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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

ふううう。

2007年06月30日(Sat) 07:57:19

ここ数日、なにも浮かばなかったのですが。
浮かびはじめると、とめどがなくなるようです。
(イツモノコトカ)
描きたいプロットが、いくつかありまして。
似たようなお話ばかり並ぶこともしばしば。(^_^;)
ひとつでも、あたりがあればいいんですが・・・

夜更けの散歩

2007年06月30日(Sat) 07:55:50

きみ、もしかして、男だろ?
夜更けの路上。
声の主は、まだ年端もいかない少年だった。
この時間に、半ズボンは似合わないね。
とっさにかえした言葉が、うそのように落ち着いている。
ボクも、似たようなこと、しているんだもの。
黙って差し出された脚にまとわれているハイソックスは。
よく見ないと、わからなかったけれど。
肌の透けて見える、明らかに女ものだった。

ストッキングも、キモチよさそうだね。
いちど、試してみたら・・・?
齢の差も、出会いの唐突さも忘れて。
似通った好みのふたりは、みじかい言葉を交し合う。
自分で買うのは、恥ずかしいなぁ・・・
こんど、持ってきてあげようか?
ウン、お願い。

つぎのつぎの時からだった。
少年の半ズボンの下も、薄黒いナイロンが染めるようになったのは。
公園に行ってみる?
吸血鬼が出るんだろ?
ああ・・・でも、友だちなんだ。
行ってみても・・・いいかな・・・
少年は、曖昧に語尾を濁したけれど。
仲良しの青年の誘いを、振り切ろうとしなかった。

新顔さん、だね?
うっとりと頷く青年を見上げる黒影は。
たった今吸い取ったばかりの血潮をまだ、口許にあやしていたけれど。
怖い・・・とは、感じなかった。
さぁ、つぎはボクの番・・・
半ズボンの下、黒のストッキングに透けた脛をさらけ出しながら。
ちくりとする疼きが、埋め込まれてくるのを。
くすぐったそうに笑みながら、受け入れてゆく。
ちゅうっ・・・
あらたにあがった吸血の音に。
むしろ招び込んだ青年のほうが、ドキドキ胸を弾ませていた。

待っておいで。
吸血鬼は、少年の血をしたたらせたまま。
悪戯っぽく、笑みをうかべると。
ウン。
少年のほうも、従順に頷いている。
夜霧の向こうから現れた女の影に、じぶんの母親をみとめていたから。

吸血鬼は、ママのことを抱き寄せると。
きちんとセットした黒髪を、ねじりあげるように、つかまえて。
おとがいを、ぐい・・・っと、仰のけて。
首筋に、がぶり!と、噛みついていた。
口の端にはまだ、彼女の愛息の血をあやしているというのに。
ちゅうちゅう・・・ちゅうちゅう・・・
まるで悪戯でもしているみたいに、他愛のない音が。
少年の耳もとを、妖しくくすぐりはじめていた。

ややもすると崩れそうになる姿勢を、気丈にも立て直しながら。
女はなおも、血を吸われてゆく。
さっき少年が捧げた血の量を、とうに越えるほどに。
たっぷりと、吸い出されてしまっていた。
ふらりと大きく揺れた身体を、後ろから抱きとめられて。
彼女ははじめて、抱きとめてくれた相手と、彼の足許に目をやっていた。

悪い子ね。
優しく咎める目線を、くすぐったそうに受け止めて。
母子はふたり、並んでベンチに腰かけて。
なおも血潮を、啜られてゆく。
毎晩・・・は、無理だけど。
たまにママと、散歩に来るね。
いいよね?ママ・・・
拒絶を許さない上目遣いに、もう、この子ったら・・・と言いながら。
かわるがわる、足許に唇を寄せてくる黒影と青年とに。
ストッキングの脚を見せびらかすようにして。
母親もまた、夜の愉しみに耽りはじめている。


あとがき
少年は、ママが夜更けに公園に散歩に出かけるのを知っていたのでしょう。
散歩をいっしょに、愉しみたかったのかも。^^

きみ、もしかして・・・

2007年06月30日(Sat) 07:41:46

きみ、もしかして・・・
声をかけてきたのは、女のほうからだった。
人通りの絶えた夜道にはふさわしくない、女学生姿。
長い黒髪を、イタズラッぽくピンと引っぱりながら。
横顔は愉しげに、ほほ笑んでいる。
吸血鬼、なんだろう?
ひくく落ち着き払った声に、魅せられたように。
黒衣の男もまた、己の正体を偽ろうとしなかった。

血が欲しいの?
無言の頷き。
ボクのでも・・・いいかい・・・?
やはり、無言の頷き。
きみは、男だね?
そんな問いを、呑みこんだまま。
黒衣は女学生姿の足許に、おもむろにかがみ込んでゆく。
ストッキング、破いてもいいんだぜ。
月明かりの下。
少年のような面差しは、むしろなまめいた翳りをよぎらせていた。

しんなりとした薄手のナイロンの下。
ドクドクとめぐる血潮の、熱い昂ぶりを唇に感じながら。
飢えたものは、ただひたすらに。
今宵の恵みを享けつづけてゆく。

さすがに貌をすこし蒼ざめさせて。
それでも、笑みだけは絶やさずに。
若い女の子にめぐり合えなかったなら。
ボクでよければ、相手してやるよ。
ひくく謡うような男言葉に、黒影はうっそりとした沈黙を守っている。
それからのことだった。
毎晩のように。
スカートをたなびかせて、ひっそりとした歩みを進める人影に。
寄り添うような黒影がまとわりつくようになったのは。

しっ!
アパートのドアを開きかけたとき。
出会い頭、薄いカーディガンのうえから肩をつかまれて。
さすがに”彼”は、どきりとした。
今出るんじゃない。
耳をすませると。
わいわいという粗野な声。
ドルルルルル・・・
エンジン音をひくく響かせて。
不良少年たちが、立ち去るまで。
肩に置かれた手は、放されることがなかった。
友だち兼ガードマン、てところかな。
薄いピンクのカーディガン姿が、クスリ、と含み笑いをする。
足許を見せびらかすように、グレーのスカートを揺らしながら。
伸べたふくらはぎには、黒のナイロンハイソックス。
服は汚さないでくれよ。母さんの形見なんだ。
さいごのひと言が、寂しげに翳ったのを。
黒影はさりげなく受け流して、いつものように唇を吸いつけてゆく。

もうじきキミとも、お別れだね。
結婚するのだろう?
どうしてわかるの?
フフッ・・・
黒影は、初めて笑んだ。
血を吸う仲になると、いろいろなことがわかってしまうのさ。
隠しごとをするつもりはなかったけれど・・・いいにくかったんだ。
キミ、若い女の血が欲しいんだろう?
襲われたくない。そうだね?
ごめんね。
いや・・・
それがふつうの感覚・・・というものだろう。
ご結婚、おめでとう。逢えるのは、いつまでかな?

吸血鬼の心配は、杞憂におわった。
”彼”のアパートは、結婚してからもそのままだったから。
過去を、新居に持ち込むことも。捨て去ってしまうこともできなかったのだ。
時おり夜更けに訪れる人影は、待ち受けていたもうひとつの影といっしょになって。
狭いアパートの一室、密やかな逢瀬を重ねつづけた。
笑うかもしれないけれど。
女の服を着ているとね。
落ち着くというか・・・癒されるんだよね。
それにしても。
こんなにか弱い服を身に着けているというのに。
女って、どうしてあんなに強いんだろうね。
吸血鬼ははじめて、声をたてて笑った。

公園に行こうか。
いいね・・・
どちらから言い出すともなく。
呼び交わしあった声は、ひとつになって。
すうっ・・・と部屋を通り抜けてゆく。
夜霧に街燈を滲ませて。
静まりかえった公園は、ひっそりと輝いている。
少しのあいだ。ここで待っているんだ。
黒影の命じるまま、”彼”は木陰に身を隠す。
ひらひらとした女の衣裳が微風に揺れて、心地よくまとわりついてきた。

そのひとは。
向こうの入り口から、まっすぐと、歩みを進めてきて。
待ち受けていた黒影に、吸い込まれるように、近づいてきて。
あたかも当然のように、胸をそらせて、
影の背中に腕を回して、おとがいを仰のけて、目を瞑る。
街燈に浮き上がった面差しに、新妻のそれをみとめて、
”彼”は驚いて、駆け寄ってゆく。
一瞬おそく、牙が女のうなじを侵していた。

ちゅうっ・・・。きゅきゅう・・・っ。
吸血の音が、いつもよりもナマナマしく響いたのは・・・気のせいだろうか?
新妻は、女装姿の夫に艶然と流し目をして。
いつも独りで出かけて。ひどいわ。
咎める声に、棘はなかった。
お母様の服なの?
その問いのほうが、むしろ翳を含んでいたけれど。
中身も優しく・・・な。
黒影のささやきを、耳にすると。
あら。
やられたわね・・・・といわんばかりに、肩をすくめて。
優しい女になるしか、なさそうね。
こんどこそ申し訳なさそうに、夫を見やる。

なん年もまえのことだった。
不眠症のいらだちをおさめるために訪れた夜の公園で。
幾度となく血を吸って、波立つ心を鎮めてやったことがある。
そう。
おれはきみの花嫁を、処女のうちから知っていたのだよ。
申し訳なさそうに、ぼそぼそと呟く黒影に。
よかったんじゃないかな?
”彼”は珍しく、翳りのない笑みをかえしてくる。
これからは・・・
妻といっしょに、逢いにくるね。
じゃあ、あなたには。わたしのセーラー服貸してあげる。
え?持っているの?
もう・・・やらしいんだから。
夜霧のなか。
ひそやかなやり取りは、にわかに中断して。
熱っぽい気配がひと刻よぎると。
じゃあ。ごきげんよう。
さりげない別れことばを交し合って。
夫婦はいままで以上に、密に寄り添いながら、姿を消してゆく。
夜明けは、近い。

かばい合い 覗き合い

2007年06月29日(Fri) 07:31:53

お願いです。
母や妹には、手を出さないでくださいね。
羞じらいながら差し出される、少年の脚。
半ズボンからむき出しになった太ももは。
いつも母親が履いている黒のストッキングに、薄っすらと縁取られていた。
母の身代わりに・・・妹の代わりに・・・
震える声で、囁きながら。
ときには妹のセーラー服さえ装って。
血に飢えた牙のまえ、惜しげもなくわが身をさらしてくる。
若い血潮をぞんぶんに、愉しむと。
夢見心地にうっとりとした目線に送られて。
部屋を出てゆく吸血鬼。

あの。
ためらいがちに呼び止める女の声に。
男は黙って頷くと。
少年の母の寝室に、姿を消してゆく。
どうか息子の生命をとらないで・・・
うめくように囁く女の、首筋に。
心地よげに、牙を突きたてて。
おいしそうな音を、忍ばせて。
ただいっしんに、啜りとってゆく。

ねぇ。
また、ママや兄さんの血を、吸いに来たんでしょ?
ひどい人・・・と、いいながら。
背後に回る黒い影に、うつむいて。
長い髪の毛をかきわけて、初々しいうなじをことさらにさらけ出す少女。
ちゅう・・・っ。
ひそやかな音に、くすぐったそうに聞き入りながら。
うっとりとした目線を、流していって。
ハイソックスを履いたふくらはぎに唇を押し当てられながら。
いやらしい。
ほんのひと言、口にすると。
長いまつ毛をしたまぶたを、うっとりと閉じてゆく。

女たちは、互いに互いの痕を、うなじのあたりに確認し合いながら。
だいじょうぶ?
息子を、兄を、気遣っているのだが。
果たしてどこまで気づいているのだろう?
細めに開いたドアのすき間から。
昂ぶりを秘めた少年の目線が、いっしんに覗かれていることを。

通りかかるひと

2007年06月29日(Fri) 06:44:56

また残業だった。
肩にずしりとのしかかる重たい疲労は、肉体の疲れからくるものではない。
響くような頭痛。胸の奥にわだかまるイライラ・・・
すべてが心身を切りさいなむように、おおいかぶさってくる。
こういう夜は。
きまって、喉の奥がひりひりと疼いてくるのだ。
半吸血鬼となったのは。
まだ、中学生のころだったろうか。

見あげる夜空にまたひとすじ、なにかがよぎっていった。
吸血鬼の跳梁する街。
吸血鬼と共存している家々。
昼間はふつうの市民に扮した魔性のものたちが、本性をあらわにする刻限だった。
夜空を翔べるものたちは、まだいい。
真性の吸血鬼は、永遠といわれる生命を背負っていて・・・
少なくともいまの自分よりは、自由な存在なのだろう。
誤解だよ。
中学生のころに彼の血を吸った吸血鬼は、ほろ苦い笑みをよぎらせそう呟くのだが。
あまりにもふつうの市民すぎるこの気疲れの堆積は、いったいなんだというのだろう?

今夜は、だれの血を吸おうか?
妻の血を吸うことは、ほとんどない。
彼女が熟れた素肌をさらけ出すのは、べつの男のまえ。
そのほうが本人も昂ぶるという。
夫であるかれ自身すら。
妻の夜間の外出は、己で襲うほどの胸の慄(ふる)えを覚えるものだった。

あら。
闇の向こうから、声がする。
こんばんは。
若い女の凛とすみ通った声が、礼儀正しい挨拶を投げてくる。
塾通いの帰りなのだろうか。
いつも家路をたどる途中で出会う、制服姿の少女。
都会では珍しくなった濃紺のジャンパースカート姿が、
田舎都市のこの街では、まだ生きている。

やぁ、こんばんは。
生えかけた牙を危うく引っ込めて。
かれはいつものおだやかな小父さんの顔に戻ってゆく。
いつもひと声、投げ合って。
一瞬で影をよぎらせてゆくだけの関係。
少女がどこの家の子なのか。なんという名前なのか。
声を交し合うようになってだいぶ経つというのに。
いまだにそんなことすらわからない。
時計の針のように規則正しい日常では。
もうそれ以上発展し得ない邂逅というものがあるのだろう。
不思議なことに。
半吸血鬼なのに。
まだいちども、彼女を襲おうという気にならなかった。
凛とした声色が、魔よけの役割を果たしているのだろうか。

いつもの晩とは、違ったことに。
おじさま?
すれ違いざま、少女のほうから声をかけてきた。
ちょっと、お散歩しませんか?
闇に浮いた白い貌が、人なつこくほほ笑んでいた。
あぁ。いいけど・・・
気後れしながら、少年のように応えるかれを。
少女は手を引くようにして、路傍の公園にいざなってゆく。
なん年も通いなれた道なのに。
初めて入る公園は。
まるで誘蛾灯のように輝く蒼白い街燈に、
ささやかな木立ちが滲むように浮かび上がっている。

公園の隅のベンチに腰かけると。
少女は人なつこい笑みをたたえたまま。
うなじのつけ根を指さすと。
ここ、噛んでもらえますか?
なんのてらいもなく、仰いだ目線をそそいでくる。
えっ?
信じられない言動に。
そんなことしちゃ、いけないよ。
思わず両手で、肩をつかんでいた。
襲うためではなく。
諭すために。
感心するほど、理性がまだ残っていた。

いいんですよ。
少女は蒼白く浮かび上がった貌に、くったくのない笑みをたたえながら。
つかまれた両肩のあいだ、可愛い笑くぼさえ滲ませている。
どうしてなのだろう?
もうこの子とは、なんどもすれ違ってきたのに。
そう、なん日も、なん年ものあいだ・・・
四十すぎの中年男に、こんないたいけな少女が格別の好意を示すものなのだろうか?

