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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

ふううう。

2007年06月30日(Sat) 07:57:19

ここ数日、なにも浮かばなかったのですが。
浮かびはじめると、とめどがなくなるようです。
(イツモノコトカ)
描きたいプロットが、いくつかありまして。
似たようなお話ばかり並ぶこともしばしば。(^_^;)
ひとつでも、あたりがあればいいんですが・・・

夜更けの散歩

2007年06月30日(Sat) 07:55:50

きみ、もしかして、男だろ?
夜更けの路上。
声の主は、まだ年端もいかない少年だった。
この時間に、半ズボンは似合わないね。
とっさにかえした言葉が、うそのように落ち着いている。
ボクも、似たようなこと、しているんだもの。
黙って差し出された脚にまとわれているハイソックスは。
よく見ないと、わからなかったけれど。
肌の透けて見える、明らかに女ものだった。

ストッキングも、キモチよさそうだね。
いちど、試してみたら・・・?
齢の差も、出会いの唐突さも忘れて。
似通った好みのふたりは、みじかい言葉を交し合う。
自分で買うのは、恥ずかしいなぁ・・・
こんど、持ってきてあげようか?
ウン、お願い。

つぎのつぎの時からだった。
少年の半ズボンの下も、薄黒いナイロンが染めるようになったのは。
公園に行ってみる?
吸血鬼が出るんだろ?
ああ・・・でも、友だちなんだ。
行ってみても・・・いいかな・・・
少年は、曖昧に語尾を濁したけれど。
仲良しの青年の誘いを、振り切ろうとしなかった。

新顔さん、だね?
うっとりと頷く青年を見上げる黒影は。
たった今吸い取ったばかりの血潮をまだ、口許にあやしていたけれど。
怖い・・・とは、感じなかった。
さぁ、つぎはボクの番・・・
半ズボンの下、黒のストッキングに透けた脛をさらけ出しながら。
ちくりとする疼きが、埋め込まれてくるのを。
くすぐったそうに笑みながら、受け入れてゆく。
ちゅうっ・・・
あらたにあがった吸血の音に。
むしろ招び込んだ青年のほうが、ドキドキ胸を弾ませていた。

待っておいで。
吸血鬼は、少年の血をしたたらせたまま。
悪戯っぽく、笑みをうかべると。
ウン。
少年のほうも、従順に頷いている。
夜霧の向こうから現れた女の影に、じぶんの母親をみとめていたから。

吸血鬼は、ママのことを抱き寄せると。
きちんとセットした黒髪を、ねじりあげるように、つかまえて。
おとがいを、ぐい・・・っと、仰のけて。
首筋に、がぶり!と、噛みついていた。
口の端にはまだ、彼女の愛息の血をあやしているというのに。
ちゅうちゅう・・・ちゅうちゅう・・・
まるで悪戯でもしているみたいに、他愛のない音が。
少年の耳もとを、妖しくくすぐりはじめていた。

ややもすると崩れそうになる姿勢を、気丈にも立て直しながら。
女はなおも、血を吸われてゆく。
さっき少年が捧げた血の量を、とうに越えるほどに。
たっぷりと、吸い出されてしまっていた。
ふらりと大きく揺れた身体を、後ろから抱きとめられて。
彼女ははじめて、抱きとめてくれた相手と、彼の足許に目をやっていた。

悪い子ね。
優しく咎める目線を、くすぐったそうに受け止めて。
母子はふたり、並んでベンチに腰かけて。
なおも血潮を、啜られてゆく。
毎晩・・・は、無理だけど。
たまにママと、散歩に来るね。
いいよね?ママ・・・
拒絶を許さない上目遣いに、もう、この子ったら・・・と言いながら。
かわるがわる、足許に唇を寄せてくる黒影と青年とに。
ストッキングの脚を見せびらかすようにして。
母親もまた、夜の愉しみに耽りはじめている。


あとがき
少年は、ママが夜更けに公園に散歩に出かけるのを知っていたのでしょう。
散歩をいっしょに、愉しみたかったのかも。^^

きみ、もしかして・・・

2007年06月30日(Sat) 07:41:46

きみ、もしかして・・・
声をかけてきたのは、女のほうからだった。
人通りの絶えた夜道にはふさわしくない、女学生姿。
長い黒髪を、イタズラッぽくピンと引っぱりながら。
横顔は愉しげに、ほほ笑んでいる。
吸血鬼、なんだろう?
ひくく落ち着き払った声に、魅せられたように。
黒衣の男もまた、己の正体を偽ろうとしなかった。

血が欲しいの?
無言の頷き。
ボクのでも・・・いいかい・・・?
やはり、無言の頷き。
きみは、男だね?
そんな問いを、呑みこんだまま。
黒衣は女学生姿の足許に、おもむろにかがみ込んでゆく。
ストッキング、破いてもいいんだぜ。
月明かりの下。
少年のような面差しは、むしろなまめいた翳りをよぎらせていた。

しんなりとした薄手のナイロンの下。
ドクドクとめぐる血潮の、熱い昂ぶりを唇に感じながら。
飢えたものは、ただひたすらに。
今宵の恵みを享けつづけてゆく。

さすがに貌をすこし蒼ざめさせて。
それでも、笑みだけは絶やさずに。
若い女の子にめぐり合えなかったなら。
ボクでよければ、相手してやるよ。
ひくく謡うような男言葉に、黒影はうっそりとした沈黙を守っている。
それからのことだった。
毎晩のように。
スカートをたなびかせて、ひっそりとした歩みを進める人影に。
寄り添うような黒影がまとわりつくようになったのは。

しっ!
アパートのドアを開きかけたとき。
出会い頭、薄いカーディガンのうえから肩をつかまれて。
さすがに”彼”は、どきりとした。
今出るんじゃない。
耳をすませると。
わいわいという粗野な声。
ドルルルルル・・・
エンジン音をひくく響かせて。
不良少年たちが、立ち去るまで。
肩に置かれた手は、放されることがなかった。
友だち兼ガードマン、てところかな。
薄いピンクのカーディガン姿が、クスリ、と含み笑いをする。
足許を見せびらかすように、グレーのスカートを揺らしながら。
伸べたふくらはぎには、黒のナイロンハイソックス。
服は汚さないでくれよ。母さんの形見なんだ。
さいごのひと言が、寂しげに翳ったのを。
黒影はさりげなく受け流して、いつものように唇を吸いつけてゆく。

もうじきキミとも、お別れだね。
結婚するのだろう?
どうしてわかるの?
フフッ・・・
黒影は、初めて笑んだ。
血を吸う仲になると、いろいろなことがわかってしまうのさ。
隠しごとをするつもりはなかったけれど・・・いいにくかったんだ。
キミ、若い女の血が欲しいんだろう?
襲われたくない。そうだね?
ごめんね。
いや・・・
それがふつうの感覚・・・というものだろう。
ご結婚、おめでとう。逢えるのは、いつまでかな?

吸血鬼の心配は、杞憂におわった。
”彼”のアパートは、結婚してからもそのままだったから。
過去を、新居に持ち込むことも。捨て去ってしまうこともできなかったのだ。
時おり夜更けに訪れる人影は、待ち受けていたもうひとつの影といっしょになって。
狭いアパートの一室、密やかな逢瀬を重ねつづけた。
笑うかもしれないけれど。
女の服を着ているとね。
落ち着くというか・・・癒されるんだよね。
それにしても。
こんなにか弱い服を身に着けているというのに。
女って、どうしてあんなに強いんだろうね。
吸血鬼ははじめて、声をたてて笑った。

公園に行こうか。
いいね・・・
どちらから言い出すともなく。
呼び交わしあった声は、ひとつになって。
すうっ・・・と部屋を通り抜けてゆく。
夜霧に街燈を滲ませて。
静まりかえった公園は、ひっそりと輝いている。
少しのあいだ。ここで待っているんだ。
黒影の命じるまま、”彼”は木陰に身を隠す。
ひらひらとした女の衣裳が微風に揺れて、心地よくまとわりついてきた。

そのひとは。
向こうの入り口から、まっすぐと、歩みを進めてきて。
待ち受けていた黒影に、吸い込まれるように、近づいてきて。
あたかも当然のように、胸をそらせて、
影の背中に腕を回して、おとがいを仰のけて、目を瞑る。
街燈に浮き上がった面差しに、新妻のそれをみとめて、
”彼”は驚いて、駆け寄ってゆく。
一瞬おそく、牙が女のうなじを侵していた。

ちゅうっ・・・。きゅきゅう・・・っ。
吸血の音が、いつもよりもナマナマしく響いたのは・・・気のせいだろうか?
新妻は、女装姿の夫に艶然と流し目をして。
いつも独りで出かけて。ひどいわ。
咎める声に、棘はなかった。
お母様の服なの?
その問いのほうが、むしろ翳を含んでいたけれど。
中身も優しく・・・な。
黒影のささやきを、耳にすると。
あら。
やられたわね・・・・といわんばかりに、肩をすくめて。
優しい女になるしか、なさそうね。
こんどこそ申し訳なさそうに、夫を見やる。

なん年もまえのことだった。
不眠症のいらだちをおさめるために訪れた夜の公園で。
幾度となく血を吸って、波立つ心を鎮めてやったことがある。
そう。
おれはきみの花嫁を、処女のうちから知っていたのだよ。
申し訳なさそうに、ぼそぼそと呟く黒影に。
よかったんじゃないかな?
”彼”は珍しく、翳りのない笑みをかえしてくる。
これからは・・・
妻といっしょに、逢いにくるね。
じゃあ、あなたには。わたしのセーラー服貸してあげる。
え?持っているの?
もう・・・やらしいんだから。
夜霧のなか。
ひそやかなやり取りは、にわかに中断して。
熱っぽい気配がひと刻よぎると。
じゃあ。ごきげんよう。
さりげない別れことばを交し合って。
夫婦はいままで以上に、密に寄り添いながら、姿を消してゆく。
夜明けは、近い。

かばい合い 覗き合い

2007年06月29日(Fri) 07:31:53

お願いです。
母や妹には、手を出さないでくださいね。
羞じらいながら差し出される、少年の脚。
半ズボンからむき出しになった太ももは。
いつも母親が履いている黒のストッキングに、薄っすらと縁取られていた。
母の身代わりに・・・妹の代わりに・・・
震える声で、囁きながら。
ときには妹のセーラー服さえ装って。
血に飢えた牙のまえ、惜しげもなくわが身をさらしてくる。
若い血潮をぞんぶんに、愉しむと。
夢見心地にうっとりとした目線に送られて。
部屋を出てゆく吸血鬼。

あの。
ためらいがちに呼び止める女の声に。
男は黙って頷くと。
少年の母の寝室に、姿を消してゆく。
どうか息子の生命をとらないで・・・
うめくように囁く女の、首筋に。
心地よげに、牙を突きたてて。
おいしそうな音を、忍ばせて。
ただいっしんに、啜りとってゆく。

ねぇ。
また、ママや兄さんの血を、吸いに来たんでしょ?
ひどい人・・・と、いいながら。
背後に回る黒い影に、うつむいて。
長い髪の毛をかきわけて、初々しいうなじをことさらにさらけ出す少女。
ちゅう・・・っ。
ひそやかな音に、くすぐったそうに聞き入りながら。
うっとりとした目線を、流していって。
ハイソックスを履いたふくらはぎに唇を押し当てられながら。
いやらしい。
ほんのひと言、口にすると。
長いまつ毛をしたまぶたを、うっとりと閉じてゆく。

女たちは、互いに互いの痕を、うなじのあたりに確認し合いながら。
だいじょうぶ?
息子を、兄を、気遣っているのだが。
果たしてどこまで気づいているのだろう?
細めに開いたドアのすき間から。
昂ぶりを秘めた少年の目線が、いっしんに覗かれていることを。

通りかかるひと

2007年06月29日(Fri) 06:44:56

また残業だった。
肩にずしりとのしかかる重たい疲労は、肉体の疲れからくるものではない。
響くような頭痛。胸の奥にわだかまるイライラ・・・
すべてが心身を切りさいなむように、おおいかぶさってくる。
こういう夜は。
きまって、喉の奥がひりひりと疼いてくるのだ。
半吸血鬼となったのは。
まだ、中学生のころだったろうか。

見あげる夜空にまたひとすじ、なにかがよぎっていった。
吸血鬼の跳梁する街。
吸血鬼と共存している家々。
昼間はふつうの市民に扮した魔性のものたちが、本性をあらわにする刻限だった。
夜空を翔べるものたちは、まだいい。
真性の吸血鬼は、永遠といわれる生命を背負っていて・・・
少なくともいまの自分よりは、自由な存在なのだろう。
誤解だよ。
中学生のころに彼の血を吸った吸血鬼は、ほろ苦い笑みをよぎらせそう呟くのだが。
あまりにもふつうの市民すぎるこの気疲れの堆積は、いったいなんだというのだろう?

今夜は、だれの血を吸おうか?
妻の血を吸うことは、ほとんどない。
彼女が熟れた素肌をさらけ出すのは、べつの男のまえ。
そのほうが本人も昂ぶるという。
夫であるかれ自身すら。
妻の夜間の外出は、己で襲うほどの胸の慄(ふる)えを覚えるものだった。

あら。
闇の向こうから、声がする。
こんばんは。
若い女の凛とすみ通った声が、礼儀正しい挨拶を投げてくる。
塾通いの帰りなのだろうか。
いつも家路をたどる途中で出会う、制服姿の少女。
都会では珍しくなった濃紺のジャンパースカート姿が、
田舎都市のこの街では、まだ生きている。

やぁ、こんばんは。
生えかけた牙を危うく引っ込めて。
かれはいつものおだやかな小父さんの顔に戻ってゆく。
いつもひと声、投げ合って。
一瞬で影をよぎらせてゆくだけの関係。
少女がどこの家の子なのか。なんという名前なのか。
声を交し合うようになってだいぶ経つというのに。
いまだにそんなことすらわからない。
時計の針のように規則正しい日常では。
もうそれ以上発展し得ない邂逅というものがあるのだろう。
不思議なことに。
半吸血鬼なのに。
まだいちども、彼女を襲おうという気にならなかった。
凛とした声色が、魔よけの役割を果たしているのだろうか。

いつもの晩とは、違ったことに。
おじさま?
すれ違いざま、少女のほうから声をかけてきた。
ちょっと、お散歩しませんか?
闇に浮いた白い貌が、人なつこくほほ笑んでいた。
あぁ。いいけど・・・
気後れしながら、少年のように応えるかれを。
少女は手を引くようにして、路傍の公園にいざなってゆく。
なん年も通いなれた道なのに。
初めて入る公園は。
まるで誘蛾灯のように輝く蒼白い街燈に、
ささやかな木立ちが滲むように浮かび上がっている。

公園の隅のベンチに腰かけると。
少女は人なつこい笑みをたたえたまま。
うなじのつけ根を指さすと。
ここ、噛んでもらえますか?
なんのてらいもなく、仰いだ目線をそそいでくる。
えっ?
信じられない言動に。
そんなことしちゃ、いけないよ。
思わず両手で、肩をつかんでいた。
襲うためではなく。
諭すために。
感心するほど、理性がまだ残っていた。

いいんですよ。
少女は蒼白く浮かび上がった貌に、くったくのない笑みをたたえながら。
つかまれた両肩のあいだ、可愛い笑くぼさえ滲ませている。
どうしてなのだろう?
もうこの子とは、なんどもすれ違ってきたのに。
そう、なん日も、なん年ものあいだ・・・
四十すぎの中年男に、こんないたいけな少女が格別の好意を示すものなのだろうか?

思いを迷わせるうちに。
さ、早く・・・
少女はせつじつに、かれを急かしていた。
肩にのしかかる疲労。
じんじんと響くような、頭の奥の鈍痛。
なによりも・・・喉の奥からせきあげるような渇望―――。
それらがすべてを、忘れさせた。
寄り添うふたつの影は、瞬間ひとつに交わった。

あぁ・・・
そういうことだったんだね?
すっかり忘れ果てていた、少年のころのぬくもりに満ちた目線にかえりながら。
かれは少女の肩を、いとおしげに撫でさする。
やっと想いが、かないました・・・
しっとりと湿りを帯びた声は、記憶の果てに消えかかっていたものだった。

三十年も前。
教室のいちばん片隅に、いつも遠慮がちにひかえていた少女。
重たい病に侵されていた・・・と知ったのは。
高校にあがって、だいぶたって。
彼女が写真のなかの人になってからのことだった。
いまその写真が、かれの目のまえで。
あのときのままの控えめなほほ笑みで、かれを見おろしている。
背後でかたりと、あたりをはばかるような音がした。
彼女はいつもそんなふうに、音を立てるのさえ遠慮するふうがあった。
もしや・・・?
振り向いた背後は、まだふすまが遮っていて、
お茶をお持ちしました、という遠慮がちな声は、少年のものだった。

応(いら)えをかえすと。
スス・・・とふすまが開かれて。
その向こうから顔を見せたのは。
あの少女・・・と見まごうばかりの少年だった。
写真の少女も。この少年も。
透きとおるその肌に。清々しいほどの控えめな笑みに。
どうして今まで、気づかなかったのだろう?
伯母のお友だちなんですね?
いまどきの少年らしく、ませている。
「お友だち」という言葉に、言外の意味があると知りながら。
そうだよ、と。
かれは真実味のこもった声で応えている。

濃い味のコーヒーを取り巻くように、ほのかな湯気のくゆらぎが、
かれの鼻先をくすぐってくる。
彼女もまた、こんな味のするコーヒーをたしなんでいたのだろうか。
ふと気がつくと。
少年はまだ、去ろうとしていない。
どこかで見覚えのある、人なつこいほほ笑みを控えめにたたえながら。
噛んでいただけますか?
伯母の血を受け継いでいるのは、いまはボクだけなのですよ。
半ズボンの下、照り返す陽射しを滲ませたむき出しの太ももに。
郷愁に似た慕情を覚えながら。
穿きなれないハイソックスの脚を照れくさそうに見おろす少年を。
畳のうえ、ゆっくりとまろばせていった。

隣室 から

2007年06月25日(Mon) 07:13:37

ちぅちぅ・・・
ちぅちぅ・・・
隣室から洩れてくるのは。
新妻となった由貴子さんの生き血が、吸いだされてゆく音。
うふふふ・・・ふふ・・・
かすかな含み笑いが、重なり合い、交錯してゆく。
真っ白なブラウスに、バラ色の飛沫をほとばせて。
由貴子さんは白い歯をみせて、くすぐったそうに笑いこけている。
うら若い血潮を、惜しげもなく捧げながら・・・
吸血鬼の片手は、ブラウスのうえから肩を抑えつけて。
もういっぽうの手は、さりげなく胸元をまさぐっている。
ブラウスを通して受けるゆるやかなまさぐりがくすぐったいのか。
傷口に触れてくる唇が心地よいのか。
わたしの目線をじゅうぶんに意識しながら。
由貴子さんは白い頬に愉悦を滲ませる。
夢見心地に、浸りながら。
謡うような、声色で。
「母の血を・・・吸っていただきたいのです」
そんな怖ろしい言葉を、さりげなく。
口許から洩らしている。
まるで暗誦するように、抑揚のない口調だった。
ほほぅ。
吸血鬼は、感心したように。
由貴子さんの肩に、さらに深いまさぐりを滲ませる。
いかが?
薄っすらと、ほほ笑んだのは。
母を襲って・・・という提案にたいしてなのか。
自ら捧げた血潮の味を問いたかったのか。
そのどちらにも、応えるように。
やつは、うふふ、と、笑みくずれて。
いまいちど、由貴子さんのうなじに、唇を這わせてゆく。
きゃっ。
ふたたび撥ねたバラ色のしずくに。
小娘みたいに、身をすくめながら。
わたしのときみたいに。きれいに襲ってあげてくださいね。
薄っすらとした目線。謡うような声色。
揺れるまなざしのかげに、妖しい情景を思い描きながら。
あのひとが、見ています。
犯してくださいな。
声はやはり、謡うようだった。


あとがき
再あっぷ分に触発されてしまいました。^^;
「妻の悪戯」
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-1069.html
「侵される喪服」
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-10.html
「喪を破る」
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-1070.html
「朝食」
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-1071.html

う、うーむ。

2007年06月25日(Mon) 06:59:50

久しぶりの、サイあっぷです。
じつは、さがしていたのはべつのお話でして。(^^ゞ
そっちはどうしても、見つからず・・・
気長に探しますが。

「妻の悪戯」「喪を破る」「朝食」は、一連のお話です。
「妻の悪戯」のあとに「侵される喪服」といういかにもなお話がありまして、なぜかそちらだけ、すでにあっぷされています。
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-10.html
読みにくくって、ごめんなさい。m(__)m
若妻だったころの由貴子さんが、お母さんを紹介してしまうお話です。

「父親の呟き」は、こちらではおなじみの?とぼけたおとーさんの独り言。
「紳士用ナイロンハイソ」は、やはりこちらではおなじみの?装いの由来についてです。

追記
「父親の呟き 2」をあとから発見しました。
不体裁で、すみませぬ。m(__)m。
あ。お話そのものが・・・ふていさいですね。(^^ゞ
いちおう過去の分類にしたがって、「近親」にいれてありますが。
「2」の内容はどちらかというと、婚約者の処女を捧げるお話ですねぇ。(^_^;)

犯されている。

2007年06月24日(Sun) 07:52:48

妻のまりあが、犯されている。
相手はわたしの弟、リョウジ。
先月吸血鬼に襲われて死んだはずの彼は。
あの忌むべき夜、わたしをベッドに組み敷いて。
重い声で、宣言するように、囁きかけてきた。
義姉さんを、犯したい。と。
口許から、ぼたぼたと。
さっきわたしの身体から吸い取った血を、したたらせながら。
思わず夢中で頷いてしまったわたし。
弟は性急にも、すぐにまりあをここへ呼べ、と。
すでにもう、かりにも義姉であるひとを。
呼び捨てにしてしまっている。
友人の結婚式から帰ってきたまりあは。
身動きできないわたしのようすなど、露ほども気づかずに。
応答のないインターホンをいぶかしみながら。
がちゃがちゃ鍵を鳴らして、ドアを開いた。
あとはただ・・・
死んだはずの義弟の魔性の誘惑に、わが身をさらして。
獣のような凌辱の下。
悲痛なすすり泣きは、いつか随喜のうめきに取って代わっていた。

まりあは今夜も、犯されている。
きょうは夜勤だよ。
何気なくそう洩らしたわたしに。
あら、そう・・・
気のせいか、口許に滲んだ笑みが、エッチな色をよぎらせていた。
雨戸の向こうとこちら側。
冷えた縁側と、熱い褥。
みしみしときしむ畳の音が。
まりあの乱れようを、伝えてくる。
なによりも。
薄めに開いた雨戸ごし。
髪振り乱して。脚を絡めあって。
悩ましげにまぶたを震わせ、かぶりを振りながら。
着衣のまま情欲に耽ってゆく肢体。
弟の冷えた体にさえ。
いつかほてるほどの血色が、じわじわとしみ込んでゆくようだった。
妻はあきらかに、わたしに気づいている。
わたしの視線を、はっきりと意識している。
それでいて。
うん・・・うんっ・・・ああぁぁぁぁぁぁあん・・・っ
ナマナマしく洩らすうめきは、いっそうなまめかしく、悩ましく。
受けたまなざしを快感として、白い素肌にしみ込ませていった。

まりあは明日も、犯される。
白昼すら堂々と現れるようになった弟は。
きょうもまりあの貞操をねだる。
人のよい兄貴は、最愛の妻をねだり取られてしまって。
スカートのなかに這いこもうとする弟の掌をとって。
もっと深く・・・と、差し入れてしまっている。
義姉さんを、独り占めにしたいんだ。
我がもの顔に抱きすくめる、猿臂のなか。
陶酔を誘う、ディープ・キッス。
密着しあった身体と身体は。
もう、とどめようもない勢いで乱れあい、わくわくと昂ぶりせめぎ合っている。

週末は。
三人連れだって、高級ホテルに泊まりに行こうか。
ひとりの女とふたりの男をいぶかしげに見比べるクロークのまえ。
わたしの名前の隣には、「夫」
まりあの名前の次には、「妻」
そして弟のところには、「妻の愛人」
そんなふうに、ペンを走らせたら。
あいつはいつも以上に、目を輝かせて。
悩ましくくねる妻の肢体を。
いっそう淫らに乱してしまうだろうか。

いっぱい、吸うんでしょう?

