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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

守ってあげる。

2008年02月29日(Fri) 00:10:37

たしかにさいしょは、公園で襲った少女。
いやがるのを、ねじ伏せて。
力づくで、うなじを噛んで。
いやおうなく、言うことをきかせてしまった女。
けれども女は、毎晩のように。
初めて襲われたあの公園に、じぶんからやってきて。
いちど通るときめた帰り道を、がんとして変えようとしなかった。
オレがだまって、道を譲っても。
喉、渇いているんじゃないの?って、首をかしげて。
だいじょうぶだ・・・って、強がったときも。
ダメよ。ガマンしちゃ・・・って。
むりに頭を、抱きかかえてくれた。
唇の裏に秘めた牙を、いつか本能のままにむき出しにして。
彼女のセーラー服を、汚してしまったのに。
いいのよ・・・って、ただひと言洩らして。
隠した涙を、笑みに変えてゆく。
女の名は、まりあ。
挑むように、胸を張って。背すじをぴんと伸ばして、背伸びをして。
わたしがあなたを、救ってあげる。
一方的に襲われて、辱められてしまう立場のはずなのに。
なぜか、襲っている俺以上に、毅然としていて。
オレが後ろめたさに視線をおとすときも。
真正面から、ひたと視線をすえてきて。
ガマンしないで。わたしが救って、あげるから。
私が救って、あげるから。
私が救って、あげるから・・・
うなじを噛まれて。
血を啜られて。
それでもただひたすらに、呟きつづけている。
意地汚く啜る音が、いつかすすり泣きをまぎらすためになったと知りながら。
とうとうひと言も、オレに恥をかかせまいとして。黙りつづけていた女。
今宵もその優しい影を。
ひっそりとあの公園に佇ませているのだろう。
襲っているはずなのに、守ってくれている。
ふしぎなあの女(ひと)を恋いながら。
今夜もオレは、公園へと足を向ける。

まりあ?公園に来てくれる?セーラー服を着てきてくれる?

2008年02月28日(Thu) 07:48:13

どうしたの?
制服を着てきて・・・だなんて。
目のまえのまりあは、いつもとおなじ人なつこい笑みをうかべていて。
けれども昔からよく知っている、子どもっぽい少女ではなくなっていて。
白い肌は、まるでうわぐすりをかけたような艶を帯びていて、
薄いピンクの口紅を淡く刷いた口許には、コケティッシュな色香が漂うようになった。
けれどもそれとおなじくらい、ボクの胸をじんじんと疼かせているのは。
うら若い、活き活きとはずんだ生気。
そう、夕べ。
ボクはひと晩にして吸血鬼になってしまっていたのだ。
なによー。ひとのこと、じろじろ見ちゃって。
イタズラっぽく笑うまりあは。
長い髪を清楚な濃紺の襟首のあたりにさらさらさせて。
さっきから。
まるで誘うように、白いうなじを見せつけてくる。
淡い血色を秘めた、白い膚。
からからに渇いた喉には、とてもこたえられない液体を秘めた肉体。
ボクはもう、ジリジリと焦がれてしまって。
ガマンできなくなって。いたたまれなくなって。
思わずつい・・・と、手を伸ばしている。
純白のセーラー服の夏服の下。
豊かに実ったおっぱいが、意外に間近に感じられる。
あっ!なにするの・・・っ!?
半ば予期していた事態に、それでもまりあは本能的に、抗って。
その抗いが、かえって劣情の焔を昂ぶらせた。
ツタのように巻きつけた猿臂のなか。
うっ・・・ううっ・・・
きみはかすかに苦悶を浮かべて、眉をぴりぴり震わせたけど。
さらさら流れる髪の毛をかいくぐって、
ぴったりと唇寄せた首筋は、ひどくしんなりとしていて、人肌のぬくもりが心地よかった。
飢えた唇を、なだめるように。
ひとしきり。ぬめぬめと這わせゆく。
あん、だめっ。ダメッ!なにするのよぅ。
ボクの真の意図に気づいていないまりあは、本気で抗っているわけではない。
腕のなかではずむ、ピチピチトした肢体に。
ボクはもう、すっかりゾクゾクとなってしまって。
熱い唇の裏に秘めていた牙をむき出しにして。
ぐいっ。
しゃにむに、圧しつけてしまっていた。
きゃあっ・・・

ぐったりとなったセーラー服姿は。
ベンチに腰かけたボクのおひざの上。
さあ、まりあはきょうから、ボクのおもちゃになるんだよ。
なにをされても、じっとこらえているんだよ。
イヤそうな顔してもいいからね。
うん、そのほうがかえって、昂奮するかな。
熱に浮かされたようになって。
うわついた口からは、引っ込み思案だったボクからは想像もつかないような声が洩れてくる。
セーラー服の胸の谷間にしたたりおちてゆく、バラ色のしずく。
ボクはそれを指に絡めて。
まりあの目のまえ、見せつけるようにして。
チュッ!と下品に、わざと音を立てて吸っている。
血を、吸うの?まりあの血を、吸い尽くしちゃうの?
たったひと晩で・・・だなんて。
そんなもったいないこと、できるわけがないだろう?
でもこれからきみは、毎晩、学校帰りにこの公園に寄り道をして。
ボクに襲われなければいけないよ。
約束してくれるよね・・・?
う・・・うん。怖いけど。
怖い?そう?じゃあ・・・もっと怖がって。
わざと腕を解くと、まりあは跳びあがって。
ばたばたと逃げ足をたてたけれど。
それはほんの、数歩のことだった。
たちまち抱きすくめられて。
まえよりもっとつよく、うなじを吸われてしまったから。

草地に尻もちをついて。
はぁはぁと、息はずませて。
キミ、まりあよりも足遅いんだったよね?
ふふっ・・・と笑って、ボクの顔を覗き込む。
逃げちゃったら、かわいそうだと思って。
ね。脚、気になっているんでしょう?
まりあの均整のとれた脚は。
濃紺のプリーツスカートの下、真っ白なハイソックスに包まれている。
穿き替えたばっかりなんだよ。
練習で泥だらけになっちゃったから。
すっ・・・とさし寄せられる足許に。
ボクはためらいもなく、唇を吸いつけている。

ママにばれちゃうかなあ。
でもなんとなく、ばれても黙っているような気がするなあ。
長い髪を、じぶんでもてあそびながら。
いいよ。毎晩、逢ってあげる。
でも・・・死なせないでね?だいじにしてね?
ちょっとだけ翳りを帯びた横顔が、ひどくいとおしくて。
セーラー服に包まれた、か細い肩を抱き寄せて。
ふたり、初めて牙を交えないキスを交し合っている。

孝行息子 ~逢いに行く~

2008年02月28日(Thu) 07:21:30

脱いだジーンズが、部屋のすみでぐしゃぐしゃになっていた。
脱ぎ捨てたとき、ストッキング一枚の太ももが寒々とした外気に触れて。
初めて・・・異常なことをしている。そんな気分になった。
ジーンズを脱ぎ捨てたミノルは、男の子。
相手をしているのは、吸血鬼となった父親。
ママのストッキングを履いてきたよ・・・って、囁いたら。
ズボンを脱いでみろ、って、迫られて。
ためらいもなくズボンを脱ぎ捨てて、女みたいな脚をさらけ出したとき。
理性の壁が、崩れ落ちたような気がした。
パパなんだから・・・それ以上のことはしないよね?
声がすこし、震えたのは。恐怖からだったか。期待もかくれていたのか。
血に飢えた男は、なまめかしい薄黒に染まった少年の脚を、くまなく舐めまわした。
ぬめくる舌が、薄手のないろんごし。くすぐったい疼きをしみこませてきて、
少年は思わずぞくり!と、感じてしまっている。
勃っている。
ひんやりとした指のあいだに、はさまれて。
じゅじゅじゅ・・・っ、と、噴いてしまっていた。

ママのストッキングを、汚したね?
お仕置きだ。
父親はふふっとほくそ笑んで。
つやつやとしたナイロンが薄っすらとしみとおる太ももに。
ちくり・・・と牙を縫いつける。
じわ・・・っ、と滲んだ血。
ちゅるちゅると啜られていった。
あとはもう、勢い。
飢えた唇は、ヒルのようにぴったりと密着して。
生温かい生き血を、勢いよく吸い上げてゆく。
ちゅう、ちゅう、ちゅう・・・
あ・・・もうそこまでで、許して。
許して、許して、といいながら。
なおも血を求める牙と唇に。
だまって持ち出してきたママのストッキングを、いいようにいたぶられてしまっている。
明日は多分、ボクもお誘いをうけるから。
蒼ざめた頬で、そう呟くと。
パパはほんの少しだけ、吸い取った血を身体に戻してくれた。

ほんとうに、いいの?
ウン。
繊細な横顔に、つよい意思を秘めた少女は。
ためらう兄の先にたって。
ふたりの父親が待つという村はずれの納屋に歩みを進めた。
学校に履いていく黒のストッキングは。
ママのそれにくらべたら、てかてか光もしなかったし、そんなに透けてもいなかったけれど。
いつまでも子どもだと思っていた妹にしては、かなり気張ったシルエット。
びっくりするほど、大人びてみえた。

さいしょにボクが、お手本示すから。
兄のほうこそ、声上ずらせていて。
半ズボンの下、ひざまで引き伸ばした紺のソックスに、飢えた唇を吸いつけられてゆく。
失血のせいで息せき切っている兄がうつぶしているかたわらで。
こんどは少女が、父親の腕に抱きすくめられてゆく。
ダメだ・・・ダメだよ・・・
嫉妬とためらいと。その裏に秘められた一抹の媚薬とが。
少年の胸を妖しく焦がす。
首筋に、さくりと降りた牙が、根元まで・・・埋め込まれたとき。
あぁ。
少女は初めて怯えたように、一瞬眉をそらせて。
身体を支える両腕が、キュッと筋肉を引きつらせるのを。
半そでのセーラー服から覗かせた。

夏服に黒のストッキングなんて、ヘンだよね?
娘はとっくに、落ち着いた声色を取り戻している。
けれども男は応えるゆとりさえ忘れて、少女の足元の装いをいたぶり続けていた。
わらにまみれた少年は。
血を抜かれてかえってスッとなった身体を、だらりとふやけさせながら。
いま目のまえで妹がされているのとおんなじように、ママが吸血鬼のおじさんに飼いならされてしまったのを。
薄ぼんやりと思い出している。

いるかい?パパ。
ママを連れてきたよ。
吸血鬼のおじさんが、別のおうちを見つけて。
そこの家の若い奥さんをたぶらかせにかかったとき。
ミノルはおじさんの許しをもらって、ママを納屋へと連れ出した。
ひさびさの、夫婦の交歓に。
われを忘れた男女を、納屋の外からのぞき見て。
妹のときのような淡い嫉妬よりも、誇らしさと安堵とが、少年の胸を染めていた。

つぎは・・・ハルコさんの番だよね?
ママも妹も、白い顔を並べて愉しげに口にするのは、ミノルの恋人の名前。
セーラー服の夏、ハルコさんは今年がさいごなんだよね?
9月30日の晩のこと。
もう着なくなる夏服を、処女の血潮で濡らしてもいい・・・
ハルコさんは、「お義父さんのためになら」って、付け加えてくれたけれど。
あのじんじんとした嫉妬の疼きは。
妹の時よりも、濃密だった。
三つ編みにした髪を、かきのけられて。
薄っすらと陽焼けした小麦色のうなじに。
あのときとおなじように、象牙色をした鋭い牙がもぐり込んでゆく。
予防接種だと、思うんだね。
浮気よけの、予防接種。
お嫁さんの浮気を封じるために、パパにしてもらうんだね?
半分は、わかったようで。半分は、納得できない・・・
でもそんな想いなど、踏みしだくようにして。
彼女はうなじから血を流して。
純白のセーラー服に、バラ色を散らしてゆく。

こんどくるときは。スカートの裏も紅くするんだよね?
口にした言葉の濃さとは裏腹に。
少女が投げてくるのは、イタズラっぽい上目遣い。
ウン。そうだね。
ストッキングは、太ももまでのやつがいいかな。
さいごまで、脱がないで。
履いたまま犯されているところ、覗いてみたいから。
少年の身体には。
いつか父親と同じ色の血が、ひそかにめぐりはじめている。

ブログ拍手♪

2008年02月26日(Tue) 23:46:46

メールが不調で、見れません。(><)
一過性のことならいいけど・・・

初めて一日四件も、拍手を頂戴しました!
「交接」
着飾った衣裳をはだけ、夫のまえで乱れる人妻。
その姿を夫の目からつづった小品です。
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-599.html

「ごく常識的に、落ち着いていて」
えろい表現は、そんなにないんですよ。
このみじかいお話のなかに。(ホント?^^)
ことさらモンスターぽくせずに、どこにでもいそうな普通の人が人の血を吸う。
そういうほうが、よほど怖いかな・・・と。思ったとおりのことを描いたエッセイです。
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-1332.html

「昔話~太郎の嫁~」
兄嫁と兄と弟の三角関係を、山里に伝わる艶笑譚のスタイルで描いてみました。
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-1336.html

