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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

ねずみ色のストッキング ~白いプリーツスカートの少女~

2007年02月27日(Tue) 22:56:53

白地のチェック柄のプリーツスカートのをたくし上げ、
おさえつけたひざ小僧を包むのは。
すこし濃いめの、ねずみ色のストッキング。
合わないよね。なんか、やぼったいよね。おばさんみたいだよね。
切れ長の目を、心細げにひそめているけれど。
だいじょうぶ。
それがきみの気に入りのいでたちならば・・・
わたしは思い切り、唇や舌をふるいつけてしまうのだから。

つややかな光沢をかすかに滲ませる薄手のナイロンは。
ピンク色をしたぴちぴちとしたふくらはぎを。
淡い紫色に、いっそうなまめかしく染めていて。
飢えたべろを、わくわくと昂ぶらせてくれている。
ぺろり。ぬるり。くちゅっ・・・
清楚に彩られた足許を、わざと下品に、音までたてていたぶって。
わたしががきみの服を気に入っているのだと、わからせてやる。
もぅ・・・
きみはいつものように、切れ長の目をくもらせて。
それはメイワクそうに、口を尖らせているけれど。
わかっている。
薄い皮膚の下に秘めた血管が。
淡い紫色をしたマゾヒズムに震えているのを。
少女のなりをしたきみは、大人のマゾを裡に秘めている。

あっ、ほら・・・ほら。
少しずつ。少ぉしずつ。
引きつれが、裂け目にかわってきたようだね。
ほんとうに、破けてしまうまえに。
うんとよだれで、汚してしまおうね。
私をもてなすために履いてきた、ねずみ色をしたストッキング。
くしゃくしゃになるほど、いたぶるのが、きみへの礼儀というものだから。

夕べは、いつも学校に履いて行く真っ白なハイソックスのふくらはぎをさらして。
真新しい厚手のナイロンのしなやかさを、気の済むほどに、たんのうさせてくれたっけ。
キュッと引き締まったふくらはぎに、飢えた牙を思うさま埋め込んだあの快感は。
とても忘れることができないよ。
明日はちょっとオトナになって。黒のストッキングを履いてくるって?
歓迎するよ。
いつものようにたっぷりと、辱めてあげるからね。
白のスカートには、似合わない。似合わないっ・・・ていいながら。
きみはそうして、おずおずと脚を差し出すんだね。

後ろから、捕まえて。^^ ~白いプリーツスカートの少女~

2007年02月27日(Tue) 22:53:11

長い黒髪を、頭の後ろできりりと結いあげて。
ノーブルな広いおでこを、スッキリとのぞかせて。
切れ長の目を、すこし憂鬱そうにくもらせて。
ピンクのカーディガンに、白のブラウス。
白、赤、深緑のチェック柄のプリーツスカートは、長すぎも短すぎもせず、
ひざ小僧のあたり、すそをひらひらと揺らしている。
スカートの下、にょっきりと伸びる発育の良い脚は、肌色のストッキングに包まれていて。
ぴちぴちと初々しい色気を、滲ませている。
すっきりとした髪型に、小ぎれいな服。
それはまるで、甘いキャンディーの包み紙のようなもの。
さぁ、どんなふうにはぐって、中身の甘さを味わおうか。

後ろから、両肩を捕まえて。
あわてた身じろぎを、ぐいっと力ずくで、抱きすくめて。
遠慮会釈なしに、うなじに唇を吸いつければ。
甘いぬくもりを秘めた皮膚が、恐怖のあまりこわばっている。
すまないね。
こんなふうに・・・きみを、汚してしまうのだよ。
お行儀悪くよだれを含んだ唇で。
思うぞんぶん、素肌をいたぶると。
情け容赦なく、がりり、と。食いついてしまっていた。

あ・・・っ
秘めやかな叫びに、そそられるように。
ぐいぐいと食いいれてしまった牙の切っ先に。
ほとび出る健康な血潮が、とても鮮やかに輝いている。
ダメだよ、逃げちゃ。暴れたりしちゃ。
これからゆっくりと、きみの血を愉しませてもらうのだから。
細い両腕を、ぎゅうっと抑えつけて。抗いを封じてしまう。
けれどもそんな気遣いは、無用らしい。
きみはメイワクそうに、顔をしかめて。
とがめるように、にらみつけているけれど。
もう、憂い顔をした切れ長の目じりには。
妖しい翳が、浮き上がっている。

さあ、聞き分けよく、大人しくするんだよ。
これからストッキングの脚、愉しませていただくのだから。
真新しい肌色のストッキングが、くしゃくしゃになるくらい。
ふくらはぎを撫でさすりながら。
ズキズキ疼く唇を、なめらかな薄手のナイロンのうえから、
ヒルのように、慕わせてゆく。

あの・・・
かわいい唇が、ためらいがちに開かれて。
いいんです。好きにしてください。
ストッキングを、破ってしまっても、かまわないんです。
あなたのために履いてきたんですから。
怒ったり、泣いたり・・・しないから。
呟きに、心の湿りを秘めながら。
ほんのちょっぴり、涙を滲ませながら。
少女はかいがいしく、そうっとスカートをたくし上げていった。
きみはMだね?じゅうぶん、素質がありそうだ。
いいだろう。
今夜ひと晩。
きみの気が済むように・・・
おじさんがたっぷりと、いじめてあげるからね。^^


あとがき
少女のイデタチに萌えて、ついいやらしいただの親父になってしまいましたね。^^;
あっ、それでもなんだか、仲いいみたいですが。このふたり。

スリップの切れ端

2007年02月26日(Mon) 07:39:50


下校までに吸血鬼に血を吸い取られた少女たちは、血に濡れた制服のネッカチーフを相手の吸血鬼にプレゼントするという。


ひとり、ふたり・・・と。
人目を避けるように更衣室から忍び出てくる、制服姿の少女たち。
ほどんどの少女たちは、胸にさげていた白のネッカチーフを取り去っている。
けっこう、吸われちゃったね。
うん。
仲良し同士、寄り添うようにして。
ちょっぴり疼くうなじの痕に手を添えながら、その場をあとにしていった。

ねぇ。
ミユキは立ち止まると、友だちの少女を物陰に引き込んでいた。
スリップ、破いてくれない?
え?
少女はちょっとびっくりしたように、小首をかしげたけれど。
クラスメイトの言いたいことをみなまで言わせずに、それと察して。
すぐにミユキの後ろに回りこんでいる。
スカート、あげてくれる?
うん・・・
重たい濃紺のプリーツスカートのなかで。
ぴりっ。
スリップの裂ける音がした。
ミユキは、表情を消して。
目を瞑ったまま、スリップの裂き取られる音に聞き入っている。
級友の手で裂き取られた約20センチ四方の白い着衣には、真っ赤なシミが浮き上がっていた。
じゃあつぎは、わたしの番。わたしのスリップも、そうしてくれる?
友だちの言い草に。こんどはミユキがびっくりする番だった。


ミユキと待ち合わせていたのは、校門の陰。
いつもの場所に現れた彼女は、もとの気の強い少女に戻っている。
少年は恋人がネッカチーフをはずしているのを、目ざとく察していた。
  待った?
  いや・・・でも、遅かったね。
相手の少年も、少し遅刻してきたらしい。
走ってきたのだろうか。まだ息をかすかにはずませている。
少女は自分の息が昂ぶっているのをさとられまいとして、
濃紺のスカートをさばいて、少年のまえを歩きはじめていた。
おや?
少年が、声を洩らす。
え・・・?
咎めるような上目遣いを、眩しそうに受け流しながら。
ネッカチーフ、どうしたの?
あげてきたのよ。汚れちゃったから。
彼女は、吸血鬼に逢っている。
そうと知りながら、交際を申し込んで。
これからも、逢うわよ。わたし。
挑発するような彼女のたいどに、なおいっそうひきこまれてしまっていた。
うなじを噛んで、血を吸うとき。
ほんの微量、撥ねかる血潮。
飛沫を含んだネッカチーフは、血を獲たものに与えられると。
少年は訳知りの老人から聞き知っている。

それに・・・
少年はまだ、いい足りないらしい。
ストッキングも、破けているよ。
うるさいわね。
少女は苛立たしげにかぶりを振ると。
ほら、ご覧なさい。
そういうように、つつっと縦に伝線を走らせた黒のストッキングの脚を、見せびらかすようにくねらせた。
ふくらはぎ、噛まれちゃったのよ。
文句ある?
って、開き直った少女の目線が。
少年の言い草に、戸惑いを漂わせた。
なんだか、見とれちゃうよね・・・
少年はしんそこ恍惚とした面持ちで、呟いていたから。

履き替えれば、ばれなかったのに。
いいの。このまま帰るって、約束したから。
そう・・・
少年の声が、ちょっとだけ震えている。
きょうは、きみん家(ち)に行こうか。
少女になるべく恥をかかせまいとしたらしい。
道行く人が少女の足許にさりげなく落としてゆく好奇の視線を気遣って。
きょうのデートの行き先を、彼はとっさに変更している。


なにもされていないわよ。
それ以上、されていたら・・・
ほら。このていどの破け方ですむわけないじゃない。
少女の部屋で、ふたりきりになって。
ことの成り行きを問いたげにする少年に。
少女は口を尖らせて、もういちど黒ストッキングの脚を見せつける。
淡い嫉妬に満ちた少年の視線が足許にじわりと吸いついてくるのが、むしょうに心地よかったのだ。
ついでに、見る・・・?
セーラー服の襟首を、ちょっとだけずらして。
胸元の一角に秘められていた噛み痕まで、さらけ出している。
パパにも見せたこと、ないんだよ。
少女は真顔になって、ひき入れられたように傷口に見入る少年の顔をじいっと見つめている。

ふっ・・・と。
ふたりの影が、重なり合っていた。
唇と唇が、重ねあわされていた。
ドキドキとした互いの呼気が、互いの鼻腔をほのかに染める。
秘めあっていた熱情に感応し合うようにして。
ふたりはもっと、身体を寄せ合っていた。
はじめて・・・だよね?
うん。
少女は羞じらいを悟られまいと、わざとそっぽを向いていた。
ぶきっちょに重ねあわされてきた唇の、ほのかな口臭が、まだ少女をどきどきさせている。
キスだけは・・・あの子のために取っておこうか。
こうなることを、予知していたのだろうか。
さっきまで逢っていたあの男がそう囁いたのは。

唐突に、切羽詰った声が口をついていた。
スリップ、破かれてきたんだろう?
さりげなく髪の毛をかきのけていた少女は、ぎくりとして手を止める。
どうして・・・?
なにも言わせない。
少年は恋人の手をギュッと握り締めて。
あとずさりしようとした少女は、つよく抱きすくめられて、逃げられなくなって。
乱れた濃紺のスカートのすそから、少年の言うとおり、破けたスリップがしどけなく白い生地を浮き上がらせる。
恥ずかしい。
少女は初めて、涙ぐんだ。
いいんだ。そのことで、俺・・・ドキドキしている。
え・・・?
ふたたび奪われた唇に、少女はもっと積極的に、応じている。

のこりのスリップ、もらってもいいかい?
ほんとうに・・・いいの?私なんかで・・・
なにも言わせない。なにも言わせまい。
じわじわと侵食してきた嫉妬の情が、
初々しい熱情を、妖しい色で染めはじめた。
のこりのスリップを得る・・・ということは。
ほかの男に処女を捧げた少女を、永遠に愛するということ。
  逢っちゃうわよ。それでも、逢っちゃうわよ。
  それでも、いいの?
  かまわない。でも、すべてを俺に見せて・・・
  見たいの?見たいわけ?ヘンなひと。
  ヘンでもいい。それほど気になるんだ。きみのことが。
  わかったわ。見て。見て頂戴。わたしのいやらしいところ。
  あなたたち。わたしを分け合うご縁で結ばれていたのね・・・
少女は、組み伏せられて。少年は、のしかかって。
永遠の契りを交わしはじめてゆく。

がたり・・・
淹れたばかりの紅茶をもってきた少女の母親は
ドアの向こうからするかすかなもの音に、足をとめた。
そして、なかの気配を察すると。
ちょっとだけ、ため息をして。
それからフフッ、と、イタズラっぽい笑みをうかべて。
なにごともなかったように、紅茶のお盆を持ったまま、回れ右をした。


あとがき
少女のスリップをねだった少年。
約束の時間に遅れそうになったのは。
もしかすると・・・? ^^
連れの少女の履いているストッキングがひどく破けていたとしても。
必ずしも彼氏が破いた・・・とは。限らないみたいですな。(笑)

血の絆

2007年02月26日(Mon) 06:03:57

穿いてきたわよ。貴方のお好きな、ガーターストッキング。
せいいっぱい若作りにしたスーツのすそをひるがえして。
妻はウキウキと声はずませて。
男の目のまえに気前よく、むっちりとした太ももを覗かせる。
いつもながらのナチュラルカラーのストッキングと見えたけれど。
ふくらはぎに、微妙な光沢をてからせたナイロンの薄衣は。
太もものところで、あざやかに区切られていた。
ウフフ。やぁねぇ・・・
見境なく吸いつけられてくる、飢えた唇に。
妻は小娘みたいに、はしゃぎ切っていて。
しつようにねぶりつけられる唇に、ストッキングの脚をさらけ出してしまっている。

逢瀬、といって、よいのだろう。
血を吸うものと吸われるものとの、秘められたランデブー。
妻はときおり、くすぐったそうな笑い声を洩らしながら。
足許にぴちっと張り詰めた、薄手のナイロンが、
ふしだらないたぶりに、くしゃくしゃに波打ってゆくありさまを。
面白そうに、うかがっている。
もうっ。悪い子ね。
と、口にしながら。
髪をつかまれて。じゅうたんの上に、抑えつけられて。
あろうことか、めくり上げられたスカートの奥、腰を沈められていって。
男の若い精力が果てるまで、尽くさせてしまっている。
棒立ちになったまま、いちぶしじゅうを洩れうかがっている私。
起き上がった影は、あたりをはばかるように、周囲の様子を窺っている。
あぁ。やっぱり。
妻の相手は・・・息子・・・だったのだな。
だから妻は、ああしてこぎれいに装って。
まるで、恋人に逢いに行くように、ウキウキと出かけていって。
血を与え、寂しささえも満たしてやっているのだな。
おなじ血を通わせているものどうし。
濃い絆を、かんじながら・・・


あとがき
夜ひそかに妻の血を啜っていたのは、実は息子だった。
血のつながりのある息子は、じつは夫よりも濃い関係で結ばれている。
それをさとったお父さんの、淡い嫉妬を描いてみたかったのですが・・・(苦笑)

通う女

2007年02月26日(Mon) 05:53:46

壁ぎわに圧しつけられたスーツ姿は。
踊るように。戯れるように。
いっとき、のしかかってくる影を相手に舞踏に興じて。
吸われた首筋につけられた痕を、心地よげにひっ掻きながら。
今宵も軽いハミングをのこして、現場をあとにしてゆく。
姉さん・・・
ひそかなつぶやきは、さっきまで女の相方をしていた影の手にさえぎられている。

美味かった。いつも、すまないね。
影は、いがいなくらい繊細な声を秘めながら。
じぶんとおなじくらい蒼白い頬をしている青年を気遣った。
いや・・・
青年の目は、朝霧の彼方にとうに消えてしまった姉の姿を、まだ追いかけている。

自分の肉親を、自分の牙にかけるのは。
なんとしても、気が進まなかった。
だから、誘った姉には、あの男を引き合わせていた。
見返りに、男が連れてきた女が現れるのは・・・そう、いつも決まって姉の襲われるつぎの晩のことだった。
女は、きりっと装ったスーツ姿。
まるで己を誇示するように、背筋をピンと伸ばして。
しゃなりしゃなりと、歩みを進めてくる。
すっきりと伸びた細くて白い首筋に、濡れるような黒髪を漂わせながら。

あいてを酔い心地にしてしまうのは、そう難しいことではないのだよ。
相棒の吸血鬼は、彼の血をあまさず吸い取ってしまったあと。
耳もとに誘惑の毒液を流し込むようにして、そんなふうに訓えていた。
うわぐすりがかかった白磁のような素肌に、毒を含んだ唾液をしみ込ませるようにして。
首のつけ根を、まるでネックレスをなぞるように、口伝いに吸いつづけていって。
女の理性を、麻痺させる。
そんな手管を・・・姉の身体に実践されて、お手本を見せつけられてしまっていた。

けれども。いまでもはっきりしているのは。
青年を訪ねてくる女が、自分の意思でここに来ているということ。
コツコツと、ハイヒールの足音を闇夜に響かせながら。
女は抜群なプロポーションをひけらかすように、夜道を歩いてきて。
立ちふさがった彼をみとめると。ちいさくうなずいて。
自分のほうから、路地に身を隠して。壁ぎわに身をもたれかけさせている。
首筋を、貫かれるほどつよく噛まれても。
ふくらはぎを、ストッキングが破けるほどに吸われても。
女は苦情ひとつ口にするでもなく、
男の切羽詰った欲情に、すすんで応えてくる。
きりりと背筋を伸ばしたまま。
スキひとつなく装ったスーツ姿に、血をほとばされてゆく。

来ちゃいけない。俺の相手なんか、しちゃいけない。
いつか、そう思うようになっていた。
女が来なければ、渇きにのたうつわが身なのに。
凛と取り澄ました女が、みずからの血を涸れ果てさせてしまうまで、
夜の訪問をやめないであろうことが。
男の胸を、強烈に締めつけている。
かつてそうしてくれた女がひとり、毎晩のように彼のもとを訪れたことがあったから。

待った?つらかったでしょう?
そのひとはかつて、わが身を襲おうとする彼を、むしろいたわるようにして。
すすんで腕を回し、はだけた胸元を投げかけてきた。
幼稚な破壊欲を満たすために。
ストッキングを穿いたままの脚を差し伸べて。
いたぶるままに、破らせてくれていた。
青年と瓜ふたつの面差しをもったそのひとは、実の母親。
やがて彼とおなじように、肌蒼ざめさせて…。
今宵はどこの街角を、さまよっていることだろうか。
おなじふうにしては、いけない。
母の代役を勤めようとして、おなじように夜更けに訪れた姉のことを。
とうとう牙にかけることは、できなかった。

見ず知らずの相手なら、なんとかなるのだろう?
見かねた相棒は、姉を襲う代わりに。ひとりの女を連れてきてくれた。
けれども、おなじことだった。
無償で血を与えてくれる女に、情が移ってしまったのだった。
来ちゃいけない。抱かれちゃいけない。
けれども、逢いたい・・・
つじつまの合っていない男の心情を、見透かしたように。
女は今宵も、ハイヒールの靴音を響かせてくる。

うまく吸えば、いいのだよ。
もう、母御のようなことには、ならないはずなのだよ。
この道のことは、幾十年分か長けている相棒は。
そういって、目のまえで姉の血を啜りながら。
ほどよい陶酔に姉を誘ってゆく。
身内の女の血を目のまえで啜られる光景に。
じんじんと胸をとどろかせながら。
彼もまた、恋人の訪れを今か今かと待ちかねる。

今夜もまた、血を撥ねかしてしまった。
白のタイトスカートを、ななめに横切る紅い飛沫。
それでも女は、苦情めいたことひとつ口にしないで。
惜しげもなくさらした脚線美を、彼のほうへと差し伸べてくる。
透明に輝くナイロン・ストッキングが。
薄闇に浮かびあがる脚の線を、いっそうなまめかしく際だたせていた。
上品な装いを、しわくちゃにしながら。
男はいつまでも、女の栗色の髪を、めでるように撫でつづけている。
人間同士の恋人のように。
ブラウスを通して息づく豊かな胸を、ゆるやかにまさぐりながら。
タイトスカートごしに、むっちりと肉のついたお尻を、撫でさすりながら。
ぬかるんだ路上に、ふたつの影は重なり合って。
放恣にだらりと伸ばした女の両腕は、とうに抵抗を放棄している。
あえぐ唇を、唇でふさいでしまうと。
うっ。
毒気に咽ぶように、いちどは離した唇を。
ふたたび、魅せられたように、求めてゆく。
ある角度に開かれた脚のすき間に、腰を沈み込ませて、
タイトスカートの奥を、さぐりはじめる。
ガーターストッキングの上にまとわれていたショーツは、とっくに脱ぎ捨てられている。
遠くから、影のように立ちすくむ相棒の気配を、ありありと覚えながら。
男は女を、犯していた。

朝もやのなかを、女の影が遠く消えてゆく。
いつもより、足取りを弾ませながら。
ようやく、うまくやれたようだね。
血を吸うたびに、まぐわえば。
精を享けた女は、よりいっそう輝きを増して、家路をたどるようになるのだよ。
自分より先立って、なん十年ものあいだ人の血を啜りつづけた男が。
小気味よげに、そしてなぜか自嘲するように。
呟くともなく、呟きを漂わせた。
きみの姉さんは、いい女だ。
相棒の口にした言葉の意味を察して、男は背筋をぞくりとさせたけれども。
姉がそれで幸せなら・・・祝福しますよ。
ありがとう。
相棒はまだちょっと、なにかを言いよどんでいたけれど。
わたしもおなじように、きみを祝福しよう。
あれはわたしの・・・最愛の娘なのだから。


あとがき
例によって、わけのわからないお話になってしまいました。
すすんで血を与えようとする姉を襲いかねている弟に、ささやきかけて。
代役を買って出た男。
その彼が見返りに血を吸わせたのは、自分のまな娘だったというお話です。
互いに自らの肉親を牙にかける勇気がなくて。
取り替えあって、血を吸っていたのですね。

合コンのあと

2007年02月26日(Mon) 05:07:36

どうもああいう場は、苦手なんだ。
年よりも、はるかに老けて見られる私。
たしかに周囲との波長もいまいち合わないし、いつも一目置かれる、というよりは、はっきりいって敬遠されていた。
自分の殻に閉じこもってちゃ、ダメよ。
親しい人にそういわれながらも、どうすることもでできないのだ。
とくにあの・・・合コンというやつ。
若い男女が礼儀も恥じらいも、まして奥ゆかしい心遣いなどかけらもなく、くだらないことで盛り上がって大騒ぎをする、あの席のことである。
ヘンに浮ついたあの雰囲気は、いちど参加しただけでもうすっかり嫌気がさしてしまっていた。
課のなかにそういう話をしょっちゅう持ち込んできては重宝がられているやつがいて。
きょうもその話で、お昼休みのあたりからかしましい。
「お前、また欠席かぁ?」
同期のヤツがこっちに水を向けてくるのさえ、うっとうしかった。
「無理無理。やめとけやめとけって」
だれかが聞こえよがしに、野次を飛ばす。
どちらの声にも、たちのよくない揶揄がこめられている。
ライバルが減って都合がいい・・・とは思われない。
なにしろ気の利かない私ごときが、場慣れしたあいつらに太刀打ちできるはずがないのだから。
ただたんに、あいつらは。
仲間うちの付き合いの悪さをなじっているにすぎないのだ。

やっぱり来るんじゃかなった。
親切ごかしに、私の肩を抱くようにして
「きみ、よくないよ。気が進まなくっても、たまにはつきあわなきゃ」
そんなふうにそそのかしたのは、誰であったか。
その誰かも、いまはあの狂った喧騒のなかに埋没していて、乱れ切った場の雰囲気に興じきっているに違いない。
にごったアルコールの匂いが、ぷんぷんとしている。
酒の弱い私には、それだけでもすでに辟易ものだったのだ。
一次会、解散!
だれかがおどけたように、奇声を発している。
ーーーてきとうなところで、ばっくれるんだぜ?つごうのよさそうな相手といっしょにな。
場慣れしているなかでもとりわけ場慣れしているらしい誰かは、わざわざ親切ごかしに、そんなことを囁いてきた。
私にそんな器用なことができないのを、百も承知のくせをして。
そそくさと、席を立った。彼のいうように、「ばっくれる」ために。
もちろん一人で。

まだまだ寒さの残る、都会の夜。
いつもなら襟首を掠める冷気がひどくいとわしいはずなのに。
飲みつけない酒にほてった肌を冷やすには、かえって小気味良いくらいだった。
くだらない連中から袂を分かってきた爽快さと解放感が、歩みをいっそう速めさせている。
どうせ、女にはモテないのさ。
私は自虐するように独りうそぶいて、家路にむかおうとした。
そのときだった。
あの・・・
ごくひかえめに、おっかなびっくりに投げられた声。
振り向くと、若い女の子がひとり、おずおずとこちらをうかがっている。

「○×のかたですよね?さっきまでご一緒していたものです・・・」
相手の告げたのは、まちがいなく私の会社の名前。
茶髪の多くなった街角に、黒々としたロングヘアはむしろ、違和感があるほどだった。
女子大生が着るような、白のニットのセーターに、チャコールグレーのロングスカート。
きちんとした感じのする地味目なパンプスを履いていて、わずかにのぞく足首は、いまどきの子には珍しく、黒の無地のストッキングを滲ませている。
こんな子、いたっけな?
ふときざした疑念は、すぐに取り払われた。
わたし・・・ああいう席、とっても苦手で。気が進まなかったんだけど・・・友だちにせかされてしぶしぶ来たんです。でももう、二次会なんてまっぴら。
もじもじとしながらも、しっかり誘いかけているじゃないか。
吐き捨てるように、あざ笑ってやりたい衝動を覚えた。
けれども女の子はどうやら、しんけんらしい。
彼氏、いないんです。いつも、引っ込み思案で。周りのお友だちはもうみんな、経験済ましているのに。
いっしょに来た子が、合コン得意で。
どうしても嫌だったら、なるべく目だたないようにしていろっていうんです。
私が適当な男の子、見つくろってあげるから、って。
あなたも目だたないように、していましたよね?
さいごのひと言には、軽い笑みと共感が秘められている。

あの。ヘンでしょうか・・・?
女の子がおずおずと、上目遣いに私を窺う。
ここは、ホテルの一室だった。
彼女を合コンに誘ったという悪友に教わったのだろうか。
女の子は手にした紙切れに書き付けられた稚拙な地図を頼りに、私をここに連れてきた。
彼女が「ヘンでしょうか」といったのは。
いきなり初対面で、軽くお茶をしただけで、こういうところに来てしまったなりゆきのことだろう。
こんなにもあっさりと処女を捨てようとする、いまどきの子だとしても。
たしなみのなさを、気にかけるふうだけは残っているのか。
私はなんだか、ほっとするような気分になった。
ニットのセーターは、部屋の隅に脱ぎ捨てられている。
その下を覆う、光沢を帯びたブラウスが、さらりさらりと衣擦れを秘めながら、やはり脱ぎ捨てられてゆく。
むき出しになったぬるりとした肩先は、ひどくなまめかしくて、
地味な上着とは裏腹な、挑発的なスリップの束縛から、はちきれそうなくらいぴちぴちと輝いていた。
女の子はためらいながら、それでも着実に作業をつづけてゆく。
こんどは、スカートだった。
ベルトをはずし、ジッパーをゆるめ、ちょっとだけ、ためらって。
思い切ったように、足許に落としている。
ぴっちりと張り詰めた黒のショーツが、女の子の陰部のそこだけを覆っていた。
太ももまでの黒のストッキングは、雑誌で見たことのあるガーター・ストッキングではなかったけれど。
眩しいくらいに白くむっちりとした太ももを横切るゴムの部分が、ひどく鮮やかに際だっている。
「ずるい」
女の子は俯いて、羞ずかしそうにささやく。
まだ脱いでいない私を、とがめているのだ。
私も思い切りよく、ネクタイに手をかけていた。

一糸まとわぬ体に、室内の空気さえもがそらぞらしい。
ぱちり、と室内の照明が落とされた。
女の子はよく輝く瞳をいっそうきらきらとさせて、私に寄り添ってきた。
思いのほか、しっかりとした体重に、私はよろけて、ベッドにまろび込んでいた。
女の子は私の両肩をしっかりとつかまえて、顔を私の胸で覆っている。
きっと、恥ずかしいのだろう・・・と思って、ついそのままに過ごしていると。
かりり。
奇妙な感触が、胸元に食い込んだ。
え?
肩をつかまれた両の掌に、痛いほど力が込められる。
身動きもできないまま、なにか硬いものが切っ先鋭く、食いいれられてくる。
ちゅっ。
ふざけたような音が、彼女の口許ではじけた。
そのまま、すうっ・・・と。
意識が、遠のいている。

青白く浮かび上がった、しどけない肢体。
女の子は瞳を蒼白く、輝かせて。
ウフフ・・・
しんそこ愉しげに、ほほ笑んでいる。
口許にべっとりと濡らしているのは、私の血。
もっと、頂戴。いいよね?
甘えるように。強制するように。
女の子は惜しげもなく素肌をさらして、私にのしかかってくる。
どうすることもできないで。
唯々諾々と組み敷かれてしまっている私。

あなた、マザコンなんでしょう?
ついでに、シスコンみたいだね。
いいのよ。恥ずかしがらないでも。
だれだってそういう感情、多かれ少なかれあるんだから。
たった一人で、恥ずかしがっちゃって。
かわいいひと。

まだ名前も告げていないその女の子は、謡うように囁きながら。
こんどは私の首筋に、濃厚なキスを重ねてくる。
あぁ・・・
服従の愉悦、というのだろうか。
女の子にいいようにあしらわれながら、ちっとも不愉快ではない。
むしろ。どういうんだろう?
自分のなかを流れていた血液が、彼女のものになってゆく。
おなじ血を、共有することが。
えもいわれない歓びを、激しくかき立ててくるのだった。
お母様と、お姉様を紹介してくれる?ついでに、妹さんも。
わかっているわよね?あなたがたの血が欲しいの。
いつ、逢わせてくれるの?
たっぷり、吸い取ってしまいたいの。
あなたとおなじ香りをした血だもの。
欲しいわ。早く。わたし、とっても渇いているのよ・・・
あのひとたちの血をくれたら。あなたのお嫁さんになってあげる。
ママも姉さんも、妹さんも。
あなたのこと、叱るだろうけど。
わたしもいっしょになって、あなたのこと、叱ってあげる。
いけない子ね、って。
わたし、これでもけっこう。情の深い女なのよ。


あとがき
あとは、お定まりのパターン、でしょうか?(笑)
この女の子がほんとうに合コンの一員だったかどうか、わかりません。
けれども彼の嗜好をそれとなく察知して。
すべてを彼に合わせて、近寄っていった彼女のなかに。
血を求める本能以外の恋心がきざしていなかったとは。
誰にも言い切ることはできないのでしょう。

茶髪・・・いまは、なりをひそめてしまったようですが。
あえてすこし前の流行にさかのぼって、すれていない彼女の面影をきわだたせてみました。

十五の春 ~桜の樹の下で~

2007年02月25日(Sun) 07:47:03


さくら、十五の春。
登校時間のピークは、壮観な眺めである。
おそろいのセーラー服の襟が、列をなすほど道いっぱいに広がっているのだ。
それでも、今朝にかぎっては。
そのなかの誰もが、いつになく言葉少なで。
ほとんど声ひとつ交わさずに、校門目ざしてざくざくと足音だけを響かせている。
きのうまでとおなじセーラー服を着ているはずなのに。
どの子も少しずつ大人びて、輝いているようにみえるのは。
ほんとうに、気のせいだけなのだろうか?