2007年06月21日(Thu) 07:58:13

ブレザータイプの制服姿が。
公園のすみで、立ち止まる。
さらさらと背中まで流した、黒髪が。
控えめな怯えに、かすかに揺れた。
血が、欲しいの?
ああ。
いっぱい、吸うんでしょう?
うん。。。
少女をさえぎる黒い影は。
ひどく内気に、声をひそめた。
怖い。
俯く少女の顔に、おびえが走る。
いやだわ。
いつまでも、決まり悪げに。
もじもじと、うつむきつづけている。
正直に、呟く少女に。
そうだよね。
影もまた、否定しない。

じぶんが忌むべき存在であることも。
それでもあえて、逢いに来てくれていることも。
すべてはお互いの胸のなか。
けれども少女は、気丈に背すじをぴんと伸ばす。
痛く・・・しないでね。
制服、汚さないでね。
ちいさな声で、懇願する少女を。
かばうように。冷たい風から、おおいかくすように。
影はしっとりと、包んでゆく。

くちゃ、くちゃ・・・
ちぅ・・・ちぅ・・・
ひかえめに洩らされる音の、なまなましさに。
少女は戦慄をおぼえながらも。
いつしか感じ始めた、淡い陶酔に。
目線をうっとりと、迷わせてゆく。

ふらふらと腰かけたベンチの足許に。
影はなおも、まとわりついてきて。
真っ白なハイソックスのうえ、唇を吸いつけようとすると。
えっち。
無邪気な声色が、含み笑いしている。
きゃっ。きゃっ。
くすぐったそうにはじける、笑みの下。
ハイソックスのうえから這わされる唇が。
いっそう力をこめて、しつようさを深めていった。

切れ切れ に

2007年06月21日(Thu) 07:50:51

お母さんを、連れて来てくれる?
後ろから、甘えるように。
ささやきながら、抱きついてくる。
少年は、ウットリと顔をあげて。
ボクだけじゃ、足りないの?
ちょっと不満そうに、口を尖らしたけど。
そうか。女のひとの血も、欲しいんだね・・・?
長いまつ毛の目は、早くも薄っすらとしている。
そろそろ・・・と。
足許ににじり寄ってくる黒い影を。
避ける風もなく、苦笑しながら見おろして。
口許に、けだるさをにじませながら。
半ズボン姿を揺らがせて。
ハイソックスを、ずりおろしてやる。
ふくらはぎの好きな、吸血鬼のために。

うふふ・・・ウフフ・・・う、ふ、ふ・・・
ふた色の含み笑いが、重なり合って。
少年は、ハイソックスを脱いでいないほうのふくらはぎも、
惜しげもなく、差し出している。
靴下のうえから・・・って、初めてだけど。
もう、ママにばれちゃっても、かまわないものね。

公園・・・に?
ママはちょっぴり、いぶかしげに首を傾げて。
夜中の一時に・・・ですって?
もういちど、訊きかえして。
よそ行きのスーツに、薄手のストッキングを履いて行くのね?
もういちど、たしかめるように。息子の顔をのぞきこんでいる。

父親が眠りに就いたのをしおに。
ふたつの影が、いそいそと。
身支度を、手ぎわよく整えてゆく。
ママはよそ行きの、紫のスーツ。
ひざ上までの、ママにしては短めなスカートのすそが。
お嬢さんみたいに、軽やかに揺れた。
玄関を開けると、門が開かれていて。
先回りしていたお父さんが、イタズラッぽく、笑いかけてきた。
えっ、あなた・・・
決まり悪げにもじもじする妻を見て。
行って来なさい。愉しんでおいで。
お父さんも、決まり悪げにほほ笑みながら。
薄い靴下に脛をおおった妻と息子を、ひっそりと送り出してゆく。

公園のベンチに、並んで腰かけて。
かわるがわる、足許を吸われて。
夢見心地に、とろりとなった、あいまいな視界の彼方。
生垣がかすかに、揺れたような気がした。
その晩息子は、生まれて初めて。
腰までたくし上げられたスーツのすき間から。
白い太ももを鮮やかに横切るガーターを目にしていた。

ノーストッキングで、家に戻るのを。
母親は小娘みたいに、決まり悪がっていたけれど。
大胆になった息子に、せかされるまま。
夫の待つ家にたどり着いていた。
夫は、書斎。
足音を忍ばせて、浴室にはいり、身づくろいをすませる。
戻ってきたリビングには、コーヒーの湯気が漂い、
湯気の向こうに、夫の笑みがあった。
ただいま。
おかえり。
なにごともなかったかのような、言葉を交わして。
ひきつれひとつないストッキングのひざ小僧を見つめる夫は。
ストッキングが、お好きなようだね。
こんどお招ばれするときも。
きれいなのを履いていっておやりなさい。
もぅ。あなたったら。
妻はほろ苦い笑みを、かえしながら。
お招ばれするときは。
必ずそれとなく、あなたにも伝えるわ。
目印は、そう・・・
夕べみたいに、黒のストッキングがいいかしら。
えっちだね。裂け目も目だつし。
うふふふ・・・ふふ。
どちらからともなく、笑みを交し合う夫婦の姿を。
息子も照れ笑いしながら、受け流してゆく。

時と空間の隔たり~オフィスの夜~

2007年06月21日(Thu) 00:12:24

もう、夏だというのに。
オフィスの窓辺から覗くネオンの色が。
こうも殺伐に輝くのはなぜだろう?

上司はもとより、同僚たちも。
仕事山積みの私から、目を遠ざけるようにして、帰っていった。
ひとり、またひとり。
失礼します。
きょうは、お先・・・
目だたぬように、声をくぐもらせて。
卑屈に背中を丸めて足早に立ち去ってゆく同僚たち。
咎めるいわれは、どこにもない。
そのなかのだれかを、今夜の自分のように置き去りにするときだって、あるのだから。
お互い様。
なんと寂しい合意だろうか。

やや薄暗く、ひっそりと静まったオフィス。
どこかの部署の、気の利いたやつは。
帰りがけ、自分の部署だけ照明を落としていくらしい。
節電・・・などという建前の、なんと空しく響くことか。
あとにのこるものの孤独を、いやがうえにも引き立てるだけではないか。

けれどもいっぽう。
こうした孤独は、望むところだったりする。
独りなら・・・もめごともなにも、起こりはしない。
私は楽々とペンを取り、あと二つ三つ残された仕事に向かい合う。
だいぶはかどった頃だろうか?
終電はとっくに、出てしまっていた。
今夜はここで泊まりか・・・
ご飯は要らない・・・とメールした妻は。
いまごろもう、とっくに寝入っているころだろうか。

お疲れさまですぅ。
殺風景なオフィスに不似合いな、若々しい女の声。
見慣れない女性が、うちの制服を着て。
ただひとり、長い髪をなびかせている。
ん?きみ、どこの部署だったっけ?
なりすましの女賊だろうか?
「女賊」。
とっさに思い浮かんだ古風な言葉に、人知れず苦笑していると。
女はお盆に載せたコーヒーを、差し出して。
一服、いかが?
小首を傾げて、すすめてくれる。
四十過ぎの、さえない中年男のためなどに。
世の中、そううまい話を用意してくれるわけがない。
眠り薬でも、入れられているかも知れないぞ。
けれどもそんな警鐘は、このさいどうでもいいいような気がした。
本能で。
私はこの女を知っている。
どこかで強く、確信していたから。

熱いコーヒーは、季節外れだったけれど。
濃厚な香りと、きつめのテイストに。
思いのほかの心地よさを覚えた。
暑い季節に、冷たいものの摂りすぎはよくないですからね。
まるで、お姉さんのように。
組んだ両手のうえに載せた顔が、イタズラっぽくほほ笑んでくる。
きみ、どこの部署?
なんどか、尋ねてみようとした。
けれどもとうとう、その問いは発せられることがなかった。
どう訊いたところで。
他愛なく、はぐらかされてしまいそうだったから。
ただ、安らかなひと刻が。
爽やかな花吹雪のような心地よさで、ふたりのあいだを通り抜けてゆく。

体に気をつけてね。
小首をかしげるように。
おどけた口調に、むしろ気遣いを漂わせる女に。
もの問いたげにしていると。
あなたといつも、文通しているひとですよ♪
女はもうそれ以上、なにもいわせまいという目をして、笑っていた。
そろそろ終電の時間ね。
急げばまだ、間に合うわよ。

・・・?
ふと、顔をあげると。
そこには片付いた資料の山と、人けのないオフィス。
薄暗く照明を落としたオフィスは、いつものようになんの変哲もなく。
殺風景なたたずまいに、ひっそりとしている。
コーヒーも、お盆も。もちろんさっきの美しいひとも。
夢のように消えてしまっていたけれど。
口許に漂うほのかな香りは。
いまでも馥郁とした余韻を残していた。
まりあくん・・・だったのか?
かすかな呟きが、闇に吸い込まれてゆく。
終電は、とっくに出てしまっているはずだったが。
時計を見ると、まだ十一時半。
私はがたがたと椅子をけたてて、終電に間に合うべく、行動を開始した。
明日も、忙しいからな・・・

ま~りあ先輩♪
どうしたんですか?
後輩のみゆきが、寄り添うようにこちらへやって来る。
ついたてで仕切られただけの、打ち合わせスペース。
まりあは暗闇の支配する窓辺の彼方から、
目線をかわいい後輩に転じている。
あっ。コーヒーですかぁ?
まりあ先輩の淹れるコーヒーおいしいんですよね?
二杯淹れられたコーヒーカップの片方を、
ていよく手にしようとしたみゆきは、つぎの瞬間。
なぁ~んだ。と。
伸ばしかけた手を、引っ込めている。
まりあが手にしているカップと、おそろいのコーヒーカップは。
きれいに飲み干されたあとだった。
だれと、お茶してたんですかぁ?
かすかに怨(えん)じるふうの後輩に。
まりあは親しい人だけに見せる妖しい笑みをよぎらせて。
大好きなひとと・・・ね♪
目線はまたも、窓辺の向こう。
漆黒の闇に沈む彼方へと、そそがれている。


あとがき
まりあのオフィスは、まだ深夜ではないはず。
時を超えた訪れを、したのでしょうか?^^

夜のお部屋

2007年06月20日(Wed) 23:36:40

照明の明るさを、めいっぱい暗めにして。
ステレオの音量も、思いっきり小さめにして。
テレビでもなく。ラジオもなく。
世間の喧騒と一線を画した空間のなか。
まりあは今夜も、想いに耽る。
じゎん、じゎん・・と。
聴きなれた音楽も。
音量を下げると、まったくべつの調べに響く。
何気ない日々の暮らしのあの人の声、この人の思惑。
それらすべても、音をひそめれば。
部屋の薄明かりににじみ込んでゆく調べとおなじくらい。
ひっそりとしたものに思えてくる。

ことり。
かすかな音が。
今夜も人の寝静まったこの刻限に響いてくる。
あなた・・・ね?
滲むような笑みが、ミステリアスに。
まりあの口辺を彩ってゆく。
くるぶしにそっと触れてくる、長い指。
さらりと撫でつけてくる掌は、ひどく冷たく、
血の気の通っている感じがしない。
咬んで・・・
欲しいんでしょ?
まりあはよどみなく、気配だけをあらわにする影に、問いかけている。

くるぶしから伝わって、ふくらはぎを。
ふくらはぎをなぞるようにして、さらに太ももを。
スカートのなかに這い込もうとした掌が。
じわじわと撫でつけようとして。
ふと、手を止める。
病んでいるのか?
いつものことよ。
無理・・・してないか?
やめて。
まりあが声で、制すると。
影は背後から、むくむくと立ち上がって。
背中ごし、肩を抱きすくめてくる。
襲う・・・というよりも。
むしろ、甘えるように。

おイタさん・・・ねぇ。
謡うように、囁く唇を。
冷たい唇が、ねっとりと包んでゆく。
きょうは、いやらしく襲わないの?
はは・・・
影はうつろに、笑っている。
私とて。閑(しず)かな刻も欲しいものだよ。
したいの?したくないの?
ちょっぴりケンをみせたまりあに、
影は一瞬、へきえきしたような気配をつくったけれど。
やがて影と人とは、ひとつになって。
傍らのじゅうたんに、身を崩してゆく。
したいの?したくないの?ねぇ。ねぇ。ねぇ・・・
甘えるような、ねだるような、女の声を。
唇がしっかりと、ふさいでゆく。

照度をめいっぱい落とした部屋のなか。
音量を思いっきりしぼったスピーカーの奏でる調べの下。
ひそかな営みは、音もなく。
濃艶な闇に息づいてゆく。

花火のあと

2007年06月20日(Wed) 08:20:02

じりじり・・・パチパチ・・・
かすかな火薬の匂いとともに。
ほとばしる色とりどりの火花。
もうとっくに、こんな遊びとは卒業したはずの年代の男女が。
言葉ひとつ、交わさずに。
じいっと焔の行く手を見つめている。

深夜に集う、不良少年と呼ばれる男女。
仲間うちには、掟があって。
頭から、新入りまで。
誰もがかならず、いちどは恋人を伴ってくる。
そういうカップルのことを。
ろくに学校に顔も出さないような彼らは
お当番
と、呼んでいた。

手をつないでいるのは、恋人どうしなのだろう。
きちんと着こなした制服姿は、きっと良い家のお嬢さんなのだろう。
いっしょに手を握っている男の子は。
まだ童顔を残した、女の子みたいに色白の肌と、ノーブルな顔だちの持ち主だった。
もうひと組は。
ショッキングピンクのワンピースに。白いヘアバンドの女の子。
寄り添う彼は、やっぱり色白の、表情を消した美青年。

ふた組のカップルの周りを、取り囲むようにひかえている男の子たちは。
見苦しさはないまでも。
あきらかにすれた、ちょっと翳りをもった風貌に。
冷たく研ぎ澄まされたものを帯びている。

夫婦ものらしいべつの男女のひと組は。
集まりの輪のいちばん隅に佇んでいて。
けれども男の子たちは、彼らのことをちょっと尊重しているらしい。
たまに交わされる囁きの合い間に浮かぶのは。
ちょっとはにかんだような、少年らしいほほ笑みだった。

そんな風景を。
ちょっと遠のいたところから、眺めているのは。
青いTシャツを着た、気の小さそうな少年。
女の子たちの恋人と似通った色白の面差しに、感情を消した目鼻立ち。

さぁ。おしまい。
さいごの一本を終えると。
ばしゃっ。ばしゃっ。
バケツに汲んだ水を、ぶちまける音。
さぁ、消えた。
頭だった少年が、口にすると。
行こうか?
一同をせきたてるように、公園の植え込みの影へと足を進めてゆく。

ふた組のカップルは。
ちょっと、息を呑んで。
お互いの顔を、見合わせあって。
もういちど、手をしっかりと、握り合う。

さぁ、お手々をつなぐのは、そこまでよ。
二番目の頭が、イタズラっぽく笑いながら、
寄り添うカップルのあいだに割り込んで、ふたりのあいだを隔ててゆく。
あ・・・
恋人の手を離した男の子たちは。
気弱そうに、眉をひそめて。
それでも両脇からつかまれた肩を引き離そうともせずに。
黒い影たちに囲まれてゆく恋人たちを見守っている。

善良な男の子たちを封じる手は。
肩に軽く添えられているだけだったが。
まとわりつくように、しなやかで。
むしろ、甘えてすがりついているようにさえ見える。

さっきまで。
いちばん遠くから様子を見ていた、あの青いTシャツの少年は。
かすかな灯りに蒼白い頬を滲ませて。
音もなく、男の子たちの背後に佇むと。
順ぐりに、うなじに唇を吸いつけていって。
楽になるから。
ひっそりと、つぶやいて。
ちゅう・・・っ
触れ合う素肌と唇のすき間から。
妖しい音を、洩らしてゆく。

なん対もの腕たちに巻かれた女の子たちは。
ふらりと芝生に、まろばされて。
ひとりは、濃紺の制服のプリーツスカートを。
もうひとりは、ショッキングピンクのワンピースを。
すそを翻して、芝生に尻もちを突いてしまう。
さぁ、お祭りの、始まり、始まり・・・
おどけたような男の言い草に、だれかがクスリ・・・と含み笑いしたら。
礼儀正しく、な。ていねいに、やるんだぞ。
頭だった少年が、鋭くたしなめていた。
シン、と静まりかえった男たちは。
女の子たちの服を、無言のまま引き剥いでゆく。
むしり取るような、荒々しさで。

あ・・・ぁ・・・ア・・・
時おりみじかい声を洩らす、気弱そうな男の子を。
やはり恋人を取られたべつの男の子が。
白い頬に凛としたものを漂わせて。
しっかり、手を握ってやっている。
兄弟みたいに、寄り添いながら。
恋人たちが、つぎつぎに凌辱されるのを。
肩に軽く添えられた腕たちを、振り払うこともなく。
いちぶしじゅうを、見守っている。
瞳の奥に、蒼白い昂ぶりを浮かべながら。

わさ、わさ・・・
ユサ、ユサ・・・
乱れた着衣の、衣擦れの音。
長い髪の毛の、揺れる音。
時おり洩れるうめき声は、少しずつ、随喜の色を深めてゆく。
制服姿の女の子は。
はじめはちょっぴり、べそをかいていたけれど。
ショッキングピンクのワンピースの子が、
真っ赤なキャミソールを振り乱して、くすぐったそうに声をたてると。
いつの間にか、顔うつむけて、恥じらいながら。
なん人めかの男の子あいてに、さっきより激しく腰を動かしはじめていた。

あぁ、奪られてゆくね。
兄めいたほうの少年を。
気弱な感じの少年は、すがるように見あげている。
征服されちゃうのかな。
帰ってくるさ。ちゃんと、いい女になって。
ふふっ。
兄めいた少年は、歪んだ笑み声を洩らしていた。

今夜が初めてではないらしい。
彼の目線の彼方で乱れ舞う、恋人のワンピース姿が。
きゃっ、きゃっ、と。
くすぐったそうな笑い声を洩らすのを。
感じる。感じちゃう~。
もうたまらない・・・っていうように、芝生のうえを転げまわるのを。
むしろ眩しげに、小気味よげに、見守っている。
そういえば。
気弱なほうの少年も。
半ズボンの下、むき出しになった太ももを。
がくがく、がくがく、震わせていて。
洩れた滴りに、ハイソックスをしとどに濡らしてゆくのだった。

順番、なんですものね。
お当番の男の子たちの耳もとに、ひくく落ち着いた声は。
夫婦ものの、奥さんのほうだった。
不良息子をとりなす母親みたいな声だった。
あ。こんばんは。
男の子たちは、恋人たちにむらがる凌辱をよそに。
礼儀正しく、会釈を交わす。
ごくろうさま。
添えられた腕たちは、とうに離れて、凌辱の輪に加わっている。
キミたちも、いい思いしたんだものね。
しょうがないですね。
感じる・・・?
ええ・・・感じます・・・
きみも・・・?
ウン・・・ずきずきする。
明日から、彼女とまともに顔合わせられる・・・?
だいじょうぶですよ、ボクは。
ボクもたぶん・・・
はは。無理すんなよ。
だって。
ちゃんと彼女を、家まで送ってゆくのよ。
もちろんです。
ああ、そう。自信なさそうなキミのほうは。
あっちの奥で、もういちど。彼女とふたりきりで、むつんでいくといい。

服に着いた泥を払うころには。
女の子たちはもう、落ち着きを取り戻していた。
奥さんが、女の子たちを植え込みの影に呼び寄せて、
軽くケアしてやっていた。
過ぎ去ってしまった一時の昂奮は、
ひと晩の夢のよう。
制服姿の少女は、とろんとした目で恋人を見あげ、
どちらからともなく差し伸べられた手は、いちど解かれるまえよりも、強く握り合っている。
ショッキングピンクのワンピースの子は。
クールな恋人とじゃれ合いながら。
感じていただろ。
感じてなんか、ないってぇ。
他愛なく、じゃれ合っている。

ひと組、またひと組と立ち去ってゆくカップルを。
少年たちは、眩しげに見送っている。
うまくいくかな、あのふたり。
心配したほうの、制服姿の彼女のほうも。
彼に促されるまま、雑木林のほうへと足を向けてゆく。
もらっちゃった。
ひとりがぶら下げたのは、真っ白なハイソックス。
そういえば、姿を消してゆく制服スカートの下、
靴下が片方だけになっていた。
もうひとりの少年も、得意そうに。
透き通った肌色のガーターストッキングをひらひらさせる。
いいモノもらったね。
ウン。
女の子の靴下を片方、彼氏からもらった男の子は。
一週間、彼女をモノにする権利を得るという。
案外さばけてるじゃん、あいつ。
色白の気弱な顔の持ち主は、どうやら一座のなかで株を上げたようだった。

さぁ、これからどうする?
少年たちの視線は、ただひとり残された女―――年配の人妻―――に注がれた。
あら。
意外そうな声あげた奥さんは。
私も、相手になるの・・・?って。
ちょっと戸惑った顔をしたが。
取り囲んでくる獣たちに。
しょうがない子たちねぇ。
苦笑しながら、夫に許しを請うている。
だんなさん、縛るよ。
にわかにはじまった第二幕に、ご主人も苦笑いして、応じてゆく。

少年たちが、母親くらいの齢のスーツ姿に。
甘えるような欲情を撥ねかしてゆくのを。
夫は植え込みの向こうから、はらはらどきどきと、窺っていた。

こと果てたころには、あたりはもうだいぶ、明るんでいた。
奥さんはスーツに着いた泥を払って。
チリチリに裂けたストッキングを破り取ると、夫に手渡した。
夫は頭の少年にそれを渡すと。
今夜でもいい?
ニッと白い歯を見せる少年に。
いつでもお出で。
照れくさそうに、囁き返す。

じゃ。
みじかいたったひと言で。
人影たちは、散り散りになってゆく。
なにごともなかったように。
残された花火の燃えかすだけが、朝露に濡れている。

パパとボクの秘密

2007年06月20日(Wed) 07:20:36

ボクの彼女はこのごろ、靴下にはまっている。
通学用の、白のハイソックスも。
お出かけ用の、柄ものの黒ストッキングも。
買い物に行くのに履いてきた、黒のスケスケのナイロンハイソックスも。
ボクのパパの、エッチな唇を吸いつけられて。
ぶちっ。ぶちぶち・・・っ。
って。
かすかな音をたてて。
裂け目を白く滲ませてしまっている。
くすぐったそうに、きゃあきゃあはしゃぎながら。
うれしそうに、血を吸われてゆく彼女。
  処女の生き血が、好きなんだって。
  わたしの血が、おいしいんだって。
ボクの目線を、挑発するように。
ハイソックスの脚を、目のまえでぶらぶらさせながら。
ほろ苦いボクの顔を、チラチラ窺ってくる彼女。
そんな自慢を、くすぐったそうに聞いているボク。

でも、みんないっしょなんだ。
担任の豊子先生も。
お出入りの保険のセールスさんも。
お隣の奥さんだって。
パパに抱きつかれると、みんなおなじようにのぼせ上がって。
ちゅうちゅう、きゅきゅっ、と血を吸われちゃって。
スカートのすそを、じぶんからたくし上げていって。
お洒落なスカートの下に穿いている色とりどりのストッキングを、
他愛なく、破られちゃうんだ。
そんな眺めが、とても面白くって。
パパがみすみす彼女の靴下をせしめてゆくのを。
チリチリになったストッキングを、なん足もぶら下げて悦に入っているのを。
つい許してしまっている。

けれどもパパがいちばんだいじにしているのは。
古びたグレーのストッキング。
赤紫色の血の滲んだ裂け目を、いくどもいとおしそうになぞっては、目を細めているんだ。
持ち主は、ボクのママ。
ほかの吸血鬼に襲われて、血をたっぷりと、吸い取られて。
ママを返してもらうのと引きかえに、パパは自分の血を一滴残らずプレゼントしていた。

それでも時にはママを連れ出されて、血を吸われちゃうこともある。
そんなとき。パパは目を細めて、あとをついていって。
ママが襲われるところを、それは愉しそうに見守っている。
小娘みたいに飛び跳ねながら、逃げ惑うママも。
愉しそうに、きゃっきゃとはしゃぎながら。
両肩をつかまれて。はがいじめにされて。
うなじを噛まれて。
フリルのついたブラウスに、赤い血をとろりとしたたらせて。
草むらに押し倒されて。
真っ白なタイトスカートから、脚をばたばたさせながら。
そう。そのひとと、脚を交えてしまってゆく。
太ももまでのストッキングを、片方は彼がせしめていって。
もう片方は、パパに渡してくれる。
ママの足型を残したなよなよとしたストッキングは、かすかなてかりを滲ませていて。
パパの手の中で、ヘビみたいに妖しくくねっている。

見せて。
ボクがママのストッキングをねだると。
俺のだぞ。って。しかめ面をして。
それでもしぶしぶ、手渡してくれる。
しんなりしなやかな、薄手のナイロンは、ボクの手のなかで。
ママが穿いていたときと変わらないツヤツヤとした光沢を。
静かに妖しく、滲ませている。
もう気が済んだだろう?
パパは手早く、ボクの手からママのストッキングを抜き取ると。
ゆう子さん、こんどはいつ遊びに来てくれるのかな?
彼女を公然と、ねだられて。
なぜかズキズキ昂ぶってしまうボク。
週末のお約束。
彼女はどんな靴下を、履いてきてくれるのだろう?
靴下をせしめたいパパと。
せしめられるところを覗き見したいボクのために。


あとがき
ひと月くらいまえに描いた、一連の婚約者寝取られものです。
パパと婚約者の、ちょっとエッチなからみに昂ぶるボク。
根源は、ママを目のまえで襲われちゃったとらうまだったのかも?

