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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

「時と場合によっては」

2007年11月29日(Thu) 06:53:27

もしも吸血鬼に友達がいて、
―――きみの奥さん(または彼女)の血が吸いたい。
そんなふうに申し込まれたら、どうしますか?
絶対イヤだ!そう思われる方は、ここから後は読む必要がないのかもしれません。
けれども。
相手と場合による。
そんなふうにお感じになった貴方。もしかすると、重症です。^^
吸血相手に、友だちのパートナーをわざわざのぞむ。
そんなときは、生き血の確保によほどせっぱ詰まっているのかもしれません。
相手が友だちの奥さんや恋人であれば、殺害目的で吸血するわけではないでしょう。
ほどほどに血を吸われて。
ほんの少々の貧血を覚えるていどで。
ぶじにご帰宅になるのは、ほぼ間違いありません。
けれども。
吸血行為というのは、たんなる輸血と決定的に違う要素があります。
素肌を直接咬ませ、ないしは吸わせてしまうこと。
怖いですね・・・。^^
時と場合による。
そんなお答えは。
相手によっては。場合によっては。
奥様や恋人の肌を吸わせてしまってもかまわない。
ちょっと変換すると、そういうことにもなりかねないわけです。
賢明な殿方であれば、ふつうは決してこういう答えかたをしません。^^

生き血の確保にせっぱ詰まっている。
そう、申し上げました。
けれども、ほんとうにそうなのでしょうか?
知り合いの吸血鬼に、訊いてみました。
友だちに、奥さんや恋人の生き血がほしい・・・っておねだりするときって、どんなとき?
愚問だね。
かれはフフフ・・・と、せせら笑います。
嘲りよりも、同情と気安さをこめた笑いで。
そうして、おもむろに答えたものです。
友だちの奥さんや彼女ほど、つまみ食いに適した関係はないのだよ。
とくに、パートナーの男性が善意の持ち主で、サポート役にまわってくれるときほどね。
おいおい。そうくるのかね?
咎めるように小突いてしまうと。
小突かれた彼はなされるがまま、くすくすと含み笑いをしています。
なにしろ、私じしんが。
彼に妻をねだられて、ねだり取られて苦笑している「善意の持ち主」だったから。

時と場合による。
そう答えた人の何割かは。
時と場合によって、こんなふうに。
奥さんや彼女を、彼のもとへと送り出しているのです。
あらかじめ、言い含めてか。
ナイショで・・・か。
それは・・・ともかくとして。
彼への友情のしるしに、そんなふうに応えてしまっているのです。

抱きすくめられて。
うなじを噛まれながら。
暖かい血を、吸い取られながら。
服一枚へだてて感じあう、肉体と肉体。
襲われる側は、どこまで許してしまうものでしょうか?
亭主がいいと、いってくれたんだ。
そんな甘美な囁きのまえに。
夫と同等の関係を許してしまう奥方。
おや、おイタをしてきたの?いけないねぇ。
迎え取った奥さんを、ご主人は苦笑交じりに優しく咎めるだけのようです。

ゆだねる女性が恋人である場合。
しばしば彼女の純潔も、危機にさらされます。
処女の生き血に格別の好みを持つ彼らなら。
すぐには・・・奪わないでしょう。
けれども、許された密会を重ねるうちに。
吸血鬼の友人に気を遣って、恋人を抱こうとしない彼氏の代わり。
友だちの未来の花嫁の純潔を、こっそりいただいてしまう。
そういうけしからぬ友人も、いないとはかぎらないようです。
よく、教え込んでおいたからね。
披露宴のとき。花婿にこっそり囁く悪友。
くすぐったそうに聞き耽る、いけない花婿。
そんなふたりを、横目で優しくにらむ花嫁。
病気です。(笑)

妻に、恋人に、こんなケシカラヌことをされながら。
時と場合によっては。
夫や彼氏は、なぜかウフフ・・・と肩すくめて笑っているのです。

ブログ拍手♪

2007年11月28日(Wed) 07:32:10

さいきんコメも拍手も入らんなぁ・・・って思っていたら。
入りました!拍手。
一日三回というのは、過去最大です。(*^^)v
(レベル低すぎ・・・? ^^;)
拍手を戴いたお話は。

携帯で合図♪
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-1128.html

エリート
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-1226.html

取り換えあって
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-1227.html

でございます。
応援、ありがとうございました。m(__)m
「携帯で合図♪」は、人の奥さんを連れ出して、みんなで誘惑しちゃうお話。
「エリート」は、同期のエリートの美人妻を堕とした吸血鬼が、お姑さんまでめろめろにしちゃうお話。
「取り換えあって」は、突然吸血鬼になった男たちが、家族の血を吸うのをきらって、互いに家族を交換して血を吸い合うお話です。
共通項は、「人の奥さんと・・・」っというところかな?
あと、ゆがんでいるところ。(笑)
あ・・・それはここのお話すべての共通項?^^;

妻を誘惑されて堕されるというのは、本来あってはならない困った現象なのですが。
なぜかここに登場する夫たちは、ひそかな昂ぶりを覚えつつ、情況を見守っているようです。
「携帯で合図♪」は、お相伴にあずかっている男たちが、じつは共犯者の立場・・・みたいなオチがついていますが。
「エリート」ではエリートサラリーマンの間々田さんが、さえない同期の蛭田くんに奥さんばかりかしっかりもののお母さんまで姦られちゃうというお話ですし、
「取り換えあって」でも、年配の奥さんと引き換えに新妻を差し出す若いご主人のほうが、かなり割を食っています。
そのあと妹やママまで進呈しちゃうみたいだし。^^
そういうアンバランス。
お話としては、かなり愉しいと思うのですが。

初めて操を喪って。  間々田の母の場合

2007年11月26日(Mon) 07:39:19

初めて操を破ったとき。
畳に散らかったのは、脱がされたスカート。引き裂かれたブラウス。
人前に出られないほど、振り乱された髪。
ストラップが片方ちぎれた、ロングスリップ。
ちりちりに咬み破られたストッキングの裂け目ごし。
じかに冷気に触れる素肌が、すーすーと肌寒い。
喪われてしまった操。
それでも冷静でいられるのは、どういうわけだろう?
頭の奥が、スッとした。
股間にねばつくものを、思い切りよくさっと拭い取ったとき。
傍らに寝そべる男がフフフと笑う。
蛭田と名乗る、その男こそ。
永年守り通してきた貞操をたったいま辱めぬいた、にくい男。
にくいはずの男。

ごめんくださぁい。
玄関先にのどかに響くのは。
宅配便らしい男の、若い声。
とても、人前に出られた情況ではない。
ご近所のうわさになってしまう。
代わりに、出て。
そう、目で訴えると。
男は物分りよく、さっと立ち上がる。
さっきまでの飢えた獣の面貌を、思い切り冷ややかな無表情の下にしまい込んで。

ごめんなさい。
男はすぐに、をたをたと戻ってきた。
奥さん、判こ・・・
もう!気の利かない話・・・
でももう、手早くすませた身づくろいのあとは、
もとの質素な奥方になりきっていた。
ああ、はい。ここに捺せばよろしいんですね?ごくろうさま。
届いたのは、大きな箱。
壊れ物、って書いてある。
お開けになるのは、奥さんですよね?
男はなぜかイタズラッぽく笑って、封を切るのだけは手伝ってくれた。

出てきたのは、大仰なまでのフラワー・アレンジメント。
血のようい紅いバラの花は、さっき彼女が流した本物の血のように濃い。
部屋に満ちあふれる香気にうっとりとなりながら。
女は花束に挿された紙片を手に取った。
男はさりげなく座をはずし、外を窺うように窓辺にたたずんだ。

「攻略おめでとう♪ 勇&瑞江」

なぁに、これ?
内心しまったと思いながら。
操子は愛人をかえりみる。
たくらんだのね?あなた達。
さぁ。。。
手をお出しになって。
え・・・?
蛭田がいぶかしそうにしていると。
女はバラを一輪つまみあげて、
蛭田の手の甲に、棘を突き刺した。
あ痛たた・・・っ!
頓狂な声をあげて飛び上がる蛭田を、くすくす笑いながら。
これでおあいこに、してあげる。
かけがえのなかったはずの貞節を。
こんなていどで惜しげもなく引き換えにしてしまうと。
女は思い切りよくサバサバと立ち上がって。
部屋の隅に脱ぎ捨てられてあった黒のストッキングを拾い上げて。
だらしなさげに、ぶら下げて。
はい。捨てといて。
男の手に、渡していた。
なぁに、捨てるはずはない。
持って帰って、息子に見せびらかすのだろうか。
嫁にまで見られるのは・・・気が引けなくもないけれど。
せめてそれが、高価なブランドものであることが。
操子のプライドをかろうじて、満足させた。

瑞江さんのときには、勇が自分で渡したのかしら?
ずばり、言い当てられて。
あのとき、照れくさそうにしていたあいつの顔を思い出すと。
瓜二つの彫りの深い面差しが、うふふふふっ・・・って、笑いこけた。
うちの人が元気だったら。
あなたに渡してもらったのにね。
賢夫人の面貌をかなぐり捨てて。
女はひとりの女に、戻っていく。

週末は、夫の法事。
親戚一同を、送り出したら。
まじめくさってしゃちこばっているであろう息子に、なんて言ってやろうか?
この男と待ち合わせるホテルに、瑞江も誘って。
おそろいの黒のストッキングの脚を、息子に見せびらかしながら。
黒のストッキング。お父様を弔う意外にも、使い道があったのね。
二人して、彼にご馳走しちゃおうね?
いつもしっくりゆかなかった嫁も、声合わせて笑ってくれるに違いない。


あとがき
奥ゆかしく秘めた貞操を食べられてしまった賢夫人さん。
凌辱のあとはよよと泣き崩れるよりも。
こんなふうにさばけてしまったほうが、愉しいかも?^^

取り換えあって。

2007年11月26日(Mon) 06:08:21

ある中年男が、突然吸血鬼になった。
それはあまりにも突然だったので、家族のだれもが気づかないほどであった。
血が欲しい・・・
そんな欲求とは、裏腹に。
家族を牙にかけるのは、どうにも気がひけた。
血を求めながら。血を欲する忌まわしい欲求をおし隠しながらさまよううちに。
とうとう我慢しきれなくなって。
夜道で襲ったのは、近所に住む若い男。
新婚ほやほやの若夫婦の、夫のほうだった。
ひと息に吸い尽くしてしまうと、ほどよい充足感がやってきた。
血は、旨い。
男の血だって、旨いくらいだ。
女の血は、さぞかし美味なのだろう。
吸血鬼仲間になってしまった若い夫に、中年男はもちかけた。
お前も血が欲しいのだろう?
でも、家族を牙にかけるのは、気がひけるだろう?
こうしようじゃないか。
うちの女房の血を、吸わせてやるから。
お前の奥さんを、襲わせてくれ。
お互い、知らない仲じゃない。
でも、家族を襲うよりは、ましだろう?
ここは、困ったもの同士。交換条件といこうじゃないか。

若い夫が仕方なさそうにうなずくと、中年男はにんまりとした。
もともとあの若妻は、まえから目をつけていたのだった。
若い夫に家のカギを差し出すように言った。
自分を支配してしまった男のいうことを聞くしかなかったのかもしれない。
おずおずと差し出されたカギと引き換えに、中年男は自分の家のカギを手渡すと。
じゃ、しっかりやれよ。
中年男はそう言い捨てて、飛ぶような速さで若夫婦の家をめざした。
若いほうの夫は、仕方なさそうに立ち上がると。
闇にさえぎられた我が家のほうを、ちょっとのあいだ残り惜しげに見送ったけど。
それでも中年男の自宅めがけて、のろのろと歩き出していた。

若妻のほうは、上首尾だった。
着飾ったまま起きていた若妻は、突然の侵入者に髪振り乱して抗ったけれど。
怯え切った手足に、力をこめることができないままに、
夫婦のベッドのシーツを、若い血で濡らしてしまっていた。
中年男は若妻のスカートをめくって、
すらりとしたふくらはぎを、てかてか光る肌色のパンストごしに意地汚くいたぶって。
しまいにちりちりに破り捨て、パンティまでも脱がしてしまった。

ごめんください。
ひっそりと鳴らしたインターホンに。
ふしんそうに玄関先にあらわれた奥さんを。
若い夫はものもいわずに羽交い絞めにして。
無我夢中で、うなじを噛んでいた。
不思議な晩ですね。
荒い呼吸を鎮めかねた若い夫に、
傷口を押さえた奥さんは、物静かを装って。
長いこと夫にかえりみられていなかった柔肌を、それとなく襟首から滲ませていた。

それから、毎晩のようだった。
中年男は若妻のもとに通いつめ、
夜な夜な若い生き血に酔いしれた。
若い夫のほうも、その妻のもとへと通いつめ、
黒のストッキングの脚に、夢中になってむしゃぶりついていた。
どちらかといえば、中年男のほうが得をしたはずの取引なのに。
いまは若い夫も、満足していた。
中年男の女房は、自分が脚に通す黒のストッキングばかりではなく、
女学校に通う娘のハイソックスまでご馳走してくれたから。

長年連れ添った妻と。最愛のまな娘と。
母娘ながら食われてしまった中年男は、内心ちょっぴり後悔しながら、
それでも自分の古女房を優しくあしらっているらしい若い夫に遠慮して、
娘もよろしくと告げただけだった。
ぴちぴちはずむ若妻の肢体に満足しきったからでもあったのだが。
若い夫は、さらに親切だった。

ふたりの吸血鬼は、それぞれにあてがわれたねぐらで飢えを満たすと。
初めて片方がもう片方を襲った辻で、顔見合わせて。
今夜のようすを、告げあった。
お互いに、相手の妻や娘の血を口許を散らしたまま。
こんなふうに、抑えつけて。あんなふうに、肌を吸って。
えーっ、そんなにされちゃったんですか?
うぅん。そこまでされちまったのか。
互いの自慢に、悦に入りなら。
なぜか相手のやり口まで、ウキウキ思い描いてしまっている。
お嬢さん、処女でしたよ。
あるとき若い夫はそういいながら。
貴方にも、処女をあてがわなくちゃ、ひき合いませんよね?
若い夫が渡してくれたカギは、自分の実家のもの。
妹がまだ、嫁ぎ先が決まらずにいるんです。
相談に乗ってやってもらえませんか?
父も・・・よかったら母のこともよろしくと、苦笑いしていましたよ。

