華代の血はぜんぶ、あたしが独り占め♪」
蒼白い唇は、おしゃべりをやめない。
「それからふたりして。みちるのこと待ち伏せて・・・ご馳走してもらったんだよね?お葬式の帰り道」
「そうそ。そのときは、山分け」
こんどはみちるが、肩をすくめる晩だった。
おいしかった?
ご馳走さま。
とんでもない話題とは裏腹に、女たちはきゃっきゃと無邪気にはしゃいでいる。
本当はあなたの血も、独り占めにしたかったのよ~
もうっ。裕美ったらイヤラシイんだから。
あら、そおだったの?
よく言うわね。華代ちゃんだって・・・私のおっぱい揉みながら、血を吸ってたじゃないの。
さえずる後輩たちを押しとどめて。裕美がいった。
さっ、きょうは仲良く、歌枝子から血をもらいましょ。
ちょっ、ちょっと待って・・・
歌枝子は手をあげて、三人を制止しようとした。
その手を取って、押しやって。裕美は囁いた。
きょうの服はね。あなたを弔う喪服なのよ。
三つの黒い影に押し包まれた喪服姿は、ひと声アッと声をあげて。
身をすくめて立ち尽くして。
じょじょに姿勢を崩していって。
冷たい石畳の上、眠るように身を横たえていった。

美味しかった?
血をあやしたままの口許が、ほほ笑みかける。
うん。
華代はまだ指先にからみついた紅いものを、舌にからめてもてあそんでいる。
私んときも、そうやっていたよね。
お行儀わるい・・・という顔つきをするみちるは、自分の身体から血を抜かれたことにまだ恨めしそうにしている。
さあ、さ。行きましょ。
あなたもこれだけ吸ったら、満足でしょ?
なりたての吸血鬼を引き立てるように、裕美は囁いた。
歌枝子、ごめんね。お墓で待ってるわ。
人目を避けてわき道に消えてゆく影たちを見ていたのは飛び交う鳥たちだけだった。

どうやって帰ってきたの?

2006年08月30日(Wed) 06:45:36

がたがた。かちゃっ。
玄関のほうで、音がする。
おかしいな。
いまは深夜。
家族はもう、皆戻ってきている。
それどころか、寝静まっている。
今さら、一体誰が戻ってくるというのだろう?
隣の部屋かな?
ここは狭いマンションだ。
隣家の遅い帰宅が、つい自分の家のことのように聞えることだってある。
いや、そうでもなさそうだ。

あれこれ思っているうちに、廊下の向こうの鉄の扉が、ほんとうに開いている。
おいおい!待ってよ!
部屋、間違えているんじゃないの??
入ってきたのは、中年の女。
どこかで見たことがあるような気がする。
けれどもとっさに、思い出せない。
どちらにしても、ここに入ってくるはずのない人であるのに変わりはない。
部屋を間違えている・・・っていったって。
どうしてうちのカギを持っているんだろう?

女は我が物顔にどしどしと上がりこんできた。
ただいま・・・
まるで買い物から戻ってきたような気安さで、荷物を置いて。
ふと目を合わせると。
ありゃ。
初めて、びっくりしたように呟いていた。
「部屋、間違えてますよ」
つとめて冷静に話しかけたら。
「どうやらそのようだね」
女は案外、素直だった。
ごめんね、といって、荷物を持ち直して出て行こうとした。
踵を返して。
玄関に向かおうとして。
ちょっと立ち止まって。
首をかしげて。
「けれどもここに、間違いないはずだったんだがねぇ」
まぁいいか・・・というように。
もういちど、振り返る。

ひとつだけ、言っておくよ。
もうじきここには、あいつが来るから。
それだけ伝えにきたんだよ。
ま、このうちの人間なら、だいじょうぶ。
慣れれば仲良くなるからね。
身近な小母さんみたいな調子でそういうと。
おや。よくみたら。
ショウちゃんじゃないか。すっかり大きくなって。
懐かしそうに、ほほ笑んできた。
えっ?
どうしても、思い出せない。
あなたはいったい、誰ですか・・・?
訊き返すいとまもあたえずに。
こんどはあんたのお嫁さんの番だね。しっかりやるんだよ。
そうやって夜中に隠れて女の下着を着けるのも。
いずれおおっぴらにやれるようになるさ。
・・・うかつにも。どんな恰好をしているのかをつい忘れていた。
黒のレエスのスリップに、同じ色のストッキング。
顔と身体つきだけが、中年の男だった。

あいつが来る。
女の正体はついに思い出せなかったけれど。
来るやつの正体はとうに見当がついている。
招かざる、我が家の客人。
訪れるたびつぎつぎと、わが家の女だちは毒牙にかかり、血を吸い取られてしまうのだ。
子供のころ現れたときにはまだ若妻だったころの母が。
つぎに現われたときにはセーラー服姿の妹が・・・
いまではふたりとも、ひどく落ち着いた顔をして。
時折懐かしそうにうなじのあたりを撫でるクセだけが、今につづいている。

女が置き忘れていった荷物には、女ものの服がひと揃い、入っていた。
明け方それを見とがめた妻は、
アラ、素敵。
行きがかりも気にせずに、やおら袖を通していた。
あまり見慣れない紅葉柄のワンピースが、妻の黄色い素肌にひどくなじんでいる。
あつらえたように、サイズもぴったり。
妻は気に入ったと見えて、その日一日それを身に着けていた。
そう。深夜まで・・・

あっ。う・・・っ。
嬉しげな呻きをひそかに洩らしながら。
いま彼女は吸血鬼の腕のなか。
夫婦の寝室を明け渡されて。
立ったまま、両の二の腕をつかまれて・・・
やつはしずかに、妻のうなじを吸っている。
きちんとそろえた両脚は、肌色のストッキングのかすかな光沢に包まれていたけれど。
ベッドに押し倒されて、ワンピースのすそをめくられて。
太もものうえから、いいように蹂躙されてしまうのだ。
母や妹の例ではっきり記憶に刻みつけられている。
そのあとは・・・
ああ・・・そのあとは・・・
想いが浮き立ってしまうのは、夫としては口にできないことのはずだが。
あんた。お父さん似だねぇ。きっと愉しめるはずだよ。
夕べの女の口調が、脳裏に響く。
あのときそんなことを言っていただろうか?
それとも別の機会にいわれたのだろうか?

ふと見ると。
ワンピースをはぎ取られてむき出しの上体をさらす妻の頭の傍らに。
たてかけてある、一枚の写真立て。
祖母のものだった。
写真のなかのおだやかな笑みが初めて、夕べの中年女に重なった。
闊達な老け顔がなぜか、ひどくイタズラっぽくこちらに向けられているような気がした。

未亡人?^^

2006年08月29日(Tue) 07:07:04

ボクのママ。まだ若いのに未亡人しているんだよ。
おじさん、襲ってみたいんでしょ?^^
無邪気な顔して、とんでもないことを・・・
こら。
と、咎めながら。
素直に餌食になり愛人になったお母さんを、きょうも寝所に引き入れている。
お母さんも、慣れたもの。
セミロングの髪の毛をさらりと肩の向こうに押しやって。
そんなしぐさに腰を浮かした情夫に気づかないふりをして、
両手をベッドの端と端へと伸ばしてゆく。
ツタのようにしなやかな白い腕が、ゆっくりと伸びていって。
心細げに、かすかに震えて。
それでも淫らなまでの白さを誇示するように輝かせている。

うずくまっていた黒い影は、素早く女と影を合わせて。
ベッドのなかに押し倒すのと、飢えた唇をうなじに這わせるのがほとんど同時だった。
くちゅっ。
うう・・・ん。
悩ましげな女の呻き。
くねる脚、しなる上体。
ブラウスに赤黒いものを撥ねかせてしまうと。
女は虚ろに焦点をなくした瞳を蒼白く燃えたたせて、
ひたすら男への奉仕をし尽くしてゆくようになる。
男はうなじといわず、肩といわず。太ももといわず、足首といわず。
くまなく、唇を這わせていって。
女の素肌と衣裳を、あますところなく、辱めつつ愛でてゆく。

わざと半開きになったドア。
そこは、夫婦の寝室だった場所。
悩ましげに眉をひそめた顔も、剥ぎ取られたブラウスからぷるんと突き出たおっぱいも、こちらから窺うことはできないけれど。
天井を指して折り曲げられた膝小僧。
ひくひくと痙攣するように筋肉を浮き上がらせる太もも。
破れたストッキングがまだ脱げかかったまま残っている、爪先立ちしたふくらはぎ。
たったそれだけの光景に、少年の目は吸いつけられた離れない。
その傍らには、もうひとつ。ひっそりと息を詰める黒い影。
「パパ」
少年は黒い影に、そう話しかける。
これで良かったんだよね?パパも愉しいんだよね?
父親は息子の問いにも応えずに。
理性を忘れ、凌辱の愉悦に酔い痴れてゆく妻の姿を、
さいごまでじいっと見つめてゆく。


あとがき
前作の未亡人とおなじ人かどうかは・・・例によって定かではありません。(笑)
未亡人だから・・・と誘い出しておいて・・・
家族みんなで、示し合わせているようです。
襲わせて愉しむ・・・という、いけない趣味。
父子で共有できるのは、おなじ血ゆえのことでしょうか。

おずおず と

2006年08月28日(Mon) 08:11:50

かがみ込んでいるのは、濃紺のハーフパンツの足許。
ふくらはぎまでぴっちりと引き伸ばされた濃紺のハイソックスは、
女の子のストッキングみたいに薄くって。
なよなよ、しんなりと、とてもいい舌触りがする。
なかなか色っぽいね。
そんな私の挑発を。
そう?
心憎く受け流す少年。
口に含んだイキのいい血液が、いつものように心地よく
身体じゅうをぐるぐると廻りはじめてゆく。

どうです?お母さん・・・
息子さんの血、なかなか美味ですぞ。
ですからもうだいぶ、尽くしてしまいました。
お気の毒ですが。
でもまだまだ、取り返しはつきます。
生命を絶つほどには、頂戴しておりませんから。

うちのママは、未亡人しているんだぜ。
息子さんからそう、聞き及びましてね。
いけない気分がまたムラムラと、湧いてしまった・・・というわけですよ。
彼の血がこんなに美味しいのですから。
お母さんの血も旨いに決まっている。
すぐに、察しがつきました。
さてさて。
息子さん、だいぶ眼を白黒させていますね。
どうだい?いい気分になってきただろう?
そろそろお母さんを襲わせていただくけれど。
座をはずしたかったら、体の動くうちにしたほうがいいんだぜ?

おや。
どうやら、出て行くつもりはないようだ。
そうだね。
キミが紹介してくれた獲物だからね。
ほかならぬお母さんを連れてきてくれるなんて。
キミはなんて気の利く男なんだろう?
じゃあそこで、よぅく見ておくんだよ。
私がどんなふうに、お母さんに迫ってゆくのか・・・

では奥さん、こちらを向いて。^^
さぁ、そのきれいなおみ脚を、こちらにもっと近寄せていただきましょうか。
ほほぉ・・・
いい手触りのするストッキングを、お召しなのですね。
え。わざわざ真新しいブランド物をおろしてくださった。
さすがなご配慮です。
なにしろ直接唇を当てるので。
古いやつだと恥をかく・・・奥ゆかしいご婦人ほど、そう仰るくらいなのですぞ。
貴女はまことに、わが邸の客人に相応しいわきまえをお持ちでいらっしゃる。

さっそく、愉しませていただこうか。遠慮なく。
ほら、そんなに固くならないで・・・
そのために、さきに息子さんに相手をしてもらったのですよ。
怖いことなぞ、ないでしょう?
靴下のうえから唇をあてがって。
はみ出した牙を、軽く・・・圧しつけて。
ぐぐ・・・っと埋め込んで。
あふれてきた血で、ほんのりと頬を染める。
ただ、それだけのことなのですから。
どれ。
お母さんのストッキング。
舌触りのほうはいかがかな?