「褥のお供 ~兄嫁のストッキング~」
前作と似た趣のお話ですが、こちらのほうがやや都会的な気がするのは。
三人の絆にストッキングが絡みついているせいでしょうか?
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-1337.html

どれも、これも、ひっそりとした地味なみじかいお話なのですが・・・
見出してくださって、ありがとうございます。m(__)m

セーラー服の季節

2008年02月26日(Tue) 00:44:39

男の子のくせに、どうしてもセーラー服を欲しくって。
思い切って足を伸ばした遠くの街。
古びたアーケードは、ところどころ玉切れになった安っぽいネオンに囲まれていて。
通りの切れ目の、いちばん奥まったところには。
まるでとっておきのように、小ぢんまりとした百貨店が、広い間口を開けていた。
ポスターのはがし跡やところどころ錆びの浮いたスチールにふち取られた入り口には。
どこからともなく吹き込んでくるさびれた風が、陳腐な飾りをさやさや鳴らしつづけていた。

まばらな人影に、吸い込まれるように。
なんの違和感も覚えずに入り込めたのは。
そこが婦人用衣料品店とか、あるいはもっとケバケバしい服を売る店とかではなくて、
だれが入っても見咎められない百貨店であることと。
ひっそりと行き交う人影が、多すぎも少なすぎもしないで、
ひどくゆったりと、溶け込むことができたから。

店内はお客の姿も店員の注意もまばらな感じがして、
見栄えのしない、くすんだ壁。
照度が乏しく、そのぶん刺激の少ない照明。
どこにでも流れていそうな、ムードまったくなしのBGM。
空気のようにさりげないそうしたものたちが。
セーラー服を、買いにきたという。
気恥ずかしさと、気後れとを。
ほどよくごまかしてくれるようだった。

てらいも恥じらいもなく。
そのへんのどうでもいい雑貨とおなじように。
つるしで並べられたセーラー服。
「祝 入学」の文字さえが古びて見えるほどに、売り場を訪れる客はまれだった。
背丈よりも高く吊るされたセーラー服のあいだに、半ば身を隠すようにして。
お客や店員の視界を避けながら。
似たり寄ったりのデザインの制服3、4通りのなかから。
濃紺に白のラインが三本で、胸当てにもおなじくラインが三本横切っている、
まるでお約束のようにシンプルなデザインのものを選び出していた。
学校の制服は、女装する子にもつごうよく、大きいサイズも置いてあった。
襟首の裏側に書かれたサイズ。「175A」。
男の子のボクにでも、着れるサイズ。

かすかに指震わせながら、腕を伸ばして、背伸びをして。
目当てのセーラー服を、ハンガーごと、そうっとはずす。
どんなふうにたたんでも。
人目を避けることは不可能なほど、白の三本線は制服らしい存在感があって。
おなじ学校のプリーツスカートを、そのうえから重ねて。
「○○中学校」と書かれた白のネクタイを、盗み取るようにしてさらい取って。
ずっしりとくる重さを腕に、レジに向かった。
売り子の女性は、母親くらいの年配で。
おずおずと制服を差し出した客の素性など、まるで気にも留めないで。
そそくさと事務的に、レジを打った。
お持ち帰りですか?
あ・・・はい。
本人の学生証を出せとか、学年をいえとか、よほどめんどうなことを言われたら・・・と、
逃げ出す足を半歩踏み出すほどの数秒間。
けれどもボクの制服は、百貨店の名前入りの包み紙に、なれた手つきで包まれて。
そのうえご立派な紙製の箱に、お行儀よく納められる。
商品を受け取る時には、まるで入学生のお兄さんかお父さんになったような気分で、
ちょっぴり落ち着いて、ちゃんとおつりまで受け取っていた。

そのままレジを離れようとしたときに。
あの。
売り子の女性が、声をかけてきた。
はい?
ぎくりとして、冷や汗が浮いたのを、とっさに押し隠すと。
だいじにしてくださいね。
ボクのいけないたくらみを、どこまで気づいていたのだろう?
女のひとはにこやかにほほ笑んで。
どんなお客にもそうするように、いんぎんな会釈をおくってきた。

家にもどって、包み紙を解く手も覚束なくて、
広げてみた真新しい制服は。
一着隣に吊るされていたやつは、いまごろはどこかの少女のはにかんだ笑みに接している時分なのに。
なぜか男の持ち主を得て、すこし戸惑っているようにみえた。
けれどもきりっとした真新しい濃紺の輝きは。
有名校の矜持をそのままあらわすように。
ボクの腕の中、どこまでも気品を失わないでいた。
濃紺に、白のラインが三本走ったセーラー服は。
正統すぎるデザインが、かえってひなびて見えたけれど。
万年筆の匂いのする、古風で奥ゆかしい女学生を彷彿とさせるようだった。
いまは見かけることのなくなった、三つ編みのおさげ姿の彼女たち。
その足跡を、間近にかいま見たようで。
清純、という。
忘れかけていた言葉を、色鮮やかに思い出していた。

どれほどの歳月が経ったことか。
結婚を翌週に控えたある晩に。
ボクは長いこと連れ添ってくれたそのセーラー服と、お別れをした。
まるで初恋の人の思い出の品を捨てるほどに、泣く泣くに。
一生をともにする相手を迎える喜びと、それは決して矛盾する想いではなかったけれど。
そんなことはきっと・・・誰に話してもわかってはもらえまい。
いちどめぐり逢った清純な女学生は。
ふたたびどこかへ、立ち去っていった。
足音も立てないで。
結婚をしてなん年か経ったころ。
なにかのはずみに妻と、幼い子どもと通りかかったあの街は。
まえよりは少しだけ、あかぬけたようすになって。
けれどもあの陳腐なアーケード街のはずれにあった百貨店は。
建物もろとも、姿を消してしまっていた。
向かい合わせの銀行の古ぼけた煉瓦は、あのときのままだったけれど。
もう昔のことは忘れたよというように、穏やかな陽射しを浴びているだけだった。

おとーさん。はやく、はやく。
すっかり大人びた娘に、せかされて。
私はもたもたと、ネクタイをしめている。
入学式に遅れまいと、妻はしきりに時計を気にして、
新調したスーツが似合うかどうかも、おなじくらい注意を払っていた。
私のことはもちろんとして、そのじつ娘のことさえ、眼中にはないかのようだった。
せかせかとした日常のなか。
おっとりとした令嬢だったはずの女は、常識まみれの専業主婦になっていて。
物指しで測ったような日常を、たくみにあやつって生きている。

似合うかしら。おかしくないかしら。
ウン、ウン。よく似合っているとも。
ほら!3本早い急行に乗っていくつもりだったのに。
つぎのに乗り遅れても、三十分前には着くだろうさ。
いつもあなたは、そうなんだから・・・
ぶつぶつ言いながら化粧台に戻って行った妻を見送って。
きょうの主役のはずの娘は私に、くすっと笑いかけてくる。
豊かな髪を、いままで見たこともないくらい、ツヤツヤと光らせて。
胸元でしめる真っ白なリボンを、片手でもてあそんでいる。
ちょっとしたしぐさは、まだまだ子どもっぽいはずなのに。
どこか大人びたなまめかしさが身体の輪郭に重なるのは。
制服というものの、魔力なのだろう。
はっ・・・となって。
忘れかけていた日々が、ありありと目のまえによみがえった。
白のラインが三本走る、真新しい濃紺の制服に。
胸当てにもおなじラインが横切っていて。
ちらりとこぼれる白い胸許。笑うおとがい。
きらきら光る、白い頬。
十なん年前抱きすくめたときは、むなしい抜け殻どうぜんだったものに。
ひそかにはぐくまれ秘められてきた魂が、いま花開く。
パパ、黒のストッキングが好きなんでしょ?
だから私・・・ストッキングを履く学校を選んだのよ。
イタズラっぽく笑う少女は、気取ったしぐさで片脚を差し伸べて。
大人びた装いに透けたピンク色の脛を見せびらかした。

連れ込み宿 六 ユウヤのママ

2008年02月25日(Mon) 07:08:17

まだママのことを、差し出していないんだね?
マコトは支配者ぶった声色で。
仲良しのユウヤを責めていた。
三人、寝そべった畳のうえで脚を伸ばして。
半ズボンの下に履いてきた、おそろいの紺のハイソックスのふくらはぎを、小父さんに差し出しながら。
あっ、あっ、う・・・うぅん。
どうしてこんなに、昂ぶってしまうのだろう?
すべすべとしたナイロンごしに、舌を這わされるだけで。
おなじ昂ぶりを、ともにしながら。
ボクたち三人は、それぞれの密会の共犯者。
古びたシミの浮いた天井の下。
黄ばんだたたみの上に転がされたボクたちは。
若いアユのようにピチピチとした膚をさらして。
小父さんの奇妙な欲望を、充たしていく。
ひそかな昂ぶりを抑えた吐息を、洩らしながら・・・

マコトのハイソックスは、いつもよりグッと薄くて。
まるでストッキングみたいに、脛を蒼白く透かしていた。
どお?パパがお勤めのときに履いていくやつなんだけど。
足裏の補強だけが、ちょっとツヤけし。
でも、紳士用とは思えないほどのツヤツヤ光る光沢が、すべてを圧倒していた。
すごい・・・
ユウヤもこういうの、穿きたいだろう?
マコトの声も、じつは昂ぶりに寸詰まっていた。

さあ、さあ。
ふたりして。
ウブなユウヤを、悪の道に引きずり込もう。
ボクたちは、ためらうユウヤの肩を両方から抱きかかえるようにして。
お宿からまっすぐ、ユウヤの家をめざしていた。
ママ、あしたの午後ってあいている?
お友だちに逢ってもらいたいんだけど・・・
いがいに落ち着いているユウヤの態度に。
ボクたちは意外そうに、顔を見合わせていた。

ほんとうは、ユウヤはママを逢わせてしまっている。
それを知らないのは、マコトだけ。
けれども。
善良な少年を悪の道に堕とす。
そんなマコトのシナリオが、捨てがたくて。
ボクはユウヤと彼のママと、三人で語らって。
堕とされる善良な母子の役を演じてもらう。

やられキャラ・・・って、愉しいね。
いよいよママを連れ出そうというとき。
ユウヤはこっそりと、囁いてきたものだった。
ボクたちは始めて、大人の前で半ズボンの脚をさらして。
おそろいの紺のハイソックスで、肌色のストッキングを穿いたユウヤのママの脚を取り囲むようにして、道を急いだ。

ああっ・・・うっ・・・あっあっ・・・
ふすまの奥から洩れる声に。
ボクたち三人は、失禁しそうなくらい、昂ぶって。
たがいにたがいのズボンのうえから、股間に手をあてがって。
パンツを濡らしあってしまっていた。
ユウヤだけは、ママを救い出すチャンスを、あきらめさせるため、
ボクたちの手で、ぐるぐる巻きに縛られていたけれど。
稚拙な結びかたをした縄は、すぐにほどけてしまっていて。
けれどもユウヤは家庭崩壊を救うチャンスを、わざと無にして。
ふすまの向こうで家庭が崩壊するのを、嬉しそうに覗き込んでいる。

堕ちちゃったね。三人とも。
羞ずかしそうな、照れ笑いを。
お互いの頬に、認め合って。
こんどは誰を、引き込もうか?
どこまでもワルなボクたちは。つぎの獲物を物色する。
気をつけてね・・・ボクたちみたいな男の子が、油断なく目配せしあうとき。
狙われているのは、キミなのかもしれないのだから。


あとがき
愉しい密会の場に、薄いハイソックスを履いてきたマコトくん。
もしかすると、パパに相談して、親子で示し合わせてママを堕としたのかも。
その事実を、見せつけたくって。
さりげなくパパの靴下を黙って借りてきたのかも。
主人公のボクは、もうなんども経験している道のようですが。^^

後妻と三人の息子たち

2008年02月25日(Mon) 06:02:58

三人の子持ちの男やもめがいた。
子どもたちは男の子ばかりだった。
男はやがて再婚することになり、家に再婚相手を招いた。
部屋は散らかり、男の子たちは飾り気もなくがさつだったけれど。
女は終始にこやかに接していた。
いちばん下の洟垂れ息子は、寒そうな赤鼻にハンカチを当ててもらって、めずらしいくらいにはにかんでいた。
再婚してなんか月かたったとき。
十八になる上の子が、おずおずと義母の部屋にあらわれた。
夫のいない夜だった。
なにを言いたいのか、みなまで聞かずに。
優しい義母は、なさぬ仲の息子を、ねやに招きいれていた。
二番目の息子が義母のところに夜這いをしかけてきたのは、吹雪の晩のことだった。
眠れない・・・といいながら。
その子は義母よりも大きな身体で甘えかかってきた。
上の息子二人が嫁をもらって家を出て行くと。
夫が妻に語りかけた。
あいつもそろそろ、年頃だね・・・と。
そして、
どの子がいちばん、かわいかった?と。
なにもかも知り抜いている声だった。
妻は優しくほほ笑んで。
どの子もとっても、かわいいですよ。
いつも覗き見している誰かさんと、おなじくらいに・・・ね。