折りよく晴れた、昼下がり。
式を終えた女学生たちは三々五々、散り散りになろうとしている。
さくらは仲良しの同級生たちに、じゃああとは誰々ちゃん家(ち)でね、と約束すると。
人目を避けるようにして、体育館の裏手へと足を向けた。
ついさっきまで卒業式が挙行されていた体育館の出入り口は、固く鎖されていた。
なかにはもう、誰もいないのだろう。
常緑樹の生垣は濃い茂みをつくっていて、向こうからの視界を遮っている。
生垣と体育館の間にあるスペースは、意外に広く、野外の大広間といいたいくらい、がらんどうの安らいだ空間になっていた。
しずかに降り注ぐ太陽の光は、冬とはいえ眩しいくらいの輝きをもっている。
「来たわよ」
さくらは独り、あたりをはばかるように声を投げた。

フフフ・・・
含み笑いは意外にも、すぐ後ろからあがっていた。
ぎょっとして、振り向くと。
黒衣の男はいつものように、細面の面立ちをひどく蒼くやつれさせていて、
それでも含み笑いを浮かべた唇は、血のように紅い。
「もうっ」
さくらは持っていた鞄で、男をどやしつけるようにして小突いた。
「おどかさないでよ」
気の強いわりに小心なのだ、と。
お互い認識し合っていた。
だれにも知られたくない、触れられたくない弱い一面を。
さくらは彼にだけは、甘えるようにさらけ出している。

男はさくらの腕を取り、裏手の広場のいちばん奥まったあたりへと、
引きずるようにしていざなってゆく。
「な、な、なによ。もぅ!気が早いんだからっ」
さくらは口を尖らせて制止したが、もう相手の意のままにされるのをそれほど恐れているわけではない。
「ひと目に触れさせまいとしているのが、わからんかね?」
「意地悪!」
口ではそういったものの、さくらは狭く生垣に区切られたその場所を嫌ったわけではなかった。
頭上には、桜の老木。
大きく広がる枝ぶりに、眩しいほどの装飾をほどこして。
誰見つめるものもない広場の片隅で、己の美を誇らかに輝かせている。
それがいましも、はらり、はらりと緋の花びらを音もなく地面にそそぎはじめていた。

さくらも、この花びらのようだね・・・
黒衣の男は、じいっとさくらを見おろしている。
クサいセリフ・・・
いつもならそういって、ますます口を尖らせているはずなのに。
なぜか残り惜しげに見つめてくる目線に戸惑いながら。
ひっそりと、つぶやいている。
「この制服・・・きょうがさいごだから。少しくらいなら、汚してもいいよ」
黒のセーラー服の襟首には三本、白のラインが鮮やかに走っていて。
襟元を引き締める純白のタイは、今朝おろしたばかりの新品だった。
首を噛まれて紅く染まったタイは、彼にプレゼントすることになっている。

どこから引っ張り出してきたのだろうか。
男が手にしているのは、荒縄だった。
「軽く、縛るよ。いいかい」
男の趣味、なのだろう。ぬめるような真っ赤な唇に、得意げに白い歯をのぞかせている。
「やらしい唇。もうだれかさんの血を吸ってきたの?」
さくらは男の頬を、遠慮なくつねった。
血の気のない男の頬は、ひどく冷たくこわばっている。
「冷たいね・・・」
ささやきに、同情がこもっている。
言わずとも、知れている。
男はさくらひとりの血を目あてに、きょうはやってきたのだと。
さくらの血で、あたためて・・・
いつの間にか、じぶんのほうから。
背中を桜の老木にもたれかけていた。
そう、甘えるように。

ぐるぐる、ぐるぐると。
男は愉しそうに、さくらの胸に、縄を巻きつけてゆく。
桜の木に、縛りつけてしまおうというのだろう。
きりりとしたセーラー服に、粗野な縄目がひどく不似合いだった。
知的で清楚な制服姿に、ヘビのように巻きついて。
少女を荒々しく縛る縄。
ぎゅっ、と食い込んでくる縄目のきつさに、幾度となく声をたてそうになったけれど。
さくらはけんめいに、それをこらえている。

フフフ・・・
男がふたたび、得意げな含み笑いを洩らすと。
「やらしい」
さくらはイマイマしげに、つぶやいた。
そうしてふくれるところが、かわいいね。
「フン、だ」
ふて腐れた言葉が、甘えを帯びていた。
では、食いつくぞ・・・
きゃっ!
さくらはさすがに、正面から覆いかぶさってくる魔性の者から顔をそむけて、わが身をかばおうとしている。
制服の二の腕に食い込んでくる掌が。尖った爪が。
縄目よりもきつく、少女の膚に迫ってきた。

「痛くしないよね?だいじょぶだよね?お洋服、血で汚れたりしないよね?」
なんどもうるさいくらいに念を押しながら首筋を噛まれていった、出会いの頃。
「髪の毛、伸ばしているのよ。どうしてかわかる?そのほうがあなたに噛まれても、ばれないでしょ?」
だれにも気づかれないように、上手に噛むのよ。
いまでは、そんなふうに。
お嬢様みたいにわがままに、駄々をこねるようになっていた。

ア・・・
一瞬の口づけ。
わざと顔をそむけたのは。
首筋をあらわに男にみせるため。
マフラーを取った白いうなじは木洩れ陽のなか、輝くようにきわだっていたが。
男は魅せられたように、無遠慮なまでにむぞうさに、少女の素肌を吸っている。
痛いっ。やだっ・・・
とっさに身をよじろうとするのを抑え込まれて。
抑え込まれたまま、無抵抗な素肌に鋭利な異物ががりりと食い込んでくる。
ひりひりと疼く傷口から挿し込まれる牙が、ひときわつよく埋め込まれた。
ひっ。
さくらのあげたうめきが、面白かったのだろう。
きゅうっ。
ひとを小ばかにしたような、あからさまな音をたてて。
ごく、ごく、ごく、ごく・・・
まるで酔い痴れるように、清冽なほとびに唇を浸してゆく。
セーラー服の胸元に、紅いものをかすかに散らせながら。

白のラインと、真新しいタイと。
どちらもが、紅いものにかすかに染まっている。
少女はそのありさまを、値踏みするように、ちらと見定めて。
ヒドイわねぇ。
口では非難していたが。
男に賞でられたことは、まんざらでもないらしい。
黒い影はいつの間に、足許にかかがみ込んでいた。
あっ、やらしい・・・
少女のとがめる口ぶりが、お気に召したらしい。
「足許を、イタズラさせてもらうよ」
うふふ、ふふ・・・
吸血鬼は人のわるい含み笑いを、クッ、クッとこらえながら。
黒のプリーツスカートのすそをつかんだ。

「きょうだけは、特別よ」
少女はちょっと自慢げに鼻を鳴らした。
かすかな身じろぎに合わせて、スカートのすそが、さわっと揺れる。
いつも学校に履いてくるのは、白のハイソックスなのだが。
きょう、晴れの日にひざ小僧を包んでいるのは、薄っすらとなまめかしい黒のストッキングだった。
「どお?似合うかな?」
高校に入ったら、毎日履いて行くんだよ、と、少女はつけ加えた。
似合うよ。とても素敵だ。
男は珍しく素直に、初々しい肌の輝きに見入っている。
無邪気にぴちぴちとした足許だった。
真っ白なハイソックスが真っ赤になってしまうくらい、吸いすぎてしまったときもあった。
そのふくらはぎが、いま見違えるほど大人びた風情を帯びて。
黒のストッキングのなか、素肌を妖しく滲ませていた。
なよなよとした柔らかいナイロン・ストッキングは。
いつものハイソックス脚とおなじあしらいをしたら。
他愛なく、すぐに破けてしまうだろう。
男は縛りつけられたまま直立した少女の足許に、まるで王女さまに接吻するようにうやうやしく、唇を吸いつけてゆく・・・

誰にも、見えないんだよね?わたしたちのしてること。
失血のせいだろうか。
少女の声色は、放心したようにうつろになりかけていた。
あぁ、見えやせんさ。
たんねんに、くまなく唇をすりつけていったふくらはぎから、
黒のストッキングはオブラアトみたいに他愛なく噛み剥がれてゆく。
胸元に撥ねた血は、黒い生地にまぎれて目だたなかったけれど。
むざんに凌辱された足許は、どきりとするほどのコントラストだった。
こうなることを予期して、鞄のなかにはちゃんと履き替えを忍ばせていたのだが。
履き替えたあとも、もういちど。噛ませてあげようか?
少女がいつになく、優しいのは。
遠く転居してゆく彼女にとって、きょうが彼との別れの日だったから。


あれからなん年、経ったかしら。
二十年ほども経っただなんて。とても実感できなかった。
齢よりずっと若く見えるのは。
まだ彼の挿し入れてきた牙に含まれた妖しい毒液が、まだ彼女の皮膚の下にひそんで、妖しく息づいているせいなのだろうか?
あれから、彼の影をずっと追いかけて。
永く、独身をつづけていて。
それでも、いまの夫にめぐり合って。
ごくありきたりだったけれど、幸せな結婚生活を十なん年も過ごしている。
おなじ街に戻ってきても。
街並みがいつか、ちがう場所と見間違えるほどに変わってしまうように。
彼の姿はもう、さくらの周囲にしのぶことはできなかった。
娘ももう、大きくなっている。
さくらとおなじ、黒のセーラー服を着て。
いまどきは少し珍しくなった白のハイソックスを履いて。
お気に入りの制服姿を見せびらかすように、無邪気に背筋をピンと伸ばして、学校に通っている。
けれども娘が、ショートカットの髪形を変えて。
肩先まで髪を長く伸ばすようになって。
鞄のなかに黒のストッキングをひそかに忍ばせるようになった、と知ったとき。
さくらもまた、昔のように髪を伸ばし始めている。

「あら、ママったら。地味ねぇ」
娘は生意気にも、母親の外出着にけちをつけている。
「ブラックフォーマルだなんて。まるでおそうしきみたい」
あなたの制服の色に合わせたのよ。
母親のほうも、負けていなかった。
ひざ丈のスカートからのぞくふくらはぎは、肉づきのいいふくらはぎがにょっきりとのぞいていて。
むっちりと豊かな脚線は、淡い光沢を帯びた黒のストッキングにいっそう輪郭をきわだたせている。
「きれい・・・」
娘は母の脚線に、いつになく息を呑んでいる。
わたしも履いてっていいかな?黒のストッキング。
わざわざ断るまでもなく、だれに言われるでもなかったのに脚に通していた。
薄墨色の薄い靴下に包まれた少女のつま先は、母親ほどの濃艶な色香は帯びないまでも。
冷えたフローリングに映えて、いままでとはまるで別人のようななまめかしさを含んでいる。
「あらぁ。お似合いじゃないの」
さくらもまんざらでもなさそうに、娘の足許に目線を吸いつけていた。
「比べっこしてみようかしら。ほら」
と、スカートの下をさらけ出すように。
まだまだか細い娘の脚と並べようとした。
「もう、ママったら!」
娘が照れたように身を翻すと。
さくらはフフッ・・・と、得意げに鼻を鳴らした。
女学生姿の娘をまえに、まるで自分も娘の昔に戻ったように。

寄って行くんでしょう?
え?ショウちゃん家(ち)で、二次会やるのよ。
でもそれって、夜からでしょう?
たたみかけるように訊いてくる母親に、娘は観念したように口をとざした。
体育館の裏手、でしょう?
どうして知っているの?
娘の部屋から出されるくずかごの中、ふだんは入念にくるめられた紙袋が、いつになく口を開いていて。
なかから薄い靴下の切れ端が覗いていたのを、さくらはなんども目にしていた。
ふたりはいつか、人もまばらになった校門を背にしている。
なにもかも察しているらしい夫は、
仕事があるから・・・と、妻に耳打ちをして。
晩ご飯は、いらないよ。お祝いは明日にしようね。
念を押すようにそう告げて、さりげなくその場を立ち去っている。

体育館の裏手は昔と変わりなく、人影ひとつ見当たらなかった。
こっちでしょ?
だれも知らないはずの、生垣のむこうに。
桜の老木はあのころとおなじように、爛漫の桜を戴いていた。
きれいねぇ。
あれ以来。とうとういちども目にすることのなかった、桜の老木に。
さくらは眩しそうに、目を細めた。
背後から声がして、娘がびくっと振り向いた。
「おや、お母さんまで、連れてきたのかい?わたしが喉をからからにしていたのを、ご賢察のようだね」
懐かしい声だった。
あのころと同じような、人のわるい言い草が。胸の奥にじわりとなにかを滲ませる。
さくらはゆっくりと、振り返る。
黒衣の男はあのときとおなじように、こわばった頬を蒼ざめさせて佇んでいた。
一瞬。すべての刻が停まり、ふたりのあいだの空気が停まった。
娘はなにか言おうとしたが、言葉を忘れて見つめ合うふたりのなかに割り込むのをはばかるように、とうとう口を開かなかった。

年の順だね・・・?
向かい合わせに、縛りつけられて。
競うように並んだひざ丈のスカートを、じゅんじゅんにたくし上げられていって。
かわるがわる、黒のストッキングに包まれた脛を。
なぶられるように、吸われてゆく。
慕いよってくる唇の熱さが、女たちを酔わせはじめていた。
母の首筋にも。娘のうなじにも。
ひとしくつけられた、紅い痕。
理性を奪わせるほどに啜られた血潮は、いま吸血鬼の胸の奥を焦げるほど燃え立たせているにちがいない。
血を抜かれたあとの、心地よい虚脱感と。
熱っぽい誘惑にわが身をさらす、陶酔と。
着衣を通して食い込んでくる、きつい縄目の束縛感と。
せめぎ合う欲情は、いつかしつようにからみ合っている。

正直におっしゃい。ほんとうは、娘のほうが魅力的なんでしょう?
ガマンなさらなくっても、いいのよ。もっとあの子の血を吸ってあげて。
いやいや、熟女の血も、好みでね。
やらしいわ。
娘さんと、差をつけようとしたね。インポートもののストッキングを履いて来るなんて。
あら、ヘンなことまで、詳しいじゃない。
きみのパンストも、初々しくて素敵だね。たっぷりいじらせてもらうよ。
あらっ、いやらしい。こんなに破くなんて。
いい眺めねぇ。母さんのときは、もっと破いていただいたのよ。
それからさいごにね。
あの生垣の向こう・・・まだ畑のままなのね。
きょうはあなたひとりで・・・あちらのほうに、連れて行っていただきなさい。
きっと、いいことがあるから・・・

お母さんはそこで、娘さんの嫁入りを眺めているんだよ。
もちろん貴女のお愉しみも、とっておくからね。
吸血鬼は、まるで悪ガキのように、イタズラっぽく微笑んで。
まず娘のほうだけ縄をほどいて、生垣の裏へと引き込んでゆく。
お父さん、どこでご覧になっているのかしら。
さくらは夫の意図を、とうに見抜いていた。
しつようにセクハラされた脚を、軽くすくめながら。
悪い子だった昔のころみたいに。
くすっ、とイタズラっぽく、笑っている。
見逃しちゃ、ダメよ。これからいちばんいいトコなんだから。


あとがき
こんなに長く描くつもりは、なかったのですが・・・(^^ゞ
とても愉しく、描いてしまいました。^^
えっ?まん中が抜けていますって?
いちばんおいしいところは、あとに取っておくものなのですよ。
卒業式のお母さんと、おんなじかな? ^^

遅ればせながらの再あっぷ情報(2007.2.22)(^^ゞ

2007年02月24日(Sat) 13:09:17

「服を引き裂く女」(2006.1.28「吸血幻想」掲載)
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-861.html
「浮気女房の生態」(2005.12.28「吸血幻想」掲載)
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-862.html
「えっちな吸血」(2005.12.29「吸血幻想」掲載)
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-863.html
「ショーツを引き裂いて(2005.12.29「吸血幻想」掲載)
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-864.html
21・22日の両日にわたりましてあっぷしたのは、過去ブログ「吸血幻想」の再アップ分でございます。
ここんとこ忙しくて、新作を考える余裕がございませぬ。
よって、消えてしまった旧ブログのお話などをお目汚しまでとご披露いたしました。
かいせつもろくすっぽつけなくて、すみませぬ。^^;

夜の同伴者

2007年02月20日(Tue) 07:53:35

車窓を通してほのかに灯りを滲ませているのは。
マンションの五階にある自宅。
あの明るい窓の向こう側。灯りの下には。
夫がくつろぎ、息子や娘がはしゃいでいる。
それだというのに。
わたしはなぜ、こんな暗くて狭い空間で。
悩ましく熱っぽい吐息をつきつづけているのだろう。
押し倒された助手席のシートのうえ。
のしかかってくるのは、軽い体重の持ち主だった。

悪戯坊主と呼び名された、息子の友だち。
はじめて襲われたのは、晩ご飯に戻ってこない息子を呼びに行ったときのことだった。
背丈の届かないその子は、わたしを座らせるなり、脚に咬みついてきた。
肌色のストッキングが破けて、ちりちりとした伝線がスカートの奥にまで忍び込んだとき。
わたしはくらっとなって、じゅうたんの上にまろび臥していた。
ようやく首に咬みつけるね。
その子は嬉しそうにはしゃいだ声をたてると、
まるでリンゴをかじるように、むぞうさに。
うなじをがりり・・・と噛んできた。
夢中に酔わされてしまった、電灯の下。
半開きのドアの向こう側にいた息子はいつの間にか洋間に入り込んできて。
恥ずかしそうに、にまにまと笑いながら。
服を脱がされてしまったわたしを、見おろしていた。

マンションのエレベーターが、ぐうぅーんと鈍い音を立てる。
高層ビルでもないのに耳がきぃんとなるのは、失血のせいだろうか。
それともまだ体の奥に疼くもののせいだろうか。
おかえりなさい。おかえり・・・
扉をひらくと。
のどかな声が、明るい居間から届けられてくる。
夫は息子や娘を連れて、玄関まで迎えにきてくれた。

お疲れさん。顔色よくないね。
夫が悪戯っぽく、にやにや笑いをする。
ちょっと、がんばり過ぎたのかな、ですって。
もぅ。
照れ隠しに口を尖らせると。
母さん、ストッキング、破けてるよ。
息子がからかうように、見あげてくる。

後ろからくっついてきた息子の悪い友だちは。
母親を犯されている少年や、妻を寝取られている亭主のようすを、
それは面白そうに窺っていたけれど。
も少し、母さん借りるね。きみの部屋でも、いいだろう?
ボク、きみのお母さんを自由にできるんだよ。
見てても、いいかい?
いいとも。
お父さんには、ナイショだぜ?
わかってるって。
聞えないようにね。ばれないようにね。
夫はわざとおどけたそぶりで、そっぽを向いている。

悪い子たちね。でも足りなかったら、お姉さんが相手しようか?
娘は年上の余裕たっぷりに、弟たちを優しくにらむ。
男の子たちはウフフ・・・と、人のわるい微笑を交し合いながら。
帰りに必ず寄るから。お部屋で待っててね。黒のストッキング履いて。
いつも学校に履いていくやつでいいから。
うなずき合う三つの黒髪が、灯りの下で妖しく輝いている。


あとがき
同年代の子に、自分の母親を自由にされるのは。
どんな気分のものなのでしょうか。
おなじ高さの目線のものが、絶対的な存在をわがものにしてゆくことは。
対等なはずの幼馴染みが”主”と映るようになるのでしょうか。
それとも案外、母との距離を近めるのでしょうか。

姦の輪

2007年02月20日(Tue) 07:35:54

おや、奥さんお出かけなんですか?もうこんなに遅いのに。
深夜とつぜんに訪いをいれてきたSくんは。
わざとらしく、奥の部屋まで覗くそぶりをした。
子どもたちも、もう寝ているのだよ。
わたしの言葉にハッと我にかえったようになって。
かれらしくない無遠慮な非礼に、へどもどと詫びを口にしている。
どうしたんだい?今夜は、きみらしくないな。
わたしがあえて、おうようにかまえると。
かれはくず折れるように、ソファに腰かけて。
なにかをふり払うように、整えた髪の毛をくしゃくしゃにまさぐった。

長いものですよねぇ。時間が経つのって。
そうかね?
どのような相槌をすればよいのか。戸惑いながら。
なにを抑えかねているのか、それとなくうながしている。
しばらくは軽い酩酊を覚ますように天井をふり仰いでいたかれだったが。
やがて思い切ったように、口を切った。
うちでね。洋子のやつが、犯されているのですよ・・・
そうか。やっぱりね。
ご存知だったのですか?
あぁ、なんとなく、だけれどね。
そうですか。
かれはしばらく、口ごもっていたけれど。やがて思い切ったようにまた口を開いた。
あなたは、平気なのですか?奥さんが吸血鬼に犯されているのに。
若い子は、ことばを知らないというけれど。
それはあるていど、しかたのないことなのだろう。
語彙の問題だけでなく。気遣いを生み出す経験が、乏しすぎるのだから。

ご覧。
わたしは紙と、一本の鉛筆とを手にとって、かれの視線をテーブルのうえに移してゆく。
きみのところにくるやつは、どんな好みがあるんだね?
緑のスカートを、穿かせるんです。
あぁ。なるほどね。
わたしは緑、と紙に書き込んだ。
ストッキングが破れたまま、外出先から戻ってくるのだね?
ええ。
髪の毛は、こう、後ろにきっちり束ねて出て行って。それをほどいて戻ってくるだろう?
ええ。
わざとこれ見よがしに彼を家に呼んだり、
スカートの裏地が濡れているのが見えるようにイスの背もたれにかけておいたりするだろう?
ええ。・・・どうしてそれを、ご存知なんですか?
ふふっ。
わたしが笑みを浮かべることができるのは。・・・そう。経験のせい。

恥ずかしがりやのやつと。見せつけたがるやつがいるらしくてね。
ほら、見てご覧。
わたしは手にした鉛筆で、丸を三つ、描いている。
そうして上から順々に指差しながら。
だれとはいわない。いちばん上が、きみ。つぎのが、わたし。
その下が、隣のご主人。そう思ってくれたまえ。
いちいち名前なんか、書かないのだよ。お互いの名誉のためにもね。
A、と書いて。「これが、恥ずかしがりや」
B、と書いて。「これは、見せつけたがりや」
わかるね?と促すと。少年のような肯きがかえってくる。

Aのところから引いた線を、まっすぐいちばん下の丸印に結びつけた。
わざと、ぐいっと。力を込めて。
かれは、ハッとしたようだった。
お隣の奥さんは、かれの妹だった。
ここにはふたり、女のひとが住んでいるね?
ええ。
矢印で結んだ大きな丸印のなか。わたしは小さな×印をふたつ、書き入れている。
そして、矢印をふたつ。
一本引いた直線を、ふたつの×印に食い込むように、書き込んだ。
どういう意味か、わかるね?

