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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

姉貴、制服貸してっ! 2 ~ストッキングの穴~

2007年08月30日(Thu) 08:07:20

ただいまっ!
女の子にしては凛としすぎる声が、きょうも玄関にこだまする。
お、か、え、り、~・・・
姉に対して応える声は、対照的にうっすらどんよりとしていて。
低く濁ったその声色に、キミカは必要以上にリンとなっていた。
ちょっとお~!
まだ明るいうちからなに眠そうな声してんのよ~っ!
荷物いっぱいあるんだから、さっさとお迎えにでてきてちょうだいっ!

姉の厳命に、シュンイチは目をこすりこすり現れた。
まだ夕食もすんでいないのに。
気の早いことに、もうパジャマなんか着ちゃっている。
どーしたの?学校さぼったの?具合でもわるいの?
具合わるいの?なんて、訊いているくせに。
弟の顔色を気づかうふうはみじんもなく、姉は情け容赦なく弟にいちばん大きそうな箱を押しつけていた。
学校は行ったけど・・・さ。
そのあとが最悪・・・と言おうとして、シュンイチはじぶんの弁解の無力さをさとっている。
はいはい、わかりましたよ。運びゃいいんでしょ、運びゃあ・・・
ちょっとだけわれに返った足取りを階段に向けると、
粗末にあつかわないでよっ!大事な物が入っているんだからっ!
あくまでも厳しい叱声が、追いかけてきた。
わが姉ながら・・・人使いの荒れー女だ・・・
シュンイチは心のなかで舌打ちしたが、逆らうつもりはないらしかった。
今夜もきっと・・・
そう。両親が寝静まったあとに待ち受ける秘密の儀式・・・
ふつうは男が優位に立てそうなものなのに。
そっちじゃない。もっと強く。あ・・・そぅそぅ・・・
キミカの要求は日を追うほどにぐんぐんレベルをあげてくるのだ。

ようやく荷物を片づけると。さすがにシュンイチは姉をつかまえた。
  なにが入っているのさ?
  ひ・み・つ♪
かわいげもなくあっかんべぇをした姉は、用の済んだ弟を部屋から追い出した。

夜。
制服姿の女子がふたり、シーツの上で折り重なって。
激しい動きにベッドの堅牢な骨組みをぎしぎしときしませている。
女は、キミカ。
男は、姉の制服で女装したシュンイチ。

勉強疲れして伸びやかな脚をお行儀悪く机に乗せたキミカの携帯がチリリと鳴って。
着信したメッセージは”姉貴、制服貸して”。
キミカはふふん・・・とおばさん笑いを浮かべて、いそいそとクローゼットに向かったのだった。

ベッドの上、もうとっくに内股を割っているのに、姉貴はいつものようにしぶとかった。
  あんた、なかなか上手にならないわねっ。
こっちの気分が萎えるようなことを平気で口にしながら、
淫らに逆立った筋肉の張りが弱まると、抜け目なくしこしこと握り締めている。
  も!行儀悪い!やめなさいよねっ!
ハイソックスのふくらはぎに唇を当てられるの妙にいやがるのが、かえって面白くって。
シュンイチは興をそそられて、べろまで這わせてくる。
  うーん、もうっ。
キミカはしなやかに身体を伸縮させ、いつか弟のまさぐりに猫のように媚びていた。

荒れたベッドのうえ、無言の背中合わせ。
  ・・・激しかったね。
  ・・・そお?
  なにかあったの?
  あったといえば・・・
身体を合わせるようになってから、弟の気持ちの変化までもが手に取るように読めるようになっている。
鈍いシュンくんには、とうてい望むべくもなさそうだったが。
こっちが黙り込むと、シュンはじぶんから、語りにくいことを語り始める。

姉が帰ってくるだいぶまえ。
早くに家に戻って来ていたシュンイチは、かほりといっしょにいた。
かほりは、文化部員の女の子。
きょうはふたり、示し合わせてクラブ活動をサボっていた。
がらんどうの家のなか、いい年頃の女と男が差し向かい。
ところがところが、ぶきっちょな二人は向かい合わせにすらなることもなく、
てんでにシュンイチの本棚から好きな本を取り出して、勝手に読みふけっているばかりだった。
男女らしいことを、なにするわけでもない。
おぼこ娘なかほりとちがって、姉のおかげでひと通りの心得は持ってしまっているシュンイチなのに、
いつもひっそりと押し黙るだけの彼女には、手も足も出ないらしい。
シュンイチは勉強机のまえの椅子で、男の子にしてはカッコウのよい足を組んでいて。
かほりは畳のうえでおばーさん座りをして、古い科学雑誌をぱらぱらめくっている。
ゆるやかな刻が、それでもふたりには心地よいらしい。
男女の間柄・・・といっても、必ずしもセックスを介在させる必要のない場合もあるらしい。

学校で一日じゅう、いっしょにいても。
始業時から放課後まで、たったふた言しか口にしなかった日もある。
そんな彼女だから、会釈もなく家にあがりこんできてから表情を消して黙りこくったまま本を読みふけっていたとしても、シュンイチにはなんの違和感もなかったのだが。
そのうちふらりと立ち上がった彼女は、
  行くわね。
たったひと言、そう言い置いて、おもむろにシュンイチに背を向けたのだった。
うかつなことに、初めて気がついていた。
制服のスカートの下彼女が履いていたのが、いつもみたいに紺のハイソックスではなくて、薄っすらと透きとおる黒のストッキングなのを。

ふーん。
キミカは気のなさそうな相槌を打ちながら、それでも内心は興味津々らしい。
  それであなた・・・寝込んじゃったわけ?
  いやー、じつはそのあとの後日譚がありまして・・・
  あのねぇ、あなた。後日譚っていうのは、つぎの日以後のときに使うんでしょ?
  あっ、ゴメンゴメン。
国語の点は姉よりもよかったりするシュンイチとしたことが、今夜はどうかしているみたいだった。
頭を掻き掻き訂正すると、ぼそりと言った。
  彼女もういちど戻ってきて、破けたストッキングぶら下げて、オレに渡すんだもの。
こんどはキミカが、黙る番だった。

姉貴の血を吸うときは、あのひといつも首筋だよね?
オレのときもそうだし・・・脚を噛むのって、だれなんだろう?
それとも夕子さんの趣味が変わったわけ?
キミカはしばらく考え込んでいたが、
明日聞いてみてあげようか?
って言ったとたん、弟は腰を抜かさんばかりにびびっている。

あ・・・あ・・・あ・・・
体育館の裏手の雑木林のなか。
制服姿の少女がひとり、おなじ制服を着た女の子に抱きすくめられて、うなじを吸われている。
このごろではだれもが慣れっこになってしまっていて、
先生方までもが、そんな情景を見かけても、ちょっとだけ様子を窺うだけで、なにもなかったように通り過ぎてゆく。
冷静なユッコが血を吸いすぎて、相手の女の子が具合がわるくなる・・・ということはいちどもなかったし、
まして襲われる生徒が複数だと、そうなる危険はもっと少なくなるはずだった。
血を吸われていた女の子が魔の抱擁を抜け出すと。
心優しい女吸血鬼は、ちょっぴり乱れた彼女の髪を直してやる。
あら・・・
少女は嬉しそうにえくぼを滲ませて感謝のまなざしを投げると、
襟首にちょっぴりついたしずくを気にしぃしぃ、鏡を覗いておめかしをととのえている。
もうひとりは、キミカだった。
吸い取った血潮にうっとりしながらユッコが顔を近寄せると。
気丈にも、じぶんのほうから首筋を押しつけてやっていた。
ちゅ、ちゅ~うっ。
ひとしきり、血を吸わせると。
ありがと。
ユッコは肩にかかる黒髪をサラサラさせながら、恥らうように頬を染めている。
染めた頬に交うのも、女生徒たちから吸い取った血液だったりもするのだが。
おぞましさをまったく感じさせないのは、ユッコのはかなげな容姿のせいだけだろうか。
  ねー、ユッコ。ひとつ聞きたいんだけど。
現実的なキミカの声に、ユッコはハッと振り向いた。
もうひとりの女子は、込み入った話は苦手らしい。
こそこそとカバンを抱えてその場を離れていった。

スポーツで鍛えた浅黒い太ももが、ぴかぴかと黒光りしている。
  キミカ、健康そうだね・・・
自分にないものを秘めたクラスメイトを、ユッコはいつもうっとりと見あげるのだが。
ひざ下までぴっちりと引き伸ばした紺のハイソックスには、目がいかないらしい。
  あなた、脚も噛むことがあるの?
キミカの問いをユッコはふしぎそうな上目遣いで返している。
いつものキミカなら、それで笑っておわりにするのだが。
  弟の彼女のことなのよ~。
  あんた以外のやつに襲われたんじゃないかって、蒼ざめちゃって。
  きのうの夕方なんか、がっくりきてたわよ~。
すこしどすの利いた魅惑の低音を、ユッコはうっとりと耳にしていたけれど。
  あ・・・ごめんなさい。私言わなかったっけ?
いつも、こうなのだ。
好んで秘密を作る子。
ーーーサバサバしたボーイッシュな女の子が、フェミニンな服着て相手してくれるのが、いちばん理想。
そんなことすら黙っていて、すんでのところ灰になってしまうはずだったのだ。
  ハイソックスも、大好きよ。キミカが噛ませてくれるんなら、喜んで破っちゃう。
  でもね・・・
  真壁さんのばあいには、ちょっと違うの。
弟の彼女を他人行儀に苗字で呼ぶと、ユッコはちょっぴり黙り込んだ。
彼女にしては珍しく長い話をする時の、前触れだった。

さぁさぁ、ふたりして行って来なさいっ。
まるでお袋みたいだぜ・・・
シュンイチがこぼすくらい強引に、キミカに送り出されていた。
制服姿のかほりも、いっしょ。
ふたり並んで、家から追出されるようにして。
向かうのはほかでもない、ユッコの家。
彼女はと振り返ると。
いつもと変わらぬうっそりとした無表情で、清楚に長く垂らした黒い髪が、しずかなツヤを放っていた。
足許を染めるのは、きょうも薄っすらとした墨色のストッキング。
ストラップシューズのすき間からのぞく足の甲が、ひどく大人びた白さを滲ませていた。

いらっしゃい。
ゆったりとほほ笑んで出迎えたユッコは、いつものように伏目がち。
おじゃまします。
聞き取れないくらい低い声で返すかほりの様子も、いつもと変わらなかった。
かほりさんは、お紅茶?
問いもしないのに、彼女の好みを言い当てたユッコは、しばらくすると湯気のたったカップを三つ、お盆の上でカチャカチャ音を立てながら持って来た。
  お姉さんから・・・聞いた?
  ウン。びっくりだよ。
見比べるシュンイチのまえ、目まぜを交し合うふたりの少女のミステリアスな微笑は、うり二つにみえるほどだった。

夕べのベッドのうえ。
ねぇねぇ、あんたもらったんでしょ?あたしにも見せなさいよ。例のモノ。
無責任な興味をあらわにして、姉がせがんだのは。
誰かに噛まれて戻ってきたかほりがシュンイチにもたらした”お土産”だった。
目のまえでだらーん、と垂らして見せる。
こっちのむぞうさなしぐさに目を白黒させている弟のようすを横顔で楽しみながら、
つつっと走る伝線のあとを、指で追ってみる。
ここと、ここと・・・ここ。
ふーん。
こんなところまで、噛んだんだ。
ねー、ねー。かほりちゃん、アブナイかもよっって言ってやったときの、あいつの顔♪
いまごろもっと、見ものな顔しちゃっているのかな?
弟を彼女つきで送り出したあと。
ちっとも見ていない参考書をまえに、姉はひとり性格悪そうにニマニマと笑んでいる。
今夜はどんなふうに、可愛がってやろうかな。
陽焼けした素肌の下、いけない血がめぐり始めている。
机の下で組み合わせたふくらはぎが、ハイソックスのなかでじわじわ疼きはじめていた。

真星さんと、真壁さん。
ふたつの家は、近い家なの。
だからわたしとかほりちゃんとは、妙に波長が合うのよ。
だから、文化部の子でも、襲っちゃうわけ♪
それは、許してくれるよね?
珍しく饒舌になっているユッコが、なぜか眩しかった。
口紅を刷いているわけでもないのに鮮やかに紅い唇は。
オレの血を吸い、彼女の血をあやし、姉貴の血まで、浸している・・・
今その唇が、目のまえで。
よどみなく語り、開かれ、閉じている。
なにかの拍子に唇を舐める舌先が、ちろりと覗いたとき。
うわぐすりのように光る唾液が、魅きつけられるような引力をよぎらせる。
隣に座っているかほりも、おなじらしい。
赤い縁のメガネの奥で、なにを考えているのか。
制服のスカートのうえ、お行儀良く組み合わせた両手に、いつか力がこめられている。
きちんとそろえた黒ストッキングの脚は、血色のよくない彼女にしては珍しく、ジューシィなピンク色に透きとおっているではないか!
ユッコはこちらの顔色を伺いながら、狙いを定めたように、口を切る。
夕べこの子の血を吸ったのは、あたしじゃない・・・って言ったら、怒る?

え?・・・え?。。。い、いや、お、怒るだなんて・・・
不必要にどぎまぎしてしまっている様子を窺っているのは、ユッコだけではない。
あ、でも、彼女の意思がいちばんだよね?
タイミングを、はかっていたように。
かほりがぎこちなく、いつもは重たい唇をおもむろに開いた。
  あたし、吸われてみたい。
  えっ。
ユッコはうふっ・・・と笑っていた。じつにこれ見よがしなくらい、少女っぽい清純さを滲ませて。
  昨日はね。あたしが吸ったの。
  黒のストッキング履いた脚に噛みつくの、ひさしぶりだったし。
  とっても、愉しめたわよ♪
かほりもまんざらじゃ、ないらしい。
  かほりちゃん、あのあとシュンくんのところに寄ったのね?
  あなた、破けたストッキング、まだとってある?
  だいじにしなさいね。
  それ・・・彼女の気持ちなんだから。
どういうこと?・・・って、訊きかえすのは。
たぶん、愚問なのだろう。
すべてを呑み込めたわけではないけれど。
かほりが自分のことをいちばん気にしてくれているらしいこと。
ユッコ以外のほかのだれかが、かほりの血を欲しがっているらしいこと。
そこまではなんとか、すっかり血の巡りのわるくなった頭でも、理解することができた。

うちの父はね。
若い女の子の血が、好みなの。
わたしを、あちこち転校させて。
家に遊びに来させて。
気に入りのコができると、そっと呼び寄せさせて。
昨日かほりに履いてきてもらったみたいに、黒のストッキングで、来てもらって。
襲っちゃうのよ~。
肩をすくめて。小声になって。イタズラっぽく囁きかけるそのようすに。
怖気をふるうどころか、どうして昂ぶっちゃうんだろう?
姉貴の相手をするときにしか、盛り上がらなかったモノが。
いま、ズボンのなかでしきりにむくむくと、勃ち上がろうとしている。

どうやらこらえかねているらしいシュンイチのようすを、すぐに見抜きながら。
心優しい女吸血鬼は、親友の弟に、彼女の前で恥をかかせることまでは言おうとしなかった。
理解してくれる・・・かな?
と、言っただけで。
話をさきに、すすめるのだった。

おなじどうしの血だと・・・呼び合うのよね。
彼女の家は、代々、わたしたちの家の男たちに、女を差し出したの。
「女」って言葉が、ひどく耳に残った。
可憐で高貴な白く透きとおった頬をもつ少女の口から、野蛮なくらい露骨に発せられた
「女」
ということば。
隣のかほりは、どう思っているのだろう?
うちはだれも反対しないんだけど・・・シュンも賛成してくれるよね?
いつもと変わらない、ひっそりとした声色に。
  父のために、かほりに黒のストッキング、履いてきて欲しいの。
  ・・・できれば今夜。
たたみかけるような、ユッコのささやきに。
つい、ふらふらと、口走ってしまっていた。
かほりのストッキング破けるところ、見てもいい?
あっ、あっ、なに言っているんだオレ!?
あわてて口をふさごうとしたけれど、もう遅かった。
  見るんじゃないのよ。あなたも加わるのよ。
  ね?
まなざしを向けられたかほりは、彼のアブナイ性癖のことまで、聞かされてしまっているらしい。
  お姉さんの制服、借りられる?
  わたしのを貸してあげてもいいんだけど。
  キミカ先輩のやつのほうが、ぴったりくるよね?
姉の名前が、彼女の口から漏れたとき。
まるでもっと深いなにかをまで、見透かされたような気になって。
シュンイチはそっと、首をすくめたのだった。

