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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

百話。

2006年12月30日(Sat) 12:51:07

夢中で描きつのっているうちに。
いつの間にか、百話を越えていました。
もちろん、いまこうして描いているようなたんなる紹介コーナーもあるのですが。
それは、毎度のことですから・・・(笑)
過去最高が去年の八月、まだ当ブログが「吸血幻想」といっていたころの81話ですから。
とっくに記録更新しています。
べつだん数を競っているわけじゃないのですが。(^^ゞ
質、落ちていませんよね?レベル低いのは、いつもどおりですね?^^;;;
新年は、3日か早ければ2日あたりに始動します。
年越しは、さすがにノーマライズされた、りあるモードで迎えなければ・・・

このようなヘンなお話ばかり散りばめられたサイトですが。
皆様に支えられて、やっとここまでたどり着きました。
来年もよろしくご贔屓下さいませ。

姉なるひと

2006年12月30日(Sat) 11:33:29

姉なるひとを求めて。
きょうもさ迷う、薄暗がりの夜道。
決して、あらわれることはない。
その女(ひと)はもう、この世にいないのだから。

おなじ背格好、年恰好。着ている服。長い黒髪。透けるほどに白い肌。
想いのよすがをすこしでも認めると。
スッ・・・とすり寄っていって。
姉が己に遺していった痕跡を。
女の影に添わせてゆく。
だれもが一瞬、苦しげに。
ほんのりと、身をよじらせて。
ため息を洩らし、目線を悩ましく、さ迷わせる。

虚ろにすぎる、一瞬、ニ瞬。
密かな至福に身を浸しても。
そそくさと立ち去る女を見送るときは。
この女じゃない。
別なる寂しさが、心の裡を食い破る。
永遠に・・・こうしてさ迷わなければならないのか。
女の与えた劫罰。
見あげる鉛色の空は、なにも応えようとしないけれど。
姉さん。さびしいよ。
ひと刻。ほんのひと刻でいいから・・・降りてきてくれないか?
滲んだ涙声に応えるように。
ちらり・・・ちらり・・・
氷の涙のかけらが、散ってくる。

虚ろに広がる薄暗がりに、降りしきる雪が舞い浮ぶころ。
来てくれたんだね?
白いヴェールに包まれた、なつかしい影。
かりに、幻影にすぎないとしても。
現れてくれた情(こころ)には、消しがたい温もりが流れている。




あとがき
お得意様のひとり、HAIREI画伯から、イラストを頂戴しました。
過去にあっぷしました「慕わしき・・・姉なるひと」をイメージしてお描きになったとのこと。
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-619.html
獣と化した面差しをさびしげに仰のける少年の裡に秘められた、女人の面影・・・といった風情です。
姉妹編、というわけでもありませんが。
一筆添えて、皆様にご披露いたします。

妖しいカウンターの美女

2006年12月30日(Sat) 10:26:49

仕事納めの日は、午後になるとオフィス内でビールの栓が抜かれ、あとは自然解散となる。
冬至を過ぎたとはいえ、まだまだ日の短い冬の午後。
四時半を回ると、あたりはもう暗くなってしまう。
里心のついたものは家路をいそぎ、
帰るあてをもたない若いものは、見慣れぬ平日の街中を、あてもなくさ迷い、
寄り添う相手をもつものは、さりげなく年末の挨拶を告げて気配を消してゆく。

なにか特別の行事があるときは。
去年はどうだったっけ?つい思い出してしまいがちだが。
去年は・・・悲惨だったよなぁ。
蛭田はゾクッと、肩をすくめる。
ひどい二日酔いに苛まれて。
後片付けはすべて、奈津子がやってくれて。
もちろん、いやな顔ひとつしないで・・・とは、問屋が卸さない。
年の暮れはは腰が抜けるほど。
情事ならぬ奈津子の家の大掃除にこき使われたのだった。

その、後片付けをしたり大掃除をさせたりした女が。
いま澄まし顔をして、隣を歩いている。
「どこ行くぅ?」
さりげなく訊いてくるのだが。
本音というフィルターで変換すると。
「どこでご馳走、してくれるのかな?」
ということになる。
自分のサイフを開かないのが身上の奈津子が、年の暮れだからといって自らの信念を枉(ま)げるはずもない。
で、さらに意地悪なことに。
連れて行った店の格で、男を判断するのである。
去年はたしか、女史に役員室に呼ばれて・・・
酷い頭痛が治った代わりに目にしたものは、がらんとしたオフィス。
誰もかれもが蛭田のことなど思い出しもせずに、事務所をあとにしていたのだった。
奈津子はあれから、だれと何処へ行ったのだろう?

ぎぃ・・・っと、古びた扉を開いた向こう側には。
煙草の煙が立ち込めている。
蛭田は煙草を、好まない。
思わずむっと顔をしかめて、開いたドアを閉めようとしたが。
「いらっしゃいませ」
間髪入れないマダムの声が、「逃がさないぞ」というように。
新来の客に、クリアな声を投げてくる。
「いいわよ。ここで」
マダムと奈津子に挟まれて。
まるでピストルを突きつけられた人質みたいに、
気の進まない足どりが、入口ちかくのカウンターに向かった。
あたりはいちめん、煙草の煙。
蛭田はブルッと、身震いしたが。
男ずれした奈津子のほうは、煙草の煙などへいちゃららしく、
「ふーん、しゃれたお店じゃん」
あんたにしては、見直したわ。
そういいたげに、蛭田のことを舐めるように見つめる。
蛭田はまたも、ビクッとする。
(コンナ洒落タオ店。イツノ間ニ開拓シタノヨ?一体誰ト?)
じろじろさぐる目線が、痛いほど突き刺さってくるのだ。
あぁ、もうすこし。もうすこしの辛抱だ。
吸血タイムになると、力関係は逆転する。
  あぁ、許して。放して。もういやあああっ。
身を揉んで泣きむせぶ奈津子の姿が、じわりと意識を彩った。
あくまで強気に彩られた日常とは、まるっきり別人になって。
蛭田に苛め抜かれることで、あらわな愉悦を滲ませるのだ。

「ねー!なにぼけっとしてんのよ。乾杯乾杯!」
蛭田の妄想などお構いなしに、奈津子姐さんに仕切られて。
いつの間にか、マダムも乾杯の輪に交じっている。
「いつから来てるのー?」
いかにも無邪気そうな質問を、マダムは「さぁ、お客さまはいつからでしょうか」と軽く受け流しているのだが。
いつ、来たんだろう?こんな店・・・
いちばん不思議そうなのは、じつは蛭田本人だったりする。
「なぁによ、あそこのステーキ。看板倒れもいいとこね」
蛭田が一生けんめい探したレストランの味は、女王様のお気に召さなかったらしい。
「それにひきかえ。こちらのお店はなかなかいいじゃない?見直したわよ」
声色から毒が去っていない証拠に、
「マダムもとても。美人・だ・し♪」
わざわざマダムがはずしたときに、囁いてきたりする。

奈津子が手にしているのは、見慣れない琥珀色の飲み物。
「それ、何てカクテルですか?」
必死になって話題をそらそうとする蛭田の手に、めずらしく乗って
「あら、ギムレットよ。違うかな?なんだっけ?」
うわばみな奈津子は、さっきから手当たり次第に注文しているカクテルの銘柄など、忘れてしまっているらしい。
「あの、これは・・・?」
蛭田の問いは、マダムの耳に届かないらしい。
すぐ目のまえでシェーカーを振っているのに。
長い黒髪を後ろで束ね、ストレートに垂らし、
シェーカーを振るたびに、揺れる髪がツヤツヤと光る。
齢は、いくつくらいだろうか?すぐ手の届くくらいの年上?
それとももう四十?あるいは五十?
女の齢のことは、蛭田にはわからない。
いや、だれにもわからないのかもしれない。
透きとおるような白い頬に、謎めいた微笑を含みながら。
女は蛭田の声になど耳も貸さずにシェーカーを振り続ける。
上下に振られる銀色のシェーカーが、蛭田のまえ、
かしゃかしゃという音を子守唄のように響かせながら。
幻惑的な輝きを滲ませてくる。
あんたはいったい・・・誰?

「マッカラン 25年もの」
傍らの席に腰をおろした女が、落ち着き払った声でオーダーを告げる。
マダムが一瞬顔色を変えたのを、蛭田は気づかない。
席の主に、目線が釘づけになってしまったから。
釘づけになったのは、奈津子とてかわりはない。
「ロックで」
まるで追い打ちでもかけるように、カウンターごしに高飛車な声を投げると。
「火をくれる?」
わざわざ蛭田のまえを遮って、奈津子のほうへと高価な葉巻を差し伸べたのは。
ほかならぬ、鳥飼女史だった。
両手で握った奈津子のライターから火をもらうと。
「あなた、煙草吸わないのに。気の利いたものを持っているのね」
誰からもらったの?
そう、訊きたげに。
ふふふん・・・と含み笑う女史の頬を、奈津子は小娘みたいにどきどきしながら見つめている。
「間々田は煙草を、吸うんだっけ?」
人のわるい流し目に、ふたりは別々の思惑でぎょっとして。
「いえ!これは・・・べつのひとからもらったんです」
もっと怖ろしい真相を奈津子が口にするのをみて、
あー・・・!
蛭田は、目を覆いたくなってくる。
すかさずどすん!とわき腹を小突かれて。
「しっかりするのよ。盗られちゃうわよ」
女史の尖った声が、鼓膜をジンと刺激する。
「あの、わたし・・・今夜はこれで失礼します」
傍らのショルダーバックをつかんで、あわてたように立ち上がる奈津子。
「お、おい!待てよっ」
逃げるように店から飛び出した奈津子を、蛭田は夢中で追いかけていた。

「どうして逃げるんだよっ」
ふたりとも、肩で息をしている。
どこの路地裏だろう。
盛り場から遠く離れてしまったのは。
蛭田の声が場違いによく響くことで、察しがつく。
「だって・・・だって・・・」
奈津子は小娘みたいに、泣きじゃくっている。
「女史にかなうわけ、ないじゃないの」
「だから、泣くなって・・・」
内心おろおろしながらも、蛭田はとりつくろった叱声をゆるめない。
それが作った声であることくらい、奈津子にわからないはずはなかったが。
カッコウだけでも、いま自分がしゃんとしていないと。
なにもかも、どろどろに崩れてしまいそうだった。
「あっ!」
だしぬけに。
さっきまで俯いていた奈津子が、顔をあげている。
「お勘定・・・あなた払ってきた?」

そそくさと逃げ出した女と、あたふたとあとを追いかける男とが足音を遠のけてゆくと。
女史はおもむろにマダムを見あげていた。
マダムもカウンター越し、一見にこやかに女史に目線を送ってくる。
ばちり。
視線のからみ合う、音にならない音を聞くはめにならなかったのは。
若いふたりには幸運というべきだろう。
「あの子がどこで、このお店を知ったのだか」
火のついた葉巻をくわえようともせずに。
女史はさらりと、嘯いている。
「さー、お客様も多いですから。なんのことだか・・・」
盛り場には場違いな、薄っすらとした気品を滲ませて。
開き直ったようにしらばくれるマダムの頬には、研ぎ澄まされた妖しい艶が秘められている。
「おかげさまで、ここ。繁昌しておりますのよ」
蒼白く輝く瞳が、いっそう妖しい艶を帯びたとき。
ばちっ。
すべてが一瞬で、真っ暗闇に包まれた。

闇に浮ぶのは、透明なグラスにたゆたう琥珀色の酒。
奈津子の飲み残したものだった。
女史はそれを小手にかざして。
グラスをとおして、カウンター越しの相手に対峙している。
「こんな子供だましを、子供に飲ませちゃダメよ」
  また、蛭田に毒を盛ろうとしているのね?
火花の散った向こう側。
白い女は相変わらず薄っすらとした微笑にすべてをおし包み、
  さぁ、毒なのかなんなのか。
あざやかにむき出した富士額を、ついっと横に向けていた。

ばたん!
お店の古びたドアをあけたとき。
蛭田はぼう然となって、周りを眺めていた。
さっきまでの洒落たバアは、どこに行ったというのだろう?
すすけた壁には、もう何年も払い落とされていない埃がこびり付き、
テーブルも椅子も、あるいは傾き、あるいはひっくり返り、まるで嵐のあとみたいに雑然と散らかって。
まともに座れそうなのは。いま女史が腰かけているカウンターの並びくらい。
ダクトも、換気扇も。抜け殻のようになっていて。
蝶番が片方はずれた奥の棚には、まだ飲みさしの酒が居並んでいる。

あたりいちめんの、廃墟の風景に。
男も女も、夢から醒めたように、ぽかんとしていた。
まるで、毒気を抜かれたように。
「十六年前、閉店しているみたいよ。なかなかセンスのあるお店だったみたいだけど」
「どうして・・・」
奈津子が口を開きかけ、黙った。
女史が歩み寄ってきて、向かい合わせに見おろしてきたからだ。
「今夜、蛭田くんと過ごしたい?」
「え、ええ・・・」
ためらうことなく決然とした口調に、フッと苦笑いを浮かべながら。
「上司としては、聞き捨てならないけど。まぁ、いいでしょ」
スッと奈津子にすりつくと。
娘くらいの年恰好の両肩を引き寄せて、着飾った上体を抱きすくめてゆく。
え・・・?
とまどう奈津子のうなじに、鮮やかな朱を刷いた唇が、ねっとりと吸いついた。
ぅ・・・
陶酔したような横顔に。蛭田はぞくり、とした。
ひとしきり。恋人の若い肌に唇を這わせた女は、おもむろに顔をあげると。
「だいじょうぶ。美味しく吸えるわよ」
ヘンなもの、飲ませるな・・・と思って、ちょっと警戒したけど。
疲れた血液に、気持ちのいい香気を寄り添わせただけ。
あの女。いったいなにを、したかったのかしらね。
薄闇のなか。蒼白く浮かび上がる女史の頬を、蛭田は魅入られたように見つめている。
「あら」
虚を衝かれたように。女史はちいさく声をあげた。
目にもとまらぬ素早さで。
濃紺に装った足許に、蛭田がかがみ込んでいたからだ。
ちくり・・・と刺す、かすかな痛みに、女史はちらと翳をよぎらせて。
気を喪った奈津子を傍らの椅子にもたれさせると。
すうっと抜き取られてゆく血潮を、情愛をこめて送り出す。
ちくり。ちくり。
止まり木に腰かけた女史の脚を、蛭田はなおも、放さずに。
左右かわるがわる。太ももからふくらはぎ、足首までも。
舐めるように、唇を這わせていって。
女史のストッキングが見るかげもなくチリチリにすりむけてしまうまで、行為を繰り返していった。
「どうしたのよ」
女史はちょっと咎めるように、口を尖らせて。
裂かれたストッキングを、じぶんの足許からぴりぴりと引き剥いてしまうと。
  わたしにだって、吸血の心得くらいあるのよ。
  あなたといっしょにされちゃ、迷惑だけど。
ふふ・・・っ、と笑んだ口許を。
蛭田はやはり、魅入られたように見つめつづける。
「お嬢さんを、送るのよ」
今夜は、見逃してあげるから・・・と。
女史はそっけなく、いつもの命令口調に戻っている。

男が女を、お姫様抱っこして退場すると。
女史はもういちど、カウンターの向こう側、マダムのいたあたりにグラスをかざして。
  メリー・クリスマス♪ ・・・ちがうわね。(苦笑)
  でも、そちらはどうなのかしら?
人とは異なる時の住人に、エールを送る。
そうして、奈津子の飲みさしを、ひと思いにグッと飲み干すと。
わたしもあの子のまえ、飲んでみたかった。
人知れず、呟いていた。


あとがき
さいごのさいごに、女史の登場です。^^
ご愛読のかたならお察しのとおり。
バアのマダムの正体は、誰の記憶からも自らを消し去ったもと重役秘書の白鳥さんです。
かつて自らの血液にめぐる毒を蛭田に含ませて、酔い酔いにしてしまった彼女。
なにも知らない奈津子に今回含めたのは・・・どうやら媚薬の一種らしいですな。^^
女史の吸血シーン。まえにもいちど、描きました。
ご不審の向きもあるでしょうけど。
いったいどういうひとなのか・・・と。ナゾを深めてみました。(笑)

家庭教師のつまみ食い

2006年12月30日(Sat) 08:50:43

さぁ、この問題をやって御覧。
セーラー服に、おさげ髪。
赤い縁の、度のつよい眼鏡。引き締めた口許。
一見非の打ち所のない、まじめ少女。
けれども濃紺のプリーツスカートの下、
ひざ下丈のスカートからわずかにのぞく脛を覆っているのは、
薄手の黒のストッキング。
光沢感のない、ごく地味なものなのに。
年頃の少女の透きとおるほど白いふくらはぎを、
いともなまめかしく、浮きあがらせて。
地味な制服なんです。
そんな少女の主張を、あざやかなほどに裏切っている。

さぁ、やって御覧・・・
家庭教師とは思えないほど、なれなれしく。
逞しい腕を少女の背中にまわして、がっちりと抱きすくめて。
ギュッと抱きついた腕の下、襟首を走る鮮やかな白ラインが、くしゃっとゆがんだ。
折り目正しい少女の振る舞いを、乱すように。

髪をあげた首筋に、おもむろに吸いつけられた唇に。
少女はあっと声を洩らしたけれど。
それも、一瞬の裡。
ちゅううっ。
異様な音が、家庭教師の正体と。
忌むべき意図の成就を告げる。

抱きすくめる腕が、ゆるめられることはない。
そう。少女の身体から力が抜けて、
ずるずると、姿勢を崩してしまうまで。
デスクの傍ら。
うつ伏せに倒れた、女学生姿。
赤い縁の度のつよい眼鏡は、参考書のうえに置き去りになっていた。
眼鏡をとった少女の横顔は、あどけないというにはあまりにもかけはなれていて、
ふだんとは別人のような、大人びた翳を滲ませている。
ふふっ。
男は嘲るように、満ち足りたように。
薄墨色に彩られた少女の足許ににじり寄る。
薄手のナイロンに縁どられた、発育豊かな脚線を。
足首から、ひざ裏へと。
輪郭をなぞるように、手をすべらせて。
すすっ・・・と軽く、撫であげる。
ふふふ。
狙った獲物を、とうとう手にした。
満足そうな唇が、うっすらと欲情を滲ませた唾液をあやしたまま。
しずかに、清楚な足許にかがみ込んでゆく。

