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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

家の記録

2006年11月30日(Thu) 07:06:43

十九代 富夫
廿一歳の春、×之辺和佳子と婚姻。
廿二歳の春、長子好夫を出生。
卅六歳の春、初めて黒衣の訪問を受ける。
卅六歳の春、初めて夫人和佳子と面会を許す。
卅六歳の夏、夫人和佳子、吸血鬼の凌辱を受ける。
卅六歳の秋、夫人和佳子に婚姻外性交を許す。

やや離れた空白に書き込まれたのは。
あとを書き継ぐべき、ボクの名前。
廿代  好夫
達筆な毛筆に書かれた家の記録を初めて目にしたのは、十九歳の夏。
父のところには、たった数行。そんなふうに記されていた。
紙が、震えている。持つ人の手から伝わった、かすかな振動。
屈辱・・・からではなく。
愉悦によるものなのだと、うなじに痕をつけられたあとのボクにはわかっている。
父は息を詰めて、筆の穂先を紙に触れさせた。

卅九歳の春。令息好夫の婚約者治子と面会を許す。
卅九歳の夏、治子の礼服を脱がしめる。

ここまで書き進められたとき。
ボクは父の手を制していた。
あとは、ボクが描くよ。
いつも頑なな父は、黙ってボクに筆を渡した。

父のところに書かれた三十六歳以後の記録に、くろぐろと傍線を塗りつける。
ぅ・・・
かすかに不満そうな、父の声。
文字が見えなくなるまで、くろぐろと塗りつぶすと、
わずかに残された余白に、
卅八歳の夏、○○大臣賞受賞
卌歳の春、村長に就任。
書き入れたのは、秘められた経歴をおおいかくす、栄光の部分。
そして、こんどはみずからのところに。

十四歳の春、村に居住の吸血鬼(以下三文字伏字)の知遇を得る。
吸血鬼(以下三文字伏字)と、隷従の契約を交わす。
当初は己の血を以て渇きを飽かしめるも、不足を訴えるに依り、
母和佳子之を憐れみて己の血を与ふ。
世、夫人和佳子を以て賢婦と称ふ。

そう、書いた。
父が無言で、筆をとりあげる。
すぐあとに書きつづったのは。

父富夫、令息の契約締結及び令夫人の善行を嘉して吸血鬼(以下三文字伏字)と遭い、以後之と交際す。
十四歳の夏、初めて吸血鬼(以下三文字伏字)を自邸に招き入れ、母の貞潔を捧ぐ。
父富夫之を悦び、令息と共に別室より令室の貞操喪失を検認す。
令室和佳子、夫の歓を得るべくあえてその身を穢し貞操を許す。
秋、父富夫、自己の責任において令室和佳子の所有を吸血鬼(以下三文字伏字)に帰するを望み、熱く懇望す。
吸血鬼(以下三文字伏字)、和佳子の姓を易(か)えるに忍びずしばしば諌めるも、
懇望もだし難きに依り遂に之を許し、貞婦和佳子を永く其の夫と共有することを約す。
令室和佳子、夫の望に依り以後永く二夫に仕う。

言い回しがひどく、婉曲になっていた。
妻の姦通を許す、寛大な夫。
夫の請いにより心ならずも凌辱を甘受する、貞節な妻。
妻の姓をかえる・・・は行き過ぎだろうけれど。
それが言い回しの妙にとどまっているのを、ボクは知っている。
父がさいしょから望んでいたのは、その妻の共有。
そして、跡継ぎ息子のボクも、また・・・
筆が、ふたたびボクにかえってくる。

十九歳の春、父の命に依り許婚治子を伴い某邸を訪問す。
着用の黒ストッキングを裂かしめ、服従の証となす。
祝言を一ヵ年繰り延べ、その間処女の血を捧ぐ。
十九歳の夏、許婚治子の禁欲を解き、
吸血鬼(以下三文字伏字)に、治子の女学校の制服姿を与う。
治子、家法の定めに依り、かつ好夫の許しに依り、婚前に精を享く。
父子、令室の例に倣(なら)い、其の純潔喪失を検認す。
歓び、一家に満つ。
祝言をさらに一ヵ年繰り下げ、其の間自らの許婚を籠絡せしむ。
婚姻後も、永く夫同然の資格を帯して寝所への出入することを許す。

父の屈従・・・を。母の恥辱・・・を。
息子の許諾と母の善行、そして父の寛容に変えて。
未来の花嫁の受け容れた凌辱・・・を。
嘉さるべき婚前の儀式に書き換える。
血を狂わされたものの所業と嗤(わら)うのは、たやすいが。
これで誰もが、不幸せを免れるはず。
笑みを交わしあった父子のことを。
ドアの影から窺っているのは、熟れた体の持ち主となった嫁と姑。
闇のなかでは娼婦に堕ちる、貞婦と淑女。
かつての貴婦人ぶりを、清楚な衣裳に色濃く残した娼婦たちは。
その衣裳を今宵もふしだらに堕とされている。
濡れたスリップ。裂けたストッキング。
目線の主たちは、互いのふしだらを揶揄し合いながら。
しどけなくはだけられた衣裳を掻き合せているのだろうか。


あとがき
いかめしい文語調の文句は時として、淫らな想像を増幅させる効果を持つようです。

許婚の制服

2006年11月30日(Thu) 06:34:09

いつ 朝子さんの制服を脱がせるの?
落ち着き払った、母さんの声。
はだけた襟首をゆっくりと掻き合わせながら、
じんわりと、ボクを見あげてくる。
ウン・・・
胸の奥からズキズキとなにかがこみ上げてくるのをこらえるように、
ボクは、生唾を呑み込んで。
Xマスか・・・いや、やっぱり姫はじめのころかな。
つんのめった囁きに、喉がからからになっている。
代々、家族の女たちが吸血鬼に支配を受ける、被虐の家系。
身づくろいを済ませた衣裳の下。
母さんのスリップも、己の血と、彼の精液とに濡らされて。
淑女の礼節のしるし・・・と見えた肌色のストッキングも、
みごとなまでに、散らされている。

朝子さんは、未来の花嫁。
嫁入り前に牙にかかることは、本人以外周囲のだれもが心得ている。
想像のなか。
寒々とした冷気に満ちた、なめらかに輝くフローリング。
薄い黒の沓下の映える白い脚が、妖しい彩りを帯びて。
静かにうつ伏せに、横たえられていて。
そのうえを、臆面もなく這い回る、毛虫のような唇に。
ノーブルに整った目鼻立ちに、かすかな嫌悪を滲ませながら。
・・・支配を受けてゆく。

制服を脱がせる。
なんという、言い回し。
けれども。
母さんのスカートを、めくってご覧。ブラウスを、破ってみて。
そういって、彼を招く役を果たしたのは、ほかならぬボク。
初めのうちこそ、びくびくとしていたけれど。
ストッキングまで、破いちゃうの?
そんなことまで口にするころには。
すっかり仲良くなった小父さんに、早くママを襲ってとせがんでしまっていた。
  夜が更けたら・・・母さんの服を着て、公園まで彼を迎えに行くんだよ。
なめらかな囁き声で、ボクに言い含めた父さんも。
ちょうどいまのボクのような顔をしていたにちがいない。

つぎつぎ と

2006年11月30日(Thu) 06:19:59

壁ぎわに、追い詰められて。
ぐぐぐ。・・・っ。と。うなじを咬まれて。
きぅきぅ・・・きぅきぅ・・・
遠慮会釈なく。
生き血をぐいぐいと、飲み味わわれて。
くらあっ・・・と、眩暈。
じわ・・・っ、と愉悦。
そのまま圧しつけられた壁を背に、ずるずると姿勢を崩していって。
グレーの半ズボンの下には、ストッキング地の紺のハイソックス。
無遠慮な手に、まさぐられて。
飢えた唇を、吸いつけられて。
あまりのくすぐったさに、いつかへらへらと、笑い出してしまっている。

つぎの獲物は、妹。
廊下に呼び出された、セーラー服姿。
眩暈の彼方。
しっかり踏ん張っていた黒タイツの脚が、みるみるうちにくず折れてゆく。
ちぅちぅ。きぅきぅ。
人をくったような、奇妙な音とともに。
柔らかな皮膚を通して引き抜かれてゆく、妹の血・・・
気が遠くなるほどの、凌辱をうけながら。
妹もへらへらしながら、黒タイツの脚を惜しげもなくさらしてゆく。

居ながらにして。
すべてが目に映し出されてくる。
さいごの獲物は、母さん。
吸血鬼の待つ部屋に、自分のほうから訪ねていって。
気前よく、スカートのすそをたくし上げる。
清楚な艶を帯びた、黒ストッキングンのうえから。
恥知らずなべろを、チロチロ、チロチロ、這わされていって。
あぁ・・・
ひと声、切なげなうめきを洩らして、くたくたとその場に姿勢を崩してゆく。
ちゅ、ちゅうっ・・・
やはり、ボクたちとおなじように。
他愛なく吸い出されてしまう、母さんの血。

魂をさえ、抜き取られてしまったような顔をして。
母さんは素肌に押し付けられる唇を厭うふうもなく。
熟れた血を、嬉々として吸わせてゆく。
どうかね・・・いい眺めだろう?
傍らにそっと立つ父さんも、うなじに痕を滲ませたまま。
むしろ誇らしげに、自分の妻が愛されてゆくさまに、見入っている。

更けゆく夜。
静かな凌辱は薄闇のなかに埋もれた秘事として。
息を詰めた男どものまえ、音もなくつづけられてゆく。

きっかけ

2006年11月29日(Wed) 23:50:33

ほれぼれするくらい、素晴らしい脚だった。
流れるようなライン。
太すぎも細すぎもしない、ゆるやかな起伏を持った筋肉。
かっちりとした輪郭は、鮮やかな発色の黒ストッキングに彩られていて。
そのなかでツヤツヤと輝く白い皮膚が、居心地よさそうに、なまめかしい潤いを帯びていた。

女は本を、いっしんに読みふけっている。
少なくともはためには、そう見えた。
つやつやと輝く、長い黒髪。抜けるように白い顔。
頭のよさそうな、整った目鼻だち。
それでいて、堅物ではないようだ。
くっきりと刷かれたルージュが、すこし妖しい、派手な赤みを伴っている。
平社員に与えられる、スチール製の狭い席。
置かれた場所に不似合いなくらい、まるで部長さんのように堂々と腰をおろして、
周囲のものなどまるで鼻にもかけないという態度。
あれは、そう。隣の課の・・・たしか岬という女だ。

思わず、つ・・・っ、と手が伸びて。
音もなく、ひざ小僧の下に爪を立てている。
ひきつれひとつ見あたらない、涼やかな艶のよぎるふくらはぎ。
指を、掌を這わせたい衝動に駆られていると・・・
ぷつっ。
指先に走ったかすかな震えが、わずかにひっかかった。
かすかな音とともに、ストッキングに裂け目が走る。
脚の主がおもむろに、読み止しの本から目線をあげた。

ぱしいっ。
頬に、熱湯を浴びせられたのかと思った。
周囲に響き渡るほどの、平手打ち。
あまりの不意打ちに、くらくらと眩暈がした。
女は・・・と見ると、もうなにごともなかったかのように、目線を本に戻している。
ほんの一瞬遅れて、みんなが目線をもとにもどすのが、
気配を消した動作でそれとわかった。

ひざ下に走る伝線が、シャープな切れ目をひろげはじめている。
まるで、涙の痕のような軌跡をにじませて。
女はスッと席を立つと、ぐるりとあたりを見まわした。
周囲のものは目を伏せて、間違っても目線をあわさないようにしている。
そのようすに納得したように後ろで結んだ長い髪をひるがえすと、
どこまでも落ち着き払って、女は更衣室へと足を向ける。

退社したあと。
ひたすら、女のあとを追っかけていた。
追い詰めてゆくのは、遊戯のひとつのはずなのに。
そのときにかぎってなぜか、自分から誘蛾灯に飛び込む夜光虫になったような錯覚を覚えている。
曲がり角で、追いついて。
二の腕を、捕まえて。
腕づくで、こちらにふり向かせて。
がぶり・・・
と、うなじを噛んでいた。
ひどくうろたえていたのは、自分のほう。
女はあくまで、落ち着き払っている。

複雑な味。
処女ではない。
純潔な女が秘めているはずの澄んだ芳香は、女の血からはとうに失せている。
それどころか・・・
大変な、経験者だ。
澄んでいないからといって。
澱んでいる・・・とは、限らない。
高価なワインほど、芳醇で複雑な香りを秘めるもの。

気に入った?
女は自分の腕の中、冷やかすようにこちらを見あげてくる。
よして頂戴。わたしを酔わせようなんて・・・
完敗・・・
男の胸が屈辱にまみれそうになったとき。
女はもっと哀しげに、呟いている。
酔うことなんかできないのよ。私。


あとがき
ちょっと、中途半端だったでしょうか?^^;
蛭田と奈津子の出会いのシーンです。
彼女に関するいちばん古い記録は↓の、「ベテランOLの息抜き」です。
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-42.html

慕わしき・・・姉なるひと

2006年11月28日(Tue) 23:17:41

はは・・・
笑い声が、乾いている。
ひとしきり謡うように。
さも、心地よげに笑んで。
男はやっと、呟きを口にした。
やはりそうなると、思っていましたよ。
何度目の、破談だろうか?
十人、二十人・・・いや、もう百人をすら越えただろうか?
そんな心地すらするほどに。
女は二十も年下のその男に肩入れをして。
あるときは、姪を。
あるときは、教え子を。
男に引き合わせてきた。
いずれ劣らぬ、才媛、美女。
男のほうも、教養豊かな美青年。
それなのに。
娘の側の返事は、つねに「ノー」であった。

もう・・・この話題は、しまいにしませんか。
男は、いともあっさりと。
いつも彼女のまえだけで見せるおどけた調子で切り出した。
結婚は、あきらめる。という。
そんなことは、駄目。
女は、くいさがった。
しかるべきひとを嫁にして。
それでこそ、男ははじめてひきたつもの。
熱っぽく説きつけてはいるものの。
女は、気がつきかけている。
正反対な感情が、心の裏をひたひたと浸してくるのを。
縁談が不調におわるたび、心のどこかで安堵を感じていることを。
そして、男のほうも・・・