褥のお供 ~兄嫁のストッキング~

2008年02月25日(Mon) 05:59:09

兄と弟が、ふたりきりで住んでいた。
やがて兄のほうが、嫁を迎えることになった。
都会育ちの女だった。
母親は、とうにいなくなっていたので。
ただでさえ眩しく映る、若い女の色香があった。
村でずっと育ってきた弟は、洋装の女が珍しかったので。
肌色のストッキングを履いた義姉になるひとの足許を。
じろじろもの珍しそうに、盗み見ていた。

やがてのこと。
勤めに出るようになった義姉の目を盗んで。
弟はそう・・・っと、義姉の部屋に忍び込むようになっていた。
狙いは、箪笥の抽斗のなか。
きちんと折りたたまれた、肌色のストッキング。
姉がいつも、隣町まで勤めに出るときには。
スーツのすそからはみ出した太ももを、しなやかにおおっていた。
はじめて手にした薄いナイロンは、ひどくなよなよとたよりなくて。
こんなものに気をそそられるだけでも、じゅうぶん恥ずかしいことだと感じながら。
ストッキングの穿き方など、だれに教わったわけでもないのに、
つま先をたぐり寄せていった。
義姉がふいに、家に戻ってきた。
外から鍵を開けようとするがちゃがちゃという音に、びっくりして。
あわてて脱ごうとしたストッキングを、つい破ってしまった。
次郎さん、いらっしゃるう?
兄嫁の若々しい声に、応じるゆとりもなく。
ズボンを乱暴に、たくし上げていた。

その晩。
とうとう戻すことのできなかった兄嫁のストッキングを履いたまま。
弟は布団のなかに転がり込んだ。
息荒く、はずませながら。
股間にあてがった掌のなか。
ヌルヌルとなまなましい粘液が、義姉のストッキングを濡らしていった。

ほどほどに・・・な。
いくたびか、おなじ行為に耽るうちに。
兄貴と二人きりのリビングから、そうっと抜け出そうとしたとき。
広げた新聞紙の向こう側から、ふいに兄の声が洩れてきた。
なんのことだか・・・すべてお見通しらしい声色だった。
ゆう子のストッキングだろ?お目当ては。
なーに、どうってことはないさ。黙っているから、ばれないようにうまくやれよ。
兄貴は新聞紙の向こう側から、感情を消した声色でそういうと。
もう行け、というように、押し黙ってしまっていた。

いつのころからだったろう?
義弟の悪戯に気づいた兄嫁は、口に出したりはしなかったけれど。
意味ありげな視線をちらちらと義弟に送って、それとなくたしなめようとしているようだった。
兄嫁のストッキングを、褥のお供にしていた弟は。
いつか、ストッキングの持ち主さえも、褥のお供にはべらせていた。
こっそりと。
兄貴のいない夜だけ・・・と。
ある晩のこと。
義姉とふたりだけの食卓で、酒に酔うままに、かきくどいてしまったら。
強引に引き込まれる手を、引っ込めようともしないで。
勤め帰りのスーツ姿のまま、独り身の布団のうえに押し倒されていったのだった。

嫁の不貞を察した兄は。
それでも、苦情を洩らさずに。
今夜は帰らないと言った夜に、夜更けになって戻ってきた。
妻も弟も、いなかった。
街はずれのラブホテルで過ごしているのだ・・・と、同僚から聞かされていた。
音を忍ばせてあけた、洗濯機のなか。
指先でつまんでぶら下げたのは、黒のストッキングだった。
透けるほどに薄いナイロンは。
いくども密着していた妻の脚の豊かさのまま、ふやけたように弛んでいた。

いつも弟が、そうしているように。
そう・・・っと、脚に通してみる。
履きなじまない薄手のナイロンに、女の色に染まった足許を見おろして。
ちょっとだけ軽く、くねらせてみる。
数時間前まで妻の膚に接していた薄衣は。
まだ妻の体温を残しているかのようだった。
その体温は、いちだんと熱して、いまは不倫の床のなか。
ぞくりとした昂ぶりのまま。
いまごろ妻は、こんないやらしいものを身に着けて、弟の相手をしているのか。
そうおもうと、いてもたっても、いられなくなって。
かつて弟がそうしていたように、
女色に染まった脚を、褥のなかに引き入れていった。

ナイショ・・・ですよ。
柔らかい声色が、暖かな吐息とともに耳朶をくすぐる。
うなじをさすり、胸に触れてくるしなやかな腕は。
兄嫁の・・・というよりも。女の色香に満ちていた。
ほどほどに・・・ね。
彼女の夫が、嫁のストッキングを盗む弟をたしなめるときとおなじ口調で。
悪戯っぽい上目遣いを投げてくる。

ナイショだぞ。
ナイショ・・・ですよ。
夫は妻のストッキングを盗み取らせ、
妻はじぶんの身体を盗み取らせる。
かわるがわるの、やり取りは。
いつか互いの知れるところになったけれど。
白昼演じられる日常生活には、なんの波風もたたないままに。
三人の男女は、齢を重ねていった。
義姉さんとずっといっしょにいたいから。
結婚話を断りつづけた弟に。
ふたりは縁談を持ち込むことをあきらめた。

そろそろ行かなくていいの?兄さんのところに・・・
いいの。今夜はここで明かしていいって、いってくれているから。
覗いたらだめ・・・と拒んだら。
兄貴は黙って、出かけてゆく。
淋しそうな後ろ姿が、気の毒で。
そのうちに覗かれながら兄嫁を犯すのが、愉しみにかわっていった。

だまって寝床からすべり抜けてゆく、あとの残り香が切なくて。
ついつい妻の行き先をしたってしまっていたけれど。
まがまがしく演じられる不貞の現場に、かえって昂ぶってしまっていて。
灼けるような嫉妬の情は、やがてゾクゾクと疼く得体の知れない熱情にすりかわっていった。

かわるがわる抱きすくめてくる、色違いの男くささ。
時間差輪姦・・・ね。
女はじぶんの発した不道徳な言葉に、じぶんで感じてしまっている。
視られながら、犯されて。
熱っぽく、愛されて。
兄弟ふたりに、嫁入った女は。
きょうも心地よげに、声を洩らしつづけていく。

むかし話 ~ 太郎の嫁

2008年02月25日(Mon) 05:21:25

昔のこと。
ある村里に、若い兄弟が住んでいた。
名前は伏せておきたいので、かりに太郎と次郎・・・ということにしておこう。
太郎はやがて、隣村から嫁を迎えた。
貧しい村だったので、嫁をもらえる息子は、跡取り息子だけと決まっていた。
よその村から迎えられた嫁は、村の男どもに荒っぽい歓迎を受ける。
永年守られてきた、しきたりだった。
あまり近しい人は、情が移るからよくないねぇ。
年老いた母親は息子をたしなめるような目をしてそういって、
わたしも若いじぶんには、身に覚えのあることだから・・・と、珍しくころころと声をたてて笑った。
無口な母親が笑うのも、珍しいことだったが。
それ以上に、齢よりもふけてしまった老女がみせた頬が、そのときだけは。
どきりとするほど、若やいでいた。
その晩花嫁は、花婿と父親に付き添われて。
村はずれの納屋へと出かけて行った。
さいしょに初穂を摘んだのは。
村いちばんの長老だった。
さいしょからさいごまで、いちぶしじゅうを見届けさせられて。
苦痛の声をあげつづける若い嫁が、さいごに洩らした吐息が。
悩ましげな色艶になまめくのまで、きかされた。
なに・・・どこの嫁も。さいしょは羞ずかしがるのじゃよ。
逞しい腕を着物の袖に通しながら。
もの慣れた長老がうそぶくと。
居合わせた村の若者たちは、いっせいに色めきたっていた。
あとは・・・勝手放題だった。
夜が明けて、家に戻された嫁は。
それから十三夜というもの、ひっそりと納屋に出かけて行って。
待ち構えている男どもに抱かれるのだった。
しとどに浴びた村じゅうの男どもの精を、うわぐすりのようにして。
女はますます、美しくなった。
嫁をとれない次郎のほうは。
夜ごと聞える悩ましい声に、布団をかぶって耳をふさいでいたけれど。
やがて・・・兄のいない夜に、兄嫁の寝所に転がり込んで。
まるで初めてとは思えないほどの素早さで。
夫婦の褥のなかに、身をすべり込ませていった。
やっと来たね?
兄嫁は次郎の頭を、まるで母親のように撫でながら。
放恣に身体を開いていった。

十なん年の歳月が流れた。
どちらに似てるだ?
村の男どもは、額を寄せ合って。
ひそひそ話しに興じている。
時には太郎までもが、加わって。
指折り数えて勘定したども・・・どうも身に覚えがないでのう。
陽焼けをした頬を、好色そうにしわ寄らせながら。
一座とともに、笑いこける。

たくましく育った、一人息子は。
やがて隣の村から嫁を迎える。
息子は一人がいいだな。
太郎は次郎に、囁いた。
んだ、んだ。二人に一人じゃ、身体がもたんて。
あはは・・・
十なん年ものあいだ。
嫁の話が兄弟のなかで話題にのぼったのは、きょうがはじめてのことだった。
なーに。ふたりにひとりとは、かぎらんて。
次郎は、え?と顔をかしげたけれど。
隣家のご隠居。はす向かいの独り身の中年男。すぐ真裏の、やもめ暮らし。
なーる・・・
しっ!
あまりの声の高さに、太郎は次郎の口をふさいでいる。
いく晩、しのんでしもうたかのう・・・
兄貴のまえ、指折り数えている弟に。
わかっているって。
太郎は照れくさそうに、さえぎっている。
その晩はいつも、部屋の外で震えておったのじゃから。

連れ込み宿  ~妹を誘い出す~

2008年02月24日(Sun) 07:51:09

都会のかたすみに、ひっそりとたたずむ古い邸。
上品なようで。わいざつなようで。
とにかく目だたない古い木の塀の向こう側には。
子どもの知らない秘密の世界が広がっている。
連れ込み宿。
そういう名前がついているなんて。
初めてママのあとを尾けていったころには、まだ知りもしなかった。
あの門をくぐった日から。
ボクは胸の奥までも、いままでにない色に染められていった。
単身赴任していたパパが戻ってきても。
家の雰囲気は元どおりには戻らないで。
なにかのはずみで、家のすみっこに隠れていたものがさらけ出されたりしたら。
秘められつづけてきた妖しいものが、取り返しのつかない形で。
いっぺんに、表に出てきそうな危うさを。
ボクはいつも、意識していた。
だれもがすべてを、知りながら。
なに不自由ない都会の家庭の、一見平穏な日常に。
歪んだ浸蝕は、ひたひたと忍び込んできて。
もう帰り道のないままに、音もなく進行をつづけていた。

週2か週3の割合で。
ママは昼日中から、ひっそりと出かけて行って。
あの古びた薄暗いお宿の門をくぐり抜けて。
別人に生まれ変わって。
小父さんと、情交を遂げてゆく。
ボクは時おり、いっしょに呼び出されて。
ママに気づかれないように、こっそりあとを尾けていって。
とざされたふすまの向こう側、秘密の穴ぼこを覗き込んで。
ママがパパをどんなふうに裏切っているのか、いちぶしじゅうを見届けていく。
おなじ覗き穴から。
パパもこんなふうに・・・ママが犯されているのを覗いているのだろうか?
シミのついた漆喰の壁に、中年男の饐えた息遣いが漂ったような気がして、
時おりはっとして、あたりを見回す。
パパとボクとは、かち合わないように。
ママとボクたちも、顔を合わせないように。
男はいつも、抜かりなく気を配っていて。
だから・・・ボクはいつも、言われたとおりに行動していた。
それが・・・支配されていることだと気づくのに、たいして時間はかからなかったけど。
服従していることが、なぜかむしょうに愉しくて。
きょうの午後、キミのママを呼び出すから。キミはいつもの部屋に先回りしているように。
小父さんにそんなふうに命令されてしまうと、
よろこんで、お言葉どおりにさせていただきます。だなんて。
なれない丁寧語で返したりしている。
そういうとき。
おじさんはひどくくすぐったそうな顔をして。
満足そうに頷き返してくるのだった。

家族どうしで、顔をあわせなくても。
ふすまの向こうにいるのが、ママで。
主婦の仮面をかなぐり捨てたママで。
着飾った衣裳を、惜しげもなく裂き散らされてゆくありさまは。
じゅうぶんすぎるほど、刺激的だった。
いちばん恥ずかしいのが、ほかのお客と同席するとき。
どうみても未成年のボクなのに。
そういうお客を見慣れているのか、
すれからしに違いないここの客人たちは、軽く会釈をするだけで、
あとは申し合わせたように、押し黙って。
覗き窓の向こう側の演劇に熱中する。
見ず知らずの男たちに、ママの痴態を観られている。
決して観られてはいけない秘めごとを。
おおぜいの男たちに、観られている。
男たちはみないちように、ママの白い肢体に、好奇の視線を這わせていって。
部屋の中でママを辱め抜いているあのひとと同じくらい、
鋭利な視線という責め道具で、ママのことをなぶり抜いている。
こんな恥ずかしい体験に。
ゾクゾクしてしまうのは・・・なぜ?