すまないね。
いいえ、こちらこそ。
夜な夜な血を求めてさまよう通い道。
男たちはひっそりと声交し合って。
今宵も互いの獲物を取り換えあうのだった。

エリート

2007年11月26日(Mon) 05:40:01

間々田は、エリートサラリーマンである。
同期の中でいちばん早く、チーフディレクターになった。
チーフディレクターというのがどれほどえらいのかは、読者の想像にお任せするが、
とにかく同期に羨まがられたことは、間違いない。
そのうえ奥さんは、ミス総務部だった同期の女子社員である。
どちらかというと、こちらのほうが羨まがられたことも、想像に難くない。
けれども誰も知らないのは・・・そうした栄光の座の裏面である。

同期に、蛭田という男がいた。
間々田と正反対の、さえない男である。
もちろんいまだに平社員なのは、想像に難くないであろう。
間々田の上には課長がいる、ということは。
チーフディレクターがいくらえらいといっても、それはせいぜい課長補佐か係長といったところだろうから。
彼よりもできのよくない蛭田は、当然に平社員なのである。
どれほどさえないかは読者のご想像に任せるが、
まずたいがいの仕事は、まともにできたためしがないといえば、容易に察しがつくだろう。
いちどだけ。
間々田に勝ったことがあるというのだが。
だれもそんなささいな勝ち負けのことなんか、もうとっくに忘れてしまっているだろう。
けれども。
蛭田はじつは、間々田に勝っているのである。
というよりも、勝ちつづけているのである。
信じられない話であろうが。
世の中、そういうこともあるのである。
そして、自分より劣ると自他ともに認めるやつが、たまさか勝ちつづけたからといって。
意外に腹立たしさを感じないということも、世の中には存在するようである。
いっぽうで。
とてもかなわない―――それもかけ離れてかなわないというほどのけた外れの相手に勝負を譲ったからといって。
力の等しい競争相手に負けるのに比べれば、
悔しいという感覚が鈍磨してしまうというのも事実である。
蛭田と間々田の関係がそのどちらにあたるのか。
それも、読者のご想像に任せるほうが、このさい適当というものだろう。

蛭田は、間々田夫人を寝取っていた。
それも、きのうやきょうからの仲ではない。
間々田との結婚前から、寝取っているのである。
夫の間々田がそれを黙認しているなどということは。
同期はもとより、この世のだれもが知らないくらいの、秘密に属するのである。
そんなことが知れ渡ってしまったなら。
もちろん、エリートサラリーマンとは見なされないであろうから。

間々田夫人の瑞江は、なかなかよくできた女である。
人妻ながら、まだお嬢さんみたいな若さを保っていた。
どれほど若々しかったかといえば、これも横着ながら読者のご想像にお任せしてしまうのだが、
透きとおるほど白い肌と、ツヤツヤとした黒髪と。
よく輝く瞳。濡れるように紅い唇。
知性的な風貌を損なわないていどに、ほどよく突き出たおっぱいと。
どう見てもすらりとしているのに、それでいてむっちりした肉づきをそなえたふくらはぎと。
そんな風情を思い浮かべていただければ、まず適切というところであろう。

よくできた・・・というのは。
たんに美貌というだけでは、むろんない。
知性や教養。所帯持ちのよさ。
そんなことは、エリートサラリーマンの女房としては、まず当然のことであって、
いちいちここで書くほどのものではないのだが。
なんといっても最も上首尾の部類といえるのは。
己の浮気を、夫にそれとなく知られながら。
嫉妬されてもおらず、夫の愛情をそこねてもおらないという点につきるのである。
これは、不思議な魔法であって。
夫にかいがいしく尽くすとか、
うまいこと、受け流しているとか。
床あしらいがいいとか。
そんなことだけでは、決してうまくいくはずもないことなのである。
それを顔色ひとつ変えずに、なんなくやり遂げてしまう・・・ということは。
ただもう、それだけで。
瑞江という女が、ただものではないことを証明しているといえるであろう。

若い妻にとって、浮気の最大の妨害者は、いうまでもなく夫である。
たまさか、夫を手なずけてしまった・・・としても。
強敵はもうひとり、この世に存在する。
それは姑という名を持つ女である。
姑というものは、嫁という種類の女にとって、いついかなるときでも天敵であり得るのだが。
さすがエリートサラリーマンの母だけあって、
操子という名を持つこの姑は、まことに手ごわい相手だった。
それがあるときをさかいに、ころりと参ってしまったのは。
まったく、瑞江という女のよくできているゆえんというものだろう。
瑞江がもちいた手段は、いたって簡単である。
愛人の蛭田に、操子を引き合わせてしまうことだったのだ。
なにしろ蛭田は、吸血鬼だったから。

操子がいかに手ごわい賢夫人であればとて、思い通りにすることは、ひと思いですむのである。
案の定、といおうか。ご多分に漏れず、といおうか。
未亡人であった操子夫人は、蛭田のためにめろめろに酔わされてしまって。
奥ゆかしくも秘めていた淑徳を、息子の悪友の劣情を前に、惜しげもなく散らしてしまったのである。
あのどん尻サラリーマンにすぎない蛭田が、人の生き血を吸って、
相手の意思を支配して、思い通りにしてしまうなどということは。
それこそ誰にとっても、想像の埒外というものであるのだが。
ラチ外・・・ということは、しばしば人を唖然とさせてしまうようで。
あまりにも唖然としてしまった彼女の息子は、貞操堅固であった母親の情事をさえも、苦笑をもって報いるだけだったという。

今の世の中は、携帯電話という便利なものがあって、
その便利さは、こうした間々田や蛭田のあいだでも、とても重宝すべきものであった。
なぜなら、お互いかち合ってしまうという気まずさを、
ワイシャツの胸ポケットに入るほどのこの小さな武器が、すっかり解決してくれるのだから。
蛭田が欲情を覚えたとき、
ないしはいつもどおりのへまを上司になじられて切なくなったとき。
彼は会社の廊下の隅っこで、ぶつくさ言いながら、間々田にあてて携帯メールを打つのである。
「今夜はお帰りは遅いですか」
とまあ、こんなような文面である。
間々田は一を聞いて十を知るようなエリートサラリーマンであるから。
たちまち同期の男のけしからぬ意図を察知するはずである。
「うちで一杯、やりますか?何時でも歓迎ですが、帰りは遅いです」
もうそれで、十分。
夜訪れる吸血鬼を歓迎するのは、親友じしんよりも、その妻のほうが適役というものであろうから。

蛭田はわくわくとして、夜の路をたどってゆく。
なにしろ、ピチピチとした若妻と、脂ののり切った熟女が、
心を込めて歓待してくれるのだから。
こういうときだけは、蛭田はかなり有能な男に早変わりする。
出迎えてくれたふたりの顔色を見比べると。
毎晩のように満たされている若妻は、それ相応に落ち着いているのに。
貞女の顔をとりつくろいながらも情事に浸る嫁が羨ましくてならない姑のほうは、
やっぱりそれなりの妍を、落ち着いた気品漂う風貌のどこかによぎらせているものなのである。
そうはいっても、瑞江といえども、そう毎晩夫からの満足を享けている訳ではない。
夫はなにしろエリートサラリーマンであるから、
仕事ができなくて早く帰される蛭田なんかよりも、ずっと帰りが遅いからである。
ふたりとも、かげながら、ほんとうにかげながら、男を求めている。
そして夫であり息子であるこの家唯一の男の住人の、今夜の帰りは遅い。
さぁ、どちらを先にしようか・・・
読者が蛭田なら、嫁と姑・・・どちらを優先なさいますか?

蛭田がさきに触手を伸ばしたのは、母親のほうであった。
もちろん、ご想像のなかでちがう選択を試みた読者諸兄諸姉もおいでであろう。
が・・・ここはまず、蛭田の選択にしたがってみようではないか。
なによりも真っ先に蛭田が考えたのは、己の食欲を満たす・・・ということばかりではなかったらしい。
たんに血に渇いた喉をうるおすだけのことならば。
その役はより若い血液を秘めた若妻のほうが適役であろうから。
蛭田が考慮したのは、ふたりの女のバランスというものである。
先に食される・・・ということは。
やはりなんといっても、女にとっては名誉なのである。
そして嫁と姑という組み合わせほど、”名誉”というもののまえに闘志をむき出しにするのは、
どこでもご多分に漏れないことである。
賢夫人である姑殿が、蛭田のまえさっと気前よく熟れた素肌をあらわにしたのは、いうまでもない。

蛭田のねらいは、べつにもある。
本命は、いわずとしれた瑞江のほうである。
けれども瑞江とはしっかり気脈を通じ合っているのであって、いまさらつまらない順序争いで嫉妬するわけではない。
そのうえ、なによりも若い素肌が放つえもいわれない香気は、
あとの愉しみにとっておくに、じゅうぶん値するのである。
けむたい姑をへろへろに酔わせてしまって。
お行儀よく、寝かしつけて。
さあ、それからが、本番だ。
蛭田のねらいは、さらにべつにもあるのだが。
それについてはおいおい触れるとして、
そろそろこの飢えた男のフラチな欲求を、少しずつ開放してやろうではないか。

姑と二人きりになると。
蛭田はだらしなく相好を崩して、この美しい姥桜によりかかっていくのである。
それは母親に甘えるような気安さで、女は母性本能をくすぐられるままに、しょうしょうのフラチには目を瞑ってしまうのである。
なにしろもう、夫はいない。
息子も嫁も、むろん口を閉ざしてなにも見ずなにも語らないのはむろんのこと。
自分はただ、愉しんでしまえばよい。
質素な黒の喪服は、彼女の気品を損なうことなく、かえって情人を欲情させるのに役立つはずだ。
気丈な賢夫人はかくて、きりりと装った高貴な衣装を、
およそ不似合いな好奇と欲情に満ちた唇だの舌だのに、惜しげもなくゆだねていってしまうのである。

携帯メールというものは、いつの場合にも便利な道具である。
布団のうえで、七転八倒、いや極楽往生を決め込んでいると。
てきとうなところでぴりりと鳴って、われに返らせてくれたりする。
「そろそろ帰りますが」
とは、この家の家長どのの弁である。
「どうぞ、お戻りください。いまお母上と面談中です」
蛭田は顔色ひとつ変えないで、返信を打つのである。
傍らに寝そべるお母上は、あまりに激しい腰使いに疲れ果て、
そのうえしたたかに相手をした吸血行為のために、すっかりへたってしまっている。

「お母上と面談中」
そんな返信を受け取って、内心間々田は困ったな、と思っているはずである。
彼の目論見では、あのだらしない蛭田のことであるから、さきにピチピチ妻を牙にかけて酔わしてしまい、
いまごろは母親にとっくりとお灸をすえられているだろうということだったのだが。
どうやら順序が、逆らしい。
いま帰宅すると、ちょうどやつが妻を食い荒らしている最中という、情けない情況に陥ること必然である。
けれども飲み疲れた上役はもう帰ると宣言しているし、
終電が迫っているいまとなっては、ほかにもう時間をつぶすよすがとてないのである。
けれどもそこは、冷静きわまりないエリートサラリーマンのこと。
かれはちっとも騒がず、返信に返信をする。
「わかりました。これから戻るので、よければ一杯やりましょう」

ええと、ここで簡単なおさらいです。

今夜は帰りは遅いですか
うちで一杯、やりますか?何時でも歓迎ですが、帰りは遅いです
そろそろ帰りますが。
どうぞ、お戻りください。いまお母上と面談中です。
わかりました。これから戻るので、よければ一杯やりましょう。

非の打ち所のない、やり取りではあるまいか?
ここからさいぜんから言及している不埒な行為の連続に察しをつけるには、よほどの想像力が要りようではあるまいか。
それでも彼はやり通し、彼はやられ通してしまっているのである。
その立場の相違は、昼間とはまったく正反対なのだが、
かえってそうであることが、お互いにとって(少なくとも片方にとって)どうやら都合のよいことのようである。

エリートサラリーマンの妻というものは、客あしらいをきちんとわきまえているものである。
なぜならそうすることで、夫の出世の糸口になったりするのだから。
ただし。
そつのない社交性というものは、社交性が必要とされない場合でも、遺憾なく発揮されるものらしい。
瑞江は勤めに出ていたときのように、きりっと装っている。
むろん、夜の客の蛭田のためだ。
ピンクのスーツに純白のタイつきブラウス、それにてかてか光る肌色のストッキングといういでたちで、
姑の身体から吸い取った血をいまだに口許から滴らせている吸血鬼と、対峙している。
瑞江はにこりともしないで、待たされた非礼を軽く責め、謝罪を寛大に受け入れると、
両腕を突き出して情夫の背中に腕を回して、目を瞑る。
長いまつ毛を、かすかに震わせながら。

あんなことを、されているのか。
こんな仕打ちも、受けているのか。
家路をたどる夫の頭のなかは、狂おしい妄想でいっぱいである。
瑞江のやつ、あのピンクのスーツを着ているのだろうか?
あれはまだつきあっているころ、オレがボーナスはたいて買ってやったやつなんだ。
ブラウスをくしゃくしゃにされるくらい、おっぱいなんか揉まれちゃって。
首筋にしつこく這わされてくる唇を、なんなく吸いつけられちゃって。
スカートのすその奥をまさぐられながら、
てかてかする薄手のストッキングを、びちびち破かれちまって。
そんな妄想がぐるぐる、ぐるぐる、頭の中で渦を巻いているのである。
ドクドク、ドクドク。
アルコールのせいで速度を増した血のめぐりは、いっそう狂おしくなっていって。
気の進まなかった足取りは、なぜか足早になっていて。
ついに間々田は我が家にたどり着く。