あなたに・・・妾(わたし)は追いつけない。
どこかでかならず、置いてゆかれる。
わかっているのよ。
妾はどんどん老い、あなたは永遠(とわ)に、老いることはない。
そうなんでしょう?
吸血鬼は鏡に映らない・・・という言い伝えがあるけれど。
真の情愛は、何ものをも鮮やかに映し出してしまうものらしい。
わかってしまったようですね・・・
男も、こんどは呟きを口にすることはなく。
物腰だけで、女に応えている。

どうしてもずっと、いっしょにいたいのなら。
ほかの女を介すべきではないわね。
あたりまえのことを、女は口にしている。
誇り高く、つねに孤高の座についているはずのひとだったのに。
きっちりと整えた長い黒髪がいま、にわかな乱れにゆだねられようとしていた。
いっしょに・・・おなじ刻にとどまってくださらない?
女の手には、銀のナイフが握られていた。

本気だ。
刃のごとく研ぎ澄まされた殺気がむらむらと、
ロングドレスに包まれた華奢な身体に満ちている。
体当たりして、ひと突きにされれば。
いかに非力な一撃であっても。
致命傷は、まぬかれまい。
けれども男の額から、陰鬱な翳の消えることはなかった。

一刹那――。
すべてが終わった。

一瞬交錯しあったふたつの影は、対極に別れている。
片方は、ぼう然とたたずみ、
もう片方は、己の散らした朱(あけ)のなかに横たわっている。
きれいな血ね。
いつもとなにひとつ変わらない、ひくく落ち着いた声。
あふれる血潮を掬いながら、
女は血の気のなくなった頬を、むりにほほ笑ませて男をみあげる。
少女のように、可憐なほほ笑みだった。

わざとこうしたのか?
うめくように呟きながら、男は足をもつれさせる。
心に致命傷をうけたのは・・・男のほうだった。
殺す・・・と見せかけて。
男に手をくださせて。
女はみずからの刻だけを、いま終わらせようとしている。

わたしがまだすこしでも若いうちに・・・って思っていたの。
あとなん百年、あなたはわたしを憶えててくれる?
狼の遠吠えに似た呻きが、女のあとにつづいた。
忘れない・・・いつまでも。
初めて交わした接吻。
男の頬が、恋する人の血潮に染められた。
永遠に刻印されるように・・・

別れの刻は、すぐそこだった。
さぁ、吸って。思いのままに。心ばかりの、お餞別よ。
恋する男の抱擁を全身に感じながら。
幸せな女は大きな瞳を閉じて・・・二度と見開くことはなかった。
だれが耳にし得ただろうか?
押し殺すような嗚咽が終夜、闇を埋めたのを。

それからしばらくのことだった。
血は吸うが決して人をあやめないという、若い男の吸血鬼の噂が街に流れたのは。
男は頬に、赤黒い痣を持っていて。
どんな女を抱いたあとも。
そっといとしげに、その痣に触れていた・・・という。
痣を目印に、男はいくばくもなく狩られた・・・とも。
行方知れずになった・・・とも。
足跡は杳として、たどることができない。

落葉の音

2006年11月26日(Sun) 11:17:20

かさり。かさかさ・・・
時おり、思い出したように。
音を忍ばせる、葉擦れの音。
だれかがこちらに来るんだろうか?
思わずはっとして、何度ふり向いたことだろうか。
けれども視界に広がるのは。
どこまでも青い空と、色鮮やかな紅葉・・・
昼日なかだというのに。
穏やかに刻ばかりが過ぎてゆく、無人の公園。

囁くほどの乾いた響きは、落葉を踏みしめる足音に似て。
人の気配ひとつないスペースに、にわかな人影を滲ませようとする。
あ。
植え込みの影から一瞬覗いたのは。
たしかに、女のひとの脚だった。
ひざ上までめくれあがった、漆黒のロングスカート。
肌の透けた、薄墨色のストッキング。
ぴかぴかに磨かれた、恰好のよいハイヒール。
まるで幻のように、一瞬にして影に隠れてしまったけれど。
ボクは足早に、植え込みのほうへと近づいていった。

しーっ。
いつもここで逢うおじさんは。
隠れんぼしているところを見つかったときみたいな、イタズラっぽい笑みを浮かべて。
抱きすくめていた女のひとを、小脇にしっかりとかかえこんでいた。
そのひとから吸い取った血の飛沫が、おじさんの口許でちらちらと光っている。
きょうのデートのお相手は。
あぁ・・・やっぱり。
ほかのだれでもない、ボクの母さんだった。
黒のジャケットにも。
純白のタイのついたブラウスにも。
落ちてきた紅い葉が、そこかしこにまとわりついている。
服のうえ。不規則に乱れ咲いた深紅の飛沫に彩りを添えるように。
あでやかな紅葉になかば埋もれながら。
母さんはうっとりと目線をさ迷わせ・・・血を吸い続けられていた。

だいじょうぶなの?
どちらに訊くともなく、口にした問いに。
あぁ・・・
吸血鬼のおじさんも。母さんも。ほとんど上の空だったけれど。
ボクを仲間はずれにしていない証拠に、
ほら、こんなふうに・・・
あ・・・ここもですね・・・
血を吸う部位、咬みつくところ。
そこかしこ、ボクにもわかるように指さしながら。
彼は奪いつづけ、彼女は与えつづけてしまっている。

ぶぶぅーん。
通りすぎる、バイクの音。
びくっとしたのは、ボクだけだった。
人目もはばからず・・・悩ましげな面差しを、秋映えのなか輝かせ。
解かれた胸元のタイ。はだけられた襟首。
すき間から覗く肌は、ひどくみずみずしく若々しくって。
見てはならないものを見てしまったように。
とっさに目をそむけてしまっていたけれど。
いいのよ。よぅく、ご覧なさい。
母さんはむしろ自慢げな響きを囁きのなかに込めながら。
ノーブルな装いのまま、危うい愉悦に巻かれてゆく。

抜けるような青空の下。
物陰に、身を淪(しず)めながら。
正装に身を包んだ良家の婦人が、またひとり。
ひそかな飽食に身をゆだねていった。

譲り合う影たち 2

2006年11月26日(Sun) 10:39:01

一週間かけての出張から戻ると。
妻は見違えるほど若やいで、小ぎれいになっていた。
外巻にしたセミロングの黒髪を、どこかウキウキと肩にはずませてながら。
手作りの料理も、味がよくなったような気さえする。
あいつはやはり、来ていたのか・・・
どす黒い渦巻きが。じわり・・・と、胸を疼かせる。
うなじのあたりをさらさら流れる髪の毛に見え隠れしているのは、まごうことなきふたつの痕。
滲む血潮がまだ輝きを帯びていて、真新しい。
ついさっきまで、抱かれていたのか。
けれども妻はそんな私の態度にはまったく気づくふうもなく。
きれいに並べられた大小のお皿、そのうえに湯気を立てているお料理。
その湯気の向こうからにっこりとほほ笑みかけてくる。

その夜はむろん、妻を抱いた。
うなじに残された傷のほか。
痕跡はどこにも、残されていなかった。
闇のなか。
勝手の分かっているはずのベッドのうえ。
なぜかむしょうに熱っぽく振る舞う私がいた。
そして妻も・・・
あれほど乱れたのは。
なんか月もなかったためばかりでは、なかったはず。

来週も、出張なんだ。
出勤間際。ネクタイを結びながら呟くと。
台所の影は気のせいか、ハッとしたようだった。
そう・・・じゃ、寂しくなるわね。
亭主のいぬ間に、夜遊びでもしてきたら?
ふと洩らした戯れに。
ですね・・・
応えはひどく、あいまいだった。

はっ、はっ、はっ・・・
ふすまの向こうからは、切迫した息遣い。
息遣いの主は、妻。
からみ合う二重唱(デュエット)の相方は、むろんヤツだった。
まるでレイプさながらに。
改まった衣裳をくしゃくしゃに乱し、しとどに濡らしながら。
薄闇に浮かび上がる白い裸身は、焦がれるほどの淫欲を隠そうともしない。
いまごろご主人は・・・独り寝か。
ほくそ笑んだ囁きに。
主人のことは・・・いわないで。
そうしていちだんと、声をひそめて。
あぁ、もっと・・・つづけてちょうだい。
き・も・ち・い・いっ。

さいしょの出張のときは。ほんとうに、出張だった。
彼との和解が成り立ったすぐあとで。
さぞ醜いであろう妻の裏切りと、せめて遠く隔たっていたかったから。
けれども留守を守った妻の、見違えるほどの小ぎれいさが目につくようになると。
嘘の出張が、増えていった。
妻の貞操を、密かに譲り渡す。
愉悦を帯びた、共犯行為。
相手が逆らいがたい魔性の身・・・であったとしても。
心の底から響いてくるような、このぞくぞくとした快感は何なのだろう?
娼婦のように振る舞う、妻。
レイパーと化して、人妻を凌辱する吸血鬼。
そのありさまを・・・一人の男として愉しむ、私。
夫婦愛と、不倫の仲は。
三人を包む薄闇のなか、みごとに両立してしまっている。

6万件

2006年11月26日(Sun) 00:24:27

まだ体調げんなりな柏木です。--;
ちょっと前にメンテナンスをしていたのですが。
「幻想」以来のヒット数が6万件を超えたようです。
旧ブログの「吸血幻想」が、30,531件。
現ブログのアクセス数が、約31,300件。
ユニークアクセスはその半分弱、といったところです。
「幻想」は昨年の5月終りから今年の3月半ばまで9ヵ月半。
「妖艶」は今年の3月半ばから11月までの8ヶ月。
ちょうど、おなじくらいの期間で、おなじくらいのアクセスをちょうだいしたことになります。
掲載した記事の数は、「幻想」が592。「妖艶」が356。(この記事含めて)
うーん。
すべてが同等なのに、作ったお話の数は減っている・・・
お話の数のわりにお客様が増えた・・・というべきなのか。
ねた切れでお客様の期待を裏切っている・・・というべきなのか。
う。悩みが深くなりそうだ。
早よ、寝まひょ。^^;

再あっぷ情報

2006年11月23日(Thu) 14:16:10

ちょっと、体調を崩していまして。
といって、寝たきりでいるほどではないのですが。(^^ゞ
しばらくあいてしまったので、「幻想」時代の再あっぷで、お茶を濁しておきます。^^;
いずれも初期の、去年の六月ころのお話です。

「隣の書斎から」
半ば開いた書斎の扉の向こうでくり広げられる、妻と母の吸血。
嫁と姑は親しみと軽い嫉妬をまじえながら・・・
あいだに、なにもうかばないときの呟きを、当時のままにいれておきました。
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-614.html
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-613.html
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-612.html
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-611.html

「少女と母」
母に付き添われて訪問してきた少女。
お手本に、まず母親が。そして・・・
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-610.html

「家庭訪問」
上記のお話と同工異曲ですね。^^;
大きな違いは、親が正面きって立ち会わないで、扉の影から熱っぽく視線を送ってくるあたりでしょうか。
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-609.html
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-608.html
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-607.html

カテゴリー追加のお知らせ

2006年11月20日(Mon) 07:58:29

「母と娘」を新設しました。
既存のものも少しずつ、こちらに移していきたいです。
似通った面差しの持ち主が、ふたりながら。
スーツに制服。
気品と清楚と、齢相応の魅力を身にまといながら、
順ぐりに、恥じらいながら。
辱めに身を淪(しず)めてゆく。
そういうシチュエーションのお話のカテゴリーです。

娘のとき 母のとき

2006年11月20日(Mon) 07:55:25

お見合い・・・といっても。
村のしきたりで十代でするお見合いでは。
実感がわかないのも、当然のこと。
けれどもテーブルの向こう側に座った少女は。
色は、白く。
髪は、艶やかに黒く。
ぱっとはじけるような笑みがとても可憐な少女。
母親も、派手さはないものの。
シックなスーツに身を包み、ノーブルな面差しは少女の行く末を予感させるほどに似通っていた。

では、のちほど・・・
意味ありげに、のたもうたのは。
二人を私に引き合わせた男。
いつも影のように、時代がかった黒マントを羽織っている。
肩を並べて部屋を出てゆく後ろ姿に、
まがまがしい笑みをにんまりと浮かべている。
視線はかわるがわる、髪をあげてすっきりと映える白いうなじに吸いつけられていた。

かんべんしてやろうよ。
なんど、言いかけたかわからない。
けれども。
いいね?
食い入るように血走った眼に。
痺れたように。魅入られたように。
つよく頷いてしまっている。
ついて来たけりゃ、来るがいい。
影はそういうと。
マントを翻して、母娘のあとを追う。

そこは、村はずれの薄暗い小屋のなか。
家の方角とは正反対に歩みを進めてしまったことに、
母娘が気づいたときにはもう、遅かった。
ふたりでひとりの相手なら。
逃げおおせることも難しくはないはずなのに。
ふらふらと魅入られたように。
まず母親が。それから娘が。
順ぐりに手を引かれ、引き込まれてしまっている。
おそるおそる外から覗く小窓の奥。
虚ろな瞳が二対、早くも妖しい輝きを秘めていた。

ほつれた髪。
はだけられたブラウス。
その肩先に点々と散る、不規則なまだら模様。
露骨にたくし上げられた、色とりどりのスカート。
むざんに咬み剥がれたストッキングは
流れるような裂け目がカーブを描いて、肌の白さを滲ませていた。
意思を喪った人形のように。
かわるがわる足許に迫る唇に、むたいないたぶりを許してしまっていた。