加虐というべきか。被虐というべきか。
ちょっと蒼ざめたかれの頬を愉しむように。
わたしはつぎつぎと、線を広げてゆく。
無数に書き連ねた丸印が、Aから発する矢印に捉えられていった。
丸印のなかに二つ三つ書き入れた×印に、矢印の先端が突き刺さるとき。
かれはなにを、想ったことだろう?
さてと、それから。
わたしはちょっと、深く短いため息をついて。
こんどはBから、かれの丸印へ。
そのうえBから、わたしのところへ。
ぐいっと思い切りよく、線を引いている。
無言のままに。
かれの丸印のなかに書き入れたふたつの×に、矢印の先端を食い込ませる。
そして、わたしの丸印のなか書き入れたみっつの×にも。
おなじ血を、好むようだね。彼ら。
同居していると、手近なのかなって想っていました。
互いの笑みに含めた憐憫は、だれに向けたものだったのだろう。

こういう関係を、なんて呼べばいいのだろうね。
ふたまたに分かれた、2本の矢印。
行き先はかれのところと、わたしのところ。
互いの妻を、おなじ男に犯されている。
二軒の家を、行きつ戻りつをくり返しながら。
きのうは、わたしのところ。
きょうは、かれのところ。
それぞれの妻を、盗み出すようにして。
血を啜り、われを忘れさせて。
いちばんおいしいところを、たっぷりと。
啖らいとってゆく。
彼との関係は、兄弟というのだよ。
ひとりの女を共有する関係。
その女とは、ほかならぬ最愛の妻。
では、きみとわたしの関係はどうなるのだろうね?
かれはちょっとの間、考えていたが。
いい言葉が、思いつかなかったのだろう。
濃い関係・・・ですね。
ひと言だけ、相槌を打ってきた。

きみのところは、真っ最中なのかね?
えぇ、家を出るときに、押し倒されていましたから。
ゾクゾク、しただろう?
さとられたら、カッコ悪すぎます。
そんなことはないさ。それとなく気づいてもらったほうがいい。
彼のためにも。きみの奥さんのためにも・・・ね。
軽い微苦笑が、かれの頬を染めている。
どうやら血の気が、もどったようだ。
すこし、元気になったかな?
若いひとはね。いつも生き生きとしてなきゃ、いけないのだよ。
奥さんも、生き生きとしているだろう?
なにしろ若い血を、折々啜られなければならないのだから・・・ね。

女房のやつ。
きみの奥さんを食べるまえの、オードブルか食前酒だったのだろうよ。
あいつ、お宅には車で乗りつけてきたのだろう?
真っ黒のセダン。
そう。おっしゃるとおりなんですよ。
人の気も知らないで、家の直ぐ後ろに、停めたんですよ。
あそこは空き地になっているから。
だれが来ているのか、ご近所からまる見えになるんです。
よかったじゃないか。
きみたち夫婦が、愛されている証拠だよ。
ついでにいうとね。
うちの女房も、じつはさらされているんだ。
あからさまに見るやつは、ほとんどいないだろうけど。
みんな遠目に、見ているのさ。
黒のセダンの車内では助手席のシートが押し倒されていて。
女房のやつ、眠りこけているんだから。
そうだよ。もちろん。服を乱したまま・・・ね。


あとがき
まわりくどいお話になっちゃいましたね。^^;
あのひとと、あのひとが。
アイツと、彼女が。
相姦関係の絆は、いくつもの妖しい弧を描いて。
幾重にも連なる輪へと、発展するのでしょうか。
輪が「和」につながるのが、この村の特異な傾向のようです。

娘の卒業式

2007年02月19日(Mon) 08:16:58

時間に遅れるわよ。早くね。
いつも甲高く響く、妻の声。
きょうはいちだんと、息せき切っているように聞えるのは。
ふだんとちがう日だから。
着込んだばかりの紫のワンピース姿は、きりりと引き締まって、
ばっちりと化粧を刷いた顔だちには、
いつもとちがった凛とした緊張感を漂わせている。
そう。
今日は娘の、卒業式。

はぁい。まだだいじょうぶだって。
制服に着替えた娘は、母親をたしなめるように苦笑している。
いつのまにか、大人びていた娘。
気がついたときには。
目線はもう、対等の大人の女の色を帯び始めていた。
この日のために用意したらしい、真新しい純白のタイが、父親の目にも眩しい。
濃紺のプリーツスカートの下からのぞいた白い脛は。
いつもの白のハイソックスではなく、
薄墨色をした黒のストッキングのなかで、ほのかな輝きを滲ませている。
大人の色。
それがいつか、無邪気なばかりだった少女を染めようとしていた。

晴れていてよかったわね。
妻はホッとしたように、青く澄み渡った空を見あげている。
雨だと、足許が汚れるから。
お出かけのときに、ブーツを履くことはめったにない。
匂いがつくでしょ?失礼ですから・・・
意味の通りにくい言い訳をつぶやきながら、
きょうも脚に通すのは、黒のパンプス。
いつもより、かかとの高いやつだった。
そういえば。
鈍い光沢をにじませた、紫のワンピースも。
てかてかと光るパンプスも。
この日のために、買い揃えたもの。
一日買い物に付き合わされた・・・といいながら。
彼女はわたしの好みを、じゅうぶんにとり入れてくれた。
なにしろそれは・・・たいせつな日に彼女を彩る晴れ着なのだから。

門を出ると、出会いがしらに、お隣のご家族といっしょになった。
「おはよう、さやかちゃん」
「あら、みどりちゃん、いいわね。パンスト履いてるの?」
お隣のさやかちゃんは、差をつけられたなって顔をして。
悪戯っぽく、娘の顔を盗み見るようににらんでいる。
えっ?似合う?
娘は黒ストッキングの脚をみせびらかすようにして、
ストラップシューズのなか、白く透ける足の甲をじぶんでも眩しそうに見つめていた。
「おめでとう」「おめでとうございます」
めったに顔をあわせない父親どうしも、挨拶を交わしている。
御覧になりましたか?家内の足許。
隣のご主人は、目で促している。
奥さんの穿いているのは、濃紺のストッキング。
派手でしょう?けれどもね。アレのつぎの日の朝には、必ず脚に通すことになっているようですよ。
ウフフ。
たくまぬ含み笑い。すこし、失礼だったかな?
けれどもつぎには、私が妻の脚へと目線を促している。
御覧ください。黒ですよ。
どういうことか、おわかりですよね?
帰りはちょっと、寄り道をします。
明日の朝には、奥さんとおなじ色のストッキングを穿いていることでしょうな。
今度含み笑いを返すのは、向こうのご主人の番だった。

卒業式に涙も笑いもあるのは、いつの時代も変わらないものらしい。
ようやく散りかけた人ごみから、名残惜しげに身を離すと。
娘はさかしらな顔になって、わたしを見あげてこういった。
だいじな儀式が、あるんだよね?
きらきらと輝く、てらいのない瞳を、知らず知らず避けるように受け流して。
家庭教師の先生にも、お礼を言いに行かなくちゃな。
わたしは第二の目的地に、妻と娘を伴ってゆく。
お父さんは、これからお仕事なんでしょ?
ああ、だから玄関先で失礼するよ。
なにもかも分かっているのよ。
娘は目でそう告げながら、それでもしおらしく微笑んでいる。
ちょっぴり悪戯っぽく、小首を傾げて。

では私たちは、此処で・・・
妻はちょっと気遣わしげに、私のほうへとまなざしを送る。
ああ、先生によろしくね。
はい。
いつになく従順に、頭を垂れる妻。
先生の家の玄関にむかって身を翻すとき。
照りつける暖かい陽射しをうけて、ふくらはぎを包む薄手のナイロンが、なまめかしいてかりを滲ませた。
むっちりと肉のついた脛を彩る、妖艶な靴下は。
すんなり伸びた少女の足許を染める質素な通学用の黒ストッキングと、好一対をなしている。

あっ、はぁ・・・うううん・・・っ
ふすまの向こうから洩れる、うめき声。
ほかの者には決して聞き分けることは出来ないのだろうけれど。
ひくく震える声の主はあきらかに、妻だった。
タイミングをずらしてお邪魔をした、先生宅。
娘はじゅうたんの上、制服に包まれた伸びやかな体を長々と伸ばしていて。
介抱するために抱き上げたなよなよとした肢体は、ぞくりとする重さを秘めている。
黒のストッキングが、伝線している。
納得ずくで、噛ませたのだろう。
ふくらはぎの肉づきのいちばん良いあたりに、ぽっちりとふたつ。
綺麗に並んでつけられた、吸血の痕。
お嬢さんは処女のまま、しばらくとっておきますよ。
一見まじめで小心そうな先生は、蒼白い頬に妖しい翳りを滲ませながら、そう告げていたが。
約束どおり。娘の身持ちはたしかなようだった。
でも、かわりに奥さんを。
求められるままに。
かけがえのないものを、謝礼として譲り与えてしまっている。

ベッドのうえ、真新しいワンピース姿が、舞うように乱れてゆく。
はだけた濃い紫の着衣から、うわぐすりのような艶を帯びた白い肌が見え隠れしている。
たくし上げられたワンピースのすそからは。
娘どうよう剥ぎ堕とされた黒のストッキングが。
ひざ上のあたりまで、ずり下ろされている。
やるなぁ。先生。
なぜか同類として、賞賛を送ってしまっているわたし。
もう家庭教師と教え娘という関係が解消になるのなら。
これからお目にかかるには。
奥様の愛人として・・・しか、ございませんな。
喜んで、迎え入れますよ。
震える声で、いけないことを口走ってしまったのは。
妻と娘が享けた傷痕を。いちはやくわたしがつけられてしまったせいなのか。
わたしは首筋に浮いた痕にそっと手をあてがって。
じんじんと響くような疼きを秘める痕を、軽く撫でつける。
手にしているのは、出掛けに妻から渡されたメモ。
さらさらと思い切りのよい走り書きには、こう綴られてあった。

晴れの日に 貞淑妻も 卒業ね♪


あとがき
祥子様の「淑やかな川柳」に出品した句から、こんなお話を作ってみました。
http://syoukobekkann.blog92.fc2.com/blog-entry-22.html
相変わらず、歪んでいますね。^^

襟元

2007年02月18日(Sun) 15:35:29

あら。どうしたの?
小枝子は大きな瞳を挑発的に輝かせて、じいっと窺うようにオレのことを見つめている。
彼女の襟元に滲むのは、赤黒い痕。
それは夕べオレがつけたものだった。
初めて、彼女の生き血を吸って。
処女であることを、確かめて。
引きずり込むように押し倒した褥のうえ。
犯していた。
親友の彼女と知りながら。

秘めておきたいことなのに。
目ざめたオレのまえ、現れた小枝子が着ている青一色のワンピースは。
わざわざ選んだかのように、胸ぐりが深くて。
ふつうなら決して覗くはずのない部位につけた傷口を、ありありと露出させていた。
いいじゃないの。
小枝子はそれでも、瞳をきらきらさせていて。
貴方に愛された、証なんだもの。
このまま街に出て、いっしょに歩いてちょうだい。
そうしたらだれもがみんな、あたしが貴方の女になったんだなって、わかるから。
行き先はもちろん、彼の家♪
わかっているわね・・・?

小枝子はウキウキと、足許をはずませて。
かかとの高い靴を履いて、わざとのように足音を響かせている。
足許を彩るストッキングは、ぴちっと鮮やかな伝線を走らせていて。
女が夕べ、連れの男にどんな目に遭わされたのか、なによりも雄弁に語っている。
そこまでしなくとも。
いいのよ、いいの。あなた、自分のしたこと、恥ずかしくないでしょう?誇れるでしょう?
彼のまえでも・・・ぜひそうしてもらいたいのよ。
この女に初めて穴を開けたのは、オレなんだって。
自慢してやってほしいのよ。

なんて女だ。
内心の苦りをかかえながら。
オレはまるで、自分がさらし物になっているような心地がして。
早く目的地に着かないかと思いはじめた。
しかし、しかし・・・
目的地で待っているのは、彼女の許婚。
そして、なによりもオレの親友。
どこにも、逃げ場はない。
逃げも隠れもできない。
捨て身になった女は、とっくにみずからの退路を絶っている。

家についた。
聞きなれたインターホンの音が、これほど忌まわしく響いたことはない。
あわただしく開かれた玄関から出てきたのは、親友のイクオだった。
きっと誰かが早くも彼女とオレが腕を組んで歩いているのを目撃して、
おせっかいにも注進したのだろう。
ヤツがオレを見るなり、オレの視界からすべてが消えた。
がつん!
これ以上はないというくらい重たい鉄拳が、オレを数メートルもすっ飛ばした。

冷たい木枯らしに包まれている気配に目ざめると。
オレはまだ、ヤツの家の門前に大の字になったままだった。
道行く人が嘲るように振り返り、知らん顔をして立ち去ってゆく。
ちく生・・・などと。いえた身分ではなかった。
小枝子の姿は、どこにもなかった。
堅く閉ざされた玄関の向こうに、首尾よく迎え入れられたのだろうか。
そこではどんな愁嘆場が、くり広げられているのだろうか。
こんなにあと味のよくない朝は、生まれて初めてだった。
もちろん、親友の女に手を出したことも・・・

夜。
携帯がぶるぶると、音も立てずに身震いをした。
番号は・・・イクオのものだった。
挨拶抜きだった。
来いよ。
ぶすっとした声色は、故意に感情を隠している。
なにも、逆らえない。
ヤツがいちばん大切にしていたものを、オレは傷つけてしまったのだから。
手酷く殴られてよかった。心からそう思った。
まだひりひりと顔面を覆う痛みが、まだしも罪悪感を減殺している。
取るものも、とりあえず。
オレはひとり、夜道を出かけていった。

人通りの絶えた街頭で。
オレはふたたび、ヤツの家のインターホンを鳴らす。
軽い違和感を覚えた。
音が鳴らなかったのだ。
電源が、落ちているのだろうか?
ちょっと訝ると、やがて音を忍ばせて玄関が開かれて。
そこにいたのは、イクオの母親だった。
しょっちゅう行き来をしていたから。
イクオの母親のことは、よく知っている。
血を吸う種族だと知りながら。
遊びにいくといつも気さくにほほ笑んで、お茶を淹れてくれたものだが。
さすがにきょうというきょうは、別人を見るような目でオレを見、顔をこわばらせている。
カラン。
施錠されていない門をひらく、かすかな音。
どうぞ。庭に回ってください。
その声さえも、極端にトーンを落としている。
首を打ち落とされれれば、永遠といわれた生命も尽きるはず。
オレはふと、そんなことさえ思っている。

庭はシンと静まり返っていた。
誰も、いないのかと思った。
リンドウの木陰に、女の影がたたずんでいるのに気がつくまでに、だいぶ時間がかかった。
なにか言おうとする俺の口許を、影の主は手で覆って制していた。
甘い息遣いは、小枝子のものだった。
裸になるのよ。
感情を消した女の声は、いきなり命令口調。
どうにでもなれ、と。オレは腹をくくって、いわれるままに服を脱ぎ捨てた。
寝て。
女はねだるように、オレに強いている。
そうじゃない。こうよ。
地べたに仰向けになって、大の字になったオレのうえに。
小枝子がのしかかってくる。
着けているスカートをそよがせて、奥まであらわにすると。
むき出しのオレの腰にすり寄った彼女の脚は、太ももまでのストッキングに区切られているらしい。
すべては、闇のなかの出来事だった。

自然の帰結。
知らず知らず逆立ってきたオレのものを、くわえ込むようにして。
熱を帯びて潤んだ小枝子の陰部が、根元まで覆っている。
はぁ。はぁ。
ひぃ。ふぅ。
女はわざとのように、息を荒げて。
オレの上でじぶんから、上下動を繰り返し始めている。
どういうことなのだ?いったい、なにがあったというのだ?
オレの問いに応えるように。
女は耳もとに口を寄せてきて、
見ないでちょうだい。
そう、囁いてくる。
見るな、と言われれば。しぜんと目を転じてしまうものだろう。
ぴったり鎖されているはずの雨戸が、わずかに開いていて。
そのすき間から覗く目の輝きを、オレは確認していた。
獣なみに発達したオレの本能は、目線の主さえ特定している。
ヤツが・・・?
訊かないで。
女の声は、いつしか濡れを帯びている。
はぁ。はぁ。
ふっ。ひぅ。
わずかな月影が、庭先をさすころ。
小枝子は蒼白く瞳を輝かせて。
白い吐息を、焔のようにゆらめかせて。
ひたすら、オレとのまぐわいに耽っている。

呼んだら・・・必ず来るのよ。
あたしは彼に嫁いで、彼の妻として貴方に犯される。
それがあたしと・・・彼の願い。
いいわね?約束よ。
帰りには・・・お義母さんにも逢ってあげて。
見たでしょう?
犯される女の眼をしていたでしょう?
誰にもこんなに好かれて・・・憎たらしいひと。
女の指がオレの頬を、あとがのこるほど手酷くつねりつづけている。


あとがき
なんだかひどく、風変わりな話に仕上がりました。
親友の婚約者を襲い犯してしまうという。
それも、処女を奪ってしまうという。
もののはずみ・・・とはいえない過ち。
取り返しのつかない事態を迎えたとき。
女はみずからそれをあらわにし、
男はそうした女を終生受け入れると誓ったようです。
奇怪な結論はそのまま、もの狂おしい闇に溶けて、
これらの男女を魔性の淵に引きずりこんでいったのでしょうか。

♪リンク更新情報♪

2007年02月18日(Sun) 09:33:52

「淑やかな彩」でおなじみの祥子様が、新しいブログを立ち上げられました。
「淑やかな川柳」
http://syoukobekkann.blog92.fc2.com/
皆様から投句を受け付けて、それに祥子様がコメントを添えられるという形式です。
広く投句を募集されるとのこと、どうぞ皆様もふるってご参加くださいませ。^^
祥子様お手製の返歌を頂戴できるかも♪

悪鬼様の「SM川柳」が現在休止状態となり、(;_;)
そのせいでもないのですが、「詩歌」のカテゴリはいまだにゼロ行進が続いています。(^_^;)
一念発起して、川柳の勉強でもはじめますか・・・(^^)

再あっぷ情報(紹介しそびれ分です。^^;)

2007年02月18日(Sun) 07:56:40

紹介しそびれました。(^^ゞ
「かえり道」(05.8.28掲載)
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-847.html
公園で吸血鬼に襲われた少女。
そのとき現れたクラスメイトの取った、意外な行動とは?

主人公のユリは、別のお話で、兄とその許婚であるべつのクラスメイトと妖しい関係を演じています。
(「幻覚」http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-441.html
この月のおわり頃掲載された「夏の終わり」では、若代ちゃんという少女がやはりおなじ公園らしいところで襲われています。
(「夏の終わり(05.8.31掲載)」http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-177.html
ベンチに腰かけているところを・・・っていうのは、今だにけっこう”萌え”だったりします。^^
いけない趣味、ですね。
この若代ちゃん、もしかすると~というかたぶん間違いなく~「かえり道」の最後に噂されている少女と同一人物です。
>「若代ちゃん、よく履いているよねぇ」
>「こんど連れてきちゃおうか」
罪のない会話ですよね?^^
おなじ日に描かれた「新学期」では、こんどはその若代さんが、クラスメイトに吸血鬼の存在を信じさせてしまおうとしていたりして、
祥子さんがいわれた「連歌」ではありませんが、妖しい連環がどんどんつづいていくんですね。^^

娘交換

2007年02月18日(Sun) 07:26:11

吸血鬼の夫婦がふた組、隣同士に棲んでいた。
たがいに、年頃の娘をもっていた。
娘たちはふつうの人間として育ち、仲良く連れだっておなじ女学校に通っていた。
やがて、娘たちの血を吸わねばならないときがきた。
じぶんの娘に牙をたてるのはしのびないと、親たちはお互いの娘を交換することにした。
娘には、よく言い含めて。
学校帰りに、互いの家に立ち寄らせることにした。
娘たちは聞き分けよく、親たちのいうなりにすると約束した。

やあ、ゆかりちゃん。いらっしゃい。
お邪魔します。おじさま、おばさま。
おや、さと子ちゃん。早いお帰りだね。
お待たせしたら、いけないと思って。
娘たちは軽い含み笑いさえ浮かべながら、紺色の制服のスカートをそよがせて、玄関の敷居をまたいでゆく。
どこからでも・・・どうぞ。
うつむきがちに、なりながら。
娘たちはお行儀よく、ソファに腰かける。
親どもは、いまごろじぶんの娘がどうしているかと気遣いながら。
それでも欲望にはさからえずに、
たがいに顔を見合わせながら、隣家の娘に近づいていった。

わたしは、首筋からいただくわ。
あなたは・・・そうね。
脚からにしてちょうだい。
互いの娘は、決して犯さない約束になっていたから。
妻たちはおのおの、自分の夫にそういいきかせて。
夫たちは、白のハイソックスに包まれたふくらはぎに、
片方の家では、ハイソックスをずり下ろして。
もう片方では、ハイソックスのうえから。
飢えた唇を吸いつけていった。
少女たちは、つま先立ちになっている。
ひと足はやく、おばさまたちがうなじに咬みついていたから。
父親たちは、つま先立ちになった足の甲を、じゅうたんの上に抑えつけて。
いつまでもいとおしむように、撫でさすっている。
キュッと引きつったふくらはぎの肉に秘められた昂ぶりを、ありありと感じながら。

娘たちの家庭訪問は、週にいちどと、決められた。
つぎの週も。そのまたつぎの週も。
娘たちは、互いの家を訪問しあった。
いつもにこやかに、ちょっぴり恥らいながら。
親友の親たちを相手に、うら若い血を恵みつづけていった。
あるときのこと。
ふたりは連れだって、親たちを勉強部屋に招いた。
あのね。お話があるんです。
三つ編みに結わえたおさげを肩先に揺らしながら。
娘たちはほんのりと、恥じらいながら。
あなたから・・・
いえ、あなたから。
ちょっとのあいだ、譲り合ったすえ。
片方の娘が思い切ったように、口をひらいた。
ほんとうのお父様やお母様のお相手をしたいんです。
生んでくれて、育ててくれて。
こんなに美味しい血を宿すようになったこの体を。
どうか体感していただきたいんです。

親たちは、しばし顔を見合わせていたけれど。
娘たちの優しい言葉に、目をうるませて。
やがて誰からともなく、じつの娘のほうへと寄り添っていって。
その身を支えるようにいたわりながら。
たがいにべつべつの部屋へと、わかれていった。
母さんの血の味と、よく似ているね。
いいえ、貴方の血と、そっくりだわ。
戯れに似たいさかいを、口々に交わしながら。
制服ごしに挿し入れられてくる牙に。
娘たちはうっとりとなって、柔らかな素肌をさらしている。
隣人にもてなすときよりも、ずっと安らかにほほ笑みながら。
手加減しながら差し入れられてくる牙に、幸せそうに頷いていた。
彼氏を見つけるときは。
きれいなお母様や、妹さんがいるひとにするわね。
少女たちは、ふふふ・・・と、イタズラッぽく笑みを洩らして。
いたわるように滲まされる牙を、心地よげに受け入れてゆく。

カップリング

2007年02月18日(Sun) 07:15:23

吸血鬼が男を襲うとき。
ほんとうの目当ては、彼らの妻や、母親や、娘だったりするという。

夜明けにはまだ刻がありそうだった。
その若い男と、年配の男とは。
よろめくようにして。手を取り合って。
墓地の通用口に間近かな、一軒の家を目ざしていた。
かすかな灯りのともる家は、墓守りの家。
目ざめた屍鬼たちを迎えるため。
墓守りの妻は、ひとり正装に身を整えて。
冴えた目をして、待ち受けているという。

薄い靴下を履いた男の脚が。廊下をかすかに、きしませる。
障子の向こうから、かすかなうめき声が洩れるのを耳にすると。
やはり・・・な。
声にならない呟きを漂わせて。
そのまま、妻の寝室を素通りしてゆく。
屍鬼が、よみがえる夜。
心優しい墓守りは。
ひと刻彼らの飢えた欲望に、最愛の妻をゆだねるという。

お気が済まれましたか?
しずかな声色は、乱れた息を気ぶりにさえ交えずに。
ひっそりとした目線とともに、男たちにねぎらいを与えている。
恐れ入りました。
いま目のまえで着衣を乱している、かわるがわる犯した人妻に。
男どもは、鄭重に頭を垂れた。
お招きしてありますのよ。
なんのことだろう?
音もなく開かれたふすまの向こうには。くろぐろとした闇が広がっていたが。
闇に解けていたふたつの影が、にわかに動きをあらわにして。
顔を見合わせる男たちのまえ、うずくまるように。
さっき男たちがみせたのとおなじくらい鄭重な礼をおくってきた。

ああ。
そのせつは・・・
男どもが慇懃に挨拶をかえしたのは。
それぞれのまえにうずくまる影たちが。
かれらの血を一滴あまさず吸い尽くしたものだと察したからだ。
私どもの血は、お役にたちましたかな?
年配の男のほうが。唇に、笑みさえ含んで。慇懃に尋ねている。
働き盛りの血と。
ひとりが、つぶやくと。
まだまだ、若々しい血。
もうひとりが、それに和した。
ぞんぶんに、たんのうさせていただいた。
男たちは、ふたたび鄭重に、頭を垂れている。
もう、お察しのことと思うが。
ほんとうの目当ては・・・ね。
男たちは、ちょっとだけ顔を見合わせて。
それでも。わかっていますよ・・・というように。
苦笑をもって報いている。
おわかりのようですな。そう。ほんとうのお目当ては、ご婦人がただったのですよ。
若いほうを、指差して。
あなたのお母上と、妹ご。
年配のほうに、笑みかけて。
あなたのご妻女と、ご令嬢。
ご令嬢・・・という言葉に。あっ・・・とうめいたのは。
意外にも。若いほうの男だった。
春に、祝言を挙げることになっているのです。
そうですか。
影は、息ひとつ乱さずに。
おめでとう。
ひと言そういって、青年を祝福した。

どこまで・・・すすまれたのでしょう?
いちばん気になっていたことを、おそるおそる訊ねる青年に。
だいじょうぶ。処女はまだ、きみのためにとってあるよ。
青年の前の影が、親しげにつぶやいた。
親しさのなかに、感じられるのは。
彼とおなじ血をその身に宿すものを。
ふたりも牙にかけたからなのだろう。
母ごも、妹ごも。たいそう美味であった。
あぁ・・・
青年は、さっき洩らしたのと、負けず劣らず深い吐息を洩らしている。

あの・・・妻は。ふつつかではありませんでしたでしょうか。
失礼。奥様だけは。ご主人になり代わって。
さいごまで、遂げてしまったのですよ。
奥様は、ご立派に振舞われました。
ああ・・・
妻の貞操が喪われたことを告げられて。
男は白髪まじりのじぶんの髪をつかんで、一瞬悶えるように天を仰いだ。
ご立派に振舞われました。
どういう態度をもって、ご立派というのであろうか。
気丈に耐えたのか。放恣に乱れ果てたのか。
あらぬ憶測が脳裏によぎり、飛び交った。
けれどもさすがに年配らしく。
すぐに、落ち着きを取り戻して。
そちらのほうも・・・愉しんでいただけましたか?
かえって穏やかに。妻を犯したものの感興を求めていた。
あなたに、似合いのカップルだとお褒めいただけるのを・・・楽しみにお待ちしていたのですよ。
思い切り扇情的な応えを。
男はすでに、余裕たっぷりに受け入れている。

母娘ながら。かわるがわる、むさぼられて。
闇のなか。密やかな音をたてて啜られた、ふた色の血。
おなじ香りを、熱情のこもった血潮に秘めて。
さいしょのうちは、母は娘を守ろうとし、娘は母をかばおうとした。
けれどもやがて。
なにかが女たちを目ざめさせると。
こんどはちがう情熱が、互いに先を争わせていた。
さいごには。
これからは、大人の時間ですよ。
母親たちは、年頃の娘たちに、言い含めるようにして。
吸血鬼とふたり、寝所に姿を消したという。

お嬢様がたの純潔を・・・あきらめる気にはなれません。
影どもは、むざんな宣告を青年にくだしている。
妹も、婚約者までも。
べつべつの吸血鬼に、ふたりながら処女を奪われてしまう。
忌まわしい運命に。
けれども青年の唇に浮いたかすかな笑みは、すでに妖しささえよぎらせている。
わたしのために、取っておかれた・・・というのは。
つまり、そういうことなのですね?
犯すことが、許されぬなら。
せめて、いちぶしじゅうを見届けるほうが、良いと思わないかね?
花嫁の処女喪失シーンなど・・・そうそうおがめるものではないからね。
うふふ・・・ふふ。
含み笑いを交し合う異形の影が、四つ。
舅となる男は、未来の娘婿の肩を小突くようにして。
妻のところも、見届けたかったよ。
ゆがんだ口許に漂う笑みは、しんそこ羨ましそうだった。


あとがき
襲われた二組の母娘。
ひと組は、父親を。ひと組は、跡取り息子を。
まず、拉し去られたうえで。
思いを遂げに訪れた影たちのまえ、喪服の胸を開いていきました。
我が家でくり広げられたであろう、淫らな恋絵巻を。
目ざめた父親や花婿も、口々に祝福して、影たちと和解をします。
こんどは彼らが、ご近所の人妻や娘たちを狙う番でしょうか?