くちゅっ。
舌の這う音。
唾液のはぜる音。
清楚な衣裳には不似合いな音を秘めながら。
笑み崩れた唇の下、制服の一部をあしらってゆく。

あらあら。ダメですよ・・・
ドア越しに洩れてくるのは。
深みを帯びた、大人の女性の声。
少女はぼんやりと目を見開いて。
目線の彼方には、点々と散った赤黒いしずく。
まだ乾き切っていないそれは、
深い輝きを放ちながら。
秘められていた熱情を、ゆらゆらと漂わせている。
吸い出されたものの、音のないゆらぎを。
虚ろな瞳が、見つめつづける。
向こうから聞える母親の声を、聞くともなしに聞いている。
足許を彩っていた、大人の装いがむざんに破けているのを。
そらぞらしく肌を打つ周囲の冷気で感じながら。

台所のまえ。
踊るようにして身を振りほどく、エプロン姿。
のしかかってくる影は、少女のときよりもいっそうしつように。
女の後ろ姿を、自らの影の下おおいかくしてしまおうとして。
そうはさせないわよ。
少女の母親の振る舞いは、せつじつさからほど遠い。
まるで、じゃれ合うように、ウキウキと。
誘惑の腕をかわしつづける。
あら、ダメ・・・
くすぐったそうな笑み声をこぼしたのは。
影が、じぶんの足許にかがみ込んだときだった。
肌色のストッキングの上から、濡れた唇を吸いつけられて。
あっ。あっ。
女はしばらく、ステップを踏むように、
かわるがわる、片足立ちして。
爪先立ちになっていって。
ヒルのような唇を這わされるたび、唾液をぬらぬらとあやされていった。
アラ。ダメですよ・・・
台所のフローリングに、尻もちをついたまま。
女はくすくす、くすくす、くすぐったそうに笑み崩れながら。
ストッキングを破らせてしまっている。
光沢よぎる、スケスケのやつは。
こういうあしらいのため、脚に通したものだろう。
きゃっ。きゃっ。
尻もちをついたまま。
小娘みたいに、はしゃぎながら。
影はいつか、傾きを深めていって・・・
床のうえは、痛いわ。
ひと言、のんびりと呟くと
あとはすべてを、深い吐息にまぎれさせてゆく。

狙いは○○の、妻と娘。
ふたりながら、堕としてゆく。
すべては、男の描いたシナリオどおり。
けれどもひとつ、シナリオになかったのは。
こうして物陰からいちぶしじゅうを窺う、夫の存在。
視て・・・愉しみたいのだよ。
密かに告げたわたしの意図に、ちょっとびっくりしていたけれど。
それもいいさ。おれはおれのすることをする。
男はうそぶき、妻と娘を侵す・・・と告げた。
長けた術中におちて、惑わされ酔わされてゆく女たち。
侵された日常の裏側で、不幸なものはだれもいない。


あとがき
母と娘をつまみ食いする家庭教師。
ありがちな設定ですが。
ふつう登場することのないであるご主人とか、お父さんとかは。
妻や娘がそんなふうに娼婦よろしく堕とされている・・・なんて。
夢にもご存知、ないのでしょうね・・・
そんなことを想像しているうちに、こんなお話になりました。

足首が告げている

2006年12月30日(Sat) 08:20:00

薄暗闇のなか。
もみ合うふたつの影は、ひとつに折り重なって。
壁を背にした女は、そのまま壁を背もたれにして。
ずるずると、姿勢を崩してゆく。
のしかかってくる影に、うなじを咬まれたまま。

スポットライトのように射し込む、一条の光。
見慣れたスーツの淡い紫が。
乱れかかったすそからのぞく、ストッキングの鮮やかな黒が。
にわかに浮かび上がる。
咬まれたまま。
生き血を啖らいつづけられながら。
脚だけが、まるでべつの生き物のように。
スポットライトのなか、蛇のようにくねりつづけた。

足首に密着する薄墨色のナイロンが。
素肌とおなじくらいきめ濃やかな彩りで、
皮膚をぬるりと彩っている。
離れて見ている。
そうは思えないほどに。
目に見えないほどの網目模様が、毒々しいほどの艶をたたえながら。
足首の周りを微妙にねじれ、ゆがんでゆく。

あっ・・・ああっ・・・
随喜を秘めた吐息交じりのうめき声。
脚をねじりながら。
沓下の肌理をゆがめながら。
スポットライトのなか、
脚は白蛇のように妖しくくねり、闇を踊る。
てかりてかりと、娼婦めいた艶をよぎらせて。

抗っている。拒んでいる。
全身をかけての演技を。
足首だけが、裏切って。
ねじれてひきつり、ばたつきながら。
たくまず、本音を滲ませる。

あぁ・・・
圧し臥せられた女の、安堵ににた吐息。
男の腕の縛めを解かれても。
壁を背もたれにしたまま。
立て膝をした脛に唇を這わされてゆくのを。
拒もうとはしていない。
くちゅ。
なまなましく濡れた音を、這わされて。
ぬるぬる、ぬるぬる、いたぶらせている。
足首の周り。ストッキングをすら、賞翫するように。
くまなくあてがわれる唇に。
むぞうさに這わされる舌に。
肌理を波だて、ひきつり、裂け目を走らせて。
滲む随喜で、薄暗闇をさえ、彩ってゆく。
足首が、禁じられた随喜を・・・ここまで告げてくる。


あとがき
さだかには、描かれていませんが。
遠くからすべてを窺っている目線の持ち主は・・・
餌食にされている人妻の、きっとご主人なのでしょう。^^

きゃー♪

2006年12月29日(Fri) 09:31:37

すこしばかり、プチ放置していたら。
皆様からのコメントが、四通もっ♪
う・れ・し・い・な。
みんな、ありがとねっ^^
枯れ木の山みたいなウチのブログに花を咲かせてくれて。^^;

いつもはコメントからさきに始めるのですが。
お話が先行してしまいました。
ご返事かならず、いたしますので。今しばらく、お待ちくだされ。m(__)m
今回のご訪問をきっかけに、「RECENT ENTRIES」を5から「最新のコメント」表示数を7から10へ。増やしました♪
てなわけで、嬉しさあまっての記念カキコです♪

愛しい母娘 ~連作:院長、ご来客です

2006年12月29日(Fri) 09:22:10


白のハイソックス、好きなんでしょ?
あなたのために、履いてきたのよ。
そんなふうに、囁かれたら。
もう、抱きついてしまう以外、どうすれば良いというのだろう?

制服の濃紺のプリーツスカートの下。
ひざ下ぴっちりの、まっ白なハイソックス。
細いリブが整然と、少女の脛のふくらみを映して。
微妙なカーブを、描いている。

ほんとうにかわゆい、という衝動が胸を焦がすときには。
足許にかがみ込む・・・などという余裕はなかったりする。
いきなり首筋に抱きついて。
まわした腕に、若い生命の充実を感じながら。
なによりもまず。肌の温もりを確かめたくて。
牙を突きたてようともせずに。
ただひたすらに・・・少女の肌に、唇で触れてゆく。
鼻先をよぎるのは。
ほのかに甘いぬくもりを帯びた、髪の毛の香り。
少女を横抱きにする腕に、ぎゅうっと力がこもる。
痛いっ。もう・・・
少女は口を尖らせたけれど。
そのまま、オレの言うなりになってゆく。

パパ・・・見ているよ。
そう。
診療室の扉が、患者もいないのに、半開きになっている。
廊下の待合室の、硬いベンチのうえ。
オレは少女を抱き伏せて。
うなじに吸いつけた唇から、キュウキュウと激しい音をたてて。
いつか、初々しい血を吸いはじめていた。
聞こえよがしに。あいつの耳に届くように・・・

パパ、不思議なひとだね。
好きな女のひとが血を吸われているのを見ていると。
どきどきしちゃうんだって。
ヘンだよ~っって、言ったんだけど。
そういうのが、好みみたい。
わかってあげようね。
でもあたし・・・のけぞっちゃうから♪
おじさま、キモチよくしてくれるんだもん。
少女はイタズラっぽい笑みを口許に含みながら。
きょうも惜しげもなく、処女の生き血を振る舞ってくれる。

真新しいハイソックスは、ひざ下からちょっぴりずり落ちて、
脛の周り、整然と流れていたリブが、
ふしだらに、ぐねり・・・とねじれている。
おまけにふくらはぎの、肉づきたっぷりなあたりには。
赤黒いものを、べっとりと滲ませていて。
具合悪くなっちゃった。せんせいに診察してもらうわね。
くくっ、と含み笑いを滲ませて。
とんとん、とんとん。せんせい、お留守?
パパの隠れている診察室のドアを、こちらが決まり悪くなるくらい、
芝居っけたっぷりにノックしている。


少女の両親が。娘をほっぽらかして海外旅行に旅立ってから。
オレの日常を支配した女。
シジマ看護婦、と名乗りながら。じつは女の名医で。
院長がむりむたいにオレにおしつけていった病院経営を切り盛りしてくれたとはいえ。
こればっかりは、かりそめにも。がまんならない事実。
オレに血を与える看護婦のローテーションをきちんと組んで、
気になるあの看護婦の熟した血や、学校出たての新米看護婦の初々しい血まであてがってくれたのは、感謝するとして。
それはそれとして・・・やっぱり許せん。
襲ってやる。
たしか、言ったはずだ。
看護婦のローテーションにじぶんを繰り入れないことを、
残念ながら・・・って。

コツコツとヒールの音を足早に響かせて。
女は逃れるようにして、病院をあとにしようとする。
そうは行くものか。
オレは黒マントをひるがえして。
背の低い植え込みの陰を、もぐるようにして。
矢のような速さで、病院の門へと先回りをする。
好都合だ。あたりに人は、だれもいない。
病院の建物をちょっと振り返ってから門を出ようとした女のまえに。
オレはおもむろに、立ちふさがる。
あっ。
あげそうになった声を呑み込んだときの、あの女の面差しは。
いままで毒牙にかけてきた無防備な女どもと、なんら変わるところがない。
さんざん侮辱しおって。このまま立ち去れるとでも、思っていたのか?
さぁ、こちらの植え込みに身を沈めるのだ。
わかっているだろうな?
襲ってやる・・・という意図を。いつも手短に、相手に告げるのだが。
こんかいだけは・・・ちょっと饒舌になっているようだ。
女は無念そうに身をすくめて、歯噛みをして。
厭。いやなんです。
身を揉んで、上目遣いに、訴えるように目線をそそぐ。
いぃや、ダメだ。聞えないよ。
さぁ、おそれおおくもオレ様のご招待だ。
大人しい淑女になるんだな。

女は病院の壁を背にして、悔しそうに、しんそこ、悔しそうに、目をそむけている。
そむけた顔の下。キュッと浮き出た首筋は、なめらかな皮膚に覆われていて。
思いのほかの白さが、オレを誘惑する。
ククク・・・ダメだ。もうそれまでだ。
ずりっとにじり寄ったとき。
だれかがぐい・・・と、手を引いた。
いつの間にか、背後に忍びよっていて。信じられない力だった。
思わずよろけて、ふり向きざまに睨みつけると。
せつじつな目線で睨みあげてくるのは・・・
意外にも、あの少女だった。
うん?
すごく気詰まりな、なま返事。
やめようよ。
少女が切なる声を洩らすまえに。
オレは顔をしかめて、苛立たしくかぶりを振って。
行け。
あごをしゃくって、女を促している。


ご面会ですぅ。
のんびりとした声をかけてきたのは、いつもの接待用美人看護婦。
たっぷりとしたお胸を、たゆんたゆんと揺らしながら、
ついたてで仕切られた応接スペースから、逃れるように立ち去った。
だれだ?
と、覗き込むと。
黒一色のワンピースに身を包んだ来客は、顔がみえないほどに頭を垂れて。
シジマでございます。
うって変わった淑やかさで、ひくい声を響かせた。

なにをしに来た?
別れ際の気まずい記憶から、つい切り口上になったのを。
あの・・・ふつつかですが。わが身をめぐる血を・・・
囁くように洩らした言葉に、オレはのけぞりかかっている。
奥様から、黒がお好きだとうかがったので。
それとも・・・いつもの白のほうが、よかったかしら?
ちょっと疲れたような白い微笑に、われを忘れて。
有無を言わさず手首をつかんで。
引きずるようにして、手近な診察室に連れ込んでいた。

どういう心境の変化だ?
ベッドのうえに、まろばせて。
うなじに牙をおろそうとするとき。
オレは思わず、訊いていた。
謝罪・・・かしら。貴方に血を吸われた看護婦たちへの。それに・・・
いいさした女は、顔をそむけて。
でも、なにもわからなかったことにしていただきたいわ。
謎のような呟きを口にすると。
それっきり、押し黙って。
血を啜り取られるのを、いっしんに受け止めている。

抱きかかえた腕の下。
思いのほか熱く豊かな肢体は、はずむように上下して。
迫った息遣いを伝えてくる。
すすり泣くような。震えを帯びた息遣い。
そんなにオレが、怖いのか?
言いかけたオレは・・・ふとわが舌を、疑った。
なぜ・・・・・・・・・・・・?

わからなかったことに、してくださいな。
女は薄っすらと目を開き、柔らかな声音を洩らした。
瞳をよぎるうるおいが、切実な光をたたえて訴えてくる。
う・・・う・・・。わかった。
どうしてこういうことになったのだ?
問いに対する答えはないだろう、と。オレは話しかける口を閉ざして。
やおら、女の肌に吸いつけた。
蹂躙しか思わなかったそれまでとは、裏腹に。
慕うように。いとおしむように。

ばれちゃったのね?
少女ははにかむように、ドアの向こうから顔を出して、
咎めるけしきがないとみると、オレの隣にちょこっと腰かけている。
ママはね。ほんとのママじゃないの。
わたしのお母さんは、あのシジマさん。
だからわたしがあなたに血をあげているとき。
ずっと控えて、見守っていたの。
シジマさん、独身よ。きれいなのに。あの齢で。
ずっと昔。
吸血鬼に、ごうかんされちゃったんだって。
それが、はじめての経験だったんだって。
だから、セックスも、男のひとも、すっかり厭になっちゃって。
でも、生まれてくる命を、断つことはできないで。
それで、わたしが生まれてきたの。
だからね。おじさま・・・みんなを大切にするんだよ。
死なさないていどに血を吸って、ガマンしているおじさまだから・・・きっと飲み込んでいらっしゃると思うけど。

うん、うん・・・
叱られた少年のように、うなだれて。
オレは少女の幼い声に、聞き入っている。
昔、オレにさいごの血と、なによりも心のよりどころを与えてくれた少年。
頬をよぎる輝きはおなじなのだ・・・と。
オレはむしょうに、いとおしくなって。
いつまでも、いつまでも。
少女の頬を撫でつづけている。


あとがき
過去ログを読んでいて、
そういえば桜草さんは女子校生のみぎり、白のハイソックスだったんだなあと思い出しまして。^^;
それがこのお話の発端・・・かな?^^

いまどきの女

2006年12月29日(Fri) 09:20:50

すこし、ケバい。
好みは清楚で古風な、つやつやとした黒髪の長い女。
ところが向かいの席に座るあの女は、
ケバケバな茶髪に、濃い化粧。
唇にはショッキング・ピンクのテカテカと光る口紅をさして。
いまどきの才媛よろしく、仕事はてきぱきとさばいている。
生足の目立つさいきんの子にしては。
いつもきちんとストッキングを穿いているが、
存在感のない肌色のそれは、どうやら安物らしい・・・と値踏みしてしまう。
たんに事務服の一部と割り切って身に着けるのなら。
破れやすい消耗品に金をかけたくない。
そんな現実的な考え方さえ、伝わってくるようだ。

その日にかぎって。
取引先のあの女も。
べつのフロアのあの女も。
お休みしていたり、出払っていたり。
吸血鬼だという正体を知っているのは、ごく限られた少数のもの。
うかつに本性をさらけだすわけにはいかないのだが・・・
喉が渇いた。
ふと見ると。
こんな時間まで残業している人間は、ごくまれだ。
無理もない。残業代カットだもんな。
四十を過ぎたというのに、いまだうだつのあがらぬ非管理職。
体力を維持するのにふんだんな血液を必要とする体には・・・無理がまったく、きかないのだ。
頼りにならないおやじ社員。
周りの連中の冷たい視線。
ちらちら、ちらちら、盗み見るのは。
こっちが気づかないほど鈍感だとたかをくくっているからだろう。
ふと、向かいを見ると。
あの女はひとり残って、なにやら難しげに書類とにらめっこしている。
周囲をうかがうと。
もう・・・だれも残っているやつはいない。
時計は、十一時をまわっている。

ねぇ・・・
なんども声を、かけようとした。
けれどももちろん、なんども声を飲み込んでいる。
血を吸わせてもらえないか。
そんなこと、言えるわけがないだろう。
ふしだらな感じのする、仕事のできる女と。
冴えない、目だたない、頼りにならないおやじ社員と。
声かけるなんて、百年早すぎる。
やがて女は書類から目を上げると。
あぁ、よかった。一段落。
ホッとした気分が、いつもこわばりがちな頬を、めずらしくバラ色に染めている。
あぁ、もうガマンできない・・・
われ知らず立ち上がったオレを。
女はいつになく、にこやかに見あげる。
食事にでも、誘おうか?
この時間でも・・・繁華な都会のはざまには。
気のきいた店の一軒や二軒、営業しているはず。
けれども。
三十そこそこの美貌のキャリア・ウーマンが(好みには合わないけれど)
四十すぎの冴えないおやじの誘いなど、真にうけるはずがない。
そうしたら。
なんと向こうのほうから、席を立って。
長く連なる座席の列を、ぐるりと遠回りして。
こちらに脚を、運んでくる。
いつもの存在感のない、肌色のストッキングを穿いた脚を。

きれいだ。
そう、感じたのは。
もちろん、飢えていたからだろう。
お食事しませんか~?
どんな男に話しかけるときも。
もちろん、上司に対してすらも。
けっして気取らず、蓮っ葉に。ハスキーで耳ざわりな声で話しかける。
あの声色が、嫌なのだが。
どういうわけか、惹かれてしまった。
ちょうどそうしようかって、思っていたところだけど。
なぜか気おされて、少年のように、口ごもっている。
残業ですか~?あまり無理しないほうがいいですよ~。
無遠慮にこちらの書類をのぞき込んできて。
××次長でしょ?こんなヘンなの振ってくるの。大変ですね・・・
身勝手でいいかげんな言動に悩まされるという経験を共有するものどうしの、同情が。
彫りの深い女の横顔に、ありありと漂っている。

