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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

こっそり募集。^^

2007年07月31日(Tue) 23:59:59

柏木ワールドに登場してみたい方を募集します。
女性のかたはもちろんのこと、ここの嗜好にご理解ある紳士な方も歓迎です♪

1.連絡のとり方
スパムメールの殺到が怖いので、メアドをさらしていません。
ここに投稿する形で意思表示&ご自身のメアドを入れてください。
秘密のチェックボックス「管理者にだけ表示を許可する」をチェックしていただけると、他の方からはメッセージが見えなくなります。

2.欲しい情報
画像がうれしいです。(顔見せナシでもOK)
ストッキングやハイソックスの着用写真を見せていただくと、
構想が盛り上がる傾向があります。
吸血されているところ・・・というのは難しいと思いますが、(笑)
綺麗な噛み痕なんか表現してくれると、創作意欲があがるようです。^^
性別年齢お人柄等々、知りたいことは改めてコチラからメールでお尋ねしますので、
差し支えない範囲で教えてくださいね。
(フィクションも可ですが、あまりフィクションだらけだと描かれた本人が萌えないかも・・・w)

アニメーションも可ですが、あまりロリっぽいやつだと、柏木ワールドにうまく重なるかどうか・・・orz
あっ、もちろん。
想像力豊かな?柏木ですので、画像ナシでもOKですよ♪

3.締め切り
とくにありませんが、さしあたってはこの記事が埋もれるころくらいまでかな。(笑)

携帯で合図♪

2007年07月31日(Tue) 06:03:20

市長主催のパーティーに、招待されているんだ。
パーティーには、かならずカップルで行かなければならないのだが・・・
吸血鬼の得意げな顔つきをみて、丘村は苦笑いをする。
なにを言いたいのか、みなまで訊かずとも分かっている。
当日のパートナーには、きみの奥さんを選んだから。
おい、おい。ずいぶん勝手なんだな。ひとの女房をつかまえて・・・
そう、妻はまだ、なにも知らないでいる。

吸血鬼のパートナーに選ばれる、ということは。
その女性がすでに彼の情婦となっていることを、宣言するようなものだった。
けれども街に住まう旧い家の夫たちは、愛妻が吸血鬼のパートナーをつとめることを忌むどころか、むしろ誇りに思っていた。
それだけの価値ある女、と認められた証しだから・・・というのである。
そういう夫たちは、彼からの申し出を受けると喜んで受け、
妻がパートナーとして召しだされてしまうのを、眩しげに見送るのだった。

しかし、妻はまだ・・・
いいつのろうとする丘村に、吸血鬼はむしろにんまりと笑いかける。
うまく、やってあげるよ。
罠にかけるご主人も、まんまと罠にかかる奥方も、恨みっこなし、ということで・ね♪
キミはただ、パーティーの夜だけ、奥さんを誘惑させてくれさえすればいい。
なにしろ・・・きみの娘さんも、承知のうえのことなのだから。
さいごのひと言に。丘村はグッと詰まっていた。
いいじゃないの。お母さんにも、たまにはいい想いをさせてあげようよ。
そんな娘の声が、聞えるようだった。
婚期間近の娘が、いまだに処女でいるのは、ほかならぬ吸血鬼のためだったから。

合図を決めておくよ。
奥さんに、携帯でメールさせるから。
  二次会です。
というメールが来たら。
オレがキミの奥さんの脚を吸わせてもらっている・・・と思ってくれ。
  ちょっと首が痛いかも。
と言ってきたら。
オレが奥さんの首筋を噛んだと思ってくれ。
  カラオケで、デュエットを唄っています。
ときたら。
ウフフ・・・わかっているよね?
だいじょうぶ。
きみのたいせつな奥さんのことだもの。
ぞんざいなあつかいは、つつしむことにするよ。
カラオケボックスなんかじゃなくて、ちゃんとホテルのツインルームを予約してある。
なにしろ・・・
ほかならぬきみの奥さんを、犯そうというんだからね。
にんまり笑う吸血鬼の前。
丘村は、どす黒い背徳感にゾクゾクとしながらも、受け入れてしまうのだった。
妻はきっと。
メールの真の意味も告げられずに、いわれたままのメッセージを送ってくるはずだ。

その晩、娘もどこかへ出かけていた。
べつの吸血鬼のところだと、分かっていたから。
丘村は、とがめだてしようとはしなかった。
むしろ・・・だれもいないほうが、昂ぶる己を見られずにすむ。
そんなふうに感じるほど。
携帯から目を離せなくなっていた。

♪♪♪
着信音は、軽やかな音楽。
時ならぬ音に、ビクッとして。
飛びつくように、携帯のディスプレーをのぞき見る。
  二次会です。
あっ。
いまごろ、脚を吸われている。
出かけていった妻の足許を彩っていたのは、黒のストッキング。
ふだんはパンツスタイルの妻が、スカートを履くことはめったにない。
まして黒のストッキングなど、何年ぶりに目にしただろう。
肌の透けて見える薄々なストッキングごし。
蒼白く浮かび上がる脚が、ひどくなまめかしかった。
あの脚を・・・ヤツは唇で吸っている、というのか?
夫のわたしですら、許してもらえないような行為なのに。
妻はきっと、なにも知らされずに打っているのだろう。
さぁ、つぎは二次会だね。
お店で落ち着いたら、ご主人にそう、メールしておやり。

♪♪♪
あっ。
またも鳴った。鳴ってしまった・・・
  首が痛い、かな?
噛まれちゃった。とうとう、噛まれちまった。
ピチピチOLの娘に比べれば。
妻の血など、ほんのつまみ食いのつもりなのだろうけれど。
オレにとっては、かけがえのない妻なのに。
今さらながら、後悔がじわじわと胸をどす黒く染めてくる。
♪♪♪
えっ?
またも、着信音。
  脚も痛いわ~
ちく生。黒ストッキングの脚まで噛みやがった。
あいつ、あいつぅ・・・

♪♪♪
もう、どうにでもなれ。
  みんなで合唱しています。
えっ?
そんなメッセージ、ヤツは教えてくれなかったぞ?

♪♪♪
こんどは、メールではなかった。
ディスプレーに表示されたのは、たしかに妻の名前。
もしもし?
私だ。
電話に出たのは、低くくぐもった吸血鬼の声だった。
いま、みんなで奥さんをご馳走になっている。
え?え?えええっ・・・?
K君にY君に、E君だ。
人選には、気を遣ったよ。嫌なやつは、いないだろう?
みんな、秘密を共有する仲だ。
そう・・・三人とも気前よく、奥さんを私のパートナーにしてくれたやつばかりだから。
今夜はお礼にね。きみの奥さんを流用させていただいたのさ。
奥さん?もちろんさいしょから、その気だよ。
さいしょ・・・って。もちろん首を噛んでからの話だがね。
いまちょうど。
さいごにお相伴のE君が、奥さんに迫っているところだよ。

がちゃり。
思わずドアを、開いていた。
彼に教わった、ホテルの部屋番号。
あっ!
ベッドのうえ、ほとんど全裸の丘村夫人は、夫の姿を見て、
ゆるんだ口許をあわてて両手でふさいでいる。
ご、め、ん、なさい~。
泣き笑いする奥さんを、丘村はよしよし、とあやしながら。
もうすこし、愉しんでいこうか?
会社の同僚のK、お隣のご主人のY、妹婿のE。
だれもが妻を、狙っていた男ばかりだったが。
お互い共犯者の目で、含み笑いを交わすことができるのは。
おなじ体験を共有するどうしだからだろうか。
夫の手でふたたびベッドに投げ込まれた妻は。
もの堅い専業主婦の仮面をかなぐり捨てて。
きゃっきゃとくすぐったそうにはしゃぎながら、
男たちのまさぐりを肌の奥までしみ込まされてゆく。

令嬢倶楽部

2007年07月30日(Mon) 07:14:12

明け方の風は透きとおっていて、ぞくぞくするほど涼やかです。
見慣れた街並みは不気味なくらいに静まり返っていて、
かえってべつの街に迷い込んだような錯覚さえ、感じるくらいです。
旧家のひとり娘である喜美江嬢は、このごろひどく早起きです。
夜、どうしても寝つかれずに、そして朝も早くから目が覚めてしまうのです。
そういうときには、家の人にも黙って、喜美江嬢はこっそりとお出かけをするのです。
どこに・・・というあてもありません。
ただ、いつもと違う雰囲気の街並みが面白く、そこかしことあてもなくそぞろ歩くのです。
だれにも出会わない。
そうはわかっているものの、そこは旧家の令嬢ですから。
きちんと身づくろいしてのお出かけです。

ある朝のこと。
喜美江嬢はやはり寝つかれずに、そのうえ夜明けくらいから目覚めてしまって、
どうにもさえざえとしてしまったものですから、いつものように”お出かけ”をすることにしました。
”お出かけ”。
それはなんと秘密めいていて、心地よい響きでしょうか。
出がけに覗いた鏡のなかの喜美江嬢は、色白の頬にイタズラっぽい笑くぼを浮かべていました。
三つ編みに編んだ長い髪の毛のあいだ、白のブラウスのすき間からわずかに覗く胸元は、
早くも女らしい透きとおりをあらわにしていましたが、ご本人はどこまで気づいていたでしょうか?
喜美江嬢は、鏡のなかの自分に、行ってくるわね、と目配せをして、
そしてそそくさと家を出てゆきました。

朝の風はいつものようにひんやりと心地よく、スカートの奥まで、くすぐるように忍び込んできます。
けさおろしたばかりの真新しい黒タイツが、足許をしっとりとした肌触りで覆っているのが、いつになく心地よくて、
喜美江嬢はのびのびと脚を伸ばして、歩みを進めてゆきました。
車の走っていない大通り。
灯りのついていない家並み。
踏切を渡るときは二本走っているぴかぴかのレールが、まだ夜露に濡れていましたし、
いつも学校に行くときに見あげて通る大木は、朝の風にゆったりと枝を揺らしながら、ふだんは街の喧騒にまぎれてきにならなかった葉ずれを、響くほどにざわめかせていました。
早起きの家もあるのでしょうか、畑の向こうに見える農家の藁屋根の下には、早くも灯りが灯されていましたし、
街外れの古風な洋館も、やはりこうこうと窓の明かりを灯しています。

ふと迷い込んだのは、大きな公園でした。
学校帰りには決して通り抜けてはいけないと、お母さまに教えていただいた公園ですが、
朝は自由に通っていいことになっていましたので、喜美江嬢もよくお友だちと連れだって学校通いに利用していたのです。
「あらっ?」
声をたててしまって、喜美江嬢はちょっぴり顔を赤らめました。
良い家のお嬢さんにとって、みだりに高い声をあげるのは、はしたないことだったからです。
けれどもそれくらい、びっくりしてしまったのです。
だって。
目のまえを遮るように、黒い影が立ちはだかったのですから。

その男のひとは、みごとなほどの総白髪で、古めかしい黒いマントを羽織っていました。
頬は気味悪いほど蒼白く、お加減がよくないのでは?と思えたくらいです。
「おはようございます」
知らないかたでしたけれども、喜美江嬢は礼儀正しくごあいさつをしました。
けれども、良家のお嬢様のそうした礼儀正しさが、どこまでお相手に伝わったのでしょうか?
なにしろそのかたは、目にも止まらぬ素早さで、喜美江嬢に飛びかかり、長いマントに巻き込んでしまったからなのです。

うっ・・・うう・・・っ
マントに巻かれた喜美江嬢は、ただ苦しがってうめくばかり。
人に届くような大きな声をあげる勇気もありません。
それをよいことに、暴漢はますます喜美江嬢の身体をマントで締めつけて、
ぐいぐいと身体を近寄せてきたのです。
お嫁入りまえの身体に殿方を近づけてはなりません。という、お母さまのお訓えが、喜美江嬢の胸にありありと浮かび、
それはこうしたことを仰っていたのだと、そう気づいたときにはもうすっかり手おくれだったのです。
男は喜美江嬢のうなじに唇を寄せると、むたいにも素肌にじかに唇を吸いつけてきます。
あッ、許してください・・・ッ
叫ぶ間もありませんでした。
首のつけ根のあたりにちくりとした痛みを感じて、喜美江嬢はアッと声をあげました。
なんということでしょう。
男は喜美江嬢の細い首筋に噛みつくと、皮膚を破って、ちゅうちゅうと音をたてて生き血を吸いはじめたのです。
男の正体は、怖ろしい吸血鬼だったのです!
眩暈に頭がくらくらとして、よくわからなかったのですが。
男はそれはうまそうに、喜美江嬢の血を吸い取ってゆくのです。
血を吸い取られてゆくときのちゅうちゅうという音が、
そのたびに傷口の上をうごめくナマナマしい唇が、
良家の令嬢にはたいそう薄気味悪く、喜美江嬢は縮みあがってしまったのです。
いったん喜美江嬢を放した吸血鬼を見ると、さっきまで真っ白だった髪が、いまはツヤツヤと黒く輝いています。
喜美江嬢の血が、しんからいきわたったのでしょうか。
吸血鬼は、いま吸い取ったばかりの血潮に濡れたままの唇をニッとゆがめるようにして、笑みを洩らしました。
喜美江嬢がゾッとして頬をこわばらせると、
きっと怯えた顔を見たかったのでしょう。
案の通りになって、よけい嬉しげな笑みを滲ませてゆくのでした。

不覚にも、乙女の血潮を吸い取られて、苦痛にあえぐ唇に、男の唇が重ねられてきます。
ヒルのように飢えた唇は、錆びたような血の芳香を漂わせながら圧しつけられてきて、
まるでこじ開けるような強引さで、接吻を強要してきました。
唇からチロチロ洩れる舌は、軟体動物のように薄気味悪くぬめりながら、少女の無垢な唇をなぞってゆくのです。
あぁ・・・
とうとう喜美江嬢は、生まれて初めてのキスを、男に奪われてしまったのです。

男は喜美江嬢との接吻を果たすと、ふらふらと力の抜けた身体をベンチに横たえて、
それは満足そうな笑みをたたえながら、頭のてっぺんから脚のつま先まで、舐めるような目色でじろじろと眺めてゆきます。
まるで、じぶんの獲た獲物の美しさをたんのうするような、それはいやらしい目つきでした。
人様からかように露骨な目で見つめられるのは、初めてのことだったのですが、
喜美江嬢は恐怖のあまり、お許しを・・・お許しを・・・と呟くばかり。
もう、身も心も消え入らんばかりの心地だったのですが。
男はむたいにも、黒いタイツに包まれた喜美江嬢の脚にまで、触手を伸ばしてきたのです。
アッ、いやらしい・・・
かわいい唇から洩れる非難のささやきを、むしろ愉しげに受け流すと、
卑劣きわまりない吸血鬼は、黒タイツのふくらはぎに、ぬらりぬらりと舌を這わせてまいりました。
喜美江嬢は長いまつ毛を震わせながら、あられもなく叫びたいのを必死になってこらえていました。
この期に及んでもなお、令嬢としてのたしなみを忘れまいとしていたのです。
けれども男は、そんな喜美江嬢の淑やかさをあざ笑うようにして、
黒タイツの足許にチロチロと、毒蛇のような邪悪な舌をからめてくるのです。
いつか男の唾液はタイツを通して皮膚の奥にまでしみ込んでいって、薄い皮膚の下をめぐる血液にまで、毒々しいものをそそぎこんでいったのです。
  わかっているね?お嬢さん。これからも朝の散歩をつづけるのだよ。
  きみのことはこの小父さまが、たっぷり可愛がってあげるのだから。
喜美江嬢は正体もなく、ただちいさく頷くばかり。
男はそれに満足すると、スッと離れようとしたのですが。
そこに犬を連れた老人が現れました。

早朝の散歩なのでしょうか、背中を寒そうに丸めながらこちらに歩み寄ってくると、
「おはよう、お嬢ちゃん。朝の散歩かね?」
と、声をかけてきたのです。
見知らぬ老人に見られるのも恥ずかしいと感じたのは。
吸われたあとの首筋が、まだぬらぬらとした血潮をしたたらせているせいでしょうか。
タイツごしに受けた恥ずかしいいたぶりの名残りが、タイツにしみ込んだ唾液となって、まだぬらぬらとしているせいだったのでしょうか。
「エ、エエ。ちょっと知り合いのおじさまと・・・」
とっさに口をついて出た喜美江嬢の嘘に、老人は納得したのか、では・・・と男のほうにも会釈をして、きびすを返してゆきます。
男は喜美江嬢のとっさの応対に、ひどく満足したようです。
  よくできたね。お嬢さん。その調子だ。
  よくできたごほうびに、きょうはこれで家に帰してあげよう。
  まだ、もの足りないことだろうが・・・明日の朝も、逢ってくれるね?
喜美江嬢はただ正体もなく、頷くばかりでした。

あくる朝から、喜美江嬢の散歩は習慣のようになっていました。
家の人たちも、毎朝くり返される彼女の外出に気がついたようですが、
ただの散歩だとでも思ったのでしょうか、だれもそのことを口にするものもおりません。
不埒な吸血鬼に求められるがまま、喜美江嬢は学校通いのときのセーラー服を着て、家を出ます。
セーラー服の胸元を引き締める真っ白なリボンが風にたなびくと、これからほんとうに朝早く登校する様なぴりっとした気分になるのですが。
学校はもう、夏休み。
濃紺の冬服も、ほんとうはおかしい季節なのです。
男がわざわざセーラー服の冬服をねだったのは。
少女の足許を淡く染める通学用の黒のストッキングがお目当てだったからでした。
初めて逢ったときに、真新しいタイツによだれをたっぷりとしみ込まされてしまったあとですから。
肌の透けて見える上品な黒のストッキングに、どんなことをされるのか、容易に察しがつきました。
恥ずかしいいたずらをされる・・・いまわしい想像に、胸をわななかせながらも。
喜美江嬢は男に言われるまま、朝目が覚めると音を忍ばせて箪笥の抽斗をあけ、取り出した黒のストッキングのつま先をさぐってゆきます。
紙のように薄く、なよなよと頼りない感じのするストッキングでしたが、
いちど脚に通してしまうと、ぴっちりと張りつめて、生娘の初々しい足許をそれは上品に染めるのでした。
人目を忍んで、家を抜け出して。
学校の制服姿で、男と逢って。
ベンチに腰かけた足許に、かがみ込まれて。
肌の透ける黒のストッキングごし、舌をぬらぬらと這わされて。
しつようないたぶりのあまり、薄手のナイロンはふしだらにねじれて、整然としたきめ細かい網目が、いびつなゆがみを見せると。
男は嬉しそうににんまりと笑んで、そのままストッキングのふくらはぎに噛みついてくるのでした。
ちゅうちゅう・・ちゅうちゅう・・・
大人びた装いを、いやらしく噛み破られながら。
おぞましくも、なん度生き血を啜られたことでしょう。
けれども雪のように白い柔肌を、男とおなじ蒼さに染めはじめていった令嬢には、
そんな屈従的なことさえが、密かな快感になりはじめていったのでした。

ここは、街外れの洋館です。
昔から、近寄ってはなりませんよ、とお母さまに訓えていただいたお邸でしたが、
おめかしをした喜美江嬢は、当のお母さまとごいっしょに伺ったのでした。
お父さまを通じて、お呼ばれをしたのです。
お邸のご主人は、街の名士ということでした。
通された洋間は、向かい合わせにしつらえられたソファーがちょうど入りきるほどの広さでした。
アラ、お電話だわ。
さっきからけたたましく鳴り響いている電話のベルが、喜美江嬢にはひどく耳ざわりに聞えました。
ところがなんど鳴っても、家人はもちろんのこと、お女中さえも応えるけしきがありません。
「お母さま。わたくし代わりに出てもよろしいかしら?」
喜美江嬢はお母さまのお許しを得て、お部屋から廊下に出ました。
シックな濃い赤のワンピースをひるがえして、廊下を歩んでゆくと、
それまでけたたましく鳴っていた電話のベルは、にわかにぴたりと止まったのです。
「あら。やだわ」
喜美江嬢は肩を落として、もと来た廊下を引き返してゆきました。
ところが、どうしたことでしょう。
どの廊下も、どの廊下も、おなじような造りのせいでしょう。
じぶんのいどころが、すっかりわからなくなってしまったのです。
「あら、困ったわ」
お母さまを呼ぼうとなんど思ったか知れません。
けれども初めてお呼ばれをしたお邸で、若い娘がみだりに大きな声を出してよいものでしょうか。
もう少し、もうすこし・・・と思いながら。
喜美江嬢は、廊下の角を曲がり、もういちど曲がってゆきました。
まるで、つづら折りになっているのかと思えるほどでした。

ふと気がつくと。
見覚えのあるドアーが、目のまえに現れました。
ドアーには取っ手がついていて、喜美江嬢はそれに手を伸ばしました。
ライオンが口にくわえているようなノッカーを、御覧になることはおありでしょうか。
ちょうどあんな感じの取っ手だったのです。
ところが喜美江嬢は取っ手に手を伸ばすと、思わずアッと声をあげてしまいました。
ライオン・・・と見えたのは。
いままで見たこともないような、不気味な角を生やした悪魔の像だったのです。
洩らしてしまった声を、だれかに気取られやしまいかと、喜美江嬢はあわてて周囲を窺いましたが、だれも現れる気配がありません。
なかにいらっしゃるはずのお母さまが、ドアを開くふうもないのは。
やはりまた、お部屋を間違えてしまったのでしょうか。
喜美江嬢はおそるおそる、ドアを開いていきました。
そしてそこで、信じられない光景を目にしてしまったのです。

お部屋のなかにいるのは、喜美江嬢と同じ年かっこうのふたりの少女。
イエ、どうやら姉妹らしく似通った面差しをしたもうひとりは、もっと年若なお嬢さんでした。
年下らしい少女は、髪をポニー・テールにしていて、喜美江嬢に負けないくらいおめかしをしていました。
紫色のワンピースのすそからは、喜美江嬢が履いているのとおなじ黒のストッキング。
よく見ると、姉らしいほうの三つ編みの少女も、夏もののセーラー服の下には同じように黒のストッキングに白い脛を滲ませています。
喜美江嬢が驚いたのは、姉娘のほうがクラスメイトの香織嬢だったからでした。
ドアから見るとやや斜めにしつらえられたソファーに、ふたりの姉妹は仲良く並んで腰かけておりました。
少女たちはこちらに気づくふうもなく、自分たちの足許を見おろしながら、
さっきから、きゃっ、きゃっ、と、くすぐったそうな声を忍ばせています。
いったい何を、しているというのでしょう?
よく見ると。
そこにはじゅうたんだけ・・・と見えたのですが。
よくよく目を凝らして見つめてみると、
まるでにじみ出たあぶり絵のように、黒いマントを着た男がうずくまっている姿が、ありありと浮かび上がってきたではありませんか。
男は少女たちの足許に、かわるがわるあのナマナマしい唇を、黒のストッキングの上からすりつけてゆくのです。
それは喜美江嬢のときよりもいちだんとなれなれしく、いやらしい感じのいたぶりかたでした。
泡がたつほどよだれの浮いた唇を、黒のストッキングを履いたふくらはぎに、むたいに押しつけていって、
まるで汚らしいあぶくをわざとなするようにして、ぐねぐね、にゅるんと、ねぶりつけてゆくのです。
女学校にあがるとき、初めて脚を通した黒のストッキングは、とても大人びたなまめかしさをもっていて、
入学式の朝、初めて濃紺のスカートと合わせて履いたとき、喜美江嬢は自分の脚ながらしばしのあいだうっとりと眺めていたくらいでした。
それなのに。それだというのに。
ふたりのお友だちは、乙女のたしなみも忘れ果ててしまったのでしょうか。
淑女らしい装いをむたいにあしらわれることに、夢中になってしまっていて。
脚を吸われるたびに、ふたりの少女はきゃっ!とはしたない声を洩らしてゆくのでした。
あぁ、なんということでしょう。
神聖な女学校の制服を、こともあろうに男の唾液にまみらせるなんて。
あの淑やかな香織嬢や、可憐な妹の奈美子嬢まで、男の毒牙にかかっていたのです。
思わずアッと声を洩らしてしまったそのときです。
香織嬢が目をあげて、喜美江嬢に気づいたのは。
・・・・・・。
ちょっとの沈黙のあと、香織嬢はちっとも騒がず、
  アラ、喜美江さんも、お見えになっていらしたの?
  ここ、愉しいでしょう?どうぞごいっしょ、しませんか?
いつもの淑やかなお口ぶりで、差し招いてくるのです。
黒いストッキングを履いた娘さんたちの脚をいたぶり抜いていた男も、顔をあげました。
もちろんそれは、あの男でした。
喜美江嬢を毎朝のように公園に呼び出して、清楚に装われた黒のストッキングの脚をいたぶり抜く、いまわしい男・・・
  ほう、やはり顔見知りの娘さんだったのだね?
  おなじ制服を着ていたから・・・もしや、とは思ったが。
  ここは、令嬢倶楽部・・・といってね。
  良家のお嬢様がたが、人目を忍んで、いけないいたずらを愉しむ場なのだよ。
  この娘さんたちは、親御さんからお預かりしたのだ。
  よくしつけてくれるように・・・と申しつかってね。
  さぁ、きみも。ここでは見栄も外聞も、恥も忘れて。
  綺麗なお洋服を辱められる歓びに耽るがよいぞ。
奇妙な笑みを浮かべた姉妹のまえ、
男のくぐもった声が、どこまでも陰々と響くのでした。