そんな日常がつづくなか。
パパが珍しく、勉強部屋に現れた。
ミカは今夜も、泊まりだね。
そう。
ママが出かけてゆく夜は。
勉強に集中する・・・そういう名目で。
妹のミカは、独り身の叔母の家に預けられる。
家でなにも知らずにいるのは、まだほんの少女である妹だけ・・・
大人の世界に一歩踏み込んでしまったボクは。
暗黙の諒解のなか進行してゆくママの不貞行為を、オトナの男として愉しみはじめていた。

そのうちにね。
ミカも泊まらなくて、すむようになるさ。
パパのひと言には、ときおり、どきりとさせられる。
今夜の場合も、そうだった。
わたしもこれから出かけるけれど・・・お前は家に残りなさい。
なにもすることがない?
いや、いや。きみにはまだ、大人になるための勉強があるはずだ。
オトナになるためのね・・・

謎めいたひと言を残して、パパが出かけてしまった後。
がらんどうになった夜更けの家のなか。
ボクはなぜか、昂ぶりを覚えている。

このあいだのことだった。
ことが済んで、身づくろいを済ませたあと。
ママは男にしなだれかかって、なぞをかけるように囁いていた。
生娘をひとり、お世話させていただきますね。
ほお?
いまどきでも、いや、いまどきだからこそ。
生娘を抱くことは、至難のこと。
世間の狭い専業主婦に用立てできる生娘など・・・そう、ひとりしかいないはず。
そのときは、なんのやり取りだか、うかつにも聞き逃してしまったけれど。
ママは、情夫の歓心を得るために、まな娘をエモノにしようとたくらんでいる!
独り取り残された家のなか、ボクはぞくり・・・と胸騒がせる。

彼女のキョウコと、フルーツパーラーで待ち合わせて。
軽く30分ほど、お茶をして。
そろそろ時間だね。
予備校の始まる時間を気にするみたいに、ボクたちは時計を見合わせると。
そそくさと割り勘で、お勘定を済ませていた。
ほんとうは、予備校の授業のある日だったけど。
ボクたちが足を向けたのは、あの古びたお宿。
先に立って歩くキョウコは、上はラフなTシャツなのに、スカートは制服の紺のスカート。
ゆらゆらと重たげに揺れるプリーツスカートの下には、いつも学校に履いて行く黒のストッキング。
薄黒いナイロンの向こう側から蒼白く透けて見える彼女の脛は、ひどくなまめかしい雰囲気を漂わせている。
そう、あの男にご馳走するために。
ボクに見せつけるようにして、オトナっぽい黒のストッキングを履いてきたのだ。
ストッキングフェチだと、彼女にばれてしまったいま。
彼女は男の腕のなか、くすぐったそうに笑いながら。
制服の一部を裂き取らせていた。
覗き穴から覗くボクの目のまえで、これ見よがしに。
ママの不貞行為の共犯者に、未来の花嫁の純潔をプレゼントしてから。
どれだけ日が経っただろう?
始めは羞じらっていたキョウコも、いまではすっかり状況になれて、
きょうもボクにお供をさせて、彼のエッチな欲望に貞操を汚されにゆく。

お部屋のまえで、振り向いて。
じゃあ、あとでね。
キョウコはボクの頬にキスをして。
ボクは彼女のおでこにキスを返してやる。
お互い唇を重ねあったことさえ、まだないというのに。
彼女は男女の体験を、どれほど重ねてきただろう?
ママのことまで狂わせてしまった、あの老巧な男の手にかかって・・・

学校帰りかね?
ええ。
彼氏には、ナイショかね?
エエ・・・
しらじらとうそをつく少女を、男は我が物顔に抱き寄せて。
Tシャツの下から、手を入れて。
しつこいまさぐりに、青いTシャツに描かれたLOVEという横文字が揺らいだ。
LOVE。そう、たしかに、LOVE
make love という言い回しを使わないように。
予備校の先生はそういって、皆を笑わしたけれど。
いまボクの目のまえで始まっているのは、正真正銘のmake love。
愛はたしかに、創られるものなのだと、
ママやキョウコを通して識ってしまったボク。

ワイシャツのあいだからはだけた逞しい胸が、彼女の胸に迫ってゆくと。
彼女はちょっとだけ、抗って。
そうすることが、ボクをよけい昂奮させるって知っているかのように、抗って。
それでも胸をまさぐられつづけていくうちに、牝の本能を目覚めさせてしまって。
はぁん・・・
教室では絶対に聴くことの出来ない、彼女のよがり声。
重たいプリーツスカートを、いともむぞうさにはぐりあげられて。
薄黒いストッキングごしに浮かんだ、蒼白い太ももに。
ストッキングもろとも侵されるように唇を這わされて。
ボクとは頬っぺとおでこのキスだけなのに。
大人そのものの、濃厚なキスを交し合ってゆく。
ああ・・・ボクの観ているまえで。
見せつけてやろうよ。
小父さんにそそのかされて、キョウコは素直に頷いている。
ツヤツヤとした黒髪が、肩の辺りで乱れ始めていた。
チャッ・・・チャッ・・・
彼女のストッキングが、足許から剥ぎ取られてゆく。
学校の制服と合わせると。とても知的に映る黒のストッキングが。
娼婦の装いとかわらぬままに、あしらわれて。
さいごは唾液と精液にまみれて、しわくちゃにされて引きずり下ろされる。
あ・・・あ・・・あ・・・
彼女を犯される。未来の花嫁を寝取られる。
古びた薄暗い密室のなか、天井の陳腐な木目模様だけが、彼女の背徳を見おろしていた。

はずんだ息を、どうにか抑え込んで。
男と別れたあと、「ご苦労様」。
彼女はそういって、他人行儀にお辞儀をした。
これからも・・・こんな夜がつづくのだろう。
ママが夜更けに、帰宅するときも。こんな口調でただいまを告げるのだった。
ご苦労様。
お供をして。恋人が遂げる不貞を覗き見て。
そうした行為に対するねぎらいなのか?
起こったような顔をしていたのだろうか?
ちょっとだけ、彼女は怯えた表情をよぎらせる。
ほんとうは・・・虐げられる悦びに、喉をからからに引きつらせていたたけなのに。

ミカちゃん、まだ済ましてないんだ。
彼女は乾いた口調で、そう受け答えした。
夫の妹になる女性など・・・所詮は他人のようなものなのだろう。
そうね。お母さんが娘を引き寄せるのって・・・カンタンだよね。
長いまつ毛が、かすかに震える。
自分自身が、母親を堕とそうとしているなどと・・・そのころのボクには察しが着かなかったけれど。
あのときキョウコは、そういう想いに胸昂ぶらせていたのだった。
だれが連れて行くの?
キョウコの問いだけが、うつろに響いた。
訊いているのよ?だれが連れて行くの?
ウン・・・
煮え切らない、なま返事。
このまま、流れのとおりに。ママにさせてしまっていいのだろうか?
実の妹が、中年男に犯される。
それも、じぶんの母親の愛人に。
吸いつくされてしまったはずの理性のかけらが、ボクの胸の奥をジリジリとさいなんでいる。
ばかねぇ。
くすり・・・
目のまえの女は、たしかに笑った。
少女ばなれした笑みだった。
お父さんが連れて行くのは、さすがにムリがあるけれど。
彼女はそのとき、自分自身の家族のことを反芻していたのだけれど。
それはボクには、わからないことだった。

いいのかね?
パパはいつも、冷静だった。
このごろ、ボクはパパに傾倒している。
おなじことを許してしまった男どうしという間柄だったから。
ママの不貞をパパに報せずにいることで。
ボクは小父さんの共犯。
自分の配偶者を犯されていることで、パパとも共犯。
その共犯者同士が、いまは娘を、妹を襲わせる共謀者になろうとしていた。

いいのよ。気にしないで。
学校から戻った時。
場違いな声が洩れるのを耳にして。
しばらく庭先で時間をつぶしていたら。
縁側のガラス戸ががらりと出し抜けに開かれて。
ママの声が、頭上から降ってきた。
ノーブルな顔の輪郭に、小娘みたいに無邪気な笑みを浮かべていた。
おっぱいをぷりんとさらけ出した、あられもない姿で。
あがんなさい。あのひとは帰ったあとだから。
ああ、お客さん帰ったんだね。
どちらからともなく交わしたのは、ごくありきたりな会話。
ママに会いに来たお客さんが帰るまで、時間をつぶしていたら、やっと声がかかった。なんて。
それこそどこにでもある、ありふれた日常。
けれども実際には、ママはお客様をもてなすために、スカートの奥まで見せびらかしていて。
ちょっとめくれあがったスカートの裏地に白い粘液がねばりつくのを、ボクは目ざとく気づいていて。
母さん、ほら。って、注意して。
ママはさりげなく、スカートのすそを直している。
いいじゃないの・・・
ああ、かまわないさ。
脈絡をもたない、言葉と言葉。
こんどの週末。ミカを連れていくわ。
あなたもどう?そう訊いているのだろうか?
もちろん、行くさ。
目で応えると。
応えの代わりに、ママは顔を近寄せてきて。
ラメ入りの口紅を刷いた薄い唇が、迫ってきた。
はじめて重ね合わせる、唇と唇。
せめぎあうように、女の唇はなかにしみ込もうとして。
ボクはあらがいもならず、口の奥にまで舌を入れられてしまっていた。
舐めくりまわされて。
ズボンのうえを、まさぐられて。
ママはいつも小父さんがそうするようなやり方で、
勃ってしまったボク自身を、なだめてくれた。
赤黒く怒張したものが、薄っすらと笑んだ唇のすき間にぬめり込んでゆく。
そのありさまに。
びゅっ。
いつかとおなじように、粗相をしてしまったけれど。
ママは口からあふれたものを、消し去るように。
床に垂れたしずくさえも、拭うようにして。
舌で舐め取っていった。
浅ましい所業。そう片づけるのは、かんたんだ。
けれどもボクは、ボクの洩らした精液をママがくまなく舐め取ってゆくあいだ。
ずっと、ママの髪の毛を撫でつづけていた。

ミカちゃん?こんどの日曜日、あいてる?
ママとごいっしょしてもらいたいの。
いい人に、逢わせてあげる。
薄っすらと笑みをたたえる、薄い唇は。
あの刻とおなじ、ミステリアスに濃いものを漂わせていて。
なにも知らないミカは、素直にママの言いつけに従っている。
ボクは勉強部屋に引き上げた妹を、追いかけて行って。
金曜日の放課後、あけといて。
ぶっきら棒に、そういった。
ママが階段の下で聞き耳をたてているのを、ワクワクとして察しながら。

おみごと・・・ね。
もう、一人前だね。
親たちは口々にそういって。
物陰からじいっと、ボクのことを窺っている。
おまえの誘いも、なかなかだったよ。
おまえがミカに誘いかけていたときの、あいつの顔ったら、なかったものな。
小夜さんにも、迷惑だっただろうし。
今週中には、けりをつけようと思っていたの。
すべては、親たちの目論見どおり。
ボクよりも何枚もうわてなふたりは。
跡継ぎ息子をそそのかして。
まな娘を堕とす下手人に仕立てたのだった。

連れ込み宿 六 ~三人おそろいで・・・~

2008年02月24日(Sun) 06:36:16

お宿にママを連れ出して犯しつづけている小父さんは。
時おり気が向くと、ボクのことまで誘い出す。
誘いを受けた僕は、ママの箪笥の抽斗から、黒や濃紺のストッキングを抜き取って。
ズボンの下、隠すように脚に通していって。
小父さんに脱がされるままになって、ママのストッキングをせしめられてゆく。
見返りに・・・というわけではないけれど。
勃ってしまったモノを、なんとかしてほしいっておねだりをして。
いつもおチ○ン○ンを、吸ってもらっている。

キモチ、いいんだぜ?
うっ・そー♪
たいていの子は、そういうけれど。なかにはからかうやつも、いたけれど。
心のどこかで、否定はしていない。
え・・・だって・・・
ちょっと突っ込むと、おずおずと戸惑い口調になっている。
なによりも。
夜のとばりに隠された大人の世界をのぞき見るという禁断の誘惑に。
ボクたちはいちばん弱い年頃だった。

面白いよな。そういうの、まえから関心、あったんだ。
ボクの告白に、積極的に共感して支持してくれたのは。
マコトにユウヤの二人組み。
いつも三人ひと組になって、たまに学校をさぼって、街にくり出していたりした。
ちょうど数百メートルばかり寄り道すれば、
あのひっそりとしたお宿のまえを、通りかかることになる。
都会の街なかは、雑然としているくせに。
妙なところで、辻褄が合っていたりする。
あそこなんだぜ?
へぇ・・・
あのなかで。
ママが犯されている。
さすがにそこまでは、言いかねたけど。
ボクじしんが体験したことは、いくらしゃべってもかまわなかった。
そういう人と、どうやって仲良くなったの?って、マコトに突っ込まれた時には。
さすがにあいまいに、語尾を濁してしまったけれど。
ボクたちの仲間うちで、重要だったのは。
それがうそ話なんかじゃないっていう、その一点だけだった。

その日は、ママが誘われることのない土曜の昼間。
そう。あのひとは、ママとパパとが二人きりになれる時間を大事にしてくれる。
あるとき小父さんと過ごしたあの部屋で。
共有する、ということは、譲り合うことなんだね?
うっとりとなったボクが、そんなことを口にすると。
よくわかるね。そのとおりだ。
小父さんはそういってほめてくれたけれど。
愛し合っている夫婦を堕とすのが、むしょうに愉しいのさ。
そんなおっかないことも口にして。
パパやママには、ナイショだぜ?って。
ボクだけに、打ち明けてくれていた。

