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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

宴の別荘

2006年10月30日(Mon) 22:16:03

きらめくシャンデリアの下には、着飾った男女。
ここは、山奥の別荘。
周囲に立ち込める闇は、妖しくなまめかしい艶を秘めている。
一見なんのことはない、和やかなホーム・パーティ。
なん組かの夫婦は、年代にふさわしいとりどりの衣裳にキリッと身を包み、
グラスを片手に、行き交っている。
よく見ると、じょじょに三人ひと組に固まってゆくようだ。

艶然とほほ笑みながら夫のつれを誘い出し、
ふたりきりになった物陰で、うなじをゆだねる人妻。
咬まれた痕を見せびらかすようにして、わざと愛想をふりまきながら人のあいだを行き来する女。
目引き袖引きして、ひとの奥さんや自分の女房が咬まれてゆくのを見守る男ども。
じぶんの結婚指輪を外して、あいての男の指にはめてやる夫。
おや、もうお寝みですか?ずるいなぁ。
いえね・・・目のまえでしていただくのを、これから拝見するお約束なんですよ。
フフ・・・それはそれは。
そんなやり取りが、ごくしぜんに交わされる。妖しいムードのなかで。

スリップ濡らしていただくお相手、見つけたわ。
あのかたに、ストッキング破っていただいてもいいかしら?
はじめは遠慮がちに、そのうちおおっぴらに、
夫に耳打ちするようになる妻たちを。
愉しみ・・・だね。きみの乱れ姿。
夫たちもまた、グラス片手に、イタズラっぽい笑みを滲ませてゆく。

おや、眠れませんか?
そういう、貴方こそ。
宴の果てたホールには、ほのかにくゆらいだ弱い灯火が、静かな薄闇を作っている。
から。から。
掌のなか。ゆっくりとめぐらされるグラスのなかで。
溶け残った氷が虚ろに音を響かせる。
お酒も、尽きましたかな。
なに。お望みならば。まだ、まだ。ありますよ。
では・・・一杯だけ。さあどうぞ。
ささやかな献酬を交わしながら。
・・・乱れてましたよ。ふしだらに。
片方の夫が、ぼそりと呟く。
ええ、うちのやつも。
目のやり場に、困ります・・・
態度が言葉を、裏切っていた。
喉をほろ苦く灼くものは、アルコールだけではないようである。
もだえる姿。魅かれますな。
長くのぞいているのは・・・体に悪そうですが。
ふふふ。
語らう男たちのすぐ向こう。
組み敷かれたべつの人妻が、悩ましくくねる脚をほのかな照明に浮かび上がらせている。

がらんどうのオフィス

2006年10月30日(Mon) 15:42:14


はい。今月の営業成績びりの蛭田くん。
罰として、開かずの間にお入り。
そこで、ひと晩たっぷり反省すること。
金曜日の夕方に、そんな宣告をする課長。
ほかの奴らもにやにやと、そ知らぬ顔してほくそ笑む。
だれ一人フォローしてくれるやつのいない、いまの部署。

開かずの間。
本社ビルの一角に、ひっそりと埋もれた闇の部屋。
昼間でも照明はなく、時おり漂う生温かい空気には、
かすかな呻き声のようなものが混じっているという。
若い女性社員など怖がって、まえの廊下さえ歩こうとはしないのだった。

ひゅう・・・ひゅううう・・・
虚ろな風が漂う廊下。
じゃな。気をつけてな。明日になったら家帰っていいから。
同僚の一人はさも小気味よげな顔をして、形だけのねぎらいをかけてくる。
明日になったら・・・って。
土曜日じゃん。
蛭田はぼっそりと、嘯いた。
その同僚も、開かずの間から洩れてくる照明ではない光がじんわりと滲むのをみとめると。
ゾクッ・・・と、怯えに体をこわばらせて、足早に立ち去っていった。

ギィ・・・
古びたドアを、押し開く。
油を差していないシリンダーが、鈍い音をきしませて。
ひょおうう・・・っ。
ガラス窓はたしかに締められているように見えるのに。
どこからともなく吹いてくる風が、蛭田の頬を薄ら寒くかすめていった。
けれども・・・
包み込んでくるような暗闇に、えもいわれぬ温もりがこもっていた。
今は、蛭田にしか感じ取ることのできなくなっている温もり。
よく、来たね。待っていたよ。
闇に目が慣れずとも。
蛭田にはわかっている。
ここには、テーブル。あそこには、書類棚。
ドア際にひっそりうずくまるデスクには、派遣社員の女の子。
窓際にあるあの大きなデスクは、所長席。
所長席のまえ、すこし間をあけて向かい合わせになった机には、万年係長が。
そして、向かい側には、ほかならぬオレが座っていた。
ドアぎわにひっそりとうずくまるデスクからは。
あの派遣の女の子が、おだやかに暖かい視線を。
懐かしい微笑みとともに送ってくる。
今はもう、知る人も少ないけれど。
ここは彼がひととき籍を置いたことのある、かつての職場。
いまは訪れる人もなく、骸骨のように原形をとどめているだけだった。


こんど配属になる男。人の血を吸うらしいぞ。
えっ・・・?
まじに・・・?
部屋の空気が、サッと変わった。
そんなことも知らないで。
はじめてその職場に配属になり、真新しいスーツに身を固めた蛭田は、
緊張に息をつめ、さっそうと出勤してきたけれど。
案の定・・・
周囲の目は、冷たかった。
そらぞらしい目線をまともに受け止めると、蛭田の悪い癖が出る。
存在を感じてもらえなくなるくらい、萎縮してしまうのだった。

そんな蛭田のことを、とにもかくにもフォローしてくれたのは所長だった。
役目柄、仕方なかったのかもしれないけれど。
いつかふたりのあいだには、和やかな空気さえ流れるようになっていた。
やがて、家に招ばれるようになって。
ときどき、病気の奥さんに逢いに行っていると噂が立つと。
またもや、やなムードが部屋に流れた。
それが少しずつ、変わってきたのは。
奥さんの病気が全快してからのことだった。
蛭田の持つ牙の毒液が病魔を鎮めたのである。

きゃーっ、怖い。
そういいながら。
派遣の子は、首筋を咬ませてくれるようになった。
彼氏がいるの。
そういいながらも。
事務所が閉鎖になるまえの晩、いちどだけ。
ふたりきりになったとき、キスを許してくれた。

女房、吸血鬼に興味あるんだってさ。
万年係長も、家に招いてくれて。
もっさりとした旦那に不似合いなくらいエレガントな奥さんは、
銀のネックレスを外してうなじをゆだね、
濃紺のストッキングを装ったふくらはぎまで、舐めさせてくれた。
中学に通う娘さんまで、お母さんのまねをして。
ハイソックスに包まれた脚に、触れさせてくれて。
娘はまだ、処女だろうね?
あくる朝訊いてくるときの万年係長は、気がかりそうな優しい父親の顔になっていた。

いまはもう、誰もいない。
信じられないほど、隔たって。
それぞれべつの世界に身を置いているはずだった。
きっとそれぞれに。
寂しい想いを抱いているのだろう。
そんな悲しい妄念が、愉しいやり取りを交わしあったかつての集いの場に舞い戻ってくるのだろうか。
埃交じりの静寂に支配された、かつてのオフィス。
どこからか洩れてくるすき間風が、すすり泣きのような奇妙な音をたてながら。
時おり蛭田の耳もとをかすめ通り過ぎてゆく。
かつて、自分の座っていた席に腰をおろして。
蛭田はうずくまり、目じりに熱いものを滲ませていた。


がた、がた。
きゅっ、キュ・・・
つぎに頭をあげたとき。
朝の光が眩しく、周囲に降り注いでいた。
オーロラのように濃い斜光線の向こう側。
ふたつの影がいそいそと、ずれた机を直し、窓ガラスに磨きをかけている。
「さ。そっちはもう片づいた?じゃー、ドア際の机、拭いてもらおうかな?」
鋭い声で指図をしながら、自らもキリキリと立ち働く、スーツ姿。
「あっ、蛭田くん。目、覚めた?早く手伝いなさいよ」
頭のうえから鋭い声をふりかけてくる、もうひとつのスーツ姿。
「まずその前に、顔洗ってくることね」
怜悧に研ぎ澄まされた声は、鳥飼女史と奈津子のものだった。
敏腕重役とやり手のオフィスレディがふたりながら、
エプロンに三角巾までつけて、部屋の手入れに励んでいる。

手近なトイレで、頭から水をふりかけるようにして、眠気を追っ払って。
涙はいつか、忘れている。
あ、そうだ。
足許においたバケツに水を汲んで。ぞうきんを絞って。
要領の悪い男手が、器用な女手を気遣うように加わってゆく。

また、この部屋に帰っていらっしゃい。
あんたが偉くなったらね。
足許に甘えてくる男をさりげなく脚で追いやり振り払いながら。
女たちはきょうも愉しげに、彼を揶揄してやまなかった。

受付窓口の怪

2006年10月30日(Mon) 15:34:15

ねぇねぇ。
受付、出てごらん。愉しいよっ。
女の子たちはひそひそと、耳打ちしあっている。
人目を気にしながらの情報伝達は、恐ろしいほど速かった。
コツコツ・・・カッカッ・・・
ヒールの音を響かせて。
あちらのオフィス、こちらの部署。
どういうふうに順番が決まるものなのか。
正確な間隔をおきながら、順序よく入れ替わり現われる、女たち。
女たちが向かうのは、正面ロビーの受付カウンター。

あっ、代わる?
同期の子がきたのを認めて、さえ子が軽く、手を振った。
済んだぁ?
ウン・・・
応えるさえ子の足許は。
ぬらあっ・・・とした透明なものを、ストッキングのうえからねばりつけられている。
廊下を行き交うOLたちは、互いの足許を盗み見合って。
あの子も、つけられたわね。やらしいわ。
あのひとまで、あんなに濡らされちゃって。うふふ。
内心の声は、男性社員の耳にまでは届かない。