夜更けの出逢い

2007年06月18日(Mon) 05:23:07

あの・・・
とつぜん、声をかけられた。
相手は、童顔の残る少年だった。
ふつうの状況だったら。
どう・・・というほどのことはなかった。
それが夜更けの、人通りの絶えた公園だということと。
なによりも。
男のわたしが、スカートを履いて、薄いストッキングを脚に通している・・・ということでなかったら。

何・・・?
私は控えめに、口を開く。
できたらこのまま、通り過ぎてくれればいいのに。
このあたりで、人見かけませんでした?
彼の言葉遣いはあくまで丁寧で、ふつうのもの。
わたしもふつうに、受け答えすればいい。
さぁ・・・
わたしのとがめるような怪訝そうな目線に、少年は決まり悪げに曖昧に笑い、足音を遠ざけてゆく。
こういうことは、案外と珍しくない。
女装のまま、公園にたむろする不良少年たちと仲良くなって。
花火だって、したことがあるのだから。
もうすぐ花火の季節・・・
ふと、さっきの少年の面差しがよみがえる。
あの花火のつどいの輪の中に、いちばんすみっこでひっそりうずくまっていた影。
もうすこし、話してゆけばよかったかな。
真っ昼間は、お互い顔をあわせることもない、赤の他人だが。
花火のときだけは、友だちだった。

あの・・・
ためらいがちにかけられた声に、振り向くと。
さっきの少年が、おどおどとこちらに顔を向けている。
いつ、引き返してきたのだろう?
わたしはちょっとびっくりしたように。
あのときの花火のひと・・・だよね?
つとめて柔らかに、声をかけた。
あの・・・
少年は、ちょっとのあいだ。
話の接ぎ穂に、戸惑ったようにしていたが。
思い切ったように、口を切った。
ボクと、付き合ってもらえませんか?
え・・・?
どういうことかな・・・?
あの・・・異性として・・・
上ずった声で、口ごもりながらも。
彼はスッ・・・と息がかかるほど近寄ってきて。
わたしの両肩を抱きかかえると。
ちくん・・・
首のつけ根に、かすかな痛みを感じたときには。
もう、唇を離していて。
その唇には、バラ色のしずくがしたたっている。
おじさんが、隠れて女装しているみたいに。
ボクにも・・・秘密があるんです。
そう・・・
吸血鬼だったの。
驚いちゃった。
怖くないですか・・・?
怖いさ。
正直に、告白した。
吸い尽くされちゃうのかな?きみに。
うぅん・・・
切なげにかぶりを振るのが、むしろいとおしかった。

たまに、逢って・・・
いいよ。たまに・・・だったら。
じゃ。
少年は、そっけなく身を離してゆくと。
もういちど、こちらを振り向いて。
ご馳走さま。
育ちの良い子が、他所のお宅でおやつを頂戴したときみたいだった。

ざく、ざく、ざく、ざく・・・
きょうも少年のために、女の服を着て。
公園をさ迷っているわたし。
少しずつ。すこしずつ・・・
少年が啖らう血の量が、増えているような気がする。
並んでベンチに、腰かけて。
半ば抱かれる姿勢のまま。
少年の片腕は、わたしの遠いほうの肩を引き寄せて。
うなじに、しっかりと痕を残して。
ちうううううぅ・・・っ
わたしの体内から血液を抜き取ってゆく音が、かすかに洩れる。
もう片方の手は、さっきから。
まるで恋人を愛撫するように。
黒ストッキングのひざ小僧を、なぞるように触れつづける。
薄手のナイロン越しに、密着してくる手が。
初めてのころの、遠慮がちな触れかたとはうって変わって。
大胆に、しつように。
まさぐりをしみ込ませてくる。
あぁ・・・
感じてしまうよ。そんなにしたら。
いいじゃない。
少年は、わたしの血で染めた唇を。
なおもしつように、すりつけてくる。
そう。甘えるように・・・

行ってらっしゃい。
スーツ姿で、出勤のとき。
妻はいつも控えめに、声をかけて。
私を送り出してくれるのだが。
顔色わるいわね、あなた。
こんなこと、言ってもいいのかしら。
気遣わしげに、こちらを見つめる。
誰にもわからないように、痕をつけてあげる。
少年のことばどおり。
職場の誰もが、彼のつけた痕に気づくふうはなかったのに。
妻には、見えるらしい。
今晩は・・・私もご一緒していいかしら?
夜更け、家族が寝静まってからのわたしの習慣を。
寝つきのよいはずの妻だけは、気づいていたらしい。

公園への道をたどる、ストッキングに包まれた脚。
いつもはただひとり、たどる夜道を。
きょうは二対の黒ストッキングが。
申し合わせたように、歩みを並べてゆく。
ほんとうに、いいの・・・?
エエ。かまいませんわ。
薄い唇に、いつもより鮮やかに紅を刷いた妻は。
潔いほど、きっぱりとしている。

約束のベンチの傍らにあらわれたのが、わたし一人ではないことに。
少年はちょっと、戸惑ったような顔をしていたが。
お邪魔だったかしら?
つとめておだやかな声をつくる妻に。
こんばんわ。
神妙に、挨拶を投げてきた。
とがめに来たわけじゃ、ないんですよ。
夫とどんなふうにしているのか。見せてちょうだい。
もしもよろしければ、わたくしの血も差し上げますから。
えっ。
少年の頬に、喜びの色が浮かぶのを。
わたしは密かに、じわりとした嫉妬を滲ませる。

いつものように、並んでベンチに腰かけて。
いつものように、ヘビのように巻きついてくる腕のなか。
いつものように、ぴったり影を寄り添わせて。
いつものように、咬まれて、血を啜らせてゆく。
理性がじわりと、不透明な滲みを帯びてくると。
少年は、わたしの足許にかがみ込んできて。
やっぱり、いつものように・・・
ストッキング、破らせてね。
こくり、と童女のように頷くわたしに。
悪童の笑みを、ありありと滲ませて。
遠慮会釈なく、素肌を透きとおらせた薄いナイロンのうえ、
むぞうさに、なまの唇を押しつけてきた。
くしゃっ。
ふしだらにねじれてゆく、黒のストッキング。
いっぱい、汚して。辱めて・・・
妻の目のまえで、正体もなく口走ってしまっている。

いちぶしじゅうを、じいっと見守る妻は。
とろりとした目線の彼方。
おずおずと近寄ってくる少年をまえに。
貴婦人めかして、手の甲を伸べて。
器用な接吻に、ゆだねてゆく。
おばさまの血じゃ、げんなりよね?
小首をかしげて、ほほ笑む妻に。
少年はけんめいに、かぶりを振ると。
では・・・と、わたしの傍らに腰をおろしてゆく。
肌を触れ合うほどの、ぬくもりが。
今さらながら、いとおしい。
そっと腕を回した腰つきに。
ちょっと咎めるような流し目を返してくる。

ぴちっと伝線を走らせたふくらはぎの隣に。
淑やかな黒ストッキングの脚が、もう一対。
少年はさっきわたしにしたのと、おなじように。
妻のまえ、ゆっくりとかがみ込んでゆく。
ひざ小僧に這わされた唇に。
妻はかすかに身じろぎをしたけれど。
ちゅうっ・・・
かすかに洩れる、吸血の音。
ちゅるっ。
唾液のはぜる音。
いずれもが、濃い調べを、わたしの鼓膜にそそぎ込んでくる。
妻の脚を彩る礼装は、他愛もなく乱されていって。
わたしの脚と、おなじほどに。
ふしだらな裂け目を、滲ませてゆく。

ちゅうっ、ちゅうっ、ちゅうっ・・・
ごくり・・・ごくっ。ごくん・・・
規則正しい音と、入り交じって。
間歇的に、喉を鳴らす少年に。
妻はとろんとなって、身体の力を抜いてゆく。
もたれかかってくるずっしりとした重さが、ちっとも苦にならない。
容赦なく抜き去られてゆく、妻のぬくもりが、むしょうにいとおしくて。
わたしは妻の、遠いほうの肩を抱いて。
ふくらはぎを吸われつづける妻のひざ小僧を、なぞるように、撫してゆく。
おいしいかしら?お気に召したかしら?
惑うような、声上ずらせた囁きに。
少年は唇を離し、声を忍ばせて。
ご馳走さま。
お行儀わるく、スカートの裏地で口許を拭った。
まぁ・・・
恥らう妻を、ひきたてるようにして。
おじさん、ちょっとだけ・・・いいよね?
少年は、大人の翳りをよぎらせながら。
妻を、植え込みの向こうへと、いざなってゆく。

あっ・・・はぁ・・・あうううううっ・・・
悩ましいうめき声が、途絶えがちに洩れてくる。
木立ちの合い間から、切れ切れに覗く白い裸体は。
黒一色のスーツを乱されたすき間から。
夜目にも鮮やかに、浮き上がる。
のしかかる少年の背中越し。
白い腕を、ヘビのように巻きつけて。
妻はいつまでも、鮮やかに紅を刷いた口許から。
蒼い焔を、吐きつづけてゆく。

行こうか?
参りましょう。
子どもたちが寝静まった夜更け。
おそろいの黒のスーツに身を包み。
わたしたちは今夜も、少年の待つ公園へと。
申し合わせたように薄墨色に染めた脚を、歩ませてゆく。

街燈の下で

2007年06月18日(Mon) 01:02:41

受話器の向こう。
くぐもった声が、洩れてきたのは、夕方のことだった。
  え・・・?なんですって・・・?
よく聞き取れないほど、くぐもった声は。
まるでこの世の果てから聞こえてくるようだった。
押し殺すような声が、かすかな愉悦を秘めて。
  お前の婚約者を、今夜も犯す。
たしかにそう、言っていた。
じく・・・っ。
スラックスの下。
太ももに秘めた、かすかな痕。
牙を深々と埋められた痕は、いまでも時おり血をあやして。
濃密な疼きに、マゾヒスティックな快感を滲ませてくる。

周囲には幸い、だれもいない。
広いオフィスの一角で。
まりあを含めた同僚たちは。
みんな出払ってしまっている。
ホワイトボードに埋められたスケジュール。
まりあの欄には、「直帰」とだけ、書かれていた。

ひたひた・・・
ひたひた・・・
一人歩き、だなんて。
思っているのはおそらく、まりあだけだろう。
かろうじて視界のとどくほどの間隔を取って。
まりあと私のあいだには。
黒い影が、足音を忍ばせていた。
やがて、影はサッと植え込みに隠れると。
目にもとまらない速さで、駆け出していた。
もちろん足音など、ひそりとも立てないで。

影が植え込みから飛び出して、まりあの行く手をさえぎったとき。
私はなにかに引きずり込まれるように。
逆に植え込みの影に、身を移していた。
スラックスの下。
ヤツにつけられた痕が、じくじくと疼いている。
嫉妬の疼き?奪われることが・・・快感?
自分で自分を疑ってしまう。一瞬、二瞬。
男はまりあを、これ見よがしに抱き寄せて。
こわがらなくてもいいよ。
たしかにそんなふうに、囁きかけていた。

熱い抱擁に、包まれて。
ショッキングピンクのスーツ姿が、くたりと力を喪った。
ベンチにゆらりともたれかかって。
焦点の定まらなくなった目が、虚ろにさ迷っている。
あぁ、だめ・・・ダメだよ。まりあ。
しっかりするんだっ。
心のなかの叫びは、もちろん届かない。
そして・・・それ以上に蝕まれた本能が。
先を・・・先を・・・と。
予期される凌辱を、望んでいる。

男はしずかに唇を寄せていって。
てかてかとした光沢をよぎらせた肌色のストッキングに、吸いつけてゆく。
あぁ・・・いけない・・・ダメだ。
私は、哀願するように。
飢えた唇の熱い誘惑を、忌みつづける。
ぬるり・・・ぬるり・・・
私の切望を、あざ笑うように。
なすりつけられてゆく唇は。
まりあの理性を確実に、侵蝕していった。
キュッとこわばった、ふくらはぎの筋肉が。
いまは・・・愉悦に震えている。

ストッキングを思うさま、破らせて。
すらりとした脚に、じかに唇を吸いつけられて。
あぁぁ、いいぃ、いいわ・・・もっと・・・
ふしだらに、身をねじり、髪振り乱して。
仰のけられたおとがいが、街燈の光芒に包まれている。
不自然に激しい、作為的な上下動が。
婚約者の貞操が破られたことを告げている。
それだというのに。
私の股間は、いつか狂おしいほど逆立って。
白く濁った毒液を注ぎ込まれてゆく恋人の痴態に。
めまぐるしい反応で応じてしまっている。
剥ぎ堕とされた着衣を、ふしだらに巻きつけたまま。
あられもなく痴情に耽る、未来の妻。
あぁ、これは・・・
きっと、結婚してからも、つづくのだろう。
焦がれる私を、横目に愉しみながら。
婚外の熱情に耽る妻。
思い描いた新生活の妖しさに。
私はとうとうガマンしきれずに・・・
不覚にも、スラックスを濡らしてしまっている。

深夜の凌辱

2007年06月18日(Mon) 00:45:54

街燈がところどころ銀色に照らし出す、夜の公園。
まえを歩く柔らかい影は、かすかに足を速めたようだ。
こちらの正体に、気づいたようだな。
くふふふふっ・・・
思わず洩れる、ひっそりとした笑み。
相手が抗うほど昂ぶりを濃くするのは。
この道に迷い込んでこのかた、身について離れない罪な嗜好。
若い肢体から獲られるはずの、ぴちぴちはずむ生気に。
心の底から、渇望を覚えていた。
逃がさんぞ。まりあ。
オレはそっと、喉の奥で愛する女の名前を口ずさむ。

植え込みの影に隠れながら先回りする足取りが、ひどく覚束ないのは。
これから始まる遊戯にワクワクとしてしまって、
地に足が着かない気分のせい。
足早に通り過ぎようとする女より、さらに足を速めていた。
公園から、のがすものか。
植え込みの影から、まりあの行き先を遮ろうとしたとき。
眩しく目を射る街燈の明るさに。
ほんの少しだけ、眉をしかめると。
目のまえの女は、うら若い肢体をかすかにはずませていた。
昂ぶっていやがる。
オレはひそかに、ほくそ笑む。
怖がっているだけだって・・・?
興をそぐことを言うなよ。

「逃れられると思ったか?」
含み笑いがしぜんと交じる声色に。
まりあは、アッ・・・と声をあげ、立ちすくんでいる。
声も出ない。身はすくんでしまっている。
幾度襲っても変わらない初々しさに。
オレはしんそこいとおしくなって。
女のきゃしゃな体が折れるほど、抱き締めたくなってきた。

「そんなに怖がらなくてもいい」
いたわりで、言っているのではない。
女をいっそう、恐怖に射すくめて。
いうことを聞かせるために、口にしている。
我ながら、悪いやつ・・・
そう思った時には、女はオレの腕のなかにいた。
鼻先をよぎる、かすかな香水の香り。
振り乱した髪の、甘い汗くささ。
吸いつけた唇の下、ほのかなぬくもりが。
オレにすべてを、忘れさせていた。
ぐぐ・・・っ。
薄い皮膚を破ってもぐり込ませた牙が、たしかな感触をつかまえている。
活き活きとした血潮をたっぷり含んだ血管を。
いともあざやかに、食い破っていた。

ふらふらと力なく、尻もちをついたベンチのうえ。
まりあはそれでも、内股になって。
短めなスカートの股間を、引き締めようとしている。
内股の女は、貞操観念が強い・・・だなどと。
だれが、言ったのだろうか?
そう、拒まれるほど。堕としたくなる。
やはりオレは・・・悪いやつなのだな。
思いをよぎらせながら。
不埒な愉しみに耽るため。
女の足許に、サッと身をかがめていった。

まりあの足許を、包むのは。
薄手の肌色のパンティストッキング。
街燈に照らし出された人工的な明るさは。
薄手のナイロンにメタリックなまでの輝きをよぎらせている。
そのうえから、思い切り下品に。
薄いストッキングごしに、すらりとした脚をいたぶりはじめていた。
にゅるっ・・・くちゅうっ。
聞こえよがしに、音をたてながら。
気品をたたえた装いは、はぜる唾液に、みるみる穢されてゆく。

あっ・・・はぁ・・・っ。
微妙な律動が。
女の五体を、支配し始めている。
かがみ込んだ姿勢のまま、決して見えないはずのまりあの面貌。
白い横顔に、虚ろな惑溺がよぎるのが。
ありありと感じられた。
破っちゃ、ダメ・・・咬まないで・・・
無心にいやいやをする足首を、ぎゅうっと抑えつけて。
むき出した牙のまえ、薄手のナイロンはいともたあいなく、裂けてゆく。

熱情のこめられた血潮が、ぬるぬると。
オレの喉を、ゆるやかに浸してゆく。
欲しかったぬくもりが。
求めてやまなかった生気が。
ほんの一瞬、冷えた体内をバラ色に染めた。
夢中になって。
オレはまりあの上体にとりついて。
ブラウスの襟首をはだけて。スカートを腰までたくしあげていた。
まりあの血を吸ってよけい昂ぶった一物は。
逞しさを誇示するごとく、剛くそそり立っている。

あぁぁっ、あぁぁっ、いいッ、いいッ、いいわッ、いいッ・・・
激しい上下動に、ぴったり腰をあわせてきた。
や、やるな・・・
オレは随喜にうめきながら。
抉るように、まりあの奥底を貫いてゆく。
ざわ・・・
植え込みの一角が、揺れている。
だれかが、覗いているのだろうか?
まりあに、囁いてやろうか?
だれかが、犯されているお前に昂ぶっている・・・と。

帰宅

2007年06月17日(Sun) 08:15:55

お邸の棺おけのなかから這い出たオレは。
人の生き血をもとめて、ふらふらと夕暮れの道をさまよってゆく。
行き先は、つい先月まで我が家だったところ。
そこに住まう中年の男女に、十代の少女は、オレの欲する若い血液を、ふんだんに蔵しているはずだ。
父だったひとは、困り顔をしながら。
自分の妻を差し招いて、オレとふたりだけにしてくれる。
隣の部屋でハラハラしている男の耳に届くように。
女に呻きをあげさせるため、スカートの奥に熱いものを吐き出してゆく。
妹だった少女は。
制服姿のまま、俯いていて。
オレの訪れを、待ち構えている。
たたみに組み伏せる快感。
恥ずかしげに閉じた瞼のいとおしさ。
薄い皮膚に、すうっと牙を通していって。
うら若い血潮に、ひたすら酔い痴れる。
辱めないのは。処女の血を吸いたいからなんだぞ。
少女は涙ぐみながら。
オレに破かれたストッキングを脱いで、むき出しの太ももをさらしてくる。
お兄ちゃんなら・・・なにをしてもいいんだよ・・・
無垢なことばに、かつてのぬくもりをフッと取り戻す。
いや、いや。そんなことではない。
お前たちから摂った血が、体じゅうにまわって、ちょっと心地よくなっただけなのさ。

吸血アルバム

2007年06月17日(Sun) 08:08:30

和装の花嫁姿の後ろのページ。
一糸まとわぬ若い裸体をさらしているのは、母。
セピア色がかった、やや不鮮明なモノクロ写真は。
その晩起きたことを切れ切れにしか、かたらない。
おめでとう、と書かれた筆跡は、なぜか父のもの。
そういう祝福もあるのか・・・と、妙に納得してしまう。

白のスーツ姿の妻は、まだうら若く、
足許に迫る唇に、しきりに恥らっている。
いまでは影をひそめた流行の髪形に、やはり目にすることのなくなった幅広な襟のスーツ。
胸元を引き締めるボウタイが、シックな感じをただよわせて、
きりりと結い上げられた黒髪のつややかさとともに、女の気品をきわだたせていたけれど。
辱められてゆく足許は。
肌色のストッキングがくしゃくしゃにねじれて。
ふしだらな裂け目さえ、滲ませている。
かすかによぎるナイロンの光沢が。
淫靡さを却って増幅させていた。
ページの隅っこに、小さな字で。
「純潔喪失記念」と、新婦を襲った運命が、ごく控えめにかかれていた。

舞ちゃん、お初!
娘の顔の、アップ写真。
首筋を噛まれながら、娘はこちらに向かってピースをしている。
おいおい。あられもない。
つい父親の目になってしまうのが。
つぎのページでは、男の目にすり替わっている。
どんな絵柄?
ここで語るのは、やめておこう。
娘の恥にもなることだから・・・
傍らから覗き込んできた息子は。
姉さん、かわいいなあ。
って、呟いて。
まだなにも貼られていないページに、さらさらとペンを走らせる。
「ユウイチの婚約者、犯さる!」
契約成立・・・だね。

おめでとう。
純潔喪失記念
婚約者、犯さる!
どれもが、写真を撮られるまえに書き込まれたもの。
女たちは、アルバムをまえに苦笑しながら。
姑や母たちの過去を、深い頷きで受け入れて。
夫や花婿がはらはらして見つめるのを、ちらちらとイタズラっぽく盗み見ながら。
じわじわと血を抜かれ、理性を奪われて。
服を脱がされてゆくのだった。

吸血ノオト

2007年06月17日(Sun) 07:58:50

いいモノを、見せてやろうか?
ヤツがそんなことを、いうときは。
たいがい、ろくでもないものだったりする。
いつだかは、女房を犯したすぐあとの、
水もしたたる一物だったことがある。
けれどもすっぱり断るわけにもいかないのが、憂き世の義理というものか。
あぁ、きょうはどんなものを見せてくれるのかい?
わたしはいかにも興味津々・・・という顔つきで、
ヤツの手許を覗き込む。

取り出されたのは、一冊の古びたノート。
吸血ノオト、と書かれてある。
付箋をたぐって、ページを開くと。
見開きで、カレンダーになっている。
縦に一列。
ご主人(41)、奥様(38)、大奥様(63)、令息(14)、令嬢(13)
なんて、書かれてあって。
おのおのに、生年月日と血液型。勤務先や学校名まで記されている。
日付の欄には○や×がランダムな感じで書き込まれていた。
なんのことだか、わかるね?
家族構成は、お隣のご家族に一致している。
わざと名前を伏せてあるのは。恩人に恥を欠かせない配慮なのだよ。
そこんとこ、恩着せがましくいわないほうがいいと思うけど・・・
いいたい言葉を飲み込んだ。

×は体調不良のため、面会不可。
△は着衣のうえから体を触れただけ。
○は首尾よく吸血。
◎はもちろん、・・・。
ほかにも▲だの□だの、凡例にはないマークがところどころ。
どうせ・・・ストッキングだけ破らせてもらった、だの。ご主人のまえで遂げてしまった、だの。ろくな意味ではあるまい。

つぎのページ。
やつが冷然と、口にした。
有無を言わさぬ、命令口調。
おそるおそるめくったページには、わたしの家の家族構成。
さっきより。
○や◎の頻度が高い。
妻などは、ほとんど毎晩のように、どちらかのマークがつけられているではないか。
どうかね?
信任度がうかがえて、嬉しいよ。
皮肉をそのまま、真に受けて。
今夜も誘ってあげるよ。
得意そうに、笑っている。
けっこうなことだね。
今夜も、眠れない夜になりそうだ。

息子の欄の下に、ちいさく書かれたイニシャルは。
息子の彼女のものだろう。
毎日のようにつけられた○印の果て。
赤ペンでわざわざ◎と記されている。
ご令息隣席のもと、とまで、書かれている。
やれ・・・やれ。
見たかったかね?
うそぶく彼。
目をやると。妻のところにも、◎
添えられた数字は、相手の数らしい。
「6」と、むぞうさに、書き込まれていた。
わたしの家が主催した、乱交パーティーの夜だった。
あの晩。妻も母もひとつ部屋で着衣を乱していたが。
しばらく事のなりゆきを覗いていた息子は、
母や祖母を犯した男を、婚約者の待つ別室に引き入れたのだろうか。

ノートは何冊にも、わたっている。
昭和4×年。
三十年も、まえのこと。
わたしがヤツに、初めて血をプレゼントした日は、赤枠になっていた。
一週間後、だったのか。
母がヤツに襲われて。
初めてモノにされてしまったのは。
父の欄にも、ちいさく○印が記されている。
昭和5×年。
◎の頻度は、ほぼ毎日。
よく耐えたものだね。
振り返るわたしに、
加減して、いただいているからね・・・
ヤツは得意そうに、鼻を鳴らす。
やがて妻のイニシャルが、わたしの欄のすぐ下に書き入れられて、欄ができ、
一週おきに△がつき、○が記入され・・・
初めて◎が書き入れられたのは、三ヶ月もたったあとのことだった。
卒業式の、まえの晩だったね。
制服姿を襲える最後のチャンスだと、きみにせがまれたんだっけ。
そうそう。お前は頬ぺたを紅くして。受話器をとってくれたんだったね。
紙のうえの、赤く記入された◎を、いとしげに撫でながら。
おめでとう。
だれにたいしてのものなのだか・・・思わず呟いていた。

あらら なんだか。^^;

2007年06月16日(Sat) 20:50:06

だいぶ濃いですね・・・きょうのお話ども。
ストレスが濃いときは、決まってこうです。
まぁ。発散するために、描きなぐっているようなものですから。(^^ゞ
(と、逃げを打つ。)
きょうのはてきとーに、読みっ飛ばしてくださいませ。
え?
いつもそうしてるって?
わはは・・・。(^_^;)

乱れ舞い

2007年06月16日(Sat) 20:38:20

妻のえり子が組み敷かれているのを、横目にして。
紋付を着た母は、取り澄ました顔で、天井を仰いで。
少しだけですよ。
ちいさな声だったが。
きっぱりと、口にすると。
静かに堅く、まぶたを瞑る。

後ろから抱きついた吸血鬼が。
母のうなじに牙をもぐり込ませて。
キュウキュウ・・・キュウキュウ・・・と。
ひとをくったような音をたてて、
生き血を吸い取ってゆく。
五十を半ばすぎた襟足は。息子のわたしの目にすらも。
まだじゅうぶんに、なまめいていて。
抱きつく腕に、じりじりとこめられた力が。
そのまま紋付に深いしわを刻んでゆくのを。
狂おしい目で、見守るばかり。

くたり。
音もなく、姿勢を崩した和装に。
影は、我が物顔に、おおいかぶさっていって。
母の体内から容赦なく、血液をむしり取ってゆく。
そう。
ちょうどわたしに、そうしたように。
そして、あの呪われた夜の宴で。
妻の喪服姿を、乱したときのように・・・

宴から戻った妻は。
不貞をはたらく、悪い嫁。
嫁の悪行を知った母は、打擲(ちょうちゃく)をさえ、加えたが。
妻はひざを突いた布団のうえ、
四つん這いになりながら。
じいっと歯を食いしばって。
かつて夫婦の床に敷かれていたシーツに、睨むような視線を埋めていた。

にわかにほの暗くなった、室内で。
母はちょっと驚いていたけれど。
背後から現れた影に、羽交い絞めにされてしまっていた。
いましめを解かれるまえに・・・淑女は、淑徳を喪うことになる。
ゆらりと立ち上がった嫁は、自分を挟み込むようにして、
ぐいいっと両肩を抑えつけてきた。
ふたつの影に、挟まれて。
母は息子と嫁の仇敵に、素肌を侵されて。
ただ、愉しみのため・・・己の血を饗しはじめていた。

淪落に堕ちた布団のうえ。
母はしどけなく、和装を乱して。
ずぶずぶと腰の奥深く埋め込まれた肉の牙に。
われ知らず歓びのうめきを洩らしてゆく。
ひくく切れ切れに震えるうめきは、やがて意味を持つ言葉になった。
おとうさん。ごめんなさい。ごめんなさい。
貴和子は感じています。感じてしまっています・・・
嫁とおなじく、未亡人の体をむさぼられ。
母は一個の女に、戻ってゆく。

宵闇に、まぎれるように。
嫁と姑は、ふたりながら。
夜風に黒のスカートをなびかせて。
漆黒のハイヒールの音を響かせてゆく。
艶ひとつないパンプスは、てかてかのエナメルのハイヒールに履きかえられて。
きりりと足許を引き締めるのは、かすかな光沢を帯びた薄墨色のストッキング。
和装を脱ぎ捨てた母は。
喪服を脱ぎ捨てた妻とおなじ、娼婦な貴婦人。
玄関のまえで、ふたりは共犯者の笑みを交し合って。
どちらかともなく、インターホンを鳴らしている。

群がるように、集うのは。
血に飢えた異形の獣たち。
うら若い血を、一滴でも多くむさぼろうと。
いずれ劣らぬ白い柔肌に、牙や爪を突きたてようとする。
女たちは、ゆるくまさぐる掌を、それとなくさえぎりながら。
いやらしいわね。
ほんとうに。
顔見合わせて、ほほ笑みながら。
淑やかに染まる黒ストッキングの脚を、さし伸ばして。
蒼白く透きとおる脚を、惜しげもなくさらしてゆく。

ぎぃ・・・ぎぃ・・・
ゆさ・・・ゆさ・・・
ちぅ・・・ちうぅ・・・
堅いベッドの、きしむ音。
長い黒髪の、揺れる音。
静かに血潮をむさぼる音。
かすかな音どもの交錯するなか。
女たちは、半ば開いた口許から、愉悦の焔を洩らしている。
漆黒のスカートの、乱されたすそからは。
申し合わせたように太ももをよぎる、黒のガーターが。
白い肌を、鮮やかに区切っている。

いかがかね?
ひっそりと傍らに立つのは。
母を、妻を、わたし自身を奪った男。
良い眺めですね。
妻が、母が、嬉々として生き血を吸われ、
舞うように、凌辱に身をゆだねるありさまを。
いまは歓びを伴って、目の当たりにしているわたし。
どの血がいちばん、美味でしたか?
うふふふふっ。
仇敵は人のわるい笑みを浮かべるだけで、
吸い尽くしてしまった血の味比べを、口のなかだけで反芻している。

そう訊くわたしも、今しがた。
見ず知らずの夫婦者を、牙にかけたばかり。
悲痛なすすり泣きが、愉悦のうめきに変わるまで。
いたぶり抜いた素肌が、蒼白くかさかさになってしまうまで。
妻を啜られた夫は、とっくに理性を喪っていて。
ギリギリと縛られた荒縄のなか、身じろぎもせずに。
もだえる妻に、昂ぶっていた。

お互い様、なのだよ。
そうなのですね。たぶん・・・
独り得をしている黒影は。
女と生き血を提供してくれる信者を、じわじわと増やしてゆく。
不道徳なかけ合わせを、愉しみながら。

喪服にジルバは似合わない

2007年06月16日(Sat) 18:32:45

ダンスホールの夜は更けて、それでも喧騒はかわらない。
ミラーボウルの煌めく下。
むんむんとした、人いきれのなか。
色とりどりの衣裳に装った男女が、狂ったように入り乱れている。

フロアの隅のボックスで、俯きがちの女。
三十代・・・くらいだろうか。
落ち着いた雰囲気は、家庭に入った女のもの。
ふさふさと巻いたエレガントな茶髪は、まだうら若い女のもの。
相手のいる女?それとも・・・?
どちらであっても、構いはしない。
宴のメンバーの誰もが。
女に影のように寄り添っている男に、チラチラと目線を送っている。
熱っぽく口説きつづける影は、今夜こそ・・・と感触を深めていた。
女はいつもアップにしてきた髪を、今夜にかぎってお嬢さんのように肩に流してきた。

まだ・・・一年と経っていないんですもの。
そう。
女は、若い未亡人。
黒一色の衣裳が、女の身分を示していた。
起伏豊かなはずの身体の線を消した、かっちりとしたジャケットに、漆黒のブラウス。
重たげなスカートの下からのぞくふくらはぎに装われた、黒のストッキング。
薄手のストッキングに包まれたふくらはぎは蒼白く透き通り、
物堅い衣裳に埋もれながら、ごく控えめにしっとりとした艶をよぎらせている。
清楚に装った足許に、男の不埒な目線が無遠慮に注がれるのを。
女はどれほど、わきまえていただろうか?