あはん・・・ううっ。
あれはまぎれもない、妻の声。
くくくくくっ・・・って、笑ったのは。
うだつのあがらないはずの、あいつの声。
声と声が、からみ合うように、重なり合って。
もうそれだけで、折り重なりからみ合っているであろうふたつの裸身を、思い描くことができるほどである。
間々田はインターホンを押すのもはばかられて、自宅の庭先にまわって、
雨戸をそっと、細目にあける。
ふすまの開いた隣室から覗いているのは、どうやら母親のものらしい白い脚。
放恣に伸びきった様子からは、日ごろ奥ゆかしい賢夫人らしさはどこにもない。
腰までたくし上げられた黒のスカートから、ぬるりと輝く太ももを大胆にさらけ出していて。
引き裂かれた黒のストッキングが、まだ片足に残っていて。
ふしだらにたるんで、脛までずり落ちている。

それよりも、なによりも。
妻である。
ソファの背中には、ピンクのジャケットが。
テーブルの上には、おなじ色のタイトスカートが。
しわひとつなく、きちんと折りたたまれているのは。
貞操を狙われた瑞江が、ろくろく抵抗もせずに、侵入者の意に従った証しであろう。
剥ぎ取られたブラウスはじゅうたんの上、荒々しく投げ出されていて。
胸元と肩先には、バラ色の花が咲いている。
むろん、吸血鬼のために服の持ち主が散らした痕である。
ストッキングはとうの昔に引き破られて、部屋の隅に脱ぎ捨てられているのだが。
あのてかてかとした光沢は、妻の脚をガードしていたときそのままに、透明な輝きを滲ませている。
脱ぎ散らかされた服の持ち主は、こんな観察をしているあいだじゅう、
卑猥なうめきを洩らしつづけていて、
こうこうと照らされた照明の下、輝くばかりの柔肌を、惜しげもなくさらしているのである。

あーっ、貫かれている・・・
犯されちまっている。
そんなこと、エリートサラリーマンとしては、口が裂けても洩らしてはならないのだが。
真夜中の侵入者がこの上もなく不埒に繰り広げるこの光景を、
なぜか間々田は、妨げようとしないのである。
ワクワクとこみ上げてくるどうしようもない劣情に耐えかねて。
ほんとうは受け入れてはならないものを受け入れつづけている妻の痴態に昂ぶりながら。
ほんらいは受け入れられているはずのものを、器用な手つきで逆なでしつづけているのである。

一杯やった、という情況とは、ほど遠いのかも知れない。
けれども・・・まぎれもなく一杯やったことになっているのである。
片方の男は、上役の歓心を得るための酒で。
その男の足許にも及びない、もう片方の男は、彼の母や妻の血で。
いや、何よりも。
嫉妬の愉しみと、面前で征服する満悦とが。
この両極端に傾いた男たちにとって、どうやら無上の献酬であるらしい。
お互い内心で、口をぬぐいながら。
また、一杯やろうね。
翌朝はそんなふうに、声を交わすのであろうか。
一杯食わされた。ですって?
さあ。いかがなものでしょうか・・・。

ちらり。

2007年11月22日(Thu) 07:47:00

はぁい。
お客さんの鳴らすインターホンに振り向いたママ。
ちらりと覗いたワンピースの胸元に、ボクはハッとなる。
ちらりと視界をよぎったのは。
はっきりつけられた、赤黒い痕。
それは、ふたつ綺麗に並んでいて。
まだしたたりを、あやしているようにさえ見えた。

まぁまぁ・・・しょうがないわね。
あいまいな呟きを口にしながら、玄関先から戻ってきたママは。
さっきまでアップにしていた長い髪の毛を、なぜかほどいて、
お嬢さんみたいに、胸までたらしている。
ちらちら覗く首筋に。
やはり見え隠れしている、紅い痕。
どうしたの?
まじまじ見られて、目をそらして。
部屋に入ってきた姉さんと目が合うと、
こんどは姉さんのほうが、目をそらす。

ふぁさ・・・
重たいプリーツスカートのそよぐすき間から。
ちらりと覗いた太ももに。
やはりつけられている、紅い痕。
ふふふ・・・
姉さんは、なにもかも見通したような目をして。
ミカちゃん、来ているんだよ。
あちらのお部屋、覗いてごらん。

こわごわ覗いた、応接間。
大人になったらボクのお嫁さんになる同級生は。
脚だけのぞかせたまま。ソファのかげ、うつ伏せになっていた。
キュッと引きつったふくらはぎが。
ハイソックスのなかで、緊張していた。
のしかかっている黒い影は、
ボクよりも毛の濃い脚を、ミカちゃんの脚に絡みつかせて。
ソファの陰で、ミカちゃんのうなじを噛んでいるのだろう。

うふふ・・・
ふふふ・・・
くすぐったそうな、女たちの笑み声のなか。
ただ、生唾を呑んで、様子を窺いつづけるボク。

初期のお話

2007年11月22日(Thu) 07:40:12

昔描いたやつをたまーに読むと、ぞくり!とします。
描き方が慣れていなくて、多少稚拙なものも多いんですが。
鮮烈さ?では、まさっていたりして。
プロットができあがったのは、早かったので。
いまのお話しか目を通していない人にも、そう違和感はないような気がします。

パートの若妻 気丈なひと

2007年11月21日(Wed) 06:05:23

また、お客さんにヤなこといわれたな?
覗き込んでくる顔つきは、まるで悪戯ざかりの少女のよう。
からかうような口調には、悪意もさげすみは、かけらもなくて。
もっと周りを愉しもうよ。
そういいたくって、たまらないらしい。
パートづとめのそのひとは、家に戻れば旧家の若奥さん。
もう、それなりの齢の子どももいるというのに。
なぜか少女のように、初々しい。

ふたりきりになったとき。
血を吸いたいんでしょう?
ひた隠しにしていた欲求を、ずばりと言い当てられて、びくりとすると。
機先を制したように、ロングスカートをたくし上げ、
ほら、噛んでもいいのよ・・・って。
ふくらはぎを差し出してくれた。
ダイヤ柄の黒のハイソックスの薄い生地は。
はち切れそうなくらいぴちぴちとしたふくらはぎの周りに張りつめて。
触れただけで、破けてしまいそうだった。

きゃっ。
かすかにあげた声に、かえって欲情して。
すべすべとした舌触りの向こう側に、力任せに牙を噛みいれて。
しぶいた血潮は活きがよく、シンのつよい彼女の気性そのままに。
さぁ、元気出すのよ・・・
そんな気持ちを、胸の奥まで染みとおらせてきた。
むざんに破けたダイヤ柄のナイロンハイソックスの裂け目から。
ばら色のしずくを滲ませた皮膚が、健康そうに輝いている。
もう。やだねぇ・・・
吸血鬼のあしらいに、なれているらしく。
近所の子供に気前よくジュースをご馳走するおばさんみたいに笑いながら。
彼女はむぞうさに、ハイソックスをずり下ろす。
こっそり捨ててあった紙袋の中身を、見られないようにせしめたつもりが。
帰りがけ、ぽんとバックを叩かれて。
いやらしいわね。
くす・・・っと笑う顔つきが、やっぱり少女のようにイタズラッぽい。

主人もね。血を吸う人なんです。
もちろん、主人のお父さんも。
だからときどき、血が足りなくなると。
母や妹に来てもらうんです。
このごろは・・・弟のお嫁さんまで、来てくれて。
でも、ダンナたちには、ないしょですから・・・
あまりおおっぴらには、頼めないんです。
このごろ息子も、大きくなってきたから。
相手をするの、たいへんなんですよ。
目じりにちょっぴり、小じわを見せる。

その小柄な身体で、よくもっているな・・・
自宅の畳のうえ、義父に組み敷かれながらも。
彼女はそれでも、あのときみたいに。
少女のように、イタズラッぽく笑いながら。
素肌をはだけて、接しているのか。
それでも背筋を伸ばして、凛と生きている気丈な彼女。
男のひとって、甘えたですね。
笑んだ口許は、翳ひとつなく快活にはずんでいる。

命じられるままに

2007年11月20日(Tue) 08:01:00

奥様のちょっと恥ずかしい写真を撮影いたします。 写真館 緑華堂
生垣に隠れるようにして、ひっそりと佇んでいる看板を。
だれがどこで盗み見ているものか。
あるご夫婦は、夜更けに目だたないようにして。
またあるご夫婦は、いかにも家族写真を撮るようなふりをして、着飾って。
写真館のドアを、ノックする。

いらっしゃい。
痩せぎすなあるじはぶっきら棒で、さえない顔色をしていて。
頭の白髪だけが、異様につやつやと輝いていて。
あの・・・表の看板見たんですが。
家内とふたり、決まり悪げに切り出すのに、
ごく事務的に、応対した。
ウン。ウン。結婚十周年ね。お子さんはまだいない。
処女と童貞で知り合った。なるほどね。
構図は・・・?着衣のまま。スカートたくし上げるくらいはOKね?
胸は?そう。あそこの毛までは写らないようにするんですね?
そつのない応対に、さいしょはほんとに決まり悪かったのに。
家内までもが、セミ・ヌードまではよろしいですよって、大胆なことを口走りはじめている。

撮影は、その場で始まった。
さいしょはふつうの、ポートレイト。
デラックスな撮影室にしつらえられた、ルイ王朝風の豪華ないす。
家内はいすに座らせられたり、脚を組まされたり。
いすの端に立ってポーズをとったり。
キュッとひねった腰つき。
意味ありげに胸の上に重ねられた両手首。
ツンとそむけた首筋。
命じられたポーズは、いつになく色っぽくて。
家内もだんだん、その気になってゆく。
タイトスカートから覗く太ももをよぎるストッキングの光沢が、夫のわたしにまで眩しかった。

さあ、脚を開いて。
撮影師の命じるまま、家内は素直に脚を開いた。
コンパスみたいにまっすぐに伸ばして、大胆に広げられた両脚は。
肌色のストッキングをてかてかと光らせていて。
ポーズを変えるたび、ヘビのようにくねる脚をよぎる光沢が。
わたしと撮影師の目の前を、毒々しくよぎるのだった。
さあ、ご主人も入ってください。
命じられるままに。
わたしは家内の後ろに立って。
後ろから家内のスカートを、まくりあげた。
きゃっ!
さすがに飛び上がったところを。
パシャッ。
眩いフラッシュが容赦なく、あられもないシーンを印画紙に灼きつけた。
いい調子。もういちど。
ひざまであった花柄のスカートは、ひらひらと薄く、
わたしは容赦なく、腰まであらわにしていった。
パシャッ。
いい感じですね。
奥さんもノッちゃって、かまいませんよ。
無表情な声に、家内は素直に反応していって。
スカートを抑える手。
扇情的に突き出した腰つき。
なにもかもが、初めてとは思えないほど堂にいってきた。

やられた・・・ね。
家内とわたしは、苦笑いを交し合って。
できたばかりの写真を一枚一枚手に取っている。
まだほんの一部しか焼きあがっていませんから。
あとは後日、お届けにあがりますよ。
撮影師はどこまでも、無表情。
クールなまでのそっけなさが、かえってわたしたちを煽り、夢中にさせていた。

見て、見て。
勤めから戻ったわたしに、家内はいつになくはしゃいでいる。
写真館から戻るとすぐに。
めまぐるしい撮影現場で弾ませた息が、まだ落ち着きを取り戻していなくって。
わたしは思わず家内を、着飾ったスーツのままベッドに押し倒していた。
あの日以来。
家内はひどく、若やいでいる。
しばらくご無沙汰だった夫婦の夜も、このところ毎晩狂おしくつづいていた。
家内の手にしているのは、あの日の写真。
花柄のスカートから覗いた太ももが。
広げられた襟首からかいま見える、ブラジャーに包まれた豊かな胸が。
きちんとセットした髪をほどいたとき。
娼婦のようにふしだらに流れた黒髪が、ひどくなまめかしかったのまでも。
カメラは克明に、とらえていた。
妻のあらゆる部位を、見通すように。

うん、うん・・・
一枚一枚に、納得がいった。
家内がいつの間にか、傍らからいなくなったのにも、気がつかなかった。
ふと、手を止めた。
見覚えのない構図のものが、一枚。
家内の後ろにまわって、スカートをたくし上げたときと、まったくおなじ構図。
けれどもこの写真では。
家内は自分から、スカートをたくし上げている。
肌色のストッキングの光沢が、いっそう淫靡に脚を撫でているように見えた。

ご満足が、いったかい?
会社の同僚の沼瀬に、後ろからぽんと肩を叩かれたときも。
わたしは覚えのないあの一枚のことで頭がいっぱいになっていた。
写真館を教えてくれたのは、沼瀬だった。
ボクも女房を、時々連れていくんだよ。
あいつ、あそこに連れて行くとはしゃいじゃって、いつもとノリが違うんだ。
知っているかい?別室があるの。
若いカップルなんか、撮られているうちに昂奮しちゃって。
本気で抱き合わないと、気がすまなくなっちゃうんだって。
ボクも恥ずかしながら・・・
三回めのときだったかな。
使わせてもらったんだよ。
きみもこんど、訊いてみるといい。

その日の家内のいでたちは。
白のジャケット。白のブラウス、白のスカート。
白ずくめの衣装の足許だけは、黒のストッキング。
合わないだろ・・・と戸惑うわたしに。
そお?
家内は足首をくねらせて、脚を見せびらかすようにした。
ストッキングごし蒼白く透けたふくらはぎが、ひどくなまめかしくって。
ぴちぴちとはずんだ、はち切れそうな生気のふくらはぎを包むストッキングは、すぐに破けてしまいそうなくらいに薄かった。
上品なのに、危うい光景。
それを、あの容赦ないファインダーの前に立たせるのだ。
わたしはなぜか、ぞくり・・・とした昂ぶりを覚えていた。