きょうはずいぶん交代が早いんだな。
なんの疑念もなく声をかけて通り過ぎてゆく次長を見送ると。
しーっ。
足許から、トーンを落とした声がする。
うずくまる男の姿は通りすぎるものの目には触れないらしく、
なぜかカウンターに立ったものにだけ、目に見える。
いいの?
うん。
じゃ~、いただきまぁす。
声の主は、蛭田。
肌色のストッキングに包まれたオフィス・レディの足許に、
ぬらりとべろを這わせていった。

きみは、11人目。惜しかったね。
でも、たっぷり舐めてあげるからね。泣いちゃ~ダメだよ。^^
じゃあ次のひと、呼んできて♪
おっ、お洒落だね。きょうは黒だね。^^
キミのだけは特別に、うんとイタズラしちゃおうかな?
おどけた口ぶりにきゃっ、きゃとはしゃぎながら。
訪問者の少ない時間帯。
女たちは脚を迷わせながらも、舐めさせてしまっている。

さっきの子は、光沢てかてかのストッキング。
そのつぎは、ダイヤ柄の黒のハイソックス。
そのまたつぎは、オーソドックスなベージュ色。
めまぐるしく交代する脚たちに、
次から次へと唇を吸いつけて。
たま~に、そう。五人ごとに。
ちゅちゅ・・・っとよけいに、しつっこく吸って。
生き血を飲ませてもらったりしている。
たまにはいいこと、なくっちゃね♪
能天気な男は、後ろにたった黒のストッキングに気がつかない。

つぎのコは?
おや、珍しい。しっとりとした濃紺だ。
きみ。なかなか、オトナだね。セクシーじゃん。
思い切りなすりつけた唇に、きりっとした足許がしんなりと応えて。
応えるとみせて、サッと受け流してゆく。
逃げかたもなかなか・・・人をそそるようなことをするんだね。
なおもにじり寄って、ひざから下を抱きすくめようとして顔をあげて。
あげた顔が、凍りついていた。
蛭田くん、ね。
こんなとき、女史の浮かべる微笑ほど。
世にも恐ろしいものはない。
とっさにあとずさろうとすると。
背後に回った脚に、軽く蹴られた。
「どうして、招んでくれないの?わざわざ黒に、穿き替えてきたんだけど。」
奈津子がいつも以上に意地悪そうな笑みを、にたーりと滲ませてくる。
さ。役員室にいらっしゃい。
きょうのお仕事はもういいんでしょ?
こんなところで遊んでいるくらいだから。。。

あてがわれた妹

2006年10月29日(Sun) 09:00:52

体じゅうの血を一滴あまさず吸い取られて。
冷えた体で、家に戻って。
それでも両親は、暖かく迎え入れてくれた。
父のいないとき。
母は小ぎれいに装って。
息子を寝室に招きいれて、
いつもは見慣れない、光沢入りのストッキングを穿いた脚を差し伸べてくれた。

それでも妹の佳奈子のほうは。
血を吸われるなんて、キモチわるい・・・
口許を両手で覆い隠すようにして。
そんな兄を嫌悪した。
お父さんとお母さんの血を両方持っているのはあなただけなのだから。
そう、両親に促されても。
なかなか兄の待つ寝所に足を向けようとはしなかった。

ある晩のこと。
お兄ちゃん、いるかしら?
皆が寝静まったころ。足音を消して。
黒のストッキングを履いた脚が、兄の部屋のまえに佇んだ。
あけて。
声のままに開いた扉の向こうには。
長い髪をストレートに流し、女学校の制服に身を包んだ妹。

やおら咬みついたりは、しなかった。
妹がどれほど、血を吸われることを嫌っているかを知っていたから。
咬まないのね。
兄の心遣いを察したように、かすかにうなずく白い顔。
佳奈子の血を吸って・・・
恐怖と昂ぶりとに、歯をかちかちと震わせながら。
たどたどしくなった言葉をつなぐようにして。
少女の声は上ずり、かすれている。
そのかわり、約束して。処女のままで、お部屋に帰して。
無言で頷いた兄のまえ。
妹はうつ伏せになって、すらりとした脚を畳に伸べた。

その瞬間。しなやかな筋肉はキュッとこわばったけれど。
ちくりと刺し込んだ鋭い牙は他愛ないほどに、ゆたかに血のかよう処まで届いていた。
慕わしかった。
だれよりも近い、血縁の血―――。
”男”にもどる衝動を抑えながら。
それでも兄はひたすら、啜りつづけていった。

イタズラ、しないの?
妹は怪訝そうに、足許にとりついた兄に訊いている。
厭がるだろうと、思ってさ。
ちょっとだけなら、いいんだよ・・・
すこしはっきりしかけた声は、まだ震えを含んでいる。
気遣わしげに圧しあてられた唇が。
ぬらりとした唾液を含んだまま・・・慕うようにすりつけられてくる。
スカートのうえから抑えつけてくる掌に力がこもるのを覚えたけれど。
恐怖が重ならないのは、なぜだろう?
なりゆきしだいでそうなっても、かまわないのに。
その一瞬だけは、ふとそんな想いさえよぎらせて。
兄の欲するまま。
夜が更けるまで・・・処女の生き血を吸い取らせていった。

このごろ、血を吸わせてあげているんだって?
まえのように仲の良さを取り戻した兄妹をみて、母親はふたりを冷やかしている。
その声色にかすかな嫉妬があることに、気がついているのは妹だけ。
だいじょうぶよ、母さん。
わたし、兄さんを取ったりしないから。
だって、私・・・
彼氏が、いるんだろ?
母が出かけたあと。
兄はそっと耳もとにささやいてくる。
だいじなもの、あげたんだろ?
すこし翳りを秘めた声色に。
ごめんね・・・
ちょっぴり、涙ぐんでいた。

たいせつな人だから。
どうしても、処女をあげたかった。
でも、もうひとりのたいせつなひとに。
処女の生き血を捧げてからにしたかった。
だから・・・怖かったけど。お部屋をノックしたの。
わたしの血の味、落ちたでしょう?
ちょっと悲しげに見あげる目線に柔らかく応えた兄は。
よかったね。うまくやるんだよ。
決してみせてはならない心の綾だけは。彼女に気づかれないよう封印することができたようだった。



ユウスケおじさま。
舌足らずな甘い声が、どこか大人びた彩を帯びてきている。
母親似の、白い頬。
長い長い髪の毛を、きょうは珍しく結びもせずに。
さらりと肩に流していた。
どこかで見たことがあったっけ。
ずっと独りでいる兄は、眩しげに姪を見あげている。

母にききました。
養女になるんですってね。おじさまの。
どうして結婚、なさらなかったんですか?
でも、佳奈枝・・・うれしいです。
おじさまの娘にしていただくなんて。
きょうはそれを、お伝えしたくて。
少女はまだ、言い足りないらしい。
娘に・・・してください。母が言っていました。
こうすれば、本当に娘にしていただけるんだと。
そよいだプリーツスカートの下。
いつものハイソックスの代わり、足許を染めているのは。
ツヤツヤと透きとおる、薄黒いストッキング。
あの夜とおなじ、畳のうえ。
うつ伏していった少女は、遠い日に、彼女の母がそうしたように、お行儀よく脚をそろえている。

足許から洩れる、ひそやかな音に。
少女はうつ伏したまま、ちょっと苦笑いをうかべて。
いつまでも、くすぐったそうにほほ笑みつづけていた。
ぴちゃぴちゃとすりつけられる、べろの下。
大人びた装いがよじれてゆくのを、面白そうにかえり見て。
獣にかえった伯父のようすに、いたわるような目線をそそぎ続けている。
いいのよ。遠慮なさらなくって。
佳奈枝はもう、おじさまのものだから。
夢見心地に浸る少女の耳の奥。
かすかな声が、よみがえる。

娘にしていただいたお礼に・・・
あなたさえよかったら。そしてあのひとが、望むのなら。
女に・・・していただきなさい。
兄妹だったから。ママはとうとう、果たせなかったけど。

おかえりー♪

2006年10月29日(Sun) 08:53:12

「おかえりー♪」
出迎えてくれたのは、十六歳になる娘。
すっかり娘らしいつやを帯びた黒髪をふさふさ揺らしながら。
ドアを開けるために、無精して。
玄関先でつっかけただけの靴から、つま先を引き抜いた。
フローリングに映える、黒いストッキングのつま先は。
もうまるで母親のそれのように、大人びた翳に染まっていて。
お転婆な振る舞いと、正反対の美質を漂わせはじめている。
すっと伸びたつま先が。
かすかな光沢をもった補強にくるまれているのさえ。
いつもよりどこか、なまめかしい。

「どしたの?」
無遠慮に顔をのぞき込まれて。
あわててとりつくろうように、訊いていた。
ママは?
浮気―。(^^)/
あっけらかんとした返事が、かえってくる。
お兄ちゃんは?
見に行った。
先を越されたな・・・
そんな想いがよぎるのを、まるで見透しているかのように。
パパも、行っちゃうの?
そういう頬がちょっぴり不満そうなのは。
  みんな私に関係のないお祭りに行っちゃうんだね。
まるでそう言いたげにみえたけれど。
家族総出で、っていうのも・・・ねぇ。
ため息交じりに洩らすのは、なかばは本音。
鞄を放り出して、そのままソファにもたれかかっていた。

そういえば、娘はセーラー服を着ている。
こんな夜更けなのに。
パパのまえで脱ぐの、かっこ悪いから。パンティ履いてない。
さっと膝の上に乗っかってきて。
ストッキングも、太ももまで・・・よ。
首筋をよぎる、純白のタイ。
頬にあたる、かすかに生々しい吐息。
ぎゅうっと圧しつけられた身体の重さは、もうすっかり大人のものだった。