二十年後。
肌の白さも。
髪のつややかさも。
あのときのまま。
妻となったそのひとは。
ぱっとはじける笑みは、昔のままに。
ノーブルな面差しを輝かせていた。
きょうは、娘のお見合いの日。
シックな白のブラウスに、色鮮やかなスーツ。
濃い紫のスカートの下、膝小僧に映えるのは、娘とおそろいの薄黒のストッキング。
母親は髪を後ろで束ねていて。
豊かにつややかなひと房を、まっすぐ背中に垂らしている。
娘は三つ編みのおさげを無邪気にうち振りながら、
濃紺の制服姿に初々しさをはじけさせていた。

ススキの穂先たなびく、秋晴れの帰り道。
ア・・・
母親はキュッと顔をしかめて立ちすくむ。
目じりにすこし、くすぐったそうな色を滲ませて。
ブラウスのすき間から、胸元に刺し入れられる一対の牙。
抱きすくめられてしわを波立てたブラウスに、かすかに散った飛沫。
白のブラウスだと・・・映えるわね。
出がけにあなたは、たしかにそう呟いていた。
牙を引き抜かれたときはもう、夢見心地。
二十年酔い続けてきた夢を。
いま、まな娘の身に重ねようとしている。
さぁ。怖がることはないのよ。
先様もちゃんと、ご存知だから・・・。しっかり、愉しんじゃいましょうね。
あなたが少女のとき。
お母様はそう、あなたに訓えたのだね。

恥じらいながら。
ためらいながら。
そろそろと、脚を差し出す少女。
くちゅっ。
唇が吸いついて、黒のストッキングのうえを這いまわるとき。
キュッと目をつむっていた。
そんな初々しいしぐさを。
あのひとは、嬉しそうに見守っている。
スカートの下、破かれたストッキングをもてあそびながら。

映像の裡に

2006年11月20日(Mon) 05:27:13

年月を経たその映像は、いくらかセピアがかった色合いをしていたけれど。
すべてをまるで昨日のことのように、リアルに映し出している。
室内はこうこうとした灯りに満ちていたが。
じっさいには、かなりの夜更けらしい。
開け放たれた窓ガラスから覗く夜の闇は透きとおり、すべてを押し包むような静けさをたたえていた。
居間に横たわるソファを傍らにしているのは、
どこの家庭にもありがちな、なごやかな団らん風景。
いずれも湯上がりの黒髪をつやつやと光らせていて、
母は黒の水玉模様の白いワンピース。
娘は夏服のセーラー服。
申し合わせたように、透明な黒のストッキングになまめかしく足許を染めていた。

きゃっ。
突然少女が立ちあがり、両手で口を抑えていて。
はしたない叫び声を、みずから封じていた。
あざやかな輝きを帯びた青いリボンを、胸許に揺らしながら。
庭から侵入してきた三つの影に。
母親もキッと、眉をひそめて立ちあがる。
「こんばんは。マダム。マドモアゼル」
軽くなぶるような会釈を、切り口上にはねつけて。
「なんの御用でしょうか?」
後じさりする母親は、身をていして少女から視界を遮ろうとしたのだが。
影どもは三人三様、息の合ったうごきをみせて。
すくみあがる母娘を、取り囲んでしまっている。

「おわかりいただけると思うが・・・生き血を頂戴するよ」
ククク・・・
影どもは、怪人めいた含み笑いを洩らすと。
きゃあっ!
少女の叫びを合図に、思い思いに獲物に迫ってゆく。
母娘ながら。
壁ぎわに、抑えつけられて。
まるで展翅板に羽を広げる蝶のように、
手足を伸べられ、胸を押し広げられ。
思い思い這わされる唇に、いずれ劣らぬ白い素肌をなぶられてゆく。

つづきを、見るかね?
傍らの声にはっとして。
けれども無言でつよく、頷いている。
では・・・つづけるよ。
応える声も、妖しい翳りを帯びていた。

厭。イヤッ!
身をよじって悲鳴をあげる少女。
「絵美ちゃん、ダメっ。逆らわないで」
母親は少女の手を、なだめるように握りしめて、
横合いから巧みに、拘束してゆく。
「は、はい・・・・っ」
あらかじめ、なにかを言い含められていたのだろうか?
少女は身体の力を抜いて、母の言いつけと侵入者のいたぶりに従順なたいどをみせる。
そのスキにつけ入るように。
ひとつの影は、なめらかな皮膚を輝かせる首すじに。
いまひとつは、黒のストッキングに包まれた足許に。
思い思いに唇を吸いつけていって。
ちゅう・・・っ
妖しく湧きあがる音に、うら若い血潮が織り交ざっていた。

ア・・・
一瞬虚脱した母親に、三つ目の影が重なった。
白い素肌を狙う唇に、まんまとうなじをくわえられて。
びゅっ・・・
重たく静かな音とともに。
白の衣裳に、かすかな飛沫を散らしている。

ちぅちぅ・・・
きぅきぅ・・・
ひとをくったような、ナマナマしい音。
横たわり静かになった女どもに、それはひどくいやらしくおおいかぶさってゆく。
母親が、諭すようになにかを告げている。
一瞬、少女は瞳に、せつじつな光をよぎらせたけれど。
母親に似て、しっかり者らしく。
口許をひき結んで、はっきりと頷き返していた。

母親は謝罪をするように、奥の部屋にちらと目線を投げかけて。
ワンピースの胸を、ほんのすこしくつろげた。

はあっ。はあっ。
静かに熱い、息づかい。
ノーブルな目鼻だちに、柳眉をぴりぴりと逆立てて。
夢みるように、かぶりを振りながら。
ひき結んでいた唇を、なかば開いて。
歯並びのよい前歯が、白珠のように光っている。
色の濃淡はあるものの。
似通った面差しに、おなじ彩りがよぎっていた。
女たちは、身をしならせながら。
夜の訪客を、歓待している。
知的な気品をたたえた黒のストッキングに、淡い裂け目を滲ませて。
厭うような面持ちをつくりながら。
ほどよく心地よげな呻きを洩らして。
ひざまでずり落ちたストッキングは、ふしだらなたるみを見せていて。
たくし上げられた衣裳からのぞく白く輝く太ももに。
ぬらぬらとしたものを、おもうさま、塗りたくられてしまっている。

どうだね?
傍らの声は、すこしゆとりを取り戻したらしい。
いいですね。
思わずかえした呟きに。
そうだろう?
きみになら・・・きっとわかってもらえると、思ったのだよ。
映像のなかで踊るのは、若かりしころの彼の妻。
そして、あの女学生姿こそ・・・わたしの妻。
唇を気丈に結んで、愉悦に耐えながら。
おろおろしながら、不覚にもむさぼらせてしまった純潔。
踏みしだかれたスカートの奥を秘めようとして、恥じらいながら。
ずり落ちたストッキングを、引きあげようとしながら。
いずれも果たせずに、かわるがわる受け入れてしまった三つの影。
床のあちこちに散らされた赤いしずくに、娘の身持ちを見出して。
母親は優雅にほほ笑んで、記念に・・・と。
指ですくいとったそれを、ワンピースの胸にこすりつけている。

有紀枝・・・有紀枝・・・おまえはもう、いってしまったんだね。
傍らの声は、寂しげに呟く。
呟きは、秋風に吹き去られる木の葉のようにせつせつと、虚ろに闇に吸い取られていった。
ずっと、あなたのそばにいてあげたいけれど。
吸血鬼になる気はないわ。人として死なせて。
不治の病に侵されたとき。
滲むような笑みを、白い頬に薄っすらと浮かべた妻。
三つの影も力なく、すすり泣くことしかできなかった。

絵美を、頼むよ。
ええ・・・いっそう、いとおしさが増しました。
今夜は絵美を独り置いてきたのだね?きっと今ごろは・・・
エエ、そうでしょうね。
応えにくすぐったい響きがまざっている。
いつかわたしは、彼女の母に妻の面影を見出していたから。

再あっぷ情報

2006年11月19日(Sun) 22:26:58

再あっぷ情報です。
「交接」
いつもながらな・・・アレです。^^;(3月9日掲載)
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-599.html
「家柄」
家それぞれのしきたりについての簡略な実例集?(2月10日掲載)
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-600.html
「寄り添って」
これまた、いつもながらな・・・アレですなぁ。^^;(2月10日掲載)
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-601.html
ちょっと手抜きで、すみませぬ。m(__)m
くわしくは、本文をどうぞ。^^

再あっぷ情報&日曜までネット落ち

2006年11月17日(Fri) 08:08:17

しばらくネット落ちするので、新旧とりまぜてのあっぷです。
さいしょの2,3は旧作。
その下に新作をいれてありますので、お見逃しなく。^^

旧作三編はいずれも今年の二月ころのものです。
翌月にブログがいったん吹っ飛びましたので、
目にする機会は少なかったかも。

追記:今回の再あっぷ

「慰めてあげる」
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-595.html
少女に迫る女の幽鬼は、姉のような優しさを秘めていた・・・(2月11日)

「夜の奇蹟」
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-596.html
今夜も妻は、吸血鬼に抱かれに出かけた・・・
夫を迎えたのは、一人娘。
白一色の衣裳で、無表情に・・・(2月10日)

「妖しい来訪者」
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-597.html
母親を訪ねてきたのは、ひとりの美女。
なにも知らない少女は彼女を家にあげてしまうが・・・(2月11日)

彼のために・・・

2006年11月17日(Fri) 07:55:35

帯のように薄っすらと伸びた、黒く透けた長靴下。
紙のようにたよりない薄衣は、まるで魔法のように
少女の足許を、まるで別人のようになまめかしく染める。
そんな魔術を密かに愉しむように、好んで装ってきたのだが。
彼・・・の欲求は、とても不埒なものだった。
知的で上品な装いとは、まるで不似合いに。
いたぶってみたいんだ。
まるで幼い子供がおねだりするみたいな頑是無さで。
声だけはひくく、熱を帯びていた。

赤い頬っぺたを、ふくらませて。
詰めた息を、すうっと吐いて。
少女は心を決めたように、つま先を探ってゆく。
いつものお出かけまえのように、たんねんに。
くるぶしから、ひざ丈に、
ひざ丈から、太ももに。
ぐーんと伸びて、ぴんと張りつめて。
男の子のように生硬な肌は、
薄いナイロンにコーティングされると。
しっとりと大人びた、淑女の脚に変貌する。

ちょっと、だけよ・・・
軽く、触るだけよ・・・
それ以上のイタズラは・・・よしてちょうだいね。
目をそむけてても、いいわよね?
おずおずと。
少女は恋人に、囁きかける。
きりっとアイロンのきいたプリーツスカートの下。
男の手は卑猥なまさぐりを秘めてゆくのだが。
少女は瞼をキュッと閉じて。
なにも感じまい・・・そんな意思をあらわに、初々しい頬に漂わせているのだが。

少年は嬉しそうに少女の脚をとって、
まるで自分専用のおもちゃだと言わんばかりに、我がもの顔に、
唇を、そしてべろを・・・むたいにねぶりつかせている。

キュッと閉じた瞼が仰のいて。
長い睫毛がナーバスに、ぴりぴり震えているのだが。
足許で、気配をかんじながら。
その気配さえも愉しむように、
少年は悪戯を、やめようとしない。
むしろいっそう、しつっこく。ねちねちと。
清楚な衣裳へのいたぶりに熱中してしまっている。

ぴりっ。
不埒なあしらいに耐えかねたように。
ひとすじ、涙のあとのような伝線が、
つつっ・・・
と、足首へと伸びてゆく。
あ・・・
声にならない声・・・
閉じたままの瞼から。
濡れた輝きが洩れてくる。
くちゅ。くちゅ。くちゅ・・・っ・・・
くまなく押し当てられる唇は、なおも欲情をあらわにして。
子供っぽい破壊欲のおもむくまま。
折り目正しいプリーツスカートのひざ下を、くしゃくしゃにしてしまう。

ごめんよ。
ありありと困り顔になった少年は。
俯く影に、いつか身を寄り添わせている。
好きだから。大好きだから。
きみにしか、お願いできないことだから。
激しく泣きじゃくる、腕の中の少女。
少年は気づいていた。
さいしょは辛かった涙に、いまは甘いものになりかけているのを。


あとがき
いろいろ悪さをしかけてみても。
けっきょくは少女に甘えているのですね。

今夜、あなたのところに・・・

2006年11月16日(Thu) 23:46:45

今夜、あなたのところに・・・
喜美代の母は、いつになく厳粛な顔をして。
娘に言い渡している。
男のかたが、お見えになります。
ドアがノックされたら。
怖がらずに開けて、迎え入れて上げなさい。
なにをされても、声を出したりしてはいけませんよ。
厭だったら・・・そうね。軽く抗うくらいはよろしいでしょう。
でもさいごには。御意にしたがうように。
このことは、カズヤさんも、おうちのかたも。
承諾済みのことですから。
あなたはなにも気になさらずに。
心をこめて、お相手なさい。
なにをされたかは、そうね・・・
さしあたって、母さん以外にはお話にならないほうがいいわね。
服は・・・きちんとした服装を好まれます。
今夜はさしあたって、お見合いのようなものですから。
そうね。制服を着て、お待ちしているとよろしいわ。
喜美代は終始、神妙な顔をして。
母のいうことを聞いている。

じゃあ、おやすみ。
意味ありげな目配せをして。
母がおやすみをいいにくると。
紺のブレザーにチェック柄のプリーツスカートを
いつも学校に行くときのようにきちんと着こなした娘は、
やはり神妙な顔をして。
黙って頷きをかえす。

こん、こん
間隔を、ゆっくりおいて。
扉がノックされた。
開け放った向こう側には、見慣れた廊下や壁とはちがう世界があるような。
少女はなぜかどきどきと胸をときめかせ、扉を開いている。
入ってきたのは、初老の紳士。
がさつな若者でもなく。
脂ぎった、中年男でもなく。
これが母がわたしのために選んだひとなのか。
選択の適切さに、少女はなぜかゆっくりと頷いている。
なにをされるか、聞いているのかね?
いきなり組み敷かれるかと思ったのに。
胸にくゆらいでいた怖れのすべてを裏切って。
紳士は穏やかな笑みをたたえて、少女を優しく見守っている。
ええ・・・
曖昧に応えて。
ただ、お好きなように・・・とだけ。
呟くような応えが、すこし語尾を震わせる。