あのさ・・・
生唾を、呑み込んでいた。
気づいたときにはもう、すり寄っていって。
影を重ね合わせていた。
あ・・・ちょっと・・・
女は意外なくらい頼りなく。
オレの腕のなか、華奢な身体を巻かれてゆく。
もう、後戻りはできなかった。

浅黒い肌に、ちくり、と牙を滲ませたとき。
女はもういちど、
ぁ・・・
とうめいたが。
むしろ、声を忍ぶようにして。
そのまま―――
ちゅ・ちゅっ。
バラ色の液体を、吸い出されてしまっている。
うそのように軽い体重を、腕の中にありありと感じながら。
オレはひたすら、女の首筋を吸いつづけている。

ふたたび身体を離したとき。
目だたぬようにつけた傷口を、女はぼんやりと撫でている。
やっぱり、そうだったんだ。
じっと見おろした足首を。
さりげない光沢がよぎっていた。
破って。
女は信じられないことを、口にしている。

おそるおそる吸いつけた唇の下。
安物と思った薄手のナイロンは、思いのほか豊かな気品に彩られていた。

いかん。吸いすぎた。
そう、気づいたときには。
女は白目を剥いて、のけぞっている。
いかん。いかん。
部屋には防犯カメラは、なかったはずだ。
あわてて照明を消し、自分の荷物と彼女のショルダーバックと、
それから、ショルダーバックの持ち主とをいっしょにかかえ込んで。
自由になるわずかな指で照明を消して。
逃げ出すように、オフィスを飛び出していた。

整然とのべられたベッドのうえ。
女は事務服のまま、しずかに横たわっている。
ばか者めが。
このお医者に叱られるのは、いつものことだ。
けれども・・・ここまで来てしまえば、職場で正体がばれるという最悪の事態は回避できる。
そんな安堵に、ひたされていた。
う・・・ぅ・・・ぁ・・・
女がのけぞって、呻き声を洩らす。
話せるようになるには、時間がかかるぞ。
お医者は嘲るように肩をそびやかし、ことさら冷ややかな視線を送ってくる。
責任を、取ることだね。
言い捨てて、スッといなくなった。
夜は繁昌する、魔人あいての古びた医院。
新来の患者に、オレにばかりはかまけていられないらしい。

はっとした。
つい、まどろんでしまった。
もう・・・明け方ちかくに、なっただろうか。
女が薄っすらと目を見開いて。
オレのほうに視線を送ってくる。
別人のようにおだやかな、夢見るような視線。
ごめんね。
ふふっ・・・と笑んだ頬は、いつもの武装を解いていた。

あんまり、見つめないでくださいな。
化粧も落ちているし・・・そんな美人じゃないでしょ?
わたし・・・化粧で持っているような顔だから。
あいかわらず蓮っ葉なかすれ声に、淋しい翳をよぎらせて。
女はよどみなく、声をついでゆく。
まるでずるずると、なにもかもを胸の奥から引きずり出すように。
ただでさえ、身体弱いし。
頭だって、そんなによくないし。三流の私大だから。
気が強すぎて、かわいくないし。
わたしのいないときなんて・・・どうせ悪口のむしろでしょう?
耳のないところに耳をもつ種族。
感度のよさは、けっして本人を救うことがない。
出て行ってくれる?弱いところ、見られたくないから。
女は向こうを向いて、うつ伏してしまった。

出て行こうか?
席を立ちかけたとき。
細かく震える肩が、なにかを語っていた。
いいようのない、逃れようもない。
おおいがたいほどの寂しさを―――
オレはオフィスでそうしたように、
夢中になって、女の肩にすがりついていた。

もぅ・・・
女はかわいくなく、口を尖らしていたけれど。
決して、嫌なそぶりは示さない。
ストッキング・フェチでしょ。やらしいわね。
破けたストッキングの片足を見おろして。もういちど。
もう・・・っ。
不平そうに、鼻を鳴らす。
いいよ。もう破けちゃったんだし。
好きなようにして。
投げ出された脚は、近すぎず遠すぎないあたりに横たえられていて、
気づかないほどかすかな光沢を、なまめかしく滲ませている。

ちりり・・・
圧しつけた唇の下。
女のストッキングは、他愛なく破けていった。
繊細な皮膜に走る不自然なほつれに、軽い昂ぶりを覚えて。
きゅうっ。ごく・・・ごくん・・・
静かに、ゆっくりと。
吸い出した血潮は、いがいなくらいの熱を秘めている。
抱いて・・・
囁かれるまでもない。
病院のベッドのうえ。
オレは事務服のスカートをたくし上げていく。
ひとつになった身体は、せつない火照りをもって。いがいなくらいの強さですがりついてきた。


あとがき
職場でおっかながられている、あの派手なOLさんは。
ほんとうに気が強いだけの人なのかな・・・?
いちどは、疑ってみる価値がありそうです。

穢された礼装

2006年12月28日(Thu) 12:00:00

白のブラウスを、しどけなくはだけさせ。
漆黒のスカートを、太ももまでたくし上げて。
黒のストッキングに、じわりと艶を滲ませて。
礼装の気品に、ふしだらな色を重ねてゆく。
夫を弔う・・・と称しながら。
ふくらはぎを蒼白く浮き上がらせた薄墨色の沓下は。
たとえようもないほど、なまめかしく。
情夫の網膜を彩ってゆく。
そう。もっと・・・辱めて。
女は恥ずかしい願いを、ためらいもなく口にしている。
そう。あのひとのまえで。
貴方が血を吸ったあのひとも・・・いまごろはもう、蘇えっているんですね?
血を吸われたものがふたたび起き上がる。
女はそれと知りながら。
夫の仇敵に、身を任せていった。
あぁ・・・
畳に伸べられた黒い彩りの脚が。
キュッと立て膝をしたとき。
ふすまの向こうから注がれる、ねっとりと熱い視線の持ち主は。
テーブルの写真立てにおさまった己じしんと向かい合わせになって。
妻が心地よげに、辱めに身を浸してゆくありさまを見守っている。


あとがき
己の血をあまさず吸い取った吸血鬼が、こんどは妻の血をも嘉しようとしている。
蘇えった夫は、妖しい愉悦に酔いながら。
破倫の新床を見守っている。

襲われる母娘

2006年12月28日(Thu) 07:53:10

あの・・・どうか。お許しを・・・
恐怖に頬を引きつらせているのは。四十代の母親。
地味な柄のスーツに身を固めた立ち姿は、気品にあふれていて。
どこか良い家の奥さんなのだろう。
取り囲んでいるのは、母親よりもはるかに若い女たち。
とりどりに、妖しい翳を滲ませて。
血が欲しいの。
狙った女ふたりを追い詰めると。
ごく率直に、意図を告げている。

あの、そんな・・・
だいじょうぶ、死なないように、キモチよくしてあげるからっ。
みちると名乗る女は、いとも無邪気な色をうかべて。
それでもいちばんに、迫ってくる。
華代は、若い子がお気に召したらしい。
母親似の目鼻立ちを舌、十代の少女に、ひたすら迫ってゆく。
白のハイソックス。わたしもよく履いたわよ。学校かよっていたときに。
うっとりと思いに耽るように。
まず少女の脚に牙を忍ばせてゆく。
怯えのあまり、声もだせないまま。
少女は血を吸い取られてゆく。
ひっ・・・
身をすくめた母親に、影を重ねていったのは、歌枝子。
お許しくださいね。
いつもの控えめな口調に、どす黒いものを滲ませて。
女のうなじに、唇を這わせる。
飢えている・・・
初体験の女にも、ありありとわかるほど。
はぜる血潮を呑み込む勢いに、くらくら力を喪ってゆく。
裕美が肌色のストッキングの脚にとりついて、おもうさまいたぶりはじめているのは・・・もういうまでもない。
若い子。いいわ・・・
尻もちをついた娘のうなじを吸っているのは、みちる。
さっきから白のハイソックスをくしゃくしゃにたるませながら脚をいたぶっている華代と競うようにして。
はじけるほどに若い、少女の血潮を。仲良く分け合っている。

夜の草むらのなか。
きゅうきゅう。ちゅちゅ・・・っ。
美味しそうな吸血の音が、いつまでもいつまでも、
静かになってだらりと横たわる、哀れな母娘におおいかぶさっていた。


あとがき
前作みたいに良い橋渡し役がいないと。
妖花たちもコワさを発揮するようです。

よってたかって♪ ~連作・四人の妖花たち

2006年12月28日(Thu) 07:44:57

うふっ♪ 美味しい。美味しいわっ。
あっ、ダメよ。裕美ったら。こんないい血を独り占めしちゃ♪
だって~。ひさしぶりなんだもの。処女の生・き・血♪
四人の妖花が、ウキウキと。
まるで花の周りを飛び交う蜜蜂みたいになって。
ひとりの少女を取り囲んで。
めいっぱい、おめかしした服を見せびらかすように。
淫らな舞いを、演じている。

えっ?えっ?
お姉さまたち、吸血鬼なのっ?
円のまん中にいる少女は、怯えのあまり両手で口をふさいでいて。
かろうじて、悲鳴をこらえている
だって・・・きれいなお化粧のしかた、教えてくれるって言うから。
まぁ。うぶなのね。そんな嘘を、信じたの?
いつも控えめな歌枝子まで。
謡うように、あやすように、少女を言葉でいたぶってゆく。

そんな・・・そんな・・・
血を吸われたら、死んじゃうっ。
いいえ。あなた。安心して。
そうかんたんに、死なせないわ。
せっかくものにした処女の血なんですもの。
ひと思いに吸い取るには、もったいないから。
怜悧な華代は、ほっそりとした指で思いきり、少女の肩を抑えつけて。
ひめやかな美声を、耳の奥まで注ぎ込んでいる。

素敵でしょう?お姉さまたち。
フフッ・・・と笑う裕美。
どお?わざわざあなたのために、おしゃれしてきたのよ♪
どこまでもあけっぴろげで、明るいみちる。
妖花たちは、舞うように。
少女の周りをぐるぐると。
かがみ込み、背伸びして。
あちらこちらと、咬みついてゆく。

あっ。いやっ。ああっ。ひっ・・・
ちいさな悲鳴があがるたび。
きゃっきゃとはしゃぐ、女たち。
さー、足伸ばしてごらん。黒のストッキング、いたぶってあげる~
裕美は少女の足許にしゃがみこんで、
お目あての通学用の黒ストッキングのうえから、
たっぷりとしたふくらはぎに指を這わせる

よかったわね~。裕美ったら、ストッキングの専門家なのよ~。
あくまでからかいの口をゆるめない、みちる。
そうねぇ。お姉さんたちもみぃんな。裕美お姉さんに破ってもらったのよ♪
ハデに破いてもらおうね。
華代も、歌枝子も、嬉しそうに頬を輝かせて。
少女の頬から、散った涙を舐め取っている。

ぬるり・・・と、少女の足許に。ピンク色の舌が這わされたとき。
お母さま。
円の中心にいた少女が、ふりあおぐ。
あら、あら。
少女とよく似た面差しをした新来の女。
落ち着いた物腰に、楚々とした足どり。
お姉さまたちに、かわいがっていただいているのね?
そうじゃないの。ふみかの血を、吸おうとしていらっしゃるの。
お母さんの応えは、少女の期待を正反対に裏切って。
あらあら。まぁまぁ。・・・よかったわねぇ。
あなた、処女なんでしょう?自慢してよろしいのよ。たっぷりと吸っていただきなさい。
さすがの妖花たちも。
新来の女には、一目置いているらしい。
さっきまでなれなれしく少女にすり寄っていたとき、崩した相好をあらためて。
ふぞろいに、頭を垂れて。
お世話になっていますわ。いつもいつも。
と、うって変わった礼儀正しさをみせてゆく。

あら。いいのよ。娘の血、お気に召したかしら?
スーツのすそから差し出された脚には、濃紺のストッキング。
まぁ・・・
きれい。
ストッキング・フェチな裕美ならずとも。
オトナの脚線美に、視線が集まる。
ふみかさん。お手本を見せてあげるわ。
こんなふうに、破っていただくのよ。
とりつくろったものをかなぐり捨ててすかさず飛びついたのは、やっぱり裕美♪
いただきまぁ~す。
と、言わんばかりに。
濃紺のストッキングに、早くもふしだらなねじれをつけてゆく。
まぁ。まぁ。お行儀のわるい。
口では軽く、裕美を咎めながらも。
己の脚に唾液をしみ込まされるのを。
ふみかの母は、とめようとしない。

ぶち・・・ちっ。
他愛なく裂けたストッキングを見せびらかすように。
ほら。
差し出された母親の脚を目の当たりに。
少女も覚悟を、きめたらしい。
あの・・・どうぞ。
通学用の黒ストッキングの脚を、おずおずと。
ストッキング好きなお姉さんのほうへと、差し伸べてゆく。
エモノがふたりに、なったわね♪
華代が嬉しそうに、呟くと。
四つの影は、ふたりの女に、思い思いにのしかかってゆく。


あとがき
しばらくごぶさただった、裕美・みちる・華代・歌枝子の女吸血鬼四人組。
暮れのご挨拶にと、まかり越したようです。^^

脚とりどり

2006年12月28日(Thu) 07:12:43

あら。そんな・・・
肌色のストッキングを履いたお母さんの脚に、飢えた唇が吸いついた。
貼りついた唇に、すかさず、キュウッ・・・と力がこめられる。
不自然なよじれをみせるのは。
齢不相応な艶を滲ませた、薄いナイロン。
ヒルのように密着した唇の下。
ちりちりとたあいなく、破けてゆく。
あっ。
喉の奥から洩れる呻きが、妖しい随喜をはらんでいる。
ぶちぶちっ。
しなやかなナイロンは、たあいなく。
スカートの奥にまで裂け目を走らせてしまう。

さぁて・・・と。
お母さんが白目をむいて伸びてしまうと。
濡れた唇に、手をやって。
なかなかいい味のおみ脚だね。
きっとわたしのために・・・わざとてかてかに脚を彩ってくれたのだね。
紅いものの撥ねた指で、満足そうに己のあごをなぞっている。
うん・・・?
吸血鬼の振り返るさきには、思いつめたような顔つきをした、OL風の若い女。
母は疲れています。あとはわたくしが・・・
差し伸べられたふくらはぎは、薄いグレーのストッキングになまめかしくつつまれている。
うふふ・・・ククッ・・・
満足そうな含み笑いが、そのまま女の足許に吸いつけられる。
母親の脚よりも、いちだんとなめらかなうるおいを帯びた皮膚。
さらりとコーティングした薄手のナイロンが、いっそうのなめまかしさを添えているのを。
まだ母親の血をあやしたままの唇が、いたぶるようになぞってゆく。
わざと女に見えるように。
これ見よがしに牙をむき出して。
噛みついていた。
きゃっ。
ちいさな叫び。
肩にかかる黒髪の、優雅なウェーブがふらりと揺れた。
きゅうっ・・・。
娘もまた、母親そっくりにずるずる姿勢を崩していって。
その場に、尻もちつくように、へたり込んでしまった。

うぅ。まだ足りない。足りないぞ。
母娘ふた色の血を、口許に散らしながら。
吸血鬼はなおも女の影を求めつづける。
そうだ。下にもうひとり、娘がいたはずだ。
捜し求めるまでもなかった。
隣室のふすま越しにハッと身をすくめる、女学生姿。
おぉ。見つけた。見つけたぞ・・・
蝙蝠のような黒い影を踊りあがらせて。
飢えた魔人は、怯える少女の肩に抱きついた。

あっ、やだ!
やだ、やだ・・・やだッ!
身を揉んで抗う少女の耳もとに口を寄せて。
さぁ、大人しくしてごらん。
お母さんも、お姉さんも、あのとおり・・・
きみだけのがれるなんて、ひどいよね。
これ以上、ふたりの血がなくならないように・・・わたしも願っているのだから。
逃げたらふたりはよけいに血を失くするのだぞ、と。
やんわりと、脅しをかけて・・・うぶに抗う少女を黙らせる。
よしよし。いい子だ。痛がらずに、すむように。
柔肌に淫らな毒液を、たっぷりとしみ込ませてあげようね。
わたし色に、染まるがよい・・・

セーラー服のすき間から、肩先に牙を忍ばせて。
ぐいいいいっ、と、食いついた。
きゃあっ。
ひと声、少女は絶句すると。
力をなくしてくたくたと、その場にへたり込んでしまった。
姉さんとおなじに、崩れるように。

う・ふ・ふ・ふ。
悪戯な笑いは、まだ消えない。
もうろうとなった少女を、姉の隣に腰かけさせると。
うふふ・・・ふふ・・・
黒のストッキングをこれ見よがしに。ふくらはぎの周りでいたぶりはじめる。
たっぷりとしたお肉だね。発育の良い脚だ。
秘めている血も、美味かろうね。
いたぶるように。いとおしむように。
唇はいやらしく、初々しい足許をなぞってゆく。

ああっ・・・やだ・・・っ。
両手で口を覆って、恥じらう少女。
初々しい恥じらいに、なおも嗜虐の気分を掻きたてる男。
うふふふ・・・ふふっ。
くすぐったそうな笑いをうかべて、濃紺のプリーツスカートをたくし上げて。
太ももの周りまで、黒のストッキングをよじらせてゆく。
やだ・・・やだわっ。
少女は相変わらず両手で口許を覆って・・・
それでも目線がすこし・・・妖しさを滲ませてくる。
だ・・・め・・・っ。
とうとう白目になって、背もたれに身を任せてしまうのと。
薄手のストッキングにぶちちっ・・・と、裂け目が走るのと。
どちらが先、だっただろう。
光沢ひとつない地味な通学用の靴下が。
にわかに艶を帯びたように見えるのは。
きっと、気のせい・・・なのだろう。