連れ込み宿 2ーと

2006年10月27日(Fri) 05:03:01

い・か・が?
耳もとをすうっと通りぬける、甘えた息遣い。
生温かい呼気に、ぴくりと胸を震わせて。
けれども振り返る目線の先にあるのは、決して若々しい美貌ではない。
年老いた老婆は、その枯れ切った面立ちに、なまめいた翳をよぎらせて。
なかば開いたふすまの向こう、狭い部屋いっぱいに延べられたせんべい布団のほうを指さして。
フフ・・・
と、笑みを洩らしつづける。
古びた柱や、しみのついた壁に仕切られた褥のうえにいるのは、
私とおなじ苗字となったあの女。そして、得体の知れぬ、黒い影。
影は女に欲情し、ピンクのスーツ姿のまま、羽交い絞めにしている。
乱されたスーツのすそからのぞいたふくらはぎは、グレーのストッキングの中、わずかにバラ色を滲ませて。
わずかに残された理性をよすがに、かすかな抗いをつづけているのだが。
魔性の猿臂に取り込まれたわたしの妻は、いまは甘い吐息を洩らしながら・・・夢見心地の媚びを含んだ上目遣いで、男に応えはじめている。

歴史は繰り返す・・・というのかね?
老婆はいつものように、背すじをしゃんとふりたてて。
オトナの愉しみ・・・というものですよ。
柔らかい声色に、人のわるそうな含み笑いを浮かべている。
マア、罪作リナ殿方デスコト。
コノ齢ニナッテ。人ヲコンナニ、ナマメイタ気分ニサセルナンテ。
女は軽い非難を含んだ眼で、優しく睨むような流し目を向けてくる。
ほろ苦い胸の疼きのなかに、ゾクゾクとそそけ立ってくる妖しい想い。
礼装もろとも妻を蹂躙されているというのに。
父もきっと。
かいま見ることの悦びに我を忘れて。
お宿通いをつづけていたのだろうか。

また、おいでになられますよね。
エエ、喜んで。
女将の記憶のなかだけに存在する宿帳に、いまは妻と私の名前も書き込まれている。
きっと、通いつづけるのだろう。
生き血を吸われ、犯される妻を愉しむために。
昼は堅実なサラリーマンに、所帯持ちのよい主婦。
そして、夜は・・・
いまは穏やかな老いを養っているあのふたりも、同じような日常を送ってきたのだろうか。


あとがき
ふと想を得て・・・
あとは気の赴くまま、
masterblueさまのいわゆる、自動筆記のごとく、延々と描き進んでしまいました。

父と母がそれぞれに、おなじ宿で別の相手と逢瀬を重ねていた。
その事実を知った男は、許婚を連れてその宿を訪れます。
古いことは、存じません・・・
そう告げながらも、なにもかも呑み込んでいるらしい女将。
けれども意外な一夜は、意外な真相を彼らのまえに明かしてゆく。
そんなようなお話に、仕上がりました。A^^;

長いわりに中身がありませんでしたか?
どこかで、どえらい破綻をきたしてやしませんでしたか?
ちょっと気がかりでしたが・・・
即興芸ということで、お目こぼしを願いたく。(笑)

連れ込み宿 2ーへ

2006年10月27日(Fri) 04:50:41

懊悩の、夜だった。
気が遠くなるほどに、遠い昔。
父と母が。
それぞれに相手を代えて。
背徳の夜を過ごしたかもしれない宿。
そこで今・・・
おなじ褥に息づく女は、たしかに最愛の人なのだけれども。
女は、恐ろしいことを口にした。
もしかして。お父さんの相手の女性・・・母のことかもしれない。などと。

そんなことはない。あるわけが、あるものか。
激情とともにほとばしる、否定の意思。
女は私の腕のなか、ぐったりとして身をゆだねつづけていたのだが。
そこにはいつもの、積極的な振る舞いは、影をひそめている。
これほどに、息の合うまぐわいは。
同じ血が呼び合ってこそ、得られたものだったのだろうか?

ふと。
なんともいえぬ胸騒ぎを覚えて。
枕辺の明かりを灯してみた。
女はこちらに背を向けて。それでもまだ、目ざめているようだった。
肩先に漂う風情に、軽い違和感を覚える。
おい・・・
声をかけたが、返事はない。
ほつれた黒髪のまといつく、汗の滲んだ首筋に欲情を覚えて、女をこちらに向き直らせると。
慄とした。
女は、ちがう顔になっている。
っ・・・!?
お前は・・・誰だ・・・?
声にならない問いに、女は微笑を浮かべ、ゆっくりとかぶりを振った。
笑みを含んだ口許に、赤黒いものが散っていることなど。
動転している私には、もうどうでもいいことだった。
めくるめく眩暈に心を奪われて。
意識は深く、谷底へと落ちてゆく。

一夜明けて。
隣室はもう、片づけが始まっているらしい。
脳髄まで灰になったかと思うほどの、倦怠感。
あれはきっと、夢だったのだろう。
傍らに横たわっていた女はまごうことなく、私の連れ合いになるはずの恋人だった。
激しい情事の名残り。
女もまた、きっちりと刷いた化粧の下、目の隈を秘めている。

隣室の片づけが、早くも始まったらしい。
この古びた宿に、私たちとは別の夢を結んだカップルがいたらしい。
来たときには先客のいるようすはなかったのだが。
終電を逃したものが、ころがりこんできたのだろうか。
恋人同士なのか。不倫の関係なのか。
詮索することは、野暮に違いはなかったが。
この宿には、私たちのような若い取り合わせは、どうにも不似合いのように思えてくる。
女将が現れた。
それとなく、辞去の刻を告げに来たらしい。
丁寧にお辞儀をし、玄関へと差し招くとき。
ふと、豊かな頬が、異様な彩りをよぎらせた。

何ヲ、オ案ジニナッテイマスノ・・・
老婆の瞳が、一瞬眩く輝いたようにみえた。
背すじを相変わらず、しゃんと伸ばして。
女将は人知れぬ呟きを、口にする。
私に聞かせようとしているのか。無意識に流れ出たものなのか。
それは誰にも、わからない。

そう。
あの夜のお客人は、まごうことなく貴方のお父様とお母様。
それぞれべつのお相手とごいっしょに、訪いを入れてこられたのですよ。
お母様のお相手は、人の血を吸う癖をお持ちでしてね。
でもお母様はこころよく、応じておいででしたわ。
賢明なパートナーと、お見受けしました。
お父様のほうは・・・そうですね。
物堅い勤め人で、とても浮気性なようには見えなかったのですよ。
それでもああいうひとを、お連れになるとは。
気づいておいでだったのでしょうか・・・
あの女の瞳・・・お母様のお相手と、おなじ色に輝いておりましたのよ。
明け方になると、お顔の色がうっそりとしていて。
きっとお若かったからこそ、平気だったのでしょうね・・・
あれはたしか、三十×年前の、秋口の出来事でしたね。
そう。貴方の生まれ月から数えて・・・ちょうどそのころのことでしょうか。
けれども・・・ご安心なさいませ。
あなたは、大丈夫。間違いなく、お父様とお母様の間のお子さんですよ。
そして、そちらのお嬢さんも。
彼のお父上が、お母様のお相手だったのですね。
でも貴女もまた・・・爛れた夜の生まれではございませんことよ。
だって・・・血の味で、わかりますもの・・・
艶然とほほ笑んだその顔は。
まさしく夜更けの枕辺に立った、見知らぬ女のそれだった。

連れ込み宿 2ーほ

2006年10月27日(Fri) 04:28:54

朝がきた。
あのときの朝とおなじように、鳥たちはさえずりを朝の景色に投げている。
ごみごみとした家並みも、この刻限ばかりは冴えた静寂のなかにあった。
見送りの刻限は、微妙にずらされている。
ごとごとと部屋を立ち去る気配を先にみせたのは、隣人のほうだった。
出ちゃダメ。
女は柔らかいかいなに私を抱え込むようにして。
立ちかけた私をしっかりと制している。
いや・・・
女は、誤解している。
夕べのあの昂ぶりは・・・
たしかに女の肌に吸い寄せられた熱情のせいでもあったのだが。
より深くは・・・
絶えて乱れをみせなくなった妻の、信じがたいほどに濃い媚態のゆえだった。
ふすま一枚へだてた向こうとこちら。
夫婦はべつの相手と肌を合わせて、痴態に身を焦がしつづけていた。

音も無く、ふすまが開かれる。
女将は気配を消しながら。
それとなく、出立の刻を告げてきた。
いつもなら、客のいなくなった部屋の片づけに入るのだろうが。
ふすまの向こう、乱れたままの褥は・・・まだ伸べられたままになっている。
思わずふすまに触れて・・・開け放っていた。
ア・・・。
傍らの女がちいさく叫ぶのもかまわずに。
黒い衣裳がひとすじ、乱雑になった掛け布団のうねりにゆだねられている。
ただれた情事の果てに置き忘れられた、証拠物件。
黒のストッキングが片方、あざやかに裂け目を滲ませていた。
静まり返った空気のなか、かすかにそよぎながら。
宿された軽い湿り気に、秘められた営みの名残りがあった。
どくどく、ずきずきと・・・なにかが心の奥で、うごめいている。
女の前も、はばからず。
思わず唇を、おしつけていた。

連れ込み宿 2ーに

2006年10月27日(Fri) 04:17:00

あっ、はあっ・・・は・・・あっ・・・
密やかに昂ぶる、女の息吹き。
妻の口許から発せられたものとは、にわかに信じがたいほどに。
それはひどくなまめいて、どろどろとした色香を含んでいた。
相手はむろん、私ではない。
今夜は、お通夜なので・・・
夜は向こうで、泊めていただきます。
そう言い置いて、出かけていった妻。
黒の衣裳を、そして衣裳の下に着込んだ黒のスリップまではだけられて。
その下に秘めた白い肌は、いっそうきわだって輝くように見える。
ほかの男のものになればこそ、彩りをよけいに添えるのだろうか。
浅ましい考えを振り払おうとしながらも。
あまりにもあからさまな光景に、妄念があとからあとから、押寄せるようにおおいかぶさってくる。