深夜。
ふたり連れだって歩く、おそろいの制服姿の影ふたつ。
ひとりは、黒のストッキング。
もうひとりは、紺のハイソックス。
  感謝しなさいよね。わざわざ新品、おろしてあげたんだから。
えっへん。と威張りくさった姉貴。
いかめしく腕組みなんかしながら、おどおどと女子の制服に着替えていく弟のようすを、ひどく面白そうに見守っている。
ヘンじゃないよな。
サッカーの選手だって、ハイソックス履くものな。
必死で言い聞かせながら、人目に触れまいかと夜の闇を透かし見しながら歩くようすは、
遠めにもほほ笑ましかった。

通されたのは、寝室だった。
えっ!いきなりそうくるの?
さすがに立ちすくんだ、ハイソックス姿に。
初対面の吸血鬼は、長い白髪をツヤツヤと輝かせながら。
いらっしゃい。
あくまで紳士として、振舞っている。
  安心したまえ。
  きみがいま気にしているような不埒なまねを、今夜このお嬢さんにしかけるつもりはないのだから。
すべてを見透かされたようで、頭を掻くシュンイチ。
あれ?だれかのまえで、やっぱり頭掻いていなかったっけ?
  わたしが処女の生き血を好むのは・・・よく御存知だね?
  そう。きみの恋人も。処女のまま、味わわせていただくのだよ。
いつの間にか、背後に回っていた影が。
素早いしぐさで、シュンイチの両手を、きりりと後ろ手に結わえてしまっている。
きつ過ぎることもなく。ゆるまることもない束縛感が。
シュンイチをいっそう、ドキドキさせはじめた。
Mの血・・・ね。
後ろから囁くユッコの声に、ひと知れず頷いていた。
血を吸われていくうちに、いつの間にか彼女によってしみ込まされた毒が。
いつか彼を、恋人を襲われる苦痛から救っている。
かほりは楚々とした立ち姿を、血に飢えた黒衣の男のまえ、無防備にさらしている。
まるで、催眠術でもかけられてしまったように。
放心したように、立ちすくんで。
おとがいを、心もち仰のけて。
男にしては、細い指先が。
彼女のあごを、ぐいっと持ちあげて。
おもむろに慕い寄った影が、いつか濃紺の制服姿を、黒のマントのなかに包み込んでいた。
マントの裏地は、血のように赤い。
これから獲る、乙女の血潮のように・・・

ブログ拍手♪

2007年08月29日(Wed) 09:10:13

またまた拍手を、頂戴しました。
昨晩と、けさ。
おーるど・なんばぁに頂戴したのがウレしくて、記事にしました。&ちょっぴり不備が、あったので。

ひとつは、「悪戯坊主 8」。
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-130.html
由貴子さんが自分の血を目当てに現れた吸血少年にしっかり買い物の荷物もちをさせています。
しっかり「主婦」していますが、そのあとはちゃっかり「上気女房」も演じてしまっています。(^_^;)

もうひとつは意外や「再あっぷ紹介」。
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-413.html
びっくりでした。
それも、去年の七月のもの。

どーしてかな?って思ったんですが。
よく見ると。
このページ、過去のお話を紹介しているコーナーなのに、URLが抜けているんですね。^^;
あらすじ自体に、拍手を頂戴したのかもしれないですが。
これではお話にたどり着くことができない・・・(・_・;)
いまさらながら、なのですが。
リンクを入れておきました。
拍手をいただいたかた。
もしもお気が向かれましたなら。
どうかりんくをたどって本編も読んでやってくださいませ。m(__)m
多少なりとも、お目にとまったなら。
拍手などいただければ。
けっこー、いけるじゃん。と思っていただけるのでしたら。
かんそうなども、いただけると。
ちょっとこのごろ、自信喪失ぎみなみぎり。
とてもエネルギーになって、助かったりするのですが。A^^;
あつかましいお話で、すみませぬ。m(__)m

都会から来た少女 4 100人め

2007年08月28日(Tue) 08:12:25

あ・・・あ・・・あ・・・
藁のうえに、ひざをついて。
情けない声をあげたのは、意外にもあの性悪男のほうだった。
うずたかく積み重ねられた藁束のかげから覗いているのは、白い脚。
未成熟な稚なさをのこした輪郭を縁どっているのは、くしゃくしゃに脱げかかった白のハイソックス。
お目当ての少女には、すでに先客があったらしい。
ゴメンね。おじさま。
ついてきた彼氏に、どうしても、おねだりされちゃって・・・
済まなさそうに、神妙に肩をすぼめているのは。
雑木林でモノにした女の子。
ただひとりの男子なので、自費でべつの宿をとって。ついてきて。
べそを掻きながら林から出てきた恋人に、びっくり仰天して。
そうか。そういうことだったのか・・・
このままじゃ、みんな犯されちゃう。わたしのお友だちを、守って・・・
恋人の訴えに、われ知らず、うん。うん、と力づよく頷いていた。

百人め・・・と狙いを定めた少女は、すでに男の腕のなか。
スカートを脱がされて、あらわに開ききった太ももには、男が流させてきたのとおなじ、バラ色のしずくが光っていた。
ちっくしょう!よけいなことを、しやがって。
いきりたつ吸血鬼に、男の子は静かに言った。
数を誇るなんて、空しいよ。
きみに捨てられて泣いた女の子の数が、多いだけじゃないか。
どうせなら。たったのひとりでも・・・
しっとり抱ける子ができるといいのにね。
あぁぁぁぁぁぁぁ!
今年になってから二百五十夜めの夜。
その晩までに、百人の処女を犯そうと、村じゅうの乙女という乙女を狙ってきたというのに。
望みのたえた男は、あとも振り返らずに納屋を飛び出していた。
華燭の典を彩る灯・・・となるはずの薄明かりが、背中の後ろで忌々しく輝くのを、見届けもせずに。

百人目。
男は別人のように、にんまりとほくそ笑んでいる。
こまったひとだよ・・・きみというひとは。
男の子はがっくりため息をして、
吸血鬼の腕のなかで酔わされた妹の横顔を見守っている。
兄さんといっしょに行く・・・という妹を、とうとう振り切れないで、連れてきて。
巻き込んでしまった・・・
そんな想いに、意外なくらい後悔はなかった。
部屋の隅に脱ぎ捨てられた淡いブルーのパンティの主は、
さらけ出された腰を、心地よげにくねらせて。
兄にさえ見せてはならないはずの初めての舞いを、ぎこちなく舞っている。
ステップ代わりにつま先で、褥を軽く、ぴたぴたと叩きながら。
わかったよ。
男は少年をかえりみて。
しかしな。
ほかの九十九人が、気の毒じゃないか。
オレがさいごのさいごでしくじったとしたら・・・あの子たちが処女を喪ったことまで、空しくなってしまうのだから。
身勝手すぎる理屈に、少年は不平ひとつ鳴らそうとしないで。
恋人と妹とが、かわるがわる抱かれる光景を、生唾飲み込んで、見入っている。
きょうがほんとうの、二百五十夜だなんて。
数え間違いするなんて、そそっかしいや・・・
去っていった女学生の群れから離れたのは。
少年の恋人と、少年に始めて抱かれた少女。
ふたりの男。三人の少女。
入り乱れての夜は、刻の移ろいを忘れている。

都会から来た少女 3 99人め

2007年08月28日(Tue) 07:54:50

この子も、ダメか。
こちらも、いけない。
狙いすました合宿所には。
都会の制服に身を包んだ少女たちが。
初々しく澄んだはしゃぎ声を響かせていたけれど。
スキを見てモノにした少女たちは、だれもが生娘とは限らなかった。
怯えた顔をして、向こうから身をすり寄せてきて。
助けて。殺さないで・・・
吸血鬼愛好会なんです。あなたの敵じゃないから。
血をあげるから・・・
そういって、泣き濡れながら身を任せてくる少女ほど、
処女ではなかった!
くそ。
男はわけもなく、少女たちの制服を汚し、無軌道なままに性欲を発散してゆく。
見せかけだけの清純さが、かえって不純に思えたのだろう。
引率の先生は、未婚の女教師だったが。
もちろん、非処女。
飽きるほど噛み破ってしまった白のハイソックスのあと、
寝そべった脚線美に妖しく密着した肌色のナイロンストッキングは、たしかにひと味ちがって愉しめたけれど。
残るは、あとふたり・・・
あのときべそをかかせた少女の、ふたりの友だちは。
どうやらまだ、未経験らしかった。

ひとりは、野原で捕まえた。
ノート片手にひとり散策していたのを、待ち伏せて。
噂を聞いていたのだろう。
飛び上がって、逃げ出して。
野原の追いかけっこを、思い存分愉しむと。
雑木林のなかに、引きずり込んで。
木に縛りつけて。犯してしまった。
荒縄に縛られてあえぐセーラー服姿に、発情するほど酔い痴れながら・・・
学校名のイニシャルの飾り文字があしらわれたハイソックスは、初めての血潮に濡れて。
もの欲しげにまさぐる男の手の中で、しわくちゃになっていて。
女の子は、顔をしかめながらも。
もういちど、逢ってくれる?
あしたの晩が、さいごなの。
それとも、カナちゃんを連れてきてあげようか?
あの子、まだ処女みたいだから・・・
ふふふ・・・っと笑んだ悪戯っぽさは、どこか残酷にあどけなかった。

都会から来た少女2 98人め

2007年08月28日(Tue) 07:44:29

三人連れだって歩く、純白の制服姿。
見慣れない制服は、きっとすぐ近くに宿を取っている、都会の学校の女学生グループらしかった。
校則の厳しい学校なのだろう。
肩先までの黒髪は、そろって三つ編みに結い上げられている。
両手で提げた黒の鞄で、スカートの前を隠しながら。
ときにははしゃいだ笑い声さえ、立てながら。
揺れる肩先が。つやつやと輝く黒髪が。健康そうな、白い肌が。
遠目にしているこちらまでも、ピチピチとした初々しさを、さざ波のように伝えてくる。

ウフフ。ちょうど三人。
男は指折り数えて、女の子たちの頭数と比べっこしている。
さっき犯したばかりの少女の素肌の余韻に浸りながら。
口許にはまだ、吸い取ったばかりの生き血の残り香を秘めながら・・・
遠くから、声がした。
じゃあね。バイバイ・・・
手を振って別れを告げる少女たち。
軽やかで涼しげなセーラー服の後ろ姿。
男はひとりになったほうの少女のあとを、足音も立てずに尾(つ)けてゆく。

きゃっ。
蒼ざめて立ちすくんだ時には、もう遅かった。
少女は弱々しく手首を握られたまま、
男の定宿の納屋に、引きずり込まれてゆく。
まるで捕食するような、むさぼりに、か細い身体を震わせながら。
藁くずの舞い散る薄暗がりで。
少女の太ももは紅く濡れた。
ぬらぬらと光る血潮の輝きを。
そのまま白のハイソックスに浸していって。
男はふたたび、満足そうに。
涙を散らした少女の瞼に、慕わしげなキスをする。
うふふ。この子も、処女だ。
これで、九十八人め。
なにも知らない少女のまえ。
男は嬉しそうに、中指を折ってみせる。

それは・・・災難に遭いなすった。
背中を丸めた老婆は、べそをかきながら戻ってきた少女を、いたわるように背中をさすりながら。
都会に戻っても、黙っているがエエぞ。
母ごには、わしからそっと耳に入れておくでの。
いたわりのこもった祖母の言葉に、少女はいっそうしゃくりあげた。
殿御。殿御。
か弱きむすめを、しいたげたもうな・・・
夜中のことだった。
犯された少女の眠る家で。
老婆はひとり、虚空に声を送っている。
殿御。殿御。
わかっておろう。花嫁御寮を、たいせつにの・・・
闇のなかから、影が浮かび上がり、
影は音を忍ばせて、少女の眠る部屋の縁側に腰掛けて、なかをうかがい始めている。
白き紙にしみ込まされた罪深いしたたりを。
そのままこの子の体内に、そそぎつづけて。
罪を忘れさせてやるのじゃぞ。
老婆は背中を丸めたまま。
会釈を返してくる男に、もう振り向きもせずに。
遠い部屋のなかから洩れてくる声色が、かすかに甘さを交えたのを耳にすると。
ようやくほっと、息をついている。
これでよい。そもじは大人になるために、この村にたどり着いたのじゃから・・・

都会から来た少女 1 納屋の凌辱

2007年08月28日(Tue) 07:27:13

ちゅうっ・・・ちゅうっ・・・ずずず・・・っ
ナマナマしい吸血の音が、きょうも納屋から洩れてくる。
セーラー服の少女は、後ろ手にされて、柱に縛りつけられて。
恐怖もあらわな、蒼ざめた顔で。
あらぬかたを、一点に見つめたまま。
影を重ねてくる男に、無防備なうなじを噛まれていた。

襟首に走る白のラインが、不規則なバラ色のしずくにところどころ塗りつぶされて。
真っ白な夏服にも。長袖の手首にも。
ぽつりぽつりと、しずくを散らしている。
キュウ、キュウ、キュウ・・・
吸血の音の、規則正しさが。少女の慄えをそそっている。

ようやく牙を離した。
少女は力が抜けたように、とろんとなって。
縛られたままの姿勢を、がくりとくずしそうになる。
気付け薬代わりに囁かれた、きわどいささやきに。
背すじをふたたびしゃんとさせて、ただひと言。
「鬼だわ・・・」
と。
呟く声も、うつろだった。

ラクになるぞ。
わたしのここが、淋しがっているからね。
男のささやきは、未通女(おとめ)にとって。
たしかに「鬼」の、ささやきだった。
ずり下ろされるパンティが。
太ももまでの黒のストッキングの上から引き抜かれていって。
ぱさり・・・と、藁くずさらけの床に落とされるのを。
少女は恥ずかしそうに、悔しそうに、見おろしている。

ずり、ずり、ずり・・・と。
音がした・・・とかんじるのは、ほんとうに空耳だろうか?
縛られた柱に、お尻をこすりつけるようにして。
少女はあえぎながら、激しい上下動にその身を合わせてゆく。
ひときわつよく、キュッと閉ざされた瞼が。
制服のプリーツスカートのなかで遂げられたふしだらな罪を。
白い顔に初々しく、にじませている。

ごちそうさん。
ことを遂げると、男はにんまりと、笑みくずれながら。
力なく立ちすくむ少女のまえに、しゃがみ込んで。
こわばった脛に、ほっそりとした指をあてがって。
なぞるように、せり上げていって。
ストッキングのゴムをとらえると、器用にするするとずり下ろしてゆく。
片方。もう片方・・・
ふしだらに崩されながら、ストッキングを一本一本脚から抜き取られてゆくのを。
少女はもう、放心したまま見つめるばかり。
白い脛のすぐ横を、薄墨色のストッキングが、ねじれながら、ゆがみながら、引き抜かれていって。
そのあとを追いかけるように、バラ色のしたたりが、白い太ももを這いおりてゆく。
男は愉快そうに、追いかけっこを愉しむように。
わざとゆっくりと、ストッキングを引きおろしている。
おっとっと。あぶないあぶない。
血がつかないようにしないと・・・ね。

少女の脚から引き抜いた黒のストッキングを、
まるで見せびらかすように、目のまえにぶら下げて。
少女が目を伏せると、にたにたと笑みながら。
つま先をさぐって、自分の脚に通してゆく。
あ・・・
嫌悪に震える声色を、かえって愉しむように。
逞しい筋肉によろわれた脚には、やや寸足らずの靴下は。
ひざの上あたりまでしか引き上がらなかったけれど。
男はじゅうぶん、満足したようだ。

さぁ、おうちにお帰り。
帰ったらママに、しっかり報告するんだね。
”きょうから女になりました”とね。
ひとこと、”気持ちよかった・・・”って、囁いたら。
ママはきっと、”おめでとう♪”って、言ってくれるから。
からかうような男の口調に、なぜか頷いてしまったのは。
初めのうちは痛いだけだった激しい動きが。
女の股間を熱するほどに、さいごには感じてはならないゾクゾクとした疼きまで。
奥の奥まで、しみ込まされてしまったからだろうか。