十二人斬り

2007年02月18日(Sun) 06:40:19

一夜に十二人の女の血を吸うと、吸血鬼の持つ魔力がいちだんと凄みを増すという。(真偽不明)

その夜パーティーに招かれたのは、十二組の夫婦。
思い思いに着飾った、年齢もとりどりのカップルで。
大広間は、人いきれでむせ返るほどだった。
スーツにワンピース、ブラックフォーマル。
結婚披露宴から抜け出してきたようなカクテルドレスの若妻は、新婚さんなのだろうか。
妻たちはいちように、色とりどりのストッキングで足許を染め、
夫たちも例外なく、スラックスの下に薄い靴下を履いていた。

あ・・・
ひと組めのカップルは。衆目の見つめるまえ。
暖炉間近のソファーに座ったまま。
覆いかぶさってくる黒い影に身をゆだねていた。
さいしょにご主人が、じぶんのスラックスのすそをひざまでたくし上げて。
女もののストッキングのように透けた長靴下に、脛をなまめかしく輝かせていた。
周囲に見せびらかすように、ぬるりとした光沢をよぎらせて。
圧しつけられた唇の下。
ぴちっと走る伝線に、ちょっぴり顔をしかめている。
お目当てだった奥さんは。年配ならではの気品を、オーラのように全身に滲ませて。
細いうなじをしゃんとさせて、夫の酔態を見守っていたけれど。
やがて自分の番が訪れると。
すすんで、おとがいを仰のけて。
ぁ・・・
妙なる声を、ひと声洩らして。
濃いねずみ色のストッキングに包まれた足首を、キュッと折り曲げた。

それからあとは、順々に。
○○ご夫妻、どうぞ。
△△家の奥方は、こちらへ。
招きを受けるたび。
夫婦で呼ばれたものは、身を寄り添わせあいながら。
独りだけ招きを受けた夫人は、謝罪するように夫に一礼して。
重く閉ざされた扉の奥へと消えてゆく。
ぁ・・・
・・・ぅぅぅ・・・っ
洩れるともなく洩れてくるうめき声に。
順番を待つ一同や。独り待ちを強いられた夫たちは。
ほのかに妖しい熱情を、たぎらせてゆく。

お宅は、なん番目でしたか?
四番目に、引き入れられちゃいました。(^^ゞ
そちらは・・・?
エエ、六番目。
あなたのとこは、まだのご様子ですね。
えぇ、じつはさいごなんですよ・・・
低い声でひかえめに交し合わされる、夫たちの会話。
手にしたくじを、もてあそぶようにしていたが。
紙片に記されているのは、書きなぐったような数字だけ。
忌まわしい儀式がなん番めに訪れるのか。
夫婦にとって重要な数字は、あえてぞんざいに走り書きされていた。
おや。だいぶ長いようですね。
えぇ。じつは今日が結婚記念日だったのですが。。。
そうだったんですか。それはおめでとう。
貞操喪失記念日にして差し上げたいと申し出られまして。・・・断り切れなかったのですよ。
ウフフ。それは一生の思い出になりますねぇ。
ええ・・・正直じんじんしています。^^;
ご一緒なされば、よろしかったのに。
いえ、それは。・・・
声を忍ばせたご主人は、扉の向こうから現れた白髪の執事に招かれるまま、自分もいそいそと扉の向こうに消えていく。

服を破られたり。高価な衣装に血を撥ねかされたり。
ほとんどの女たちが、身づくろいをしたあとはラフな服装に戻っているなかで。
ひと組、べつの衣裳に着飾っている夫婦がいる。
おや。まだ襲われていらっしゃらなかったのですか?
いえいえ。着替えもおしゃれに・・・と妻が言い張るものですから。
謎のような含み笑いを、目交ぜに隠している。

さいごの十二組めの夫婦の血で、喉をぞんぶんに潤した男は。
今宵さいごに餌食にしたご婦人を伴って、扉の向こうからふたたび姿を現した。
よほどのあつかいを受けたのだろうか。
人妻は夫と彼とに挟まれて、よろめきながらあらわれて。
肩で息をしながら、かろうじて身を支えている。
今宵は格別のご厚意を賜った。篤く御礼申し上げたい。
気品のある口調に、新たに得た精力をみなぎらせて。
一同をぐるりと、見回して。
着飾っていた夫婦に目を留めると。
そこのご夫婦だけは、此処で夜明けを迎えられたい。
ひと言そう告げて、散会を宣告した。

どうなったのかしら?あのご夫婦。
妻は首筋に疼く痕をやわらかくまさぐりながら、甘えた声で夫にたずねる。
おや、知らないのかい?
あのご夫婦が、十三組めになるのだよ。
十二組といいながら。ほんとうは十三組なのさ。
指名を受けた幸運なカップルは。
きょう一日・・・夫婦ながらいつくしまれるという。
うちも次回は・・・願ってみるかね?^^


あとがき
ひとりひとり。ひと組ひと組を。たいせつに味わうのも作法なら。
わざと大勢、十把一絡げに招き入れて。
ぞんざいに描いた数字で、運命を割り振って。
支配欲をぞんぶんに発揮させて、手荒な楽しみに狂うのも。
ひとつの作法・・・といわれています。
そうした打ち解けた会合に招かれるのは。
夫婦にとって、一種の栄誉とされていて。
招かれたカップルたちは、家族にも隣人にも告げずに、夜更け足音を忍ばせて、邸に向かうといわれています。

再あっぷ情報(07.2.17)

2007年02月17日(Sat) 07:37:03

再あっぷ情報です♪
「妻のご機嫌」(05.8.25掲載)
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-848.html
「妻の自室」(05.8.25掲載)
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-849.html
「留守宅の妻」(05.8.7~9掲載)
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-850.html

・・・てなわけで。^^;
今回「大」不評であった「妻の自室」ほかは、じつは再あっぷだったのです。^^;
違和感なくお読みいただけたでしょうか?
それとも、作風?に若干違いが出ていましたでしょうか?
「留守宅の妻」に若干の後記を加えたので、むし返しなのがばれるなあと思い、同時に紹介させていただきます。(笑)

描きすぎました。^^;

2007年02月13日(Tue) 07:39:10

今朝のあっぷは、ことごとく。
「萌えことばあれこれ」というテーマの、随筆のようなものです。
「血」「衣裳」「ママ」「父親」「寝取られ」「姉妹」「婚約者」「人妻」などなど、
柏木ワールドになくてはならないさまざまな言葉たちについて、思うこと感じることをつづってみたのですが。
うっかり長くなりすぎました。
お好みの部分だけでも、御覧になって下さいませ。(^_^;)

萌えことばあれこれ ~人妻~

2007年02月13日(Tue) 07:37:02

あるかたのところを読んでいてふと思ったのですが。
人妻、というキーワードは、それ自体ひとつの”装置”だと思うのです。
人の妻。決して手を出すことを許されないという、禁忌を秘めた存在。
禁忌というものはどうしてこうも、蜜のような誘惑を漂わせるのでしょうか?^^
かるがると服を脱ぎ、ベッドのうえで裸になる。
そういう女には昂ぶらないという男性は、いまの若い人のあいだでも決して珍しくはありません。
秘められるから。禁じられるから。罪の意識や恥じらいゆえに。
男は昂ぶりという魔法にかけられてしまうのかもしれません。

密通、という行為には。
裏切りの側面がつきまといます。
それがやはり毒液のような蜜と化する場合もすくなくないのですが。
柏木ワールドで展開される婚外婚では。
しばしば夫の同意のもとに、それがおこなわれます。
最愛の妻の貞操を捧げるという行為が、夫の愉悦をさえ伴うのです。
昂ぶる夫のまえ。情夫のまえ。
貞潔を堕としめられてゆく女たち。
さいしょの発想は。
同意なき凌辱や、裏切り行為としての不倫には私じしんが萌えなかったから。
ところが。
配偶者による認知、というプロセスを経ることで。
行為はいっそうの妖しさを増してしまったようです。
”人妻”について描くべきことは、もっとたくさんあるはずなのですが。
そろそろお時間が、迫ってきたようでございます。^^;

萌えことばあれこれ ~婚約者~

2007年02月13日(Tue) 07:30:45

純潔といえば。
もうひとり、いましたね。処女の生き血を提供できる存在が。
そう。
恋人や婚約者です。
姉妹のように、おなじ血・・・というわけにはまいりませんが。^^
通常のばあい、実の姉や妹が自分の配偶者にもなるというケースはまれ(なはず)ですから。
未来の花嫁が果たす役割は、大きいです。

彼女たちはたいがいのばあい。
少女以上熟女未満、という年代にいます。
柏木ワールドでは、多くの場合、もちろん処女♪
彼女たちの血は、気前よく?吸血鬼に分かたれます。
”家に入るもの”という古いしきたりをもった村の場合。
因習
という、妖しくマガマガしいものが。未来の花嫁を縛ります。
そう。
祝言を挙げるまえの、通過儀礼として。
家に巣食う吸血鬼に血を与え、純潔を試されなければならないのです。
姑となる女性とともに、吸血鬼の邸の門をくぐる許婚たち。
それを見送る、未来の花婿たち。
いずれ妻となった彼女たちを送り出すようになる、事前練習として。
わななく胸を抑えかねながら、着飾った後ろ姿を見送る羽目になります。

未来の花嫁が喪うものは、処女の生き血ばかりではありません。
しばしば純潔そのものが、狙われる対象となってしまいます。
家によって。
嫁として迎え入れられてから貞操を侵奪されるばあいと。
処女をすら譲り渡すことを余儀なくされてしまうばあいと。
ふた通り、あるようですが。
吸血鬼との親密度が増すにつれ、花嫁の純潔は危うくなるようです。
婚約者の純潔を、他者に捧げてしまう。
現実には、考えられませんよね。そんなこと。
こんな世迷言をほざいている柏木ですら、
じぶんで犯すほうがずっといいって思っていますから。^^
それでいながらこんなストーリーにも魅かれてしまうのは。
どういうわけなのか、いまだに”謎”です。(笑)
しいていえば。
いちどしかない貴重な体験という、かけがえのないものを。彼女もろとも捧げてしまう。
たいせつなものを捧げること自体への萌え、でしょうか。
あるいは。
「視る」ということが、それほどまでに。
直接の行為以上に、男を惹きつけてやまないものがあるのでしょうか。
謎が謎を呼びそうなので、このあたりにしておきます。^^;

http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-339.html

萌えことばあれこれ ~姉妹~

2007年02月13日(Tue) 07:18:54

「柏木さんには、お姉さんがいらっしゃるでしょ?」
あるファンのかたから、そんなメッセージをいただいたことがあります。
リアル柏木の家族構成は、あえてナイショにしておきますが。
その方がそう思われたのは、
登場する女学生が、小さな男の子が見あげる年上の女性という雰囲気を持っている。
といったあたりが根拠だったようです。
ここに登場する女学生って、わりと古風ですよね。
昔ながらの女学生も、いるところにはいがいにいたりするようですが。
少数派であることは、まぬかれません。
非常に残念なことではありますが。

柏木ワールドにおける姉や妹は、たいがいの場合。
吸血鬼と仲良くなった男の子が、お姉さんや妹の血まで吸わせてしまう。
という形で登場します。
年齢が近いぶん、距離感は母親よりも間近です。
血の性格、という意味では。
両親の血を享けている・・・ということで。
まったくおなじ血をもっている、といえます。
ボクの血だけでは、足りなくなってしまったとき。
もっとも優良なスペアが、姉妹の血でもあるのです。
そして、なによりも。
彼女たちは、母親の提供できない重要な要素を備えています。
処女であること、です。
処女のまま提供できる・・・ということは。
純潔な血を尊ぶ吸血鬼にとっては、こたえられない魅力でしょう。
仲良しのボクとおなじ香りを秘めた、おいしい生き血なのですから。
血を吸うばかりではなく。純潔をもイタダイてしまうことで。
彼女たちの未来まで支配してしまうことも、しばしばあるようです。
よほど愛してしまった場合、なのでしょうけれど。
(あるいは、よほど血が不足しているときだったりして・・・ ^^;)

親に対する利害関係という意味でも、近い位置にあります。
さきに姉妹を紹介してしまった場合などは。
ママの血も、吸わせてあげようよ。
そんな大胆な計画でも、いちばん頼もしい協力者になります。
母親と同性、ですから。
女として、母親の目論見を察知していたりします。
(未亡人で無意識に男の影を追っていたり・・・みたいな)
そんなわけで。
時には未来の花婿までも巻き込んで。
お話はどこまでも、広がっていってしまったりもいたします。
おーいっ。^^;

http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-653.html

萌えことばあれこれ ~母親寝取られと妻寝取られ~

2007年02月13日(Tue) 07:02:45

母親寝取られ、という用語があるそうです。
通常母親との間に性行為が介在することは稀なので(^^)、ちょっと不思議な言葉なのですが。
そうとしかいいようのないゆがんだ感情がこの世に存在することも、否定できません。
ママが犯されている想像に昂ぶりを覚えるときと。
妻が弄ばれるという想像に昂ぶりを覚えるときと。
本質的に、どれほどの差があるでしょうか。
肌を接するほどに身近な女性が、理性ある日常から転落して。
ただの娼婦どうぜんに、狂わされてゆく。
”落差の美学”というべきものが、そこに感じられます。
ヒロインが母親であれ妻であれ。
禁忌を伴う行為が、一種の解放感、超越感を伴う愉悦とともに眼前に展開する。
そういう意味では、似通ったものが感じられます。

じっさいの”寝取られ”は、夫婦の性行為を他者に禁じられたり、とか。
パートナーの女性の辱めかたが、あまりにもコアだったりとか。
柏木ワールドのようなやわな世界ではなかったりもしますので。
いちがいにどうこうということは、とてもいえなかったりするのですが・・・

萌えことばあれこれ ~父親の存在~

2007年02月13日(Tue) 06:55:18

柏木ワールドでは、どちらかというと父親は脇役的な存在です。
ある意味、当然なことではあるのですが。(笑)
彼らが登場するのは、多くは一連の行為を追認する存在として・・・だったりします。
かわいそうなお父さんですが。^^
不義密通のたぐいが、父親の権威で許され認められて。
そうすることで、初めておおっぴらに愉しまれることになるようです。
伝統的に支配されている一家だったりすると。
父親じしんが、主導的な役割をもっていて。
妻や娘、息子の許婚にいたるまで。
順ぐりに、整然と。支配者の欲求に饗してゆきます。
それはそれで、怖すぎる権威ですが。^^;

http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-263.html

萌え言葉あれこれ ~ママ~

2007年02月13日(Tue) 06:50:43

母親という存在は、男の子にとってはもっとも身近な異性。
それも、オトナの異性。
男の子の多くが、彼女の振る舞いで「女性」に対する認識を形作っていきます。
そういう意味で。あるいは妻以上に重大な存在だったりします。

ママを犯される想像って、奇妙にそそられます。^^
意外に多くの男の子が。
そうした想像で、己を昂ぶらせていたりします。
ふつうの母親にとって。
息子がそんな想像をたくましくしているなど・・・おぞましいかぎりなのでしょうけれど。
このての、ほんらい口にすることもできないくらい、とても恥ずかしい妄想は。
決して憎悪から生まれるものとばかりは、かぎりません。
それはしばしば、深い情愛の裏返しだったりもするのです。

彼らが想像するママは、多くの場合。
父母面談や、結婚式みたいに改まった場に出るときのように。
きちんと着飾っていたりします。
着飾ったママが、衣裳を乱されて・・・というのがいいみたいです(他人事のように・・・^^;)
折り目正しい日常との、きわだった落差がそこにあります。
下着がしばしば、特別視されるのは。
それを直接目にする機会が、きっとすくないからなのでしょう。
隠されているものが、さらけ出される。
そのことだけで。特別な情況を想定することができますから。
特別な刻 というものには。
ある種の開放感が、つきまとうことがあります。
禁忌が禁忌でなくなる刻  なのですから・・・

ママが脚に通しているストッキングは。
しばしば、絶好の餌食?にされてしまいます。
男の子が履くということが、まず考えられない。
大人の女性固有の衣裳。
それはまちがいなく、”大人の女性”そのものともいうべき、シンボル的な存在なのです。
ブラやパンティとちがって。
生地の薄さ、透けかげんも、見逃しがたい要素です。
白い肌を滲ませるなまめかしさも、そうですが。
女性の衣類のなかでいちばんもろくて、しばしば他愛なく破けてしまいます。
上品なのに、脆い。
これは、そそられますね。無条件に。^^
いまこうして見ると。
脆い
という字は。
肉づきに、危ない、って描くんですね。
文字どおり。アブナイ字です。^^;
なよなよと頼りない女の衣裳が、ちりちりと裂け目を広げてゆく。
破れ、というものは隙につながります。
隙なく装われたはずの大人の衣裳に秘められたすき間。
伝線とおなじくらいの鋭さを、秘めています。^^
母親が身につけた大人の理性。
しばしば子どもを厳しく縛る、そうしたいましめが、いっきに乱される。
・・・・・・特別な刻には、開放感がつきまとう。
さっき、そう描きました。

ママが犯される想像に萌える男の子には、ふた通りあるようです。
ひとつは、自分もいっしょになってヤりたい、というもの。
もうひとつは、影からこっそりと覗いてみたい、というもの。
後者はなかなか、あやういです。^^
他者に母親を支配されてしまう。
そうした欲求を、感じさせます。

母親からの支配から脱却したい。
そうした欲求とは、裏腹なものの存在も、あるようです。
じぶんのすべてでさえある存在を、支配されてしまう。
それは自分自身が支配されることへの、欲求につながるからです。
ときにそれは、渇望にちかいはげしさを秘めています。
おじさん、吸血鬼になってよ。
なついている大人の男性に。
父親の代役をねがう息子たち。
実の父親に支配されることは決してがえんじることのないはずの彼らが。
しばしば他人の男性の支配下に、嬉々としておかれてゆきます。
ママの体内をめぐる血は、ボクの血とおなじもの。
ともどもに嘉されてしまうことで。
別な種類の解放感を味わうのかもしれません。

萌え言葉あれこれ ~素肌と着衣~

2007年02月13日(Tue) 06:29:25

着衣の絵。
それもやや着乱れているほどのそれは、全裸の絵よりも風情を伴うように感じます。
下品でロコツなポーズを取ったものよりは。
まだしも、ただの着衣画像のほうが萌えを覚えます。
柏木独特の感覚なのかもしれませんが。
世の男性のなかには、婦人服のつうはんの画像に萌えるかたがたすら、少なからず存在するのです。
つうはんの画像が小さくなって、ディテールがわかりにくくなったことと、相関関係があるのでしょうか。ないのでしょうか。

素肌に、じかに・・・
ということは。
恋人同士、夫婦のあいだでのみ許されるはずの行ない。
それをあえて許す。ということは。
許された接近の度合いを示すもの。
そこまでは、どこの世界でも常識です。
プレイ(と呼ぶべきなのか・・・?)が、しばしば着衣のまま行われるのは。
まずひとつには。
素肌を許してはならない。
そうした禁忌があるから。
そしてもうひとつには。
着衣そのものを愉しませてしまう。
むしろこちらのほうが、禁忌そのものかも。(笑)

着衣はたいがい、清楚で礼節を感じさせるもの。
身にまとう衣裳が上品であればあるほど、相手への礼節を示します。
襲われる相手に対して、礼節もないでしょう、ですって?
いえいえ。あるのですよ。深いでしょ?^^
堕とすのが貴婦人であればあるほど、男は萌えたりしますから。
女もまた、貴婦人として装って、みだらに堕とされてゆくのですよ。

未亡人が、喪服姿で。女学生が制服姿のまま。襲われるのは。
己の立場をわきまえた上で・・・という意味もこめられています。
全裸で乱れ狂ってしまうより。
身分や立場を意識しつづけながら犯される、ということのほうが。
より濃厚なものをかきたてられます。

夫に操を立てなければならないのに。
勉学に励み清楚に身を保たなければならないのに。
正装のまま、襲われてしまうのです。
衣裳を堕とされる、という行為は。
身分を堕とされる。忘れさせられる。
そんな側面を伴うようです。

衣裳を汚されたり破られたりすることは。
女性にとっては、血を吸われる以上に屈辱を伴うはずなのですが。
あえてそれを許す、ということで。
相手への、格別の好意を示すことをも意味します。
きりっとした衣裳を乱されることで。
みずから娼婦に堕ちることを、無言の裡に告げながら。
あえてそうすることは、相手が特別な存在だから。
だからこそ。
ブラウスにほとぶ血潮がしみ込むほど。
ストッキングの裂け目がひろがるほど。
女たちは、愛されている。
女たちも、愛している。
そういう関係を裏づけるのでしょうか。

萌えことばあれこれ ~血~

2007年02月13日(Tue) 06:17:49

いろいろと変わったモチーフの頻出する柏木ワールド。
言葉の裏に秘められた萌えのさまざまを思いつくまま綴ってみます。
まずは、”血”から。

~洗脳・支配の側面から~
血を吸い取られることで、理性や魂を奪われて。
心の奥底まで支配されて、洗脳されてしまう。
ドラキュラものでは、かなりオーソドックスなプロットです。
理性を喪った男女は、生命の源泉である己の血をすすんで与え、
婚約者や父親、夫の目を盗んでまで、彼との逢瀬を遂げようとします。
理性を奪われることで。
ほんらい屈辱や悲しみ、憤りを伴うはずの数々の”喪失”が。
淡い愉悦を秘めるようになってゆくのです。
日常から夢への、妖しい遊離。
ワールドのなかでは、必要不可欠な要素です。

~一体感・共有の側面から~
血を吸い取られる、ということは。
己の血を、吸い取るものと共有する行為。
 (行為、なのですね。あくまでも。
  たとえそれが、一方的に『されて」しまうことであっても。)
許容という要素、あるいは友愛という要素も認められると思います。

血は精力・生命力の象徴ですから。
それを与えることは、相手に恵みをほどこすことにもつながります。
人それぞれ違う血をその身に秘めている、というところからすると。
己自身の形質を、他者に与え共有することにもつながります。
男性の場合。
あいてが己の血を共有するのであれば。
彼が妻や婚約者、母親を襲ったとしても。
それは一部分、かれ自身が愛する女性を襲っていることを意味する場合もありそうです。
そうした不埒を、他者に”許してしまう”のは。
かれが秘めてしまった己自身ゆえにかもしれません。

異性のパートナーもろとも、血を吸われるときには。
吸血鬼の体内でふたりの血が交じり合うことで。
パートナーとの情愛がひとつの頂点に達します。

母親とか。血のつながった肉親ともども血を吸われるときには。
おなじ血をともにするものとならんで、ひとしく血を愉しまれてしまうことで。
かれに、”家”をも愛されてしまったことを意味するのかもしれません。
母親の血を吸って、娘の血をも求める。
たんなる”飢え”を満たしているだけでは、必ずしもなくて。
おなじ香りのする飲み物を欲する、という、ごく”自然な”欲求だったりするわけなのです。

いずれしても・・・”血”というものは。
たんなる物質であることを超えた妖しさを感じさせる、ミステリアスな液体のようです。

おさななじみ

2007年02月12日(Mon) 05:11:57

うらやましいな、きみんちは。
ボクもママのこと紹介して、ママの履いている肌色のストッキングを破ってもらおうかな。
庭先から覗き込んでいるのは、ボクの家のリビング・ルーム。
部屋のなかで、母さんと姉さんは、くすくすと、くすぐったそうに笑いながら。
かがみ込んでくる吸血鬼のおじさんのまえ。
黒のストッキングを履いたふくらはぎを、惜しげもなくさらけ出して。
飢えた唇を順ぐりに、吸いつけられちゃっている。
やだぁ。破けた・・・
ダメよ、大きな声出しちゃ。
つま先立ちをしている姉さんは、
足許をオトナっぽく彩る薄墨色の靴下に、かわるがわる脚を吸われながら。
ちりちり、めりめりと、薄黒いストッキングを噛み剥がれてしまっていた。

おさななじみの、澄夫くんは。
吸血鬼に襲われるボクの母さんと姉さんが、きゃっきゃとはしゃぎながら戯れるありさまを。
じいっと、食い入るように見つめながら。
ボクのママも、紹介したいな。
きみみたいに、いさぎよく。
思い切って、襲わせてみたいよね。
ふるえる声を、ひそめながら。
いつかそんなふうに、口走っている。

ハイソックスの女子学生が、ストッキングに履き替えるように。
ボクたちも、半ズボンから制服の黒のズボンになっていた。
おなじ高校に通うようになってからも。
澄夫くんとは、仲の良い間柄。
やあ。
大人しい彼は、照れくさそうにほほ笑んで。
しばらく、もじもじためらっていたけれど。
ほら。
握り締めているのは、肌色をした着衣の切れ端。
ぴんときたボクが、手を突き出して。彼の手からとりあげると。
はらりと長く、ひざのあたりまで延びている。
母さんのストッキング、とうとう破らせちゃった。
彼女ができたんだ。
夏にきいた、そんな告白よりも。
冷え冷えと澄んだ室内を揺らすいまの声色のほうが。
いっそう切に、響いてくる。

よかったね。おめでとう。ママ、嬉しそうだっただろ?
うん。それはもう。
お気に入りのブラウス、惜しげもなく濡らしちゃって。
脚ばたつかせて、はしゃぎきって。愉しんでたよ。
もっと早くに、紹介するんだったね。
パパにはナイショ、なんだよね?
ボクが声をひそめると。
そういうことになっているんだ。
意味深な返事が、かえってくる。

ひっそりと身を沈めたのは、澄夫くんの家の庭先。
いつものお礼に、覗かせてあげるから。
そんなお誘いに、一も二もなく舞い上がって。
深夜ボクを送り出してくれた母さんも姉さんも、苦笑いするばかり。
見ていたのね?ふたりとも。悪い子たちね。もぅ。
非難の声が、なぜか得意そうにはずんでいた。

きゃあっ。あぁ・・・
抑えたぶん、切なげにひびくかすれた声に。
澄夫くんはどきりと、首をもたげていた。
あぁ。もうやられちゃっている。
かさかさに乾いた澄夫くんの唇から洩れた声色は。
妖しい慄えを帯びている。
がさがさと、庭先の植え込みをかき分けて。
たどり着いた窓辺は、特等席。
ベッドのうえ、押さえつけられたワンピース姿は、
まぎれもない、澄夫くんのお母さん。
いつもながらのおしゃれな柄のワンピースには、
不似合いなくらいふしだらなしわが引きつっていて。
くしゃくしゃに乱されたワンピースは、スタイルのいい体にぴったりとくっついていて、
体の線をきわだたせている。
はぁ。はぁ。
もう、犯されちゃっているのだろう。
母さんのときも、あんなだった。
吸血鬼のおじさんは、身をすり寄せて、言い寄って。迫っていって。
荒々しく、組み敷いて。
小ぎれいな洋服を、くしゃくしゃにしていって。
ストッキングを、むしり取るように、引き裂いて。
ちりちりに引き剥かれたストッキングとおなじくらい、
ふしだらに堕としてしまうのだった。

見て。
澄夫くんのささやき声は。
ベッドの向こうのふすまの陰に向けられている。
ほら。細目にあいているだろ?
パパが覗いているんだよ。
とても、嬉しそうに。
ママが犯されているのを、じいっと見守っているんだ。
愉しいのかな。妻が犯されるのって。
こんどおじさんに、彼女のことを紹介してみるつもりなんだ。
きみもきっと、そうするんだろう?


あとがき
ちょっと尻切れトンボかな?
ママを紹介したおさななじみが、破られたストッキングを得意そうに見せびらかすのと。
ママが吸血鬼に逢うのを、パパもひそかに歓迎しているのと。
どちらも好みなプロットです。^^
若い女の生き血を欲しがる吸血鬼さんに、ママを襲わせるときは。
かならずパパの承諾ももらうようにしましょうね。^^

仲良くなると

2007年02月12日(Mon) 04:48:53

仲良くなると、何でも許せるもの。許しあえるもの。
そう、訓えてくれたのは。
母さんと、母さんのなじみの吸血鬼。
それでも、ふたりがなじみになったのは。
ボクがキューピッド役をつとめたから。
母さんを犯される日常に。ほんの少しだけ、鼻が高い。

えっ、こんどは誰をお望みなの?
声変わりしたボクは、すこしオトナになっていたから。
おじさんがなにを欲しがっているのか、とっくに察しをつけていたけれど。
ちょっぴり、からかってみたかったのと。
きちんと、申し入れてもらいたかったのと。
それで、わざと空とぼけてみたのだった。

知っているんだよ。
こんど狙っているのは、須美代ちゃんだろう?
須美代ちゃんは、ボクの婚約者。
お兄さんの澄夫くんは、ボクとは大の仲良しで。
半ズボンの少年のころ、いつもおじさんのお邸にお呼ばれをして。
ふたり並んで、まるで競争するみたいに、脚を伸ばして。
ハイソックスのふくらはぎを、イタズラしてもらったことがあったっけ。
母さんや姉さんが、黒のストッキングを破られているのを、いっしょに覗き見したときに。
いいなぁ、キミのうちは。
ボクのママも紹介して、いつも履いている肌色のストッキングを破ってもらおうかな。って。
うわ言みたいに、つぶやいていた。
おくてな澄夫くんがとうとうママを紹介したのは、高校を卒業するころだった。

うん?なぁに?
なにも知らない須美代ちゃんは、きょうもあどけなくほほ笑んで。
長い長いツインテールの黒髪を、ほっそり肩まで垂らしている。
きれいな髪だね、って。ほめてあげたら。
ううん・・・もぅ。そんなにはっきり言わないでよって。照れていた。
ほんのり染まった頬の赤さが、ボクの胸をざわざわと騒がせる。
どうしたの?
うん?
わずかな沈黙。
吸血鬼って、信じる?
ううん・・・まさか。ね。
いるんだよ。
本当・・・?
ボクも、血をあげているんだ。
えっ。
怯えたように、身を引くのがかわいくて。
逆にグッと、抱き寄せていた。
ブラウス越しに感じるぴちぴちとした素肌の下。
ゆったりとめぐっているうら若い血潮の気配まで、ありありと感じることができるようになっていた。

肩を抱いたまま。母さんの部屋に連れてゆくと。
お茶を出してくれたあと、すぐに引っ込んでしまった母さんは。
案の定、黒のストッキングを履いていて。
庭先からの侵入者に組み敷かれていて。
きっちりとスキなく装ったはずの喪服から。
白い肌を惜しげもなく、あらわにさらけ出していて。
おまけに、ぬめぬめ、ぬめりと、べろまで這わされちゃっている。
いやらしいね。
いやらしい・・・だろ?
予期しない相槌に戸惑いながら。
ハイソックスじゃ、子どもっぽいよね。
見おろしたチェック柄のプリーツスカートの下、白のハイソックスが足許をキュッと締めつけている。

須美代ちゃん、まだ処女なんだよ。
おじさんのために、とってあるんだよ。
かんたんな挑発に、おじさんはもっとかんたんに、目をくらませている。
早く、早く・・・
もう、あさましいくらい、ねだられちゃった。
わかってるって。
でもちゃんと、申し込んでくれるよね。
たいせつな、ボクのフィアンセなんだから。
うちにとっては、跡取り息子の未来の花嫁なんだから。
ああ、ああ。もちろんだ。礼は尽くすとも。最大級に。
仲良くなるとね。キミのすべてが、欲しくなってしまうのだよ。
キミのフィアンセが素肌に秘める処女の生き血を、
すみからすみまで、味わい尽くしてしまいたいのだ。
いけないおじさんを、キミは許してくれるかな?
ボクはうふふ・・・と笑って。
そお?須美代ちゃんの兄さんや母さんも、毒牙にかけたんだろう?
おいしかった?
そう、おいしいんだ。でもね。お嬢ちゃんのことは、手にかけないでいたのだよ。
ほかならぬ・・・キミのパートナーだと知っていたから。
だからきちんと、あいさつをして。
キミから譲り受けようと、思っていたのだよ。
心積もりは、ボクもおなじ。
須美代ちゃんの処女の生き血をすすらせるのに、おじさんほどの適任者はいなかったから。

しばらく興じたのは、須美代ちゃんの家族の話題。
あいつ、とっても幸せものだね。
えっ、澄夫の彼女、もうモノにしちゃったの?
すごいね。スカート乱して、大変だったの?
処女だったって?シーツが真っ赤に、濡れたって?
あいつも昂奮、してたんだって?すごい・・・
いつの間にか。こんどはボクが、おじさんのペースに巻き込まれている。

さいしょが、だいじですよね?
ボクの肩を小突いて。イタズラッぽく、小首をかしげて。
人がわるそうな笑みを、ニッと浮かべる。
ハイソックスの高校を卒業した数年後。
須美代ちゃんは、なりたて看護婦の白衣を脱いで。
身にまとっているのは、いかにも妙齢のお嬢さんっぽい、白一色のスーツ姿。
ねぇ、これくらい薄い靴下だったら。
吸血鬼さんもご満足かな?
病院に履いていく白のストッキングは、
ナースストッキングとは思えないくらいツヤツヤとした輝きを帯びていて。
このごろよほどなまめいてきたふくらはぎの輪郭を、ドキッとするほどきわだたせている。
おいしそう。もったいない。
母さんの喪服姿をモノにされたときも。
姉さんの制服の下を、イタズラされたときも。
おなじくらいゾクゾクと、昂ぶってしまったものだった。