撮影師はどこまでも冷静で、そつがなく。
よく響く声でよどみなく、クールに的確な指示をつづけていた。
家内はリズミカルに手足をうごかして。
彼の命じるままに、ポーズを変えてゆく。
パシャパシャと眩いフラッシュを焚かれることにも、慣れたらしく。
むしろ小気味よげに、フラッシュを浴びつづけていた。
奥様は、いすに脚を乗せて。そう、ハイヒールを穿いたまま。
ご主人は、奥様の向こう側にまわって。ひざを突いて。
わたしたちは命じられるままに、体位を入れ替えて。
家内の足の甲に、自分の手を置いていた。
ぱしゃ。
フラッシュが横顔を、眩しく染める。
ではご主人。奥様のストッキングを破ってください。
え・・・?
そつなく続けられる命令口調は、なんの違和感も感じさせずに。
あらぬことを、命じていた。
さすがにためらった手を、射るように。
奥様のストッキングを、破ってください。やり方は、任せます。
ふたり、顔を見合わせると。
家内は意外にも、目で合図して促してくる。
よぅし・・・
肌にぴったりと密着した薄いナイロンを破るのに、意外に手間取っていると。
家内はわたしの手をスカートのすそまで導いて、
ひざの周りのわずかなたるみを手がかりに、指先でつまませて。
ぴりり・・・
見事なまでに、あざやかに・・・
薄墨色をしたナイロン生地のうえ、裂け目が白い素肌を露出させた。
パシャ。
冷静なフラッシュが容赦なく、ふたりを照らした。
数分後、撮影の終了を告げる彼に、わたしはおずおずと、別室を貸してくれるよう依頼をしていた。

はぁ・・・はぁ・・・
家内はまだ息荒く、ほどいた黒髪をむき出しの肩に波打たせている。
飛び散った劣情の残滓をいとおしむように口に含むと、
わたしのほうを振り返り、くすりと笑った。
口許に精液を散らしたまま、白い歯を見せてわらう家内。
なぜか、べつの女を見るような気分になった。
裂けたストッキングは、汗で太ももにへばりついていて。
家内はけだるそうに髪をゆすりながら、ストッキングをむぞうさにずり降ろしてゆく。
わたしは家内の手に自分の掌を重ねて、脱ぐのをやめさせると。
パチパチッ・・・ブチチッ・・・
思うさま自分の手で、引き裂いていた。
稲妻のように吹きつけた黒い衝動が、わたしにわれを忘れさせていた。
ふふふ・・・
家内はどこまでも白い顔をして。
白い歯を隠さずに、わたしに笑いかけて。
娼婦のように、しなだれかかってきた。

写真が届いたのは、木曜日の晩だった。
わざわざ、届けてくれたんですよ。
お行儀よく、和室の中できちんと正座している家内は、
いつもの地味なくすんだブラウスに、えび茶のスカート姿。
二枚・・・三枚・・・
いつもながら鮮烈なショットは、
夫の気づかないところまで秘めた魅力をあらわにさらけ出している。
いつも、こうやって。
写真を見て、悦に入って。
それからベッド・インするのが、このごろわたし達夫婦の習慣になっていた。
いよいよだった。
わたしが家内のストッキングを引き裂くシーン。
ごくりと生唾を、呑んでいた。
まるで強姦しているように、家内に迫っているのは。
ほんとうに、わたしなのだろうか?
それにしても
さいごの数葉に、わたしの手が止まっていた。
見覚えのない構図。
それは後ろから家内の胸を揉み、ブラウスをくしゃくしゃにして、
白のプリーツスカートを、淫らな粘液で彩っていた。

決まっているじゃないか・・・
瀬沼はむしろ淡々として。
思いつめたわたしに囁きかけてきた。
奥さんだって・・・女なんだから。
撮影は、ふたりきりで愉しむようになるんだよ。
ボクの女房だって。
きょうはひとりで写真館に出かけていったから。
いまごろきっと。
フラッシュの下で食われちまっているんだろうな。
タイマーのかかったフラッシュの下。
表情を喪った家内が、両肩をむき出しにして。
たくし上げられたスカートの奥を蹂躙されながら、
まゆひとつ、動かさずに。
操を汚してゆく・・・
ぞくり・・・
こんな昂ぶりに慣れてしまったのは・・・いったいいつの日のことからだろう?

行ってまいります。
ああ、行って来なさい。
家内はきょうも、ひとり写真館へ出かけてゆく。

危ない合コン

2007年11月20日(Tue) 06:42:30

彼女を連れてきな。
できれば生娘で、ピチピチしたコがいいな。
オレもつきあっている女を連れてくるからさ。
あくまで平等な条件のはず。
けれども、決して逆らうことができない。
どこか大損をしている。
取り返しのつかないようなことを、しでかそうとしている。
そんな想いが、かけめぐるのに。
なぜか・・・ウキウキと応じてしまっていた。

ひっそりとした山あいにある村の、そのまたはずれ。
都会の風吹く現実的な空間から隔絶されたこの土地は。
冷たさを含んだ夜風さえもが、なまめいていて。
妖しい湿りが頬をくすぐる。
そう・・・ひなびたこの村に来るような娘は、うぶなコが多いのだ。

あちらの学校とこちらの学校が、男女ほとんど同数の頭数をそろえて。
示し合わせて繰り広げる、合コンという名のどんちゃん騒ぎ。
ちょっと違っているのは。
だれもかれもが、男女一対でやってくること。
けれどもボクは、知っている。
相手校の学生は、男も女もちょっと蒼ざめた顔つきをしていて。
身体のなかに血をめぐらせていない種族の人々。
ボクの隣で、おびえたように寄り添ってくるルミ子さんは。
将来を誓った婚約者。
純白のスーツに黒いロングのストレートの髪たなびかせて。
控えめで目だたない性格そのままに、口数少なくひっそりと控えている。
ボクをさそったその男は。
やっぱりストレートのロングヘアの女の子を連れてきていたけれど。
金髪がかった染めた髪。
ボクの未来の花嫁とはうって変わって、
洗いざらしのジーンズに、ラフなTシャツ姿。
すこし汗ばんだTシャツには、ブラジャーが薄っすら透けていた。
サングラスの似合う面差しは、たしかに整っていて美しかったけど。
どこかすさんだふしだらさをただよわせていて。
とても彼女と話の合いそうな手合いではなさそうだった。

さぁ、はじまるぜ。
うそぶくあいつの、言うままに。
ざわざわと耳障りな喧騒のなか。
ビールが、ワインが。そして正体不明のお酒までもが目の前に並べられ、配られてゆく。
ボクのコップにはビールがなみなみと注がれ、
ルミ子さんは黙って、見知らぬお酒の入ったグラスを取った。

隣にいたクラスメイトのシンヤくんも、彼女を連れてきたけれど。
オイ、この席なんかおかしくないか?
あそこの隅っこにいるあいつ。
さっきからオレの彼女のことをじいっと見つめてやがるんだよ。
言葉とは、裏腹に。
涼子ノヤツ、他ノ男ニ視ラレテ、嬉シソウニ照テヤガンノ。
裏に含まれた、得意げな響き。
いつもまじめくさった声色までが上ずって。
オ前ハ約束デキテンノカ。俺ハヨリドリミドリダゼ。
そう言わんばかりに、わくわくしている。

もうひとりのクラスメイトのタカヤくんは。
彼女がいないので、妹を連れてきていて。
妹さんが隣の男とはしゃぎ始めたのを、
ちょっと不愉快そうに、横目でにらんで見守っていた。

宴はいつか、最高潮に。
やがて灯りが暗くなり、
隣の女の子が、きゃあっとはしゃいだ声をたてる。
そのまた隣の男の子に、襟首に手をすべり込まされていた。
アツ!と叫んで、のけぞったのは。
シンヤが連れてきた彼女。
ブルーのストッキングの脚がばたつく向こう側では、
シンヤは早くも、別の女と戯れはじめている。

タカヤがいなくなったな・・・と思ったら。
あいつ、どこでどうやって、話をつけていたのだろう。
自分は相手を取らないで。
ブレザーにチェック柄のスカート姿の妹さんと。
ひっそりとおとなしそうなオタクっぽい若者とを向かい合わせて。
互いに互いの胸をさぐらせはじめていた。

ボクもとっくに、正気ではない。
あいつが耳元でなにかをささやくと。
がぶり!とうなじに食いついてきた。
首のつけ根に走る鈍痛が。
理性も見栄も、すぐに忘れさせてくれた。
ルミ子さんは、あの不似合いなタイプの女に引き寄せられて。
ディープ・キッスを強いられている。
それでもいつの間にやら、無我夢中になっていて。
ヒルみたいに吸いつけられてくる唇に。
ひかえめに、ぶきっちょに、応えはじめてしまっていた。

宴はもはや、頂点。
吸血鬼のカップルと。人間のカップルは。
互いに相手を、入れ替えて。
女は男の、男はその彼女の。
生き血をたっぷり、頂戴してゆく。
夢見心地にされてしまった女の子たちは。
スカートの奥をまさぐられて、
つい、その気になって。
いいよね・・・?って、彼氏にことわって。
彼氏がとっくに別の女に酔わされていると見て取ると。
ちょっぴりふくれ面をつくって。
迫ってくる相手の男の背中に、すすんで腕を巻きつけてゆく。

あの大人しいルミ子さんまでが。
目の前で、あいつにのしかかられて。
折り目正しい真っ白なスーツのすそを乱していた。
いつの間に、つけられたのか。
ふたつ綺麗に並んだ、紅い痕。
侵すように咬みついて。
夢中に酔わせて、組み伏せて。
処女の生き血を、盗み取るように吸い取って。
ついでに理性とためらいまでも、たくみに奪い取ってしまっている。

さすがに恥じらい、逃れようとする唇を。
力づくで首ねじ向けて、唇でとらえて。
しつように重ねられてくる唇に。
いつか唇で、応えてしまっていた。
血と引き換えにそそぎ込まれた毒液がまわったのか。
ボクとのときにも、ないくらい。
それは大胆に応えはじめていって。
長いまつ毛を震わせながら、抱きすくめられてゆく。

これ以上は、やばいよ・・・
やばいなんて言葉。彼女が使うのを初めて耳にする。
彼氏の前だもの・・・
妨げる言葉が、誘い言葉になっているのは。わざとだろうか。
きゃっ。触らないで・・・
おい、おい。そんなにまさぐるなよ。
いやん。
たくし上げられた純白のタイトスカートから覗く太ももは。
肌色のストッキングをむぞうさに破かれて。
ふしだらに走った裂け目は、淡いカーヴを大胆に描いていた。
ブラウスを剥ぎ取って。
みるかげもなくなるほど、びりびり破いて。
あらわになった乳首を、あいつが噛むように含んでしまったとき。
横なぐりにするように伸びてきた女の腕が、
ボクを囚えるように巻きついてきた。

近くではシンヤが。
隣で彼女を犯しているオタク青年の相棒に、
お○ンチンをねぶられて、夢中になっている。
向こうのふすまの陰では。
ずり落ちたハイソックスの脚だけ見えるタカヤくんの妹さんが。
ふくらはぎをぴくぴく震わせていて。
こちらを向いたタカヤくんの顔は、
別人みたいにワクワクと目を輝かせて、
こちらからは見えないかんじんな部分に目を釘づけにさせていた。

広い部屋じゅうに満ちた、きゃあきゃあというはしゃぎ声。
そんなにするなよ。手加減してよ・・・という困ったような囁き。
そんな声が、いっしょくたになって。
夜明けまで、絶えることがなかった。

もう、陽が高い。
草むらに淪(しず)んだ身体を、手を引いて起こしてやると。
ルミ子さんは、別人みたいに活き活きとした顔を輝かせて。
まだ草むらに寝転んでいる相棒を、自分の手で起こしてやる。
ふふふ。悪いね。彼女のこと長々と借りちゃって。
口でいうほど、悪いとは思っていないらしい。
あいつは悪びれもせず、ルミ子さん、いい女だな・・・って。
あからさますぎる賞賛を口にする。
ルミ子さんは、もうっ・・・って、照れて相手の背中をひっぱたいたけれど。
叩く手さえもが、甘えていた。

草むらでの戯れは、夜より長かったかも。
泥だらけになった純白のタイトスカートは、腰までめくれあがっていて、
気づいたルミ子さんは、恥ずかしそうにすそをおろして。
眩しい太ももを盗み見たボクを、咎めるように優しく睨んだ。
白いジャケットの下、ブラウスを剥ぎ取られた上半身は、
眩しいほどの裸身をあらわにさらしていて。
目のやり場に、困るくらいだった。
静脈の透けたおっぱいが、はち切れんばかりに輝いていた。

素敵な彼女だね。うらやましいよ。
本心かららしく、ルミ子さんをうっとり見つめる目を。
あまり視るなよ。
ボクはくすぐったそうに、応えたけれど。
ときどき、貸してあげるね。彼女はキミが、初めての男なんだし。
うふふふふっ。ご馳走さまぁ・・・
なにを言われても腹が立たないのは。
あの夜が、魔法のかかった特別な夜だったから。
さっきスカートをおろすとき。
ちらりとよぎった太ももには。
初めての紅いしるしがべっとりとしていて。
痛くなかった?
小声で訊くと。
ルミ子さんは控えめな面差しをはじけさせて、
珍しく白い歯を見せて、イタズラッぽく笑い返してくる。

じゃね。きょうも学校、あるんでしょ?
じゃあ、午後の講義で・・・
吸血鬼は、吸血鬼の里へ。
人間たちは、じぶんたちの住む街へ。
互いにべつべつの方角に、脚を向けてゆく。
ふと振り向くと。
向こうもちょうど、振り返っていて。
こっちとおなじように、恋人同士仲良く手を握り合っていた。
あのふしだらな彼女も、脱いだジーンズを肩にかけて。
黒のガーターストッキング一枚という大胆なスタイルを見せびらかすように、脚をくねらせて応えてきた。

行き来し合って 村の住人になった夜

2007年11月18日(Sun) 10:34:40

びっくりした。
まさか知人の奥さんの濡れ場を、真昼間から見せつけられるなんて。
そのうえご主人同席で、のほほんとしているだなんて。

ぎすぎすした都会の生活から逃れるようにしてやってきたこの村は。
広々とした山すそに包まれるようにしてうずくまっていて。
それでも中心街のほうは、洗練された空気を漂わせている。
都会から雑然とした喧騒だけを取り去ったような街なみに、
妻も娘も大満足だった。