ウフフ・・・
くすぐったいほどに、いい舌触りですな。
こんなふうにして殿方を愉しませたご経験、まだおありにならないようですね。
ご主人はもういらっしゃらないのですから。
もっと、おおっぴらに愉しまれても。
差し支えはないと思いますがね。
にゅるり。くちゅっ。
まことに、よろしい感触だ。
ストッキングも、その下のなめらかなお肌も。
咬み破ってしまうのは、もったいないくらいですな・・・
でもどうぞ、お目を閉じてくださいませ。
あまり痛みを覚えぬように。
綺麗に咬んで、差し上げよう。
さあこんどは、
客人の前でいかに振る舞うべきなのか、
お母さんがお手本を見せる番ですぞ。
いつものように、気丈に振る舞いなさるがよい。
では、つつしんで。^^
ぐぐ・・・っ

もう、のびてしまわれた。
いつもはしっかりものの、気丈なお母上・・・とうかがっていたが。
なに、私の手にかかると。
他愛ないものだね。
ほら、気を失って、お肌をあられもなくさらけ出して。
息子のキミの目のまえで、だらりんとなってしまわれた。
たしか、童貞・・・だったよね。
血をぜんぶ、私に吸い取られてしまう前に。
キミにもいちどは、いい目を見させてあげようか。
でもまずは。
私が先に、いただくとしよう。
そそり立ってきた逸物が。
もう、ワンピースの奥をねだっていうことをきかなくなっているのだよ。
許してくれるね?
そうか、似合いのカップルだといってくれるか。
この期に及んでも、心強いパートナーでいてくれるのだね。
ではよろこんで、これからはママの愛人として
お宅にお邪魔するとしよう。

キミはすっかり縛られてしまって。
これならママを守れなくても、いいわけできるよね?
じゃああとはとっくりと。
ママの素肌をおがむがいい。
おや、粗相をしたみたいだね。
お気に入りのハイソックスに、
どろりとしたものが垂れてゆくじゃないか。
まるで涙でも流すように・・・

ノースリーブの女

2006年08月28日(Mon) 07:41:28

エキゾチックな、大きな瞳をもった女だった。
どうりで、電車のなかでもひときわ目を引いた。
すこし陽焼けをした肌に、ノースリーブのベージュのワンピースがよく似合う。
彼氏にでも逢いにいくのだろうか?
まだ暑い時分だというのに。
パンプスをつっかけた脚には、ナチュラルカラーのストッキングを履いていた。

ノースリープのワンピース。
きっと暑くなる。
そう思って選んだに違いない。
ところが脚には、ストッキング。
考えてみれば、すこしアンバランスな気がしないでもない。
冷え性なのか?
蚊に食われた痕とか、ささいな粗が気になるのか?
たしかに肌色の皮膜を一枚へだてた向こうからは、
青白い静脈やや目につくほどにみとめられる。
けれど、そんなまともな想像よりも。
もっと淫猥な想いのほうが、はるかにまさった。
きっと彼氏に破らせてやるのだろう。と。
彼氏はきっと、ストッキング・フェチ。
まともに口に出す勇気がなくて、言外に匂わされたおねだりをかなえてやるために。
この暑いのにわざわざ女は自分の脚を薄いナイロンで彩って、でかけてゆくのだ。と。

いやいや。残念ながら。
それは少し違うのかな。
想像は再度、べつのほうへと向かいはじめる。
かなり決定的な反証が、彼女のすぐ隣りに控えていた。
息子らしい十歳くらいの少年が、
手にしている本に、母親似の瞳をじいっと注いでいたからだ。
そういえば彼女の彫りの深い顔立ちにも。
どこかしっとりと落ち着いた雰囲気が、
まるで陶器をひきたてるうわぐすりのように、さりげなく、漂っている。

いまどきの子供が手にするのなら、漫画かゲーム。
それなのに少年の手に握られていたのは。
漢字の多い、そうとう難しそうな文庫本だった。
きっと、教育ママなのだ。
そういえば息子のほうは、まっ白のワイシャツに紺のハーフパンツ。
年に不似合いなくらい、大人びた恰好をしている。
大人びた・・・というより、古風・・・というべきかもしれない。
きっと、旧家の子弟なのだろう。
じゃあこれから出かけるところは、裏口入学の交渉かな?
どうしてこうも、よからぬ想像ばかりするのだ。
軽く自分を咎めながら。
親子につづいて、電車をおりる。

駅からつづく白い道は、ひどく見慣れた道。
息子のほうが母親の手を取るようにして、
折り重なるような狭い路地を抜けてゆく。
おやおや。
裏口入学でも、なさそうだな。
まだ独身のように若く見える母親のほうは、
これからお見合いにでも行くみたいな優雅な足取りで。
ゆったりと、息子の歩みに合わせてゆく。
隙のないワンピースと、かっちりとしたパンプスに区切られたふくらはぎ。
肌色のストッキングが太陽を反射して、
てかてか、じんわりとした光沢を。
汗の代わりに、滲ませている。

「ここだよ」
息子が初めて、声をあげた。
前にあるのは、大きなお邸。
そう、私の家だ。
「よぅ」
私は息子の後ろから、なれなれしく肩に手を置いた。
くすぐったそうにふり仰ぐ目線が、イタズラっぽく笑っていた。
「おじさん、ずっとあとをつけてきたんだね?」
どこから気づいた?
そんな問いに。
電車に乗るときから、ずっとだよ。
おやおや。本に気を取られていたわけじゃ、なかったのだね。
「こちら、ボクの母のミユキです。歳は36です」
にわかに改まった口調に、母親は礼儀正しい会釈を送ってくる。
どこまで聞かされているのかな?
好奇心がよけいに、深くなる。

ね?美人でしょ?年かっこうも、食べごろでしょ?
そぉら、口の奥がむずむずしてきて。ママのお肌を咬んでみたくなったでしょ?
おやおや。目つきが悪いぜ?おじさん。
どうやらボクのママのこと、気に入ってくれたみたいだね。
よかった♪
無理を言って、来てもらったんだもの。
どんな御用があるのか、ママにはようく話しておいたから。
遠慮なく、襲ってね。^^
その証拠に、ほら。
じんわり光るストッキング。おじさんの好みに合わせて履いてきたんだぜ。
この暑いのに・・・

あとがき
彼はあの悪戯坊主の友だちなのかも。
悪戯坊主は年上のお姉さんやひとの奥さんを狙うのに。
彼は自分のお母さんを襲わせちゃうんですが。

ええとおそらく

2006年08月23日(Wed) 23:37:12

週末はネット落ちすることになるかと思います。
・・・って、ここんとこずっと、更新をさぼっているような。(^^ゞ
で、例によって申し訳?に、「吸血幻想」時代のお話を再あっぷしました。
以下の六作は、少年のころの柏木が吸血鬼氏と初めて出遭ったころのお話です。
「誰の代わりに・・・?」
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-465.html
導入部、です。
「子供のころの作文」
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-466.html
「子供のころの作文 2」
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-467.html
このふたつは、少年時代に書かれた日記風のメモ・・・という感じてで綴ってみました。
まだ決定稿、というわけでもなく。
どんな描き方がいいかな・・・というノリで作った「習作」です。^^;
子供っぽい表現が意外な効果をもたらすものだと自覚?できたのは、
「悪戯坊主」のシリーズhttp://aoi18.blog37.fc2.com/blog-category-23.htmlを描くようになってからのことでした。

「箪笥の抽斗」
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-468.html
上記の続編です。
母親の箪笥の抽斗を・・・というモチーフでさいしょに描いたお話です。
「幻想」のときには「女装」のカテゴリにしていました。
おなじモチーフの話で「近親」や「女装」に入れているものもあるかと思います。
このあたりの「分け」は、依然として迷っています。
「夕暮れ時の公園にて」
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-469.html
自分のすねやふくらはぎのうえで、ママの身代わりに履いたストッキングを辱められてゆく少年。
その行為にママ自身への凌辱の意図がかくされていることを、身をもって実感してゆくようになる。
そんなシーンですが。
いままでとは一転して、大人になってからの回想・・・というモードを取っています。
不統一で、もうしわけありません。^^;
表現に淫靡さを加えてゆくと、どうしても子供言葉を超えざるを得なかったので。
まだまだ修行が足りませんね。
「薄いナイロンの神秘」
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-470.html
母に魅かれる吸血鬼が、さいごにたどり着く境地が、少年への吸血とオーバーラップするようにして語られていきます。

「音」
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-471.html
夜更け。
さりげなく物音をたてて、自宅をあとにする妻。
これも初期作品ですが。
出来不出来はともかくも、ですが。
久しぶりに読み返してみて、もうすでにモチーフのほとんどはさいしょからできあがっていたのだなあと思いを新たにしました。(苦笑)

「ひぐらし時雨」
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-472.html
さいごの一話は一転して、晩夏のシーンを描いたもの。
去年の9月19日にあっぷしたお話です。
ちょっと季節感のあるやつを取り上げてみたくって。
とうとつに、入れてみました。^^;

え?新作がないって?
ごめんです。(^_^;)
明朝「魔」が囁くかどうか・・・がリミットですな。(^^ゞ

お着替え

2006年08月20日(Sun) 07:39:34

どんな服を着ていこうかしら?
主人の柏木を振り返ると。
きょうはひと言、あるみたい。
  そうだね。先週が黒のフォーマルだったから。
  きょうは純白のワンピースが似合いかな。
えっ?こないだ新調したばかりなのよ。
もう少し、楽しませてくださいな。
そんな気分を含ませたつもり・・・なんだけど。
あのひと、ちっとも気がつかないみたい。
  そう。だからこそ、いいんだよ。
ですって。
  白い衣裳はね。
  飛び散った血が鮮やかに映えて、とても似合うんだよ。
  それと、ストッキングは黒・・・かな。
  破けたときに、脛の白さが際だつだろう?
  とてもセクシーだって。あのかたがそう、仰るんだ。
わたくしの気持ちになんか、ちっともお気づきにならないで。
もう、由貴子の衣裳を決めてしまわれました。
もう少し貴方のために、清らかな装いをしていたかったのですが・・・

ストッキングで脚を彩ることができるのは女の特権だけど。
ボクも少し、あやかってみようかな?
あのひとの顔が人の悪そうな笑みを浮かべて。得意そうに、輝きます。
はい、はい♪
仕方ないわね・・・
うちには聞き分けのない息子がひとり、いるみたい。
聞き分けよく箪笥の抽斗から、黒のストッキングを一足。
差し出された黒の薄絹をサッと取りあげると、
わたくしよりも器用に、つま先に通してゆくんです。

女どうしみたい。
ふたりで脚並べて、薄手のナイロンを太ももへとひき上げていって。
太ももにぴっちりと密着したガーターが、鮮やかに。
由貴子の白い肌を区切っています。
そこから下は、娼婦の翳。
上は・・・そう。あのかたの餌食・・・。。。
  これなら犯されるときも、身に着けたままでいられるね?
そんなにじっとりと、わたくしの顔をのぞき込まないでください・・・。
これから捧げつくすものの美しさを賞賛するような、
眩しげな視線を感じます。
男のひとに見つめられることじたいは、とても快感。
わたくし、やっぱり娼婦の素質があるのかしら。
主人の目は・・・ちょっとまとわりついてくるようで、うるさいんですけど。
さぁ、出かけましょう。
襲われて凌辱される淑女を、綺麗に演じさせていただきますね♪
貴方のご満足のいくように・・・


あとがき
ちょっと趣向を変えて。
由貴子の独り言を、採録してみました。^^

喪服の母、制服の娘

2006年08月20日(Sun) 07:26:37

ぴっちりとアイロンのよくきいた、重たげな濃紺のプリーツスカート。
ぴかぴかと黒光りのするかっちりとしたストラップシューズ。
そんな硬質なイデタチに区切られた少女の脛を染めるのは。
薄手の黒ストッキングの、涼しげな翳のような彩り・・・

さぁ、お母様がお手本をお見せしますからね。
なにが起こっても、お行儀わるくしてはいけませんよ。
お母さんは娘の肩に手を置いて。
諭すように言い含めると。
まず自分の脚をスッ・・・と、差し出している。
向かい合わせに待ち受けるのは、イタズラっぽく笑む、濡れた唇。
たっぷりとしたふくらはぎにまとっているのは、娘とおなじ黒のストッキングだったけれど。
お母様のストッキング、なんかイヤらしい。
娘の目にもそう映るほど、毒々しい光沢をよぎらせている。

ぁ・・・
小娘みたいな悲鳴を飲み込んで。
お母さんは自分で自分のひざ小僧を抑えつけながら。
ボウタイを垂らした胸を心持ち、わなかかせて。
なよなよとしたストッキングをねじるようにいたぶってゆく不埒な唇の動きを見つめている。
口許から滲むように現れた、人間離れした牙。
娘がハッとする隙もなく。
それは見る見る、黒の色艶に青白く透けた皮膚を冒していった。

ストッキングを剥ぎおろされてしまうと。
お母さんは、気品の漂っていた白い頬に、ふしだらに弛んだ色を滲ませながら。
傍らの娘の所作を見守っている。
指先の震えひとつ、見逃すまいと。
濃紺のプリーツスカートの下。
いまは少女の黒ストッキングが、母親とおなじあしらいを受けている。
  このかたは、紳士ですから。
  こうしてね。
  素肌をじかに吸うような不行儀はなさいませんのよ。
  ですからあなたもお心安く、愉しませて差し上げてくださいな。
さっきとおなじように。包むように肩を抱きながら囁きかけてくるお母さんに。
娘はゆっくりと、頷き返してくる。

唾液をなすり付けるようにして。
しつように、ねぶりつけられてくる唇を。
少女は嫌悪しながらも、目を離せないでいる。
いちど、お母様みたいなストッキングを履いてみたい。
そんなおねだりをする少女に。
じゃあ、わたしについていらっしゃい。
でもきょうは、いつも学校に履いていくやつになさいね。
笑みを含んだ目に逆らえずに、脚に通してきた通学用のストッキング。
知的で大人びた装いには不似合いないたぶりに、
なぜか少女はゾクゾクと、胸ときめかせ、衝動を閃かせていた。

ひとしきりお愉しみいただけたら。
あなたは先に、お帰りなさい。
わたくしはいま少し、こちらに御用がありますから。
どんな御用・・・ですって?
それをあなたが知るのは、まだ早いわね。
ナ・イ・ショ♪
お父さまにももちろん、黙っていてね。
いい子にしていて、処女のままだったら。
高校を卒業するまえにいちど、教えて差し上げますからね。

いまは、夏服の季節。
黒のストッキングは、去年の冬の記憶とともに。
薄っすらと破られ、散り裂けてゆく。
ぜんぶ、破ってしまったら。
お母様みたいなお洒落なストッキング、いただけるわね?
そうね。学校に履いて行っても結構ですよ。
お友だちを、連れてくるつもりがあるのなら。
クスクスと笑みのはじける下で、女たちの装いは淫らな歪みを広げてゆく・・・

嫁と姑

2006年08月20日(Sun) 06:49:20

まんまなタイトルですが。(笑)

おそろいの黒のストッキングに包んだ脚を連ねて、
ふたり連れだって夕闇の路をたどる嫁と姑・・・
そんなシーンを妄想します。
艶めかしく装った脚を。
なめらかに輝くうなじを。
競い合うように、差し出して。
夫に、息子に隠れて愉悦に耽る、ふたりの女。
娼婦のさがに目ざめ、女にかえった嫁と姑は。
つつしみをかなぐり捨てて乱れ果てる、互いの肢体を見つめあいながら。
共犯者の笑みを交わしあい、互いの不貞を許しあってゆく。

