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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

後輩

2007年05月31日(Thu) 07:35:54

人もまばらになった、午後七時。
きょうもまりあ先輩が、長い髪をたなびかせて。
わたしのほうへと、足をはこんでくる。
肩にかかるほどの髪の毛が、流れるようにさらさらとしていて。
じわりとした輝きを帯びて、リズミカルに揺れている。
いつ見ても、きれい・・・
ゆうかさん、ごつごうは・・・?
赤い唇に、かすかな笑みをたたえながら。
まりあ先輩は、わたしの顔をのぞきこんでくる。
艶然と。
そういう表現。ここに来るまでは、漢字テストでしか、ぴんとこなかった。
すみません、きょうはちょっと体調が・・・
そんなふうにやんわりと、お断りしたこともある。
けれどもまりあ先輩は、決して許してはくれない。
だいじょうぶよ。あなたは若いから。
ほんの少しだけ。ね?お願い・・・
囁くようなひくい声に、いつも根負けをしてうなずいてしまうわたし。
いつものように、コクリ、と無言でうなずくと。
課長のいない席をちらと見て、それからそそくさと席を立つ。
業務中のサンダルから、ハイヒールに履き替えて。
すこしでも・・・まりあ先輩にオトナに見られたいから。

かちゃり。
まりあ先輩の後ろ手のなか。
部屋は施錠されていた。
オフィスのなかにしつらえられた、パーテーションで区切られた密室。
まりあ先輩は、年下のわたしですらかわいいと感じる微笑をたたえながら。
わたしのほうへと、身を重ねてくる。
いいのよ。楽にして。怖かったら、目をつぶっていてね。
まりあ先輩は、いつも優しい。
けれどもわたしのまぶたが閉じられることは、決してない。
おもむろに開かれた唇の端。
研ぎ澄まされた牙のきらめきが、わたしのことをワクワクさせてくれるのだから。

さいしょのうちは、怖かった。
呼びとめられた給湯室。
まりあ先輩はスッ・・・とこちらに身を寄せてきて。
声も出せない、無人のオフィス。
きれいなお肌。しているのね・・・
わたしの髪を、撫でるようにかきのけると。
そのまま唇を、吸いつけてきた。
ごめんなさいね。ちょっぴり痛かも・・・
影をひとつに重ね合わせたなか。
まりあ先輩はすがるような熱情こめて、わたしを抱きすくめて。
皮膚を破って、血を吸いはじめていた。

ソファに横になるのよ。
そのほうが、楽だから。
まりあ先輩は、きょうも優しく、わたしの大好きなあのほほ笑みをうかべてくれる。
さぁ。あなたの血で・・・私のことを、楽にして・・・
わたしはうっとりと、うなずいて。
しなやかな体重を重ね合わせてくる先輩の香水の匂いに、くらくらとしてしまっていた。
ずずっ。じゅるうっ。
優しいルックスとは不似合いに。
まりあ先輩の吸血は、露骨なくらいに熱っぽい。
いつもの優雅なつつしみをかなぐり捨てた求めに、わたしもつい夢中になって。
身をしならせて、感じちゃっている。
うっとりと吸いつけられた唇が、熱を帯びている。
ぬるりと柔らかい、ああ・・・なんていったら、いいのだろう?
わたしの肌を支配し、ゾクゾクと夢中にさせてしまう唇・・・
うなじから、ブラウスをはだけた胸元へ。
着崩れさせた制服のすき間から、二の腕やわき腹へ。
まりあ先輩は、面白そうに。
薄い皮膚の裏側にまで、牙を滲ませてくる。
ときには、くするぐように。
ときには、ちくりと意地悪く。
まりあ先輩は、わたしの肌を挑発して、まんまと血潮をせしめてゆく。
若い。若いわね・・・
とてもきれいよ。あなたの血。
そういうまりあ先輩だって・・・
甘やかな香水に。ほのかに息づかうなまの肌に。
わたしは酔わされ、いつか対等に、抱擁を交し合っている。
ソファに寝転がったまま床におろした脚を、いつの間にかつま先立ちさせて。
くすぐったいような、ちくりとするような。
そんな艶技に、耽り抜いてしまっている。

きょうのストッキングは、なめらかね。
光沢もなまめかしくて。とてもきれいよ。
たくし上げてさしあげた、スカートの下。
ストッキングを履いたままの太ももに。
まりあ先輩は熱っぽく、くちづけしてくれて。
咬ませてさしあげるために装った、薄いナイロンの包装を。
まるで蹂躙するように、チリチリにしてしまわれた。
気品のある装いを、女どうしの凌辱にゆだねてしまって。
それでもわたし、とても嬉しい。
だって、先輩が愉しんでくださるのだから。
ねぇ、どこのブランドなの?
ストッキングのブランドを聞きだそうとするまりあ先輩は、OLの目にもどっている。
エヘヘ・・・
わたしはイタズラっぽく、くすくす笑いを洩らしながら。
まりあ先輩のぶんも、ご用意してあるんです。
そっと、先輩の耳もとに、ささやいている。
あら。そう。気が利くのね。あなた。
くたびれたでしょう?
さ。課長が戻ってこないうちに。お帰りなさい。
優しい命令にはなにひとつ、わたしは逆らえなくなっている。

席に置いてきた、ハンドバッグ。
中から取り出したストッキングのパッケージを。
まりあ先輩はさっとむぞうさに、引き裂いて。
ご自分のストッキングを、惜しげもなく脱ぎ捨てると。
わたしの差し上げたストッキングを、するりと脚に通してゆく。
うれしい・・・
ぬるりと艶を帯びた、輝くような脚線美が。
わたしとおなじ色に、染められてゆく。
黙っているのよ。
はい・・・
わたしは心から、頷いてしまっている。
きっと、好きなひとがいるんだ。
そのひとも、吸血鬼で。
まりあ先輩は嬉々として、そのひとに抱かれているんだ。
今夜も、きっと。
濃艶な逢瀬をお愉しみになるのだろう。
だって・・・わたしから、血をたっぷりと補給したくらいだもの。
逢わせてあげないわ。あなたには。
そのときだけ、まりあ先輩はちょっぴり怖い顔をして。
あのかたに血を捧げるのは。わたしのお仕事なんですから。
いいんです。まりあ先輩。
わたしが好きなのは、貴女ですもの。
どうかあしたも、その鋭い牙で。
わたしを虐めてくださいね♪

善意の献血

2007年05月30日(Wed) 08:13:59

善意の献血、ですよね?
お相手は、貴方のお身内のかた・・・なのですよね?
婚約者の由貴子さんは。
いつもの翳りのない笑みを、透きとおった白い頬にたたえながら。
たたみかけるように、こちらの顔を、覗き込んでくる。
初めてお伺いしたときに、破られてしまいましたわね?
白のストッキング。
直接素肌を触れまいという、あのかたの礼儀正しいご配慮だったのですね?
それでも・・・お気に召していただいたのかしら?
ほかの方のものよりも、お粗末じゃなかったかしら?
慎み深い恥じらいをよぎらせながら。
きょうもきみは、お邸へと足を向ける。
その脚にまとわれているのは。
薄っすらと透きとおる、なまめかしい黒のストッキング。
呼び寄せられるたび。
脚に通してゆくストッキングがいっそう薄く、なまめかしくなっていくように見えるのは。
きっと、錯覚ではないはず。
だって。
息の触れ合うまでに抱き寄せられたきみは。
つとめて肌を近寄せまい・・・と振舞っているはずの彼に、うなじまで吸わせてしまっているじゃないか。
長い黒髪に秘めた咬み痕。
ボクは気づいているんだよ。
秘められた逢瀬のあいだに交わされる、唇と唇。
熱い口づけのあと、絡み合うエロチックな目線と目線。
そんなあとはきまって、彼から報せが届くのだ。
今夜もきみのフィアンセから、生き血をいただいた。ありがとう。
今宵も失敬、してしまったよ。ごちそうさま。
どこまで、許しているのだ?
なにを、されて戻ってくるのだ?
懊悩するボクの横顔を。どこまでも透きとおった笑みをたたえながら。
愉しげに、にこやかに見つめつづけるきみ・・・

腕の中の婚約者

2007年05月30日(Wed) 07:22:46

腕の中、硬直し切った華奢な身体つきは。
かすかな震えを、素肌に滲ませていて。
すがるように身を寄せて、影を重ねてくる未知なる男を。
ごく控えめに、拒んでいたけれど。
素肌に刺し込まれた鋭い牙の切っ先に。
己の血潮をあやされてしまうと。
気力はみるみる、喪われていって。
ひと声、ひくくうめくようなすすり泣きを洩らすと。
ひと思いに、身体の力を抜いていた。

そのままの姿勢で、ひとしきり。
うら若い血潮に酔い痴れたあと。
離したその身は、セイセイと息弾ませて、かすかに肩を上下させている。
黒のシフォンのドレスのなか、透きとおるほどの白い肌が。
いっそうなまめかしく、ひきたっている。
傍らに控えているのは、男の恋人。
かけがえのない、私の幼馴染。
彼の母親も。妹も。彼の手引きで、引き合わされて。
女たちも、相手が私なら・・・と、納得ずくで。
すすんで素肌をさらけ出して、
飢えた牙を、受け入れてくれていた。

いちばんたいせつなひとだから。
ほかのだれでもない、お前に逢わせてやりたいんだ。
そう告げてくれた彼。
吸血鬼が同居するこの村では。
人間たちは、家族の女性を、心きいた吸血鬼にすすんで引き合わせる習慣をもっていた。

びっくりしちゃった。
よく輝く瞳を、くりくりさせて。
彼女は恋人を、優しく睨む。
ほっそりとした指先は、私につけられた痕を、奏でるように撫でつづけて。
じんじんと響くような疼きは、いまはほどよい快感に変わっているはずだった。
もういいの?喉渇いているんでしょう?
与えるものの優越感が、彼女をいっそう輝かせていた。
おいしそうなふくらはぎだね。
あらわな私の言葉に、さすがに恥じらいを込めて。
肌の透ける薄手の黒のストッキングのふくらはぎを。
キュッとこわばらせたように、すくめてみせる。

食べさせてやりなよ。
幼馴染は、イタズラッぽく恋人に笑いかけて。
彼女もまた、クスクスとくすぐったそうに、笑み返している。
いいの?わたしの血を吸わせちゃっても。
処女の生き血、捧げちゃうわよ?
活き活きと輝く白目に、かすかに淫蕩なものを滲ませて。
健康そうな艶をよぎらせたふくらはぎを、見せびらかすように前に差し出してくる。
含み笑いのままの唇に、薄手のナイロンのさりさりとした触感が。
唇を染めるほどに、なまめかしい。
きゃっ!エッチ!
ストッキングのうえからぬめりつけられた唇に。
彼女は飛びあがって、脚をすくめたけれど。
ひざ小僧のあいだにすべり込ませた手の指を。
そのままじりじりと、せり上げてゆく。
イタズラ・・・されちゃうんですね・・・
ため息交じりに見回した周囲から。彼氏が姿を消しているのを見て取ると。
彼が戻ってくるまでですよ。
女は優しく私を睨んで。
脛のまわり、ストッキングをよじれさせてゆく私の悪戯を。
甘い咎めのなかで、見つめつづけている。
今度は夜更けに呼ぶからね。彼にナイショで・・・
そんなささやきを。
ヤツはどこかの物陰から、聞き入っているに違いない。

お酒の入った夜更け。

2007年05月30日(Wed) 07:03:29

奥さんの血を、吸わせてくれないか?
ふつうなら。ストレートに、そんな申し出をしたところで。
冗談じゃないよ。
相手にされないのが、おちだろう。
けれども、用意の媚薬を一滴、杯のなかにしたたらせてしまうと。
どんな男も、言うなりになってくれるのだった。
きょう、餌食にした男にしても。
いいとも、いいとも。女房の血でよかったら、たっぷり吸わせてやるよ。
って。気前のいい約束を、してくれた。
おまけに家まで、電話をかけて。
おい、これから友だち連れて帰るからな。
お前もいいかっこして、待っているんだぞ。
スカートにストッキング、義務づけだからな!
って。思いっきり、横暴な命令をしていた。
こういう男にかぎって・・・しっかり女房の尻に敷かれていたりするのだが。
ヤツの女房の、ぬるりと艶を帯びた豊かなうなじと、
いつも肌色のストッキングに包まれているふくよかなふくらはぎ。
そのどちらもが、酔境のなか、妖しい幻を結んでくる。

ふわ・・・わ。わぁ。
男はオレを招き入れた玄関先で。
他愛なく、尻もちをついてしまっている。
まぁ。まぁ。
黒のスーツに着飾って、夫の帰宅を待ち受けていた奥さんは。
ため息交じりに、夫の肩を抱きかかえる。
慣れた手つきに、夫婦の関係がにじみ出ているような光景だった。
オレは奥さんに手を貸して、重たい身体を担ってやろうとしたけれど。
だいじょうぶ、シャワーくらい浴びれるって。
けっきょくは、振り切るダンナの好むがまま。浴室の扉の向こうに行かせてやった。
ふたりきりの空間は、シンと静まり返って。
微妙な緊張が、周囲をよぎった。

わたくしの血が、お目当てなんでしょう?
女はさすがに、カンが鋭い。
自分の素肌の下にめぐるものを、オレが欲しているのだと。
唇の裏側で、飢えた牙をズキズキさせていることをすら。
ひと目で、見抜いてしまっていた。
せめてあのひとに、感謝しなくちゃね。
初めて襲われるのに、きれいな格好させてくれたのですから。
女は思い切りよく、長い黒髪を肩の向こうへと追いやって。
なめらかに輝くうなじを、惜しげもなくさらけ出した。

あぁあ。さっそくヤッちゃっているのか・・・
男はすこし、気分が冴えたらしい。
じぶんの女房が目のまえで血を啜られていることは、どうやら知覚できているようだった。
ご馳走になっている。おいしいぜ。
オレは片目でウィンクすると。
ふたたび、ヤツの目のまえで、女房の首筋にくらいついていた。
おい、おい。見せつけてくれるねぇ。
男は目つきを、とろんとさせて。
まだ抜けきらない催眠効果に酔うがまま。
じぶんから、寝室の扉を開いていた。

ごろりと横になった男の両手を、軽くビニールテープで縛りつけて。
そのすぐ傍らに、女房を転がしてやる。
オレはわざと、女房の脚に取りついて。
黒のストッキングのうえから、豊かなふくらはぎをネチネチと唇でいたぶり始めていた。
いやらしいわ。ねぇ、あなた?
奥さんは、軽い含み笑いを秘めながら。
夫のことをイタズラっぽく、挑発して。
ダンナはダンナで、
あ・・・あ・・・、オレの女房が、血を吸われちまう・・・
って。苦痛のセリフに、無我の陶酔を滲ませていた。
かりり。かりり。
礼装のうえから、あちこち刺し入れてゆく牙に。
奥さんはきゃっ、きゃ・・・と、くすぐったそうに身を揺らしながら。
一滴、二滴、またひとしずくと。
貴重な血潮を気前良く、抜き取らせてくれている。

あぁ。あなた・・・犯されちゃうわ。
乱れ髪を口にくわえて。
女はひと声、悲痛にうめいた。
声のゆらぎに、隠し切れない欲情を秘めながら。
女はご主人の見守るまえ。
守り抜いてきた貞操を、他愛もなく踏みしだかれてゆく。
あ・・・ぁ・・・ァ・・・
喉の奥から洩れてくる、秘めやかな随喜の声。
男ふたりは、にんまりと笑み交わしながら。
それぞれの夜の営みに、耽ってゆく。

机の下

2007年05月30日(Wed) 06:34:29

昼間は裡なる獣性を。
冷たい面貌の下、ひっそりと沈めている私だが。
あの晩・・・
会社の飲み会のあとだっただろうか。
闇夜の帰り道に、つい己の真性をさらけ出してしまったのは。
飲みすぎて具合のわるくなった女性社員を、独り暮らしのマンションまで送り届けて。
どうぞ・・・
と、差し出された脚に、ストッキングのうえから唇をすりつけてしまっていた。
彼女がどこまで、憶えているかって?
もちろん、憶えているとも。
心の奥底で・・・

いちど刺し入れた牙の効き目は、24時間は有効である。
だからそのあいだなら、いつでもその女子社員をモノにすることができる。
あの晩、ぴちぴちとしたふくらはぎをたんのうさせてくれたのは。
いま目のまえで、取り澄ました横顔をみせて執務する、うら若い女子社員。
その名は、まりあ。

まりあ君。ちょっと・・・
私が目配せすると、まりあ君はふだんと変わりなく、
仕事の手を止めてすぐに席を立ち上がる。
ふたりでかかえている案件があるので、周囲の連中も不思議には思わない。
いつも使っている打ち合わせのスペースは。
パーテーションに囲われた、簡易な密室。
そこへまりあを連れてゆくのに、足どりがいつもと違ったりはしていなかっただろうか。
部屋に入ると、後ろ手でドアを施錠して。
制服の肩にさらりと流した、しっとりと潤いのある黒髪をじいっと見つめる。
ドアの鍵は必要最小限の音量を。
私の掌のなかで、響かせている。