すまないね。
肩にかかる長い髪の毛をかきのけて。
おもむろに、うなじに刺し込まれた牙。
つねるような痛みは、ほんのひとときのこと。
血を吸い上げられる感覚が・・・しばし少女を酔わせていた。
がっしりと抱きすくめられた両肩。
ちくりと刺し入れられる、鋭利な異物。
ちゅ、ちゅ・・・っ。
吸血のかすかな音が。
少女の胸を、妖しく震わせていた。
痛かった?
いたわるような目線に。
ううん。
少女は気遣う彼のために、かぶりを振っている。

長い靴下が好みでね。
すこし、悪戯させてもらえるかね?
ええ。どうぞ。
むぞうさに差し伸べられた脚は、ひざ小僧のあたりまで。
こげ茶色のハイソックスにおおわれていた。
まるで初々しい素肌を、不埒な手からガードするように。
ふふっ。
生温かい息遣いが、ハイソックスを通してしみ込んでくる。
少女ははじめて怯えをうかべ、
ちょっと脚をすくめていた。

吸いつけられた唇は。
ほのかな熱を伴って。
ねじるように、しつっこく。
押し当てられてくる。
ぴちゃ。ぴちゃ。
ひそかにあがる、吸う音が。
ひどく淫靡に、耳を刺す。
まるでハイソックスの舌触りを愉しんでいるみたい。
大人びた紳士の、見かけに不似合いな行動からか
なすりつけられてくるべろの感触からか。
少女はくすぐったそうに、くすくす笑いこけていた。

わたしのハイソックス、おいしいですか?
笑みを含んだ少女の問いに。
男は無言で頷いて。
言葉をかえすゆとりもないほどに、少女の脚に夢中になっている。
もっとなさって、よろしいのよ。
母から言われてますの。
ぞんぶんに、お愉しみになって。
使い慣れない、貴婦人のことば。
それがいともすらすらと口をついて流れ出てくるのは。
やはり。魔性の夜のなせるわざか。
脛の周りにぴんと張りつめていたハイソックスは
くしゃくしゃにたるんで、だらしなくずり落ちてゆく。
そんなようすが、おかしくて。
少女はくすくすと笑いつづけた。
むざんなあしらい、というよりも。
すがりついてくるようなせつじつさを、感じたから。

出かけてくるよ。喜美代さんのとこ
カズヤは母にそういって。
もう、夜更けだというのに、玄関を出る。
母親は少女のように小首をかしげ、そんな息子を優しく見送った。
そうね。わたしにも、父さんにも。そんなころがあったわね。
まるで自身も少女のころに戻ったように。
ウキウキとした気分で、扉を閉めた。
息子が若い許婚と直接顔をあわせるわけではないことを。
彼女はちゃんと、わかっている。

そんな幾晩かがすぎたあと。
今夜は・・・ね。
喜美代の母は、意味ありげな翳をたたえて。
娘に囁いている。
してはいけないことを、するのですよ。
ほんとうは、どこの娘さんも。
結婚をして初めて、お婿さんにしていただくことを。
今夜はあのかたに・・・していただくのですよ。
よろしいのよ。カズヤさんも・・・よく心得ておいでですから。

どきどき。どきどき。
こんなに胸がはずむのは。
きっと、初めての夜いらいのことだろう。
なにをされるのだろう?
おおよそのことは、知っているけれど。
もちろんこの身に受け止めるのは、初めてのこと。
いいのだろうか?
不義・・・という、いかがわしい言葉。
それがわが身に重なり合ってくることを。
そのままにして、いいのだろうか?
そんな思いと。
カズヤさん、許してくれるのかな。
わたしのこと、汚い女だと。思わないのかな。
そんな想いと。
けれどもそれ以上に。
未知の世界への期待が。
靄のような妖しい彩りを・・・少女の胸に投げかけていた。

その晩の彼は・・・いつもの紳士をかなぐり捨てて。
のべられた布団に、抑えつけられたとき。
少女ははげしくかぶりを振って。
すこし、泣いた。
いつものようにうなじに沈められた牙が、彼女の理性を奪ってしまうまで。
そんな、つかの間の抵抗を。
ドアの向こうにうずくまる翳の主は、たぶん一生忘れることがないだろう。
くしゃくしゃにされるブラウスと。
しどけなく太ももからずり上げられてゆくスカートと。
揺らぐ色彩と乱される秩序とが。
青年の瞼を、極彩色に彩ってゆく。

少女は輝くような初々しさを、じょじょにあらわにしてゆきながら。
もう、夢見心地になって・・・かすかなあえぎをただよわせる。
まだ、己の美しさを、はっきり自覚できない齢ごろだった。

不自然に開かれた、両脚。
ここからでも、はっきりと見てとれる。
いつも学校に履いてゆく、こげ茶色のハイソックス。
太めのリブが灯りを受けて。
鮮やかな縦縞となって、浮かび上がる。
娘らしい緩いカーヴを帯びた、なまめかしいラインに。
少年の目は吸いつけられていた。
ゆったりとしたふくらはぎが。
ハイソックスのなか、にわかにキュッと張りつめる。
あぁ・・・
たいせつなものが喪われるとき。
かすかに開かれた唇から。
声を抑えたうめきがあがる。
それが・・・ひそかに洩らした自分の声と重なるのをおぼえて。
少年は昂ぶる股間を抑えかねている。

せわしいほどの、上下動。
くしゃくしゃになったプリーツスカートの奥で、
潔らかだったものが、愉悦を伴って踏みしだかれてゆく。
性急で、せっぱ詰まった息遣いに。
きりりと八の字に寄せられた濃い眉毛に。
頬にほの白く漂う、初々しい淫蕩に。
許婚の切なる営みをみて。
狭いプライドから開放された少年は、
ひそかに、愉しみはじめている。
ふくらはぎからずるずると。
ふしだらにずり落ちてゆくハイソックスは。
少女の堕落を告げるのではなく。
妖しい営みがこれからもつづくことを。
少年に、愉しく予感させている。

さぁ。
少女の母に促されて。
少年はその場を離れる。
義母さん・・・
じぶんを抱き取るそのひとは。
肌が透けるほどに薄黒いネグリジェ一枚をまとっていて。
腰から下は、ガーターストッキングというのだろう。
てかてかと光る、紙のように薄い衣装を一枚、帯びているだけ。
今夜はお父さんもいませんから。
ひと晩、いっしょにいてあげる。
べつに・・・できなくても構わないのよ。
あの子にこういう夜を許してくださるときは。
いつでも好きに、遊びに来てくださいね。
お父さんがいても、構いませんから・・・

あしたの朝。
少年は、詰襟姿で。
少女は、ブレザーにプリーツスカートで。
いつもとおなじように、顔をあわせるのだろう。
こげ茶色のハイソックスは、お行儀よくリブをまっすぐにして。
清楚な足許に映えるのだろうか。


あとがき
後半は、ちょっと不自然かな?
とりあえず直さないで、あっぷしておきます。

譲り合う影たち

2006年11月16日(Thu) 23:39:18

闇とともに上から重苦しくのしかかってきていた、得体の知れない圧迫感。
うなじのつけ根にひりひりとした疼痛を残してそれがにわかに去ると、
わたしはふと、起き上がった。
傍らに寝ていたはずの妻は、いない。
もぬけのからの床に触れると、温もりさえもが去りかけている。
去りかけた温もり。
ゾッとするような予感に、布団をけるようにして立ち上がっている。

きゅうきゅう・・・ちぅちぅ。
どこからともなくすすり泣きのように洩れてくる、ひとをくったような奇妙な音。
勝手の分かったわが家のはずなのに。
まるで初めての場所のように、手探りしながら音を追う。
行きつ戻りつ、堂々巡りを繰り返し。
たどりついたのは、なんのことはないリビングだった。
純白のブラウスに、黒のロングスカート。
あれは、合唱団の発表会で、舞台にたったときのものだろうか。
薄闇のなか。
腰から下は、すこしおぼろになっていて。
影が・・・まとわりついていた。まるで腰を抱くようにして。
ロングスカートはふしだらなほどたくし上げられていて。
そいつは妻のひざよりすこし上のあたりに、唇を押し当てていて。
なにをしているのかは、容易に想像できた。
うなじの傷に、そっと手をあてがうと。
まだ、じんじんと響くような疼きを帯びていた。
眩暈のするような、心地よさ。
たどたどしく足を運ぶと。
影のほうから、顔をあげた。
ご主人、今晩は。
ぬけぬけと呟きながら。
けれどもそこにあるはずの嘲りは、どこにも窺うことができない。
妻を・・・どうするつもりなのだ?
いちばん聞きたかった、気がかりなこと。
あぁ。
影は二度三度、淑女に接吻を与えるように、名残惜しげに唇を這わせると。
おもむろに、妻の太ももから唇を放す。
常夜燈に浮かび上がった太ももは、黒のストッキングの放つうっすらとした光沢に包まれていたが。
まん中にひとすじ・・・細い裂け目が走っている。
微妙なカーヴに、ついうっとりと見とれると。
綺麗・・・だね。
同意を誘う声に、つい無言で頷いてしまっている。
彼のやり口だと、薄々感じながらも・・・

死なせるつもりはない。
けれども、わたしも死にたいとは思っていない。
時おりこのように・・・奥さんの血を分けてくれまいか。
穏やかな声色が、わたしを幾分、大胆にさせた。
それだけじゃないんだろう?
え・・・?
影がかすかなためらいを揺らがせる。
こいつでさえも、良心のかけらは持ち合わせているらしい。
妻を・・・抱いているのだな。
すまない。
影から、ため息が洩れる。
それは、すすり泣きに近い震えを帯びていた。
寂しくてね。
そう言いたいのを、かろうじてこらえているらしいのが・・・ありありと伝わってくる。
せめて・・・もの扱いしないでもらえまいか。
貴方に取ってはたんなる獲物に過ぎないだろうが。
わたしに取っては、最愛の妻なのだ。
おなじ女に魅かれるのなら。
せめて抱いているとき・・・真心をこめてやってもらえまいか。
我ながら、信じられないことば。
けれども影は、そんなわたしの世迷言に近い言葉に、固唾を呑んで聞き入っている。
まるで救いを見出したように、彼の顔から妍が消えていた。

さっきまで夢見ごこちに視線を揺らしていた妻が。
いつになく穏やかに、ゆったりとほほ笑んで。
わたしと、彼とを、等分に見比べている。
負けたよ。
口にしたのは、影のほうだった。
今夜は・・・ここまでにしておこう。
しばしのあいだ。奥さんと愛し合って。
それから、豊かな眠りを結ぶがよい。
すまないね。
わたしも、口にしている。
来週なら・・・出張でいないから。
そのときにでも。妻に逢いに来るがいい。

生まれ育った街

2006年11月13日(Mon) 14:55:01

ぐず・・ず。
営業用車のタイヤが砂利を噛んで、鈍い音を立てた。
昼下がりの青空は、周囲の雑多な建物に狭く仕切られている。
南向き建った古ぼけた小料理屋からも。北向きのマンションからも。
そして、左右にうずくまる民家からも。
死角になっている、ささやかな空間。
仕事に疲れると。
蛭田はいつも、ここに車を止める。
わざわざ一時間も、遠回りをして。

車のキーを、引き抜いて。
シートをがたんと倒して。
あらかじめ開放した窓からは、自然の風がそよそよと流れ込んでくる。
さっきまでの息の詰まるような仕事の世界とは、隔絶された。
身勝手な目上やしたたかなクライアントのなまな声からも、遠くかけ離れた。
ベッドタウンの、静かな昼下がり。
ピーポー、ピーポー・・・
遠くでサイレンが、鳴っている。
ぱん、ぱん。
近所の家では、干した布団をひっくり返しているようだ。
ガタタン、タン。
遠鳴りのように聞えるのは、新築工事が始まっているのだろうか。
あとは、雑多な日常の奏でる、音にならない音。
その静けさのなか。フッと自分を取り戻すとき。
ここはかつて、彼の住んだ街だった。

ここからわずかに見える、古びた民家。
幼馴染みのUちゃんは、いつも彼のためにハイソックスを履いて、畳のうえにうつ伏してくれた。
おやつがわりに、愉しんだ血。
Uちゃんがうっとりとなるころには。
こんどは彼のお母さんがお勤めから戻ってきて。
いそいそと、真新しいストッキングに履き替えて。
おおらかに笑いながら、Uちゃんの隣に、寝そべってくれた。
いまは住む人もなく、穏やかな静けさに埋もれた家。

小学校のころ同級生だったS代と、たまたま行き合わせた四つ角。
見慣れないセーラー服姿が眩しくて、つい道端の草むらに引き込んでいた。
うなじに唇を吸いつけながら、困り顔をしながら抗う手足を抑えつけて。
勝つに決まっている愉快な力比べのあと。
しずかになった身体から、重たいプリーツスカートをたくし上げていって。
手探りでパンティを脱がせていった。
あのときの草むらにはもう、鉄筋コンクリートのマンションが建っている。

風のうわさに、あのふたりはいっしょになったときいた。
結果として・・・たしかに幼馴染みの血を吸い、花嫁までもモノにしたことになるのだが。
ふたりのことを思い出すと。
独り取り残された気分になるのは、なぜだろう?
いまごろどこかの街で。
幸せな主婦をしているだろう彼女は、ぱんぱんと音を立てて。
干した布団をひっくり返しているところかもしれない。

みんなみんな、優しかった。
想い出のよすがはまだこの街の、至るところに残されているけれど。
ところどころ唐突に、見慣れない真新しい構築物が出現して。
その部分だけ、甘い追憶が断ち切られていた。
微かな風に吹かれて。
いま、ここにいる。
あんなことやこんなことがあった、この街に。
長いあいだそこにある生垣も。
咲き乱れる秋の花も。
あのころと同じように、手の届くところにある。
なによりも。
あたりに漂う安らかな空気は・・・
まごうことなく、あのときのもの。
けれどももう、過去に戻ることは・・・
と、顔をあげると―――
フロントガラスのまえに出現した唐突な光景はに、蛭田の甘い追憶を見事に切断していた。
一分のスキもない、キリッと着こなしたスーツの立ち姿。
ふさふさとしたボウタイに覆われた、豊かな胸元。
髪をあげてきりりと眩しい首筋。
そしてなによりも―――金縁メガネの奥に光る、魅惑的なまでに鋭利なまなざし。