夢から覚めたような足取りで、少女が立ち去ると。
男はふう・・・っ、と、充足しきった息をついで。
これで、九十七人目。
それは愉しげに、指折り数えている。

夜明けの悪戯

2007年08月27日(Mon) 08:18:50

やらしいよね。ゼッタイ、やらしいよね。
むき出しのフローリングの床に投げ出された脚は。
薄っすらとした墨色のナイロンに包まれて。
女学校の制服の下、白い脛がなまめかしく透きとおっている。
なまの唇が、慕い寄るようにして、吸いつけられて。
ねばねば・・・ねばねば・・・
ストッキングがよじれるほど、なすりつけられて。
ナマナマし過ぎるほど、真っ赤なべろが。
清楚なナイロンのうえを、これ見よがしにぬめってゆく。

あ・・・ヤラシイ・・・
少女はさすがに、眉をひそめて。
足首を抑えつけられた姿勢を、どうすることもできないで。
オトナっぽい脚の装いを、男のいたぶりにさらしてしまっている。
おじさん~。もぅ・・・ヒンシュクものだよ。
咎める口調に、よけいそそられるのか。
足の裏まで這わされたべろに、少女はクックッと笑いをこらえかねている。

噛んで・・・破っちゃって・・・
昂ぶりに声を途切らせながら、さし伸ばされた脚に。
いっそう力をこめて、吸いつけて。
ちゅうっ・・・ちゅうっ・・・ちゅうっ・・・
若々しい血液を抜き取る音とともに、
滲んだ裂け目が少しずつ、幅を広げてゆく。

どうかね・・・?いいなずけが処女の生き血を啜られる・・・という趣向は?
未成年者には、刺激強すぎですね・・・
少年もまた、昂ぶりに震える声を、傍らのささやきに重ねてゆく。
夜が明けたらあの少女は、きっとなにごともなかったように。
スキップするように、ハイソックスの足取りをはずませながら。
よぅ、顔色わるいね。寝不足っ!?
トーンの低い男言葉で、
気軽にぽんと肩を叩くのだろうか。

登校前に

2007年08月26日(Sun) 07:29:16

初々しげに結わえた、ツインテールの黒髪を。
セーラー服の肩先に、ゆらゆらさせて。
真っ白な夏服の胸元には。
光沢のある青のリボンを、わざと長めにたなびかせて。
ぴっちりアイロンのきいた濃紺のプリーツスカートを、重たげに揺らしながら。
薄墨色のストッキングに、白い脛を薄っすらと滲ませて。
キュッと浮き出た足首の下は、真新しいぴかぴかのストラップシューズ。
はた目にもなまめかしい脚を、むぞうさに乗ったハイチェアの下でぶらぶらさせている。

こちらからのしかかるようにして、寄り添ってくる男は。
早くも襟首から手を差し入れて、
真っ白な夏服の胸を、内側から波打たせながら。
時おりくすぐったそうに口許をひん曲げる少女の反応を、息がかかるほど間近で窺っている。
もう片方の手は、もっと露骨に、プリーツスカートの奥深く。
重たげなスカートを、腰のあたりまでたくし上げて。
なまめかしいストッキングの翳りのなかで、ぴちぴちはずむ太ももを。
あらわに惜しげもなく、さらけ出している。

ふしだらなカッコウを、恥ずかしがるふうもなく。
少女は所在なげに小指をねぶりながら。
男の所作に身を任せてゆく。
こすりあげるほど、しつように指を食い込まされた太ももの奥。
パンティのなかが、じわりと熱い湿りを帯びてくると。
男はさもあろう、と、卑猥な唇をゆがませて。
ゆがめたその唇で、少女のうなじをねぶりはじめる。
  ァ・・・いやぁん。
少女はけだるげに、男の唇を避けようとしたけれど。
躍起になって男を拒んでいない証拠に。
もう、じくじくとしたよだれを、首筋に光らせてしまっている。

うふふふ・・・ひひひ。
男は卑猥な笑いを洩らしながら。
しつような手つきを、止めようとしないで。
さいごにズボンのすき間からつかみ出した魔羅を、握らせて。
ぶきっちょな指に、つままれるまま。
しばらくうっとりとした顔つきで、揉みしごかせていたけれど。
やおら少女を抑えつけると。
濃紺のプリーツスカートの裏地に、先端をこすりつけて。
どろりと濁った白いほとびを、湯気がたつかと思うほど、吐き出してしまっている。
もぅ。
口を尖らせて見あげる少女に、もういちど。
唇を重ねてキスを奪うと。
男はゆるめたネクタイをしめ直して。
なに食わぬ顔で立ち去ってゆく。
清楚なセーラー服姿に不似合いな、卑猥な仕打ちだったのに。
少女は顔色ひとつ、変えないで。
何事もなかったかのように、身づくろいをして、スカートの裏地を拭っている。


見たか?見たさ。
いちぶしじゅうを見届けた、壁の節穴から顔をあげると。
男ふたりは、目交ぜをかわして。
ひとりはそのまま、そこにとどまって。
もうひとりは、昂ぶった顔つきで、いそいそと少女の居場所にまわる。
鞄を取って立ち去りかけた少女に、通せんぼをすると。
  またぁ?
少女はあからさまな声をして。あきれたように、頬をふくらませて。
それでも男に促されるまま。
藁の褥に、投げ出すように尻もちをつく。

むぞうさに引き伸ばした脚に。
男はむしゃぶりつくように、唇を這わせて。
発育の良い脛を薄っすらと翳らせているストッキングを、ことさらいたぶるように、波立てて。
だめー。
少女の無邪気な制止に、ますます欲情をたぎらせて。
紙のようになよなよとした薄手のストッキングを、踏みしだくように、いたぶって。
ちりちり裂け目を滲ませてゆく。
学校、行けなくなっちゃうじゃん。
少女がふくれっ面をすると。
行けなくたって、いいじゃん。
口まねで応えながら。
壁の向こうの視線に、臆面もなく。のしかかってゆく。
男のあらわな体重を、払いのけかねて。
少女は思わず、ひざを崩した。
まくりあげられた濃紺のスカートから覗いた、黒ストッキングの脚。
太ももの上まで引き上げられた、真っ赤な留めゴム。
留めゴムに区切られたむき出しの太ももの白さが、
壁の向こうでゾクゾクしながら覗くものの目を、眩く射た。
きゃっ。
思わず立てひざをして、キュッと引き締まったふくらはぎの筋肉が。
ストッキングのなか、しなやかに浮きあがる。
振り乱される、ツインテール。
鮮やかな黒髪の後れ毛をかきのけられながら。
朱い唇をヌメヌメ這わされる、透きとおるほど白い首筋。
ふしだらに乱れた、セーラー服の襟首。
淫らに歪められてゆく、襟首の白い三本線・・・

九時半。
始業時間は、とうにすぎている。
藁のうえ、投げ出され留め金が外れた鞄からは。
きょうは開かれることのなくなった教科書や参考書。
尖った先端を金色に輝かせた万年筆。
知性と気品を思わせる付属物が。
藁のうえの稚なくて露骨な振る舞いと。
どうしても、重なり合ってこない。
ざわ、ざわ、ざわ、ざわ。
蹴散らされる藁束のなか。
目のさめる純白と濃紺のコントラストは、みるみる黄ばんだ藁くずにまみれてゆく。

男が立ち上がって、ズボンについた藁を払うと。
少女もだまって、向かい合わせに立ち上がる。
壁の向こうの視線を知ってか知らずか。
まるで思わせぶりなポーズで、荒々しく踏みしだくような口づけを受け止めて。
ぶきっちょでも、しつこいくらい、これ見よがしに応えていった。
脱げたスカートは、少女の足許で、魂が抜けたように、ひしゃげていて。
すらりとした脚線美が、薄闇のなか鮮やかに浮き上がる。
黒のストッキングは、片方だけずり落ちていて。
ふしだらにたるんで、よじれている。
もう片方のストッキングは、太もものあたりまで、ぴっちりと引き伸ばされていて。
まだ女学生らしい淑やかさを保っているように見えたけれど。
ちらと映った向こう側には、白い濁りを光らせてしまっていた。

男がわれにかえって。しょうしょう決まり悪げに立ち去ると。
も~いいよ。
まるで隠れんぼでもするような、無邪気な声で。
少女は壁の向こうに笑いかける。
頭を掻き掻きあらわれた、さいごの男に。
卒業したら、結婚するんだよねっ。
からかうように、声をはずませた。
お嫁入り前にこんなこと・・・覚えちゃってよかったのかな~?
挑発するような少女の声色を。
婚約者は唇を重ねて、封じてゆく。
しばしの沈黙のあと。さすがに息をはずませながら。
満足だった?お兄ちゃん・・・
少女はだれにたいするよりもうちとけて、いつもの呼び名で、イタズラッぽく小首をかしげる。
よくできたね。・・・愉しかった?
ウン。おじさんたち・・・ふたりともキモチよかったよ。
たくまぬ少女の言い草に。
男は我を忘れて抱きしめた。
藁くずがまた、狭い小屋のなか舞い散っている。

女学生をいいなずけにした、そのすぐあとに。
お嬢さんの制服を、脱がせたい。
黒のストッキングを、悪戯したい。
花婿に覗かれながら、犯したい・・・
身内から囁かれた、けしからぬ申し出に。
ひとつひとつ、律儀に応えてしまっていた。
祝言を挙げるまえ。
身内の男たち、ひとりひとりと仲良くなることが。
この家に課せられたしきたりだったけれど。
旧家の跡取りとして育てられた男は、そんなまがまがしいしきたりを。
むしろ愉しげに、受け入れていた。
嫁入りまえに、きみが犯すあやまちを。
かげで覗いても、かまわないね?
熱っぽく震える囁きに。
まだ子どもっぽさを残した悪戯心から。
少女は伸びやかに、頷き返していた。
お嫁さんになってからも。おじさんたちと仲良くしちゃおうかなっ。
初々しい恋人の囁きに。
男はくすぐったそうに、頷き返している。


あとがき
ある家では代々、結納を交わした後。
若い息子は嫁になる少女を、身内のだれかれに抱かせて仲良くさせるしきたりになっていたようです。
まじめな一方な婦人なら、恥じらいをもって迎えるであろうことを。
小悪魔な少女はかえって、愉しんで。
夫になるひとを、挑発しているようです。
いいお嫁さんになりそうですね。^^

汚される・・・

2007年08月26日(Sun) 07:26:00

ベンチのうえに、抑えつけられて。
こじ開けるようにして、唇を吸われて。
汗臭いほどの男の匂いを、喉の奥にまで、吹き込まれて。
ブラウスがもみくちゃになるほど、胸元を深くまさぐられて。
上品なスカートを、太ももが見えるほど、まくりあげられて。
女にされてゆく。
そんな予感を、秘めながら。
そうされてはならない。
堅く、堅く、想いながら。
きっと、されてしまう。
まがまがしい予感に、慄えながら。
展翅板のうえの蝶のように、手足を広げられてゆく。

こちらから注いでいる、じりじりとした視線を、めいっぱい感じながら。
感じてしまっても、のけぞることも。もだえることも、できないで。
敏感になってしまった素肌に、手管に長けたまさぐりを、ただひたすら、まさぐりいれられてゆく。
相手はわたしより、若い男。
おそらく女性経験のあまりない彼は、わなわな昂ぶりながら、息を弾ませて、
稚拙な手つきは、それでもしつように白い肌を撫でつづけ、
すり込まされた欲情に、はだけた胸がみるみるピンク色に染まってゆく。
あぁ・・・
とうとう、支配下に置かれてしまうのか。
あれはわたしの、妻になるはずだったひとなのに。

そう。
彼女はわたしの、婚約者。
彼はわたしの血を吸い取った吸血鬼。
デートの夜。行きずりの公園で。
わたしに取りついた彼は、ほとんど一瞬で。
体内に流れる血を、ほとんど一滴あまさず吸い取ってしまって。
折り目正しいスーツ姿があわてふためくさまに、引き入れられるようにして。
彼女を支配して、洗脳して、捕食してゆく。
むたいに食い込まれた牙は。
折り目正しい衣裳に、純潔な血潮を撥ねかせて。
じょじょに注ぎ込まれた毒液は。
潔癖な理性を、いびつな惑いにまみれさせて。
衣裳のすき間から忍ばされた、誘惑は。
潔癖な理性を、あとかたもなく突き崩していった。

あぁ。いけない・・・
淡いピンクを刷いた唇が、薄っすらとほほ笑んだ。
迫ってくる胸をあれほど拒んでいた細い腕が、いつの間にか背中にまわされていた。
しとやかにすぼめたひざ小僧は、いまやむぞうさにおっ広げられていて。
ストッキングをよぎる気品ある光沢は、てらてらとぬめっこい唾液の輝きに塗りつぶされる。

脱ぎ捨てられた、純白のジャケット。
腰までたくし上げられた、紺色のタイトスカート。
草地に転がった、ハイヒール。
みるかげもなく破かれて、ひざ下までずり落ちたストッキング。
そのいずれもが。
彼女の堕落を装飾してゆく。
清楚な衣裳のすき間から、つややかな肌をにじませた美しい獲物は。
男の腕のなか、初めてメスのおらびをあげている。

わたしとおなじように、生き血を吸い取られて。
わたしの目のまえで、純潔を堕とされて。
たぶらかされたわたしは、促されるまま。
未来の花嫁を彼の支配下に置くことを、切望させられる。

それからどれほどの刻が、経ったことか。
おなじ公園にいるのは、仲睦まじい老夫婦となったわたし達。
  ちょうどこのへんだったわね。楽しかったわね。
  痛かったんですよ。処女でしたから。
  でも、あなたが見ていて、なぜか余計に大胆になっちゃった。
  もう、時効ですから。そろそろ白状なさったら?
  ・・・愉しんでいらしたでしょ?
  エエ、わたしも、愉しんでいましたよ。
  でもあれからあなたは、人が変わったように男らしくなって。
  生涯わたしのことを、守ってくれた。
  わざと知らないふり、してたでしょう?
  わたしが真夜中、此処に散歩にきたことを。
  ええ、ええ。ときどき逢っていたんですよ。
  とっても、愉しかった♪
  あなたに悪いと思いながら。
  けっしてやめることのできなかった過ち。
  でも・・・ほんとうに愛していたのは、あなただけ。
  それがわかったから。彼はつきものが落ちるようにして、わたしから離れていったわ。
妻の独り言を、夢見心地に耳にしているわたし。
そう、あれはもう風化した、いまでもほろ苦く疼く、遠い思い出。
わたしたちに激しい夢を見せつけたあの吸血鬼の青年は、いまもどこかで。
若いカップルを狙っているのだろうか?


あとがき
う~ん。このごろしょうしょう、カゲキですねぇ。^^;
今朝は婚約者を汚される話をふたつ、あっぷしましたが。
こちらのほうが、オトナな女性でしょうか?