お母さま?お母さま?出ていらして!
喜美江嬢はもう夢中になって、廊下を駆け出しました。
それでもだれも、出てきません。
あの忌まわしいことが行なわれていた小部屋からは、一歩でも早く遠ざかりたかったのですが、
背中越し、あとを追いかけてくる気配もありません。
少女らしい潔癖さもむき出しに、喜美江嬢は廊下を行きつ戻りつして、お母さま、お母さま、と、声をかぎりに叫びつづけたのでした。
ふと見ると。
おなじようなドアが並ぶ廊下のいちばん奥。
突き当たりの部屋のドアだけが、半開きになっています。
漏れてくる外の明かりの眩しさに、少女は目を細めながら、
それでも目に慣れたシャンデリアの灯りの妖から逃れるようにして、
突き当たりのお部屋に駆け込んだのです。

初めは眩しくて、なにも見えませんでした。
大きな窓ごしに広がる青々とした空が、朝早い時分のように冴えわたっています。
なかに射し込む眩しい陽の逆光になって。
さいしょは影絵のように見えたものが。
ふたつの人影となって、像を結びます。
影ふたつは、高いベッドのうえ、身を横たえたまま寄り添い合っています。
ひとつは、お母さまのもの。
ごいっしょにお出かけしたときの、シックな黒のロングドレスをお召しになったまま、ベッドに横たえられておりました。
お母さまは、いつになく面差しを弛めていて、うっとりとあらぬ方を見つめています。
目線の先は、ご自身の足許に向けられていて、はしたなく乱されたロングドレスのすそからは、肌色のストッキングに包まれたふくらはぎが、滲むようにあらわになっていました。
もうひとつの影がかがみ込んでいたのは、お母さまの足許でした。
男はお母さまの脚を吸いながら、上品に透きとおる肌色のストッキングを、不埒にも噛み破っていたのです!
ふふ・・・ふふふ・・・うふふふふ・・・
鮮やかな口紅を刷いたお母さまの口許から、別人のように虚ろな笑い声が洩れてきます。
お母さま・・・っ!?
声を呑んだ喜美江嬢は、肩先をだれかにギュッと捕まえられて、
ハッとして振り向くと。
どんな早業を使った・・・というのでしょう。
さきほど不埒にも、お母さまのストッキングを破っていた、あの男が。
それ以前には、クラスメイトの姉妹を堕落に導いていた、あの男が。
あまつさえ、喜美江嬢自身を朝の散歩に連れ出して、処女の生き血に酔い痴れたあの男が。
薄っすらとした含み笑いを浮かべて、喜美江嬢をじいっと見おろしていたのです。
  どうかね?もうみんな、私の奴隷に堕ちたのだ。
  もうなにも、気にすることはない。
  だれの目もはばかることなく、わが牙を愉しむがよい。
喜美江嬢は眩暈を覚えて、ふらふらとベッドに腰を落すと。
起き上がったお母さまが、後ろから抱きつくようにして、まな娘を羽交い締めにします。
男とうりふたつの、薄っすらとした含み笑いを浮かべながら・・・
落ち着いた濃い赤のワンピース姿が、シックな黒のロングドレスの胸のなか、ぐったりと力なく姿勢をくずしてゆきます。
ちゅう・・・ちゅう・・・
くちゃ・・・くちゃ・・・
男は不気味な音を立てて喜美江嬢の血を吸い取ると、
吸い取ったばかりの血潮を、ワンピースのうえにしたたらせてゆきました。
濃い赤のワンピースの胸元が、バラ色に染まるまで。

おかえりなさい。
夜遅く帰宅した二人を迎えたのは、ガウン姿のお父さまでした。
妻と娘をお邸に送り出したお父さまは、なにごともなかったように、
  遅いお帰りだったね。ずい分楽しませていただけたかな?
お母さまに問いかけます。
ふたりのはだけた胸元に、血をあやした痕がふたつ、白い肌にくっきりと滲ませていることも。
ドレスやワンピースのすそからのぞく足許に、ストッキングが踏みしだかれたように派手な裂け目を滲ませているのも。
とがめるけしきはありません。
もとの淑女に戻ったお母さまは、ゆったりと笑みを浮かべて。
  エエ、とても愉しうございました。
淑やかに頭を垂れました。
  喜美江には、夜会はまだすこし早かったかな?
  そんなことございませんわ。ねぇ。喜美江。またお邪魔させていただきましょうね。
  エエ、お母さま。こんどは女学校の制服姿で参りますわ。
喜美江嬢も、礼儀正しく応えます。
まるで、よそのお宅にふつうにお呼ばれをした令嬢そのものでしたけれど。
出かけるまえとはちがって、目許に蒼白いものを、ひっそりと滲ませていました。

お嫁入りまえのお嬢様がた。
よぅく、お気をつけあれ。
世に令嬢倶楽部という、秘密組織があって。
良家のお嬢様を狙っては、このように堕としてゆのです。
朝早くとか。夜遅くとか。
人が寝静まっているころに、一人歩きをなさらないように。
空気の透きとおった明け方に、まるで朝のお出かけに誘うように、
街が不気味なくらいに静まりかえって見えるときなどは。
どうぞ、お気をつけあそばせ・・・

淫乱妻と 夫に言われないために

2007年07月29日(Sun) 00:42:20


誰とでも寝る・・・というわけでは、ありませんのよ。
そんなふうに軽々しく肌をお許しする女だと、軽く見られてしまいますもの。
いくつになっても、お値打ちものの女でいたいんですの。
自分の貞操のお値打ちを下げないためにはね。
だれもいないときには、夫に尽くすことにしておりますの。
夫ひとすじに、守り抜こうとする操こそ。
殿方にとっては、よけい望みたくなるものでしょうから。

由貴子は白い頬に、フッと微笑を滲ませて。
相手の男の顔を、値踏みするように窺っている。


すみません。ほんとうに。
これから言うことのご無礼を、どうか許していただきたいのです。
奥様と、由貴子さんと、おつきあいさせていただきたいのです。
え?どういう意味か?ですって?
文字どおり・・・恋人のようなおつきあいをしたいのです。
ベッドのうえで、由貴子さんを思う存分辱めて。
いっぱい、愉しませてあげたいのです。

柏木は、面食らっていた。
怒るよりもなによりも、相手の応対が尋常ではなかったからだ。
目のまえで小さくなっているのは、自分よりも十歳以上も年下の男。
初村と名乗るその男のことは、柏木もまんざら知らないわけではなかった。
娘のクラスを受け持つ担任として。
学校で顔をあわせたこともある間柄だったのだ。
私立の学校で教員をしている初村にとって。
人妻と、それも教え子の母親と通じる・・・ということは。
ごくひかえめにいったとしても、相当な罪悪感を伴うものだったに違いない。
それなのに。
わざわざ亭主に面と向かって、こんなことを告白するものなのだろうか?

いいでしょう。とは・・・ふつう申し上げかねると思うのですが。
柏木はわざと、冷静な応対をこころみる。
相手はますます蒼くなって。
そうですよね。それはもちろん、そのとおりだと思います。
大柄な身体を、ますます小さく丸めるばかり。
柏木は、ちょっと相手が気の毒になった。
わざわざ私のところに、このようなお申し越しがあるとは・・・ふつうのことには思われないのですが。
初村は、「そうですよね?」小声で相槌を打ちながら。
じつは、奥様にそうしろ、って言われたのです。
口ごもりながら彼が語ったのは。
冒頭の由貴子の答えだった。
それくらい、由貴子さんのことが、恋しいのです。
抜け目なくそう付け加えることも、忘れなかった。

夫としては、しょうしょう悔しいのですが。
家内は・・・貴男のことをにくからず思っているようですな。
柏木は、認めざるを得なかった。
堂々と、夫に申し込んでください。わたしを犯したいのだと。
夫がなんといいますか・・・
たしなみのある人妻としては、それ以上のことは申し上げかねますわ。
心のなかで由貴子が、人のわるい薄ら笑いをしているのを思い浮かべながら。
男ふたり。完全に手玉に取られているのだよ。
そういって、初村の肩を叩いてやりたい気分になっている。

妻を寝取られる、ということはね。
もちろん、いろいろな状況があるのだけれど。
少なくとも、誰もが誰もを尊重する気持ちがあるのなら。
まれに、憎しみを伴わないで進行することがあるのですよ。
だって。おなじひとりの女性を好きになっただけのことだもの。
むしろ。ほかの男性に恋われるほどの魅力を妻が持っている・・・といううことは。
夫にとって、誇りにもなり得るのですから。

一歩退けば。
相手もそれにつられるようにして。
一歩退がることがあるらしい。
ここで図に乗って、さらに一歩よけいに踏み込んでくるほどのあつかましい男なら。
柏木といえども、おもて向き笑みをたたえた唇の裏に隠された牙に、ものをいわせることもあっただろうが。
男はそうするには、あまりにも善良すぎたようだった。
もじもじと。言いにくそうに。さらに言葉を継ぐのだった。
もちろん無償で・・・というわけには、いかないでしょう。
代わりに・・・と申し上げてはなんですが。
私の妻を、抱いてくださってけっこうです。

初村の妻のことも、柏木は知っている。
芳紀二十四歳。まだ結婚して二年と経たない若妻だった。
まだ娘っぽさが抜けない初々しさを、由貴子さえもが気に入っている。
ほほー。それはそれは。
中年男独特の脂ぎったものを、とっさに押し隠しながら。
「妻を・・・」と口にしたときの、相手の口調の微妙な震えに、彼は敏感にも気がついている。
気の毒に・・・私と同じ血をもつ男なのだな。

すこし、異論をとなえたいのですが。
柏木はあくまでも、紳士的に口を切った。
それでは、奥様の意思をないがしろにするようなものにはなりませんか?
奥様にも、選ぶ権利があるはず。
貴男が人妻に手を出したからといって、ご自分の身を好んで汚すお人柄かどうか。
それにそもそも、私などを相手に選ぶお人かどうか。
こうしましょう。
どうしても貴男の気がすまない・・・と仰せなら。
奥様を誘惑する機会だけを、私にお与えください。
もしも奥様がその気になられたら。遠慮なく頂戴いたしましょう。
貴男にしても・・・
ウデがあったから、由貴子を堕とせたのですからね。


弱りました。
初村はまたもや、柏木家の応接間で頭を抱えている。
家内に柏木さんのお話をしたのです。
そうしたら、大変な剣幕で怒り出しまして。
夫婦交換とおなじじゃないの。そんなに私が嫌いなの?といって。
家を出る・・・というのです。

おや、おや。
そいつは困りましたね。
色恋というものは、相手をいつくしむためにあるものなのにね。
こういうふうになってしまうのは、なんとしても興ざめで、残念な話ですね。
いっそ、わたしのほうの申し出は、反故ということにいたしましょうか?
一方的に由貴子を犯されるだけの関係でも、よろしいのですよ。
柏木の寛大な申し出にも、初村は首を振るばかり。
今すぐにでも・・・って。もう出支度をはじめているんです。
困ったものですね・・・
よろしい、一肌脱ぎましょう。
柏木は内心しぶしぶ・・・というように、座をたった。


当面奥様は、お気持ちが静まるまで。
わたしの別宅でお預かりすることにいたしましょう。
あなたは、わたしにお構いなく、由貴子のところに通うがいいでしょう。
けれども必ず、夜明け前には家に戻って、
奥さんのいないご自宅で過ごすのを忘れずに。
夕飯もなく、掃除もされず、洗濯物も自分で始末しなければならない生活を余儀なくされるでしょうが。
そのていどの罰ゲームでは、軽すぎるくらいでしょうからね。
いずれ・・・奥様は。
ご機嫌が戻った時に、お返しします。
ご帰宅のまえには、私から一報入れますが。
ご主人はいっさい咎めだてをなさらずに、奥様をお迎えになるように。
よろしいですな?
初村は柏木の芳情に、ひたすら感謝するのだった。


ずるいわね。
由貴子は白い頬にからかうような色を込めて、夫を軽く睨んでいる。
初村さんの奥様のこと。
とっくに、堕としてしまわれていたくせに。
あまり図に乗って、恩着せがましくなさったら。
ぜんぶばれちゃってから、初村さんに恨まれるかな?って、心配していたんだけど。

あれ・・・?(^^ゞ
分かっていたの?
きみもまぁ・・・なかなかすみにおけないね。
けれどもすべて、丸く収まったじゃないか。
初村くんは、数あるきみの愛人の一人になれたわけだし。
今では、若い奥さんをボクに捧げることにも、歓びを見出していらっしゃるようだし。
このあいだ、言われちゃったよ。
なぁんだ。さいしょからできあがっていたんですか。ひどいなぁ。
これからはどうか、安心して遊びに来てくださいね。
初村家の最高の客人として、歓迎しますから。ってね。

すみにおけないね、といわれた由貴子が。平然と。
貴方の妻ですもの・・・と、いつもの淑やかさを失わないで。
ものを投げたり、もちろんダンナをひっぱたいたりもしないのは。
なにも知らない初村が、じぶんのほうからしかけてきた・・・というところだけはほんとうだったからなのか。
初村さん。わたくしよりもずっと、お若いのに。
お目が高いのですね。
年配の貞淑妻のお味が、おわかりになるなんて。
あぁ。まったくだね。
おふたりのお熱さかげんには、ボクもずいぶん妬けたものだよ。
あなたこそ・・・若妻のお味はいかがでした?
う・ふ・ふ。
きみほどじゃなかった・・・と、申し上げておこうかな?


あとがき
浮気妻と淫乱妻とは、微妙に違うと思うのです。
これぞ・・・と想う殿方にだけ許すのが、浮気妻。
相手かまわず、肉体的悦楽に酔っちゃうのが、淫乱妻。
由貴子はどうやら、前者といいたいようです。
ステディな相手がいないときには。夫ひとすじ・・・
そうすることで、周囲の男が勝ち獲ようとする彼女の貞操の値打ちも高まると。
殊勝なことを、申しております。

それにしても。
夫がつまみ食いをした若妻の夫に言い寄られて。
それなりに彼女も、愉しんだのでしょうけれど。
案外と。
夫が相手のご主人の目を気にせずに若妻を愉しむことができるよう。
周到に計らった結果なのかもしれません。
夫想いの由貴子さん。
なかなか知能犯だったりするようです。

家族ぐるみで

2007年07月28日(Sat) 17:15:03

夜の闇のなか。
かねて見定めておいた家は、団欒の灯に包まれている。
夫41歳、妻38歳。そして、長女16歳。
インプットされた情報に、ふとこぼし笑いを浮かべながら。
妖気をふくらませて、
ぱあっ。
と、その家向けて投げつける。
薄ぼんやりとした妖気は、オーラのようにその家を包んで・・・
それまで洩れてきた和やかな人声が、いつか途絶えている。

うふふ。うふふ。う・ふ・ふ・・・
オレはほくそ笑みながら、堂々と。
家の玄関の前に立ち、インターホンも鳴らさずに、
ギィ・・・
鍵もないのに、扉を押し開いている。
ふわっ・・・とかぶさってくるのは。
人の息吹き。生活の匂い。そしてなによりも、人肌のぬくもり。
それらいっさいの雑然とした空気のよどみが、オレの鼻をくすぐり胸をワクワクときめかせる。

おもむろに中へとあがりこんでゆくと。
応接間らしい洋間のまん中で、
ご主人がぐったりと、あお向けになっている。
お隣の和室でうつ伏せになっているのは、奥さん。
まずオレは、ご主人の首筋にかがみ込んで。
さっきからジリジリ疼いている牙を、むき出にした。
男の血は、べつだん好みではないのだが。
これから訪れる愉しい遊戯のため。
どうしても、欠かせないものだった。
こくり・・・こくり・・・
働き盛りの血は、ほんのちょっぴり脂ぎっていたけれど。
たっぷりな栄養は、きっとオレさまの役に立つことだろう。

静かに喉を鳴らしながら、気の済むまでご主人の血を飲み干すと。
うぅん・・・
ご主人は不快げに眉を寄せ、寝返りを打った。
かなりの量の血を抜かれたのは、だいぶこたえたらしかった。
ご主人を放すと、そのままぐったりと寝入ってしまう。
死なせるのは、本意ではないけれど。
彼を正気においたまま、すべてのシナリオを尽くしてしまうのは。
ちょっと・・・残酷だからね。

和室に入ると、ストライプ柄のブラウスを着た奥さんが。
紺のスカートのすそをしどけなく乱したまま、やはりあお向けになって寝そべっている。
肩を抱き支えると、ずっしりと手ごたえのある身体の重み。
え?重み・・・だなんて。失礼ですね?だって?
いいじゃないか。
この体重の幾分の一かが、血液の重さで、
そのうちいくらかを、オレさまが頂戴することになっているのだから。
おもむろに、うなじをぐいっ・・・と、仰のけて。
さっき彼女のご主人にそうしたみたいに、首筋に唇を吸いつける。
なめらかな潤いがいきわたる皮膚は、ひんやりと湿っていた。
ダンナの血がついたままの牙を、グイッと刺し入れたとき。
女はハッとしたように目を見開いたけれど。
ちぅちぅ・・・きぅきぅ・・・
しずかに音をたてて血を吸い取ってゆくうちに、
いちどは突っ張った腕は、少しずつ張りを失って、
だらりと手首を畳のうえに投げ出していた。
うーん。
やはり、女ざかりの血は旨い・・・

女房の生き血が、体のすみずみまでたんと行き渡ると。
オレはご主人を揺さぶって、気付け薬にブランデーを含ませて。
もうろうとなっているご主人を、奥さんのいる和室へと引き入れる。
  いいね?これからあんたの女房をいただくぞ。
オレの囁きの意味が、よく呑み込めないのか、
ご主人はしばらくのあいだ、ウン、ウンとあいまいに頷くばかり。
  じゃあ、言ってみろ。私の妻を犯してください・・・ってな。
  ェ?
おもむろに目をあげたご主人は。
ビクッとして、オレの目を見ると。
ちょっと待ってくれ、と言わんばかりに目をむいたけれど。
遅い、遅い。
オレはマントの内側に隠し持っていたロープで、ご主人をぐるぐる巻きに縛ってしまうと、
  さっきは血を、ご馳走様。
  あんたからいただいた血で、精力がついたから。
  その勢いで、こんどは奥さんをいただくんだ。
  おまえは、そこで見ているんだぞ。
  めったに見れない、ポルノまがいの見世物をね。
愉しげにそう、うそぶくと。
ご主人がどうぞ・・・って応えてくれるかどうか、たしかめるまでもなく。
ブラウスの襟元はだけた奥さんのうえ、
にまにま笑いながら、のしかかっていった。

太ももまでの肌色のストッキングは、ちりちりに破けて、
ふしだらにねじれて破れ堕ちたまま、まだふくらはぎにからみついている。
もう片方、脚にのこったストッキングを脱がせてせしめてしまうと。
ぼんやりとしているご主人に、にんまり笑みかけてやる。
ご主人はあいまいに、笑みを返してきて、
もうかんべん・・・といいたげに、片手をあげて会釈をすると、
そのままぐぅぐぅいびきをかき始めていた。
おや、もったいない。
これから第二幕が開くというのに。

階段のきしむ音を忍ばせて。
さいごにたどり着いたのが、娘さんの勉強部屋。
おあつらえ向きに、まだ制服を着たまんま。
娘さんは椅子に腰かけたまま、机のうえに突っ伏していた。
真っ赤なチェック柄のスカートの下。
すねを染めているのは、濃紺のストッキング。
おい、おい。目の毒だぜ。
鮮やかすぎる色づかいに、まぶしげに目をやると。
おもむろに、後ろから忍び寄って。
ふさふさとした髪の毛をかきのけていって。
うなじをあらわにすると。
がぶり!と、咬みついていった。

抱きすくめた腕のなか。
  ァ・・・
娘さんは、喉の奥で。
かすかにひと声、うめきをあげると。
身体が痺れたまま、抵抗ひとつできないで。
そのまま畳のうえへと、身体を横たえていく。
うふふふふっ。
ご両親とよく似た味の、コクのある血をしているのだね。
どうやら血液型まで、いっしょのようだね。
いいだろう。
わたしのなかで、お父さんやお母さんの血と、ひとつになるのだよ。
わざわざおめかしまでして、わたしのことを待っていたというのかい?
おいしそうな脚だね。
いまからたっぷり、愉しませてもらうからね。

さぁさ、お嬢さんのお床入りだ♪
オレは鼻唄交じりに、押入れから布団を引き出して。
マントの内側から、真っ白なシーツを取り出すと。
娘さんの新床を飾ってやる。
あお向けに寝かせた娘さんは。
おとがいを少し、仰のけて。
唇をほんの少し、ツンと突き出して。
まるですねたような顔をしたまま、気を喪っている。
いい子だ。そうやって、さいごまで素直にしているのだよ。
オレはそんなふうにうそぶくと。
娘さんの身体の線を、服の上からなぞるようにして確かめる。
うなじの硬さを、胸のふくらみのまろやかさを。
真っ赤なチェック柄のスカートのすそからにょっきりのぞく、
健康そうな肉づきたっぷりの脚を、ほんの少し開かせて。
太ももを、そうっ・・・と撫ぜたとき。
くすぐったいのか、ほんのちょっと、身じろぎをした。
うふふふふっ。
笑み崩れた唇を、濃紺のストッキングの太ももに、圧しつけてゆく。
娘さんのめいっぱいのおめかしを、愉しむように。
いい舌触りのストッキングだ。
きれいだね。オトナっぽいね。よく似合うね。
さぁ、オトナなストッキングの艶がもっと似合うように。
いまからオトナの女に、してあげるからね。

あ・・・あ・・・ぁ・・・
ゆるく震える声が洩れる唇を。
父さんや母さんの血を吸った唇でふさいでやると。
娘さんは軽くいやいやをして、オレの誘惑を防ごうとする。
いや、ダメだ。見逃してやるわけにはいかないのだよ。
これからはきみにとって、大人になるためのたいせつな儀式。
しっかり遂げないと、いけないのだからね。
オレは娘さんの手を、シーツのうえに抑えつけて。
軽く、ぎゅうっ・・・と、ふかふかとした布団のなかに沈めると。
娘さんは覚悟を決めたのか、もう大人しくなっている。

胸元のリボンを解く手が、昂ぶりにかすかに震えていた。
なにしろ処女は、ひさしぶりだからな。
夕べ襲ったきみのクラスメイトも、とっくに済ませたあとだったのだぜ?
にんまり笑んだ口許から、さっき吸い取ったばかりの血をしたたらせて。
空色のブラウスを汚してしまうと。
娘さんは薄目を開けて、咎めるようにオレをにらんだ。
うふふふふっ。
オレはもう、たまらなくなって。
あとからあとから、ぼたぼたと。
お行儀わるく、娘さんのブラウスを浸しつづけてやった。
怯えて黙るかと思ったら。
もぅ。
口を尖らせて。
弁償してね。
だと。
いまどきの娘らしく。きみはなかなか、しっかりした子だね。

濃紺のナイロンに染められた脚は、ぴちぴちとはずんだ皮膚をしていて。
まばゆい光沢の向こう側、活き活きとした艶を帯びている。
たまらなくなっちゃって。
ストッキングを履いたままの脚に。
ぎゅうっ・・・と。
牙を、圧しつけてしまっていた。
弁償すれば、許してくれるんだろう?
娘さんの顔を覗き込んだら、
さすがにちょっぴり、べそをかいていたけれど。
ひどーいっ。
ふくれたようすが、かわいくて。
おれはまたまた、うなじに熱いキスをしてしまっていた。

さっきから。
半開きになったドアの向こう。
気配をひそめたふたつの影が。
じいっとこちらを、見守っている。
意識を取り戻した奥さんが、われにかえったご主人をうながして。
  アラ、あなた。見ていたの?私が犯されるとこ。
  もぅ。いやらしいわね。
  私、素敵だった?すこしは昂奮、できたかしら?
  いまごろあの子も、血を吸われているわよ。
  早くしないと、姦られちうわよ。
  おじゃましたら、失礼だけど。
  ねぇ。いっしょに覗いてみようよ♪
って、そそのかして。
娘がずるずると服を脱がされながら、処女を喪失してゆくのを、
奥さんは、面白そうに。
ダンナは、ちょっぴり悔しげに。
じわじわときわどい視線を、からみつけてくる。
おい、おい。見世物じゃないんだぞ。
そんなふうに、不平を鳴らしながら。
組み敷いた娘さんの身体の上、
破けたストッキングのまつわりついた太ももの、
さらに奥までまさぐりながら。
ままよ、親どもにも、見せつけちまおうか。って。
覚悟をきめて。
別な覚悟を決めちゃったらしい娘さんが、
キュッと歯を食いしばって待ち受けるのを。
唇をなぞるように、舐めまわして。
歯並びのよい歯ぐきを、べろでなぞって。
うふふっ・・・
思わず笑んだところを。
逆立った魔羅で、ぐい、ぐい、ぐい・・・っと。
力まかせに、貫いていた。