思いを迷わせるうちに。
さ、早く・・・
少女はせつじつに、かれを急かしていた。
肩にのしかかる疲労。
じんじんと響くような、頭の奥の鈍痛。
なによりも・・・喉の奥からせきあげるような渇望―――。
それらがすべてを、忘れさせた。
寄り添うふたつの影は、瞬間ひとつに交わった。

あぁ・・・
そういうことだったんだね?
すっかり忘れ果てていた、少年のころのぬくもりに満ちた目線にかえりながら。
かれは少女の肩を、いとおしげに撫でさする。
やっと想いが、かないました・・・
しっとりと湿りを帯びた声は、記憶の果てに消えかかっていたものだった。

三十年も前。
教室のいちばん片隅に、いつも遠慮がちにひかえていた少女。
重たい病に侵されていた・・・と知ったのは。
高校にあがって、だいぶたって。
彼女が写真のなかの人になってからのことだった。
いまその写真が、かれの目のまえで。
あのときのままの控えめなほほ笑みで、かれを見おろしている。
背後でかたりと、あたりをはばかるような音がした。
彼女はいつもそんなふうに、音を立てるのさえ遠慮するふうがあった。
もしや・・・?
振り向いた背後は、まだふすまが遮っていて、
お茶をお持ちしました、という遠慮がちな声は、少年のものだった。

応(いら)えをかえすと。
スス・・・とふすまが開かれて。
その向こうから顔を見せたのは。
あの少女・・・と見まごうばかりの少年だった。
写真の少女も。この少年も。
透きとおるその肌に。清々しいほどの控えめな笑みに。
どうして今まで、気づかなかったのだろう?
伯母のお友だちなんですね?
いまどきの少年らしく、ませている。
「お友だち」という言葉に、言外の意味があると知りながら。
そうだよ、と。
かれは真実味のこもった声で応えている。

濃い味のコーヒーを取り巻くように、ほのかな湯気のくゆらぎが、
かれの鼻先をくすぐってくる。
彼女もまた、こんな味のするコーヒーをたしなんでいたのだろうか。
ふと気がつくと。
少年はまだ、去ろうとしていない。
どこかで見覚えのある、人なつこいほほ笑みを控えめにたたえながら。
噛んでいただけますか?
伯母の血を受け継いでいるのは、いまはボクだけなのですよ。
半ズボンの下、照り返す陽射しを滲ませたむき出しの太ももに。
郷愁に似た慕情を覚えながら。
穿きなれないハイソックスの脚を照れくさそうに見おろす少年を。
畳のうえ、ゆっくりとまろばせていった。

隣室 から

2007年06月25日(Mon) 07:13:37

ちぅちぅ・・・
ちぅちぅ・・・
隣室から洩れてくるのは。
新妻となった由貴子さんの生き血が、吸いだされてゆく音。
うふふふ・・・ふふ・・・
かすかな含み笑いが、重なり合い、交錯してゆく。
真っ白なブラウスに、バラ色の飛沫をほとばせて。
由貴子さんは白い歯をみせて、くすぐったそうに笑いこけている。
うら若い血潮を、惜しげもなく捧げながら・・・
吸血鬼の片手は、ブラウスのうえから肩を抑えつけて。
もういっぽうの手は、さりげなく胸元をまさぐっている。
ブラウスを通して受けるゆるやかなまさぐりがくすぐったいのか。
傷口に触れてくる唇が心地よいのか。
わたしの目線をじゅうぶんに意識しながら。
由貴子さんは白い頬に愉悦を滲ませる。
夢見心地に、浸りながら。
謡うような、声色で。
「母の血を・・・吸っていただきたいのです」
そんな怖ろしい言葉を、さりげなく。
口許から洩らしている。
まるで暗誦するように、抑揚のない口調だった。
ほほぅ。
吸血鬼は、感心したように。
由貴子さんの肩に、さらに深いまさぐりを滲ませる。
いかが?
薄っすらと、ほほ笑んだのは。
母を襲って・・・という提案にたいしてなのか。
自ら捧げた血潮の味を問いたかったのか。
そのどちらにも、応えるように。
やつは、うふふ、と、笑みくずれて。
いまいちど、由貴子さんのうなじに、唇を這わせてゆく。
きゃっ。
ふたたび撥ねたバラ色のしずくに。
小娘みたいに、身をすくめながら。
わたしのときみたいに。きれいに襲ってあげてくださいね。
薄っすらとした目線。謡うような声色。
揺れるまなざしのかげに、妖しい情景を思い描きながら。
あのひとが、見ています。
犯してくださいな。
声はやはり、謡うようだった。


あとがき
再あっぷ分に触発されてしまいました。^^;
「妻の悪戯」
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-1069.html
「侵される喪服」
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-10.html
「喪を破る」
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-1070.html
「朝食」
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-1071.html

う、うーむ。

2007年06月25日(Mon) 06:59:50

久しぶりの、サイあっぷです。
じつは、さがしていたのはべつのお話でして。(^^ゞ
そっちはどうしても、見つからず・・・
気長に探しますが。

「妻の悪戯」「喪を破る」「朝食」は、一連のお話です。
「妻の悪戯」のあとに「侵される喪服」といういかにもなお話がありまして、なぜかそちらだけ、すでにあっぷされています。
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-10.html
読みにくくって、ごめんなさい。m(__)m
若妻だったころの由貴子さんが、お母さんを紹介してしまうお話です。

「父親の呟き」は、こちらではおなじみの?とぼけたおとーさんの独り言。
「紳士用ナイロンハイソ」は、やはりこちらではおなじみの?装いの由来についてです。

追記
「父親の呟き 2」をあとから発見しました。
不体裁で、すみませぬ。m(__)m。
あ。お話そのものが・・・ふていさいですね。(^^ゞ
いちおう過去の分類にしたがって、「近親」にいれてありますが。
「2」の内容はどちらかというと、婚約者の処女を捧げるお話ですねぇ。(^_^;)

犯されている。

2007年06月24日(Sun) 07:52:48

妻のまりあが、犯されている。
相手はわたしの弟、リョウジ。
先月吸血鬼に襲われて死んだはずの彼は。
あの忌むべき夜、わたしをベッドに組み敷いて。
重い声で、宣言するように、囁きかけてきた。
義姉さんを、犯したい。と。
口許から、ぼたぼたと。
さっきわたしの身体から吸い取った血を、したたらせながら。
思わず夢中で頷いてしまったわたし。
弟は性急にも、すぐにまりあをここへ呼べ、と。
すでにもう、かりにも義姉であるひとを。
呼び捨てにしてしまっている。
友人の結婚式から帰ってきたまりあは。
身動きできないわたしのようすなど、露ほども気づかずに。
応答のないインターホンをいぶかしみながら。
がちゃがちゃ鍵を鳴らして、ドアを開いた。
あとはただ・・・
死んだはずの義弟の魔性の誘惑に、わが身をさらして。
獣のような凌辱の下。
悲痛なすすり泣きは、いつか随喜のうめきに取って代わっていた。

まりあは今夜も、犯されている。
きょうは夜勤だよ。
何気なくそう洩らしたわたしに。
あら、そう・・・
気のせいか、口許に滲んだ笑みが、エッチな色をよぎらせていた。
雨戸の向こうとこちら側。
冷えた縁側と、熱い褥。
みしみしときしむ畳の音が。
まりあの乱れようを、伝えてくる。
なによりも。
薄めに開いた雨戸ごし。
髪振り乱して。脚を絡めあって。
悩ましげにまぶたを震わせ、かぶりを振りながら。
着衣のまま情欲に耽ってゆく肢体。
弟の冷えた体にさえ。
いつかほてるほどの血色が、じわじわとしみ込んでゆくようだった。
妻はあきらかに、わたしに気づいている。
わたしの視線を、はっきりと意識している。
それでいて。
うん・・・うんっ・・・ああぁぁぁぁぁぁあん・・・っ
ナマナマしく洩らすうめきは、いっそうなまめかしく、悩ましく。
受けたまなざしを快感として、白い素肌にしみ込ませていった。

まりあは明日も、犯される。
白昼すら堂々と現れるようになった弟は。
きょうもまりあの貞操をねだる。
人のよい兄貴は、最愛の妻をねだり取られてしまって。
スカートのなかに這いこもうとする弟の掌をとって。
もっと深く・・・と、差し入れてしまっている。
義姉さんを、独り占めにしたいんだ。
我がもの顔に抱きすくめる、猿臂のなか。
陶酔を誘う、ディープ・キッス。
密着しあった身体と身体は。
もう、とどめようもない勢いで乱れあい、わくわくと昂ぶりせめぎ合っている。

週末は。
三人連れだって、高級ホテルに泊まりに行こうか。
ひとりの女とふたりの男をいぶかしげに見比べるクロークのまえ。
わたしの名前の隣には、「夫」
まりあの名前の次には、「妻」
そして弟のところには、「妻の愛人」
そんなふうに、ペンを走らせたら。
あいつはいつも以上に、目を輝かせて。
悩ましくくねる妻の肢体を。
いっそう淫らに乱してしまうだろうか。

いっぱい、吸うんでしょう?

2007年06月21日(Thu) 07:58:13

ブレザータイプの制服姿が。
公園のすみで、立ち止まる。
さらさらと背中まで流した、黒髪が。
控えめな怯えに、かすかに揺れた。
血が、欲しいの?
ああ。
いっぱい、吸うんでしょう?
うん。。。
少女をさえぎる黒い影は。
ひどく内気に、声をひそめた。
怖い。
俯く少女の顔に、おびえが走る。
いやだわ。
いつまでも、決まり悪げに。
もじもじと、うつむきつづけている。
正直に、呟く少女に。
そうだよね。
影もまた、否定しない。

じぶんが忌むべき存在であることも。
それでもあえて、逢いに来てくれていることも。
すべてはお互いの胸のなか。
けれども少女は、気丈に背すじをぴんと伸ばす。
痛く・・・しないでね。
制服、汚さないでね。
ちいさな声で、懇願する少女を。
かばうように。冷たい風から、おおいかくすように。
影はしっとりと、包んでゆく。

くちゃ、くちゃ・・・
ちぅ・・・ちぅ・・・
ひかえめに洩らされる音の、なまなましさに。
少女は戦慄をおぼえながらも。
いつしか感じ始めた、淡い陶酔に。
目線をうっとりと、迷わせてゆく。

ふらふらと腰かけたベンチの足許に。
影はなおも、まとわりついてきて。
真っ白なハイソックスのうえ、唇を吸いつけようとすると。
えっち。
無邪気な声色が、含み笑いしている。
きゃっ。きゃっ。
くすぐったそうにはじける、笑みの下。
ハイソックスのうえから這わされる唇が。
いっそう力をこめて、しつようさを深めていった。

切れ切れ に

2007年06月21日(Thu) 07:50:51

お母さんを、連れて来てくれる?
後ろから、甘えるように。
ささやきながら、抱きついてくる。
少年は、ウットリと顔をあげて。
ボクだけじゃ、足りないの?
ちょっと不満そうに、口を尖らしたけど。
そうか。女のひとの血も、欲しいんだね・・・?
長いまつ毛の目は、早くも薄っすらとしている。
そろそろ・・・と。
足許ににじり寄ってくる黒い影を。
避ける風もなく、苦笑しながら見おろして。
口許に、けだるさをにじませながら。
半ズボン姿を揺らがせて。
ハイソックスを、ずりおろしてやる。
ふくらはぎの好きな、吸血鬼のために。

うふふ・・・ウフフ・・・う、ふ、ふ・・・
ふた色の含み笑いが、重なり合って。
少年は、ハイソックスを脱いでいないほうのふくらはぎも、
惜しげもなく、差し出している。
靴下のうえから・・・って、初めてだけど。
もう、ママにばれちゃっても、かまわないものね。

公園・・・に?
ママはちょっぴり、いぶかしげに首を傾げて。
夜中の一時に・・・ですって?
もういちど、訊きかえして。
よそ行きのスーツに、薄手のストッキングを履いて行くのね?
もういちど、たしかめるように。息子の顔をのぞきこんでいる。

父親が眠りに就いたのをしおに。
ふたつの影が、いそいそと。
身支度を、手ぎわよく整えてゆく。
ママはよそ行きの、紫のスーツ。
ひざ上までの、ママにしては短めなスカートのすそが。
お嬢さんみたいに、軽やかに揺れた。
玄関を開けると、門が開かれていて。
先回りしていたお父さんが、イタズラッぽく、笑いかけてきた。
えっ、あなた・・・
決まり悪げにもじもじする妻を見て。
行って来なさい。愉しんでおいで。
お父さんも、決まり悪げにほほ笑みながら。
薄い靴下に脛をおおった妻と息子を、ひっそりと送り出してゆく。

公園のベンチに、並んで腰かけて。
かわるがわる、足許を吸われて。
夢見心地に、とろりとなった、あいまいな視界の彼方。
生垣がかすかに、揺れたような気がした。
その晩息子は、生まれて初めて。
腰までたくし上げられたスーツのすき間から。
白い太ももを鮮やかに横切るガーターを目にしていた。

ノーストッキングで、家に戻るのを。
母親は小娘みたいに、決まり悪がっていたけれど。
大胆になった息子に、せかされるまま。
夫の待つ家にたどり着いていた。
夫は、書斎。
足音を忍ばせて、浴室にはいり、身づくろいをすませる。
戻ってきたリビングには、コーヒーの湯気が漂い、
湯気の向こうに、夫の笑みがあった。
ただいま。
おかえり。
なにごともなかったかのような、言葉を交わして。
ひきつれひとつないストッキングのひざ小僧を見つめる夫は。
ストッキングが、お好きなようだね。
こんどお招ばれするときも。
きれいなのを履いていっておやりなさい。
もぅ。あなたったら。
妻はほろ苦い笑みを、かえしながら。
お招ばれするときは。
必ずそれとなく、あなたにも伝えるわ。
目印は、そう・・・
夕べみたいに、黒のストッキングがいいかしら。
えっちだね。裂け目も目だつし。
うふふふ・・・ふふ。
どちらからともなく、笑みを交し合う夫婦の姿を。
息子も照れ笑いしながら、受け流してゆく。

時と空間の隔たり~オフィスの夜~

2007年06月21日(Thu) 00:12:24

もう、夏だというのに。
オフィスの窓辺から覗くネオンの色が。
こうも殺伐に輝くのはなぜだろう?