村の夜まつり

2007年08月25日(Sat) 11:43:59

ユウくん、いるぅ?
澄んだ声が、甘えたっぷりの媚びを帯びて。
ユウのアパートの玄関に響いたのは。
雨上がりの午後だった。
声の主を、確かめるまでもない。
幼いころから、ずっと仲良しのカナエだった。
なん年かまえ、ユウのなみなみならぬ好意に気づきながら、かれの幼馴染みのミチヤのもとに嫁いでいった。
それいらい。
彼女が独りで訪ねてくるなど、想像することさえできなかったのに。
なぜか、開いたドアに寄りかかるようにして。
いま、目のまえで。甘えた目線を送ってくる。
真っ白なワンピースを、泥まみれにさせたまま・・・

おいっ!どうしたんだっ!?なにがあったんだ!!
抱きかかえて肩を揺らしたときには。
カナエは、もう薄ぼんやりとしてしまって。
なにを問われても、どんなに揺すぶられても。
ふらふらとした笑みで、呆けたように応えるばかりだった。
彼女の身を、兇暴な異変が通りすぎたのはあきらかだ。
それも、夫の手によってではない。
認めたくない。けれども、認めざるを得ない。
ワンピースの胸ぐりはわずかに裂け、ブラジャーのストラップが切れて肩先にへばりついているのが覗いていたし、
泥だらけのすそは、かすかに血を滲ませていて、どうやら脱がされたものをもういちど履きなおしたらしいストッキングは、みるかげもなく引き破られている。

待ってろ。いま、あいつを呼ぶから。
よばないで・・・
そのときだけは、せつじつな目で。
はじめて、まともな反応がかえってきた。
辱めを受けて、醜く汚れた姿を夫に見せたくない。
まっすぐになった視線が、ありありとそう語っている。
どうすればいいんだ・・・?
だいじょうぶ。すこし休ませて。落ち着いたらすぐに、ここから出ていくから。
―――冗談じゃない。
こんなニュートラルな状態で、家から出せるだろうか?
ふらふらと放心状態のままよろめき出て行ったら。
なにかをしたと疑われるのは、ユウのほうではないか。
それ以前に。
傷ついたカナエを目にした瞬間から。
かわらぬいとおしさが、ユウの胸にこみ上げてきたのだった。
ともかくも。
カナエはまだ、土間にうずくまっている。
ユウのやるべきことは、シャワーと洗濯の用意。
それからなによりも、彼女を寝ませるべき布団をのべること。

羽毛にくるまれた雛鳥のように。
眠りこけたカナエは、毛布を隙なく身体に巻きつけて。
巻かれていることが安心・・・といわんばかりに身を縮こまらせて。
湯あがりの身を、布団に横たえている。
独り暮らしのユウには、布団はひと組しか持ち合わせがない。
その布団のうえで、いっしょに戯れることを。
なんど、思い描いたかわからない。
想像の一半は、たしかに現実になっている・・・といえるのだが。
もちろんユウの気分は、ちっとも浮き立たなかった。

いったいだれにやられたんだ?
そんな想像がまがまがしく、ぐるぐると頭の中を渦巻いている。
どんなふうに、ねじ伏せられて。
どんなふうに、身体を開かされて。
叫びもしたろうし、泣きもしただろう。
身をよじっていやがる華奢な身体を否応なく押し開いていった鬼畜どもは、
下卑たしぐさと野卑な哂いとで、ユウの永遠の天使を踏みにじっていったのだろうか。
そう思うと、矢も盾もたまらなくなって。
周りじゅうのものを、端からぶち壊してやりたくなるのだった。
やっぱりヤツに、連絡すべきだ。
カナエがようやく安らかな眠り―――それは極度の疲労と緊張から解放されることでようやくもたらされたものだったのだが―――についたのをしおに、彼は決然と受話器をとった。

ユウの介抱の見返りに振舞われたのは、鉄拳だった。
このヤロウ!カナエに何しやがったんだ。
アパートに躍りこむようにして、眠りこけた妻と干された服とを見てとると、
カナエの夫のミチヤはこぶしを握りしめ、衝動的に繰り出していた。
突然の反撃に、無防備だったユウはひとたまりもなく吹っ飛んだ。
カナエが突然あらわれて、泥だらけの姿で助けを求めてきた・・・そんな話はてんから信じてもらえなかったのだ。
カナエがこんなふうになったのは、お前のせいだ。
行きずりにカナエをつかまえて、アパートに引きずり込んで、手ごめにしたんだろう、というのである。
無理もなかった。
カナエはユウを振ってから、夫のミチヤがユウのところに顔を出す時でさえも、いちどもユウに会おうとはしなかったのだから。

ミチヤの理不尽な暴力を、ユウは立ち尽くしたまま受けつづけていた。
そうであれば、どれほどよかっただろう。
心の天使でありつづけた女を、どこの誰とも知れない屑どもの自由にされた・・・などという事実が消えるのであれば。
罪を一身に背負っても、ぜんぜんかまわなかったのだ。
思い切り繰り出されるパンチが、痛くないわけはない。
じじつ、唇は裂けて血を滲ませて、頬はたちまち感覚がなくなるほど腫れあがって、
ハンマーのように容赦ない激痛は、一撃見舞われるごとに、目がくらむほどだった。
けれど、起こってしまった現実にくらべれば、そんなものは蚊に刺されたほどでもなかったのだ。
カナエを犯したい。
それを心のどこかで望んでいたのも、事実だったのだから。
いや、むしろ。
どれほどそれを、望んでいただろう。
ミチヤとはそのままずっと竹馬の友ではあったけれど。
それとこれとは、彼の中ではもう別次元の問題になっていたのだ。

はぁ。はぁ。はぁ。
さすがにミチヤも、疲れたらしい。
気の済んだようすでは、とうていなかったけれど。
ともかくも、鉄拳をふるうのをやめた。
目は、まだ怒りに燃えていて、どうしてかかってこないのだ?そう問うているようだった。
やめて。
昂ぶった耳にはほとんど聞き逃されてしまいそうなほどにか細い声が、男ふたりに絶大な変化をもたらした。
雷にでも打たれたように振り返るふたつの顔の、どちらに応えるともなく。
はっきりと目を見開いた女は、ちいさな唇から、こんどははっきりとした声色を洩らす。
ユウじゃない。
妻のひと言が、夫をほんとうにだまらせていた。

買い物帰りのところだった。
その見慣れない若い男の三人組は、エンジン音を轟かせたバイクにまたがっていて、
道を変えようか、と、ちょっと逡巡した彼女をみとめると、
ヘルメットを放り出して、つかみかかってきた。
不幸にも、周囲に人影はなかった。
彼女はたちまち手近な雑木林に連れ込まれて、暴行された。
暴行にさきだって振るわれた抵抗の意思を奪うための容赦のない平手打ちと、無造作に投げ込まれたぬかるみに浸ったぬるぬるとした感触が、恥辱をいっそうたしかなものにした。
男どもは欲望を果たすと、せせら笑いを残して、立ち去った。
夜は野犬の立ち回る、奥行きの深い森である。
見つかれば、命にかかわるかもしれなかった。
立ち上がるのさえ容易でないほどの打撃を受けながらも、彼女がユウのところにたどり着いたのは。
彼のアパートが近かった・・・というよりも。
なにかがいっしんに、彼女の身を引きずっていった・・・としかいいようがなかった。
そのことだけは、ついに彼女も口にしなかったのだけれども。

バイクの三人組、だな?
ユウの瞳に、兇暴な光が宿った。
おねがい。もう乱暴はやめて。
女はきっぱりと、ユウの復讐を斥けたが。
ユウはそれには応えずに。
彼女を動かすのは、まだむりだ。あんたは残って、介抱してやってくれ。
よそ者のことだ。ここにあがりこんでこないとも限らない。
ぜったい、このひとの手を放すんじゃないぞ。
影のように、ゆらり・・・とよろめきながら。
彼は玄関に向かおうとした。
待てよ・・・
ミチヤは部屋の外で、彼を呼び止めた。
  吸って行けよ。
  いいのか?
みじかいやりとりのあと。
ユウはミチヤの首筋に唇を吸いつける。
  お前に疑られたのが、いちばんこたえたよ。
  いまので、帳消しな。
  あぁ・・・
男だちの囁きは、カナエに聞えないように小声で交わされる。

戻った。
ひと声、発すると。
出て行ったときと、おなじように。
アパートの主は、ゆらり・・・と、影を揺らした。
ミチヤによってつけられた顔面の疵が、いくらかよけいに多くなっているようだったが。
これでやつらは、にどと吹聴できない。
引きつらせた頬に、さすがに若い夫婦は戦慄した。
窓の外、はるかに望む谷間は、とうに夜の闇におおわれていたが。
谷底からチロチロと、焔があがっている。
ここからは、小さくしか見えないのだが。
かなりの火勢であることはあきらかだった。
あすこなら、どこにも迷惑はかかるまい?
あるじもろとも投げ込まれた、獣どもの愛馬は、自らの燃料を焔に変えて、すべてを葬り去ってゆく。

カナエはだいじょうぶか?
まだ・・・正気ではない。
誤解で振るった暴力への悔いからか。
汚された妻に対する自責からか。
ブスッと応える背中が、ひどくやるせなさそうだった。
こいつ、ほんとうはお前のことが、好きだったんだ。
  お前、言っていなかったんだな?じぶんの正体を?
  あぁ・・・
  オレだって、周りのだれだって、知っていたのに。あいつには、言わなかったのか?
どんなに本人が、口にしなくても。
そういううわさは、かならず耳に入るはずなのに。
  あいつの家。吸血鬼の家なんだぞ。
そう囁いたときのカナエのびっくりした表情が、忘れられない。
幼馴染を売るようなことを告げてから一週間経って。女はミチヤの求婚を許したのだった。
  手を貸してくれ。
  え・・・?
ミチヤはあきらかに、意思を秘めている。
さっき語ったうわ言を、なんとしても忘れさせてやりたい。

幸せな幻影だった。
ふたりの男が、入れ替わり立ち替わり、カナエの肢体に挑みかかってくる。
どちらも、カナエがもっとも愛した男たち。
え・・・そんな。
カナエは恥じらい、とっさに身を硬くする。
けれどもふたりの若者は、カナエの白い肌を、食い入るほどに見つめながら。
それでも、仲の良い犬ころが、餌を分け合うように。
たがいに順番を、ゆずりあって。
ひとりは胸を、わしづかみにして。
もうひとりは太ももを、まさぐりながら。
しんから慕わしげに、逞しい胸をすり寄せてくる。
ひとりの女が、複数の男を相手にすることは。
古い因習のまつわるこの村では、けっして珍しいことではなかったのだ。
もちろんそれは、女への祝福や愛敬の念をこめてされる、最高の儀礼。
間違っても、辱めたり、もてあそんだりするためのものではない。
夜祭り。
そう呼ばれる密かな宴は。
そうそうだれの身にも、訪れるものではない。
ある家では、夫と舅とが、語らって。
またある家では、祝言間近の娘を、父と兄と、花婿までが示し合わせて。
血の交わりを濃くするように、おこなわれる。
けれども今夜のように。
ひとりの女をふたりの男が、ひとしく愛してしまったときも。
仲良しでい続けるために。
ひとりは、花婿に。ひとりは、密夫に。役割を分け合って。
愛する女を、分かち合おうとする。

そうだったんだ。
買い物帰りに、ふたり示し合わせて。
わざとわたしを、泥だらけにして。いつもと違うんだ、って、わからせてくれて。
さいしょに姦ったのは、ユウ。つぎに迎え入れたのは、ミチヤ。
ふたり、どちらがまさるともなく、愛し抜いてくれて。
それだけでは、こと足りずに、いままたユウのアパートに連れ込んで、犯されている。
しあわせ・・・
花びらのような女の口許から。
うつろに酔った歓びを耳にして。
親友は安堵したように、夫をかえりみた。
夫も、安堵したように、笑って応えて。
イタズラっぽく、もういちど・・・と。幼馴染みをうながしている。


あとがき
暴力シーンは、むしろ大嫌いだったりするのですが。
意外にも、こんなお話になってしまいました。(^^ゞ
輪姦・・・という行為は。ほんらいマガマガしいものですが。
そのマガマガしさに、もう一段深い奥底を忍ばせると。
淫らな極彩色を、あざやかに放つようです。
前半と後半。どちらも輪姦にはかわりないのですが。
違いは・・・おわかりいただけますよね?

田舎からの訪問客

2007年08月25日(Sat) 11:34:23

1.プロローグ 和朗の独白
田舎から、あいつが出てくるという。
年齢不詳。はたちの若者にみえるときもあれば、とうに定年をすぎた爺さんのように老け込んでいるときもある。
けれどもどういうわけか、我が家で一泊していくと。
昨晩どんなに年寄りじみてみえたとしても、見違えるほど活き活き、ピチピチとして、嬉しそうに帰っていきやがるんだ。
え?どういう関係かって・・・?
それがとんと、想い出せない。
自分の係累はもとより、女房の知り合いのことも、けっこうこと細かに知っていることが、オレの自慢なのだが・・・
いったいどっちの関係で、あいつを泊めるようになったんだっけ・・・?

2.到着 男のメモ帳から
20:00 やっと目的地に到着。
喉をうるおしたいのをぐっとこらえて、ネオン街に背を向ける。
あまり遅くなると、彼も彼女も待ちくたびれるだろうから。
郊外まで電車でかなり入り込んで、私のことなどだれ一人知らない街は、ほっとする。
いや、いや。ほんとうは、あのふたりだけは。知っているはずなのだが。
あすの朝、ここを発つまでには。
ダンナの記憶は、消しておいてあげなくちゃね。

3.歓迎 和朗の独白
やぁ、しばらく。
だと。
なにをなれなれしく・・・って言いたいのを、グッとこらえて。
  いつまでも滞在かね?
つとめて優しく、訊いてみる。
  今回はちょっと、時間が取れなくて。
いかにも申し訳なさそうな口調だが。こっちにすりゃ、おおいに好都合だ。
  あすの朝、さっそく帰らなくちゃならないんですよ。
小首をかしげた顔つきが、かなり残念そうだが。
オレは同情なんかしてやらない。
  そんなに忙しいんなら、そもそも来なくたってよかったのに。
しまった。
思わずホンネを吐いてしまった。
けれどもやつは、正反対の解釈をしたらしい。
  すみません。それは怒られちゃいますよね。
  もっと時間をとれれば、ほんとうによかったんだけど。
おいおい・・・
  こんどは前々から、予定をたっぷり取って、一週間くらいお邪魔できるようにしますよ。
だと。
だ・か・ら! きみは招かざる客なんだって・・・
オレのつくった渋面に、気づかぬわけはないはずなのに。
やつは、かんたんにうけ流して。
こともなげに、ほざいたものだ。
素足だと、落ち着きませんね。奥さんのストッキング、貸してもらえないですか?

4.男のメモから
首尾よくダンナから、理恵のストッキングをゲットした。
ちょっと履き古したものらしい。
ひっかけた跡が、横ひと筋のひきつれになって残っていて。
それがいく筋か、つつっと走っている。
理恵といっしょに、いるみたいだ。
悪いね、ご主人。けれどもあんたの奥さんの履き物を、こうしてなかからいたぶるのが。
私のいけない好みなのだよ。^^

5.饗応 和朗の独白
お食事、できましたよお。
女房の理恵が、やけにのどやかな声をして、客人のいる部屋に声を投げた。
おいおい、あんなやつに親切にするこた、ねぇんだ。
つい伝法に、いってしまいたくなるのは。
女房がなんとなく、やつに気がありそうだからか。
あ、いけねぇ。そういう想像すると、腹が痛くなってくる・・・
かかぁの浮気なんて、考えただけで虫唾がはしるからな。
虫唾が走る・・・といえば。
オレにねだった女房のストッキングを、やつは自分で履いていやがった。
寒い季節でもあるまいに。
それになにを好んで女もののストッキングなんか、履きやがるんだ?
オレへのあてつけ?
いやいや・・・も少しようすを、見てやろう。

食卓につくと、料理を置いてあるのは、二食分。
え?
  ほらあなた。早く食べないと、さめちゃうわよ。
・・・ってことは、ひとつはオレの分。
で、理恵のやつが遠慮して夕食を食べない・・・ってことは、ありえない。
じゃ~、あいつの分は・・・?
  あら。あのひとのお食事?
理恵はオレの心中を見通したように、誇らしげに肩をそびやかして。
とんでもないことを口走りやがった。
  あたしから、いただくのよ。
えっ?どういうことだ?それ・・・
あーん、って口あけさせて、スプーンを運んでやるとでもいうのだろうか?
ふと後ろを振り返ると。ぎくりとした。
やつがいつの間にか、音も立てないで背後に控えていたのだから。
  わたしの夕食は、ご心配なく。
  今夜は奥さんから直接、生き血をいただきますから。
えっ?えっ?えっ?
理恵の身体から、生き血をとる・・・って?
目を白黒させているオレの反応を、やつはもてあそぶみたいに、楽しげに。
ことさら意外そうにして。
  えっ?だって・・・今夜のお目当ては、奥さんの生き血なんですから。
こいつ、吸血鬼・・・?
すがるように、女房のほうを振り向くと。
  あらぁ。あたしの血をお望みなのぉ?
女房のやつ。ことさらに、しなを作りやがって。
まんざらでもない、ようすなのだ。
  よろしいですわよ。じゃ、少~しだけ ね♪
  あなた、いいでしょ?ちょっとくらい肌を吸わせたからって。
  ヘンな嫉妬なんか、感じないわよね?
  あ ちょっとくらい えっちなこと されちゃうかも。
  でも、でも。平気ですよ。
  ・・・若いコなんかに、負けないんですからね。
女房はやつと腕を組んで、やつの寝室へと背を向けてゆく。
ひざ下までぴっちり引き伸ばしたハイソックスが、これ見よがしに、
女房の足許でいつにない光沢をきらつかせていた。
は、はぁ~っ。
オレは自分が血を抜かれたような気分になって、その場にくたくたと崩れてしまった。