私の傍らにいる女もまた。
ふたりの行為をじいっ、と見つめつづけている。
私が気を取られていることを、咎めようともしないで。
ふと開いた女の口許から洩らされた声が、はかなさを帯びて震えている。
血を、吸っているわ・・・
女はたしかに、そう呟いていた。
ぎょっとしてもういちど、組み敷かれている妻に視線を転じると。
しつように吸いつけられた唇にも。
黒一色の礼装にも。
赤黒いものがしたたって、静かな輝きをたたえていた。

立ち上がろうとする膝を、白くて細い女の掌にとめられていた。
スッと置かれただけの、力のこもらない掌だったが。
私を我に帰らすにはじゅうぶんだった。
だいじょうぶ。きっと、幾晩も・・・
皆までいわずに、女は声をひそめている。
そう。
きっと、そうなのだろう。
此処で夜を迎えることは・・・妻にとっても初めてではないのだから。

連れ込み宿 2ーは

2006年10月27日(Fri) 04:02:59

女と別れると。
私はすぐに宿の近くへと取って返して。
電信柱の陰に身をひそめていた。
チチチ・・・チチチ・・・
頭の上を、鳥たちのさえずりが駆け抜けてゆく。
まるで私の愚行をあざけるように。
七時が過ぎ、八時が回った。
九時ともなると。
さすがに周囲の家でも、いつもより遅い朝の営みが雑多な喧騒となって伝わってくる。
けれども私たちを送り出した玄関は。
いっかな、開かれることがなかった。

昼近くになって。
我慢もならず開いた扉のまえ。
土間はきれいに掃除が行き届いていて。
出かけるとき、たしかにもうひとつがい残されていた靴たちは、名残りさえもとどめていない。
なにか、お忘れ物でも・・・?
怪訝そうに出てきた初老の女将は、白い頬にゆったりと・・・謎めいた笑みを含んでいる。
ここには裏口があるのかね?
思わず口をついて出た問いは、我ながらいかにもまずかった。
女将は私の抱いた苦味さえも受け止めるように、おおらかにほほ笑んで。
もちろん、ございますわよ。
・・・お客さまどうしが、気まずくならないようにね。
でもここに。たしかにここに・・・
言い募ろうとしても、言葉が出ない。
そんな様子を、女はあらわに察していたはずなのに。
ひっそりとした笑みには、聞かぬが花・・・と言いたげな風情を含んでいた。

連れ込み宿 2ーろ

2006年10月27日(Fri) 03:55:15

おなじ舞台と情景でありながら。
時代はかなり、さかのぼる・・・・・・。

隣室は、女将の居室だったようだ。
白黒テレビが今朝もまた、朝のニュースをせわしなく報せてくる。
外ではもう、小鳥のさえずりが始まっていた。
こういう処で迎える週末の朝は。
一日のはじまりの清々しさよりはむしろ・・・
昨日の昂ぶりが、まだ息の詰まるような澱となって残るばかり。
連れの女はとっくに起き出していて。
寸分隙のない化粧で、素顔を覆い尽くしていた。
「出ましょう」
身にまとうワンピースは、夕べのものとはべつのもの。
目ざわりなほど大きなバックルは、今どきの流行りなのだろうか。

立ち去る気配が伝わったものか。
ひと言も告げないうちに、女将が見送りに出てくる。
つややかな黒髪に、白いものの混ざる頭をゆっくりとさげて。
行ってらっしゃいませ。
その場にいるものにしか聞き取れないような低い声だった。

土間には靴が、用意されている。
あら。
女が意外そうに声をあげたのは。
靴が二対、よけいに用意されていたからだ。
きっと私たち以外にも。
此処で人目を忍ぶ夜を迎えたものたちがいるらしい。
自分の靴に足をつっかけながら。
え?
狼狽は、思わず声に、なっていた。
足を通されなかったほうの女の靴。
なまめかしいほどてかてかとした、真っ赤なハイヒール。
妻に買い与えたものと、寸分違わなかったのだ。

連れ込み宿 2ーい

2006年10月27日(Fri) 03:47:00

あら、いらっしゃい。
にこやかに客を迎えた女将は、小柄で色白。
和装に襷がけがよく似合う、もう八十にはなろうかという老女である。
老女というよりは。
少女にさえ似た無邪気さを、この齢になるまで失っていない。
あるいは、この齢になればこそ、はぐくんできたものだろうか。

永い年月。
どれほどの男女を迎え入れ、見守り、送り出してきたことか。
それらの恋路の彼方には。
稀には豊かな実りを迎えたものもあるだろうけれど。
多くのそれは・・・
あるいは色あせ、あるいは草が生い茂り、あるいはすでに朽ち果てていて。
跡さえさだかに辿れぬ路が、ほとんどなのであろう。

下駄箱の上には、咲き初めた月下美人。
まだ人声のしない刻限である。
なん十年かまえ。
この敷居にそよいだワンピースは、
いまではとうてい目にすることのできない、時代おくれの衣裳であったはず。
写真のなかにいる若かりし母は。
初々しい素肌を誇示するかのようにして。
若さこそ魅力、といわんばかりの生気を振りまいていた。

あぁ、そう・・・そうなんですか。
この方ねぇ・・・
手渡された写真に、女将はしばし目を細めていたけれど。
さぁ・・・なにぶん古いことですからねぇ。
白髪の中に埋もれた記憶は、洗いざらしたようにきれいさっぱりとなっているのだろうか。
それにね。あなた。
言いかけて、呑み込まれた言葉。
きっと、こういいたかったのだろう。
野暮ですよ・・・。こういうところで、客の素性を訊ねるなんて。
たとえなにかわだかまるものがあったとして。
彼女が口を割るなどということは・・・そう、決してありえない。

宿帳・・・?ですか?
そんなもの・・・古いものは、とっくに処分してしまいましたよ。
しゃんと伸びた背すじを一瞬崩して、女将は笑いこけている。
だいいち、こんなところで。ほんとうのお名前を書くお人がどれほどいらっしゃることか。
あぁ、それはそうですね・・・
参りました。
私は軽く、手を挙げる。
ホールド・アップ。
齢のへだたりからしてすでに。
この女将とでは、そもそも勝負にならないはずだった。
それよりも。
今夜は、お泊りですか。ご休憩ですか。
あぁ、そうですね・・・
不覚だった。私たちはまだ、靴も脱いでいなかった。
私は連れの女を振り返る。
女はゆっくりと、かぶりを振った。
そうして、自分のほうから。
お泊りで。
そう、告げた。
ちょっとお話が・・・長くなりそうなので。
一瞬。水を打った静寂。
おかみはさっきよりもいっそう背すじをしゃんとさせて。
あでやかな笑みは若かりしころのように、あでやかな芍薬とさえ錯覚させられた。

ひざ下をいたぶって・・・

2006年10月26日(Thu) 20:36:20

白のハイソックスに、紺色のラインが三本。
ふくらはぎの、いちばん肉づきのよいあたりを、くっきりと横切っている。
そのうえからそうっと圧しつけられる、赤黒い唇。
ぬるりとした唾液をうわぐすりのように光らせながら、ぴっちりと張りつめたハイソックスの生地になすりつけられてゆく。
少女の目線のありかは定かではないものの。
息を詰めながら見守っているのが、ありありと窺える。
にゅるり。にゅるり。
唇はヒルのようにいやらしくまといつきながら、ハイソックスのふくらはぎをさもおいしそうに賞翫し始めた。
ゆったりとした脚の線をうつした太めのリブが、じわっとゆがんでゆく。
しわをひきつらせ、くしゃくしゃにたるませながら、ずり落ちてゆくにつれて。
健康な小麦色に輝く素肌が、じょじょにあらわになってくる。
あ・・・
脚の主が、初めてかすかな声を洩らす。
唇が。きゅうっ・・・と、ひときわつよく吸いついたのだ。
眩しいほどの白さに一点、紅いものがにじんで、それはみるみる、いびつにひろがった。
きゅうっ。
唇が、ハイソックスのうえからむさぼってゆく。
少女の若さを吸い取ろうとするように。
きゅうっ。きゅうっ。
リズミカルなまでに規則正しい、吸血の音。
あっ・・・。う、うん・・・っ。
少女の吐息は切れ切れに、吸い出される己の血潮のあとを追いかけた。
あはっ。
牙を引き抜かれるとき。
洩れる吐息に、安堵が滲んでいる。

もぅ・・・
血の付いたハイソックスをふたたびひざ下まで引きあげながら。
少女は相手を咎めるように、口を尖らせる。
そんな少女のふくれっ面を、さも小気味よげに眺めながら。
影はセーラー服の襟足を両方からつかまえて。
口許に撥ねた飛沫もそのままに、こんどはそれを細いうなじに重ねてゆく。
きゃっ。
ひと声洩らすと、少女はそのまま姿勢を傾けていって、やがて静かになってゆく。

どうだね?
問いかけるのは、唇の主。
気を、そそられるね。
幻灯機のように映し出される恋人の映像に、青年の吐息もなまめいたものを帯びていた。
秋には結婚、するんだって?
ああ・・・
自分の選択に、後悔はないかね?
まったく・・・ないね。
フフン。
得意げに鼻を鳴らしながら。
男は青年のほうへと、影を寄り添わせてゆく。
たくし上げられてゆくスラックスから覗いたふくらはぎは、どこまでも薄手のナイロンに覆われていた。
しなやかな筋肉を。黒光りする薄手のナイロンが、まるで男の脚とは思えないほどなまめかしい色気で染めていた。
長いね。
ひざ下にようやく見出した靴下のゴムは、太い帯のようにくっきりと映えている。
きみが好むと、彼女がいったから。
ふふ・・・
笑みを含んだ唇が。
映像のなかとおなじようにぬらぬらとしたうわぐすりを含んだまま。
薄墨色に染めあげられたふくらはぎに、添えられる。
脚の線に沿って、ぬるっと吸着したそれは、ある一点に達すると。
きゅうっ・・・
唇の影に隠されたものを、皮膚の奥へと沈ませていった。
きみのなかで、ぼくの血と・・・彼女のが・・・いっしょになってゆくのだね。
虚ろになりかけた声色にくすぐったそうに笑みながら。
吸血鬼は牙をさらに奥へと刺し込んでゆく。