えっ!!?どうしてここに?
数秒後。
営業用車のドアは外から開かれて、蛭田は女に苦もなくつまみ出されている。
「あっ、あの・・・その・・・え~と」
濃紺のスーツの主は、静かに腕組みをして、佇みながら。
見苦しく弁明の言葉を探し出そうとする蛭田のことを、
まるで滑稽な見世物でも見るように、しばし眺めていたが。
「いいわよ。もう」
蛭田を促して、車のなかに乗り込んだ。
彼女は助手席。彼は運転席。
「さ・・・こっち来なさい」
助手席の女は蛭田を引き寄せると、おもむろに胸をくつろげた。
解かれるボウタイ。
ふたつ、みっつと外されるブラウスのボタン。
フェミニンなレエスのスリップのすき間から覗く谷間は深く、
むっちりとした白い乳房には、静脈が薄っすらと、青白く透けている。
母鳥が雛を抱え込もうとするように。
左右から伸びてきた女の腕が、蛭田を抱き取った。
「いっしょに、サボろ」
懐のなかでむき出された牙が落ち着きどころを見出したように、乳房のつけ根に食い込んで。
鈍い疼痛を伴いながら、吸いついた唇が吸血をはじめると。
「やっぱりムリかな?金縁メガネ」
奈津子はのんびりと呟いて、メガネをはずす。

ちぃちぃ・・・ちぃちぃ・・・
名も知らぬ鳥が飛び交う下で。
みじかい晩秋の昼下がりはじょじょに光を弱めていって。
しずかな終りを告げようとしている。
遠くからきこえる、子供たちのはしゃぎきった声。
それが追いかけあいながら、間近になってくると。
女は一方的に、男を放した。
「そろそろ隠れんぼは、おしまいね」
男はまだ、残り惜しそうに。
女の足許に唇を這わせた。
女はあえて逆らわず、男の思うまま、ストッキングを破らせてしまうと。
「ったく、もう」
口を尖らせながら。
「気が済んだら、行くわよ」
いつものきつい先輩口調を取り戻して。
男の背中を叩いて、車を発進させる。

ここが蛭田くんの育った街・・・か。
どこでどんなおイタをしていたんだか。
あの家あの草むらに目を転じながら。
ふふっ。
いとも愉しそうに、笑っている。
さいごの赤信号。
ここから先は、いたるところ仕事の待ち構える、いつもの街並み。
「こんどまた、来ようね。お休みの日に。・・・いっしょに、来させてくれるよね。」
応える代わりに、男は空いた片手で奈津子の手をギュッと握りしめてくる。
頑是無い子供のような、手加減しない力をこめて。


あとがき
半分蔵出しです。^^;
さいしょは敏腕重役・鳥飼女史をモデルにしようと思っていたのですが。
女史を気取ろうと背伸びをする奈津子に切り替えてみました。
果たして成功しているかどうか・・・
このシリーズにしては珍しく、とくにストーリーのない展開になってしまいましたが。
蛭田の少年時代を少しのぞいてみたくなりまして。
たまにはこんなのも、よろしいでしょうか?^^

生娘

2006年11月13日(Mon) 14:26:32

少女がキャッと叫んで、のしかかってきた影を引き離そうとしたときには、
影はすでに、少女のうなじに牙を埋めていた。
滲むような鈍痛の下。
きゅーーーーっ。
うら若い血が勢いよく吸い取られてゆく。
「あぁっ!」
悲痛な絶叫を無視して、吸血はつづけられた。
眩暈がし、身体がだるくなり、意識が痺れてゆく。
やめて・・・やめて・・・厭ッ!
少女の叫びは、どこまで相手につうじたことか。
「殺さない・・・で」
さいごのひと言に、影のうごきがとまった。
我に返ったようだった。
牙が引き抜かれ、少女は力なくくたりとその場に崩れた。
血に濡れた唇がにやりと冷たく笑んで、
こんどは少女の足許に這った。
真っ赤なチェック柄のプリーツスカートの下。
初々しいふくらはぎをしなやかに包んだ黒のタイツがよじれ、ゆがみ、咬み破られてゆく。
ひ・・・っ、ひどい。
少女の抗議をものともせずに、まず片足を、そしてもう片方からもタイツを引き剥いでしまうと。
初めて影は得心がいったらしい。
にわかに慕い寄るように少女と影を重ねると。
すまない。おれの流儀につき合わせてしまって・・・でも嬉しかった。
ぶっきらぼうに、そう囁いて。
長い髪を撫でる手には、えもいわれぬ情愛が籠められている。
初めて男の見せたぬくもりが伝わると、女はせきあげるように涙をあふれさせ、
しばらくのあいだ、むせび泣きに埋もれた。
男はいつまでも、女の髪を撫でつづけていた。

つぎの日も。
おなじ時刻、おなじ公園のベンチで、少女は本を手にしていた。
後ろに立った影に、びくっと身を震わせて。
軽くいやいやをしたけれど。
もう、あきらめたように目を瞑り、猿臂にわが身を巻かれていった。
きょうもなかなか、お洒落さんだね。
男は揶揄するように、赤のストライプ模様のワンピースを褒めた。
いやらしいこと、しないで・・・
女は呻くように懇願したが。
許せ。これが愉しみなのだ。
男はそういって、きのうのように女の足許にぬるりと舌をあてがった。
きょうは、肌色のストッキングだった。
ひきつれひとつない真新しいストッキングは、夕陽を光沢に滲ませて、つややかな輝きを放っている。
なまめかしさに吸い寄せられるように、男は女の足許をなぶりはじめている。

あえかな陶酔に身を浸しながら。
わたしを、どうするつもりなの?
女は、すべてを許そうとしている。
お前の望むままに・・・だ。
男はぬけぬけと、そう告げた。
ふたたびのしかかってくる影が、うなじに熱い息吹きを吹きかけてくるのを。
わざと鬱陶しそうに首をふりながら。
それでも女は呟いていた。
こんどはどんな靴下がいいかしら?


あとがき
なん日かまえに描いた、蔵出しです。^^;
あまりにも変化のないお話なので、もちっとひねりを加えようかと思っていたのですが。
どうもこのあたりが、才能の限界みたいです。A^^;

妖怪占い♪

2006年11月13日(Mon) 08:27:58

桜草さまから、こんな占いを教えていただきました♪
「妖怪占い」です。(*^^)v
http://www1.odn.ne.jp/interface/sub2.htm
これはなんとも、ワタシのサイトに似つかわしいテーマ。^^
・・・と思ったら、ココでご覧になったさやかさまがもうおやりになっていらっしゃいます。
http://aisaretaiwatasi.6.dtiblog.com/blog-entry-719.html#comment
速っ。^^;
桜草さま、楽しい占いのご紹介ありがごうございます。m(__)m
さっそくやってみます。(^^)/

柏木は、ドラキュラかと思いきや・・・

お相手は、ふたりだけ・・・

2006年11月13日(Mon) 08:04:54

ふすま一枚へだてただけの、隣室でした。
主人にはきっと、聞こえてしまっていたでしょう。
はからずも洩らしてしまった、随喜のうめき、喘ぎ声・・・。
お相手は、主人の親友とおっしゃるかたでした。
初めてお目にかかったのに。
どこか、魅かれるものを感じて。
さいわいあの方も、おなじ想いを私に対して抱かれたようでした。
主人はすぐに、ふたりのあいだに親しく交わりあうものを見通したようでした。
なぜか嬉しそうにほほ笑んで。
ふたりながら席を外すよう、求められたのです。
それがなにを意味するのか。
わたしたちにも、察しがついていました。
すべてがほとんど瞬時にうごいたのは・・・きっとそれが特別に差し迫った場だったからでしょう。
そう。
主人は、死の床についていたのです。

乱れる息をけんめいに抑えて。
はだけた衣裳を身づくろいして。
ブラウスのボタンがひとつ、飛んでいたのと。
畳にひっかけて、ストッキングを破いてしまったのと。
どうすることもできませんでした。
ストッキングは、奥の部屋にいけば取り替えることができたのですが。
なぜかあの方は、その時すら惜しかったものか、
わたしを引き立てるようにして、夫の寝む部屋へと立ち戻ったのです。

ぶじに、すんだようだね。
わずかな髪のほつれに目を留めて、
わたしが気にするそぶりを見せると、さりげなく目線をそらしてくれた主人。
さいしょに、いやがうえにも目にとまったはずのストッキングの裂け目には。
とうとう気づかないそぶりをしつづけていました。
  奥さん、あなたを想ってちゃんと抵抗しましたよ。
  けれどもとうとう、モノにしてしまったんですよ。
今にして思えば・・・そんなメッセージが、こめられていたのでしょう。
頬に浮んでいるのは、嫉妬の苦悶ではなく。
どこまでも穏やかで平和な笑み・・・
オレがいなくなったら・・・ふたり仲良く睦んでくれないか?
この女(ひと)は、身よりがないのだから。
あの方は、主人を気遣うお友だちの目にかえって、
それこそ親身に、沈痛なものさえ浮かべて・・・約束してくださったのでした。
心配ない。あとは私に任せなさい。
悪いね。押しつけてしまうようで。
主人は気の毒そうに、憐れむような目線をあの方に投げました。
そしてちょっとだけイタズラっぽく笑いながら、こういったのです。
おいしかったかね?ひと言でいい。そう応えてくれんかね・・・

主人がいなくなってから、しばらくして。
わたしは黒の喪服を脱いで、今一度純白のウェディングドレスを身にまとったのでした。

この齢で・・・できちゃった婚か。すこし恥ずかしいね。
新しい夫となったあの方は、冷やかすようにそう囁きましたが。
内心生まれてくる生命を喜んでくれているのは、はた目にもあきらかでした。
生まれたのは、男の子でした。
その子に名前をつけたのは、あの方。
ご自分の名前ではなく、まえの主人の一字を取ったのに、わたしは驚きはしませんでした。
それほど深いつながりが、あの二人の間に流れていることを。
とっくに感じていたので。

年頃になった息子は・・・なぜかまえの主人とよく似ていました。
面立ちだけをみれば、ほんのどことなく・・・はた目には言われなければ気にならないほどなのですが。
あきらかに、あの方とは似ていませんでした。
それどころか、ちょっとしたしぐさや言葉遣いが、ときとしてはっとするほどに、まえの主人と生き写しだったのです。

息子が十六の春でした。
学校の家族面談から戻ってくると。
わたしはいきなり、あの子に迫られ、押し倒されてしまったのです。
実の息子に襲われている・・・
そんなおぞましさとはべつに、
わたしの心のどこかで妖しい火花が閃くのをおぼえました。
そのときの装いは・・・ぐうぜんだったのですが。
まえの主人がやすむ隣の部屋、初めてあの方に組み敷かれたときの服だったのです。
畳のまん中に、大の字に転がされて。
ブラウスに手をかけられて。ボタンをひとつ、飛ばされて。
白いスカートを荒々しくたくしあげられて。
肌色のストッキングを、むしり取るようにして引き裂かれて。
手口まで、まるであのときそのまま・・・
どうすることも、できないままに。
どうするつもりも、ないままに。
身体の奥のもっとも柔らかいところに、生硬にそそり立つものを深々と受け容れてしまったのでした。

一時間後。
わたしは鏡台に向かって、ほつれた髪を直し、はだけた服を着替え、
無言で、身づくろいをしていました。
ちょうど身なりがととのったころ。
背後に立つ影が、鏡に映りました。
わたしの身体をわがものにした男が。
母さん、ごめんね。でも時々襲わせてもらうから。
そんな怖ろしいことを呟いて、影は去ってゆきました。
けれどもわたしが息を呑んだのは。
息子の言葉に対する恐怖からではありませんでした。
すべてが、まえの主人と生き写しだったからなのです。

いいえ。存じませんわ。
あなたと、まえの主人以外の男性は。
夫婦の営みのあと。
あまりになまなましいわたしの振る舞いを訝る、いまの夫に。
わたしはそう、答えるのです。
だって、事実ですもの・・・
いまの主人は、どこまで心得ているのでしょうか。
むきになって言いつのるわたしを冷やかすように、
あのイタズラっぽい笑みを浮かべたのす。

占い♪

2006年11月09日(Thu) 23:39:36

さやか様の「スパンキングとSM」で紹介されている占いが面白そうだったので、ちょっとやってみました。(*^^)v
http://aisaretaiwatasi.6.dtiblog.com/blog-entry-697.html
ご本人が仰るには、性格判断的な占いがお好きだとか。
時々面白い占いが紹介されていますので、ぜひチェックしてみてくださいね♪

まずは★あなたのHなペット度占い★
http://u-maker.com/173919.html

これは名前と生年月日で占うんですね。
こういうタイプのものは、○×方式と違って狂うことがありません。
結果は・・・
忠実メイド。でした。^^;

● 忠実メイドさんは、人懐っこく、敬愛する人にはどこまでもついていくタイプ。一度心を許すと、生涯に渡って変わらぬ友情や愛情を持ち続け、一方的に裏切ることはまずありません。直観力に優れ、聡明で正義感が強いのも特徴です。その分、ちょっぴり融通の効かない部分もありそう。特に周囲から反対されると、妙に頑なになり、内側に閉じこもってしまいがちなので、ある程度の柔軟性を身に付けたいところです。もともとの誠実な人柄に柔軟性が加われば、もっと大きな幸せに恵まれるでしょう。恋愛面ではややオクテですが、主従関係から次第に恋心を深め、御主人様と満ち足りた関係を築いていけるはず。ご主人様もあなたの良さを理解し、温かく包み込んでくれるでしょう。
★忠実メイドさんのラッキーアイテム・鍵付きのピンクの日記
★忠実メイドさんの口癖「何か私に出来ることはありませんか?」
● 柏木 好夫さんの開運物まねは、織田信長です!