静まり返った、畳部屋。
おじさんは、須美代ちゃんと差し向かいになっていて。
須美代ちゃんは座布団のまえ、白ストッキングの脚を見せびらかすように流している。
きゃっ。
ふすま越しに、たったひと声。
細目に開いたふすまの向こうで、さっそくうなじを噛まれちゃっている。
キュッとねじ曲がった白ストッキングの足首に。
深いひきつれを走らせながら。

あっ、やだ。だめぇ・・・
くすぐったそうに洩らされる、抑えた笑みが。
ふすまの向こうから、しみ込んでくる。
あっ、ダメ・・・ボクのフィアンセを。
心のなかで。おなじように、拒むボク。
むざむざ彼女の血を吸わせちゃうなんて。
ズキズキはずむ胸の奥にまでしみ込んでくる、毒液のような誘惑は。
きっと、須美代ちゃんの柔らかな乳房の下をも侵しているはず。
いや、いや、いやよ・・・だめだったら。
ふすまの向こう、形ばかりの抗いをみせる須美代ちゃんは。
ボクの心の叫びとおなじ声色を洩らしながら。
おなじように心を妖しく染めてゆく。

くすぐったそうに笑いこけた声が、にわかにぐらりと傾いて。
ころころと笑いながら、畳のうえにまろび伏している。
彼氏はもう、お帰りかね。
エエ、お帰りよ。
嘘だ。ボクは、ここにいる。
けれども、フィアンセに悪いからって。
隠れて遂げる、初めての交わり。
そういう趣向にするからね。きみは黙って、覗いているのだよ。
決して声を立てちゃ、いけないよ。
彼女をモノにしようという前の晩。
おじさんはにんまりとしながら、ボクの頭を撫でんばかりにして、囁いていた。

うふふ・・・ふふふ・・・
さそい合い、応え合う。声と声。
タイトスカートを、はしたなくまくりあげられて。
透明なストッキングに包んだ太ももを、惜しげもなく目線にさらして。
舌にゆだねて。
三足めのストッキングは、ボクの控える向こう側。
まえのふたりに負けず劣らず・・・
ふしだらに、ちりちりに、堕とされてゆく・・・
おいしいかい?
いつでも、イタズラにおいでよ。
うちの女のひとの履いているストッキング。
たっぷり愉しませてあげるから。
少年のころの誘い文句は、そのままオトナ同士の誘惑になっていた。

できの良いお坊ちゃん

2007年02月12日(Mon) 04:06:40

えっ、母さんの血だけじゃ足りないって?
ボクの血を吸っても、まだ要りようなんだって?
ウフフ。
知ってるんだからね。ボク・・・
ほんとうは、恵理ちゃんを襲いたいんだろ?
吸血鬼のおじさんは、エヘヘ・・・って。照れたように笑って。
いつの間に、そんなにカンがよくなったのかね?
ニヤニヤしながら、問いかけてくる。
仲良くなった、さいしょから。
母さんと恵理ちゃんのこと、狙ってたんだろ?
うんうん。
お二人の足許に、つい・・・目がいってしまうのだよ。
ふたりとも、とてもセクシーな黒のストッキング履いているからね。
恵理ちゃんは、ボクより三つ年上のお姉さん。
毎日紺の制服を着て、女学校に通っている。
彼氏はいないの?ボクのませたからかいに、
もうっ!
かばんを振り上げておどすところなんか、まだまだ彼氏がいないのよって言っているみたいだった。
彼氏、ほしくない?いい人、知っているんだけどな。
ボクがからかうように、そういうと。
吸血鬼でしょう?姉さん知っているのよ。って。
いつになくおっかない顔をして、ボクをにらんだ。
母さんに、ことわった?仲良くしているんでしょう?
女のひとって、どうしてこんなにいろいろと詳しいんだろう。

いいじゃないの。まず母さんがお手本を見せてあげる。
おじさん、姉さんの血まで欲しがっているんだよ。
おそるおそる、そう切り出すと。
母さんは、思ったよりも度胸が据わっていて。
和服を着たほっそりとした上背を、しゃんと伸ばしていた。
え?いいの?母さん。
珍しく戸惑っている姉さんが、とてもかわいかった。
いつかは来ることですからね。早いうちにわかっておくのも、悪くないでしょう。
母さんはソツなくいそいそと、念入りに化粧をして。
おじさんが来る・・・という今夜の用意にかかっている。
あなたは、そうね。へたにお化粧なんてしないほうがいいわ。
生娘の肌は、隠しちゃいけないくらい輝いているものなんだから。
よどみなく語る母さんの横顔に。
恵理ちゃんはすんなりと、うなずいていた。

うふふふふふっ。
その夜遅く現れた吸血鬼のおじさんは。
人のわるい笑いをうかべて。
母さんと姉さんに。順ぐりに迫ってゆく。
ふたり、申し合わせたように脛を包んだ黒のストッキングのうえから。
ひざ丈のスカートを、ほんの少しめくりあげて。
青白く滲んだ母さんのひざ小僧と。恵理ちゃんの太ももと。
かわるがわる、唇を吸いつけてゆく。
ボクはもちろん、見ているだけ。
ほんとうは、見ちゃいけないって言われたんだけど。
姉さんのだいじな儀式なんだから、って。しつこくせがんで。
やっと、参列を許可してもらった。

黒のスカートのすそを抑えた母さんの手の甲を、スカートのうえからギュッと抑えて。
おじさんは、母さんのふくらはぎを、なぞるように舐めはじめる。
隣で息を詰めて見守る恵理ちゃんは。
生唾飲み込んだような、おっかない顔をして。
母さんの足許に這わされる、いけないイタズラのいちぶしじゅうを見届けていた。
制服のスカートの下に身に着けているのは、通学用の黒のストッキング。
母さんの履いているやつよりも、ずっとなよなよとしていて。頼りなさそうで。
それでいて、いつもの恵理ちゃんとは見ちがえるみたいに、なまめかしくって。
薄黒くひきたつ脚の輪郭を、侵すように噛みついてくるおじさんを。
メイワクそうに、見おろしていた。

うふっ。おいしそう。こたえられない・・・
ゾクゾク慄(ふる)える、ボクのまえ。
おじさんは、ちゅうちゅう、キュウキュウと音をたてて。
姉さんの血まで、吸い取っていく。
そうだよね。母さんの血も、ボクの血も。
おじさんの気に入りなんだもの。
姉さんが持っている処女の血が、口に合わないわけがないんだよね・・・
みんなみんな、おじさんに血を吸い取られてゆく。
おなじ血で、渇いた喉をうるおすために。

母さんを、連れてきてくれる?

2007年02月12日(Mon) 03:35:38

母さんを、連れてきてくれる?
きみの母さんの血が欲しいんだ。
知っているだろう?私は吸血鬼。
若い女の血が、なによりの好物なんだよ。
母さんは若くて、美人で、とても淑やかで。
私の好みのタイプなんだ。
きみさえ、よかったら。
この邸に、きみの母さんを連れてきてくれる?
ほんのちっぴり、ガマンして。
きみの母さんを、私に預けてもらいたいのだ。
目印は、喪服の下に履く、黒のストッキング。
ふくらはぎの白さが透けてみえるような、薄いやつ。
母さんにいえば、わかるから。
私がそういっていたのだと。
もしもきみがおねだりをしてくれて。
母さんがほんとうに、薄々のストッキングを履いてきてくれたなら。
きみはそのまま、お墓参りの帰りに寄って、
私の邸のベルを鳴らしなさい。
白いうなじに、噛みついて。
母さんの血を、おいしくすすらせていただこう。
きみの目のまえで、そこまで許してくれるなら。
量は・・・ほんのちょっぴりでも、ガマンするから。
約束だよ。

悪魔の囁きを、耳にして。
ボクはどきどきしながら、正直に。
母さんに彼の望みを告げていた。
父さんがいなくなったあと。寂しい母さんを慰めたいんだって。
ほんの退屈しのぎでも、つとまるようなら。
ドラキュラ映画を地のままで・・・愉しんでみませんか?だってさ。
ボク?いいよ。母さんが行くっていってくれたら。
ちゃんと付き添うよ。
具合悪くなったら、帰り道が大変だから。

木枯らしがひゅるるる・・・と吹き渡る、お墓参りの帰り道。
母さんの黒いワンピースが、ひざの下をさわさわとそよいでいた。
冬なのに。母さんが着ているのは、夏ものの喪服。
分厚いジャケットの下に着ているワンピースは、
ほっそり、するりと、体の線を目だたせていて、
二の腕のあたりは、ストッキングみたいに薄くって。
白い腕がすけすけになっている。
ワンピースの下に履いている黒のストッキングは。
いつものタイツより、ぐっと薄手で。
白い肌が滲むように、透けている。
ちく生。
あんなにきれいな母さんの脚を噛むなんて。
むざむざボクの目のまえで、噛ませちゃうなんて。
そんなふうに、歯噛みをこらえながら。
半ズボンの下、出がけにウキウキと通した黒の長靴下も、
母さんの履いているのとおなじくらい、スケスケに薄かった。

古びた廊下がかすかにきしむ、夕暮れ刻。
オレンジ色の陽を浴びて。
母さんの足許を染める黒のストッキングが、
じんわりと、濡れるように輝いている。
え・・・?こんなふうに光るの?
いつも脚に通しているやつと、違うのかな。
女のひとの靴下のことなど、うとかったボク。
そういえば、さっきから。
ボクの足許も、キモチわるいほどぬるりとした光沢に包まれている。

あっ・・・ううぅ・・・っ。
障子の向こうから洩れてくる、かすかなうめき声。
母さんは黒の喪服を着たまんま。
吸血鬼のおじさんに、迫られている。
うなじを侵され、えり首を血で濡らしながら。
半そでの喪服からのぞく、ほっそりとした腕が、
薄い筋肉をキュッと浮き上がらせていた。
ひざ小僧から下を染めているスケスケの黒のストッキングは、
色白の肌をぬるりと滲ませていて。
息子のボクがみても、とてもドキドキする眺め。
吸血鬼のおじさんは、ようしゃなく。
ママのスカートをたくし上げていって。
しんなりと盛り上がるふくらはぎに。
なまの唇を吸いつけてゆく。
あっ、ちく生。ママをあんなに、乱してしまって。
ひどい。許せない。
じりじり、いらいらしながらも。
薄い長靴下を履いたボクの脚は、畳に吸いついたみたいに動かない。
淡い墨色の長靴下のなか、ピンク色に透けた皮膚に。
なんだかよくわからないズキズキとした疼きが・・・
じわり、じわりと滲んできた。

母さん・・・母さん・・・
喪服は黒でも。なかのブラジャーは、真っ白だったんだね。
スリップのすそが乱れると、あんなふうに妖しく輝くものなんだね。
母さんの白い胸を、男のひとの掌を撫でられるのって。
そばで見ているだけでも、すごくドキドキすることなんだね。
吸血鬼のおじさん、母さんの血に満足してくれたみたいだね。
母さんも、愉しかったみたいだね。
また逢えるな、って訊かれて。
なにも言わずに、うなずいて。
息子のいないときにでも・・・って。
でも。遠慮しなくて、いいんだよ。
ボクはもう、悔しがったり、しないから。
だって。
吸血鬼のおじさんが母さんに迫るのって・・・
見ているだけで、ドキドキしちゃうんだもの。

それからなん年も経ってからのことだった。
吸血鬼のおじさんが、母さんに迫ったのは。
血が欲しいからではなくって。
母さんとの関係が、父さんとのあいだとおなじになることなんだって。
なにもかも、わかったときには。
ボクはもうすっかり、とり憑かれてしまっていて。
ふたりのみそか事をドキドキ胸を弾ませて覗き見する、とても悪い子になっていた。

代わりにあたしを・・・

2007年02月11日(Sun) 22:31:34

泥んこ道で、転んだ少女。
通りかかったその男は、びっくりしたように駆け寄って。
とっさに少女のひざから泥を払い、介抱していた。
ひどくぶつけたらしい。少女は軽く、足を引きずっていた。
家はどこだと、たずねると。
あっち。
べそをかきながら、森の端にある古びた大きな家を指さした。
すりむいたひざ小僧からにじみ出る血を目にしたときと。
少女がじぶんの家を指さしたときと。
男はぎくりとしたように、ちょっと身をこわばらせたけれど。
少女はまったく、気づかないようだった。

背中に負ぶさろうとした少女を。
男は胸に抱きかかえて、お姫さまを抱っこするようにして。
戸惑う少女を軽々と抱き上げて、家に向かって足をむけた。
ノックに応じて扉を開けたのは、少女の母親だった。
母親は怪我をして運ばれてきた娘を見て、身をすくめ、
さらに男の顔をみて、もっと身をすくめていた。
少女の姉も顔を出したが、妹を救った男をみて母親どうよう顔をこわばらせていた。

ちぅちぅ。きぅきぅ・・・
時ならぬ奇妙な音に目を覚ました少女は、扉をそうっと開いて、
音の正体を突き止めている。
母さんは顔をしかめて。眉をひそめて。
悩ましい顔・・・というのだろうか。
なんともいえない濃い目線を、じぶんの足許にそそいでいた。
ふくらはぎを淡く染めていたねずみ色のストッキングは、
圧しつけられた唇の下、ちりちりと裂け目を走らせていって。
スカートの奥にまでしみ込むような、じわりとした裂け目は、
白い素肌をいっそう妖しく輝かせていた。

べつの日のこと。
学校から戻った姉さんが、いつまでたっても勉強部屋から戻ってこない。
代わりに、扉のむこうからもれてくるのは。
ちゅっ、ちゅ・・・ちゅう・・・っ。
母の足許から漏れたのと、おなじ音。
濃紺のプリーツスカートから覗く脚を、ひざ下までぴっちりとおおっているのは。
真新しい白のハイソックス。
無地のハイソックスにばら色のシミを滲ませながら。
姉さんはウットリと、夢見心地になっている。

いつだかのお礼をしたいの。
わたしの脚も、噛んで。
少女が差し出した脚は、真新しいハイソックスに、ぴっちりと包まれていた。
男はめずらしく、戸惑って。
少女に優しく、キスをして。
皮膚の向こう側に宿る、暖かい血潮を愛でるように、さすりながら。
けれども、あのまがまがしい牙を突きたてようとはしなかった。
ありがとう、お嬢ちゃん。もっとオトナになったらね。
少女はもの足りなさそうに、ぷっと頬をふくらませて。
じゃあ、いつ?
たたみかけるように、訊いている。
そうだね。きみが中学にあがったら・・・
血を吸う性を秘めた男は、いつまでも、いつまでも。
優しく、少女の頭をなでつづけている。


あとがき
ちょっと、ぬるいでしょうか?^^;
ちょうどいい湯加減でしょうか?^^

報い

2007年02月11日(Sun) 21:54:34

つき合っているひとが、いるんです。
プロポーズしたときに、満智子が発した応え。
黒い瞳を輝かせて。はっきりとした口調で。
だれと・・・?
満智子が口にした名前は、既知のもの。
奥沼という変わった苗字をもつその男は。
隣の部の、部付き部長という中途半端な肩書きを持った、冴えない窓際族の男。
けれども収入は、若い彼とは雲泥の差。
先祖伝来の土地や屋敷は、さらにそれをはるかにしのいでいるというもっぱらのうわさだった。
目のまえにたたずむ、彫像のように整った顔だちは。
冷たい美しさに満ちている。
三十を越えて、もう無邪気なだけではない結婚観をもっているはずの彼女。
ひとあし、遅かったのか。
苦い後悔についうつむくと。
あの。
女は毒液のような囁きを、口にしている。
あのひととは、いっしょに暮らしたくないんです。
あまりにも、だらしのない人なので。
それに・・・奇病に冒されていて。余命いくばくも、ないんですの。
黒い瞳の輝きが、にわかに冷酷さを帯びたようにかんじた。
きりりとしたスーツ姿には、いちぶのスキもない。

知らず知らず、唇を重ね合わせていた。
刻印するように、侵すように。
奥の奥まで、さぐるように。
女は薄ら笑いを浮かべているらしい。
さりげなくやり過ごそうとする口づけを。
男はなおもしつように、追いつづけている。

どちらを、お選びになるの?
わたしの夫?それとも、情夫?
女はなおも黒い瞳を、猛禽のように輝かせて。
挑発するように、男を見つめる。
もちろん、夫だ。
お気の毒。
女はくすり、と憐れむような笑みを洩らすと。
いいわ。それでこそ。わたしと生涯手を組むパートナー。
握手しましょ。しっかり、寝取られ亭主を演じてね。
掌のなかにやっとつかみ取った花びらのように華奢な手は。
冷然とした女のたいどそのものに、黒い血潮を秘めているかのようだった。

あのひとに、言うわ。わたし。
あなたと暮らすのは嫌。
でも、たまに逢うくらいなら・・・って。
そのほうがあのひとの性に合ってもいるのよ。
なにしろ、いいとこどりの名人なんだから。
許してくださいね。
どうしてもプライドが許さなかったら、見て見ぬふりをするのよ。
そうすれば・・・
皆まで言わせないで。
女の瞳はあくまで冷たく、輝いている。

奇妙な生活が、はじまった。
表向き、婚約者となった彼とデートを重ねながら。
満智子はひそかに奥沼の邸の裏口をくぐり抜けていた。
いいのかね?
奥沼は、不器用な男らしい。
醜悪にだぶついた肥満体を、ちいさく縮こまらせながら。
わざわざ彼と二人きりになって。
満智子との関係を質しに訪れた。
もともと風変わりな奥沼を、彼はさほど嫌っていなかった。
けれども、女を挟む間柄になるとは。
男たちのあいだに、奇妙な逡巡が漂っている。
気まずい雰囲気を打ち消すように。
若いかれのほうが、口を切っていた。
けっこうですよ。どうぞ時々、抱いてやってください。
私もなぜか・・・彼女を抱かれることに、昂奮してしまうんですよ。
胸をズキズキさせながら。上ずった声で告げた囁きに。
奥沼はくすぐったそうに、頷いていた。
ときどき、メールをください。
彼女と逢っているときのこととか、聞かせてください。
ドキドキしたいんですよ、ぼくも。

”処女”は、かれにあげるわ。
満智子がさいしょに抱かれたのは、奥沼のほう。
三十を過ぎた満智子が、いまさらきれいな体のわけがない。
それでもあえて”処女”と告げたところに。
濃厚な背徳を、覚えていた。
四十をとうに過ぎながら独身だった奥沼は、信じられないことにそちらの経験が初めてだったという。
若くしてなん人もの女を体験しているいまどきの彼とは、あきらかに別人種だった。
そういうところが、かえって忌まわしいのだろうか?
満智子が奥沼ではなくじぶんを選んだわけが、すこしわかったような気がした。

結婚してからも。
満智子はしばしば、奥沼の邸をたずねていた。
奇病がすすみ、欠勤がちになったかれのところを。
平日の真っ昼間に訪ねていって。
奥沼もまた、夫の留守をねらって新居の畳に新妻を組み敷いていた。
うふふ。ふふ・・・
嫉妬に顔を赤らめる彼をみるたびに。
満智子はいとも愉しげに笑みを浮かべる。
だいじょうぶ。安心して。
また一千万、いただいちゃった。もちろんちゃんと、贈与の手続きを取るわ。わたし達の財産よ。
女は夜な夜な、道ならぬ熱情に身を焦がしながら。
しっかりと見返りをせしめていた。
まるで夜ごと通う吸血鬼が生き血をせしめるようなしたたかさで。

奥沼からのメールは、義理堅いほどにつづいていた。
ぶきっちょな表現が、かえってリアルに妻の痴態を伝えている。
きりりとした衣装にいちぶのスキもなく、帰宅してくる妻。
けれども彼は、知っている。
出かけるときに脚に通していた黒のストッキングは、彼の褥で淫らに引き剥がれ、いま身につけているものはおなじブランドのものを履き替えただけなのだ、と。
  来週ぼくは、出張です。ぜひ泊まりにいらしてください。
時おりそんな返信すら、彼のほうからしかけていた。
あきらかに。
なにかが、かよい合っている。
彼と奥沼とのあいだには。
彼がそう感じたころ。
奥沼に、死期が訪れた。

喪服に包まれた満智子は、いつになくなまめかしい。
身寄りのない奥沼はいつの間にか、莫大な財産を満智子に遺贈していた。
先の短い日々を、さいごに彩りに満たしてくれた女性に対して、かれができる精いっぱいのことだったのだろう。
うふふ。ふふ。
満智子の笑いは、冷たかった。
奥沼のことも、きっとすぐに忘れてしまうのだろうか。
冷ややかなものが、彼の胸に流れている。

奇妙な音に気づいたのは、夜更けのこと。
その晩妻とは部屋を別にしていた。
週に二日か三日。
べつべつに、寝みませんか?
それは奇妙な提案だったが。
結婚以来、なにごとも満智子が主導権をにぎることが、夫婦の暗黙のルールになっていた。
それがなにを意味するのかを。
彼は今夜、知ることになる。

あ、あっ・・・やめて・・・やめて・・・
くぐもったうめき声は、妻の寝室の前に立つころには。
意味のある言葉に変化していた。
かたく鎖された廊下のドアが。なぜかがたがたと風にきしんでいる。
窓が開いているのだ。
とっさに庭先に回った彼の目にしたものは。
妻のベッドのうえ、のしかかっている黒い影。
それがやせ細って死んでいった奥沼のものだということは。
目にしたとたんに、なんの疑問も違和感もなく。
受け止めてしまっていた。
奥沼はぎしぎしとベッドをきしませるほどに熱っぽく妻に迫って。
犯しつづけている。
やめさせよう。そんなあたりまえの意識は、とうに彼の頭から消えている。

わかっていたのだよ。かの女のたくらみは。
きみがたぶん、利用されているだけということも。
あの女の血は、冷たいのだ。きっと一生、冷たいままなのだろう。
けれども時おり、暖めてやらねば。
あの女は冷血魔に成り下がってしまう。
いいね?
きみとぼくとで。交代に。
彼女を暖めづづけてやらねばならないね。
恐怖に蒼ざめしばし我を忘れていた彼は。
来週・・・ぼくは出張なんです。ぜひ泊まっていってやってくれませんか?
出すあてのなくなったメールにつづった文句を、そのままに。
真夜中の幻影に告げていた。


あとがき
財産目当てに男をたぶらかした女が、死んだ男によって報いを受ける。
ありがちな設定ですかねぇ・・・(^^ゞ

重ねられる血 ~謝恩会の夜 外伝~

2007年02月11日(Sun) 21:14:14

これを・・・くれるというのかね?
教授が手にしたのは、一葉の写真。
キャビネ版といわれるほどほどの大きさのそれは、いまではめったにお目にかかることがない。
あるとしても・・・そう。
結婚式の集合写真くらいであろう。
色とりどりに着飾った、年頃の娘たち。
よく顔を知っている教え娘たちのイデタチは、みな申し合わせたように。
卒業式のときに目にした衣装そのままだった。
帰りに、撮られたのか。
それともべつの機会に、ふたたび集まったものか。
被写体のひとりである教授の娘は、卒業式の夜・・・とうとう戻ってこなかった。

写真のなかの娘は。
友人たちのまん中に腰かけて。
半身にポーズをとって、小首をかしげて。
口許には、いつものあのイタズラッぽい笑み。
いつにかわらない落ち着いた物腰とは裏腹に。
ひざから下、てかてかと光る肌色のストッキングが、たてに大きく裂けていた。
部屋の背景は、教授もしばしば出入りしているあの男の邸の応接間。
撮り手がだれであるのかは、いまさら問うまでもない。
何しろ彼は、目の前でほくそ笑んでいるのだから。

影村くんにも、渡したのか?
教授はおそるおそる、まな弟子の名を口にしている。
娘は来春、彼とおなじ苗字を名乗るはずだった。
ほくそ笑みは、かわらない。
ええ。もう一枚、よけいにね。
お父様が御覧になるのは、ちょっとはばかられるようなやつを。
かれも、承知のうえなのかね?
ええ・・・処女さえ獲られれば・・・と。すべては、諒解ずみなのですよ。
けしからん。けしからんことだ。
ええ・・・まったく。ごもっとも。^^
きみも。だよ。
はぁ。なんと申しましょうかな。いいお味でしたぞ。

男が差し出したのは、ワイングラスにそそがれた真紅の美酒。
口許にもっていった教授は、苦々しげに眉をしかめた。
ちょっと、なまぐさいですかな?
いや・・・いただこう。
ごくり。ごくり・・・ごくり・・・
教授が喉を鳴らすひそかな音に。
男は相変わらずほくそ笑みながら、聞き入っている。
いかが?摘みたてのぶどうと思し召されますかな?
口に含んで。舌に転がして。胃の腑に染み透らせて。
教授は、なにも応えずに。
ハンカチを口にあてがって、たんねんに拭い取っている。

影村さまも、お招きしているのですよ。
男が目線を転じた先にいるのは、娘の未来の花婿。
いつから、気づいていたのだね?きみ。
エエ、さいしょから。お嬢様に聞かされておりましたから。
かれもまた。手にしたグラスを、かるがると飲み干している。
母にも、逢っていただきました。
披露宴の席上がはじめて・・・ということでは。
なにかと粗相だと思ったものですから。
娘の未来を託そうとしたまな弟子は、たんたんと。
母親の和服を持ち主の血潮で彩ったことを告げていた。

うまい酒ですね。おかわりはありますか?
こいつも・・・娘の血を飲んでいる。
どす黒い嫉妬がぐるぐると、教授の胸の奥を浸しはじめていた。
いえ・・・いえ。必ずしも。ですよ。
いただいたのは、お嬢様ばかりとは限りませんから。
なに?
お姑さんとして・・・末永く深い交わりを願いたかったものですから。
この器の中身は、母の血を差し上げた代わりなのですよ。
どす黒い渦巻きは、いつか二重の螺旋を描きはじめていた。

闇の彼方に、なにかぐるぐると渦巻くものが漂っている。
せん、せい・・・。あれは・・・?
うむ・・・
教授はなにも、応えない。
己の下で悶えているのは、実の娘。
すべすべとした素肌に、飽きることなく舌を這わせて。
娘婿のまえ、新妻を虐げてゆく。
その娘婿を慰めているのは、三十年連れ添った最愛の妻。
たけりたつものを口に含む。
そのようなはしたないことを、妻はいちどたりとも許さなかったものなのに。
いまはただ。男に支配されるまま。
きっちりと整えられた黒髪を、むぞうさにつかまれて。
奥の奥まで、突き入れられている。
どす黒い、どす黒い霧。
歪んだ血が、またひとつ。
彼の家系に重ねられてゆく。

謝恩会のあと

2007年02月09日(Fri) 09:24:43

格式ばった卒業式のあとは、場所をうつしての恒例の謝恩会。
今年はバラ色のコサージュが、ばかに目だつね。
華やかな雑踏のなか。
白髪頭の先生がたは、着飾った教え娘たちのあいだをすり抜けながら、囁きあっている。

色とりどりに着飾った、スーツ姿。
それでも、申し合わせたように身につけているのは。
バラ色のコサージュに、黒のストッキング。
そんなイデタチの乙女たちが数人連れだって、夕闇迫る街角を闊歩してゆく。
丈がまちまちのすそをさばいて。
黒ストッキングの脚を見せびらかすように、リズミカルな靴音を響かせて。
行く先は、街はずれの古びた邸。
鼻筋の通った総白髪のご主人は、にこやかに女の子たちを迎え入れる。
ほぅ、ほぅ。みんなきれいに装ったね。
華やいだざわめきが、静まり返っていた邸にぱっと広がり、
冷え冷えとした空気を一変させていた。
あたかも吸血鬼のひからびた血管を、乙女の血潮が暖かくうるおすように。

撮影スタジオにしつらえられた、応接間。
まん中の豪華なソファに、女の子たちを腰掛けさせると。
カシャ。カシャ。
フラッシュとともに連続する、シャッター音。
一見なんでもない卒業記念写真なのだが。
それでは、彩を添えようね。
ご主人はカメラのまえに進み出て、乙女たちひとりひとりにかがみ込むように、うなじに接吻を重ねてゆく。
さぁ、どうだい?
ご気分は、いかがかな?
囁かれる言葉を、くすぐったげに受け止めながら。
乙女たちはウットリと、頷きかえしてゆく。
さっきまでの喧騒を、すっかり忘れたかのように。

ブラウスやワンピースの肩先に散らされたのは。
色鮮やかな、放射状の飾り糸。
バラ色のコサアジュの花の色がにじみ出たような風情に。
男も、女たちも、いちように含み笑いを滲ませる。
さぁ、もうひとつ。
淑やかにそろえられた足許に。
ご主人はさらに頭を低くして、かがみ込んでゆく。
きゅうっ。ごくり・・・
あからさまな物音に、応えるように。
女の子たちは、体のかすかな変調に、頭を揺らしながら。
夢見るように、うっとりと、微笑みながら。
衣装からにじみ出てくる色香を、狭い室内にむせ返るほど発散させてゆく。

あら・・・
きゃっ・・・
かすかな声を、くすぐったそうに洩らしながら。
無地のストッキングにつけられたストライプ模様が、
女の子たちをいちように、足許をすくめさせている。
さぁ、記念になんでも、撮っておこうね。
カシャ、カシャ、カシャ・・・
連続するシャッター音、フラッシュの瞬き。
ストッキングの裂け目もあらわになった脛を。
どの子もいちように、見せびらかすように前に差し伸べていた。

ここから先は、ひとりひとり・・・かな?
フフフ。。。
そよ風に頭を揺らす百合の花園のように。
乙女たちは互いの顔を窺いながら。
わたしが、先。
秘めやかな声色で順番を争っているのは、恥辱を受ける順番。
応接間の奥、半開きになったドアの向こうに。
順ぐりに、引き入れられてゆく。

待っている諸君は、息子の相手でもしていておくれ。
いつの間にか傍らには、まだ少年というほどの年頃の子たちがふたり、三人。
礼儀正しくお辞儀をして。
眩しそうに、お姉さんたちを見上げている。
ふふふふふっ。
お姉さんたちは、いちように。あらためて顔を見合わせて。
じゃあ、わたくしから。
貴方は、わたくしが。
ゆずり合い、しめし合わせて。
男の子たちをひとりひとり、惹きつけてゆく。
ブラウスの襟首を、すこしだけゆるめて。
中身を、見たい?
あら、ダメよ。スカートの下なんて・・・

更けはじめた夜。
卒業祝いはひと晩じゅう、つづいてゆく。
秘めやかに、熱っぽく・・・

寵遇か?恥辱か?