破けたまんま

2006年10月26日(Thu) 20:33:53

えっ・・・?やぁだ。このままで帰るのっ?
脚をすくめて小娘みたいに恥じらう妻は、とてもかわいい。
足許にはまだ、妻の脚をぞんぶんに辱めたやつが。
ひどく満足そうな卑猥な目線で、上目遣いに夫婦の顔を見比べている。
娘だったころと寸分違わぬ脚線美。
白い脛を艶めかしい翳りで包んでいたストッキングは、
上下にびちーっと、鮮やかな裂け目を走らせている。

だいじょうぶ。誰にも会わないよ。もう遅いから。
誰かに会っても、気づかれないさ。
ストッキングの伝線をしきりに気にかける妻を引きたてるようにして。
たどる家路を見守るのは、こうこうと照る銀色の満月だけ。
意外に明るい足許を気にしながら歩みを進める足許に。
つい目線を迷わせては、ニヤニヤしてしまう。
もうっ。
気配を察して、肘鉄砲でつつかれて。
ふと行く手を見ると
こんばんは。
お隣のご主人だった。

やぁ、いい月ですね。
そ知らぬ顔で、会釈して。
けれども早くも察しをつけた目線は抜け目なく、妻の足許にからみつく。
いい眺め・・・ですな。
そう・・・ですな。
なにが?とは。問うまでもない。
地に足がつかない様子で立ち去る人を背に、
あのひと、絶対。気づいてた。
いまいましげに繰り出される肘鉄砲が、わき腹にひどくくすぐったかった。

♪♪ ♪
ひと息つくと、妻の携帯の着メロが鳴る。
  今夜のご都合は、いかがですか?
発信者は、さっきのご主人。
どうするの?
口を尖らせて見あげる妻。
けれども湯あがりの頬に浮いた艶は、言葉と裏腹の想いに浮き立っている。
妻の携帯をとりあげて。
  主人が寝たら、雨戸を一枚開けますね。あとはよろしく♪
・・・返信した。
あとのほうは、貴方の言い草ね。
ふくれた顔を装いながら。
妻は早くも別の部屋に床を伸べ、いそいそとおめかしを始めている。

脚を舐めさせて

2006年10月26日(Thu) 20:32:39

待った?
濃紺の制服に白のネッカチーフをたなびかせ。
えりかはベンチで待つ人に、笑みを送った。
彼の隣に腰かけると。
重たいプリーツスカートをいさぎよいほどささっとさばいて。
お行儀悪くないほどに、ひざ小僧をちょっぴりのぞかせる。
薄手の黒のストッキングにおおわれたひざ小僧は、
ツヤツヤとした肌の輝きに艶めいた彩りを帯びていた。

男は少女に感謝の目線を投げると、ほっそりとした白い手をぎゅっと握りしめて。
みずから慕い寄るように彼女の肩を抱き、おでこにキスをして。
少女と入れ違いに腰をあげ、その足許にうずくまる。

やらしいわ。
くすくすと洩れる含み笑いの下。
大人びた装いが、ふしだらに乱されている。
折り目正しい直線的なプリーツはちょっと折れ曲がっていて、
すそからはみ出たふくらはぎに吸いつけられた唇は、ぬるぬるとよだれをあやしていて。
清楚なストッキングのうえから、じっとり濡れた赤黒いべろをにゅるりとなすりつけられてゆく。
ウフフ。うふふ・・・
少女の笑みが作り笑いでなくなったのは、ついこのごろのことだった。

あら。あら。いけない子ね。
ママはあきれた声で、足許にうずくまる影を見下ろしていた。
紫のワンピースのすそをつかまえられて。
ふくらはぎを強く吸われて。
肌色のストッキングが波を打つほどに、しつように吸いついた唇が。
ひどく忌まわしいものに思えたのはとうぜんのことだった。
えりかも、して戴きなさいね。
そのときだけはママの瞳のなかに。逆らいがたい強い輝きがきらめいていた。

ストッキングを履いた女のひとの脚をね。イタズラしたいんですって。
えりかも、協力してあげて。
耳もとで、囁かれて。
いやいや、頷かされて。
行為はほんの一瞬だったけれど。
いつも学校に履いていく黒のストッキングのうえから圧しつけられた唇は、
軟体動物のように気味悪く少女の脛をいたぶって。
かすかな唾液のなま温かさを残していった。

来る日も来る日も要求される、忌まわしい習慣。
学校から戻ってくると。
ママにせきたてられるようにして、靴下を履き替えて。
彼の待つ公園へと促される。
ベンチにうずくまるようにして待っていた彼は、少女の姿を認めると。
わざと目線をさけるえりかを咎めようともせずに、
黒革のストラップシューズに囲われた足の甲に、押し戴くように触れていって。
不埒な接吻を熱っぽく、重ねてくる。
あの子の昂奮がおさまるまで、つきあってあげて。
ママの言いつけにそむくのが恐くって。
つい許しつづけた黒ストッキングの脚。
はじめてお○ん○んをおしつけられたときは、
もう、息が止まってしまいそうだった。

けんめいに目をそむけたが、足許の感触だけが覚えていた。
そいつは思いのほか硬く、
かり・・・と突っつくように圧しつけられ、それから腹這うように伸べられてきた。
じわっ・・・となにかがほとび出て、薄手のナイロンを生温かく濡らすのを。
きつく引き結んだ唇の奥、白い歯をかりかりさせながら、耐えていたけれど。
うっ・・・
おもわず咽んだ喉からは、こらえきれない嗚咽が洩れていた。
身を震わせて俯く少女は、背中にまわる猿臂を感じて、
厭っ!
思わず身を振りほどこうとした。
ごめん・・・
だいぶ時間が経って。
泣いているのは自分だけではないのだということに、ようやく気がついていた。

どお?おニューをおろしてきたのよ。
心して、接して頂戴。
そういわんばかりにして。
えりかはきょうも、脚を差し伸べてゆく。
発育のよいふくらはぎは、艶めかしい薄いナイロンに彩られて。
女らしいカーブをいっそうきわだたせていて。
男はもう、生唾を呑み込むのももどかしく、
すうっと少女の脚にふれてゆく。
指で、唇で、そして、股間にそそりたったもので。
くすっ。
少女はいつか、笑んでいた。
お行儀、わるいのね。
互いの弱みを見せあったそのときから、
なぜかふたりをへだてていた空々しい空気は柔らかく溶け合うようになっていた。
いかが?愉しい?
いま想っているのは、彼を愉しませることだけ。
よく見ると、公園のあちらの隅のベンチにも、こちらの木陰のベンチにも。
おなじような少女が足許にうずくまる影に身をゆだねている。
きょうのために、用意してきた言葉。
ストッキング、破ってもいいのよ。
いいえ・・・破ってくれる?
いよいよ口にしようとして。少女はちょっぴり、顔赤らめている。

蜻蛉と甲虫

2006年10月25日(Wed) 08:00:13

樹木にとりつき樹液を吸う甲虫のように。
やつは追い詰めた獲物をつかまえて。
立たせたまま、うなじを吸いつづけている。
口許から洩れるもの欲しげな音は、そのままに。
女に狂気の息吹きをそそぎ込んでゆく。

女は薄命のウスバカゲロウのように、まっ白になったまま。
おとがいをこころもち仰のけて。
目もとにほんのすこしだけ、
厭わしげな翳を滲ませながら。
男のなすがまま、血を吸い取られてゆく。

約束の時間を越えているぞ。
口を尖らせる私に。
やつの相棒は、にたりと人のよくない笑みで応えるばかり。
おい、おい。
私は訴えつづける。
これでは、約束が違う。あのままでは、私の二の舞だ。
己の得た運命を口にすると、やつはようやくこちらを振り返る。
---いいじゃないか。それほどに、彼女の血を気に入っているのだから。
あぁ、それはそうだ。
我ながら不可解にも。そんな理屈に、安堵と納得をかんじている。
しつように吸いつけられている唇が。
彼女の血を慕うように肌を這い回るのを。
なぜかひどくいとおしく、思えてしまう。

---いい、眺めだろう?
ああ。
知らず知らず、頷いてしまっている私。
けれども・・・早くやめさせないと、死んじまう。
繰り返し口をついた警告は。もはや咎めを含んでいない。
すこしでも長く、味わっていただきたくってね・・・
やつは含み笑いに同意を滲ませていた。
---ヤツはそれほど、莫迦じゃない。きっと大切に、いつまでも吸いつづけるつもりだろう。

なにしろ獲物は・・・ほかならぬきみの奥さんなのだから。

じんわりと耳に残る、「奥さん」という言葉。
目のまえで笑みを滲ませる男は、かつてわたしの血を性急に求め、吸い尽くして。
いまは相棒とともに、妻を狙っている。
狙うようにすすめたのは・・・ほかならぬ私。

きみが好きだったのだ。だから、味わいつくしてしまったのだ。
もちろんきみの奥さんも・・・憧れの的なのだ。
せつせつとそう、せがまれて。
もとめられるまま、家の鍵を明け渡していた。
苦痛のこもった抗いは、ほんの数瞬。
吸血鬼の手におちた人妻は。
見慣れた柄のワンピースにかすかに血潮を滲ませて。
いつか艶然と、招かれざるべき客を迎え入れていた。