どうして土曜がいいの?
マコトはなにかと、突っ込んでくる。
それは・・・だって。
小父さんのつごうがいいからさ。
つごうがいい。
たんに、予定があいている・・・という意味ではない言葉。
けれども二人とも、ボクの思惑になんか気がついていない。
公園のトイレで、半ズボンにハイソックスのスタイルに着替えたのは。
ボクたちくらいの年代で、そんなカッコウをしている子があまりいなかったから。
申し合わせたように、濃紺のハーフパンツにおなじ色のハイソックス。
こういうスタイルに、萌えるのかな?
大人しいユウヤは、女の子みたいにむき出しにしたひざ小僧の下を、ひどく寒そうにしていた。
そう。
ちょっと見には、男の子にも女の子にも見えるスタイル。
通りすがりの男の子に目をやる小父さんに。
こんど、あういうカッコウしてやろうか?って言ったら。
図星・・・と言わんばかりに、肩を叩かれて。
きみは優秀だね、って、からかい口調のなかに本音をすべりこませていた。

あらあら。
迎えに出た老女は、古びたお宿に不似合いなボクたちの若さと、土曜の昼下がりという刻限とにもかかわらず。
いつもとかわらずにこやかに迎え入れた。
お代はきょうも、けっこうですよ。
老女の格別の好意に、三人ばらばらにお辞儀をかえして。
どたどたと上がりこむ音が、静謐な廊下に耳ざわりに響き渡った。

先に着いていた小父さんにも、けたたましい足音は聞えたらしい。
きっと・・・
威勢の良い足音の向こう側にある、吸い取るべき若々しい精気を。
おじさんはひしひしと感じて悦に入っていたはず。
>満足だろう?
>ああ・・・まぁな。
ふたりだけに分かる、目配せのやり取り。
ボクたちはさっそく、脚を並べて。
たたみの上にうつぶせになった。
ちゅっ・・・
足許に吸いつく唇の音がしたのは、お隣だった。
ボクの左側に寝そべっていたユウヤは、しょの瞬間ウッとうめいて、身をすくませた。
だいじょうぶ。だいじょうぶだって・・・
畳のうえで震えるユウヤの手の甲を、ボクは包むように握り締めた。
小父さんはあとでこう言ったっけ。
お前が手伝って、あいつの手を抑えつけてくれていたんだよな?
そんなつもり、毛頭なかったんだけど・・・
小父さんは、聞こえよがしにちゅるちゅると、ユウヤのふくらはぎをハイソックスのうえから撫でてゆく。
そう、舌で・・・
はぁあ。
ユウヤのため息が、ほてりを帯びはじめると。
男は品定めをするように、ボクたちのハイソックスの脚を見比べて。
こんどはマコトの足許に、おおいかぶさった。
ちゅるうっ。
いつも怜悧なマコトなのに。
きょうは、人が変わったように小さく縮こまっちゃって。
長く伸びた爪で、畳をカリカリと引っ掻いていた。
はぜる唾液の音が、部屋の空気を濡らしてゆく・・・

はぁ、はぁ、はぁ・・・
順番に脱がされた半ズボンの下。
逆立ちするばかりに勃ってしまったモノを、小父さんはひとつひとつ、咥え込んでいって。
ちゅるり、ちゅるり、ちゅるり・・・
あの、いつもとおなじもの慣れたあしらいで。
ボクたちの理性を、こともなげに吹っ飛ばしてしまった。
仰向けになった姿勢のままで。
寒々とした冷気のなか、腰周りを思い切りよくさらけ出して。
太ももやお腹のあたりを、ぬらぬらする粘液がねばついているのを。
ひどく落ち着かい気分で、意識しつづけている。
放り出された通学用の鞄が思い出させる日常が。
日常ばなれした現場を、よけいにいやらしいものにした。

ウフフ。どの子の靴下も、美味だね・・・
ひどくヘンタイな科白なのに。
小父さんが言うと、みんな納得してしまっていて。
ユウヤはまた履いてきてあげるねって言い出すし。
いつもクールなマコトまでもが、こんどはいつ?って、せがみ口調で訊いている。
そうだね。
今度来るときは・・・
ふだんの長ズボンでかまわないから。
キミたちのママのストッキングを履いてきてもらおうか?
ズボンの下なら、目だたないから・・・
ほぅら、来た、来た。
これからなん人、堕ちるのだろう?ボクの周りで。

数ヵ月後。
キミのママを見ちゃったよ。あのお宿で・・・
放課後ボクをつかまえたマコトが、ひっそりと囁いてきた。
お宿に行ったの?
独りでは、怖いからって。
行くときは、三人そろって行こうねって約束していたので。
ボクはそれとなく、咎めると。
だって・・・ママのことを連れて行ったんだもの。
キミのママのあと、ちゃんとしてもらったよ。
さいごまで見ていた。昂奮した。
ユウヤも、悪の道に引きずり込もうぜ?
さいごだけは、いつものマコトに戻っていたけれど。
ボクはなにもかも、知っている。
ユウヤはもう、すませてしまっているのだ。

どうしても、ママのストッキングに手を出せないって相談されて。
ストッキングの持ち主に、じぶんで履いてもらって。
ふたりして、あのお宿に案内して。
ふたりきりにさせたふすまの向こう側。仲良くひざを並べて、なかの様子に聞き入っていた。
ガードの固いユウヤのママも、やっぱりいちころだった。
帰りぎわ。
案ずるより生むが易しなんだね。ほんとうは、簡単なことなんだね・・・って、
思わずユウヤが口走ったとき。
ユウヤのママは、ちょっとだけ怖い顔になったけれど。
そのあと彼がどんなお仕置きを受けたのかは、もう訊かなくてもわかっている。
けれども、ナイショにしておこう。
意外に演技派なユウヤと示し合わせて。
まじめな男の子を悪の世界に迷い込ませる。
そういうシナリオを、なにも知らないマコトを交えて愉しむのも、とても面白そうだから。

待ち合わせる少年

2008年02月24日(Sun) 04:40:57

脚が好きなんだろ?
ほら、吸えよ。
お前の好きそうな黒のハイソックス、履いてきてやったから。
サッカー部のやつから借りてきたわけじゃないんだぜ。
ふつうの女の子が履いている、ラインの入ったやつ。
タマミの部屋から、だまって持ち出してきたんだぜ。
え?下にストッキング、履いているのかね?って?
いいじゃないか、そんなこと。どうだって。
こんな寒い夜に、こんなところに呼び出すからさ。
公園がふさがっているから、終電車の出たあとの駅がいいだなんて。
ヘンな気まぐれ、起こすからさ。

ほら、早く吸いなよ。吸えったら!
ほんとうは噛みつきたくて、うずうずしているんだろう?
目つきをみれば、わかるよ。
だから・・・ママや妹の靴下をくすねてきたんだから。
わざわざお前のために・・・さ。
あっ。
いきなり吸ったね?
にゅるにゅると、いやらしいなあ。
よせって。そんなによだれで汚すのは。
え?くれたものをどうしようが勝手だろう?って?
う、う~ん・・・(目をまわす)
わかったよ。
こんどはママかタマミのどっちかを連れてくるよ。
ボクひとりの血じゃ、もの足りないようだから。
ひと晩ひと晩、逢うたびに。
ボク・・・素直になっていくみたい。
なんだかヘンな気分だね。
すこしくらい・・・かっこつけさせてくれよな・・・

ごく常識的に、落ち着いていて・・・

2008年02月24日(Sun) 04:15:25

吸血鬼だというから、どんな化け物じみたやつだろうかとか身構えていたのだが。
女好きだというから、はたまたどんな色ぼけなのかと思ったら。
現れたのは、ごく常識的に落ち着いた、初老の紳士。
ふうさいのあがらないその男は、うつむきがちにぼそぼそと、いろいろな話をしかけてきて。
思わず優越感と憐憫までも感じてしまうほどの、不景気さだったけれど。
裏に隠されたびっくりするほどの知識と、深く行き届いた配慮とに、ほとほと驚嘆させられるはめになった。
けっきょくわたしはこの男に血を吸われ、妻はこの男に凌辱を受けた。
凌辱。
言葉のマガマガしさとは、裏腹に。
それはひどく甘美で、刺激的な体験。
ふすま一枚へだてた向こう側、女房の声色は色めいていて。
わたしはその声とかすかな物音ゆえに、ひと晩昂ぶりつづけていた。

明け方ふすまが開いたとき。
女房はくすんだ顔色をしながらも、どこかサバサバと投げやりになっていて。
いい村ね。
ただひと言で、村を受け入れてしまっている。
晴れて村の住人となったその日。
わたしは村の人妻のもとに忍んでゆき、見返りに女房はいく人もの男どもを相手にした。
こんど、娘や嫁たちも呼びましょうね。
あくる朝。
ほつれた遅れ毛をかきあげながら。
女房はのんびりとそう囁いた。

あとがき
いや、化け物じみてないから、怖いんですってば。^^;
やたらとケダモノじみたルックスにしたり。
ひどく不自然に目をつり上げてみたり。
知性のひとかけらもないような吸血鬼よりも。
どこにでもいるひっそりとした中年男が無表情に迫って。
うなじを噛んだ女を、瞬時に別人に変えてしまう。
そういうほうがよほど怖ろしく、ロマンチックだとは思いませんか?^^

献身的な少年

2008年02月23日(Sat) 18:16:08

ああっ!だめっ!お願いですっ!やめてくださいっ!!
少年は激しくあらがい、身を振りほどこうとしたけれど。
そのときにはもう、老婆の腕の中に落ちていて。
ツタのように絡みついてくる猿臂を、どうすることもできなくなってゆく。
うへへへへへっ。
旨そうな若者じゃ。たっぷり啜り取ってくれようぞ。
老婆はさもしげな笑いを、あからさまに滲ませて。
抱きすくめた猿臂のなか、なおも言い募ろうとする少年のうなじに、がぶりと牙を食い込ませた。
あああああっ・・・
ちゅう、ちゅう、ちゅう、ちゅう、ちゅ~うっ。
吸血の音がひとつ、響くたび。
村の連中は、総出になって。
ひとーつ、ふたーつ、みーっつと。
嬉しそうに、声あげている。
自分たちの仲間が増えることに、だれも異存はないのだから。
八回啜られると、もはや理性のさいごのひとかけらまで奪い尽くされて。
すべてを老婆に捧げることを、いとわなくなるという。
だって村人のだれもが、そういう境地にいるのだから。

あ・・・あ・・・あ・・・
八回啜られた少年は、目を回してひざを突き、
草むらのなか、まろび臥す。
泥で汚した半ズボンのすそを、老婆は嬉しげににたにた笑いながら、払ってやって。
旨そうなハイソックスじゃ。遠慮のう、噛ませていただくぞい。
長靴下に目のない老婆は、うひひひひっ・・・と、卑しげな笑みの滲んだ唇で。
太めのリブが整然と流れるハイソックスのふくらはぎを。
むたいにいたぶり、ねじれさせてゆく。
かりり。ちゅうっ。
ぁ・・・
少年の身体から今度こそ、力が抜けた。
ハイソックスを噛み破ってしまった老婆は。
強欲にも、少年の家族の女たちが履くストッキングまで狙っている。
母ごも、啖らわせてくれるの?
エエ、よろこんでご馳走させていただきます・・・
妹ごの脚も、噛ませていただくぞえ?
ハイ、真っ先に、連れてきます。
許婚がおろうが。黙っているのはよくないぞ。
すみません。隠すつもりは無かったのです。
おわびのしるしに、村の誰かに、紹介して。純潔をお譲りさせていただきます。
よい心がけじゃ。
未来の嫁ごが心乱されるさまを、とくと見物するがよい。

・・・・・・。
・・・・・・。
それから、あんなことやこんなことがあって。
都会育ちの淑女たちが、なん人も移り住んできて。
夫や父親、息子たちが戸惑うのも、愉しげに横目にしながら。
押し倒された草むらのなか、惜しげもなく。
これ見よがしに、裸体をさらしていった。
おおぜいの女たちを、芋づる式に堕とさせた少年は。
いまでは村の功労者としてたたえられている。

連れ込み宿 六ーは ~捧げられた処女~

2008年02月23日(Sat) 17:00:58

男のひとのまえで、はじめて制服脱いだとき?
あぁ私、この人のものになるんだな。女にされちゃうんだなって、思って。
けっこう落ち着いていたのよ、私。

中学のころから付き合っているキョウコは、彼女といっていい間柄だった。
「だった」ではなくて、もちろんいまでも彼女だけれど。
去年までと、今年では。
なにかが大きく、違っている。
そう。
彼女は処女を、喪って。一人前の女になっていた。
処女を捧げたあいては、ほんとうなら将来を約束したボクのはずなのに。
ボクはなぜか、震える声で。
あの男に彼女の純潔を譲り渡してしまっていた。
あの男・・・
そう。
ママの情夫で、ボクのことすら愛撫を加えていった男。