どうです?柏木。けっこういい人みたいですね。
しかし・・・鍵付きピンクの日記って・・・
ブログの背景をピンクにしてみようかな?^^;
似合わない~。

つぎはえっち度チェック<男性編>
http://h.tank.jp/h/man2/rank.cgi
これはアンケート方式です。
回答画面の注意書きによると、いちどしかできないみたいです。
ですから、一発勝負!

あなたのエッチは係長級です
上から数えて10番中の6番目の階級です。
値段にすると78,570,000円です。
160408人中のの61007位です。

係長だそうです。^^;
案外ヤらしくないんですよ、柏木。
そう、ジェントルマン。ジェントルマン。^^

さいごはヘンタイ度チェック
http://goisu.net/cgi-bin/psychology/psychology.cgi?menu=c014
・・・って、じつはいちばんさいしょにやったのはコレ、なんです。^^;

あなたは【SM系ヘンタイ】なタイプ。
あなたの潜在意識下では「誰かを支配したい/支配されたい」という欲望が渦巻いているようです。
もともと誰かの言いなりになったり、あるいは誰かを服従させたりすることにこそ、喜びを見出すタイプといえるでしょう。
あなたのヘンタイ気質は、普段、誰からも気がつかれないという特徴があります。
恋人など、ごく近い相手にのみ本心を明かす、少々厄介な人、といえるかも知れません。

あなたにぴったりの遊び場:SMクラブ
幼女少年系倒錯度  37%
自虐残虐系倒錯度  100%
同性愛系倒錯度  15%
電波系倒錯度  5%

吸血鬼というのは快楽系Sだと思っているので、当らずといえども遠からず、かな?え?そのものずばりですって?^^;
占い・・・コワイなぁ。^^;;;

再あっぷ情報

2006年11月09日(Thu) 23:17:02

ここんとこ「魔」の訪れもなく沈滞ぎみの柏木です。^^;
なんにもなしよりは、しばらくさぼっていた過去ログの再録でもしておこうかと。
今回は「怪人」に触発されてか、初期のものばかりです。
いずれも去年の初夏のころのものです。

「夢」
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-583.html
実際に見た夢をほぼそのまま描いたものです。
正直ゾッとしました。^^;

「フィアンセは女学生」
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-584.html
どちらかというと随筆から始まったのですが・・・
いつのまにか、ひとつの長いお話に。

「恵の献身」
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-585.html
最初のシーンは、ひなびた旧家の座敷牢。
吸血癖ゆえに軟禁された兄と、兄想いの妹との禁断の愛。
けれどもじつは、未完です・・・^^;

再あっぷ情報

2006年11月09日(Thu) 08:01:00

過去ログにうつしたので、痕跡だけ残しておきます。

素材としての吸血怪人 1
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-581.html

素材としての吸血怪人 2 抱擁の意味
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-580.html

素材としての吸血怪人 3 吸血怪人、大活躍(?)
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-579.html

やや趣を異にしたテーマですが、よろしければクリックを。^^
カッコよくいえば、柏木ワールドの原風景の一様態についての考察です。

明け方の風景

2006年11月06日(Mon) 07:24:28

がたがた ごとごと
明け方のしじまを破るもの音が。
女たちの帰宅を告げる。
戻りましたね。
戻ったな。
父と息子は、等分の大きさにつけられた痕に、まだ血潮をしたたらせたまま。
意味ありげな目配せを交わし合う。
ふたりが喪った血液を、女どもはまだふんだんに、体内に宿しているはずだった。

乱交に似た交わりは、つかの間の嵐のように通り過ぎていた。
女たちは、そこかしこに撥ねた血と、着衣の乱れを気にしながらも、
けだるげに乱れ髪を取り繕って。
ふたり並んで、きちんと正座をして。
男たちに、報せを告げる。
あれから・・・
ユリ子さんはつつがなく・・・貞操を喪失いたしました。
息子の嫁が不義の床を契ったことを。
姑は顔色ひとつ変えないで、夫と息子に告げていた。
ユリ子はさすがに羞じらいをにじませながら。
ごめんなさい。
夫のまえ、深々と頭を垂れる。
息子は妻の手を取りあげて、押し戴きながら。いたわるように、その手の甲に接吻をして。
妻の過ちを咎めまい・・・そんな意思をあらわにしている。
夜更け。
唐突に現れた迎え。
ふたつの影は、それぞれ父と息子のうなじを噛んで、
ほとんど瞬時に、生き血を吸い取ってしまった。
人ではなくなってしまうほど。
くらくらとする眩暈の向こうに連れ去られてゆく妻たちを。
男どもはウットリとした目つきで、ただ見送るだけだった。

つきものに憑かれたように。
無表情の姑は、口をつくまま呟きをつづけ、
嫁は息を詰めたまま、眼を伏せながら姑の口許を窺っている。
お邸に連れてゆかれて。
そう、無理無体に、組み敷かれてしまいましたの。
わたくしのお相手は、三人ですよ。
お前は、慣れているだろう?
そんな言い草、なさるんですの。
もう・・・抗いようも、ございませんでしたわ。
ユリ子さんのお相手は・・・
そう。わたくしを初めて凌辱なすった方。貴方はよく、ご存知ですね?
若夫婦のころから、ずっとのお付き合いですものね。
母親のイタズラっぽい含み笑いに、照れ笑いで応える夫は、ただの悪戯坊主にしか見えない。

今晩・・・もういちど、あのかたがお見えになります。
あなたたちご夫婦で、お迎えしなくてはなりませんよ。
あとは三人でよく話し合って、行く末をおきめになるように。
厳粛に言い渡されてはみたものの。
結論ははじめから、きめられている。
吸血鬼の支配を受ける家。
夜ごとの訪客は、妻の愛人として迎えられる。

親たちは、夫婦ふたりきりになると。
さきほどは・・・ユリ子さんを押し倒して。あんまりななさりよう。
本当は、若いひとの血のほうが、美味しいんじゃなくて?
媚びるような目線を流しながらも怨ずる妻を。
なに、一家の長として・・・嫁の身持ちが気になったのだよ。
そういいながら、夫はひしとかき抱いている。

つぎの晩が過ぎると。
息子は昂ぶりの余韻を、まだあらわに残したまま。
ひと晩寝ずに控えていた両親の部屋を訪れた。
悔しいけれど、おめでとう。
そう、言ってやりました。
あのかたに、ユリ子の愛人になっていただくよう、私のほうからお願いしたのです。
いまは・・・そう。邪魔しないであげてください。睦み合っている最中ですから。


あとがき
なかば強引に連れ去られ、吸血と情交を強いられた嫁と姑。
ふたりは帰宅すると、こんどは血に飢えた夫たちに迫られていきます。
息子は、母と。
父親は、嫁と。
互いにパートナーを取り替えあって。生き血を啜りあって。
「儀式」を終えると、ようやく語り合いの場にたどり着くのです。

夜中のお祭

2006年11月06日(Mon) 07:06:42

ふすまの向こうは、夫婦の寝室。
真夜中だというのに、明かりはまだこうこうと点いている。
いつものように床が延べられ、その上に妻もいるのだが。
当然そのかたわらにいるはずの私は、部屋の外。
そして私のかわりには、いくたりもの裸形の男たち。
昼間のように明るい電灯の下。
恥ずかしいほどあからさまに、白い素肌をさらして。
くんずほぐれつ、いくつもの影が。
かわるがわる重なり合い、交わり合ってゆく。

長い黒髪を肩先に振り乱して。
熟れたおっぱいをぷりんと揺らして。
見慣れたよそ行きの、紫のスカート一枚になって。
そのスカートすらも。
黒のストッキングを留めているガーターまであらわになるほど、大胆にひるがえして。
ふくらはぎをなぶりにかかる舌先に、
透きとおるほど薄いストッキングは、ふしだらに乱れ波打っている。

もの音も、うめき声も、するはずなのに。
耳には、なにも聞えてこない。
水を打ったような静寂の彼方。
妻は折り重なってくる男たちと肌をすり合わせ、
ただひとつ身に着けたスカートをくしゃくしゃにしながら。
スカートの奥に秘めた貞操を繰り返し、むさぼられてゆく。
剥き出しの肩に、ネックレスだけを着けて。
さっきまで淑やかな翳で脚をガードしていたストッキングを、
ひざ下までずりおろされて。
完全に脱がされたもう片方のストッキングは、
女の頭の上、なにかにひっかけられたまま。
虚しく舞うように、ゆらゆらと虚空を漂っている。

踊っているように。
はしゃいでいるように。
のけぞり、もだえにうち震える、白い肢体。
むざんな輪姦。
そんな描写が似合わないほどに。
呆けたように笑いこけながら。
前から、後ろから迫ってくる男どもに、
気前よく、交接を許してしまっている。
まるで若い衆にお昼ご飯を振る舞うように、
あけっぴろげに、こともなげに。
はしたない・・・
そう嗤うのは、たやすいが。
そこにはしきたりどおりの、一定の秩序が成り立っている。

月にいちど。
「奥さんと仲良くしたい」
そう思う男たちの訪問を受けて。
ひと晩、妻に饗応をさせる。
「講」に属する家庭はどこも。
ひっそりとその順番を待ち受けている。
男が女と仲良くする方法は、ひとつしかない。
どんなに貞淑な妻も。
その夜だけは、所帯持ちのよい主婦の仮面をかなぐり捨てて。
「夫は留守よ♪」
小首をかしげて、ウィンクをして。
あがりこんできた男たちを、そのまま夫婦の寝室に誘い込む。
いわば「お互い様」の、近所付き合い。
夜が明けると、男どもは。
夕べのまぐわいなど、おくびにもださないで。
寝取った女房の亭主と顔をあわせても。
いつものように、親しい会釈を交わすだけ。
女房どもは・・・
庭先で布団を干し、洗濯物を干しながら。
あら。色っぽい下着。夕べ使ったの?
エエ、七人も来ちゃった。
あらー、羨ましいわね。若いひとは。
井戸端会議のようなのどけさで、そんなやり取りを交わすのだろうか。


あとがき
「夜這い」という風習は、案外健全であけっぴろげなものなのでは、と思うのです。

ダブルパンチ

2006年11月05日(Sun) 23:35:57


おい。雅江はいるか?ちょっと貸せよ。ここんとこ、女ひでりなんだ。
耳ざわりな声といっしょに勝手に上がりこんできたその男は、明らかに酒気を帯びている。
ぼさぼさの頭に、着崩れたシャツ。放蕩にやつれた、蒼い顔。
たばこの臭いまでぷんぷんさせながら、そいつは我が物顔でずかずかと夫婦の寝室まで入り込んでくる。
「おい!雅江!どこだ?」
ひとの女房を大きな声で呼び捨てにして、男はうろうろと家捜しするようにして女を求めた。
その声に堪えられなくなったのか、女はじぶんから出てきた。
白のブラウスに紺のスカート。
地味だがこざっぱりとした身なりは、侵入者には明らかに不似合いだった。
「おう、久しぶりにつきあわないか?おれのモノでイカしてやるからよ」
男はなれなれしく雅江の肩に腕をまわしてくる。
雅江は夫のほうを怨めしげにかえりみたが、どうすることもできないのはわかっているらしい。
そのまま何も言わないで、されるがままに寝室に引きずり込まれていった。

坂崎はその男に、多額の借金をしていた。
脱サラではじめた事業が失敗したのだ。
いやというほど分かりすぎていることなのだが、すべては彼の見通しの甘さが原因だった。
そしていま、彼はもうイヤということすら、できなくなっている。
ドアの向こう側から、妻の啜り泣きが洩れてきた。
やり場のない怒りに震える肩に、ぽんと置かれる手があった。
「坂崎社長ですね?そこまで我慢すること、ないじゃないですか」
顔見知りの、取引先の男だった。
いつもぶきっちょで落ち着きがなく、かえってそんな取り繕わない態度に好感をもって、取引を始めた男。
どうして自宅を知っているのか、そんなことはもうどうでもよかった。
「自己破産でもして、すべてやり直す方が男らしいと思いますよ」
そういう男の言葉に、いつになく強く頷いている。
「その覚悟があるのなら・・・」
男はにやりとして、あっけに取られた坂崎をおいて、寝室にむかった。
蛭田というその男の名前を思い出したのは、もう彼がドアの向こうに消えたあとのことである。

ぎゃあああ・・・
弱いものだけに横柄な男の粗雑な声が、情けない悲鳴にかわった。
ひぃ、ひぃ、ひいっ。助けてくれぇ。悪かった、悪かったよおお・・・
ベッドから転がり落ちるような音。
「痛ぇぇぇ・・・」
金貸しはまたも情けない声をたてると、寝室から飛び出してきた。
ぼさぼさの髪をいっそうみっともなく振り乱しながら、坂崎のほうに紙切れを一枚、投げ捨てるようにすると、
どたどたと慌しい足音だけを残して白昼の通りに姿を消した。

目を丸くしている坂崎のまえ、蛭田は呼吸ひとつ、髪の毛ひとすじ乱さずにいる。
連れられて出てきた雅江はうつむいていたが、あきらかに安堵の色をうかべていた。
スカートのすそはめくれ上がり、ブラウスは釦をひとつ飛ばしていたが、
それでも最悪の事態だけは免れることができたらしい。
「もうだいじょうぶですよ。やつは二度とこの家に来ないでしょう」
坂崎の足許に落ちているのは、長いこと彼を苦しめていた借用証だった。
「あんたはいったい・・・?」
「たいしたことではありません。私ね、吸血鬼なんですよ。野郎の血を吸い取って、いうことをきくようにしてやっただけ。ついでに記憶も消しておきましたから。もう二度とここには、来たくても来れないはずですよ」
とても信じられないようなことをさらりと口にすると、蛭田ははじめて、はにかむような色をうかべた。
「ついでのついでですが・・・奥様の血もしょうしょう、頂戴しましたが」
たしかに妻のブラウスには、目だたぬほどの少量だったが、なにか赤黒い飛沫が散っていた。
「じつはね。このあいだの御社のパーティーで奥様を初めてお見かけして。その・・・見初めてしまったんですな。・・・ほんのすこしでよろしいので・・・」
皆までいわせずに、坂崎はふたりの前につかつかと近寄ると、男を思いっきり、殴り飛ばしていた。
「どいつもこいつも、いい加減にしろ!雅江はおれの女房だッ!」
いい気になっていた吸血鬼は、ひとたまりもなく消し飛んだ。
あなた!と叫んだ坂崎の妻は夫にかけ寄って、力いっぱいすがりついている。