先立たれた夫は、体内の血液をすべて喪っていた。
まさかその血を獲たものが、目のまえにいるとは。
夢にも察し得ないことだった。
もちろん、さいしょから。
狙いは、女の生き血。
不幸な夫は、添えものにすぎなかった。

ゆるやかに淫靡なワルツの調べが絶えると。
打って変わって華やいだ喧騒が耳をつんざいた。
ジルバは・・・踊れますか?
わたくし、踊りのほうは。
渋る女と、ちょっとのあいだ、揉みあいになった。
きらめく光芒が一瞬闇に包まれたとき。
女と男の影も交錯した。
不意の接近に身を揺らがせた女は。
しばしのあいだ、息を整えようとしていた。
うなじにつけられた痕に、女は気づいていない。

淫らにざわつくホールの中心に。
ひと組のペアが、進み出ると。
めまぐるしい旋律にあわせて、テンポの速いステップを狂ったように踏んでゆく。
喪服の女は、すべてを振り捨てるように。
腕を振り、腰をくねらせて。
ひと目もはばからず、淫靡なゼスチュアに身をゆだねる。
流れるように差し出される腕を。
男はぐいと引っ張るほどに、握りかえして。
くっつき、離れ、離れ、くっつき・・・
目にもとまらぬ勢いで、ぐるぐる回って。
女をいつか、抱き抱えていた。

フィナーレ。
女はおとがいを、仰のけて。
男にうなじを咬まれている。
キュウウウッ・・・と、すごい音をたてて。
貞淑な未亡人の生き血が、男の喉の奥で渦を巻いた。
けれども、誰もがそんなこと、気にも留めていない。
おのおのが、それぞれのパートナーと。
音楽が果てたあとも、入り乱れて、踊り狂う。
夫婦は、はなればなれになって。
父娘も、お互いが見えなくなって。
夫は妻が、ほかの誰かのまえ黄色いスカートを揺らすのを横目にして。
自分は親友の令嬢を、硬い床のうえ、組み伏せてしまっている。

入り乱れる狂宴のなか。
場違いなほど、地味な衣裳は。
いまや淫靡な輝きのなか、禁断のきらめきに埋もれてゆく。
夫を弔い、貞節を守る決意をこめた装いが。
しどけない体の動きに合わせて、胸のリボンを振りたてて、スカートをひらめかせる。
黒のストッキングの足許が、セクシィに輝いて。
艶ひとつないパンプスが、脱ぎ捨てられて、転がって。
乱倫の渦のなか、女は硬い床に、ひざ小僧を突いていた。

朝。
脱げだパンプスのストラップに指を通して。
女は放心したように、とぼとぼと。
独り、人通りのまばらな夜明けの路を歩いてゆく。
出かけるときは、きちんとセットしていた髪を。
いまは、ぼろぼろに振り乱して。
はだけた胸元から、白い肌を惜しげもなくさらして。
みるかげもなく裂き堕とされたストッキングを、足許にまつわりつかせて。
次から次へと入れ替わるパートナーたちと交わした、
夫にしか許さなかった秘儀。
せめぎ合った敏感な処が、まだ迫るほどの疼きを秘めて、じわりとしたほてりを滲ませていた。

女は気づかない。
蒼白い皮膚の下埋められた牙が、もっと淫らな毒液をそそいだことを。
毒液は、身の裡で囁いている・・・
今夜は、お前の義母を連れて来い。
それが無理ならば。
家の雨戸をほんの少し、ひらいておけ。
義母はお前の不貞を、赦すまい。
けれどもそれは、つかの間のこと。
一夜明ければ、きっとお前と連れだって。
己の婦徳を、嬉々として淫らな濡れに浸すようになるだろう。
犯して、惑わして、堕としてやるから。
そうすることで。
お前たちふたりは、初めて救われるのだ・・・

寝取られ川柳 2

2007年06月16日(Sat) 16:16:32

女房を 犯してくれと 頼む夜
そんなノリで、第二話を。^^

私の親友・レディキラーのDに誘いをかけられた妻は、
いそいそ、ウキウキと。身支度を整えてゆきます。

  気晴らしに 妻をねだられ 断れず
  もてあそぶ つもりの彼に つい許す
  おもて向き 言葉は渋々 装うも 見透かす目線に 声もつれさせ

あっ、でも内心は・・・昂ぶっているんですよね。。。

  本心を 言うべきだよと さとされて
  不覚にも つい口走る 「姦ってくれ・・・」
  無理やりに 言わされ言葉に 昂ぶって
  あぁ、いいよ たっぷりサービス いただくよ
  夫婦ながら 支配を受ける 歓びに 胸の芯まで 焦がれ痺れて

奥さんも、積極的です。
やっぱり・・・よかったんでしょうねぇ。^^;

  犯されに 行かせてほしいの お願いね
  えっ?きみが? まさかの言葉に ズキズキと
  肌許す わたし覗いて いただくわ
  なにもかも 歓ぶあなた 見たいから

けなげな妻です。
どこまで本心なのか・・・は。
もう信頼関係ですね・・・

  いいよいいよ 夜のお出かけ 愉しくね
  許されて 夜のおめかし いそいそと
  お出かけに 黒のガーター 見せつけて
  破かれて 来るわとまとう Gストの 濃い彩りに 惑い深めて
  こつこつと 消え行く足音 いつまでも 耳で追いかけ 独り昂ぶる

いままでのパンティストッキングを脱ぎ捨てて、
娼婦となった妻がまとうのは、妖しく輝くガーター・ストッキング。
衣裳は女を変えるのか・・・

  いそいそと あと追う足取り 浮わついて
  窓の外 聞き漏らすまい みそかごと
  さりげなく 窓を開いた 情夫の手
  見えるよう 妻に迫って うなじ吸う
  せめぎ合う 唇にはぜる 熱き唾
  夜の蝶 じゅうたんのうえ 羽広げ
  襟首を 押し広げられ 肌さらす
  窓ごしの 妻の濡れ場に 昂ぶって
  ふしだらに 衣裳破かれ はしゃぐ妻
  闇に透ける 犯され妻の あで姿
  ひとしきり 覗いたあとは 独り去る 二人っきりの 刻つくるため

  別々に たどる帰り路(じ) なに想う
  独り寝に 妻の下着を 身に添わせ
  戯れの 痕をまさぐれど 白き衣(きぬ)
  このうえを 這った唇 痕たどり
  夜明けても まだ戻らない妻想い まだ愉しんでるかと 焦れる独り寝

独り寝の懊悩は尽きないで、そっと開いた妻の箪笥。
取り出した下着を、自らの肌に添わせると。
この下着は、逢瀬のときに着けたものだろうか?
あいつの唇が這った痕が、どこかに残ってやしないだろうか?
懊悩はますます、深まるのでした。

  がちゃがちゃと 施錠を解いて 妻戻る
  時ならぬ 音を子どもに 咎められ
  まだ早い 寝ていなさいと 追いやって
  母さんは 夜出ていたのと 息子問う
  お泊まりで 法事だったと 清め塩
  ふふ・・・と笑む 妻の清楚な 喪服姿
  なにごとも 起こらなかったと 見間違う 靴下の裂け目 スカートに秘め

  なに食わぬ 顔で迎える 朝帰り
  スカートの 裏地濡らして 朝帰り
  濡れてるよ 息子に見られ 妻焦る
  おかしいな ほんとに法事? 首かしげ
  浮気かも おどける私に 「そうかも・・・ね」
  浮気かも・・・ 息子の顔も ドキドキと
  白い痕 スカートの裏 気づかれて
  汚れ痕に あらばれちゃったと 妻照れる
  愉しそう ボクの彼女も 汚されたい

おやおや・・・だんだんアブナイ方向にイキそうですね。
それでは、このあたりで。

寝取られ川柳

2007年06月16日(Sat) 15:19:27

詩歌をまじえて、お話をひとつ綴ってみましょう。^^

レディキラーな親友D。
人妻を堕とすことにかけては、一流のテクニシャン。
私は何人も、貞淑な人妻が彼の手にかかるところを見てきました。

  貞淑な よその奥さん 手ごめにし
  悔しげな 涙も随喜に 飲み込まれ
  凄腕に 節操さえも 忘れ果て
  破かれた 衣裳ともに 堕ちてゆく
  乱れ妻 私もいつか お相伴
  人のもの 味は格別 穴探る

あぁあ。ワルイコトをしちゃいました。(^^ゞ
彼のお下がりの人妻を、時おり相伴させていただき、
私までいい思い・・・。^^

ところがなんと。。。
こんどの獲物は、ほかならぬ私の妻。
妻への好意をいきなり告げられて、あわててしまいました。

  奥さんを 狙ってるんだと 笑う友
  えっ?そんな・・・ そいつは勘弁 見逃して。(((^^;
  だめ、だぁめ 戯れながらも 赦されず
  どうしても きみの奥さん 犯したい
  ねだられて まんざらでもなし 寝取らせも

おやおや、雲行きが妖しくなってまいりました・・・

  困ったね あいつのどこに 惚れたのさ?
  なによりも きみの愛する 女(ひと)だもの
  犯したい・・・ 股間を抑え 求む友
  せつせつと くどき上手に あきれ果て
  誘惑を 許す言葉の 語尾震え

あ~あ。とうとう誘惑を許してしまいました。
まさか妻が、乗るわけがない。
そんな思いは、見事に裏切られます。

  唐突な 誘いの電話 妻揺らぐ
  どんな口説き? 新聞の陰 窺って
  くぐもった 声に真意は 闇のなか
  あのひとに 誘われちゃったと 照れる妻
  きみまさか・・・ 受けやしないね? その誘い

疑惑を深める私。しかし妻は一枚上手。
実行力は、もっと上。
おろおろする私を尻目に、妻は大胆な行動を・・・

  おいおい・・・と。 戸惑ううちに 身支度を 整え妻は 三つ指を突く
  お嫁入り してきちゃうかも 言いつつも だいじょうぶよと 気丈に返す

ここだけ短歌になっちゃいました。(^^ゞ
三つ指つきながらも、まさか自分が・・・という想いもあるようですね。
あくまでも潔癖で気丈な妻。
信じても、良いのだろうか・・・
自分のしてきたことをたなにあげて、ムラムラきてしまいます・・
  
  すがるよう 帰りは何時? 妻に訊く
  あきれたわ お食事だけよと 妻笑う
  気をつけて あいつは油断 ならないよ
  念のため ボクも行こうか 気になるよ
  アラ、いやよ。 貴方が来たら 無粋だわ
  向かい合う 鏡台の中 妻笑んで

さぁ、奥さん出かけちゃいました。(><)
そんなに遅くならないだろうと思っていたのに、時計の針はぐんぐんと回ります。
物音ひとつしない室内。残された私は悶々と・・・

  焦がれ待つ 夜しんしんと 更けゆきて 妻の足音 耳そばだてる
  コツコツと 近づく足音 落ち着いて 何が起きたか 起きなかったか
  ただいまと 冷たい声を 響かせる 白き横顔 やつれを見せて 
  どうだった? 気遣う声も かけかねて 遠目に見やる 立ち居振る舞い
  
思わせぶりな妻の態度。
私、ますますオロオロと・・・

  目のまえで 脱いだブラウス その下に あられもなきは 唇の痕
  ねぇ、見て・・・と。妻指し示す 足許を 裂けたパンスト ふしだらに染め
  されちゃった ごめんなさいね 許してね 語尾に滲んだ 愉悦の名残り
  肌の奥 淫らな血潮 そそがれて 貞淑妻は 娼婦に変わる

さぁ~。どうしましょ?
貞節を喪った妻。親友を裏切った友。
けれども妻の告白をまえに胸の底からわなないてくるのは、不道徳な愉悦のゆらめき・・・

  無理やりに 服剥ぎ取られ 肌吸われ・・・ 妻の語りに つい昂ぶって
  パンストを ぬめぬめされて 堕とされて 犯されちゃったと しらじら語る
  あからさまに 見せつけるように 告げながら ちらちら窺う 夫の顔を
  けっきょくは あなたもわたしも 悪くない あいつがすべて 食べちゃっただけ

あらあら。
どうやら奥さん、こちらの心境に気づいているようですね。^^;

  どうするの? これから彼と つきあうの?
  どうしましょ? 貴方が決めて これからは
  そんなこと 言えやしないよ そんなこと・・・
  でもわたし 貴方のものよ いつまでも
  
奥さん、さすがに上手です。
一番心配していたのは、彼女の心が離れてしまうこと。
けれども、ちゃんと見透かされていたようですね。
ヘンな嗜好の持ち主であることを。
長年連れ添う・・・ということは、幸せなことでも怖いことでもあるようです。

  犯されて 昂ぶるきみに 惚れ直す
  妻譲る 気持ちのなかに 深い愛
  ヘンな趣味 妻の理解に 救われて

どうやらめでたく、仲直りできたようです。
ところがまだ、妻は話したいことがあるようで。

  週末に またのお誘い 受けちゃった
  困ったわ あなたの愛する 妻なのに♪
  唇を 白いお肌を 奪られちゃう♪

困ったようで・・・愉しみみたいですね。
週末の予定も。夫の反応も。

  ことさらに 恥らってみる 妻いとし
  はらはらと 見つめる私に 笑み返し
  さぁ、言って。 ほんとに望む ことだけを

さぁ・・・もう言ってしまおう。

  わなわなと 揺れる唇 あらぬこと 告げらるきみは くすぐったそう
  犯すのも 犯されるのを 覗くのも ひとしく魅かれる 愛の営み
  凌辱に おののくきみも 陶酔に もだえるきみも なべて恋しく
  じゃあなるわ あなたのために 堕ちますわ 妻きっぱりと 声を澄ませる

これからも不貞をはたらくことで、夫を歓ばせようと決意する妻。
凛としていますね・・・
座はじょじょに、和らいでいきます。

  許しちゃう きみの不倫は 美しい
  アラ、いいの? 私もだえて しまうわよ
  もだえ妻 覗くも愉し ふすま越し
  やらしいわ ほんとに困った だんな様

でもやっぱり、男ですから。
ここはきちんと、言葉で表明しないと。

  ボクからも 彼によろしく 伝えるよ
  貴方から きちんと伝えて 公認て♪
  ああいいよ 手に取る受話器 ずっしりと

  取る受話器 恥じらいほほ笑む 妻見つつ 犯してくれよと 声震わせる
  妻の肌 娼婦の味を よぎらせて 嫉妬にたぎる 夫婦のベッド

めでたしめでたし。(^^)

娘の通った家

2007年06月16日(Sat) 14:40:00

老人のくせに、肌の色つやだけはひどくよかった。
輝いているほど・・・
しかし、わたしは知っている。
その輝きの裡に、妻や娘の血潮が秘められていると。
その男は、吸血鬼。
村に棲みついて、もうなん十年になるかわからない。
村長も、お役所勤めの人たちも。
此処には不似合いなくら大きな病院の院長も。
学校の校長や、先生がたも。
村一番のホテルのオーナーも。
有力者・・・と名のつく人たちは、皆が皆。
妻や娘たちを、彼の邸に送り込んでいる。

都会から教師として赴任してきたわたし。
前任者はなにも告げることなく、べつの町へと転任していった。
隣席の初老の佐沼教師は、わたしのことを振り向くと
「38歳。奥さんとお嬢さんがおひとり。こうつごうだね」
意味不明な呟きに、口辺をゆがめると。
わたしの頭のてっぺんからつま先まで、まるで品定めでもするようにして見回した。
植物的なぬめぬめとした目線が、ひどく薄気味悪く、わたしが眉をひそめると。
佐沼教師は察しよく、そのうちわかるよ、とだけ呟いていた。

娘さんを、見かけたよ。
同級生の子たちといっしょに、お邸に入っていったようだけど。
あぁ。ついに・・・
わたしがびくん!と胸わななかせたのは。
妻がお邸通いをはじめたあとだった。

邸のなか、通された応接室は、ひどくきちんと整頓されていて。
塵ひとつないほどに、清められている。
先刻なにが起こったのか、まったく想像させないほどに。
男は慇懃にわたしを迎え入れ、
どうぞ、と席をすすめてくれた。
無表情にあらわれた初老のメイドが、形ばかりのお辞儀をして、
高価な食器の音をかちゃかちゃ響かせながら
わたしと彼のまえ、湯気のたったコーヒーをおいていった。
痩せぎすなメイドの首筋には、案の定。
赤黒い痣のような痕がふたつ、鮮やかに浮いていた。

彼はコーヒーをひと口啜ると、懐中からヤスリのような小さな金属片を取り出して、
おもむろに、伸びた犬歯に当ててゆく。
なにをしているのですか?
ぶしつけな問いを、咎めることもなく。
彼はヤスリの手を止めると。
こうして時おり、牙を磨いているのだ。
自慢の柔肌をさらしてくれるご婦人がたに、失礼のないようにね。
素肌を侵して生き血を啜る悪魔にも。
それ相応の、礼儀があるらしい。

娘さんのこと、だね?
切り出したのは、彼のほうだった。

ええ。
ためらいがちに、わたしが応じると。
  ああ、お見えになりましたよ。
  たしかに新顔の娘さんが、ここへ来なさった。
いちばん耳にしたくない答えを、彼はむぞうさにかえしてきた。
  なん人か、連れだって。
  良くしてくださる女学生のお嬢さんがたが、おいでなのですよ。
  そういうお嬢さんたちほど、礼儀正しく接していただけるのですがね。
きりっと装われた、黒のセーラー服。
ぴっちり引き伸ばされた、色とりどりのハイソックス。
そのなかに、黒のダイヤ柄のハイソックスの少女はいなかったか?
という問いに。
  あぁ、たしかにいらっしゃいましたよ。
  それが、新顔のお嬢さんでしたな。
応える声が、じわじわと。
私の脳裏を狂おしく染めていた。
  初めてのご婦人からは。
  身につけていた靴下を頂戴することにしているのだが。
そうだったのか。
妻がはじめて、お邸に招かれて。ふたたび戻ってきたとき。
ストッキングの色が、変わっていた。
其処で、なにがあったのか?
其処で、なにをされてしまったのか?
きみは、どう変えられてしまったのか?
ついに訊き出す勇気をもてなかったのは、まさにそのせいだった。
  お宅のお嬢さんかどうか、定かではありませんが。
彼は座を立つと、ふらふらとした足取りで、古風な調度のまえに立つと、
小さな引き出しを、そうっと開いて。
なかから黒っぽいものを取り出した。
薄気味の悪いものを、見せつけられる思いで、彼の所作を窺っていると。
彼はやがて席にもどってきて。
目のまえに、破れたハイソックスを差し出した。
  お改めを・・・
震える手に取ったハイソックスは、私の手の中でくしゃくしゃに縮こまっていて。
それが娘のものなのかどうか・・・など。
とても覚束なかった。

うふふ・・・
おわかりに、なりますまい。
いいのですよ。それ、よろしければあなたに差し上げましょう。
わたしは思わずかぶりを振って、
ハイソックスを、手離した。
忌むべきもののように。
それでは改めて、頂戴いたしましょう。
彼はしてやったり、とほくそ笑んでいた。
ぐるぐると、目が回ってきた。
おわかりか?
あなたの今、なさったこと。
子女の衣裳をあたえるものは。
衣裳の持ち主さえも、許したことになるのですぞ。
彼の声音は、薄っすらと甘美に響き、
わたしは眩暈に耐え切れず、ソファに身をもたせかけてゆく。

さて、さて・・・
彼はわたしを介抱するように、身を近づけてきて。
どうやらよからぬたくらみに、わたしも屈することになるようだ。
お出かけの服は、奥さんが択ばれているのですな?
確信をこめた、彼の声。
無意識に頷くと、スラックスをずるずるとたくし上げられていた。
すうっ・・・と撫でつける手が、ひどくいとおしげだった。
ひざまである、紺色の薄い長靴下。
見慣れぬ靴下と思いながらも。
そ知らぬ顔をしている妻に、つい声をかけそびれていた。
そういえば。
隣席の教師もおなじ靴下を。
いつも履いていたような気がする。
ちくり・・・
鈍い痛みが、ふくらはぎを刺ししてくる。
ストッキングのように薄い長靴下が、かすかにぱちぱちと音を立ててゆく。
貴方の靴下も・・・コレクションに加えさせて頂こうか?
いけない・・・そんなことをさせてはいけない・・・
さいごにひとかけら残った理性が、悲痛に訴えてくるのだが。
甘美な誘惑がすべてにまさっていた。
妻の貞操を・・・娘の純潔を・・・
眩暈が、満ちてくる・・・
お伺いしたときは・・・そうですね。
長い靴下を脱いで、あなたに進呈しましょうか。
唇がひとりでに、そんな文句をつづってゆく。
よろしい。お楽になるがよい。
うなじにずぶり・・・と。食い込むものが、ひどく心地よく。
わたしは全身の力を、抜いていった。

着たい 2

2007年06月15日(Fri) 18:16:18

さいしょにねだられたのは、妻の服だった。
あいては、親しい友人。
ただし、吸血癖という、特殊な嗜好を秘めている。
ねだられるままに。吸血の宴に妻を差し出した選択は。
果たして、ただしかったのだろうか?
父兄会に着てゆく堅いかんじのスーツ姿を乱しながら。
足許をぴっちりと引き締めた、上品なストッキングをふしだらに破かれていきながら。
異端の嗜好は妻の素肌の奥深く、しみ込まされていった。

着たい。
ふたたび彼が、口にしたのは。
結婚式にお呼ばれしたときの、娘のワンピース姿だった。
妻やわたしが、身代わりになって。
幾晩となく、娘の服を身にまとって。
彼の欲情をまぎらせようと、試みたものの。
却って彼の欲情を、体のすみずみにまで思い知らされただけだった。

いちばん気に入りの服、あげたのよ。
娘はくすっ・・・と、ほほ笑んで。
ポニーテールを心地よさげに、揺らしながら。
まるで鏡を見るみたいに、じぶんの服を身につけた彼を、
からかうように、目で挑発して。
制服のスカートをちょっぴり、たくし上げて。
白のハイソックスの脛を、差し出してゆく。

どちらが、娘?
どちらが、魔人?
娘の服を着た、ふたつの影は。
くんず、ほぐれつ、乱れあって。
やがて妻もたどったひとつの頂点を。
うつむきあえぎながら、ともにしてゆくのだった。

男の服は、萌えないね。
冷然と呟く彼のまえ。
ノリのよい息子が私の箪笥から失敬していったのは。
妻から譲られた、ブラックフォーマル。
おじさん、黒のストッキング、好きなんだって?
ぴちぴちとした健康なふくらはぎは。
まるで女の子のように、しなやかで。
吸血鬼の飢えた目線をそそるには、かっこうのものだった。

明け方、照れくさそうにうなじを掻きながら戻ってきた息子は。
こんど行くときは、彼女の服を着て来いってさ。
面白そうだね?
父親似の面差しに浮かんでいたのは。
きっと・・・あの晩妻を差し出すことにした私と、おなじ翳だったにちがいない。

善意の献血・・・ですからね。
妻は、子どもたちにも言い含めるように。
装いをきちんと、整えてゆく。
きりりと結った黒髪を、さらになで上げて。
脛をおおうストッキングに、ひきつれがないか入念に点検して。
おなじように、
娘のスカートの下も。
わたしや息子の半ズボンの下も。
手でなぞりながら、確認してゆく。

では。参りましょうか・・・
夕暮れ刻を、合図にして。
きょうもぞろぞろと、無言の人群れが、お邸をめざす。
今宵妻や娘の血を。わたしや息子の血を。喉に散らせるのは誰・・・?