ひとりの男をはさんだ微妙な対立関係と、おなじ女としての連帯感。
そんなものを巧く描ければ・・・と思います。

どちらが先に、餌食になるのか?^^
家に伝わる淫らな因習を嫁にも伝授する・・・ということであれば。
姑さんが率先して、自らの貞操を嫁の前で散らしながら。
おなじ行為を強いてゆき、
嫁が夫にすら隠れて家の作法を従順に受け容れてゆくことで、ふたりの間に共犯関係が成立する・・・みたいなお話になりますし。

穏やかな日常に妖しい影を入り込ませて、貞淑な姑をたぶらかす淫乱な嫁・・・という方向であれば。
自らの不貞を認めさせ、思い切り酔わせてしまって。
息子の仇敵であるはずの存在に、さいごには嬉々として己の貞操を捧げさせる・・・みたいなノリになりますし。

どちらが、よろしいでしょうか?
どちらも、歪んでいますね・・・

あら、時間・・・。

2006年08月20日(Sun) 06:35:47

あら、時間・・・。
妻のサトミは腕時計に目をやって。
こちらを振り返ると、薄っすらとほほ笑んで。
お約束の時間なんです。ちょっと、出かけてまいりますわね。
まっ白なワンピースに包んだしなやかな肢体が、ドアの向こうへと。
すべり込むように消えてゆく。
同居している母のシズエは、もう先刻。
なにかに呼び出されたようにハッと顔色をあらためて。
わが身を紛れ込ませるようにして、夕闇の彼方へと姿を消していた。

夜更け―――。
玄関先でドアを開けたてする音が、にわかに聞えてきた。
ふたり一緒に、戻ってきたようだ。
開けっ放しの寝室のまえを横切ってゆく、ふたつの影。
白のワンピースの下は、ノーストッキング。
たしか家を出るときは。
肌の透ける黒いストッキングが、ひざ小僧に刺激的なまでの光沢を滲ませていたはずなのだが。
黒のスーツの下には、やはり黒のストッキングがきちんとまとわれていたけれど。
よく見ると薄っすらと、縦に伝線を滲ませている。
ふたりの襟首からのぞくのは、断ち切られたブラジャーのストラップ。
不埒な手が、ふたりの衣裳の奥深くまで侵入したのを裏づけていた。
そんなものがはみ出したままの恰好で。
ふたりは家路をたどってきたのだろうか?
誰見咎めるものもない夜更けの道とはいいながら。

あらお義母さま、あまりしつこくされなかったんですね。
とにもかくにも、まだストッキングを履いている母を、
妻はさりげなく冷やかしている。
いえいえ。履き替えを二足も、用意していったのですよ。
あら。まぁ。
秘めやかに戯れ合う、柔らかい声色たち。

どうやら気づかないふりをして、寝ていたほうが賢明だ。
そう思って向こうに寝返りをうったとき。
ママ・・・
か細い泣き声が、妻のほうへとかけ寄っていった。
あぁ、いい子いい子。
声色はすぐに、優しい母親のそれにすり変わっている。

さして手を焼かせずに子供部屋のドアが閉じられると。
あの子も、いずれ・・・
そうね。中学にあがる頃かしら。
悪い大人たちは、そんな囁きすら交し合っている。

憎めない血

2006年08月20日(Sun) 05:55:55

「先日のお話・・・ね」
芙美子が薄っすらと、ほほ笑んだ。
つぎに洩れる言葉が吉か凶か、微妙な笑みからは読み取ることができない。
「まだ、迷っておりますの」
透きとおるような白い頬が、困ったような笑みをたたえつづけている。
出会ってひと月。
プロポーズしたのは、先週のことだった。

貴方のことは、好き。
けれどもね・・・
それから先をどうしても語りたがろうとしない彼女を強引なまでに促すと。
意外な事実だった。
好きな人が、いるんです。はっきり申し上げて、お付き合いもしているんです。
でもその人は結婚していて、いまの奥さんと離婚するおつもりはないんです。
私ももちろん、誰かと結婚するつもりだし。
でも、決してその人と離れることはできない・・・・・・。
エエ。相性が抜群にいいんです。セックスの・・・
どうしてこんなお話をするのか、ですって?
決まっているじゃないですか。
生涯の伴侶としては、貴方しか考えられなくなっているから・・・・ですわ。
不まじめな女だと、お感じになるでしょう・・・?

私のことをあきらめるなら、早めにあきらめてください。
芙美子の顔には、そう書いてあったのだけれど。
シュウジはとうとう、彼女の望みを受け容れてしまっていた。
芙美子を婚約者とし、妻としながら。
その男との割り切った交際を認める・・・という。
男としてはこれ以上の屈辱はないはずの条件に、却って軽い刺激と愉悦さえ覚えたのは。
きっと、おれがMだからだろう。
三十ちかくまで童貞だった彼は、自分のことをそう結論づけていた。

奇妙な交際が始まった。
女は水曜と金曜、それに日曜に、男のところに抱かれに行く。
デートは土曜と、水曜日。
3対2。
そんな比率も、彼女が決めたものだった。
いちど、どんな男だか。逢ってみたいな。
自らも予期しない言葉を洩らしてしまったのは。
婚約してからひと月たったころだった。

いいですよ。
女はわが意を得たり・・・といわんばかりに。薄っすらとほほ笑んだ。
末永くパートナーでいてくださるお二人だから。
それがいちばん、嬉しいご配慮ですわ。
女の口調はいつか、未来の夫に対してへりくだったものになっている。

芙美子の相手は白髪交じりでやせぎすの、ちょっと気弱な感じのする男だった。
意外なくらい、弱そう。
そうした直感は、すぐに優越感につながって。
婚約者の情人の、風采のあがらない風貌に、すこしホッとする思いが湧いた。
相手にもそれが、伝わったらしい。
けれども男はあくまで弱々しい笑みをたたえながら。
ご迷惑をかけます。
ひと言そういって、慇懃な礼をなげかけてきたのだった。

はっきりいって、ウマの合う相手だった。
いつともなしに始まった会話ははずんで、尽きることがなかった。
ちょっと失礼。
相手が自分の足許にかがみ込んでくるのも。
なんの警戒心も抱かずに、許してしまっていた。
ズボンがたくし上げられて、薄い靴下の包まれた脛があらわになる。
シュウジが気に入りの、ストッキング地のハイソックス。
淡い毛脛の浮いた脚に紳士用とは思えないほどの艶やかな光沢がよぎるのを、ちょっと恥ずかしそうに見おろしたけれど。
彼の唇をねっとりと圧しつけられてしまうのを、そのまま許してしまったのはどういうわけだろう?
数瞬ののち。
シュウジは意識を昏く、堕としていた。

ね?言ったとおりでしょう?女ものよ。
芙美子が口を尖らせて主張する。
いや。違うな。正真正銘、紳士用だよ。
男の口調はあくまでも、落ち着き払っている。
そお・・・?
女がちょっと未練がましく男の主張を認めたときに。
シュウジはフッと目を開けた。
気がつかれましたか?
あくまで慇懃な男の口許に、さっきまで自分の体内を流れていた血潮が散っている。

吸血鬼、だったんですね?
エエ、すみません。仲良くなれたのに、なかなか正体をいい出せなくて。
いえいえ、ごもっともなことですよ。
わたしの血は、いかがでしたか?
芙美子さんのほど、美味しくないでしょう?
嬉しそうなときも、苦笑いになるのですね。
吸血鬼の言い草に、シュウジはまたも苦笑いを返している。
まがまがしいはずだった、吸血のあとも。
ふたりの男性の親密さは、変わらない。

芙美子さんは、処女なんです。処女の生き血を好んで吸う・・・と、ご存知ですね?
ええ。お察しのとおり。芙美子さんの処女も、挙式のまえまでには頂戴いたします。
お許し・・・いただけますね?
あつかましい奴。
そんな想いを苦笑いにくるんで。
純潔だった・・・とは意外でした。望外のことです。
なぜ・・・って?
芙美子さんの純潔を、私のほうから貴方にプレゼントできるわけですからね。
ぜひ、そうさせていただきたいのです。
ああ。何となく、貴方にはそう仰っていただけそうな気がしました。
貴方の血を吸い尽さなかったのは。
芙美子をはさんで、仲良くやっていけそうな気がしたからなのですよ。
男の賞賛をうるさそうに受け流して。
単なる、Mなんでしょうね。
シュウジは諦めたような微笑を、口許に苦く滲ませる。
卑下しないで下さい。得難いことです。
男がふたたび、破れかけた長靴下のうえから唇を這わせてくるのを。
彼はもう、とめようとはしなかった。

・・・お察しのとおり、紳士用の靴下ですが。
・・・ふむ。いい舌触りだ。女ものと遜色ないくらいにね。
・・・お恥ずかしい。
・・・いえ。こういうものをお召しになる殿方を、なん人か存じ上げているのですが。
   たまたま、誰もがMでしたな。
・・・それで、仲良くなれると踏んだのですね?悪い人だ。
ニコニコとほほ笑む婚約者の前。
男ふたりは、声を合わせて笑っている。
わたくしも、お仲間に加えていただきますね。
女は思い切りお行儀悪く、スカートをたくし上げた。
  こうして・・・ね。
  母や妹の血も、このかたに吸っていただいているんですよ。
肌色のストッキングに包まれた婚約者の太ももに、男の唇がぬらぬらと這った。
初めて目の当たりにする光景だった。
脚線美を惜しげもなくさらけ出して牙にゆだねていく婚約者に、シュウジはドキドキと瞳を輝かせている。

結婚して、三ヵ月が経っていた。
芙美子さん。出かけてきますね。
姑の晴代はそわそわと、スーツ姿の身づくろいをしている。
黒のストッキングが、五十年配の女とは思えないほどのすらりとした脚線美を惹きたてている。
ええ、どうぞ。
さりげなく返した芙美子は、気づかれないほどの笑みを頬によごらせていた。
先週のことだった。
連れだって、彼のもとに案内したのは。
抵抗は、ほんの数秒・・・もあっただろうか。
首筋を咬まれた女は、すぐに酔わされてしまっていて。
息子さんの血が気に入ったんです。
若奥様の血も、処女も、貞操も。頂戴し続けているのです。
あらわに告げながら求めてくる吸血鬼のまえ、
すすんでブラウスのタイをほどいていた。
嫁の情人。息子の仇敵。
そう呼ぶべき存在に、いさぎよく肌をさらして・・・・・・。
ぎゅう、ぎゅう、ごくり・・・と、むざんに喉を鳴らす光景を。
貞女ぶりを賞賛する吸血鬼の抱擁のなか、
亡夫のため守りつづけた貞操を、気前よく振る舞う有様を。
隣室に隠れた夫は、いちぶしじゅうをドキドキと見つめつづけていた。
芙美子が処女を喪失するときとおなじように。

それ以来逢瀬は三日にあげず、つづいているのだが。
夫も、姑も。新しい環境に不平めいたことを口にすることはなかった。
玄関が閉められ、門が鎖される音が響くと、
芙美子はとんとん・・・とリズミカルな足音を響かせて、階上に向かう。
夫の妹は、歳が離れていて、まだ高校生だった。
「お義母さん、お出かけよ」
ふたりの女が交わし合うのは、共犯者の笑み。
さあ、横になってちょうだい。
義姉にせがまれるまでもなく、少女は濃紺の制服のスカートをひるがえして、黒のストッキングに包んだふくらはぎを眼前にさらしてくる。
奇跡的に、処女・・・・・・。
はじめて生き血を口にしたとき。
セーラー服の襟首に血潮を散らしたままウットリとしてしまった義妹に、芙美子は嬉しげな笑みを返していた。
あ・・・っ。
うう・・・ん。
ふた色の声が悩ましくからみ合い、勉強部屋は脂粉の芳香に満たされてゆく。

由佳の血も、召し上がったのですね・・・
スリップ一枚に引き剥かれながら。
母親はそれでも悩ましげに、情夫の腕をふりほどきかねている。
ああ、ダメ・・・
ストッキングのうえからなすりつけられてくる、不埒な唇。
上品なさらさらとした感触を愉しむようにねぶりまわしたあげく、
他愛なくチリチリに散らしてしまうのが、つねの振る舞いだった。
早くに亡くなった夫を弔うために。
日常から脚に通していた、黒のストッキング。
かつての質素で丈夫なやつは、貞操とともに裂き捨てられて。
ねじれるようにくねる脚を、いまは淫靡な光沢が彩っている。
いまは情夫を惑わす妖艶な小道具へとすり替わっていた。
隣室で娘の由佳を犯しているのは、息子。
お兄さんのことがずっと、好きだったの。
我を喪った小娘は、酔ったようにそう、口にし続けている。
嫁の芙美子は、そんな娘の頭をあやすように撫でながら。
そう、そう、想いを遂げることができて、よかったわね。
妖しい笑みをたたえつづけている。

本当は。
あのひとの一家が、憎かったんです。
父を破産に追いやった家だから。
張本人は死んでしまったけれど。
家族はわたくしの家の財産をいまでも食(は)んでいる。
だから、復讐してもいい・・・
そう。めちゃくちゃにしてやろう・・・と思って。
シュウジさんを、誘惑したんです。
そうしたらあのひと、言うんですよ。
あの青年は、面白そうだ・・・ですって。
ひと思いに、死なせるよりも。
うんと堕として、愉しんでみないかね?
耳の奥に、毒液を注がれるようでした。
わたくし、今みたいに心地よく笑みながら。
彼のアドバイスを、容れましたの。
でも。
目算違い・・・だったようですわ。
ご一家のかたがたの血を順ぐりにむさぼるうちに。
わたくしの母や妹の血とおなじくらい、好きになってしまったようですの。
味が似るのでしょうか・・・
ええ。いまではもう、皆で仲良く。
彼の処に、伺うようにしています。
伺う順番は、夫のまえでくじ引き♪
苦笑いしながら、とっても愉しそうなんですよ。あのひと。
ぜったい、ヘンですよね。
自分の奥さんや、お母様や妹さんまで犯される・・・というのに。
でもあのひとのMが、すべての幸せのもとだったのかも。