6.エピローグ 記憶の彼方
あくる朝、和朗が目ざめたのは、いつものベッドだった。
だいぶ寝過ごしてしまったらしい。
妻の理恵はベランダで鼻唄交じりに、洗濯物を干している。
頭が軽く、痛いのは。夕べ酒を飲んだせいらしい。
あんまり記憶がないのは、二日酔いの証拠だった。
  あれ?夕べだれか来なかったっけ?
  えー?ふたりで晩ご飯、食べたじゃない。
台所を見ると、洗いあげたいつもの食器が、ちょうどふた組。
だれか来ていたような気がするんだがなぁ・・・
和朗はいつもの週末のように、頭を掻き掻き、けだるい足取りを洗面台に向けた。
彼はなにも、気づいていない。
裸足でベランダで立ち働く妻のふくらはぎに、かすかな赤い痕がふたつならんでいるのも。
そもそも裸足になったのは、履いていたストッキングを脱がされたためだということも。
何足めか、履き替えたストッキングを、やっぱり噛み破られて。
動かぬ証拠を残すまいとした吸血鬼は、かれの女房の脚から抜き取って、せしめていったのだ。
さいしょに履いていたななめ模様のハイソックスを、半ズボンの下自慢げに自分の脚に通しながら。

誘惑する闇

2007年08月25日(Sat) 11:00:59

昼間の陽射しがきびしいぶん、夜の闇が恋しくなります。
夕暮れ刻は、まだまだ暑さの余韻があって、焦げた空気がまだそこかしこにのこっているようですが。
真夜中ともなると、さすがに涼風漂うようになるようです。
とろりと落ち着いた、恋闇の彼方。
昨晩は あんな夜。一昨晩は こんな夜。
そして今夜は・・・どんな夜?^^

今月は、スローペースです。^^;

2007年08月23日(Thu) 07:47:26

うーん・・・
「魔」がなかなか、訪れてまいりません。
夏休みなのでしょうか?
去年もおととしも、律儀にあらわれたんですがねぇ。(笑)
そうそう。
おととい「白のハイソックスの時代」に、拍手を頂戴しました。(^^ゞ
拍手をくださったかた、ありがとうございました。m(__)m
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-1109.html

男の子は、半ズボンの下。女の子は、スカートの下。
おそろいの白いハイソックスを履いて、吸血鬼になった幼馴染にかわりばんこに血を吸わせる・・・
そんなお話です。
まだ御覧になっていらっしゃらないかたは、ぜひどうぞ。^^

ひき逢わせて

2007年08月23日(Thu) 07:06:59

きみは、男だね?
黒マントの男が、耳もとで囁くのに。
怯えたように頷いているのは、女もののスーツ姿。
深夜の公園で。
人目を忍んでヒールの音を響かせていたところを。
横抱きに、連れ込まれた雑木林のなか。
抑えつけられた木の、ささくれ立った樹皮が、背中に痛かった。

すでにうなじを、えぐられたあと。
白のブラウスに、点々とバラ色のしずくを滲ませて。
彼(彼女)は、なかば恍惚となって。
黒マントの影の欲するまま。
体内をめぐる生命の源泉を、飲み味わわれてしまっていた。
無遠慮にまさぐりを入れられたブラウスの下。
ひやりとする掌のなか、ふくらみを帯びていない乳首が、ナーバスな昂ぶりに疼いている。

どうしようっていうの?
声震わせた抗議に、吸血鬼はまさぐりをいっそう濃くしていって。
貴女をレディとして、遇したい。
ひくい囁きが、彼(彼女)の抗いを封じてしまっている。
かがみ込んでくる影の、欲するままに。
圧しつけられた熱い唇の下、肌色のストッキングをくしゃくしゃにされてしまってゆく。


あくる晩。
ようこそ。
やっぱり、来てくれましたね。
彼(彼女)は、昨晩とはちがう色のスーツ姿で立ちすくんだまま。
冷ややかな笑みを、にらみ返していたけれど。
促されるまま、ベンチに腰かけて。
黒のストッキングのうえ、卑猥に輝く唇を、這わされてしまっていた。
ぴちゃ。ぴちゃ・・・
下品な音をたてて、はぜる唾液。
挑発するようなそぶりは、いつか甘えるようなしぐさに変わっていて。
むしょうに慕わしく重ねられてくる唇を。
彼(彼女)はかすかな笑みさえ浮かべながら、許してしまっていた。

問わず語りに、語っていた。
まじめいっぽうに、暮らしてきて。
いつか、周りに女っ気のない生活に、包まれていて。
つい寂しくなって、母親の服に手を出すようになって。
独り暮らしをしているいまは、女の装いをした姿を、夜の闇にまぎれさせるようになって。
ストッキングの脚を、夜風にさらすようになったのだ と。
黒マントの男は、正直すぎるほどの告白に、いちいち頷いて。
わかるよ。
だからこそ。きみを、女として遇するのだから。


幾度めか重ねた、逢瀬のとき。
夜になると・・・そう。ここに伺うときだけ、胸が大きくなるようです。
恥じらいながら、彼(彼女)がそう告げると。
ウフフ・・・
黒マントの男は、含み笑いを浮かべながら。
お前からいただいた血と引きかえに、若い女の血を含ませてやったのさ。
イタズラっぽく、囁いている。
おまえの血管に流し込んでやった血の主は。
もう、処女ではないが。いい女だよ。
会ってみるかね?
え・・・?
いぶかしげに身じろぎしたスーツ姿は。
それでも素直に、頷きかえしていた。

教えられたのは、とある一流ホテルのロビー。
楚々とした長い黒髪を肩先に揺らせながらあらわれたそのひとは。
きりりと装ったオフィススーツも涼やかに。
カッコウの良い脚を、スカートさばきも大胆に、大またに歩ませて。
ぴかぴか光る、黒のエナメルのハイヒールを響かせて。
さっそうと、あらわれた。
どう、声をかけたものだろうか?
とっさに口から洩れた、「黒マント・・・」というささやきに。
そのひとは、こちらが恥ずかしくなるくらい、落ち着きを失って。
それまでの凛と取り澄ました雰囲気を、雲散霧消させてしまっていた。

それからのことだった。
ふたりはすぐに、寄り添うほどに親しくなって。
かわるがわる。ときには連れだって。あの公園で、夜歩きをするようになった。
公園を徘徊するとき。
彼(彼女)は、恋人の服を借りるようになっていて。
いっしょに出かけるときなどは。
お互い、くすくすと笑み合いながら。
ワンピースの背中を、きっちりと締めてもらうのだった。

ふたり並んで、酔ったようにふらふらになって。
うわ言のように、彼(彼女)は囁いている。
彼女と結婚の約束を、交わしました。
あなたはきっと、祝福してくれるでしょうね?
察していましたよ。彼女の処女を獲たのが、貴男だということを。
どうせなら。
私から貴男への、引出物にしたかったですね。
もぅ・・・
横合いから、恋人につねられながら。
それでも彼は、語りやめない。
遠い先のことかもしれないですが。
娘ができたら、貴男に差し上げましょう。
わたしたちの娘ですから。
きっとその子は、怖がらないでしょうから。
どこまでも澄んでいる月影の下。
三つの影は、かわるがわる。慕いあうように。影を重ね合わせてゆく。

闇夜と朝と

2007年08月17日(Fri) 11:17:08

真夜中。
薄闇に透けて、蝋燭の火が三つ、ゆらめいている。
ゆらめきはじょじょにこちらに近づいてきて。
吹き抜けになった上の廊下から。
リビングに通じるらせん階段を、ひっそりと降りてくる。
手近なテーブルのうえ、燭台を置いたのは。
ネグリジェ姿の若い女。
ゆるやかに波打つ長い黒髪は。
蒼白い頬に、慄とするほど映えていて。
彫りの深い面差しには、かすかな憂いをたたえていたが。
瞳はまるで放心したように。なにかに魅入られてでもいるように。
遠く一点を、見つめつづけている。
彼女の目線の彼方、闇が影となって、身じろぎをして。
その黒衣の男は、壁にかかった金縁の絵画から抜け出たかのようだった。

どちらからともなく、歩み寄って。寄り添いあって。
しずかに、熱く交わされる口づけに。
女も男も、酔うようにして、浸りつづけた。
男は女を放し、すぐにもういちど、すがりついて。
こんどは胸元に、その唇をあてがってゆく。
ズズ・・・ッ
生々しい音は、己の体内から血液を抜かれる音なのだ・・・と。
女が気づかぬはずはなかったのに。
そのままこともなげに、男に身をゆだねたまま。
いとも心地よげに、ほほ笑みながら。
吸い取られてゆく血のせせらぐ音を、耳にしつづけている。

かちゃり。
時ならぬ、開錠の音に。
女も男も、ぎくりとして振り向いた。
ギギ・・・と重たい音をきしませて開かれた扉の向こうには、燭台を持つ男。
女の父親だと、ひと目でわかった。
けれども女は、気力が尽きた・・・というばかりに。
男の腕のなか、ふらりとその身を揺らがせて。
異形の恋人の胸のなか、甘えるようにしなだれかかってしまっている。

男は女をソファに寝かしつけると。
恭しく、父親の手を取って、手の甲を押し戴いた。
  ようこそ。婿殿。
  仲のよろしいことだね。
  娘の血の味は、いかがかな?
  奥の間で、さっきから妻も待ちかねている。
  貴殿の好みの、薄く透けるストッキングを脚に通して・・・ね。
  娘の番が済んだら、襲っていってやってくれたまえ。
  あとのめんどうは、すべてわたしがみておくから・・・
男はふたたび恭しく黙礼すると。
女のワンピースのすそを乱して、父親のまえ、これ見よがしに足許に唇を重ねると。
恋人を父親の腕に残して、許されるままに奥の間へと足音を忍ばせてゆく。

ずずず・・・っ。
半開きのドアの向こう側。
かすかに洩れる吸血の音を、父親はくすぐったそうに聞きながら。
ソファのうえまどろむ娘に、語りかけるように身を投げかけて。
そのまま深い闇に、身を淪(しず)めていった・・・

お紅茶が入りましたよ。
夫人は優雅にほほ笑んで。
陶器のカップをカチャカチャと鳴らしながら。
リビングに、楚々とした歩みをすすめてくる。
もうあたりは、すっかり明るくなって。
夕べの男は気配さえも消してしまったけれど。
夫人のブラウスは、胸元にかすかな乱れをまだ残していて。
娘は放心したように、破れたストッキングを脚から引き剥がしている。
だれもが、なにもかも知っていながら。
ことさら穏やかに過ぎてゆく、朝餉のとき―――。

闇夜の帰宅

2007年08月17日(Fri) 10:58:04

女が帰宅したとき、部屋は真っ暗闇だった。
母がいなくなってから。
父も兄も、帰宅時間を遅らせて。
ことさら家を避けているかのように、彼女の戻るよりもはるかに遅く、
人目を忍ぶようにして、戻ってくるのだった。
一家から夜の団らんがなくなって、もうどれくらいになるのだろうか?

ただいま。

迎える人も、ない部屋のなか。
ひと言、ひっそりと呟いて。
女はハイヒールを脱ぎ、ストッキングのつま先をそのままスリッパに突っ込んで。
手さぐりで、リビングまでやって来て。
灯りをつけようとした、ちょうどそのとき---
ぎゅっ。
と、いきなり、口をふさがれた。
背後から忍び寄っただれかが、女との距離をぴったりと詰めて、
のしかかるようにして、女をじゅうたんにまろばせようとする。
女は無言のまま、あらがって。
髪振り乱して、身もだえしたが。
かりり。
首筋に噛みつかれたとき。
唾液のはぜる音が、かすかに洩れた。

ちゅ~っ。
血を吸い上げる音に、声もなく。
女は力を抜いて、ふらふらと。
背後の影の意図するままに、じゅうたんの上、うつ伏せになってゆく。
吸い取った血潮を、女の服の上ぽたぽたとしたたらせながら、
影は女の髪の毛を梳くように撫でつけながら、顔をのぞき込んで。
女が気絶している・・・と見て取ると。
こっそりと唇と唇を、重ねてゆく。
忌むべき影は、男。
気絶して倒れ伏したのは、女。
とうぜんあり得る帰結を、素通りして。
男は接吻を奪っただけで、満足したようだった。
影は女のうえを去ると、そのまま煙のように消えうせた。

ことり・・・
廊下の奥から、もの音がする。
ドア越しにひっそりと立ったのは、べつの影。
さっき荒々しく女を襲った影とは、どうやら別らしい。
さっきの影とは、うらはらに。
気遣わしげに、倒れている女のようすを窺いながら、リビングにあがりこんできて。
こんどは女のふくらはぎに、唇を這わせてゆく。
ワンピースからのぞいた白い脛は薄闇に映えて、まるで闇夜の三日月のように妖しく輝いていた。

ぬるり。
影は唇を吸いつけ、舌を這わせ、
ストッキングにしわが波打つほど、
しつように、しつように、女の脚を慕ってゆく。
いたぶっているようで。甘えているようで。すがりつくようで。
なによりも、女を深く案じているようで。
女の体内を脈打つものの強さを測るように、
ふくらはぎを念入りに、なぞってゆく。
ちゅうっ。
吸いつけられた唇が、さっきの影とおなじ音を洩らすまでに。
かなりの刻が、経っていた。
音を忍ばせて。ごく、ひかえめに。
影はそれでも、己の欲情を満たすだけのものを獲ると、
そのまましずかに立ち上がって。
女をお姫様抱っこして。
足音も立てずに彼女の寝室へと運び入れてゆく。

朝。
おはよう。パパ。
ああ、おはよう。
おはよう、兄さん。
おっ、早いな・・・
何事もなかったような、言葉のやり取り。
けれども女は、知っている。
父も兄も、昨日勤めに出てゆくときよりも、ずっと顔色がよくなっていることを。
写真のなかの母親は、まるでまだ生きているように。

困った人たちねぇ。

娘に語りかけるように。
夫や息子を、たしなめるように。
ちょっぴり顔を、しかめているように見えた。

しょうがないよね。
処女の生き血は、わたししか持っていないんだもの。
彼氏を作るときは。
なるべく若くてきれいなお母様と。
初々しいおぼこ娘な女子学生の妹さんのいるひとにしようかな。
女は軽くハミングしながら、身づくろいをすませると。
チリチリに破けたパンストを、むぞうさにくず籠に放り込んで。
ショルダーバック片手に、今朝も玄関に向かうのだった。

木になってしまいたい。

2007年08月17日(Fri) 00:03:55

木になってしまいたい。
そんなふうに感じたことは、ないですか?
人ではなくて。ただひとところに、とどまって。
春は花をつけ、夏は葉ずれを響かせて。
冬は・・・まる裸になって、震えながら。
足許を行き交う人々を、ただ眺めているだけの木になりたい・・・と。


通学路から一本はずれたその路は。
人通りが、ふしぎなくらいにまばらな道。
その木は公園の隅に、ひっそりと植わっていて。
花を咲かせる時も、たった独り、建物の陰に隠れながら。
爛漫たる花を、これ見よがしに咲かせる木。
だれもその木のことを、気にも留めないし、苦にもしない。

その木にもたれかかったのは。
セーラー服におさげ髪の、初々しい紅色の頬をもった少女。
メインストリートから一本はずれたこの路を、
わざわざ通学路に選んだ少女は、いつもなぜかひっそりと、
独りで歩いていた。
  ねぇ、木さん。わたしのことを、憶えてくれる?
  いったいいつまで、憶えていてくれる?
不思議な問いを発したのは。
彼女が木の足許を行き交うようになってから、
どれほど経ってからだろうか。