あとがき
母娘三人ながら、衝動的に襲ってしまう吸血鬼。
うらやましい?^^

吸血ごっこ 2

2006年12月27日(Wed) 23:17:04

ねぇ、してみない?吸血ごっこ。
誘いかけてきたのは、友達のサクオくん。
母さんも、いっしょにどう?
なにもかも、感づいているの?
ボクがきみの母さんを狙ってきた、ってことも。
さきに襲われるのは、ボクね♪
サクオくんは無邪気そうに笑いながら。
ここを噛むんだよ。
って。じぶんのほうからうなじをあらわにしていった。

かりり・・・
つやつやと生硬な、少年の肌。
女の子みたいに白い肌から滲む血は、ひどくあざやかなバラ色をしていて。
ボクはつい夢中になって、
キュウキュウと音を洩らして、吸い続けてしまった。
ア・・・うぅん。
サクオくんはボクの腕のなか、白目を剥いて気絶する。
あらあら。気絶するまねがうまいのね。
なにもかも、知っているくせに。
お母さんはイタズラっぽく、息子の額を小指で突いた。
後ろで束ねていた髪の毛を、いつの間にかほどいていて、
お嬢さんみたいに、背中にゆるやかに流している。

え?いいの?ほんとう・・・?
きゃあ~っ。
お母さんはお芝居よろしく、両手をちいさくあげて、狭い部屋のなかを逃げ回る。
ボクはお尻を追いかけていって、
部屋のすみに、追い詰めて。
さいごは本気で逃げようとしたお母さんを、まんまとつかまえてしまった。
ごめんね。
耳もとでそっと、呟くと。
かすかに頷くのが、わかった。
サクオくんとちがって、噛んだ首筋はしなしなと柔らかくって。
ほとび出る血は、どきりとするほどなまめかしかった。
う・・・う・・・んっ。
ひと声洩らして。それでも、お行儀よく。
手足をそろえて、うつ伏せに倒れた。
丈の短いワンピースから。
肌色のストッキングの脚を、まるでみせびらかすようにして。

うふふ・・・ふふふ・・・
お行儀わるく笑み崩れた唇を、
サクオのママの足許に、すりつける。
ふふ・・・ふふふふっ・・・
しなしなとねぶりまわした薄手のストッキングは、
みるみるねじれて、ゆがんでいって。
ぴったり吸いついていたふくらはぎの周りを、じりじりとよじれていく。
うふふふふっ。
やっぱりイタズラは、愉しい。
あ~あ、とうとう。破っ・ちゃっ・た♪

おぉい、美奈子。
遠くから聞えるのは、サクオくんのお父さんの声。
けれどもなにが起こっているのか気がつくと。
ボクを咎めるはずの声を、ぴたりと黙らせて。
わかっているんだ。じいっと窺っているの。
お母さんのうえに馬乗りになって、丈の短いワンピースのすそを、たくし上げていって。
そそりたってきたものを、隠すように、ワンピースのなか、スリップの奥へと忍び込ませてゆく。
サクオくんも傍らで、にこにこしながら。
お父さんは、物影で、息を詰めながら。
ボクがしているあいだ。
お母さんが困ったように身をすくめているのを、愉しそうに見守っている。


あとがき
だいぶまえに描いたのは、年端もいかない少年吸血鬼に、お姉さんと弟が巻かれてしまう風景でした。
日常の延長にひそむ妖しい世界。お愉しみいただけますでしょうか?^^

吸いたいんだろ?母さんの血を・・・

2006年12月27日(Wed) 23:15:39

ミナオくんは、数少ない打ち解けた遊び相手。
きょうも一人ぼっちだったボクを家に招んでくれて。
しばらくは愉しそうに時をすごしていたけれど。
おもむろに、ボクの顔をじいっと見つめて。
すこしのあいだ、はずそうか?母さんの血を、吸いたいんだろ?
声がほんのすこし、震えていた。
ごめんね・・・
小さな声でそう呟いてしまった、情けないボク。
断ってくれる。かれはすこしくらい、そんな反応を期待したはず。
けれどもボクの喉ははぜるように、じんじんとした渇きを訴えつづけていた。

入れ替わりに現れたミナオくんのお母さんは、
こぎれいな花柄もようのワンピースを着ていて、
しっとりとお辞儀をしてくる。
ボクがどういうやつなのか。なにをしにきたのか。
ぜんぶわかって、いるくせに。

すり寄って、背伸びをして。
お母さんの首筋に抱きつこうとしたとき。
それと察したお母さんは、優しくほほ笑んで。
ソファに腰をおろしてくれて。
ボクを隣に、招き寄せて。
自分のほうからボクを抱きしめるようにして。
うなじにドキドキと飢えた唇を、すりつけてくれていた。

ごくん、ごくん・・・
喉を鳴らして、むさぼるうちに。
お母さんは少しずつ、姿勢を崩していって。
やがてくたりと、力なく。
じゅうたんのうえ、まろび臥している。
床に伸べられた、肌色のストッキングを履いたふくよかな脚。
じんじんと疼く唇を、うえからなすりつけていって。
じわりとにじんだよだれが、ツッ・・・と糸を引いていた。
さらり、さらり、と撫でていくうちに。
引き込まれるように、牙を埋めていって。
ぶちぶちっ。
唇の下。柔らかなストッキングが、たあいなく破けていた。

さっきからずっと、気が付いている。
座を外したはずのひとの、密かな息遣い。
さいしょはすすり泣くように、痛々しかったのが。
ボクが夢中になるにつれて、妖しい昂ぶりを帯びてきて。
いつかおなじ波長の震えを秘めている。

また、破かれてしまいました・・・

2006年12月27日(Wed) 23:13:51

また、破かれてしまいました・・・
婚約者の由貴子さんはちょっぴり迷惑そうに、ほほ笑んで。
つま先をさし伸ばす
グレーのストッキングの足許は、よほど熱っぽくあしらわれたのだろう。
皮膚を覆おう薄っすらとした艶に、かすかな裂け目を滲ませている。
いただくときはおもうさま・・・それが淑女に対する礼儀なのだよ。
もっともらしく囁く彼。
どんな顔つきで、わたしの由貴子さんに迫っていったのだろう。
ジン、と湧いた感情を察したものか。
まるで、逆撫でするように。
愉しいひとときでしたわ。あなたのいないところで・・・
ほんのり秘めた薄笑い。
憐れみでもなく、まして嘲りではなく。
白い頬に輝いているのは。あきらかな媚態。
いつされてしまうのかしら・・・
気遣わしげな横顔には、いままでになかった艶を滲ませていた。

真夜中の囁き

2006年12月27日(Wed) 23:13:06

チリリリリリ・・・
夜更け、時ならぬ携帯の呼び出し音に。
ベッドから跳ね起きる。
表示されたナンバーは、妻のもの。
「わたしだ」
耳に響いてくるのは、かれの声。
単身赴任のわたしになり代わり、妻を従属させてしまったひと。

あぁ、今夜も・・・来ていただいているのですね?
さびしい妻を慰めるために。
わざわざ時間をつくって、来ていただいている。
わたしたち三人のあいだでの、暗黙の了解事項。
来ていただいている。妻を犯していただくために。
ひそかにめぐる血潮が、マゾヒスティックな彩りに輝きを帯びはじめる。

すぐに電話を代わった妻。
ごめんなさい。さびしくって・・・
いいんだよ。たっぷりと、可愛がっていただきなさい。
すみません。
いま、家なの?
エエ、息子も娘も、知っているわ。知っていながら、もの音ひとつ立てないで・・・聞き入っているのよ。
ふふ・・・
口許から洩れる笑みは、罪深いほどに愉しげだ。

しばらく、聞いていたまえ。きみの奥さんを狂わせるところを。
ふたたび代わったあのひとは、そういいさすと。
すぐに、傍らの妻に襲いかかったらしい。
ゆさ、ゆさ、ゆさ、とベッドの揺れる気配。
ひっ・・・
ひと声。挿入を強いられたのだろう。
息を呑むような呻きが、じゅうぶんにわたしまでも狂わせる。
あぁ・・・あうっ・・・うぅん・・・っ
すすり泣くような、むせび泣くような。
ナマナマしい、夜の呻き。
じじつ、妻は泣いているのだろう。
こんなに愛されて、嬉しいの。
こんなに聞いていただけて、小気味良いの。
こんなにあなたと隔たって、寂しいの・・・

すきま風の入り込みかけた、どこにでもある夫婦の情景。
まさか人を介することで・・・喪われかけたぬくもりが戻ってくるとは。
なん百キロも隔てられた、受話器の向こう側。
確かな絆が、息づきはじめている。
淫らな音色を、帯びながら・・・

とどまるところを・・・

2006年12月27日(Wed) 08:17:50

もぅ、とどまるところを知りません。(苦笑)
じつはあとふたつほど、描いてしまったのですが。
あっぷをひかえます。
ぜひ読んでもらいたいお話が、ずんずん埋もれていってしまいそうで。
朝と夜と、このごろあっぷが一日二回になっているような・・・
夕べ書いたのを朝に。朝書いたのを夜に。
そんな感じでアップするほどに、あとからあとからヘンな妄想が・・・
われながら、怖いです。(笑)
今夜あたり。もういちど覗いてみてくださいね。^^

このところあっぷしたもので、比較的読んでもらいたいお話です。
お急ぎのかたは、こちらをクリックしてね。
全部読んでくれると、なお嬉しいですが。^^

「古宿の夜」
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-716.html
さびれたホテルにやってきた二組の夫婦が過ごした、妖しの一夜。

「若返る女」
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-715.html
さいごの一行が、どんでん返しなのですが。
ちょっと切ない系のお話です。

「えっ?キミ・・・どこから入ってきたの?」
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-714.html
独りぼっちの青年のところに、いきなり舞い込んできた少女の正体は?

「妻のストッキングを穿く男」
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-712.html
妻を寝取った男がスラックスの下に秘めていたのは・・・すこしコア。

すぐ下にあるからいちいち書かないですが、「妖しの淑女」「寝ずの番」も気に入りです♪
・・・って、ほとんど全部じゃん。(笑)
ではでは♪

少女の手管

2006年12月27日(Wed) 06:32:39

男のひとを、魅了する。
そんなこと、あたしにできるわけがない。
十代の半ばをほんの少し、こえただけの年頃で。
まして、世間知らずのおぼこ娘。
きらきらとしたおめかしよりも。
紺の制服がよく似合っている。
初々しさというよりも。まだきっとあたし・・・稚ないのだ。

けれども夜ごと忍んでくるあのひとは。
きちんとした礼装に身を包んでいて。
淑女かお姫様を扱うように。
ほんのりと、優しげな笑みをたたえて。
深夜の舞踏会、ワルツを申し込むように。
両腕をこちらへと、伸ばしてくる。
そう、逃げられないように。

どうして?どうして?
そんなひどいこと、するんですか?
あたしの若い身体を抑えつけ、身動きできないくらい抱きしめて。
肌に牙を立てて、血を吸い取るだなんて。
ごく・・・ごく・・・ごく・・・
聞こえよがしな音までたてて。
さいしょのうちは。
失血にぼうっとなりながら、音を聞いているだけでも怖かった。
それがいまでは。
ご自分の力を、誇示しているのね?
わざと怖がるように、家じゅうを逃げ回らせて。
息を潜めて隠れているあたしを、とっくに居所を突き止めているくせに。
わざと足音を響かせて、近づいてくる。
そうして、つかまえられて・・・
あぁ、やめて!
目をそむけようとしているのに。
顎をつかまえて、無理やりぐいいっ・・・と、ご自分のほうを向かせて。
お嬢さん、いただくよ。
礼儀正しいつもりなの?
牙をがくりと、食いいれてくる。

ちぅちぅ・・・ちぅちぅ・・・
ばかにしたような音をたてて。今夜も吸い取られてゆく、あたしの血。
パパも、ママも、あのひとの味方。
え?吸血鬼?なに言っているのよ。
でも、あたしは知っている。
ふたりの首筋に、目だたないほどにつけられた痕。
あたしもおなじ痕を外気にさらして、いつものように学校に通っている。

そんなに、美味しいの?
魅かれるように、唇を慕わせて。
ひたすら、血を啜り取ってゆくあなた。
忘我の刻。
そんな勝手なことをいって。
制服姿を、もてあそぶようにかき抱いてゆく。
わたしにとっていちばんの礼装を、辱めるようにして。
あ・・・ダメ・・・
長いスカートほど、たくし上げられるときの恥ずかしさが身に沁みる。
それでも、たくし上げて、脚を見せることを強いられて。
あらわにした太ももは、いつも学校に履いて行く黒のストッキングに包まれている。
あのひとの目を、素肌からすこしでもへだてようとしていたのに。
薄く透ける白い肌に、かえって魅かれるようにして。
あのひとはおくめんもなく、私の脚をいたぶり、辱め尽くしてゆく。
なんて、ひどい・・・
心のなかで、抗議しながらも。
あたしもいつか、脚をお行儀わるく崩していって。
追いかけてくる唇に、ゆだねてしまっている。
しっとり吸いつくような薄いストッキングも。
しなやかにぴったり貼りつく黒タイツも。
どれもが、あのひとの好物。
手管・・・なんて知らないけれど。
きょうもあのひとを欲情させる制服に身を包み、夜更けを待ち焦がれているあたし。


あとがき
恋する人が、欲情するのなら。
かれの欲求に饗するために、制服さえも与える少女♪

寝ずの番

2006年12月27日(Wed) 06:32:11

誰かが夜、訪れている。
寝静まった、わが家の寝室を。
そうして、家族のひとりずつを・・・
寄り添うように、影を重ねていって。
無慈悲な牙を、皮膚ににじませて。
冷酷なほど、たっぷりと。
肌の下をめぐる暖かい血潮を啜り取っている。

妻も。息子も。そして、娘も・・・
みな、気づいていないのか?
うなじに、ふたつ。綺麗に並んだ黒いあざ。
夜の来訪者が残していった、これ見よがしな痕跡。
顔はふだんよりちょっぴり蒼ざめていて。
それでもどこかウキウキと、嬉しそうに声が上ずっている。
夕べの余韻を、やどすように・・・
けれどもみないちように、かぶりを振って。
吸血鬼?まさか・・・お父さんの思い過ごしですよ。
申し合わせたように、おなじことを口にする。

ごとり・・・ごとり・・・
今夜も廊下の向こうから。
異形のものが足音を忍ばせる。
迫りくる影の妖しさを。どれほど訴えても。
体内をめぐる血液を喪うことが、どれほど危険であるかと囁いても。
家族のだれもが、耳を貸さない。
さぁ、お父さん。きっと、疲れているんですよ。もう寝みましょう。
わたしだけを早く、寝巻きに着替えさせて。
ほとんど押しやるようにして、ひとり寝室に閉じ込めてしまう。
いけませんよ。これから始まる宴を、邪魔したりしては。
そう、言わんばかりにして。

寝ないで・・・待つんだ。
そしてやつの正体を、あばいてやるのだ。
家族の生き血を吸われて・・・一家の長が黙っているわけにはいかない。
閉ざされた闇のなか。
目を凝らし、耳をそばだてて。
妖しの影の来訪を、見逃すまい、聞き逃すまいとして。
けれどもすべては、無駄な努力。
寝酒に、眠り薬でも仕込まれているのか。
そう思えるほどに、心地よい眠りに・・・今夜もあえなく屈服してゆく。

あら。お早いのですね。
朝日が斜めに差し込む彼方から。
豊かな黒髪を両肩に流し、清らかな笑みをたたえているのは。
息子の婚約者である美津恵さん。
齢は二十をすこし、過ぎただろうか。
年頃のお嬢さんというのはそういうものなのか、
透き通る肌は日に日にうるおいを増していて。
会うごとに、さわやかな色気を含むようだ。
お見えになっていたのですか?
えぇ・・・
ちょっと俯いたうなじのあたりが目に入って。
ぎくりとした。
彼女も、痕を持っている・・・

お許しを戴きたいのですが。
息子は行儀よく、態度を改めて。
美津恵さん、今夜は泊まっていきたい・・・というのです。
おや。向こうのご両親は、よろしいのかな?
えぇ、了解を戴きました。
あ、もちろん。不埒な下心は、なしですよ。
息子はおどけたように、くすっと笑う。
花嫁を処女のまま迎え入れたい。
昔から、そんなことを言うほどに。
大人になっても、純なものをこめている息子だが。
今夜もはやく、寝んでくださいよ。
美津恵さんに、ヘンなことを聞かせたくありませんからね。
こういときだけは、説教口調にかわっている。
いいのか?おまえの未来の花嫁まで、処女の生き血を啜られてしまうのだぞ・・・?