上司はもとより、同僚たちも。
仕事山積みの私から、目を遠ざけるようにして、帰っていった。
ひとり、またひとり。
失礼します。
きょうは、お先・・・
目だたぬように、声をくぐもらせて。
卑屈に背中を丸めて足早に立ち去ってゆく同僚たち。
咎めるいわれは、どこにもない。
そのなかのだれかを、今夜の自分のように置き去りにするときだって、あるのだから。
お互い様。
なんと寂しい合意だろうか。

やや薄暗く、ひっそりと静まったオフィス。
どこかの部署の、気の利いたやつは。
帰りがけ、自分の部署だけ照明を落としていくらしい。
節電・・・などという建前の、なんと空しく響くことか。
あとにのこるものの孤独を、いやがうえにも引き立てるだけではないか。

けれどもいっぽう。
こうした孤独は、望むところだったりする。
独りなら・・・もめごともなにも、起こりはしない。
私は楽々とペンを取り、あと二つ三つ残された仕事に向かい合う。
だいぶはかどった頃だろうか?
終電はとっくに、出てしまっていた。
今夜はここで泊まりか・・・
ご飯は要らない・・・とメールした妻は。
いまごろもう、とっくに寝入っているころだろうか。

お疲れさまですぅ。
殺風景なオフィスに不似合いな、若々しい女の声。
見慣れない女性が、うちの制服を着て。
ただひとり、長い髪をなびかせている。
ん?きみ、どこの部署だったっけ?
なりすましの女賊だろうか?
「女賊」。
とっさに思い浮かんだ古風な言葉に、人知れず苦笑していると。
女はお盆に載せたコーヒーを、差し出して。
一服、いかが?
小首を傾げて、すすめてくれる。
四十過ぎの、さえない中年男のためなどに。
世の中、そううまい話を用意してくれるわけがない。
眠り薬でも、入れられているかも知れないぞ。
けれどもそんな警鐘は、このさいどうでもいいいような気がした。
本能で。
私はこの女を知っている。
どこかで強く、確信していたから。

熱いコーヒーは、季節外れだったけれど。
濃厚な香りと、きつめのテイストに。
思いのほかの心地よさを覚えた。
暑い季節に、冷たいものの摂りすぎはよくないですからね。
まるで、お姉さんのように。
組んだ両手のうえに載せた顔が、イタズラっぽくほほ笑んでくる。
きみ、どこの部署?
なんどか、尋ねてみようとした。
けれどもとうとう、その問いは発せられることがなかった。
どう訊いたところで。
他愛なく、はぐらかされてしまいそうだったから。
ただ、安らかなひと刻が。
爽やかな花吹雪のような心地よさで、ふたりのあいだを通り抜けてゆく。

体に気をつけてね。
小首をかしげるように。
おどけた口調に、むしろ気遣いを漂わせる女に。
もの問いたげにしていると。
あなたといつも、文通しているひとですよ♪
女はもうそれ以上、なにもいわせまいという目をして、笑っていた。
そろそろ終電の時間ね。
急げばまだ、間に合うわよ。

・・・?
ふと、顔をあげると。
そこには片付いた資料の山と、人けのないオフィス。
薄暗く照明を落としたオフィスは、いつものようになんの変哲もなく。
殺風景なたたずまいに、ひっそりとしている。
コーヒーも、お盆も。もちろんさっきの美しいひとも。
夢のように消えてしまっていたけれど。
口許に漂うほのかな香りは。
いまでも馥郁とした余韻を残していた。
まりあくん・・・だったのか?
かすかな呟きが、闇に吸い込まれてゆく。
終電は、とっくに出てしまっているはずだったが。
時計を見ると、まだ十一時半。
私はがたがたと椅子をけたてて、終電に間に合うべく、行動を開始した。
明日も、忙しいからな・・・

ま~りあ先輩♪
どうしたんですか?
後輩のみゆきが、寄り添うようにこちらへやって来る。
ついたてで仕切られただけの、打ち合わせスペース。
まりあは暗闇の支配する窓辺の彼方から、
目線をかわいい後輩に転じている。
あっ。コーヒーですかぁ?
まりあ先輩の淹れるコーヒーおいしいんですよね?
二杯淹れられたコーヒーカップの片方を、
ていよく手にしようとしたみゆきは、つぎの瞬間。
なぁ~んだ。と。
伸ばしかけた手を、引っ込めている。
まりあが手にしているカップと、おそろいのコーヒーカップは。
きれいに飲み干されたあとだった。
だれと、お茶してたんですかぁ?
かすかに怨(えん)じるふうの後輩に。
まりあは親しい人だけに見せる妖しい笑みをよぎらせて。
大好きなひとと・・・ね♪
目線はまたも、窓辺の向こう。
漆黒の闇に沈む彼方へと、そそがれている。


あとがき
まりあのオフィスは、まだ深夜ではないはず。
時を超えた訪れを、したのでしょうか?^^

夜のお部屋

2007年06月20日(Wed) 23:36:40

照明の明るさを、めいっぱい暗めにして。
ステレオの音量も、思いっきり小さめにして。
テレビでもなく。ラジオもなく。
世間の喧騒と一線を画した空間のなか。
まりあは今夜も、想いに耽る。
じゎん、じゎん・・と。
聴きなれた音楽も。
音量を下げると、まったくべつの調べに響く。
何気ない日々の暮らしのあの人の声、この人の思惑。
それらすべても、音をひそめれば。
部屋の薄明かりににじみ込んでゆく調べとおなじくらい。
ひっそりとしたものに思えてくる。

ことり。
かすかな音が。
今夜も人の寝静まったこの刻限に響いてくる。
あなた・・・ね?
滲むような笑みが、ミステリアスに。
まりあの口辺を彩ってゆく。
くるぶしにそっと触れてくる、長い指。
さらりと撫でつけてくる掌は、ひどく冷たく、
血の気の通っている感じがしない。
咬んで・・・
欲しいんでしょ?
まりあはよどみなく、気配だけをあらわにする影に、問いかけている。

くるぶしから伝わって、ふくらはぎを。
ふくらはぎをなぞるようにして、さらに太ももを。
スカートのなかに這い込もうとした掌が。
じわじわと撫でつけようとして。
ふと、手を止める。
病んでいるのか?
いつものことよ。
無理・・・してないか?
やめて。
まりあが声で、制すると。
影は背後から、むくむくと立ち上がって。
背中ごし、肩を抱きすくめてくる。
襲う・・・というよりも。
むしろ、甘えるように。

おイタさん・・・ねぇ。
謡うように、囁く唇を。
冷たい唇が、ねっとりと包んでゆく。
きょうは、いやらしく襲わないの?
はは・・・
影はうつろに、笑っている。
私とて。閑(しず)かな刻も欲しいものだよ。
したいの?したくないの?
ちょっぴりケンをみせたまりあに、
影は一瞬、へきえきしたような気配をつくったけれど。
やがて影と人とは、ひとつになって。
傍らのじゅうたんに、身を崩してゆく。
したいの?したくないの?ねぇ。ねぇ。ねぇ・・・
甘えるような、ねだるような、女の声を。
唇がしっかりと、ふさいでゆく。

照度をめいっぱい落とした部屋のなか。
音量を思いっきりしぼったスピーカーの奏でる調べの下。
ひそかな営みは、音もなく。
濃艶な闇に息づいてゆく。

花火のあと

2007年06月20日(Wed) 08:20:02

じりじり・・・パチパチ・・・
かすかな火薬の匂いとともに。
ほとばしる色とりどりの火花。
もうとっくに、こんな遊びとは卒業したはずの年代の男女が。
言葉ひとつ、交わさずに。
じいっと焔の行く手を見つめている。

深夜に集う、不良少年と呼ばれる男女。
仲間うちには、掟があって。
頭から、新入りまで。
誰もがかならず、いちどは恋人を伴ってくる。
そういうカップルのことを。
ろくに学校に顔も出さないような彼らは
お当番
と、呼んでいた。

手をつないでいるのは、恋人どうしなのだろう。
きちんと着こなした制服姿は、きっと良い家のお嬢さんなのだろう。
いっしょに手を握っている男の子は。
まだ童顔を残した、女の子みたいに色白の肌と、ノーブルな顔だちの持ち主だった。
もうひと組は。
ショッキングピンクのワンピースに。白いヘアバンドの女の子。
寄り添う彼は、やっぱり色白の、表情を消した美青年。

ふた組のカップルの周りを、取り囲むようにひかえている男の子たちは。
見苦しさはないまでも。
あきらかにすれた、ちょっと翳りをもった風貌に。
冷たく研ぎ澄まされたものを帯びている。

夫婦ものらしいべつの男女のひと組は。
集まりの輪のいちばん隅に佇んでいて。
けれども男の子たちは、彼らのことをちょっと尊重しているらしい。
たまに交わされる囁きの合い間に浮かぶのは。
ちょっとはにかんだような、少年らしいほほ笑みだった。

そんな風景を。
ちょっと遠のいたところから、眺めているのは。
青いTシャツを着た、気の小さそうな少年。
女の子たちの恋人と似通った色白の面差しに、感情を消した目鼻立ち。

さぁ。おしまい。
さいごの一本を終えると。
ばしゃっ。ばしゃっ。
バケツに汲んだ水を、ぶちまける音。
さぁ、消えた。
頭だった少年が、口にすると。
行こうか?
一同をせきたてるように、公園の植え込みの影へと足を進めてゆく。

ふた組のカップルは。
ちょっと、息を呑んで。
お互いの顔を、見合わせあって。
もういちど、手をしっかりと、握り合う。

さぁ、お手々をつなぐのは、そこまでよ。
二番目の頭が、イタズラっぽく笑いながら、
寄り添うカップルのあいだに割り込んで、ふたりのあいだを隔ててゆく。
あ・・・
恋人の手を離した男の子たちは。
気弱そうに、眉をひそめて。
それでも両脇からつかまれた肩を引き離そうともせずに。
黒い影たちに囲まれてゆく恋人たちを見守っている。

善良な男の子たちを封じる手は。
肩に軽く添えられているだけだったが。
まとわりつくように、しなやかで。
むしろ、甘えてすがりついているようにさえ見える。

さっきまで。
いちばん遠くから様子を見ていた、あの青いTシャツの少年は。
かすかな灯りに蒼白い頬を滲ませて。
音もなく、男の子たちの背後に佇むと。
順ぐりに、うなじに唇を吸いつけていって。
楽になるから。
ひっそりと、つぶやいて。
ちゅう・・・っ
触れ合う素肌と唇のすき間から。
妖しい音を、洩らしてゆく。

なん対もの腕たちに巻かれた女の子たちは。
ふらりと芝生に、まろばされて。
ひとりは、濃紺の制服のプリーツスカートを。
もうひとりは、ショッキングピンクのワンピースを。
すそを翻して、芝生に尻もちを突いてしまう。
さぁ、お祭りの、始まり、始まり・・・
おどけたような男の言い草に、だれかがクスリ・・・と含み笑いしたら。
礼儀正しく、な。ていねいに、やるんだぞ。
頭だった少年が、鋭くたしなめていた。
シン、と静まりかえった男たちは。
女の子たちの服を、無言のまま引き剥いでゆく。
むしり取るような、荒々しさで。

あ・・・ぁ・・・ア・・・
時おりみじかい声を洩らす、気弱そうな男の子を。
やはり恋人を取られたべつの男の子が。
白い頬に凛としたものを漂わせて。
しっかり、手を握ってやっている。
兄弟みたいに、寄り添いながら。
恋人たちが、つぎつぎに凌辱されるのを。
肩に軽く添えられた腕たちを、振り払うこともなく。
いちぶしじゅうを、見守っている。
瞳の奥に、蒼白い昂ぶりを浮かべながら。

わさ、わさ・・・
ユサ、ユサ・・・
乱れた着衣の、衣擦れの音。
長い髪の毛の、揺れる音。
時おり洩れるうめき声は、少しずつ、随喜の色を深めてゆく。
制服姿の女の子は。
はじめはちょっぴり、べそをかいていたけれど。
ショッキングピンクのワンピースの子が、
真っ赤なキャミソールを振り乱して、くすぐったそうに声をたてると。
いつの間にか、顔うつむけて、恥じらいながら。
なん人めかの男の子あいてに、さっきより激しく腰を動かしはじめていた。

あぁ、奪られてゆくね。
兄めいたほうの少年を。
気弱な感じの少年は、すがるように見あげている。
征服されちゃうのかな。
帰ってくるさ。ちゃんと、いい女になって。
ふふっ。
兄めいた少年は、歪んだ笑み声を洩らしていた。

今夜が初めてではないらしい。
彼の目線の彼方で乱れ舞う、恋人のワンピース姿が。
きゃっ、きゃっ、と。
くすぐったそうな笑い声を洩らすのを。
感じる。感じちゃう~。
もうたまらない・・・っていうように、芝生のうえを転げまわるのを。
むしろ眩しげに、小気味よげに、見守っている。
そういえば。
気弱なほうの少年も。
半ズボンの下、むき出しになった太ももを。
がくがく、がくがく、震わせていて。
洩れた滴りに、ハイソックスをしとどに濡らしてゆくのだった。

順番、なんですものね。
お当番の男の子たちの耳もとに、ひくく落ち着いた声は。
夫婦ものの、奥さんのほうだった。
不良息子をとりなす母親みたいな声だった。
あ。こんばんは。
男の子たちは、恋人たちにむらがる凌辱をよそに。
礼儀正しく、会釈を交わす。
ごくろうさま。
添えられた腕たちは、とうに離れて、凌辱の輪に加わっている。
キミたちも、いい思いしたんだものね。
しょうがないですね。
感じる・・・?
ええ・・・感じます・・・
きみも・・・?
ウン・・・ずきずきする。
明日から、彼女とまともに顔合わせられる・・・?
だいじょうぶですよ、ボクは。
ボクもたぶん・・・
はは。無理すんなよ。
だって。
ちゃんと彼女を、家まで送ってゆくのよ。
もちろんです。
ああ、そう。自信なさそうなキミのほうは。
あっちの奥で、もういちど。彼女とふたりきりで、むつんでいくといい。

服に着いた泥を払うころには。
女の子たちはもう、落ち着きを取り戻していた。
奥さんが、女の子たちを植え込みの影に呼び寄せて、
軽くケアしてやっていた。
過ぎ去ってしまった一時の昂奮は、
ひと晩の夢のよう。
制服姿の少女は、とろんとした目で恋人を見あげ、
どちらからともなく差し伸べられた手は、いちど解かれるまえよりも、強く握り合っている。
ショッキングピンクのワンピースの子は。
クールな恋人とじゃれ合いながら。
感じていただろ。
感じてなんか、ないってぇ。
他愛なく、じゃれ合っている。