あとがき
久しぶりに何かが湧いた・・・と思ったら。
けっこう、長くなっちゃいました。(苦笑)
嫁になる女の手引きで次々とモノにしていったご一家が。
嬉々として己の生き血を与えるようになったとき。
吸血鬼は知らず知らず供血者たちと心を通わせるようになっている。
そんなお話です。
けれども案外。
すべてはさいしょから、芙美子のまがまがしい怨念を解かすために用意された、吸血鬼のシナリオだったのかも。

ふぅ。

2006年08月18日(Fri) 09:41:10

どーやら。スランプのようですよ。
・・・って、人ごとみたいに言ってみたくなります。^^;
どうにもなにも、浮んできません。
才能の枯渇ですな。きっと。(^^)
うん、そうに違いない。(^^)
柏木医院の診断って、いつも狂いがないですから。
ほかのことに打ち込むべきときなのかもしれませぬ。
・・・って、逃げばっかり打っていますが。^^;;;
ちょっとおとなしくしていたい気分もありますので。
いちおう存在証明として、キーを叩いてみました。
更新はあてにせず、気長にお待ちくださいませ。

怖いめのお話などを。

2006年08月14日(Mon) 13:49:14

夏ですね。♪
皆さまはいまごろ、お盆休みでしょうか?
前作の紹介で恐縮なのですが。
このサイトでご披露したお話のなかで、ややホラータッチのやつだけ並べてみました。
ホラー、と申しましても。
スプラッタ、とかそういう方向はどうしても好きになれないものですから。
例によってほんのりと、怖さを出してみたものばかり。
ですから、あんまりコワくないかも・・・ですが。

「絵のあるじ」(2005年12月15日付)
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-120.html
ふと見ると、絵に描かれた顔が変わっていた・・・といったら。
少し、ゾッとしませんか?
ふとしたことから手に入れた絵に宿った魔性のものを描いたものです。

「吸血奏鳴曲(ソナタ)」(1月10日付)
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-152.html
埋もれた老音楽家の未亡人は、夫の遺作のレコードを携えて。
夜ごと知人宅を訪れつづける。
妖しい調べはいつか人々を迷わして・・・
こちらのお話では小道具に、いまでは見ることも希になってしまったレコードを引き出してみました。
このお話の続編「死霊に捧げる恋」http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-153.htmlは、その未亡人にかつて恋していた男のお話です。
下書きなしであっぷしつづけていた頃のこと、たったの十一分間であげているんですね。^^;

「心優しい人びと」(2月16日付)
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-456.html
元気をなくしている吸血鬼を慰めようとするその少年は、
初対面の彼を、自分の家に招いてくれた。
母や妹を紹介するために。
三人は皆、心優しく振る舞ってくれた。
なぜかいちように、口許に淋しげな笑みをたたえながら。

「心優しい人びと」はたった今、再あっぷいたしました。
いきなり2月のほうへとあっぷしてしまいましたので、よろしければぜひ御覧下さいませ。

「部屋のなかに、もう一人・・・?」(4月10日付)
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-145.html
引っ越してきたマンションには、自分以外の者の影が・・・
ふと開いた匿名のブログ。そこに写っているのはまぎれもない自室だった。
夜更け、いつか「私」は闇からにじみ出てきた少女の影と動きをひとつにして・・・
迫真の女装ホラー?

すぐ次に掲載した「娘の服をお召しになりませんか?」http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-146.htmlはその姉妹編です。

「あの世に捧げる操」(4月18日付)
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-194.html
踏みにじられた令嬢と青年の恋。
恥知らずな男は数十年を経て、その報いを受ける。

「誰かが見ている」(5月4日付)
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-245.html
敬愛する兄の死後。
己の正体を秘めていた弟は、兄嫁への秘めた想いを遂げる。
母も席をはずした自宅の一室。
恋人は囁きかけてきた。
誰かが見ている。
と。
ホラーにしては、ちょっとほほ笑ましいかも。

再あっぷ紹介

2006年08月10日(Thu) 11:53:49

明日からひと休みさせていただこうと思います。
置き土産がわりに・・・と。「幻想」時代のお話を再あっぷしておきます。
「妻の血を吸う屍鬼」
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-449.html
妻に迫った吸血鬼が、夫のまえ。
素肌に肉薄するように誘惑・・・
ひたひたと皮膚に染み透る妖しい熱情を描いてみました。

「お帰りなさい。^^」
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-450.html
おなじみの、まりあシリーズです。
どうしてこれが再あっぷされていなかったのか?作者の私にも不思議です。^^;
お勤めからぐったり疲れて帰宅したまりあに、吸血鬼さんが迫ります。^^

「優等生」
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-451.html
「眩しい存在」
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-452.html
おなじ制服を着ていながら、手の届かないような眩しい存在だった優等生の女の子。
そんな彼女のお話です。
気丈にも自分から、わが身を与えてゆきます。^^
後者は解説。
どちらも再あっぷに当たって、かなり描き直しました。

「代役」
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-453.html
体調不良な娘に代わって、娘の恋人の少年に気前よく血を与えるお母さん。
こういう理屈ぬきに優しい女性、むしょうに描きたくなることがあるんです。
現実は厳しかったりしますが。(笑)

「救って・・・」
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-454.html
これも優しいお母さんです。
夫のまえ、母子ほども年の離れた少年吸血鬼に襲われて。
縛られた夫の切実なまなざしを感じて、奥さんを放す少年。
初めて流れた暖かい空気が、三人の間を和ませてゆきます。
「妻はどうやら救われるよりも、救うほうを選んだらしい」
さいごの一句からつくりはじめたお話です。

院長、ご来客です・・・ 2 懐手

2006年08月10日(Thu) 01:21:40

院長室の壁の木目模様を背にすると。
ヤツの黒マントがいっそう、陰翳を増すようだ。
いつものように、蒼白な頬に嫌な含み笑いを浮かべて。
音もなくスッ・・・と、近づいてくる。
まずは私の首筋をえぐって、酔わせてしまおうというのか?
私が我を喪ったそのあとに。客人の相手をするのは。
夜勤の看護婦たち、そして妻・・・

ところがヤツはちょっと俯いて。
己の懐に手を忍ばせる。
そこの壁にかけてある西洋の英雄の肖像画そのままに。
懐手したまま、キッとこちらを見すえてくる。
握られているのは、拳銃一丁。
ぴかぴか黒光りするそいつを、私のほうへと向けてきて。
どきゅん。
その瞬間、視界は深紅に閉ざされた。
あとは幻のように・・・
妻や看護婦どもが、テロリストから解放された人質みたいにウットリとした目線でヤツを仰ぐ情景が広がるばかり。

ハッとして、起き上がる。
傍らのベッドで、妻はすやすやと安らかな寝息を立てている。
首筋にはくっきりと、ふたつの痕・・・
今宵もヤツは、訪れたのか。

「院長、来客です」
あのいまいましい不慣れな若い看護婦が、ふたたびヤツの来訪を告げる。
いまさらもう咎めだてすることもないのだろう。
髪をアップした彼女のうなじは、夕べの妻とおなじ痕を持っている。
「ようこそ。歓迎はしないがね」
ヤツを迎え入れながら。きのうの夢がありありと蘇える。
強く首を振って打ち消そうとしていると。
「なにをしている?」
軽い揶揄を含んだ声が、部屋に響いた。
ちぇっ。
我が物顔に、私の妻を従えてのご入来だ。

「喉が渇いている。これから奥方を拝借するよ」
「夕べも来ていたようだな」
「ご明察・・・」
決して悪びれない言葉のウラにたくまず滲む、悪戯心と親愛の情。
ヤツの手が、すっ・・・と黒衣の脇に差し入れられた。
どこかで見たことのあるポーズだった。
目のまえの挙措が、夢の記憶とつながったときには。
ヤツはキッとして。殺意に瞳を輝かせる。
えっ?
たじろぐ隙に。
懐から出した中身は、一輪の薔薇の花。
私を尻目に、妻のまえ。
お姫様に捧げ物をするナイトのように膝をかがめる。
「まぁ」
芝居気たっぷりな態度でも。
意外なプレゼントには決して嫌な顔をしないものらしい。
「ずうっとそこに、隠していたんですね?どうやってしおれないように持ってきたのかしら」
薔薇の花を受け取り、るんるんとはしゃぐ妻を見て。
私はツカツカとヤツのほうへと歩み寄っている。
自分でも予期しないほど、出し抜けに。
どかん!
ヤツのことを、ぶん殴っていた。

虚を突いた攻撃に、ヤツは恰好悪くすっ飛んで。
仰向けにぶっ倒れて、両足を天井に向けていた。
さすがにヤツも、あっけに取られている。
男どうしのあいだでは。
突発した暴力は応酬されがちなものなのに。
ヤツは応戦の手を引っ込めて。
頬に散ったかすかな鼻血を手の甲でゆっくり拭い取ると。
サッと私のほうへと近づいて。
それを私の頬へと塗りつけた。
一瞬で、ぼう・・・っとなってしまった。
「失礼。ちょっとなれなれし過ぎたようだね」
あくまで紳士然に振る舞うと。
金縛りにあった私のまえ。
「さて奥様。いまのご褒美のお返しに・・・たっぷりお相手願いましょうか?お気が進まないだろうけど」
冷たい囁きを口にすると。
サッと妻のほうへとおおいかぶさっていった。

きゃあっ、やめてぇ・・・
あなた、あなたぁ・・・
痛いっ、何なさるの・・・っ!?
嫌ッ!嫌、嫌、嫌あぁ・・・
妻は私のまえ、初めて襲われたときそのままに。思いっきり抗って。
うなじを咬まれ。血を吸い取られて。押し倒されて。
それでもまだ、思いっきり脚をばたつかせて。
必死で貞操を守ろうと、抗いつづける。
厭らしいです。お許しくださぁい・・・
いかにも芝居がかったしぐさだけれど。
こういうほうがまだ、許せるというのだろう?
犯す直前振り返ったヤツの笑みには、ありありとそう書いてあった。
正直に愉悦を滲ませた、激しい腰の動きにも。
不満はとうに、妖しい快楽に封じ込まれてしまっている。

お留守番

2006年08月08日(Tue) 07:27:05

独りのお留守番が大好きだ。
そのときだけは、うちの主人はボクになる。
ママは、夕方まで戻ってこないはず。
ボクはいそいそとママの部屋に忍び込み、
そうっ・・・と箪笥の抽斗を覗き込む。
パンティやブラジャー。
そうしたロコツなものよりも。
どういうわけか魅かれるのは、ストッキング。
下着は直接見えないけれど。
腰まで行き着くストッキングは、しぜんと目に入るせいだろうか。
ママはいつも、肌の透ける黒いやつを好んで脚に通していた。

きちんと折りたたまれたストッキングは、ママの秘密を知るように。
抽斗の奥、ひっそりとしずかな光沢をよぎらせている。
どれにしようか・・・?
息を詰めて。品定めして。
きょうのお相手は、肌色のやつ。
先週学校の参観に穿いてきた、光沢のじわりと滲むタイプ。。
かすかに震える手で、つま先をさぐって。
それを自分のつま先にあてがって。
思い切って、ぐーん・・・とひざへと引き伸ばしてゆく。
あ・・・
しまった。
涙の痕のような伝線が、つ、つーっと音もなく、広がってゆく。
顔色がみるみる変わっていくのが、じぶんでもわかった。
がたがたっ。
玄関から、もの音がする。
鍵を開ける音だ!
えっ?どうして?
ママがよく忘れ物をする癖を、うっかり忘れていた・・・(><)

さっき、なにをしていたの?
ママは戻ってくるとすぐ、目を三角にして。
ボクの勉強部屋までとんできた。
肌色だからばれないだろうと。そのまま箪笥に戻して。
すぐさまお愉しみを中止して。
自分でも信じられないほど素早く部屋に戻って。
何食わぬ顔をしていたけれど。
カンのいいママのこと。すぐ気がついちゃったみたい。
ふだんまじめで大人しい子が。自分の下着に手を出していた。
母親としては、ショックなはずだ。
  もうっ。伝線しちゃったじゃないのっ。
ママはカンカンに怒っている。
  どうしてくれるのよっ。高いのよ?あなたっ。
???
怒りかたが、ちょっと違うんじゃないのかな?^^;
息子が母親の下着をイタズラ、していたんだぜ?
やらしい、とか。そういう怒りかたしないのかな・・・?
「こんどから、手を出すのならこっちの箪笥のやつだけにしてね。
 いいこと?右側の、桐の箪笥よ?」
いやに物分りの良い対応に。
ボクはばかみたいに、目を白黒させていた。

ママのお使いで、叔父さんの家に出かけたときのこと。
しまった。忘れ物っ。(><)
自分が忘れ物をするくせに。
ボクが忘れ物をすると、ママはひどく、ご機嫌がわるい。
そのくせきのうみたいに。
ママが忘れ物をしても。
どういうわけか、怒られるのはいつもボク。

玄関をあけて入ってゆくと。
いつも階下で家事をしているママの姿が見あたらない。
音ひとつしない、家のなか。
おかしいな。家にはいるはずなんだけど。
かまわないや。うまくすると忘れ物、ばれないかも。^^;
そうっ、と足をを忍ばせて。
二階の勉強部屋にあがってゆくと。
ボクの部屋とは正反対の、奥まった小部屋。
あれ?ドアが開いている。
よくないことだ。そう分かっていても。
忍び足は知らず知らず、小部屋のほうへと伸びてゆく。