職場の人たちは純朴で親しみやすく、
よそ者を寄せつけない田舎びたへんくつさとは、無縁だった。
そういえば妻も近所づきあいには苦労がなかったらしい。
マンション住まいだったころは、隣に住む人の顔もろくに知らなかったのに。
お互いの家を行き来して、日がなおしゃべりに興じているという。
娘も学校帰りには、よそのお宅にお邪魔したり、自分の家に友だちを連れてきたり、
それは和やかな日常だった。

その同僚は、わたしと同年輩で、いかにも円満なゆったりとした言葉つきと体格と。
どっしりとした自信と風格を身に着けていた。
責任者の立場が、そうさせるのか。
高い肩書きはにじみ出る人柄とほどよくつりあっている感じだった。
どうですか。いちどうちに遊びに来ませんか?
誘われるままに伺ったのは、土曜日の昼下がり。
広々とした家は新しく、ぱりっとした明るさを持っている。
先祖代々の古い家を、去年改築したんですよ。
そのときだけはちょっとだけ、誇らしそうな顔をした。

ご主人はじぶんで台所に入っていって、酒とつまみを持って戻ってきた。
奥さんは、留守なのだろうか?
問いかけるきっかけを失ったのは、彼の手ぎわがあまりにもよかったから。
落ち着いたときにはもう、一献ニ献酌み交わしていて、
昼間なのにもういい気分になっていた。

いまどき、きれいな猥談をさらりとできる男は珍しくなってしまったけれど。
家族の話から、奥さんとの馴れ初め・・・と話が進むと、
いつかそちらの話に流れていった。
猥談が男同士の間柄を近づけるのは、決して田舎のことだけではなかったはず。
彼はさらりと、ロコツなことばひとつ交えずに。
淡々と語ってゆくのだった。

お宅では、夜這いの風習なんてないんですか?
今でもね。残っているんですよ。
ここはまだまだ、田舎ですからね・・・
昔はそうして、嫁取り婿取りをしていたこともあったようです。
「トコロアラワシ」っていうんですか、
親が娘と密会している若者を見つけて、ご披露してしまうんです。
それでふたりは、公認の間柄。
やがてめでたく祝言ということになるんですな。
私のとこ?
そうですね・・・もうちょっと、こみ入っているかな?

あとね。初夜権というのはご存知かな?
えっ、それは西洋の話でしょうって?
いえ、いえ。
日本だって、あるんですよ。
ご領主さまが、村娘をひとりひとり呼び寄せて、女にしてくれるんですよ。
村人たちはそれを覗き見して・・・
あははははっ。
いけないお話・・・ですよねぇ。

ご主人の話しぶりは、どこまでも洒脱だったけれど。
わたしはずっと、気になっていた。
奥から。二階から。
時おり切れ切れに洩れてくるうめき声のことが。

ああ、あれですか。
すぐに察しをつけたご主人は、
どうぞ、ごらんなさい。面白いですぞ。
そういって。
わたしをせきたてるようにして、二階の階段に押し上げてゆく。
ポルノビデオはもう、ご卒業ですかな?
彼女ができたり結婚したりして、実演するようになると・・・あれはいらなくなりますからね。
まえのお人は、単身赴任だったので。
それでも時おり、貸してあげましたけど。
たぶんビデオなんかより・・・こっちのほうが面白いと思いますよ。
どうです?
女学生 狂った青春
だなんて。

ノックもせずに開かれた部屋の扉。
ふたり並んで、顔覗かせて。
なかは、勉強部屋だった。
散らばった教科書、参考書。
それらをまたぐほどの、へだたりに。
昼間から伸べられた布団にシーツ。
仰向けになった少女のうえ、黒い影がおおいかぶさっている。
少女は向こうを向いていて、顔はよくわからなかったけれど。
振り乱されたおさげ髪を結わえた緑のリボンの持ち主は、
いつも娘が連れてくる、彼の娘に違いなかった。
娘とおなじ制服は、リボンを解かれ、えり首を広げられて。
白いブラジャーと、つやつやとしたむき出しの肩とが、
目のやり場にこまるほど、眩しかった。
濃紺のスカートのすそはまくれて、
少しずり落ちた黒のハイソックスには。
すでに犯されてしまったしるしが、どろどろと濁った残滓となって染み着いている。

どうですか?
すこしは、見ごたえあるでしょ?
ご主人はイタズラッ子みたいに笑いながら、
ばたんと音をたてて、ドアを閉めた。
ドアの音など、まるっきり無視して。
娘さんは色香漂う遊びに耽っているらしい。
室内からはなんの反応も、かえってこない。

あまりのことに驚いているわたしのことを、
ご主人はわき腹を軽く小突いて促した。
こんどは、こちらへどうぞ。
みしみしときしむ階段が、ぐらぐら揺れているようで。
わたしは何度か、足を踏み外しそうになりながら。
それでも催眠術にかけられたようになって、
導かれるまま、奥の座敷に足を向ける。

ひいっ・・・あぅん・・・あれえっ。
なまめかしい、なまなましい声が洩れるふすま越し。
もう、なにが起こっているのかは、じゅうぶん想像できていた。
娘の相手は、学校の先生。
母親の相手は、家庭教師なんですよ。
ときどき、取り替えあっているみたいですがね。
得意げに口ひげを撫でながら。
ご主人は泰然として、妻の情事を見守っている。
細めにあけられた、ふすまの向こう。
真っ赤なワンピースの肩先に、振り乱された黒髪が。
ひどくエロチックな翳を添える。
陽の光に照らし出された、あからさまな情事は、
ぴちぴちとした肌を、むしろ健全なくらいに輝かせている。

見られちゃいましたねぇ。
奥さんは悪びれもせず、わたしにお茶を淹れてくれた。
さっきまでの濡れ場のなごりを、あとかたもなく追い払って。
薄緑の和装は奥ゆかしくしっとりと落ち着いている。
頭の後ろに巻き上げた黒髪は、
さっきまで見せていた、蛇のようなおどろおどろしさを隠しおさめて、
お行儀よくきっちりと、結わえられている。
家族ぐるみの付き合いで、わたしの妻とも行き来のある女性。
それが悪びれもせず、昼間から夫に情事を見せつけている。

よろしいのですか・・・?
さぐるように見つめたご主人の顔は、いつもと変わらず落ち着き払っていた。
おどおどと気にするのはね。
自分が妻に愛されているという自信がない証拠なのだよ。
その点、うちはね・・・
ホホホ・・・
目交ぜをからめ合う夫婦は、絵のようにむつまじくて。
妻の浮気さえ、ほどよい刺激に塗りこめられてゆくようだった。
きみも、なかなかあしらうねぇ。
だってまだ、若いんですもの。
あの技、あの子に教えてやれよ。
まだまだ、だ~め。
ねぇ。
愉しいわよねぇ。
いつまでもつづくやり取りは、むしろ心地よげでリズミカルだった。

アラ、お気づきになりませんでした?
ほっそりとした指先がさし示す、うなじの一角。
かすかに滲んだような、赤黒い痕。
いつもここから、吸われてしまうんですよ。
あと、ほら。ここと。
指差されたのは、むぞうさにたくし上げられた着物の裾の下。
ふくらはぎに浮いた痕は、ふたつ綺麗に並んでいて。
まだ、かすかな濡れをあやしていた。
さっきまでの情事の名残りを見たような気分になって。
思わずどきりと、胸が震える。
脚がとても、お好きなんですよ。
主人、きちんとサービスしなくちゃね・・・って。
都会に出張に出るときは、必ず洋もののストッキング買ってくれるんですよ。
娘も・・・ね。
今月になって、ハイソックス何足買い換えたかしら。
靴下が何足も要りようだ・・・そんな言い回しが、ひどく淫らな響きを含んでいた。
あら、そうおっしゃるあなたも。ほら。
奥さんが差し出した鏡のなか。
わたしの首筋にも、おなじ痕がつけられている。
夕べは当直、ご苦労さん。
ご主人がゆったりと、怖ろしいことを口にした。
きみと組ませたあの痩せ男。
ひどく満足していたよ。

今夜。お宅の奥様をお誘いしますわね。
お嬢さんは、うちの娘が。
あしたの朝学校に行く前に寄り道して連れて行くって言っておりましたよ。
こういうことは齢の順がよろしいかと。
すでに別々の、あのひととあの方とが。
ひどく、ご執心なんですの。
よろしい・・・ですよね?
想いを遂げさせてあげたって。
だいじょうぶ。
昼間に、男を呼び入れるようになったとしても。
あの奥様だったら。
お父さんが、いちばんよ・・・って。
きっとそう仰るはずですわ。
ほかの男のひとに、されちゃいながら。

一週間後。
帰りに寄り道しても、いい?
こちらを振り返る娘は、白い頬に薄っすらと翳りをよぎらせる。
あら、いいわよ。いってらっしゃい。
わたしに代わって応えた妻も。
じゃあ、そうするね・・・って、無邪気に笑った娘も。
ショートカットにした髪の毛の生え際や、
三つ編みにしたおさげの合い間から。
赤黒い痕を、ちらちらさせている。

今夜、呼んでもいいかしら?
寄り添いながら追いかけてくる、妻の甘えた上目遣いは。
拒絶されない・・・という確信に輝いている。
ああ、いいとも。帰りは遅くなるから・・・よろしく伝えてくれるかな?
夜の訪問客と入れ違いに帰宅するとき。
さっきまで覗いていた濡れ場に声はずませてしまうのを。
妻はイタズラッぽい流し目ひとつで受け流すだろう。

妻も娘も、太ももを白く濁ったしたたりに濡らしてしまうと。
夜は雨戸を細めに開けておくようになっていた。
夜這いを公然と受け入れて。
一家がほんとうに村人になった夜。
群がる黒影のなか、あのご主人は得意げに笑みを投げてきて。
妻の乳房に愛撫を滲ませていったのだった。

妹を連れ出して。

2007年11月16日(Fri) 07:42:33

理香、おいで。
兄さんに手を引かれるままに迷い込んだ裏庭は。
ふだんはだれも足を踏み入れないほどうっそうとなっていて。
其処に棲みついている黒い影は、
少女の香りを嗅ぎつけたように、ぬっと立ちはだかっていた。
怯えをよぎらせた少女の顔は、すぐにホッと打ち解けた顔つきにもどっていて。
困ったなぁ。理香の血、ぜんぶ吸われちゃうのかな。って。
兄さんのほうを、振り向くと。
さぁさ・・・きちんとむこうを向いて。
兄さんは理香の顔を正面に向きもどさせて。
そっとおとがいを、仰のけさせる。
夕陽を浴びた白い首筋は、透き通るほどに映え、
どす黒くただれた唇が、ことさら醜く吸いついていった。

今夜も・・・あいている?
ウン、いいよ。
理香は思い切りよく、兄さんの誘いに乗って。
ママにナイショで、家を出る。
濃紺の制服のスカートの下には、黒のストッキング。
それが稚ない脛を、別人のようになまめかしくさせていた。
裏庭で遭った魔物の正体を、もうとうに気づいていたから。

頭のうえに広がる木の枝は、かすかな風に葉ずれをざわつかせていて、
こうこうと照りつける街灯が、木漏れ陽のようにちらちらとする。
ベンチに腰かけた少女は、大人びた装いの脚をおずおずとさし伸ばしていって。
うずくまる影の唇を、吸いつけられるままにしてしまっている。
理香の血、おいしい?・・・パパ。
女学生の足許にうずくまる男は、びくっと影を揺らしたけれど。
応えるかわりに、少女の脚を、ひときわつよく吸っていた。

肉親の血だから、よけい口に合うんだよね?
血液型も、いっしょだし。
どお?おいしい?えっ?よく似合うって?
でも、なんだかやらしいよ。
ストッキング、ねじれちゃうじゃない。
舌足らずな稚な声を、くすぐったそうに忍ばせて。
少女はしばし、吸血されることを愉しんでいる。
兄さんも・・・ほんとうは、理香の血を吸いたいんでしょ?
けんかしないで、仲良く吸ってね♪
みずから仰のけたおとがいに、兄の唇を熱く感じながら。
あぅ・・・
少女は初めて、なまめかしい声色を洩らしていた。

アブナイ眺めだなぁ。
いつも学校に履いていく白のハイソックスに、ばら色のシミを滲ませながら。
少女は脚をぶらぶらさせて、見入っている。
ママにばれないように、新しいやつ買っておくね。
一足五百円でいいから・・・
兄さんから受け取った千円札をスカートの隠しに押し込むと。
少女はもう一方の脚も、せいいっぱいセクシィにさし伸ばして。
こっちも噛んでとねだっていた。

毎晩だと・・・きついなぁ。
あしたの晩は、お友だちも誘ってみるね。
処女の血がいいんだよね?
まりちゃんとタカちゃんはまじめだし、ボーイフレンドいないみたいだから。
たぶん、期待できると思うよ。
少女は蒼白い頬に、フッと笑みをよぎらせて。
ふたり征服しちゃったら、そのつぎはエミちゃんの番だよね?
兄さんが気にしている子の名前だった。
戸惑う兄さんを横目にして、もっとイタズラッぽく、笑んでいた。

夕闇にまぎれ、木陰につどう少女たちは。
おそろいの紺の制服姿を戸惑わせながら。
ひとりひとり、抱かれていって。
かわりばんこに吸いつけられる唇に、うなじをゆだねていった。
痛ーっ。
スッとするぅ。
まり子と孝枝は、顔見合わせて。
首筋にちょっぴり滲んだ血を、指先に塗りつけて。
その指先をかわいい口許にもぐらせて。
お行儀悪く、チュッ!と音を立てている。
ベンチの後ろにまわった兄さんは、座っているエミちゃんの両肩を抑えつけていて。
たっぷりとしたふくらはぎをくるんでいる白のハイソックスが、
吸いつけられた唇の下、バラ色に染まるのを。
ぞくぞくした目で、見守っている。
みぃんな、処女だったでしょ?
いい子だもんね。
少女たちは白い顔を羞ずかしそうに揺らしていた。
まるで、ユリの花がそよぐようだった。
どお?エミちゃんの血、おいしかった?
兄さんのお嫁さんになるひとなんだよ?
自慢そうな囁きに、ふたつの影は照れたように顔見合わせて。
父さん、いいよ・・・
じゃ、いただくぞ。
小声の相談は、すぐにまとまっていた。
恍惚と血を吸われてゆくクラスメイトのかたわらで。
お当番ね。順番ね。
あしたは誰が来るのか・・・と。
少女たちははしゃぎながら、怖いくじ引きさえも愉しんでいる。

あくる朝。
マサオ、いらっしゃい。
いつになくあらたまったママの声に、
マサオはふと顔をあげると。
スッと近寄ってきたワンピース姿のママは、
理香にムリさせちゃ、だめよ。
年頃の娘の身体は、不安定なのですから・・・
夜中に喉が、渇いたら。
ママの寝室に、いらっしゃい。
首筋にほんのり滲んだ傷痕は。
父親の歯型とは違うサイズ。
夫婦ながら、支配されていたんだね?
でも、仲良く吸い合えば、いいんだね?
目で問いかけてきた息子のまえ、
光沢入りのストッキングの太ももが、ぬるりとなまめかしくよぎっていった。


あとがき
吸血鬼になってしまったパパに同情して。
求められるまま、妹を連れ出してしまうお兄ちゃん。
なかなか萌えなプロットなのですが・・・。^^

3人のクラスメイト

2007年11月16日(Fri) 07:13:10

かよちゃん、放課後あいてる?いつもの教室で・・・
みなみさん、帰りにあそこの公園通っていこうよ。
お凛、うちにこないか?