痛ぇぇ。
こんどは蛭田が呻く番だった。
起き上がったときには、夫婦の姿は目のまえにない。
睦まじさを取り戻そうとするふた色の声が、寝室のなかから聞えてくる。
状況をみるかぎり、肩を落としてすごすごと退散するよりなさそうだった。
なによりもすっかり、興ざめしてしまったから。


とんでもないよなあ・・・
薄暗さをみせてきたあたりの空気が、寒さをいちだんと伝えてくる。
ヒーローになったところでやめておけば。
感謝に満ちた夫婦のまなざしを背に、かっこよく退場できたものを。
前半戦は我ながら、じつに堂に入っていたのだが。
だからこそ、救いようもない後半戦の記憶が、いっそうみじめさを添わせてくる。
自分で自分の記憶を消せたら・・・しかし、そういう術は不思議と身についていないのであった。
「うぅ。喉が渇いた・・・」
さすがに切なくなってきた蛭田のまえ、フッとよぎったのは長い髪の毛の女の影。
蛭田の瞳に、ふたたび紅いものが宿った。
不運な女は、三十そこそこだろうか。
落ち着いた物腰に、大人の女の色気を漂わせている。
こぎれいに装った、スーツ姿。
服装からして未婚の女のようだった。
「あっ・・・あの・・・っ」
戸惑う肩を抑えつけて、荒々しくコンクリートの壁に押しつける。
あんなことがあったせいだろか。
もう、自分でも抑制がきかなくなっていた。
お前のいうことなんか聞くものか・・・
いつにない憤りをこめて、むき出した牙を女のうなじにグッと突き立てている。
飢えた牙は面白いように、薄い皮膚にめり込んだ。
「きゃっ!」
咬みつかれた女が洩らした悲鳴は、人が通りかかっても聞き取れないほどちいさかった。
悪童みたいな破壊欲がふきつける。
女を抱きすくめる腕に、いっそう力がこもった。

ぎゅうっ・・・ごく・・・ごく・・・っ。きゅうっ・・・きゅうっ・・・
貪婪な食欲もあらわに、食いついて。
瞳のなか、紅いものをますます兇暴に燃えあがらせて。
切なくなるほど熱い液体を、喉を鳴らして呑み込んで。
ブラウスにぼとぼととしたたる血すら気にもとめずに、ただ、ただ、ひたすらに貪っている。
   お願い。お願い。もう赦して・・・
必死の懇願がブラウス越しに伝わってくるまでに、ずいぶんな刻が必要だった。
   ああ、すみません。でも、もう少し・・・
   わかりました。我慢します。声もたてません。
   でも、ほんとうに、いま少しで見逃してくださいね・・・
ひどく物分かりの良い女だった。
鋭い牙の切っ先に秘めている毒が、女をそんな気分にさせているのだろうか。
いやいや。蛭田は思いなおす。これがおれの実力なんだ・・・
弱々しくなってきた女の鼓動をかき立てるように、優しく強く女の背中をさすってやる。
女もまた、それに応えるように、必死になってわが身をふるいたたせようとする。
   せめてもうすこし、貴方に血を差し上げたいの・・・
甲斐甲斐しい女の振る舞いに、蛭田は本当にいとおしくなってしまって。
いつか女をいたわりかばいながら。
さっきまでの荒々しさは影をひそめて。
いまは甘えるように、すがりつくように、女の肩を抱きしめていた。
撫でさする女の身体はそのまま力を失って。
蛭田の腕のなか、ずるずると姿勢を崩してしまっている。
あきらかに、やり過ぎたようだった。



まったく、ばか者が。
年老いた医師は吐き捨てるようにそういうと、
蒼い顔をしている蛭田のほうなどちらりとも視線を送らずに、
なれた職人のような手でベッドに横たわる女を触診している。
ちいさな懐中電灯で瞳孔まであらためている医師のしぐさには、さすがの蛭田もどきりとしたが。
「だいじょうぶ、すこし休んでおればよくなるわい」
「たぶらかすのはよいが、こういうことじゃ修行が足らんな」
医師の声色は蔑みにみちていたが。
女の安静をさとると、かれもようやくホッとした色を浮かべた。
いくら罵られようとも、いまさら痛くもかゆくもない。
それよりも、通りすがりの女が示してくれた善意の余韻が、まだ男の胸を甘く締めつけている。
いわれのない凌辱を受けたのに、女はこちらのきわめて風変わりな愛し方を受け入れてくれて。
ためらいなくわが身を犠牲にしてくれたのだ。
すこし不思議なのはね。
そんな蛭田の感傷を完全に無視して、医師の声色はあくまでも冷たい。
牙の入った角度なのさ。ようくご覧。じつに自然な角度だろう?
この角度だと相手もそんなに痛がらないだろう?
苦痛が、ごく軽いものですむのだよ。
あんたにしたってそうすれば、皮膚の奥深くのいちばん美味しい血管を食い破ることができるのだ。
吸うものと吸われるものとが、よほど息が合っていないと、難しい角度なんじゃが。
女はあんたの知り合いかなにかなのかね?
どうも、女のほうからあんたに血をやろうとしたとしか思えんのだが。
ベッドのなかの女は、白い顔をして眠り続けている。
失血でやつれた顔色は、初めて襲った瞬間のうろ覚えな面差しよりも、ちょっと老けてみえたけれど、
目鼻に滲ませている地味な色気は、淡いオーラのような香気を放っている。
女の顔に、身覚えはなかった。
あんなに親切にしてもらえるような覚えも、もちろんなかった。
あるとすればさっき、すこし調子に乗ったばかりに善意で助けたはずの男に殴られたぶざまな体験があるばかり。
ヘンなところで遠慮をしたせいで。
毒消しに吸い取った人妻の血は、身を持ち崩した男から取り込んだ毒をまぎらすには少量過ぎたのだ。

「不思議といえば」
老医師は感情を消した顔で蛭田のほうを振り返った。
「お前にしても、不思議なやつだな。血を吸った女をわざわざ病院につれてくるとはね」
からかうような目をして男と女を見比べながら、老医師は人のわるい笑みをうかべた。
「女のことは任せなさい。どうせあんたのことだから、記憶を消しているんだろう?行き倒れだということで処理しておくから、あんたは早く家に戻って休んだがいい」
いや、そのひとを家まで送るのはせめておれが・・・
そういいかけた蛭田が女よりも顔色を蒼ざめさせてその場にぶっ倒れたのを、医師は驚きもせずに見おろしている。
「だからばか者だというのだ。いまだに見分けがつかんのか」
しんそこばかにしたように独り呟くと、
「おおい、誰か。接待用の看護婦を呼んでくれ。」
奥に向かってせわしなく、声を投げている。
あっ、はい。ただいま・・・
表向き怖がりながらも期待するような若い声にはお構いなく、
医師は傍らに置いたカルテに、手早く患者の名前を書き入れる。
蛭田が女の名前を聞いているはずがない。
けれども医師は顔色も変えず、白鳥美和子、とペンをさらさらと走らせていた。


あとがき
ぐうぜんに発見した、「蛭田物語」の埋没原稿です。
「幻想」が突然消滅する直前に描いて、消滅騒ぎにまぎれてしまっていました。
唐突に消えてしまった美人秘書の白鳥さんをどこかで復活させようと目論んでいて、描いたものなのですが。
どうしてすぐにあっぷしなかったのか、自分でもよく憶えておりません。
ともあれ、復活できてよかったです。^^

白鳥さんは善意のひとで。自分から蛭田に血を吸わせてやったりするのですが。
どういうわけか彼女の血液には吸血鬼を退治してしまうほど強度な毒気が秘められていて。
いつもこんなふうに、彼女のけなげな好意とは裏腹な結末になってしまうのです。
周囲の記憶を消して、自らも姿を隠した白鳥女史。
蛭田はとうとう、彼女のことを想い出せないまま、またもノックアウトされてしまいました。
いつもながら・・・な展開ですが。(^_^;)

優等生 2

2006年11月05日(Sun) 23:18:53

もう、気がすんだ?
男が牙を引き抜いて。
たっぷりと獲た処女の生き血に満足していると察すると。
少女はベンチから立ち上がった。
たくしあげられていた濃紺のプリーツスカートが重たくゆさっとゆれて、
あらわになった少女の脚を、もとのようにひざ下まで隠していた。
靴下、まだ破いたのね。
冷ややかな非難が、男の耳を心地よく打つ。
優等生の彼女。
みだしなみこそ、きちっとしていたけれど。
自らの美質をまだ意識していないのか、
ストッキングのことを、靴下というほどに。
おしゃれにも、流行にも、とんと無頓着なようだった。
けれどもきっちり着こなした制服姿だけでも。
ほんとうに周りの女の子たちとおなじ制服なのだろうか、と見まごうほどに。
だれもが惹き入れられるような、清楚で知的な侵しがたい風情を漂わせている。
きのうは、タイツ。きょうは黒の薄手のストッキング。
あしたは、そうね。白のハイソックスを履いてきてあげる。
薄いやつ?いやらしいわね。
さいごのひと言を口にするとき。
少女はさも不平そうに、ぷっと頬をふくらませる。

カン違いしないでね。
好んでお相手しているわけじゃないのよ。
貴方が好きで、相手しているわけでもないのよ。
ほかの子が、あなたにいやいや襲われているのがかわいそうで。
代役をかって出ているだけなのよ。
校内でも有名な、優等生。
親友を襲って泣かせたことを咎めたてて。
苦い後悔に落ちた少年に、みずから脚をゆだねていった。
顔色ひとつ、変えないで。血を吸われて。
喪われた血の量がひととおりでないことは、
透きとおるように白い肌が告げていた。

新藤、ゴメン。
名前で呼び合うことの多い女の子同士でも。
彼女だけはなぜか、苗字で呼ばれていたのだ。
ウン、どうしたの?
少女が振り返ると、
そこにはおさげ髪の同年輩の少女がいた。
この前男が見境なしに襲って、力ずくで血を獲た少女。
だって、由美江は・・・こいつのことイヤだって・・・。
いいかけた少女をさえぎるように。
わたし、あとは引き受ける。新藤にばかり、悪いもの。
いつも大人しい少女のいつにない強い語調に、さすがの新藤も口ごもってしまう。
だいじょうぶ・・・?
ちょっと当惑げに、少女は首をかしげた。
あくまでも、クラスメイトを気遣う眼をして。
エエ、だいじょうぶ。なんとかなる、って。
そう。
あまりにかすかな変化だったから。
少女の声が虚ろを帯びたのを。由美江も、男のほうさえも、感じ取ることができなかった。
あなたは、いいの?
少女は軽い揶揄をあからさまに含めて、男を見やる。
ああ・・・喜んで、好意に甘えるよ。
ぬけぬけとした本音に。
  そういうとおもった。
あきらめとも嘲りともつかない少女の態度に、
  ゴメン。
男はなぜだか後ろめたくなって。
女をちょっと気遣わしげに見つめたが。
彼女はその視線を跳ね返すようにして、
  仲良く、ね。
男の傍らをすりぬけるとき。
折からの風に少女の髪がたなびいて。
ちょっと残り惜しげに男の方にふりかかったように見えたのは・・・たぶん錯覚なのだろう。

男は、おさげ髪の少女とそのまま恋に落ちて。
二人はやがて、結ばれた。
結ばれてもなお、男の吸血癖はおさまらず、
新妻だけでは飽き足らず、時には通りがかりの少女や人妻を襲って、
草むらのなかでたぶらかした女たちには、
ご丁寧にも、深い情けをかけていた。
それでも我にかえって、血のついた手を目にすると。
男は蒼ざめて、ぶるぶる震えながら妻の許しを請うのだが。
由美江はいつも、おおらかにほほ笑んで。
夫の手を優しく取るのだった。
また裏切られると、ありありと知っているのに。
そんなことは露ほども、咎めようともしないで。

ある日の昼下がり。
襲ってやりたいくらいいい女が、こともあろうに自分のほうから家にやってきた。
妻の友だちだと、いっていた。
たしかに妻と、同年配。
身につけている洗練された服から察するに、まだ独身のようだった。
所帯じみたところがないぶん、妻より若く、活き活きと魅力的にみえる。
帰り道を襲ってやろうか。
フラチなことを思っていると。
意外や妻のほうから、お呼びがかかったのだ。
つい、ふらふらと出てゆくと。
あなた。よかったわね。恵理子ちゃん、血を吸わせてくれるんだって。
久しぶりでしょ?憶えているわよ。わたしと付き合うまえ、時々彼女の血、吸っていたんでしょう?
え・・・?
いぶかしげに顔をあげると、
待ち構えていた視線が、痛いほど彼を射すくめる。
恵理子・・・恵理子・・・
その名前が未知の仮面を剥ぎ落として、懐かしい響きを帯びるのに・・・さして時間はかからなかった。
目のまえの女は、優等生と呼ばれたあのときさながらに。
瞳の裡にまだ、怜悧な清らかさをたたえていた。