きゃあっ。
痛かったかな?
思わずのけぞった新床のうえ。
たしなみを忘れて暴れる手足を、抑えつけながら。
オレは何度も何度も吶喊をくり返して。
有無を言わさず、娘さんを大人しくさせて。
周囲の目線をいっそう、昂ぶらせてやる。
はぁ、はぁ、はぁ、はぁ。
悪いね、ご主人。
お嬢さんの純潔、おいしく頂戴したぜ?
悪いね、奥さん。
きみのときよりも、熱烈に姦っちゃったかな?
取り去ったシーツに散りばめた、処女の証しをたしかめると。
オレは素早くマントの裏に、少女が夢を結んだ証拠の品を隠してゆく。

ご苦労さま♪
さすがに奥さん、もの分かりがよくて。
薄ぼんやりとしてしまった娘さんを、かいがいしく介抱して。
よかったね。これでサトちゃんも、一人前の女だね。
って。
母親らしく、髪の毛を撫でながら、娘をあやしてゆく。
娘さんは、お母さんに撫でられるまま、頷いて。
どうだった?痛かった?それでもよかったでしょ?
母親の誘導尋問に、むざむざと引っかかって。
これまた素直に、頷いてしまっている。

ねぇあなた。
私たちだけ見るなんて、不公平だわ。
この子にも、魅せてあげましょうよ。
わたしが犯されているところ。
ウン、そうだね。やっぱりお手本を見せてあげなくちゃね。
ご主人は、なにもかも吹っ切れちゃったのか。
意外にも、物分りよく。
どうぞ家内を、犯してください。
お見事。こんどはすらすら、言えたようだ。
よくできたね。
オレがご主人を、冷やかすと。
ご主人、いたずらを見つけられた悪い子みたいに、
照れくさそうに。決まり悪そうに。
エヘヘ・・・と笑っていた。
オレは声を合わせていっしょに笑って、
もう、すっかりご主人とも、うちとけてしまっている。
今夜は、魔法にかけられちゃったみたいですね。
魔法の夢を、さいごまで見たいだろう?
もちろんですよ・・・

ママのときは、どうだったの?
えー?^^;
奥さんと娘さんは、それぞれに破かれた肌色と濃紺のストッキングをからみつけたまま、
自慢し合うように、見せびらかして。
あんなふうにされてね。こんなふうになっちゃってね。
こちらをチラチラ、窺いながら。
必要なことはぜんぶ、娘に教え込んでしまっていた。

でもお前。抵抗しなくちゃ、いけないよ。
娘の教育上、だれにも許すものじゃないって、教えてやらないとね。
もちろんさいごは・・・
もてなしの良い主婦になって御覧。
今夜だけは、ガマンするからね。


あとがき
ご一家の和やかな団らん風景です。^^
今夜だけ・・・では、もちろんすみそうにありませんねぇ。

ママを守るわ

2007年07月27日(Fri) 10:17:18

若い吸血鬼は、やっかいだ。手加減というものを、知らないのだから。


喉が渇いていた。
じりじりと照りつける太陽の下。
待ちきれないくらい、じりじりと渇いていた。
それでもオレは、待ちつづけていた。
女は、来るはずだ。
きのうあれだけ、血を啜り取って。
地獄に堕ちるほど、素肌に毒を含ませてやったのだから。

もしかすると、吸い殺してしまうかもしれない。
先週までは、正反対に吸われる立場。
さいごに力尽きて草むらに倒れたとき。
オレの血を吸い尽くしたあいつは、真っ蒼になったオレの顔を面白そうに見おろしながら。
憎らしいくらいゆうぜんと、立ち去っていった。
初めて襲った女は、きょう待ち合わせている、三十半ばの人妻だった。
真っ白のスーツ姿が眩しくて、気がついたら公園の草むらに引きずり込んで、
雨上がりのぬかるみのうえ、服をどろどろにしてしまっていた。
台なしになったスーツと、裂けた肌色のストッキングを気にする女を横目に見ながら。
吸い取った血の、いがいなくらいのうら若さが、喉にしっとりとしみ込んでゆく。
  半吸血鬼で、いらっしゃるのね?
  だから陽の光の下でも、お見えになれるのね?
憎らしげにオレを見あげながら、まるでくり言みたいに呟きつづけながら。
それでもまだ飽き足らないオレに、衝動のまま、組み伏せられていって。
おいしい生き血を、たっぷりと。
まだ若さの残る素肌から、吸い取られていったのだ。

こんにちわ。
うずくまっていたオレの耳もとに聞えてきたのは。
しっとり落ち着いた人妻のそれを予期していた耳には、舌足らずで甲高い声。
声に応じて見あげると。
そこにいたのは、母親そっくりの目鼻立ちをした少女。
色白な丸顔のまん中に。
いかにも気の強そうな瞳をきらきらさせて。
ポニーテールにした栗色の髪を、黒のカーディガンの肩になびかせていた。

少女は言葉を投げつけるようにして。
  おじさま、血を吸うひとなのね?
やけにはっきりと、ものを言いやがる。
オレは、そうだよ、と、ぶっきら棒に応えると。
少女の母親が、あとからおずおずとついてきた。
  家にいなさいって、申したのですが。
覚悟を決めてきたのか、女は黒一色の礼服の下、
いかにもオレ好みな、スケスケに薄い黒のストッキングを履いて、
蒼白い脛をなまめかしく、透きとおらせている。
  元気の良い嬢ちゃんだな。
オレのぞんざいな言い草に、少女の応えは予期しないものだった。
  恥ずかしがることなんかないわ。
なにもかも、見とおしている少女。
乱暴に投げたふた言三言のなかから、どうして人の心を言い当てることができたのか。

思わず暗くなった眼で、少女を見返すと。
少女も初めて、切なそうに息迫らせて。
  ママを死なせないで。お願い。
初めて本音を、ぶつけてきた。
  ゆうかの血でよかったら、あげるから。
怖ろしい結末をもたらしかねない言葉を、むぞうさに口にできるのは。
なにも知らないものの強さだろうか?
  ゆうか、おやめなさい!
さすがに色をなした母親は、娘の手を握り締めて。あとに退かせようとした。
少女はそれでも、強くかぶりを振って。
  ショジョの血が、好きなんでしょ?ゆうか、ショジョなのよ。ママとは違うのよ。
言い募ることを、やめようとしない。
お行儀のよい黒革のストラップシューズにくるまれた、幼い足首は。
ママとおそろいの黒ストッキングに包まれていて。
脛には大人びた光沢さえ、よぎらせている。
  夕べからこうして、聞かないんですの。
  それで、わたくしが出かけるときに、ついてきてしまいましたの。
  主人がいれば、とめられたのですが。
  きょうにかぎって、急な仕事が入ってしまって・・・
きんきんと甲高い少女の声をおぎなうように、母親の声がまろやかなのは。
齢相応に辿ってきたもののせいだろうか?

人だと思ってはいけない。
とくに、さいしょのうちこそ、相手をただの飲み物と割り切るのだ。
血にありつける肝心なときにへたな同情心をおこすと、こんどはおまえが干あがる番だぞ。
悪いやつが、そう教えてくれたけれど。
人里に大手を振って出てゆく吸血鬼のだれもが、
街の住人たちとは家族どうように振舞っている。

オレは少女の両肩を、すがるように捕まえると。
あわてて寄り添う母親が、少女をもぎはなそうとした。
けれどもオレは、なりふり構わず、少女に甘えるように抱きついて。
少女もなされるがまま、黒のストッキングを履いた二本の脚で、しっかりと立ちんぼしていた。
母親は、ふたりのあいだに割って入って、けんめいにかぶりを振って。
  まず、わたくしから。
  順序をたがえるのは、侮辱ですよ。
薄っすらとほほ笑んで、ブラウスをくつろげた胸元を、白々とさらけ出したときには。
いままでにない大人の落ち着きを、見せつけてきた。

きゃっ。
ひと声、かすかな悲鳴をあげて。
長い黒髪を、ユサッと重く、揺さぶって。
倒れ伏した草むらのなか。
オレは獣にかえって、女のスカートをたくし上げて、
黒のストッキングのふくらはぎを、なぞるように舐めくりまわして。
ぶちちっ・・・
いともむぞうさに、噛み破っていた。
むさぼる血潮は、いままでになくなまめかしく、
淑やかな面差しに似ず、ワイルドなくらい若々しく、
オレの喉を、胃袋を、そして、心の臓を。
心から、和ませていった。

ひとしきり、劣情の嵐が過ぎ去ると。
女は息をはずませながらも、起き上がって。
近くのベンチに腰をおろすと、
  仕方のないかたですね・・・
薄っすらとした笑みに、かわらぬ落ち着きをたたえながら。
破れ落ちたストッキングを、ゆっくりひざ上までひきあげてゆく。
  見た?このおじさまは、怖いのよ?
娘を見やる瞳には、大人の余裕と挑発的な誘惑が秘められていた。

少女は不機嫌そうに、ぷっとふくれ面をして。
母親を睨むように、立ち尽くしていた。
目のまえで母親を踏みしだかれた悔しさからか。
女として自覚し始めた淡い嫉妬のせいなのか。
オレのほうに、挑戦的なまなざしを投げてくると。
  ゆうかの脚も、噛んで。
舌足らずなたどたどしいかった声が、きっぱりと響いていた。
母親は、あきらめたように。少女を自分のいたところに座らせると。
  どうか、お手柔らかに。まだ子どもなんですから。
  子どもじゃないわ。
少女はいつまでも子どもあつかいする母親を、うるさそうに顔をしかめながら。
さっき、見ていたのだろうか?
母親そっくりに、ことさら優雅に脚を伸べてきた。
薄手のナイロンは、母親の履いていたものとおなじ舌触りがしたけれど。
その向こう側に息づいた、ピチピチとした素肌は、まるで男の子みたいに生硬で。
オレがしばらく、牙を立てずに黒ストッキングの脚を舌でなぞりつづけたのは。
少女を必要以上に辱めようというつもりではなく。
どこに牙を立てたものかと、思わずためらってしまったから。
どこにどうやって噛みついたのか、いまになっても思い出せない。
ひざ小僧の上まで走らせた縦じまもようは、白い肌をいっそう白く滲ませた。
  もう・・・っ
少女は、頬をふくらせながら。
それでも機嫌よく、
  こっちの脚も、どうぞ。
  すりすりしたかったら、どうぞご遠慮なく。
って。
甲高い声に、大人びたセリフはまだそぐわなかったけれど。
オレは吸うのをやめて、少女の肩を抱き締めている。
まるで母親に縋る、少年のように。

ボクが勝ったら、何くれる?

2007年07月27日(Fri) 07:14:36

ケンイチとシンジは、大の仲良し。
きょうもなにやら、ゲームらしきものを競っています。
「ボクが勝ったら、何くれる?」
「・・・ママのストッキングなんか、どうだい?」
え・・・?
いいね・・・って。
ひそかにシンジは胸をはずませました。
ケンイチのママが履いているストッキングはうちでは見かけない光沢のツヤツヤするやつだったのです。
「じゃあ、お互いに、ママのストッキングを賭けっこしよう」
少年たちは、いままで以上に息を詰めて、ゲームに熱中します。
勝った!
シンジがしんそこ嬉しそうに声をあげたとき。
ケンイチはなぜか、困ったような笑いを浮かべています。
「さぁ、約束だぞ。ママのストッキングを持って来い」
シンジに命じられるままに、ケンイチはママのタンスから、ストッキングを取り出すと、
むぞうさにひらひらとぶら下げて、シンジに手渡します。
初めて手に取るケンイチのママのストッキングは、思った以上にツヤツヤとしていて、
シンジはウットリと、見とれてしまいます。
太ももまでのストッキングは、彼らが日常たしなんでいるハイソックスよりも少々長めの靴下・・・という感じに思えてきました。
「せっかくだから、ここで履いてくね」
シンジは照れくさそうに、ケンイチのママのストッキングのつま先をさぐると、
じつに嬉しそうにストッキングをひざ小僧の上まで引っぱり上げていきました。
ケンイチはニヤニヤとその様子を見ていましたが、
(ちく生。ママのストッキングをあんなふうにむぞうさに扱って・・・)
と、嫉妬とも怒りとも、いえいえその裏に妙な嬉しさ気恥ずかしさまでたっぷりと感じてしまっていました。

帰り道。
ゲームに熱中し過ぎて、あたりはもう真っ暗です。
ママにしかられるかなぁって、思いながら。
シンジはそれでも、てかてか光るストッキングを履いた自分の脚を、さっきからチラチラと盗み見ていました。
半ズボンの下に履いているケンイチのママのストッキングが、太ももまでキュッと締めつけてくる感覚が、なんともいえず気持ちいいのです。
(またあしたも、ケンイチとゲームをしなくちゃな。そしてあいつのママのストッキングを、もう一足せしめてやるんだ)
シンジはさっきのゲームで、ちょっとずるをしたことを、くすぐったそうに思い返していました。
(あの手を使えば、ケンイチのママのストッキングを、もう一足・・・)
と、思う間に。
とうとう学校の校門まで、たどり着きました。
シンジの家は、この真裏にありました。
校庭を突っ切っていけば、すこしでも早く家に帰れるな。
ほんとうは、いけないことだったのですが。
シンジは何気なく、校門をくぐっていました。

あともう少しで、学校の裏門、というところで。
シンジは見てしまったのです。
噂には聞いていたのですが。
この学校では、放課後になると黒いマントをまとった吸血鬼が出没する・・・というのです。
まちがいなく、そいつでした。
地面まで届くほど長い黒マントをまとった男は、夕闇のなかに身体の輪郭をにじませていて、まるで影そのもののようでした。
ーーーお坊ちゃん。遅いお帰りだね。門限破りの罰に、おじさんに血を吸わせてくれないか?
冗談じゃない。どうしてこんなヤツに・・・
シンジはとっさに飛びのきましたが、影のようなその男は、どこまでも追いかけてきます。
とうとう教室の前まで来たときに、後ろから肩をつかまれてしまいました。
はぁ、はぁ、はぁ、はぁ・・・
もう、息があがって、うまく口がきけません。
ーーーよし、よし。いい子だ。血を吸わせてもらうからね。
影はやさしい口調になって、シンジの首筋を吸おうとしました。
「ま、待って!ダメ!だめだったら!」
シンジは必死に抵抗しましたが、とうとう男に抱きすくめられたまま、首筋を吸われてしまいました。
ああああっ・・・

薄ぼんやりとなったシンジを、校舎の外に放り出されてあった椅子に座らせると。
吸血鬼はさいしょに噛んだのとは反対側の首筋を吸って、
シャツをはだけて胸元を吸って、
それから、わき腹にまで、噛みついて。
さいごに半ズボンの下の太ももあたりに、牙を埋めようとしました。
アッ、ケンイチのママのストッキングを破られちゃう。
シンジは脚をばたつかせて嫌がりましたが、
男はケンイチのママのストッキングの上から、シンジの太ももにぴったりと唇を這わせてしまいました。
ーーーいい舌触りの靴下を履いているね?女のひとの履いているストッキングだね?
「知らない。僕なんにも知らないよッ!」
ーーーまぁ、そうじゃけんに言うものじゃない。きみのお母さんのものだね?
「違う、違うッたら!」
シンジは吸血鬼のしたがることをやめさせようと、けんめいに首を振って抗いましたが、
両ひざを強い力でがっちりと抑えつけられていて、身動きひとつできません。
とうとう・・・
ちゅるっ。
サリサリとした薄手のナイロンごしに、吸血鬼の舌をなすりつけられてしまいました。
ーーーおやぁ、ほんとうにいい舌触りだ。きみのお母さんは、いつもこんな靴下を履いているのかい?
ーーーおじさんにも、紹介してもらいたいものだね。
「違う!ちがうっ!これケンイチのママのやつなんだ」
シンジはとうとう、ゲームでずるをしてケンイチからママのストッキングをせしめてしまったことを白状してしまいました。
ーーーふーん。きみは少し、悪い子のようだね。
ーーー友だちをだますなんて、よくないぞ。ちょっとお仕置き、しなくちゃな。
そういうと吸血鬼は、シンジの首筋にもういちど唇を吸いつけると。
ぬるーり、ぬるーりと、それは旨そうに、血を吸い取っていくのでした。
じっくりと、いやらしく・・・
あっ、イヤだ。イヤだよ・・・
シンジの声はだんだん弱々しくなっていって・・・
とうとう自分のほうから、ストッキングを履いた脚を、吸血鬼のほうへと投げ出してしまったのです。

ーーーすまないね。
吸血鬼は言葉とはあべこべに、にんまりと笑いながら。
半ズボンを履いたシンジの足許から、ケンイチのママのストッキングを抜き取っていきました。
むざんにあちこち噛み破られてしまった肌色のストッキングは、蜘蛛の巣みたいにチリチリになってしまっていて、
少年の目にもなぜかひどくいやらしく、ふしだらなもののように映ります。
ーーーいいだろう?もう一足、せしめてみたいものだね。
ーーーいまからきみの家に行って、ママにおねだりしてみようか?
「違う。それ、僕のママのじゃない。ケンイチのママのやつだよっ。
 どうしても欲しいんだったら、ケンイチに言えよっ」
ーーーそうか、そうか。そうだったね。
影はいったんはおとなしく引き下がるふうを見せましたが。
それでもまだたち悪く、シンジの首筋につけた傷口を、いやらしくぺろぺろと舐めつづけています。
傷口をとおして、どす黒いものがじわじわとしみ込んでくるような気がして、シンジは目まいを覚えました。
ーーーわかっているね?きみはもう、わたしの奴隷なのだ。明日はその、ケンイチという子を、ここに連れてお出で。
ーーーきみから頼むのが、決まり悪いのなら。そちらのほうは私が引き受けてあげよう。
「う・・・う・・・ウン。わかった。そうするよ」
ーーー悪いが、私にはゲームのずるは通用しないよ。うっかりすると、家族もろとも血を吸い尽くしてしまうのだからね。
シンジはひいっ!と、震えあがりながらも。裏切らないよ、裏切らないから・・・って、哀願するように頼み込むのでした。
ーーーよし、よし。もうひとつ、お約束。
「えっ!?」
ーーー明日きみが履いてくるのは、お姉さんが学校に履いて行く、紺色のハイソックスだ。いいね?

つぎの日の放課後のことでした。
シンジはケンイチを連れて、校庭を歩いていました。
シンジの足許には、お姉さんの履いている濃紺のハイソックス。
いちど家にもどったとき、まだ帰ってきていないお姉さんの部屋にこっそりと忍び込んで、
タンスの引き出しをあけて、真新しいやつを一足、盗んできたのです。
真新しいハイソックスは、シンジにはすこし丈が長めで、ひざまでかかっていましたが、
夕陽を受けて、いつになくツヤツヤと輝いていました。
ケンイチには、ママのストッキングを履いて来いって言ったのですが。
「えー、それはさすがに、恥ずかしいよぉ」って。
断られてしまいました。
けれどもシンジのほうも、必死です。
約束を破ると、吸血鬼に血を吸い尽くされてしまうかもしれないのです。
どうにか頼み込んで、履かずに持ってきてもらうことにしました。
ストッキングを履かない代わり、ケンイチは紺のハイソックスを履いてくると言ってくれました。
シンジが長い靴下が好きなのを知っていたからです。
だれもいない校庭に現れたケンイチが履いてきたのは、肌の透けて見える薄いハイソックスでした。
ケンイチは、ひそかにごくりと生唾を飲み込んで。
「きれいなハイソックスだね」って、口ごもりながら言いました。
ケンイチは色白な頬をゆがめるようにして笑うと、
「きみが喜びそうだと思ってさ」とだけ、言いました。
そうして、もっとびっくりするようなことまで、言ったのです。
「来るんだろ?吸血鬼」

えっ?
どうして知ってるの?とシンジが訊ねようとしたとき。
あたりに広がった薄闇から溶け出すように。
早くもあのいまわしい影が、ふたりのまえに現れたのです。
ーーーよく来たね。ふたりとも。
「あ・・・ああ」
シンジがあいまいに頷くと。
ケンイチは、「だれ?」といぶかしそうに訊きました。
「だからさ・・・吸血鬼・・・」
ケンイチも、さすがに表情を硬くして、それでも礼儀正しく「こんばんは」と言いました。
ーーーこんばんは。
吸血鬼も応えます。
ーーーきょうはきみたち二人の血を、たっぷり吸わせていただこうと思ってね。
ーーーふくらはぎを噛んであげたくて、ハイソックスを履いてきてもらったというわけさ。
うふふふふっ。
いやらしい含み笑いに、少年たちは顔を見合わせながら。
「キミ、どうする?」
「お前こそ、どうする?」
「ボクは、かまわないよ」
「じゃ、僕だっていいさ」
まるで張り合うようにしながらも。
ふたりは校庭のすみのベンチに腰かけて、ハイソックスの脚を並べてゆきました。
吸血鬼は少年たちの足許をかわるがわるいたぶって。
まずケンイチの、つぎにシンジのハイソックスを、むぞうさに噛み破ってゆくのです。
さきにケンイチが、ストッキングみたいに薄いハイソックスを手ひどく破かれてしまうと。
にじり寄ってくるあいつの息遣いが足許に迫るのを感じながら、
姉さん・・・っ
シンジの噛まれるハイソックスは、姉さんのものでしたから。
思わず姉のことを思い出してしまいます。
まるで姉さん自身が、吸血鬼に噛まれるみたいな気分がして。
なぜかゾクゾクと、昂奮してしまったのです。
少年たちの血を順ぐりに吸い取ってしまうと。
薄ぼんやりとなっているふたりの肩を抱きながら。
ーーーさぁ、今夜はどっちが、母さんや姉さんの血を吸わせてくれるのかな?
ほくそ笑みながら、囁きかけてきたのです。
ーーー夕べはきみのママのストッキングを、イタズラさせてもらったんだ。きみの友だちの好意でね。
ケンイチは決まりを守って、放課後には決して校庭を通りませんでしたから、
吸血鬼がケンイチのママのストッキングを味わうチャンスはなかったのです。
「わかった。わかったよ・・・ママを連れてくるからさ・・・」
えっ?
ケンイチがうわ言みたいに口走るのを耳にして、シンジはどきりとしました。
あのきれいなママが、吸血鬼のものになる。
想像しただけで、ゾクゾクしてしまったのです。
「ケンイチ、よかったね。ママもきっと、喜んでくれるから」
まるで世迷言みたいに、シンジが声を漏らすと。
ーーーきみは、姉さんを連れて来るんだぞ。
影は嬉しそうに言いながら、シンジの足許から姉さんのハイソックスをズリ降ろしてゆくのです。
ふたりの脚からハイソックスを抜き取ってしまうと。
明晩が、愉しみだな。
そんなふうに囁くと。
うふふふふっ。
たちの悪い笑みを残して、煙のようにかき消えてしまいました。

「どうする?」
「どうする・・・って・・・」
ふたりはしばらく蒼い顔のまま、顔つき合わせていましたが、
どうしようもないじゃん。
どちらからともなく、そういうと。
あとはどうやって、ママや姉さんを連れ出そうかって考えながら、
別れ別れに帰っていきました。


あとがき
うーん。ちょっとだるいでしょうか?^^;
つづきは、気が向いたら描きますね。

服を着られて・・・

2007年07月27日(Fri) 00:16:34

行ってきまーす。
玄関先から漏れてくる声は。
長女の声のように、リンと響き渡る。
昨日の夜は。
行ってまいります・・・
妻の声のように、しっとり落ち着いた声が。
やはり玄関先に、こだました。
声の主は。
今夜は、白のカーディガンに、真っ赤なチェック柄のプリーツスカート。
夕べは洗練されたベーズリー柄の、プリントワンピース。
ぴちぴちとした白のハイソックスに、奥ゆかしい黒のストッキング。
娘や妻そのもののなりをしているのは。
服の持ち主たちの血を啜る、吸血鬼。
女なのか。男なのか。
わたしには正体ひとつ見せることなく。
今宵も家族の女性の血を吸って。
血を吸った女たちの衣裳をまとい、夜の闇へと消えてゆく。
道行くひとには、娘や妻そのひとと、映るらしい。
夕べももまた。
おや、和代さん。これからお出かけ?
きょうもまた。
あっ、ジュンちゃん。こんなに遅くに、どちらへ?
いぶかしそうに訊ねるお隣の奥さんに。
えぇ、ちょっと・・・
謎めいた含み笑いを残して、立ち去ってゆく。
あちらのお宅の奥様。夕べは戻ってこなかったわ。
お嬢さんも、お邸に抱かれに行っているみたい。
そんな風評が、そこかしこから。
これ見よがしに漂うのを。
わたしはなぜか、くすぐったく鼓膜を震わせて。
いえ、妻にかぎって。娘にかぎって。
だれも信じてくれない打ち消しを、内心わくわくしながら、口にしている。
行ってらっしゃい。
心のなかで、呟きながら。
わたしは妻や娘の部屋に赴く。
ほんとうは、肌を蒼ざめさせて。
薄ぼんやりとした焦点の合わない瞳を、
つかの間の情人が消えていった彼方に漂わせて。
女たちが衣裳を乱している部屋へ。