じょじょに乱されてゆくワンピースのすそから。
にょっきり伸びた太ももが。
まるで薄命を予感させるような白さを帯びていて。
それでもやつは、吸血をゆるめようとはしない。
散々もてあそばれた足許に。
裂けたストッキングをひらひらとさせながら。
妻は陶然と・・・許しはじめてゆく。
むき出しになって、キュッと折られた脚に。
破れ残された薄手のナイロンは、脛の半ばまでとどまっていて。
女が淑女だったという証しをたてるように・・・まだ気品のある光沢を静かに滲ませている。

薄命のウスバカゲロウは甲虫に組み敷かれて。
儚い生命を愉しむかのように。
妙なる声を、洩らしつづける。


あとがき
吸い取られて。気に入られて。けっきょくは尽くされてしまうのでしょうか?
それとも、肌を透き通らせたまま。
永く、侵入者たちのしもべとして、永らえつづけるのでしょうか・・・

連れ込み宿 1ーい

2006年10月25日(Wed) 00:43:13

古びた柱に浮んだ木目は、凛とした格調を滲ませて。
きょうも、夜の訪客を迎え入れる。
ここが都会のまん中なのか。
そう思えるほどに、静まりかえった巷の一隅。
背の低い建物が、さながら時代に置き忘れられたように密集しながら。
都会の喧騒とは一線を隠した結界のなか、独自の立場を占め続ける。

整然としつらえられた、調度。
チクタクと鳴る、振り子時計。
狭いながらも一定の存在感を誇示しているかような、床の間。
それらすべてが、整えられた静謐のなかにあるのだが。
奇妙に違和感のあるべつの雰囲気が、あきらかに漂っている。
永年見つづけてきた秘密の営みを。
時とともに蓄積された澱のように、木目に滲ませて。
そうして沁み込んだものが、知覚できないほどの微薫を伴って、
どこかけばけばしく猥雑な、ふしだらな空気を漂わせている。

静謐のなかの猥雑。
それはほんの少し乱された、シーツの上に凝縮されていた。
あっ・・・、ああ・・・っ、ううっ・・・
密やかなうめきを洩らす唇は。
濃い乳色の頬にぞくっとするほどの朱を刷いていて。
黒一色の女の装いは、たれかを弔うためのものだという、
そうした通念を、みごとなまでに裏切っている。

もうかれこれ、どれほど経ちましたかな?ご主人が、いなくなられてから・・・
けだるげにうごめく、さして饒舌でもない口が。
見かけと裏腹な老獪さを伴って。
どうにかして女を口説き落とそうと、
逃げ惑う女のあの手この手の口実を、たたみかけるようにして封じてゆく。
しつような接吻を、女の素肌に沁み込ませてゆきながら。
イヤですわ。そういう仲ではありませんもの・・・
女は顔をそむけて、あくまでも抗いの姿勢を解こうとはしていないけれど。
部屋に入るなり履き替えたストッキングは。
静淑な黒から、猥褻な濃紺に色を変えている。

いっしんに迫ってゆく影が、女を呑み込むようにして。
ふたつの影は、ひとつになって。
・・・倒されてゆく。
だめ・・・ダメ。
女はまだうわ言のように、呟きつづけていたけれど。
パンティを履いていないお尻を白く滲ませた臀部を、漆黒のスカートからあらわにされてしまっていた。

だめ・・・ダメ。いけませんわ・・・
禁忌を告げる震える声が、かえって男を昂ぶらせるのを。
女は果たして、計算していたのか。
それともたくまぬ手管というべきだったのか。
びゅ・・・っ。
黒の衣裳のうえ激しく散らされた、濁った粘りを帯びた放物線。
気品と劣情。
衣裳のうえに表現された、きわどいコントラスト。
清楚な衣裳を侵されることの厭わしさが。
シーツのうえに抑えつける腕にどれほどの力をみなぎらせるのか。
それも女の仕向けたことなのか。
意識か無意識か。
女の手足は計算しつくされたように抗い、もだえ、受け容れてゆく。

ブラウスの襟首を押し広げられて。
ストッキングをぴりぴりと引き裂かれていって。
女の呻きはいつか、甘い苦しみに満ちてゆく。
破かれたストッキングは脛のうえを伝って。
少しずつ、少しずつ。
ずり落ちていって。
ついさっきまで女が貴婦人だったことを証拠だてるように
淑やかな気品を、いまだに宿していたけれど。
情事を見守る電燈が淡く滲ませた光沢は、
さながら娼婦のように、ふしだらな翳を色濃く滲ませてゆく。

堕ちたようだね。
残念ながら・・・おめでとう。
音もたてずに放恣にばたつく脚が、影法師になって映る障子の向こう側。
ほろ苦い握手を交わしている、ふたりの男。
ひとりは、影の相方らしい。
そしていまひとりは・・・夫の亡霊。
妻を獲るために、生き血をすべて、吸い取られて。
あの世に行くこともままならない身のうえにされて。
いまこうして人知れず、喪われてゆく貞操を見守っている。
目だたぬように装いをこらして、此処に来た。
もう、それだけで。
最愛の妻の貞操は、彼らの手に堕ちたも同然だったのだが。
こうも見せつけられてしまうと・・・
なにかがむくむくとどす黒く、男のなかで鎌首をもたげる。
たれにも見せるわけでは、ないのだよ。
きみなら、わかっていただけると思ってね。
いかがかね?・・・格別、だろう?
笑みを含んだ問いかけに。
強く、強く頷いてしまっていた。

表向きは、失踪になっているようだから。
いますぐ、家に戻れば・・・またおなじように奥さんと暮らせるのだよ。
もの柔らかな相手の態度に、訝しげに応じながら。
すぐに、それと察しがついた。
あぁ。そういうことなのですね・・・
さりげない言葉つきが。
女を、自分の妻のまま。
引きつづき、生き血を吸われ・・・犯し抜かれる。
そんな運命を告げていた。

奥さんは、貞淑な心をこれからも抱きつづけることだろう。
そうして。
今夜みたいに。
イヤよ・・・イヤよ・・・と、抗って。
とうとう逆らいがたくなってしまって。
甘く、崩れてしまうのだよ。
・・・赦して、あげることができるかね?
どうやら、貴方がたのことも・・・ね。
色あせた唇に微苦笑を滲ませて。
夫はしずかに障子をすべらせた。
つぎは・・・貴方の番ですよ。
開け放たれた障子の向こう側。
今宵のヒロインは、さながら夢を見るような目線をさ迷わせて、
淫靡な舞踏に興じきっていた。
浅ましくはだけた衣裳をゆるゆるとさせながら・・・

黒一色の衣裳からのぞく白い肌が、いまは夫の目さえも眩ませている。


あとがき
清楚な礼服・・・と見せかけて。
招きに応じた場は、連れ込み宿。
脚を彩るのは、淫らな輝きを放つストッキング。
ゆがめた面貌には、入念な化粧が刷かれていて・・・となると。
女はさいしょから、男の要求に屈していたのですね。
血を吸い尽くされた夫のほうも。
彼らに操られるまま・・・妻の情事に目を眩ませていたのでしょうか。

お時間・・・ですわ。

2006年10月24日(Tue) 19:43:11

お時間・・・ですわ。
デートの途中、ふと腕時計に目をやった由貴子さんはそういうと、
きらきらとした笑みをきらめかせながら、ひたと私を見つめてくる。
あぁ、そうだったね。
何気なく席を立とうとするけれど。
しぜん、ぎこちなくなっている私は、不覚にも向こう脛をテーブルにぶつけていた。
くすっ。
長く垂らした黒髪を揺らして、片手で口をふさいでいる。
はしたなく笑ってしまったことを恥じらうように。
笑みをあふれさせた白く初々しい頬に、いっそう艶をにじませながら。

きょうで三人目・・・ですのよ。
さっきからの世間話に穂を接ぐように。
さりげなく洩らされた、きょうの予定。
喫茶店の柱時計が午後六時を打つと。
いやおうなく、その刻がやってくる。
安心して。今夜は、血を差し上げるだけですから。
けれども口許に漂う謎めいたほほ笑みは、微妙な妖しさを秘めていて。
それが嘘だということを、あからさまに告げていた。
言葉を裏切る態度を、わざと滲ませて。
由貴子さんは、しらっと取り澄ましながら。ちらちらとこちらを窺いながら。
さっきまでよりいっそう愉しそうに、脇の下に腕をすべり込ませてくる。

お嫁入りまえのお嬢さんって、とても魅力的だって仰るの。
そんなあのかたがたのお気持ち、あなたもわかっていただけて?
ふだんは高く澄んだ声色が、そのときだけは低く深く、胸の奥にまで食い入ってくるのだが。
そうと知ってか知らずか、薄手のブラウスの二の腕は、心もとなげに寄り添ってくる。
着衣を通して伝わってくる体温。
間もなく・・・血潮とともに奪い去らてゆくであろうぬくもり―――。
いま傍らで初々しい息遣いをはずませる白い頬は、そのときどれほど妖しく輝くのだろう?

心配だろう?気になるだろう?
私の心の奥底を、見透かすように囁かれて。
吸血鬼どもにそそのかされるまま、覗いてしまったあの時、この刻―――。
そして今夜も・・・密かにかいま見ようと目論んでいる私。
息を詰めて見つめる目のまえで。
始めは淑やかに恥じらいながら。拒みながら。
それでもじょじょに傾いてゆく、気品漂う礼装。
―――仕方ありませんわ。血を差し上げると、眩暈がしますもの。
白い歯を滲ませて、ゆったりと言い訳をするのだが。
はたしてどこまでが、本当のことなのか。
いったんしどけなく乱され引き剥がれると。
裂けたブラウスやストッキングに白い肌を滲ませながら。
控えめに拒む所作はやがて、人目もはばからず取り乱し、大胆な昂ぶりに取って代わられる。
そう。見ている私がかえって気恥ずかしくなるほどに・・・
いまいとしげに腕を巻きつけてきているこの華奢な身体つきのなかには、いったいどういう魔物が潜んでいるのだろう?