着たい

2007年06月15日(Fri) 17:56:17


薄暗い深夜の室内で。
たたみに横たわる女学生姿におおいかぶさっているのは、黒のワンピース。
蒼白い頬をときおり不気味にひくつかせながら。
ちぅちぅ・・・
ちぅちぅ・・・
うなじにぴったりと這わせた唇から洩れる音が、ひどく猥雑な震えを帯びていた。

いい子だ。
女学生姿から身を離すと。
黒衣はそう、呟いた。
さぁ、行っておいで。おまえが喪った生き血を求めて。
黒衣の囁きに、頷くと。
女学生は紺のスカートを翻して、ふらふらと表へとよろめいてゆく。

ふふっ。
ふらつきながら立ち去ってゆく人影を、
黒衣は、血をあやしたままの口許に冷笑をたたえて見送ると。
さぁ、出ておいで。
お待ちかね。きみの番だよ。
こちらのほうへと、異様に優しげな目線を送ってくる。
お嬢さん座りをしていた畳から、立ち上がるとき。
そわり・・・
胸元のスカーフが、音もなくなびいた。

素敵なハイソックスをお召しだね。
通学用なんです。
そぅ。あとでゆっくり、愉しませてね。
月明かりが差し込むだけの小部屋のなか。
黒一色のワンピースに、蒼白い肌がいっそうなまめかしく浮き上がる。
横におなり。
命じられるままに。
仰向けに寝そべって、おとがいをわずかにあおのけて。眼を瞑る。
そろり・・・と、のしかかってくる気配がした。
ひんやりとした息吹のうちに、さっきの娘から吸い取ったものが。
かすかに熱いものを、交じらせている。
かりり・・・
牙が、突き立った。
本能的に、身をすくめて。
ウッ・・・と、のけぞっていた。
あとは、さっきの犠牲者とおなじ経緯だった。
ちうっ。
血を吸い上げる音が、かすかに鼓膜を焦がした。

どれほど、吸われてしまったのだろうか?
さぁ、顔をおあげ。
黒衣の命じるままに、眼を開くと。
吸い取ったばかりの血潮に濡れた唇が、目のまえで笑んでいる。
いつも、ひと月にいちどしか、来てくれないのだね?
声色はあきらかに、男。
そして、さっき出て行った少女も。わたし自身も。男。
そう。
だれもが、女の衣裳に身を装いながらも。
影絵のようなお芝居を演じていたなかに、女の影はなかった。

だって。
女言葉を、強制されていた。
ナイショにしているんですもの。
昂ぶりにかすれた声が、かろうじて女ぽかった。
ふふふ。
黒衣はあざ笑うように、含み笑いで応えると。
毎晩遊びに来たら。あの子みたいに。
半吸血鬼になっちゃうものね。
組み敷かれた、上と下。
イタズラっぽく交わされた共犯者の笑みが、緊迫した空気をかすかに和らげた。

ハイソックスごしにもぐり込んでくる、鋭い牙が。
疼くような痛みとともに、ぐぐ・・・っと、深く刺し入れられる。
持ち主の血潮がじょじょにしみ込んでゆくのを、
ぬるぬるとしたぬくもりの広がりで、感じながら。
淡い陶酔が、胸いっぱいになってゆく。
障害は奥さん・・・なんだね?
黒衣の問いに、深く頷きかえしてしまっていた。


妻には身内のパーティーだと、言い含めていた。
子どもたちを置いて、夫婦ふたりで外出するのは。
ほんとうに、なん年ぶりのことだろう?
妻は着ていく服に迷っていたが。
けっきょく、いつも学校の父兄会に着ていくモスグリーンのスーツで装っていた。
地味めな装いに、ちらりとある予感を覚えたが。
わたしはなにも言わずに、妻を伴って、邸へと向かう。
帰宅する時には。
妻は、ふつうの状態ではないかもしれない。

招かれたのは、わたしたちだけではない。
ぜんぶで十人ほどの男女が、狭いリビングに入り乱れるように腰かけていた。
択び抜かれた人選と、たくみに化粧をしているせいとで。
だれもが男・・・だなどと。
妻はまったく、気づいていないようすだった。
せめて会話があれば、わかってしまうのだろうけれども。
すべてがほとんど無言の裡に、進行していったのだ。

どういう式次第なのか。
わたしには、よくわかっている。
おなじ趣旨のつどいに、べつのご夫婦を招待したことが。
過去になんどとなく、あったからだ。

さっきから。
黒衣が無言で、差し招いている。
用のあるのは・・・わたしに対してだけらしい。
妻にチラと耳打ちをして、傍らを離れた。

招かれた別室には、カメラがしつらえられていて、
妻を含む宴のメンバーが、いろんな角度から、あますところなく映し出されている。
黒衣はむぞうさに、あごをしゃくっていたが。
わたしに、たったひと言。囁いてきた。

着たい。

え?

きみの奥さんの服・・・

なにを言うことが、あるだろう?
知らず知らず、口許が浮ついていた。
似合うと思いますよ。
そう。
あなたとなら、だれでも、どういう形でも、お似合いでしょう。
妻の服も。
服の持ち主の、セックス・パートナーとしても。


宴は他愛ないほど、うまくすすんだといえる。
女装した吸血鬼たちに、両側を挟まれた妻は。
しばらく怪訝そうにしていたけれど。
目のまえの男女が、互いに相手を取り替えあって、血を啜り合いはじめると、
ひっ!
喉の奥を引きつらせていた。
優しく導いたのは、もちろん黒衣の彼。
奥さん。御覧なさい。ご主人も・・・愉しんでおいででしょう?

妻の目線のとどきにくい部屋のすみで。
わたしはべつの吸血鬼に、うなじを咬まれていた。
完全に征服された夫をみて、
妻もまた、ぐいぐいと力ずくで迫ってくる牙の下。
モスグリーンのスーツ姿から力を抜いていった。

咬みつかれたとき。
ストッキングに包まれた太ももの筋肉を。
かすかに、しくっ・・・と。
引きつらせていた。

わたしはいつか、彼と逢うときの女学生の制服に着替えさせられて。
夫婦並べられて、かわるがわるの毒牙に身をゆだねていった。


よく、見えられました。
女の客人を礼儀正しく迎えるのは、黒衣の彼。
彼のまえには、着飾った妻。
まだ、真っ昼間。
子どもたちが、学校からもどるまえ。
そして、夫が勤めのあいだ。
白昼も活動できるということは。
彼にとって、どんなにおいしいことか。
口許からはみ出した牙を眼にしても。
もはや妻は取り乱すようすはない。

お似合い・・・ですわ。
妻の言葉に。彼は満足そうに頷いた。
いま彼が身に着けているのは。
あの晩妻からせしめた、モスグリーンのスーツ一式。
履いていた黒のストッキングは、彼の牙にちりちりに裂かれて。
いまはなれ初めの記念品として、どこかに蔵されているにちがいない。
私、似合わないでしょう?
珍しく羞じらう妻の装いは。
若い頃、結婚式にお呼ばれした時に着ていた紫のスーツ。

処女の生き血じゃなくても、よろしいんですの?
えぇ。熟した血潮・・・愉しませていただきますよ。
ストッキングのおみ脚も・・・よろしいですね?
また、破いてしまうんですね?いやらしい。
甘美にからみ合うやり取りに、生垣ごしにはらはら聞き入っているわたし。

吸血が、はじまったようだ。
会話のとだえた窓ガラスの向こう側は、沈黙に沈んでいる。
ちぅちぅ・・・ちぅちぅ・・・
いつもわたしを包んでいた音が、妻におおいかぶさっていて。
わたしの肌を侵していた牙が、妻の柔肌をなぶり抜いている。

お洋服、汚さないで。ばれてしまうわ。
もだえながら、許してしまったのは。
白いブラウスのわき腹と、
紫のスカートの裏地。
撥ねた血の目だたないところ。
けれども彼の好みに合わせて履いていった真新しい黒ストッキングだけは。
容赦なく、咬み破られてゆく。
むっちりと白い太ももから、オブラアトが剥がされるように。
ふしだらに破れ堕ちてゆく、薄いナイロンの礼装・・・。

時おりご主人にも。
あなたの服を、着て来ていただきましょう。
えぇ。喜んで・・・
  アナタノ女装姿、コレカラモ見タイワ。
あの晩連れだって帰る道々、妻ははしゃいだ声で囁きかけてきた。


善意の献血・・・なんですよね?
妻は何度も、念を押してくる。
もちろん、そうさ。
わたしもよどみなく、応えている。
交わされたやり取りを、夫婦どちらもが信じていない。
子どもたちが寝静まってから、
夫婦連れだっての、お邸通い。
ふたり、スカートのすそをゆらめかせて。
妻は、よそ行きのスーツ姿。
わたしもまた、妻から借りた礼服やワンピース。
まるで姉妹のように、並んで横たえられて。
複数の牙に、素肌を侵されてゆく。
陶然となった、夢見心地のなか。
半裸に剥かれた妻が、熱い血潮をよぎらせた素肌をわななかせる。
あのひとの、お嫁になりたいの。
妻にせがまれて、結婚式を挙げさせたのは。
それからひと月とたたないころだった。


我が家の血が、お気に召したようね。
もっと、ご馳走しなくちゃね。
わたしたちだけじゃ、身体が持たないですから。
子どもたちにも、事情を言い含めておきましょう。
善意の献血・・・なのですから。
吸血鬼の情夫を持って。
ときには娼婦のように、春をひさぎながら。
善意の献血・・・と口にする妻。
けれども彼女は、間違っていないのかも。
採られる血液のなかには。
捧げられるべき熱情や情愛も秘められているはずだから。

さいしょは、息子。
それから、娘。
すうっとあけておいた雨戸のすき間から。
影どもはひそかに忍び込み、朝日とともに去ってゆく。
音ひとつ、痕跡ひとつ、残さずに。
ひと月経ったころには。
息子も、娘も。
照れくさそうに、うなじのあたりを引っ掻きながら。
部活だとか、お呼ばれだとか、口実をつけながら。
お邸で、ハイソックスを濡らしてくるようになっていた。


その晩。
自宅のリビングは、時ならぬ人いきれに包まれていた。
今夜はべつのご夫婦が。
わたしたち夫婦とおなじ運命を与えられる日。
妻は、小娘みたいにウキウキとして、
他所の家の奥さんを毒牙にかけるくわだての片棒をかついでいた。
招かれたのは、人のよさそうなご主人と、しっかり者らしい奥さん。
ご主人の女装癖を、奥さんが気に入っていないらしい。
気に入らせてあげないと、気の毒じゃないか。
黒衣の彼の言葉に、深々と頷いたのは妻のほうだった。
敷居をまたいだご主人の、スラックスのわずかなすき間から。
ねぇねぇ。見た?薄い靴下、履いているわ。
妻は耳打ちといっしょに、わたしのわき腹を小突いてくる。
あちらの御宅。年頃のお嬢さんが三人も、いらっしゃるんですって。
ねらい目・・・ね。
そういう妻の口許からは。
いつか、尖りを深めた犬歯が覗くようになっている。

窓辺

2007年06月15日(Fri) 14:02:13

雨雲に覆われた窓辺。
目を凝らしてみても、故郷の山影は遠く、
想いは景色の彼方まで、届くことはない。
もう決して、戻ってこない刻。
この世のどこにも存在しない、安らかな日々。
すべてが和やかに過ぎ去った、あのおだやかな刻たち。
濁った水彩画のような雨雲が、曇った現実となってベランダまで迫る日は。
しばし、過去の追憶に耽ろうか・・・

詩歌

2007年06月14日(Thu) 07:42:53

パンストの 脛をさらして 歩きたい
        爽やかによぎる 六月の風
スカートの 中ひんやりと 忍び入る
        夜の冷気に 脚舐められて
ひらひらと 胸元に舞う ボウタイに 
        身に添うほどの 色香覚えて
しっとりと 寄り添うごとき 触感に
        血の色さえも 女に染まる
ナイロンの 薄い網目に 縛られて
        蒼白き脛 艶めき翳る
フェミニンな 装いの下 疼く肌
        バラ色の血を 淫らに染めて
通う血を 女の色に 染めながら
        きりりと通す 薄い靴下 

そこはかとなく、女装の気分を詠み込んでみましたが。
・・・ヘンですよね。(笑)

ブログ拍手

2007年06月13日(Wed) 22:47:52

面白い機能がつきましたね。^^
動作がいまいち、不安定な気がしますが。^^;
さっき見たら。
昨日に一回、今夜に二回。
先日描いた「移りかわり」というお話に拍手をいただいたのですが。
画面を見たら、数字が出ていない~。
そんなぁ~、と思っても一度見直したら。
あった、ありました。
え?私の目が悪い?
そ、そんなぁ~。

今週でいうと、上記の「移りかわり」3拍手を筆頭に、
「エール」に2拍手、「呼び出されて」「脚写真を撮られながら。」「た・め・い・き♪」に各1拍手。
このなかでは、
「た・め・い・き♪」がいちばんのひいきです♪
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-1036.html


ついでに今月で見ると、
「父の恋人」「後輩」「化粧をしないで・・・」「このサイトのご紹介」にひとつずつ、拍手を頂戴しました。
ごひいきを頂戴し、ありがとうございます。m(__)m

移りかわり 少年の場合

2007年06月12日(Tue) 08:07:05


ママの生き血を、吸いたいんだって?
いけないなぁ・・・そういうのって。
どうしても、欲しいんだって?
しょうがないなぁ・・・ちょっぴりだけだよ。
小父さんだったら、ボクのママを死なせたりはしないだろうから。

若くてきれいな女のひとの血が欲しい、ってせがまれて。
そんなひと、心当たりがないよ、っていったとき。
ボクの頭によぎったのは。
水色のハイソックスがよく似合う、担任のツヤ子先生だったけれど。
小父さんの好みは、すこし年上で。
  好きな女の子のことって、秘密なんだろう?
  小父さんの秘密は・・・きみのママだよ。
ヌケヌケと、そんなことを洩らしてきた。
そんなことを、言いながら。
家庭訪問の帰り道。
ツヤ子先生のハイソックスにも、しっかり咬み痕をつけちゃったくせに。
  ママの履いている肌色のストッキングも。
  あんなふうに破かれちゃうのかな?
自分で言っていることに。
なぜかボクまで、たかぶっていた。

もう少し・・・少しだけですよ・・・
ママは髪を振り乱して。
けれども、ちっともイヤそうな顔をしないで。
小父さんの腕のなか、うなじを噛ませちゃっていた。
ふらふらと、姿勢を崩してしまうと。
しんなりとした肉づきをした、ママのふくらはぎに。
ストッキングのうえから、唇を吸いつけて。
薄っすらとテカる、薄手のナイロンごしに。
いつまでもキモチ良さそうに、ぬるぬるとよだれを、なすりつけていた。


小父さんとの馴れ初めは、夕方の公園だった。
独りぼっちのボクのまえ、音もなく現れて。
半ズボンの下、ぴっちりと引き伸ばして履いていた黒のハイソックスの脚をつかまえて。
唇を、なすりつけてきた。
なぜだかむしょうに、くすぐったくて。
許してしまったときには。
つねるようなかすかな痛みといっしょに。
飢えた牙がもぐり込んできて。
ボクはあっという間に、征服されてしまっていた。

さすがにきみのママだね。
おいしい生き血だったぞ。
小父さんは、ママを襲ったあと。
必ず部屋に、遊びに来る。
もちろんお目当ては。わかっている。
だからボクは、小父さんがママを襲いにくるときは、
いつも半ズボンの下、小父さんの気に入りそうなハイソックスを履いていた。


好きな女の子のことは、秘密なんだよね?
ボクが大好きなのは・・・お隣のユウちゃんなんだ。
声をひそめたささやきを。
小父さんは、くすぐったそうに聞き入っていて。
願いがかなうといいね。って。
でもきっと。
小父さんが、なにかをそう仕向けてくれたんだろう。
声をかけることもできなかったユウちゃんが。
つぎの日から毎日のように、ボクの部屋に来るようになったのだから。

感謝のしるしに。
咬ませてあげるよ。
ハイソックスの脚、好きなんだろ?
そう。
ユウちゃんはいつも、ストッキング地のまっ白なハイソックスを好んで履いていた。
すまないね。
お茶に混ぜた、睡眠薬に。
他愛なく寝そべってしまったたたみのうえ。
ユウちゃんのたっぷりとしたふくらはぎに
小父さんは遠慮なく、唇を吸いつけてゆく。
ああ・・・
大好きなユウちゃんが、血を吸われちゃう。
けれどもボクは、小父さんのしているワルイコトを。
もはや拒むことができなくなって。
ちゅうちゅう・・・ちゅうちゅう・・・
ナマナマしい音に喉を鳴らして、ユウちゃんの生き血を吸い取ってゆく小父さんのことを。
いつまでもじいっと、見つめていたら。
ユウちゃんは、けだるそうに薄目をあけて。
いやらしいわね。ふたりとも。
くすっと笑みを、こぼしていた。


受験勉強に、夜更かしをしているときも。
小父さんは容赦なく、現れた。
さっき、お隣の家で。
ユウちゃんの脚から抜き取ったというハイソックスを見せびらかして。
ボクにも履いてみろ・・・と、せがんでくる。
とっくに履かなくなった半ズボンの代わり、
用意のいいことに、ユウちゃんの制服のスカートまで、持ち込んできた。
え?恥ずかしいよ。女のかっこだなんて。
渋るボクを、うながして。
腰に巻いたスカートの下は、
ひどくすーすーとして、そらぞらしかったぶん、
ひざ下にぴっちりと吸いついたユウちゃんのハイソックスが。
ボクの足許をぬくもりで包んでくれていた。
まるで彼女の体温が、じかにボクを暖めてくれるように。

椅子の下にかがみ込んできた小父さんのおかげで。
ボクは机に突っ伏したまま、
すぅすぅ寝息を立ててしまっている。

あら、あら。
物音を聞きつけてか、お茶を淹れてくれた母さんは、
お盆を傍らに置くと。
ボクの血をしたたらせたままの小父さんの唇が。
黒のストッキングのふくらはぎに吸いつけられるのを。
含み笑いしながら、見つめつづけている。
ぴりり・・・っと走った伝線と。
母さんのストッキングごし、キモチ良さそうに這い回る唇と。
いつか。
ユウちゃんにも、ストッキングを履いてもらおうかな。
堕ちるような眠気のなか。
妖しい夢想が、ほんのりとボクの胸を染めている。


くり返すのねぇ。
目のまえでほほ笑むユウちゃんは。
おっとりとした二重まぶたに、大人の色香を滲ませていて。
もう、なん年もまえから、ボクの妻になっている。
妻の指し示す向こうには、息子の勉強部屋。
椅子に腰かけた息子は、傍らのたたみの上、腰を下ろした少女と談笑している。
華やいだふぜいの少女の脇には、家族どうぜんに見慣れた小父さんの姿。
ボクたちの血のせいで、ちっとも老けていない彼は。
息子の未来の花嫁に、求愛しつづけているのだった。
咬ませちゃうわよ。ちょっぴりだけよ。
挑発的な白目に、かすかな艶を滲ませて。
ちょっぴり身を引いた制服のスカートの下。
かつて妻が履いていたのとおなじ、白のナイロンハイソックスが。
初々しい脛に、艶やかな光沢をよぎらせている。
息子は、咬まれたあとらしい。
半ズボンの下、リブタイプのハイソックスに。
バラ色の痕を滲ませていて。
きみの血のほうが、きっと綺麗に映えるだろうね。
恋人に、妖しい挑発を忍ばせている。

妻がそっと、ささやいた。
あの子ね。きっと。
今夜、あのお嬢さんの純潔を捧げるつもりなんですよ。
やっぱり・・・ね・・・
くり返すんですね。
そういう妻も。
ウェディングドレスのすそをかすかな血潮で濡らしたのは。
挙式直前に交わされた、かれとの新床のあとだったのだ。

もう二年前になるかしら。
あの子ったらね。
わたしと小父さまの、キューピッド役をしたんですよ。
お父さんにナイショで、小父さんにママの血を吸わせてやるんだ・・・って。
でもあなたったら、よぅく、ご存知で。
しっかりあとをつけてきたでしょう?
どこかの親子も・・・きっとそうだったんですね。
今更ながら。
おだやかに齢を重ねてゆく両親のことを思い浮かべる。
父がボクのことを始めて一人前あつかいするようになったのは。
小父さんにママを紹介して、血を吸わせたころからだったろうか。

移りかわり

2007年06月12日(Tue) 07:18:28


ママをいじめないで。
思わず声を、たてていた。
ぼうっとなった感じのママの様子が、気になって。
ずっとあとをついてきた、森の奥。
ママは黒いマントを羽織ったおじ様に。
うなじをぐいいっ、とつかまれて。
むき出した牙の怖ろしさに、とっさに叫んでしまったのだ。
なぜだかよくわからないけれど。
おニューの白いスカートが、わたしを守ってくれるような気がした。

振り向いたおじ様は、こちらを見つめると。
相手が非力な子どもだと知って、
却って気落ちしたように、しんみりとなっている。
さっきまでママの細い身体を折れるほど抱きすくめていた腕が。
にわかに力を失って。
しぜんに腕のなかから抜け出したママは、
優しく咎めるように、こちらを振り返って。
来たら、ダメよ。
怖いおじさんじゃ、ないのだから。
落ち着いた声を、返してきた。

帰りなさい。
おじ様はもう、ママのほうを見まいとするように、身体を離していた。
アラ、よろしいのに。
引き止めたのは、ママのほうだった。
ユカちゃん、見ているのよ。
ママはイタズラっぽく含み笑いを浮かべながら。
黒ストッキングを履いた脚を、おじ様の前へと差し伸べてゆく。
おじ様は、背すじをピンと伸ばしたママの前にひざまずいて。
まるでおとぎ話に出てくるナイトが、女王様に接吻するように。
ママのハイヒールに軽く手を添えながら、
ひざ小僧の下のあたりに、唇を添えていった。
ちゅ、ちゅっ・・・
ひそかな音。
唾のはぜる音が、混じっていた。
いやらしい。
なぜか子供心に、そう感じたけれど。
ママはうっとりとして、おじ様の接吻を許していた。

ママの履いている黒のストッキングを、ぴちっと伝線させてしまうと。
ふたりは目を合わせて、フッとほほ笑みあっていた。
おじ様が吸ったのは、ほんの少しの量だったから。
こわいお話に出てくる吸血鬼みたいに、ママを吸い殺してしまうわけではなくて。
ママに甘えてみたかったんだ、って。
子供心にも、感じていた。
  おじさま、えらいね。ガマンしたんだね。
  ユカが大きくなったら、血を吸わせてあげるからね。
まぁ。この子ったら・・・
困り顔をして、娘の顔と、おじ様の顔を見比べるママに、手を伸べて。
さぁ、帰ろう。
おじ様はもう、わたしたちを引き止めなかった。



えっ?怖くないの?相手は吸血鬼なんでしょ?
クラスメイトの知也子は、びっくりしたように。
わたしとおなじ制服姿を、すくめてみせた。
ウン。お友だちだもの。
学校からの帰り道。
お友だちといっしょのときは、出てこないでねって約束だったのに。
さりげなく、あとをついてきたおじ様の影が。
飢えているんだ。
そう言いたげに、寒々としていて。
だからきょうは、わたしのほうから声をかけていた。
だいじょうぶ?って。
返事をもらうまでもなかった。
おじ様はいつもより、蒼い顔をしている。
怖々と見つめる知也子のまえで、わたしはわざと落ち着き払って。
濃紺のプリーツスカートの長いすそをむぞうさにさばいて、
白のハイソックスを履いた脚を、一段高い舗道の敷石にさし伸ばしている。

初めてのときはね。
リンと響く、わたしの声の下で。
這わされた唇が、白のハイソックスにバラ色のシミをつけてゆく。
わたしの血が生暖かく、ハイソックスにしみ込んでゆくのを感じながら。
ドキドキ浮つく声を、つとめて抑えながら。
わたしの顔と、足許とに、等分に目を注いでくる知也子を落ち着かせようとしていた。
  初めてのときは、ハイソックスを脱いでいたのよ。
  ママに見つからないように、って。
  でも、彼ね・・・
  女のひとの長い靴下が好きみたい。
  だからね、たまにこうして、咬ませてあげちゃっているの。
  知也子だから、話すんだよ。
  ほかの子には、ナイショだよ。
知也子はおびえたように、わたしの顔を窺いながら。
それでも、う、うん。って。頷いてくれていた。
  怖がらないで。無理に襲ったりするひとじゃないんだから。
  ハイソックスのうえから・・・だなんて。
  ちょっぴり、いやらしいけどね。
「いやらしい」という言葉を耳にすると。
おじ様はスッと立ち上がって、霧のようにかき消えてしまった。
ちょっぴり、傷ついたのかもしれない。
それから、すぐのことだった。
知也子がおじ様に逢いに行くというわたしと連れだって、
おそろいの白のハイソックスを履いた脚を並べるようになったのは。


なかなか恋人のできなかった、わたしにも。
結婚の刻が、訪れるようだ。
交際を申し込んでくれたひとが、いないわけではなかったけれど。
  お友だちに、吸血鬼がいるの。
真顔でそんなことを言うわたしに、まともに相手をするひとはなかなかいなかった。
けれども彼は、そんなわたしをわかってくれて。
  そう。ボクにも、紹介してくれる?
夕暮れ刻の公園で、一時間ものあいだ。
彼と向き合って、言葉を交わしてくれていた。