2007年02月07日(Wed) 07:40:52

男女がまぐわうという、おなじ行為が。
あるときは寵遇と羨まれ、あるときは恥辱と忌まれる。

身内の女たちは、ひとつ部屋に集まって。
だれもがいちように、唇を引き結んで。
女の集まりにはつきものの 和やかなざわめきは。
いつになく、シンとかげをひそめている。
わたしはそのなかに、入っていって。
  由貴子、きみの番だよ、と。
妻の名前を、告げている。
きゃっ。
妻は思わず両手をあわせて。
はずんだ声を、忍ばせて。
周囲を気遣うように、ごくひかえめに。
歓喜を頬に輝かせる。

さ、こちらへおいで。
羨望の視線を一身に受けて。
わたしに肩を抱かれながら、部屋をあとにする。
しゃなりしゃなりと、スーツのすそをたなびかせて。

今宵のいちばんのお呼びは、だれにあたるのか。
それで、あしたの運気さえ占う女たち。
妻の招かれるさきは、吸血鬼の待つ褥。
夫婦の部屋にしつらえられたベッドのうえで、
妻はひととき、夢の刻に酔いしれる。

ほんのすこし、血を吸うだけさ。
見え透いた嘘を、わざと真に受けて。
しかたのないお人だね。
秘められた密事は、言葉の裡に塗り込められていた。

男女のまぐわいという、おなじ行為が。
あるときは、寵遇。あるときは、恥辱。
妻を犯される。
その行為に、恥辱を覚えるのは。
意に添わぬことを強いられるがゆえのこと。
たいせつなものを、踏みにじろうとするのか。嘉しようとするのか。
ひとつの行ないの価値を決定づけるのは。
抱くもの 抱かれるもの 抱かせるものの心映えなのか。
ともに愛し抜こうというのなら。
どうしてそれを拒むことがあるだろう?
薄闇の彼方、くり広げられる恥辱の宴。
わたしは恥を忘れて、闇の彼方を見通そうとしている。

エチケット

2007年02月06日(Tue) 22:56:54

そそぎ込むのは、エチケット。
妻の浮気を愉しむことのできる夫が、
妻の肉体を、ぞんぶんに愉しんでもらうため。
彼女のパートナーに許す、特別な待遇。

男たちはなぜ・・・そそぎ込むことに、こだわるのか。
それはきっと、本能を呼び覚ますことだから。
はらませてやる。胤をつけてやる。
そうすることで、ながいこと。男は女を己固有のものにしてきた。
胤をつける。
血を伝え、受け継がせるために。幾世代もつみ重ねつづけられてきた儀式。
じぶんの妻を、捧げるとき。
男たちは、妻たちの奥深く秘められた体腔のさらに奥に、
熱いしぶきをまき散らされてしまうことで。
妻のすべてを侵蝕されてしまうだけでなく。
妻のありったけを そして 己のすべてをも 支配されてしまう。
己の血筋、もろともに。
その事実を、本能で感じ取る。

捧げられた褥のうえ。
満ち足りたまぐわいを遂げるには。
さいごにすべてを吐露する射精という行為は、なくてはならないもの。
これを許し受け入れることなしに。
さいごの一線を許したことにはならない。

一線を越える。
女のばあい。それはたんに、肌身を許すこと。
下着のなかにまで、手や指を挿し入れられて。
衣装の裡に秘めた素肌に、まさぐりをうけて。
大切に秘めた処を、剛くそそり立つ太い芯でかき乱される。
すり合わされる粘膜のせめぎ合いにこらえきれなくなって、すべてを忘れてしまう。
それが、男を受け入れる ということ。

けれども妻帯者が、最愛の妻を捧げるとき。
己の座をしんから譲り渡すには。
精を注がれなければならない。
ちがう色の精液で、妻という唯一人のひとの、秘奥までまみれさせてしまうことで。
しんからの歓びを成就させる。
捧げた相手がしんから妻に満足したことと。
己の立場に相手の男がそっくり入れ替わり同化したことと。
それがたとえつかの間の、たった一夜のことであっても。
ふしだらに染めた一夜を 男は決して、忘れることがない。
妻を愛しつづけるかぎり・・・

泥んこになった新妻

2007年02月06日(Tue) 22:52:46

行きずりの道ばたのことだった。
初めてヤツに、新婚三ヶ月の新妻を紹介したのは。
路傍で妻を紹介する、ということは。
そのまま草むらに引き入れられて。
新調したばかりの純白のスーツを、泥まみれにさせながら。
夫の前で、凌辱されてしまうこと。
とつぜんの椿事に戸惑いながらも。
村のしきたりを言い含めておいた妻は、しかたないわね、とばかり。くすっと笑う。
真っ白なフレアスカートのすそを、むぞうさに青くさい雑草に浸しながら。
妻は思い切りよく、丈のひくい穂先の下にわが身を淪(しず)ませていった。

泥んこになって遊んだ子どものころに戻った妻は。
きゃあきゃあとはしたなく、はしゃぎ声さえ立てながら。
白昼、陽の照りつける草むらのなか、
スーツには不似合いな褥のうえ、ひと刻の悪戯に興じていった。
いかされちゃったね。
ウン。愉しかったよ。
てらいもなく応じてきた妻の頬には、いままでみられなかった淫らなうわぐすりをてからせていて。
泥まみれになった真っ白なフレアスカートの奥、ボクいがいのモノから放射された粘液を、ナマナマしくてらてらと、光らせていた。
息子のめんどうを、見てくれないか。
吸血鬼のそんな要望にさえ、
面白そうね。
興味津々、わくわくと瞳を輝かせる。

約束させられたその場所は、
その子がよく遊んでいるという、公園のお砂場。
彼女はそれでも、彼に初めて穢された純白のスーツを着込んでいって。
透明なストッキングに白のパンプスを穿いた脚を、
惜しげもなく、砂地に踏み入れてゆく。
生い茂る藤棚が、涼やかな葉ずれをささやかせつづける下で。
大の字に脚を広げた白のスーツ姿が、子どもの吸血鬼にうなじを咬まれてゆく。
公園の片隅にある、植え込みの影から。
有様を窺う男どもの視線など、恥じらいもせずに。
妻はひざ丈のフレアスカートを器用にさばいて、
破けたストッキングの太もものさらに奥へと、
稚ない指のまさぐりを導いてゆく。
破れ果てたストッキングは、
かつて親戚の子どもたちを、彼女のことをお姉さんといわせたアイテム。
手の届かないところにあるはずのものをかち獲た幸運な少年は、
紙切れのように引き破いてしまったストッキングを、掌に垂れ提げて。
見せつけるように、ひらひらさせて。
人妻を征服しちゃった。
得意げな笑みが、いつになく大人びていた。

ボクの嫁さんだぜ?

2007年02月06日(Tue) 22:46:12

目の前に展べられているのは。
帯のように長く、透けるほど薄い、ナイロンのストッキング。
光沢を帯びた肌色の薄衣は、
長いすの上に敷き詰められた毛皮の起伏のままに。
ふわりと軽く、展べられている。
持ち主の脚から引き抜かれてから、まだいくらも刻は経っていないはず。
それがはっきりと、判るのは。
さっきまでこれを脚に通していたのが、ほかならぬボクの新妻だったから。
目の前で、ボクの顔色を窺うように。ほくそ笑んでいるあいつ。
立ちふさがった、薄暗がりの帰り道。
なにを、されたのか。どんなふうに、されたのか。
わざわざしたり顔で告げられずとも。
おおよその察しは、ついている。

ふくらはぎのあたりと、太もものあたり。
わずかに脚線を残した、ふやけたようなふくらみに。
鮮やかに走る、いく筋ものストライプもよう。
きっと、身じろぎひとつならなかったことだろう。
抑えつけられて固定された、足首から。太ももから。ふくらはぎの内側から。
余裕たっぷりな唇を ねっちりと這わされて。
いたぶり抜かれて、ちりちりにされていったのだろう。
妻の脚に加えられた凌辱の痕跡は。
狂おしいほどの想像を伴って、ボクの目線を引き寄せている。

ボクの嫁さんだぜ?
キミの嫁さんだから、だよ。
決まっているじゃないか。
あいつは、おうむ返しに応えると。
キミのものだから。
犯したかった。辱め抜きたかった。精を注ぎ込んでやりたかった。
身も心も、オレのものにしてみせたかった。
そうすることで。
すこしでも、キミと重なりあって。キミと同化できるような気がするから。
だからこそ。親友の妻という礼節を、踏み越えてみたんだ。
ボクの心の裡を読み取るように。ゆっくりと。しみじみと。
あいつは目線を秘めながら、語りかけてくる。
でもね。いちばんの醍醐味は。
キミの奥さんのまま、ミユキを犯しつづけることなのだよ。
ほかならぬキミがもっとも愛したひとを かち獲つづけることになるのだから。
はじめて呼び捨てにされた妻の名前は、慄(ふる)えあがるほどの昂ぶりを帯びて、鼓膜の奥にまでしみ込んでくる。

わかっているさ。
冷え切った部屋のなか。
ボクの声が、うつろに響く。
夫婦もろとも、きみに愛されてゆくのだね。
いいだろう。これからも妻のことを、呼び捨てにしてくれたまえ。
喜んで、妻の貞操をきみの褥に捧げよう。
あいつははじめて、安堵したようにほほ笑むと。
嫌われるかと、思ったよ。
俺の勝手な情愛を。受け入れてもらえて、感謝する。
色を知った女に、より深い色を与えるには。
ほかの男にも抱かせるのが、いちばんの早道なのだよ。
わかるさ。
ボクは知らず知らず、つぶやき返している。
相手はさいしょから。きみしかいないと感じていた。
最愛の妻を捧げることのできる相手は。かぎりなくボクと近しいひと。
きみなら、きっと。
彼女をうまく、しつけてくれるだろうから。
あいつは嬉しそうに、声までほどけかかっている。
色を知った女に、より深い色を与えるには。
ほかの男にも抱かせるのが、いちばんの早道なのだよ。

彼女、ノッていたかい?きみの持ち物に、狂わされてしまったのかい?
ああ、ノッていたさ。狂わせないわけには、いかないだろう?
シンコクに悩まれたら、キミに合わせる顔がなくなるしね。
さいごにはうれしそうに、このつやつやとしたストッキングを引きはがれていったのだよ。
あいつはうっとりと遠い目をして、窓の彼方を見つめている。
凌辱現場は、目線の先の雑木林。
冬枯れした木の幹は、背中に痛かっただろうか。
ぐるぐる巻きに締めつけられた縄目に、息づく胸を抑えられながら。
恐怖が愉悦に変わる瞬間を。妻はどのようにして、迎えたのだろう。
今夜。もういちどだけ、襲わせてくれないか。
いいさ、彼女が望むなら。何度でも・・・
妖しくわななく胸 ときめかせながら。
妻を凌辱したいという申し出に、こころよく応えてしまっている。

夜更けの新居。
階段を伝って、きゃあきゃあと響いてくるのは。
身を揉みながら、無邪気にあがる悲鳴。
声の主はいうまでもなく、階下で襲われている妻。
近所にまる聞こえになるほどの嬌声を。
妻も夫も、恥ずかしがっていない。
夜は、更けている。
耳にするものがいたとしても それは新床のたわむれとしか届かないことだろう。
まさか、あいてがちがうなんて。

白のスーツ姿を、戸惑わせて。
ソファの周りを、ぐるぐると立ち回って。
さいごに背中から、猿臂をまわされて。
うなじをがぶりと、やられてしまった。
ほとび散るバラ色のしたたりを。
リボンつきのブラウスという、しなやかな肢体に最適な包装に撥ねかしながら。
肌色のストッキングに包まれた両脚を、みるみるうちにくず折れさせて。
じゅうたんのうえ、突いた両ひざに。妖しい光沢を滲ませながら。
衣装のうえからくわえられるまさぐりに耐えかねて。
きゃっきゃとはしゃいで、息はずませている。


あとがき
2月4日付「友情 2」に寄せられた祥子様のコメントから、ついこのような妄想が。^^
悪しき受け手でございますね・・・^^;;;
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-824.html

お芝居が来る ~楽屋裏の舞台監督 外伝~

2007年02月05日(Mon) 07:24:04

村がまだ、電気が通っていくらもしない時分のこと。
お芝居が来る。
それは、子どもたちの合言葉。
娯楽がほとんどなかったそのころに。
よその街から時おりやってくるその劇団の公演は、なによりの楽しみだったのです。
お芝居のすじですって?
まさかそんなもの、昔のことだったから。
誰も憶えては、いないでしょうよ。
なに、今でも時々、くるんですがね。お芝居。
すじがきなんて・・・それはあなた。

薄い靴下、履いているんですね?って。
どこ御覧になっているのですか?(笑)
昔からね。履くことになっているのですよ。どういうわけでしょうか。
まぁ、それはさておき。
お芝居についてよく憶えていること、ですって?
・・・ええ。ありますよ。
主人公が、いや悪役だから、主人公のわけはないな。
怪人が出てくるんです。魔人っていっていたかもしれないな。
そいつがね。普通の市民を襲って、生き血を吸い取るんです。
さいごには退治されて、めでたしめでたしで終わるんですがね。
でもねぇ。血を吸い取られちゃった人たちは生き返らないんでしょうから。
人がなん人も血を吸われて、それでめでたしめでたしってみんなさいごに笑っているけど。
あれ、やっぱり、おかしいですよね?
それはさておき。
お袋のことなんです。
あのころはまだ、三十代くらいだったでしょうか。
わたしがまだ、ほんの子どもの時分でしたから。
舞台にあがりましてね。
血を吸われたんですよ。怪人に。
もちろん、お芝居のことですよ。
ほら、あるじゃないですか。
子どもだましの演劇で。
飛び入りを募って。
劇のなかで簡単な役をもらって演技するやつ。
もちろん、たいしたセリフがあるわけでもなんでもなくって。
お客ですから。しくじったって、芝居のすじにはなんの影響もないような。
やりたい人!って。悪役の女が手を挙げさせたんです。
お袋、目だつのがきらいなたちなのに。どういうわけか、手を挙げちゃって。当てられちゃって。
息子のわたしが、びっくりしました。
そのままするすると舞台のうえに上げられちゃって。
あのときはたしか、水色っぽいジャケットにスカート、履いていましたっけ。
いまだにわたし、あの色が好きでね。まぁそんなことはどうでもいいんですが・・・
お袋、まるで舞台にひもでもついていて、引き寄せられるみたいでした。
上背のあるほうだったので、舞台映えがしたんです。
それで選ばれたのかな。
でも、お芝居のあいだは座っていたから、背丈なんてわからないはずなんですがね。
案外お芝居の始まる前から、だれかがお袋のこと、狙っていたのかもしれないですな。(笑)
それでね。お袋の役は、吸血怪人に血を吸われる通行人の役なんです。
グロテスクな、カマキリだかカブト虫だかわからないような着ぐるみをきたやつがね。
お袋のことつかまえて。
首筋に吸血管を突き刺すんです。
あれ、ほんとに突き刺してたんじゃないかな。
記憶はちょっと、あいまいですが。
管は透明で、細長かったんですが。
ちょうど献血の時の透明なチューブみたいに。
そのチューブのなかを、お袋の血が伝ってゆくんですな。
透明なチューブが、赤黒くなって、どんどん怪人の口のほうへと、流れてゆくんです。
わたしですか?
もう、ぞくぞくしながら、見守ってしまいましたよ。
あのお袋がヒロインだなんて、ねぇ。
舞台のうえで、お袋目を回して、倒れちゃって。
そうしたら、怪人のやつ、お袋にのしかかっていって、
ふくらはぎにまで、ぶすりと。突き刺すわけですよ。吸血管を。
レンコンみたいに平たい触手で、お袋の全身を撫でまわしながら。
帰りにそっと見たら、お袋の履いている肌色のストッキングが、破けていました。
色が目だたなかったので、さいしょのうちは気がつかなかったんですが。

お芝居の晩のことでした。
怖い夢を、見ましてね。
あのカマキリみたいな吸血怪人が、家に侵入してくるんです。
お袋は、昼間みたいに、こんどは緑のスーツを着ていて。
あのときみたいに、怪人に迫られて。
ふすまのきわにまで、追い詰められちゃって。
タイトスカート、っていうんですよね。
幅のきちっとしたスカートが、ぐいぐい引き上げられてゆくんです。
肌色のストッキングを履いた太ももが、子どもの目にもまぶしくて。
上からあのレンコンをあてがわれてしまうと。
おもしろいように、ちりちりに破けてゆくんです。
あの吸血管も、刺し込まれてしまいました。
面白いだろ?
怪人が、人間のことばでしゃべりました。
思わずうなずいちゃっていましたよ。わたし。
もっと吸ってみてって、おねだりしていました。
お袋、苦笑いしながら。でも、まんざらでもなかったらしくって。
じぶんからうなじを差し出して、管を挿されたり、レンコンをあてがわれたり。
くすぐったそうに目を瞑りながら、血を吸い取られていました。
きみもどうだい?
いわれるままに。
わたしも首筋を、あの管で刺されてしまったのです。
痛かったかって?
くすぐったい感じがしましたね。むしろ。
お袋がわざわざ手を挙げてまで、刺されたわけがわかったような気がしましたっけ。
首のつけ根から、なにかを吸い取られるような感覚がして。
こいつのなかで、お袋の血と、ボクの血が、混じりあうのかなって、ヘンな想像しているうちに。
ひどくうっとりとなって、眠くなって。
その場に倒れて、あとは記憶がないんです。
そうそう。
翌朝ね。
朝ご飯を食べながら、そんな話をしたら。
親父にしかられましたっけ。
莫迦だな。そんなこと、あるわけがないだろう、って。
叱りようが、子どものたわごとなのに、えらくきつかったので。
それきり、黙っちゃいましたっけ。

え?夕べどこに行ったか、ですって?
まるで。尋問みたいですな。
エエ、出かけましたよ。家内とふたりで。
子どもを寝かしつけてから。
親父もお袋も、まだ元気なので。
子どもを見てくれるっ、て、言ってくれたのです。
でもお袋は、あのあとどこかに出かけたようですが・・・
よくご存知ですね。
そうです。お芝居ですよ。
夜の部があるんです。広告には、出ていませんでしたっけ?
家内もおめかしして、いっしょに出かけました。
息子のお友だちのお母さんとかも、顔見知りの人がかなり来ていましたな。
みんな、着飾って。
ああいうときは、女って、どうして競争するみたいに着飾るんですかね。
男のわたしには、さっぱりわかりませんな。
芝居のすじがきですか?
よしましょうよ。もう、子どもじゃないんですから。
本当に知りたい。
いいんですか。引き返せなくなりますよ?
そうですか。まぁ、仕方ないですね・・・

足をくつろげられるくらいにね。シートがひろびろとしているんです。
お芝居のあいだは、照明が暗くなるんですが。
なにも、気づかなかったふりをしていることになっているんですよ。
わたしみたいに古いお客は、まぁそれなりに。
状況を愉しんでしまっていますが。
順番にね、やって来るんです。
なにが、って?
吸血怪人のやつですよ。
子どものころの記憶そのままに。カマキリみたいな着ぐるみを着たやつです。
そいつがね。順ぐりに、ご婦人方におおいかぶさってきて。
首筋に、吸血管を、あてがうんです。
そうするとね。
皆さん、演技がお上手ですな。
うぅん!って、のけぞって。
もだえたふりをして。
スーツのすき間から、管を刺し込まれていって。
ちゅー、って。音までするんですよ。
ご主人がいっしょについてくる場合には、よけいに吸い取られてしまうらしいです。
介抱するひとがいるわけですからね。
男の人はね。希望しだいなんです。
スラックスの下に、ストッキングみたいに薄い靴下を履いてゆくと。それが目印です。
まぁ皆さん、行かれるのは服従をしている人たちばかりなのですが。
体調のいい人は、協力することになっているんですよ。
一種の献血ですからね・・・
私、ええもちろん。履いていきましたよ。
すねの周りを、ぴっちりと張り詰めて。
肌が妙に、じわじわしてくるんですよ。
血の色が変わるんだ、っていうんです。もちろん嘘でしょうけど。
怪人といっしょに、女戦闘員がついてきましてね。
子どものときと、おなじ人のような気がするんです。
あれからなん十年も経っているわけですから。そんなことありはしないのですが。
ご主人の相手をするのは、女のほうです。
嬉しそうにスラックスを引き上げましてね。
吸血管を刺し込むんです。
わたしのときは、じかに唇を吸いつけてきましたが。
靴下?ええもちろん。びちびちに破けてしまいましたね。
家内のストッキングと、おなじように。
ええ。足許に、かがみ込んできましてね。
ふくらはぎの、肉づきのいいあたりに。
ストッキングの上から、刺し込んでくるんです。
握ってやっていた掌が、一瞬こわばったみたいに、ギュッと握り締めてきて。
応えてやりましたよ。もちろん、ね。
しばらくは、硬直したみたいに固まっているんですが。
血を吸い取られてゆくとね、じょじょにゆるんでくるんです。
わたし?ええ。目の前で、家内の血を吸い取られてゆくのが。
ひしひしと伝わってくるんですが。
麻酔に痺れたみたいになって。
ゾクゾクとこわばってしまうんですね。
自分の血を吸い取られる以上に、ね。
透明な吸血管を、家内の血が、赤黒く充たしていって。
不健康な色だねっていったら。
あら、そんなことないですよ、静脈から採っているからだって。
女のほうが、教えてくれました。
えぇ、もちろん。本当に採血しているんです。
医者でもないのに、って?もちろん、夢のお話ですからね。
ほら、濃くって、熟した色に見えるでしょう?
女にそう言われると。
吸い上げられてゆく家内の血が、妙にいとおしく思えたんです。
知らず知らず、家内のことを、しっかりと抱き寄せていましたっけ。

わたしたち夫婦の身体から、血をたっぷりと吸い取っていったはずなのに。
それでも、吸い足りなかったらしいです。
よくいえば、気に入ったのかもしれませんが。
そいつは、夜更け。わたしたちが帰宅すると。
雨戸をほとほと叩きましてね。
侵入してきやがりました。
わたし?えぇ、もちろん抵抗しましたが。
とうとう家内を、捕まえられてしまいました。
家内、破けたストッキングを、劇場で履き替えて戻ってきたのですが。
持ち合わせがたまたま、黒いやつでして。
タイトスカート、っていうんですよね。
その晩は、黒一色のスーツでしたが。
男の目にも、肌の透けてみえる薄手の黒のストッキングに、よくマッチしていました。
妙に、記憶に残るものですね。
畳のうえをくねる、黒い脚が・・・
お芝居で、そうされたみたいに。
吸血管やレンコンをあてがわれて。
あのレンコンで、全身をくまなく撫でまわされて。
家内、お酒に酔ったような顔つきになっていました。
求められるまま、スーツのすそから、脚をさらけ出していって、
黒のストッキングが、じりじりと裂け目を広げていって。
みるかげもなく引き剥がれて、すねからすべり落ちてゆくんです。
白い太ももをよけい鮮やかに、浮き上がらせて。
失血であえいでいたわたしは、もう意識の彼方になりかかっていたのですが。
家内がのけぞって、うめき声を必死になって忍ばせているのだけは、よく憶えているんです。
怪人に犯された?まぁ、そんなところかもしれないですね。
お芝居が街にいるあいだ。吸血したくなったら。
いつでもたずねておいでって、言ってやりましたっけ。

あなた。今夜、お芝居に行かれるんでしたよね?
奥様のご招待ですか。
今のお話。あくまで夢の話ですからね。
あまり、参考にはならないと思いますが。
あなたにも・・・夢と思っていただければ、なによりです。
それなりに、愉しめるお芝居ですから。
あ、そうそう。お子さんにはくれぐれも、内緒ですよ。
夕べはうちの息子もそれとなく気がついたようですが。
莫迦だな、夢の話なんかするものじゃないって。
よく叱っておきましたから・・・

友情 2 ~訊くのは、野暮。~

2007年02月04日(Sun) 19:47:00

ボクは、既婚者。ヤツは、独身。
ボクは普通の、人間だけど。ヤツは昔から、吸血鬼。
半ズボンにハイソックスの子どものころは。
つかまえそこねた女の子の身代わりに。
妹のスカートを履いて、ハイソックスの脚を咬ませてやったこともあったっけ。

お嫁さんをもらったときも。
処女の血が欲しいって、せがまれて。
恐る恐る彼女に打ち明けてみたら。
面白そうね。♪
もの分かりよく、そんなふうにささやいて。
ひと晩、ふた晩、それからいく晩。
ウットリとして、生き血を吸われる乙女を演じてくれた。

貸してくれない?奥さんのこと。ほんのときどきで、いいからさ。
ストッキングを履いた彼女の脚。
見ているだけで、ワクワクするのを我慢できなくなるんだよ。
ボクの嫁さんなんだぜ?
苦笑いして、ヤツをにらむと。
ストッキングのうえから、舐めるだけ。ちょっぴり悪戯するだけだから。
だって、とてもなめらかそうなんだもの。
奥さんの脚を味わうんじゃなくて、ストッキングの鑑定をしたいだけだよ。
そんなふうに、たたみかけられて。
とうとう断りきれなくなっちゃって。
恐る恐る、妻に切り出したら。
素肌をじかに吸われなかったら、浮気にならないかなって。
ウフフフ・・・ッ、と含み笑いをかえしてくる。

じゃあ、いいよ。我慢するよ。見て見ぬふりも、してあげるから。
あいつが血を吸われすぎて、倒れそうになったなら。
後ろから支えてやるくらいは、手伝えるかな。
ストッキング、そんなに気になるのなら。
もののはずみで、破けちゃうこともあるだろうね。
破けたら・・・オレがもらってもいいかい?
うふふ。エッチだな。お前。好きにしなよ・・・

それからヤツは三日にあげず、うちに来て。
ボクの留守中、ヤツのためにストッキングを履いたまま家事をしている妻の後ろから忍び寄って。
ぬるぬる、ぬるぬる、唇やべろを這わせてきた。
先月は、やぼったい肌色のタイツだったのに。
先週は、ふつうに肌の透けるストッキング。
色も、肌色から黒になって。
白い脛がじわりと色っぽく、透けてみえる。
きょう、脚に通していたのは、洋もので。
つやつや光沢がよぎっていた。
妻のストッキングは、ヤツが来るたび薄くなっていく。
あんなに薄かったら。
べろのぬめりがなまのまんま、皮膚にじんわりしみ込んで。
皮膚の下の静脈にまで、ヤツの麻酔が滲んでしまうよ。

だって、だって。せっかく愉しみにいらしたんだもの。
ちょっとでも、彼の好みに合わせなきゃ。
それもそうだね。
妻のもっともらしい言い分に。
ボクはわざと、言いくるめられている。

破けちゃった。
仕事がひけて、家に帰るなり。
妻は、ロングスカートのすそを引きあげて。
つつーと伸びた伝線を、誇らしそうに見せびらかした。
留守中、彼が遊びに来たのよって。無邪気に笑いながら。
しょうがないねぇ。あいつ。
痛くなかった?悔しくなかった?
明日謝りに来させるって?
お手柔らかにね。^^;
でもまあ、たまになら・・・もののはずみってこともあるだろうね。
それにしても。
破けたストッキングって、妖しいね・・・
ストレス忘れちゃうくらい♪
ボクは不覚にも妻にふるいついて、その場で押し倒してしまっている。

ゴメンな、また破いちゃったよ。^^;
逢瀬が度重なるにつれ。
ヤツはますます、妻のストッキングにご執心。
独りきりで、寂しいんだろ?しょうがないね。ほんとうに。
妻の生き血を、ほどほどに愉しんで。
ストッキング破くくらいで、気が晴れるのなら。
いつでも妻を襲いにおいで。