ある日の夕暮れ、少女は泣き濡れて。
いつものように、木にもたれかかって。
ひっそりと、声もなく。
いつまでも、泣き濡れて。
そうして葉ずれに、聞き入っていた。

かわいらしい唇からは。
すうっと吐いた吐息とともに。
妖しく低く、流れるように。
呪文のような声色が、よどみなく流れてきた。
  木になりたい。
  このままじっと、ここを動かないで。
  永遠に、動かないで。
  そのまま凍りついたように、木になってしまいたい。
ざわ・・・
少女の声に、応えるように。
木ははじめて、不気味な葉ずれを響かせる。
  木になりたい・・・とな?
  わたしがどんな「き」だか、お前は心得ているのだな?
少女は小首をかしげたけれど、
木にもたれかかった制服姿を、もっと甘えるようにしなだれかけただけだった。
  わかっているわ。
  木さんは、ほんとうは、「鬼(き)」さんなのよね?
気のせいか・・・
梢が一枝、少女にまとわりついてきた。
その身に近づき、巻きついてくるように。
押し黙った少女は、その梢を制服の襟のすき間から差し入れて。
みずからの生気を吸い取らせるかのように、眼を瞑る。

翌朝。
木の根元に抱かれたまま、少女は眠るように、息絶えていた。


それから何年、経ったことだろう---。


緋色の花びらが、風もないのに散りしきっている。
公園の一角、昔は建物の影に隠れて目立たなかったその木は、
いつの間にか建物が取り払われたために。
ほんらいの美質を人目に触れさせるようになっていた。
かつては人知れず咲き誇っていた見事な花びらは。
人々に愛で仰がれて。
いまを限りと咲き乱れる。

その木の下で、憩うのは。
ひと組の夫婦。それに戯れあう幼な児たち。
若い夫は散りしきる花びらをうるさそうに払いのけて、
おなじくらい若い妻は、まるで放心しきったように。
ただいっしんに、花の美に目線を吸い込ませている。
  アラ、勿体ナイジャナイ。ソンナニ邪慳ニシタラ。
女が咎めるほどに、男はまるで花びらを忌むように、払いつづける。
  どうにも、薄気味悪いじゃないか。
  エ?花ガ・・・?
  あぁ。だって・・・
男はいうなり、口をつぐんで。
それきりもう、なにも言わなかったけれど。
女はなにもかも察したような面持ちを、すぐにしまい込んで。
子どもたちにお弁当を食べさせることに余念がない。

今ぞ、その刻・・・とばかりに散りしきる花びらは。
ただいっしんに、若夫婦と幼な児たちを包み込んで。
みずからかけようとした呪いをさえも、忘れ果て、
ただ、ただ、いっしんに、うら若い花びらをまき散らしてゆく。
今ぞ、その刻。今ぞ、その刻。
切なげに、悲しげに。
なにかを訴えるかのように。
かぎりなく散りしきる、舞うような落花・・・・・・

処女がえりの里

2007年08月03日(Fri) 08:17:18

その村では、人妻が夫いがいの男と通じることが、固く忌まれていた。
もしも夫いがいの男と通じたければ、村の外で果たすしかなかった。
もとより多くの女たちは、夫ひとりを守っているのだが。
たまに、熟れた血潮をもてあます人妻がいると。
村の外に住む実家の縁者や、ときには夫の縁をさえ頼って、
節操を忘れて、あられもない裸体をさらすのだった。

ちさとに好きな男ができたのは。
勤めに出ていた村の外のことだった。
禁忌に触れない浮気なのだと、わかってはいたものの。
いっぽうで夫のことも愛していたこの人妻は。
あえて一線を越えようとはしないでいた。
女のようすが、かわったのは。
愛した男の正体を、察してからのことだった。
男の正体は、生娘の生き血を好む吸血鬼。
ちさとには優しく、襲う・・・などとは夢にも思っていないようすなのは。
もしかすると、ちさとが人妻だからかもしれなかった。

ふしぎな村も、あるものだ。
ちさとの愛した吸血鬼は、そううそぶいて。
ちさとの住む村を遥かに窺いながら。
今夜も棲家のベランダに出て、古い酒を口に含んでいた。
生き血にありつけない夜は、こうして刻をまぎらわせるのだ。
チリリリリリ・・・
時ならぬ電話のベルに、男はちょっと不快げに受話器をとった。
声の主は、いま思い浮かべていた女。(ひと)
  吸血鬼さん・・・?
ふたりきりになると。ちさとは決まって、そんなふうに呼びかける。
けっして、蔑んでいるわけではない。
  もしも貴方が吸血鬼だとしても。わたしは貴方のことを愛している。
そんな想いを込めた、女の呼びかけだったから。
  五回鳴ったら、切ろうと思っていたの。
  眠れないでいたの?
思いやりに満ちた女の声が、干からびた心をじわりと湿らせる。
  まぁ・・・ね。一杯やってから、寝るさ。
表向きは、律儀でぶきっちょな勤め人。
それが時おり、周りの女に対しては、人妻と娘とを問わず、ひそかに本性をむき出しにするのを。
女はとうに、気づいている。
  どうしてわたしには、手を出さないの?
いちどストレートに、聞いてみたかった。
けれどもきっと。
シャイなあのひとは、
  さぁ・・・な。
と、受け流すだけだろうから。
女はひと呼吸おいて、声を一気に受話器の向こうに吹きかけた。

処女にもどって、ひと晩貴方に抱かれてあげる。

あまりにも、ふしぜんな話を。
男は瞬時に、信じていた。
女が口にしたことばは、男がそう感じた言い伝えそのままだったから。

人里離れた土地のようにみえて。
ものの三十分も、車を飛ばせば。
ちさとのいる村に、着くことができるのに。
どうしてこうも、遠く感じていたのだろう?
ちさとは勤めのときに着込んでくる堅苦しいスーツ姿ではなくて、
もっとうちとけた服装だったけれど。
太ももまでのスカートさばきは、くつろぎをみせるぶん、かえって伸びやかで、いっそう女らしさを帯びていた。
なにも知らないらしいこの家の主人は、男のことを快く迎え入れて、
  今夜はゆっくりしていってくださいね。
まるで十年来の友のように、話しかけてくる。
出迎えのなかにいた、ちさとの娘や息子は。
母親そっくりの目鼻だちをしていて、
とくに息子のほうなどは、男の子なのにうりふたつといっていいくらいだった。

お人よしのご主人は、
  いい飲み友達が、できましたよ。
すっかりご機嫌になって、酔い酔いになって。
とうとう酔いつぶれて、妻の介抱で寝所にひきあげた。
ちさとは夫がいなくなると、ひたと目配せをして。
  お部屋でお待ちになって。
手みじかに囁くと、とうに寝入った子どもたちのことなど、気にするふうもなく、
手早くテーブルのうえを、片づけにかかった。

スス・・・と音を忍ばせてふすまが開かれる。
  お部屋を暗くしておいて。
女に言われるままに、部屋の灯りは机の上の蝋燭が一本。
ふすま越し、廊下にひざを突く人影は。
ふすまを背にすると、セーラー服姿の少女になった。
いつも薄茶に染めた髪を、今夜はくろぐろとした地の色にかえて。
いつもそっけなく、きりりと頭のうえで結わえていたのを。
少女らしく、三つ編みにして垂らしている。
  いつもこんなふうにしてたんですよ。
齢不相応なくらい、若々しいちさと。
くすっと笑んだ横顔は、ほんとうに少女のようだった。
  リボンをほどいて。
かすれた声に、誘われるまま。
男はセーラー服の胸元をくつろげて。
うなじに初めての接吻を、重ねてゆく。

村の言い伝えは、嘘ではなかった。
ほどよく熱した血潮は、処女そのままの清冽さをたたえていて、
咲き初めたユリのように強い香気が、鼻腔の奥まで突き刺さるようだった。
  どう・・・?おいしい・・・?
ひそめた声に、つよく頷くと。
ちさとはかすかにかぶりを振って、
  わたしが身体を揺らしたら。襲って・・・
ふるえる語尾を、いたわるように。
男は抱きすくめた腕に、いっそう強く力を込めた。
処女にかえった女のしぐさは、ほんものの生娘のように初々しく、たどたどしくて。
男は震える昂ぶりを抑えかねて。
つい淫らに、振舞ってしまった。
人妻が、夫いがいの男と交わることを禁じられたこの村で。

あくる朝。
起きてきた亭主は、夕べの酒がまだ残っているのか、ちょっと蒼い顔をしながらも。
  夕べはすこし、飲みすぎましたな。
じぶんが眠りをむさぼっているあいだ、妻が不貞を遂げたなどとは、つゆほども思っていないらしかった。
何ごともなかったように、いつものような朝餉がすすめられて、
子どもたちは、もういい齢をしているくせに。
好みのおかずが多い少ないと、まるでやんちゃ坊主のように騒々しく、旺盛な食欲でご飯を平らげた。
娘が勤めに、息子が学校に出てしまうと。
  どうです、よかったらもうひと晩。
夕べの記憶の後ろめたさに、しきりに辞退したのだが。
  お受けになって。
女の目配せに、がんじがらめになるようになって。
  ご迷惑でなければ、遠慮なく・・・
  そうこなくっちゃ。
亭主はよほど、酒の相手に事欠いているらしかった。

夕べと変わりなく、しきりに酒を酌み交わして。
子どもたちがおやすみを言い、亭主までが寝入ってしまうと。
ひき上げた暗い寝所に、女はまた忍んできた。
驚くべきことに。
夕べはたしかに処女だった、ちさとの身体。
今夜もぶるぶる震えて、恥らって。
昼間はキリキリと立ち働く男勝りの気性をみせるのに。
布団のうえでは終始、おぼこ娘みたいにがちがちに固まっていた。
豊かな胸を、ほぐすように揉みしだいて。
肩先を、二の腕を、いとおしむように、なぞっていって。
しまいに、股間に手をすべらせて。
男はちさとの肌に、飢えた唇を重ねてゆく。
驚くべきことに。
処女として許された逢瀬は、一夜かぎりではないらしい。
  一生に、いちどだけ、想う男のために、女は生娘の身に戻ることができるのです。
ちさとは暗誦するように、先祖からの言い伝えを口にする。
ひくく震える声さえ、いとおしくて。
男は女が話し尽くしてしまうと。
口を封じるようにして、接吻を重ねていった。

けっきょく、泊まりは三晩になった。
亭主はよほど、呑ん兵衛らしい。
どうぞどうぞ、秘伝の美酒です。尽くしていってくだされ。と。
よほどうちとけたものか、いろいろな話を聞かせてくれた。
この家が、村でも指折りの旧家なのだと。
ちさととは、数代前から定められた夫婦(めおと)なのだと。
しまいにとうとう、村の言い伝えまで、口にした。
  この村ではね。人妻が男に惚れると、一夜だけ生娘に戻れるんですよ。
どういうつもりで口にしたのか、話はそこでふっつりと途切れてしまったので。
もうそれ以上、問い返すことも、できなかった。
なぜなら亭主はまたしても、さきに酔いつぶれてしまったのだから。
さて。
たっぷり、味わうとしようか。
亭主から振舞われた古酒よりも、数等まさる美酒を。

お邪魔します。
ふすま越しに、忍ばせた声。
男は自分から、ふすまを開けて。
女をなかに、引き入れる。
廊下の向こうで、人の気配が立ったような気がしたが。
どうやら気のせいだったらしく、もうそれ以上ことりとも音を立てなかった。
女の服は、鮮やかな緑のワンピース。
  これ、新婚旅行のときに着ていた服なんですよ。
もう似合わないでしょう?と言いたげなようすだったけれど。
童顔で、いつもピチピチと活発に動き回るちさとは、男の子みたいに生硬で。
夕べのセーラー服さえ、なんの違和感もないのだった。
  では、新妻を誘惑しようか・・・?
たたみの上。体重をかけられるままに、姿勢を崩していった女は、
ストッキングのうえから太ももを撫ぜられただけで、
  ひぃ・・・。
と、悩ましげな声を洩らしている。

処女の証しが散ったシーツが、二枚。
夫の目の触れぬところで、乾かされている。
夫が働きに出かけていったあと。ちさとはふふっ・・・と笑みながら。
  お持ち帰りくださいな。
かすかに責める声色が、むしょうにおかしくて。
つい、笑み声をはずませてしまったら。
女はそのときだけは、怖い顔をして。
  お笑いにならないで。
そういって、男の声を制している。
  ここに私がとどまるかぎり。お前は毎晩処女を散らしていくのかね?
ふと尋ねた声に、女は満面に恥じらいを浮かべながら。
  あなたがお望みなら、幾夜でも。
声に濡れが、滲んでいる。
けっきょく男はその晩も、女の家に宿を取った。
折からのお盆休みが、ふたりに幸いしていて、
亭主と上の娘は、毎日働きに出て行って。
下の息子も、部活動でもあるのか、朝餉のあとはひっそりといなくなっている。

真っ昼間から・・・?
ちさとはさすがに、眉をひそめて。
  村では、契ってはならないことになっているんですの。
いまさらながら、そんな言葉を口にする。
  渇いているのだ。
男は駄々っ子のように、せがみつづけて。
とうとう生き血だけは、めぐんでもらうようになった。
朝餉のあとに、いちど。
昼餉のあとに、もういちど。
家人が戻ってくるまぎわに、さらにいちど、挑んだとき。
男は我慢しきれずに、女をたたみの上に押し倒していた。
  アッ!そればかりは・・・
女の必死の声色に。
なにかが違う。
男はさすがに、察するところがあって。
いちどは服の下にまさぐり入れた手を止めた。
  お前さん。なにか嘘をついているね?
  夕べも、そのまえも・・・
  アレはほんとうに、あんただったのか?
抱いたのは、間違いなく処女。
いま彼のために流された血も、言い伝えどおり、たしかに処女のそれだったのだが。
口ごもった女のまえ。
男はずばりと、口にする。
あれは・・・あんたの娘だったのだね?

亭主はなかなか、戻ってこない。
夕餉の時間。卓を囲んだのは、ちさとと上の娘だけ。
娘は蒼い顔をして、終始俯いたまま膳に向かい、
  ごちそうさま。
力の抜けた声で、箸をおいて、客人にあいさつもしないで勉強部屋にあがっていった。
男は容赦のない観察眼で、見つけていた。
娘のうなじに滲んでいた、かすかな痕。
それは彼いがいのものには見抜くことのできない、逢瀬のあとの証しだった。

村のなかでは、契ってはならないと言っていたな?
だから、娘をおれにあてがったのか?
だが・・・抱いた女はふた晩とも、まちがいなく処女だった。
女はそれには応えずに。チラと真横のふすまの向こうを窺って。
  お入りなさい。
冷然とした声に、応えるように。遠慮がちにひらかれたふすまの向こう。
いつの間に、戻ってきたのだろうか。
それはちさとに瓜二つの、息子のほうだった。
  ふた晩めに、貴方のお相手をしたのは。この子なのですよ。
  そう。ほんとうは、子どもはふたりとも、娘なのです。
  この子を生んだとき、わたしは子どもを生めない身体になってしまって。
  だからこの子は、男の子として育てました。 
  このまま一生、男の子で通していくことになるのです。
  うちは旧家ですから・・・跡取りがいないわけにはまいりませんもの。
母親の秘め事を、はじめからおわりまで。
息子は俯いたまま、表情を消して聞き入っている。
  いずれこの子には、嫁を迎えることになります。
  嫁には跡継ぎ胤をもうけてもらって、この家を絶やさぬようにしなければなりません。
  もちろん、女どうしでは、子どもはできませんから。
  因果を含めた分家から、嫁をもらって。
  嫁にはべつの男をひそかにあてがって。
  それで子をなさせようと・・・旧家とは、むごいものですね。
  だからせめて、ひと晩だけ。
  この子にも、女としての歓びをあげたかったのです。
  だれよりも、信用できる貴方のために。