ひと組、またひと組と立ち去ってゆくカップルを。
少年たちは、眩しげに見送っている。
うまくいくかな、あのふたり。
心配したほうの、制服姿の彼女のほうも。
彼に促されるまま、雑木林のほうへと足を向けてゆく。
もらっちゃった。
ひとりがぶら下げたのは、真っ白なハイソックス。
そういえば、姿を消してゆく制服スカートの下、
靴下が片方だけになっていた。
もうひとりの少年も、得意そうに。
透き通った肌色のガーターストッキングをひらひらさせる。
いいモノもらったね。
ウン。
女の子の靴下を片方、彼氏からもらった男の子は。
一週間、彼女をモノにする権利を得るという。
案外さばけてるじゃん、あいつ。
色白の気弱な顔の持ち主は、どうやら一座のなかで株を上げたようだった。

さぁ、これからどうする?
少年たちの視線は、ただひとり残された女―――年配の人妻―――に注がれた。
あら。
意外そうな声あげた奥さんは。
私も、相手になるの・・・?って。
ちょっと戸惑った顔をしたが。
取り囲んでくる獣たちに。
しょうがない子たちねぇ。
苦笑しながら、夫に許しを請うている。
だんなさん、縛るよ。
にわかにはじまった第二幕に、ご主人も苦笑いして、応じてゆく。

少年たちが、母親くらいの齢のスーツ姿に。
甘えるような欲情を撥ねかしてゆくのを。
夫は植え込みの向こうから、はらはらどきどきと、窺っていた。

こと果てたころには、あたりはもうだいぶ、明るんでいた。
奥さんはスーツに着いた泥を払って。
チリチリに裂けたストッキングを破り取ると、夫に手渡した。
夫は頭の少年にそれを渡すと。
今夜でもいい?
ニッと白い歯を見せる少年に。
いつでもお出で。
照れくさそうに、囁き返す。

じゃ。
みじかいたったひと言で。
人影たちは、散り散りになってゆく。
なにごともなかったように。
残された花火の燃えかすだけが、朝露に濡れている。

パパとボクの秘密

2007年06月20日(Wed) 07:20:36

ボクの彼女はこのごろ、靴下にはまっている。
通学用の、白のハイソックスも。
お出かけ用の、柄ものの黒ストッキングも。
買い物に行くのに履いてきた、黒のスケスケのナイロンハイソックスも。
ボクのパパの、エッチな唇を吸いつけられて。
ぶちっ。ぶちぶち・・・っ。
って。
かすかな音をたてて。
裂け目を白く滲ませてしまっている。
くすぐったそうに、きゃあきゃあはしゃぎながら。
うれしそうに、血を吸われてゆく彼女。
  処女の生き血が、好きなんだって。
  わたしの血が、おいしいんだって。
ボクの目線を、挑発するように。
ハイソックスの脚を、目のまえでぶらぶらさせながら。
ほろ苦いボクの顔を、チラチラ窺ってくる彼女。
そんな自慢を、くすぐったそうに聞いているボク。

でも、みんないっしょなんだ。
担任の豊子先生も。
お出入りの保険のセールスさんも。
お隣の奥さんだって。
パパに抱きつかれると、みんなおなじようにのぼせ上がって。
ちゅうちゅう、きゅきゅっ、と血を吸われちゃって。
スカートのすそを、じぶんからたくし上げていって。
お洒落なスカートの下に穿いている色とりどりのストッキングを、
他愛なく、破られちゃうんだ。
そんな眺めが、とても面白くって。
パパがみすみす彼女の靴下をせしめてゆくのを。
チリチリになったストッキングを、なん足もぶら下げて悦に入っているのを。
つい許してしまっている。

けれどもパパがいちばんだいじにしているのは。
古びたグレーのストッキング。
赤紫色の血の滲んだ裂け目を、いくどもいとおしそうになぞっては、目を細めているんだ。
持ち主は、ボクのママ。
ほかの吸血鬼に襲われて、血をたっぷりと、吸い取られて。
ママを返してもらうのと引きかえに、パパは自分の血を一滴残らずプレゼントしていた。

それでも時にはママを連れ出されて、血を吸われちゃうこともある。
そんなとき。パパは目を細めて、あとをついていって。
ママが襲われるところを、それは愉しそうに見守っている。
小娘みたいに飛び跳ねながら、逃げ惑うママも。
愉しそうに、きゃっきゃとはしゃぎながら。
両肩をつかまれて。はがいじめにされて。
うなじを噛まれて。
フリルのついたブラウスに、赤い血をとろりとしたたらせて。
草むらに押し倒されて。
真っ白なタイトスカートから、脚をばたばたさせながら。
そう。そのひとと、脚を交えてしまってゆく。
太ももまでのストッキングを、片方は彼がせしめていって。
もう片方は、パパに渡してくれる。
ママの足型を残したなよなよとしたストッキングは、かすかなてかりを滲ませていて。
パパの手の中で、ヘビみたいに妖しくくねっている。

見せて。
ボクがママのストッキングをねだると。
俺のだぞ。って。しかめ面をして。
それでもしぶしぶ、手渡してくれる。
しんなりしなやかな、薄手のナイロンは、ボクの手のなかで。
ママが穿いていたときと変わらないツヤツヤとした光沢を。
静かに妖しく、滲ませている。
もう気が済んだだろう?
パパは手早く、ボクの手からママのストッキングを抜き取ると。
ゆう子さん、こんどはいつ遊びに来てくれるのかな?
彼女を公然と、ねだられて。
なぜかズキズキ昂ぶってしまうボク。
週末のお約束。
彼女はどんな靴下を、履いてきてくれるのだろう?
靴下をせしめたいパパと。
せしめられるところを覗き見したいボクのために。


あとがき
ひと月くらいまえに描いた、一連の婚約者寝取られものです。
パパと婚約者の、ちょっとエッチなからみに昂ぶるボク。
根源は、ママを目のまえで襲われちゃったとらうまだったのかも?

夜更けの出逢い

2007年06月18日(Mon) 05:23:07

あの・・・
とつぜん、声をかけられた。
相手は、童顔の残る少年だった。
ふつうの状況だったら。
どう・・・というほどのことはなかった。
それが夜更けの、人通りの絶えた公園だということと。
なによりも。
男のわたしが、スカートを履いて、薄いストッキングを脚に通している・・・ということでなかったら。

何・・・?
私は控えめに、口を開く。
できたらこのまま、通り過ぎてくれればいいのに。
このあたりで、人見かけませんでした?
彼の言葉遣いはあくまで丁寧で、ふつうのもの。
わたしもふつうに、受け答えすればいい。
さぁ・・・
わたしのとがめるような怪訝そうな目線に、少年は決まり悪げに曖昧に笑い、足音を遠ざけてゆく。
こういうことは、案外と珍しくない。
女装のまま、公園にたむろする不良少年たちと仲良くなって。
花火だって、したことがあるのだから。
もうすぐ花火の季節・・・
ふと、さっきの少年の面差しがよみがえる。
あの花火のつどいの輪の中に、いちばんすみっこでひっそりうずくまっていた影。
もうすこし、話してゆけばよかったかな。
真っ昼間は、お互い顔をあわせることもない、赤の他人だが。
花火のときだけは、友だちだった。

あの・・・
ためらいがちにかけられた声に、振り向くと。
さっきの少年が、おどおどとこちらに顔を向けている。
いつ、引き返してきたのだろう?
わたしはちょっとびっくりしたように。
あのときの花火のひと・・・だよね?
つとめて柔らかに、声をかけた。
あの・・・
少年は、ちょっとのあいだ。
話の接ぎ穂に、戸惑ったようにしていたが。
思い切ったように、口を切った。
ボクと、付き合ってもらえませんか?
え・・・?
どういうことかな・・・?
あの・・・異性として・・・
上ずった声で、口ごもりながらも。
彼はスッ・・・と息がかかるほど近寄ってきて。
わたしの両肩を抱きかかえると。
ちくん・・・
首のつけ根に、かすかな痛みを感じたときには。
もう、唇を離していて。
その唇には、バラ色のしずくがしたたっている。
おじさんが、隠れて女装しているみたいに。
ボクにも・・・秘密があるんです。
そう・・・
吸血鬼だったの。
驚いちゃった。
怖くないですか・・・?
怖いさ。
正直に、告白した。
吸い尽くされちゃうのかな?きみに。
うぅん・・・
切なげにかぶりを振るのが、むしろいとおしかった。

たまに、逢って・・・
いいよ。たまに・・・だったら。
じゃ。
少年は、そっけなく身を離してゆくと。
もういちど、こちらを振り向いて。
ご馳走さま。
育ちの良い子が、他所のお宅でおやつを頂戴したときみたいだった。

ざく、ざく、ざく、ざく・・・
きょうも少年のために、女の服を着て。
公園をさ迷っているわたし。
少しずつ。すこしずつ・・・
少年が啖らう血の量が、増えているような気がする。
並んでベンチに、腰かけて。
半ば抱かれる姿勢のまま。
少年の片腕は、わたしの遠いほうの肩を引き寄せて。
うなじに、しっかりと痕を残して。
ちうううううぅ・・・っ
わたしの体内から血液を抜き取ってゆく音が、かすかに洩れる。
もう片方の手は、さっきから。
まるで恋人を愛撫するように。
黒ストッキングのひざ小僧を、なぞるように触れつづける。
薄手のナイロン越しに、密着してくる手が。
初めてのころの、遠慮がちな触れかたとはうって変わって。
大胆に、しつように。
まさぐりをしみ込ませてくる。
あぁ・・・
感じてしまうよ。そんなにしたら。
いいじゃない。
少年は、わたしの血で染めた唇を。
なおもしつように、すりつけてくる。
そう。甘えるように・・・

行ってらっしゃい。
スーツ姿で、出勤のとき。
妻はいつも控えめに、声をかけて。
私を送り出してくれるのだが。
顔色わるいわね、あなた。
こんなこと、言ってもいいのかしら。
気遣わしげに、こちらを見つめる。
誰にもわからないように、痕をつけてあげる。
少年のことばどおり。
職場の誰もが、彼のつけた痕に気づくふうはなかったのに。
妻には、見えるらしい。
今晩は・・・私もご一緒していいかしら?
夜更け、家族が寝静まってからのわたしの習慣を。
寝つきのよいはずの妻だけは、気づいていたらしい。

公園への道をたどる、ストッキングに包まれた脚。
いつもはただひとり、たどる夜道を。
きょうは二対の黒ストッキングが。
申し合わせたように、歩みを並べてゆく。
ほんとうに、いいの・・・?
エエ。かまいませんわ。
薄い唇に、いつもより鮮やかに紅を刷いた妻は。
潔いほど、きっぱりとしている。

約束のベンチの傍らにあらわれたのが、わたし一人ではないことに。
少年はちょっと、戸惑ったような顔をしていたが。
お邪魔だったかしら?
つとめておだやかな声をつくる妻に。
こんばんわ。
神妙に、挨拶を投げてきた。
とがめに来たわけじゃ、ないんですよ。
夫とどんなふうにしているのか。見せてちょうだい。
もしもよろしければ、わたくしの血も差し上げますから。
えっ。
少年の頬に、喜びの色が浮かぶのを。
わたしは密かに、じわりとした嫉妬を滲ませる。

いつものように、並んでベンチに腰かけて。
いつものように、ヘビのように巻きついてくる腕のなか。
いつものように、ぴったり影を寄り添わせて。
いつものように、咬まれて、血を啜らせてゆく。
理性がじわりと、不透明な滲みを帯びてくると。
少年は、わたしの足許にかがみ込んできて。
やっぱり、いつものように・・・
ストッキング、破らせてね。
こくり、と童女のように頷くわたしに。
悪童の笑みを、ありありと滲ませて。
遠慮会釈なく、素肌を透きとおらせた薄いナイロンのうえ、
むぞうさに、なまの唇を押しつけてきた。
くしゃっ。
ふしだらにねじれてゆく、黒のストッキング。
いっぱい、汚して。辱めて・・・
妻の目のまえで、正体もなく口走ってしまっている。

いちぶしじゅうを、じいっと見守る妻は。
とろりとした目線の彼方。
おずおずと近寄ってくる少年をまえに。
貴婦人めかして、手の甲を伸べて。
器用な接吻に、ゆだねてゆく。
おばさまの血じゃ、げんなりよね?
小首をかしげて、ほほ笑む妻に。
少年はけんめいに、かぶりを振ると。
では・・・と、わたしの傍らに腰をおろしてゆく。
肌を触れ合うほどの、ぬくもりが。
今さらながら、いとおしい。
そっと腕を回した腰つきに。
ちょっと咎めるような流し目を返してくる。

ぴちっと伝線を走らせたふくらはぎの隣に。
淑やかな黒ストッキングの脚が、もう一対。
少年はさっきわたしにしたのと、おなじように。
妻のまえ、ゆっくりとかがみ込んでゆく。
ひざ小僧に這わされた唇に。
妻はかすかに身じろぎをしたけれど。
ちゅうっ・・・
かすかに洩れる、吸血の音。
ちゅるっ。
唾液のはぜる音。
いずれもが、濃い調べを、わたしの鼓膜にそそぎ込んでくる。
妻の脚を彩る礼装は、他愛もなく乱されていって。
わたしの脚と、おなじほどに。
ふしだらな裂け目を、滲ませてゆく。

ちゅうっ、ちゅうっ、ちゅうっ・・・
ごくり・・・ごくっ。ごくん・・・
規則正しい音と、入り交じって。
間歇的に、喉を鳴らす少年に。
妻はとろんとなって、身体の力を抜いてゆく。
もたれかかってくるずっしりとした重さが、ちっとも苦にならない。
容赦なく抜き去られてゆく、妻のぬくもりが、むしょうにいとおしくて。
わたしは妻の、遠いほうの肩を抱いて。
ふくらはぎを吸われつづける妻のひざ小僧を、なぞるように、撫してゆく。
おいしいかしら?お気に召したかしら?
惑うような、声上ずらせた囁きに。
少年は唇を離し、声を忍ばせて。
ご馳走さま。
お行儀わるく、スカートの裏地で口許を拭った。
まぁ・・・
恥らう妻を、ひきたてるようにして。
おじさん、ちょっとだけ・・・いいよね?
少年は、大人の翳りをよぎらせながら。
妻を、植え込みの向こうへと、いざなってゆく。

あっ・・・はぁ・・・あうううううっ・・・
悩ましいうめき声が、途絶えがちに洩れてくる。
木立ちの合い間から、切れ切れに覗く白い裸体は。
黒一色のスーツを乱されたすき間から。
夜目にも鮮やかに、浮き上がる。
のしかかる少年の背中越し。
白い腕を、ヘビのように巻きつけて。
妻はいつまでも、鮮やかに紅を刷いた口許から。
蒼い焔を、吐きつづけてゆく。