人の血を欲する身のうえで、
人をあやめることを、なによりも嫌う。
あのときだって、ほんとうは飢えていたのに。
わたしのひと声で、ママを襲うのをためらっていた。
そんな想い出を、言葉にすると。
彼は深く、頷いて。
そうしておじ様に告げたのだった。
  処女の血が、お好きなのですよね?
  ユカさんと結婚したい・・・って、ボクが言ったら。
  さぞ、ご迷惑なのでしょうね。
おじ様は、大きく目を見開いて。
けれども口許に浮いたのは、いつもの冷えた笑みではなくて。
諦めたような、優しいほほ笑みだった。
彼と並んだわたしを見て。
たったひと目で、わたしたちのあいだにかよい合うものを感じ取っていたらしい。
おじ様は、わたしと彼の手を取って、ふたりの手を、重ね合わせて。
たったひと言、
  おめでとう
呟いていた。

ごめんね。
いいんだよ。
夜のしじまを忍ぶように、ひっそりと呼び交わす。
いつも、ひとりで訪れる、夜の公園。
今夜は、彼のうなじにも。
バラ色のしずくがちょっぴり撥ねている。
精いっぱいの好意を、こういう形でしか示すことのできないおじ様は。
しばしの間、わたしの花婿を酔わせ支配した。
ふつうはね。
花嫁の純潔を、こうして奪ってしまうのだけれど。
キケンなささやきを洩らすおじ様に。
彼は、困ったようにほほ笑んでいたけれど。
どうしても・・・ご所望なのですか?
薄っすらとしたつぶやきに。
意外にもおじ様は、かぶりを振っていた。
わたしを見つめる目線を、わたしはまともに返して。
  初めての刻は、彼といっしょに過ごします。
自分でも驚くほど、きっぱりとした声だった。
おじ様は、いつも別れ際に浮かべるあの寂しげな笑みを浮かべると。
夜霧のように、かき消えていた。


用意はできた?時間におくれるわよ。
人並みに、せかせかとしたおばさんになってしまったわたしのことを。
娘は冷やかすように見あげ、夫は苦笑しながらかえりみる。
ふだん着の夫は、家で待っているつもりらしい。
娘が・・・というのはね・・・
遠慮がちに洩らした声の主は、きっとあの晩のことを思い出したに違いない。

結婚して、子どもができて。
子どもが大きくなって。
それまでのあいだ、ずっと現れなかったおじ様が。
庭先にたった、その晩に。
夫は窓を開いて、迎え入れて。
ちょっと一服、してくるよ。
イタズラっぽく振り返る目が、すべてを許してくれていた。

あの晩いらい。
吸血鬼の花嫁になったわたしのことを包むいたわりが。
濃く熱くなったような気がするのは、ほんとうに気のせいなのだろうか?
時おり隣室から洩れてくる夫の目線をかんじながら。
凌辱ごっこの床のうえ。
わたしはよけいに昂ぶって、声まで洩らしてしまっていた。

花嫁の純潔は、得られても。
娘の純潔は、獲られてしまうようだね。
おじ様からの招待を、切り出すまえに。
言葉を洩らしてきたのは、夫のほうからだった。
しっかり介添えしてあげなさい。
肩に置かれた手が、しっとりと。
ワンピース越しに、ぬくもりを沁み入らせてきた。

母娘が脚に通したのは。
おそろいの、黒のストッキング。
彼に、破いてもらうんだ。
娘はまるで、遠足に行くようにウキウキとして。
パパにもママにも、大人びた脚を、見せびらかしている。
苦笑を交わすわたしたちを。
おじ様はどこからか、覗きこんでいるに違いなかった。

通われ・・・て。

2007年06月11日(Mon) 07:47:12

母さんのところには、お隣のレイジ小父さんが。
そして、ボクの婚約者のハルミさんのところへは。
レイジ小父さんの息子のユウくんが。
毎晩のように、通ってくる。

志津夫。志津夫。
父さんがボクのことを招き寄せると。
ボクは素直に席を立って。
母さんとハルミさんを、ふたりきりにする。
嫁と姑になるふたりは、顔見合わせて、うなずき合って。
いそいそと身づくろいをして、それぞれの部屋に引き取ってゆく。
ひとつ屋根の下の、むこうとこちら。
それぞれの寝室の窓辺には。
黒い影が、ひっそりとたたずんでいる。
縁側をかすかに、きしませて。
そう・・っと、細めにふすまを開いて。
中はかすかな、常夜灯。
男の影が、浮き上がり、そしてやがて、
うつぶせている女たちの影に、寄り添うようにおおいかぶさる。

ちゅう、ちゅう・・・
きぅ・・・きぅ・・・
柔肌を破られ、身体から生き血を吸い取られてゆく。
母さんの部屋からは、かすかな音。
ハルミさんの部屋からは、あからさまな音。
傍らの父さんは。
若いんだね。ハルミさん。
キモチよさそうに、たっぷりと吸われちゃっているんだね。
母さんも昔は、三人同時に相手をしことがあるんだけどね。

祝言のまえとあとの数ヶ月。
それから、子どもができたあとの、女ざかり。
人妻たちは、村の男たちを相手に、
柔肌を飢えた牙にゆだねる。
そんな村の風習に、何の疑問も抱かれない。
村の男たちと、なん人仲良くなれるか。
どれだけおおぜいの男たちを、もてなせるか。
主婦たちは、寄ると触るとみそか夫の数を、自慢しあっているという。
夫たちも。
妻の魅力の度合いをはかるのに。
定められた期間をすぎても、相手の男を引き止めて。
一家の主婦の貞操という、もっともたいせつな宝物を。
惜しげもなく、もてなしつづけようとする。

いちどは引退をした母さんを。
ボクは、お隣の家に連れて行って。
レイジ小父さんに、襲ってもらった。
きゃあきゃあと逃げ回る母さんが、つかまえられて、組み敷かれて。
咬まれて、血を吸い取られて、犯されて。
そんなお芝居を、ドキドキしながら、
いちぶしじゅうを、見守って。
あとから知った父さんは。
苦笑いをしながら、許してくれて。
こんど小父さんが通ってくるときは。ちゃんと教えなくちゃダメだぞ。って。
見当違いなしかられ方をしただけだった。
ハルミさんの処女は、この子にあげてくれるね?
小父さんに、言われるままに。
ずっと年下の、ユウくんが。
いまでは一人前の顔をして。
制服のスカートのなかを、知り尽くしちゃって。
我が物顔に、ボクの未来の花嫁に、通っている。

通われちゃったね。
通わせちゃったね。
もっと、通ってもらおうね。
父さんとふたり、苦笑いをして。
これ見よがしに明るくなった寝室で。
くり返される、愉しみを。
代わりばんこに、見守ってゆく。
夜はいつでも、とても愉しい。

息子の許婚

2007年06月11日(Mon) 07:22:21

みしり・・・
うっかり踏み折った小枝が、かすかな音をたてた。
ここは、我が家の庭先。
一家のあるじがどうしてこのような夜更け。
帰宅するのに、庭先で足音を忍ばせているのは。
わたしがもう、ふつうの人間ではなく。
吸血鬼に、なってしまったから。
ひつぎからよみがえったあと、ただいっしんに追ったのは。
ほかならぬ、妻の面影だった。
操のきれいな女の血を吸うがよい。
やつはたしかに、そういった。
わたしの「死んだ」あとの一週間。
妻は再会を喜んでくれるのだろうか?

ふと身を沈めた生垣の向こう。
縁側に足音を忍ばせたのは、息子のカツヤ。
「母さん。起きてる・・・?」
声までも忍ばせて訪うのは、夫婦の寝室。
細めに開かれたふすま越し。
テーブルに置かれているのは、わたしの写真。
そして妻は、黒ずくめのフォーマルスーツを着ていた。
「黒のストッキング、履いてくれたんだね?」
息子は嬉しそうに、妻を見あげる。
「さ、早く・・・」
母子でひと目を忍ぶように、いったいなにをしているというのだろうか?
と、思うまに・・・
きゃっ。
妻が、くすぐったそうな声をあげた。
あろうことか。
カツヤは妻の、黒のストッキングを履いた脚を吸っている。
「アラ。だめ・・・」
かすかな翳りを帯びた声が、閉ざされたふすまの向こうでくぐもった。
「ぁ・・・あ・・・ァ・・・」
切れ切れな声は、ひくくちいさく。
照明を落とされた部屋のなか、いつまでも震えつづけていた。

もう・・・ガマンできない・・・
ふすま越しに覗いてしまった。
息子を相手に淫欲に耽る、妻の痴態。
どうして?なぜ?
淡い照明の下。
黒のストッキングは淫靡に輝き、むき出しの若々しい脛とヘビのように絡み合う。
ついぞ見たことのない、ガーターストッキングは。
わたしを弔うためにまとわれたものではなかった。
喉が、カラカラだった。
けれどももう、妻の血でうるおすわけにはいかない。
知らず知らず足を向けていたのは。
息子の許婚、優子が住まう家。

みしり・・・
小枝を踏み折る音は、どこかで耳にしたような気がする。
夜も更けているというのに。
目指す窓辺には、こうこうと灯りが点されていた。
静まりかえった庭先。
昂ぶった息遣いをしずめるのに、ひどく苦労をしながら。
少女の部屋につづく廊下に、足を忍ばせる。
すすっ・・・
音をたてずに、障子をずらすと。
机に向かっていた人影は、敏感にも自室の変化を察していた。
少女は顔をあげ、楚々とした歩みをこちらへと向けた。
お義父さま・・・ですね?
まだ祝言を挙げる前だというのに。
息子の花嫁となる少女は、わたしのことを義父、と呼んでくれた。

聡明な少女は、わたしの正体を察していた。
血が要りようで。処女の生き血を求められてきたのですね?
動揺ひとつ、見せないで。
秋にはお義父さまの娘にしていただきますので。
そのあとからでは・・・遅いですわね?
少女はさりげなく、長い黒髪を背中へと追いやっていた。
恥ずべき衝動が、わたしにすべてを忘れさせた。

組み敷いた畳の上。
少女は蒼ざめた唇に、沁み透るような笑みを含ませて。
もっと・・・召し上がれ。
傷つけられたうなじを、自ら仰のけて。
忌むべき訪客を、うながしている。
黒のストッキング。お嫌いですか?
応えるかわりに。
濃紺のスーツの下、清楚に装われたふくらはぎに唇這わせて、
薄いナイロンのオブラアトを、ふしだらにいたぶり始めてしまっている。
うふふ・・・
少女はうつろに、笑みながら。
いいんです。どうぞ、存分になさってください。
あくまでも礼節を失わない態度が。
かえってわたしに恥を忘れさせていた。

ちりちりになるまで、なぶり抜いて。
少女の脚から、ストッキングを剥ぎ堕としてしまうと。
少女はストッキングを惜しげもなく破り捨てて。
こんどは薄手のナイロンハイソックスを、脚に通してゆく。
真っ白なハイソックスが、少女の足許を蒼白く染めた。
うふふ。いかが・・・?
少女は小首をかしげ、わたしの与えようとする恥辱を待ち受けている。

知っているんです。
カツヤさん、お義母さまのところに、通っていらっしゃるんですよね?
お義父様、もしかして。
ドキドキされてしまいました?
見透かされたような言葉に、てらいも忘れて頷きながら。
なおも少女の装いを堕とすのに、熱中してしまっている。
ブラウスに、バラ色のしずくを散らしながら。
えり首を、はだけられながら。
半ばあらわになった胸元から、取れかかったブラジャーから、初々しい乳房を覗かせながら。
少女はなおも、含み笑いを消さずにいた。

カツヤさんたら・・・ね。
貞淑なお義母さまを、堕落させてしまいたいらしくって。
わたくしの父に、お義母さまを取り持たれたのです。
ご存知でした?
お義母さまが昔、嫁入り前に父に犯されていたそうですわね?
目のまえで、お義母様を犯させて。
それから、母子で契ってしまったのです。
わたくし・・・見てしまいましたの。
それから、ご自分の妹さんまで、巻き込んで。
兄妹仲、よろしかったのですね。
わたくしだけが、仲間はずれ。
いちばんたいせつなひとだから・・・って言われましても。
どうして暗がりの秘密を、わたくしにだけ内証になさるのでしょうね?
わたくし、決めてしまいましたわ。
お義父さまが、わたくしのところに忍んでいらしたら。
わたくし、まっさきに・・・お義父さまにお嫁入りさせていただこう・・・って。
きっと、それ。カツヤさんも、じつは。の・ぞ・ん・で・い・ら・し・て・・・よ・・・
さいごの声は、衝動の嵐に飲み込まれていた。

わたしは感づいていた。
優子さんを犯しているあいだ。
細めに開かれたままのふすま越し。
しつような目線が、ふたりを嘗め回すようにみつめていたのを。

そのうち父も、わたくしのお部屋にしのんでまいります。
どうかそのときは・・・
入れ違いに、母のことを襲ってくださいませ。
母はきっと、父しか知らない身体ですから。
お口に合う生き血を、宿していると思います。
血を吸う相手は。
多いほど、ご都合よろしいでしょう?


あとがき
ちょっと、散文的になってしまいましたね。
よみがえってみたら。
妻は息子に通われていて。
ひっそりと抱きあうふたりを覗いて、昂ぶって。
見返りに・・・と。
息子の許婚の部屋に、忍んで行って。
予想外の歓迎に、わななきながら。
彼女の血を吸い、衣裳を乱し、純潔さえも、散らしてしまって。
組み敷かれた下、息子の許婚が語る、妖しい話。
息子は母親~彼の妻~の喪服姿を。
自分の義父になる男に差し出して。
目のまえで、凌辱させていた。
そこまで語った娘は。
義父となる彼に。
母のことも襲ってください。
インモラルな依頼を、重ねてゆく。
・・・やっぱり。
込み入っていますね。

待ち合わせの喫茶店

2007年06月11日(Mon) 06:33:40

そこ、ここ、かしこに、ひとり、ふたり。
あちらに、ひとり。こちらに、幾人。
年恰好もばらばらな男たちが、三々五々つどってきて。
お邸まえの喫茶店は、きょうも繁盛。
だれもが奥さん連れで、やって来て。
時間がくると・・・奥さんだけが。
華奢な腕をかるくあげ、
腕時計にそれとなく、目をやって。
ご主人に甘えるように、寄り添うように身を重ねて。
ひと言、ふた言囁くと。
あちらのご主人は、くすぐったそうに、目を細め。
こちらのご主人は、ちょっぴりしかめ面をして。
それでもルールを、わきまえて。
差し出された手の甲に、優雅な接吻を加え、
各々の妻を、お店から送り出してゆく。
友だちみたいにちいさく手を振り合っていたのは、
新婚ほどない若夫婦。
お邸の門前で振り返って、深々と頭を垂れるのは、
いかにも貞淑そうな初老の婦人。
夫たちは、みないちように。
妻たちの後ろ姿が門の扉の向こうへと吸い込まれるまで、
ただぼうぜんと、見送っている。
ふたたび暖かい店内に戻ると。
めいめいのコーヒーカップは、おかわりに満たされていて。
ちょっときつめのコーヒーが。
くゆらぐ湯気に、苦味を秘めて。
男たちはまだ押し黙って、カップを口に運んでゆく。

ぎいっ。がたん。
にわかに開け閉めされる扉のわきで。
  おや、あなたもですか。
  あらら。かち合っちゃったのかな。
はち合わせたふたりは、お隣同士。
時ならぬ声に、ほかの客はいちように顔をあげ、
やがて無関心を装って、自分独りの世界にもどってゆく。
  いえ。いえ。かち合うなんて。
  貴方のお相手とうちとでは。たぶん・・・ちがうはずですから。
入ってきたほうのご主人は。
促されるまま、先客の隣に腰かけていた。
ことさら何かを見せびらかすように、ひとりが脚を組みなおすと。
もうひとりもやはり、わざとらしく。
組んでいた脚を、引き伸ばしてゆく。
ズボンのすそからわずかにのぞいた足首は。
薄い靴下に透けて、かすかに白く浮き上がって見えた。
  黒。ですな?
ひとりが眉をあげると、
  お宅は、紺・・・ですか。おめでとうございます。
色にはそれなりの、意味が隠されているらしい。
おめでとう・・・と言われたほうの、紺の靴下の主は。
まるで披露宴の新郎みたいに、照れながら。
ちょっぴり、くすぐったそうに。自慢げに。
あたりを憚るような小声で、呟いている。
  あちらがご執心でしてね。
  夕べとうとう・・・されちゃたんですよ。
そう、ここは。
吸血鬼に妻を寝取られたものたちが、つどう場所。

ふたりの夫は、堂々と。
妻と連れだって、出かけてきたけれど。
こっそりあとをつけてきた夫たちも、
じりじり、苛々、悶々としながら。
表向きだけはかろうじて、平静を装って。
コーヒーカップを、いじりまわしている。
いまごろ、なにをされているのだろう?
あいつはどんな顔をして、やつを迎えているのだろう?
そして、そのあと・・・
家を出るときは、黒のスカートだった。
その下には、肌のすけすけに透ける、黒のストッキングを履いていた。
しわがよるほど、スカートをたくし上げられて。
オレといっしょのときには、身につけたこともないガーターストッキングの太ももをさらけ出して。
脚の周り、唇でねぶられて。
ストッキングがふしだらに、波を打って・・・
あぁ、あぁ・・・あなた・・・って。
オレの名前を呼びながら。もだえているのだろうか?

お隣同士のご主人たちは。
落ち着いた、よどみのない小声で。話を交わしはじめている。
だれ聞くともなしに、聞き入っているのだが。
定まった愛人を妻に迎えた夫たちは。
口許に笑みさえ浮かべながら、妻たちの不貞を淡々と語り合っている。
  あぁ、馴れ初めは・・・去年の秋だったんですね。
  うちはこの春、娘が中学にあがったころですよ。
  追い抜かれましたね・・・
  ははは・・・
まるで他愛ないうわさ話のようにつづけられるのは。
妻たちの吸血体験談。
  法事のかえりに、いきなり襲われちゃいまして。(^^ゞ
  黒のストッキング、なまめかしかったんでしょうな。
  まんざら捨てたものでも、なかったのですよ。
  おやおや。言いつけてしまいますよ。^^ 
  うちのは、娘の入学式のときでした。
  あのときは新調のスーツ、台無しにされちゃいましてね。
  おやおや、それはとんだ災難でしたな。
妻たちの浮気自慢は、まだまだつづく。

どうしてあんなに、冷静に口にできるのだ?
そもそも何故、愉しそうなんだ?
店の隅っこで頭を抱えているご主人も。
スラックスの下には、黒の薄い靴下。
奥さんの箪笥の抽斗から引っ張り出してきた、彼女がまだ貞淑だったころの形見。
いまではほんとうなら。あの隣の男のように、紺の靴下を履かなければならない立場。
けれども決して、そんな恥ずかしいことは・・・
喫茶店の客を見回すと。
だれもが、男。
だれもが、薄い靴下を履いている。
彼らの奥さんたちも。
いまごろはご主人がズボンの下に身に着けているのとおなじストッキングを脚に通して、
ふしだらにあしらわれ、破かれていっているのだろうか。

あれ?お父さん?
呼び止めてきた若い声に、顔をあげると。
新来の客たちのなかに、息子の姿を見出した。
かれらはみないちように、若者らしい、むれむれとした熱を帯びている。
  あれ?おまえどうしてこんなところに?
  友だちと・・・ね。
彼の息子は、ちょっぴり口ごもったけれど。
  ミナコさんと、そこまでいっしょだったんだ。
よく見ると。
若者たちはみな、太ももまでのハーフパンツ姿。
ある青年が脚にまとったラインの入ったハイソックスは、スポーツの試合のあとかと思ったけれど。
べつの若者は、もっと薄いやつを履いている。
なかにはひざから上までも、薄手のストッキング地の靴下でおおっているものもいる。
息子はと、見つめると。
見おろした足許は、つやつやとしたダイヤ柄のハイソックス。
  彼女に借りたんだ。
てらいもなく口にして、足許を見せびらかしてくる彼は、
じゃあ・・・といって、父親の傍らを離れて。
仲間たちの談笑の輪に加わってゆく。
  ユウカはきょうで三人目なんだ。
  あれ?ミツオは?
  あいつ、まゆみといっしょに入っていったぜ。
  男連れ・・・ってことは。もしかして。新婚初夜?
  うふふふふっ。
息子の彼女、ミナコの名前も、いかがわしいうわさ話のさかなにされていて。
それでも息子は照れくさそうに、得意げに。
おうような相槌をうっていた。
どうやら息子は来週にも、紺の靴下を履くようになりそうだ。
  いいのかい?ミナコちゃんまだ処女なんだろう?
  未来の花嫁、捧げちゃうの~?
友だちの気遣いに微笑しながら。
  たいせつなひとだから、処女をあげるんだぜ?
  もちろん、見せてもらうけどね。
だから、母さんを犯したひとに、わざわざお願いしたんだ。
えっ?
気がつくと。
傍らには、妻がほほ笑んでいる。

妻にはだまって、あとをつけてきたはずなのに。
  やっぱりいらしたのね?
  困ったわ。
羞じらいを含んだ咎めに、だって・・・と少年のように言いよどんでいたら。
  こんど、失礼でなければ。
  貴方のこともお招きしたいって言われているの。
  いいかしら?
謡うような、妻の声色に、つられるように。
  どうせなら、うちへお招きしようか。
  どうやらボクは、きみと彼との仲人役をやるハメになりそうだけど。
ついすらすらと、洩らした言葉に。
  紺色の靴下、買わなきゃね。
  あなたもようやく、似合うようになったみたい。
眩しげに見あげてくる妻の目線と。
向こうからチラチラと窺ってくる息子の視線とを。
くすぐったそうに、受け流して。
  せめてあいつより先に、履かなくちゃな。
  もう。あなたったら。
  ミナコさんも、近々祝言らしいから。
  おまえ、あんまり張り合うなよ。
  もぅ・・・
まろやかな声の応酬に、周囲の空気が安堵に揺らいだのを。
どうやら彼だけは、気づいていないらしかった。

能面の女

2007年06月11日(Mon) 06:17:12

御所とも見まごうその古寺は。
夜の闇のなか、シンと静まり返っていて。
ぴかぴかに磨かれた廊下は、月の光をさえ映さんばかりに冷え透きとおっている。
しずしず・・・と。
彼方から歩みを進めてくるのは、和装の女。
氷のような無表情・・・と見えたのだが。
顔には能面を、つけている。
鮮やかな濃い眉に、切れ長の目じり。
生気の喪われた、白い面貌。
女はきざばしの上で歩みを止めると。
真っ暗な庭を、見下ろした。
がさ・・・
何者かが。
うごめいている。

しぃん・・・と落ち着いた沈黙のなか。
女はいま一歩、きざばしに脚をかけて。
ぱあ・・・っ。
大胆にめくられた、着物の下前から覗いた脚は。
薄墨色のストッキングに、ぴっちりと包まれていた。
影は女の足許に、忍び寄るように近づいて。
額づくがごとく、卑屈なほどに。
女の足許に、かがみ込んでいる。
ちう・・・っ。
血を吸う音が、かすかに響いた。

ざわざわざわっ。
草を薙ぐ音とともに、影が消えうせると。
能面の主は、ほう・・・っ、と息をついて。
影の消えていったあとを、いつまでも見やっている。
そしてあたりから物音ひとつさえが、消えてしまうと。
何ごともなかったように、着物の下前を元どおりにして。
しずしず・・・と。
奥の間へと、消えていった。

くたり。
地面に落ちた花びらのように。
女はいっきに身体の力を抜いて。
豪奢なうちかけ姿の身を崩す。
うちかけから覗いた脚には、すうっとひと筋。
薄手のナイロンの裂け目が、滲むように浮き上がっている。
かすかに肩を上下させているのが。
女の失血がひととおりではなかったことを示していた。

後ろから伸びてきた手が。
女の顔から、能面をはずしてゆく。
現れたのは。
美しい女。
けれども齢以上のやつれを見せたその顔は。
かえって妖しい香気を放っている。
女の背後には、従者のごとく控える男。
おかげんは。
感情を消した声色に。
だいじょうぶです。
女は落ち着き払って、声を落とす。
あの子はわたくしのこと・・・感じ取っていたようですわ。
血は争えない。
そういうことのようですね。
うつろに響く声に。
男は、頷きもせず、かぶりも振らず。
彼がさ迷いをやめるまで、おつづけになるおつもりなのですね?
声はどこまでも、冷えていた。
ええ。だって。
あの子はわたくしと貴方の間に生まれた息子ですもの。
ホホ・・・
闇に吸い込まれてゆく笑み声は。
かすかな狂気さえも、含んでいた。

た・め・い・き♪

2007年06月10日(Sun) 22:34:25

はぁ。
ついていないというか。つまらな過ぎるというか。
本当だったら、いまごろは。
ウキウキと職場を、あとにしていたはず。
憧れのあの人から、お酒を飲みに行こうって誘われて。
まりあはもちろん、OKをした。
二時・・・三時。
時計の針がまわるのが、待ち遠しかった。
四時・・・四時半。
どきどき。ずきずき。
早く五時に、ならないかなぁ。
そして、五時。
気分は、暗転していた。
時ならぬ、携帯メール。
職場のなかでは携帯は原則禁止になっているのだが。
だれもがマナーモードで、ポケットに忍ばせているのは公然の秘密。
じわじわっ・・・と、胸をまさぐられるような感触に。
まりあは思わず、どきん!としたけれど。
  すまない。残業になっちゃった。またこんど。
そっけなさ過ぎる断り文句に。
まりあは寂しさよりも、むしろ憤然としてしまった。
もうっ!そんなの、あり?
せっかくの、週末なのに。
まりあとお仕事と。どっちが大事なのよっ。
にこにこ顔に急にケンをたてたまりあ先輩を、
周りの女の子たちは、敏感に察知して。
当たらず、触らず、よらず、ちょっかい出さず。
そんな雰囲気に、ますますいらだって。
憤然として、席を立っていた。

五時半。
周囲の人の影は、まばらになっている。
さっきまでまりあの顔色を窺っていた後輩たちも。
みなそれぞれに、予定が入っているのだろう。
そのだれもが、彼氏つきの予定ではないとわかってはいても。
いそいそと立ち去ってゆく後ろ姿が、なんだかとってもやるせない。
残業、してこうかなぁ・・・
お仕事、たまっているし。土日も、休日出勤だし。
あ~あ・・・

八時。
もうオフィスのなかにいるのは、まりあだけ。
いざ仕事に立ち向かうと、キャリアウーマンの目の色になって。
てきぱきと手際よく、リズミカルなまでにお仕事を片づけてゆく。
未決の箱に山積みになった資料が、ぱっぱと小気味良いくらい、
既決の箱に積まれてゆく。
さっき顔を出した守衛さんが、つぎにオフィスを覗くのは。
きっかり、三十分後のはずだ。
誰もいないオフィス。
そこは、まりあ独りの支配する世界・・・のはずだったのだが。

くくくくくくっ。
時ならぬ、含み笑い。
だれ?どこにいるの?
見回す視界には、スチール製の机やロッカーが居並ぶばかり。
気のせい、か・・・。
ペンを取り直すと、ふたたび。
くくくくくくっ。
「誰っ!?」
こんどは声に出して、立ち上がろうとした。
なにかが強い力で、席を立とうとするまりあの両肩をぐいっと押さえつける。
「っ!」
ブラウスの袖を通して食い込んでくる鋭い爪に、相手の正体をさとってしまった。
なに・・・何するのよっ!
わかっているくせに。
影はせせら笑いながら、まりあの肩先に身をかがめてくる。
お仕事中は、しないって約束でしょっ!?
そうだったっけな?^^
影は、もう嬉しくってしょうがないらしい。
おどけるように、まりあをからかいながら。
まりあの首筋に、今にも牙をすべり込ませようと狙いを定めてくる。
お願い。今夜は放っておいて・・・
ダメだ。
こんどの声は、厳然としていた。
おまえは今宵、わたしの奴隷になる。いいね?
嫌です・・・
声が、うつろな闇に、むなしく吸い込まれてゆく。

キュッと閉じた瞼を、かすかに震えるまつ毛がくっきりと縁どっていた。
諦めて抵抗をやめたまりあを、愉しむように。
肩に置かれた掌は、すべるように、ブラウスの二の腕を伝い降りて。
握り締めた指先を、一本一本、引き剥がすようにほぐしていって。
暖かい体温を、愉しむように。
まりあの掌を、もてあそぶ。
もう逃げないね?
影はまりあの意思を、確認すると。
いい子だ。
いまいましいことに。
声まで、まろやかに和んでいる。
影は、そう・・・っと、唇をうなじに添わせてきた。
冷たく湿った、なまの唇が。
めでるように。味わうように。
ぬるり、ぬるり・・・と、素肌に慕い寄ってくる。

三十分・・・経つわよ。
切れ切れな声に、ニッ、と頷いて。
じゃあ、しばしのあいだ、隠れんぼをしようかね?
影はうそのように、跡形もなく消えうせている。

おや、まだ残業ですか?
白髪交じりの守衛さんは、週末まで残業をする若いまりあにねぎらいの声をかけてきた。
エエ、もうじき終わりますが。
まりあはいつものように、礼儀正しく声を返して。
すぐにまた、机上のメモにペンを走らせてゆく。
足音が去ると。
もうっ!
まりあに蹴られまいとして。
影はふくらはぎをつかまえて。
優しいおみ脚に、そんな振る舞いは似合わないね。
まりあを愉しげに、からかいながら。
破けたストッキングをさらさらとむぞうさに剥ぎ落とすと。
もういっぽうのふくらはぎにまで、唇を這わせていった。

10万あくせす?