挑発。

2007年07月26日(Thu) 23:14:45

茶髪の髪を、肩までおろして。
ピンクの口紅を刷いた悧巧そうな唇と、挑発的な瞳を輝かせて。
きみはウキウキとして、ブラウスの胸元に手をやって。
思い切りよく、まえを開いた。
眼前に広がる絶景は。
満月が闇夜を遠ざけるように。
オレを現実から引き離す。
薄く透ける青白い静脈は、うら若い血液を活き活きと脈打たせるかのように。
ツヤツヤと輝く素肌の奥。オレの牙を疼かせる。
ふと見ると。
ストライプ柄の制服のスカートは、とうの昔に持ち主の腰から解かれていて。
傍らの椅子の背中に垂らされている。
いつもの柄もののストッキングではなくて。
俺の好みを察したように、飾り気のない無地の黒ストッキングが。
なまめかしい薄墨色の濃淡に、脚の筋肉のしなやかな起伏を、うっとりするほどたくみに包み込んでいる。
噛んで。
え?
噛・ん・で♪
生命の源泉を啜り取られる吸血という行為を。
きみは物怖じひとつしないで、受け入れようというのか。
服をはだけて、輝く胸をあらわにして。
上目遣いに、挑戦的な光を秘めて。
キッとにらむように見あげるまなざしは、どこかせつじつな濡れを帯びている。
俺は、はじめて女のひとにそうしたときのように。
恐る恐る、きみの両肩に手をおいて。
分厚いジャケットの生地が、俺の手を拒むように、きみの素肌からへだてるのを感じると。
きみはそれを察したかのように。
俺の片手をギュッと握りしめて。
そのまま、太もものすき間へと、導いてゆく。
むっちりとした柔らかな肉のはざまに、導かれて。
迫るほどのぬくもりが、冷え切った掌を、表と裏から暖めて。
サリサリとしたナイロン製のストッキングの感触の向こう側。
ピチピチとはずむ、なめらかな皮膚。
俺は思わず、ストッキングをくしゃくしゃに揉みしだき、引き剥いで。
舐めくりまわすように、きみの太ももを愛玩している。
えっち。
薄い唇から覗く白い歯が、挑発的に輝いていて。
俺はきみの前歯を覆うようにして。
唇に唇を、噛むように重ねてゆく。
うっ・・・
獣じみた息遣いを。
互いに互いの喉の奥まで吹きかけながら。
いつか身体は平衡を喪っている。
すっ裸よりも。
脱げかけた服が、そそるね。
俺の囁きに、きみはもういちど。えっち・・・と囁きかえして。
言葉と裏腹に、露骨な愛技を投げかけてきた。
照明の落ちた、広いオフィスのなか。
はぜる息遣いは、夜明けまで絶えない。

処女に戻って、抱かれてあげる

2007年07月26日(Thu) 22:55:05

処女にもどって、あなたに抱かれてあげる。
ミサエさんはそういって、じいっとボクを見つめている。
いつものあのミステリアスな瞳の輝きが、今夜はいっそう深くなったようだった。
十歳も年下の彼女。
それなのに・・・ボクよりずっと年上に思えるのは。
彼女がミセスのせいなのか。
ボクがいつまでも幼いせいなのか・・・

事務所をひけるとき、か弱げにみえた後ろ姿につい手を伸ばしてしまったのが、さいしょ。
両肩を抱きしめて。
立ち尽くす彼女のうなじに、飢えた唇を熱く這わせて・・・
薄い皮膚を、牙で破って。
ほとび出るばら色のしずくを、彼女の想いもろともに、呑み込んでゆく。
だれもが我を喪ってしまう、ボクならではの愛し方。
ふつうの女なら、それでとことんまで堕ちてしまうのに。
彼女はさいごまで、凛としていて。
夫婦だけに許された一線だけは、とうとう侵させてはくれなかった。
力ずくで、奪おうとすれば奪えたものを。
そうしてしまうことができなかったのは。
いったいどうしてなのだか、いまでもわからない。

それからというものは。
彼女は仕事上の頼れる同僚としてばかりか。
ボクだけの妖しい愉しみを共有するパートナー。
事務所がひけるとき。
いつもわざとのように、ボクに後ろ姿をみせて。
それまでは髪をアップにして輪郭をあらわにしていた首筋を。
いまはお嬢さんみたいに、肩まで長く垂らしている。
うなじの痕を、ほかのものに見られまいとするかのように。
そんな彼女がある晩ボクに。
打ち明けるように、囁いていた。
処女にもどって、あなたに抱かれてあげる。って。

犯してもいいの?
初めてのものを、くれるというの?
少女のようにうつむくきみは、もうそれ以上なにも語ろうとしないで。
まるではじめての少女のように、恐る恐るボクの手を握り締めてくる。
力強く握り返した掌のなか。
か細いきみの手指は、くだけてしまいそうなくらい、心細かった。

ラブホテルなんか、嫌。
わたしの家まで、連れて行って。
夫は子どもを連れて、自分の実家に戻っているの。
朱の唇から洩れてくる命令口調に導かれるままに。
ボクは彼女を引き寄せて、夜の空を翔んでいた。
なんどひそかに、その窓辺に立ったことか。
そうして、なかの和やかな声の行き交いに、耳をひそめて。
やがて、夢からさめたように、うちしおれて。
いくど、空しくきびすをめぐらしたことだろうか。
それらすべてを、知っているかのように。
きみはあの茂みと窓辺に、わざと一瞥をくれて。
もういいのよ・・・というように。
小手をかざして、ボクを庭先に差し招く。

ここで待っていて。
夜風のなかに消えた彼女は、いつまで待っても現れない。
騙されたのか?と思うほど。
ボクはなきそうになりながら。
足が棒になるほど、待ちわびて。
そうしたら。
がたり。
雨戸が一枚、音を忍ばせておし開かれて。
招き入れる手は、どこか弱々しく、透きとおる肌の白さも、きゃしゃにみえた。
つかんだ手首を包む袖は、真っ白で。手首だけが濃紺で。
濃紺の手首には、白い三本のラインが横切っていて。
胸元には、ふさふさとした、濃い紫のタイ。
薄っすらとした茶髪だった髪は、生のままの黒さをツヤツヤと輝かせて。
もともと少女のようだった瞳の冴えだけは、そのままに。
きみは自分の娘ほどの童顔に、戻っている。
抱・い・て。
そろそろと伸びてくる腕は。
恐る恐る。怯えるように。
何も知らないことを、これから受け入れようとする少女そのままのためらいを秘めていた。

庭で・・・して。
制服、汚れちゃってもかまわないから。
別人のように見えながら。
それはきみ以外のだれでもない。
きっぱりとした、思い切りのよさと。
さばさばとした、いさぎよさと。
ちょっぴり覗かせる、ためらいと気恥ずかしさと。
勝気で潔癖なきみは、
汚れることへのかすかな嫌悪と、
それを気取られまいとする気丈さと。
心の中で、綱引きをしている。

うつむく横顔を、やんわろと抱きすくめていきながら。
なにもいわないで。
囁き命じられるままに。
ボクはだまって、きみを押し倒す。
真新しい制服を、惜しげもなく泥にまみれさせながら。
ボクの腕のなか、きゃっ、きゃっ・・・とはしゃぐきみ。
どこまでも。どこまでも。
奥深い夜空に吸い込まれてゆく、愉しげな忍び声。
きみは無邪気で、気が強くって、そして、とても可愛い。

部長の奥様

2007年07月25日(Wed) 07:58:23

奥様ですか?
今夜わたくし・・・部長に誘われているんですのよ。
何のために・・・ですって?
中年の男性が、若い女性を夜誘うだなんて。
目的はひとつしか、ございませんでしょう?

電話口に出た部長夫人は、ひどくうろたえていたようだけれど。
善良な専業主婦らしい声に、毒液たっぷりな声色を重ね合わせてしまうと。
奈津子は一方的に受話器を置いて、ふふん・・・と鼻を鳴らしている。
得意になったときの、癖だった。
どうするの?
ばかな問いをされるまえに。
わかっているでしょ?
って。
あいつに突きつけてやった。
これで今夜も、人妻の生き血にありつくことができるわね。蛭田くん。

あっ!な、何なさるんです・・・っ。
いけませんわっ。部長っ!
やめてください・・・っ。
ドアの向こう側、
芝居がかった声色なのに。
部長はなんにも気がつかないで。
てかてか光る肌色のパンストを穿いた奈津子の脚に。
ズボンを脱いでむき出しになった毛むくじゃらの脛を重ねていって。
鼻息荒く、奈津子をベッドに押し倒している。

半開きになったドアのすき間から、
なかの様子を窺いながら。
あっ、ちく生!
ひとの婚約者をつかまえて。
おっぱいをまさぐるだけじゃなくって。
あんなことまで・・・こんなことまで・・・
このヤロ。このヤロ・・・こんちくしょうっ!

蛭田はいつになく、目を血走らせて。
奈津子に言われるがまま、彼女の婚約者になりきってしまっている。

がちゃり。
背後のドアが、つっけんどんに開かれたのを。
不覚にも、一歩遅れて気づくほど。
なかでくり広げられるシーンは、刺激に満ちたものだった。
肩で息をはずませている、四十後半ときいた奥様は。
さすがに顔を、蒼ざめさせて。
細い眉には、ピリピリと。
ナーバスな妍をたたえていたけれど。
抜けるように白い肌に、ノーブルで控えめな目鼻だち。
後ろに縛った長い黒髪の、つややかさ。
上品なスーツのすき間からのぞく、豊かな胸。
淑やかな黒ストッキングに包まれた、すらりとしたふくらはぎ。
どれをとっても、まず十歳は若くみえた。
まさに・・・おいしい獲物♪

どいてください。
女は荒々しく、蛭田を突きのけようとした。
どうやら蛭田のことを、夫と示し合わせたお気に入りの部下だとでも、思い込んだらしかった。
こういうときの蛭田は、俊敏なのだ。
器用にサッと身をかわすと、片方の手で奥様の腕をねじりあげて。
もう片方の掌で、奥様の口を、ギュッとふさいで。
掌のなか、もぐもぐさせる唇の柔らかさに、なかば陶然となりながら。
はしたないですよ。取り乱しちゃ。
わたしは彼女の、婚約者です。
きっぱりとしたささやきに。
女はびっくりしたように、蛭田の顔を見つめて。
見つめた瞳は、すぐに力を喪って。
とろんと甘く、崩れてゆく。

うふふふふうっ。
蛭田はお行儀わるく、手の甲でよだれを拭いながら。
じゅうたんの上、大の字になってあお向けになった奥様に、這い寄っていって。
透明な黒ストッキングごしににじみ出る白い脛に、
ぬらぬら唇を這わせていった。
ぁ・・・
突き刺されたとき。
奥様は眉間にかすかなしわを寄せて。
眉をひそめたその表情に、蛭田は躍りあがって・・・
ブラウスのタイをほどく手も、もどかしく。
思い切り、引き剥いでしまっている。

濃い紫のタイトスカートの奥。
びゅう・・・っ
思わず洩らしてしまった、熱い精液。
女はさいごまで、あらがっていたけれど。
涙のしずくをひとすじ、頬に伝い落としてしまうと。
むしろじぶんのほうから、大胆に腰を合わせてきた。
上品で地味な服装のうえ、意外に起伏のある肢体をなぞってゆくと。
嫌悪のあまり身を硬くしていたおなじ身体が、
こんどは昂ぶりに引きつっていた。
ひとしきり、女をかわいがってしまったあと。
しまった。
蛭田はハッと、身を起こした。
思うまでもない。
ドアの開きかかった向こう側。
コトはすでに、済まされてしまっている。
制服の紺のベストが脱げ落ちた肩は、むき出しの肌を輝かせていて。
奈津子は朱色に刷いた唇を、ふしだらな愉悦に弛めきっていた。

ちく生!ちく生!ちっく生うっ!
幾ら言ったって、遅いって・・・
自分で自分を嘲りながら。
せめても・・・と。
新たな獲物を、いっそう辱め、踏みしだいていた。
生まじめいっぽうで通っていた部長夫人は、
意外なくらい床上手で。
離れたり、くっついたり。
拗ねたり、甘えたり。挑発したり。
目線だけは、控えめに伏せながら。
わずかに頬を染めながらも、ほとんどかわらない面差しのまま。
やることだけは、おそろしく大胆で。
髪をユサユサ振り乱し、装いをしどけなくゆるめ切って。
蛭田の相手を、身を添わせるようにして、つとめてゆく。
一物を口に含み、ねぶりまわし、それを己の股間にあてがって、思い切り貫かせ、
はぁ、はぁ、はぁ、はぁ・・・
ひそめた息は、ひそかに荒く、昂ぶっていて。
鼻筋のとおったノーブルな面差しに、淫らな血をいきわたらせてゆく。

部長。感心してたわよ。
夫婦が引き取ったあと。
乱れ髪のままの奈津子は、制服もやはり着崩したまま。
怖い目で、蛭田を見つめている。

あくる朝。
叩かれた頬が、じんじんと痛い。
そんな蛭田を見慣れているのか、営業部のだれもが、頬っぺの痕の由来をただそうともしなかった。
おっ、こんどはどこの女に手を出した?
同期のコウノだけが、おどけた口調で突っついてくる。
こいつの女もいちどだけ、ご馳走になったっけ。
甘い追憶はそのまま、夕べの責めに直結して。
蛭田はあわてて、妄想を追い払った。

エイノ部長がお呼びです。
隣の課の新人社員が、蛭田を呼んだとき。
来やがった。
蛭田はあやうく、うめくところだった。
夕べ奈津子を組み敷いて思い通りにしたやつと、はっきり決着をつけてやる。

びっくりしたよ。
二人きりになるのも、もどかしく。
部長は眼鏡の奥、意外なくらい晴れ晴れとした目線を投げてくる。
まさか妻に、かぎつけられるとはねぇ。
あいつはいつも大人しくって。
そのくせ、きみ相手に、あそこまで乱れるなんて。
あちこち攻め取っていくうちに、つい本丸がおろそかになっていたようだな。
自分のしたことを、棚にあげて。
ひとしきり、蛭田のお手並みを褒めちぎると。
ときどき、家内を頼むよ。
そのかわり、ボクも・・・
「おいし過ぎやしませんか?部長」
どれだけいい女だったとしても。
むこうは古女房、こっちはピチピチOLの婚約者なのだ。
そう。オレは奈津子の許婚なんだぞ。
思わず蛭田が力んで、反り返ろうとしたときに。
がちゃり。
現れた女たちに、度肝を抜かれてしまっている。
ひとりは奈津子、そしてもうひとりは、ほかでもない部長夫人。

岬くんから、話は聞いたよ。(^^)
えっ・・・? **;
(ば、ばらしたの・・・?(ーー;) )
(ふんっ! (ー_ー)!! )
そこまでして、家内に照準を合わせるなんて。きみもなかなか見あげたものだね。
改めて紹介しよう。家内の八千代だ。
これからはきみの愛人として、仕込んでやってくれ。
さっそくだから・・・
隣は、寝室になっている。
どうかね?そこで、ふた組で・・・。^^
きみが彼女を抱かれて萌えるように。
ボクもどうやら、似たものどうしのようだから・・・


あとがき
どこかそそられませんか?
上品なスーツを装ったノーブルな面差しのご婦人が。
表情をかえずに乱れる光景って。^^

忘れもの。

2007年07月25日(Wed) 06:58:48

忘れものだよ。
届けてくれたのは、はす向かいのご主人。
蛭田は差し出された手帳を、ばつが悪そうにポケットに押し込んでいた。
家内の寝室で見つけたんだ。きみも相変わらず、忘れっぽいねぇ。
ご主人は、とがめるふうもなく。
ニコニコとおだやかに、笑っている。
手帳の中身を、見ましたか?
などと。
間違っても、訊けたものではない。
だって。
手帳の日めくりをめくれば、
そこにはその晩逢うべき女(ひと)の名前が、そこかしこに散りばめてあるのだから。
もちろん。
夕べの欄には、奥さんの名前が書かれてある。
年頃になった娘さんの名前と、隣り合わせに。

きみはいつまでも、そそっかしいね。
しっかり者の家内の血を、あんなにたっぷり吸っているわりに。
ご主人は、悪戯っぽく笑いながら。
娘の部屋にも、落ちていたよ。
あの子はまだ、黒のストッキングなんて、履かないだろうね。
差し出された黒いナイロンの塊は。
ご主人の掌から、はみ出して。
だらりとふしだらに、垂れ下がっていたけれど。
イエ、それ・・・お嬢さんのです。
なんて。
もちろん、言い出せたものではない。
だって。
娘が夜ごと、黒のストッキングを脚に通すようになった・・・などと。
善良なご主人の耳には、まだ入れる段階ではないのだから。

お礼にきみの収穫も、拝見したいものだね。
にこにこと、罪のない笑いを浮かべながら。
ご主人もなかなか、すみに置けない。
蛭田は照れくさそうに、傍らにある紙包みを取り上げた。
むぞうさにぐるぐる巻きにされたまま。
夕べ奥さんの穿いていた黒のストッキングは、
ガーターの部分にまで、白っぽい粘液を光らせている。
おや。おや。
ご主人は、ためつすがめつ。
夕べ奥さんの脚を包んでいたナイロンを、まさぐりながら。
だいぶ、がんばったみたいだね。
って、いわれたときには。
家内もきみに汚されまいとして、ちょっとは抵抗したのかね?
なんて、呟かれてしまったときには。
蛭田は自分の醜態を、すみからすみまで覗き込まれたような気分になって。
耳の奥まで、真っ赤になってしまっている。
いえ、わざとひっかけてやったんです。
とは。
口が裂けても、口にできない。
なぜかといえば。
うちのひとのよりも大きいわ・・・って。奥さんが口走った、だなんて。
言わぬが花に、決まっているのだから。

ご主人、さらに容赦なく。
もうひとつのほうも。
声は控えめでも、要求はシビアなのだ。
蛭田は、困ったな・・・という顔をしながらも。
優しいご主人の求めを断る手だても思いつかずに。
もうひとつの大きい紙包みも、開いてゆく。
いつも娘が学校に履いてゆく、チェック柄のプリーツスカートが。
ていねいに折りたたまれてあった。
ご主人は、さすがにため息をして。
さすがにスカートの裏がわまでは、改めようとはしなかった。
お手柔らかに頼むよ。
なにしろ、まだ嫁入りまえの身体なのだから。
どういたしまして。
などということは。
冗談にも、口にすべきではなかった。
なにしろ。
処女を頂戴したときに彼女が履いていた白のハイソックスは。
バラ色の初々しいしずくを散らしたままの状態で。
蛭田の箪笥の抽斗の奥、それは大事に仕舞われているのだから。

ほら、もうひとつ、忘れもの。
ご主人は、もういちど鞄のなかに手をやって。
手にしているのは、サイズの小さめな黒タイツだった。
下の娘も。中学にあがったら、きみにお願いしようかな。
もっと薄いやつを履かせて、お姉ちゃんとふたりで、ここに遊びに来させるからね。
いまからとても、愉しみですね♪
って。
とてものこと、言えたあいさつじゃないけれど。
言ってしまっても、貴男は笑って許してくれますか?
いつものように、くすぐったそうに、照れくさそうに。


あとがき
ひさびさ登場の蛭田くん。
またもや、いい思いをしているようです。^^
ちょっと、喜びすぎかも・・・ですが。^^;
奥さんの貞操も。お嬢さんの純潔も。
食い荒らされてしまっている(!)のに。
人の良いご主人は、なぜか救われた存在のような気がします。(笑)

闇夜に舞う服

2007年07月25日(Wed) 06:39:59

ぶるるるるるるるるるぅん・・・
真夜中の大通りは、行き交う車もまばらなぶん。
とてもハイスピードで、飛ばしている。
テールランプがゆらめく光芒となって、闇の彼方に消えてゆくと。
あたりに残るのは、街燈に照らし出された静寂。
昼間とは違う種類の輝きが支配する空間は。
日常とは裏返しの異界が、意外に近く存在することを告げているかのようである。

紺とグレーのチェック柄のスカートをたなびかせて。
ひざから下は、闇夜には眩しすぎる、真っ白なハイソックス。
あるはずもない視線を意識しながら。
そらぞらしい冷気のなか、スカートを思い切りよくさばきながら、歩みを進めてゆく。
歩むたび太ももを撫でる夜の空気が、むき出しの肌に心地よい。
見あげたマンションの窓辺は、どの部屋も真っ暗なのに。
その部屋だけは、いまもこうこうと灯りが点されていた。

がたん。
重たく殺風景な鉄の扉をひらくと。
オレンジ色の照明を放つスタンドの下。
輝くほどに色の浅い茶髪の下、黒一色のワンピースが、ゆるやかにそよいでいる。
  あら。お帰り。早かったじゃない。
黒のワンピースの主は、こちらを振り返って、共犯者の笑みを投げてくる。
  コーヒー、淹れたわよ。よかったら、召し上がれ。
差し出されたマグカップの中身はどす黒く澱んでいて。
香気とともに立ちのぼる湯気のくゆらぎが、鼻先をくすぐった。
午前三時。
  とてもコーヒーを飲む時間じゃないよな。
  あら、いらないの?
  うぅん。いただく・・・
ずるっ。
お行儀悪く啜りあげる音。
青とグレーのチェック柄が、大胆な切り込みのあるシフォンのワンピースと重なり合う。

濃い口紅を刷いた唇に。かわるがわるコーヒーカップをあてがいながら。
  まだ、睡っているの?
  ええ、ぐっすり。
ふふ・・・と笑み合う唇を濡らす紅色が。
口紅だけのものではないことなど。
ちょっと見には、だれも気づかないだろが。
照明の落ちた隣室で、口を半開きにしたまま転がっているのは。
ふたりの身につける衣裳の持ち主たち。
うなじに深々とつけられた痕からは。
吸い残された血潮が、ぬらぬらと洩れつづけていた。

ふたつの影は、くすぐったそうに含み笑いしながら。
  おいしかったね。
  えぇ、おいしかったわね。
口々にほめているのは。もちろんコーヒーのことではない。
隣の畳部屋に横たわる母親と娘も。
奥の部屋に寝そべるご主人も。
ひとしく濃い口紅を刷いた唇に。
己の血潮を散らしたあとだった。

ふたりとも。
おのおのが、母と娘になりすまして。
それぞれべつべつの、夜道をたどって。
さきに”帰宅”したワンピースの女が、コーヒーを淹れて相棒を待っていた。
  交差点で、車のライトに、照らされちゃった。
  あら。あたしなんか。後ろからゆっくりと、車に尾行(つ)けられて。
  声かけられちゃった。
  あはは。それで、どうしたの?
  あわてて車の入れない路地に、逃げ込んじゃったのよ。
  ウフフ。臆病ねぇ・・・
濃く刷かれた化粧の下。
ほほ笑む目鼻立ちは、整っているとはいえ。
起伏のとがった、男のものだった。
チェック柄のスカートも。
黒のワンピースも。
真っ白なハイソックスも。
ダイヤ柄のストッキングも。
きりりと引き締まった筋肉を帯びた肢体に。
まるで女そのもののように、マッチしていたけれど。

夜の団らんの席に、忍び込んで。
まず、風呂上りのご主人を、たぶらかして。
それから。
横縞もようのカーディガンを羽織った奥さんの、モスグリーンのスカートの下に、かじりついて。
肌色のストッキングごしに、柔らかな皮膚を牙で刺して。
甘えるように、抱きついて。血潮をたっぷりと、啜り取って。
女の指さすまま、箪笥の抽斗(ひきだし)をあけて、
黒のワンピースをせしめていった。
もうひとりは、勉強部屋に引きあげていた娘を、手なずけて。
空色のブラウスが、紫色になるくらい。
うら若い血潮を、たっぷりと口に含んでいって。
首尾よく制服のプリーツスカートをせしめてきた。
  母娘ごっこが、楽しめるね。
女装の吸血鬼は、ふたり寄り添うように、影を重ねて。
互いに互いの衣裳を、愛でていた。

奥の部屋。
母娘に扮したふたりは、ご主人のうえかがみ込んで。
薄っすらと眼をあけたご主人は。
さいしょは妻と娘だと思い込んでいて。
  だいじょうぶか?お前たち・・・?
だいじょうぶじゃないわ、と呟いた黒のワンピースが。
寝そべったままのご主人のうえ、身を投げかけていって。
夫婦のキスにも似た、強烈な接吻を。
首筋につけた傷口のうえ、容赦なく重ねてゆく。
あ・・・あ・・・ぁ・・・
じゅうたんの上、力なくけだるげに首を振るご主人の顔を、
苦しむ顔を見たくって。ふたりかわるがわる、覗きこんで。
  けっこう、いい男じゃない。
  そうね。女の服が似合いそう。
ふたつの影は、たちの悪い笑みを交し合って。
  お嬢さんの服、着てみない?
腑抜けのように理性をなくしたご主人を。
娘の勉強部屋に、引き入れてゆく。
自室に入ってゆく三つの影を。
少女は、意識のぼんやりとなった意識の向こうに見つめていた。