行こうか?
参りましょう。
子どもたちが寝静まった夜更け。
おそろいの黒のスーツに身を包み。
わたしたちは今夜も、少年の待つ公園へと。
申し合わせたように薄墨色に染めた脚を、歩ませてゆく。

街燈の下で

2007年06月18日(Mon) 01:02:41

受話器の向こう。
くぐもった声が、洩れてきたのは、夕方のことだった。
  え・・・?なんですって・・・?
よく聞き取れないほど、くぐもった声は。
まるでこの世の果てから聞こえてくるようだった。
押し殺すような声が、かすかな愉悦を秘めて。
  お前の婚約者を、今夜も犯す。
たしかにそう、言っていた。
じく・・・っ。
スラックスの下。
太ももに秘めた、かすかな痕。
牙を深々と埋められた痕は、いまでも時おり血をあやして。
濃密な疼きに、マゾヒスティックな快感を滲ませてくる。

周囲には幸い、だれもいない。
広いオフィスの一角で。
まりあを含めた同僚たちは。
みんな出払ってしまっている。
ホワイトボードに埋められたスケジュール。
まりあの欄には、「直帰」とだけ、書かれていた。

ひたひた・・・
ひたひた・・・
一人歩き、だなんて。
思っているのはおそらく、まりあだけだろう。
かろうじて視界のとどくほどの間隔を取って。
まりあと私のあいだには。
黒い影が、足音を忍ばせていた。
やがて、影はサッと植え込みに隠れると。
目にもとまらない速さで、駆け出していた。
もちろん足音など、ひそりとも立てないで。

影が植え込みから飛び出して、まりあの行く手をさえぎったとき。
私はなにかに引きずり込まれるように。
逆に植え込みの影に、身を移していた。
スラックスの下。
ヤツにつけられた痕が、じくじくと疼いている。
嫉妬の疼き?奪われることが・・・快感?
自分で自分を疑ってしまう。一瞬、二瞬。
男はまりあを、これ見よがしに抱き寄せて。
こわがらなくてもいいよ。
たしかにそんなふうに、囁きかけていた。

熱い抱擁に、包まれて。
ショッキングピンクのスーツ姿が、くたりと力を喪った。
ベンチにゆらりともたれかかって。
焦点の定まらなくなった目が、虚ろにさ迷っている。
あぁ、だめ・・・ダメだよ。まりあ。
しっかりするんだっ。
心のなかの叫びは、もちろん届かない。
そして・・・それ以上に蝕まれた本能が。
先を・・・先を・・・と。
予期される凌辱を、望んでいる。

男はしずかに唇を寄せていって。
てかてかとした光沢をよぎらせた肌色のストッキングに、吸いつけてゆく。
あぁ・・・いけない・・・ダメだ。
私は、哀願するように。
飢えた唇の熱い誘惑を、忌みつづける。
ぬるり・・・ぬるり・・・
私の切望を、あざ笑うように。
なすりつけられてゆく唇は。
まりあの理性を確実に、侵蝕していった。
キュッとこわばった、ふくらはぎの筋肉が。
いまは・・・愉悦に震えている。

ストッキングを思うさま、破らせて。
すらりとした脚に、じかに唇を吸いつけられて。
あぁぁ、いいぃ、いいわ・・・もっと・・・
ふしだらに、身をねじり、髪振り乱して。
仰のけられたおとがいが、街燈の光芒に包まれている。
不自然に激しい、作為的な上下動が。
婚約者の貞操が破られたことを告げている。
それだというのに。
私の股間は、いつか狂おしいほど逆立って。
白く濁った毒液を注ぎ込まれてゆく恋人の痴態に。
めまぐるしい反応で応じてしまっている。
剥ぎ堕とされた着衣を、ふしだらに巻きつけたまま。
あられもなく痴情に耽る、未来の妻。
あぁ、これは・・・
きっと、結婚してからも、つづくのだろう。
焦がれる私を、横目に愉しみながら。
婚外の熱情に耽る妻。
思い描いた新生活の妖しさに。
私はとうとうガマンしきれずに・・・
不覚にも、スラックスを濡らしてしまっている。

深夜の凌辱

2007年06月18日(Mon) 00:45:54

街燈がところどころ銀色に照らし出す、夜の公園。
まえを歩く柔らかい影は、かすかに足を速めたようだ。
こちらの正体に、気づいたようだな。
くふふふふっ・・・
思わず洩れる、ひっそりとした笑み。
相手が抗うほど昂ぶりを濃くするのは。
この道に迷い込んでこのかた、身について離れない罪な嗜好。
若い肢体から獲られるはずの、ぴちぴちはずむ生気に。
心の底から、渇望を覚えていた。
逃がさんぞ。まりあ。
オレはそっと、喉の奥で愛する女の名前を口ずさむ。

植え込みの影に隠れながら先回りする足取りが、ひどく覚束ないのは。
これから始まる遊戯にワクワクとしてしまって、
地に足が着かない気分のせい。
足早に通り過ぎようとする女より、さらに足を速めていた。
公園から、のがすものか。
植え込みの影から、まりあの行き先を遮ろうとしたとき。
眩しく目を射る街燈の明るさに。
ほんの少しだけ、眉をしかめると。
目のまえの女は、うら若い肢体をかすかにはずませていた。
昂ぶっていやがる。
オレはひそかに、ほくそ笑む。
怖がっているだけだって・・・?
興をそぐことを言うなよ。

「逃れられると思ったか?」
含み笑いがしぜんと交じる声色に。
まりあは、アッ・・・と声をあげ、立ちすくんでいる。
声も出ない。身はすくんでしまっている。
幾度襲っても変わらない初々しさに。
オレはしんそこいとおしくなって。
女のきゃしゃな体が折れるほど、抱き締めたくなってきた。

「そんなに怖がらなくてもいい」
いたわりで、言っているのではない。
女をいっそう、恐怖に射すくめて。
いうことを聞かせるために、口にしている。
我ながら、悪いやつ・・・
そう思った時には、女はオレの腕のなかにいた。
鼻先をよぎる、かすかな香水の香り。
振り乱した髪の、甘い汗くささ。
吸いつけた唇の下、ほのかなぬくもりが。
オレにすべてを、忘れさせていた。
ぐぐ・・・っ。
薄い皮膚を破ってもぐり込ませた牙が、たしかな感触をつかまえている。
活き活きとした血潮をたっぷり含んだ血管を。
いともあざやかに、食い破っていた。

ふらふらと力なく、尻もちをついたベンチのうえ。
まりあはそれでも、内股になって。
短めなスカートの股間を、引き締めようとしている。
内股の女は、貞操観念が強い・・・だなどと。
だれが、言ったのだろうか?
そう、拒まれるほど。堕としたくなる。
やはりオレは・・・悪いやつなのだな。
思いをよぎらせながら。
不埒な愉しみに耽るため。
女の足許に、サッと身をかがめていった。

まりあの足許を、包むのは。
薄手の肌色のパンティストッキング。
街燈に照らし出された人工的な明るさは。
薄手のナイロンにメタリックなまでの輝きをよぎらせている。
そのうえから、思い切り下品に。
薄いストッキングごしに、すらりとした脚をいたぶりはじめていた。
にゅるっ・・・くちゅうっ。
聞こえよがしに、音をたてながら。
気品をたたえた装いは、はぜる唾液に、みるみる穢されてゆく。

あっ・・・はぁ・・・っ。
微妙な律動が。
女の五体を、支配し始めている。
かがみ込んだ姿勢のまま、決して見えないはずのまりあの面貌。
白い横顔に、虚ろな惑溺がよぎるのが。
ありありと感じられた。
破っちゃ、ダメ・・・咬まないで・・・
無心にいやいやをする足首を、ぎゅうっと抑えつけて。
むき出した牙のまえ、薄手のナイロンはいともたあいなく、裂けてゆく。

熱情のこめられた血潮が、ぬるぬると。
オレの喉を、ゆるやかに浸してゆく。
欲しかったぬくもりが。
求めてやまなかった生気が。
ほんの一瞬、冷えた体内をバラ色に染めた。
夢中になって。
オレはまりあの上体にとりついて。
ブラウスの襟首をはだけて。スカートを腰までたくしあげていた。
まりあの血を吸ってよけい昂ぶった一物は。
逞しさを誇示するごとく、剛くそそり立っている。

あぁぁっ、あぁぁっ、いいッ、いいッ、いいわッ、いいッ・・・
激しい上下動に、ぴったり腰をあわせてきた。
や、やるな・・・
オレは随喜にうめきながら。
抉るように、まりあの奥底を貫いてゆく。
ざわ・・・
植え込みの一角が、揺れている。
だれかが、覗いているのだろうか?
まりあに、囁いてやろうか?
だれかが、犯されているお前に昂ぶっている・・・と。

帰宅

2007年06月17日(Sun) 08:15:55

お邸の棺おけのなかから這い出たオレは。
人の生き血をもとめて、ふらふらと夕暮れの道をさまよってゆく。
行き先は、つい先月まで我が家だったところ。
そこに住まう中年の男女に、十代の少女は、オレの欲する若い血液を、ふんだんに蔵しているはずだ。
父だったひとは、困り顔をしながら。
自分の妻を差し招いて、オレとふたりだけにしてくれる。
隣の部屋でハラハラしている男の耳に届くように。
女に呻きをあげさせるため、スカートの奥に熱いものを吐き出してゆく。
妹だった少女は。
制服姿のまま、俯いていて。
オレの訪れを、待ち構えている。
たたみに組み伏せる快感。
恥ずかしげに閉じた瞼のいとおしさ。
薄い皮膚に、すうっと牙を通していって。
うら若い血潮に、ひたすら酔い痴れる。
辱めないのは。処女の血を吸いたいからなんだぞ。
少女は涙ぐみながら。
オレに破かれたストッキングを脱いで、むき出しの太ももをさらしてくる。
お兄ちゃんなら・・・なにをしてもいいんだよ・・・
無垢なことばに、かつてのぬくもりをフッと取り戻す。
いや、いや。そんなことではない。
お前たちから摂った血が、体じゅうにまわって、ちょっと心地よくなっただけなのさ。

吸血アルバム

2007年06月17日(Sun) 08:08:30

和装の花嫁姿の後ろのページ。
一糸まとわぬ若い裸体をさらしているのは、母。
セピア色がかった、やや不鮮明なモノクロ写真は。
その晩起きたことを切れ切れにしか、かたらない。
おめでとう、と書かれた筆跡は、なぜか父のもの。
そういう祝福もあるのか・・・と、妙に納得してしまう。

白のスーツ姿の妻は、まだうら若く、
足許に迫る唇に、しきりに恥らっている。
いまでは影をひそめた流行の髪形に、やはり目にすることのなくなった幅広な襟のスーツ。
胸元を引き締めるボウタイが、シックな感じをただよわせて、
きりりと結い上げられた黒髪のつややかさとともに、女の気品をきわだたせていたけれど。
辱められてゆく足許は。
肌色のストッキングがくしゃくしゃにねじれて。
ふしだらな裂け目さえ、滲ませている。
かすかによぎるナイロンの光沢が。
淫靡さを却って増幅させていた。
ページの隅っこに、小さな字で。
「純潔喪失記念」と、新婦を襲った運命が、ごく控えめにかかれていた。

舞ちゃん、お初!
娘の顔の、アップ写真。
首筋を噛まれながら、娘はこちらに向かってピースをしている。
おいおい。あられもない。
つい父親の目になってしまうのが。
つぎのページでは、男の目にすり替わっている。
どんな絵柄?
ここで語るのは、やめておこう。
娘の恥にもなることだから・・・
傍らから覗き込んできた息子は。
姉さん、かわいいなあ。
って、呟いて。
まだなにも貼られていないページに、さらさらとペンを走らせる。
「ユウイチの婚約者、犯さる!」
契約成立・・・だね。

おめでとう。
純潔喪失記念
婚約者、犯さる!
どれもが、写真を撮られるまえに書き込まれたもの。
女たちは、アルバムをまえに苦笑しながら。
姑や母たちの過去を、深い頷きで受け入れて。
夫や花婿がはらはらして見つめるのを、ちらちらとイタズラっぽく盗み見ながら。
じわじわと血を抜かれ、理性を奪われて。
服を脱がされてゆくのだった。

吸血ノオト

2007年06月17日(Sun) 07:58:50

いいモノを、見せてやろうか?
ヤツがそんなことを、いうときは。
たいがい、ろくでもないものだったりする。
いつだかは、女房を犯したすぐあとの、
水もしたたる一物だったことがある。
けれどもすっぱり断るわけにもいかないのが、憂き世の義理というものか。
あぁ、きょうはどんなものを見せてくれるのかい?
わたしはいかにも興味津々・・・という顔つきで、
ヤツの手許を覗き込む。

取り出されたのは、一冊の古びたノート。
吸血ノオト、と書かれてある。
付箋をたぐって、ページを開くと。
見開きで、カレンダーになっている。
縦に一列。
ご主人(41)、奥様(38)、大奥様(63)、令息(14)、令嬢(13)
なんて、書かれてあって。
おのおのに、生年月日と血液型。勤務先や学校名まで記されている。
日付の欄には○や×がランダムな感じで書き込まれていた。
なんのことだか、わかるね?
家族構成は、お隣のご家族に一致している。
わざと名前を伏せてあるのは。恩人に恥を欠かせない配慮なのだよ。
そこんとこ、恩着せがましくいわないほうがいいと思うけど・・・
いいたい言葉を飲み込んだ。

×は体調不良のため、面会不可。
△は着衣のうえから体を触れただけ。
○は首尾よく吸血。
◎はもちろん、・・・。
ほかにも▲だの□だの、凡例にはないマークがところどころ。
どうせ・・・ストッキングだけ破らせてもらった、だの。ご主人のまえで遂げてしまった、だの。ろくな意味ではあるまい。

つぎのページ。
やつが冷然と、口にした。
有無を言わさぬ、命令口調。
おそるおそるめくったページには、わたしの家の家族構成。
さっきより。
○や◎の頻度が高い。
妻などは、ほとんど毎晩のように、どちらかのマークがつけられているではないか。
どうかね?
信任度がうかがえて、嬉しいよ。
皮肉をそのまま、真に受けて。
今夜も誘ってあげるよ。
得意そうに、笑っている。
けっこうなことだね。
今夜も、眠れない夜になりそうだ。

息子の欄の下に、ちいさく書かれたイニシャルは。
息子の彼女のものだろう。
毎日のようにつけられた○印の果て。
赤ペンでわざわざ◎と記されている。
ご令息隣席のもと、とまで、書かれている。
やれ・・・やれ。
見たかったかね?
うそぶく彼。
目をやると。妻のところにも、◎
添えられた数字は、相手の数らしい。
「6」と、むぞうさに、書き込まれていた。
わたしの家が主催した、乱交パーティーの夜だった。
あの晩。妻も母もひとつ部屋で着衣を乱していたが。
しばらく事のなりゆきを覗いていた息子は、
母や祖母を犯した男を、婚約者の待つ別室に引き入れたのだろうか。