初めての夜は、自宅の寝室で迎えた。
当家の嫁のしきたりを伝えた母の言葉に従って。
腰を抱かれるままにして、ドアの向こうに姿を消した。
―――振り返る勇気が、もてなかったんです。
彼女に言わせると、そういうことだったのだが。
隣室で待つ私はひと晩眠れずに、洩れてくるかすかな物音に聞き入っていた。
ふたりめのときは、いつのことだったであろうか?
思い出したいような、忘れ去ってしまいたいような。濃い霧に包まれた記憶。
初夜さえも許されていないはずの身に、さらに別の男性の影を重ねようとするときに。
花嫁よりも昂ぶってしまっている自分を見出して。
気恥ずかしさに戸惑っていると、やつはしんそこ嬉しげに、耳打ちしかけてきたものだ。
  何よりだ。愉しんでいただけて・・・
いや、そんなつもりは・・・
応えを待つ遑もあたえずに、つねるような痛みとともに刺し込まれてきた牙に身を浸して。
引き抜かれた余韻を愉しむころには・・・
未来の花嫁は、蒼白い吐息をはずませて。衣装をしどけなく乱しはじめていた。
そして今宵は、三人目。

まだ異性の肌に触れたことのない私。
すでに三人目を褥に迎えようとしている彼女。
へだたりが大きく思えたとき。
そんなに見つめないでくださいね。
ほんのりと染めた頬に籠められた含羞が、ふたりのあいだの空気をどぎまぎと揺らした。
見られることが・・・愉しいだなんて。とても人様には・・・
いいや・・・ぼくのほうこそ。
はじめての衝動が、とつぜんに訪れた。
しっかりと抱きすくめた両肩のあいだ。
はじめてのくちづけを熱っぽく、交わしている。
見ることを・・・愉しんでいるだなんて。言えたものじゃないからね。
冷静を装って、私を挑発しもてあそんできた彼女だが。
初めて戸惑ったように、長い黒髪を揺らした。
こんどは彼女が、昂ぶる番らしい。

行き交う人もない、真夜中の帰り道。
なにごともなかったようにとりつくろった服の下。
肌のほてりは、まだ熱い余韻を宿している。
きみは男を三人も知っているというのに。
ぼくはなにも知ってはいけないというのかい?
笑みまじりに問いかけると。
そうよ。あなたは、だーめ。
おどけて突き出したおとがいは、艶めかしい闇のなか、
ぬるりと妖しく輝いていた。


あとがき
前作と少し、似ています。というか、ほとんど同一のプロットです。
まだ婚約中なのに。花婿ならぬ男性につぎつぎと身を任せることを強いられながら。
女学生さんは納屋のなか、場違いな制服姿を乱しながら・・・えっちな初々しさをまき散らして。
由貴子さんは寄り添ったり冷やかしたりして、未来の夫を挑発しています。
いったいこの人たちの新婚生活はどうなってしまうのだろう?
と思うのですが。^^;
どういうわけかほぼ例外なく、円満夫婦になるのです。^^
婚約者の純潔をほかの男に奪わせる・・・という。
そもそもがあり得ないシチュエーションなのですが。
どういうわけか、魅かれます・・・

納屋に招ばれて ~穢された女学生姿~

2006年10月24日(Tue) 19:20:49

あっ、時間。
彼女が腕時計を覗き込んで、大仰に声をあげる。
えっ。
思わずあげた声に、こんどは彼女が
しーっ。
コーヒーの湯気の向こう側。
三つ編みのお下げを両側に揺らしながら、イタズラっぽく笑った唇に一本指を立てていた。
ごめん、おばちゃん。おトイレ借りるね。
そそくさと席を立とうとする少女。
カウンターのなかでおばちゃんは、
いいよ、お座敷におあがりよ。
にこにこほほ笑みながら、恥じらう少女の手を引いた。
じゃ、ちょっと待っててね。
彼氏にぺこりと頭をさげると、サッと背中を見せる。
セーラー服の襟がひるがえった。
手には鞄から取り出した、パッケージ入りの真新しい黒のストッキング。

ごめん、ごめん。待った?
ふたたび現れた少女は、さっきのあわてぶりを完全に消している。
黒のストラップシューズと膝丈のスカートの間からのぞく脛を覆うのは。
さっきまでの白のハイソックスの代わりに、肌の透けて見える黒のストッキング。
薄墨色のナイロンに包まれた向こう脛は、肌の白さにいっそうのなまめかしさを添えていて、
同級生をどぎまぎとさせている。

さぁ、いってらっしゃい。
若い二人を送り出すと。
喫茶店のおばちゃんは、照れくさそうにマスターを振り返る。
私にも身に覚え、ありますからねぇ。
永年連れ添った旦那は、今更ものに動じるふうもなく。
色っぽかったよ、お珠ちゃん。
一瞬少女の面影をよみがえらせかけた妻に、からりとした笑みを返している。
セーラー服と詰襟が向かうのは、村はずれの納屋。

よく来たね。
いつも、悪りぃな。
ふたりを出迎えた影たちは。
木枯らしの向こうから身をすぼめてきた二人を、暖かく取り囲んだ。
いつまでもおどおどとしている影たちを。
同級生の男子は、親しげに言葉を交わしている。
人目を忍ぶ交わりが、場の空気を打ち解けたものにしていた。
もぅ、逃げられないよねぇ。
お姉ちゃんは自分よりずっと年下の少年に、まっ白な手の甲を気安くもてあそばせてやっていた。
邪気のない笑みをはじけさす白い頬を。
青年たち、大人たち。白髪交じりの年かさのものたちも。
救いの女神を見守るように、見つめていた。
覗いても、いいかい?
おずおずと言い出したのは、彼氏のほうだった。
もうっ。
おどけてすくめた肩先に、三つ編みのお下げをはじけるように揺らしながら。
いいですよね?
大人たちを振り返るまなざしは、小春日和りの日差しのようにひどく和やかだった。

はじめてのときは、喉から心臓がとび出るかと思うくらいドキドキしていたが。
今でもやっぱり、気を失いかねないほどに。
どす黒いものが、身体じゅうをかけめぐる。
あの日の帰り道・・・少女のスカートのなかは淋漓とした血潮を散らしていたが。
この人数だと、やっぱりそういうことになるのだろう。

一人めが、早くもセーラー服姿を強引に引き寄せている。
うなじを抉るほどに、つよく圧しつけられた唇に。
少女はさすがに目線を戸惑わせながら、抱きすくめられるまま身をゆだねてしまっていた。
キュ・・・
きゅうっ。
なまめかしい、なまなましい音とともに。
吸い出されたものが飛沫となって、男の頬と、制服のネッカチーフを彩った。
あぁ。
きりりと引き結んでいた口許を、和めるように弛ませて。
おなじくらい強かった目線を、虚ろにさ迷わせて。
少女は酔ったように頬をかすかに染めながら。
恥ずかしさを滲ませて、許婚の目線をやり過ごそうと顔をそむけて。
迫ってくる男の両肩を隔てようとして、ちょっとだけ腕を突っ張って。
けれどもやがて、あきらめたようにかすかに息を洩らして。
こんどは自分のほうから、濃紺の長袖を男の背中に巻きつけてゆく。

はぁ。はぁ。
失血のせいか。
少女の息が、荒くなっている。
二人めの男はさっきから、ひどく卑猥な手つきをして。
膝丈の重たげなプリーツスカートのすそから覗く脚を、弄りまわしていた。
オトナっぽい黒のストッキングが、どうにも気になるらしかった。
奥ゆかしい風情の黒のストッキングが、ふしだらなしわを浮かべて少女のすねの周りをよじれてゆくのを。
大人も少年たちも、そして彼氏も。
まがまがしく息を詰めながら、見つめつづけていた。

三人め。
とうとう・・・だった。
いちばんおいしいクジを引き当てた幸せものは。
ぴちっとアイロンのきいたプリーツスカートのすそを、見るもむざんに乱していった。
太ももまでのストッキングを留めている、真っ赤なバンド。
あからさまな色合いが、持ち主の清楚な面持ちとは不似合いに。
黒と濃紺のなか、きわだっている。
身をよじるたび。藁のうえで脚をばたつかせるたびに。
少女の脚を王女さまのように染めあげたストッキングが、ずるずるとだらしなく、ずり落ちてゆく。
きょうが初めてではないにせよ。
彼氏は目許を赤くうるませて・・・もぅ恥も外聞もなく。
食い入るように、見入ってしまっている。
傍らにいる男の子と、その父親らしいのが。
彼氏の気分をひきたてるかのようにして。昂ぶった耳朶にかわるがわる、なにかを囁き続けていて。
その言葉のひとつひとつがまるで毒液のように。
恋人の胸をどす黒く、焼き尽くしていった。

荒らされた藁のうえ、点々と散った血潮。
セーラー服に藁くずをつけたまま。
少女はきゃっきゃと声をあげてはしゃいで、犬ころのように転げまわり、戯れつづけている。
さいしょの恥じらいは、どこへやら。
くすぐったそうに、ころころと声たてて笑いこけながら。
藁くずを飛び散らせながら、鬼ごっこに興じていた。
華奢な獲物を掴まえて。
スカートをはぐりあげていって。
びゅうびゅうと白い濁液を注ぎ込んでゆく獣たち。
ひとりが終わると。すぐさまもうひとりが、襲いかかる。
まるで可笑しくてたまらない・・・そう言いたげに
ひぃひぃと声上ずらせる、女学生姿。
また、つかまえられた。
セーラー服が、はだけてゆく。
ストッキングを剥ぎ降ろされた白い脛が、濃紺のスカートに妖しく映える。
あぁ、愉しそう・・・
乱れ舞う光景に、魅きつけられるように。
ひき詰めた視線が、半裸の戯れを凝視している。
いい花嫁修業だろ?
野卑だが親しみのこめられた問いかけに。
未来の花嫁をゆだねた男は、深く頷きかえしていた。