利用された・・・という憤りは、とうとう湧いてこなかった。
女は家のために、さいしょの晩には娘を捧げ、つぎの晩にはべつの娘を捧げたのだ。
上の娘は、母親譲りの勝気な性質(たち)で、妹よりもあとになることを肯んぜず、自分から客人に抱かれると言い出した。
人妻になるまでは、なにをしてもいいんでしょう?
村のしきたりを、逆手にとって。
彼女は真っ白なままの身体を、ひと晩悩乱のなかにおいたのだった。
それにしても。
  もしもわたしがひと晩で帰ってしまったら。
  上の娘が、きず物になっただけだったろうに。
男がそう、うそぶくと。
向かいの障子の向こうから、
  だからこそ、もうひと晩・・・と、お留めしたのですよ。
  いえ、いえ。わたしが誰なのか、せんさくしないでください。
  家の恥に、なることですから。
  よければ時おり忍んでこられて、娘どもを歓ばせてはくれまいか?
  あんたは村の外の人だから、聞いてはおらなんだろうが・・・
  人妻になってからはお固いこの村も。
  嫁入り前は、自由ですだで。
  村の若いもんは、得手勝手に、相手を選んで。
  堂々と、夜這いをするですわ。
  父親どもは、娘の歓ぶさまを、板塀のすき間から覗き込んで、悦に入っておりやすわい。
  わたしもそろそろ、お愉しみのお裾分けに預りとうて。
  嫁をくどいたのですわ。
  もうあれたちも、いい齢だぞ、と。
  処女がえりの言い伝えですか?
  さぁ。どこまでまことなものやら・・・
  ここは水の良い土地でしてな。
  お婆が飲んでも、若者のように血がサラサラになると。
  このごろ評判らしいですわい。
  ほんとうに、嫁が生娘の身体になっているかどうか。
  いっそ、お試しになるがええ。
  そうじゃ。村のなかで契ってはならんゆえ、わしが村の境まで送って進ぜよう。
  なに、なに。遠慮なさることはない。
  おなじ覗くなら。
  嫁が抱かれるのも、さぞや良い眺めでしょうからなぁ。

数年後。
ちさとの息子は、嫁を迎えた。
祝言は、村の外で挙げられて、
初夜の席を汚したのは、むろんその男。
花嫁が抱かれるあいだ、花婿もまた、女の身にかえって、美々しく装って。
花嫁が処女の証しを散らしたシーツのうえで、わが身を歓びにゆだねていった。
亭主は決して、村から離れようとしなかったから。
亭主の女房や、息子の嫁を抱くときは。
それぞれの夫が、嫁を村の境にまで連れてきて。
若夫婦だけは、夫婦ながら、並べて草むらに豊麗な裸体をさらすのだった。
月がこうこうと高空に宿る夜。
亭主は息を詰めて、
かつて一夜の宿を貸した男が、嫁や娘を汚すのを。
それは愉しげに、覗きつづけたという。


あとがき
「処女に帰って貴方に抱かれてあげる」というお話がありました。
あのお話を書いたすぐあとに、こんな概略のお話を思いつきました。
処女に帰って自分を抱かせようとした人妻。
しかしじっさいに抱いたのが誰なのか、男にはわからない。
ほんとうに、その女じしんなのか。ほんとうは娘ではなかったか。
旧家の血筋を絶やさぬために男の子として育てられた少女が、男の手にかかってひっそりと処女を散らす・・・
ところがところが。
いつまでたっても、描けないんですねぇ、これが。(^^ゞ
こんかいも、じゅうぶんではないのですが。
とりあえずまとまったもんですから、あっぷしてみましたよ。^^
巧く描けてる!とお感じになったら、コメを。
まぁまぁじゃん。と思われたら、拍手を。
って、なぁんにも入らなかったら、それこそ悲しいですねぇ。^^;

(追記)いま読み直してみましたら。
どうなんだろう?(@_@)いいんだろうか?(@_@)
てなところが随所に・・・
いまは、描き直している時間がありません。
しばらくこのまま、あっぷしておきますです。^^;;;

公園に棲む魔物

2007年08月03日(Fri) 06:48:01

真夜中に、だれもいない公園を通りぬけるのは、ちょっと怖くはないですか?
でも、それがどうして怖いか・・・ごぞんじですか?
それは。
あの闇のなか、どんな魔物がひそんでいるのか、なかなか察しがつけられないからなのです。
もしも棲んでいる魔物の正体があらかじめわかっていれば、あそこまで怖いものではないかもしれません。
魔物だって・・・ただ人をとって食おうというばかりのものではないのですから。

深夜。午後十時。
まりあは勤め帰りのスーツ姿で、その公園を歩いていた。
かかとの高いヒールでは歩きにくい地面のうえ。
アスファルトの舗道では硬質な音を立てるハイヒールも、
ここではサクサクと草を踏みわけるかすかな音をたてるばかり。
こうこうと照りわたる街燈から遠ざかって、
暗闇のいちばん濃いあたりに歩みを進めると。
まりあは、声を忍ばせて。
  魔物さん。魔物さん。ご機嫌いかが?
しっとり落ち着いた低い小声で洩らしたことばは、
まるで呪文のように、あたりの闇に吸い込まれてゆく。

ざわ・・・
公園の隅の植え込みがかすかに揺れて、背の高い黒い影がヌッと闇の置くから姿をあらわした。
まりあは、怖れるふうもなく。
  うふふ。そんなとこに、隠れていたの?
悪戯ッ気の抜けない小娘みたいに小首をかしげて、じぶんのほうから影にむかって歩み寄ってゆく。
まるで、永年親しんだ身内のような気安さで。

十なん年も、まえになるだろうか。
そのころの帰り道、まりあはまだセーラー服を着ていた。
部活で遅くなった帰り、近道をしようとして、
つい、禁忌を犯してしまったのだ。
お嫁にいけなくなる公園。
そう呼ばれる公園を、乙女と名のつく少女は決して横切ってはならないという。
はたして、影はあらわれた。
  ひっ。
はじめて遭う怖ろしい影に、さすがのまりあも立ちすくんで。
大木を背に、追い詰められて。
うなじをつかまれ、間近に迫ったきらめく牙をもうこれ以上目にすまいと、両手で顔を覆ったとき。
がぶり・・・
影は遠慮会釈なく、まりあのうなじをえぐっていた。
  きゃ。
ひと声あげて。立ったまま、意識を失って。
思う様血を吸い取ると、影はまりあをそう・・・っと、横たえて。
  うふふふふっ。
いやらしい笑みを浮かべた口辺を、ハイソックスをはいたまりあのふくらはぎに近寄せてゆく。
まじめな女の子ならだれでも履いている、リブタイプの真っ白なハイソックスは、
校名のイニシャルの飾り文字をあしらっただけの無地のもの。
笑み崩れた唇が、いたぶるように、ハイソックスごしにふくらはぎをなぞっていって、
お行儀よくきちんとひざ下まで引き伸ばされたハイソックスは、じりじりとふしだらにずり落ちていった。

その晩いらい。
まりあは毎晩、公園に通ってきて。
近道をしようとして。黒い影に襲われて。
けれども影はけっして、まりあのことを殺めようとはしなかった。
まりあもけっして、道を変えようとはしなかった。
血を吸ったあと、ハイソックスのふくらはぎに、不埒な悪戯をされると分かっていても。
毎晩履いてくるハイソックスは真新しく、影は旨そうに、舌をふるいつけてくるのだった。
公園の近くでわざわざ履き替えてくるのだと、察していたのだろうか。
血を吸うものと、吸われるものと。
そんな関係のはずなのに、お互いに、敵意を抱くことがなかったのだ。
そんな関係が、もう十数年。
影は今夜も、公園の隅の植え込みをざわつかせる。

魔物さん。魔物さん。
すこしエッチな魔物さん。
まりあは呪文を唱えるようにして、魔物が足音もなく近づいてくるのを待っていた。
そうして手が届くほどのところまで、黒い影が近寄ると。
スーツのすそから、にょっきりと。
ピチピチとした太ももを、さらけ出して。
  ほ~ら、あなたの好物の黒ストッキング。今夜も履いてきてあげたのよ。
白い皮膚をなまめかしく透かせた脚を、見せびらかすようにくねらせる。
影は終始、無言。まりあもそこからは、無言。
差し出された足許に、黙ってかがみ込んできて。
ちゅうっ・・・
慕い寄った唇が、いとおしむように密着してくるのを。
まりあは面白そうに、見おろしている。
薄手のナイロンを、ふしだらによじれさせてしまう魔物のおじさまを。

来る日も来る日も、通って来た。
ハイソックスの女学生時代。
ストッキングを選びはじめた、女子大生のころ。
てかてか光る薄手のナイロンに包まれた足首を、眩しそうに見つめる影の前。
ロングスカートを大胆に、腰まで捲り上げていた。
処女を捧げた相手は、生身の人間だったけれど。
影とはいつも、つかずはなれず、過ごしてきて。
  今夜は思い切り犯して。
  また、振られちゃったの・・・
淋しい夜。影ははじめて、まりあの股間を抉っていた。
  あぁ。あぁ・・・あああぁぁぁぁぁ・・・っ・・・
通りがかりのOLを襲って生き血を吸い取り、あげく犯してしまうやり口は、
じゅうぶんに、魔物そのものだったけれど。
まりあの淋しい夜を、情欲の渦に巻き込んで、極彩色に塗り替えてしまうのは、
果たしてほんとうに、悪事・・・だったのだろうか?

草むらから起き上がって。
まりあはのんびりと、ため息をつく。
  スカートにまた、泥つけちゃったね。
  彼氏がいるんだろ?
  エエ、いるわよ。
  妬かれないか?
  それが、愉しいのよ。
  わるい女・・・
影は、まりあの頬をつねりながら。
  わるい女。わるい女。・・・いとしい女。
こんどは影が、呪文を唱える番らしい。

姉貴・・・。制服貸してっ!

2007年08月02日(Thu) 07:23:06

きょうの練習は、キツかった。
何しろあしたは、大会初日。一回戦負けなんて、ありえないんだからっ。
先輩のしごきは猛烈だったけれど。
主力選手のキミカにとっては、さすがに「いつもの汗」っていうくらい。
浴びたシャワーの余韻が制服の下にほどよく残っていて、ほてった肌と服とのあいだがなんとなくしっくりこなくて、ちょっとごわごわした感じがする。
そこまでは、いつもの感覚だったのだけれど。
フウッ・・・
下駄箱で靴を履き替えて校舎を出るとき、なにかうそ寒い空気が頬をよぎった。
あ・・・。
立ち止まったキミカのまえ。
おなじ制服を着たその少女は、浅黒いキミカとは好対照に、透きとおるほど色が白い。
制服のスカートの下は、みんな白のソックスか、いまキミカが履いているような紺色のハイソックスなのに。
少女の脚を薄っすらとなまめかしく染めているのは、黒のストッキング。
夏服になっても黒のストッキングで通している彼女は、みんなと一線を画した別世界に住んでいた。
「ユッコ!おどかさないでよっ。」
いつもながら雰囲気たっぷりのお出ましに、キミカは思わず飛びのいていた。
県内きっての名プレーヤーも、意外な怖がりだったりする。
真星夕子―――。
その名は校内でだれ一人、知らないものはない。
だって彼女は、吸血鬼だったから。

こんど入学してくる新入生に、吸血鬼がいるんだってよ。
え~っ!どんなやつ!?
女子だよ、女子!
おっ♪オレ立候補しちゃおうかなっ。
去年の春、そんな上級生たちの無責任な好奇の目にさらされながら入学してきたユッコが、
それでもすぐにクラスのなかで打ち解けることができたのは。
たまたま席を隣り合わせたキミカの開けっ広げな性格が幸いしたからだ。
かたくなな性格のユッコは、キミカとはすぐに打ち解けて、
幾日も経たないうちに、キミ、キミと呼ぶ仲になっていた。
キミカも、キミカの周りの女の子たちも、そろって吸血されちゃったけど。
女の子のあいだでも、いっそう女らしくって、嫋々と頼りなくて、影のように寄り添ってくる大人しい少女のことを、だれも邪慳にしようとはしなかったのだ。
相変わらず好奇の目線を投げてくる男の子たちとは、つねに一線を画していたユッコだったが。
それで困るということは、二年生の夏になったいままで、さしあたって思いつかなかいくらいだった。

キミ。・・・血をくれる?
俯きがちな少女は、控えめでノーブルな目鼻だちに、心もち蒼い翳を滲ませながら。
語尾だけは、ゾクッとするほど強い響きをもっていた。
「えーっ!!」
いつもだったら、校舎の裏にふたりで行って、ブラウスの胸をくつろげてあげるところなんだけど。
明日は、大会初日。そう、一回戦負けは、ありえない。
とてもじゃないけど・・・
体調管理を十分しなければならない前日に、血を吸われている余裕はなかった。
「ごめんなさいっ!明日大会なのっ!」
キミカは思い切り威勢よく、ぺこりと最敬礼をした。
よければ、「いいよ」。だめなときは「ダメッ!」
はっきり、さばさば、が、キミカの身上だった。
えっ・・・
ユッコはもう、めそめそし始めている。
・・・きょうじゅうにだれかから血をもらわないと、あたし灰になっちゃうの。
ユッコが口にした言葉は、ただならない内容だった。

終業式のあった先週の月曜から、ずっと生き血を口にしていないという。
さいごに血を吸ったのは、キミカの親友のメグミを、学校帰りに襲ったときのこと。
そういえば途中で会ったとき、メグ顔色わるかったっけ。
いつになくウットリとした顔つきでふらふら歩いていたのを、なんとなく憶えている。
十三日間生き血を口にしないでいると、灰になってしまう。
ユッコの家ではそう言い伝えられていて、週末には交代で、クラスメイトがだれかしら、2、3人連れ立ってユッコの家に遊びに行くくらいだった。
そのペースが、夏休みになると狂ってしまう。
学校にはほとんどだれも来ないし、いつも血を吸わせてくれるサトコやハルミは、北海道旅行に行ってしまった。

「どーしてそんなに、計画性がないのっ?」
「早く言ってくれれば、みんなで相談したのにっ!」
「血が欲しいんだったら、どうしてもっと早く言ってくれないのよっ。」
思い切りストレートなキミカに叱りつけられて、ユッコはたじたじとなりながら、
・・・だって・・・みんな忙しそうだったし・・・それにキミカがスカート履くの、制服のときだけなんだもの。
そういえば、夏休みになってからスカートを履いたのは、校庭の使えるきょうがはじめてだ。
狭い校庭はいろんな部で交代で使用することになっていたので、キミカの部も、外部の貸しグラウンドを転々としていたのだ。
「だからってねぇ!文化部の子とかだって、いるじゃないっ。」
そう。あの子たちなら、いつだって制服を着ているし、スカートだって履いている。
・・・だってぇ。
ユッコはまだ、ぐずぐずと口ごもっている。
運動部の子の血のほうが、活きがいいんだもの。
それに、そういう子たちがスカート履いていると、おとなしい子以上に似合っていたりするんだもの。
サバサバしたボーイッシュな女の子が、フェミニンな服着て相手してくれるのが、いちばん素敵なんだもの。
あたしにだっていちおう、ポリシーあるのよ。

もうっ!
あまりにも勝手な言い草に、キミカは口を尖らせた。
スタイリストなユッコらしいと、いえばいえるけど・・・
血を吸っているときの情景がたいせつなの。
ユッコはうっとりとした目をしながら、いつもキミカにそういっていた。
とても素敵じゃない?
いつもキリッとしたかんじの女の子が、女の子ぽいカッコウをして、ウットリしながら血を吸い取られてゆくのって。
そういえば、校舎の裏に連れ込まれて血を吸われるときって、いっつも制服を着ているときだったっけ。
キミカのクラスメイトたちも、ユッコの家に遊びに行くときには、みんなそろってスカート姿で、おしゃれな子はストッキングまで履いていくって聞いていた。
もう付き合い始めて一年以上になるのに、部活が忙しいキミカは、いちどもユッコの家に行ったことがない。
それにしても。
スカート姿を襲いたいからって、キミカが制服を着るまで血を吸うのを待っていた・・・だなんて。
こだわりなのか、バカなのか・・・
バカなのよっ。
ブチッとそう言い切ってやろうか・・・って思ったときに。
あのー。お取り込みのところ、ゴメンなさい・・・
おどおどとした男の声に、振り向くと。
キミカの弟のシュンイチが、いつもみたいに、小さくなってたたずんでいた。
ここに自分が存在しているのさえ申し訳ないとでも、言いたげに。