鍵を閉めたことに、彼女が気づいたのか、どうなのか。
ふたりきりになると、まりあは焦点を喪った目をして。
うっとりとうなずいて。
さらさらと髪の毛をかきのけて。
なめらかな皮膚におおわれたうなじを、あらわにしている。
よく、わかっているようだね・・・
私が呟くと。
えぇ。
ひくくひそめた声色が。
しっとりとした潤いを秘めていた。
重ね合わせた唇は。
淫らに熱い呼気を秘めていて。
すぐさまふたりを、乾いたビジネスの世界から別のところへと拉し去る。

うなじの肉は、しんなりとした硬さをもっていて。
ひやりとした触感を帯びていたけれど。
ひとたび牙を奥深く刺し入れてしまうと。
絡みついた血潮は思いのほか熱く、
灼けるほどに胸を焦がしてくる。
それだけじゃ、ないんですよね?
まりあはとろりとした上目遣いで、私の目を追いながら。
しどけなく、制服のスカートをたくし上げてゆく。
いいの・・・?
履き替え、持っていますから。
女はけだるそうに髪の毛を撫でつけて、うなじの傷をさりげなく隠すと。
あの晩と同じように。
「どうぞ・・・」と呟いていた。
ぴちぴちとしたふくらはぎの周りを包む、薄手のパンティストッキングは。
しっとりとうるおう素肌のうえ、張りつめた気品をたたえていた。

あとは、終業後ですね?
とろりとした目つきで、私を見つめる女。
まぶたにキスをし、そのまぶたをシャット・ダウンして。
いちどは正気に、かえしてやる。
終業後には。
獣にかえった私は、気配を消して。
まりあの机の下に、もぐり込む。
だれが見ているわけでもない。
また、だれが見ても、真性の私は目にとまることがない。
そうは知りながらも。
わざわざ履き替えられた真新しいストッキングに、いたぶりを加えるとき。
ストッキングの主が戸惑い乱れるところは。
だれにも、目に触れさせたくないのだから。

タイムリミットは、24時間。
いちど、終業後にモノにしてしまえば。
翌日も、終業後には、思いどおりにすることができる。
女はひたむきに、私の欲望を満たしてくれて。
そうして日々、顔色を蒼ざめさせていった。
吸い尽くしてしまうわけには、いかないのだ。
だって、私はいつか、惜しげもなく生命の源泉を分かち与えてくれるその女に、魅かれはじめていたのだから。
終業後。ひとり飢えた牙をかかえながら。
私はそそくさと、席を立った。
目のまえの白面の女は、何事もなかったように身の回りを整頓して、ショルダーバッグをひるがえしてゆく。
蔭なる秋波を送らなければ。
彼女はただの、まっとうなオフィス・レディ。

悶々と過ごす夜。
私はいつか彼女の脚から破り取ったガーター・ストッキングで。
ひそかに己の脚を包んでいった。
柔らかに、しなやかに、ふくらはぎに密着してくる、薄いナイロンの束縛。
彼女はいくたび、私のためにこれをまとってくれたのか・・・

つぎの日は、日帰りの出張だった。
戻ってくると、オフィスはもうがらんとしている。
きょうは定時退社日だったか。
広いオフィスは、冷え冷えと静まり返っていて。
わずかにいちばん向こうで、別の課の課長連中がニ、三人たむろしているばかり。
両肩にのしかかる疲れと虚脱感で、私はかばんを机に置いた。
きょうじゅうに報告書をまとめて、朝いちに提出か。
かさかさの唇に、自嘲の色が漂ってくる。
ふと・・・

目のまえには、取り澄ました白い面貌。
おや、きみ・・・まだ残っていたのか?
まりあは、くすっ、っと。笑んでいる。
出張、お疲れ様です。
いつも礼儀正しく接してくる彼女。
お茶でも、淹れましょうか?
いいよ。もう時間外だろう?
いえ・・・わたくしからの、心づくしを。
机の下でさりげなく、かすかにくねらせた脚は。
黒のストッキングが、薄っすらと妖しい彩りを滲ませていた。
今朝きみが穿いていたのは、いつもの肌色だったはずだね?
どうぞ・・・
媚薬はとっくに、切れているはずなのに。
机の下にもぐりこんだ私を。
まりあはくすくす笑みながら、迎え入れる。
はぜるほどに飢えを滲ませた唇の下。
しなやかな真新しいナイロンごしに、素肌のうるおいがみずみずしかった。

父の恋人

2007年05月27日(Sun) 11:33:29

シーツのうえ、ぴったりと抑えつけられて。
そのひとは僕のうえにおおいかぶさって、
すき間ひとつないくらいに、身体を密着させてきて。
まるで愛している・・・というばかりに、影を寄り添わせている。
僕の首筋に、熱っぽく吸着された唇は。
さっきから、ちゅうちゅう、ちゅうちゅうと、いやらしいほどの音を洩らしつづけて。
時には狂ったように。時には切なげに。
すり寄り、這い回り、唾液をはぜながら。
さっきつけたばかりの傷口を、つよくつよく吸いつづけている。
そう。
恋するほどに身を寄り添わせてくるそのひとは、美しい吸血鬼。
僕を見おろす哀しげな面貌は、妖しいほどに透きとおり、
長い睫毛に、残忍な慈悲をたたえていた。

もう・・・離して・・・
けだるくあらがう僕に、そのひとははっきりとかぶりを振って。
だめ。もっと・・・
ひくいけれど、はっきりとした声色で。
僕の希いを、斥ける。
ふたたびすり寄せられたなめらかな肌は、吸い取った血潮にうるおって、
したたるほどのみずみずしさをたたえていた。

助けて・・・助けて・・・
生命だけは・・・見逃して。
どんなに身を揉んで、哀願しても。
そのひとは優しい光をたたえた瞳をめぐらして。
いいえ。
ただ、かぶりを振るばかり。
蒼ざめた僕の頬を、気遣わしげになぞりながら。
引き込まれるように、しつような接吻を重ねてくる。
あぁ・・・
どれほど、吸い取られてしまったのだろう?
けれども、やめさせる力も意思も、いまの僕には残されていない。
すべて、あなたの思うまま。
渇き癒えるまで、尽くさせてしまっている。

一瞬視界をよぎったのは。
すこしだけはだけた服の隙間から覗いた、細い肩。
黒々とした咬み痕が、白い肌の細やかな肌理を、その部分だけ不自然にそこなっている。
うっとりと見つめた目線に気づいたのか。
そのひとは、ひどくうろたえて。
まるで生娘が素肌をあらわにするときのように、恥らって。
  見るものじゃないわ。そんなとこ。
困ったようにうつむく姿が、ひどくいとおしかった。
あなたも昔、咬まれたんだね?
うわ言のような問いに、そのひとは。
  応える必要はないわ。
といわんばかりに、受け流そうとしたけれど。
すぐにキッと顔を差し向けてきて。
  もう、三十年にもなるわ。
  結婚を控えていたのよ。わたし。
  それなのに、襲われてしまったの。
  夜の公園で・・・つかまえられて。
  一滴余さず、吸い取られてしまったの。
  処女だったのよ。
震える語尾に、ひっそりとした涙の湿りを聞いたのは。
きっと、空耳ではなかったはず。
結婚相手は、どうしたの?
つい口をついた、その問いに。
そのひとはちょっとのあいだ、ためらっていたけれど。
冷え冷えとした床の一点を見すえたまま。
しずかに、口にしたのだった。
  べつの女のひとと、結婚して。・・・あなたを生んだの。
こんどは僕が、黙る番だった。

ちぅちぅ・・・ちぅちぅ・・・
ひそやかな音は、まだつづいている。
夜明けまで、まだだいぶ、あるだろう。
それまで僕の血は、もつのだろうか?
疑わしい希望を、うつろにつかまえたまま。
僕はせきあげるほどのあなたの欲求を、拒む意思を喪っていた。
この身をめぐるぬくもりが、すこしでもあなたの胸を暖めることができるのなら。
とつぜん、胸のうえに埋まった頬が、発作を起こしたようにしゃくりあげていた。
  優しいのね。咎めないの?
どうして咎めるの?
もう声も・・・あまり出ない。
  わたし、あなたを死なせてしまうかもしれないのよ。
  だって、あなたの半分は、あの女の血。
  憎いんだもの・・・
女のうめきは、うつろな響きをともなって。
静かな闇に、吸い込まれてゆく。

夜明けはまだ、遠かった。
けれども、変化は訪れていた。
重苦しく覆いかぶさっていたけだるいいとわしさが、
僕のうえから、溶けるように消えてゆく。
そのひとは、さっきまでとおなじように。
美しい面貌を透きとおらせて、哀しげに僕を見おろして。
  そっくりね。あのひとに。
ひっそりとそう、囁くと。
口許についた血を、いとおしそうに指にからめて。
こんどこそ、すうっ・・・と、闇の彼方に吸い込まれていった。
  生きて。
耳もとに聞えたさいごの囁きは、幻覚だったのだろうか・・・

制服を取り替えて

2007年05月25日(Fri) 09:40:52

弟は、純白のセーラー服。
姉から借りた制服は、すこし大きかったけれど。
ほのかに姉の香り漂う、かっちりとした着心地のなか。
いつもとちがう自分を意識した。
女の子の服を着てるときはね。女の子になりきるのよ。
おぼつかない手つきで制服を着る彼のことを手伝ってくれた姉さんは、
甘くてひくい声色で、とうてい無理なことを囁きかけてきた。

初めて脚にとおす、黒のストッキング。
脛の白さをなまめかしく滲ませて、遠目にも眩しかった装い。
吸いつくように寄り添ってくる、じわりとした密着感が。
決まり悪げにすくめた脚を、ゆるい束縛で締めつけていた。
噛ませちゃうのよ。あ・な・た。
姉はいつもとちがう色を、甘い声色に混ぜて。
白いラインを三本走らせた襟首のうえから。
しっとりとした重みを、両肩にもたせかけてきた。

そういう姉は、いまはボクの制服に身を包んでいて。
すらりとしたふくらはぎを。引き締まった足首を。
紺色のハイソックスが、キリッと引き立てていた。
男のボクが身に着けるより、姉さんの男装は、ずっと凛々しく映えていた。
あなたのハイソックス、けっこう履き心地いいんだね。
からかうように顔をのぞきこんでくる姉さんから、思わず目をそらせてしまったのは。
姿見に映る自分の女装姿が恥ずかしかったからだろうか。
姉さんの放つ凛々しい色気に、毒気をあてられたからだろうか。
制服を取り替えあって。
ママにナイショで、血を吸われに行く夜。

しゃなり、しゃなり、という表現が。
いかにも、ぴったりくるのだった。
腰周りにまといつくスカートは、ちょっぴりうっとうしくって。
紙のように薄くて頼りない感じのストッキングを、もののはずみで破けやしないかと始終気にしながら。
姉さんと寄り添うようにしてたどる、夜道の記憶。
胸ときめくほどの、昂ぶりは、いつか記憶さえも途切れ途切れにさせて。
影をふたつにしておおいかぶさってくる異形の友は。
ボクと姉さんとを、並べて押し倒し抱きすくめていって。
同時にうなじに唇這わせて。
ちゅうちゅう、ちゅうちゅう、お行儀悪く音をたてながら、
姉弟ながら、生き血を吸い取られてゆく。

セーラー服のなか、ほてる素肌は、女の子のような艶を帯びて。
半ズボンとハイソックスのすき間からむき出す素肌は、男の子のような生硬さを秘めていて。
すがるように吸いつけられてくる唇も。
えぐるように滲まされてくる鋭い牙も。
はぜる唾液の音。
ほとぶ血潮のひびき。
秘められたかすかな音に、淫らなまでの欲情を交えながら。
薄闇のなか、狂い咲きする忘我のもだえ。

ずいぶん、吸われちゃったね。
女学生の姿に戻った姉さんは、けだるそうに長い髪の毛をなでつけて。
ゆったりとした流し目をして、自分の身体から吸い取ったばかりの血をまだあやした男の口許を軽くにらんだ。
男はわざと行儀悪く、舌なめずりを繰り返しながら。
おいしかったよ。ごちそうさま。
唾液のはぜる音に、姉さんも、ボクも、どきりと胸をときめかせる。
また、こんどね。
指きり、げんまん。
そんなときだけは、姉さんは子どものころみたいに。
ニッとえくぼを滲ませて。
こんど襲われる日取りを、指折り数えている。

男の姿に戻ったボクも、さっきまでの余韻がまださめやらない。
ひざ下までぴっちりと引き上げた、通学用のハイソックス。
さっきまで姉さんが脚を通していたぬくもりが、
ボクの脛を、妖しく包んでいるのだから・・・

姉さんを連れてきな。媚薬を飲ませて・・・

2007年05月25日(Fri) 08:48:52

姉さんを・・・連れて来たよ。
少年は息を詰めたまま、黒い影に囁きかけた。
濃紺の半ズボンに、おなじ色のハイソックス。
少しユニセックスな制服のすき間から覗いた太ももは。
ツヤツヤとした輝きを秘めていて。
少女と見まごう色香を漂わせる。
男はフフ・・・とほくそ笑むと。
ではさっそく、紹介してもらおうか?
少年と、彼よりすこし背の高い少女のまえに、ヌッと姿をあらわにした。

ふつうの人。なのね?
少女は小首を傾げて、男をすみずみまで見まわした。
あくまでも姉らしく、弟の悪友を観察するしっかりとした目線。
流れる黒髪の下、襟首に走る三本の白いラインが。
男の目には、なぜか大人びて映った。
  姉、近野紫織。十七歳。清華女学院三年生です。血液型はO型。
  ボクにとっていちばん身近な処女・・・です。
決められたルールどおり、姉を紹介する少年は。
時おり言葉をたどたどしくもつれさせながら。
どうにか課せられたつとめを果たしていた。

なにされるのか、聞いているね?
ええ。
きみにも異存は、ないのだね?
・・・ええ。
少女の応えは、よどみがない。
おどおどしながら姉を窺う弟よりも、よほどしっかりしているようだ。
  薬は、飲ませてきたのだろうな?
ひらめく男の目線に。
  もちろんだよ。
少年は心外そうに、咎めをはね返してきた。
  そうでなければ、こんなこと・・・
それはそうだな。男は心で頷いた。
姉を連れてくるときに、飲ませるように。
少年に渡した薬には、ほどよく理性を喪うほどの媚薬が含まれていた。
いま目のまえで応対している姉娘は、彼女であって彼女ではない。
  紫織。いい名前だ・・・
姉の名前を、呼び捨てにされて。
なぜか少年は、昂ぶったように目をあげた。

ボクだけでなく。
姉さんまでが、血を吸われちゃう。
いけない。やめるんだ・・・
心のなかの叫びが、声にならないのは。
小心ゆえの恐怖心ばかりではなくって。
心のどこかで、そうなってもらいたいという密かな願望が。
かすかにあがる焔となって。
きっと、男はそれを目ざとく、見抜いたのだろう。
半ズボンとハイソックスのすき間から覗く太ももに、
牙をゆるやかに食い込まされるたび。
少年は随喜を秘めて、血潮を吸われていったのだった。

あの。
不覚にもおずおずと、声を洩らしていた。
姉を襲うのは、やめにしてください。
少年は、喉がカラカラになっている。
どういうことかね?
咎めるような目線に。
ただ、お願いなんです・・・
あと戻りできない。
そんな想いが。
彼から近親を遠ざけようとしたのだろうか。
男はあまり愉快ではなさそうに、少年を見つめていたけれど。
無理強いしてまで、姉をモノにするつもりはないようだった。
きみが私を、信用できないというのなら。
それは、しかたのないことだね。
どことなしに、寂しげな微笑を浮かべながら。
すまなかったね。
間近に迫らせた牙を素早く隠して、姉娘を受け流そうとした。
少年は、それまでよりももっとうろたえて。
おじさん、血を吸うあてはあるの?
おどおどと、声をあげた。
ないさ。きみの姉さんをあてにしていたのだから。
あとはいい。お前の心配することではない。
男の影は、早くも夕闇に消えかかっている。

いいのよ。
男を遮るように、呟いたのは。意外にも姉のほうからだった。
わたし、自分の意思で来たから。
え?それは・・・だって・・・
少年は、戸惑った。
どこまで酔わされているのか。姉を酔いから醒まさなければ。
だってわたし、薬飲んできていないもの。
え・・・?
あなたの仲良しのお友だち・・・なんでしょう?
わるい人のはず、ないものね。
姉はくすっ・・・と、笑みを洩らして。
自ら、黒影のほうへと影を重ねてゆこうとする。
ァ・・・
遮ろうとする少年を、べつの影が遮っていた。
ふふ。
かわいいな。きみ。
影は、男そのものだったが。
自分を抱きすくめている影と、寸分違わぬ影が。
同時に姉をも、抱きすくめてゆく。
ふたりながら、いっしょに愉しんでやるよ。
どちらも・・・きみなの・・・?
ひとりの彼は、ふたつの影になって。
姉弟ながら、それぞれの腕に抱きしめて。
髪の毛をかきのけて、うなじをあらわにしてゆく。
かりり・・・かりり。
ほとんど同時に刺し入れられた牙に。
姉も、弟も・・・
かすかなうめきを重ね合わせる。
ちゅうっ・・・
血潮をひと口。そして、またひとしずく。
啜りあげる唇が、笑むほどに愉しんでいる。