・・・ぁ。
洩れてきたちいさな呻きにただならぬものを覚えて。
ボクは用心深く、そうっと中をうかがった。
ママは椅子に腰かけて、こちらに背中を向けていて。
組んだ足許には、見慣れないやつがうずくまっている。
そいつはストッキングを履いたママのふくらはぎにとりついて。
真っ赤なべろで、舐めていた。
えっ???
とっさに感じた。
いいなあっ。って。
男はにんまりとママのことを見あげていて。
ママのほうも、にこやかに相槌うっているみたい。
えっ?えっ?
男はひときわ強く、ママのふくらはぎに吸いつくと。
ぴりぴり・・・っ。
黒のストッキングにひと筋。
つ、つーっと走った伝線は、ひときわ鮮やかに白い肌を滲ませていく。
ボクがやったら、叱られるのに。
うらやましいヤツ・・・


あとがき
ストッキングをうっかり破って叱られる男の子。
家族に隠れて、破らせているママ。
色違いな感覚の持ち主どうしみたいです。

法事のあとに

2006年08月08日(Tue) 07:06:17

田舎に帰ると必ず行くのが、お寺。
そこで親戚一同がつどい、先祖や故人を弔うのがしきたりだった。
お堂のなかの、むき出しの床。
夏でもひんやりとした感触が、薄い靴下ごしに伝わってくる。
ぜんぶで数十名。今年も盛会になりそうだ。

ひとりひとり前に出て。拝礼をする。
黒衣に身を包んだ女たちは、思い思いの丈のスカートを翻し、
神妙な面持ちで、まえを通り過ぎてゆく。
すらりとした脚。むっちり肉の豊かな脚。
さまざまな脚たちが、行き交ってゆく。
スカートの下から覗く黒のストッキングも。
濃いもの、薄いもの。
薄い靴下から透けるふくらはぎに不埒な想いを馳せるのは、私ばかりではないようだ。

拝礼を済ました女たちは、
そのまま席には戻らない。
小さな子がいるものは、祖父母にあずけて。
そのままいちど、中座する。
すぐ戻ってくるもの。なかなか戻ってこないもの。
若い女ほど、中座の時間が長いようだ。
戻ってきた女たちは、いちように。
黒のストッキングに伝線を走らせている。
たしなみのあるひとは、履き替えることを考えるはずなのに。
作法にやかましい年配の伯母も。
貞淑な賢夫人のきこえ高いあの人も。
すっかり年頃のお嬢さんになった、お洒落な姪も。
誰ひとり、履き替えを脚に通すこともなく。
夫や父親のまえ。
靴下の裂け目も顕わに、席に戻る。
あくまで、落ち着いたふうを装って。

妻の番が廻ってきた。
よく言い含めてある。というよりも。
よく心得ている。というほどに。
村の風習に馴染んだ妻。
中座する時には障子を閉めるまえ。
きちんと正座して。軽く指を突いて、一同に会釈をするのだが。
ふと目があったとき。
意味深な笑みを送ってきた。
母や姉たちのいるあたり。
和んだ空気が漂ったように感じたのは気のせいだろうか。

マサコさん、長いわね。
母がイタズラっぽく笑みかけてくる。
妻はとうとう、法事がおわるまで戻ってこなかった。
若い人は、もてるねぇ。
子供のころからからよくからかわれた伯父の声色には、
いつにない羨望がこめられている。
気になるんでしょ?行っておあげなさいよ。ガマンするのは、よくないわ。
むしろそう、私にすすめたのは女性軍のほうだった。
気丈で美しい妻が。そのときどれほど乱れるのかを。
よく知っている私。
ひどく遠慮がちに、席を立ち。
けれどもいちど、廊下に出ると。
脚を早めるのを止めることはできなかった。
マサコさんの着替え、用意してあるからね。
別れぎわ。母がそっと、耳打ちをした。


あとがき
清楚な礼装にいけない想いをいだくのは、罪でしょうか・・・

院長、ご来客です・・・

2006年08月08日(Tue) 03:50:41

「院長、ご来客です」
新米の若い看護婦は、私が会うと言わないうちに。
うかつにもその訪客を、院長室に通していた。
ああ。知らないのだから、無理もない。
夏だというのに、いちめんの黒衣。
衣裳がかもし出すかすかな違和感をのぞいては。
いかにも教養ありげな物腰に、紳士然とした口ぶり。
ふつうなら、通してしまう。
こいつがなにを意図して来たかも知らないで。

「いい看護婦だな。新入りかね?」
「そんなことに応える必要はない」
そっぽを向く私に、
「珍しく素直じゃないね。景気がよくないのかね?」
それどころか。
今年は妙に、夏カゼが流行っていて、てんてこまいの忙しさだった。
「患者が途切れたようだからね。ちょっと顔出ししてみたのさ」
あたかも自分が歓迎されているかのような口ぶりが、ちょっと滑稽ですらある。
「なにがおかしい?」
「いや・・・失礼」
笑いを押し隠しながらも。
失礼なのはお前だろ?
と、心のなかでうそぶいている。
看護婦たちや、ときには妻を。
襲って、血を吸って、凌辱を繰り返す男。
怒りが湧いてこないのは。
麻痺した理性と、あとに残された女たちの濃い媚態のせいなのか。

「喉が渇いた」
「輸血用の血液ならあるぞ。ただし商売用だが」
あくまでそっけなく応対する私。
本音は、若い看護婦の血が目当てなのだろう。
けれどもいまは、ひとりでも引き抜かれると困るのだ。
「患者は途切れている」
男は誇示するような口調で、強調した。
「ナースステーションは、三階だったな?」
あいさつもそこそこに立ちかけるのを、私はあわてて引きとめにかかった。
「待ってくれ。お前を知らないものも勤務している」
ああ。四階の詰所にいるのは、わけ知りな看護婦だけだったな。
言いかけた言葉をとっさにつぐむと
「じゃあ、呼んでもらおうか」
ヤツは憎らしいほど余裕たっぷりに。
どっかりとソファに腰をおろす。

四階かね?守部看護婦と長原看護婦を呼んでくれ。
あくまで事務的に受話器に話しかけると、
ヤツはげんなりしたようにそっぽを向いた。
ふたりの看護婦が白衣に包んだ巨体をゆするようにして現れる。
年はたしかに若い。
堂々たる体格に、おっぱいを誇らしげにぷりんぷりんとさせている。
ただし。
美人だなどという表現はもちろん、薬にもならない。
彼のために雇い入れた、体力採用の献血用看護婦である。
「お呼びですか?」
言うなり振り返って客人をみとめ、
あぁ・・・
ちょっぴり顔を、しかめている。
彼女たちにしたって、こういう患者は迷惑だろう。

ヤツの態度は、なかなか立派だった。
一瞬見せた軽い失望など塵ほどもとどめずに。
あたかも名流婦人に会釈するような慇懃さで。
いつもぞうさをかけますな。
心からの感謝を滲ませて。
どんな美女に対してもそうするように。
順ぐりに。
手の甲に接吻し、身を寄り添わせ。
そうして、うなじを噛んでゆく。
ぁ・・・
こういうときに洩れる呻きは、妙なる声・・・と表現しても。
たしかに差し支えなさそうだった。

ふたりが夢見心地になって出てゆくと。
ヤツはなにかをアテにするように。
まだ院長室に居座りつづけている。
ドアの向こうから、がやがやと。
一団の話し声が近づいてくる。
あ・・・っ
悔しい呻き声を押し隠すのが、やっとだった。
入ってきたのは病院で一、二を争う美人看護婦が二人。
そしてその二人を従えて真っ先に入ってきたのは。
ほかでもない、妻だった。
看護婦たちの白ストッキングの脚と。
つやつやと光沢をよぎらせる肌色のストッキングの脚と。
吸血鬼は愉快そうに、三対の脚たちを見比べている。

院長室の扉に耳を当てれば、聞えるだろう。
きゃっ。あぁ・・・っ。
絶望の悲鳴に似て、そうではない。
きょうはなん時間、見せつけられるのだろう?


あとがき
以前あっぷした「絵を描く少年」の舞台になった病院です。
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-128.html

腰が痛・・・

2006年08月08日(Tue) 03:31:40

「腰が痛・・・」
傍らでくつろいでいた妻が、にわかに呻く。
見ると手を腰にあてがって、痛そうに身をかがめているのだ。
「オイ大丈夫か」
声をかけるよりも早く妻のほうへとにじり寄り、傾いた体を体で受け止めてやり、じゅうたんの上に寝そべるのに手を貸してやる。
そんなにトシ・・・というわけでもない。
といって、ぴちぴちに若い・・・というわけではさらにない。
四十も、間近。
若いつもりでも、無理をすると正直に体に出るようになっていた。

ワンピース越しに触れた腰は、たしかにかたくななこわばりを帯びている。
掌を伸ばして、その部位にあてがって。
無理なく、ゆっくりとほぐしてやる。
「あぁ・・・キモチいい」
しばらく触れてやると。妻はうめくように呟いた。
さっきの急迫したかんじではなく、救われたような安らかさがこめられている。
「セックスよりも、よっぽど上手ね」
そんな、憎まれ口をたたく妻。
「毎日、ハイヒールだからね。疲れもたまるだろうさ」
妻はいつも小ぎれいに装って。
ハイヒールの足音をコツコツと響かせながら。
出かけてゆく。
そう。吸血鬼に抱かれにいくために。

そんな正体などつゆほども気づかずに。
妻に近寄った吸血鬼は、女装癖のある私にも接近して。
私に女の装いをさせて。
その目のまえで、呼び寄せた妻を踏みにじった。
夫のまえでその妻を抱く。
「踏みにじる」という表現が、いちばん適切なはず。
けれども女の衣裳は妖しい呪縛で私の理性を縛りつけ、
私はうっとりとしながら、愉悦に耽る妻の媚態を見守りつづけているばかりだった。

長いことハイヒールで歩くのは大変だね。タイトなワンピースもきゅうくつそうだし。
妻は人の悪そうな笑みを艶然と滲ませて。
よくご存知ね。あなた。
軽い含み笑いで受け流す。
私娼婦になってしまったの。淑女の昔には、戻れないわよ。
うそぶく横っ面にいつの間にか。
くわえタバコが似合うようになっていた。
血の味が落ちるぞ。
からかう・・・とも。たしなめる・・・とも。
どちらを意図した言葉だったろう?
たまにはいいの。ちょっと不貞腐れたくなるときだってあるんだから。
はは。ダンナの趣味が趣味だからな。
思わず自嘲の声が洩れる。
いいえ。
真顔になって。かぶりを振って。
お綺麗だったわ。よく、お似合いよ。
サイズの合う服は、貸してくれるようになった妻。
おなじファンデーションや口紅を、使いまわしする仲にさえなっていた。
貴方だって。もう戻れないのよね。
ははは・・・
夫婦は、声を合わせて笑っている。
寄り添ってきた妻を抱き返しながら。
年取るまで、いい夫婦でいような。
思わず本音を洩らしてしまう。
まだ、そんな年じゃないことよ。
ホホ・・・
笑いにすべてを紛らわせてしまう。
妻のほうがいつも、一枚うわて。
腰の痛みは、忘れたのだろうか?


あとがき
前作「女装の刻」のご夫婦です。

独りのドライブ

2006年08月07日(Mon) 14:28:30

かれはフィアット。あいつはべー・えむ・べー。
フン。外車がなんだ。いまは国産が最強のブランドだぜ?
頼もしくそううそぶいたあいつは・・・。
その国産の、いちばんいい車に乗っていた。
ちぇっ。
そろいもそろって若いのに、みんないい車を乗り回している。
助手席にはもちろん、かわいい彼女を乗せて。
爽やかにカッコイイそんな連中を横目にして。
ボクの愛車は国産三流メーカーの中古の軽自動車。
お前の車、雨漏りしないか?
みんなにそう嘲られても、仕方のないほどの見てくれだ。
人の格を見定めるには、彼の愛車をみればいい。
そんなふうにまでいわれた時代は去りつつあるけれど。
もしもこれが真理だとしたら・・・ボクは最低の人格の持ち主なんだろうな。
車なんか、金さえ持っていればどんなやつだって買えるんだぜ?
ついそんなふうに。ひがんでしまってみたくなる。

暑い陽射しにさらされた、二車線の道路。
山へ向かうその道は、あと500mで一車線に縮まる。
左を行くのは、ばか正直な律儀者。
右にまわるのは、要領のいい狡いやつ。
もちろんボクは、左側。
隣の車線はすいすいと、なに食わぬ顔してすり抜けていって。
はるか手前でうまいこと、器用にするりと割り込んでいく。
世の中どんなところでも、人間というやつは二種類しかいないらしい。
そして、きれいな女の子は絶対に、右車線の車にしか乗りたがらないはず。

彼女もいないのに、どうしてそんなにあくせくと。
わざわざドライブなんかに来たのか、だって?
きれいな景色が、好きだから。
どこまでも澄んだ空気に、身を浸しきっていたいから。
数時間の渋滞に、目の覚めるような絶景。
いまの疲労に見合うのかどうかは、景色の記憶がいつまで長持ちするかにかかっているのだが。
心洗われるそのひと刻が。
色あせた日常に渇いた心に、どれほど豊かな彩りを取り戻させてくれることだろう?