今夜こそ、寝るまい。今夜こそ・・・
息子の美津恵さんが、泊まっているのだ。
それも、いつの間にかあんな痕を滲ませて。
やつは息子の嫁にまで、毒牙を伸ばしていたのだ。
今夜こそ、化けの皮をはいでやる。
一家を、守るのだ・・・
うとうとと頭を上下させながら。
ガウンを着たまま、椅子のうえ・・・とうとうこらえがたく、眠りに落ちてしまっていた。

我に返って、見回すと。
あたりはいちめんの、闇。
だれが電気を消したのだろう?
塗りつぶしたような、見通しのなさに。
無重力状態におちたような頼りなさを覚える。
喉がからからに、渇いていた。
水・・・とおもい、たちあがる。
いや・・・思い直したのは、なぜだろう?
足を向けたのは、台所とは正反対の、家族の寝室。

むしょうに、ふらふらとしている。制御がまるで、きかなかった。
すこし、飲みすぎたのだろうか?
眩暈が頭の半分をおおい、手探りの闇はいよいよ深い。
目のまえに薄っすら白く浮ぶものがあった。
白いものは、ゆるやかに息づいていた。
ベッドのうえ、優雅に身を横たえているのは。
まっ白に透けるネグリジェに縁どられた、女の胸元。
それと気づくまでに、時を要した。
頭が、くらくらする。喉も・・・からからだ。
あぁ・・・
横たわる白い影に、救われたように、すり寄っていって。
いつか、影を重ねている。
解いた黒髪を、かきのけて。
細い両肩を、つかまえて。
逃げられないように、固定する。
息づく皮膚が昂ぶるように、ひときわその身をのけぞらせたとき。
我を忘れて、唇を添わせていった。
柔らかな皮膚を破る感覚が、どきどきするほど心地よくて。
あふれ出るジューシィなほとびを、夢中になって口にしていた。
それこそ、年頃のお嬢さんのまえでは恥ずかしいほど行儀悪く、
ごくごくと、喉を鳴らして。

お気づきになってしまったのですね?
傍らにひかえているのは、息子。
だいじょうぶ。この家の人間はみな、お父さんの身内ですから。
どちらが父?どちらが子供?
そんな錯覚をおぼえるほどに、息子は落ち着き払っていて。
親愛なる吸血鬼殿に、あらためてお引き合わせしましょう。
ボクの未来の花嫁です。
純潔な血は、お口に合いますでしょう?
いつもながらの、女の子のように優しい口調が。いつになく、心に沁みる。
脚も、見てやって下さい。お父さんのために彼女、わざわざきれいに透けるやつを脚に通してくれたのですよ。
むぞうさに剥いだ寝具から、豊かな肢体をあらわにしていった。

いがいなくらいの肉づきに。はしたなくもごくり・・・と生唾を呑み込んでいた。
息子はくすくす笑いながらわたしのそうした所作を窺っていて。
さ・・・どうぞ。彼女も、先方のご両親も、心得ていますから。
生硬な肌に、うわぐすりのようにいきわたったうるおいを。
じかに、唇に感じながら。彼女の若さを味わっていた。
太ももの周り、オブラアトのように包む薄手のナイロンを、ぱりぱりと裂き散らしてしまうほど。
ボクのときは、意識がなかったようですね。
揶揄する息子の足許で。男にしては薄すぎる靴下が、縦にあざやかに伝線していた。

だいじょうぶ。つぎは母さんかな?それとも、さおりの番かな?
少しずつなら、身体にさわらないから・・・って。
ふたりとも嬉しそうに、お父さんの訪れを待っているのですよ。
ベッドに横たわっていた眠れる美女は。
長い髪をさらりと流して、優雅な会釈を、ゆったりとかえしてきて。
夢見るようにうっとりとして。
柔らかい指でゆるやかに、うなじのあたりを撫でている。


あとがき
守ろうとしていたはずが。かばわれていた。
そんな御経験、ありませんか・・・? ^^

妖しの淑女

2006年12月27日(Wed) 06:31:26

女もののストッキングを履いていると、優しい気分になる。
吸いつくようにぴったりと寄り添ってくるしなやかな感触が、皮膚にしみ込むほどに滲んできて。
包みこまれた肌の下をめぐる血潮も、より暖かくなるようなかんじがする。
夜さえも・・・
眠りが浅くならないの?
ふしぎそうに、言われるのに。
むしろ脚に通しているときのほうが・・・安らかな眠りが訪れるのだ。

ホホ・・・
あざ笑うような上目遣いで、そんなボクを窺うのは。
姫君のように淑やかで、エレガントな女。(ひと)
透きとおるほどの乳色の肌に、つやつやとした長い黒髪がなまめかしく映えるそのひとは、
白い衣裳が、よく似合っている。
そして彼女は・・・闇のなかにしかあらわれることがない。

また・・・穿いていらっしゃるのですね?女の子の靴下を。
揶揄するような鋭い視線が、ねっとりと包み込むようにして。
いけないボクを、とりこにする。
ほんとうに、いけないひとだこと。お仕置きですよ。
女のひとは、媚びるほどの優しい睨みを含ませて。
今夜も冷酷に、ボクに影を重ねてくる。
血に飢えているの・・・よく、おわかりですよね?
薄っすらと上品な口許から、おもむろにむき出されたのは。
冷酷に輝く、鋭利な牙。
夜な夜な、暖かい血を求めてさまようきみは・・・そうしてしばしの刻をともにする。

うふふ・・・ふふ・・・
揶揄するような、含み笑い。
決して好意からのものではない。
人の生き血を口に含み、心ゆくまで喉をうるおすためのもの。
そうと知りながら。薄っすらとした笑みにつり込まれるようにして。
薄墨色に装った脚を・・・今夜もじぶんのほうから、差し伸べてしまう。

いけないひと。
忍びやかな、囁きに。冷酷な笑みを、滲ませて。
きみは足首をギュッとつかまえると。
もう、動けませんよ。
ちょっぴり気の毒そうに、上目遣いでほほ笑んでくる。
どうぞ・・・
ボクは、囁き返している。
血が欲しいんでしょう?
さぁ、気の済むまで吸っていって。
きみに訪れる夜は・・・やさしい夜ばかりじゃないだろうから。
いいの?ほんとうに・・・そんなにわたしのことを信じたりして。
わたし、その気になったら・・・死んでしまうかもしれないのよ。あなた。
きっと、それはほんとうなのだろう。
キュッ・・・と吸いつくきみの唇は。
眩暈がするほど、しつようで。
惹きつけるような引力を、もっている。
魂もろとも、引き抜いていってしまうほど。

いいんだよ。でも、もうすこし生かしてね。
やりたいことが、残っているのだから。
幸せね。あなた。
え?
だって・・・
やりたいことが、あるのでしょう?
皆、希望なんかこれっぽっちも持ち合わせないひとばかりなのに。
薄手のナイロンのストッキングごし。
甘えるようにすりつけてくる唇は、いつかぬくもりを滲ませていて。
さっきまでのゾッとするほどの冷たさは、影をひそめている。
気持ちいいわね。あなたのストッキング脚。
わたくしが、うかがうときは。
かならず、脚に通すように心がけてくださいね・・・

団らんの裏舞台

2006年12月26日(Tue) 23:17:38

笑いさざめくのは、母や妻、そして娘に息子。息子の許婚。
いずれも若い衣裳に身を彩って。
息子は男のくせに、姉さんのスカートを身につけていた。
やがて新たな娘になろうとしている年頃の少女は、
恋人の異装などは気にも留めずに、華やぐ会話に笑いこけている。

お食事に、お茶。そして、お酒・・・
妻は入れ替わり立ち代わりの饗応のたび。
台所に足を運ぶのだが。
時にはなかなか、戻ってこない。
どうしたの?問うものも、いないほど。
それは日常のなかに入り込んだ闇。

闇は妻を、ひと思いに飲み込んで。
くんずほぐれつ・・・交わす息遣いは、熱っぽい。
ひとしきり、交わりを遂げて。
戻ってくる時。妻はほろ苦い笑みで後ろを振り返る。
うなじに軽く、手を添えて。
指についた紅いものの由来を、だれも尋ねようとはしない。

入れ替わり、立ち代わり。
女たちはさりげなく、かわるがわる座を外して。
隣室の闇に、吸い込まれてゆく。
ちゅっ・・・
なにかの物音が洩れてきても。
たれもが聞えないふりをして、会話に興じている。
夜も更けた・・・というのに。

うなじを抑える女が、またひとり。
息子は紅いものを宿した恋人の指を、そのまま口にくわえ、
チュッ・・・と吸うと。
スカートのすそを軽々とさばいて、引き込まれるようにして。
闇の奥へと消えてゆく。

母も、そして娘までも。
おなじ血よね?
なぞをかけるような、意味深の目交ぜにすべてを隠している。
そろそろ・・・寝みましょうね。
誰いうともなく、客間をあとにするものの。
寝巻きに着替えるものは、誰もいない。
(どなたのところに、真っ先にしのんでくるかしら)
無言のやり取りに、クスクスと含み笑いを忍ばせながら。
フェミニンな装いのまま、各々の寝室へと散ってゆく。


あとがき
う~ん・・・うまく描けないものです。^^;
過去ログを見ていたら。
「順ぐりに」(2月21日付)に寄せられた桜草さまのコメが目に入りました。
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-628.html
>血を吸われたものがまた別のものの血を吸って
というお話と。
>ひとりの吸血鬼がある家族をひとりずつ、血を吸って
というお話と。
どちらが・・・?というわたしからの質問に。
>一人の吸血鬼に家族が・・・
というお応えを頂戴しました。^^
いつか描いてやろうと思いつつ・・・構想を暖めていたつもりなのですが。 (^_^;)
次回に期待しましょう。(苦笑)

奥様とお嬢様のあいだ

2006年12月26日(Tue) 22:37:19

肩まで波打った、長い黒髪。
黒のロングドレスが、舞うように。
男の腕のなか、淫らな旋舞(ロンド)をくり返す。
毒々しい真っ赤な口紅。
起伏の豊かな胸。
身体の線をくっきり惹きたてる、ぴっちりとした衣裳。
引きあげたドレスのすそからのぞくのは、黒光りしたストッキング。
娼婦そのもの。そう見えた。

けれども男のなかに息づくのは。
初々しく昂ぶる、かつての記憶。
純度たかく、研ぎ澄まされていたのは。
口に含んだ強い酒ばかりではない。
女は闇のなか、魂を蒼白く輝かせて。
今宵をかぎりと乱れ舞う。
夜更けるほど、激しく息遣う熱情に。
旋舞はふたりを、溶けるほどまぐわせる。

女学校の制服を、脱ぎ捨てて、
楚々とした沓下から、脚を引き抜いて。
少女は女に、なりかわる。
わたし、世間知らずなのよ。まだ、汚れを知らないのよ。
感じて・・・若さ。初々しさ。
王女のように、わたしを愛して。
うわ言のように、囁きながら。
しなやかな細身の腕は、強靭なツタとなって。
逃がさない・・・無言の意思で、男の背中にからみつく。
令嬢と、熟妻と。
フラッシュバックする、過去と現在(いま)
男が真に抱きしめるのは、どちら・・・?


あとがき
衝動的に・・・わかったようなわかんないような文句を連ねてしまいました。(^_^;)

凌辱ツアー

2006年12月26日(Tue) 22:21:33

村はずれの納屋に並んだ、男ばかりの行列は
みないちように、眼を血走らせ、じぶんの番がくるのを待っている。
奥から聞えてくるのは、愉悦を秘めた女の嬌声。
声があがるたび、行列は跳ね上がるように反応し、
早くしろ、あとがつかえている。
野卑なざわめきに包まれる。
納屋は三軒、並んでいて。
どの納屋でも、おなじ儀式が繰り返される。
行列のまえ、縛りつけられているのは。
声の主の、夫たち。
全裸に剥かれた股間は、ひどくそそりたっていて。
あからさまな揶揄に顔をそむけていても。
揶揄すらが、快感につながっているのだと。
全身で吐露してしまっている。
嘲りをうける夫たちが、しんからの屈辱にまみれないのは。
夕べ飲み干した毒酒の酔いがとまらないのと。
それ以上に、妻を犯すために並んでいる男たちの、
いつわりのない羨望と賞賛のまなざしのせいだった。
妻たちは、いやがっていない。
酒宴のさなか、都会ふうのワンピースを引き剥かれた女たちは、
じぶんたちの不運を快楽にかえていた。
のしかかってくるのは、逞しくて汗臭い、およそ都会の洗練とは似合わない男たち。
男、よりも獣、にちかい連中に蹂躙され、踏みにじられて。
それでも嬌声はいっそうの悩ましさを帯びて、夫たちをすら悩乱させる。
たいした魔法を使えるのだな。
村のおさは、夫たちに敬意を表して、
一週間、滞在するが良い。そのあいだ、村の女たちはお前らの自由にして良い。
生娘も、人妻も。だれひとり、自由にならない女はいない。
男としてのパラダイスをつきつけられて。
妻の貞操をむさぼり尽くされることを、夫たちもしぶしぶながら同意していた。

一日ふつかは、女という女に酔い痴れていたけれど、
やはり気になるのは、支配を受けている妻たちのこと。
だれ誘い合わせるともなく、集まったのは納屋のまえ。
やっぱり・・・な。
村のおさは満足そうに呟くと。
妻や娘を穢された村の男衆を呼び集め、
みせしめだ。縛りつけて・・・その目のまえで、女房どもを辱めてやれ。
ウフフ・・・ふふ・・・
迫るほうも。そして、迫られるほうも。凌辱をしのぶはずの女どもでさえ。
口辺に浮ぶ妖しい笑みをこらえきれなくなっていた。

破れたワンピースを身にまとい、裂けたストッキングをずり落ちさせて。
女たちは夫のまえ、なおも己の貞淑振りを発揮する。
感じてなんかおりませんわと、腰を振り、呻き声をたてながら。
太陽の照りつける、真昼間の草っ原で。
いい眺めだ。たかぶるよ。
体面を保つための縛めは、すでにとかれていたけれど。
夫たちは妻たちを、不埒で逞しい腕どものなかから救い出そうとはしなかった。
妻たちも、あらいやよ、御覧にならないで、
きゃあきゃあとはしゃぎながら、
ふだんは接することのない獣じみた逞しさに、わが身をゆだねきってゆく。
このままのスタイルで、帰りたいわあ。
さすがにそれは・・・と。
村のおさは・・・夫たちに着替えを取りに戻るため都会の家まで戻るようにと、命じていた。

古宿の夜

2006年12月26日(Tue) 22:20:49

せつ子は、気乗りがしなかった。
男たちはいったい、なにを考えているのだろう?
逢ってくるよ。サダオと彼の奥さんに。
お目当てはもちろん、奥さんのほう。
彼がね・・・抱かせてくれるっていうんだ。
それだけじゃ、きみも納得してくれないだろう?
若いころよく行った、あのホテル。
いまでも昔のままなんだ。
四人でそこに泊まって・・・相手をかえる。
プレイだと、割り切って。
きみにもきっと、愉しんでもらえるから。

もともと遊び人だった夫。
けれども結婚してからは、浮気らしい浮気ひとつするそぶりもなく。
一見平和な結婚生活がもう、七年もつづいていた。
そぶりを見せていなかっただけ?
口をついて出そうな詰問を、かろうじて呑み込んだのは。
もうすっかり、夫のペースができあがっていたから。
万事控えめで、皆の視線を浴びるくらいの美貌すら、重荷になって。
いつもおずおずと、ひとの背中に隠れていた独身のころ。
そんなせつ子に目をつけた彼は、
素早くすり寄って、その夜のうちにベッドに引き込んだ。
あのときのパワーを、いまふたたび・・・惜しげもなく発散させている。

サダオの奥さんとは、初対面だった。
せつ子とは違って色の浅黒い、
巻き毛にしたロングヘアと、エキゾチックな二重まぶたの持ち主だった。
ちょっとさえない顔色を、
毎晩寝不足なんです。
って、快活な笑いにまぎれさせていた。
それほどの夫婦仲を、ひと刻の衝動に痺れさせてしまうの?
せつ子の疑問はつのったけれど。
ハルエって呼んでね。
したの名前で呼び合うようになったからか、
往きの車の中で隣り合わせた女同士は、すぐに打ち解けていた。

ホテルはたしかに、結婚前夫とよく来たときそのままだった。
近くに新しいホテルができましてね。
見覚えのないホテルのクロークが苦笑いするほどに。
ロビーはがらんとしていて、泊り客はこの二組の夫婦だけのようだった。
なかで、お料理もできるのよ。
初めてここに来た、というハルエ。
どうしてそんなに、知っているの・・・?
問い直すのは、おろかであろう。
これから過ごすことになる、偽りの夜を思えば。
そのていどの嘘は・・・気にならなかった。

シャワーを浴びて、着替えると。
ベッドのうえ、せつ子はひざ小僧をかかえてうずくまる。
さらりとしたワンピースが軽やかに包む体は、
夫以外に抱かれたことのない体。
ほんとうに、犯されちゃうの?
あのひとは、平気なのね?こういうことも。
でもやっぱり、わたしは平気ではいられない。
お母さん・・・わたし達がしようとしていること・・・間違っているよね?

ふと、気が付くと。
夫の気配はない。
隣に部屋を取ったハルエ夫婦の気配も消えている。
やだ・・・もうこんな時間。
時計は九時をまわっていた。
お食事もまだなのに・・・
スリッパをぺたぺたと慣らして、ドアまできて。
思い直して、家から履いてきたパンプスに履き替える。
つま先を包むのは、黒のストッキング。
女のたしなみと思って、結婚してからもかかしたことのない装い。
けれども、いつもの肌色はなんとなく気がひけて。
すこし、違う女になってしまおう。
初めて手にしたブランドの高価なストッキングは、
見慣れぬほど・・・妖しいまでの色つやを放っていた。

あなた?ハルエさん?・・・サダオさんっ?
信じられないことに。
隣の部屋も、がらんどうだった。
駆け抜けた廊下は、照明を落としていて薄暗かった。
まえはもっと、きらびやかだったはず。
なじみのホテルは、今やいかにもうらぶれた古宿になっている。
ホテルぜんたいが、まるで無人と化したように。
がらん、としていた。
せつ子はなぜか、ぞうっ・・・となった。
どうしましたか?
先刻のクロ-クが歩み寄ってきたときも。
ドキドキ高鳴る心臓は、とまることがない。

えぇ、連れの姿が見あたらないので・・・
さすがにはしたない・・・と、息を整えて事情を訴えると。
それは・・・ご心配でしょうね。
クロークは、あたりを窺うように左右に視線を投げると、
どうぞ、こちらへ。
せつ子を促していた。
思い当たることがある・・・そんなそぶりに引かれるように、
せつ子は洗い髪をたなびかせ、あとをついてゆく。

意外にも。
たどり着いたのは、もといた部屋。
照明はいつのまにか暗めに落とされていて。
奥のほうは、まったくの闇。
そらぞらしいほどの明るさに、穢されることになる白い肌をさらしていたときとは。
まるで別の部屋のようだった。

いらっしゃい。
虚ろな声で迎えてくれたのは、サダオだった。
ガウンの下、
今夜じぶんを抱くはずの、逞しい胸をはだけていて、
なめしたように光る肌の生々しさから、とっさに目をそむけてしまった。
いつもとようすが、すこし違う。
浅黒い頬は、さっきまでとは別人のように青ざめて、
声はふらふらと、おぼつかない。
どうかなさったんですか?
さすがに気遣わしく声をかけると。
せつ子・・・?
背後からしたのは、夫の声。
はだけたワイシャツまとったまま。
スマートな体を安楽椅子にだらりとなげている。
ハルエのストッキングだよ。似合うだろう?
見せびらかした脚を、濃紺のストッキングがしなやかに包んでいた。
女ものを、穿くなんて・・・
非難の目を注いだつもりが。
なまめかしく装われた夫の脚に、いつか目線が釘づけになっていた。
主人にも・・・あなたのストッキングをいただけないかしら?
気配もみせずに傍らにたったのは、ハルエ。
薄明かりに浮ぶ彫りの深い目鼻立ちが、ひどくミステリアスだ。
あぁ・・・そうね。気がつかなかったわ・・・
異常なことを、言ってる。
気がつきながらも、手の動きは家から持ってきたボストンバックに伸びていた。