あいも変わらず、三日にあげず。
ヤツはせっせと、ボクの家に通いつめ、
うなじから二の腕へと、すーっと撫でおろしたり。
背中をじわりとさすっていたり。
けれどもボクは、とがめない。
いいんだよ。仲良しだから。
妻とも、仲良くなりたいんだろう?
多少のことは、許してあげる。
今晩、ボクは夜勤だから。
独りで寝るのが寂しかったら・・・
妻のストッキングを破りにおいで。

今週は三足くらい、穴をあけられちゃったかな?
いやぁ、ひと晩見逃しているね?^^
四足なのだよ。
おやおや。してやられちゃったねぇ。(^_^;)
あいつ、黙っているんだもの。
でもね。妻のところにばかり、通いつめていると。
ほかの女たちに、怨まれないかい?
平気平気。^^v ひと晩に三人くらいは、楽勝でいかしているからね♪
まさかイカしているなかに・・・ボクの妻は入ってやしないよね?
だいじょうぶ、だいじょうぶ。
奥さんとは、清い仲。ストッキングを、破くだけ♪
ほかならぬきみの嫁さんだからね。特別扱いだよ。^^

吸い取られたのは、生き血だけかって?
穴をあけられたのは、ストッキングだけなのかって?
訊くのは野暮・・・というものだよ。
誰だって。わかっているさ。
ストッキングを破らせるほどの仲だもの。
もののはずみってことも、あるだろうね。
うっかりスカートを引きあげてしまったり。
腰と腰とを、合わせてしまったり。
首筋を咬んで、血を吸っているうちに。
つい唇を奪ってしまったり。
それくらいのことは、ほんのささやかなサプライズ。

ほら御覧。
妻はまえよりいっそう、若々しく、美しく、つややかに磨かれてきただろう?
料理が上手になったのは。
ボクが夜勤で、なにをしていてもわからない晩とかに。
ナイショで、だれもいない、ヤツの家に出かけていって。
お夜食を作ってやっているから。
ヤツに相手がいないあいだは、妻がヤツの女房代わりを務めているのさ。
お夜食の中身?
どこまで女房代わり?
さぁ、それは・・・
訊くのは野暮と・・・いうものだよ。♪


あとがき
またまた、ヘンなお話を・・・^^;
まぁ、いつものことですが。(^_^;)
去年の12月12日付「友情」と、相通ずるお話です。
ストーリー展開からして、べつのご夫婦のようですが。
ストッキングを悪戯させたり、破らせたりするところまでは、OKをして。
あとはムフフ・・・な沈黙にくるんでしまっているあたり。
兄弟のように、瓜ふたつの展開かも。^^
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-664.html

終演 ~楽屋裏の舞台監督 続編~

2007年02月04日(Sun) 16:12:42

劇団の朝は、遅い。
かつての勉強室とはフロア違いの楽屋裏に俺が靴音を響かせるのは、もうお昼もほど近い刻限だ。
「おはようございます」
声をかけてくるのは、あの受付嬢。
俺を楽屋裏に引き入れて、監督に会わせた女。
「気にすることはないわよ」
女がたしなめるように、囁いたのは。
きのうの上演の不首尾をフォローしてくれたのだろう。
それが俺の初舞台だった。
サラマンダーという、いまでは誰も知らないヒーローが活躍する子供向けのお芝居に、
俺はすぐに出演させてもらえることになった。
なにしろ、男優不足でね。
苦笑交じりに語った監督は、女ばかりやたらと多い劇団員を、それでもちょっと得意げに見回しながら、俺の配役を教えてくれた。
さいしょの配役は、吸血怪人だった。
きみは、あがり性だそうだが。
着ぐるみを着ていれば、人の目は気にならないだろうと思ってね。
引き出されたグロテスクな着ぐるみは、存外重くて、それでもかなりきついと耳にしていた内部の臭いは思ったほどでもなかった。
これを着て、舞台のうえで女性を襲って、生き血を吸い取るまねをする。
それが俺の役柄だった。
さいごにはもちろん、正義のヒーローにやっつけられてしまうのだが。

いよいよ舞台にあがったときは、緊張感などなんでもなかった。
初仕事をうまくこなそう。
我ながら殊勝にも、そんなことで頭がいっぱいだった。
意外だったのは。
俺に襲われるという女性が、観客だったことだった。
まるで小学生のころに学校で見させられた演劇の世界だった。
「ではじっさいに、吸血怪人に襲われてみたい人~!?」
能天気な声を張りあげたのは、あの窓口の女だった。
女は、悪役の女の扮装をしている。
黒ずくめのスーツに、細身の黒のサングラス。
かっちりとした黒のハイヒールをてかてかと硬質に輝かせ、それと対照的になよなよとした薄黒いストッキングに包まれた脚線美が、薄暗い舞台のうえでもいっそうきわだっていた。
女の声に応えるように。
ふたり、三人・・・と挙手の手が白く浮き上がる。
選ばれて舞台にあがったのは、すこしとうがたった女だったが、
上背があって、しっかりとした輪郭の目鼻だちをしていた。
若いころは、まぶしいほどの美人だったに違いない。
年齢からすると、お芝居に子どもをつれてきたお母さんの一人だろうか。
だいたいこんな子どもじみたお芝居を、いい大人の女がひとりで見に来るとはとうてい思えなかった。

ほら、しっかりやれよ。
舞台の袖の暗がりから声をかけてきたのは、監督だった。
スポットライトを照り返す黒眼鏡の奥にあるのは、俺の演技を値踏みする職人の鋭い目。
おもわずびくり、とした。
くちばしが、吸血管になっている。
そいつで、女の首筋をぶすりとやれ。
強すぎても問題ない。突き通してしまうくらいに、強く食いつくんだ。
まるで悪の首領のような冷徹さで、監督は命令口調にそういった。
女は薄いブルーのスーツを着ていて、真っ白なブラウスのふわふわしたリボンが胸元をキュッと引き締めている。
こういう飛び入りに慣れているのか、男の俺でさえ足元の定まらない舞台の床に、薄茶のハイヒールの脚でしっかりと立っていた。
薄っすらとした微笑が、妙に余裕たっぷりだった。

莫迦なやつだな。
舞台がはねると、監督は俺を呼んで、じっくりとした顔で面と向かっていた。
いわれたとおりに、ぶすりとやればよかったのだ。
お前にはちゃんと、埋め込むものを埋め込んであるのだから。
舞台に上がってきた女は俺の不十分な襲撃に、ちょっとふしんそうな面持ちをして、しばらくは抱きすくめられていたのだが。
とうとう見かねたらしい女戦士~受付の女~がさっと出てくると、俺の腕から女をさらって、代わりに首筋に唇を吸いつけていた。
ほんとうに血を吸っているほどの、迫真の演技だった。
女戦士に抱きすくめられたヒロインは、上背のある上体をぐらっと傾けて、
白目になって体の均衡を喪っていった。

格下げだね。
受付の女は、憐れむようにせせら笑った。
昨日の失敗を言っているんだろう。
彼女はそれでも、べつに気にするんじゃないよ、と俺をねぎらって、
監督に挨拶してきなよ。たぶんきっと、また役をくれるよ。
そういうと、俺からすぐにさっと離れて、知らん顔をして受付カウンターに立ちつづけた。
もうなん時間も立ちんぼしているのだと言わんばかりに。
人なつこそうな声色は、俺がなかに入って舞台裏の人となると。
掌を返したように、ぞんざいになっている。
序列からすれば、それがとうぜんなのだろう。

楽屋に入ると、そこはまだがらんどうだった。
早すぎたらしい。
女たちは、お昼を過ぎてもなかなか顔がそろわない。
上演は午後の二時と、四時。
それまでに出てくればいい。そんなふうに、たかをくくっているようだった。
監督の姿も、みえなかった。
楽屋の奥にはもうひと部屋あるらしく、けれどもそこはいつも堅く施錠されていて、そもそも誰も近づこうとはしなかった。
ふと、好奇心が胸にきざした。
あの奥は、どうなっているのだろう?
冷たい鉄の扉に、俺はそっと耳をつけてみた。
周囲のもろもろの音響が、じわーんと滲んできた。
雑音に慣れると、その向こう側から、なにかが聞えてきた。
うめき声だった。
あえぎ声、といってもよかった。
切なげに、息せき切った声色は、若い女のものだった。
キュウキュウキュウキュウと、人をくったような音が、それに重なった。
怪人が犠牲者のうえにのしかかって吸血するときに使った擬音のようだった。
ふと、擬音がとまった。
誰かがじいっと、扉の向こうからこちら側を見据えている。
そんな感覚が、ありありと伝わってきて。
俺はゾッとして、扉から体を離した。
狼狽した視線を楽屋のすみずみに配ったが、昼下がりのがらんどうの部屋は相変わらずシンと静まり返っていて。
もの音ひとつ、たたなかった。

そそくさと受付に戻ると、受付の女と目が合った。
「いなかったのかい?監督」
「ああ」
俺は仕方なく、そう答えて、
「奥の部屋までは、見なかったけど」
わざとそういった。
女がなにかを知っているのだろうかと、かまをかけてみたくなったのだ。
女の反応は、過剰だった。
キッと柳眉を逆立てると。
「だめだよ。あそこは。間違っても覗いたりしちゃ」
怒ったように肩をそびやかして、上背のある反り身で威嚇するように迫ってきた。
「わかってるって」
あまりの過剰反応に俺はしょうしょうへきえきとなって、手をあげて女を振り払った。
「わかってるんなら、いいんだよ。もうあんたはここのひとなんだから。掟は守ってもらうんだよ」
”掟”・・・か。
たしかにここは、いままで属した学校とか、勉強室とか、生ぬるい学生サークルとかとはまるで異質な、妙に強い連帯があるようだった。
「そういえば」
女は狼狽を隠すように、話題を転じた。
「彼女、ここに来たんだろ。夕べ」
ふふん、と値踏みするように笑んだようすがひどくあだっぽく、俺はちょっと女を見直すような気分になった。
「あぁ、来たよ」
我ながらひと事のようだな、と思って。
「俺が連れて来たんだ」
そうつけ加えた。
「そうだってねぇ。ご苦労さん」
夕方彼女を連れて劇団にやってきた俺を出迎えたとき、
この女はちょっとびっくりしたように、俺を見直したという目をして楽屋に招き入れたのだ。
春から就職が決まっていた彼女は、グレーのスーツに身を包んでいた。
いわゆる、リクルート・スーツというやつだ。
スーツを着るのが気が進まなくて、就職活動もろくにしなかった俺には、もの珍らしい服装だった。
どこでも見かけるようなありふれた一着のスーツが、いまの彼女と俺とを正反対の方向に分かつような雰囲気を、たしかに漂わせていた。

俺が彼女を監督に引き合わせると。
はじめまして。彼氏からお話を聞きましたか?
ではすぐに、面接をしようか。
と、おだやかに口を開いて。
おだやかな口調とは、裏腹に。
有無を言わさずに、彼女をあの楽屋の奥の部屋に引き込んだのだ。
あとにつづこうとした俺を、強い力で腕を取って引き止めたのは、受付の女だった。
受付の女は、美也子と呼ばれていた。
いつまでも受付の女では、悪いだろう。ちゃんと名前があるのだから。
これからは、美也子と呼ぶことにする。
美也子は「いっちゃだめ」と小声で俺を制すると、「あんたには仕事があるのよ」と、舞台に出っ放しになっている大道具の移動を命じた。
大道具は悪の組織が犠牲者を処刑する処刑台で、見た目ほど重くはないのだが、ばかにでかかった。
慣れない俺がそれを相棒とふたりあくせくと片づけるのに、ゆっくり30分はかかっていた。
ふたたび楽屋に行くと、監督が独り残っていて、お嬢さんは先に帰ったよと俺に告げた。
あの30分。
彼女は監督と二人だけの刻を過ごしている。
どんなやり取りがあったのか。
なにかをされたのか。
それは誰にも、わからない。

「役が決まったよ」
所在なくなった俺が階下の喫茶店で時間をつぶしてふたたび戻ってくると、美也子はぞんざいに台本を投げてよこした。
「冷酷!吸血魔人の陰謀」
大仰なタイトルに、思わず苦笑を洩らしてしまう。
「だめだよ、あんた。そんな態度だったら。商売道具なんだからね。舞台に上がったら、こんどこそへたは打てないんだからね」
美也子は伝法に啖呵を切ると、
「あんたの役はね。犠牲者だよ。恋人といっしょに夜道を歩いて、吸血魔人に襲われるんだ」
どうやらこんどは、さいしょにやられてしまう役名もない通行人のようなものらしい。
女は俺のそんな態度をすぐに察したらしく、いい含めるようにつづけていった。
「大事な役だからね。ここで吸血魔人の怖さを、子どもたちにとっくりと見せつけなくちゃならないんだからね」
どんなふうに演(や)ればいいいんだい?
我ながら、間抜けな質問だったが。
美也子はていねいに教えてくれた。

出番は、さいしょのシーンだった。
俺は恋人とふたり、腕を組んで舞台の袖から登場し、暗い舞台の中央まで歩いてゆく。
ちょうどまん中あたりまでさしかかったところで、昨日俺がかぶったのとおなじ着ぐるみの姿の魔人が登場する。
「怪人と魔人と、どう違うんだい?」
俺は思わず訊いていた。
「つまらないことを訊くんだね。そのうちわかるよ」
美也子はまるで、取り合わなかった。
いつもやっつけられるのがおなじ怪人じゃ、まずいだろう?
おなじ着ぐるみなのだから・・・という文句は、美也子の説明のまえにさえぎられた。
魔人と出遭った俺は必死になって恋人を守ろうとするのだが、
横合いから出てきたべつの女怪人に抱きつかれ、首筋を吸われてしまう。
俺が抵抗できずに血を吸われているあいだに、恋人役の女もあわれ魔人の毒牙に・・・
まず、そんな筋書きらしかった。
「女怪人は、わたしだよ。お前の血を吸ってやるんだ」
美也子はいとも愉しげにせせら笑うと、恋人役が誰だか知りたくはないかい、と訊いた。
俺が黙っていると、
「あんたの彼女さ。初舞台なのに、大抜擢だね」

ふつうさいしょは、踊り子なのさ。
踊り子。
多くの女たちが、バックで演じている、意味のない舞踏。
時おり怪人の手下の戦闘員にはや代わりしたりするのだが、要するに「その他大勢」というやつなのだ。
たいしたもんじゃないか。あの子はうまくやるだろうよ。
美也子はなにもかも見通したように、もっともらしく頷いている。
ふと振り返ると。俺はぎょっとした。
いつ入ってきたのだろうか。
彼女が佇んでいた。
俺の真後ろに、音もなく。

「おやぁ、ミチルさんじゃないの。早かったねぇ」
美也子は打って変わって愛想よく、彼女を出迎えた。
ミチルは俺のほうにはごく素っ気なく会釈を投げただけだった。
きょうのミチルは、真っ白のスーツを着ている。
このごろ見慣れたグレーのリクルート・スーツではなかった。
よく見ると、夏物だった。
そう。
彼女の就職活動の合い間に時間を作って公園を歩いたとき、着ていたやつだった。
薄暗いビル内の照明のせいだろうか。
肌色のストッキングが、やけにてかてかと輝いている。
さして特徴の感じられなかった足首やふくらはぎが微妙な起伏を帯びて、俺の目を一瞬釘づけにする。

二時の上演は、お流れになった。
なぜか、客が一人も来なかったからだ。
踊り子たちも、二時に顔をだしたものはまばらで、上演予定の時間を三十分も過ぎたころから、三々五々集まってきた。
ミチルがあらわれたのも、二時五分まえ。
俺がデートの時間に遅れたときにいつも口を尖らせていた彼女にしては、遅い。
もともと二時の上演は、なかったのだろうか。
事情を知らないのは、どうやら俺だけらしい。

さ、出番だよ。こんどこそ、しくじるんじゃないよ。
美也子はまるで駆け出しの小僧にいいきかせるように、俺を舞台の袖に引き立てた。
いっしょに腕を組んでいるのは、ミチル。
さっきまでの仏頂面はどこへやら。
こんなに明るく人懐こいミチルを目にするのは、互いの進路が話題になってからたえてないくらいだった。
さ、行きましょ。ヒ・デ・キ♪
彼女はウキウキと俺の腕を取ると、まるで引き立てるようにして舞台につづく階段へと脚を進めた。
真っ白なハイヒールに収まった、格好のよい脚。
ミチルの脚は、こんなにも見映えがしただろうか。
いっしょの夜を重ねたことも、何度かある。
けれども彼女の脚にまで、俺の目は及ばなかったのだろうか?
ミチルはハイヒールのかかとをきりりと合わせると、
「じゃ、行くわよ。一、二、三・・・!」
思い切りよく、舞台に脚を踏み入れた。

シンと静まり返った真っ暗な舞台に、スポットライトだけがやけに眩しい。
間近に浴びると額に照りつけた光が意外なくらい熱くて、もうすでに薄っすらと汗をかいていた。
緊張のせいだけでは、ないはずだ。
俺は恋人どうぜんに、(事実恋人同士なのだが)ミチルとふたり、みるからに睦まじげに腕を組んで、台本どおり舞台の中央へと向かった。
コツコツという靴音だけが、やけに耳に響く。
ギエッ!
だしぬけに、音響装置から耳ざわりな音が鳴りわたった。
怪人・・いや吸血魔人の登場だ。
「うわっ、だ、だ、誰だッ!?」
俺は台本どおりのセリフを口にする。
思い切りよく発した声量が、あまり広くない観客席のすみずみにまでいきわたるのを感じた。
第一声は、成功だ。
ギエッ!
魔人はむろん、人の言葉をしゃべらない。
人の生き血が欲しい、という意思表示も。もちろん直接行動があるだけだ。
いきなりミチルに襲い掛かろうとした。
「こっ、こいつ・・・っ」
俺は本気になって、魔人に向かってつかみかかっていった。
組み打ちになった。
もうじき横合いから、美也子が出てくるはずだ。
吸血魔人と格闘を演じながら、俺は美也子の出番を今か今かと待っていた。
キャーッ。
ミチルが声を振り絞って、悲鳴をあげる。
恐怖で立ちすくんで動けない、という演技だった。
薄暗い舞台のうえ、てかてか光る透明なストッキングの脚が、妖しいまでに浮き上がっていた。
あの脚を、こんな化け物の餌食にしてたまるか。
俺はむきになって、腕に力を込めていた。
美也子はなかなか、現れない。
俺はミチルを守ろうとして、いつか夢中で魔人ともみ合っていた。
ぬるっ。
魔人の口許から、細長い管が伸びてきた。
俺が着ぐるみを着たときに、飛び入りの女性の観客に刺し損ねたやつだった。
それが自ら意思を持っているように、ぐんぐんと伸びてくる。
両腕は、吸血魔人の持つ四本の腕と組み合っていて、もう身動きができない。
うわ、わ・・・っ
俺は、肝を消していた。
差し伸べられた吸血管が、そのまま俺の首筋に、ググッ・・・と突き込まれたのだ。
なっ、何を・・・?
無機質な細長い管は、皮膚を破ってかなり奥まで達すると、そのままチューッと音をたてて、本当に俺の血を吸い上げはじめた。
そんな、莫迦なっ!?
くらくらと眩暈に襲われて、俺は舞台のまん中で仰向けに倒れてしまった。
薄らいだ意識の向こうで、ミチルが魔人に襲われている。
真っ白なスーツ姿が舞台のすみに追い詰められていって、けんめいにいやいやをしながら、
やはり俺のときとおなじように、白くて柔らかいうなじにあの忌々しい吸血管を刺し込まれてしまうのだった。

あとは、夢かうつつか、よくわからない。
魔人の腕のなか、体から力の抜けたミチルは、ずるずると姿勢をくずしていって、
息も絶え絶えにあえぎながら、とうとう舞台の床にうつ伏せに伏せってしまった。
ぼうっとなった彼女のうえに、冷酷な嘲り笑いが響いた。
手加減抜きでふたりの体から吸い取った血は、かなりの量になるはずなのに。
魔人はまだそれでも飽き足らないらしい。
うつ伏せに倒れたミチルの足許に這い寄っていった。
四本もある腕のうち、二本は指がなかった。
腕の先端はレンコンのように平たくなっていて、いちめんにグロテスクな穴ぼこがあいていた。
あの穴から、生き血を吸うんだよ。
美也子の嘲るような声色が、どこかから響いてくる。
舞台の床のうえ、すんなりと伸べられたミチルの脚は、てかてか光る透明なストッキングに包まれている。
魔人はすり寄るようにミチルの足許に身を寄せていって、
長い舌をミチルのふくらはぎに巻きつけていった。
てらてらと光る魔人の唾液が、光沢を帯びたナイロンの表面になすりつけられてゆく。
若い女のもつ理性や気品を、見るかげもなく侵蝕してしまうように。
その光景はひどくエロチックで、意識の遠のきかけた俺が気付け薬を嗅がされたようにハッと我にかえるほどだった。

しんなりと伸びたふくらはぎに、吸いつくように密着した透明なストッキング。
それが、意思を持った触手のようにぐねぐねとうねる長い舌に巻かれた下で、微妙にねじれを帯びてゆく。
足首にひきつったようなしわが浮き、やがてぶちぶち・・・っと、音を立てて破れた。
あ・・・
ふたたび、気が遠くなりかけた。
薄らいでゆく意識の向こうで、魔人はミチルにとどめを刺すように、レンコンのように平たい掌をふくらはぎに圧しつけてゆく。
てかてかとした薄いストッキングは、むっちりとした起伏を帯びた脚まわりから剥ぎ堕とされて、ぶちぶちと裂けてゆく。
薄っすらとした破れ目には、バラ色の液体が滲んでいた。
さらにミチルの身体を乱暴にひっくり返すと、白のブラウスの胸元にも、おなじようにレンコンをあてがってゆく。
ブラウスも、バラ色に濡れた。
ほんものの血だ・・・
俺は薄ぼんやりと、ミチルが魔人に吸血されるのを目の当たりにしていた。

「よくやったよ。迫真の演技だった」
監督は珍しく、ぱちぱちと手を叩いて俺を迎えてくれた。
眩暈が、まだ去らない。
「あせりましたよ。美也子さんがなかなか出てこないんで」
俺がうっそりとした口調でそういうと、監督はちょっとびっくりしたように俺を見つめ返して、そういうことか、と得心がいったように頷いていた。
台本を見せてみろ。そう言われて差し出した台本をひと目見るなり監督は、
「これは偽の台本だよ。あいつがでっち上げたんだ」
えっ?
お前の演技を試そうとしたんだろうな。時々私にもいわないで、こんな悪戯をするんだよ。

あんたのまずい血なんか、吸いたくなかったからね。
俺が問い詰めても、美也子はどこ吹く風だった。
それよりも、つぎの上演がすぐなんだよ。
明日か・・・?俺が訊きかえすと
女は意外にも、今夜だと告げた。
上演は二時と四時のはずだった。
もういちど、やるというのか?
あぁ、八時にね。
八時・・・?
子どもたちがお芝居を見に来る時間ではないはずだ。
ばかだね。
美也子は軽蔑したように吐き捨てた。
「なんのために、飛び入りのお客をあんたに見せたんだい?
  あいつらが、遊びに来るのさ」

だれが好きこのんで、こんな田舎芝居を見に子どもを連れて来るものか。
ほんとうはね。みんな夜の部を楽しみにしているんだよ。
お昼の部で子どもをてきとうに疲れさせて。
疲れると、子どもはよく寝るからね。
そうして、家を一人で抜けてきて、夜の部を観に来るんだよ。
そうなったらあんたも、また吸血怪人に早代わりだね。
町の広報にも、受付にも。事前告知されることのない、夜の上演。
たしかに美也子のいうように、コートにまとわれた女もののスーツやワンピースの影がどこからともなく、足音もたてずに集まってくる。

閉館でいちどは照明を落したロビーは、にわかに輝きを取り戻している。
ざわざわとした雑踏は生き生きと、そして猥雑な息遣いに包まれていた。
足許を、よく御覧。
美也子がそっと、耳打ちをする。
みんな、ハイヒールにストッキングだろう?
そう、これからやるのは田舎芝居なんかじゃない。舞踏会なんだよ。
女はいとも心地よげに、ころころと笑った。
よく響く、高く澄み透ったきれいな声だった。
まるではたちそこそこの、ミチルでもめったに口にしないような、童女のような直ぐな咲(わら)い。
この女、齢はいったい、いくつだというのだろう?

観客たちがぞろぞろと入場すると、待ち構えたように外から錠がおろされた。
パチンと冷たく響く施錠の音は観客たちの耳にもとまったはずだったが、かれらはいちようにそんなことは意に介さずに、思い思いの席に腰をおろしてゆく。
ほとんどが、女性の単独客。あとは二人連れか数人組の女性客。まれに夫婦者とおぼしきカップルがいたが、男たちはまるで去勢されたように、精気の抜け切った表情をしている。

昼間と打って変わって明るく照りわたる照明の下、俺は座席がやけに少ないのを見てとった。
ふつうなら座席がぎゅう詰めになっているはずのこの手の劇場にはめずらしく、それぞれのシートの前には十分な余裕があって、観客は旅客機のファーストクラスよろしく、ゆったり足が伸ばせるくらいだったのだ。
ふつうならジリリリリリリリ・・・とけたたましく鳴り響くはずの開演のベルは、鳴らされない。
踊り子たちはまるでカーニバルさながらに、露出度満点のいでたちをして。颯爽と胸を張っている。
短いドレスの下、惜しげもなくさらけ出されたむっちりとした太ももを、きめの濃い黒の網タイツが巻きつくように引き締めていた。
美也子はとうに黒づくめの女戦闘員の扮装に立ち戻って、おなじくむき出しにした脚線美をひけらかすように、舞台の隅から隅へとしゃなりしゃなりと歩みをめぐらせながら、観客席をそれとなく、なにかを値踏みするように窺っている。
一歩一歩投げ出される脚が、挑発するようにくねり歩くのだ。
それだけでも、まるでショーのようだった。
黒のストッキングのなか、かすかに透ける白い脛が、鈍い輝きを帯びている。

ミチルは、舞台の最前列にいた。
そういえば、舞台の上で魔人にいっしょに襲われてから、彼女とは言葉を交わしていない。
いつの間に、着替えたのだろう?
見たこともない、黒のサテンのスーツに身を包んでいた。
さいしょは誰だか、わからないくらいの変貌だった。
水商売の女に扮したのか、というほどにけばけばしい衣装の短いすそからは、しっかりとした肉づきの太ももがにょっきりと覗いていて、
薄い白のストッキングにぎらつく光沢が妖しい輝きを放っている。

「では、順番にお並びなさい」
マイクを使わずに舞台の上の人ごみを指図したのは、監督だった。
○さん、すこしさがって。△さん、顔がみえないよ。そう、もうちょっと前に。よしよし、それでよし。
いくら張りあげても、観客もろともにつくりあげられたざわめきに、監督のしわがれ声は切れ切れにしか耳に届かない。
それでも監督はゆうゆうと、手ごまを動かすように造作もなげに舞台上の人々を整列させて、それから後ろの観客席を振り返って、
「では、照明を少し落します。あとは目をつぶっていてください。とくに殿方」
笑いに似たかすかなどよめきが、みだらな震えを帯びている。

低くゆったりとした、妖しい音楽だった。
昼間にいやというほど流されつづけてきた稚拙で単調なテーマ音楽とは、まったく異質の旋律だった。
俺は背筋にゾクッと寒気が走るのを感じた。
いけない。これ以上ミチルをここにいさせるのは。
胸の奥で、本能が警鐘を鳴らしている。まるで火事場の半鐘のように。
流れる旋律が、ゆったりと調べを進めるにつれて。
周囲はだんだん暗くなり、にわかなざわめきがなければ、新たな登場人物に気がつかないほどだった。
ざわめきの向かうほうに目をやると、そこにはあの着ぐるみがグロテスクなシルエットをほのかに浮かび上がらせていた。
着ぐるみのくせに。
やつは俺の血を吸い、そしてミチルの血まで吸い取った。
いったい、なかには誰が入っているのだ?
俺は舞台の袖から知っている顔をひとりひとり見極めようとしたが、
美也子はもちろん、ミチルまでもがよそよそしく、取り澄まして佇んでいるだけだった。
そのふたりの影さえ、周囲に広がる暗がりに、いつか判別がつかなくなった。