彼女がいるんだ。まだ、処女なんだ。
ほんとうなら、自分でヤりたいって、想いつづけていたんだけど。
いまはね。ほんとうは、小父さんに犯してもらいたいんだ。
あらぬ呟きを、洩らしてしまったのは。
都会の片隅にある、古びた密会場所。
道ならぬ恋を結ぶという、あの忌まわしい儀式が、毎日のように遂げられてゆく処。
ママは相変わらず、まるで淑女が操を立てるように。
濃紺のストッキングに脚を通そうとはしないでいて。
人知れず、ボクが身代わりに。
箪笥の抽斗からこっそりと抜き取った濃紺のストッキングを、ズボンの下にまとっていって。
男ふたりの、畳のうえ。
ズボンを脱がされて、ママのストッキングを抜き取られてゆく。
昂ぶり勃ってしまったモノを、男はいつもちゅるりと旨そうに、根元まで飲み込んでいって。
きれいな肌をしているね、って。
まるで女に向かっていうように、褒めながら。
ボクの乳首をかわるがわる、つよく吸っていくのだった。
小父さん、ほんとうはボクの家を支配しているんだろう?
ほんとうは・・・パパも、ママとの仲を知っていて。
許してもらっているんだろう?
畳のうえ、惑いながら。
あらぬことを・・・うわ言のように繰り返してゆく。

パパが、単身赴任を終えて帰ってきた。
けれども家のなかの空気は、拍子抜けするほど、ほとんどなにも変わらなかった。
もともとパパは、しずかな人だったから。
人が一人増えたという実感もないほどに。
増えたはずの人は、朝ひっそりと新聞を読んで出勤していき、
たまにいっしょになる夕食も、ひっそりと新聞を読みながら、しずかに終えて。
週末珍しくおなじ部屋にいても。
やはりひっそりと、新聞を読んでいる。
けだるそうに、けれども満ち足りたような落ち着きを漂わせながら。

パパとはきっと、おなじ立場なのだろう。
かたほうは、自分の母親を犯され、もういっぽうは、妻を侵されているのだから。
もちろんそんな怖ろしい会話など、子どものボクにはとても切り出せたものではなかったけれど。
小父さんとは、週1か2くらいの頻度で逢っていた。
男のひとのまえでズボンを脱ぐときの羞ずかしさだけは、なかなか消えなかったけど。
咥えてもらうときの快感には、すっかり慣れっこになってしまっていて。
それなしには、日常を過ごせないほどになっている。
テルヤの精液を飲みたい。
そういわれることに、ドキドキと昂ぶってしまう日常。

きみは、ママとおなじ膚を持っているね。
小父さんはいつもそう囁きながら。巧みに唇を這わせ舌をさばいて。
皮膚の奥深く、逃れようもない快感をしみ込ませてくる。
口止めのために、ボクを自由にしたのだろうか?
とてもそうとは、思えなかった。
だって。
わざわざそんなことをしなくても。
ボクはたぶんパパのためには動かなかっただろうから。
ママの不貞をやめさせようとも、パパに教えようともしなかっただろうから。
ママの浮気を好んで覗いて。パパにはナイショでだまっている。
そういういけない子なんだから。
むしろパパよりは、ボクは小父さん寄りの立場に立っていた。
狙いを定めたママと、おなじ膚と血を宿したもの。
小父さんが求めているのは、どこまでもママの幻影だったのだ。

ママのときも、そうしているんだね?
幾度、そう呟いたことだろう?
ああ・・・そうとも。きみも見ていて知っているだろう?
男は決まって、そう応えてきた。
このごろは。
ママの服を、公然と持ち出して。
あの古びた宿の一隅で、女になって。
男は笑いながら、化粧するのを手伝ってくれた。
なかなか美人だな。女ぶりをあげたじゃないか。
男のからかい口調が、なぜか心地よく鼓膜を刺した。
ストッキングが好きだという、ママの情夫に。
ママのストッキングを履いた脚を差し出したあの日から。
彼はボクのことを、かけがえのない悪友として、齢を離れた親しみを寄せかけてくるようになったのだ。

彼女には・・・話してあるの?
いいや・・・
そうか。そうだよね・・・話しにくいことだよね。でも、いつか・・・
うん・・・
この世界から抜け出して、まっとうな世界に戻るつもり?なんなら、応援するけど。
ううん。
意外なくらいに強く、ボクはかぶりを振っている。
じゃあ・・・どこかで打ち明けないとね。
うまい方法、あるの?
うまくやってあげるよ。あのときとおなじように、溶け込むように・・・

溶け込むように。
あのときもほんとうに、そうだった。
男が禁じた日、秘密のお宿に遊びに行って。
そのとき、隣の覗き部屋に、パパの姿を見たときに。
あやうく声をあげそうになったボクを。
ほかのお客に気取られまいと、パパはとっさに「しいっ」と制して。
そのままじぶんの妻が犯されてゆくありさまを。
いちぶしじゅう、もらさずに。
じいっとさいごまで、見守りつづけていたのだった。
痛いほど握り締められたボクの手に伝わってきたのは。
普通ではない想い。
たぶん・・・小父さんの期待とは裏腹に。
ボクは、パパとおなじ血を秘めているのだろう。

お前も、マゾの血に目覚めたようだね。
お宿を出るとき。
ほかの客が散ったのを見計らって。
パパはそっと、囁いたものだった。
マゾ。
ボクたちの年代では、変態以外のなにものでもない言葉。
けれどもその言葉の裏に秘められたおどろおどろしいものに惹かれるようになって。
仲間たちといるときには表向き、揶揄の表現としてしか使わない言葉を。
日常を離れたあの密室では。
身に沿うほどに、身近な言葉として受け入れてしまっていた。
なにも口にしないように。
ママも、わたしも。すべてを承知のうえでしていることなのだから。
パパの言いつけは、いまでもきちんと守られている。
なにも言わないように。
そう囁いたとき、パパはひと言つけ加えたものだった。
きみがいままで、ママの浮気をわたしに黙っていて、彼と共犯になっていたのとおなじように。
これからもずっと、彼の共犯になって。
ママを寝取るのに、手を貸してやるように。
囁きながら、パパの浮かべた不思議な翳りは。
いまは生き写しに、ボクの顔の輪郭をなぞっている。
ふたりのあいだに横たわる秘密が溶けた瞬間。
ボクはパパの共犯者になっていた。
すべてをそう仕向けたのは・・・
パパのために用意された夜に、ボクが来ることをわざと禁じた小父さんだった。

キョウコさんのことを、どうするつもりだね?
朝、妹が登校していったあと。
やはり鞄を持って、玄関に向かう時、呼び止められて。
もちろん・・・結婚するつもりだけど。
なんのてらいもなく言えるほど、周囲に認められた仲だった。
ウン。ぜひそうするがいい。
いまならまだ・・・わたしを上回ることを彼にしてあげることができるようだね。
キョウコさん、まじめなひとだから。まだ、処女なのだろう?
ぼそりと呟いた父の声は。
ずぅん・・・って。ボクの胸を刺し貫いていた。
みなまで、パパは言わなかったけれど。
ママを催眠術にかけたように。キョウコさんのことも、うまく面倒みてくれるだろうから。
穏やかな笑み顔には、ありありと。そう書いてあるようだった。

彼女がいるんだ。まだ、処女なんだ。
ほんとうなら、自分でヤりたいって、想いつづけていたんだけど。
いまはね。ほんとうは、小父さんに犯してもらいたいんだ。
口走った言葉を、そのまま文字に書かされて。
目のまえで、朗読までさせられた。
想いはそれでも、変わらないのだね?
念を押すようにたたみかけてくる男の瞳は。
してやったり・・・とばかりの輝きを秘めていたけれど。
ああ、狙い通りだろう?うれしいだろう?思いどおりに・・・させてあげるよ。
かけがえのないひとだから。
心ゆくまで辱めて・・・愉しんじゃってね。
にやりと返すボクは、どこまでも小父さんの悪友。
さっき目にした紙片は、ボクがいま書いた手紙とおなじくらい、挑発的だった。
  妻を誘惑してください。
  もしも妻を堕とすことができたなら。
  単身赴任期間中は、最愛の妻を貴方のために捧げます。
  もしも戻ってきてからも、妻が貴方との交際を望むなら。
  私はただ、見守ることだけを愉しもうと思います。
あれはまぎれもない、パパの書いた字・・・
あんなに上手には、書けないけれど。
ボクはパパが捧げることがかなわなかったものを、彼にプレゼントしてあげることができる。
じゃあ、約束・・・
重ねあわされてくる唇は、男のものとは思えないほど柔らかだった。

キョウコ・・・キョウコ・・・
古風な名前だね。
制服姿で抱かれたい・・・だなんて。
名前のとおり、古風な子なんだね。
古いだなんて・・・
キョウコは口を、尖らしたけれど。
セーラー服の襟首に這い込んでくる手を、取り除けようともしないで。
制服の中身を、まさぐりにゆだねてしまっている。
折り目正しく着こなしたセーラー服は、荒々しい掌の動きに合わせて、波打って。
濃紺の襟元に鮮やかに走る整然とした三本のラインは、みるみる曲がり、ゆがめられてゆく。
洗脳されきったような横顔は、いつになく大人びた蒼白さを帯びていて。
抑揚をおさえた声色で。
彼氏がいるのに・・・こんなこと。
眉をひそめて、呟いている。
女になりかけた少女は、知り抜いている。
軽い咎めがどれほどの効果を持つのかを。
目のまえに迫る男にも。
ふすまの向こうで聞き入っている恋人に対しても・・・

姑になるひとを、日常的に支配しているその男に。
思いのまま、素肌をいたぶらせて。
蒼白かった頬を、じわじわとピンク色に染めていって。
姑がスカートのすそを浸したのとおなじ濁り液に。
制服のプリーツスカートを、惜しげもなく浸してゆく。
血潮を散らした新床のうえ。
女は瞳に蒼い光をよぎらせながら。
熱っぽく、囁きかけていた。
こんどは母のことも、犯してくださいね。
お義母さまとおなじくらいの年頃なんですの。
父はまじめな人なので・・・ばれないように。
もしもばれても、平気なように。
お義父さまやあのひとみたいにしてくださるのなら。それでもよろしいのですけれど・・・

連れ込み宿 六ーろ ~ママの情事~

2008年02月23日(Sat) 15:28:30

パパと口を利かなくなったのは。声変わりしたころからだろうか?
ちょうどそのころ。パパは田舎に単身赴任していって。
ますます距離が、遠くなった。
学校も、忙しかったから。
パパの任地までわざわざ遊びに行くこともなかったし、
たまに家に帰ってくるときも、ボクは勉強部屋にろう城してしまっていた。

そんなころだった。ママが眩しく見えるようになったのは。
年頃になると。女のひとがやたらきれいにみえるようになる・・・って。
学習雑誌にも、書いてあったけど。
どうやらそういうボク自身の変化だけじゃなくって。
ママも変わったのかも・・・って、気づいたのは。
なにかの拍子に、古いアルバムを開いたときだった。
こんな地味な服を着ていたっけ?
ひっつめた髪。やたら無地ばかりが目だつ服。
写真のなかのママは、いまのママに比べて、ひどくやぼったく見えたのだった。
その日もママが着ていたのは。
濃い紫色のスーツだった。
パパがなにかのお祝いに買ったんだって、夫婦ではしゃいでいたのは、いったいいつのことだったろう?
ママの服なんか、それまで気に留めたこともなかったのに。
シャワー浴びるとき。
着ていた服を洗濯機に放り込むとき、つい目に入ってしまったのは。
机のなかにこっそり隠しているいけない雑誌に出てくるような、
レースのついたガーターだった。
興味本位はだめだって、大人はいけないことのように言うけれど。
スーツだとか、ガーターベルトだとか。ボンテージだとか。
ボクが女の服の種類を覚えたのは、こういう雑誌だけが、情報源だった。
思わずボクは、どきりとした。
ボクの知っているママは、どちらかというと潔癖症で、引っ込み思案で。
色気も飾り気もなくて、やたら細かいことにばかり目くじらたてている、
そう、どこにでもいる、専業主婦というやつ。
だのに・・・
地味なブラウスやスカートの裏側に。
いやらしい雑誌に出てくるような、あんな挑発的な下着を着けているなんて。

そういえば。
パパのいたころと比べて、出かけることも多くなったみたい。
あるときは、妹の学校。
べつのときは、妹の同級生の親たちとの会合。
またべつのときには、なにかわからない大人のサークルの打ち合わせ。
学校に行っている間、ママがなにをしているかだなんて。
男の子はふつう、気にも留めないものなのに。
どことなくわざとらしい、弁解がましい態度が・・・どこかヘンだった。