奥さん、だいじにしてる?
ひとの顔をのぞきこむようにしてたたみかけてくるしぐさも声も、まるであのときのままだった。
ああ・・・
なま返事の裏を読み取るように。
まさか、泣かせてなんか、いないわよね?
そんなはずはない。
応えはなぜか、弱々しい。
いつも自分のまえで、笑みを絶やさない妻。
けれどもそれだけが、妻のすべてなのだろうか?
いいわよ。半分は、あなたに用があって来たのだから。
恵理子はスッと立ちあがると。
きりっと足をそろえて。
昂然と胸を張って。
目を瞑り、牙がおりてくるのを待つようすは、
やはり、あのときの少女そのままだった。
抱きすくめたとき、ふとかすかに揺れたためらいも。
あのときと、かわりがなかった。
なぜか気後れを覚えつつ、おずおずと牙を差し入れて、
ちゅ・・・っ
久しぶりに吸い出した彼女の血は、年相応のよどみをおびていたけれど。
その裡に秘められたほのかな香りに、男ははっと気づいていた。
まだ・・・処女だったのだ。

同情しないで
すべてを読み取ったように、女はなにも言わせなかった。
いまでもね、私・・・優等生なのよ。
長い髪の毛をサッとかき寄せてうなじの傷口を隠すと、
女はそれまでの淑女に舞い戻っている。
けれども一瞬よぎった翳を、男は見逃さない。
  貴方が好きで、相手しているわけじゃないのよ。
ほんとうは、嘘だったんだね・・・・

それからのことだった。
彼がよその女の血を吸う時に、女と交わるのをやめたのは。


あとがき
昨年の11月10日付「優等生」の続編です。
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-451.html
あれからずいぶんと、時間が経ってしまいましたが。
一回こっきりの登場のわりに、私の心に深く印象づけられていた少女です。
彼女についての説明が↓こちらに載っています。
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-452.html
おなじ日に描いたものです。

飼われている吸血怪人

2006年11月05日(Sun) 23:06:27


包丁を持った強盗が夜、四人家族の住居を襲った。
両親と息子、息子の嫁の四人を順繰りに縛ると、いちばん若い息子の嫁に、よだれをたらしてすり寄った。
「悪く思うな。女ひでりなんでね」
男は若い夫に向かって嘲るようにうそぶくと、着飾った奥の和室へと引っ立ててゆく。
あ、あ・・・
男たちの戸惑いのうめきを背に、強盗がにまにまとしながら嫁の首筋を吸おうとしたそのとき。
ぎゃっ。
顔を引きつらせて魂切るような悲鳴をあげたのは、強盗のほうだった。
部屋の奥からぬっと現れたのは、身長二メートルにもなろうかという怪人。
姿かたちはすでに人間のそれではない。
大ビルのような胴体に、カマキリのような頭。
爬虫類の獰猛さと毛虫のキモチ悪さとをミックスしたようなグロテスクなやつである。
そいつが強盗の頭部をぶぅんと横殴りにすると、
うわあああっ!
強盗はあっさりと、その場に伸びてしまった。
大ビル怪人は強盗のうえにうずくまると、胸のうえから吸血管をぐさりとさしこんだ。
半透明な管には、たちまち赤黒いものが満ちてゆく。
ケケケ・・・
怯える家族を卑猥に嘲った強盗を無気味な声で嘲りかえすと。
大ビルは家族ひとりひとりにかけられた荒縄やビニールテープをこともなげに断ち切ってゆく。
いましめを解かれたお父さんは真っ先に、
ありがとう。助かったよ。
怪人にお礼を、言っている。
まるで懇意な知人に話しかけるような口調で。
怪人は家族とは長いあいだの顔見知り・・・いやもっと深い間柄だった。
「家内を犯すだけなら、許してやってもよかったんだけどなぁ」
トンデモナイことを呟くにやけたご主人を、奥さんが後ろからぶっ叩いたのは当然として。
怪人もまた、たどたどしい言語で反論する。
「ダメ、ダメ。ゆう子。誰ニモ触ラセナイ。コイツ許セナイネ」
器械のような声でフンガイしながら、
「コイツノ血、マズカッタ」
血を抜かれて呆けてしまった強盗を、憎ったらしそうに足で蹴転がす。
「サ、オ父サン。早ク、早ク。ヒャクトーバン、ネ」
逆にお父さんをせっついている。

一件落着すると。
とうぜんのように、おねだりが始まった。
さっきはあんなに嫉妬深いところをみせたくせに、自分がひとの女房を取るのは問題ないらしい。
父も息子も、いなやはない。
妻たちが怪人に奥の居間に手を引かれてゆくのを、苦笑しながら見守るばかり。
いつもはトシの順、なのにね。
先に招ばれた嫁の後ろ姿に、お母さんがちょっぴり不平そうに口を尖らせる。
あいつが襲われそうになったのをみて、きっと発情しちゃったんだよ。
息子がなかば困り顔で、母親をなだめていたが。
ふすま越しに「きゃっ」と声がすると、
「あー・・・刺されちゃった」
蚊に食われるのとでは、わけがちがうのだが・・・
キュウ、キュウ・・・くちゅ、くちゅ。
悩ましいもの音がつづいた30分後。
「サァ、ツギハ順子ノ番。用意ハイイネ?」
嫁とおなじくお母さんまで、これまたなれなれしく呼び捨てである。
お母さんはまだ若さのじゅうぶん残る頬を輝かせ、ミスコンテストで指名をうけたときのようにウキウキと立ち上がる。
「あなた、ごめんね。ちょっと浮気してくるからね」
夫をかえりみてイタズラっぽいウィンクをすると、手を引かれるまま、部屋に引きずりこまれてしまう。
「ああぁ・・・」
押し殺すような呻きが洩れてくると、彼女の夫も息子も、くすぐったいのをこらえるような渋面になっている。

ほら、母さんのほうが長いだろう?
得意気に鼻をうごめかせているのは、お父さん。
さっきから奥さんは、はだけられたワンピースから豊かな白い肌をのぞかせて、吸血管を刺し込まれている。
鋭く尖った管の先端が皮膚に突き刺さるときだけは、ちょっと顔をしかめていたけれど。
そのじつ、あんまり痛そうではない。
痛そうではないどころか・・・くすぐったいのか、疼くのか。
脚をばたつかせて跳ねまわりそうになるのを、どうやら必死でこらえているようす。
お母さんの生き血で吸血管をたっぷりと充たして。
怪人は、ククク・・・と嬉しそうに吸血をつづけている。
吸血しながら、胸とかお尻とか。もっとキワどいところとか、ヌルヌルとした触手で触りつづけているのだが。
お母さんはそれを苦にするどころか、
「イヤぁ、もぅ」
悪戯っ子のわるさを咎めるような、甘い口調。
となりに転がされている嫁は。
ブラウスに血を撥ねかせたうえ、どうやらスカートもめくられたようだった。
たくし上げられた紺色のキュロットスカートからあらわになった太ももからは、グレーのストッキングがぱちぱちと裂け目を広げていて。
ヌルヌルとした触手で、しつようになぶられた痕をはっきりと残していた。
目ざとい夫はそのまた奥に白く濁る粘液が鈍く輝きながらゆらゆら揺らいでいるのを発見しているのだが。
情交の痕跡ありありな奥さんを、面白そうに観察して。
怪人でも、精子は白いんですねぇ・・・
合いの子ができなけりゃ。すこしくらい、構わないよな?
とんでもない父子である。

街から強盗が姿をひそめて、もう何年にもなるだろうか。
表立っては忌まれながらも。
闇夜にひそむ兇悪なやからの血を餌にしていた怪人は、どうやら餌には不自由していないらしい。
あるとき迷い込んできた怪人を、暖かく迎える家庭がいくつもあるという。

怪人と逢ってみたいの。
そんなおねだりをした、お隣のお嬢さん。
気遣って同伴したお母さんも戸惑いながら、母娘ながら吸血に応じていった。
ふたりながら、脚に触手を巻かれていって。
苦笑いしながら、真新しいストッキングをチリチリにされて。
まずお手本に、お母さんが、スカートの奥まで触手を忍び込まされて。
そいつが娘のスカートの、お嫁入りまでだいじにしなくちゃならない処にまで入り込んでいくのを、いまは忍び笑いをこらえながら、見守っている。

浮気の張り番、頼みますね。
悪戯っぽくそういいおいて単身赴任していった夫のかわり、向かいの家で寝ずの番をしながら。
許された少量の血と引き換えに、寂しい奥さんのため・・・夫の代役を果たすときもある。
留守だといいながら。・・・隣りの部屋に通じるふすまがこっそり細めに開いていて。
けしからぬ昂ぶりを帯びた目が、もだえる奥さんを見つめつづけているのも。
怪人はよく、心得ていたりする。
きみになら・・・いっとき妻を奪られてもいいかな・・・って。
少年のころ、独りぼっちだった彼。
ただひとり、心を開いていたのが・・・公園で独り寂しく遊んでいる彼のまえに現われ、いっしょに遊んでくれた怪人だった。
優しい奥さんが、夫を愛しながらも。
風変わりな客人と賢明に接してゆくことに・・・密かな満足を覚えていた。

一見なにごとも起こらないような、閑静で平和な住宅街。
けれども不思議な共存関係は、街の裏通りに潜んでいて。
見たい人にしか、見ることはできない。


あとがき
なんともまあ、奇妙奇天烈なキワモノになってしまいましたが。(^_^;)
特撮ものの吸血怪人のようなものをイメージしてもらえるといいと思います。
彼らから受けた影響は決して小さくないのですが。
「幻想」時代のはじめのころに、そんなエッセイを描いた覚えがあります。
・・・って、まだ再あっぷしていなかったっけ?(^_^;)

連れ込み宿 1-ろ

2006年11月05日(Sun) 13:33:35

広げられたのは、住宅地図。
美薗家の欄が、太い赤枠で囲われ、塗りつぶされた。
散らされた薔薇の花びらのように。
赤が、地図のあちこちを埋めている。
花びらの一片一片は・・・
そう。
奥さんが、吸血鬼に貞操を捧げた家。

出かけてまいります。
いつもの、もの静かな声色に。
ほんのわずか、愁いと震えを秘めながら。
妻は今日も、三つ指を突く。
あぁ、行って来なさい。
わたしがつとめて温顔をつくろうと。
救われたように、瑞々しい笑みを滲ませてゆく。
外出は、決まって夕刻。
夫が吸血鬼に囚われて失踪して。
妻の衣裳は、黒に包まれていた。
やがて私が無事帰宅をしたあとも。
妻は喪服を脱ぐことがない。
黒の衣装を脱がされ、はぎ取られるのは。
吸血鬼とともにする、不義の床のうえでのこと。
未亡人の貞操は、同属の共有財産。
そんなうそぶきを口にするものたちのために。
妻は夜だけ、未亡人に舞い戻って。
わたしは装いを改めた妻を、夜ごとおだやかに送り出す。

毒々しく輝くネオン街。
その果ての、闇にうずくまるのは、秘めた営みを遂げるためのねぐら。
ほっそりとした身を包む黒のワンピースは、
今夜も巷の灯りを避けるように、足音を速めてゆく。
逢瀬の場となるのは、決まってその一隅の、古びた連れ込み宿。
我がもの顔に腰に回された腕をそのままに。
折り目正しく装った楚々たる黒の礼服姿は、
耳ざわりに開け立てされる硝子戸の向こうに消えてゆく。

あっ、・・・うう。オオ・・・ッ・
ときには獣のおらびのように。
ときには押し殺したすすり泣きを交えながら。
雨戸に鎖された向こう側。
妻は交淫を遂げてゆく。
強いられた行為に身をゆだねながら。
じつは奥底に秘めた想いを募らせてゆく。
あい矛盾した感情を、ひとすじの血潮に秘めながら。
女は首筋を獣にゆだね、
真珠色の素肌を思うさま踏みしだかれて。
血を啜られぐったりとなったその身を、すみずみまで蹂躙され尽くしてゆく。
雨戸一枚隔てた熱狂は、わが身を苛むと見せながら、
異様な昂ぶりは魔の手を広げて、私の胸をわしづかみにする。

お寒いでしょう?
庭先に佇むのは、宿の女将。
枯れ切った老いを滲ませていたはずの頬は、艶やかな翳を月の光に漂わせる。
暖まりなさいませ。
女は和装の下前をそよがせると、私の掌をなかへと導いてゆく。
ぴったりと合わされた太ももは、思いのほか温かく・・・そして若々しい。
奥様のこうしたあで姿を。あなたは愉しむことができるのですね。
精を注がれるお姿は・・・そう。見ているだけでも、若返るものですわ。
とうのたった人肌を、じかに触れさせまいとして。
薄手のストッキングにまとわれた太ももは。
じかの素肌よりも艶めかしくて。
心の奥に、妖しいともし火をかきたててくる。
シンと静まり返った庭先。
雨戸に封じ込まれた闇は、まだあえかなうごめきを止めようとはしない。

夕刻に出かけてゆく妻の帰りは、決まって朝。
ごとり、ごとりという玄関先の物音に目を覚まして、
迎え入れてやる。夕べ送り出したときとおなじように、おだやかに。
ただいま戻りました。
出てゆくときと同じように、三つ指を突く妻。
きちんと束ねて出かけたはずの黒髪が、目にとまらないほどの乱れを残していた。
おかえり。
つとめて優しい声で迎え入れて、
疲れただろう?体を清めて、ゆっくりとおやすみ。
それとも今朝は私の手で・・・ゆっくりとすみずみまで、清めてあげようか?
妻ははっと顔を上げて、羞じらいにありありと顔を染めて。
後ろに回りこんだ私の手を払いのけることもできないままに。
襟首のなかを、まさぐらせてしまっている。
ほかの男の、自由になった肌。
どれほど賞翫されたのかを、雨戸越しにありありと知っている。
くずした膝のうえに滲んだストッキングの伝線も。
断たれたストラップの切れ端も。
すべては、情事の名残り。
掻き抱いてまさぐる皮膚の下。
吸いつくされて凍りかけた血管に。
息を吹き返した血潮が、生き生きとしたバラ色によみがえって。
夜にもまして、いっそうの熱を帯びて。またゆるゆるとめぐりはじめる。
ほのかなぬくもりを取り戻した人肌は。
冷え切っていたわたしの指先を暖めてゆく。


あとがき
連れ込み宿 1-い の続編です。
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-552.html