はしたなく乱されたスカートの裾もかえりみず、迫らされた接吻の嵐に唇で応えながら。
嫁入りまえの素肌を惜しげもなくあらわにして。
花婿ならぬ身に求められるまま。
嫁となったあとに課せられるはずの役目を、果たしつづけてゆく。
はじけ散ったストッキングから、ひざ小僧を覗かせたまま。
脚ばたつかせてはしゃぐ恋人に。
未来の花婿の、陶酔に満ちた目線がくまなく注がれている。

お兄ちゃん、いい眺めだね。
ボクのときは、よろしくね。
さっきからずっと彼の傍らにいて、囁きつづけていた少年。
大人たちが見せてくれた手本を見よう見まねに見習って。
初めて筆おろしを済ませたのだという。
指先にちょっぴりついた紅いものを、チュッと口に含んで。
無邪気に笑いかけてくる。

夕闇が濃くなった、納屋の周り。
影たちは三々五々、散ってゆく。
まだ艶っぽさの名残りをとどめた薄闇のなか。
肩を並べて立ち去ってゆく恋人たちの手は、来るときよりもずっと固く握り合っていた。

あとがき
~秘められた村の口伝より~
未来の花婿に、納屋に誘われたなら。
婚家の縁者やご近所の人たちと、仲良くしなければなりません。
もっとも適切に仲良くする方法は、女としてはただひとつだということです。
娘の身でふしだらな振舞いに耽るのははしたないことですので、
決して、取り乱してはなりません。
ただし、いたずらに取り澄ましてことが過ぎるのを待つだけでも、お相手の方々を満足させることはできません。
あくまで素直に明るく、振舞うように心がけて下さい。
よく親しみなじんでいただくためには・・・お二人でよく話し合い、年長の方々の教えも仰いでから、ことに臨むように。

奇妙なお話です。^^;
するーしたほうが、良さそう・・・

着衣のままで

2006年10月24日(Tue) 18:49:44

おとついは、勤め帰りのOLを不意討ちに。
昨晩は、旦那以外の男は初めてだという新妻を、旦那のまえで。
そして今夜は、祝言を間近に控えた生娘を、こともなげに犯している。
はぁはぁと胸はずませるブラウスに、吸い残した血潮をたらたらとしたたらせて。
オレは満悦しながら、さっきからしっくり合わせている腰を、よりいっそう深々と慕い寄らせていった。

部屋を同じくしたとたん。
見境無く女に迫ろうとするオレを制して、
着衣はどうぞ、そのままに。
許婚を伴って現れたその青年は。
見境なくブラウスの胸元に手を伸ばしかけたオレの手を固く握りしめて。
どうぞ。ゆるりと、お情けを・・・
ちっとも卑屈ではない挙措に、不可解ないさぎよさを滲ませて。
男はためらいもなく、自分の服を脱ぎ捨てる。
アームチェアに手首をくくり付けられながら。
だいじょうぶだよ。彼は巧く導いてくれるから。
パンツ一枚に剥かれたその身は、ほれぼれするほどしなやかな筋肉に包まれていた。
不健全な愉しみに酔った血潮が流れているとは、とうてい思えないほどの、非の打ち所のない肢体であった。

あっ。
戸惑う女を抱きすくめると。
オレは一瞬にして、獣に変わる。
女の抗いなどすみのすみまで見とおしながら。
淑やかな衣裳に、ことさらふしだらなしわを波打たせてゆく。
ブラウスを着けたまま、胸をまさぐられて。
スカートを履いたまま、手を入れられて。
ひざ上までのストッキングは、男の好みだろうか?
それとも案外と・・・そのまま姦れるようにという配慮だろうか?
遠慮なく割り込んだ太ももは、電灯の下透きとおった白さに輝いていた。

男は、こういうことに昂ぶりを覚えるらしい。
女の子みたいにひざ下までぴっちりと引き伸ばされたハイソックスには、
透明な液体をちらちらと滲ませている。

処女を奪ってきたことは、じつはいく度も、あるんです。
でも彼女の場合には。
ほかのやつに奪われるところを見ておきたい。
・・・ヘンですよね?でも、わかっていただけますよね?貴方なら・・・
めいっぱい、おめかしさせてきますので・・・
一糸まとわぬ・・・というよりも。昂ぶってしまうんです。着衣のまま、犯されるのって。
いつも知的で上品な彼女が、どんなふうに乱されるのか。堕とされるのか。
そんな落差を・・・垣間見たいのかも。
襲うまえ。ふたりで話し合ったとき。
そう呟く唇が、秀麗な貌とは不似合いにかすかな震えを持っていた。


あとがき
前作とおなじ吸血鬼でしょうか。
婚約者の処女をほかの男性に捧げたい。
現実には、まずありえないシチュエーションです。
自分で犯すのと。
人に犯されるのを見守るのと。
どちらのほうが、昂ぶるものでしょうか。
ふつうは、前者だと思うのです。
後者を愉しむことのできるのは。
よほど、飽いたものだけに許される特権なのかも知れませんね。
あっ、でも。
柏木、飽いてはいなかったですね・・・(^_^;)

作られた筋書き

2006年10月24日(Tue) 18:38:24


喉が渇いた。
どこかに、生き血を吸わせてくれるお嬢さんはいないかね?
そんなオレの言い草に。
向かい合わせににんまりとほくそ笑んだ同属は。
口許に、まだ女房の血を光らせている。

この男が・・・ね。
あなたの喜美恵さんに、欲情を覚える・・・と。こう仰るのだよ。
あの女とオレとを結びつけた同属は。
女の許婚に、そんなふうにオレを引き合わせた。
あぁ。貴方がS・・・さんですね。お話は喜美恵からよく伺っております。
平静さと穏やかさをとりつくろった男の頬は、白く磨かれたように。
冷えた皮膚をいっそうこわばらせているようにみえた。
居合わせたその女を、同属は我がもの顔に抱き寄せると。
喜美恵さん、よろしいね?あの晩のように。こんどはこの男にストッキングを破っていただくのだよ。
生真面目に構えた許婚のまえ、得意気に鼻をうごめかせる。
その瞬間、彼はぴくっと痩身を震わせたが。
もうそれ以上、なにも言おうとはしなかった。
意気地なしなのか。いや、そうではあるまい。
額に浮いた蒼白い静脈には、淫らさを秘めた血潮がたしかにかよっている。

目に見えぬほどのかすかなものであるにせよ。
女の許婚と同属とのあいだには、どこかかよい合うものが流れている。
ヤツは婚約者たちのまえ、言いたい放題、言い募っていた。
さいしょの夜は。
やっぱり気心知れた私もいっしょのほうが、よろしいだろうな?
いちおう約束としては、血を戴くのと。お召しものを汚すのと。
そこまでのお許し・・・そういうことにしておこうじゃないか。
けれどもまぁ、そこは成り行き・・・ということもあるだろうな。
貴男も、そのへんは呑み込んでいただけるのだろうね?
嫁入りまえに、ふたり目の男を・・・くくく。
どうだね?いい体、しているだろう?じっさい、あそこの締まりもよろしいのだよ。
よく躾けておいたから・・・
私のあとでもヤじゃなけりゃあ。約束をこえて、犯してしまってもいいんだぜ?
ヤツがそういうと、男の股間はたしかな昂ぶりを着衣のなかに秘めている。

乱れた寝室。
そこかしこに散らばった書類や調度。
床に転がされた電気スタンド。
それらひとつひとつが、抵抗のあとを物語っている。
身じろぎひとつできないほどに縛られた許婚は、無念そうにこちらをちらちらと窺っていた。
厭です。イヤッ・・・!
女もまた、激しくかぶりを振りながら。
貞操を守るため、なんとか猿臂のなかから抜け出そうと身もだえをつづけている。
突っ張ろうとした腕をへし折るようにしてのしかかり、
けんめいに避けようとするうなじにべっとりと唇を這わせ、
とうとう力まかせに、びろうどのように張りつめた皮膚を食い破る。
じゅうっ。
ほとび出る血潮が。
ちいさなしぶきをつくって、氷板のように冷たい床に散った。
意識をさ迷わせた女が力を抜くと、オレはそろそろと、女の足許に這い寄った。
や、やめろ・・・
男の声が力なく、わずかに震えを帯びている。
耳も貸さずに、こわばった脛にちゅうっ、と唇を吸いつける。
女の穿いているストッキングは思いのほか、なよなよとした舌触りがした。
狂ったように、いたぶってしまう。
女の素肌と唇をへだてているストッキングが、みるかげもなくくしゃくしゃになるくらい。
強く、強く。ねちねちと。しつように、吸いつけてやる。
ああっ・・・
絶望のうめきを洩らし、女は許婚のほうから顔をそむけようとする。
オレはわざと女の顔を、整った目鼻立ちを恨みがましく歪めた男のほうへと振り向けてやりながら、
いまいちど、これ見よがしに女のうなじを吸い、唇をも奪う。
あ・・・ァ・・・
いつの間にか、女の細い両腕が、オレの背中にまわっていた。
きつく鎖されていたはずの股間はいつかほどよい角度に開かれていて。
不埒な欲望とともに侵入するものを、迎え入れる姿勢をつくっている。
すべては、お芝居。
貞節を守ろうとする許婚。
不埒な狼藉から嫁入り前の肌を守ることのできずにしまう、未来の花婿。
してはいけない。されてはいけない。そんなことを。
しらじらとした灯りの下、あからさまにさらけ出されて。
にじみ出る愉悦に迷い、背徳の歓びに全身を痺れさせながら。
暴力的な凌辱にさらされて。ふたりながら愉悦のなかで、名誉と貞操を奪われてゆく。
ふたりの描く筋書きは、ひどく歪んでいたけれど。
深夜の居室にまろばした若い女をまえに。
オレもオレで、ノリまくっていて。
秋に祝言を控えた白い肌を、こともなげに蹂躙してしまっていた。

そろそろ

2006年10月24日(Tue) 00:49:44

復活しようかと思います。無理のないていどに・・・ですが。