ハァイ・・・
能天気に明るい声が隣でしたのはそのときだった。
うきうきとはずんだ声がボクに向けられているなんて、
とても思いつくことはできなかった。
若い男として多過ぎるほど味わった、じめじめとした経験からは・・・
三べん、声をかけられて。
周囲にだれもいないのに気がついて。
ようやく振り返ると。
そこには輝くほどの美少女が、無邪気な笑みをふりまいている。
きみ、だれ?
こんな知り合いは、いないはずだ。
逆なんぱ・・・なんてされるほど、カッコいいわけはないし。
お財布を狙われるほど、金持ちそうにも見えないはず。
ボクの背中に何かついているのかも。
けれどもその子はそんなボクの思惑すべてを裏切って。
だれもいっしょじゃないの?だったらふたりでドライブしましょうよ。
頼みもしないのに、さっさと助手席に乗り込んでいる。

みどりの黒髪、というけれど。
その子の髪の毛はほんとうに、緑がかっているようにみえた。
陽の光が、そうみせたのか?
見ようによっては、つやつやした黒髪にも。
華やかな茶髪にも。どういうわけか、金髪にすら見えるほど。
目映くつやつやとした長い髪が軽々と風にそよぐのを。
つい黙って見つめてしまう。
どうしたの?
名前もつげない女の子は、きっとこちらの想いなど、とっくに見透かしているはずだった。
思わず口ごもって。それからすぐに。
挨拶ひとつ、してないんだよな。そんな当たり前のことに、ようやく気がついていた。
きみの名前は、なんていうの?
おずおずと尋ねてみると。
そうね。華、と呼んで頂戴。
可愛い唇が謎でもかけるように、妖しく動くのを。
魅入られたように、見つめてしまっていた。
華さん、か。日本人なんだね。
それくらい、彼女は日本人ばなれしていた。容貌も、立ち居振る舞いも。
ボクの助手席に座るところなんか、なおさら特に。

並んで腰かけた草原は、見渡す限り。人っこひとり、いなかった。
華さんはしぜんと近づいてきて。寄り添ってきて。
とっさにすき間をつくろうとしたら。
迷わずすき間を埋めてきた。
えっ?
しなだれかかってきた少女の身体からは、ほとんど体重が感じられない。
えっ?えっ?
彼女はボクの耳もとに口を寄せてきて。
なにかを囁くのか、と思ったら。
ほんとうの狙いは、耳のすぐ下のあたり。
しっとり濡れた唇を、塗りつけるように首すじに吸いつけてきた。
あ・・・っ。
かすかな痛みが、不思議な同伴者の正体を教えてくれるころ。
ボクは全身痺れたようになっていて。
細くてしなやかな腕の抱擁から、抜け出すことができなくなっている。

吸血鬼、だったの?
うん。
童女のような素直さで、華さんはうなずいた。
さいしょから、ボクの血を狙っていたの?
うん。
ぜんぜん悪びれないで。
もういちど、傷口に唇をつけて。
思いっきり、吸われていた。
眩暈にくらくらっと眩むのを、愉しそうに窺っている。
経験がないからよくわからないけど。
性技をしかけてくるタイプの女の子って、こんなふうにするんだろうか?
恋人同士でくすぐり合うような無邪気さで。
子供のようにじゃれついてくる彼女は、とても素直な子にみえて。
そのたびに、繰り返し血を吸われている、というのに。
逃げなくちゃ。せめて、やめさせなくちゃ。
そんな思いは、すぐに消し飛んでいた。
親からもらった、大事な血なんだよ。
ちいさな声で、おそるおそる、そういうと。
そのときだけは、はっとして。叱られた子供みたいに、神妙に。
じいっと、ボクの言葉を反芻した。
ごめんね、と。
初めて、謝ってくれた。
謝ることなんか、あまりないのよ。あたし。
わざと恩着せがましい口ぶりをつくって。
珍しいんだ。あなたみたいに。童貞で、性格のいい子って。
そういう子の血って、とても美味しいんだけどね。
期待どおりだったわ。あなたの血。すごくいいよ。
これって、褒められているんだろうか・・・?

ほんとに恋人、いないんだね。
ボクを見つめる瞳が、しみじみとした光をたたえている。
え・・・?
血を吸うとね。たいがいのことは、わかるのよ。
お礼に、きみの彼女になってあげる。
彼女つきで出会った男の子はね。彼女もろともモノにしちゃうの。
でも、きみみたいなまじめっ子は。さしでいたぶるのが愉しいなあ。
一生、あなたのそばにいてあげる。
だからこれからも、おいしい血を吸わせてね。
どう?私の髪型、気に入った?
わたし。相手の男の子の好みに合わせて。姿をかえることができるのよ。

再あっぷ紹介

2006年08月07日(Mon) 02:34:04

暑いですね。
ちょっとお休みだった再あっぷです。

「取引先の女」
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-435.html
オフィス編初期のお話です。
鳥飼女史・蛭田とは別系統なお話なので、当時は存在しなかったカテゴリである「成人女子」あたりおにクラス替えしようか・・・と迷っています。

「吸血鬼同好会」
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-436.html
「夏休みの日記」
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-440.html
同系統のお話です。
吸血鬼同好会で実際に吸血を体験した少女。
後編では、都会からやって来る友達を巻き込んで、奔放な夏を。^^

「門出」
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-437.html
祝われる新郎新婦の門出。
その裏では秘められた儀式が・・・

「ひと息」
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-438.html
当時書いた随筆ですが。いまもあまり変わらない気分でやっていますので、
ちょっと載せてみました。^^

「逆らえない私」
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-439.html
愛人は吸血女。せがまれるままに求められた妻は、吸血女のおパートナーの腕に・・・

「幻覚」
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-441.html
処女の血を捧げる妹と婚約者。しかし妹にはある意図が・・・

女装の刻

2006年08月05日(Sat) 07:30:24

女はべつの肌で、呼吸しているのか。
淑夫はなんとなく、そう思う。
美容院のような密室の、鏡の前に座らされて。
傍らの男はさっきからぺたぺたと、脂粉のような感じのするものを、
頬に塗りこめてくる。
鏡に映る自分の顔は、すでに別人になっていたけれど。
まだまだ・・・ですよ。
男はそういって、脂粉を塗りつける手を休めようとしない。
ファンデーション、という、自分には無縁と思ったものが、
いま自分の素顔のほとんどを覆い隠して、皮膚のうえにもうひとつの肌を創りあげている。

脱ぎ捨てられたワイシャツやズボンが、よそよそしく部屋の隅に吊るされていた。
代わりに淑夫がまとっているのは、白っぽい女もののワンピース。
丈の短めなワンピースからは、黒ストッキングに包まれた脚を、
にょっきりと覗かせていた。
ふつうは肌色なんだけど。
男はにっこり笑いながら、淑夫を見た。
思い切って黒にしたほうが。
コントラストができて。綺麗かもしれないですよ。
静かな笑みに、知らず知らず男の意図のままに動いてしまっている。
慣れない手つきで脚にとおした薄手のナイロンの靴下は
思いのほか伸縮性があって、ぐーんと引き伸ばされて、
毛脛の薄いふくらはぎを別人のように彩っていた。

つけ睫毛はどうしても、違和感がつよかったけれど。
男は許してくれなかった。
ルージュを刷くときだけは、本当に女になったような気がして。
少しうっとりとした気分になったけれど。
女に化(な)るのも、大変だな・・・
妻には、いつもおめかしして、小ぎれいにしていてくれ、と。
かなりの負担を強いていたことを、いまさらのように実感する。
さぁ、できあがり。
にわか娼婦のようだった。
無理にもそう思わなければ、理性を保てそうになかったけれど。
男にしては優しい顔だちは、見事なまでのレディに生まれ変わっている。

お綺麗ですよ、と。
そう、言われて。
なぜか嬉しいと感じている。
醜態・・・ではなかったという安堵・・・ではなくて。
鑑賞するような男の目が、むしょうに歓びをかきたてる。
女には、綺麗だ、綺麗だ、といってやるものだよ。
いつだったか、世知に長けた悪友が、そんなふうに嘯いていたっけな。

さて・・・と。
洒落たテーブルの前、椅子に座らされて。
飲み物をすすめられた。
思いのほか長時間になった、「化粧」という名の作業。
女はいつも、これを独りでやるのか・・・とあきれるほどの工程を通り過ぎて、喉の渇きを覚えたけれど。
鄭重に、断っていた。
服にシミをつけると、まずいから。

身に着けた女ものの衣裳がまとわりつく、しゃなりしゃなりとした感覚と。
初めて穿いたハイヒールという、おそろしく歩き心地の悪い靴と。
そうした感覚に慣れて、ふつうに動き回ることができるようになるまでは。
特別なことはなにもしたくない。
自ら望んだ体験とはいえ。
思い描いていたものとはかけ離れた不自由さがそこにあった。
夢に包まれるような、忘我と陶酔の世界。
そんな想像とは反対に。
そう。まるで、縛られているような・・・
思いを見透かされたのだろうか?
女は衣裳に縛られているのですよ。
男はそう言って、淑夫の両肩に掌をおいた。
掌は密着するようなしつようさで淑夫の両肩を撫でると、
そのまますうっ・・・と、二の腕におりてゆく。
密着感は、かわらない。
女を扱い慣れた手だ。
そう直感した。

男は椅子に腰かけた淑夫の傍らにかがみこんで、いつの間にか背後にまわり込んでいる。
ストッキング、お似合いですね。
吹きつける息が、脚許を妖しくよぎった。
この感覚は、悪くない。
肌に吸いついたように密着した薄手のナイロンは、ほどよい束縛感を帯びながら、
まるで女の肌そのもののように、彼の脚をしっとりと刺激し続けている。
ぺた・・・
だしぬけに。
柔らかく濡れたものを、足許に圧しつけられていた。
なんだろう?
男の唇だとわかるのに、かなり時間がかかった。
それくらい、奇矯な行動だったけれど。
男の意図がわかったときには、もう手遅れだった。
ちょっとのあいだ、ストッキングの感触を愉しむかのように
ぬるぬるとねぶりつけてきた唇から、
いつか鋭利な牙がにじみ出ていた。

ぎゅう・・・っ。
まるで注射針のように、むぞうさに。ひと思いに埋め込まれて。
淑夫はアッと叫ぶと、椅子のうえでのけぞっていた。
痛みよりも。驚きのほうが強かった。
な、なにを・・・
応えの代わりに、
ズ、ズ・・・ッ
足許から重たい音が洩れた。
血を啜る音だった。
あ・・・う・・・
抗おうとする数瞬。
けれども椅子の下に身をかがめた男を脚から引き離すのは難しく、
着慣れない衣裳に遮られているうちに、血はどんどん吸い取られてゆく。
縛られている・・・そんな感じがするでしょう?
男の口調は、さっきと変わらぬ控えめなもの。
嘲りも、勝ち誇るふうも、微塵もないそのようすが、わずかに淑夫のプライドを救った。
いま少し、頂戴しますよ。
男がもう一度、ストッキングの裂け目のうえから唇を吸いつけたとき。
ワンピース姿は抗うことをやめていた。

周囲の視界が、ぼうっと滲んでいる。
頭のなかは、とうに無重力状態だった。
ぜんぶ、抜いてしまうつもりかい?
そのほうが、お幸せだとおっしゃるのなら。
どうして・・・
淑夫の問いに。
夕べのことです。
奥様からもこうやって、血をいただいたのですよ。
いつの間にか、妻が入ってきていた。
こんなところに、来るはずはないのに。
妻のまえ、女の姿をさらしながら。
もう羞恥心は忘れていた。
お綺麗ですわ。あなた。
棒読みするような口調に、妻もまた理性を奪われているのがわかった。
貴方を、レディに変えたように。
奥様を、娼婦に変えてしまいました。
男は淑夫の妻になれなれしくすり寄ると、白いうなじに唇をあてていた。
きゅうっ。
人をくったような、あからさまな吸血の音に。
淑夫はただうっとりと、聞き惚れてしまっている。
あぁ、あなた・・・
甘い媚びを含んだ妻の上目遣いが。
自分ではない男に向けられている。
なぜか、怒りを覚えなかった。
じぃんと痺れた脳裡から、世間並みなプライドは跡形もなく消えていた。

男はハンカチを取り出して、しずかに口許を拭おうとする。
似合っていますよ。
思わず淑夫は口走っていた。
家内の血が、貴方の頬に。
こちらを窺う一対の男女に、ほっと安堵のため息が洩れて。
周囲の空気が和むのを覚えると。
もう、取り返しがつかないのだな。
ほろ苦い想いが、ちらとかすめたけれど。
気分はどうだい?
素晴らしい気分よ。いまのあなたとおなじくらい。
そんな応えがかえってくると。
わき上がる深い陶酔が、濃霧のように立ち込めるなか。
ぞんぶんに、辱めていただくように。
従順に頷く妻に、満悦の笑みを返しながら。
淑夫は結婚指輪を指から引き抜いてしまっている。


あとがき
身にそぐわない女の衣裳があたかも呪縛のようにまとわりついて。
日常を侵されてゆく男。
倒錯の世界では、妻にほかの男を迎えることも、違和感を覚えないようです。

落ちる靴下

2006年08月04日(Fri) 13:15:11

「お邪魔します」
嫁のサトミが来たらしい。
治子は読みさしの本をおいて、玄関にむかった。
嫁はいつも、娘と息子を連れてくる。
「ふたりとも仲良く、遊んでいるのよ」
サトミは改まった口調でふたりにそういいつけると。
子供たちは従順に、祖母の書斎へと立ち去っていった。

ほほほ・・・
ふふふ・・・
リビングに響く、ふた色の含み笑い。
嫁は姑の、姑は嫁の脚へと触れてゆき、
お互いのストッキングを片方ずつ、引きおろしてゆく。
はらり・・・はらり・・・
なよやかなナイロンの薄絹が、風にそよいでふわりと床に落ちてゆくのを眺めながら。
ホホ・・・
含み笑いは、いっそう濃さを増してくる。
姑はまだストッキングを脱いでいないほうの脚を、嫁のスカートの奥に差し入れていって、
嫁は心持ち広げた脚を、キュッとつま先立たせて。
きゃっ。お義母さま・・・ったら・・・
低くけだるい声をわななかせながら。
体の奥へと差し入れられる脚のうごきにあわせて、スカートがしどけなくねじれていった。
もう・・・
嫁は口を尖らせながら。
こんどは自分のほうから姑のほうへと身を寄り添わせ、
むしり取るようにしてブラウスを脱ぎ捨てると、
はちきれるほどぴちぴちとした、豊かな胸をむき出しにして、
姑の体にすり寄せる。