少年は、さっきまでの狼狽などすっかり消して。
いまはひたすら、男の牙に酔い痴れている。
首筋を。太ももを。そして、もう片方の太ももを。
かわるがわる押し当てられる唇の下。
鋭利な牙を、深々と滲まされて。
しみ込んでくる疼くような鈍痛に。
いつか我を忘れて、酔い痴れてしまっていた。
ハイソックス、破ってもいいね?
悪戯っぽく唇を這わせてくる男の求めに、われ知らず頷いて。
差し出したふくらはぎに、牙を埋められるのを感じながら。
姉もまた、すぐ傍らで。
たくし上げたスカートの下、黒ストッキングの脚に、なまの唇を許してしまっていた。
薄っすらと滲まされた伝線が、縦にぴちっと延びてゆくのを。
面白そうに、くすぐったそうに、見つめている。

声もなく。耽るように。
並んで腰かけたベンチのうえ。
姉も弟も、人外の身にわが身をゆだねて。
肌の奥底の熱情を、涸れるほどに捧げながら。
礼装を惜しげもなく、汚されてゆく。
また、来ようね。
こんどは制服、取り替えっこして来ようか?
姉の誘惑に、少年は夢中で頷いてしまっている。

扮装 第二幕

2007年05月25日(Fri) 08:14:05

ああっ!ああっ!う・・・うんっ・・・!
街灯も夜霧にけぶる、無人の公園で。
まりあは、瞳を蒼白く輝かせて。
整然と刈り込まれた草地のうえ、女学生の装いをしどけなく乱してゆく。
マントにおおわれた男の下肢は、紅蓮の焔のような昂ぶりもあらわにして。
嫁入り前の純潔を踏みしだいている。
うふふ・・・ふふふ・・・
どちらが洩らしたものなのか。
くすぐったそうな、含み笑い。
幾夜となく繰り返される、処女喪失劇。

舌足らずな男は、化粧をせずに公園に来い、などと。
わざと心ない言葉を口にしたけれど。
心乱した女は、男の真意を汲みかねて。
いちどは荒々しく、受話器をおいていた。
けれども血潮のなかに埋め込まれた熱情は、
いつかふつふつと女の心を燃えたたせていた。
目を背けたくなる現実をかなぐり捨てて、家を出たとき。
蒼白い静脈が、ほの明るく染まるほど。
女は肌をつややかに輝かせている。

痛い!やだ・・・あうぅん。きゃっ・・・
切れ切れに洩れるちいさな叫びに、
男はいっそう、支配欲をつのらせて。
ことさらキュッととざされたひざ小僧のあいだに指をさし入れ、
強引なまでに、すき間を広げてゆこうとする。
女はじたばたと、抗いながら。
まんまと意図にはまった男に、いとおしげに笑みかけている。
許さない。許すまい。あっ、でも・・・許しちゃいそう。(^_^;)
激しく揺れるのは、身体よりもむしろ、心。
制服のすき間から侵入してきた手や指は。
まりあの肌を、ぞんぶんに狂わせながら。
どこまでもお嬢さんらしく装われた清楚な風情を、すみずみ、くまなく、愉しんでいる。

ぐいいっ・・・と、食い入れられたのは。
口許から覗く牙と、股間に逆立つ肉の牙。
肉の牙は、どす黒い熱情に硬くそそり立っていて。
ほどよく開かれた太ももの奥に、猛々しく突き刺さる。
そのまま遠慮会釈もなく、えぐるように侵されて。
まりあは絶叫さえ忘れ、ひくっ、と身体を硬直させる。
はぁはぁと蒼白い焔を吐く唇を、熱い唇にふさがれて。
ぴったりと密着した、身体と身体。
やだ・・・出さないで。
吸われる血が、きっと伝えているはずの想い。
男はそ知らぬふうに。滾りたつ熱い粘液を。
どっぷりと、まりあの奥に注ぎ込んでしまった。
焦がされるようなほとびを感じながら。
まりあは全身を、ひく・・ひく・・ひく・・と。
踊るように、波打たせてゆく。
夜霧に包まれた、無人の公園。
すき間なく抱き合ったふたつの影は。
おなじ色に染まった熱情に、ただ刻を忘れて包まれてゆく。

扮装

2007年05月25日(Fri) 07:54:53

さらりと流した、胸元のリボン。
濃紺のセーラー服は、キリリとした輪郭をきわだたせて。
ふわりとかぶさる三つ編みのおさげから見え隠れする襟首のラインが。
輝くほどに透きとおる、白い頬が。
いっそうあざやかに、夜の街灯に照らし出されている。
いつになく楚々とした風情が、闇の彼方に隠れた黒影を。
誘蛾灯のように引き寄せている。
いかが?
まりあは可愛らしく小首をかしげ、ちょっぴり得意げに、ほほ笑んで。
ゆるやかに結いあげた三つ編みを、愉しそうにもてあそんでいる。
お嬢さんぽく、淑やかに交叉させた脚を染めているのは。
もちろんでしょう?といいたげなほど、
薄っすらと透きとおる、黒のストッキング。
これ見よがしに差し出された脚に、唇を吸いつけようとする影に。
そうじゃないでしょう?
彼の両肩を抱くようにして、目線を合わせて。
どこまでも可愛くほほ笑む顔を、間近に迫らせてゆく。

う・・・。
合わされた唇と唇のすき間から。
激しく吹き込まれる男の呼気が。
目のくらむほどの官能までも、息遣いで伝えてくる。
冷えた唇の裡には、焔のような熱情が秘められていた。
飢えているのね?
挑発するようにほほ笑む横顔に。
いまいちど、唇を当てると。
好きにして。
言われるままに・・・
頬に当てられた唇は、そのまま首筋へと伝ってゆく。
しっかりと、身動きできないほどにつよく、抱きすくめたのは。
女が我を喪うほどに、身体の均衡を崩しても支えてやろうとしたのか。
ただ、いとおしいがゆえだったのか。
切なげに押し当てられた牙が、ひときわつよく。
ぎゅうっ・・・と、皮膚の下にもぐりこんできた。

ちゅっ・・・・・・
かすかな吸血の音に、まりあはひくくうめきながら。
それでも魔性のものの我を忘れた所行を、とがめもせずに受け入れてゆく。
痛いほどきつく抱きしめてくる男の腕を、いとおしく感じながら。
もっと。もっと。もっと・・・
女は急くように、心のなかで呟いている。
うら若い熱情と、女の真情を秘めた血液が。
男のなかへと、取り込まれてゆく。
チュウッ。チュウッ。ちゅう~っ。ちゅううううっ・・
せきあげてくる熱情のままに、血潮のほとびに酔い痴れる男。
痛いほど締めつけてくる男の腕に、女はいつか、身をゆだねている。

もぅ・・・
ほどけてしまった髪の毛を、ゆるやかにまさぐりながら。
まりあは夢見心地に、足許にうずくまる影を見おろしている。
男のむたいないたぶりに、黒のストッキングはぱちぱちとはじけていって。
青白く透きとおった脛を、夜の灯りにあらわにされてゆく。
  化粧をしないで・・・だなんて。
  なに言い出すのかって、思ったのよ。
  女学生には・・・化粧は似合わないものね。
  さいしょから、そう言えばいいのに。
独り言のように呟くまりあに、ほどよいつよさで傷口を吸う唇が応えてゆく。

処女だった頃を、思い出すなぁ。
久しぶりに身を包む、女学生の制服は。
すっかり女らしく成熟した肢体さえも、初々しいものに染めてゆく。
あたしの血、おいしい?すこしは処女の味に近いかな?
からかうように向けられた声に、影は戸惑ったようにかすかな揺らぎをみせたけれど。
そのままものも言わないで、ひたすらまりあの足許をなぶりつづけている。
  もぅ。
少女のように、口を尖らせながら。
まりあはほんの少しだけ、濃紺のプリーツスカートをひきあげる。
いつの間にか忍び込んできた男の手が、スカートのすそをさらにぐいっと押しのけた。
  ァ・・・
さらけ出された太ももを横切るのは、ひときわ濃く染められた、ストッキングの端。
  ガーターを、穿いて来たのか?
見あげる目線を、イタズラっぽく見返して。
  女学生ぽく、なるべくツヤのないやつにしたのよ。
  ロ○コンな吸血鬼さん♪ そのほうが気に入るかとおもって。
いとおしげに、脚の輪郭をなぞるようにすべらせた唇が。
まだ破れていないほうのストッキングに、ふしだらなしわを寄せてゆく。
  あら、やだ・・・
感じちゃう、だなんて。意地でもいってやるものか。
  ほのかな艶が。私をよけい惹きつけた。わかっているね?まりあ・・・
なに言い出すのよ。意地でも・・・意地でも・・・
まりあは心のなかでもだえたけれど。
どこまでもき然としているんだ。
そんな意思を。
むき出しの太ももにくわえられる、ゆるやかなまさぐりが。
皮膚に滲ませてゆく妖しい愉悦に、すり替えてゆく。
あっ。
ベンチのうえの平衡が、一瞬で崩れた。
柔らかな草地に含まれた夜露が制服を濡らしたけれど。
いまさら、もう、苦にはならなかった。
男の熱い呼気が、それほどまでに女を酔わせてしまっている。
処女のままでは、お家に帰さないぞ。
男の声も、悪戯心にはずんでいる。
若草香る、夜の公園。
女学生の受難は、第二幕を迎えたらしい。

化粧をしないで・・・

2007年05月23日(Wed) 22:32:49

化粧をしないで、あなたに逢えというの?
できるわけないじゃない。
受話器の向こうの声は、手のつけようもないほど尖りきっていて。
邪険な態度とともに、一方的に、ガチャンと切られてしまった。
シン、と静まりかえった闇のなか。
牙を秘めたものは、鼓膜に残る尖った声に、痛々しげに胸震わせて。
そのまま、食事を摂りに出かけようともせず。
ひとり、棺に引きこもってゆく。
さびしい。さびしい。さびしい・・・
独りでは癒えぬ病。
けれども、いまは誰とも顔あわせたくない。
さびしい。さびしい。さびしい・・・

泣き濡れた女(ひと)の、手の甲に。
またひと雫、涙がしたたった。
美々しく装わないで、どうしてあのひとの前に出られようか?
せっかく化粧をしても。
乾かぬ涙に、みな流れてしまうではないか?
哀しい。哀しい。ただ、哀しい・・・
独りぼっちでも、虚勢を張って。
虚勢を張ることで、かろうじてわが身を支え抜いて。
そうして生きてきたわたし。
けれども。
哀しい。哀しい。ただ、ひたすらに・・・

吸血少年 3 ひっそりと

2007年05月23日(Wed) 12:02:31

お兄ちゃん、顔色悪いね。
からかうように笑う純子に、少年は照れくさそうに笑った。
吸わせてくれるよね?
エ・・・?どうしよう・・・
両手を口でおおって、怯えたふうをつくろっているのは。
自分をよけい、そそらせるため。
思わずつかまえた妹の二の腕に、力がこもった。
やだぁ。もぅ。
いつも不平そうに、口を尖らせながら。
ちょっとだけだよ。
そういうときだけは、しんけんな眼差しになっている。
早く、早く。
兄にせかされるまま、うつ伏せになって。
白のハイソックスのふくらはぎを、さらけ出してゆく。

いけない・・・
物陰から様子を窺っていた母親は、二人を止めようとしたけれど。
グイッと二の腕をとられて、ふらつくように引き戻された。
えへへ・・・
はにかんだように見あげてくるのは。
息子の友人で、初めてこの身に牙を突き立てた男。
さぁ、こっち。
抱きかかえるようにリビングに拉っし去ろうとするときに。
ブラウスの胸をわしづかにみしたのは、きっとぐうぜんではないはずだった。
じゎん。
なにかが胸の奥で響いた。
淫らな血が目ざめて、じわじわ、じわじわ、皮膚を侵しはじめている。

ストッキング、破らせて。
睨みつけるような怖い顔をして、見あげてくる少年に。
いちおうは、ダメよ、とこばんだものの。
早く。いますぐに。
性急につきつけた要求を、のまないわけにはいかなかった。
階上で娘が過ごしているであろうわいせつな刻の成り行きを気にしながらも。
景子はソファに腰かけて、スカートをかるくそよがせている。
いい色のストッキングだね。
茶色がかった肌色。だろうか。
ちょっぴり光沢がかかっているのは。
ストッキングを破られる日常を迎えるようになってからだろうか。
お・い・し・そ・う♪
怜次は目を輝かせて、女の脚に見入っている。
ウフフ・・・と含み笑いをしたまま押しつけてきた唇に。
なまの熱情が込められていた。
しつっこく、ねぶるように。ことさら、侮辱を加えるように。
それでいて、甘えて、甘えきっている。
薄手のナイロンごし、いたぶりをうけるふくらはぎ。
じわじさを湧いてくる淫らな血潮をこらえ切れずに、
それを察してこれ見よがしにいたぶりを重ねてくる少年に、
やめて、やめて・・・と、哀願していた。

すべてを取り去られて。
溶けるほどの愛撫をくまなく受けた素肌。
残滓のほてりに戸惑いながら、階上の物音を気遣って、素早く身づくろいを済ませていた。
何食わぬ顔をしておりてきた兄妹。
ハイソックスに浮き出たかすかなシミと。
濃紺のプリーツスカートのすそをかすかに濡らす、劣情の痕と。
ふたりは、気づいていないのだろうか?
髪の毛がほつれているわよ、って、注意したら。
さすがにあわてて、照れくさそうに撫でつけている娘。
ストッキング、破けているね。
すかさず返された息子の声に、
しょうがないでしょ・・・
と、言い返すと。
履き替えて。
こんどはボクの言うことを聞く番だよ。

かたわらにいたあの悪童は。
  じゃあ、こんどはボクが妹さんの相手をしようか。
純子はおずおずと少年を見あげて、
処女じゃなくなっちゃっても、おいしいの?
気遣わしそうに、小首をかしげる。
  ウフフフッ。かわいいねぇ。
  いいのかい?
  お母さんのまえで、そんなこと言っちゃって。
少年に手を取られてふたたび勉強部屋に連れ戻されるセーラー服の襟首に、
黒のリボンがそよそよと舞っていた。

週末になると、帰宅した夫にひと言告げて。
娘とふたり、出かけてゆく。
秘された場所で待ち受けるのは、輪姦の場。
だれもが、吸血少年の毒牙にかかった女たちの、夫や父親。
自分の妻や娘、婚約者を差し出す見返りに、宴の切符を手にした男たち。
今夜は誰、明日はどこの家・・・と。
密かに順番まで、決められているらしい。
人選には、夫の意見も加味されている、という。
そしてしばしば。夫や息子までもが、輪姦の渦に加わってくる・・・。

紗枝の純潔

2007年05月23日(Wed) 10:01:50

秋祭りのまえまでには、決着つけるんだぞ。
ぶすっと呟く父親。
夏服を着ているうちがいいわね。衣替えを済ませてからだと、先方にもご迷惑よ。
やんわり口説いてくる母親。
ふたりをうるさそうに受け流すと、セイジは席を立ってゆく。
玄関先で運動靴をつっかけたとき、後ろから追ってきた母親が、素早く耳もとに囁きかけてきた。
母さんのときもね。セーラー服着たまましていただいたのよ。
どきり!と心臓が高鳴るのを気取られまいとして、そっぽを向いていたけれど。
とっさに運動靴から革靴に履き替えて、行き先もすり替えてしまっていた。

良太君、いますか?
玄関先で訪いを入れた少女を、良太の母親は眩しく見あげた。
純白のセーラー服に、黒のリボンがいっそう清楚さを添えていた。
白い丸顔が、長く垂らした黒髪に挟まれるように、肌の白さがいっそうきわだっている。
かすかに汗ばんだ少女の胸もとが、ちょっとはずんでいるのは。
年頃の娘さんが息せき切って、息子にどんな用事があるというのだろうか。
良太の母親はだいたいの察しをつけて、それ以上娘さんを困らせまいと、にこやかな応対にかえってゆく。
濃紺のプリーツスカートの下、脛を染めているのは。
夏服には珍しい、黒のストッキング。
まだ暑さののこる陽射しのなか。
白い脛を薄々に透きとおらせているナイロンは、むしろ涼しげにさえ映っている。
さあさ、おあがりになって。・・・そちらのお連れさんも。
お母さんは、生垣のむこうでもじもじとしている少年にも、気配りを忘れない。
良太。早くお出でよ。紗枝さんに、セイジさんだよ。
のどやかな声が、古びた邸の奥まで響き渡る。

よく、来たね。
毎日学校で顔をあわせている、仲良しどうしなのに。
どこか改まった、気詰まりなものが一瞬流れた。
三人は、おなじ高校に通う同級生。
訪ねてきたふたりは、卒業と同時に祝言を挙げることになっている。
婚約指輪、はめていないね。
良太がそういって少女をからかうと。
だって・・・制服のときは恥ずかしいですもの。
初々しい羞じらいが、少女の頬を紅く染めた。
どうして連れて来たのか、わかっているよね?
さいぜんから息を詰めて親友と許婚のやり取りを見守っていた青年の声は、すこしかすれていた。
ウフフ。お礼を言うよ。
さぁ、言ってくれないか?どんなにか、その言葉を待ち望んでいたのだから。
そう言われてしまうと・・・もう、あとには引けなかった。
セイジは紗枝と一瞬目線を交し合うと。
「紗枝を犯してくれないか?」
みじかいことばにシンとなった部屋に、ジィジィと蝉の鳴き声だけが降り注いでくる。