はい、これ・・・
いちど脚にとおしたもののほうが、いいですよね?
ありがとう。
王女様の衣裳をおしいただく侍女のように。
ハルエは透明な靴下を受け取った。
手のあいだからさらりと垂れ下がったつま先が、ひらひらと虚空を舞う。
さぁ、あなたも履いて・・・
妻から受け取ったストッキングを、黙々と脚にとおしてゆくサダオ。
つま先をさぐり、足首をくぐらせて。
ぐぐ・・・っと、脛まで引っぱり上げた。
すこし、小さいかしら?
気遣いは無用だった。
グーンと伸びた肌色のナイロンは、どこまでも伸びていって。
女の脚と見まごうばかりに、毛の浅い小麦色をしたふくらはぎを、なまめかしく染めていた。
わたしを占有されてしまった。
そんな錯覚が胸をざわつかせる。
なぜ・・・?たかが靴下一枚のことなのに。

ふと気がつくと。
じぶんをここに連れ戻ったあのクロークが、まだ部屋に居残っている。
見られてはならないいちぶしじゅうを見られていた・・・
ひどく、決まり悪い思いがした。
まだはずしていなかったなんて・・・ちょっと失礼なひと。
かすかな不快感を押し隠して、お礼を告げた。
もう、ここから立ち去るように、と、さりげなく。
せつ子の意図を裏切って、彼は頑なにかぶりを振った。
冷ややかな笑みを、はっきりと含みながら。

え?
三人をふりかえると。
みないちように、照れたような顔をして。
うなじのあたりを、掻いている。
ガウンやワイシャツ、それにブラウスの襟首には。
かすかな飛沫が、散っていた。
・・・っ!
息を呑んだその時に。
男はまず、サダオに近づいてゆく。
サダオは王侯貴族のように、優雅に脚をさらしていって。
せつ子のストッキングの上から、男の接吻を受けている。
男はサダオの脚をおしいただいて、舐めるように唇を這わせてゆく。
ぬるっ、と吸いつく唇が、ヒルのようにナマナマしい。
ぞくっ・・・とした。
まるでせつ子じしんが、脚に唇を這わされたみたいに。
淡い脛毛を帯びたサダオのふくらはぎの周りを、薄手のストッキングがなよなよとねじれてゆく。
見てしまった。
接吻のあと。くっきりとついた黒い痣が・・・薄手のナイロンの裂け目からはっきりと覗くのを。

つぎは、夫の番。
濃艶な紺のストッキングに包まれた脚は、ぬるりとした光沢をよぎらせて。
蛇のようにしなやかに、男のほうへと伸べられてゆく。
サダオのときとおなじように。男は夫の脚をおしいただいて。
薄手のナイロンの舌触りを愉しむように。心地よげに、すり寄せてゆく。
びちち・・・っ
かすかな音とともに、ひきつれひとつなかった薄手のナイロンは、縦に裂け目を滲ませる。

ハルエが吸われたのは、首筋だった。
ぁ・・・
かすかなうめきに、濃い媚態を滲ませて。
ちぅちぅちぅちぅ・・・
なにかを吸い上げてゆくリズミカルな音をともに、彼女はひざを崩していった。
そして、かれは向き直る。
まだすませていないのは・・・あなただけだね。

逃げることも、できないで。
硬直したように立ち尽くしていると。
男はスッと音もなくすり寄ってきて。
せつ子の両肩を抱きすくめて。
うなじのつけ根に、唇をあててきた。
ゾッとするほど冷たい唇が。ヒルのようにぴったりと密着した。
きゅうっ。
軟体動物のように薄気味悪い唇から、尖った異物がのぞき、
異物が皮膚に突き刺さる。
ちくっ・・・
かすかな痛みがかすめたとき。
あぁ・・・
傍らの夫が、切なげなうめきを洩らしていた。
夢でも見るように、ウットリと。
妻に加えられる吸血を、ただ見とれてしまっている。

体内にある血液のすべてを、引き抜かれるかと思った。
それくらい、強烈な吸い方だった。
ふらり、と姿勢を崩して、
夫の腰かけていたすぐかたわらのソファに腰を落とす。
わかっているね?
冷ややかな笑みは、まだ消えていない。
どうぞ・・・
差し出したのは、黒の靴下を穿いた脚。
まるで、化粧をしているようだね。
男は冷ややかに紳士的な挙措をくずさずに。
さりげなく女の脚に触れ、
薄手のナイロンごしにさらりと撫でつけて。
女がゾクゾクとするほど、たくみに肌をさすりあげていた。

ちくり・・・と、くすぐったいほどのかすかな痛みが忍び込んだとき。
女はもう、夫とおなじくらい。
夢見るようにウットリとなってしまっている。
夫のまえ、ワンピースを引き裂かれて。のしかかってくる男を。
ころころと笑いこけながら、受け入れてしまっている。

凌辱の嵐だった。
夫は、ハルエに。
サダオは、せつ子に。
さながら獣のように接してくる。
股間にしたたる精液は、だれのもの?
あのクロークも、入れ替わり立ち代り、ふたりの人妻を苛んでゆく。
いくらさいなまれても、虐げられても。
辱め抜かれても・・・
こみ上げてくる愉悦は、とまらない。
ワナにはめられた。
誰もがそう、認めながらも。
やめることは、できないよね?・・・いつもとおなじ朝にたどり着くまでは。
乱れ尽くしてしまおうよ。別人になりはてて、
暗黙の了解が、四人のあいだをめぐっている。
となりでかれに抱きつかれ、血を抜かれてゆく夫。
上には、サダオ。
サダオの妻は、夫に凌辱されようとするせつ子を助けようともせずに。
つけられたうなじの傷を撫でながら。
にやにやとして、股間を抉られてゆく女友だちを見守っていた。


あとがき
もしかするとこのホテル。
すでにとっくに、廃業していたのかもしれません。
迷い込んだのは、本当のホテルではなく。ホテルの廃墟。
そう・・・かの「浅茅が宿」のように。

スワッピングを愉しむカップルを吸血鬼がエジキにするとき。
あなたなら・・・どんなストーリーを思い描きますか?
互いの妄想に、感応するほどの響きを得られたら。
もうひとつ・・・語ってみたいプロットです。

若返る女

2006年12月26日(Tue) 22:19:17

あっ、と思った。
わたし、若返るからね。
寝しなに妻は、確かにそう告げた。
けれども。
カーテン越しに朝の光線が、夫婦の寝室にさしたとき。
傍らにいたのは、まぎれもない妻。
それも十代に若返った・・・

長い髪を、さらりと肩に流して。
若いころ着ていた真っ赤なワンピースをまとって。
リビングにおりてゆく君。
息子はびっくりして、あいた口がふさがらなかった。

若い子の相手をするのは、とても愉しい。
妻は、少女の服がよく似合う、ぴちぴちとした十代の体。
初々しい肌に唇をあてていると、まるでわたしまでもが若返りそうだ。
けれども妻は、わたしの腕の中、
くすっ・・・とイタズラっぽく笑って。
わたし、若いのよ。あなただけじゃ、もの足りないのよ。
このごろあの子が、わたしのことを見ているの。
口にしたのは、息子の名前だった。

ママ。もうガマンできないよ・・・
わたしがいない夜。とうとう後ろから母親に抱きついてしまっていた。

仕方がないね。三人で仲良くやるさ。
頭に白いものの混じるわたしが妻に尽くしつづけることは、むりだった。
まだしも・・・見ず知らずの他人に犯されるよりははるかにまし・・・そういいきかせて。
ぴちぴちと若い妻の肢体を、息子が部屋に迎え取るのを。
なぜかドキドキしながら、見守っていた。

外で聞いていても、いいのよ。
妻は挑発するように。
ベッドの傍ら、囁きかける。
けれどももう、わたしは年老いた体。
たぶんもう、長くはないよ。
そうね・・・
妻はうんとさびしそうに、若々しいじぶんの肢体を眺め回した。
永遠(とわ)のわかれをつげたとき。
わたしの魂はまだしばらくのあいだ。
家の周りを漂っていた。
わたしを弔ったあと。
妻はすぐに喪服を脱いで。
真っ赤なドレスに着替えて。
息子の部屋を訪れる。
ドレスの裾を、しどけなく引きあげる。
黒のストッキングを留めたガーターがみえるほど。

ずっといっしょに、いようね。
あなたなら・・・いつまでもいっしょに、いてくれるわね。
さびしい妻の願望は。
きっとこんども、かなえられない。
だってきみは・・・わたしのママだったひとだから。


あとがき
いく度も若返り、永遠に生きつづける妻。
不思議な、そして哀しいお話です・・・

えっ?キミ・・・どこから入ってきたの?

2006年12月26日(Tue) 01:09:50

えっ?キミ・・・どこから入ってきたの?
びっくり仰天してはね起きたのは。
自分独りなはずの、下宿部屋。
たまの週末。誰もかれもが彼女を連れて、野に山に、街なかへと繰り出しているころ。
ぶきっちょで、彼女ひとりできないボクは。
下宿のアパートの畳のうえ、
ひとり仰向けになって、うたたねしていたのだが。
傍らに感じた人の気配に目を覚ますと、その子はボクをじいっと見おろしていた。
はっきりとした輪郭の、透きとおるような瞳。
さらりと長く垂らした黒髪が、白地に赤のチェック柄のワンピースによく映えている。
どこかで、会った・・・?
思わず口をついて出た言葉に、少女はちょっとびっくりしていたけれど。
もうっ。こんな真っ昼間からうたた寝なんかして!
歯がゆそうにプッと頬をふくらませる。
起きるのよ。面倒見てあげるから。
面倒・・・?なんのこと。って思っていたら。
細くて長くて白い腕がヌッと伸びてきて、思いのほかつよい力でボクのことを引き寄せる。
気がつくと。
温かい唇が、ボクの唇を覆っていた。
これが、キスというものか。
少女の呼気がぬくもりをつたえてきて。
乾ききった体のすみずみまでも、うるおいがいきわたってくるようだ。

こんな服が気に入りなのねぇ。
少女が見つめるのは、見開きのまま投げ出された成人雑誌。
メイド服を着た女の子が、黒のニーソックスを履いた太ももをあらわに、M字開脚をしている。
あわてて隠そうとしたけれど。
少女はボクの手の届かないほうへと本をさしあげて。
こういうのがいいんだ。ふーん。ふーん。
あわてるボクを、愉しむみたいに、これ見よがしに本に見入っている。
でも・・・お行儀悪いわよねぇ。この子・・・

つぎの日。
朝起きると台所でトントンと音がする。
ガスコンロのうえ、ごとごとと煮えているのはみそ汁らしい。
いい匂いが、ぷんと鼻を突いた。
お野菜、だめになりかけてたよ。なにをやっても、ほんとにダメねぇ。
少女はまるでお母さんみたいな口ぶりで。
白いエプロン。黒のコスチューム。
あの雑誌から抜け出たような、メイド姿で立ち働いている。

はいっ。朝ご飯。
ふたり差し向かいで、食事をして。
こんな朝食・・・もう何年も記憶がなかった。
一体どうして、こんなことしてくれるの?
思わず、訊いてしまった。
あんまりあなたが寝ぼけているからよ。
かわいくない応えに、グッと詰まってしまったけれど。
後片付けも、そこそこに。
黒のニーソックスの脚を、ぬるりとからめてきて。
イタズラ、したいんでしょ?
誘うような上目遣いに。
薄手の靴下から透ける肌に。
あっけなく、理性をなくしていた。
お行儀悪いのは、嫌。
とうとうM字開脚はしてくれなかったけど。
ボクはじゅうぶん、満足だった。

そうやって、一週間も経ったころ。
頼みがあるんだけど。
シチューをコトコト煮立てている後ろから、ボクはおずおずと声をかける。
きみ、いきなり現れたけど。
いきなり消えるのは、なしにしてくれない?
さいしょの日から、そうだった。
気がつくと。じゃあね・・・って。
言ったか言わないかというほどに、ひそめた声を、ひとこと残して。
スッと消えて、いなくなってしまう。
明日は、来てくれるんだろうか。まさか、これっきりなのだろうか。
心配で、たまらなくなってしまう。
少女は、くるりと振り向いて。
さいしょにボクのことを見つめた、透きとおった瞳をして。
ずっと、いっしょにいてあげる。あなたにちゃんとした彼女ができるまで。
キリッとした頬は、にわかに大人の理性をみせている。
この子とは、どこかで会ったことがある。まちがいなく。
確信が深まった。手がかりも、心当たりもないままに。

幻なのだ。彼女は。
それもひとつの、確信だった。
いつも、前触れもなく現れて。
いつも、着てもらいたい服を着て。
いつも、してもらいたいことを、やってくれる。ボクがなにも言わなくっても。
消えてしまわないで。
そんなふうに願うだけでは、彼女は消えてしまう。
それもひとつの、確信だった。
どうすればいいのかは、まだわかっていなかったけど。
いつ来ても、寝ているんだね。
少女はきょうも、いきなり現れて。
さも小ばかにしたように、こっちを窺ってくる。
だって、彼女もできなかったしさ。
ぷすっと呟くボクは、つぎの瞬間。ユサユサと力いっぱい、少女に揺さぶられていた。
しっかりなさいよっ。もうっ。そんなことだから、いつまでたっても彼女ができないのよ。
振り返った彼女の目線の彼方には、積み上げられた専門書の山。
中断してしまった努力の記憶が、にわかによみがえってきた。
その日から。少女は二度と、ボクのまえに現われなくなった。

五年が経った。
里帰りするのは、八年ぶりだった。
実家に顔向けできるようになるのに、それだけ時間がかかったということだ。
八年まえ。
いっこくものの父とは、大喧嘩をして。
叩きだされるようにして、家を飛び出していた。
最難関の資格試験を、みごと突破して。
しかるべきポストと、未来の花嫁を連れて。
鮮やかな、大逆転勝利。
これ以上の凱旋は、考えられなかった。
白髪の増えた父は、性分も身体つきも、あのときよりもずっと丸くなっていて。
それがちょっぴり、さびしく感じた。
母さんも、喜んでいるだろ。
早くに亡くなった母の仏壇には、写真ひとつ飾られていない。
見るのがね。辛かったのさ。
珍しく弱音を洩らしたのも、年のせいなのか。
いやたぶん。長いことずっと・・・
あの倣岸な怒り顔の下に、むりに押し隠していただけなのだろう。
二十年ぶりだね。顔を見るのは。
目を細める父は。
別人みたいな優しい視線を、古びた写真のうえに注いでいる。
見せて。
記憶の限りでは、初めて見る母の写真。
驚きのあまりかろうじて声を呑み込んだボクに、父はちょっとけげんそうだった。
セピア色のなか、小首をかしげてイタズラっぽく笑っていたのは。
まごうことなく、あの子だった。
いまの子は、お行儀悪いのね。
そういうことだったのか・・・
滲んだ涙を、せいいっぱいの笑みに押し隠して。
ボクは人知れず、呟いている。
だいじょうぶ。連れてきた子は、よくできた子だよ。
母さんにも、自慢できるくらいに・・・ね。


あとがき
時のへだたりがなかったとして。
若いころの母親と青年となった息子とは、惹かれあうことはあるのでしょうか・・・

試験の前夜

2006年12月26日(Tue) 01:08:12

入学試験の、まえの晩だった。
時ならぬ昂ぶりに、眠れなくなったのは。
都会に出てきてのホテル宿泊という環境の変化がおおきかったせいだろう。
明日は、試験。
それなのに。
眠れない。眠れないよ。
気がついたときには泣きながら、隣の部屋をノックしていた。
ママが独りで寝んでいるはずの部屋。
なかから明かりがついたとき。
ホッとしたのを、憶えている。
どうしたのよ?
あからさまに咎める視線がチクチクと身体を刺すのさえ心地よかった。
ママは寝乱れた髪の毛に、白地に黒の水玉模様のワンピース。
匂いたつような色気が、まだ子供のボクにすら伝わってきた。

いつもと違うママ。
おととい新幹線に乗って、都会に一歩足を踏み入れてから。
ママは変わった。
目に映じたのは、ひとりの女。
埃っぽいアスファルトの上。
ハイヒールの音を高らかに響かせて、背すじをキリッとさせて闊歩する姿は。
眩しいほどの、オトナな女。
ませているって?仕方ないでしょう?ママの子なんだから。

深夜のホテル。
ママは困ったような顔をして、部屋の奥を振り返る。
そこには見知らぬ男のひとがいた。
逞しい筋肉に覆われた胸には、ネックレスをさげていた。
あぁ、困ったわね。
ママはその場を取り繕うようにその男のひととボクとを見比べると。
困った子ね。いらっしゃい。
そういうと。
男のひとを置いたまま、ボクの手を引っぱるようにして、部屋に戻らされた。
さっきから。
恥ずかしい場所が、ぴんと逆立っている。
ママの寝室で、男のひとを見てからだった。
気づかれませんように・・・って、思う間もなく。すぐに気づかれちゃっていた。
困った子ね。
ママはもういちど、呟くと。
ズボンを下ろしなさい。恥ずかしがらなくてもいいの。男の子なら、あたりまえのことなんだから。
あ・・・
止めることは、できなかった。
寝巻きのズボンをひきおろされると、冷たい空気がよぎっていた。
ママはボクのまえ、ひざを突きながら。
目をそむけようとするボクをまともに見あげて、叱るような声だった。
しずかにしていて。ママが眠れるようにしてあげる。見なくてもいいのよ。
え?
問い返すまでもなく。
そそり立っていたものが、ぬるりと生温かいものにくるまれる。
え・・・っ?
ぬるり・・・ぬるり・・・
口に含んでいるんだ。
ボクはけんめいに、ママから目をそむけつづけた。
にゅるっ。
わざと刺激するみたいに。
ママの舌が、口のなかにあるボクをしごいた。
びゅっ!
なにかがはじけるように、飛び散って。
ひざから力の抜けたボクは、へなへなとその場にへたり込んでいた。

さっきのことは、忘れなさい。もともとなにもなかったわ。
ママは寝乱れた巻き毛をひるがえすようにして、ボクの寝室から出ていった。
ベッドに戻ると・・・溶けるような眠りがボクを待ち受けていた。