どお?あなたの制服。お父様に似合うでしょう?
決まり悪げにしているご主人は。
ゆったりと結ばれた紺色のリボンに、白のブラウス。
紺のブレザーに、青とグレーのチェック柄のプリーツスカート。
  女子校生の制服って・・・男のひとでも着れるのよ♪
  ウフフ。これで化粧をすれば、できあがり♪
黒のワンピースが、まるで母親みたいに寄り添って。
ご主人のノーブルな面貌を、化粧の下に塗り込めてゆく。
理性を喪った少女は、やわらかにほほ笑みながら。
  似合う。お父さん。とってもよく似合うよ・・・
まだあどけない声色を、うつろに揺らせている。

血を抜かれたご主人は、陶然となって。
妖しの影に、問われるままに。
うつろな頷きを、くり返している。
  女装の愉しみ、もっと味わいたいでしょう?
  わたしたちの仲間に、なっていただけるわね?
ふたつの影は、邪悪な意図を化粧に隠しながら。
父娘ふたりに、にじり寄ってゆく。
黒のワンピースが、少女のほうを。
娘とおそろいの制服姿が、ご主人を。
からめ取るように、抱きすくめて。
うなじに唇を、あててゆく。
  お嬢さんのほうは、尽くしちゃダメよ。
  処女の生き血は、貴重品なんだから♪


つぎの夜。
女ふたりは、まだ薄ぼんやりと。
畳のうえに、へたり込むように、座りつづけていて。
その隣の部屋では。
鉛色の肌をしたご主人が。
うつろに天井を見あげていた。
昨晩から。なにひとつ変わっていない部屋を見て。
ふたつの影は、予期していたように。
目交ぜを交し合って、近づいてゆく。
  お出かけよ。早く用意をするのよ。
うつろな眼をした母娘は。
すこしだけ、血色の戻った首筋から、まだ血をしたたらせたまま。
娘は中学のときのセーラー服を。
母親は、授業参観のときに着ていく濃い紫のスーツを。
夫は、毒々しいほど色鮮やかな、ブラックフォーマル。
女の身なりになった三人の男性は。
母娘を取り巻くようにして。
暗くなりかけた街へと、さ迷い出ていった。

ぎゅうん。ぎゅううぅんん・・・
渦巻くような車の騒音のなか。
行き交う人々の目を、それとなく避けるようにして。
なぜか誰にも気づかれることもなく。
たどり着いたのは、街はずれの古びた邸。
黒衣に身を包んだ白髪の主は、女装のふたりを見ると。
  おや。雅子さんにミサエさん・・・
口にした名は、罪もない母娘のそれだった。
衣裳をまとうと、持ち主じしんに見えるのだろうか。
黒衣の主は、かわるがわる。
女装のふたりを抱き寄せて。
うなじに熱烈な、キスを重ねた。

奥さんも娘も。そしてご主人も。
血を吸われる女装のふたりを、声もなく見守って。
やがて、吸い寄せられるようにして。
まず、奥さんが。
それから、娘までもが。
黒衣の主に、抱かれてゆく。
ご主人は、妻や娘の後ろから、影のように寄り添って。
優しく手を伸べて、妻の、娘の、おとがいを、仰のけて。
男が妻や娘の血を吸いやすいように、手を添えてゆく。
黒衣の主が、妻と娘のうなじを、さも噛み心地よさそうに噛んでゆくのを。
くすぐったそうに、見つめながら。

黒衣の主は、ご主人をふり返り。
おまえはきょうから、わたしの執事。
もはや浮世のなりわいから、解放された身。
このまま、家には戻らずに。この邸に、住まうがよい。
命じられるままに、ご主人が頷くと。
  奥さんと娘さんの血を吸わせてくれたね。美味しかった。
ウフフフ・・・
黒衣の主も。女装の二人も。ご主人までも。
くぐもった笑いを、重ね合わせている。
  ご褒美だ。
  時おり自宅にも、通うがよい。
  妻も娘も、お前の牙に、喜んで貫かれることじゃろう。
  じゃが、そのまえに・・・
  わかっているね?^^
  きみが身に帯びている喪服に恥じないように。
  奥方の貞操の喪を、ともに祝おうではないか。
ふとかえりみると。
妻と娘は、薄目になって。
女装のふたりに、身をゆだねて。
黒衣の主にキスをされたうなじの傷を。
いちだんと深く、抉らせてしまっている。
かわるがわる。
獲物を取り替えあうふたつの影に。
黒衣の主は、目を細めて。
あのふたりも、いっとき男性に戻してやろうな。
ご主人は、諾、と応えるかわり。
無心になって。
己の脚をなまめかしく彩る黒のストッキングごし、掌を密着させて。
なぞるように、まさぐるように。
己の脚を愛で、その掌を、ふたりの脚にもあてがって。
薄墨色をしたストッキングを、ゆるやかにまさぐりながら、波立てていった。


あとがき
少女やその母親の血を吸って、衣裳を奪って。
奪った衣裳を身につけると、本人になりすますことができるようです。
少女や人妻になりすまして。
黒衣の主に抱かれていって。
そうすることで。
衣裳の持ち主たちをも、おなじ運命に導こうとする者たち。
深夜の街は、しばしば異形の影を宿すのでしょうか?

吸血占い

2007年07月24日(Tue) 07:39:05

妻を伴って訪れたのは。
昼なお暗く、夜はさらに闇にとざされる古びた邸。
ひっそり灯る街燈は、冷たい焔をゆらめかせて。
ただ無表情に、客人を迎え入れる。

よくあたる占いなんだよ。
顧る妻の頬は、いつもより蒼白く、はっきりとしたやつれをたたえている。
占いに頼るなんて。あなたらしくないわ。
気丈をとりつくろって応える声も、どこか痛々しさを秘めていて。
きみが何を悩んでいるのか。なにに苦しんでいるのか。
それとなく察しをつけているわたしにすら、たまらなく悩ましい。

いらっしゃい。
邸のあるじは、陰にこもった声色の持ち主で、
黒い影にわが身を封じ込めるように、いつも黒いマントをはおっている。
うわさどおりのいでたちに、心ひそかにほほ笑みながら。
妻を、占っていただきたいのです。
おうむ返しにかえってきたのは。
占ってもらいたいのは、お前自身でもあるのだろう?
声は、どこか共感を秘めていて。
わたしは思わず、頷いてしまっていた。

それではまず、奥方に・・・お前から手本を示すのだな。
どんなふうに占うのかって?
そう。彼は占う相手の血を吸いながら、相手のことを見とおすのだった。
ネクタイを取り去って、シャツをはだけたうなじのつけ根。
ちくりと刺すかすかな痛み---。
男は吸い取ったばかりのわたしの血を口許にあやしたまま。
ふむ・・・ふむ・・・
占ったことを、告げようともせずに、妻のほうへと向き直る。

なにを、占ってもらいたいのかな?
覆いかぶさるように立ちはだかる黒影に。
妻は魅せられたように目線を吸いつけながら。
あの・・・
ひとしきり、夫であるわたしを、はばかるように窺いながら。
震える声で、おそるおそる。
発せられたのは、奇妙な問い。
わたくしには、どんな色の沓下が似合うのでしょうか?
ふふん・・・
男は得意げに、鼻を鳴らして。
いい問いだ。
妻の真意を、知り尽くしたように頷くと。
脚をお出し。
請われるままに差し出された脚には、ひざ上までの真っ白なハイソックス。

いつの頃からだっただろう?
若い女の子が穿くような靴下を、妻がたしなむようになったのは。
そんな妻を、苦笑しながら見守ってきたわたし。
あるとき、フッ・・・と。
ほんとうに、ふっつりと。
妻は白のハイソックスを穿かなくなった。
どうしたの?
口に出すには、愚問すぎるだろう。
沓下の色といっしょに、恋する人を変えてきた女。
それが必ずしも、わたし以外の男性だったとしても。
なぜかそうした事実に胸を震わせ、心を昂ぶらせてしまっている、恥ずかしいわたし。

うふふふふふっ。
占うまえから、すべてを見通したように。
男はわたしのほうを、盗み見るように窺うと。
ご主人、それでは失敬するよ。
古風な言葉遣いとは、裏腹に。
ふくらはぎに噛みつく牙はワイルドに輝いて。
キュウッ!
押し殺すように響くのは、しつような吸血の音。
う・・・う・・・ん・・・っ。
妻は白眼を剥いて、ふらふらとその場に身を崩していった。

うふふ。うふふ。うふふふ・・・っ。
くすぐったそうな笑み声をあげるのは。
気失したはずの妻。
薄い唇の向こうから、白い歯をさらけ出し、
ブラウスのタイが揺れるほど、笑いこけているのに。
意識はまだ、深淵のなか。
つきものにとり憑かれたように。
唇からこぼれる言葉に、わたしは聞くともなしに聞き流してゆく。
男はわたしに、命じていた。
耳にしてもよい。ただし、すぐ忘れるように・・・と。

情夫(おとこ)がいたんです。
若い男なんです。
彼はわたくしの心を奪い尽くして。
淑やかに秘めてきたわたくしの貞節を。
むたいに辱めていったのです。
それが心から、心地よくて。
生涯の伴侶を裏切ることさえ、むしろ快感で。
そう・・・心から、悦んで。
わが身を戯れのための苛みに、ゆだねてしまっていたのです。
かぎりない愉悦を尽くしながら。
ひと刻燃えた、わたくしの恋。
主人はなにも、知らないと思います。
それはとっても愉しい、秘密の夢。
けれどもその男は、とても移り気で。
いつか・・・わたくし以外の女にも。影を寄り添わせていったのです。
それがわたくしには・・・どうしても赦せなくて。
女って、勝手な生き物ですね。
わたくしだって・・・夫を裏切る身ですのに。
けれども、どうしても、赦せなくって。
彼の気に入りの、白のハイソックスを棄てたのです。
そんなことで、主人はわたくしを、赦してくれるのでしょうか・・・?
なにも償っていない、わたし・・・

聞いたかね?
わたしをかえりみる男の目は。
嘲るように。憐れむように。
それでいて・・・どこか、敬いをこめて。
最愛の妻を、ほかの男の歓びに供する者よ。
おまえはつぎに、どんな色の沓下で、女の脚を彩るというのかね?
それは・・・わたしに訊かれても。

男は倒れ伏した妻の身体を、拾いあげるように抱き寄せて。
胸元のタイを、ほどこうともせずに、
うなじに唇を、這わせてゆく。
わたしのときには、ネクタイもワイシャツも、取り去っていったというのに。
まるでわざとのように、吸い取った血をしたたらせてゆく。
どうかね?妻を汚される気分は・・・?
妻の血のついた牙を、わたしは恐れ気もなくなぞりながら。
それでこそ。
たったひと言。応えている。
彼女の血が淫らに染まっても。
彼女じしんが、純粋に生きるのなら。
そして、わたしの許を離れまいとするのなら。
わたしはいつでも、彼女を受け入れよう。
彼女も。彼女の恋した男たちも・・・

支配されたいようだな。
半裸に剥かれた妻は。
いつ、穿きかえたのだろうか?
いつも脚に通している黒のストッキングを、
ひざ下までふしだらにずり下ろされて。
夫であるわたしの前。
スカートの奥深く秘めた貞操を。
占うものに、むさぼらせている。
薄手のナイロンの気品ある艶を、てかてかと淫靡によぎらせながら。
毒々しいぎらつきを帯びたストッキングに透ける脛は、どこまでも白く悩ましく、
ふしだらなのか。高貴なのか。
淑やかなのか。淫らなのか。
いや・・・女はそのどちらでもあるのだろう。

支配されていなければ・・・満足することができないのだな。
男はなおも、夫であるわたしの前。
これ見よがしに、妻をいたぶりながら。
妻は男の問いに、童女のようにこっくりと頷いている。
うふふふふふっ。
可愛い女だ。
そうは思わないか?ご主人・・・
男の問いに、わたしも深々と、頷き返している。
可愛い女。可愛い女。
きみは傷ついても。
その身を支配される主をさえ、見出すことができるのなら。
また、輝く女に戻るというのだね?
それがわたしではないことが・・・ほんの少し心残りなのだが。
けれども男の容赦ない声は。
わたしのことをも、指弾してくる。
きみもまた・・・支配されたい男なのだな?
自分自身も。そして最愛の妻をも・・・
さいしょにひと口、吸い取られたわたしの血は。
いまごろ彼のなかで、妻の血潮と交わっているのだろうか・・・

妻の穿くストッキングの色は、もうお決めになったのかな?
それとも夫であるわたしこそが、決めるべきものなのかね?
彼女の好きに任せるさ。
男はそう、うそぶくと。
こんどはいつ、来なさるかね?
奥さんの血は、うら若くて美味しい。
若くて美味しい刻にこそ。
女はたたえられるべきなのだよ。
影がスッと消えた、闇の奥。
妻を抱きとめるわたしも。
わたしの手を拒もうとしない妻も。
それをいつまでも、見つめつづけていた。

廃屋の少女

2007年07月24日(Tue) 07:03:48

どこをどうやって、たどってきたのだろう?
古びたタンス。
横倒しに寝そべったままの椅子。
蜘蛛の巣の張った台所。
もうなん年も人を寝かせたことのない寝台。
和やかな生活の名残を、いくばくかはとどめながら。
月影のさすその家は、窓の破れた廃屋。
外から射し込む、蒼白い月明かりは。
窓枠の影を、むき出しの壁に鮮やかに映している。

ふと立ち止まると。
廊下にポッと浮かぶ、人の気配。
こんなところに、まだ人がいたのか?
振り向いた目線の先で。
その少女はほのかな微笑をたたえていた。
真っ赤なベスト。
グレーのチェック柄のスカート。
ひざ下までおおう、真っ白なハイソックス。
胸元まである長い髪の毛をツインテールにした少女は、
口許にイタズラっぽい笑くぼを浮かべて、
ちょっぴり気恥ずかしげに、こちらを窺っている。

おじさま、血を吸うんでしょう?
かわいい唇から、白い歯を覗かせて。
少女は怖がりもせず、そう口にする。
よくわかるね・・・
重く沈みがちな声を、
そのいたいけな少女は、まるで姉が弟をいたわるように、ひきとって。
だって。牙が伸びてるもの。
うかつにも。
正体もあらわに、さ迷っていた俺。
いいわよ。あたしの血を吸って。
少女はゆったりと、ほほ笑みながら。
真っ白なハイソックスを、キュッとひざ下まで引き伸ばす。

真っ赤なベスト。グレーのチェック柄のスカート。
装いの下からむき出しにのぞく少女の肌は、どこまでも白く、
月影じたいが少女の容(かたち)をなしているかのようだった。
俺は真っ赤なベストの両肩に、ぐいっと重さを圧しつけていって。
いつか少女を、畳にまろばせてしまっている。

ちゅうっ・・・
深々と刺し入れた柔肌の奥。
思いやりに満ちた暖かい血液が。
俺の喉に、洩れるほどひかえめに忍び込んできて。
はぜるほどの渇きは、濃いうわぐすりをかけられたようにうるおされてゆく。
いつしか少女を抱く腕に力がこもり、
そしていつしか俺は、年端もいかない少女に、甘えるようにすがりついていた。

ウフフ。
姉が弟をいたわるように。
少女は、蒼白い頬に不思議な笑みをたたえて。
俺の所行を、気の毒そうに見守っている。
すまない。
深い後悔が、いつものように俺をさいなむころ。
しょうがないじゃない。だっておじさま、吸血鬼なんだもの。
少女はあどけない指先で、俺の尖った耳を撫で、
さっき自分の血を吸い取ったばかりの唇をなぞる。
人の生命を、とらないで。
みんな、一生けんめい、生きているのよ。
気がつくと。
俺の目は涙に濡れて、
少女の瞳も、また涙に翳っていた。
ギュッと抱き締めた腕のなか。
少女の幻は、溶けるように消えてゆく。

破れた窓から流れ込んでくる微風が、俺の頬を撫でてゆく。
たった今まで暖かかった、少女の掌のように。
また、逢いましょうね。
つらくなったら、いつでも呼んでね。
あたしでよかったら・・・遊び相手になってあげる。
どんなふうに、生命を終えたのだろうか。
きっと淋しく死んでいったであろう少女。
淋しさが、澱になって。
もとのままの容によみがえって。
おなじ心の持ち主を、慰めていったのだろうか。
ハハハ・・・
乾いた笑いが、廃屋の薄闇に吸い込まれていった。
夏の夜の夢は、正夢?
かつて少女の睡りを抱いたであろうベッドの柱を、いとおしげにさすると。
俺はまた、影と化してゆく。
今夜はだれも襲うまいと、心に決めて。

派遣社員の女

2007年07月22日(Sun) 11:34:25

はじめに
めちゃくちゃ、長くなりました。A^^;
実質上、三部作です。
そのつもりで、どうぞ。^^

1 派遣社員の女

その女と初めて出会ったのは。
勤めている事務所に、彼女が派遣社員として来たときだった。
齢は33。既婚。ひとつ年上の夫とのあいだに、男の子が一人。
無機質にインプットされた経歴が、もっとぬくもりのある血肉を通わせるようになるのに、そう時間はかからなかった。
彼女は太陽のように明るい性格だったから。
活き活きとした、気の強そうな黒い瞳。
キビキビとした、小気味良い立ち居振る舞い。
しっかり者で、それでいて情にもろいひと。
長い黒髪を、頭の後ろできりりと結いあげた首筋は。
私が吸血鬼ではなくとも、きっと魅了されたことだろう。
カンのよい彼女は、きっと私の好意にじゅうぶん気づいていたはずだったけれど。
あくまでも上司と部下の一線を越えようとは、決してしないのだった。

あるときのこと。
彼女の夫、という男性が、事務所に訪ねてきた。
隣接する隣の村からは。
車でも、一時間弱はあるはずなのに。
夜の十時をまわったころ、はじめて見る妻の勤め先に、彼女のご主人はきょろきょろと落ち着かない視線を配っていた。
妻が戻らないんです。
彼の表情は、気の毒なくらい憔悴していた。
いちど写真で見たことがある、彫りの深い男らしい面差しに。
思慮深さと思いやりの深さからくる翳りをよぎらせていた。
夫と息子がなによりも自慢な彼女は、いつも家族の写真を持ち歩いていて、
私にもそれを、見せたのだった。
そうすることで、あくまで一線を越えまいという意思を伝えるように。

妻想いの人なのだ。
話してすぐに、伝わってきた。
夫婦のあいだで通いあう、濃やかなものを。
そうした濃やかなものさえも、ほんのささいないさかいで、こうもこじれてしまうことも。
私はご主人と手分けして、彼女の立ち回りそうな場所に、片っ端からあたっていった。
彼女のご主人は、いいひとだった。
しんそこそう思い、好意さえ覚えていた。
こんな夜分に。お仕事のことでもないのに。ほんとうに、すみません。
正直に詫びるご主人をまえに。
どちらが詫びねばならないのか、ちょっとだけ自問自答したくなっていた。

彼女はすぐに、見つかった。
市内に住む独身の友だちの家で、一夜を明かしたのだった。
もちろん同性の。
だって彼女は、浮気とはほど遠いひとだったから。
ご主人は一睡もせずに、事務所に泊まり込み、
たまたま宿直だった私は、上司にも告げずにそれを許したのだった。
あくる朝、もじもじと決まり悪げに現れた彼女は、
ほんのふた言三言で、暖かい和解にたどり着いていた。
きょうは休んでいいですから。
憔悴していたのは、夫ばかりではないことに気づいた私は。
せめてそんな形で、彼女へのいたわりを投げてやった。
夜勤明け後もまる一日、私ひとりの勤務だった。
なにも知らないご主人が私に向かって丁寧に礼を言うのが、ひどくこそばゆかった。

お別れは、意外に早く来た。
短期契約の彼女のほうが、先だとばかり思っていた。
この街で育った私にとって、とても外への栄転など無縁だと思い込んでいたのだから。
ひなびた居酒屋でともにした、ふだんはまれな飲み食いのなか。
私は初めて彼女に、生まれは同じ村なのだ、と告げていた。
あら・・・
彼女はパッと目を輝かせて、
早く言ってくれればよかったのに・・・
なぜかそんなことばを、口にした。
時間が経つにつれ、ひとりふたりと席を立ち、
宴の席はたちまちひっそりとなって、
残ったのは、彼女一人になっていた。
今夜・・・泊めていただけますか?
予期しない言葉が、引き結ばれた薄い唇から洩らされたとき。
私は青年のように、ドキドキ胸をはずませていた。

主人は、出張なんです。
息子は、実家にあずけてきました。
その夜彼女が身につけていたのは、私が密かに好んでいた黒一色のスーツ。
足許を彩る薄手の黒のストッキングは、いつになくツヤツヤとしたてかりを帯びていて。
貞淑妻を一夜だけ、娼婦に変えようとしている。
私たちは居酒屋を出ると、恋人のように細い肩を抱きながら。
淋しげな灯をあげている古ぼけたホテルへと足を運んでいた。

血を・・・吸って。
ひたと見つめる瞳に、張りつめた輝きをたたえながら。
彼女はそういって、黒いブラウスのタイをほどいていた。
さらけ出された胸元は、眩いほどの白い皮膚におおわれていて。
かすかに透ける青白い静脈は、レエスのついた黒のスリップの下へと忍び込んでいる。
じゃ・・・咬むよ。
ええ・・・
さすがにまつ毛を震わせながら。
血を吸い終えるまで、気丈にも目は見開いたままだった。

初めて味わった、人妻の生き血。
うら若い血潮の余韻を心地よく喉におぼえながら。
波打つ細い肩を、つかまえて。
ぐっ・・・と、重みをかけていった。
不埒にすりつく中年男の胸を、わが身をへだてようとする細い腕は、
にわかにぐったりと力をなくして。
あとは思うまま、ブラウスのうえから、スカートのうえから。
乳房や太ももを、まさぐりつづけていった。
互いに敬愛しあっていた。
互いに信用しあっていた。
そうした理性的な感情のいっさいを、ほんのひと刻ふり捨てて。
オスとメスとに、堕ちていって。
不覚にも。
想いのありったけをこめて突き刺したものを、引き抜くいとまもなく。
私はすべてを彼女の秘奥にまで、ほとばしらせてしまっていた。

ウン。ウン。わたしはだいじょうぶ・・・
あ。それと・・・。中まで濡らされちゃったから。
傍らのベッドに座り込んだまま。
すがるように耳に当てた携帯で。
白い顔を、かすかにうつむけながら。
囁くような、ちいさな声で。
彼女は夫に、不貞を告げている。
髪を振り乱したまま、おもてをあげて。
代わっていただけます?
切り口上に差し出された携帯を。
私は躊躇しながらも、受け取っていた。
耳に響いてきたのは、思いのほか暖かな声だった。
あ。○○課長さんですか。先だっては妻のことでご厄介になりました。
あぁ、イエ。それは・・・
さすがにしどろもどろになる私のを横目に。
彼女はイタズラっぽく、くすっと笑って、肩をすくめた。

知っていたんです。
妻のことをずっと、好きだったんですよね?
あのとき親身になって、妻を捜してくれたとき。
ほんとうは・・・貴方がかくまっているのでは?って、邪推していたのですよ。
けれども貴方は一線を守っていらして。
それに、親身になって、妻を捜してくれました。
うちの村は、古風な村でして。
いちど嫁に入ったら、浮気は絶対にご法度なのですよ。
女たちが、どうしても浮気をしたくなったなら。
村の外にでてするしか、ないのです。
わたしの母も・・・浮気をするときには。
着飾って、そちらの街まで出かけていったものでした。
貴方もとっくに、お気づきでしょうが。
妻は、見かけよりも繊細な女です。
貴方とわたしを、使い分けて。
職場の顔と、家庭の顔と。
ふたつながら、あわせ持つことで。
じぶんというバランスを、危うく保っていたのです。
心酔していた貴方がいなくなるのは・・・貴方だけではなくて。
妻にとっても、痛手なのです。
今夜は好きにしなさい・・・わたしのほうから、そう言いました。
可愛い妻です。わざわざ電話をかけてくるなんて・・・


2 村から来た養女

その少女は、かつてつかの間愛し合った人妻の娘。
おなじ事務所で働いていて、さいごの夜にいちどだけ契ったひと。
思いのほかに、深い契りだった。
私はそれからとうとう結婚することもなく。
頭には白髪の交じる齢になっている。
半吸血鬼は、人とおなじように齢を重ね、人とおなじように死んでゆく。
許してくれた人だけが知る、吸血癖は。
まだまだひどく、さかんである。