ノートは何冊にも、わたっている。
昭和4×年。
三十年も、まえのこと。
わたしがヤツに、初めて血をプレゼントした日は、赤枠になっていた。
一週間後、だったのか。
母がヤツに襲われて。
初めてモノにされてしまったのは。
父の欄にも、ちいさく○印が記されている。
昭和5×年。
◎の頻度は、ほぼ毎日。
よく耐えたものだね。
振り返るわたしに、
加減して、いただいているからね・・・
ヤツは得意そうに、鼻を鳴らす。
やがて妻のイニシャルが、わたしの欄のすぐ下に書き入れられて、欄ができ、
一週おきに△がつき、○が記入され・・・
初めて◎が書き入れられたのは、三ヶ月もたったあとのことだった。
卒業式の、まえの晩だったね。
制服姿を襲える最後のチャンスだと、きみにせがまれたんだっけ。
そうそう。お前は頬ぺたを紅くして。受話器をとってくれたんだったね。
紙のうえの、赤く記入された◎を、いとしげに撫でながら。
おめでとう。
だれにたいしてのものなのだか・・・思わず呟いていた。

あらら なんだか。^^;

2007年06月16日(Sat) 20:50:06

だいぶ濃いですね・・・きょうのお話ども。
ストレスが濃いときは、決まってこうです。
まぁ。発散するために、描きなぐっているようなものですから。(^^ゞ
(と、逃げを打つ。)
きょうのはてきとーに、読みっ飛ばしてくださいませ。
え?
いつもそうしてるって?
わはは・・・。(^_^;)

乱れ舞い

2007年06月16日(Sat) 20:38:20

妻のえり子が組み敷かれているのを、横目にして。
紋付を着た母は、取り澄ました顔で、天井を仰いで。
少しだけですよ。
ちいさな声だったが。
きっぱりと、口にすると。
静かに堅く、まぶたを瞑る。

後ろから抱きついた吸血鬼が。
母のうなじに牙をもぐり込ませて。
キュウキュウ・・・キュウキュウ・・・と。
ひとをくったような音をたてて、
生き血を吸い取ってゆく。
五十を半ばすぎた襟足は。息子のわたしの目にすらも。
まだじゅうぶんに、なまめいていて。
抱きつく腕に、じりじりとこめられた力が。
そのまま紋付に深いしわを刻んでゆくのを。
狂おしい目で、見守るばかり。

くたり。
音もなく、姿勢を崩した和装に。
影は、我が物顔に、おおいかぶさっていって。
母の体内から容赦なく、血液をむしり取ってゆく。
そう。
ちょうどわたしに、そうしたように。
そして、あの呪われた夜の宴で。
妻の喪服姿を、乱したときのように・・・

宴から戻った妻は。
不貞をはたらく、悪い嫁。
嫁の悪行を知った母は、打擲(ちょうちゃく)をさえ、加えたが。
妻はひざを突いた布団のうえ、
四つん這いになりながら。
じいっと歯を食いしばって。
かつて夫婦の床に敷かれていたシーツに、睨むような視線を埋めていた。

にわかにほの暗くなった、室内で。
母はちょっと驚いていたけれど。
背後から現れた影に、羽交い絞めにされてしまっていた。
いましめを解かれるまえに・・・淑女は、淑徳を喪うことになる。
ゆらりと立ち上がった嫁は、自分を挟み込むようにして、
ぐいいっと両肩を抑えつけてきた。
ふたつの影に、挟まれて。
母は息子と嫁の仇敵に、素肌を侵されて。
ただ、愉しみのため・・・己の血を饗しはじめていた。

淪落に堕ちた布団のうえ。
母はしどけなく、和装を乱して。
ずぶずぶと腰の奥深く埋め込まれた肉の牙に。
われ知らず歓びのうめきを洩らしてゆく。
ひくく切れ切れに震えるうめきは、やがて意味を持つ言葉になった。
おとうさん。ごめんなさい。ごめんなさい。
貴和子は感じています。感じてしまっています・・・
嫁とおなじく、未亡人の体をむさぼられ。
母は一個の女に、戻ってゆく。

宵闇に、まぎれるように。
嫁と姑は、ふたりながら。
夜風に黒のスカートをなびかせて。
漆黒のハイヒールの音を響かせてゆく。
艶ひとつないパンプスは、てかてかのエナメルのハイヒールに履きかえられて。
きりりと足許を引き締めるのは、かすかな光沢を帯びた薄墨色のストッキング。
和装を脱ぎ捨てた母は。
喪服を脱ぎ捨てた妻とおなじ、娼婦な貴婦人。
玄関のまえで、ふたりは共犯者の笑みを交し合って。
どちらかともなく、インターホンを鳴らしている。

群がるように、集うのは。
血に飢えた異形の獣たち。
うら若い血を、一滴でも多くむさぼろうと。
いずれ劣らぬ白い柔肌に、牙や爪を突きたてようとする。
女たちは、ゆるくまさぐる掌を、それとなくさえぎりながら。
いやらしいわね。
ほんとうに。
顔見合わせて、ほほ笑みながら。
淑やかに染まる黒ストッキングの脚を、さし伸ばして。
蒼白く透きとおる脚を、惜しげもなくさらしてゆく。

ぎぃ・・・ぎぃ・・・
ゆさ・・・ゆさ・・・
ちぅ・・・ちうぅ・・・
堅いベッドの、きしむ音。
長い黒髪の、揺れる音。
静かに血潮をむさぼる音。
かすかな音どもの交錯するなか。
女たちは、半ば開いた口許から、愉悦の焔を洩らしている。
漆黒のスカートの、乱されたすそからは。
申し合わせたように太ももをよぎる、黒のガーターが。
白い肌を、鮮やかに区切っている。

いかがかね?
ひっそりと傍らに立つのは。
母を、妻を、わたし自身を奪った男。
良い眺めですね。
妻が、母が、嬉々として生き血を吸われ、
舞うように、凌辱に身をゆだねるありさまを。
いまは歓びを伴って、目の当たりにしているわたし。
どの血がいちばん、美味でしたか?
うふふふふっ。
仇敵は人のわるい笑みを浮かべるだけで、
吸い尽くしてしまった血の味比べを、口のなかだけで反芻している。

そう訊くわたしも、今しがた。
見ず知らずの夫婦者を、牙にかけたばかり。
悲痛なすすり泣きが、愉悦のうめきに変わるまで。
いたぶり抜いた素肌が、蒼白くかさかさになってしまうまで。
妻を啜られた夫は、とっくに理性を喪っていて。
ギリギリと縛られた荒縄のなか、身じろぎもせずに。
もだえる妻に、昂ぶっていた。

お互い様、なのだよ。
そうなのですね。たぶん・・・
独り得をしている黒影は。
女と生き血を提供してくれる信者を、じわじわと増やしてゆく。
不道徳なかけ合わせを、愉しみながら。

喪服にジルバは似合わない

2007年06月16日(Sat) 18:32:45

ダンスホールの夜は更けて、それでも喧騒はかわらない。
ミラーボウルの煌めく下。
むんむんとした、人いきれのなか。
色とりどりの衣裳に装った男女が、狂ったように入り乱れている。

フロアの隅のボックスで、俯きがちの女。
三十代・・・くらいだろうか。
落ち着いた雰囲気は、家庭に入った女のもの。
ふさふさと巻いたエレガントな茶髪は、まだうら若い女のもの。
相手のいる女?それとも・・・?
どちらであっても、構いはしない。
宴のメンバーの誰もが。
女に影のように寄り添っている男に、チラチラと目線を送っている。
熱っぽく口説きつづける影は、今夜こそ・・・と感触を深めていた。
女はいつもアップにしてきた髪を、今夜にかぎってお嬢さんのように肩に流してきた。

まだ・・・一年と経っていないんですもの。
そう。
女は、若い未亡人。
黒一色の衣裳が、女の身分を示していた。
起伏豊かなはずの身体の線を消した、かっちりとしたジャケットに、漆黒のブラウス。
重たげなスカートの下からのぞくふくらはぎに装われた、黒のストッキング。
薄手のストッキングに包まれたふくらはぎは蒼白く透き通り、
物堅い衣裳に埋もれながら、ごく控えめにしっとりとした艶をよぎらせている。
清楚に装った足許に、男の不埒な目線が無遠慮に注がれるのを。
女はどれほど、わきまえていただろうか?

先立たれた夫は、体内の血液をすべて喪っていた。
まさかその血を獲たものが、目のまえにいるとは。
夢にも察し得ないことだった。
もちろん、さいしょから。
狙いは、女の生き血。
不幸な夫は、添えものにすぎなかった。

ゆるやかに淫靡なワルツの調べが絶えると。
打って変わって華やいだ喧騒が耳をつんざいた。
ジルバは・・・踊れますか?
わたくし、踊りのほうは。
渋る女と、ちょっとのあいだ、揉みあいになった。
きらめく光芒が一瞬闇に包まれたとき。
女と男の影も交錯した。
不意の接近に身を揺らがせた女は。
しばしのあいだ、息を整えようとしていた。
うなじにつけられた痕に、女は気づいていない。

淫らにざわつくホールの中心に。
ひと組のペアが、進み出ると。
めまぐるしい旋律にあわせて、テンポの速いステップを狂ったように踏んでゆく。
喪服の女は、すべてを振り捨てるように。
腕を振り、腰をくねらせて。
ひと目もはばからず、淫靡なゼスチュアに身をゆだねる。
流れるように差し出される腕を。
男はぐいと引っ張るほどに、握りかえして。
くっつき、離れ、離れ、くっつき・・・
目にもとまらぬ勢いで、ぐるぐる回って。
女をいつか、抱き抱えていた。

フィナーレ。
女はおとがいを、仰のけて。
男にうなじを咬まれている。
キュウウウッ・・・と、すごい音をたてて。
貞淑な未亡人の生き血が、男の喉の奥で渦を巻いた。
けれども、誰もがそんなこと、気にも留めていない。
おのおのが、それぞれのパートナーと。
音楽が果てたあとも、入り乱れて、踊り狂う。
夫婦は、はなればなれになって。
父娘も、お互いが見えなくなって。
夫は妻が、ほかの誰かのまえ黄色いスカートを揺らすのを横目にして。
自分は親友の令嬢を、硬い床のうえ、組み伏せてしまっている。

入り乱れる狂宴のなか。
場違いなほど、地味な衣裳は。
いまや淫靡な輝きのなか、禁断のきらめきに埋もれてゆく。
夫を弔い、貞節を守る決意をこめた装いが。
しどけない体の動きに合わせて、胸のリボンを振りたてて、スカートをひらめかせる。
黒のストッキングの足許が、セクシィに輝いて。
艶ひとつないパンプスが、脱ぎ捨てられて、転がって。
乱倫の渦のなか、女は硬い床に、ひざ小僧を突いていた。

朝。
脱げだパンプスのストラップに指を通して。
女は放心したように、とぼとぼと。
独り、人通りのまばらな夜明けの路を歩いてゆく。
出かけるときは、きちんとセットしていた髪を。
いまは、ぼろぼろに振り乱して。
はだけた胸元から、白い肌を惜しげもなくさらして。
みるかげもなく裂き堕とされたストッキングを、足許にまつわりつかせて。
次から次へと入れ替わるパートナーたちと交わした、
夫にしか許さなかった秘儀。
せめぎ合った敏感な処が、まだ迫るほどの疼きを秘めて、じわりとしたほてりを滲ませていた。

女は気づかない。
蒼白い皮膚の下埋められた牙が、もっと淫らな毒液をそそいだことを。
毒液は、身の裡で囁いている・・・
今夜は、お前の義母を連れて来い。
それが無理ならば。
家の雨戸をほんの少し、ひらいておけ。
義母はお前の不貞を、赦すまい。
けれどもそれは、つかの間のこと。
一夜明ければ、きっとお前と連れだって。
己の婦徳を、嬉々として淫らな濡れに浸すようになるだろう。
犯して、惑わして、堕としてやるから。
そうすることで。
お前たちふたりは、初めて救われるのだ・・・

寝取られ川柳 2

2007年06月16日(Sat) 16:16:32

女房を 犯してくれと 頼む夜
そんなノリで、第二話を。^^

私の親友・レディキラーのDに誘いをかけられた妻は、
いそいそ、ウキウキと。身支度を整えてゆきます。

  気晴らしに 妻をねだられ 断れず
  もてあそぶ つもりの彼に つい許す
  おもて向き 言葉は渋々 装うも 見透かす目線に 声もつれさせ

あっ、でも内心は・・・昂ぶっているんですよね。。。

  本心を 言うべきだよと さとされて
  不覚にも つい口走る 「姦ってくれ・・・」
  無理やりに 言わされ言葉に 昂ぶって
  あぁ、いいよ たっぷりサービス いただくよ
  夫婦ながら 支配を受ける 歓びに 胸の芯まで 焦がれ痺れて

奥さんも、積極的です。
やっぱり・・・よかったんでしょうねぇ。^^;

  犯されに 行かせてほしいの お願いね
  えっ?きみが? まさかの言葉に ズキズキと
  肌許す わたし覗いて いただくわ
  なにもかも 歓ぶあなた 見たいから

けなげな妻です。
どこまで本心なのか・・・は。
もう信頼関係ですね・・・

  いいよいいよ 夜のお出かけ 愉しくね
  許されて 夜のおめかし いそいそと
  お出かけに 黒のガーター 見せつけて
  破かれて 来るわとまとう Gストの 濃い彩りに 惑い深めて
  こつこつと 消え行く足音 いつまでも 耳で追いかけ 独り昂ぶる

いままでのパンティストッキングを脱ぎ捨てて、
娼婦となった妻がまとうのは、妖しく輝くガーター・ストッキング。
衣裳は女を変えるのか・・・

  いそいそと あと追う足取り 浮わついて
  窓の外 聞き漏らすまい みそかごと
  さりげなく 窓を開いた 情夫の手
  見えるよう 妻に迫って うなじ吸う
  せめぎ合う 唇にはぜる 熱き唾
  夜の蝶 じゅうたんのうえ 羽広げ
  襟首を 押し広げられ 肌さらす
  窓ごしの 妻の濡れ場に 昂ぶって
  ふしだらに 衣裳破かれ はしゃぐ妻
  闇に透ける 犯され妻の あで姿
  ひとしきり 覗いたあとは 独り去る 二人っきりの 刻つくるため

  別々に たどる帰り路(じ) なに想う
  独り寝に 妻の下着を 身に添わせ
  戯れの 痕をまさぐれど 白き衣(きぬ)
  このうえを 這った唇 痕たどり
  夜明けても まだ戻らない妻想い まだ愉しんでるかと 焦れる独り寝