あるときのことだった。
学校から戻ったら、ママの姿はどこにもなくて。
いつも裁縫をしている部屋を覗いたら(やたらと覗くなって、叱られてことがある・・・)
そこにもママはいなくって。
がらんどうの部屋のなか。古びたじゅうたんの上。
なにか薄くて黒い、細長い生地が、長々と伸びていた。
拾い上げるまで、それがママの穿いていたストッキングだなんて、思いもかけなかった。
すくった手のひらから、ぶらりと垂れ下がったストッキングは。
ボクの腕に、ヘビのようにからみついてくる。
淡い光沢を帯びた薄手のナイロンは。羽衣のように軽くて。
サヤサヤとした感触が、日常ばなれしていて、ひどくなまめかしい。
ママのなかに感じたことのない”女”の香りが、そのときボクに伝染した。
思わず唇をつけようとしたとき。
鼻先を、ツンとした異臭がよぎる。
なんだろう?なんの匂いだろう?
わかるのに、たいした時間はかからなかった。
朝起きた時、ボクはいつもそいつの始末に困って、
そ知らぬ顔をして夜具を片づけるママの傍らで、気まずい思いをしていたのだから。
パパがさいごに、家に戻ってきてから。
ゆうに半月は、経っていた。

たぐる手も、もどかしく。
てかてか光る薄手のストッキングのつま先をさぐってゆく。
ママとはどうしても重なり合ってこないくらい、なまめかしい薄絹は。
ボクをそこまでも、魅了していた。
それはきっと、一瞬よぎったあの異臭のせいだったろうか。
ママを汚したかもしれない、いやきっと汚したであろう異臭。
想像の延長線は、どうやっても。
マガマガしい結論しか、導き出せない。
なんどやっても合わない計算問題を解くように。
なんどもなんども、反芻したけれど。
こたえはやっぱり、ひとつだった。
家族に秘めた、犯罪の移り香。
それは、不快きわまりないもののはずなのに。
ボクはなぜか、胸わくわくさせていて。
まだ見ぬ異臭の持ち主に。親近感さえも、覚えていて。
なよやかなストッキングにまつわりついた異臭に、ボクの汗を重ね合わせてみたくなって。
見よう見まねで、つま先を合わせていって。
思い切って、ぐ・・・っと。脛からひざ小僧へと、引き伸ばしてゆく。

太ももまでのストッキングは。
背丈の伸びたボクには、すこし寸足らずだったけど。
きゅうくつな束縛感が、かえってたまらない密着感を増幅させて。
古びたじゅうたんが冷たく伸べられた無人の密室のなか。
ほんものの女の脚のようになった自分の脚に、ついうっとりと目を取られて。
ボクは人知れず、昂ぶっていた。
びゅうっ。
しまった。
我に返ったときには。
肌理細やかなナイロンのうえ、白く濁った粘液が貼りついている。
パンツにも。じゅうたんにも。
ほんのちょっぴりだったけど、消しようもない痕を、残していた。
真っ青になったボクは、あわててストッキングを脱ぎ捨てて。
ありあわせのティッシュで、犯罪のあとを、ありったけ拭い取って。
部屋に入ってきた時、これはどんなふうに展べられていたのか?
あるはずもない記憶を、必死に振り絞っていた。
その日。遅くに帰ってきたママは。
きっとボクの不始末に、気がついたはずなのに。
とうとうなにも、切り出してこなかった。

ママの行動が、気になる。どうしても、気になる。
まるで自分の彼女に浮気されているような、地に足が着かないようなたよりない感覚にさいなまれて。
ある日思い切って、というよりも、ついふらふらと、学校をさぼってしまった。
朝家を出ると、そのまま庭先にまわり込んで。
パパがいないあいだ、伸び放題になっている草むらに隠れていると。
青臭い香りに、ひどく悩まされた。
だれかが訪ねてくる気配は、いつまでたってもやって来ない。
けれども部屋の中で、ママが身支度をしているらしいのが。
すりガラスを通してなんとなく、伝わってくる。
がたがた・・・ぴしゃん。
二階の窓を、閉める音。
いつもきちんとしていて、開けっ放しがキライなママも。
このごろは陽気がよくなったからって、二階の窓だけは開けるようにしていた。

玄関の物音に、つられるように。
ボクはもうこれ以上なにも起こりそうにない庭先から、表にまわった。
ひと足ちがいで、ちょうどママが出かけていくところだった。
黒の地味なジャケットの下。
いままで目にしたことのない、ショッキングピンクのワンピースを着て。
PTAとかで学校にくるときには、絶対履いてこないハイヒールは。
ぴかぴかと黒光りしていて。
ハイヒールのなか、きちんと収まった足の甲は。
なよなよと薄い黒のストッキングに、薄く透きとおっていた。
生唾を、飲み込んで。
知らず知らず、あとを尾(つ)けていた。

どきどきと、胸とどろかせながら。
時おり別のボクが、咎めるように、ボク自身を問い詰めている。
いったいどうするつもりなんだよ?ママを尾けたりなんかして。
男と寝ている現場を押さえて、パパに言いつけるつもりなの?
否、否。決してそんなつもりはない。
たぶんママがなにかをしていても。
ボクはきっと、口にチャックをしているだろう。
だのに、なぜ・・・?
こたえのないままに。
ママは電車に乗って、降りて。
ボクも人ごみにまぎれて、ママのすぐ後ろにくっついて、改札口を出ていた。
ハイヒールの足どりはひどく速くって。
時おり、見失いそうになったけれど。
古びた木の塀に囲われた、ごく目だたない邸の門に。
まるで忍び込むようにして、身を沈ませていった。

どうする?あとに入るの?
もしも、ただの知り合いの家だったら、どう言い訳する?
学校さぼって、来ているんだぜ?
めまぐるしく応酬する、自問自答。
けれどもそうしているあいだにも、ママの身になにか決定的なことがふりかかりそうな予感がして。
いても立ってもいられずに、とうとう門をくぐり抜けてしまった。
門をくぐるとき。
ちらりと視界に入った表札には、「○×旅館」と、目だたない字で書かれていた。
ボクはなにかを確信し、数分前ママが締め切った引き戸をぐいと押し開けた。

古びた家の玄関は、昼でも薄暗くて。
内部がどうなっているのか、ちょっと間合いがつきかねたけれど。
そう広くない土間の真正面、きちんと正座した老女と、いきなり目が合っていた。
さっきまでの思惑は、どこへやら。
ボクはすっかり、怖じ気づいてしまって。
どう切り出したものか、へどもどと。
言葉にならない言葉を、飲み込んでいた。
とつぜんの闖入者に、老女は驚くふうもなく。
血色のよい童顔に、ほほ笑みさえ浮かべながら。
ちょっとだけふしんそうに、小首をかしげて促してくる。
あの・・・あの・・・ええっっと。
お客様ですか?
老女はどこまでも、丁寧だった。
え、ええ・・・
そうですか。ご休憩ですか?
あ、はい・・・
ふつうこちらは、未成年のかたはお断りなんですよ。
老女は意味深な笑いを浮かべていたけれど。
とても、まともに応対するゆとりなんかなかった。
あ。ちょっと気分が悪くって。
まあ、それはいけませんねぇ。
老女はボクのウソをどこまで真に受けたものか、それでもうわべは親身そうに、こちらの顔色を窺っていたけれど。
お布団を敷きましょう。ちょっとゆっくりしてらしたら、案外すぐに具合がよくなるかもしれないからね。
まるで孫をあやすおばあちゃんみたいな優しい顔で、ボクを中へと促した。
箒できれいに掃かれた土間は、ちりひとつ落ちてないように見えたけど。
ボクの革靴を下足箱に入れるとき。
見てしまった。
ママの穿いていたハイヒールが、家を出かけたときのまま。
ぴかぴかと黒光りして、うずくまっているのを。

頭の上にお盆を載せても落ちないかと思うほど。
こざっぱりとした和装の老女は、背すじをしゃんと伸ばしていて。
まるで御殿の奥女中かなにかのように、落ち着き払って。
ボクの先に立って、廊下をしずしずと歩いてゆく。
お連れのかたは、見えるのかしら?
だしぬけな質問に、ボクはまたもへどもどとなったけれど。
(たいがいここにいらした殿方は、女のひとをつれてくるものですよ)
折り目正しい和装の背中に書いてあるようなその言葉を、老女はとうとう口にしなかった。
さ。どうぞ。こちらへ。
通された部屋は、やっぱり古びていたけれど。
きちんと掃除が行き届いていて、居心地よさそうな畳部屋だった。
四畳半の部屋のまん中に敷かれた布団は、古いものだったけれど。
シーツだけは真新しくて。かえって部屋になじんでいない感じがした。
ご気分が悪くなったら、そこの呼び鈴を鳴らしてくださいましね。
では、ごゆっくり。
老女はそつのない事務口調で、そういうと。
大人の男性にするように、折り目正しく三つ指ついて。
まるで閉じ込めるように、ふすまをススッと引いて。
互いを互いの視界から消していった。
いきなりな扱いに、途方にくれたボクは。
一人前に扱われたことで、かえって頼りない気分を覚えていた。

伸べられた布団をまえに。
ちっとも具合の悪くなかったボクは、ちょっとのあいだ途方にくれていたけれど。
ほんらいの使命を思い出すのに、そんなに時間はかからなかった。
ママは・・・どこにいるのだろう?
見あげた天井には、ところどころ古いしみが浮いていて。
踊るような木目とないまぜになって、迷路のような模様を描いている。
おなじ天井の下。
ママはいま、どうしているのだろう?
ふと、気がつくと。
隣室から聞える、妙なきしみ。
ふすま一枚隔てているだけの隣室からは、女のものらしいかすかな呻き声さえ洩れてくる。
思わずふすまにとりついて、開けようとした手を、すぐ引っ込めて。
そう・・・っと細めに開ければ、と思ったものの。
なかにだれがいるのかもわからないまま、そうする勇気もわいてこない。
ふすまの脇には、数十センチほどの引き戸があって。
古風な金具が、まるで謎かけでもするように。
ゆらゆらと音もなく、揺れていた。

恐る恐る、伸ばした手が。
別人の手のように、慣れた手つきで。
引き戸をそうっと、開いてゆく。
びっくりした。丸見えだった。
隣の部屋は、大きな部屋で。
時代劇に出てくる殿様の寝所みたいに、畳の縁も、床の間の置物も、とても豪華だった。
それよりも、びっくりしたのは。
生まれて初めてみる光景。
男のほうは、逞しい背中をこちらに向けて。
組み敷いた女体を、腰でもてあそんでいる。
女のほうは、脱げかかった服のすき間から、白い肌を覗かせて。
雑誌で目にする全裸の女よりも、ずっといやらしい雰囲気を漂わせている。
ショッキングピンクのワンピースは、身体の線にしなやかに密着していて。
ウェストはあんなに、くびれていたのか。
おっぱいは、あんなに、大きかったのか。
見知らぬ家のなか、ふすま一枚へだてた隣の部屋で。
ママは白目をむいてあえぎながら。ただの女になっていた。

お客さん、いないのかしら。
いや、ひとりだけ、いるようだ。
そんなやり取りが、かすかに聞えて。
じゃあ・・・もう少しだけ。亭主は帰らないんだろ?もっとゆっくりしていけばいいじゃないか。
男は引き寄せたママの耳もとで。そんな誘い文句を、まるで毒液のように流し込んでいく。
目のまえの女は、もの分かりよく。男に従順にしたがって。
ショッキングピンクのワンピースの胸に触れながら。
着てようかしら。それとも、脱いじゃおうか?
脱がせてやるよ。
まぁ。いやらしい・・・
無言の応酬が、鼓膜をつんざくほどに、伝わってきた。
女は男に脱がされるままに、ワンピースを剥ぎ取られてゆく。
こちらを向いて、目はうつむけて。
だから、いちぶしじゅうが済んでしまうまで。
目を合わせずにすんだのだった。
ワンピースから抜け出した、白く輝く裸身は。
まるで見覚えのない女のもの。
磨きぬかれた裸身に、ただ一枚だけ身に着けた、薄っすらとした黒のストッキングは。
下肢の白さを、娼婦の翳りをくわえていた。
ちょっとたるんだ肉づきを、ふしだらにぷるんと揺らして。
牝の獣は、じぶんから。
褥のなかに、するりと忍び込んでゆく。

こと果てたとき。
息を潜めた別室のシーツも濡れていたことを。
たぶん二人は、気づいていない。
男はパパよりも年配の、ごま塩頭。
鼻筋の通った顔だち。悧巧そうに輝く瞳。年配とは思えない鍛えられた筋肉。
どう見たって、家でも小さくなって新聞を読んでいるパパは、かないっこなかった。
情事のさいちゅうまで、ずっと脚に通していたガーターストッキングは、
畳のうえ、黒い帯のように展べられていた。
男はママの目のまえに、見せびらかすようにそれをぶら下げて。
もらっていくぜ?
囁いていた。
ママはちょっと羞ずかしそうに、目を伏せていたけれど。
男に逆らうつもりは、ないらしい。
男はもうそれ以上あいさつもなしに、ママのストッキングを片脚だけ、むぞうさにポケットに詰め込んだ。
自分のストッキングが背広のポケットに飲み込まれてゆくのを、ママは無感動に見つめていた。
もう片方は、お客に与えるか。
わざとこちらに、聞えるように。
男はさりげなく、ストッキングの本来の持ち主が、せめて片方だけでも持ち帰ろうとするのをさえぎっていた。

いつも、黒なんだな。
男が口にしたのは、ストッキングの色のことらしい。
貴方がお好きだと仰るから・・・
女はごもごもと、言い訳がましく応えたけれど。
特別なときには、濃紺がいいね。
こんどはぜひ、頼むよ。
男のリクエストに、女はめずらしく、不承不承な反応をみせていた。

表に出ると、まだしらじらとした陽が、視線の高さにとどまっていた。
表通りに出る、ひとつまえの四つ角で。
男と女は背を向け合って、互いに別方向を目指してゆく。
ボクが選んだのは・・・男のほうだった。
ことを終えた男は、どこにでもいる初老の男に舞い戻っていて。
不景気そうに、背広の肩をすくめて歩いていた。
あと五十歩も歩けば、表通り。
そこから先で、声かける勇気はなかった。
ボクは後ろから駆け寄って。
あのう・・・
恐る恐るかけた声は、かすれていた。

ふしんそうに振り向いた男は、なにかね?と尋ねたけれど。
咎めるようすは、みじんもなくて。
もの柔らかな視線が、ほんの少しだけ、ゆとりを与えてくれた。
なんでも、聞いてあげるよ。いいやすいように、仕向けてやるから。
男の瞳は、そんなふうに輝いていたけれど。
一歩踏み出してしまったボクは、抑揚のない声をつくって。
忘れ物。
差し出したのは、情事の現場に投げ出されたままになっていた、女もののストッキング。
おや。隣にいたのかね?
男は高い背丈をボクとおなじ高さにかがめてきて、ちょっと愉しそうに笑いを浮かべた。
共犯者みたいな笑いにつり込まれて、ボクもすこし笑った。
女もののストッキング、好きなんですか?
ああ・・・ちょっと恥ずかしい趣味だけどね。
はにかんだようすが、そう齢の離れていないお兄さんみたいに見えた。
こんど、逢って。ママのでよかったら、持ってきてあげるから。濃紺のがいいんだよね?