村から訪ねてくる、夫婦連れ。兄妹。姉妹。母親と娘。
吸われすぎたら大変・・・というのだろうか。
かならずいつも、2、3人連れだってやってくる。
多くは家族連れなので。
夫は妻が、娘は母親が肌を侵されるところを。
ドキドキかいま見ていたりすることもある。
都会住まいが長くなると。
いっしょに働いている人たちのなかにも、善意のひとがあらわれるようになって。
夕べは懇意の部下が、婚約者を連れて現れて。
ちょっと・・・プレイを愉しみませんか?^^
いまどきのカップルにとって。
パートナーが抱かれるのを覗き見することさえ、プレイのように愉しむことのできるものなのだろうか。
婚約者の娘さんは、さすがに処女ではなかったけれど。
縛られながらズキズキ見守る青年のまえ、
ぷよぷよと柔らかい肌を、ぞんぶんに愉しんでしまったのだった。

そんな私のところへ届いた、一通の封書。
都会住まいをする娘のことが気がかりなので、貴方にたくしたい。
そんな事務的な文面だった。
娘がどこの学校に行くのかも、どんな進路を夢見ているのかも、そこには何も書かれていない。
お気遣いをなさる貴方のことだから。
親よりも深く、本人からお聞きになるのでしょう?
ひさしぶりに、悪戯っぽい彼女の笑みが、活き活きと脳裏によみがえった。
村から来る人が絶えないなか。
とうとういちどとして、現れることのなかったひと・・・

初めて見る少女は、両親も連れずに、たったひとりで現れた。
約束した改札口で、写真を頼りにやっと見つけ出して。
よく来たね、と声をかけたのに。
少女はかたくなに、むっつりと押し黙っていて。
濃紺のジャンパースカートの制服を、まるで自分の殻を護る鎧のように着こなしていて。
ただいちどだけ、じつにぶきっちょに、頭を下げただけだった。
母親の才気とも、父親のぬくもりとも、遠いひとのように見えた。
家に連れて帰る道々も、ひどくもの静かで。
こちらが戸惑うほど、沈黙を守りつづけていた。
明日は学校に行きますので・・・
冷えた口調を事務的に響かせて。
少女は私があてがった一室に、そそくさと消えていった。

会話ひとつない夕餉のあと。
少女がふたたび自室に引き取ると。
私もその場からのがれるように、書斎へと引きあげた。
読みさしの本のページを繰りながら。
思わずため息してしまった私。
彼女に電話をかけねば・・・と思いながら。
それさえも、おっくうで。
初恋の人としいて再会すると、多くの場合幻滅する。
そんな想いにさえ、囚われていた。

しばらくして。
コツ、コツ・・・
遠慮がちにノックされた、書斎の扉。
どうぞ。
席を立ってドアを開ける手間を惜しんで、声だけ投げると。
ギイ・・・
ゆっくり開かれた扉が、重たいきしみを響かせた。
夕餉のときには、もうとっくにパジャマに着替えていたはずなのに。
ドアの向こうから顔を覗かせた少女は、きちんと学校の制服を身につけていた。

昼間に着ていたジャンパースカートではない。
真新しいセーラー服は、春から着るものなのだろうか。
濃紺の襟首を走るのは、こげ茶色の細いライン。
おなじ色のスカーフは、活き活きとした光沢をたたえている。
昼間、駅にあらわれたとき、
白無地のハイソックスを、まるでサポーターみたいにそっけなく履いていた脚には、
薄っすらとなまめかしい、黒のストッキング。
しなやかなナイロンは、濃淡織り交ぜた翳りを帯びて、少女の脚の大人びた起伏を浮き彫りにしている。
母に、いわれました。
血を吸われるときには、寝室でお迎えするよりも・・・じぶんから訪ねていきなさいって。
それまで抱えつづけてきた張りつめたものが解けたのか、
少女は初めて、無表情だった貌を初々しい涙に潤わせた。

怖い・・・かな?
いえ・・・
少女は目をそむけたまま、うなじに重ねてゆく唇を、真正面から受け止めてゆく。
気丈な血は、この子にも伝わっているのか・・・
血を吸い終えるまで、はっきりと目を見開いたまま。
初めての痛みが走るとき、かすかに身じろぎをしただけだった。
吸いそめた血潮が、喉にぬるりと流れ込んだとき。
私は思わず、ハッとする。
おなじ血の香り・・・
それは彼女と私自身の血の、あきらかなブレンドだった。
犯すときは・・・古い制服を着させてください。
想い出のある服なので。
少女はそれだけ言い終えると、初めて恥ずかしそうに目を瞑った。

毎晩のように。
女学生を襲う愉しみに酔い痴れて。
血のつながったわが娘と知りながら。
禁じられた愉しみに、浸りぬいてしまっている。
こうなることを、知りながら。
彼女はこの娘を、送り出したのだろうか?
ジャンパースカートを着せたのは、一学期がおわるころだった。
古ぼけてややてかりを持った制服のスカートのなか。
思うさまそそぎ入れたものを、
少女はいっしんに、うけとめて。
伸びやかに柔らかい肉ひだの奥、まるで砂地にしみ込む水のように含ませていた。
脱いだスカートの裏地をめくって、それが初めての血に浸されているのをみとめると。
少女は初めて、これで母とおなじになれました、と。
可憐な笑みに、満面を彩っていた。

夏服になっても、古風な黒のストッキングを履きつづけた少女は、
やがて気の許せるクラスメイトを、家に連れてくるようになった。
そう、もちろん。私に襲わせるために・・・
心優しい女学生たちは、
あるひとは、笑くぼを滲ませながら。
あるひとは、深く恥らいながら。
三つ編みのおさげをかきのけて、まだ生硬なうなじを飢えた唇に吸わせ、
ストッキングやハイソックスを履いたままのふくらはぎを、惜しげもなく咬ませてくれた。
嬉々として身をゆだねるクラスメイトを目の当たりに、
少女はわがことのように嬉しげに、くすくす笑いながら。
じぶんもまた、凌辱の宴に加わるのだった。


3 許婚者

兄が、訪ねてくるそうです。
少女は無表情に、母からの手紙を差し出した。
この秋に結婚するという、彼女の長男。
そう、いっしょに働いていたころには、まだほんの坊やだった。
彼がもう、一人前の男になったのか。
彼女の心優しいご主人も、いまはきっと穏やかに老けて、
ごま塩頭を撫でながら、あの人の良さそうな照れ笑いを浮かべているのだろうか。
息子は夫との間の子だったが。
娘は私との一夜の契りでもうけた子。
どちらも彼女にとって、最愛の子どもたち。
いったいなにを、させようと目論んでいるのだろう?

久しぶりに顔をあわせた彼女の息子は、好青年に育っていた。
いっしょに現れた婚約者の娘さんも、初々しいなかに大人の気品をたたえていて、
いくつか年下になる少女とも、すぐに打ち解けたようすだった。
活き活きとした瞳。キビキビとした身のこなし。
息子は、母と同じような女性を選ぶものだろうか。

父は・・・母との一夜を、あなたにお許ししたそうですね。
思い切ったように口を切った青年は。
睨むように見あげてくる妹の目線を、愉しそうに見返して。
ボクが言い出さなかったら、きっときみが彼女のことを誘い出したのだろうね?
そうだ、いっそ、そうさせてあげようか。
青年はそうひとり決めをすると、語りはじめた。
ほんのりと含羞を浮かべた頬が、むしろ可憐だった。

母に言われたんです。
この村の嫁たちは、浮気をする自由を持ちません。
けれども、女の血は、熱いものです。
男の血と、おなじくらい。
ですからもしも嫁にする女(ひと)が、人一倍熱い血の持ち主ならば。
いちどは、許してあげなさい。
そして、いちどだけにおさせなさい。
お相手も、きちんとしたひとを。あなた自身でえらんであげなさい。
真っ先に思い浮かんだのが、貴方です。
父が、最愛の母を許した相手。
母が、父いがいにただひとり愛したひと。

さいごのひと言を耳にして・・・私は人目も憚らず、顔じゅう涙を散らしていた。

あの娘さん、私にすこし、似ていなくて?
きりっとしていて。情が深くて。かわいくて・・・
そういう女(ひと)に、悪い道を歩ませることはできないですよね?
青年のまえ、処女を奪ってしまうことが。
果たしてよい道につながるのだろうか?
うなじに押し当てた唇に、じかに伝わってくる彼女の震え。
私はおもむろに彼女の白いスカートをめくりあげ、
ストッキングをずりおろしてゆく。

脱がされたストッキングは、ぬらぬらとした粘液を光らせていて。
ほとばせた本人すら、気恥ずかしくなるほどに、
あからさまな劣情をたぎらせていた。
濡らされちゃった・・・
恥じらいもあらわに、可憐な涙を流すひとを。
青年はまめまめしく身を添わせ、心地よい安らぎへといざなってゆく。
いい夫婦になるだろう。
そして、そうなる日まで、ふたりだけの秘密にしておこう。
さも、それらしく、腰を振って、揺さぶって。
ほんとうに悩乱させてしまうほど、白い肌をいたぶり抜いてしまったものの。
ほんとうの、さいごの一線だけは。
とうとう越えずに、けなげな彼のために取っておいたのだ。
初夜を迎えて、彼は驚くだろうか?歓ぶだろうか?
案外。
わたしの嫁は、かわいくありませんでしたか?
って、憤然として。
今夜みたいに、夫婦ながら押しかけはしないだろうか?

ラブホテル

2007年07月22日(Sun) 08:21:16

パパはラブホテルに行ったことがないけれど、
ママはラブホテルに行ったことがあるらしい。
と、いうことは・・・
ママがパパ以外の男のひととつきあったのは。
結婚するまえのこと?
それとも、結婚してから?
案外、ボクが生まれたあとのこと?

花嫁さんは処女じゃなければいけなかったのは、昔のことだというけれど。
ママの時代って・・・どうだったんだろう?
パパに訊いたら、さすがに苦笑いして。
そんなこと、パパに訊くのはどうかな?って。
なんのヒントももらえなかった。
思い切って、ママに聞いてみた。
ねぇ。ラブホテルって、どんなとこ?

ママはゆったりと、微笑んで。
そうね。あなたももう、識っておいたほうが良いお年頃ね。
あそこはね。
女のひとと男のひととが、いい夢を結ぶ、秘密の花園。
人目を忍ぶ関係のほうが。
こっそり愉しむ愉しみを、うんと愉しむことができる場所・・・
ママはいつになく、考え深げな面差しをして。
遠い目線は、庭のほうに向けられていたけれど。
咲き乱れている真っ赤なバラを見ていたのだろうか?
それともまったくべつの、過去の幻を見ていたのだろうか?

御覧なさい。お祖母さまよ。
まだ、お若いでしょう?
姑の写真を、いとも愉しげになぶりながら。
ママは遠い夢を追っている。
セピア色の写真のなか、嫁と姑とは仲睦まじげに、並んで立っていた。
ママは華やかな色づかいのスーツ姿。
お祖母さまは正反対に、黒づくめの礼服姿。
ふたり申し合わせたように脚に通した黒のストッキングだけは。
お祖母さまのほっそりとノーブルな足許も。
ママの健康そうなむっちり脚も。
薄っすらと妖しい艶に彩っている。

お祖父さまが、いらっしゃらなくなってから。
わたくしがお連れしたのよ。
お祖母さまは、昔かたぎで、貞淑でいらしたから。
一周忌を迎えて、ようやく思いきってくださったのよ。
ママは自慢そうに、愉しそうに。
じぶんの情夫にお祖母さまの相手をさせて。
美しい未亡人の淑徳を、不倫の渦に堕としたてんまつを語るのだった。
まだお若かったから。もったいなかったのよ。
一日でも早く、堕として差し上げたかったのよ。
それからは。
わたくしもお祖母さまのお咎めなしで。
ときには嫁姑で、連れだって。
お出かけするようになったわ。真夜中に。
そう。
ボクがたしか、中学生のころだったっけ。
ママがいそいそと、黒のストッキングを履いて。
真夜中にドアの音をしのばせるようになったのは。

まなみちゃんをホテルに連れて行ったのは、
あの子が高校にあがったころだったかしら。
ママが口にした姉さんの名が。
濃いルージュのすき間から、甘美な響きを帯びている。
まなみちゃん、初めてだったのよ。
それでもママの彼氏のおかげで・・・いちころだったの。
いまはもう、結婚しているまなみ姉さんは。
いまでもときどき、義兄さんにことわって、ラブホテルに通っている、という。
姉さんにべた惚れの義兄さんは。そんな姉さんをとがめもせずに。
こんど、覗いてみたいな、だなんて。
嘘とも本気ともつかない口調で戯れているらしい。
ママはちょっぴり、目線をとがらせて。
吸血鬼さん。若いひとが好きなのよね。
あの子、わたしに似てグラマーだし。
脅威だわ。
くすっ、と。うわべは、笑みながら。
ボクをひたと見すえる黒い瞳が。
さっきから、妖しい輝きをよぎらせている。

さっきから。
どき、どき、どき、どき・・・
胸の鼓動がはずんでいるのは。
きっと・・・きっと・・・。そう。きっと。
次に出されるのは、貴美さんのもののはずだから。
秋には、ボクと結婚することになっている貴美さんは。
ママの同級生の娘さんだった。
そんなボクの様子を、面白そうに窺いながら。
順を踏んで・・・という顔つきでママが差し出したのは、貴美さんのお母さんの写真だった。
麻美とは、学生時代から。
お互いの彼氏とラブホテルに通う仲だったのよ。
でも、わたしの彼氏にかかったら。
ほーら。
ベッドのうえ、抱きすくめられたスーツ姿の麻美さんは、
うっとりとなったまま。
彼氏というひとに噛まれた痕を、唾液と血潮に妖しく光らせていて。
麻美さんの上、得意げに笑んだ口許からは。
バラ色のしたたりがひとすじ、白い肌を濡らしていた。

もうお写真は、おしまいよ。
ママは面白そうに、ボクの顔色をうかがいながら。
秋までに、済ませないとね。
えっ、なにを?
見え透いた問いを、かるく受け流しながら。
だってあなた・・・昂奮してたじゃない。
刺すような目線に、痺れたように射すくめられて。
ボクはあいまいに、頷き返してしまっていた。
貴美さん、まじめなかただから。
まだきっと、処女のはずよ。
あのひとも、処女の生き血がお好きだから。
さいしょにあなたの姉さんを引き合わせて。
そのとき、約束したのよ。
息子にお嫁入りするお嬢さんのことも、必ずお連れしますからね・・・って。


あとがき
結婚前からつきあっている吸血鬼な愛人のために。
まず、親友を。
さらに、姑を。
それから、まな娘までも。
つぎつぎと、ラブホテルに連れていって。
さいごの狙いは・・・そう。息子の許婚だったのですね。^^

女学生の受難

2007年07月21日(Sat) 10:22:31

学校からのかえり道。
16歳の女学生まりあは、公園の芝生をゆっくりと横切っていきました。
入学したばかりの真新しい制服を、そよ風になびかせて。
ふと気がつくと。
だれかがじいっ・・・と、まりあのことを見つめているようです。
せつじつに迫った視線です。
そんな視線。
一人前の娘なら、だれだってたびたび受けているはず。
道行く大人たちのそんな視線に、ウブだったまりあもようやく一人前の娘らしく、慣れはじめてきたこのごろです。
黒のストッキングを履くようになってから、見違えるほど大人びてきたまりあの肢体。
注がれる目線に、さいしょは戸惑い、そのうち慣れて、やがては見せつけるような挑発に走るようになるのですが。
良い子のまりあは、まだまだそんなおイタを知りません。
けれどもきょうはほんのちょっと、悪い子になっているのかもしれません。
だって。
夕暮れ刻になってからは。
乙女は決して通ってはならない。
そういわれた公園を。
もうそろそろ薄暗くなりかけようという刻限に、横切ろうとしているのですから。
そう。
その公園は、密かにこう呼ばれていたのです。
お嫁に行けなくなる公園・・・と。

女学生まりあは良い子なので、そんな公園には近寄りません。
けれどもきょうは、クラブ活動が遅くなって、塾に遅れてしまいそうになったので。
つい、近道をしてしまったのです。
注がれる視線は、どんな大人よりも熱くて濃くて。
おぼこ娘のまりあにも、それがただならぬ人からの視線だと、容易に感じることができました。
びくっ、と。
黒ストッキングの脚が、震えます。
だって。
ほら、目のまえに・・・
妖しい黒い影がむくむくと、わき出るように現れたではありませんか。

逃げてもむだだよ、お嬢ちゃん。
影はむしろやさしく、まりあのことを呼び止めます。
はっ、はい・・・
まりあはもう、すっかりすくみあがってしまって、声もろくろく出てきません。
わたしがどんな生き物だか、きみにはよくわかっているね?
はっ、はい・・・
わたしがきみに、どうしてもらいたいかも、わかっているね?
は・・・はい・・・
では、首筋を噛ませておくれ。
あっ・・・は・・・はい・・・っ。
決して言ってはならないのです。「はい」だなんて。
禁じられていた言葉をつい、口にしてしまったまりあ。
いよいよ男が近寄ってくると、すくみあがってしまって、声も出ないでいるのです。

男はまりあの両肩を抑えつけるようにしてベンチに座らせると。
まりあはわなわなと震えながら、哀願を始めます。
お願い、やめて。おうちに帰して・・・
うふふふふっ。
あまりにもかわいらしいまりあの怯えように、影はにんまりとほくそ笑むと。
お嬢ちゃん。聞き分けよくしないと、いけないよ。
わたしは吸血鬼。
若い女の子の生き血が、なによりも好物なんだ。
わかってくれるね?
だからきみは、このきれいな身体のすみずみにめぐっているうら若い血を、
ほんの少しだけ、わたしに分けてくれなければならないのだよ。
それがこの公園の、通行税。
あとは・・・もうわかっているね?
この公園が、なんて呼ばれているのかも・・・

嫌。厭。イヤよ、わたし。血を吸われるだなんて。
なにもしないで、おうちへ帰して。
まりあはもうすっかり震えあがってしまって、それでも血を吸われまいと、けんめいに哀願を繰り返します。
吸血鬼のおじさまは、そんなまりあの長い髪をやさしく撫でながら。
聞き分けのないお嬢ちゃんだね。
気の毒だが、そうはいかないよ。
せっかく、おいしそうな血をやどしているんだもの。
きみは、わたしにとっておいしい獲物。
逃してはならない、たいせつなひと。
たっぷり噛んで、生き血を吸い取らせてもらわなくちゃね。
なぁに。痛いのは、さいしょだけ。
ほんの少し、おじさまを慰めてくれれば。
そのうち慣れて、心地よくなってくるものなのだよ。
ぶじにおうちに帰りたかったら。
おじさまと仲良く愉しんだほうが、お悧巧さんというものだよ。
どこの家の娘さんも、ここを通りかかったら。
みぃんな、そうして。わたしと仲良しになってくれるのだから。
初めのうちは、怖かろう。
よし、よし。安心おし。とくべつに、手加減してあげるから。
あまり痛くないように、噛んであげるよ。

吸血鬼のおじさまの、あまりの言い草に。
まりあは涙も涸れんばかりに、許して、やめて・・・とかき口説いていたのですが。
やがて暗くなりかけた公園のベンチのうえ、
きゃあ・・・っ。
悲痛な呻きがただひと声、だれもいない公園の薄闇に、こだましたのでした。

ちぅちぅ・・・きぅきぅ・・・
おじさまは、それは美味しそうに、まりあの血を吸い取ってゆきます。
まりあはすっかり夢見心地になっていて。
それでもまだ、哀願をくり返していましたが。
お願いの内容は、すこしずつ違うものになっていきました。
おじさま、許して。痛くしないで・・・
お願い、吸い尽くしたりなさらないで。
おうちに帰してくれるって、お約束してくれたなら。
わたし、おじさまと仲良しになってあげる。
吸血鬼のおじさまは、とても嬉しそうな顔をして。
さっき噛みついたときの、無慈悲な強引さとは裏腹に。
まりあの長い髪を、優しくなでてくれました。
それから、まりあの制服のスカートをちょっとめくると、脚を吸いたい、とおねだりをしました。
え?じゃあ、ストッキングを脱がないと・・・
まりあが戸惑うようにしながらも、太ももまでのストッキングをひき下ろそうとすると。
おじさまはまりあの手の甲を静かに抑えて。
そのままで良い。
ひと言囁くと。
訝しそうにしているまりあに、ふふ・・・と笑いかけて。
笑みを浮かべたままの唇を、黒のストッキングの上から、じわり・・・と吸いつけてゆきました。
ぬるぬるとした唇が、まるでヒルみたいに、ストッキングごしに這い回るのを。
まりあはわなわな震えながら、ただ見守っているばかり。
オトナっぽい感じのするストッキングは、まりあのお気に入りだったのですが、
いまはおじさまに、いいようになぶられてしまっているのです。
おじさまは、こうしたあしらいに慣れているのか、
まりあのストッキングの舌触りを愉しむようにして、べろをさんざんふるいつけて、
薄くてなよなよとしたナイロンを、さりさりと波立てると、
おもむろに、ぐい・・・っ、と、噛みついてきたのです。
びちちっ。
かすかな音をたてて、薄手のナイロンが噛み破られます。
他愛なくちりちりと広がってゆく伝線を、いまはまりあも面白そうに見つめるばかり。
うふふふふっ。
初々しい少女の血管にそそぎ込んでやった毒液の効き目に、満足そうにほくそ笑みながら。
おじさまは、ちゅうっ・・・と、まりあの血を吸い上げたのです。

ベンチのうえ。
まりあはまだ、囁きつづけています。
いけないおじさま。
ひどいいたずらを、なさるんですね・・・
でも、かまわないわ。
おじさまが、愉しいのなら。
これからも夜の公園に遊びに来て、
黒のストッキング、イタズラさせてあげるから。
それともこんど来るときは、白のハイソックスがいいかしら?
ふ。ふ。ふ。
かわいいねぇ。まりあ。
いい心がけだ。
白のハイソックスも、愉しませていただくよ。
きみの血で真っ赤になるまで、いたぶってあげるから。
お礼にきみを、処女のままここから出してあげよう。
そのかわり、週に三日は、かならず公園を横切って。
清楚な制服姿で、おじさまを誘惑するのだよ。
いつまでも、いい子にしておいで。
きみの処女は、きみがいちばんかわゆらしくなるころまで、取っておいて。
そのうちおじさまが、奪ってあげるから。
まだ制服を着ているうちに、犯してあげるから。
そのときは・・・黒のストッキングを、忘れずにね。


なん年も経ったころ。
おなじベンチのうえ。
OLになったまりあは、ウェーブさせた髪を肩先に揺らしながら。
吸血鬼のおじさま相手に、素肌を妖しく覗かせていました。
巧みにくねる脚にまとわれた、無地の黒ストッキングは、
あのころの通学用の黒ストッキングよりも、グッとひきたつなまめかしい光沢に彩られていて。
吸血鬼のおじさまの悪戯心を、いやがうえにもかきたてていました。
先週の網タイツと、おとといのダイヤ柄と。
どれがいちばん、お気に召して?
夢見心地で問うまりあに、
この無地の薄々が、素敵だね。
なおもぬるりと、唇を這わせてきます。
えっち。
まりあはくすぐったそうに、肩をすくめながら。
今夜もうら若い血を、たっぷりと。
ちょっぴり自慢げに、舐めさせてあげるのでした。
おじさまの手で、初めて女にしてもらえたお礼をこめて・・・

まだ・・・お仕事中なの。

2007年07月21日(Sat) 07:11:53

鉄筋コンクリートの城のなか。
こうこうと輝く照明。明るく照り返す壁。濡れたようにてかりをおびた床。
そんな空間で。
まりあはコツコツと、ハイヒールの音を響かせて。
きょうもオフィスのなか、颯爽と背筋を伸ばして、闊歩する。

たどり着いたのは、階段の踊り場。
ここだけは。
城がその妖しい本性を暴露するかのように、
無機質なコンクリートがむき出しの壁。
後ろから、肩をつかまれて。
まりあは、あぁ・・・と、悩ましいうめきを洩らしている。
ピンクのタイトスカートの下は、濃艶な黒のストッキング。
背後から這わされた手は、薄手のナイロンの手触りを愉しむように、
じっとりと、いやらしく、吸いつけられたように密着しつづけてながら。
じょじょに、さりげなく、上へ・・・と、なぞるようにせり上がってゆく。

スカートの奥をめざしているのだと、まりあはとっくに察しをつけながら。
それでも己を支配しようとする手を、指を。
どうすることもできないままに。
階段の手すりを、しっかりと捕まえながら、
転ぶまいとして、脚を突っ張りつづけていた。
手、だけじゃない。
唇も、唇からチロチロ洩れる舌も。
まりあの素肌に、欲情している。
薄いナイロンごし、じっとりとした唇が、まるで軟体動物のようなナマナマしさで。
ぬめるように這わされながら。
まりあは身体の芯が熱く濡れてくるのを。
心臓がはぜるような躍動にはずむのを。
ひざをガクガク震わせながら、耐えている。

うふふふふふっ。
ガマン・・・することはない。じきに済む。お前はただ、愉しめばよい。
くぐもった声に、聞き入りながら。
そんなのダメよ・・・
そんな口先だけの抗弁を。
声は嘲るようにもてあそびながら。
女の身体の線をなぞるようにして。
肩先を、胸を、うなじを・・・
いやらしい手で、じっくりと。
たくみなまさぐりは、まるで毒液をしみ込ませていくように、
まりあをじわじわと支配してゆく。