独り寝の懊悩は尽きないで、そっと開いた妻の箪笥。
取り出した下着を、自らの肌に添わせると。
この下着は、逢瀬のときに着けたものだろうか?
あいつの唇が這った痕が、どこかに残ってやしないだろうか?
懊悩はますます、深まるのでした。

  がちゃがちゃと 施錠を解いて 妻戻る
  時ならぬ 音を子どもに 咎められ
  まだ早い 寝ていなさいと 追いやって
  母さんは 夜出ていたのと 息子問う
  お泊まりで 法事だったと 清め塩
  ふふ・・・と笑む 妻の清楚な 喪服姿
  なにごとも 起こらなかったと 見間違う 靴下の裂け目 スカートに秘め

  なに食わぬ 顔で迎える 朝帰り
  スカートの 裏地濡らして 朝帰り
  濡れてるよ 息子に見られ 妻焦る
  おかしいな ほんとに法事? 首かしげ
  浮気かも おどける私に 「そうかも・・・ね」
  浮気かも・・・ 息子の顔も ドキドキと
  白い痕 スカートの裏 気づかれて
  汚れ痕に あらばれちゃったと 妻照れる
  愉しそう ボクの彼女も 汚されたい

おやおや・・・だんだんアブナイ方向にイキそうですね。
それでは、このあたりで。

寝取られ川柳

2007年06月16日(Sat) 15:19:27

詩歌をまじえて、お話をひとつ綴ってみましょう。^^

レディキラーな親友D。
人妻を堕とすことにかけては、一流のテクニシャン。
私は何人も、貞淑な人妻が彼の手にかかるところを見てきました。

  貞淑な よその奥さん 手ごめにし
  悔しげな 涙も随喜に 飲み込まれ
  凄腕に 節操さえも 忘れ果て
  破かれた 衣裳ともに 堕ちてゆく
  乱れ妻 私もいつか お相伴
  人のもの 味は格別 穴探る

あぁあ。ワルイコトをしちゃいました。(^^ゞ
彼のお下がりの人妻を、時おり相伴させていただき、
私までいい思い・・・。^^

ところがなんと。。。
こんどの獲物は、ほかならぬ私の妻。
妻への好意をいきなり告げられて、あわててしまいました。

  奥さんを 狙ってるんだと 笑う友
  えっ?そんな・・・ そいつは勘弁 見逃して。(((^^;
  だめ、だぁめ 戯れながらも 赦されず
  どうしても きみの奥さん 犯したい
  ねだられて まんざらでもなし 寝取らせも

おやおや、雲行きが妖しくなってまいりました・・・

  困ったね あいつのどこに 惚れたのさ?
  なによりも きみの愛する 女(ひと)だもの
  犯したい・・・ 股間を抑え 求む友
  せつせつと くどき上手に あきれ果て
  誘惑を 許す言葉の 語尾震え

あ~あ。とうとう誘惑を許してしまいました。
まさか妻が、乗るわけがない。
そんな思いは、見事に裏切られます。

  唐突な 誘いの電話 妻揺らぐ
  どんな口説き? 新聞の陰 窺って
  くぐもった 声に真意は 闇のなか
  あのひとに 誘われちゃったと 照れる妻
  きみまさか・・・ 受けやしないね? その誘い

疑惑を深める私。しかし妻は一枚上手。
実行力は、もっと上。
おろおろする私を尻目に、妻は大胆な行動を・・・

  おいおい・・・と。 戸惑ううちに 身支度を 整え妻は 三つ指を突く
  お嫁入り してきちゃうかも 言いつつも だいじょうぶよと 気丈に返す

ここだけ短歌になっちゃいました。(^^ゞ
三つ指つきながらも、まさか自分が・・・という想いもあるようですね。
あくまでも潔癖で気丈な妻。
信じても、良いのだろうか・・・
自分のしてきたことをたなにあげて、ムラムラきてしまいます・・
  
  すがるよう 帰りは何時? 妻に訊く
  あきれたわ お食事だけよと 妻笑う
  気をつけて あいつは油断 ならないよ
  念のため ボクも行こうか 気になるよ
  アラ、いやよ。 貴方が来たら 無粋だわ
  向かい合う 鏡台の中 妻笑んで

さぁ、奥さん出かけちゃいました。(><)
そんなに遅くならないだろうと思っていたのに、時計の針はぐんぐんと回ります。
物音ひとつしない室内。残された私は悶々と・・・

  焦がれ待つ 夜しんしんと 更けゆきて 妻の足音 耳そばだてる
  コツコツと 近づく足音 落ち着いて 何が起きたか 起きなかったか
  ただいまと 冷たい声を 響かせる 白き横顔 やつれを見せて 
  どうだった? 気遣う声も かけかねて 遠目に見やる 立ち居振る舞い
  
思わせぶりな妻の態度。
私、ますますオロオロと・・・

  目のまえで 脱いだブラウス その下に あられもなきは 唇の痕
  ねぇ、見て・・・と。妻指し示す 足許を 裂けたパンスト ふしだらに染め
  されちゃった ごめんなさいね 許してね 語尾に滲んだ 愉悦の名残り
  肌の奥 淫らな血潮 そそがれて 貞淑妻は 娼婦に変わる

さぁ~。どうしましょ?
貞節を喪った妻。親友を裏切った友。
けれども妻の告白をまえに胸の底からわなないてくるのは、不道徳な愉悦のゆらめき・・・

  無理やりに 服剥ぎ取られ 肌吸われ・・・ 妻の語りに つい昂ぶって
  パンストを ぬめぬめされて 堕とされて 犯されちゃったと しらじら語る
  あからさまに 見せつけるように 告げながら ちらちら窺う 夫の顔を
  けっきょくは あなたもわたしも 悪くない あいつがすべて 食べちゃっただけ

あらあら。
どうやら奥さん、こちらの心境に気づいているようですね。^^;

  どうするの? これから彼と つきあうの?
  どうしましょ? 貴方が決めて これからは
  そんなこと 言えやしないよ そんなこと・・・
  でもわたし 貴方のものよ いつまでも
  
奥さん、さすがに上手です。
一番心配していたのは、彼女の心が離れてしまうこと。
けれども、ちゃんと見透かされていたようですね。
ヘンな嗜好の持ち主であることを。
長年連れ添う・・・ということは、幸せなことでも怖いことでもあるようです。

  犯されて 昂ぶるきみに 惚れ直す
  妻譲る 気持ちのなかに 深い愛
  ヘンな趣味 妻の理解に 救われて

どうやらめでたく、仲直りできたようです。
ところがまだ、妻は話したいことがあるようで。

  週末に またのお誘い 受けちゃった
  困ったわ あなたの愛する 妻なのに♪
  唇を 白いお肌を 奪られちゃう♪

困ったようで・・・愉しみみたいですね。
週末の予定も。夫の反応も。

  ことさらに 恥らってみる 妻いとし
  はらはらと 見つめる私に 笑み返し
  さぁ、言って。 ほんとに望む ことだけを

さぁ・・・もう言ってしまおう。

  わなわなと 揺れる唇 あらぬこと 告げらるきみは くすぐったそう
  犯すのも 犯されるのを 覗くのも ひとしく魅かれる 愛の営み
  凌辱に おののくきみも 陶酔に もだえるきみも なべて恋しく
  じゃあなるわ あなたのために 堕ちますわ 妻きっぱりと 声を澄ませる

これからも不貞をはたらくことで、夫を歓ばせようと決意する妻。
凛としていますね・・・
座はじょじょに、和らいでいきます。

  許しちゃう きみの不倫は 美しい
  アラ、いいの? 私もだえて しまうわよ
  もだえ妻 覗くも愉し ふすま越し
  やらしいわ ほんとに困った だんな様

でもやっぱり、男ですから。
ここはきちんと、言葉で表明しないと。

  ボクからも 彼によろしく 伝えるよ
  貴方から きちんと伝えて 公認て♪
  ああいいよ 手に取る受話器 ずっしりと

  取る受話器 恥じらいほほ笑む 妻見つつ 犯してくれよと 声震わせる
  妻の肌 娼婦の味を よぎらせて 嫉妬にたぎる 夫婦のベッド

めでたしめでたし。(^^)

娘の通った家

2007年06月16日(Sat) 14:40:00

老人のくせに、肌の色つやだけはひどくよかった。
輝いているほど・・・
しかし、わたしは知っている。
その輝きの裡に、妻や娘の血潮が秘められていると。
その男は、吸血鬼。
村に棲みついて、もうなん十年になるかわからない。
村長も、お役所勤めの人たちも。
此処には不似合いなくら大きな病院の院長も。
学校の校長や、先生がたも。
村一番のホテルのオーナーも。
有力者・・・と名のつく人たちは、皆が皆。
妻や娘たちを、彼の邸に送り込んでいる。

都会から教師として赴任してきたわたし。
前任者はなにも告げることなく、べつの町へと転任していった。
隣席の初老の佐沼教師は、わたしのことを振り向くと
「38歳。奥さんとお嬢さんがおひとり。こうつごうだね」
意味不明な呟きに、口辺をゆがめると。
わたしの頭のてっぺんからつま先まで、まるで品定めでもするようにして見回した。
植物的なぬめぬめとした目線が、ひどく薄気味悪く、わたしが眉をひそめると。
佐沼教師は察しよく、そのうちわかるよ、とだけ呟いていた。

娘さんを、見かけたよ。
同級生の子たちといっしょに、お邸に入っていったようだけど。
あぁ。ついに・・・
わたしがびくん!と胸わななかせたのは。
妻がお邸通いをはじめたあとだった。

邸のなか、通された応接室は、ひどくきちんと整頓されていて。
塵ひとつないほどに、清められている。
先刻なにが起こったのか、まったく想像させないほどに。
男は慇懃にわたしを迎え入れ、
どうぞ、と席をすすめてくれた。
無表情にあらわれた初老のメイドが、形ばかりのお辞儀をして、
高価な食器の音をかちゃかちゃ響かせながら
わたしと彼のまえ、湯気のたったコーヒーをおいていった。
痩せぎすなメイドの首筋には、案の定。
赤黒い痣のような痕がふたつ、鮮やかに浮いていた。

彼はコーヒーをひと口啜ると、懐中からヤスリのような小さな金属片を取り出して、
おもむろに、伸びた犬歯に当ててゆく。
なにをしているのですか?
ぶしつけな問いを、咎めることもなく。
彼はヤスリの手を止めると。
こうして時おり、牙を磨いているのだ。
自慢の柔肌をさらしてくれるご婦人がたに、失礼のないようにね。
素肌を侵して生き血を啜る悪魔にも。
それ相応の、礼儀があるらしい。

娘さんのこと、だね?
切り出したのは、彼のほうだった。

ええ。
ためらいがちに、わたしが応じると。
  ああ、お見えになりましたよ。
  たしかに新顔の娘さんが、ここへ来なさった。
いちばん耳にしたくない答えを、彼はむぞうさにかえしてきた。
  なん人か、連れだって。
  良くしてくださる女学生のお嬢さんがたが、おいでなのですよ。
  そういうお嬢さんたちほど、礼儀正しく接していただけるのですがね。
きりっと装われた、黒のセーラー服。
ぴっちり引き伸ばされた、色とりどりのハイソックス。
そのなかに、黒のダイヤ柄のハイソックスの少女はいなかったか?
という問いに。
  あぁ、たしかにいらっしゃいましたよ。
  それが、新顔のお嬢さんでしたな。
応える声が、じわじわと。
私の脳裏を狂おしく染めていた。
  初めてのご婦人からは。
  身につけていた靴下を頂戴することにしているのだが。
そうだったのか。
妻がはじめて、お邸に招かれて。ふたたび戻ってきたとき。
ストッキングの色が、変わっていた。
其処で、なにがあったのか?
其処で、なにをされてしまったのか?
きみは、どう変えられてしまったのか?
ついに訊き出す勇気をもてなかったのは、まさにそのせいだった。
  お宅のお嬢さんかどうか、定かではありませんが。
彼は座を立つと、ふらふらとした足取りで、古風な調度のまえに立つと、
小さな引き出しを、そうっと開いて。
なかから黒っぽいものを取り出した。
薄気味の悪いものを、見せつけられる思いで、彼の所作を窺っていると。
彼はやがて席にもどってきて。
目のまえに、破れたハイソックスを差し出した。
  お改めを・・・
震える手に取ったハイソックスは、私の手の中でくしゃくしゃに縮こまっていて。
それが娘のものなのかどうか・・・など。
とても覚束なかった。

うふふ・・・
おわかりに、なりますまい。
いいのですよ。それ、よろしければあなたに差し上げましょう。
わたしは思わずかぶりを振って、
ハイソックスを、手離した。
忌むべきもののように。
それでは改めて、頂戴いたしましょう。
彼はしてやったり、とほくそ笑んでいた。
ぐるぐると、目が回ってきた。
おわかりか?
あなたの今、なさったこと。
子女の衣裳をあたえるものは。
衣裳の持ち主さえも、許したことになるのですぞ。
彼の声音は、薄っすらと甘美に響き、
わたしは眩暈に耐え切れず、ソファに身をもたせかけてゆく。

さて、さて・・・
彼はわたしを介抱するように、身を近づけてきて。
どうやらよからぬたくらみに、わたしも屈することになるようだ。
お出かけの服は、奥さんが択ばれているのですな?
確信をこめた、彼の声。
無意識に頷くと、スラックスをずるずるとたくし上げられていた。
すうっ・・・と撫でつける手が、ひどくいとおしげだった。
ひざまである、紺色の薄い長靴下。
見慣れぬ靴下と思いながらも。
そ知らぬ顔をしている妻に、つい声をかけそびれていた。
そういえば。
隣席の教師もおなじ靴下を。
いつも履いていたような気がする。
ちくり・・・
鈍い痛みが、ふくらはぎを刺ししてくる。
ストッキングのように薄い長靴下が、かすかにぱちぱちと音を立ててゆく。
貴方の靴下も・・・コレクションに加えさせて頂こうか?
いけない・・・そんなことをさせてはいけない・・・
さいごにひとかけら残った理性が、悲痛に訴えてくるのだが。
甘美な誘惑がすべてにまさっていた。
妻の貞操を・・・娘の純潔を・・・
眩暈が、満ちてくる・・・
お伺いしたときは・・・そうですね。
長い靴下を脱いで、あなたに進呈しましょうか。
唇がひとりでに、そんな文句をつづってゆく。
よろしい。お楽になるがよい。
うなじにずぶり・・・と。食い込むものが、ひどく心地よく。
わたしは全身の力を、抜いていった。