誰もがあからさまに語ることはなかったけれど。
村には何軒か、吸血鬼の棲む家があった。
吸血鬼をひとり宿すと。
家族の女たちは、すすんで毒牙にかかってゆき、
夫や父親は、妻や娘が夜ごと迎え入れる訪客の前、しどけなく衣裳を乱すのを、見てみぬ振りをするのだった。
周囲には、その家に「奉仕」する家が、目だたぬように何軒も、取り囲んでいた。
家族の血だけでは足りなくなった需要を満たすために、血液を提供する家。
そうして家々では、どの家でも例外なく。
夫婦のみに許された関係を結ぶため、夫たちは妻を差し出すことになっていた。
妻に自由を与える、という名目で。
とくに親密な一家では。
嫁入り前に、花嫁の純潔を穢す特権をさえ、与えてしまっているという。

こわばってしまった場の雰囲気を取り返そうと、
良太はいつもののどやかな笑みにかえってゆく。
そう、かたくなるなよ。でも、嬉しいよ。ありがとね。
深刻になってはいけないのだ。
そう。あくまでも、しきたりを果たすだけ・・・
でも、その場で交わされるものは決して軽いものではない。
受け取るものの重さを、きちんと受け止めながら。
今夜はきみの許婚を、帰さない。
親友の肩に、手をかけて。良太はおだやかな声でそういった。
きみのお袋さんも、祝言のまえにうちに来たそうだね・・・
良太の呟きに、セイジはずきり、と、かすかに身を震わせた。
だいじょうぶ。
かすかな震えに、怒りは込められていない。
きみはじゅうぶん、今夜を体験する資格を持っているね・・・

シャツの上から食い込むロープが、セイジの動きをしなやかに封じていた。
キミにも、体面があるだろうからね・・・
良太が呟いたつぎの瞬間、こんな具合だった。
どうやって?と、いぶかるくらい。
彼のやり口は、手馴れていた。
うちだけじゃないんだ・・・
感じ取っている。
そう。きっと・・・
お隣のサヨちゃんも。
秋に結婚する若い叔父の婚約者も。
こんなふうにして、彼に純潔を食われてしまったのだろう。
夜明けにジョギングに出るときに、サヨちゃんがお邸から出てきて、
不自然な内股になって帰ってゆくのを。
美しく着飾った婚約者をつれてきた叔父さんが、夕方示し合わせたようにお邸に入っていって、
一時間して出てきたときには、彼女の服が変わっていたのを。
いまありありと、思い出す。

半分開いたふすまの向こう。
セーラー服の後ろに流した長い黒髪を、さらさらとなぞるように撫でつける良太のなすがまま、
紗代は目を瞑って、おとがいを少し上向けている。
彼の手が、軽く両肩にあてがわれ、痛くないほどに、抑えつけて。
グイッと首を、仰のかせる。
いよいよだ・・・
予防接種の注射針が向けられたときのような、ドキドキ感。
大きく開かれた口許からむき出しになった鋭利な牙が、
婚約者の肌を冒そうとして、ジリジリと近寄せられてゆく。

男の腕のなか、紗代は初めて目を見開いて、
じいっと彼を見あげ、恐れ気もなく、自分を傷つけるであろう牙を見つめて。
いったんうつむくように目をそらせると、こんどはこちらに目線をそそいでくる。
ここにいてね。
今夜、犯される。
突きつけられた申し出に、しずかに頷いた少女は。
透きとおる瞳で、見すえてきて。
せめて、女になるところ・・・見届けてください。
よどみない声色に惹きこまれるように。
セイジは思わず、頷いてしまったのだった。

せっぱ詰まった目線だった。
なにかを、訴えるように。せつせつとそそがれてくる、柔らかな目線。
奪われてしまう。
セイジのほうも。目線にせつじつなものを、滲ませて。
愛するひとに向けて、ひたと返してゆく。
彼女の頬が、フッとゆるんだ。
憐れんでいるのだろうか?だれを?
縛られたまま婚約者を犯されてゆく、オレのことを?
それとも、家の因習に巻き込まれて、道ならぬ情欲に身を焦がすことになる自分自身を?
けれども翳は、一瞬だった。
薄っすらと笑んだ口許から、白い歯を覗かせて。
少女はニッと、笑んでいた。
イタズラっぽい笑み。
それは、いつも目にする無邪気な彼女そのものだった。
ゴメンね。浮気しちゃうね。
あんまりじろじろ見たら、やぁよ。
気持ちが目線に、乗ってくる・・・
彼女がなにか言おうとしたとき。
ねじ曲げられてあざやかに浮き上がった首筋を、あいつの牙が侵していた。
ァ・・・。
痛ッ!と、いうように。
紗代はキュッと目を閉じて、痛みに耐えている。
良太は眉ひとつ、動かさないで。
鋭利な太い牙を、ぐいいっと。
紗枝の首筋に、根元まで埋め込んでしまった。
きゃっ。
声をたてるのは、はしたないとされていた。
けれども・・・初めての吸血を無言のまま耐えるなど。
どんな娘にも耐えがたいことだろう。
きゅうっ。
奇妙な音が、あがった。
初めて耳にする、吸血の音。
結ばれたことのないセイジにはうかがい知ることのできない、素肌の下に秘められた熱情。
それを良太は目のまえで、あたかも我がもの顔に、奪い去ってゆこうとしている。
良太の喉が、ごくり、と鳴った。
ごくり、ごくり、ごくり・・・
モンスターのように情け容赦なく、与えられたものを獲てゆく彼。
鉛色の横顔がいっそう凄みを帯びていた。
薄闇のなか。
紗枝の素肌の初々しい輝きが、怯えやわななきをいっそうきわだたせている。

ごくり、ごくり・・・
ちゅう・・・ちゅう・・・
規則正しい吸血の音とともに、婚約者の純潔な血が、ぐいぐいと抜き去られていった。
あ・・・あ・・・吸われちゃう。紗枝の血を、吸い取られてしまう・・・
セイジは焦れて、のたうち、ロープの食い込みを深めてゆく。
ダメだ。ダメだ。許されない。紗枝を放せ。血を吸うのを、やめてくれ・・・
まるでうわ言のように、うつろに繰り返される言葉。
けれども血走った眼は、純真な肌を侵す唇のうごめきから一瞬たりとも離れることはない。
生々しい吸血の儀式に身を添わせてゆく紗枝の面差しが、じょじょに愉悦を滲ませてゆく。
薄っすらと開いた目線は、いっしんに良太にそそがれて。
もっと吸って。
信じられないことに。
牙をねだっていた。
うっとりと見あげる恋人のまなざしを、くすぐったそうに受け流すと。
そのままふたたび、うなじに牙を埋めてゆく。
いちぶの隙もない抱擁のなか、男は乙女の血潮に酔い痴れて、乙女は己に酔い痴れる男に、酔わされてゆく。

じょじょに姿勢を崩してゆくセーラー服姿。
たたみに黒ストッキングのひざを突いてしまうと。
少女はいったん男の胸を引き離して。
横にならせて。
そうつぶやくと、答えも待たずに、うつ伏せになって。
清楚な黒のストッキングに染められたふくらはぎを、惜しげもなく、男の目線にさらしてゆく。
良太はこちらのほうをちらりとも見ずに、黒ストッキングのふくらはぎに、唇を這わせていった。
うふふ・・・ふふふ・・・
交し合わされる、くすぐったそうな含み笑い。
なぶるものも、なぶられるものも。
穢す行為のおぞましさに、胸わななかせながら。
清楚な身なりを崩してゆく行為に耽りつづけている。
紗枝はしばらくのこと、うつろな目線をたたみに這わせていたが、
セイジと目が合うと、さすがに恥ずかしそうに目を伏せて。
それからちらりと、盗み見るように、許婚のほうに目線を投げた。
うふふふっ。
目線が、笑っていた。
愉悦の含まれた笑いだった。
なにもかも、侵されてしまったのか・・・
魂を吸い取る行為なのだよ。血を吸うのって。
いつか良太に血を吸われたとき。たしかに彼はそういっていた。
げんに、オレだって・・・
こうしてヤツに犯させるために、紗枝を此処につれてきたじゃないか。

ごくり・・・ごくり・・・
味わうように、いたぶるように。そして、愛するように。
ぐいぐいと呑み込まれてゆく、紗枝のうら若い血潮。
すき間だらけにされたセーラー服からは乳房がこぼれ、
腰までたくし上げられたプリーツスカートから覗いた脚は、
頼りなさそうにすくんでいる。
甘苦しい表情をたたえながら吸血を受けてゆく紗枝は、身に降りかかる受難からわが身を隔てようとする意思を、完全に喪っているようだった。

いただくよ。
親友の囁きに、われ知らず頷き返していた。
よろしくね。
どうしてそんな恥知らずなことを、口にできるのだろう?
スカートをまさぐる手が。
引き裂かれる純白のパンティが。
羞じらいながらも許してゆく紗枝の面差しが。
セイジの脳裏を、狂おしく染めた。
甘美な息苦しさだった。
婚約者を目のまえで犯される。
純潔を、見るもむざんにむしり取られる。
そんなまがまがしい光景が、くり広げられているというのに。

彼の好意を、イタズラっぽい笑みさえ浮かべながら受け入れてゆく未来の花嫁と。
親友の許婚を誘惑して、まんまと罠に堕としてしまった吸血鬼と。
おめでとう。似合いのカップルだね。
よかったよ。初めての刻をともにできて。
言葉も忘れてはぁはぁと、本能の赴くままに耽り合うふたりをまえに。
セイジはいつまでも、うつろな呟きをつづけている。

吸血少年 2 呼び出されて

2007年05月23日(Wed) 08:50:16

ちょっと、出かけてきます。
声がうつろに透き通るのを。
夫はどこまで、気づいているのだろう?
着替えをするために、景子はそわそわと席をたった。
申し合わせたように、娘の純子も席を立つ。
学校の面談で・・・というのが。
示し合わせた口実だった。

小母さんも、純子ちゃんも。ボクの吸血奴隷になるんだよ。
ボクが血を欲しい時は、いつだって、応じてくれなきゃいけないよ。
そんな怖ろしいことを、息子と同い年のあの少年は、こともなげに口にした。
傍らの息子までもが黙って頷く姿に、景子はぎくりとしたのだが。
どうやらきょうの行き先に待っているのは、あの少年だけではないらしい。
太ももまでのストッキング、履いて来てね。
そのまま脱がずにヤレちゃうから。
なにをヤルというの・・・?
訊きかえす勇気は、景子にはなかった。

よく連れ出せたね。
大人たちは口々にそういって、怜次の”腕前”に感心していた。
フフ。かんたんだよ。そんなこと。
きみのおかげさ・・・と振り返る目線に、母と妹を提供したクラスメイトをとらえながら。
みんな、ボクの父さんに、奥さんのこと襲われちゃって。血を吸われたり犯されたりしちゃったんだよ。
そんな紹介に、大人たちは苦笑交じりに顔を見合わせている。
純ちゃんの一番乗りは、ボクだからね。
わかってるって・・・
じぶんたちの正体をさらけ出されてしまった大人たちも、いなやはない。
若い娘さんの血を吸えるだけで、うれしいね。
呟いたのは、夫の同僚。
その後ろにいるのは、夫の弟。
顔ぶれのほとんどが、夫と関係のある人たちだった。
お母さんのほうは、どうする?
引きつったような声を洩らしたのは、ご近所のご主人だった。
そうだね。でもみんな、犯したいんだろ?景子のこと。
呼び捨てだった。息子の前だというのに。
けれども、そうされてしまっても仕方のない関係・・・
怜次は一同を威圧するようにじいっと見渡して、だれにも異存がないと見てとると、
じゃ、くじ引きだね。
ノートを破ると、鉛筆でむぞうさに線を引いて、あみだくじを作りはじめている。
じぶんの運命を左右する線が、稚拙な手でむぞうさに引かれてゆくのを、景子は無表情に見つめている。
かぎりない、無力感。
裏返しに、状況に身をゆだねてしまっている、心地よい帰属感。
純ちゃんに一番乗り。
どういう意味だろう?
いちいち考えるのも、けだるくなってしまった・・・

だいじょうぶだよ。肌を吸わせるだけだよ。でも、貧血にならないようにね。
隠れていっしょにイタズラでもするように、愉しそうに笑いながら。
息子のクラスメイトは、ふたりを淪落の淵にいざなってゆく。
肌を吸わせるだけ・・・って。
景子はなんども、反芻した。
こんなにおおぜいの男たちに肌を吸われて、はたして正気でいられるだろうか?
のぼせあがるのは・・・貧血のせいだけじゃないよね?
毒々しく輝く少年の瞳が、そう語っているようだった。

あっ。
かたわらの娘が、縮みあがった。
男の子みたいにはねっかえりなはずの娘さえ、いつもと違う場の雰囲気に気おされっぱなしのようだった。
終始無言で、蒼い顔をして。
母親の肩に、すがりつくようにしていたけれど。
並んでソファに座らせられて。
それからすぐのことだった。
声をあげた娘は、なにかをこらえるようにして、
スカートのうえから、ひざ小僧を抑えている。
ひざ下には、男が取りついていた。
娘の塾の先生だった。
黒のストッキングの表面にかすかに撥ねているのは、唾液だろうか?
ドキドキとふるいつけられた唇が、まるで膨れあがったヒルみたいになすりつけられていて、
整然と流れるナイロンの細やかな網目をゆがめはじめていた。
ひいっ。
娘がふたたび、声をあげた。
後ろから忍び寄った怜次が、うなじに唇をあててきたのだ。
ハッと気がつくと。
肌色のストッキングを履いている自分のふくらはぎにも、ぬるぬるとしたものがあてがわれている。
それも、ひとつではなかった。
ふたつ、みっつ・・・
じりじりとせり上がるように、薄手のナイロンごしに、素肌をなぶりはじめていた。
ぬるぬるとなすりつけられてくる唇が、にわかに数を増した。
あ、あ、あっ・・・
もう、娘どころではなくなっている。
襟首にすべり込まされた腕が、ブラジャーのなかをまさぐる。
腰周りに巻きつけられた腕が、スカートを脱がせようとする。
あ・・・あ・・・あ・・・
じわじわと素肌に滲み込んでくる快感が、女を狂わせ始めていた。
身体の奥でゆらゆらと、蒼白い焔のようなものが揺らめいている。
もう、ダメ・・・
悲痛な叫びは、声にならなかった。
女は身体の平衡を失って、じゅうたんのうえにまろび臥していた。
すぐ傍らで、とっくに押し倒されてしまった娘が。
怜次に抱きすくめられたまま、別の男にスカートのすそをせりあげられてゆくのがチラと映り、
それはすぐまた別の男の陰に押し隠されていた。

いく度、吶喊が襲ってきたことだろう?
太ももの奥に加えられた衝撃は、二度や三度ではすまなかった。
はぁはぁという、男たちの荒々しい息遣い。
切れ切れに洩れてくる、娘の悲鳴。
むぞうさにあしらわれてゆく礼装が、ピリピリと裂けてゆく音。
太ももを横切るストッキングのゴムは、すでになん種類もの精液に濡れていた。
娘もきっと、おなじようすなのだろう。
”一番乗り”は、首尾よくあの子が果たしたのだろうか?
セーラー服を脱がされることなく、きちんと着たまま犯されつづけたのは。
若い身空で肌身を獣たちの目線にさらさせまいという同情心などではなくて、
きっと、男たちのけしからぬ趣向のせいなのだろう。
セーラー服のコとヤレるなんて、夢みたいです。
奥さんを犯している少年に、感謝の言葉を呟きつづける男たち。
だらしなく垂れ下がるスカートの下。
娘も自分も、まだストッキングさえ着けていた。
おおぜいの男どものあしらいで、蜘蛛の巣みたいにチリチリに裂かれてしまっていたけれど。
  そのまま脱がさずに、ヤレちゃうから。
あの子はたしかに、そう言っていた・・・
蹂躙は、いつか供宴にすり変わっている。
生きながら血を吸われ、セーラー服に血をほとばされて泣きじゃくっていたはずの娘。
いまは白い頬を淫蕩に輝かせて、じぶんからお行儀悪くスカートをたくし上げ、太ももをチラチラさせて男たちを挑発している。
そういう自分だって・・・
娘に負けまいとばかり、思い切り腰を使ってしまっているのを、どうすることもできない。
はぁ。はぁ。
もう、ダメ・・・
けだるいものが澱のように身体の奥に沈んでゆくと。
襲いかかってくる獣たちの蹂躙が、澱をかき回すようにして。
ふたたび、みたび、女を淫欲の虜にしていった。