見える?
姉が背丈の低い弟を気遣うと。
ウン。よく見えるよ。
弟も熱を含んだ小声でささやき返している。
女らしいカーブを帯びた、白のハイソックスのふくらはぎ。
そのすぐ傍らで、濃紺の半ズボンに黒のハイソックスの脚が爪先立ちをしている。

こんどね。
おもむろに嫁が、口を開いた。
うちの近所に、ご家族連れが越してきたの。
娘さんが、ひとりいて。ミカの同級生なのよ。
ご主人、ちょっといい男で。なによりも、女好きらしいの。
そお。それはまた・・・
好都合な餌食ね。といいかけて。
言葉を呑み込んだ口許に、軽く笑みを滲ませた。

数日後。
嫁はひとりで、やって来た。
急ですけど。これからご一緒しませんか?
え?
姑が読みさしの本を傍らに置くと。
嫁は得意気に、ハンドバックのなかから薄い衣類を取り出した。
「ご主人の」
まっさきにつまみ上げたのは、濃紺の薄手の長靴下。
それを姑のまえ、みせびらかすようにして。
ぱらっ、と、床に、落としてゆく。
鮮やかに浮いた裂け目に、姑は息を呑む。
「お嬢さんの」
こんどは白のハイソックス。
ふくらはぎのあたりには、まだ滲みを帯びた赤黒いシミ。
つまんだ指を放して。お父さんの靴下のうえ、ぱらりと落としてやる。
「奥さんの」
こんどは黒の、ストッキング。
ぴちっと鋭い伝線が、つま先から腰のあたりまで伸びていた。
嫁は濃い含み笑いをたたえたまま、
長い長い薄手のナイロンを。
とぐろを巻いた蛇のように。
ぐるーっと、渦巻かせながら。床に垂らしてゆく。

ウフフ・・・ふふ・・・
人のわるそうな、ふた色の含み笑い。
「ご一緒しましょ」
姑は装いを改めるため、席を立った。

真新しい家のリビングで。
母娘がふたり、がたがたと震えながら抱き合っている。
父親はもう、写真立てのなか。
怯えるふたりを冷ややかに、見守っていた。
「ごめんあそばせ」
凛とひびく、姑の声。
「義母(はは)ですの」
あくまで取り澄ました、嫁の声。
どちらになさいます?
上目遣いをする嫁に。
「お嬢さん、素敵ね」
黒のワンピースのすそからのぞく脛が、淡い黒のストッキングのなかで青白く映えている。
嫁がさっと身を翻して母親に迫ると。
姑は、「いい子ね♪」と、あやすように娘を抱きすくめる。

きゅ、きゅう・・・っ。
ちゅうううう・・・っ。
扉のすき間から洩れてくる、吸血の音。
足を忍ばせてあとを尾けてきた姉弟は。
息をひそめて。見つめ合って。
もう、目を離せない。
そういうように。
ふたり並んで、扉の隙間に顔を押しつけていた。

臨時登校日

2006年08月04日(Fri) 11:00:15

ぎらぎらと輝く太陽の下。
いつも静まり返っていた学校が。
にわかなにぎわいに満ちている。
きょうは、臨時登校日。
半月しか離れていないのに。
ずいぶんと長いこと会っていないような気分になるのは。
真っ黒になった子。
どことなく、大人びた子。
みんなそれぞれに、磨かれ輝きをましたせいなのだろう。

初めてつけたピアスを自慢するように、咬まれた痕を見せびらかす少女。
生え初めた牙の長さを誇らしげに、クラスメイトと比べ合いっこしている少年たち。
そうした異形のものたちも。
子供たちはさしたる違和感も伴わず、無邪気に共有してしまっている。

「咬まれちゃった」
幼馴染みのとも子が、
こっち来て。
ちいさな声で、少年を呼び止めて。
人けのない校舎の裏手に、手を引くように呼び寄せて。
そっとおさげ髪をひきあげた。
ついぞ見つめたことのない少女のうなじは、
どきっとするほどなめらかな、女の皮膚に覆われていて。
その隙間を侵すように。
赤黒い痕がふたつ、綺麗に並んでいた。
神秘的なものでも見るように。
それでいて、どこかじりじりと、落ち着かない。
いつの間に・・・?
少女の肌の変化と。
その肌につけられた犬歯の痕と。
そのどちらもが、少年から落ち着きを奪っていた。

いちど血を吸われちゃうとね。
もう二度と、ほかのひとには血をあげられなくなるんだって。
あたしほんとうは、ケンくんに血をあげたかったんだけど。
もうそんなこと、できなくなっちゃったね。
ちょっと寂しそうに俯く少女の横顔が、
少年の目には、この世のものとは思われないほど高貴なものに映っていた。
でもね。
少女の話は、終わっていない。
今夜は、満月でしょう?
お月さまが、のぼる前にね。
誰かに血を吸われたら、魔法は解けるんだって。
「誰かに」
その部分に力点がこめられたように思えたのは。
空耳だろうか?少女のほんとうの意思だろうか?

もうじき、のぼるわ・・・
少女は虚ろな目になって。
空の縁を見つめている。
いつのまにか、眩しかった太陽は、にわかにその輝きを減じはじめていた。
あ・・・
危うくなにかを言いかけて。
少年はごくり、と、生唾を呑みこもうとしたけれど。
口のなかからは、潤いが去っていて。
からからに渇いた喉が、ひっつきそうになっただけだった。
われ知らず、少女のほうへと身を寄せていて。
震える手で、おさげ髪をかきのけて。
痕のあるのとは反対側のうなじへと、生えかけた牙を突き立てていった。
きゃっ。
少女はかすかにあらがったけれど。
がっちりとつかまえられた握力を両肩に感じると。
立ちすくんだまま、少年の衝動に従っていた。

夕闇が、濃くなった。
姿勢を崩した少女は、足許を草むらに淪(しず)めていた。
「嘘、ついてたね?」
少年は咎めるように口を尖らしたけれど。
しんそこ怒っているわけではなさそうだった。
陶酔にほんのりとなった少女の頬が、こわばることはない。
そう。自分でつけたの。それらしく。
あなたに初めて、吸ってもらいたくって。
男の子はなかなか気がついてくれないけれど。
あたしだってもう、キケンなお年ごろ・・・なんだから。
「罰だ。もっとやらせろ」
「きゃっ」
戯れあう犬ころのように。
周囲の草むらは、がさがさと穂先を揺らがせて。
そのうちスッ・・・と、しずかになる。
りぃん。りぃん。
暗闇に漂う静かな虫の音は、まだ稚ないふたりへの祝婚歌だろうか。
お月さまはとっくに、ふたりの頭の上。しずかな輝きをたたえている。

再あっぷ紹介

2006年08月04日(Fri) 10:27:00

明け方インスピレーションが湧いて、「人妻倶楽部」というのを描いたのですが。
そのあとに旧作の再あっぷをしたので、埋もれてしまいました。--;
よければそちらも、おたちより下さい。^^

「帰省」
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-428.html
去年の8月17日といいますから、お盆明けに描いたものです。
明け方の四時ころ思いついて、あとからあとから湧いて出てきて、
けっきょく1~5までを朝のうちにあっぷしました。
今回はぜんぶまとめて載せます。
村に帰省するご一家は、年頃のお嬢さんや綺麗な若妻さんを連れて帰るのですが・・・^^
どさくさまぎれに愉しんでいる由貴子さんが気に入りです。^^;

「後朝(きぬぎぬ)」
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-429.html
「出迎え」
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-430.html
きぬぎぬ、とは。
逢瀬の翌朝のことです。
昔はたった今までいた恋人に、歌を贈ったそうですが。

吸血鬼に抱かれてきた妻を迎える夫。
これから抱かれに出かける妻を送り出す夫。
ゆがんでいますね・・・^^
なんかこんなのばかり、描いている気がしますが。
こういうシチュエーション。
不快に感じられた方には、素直にごめんなさいです。m(__)m

人妻倶楽部

2006年08月04日(Fri) 07:48:21

その店はいかにもありがちな、古ぼけたマンションの一角にあった。
隅っこにすすをいっぱいつけた、
陳腐に派手な、思わせぶりの看板に。
人妻倶楽部
これまた実にありきたりの、そしてどういうお店かだいたい察しのつくような店の名が書かれてあった。

いらっしゃい。
さして美しくない、中年の女。
派手な衣裳に包まれた白い貌は、ちょっとすさんだやつれを見せているけれど。
若い頃はもっときれいだったのよ。
整った目鼻立ちは、あたかもそう主張しているように、妍を帯びていた。

なんになさいます?
女はボトルのたくさん並んだカウンターを振り返った。
疲れたような低い声が、妖しく悩ましく、耳の奥まで染み透る。
指一本、まっすぐに突き出して。
女の胸元を刺すように、指さしていた。
わたし?
女は自分を指さして。
望むところね。
にっこりと、ほほ笑んだ。
奥には整えられた古いベッドがひとつ。
ひっそりと薄闇のなか、うずくまっている。

さすがに巧みな腰さばきだった。
流れる汗をうわぐすりにするように。
女の肌は若いころそのままに、白磁のように輝いている。
どちらが奪っているのか。どちらが慰めているのか。
すべてが混沌とした、無重力状態の刻一刻。
こと果てて身を離した女はきょうも、醒めた弱々しい目線を投げてくる。
ひたひたと染み透るように、ひとを癒す目線だった。
あなたの変態は治らないけど。
年に二度くらいは、ここにいらっしゃい。
いいのよ。何しても。
そうすれば、心の底まで澄んでくるでしょう?

店を閉めた帰り道。
いつも通りかかる公園で。
女は三人の男に凌辱を受けた。
乱れたスカートをさらにたくし上げながら。
もっと、おやりなさいよ。
女はなぜか自分から、獣どもを誘っていた。
あなたたち、そのままじゃ。
また他所へいって、別の女を襲うでしょ?
汚れついでに、癒してあげる。
どれほど刻が過ぎたあとか。
男どもの顔から、獣じみた翳はあとかたもなく消えている。
やっぱり、自首するよ。
しちゃいけないことを、したんだから。
そうね。
こんどこそ出てきたら。
もうこんな悪さはつつしむことね。
どうしてもガマンできなかったなら。私のお店にいらっしゃい。
女は立ち上がると、こともなげにスカートの泥を払い落として。
気の毒だったわね。
しんそこ気の毒そうに、醒めた柔らかい目線を、ひとりひとりに投げていく。

人目の入り込む隙もない、生い茂った木立ちの奥。
女におおいかぶさった黒い影は、うなじを強く吸っている。
ブラウスに散ったバラ色のしずくが、忌むべき男の所業を告げていた。
もういいの?
女は起き上がると。
身を離した男に念を押した。
醒めた柔らかい声色で。
悪さをするな・・・だなんて。貴方に言っても無理よね。
でもせめて。そこまで幸せがきているような人を殺めるのは、やめてちょうだいね。
影は少年のように従順に、ゆっくりと深く頷き返している。

誰も彼も。
あんたに救われていくのだな。
男は女を抱きながら。
そう、耳もとに囁いた。
ただの、汚れた女よ。
女の声はあくまでも。醒めて弱々しい。
そんな評判。救われた連中が赦すまい。
女は男のしずかな賞賛を受け流しながら。謡うように呟いていた。
誰でもね。
心のなかに、神さまが住んでいるの。
神さまを居眠りさせていなければ。
私の声は、どこかに届く。ただそれだけ。
誰でも救えるわけじゃないのよ。
神さまを消してしまったものは、自分も死ぬしかないわけだし。
あまりにも深く眠らせてしまった人も、救うのが大変なの。
だれのことで苦しんでいるの?
男の問いに、女の応えははっきりしている。
うちのひと。
だから一生、連れ添っているのよ。

メイドのいる邸

2006年08月03日(Thu) 08:03:33

ちろちろと明滅する照明だけが頼りの、薄暗がり。
燭台を持ち歩くメイド姿の長い影が通りかかった。
はた、と立ち止まると。
燭台を置きなさい。
そう、命じられて。
置きどころをかえた燭台が照らし出す少女の影が。
次の瞬間、大きく揺れた。
「あっ、お許しくださいませ・・・っ」
のけぞるその身に、もうひとつの黒影が重なり合って。
仰のけたうなじに、唇が吸いつけられる。
きゅっ、きゅうっ・・・
むざんな吸血の音。
メイドは絶句して、やがて力尽きたように、ぱたりと廊下に倒れ臥した。
影はメイドの血に濡れた唇に、にんまりと笑みを滲ませて。
ひざ上までの長靴下を履いた足許に、そろそろとかがみ込んでゆく。
黒の長靴下のうえからあてがわれる唇が、もの欲しげに吸いつけられて。
きゅっ・・・きゅきゅうっ・・・
しずかになったメイドのうえにおおいかぶさる吸血の音はいつまでも絶えることがなかった。

まりあがはじめて訪ねたそのお邸は。
ウッソウと茂るツタに埋もれたような、古風な洋館。
初めまして。
なるべく初々しく。適度にピチピチと。そしてもちろん、お行儀よく。
ご主人さまになる人に、お辞儀をする。
ご主人さまは、四十代。それとも五十くらいかな?
とっても落ち着いた上品な人で。
でもどこか、お顔の色が悪くって。
奥様もやっぱり美人だけれど。華がなくて、やっぱり顔色がお悪かった。
―――気にすることはないのですよ。
とりなすように、御主人様が口をはさむ。
わが家の遺伝でね。みんな顔色がよくないのだよ。
きみに面倒を見ていただく息子もね。
ちょっと気難しいところがあるけれど。心の優しい子だから。よろしく頼みますよ。
静かだけれど。威厳のある声色でそういわれると。
まりあは背すじをぴんとさせて、最敬礼のお辞儀をしてしまった。