着たい 2

2007年06月15日(Fri) 18:16:18

さいしょにねだられたのは、妻の服だった。
あいては、親しい友人。
ただし、吸血癖という、特殊な嗜好を秘めている。
ねだられるままに。吸血の宴に妻を差し出した選択は。
果たして、ただしかったのだろうか?
父兄会に着てゆく堅いかんじのスーツ姿を乱しながら。
足許をぴっちりと引き締めた、上品なストッキングをふしだらに破かれていきながら。
異端の嗜好は妻の素肌の奥深く、しみ込まされていった。

着たい。
ふたたび彼が、口にしたのは。
結婚式にお呼ばれしたときの、娘のワンピース姿だった。
妻やわたしが、身代わりになって。
幾晩となく、娘の服を身にまとって。
彼の欲情をまぎらせようと、試みたものの。
却って彼の欲情を、体のすみずみにまで思い知らされただけだった。

いちばん気に入りの服、あげたのよ。
娘はくすっ・・・と、ほほ笑んで。
ポニーテールを心地よさげに、揺らしながら。
まるで鏡を見るみたいに、じぶんの服を身につけた彼を、
からかうように、目で挑発して。
制服のスカートをちょっぴり、たくし上げて。
白のハイソックスの脛を、差し出してゆく。

どちらが、娘?
どちらが、魔人?
娘の服を着た、ふたつの影は。
くんず、ほぐれつ、乱れあって。
やがて妻もたどったひとつの頂点を。
うつむきあえぎながら、ともにしてゆくのだった。

男の服は、萌えないね。
冷然と呟く彼のまえ。
ノリのよい息子が私の箪笥から失敬していったのは。
妻から譲られた、ブラックフォーマル。
おじさん、黒のストッキング、好きなんだって?
ぴちぴちとした健康なふくらはぎは。
まるで女の子のように、しなやかで。
吸血鬼の飢えた目線をそそるには、かっこうのものだった。

明け方、照れくさそうにうなじを掻きながら戻ってきた息子は。
こんど行くときは、彼女の服を着て来いってさ。
面白そうだね?
父親似の面差しに浮かんでいたのは。
きっと・・・あの晩妻を差し出すことにした私と、おなじ翳だったにちがいない。

善意の献血・・・ですからね。
妻は、子どもたちにも言い含めるように。
装いをきちんと、整えてゆく。
きりりと結った黒髪を、さらになで上げて。
脛をおおうストッキングに、ひきつれがないか入念に点検して。
おなじように、
娘のスカートの下も。
わたしや息子の半ズボンの下も。
手でなぞりながら、確認してゆく。

では。参りましょうか・・・
夕暮れ刻を、合図にして。
きょうもぞろぞろと、無言の人群れが、お邸をめざす。
今宵妻や娘の血を。わたしや息子の血を。喉に散らせるのは誰・・・?

着たい

2007年06月15日(Fri) 17:56:17


薄暗い深夜の室内で。
たたみに横たわる女学生姿におおいかぶさっているのは、黒のワンピース。
蒼白い頬をときおり不気味にひくつかせながら。
ちぅちぅ・・・
ちぅちぅ・・・
うなじにぴったりと這わせた唇から洩れる音が、ひどく猥雑な震えを帯びていた。

いい子だ。
女学生姿から身を離すと。
黒衣はそう、呟いた。
さぁ、行っておいで。おまえが喪った生き血を求めて。
黒衣の囁きに、頷くと。
女学生は紺のスカートを翻して、ふらふらと表へとよろめいてゆく。

ふふっ。
ふらつきながら立ち去ってゆく人影を、
黒衣は、血をあやしたままの口許に冷笑をたたえて見送ると。
さぁ、出ておいで。
お待ちかね。きみの番だよ。
こちらのほうへと、異様に優しげな目線を送ってくる。
お嬢さん座りをしていた畳から、立ち上がるとき。
そわり・・・
胸元のスカーフが、音もなくなびいた。

素敵なハイソックスをお召しだね。
通学用なんです。
そぅ。あとでゆっくり、愉しませてね。
月明かりが差し込むだけの小部屋のなか。
黒一色のワンピースに、蒼白い肌がいっそうなまめかしく浮き上がる。
横におなり。
命じられるままに。
仰向けに寝そべって、おとがいをわずかにあおのけて。眼を瞑る。
そろり・・・と、のしかかってくる気配がした。
ひんやりとした息吹のうちに、さっきの娘から吸い取ったものが。
かすかに熱いものを、交じらせている。
かりり・・・
牙が、突き立った。
本能的に、身をすくめて。
ウッ・・・と、のけぞっていた。
あとは、さっきの犠牲者とおなじ経緯だった。
ちうっ。
血を吸い上げる音が、かすかに鼓膜を焦がした。

どれほど、吸われてしまったのだろうか?
さぁ、顔をおあげ。
黒衣の命じるままに、眼を開くと。
吸い取ったばかりの血潮に濡れた唇が、目のまえで笑んでいる。
いつも、ひと月にいちどしか、来てくれないのだね?
声色はあきらかに、男。
そして、さっき出て行った少女も。わたし自身も。男。
そう。
だれもが、女の衣裳に身を装いながらも。
影絵のようなお芝居を演じていたなかに、女の影はなかった。

だって。
女言葉を、強制されていた。
ナイショにしているんですもの。
昂ぶりにかすれた声が、かろうじて女ぽかった。
ふふふ。
黒衣はあざ笑うように、含み笑いで応えると。
毎晩遊びに来たら。あの子みたいに。
半吸血鬼になっちゃうものね。
組み敷かれた、上と下。
イタズラっぽく交わされた共犯者の笑みが、緊迫した空気をかすかに和らげた。

ハイソックスごしにもぐり込んでくる、鋭い牙が。
疼くような痛みとともに、ぐぐ・・・っと、深く刺し入れられる。
持ち主の血潮がじょじょにしみ込んでゆくのを、
ぬるぬるとしたぬくもりの広がりで、感じながら。
淡い陶酔が、胸いっぱいになってゆく。
障害は奥さん・・・なんだね?
黒衣の問いに、深く頷きかえしてしまっていた。


妻には身内のパーティーだと、言い含めていた。
子どもたちを置いて、夫婦ふたりで外出するのは。
ほんとうに、なん年ぶりのことだろう?
妻は着ていく服に迷っていたが。
けっきょく、いつも学校の父兄会に着ていくモスグリーンのスーツで装っていた。
地味めな装いに、ちらりとある予感を覚えたが。
わたしはなにも言わずに、妻を伴って、邸へと向かう。
帰宅する時には。
妻は、ふつうの状態ではないかもしれない。

招かれたのは、わたしたちだけではない。
ぜんぶで十人ほどの男女が、狭いリビングに入り乱れるように腰かけていた。
択び抜かれた人選と、たくみに化粧をしているせいとで。
だれもが男・・・だなどと。
妻はまったく、気づいていないようすだった。
せめて会話があれば、わかってしまうのだろうけれども。
すべてがほとんど無言の裡に、進行していったのだ。

どういう式次第なのか。
わたしには、よくわかっている。
おなじ趣旨のつどいに、べつのご夫婦を招待したことが。
過去になんどとなく、あったからだ。

さっきから。
黒衣が無言で、差し招いている。
用のあるのは・・・わたしに対してだけらしい。
妻にチラと耳打ちをして、傍らを離れた。

招かれた別室には、カメラがしつらえられていて、
妻を含む宴のメンバーが、いろんな角度から、あますところなく映し出されている。
黒衣はむぞうさに、あごをしゃくっていたが。
わたしに、たったひと言。囁いてきた。

着たい。

え?

きみの奥さんの服・・・

なにを言うことが、あるだろう?
知らず知らず、口許が浮ついていた。
似合うと思いますよ。
そう。
あなたとなら、だれでも、どういう形でも、お似合いでしょう。
妻の服も。
服の持ち主の、セックス・パートナーとしても。


宴は他愛ないほど、うまくすすんだといえる。
女装した吸血鬼たちに、両側を挟まれた妻は。
しばらく怪訝そうにしていたけれど。
目のまえの男女が、互いに相手を取り替えあって、血を啜り合いはじめると、
ひっ!
喉の奥を引きつらせていた。
優しく導いたのは、もちろん黒衣の彼。
奥さん。御覧なさい。ご主人も・・・愉しんでおいででしょう?

妻の目線のとどきにくい部屋のすみで。
わたしはべつの吸血鬼に、うなじを咬まれていた。
完全に征服された夫をみて、
妻もまた、ぐいぐいと力ずくで迫ってくる牙の下。
モスグリーンのスーツ姿から力を抜いていった。

咬みつかれたとき。
ストッキングに包まれた太ももの筋肉を。
かすかに、しくっ・・・と。
引きつらせていた。

わたしはいつか、彼と逢うときの女学生の制服に着替えさせられて。
夫婦並べられて、かわるがわるの毒牙に身をゆだねていった。


よく、見えられました。
女の客人を礼儀正しく迎えるのは、黒衣の彼。
彼のまえには、着飾った妻。
まだ、真っ昼間。
子どもたちが、学校からもどるまえ。
そして、夫が勤めのあいだ。
白昼も活動できるということは。
彼にとって、どんなにおいしいことか。
口許からはみ出した牙を眼にしても。
もはや妻は取り乱すようすはない。

お似合い・・・ですわ。
妻の言葉に。彼は満足そうに頷いた。
いま彼が身に着けているのは。
あの晩妻からせしめた、モスグリーンのスーツ一式。
履いていた黒のストッキングは、彼の牙にちりちりに裂かれて。
いまはなれ初めの記念品として、どこかに蔵されているにちがいない。
私、似合わないでしょう?
珍しく羞じらう妻の装いは。
若い頃、結婚式にお呼ばれした時に着ていた紫のスーツ。

処女の生き血じゃなくても、よろしいんですの?
えぇ。熟した血潮・・・愉しませていただきますよ。
ストッキングのおみ脚も・・・よろしいですね?
また、破いてしまうんですね?いやらしい。
甘美にからみ合うやり取りに、生垣ごしにはらはら聞き入っているわたし。

吸血が、はじまったようだ。
会話のとだえた窓ガラスの向こう側は、沈黙に沈んでいる。
ちぅちぅ・・・ちぅちぅ・・・
いつもわたしを包んでいた音が、妻におおいかぶさっていて。
わたしの肌を侵していた牙が、妻の柔肌をなぶり抜いている。

お洋服、汚さないで。ばれてしまうわ。
もだえながら、許してしまったのは。
白いブラウスのわき腹と、
紫のスカートの裏地。
撥ねた血の目だたないところ。
けれども彼の好みに合わせて履いていった真新しい黒ストッキングだけは。
容赦なく、咬み破られてゆく。
むっちりと白い太ももから、オブラアトが剥がされるように。
ふしだらに破れ堕ちてゆく、薄いナイロンの礼装・・・。

時おりご主人にも。
あなたの服を、着て来ていただきましょう。
えぇ。喜んで・・・
  アナタノ女装姿、コレカラモ見タイワ。
あの晩連れだって帰る道々、妻ははしゃいだ声で囁きかけてきた。


善意の献血・・・なんですよね?
妻は何度も、念を押してくる。
もちろん、そうさ。
わたしもよどみなく、応えている。
交わされたやり取りを、夫婦どちらもが信じていない。
子どもたちが寝静まってから、
夫婦連れだっての、お邸通い。
ふたり、スカートのすそをゆらめかせて。
妻は、よそ行きのスーツ姿。
わたしもまた、妻から借りた礼服やワンピース。
まるで姉妹のように、並んで横たえられて。
複数の牙に、素肌を侵されてゆく。
陶然となった、夢見心地のなか。
半裸に剥かれた妻が、熱い血潮をよぎらせた素肌をわななかせる。
あのひとの、お嫁になりたいの。
妻にせがまれて、結婚式を挙げさせたのは。
それからひと月とたたないころだった。


我が家の血が、お気に召したようね。
もっと、ご馳走しなくちゃね。
わたしたちだけじゃ、身体が持たないですから。
子どもたちにも、事情を言い含めておきましょう。
善意の献血・・・なのですから。
吸血鬼の情夫を持って。
ときには娼婦のように、春をひさぎながら。
善意の献血・・・と口にする妻。
けれども彼女は、間違っていないのかも。
採られる血液のなかには。
捧げられるべき熱情や情愛も秘められているはずだから。

さいしょは、息子。
それから、娘。
すうっとあけておいた雨戸のすき間から。
影どもはひそかに忍び込み、朝日とともに去ってゆく。
音ひとつ、痕跡ひとつ、残さずに。
ひと月経ったころには。
息子も、娘も。
照れくさそうに、うなじのあたりを引っ掻きながら。
部活だとか、お呼ばれだとか、口実をつけながら。
お邸で、ハイソックスを濡らしてくるようになっていた。


その晩。
自宅のリビングは、時ならぬ人いきれに包まれていた。
今夜はべつのご夫婦が。
わたしたち夫婦とおなじ運命を与えられる日。
妻は、小娘みたいにウキウキとして、
他所の家の奥さんを毒牙にかけるくわだての片棒をかついでいた。
招かれたのは、人のよさそうなご主人と、しっかり者らしい奥さん。
ご主人の女装癖を、奥さんが気に入っていないらしい。
気に入らせてあげないと、気の毒じゃないか。
黒衣の彼の言葉に、深々と頷いたのは妻のほうだった。
敷居をまたいだご主人の、スラックスのわずかなすき間から。
ねぇねぇ。見た?薄い靴下、履いているわ。
妻は耳打ちといっしょに、わたしのわき腹を小突いてくる。
あちらの御宅。年頃のお嬢さんが三人も、いらっしゃるんですって。
ねらい目・・・ね。
そういう妻の口許からは。
いつか、尖りを深めた犬歯が覗くようになっている。

窓辺

2007年06月15日(Fri) 14:02:13

雨雲に覆われた窓辺。
目を凝らしてみても、故郷の山影は遠く、
想いは景色の彼方まで、届くことはない。
もう決して、戻ってこない刻。
この世のどこにも存在しない、安らかな日々。
すべてが和やかに過ぎ去った、あのおだやかな刻たち。
濁った水彩画のような雨雲が、曇った現実となってベランダまで迫る日は。
しばし、過去の追憶に耽ろうか・・・

詩歌

2007年06月14日(Thu) 07:42:53

パンストの 脛をさらして 歩きたい
        爽やかによぎる 六月の風
スカートの 中ひんやりと 忍び入る
        夜の冷気に 脚舐められて
ひらひらと 胸元に舞う ボウタイに 
        身に添うほどの 色香覚えて
しっとりと 寄り添うごとき 触感に
        血の色さえも 女に染まる
ナイロンの 薄い網目に 縛られて
        蒼白き脛 艶めき翳る
フェミニンな 装いの下 疼く肌
        バラ色の血を 淫らに染めて
通う血を 女の色に 染めながら
        きりりと通す 薄い靴下 

そこはかとなく、女装の気分を詠み込んでみましたが。
・・・ヘンですよね。(笑)