きゃあっ。
おおうぅ・・・っ
暗がりの彼方から、異様なうめき声が洩れてくる。
舞台の上にいるにはすべて劇団員のはずだったのだが。
まだ聞き覚えがあるといえるほどの声の主は、そう多くない。
それでもいちばん年かさらしい五十がらみの踊り子や、美也子とかわるがわる受付をしていた比較的若い娘の声がそのなかに混じっているのを、容易に聞き分けることができた。
いったい、なにが起こっているのだ?
俺は我慢できなくなって、とうとう舞台にあがってしまった。
唐突な行動だったが、周囲のだれにも見咎められなかった。
それくらい、室内は昂奮につつまれていたのだ。
見ると、舞台のうえ、怪人は左の端から順繰りに、居並ぶ男女を抱きかかえて、あの鋭い吸血管を首筋に刺し込んでいるところだった。
きらびやかな衣装には、どす黒い血潮がぴゅっと撥ね飛び、飛び散った飛沫が純白の衣装を放射状のまだら模様で彩るたびに、昂ぶる声が最高潮を迎えてゆく。
目の前で、見覚えのある男がどたりと尻もちをついて、動かなくなった。
そのすぐ隣にいるのは、男の妻の劇団員だったが、やっぱり夫とおなじように吸血管を刺し込まれて、絶叫した。
悲痛なものではない。
深い歓びに満たされた叫びだった。
女は声がからからになるほどの悲鳴をあげつづけ、そのまま姿勢を崩して、夫の傍らで夢に堕ちるように目を瞑る。
どういうことなのだ?
気がつくと、俺の傍らに美也子がいた。
「あんたもよ」
美也子はニッ、とほほ笑んだ。
淫らな笑いだった。
手に持っているのは、魔人の吸血管とおなじもの。
「取り外しができるのよ、これ」
そういいながら、美也子は面白そうに、それを俺の首筋に圧しつけた。
めくるめく眩暈に、足がもつれた。
うふふ。
美也子は愉しそうに、俺の顔色を覗き込むようにして、じぶんのした悪戯の効果を見届けると、
「つぎはお嬢さんだね」
腕をつかまれているのは、ミチルだった。
不似合いにけばけばしい衣装に包まれたミチルは、恐怖に頬を蒼白にしている。
「どういうことなの?」
けれどもその声色にかすかな愉悦がこもっているのを、俺は聞き逃さなかった。
ミチルまで、狂わされている。
それは、いつからだろう。
  よし、合格。
初めて楽屋を訪れたとき。
監督に両肩をつかまれて・・・あのとき俺はなにをされたのか。
おなじことをきっと、ミチルもされてしまったに違いない。
いけない。こんなことを繰り返していては・・・
「死ぬのが、怖いのかね?」
肩を接するほどの距離に、監督がいる。
相変わらず、黒眼鏡に黒のジャケット。
無表情な装いの裡に、邪悪なものが渦巻いていた。
「逃がさんよ」
にやりと冷たくほくそ笑んだその顔に、俺は敵意よりもなぜか親近感を覚えていた。
首筋を吸血管で刺されたあとが、まだ疼いている。

「さぁ、つぎは娘さんだ」
腕をつかまれたままだったミチルは、怯えながらも目の前に迫った吸血魔人の意に沿っていた。
じぶんからうなじを仰のけて、突き出される吸血管を白くて柔らかな皮膚に埋められてゆく。
半透明な吸血管を、ミチルの血が赤黒く充たしていった。
うら若い温もりとともに、ゆるゆると・・・
ミチルの血で赤黒く充たされた吸血管が。
俺の胸の奥にまで、えもいわれぬ充足感をもたらしてきた。
まるで自分じしんのなかの渇いたなにかが、癒されるように。
「あ・・・あ・・あ・・・」
ミチルはじょじょに、身体を傾けていった。
目線を惑わせ、ふらりと頭を揺らし、ウットリとなって・・・。
ほくそ笑みながらミチルを後ろから羽交い絞めにしているのは、美也子。
ラメの輝きもけばけばしい口紅を刷いた唇を、ぎらぎらとどぎつく輝かせて。
襟首の広いミチルのブラウスの肩先におもむろに吸いつけてゆく。
「きゃ・・・」
魔人の吸血管は、さも満足げに引き抜かれていたが。
ミチルへの吸血は、まだ続けられてゆく。

頬に、舞台の床が氷板のように冷たかった。
いつの間にか、俺はうつ伏せに倒れていた。
スラックスのすそをまくり上げられて。
ひざ丈まである薄手の長靴下のうえから、魔人のレンコンを圧しつけられていた。
ストッキング地のナイロンのしなやかな感触がいっそう強くふくらはぎに沁み込んだかと思うと、
強い吸気が、レンコンの穴から洩れてくる。
くらくらするほど強烈な吸気とともに、血を抜かれるのを感じた。
靴下がブチブチと、かすかな音を立てて裂けてゆく。
ちょうど昼間、ミチルがそうされたように。
おなじように、皮膚を破られて。血液を抜き取られて。
やつの体内で、ミチルの血と俺の血が、ぐるぐるととぐろを巻いて交わっているのだろうか?
妖しい歓びを秘めた疼きが、俺の眩暈を倍化させる。
あとはまたしても、闇---。

さぁ、どうぞ。
では、次・・・
舞台のうえで、転がったまま。
それでも意識のどこかが、まだ覚めているらしい。
吸血魔人は、客席のほうを回っているらしい。
女性客はひとりひとり、隙なく装ったスーツの合い間から肌をさらけ出して、吸血管を刺し込まれてはウットリした目つきになってゆく。
夫連れの三十そこそこの女が、眩暈を起こしたらしい。
管を引き抜かれるや、夫のほうへと身をもたせかけて突っ伏していた。
魔人は恭しく跪くようにして夫人の足許にかがみこむと、しばらくそのままの姿勢を続けている。
ここからは、つぶさに様子が窺えないにしても。
きっと、ストッキングの上から足許に管を刺し込んでいるのだろう。
夫らしい男は無表情に妻の体を抱き支えながら、
不埒な吸血魔人が妻の血を吸い取ってゆくのに、さりげなく手を貸している。
少数派である男性客は例外なく妻を伴っていたが。
皆が皆、妻の足許にかがみ込んでくる吸血魔人をとがめだてするふうもなく。
さりげなく目をそらし、見てみぬふりをしていたり。
脚をすくめる同伴者のひざ小僧を、スカートの上からそっと抑えたり。
個人差はあるものの。
だれもが吸血怪人たちに、自分の妻の履いているストッキングを破らせてしまっている。

俺の目の前で血を吸い取られた劇団員夫婦も、生き返っていた。
血の気のなくなった蒼ざめた顔に、瞳だけをぎらぎらさせて。
鉛色の唇を、観客の女性のうなじに吸いつけると、
女性客はきゃあきゃあと小娘のようにはしゃぎながら、血を吸い取られてゆく。
魔人は複数いた。いや、正銘の魔人は、きっと単独なのだろう。
魔人のために怪人にされたものたちが。
互いの妻を取り替えあって、襲っている。
豪奢な衣装に血潮をしたたらせながら。
女たちは声を上ずらせながら、忌むべきはずの吸血に、嬉々として応じてゆく。
怪人のひとりが、破れ果てた薄い衣類をひけらかすようにふりかざしている。
破れたストッキングを女の脚から抜き取ったものらしかった。
ミチルのものだ。
俺は直感した。
けれども、さっきから背筋をゾクゾク、ゾクゾクと昂ぶらせているものが、悔しさや憤りを中和させていた。
ミチルは、魔人たちの渦のなかにいた。
あのけばけばしいサテンのジャケットを、色とりどりのスポットライトに浮かび上がらせて。
ほかの女たちと、まったくおなじように。
いつの間に穿き替えたのか。
ちりちりに剥ぎ取られた白のストッキングの代わりに、起伏の豊かな脚を彩るのは、薄手の黒ストッキング。
美也子が脚に帯びていたようなぎらつく光沢こそなかったが。
白い地の肌は、透明なナイロンの淡い翳に惹きたっていた。
しっとりと。それでいて、挑発するように。
その脚を、いまは地につかないと言いたげに。
舞台の床のうえ、淫らに妖しく、ヘビのようにくねらせながら。
きゃあきゃあとはしゃぎきって、繰り出される吸血管に惜しげもなく肌をさらしている。
娼婦の衣装。
折り目正しいスーツを脱ぎ捨てた彼女は、道をはずした俺とおなじように、娼婦に堕ちようとしている。いや・・・すでに堕ちていた。
折り重なるように覆いかぶさってきて。
凌辱に耽る怪人たちのまえ。
女の本性もむき出しに。俺とのときよりもずっと、激しく。
ミチルは淫らな血潮で素肌をあらわに染めながら、自らも熱っぽく応えはじめている。
白い脛を、薄黒いストッキングに妖しく滲ませながら。

「終演だよ」
ふと、目ざめると。
監督が目の前で、黒眼鏡を光らせていた。
いつものように、静かで穏やかな物腰で。
周囲を見回すと、なにもない。誰もいない。
さっきまであれほど盛り上がっていた舞台には、あの狂宴を思い出させるものは、あとかたもない。
それどころか。
劇場全体が、もう何年も使われてこなかったかのようにさびれて、色あせたポスターの切れ端がそこかしこに散らかっていた。
夢だよ、夢。
がらんどうの舞台のうえ。
監督の声だけが、うつろな反響を伴っていた。
どんな宴でも・・・愉しみを尽くせばいずれは終わるものだよ。
さぁ、貴方はこれから、どうやって生きてゆくのかね?
「地道にアルバイトでもして、ちゃんとした定職をさがしますよ」
さっきまでの自分が持っていなかった答えを、返している。
すらすらと、よどみなく。
「彼女さんは、就職できたようだから。しばらく”ひも”にでもなるかね?」
しかしもう、彼女とは・・・
言いかけたとき。
こつーん。こつーん。
開けっ放しの扉の向こうから、高いヒールの響きがうつろに近づいてくる。
美也子がね。時々彼女に逢いたがっているのだよ。
そのときには、逢わせてやってくれるね?
いいでしょう、と俺はやはりよどみなく答えている。
亭主になる私が許すんですから。
たまには監督も、魔人に化けて。彼女の血を吸いに来てくださいよ。
ミチルの相手がつとまるのは、いまはおそらく俺しかいないだろう。
ふつうの女では体験できないことを、素肌にしみ込ませてしまったあとで。
もはや普通の男と交わることも、普通の生き方をすることもできないだろうから。

無表情に近づいてきたミチルの腕を、俺は取っていた。
二度目の舞台で彼女の恋人を演じたときとおなじくらい、愉しげに。
頬をこわばらせていたミチルは、はじめてホッとしたように、相好を和らげた。
足許にそれとなく目をやると、黒のストッキングにひとすじ、あざやかな伝線が走っている。
目だつ足許をさすがに気にしながらも。
美也子さんと勝負したのよ。このままのカッコウで、平気で家に帰れるかな、って。
彼女は賭けに、勝つもりらしい。
だいじょうぶ。夕べね・・・母も招んだの。お芝居に。
手にぶら下げているのは、裂けた肌色のストッキング。
てかりのない古風に地味なナイロンは、派手な裂け目のおかげで妖しい翳を帯びていた。
きっと持ち主の肌の奥深くにも、滲み込んでいるに違いないであろう翳を。
愉しかったみたいよ。こんど興行するときは、必ず教えてくださいね、監督。
わたしもお嫁入りまえに、たっぷりいい勉強もできたし。
このひとに仕事が見つかったら専業主婦になって、追っかけをしようかしら。
ミチルは甘い目線で、俺を見上げてきた。もう逃がさないぞ、というように。
結婚、おめでとう。
監督は初めて、ニッと笑った。
心から打ち解けた笑いだった。
俺はかさかさに節くれだった掌をつよく握り返しながら、
「監督は、どうするんですか?」
わたし?監督はわざとのように小首をかしげて。
決まっているじゃないか、と言いたげに。
「わたしは行脚を続けるよ。世の中に歪んだ女と男がいる限り。たぶん、永遠に・・・」


あとがき
なんだか異様に長くなっちゃいました。(^^ゞ
出来が最悪でないことを祈ります。^^;

ご参考まで ですが。
前作「楽屋裏の舞台監督」(1月5日)はこちら。
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-746.html
夢にみたお話を、ほとんどそのままあっぷしただけだったのですが。
祥子さまに”終演”の意味するところをお尋ねいただき、ずっと考え続けていました。
お応えになったような、ならなかったような。ですが。^^;;;

母も娘も。

2007年02月04日(Sun) 11:43:13

流れるような脚線美を。
てかてかと光る、黒のハイヒールもろとも、抑えつけて。
鈍く滲んだ白い脛に、思うさまべろを這わせていって。
頭上に降り注ぐ抗議の目線を、くすぐったく受け流して。
ぬめらせた舌先に、しなしなとした薄手のナイロンが、
引きつったふくらはぎの筋肉のうえ、しっとりと心地よい。

羞恥と戸惑いと屈辱に。
かすかに震える足首を。
身じろぎひとつ、できないように。
踏みにじるように、抑えつけて。
ぬらぬらと這わせるべろで、ストッキングを汚してゆく。
女はきつい目線を注ぎつづけて。
悔しげに唇をかみ締めるのが、それとなく気配で伝わってきた。

向かい合わせの安楽椅子には。
お行儀よくそろえられた両手の下。
かっちりと重たい、濃紺のプリーツスカート。
ひざ丈まであるスカートのすそからは。
すんなり伸びた、発育のよい脚が。
淡く滲んだ黒のストッキングに透けている。
いま俺が辱めている女の、歪んだ面差しと、瓜ふたつ。
そう、二人の女は、母と娘。
人妻と、女学生。
そして、親友の愛妻と、まな娘。

女房の血を吸わせてやると言いながら。
やつはずっと、ためらっていた。
娘の血も、いただきたいな。
色よい返事を、くれながら。
やつはやっぱり、ためらっていた。
お行儀悪く、せかしてみたら。
娘が中学にあがったら・・・といってきた。
先週が、入学式だった。
踏ん切りが、つかないんだな。
背中を押してやらなくちゃ、いけないな。
もう、いいだろう?
俺はやつに無断で、やつの妻と娘とを招き入れていた。

女房に電話をかけさせて。
亭主が出るまでのあいだ、俺は女の足許に唇を這わせている。
ぴちゃぴちゃと、聞こえよがしに。
いやらしい音を、洩らしながら。
セーラー服のうえから荒縄をぐるぐる巻かれた娘のほうは、
胸元をギュッと締められるとき、すこしだけ涙ぐんだけれど。
気丈にも背筋をしゃんとさせて。
ママのまえ、お行儀よくうつむいている。

「ああ、あなた?いま、・・・さんのお宅なの。
  びっくりなさらないで。
  さらわれてしまったのよ。優香もいっしょです。
  いま、あのひとに代わるわね」
受話器をひったくると。
俺は得意満面。
戸惑う親友をひとしきりなだめると。
言ってやった。
ずいぶん長いこと、待たせてくれたね。
もう、我慢できなくなっちまったんだ。
奥さんは、熟れているし。
お嬢さんは、つやつやしてきたし。
そろそろ食べごろだろう、って思ってね。
むろん、乱暴なことはしないさ。
家族面談の帰りだったようだね。
ちょっと、お立ち寄りいただいたのさ。
どうだろう?
夕方までお預かりするよ。
なぁに・・・
お召しの黒のストッキングの舌触りを。
ほんの少しだけ、ためさせていただくのさ。
それくらなら、まさか差し支えはないだろう?
お嬢さんも・・・きょうはお母さんとおそろいの黒ストッキングだね。
ちょっと見ないあいだに、すっかり大人びてしまったね。
なに、君は身近にいるから、却って疎いのさ。
ふたりながら、味わわせていただくよ。
黒のストッキングのおみ脚を。
やつは、仕方のないやつだな・・・と。チッと舌打ちをして。
  わかった。ストッキングを悪戯するくらいなら、目をつぶろう。
  女房に代わってくれないか?
女に、受話器を押しつけると。戸惑いながら、受け取って。
「エエ、エエ・・・わかったわ。仕方ないわね。じゃ」
ことさら事務的に、素っ気なく。
みじかい言葉で了承の意を伝えると。
チン、と受話器を置いた。
「優香さん?おいやでしょうけど。しばらくこちらのおじさまの悪戯に目をつぶるのよ
  ママがまず、お手本を見せますから。決して声をたててはいけないですよ」
そういって。
両目をキュッと閉ざして、安楽椅子のうえ、脚ををそろえていた。

にゅるにゅると意地汚くねぶりつける唇の下。
ママのパンストがふしだらによじれてゆくのを。
娘は息を詰めて見守りつづけている。
どぅら、オブラートみたいに、とろかしてしまうぞ。
俺はいともむぞうさに、女の穿いているパンストを、
すみからすみまで、いたぶり抜いて。
さいごにぴりり・・・と、裂け目を走らせていた。
あ・・・
たくまずに洩らしたうめき声が、娘に伝染するのはすぐだった。
ちゅうっ・・・
母親が血を吸い上げられる音を。
少女は顔を背けるでもなく、目を見張ったまま、視線をそそいでくる。
つぎは私の番だと知っていて、
じぶんがどんなふうに振舞うべきなのか、
ママのお手本を、逐一見届けていた。

さぁ、つぎはお嬢さんの番だね。
俺がたちの悪い微笑を浮かべてにじり寄ったとき。
母親のほうは、ふしだらにスーツを乱したまま。
じゅうたんの上、仰向けになっている。
噛み破られてちりちりになったストッキングを、足許にからみつかせたまま。
目を白くして、気をそぞろにさせている。
そこまでしなければ。
娘を守ろうとする試みを、放棄しなかったことだろう。
少女は相変わらず口許を引き締めて。
縛られたセーラー服の胸をピンと張って、
それでも知らず知らず、足許を控えめに引こうとしている。

足首をギュッと握り締めた掌の下。
紙のように薄いナイロンが、なよなよと頼りなかった。
ピンと張り詰めたふくらはぎに、ぬるりと唇をすべらせてゆくと。
ママの穿いていたのよりもなよなよとしたストッキングは、
ひとたまりもなく、ねじれてゆく。
少女はさすがにハッとして、身を引くようにしたけれど。
それはただ、俺の悪戯心に火をつけただけだった。
不覚・・・とおもったらしい。
身をよじって、目をそむけようとしたけれど。
俺は少女のあごをぐいと引き寄せて。
ためらう唇を、強引な唇で封じ込めて。
ぐいぐいと、なぶるような接吻で。
男の息遣いを、思うさま吹き込んでやっている。
麻酔が効いた患者のように。
少女はぐったりと身体の力を抜いた。
あとはもう、思うがまま・・・

はっきり自覚するほどに、にんまりと笑み崩れた唇を。
もういちど。
黒のストッキングのふくらはぎに押し当てて。
くまなくすみずみまで、よだれで汚してゆく。
つやつやとした装いに、じくじくとした粘液がいちめんにしみとおるまで。
重たいプリーツスカートを引きあげて。
すくめたままの太ももを、あらわにしていって。
幾度となくねぶりつけた唇の下。
ママとおなじ裂け目を、じりじりと滲ませてやる。
いい子だ。オトナになるんだよ。
俺は引導を渡すように、少女に囁くと。
いがいなくらいはっりと、少女は諾、と頷いた。

ふたり並んで寝そべったじゅうたんの上。
俺は少女の上に乗っかって。
スカートの奥、引き破ったパンストの向こう側へと。
己自身を挿し入れてゆく。
母親はブラウスをばら色に染めたまま。
はっきりと、瞳をひらいて。
娘が女になる瞬間を見守っている。
責めるようなきつい目線で、俺の嗜虐心をくすぐりながら。
セーラー服を着た少女は、母親そっくりの目鼻立ちを。
ほんのちょっぴり、痛そうにゆがめて。
つつがなく、大人の仲間入りを果たしていた。
あっけないものだろう?
俺がそう囁くと。
少女は涙を滲ませた目で、じいっと俺を見つめながら。
それでもはっきりと、頷いてくる。

さぁ、つぎはお母さんの番だな。
お嬢さんはそのままの姿勢で、見ているのだよ。
きみのパパとは、仲良しだけど。
きみとはもちろん。ママとも、仲良くなりたいのでね。
大人の男女は、仲良くなるのに・・・こんなふうにするのだから。
女は俺の下、もう抗いもならず組み敷かれていって。
娘とおなじようにめくり上げられた黒のスカートの奥は、
しとどに濡れそぼっている。
逆立った一物を挿入すると。
柔らかに濡れた其処は。
俺を呑み込むようにして、すんなりと迎え入れてゆく。
ああうううううっ・・・
思わず洩らした声とともに。
女は俺の腕のなか、身をしならせる。
組み敷いた下に引きつる顔が、少女の目鼻立ちと重なり合った。

かわるがわる。
犯し抜いて。
どちらを犯しているのか。
定かでなくなるほどに。
その身を入れ替えあって。
気がつくともう、真夜中だった。
女はふたたび受話器を取って。
愛する夫に、囁いている。
ごめんなさいね。愉しんじゃっているの。もちろん、優香もよ。
今夜はやっぱり、遅くなるわ。
え?お食事もう済ませたの?
あなた・・・はじめからこうなることを、お察しになっていたのね?
いやらしいひと。

明け方俺は、女ふたりを引き連れて。
家まで送り届けてやった。
ストッキングの舌触り、たしかに愉しませてもらったぜ。
言わずもがなだ。
俺がどれほど、二人の脚を愉しんだのか。
スカートの下、きちんと身につけていたはずのストッキングは、
ちりちりになって絡みつけたままだったのだから。
俺に思うさま、破かれたままの状態で。
女たちの名誉のために。
俺はそれしか、口にしなかったけれど。
はだけたブラウスや、ほどけた胸のリボン。
それに振り乱した髪の毛ややつれた頬が。
その晩なにがあったのかを、じつに雄弁に告げている。

亭主殿は、苦笑いをして、たったひと言。
さんざんだね。
って、答えるばかり。
悪かったな。ひと晩借りちまって。
素直に頭をたれると。
夫婦は互いに目交ぜをして。
愉しかったかね?
ええ、とっても♪
すばやく、意思を認め合っていた。
時々、お邪魔することだね。黒のストッキングを履いて。
目色で、やつは伝えてくる。
背中は押されてみるものだね、と。

血を吸われるなんて。

2007年02月04日(Sun) 10:34:00

血を吸われるなんて、キモチわる~い。
妹が、しんそこキモチわるそうに、顔をしかめます
けれども、ね。
きみはボクの妄想のなかで、もうなんども血を吸い取られているのだよ。^^
いま着ている、セーラー服に黒のストッキングのイデタチで♪


あとがき
短すぎですね。(笑)
この妹さんの運命は、↓みたいな感じです。^^

http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-653.html
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-671.html
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-688.html

当直の夜

2007年02月01日(Thu) 07:48:03

ひとり淹れたコーヒーの湯気が漂う、当直の夜。
静まり返った深夜のオフィスは、昼間とはまったく違う面貌をみせる。
しつらえられた机や椅子も。
雑然と置かれた書類も。
なにひとつ、昼間と変わっていないはずなのに。

チリリリリン。
にわかに響く、電話の呼び出し音。
なにかあったのか?
はっと飛びついた受話器の向こうから聞えてきたのは。
もしもし、あなた?
ゆったりと響く、妻の声。
気分がスッと、入れ替わってしまう。
なんだ、お前か。どうしたんだ?
由貴子は、くすくすと笑いながら。
なんだ、はないでしょう?
トーンを抑えてしのばせた声色が、いつになく深く低く響いてくる。
かわいい妻が、こうして電話をかけてきた、というのに。
ねぇ。
受話器の向こうの声は、傍らのだれかに相槌をもとめている。
だれかいるのか?
われ知らず、ちょっと迫らせた声に。
あらぁ、気になる?
それ、食いついた・・・といわんばかりに。
すこし高くなった声色に、挑発的なものを滲ませていた。
いらしてしまったのよ。わたくしを襲いに。・・・ムラムラなさるんですって。
若い女の血が欲しくって。喉がカラカラに渇いちゃって。
看護婦が患者の病状を医師に逐一つたえるように。
たたみかけるように、つぶさに状況を告げてくる。
わたくし、血を吸われてしまうのよ。
そのあときっと、たぶん犯されてしまうわ。
困惑しているような。辱めに耐え切れない、というような。
それでいて。
明らかに、状況を愉しんでいた。
いいわよね?
念を押すことも、忘れない。
だしぬけに、
あっ!やだ・・・。
数十秒の沈黙。
なにをしているんだ?なにをされているんだ?
妄想がめまぐるしく駆けめぐる、刻一刻。
どくどくと昂ぶる血が、全身をめぐりめぐって。
いつかわたしの血潮まで、妖しい色艶を帯びてゆく。
もぅ。
すねて、口を尖らせている妻の声。
今度お目にかかったら、よく言ってくださいませ。
ストッキングを穿いた脚、めろめろになさるんですのよ?
こんな夜更けに、ストッキングなんか穿いているのか?
咎めるように、訊きかえすと。
おねだりされてしまったのよ。
だから、ちょっぴりおめかししているんです。
聞いて・・・といわんばかりに。
こないだ買っていただいた紫のワンピースにね、白のストッキング。
どう?お姫さまみたいでしょ?囚われのお姫さま♪
下にはね、貴方の好きなレースもようの黒のスリップ着ているの。
たぶんきっと。視られちゃうわね。スリップの色・・・あっ、ダメ!
ダメダメダメ・・・っ
言葉と裏腹に、イタズラッぽく誘っている妻。
布団に圧しつけられてしまったらしいくぐもった音。
受話器を取り落としたのか。
せめぎ合う音がやや遠のいたぶん。
妄想がよけい、増幅される。
やめろ、やめてくれ。仕事中なんだぞ・・・
空しい声は、たぶんきっと、届かない。

チン。
受話器を置いた由貴子は、フフ・・・っ、とほほ笑んで。
静まり返った周囲に目線をめぐらせた。
だれ一人いない室内に。
夫に告げたとおりの紫のワンピース姿だけが、ぽつんと佇んでいる。
子どもたちも、もう寝静まっていた。
あのひとったら。
ここにはだぁれも・・・いないのに。
予想以上の旦那の狼狽に満足しながら。
さて・・・夜のサービスはこれまでね。
もう、遅い時間。あのひとが戻ってくる夜明けを、きりりと迎えなくちゃ。
ワンピースの後ろのファスナーに手をやったとき。
かたり・・・
ドアの向こうに、かすかな音。
え・・・?
戸惑う由貴子の目の前に、黒い影が霧のように流れ込んでくる。
えっ?えっ?
影はたちまち、人のかたちになり、丁寧な会釈をしかけてきた。
いい月夜だね。
人のわるい笑みを滲ませた唇が、震えるほどの飢えを帯びている。
いつもながら、素敵なおめかしだね。由貴子。
月夜の夜。令夫人は奴隷に堕ちる。
・・・分かっているね?


あとがき
戯れにしかけたテレホンセックスは、あやしの影まで起き上がらせてしまったようです。^^;

きょうはなに色?

2007年02月01日(Thu) 07:43:40

妻が黒のストッキングに脚を通すようになったのは。
あの忌まわしい吸血鬼に、生き血を吸われるようになってから。
行ってまいります。
勤めに出かけるときも。
ちょっとそこまで、出てきますわね。
招きをうけて、夜いそいそと出かけてゆくときも。
足許を淡い翳に彩るのは、黒のストッキング。
そういえば、いつからともなく、
むっちりとしただけの脚が、流れるような色気を帯びてきた。

夕べは、肌色。今夜は、黒。明日は濃紺。
娼婦の輝き。淑女のつつしみ。
相反するはずのふたつの色を、ひとつの色に染めながら。
女はきょうも、理性を忘れに出かけてゆく。

マゾの色

2007年02月01日(Thu) 07:40:55

もしもマゾヒズムに色がついている、というのなら。
きっとそのとき、私の血潮は、マゾの色に染まっていたのだろう。
足許を彩る淡い翳。
女もののストッキングのように薄い長靴下に包まれて。
ぬらりとするほどなめらかな触感が、心の奥底まで侵食するように。
じわりと滲む肌の下、ドクドクと全身をかけめぐる熱い血が、マゾの色に染まる。

妻は私の見ているまえ、組み敷かれて。
獣のように荒々しい劣情に、股間に秘めた貞操を、無防備にさらしていた。
かすかな苦痛。ほどよい背徳のうずき。
日ごろの所帯持ちのよい、貞淑そのものの主婦の姿は、そこにはない。
ブラウスをはだけられ、スカートをたくし上げられ、ストッキングをずり下ろされ。
乱される衣装のなか、悶える白い裸身。
まごうことなく悦んでいる、熟した肌。
ピンク色に染まった柔肌を。
やつは舐めるように賞玩して、
首筋からわきの下、へその周り、内腿、あそこの周りにいたるまで。
すみずみまで、舐め味わって。
さいごに止めを刺すように、太く逞しい逸物で、荒々しくそこを踏みしだく。
おぉう・・・っ
その瞬間、妻は仰け反って。
あとは魂を入れ替えられてしまったように。
大人しく、やつのモノになりきった。
乱された衣装さながらに、理性とプライドをぐずぐずに崩されて。
淑女と娼婦の落差を見せつける。
やつは、妻のうなじに唇を這わせて。
とどめを刺すように。思い切りつよく、咬みついて。
いちばん美味しい血管を、食い破る。
妻は随喜のうめきに身を焦がし、
ずいずいとすすりとられてしまっている。

さいごにやつは私にのしかかって、うなじにがぶりと食いついて。
生き血をぎゅぎゅううっと、吸い上げた。
奥さんの血も美味いけれど。
マゾの血潮も、なかなかだね、と嘯きながら。