お坊ちゃんはまだ童顔を残したお年頃で。
いつも半ズボンの下に黒の長靴下を履いていた。
古風な装いがとてもよくお似合いで。
けれども御主人様以上に無口で。
はじめのうちは合わせるのに苦労した。
けれどもすぐに、優しい子なんだってわかったら。
まりあのほうがちょっぴりお姉さん気分になって。
気詰まりの多いという住み込みのお仕事も、
そんなに苦にはならなくなった。
けれどもお坊ちゃんが最初に口にした言葉、ちょっと不思議で忘れられない。
ここにくるお姉さんはね、いつも突然辞めちゃうんだ。きみもいつまでもつのかな。

黒のミニのワンピースに、まっ白なエプロン。
脚には黒の長靴下。
長い髪をキュッと結わえて、いままでよりグッと清楚な感じにして。
お仕着せのメイド服はきちんと着こなして、変化は靴下で出すようにしている。
黒の長靴下を着用のこと。
規則にはそれしかかかれていなかったけれど。
お坊ちゃんがよくなついていたという前の前のメイドさんは、薄い靴下を履いてたみたい。
ふたりで写っている写真を、お坊ちゃんはなぜか、
パパやママには内緒だよ。
そう言って、こっそり見せてくれた。
きょうはお坊ちゃんの好きな、黒のガーター・ストッキングにしてみようかな♪
まりあお姉さんの足許をちらちら盗み見ているの。ちゃんと気づいているんだぞ。^^

こんどのお嬢さんは、活きの良さそうなかたですねぇ。
夫人のささやきは、夢遊病者のように力が抜けている。
そうだね。なかなかハキハキとした、感じのよい子のようだ。
どうしたら、よろしいかしらねぇ。あまりお気の毒なことになってはいけないわ。
そうだね。この邸には、魔が棲みついているからな。
そんな夫婦の語らいを、まりあは夢にも知らない。

ビックリしちゃった。
お気に入りの半ズボンの下。
お坊ちゃんが履いていたのはいつもの黒のハイソックスじゃなくって。
ひざ上まですうっと透ける、黒のストッキング。
あの、それ、女ものなんですかあっ?、って、訊いちゃった。^^;
お坊ちゃんは照れくさそうにまりあを見あげて。
ウン。たまにね・・・履いてみたくなるんだよ。
まりあはそんなボクのこと、笑ったりしないでくれるよね?
エエ。もちろんですわ。
お坊ちゃんは男の子なのに。とてもほっそりとした脚をしていて。
黒のストッキングに包まれたふくらはぎは、まるで本物の女の子みたいで。
ゾクッとするほど、なまめかしい。
まりあのストッキングも、履いてみたいな。こんど、貸してくれないか?
うんうん。
いっしょにイタズラに熱中する、悪い子になったみたいな
ちょっとスリリングな気分になって。
いま履いているやつ、脱いであげようか?
そう口にするのを、かろうじてくい止めていた。^^;

夜になった。
寂しいお邸のなかは、暗くなると本当に真っ暗になってしまって。
怖いくらい、シンと静まり返っている。
広いお邸のお掃除はとても大変で。
まりあはきょうもへとへとになって、ベッドに就いた。
メイド服から、ネグリジェに着替えようとしたら。
急に眩暈がして、そのままばったりと、ベッドに臥せってしまった。

真っ暗になっている。
でも部屋のなかにいるのは、まりあだけではない。
寝室にかすかに息づくものが、だんだんこっちへと迫ってくる。
動けない!
金縛り・・・というのだろうか?
手も脚も、痺れたようになって。身じろぎひとつ、できないのだ。
息遣いはだんだん近く、荒くなってきて。
とうとうまりあのうなじの上で、動きをとめた。
研ぎ澄まされた目線が、首筋を狙っている。
恐怖と、そしてなぜかわき上がる、えもいわれぬ陶酔と。
淡く昏い渦のなかに、うっかり身をゆだねてしまいそうになったとき。
「まりあお姉ちゃん、どこにいるの?」
廊下でお坊ちゃんの声がした。
まりあの上におおいかぶさろうとした影は、ハッとしたように身を起こし、
つぎの瞬間、霧のように掻き消えてしまっている。

おはよう。
お坊ちゃんは、このところ、顔色がよくない。
前から蒼白かった頬が、さらにいっそう、透きとおるようになってきた。
時折身につけてくれるのは、まりあがあげた黒のストッキング。
パパやママには内緒なんだ、そういいながら。
まりあを招ぶときは必ずといっていいほど、脚を彩っている。
色の白くなったぶん、いっそう妖艶に映えるようになっていた。
夕べ、まりあのこと、お捜しになっていたでしょ?
思い切って、まりあのほうから切り出してみた。
え?そんなことないよ。
お坊ちゃんはしんそこふしぎそうに、首をかしげている。
重苦しい霧が去ったあと。
すぐにドアを開けて覗いた廊下には、人影ひとつなかったのだ。

今夜は特別な夜だから。
早くに自室にこもって、朝まで部屋を出ないように。
めったにご指示を出さない御主人様が、
いつになく重々しい口調で、そうおっしゃった。
まりあ。今夜ボクの部屋に来てくれる?パパやママには、絶対、絶対、内緒にしてね。
お坊ちゃんの目がいつになく、しんけんだった。

もうとっくに、ネグリジェに着替えている時分。
そして、自室から出ることを御主人様から禁じられた刻限。
まりあはメイド服のまま、お坊ちゃんの部屋へと向かっている。
黒のガーターストッキングを穿いた脚を、忍ばせて。
約束の時間を、ちょっと過ぎてしまった。
扉ひとつへだてた廊下から、行き交う足音がいつになく、絶えることがなかったからだ。
お坊ちゃんのお部屋は二階の一番隅にある。
昼も薄暗い廊下は、夜ともなると。
そのあたりが、一番暗い。
それなのに。どういうわけか、いつになく。
お部屋のまえの廊下が、明るい。
よく見ると、お部屋のドアが半開きになっている。
どうしたんだろう?
思わず駆け寄っていくと。
あ・・・
中から、引きつるような声がした。
お坊ちゃんの声だった。
まりあは知らず知らず、ドアをたてに身を隠していた。

お坊ちゃんはチェアのうえに脚を乗せていた。
いつもの半ズボンに、黒の長靴下。
誰かがお坊ちゃんの靴を磨いているのか・・・と思った。
お坊ちゃんと真向かいになっている人は、まるで黒い影みたいに。
足許にかがみ込んでいたから。
きゅ、きゅう・・・っ。
奇妙な音が、まりあの耳の奥をくすぐる。
なんだろう?なにをしているだろう?
入ってもいいのかな?
ぐずぐずと迷っていると。
後ろから伸びてきた手が、スッとまりあの肩を撫でていた。
ひ・・・っ。
悲鳴は喉の奥に貼りついて。
とうとう声にならなかった。
連れ去られるさいごの瞬間。
振り返ってみるとお坊ちゃんは眠そうに目をこすらせながら。
血のついた太ももを、ハンカチで器用に拭っていた。
差し向かいになった影は、なおもお坊ちゃんの脚に唇を貼りつけて。
どうやら血を吸っているみたいに見えた。
まりあが廊下の曲がり角をまがるとき。
ふとふり向いた影の持ち主が、ほかならぬ御主人様だとわかって。
まりあの背すじにはじめて、ゾクッと寒気が走っていた。

御覧になったでしょ?
奥様は蒼い頬を冷たく輝かせて。
まりあをひたと見すえている。
おわかりになるわね?あなたも先輩たちの、仲間入りをするんですよ。
奥様の手には、ロープが握りしめられている。

メイド服のうえから、ロープをぐるぐる巻きにされて。
容赦なく、ぎゅう・・・っと縛られて。
痛いです。
奥様に訴えると。
痛いのよ。
訓えるように、しっとりと。落ち着き払った反応がかえってきた。
どうしようっ。まりあ、これからどうなるの?いったい、どうされちゃうの?
引き合わせてあげるわね。そのまえに・・・
奥様はしなだれるようにまりあのほうへと寄り添ってきて。
荒い息遣いが頬をかすめる。
あのときの「影」だ。
寝室でまりあにおおいかぶさろうとした影。あの正体は・・・奥様?
気がついたようね。でももう遅いわ。
奥様はちょっとだけ哀れむように。
美しい瞳でまりあのことをじいっと見つめると。
いとおしい・・・
そうおっしゃりながら。
まりあの首筋に、唇を当ててくる。
柔らかに濡れた唇がしっとりとあてがわれて、まりあの肌を強く吸った。
・・・・・・っ!
唇のすき間から滲むようにはみ出てきたのは、二本の牙。
それがまるで注射針のようにむぞうさに、皮膚を破っていた。
ぎゅう・・・っ
と圧しつけられた唇の下。
じゅくっ。
と、血がほとび出て肩先を濡らすのを感じていた。
あっ、あっ。。。ああ・・・っ!
声にならない悲鳴と、抗いにならない悶え。
ロープと奥様の腕のなか。
まりあはどうすることもできないまま、ひたすら血を吸い取られてゆく。
奥様。お、お許しを・・・っ。

ダメ、ダメ・・・
奥様はイタズラっぽく微笑んで。
ゆっくりと、かぶりを振っていらっしゃる。
かわいい子。でもお仕置きは、まだまだよ。
まりあの頬をいとおしげに撫でながら。
さぁ。皆さんにも、ご挨拶しなくちゃね。
パン、パン。
はっきりと打ち鳴らされる奥様の手の音が、薄闇にこだました。
その音に招かれたように。
透明な闇の彼方から、まるで浮かび上がるようにして。
まりあとおなじメイド服の女たちが、忽然として、現れた。

「生意気そうな子じゃないの」
頭だったひとりは、すこし、とうのたったお姉さま。
まりあをひと目みると、そうおっしゃって。
あごをつかまえて、ぐいと持ち上げて。
お相伴にあずかるわ。
フフッと笑んだ顔が視界から消えると、
ぐい・・・っ
さっき奥様につけられた傷口を、さらに深くえぐってくる。
むぞうさに血を引き抜かれた瞬間、クラクラと眩暈に襲われた。
おかわりね。
妹ぶんみたいな女の子が、つづいて傷口を吸う。
あたし、次っ。
ちょっとはしゃいだ声の女の子は、まりあよりも若そうだった。
まりあに抱きついてきて、やっぱり血を吸い取っていった。
ちゅうっ。きゅうっ・・・。ごくり。ずず・・・っ。
メイド服の女の子たちはかわるがわるまりあに抱きついてきて、
少しずつ、血を吸い取ってゆく。
そのたびにまりあの視界は眩暈に遮られて、じょじょに姿勢が崩れてゆく。
けんめいに、脚を踏ん張ってみたけれど。
濃くなった眠気は、夢みるような誘惑をまりあにしんなりと巻きつけてくる。
ホホ・・・
傍らで見物をしている奥様が、口に手を当てて。
エレガントにお笑いになった。
ああ・・・
どうしよう・・・
このままじゃ、死んじゃうっ。
だいじょうぶよ。あなた。
まりあの心を見透かしたように、奥様が口を添える。
からかうような、お口ぶりで。
あなた、気に入られたみたいだわ。
このまま幾晩も、過ごせるわね。
その代わり、もうお邸から出られないのよ。
その体に流れる若い血を、たっぷりとみなさんに恵んであげなくちゃならないから。
闇を通して。
優雅に流れるさやさやとした、白のイブニングドレス。
その向こうから、影がふたつ。
そうっと忍び足で、奥様の背後に忍び寄ってくる。

「お姉ちゃん、ごめんね」
すりよってきたお坊ちゃんは、メイドの女の子たちを見回すと。
みんな、死んでしまったんだよね。パパやママに血を吸われて。
寂しそうに、みんなを見回していた。
ボクが脚に通している靴下ね。
みんな、この子たちのものなんだよ。
血を吸われる前に、分けてもらって。
ボクもパパに、血を上げているから。
まりあもボクといっしょに。みんなに血を上げてくれるよね?
でもそのまえに、ボクもまりあを・・・
そうおっしゃると。
お坊ちゃんは縛られたままのまりあの足許にかがみ込んできて。
ぬるり。
ガーターストッキングの太ももに、唇を這わせてしまった。
あ・・・
なにかがじくっと、まりあに迫る。
それはじりじりとせりあがってきて、まりあの体の芯を熱くほてらせてきた。
あ・・・おやめになって・・・
どうしてこんなときに、色っぽい声を?
まりあ自身が、いぶかしかった。
けれども。
いつのまにか床のうえにくみしかれてしまって。
ガーターだと、穿いたまま、姦れるんだよね。
お坊ちゃんは息せき切って、生え初めた牙をまりあの肌にすべらせてくる。
ふと見ると傍らで、御主人様が奥様を。そしてメイドのひとりを巻き込んで。
かわるがわる、愉しまれていらっしゃる。
供宴のるつぼ。
まりあは思わず激しくかぶりを振っていた。
ああっ・・・お許しを・・・っ。
お坊ちゃんにそう囁いたとき、なにかとんでもない衝動が、とめどもなくまりあを貫いていた。
もう、いいだろう?ここから出られなくっても。
はにかみ屋だったはずのお坊ちゃんの声色は。
御主人様とおなじような威厳を秘めていて。
だめよ。だめよ。・・・だめよ。
繰り返し拒絶の言葉を吐きながら。
まりあはただひたすらに、めくるめく衝動に身をゆだねてしまっていた。