男たちの気配が、消えてゆく。
入れ替わり、たち替わり、けれども頭数は確実に減っている。
娘と自分とのあいだの視界をさえぎるものも、まばらになってきた。
娘のほうは、見まいとしていた。
娘にも、見られまいと念じていた。
けれどもきっと、お手本にしているのだろうか。
時おり注がれる"女”の視線に、景子は幾度も辟易させられた。
見ないでよっ。
そう言おうとして。
つい、振り向いてしまった。
あっ。
声を、呑んでいた。
乱れたセーラー服のうえにいるのは、夫ではなかったか?
顔の輪郭だけで、すぐにはだれとも判別できなかったのだが。
薄闇に透けて見えたのは、夫婦のベッドのうえでしばしば目にした得意げな笑み。
まさか、父親が、実の娘を・・・
それ以前に・・・知っていらしたの?こういう関係を。
思わず娘の身体にすがろうとするのを、強い力にグイとさえぎられた。
だれ?
さっきから自分のうえにおおいかぶさって。
しつように腰周りを責めていた男。
すがりつくように挿入されるものが、なぜかひどくいとおしくて、
じぶんのほうから身を寄り添わせて、幾度も幾度も果たさせていたけれど。
父親と娘だなんて。
言い募ろうとして顔をあげると、凌辱者と初めて目が合った。
自分の目を、疑った。
じぶんをしつように犯しつづけていたのは、ほかならぬ息子だったのだから。
ちょっと・・・
いいから・・・
息子は不機嫌そうに母親を遮ると。
もういちど、荒々しく組み敷いていった。
まるで、自分の女だ、と言わんばかりに・・・
いつの間に、入れ替わったのだろう?
どうして自分と、契る気になったのだろう?
わななく理性は、いつか深い混濁の谷間に堕ちてゆく。
抗う声が、喪われた。
かわりにヒクヒクとあがったのは。
含み笑いだったのか。うめき声だったのか。
もはや部屋には、ほかの誰もいなくなっている。
乱れあう二組のカップルだけが。
熱い吐息に、薄闇を染めるほどの彩りを秘めながら。
もはや理性も人目も体面もかなぐり捨てて、
おなじ血を、交し合ってゆく。

吸血少年

2007年05月23日(Wed) 07:23:05

ふたつ並んでのべられた布団のうえ。
黒のストッキングに染まった脚が二対、かすかな震えを帯びている。
どちらの脚も、淡い脛毛をあやしていて、
なよなよとたよりない女もののストッキングとは対照的に、ごつごつとした筋肉におおわれている。
くしゃくしゃににたくし上げられたスカートの奥。
股間にあてがわれた両の手が、卑猥な意図を押し隠していた。
周囲には、ぬいぐるみや大きな鏡。きちんと整理された本棚。
女の子らしい小ぎれいな部屋のなか。
二人は明らかに、侵入者だった。

いきなりがらっと開いたドアの向こう。
セーラー服姿の少女がひとり、室内の異状を感知するや
「ひどーいっ!」
非難の声を、はじけさせている。
「兄さんも、怜次さんも・・・あたしのストッキング台無しじゃないのっ」
もうっ!
思いきり口を尖らせたふくれ面に、ふたりの少年は照れくさそうに笑いながら、
わりぃ、わりぃ。つい、ヒマでさ・・・
と、言い訳にならない言い草で、口をゴモゴモさせている。
「血を吸いに来たんでしょ?」
少女はどこまでも、サバサバしている。
「夕食のお手伝いしなくちゃいけないから、早めにすませてね」
いつも、そうしているのだろう。
タンスに向かい合って、しがみつくように手でつかまって。
「はい、どうぞ」
威勢のいい声音のわりには、キュッと閉じた瞼がひくひくと震えている。

「お兄ちゃんは、どうする?部屋に戻る?それとも、見ている?」
「あぁ、見ていよっかな」
好きにしなよ・・・
怜次と呼ばれた少年はにんまりと笑みながら、布団から起きあがった。
すまないね・・・
少女に囁くように声をかけると、セーラー服の背後に、寄り添うようににじり寄る。
うっ。
妹にすり寄る、魔性の影に。
兄貴ははじめて、ビクッと反応した。
お兄ちゃん、ひどい・・・っ!
さいしょのとき。
そう叫んで、身を揉んで抗っていた妹が。
いまではなんのかんのと言いながら、自分の同級生に肌を吸わせてしまっている。
本人が意識しているかどうか・・・
ツヤツヤとした彼女の肌は、健康なばかりではない、微妙なてかりを放つようになっていた。

きゅっ。
唇がなすりつけられる、かすかな音。
あ・・・あ・・・
妹が、血を吸われちゃう。
アイツに、わがものにされてしまう・・・
胸の奥でかすかにゆらめいている蒼白い焔が、
チロチロと理性をあぶりたててゆく。
目のまえには、黒のストッキングの脚が二対。
忍び寄るものの脚が、背後から妹の脚に交えられてゆくのを。
ただジリジリと、見守るばかり。
かりり。
音なんか、するわけないのに。
その瞬間、気丈に踏ん張っていた妹の脚から、緊張が喪われた。
かろうじて抱きとめた逞しい腕のなか、きゃしゃな女学生姿は意思を喪ってふらふらと揺らぎつづける。
体調、バツグンだね。
吸い取ったばかりのバラ色のしずくを口許に輝かせながら。
アイツはイタズラっぽく、ウィンクを投げてくる。

どけよ、といわれるまでもなく。
布団のうえを、譲っていた。
真っ白なシーツのうえ。
きりっと装われた制服姿が、しずかに横たえられる。
やっぱり、ご本人の脚がいちばん美味だよね。
食通めかして頷く彼は。
兄の見ている目の前で、黒のストッキングを履いた妹のふくらはぎに唇をねぶりつけた。
すまない、純子。許せ・・・
こいつに妹を凌辱させていることに対してではなかった。
とうとうこらえ切れなくなって。。。
身に着けたスカートのなか、白く濁ったものをびゅうびゅうと吐き出してしまっていたのだった。
ちゅう、ちゅう・・・
きゅう、きゅう・・・
ひとを小ばかにしたような異様な音といっしょに、妹の血が吸い出されてしまうのを。
胸をぶるぶるふるわせて、胸をワクワクときめかせて、
いつまでも、聞き入ってしまっていた。


がたり。かちゃん。
にわかに響くのは、玄関先のドアの音。
開けたてしているのは、母に違いない。
ただいまぁ・・・
いつもどおりの、のんきな声。
けれども、アイツは敏感に反応して、素早く立ち上がっている。
おばさん、出かける時ねずみ色のストッキング履いてたよな?
もぅ、目つきをギラギラと輝かせている。
しょうがないやつだな。
妹も。お袋も。
ストッキングをこいつに破かれるようになって、どれほど経つのだろう?
単身赴任の父は、なにも知らないのだろうか。

きゃっ。
ちいさく叫んだ母は、それきり声を忍ばせている。
きちんと着こなしたグレーのスーツの、スカートの下。
いまごろ、ねずみ色のストッキングをむしり取られているのだろう。
母の受難を、かすかな忍び声で察しながら。
倒れている妹の足許に、知らず知らずにじり寄っていた。
清楚に装われた黒のストッキングは、紙のように薄く頼りない感じがする。
大人びた装いは、手を触れるのさえはばかられるほどに。
おきゃんな妹には、不似合いな感じがしたけれど。
ふくらはぎにつけられたかすかな痕をまん中に。
縦に伝線を滲ませている。
フェミニンな衣裳のすき間・・・
兄であることを忘れて、思わず傷口を吸っていた・・・

かすかにすえたような匂いは、アイツの唾液だろうか?
傷口の周りに、かすかにあやされた劣情の残滓。
妹の血を穢した・・・
不思議に、憎しみは覚えなかった。
なおもしつっこく、破れかけた黒のストッキングを踏みしだくようにして。
唇をむやみにぎゅうぎゅうと圧しつけていた。
深紅の体液の、錆びたような香り。
滲んできたメロウな芳香に、喉に貼りついていたはぜるほどの渇きが、敏感に反応してゆく。
ちゅうっ。
思わず、音をたてていた。
盗み取るように吸い取ってゆく、妹の血。
血を分けたもの同士だからこそ感じることのできる、同じ種類の血。
喉に、胃の腑に、そして乾きかけた血管に。
それは違和感なく、するすると引き込まれてゆく。
気づいているんだ。
わずかな身じろぎが、彼にそう伝えていたけれど。
シーツのうえ、けだるく沈んだ身体は、積極的な抗いをみせようとしない。
生え初めた牙を、彼はグイッと食い入れてゆく。

玄関先は、ポルノ映画さながらの情景だった。
グレーのスカートを、めくりあげられて。
ねずみ色のストッキングを、ちりちりに引き剥がされて。
裂かれたブラウスからこぼれる乳房もあらわなまま。
勤め帰りの主婦は、靴脱ぎ石の傍らに、転がされて。
息子の親友に、素肌をちゅうちゅうと吸わせていた。
時おりなまめいたうめき声で、応えながら。
階段ごしに、娘の部屋のなかの気配が伝わってくる。
薄れゆく意識のなかですら、母親の本能は室内の異状を嗅ぎ分けていた。
困ったわね。ほんとうに。
彼女は意味もなく、呟いている。
ふたりとも、ほんとうに困ったわ。
悪童ふたりのことなのか。兄妹のことなのか。
それは呟いた本人にも、よくわかっていない。


「息子の怜次です」
父親に紹介された怜次は、「いつもお世話になっています」と、折り目正しく一礼する。
「やぁ、元気そうだね」
「そうでもないですよ」
色白の頬に、線の細い目鼻をノーブルに輝かせて。
どこからどう見ても、良家の令息だった。
こうやって公に顔をあわせるのは、たしかに久しぶりのはずだった。
けれども・・・ついさっきのことだった。
目のまえで父と親しげに談笑するこの中年男性の妻や娘の血を吸ってきたのは。
唇の裏には、この男の妻や娘の身体から吸い取った生き血が、まだいくばくか残っているかというほどだった。
息子と同い年の少年に愛妻やまな娘を餌食にされながら。
跡とり息子まで、手中にされてしまいながら。
気づいていないのだろうか?
いや・・・どうやらそれは、思い過ごしのようだった。
男は、怜次そっちのけで、父親との談笑に興じている。

庭先でね、面白いものを拝見しましたよ。
ほぅ?
ななかまど。綺麗に紅く実っていましたよ。
それはそれは・・・いい眺めでしょうな。
ええ。こんどぜひ、覗きにいらしてくださいよ。
つぎの週末は、お帰りかな?
仕事が押せていますが、なんとか戻ってきますよ。
じゃあ、愉しみに・・・
さりげないやり取りのなかに、怜次はすべてを読み取った。
自宅のことなのに、どうして「拝見」などと、いうのだろう?
「見に来てください」といえばすむものを。どうしてわざわざ「覗く」だなんて、いうのだろう?
  いつもお世話になっています
  <<<奥さんや娘さんの血をご馳走になっています>>>
  元気そうだね
  <<<たっぷり吸っているみたいだね>>>
  それほどでもないですよ。
  <<<これでも手加減しているんですよ。>>>
裏の意味を重ね合わせれば。
つぎの週末にナナカマドの実をはじけさせる役は。
どうやら自分が、つとめるらしい。

通勤途中で ~桜の散ったあと~

2007年05月21日(Mon) 08:30:42

~プロローグ~

散りしきる桜のかなた。
妻と娘は、順ぐりに。
吸血鬼に、うなじを吸われていって。
それから、白い頬を、ゆったり優雅にゆるませて。
気品ある礼装を、妖しくくつろげていって。
淑女でも、生娘でもなくなってゆく・・・

けだるくまとわりつく幻影が、甘美な毒となって。
今夜もわたしの夢を、濃い彩りに染めてゆく。

1.
マンションのベランダから、妻のさくらが手を振っている。
結婚以来、かわらない習慣。
玄関でかならず行ってらっしゃいを言って、わたしが見えなくなるまでベランダから見送るのだ。
今朝みたいに、すこし気温のひくい日だと。
ほどよい冷気を含んだ朝風が、目を覚ませ、というように、軽く頬をなでてくる。
通りかかったのは、家とは目と鼻の先にある中学校の前。
三月まで、娘の裕香(ゆうか)が通っていた。
あのころはわたしよりも登校時間が遅かったので、娘の制服姿は見慣れたものだったけれど。
高校は遠かったので、へたをするとわたしが起きるまえにはもう、家を出ていたりする。
だから娘の制服姿を見ることは、意外にすくなくなっていた。
黒と白の古風なセーラー服を、都会ふうのブレザーにかえて、
娘はちょっと大人びた髪型で出かけてゆく。
大人びたのは、そう。髪型だけではなかったのだが。
そうそう。
今朝も早くに、制服姿で出かけていった。
あれ、だけど、きょうは学校、休みだと言っていたはずだが・・・

おとうさん。
背中越しに娘の声を聞いた。
え?いつのまに?
カンは決して、鈍いほうじゃない。
それなのに。
いつの間にか真後ろに忍び寄っていた娘に、まったく気がつかなかった。
昨日までは、濃いモスグリーンのジャケットだったが。
赤のラインを交えた紺色のチェック柄のプリーツスカートはそのままに、
真っ白なブラウスと、おなじくらい真っ白なハイソックスが、父親の目にも眩しい。
ストッキング地のハイソックスのなか、発育の良いふくらはぎは、ぴちぴちとはずむように。
ピンク色の素肌を、活き活きと滲ませている。
思わず目を細めるわたしのことを、どこまで見透かしたのか。
きょうも、いい天気だね。
娘はちょっと、照れくさそうに小首をかしげる。

いつか、母親そっくりの少女になっていた娘。
いつまでも子どもだと思っていた童顔に、いまは初々しい色香さえ秘めている。
それに初めて気づいたのは・・・もしかしたらあの三月の日のことだったかもしれない。
ふと、見あげると。
体育館の裏手ににょっきりそびえる桜の樹。
あのときは・・・そう。樹一本だけで宴の盛りとばかり華やいでいたものが。
新緑のなか、うそのようによそよそしく埋没している。
何も知りませんよ、と空とぼけているかのように。

どしたの?会社、行くんでしょ?
いつもの強気な口調をつくろいながら。
娘はなぜか、決まり悪そうにもじもじしている。
学校が休みのはずの娘が、まして卒業してしまった中学校に用のあるはずもない。
あるとすれば・・・
チラ、とかすめたものがあった。
ここで誰かと待ち合わせをしていたのに、折悪しくパパに見つかってしまった。
テレパシーのように通じ合う、心と心。
おなじ心のなかで。
ダ・メ・よ。
妻までもが、イタズラっぽいウィン句を送ってくる。
そういうことだったのか。
娘をさりげなくやり過ごすと。
わたしは携帯を取り出して、今朝はちょっと遅くなるから・・・と、部下にメールを打っていた。

2.
透きとおる微風に、音もなく新緑をそよがせている桜の樹。
気をつけていないと、それが桜の樹だとすら知らずに通り過ぎてしまうほど、息をひそめているその樹なのに。
卒業式の日。
あの日の華やぎは、なんだったのだろう?
体育館の裏手という、人目に触れないこの空間で。
爛漫と咲き誇る桜の花の下、
娘は初めて大人の女になり、妻さえ淑女を忘れ果てていた。
式のあと、用があるから・・・と、妻はさりげなくわたしを先に帰そうとした。
  愉しんじゃうわ。役得よ♪
  でも、心配しないでね。
愛情たっぷりのイタズラっぽい目が、そう語っていた。
いちいち言葉を交わした覚えもないのに。
どうやって察することができたのだろう?
きょう、妻が着飾った盛装のまま。
制服姿の娘ともども、吸血鬼に抱かれるなどということを。

見逃しちゃダメよ、お父さん。
いちばんいいトコなんだから。
さっき別れたばかりの妻の口許が、イタズラッぽく囁きかけてきたような幻惑が。
まだ、胸にかすかに残っていた。
薄っすら笑んだ唇に、いつになく妖しいほどに、色鮮やかに刷いた口紅。
あれはいったい、だれのためだったのだろう?