2007年06月10日(Sun) 21:47:32

ちょっと、日があいてしまいましたね。(柏木にしては)
一昨日あたり、どうやらアクセスが十万件突破したみたいです。
といっても、「幻想」からの通算ですが・・・
まいどごひいきにあずかりまして、ありがとうございます。m(__)m

二年で十万件。
多いのか少ないのか、わかりませんが。
こういういんもらるなサイトですと。
自慢になるような、ならないような・・・(^^ゞ
もっと健全なえろ小説だったら、じゅ~ぶん自慢になるような気がするのですが。
表現はゆるいですが、ふどうとくですからねぇ。ここ。

脚写真を撮られながら。

2007年06月07日(Thu) 08:00:21

あのぅ・・・
業務終了時間を過ぎてから。
おずおずと声をかけてきたのは、隣席の男。
黒ぶちめがねに、もさもさの頭。
決して見苦しくはないまでも。
おだやかで冴えない雰囲気は、見るからにオタクな中年男性。
めんどうな仕事でも、嫌な顔ひとつしないで引き受けてくれる、重宝な男なのだが。
若い女子社員たちは、キモチわるがって、とおりいっぺんにしか近寄ってこようとしない。
独身なのか。妻子もちなのか。
隣同士でありながら、そんなことすら知らないでいたのだが。
きっと、独身なのだろう。
心のなかで、そう決めてかかっていた。
悪いひとじゃ、ないのにねぇ・・・

あら、なんですか?
応える声は、おっとりと落ち着いていて。
三十そこそこの、まだ若い娘の面影さえ宿す若さとは裏腹の、
ミセスの余裕が見え隠れする。
そんな自分の変化を、このごろはどこか誇らしく思っている。
なんでも聞いて御覧なさい。
若い子とちがって。ちっとも、驚かないから。
男は周りに人がいないのを、見計らって。
いつになくおずおずと、切り出した。
脚の写真、撮ってもいいですか?
え?
さすがに、聞き返していた。
若い子だったら、間違いなく引くだろう。
もっと、ノリがよければいいのにね。
となりの課の若い彼など、能天気なくら明るい態度で、ヌケヌケと。
いつも若い子たちの群れのまん中で、のうのうと振舞っていて。
もっとひどいことだって、まんまとやらせてもらっちゃってるくらいだし。

え・・・女の人の靴下。興味あるんです。
へぇ~、変わってるんだ。
黒のナイロンハイソックスを履いた脚を、わざとぶらぶらさせてみる。
どこにでもある、ダイヤ柄のハイソックスなのに。
男はとたんに反応し、そわそわと落ち着かなくなった。
応対に、余裕をかませてしまうのも。
相手が相手・・・だからなのだろう。
同年輩の男が、自分の脚を撮る。
危険のない状況・・・とは言い切れないはずなのに。
いいわよ。お撮りなさい。
その代わり、撮った写真はわたしにも頂戴ね。
男は嬉しそうに、冴えない面貌にはじめて青年のような輝きをよぎらせた。

パシャ。パシャ。パシャッ。
昔の一眼レフのように、重々しくはないけれど。
デジタルカメラが放つ眩いフラッシュの前、脚をさらしていると。
ちょっぴり、モデルさんになったような気分になる。
脚を組んだり。そろえたり。
ななめ前から。真横から。正面から。
いったい何枚、撮らせてあげたことだろう。
見せて。
男のパソコンのディスプレイに映し出された自分の脚は。
まるで別人のようになまめかしく、流れるような脚線美を誇示していた。
身を乗り出して、差し出した手に。
男は慣れた手つきで二枚、三枚・・・と、写真を載せてゆく。

ねぇ、あなた。見て。
写真、撮られちゃった。
勤め帰りのダンナに自慢して、見せびらかしてみた。
気にもとめてくれないかな。
と、思ったけれど。
ダンナは案外。ノッてきて。
へぇ。うまく撮れてるねぇ。
プロの手にかかると、お前の足なんかでも、綺麗に写るものなんだね。
「なんか」って、何よ?「なんか」って。
思わず、ぶーたれてみたけれど。
ことさら「綺麗」と、言ってもらったのは。
なんヶ月ぶりのことだろう?
明日もね。撮らせてあげるの。
こんどはもうちょっと肌の透けるやつ、履いてってあげようかな。
あなた、嫉妬する?しないよねぇ。
あのひと。どうせ、靴下目当てなんでしょうから。

外で撮らせてくれる?という頼みに、さすがにやぁよ、と言ってみる。
だって・・・だれに見られるか、わからないでしょ?
じゃあ、うちのスタジオで。
スタジオ?
家が、写真館なんです。ボクんとこ。
両親も、写真家でしてね。
へぇー。そうなんだ。
両親、という言葉に。
オフィスでのツーショットよりも気安いものを覚えて。
まだ時間も早かったので、即座にOKしてしまった。
今夜のダンナは、たしか飲み会のはずだった。

古風で瀟洒な洋館は、小説にでも出てきそうな趣で。
思わず「すごいね」と言ったけれど。
長年棲んでいる家は、彼の眼には変哲もないらしくて。
「そうですか?」と、冷淡な返事がかえってきただけだった。
表の古めかしさとは打って変わって、
スタジオは明るく、近代的だった。
まちまちな角度にしつらえられた大小のレンズが、なぜかいちようにこちらをにらむように向けられている。
じゃ、撮るね。
身のこなしが、いつもよりてきぱきとしているのは。
やっぱり慣れた空間のせいだろうか。
脚、組んでみて。
いま、気がついた。
男の声色が、命令口調になっている。

何回、フラッシュを当てられただろう?
幻惑されるほどの眩しい閃光に包まれて、意識が遠くなるほどだった。
ほら、見て御覧。
時おり手を休める彼は。
プリントアウトされたばかりの画を、まるで自分の獲物のように見せびらかして。
微妙なツヤが、あるでしょう?脚の線を縁どるみたいに。
これが・・・いいんだよなぁ・・・
自分で撮った写真を、自分でしんけんに見入っている。
そんな顔つきがなんだかこっけいで、しまいにはくすくす笑ってしまったのだけれど。
もっといろいろ、持って来てあげたのよ。
二足、三足と、つぎつぎに。
男のまえで、靴下を変えていった。

さいごに取り出したのは。
無地の薄手のハイソックス。
ストッキングのように薄い靴下は。
蒼白く浮き上がる脛もなまめかしく、足許を染めていた。
柄もののほうが、面白いんでしょ?
いや。無地がいちばんなんだ。
気のせいか・・・
男の目が、獣のように輝いたような気がした。

くたびれちゃった~。
夜遅く帰宅すると、先に戻っていたのは夫のほうだった。
おや、おや。ずいぶん熱心なモデルさんだね。
あのあと、お父さんにつかまっちゃって。話し好きなんだもの。
それはそれは、ご苦労さん。
しっかり女房に、お人よしの亭主。
そういう組み合わせだから、気の強いわたしでもうまくやってこれたのだろう。
どんな写真、撮られたの?
夫も、無関心ではないらしい。

ふぅーん。
印画紙を見つめる眼が、昨日よりも熱心だった。
どれもこれも、色とりどり、柄もさまざまな靴下を通した脚、脚、脚。
なんのへんてつもないはずの脚写真に、しばし彼の眼はクギづけになっていたようだ。
まるで、成人雑誌のグラビアでも覗いているときのような眼をしていた。
ねぇ、きれい?
あぁ、きれいだよ・・・
なぜか放心したように。夫はぼうぜんと、まだ印画紙から目をそらさない。
また、撮ってもらいにいくんだろう?
ウン、約束しちゃったぁ。
エヘヘ・・・と、イタズラっぽく笑うわたしを、咎めるふうもなく。
彼はウフフ・・・と、人のわるい笑いを浮かべて。
彼。きみの写真をどうしているか、知ってる?
わからない。って、応えると。
おなねたにしているに、決まってるじゃないか。
もうっ!
思わずふりかざしたハンドバッグに、夫はおどけて逃げるそぶりをした。

お邪魔しまぁす。
彼のスタジオに来るのが、愉しみになっていた。
きょうは上半身も、おめかししている。
とはいっても、地味好きな彼の好みに合わせたので、
シックな濃い紫のワンピースだったけれど。
ねぇ。こんなのどう?
バッグのなかから取り出したのは、濃紺のハイソックス。
服と色が合いそうですね。
品定めするような彼の目のまえで、ひざ下までぴっちりと引き上げてみせる。
足の裏の補強を見咎めた目線のまえ、てかてかとした光沢を滲ませる脛を見せびらかしながら。
主人のやつなの。借りてきちゃった。紳士用とは思えないでしょう?
光沢がウットリするくらい、なまめかしくて。
いちど、履いてみたかったんだ。
男の目が獣のように輝いたとき。
昨晩ちらとよぎらせたあのときの目線を思い出していた。

気がつくと、男の腕のなかにいた。
うなじをちゅうちゅうと、吸われてしまっていた。
ふつうの男のひとが、するようにではなく。
皮膚に咬みついて、血を啜っているのだった。
あぁ。何するの・・・?
声色は甘く、見せかけの抵抗をする腕から、とうに力は喪われていた。
おいしい。
わたしの目の前で、吸い取った血で、ゴクリと喉を鳴らす彼。
ワイルド・・・ねぇ。
されていることのまがまがしさも忘れて。
わたしは、いつになく精悍になった彼の横顔に見入っている。
噛み破られた夫のハイソックスは、彼の手で引きずりおろされて。
むき出しの脛を、彼はいつまでも舐めつづけていた。

行って来るね。
いつもは職場から直行するスタジオに。
週末の自宅から、足を向ける。
わたしを送り出してくれた夫は。
きみの写真をおなねたにして、待っているよ。
と、笑ってくれた。
なんだか・・・ね。
ちょっぴり肩をすくめて、ため息ついてみせて。
わたしはショルダーバッグをひるがえす。
今夜、わたしの足許を彩るのは、黒のガーターストッキング。
ぜひ、履いてってやりなよ。
すすめてくれたのは、夫のほうだった。
あのカメラマン、モデルの履いている靴下を自分で脱がせるんだってね。
うふふふふっ。
恋人どうしのような異性どうしのむつまじさが、ふたりのあいだにもどってきたのは。
淡い嫉妬・・・という。妖しいスパイスのせいだろうか。

持たされた写真のなかに、妻の濡れ場を見出して。
ドキドキしながらうつむいてしまったわたしの肩を。
かわいいよ・・・と、抱き締めてくれた彼。
きみ、彼のお父さんになんか、会っていないんだろう?
どうしてそんなことを知っているのかは、わたしにはいまだにナゾである。

エール

2007年06月06日(Wed) 23:22:27

体重が 増えた増えたと いう女(ひと)の 
    あでやかによぎる 艶(つや)と色気と

ほんとうはこれ、あるかたに差し上げた歌なんですが。
気に入ったので、あっぷしてみます。^^
だいじょうぶなんですよ♪
たいがい、そんなことをいいながら。
貴女の周りのあの人も、あのオトコも。
みぃんな貴女のオーラに釘づけなんだから。


柏木は、どちらかというとむっちりなタイプのほうが好みです。
こちらによく登場する黒ストッキングも。
多少、発育のよろしいふくらはぎにこそ、より映えるように思います。
もちろん心も・・・豊かな肉づきをもっていれば。
もう、申し分御座いませんな。(^^)

法事のかえり いやらしいわね・・・

2007年06月06日(Wed) 08:11:08

三人連れ立ってあるく、喪服姿。
ひらひらとなびくスカートは、長短おりまぜていて。
スカートの下から覗く脚の太さ長さも、さまざまだった。
ひとりは年配の、あとのふたりは若い女。
そのうちひとりは、きっと娘なのだろう。
年配の女と似通った面差しをしている。
夕闇迫るなか、笑いさざめきながら通り過ぎる公園に。
ぬっと現れる、三つの影。
あら、あら。
女たちは、驚きもせず。
まるで旧知の仲のように、影たちに会釈をおくる。
さ、どうぞこちらへ。
物柔らかだが、拒絶を許さない声の響きに。
女たちはいちように、身をすくめ、顔見合わせて。
いやらしいわねぇ。
誰からともなく、囁きあっている。
じゃ・・・
喪服のスカートのすそを、ひるがえして。
女たちはためらいもなく、植え込みの向こうへと影を消した。
植え込みのなか、ひっそりとしつらえられた古いベンチ。
三人、並んで腰かけると。
影どもは並べられた足許にかがみ込んでゆく。
靴屋さんみたい。
娘がくすっと笑うと、黒ストッキングに包まれた発育の良い脚を、
自分のまえにうずくまる影のまえ、惜しげもなく投げ出した。
あら、まぁ。
はしたない・・・と、たしなめようとするお母さんも。
ダイタンねぇ・・・と、義妹を振り返る奥さんも。
ほとんど同時に、すねに唇を吸いつけられていた。
ぐにゅぐにゅと意地汚くむさぼりはじめる唇に。
白い脛を薄く透きとおらせた黒ストッキングを、くしゃくしゃにされながら。
あ・・・ァ・・・
女たちはかすかな声を洩らして、
つぎつぎと、その場にまろび臥してゆく。

生垣のさらに奥から、様子を見つめるふたつの影。
ひとつの影が、相棒に、囁きかけていた。
すまないね。
いつも、協力していただいて。
じゃ、私も遠慮なく、頂戴するよ。
相棒の応えを、くすぐったそうに耳にして。
輪姦の渦のなか、影がもうひとつ、加わった。
どうぞ召し上がれ。
そう応えた影は。
母と、妻と、妹とが喪服を乱してゆくようすを。
ズキズキした昂ぶりもあらわに、愉しんでゆく。

法事の帰り

2007年06月06日(Wed) 08:01:34

法事が済むと、真智子はお寺に慇懃な挨拶をすませ、
親戚一同にもていねいにお辞儀をし、
訪客の影が絶えると、寺をあとにした。
山門の前に佇んで、それとなく待ち受ける影。
さっきまで、会社の同僚と名乗って夫の法事に参列してくれていたレイだった。
レイさん、待った?
喪服姿の真智子が笑みを浮かると、影はくすぐったそうに笑みをかえした。
色白の真智子の頬が、黒一色の衣裳に、いつも以上になまめかしく映えている。

こんなにおいしい真智子さんが食べられるなんて・・・ご主人に感謝しなくちゃね。
冷やかすような声を受け流して。
真智子は白い表情のまま、喪服のジャケットを脱いだ。
汗ばむ季節のことだった。
脱げよ。
レイは冷ややかに、女を促す。
胸のリボンを荒々しくむしられるのは、真智子の本意ではない。
脱がされるくらいなら、自分で脱ぎます。
初めて襲われたときですら、真智子はき然と言い放つ。そんな女だった。

さらりと解かれたボウタイが長々と下に垂れ、薄く透けてそよそよと漂っている。
プレゼントのリボンがほどかれるときのように、男はワクワクと待ち受けていた。
かすかな衣擦れとともに、二の腕がむき出しになる。
スリップを着けていない女の上半身は、ぴっちりとした黒のブラジャーに覆われているだけで、
眩いばかりの白い皮膚を、惜しげもなく男のまえ、さらけ出していた。
まぶしいね。
男はそうつぶやくと、むぞうさに手を伸べて女の肌をさすりはじめた。

はじめは、二の腕。
伝い落ちるように、掌を握って。
手の甲にキス。
キスした手をたぐり寄せるように、女との隔たりを縮めてゆく。
女は表情を消してうつむいたまま、男にされるがままに身をゆだねてきた。
頭の後ろできりりと結ばれた黒髪が、淡い芳香をよぎらせる。
あらわになった女の肩に、目だたぬほどに浮いたふたつの痕。
夕べ逢ったとき。
首筋はイヤよ。
拒む女は、わざわざブラウスを脱いでくれた。

しっかりと抱きすくめた身体の重み。
その幾分の一かは、血の重さだという。
オレの所有物・・・。
思わずフフッ・・・と笑んだ息遣いに、女はぴくりと身を震わせる。
いい子だ。
幼な子を、撫でつけるように。
男の愛撫は、とまらない。
両の二の腕を捕らえたふたつの掌は、相互に連関するように。
女のうなじ、胸、わき腹と、ゆるやかにすべってゆく。
敏感になった薄い皮膚の下。
淫らな血潮がドクドクと脈打つのを。
男は確かな手触りのなか、感じ取ってゆく。

あぁ・・・
女が始めてのけぞって、うめきをあらわにしたのは。
男の手が、淑やかに組み合わされたひざのすき間を縫って、
太ももの間に侵入したときのこと。
手触りのよいストッキングだね。
とても、なまめかしいよ・・・
男は女をあやしながら。
ゆるい手探りを止めようとしない。
女もまた、スカートのなかの無作法にたいして、
男の手首を握ったけれど。
もうそれ以上、男の所行を妨げずにいる。
おいしそうな太ももだ。
男はどこまでも甘い声色で。
女をあやすように、撫しつづける。

ひっ。
喉の奥から洩れる、忍び声。
男のまさぐりは、ショーツのなかにまで及んでいる。
冷えた表情とは裏腹に。
女の股間は熱い湿りに潤っている。
う・ふ・ふ。
秘密を知ってしまったようだね。恥ずかしい秘密だね。
う・・・そ・・・
われ知らずうめきながら。
女はじぶんから、姿勢をくずしていった。

はぁ。はぁ。
せぃ・・・せぃ・・・
きちんと束ねられた黒髪はほどかれて、
ヘビのように妖しいうねりを、畳のうえに投げている。
仰向けになった女は、喪服姿もしどけなく、
薄く口紅を刷いた唇からは、蒼白い焔を漂わせる。
ストラップを断ち切られたブラジャーは傍らに捨てられて。
男は熟れた果実のなかに、顔を埋めながら。
己の熱い息遣いを、女の皮膚に染みとおらせてゆく。
くしゃくしゃになったまま着けられたスカートの奥。
ひとつに合わさった腰が、はげしい上下動を繰り返す。
ずり落ちた、黒のガーターストッキングが。
夫を弔うため淑やかに装われた意図に反して、
淫らな輝きを秘めていた。

マサオ・・・マサオ・・・
ゆるしてちょうだい。
女が呼んでいるのは、夫の名。
もっと言え。もっと言うんだ。亭主がきっと、聞いているぞ。
男の責めに、酔うごとく。
女は夫の名をもてあそんでゆく。

いちぶしじゅうを見届ける眼が、人知れず。
ふすまの向こうから熱い目線をおくってくる。
気づいているのは、男だけ。
きみが吸血鬼になって戻ってきたころには。
奥さんことをモノにしているだろうよ。
たっぷり、見せつけてやるからな。
さいごの一滴をすすり取られるとき。
真智子の夫だったころの彼は、うっとりしながら頷きかえしていた。
熱いまぐわい。
夫である自分に隠れての、忍び逢い。
これからも、つづけさせるのだろうか?
きっと、このあと・・・妻のまえに姿をあらわしても。
できそうにない。
しようとも思わない。
彼との逢う瀬を断ち切ることを。

父への応接

2007年06月05日(Tue) 08:06:31

1 夕方
「あら、奥様。おめかしなさって。今夜はどこかお出かけですか?」
お隣の奥さんに、声かけられて。
尚子夫人は嬉しげに、薄っすらと笑みながら。
いえ、夫が今夜、戻ってまいりますので。
そんな返事を受けたものは。みないちように、黙りこくってしまうのだが。
相手の反応になど、お構いなく。
尚子夫人はいそいそと、玄関先を掃き清めている。
戻ってくる夫が、いようとは思われなかった。
だって彼女は昨日、夫の七回忌を済ませたばかりなのだから。

1 喪明け
白い額に、鮮やかな眉。大きな瞳。
若々しさをたたえた美貌に、男はうっとりと見入っている。
「どうしても、夫がどうなったのか知りたいのです」
ひたと見すえてくる瞳から、男はもう逃れられないのだと感じた。
そう、俺はきみの追求から逃れられないが。
きみも、俺から逃れられなくなるのだぞ・・・と。
「血が一滴も、遺されていなかったそうですね」
男は冷ややかな声をつくっている。
「ええ、亡くなりかたが、不可解で・・・お医者様も、なにもおしえてくださらないものですから」
では・・・と、男はさりげなく女の後ろにまわっていた。
背後から、両腕をつかまれて。
身の危険を察した若妻の、とっさの抗いは。
すぐに手際よく、封じられてゆく。
「気の毒だね。奥さん。でもご主人、最後に仰っていましたよ」
「な、何を・・・っ!?」
「貴女の血を愛でてほしい・・・ってね」
「う、嘘・・・ッ!」
女は男の腕のなか、ちいさく叫んだ。
首のつけ根に走る、かすかな痛み・・・
悲鳴はやがて、けだるげに語尾を濁して、淡い陶酔のなか、掻き消えていった。

「すまないね」
ここは、自宅の和室。
夫婦の寝室だったその部屋には、いまはちゃぶ台のうえに夫の写真がぽつんとおかれている。
畳の上、仰向けになった女は、黒一色の喪服姿。
蒼白い脛の周り、清楚に透ける黒のストッキングが、なまめかしく映えている。
男はストッキングごしに、女の脛に掌をあてながら。
ゆっくりと、上下に撫でさすってゆく。
掌に込められた、淫らなものが。じわじわと。
女の肌のうえ、波紋をひろげるように、広がってゆく。
さするたびにかすかにずれてゆく、ストッキングのふしだらな波立ちに。
耐えかねたように、女はときおり、かすかな身じろぎをみせた。
「娘の帰ってこないうちに、すませてください」
女はキッと眉を逆立てて、怒ったように口走る。
「ああ・・・望みどおりに、してあげよう」
望みどおりなんかじゃ・・・ない。
女はもういちど、柳眉を逆立てたが。
もうそれ以上、男に逆らうことができないのは、よく理解できていた。
身に沁みて・・・。
男は寝そべったままの姿勢の女の上体ににじり寄ると、
口許から鋭利な牙をむき出して。
ためらいもなくむぞうさに、薄い皮膚の下、ちくり・・・と牙をもぐり込ませていった。
ちゅうっ・・・
仏間になった、薄暗い部屋のなか。
ひそやかにあがるのは、吸血の音。
かれのなかで、きみといっしょになりたい。
いまわのきわに、夫はそう願ったという。
嘘かまことか・・・
女にたしかめるすべは残されていなかったが。
理性を越えたわななきのなか。
そうするよりほか、なくなってしまっていた。

ただいまぁ。
玄関口から、娘の声がする。
男が女のうえから身を起こし、玄関のほうを見やると。
女は乱れたブラウスとスカートを手早く直しながら。
娘には手を出さないで。
口早に、ささやきかけた。
わかっている。
征服したばかりの女の肩に手をかけて、男は女を落ち着かせようとした。
そんな格好では、表に出れまい。
きちんと整えられた長い髪は乱されて、ストッキングはちりちりに引き裂かれている。
あくまでも、知り合いの小父様。なのだからね。
娘が中学にあがるまで、いい子にして待っているからね。
男のささやきに身を支える力を喪った女は、そのままたたみの上にへたり込んでしまっている。