なによー。
姉貴に詰め寄られて、シュンイチはよけい、小さくなっていた。
姉貴はいつも、強いから。
シュンイチは話しかけるたびそんなふうに口を尖らせてくる姉貴の態度に、慣れてしまっている。
話、途中から聞いてたんだけど・・・。
オレじゃ、ダメかなぁ。
「えーっ?だってあなた、男でしょ?」
夕子さんて、男子の血は吸わないの?
「えっ?」
虚をつかれたようにキミカが親友をふり返ると。
ユッコはいがいなくらい、どぎまぎしてしまっている。
エ?だって・・・
男子はいやらしい目で見るから、嫌い。
大人しいユッコだったけれど、男子の話になると決まって目を尖らせて、ぷいとそっぽを向いてしまうのに。
男ぎらいじゃ、なかったんだー。
キミカは別人を見るような目で、親友と弟とを見比べている。
だけど・・・
「あなた、話どこまで聞いてたの?」
えっ・・・?
「スカートがどうのって、聞いてなかったの?」
うーん。聞いてたけど・・・
「この子、スカート履いている子じゃないと、襲わないのよ。」
じゃあ、姉貴の制服貸してよ。
「え?え?いまなんと言った?」
こーのー!
弟の頬っぺをつまみ上げて、思い切りねじってやろうかと思ったら。
やめてよ。
ユッコがいつになく、強い口調で親友をとめた。
そうして、ぽつりと呟いていた。
ごめん。ユッコ。シュンイチくんのお世話になる・・・
黒髪に隠れた細い眉に、妖しい翳をにじませながら。

ヘンだよね?ぜったい、ヘンだよね?
初めて着る女子の制服に、シュンイチはどぎまぎしながら。
ひたと真顔で見つめてくるユッコの視線に、へきえきしていた。
じぶんで言い出したことなのに。
倒錯・・・って言葉。こういうときに使うのかな。
服を取り替えただけで訪れた大きな変化に、シュンイチはひどく戸惑っている。
詰襟の代わりには、サワサワと軽いブラウスが胸元を涼しくしていたし。
ふわふわとしたスカートからは、よそよそしい外気が太ももまで入り込んできて、ひどく落ち着かなかったし。
ひざ下までぴっちりとくるハイソックスの、うっとりするような締めつけ感は、自分がしんそこ女の子になってしまったような、ウットリするような幸福感を素肌の奥にまでしみ込ませてくる。
姉の窮状を救おうとした・・・というのが、理由の半分だったが。
もう半分は、どきり!としてしまったからだった。
  だってキミカがスカート履くの、制服のときだけなんだもの。
ユッコがいうように、シュンイチは姉がスカートを履くのをめったにみたことがない。
従姉の結婚式のときだってパンツスーツを着た姉に、ひそかな失望感を禁じえなかったくらいだった。
せっかく女の子に生まれてきたのに、どうしてもっと女ぽく装わないんだろう?
そうだよな。姉貴、スカートくらい履けばいいのに。
見てくれはそう悪くない姉が、彼氏もできずにいるのは。
部活が忙しいからばかりでは、なさそうだった。
もっとも・・・
女子の制服を着れるかも・・・って、残り半分の理由に胸をズキズキさせてしまったシュンイチは、姉とは正反対なオタク少年だったのだけれど。

おっかしい・・・
ユッコは内心、くすくす笑いたいのをグッとこらえている。
行動はグズだが、察しのよいユッコには、シュンイチの考えていることが、見透かすように見えてしまっているのだった。
けど。ボーイッシュな女の子と男の子は、やっぱり違うなぁ・・・
そう感じながらも。
せっかく血を欲しがっている彼女のために女装までしてくれた親友の弟に、むげなことを言うのをつつしむくらいには、彼女は心優しさを持ち合わせていた。
似合うよ。シュンくん。こんどから、女子の制服着て登校すればいいのに。
「え?え?えっ?」
かわいい子。目を白黒させちゃっている。
言い過ぎたかなぁ。真に受けなければいいけど。
成長の早い女子からしたら、一年下の男の子など、子どもみたいに見えるのだ。
けれども、そんなゆとりも、つかの間だった。
さっきから。
忘れかけていた喉の渇きが、はぜるほどに胸をついてきたからだった。
ごめん。シュンくん。襲うね。
なるべく抑えた声だったけど。
もう、語尾がつんのめっている。

きゃっ。
ほんとうに女の子みたいに、声をあげてしまっていた。
のしかかってきた少女は、まるで獣のように素早くシュンイチをねじ伏せると、
ふうっ。
吹きかけてくる熱い吐息が、まるで化け猫みたいにナマナマしい。
やっぱり、鬼だっ・・・
シュンイチがとっさに身をよじろうとしたときには、もう牙が、首のつけ根に突き立っていた。
かりり。
きゅうっ・・・
初めて吸い上げられたとき。
さすがにくらっ・・・と、眩暈がした。
少女は姉の制服の上から抱きついてきて、ほんとうに化け猫みたいにナマナマしく、
つけた傷口にべろまで這わせて血をすすり取っていた。
姉貴もいつも、このひとに血を吸われているんだ・・・
はじめのうちは、そう思えばこそできるガマンだった。
けれども、うなじにじかに這わされたしっとりと潤った熱い唇と、
ブラウス越しに存在感を感じるぷよぷよと柔らかいおっぱいとが、
シュンイチに我を忘れさせてしまっている。
思わず、抱き締め返した彼は、男に舞い戻っていた。

きゃっ。
つぎにちいさく叫んだのは、ユッコの番だった。
どっちが襲われているのか、わからないっ!
オタクっぽくて、ただの引っ込み思案な男の子だと思い込んでいたシュンくんが、
いまは獣のように瞳を輝かせて、
ユッコのブラウスを剥ぎ取ろうとしている。
えっ?えっ?えっ?
ブラウスの上から、胸をわしづかみにされて、もみくちゃにされて。
そうした荒々しさとはほんらい無縁な分、うぶな少年はよけいにじぶんを昂ぶらせてしまったらしい。
たどたどしい手つきが、ブラウスの上をまさぐり、二の腕をなぞり、制服のスカートをたくし上げる。
季節外れの黒のストッキングは、それでも夏らしく薄手のもので、白い肌が透けてよけいなまめかしく映ったらしい。
兇暴化した少年は、舌をクチャクチャと鳴らしながら、抑えつけたユッコの脚を舐めはじめた。
薄手のナイロンごしにヌルヌルと這わされるなまの唇や舌が、素肌を求めてしつように迫ってくる。
「やだっ、やだっ、やめてぇ・・・」
もう、どっちが吸血鬼だか、わからなかった。
そのときだった。
ぴしゃーん!
ふすまが思い切りよく開かれて、開かれたふすまの向こうには怒髪天を突いたキミカが、弟の所行を睨みおろしている。

あっ!わかった!ごめんっ!ごめんったらっ!
竹刀のように丸めた新聞紙で、びしびしと背中を叩かれながら。
シュンイチは意気地なく、畳のうえを転げまわる。
「お願いやめてっ!」
ユッコが思わず叫ばなければ、そのあとどうなっていたか、わかったものではない。
たいせつな友だちを、むたいにあしらおうなんて。
キミカはじぶんが侮辱されるより、許せなかったのだ。

もう・・・
「雰囲気、台無しだね。」
同時におなじことを口にして。
ユッコとキミカは、くすくす、けらけらと笑い出してしまっている。
なんなんだよ。オレ・・・
元どおりおどおどと小さくなっているシュンイチは、内心みじめでたまらない。
けれども、首のつけ根につけられた傷口は、さっきからじんじんと妖しい疼きを響かせていて。
ともすると、さっきまで彼に我を忘れさせていたあの淫らな妖気がかま首をもたげてくるのを、こらえきれなくなりそうになる。
ユッコが、また逢おうね、って言ってくれたのが、かすかな救いだったけど。
そのユッコも、やがて満足したように、帰ってしまった。
あとに残されたのは、おなじ制服を着た姉と弟―――
「もぅー。いつまで私の制服着てるのよっ。早く脱ぎなさいよねぇ。」
もとの姉にもどった姉は、まだぷんぷんしているのだが。
丈の長めなスカートからちらちら覗く、ひざ小僧。
ひざから下をぴっちりとおおっている、紺のハイソックス。
さっきの少女とはちがった、男の子みたいにかっちりとした身体の輪郭が、
身に添わせた女子の制服を、いっそうひきたてているようだった。
キリッとした輪郭に、フェミニンな衣裳。
たしかにあの子の、いうとおりだ・・・
シュンイチは息を詰めて姉の背後に忍び寄って、ひと息、息を詰めると。
やおら姉貴の両肩を、羽交い絞めにしていた。
「あっ!なにすんのよっ!?」
さいしょは尖った姉貴の声は、いつかかすれて、かき消えて。
ふたり、畳の上に影を重ねたときには、もう無言のせめぎ合いになっている。
痛・・・っ。
そのときだけ、姉貴はしんそこ痛そうに、声を洩らした。
吸血鬼の友だちに初めて噛まれたときにも、こんな声出したのかな?
生硬な入り口のなかの、思いのほか熱くて柔らかい秘奥に戸惑いながら。
少年は噛まれる姉を想像して、こらえ切れなくなって。
熱いほとびを思いきり、そそぎ込んでしまっていた。

キミ・・・。血の味が、変わったね。
ユッコに訊かれて、キミカががらにもなく顔を赤らめると。
おめでと。サトコやハルミも、もうとっくに女になっていたんだよ。
キミ、負けず嫌いだから・・・ずっと言えなかったんだ。
大人しやかな頬に、ユッコは珍しく、からかうような笑いをにじませて。
キミカを見あげる瞳が、愉しげに揺れている。
わたしもシュンくんに、バージンをあげちゃおうかな?
えっ?シュンのこと、好きなの?
はじめて女の歓びを知ってしまうと。
いかに親友でも。いかに相手が、弟でも。
嫉妬を感じてしまう、負けず嫌いなキミカだった。
それでもシュンイチには、すでに彼女がいる。
オタクなくせに、そのぶんませているのか。
とても色恋など語れそうもないシュンイチは、いかにもおぼこ娘な文化部の彼女と、いったいどんな会話を交わしているのだろうか。
キミカはイタズラっぽく親友の腰をつつくと、軽くそそのかしている。
こんどさ。アイツの彼女、襲っちゃってよ。
いまならまだ・・・処女だよあの子。
あいつ、女の子の味を、あたしで覚えちゃったから。
ぐずぐずしていると、手を出して・・・取り返しのつかない身体になっちゃうわよ。
・・・ウンウン。
ユッコはイタズラっぽく、ずるそうに笑って、親友に相槌を打っている。

夕子さんて、文化部の子は襲わないって言っていなかった?
彼女さいきん、黒のストッキング履いて学校に来るんだよ。
シュンイチが照れたように、困ったように、おなじベッドにいる姉をとがめると。
「いいじゃない。まだ清い付き合いなんでしょ?あなたたち。」
エヘヘ・・・と、頭を掻いていたら。
ヤルときにはちゃんと、ユッコの許可をもらいなさいよ。
姉はあいかわらず、言うことがきびしくて。
「わかったよー。夕子さんも、処女の血が欲しいんだろうね?」
軽く流しただけの目線を咎めた姉は、すぐさま敏感に反応しちゃって。
「彼女にナイショにしてあげてるんだからねっ。今夜はきちんと、満足させなさいよっ!」
ぞんざいに投げ出された伸びやかな脚は、太ももまでの黒のストッキングに薄っすらと染められていて、しなやかな筋肉に妖しい濃淡を浮き彫りにしている。
あのことがあったつぎの日。
さすがにコンディションを崩して、大会初日に負けたあと。
姉はスポーツ少女な日々から、一歩足を踏み出したらしい。

若返りの秘術

2007年08月01日(Wed) 08:06:49

洋間で倒れているのは、ワンピース姿の女。
太っちょの身体つき。
若さなどとはもう無縁な年恰好。
ワンピースの裾からにょっきりのぞく脚の、むっちりとした肉づきだけが、
てかてか光る肌色のストッキングごしに、わずかに色っぽさをとどめている。
めまいを起こしたように、大の字になって、気絶して。
そんな女の身体にのしかかっているのは、若い男。
さっきから首筋をくすぐるように、
ちゅうちゅう、ちゅうちゅう、音を立てて、
女の生き血を吸い取っている。
女はちょっぴりくすぐったそうに、頬をゆるめて。
男のなすがまま、血を啜り採られてしまっていた。

しばらくのこと。
男が起き上がると、あたりはもう薄闇が支配する夕暮れ刻。
手を引かれるままにけだるそうに起き上がった女はーーー
見違えるほど若やいでいて、透き通った肌はほどよく脂の乗った艶をたたえていた。
えっ。
女はわが身に訪れた変化にびっくりして、
あわてて鏡に向かって走り寄る。
向かい合わせに見出した往時の美しさに、
忘れかけていたものと再会した嬉しさに舞い上がって、
ほとんど涙ぐんでいた。

男は女の肩を後ろから抱き寄せて。
いいかい?オレに血を吸われると、その夜だけは、若返るのさ。
そういうことなら喜んで、あんたの血を吸わせてくれるだろう?
ウン。ウン。
女は小娘みたいに、はずむように身を躍らせて。
いいわよ。好きなようにして頂戴。
男の腕に、身を投げかけている。
さんざん愉しんだあげくのこと。
はだけた女の服を、もてあそびながら。
男はさっきの話の続きを、囁いている。
ただし・・・ね。
十ぺん、オレに血を吸われると。
もう、生きてはいられなくなるのさ。
だから、忘れちゃいけない。このイタズラは、九回までだよ。
女はそれでもウットリと、九回来てね、と、囁いている。

毎晩のように。
女は男を待ちつづけて。
九回吸われたその晩も。
男に囁いてしまっている。
あしたの晩、また来て頂戴。
怖くないの?死んじまうんだぜ?
男の問いに、女はきっぱりと。
いまの若さで死ねるなら、それでいい。
あなただって、若い女の血が欲しいんでしょう?
あしたの晩がさいごになるけど。
どうぞたっぷり、おあがりよ。
それから・・・わたしがいなくなっても、寂しがらないでね。

つぎの晩、男は約束どおり、やって来た。
女は、すこし古びていたけれど、色鮮やかなスーツを取り出して。
若い頃の服なんか、ほとんど捨ててしまったけれど。
これ、新婚旅行のときに着ていった服なのよ。
いま見たら、古くさい感じに見えるかしら?
お気に入りの、想い出の服を着て。
さいごにあなたに抱かれたかった・・・
男が足許にすり寄ってきて、すらりと伸びた脚に唇を吸いつけて、
早くもストッキングにふしだらなしわを波立ててゆくのを。
女は甘苦しげな笑みを浮かべながら、許していった・・・

動かなくなった女のむくろを抱きかかえて。
男はひとしきり、涙を流した。
けれども抱き締めた肩には、やがて生気がよみがえり、
女はかすかに身じろぎをした。
えっ。
目ざめた女は、初めてじぶんが若返ったときのように、信じられないというような顔をした。
悪いな。嘘をついたのさ。
男は女の耳もとに、秘密の言葉を囁いている。
オレに十回血を吸われたら。
血を吸われたやつは、オレとおなじ吸血鬼になってしまうんだ。
そこまでして、オレに血を吸われたがるか。
かりそめのイタズラで、とどまりたいのか。
それを、試してみただけなのさ。
オレだよ、母さん・・・
女が覗き込んだ顔は、ずっと昔生き別れになった息子のものだった。

ごく幼くして、別れ別れになったあと。
それでも息子は、顔も憶えていない母親を、ずっと慕いつづけていて。
吸血鬼になってしまってからも、面影を追いつづけていて。
やっとめぐり逢ったときには、吸血鬼と襲われる女の関係だった。
ひと晩、血を吸って。女を若返らせて。
そこに見出したのは、ほのかに残る甘酸っぱい記憶。
そこにあるのは、いまは理想の女の面差しとさえなっていた、若いままの母。
  わたしがいなくなっても、淋しがらないでね。
寂しかった。寂しかった。とても、寂しかった。
一生抱えてきたその寂しさを、渾身の力に変えて。
男は女に、魔法をかける。

~かつて美しかった、年配のご婦人方へ
  いま真っ盛りに美しい、うら若いご婦人方へ~
夜更け、男女二人連れの吸血鬼を見かけたら。
ようく、御覧になるといい。
恋人のように、寄り添っているのは。
ふたりが互いに唯一の肉親どうしだから。
もしも、そんなふたりに出遭ったなら。
喜んで、血を恵んでやりなさい。
優しい心の持ち主たちは、
むやみと貴女の生命を奪おうとはしないはず。
けれど・・・ご注意を。
かならず九回までで、やめておくことですよ。
あのふたり・・・息子の嫁になる女を、さがしているはずですからね。