誘った三人はいずれも同級生の女生徒たち。
誘われた帰り道にはぼう然と手を引かれるまま、家路をたどっていた。
制服のブラウスに、ちょっぴり紅いものを撥ねかして。

いいよ。きょうはどこ?
妹も連れてきてあげようか?
ママにばれちゃったけど・・・なんとかしてくれるよね?
女の子三人は、きょうもニッと笑いあって。
並んでベンチに腰かけると、神妙に脚を並べてゆく。
おそろいの白のハイソックスに包まれた脚たちは。
すらりと伸びた格好の良いふくらはぎ。
発育のよさをたっぷりにじませた、ボリウムたっぷりの太もも。
キュッと締まってセクシーな足首。
人さまざまに、少年の目に灼きついて。
かわるがわる這わされる唇に、
やらしいわね・・・って、囁きあいながら。
それでもきゃっ、きゃっ、と。
くすぐったそうな笑み声を洩らしてゆく。

なん年経ったことだろう。
だれもが大人になって。
少年の親しい友人たちの奥さんになって。
それでも三人集うと、申し合わせたように、あの古い教室にたずねていって。
唇に浸す足許を彩るのは。
丈夫な生地のハイソックスから、薄っすらとなまめかしいストッキングに変わっている。
あなたのとこのエミちゃん、来年中学でしょ?
うん、うちの子と同級生なんだ。
じゃ~、連れてこなくっちゃね。
うちは男の子だから。
彼女ができたら、紹介するわね。
女たちは、そのときだけは少女のようにイタズラッぽく、
昔の女学生に生まれ変わっている。

ひとり・・・ひとり。

2007年11月15日(Thu) 07:47:19

佳代子嬢連れ出し・吸血に成功。
雅恵夫人連れ出し・吸血に成功。

メモ用紙の走り書きに、母や姉の名前を見出して。
ボクは思わず、ブルッていた。
恐怖・・・だけではないなにかが、
背後からのしかかるように、迫ってくる。

見たわね?
低い囁きに後ろを振り返ると。
母の雅恵が、薄っすらとほほ笑み哂いを浮かべている。
首筋にはひとすじ、赤黒い血のしたたり。
あら、見ちゃったの?
隣室からの声の主は、いまさら確かめるまでもない。
とっくに卒業したはずの高校のセーラー服を着た姉は。
あのころのように、三つ編みのおさげ姿。
久しぶりに見る女学生姿は、想像のなかで、
去年までおなじ制服を着ていた少女の影と重なり合った。
白のラインが三本走った襟首には、やはりばら色の飛まつが散っている。

ふふふ・・・
ルミさんのブラウスも、汚してみたいでしょ?
そう。
まっさきに噛まれたボクは、血をほしがる彼のため。
ママへの電話を、とりついでいた。
ふくらはぎにつけられた噛み痕を、ハイソックスの下に隠しながら。
ほら、見て。
ちりちりに破けた、ママのストッキング。
ばら色のシミをつけた、姉さんのハイソックス。
家族の女たちを、噛ませたいんでしょう?
きゃあきゃあはしゃぎながらストッキングを破らせるの、覗きたいんでしょう?
こんどはあの子の番・・・よね?

こんちはぁ・・・
玄関に響く明るい声に、ボクはわれに返っていた。
家にあげちゃ、いけない。
早く帰さなきゃ。
息せき切って駆けつけた玄関の板の間に。
ボクの脚は吸いついたように釘づけになる。
いつものピンク色のスーツの肩先に滲むのは何?
首筋には酷たらしい痕が。
そして、笑う口許からは、伸びた犬歯が。

タイトスカートのすそから覗くふくらはぎを、なめらかに彩る黒のストッキング。
貴方も・・・履いてみる?
これからここに来るひとに。
お姉さんとごいっしょに、脚を並べてごらんになる?
わたしも・・・よろこんでご一緒するわ。
久しぶりにセーラー服も、いいかもね・・・

日常に入り込んだ、魔性の影。
知らず知らず、女たちのなかに入り込み、侵蝕して。
清らかな血潮を妖しい輝きに染めていった。

夜這い唄

2007年11月12日(Mon) 22:13:10

家族構成:
父と母 
長男 
長男の婚約者 
長女
そんなお宅に、夜這いの夜が。^^


して愉し されて愉しい 夜這いかな
目印は 黒のパンスト 許す夜
今週は 当番ですねと 妻咲(わら)う
いそいそと 黒の靴下 装って

洋子さん 貴女も履いて おなじ色
母に呼ばれ 未来の妻も 黒の脚
いいかしら? 処女なんですと はにかんで
もったいない けれど妄想 むくむくと
笑み交わし そろって並べた 黒い脚
黒脚を これ見よがしに くねらせる

ガラス戸を そっと開いて 花を置く 
さあ集え 若妻めあてに 群がって
お邪魔する 夜は三本足になり
困ったね こんなに大勢 来るとはね
順番を ダンナの前で くじ引きし

いやらしい すべり込む手と 見つめる目
される妻 覗く愉しみ ゾクゾクと
アラ、いやだ。 ちょっぴりだけよ・・・ まぁ、やだわ。
つぶやきと 物音だけでも そそられる
とっくりと お手並み拝見 妻のわざ

そそくさと 娘も起こして きますねと
眠いって? アラ、嘘ばかり 眼が赤い
どうせなら 制服を着て いらっしゃい
生娘を 夜這いに捧げる 星月夜
兄さんに 覗かれながら ドキドキと
痛かった~! パパの前では 泣かない子

兄さんも 義姉さん起こして いらっしゃい
潔く 未来の妻を 差し出して
困ったね でも見てみたい いいのかな・・・
迷わせず 好奇の影は 忍び込み
振袖に 三つ指ついて お出迎え
待ち受けた いでたち見つめ あきらめて
純潔が 夜這いの渦に 巻き込まれ
痛かった・・・ これでようやく お嫁入り

お茶の間も 勉強部屋も 淫ら宿
隣部屋 誰犯される 衣擦れか
はぁはぁと 洩らす吐息も いとおしく
乱れ髪 フィアンセの顔 色白く
凛として 犯されましたと ご報告
よくやった あと六人も 待ってるよ
若いから 数では負けない 義母さまに
お義母さま 長いんですねと 取り澄ます

フィアンセも 妻も娘も され果てて
見合わせる 親子ながらに コキュとなり
明日の夜 うちにお出でと お隣さん
はす向かい 若奥さんも 都合つけ
お隣の お宅も雨戸 半開き

やりすぎですか?^^;

噛み痕も芸術・・・?

2007年11月08日(Thu) 07:41:33

トシの順だね。
白髪の男はそうほくそ笑んで。
まずさいしょに、かがみ込んだのは。
ブラックフォーマルに身を固めた奥方の足許。
黒のストッキングのうえから、ふくらはぎを噛んで。
つつ・・・っ、と滲むような伝線を走らせてゆく。
奥方が陶然となって、ベンチに腰を落としてしまうと。
つぎは、お姉さんの番。
てかてか光る肌色のストッキングは、リクルート・スーツには不釣合いだったけど。
男は舐めるようにふくらはぎに唇這わせて、
やっぱりママの脚とおなじように、
ぶちち・・・っ、と。伝線を走らせてしまう。
あっ!痛っ!
彼女は顔をしかめて、目をキュッと瞑ったけれど。
男がなおも足許を舐め舐めしてゆくのを、なぜかそのまま許してしまっている。
さぁ、さいごはお待ちかね・・・
セーラー服の妹娘は、ひざ下ぴっちりの真っ白なハイソックス。
うふふふふっ。
旨そうだね・・・
男はほくそ笑んだままの唇で、整然と流れる太めのリブをねじ曲げてゆく。
どろり・・・
滲んだ血潮に、ゆったりと。
妹娘は視線を迷わせて。
ちょっぴり痒そうに、手のひらでおおいながら。
いけない・・・なぁ。おじさまったら。
甘えた声で、そういうと。
その場にしゃがみ込んで、うなじをスッとさし伸ばす。
じゃあ、いただくよ。
ママやお姉さんを見比べながら。
男は少女の柔らかいうなじに触れてゆく。
かりり。
噛まれたとき。
少女がちょっと、しかめ面になったのは。
かすかな痛みのせい?
それとも、ブラウスに撥ねたシミのせい?
さぁさ、お前たちも・・・我輩に首を噛まれるのだよ。
末娘に遅れをとっては、いけないな。
立ちふさがる男に、女たちは従順に微笑みながら。
かわるがわる、うなじを差し伸べていった。
黒一色のインナーに縁取られた白い首筋も。
ボウタイブラウスにきりっと引き締められた胸元も。
不自然につけられた赤黒い痕を、くっきりと滲ませて。
女たちは満足そうに、互いの傷口を見詰め合う。
かえって、ダンナに報告するんだね。
母娘三人とも、あのお方を満足させてまいりました・・・とな。
女たちは、イタズラッぽい微笑を揺らしながら、
さらりときびすをかえしてゆく。
ストッキングの伝線を。
ハイソックスの赤黒いシミを。
いずれ劣らぬすらりとした足許に、あざやかに滲ませながら。


あとがき
ダンナさまは、吸血鬼の信者です。
公園での逢瀬をセッティングしたのも、きっと彼。
愛する人々につけられた支配の痕跡に、きっと萌えてしまうことでしょう。^^

いもづる・・・

2007年11月08日(Thu) 07:30:36

走るのが、速いんだね。
男の子の両肩をつかまえたとき。
吸血鬼はさすがに、息を荒げていた。
荒げた息を、首筋にふきかけて。
少年の目を、一瞬白くしてしまうと。
がぶり・・・!って、思い切り大胆に噛みついている。
ラインの入ったユニフォームの肩先に、不規則に散った熱い血潮。
はぁ、はぁ、はぁ・・・
息を荒げているのは、一人ではない。
わけのわからない昂ぶりに、瞳を蒼くした少年は。
求められるまま、ハイソックスを履いた脚を、さらけ出してゆく。
女の子みたいに、大胆に。
脛の周りを整然と流れる、太めのリブがゆがむほど。
べろでくしゃくしゃになるまで、いたぶりながら。
少年の夢見心地を、上目遣いに見あげながら。
真っ白なハイソックスに滲んだ赤黒いしみを、唇の下。
じわじわ、じわじわ、広げてゆく。
どうだい?綺麗に滲んでいるだろ?
意地悪そうな笑み。会心の笑み。
男はたちの悪そうなくすくす笑いを浮かべた唇を、もういちど少年の首筋に貼りつける。

泥だらけの身体を、シャワーで洗い流すと。
少年は裸のまま、肩をつかまれて。
引き据えられるように、じゅうたんの上ひざを突いている。
あたりにばらばらと散らばっているのは。
十足くらいはあろうかという、ハイソックスの山。
おなじ色、おなじ太さのラインの走った、長さだけはとりどりのハイソックスは、
どれも残らず、赤黒いしみを滲ませていた。
少年は驚いたように目を見張る。
これは山○くんの。こっちは△藤くんの。こちらは×原ちゃんの。
聞き覚えのある少年たちの名前は、彼の友達のほとんどだった。

わたしの望みを、察したようだね。
吸血鬼は半ズボンの下、むき出しの太ももにべろを這わせながら。
ピチピチとした脛を、ハイソックスのうえからまさぐっている。
これは、姉さんのやつだね?
女もののハイソックスは、少年の脚にしっくりなじんでいて、
ユニセックスな凛々しい輝きを秘めていた。
さあーてと。さっそく料理してしまおうかな?
少年は無言でいやいやをしていたけれど。
そんなものは先刻から無視の吸血鬼は、いやらしい舌を首筋にからめていって、
少年の血を、ずずっ・・・と啜る。
さあ、いつ連れてくる?
明日の夕方、この公園に・・・
ひと言、うわごとみたいに口にしてしまうと。
少年はなぜか、ほっとしたように、頬をゆるめていった。

いやらしいわ。いやらしいわ。
すねたように口を尖らせる制服姿の少女は、
傍らでつくねんと立ちすくむ少年よりも、すこしばかり年かさで。
濃紺のスカートの下、鮮やかに映える白のハイソックスは、
弟とおなじように、ちらちらと赤いものを滲ませて。
ひざ下からすこしだけ、ずり落ちていた。
似通った面差しの、若いふたりを見比べながら。
吸血鬼はにたにたと笑みながら。
毒液のような問いを、耳の奥へとそそぎ込む
ママのストッキングを穿いてくれるのは、どちらかね?
姉娘は、弟の耳を軽くつねって、
ストッキングどうやって履くか、教えてあげようか。
ふふっ・・・笑う口許が、ひどくかわいらしかった。

いけない人ですね・・・
地味な濃紺のスーツの下。
なまめかしく薄い黒のストッキングに滲まされた伝線に。
お母さんはちょっとだけ、眉をひそめたけれど。
うちの人をあんまり昂奮させないでくださいね。
傍らの木陰にさりげなく目をやりながら、ベンチに深々と腰かけていって。
見せびらかすように、脚を組んで。
まだ噛まれていないほうのふくらはぎを、これ見よがしに差し出していった。


あとがき
前作とおなじころに下書きしたやつです。
男の子のお話で、まとめたかったんですが。
どーしても、ママやお姉さんのコトが気になってしまいました。^^;
お話が不釣合いなのは、きっとそのせいです。(笑)
だって~。
男の子の血が美味しかったら。
ママやお姉さんの血だって、美味しいに決まってますもの。(*^_^*)

伝線は芸術?