3 夫の帰宅
おかえりなさい。
玄関から聞こえてきたのは、母の声。
父を迎える時の声色は、ふだんはみせない穏やかさに満ちている。
穏やかさ。だけでは・・・表現が足りないと思う。
暖かな息遣いを、もっと身近かに感じることのできる、なまめかしさ。色っぽさ。
父のまえ、母ははじめて、女に戻るのだろうか。
そういうひとを、わたしも近く、迎え入れることになるのだろうか。
わたしは、母といっしょに父を出迎えることを禁じられている。
お部屋でしずかに、待っていなさい。
きちんとした服を着て、お迎えするのですよ。
そうね。せっかくですから、学校の制服がよろしいですね。
あなたも成長したのだと、お父さんきっとほめてくださいますよ。
優しい声色のなかに秘めた、剛いもの。それを母は持っている。
だからわたしは、母に逆らうことはほとんどない。
アイロンのきいたプリーツスカートのうえ、お行儀よく手を重ね合わせて。
父が部屋に来るのを、待ち受けている。
ふだんは履かない、黒のストッキングを脚に通して。

わたしの想いが破られるのに、しばらくの刻がかかった。
洋間には、来たらダメよ。
そういうときの母は、いつもの厳しい顔と命令口調にもどっている。
お父様・・・とはいっても。吸血鬼なのですから。
まずわたくしが、飢えを満たして差し上げてからじゃないと。
あなたに逢わせるわけには、いかないんですよ。
けれども、わたしはとうに察しをつけている。
ほんとうは。母は父との、つかの間の逢瀬を。
ひと目も憚らずに、愉しみたいのだと。

母と逢ったあと。
父は、わたしの血を吸いに来る。
初めてのときは、怖かった。
制服を着けたまま抱きすくめられて。
怯えて震えているわたしのことを、父はなだめるように優しく撫でつづけてくれていたけれど。
血を吸い取られてぼうっとなってしまうけだるさが、いまでは恋しいほどなのに。

かちゃり。
控えめに開かれる、ドアの音。
わたしはハッと顔をあげ、そこに父の顔を見出す。
幼いころ、遠くへ行ってしまった父は。
あのころのおぼろげな記憶そのままの、若々しい顔をしている。
口許にちょっぴり滲んだ赤いものは。
たった今まで、母の体内をめぐっていた、しずく。
どうぞ・・・
わたしは、古風な伏し目をして。
黒のストッキングに装った脚を、父の前へと差し伸べる。
肌の透けてみえる薄手のストッキングは、
わたしの目にも、なまめかしかった。

母さんのほうが、いいのを履いているでしょ?
わたしはちょっぴり、ふたりの仲に嫉妬してみせる。
父はそんな私の言い草を、かるく受け流して。
なよなよとした薄い靴下を、脛の周りによじれさせてゆく。
アッ、やだ・・・
思わず、声をあげてしまった。
圧しつけられてくるなまの唇が、それほどまでに強くねばりついてきたのだ。
いやらしい。
父への応接にもの慣れてしまったわたしは、ふふ・・・と、笑いながら。
オトナっぽいストッキングにイタズラをする父を見おろしながら。
父が吸いやすいように、時おり脚の向きを変えてあげたりしている。
いかが?まゆみの脚は、おいしいですか?
ちょっぴり小首を傾げて、かわいくほほ笑んでみせながら。
ぴちゃ・・・ぴちゃ・・・
どうやら今夜も、気に入っていただけたみたい。
父の舌が熱っぽく、はぜる唾液にストッキングが濡れてくる。
いつもそんないやらしいやり口で、わたしのストッキングをくしゃくしゃにしてしまう父が。ひどくいとおしい・・・
まゆみの脚も、きれいになったね。
父のほめ言葉は、ただのおだてではなさそうだ。
このごろ訪れるたび。父がわたしの脚を辱める時間が、だんだん長くしつようになってきたような気がする。
まゆみは、好きな男の子はいるのかな?
う・・・ん。どうかな・・・?
付き合う前に、ちゃんと父さんに紹介するんだぞ。
そう・・・ね。でも・・・恥ずかしいから。黙ってつきあっちゃうかも。
ダメ・・・だめ。
父は笑いながら。
まるでお仕置きするように、わたしの脚にいっそうひどいいたぶりを加えると。
たいせつな処女の生き血・・・なのだから。
まして肉親の血は、口に合うのだよ。
お前は唯一、わたしの血を享けたひとなのだから。
あぁ・・・そうなのだ。
こんな仕打ちを受けながらも、受け入れてしまうのは。
きっと、そう・・・血が呼び合っているから。
わたしはほっそりとした首筋を仰のけて。
しずかに目を閉じて、降りてくる牙を待ち受けている。

当番の夜

2007年06月04日(Mon) 12:09:47

夕べは、向かいのお宅が当番だった。
向かいに住んでいるふたりのお嬢さんは。
女学生の制服のスカートの下、申し合わせたように黒のストッキングを履いていて。
いつも以上に大人びて、なまめかしい風情だった。
奥さんも、ブラックフォーマルに、黒のストッキング。
お嬢さんたちのものよりも、いちだんと濃い艶を帯びたストッキングは。
礼装の下には不似合いなくらい、挑発的だった。
ご主人は夕暮れ刻、どこかに黙って出かけて行って。
けれども夜が更ける頃、足音を忍ばせて、戻って来て。
庭先にまわって、夜が明けるまで。
声をひそめて、様子を窺っていた。

今夜は、うちが当番だった。
当番に選ばれた家では。
女たちは色とりどりに、装いを凝らして。
夜更けを待ち受ける。
お向かいの奥さんは、貞淑妻。お嬢さんふたりは、純潔なのだろう。
黒一色の装いは。
男を拒みながらも、惹きつける。
黒で装う女たちは。
そんな思惑を秘めている。
我が家の場合・・・?
もちろん、黒一色ですよ。

だれが最初かしら?
妻と妹は、挑みあうように。
真っ先を、引き受けたいような。遠慮したいような。
父や夫のまえ、貞淑ぶりを演じたものか。
魅力のあるところを、ひけらかそうか。
一筋縄ではいかない駆け引きを、もうし始めている。
年頃になった娘は、
お客さん、処女の血が好物なんでしょう?
わたしは最初かな?それとも、最後かな?
あらぬことを口走って、
そんなたしなみのないことを・・・と、母親にたしなめられている。

母は奥ゆかしく、和服のように装った古風な洋装のフォーマルウェア。
淑やかにそろえた足許は。
嫁や娘よりも、いちだんと薄いナイロンに染めている。
あら。お呼びがかかったわ。
ふすまの向こうから。真っ先に呼ばれたのは。
ほかならぬ、母の名前だった。
もう、三十年にもなるんですものねぇ。
ため息する、ふたりの女を。
私も父も、眼を細めて見つめていた。

ちぅちぅちぅ・・・
キュウッ・・・キュウッ・・・
異形のものが。
正装した母を相手に耽る、吸血の儀式。
この身のすべてをも引き抜かれるような、感覚に。
私は痺れたようになって、全身を硬直させている。

次に呼ばれたのは、娘だった。
ぴちぴちとしたふくらはぎを包む白のハイソックスが、
目のまえを跳ねるように通り抜けてゆく。
決して、犯さない。
その約束と、引きかえに。
制服のすき間からふしだらな指の侵入を許して、無垢な肌を染められる行為。
なんのことはない。
処女の血を確保するために、しばしの猶予を与えられているに過ぎないのだ。

入れ違いに戻ってきた母は。
お酒に酔ったように、ほんのりと頬を紅潮させて。
決まり悪げに、乱れた後れ毛をかきのけている。
うなじに這うようにつけられた、ふたつの痕。
スカートの下に滲む、ストッキングの伝線。
どれほど深く、しつようないたぶりにさらされたのか。
蜘蛛の巣のようにちりちりにされていることが。
すべてを、想像させた。
漆黒のスカートの裏地は。
あの白く濁った熱い液に、浸されているのだろうか?

妻と妹が呼ばれたのは、ほとんど同時だった。
きょうのお客は、複数らしい。
かわるがわる、呼び出されて。
血を啜られて。
処女でない女は、べつのサービスも、強いられる。
ひとしきり、行為が済むと。
何ごともなかったような顔つきで、居間に戻ってくる女たち。
招きに応じて、いそいそと立ち上がり、
礼装姿を惜しげもなく、なまの欲情にさらしてゆく。
かわるがわる。交代に・・・

きゃっ。
みじかい叫びは、妻のものか。妹のものか。
体内をめぐる血潮の熱さが、彼らの本能を呼び覚ましてしまったらしい。
あとは、明け方までだね。
父は淡々と、呟きながら。
母にも応接に加わるようにと、促している。
奥ゆかしい母は、私の少年時代、そうしていたように。
いまいちど、衣裳をととのえて。
真新しいストッキングに、脚を通して。
ごめんくださいませ。
影どもの跳梁するふすま越し、たたみにひざを突いて。
開かれたふすまの向こうへと、身を沈めてゆく。
濃い誘惑に、わが身をさらすため・・・

そういえば

2007年06月04日(Mon) 11:35:48

先月末で、ちょうど二周年だったんですね。
このブログ、おととしの5月29日に「吸血幻想」として誕生しました。
一時中断を経て。お話の数ははや千を超えて。
アクセス数も、先月末で98,662件を数えています。
ヘンな妄想話ばかりですが・・・
これからもよろしく、おつきあいくださいませ。

送り出す

2007年06月04日(Mon) 11:33:48

闇に包まれた寝室で。
男と女は、ぴったりと身を寄り添わせて。
そのままじいっと、押し黙ったまま。
影をひとつに、重ねてゆく。
男は、黒衣。
女は、白のネグリジェ。
純白のシーツのうえ。
黒と白は、交じり合うほどに、せつせつと。
熱いまぐわいに身を染めてゆく。

出かけますよ。
女は念を押すように。男のほうへと目線を注ぐ。
行くがいい。
男はもういちど、差し出された女の手の甲に、礼儀正しい接吻を重ねた。
女が出て行った部屋で、男は独り、あたりを見回して。
自らの生前の痕跡をたどるように、
こちらの本棚、あちらのペン立て・・・ゆかりの品々をひとつひとつ手にとってゆく。
吸血鬼に堕ちた夫は。
夜な夜な墓場を抜け出して。
静かな帰宅を遂げるのだった。
正装して待ち受けるその妻は、外の合図に耳ざとく振舞って。
夫をなかに、引き入れて。
熱い抱擁のなか、ヒロインを演じきる。

ふたたび現れた女は。
黒一色の、フォーマルウェア。
ゆらりと揺れる、胸元のタイを。
男は手で触れ、指に絡めて。
もてあそぶように、愉しんでいたけれど。
妻は男が飽きるまで。
清楚な礼装を、軽いいたぶりにゆだねていく。

行って参ります。
深々とこうべを垂れる妻を。
男はもういちど、抱き寄せて。
行ってきなさい。
互いの愛を確かめ合うように、
熱い熱いくちづけを、重ね合わせてゆく。

行き先に待ち受けるのは。
妻を望みつづけた男。
妻子あるその男性は。
男の親友だったから。
とうとう彼の生きているあいだに、思いのたけを遂げることはなかった。

先週が、三回忌でした。
それまでに、心を決めてくれないか?
そう、言われたんです。
先様の奥様も、お嬢様も。よもやご存知ではありますまい。
けれども・・・貴方に先立たれた私にとって。
熱い血潮を静めてくれるのは。もう、あのかたしか、おりませんの・・・
妻を気遣う夫の吸血は。
素肌を蒼ざめさせるまでには至らなかったらしい。
男には、わかっていた。
事業のパートナーでもあった親友が。
いまの妻にはもっともふさわしい異性なのだと。

家人の寝静まった、親友宅に。
彼は人知れず、忍んで行って。
最愛のものを譲り渡す意思を、伝えていた。
死んだはずの親友の、にわかな出現を。
親友は驚きもせず、迎え入れて。
お察しするよ。
ひくい声で、ねぎらって。
最愛の奥さんが、きみのために守り抜いてきた貞操。
ありがたく、頂戴するよ。
親友の声が悦びではずむのを、男はくすぐったそうに聞き流し、
心から、祝福するよ。
仲人になれなくて、残念だ。
にこやかな握手のあと。
ふたりは事業のこまごまとした相談事すら、交わしあったのだった。

あなたもこれから、お出かけなんでしょう?
ハイヒールに脚を通した妻は。
イタズラっぽく笑んで、夫を振り返る。
わたくしも・・・あのかたにお願いしておいたのよ。
あなたが、若い女の血を欲しがっている・・・って。
はい、これ。鍵ね。
今夜なら・・・表から堂々と、お入りになれるわよ。
わたしくしより、あとにお出でになって。
奥様も。お嬢様も。起きて待っていてくださるそうよ。
わたくしが、犯されているあいだ。
あなたはお二人を、酔わせてしまってちょうだい。
最愛の奥さんの貞操を、捧げるんですもの。
これくらいの返礼は、あってもよろしいわね?

壁ひとつへだてた、向こうとこちら。
向こう側で狂わされてゆくのは、最愛の妻。
わが身の下で、酔い痴れているのは、親友の妻と娘。
申し合わせたように装われた、純白のブラウスに。
持ち主の血潮を、したたらせながら。
男は隣室のわずかな音さえも聞き逃すまいとしている。
犯す欲情と、犯される愉悦。
ふたつの情欲が輻輳する夜・・・

謹んで。 操捨てます 三回忌


あとがき
このお話。礼装用の黒のストッキング履きながら思いついただなんて。
告っちゃっても、いいかな?^^
真偽のほどは、ご想像までに・・・

仲良くしに・・・

2007年06月04日(Mon) 11:08:43

いまからお出かけしますからね。
吸血鬼の小父さんと仲良くしに行くんですよ。
いい子で待っていらっしゃい。

千鳥格子のスーツに、肌色のストッキング。
ばっちりとおめかししたママが、ウキウキと出かけてゆく夕暮れ刻。
ハイヒールに通した脚を包むストッキングは、いつものやつよりツヤツヤと輝いていた。

いいの、パパ・・・?

ボクは上目遣いにパパのほうを振り向いたけど。

いいんだよ。小父さんはパパの仲良しなんだ。
でも、他所のおうちには、絶対ナイショだよ。
学校でそんな話をしたら、ママが困るからね。

パパはママがジャケットを羽織るのに手を貸して、玄関の鍵を開けてあげていた。
さぁ、いい子は早くお寝み・・・そう言い置いて、パパは階上へとあがっていってしまった。

吸血鬼だって?どうしよう・・・?
パパもきっと、たぶらかされちゃったんだ。
勉強部屋の机のうえ。
ボクは悶々として、外が暗くなっていくのをただ眺めていた。
お隣のさよちゃんのお母さんも。
秋に結婚するお向かいのサユリ姉さんも。

小父さんと仲良くしてくるね。

そういって。
スカートのすそを、ひらひらさせて。
ショルダーバッグをひるがえして。
コツコツとハイヒールの足音を響かせて。
静かな闇の向こうへと、吸い込まれるようにして消えていった。
あくる朝には、なにごともなかったような顔をして。
あら、ケンちゃん。おはよう。夕べはよく眠れたかな?
なんて。
戻ってくる足音に明け方まで聞き耳立てていたボクの、はれぼったい目を見つめてくる。
そして、今夜はママの番。
ボクはとうとうガマンし切れなくなって。
音を忍ばせて、玄関をおし開いていた。

夜遅く、外を歩いてはいけないよ。
大人たちは口をそろえてそういうけれど。
半ズボンの下、当たる夜風は気味悪いくらい心地よく、
むき出しの太ももを撫ぜてゆく。
街のはずれにあるお邸は。
まるで無人のように、シンと静まり返っていたけれど。
ウッソウと茂った木立ちのなか、
客間にひっそりとした灯りが洩れていた。

木の枝を踏んづけた音にさえ、ビクッと胸をわななかせて。
ボクはどうにか、客間の窓辺にたどり着く。
・・・っ。うぅん・・・。
だれの声だろう?
くぐもったような、声色が。
闇に包まれた庭先にまで、洩れてきた。
おそるおそる覗き込んだ窓際から、さっきまでの灯りは消えていて。
庭園の街燈の灯だけを頼りに、闇を透かして見つめようとした時に。
あっ・・・
声たててのけぞったのは、ボクのほうだった。
ひざ下まで引き上げたハイソックスのうえ。
ぬるぬると濡れた唇が、ぴったりと寄り添うように圧しつけられてきて。
あてがわれたなまの唇の両端から、尖ったものが突き立てられて。
ちくり。
あぁうぅぅぅぅぅ・・・っ
声にならない悲鳴を呑み込んで、ボクはその場に突っ伏していた。

よく来たね、坊や。
吸血鬼の小父さんは、見つけたぞ、という顔つきで。
鬼ごっこで捕まえられたときみたいに、ボクは身動きできなくなっていた。
お話に出てくるように、黒のマントをかぶっていて。
口許から垂れているのは・・そう、さっきまで吸っていた、ボクの血。
似合う・・・だろう?
ウン、って応えるしかなかった。
うなずくように。
って、命令されていたみたいだった。
せっかく来たんだ。よぅく御覧。
小父さんはボクをかるがると抱きあげて。
ふわり、と宙を跳んで、客間の暗がりへと入り込む。

ソファで姿勢を崩しているのは、ママだった。
時ならぬ人の気配に、ママはふらりと頭を上げたけど。
もう血を吸われて、ふらふらになっちゃっているらしくって。
ボクのことが、わかったのかどうか。
お坊ちゃんの血は、なかなか美味だね。
ほくそ笑む小父さんに、あいまいに相槌を打っている。
なんども口をつけられたふくらはぎは、さっきからジンジンしていて。
小父さんの毒が皮膚にまわるのを、感じていた。
履いていた黒のハイソックスは、しつこいくらい噛み破られて、
くしゃくしゃにたるんで、ずり落ちていた。

キミのハイソックスにしたみたいに、悪戯してもよろしいかな?
なんのこと・・・?
問うまでもなく。
小父さんはママの足許に、にじり寄っていく。
外からのかすかな灯りを映して、てかてか光る肌色のストッキング。
ツヤツヤとした表面に唇をなすりつけると。
きゃっ!
ママはくすぐったそうに、跳びあがって。
いやだわ・・・あなた。
困ったように、決まり悪そうに、もじもじと脚を引っ込めながら。
それでも小父さんの思うまま、
薄手のストッキングは、ボクのときとおなじようにあしらわれて、
めりめりとかすかな音をたてて、はじけていった。
ママの脚から口を離して、振り向いた小父さんは。
いい眺めだろう?
思わずうなずいちゃったボクに、たたみかけるようにして。
キミが大きくなったら・・・お嫁さんとも、仲良くしたいものだね。
ゾクゾクと縮みあがるボクのほうは、もう振り向きもせず。
押し倒したママの身体にまたがって、服を破くのに夢中になっていた。


夜の想い出から、七、八年も経っただろうか?
りぃん。ろぉん・・・
街はずれのお邸のインターホンを。
ボクは彼女と連れだって、鳴らしていた。
友だちの結婚式の帰りだった。
紫のスーツに着飾った彼女の足許は、グレーのストッキング。
あの夜ママが穿いていたものと同じくらいなまめかしく、
ひざ下をツヤツヤと染めている。
彼女の白い首筋には、はっきりと。
赤黒い痕がふたつ、つけられている。
ただれたような痕の周りを、吸い残した血潮がまだかすかに滲んでいる。

夕べ、ふたりで歩いているところをいきなり襲われて。
あとは・・・お約束どおりだった。
木に縛りつけられて。いちぶしじゅうを見せつけられて。
半裸になるほど服を裂かれた彼女は、それでもこと果てると、お行儀よく。
ふつつかでした。って。ていねいに会釈なんかして。
ボクをぐるぐる巻きにしていた縄を解く手つきも、ふしぎなくらい落ち着いていた。
仲良くしに行こうね。
あしたは、ユカちゃんの結婚式だから。
おめかししたまま、帰りに寄ろうね。
ストッキング、好きみたいだね。
やらしいよねぇ・・・
あなた、目のまえで私がストッキング破かれちゃっても、平気でいられる?
試してみようね。
お邸に着くまえに。
ちょっとだけ、あなたのお宅にお邪魔させて。
ストッキング、真新しいのに穿き替えたいの。
あのひとに・・・咬み破らせてあげたくて。

つれづれ に

2007年06月03日(Sun) 13:16:40

送り出す 妻の黒スト 誰破く?
ウキウキと 黒スト装う 浮気妻
金曜日 きょうのお相手 誰だっけ?
お相手の 好みに合わせ 服を変え
履き替えを いつも持参の 浮気妻
許しても 相手はナイショ 笑う妻

先日つくったまま、あっぷしそびれていたものです。
・・・しょうもないものばかりですね。(^^ゞ

呼び出されて

2007年06月03日(Sun) 05:45:34

ねぇ・・・きょうの放課後、来てくれる?
ふたり、三人と、連れだって。
きょうも男の子たちが、おずおずと問いかけてくる。
さゆりはちょっと、泪目になって。
それでも「うん・・・」と、頷いていた。
ゴメン。きょうって、出てこれる?
取り囲まれた、校舎の裏手。
いつもさゆりといっしょのセイコは、ちょっぴり眉を翳らせて。
ゴメン。わたしちょっと、体調悪いの。
男の子たちとおなじくらい、おずおずと応えたけれど。
ごめん。ごめん・・・でも、来てよ。
そんなふうに、迫られて。
ちょっぴり、べそをかいている。
さゆりはセイコの顔をのぞきこむようにして。
いっしょに、来て。私ひとりじゃ、怖いもの。
わたし、よけいにがんばるから。
しばらくためらっていたセイコは、それでもけなげに、ウン、とあいまいに頷きかえす。
だいじょうぶ。手加減してあげるから。
ユタカがそういって、セイコの手を握り締めると。
うん。うん・・・行くわ。
こんどこそ、はっきりと頷いて。
男の子たちは、ほっとしたように顔見合わせる。

夕闇迫る公園で。
ベンチに腰かけた、ふたりの女の子たちは。
かわるがわる、男の子たちに肌を吸われている。
はだけたブラウスの、胸元に。
おさけ髪をかきわけた、首筋に。
ひざ丈のスカートの下からのぞく、ふくらはぎに・・・
セイコは、白のハイソックス。
さゆりは、薄黒いストッキング。
かわるがわる吸いつけられてくる唇に。
きちんと引き伸ばされた長い靴下は。
お行儀悪く、くしゃくしゃにされてしまっている。
ゴメン。ごめんね・・・
男の子たちはくり返し、しんそこすまなさそうにささやきながら。
それでもかわるがわるのくちづけを、止めようとしない。
うん・・・ウン。平気よ。だいじょうぶ・・・
さいしょから弱気だったセイコばかりか。
お姉さんぽくふるまっていた気丈なさゆりまで、
ちょっぴりべそを、かいている。
男の子たちの口許には。
少女たちから吸い取ったバラ色の血潮が。
悲しい涙のように、散っている。

ダメだよ、もっと吸わせてね。
おうちに帰して、あげないぞ。
男の子たちは、ちょっとだけ横暴に。
女の子たちの柔らかい素肌に、きゅっ、キュ・・・と音を響かせて。
無作法に飢えた唇を。
制服のすき間からこぼれる白い肌に、甘えるようにすりつけてゆく。
セイコは、べそをかきながら。
さゆりは、黙ってうつむきながら。
ひっそりと、身を震わせて、耐えている。
あっ。ダメ・・・
さゆりがにわかに声をあげると。
彼女の足許にかがみ込んでいた男の子は、
なおも得意げに、黒ストッキングの足許にべろをふるいつかせている。
ぬるりと這わされたべろが、なよなよとした薄手の靴下を。
ひきつれるほど、ふしだらにねじれさせて。
とうとう、ぴりり・・・と。破ってしまったのだ。
しっかり。しっかり・・・
両手で顔を覆うクラスメイトの肩を抱きしめて、慰めているのは。
さっきまでべそをかいていたセイコのほうだった。
少女たちは、手と手を握り合いながら。
果てなくつづくかのような吸血の音の下。
いたわり合い、慰めあっていた。

数年後。
さゆりの傍らにも。セイコの隣にも。
凛々しく上背の伸びた青年が付き添っている。
よく見ると。
セイコの相手は、あのとき彼女を促して、公園に誘った優しげな彼。
さゆりの彼氏は、ストッキングを破って泣かせてしまった彼。
二組のカップルは、仲良く手をつなぎながら。
あの公園にやって来る。
あのときとおなじ、夕暮れ刻。
薄闇の彼方からは、かつての仲間たちが。
三々五々、よりつどってきた。

しばらく。
きれいになったね。
そお?
すっかり娘らしくなった、女の子たちは。
見え透いたおだてにも、イタズラッぽく笑み返している。
さゆりは、てかてか光る肌色のストッキング。
セイコは、ダイヤ柄の黒のハイソックス。
薄い靴下ごし、透き通る肌を。挑発するように、見せつけながら。
女の子たちは、恋人たちに手を借りて。
ベンチに腰をおろしてゆく。
すまないね。
いいんだよ。
男の子どうしのあいだで、声かわされると。
かわるがわる。
甘えるように。
慕い寄せられてくる、唇、唇、唇・・・
ぴちゃっ。くちゅうっ・・・
いやらしい。
くすくす笑う女の子たちの足許で。
整然と流れる薄手のナイロンの網目模様が、ふしだらなゆがみを描いてゆく。
泣いちゃったんだよね。
そうだったよね。
女の子たちは、イタズラっぽく恋人たちを盗み見しながら。
恋人たちも、かつての悪友たちにまじって。
かわるがわる、唇を吸い寄せてゆく。

ごめんね、ユタカ。ひざを崩すね。
セイコが小首をかしげて、恋人を振り返ると。
ユタカも薄っすらとほほ笑んで。
彼女を芝生に、まろばせた。
フェミニンなロングスカートが、ふわあっ・・・とまくれあがって。
それを見たさゆりも、彼氏を目でうながした。
きゃっ。
みじかい叫びといっしょに。
尻もちをついた黒のタイトスカートが。
べつべつの手に、中身をまさぐられて。
しんなりテカるストッキングの感触を、いとおしむように触れてくる手に。
少しずつ、たくし上げられていった。
リン、リン・・・と、鈴虫が切れ切れな音を洩らすなか。
愉しい夜は、まだつづいている・・・