あっ、ダメ・・・
キュッとつぶった瞳。
かすかにふるえるまつ毛。
ダメ、ダメ・・・
影はおなじ言葉を、正反対の内容に変えて呟きながら。
女を惑わすまさぐりを、まだ止めようとしていない。
お仕事中・・・なんですっ。
やっとの思いで発した言葉に。
それがわたしと、どういう関係があるのかね?
影はまりあの耳もとに、
うふふふふふっ。
人のわるい笑いをそそぎ込んでやっている。

ストッキング、破るよ。いいね?
あっ、そんな・・・
まだ、お仕事中なの。
くくくくくっ。
まだそんなことを、言っている。
美味しそうな脚だ。ぞんぶんに、愉しんじゃうからね。^^
影は臆面もなく、唇をぬめらせていって。
よだれ、光っているよ。お嬢さん。
こんななりをして、オフィスを歩く勇気があるのかな?
ストッキングのうえ、泡立つほどになすりつけた唾液を。
じわりじわりと、指で広げて。
清楚な黒ストッキングに、妖しい翳りを重ねてゆく。
あっ、ダメ・・・許して。
まりあの哀願には、耳も貸さずに。
影は人のいない小部屋に、しなやかな肢体の持ち主を抱き込んでいた。

あっ・・・ウッ・・・
オフィスレディさん。ここでわたしの支配を受けるのだよ。
どうだね?こういう愉しい業務は、厭ではないのだろう?
嫌。厭。イヤ・・・ッ。
女の拒みが、心にもないものだと知り尽くしているのだろう。
影はまりあに、おおいかぶさるようにして抱きつきながら。
ブラウスの上。襟首のなか。
スカートのなか。ショーツの奥。
虐めるように、さいなむように。
そして、いとおしむように。
すべすべとした肌を、なぞってゆく。

さらりと乾いた皮膚は、いつか妖しいうわぐすりのような汗を滲ませて。
男の唇に吸われるたび、バラ色を深く、秘めていって。
ひとしきり、服の上からの愛撫がつづくと。
もう、耐え切れない・・・っ!と言わんばかりに。
大胆にも、じぶんのほうから、オフィスの装いを解いてゆく。
セイセイと息づく肌。
性急に巻かれる腕。
見慣れたオフィスの無機質なたたずまいが、
極彩色に変わってゆく。

たっぷりとした胸に、揉みしごくほど強引なまさぐりを埋められて。
逆立った太い肉を、スカートの奥に侵入させられて。
あん、あん、あん・・・っ。
ドア越しに、男子社員たちの好奇にそばだった耳があるかもしれないのに。
半開きになったままのすき間から、じわじわとした目線が忍び込んできているかもしれないのに。
まりあはもう、一匹のメスになって。
しつらえられたソファを、褥がわりに。
限られた空間に、身を縮こまらせて、屈折させて。
そのぶんよけいに満ちてくる熱情を、オフィススーツの奥の奥まで、ほてらせてしまっている。

太ももを横切るレエスが、ちょっとずり落ちて。
軽く波立ったストッキングは、淫靡な輝きをふしだらにぎらつかせて。
メタリックなまでに輝く薄手のナイロンの向こうには、ピンク色に染められた肌。
踊るような妖しいくねりにはずむ、バラ色の血潮。
さぁ、淫らに染まった血を愉しませてもらおう。
うなじの肉に、滲ませるように埋め込まれる牙に。
まりあは、眉を寄せて、快感に耐えていた。

身づくろいをするまりあの後ろにまわって。
まりあの足許で、わざと下品に、クンクンと鼻をひくつかせて。
まだ、未練げに、ストッキングの上から、脚線をなぞっている。
もう・・・
苛立たしげに足許を振り返ったまりあは。
欲しいんなら、あげるわよ。いま穿いているストッキング。
振り切るように、男を睨むと。
男はまりあの首筋に、わざと熱い息を吹きかけながら。
じゃあ・・・穿いて帰ろうかな?
たちのわるい囁きに、まりあはクスッと笑み返して。
ひざ上までのストッキングを、ふくらはぎからつま先へとすべらせてゆく。

自分の脚をなまめかしく彩っていた薄手のナイロンが。
淡い体毛を帯びた男の脛に、まとわれてゆくのを。
まりあはウキウキと、眺めていて。
自分にはすこしサイズの小さめなストッキングが、ぴっちりと束縛するように締めつけてくるのを。
男は心地よく感じていた。
じゃ。
ええ。
また、夜に・・・
ええっ?
脚すくませるまりあを、小気味よげに見返して。
つぎの瞬間、影は跡形もなく、消えていた。

まりあのいる街

2007年07月21日(Sat) 06:34:24

血が、欲しい。血が・・・欲しい・・・
はぜるほどの喉の渇きが、今夜も俺をさいなんでいた。
人の行き交う、夕暮れ刻。
笑いさざめきながら通り過ぎる家族連れ。
ダンナをたぶらかし、それから奥さんを。そして娘を・・・
そんな妄想が、妄想だけにおわるとき。
胸をぎりぎり締めつけるほどの寂しさが、心を侵すほどの渇きになる。
なにかにハッとして、顔をあげたとき。
陽の香りのする熱風が、ふと鼻先をとおり過ぎた。

数百キロ。いや、数千キロも翔んだのだろうか?
俺は俺じしんがトリップしたのを感じていた。
香ばしい熱風は、いまだ鼻先をよぎりつづけている。
大きな通りの中央分離帯には、見も知らぬ南国の樹が、踊るようにこうべを揺らしている。
目のまえに広がるのは、さっきまでとは似ても似つかないべつの街。
見知らぬ風景に戸惑いながらも、俺はなぜか確信をこめた足取りを運びはじめている。

向こうから、若い女がひとり。
勤め帰りなのだろうか、すこしけだるそうに足を運んでくる。
肩先を、ユサユサと揺れる長い髪。
ブラウスの下、むっちりと張り出した豊かな胸。
ひざより少し丈の短いスカートは。
長い長い脚を薄っすらセクシィに彩るストッキングの延長に、
フェミニンなレエスを、見え隠れに覗かせている。
見知らぬ女。まちがいなく、初めて顔を合わせる女。
まりあだ。
俺は心のどこかで確信していた。
女はすれ違うほど間近にくると。
ふふっ・・・
イタズラっぽい笑みを、含ませて。
小首をちょっと、傾げさせて。
柏木さん、ね?
みごとに俺の名前を、言い当てている。

たったいま出てきたオフィスを見あげながら。
まりあは、ことさらぴんと脚を伸ばして。
穿いている黒のストッキングを、さりげなく引き伸ばす。
フェミニンなレエスを、見せびらかすようにして。
ひざ小僧のあたりに迷う俺の視線に、
面白そうに、くすくす笑いながら。
もっと、見て。
とさえ、言わんばかりに。
もう片方のストッキングも、軽く引き上げてゆく。
オフィスを出るときに、穿き替えてきたばかりなのだと。
どうして見てもいない事実に、俺はこれほど通じているのだろう?

少し、歩こうか?
朱の唇に、むしろ和やかな笑みを滲ませながら。
女は俺を導くように、裏通りへと歩みを進める。
雨上がりらしい湿った風は。
昼間の暑さをほんのすこし、和らげていて。
自然な風がよぎる頬に、女は低く聞えないくらい、
心地よげなハミングを洩らしていた。

どれほど歩いたことだろう。
マンションに囲まれた、小さな公園の一角の木陰の下。
ひっそりとしつらえられたベンチは、ふしぎと雨のしずくをまぬかれていた。
座ろうか。
女はサッと身をひるがえして。
俺の腕を、小脇に抱え込むように。
ぴったりと身を寄り添わせ、密着させてくる。
ほのかなぬくもりを帯びた体臭が、ツンと鼻を刺す香水を交じらせて。
ふわっとかぶさってくる長い髪は、甘い湿りを帯びていた。
噛まないの?
朱の唇が、白い歯を覗かせながら。
もういちど、魅せつけるようにして。
黒のストッキングを、引き伸ばしてゆく。

ここね・・・死角なの。
こんなにベランダに囲まれているのに。
たぶん・・・きっと。
あたしたちのこと、だれも気づいていないんだよ。
イタズラっぽく開かれた朱の唇から覗く、白く輝く濡れた犬歯。
俺は、むらむらと欲情して。
女を間近に、痛いほどしっかりと抱き寄せて。
もう遠慮会釈もなく、うなじを噛んでいた。
ちゅっ・・・
喉の奥まではぜる血潮は、踊るような活力と、メロウな翳りを帯びていて。
さぁ、吸って。もっと・・・吸って・・・
血潮の主の思いをさえ、ストレートにそそぎ込んできた。

噛んで。ストッキング、破ってちょうだい。
女はあらぬことを口走りながら。
ベンチのうえ、あらわに脚を、ひらいてゆく。
はぐりあげたスカートの中は、まさに絶景。
ショッキングピンクのショーツの向こうに、黒い翳りが、熱い濡れを帯び始めていて。
思わずまさぐりを入れた指に、まりあは敏感に反応してきた。
あっ、そこは・・・だめ・・・
だめ・・・だなんて、いいながら。
きみは俺の指を咥え込むように、強く股をとざそうとして。
淫靡な摩擦が濃くしみ込まされるのを。
まつげを震わせながら、愉しんでいる。
引き抜いた指は、うわぐすりのようにぬらぬら光っていて。
俺はまりあの目のまえで、見せびらかすようにして。
濡れた指を、クチュッと含んでいた。

フェミニンなレエスの上と下。
薄っすらと妖しいナイロンに包まれたひざ下と。
眩しいほどの太ももと。
いったいどちらをちくりとやれば良いのだろう?
俺はちょっと迷ったすえに。
むき出しの太ももに、牙を埋めて。
軽くキスをするように、そして熱く唇を重ねてゆく。
洩れてきたバラ色のしずくは、俺をしんから魅了して。
胸の奥まで、バラ色に変えてゆく。

いいのよ、破って。人前でも恥ずかしくない・・・
まりあは優しいささやきを秘めながら。
薄手のナイロンに輝く脚を、ヘビのように妖しくくねらせて、俺を誘ってゆく。
じわりと滲んだふくらはぎに。
吸い寄せられるように、唇を吸いつけて。
いやん・・・
わざと脚を引く、軽い拒絶に、かえってそそられて。
まりあの思うつぼだ・・・
そう自覚しながらも。
女の穿いているストッキングを、
いやらしくクチュクチュと唾液を散らしながら、もてあそんでゆく。
サリサリとしたナイロンを、思う様汚す愉しみに耽りながら。
俺の手は絶えず、ブラウスごし、まりあの胸を揉んでいた。

あっ、あっ、あっ・・・
すっかり愉しんだストッキングを噛み破って。
捧げてくれた女(ひと)への礼儀を、心得たように。
みるかげもなく、堕としてゆく。
差し出されたもういっぽうの脚も、おなじようにあしらって。
オフィスレディのセクシィな装いは。
妖しくふしだらに、乱れてゆく。
ぱりぱりとはじけてゆく薄いナイロンを、ふたり愉しげに見守ると。
どちらからともなく、うふふ・・・と笑みを交し合って。
交し合う笑みを、近寄せていって。
お互いの唇を、むさぼるように。
熱く熱く、吸いあっている。

ふと、気がつくと。熱い視線。
植え込みの向こうから。
ベランダのかげから。
通りに面した窓辺から。
好奇に満ちた、視線、視線、視線・・・
まりあはそんなものを、ものとのせずに。
いいじゃないの。
ふたりの熱いとこ、思いっきり見せつけちゃおうよ。
イタズラっぽいウィンクは。
さいしょからなにもかも、心得ていたのだろう。

見られたい。見られながら、犯されたい・・・
女は通勤用のスーツ姿を、みずから草の褥にまろばせながら。
雨あがりのぬかるみに、ハイヒールの脚をわざと突っ込んで。
白のブラウスに、惜しげもなく泥を撥ねかして。
欲情あらわに迫ってゆく俺に、じぶんから組み敷かれてゆく。
あぁ・・・あぁ・・・ああぁぁぁぁぁ・・・っ
のけぞりもだえ、興じるまりあ。
時空を翔け抜ける俺を、ひそかに待っていたのか。
それともじつは。おまえのほうから、俺を呼んだのか。
めくるめく極彩色の欲情かけめぐるなか。
俺も我を忘れて、雨のしずくを湯気にかえてゆく。

白いハイソックスの時代

2007年07月18日(Wed) 07:32:12

いいわよ。噛んで・・・
真っ白なハイソックスに包まれたふくらはぎを、
ローファーのつま先までピンと伸ばして。
制服のスカートを、軽くつまみ上げて。
少女はくす・・・っと、ほほ笑みかけた。
腰かけたベンチの足許に、ちいさな黒い影は、音を忍ばせてかがみ込んで。
”彼”が、ハイソックスの上から唇を吸いつけているあいだ。
少女はくすぐったそうにして、彼のしぐさをのぞき込んでいる。

じゃ、つぎはわたし。
すこし蒼ざめて息をはずませかけたクラスメイトのお隣に。
べつの少女が腰かけて。
重たい制服のスカートを、さらりと器用にたくし上げる。
薄手のストッキング地のハイソックスは。
ひざ下をぴっちりと締めつけている白いゴムが、ひときわあざやかにきわだっている。
きゃっ。
少女が濡れた悲鳴を洩らすと。
かたわらの少年二人は、あわてたように。
ひとりは少女をなだめるように、肩を抑えて。
もうひとりは、決まり悪げにうずくまる”彼”を、手加減しろよ、とさとしていた。

少年二人は、白やグレーのハーフパンツの下、
少女たちと申し合わせたように、白の無地のハイソックスで脛を覆っていて。
やはり申し合わせたように、かっちりとした肉づきをしたふくらはぎに、赤黒いシミを滲ませていた。
しょうがないなぁ・・・
ふたり目の少女は、目じりにまだ光るものを散らしていたが。
くしゃくしゃにずり落ちたハイソックスを、もういちど。
見せびらかすようにキュッと引き伸ばす。
やだぁ・・・
さいしょに噛まれたほうの少女が、くすぐったそうにクラスメイトの首に抱きついた。
こちらの少女がお気に入りなのか。
影はもういちど、ずり落ちかけたハイソックスのうえ、ふくらはぎに熱烈なキスをしかけていって。
もうひとしきり、吸血の音を周囲の薄闇に溶かしてゆく。
彼氏らしい白のハーフパンツの少年が、傍らではらはらしているのを認めると。
悪りぃ・・・
影は、決まり悪げに、友だちらしい少年を見あげると。
おずおずと牙を、引いてゆく。
いいんだよ。遠慮なくおやりよ。
白のハーフパンツの少年は、優しいたちらしい。
影の口許に、すり寄せるようにして。
ハイソックスを履いた自分の脚をあてがってやると。
キュキュ・・・ッ
薄闇に溶けてゆく吸血の音に、しばしうっとりと目線を迷わして。
それからいまいちど、恋人の脚にイタズラすることを許してやったとき。
けだるそうに、くすぐったそうに身じろぎする恋人の肩を、優しく手を添えて、ギュッと抑えつけていた。

ただいまぁ。
白のハーフパンツの少年が、我が家に帰ると。
両親も妹も、もう起きていて、焼きたてのパンの匂いが甘く漂いはじめていた。
行ってきたの?
ウン。
息子の足許の汚れを見て、すべてを察したお母さんは、
よくつづくわねぇ。男の友情。
あきれたように、感心したように、息子の肩をぽんと叩くと、
もうそれ以上、暗いうちから出かけた息子の行く先を、話題にしようとはしなかった。

当番ね。
彼が飢えないように。
順ぐりに、公園に来るんだよ。
土曜日には、マサオ。日曜日は、ユウコ。月曜は、シンジ。火曜は、ハツエ。
それ以外の曜日には、彼の両親や姉が、それぞれ順ぐりにめんどうを見る、という。
勤め帰りの彼のお姉さんが、ショルダーバッグを提げたまま。
通勤用のスーツのすそから、惜しげもなく。
肌色のストッキングの太ももをさらけ出しているのを、
道行く人が目にすることもあるという。

マサオとユウコは、恋人どうし。
シンジとハツエも、未来を誓いあっていた。
ユウコが相手をするときは、マサオがいつもやってきたし、
ハツエが襲われる当番の夜は、シンジも闇のなか、息をはずませていた。
だいじょうぶ?
身体の力を抜いたかつてのクラスメイトのことを。
その身から牙を抜く”彼”も、気遣わしく見あげて。
ときには今夜はこれで・・・と。
あきらかに、まだ渇いているはずなのに。
カップルの片割れが残りを補おうとするのを振り切って、
恥じ入るように、闇の奥へと消えてゆく。

マサオはよくわかっていた。
”彼”がユウコを気に入っていることを。
ほんとうは、昔から、好きだったのに。
毎晩血を吸われるようになったとき。
告白することをあきらめたのだということまでも・・・。
けれども”彼”は、そんなことをおくびにも出そうとせずに。
ほかのクラスメイトから血をもらうときと、同じように。
彼女にもおずおずと、控えめに接しつづけている。
おそろいの白のハイソックスの脚を、恋人とふたり並べて伸べたとき。
恋人の身体をめぐる血を、”彼”が少しだけよけいに飲むことも。
彼女のハイソックスを、嬉しそうにせしめることも。
苦笑しながら、見て見ぬふりをするのだった。

お前、どうする・・・?
意外にも、相談を持ちかけてきたのは。
シンジのほうからだった。
あいつ、処女の生き血が好きだろ?
でもそれ以上に、処女を犯すのも好きらしいぜ。
知ってる?
嫁に行っちゃったお姉さん・・・さいごの夜に、あいつに犯されちゃったって。
なにを言いたいのだろう?
どぎまぎしていると。
そんなマサオの思惑を見透かすように。
今夜。ハツエのやつ、犯されに行くんだ。
えっ・・・?

公園の片隅で、人知れず静かに輝く街燈の下。
時ならぬかすかなざわめきが。
いつものように公園に流れる。
めずらしく。
四人顔をそろえたベンチの周り。
ハツエは黒のストッキングを履いた脚を、照れくさそうにすくめながら。
マサオとユウコには、あんまり見ないでね・・・って、囁いて。
恋人とふたり連れだって、生垣の向こうへと分け入ってゆく。
あっ・・・うう・・・っ。
喉の奥からはぜるような切れ切れな悲鳴のあと。
痛・・・っ。
ひと声洩らした声のあと、いっさいは静寂―――。
雑草を踏みしだく、ざわざわという音だけが。
思い出したように、残されたふたりの鼓膜を突いた。

しばらくして。
生垣の向こうから聞えてきたのは、いつもの仲睦まじげに呼び交わす声と声。
三人は、影を重なり合わせるようにして、こちらに戻ってきた。
シンジは手首にロープの痕をくっきりつけていて、
首筋からは、バラ色のしずくがひとすじ、伝い落ちている。
さいしょに血を吸われちゃって、もうろうとなっちゃってさぁ。
かわいかったよ、ハツエ・・・
恋人ふたりは、まえよりもいっそう寄り添うようにして。
街燈の照らし出すじゅうたんのような芝生の向こうへと、影をひそめてゆく。
マサオはユウコと目を合わせて。
いいよね・・・?って、囁き交わすように、目まぜをして。
マサオは、思い切って、”彼”のほうへと一歩すすみ出て。
つぎの週末・・・ユウコと仲良くしてくれないか?
呟く声が、さすがにガクガクと震えていた。

ハツエの犯されたのが、火曜日の夜。
マサオは息を呑む想いで、
水曜日、木曜日、金曜日・・・
指折り数えるように。
一日一日と、”その日”がひたひたと近づいてくる。
やっぱり、やめてしまおうか?
なんど思ったか、知れなかった。
けれどもじぶんが当番の土曜の夜。
ユウコもやっぱり顔を出していて。
涼しげな浴衣を、夜風に流しながら。
明日の夜は、よろしくね。
くったくなげに、”彼”に囁いていた。

もう・・・なにがどうなったんだか、記憶が定かじゃない。
気を利かせたのだろうか。
ハツエとシンジの姿はなかった。
あのとき二人が分け入っていった生垣の奥。
いまは自分とユウコがいた。
ユウコは制服のスカートを腰までせり上げられていて。
大人びた翳りを帯びた黒のストッキングの脚は、立て膝になっていて。
薄っすらと透けるナイロンごしに、しなやかなふくらはぎの筋肉がキュッと浮き出していた。
ハツエのときと、おなじように。
いつものハイソックスの代わりにユウコが履いてきたのは、黒のストッキング。
妖しく翳る足許に、どきりとしてしまったのを。
目ざとく見られて、イタズラっぽい目線をもらっていた。
一週間遅れの卒業を、オトナっぽく飾ろうという、
ユウコならではの、見栄だったのか。
太ももまでのストッキングは、ゴムのあたりまでまる見えになっていて。
白く覗いた腰が、意外に逞しい”彼”の浅黒い腰と、ぴったりかみ合うように重なり合っていて。
ぎこちない上下動が、靴の脱げたつま先の及ぶかぎりの草むらを、
片っ端から、踏みしだいてゆく。

思わず鼻血を、出してしまった。
初めに”彼”がマサオの首筋を噛んだのは。
そうならない予防のためだったのだろうけれど。
恋するひとのあらぬ乱れを見せつけられて。
マサオはシンジがそっと囁いた言葉を、ありありと思い出していた。
  ハツエには、ナイショだぜ?
  姦られちゃったときにさ・・・思わず勃っちゃったよ。^^;
ひそかに股間を湿らせたハーフパンツ姿に。
ユウコは一瞬、目をやって。
すぐにそ知らぬ顔をして、目線をよそに流していった。
女どうしも、おなじように・・・囁き交わすことがあったのだろうか。
それからぴったりと。
公園を訪れる人影は絶えて。
”彼”のうわさをするものも、じょじょに影をひそめていった。



披露宴の喧騒が、まだ身体の周りをざわざわとおし包んでいる。
ピンク色のスーツに着替えたユウコは、艶然とほほ笑んで、
片手をベッドに突いて、けだるい身体を支えている。
誘っているのか?
つい、そんな気になって。
思わず身を寄せていって。
お酒臭いわ・・・と囁きながら。
わざと挑発してくる彼女の誘いに、まんまと乗って。
思わず押し倒したシーツのうえ、はぎ取るような荒々しさで、ブラウスをはだけていった。
あの夜から。
とうとういちども訪れることのなかった淫らな夜。
記憶が鮮明であるほどに。
ふたりに捺された刻印は重く、濃やかな交際だったにもかかわらず、
夜をともにするのは、じつは今夜が初めてだった。

初めて目のまえにさらけ出された、新婦の肌。
薄暗い照明の照らし出すなか、淡く滲んだ乳色の肌は。
とても穢れを知った身体とは思えないくらい、初々しい輝きに包まれていた。
思わず吸いつけた唇が、ぴったりとなじむように、ユウコの肌に吸着して。
思わずかつての吸血鬼のように、ユウコの肌をむさぼっていた。
ァ・・・
恋人の熱烈な行為に、ユウコも悩乱を覚えたらしい。
あとはめくるめく、光と闇―――。

えっ・・・?
あら・・・?
そうだったの・・・?
驚いちゃった。
思わずベッドのうえ、座り込んでしまったふたり。
シーツについた紅いしずくが、すべてを証明している。
ユウコはなにも識らない身体だった。
あの夜の草むらで。
求められながら。応えてやりながら。
嫉妬の裏に息づいていた、ひそかな充足感、帰属感。
あれはいったい、なんだったのだろう?
冥界に行ってしまった彼は、ひそかな想いを遂げながら。
ついに親友から、たいせつなものを奪い去ることはできなかったのだろう。
ふたりはどちらからともなく、窓辺に出て、夜空を見あげる。
”彼”が消えていった、公園の闇のかなたを見とおすように。



中学校にあがった娘が、初めてハイソックスに紅い沁みをつくってきたとき。
ユウコはおめでとう、と言ってやった。
懐かしい、歯型の痕。
母親似の面差しに、”彼”は昔を思い出してくれただろうか?
まな娘につけられた痕の周り、かすかに残る唾液をなぞるようにして。
そうした母親のしぐさを、ふしぎそうに見つめる娘をたしなめるように。
ひと言、囁いていた。
パパにはまだ、ナイショにしておこうね、と。

深夜の公園通い

2007年07月18日(Wed) 07:30:21

もう、何年もまえのことじゃが。
この通りをの。毎晩夜更けになってから。
若い女が徘徊しておったのじゃ。
黒っぽい上着を着て、スカートも黒。そう、ストッキングも黒じゃった。
肌の透けるストッキングが、えろぅなまめかしくて。
出しぬけにはち合わせたりすると、かえってこちらがどきりとしたものじゃった。
女は長い髪をしずかに揺らしながら、そう、あちらの公園のほうへと歩いていって、
夜が明けるまえ、いつも足音を忍ばせて家に戻ってゆくのじゃった。
刻限が刻限じゃて。
知っておるものは、そうなん人もおらんじゃろ。
けれども視たものは・・・それがだれだか、皆知っておった。
男・・・じゃったのよ。