試験に合格すると、ボクは親類の小父さんの家に預けられた。
なに不自由ない暮らしをしていることは、大きな邸を見ただけで分かった。
広々としたゲートには、外車。裏手には、プール。
奥まった部屋には、背高のっぽな本棚が、いばったように置かれている。
一人で暮らすつもりで、がんばるのよ。
小父さま、忙しいから。あなたのことばかり構ってはいられないの。
それに、まだ独身なの。四十を過ぎているのに。
でもお料理も上手だし、お洗濯とお食事くらいは面倒見てくれるっていうのよ。
引き合わされた小父さんは・・・
スマートに着こなした柄もののシャツの下、ネックレスをひらめかせていた。
そう。あの晩ママの部屋に来ていた人だった。
いつも家内が、お世話になります。
一緒にきたパパは、きちんとおじぎをして、小父さんと握手をしている。
ギュッと握り合った手と手が、言葉を交わし合っているみたいだった。
仲がいいんだ。このふたり。
いつもむっつりしているパパが、珍しくにこにこと上機嫌だ。
なにも知らないはずのパパ。
でもほんとうに、知らないんだろうか?
あとで気がついたけど。
息子がお世話になります
じゃなくって。
家内が、って言っていた。
なにも憶えていませんよ。もともとなにもないわけだし。
三人して・・・声にならない声を交し合っている。
なんとなくそう感じたのは・・・きっと錯覚に違いない。

妻のストッキングを穿く男

2006年12月26日(Tue) 01:07:36

恵理子さんを連れてきなさい。
キミ自身は、ズボンの下に恵理子さんがいつも脚に通している黒のストッキングを履いてくるように。
彼からそんなメールを受け取ったのは。
単身赴任一ヵ月後のこと。
連休を利用して帰京して。
さっそく彼に逢いたいと、送ったメールの返事だった。
妻と、顔を見合わせる。
いつもしていることじゃないの。
妻は平然と、箪笥の引き出しから黒のストッキングを一足。
いつも手渡されるのは、封の切っていない新しいものだったが。
いちどだけ、脚を通したものです。そのほうがあのかた、お喜びになるわ。
すべてが、「あのかた」を中心に回り始めようとしている。
夫婦連れだって訪れたわたしたちを、彼は客間に迎え入れた。
奥さんは、留守らしい。
彼によると・・・割り切った遊びをしている・・・ということだったが。
どこまで信じてよいのかは、例によって謎だった。
信じて良いのは・・・妻への礼遇。
エモノを彼のまえに置き去りにしたというのに。
いまだに妻は、貞淑を保っている。
彼女がまだ、その気になっていない。
それを唯一の、理由にして。

ふふ・・・
独特の、くすぐったそうな含み笑い。
じわりと注がれる視線が、わたしの足許に注がれる。
言いつけを守ってくれたようだね。
ズボンのすそからのぞいたわたしの足首は・・・妻のストッキングに彩られ、
薄墨色に染めあげられている。
「言いつけ」。
すでにわたしたちは、彼の支配下におかれはじめてしまったようだ。
ズボンを、引きあげて御覧。
かれはさらりと、次なる「言いつけ」を口にする。
えっ?
顔を見合わせた妻は。
きつくしっとりとした、不思議な目線を送ってくる。
あぁ・・・そうだね。
よく見てもらわなくちゃ。
心のなかの呟きを、行動に移して。
そろり・・・と。
グレーのスラックスをひざ下まで、引きあげる。
ほほぅ・・・
彼は感心したように黒ストッキングに染まったわたしの脚を見つめ、
引き込まれるように、そろそろと足許にかがみ込んでくる。

薄手のナイロンのさらりとした感触のうえから、手の指が、掌が、触れてくる。
ざらっぽい手触りに、いささかの昂ぶりを覚えつつ。
わたしはつい、彼のおもうまま。
妻のストッキングに包んだふくらはぎを、まさぐりにゆだねた。
女の脚と、区別がつかないくらいだね。
目を細め、足許に目線を落としつづける彼。
つっ・・・と。唇を近寄せてきて。
ふくらはぎを、吸われていた。妻のストッキングのうえから。
ぬるり・・・と這わされる唇を。
妻も、じいっと見つめている。
ぬるり・・・ぬるり・・・
くまなく、しつように。
時には舌を、使いながら。
わたしの脛のうえ、凌辱どうぜんのあしらいを受けながら。妻のストッキングがくしゃくしゃになってゆく。
あぁ・・・
巧みな舌遣いだった。
男のわたしが、感じてしまうほどに。
そんなふたりを、妻はさいごまで。じいっと、見つめつづけていた。
ズボンのすそをたくし上げたわたしのとなり、
妻はお行儀よく脚をそろえ、両手を重ねてひざの上に置いて。
ひと言も口にしないで。
つづいて舌を這わせようとする彼の唇に、肌色のストッキングの脚をそのままゆだねていった。
夫婦並んで。妻のストッキングで覆った脛に、唾液をねばりつけられて。
ささやかな恥辱に、妻もわたしもまたいちだん・・・堕とされてゆく。


数ヵ月後のことだった。
半月ぶりの帰宅は、仕事の関係で前触れなしだった。
出迎えたわたしを、妻は躊躇して見つめ、遠慮がちに口を開いた。
あのひとと、逢うお約束をしてしまいました・・・
スケジュールが重なったとき。
譲り合いの精神、だね。
ルール決めをしたときに、彼はそう口にしてほほ笑んだ。
年長者の余裕が、瞳の中にたたえていた。
困惑顔の妻に、わたしはそっと囁いた。
行っておいで。子供たちの面倒はボクがみるから。
妻を送り出したわたしには、悶々とした夜が待ち受けていた。
夜明け、携帯電話の着信音で目が覚めて。
服が汚れちゃった。着替えを持ってきていただけませんか?
ディスプレイには、恥ずかしい音信が。
夜中、とうとう戻らなかった妻。
説明抜きで、いそいそと出かけてゆくわたし。
すでに子供たちも、ふたりの関係を心得ている。

ここは、都内の高級ホテル。
平日の昼下がりとなると・・・ロビーもひどく、閑散としている。
明るくダイナミックな空間に、人どおりがほとんど絶えていた。
都会の盲点、なのかもしれない。
ホテルに着いたのは、一時間まえ。
ロビーには表情を消したかれが待ち受けていて。
ちらと一礼すると、わたしの手からスーツケースを素早く受け取り、
サッと身を翻して、エレベーターの向こうに消えた。
まるで、幻を見るほどの素早さだった。

向こうからコツコツと、ハイヒールの音を響かせて。
彼と一夜を過ごした妻が、現れた。
髪をきちんとセットして。もちろんばっちりとメイクも施して。
彼女のためにわたしが択んだのは、ぱりっとしたライトグリーンのスーツ。
シンプルなデザインの純白のブラウスが、胸のすき間から楚々とした雰囲気を湛えている。
上背をぴんと張りつめた立ち姿。きりりと引き締めた面差し。
情事の痕跡は、どこにもとどめていない。
そこには気品を漂わせた、ひとりの貴婦人があった。

脚にまとっているのは、黒のストッキング。
わざわざ新しいのを、おろしたのだろう。
ひきつれひとつないストッキングのなか、大人の柔肌が青白く透けていた。
情事のとき。
かれの好みに合わせて欠かしたことのないアイテム。
初めてかれに操を捧げたときも。
同時にわたしの好みでもある脚の装いを、欲情はじける唇にゆだねていた。
ストッキング、破られました。貴方好みの、黒いやつを。
そんなふうに、メールしてきた妻。
「おはようございます」
他人行儀なほど礼儀正しく、頭を垂れる。

ふふ。
笑んだのは、わたしのほう。
スラックスの裾から覗く、かれの足首を見てしまったから。
かれもまた、すぐに気づいたらしい。
あぁ、これね・・・
ちょっぴり誇らしげに、さりげなくすそを引きあげてゆく。
お宅を出てからホテルに着くまで・・・ほんの一時間くらいかな。
恵理子が穿いていたやつ。
ぬらりとした光沢の向こう側。
淡い脛毛が、渦を描いていた。
あぁ、支配されたんだ。
実感が、妖しい歓びとともに全身をかけめぐる。
衣裳を与えて、身にまとうことすら・・・妻は許してしまったのか。

あたりには、人っこひとり、居合わせない。ふしぎな静けさ。
はしたない・・・とわれを制するいとまもなく。
わたしは硬い床にひざを突き、かれの足許にかがみ込んでいた。
ぬるり・・・ぴちゃ、ぴちゃ・・・
ふるいつけた舌が、音をたてている。
泡だった唾液が、かれの足首を濡らしていた。
厭うふうは、窺えない。
むしろ脚をのべて、そのままわたしの唇にゆだねてくる。
  どうかい?奥さんのストッキング。感じるだろう?服従の歓びを。
むしろ誇らしげに、妻のストッキングに染まった脚を見せつけてくる。
ふたたび、顔をあげたとき。
妻はわたしの手を軽く握ると。囁きかけてきた。
  まいりましょう。
おだやかに、よどみのない声色で。
夫のはしたない振る舞いを咎めるでもなく。
かれには目配せで別れを告げて。
涼しい顔で、身を翻してゆく。
若いころのように、腕に腕を組んで歩む、ビル街の谷間。
スーツに隠された熟れた肉体は、はずんだ諧調を帯びていた。

報告依頼

2006年12月26日(Tue) 01:05:34

注意・すこしコアです。寝取られものがお嫌いなかたは、素通りして下さい。
あまり読まれたくない、という気分も正直あるので。


夫の独白
彼に妻を正式に引き合わせたのは、単身赴任がきまり、いよいよ来週から着任という慌しいときだった。
彼はわたしよりも二十ほども年上の既婚者で、わたしが子供のころからの付き合いだった。
ふだつきのワル、と陰口を叩くものもいたが。
少なくともいえることは、そうとうな女たらしだということだった。
身内でもずば抜けたステータスをもつ彼は、ひとをそらさぬ話術の持ち主で、さほど風采があがるというわけでもないのに・・・たしかに艶聞がたえなかった。
恥を告げるようだが。
かつては母とも、交渉のあった男性なのだ。
夜更け訪ねてきた彼のことを父が上機嫌で迎え入れたのを、よく憶えている。
かれを迎えるときの両親の和やかさが、かれの来訪を子供心にも嬉しいもの、楽しみに待つべきものという印象をもたらしていた。
彼を慕って、閉ざされた奥の部屋に行こうとしたわたしは、よく父にさえぎられたのだが。
「いま、向こうに行っちゃ、いけないよ。ママと二人で仲良くしているところだから・・・そっとしておいてあげようね」
そういうときの父はかならず、ほかの人に話したらいけないよ・・・そう付け加えることも、忘れなかった。
父はみずから、最愛の妻を彼にゆだねていたのだが、ごく幼いうちから彼と両親のそうした交わりをしぜんに目にしていたわたしは、人よりもちがう倫理観をもって育ってしまったのだった。
マゾヒズムの血は、父譲りなのかもしれない。
いつかわたしは、妻になにかあったときには彼にゆだねよう・・・心ひそかにそう決めていた。

妻は以前から、彼とは面識があった。
「正式に」引き合わせた、というのはもちろん、妻を彼の性的なパートナーとして捧げるための一段階だったのである。
もちろんそのときは、ごくふつうに三人で食事をしただけなのだが。
魔性の話術・・・身内でも有名な彼の声に妻がどうやら酔ってしまっていたのは、はた目からも明らかだった。
陰で、血を吸っているんじゃないか?
口の悪い身内がそんなふうに評するほどに、相手の女性は宴がすすむにつれてみるみる態度を和らげて、会う前とは別人のように打ち解けてしまうのだった。
妻はまじめで、どちらかというとそちらの世界には疎いほうだった・・・はずなのだが。
目のまえで、少女のようにウキウキし始めたんを目の当たりにすると。
さすがに、嫉妬心を抑えるのにすこし苦しんだことを白状しなければならない。
ためしに、ちょっと口を挟んでみた。
なにかあったときには、ボクどうぜんに頼りにしていいんだよ。
そんなふうに、告げたとき。
彼は間髪を入れずに「誘惑もアリかい?」と口を挟んだのだが。
そんなことをぬけぬけと口にするかれのことを、もうっ!と、背中を叩いたのは。
警戒心が強く誰に対しても頑なな妻にしては上出来だった。
もしも付き合うのなら、連絡だけはよこすんだよ。
念押しするわたしの言葉を真に受けたかのように。
意地悪ねぇ・・・
口を尖らせる妻は、どこまで本気だったのだろうか?


四月十七日 妻からのメール
そちらは落ち着きましたか?報告するように、とのことなのでメールします。
あのかたに、お会いしました。お買い物で荷物持ちをしていただいて、お昼ごはんをごいっしょしてお別れしました。

同日  彼からのメール
やあ。きょうは、奥さんとデートしました。^^
昼まえに待ち合わせて、買い物に付き合って。荷物持ちをして。
キミは、買い物の付き合いがよくないそうだね。
そのぶんよけいに感謝されたわけだから、ボクにとっては幸運だったが。
重かったけど。恵理子さんをベッドに放り込むときは。もっと軽いだろうね。^^
きょうの服は、きみが単身赴任するまえの日、3人で食事をしたときの地味なスーツ。(グレーのやつだけど、覚えてるかな?)
ストッキングも肌色の、あいかわらず地味なやつでした。
きょうの態度は、ちょっぴり堅かったかな?
きみがいないと、まだ緊張するみたいだ。
並んで歩いているところを見られるのが、恐怖みたい。(笑)
ま、ゆっくり落とすさ。またね♪

夫の独白
単身赴任して、一週間が経過した。妻の恵理子と、彼とをうまく結びつけるため。
三人で食事をしてからは・・・かれこれ十日以上も経っている。
わたしが当地に赴く直前。
渋る妻の背中を押すようにして、いちどはデートに送り出したものの。
何事もなく、夕方には戻ってきてしまった。
だって、子供の食事を誰が作るのよ?――-女はつねに、現実的だ。
彼のほうも・・・妻に対しては、ひどく慎重に構えている。
殻の硬い、プライドの高い、お付き合いが苦手な妻。
様子を見ている・・・というよりは、ためらっている・・・そんな気さえ漂っていた。
本気になると・・・ボクは気後れしてしまうのさ。
女たらしといわれた男の、案外それが本音なのかもしれないが。
どうやらやっと、物ごとが順調にすべり出したようだった。
パート先の男とか、見ず知らずの値打ちも定かではないような男とつるまれてしまうくらいなら・・・いっそ妻の相手は自分で選んでしまいたい。
妻のメールは、そっけないほどかんたんだった。
あとできいたのだが、かれが打つようにと、すすめたらしい。
そのほうがかえって、ボクが安心するのだから・・・と。
嫌だとなると、てこでも動かなかった妻。
しらずしらず、支配の手が伸びていることに。その支配に妻が服従し始めていることに。
どうしてこんなに胸が昂ぶってしまうのだろう?
食事の席で妻が見せた、若やいだ顔が目に浮かんだ。


四月二十八日 妻からのメール
明日は子供を連れて博物館に行きます。
道順が分からないので、子供が学校に行ったあとあのかたについて行ってもらって、道を覚えてきました。
ユウコはクラブ活動で、ご飯を外で済ませてきましたが、タケオのご飯を作らなければならなかったので、夕方までには戻ります。

四月二十九日 彼からのメール
やあ。奥さんからメールは来たかい?
まだ、ナイショってわけにはいかないだろうね。^^
きょうのイデタチは、ピンクのスーツ。
結婚前に着ていたやつだそうで、もう似合いませんねって、照れていたよ。
ストッキングは、グレー。今回はちょっと、光沢がかかっていたな。
色っぽいね、っていったら。すこしあわてていた。
帰りに、キスを迫ったよ。
道案内のお礼にって♪
でも、ダメだったー。(涙)奥さんまだガードが堅いね。
時間が迫っていたし、帰りを気にしていたから。
こんどはもう少し、タイミングをはかってみるね。♪じゃ、また♪

夫の独白
あれからきっかり、十日経っている。
妻のメールは、相変わらず短く、そっけない。
ごく事務的に、あったことを報せてくるだけ。
行間を深読みするのは、わたしの勝手だが。
いまのところでは、なにも出てこない。きっと本当に・・・なにも起こっていないのだろう。
彼の動きも、はずんだ語調のわりには、いつもの自信たっぷりな積極性を欠いているような気がした。
妻には関心がないのだろうか?
いや、きっとその逆だ。
彼からメールをもらったあと、折り返し電話をかけてみたときの。
青年のようにはずんだ声色が、すべてを告げているようだった。
きっと・・・拒まれることで。彼の制服欲はいっそう昂ぶり始めているのだろう。
キスを拒まれたおくやみを、心の底から口にする。
本命ほど、慎重に構えてしまうね。
いつになく低い声に、どきりとした。
直接会うよりも、電話やメールのほうが得意。
妻のそうした志向を察した彼が、さかんに電話でのやり取りをしていたのだと。
だいぶあとになってから知ったのだが。
妻を奪われてみたい。妻のなかの「女」を、いまいちど呼び覚まさせてみたい。
そんななか。妻が結婚前のスーツを出したことに、あらためて。
かすかな変化の徴候をおぼえる。


五月七日 妻からのメール
GWはいっしょにいられてよかったです。
きょうはあの方が家に見えられました。
ちょうど忙しかったので、なかにお招きすることはしませんでした。
子供たちも、いませんでしたし。二人きり、というのは、気づまりです。

五月七日 彼からのメール
やあ。単身赴任してもうひと月になるんだね。
だいぶ落ち着いたころかな。
こっちもひとつ落ち着いて、腰を据えて・・・恵理子さんを頂戴する算段に取りかかるところだ。
きょうは思い切って、家に訪ねていったけど。
あげてくれなかった。^^;
玄関で押し倒してキスを・・・って思ったけど。
猪突猛進は、まだ禁物のようだね。
連休中久しぶりにきみの顔を見たあとだから、きょうは挨拶だけ^^v じゃ、また♪

夫の独白
連休。ひと月ぶりに家に戻ると。妻も子供も、たいそうな歓迎振りだった。
どこにでもある、家族の団らん。そのなかにまだ一点の曇りもないことに。
一種の安堵を覚えている。ことが成就を迎えたときも。
こうした団らんは変わりなく存在するのだろう。
すくなくともかれは・・・そうやって夫を気遣うタイプの情人だ。
かれに妻を差し出している夫たちが、周囲にさえ少なからずいるのだが。
みな、不思議なほどに円満な家庭生活を送っている。
ちょうどかつてのわたしの両親のように。