2007年11月08日(Thu) 07:28:25

ふくらはぎの真後ろを、ツツッと細めに。
内ももを縦に、大胆に太く。
鉛筆でなぞるくらいの極細なやつを、なん本も器用に。
人それぞれ、気分のままに。
じわりとしたカーヴを、それはいやらしく、滲ませてゆく。
ひどーいっ。
もう、やぁねぇ・・・
女たちは、口々に。いかにも迷惑・・・って顔つきを装って。
それでも色とりどりに染めあげた脚を、不埒な唇にさらしてゆく。
きゃっ!痛いっ。
いやーん・・・もおっ。
非難の声がくすぐったく、鼓膜をくすぐる。
立ち去るとき。
だれもかれも、ちょっぴり恥ずかしそうにしながらも。
命令どおり、破けたままのストッキングを穿いたまま、街の冷気にさらしてゆく。
ふしだらな伝線を映した脚は、夜の闇にいやらしく映えて、
面持ちだけは、なにごともなかったかのように。
夫や恋人の待つ家へと、歩みを進めてゆく。

あとがき
二週間くらいまえに描いたのですが。
なぜかあっぷしないで、とめおいていました。
そういうことをするから、新しいお話が浮かんでこない?(笑)

うくー。><

2007年11月05日(Mon) 20:31:14

カゼ、ひいたみたいです。
いけない文章ばかり描いていたせいでしょうか?^^;
あー、体がだるい。。。

幼馴染みと婚約相手

2007年11月05日(Mon) 07:49:25

あなたのお嫁さんになるひとよ。
ママがそういって、引き合わせてくれたのは。
齢はほんの2、3歳しか違わないはずなのに。
ボクよりずっと、お姉さんにみえる人。
そう。
はたちを過ぎるということは。
きっと、そういうことなのだろう。

透き通るような、色白の頬は。
ほどよい化粧と、香水の香りに大人びていて。
二重まぶたにふち取られた、くりっとした瞳は。
落ち着いた理性的な輝きを秘めている。
凛とした気品漂わせたそのひとは、口数少なく、ひかえめで。
とてもボクなど、太刀打ちできそうにない雰囲気を持っていた。
並んで歩くと、上背だけはボクのほうがすこし上だけど。
学校の制服姿のボクと並んだいでたちは、
ママとおなじスタイルの、奥ゆかしいスーツ姿。
ライトグレーの無地のスーツは、さすがに若い娘らしく若やいでいたけれど。
すきひとつなくキメたスタイルに、ボクは気後れするばかり。
ハイヒールの足の甲を包む肌色のストッキングは、
なまめかしい光沢をよぎらせながら、ボクと歩みを並べてゆく。

では、ここで・・・
帰り道をさいごまで送るのは、婚約したものだけの特権だという。
親が決めた結婚相手。もう結びつけられたもどうぜんだけど。
まだ稚ないボクには、つけ入るすきさえ、なさそうだった。
婚約したら・・・家まで送ってくださいね。
首傾げるように会釈する白い顔は、浮かべたえくぼに初めて愛嬌をにじませた。

いけないことだと、知りながら。
ボクはあとを、ついてゆく。
人けのない帰りの道に、夕刻の長い影が伸びてゆく。
かなり隔たって歩いていても。
ボクは時おり彼女の影を踏みそうになって。
そのたびすこし、歩くスピードを弱めていく。
コツコツと響くハイヒールの足音に、忍び足を重ねながら。
逆光のなか、浮かび上がる彼女の黒い影は、
ミステリアスなくらい、透き通ってみえた。

足音を消して、彼女が迷い込んだ建物は。
ツタにおおわれた、古びた洋館。
カギすらかかってなかった玄関を、そうっとおし開いて。
ストッキングの脚を、きれいにそろえて、立ち止まって。
暗い建物のなか、遠慮がちに顔だけ差し入れている。
訪ないを入れた相手のゆるしをえたのか、
ライトグレーのスーツ姿を飲み込んだ扉は、そのままばたんと閉じられてしまった。

どの窓も、暗い。
灯りはおろか、人のいる気配すら感じられない。
思わず通りぬけてしまった門のなか。
ボクはおろおろと、彼女の手がかりをもとめて、
知らず知らず、裏庭にまわっていった。
さくさくと踏みしめた丈の長い下草が、しどけない湿りを帯びていた。

ぁ・・・
声が洩れたような気がした。
庭にまわると、窓が開かれたままのお部屋があって。
思わず引き込まれるようにして、覗き込むと。
あやうく、声をたてるところだった。
いちぶのスキなく、きちんと着こなされたスーツ姿が。
畳のうえ、しどけなく乱れていた。

白い面貌に、妖しい愉悦をにじませて。
彼女は天井を振り仰ぎ、ショートカットの髪振り乱している。
うなじに埋められた男の頭は、しつように食いついたように離れない。
あ・・・あ・・・あ・・・
底なしの深淵に引きずり込まれるように。
彼女を支配しているのは、無重力状態の頼りなさ。
あらぬかたに、うつろな視線を這わせながら。
男のいいなりに、服を乱されてゆく。
乱雑に散らばされた、ハンドバッグの中身が。
花びらのように裂き散らされた、純白のブラウスが。
ぴちっと伝線を走らせた、透明なパンティストッキングが。
ボクの脳裏に灼きついてゆく。

ズボンをひざまでずり下ろして。
丸太ん棒みたいに逞しい太ももが。
彼女のほっそりとした脚のすき間に入り込んで。
腰のうごきは、彼女のすべてを支配していた。
排泄行為のように、荒々しいセックスが。
淑女の知性を、圧倒している。
女は白い細腕を伸ばしていって。
男の幅広な背中に巻きつけられてゆく。
じくり・・・
なにかがじわりとしみ込むように。
ボクの胸を棘で刺した。

逢ってきたのかい?
気に入ったかい?
あいつは俺の、友だちなんだ。
仲良くしてやってくれよな。
きみがあいつのものになるとわかってから。
いっそうきみが、いとおしくなった。
男の勝手な言い草に。
女はうっとりとうなずき返して。
じぶんのほうから、慕わしげに、男の肩を抱いている。
わたし、いいお嫁さんになるの。
あのひとを、愉しませてあげたいの。
だからもっと・・・教えて。
胸の奥までくすぐられるようなひそひそ声に。
ボクは窓辺から、離れることができなくなっていた。
男はボクの同級生。たったひとりの親友。

吸血鬼だった彼は。
友だちのお母さんを狙うのが大好きで。
きみのママ、きれいだね・・・
そんなふうにささやいては、級友にお母さんをねだっていた。
ささやかれた級友たちは、催眠術にかかったように。
その日の夕方、着飾ったママを連れて、彼の家へとやってきて。
散らかった勉強部屋で、ママのスーツを着崩れさせてしまうのだった。
やがてボクも。
ほかの子たちと、おんなじように。
催眠術にかけられて。
ママを連れ出して、黒のストッキングを破らせちゃっていた。

父兄会のとき。
どこの家のお母さんがたぶらかされたのか。
だれの目にもはっきりとわかるのだった。
お母さん方のなかに割って入った彼に、
順ぐりに、脚を舐められてしまうから。
ママが黒のストッキングの脚を見せびらかすとき。
パパはさすがに、決まり悪げに目をそらしていたけれど。
人のわるそうな笑みを洩らして、
ちらりちらりと細君の足許を盗み見しているの、ボクはとっくにわかっていた。

おんなじような、ようすだった。
ママが初めて、彼にスカートのなかを許しちゃったときも。
ズボンをひざまでずり下ろして。
あいつはママのパンティストッキングを破ってしまっていた。

いいよ、入ってきても。
窓の内側からかけられた声に。
ボクはいやいやと手を振って。
いいよ、ここから見ているから。
ひそひそ声を、かえしている。
気絶している彼女に、気づかれないように・・・
あのときのパパとおなじくらい、決まり悪げにほほ笑みながら。

書物に潜む鬼

2007年11月05日(Mon) 07:13:25


彼が持ってきたその本は。
旅行先で手に入れた、とても珍しい本だといっていた。
分厚い背表紙は、なん百年まえのものかと思うほど古びていて。
なに語でかかれてあるかわからない流麗な飾り文字が、踊るようにつづられている。
なにげなしに、開いてみると。
古い紙の黴臭い匂いが、つんと鼻先をよぎっていった。

読める。
なぜだろう?
初期の活版印刷のような、とぎれとぎれの飾り文字は。
たしかにいままで見たことのない言語でつづられているというのに。
書かれてある言葉の意味が、まるで耳から入ってくるように、ありありとわかるのだ。
耳から・・・というよりは。
心のなかに、直接訴えかけてくるように。
内容は、土俗宗教の典礼だろうか。
夜更けを迎えて、家のものが寝静まったあと。
じぶんで最高と思えるくらいに、装って。
まるで娼婦になった、と思ってしまうほど、化粧を刷いて。
真夜中ちょうどに、窓辺に立って。
部屋じゅうに冷気たちこめるまで、窓をひらききる。
あとはただ・・・待つだけでよい。


晩秋の庭先は、夜ともなると、冷え込みが酷かった。
ミツオはがたがたと震えながら、「その刻」を待っていた。
真夜中ちょうど。
家じゅう寝静まっている・・・そう思われた窓辺に、にわかに人影が立って、
がらり。
忍ばせたはずの音が、庭じゅうに響いていた。
窓辺にたたずむいとしい影は。
まだ犯されていない浄らかさを、透明な空気にかえて漂わせている。

どうかね?
背後から洩れる声は、すこし得意げだったけれど。
陰にこもった声色には、ミツオへの気づかいがこめられている。
不思議な本を、手に入れちゃったみたいだね。
目許を蒼白く染めて、ちかりと笑んだ頬には。
淫靡な翳がよぎっていた。
もう・・・昼間には、逢えないのだから。
さっき、訪ねていったときも。日暮れをすぎたあとだった。
魅入られてしまったあの本を、恋人におしつけるようにして。
あとは、そう・・・おなじ世界に旅立つだけ。

では・・・いただくよ。
あぁ・・・お手柔らかに・・・ね。
背後の影は、ミツオの指に軽く触れ、婚約指輪を抜き取った。
手の甲にそっと触れ合わされた唇は、ひどく濡れているようだ。
あの濡れが・・・恋人の首筋をも濡らすのか。
おぞましいはずの想像は、異様な昂ぶりを生んでいた。
風のようにすり抜けていった透明な影は。
窓辺の女に影を重ねていって。
靴のないことに戸惑う女を、横抱きにして。
枯葉の散らばる地面にじか置きにする。


耳の奥は、意味不明な呪文で満ちていた。
まるで、催眠術にかけられたように。
女はブラウスの襟首をはだけていって。
ロングスカートのすそを、せり上げられていった。
薄いストッキング一枚の太ももが、夜気を吸って鳥肌だっている。
ぞくぞくと粟つぶのように湧いた鳥肌は。
はたして寒さのためだけだったのだろうか?