十九かはたちの、若者じゃった。
ちいさいころから、心の優しい子でな。
今思えば・・・優しすぎたのじゃろうの。
着ている服は、あの子が大好きな母ごのものじゃった。
肩まで伸びた長い髪をととのえて、母ごの服を着て通りかかると。
血は争えないものでな。
どうかすると、美しかった母ごそっくりに見えることもあったのじゃ。
公園で待ち合わせているのは、吸血鬼じゃった。
吸血鬼はあくまであの子を、女として扱っておったようじゃ。
公園でふたりが抱き逢っているのを視たものは。
黒衣の男が、女に扮したその青年を抱き寄せて、
髪の毛や背中を長いこと、恋人のように愛撫しておったというておった。
女として扱われるのが、うれしかったのじゃろう・・・と。
もっぱらの噂じゃった。
女として視られ、扱われ、愛されることが嬉しうて。
その子は毎晩、公園に忍んでいって。
ある朝紙のように白くなった面差しのまま、公園の芝生のうえで冷たくなっておったのよ。

地区の長(おさ)じゃったわしは、杭を打つな、と皆に言うたのじゃが。
だれひとり、逆らうものはおらんかったな。
母ごは悲しみのあまり、酷く蒼ざめておって。
あとを追うようにして、半年後にこの世からいなくなってしもうたのじゃ。
血を吸い尽くされた身体のあちこちには。
ふた色の歯型がついておって。
そのうちひとつは間違いなく、あの子のものじゃった・・・と言うものがおった。

わしはよぅ、知っておる。
あの子が逢っていたのは。
まえの年になくなった、実の父ごだということを。
父ごはあの子の母を恋うるあまり、母ごをたびたびあの公園に呼び出して、
生き血を啖ろうておったのじゃ。
あの子は見るに見かねて、母ごの目を盗んで。
母ごが具合悪く寝入ってしまった夜に、母ごの服を着て、あの公園に行ったのじゃ。
夜な夜な、あらわれる”女”のことを、父ごはきっと、察しておった。
抱き合うておったのは。
決して疚しい深情けなどではない、肉親の情だったのじゃろう。
やがてあの子の力が尽きると。
母ごは自分から、すべてを捧げ尽くしてしもうたのじゃ。

杭を打つな、と。
だれを送るときも、わしは言いつづけ、皆も従いつづけておった。
あぁ、今かね?
家族三人、この街のどこかでひっそりと暮らしておるのじゃろう。
わしの家の息子なども――あの子の仲良しだったものじゃが――時おり誰かに逢いに、こっそり公園に忍んでいっておるようじゃから。
そう、自分の母ごの服に、身をやつして・・・の。


あとがき
このお話とつぎのお話は、先週描いてみたのですが。
ドウにも食い足りない状態でしたので、きのう描き足しまして。
ようやくけさ、あっぷにこぎつけました。A^^;

ブログ拍手♪

2007年07月17日(Tue) 06:01:28

ここ数日で拍手をいただけた、幸せなお話たちです。^^

彼女の代わりに 公園へ・・・ 4月23日付
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-960.html

血を吸われすぎた?婚約者の身代わりに、恋人のハイソックスを履いて吸血鬼をもてなす青年のお話です。
相手の吸血鬼も、仲良しのようですが。
淡い嫉妬と慣れない女装の昂奮に声を震わせるくだりが気に入りです。^^


帰宅 6月17日付
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-1056.html

吸血鬼となった少年が生き血を求めてめざすのは、かつてのわが家。
そこではだれもが彼を歓迎し、心づくしを重ねてゆく。


父の恋人 5月27日付
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-1015.html

若い生き血を求めて上から覆いかぶさってきて、
ひたすら無表情で血を吸い尽くそうとする美しい女。
半分は、憎い女とおなじ血。けれどもあと半分は、いまだ恋しい男の血。


妻の外出 息子の同伴 7月10日付
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-1102.html

帰りの遅い息子を公園に迎えに行った妻は、息子どうよう蒼い顔をして帰宅する。
そんな妻を、今夜も誘い出そうとする息子。
そう、かつては私も・・・

このお話を読み返していて思い出したのは、↓の話です。
「切れ切れ に」 6月21日付
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-1064.html

>公園・・・に?
>ママはちょっぴり、いぶかしげに首を傾げて。
>夜中の一時に・・・ですって?
>もういちど、訊きかえして。
>よそ行きのスーツに、薄手のストッキングを履いて行くのね?
>もういちど、たしかめるように。息子の顔をのぞきこんでいる。

こんなふうに誘い出されてゆくお母さん、素敵です。^^

うーむ・・・

2007年07月17日(Tue) 05:39:23

お話が浮かびません。
今月は最初の十日間で25作と、快調?すぎるほどだったのですがね。
あっ、それはそれで、読むほうが大変だったかも。^^;
あとさき考えずにどんどんあっぷしてしまいますんで、ごめんです。m(__)m
今朝はなにか浮かぶかな?
こんなこと呟いているようだと、無理かな~?

通ってくるんですよ。

2007年07月10日(Tue) 07:21:05

通ってくるんですよ。
彼は苦笑いを交えたため息を漏らして。
案外得意げに、ひそひそと語るのだ。

女房の親父が、吸血鬼になっちまいましてね。
どこをどう、見込まれたものだか。
義母がなかなかの美人で、さいしょにとり憑かれたのは義母のほうで、
亭主を黙らせるためにたぶらかしたのだって、
わけ知りのやつが、教えてくれました。
義母がお客さんを迎え入れて。
熟した血を振舞う夜。
義父は女房のことを、襲いに来るのですよ。
玄関先に義父が立つと。
女房のやつは、もういてもたってもいられなくなって。
  あなた。悪いけど。お出かけになって。
  どこにでも、かまいませんから。お出かけになって。
って。
わたしのことを、せかすのですよ。
おなじ血・・・ですからね。
きっとまな娘の血は、喉に心地よいのでしょう。
妻はさすがにそんなありさまを、わたしに見せたくないのでしょう。

娘が中学にあがると・・・そう。
  あなた、わかってくださるわね?
  生娘の生き血を飲ませることができるのは。
  この家では、早百合だけなのですよ。
言い含めるように、わたしに迫ってくるのです。
ですから義父は、わたしの家に。
娘と孫娘の血を吸いに、通ってくるのですよ。
義理の父とはいえ。
妻と娘とを、ふたりながら特定の男に食べさせるなど。
気味のよいものではない・・・とお感じでしょうけど。
どういうわけか、妻にせかされると。
ウキウキと腰を浮かせているわたしだったりもするのですよ。

妻の肩先に、牙を食い入れて。
ワンピースの両肩を、痛いほどつかまえて。
姿勢を崩す妻を放すまいと、身をすり寄せていって。
はだけた胸元。
ストッキングを履いたふくらはぎ。
あぁ、父娘なのに・・・そうした夜は、したい放題なのですよ。
それなのに、昂ぶってしまっているわたし。
わかって、いただけますよね・・・?

語り終えると、私のことを。
じいっ・・・と見つめる彼。
どうしてわからないことがあるだろうか?
週末になると、決まって妻の生き血を吸いに来るきみを。
こうして迎え入れている私なのだから。

妻の外出 夫の外出

2007年07月10日(Tue) 07:10:39

遅い時間の訪問なのに。
彼はにこやかに迎え入れてくれた。
出迎える彼も。
歓迎されたわたしも。
互いの足許を見交わして。
薄い靴下のつま先に、ニッと笑い合っている。

通された応接間には、手回しのよいことに。
ふたり分のティー・カップが置かれている。
さすがに賢妻だね。
冷やかすわたしに、よせやい、と。
彼は真顔になって、そして照れている。

いったん閉じられたドアが、細めに開かれて。
白い顔が半分だけ、覗き込んでくる。
装われたお洒落なモノトーンのワンピースが、すそをひらりと覗かせた。
言ってまいりますね。
ささやくようにひそめた声に。
彼はひと言、行ってきなさい、と返して。
スッと身を引いた横顔には、感謝の色がよぎっていた。

こんな夜更けに、お出かけかね?
しらじらしい問いを投げるわたしに、
ああ、戻るのは明け方かな?
うそぶく彼。
いいのかい?あんな美味しいカッコウさせて。
あくまでからむわたしに、
そう、なぶるなよ・・・
苦笑をかえす悪友。

そういうきみのとこは、どうなんだい?
おっと。テキもなかなか、鋭いな。
鋭い・・・って。
悪友はからかうような目になって。
来ているんだろう?
ああ・・・まぁね。
ゾクリ・・・とあわ立つ昂ぶりに、かすれ声になっていた。
通われているのだね?
ウフフ・・・図星だよ。
妻はいまごろ、訪客を迎え入れて。
おなじベッドに身を横たえているはずだった。

出かける妻に、迎える妻。
どちらにも罪はないのだ、とうそぶく友も。
かつては、恋敵。
今夜にこやかにわたしを迎えた玄関に。
もっと淫靡な息遣いをして、妻を迎えていた彼。
妻も情婦も、情婦の夫さえも巻き込んで。
血を吸うものたちは、今宵も逢瀬を重ねに来る。

耳もとでふと、声がした。
男ふたりでは、さまになるまいの・・・
悪友も、べつの声を誰かに吹き込まれているらしい。
互いにウットリ夢心地にひたりながら。
向かい合わせに座ったソファから、ずるずると・・・
じゅうたんのうえ、姿勢を崩してゆく。
女には男の。男には女の。淫魔がついてはなれない夜更け・・・

妻の外出 息子の同伴

2007年07月10日(Tue) 06:59:06

あの・・・
夜が更けるとわたしを見つめ、口ごもる妻。
よろしいですか?これからお出かけしても・・・
無言のうちに瞳が訴える。
ああ、行ってきなさい。
そういうときはいつも、優しく応えてやる。
なにごともないように。

その習慣は、ある夕方からはじまった。
息子の帰りが遅いと、心配して公園まで迎えに行った妻。
ふたり戻ってきたときには、どちらもいつになく蒼い顔をしていたけれど。
ただいま・・・
ご飯にしますね・・・
うつろな声に、なにが起きたかを察しながら。
あぁ、遅かったね。
わたしは優しく、応えていた。
そう、なにごともなかったように。

夜更けにフェミニンなワンピースのすそをひるがえして、
妻がひっそり出かけてゆくと。
入れ違いに顔を見せたのは、息子。
ママは、出かけたの?
あぁ。行き先は・・・わかっているよね?
わたしの声までが、どことなくうつろにひびくようになったのは。
いつのころからだったろう?
ウン。ボク、迎えに行ってくる。
そそくさと歩み去ってゆく息子の脚は。
どうやら母親のものらしいグレーのストッキングに、薄っすらと染められていた。
おい・・・
うん・・・?
似合うよ。
たくまぬ穏やかな声に、息子はちょっぴり照れくさそうに笑み、
わたしも笑って送り出してやる。
そう、なにごともないように。

振り向くと、そこには母の写真。
吸血鬼の棲むという邸にあがってから、もう何年になるだろう?
父は母を捧げたことを、むしろ誇らしげに人に語り、
母はそんな父に感謝のまなざしを投げながら。
いまも若々しい装いで、夜更けの散歩に出かけるという。
追憶の幻のなか。
ママ、ママ、お出かけしようよ・・・
夫婦の寝室のドアをほとほとと叩いているのは、少年のころのわたし。
出てきた父は、
しょうのないやつだな、って、苦笑いを浮かべながら。
支度ができるまで、いい子で待っているんだぞ。
手をつないで散歩に出かける妻と子を、
おだやかに送り出してくれたのだった。
そう、なにごともないように・・・

教室の同窓会

2007年07月09日(Mon) 07:53:25

やあ、しばらく。
何年ぶりかなぁ。
口々に懐かしさをあらわにするのも、無理はない。
卒業して、ちょうど十年。
お互いに世間なみのサラリーマンの顔を見出して。
それでも態度や口ぶりが、もとの悪ガキにもどってしまうのは。
ここがかつての教室だから、なのだろう。
相変わらずここの照明、薄暗いや。
誰かがいった。
真夜中の校舎は、深い闇に包まれていて。
かつて寝食をともにした寄宿舎の灯りだけが、木立ちの合い間にかすんでいる。

申し合わせたように。
現れた三人が三人とも、昔の制服姿。
わたしは夏服のグレーの半ズボン。
白のハイソックスは、わざわざ早めにここに着いたとき、購買で買い求めたものだった。
ふたりは冬用の濃紺の半ズボンの下。
キミオは濃紺の薄手のハイソックス。
セイジは黒のストッキング。
明らかに女もののストッキングは、薄暗い照明を滲ませていて、
なまめかしい光沢を放っている。
オイ、誰のやつだよ?
キミオがからかうようにして、セイジの肩を小突いた。
あれ、お前だって・・・
お洒落な子は、その当時から。
リブタイプの指定のハイソックスの代わりに、ストッキングやストッキング地のナイロンハイソックスで脛を染めていたのだが。
童貞のまま卒業した三人は三人ながら、
ほとんど薄い靴下に脚を通すことがなかった。
例外だったのは。
入学して初めての頃。
じぶんの母親が父兄面談にあらわれた次の日だった。
堕とされた母親が礼装の下から素肌を覗かせるのをかいま見て。
オトナになったような気分になって。
ついふらふらと、脚を通していたのだった。
同室の三人で、一足だけ買った紺のナイロンハイソックスを。
三人で、使い回しして。
面談の日程のさいごに当たったのは、わたし。
ほら、履けよ。一日早いけど。
キミオはイタズラっぽく笑って、ぞんざいにそれを手渡してきたのだった。

濃紺のハイソックスは、家族のだれかを吸血鬼に差し出した証。
黒のストッキングは、いよいよこれから・・・というシグナル。
だれが決めたのかわからないけれど。
履いている靴下の色や長さで、クラスの誰かの事情をあて推量して。
まるで噂好きな女の子みたいに、くすくす笑いあっていたっけ。
どうしたの?
わたしはそのころに戻った笑みで、ふたりに問いただしている。
新妻を・・・ね。
キミオは口ごもって、濃紺に包まれた脚をもじもじすくめ、
秋に結婚するんだけど・・・週末に逢わせちゃうんだ。
セイジも黒ストッキングの太ももを、自分ですべすべと撫でている。
彼女、まだ出来ないの~?
ふたりの目線が、白のハイソックスに注がれる。
大きなお世話・・・といいたいのだが。
母を堕とした吸血鬼は、いまだに母を恋人にしていて。
ボクはまだ、ウキウキとそれを覗き見している日常。
いますこし、童貞を守るがいい。
母の情夫のうそぶくままに。
けれどもそろそろアイツも・・・
ボクの彼女を寝取りたいと思うようになるのだろうか?
来年の同窓会にわたしが履いてくるのは。
黒のストッキング?それとも、濃紺のハイソックス?

息子の外出

2007年07月09日(Mon) 07:32:38

じゃ、お父さん。行ってくるね・・・
応接間のドアを開いて顔を出したのは、からの息子のカズオくん。
ことしでもう、十四になったろうか?
大人びてきた目鼻に、トーンの低くなった声。
けれどもまだまだ、子どもっぽさが抜けきらないようにみえるのは。
あの悪戯っぽい笑みがもとのままだからなのだろう。
あぁ、行ってきなさい。
わたしの友人である父親は、いまどき珍しいパイプをくゆらしながら。
そこまで散歩に行ってくる・・・という風情の息子を横顔で送り出す。
真夜中なのに。
彼は、どこへ行くというのだろう?
ふと見ると。
ハーフパンツの下、むき出しになっている脛を。
薄っすらと彩る、黒のストッキング。
おいおい、カズオくん。ずいぶん色っぽいねぇ。
よけいなことだと思いながら、
つい口をはさんでしまった。
カズオくんは、くすぐったそうに笑いながら。
(ア・・・これ?)
って。
見せびらかすようにして、片脚を半歩、前にさし出した。
じわりと滲む肌が、女の子みたいになまめかしい。
こら、こら。
さすがに父親が叱声を発すると。
いけねぇ。
といわんばかりに、そそくさと出ていこうとする。
似合うぜ。
わたしのひと言に、くすぐったそうに応えて。
扉はばたんととざされる。

いったい、どういうことなんだい?
毎晩のようにね。
だれかの靴下を履いて、夜出かけていくのだよ。
ふーん。
今夜のは、家内のかな。それともユリのかな・・・
お父さんは人ごとみたいに嘯きながら、パイプを口から離すと。
さも心地よげに、すーっと紫煙を吐いている。
アブナイんじゃないのかい?
女装に走る前触れだぜ?
という意味と。
それ以上に、気になったのは。
声変わりする年頃の少年が、街に徘徊する吸血鬼に魅入られると。
むしょうに脚を噛まれたがって。
しきりと母親や姉妹のストッキングやハイソックスを持ち出して、
身代わりのようにして、破らせてしまうという噂。
そして、いちど持ち物を吸血鬼の牙にさらしてしまった人妻や令嬢は。
いずれ、吸血鬼の手に堕ちて、操までも奪われる・・・という話。

いいじゃないか?
見透かすような目線に、どきりとした。
おなじことになっているのだろう?きみん家(ち)だって・・・
投げかけられた、無言のメッセージ。
ズボンの下に、気づかれないように脚を通してきたのは、妻のストッキング。
太ももを引き締めているほどよい束縛が、ひときわ、しくり、と疼いたのは。
そう、ちょうどいまごろ。
息子が妻を、初めて彼のところに連れて行く時分だったから。
まだ、間に合うぜ?
エ・・・?
奥さんだよ。
息子を誘い出したやつが、言っていたそうだ。
今夜は他所の息子さんがお母さんを連れてくる日だってね。
早く、行っておやりなさい。
明日はうちの番なのだから。
そうそう。
息子、牙が生えてきてね。
血を吸うようになったんだ。
ほんのちょっぴりでいいから、奥さんの血の分け前にあずからせてやってくれないかね?

息子が靴下を履きかえるとき

2007年07月08日(Sun) 06:40:05

いつのころからだったろう。
妻の背後に、別の男の影を感じるようになったのは。
それは遠く、まだ子どものできていない時分からのことだっただろうか。
わたしの前、妻はあくまで良妻賢母の賢夫人。
いまどきここまで尽くすタイプの女性はいないよ、と。だれもが羨む夫婦仲。
息子と娘、ふたりの子どもにも恵まれて、やがて子どもたちが年頃になったころ。
すべてが明るみに出たのだった。

ごめんなさいね。ほんとうに・・・
男の腕の中、妻は薄っすらと目を開いて、謝罪のことばだけはあらかじめ用意していたかのように、よどみなかった。
ほかの男に抱かれつづけてきたことよりも。
ばれてしまったことのほうを、悔いているような妻。
パパ、ごめんね。ボクがいけなかったんだ。
母親をとりなしたのは、息子だった。
ホラ、見て御覧。
もう、高校生だというのに。
ハーフパンツの下には、ハイソックスを履いている息子。
まるで女の子みたいだな・・・
いつかそんな苦情を妻に漏らしたときには。
しょうがないじゃないの。好みなんだから。
妻はおっとりと、かばいだてをしていたっけ。

長い靴下が、好きなんだって。
それでボク、小父さんと仲良くなって。
ときどきボクのハイソックス、咬ませてあげていたんだけど。
女のひとのストッキングを破ってみたいって言われて。
黒のストッキングを履いて学校に通っている同級生の女の子をなん人か誘ったんだけど、
みんな、しり込みしちゃうものだから。
代わりに、ママの肌色のやつを履いていってあげたんだ。
それがとても気に入っちゃって・・・
持ち主を教えろって、せがまれちゃって。
ボク本当は、気が進まなかったんだけど。
困り抜いて、ママに相談したら、言ってくれたんだ。
「息子をかばうのが親ですよ」って。
「ママの生き血は、まだ若い香りがするかな?楽しみね」って。
ルンルン気分で、逢ってくれて。
あのときのママが、とても綺麗で。
視たい・・・ってねだったのは。ボクのほうだったんだよ。

嘘だ。
素直な息子には、無理な嘘だった。
母さんをかばうのは、ほめてあげるけれど。
ウソかほんとうか、ちゃんと顔に書いてあるよ。って応えたら。
さすがにもじもじと、俯いてしまっている。
けれども半分は、やはりほんとうなのだろう。
早百合が中学にあがったら。
こんどは黒のストッキングを代わりに履いていってあげようかな。
ウキウキはずんだ息子の声。
皆がたぶらかされてしまった・・・
ふつふつと。あらぬ想いが湧いたのは。
きっとやつに盛られた媚薬のせいにちがいなかったのだが。
いまでは盛られた媚薬に、感謝をしている。

息子が得意げにぶら下げているのは。
四月から早百合が学校に履いていくことになっている、黒のストッキング。
黒って、いいよね。
濃い色をした薄手の靴下って、肌がとっても魅きたつよね?
息子の言い分は、もっともだった。
身づくろいを済ませてふたたび姿を現した妻は。
清楚な黒のワンピースを装っていて。
息子の話は、いちぶしじゅう耳にしていたようだった。
寝乱れたベッドのうえで、よく・・・と思うほど。

この子が自分いがいの人の靴下を履くときは。
そのひとがこの子にとって大事なひとで、大事なひとを彼とを、結びつけたくなるときなの。
だからわたしも、この子にストッキングをあげました。
彼と逢うときだけ穿いていた、ブランドもののガーターストッキング。
初めて着けるとき、とても恥ずかしそうにしていて。
かわいかったわ。
わたしのストッキングが、この子の脚にまとわれて。
あのひとの欲情のままに噛み剥がれてゆくのを想像して。
ドキドキしちゃった。
あのね。
いま本当はこの子が穿きたがっているのは、貴方の靴下よ。
ストッキングみたいに薄手の、紺のハイソックス。あるでしょう?
さいしょから、きれいだね、って。狙っていたみたいだけど。
このひとと、あなたと、仲良くなれたら。
ママも楽になれるのにね・・・ですって。
どうなさるか、貴方が決めて。
この子に穿かせるのは、早百合の黒ストッキング?
それとも貴方のハイソックス?
悪戯っぽい微笑が、いままでにないほど優しげに、妻の満面を染めていた。

足音を忍ばせて。
吸血鬼とふたり、夜の公園に消えていった息子。
だいじょうぶかな、と問うわたしに。エエ、平気ですよ、と応える妻。
あの子・・・言いつけどおりに貴方のハイソックスを履いていったのですよ。
ウフフ・・・と含み笑いする妻を。
この浮気妻めっ!と、軽くつねってやる。
きっとちりちりに剥かれて、戻ってくるわよ。
やつはわたしを咬んだつもりになるのだろうか?
思うだけでも、ゾクゾクしてくる。
それ以上に、ゾクッ・・・としたのは。
あの子。あしたの夜は早百合のスクールストッキングを履いて行くんですって。
家族それぞれの薄い靴下を脚に通して。
かわるがわる、愉しませて。
月明かりの下、今夜も息子はウットリと笑んでいるはず。

行ってきまぁす。
いつものように、夜が更けてから出かけてゆく息子。
ちょっとだけ顔を出して、返事も聞かずにドアを閉めた。
ほんのすこしの間だけ覗いたハーフパンツの下は、濃紺のハイソックス。
滲んだ光沢は紳士用とは思えないほどなまめかしく、
ピチピチとはずむような若々しいふくらはぎを、いっそう引き立てている。
セイジ、とわたしは息子を呼び止めて。ひと言、似合うよ・・・と告げていた。
息子はなにも応えずに、くすぐったそうに笑み返してくる。
わたしもごいっしょするわね。
息子のあとをついてゆく妻の脚は、黒のストッキング。
きっと・・・わたしが見たこともないブランドもののガーターストッキングなのだろう。
そんな母子を、にこやかに送り出すわたし。
さぁ。支度をしなきゃ。
公園で演じられる、妻がヒロインの吸血シーン。
見逃す手は、ないからな・・・

翌週のことだった。
娘の早百合は、夏服のセーラー服の下に、黒のストッキング。
ふつうにはあり得ない組み合わせが、初々しさと清楚さとをないまぜにしている。
ひどく大人びてしまった娘。
それは身につけた装いだけのせいではないようだった。
娘の傍らに、恋人のようにひかえる息子は。
反対側から妹の足許にかがみ込んでくる黒い翳に、チラチラと悪戯っぽい笑みを送っている。
娘の早百合は、恥じらいながら。ためらいながら。
黒のストッキングに透ける肌に、ぬるりと唇を這わされてゆく。
大人びた足許の装いが、ぴちぴちと他愛なくはじけてゆくありさまを。
夫婦並んで、遠くから見つめるわたし達。
いつか、ふたりでしてみたいね。アレを。
そのときは、穿いてくれるだろう?ブランドものの黒のガーターストッキング。
妻は照れたように笑いながら、ただ含み笑いをかえしてくるばかり。


あとがき
昨日あっぷした「人声」の後日談みたいです。(笑)
前作よりもやや間延びしてしまいましたが。(^^ゞ
心優しい奥さんを、夫を裏切っているだけのひとにしたくなかったので。^^