人の散ったあとの空疎な校庭の、さらに片隅で。
だれひとりいない、体育館の裏手という、ひっそりとした空間で。
さんさんと降り注ぐ、あからさまな陽の光のなかで。
母と娘は、向かい合わせに樹に縛りつけられていて。
かわるがわる、足許にあてがわれる唇に。
黒のストッキングの脚を吸われていった。
ヒロインがほかならぬ、わたしの妻と娘だなどと。
目の当たりにしながらも、信じることができなかった。
かつては妻もまとっていたという古風なセーラー服に。
清楚に艶やかな黒一色の礼服は。
好一対の装いだった。
かっちりとしたフォーマルな装いを、しどけなく乱されて。
ちりちりに、裂き取られていって。
降りしきる桜の花びらのなか。
堕とされてゆく、うら若い母と娘。

フォーマル・ウェアのうえから巻かれた荒縄は、アンバランスな妖しさを見せつけて。
おいしいエモノの魅惑を、不必要なまでに、きわだたせて。
これから始まる重い儀式のゆくえを、じゅうぶん連想させてくれていた。
黒い影は、妻の足許ににじり寄って、さっきから。
ゆるいカーヴを描く脚線美を、なぞるように唇を這わせてゆく。
妻はそれを厭うように、眉をしかめて見おろしていたけれど。
黒のストッキングをくしゃくしゃにたるまされてゆくのも、厭わずに。
内心ウキウキと心はずませているのは。
十メートルはあるはずの隔たりをこえて、ひしひしと胸の奥まで伝わってくる。
つま先立ちになりながら。
かわるがわる、脚を跳ね上げながら。
清楚な黒ストッキングになまめかしく滲む、白いふくらはぎを。
くまなく舐められるように、吸わせてゆく。

つぎは、娘の番。
娘もすでに、あいつの牙を体験済みらしかった。
目を瞑って。息を詰めて。
上気した頬に、採りたての果実のような初々しさを滲ませて。
処女の血を、惜しげもなく与えようとしている娘の横顔に。
どうして、青年のころのように、ドキドキ胸わななかせてしまうのだろう?
セーラー服のすき間を、狙われて。
張りつめた白い首筋を、侵されて。
初々しい柔肌を、むたいに踏みしだくようにねぶられながら。
かすかにちぅちぅと音を洩らしながら吸われてゆく、娘の血。
襟首に走る白のラインに、かすかにバラ色のしずくをほとばされて。
娘はまるで、魔法にかけられたように、薄っすらとほほ笑んでいる。
白い頬に散ったバラ色のしずくが、薄日を受けて静かに輝くようすまで。
遠く離れているというのに、手に取るように視て取れた。

そろそろと差し伸べる脚は、制服のスカートの下、
いつもよりグッと大人びた、黒のストッキングに包まれていて。
妻のそれに、優るとも劣らない風情に。
父親のわたしですら、生唾を飲み込んでしまっている。
ちくしょう。あんな装いで吸わせちまうなんて。
身震いするわたしのことを、知ってか知らずか。
うふふ・・・ふふふふ・・・
二重三重に重なり合う含み笑いが、ここまで聞えてくるような錯覚に。
おもわず股間を昂ぶらせてしまっていた。
妻さえも、不埒にねぶりつけられてくる唇に、
おろしたばかりのブランドものの黒ストッキングを、惜しげもなく破らせてしまっていた。

パチパチ・・・ぶちっ。
そんな音が、はじけているのだろうか。
しつようにセクハラされた足許からは、
彩り豊かなおそろいの黒のストッキングがすりむけてゆく。
やつはふたりの脚に、かわるがわる唇を吸いつけていって。
くまなく這わせた唇の下、薄いナイロンをくしゃくしゃに踏みしだいていった。
ちくしょう。はでに破きやがって。
ひとの娘や女房を、なんだと思っていやがるんだ?
そんなことを、呟いたところで。
  今夜のごはんは、いらないよ。
そう告げたときの妻は、なにもかも心得たように。
  では、私たちのお芝居。愉しんでいってくださいね。かげながら・・・
無言の笑みにはたしかに、そんなメッセージがこめられていた。
やつもまた。わたしを愉しませてくれるというのだろうか。
清楚に装われた礼装のうえ、これ見よがしにあてがわれる唇は。
遠くから注がれる熱い目線を、明らかに意識していた。
さぁ、とうとう。ふたりとも。酔わされてしまったぞ・・・

ひとりひとり、順ぐりに。
娘も。妻も・・・
植え込みの向こうへと連れ去られてゆく。
なにをされるのか、もちろん容易に察しがついた。
お嫁入り。
あの男。たしかそんな言葉を、口走っていた。
なかなか洒落っ気のあるやつらしい。
わたしはそろそろ足音忍ばせて。
遠回りに、植え込みの向こう側をと、覗き込む。
見逃しちゃ、ダメよ。
妻にそんなふうに、囁かれているような気がして。

きゅっと引きつらせた眉に滲んだ、悩ましい愉悦。
母親似の横顔を、こわばらせながら。
娘は、スカートを乱されて。
あぁ、そう・・・処女ではなくなってゆく。
太ももの奥へと沈み込んだ逞しい腰が。
えぐるように、飼いならすように。
か細い身体を、もてあそんでいくというのに。
わたしはなぜか、総身を昂ぶらせているばかり。
妻も昔、あんなふうにされていったのだろうか。
泥だらけにされてゆく、セーラー服姿に。
のけぞり悶える喪服姿に。
かつて女学生だった妻の処女喪失のありさまが、想像のなかで重なり合う。
そのころわたしは、まだ妻のことさえ識らなかったけれど。
まだ少女だった妻は、初々しい女学生姿をあらわにして。
透きとおった魂を、いっしんに燃やしたのだろうか。
嫁入り前の娘には禁じられているはずの、秘められた儀式。
それを妻が体験済みなのだと知ったのは。
新婚初夜の新床のうえだった。

娘がちょっぴり涙を滲ませて。
初めての痛みが、甘い疼きになってゆくのを、いとおしげに撫でさすっているかたわらで。
こんどは妻が、乱れていた。
中学の卒業式で処女を捧げたのは。
そう、きみのときも・・・こうだったのだね?
あん・・・あぁ・・・ん・・・っ
忍ばせたはずのうめき声が、はずむ息とともに洩らされるのを。
かたわらで見守る娘は、はじめのうちこそおそるおそる、顔をこわばらせていたものの。
やがて、共犯者のイタズラっぽい含み笑いを滲ませて。
もういちど・・・いい・・・?
なんて、囁いている。
視ていてあげるわ。きれいに犯してもらうのよ。
母親は、仰向けになった娘の両腕を、ぎゅうっと地面に抑えつけた。
やだぁ。ママったら。放してぇ。
娘ははじめて、はしゃいだ声を洩らしていた。


ハッと気がついた。
出勤時間は、とうに過ぎている。
部下にもういちど、メールを打った。
家族の具合が悪いので、病院に連れて行く、と。
半分は、嘘じゃない。そう信じているのは、わたしだけ?
待ちぼうけをくったように、フェンスにもたれかかっていた制服姿は、いつの間にか影を生垣の向こうに埋没させていた。
あわてて取って返すわたしを、見咎めたものがいただろうか?
娘の隠れ場所を判別するのは、容易だった。
がさがさ。がさがさ。
かすかな音が。
生垣の向こうから聞えたから。

運動部の朝練だろうか。
ダン、だ・・・だぁん・・・
体育館の重たい扉の向こうから聞えてくるのは、はずんだボールの反響音。
けたたましい音に隠れた音が、いっそうわたしの鼓膜をジンジンと刺激する。
  ちょっぴりだよ。すぐ破けちゃうからね。
娘の声だ。
あの日とおなじように、頬をかるく上気させている娘。
スカートを履いた足許にかがみ込んだ黒い影法師は、こちらに背を向けたまま、
白のハイソックスのふくらはぎに、とりついていた。
ふくらはぎにぴっちりと密着した薄手のナイロンは、ピンク色のふくらはぎを初々しく透きとおらせていて。
ぬるぬるとあてがわれてくる男の舌に、うら若い血潮をいっそうズキズキはずませているらしい。
潔癖な娘が、照れくさそうにほほ笑みながら、
お気に入りのハイソックスを履いたふくらはぎを惜しげもなく、よだれを含んだべろにねぶらせてしまっている。
男はいっそう露骨に、娘の脚に唇を這わせていった。
そう、覗くものを意識するかのように、これ見よがしに。

きゃっ。
ちいさく叫んだ娘の足許が、バラ色のしずくに濡れていた。
パチパチとかすかな音をたてて、薄手のハイソックスは縦にぴちっと裂け目を走らせる。
あ・・・ダメ。
ちぅちぅ・・・ちぅちぅ・・・
いたぶるように、いとおしむように、吸い取られてゆく、娘の血。
  処女じゃなくなっても・・・おいしいかしら?
ぼそぼそと囁く娘に、影が深々と頷いたことが。
なぜか安堵を呼んでいた。
  すこしだけだよ。
娘はみじかく囁くと。
ふらり・・・と、貧血の身体を揺らしていた。
お芝居みたいに、上手にまろび伏して。
うつ伏せのふくらはぎを、なおもねぶらせつづけていって。
初々しいハイソックスを、チリチリになるまでもてあそばれてしまうと。
スカートの奥にまで忍び込んでくる指先をチラリと見おろして、
なされるがまま、パンティを引き抜かれてしまっていた。
ダン、ダン、ダァン・・・
空虚に響く、ボールの音。
後輩たちのたてる活発な喧騒を、よそにして。
娘は淡く息をはずませて、覚えたての床運動に、いそしんでゆく。

たくし上げられた制服のスカートから白く滲ませた太ももは、
柔らかい筋肉をキュッと緊張させて、
強引なまでの上下動に、うごきがひとつになってゆく。
アイロンのきいたプリーツスカートを、泥だらけにしながら。
ちょっぴり痛そうに瞑った切れ長な目。
かすかに震える長いまつ毛。
頭上では小鳥が、甲高い鳴き声もけたたましく、羽音をたてていた。

ふと、遠くから注がれる視線を感じて、振り返ると。
マンションのベランダのうえ、妻のさくらがこちらに目線を送ってきた。
もうそれ以上は、ダ・メ・よ。
イタズラっぽい共犯者の目は、わたしをさえも、包み込んでいる。
いまの娘のように、妻もこうして母校を密かに訪れていたのだろうか。
結婚以来、手を振りつづけてくれた妻。
かつては嫁入り前に処女を喪った贖罪に裏打ちされていたであろう習慣は。
いまでは吸血鬼を白昼招き入れる間合いをとるのにも、役立っているらしい。
わたしは、妻に手を振った。
  行ってくるよ。
  お仕事、がんばって。
どこにでもある、出勤風景。
けれどもわたしは、心の奥底で呟いている。
  あんまりハデに、乱れるなよ・・・
ほんのひと刻。
じわり、と湧いた妖しい愉悦を心に行き渡らせると。
さて。きょうのスケジュールは・・・
わたしはにわかに、すうっと気分を引き締めて。
どこにでもいる勤め人のひとりに、立ち返ってゆく。


あとがき
やたらと長くなっちゃいましたね。(^^ゞ
「さくら 十五の春」(2月25日掲載)を、夫の目線から・・・ということで。
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-866.html
もう一ヶ月以上もまえに構想していたのですが。
なぜかなかなか、文章になりませんでした。
若葉に埋没した桜と、華やぐ樹の下で犯されたさくらの記憶をかけ合せて、
いまでもつづいているらしい母娘と吸血鬼の交情を描いてみました。
ひさしぶりにお仕事がお休みだと。
意外にブログ、やらなかったりいたします。(笑)

ねえさん

2007年05月18日(Fri) 07:49:26

そのひとは、いつも夕暮れ刻に、勤め帰りの人の群れに交じってあらわれて。
公園の片隅で、ボクと密かな逢瀬を過ごしてくれる。
坊や、またお食事にあぶれたの?
困った子・・・軽い咎めを含んだ目が、ボクを優しくにらみながら。
それでも決して咎めようとも、避けようともしないで。
そのあたりのベンチに、エレガントに腰かけて。
ただひっそりと笑みながら、ボクの愚行を見つめつづけている。
ひとたび生き血を、吸ってしまえば。
どういうひとなのか。なにを想っているのか。
たいがいのことは、読めてしまうはずなのに。
心をしっかり秘めているそのひとは。
どこのだれなのか。名前すらも、教えてくれないから。
そのひとのことを口にするときは。
ただ ねえさん とだけ、呼んでいた。

ねえさんと初めて出逢ったのは。
やっぱり夕暮れ刻の公園だった。
勤め帰りらしいそのひとは。
しっとりと落ち着いたスーツを、まるで和服のように着こなして。
お姫様のような、楚々とした足取りで。
喉をカラカラにしていたボクのまえに現れた。
鬼ごっこは、すぐに終わった。
人を殺さない吸血鬼でしょう?
ボクの正体を、見透かしたように。
追い詰められたはずのそのひとは。
あべこべにボクを憐れむような目線を注いでくる。
ごめんなさい。
とっさに口をついてでたのは、意外な言葉。
だれにもそんなこと、今まで思ってもみなかった。

悪戯したいのね?
ねえさんはもういちど、憐れむような笑みをうかべて。
独り言みたいに、呟くと。
傍らのベンチに腰かけて。
長く後ろに垂らしただけの髪の毛を、さっと掻き分けて。
どきりとするほど白いうなじを、よく見えるようにしてくれた。
それがいつも、ねえさんが逢ってくれるときのお定まりのしぐさになっていた。

女のひとが、お洋服にどれほどお金をかけているか、ご存知なの?
ねえさんは、しっとりとした湿りけのある声をしている。
ボクは、ううん。って、かぶりを振った。
ねえさんの履いている黒のストッキングをべろでいたぶりながら。
お肌を手入れするのにどれほど手間をかけているか、知っているの?
ううん。
ボクはやっぱり、かぶりを振った。
ねえさんの素肌に、おいしそうに噛みつきながら。
優しい言葉の裏に、かなり辛辣な咎めがあるのを感じながら。
渇いたボクは、渇いたボクを、どうすることもできないでいる。
困った子ね・・・
嫌悪でもあきらめでもないものが。
姉さんの暖かい血潮に乗って、ボクのなかに流れ込んできた。
薄くて冷たい素肌とは裏腹な、熱さを込めた血潮。
初めて気がついた。
そのときボクは、泣いていたんだ・・・

勤め帰りの雑踏にまぎれて姿を現したねえさんは。
人ごみから独りはなれて、公園に脚を向けてくる。
やっぱりいたのね?
ボクを見つけると、ねえさんはくすっと笑い、いつものように、
ベンチにおっとりと腰をおろしてゆく。
淡いブルーのスカートは、ひらひらと軽く夜風にそよぎ、
さわやかな初夏の風情を漂わせていた。
ボクなりに、心を込めて。
いつものように、ねえさんの優しい輪郭を。
めでるように、なぞっていった。

教えるものが、かえって訓えられているような。
侵すものが、かえって護られているような。
それはほかのだれとも違う、不思議な逢瀬。
けれどもその夜のねえさんの血は、
いままで味わったどんな血ともちがう香りをたたえていた。
わかる?
いつものように優しい目線でボクを包み込んでいたねえさんの目は。
悲しい涙をたたえている。

なにもいわないで。
きっぱりとした口調に、さえぎられて。
ボクはおざなりな慰め言葉を、あわてて引っ込めていた。
いいのよ。吸って。
吸い尽くしちゃっても、かまわないわよ。
しずかに語るねえさんに、ボクまで涙を浮かべながら。
どうすれば、慰めてあげられるのか。
どうすれば、いつものようにほほ笑んでくれるのか。
ただそれだけを、念じながら。
それでもいつものまがまがしい仕打ちしか、かえすことができないでいた。

いいとこあるわね、坊や。
いつもよりすこし長めの逢瀬に、ねえさんはちょっぴり顔を蒼ざめさせながら。
いつもより目だたないストッキングの破れぐあいを見おろして。
もういいの?
あべこべに、ボクを気遣っている。
背丈の足りないボクのために、いつもしゃがみこんで首筋を噛ませてくれるねえさんは。
今夜もいつものように、長い髪をかきのけて、首筋をあらわにしてくれたけれど。
ボクは激しくしゃくりあげて、白いジャケットの肩先に、もたれるように顔を伏せてしまっていた。
重いわよ・・・
苦笑交じりのぬくもりが、いつかしっかりボクの背中を抱いてくれていた。


あとがき
しっとり調な文章を描いているのは。
疲れているから?
なにかに、癒されたいから?

えっ?