影はまるで、自分を支配するかのように、のしかかってきて。
首筋に吸いつけられた唇は、酷く濡れそぼっていた。
警戒しないでいい・・・
まだ恋人にも許していない肌を這う唇に命じられるまま、
まるで童女のような素直さで、身体の力を抜いてゆく。
耳の奥に響き渡るのは、呪わしいほど混沌とした祝婚歌。

太ももの隙間に侵入しているのは、未知の男。
枯葉の褥に腕を抑えつけているのは、ほかならぬ未来の夫。
スカートの奥。
太ももにぴちっと張りつめたガーターの上。
男の昂ぶりをありありと感じながら。
硬くそそり立った熱い肉の侵入を、心地よく迎え入れようとしている。
耳を幻惑するように響き渡るのは、異端の聖歌。
吸血鬼に初夜権を行使させる恋人は、
蒼白い頬に、愉悦の笑みをにじませて。
怖くないんだよ。これから、愉しいことをしようね。
優しい声色で、耳元にささやきかけてくる。
ほんとうに・・・?いいの・・・?
問いかける声が、思わずあどけなくなってしまった。
声に応えたのは。
ずぶり・・・
踏みしだくように侵入してきた、あからさまな感触。
あああっ・・・
悩乱。悩乱。悩乱・・・


本、返すわね。
ああ。面白かった?
エエ、びっくりしちゃった。
そお・・・?
ウフフ。
今夜も、遊びにいくよ。
エエ、部屋の窓を開けて待っているわ。
あの人も、いっしょだよ。
やだ・・・乱れちゃう・・・
え・・・?
ううん。なんでもない。

口に出すことは、禁じられている。
そう、あの本には、書いてあった。
結婚したら。ふたり連れだって。
秘密の邸に招待されるという。
そう。そのときまで・・・
恋人と、正体不明の彼と。
ひそかな愉しみを分かち合おう。
ひとことも、だれに対しても、口にはせずに・・・

指先で さえぎって。

2007年11月04日(Sun) 07:29:31

朝。
冴え冴えとした青空が、どことなくうっとうしく思えるのは。
それが出勤途中の風景だから。
まりあはいつものように、長い髪を秋風にたなびかせて。
駅までの道を、急いでいた。
ほんのちょっと、化粧に時間をついやしたら。
いつもの電車に間に合わなくなりそうになったのだ。
夜は必ず避けて通る、あの公園。
いいや。もう明るいし。近道しちゃえ。
夕べの雨がのこった地面は、しっとりと湿っていて。
いつもよりよけいに、ヒールのかかとが沈むようだ。
芝生の真ん中を、まっすぐに横切って、
ベンチのかたわらを通りかかったとき。
足元にひやりとした指先が当たるのを感じて。
まりあはきゃっ!と、縮み上がった。
私だよ。
見あげる視線が眩しそうなのは、太陽がまぶしいから?それとも・・・
こんなに明るいのに・・・待っていたっていうのっ!?
思わずあからさまな声を立ててしまったのは。
公園にたまたま、だれも通りかからなかったから。
通して頂戴。急いでいるの。
なに・・・きょうは出勤しないでもかまわないさ。
男は泰然と、うそぶいた。
うちの会社の社長さんでもあるまいし。
まりあはむしょうに、腹が立って。
だいじな会議があるのよ。
わざとそっけなく言って、通り過ぎようとしたけれど。
どうしても職場に行きたいというのなら、むりに引止めはしないけれど。
すこし、ゆっくりしていかないか・・・?
誘う声は自信たっぷりで、人のわるそうなからかい口調になっている。

すこし、ゆっくりしていこうね。
そう。十年まえ。この公園を通りかかったとき。
まりあは化粧っけなしの女学生で、
足許をさえぎった指先にあたったのは、通学用の黒のストッキングだったっけ。
あのときも。
きょうのお勉強は、ここでしようね。
なんて、言われちゃって。
黒のストッキングを、破かれちゃって。
制服姿を、愉しまれちゃって。
そのまま。お昼になるまで、放してもらえなかったんだ・・・
相手は、人の生き血を吸う吸血鬼。
そんなにしてまで、血を吸い取られているというのに。
いとおしげに這う唇は、まりあの生気をそこねることなく。
かえってその肌を、みずみずしい輝きで磨きあげているのだった。

おとなしくなったね。
わかっているんだよ。
お化粧に、時間がかかったのは。
私のために、装うつもりだったからだろう?
なにもかも、知っているのだよ。
そう言わんばかりの得意げな口調に、わざとそっけなく、
早く済ませて頂戴。
突き放すように、口を尖らせてみたけれど。
男はますます調子づいていて。
早く抱いてもらいたいのだろう?
まりあが厭がるように、わざとなれなれしく、方に腕を回してくる。
回りきった腕は、そのままブラウスのえり首に差し込まれて、
ブラジャーのストラップを伝って、乳房の周りにまさぐり入れられてゆく。
あっ!ああ・・・っ。
ストッキングの脚を、つま先立てて。
まりあは思わず、のけぞっていた。
そうそ・・・いいかね・・・?
男は意味不明の言葉の切れ端を、つなぎ合わせながら。
とぎれとぎれにかすめる指先は、ほどよくまりあの急所に刺激をにじませて。
妖しい疼きは、うら若い血を熱っぽく沸きあがらせてしまっている。
どうかね?ご気分は・・・
だまってかぶりを振るばかりの、まりあの横顔を、いとおしげに見つめながら。
ご褒美をくれるね?
太ももを這う掌が、ストッキングごしに熱く迫ってきた。

ああっ、いやぁん。厭らしいっ。
ストッキングの脚をつま先立てて。
てかてかの光沢を塗りつぶすように舐めあげてくる舌を、避けようとしたけれど。
もう、足首を捕まえられてしまっていて。
男の欲するまま、ナイロンのすべすべとした舌触りを愉しませてしまっている。
昔・・・通学用の黒ストッキングをいたぶったときと、まったくおなじやり口で。
笑み崩れる唇が、ふくらはぎをなぞるように、這いまわって。
柔らかいふくらはぎを、めでるようにくまなく、にゅるにゅると。
舌と唇とで、いたぶってゆく。
これから出勤なの。大事な会議があるの。
いくら言い募ってみても。
足許をくすぐる誘惑は、絶えることがない。
出勤なの・・・
会議が・・・
途切れ途切れになる声が、淫らな揺らぎを帯びてくる。
だめ、だめ、ダメぇ・・・
まりあは甘えるような声を震わせながら。
とうとうベンチからすべり落ちるようにして、芝生に身を横たえてしまっていた。

草って、クリーニングでも落ちないのよ。
口を尖らして、悪態をついたけど。
男はくすぐったそうに、うけ流しながら。
肩先に流れる長い髪を、いとおしげに撫でつづけてゆく。
はずんだ息づかい。
量感豊かな胸の震え。
そしてなによりも、全身からにじみ出るぴちぴちとした色香が、
むんむんと上気するほどに、まりあを包み込んでいる。
愉しい朝餉。い・た・だ・く・よ。
笑みを含んだ囁きに、まりあはむっとしたように顔を背けたけれど。
ふたたびまさぐり入れられてくる掌と指に。
スーツに泥がつくのも忘れて、
う、ううん・・・っ!
って、のけぞってしまっている。

ラブホテルの裏口で

2007年11月04日(Sun) 06:54:01

街はずれにたたずむ、さびれたラブホテルは、
薄ぼんやりとしたネオンに、うらぶれた影をにじませていて。
女と目をそむけ合いながらこじんまりとした裏口を抜けると、
足早にそそくさと、裏口から遠ざかる。
あたかも、その建物とはなんのかかわりもないのだといわんばかりに。
振り返ると、けばけばしい化粧に、あからさまな笑みをにじませて。
女はなれなれしく腕を回してきたけれど。
からみついてくる腕を、俺はうっとうしげに振り払っていた。
なぁんだ・・・
そういわんばかりに、女はふくれた顔をしたけれど。
外では、まずいだろ。
矢のように囁きを吹き込んだ耳元が、くすぐったかったのか。
イタズラッぽく、肩をすくめて。
はじめて満ち足りた色を浮かべて、
じゃあ、またね。
ここからはべつべつに、歩くわよ。
さいごにチラッと、こちらを振り返って。
もうなにごともなかったように、格好のよい脚を大またにすすめて立ち去ってゆく。

なんだかばつが、わるくなって。
なにげなく振り返ってみると。
さっき出てきたばかりの裏口に佇んでいる女の姿に、
あやうく声を、あげそうになった。
声ならぬ声に、気がついたのか。
置き捨てるようにして先に立ち去った相手の男を見送るのをやめて。
まともに、視線を合わせてしまっていた。
いつも隣町から通勤してくる、パートの彼女。
お嬢さんのようなポニー・テールに、真っ白なニットのセーター。
落ち着いたかんじのする千鳥格子のスカートの下は、
よく、若い女の子が履いている、クロス柄の黒のハイソックス。
しっとりにじんだ化粧の落ち着きだけが、彼女がミセスなのだとわからせてくれる。

もはやそらしようもないくらい。
うっかり合わせてしまった視線と視線。
からみ合う目をようやくそらすことができたのは。
すぐそばの喫茶店に、差し向かいになって。
湯気のたったコーヒーが置かれたあとのことだった。
がやがやとしている店内では。
なにを話していても、注意を払うものはなさそうだった。
なにも見なかったことにしようね。
黙っているから。
そんな俺の言葉を、どこまで本気にしてくれたのか。
女はもじもじと、決まり悪げに目をそらしつづけていた。
快活で、前向きで。力のこもった視線をもったひと。
若さばかりではない、しんのつよさをもったひと。
それが打って変わって、黙りこくってしまっている。
いつもは澄んで、力を秘めた瞳が。
どこか悩ましく、頼りなげに揺れていた。

きみがそういうことをするひとだとは、思わなかったね。
悪いヤツなら、だんなにばらすぞっ・・・て、おどかして。
そんなふうにしてでも、きみをモノにしてしまうところだけど。
俺はそんな卑怯な手は、使わない。
飲み会の帰り道。
冗談半分、残りは本音でホテルに誘ってみたときに。
鉄火な調子ではねつけられたのを思い出しながら。
まるで毒液をたらし込むようにして。
誘惑の声を、たたみかけてゆく。
きみは不倫なんかしないひとだと思っていたから、あきらめつけていただけなんだ。
俺がなにをいいたいのか。なにをしようとしているのか。
莫迦ではなかった彼女は、すぐに察しをつけたようだった。
ぞんざいに渡されたキーにかかれた部屋番号が、
さっきとおなじ部屋ではないことに。
女はすこし、ほっとしたような色をみせている。

荒れ狂った、ベッドのうえ。
乱れたシーツが、悩ましい刻がどれほど濃密に重ねられたかをつげていた。
女は鏡に真向かいになって、
無表情に、ルージュをひいている。
化粧っけなど、ないのかと思っていたむき出しの若さは。
ほんのすこしだけ、とりつくろわれたものだった。
化粧がすむと、女は俺と向き合って。
もう一度、寄り添ってきた。
キライだったわけじゃない。
けれども、遠慮していたの。
職場だから・・・それに・・・
言いかけてやめた女は、おそるおそるの上目遣いで俺を見あげて。
ひとこと、つぶやくように声を漏らした。
血をくれる?ほんの少しで、かまわないから。
え?
言葉の意味を反芻したのは。
ふたたび身を埋ずめたベッドのうえ。
首のつけ根にしみ込んだ疼痛に、ちょっぴり顔をしかめながらだった。

あなたの血だけじゃ、足りないの。
こんど逢うときは・・・奥様を連れてきて。
わたしも主人を、連れてくるから。
口許に秘めた笑みは、いつもの快活さとはうって変わって、
ひどくミステリアスなものをにじませていた。
奥様のつぎは。
そうね・・・さっきの愛人さんも、紹介してもらおうかしら。

紹介するよ。
仕事のパートナーの華月さん。こちらはご主人。
秋の景色を楽しみながら、お食事をしましょうという誘いに、
気軽にやってきた妻は。
いつもより濃いめの化粧を刷いて、若々しく装っていて。
別人と見まごうくらいに、華やいでいる。
真っ白なスーツの胸元に、金のネックレスをきらめかせて。
肌色のストッキングに透けた脛は、淡い光沢に輝いている。
ちょっぴりもったいなげに、さりげない視線を走らせると。
あら、なぁに?
女ははっきりとした瞳を輝かせて、俺をひたと見つめてくる。
何気なく、ほんとうに、なにげなく・・・
ふた組の男女は、べつべつに引き分かれてゆく。
女は俺の腕を取って、寄り添うように別室に向かい、
妻は女の亭主に背中を押されるようにして、白のスカートをたなびかせてゆく。

こんど夫婦で、顔あわせるときは。
互いに互いの首筋に、にじんだ血潮を見つめあうのだろうか。
妻の穿いている光沢入りのストッキングに。
すこしあからさまな裂け目が走っていたとしても。
俺は目をそむけずに、告げてやろう。
なにも見なかったことにするよ。
黙っているから・・・

きみのママって、きれいだね。

2007年11月04日(Sun) 06:15:55

太った体に、大きな目。
思いのほかすばやい身のこなしは、彼の正体をにじませているのだが。
見るからに頭のよさそうでないその少年は、人のよさげな笑み顔で。
だからだれもが、ガードをさげる。
見かけによらず口が堅いのも、皆が安心するひそかな理由らしかった。

きみのママって、きれいだね。
クラスでそう声をかけられた男の子は、ちょっと恥ずかしそうに顔赤らめて、
つぎの瞬間、どきりとしている。
ママをほめられたとき。
それは彼のところにママを連れ出す役をおおせつかったときなのだから。
人のよさげな笑み顔が、
ボクのうちに、連れておいで。
無言の要求を、くり返している。

村はずれにある、大きな屋敷。
黒一色の礼服に身を固めた女がひとり、楚々とした歩みをすすめてゆく。
前に立って女を導いているのは。
教室で声かけられていた、あの男の子。
頬っぺたが赤く上気しているのは・・・秋風に含まれた冷気のせいだろうか。

いらっしゃい。
え?きみのママも、いっしょなの?
えへへへ・・・ゴメンネ。
人のよさげな丸顔ににじんだ照れ笑いは、
こちらが決まり悪くなるほど、あからさまだった。
さぁさぁ、こっちがボクの部屋だよ。
きみは、そうだね・・・お隣の部屋にいてくれる?
えっ?手伝ってくれるの?悪いねぇ・・・

うふふ・・・ふふふ・・・
半開きになったドアのすき間から。
くすぐったそうな声が、重なり合った。
抑えつけられた肩とうなじに埋められた、坊主頭をとりのけようと。
ママはきゃしゃな腕を突っ張ったけれど・・・
つぎの瞬間、ううっ・・・とひと声。
ちゅうちゅう。ちゅうちゅう。ちゅう~っ。
聞こえよがしな吸血の音に、ただ顔をしかめているばかり。

そうなんだ。手伝ってくれたんだ。
やっぱ、仲良しだもんね。
われを忘れて、迫っちゃった。
マシュマロみたいな唇、しているんだね。
あそこの具合も、よかったよ。
えっ。なんのことだか、わからないって?
きれいな服着てたから。
ぼたぼたしたたらせちゃった。
メイワクそうに、顔しかめてたけど・・・あとで怒っていなかった?
ストッキングの舌触りも、よかったよ。
またこんど・・・父兄会に来たときにでも、舐めさせてね。^^

ママがうううん・・・っ、ってしかめ面になったとき。
思わず、ちびっちゃった。
あの厳しいママが・・・きみの腕のなかで。
困ったような顔しながら。
スカートも、黒のストッキングも履いたまま。
古い畳のうえ、脚をそろそろと開いていって・・・
とても、ドキドキしちゃったよ。
またこんど・・・舐めさせてあげるときは。
なに色のストッキングがいいのかな?