五月九日 妻からのメール
彼からお誘いを受けました。
貴方がいなくなって、お買い物に付き合ってもらって以来です。
久しぶりの都会はいいですね♪ 若葉が輝いていました。
あのひと・・・きみも輝いているね、ですって。お上手ね。
子供たちは元気に学校に行っています。貴方も五月病にならないように。

五月十日 彼からのメール
やあ。相変わらず恵理子さんからメールは届いているかね?
まだ残念ながら、夫に内緒の付き合い・・・っていうところまでは進んでいないな。
でも、きょうはデートをしてきたよ。
紺のジャケットに、白のスカート。丈がひざ上までの、ミニだった。
ストッキングは肌色で、彼女には珍しく艶のあるやつだった。
色っぽいねって言ったのが、すこし効いたかな?
いっしょにお茶していても。
ときどき脚組み直したり、スカート引っぱり上げたり。落ち着かないようすだったけど。
ま、気のせいということにしておこう。
でもね。
きょうはとうとう・・・キスをゲット♪
例の美術館の、いちばん奥って、人がいないだろう?
帰りがけ、あのフロアでつかまえて。
ギュッて抱きしめて。奪っちゃったよ。
マシュマロみたいに、柔らかい唇をしているんだね。
まだ・・・黙ってて。
って、言われたけど。
いちおう約束だから、報告しておくよ。恵理子さんにはまだ、ナイショ♪
キミも、知らんぷりをしていてね。^^
どうだい?悔しいだろう?嫉妬、するだろう?
いいのかい?ほんとうに。
きみの恵理子を、ボクの恵理子に塗り替えてしまっても。
いまならまだ。引き返せるかな。もう、ムリかな?キミがどうしても・・・っていうのなら。重い止まるよう努力するけど。
でも・・・塗り替えてみたい。
キミの恵理子を、ボクの色に。
彼女はじゅうぶん、塗り替えるに価する。
どうか、ボクのくわだての邪魔をしないでくれないか?
一生のお願い。では。

夫の独白
妻のメールに、表情が出てきた。わたしを気遣う文面にも、真情がこもっている。
人の血が通っている文章。こんなたよりは、結婚前にすらもらったことがない。それくらい、筆無精だった妻。
変わったのは、たよりだけではないようだ。
妻の服が、華やいできた。
相変わらず正統派の装いだが。白のミニなどを履いているところなど・・・もうなん年目にしていないだろう?
そして・・・とうとうキス。
そこを目にしたとき。ずきん!となにかが騒いだ。
夫として、とうぜんだろう。
けれども、妻を護らなければならない・・・という意識ではなくて。
迎え入れる愉悦のようなものが、ぐるぐる、ぐるぐると・・・毒液のように全身を浸してくる。
キスを許したら。ほとんどの人妻は落ちるね。
さりげなく語っていた彼。
あれはたしか、従兄の嫁を落としたあとのことだった。
大人しく、貞淑そうだった従兄の嫁。
いまは夫をさえ交えて、嬉々としてかれとの夜を迎えるという。
妻もまた、塗り替えられてしまうのだろうか?
自分から求めていながら・・・焦りに似たものが、神経を尖らせる。
ふと気がつくと、かれにメールを打っていた。

メールを有難う。
恵理子は塗り替えられたら、どんな女になってしまうのでしょうか?
まじめ過ぎるほど、まじめな女です。
わたしのことを忘れて、貴男のもとに走るようなことは・・・よもやないとは思いますが。
状況さえ、ゆるすなら。
恵理子を貴男の恵理子に塗り替えてしまっても構わない。
苗字は、わたしのまま。
○○家の令夫人を、貴兄の情婦として捧げます。


五月十一日 彼からのメール
やあ。メールありがとう。感謝する。
キミのいうように。苗字はあくまで、きみのもの。
ボクは既婚者だが。キミの奥さんだったら、他所に囲ってしまおうかって。まじめに考えてしまったのだけど。
それはお子さんのためにも、よくないことだね。
恵理子さんを、あくまでキミの妻のまま・・・犯しつづけたいのだ。
そのほうが・・・キミも昂ぶってくれそうだから。
自分のものでありながら、盗られつづける。
快感、だよね?いまのキミにとっては。
マゾの血が、疼いてくるだろう?
決行は・・・そう、もうひと押しだけど。
まだまだ、慎重に構えるよ。
エモノが大きいからね。逃したくないんだ。
それから頼みがある。今週と来週は、ボクのために彼女のスケジュールを空けてくれないか?
もっと言ってしまうと、今回は帰京しないでもらいたいんだ。
キミが戻ってくると、迷いはじめた彼女の意識がまたもとに戻ってしまいそうだから。
ちょうどいま、いいトコだから。
気を逸らしたくないんだ。
いい返事を待ってる。では。

五月十二日 妻からのメール
ごめんなさい。疲れているの。
彼とはあれから、逢っていません。
でもきょう、なにかのついでだって、ちょっとだけ家に立ち寄りました。
よかったのでしょうか?脚を吸われてしまいました。それに、キスまで。
ごめんなさい。不実な女になってしまいそうです。
週末の午後に予定を入れました。子供たちは一日、お義母さまが預かってくれます。

夫の独白
はじめて妻が、わたし以外の男との情事をほのめかした。
どれほど心が揺れただろう?夕べは一睡も、できなかった。
苦しみから・・・ではなくて。わたしはそんな、健全な男ではない。
恥ずかしいことだが。どす黒い色をした愉悦が、ぐるぐると渦巻きつづけていた。
わたしは妻にも、メールを打っていた。

きみがマナーモードにしていることを願いつつ、打っている。
もう、こんな時間だからね。
こんど脚を吸わせて差し上げるときには、いつもよりすべすべとした色っぽいものを身に着けることをすすめます。
きみがいままでどおり、わたしの素敵なきみでいてくれるのなら。
なにもかもを忘れるひと刻を・・・
もしも眠れない夜を過ごしているのなら、このメールが安らかな眠りにつながることを希望します。



五月十二日 彼からのメール
彼女から、メール来た?
お宅にお邪魔したんだが。とうとう迫ってしまったよ。
きょうの服は、白のワンピースだった。
こちらはだいぶ、暑くなってきたからね。
彼女も、涼やかな薄着になっていた。
ブラジャーのストラップが透けて見えて、とても「女」を感じた。
つい夢中になって。
脚を見せてくれない?って。
薄々気づいてはいたと思うけど。
はじめて、面と向かってカミングアウトしてしまった。
ボクがストッキング・フェチだって。
彼女、男のひとって、みんな同じね、って。笑ってくれて。
ワンピースの裾をちょっぴりだけ、たくし上げてくれて。
お姫様がドレスのすそをつまむみたいに、エレガントに…ね。
彼女とキミとに、感謝しつつ、接吻♪
ツヤツヤ輝く、白のストッキングだった。
思わずぬるり・・・と、唇を這わせて。
彼女、ハッとして。脚すくめてたけど。
そのまましばらく、じっとしていてくれて。
好きなだけ、舐めさせてくれた。
それから、キスをして。
抱き合っていた。
美術館のときよりも、長い口づけ・・・。
人目がないから、むさぼるように吸ってしまったよ。
あの柔らかな唇を。まるで花びらをもみくちゃにするみたいにして。
昂ぶっちゃう、って?
こうして書いているボクだっていま、昂ぶっているんだ。
そのあと、耳もとで、囁いていた。もぅ夢中になってさ。
こんど逢うとき。きみのストッキングを破りたい、って。
無言で、頷いてくれたよ。
肌の透ける、黒いのを穿いてきてくれ・・・って、お願いしてみた。
週末に・・・って思ったけど。
あさって、逢うことにした。
間を空けて・・・彼女の気が変わるといけないからね。
平日だから・・・きみは、仕事だったな。
首尾よく姦れたら。携帯メールで、教えようか?ではまた。

夫の独白
妻のメールでは。逢うのは週末・・・となっていた。
そのあと届いた彼のメールでは、明後日と。
予定が急に変わっただけなのだろうか?
それとも・・・なにが起こり始めているのだろう?
美術館のなか、妻が彼にキスを許してから。動きが速くなっている。
遠く離れたわたしには、ついていけなくなるほどに。



五月十三日 妻からのメール
さいきん、お帰りがないですね。さびしいです。月末までお会いできませんか?
すこし急ですが・・・明日、彼に逢ってきます。
帰りが遅くなりそうなので、お義母さまにお願いして、子供たちを泊まりで預かってもらうことにしました。
貴方の好きな薄手の黒のストッキング、穿いて行きます。

夫の独白
とうとう・・・
とっさに、暗然としたものが、こみ上げてくる。
それが瞬時に、極彩色に塗り換わる。
薄手の黒のストッキング。
妻が操を喪うとき・・・ぜひ脚に通してもらおうと。かねて約束をしていた目印。
口下手な妻が、大胆な言い回しを使わないですむように・・・との配慮だった。
今日までは、知的で清楚な装い。
それを明日、淫靡に引き裂かれてゆくのだろうか・・・
子供たちを、泊まらせる。
母もすべてを、心得ているのだろう。
いつものように短い文面が、わたしの胸をぐさりと突き刺していた。


五月十四日 妻からのメール
ご報告します。
とうとう、貴方だけのわたしではなくなってしまいました。
彼と、身体の関係を持ったのです。
子供たちが学校に行ってから。彼と待ち合わせてホテルに行きました。
あとは、ご想像通りです。
ストッキング、破られました。貴方好みの、黒の薄いやつを。
ごめんなさい。恥ずかしいのですが・・・まだ少し、興奮しています・・・。
罪深い人妻より

五月十四日 彼からのメール
やあ。もう、聞いたと思うけど。
とうとう、恵理子さんを陥落させたよ。
キミに電話をしたときは、さすがに声がなかったね。
配慮が足りなかったと、すこし反省している。
まったく、どうかしていたな。ボクとしたことが。
でもそれくらい、嬉しいプレゼントだったのだよ。
ほかならぬ、キミの愛妻をモノにすることができたんだから。
人妻というだけなら、いままで数え切れないほど相手をしてきたけれど。
いちばん抱きたかったのが、キミのお嫁さん。
ヘンな感情だといわれるだろうけど。
キミがまだ独身のころから・・・ずっとキミの妻となるひとを狙っていたんだ。
すこし、ショックだったと思うけど。
一日も早く、状況を愉しめる心境になってくれることを期待している。
キミの恵理子を、とうとうものにしてしまった悪い男より

夫の独白
帰ったらご主人に、メールするんだろう?履いてくるストッキングの色を、忘れずにね。
そう、彼に言われた、という。
どこまでも行き届いた男だった。
妻を犯そうとする男に、賞賛を与えることに。
わたしの体を流れるマゾヒスティックな血が騒いでいる。
きょうのこのメールも。
わざと妻にさきに打たせた・・・ときいて。
夫婦ながら、支配されてしまったな。と。いいしれないほどの感情・・・

五月十四日 わたしから妻への返信
おめでとう。よくガマンしたね。
いままできみが捧げてくれた貞節に感謝する。
これからは彼にも可愛がって戴きなさい。留守宅を守る孤独がすこしでも癒されるように。
夫として、せつに希望します。
今月は帰京をあきらめます。いまのふたりは、仲良くなる機会をいちどでもよけいに持つべきだと思うので。
賢明な貴女は、そうしたことで家庭をこわすような行動には走らないでしょうから。
母もきっと、協力してくれるでしょう。ことあるごとに、相談してみてください。

五月十四日 わたしから彼への返信
交際成立、おめでとう。
妻の貞操は、いかがでしたか?美味しかったかな?
まえから自信はあったのだけれど。自慢の妻です。可愛がってもらえると嬉しいです。
いちど抱かれるごとに。ボクのなかで妻への誇りが増すように感じます。
当日のようす。本当はもっと詳しく伺うべきだったのですが。
(妻に不倫の勧めをした夫としての務めだと思うので)
でも・・・さすがに、絶句してしまいました。不覚です。
たしかにショックでしたが。もう立ち直っていますよ。
恥ずかしい感情ですが。かなりズキズキとしています。
恥知らずな悦びが、全身をかけめぐっている・・・そう申し上げておきましょう。
週末貴男がどんなふうに、妻を堕としてくださるのかと思うと・・・
報告はいままでどおり、お願いします。
独りの生活も、おかげでかなり刺激的なものになるでしょうから。
妻のもうひとりの花婿殿へ。

山の中

2006年12月23日(Sat) 18:13:09


村はずれの、山中で。
練村さんの奥さんが、ご主人のまえで強姦された。
せまい村のなかのこと。
どんなに口を、鎖していても。
こんな噂は、すぐに広まる。
お隣の家が、今夜なんの漬物を漬けているのか。
村はずれの次男坊と、旧家の後とり娘とが学校帰りの草むらになん分間いっしょにいたとか。
どこの旦那が、誰の女房に夜這いをしたか、とか。
村じゅう、誰もが心得ている。
開けっぴろげに、語るのも。
知らんふりを通すのも。
人それぞれ・・・とはいいながら。


姦っちまったよ。奥さんを。
ずっと前から、狙っていたんだ。
なにしろここんとこ、女ひでりだったし。
都会育ちの女なんて、めったに味わえるもんじゃないからな。
まず旦那を、木に縛りつけて。
それから女房を、泥道に転がして。
女というのは、服が汚れると。
妙にいうことをきくようになるんだな。
こぎれいな服にはねた泥が。
なかなかよく似合っていたよ。
ツヤツヤとしたストッキングを、ダンナのまえで引き裂いてやったら。
泣き出しやがった。
いい気味だ・・・って、思い切り、キスしてやって。
そうしたら小さくなって、お願いします・・・って言いやがるんだ。
あれにはちょっと、驚いたな。
亭主は諦めきったように、目をそむけているから。
おい、よく見ておくだ。
手前ぇの女房が姦られるところなんか、めったにおがめるものじゃないぜ?
声かけてやったらよ、素直な男だ。
どうか、お手柔らかに。って。
あんまり礼儀正しいもんだから、おれも言ったよ。
いただきます、とな。
あー、いい女だった。今夜さっそく、頂戴しにいくんだ。
旦那はすっかり、のぼせ上がっちまって。
もういちど、見たい。妻のことを犯してくれ・・・って。
頼まれちまったら。オレもこういう面倒見のいいたちだから。
断るわけにゃ、いかねぇよな。
愉しんでくるぜ。旦那も待っているみたいだからな。


困っちゃった。どうしよう。
あんなに恥ずかしいことを。
よりにもよって、あのひとの前でされちゃうなんて。
感じていたんです。さいしょから。
あのひと、いっつもわたしを見る時に、じとーって、いやらしい目をしていて。
視線を感じると、スカートのなか。汗かいちゃっていたんです。
いつかはきっと、襲われちゃうな、って。
だから山道で出くわしたとき。
あぁ、待ち構えていたんだ、って。
ひもじい想いをして、ずっとわたしのこと待っていたのね、って。
山に行くのに、わざとおめかししていったんです。
ブラウスに、スカートに、ストッキング。
さすがにハイヒールは、無理だったけど。
代わりに履きなれたパンプスを、ぴかぴかに磨いておいたわ。
もう寒いのに、薄着していって。
わたし、あのひとのことを見て。じーんと感じちゃったんです。
主人には、悪いけど。
汗臭い体臭に抱きつかれて。
口のなかの臭いを、思い切り嗅がされて。
くらくら、眩暈がしちゃった。
主人に、顔向けできない・・・って思ったんだけど。
あのひと、主人のこと、うまく脅しつけてくれて。
村じゅうに、言いふらすぞ、っていうんです。
狭い村ん中。お前ら夫婦は、オレの胸三寸でどうにもなるんだって。
まっすぐ見てろ、って言われて。
妻が犯されるところを、あんなにまじまじと見れるものなのですね。
恥ずかしかった。
けれど、感じてしまった。
もういちど。主人のまえで、してもらいたくって。
わたしのほうから、おねだりしちゃった。
母が聞いたら、びっくりするわ。
わたし、もともと、大人しいたちだから・・・


前の晩のことでした。
電話がかかってきたのは。
富美子を襲わせろ。山ん中で、けりをつけてやる。
くぐもった声で、そう、言うんです。
受話器を持つ手が、ぶるぶるっと震えました。
どうしようっ、て。思いました。
恐怖、ですって?さぁ、どうでしょうか・・・
富美子にほんとうのことを告げるべきなかな、って。思いましたが。
けれども、選択の余地は・・・事実上ありません。
いったいどこに、逃げ場があるのでしょうか?
こんな狭い村のなかで。
都会の生活習慣などは、ここではまったく顧みられることがありません。
厭なら、出て行けばいい。
そんな風潮も、知っていました。
けれども村に入ったとき、
さりげなく、人知れず漂っている淫靡な空気を感じ取って、
わたしはずきずきと、胸をわななかせていたのです。
きっとこのなかに。妻の白い肌をモノにしようというやつが現われる。って。
都会では、そんな落ち度は許されません。
職場に知れれば、よくて左遷か、会社にいられなくなるか。
金目当てのやつらに写真を突きつけられて、脅迫されるか。
あるのはきっと、そのような刺々しい反応ばかりでしょうから。
ところがこの村ときたら。
お隣の奥さんは
  夕べは三人遊びに来たのよ。あー、腰が痛・・・
おおっぴらに、そんなことを口にしていますし。
ご近所の娘さんたちは、仲良し三人で連れだって、
村はずれの納屋で、婚約者の男性いがいの男と契ったと。
さすがにちょっと羞ずかしそうに、でしたが。
ぺちゃくちゃと、愉しいおしゃべりでもするように。
三つ編みのおさげを揺らしてはしゃいでいます。
そんな中。
いつもこぎれいにしている妻が求愛をうけるのは、もう時間の問題だったのです。
どうして村から出ないのか、って?
だって。此処がわたしの生まれた村ですから。
そして、妻を蹂躙した男は、他ならぬわたしの父だったのですから。
良い嫁をもらったな。
父に褒められたのは・・・もしかすると初めてのことかもしれません。
わたし・・・お人よしなたちなのかもしれませんね。


あとがき
柏木版「藪のなか」にしようと試みたのですが。
まだまだ、浅い浅い。^^;
あいかわらず、ゆがみっぱなしですが。^^;;;