2007年05月16日(Wed) 00:15:49

更新、早いね。ですって?
いえいえ。(^^ゞ
今朝ほど浮かんだお話を、さらりとあっぷしただけなのですよ。
どうも一連のお話ぽいので、てきとうに名前、つけてみました。^^
名前つけるとあとが続かなくなるのは・・・このごろよくあることですねぇ。^^;

それはさておき。
とうとう千話を越えました。
妖しい千夜一夜物語。まだまだ完結した感じはいたしません。
ま、そのなかにお気に召したお話がいくつかるかのほうが大切なのですが。^^;
どうぞ今後も、ごひいきに・・・

そうそう。せっかくですから。
千話を記念して?、いままでのお話のなかでお気に入りのお話が在りましたら、カキコしてくださいませ。
古いやつを憶えてくれている人って、どれくらいいるのかなあ?って、時々気になります。

吸血されるカップル

2007年05月16日(Wed) 00:10:24

その青年は、女の子のように控えめな目鼻と、ごく目だたない性格の持ち主だった。
しいてその子を特徴づけるなら。
女の子の服が気に入りだ、ということ。
母親や、姉たちの身につけるフェミニンな衣裳に魅せられて。
どうにもならなくなって、気がついたら人知れず、
箪笥の抽斗を、こっそりと開けていた。

似合うよ。すこしもヘンじゃない。
唯一、己の嗜好を明かした親友は、顔色ひとつ、変えないで。
真顔で彼の好みを肯定してくれた。
ありがとう。
深い声色に、親友も満足したらしい。
いちど、気に入りの服を着て、遊びにきてくれないか?
そんな求めにすら、なんらの疑いもさしはさまずに。
青年は真夜中、ストライプ柄のワンピースに身を包み、
しゃなりしゃなりと夜道をたどってやって来た。

きれいだね。きみ・・・
親友は、まるで恋人に接するように、うっとりとした目つきをして。
しなだれかかるように、迫ってきた。
同性愛の嗜好はなかったけれど。
甘やかに妖しい雰囲気に、呑まれるようにして。
青年はなされるがまま、身をゆだねてしまっていた。
フェミニンなワンピースの上から、身体をまさぐられながら、なかば夢見心地になって。
相手の青年がすり寄せてくる唇の裏側に、飢えた鋭利な牙が秘められているなど、夢想だにせずに。

かりり・・・くちゅうっ。
かすかな痛みと奇妙な音に、われにかえったときには。
もう、身動きできないまでに、がんじがらめに抱きすくめられていて。
その内側で、身につけている女ものの衣裳までもが、
彼を呪縛にかけるがごとく、しつように巻きついていた。
唯々諾々と。嬉々として。
彼は、求められるまま、うなじをえぐられて。
若い生き血を、ちゅうちゅうと。果てなく吸い出されてゆくのだった。

彼女がいるんだよね?
紹介してくれるよね?
きみの女装趣味に、まだ気づいていないんだって?
将来、結婚するつもりなんだろう?
だいじょうぶ。うまく取り計らってあげられるから。
そんな妖しい囁きに。
青年はうっとりと、自らのすべてをゆだねきってしまっている。

連れてきた彼女は、
友だちの結婚式の帰りだといっていたけれど。
鮮やかな若草色のワンピースに、少し濃いめの化粧をしていて。
足許を彩る肌色のストッキングも、いつもよりツヤツヤとした輪郭に縁どられていた。
おいしそうだね。
そんな言葉を、のみ込んで。
親友は若いカップルを、闇におおわれた館へと、招待する。

父さん?父さん?いるかい?
少年のころの声にかえって。
親友は闇の彼方に呼びかけた。
ズボンの下に秘めているのは、女もののストッキング。
青年から密かに手渡した、恋人の持ち物だった。
濃いめの黒は、紳士用の薄手の靴下だと弁解しても。
きっと彼女には、見抜くことができなかっただろう。
もっとも。
女装の彼に、愛用のストッキングを脚に通されるのは。
案外彼女にとっても、不愉快なことではなかったかもしれないが。

闇から追われるようにして現れた初老の紳士は。
青年と、うら若い女性のことを、
かわるがわる、まぶしそうに見比べていたけれど。
友だちと、彼女なんです。
息子が折り目正しく挨拶すると。
かわるがわる差し伸べられた手の甲に、紳士らしい接吻を重ねてゆく。
古風な挨拶を面白そうに受け入れた男女は、くすぐったそうに笑んでいた。
皮膚を通して巡る血潮を感じながら。
相手がひそかに、胸震わせているとも知らないで。

ほんのつかの間のことだった。
さいしょに、青年が。
つぎに、恋人が。
青年は、親友に。
恋人は、その父親に。
抱きすくめられて、うなじを吸われて。
ワンピースの胸に、ワイシャツの胸に。
若い血潮を、撥ねかせてしまっている。
やがてそれは、得がたいほどの愉悦になり代わって。
ふたりとも、唯々諾々と。嬉々として。
目のさめるほど鮮やかな衣裳を、己の生命の色に染め抜くことを愉しんでいた。

たくし上げられた青年のズボンの下。
目を見張る恋人のまえで、親友は脛に唇を当ててゆく。
親友の唇と、迎え入れる皮膚のあいだに介在するのは。
薄手の黒のストッキング。
よく見ると、相手の青年の脚もとも、おなじ色合いに映えていた。
お嬢さん。彼氏を見習うといい。
貴女のお召しになっているストッキングよりも。
彼のもののほうが、いい色合いをしているだろう?
きみの未来の花婿は、いいたしなみをもっているようだね。
彼の愛用のストッキングは。舌触りさえ、なめらかなのだよ。
初老の吸血鬼のささやきに。
女は応えなかったけれど。
うっとりとなって、恋人に囁いている。
こんど、あたしの服を貸してあげる。
明日の晩、ふたりでここに来ようね・・・と。

女装する吸血鬼

2007年05月16日(Wed) 00:09:30

ちっとも、いやらしい感じがしない。
もちろん、下卑た雰囲気からは、ほど遠い。
詩人のような豊かな感性と、貴公子のような気高い気品さえ感じさせる。
いつも女の服を嗜んでいる彼だというのに。

彫りの深い顔立ちは、エキゾチックな翳を秘めていて。
切れ長な目と、薄く高貴な唇が。
女と見まごうほどの色香を漂わせてはいるものの。
あきらかに、男性。
それでいて、シンプルなスカートにハイヒールという、
フェミニンな輪郭を持ちながらもキリッと装われた直線的な装いが、なんらの違和感もなく、
スマートな肢体にぴったりとマッチしている。

口数が少なく、翳さえ秘める彼なのに。
時おり発せられる声は、音楽的な響きで女たちを酔わせ、のぼせ上がらせる。
ねぇ。そのスカート、いい柄だね。
ちょっと、ボクに貸してくれないか?
いい色をしているね。きみのストッキング。
こんど、履いてみたいんだけど。
こともなげに吐かれるそんな不埒な言葉にさえ、
女たちは唯々諾々として、嬉々として。
己の衣裳を貸し与えてしまっている。

あの子の穿いていたやつだよ。
青年はフフフ・・・と笑みながら。
訪れる夜の闇の彼方。
すり寄せられてくる唇を、避けようともせずに。
黒の柄もののストッキングに覆われた己の脚を、大胆にさらけ出してゆく。
ヒルのように膨れ上がった赤黒い唇が、這うようにネチネチと淡いストッキングの翳りをいたぶってゆくのを。
薄っすらと笑んだ、切れ長の目が、いとも愉しげに、小気味よげに。
ストッキングに加えられる凌辱を、その持ち主の面影へと重ね合わせてゆく。

こんど、逢わせてあげるよ。
ふふふ・・・
ククク・・・
笑み合うふたりは、親子。
父親は処女の生き血に魅せられ、
息子は生き血を吸われる美少女に魅せられている。

息子のフィアンセ

2007年05月16日(Wed) 00:08:34

追い詰められた壁ぎわで。肩をすくめて、ほほ笑むのは。
楚々とした女学生姿。
頭のうしろでむぞうさに、ぎゅっと縛っただけの黒髪が。
健康そうに輝く素肌とよく似合っていて。
ツヤツヤとした若さを放散していたけれど。
今夜の彼女のお相手は、血に飢えた吸血鬼。
活き活きとした若さを、ピチピチとはずむ生気を。
むざんに、むしり取られてしまうのだろうか?
それでも少女が、いつものようにほほ笑んでいるのは。
それが婚約者の父親だったから。

迫り来る影の主は、婚約者の父親の仮面の下。
飢えた淫らな唇に、義理の娘になるものへの礼節さえ忘れかけた好色を秘めていたけれど。
少女は唯々諾々と。嬉々として。
傍らのイスに、縛りつけられてゆく。
そんな不埒から、婚約者の素肌を遮るべきものは。
とうに恋人とおなじように。
イスのうえ、荒縄でぐるぐる巻きにされてしまっている。
見交わしあう視線と視線は。なぜかイタズラっぽい笑みを含んでいて。
少女は足許にかがみ込んでくる恋人の父親に、微笑を含んで見守っていた。
すらりとしたふくらはぎを覆う真っ白なハイソックスに、少女はドキドキ胸はずませながら、
いやらしいよだれをうわぐすりのようにぬめらせた唇を、吸いつけられてゆく。
学校名のイニシャルを飾り文字にあしらった、通学用のハイソックスは。
女学生らしい品位を、ツヤツヤとした真新しさにして輝かせていたけれど。
整然と流れるような太めのリブが、ぐねぐねとねじれてゆくのを。
にわかに力を込めて吸われた唇の下、バラ色のシミが広がるのを。
少女は面白そうに、くすぐったそうに。
イタズラっぽい含み笑いを絶やさずに、見つめつづけている。

おいしいですか?わたしの血。
舌足らずな甘さを秘めた声色に。
血を吸うものも。恋人をゆだねるものも。
うっとりと、聞きほれながら。
切れ切れに鼓膜を刺してくる、忌むべき妖しい吸血の音もろとも、聞き漏らすまいとしている。

処女を・・・盗られてしまうのね?
口をついて出た少女のことばに、少年はぎくりと身体をこわばらせたけれど。
父親は、そんな息子を揶揄するように。
うふふふふっ。
と、笑みながら。
いますこし、処女の生き血を愉しませていただくよ。お嬢さん。
そのたびに、スカートや靴下を、悪戯して。
素肌をねっちりと舐めさせていただくが。
そんな不埒を、許していただけるだろうね?
きっとそのほうが、息子もドキドキするようだから・・・

999話。

2007年05月16日(Wed) 00:05:59

早いもので。
もうこの記事で、999になるのです。
喜んでいいのかため息したほうがいいのかって心境ですが。A^^;
ここのお話、じつは成分のほとんどが柏木氏のストレスだったりするものですからね。
999話と描きましたが。
もちろんすべてが一話完結のお話ではありませんし、
今回みたいな、無駄話の記事もございます。
とはいえ。
以前からお見えになってくださいました方々はご存知なように、
このブログ、いちど吹っ飛んでいますから。
まだリバイバルしていないお話も、だいぶあるのですね。
それも、ハンパじゃない数が。
もしかすると、ここに表示されている999は、たまたまの999であって。
その実もうとっくに千を越えているってことだって、あり得るんですね。
数ばかり自慢しているとまた叱られちゃいそうですから、てきとーにしますが。(^^ゞ
千のうち、一割でも面白い話があたっとしたら。
もうそれだけで、百話。
そんなにあるわけ、ありませんよね?(苦笑)

処女を連れ出す少年

2007年05月15日(Tue) 04:08:25

父さん?父さん・・・?
ドアの向こう側に深々と広がる闇を、はばかるように。
少年は声を忍ばせながら、父のことを呼んでいる。
あぁ。
くぐもった声が、だいぶ奥のほうからかえってくるまでに、だいぶな時間がかかったのだが。
少年は声がもどってくるのを確信していたらしい。
ちょっと帰りたそうにしている少女の手をギュッと握ったまま、かなりのあいだ沈黙だけの闇と向かい合っていた。

ユウカを連れて来たよ。パパに逢いたがっていたんだよ。
少年の声は、得意そうにはずんでいる。
すまないね。
しわがれた声の主は、闇の奥からその身を引きずるようにして。
もの憂げに、けだるげに、頭をかすかに振っている。
眩暈がするの?父さん?
あぁ・・・だいぶ、渇いているのでね。
だいじょうぶ。
少年はいっしんになって、父と声を合わせてゆく。
ボクだっているし。ユウカもそのために、連れてきたんだから。

少年は妹の手を離すと、
見ておいで。相手は父さんなんだから。ちっとも怖くなんか、ないんだよ。
そういうと。
両手を後ろ手に組みあわせ、おとがいを軽く仰のけて。
しっかりと、眼を瞑っている。
父と呼ばれた黒影は、闇に表情を消したまま。
そうっ・・・と、息子のほうへと忍び寄って。
両肩に手を置いて。
すっきりと伸ばされたうなじへと、影を重ねてゆく。
ちゅうっ・・・
かすかに洩らされたのは、吸血の音。
あらかじめ言い含めれていたらしい少女は、父と兄の所作を、大きな瞳でじいっと見つめつづけている。

さぁ、つぎはユウカの番だよ。
吸われた痕に、軽く手をやると。
少年はさっきまでと同じように、ひそめた声をはずませて。
セーラー服姿の少女を、父のほうへと押しやっていた。
ゆらっと揺れたリボンが、薄闇のなかでも初々しい。
すまないね。
父親は、まな娘の足許にかがみ込み、
ひざ下のあたりにそうっと唇を這わせてゆく。
肌の透けて見える、薄めの黒のストッキングが。少女の脛を大人びた彩りに染めていた。
少女はちょっと眉をひそめたけれど。
そのままじっと突っ立ったまま。
なされるがまま、唇を受け入れていた。

破るのは・・・なしにしようね?
少年の訴えるような目線に、われにかえると。
男は愛情を込めて少女を掻き抱いて、
兄にならってわずかに仰のけたおとがいをくぐるように、
うなじに影を重ねていった。

母さんには、ナイショだからね。
父と妹、どちらに言うともなく、少年の声はまだ上ずっていた。

ほんとうは、ユウカのことを犯したいんだろ?
息を詰めて、少年が訊いたのは。
そんな風変わりな逢瀬を数回、繰り返したあとのこと。
ストッキングを履いたまま、ふくらはぎを咬んで。
そのままびりびりと、衣裳を切り裂いていって。
女にしてしまうんだよね?
声変わりをした少年の声は、ひくく淫靡に震えていた・・・

男が静かにうなずくと。
少年はちょっとだけ、身を固くして。
けれども、いままでと変わらない、上ずった声色で。
いいよ。連れて来てあげるから。
その代わり・・・ボクも見ていてかまわないかな?
さいごの言葉は、さすがにちょっと震えを帯びていた。
父はちょっとだけ、息子の顔を見上げたけれど。
好きにするがいい、という意思だけが、声もなく伝わってきた。
念のため、縛らせてもらうよ。
声にならない声に。
少年はくすっ、と、笑みかえしていた。

制服を振り乱して。
少女はかすかに、あえいでいた。
整然としたプリーツの流れる濃紺のスカートの奥深く。
肉薄するように迫らされた、むき出しの腰周り。
遠慮会釈のない侵入に、さすがの少女もわれをわすれて。
ちょっとだけ、抗って。
ちょっとだけ、涙ぐんで。
けれども今は・・・
嫁入り前に受け入れることの禁じられた男の肉を。
耽るように、愉しんでしまっている。

イスに縛りつけられた少年は。
半ズボンの下、妹の愛用のハイソックスをひざ下までぴっちりと引き伸ばして履いていて。
密着してくるハイソックスのしなやかさと。
ドクドクと脈打つ妖しい拍動に。
すっかり敏感になってしまった皮膚を、わななかせてしまっていた。

処女が欲しいんだろう?
ユウカだけじゃ、足りないんだろう?
来週の金曜日には。
ボクの彼女、連れてくるから。
しばらくは、血だけだよ。
処女の生き血なんて、そうそう手に入らないんだから。
彼女を犯しちゃったら。
そうだな・・・幼馴染のフサオくんを連れて来るよ。
先月、ユウカの友だちと、婚約したばかりなんだ。
もちろん彼女も、いっしょに・・・ね。


あとがき
縛られたまえで、少女が生き血を吸われ、着衣を辱められ、犯される。
そんないけない遊戯に、はまってしまったのでしょうか?

願望撮影術

2007年05月15日(Tue) 03:43:46

あぁ、お待ちください。いま、お茶を淹れますから。
男はわたしを招じ入れると、いつものように気さくに台所へと立ってゆく。
真紅のベレー帽。
千鳥格子のチョッキに、おなじ柄の半ズボン。
ひざ下まである、白の長靴下。
場違いなほどにクラシックなイデタチが、妙に似合う男。
本名は、だれも知らないが。
だれもが彼のことを、写真館の名のままに、”緑華堂”と呼んでいる。

齢はいくつに、なるのだろう。
もう、枯れ切った、かなりな老齢にも見えるのはむろんだが。
時にはもっと若く、脂ぎった五十代くらいにさえ見えるほどの、ひらめくような鋭さを覗かせることもある。
祖母と淡いロマンを交し合ったというのは、果たしてほんとうなのだろうか?
その彼が。
最近婚約をした弟のことを話すという。
だれにも言いなさんな。
もとより、この場だけの話にするつもりなのですが。
今から淹れる紅茶には。
忘れ薬が入っているのですよ。
男はにたりと得意げに、人のわるそうな笑みを浮かべている。

御覧なさい。
見せられた写真に、ハッとする。
弟と、その婚約者になった少女の写真。
しかしそれは、初々しかるべき二人にはあるまじき、まがまがしい絵柄に彩られている。
年頃のままに、セーラー服を着ている少女。
けれども彼女の頬は苦痛に歪み、目をキュッと瞑り白い歯を見せている。
弟はカメラに背中を見せていたが、ノーブルな面差しをかすかに伝える輪郭が、それが明らかに弟であると語っていた。
モノクロの印画紙のなか。
弟は少女を手荒に抑えつけ、セーラー服を引き裂いている・・・

いかがです?
奥ゆかしく、遠慮深く控えているようで。
そのじつ、ひとの顔色をじいっと冷静に窺っている。
とんでもないやつだ。
わたしは思わず彼を見返した。
おやおや。怖ろしいお顔を・・・
ご存知でしょう?これはもちろん、現実では、ないのですよ。
人の妄想をそのままに写すという男。
信じられない写真術だが。
わたしは彼を疑うことは、もはやできない身の上だった。

これは・・・誰の妄想なのかね?
いうまでもないこと。弟さんご自身のものですよ・・・
緑華堂は、クックッと含み笑いを浮かべながら。
これを、お嬢さんに見せたと思し召せ。
もちろん、この紅茶を飲みながら・・・なのだね?
えぇ。だって、それは・・・
緑華堂は、女のようにか弱く震えるような声色で。
良家のお嬢さんのお目にかける図柄じゃ、ござんせんからね。
わざと伝法を気取った声色が、却って妖しくくぐもっていた。

お嬢様は、頬を紅潮させて見入っておいででしたが。
ほら、御覧下さい。
差し出された二枚目の写真では。
白のレエスのスリップ姿の少女が、妖しく黒髪を振り乱して、
弟に抱きすくめられている絵柄だった。
か細い弟の腕は、初々しい肢体に、ツタのようにしつように巻きついていて。
歪められた衣裳のしわさえが、リアルに悩ましく写し出されている。
彼女にカメラを向けたのだね?
ご賢察・・・
緑華堂はいつも、みなまで語らない。

ご主人のときは、こうでしたな。
レトロなイブニングドレスに身を包んでいるのは、婚約当時の妻。
真っ白なドレスの襟元を、真紅に濡らしながら。
彼女を抱きすくめている黒い影は、吸い取ったばかりの血潮で、彼女のドレスを彩ってゆく。
素敵な想像力をお持ちですな。
緑華堂は、にこりともせずに。
おなじ絵柄を、彼女の奥底に描いて進ぜましょう。
まるで独り言のように、呟くと。
別室に待つ彼女のほうへと座を移していった。
彼女の前に置かれている紅茶は、ほとんど飲み干されていたけれど。
撮影のあと、彼女はもう一杯、おかわりを頼んでいたようだ。

ほら。御覧なさい。
見せつけられた印画紙のうえ。
彼女は長い黒髪を、さらさらと素のままに流していて。
うっとりと瞑った瞼から、長いまつ毛がピンと格好よくはねていた。
いくぶん反らした上体には、正体のみえない黒い影がのしかかっていて。
真っ白なブラウスの上、不規則なバラ色の斑点を散らしてゆく。
半開きにされた扉の向こう、おぼろげに写っているのは。
イスに座ったまま縛られた、スーツ姿の若い男。
男の顔は、予想通り。わたしのものになっていた。

エ?それからなにが起きたか・・・ですって?
さぁ・・・古いことは、忘れるようにしておりますからね。
ありありと憶えている。
そう言いたげな含み笑いを、隠そうともせずに。
彼は、あなただけにお見せするのですよ、といいながら、
べつの絵を、ひろげてゆく。
油絵なのか。写真なのか。
写したものだ、と判断する眼と。
創作にちがいない、と訴える理性と。
どちらを信じれば、よいのだろう?
妻の上には、弟が。
そして、セーラー服の少女の足許には、ほかならぬわたしが。
弟は妻のうなじを、咬みつくようにして吸いつづけ、
わたしは少女の足許から、黒のストッキングをむしり取っている。
相手を取り替えてまぐわう兄と弟。
いかがです・・・?
お望みでしたら。
写されたままに・・・


あとがき
ふと目が覚めてみたら。こんなお話が・・・
いけませんねぇ。

破られる沈黙

2007年05月10日(Thu) 07:17:30

あの晩いらい。
きみはいつもあの公園に、ひたひたと足音を忍ばせてきて。
黒のストッキングにつややかに装った脚を、惜しげもなくさらけ出す。
そう。ひと言も、口をきかないで・・・
地味な清楚さを穢す愉しみを与えるために。
きみが身に着けてくるのは、薄手で無地の黒ストッキング。
無地であっても・・・ちゃんとわかっている。
いつの夜も、履いてくるのは例外なく、高価なブランドものだということを。
唇を吸いつけるたび、違うブランドを身に着けてくるのを。
わたしは無言の好意と受け取って。
ただひたすらに、唇を這わせ、舌をなすりつけてゆく。
どんなにつくりつけた柄よりも。
薄いナイロンごし、青白く透けるきみの素肌以上に、わたしを魅せるものはないのだから。

忍びやかな吸血の音だけが、ふたりのあいだに漂っている。
きみは夢見心地になって。体をすこし、傾けて。
あすを生き抜く活力までは、奪うことなく。
きみが今宵も、安眠を得られるほどの吸血の量。
きちんとそろえた脚を、残り惜しげにわたしが離すと。
きみはあいさつひとつなく、足音もたてずに立ち去ってゆく。
眠れない夜は、そんなにも毎晩きみを訪れているのだね?

ある晩のこと。
差し出された脚には、珍しく。
ダイヤ柄の黒のナイロンハイソックス。
どうしたの?
声なき問いに、きみはくすっ・・・と忍び笑って。
初めて、口をひらいてくれた。
ストッキングの持ち合わせ。ぜんぶあなたに破られちゃった。
今夜はこれで、間に合わせて・・・
残業つづきで、ストッキングを買いに行く時間さえ持てないきみは。
通勤のときの装いをさえ、提供してくれる。
それほどまでにして、逢ってくれるというのか?
妖しい湿りを帯びた妖艶さとはひと味ちがう、
きりりとしたビジネスタイムを想いながら。
わたしは牙を、おろしてゆく。
夢見心地になるのは・・・そう、きみばかりではない。
こんどくるときは・・・ちゃんとストッキング履いて来てあげるからね。
きみはあくまで、言葉すくなに。
ベンチのうえ、くすくすと忍び笑いをつづけている。

紳士用・・・?

2007年05月10日(Thu) 06:46:09

真夜中に訪いを入れてきたその男は、
スーツのズボンを、かるくひき上げて。
薄墨色に染まった脛を、見せびらかすようにしてさらけ出す。
くるぶししか、見えないと。紳士用の靴下みたいだろ?
男は得意そうに呟くと。
さぁ、噛んで御覧。いちどは妻が脚を通したやつだから。
いつも逢わせてあげられなくて、すまないね。
あいつ、今夜も体調がよくないみたいなのだよ。
同情に満ちた視線を、くすぐったく受け流して。
私は男のふくらはぎに、舐めるように唇をあてた。
薄い靴下ごしに感じるのは、男の女房のかすかな気配。
そしてその下を脈打っている、マゾヒスティックな血の気配。
そこには淡い嫉妬が、いとも妖しく溶けている。
ごつごつとした筋肉質のふくらはぎを、なめらかにコーティングしている、いとしいひとの装いを。
まるで蹂躙するように荒々しく、いたぶって。
ゥゥゥ・・・
喉引きつらせる男の、随喜の呟きの下をくぐるように、くまなく舐めて。
かりり・・・と、噛んでゆく。
あいつは、思いやり深く、囁きつづける。
週一じゃ、もの足りないだろ?
もっと、逢わせてやりたいね。
妻の体調さえ、よくなれば。
きっと本心・・・なのだろう。
けれどもひとつだけ、見落としてはいないかね?
どうして彼女はいつも、体調がすぐれないのかを。
破ってしまったストッキングの持ち主と。
じつはたったいま、逢ってきたばかりなのだよ。^^

あっ、あなた。しっかりして・・・っ

2007年05月10日(Thu) 06:39:42

さいしょに噛まれたのは、夫のほうだった。
深夜の街なかで。
帰り道を急ぐ夫婦連れのまえ。
黒のフォーマルスーツに欲情した吸血鬼が、襲いかかる。
妻と黒影とのあいだをさえぎろうとした夫は、たちまち幻惑されて、抱きとめられて。
気づいたときには、首筋を噛まれていた。
あっ、あなた。しっかりして・・・っ
思わず駆け寄り、取りすがった妻は。
身を揉んで、男の影を夫から引き離そうとしたけれど。
男はぐいぐいと力まかせに血を啜り、夫がゆっくりと、ずるずる姿勢を崩してゆくのを尻目に。
こんどはお目当ての奥さんに襲いかかる。
きゃあっ。
悲鳴がひと声・・・
そして、沈黙・・・

つぎの晩のことだった。
お通夜でもないのに・・・ね。
奥さんはイタズラっぽく、忍び笑う。
ご主人は照れくさそうに、ウィンクする。
スカートのすそに、そろそろと手をやって。かるくめくり上げて。
薄墨色に染まる足許に吸いつけられる唇に、
くすぐったそうな笑いが、ふた色重なる。
きみがあのとき。ぼくに取りすがってきて。
身を揉んで取り乱したとき。
久しぶりに、きみの愛情を体感したのだよ。
もう・・・仰らないで。
黒い影の腕のなか。
妻は幾重にも、恥らいつづけている。
あなた・・・しっかりなさって。奥さんを犯されてしまうのよ。
あの夜と似た、囁きは。
ひきつるほどの切迫感が、甘えを帯びた挑発に変わっていた。

堕とされてゆく礼節

2007年05月09日(Wed) 08:05:39

わたしの由貴子さんは、白一色のスーツに身を包んでいて。
薄暗がりの支配する部屋のなか、立ったまま抱きすくめられている。
スポットライトのように射し込む光のなか。
やつの腕のなか、由貴子さんはウットリと、薄目をあけて。
まつ毛をナーバスに、ピリピリとふるわせながら。
処女の生き血を、捧げてゆく。
濡れた唇をなかば開いて。
うつろな目線を、闇の彼方に惑わせて。
ひっそりと吸血に耽る黒影に、わが身を惜しげもなく浸している。
ちぅちぅ・・・ちぅちぅ・・・
きゅうっ・・・きゅうっ・・・ごくり。
人をくったような、生々しい吸血の音を響かせながら。
穢れを知らなかった純潔な血潮は、飢えた唇に含まれて、渇いた喉に散らされてゆく。
濃艶な液体に秘められた真情と熱情は。
どこまでやつに、伝わっているのだろう?
やつは夜ごと、わたしの婚約者を狙って、
あるときは帰り道を待ち伏せ、
あるときは公然と迎えを寄越しさえして。
ひたすら、都会育ちのお嬢さんの血潮で、ひからびかけた血管をうるおそうとする。

アラ、いけませんわ。
べつの悪戯が、始まったらしい。
やつはいつの間にか、由貴子さんの足許にかがみ込んでいる。
お目当ては、彼女の穿いているストッキング。
薄明かりに浮かび上がる、スカートの下は。
薄墨色のナイロンに染められた白い脛が、なまめかしく透きとおっている。
やつはそのうえから、唇を寄せて。
ぴったりと這わせて、よじれさせてゆく。
いけませんわ。お行儀のわるい・・・
秘めやかな声で。ひっそりとたしなめる由貴子さんも。
もはや、彼の悪戯の共犯者。
見せびらかすように、脚をぶらぶらさせながら。
きゃっ。だめ・・・
だなんて。
甘い声を、薄い闇にはしたなく響かせて。
避けるそぶり。拒むふり。
ことさら厭わしげに、眉をひそめ、まつ毛をふるわせながら。
涙の痕に似た伝線を、つつっとあざやかに、滲ませてゆく・・・

アラ。なんにもされて、いませんわ・・・

2007年05月09日(Wed) 07:26:42

問い詰めるたび、由貴子さんは。
歯並びのよい前歯を、薄い唇から薄っすらと滲ませながら。
アラ。なんにもされて、いませんわ。
って。
透きとおるような白い頬を、謎めいた輝きに染めている。
私はいつも、
そうだね。きみの身持ちのよさを信じているよ、って。
そう応えてあげるのだけれど。
そのじつちゃんと、聞いてしまっているのだ。
ほかならぬ、さっききみが逢ってきたお相手から。

きょうは、スカートのなかに射精してしまうよ。
きみの由貴子の、スカートの裏地を濡らしてみたくてね。
意地悪くほほ笑むあいつは、わたしのツボをちゃんと心得ていて。
私の肩から二の腕を、なぞるように撫でつけながら。
深く落ち着いた、痺れるような声色で。
けれども、決して拒絶を許さない、冷ややかに澄み通った語調をもって。
未来の花嫁に不埒を加える許可を、しっかりねだり取ってしまっている。
いつも、そんなふうにして。
あの夏の日の午後、彼女を初めて引き合わせたときに。
純白のブラウスに、持ち主の血をしたたらせる悪戯も。
べつの機会に、黒のストッキングを、蜘蛛の巣みたいになるまで噛み破ってしまう愉しみも。
嬉々としながら、チャンスを与え、許しつづけてしまっている。

知っているんだ。
見透かせるんだ。
軽やかな純白のそのスカートの、裏を見せて御覧。
指先でつまみあげることもできないほどに。
濡らされてきたんだろう?
ストッキングに、ひきつれひとつないのも。
お邸で、新しいのに穿き替えてきたからだろう?
だって。
きみがお邸に穿いていったやつは。
私がいま。ポケットの奥深く、握り締めているのだから。
蜘蛛の巣のように破けたふくらはぎを。
濁った粘液を妖しくぬらつかされた太もものあたりを。
あいつはひどく得意げに、私にみせびらかしていったのだから・・・


あとがき
まだ、処女のころの由貴子さんの挿話ですね。
あの、自宅での衝撃的な夜に。
彼女が嫁入り前の肌を、しんそこ穢されてしまうまでは。
純潔がだれに帰属するのか、定められてしまったあととはいえ、
ドキドキするほどの危うさを秘めていますから。

許された裏口

2007年05月09日(Wed) 07:17:38

ドキドキしている。
ズキズキしている。
だって。
ボクの婚約者の、真智子さんが。
ママといっしょに、吸血鬼のお邸の門をくぐって。
それから、もう一時間というもの。
出てくるようすがないのだから。
ママは、週末の法事に着ていった、黒一色のフォーマルウェア。
真智子さんは、白いセーラー服の夏服に、黒のプリーツスカートをたなびかせて。
スカートのすそからのぞく、ひざから下を、
ふたりとも、申し合わせたように。
肌の透ける黒ストッキングで染めていた。
ママに肩を抱かれて門扉の向こうに消えた後ろ姿は。
黒い襟章に整然と走る白のラインが、目に沁みるほど鮮やかだった。

お心が向けば、処女を差し上げることになってしまうかも。
ママはなぜかちょっぴり、恥ずかしそうにしていたけれど。
あとでパパがそっと、囁いてくれた。
ママも、お嫁入りしてくるまえに、吸血鬼さんに逢ってからうちへきたのだよ。って。
シンと静まりかえった庭先は。
ボクのために・・・といわんばかりに、
裏口が開け放たれているけれど。
とても、入ってゆく勇気はもてないでいた。

ポンと肩を叩いてきたのは。
幼馴染の、ツトムくん。
この家の息子だった。
そう。
いまごろ真智子さんのうえにおおいかぶさっているのは。
ツトムくんのパパなんだ。
悪いね。
ツトムくんは、ちょっぴりはにかんだような照れ笑い。
おうちでなにが起きているのか、知っていて。
それでわざと帰宅を遅らせたのだという。
キミのことが、気になってさ。

それから三十分ほども経っただろうか。
真智子さんは、ママに連れられて。
入っていったときとおなじように、表情を消して門をくぐり抜けてきた。
ふたつの細い肩を包む正装は、なにごとも起こらなかったかのように、しわひとつ見せずに。
ひざ下を薄っすら染めている黒のストッキングも、
ひきつれひとつ、走っていなかった。
彼女の身に、ママの素肌に。
なにがおおいかぶさって、なにが這い回ったのか。
忌まわしい想像は、いとも妖しいとぐろを巻いて。
なぜかボクのことまでも、淫らな昂ぶりに染めている。

なに考え込んでいらっしゃるの?
ママは黒の帽子をさっとかざして、ボクを眩しそうに見つけてきた。
なんにもなかったわよ。
不機嫌そうに口を尖らせた真智子さんは。
なぜか目線をそらしていった。
その言葉を裏切るように。
首のつけ根にくっきりと浮いた、赤黒い痕が。
ボクの胸の奥に、鮮やかに烙きついた。

当たり前じゃないか。彼女が言ったのは、そういう意味じゃないんだよ。
気を利かせて、さきに消えてくれた幼馴染は。
つぎの日に会ったとき、そんなふうに耳打ちしてくれた。
吸血鬼がキミの母さんと、いいなずけを呼び寄せたのは。
もちろん、喉の渇きをいやすため。
なんにもなかった。
それは・・・もっと特別な意味に決まっているのさ。
キミのいいなずけは、まだ処女のはずだし。
母さんも、まだ淑女じゃないかな。
どうしてかって?
それは・・・キミが覗かなかったからさ。

カサカサという葉ずれさえが妖しく聞える、夕闇せまる庭先で。
ボクは肌寒さに身を震わせながら。
許された裏口を通り抜けていた。
半ズボンにはまだ早い季節だけれど。
ひざから下は、ストッキング地の紺の靴下。
パパがそっと渡してくれた愛用の靴下は、ひどく薄くて、なよなよしていて。
男が穿くには、過ぎた色艶を秘めていた。
いつもね。ママがお出かけするときに。
パパもこれを穿いて、出かけてゆくのさ。
そっと囁くパパは、口許に悪戯っぽい微笑を浮かべていた。

ふくらはぎに吸いつくように密着した、薄手のナイロンのじわりとした感触が。
いっそう妖しく、滲んできた。
だって。
カーテンさえはずされた窓ごしに。
仰向けにされたママは、さきに喪服を脱いでいて、
ベッドのうえ、まるで娼婦のように。
かっこうのよいおっぱいを、ぷりんと震わせていたのだから。
吸血鬼は、暑苦しいマントを着込んだまま、ママに覆いかぶさっていて。
腰のうごきを、ひとつにしていた。
ママの肩先にかかるたっぷりとした黒髪が、ゆさゆさと揺れるほど。
髪の毛も、ゆさゆさ。
ベッドそのものも、ゆさゆさ。

きしむベッドのうえ。
いま、ぎしぎしと音を立てているのは。
ほかならぬ、真智子さん。
ボクの未来の花嫁。
ママが犯されている隣の部屋で。
清楚な女学生姿を餌食にしているのは、ほかならぬ幼馴染の彼。
その瞬間。
真智子さんは、ちょっと痛そうに眉をしかめて。
ちょっとためらったような面差しをみせて。
それから、まつ毛を震わせて、応えていった・・・

きみに姦られちゃうのなら。ガマンするよって。
たしかにボク、そう言ったよね?
ガマンする・・・っていうよりも。
ガマンし切れなかった。
正直に、白状すると。
夫ならぬ身に処女を捧げる未来の花嫁に。
いちばん昂ぶっているのは、ほかならぬボクのほうだったから。