約束したのは、日曜日。
あとからわかったことだけど。
なぜかその曜日だけは、男はママを誘わなかった。
どうして知っているかって?
だって・・・それからなんども、ボクは男と示し合わせて、老女に隣室を借りるようになっていたから。
のっけから、あのひとの息子だとは、さすがに名乗らなかったけれど。
男は察しているようでもあり、察していないようでもあった。
通されたのは、いつもとは違う、奥まった小部屋。
男どうしだなんて・・・お珍しいですね。
冗談めかして笑いかけた老女の口許からは、真っ黒な鉄漿(おはぐろ)が覗いていた。
ボクがもじもじして、なにも差し出そうとしないのを、男はちょっとふしんそうにしていたけれど。
かすれた声で、囁いていた。
ズボンの下に、履いてきたんだ。
どうしても欲しかったら、脱がして持っていってよ。

男にズボンを脱がされるだなんて・・・
いったいボクは、なにをしているのだろう?
いまごろは。
クラブ活動に行っていると、ママは思い込んでいるというのに。
男はわれを忘れて、息せき切っていて。
はぁはぁという息遣いが、淡いナイロンを帯びた太ももにまで熱っぽく吹きつける。
器用な指が、腰周りのゴムにかかって。
たんねんに、薄皮を剥がすようにして。
ママのストッキングが、ずり落ちてゆく。
それはふしだらに、ずるずると・・・
くしゃくしゃになってゆくナイロンのうえから、時おりあてがわれる唇は。
まるで情婦の肌を賞玩するように、たんねんに唾液をすり込んできた。
汚される。汚される。どこまでも・・・
けれども、汚されることが、なぜか心地よかった。
男にストッキングを脱がされるとき。
ママは夢見るような無表情で、男の指先を受け入れているけれど。
どんな気分でいるのかが、ひたひた、ひたひたと、伝わってくる。
勃起しているね?
お医者様が診察するときのように冷ややかな声が、却って刺激を呼んで。
ボクは男に、なんとかして、って。お願いしていた。

ちゅるる・・・ちゅるる・・・ちゅるる・・・
音まで、聞かせているんだ。
男の態度は、余裕たっぷりだった。
逆立ちするほど昂ぶってしまったボクの茎を、根元まで咥え込んで。
まるで吸血鬼が生き血を吸うみたいに、味わうように。
ボクのなかからあふれ出る精液を、一滴あまさず飲み込んでゆく。
坊や、かわいいね。わたしは二刀流だから。淋しくなったら、いつでも連絡してこいよ。
男はそういいながら。
いつもママにそうしているみたいに、乳首をかわるがわる、唇に含んでゆく。
そのたびに。
じわん。じわん・・・と。えもいわれぬ刺激が、皮膚の奥深くにまで、しみ込まされてゆくのを感じた。

約束どおり。ママのストッキング、ありがたく頂戴していくよ。
男は濃紺のパンティストッキングを手に取ると、背広のポケットにねじ込んでいた。
あしたも、ママに逢うの・・・?
思わず発した声に。男はすこしぎくりとしたようだったけれど。
ああ、逢うよ。だからきみも、いつものように見に来るんだよ。
軽い含み笑いには、予期したような侮蔑はなくて。
むしろ悪友とのやり取りを愉しむような含みが感じられた。
対等の、大人の男どうしとして。彼はボクを遇してくれて。
まえに老女にそうされたときとは、裏腹に。
もっと分け入ってやろう。愉しんでやろう。
そんな気分が焔のように、燃え立たせていた。
ママへの憎しみなのか。パパへの軽蔑なのか。
いや、きっと。
そのどちらでも、ないだろう。
だってボクは、ママを今までよりもずっと好きになったし、パパのことも嫌いではなくなっていたから。

連れ込み宿 六ーい

2008年02月23日(Sat) 05:52:17

夕暮れ刻が近づくと、いつになくそわそわと落ち着かなくなる妻。
なににかこつけようか。どんなふうに、切り出そうか。
逡巡している空気の揺れが、横っ面にくすぐったい。
あの・・・
生唾を飲み込む音がしたのは、気のせいだろうか?
さんざん考え、練り直したはずの科白は、いとも短かった。
ちょっと・・・出かけてまいりますわ。
わたしは何食わぬ顔をして、新聞紙に貼りつけていた視線を妻に向ける。
濡れるように光る口紅が。
心なしか、妖しく輝いたようにみえたのは。
きっと、気のせい・・・
窓から射す夕陽が、きみの唇を照らしただけのことなのだろう。

いちど、切り出してしまうと。
あとは・・・もう、すべるようによどみがなかった。
帰り・・・遅くなりますわ。夕食のしたくはできていますから。
テルヤやミカといっしょに、召し上がっていてくださいね。
ああ、わかったよ。気をつけていってらっしゃい。
あまり遅いようなら、さきに寝んでいるから。
どちらもよどみがない、一連のお芝居。
互いに秘めた黙契に、薄っすらとした笑みを交し合う。
あの子たちには・・・そうね。クラス会だって、言っておいてくださいな。
いや・・・
わたしはちょっとだけ、ためらったけれど。
私も出かけるから。
ふたりで出たことにしておこうじゃないか。

なにも知らない子どもたちに、見送られて。
肩を並べて、家を出て。
商店街に出るさいしょの交差点で、ふたり目を見交わして。
からみ合う、視線と視線。
妻はふと、なにか言いかけて。
そのしぐさに、わたしはなぜか、狼狽をおぼえて。
あでやかに紅を刷いた唇は、けっきょく開かれずじまいだった。
居ずまいをただし、よそよそしく会釈する妻。
これからほかの男のものになってまいります。
淑やかなお辞儀の裏で、きみはわたしにそう告げている。

では・・・
どちらから言うともなく、声を交わして。
それぞれ、正反対の方角に、脚を向ける。
ちょっとだけ振り返った、妻の後ろ姿。
楚々とした黒ずくめのフォーマルウェアのすそから覗く足首が。
薄手の黒のストッキングに、なまめかしく透きとおっている。
貴婦人の足どりは、何処で娼婦のそれに変わるのだろう?
遠目に見送った巷の灯りのなか。
華奢な身体つきはすぐさま埋没して、見えなくなっていた。

単身赴任を終えて、家に戻ってきたとき。
妻はわたしの識っている淑女から、見違えるほどの牝犬になりかわっていた。
表向きは、どこまでも。
所帯持ちのよい主婦。絵に描いたような、良妻賢母。
けれども地味な濃紺のタイトスカートからはみ出したひざ小僧は。
秘めつづけてきた淫蕩な日常を、しらじらとにじませていた。
淑やかに装われた薄手のナイロンに、妖しい色に染めあげられて。

戻ってきてから。
夫婦仲は、以前よりもむつまじくなった。
年頃になった息子や娘をはばかりながらの夜の営みも、いっそう濃いものになっていた。
妻は浅ましいほどに乱れ惑って、わたしの一物をおねだりして。
みずからすすんで、大人しやかな唇に咥えこんでゆく。
そんな振る舞いは・・・以前の彼女にはなかったことだった。
正直なものだった。
夫婦のあいだの、濃いまぐわいは。
そのまま、夫婦仲のこまやかさに直結した。
週末には、なにがしかのおみやげを持ち帰るようになって。
妻はにこやかに受け取ると、その夜の夕餉に腕をふるうのだった。

けれども、土曜日の夕方と夜は。
最愛の妻は。子どもたちの母親は。
わたしとは別の男の支配下に入る。
いや、たぶん。そう・・・きっと。
平日の真っ昼間も、おなじように。
その男の影響下に置かれているはず。
その男こそ。
単身赴任がきまったとき。わたしが黙契を交わした男。
妻を誘惑する権利え得、
やがて堕とした妻の支配権までかち獲ることになった男。
彼とわたしの予定がかち合うときは。
いつもわたしが彼に、優先権を譲り渡すのがつねだった。
行ってまいりますわ。
薄っすらと笑んだ、あの気品漂う唇の裏に。
どれほどのものが、隠れ棲んでいるのか。
夜出かけるとき。
妻が決まって引く、真っ赤なラメ入りの口紅は。
きっと、あの男の好みなのだろう。
鮮やかに刷いた唇を、受け口に差し出して。
そう。なぞるように、愛でられて。
古びた密室のなか、妻は夜の蝶に生まれ変わる。

狭い空間は、暗闇に仕切られていた。
古びた壁の醸し出す、ぷーんと黴臭い木の香りが。
この空間を通り過ぎた永い年月を、物語っている。
いつもきまって、五、六人。
どこからともなく、ひっそりと現れて。
お互い、言葉も交わさずに。
けれども申し合わせたように、似たり寄ったりの姿勢をとって。
並んでしつらえられた、覗き穴から。
ひとつの情景に、見入っている。
壁の向こう側は、殿様部屋と呼ばれる豪奢な日本間。
そのうえに敷かれた金襴の褥のうえ。
今夜も濃密な演劇が、繰り広げられるのだ。
覗き穴の向こう側。熱っぽく演じられるのは。
女と男がせめぎ合う、ひとつの営み。
連れ込み宿と呼ばれる、その家は。
ひっそりと古びながらも、木目のひとすじひとすじにさえ、
長い年月営まれてきた熱情がしみ込んで、艶めいたものをたたえている。

はぁ・・・はぁ・・・
あ・・・。うっ!
声はひそめられるほど、ゾクゾクと鼓膜に響くものだろうか?
間歇的に洩れる、呻き声。
ピクッと仰け反る、あらわな肢体。
脱げかかった衣裳が、全裸よりもかえって淫猥な趣を漂わせ、
人妻であることをうかがわせる、落ち着いた服装の、
ふしだらに乱れたそのそこかしこからこぼれる、白い肌は。
こちら側の住人たちの視線を、息詰まるほど釘付けにする。
柔肌にくるまれたしなやかな筋肉は、あるときはキュッと引き締まり、そして弛緩する。
緩急自在の舞いは、女のうら若さと熟した老練さを同時に見せつけてくる。
女が着ている衣裳は。そう。いっしょに家を出た妻が着ていたのとおなじもの。
けれども褥のうえ、大胆に振舞っているのは、わたしの妻とは別人になった女。

はじめはたしかに・・・羞恥の色があった。
夫のある身体です。どうか、お許しを・・・
殿方のお相手など、どうか、どうか・・・
嫌!嫌!見られながらするなんて・・・っ。
けれどもつかの間の抵抗は、あっさりと封じられていって。
目のまえで、わたしのため守ろうとした貞操は、いともあっけなく陥落する。
あなた・・・ごめんなさいっ。
共演者の巧みなまさぐりに感じてしまっていることを、とっくの昔に白状している素肌は。
目の覚めるほどあざやかなピンク色に染まっていた。

どうして。どうして。
妻の情事の現場を目にしながら昂ぶるのか。
人妻の痴態に見入る、無責任な目ばかりが、周囲を取り囲む。
まるでハゲタカのように、妻の柔肌に、視線を食い入らせていく。
劣情と、好奇心だけの視線に包まれて。
情事のヒロインは、いっそう濃く、牝の演技に耽ってゆく。
犯している男。観ている男たち。
それらすべてが妻の肢体に注いでゆく強烈な情念に。
わたしは自らの昂ぶりを、輻輳させてゆく。
無言の夜。
いつ果てるともしれない、宴。
見世物になり果てた妻は、それをみずからの分と心得るかのようにして。
許して、あなた。
あっ、感じてしまう・・・
演技なのか。本気なのか。
ひたすら、濡れた呻きを洩らしつづける。

明け方が近づく頃。
ふと気がつくと。周囲の人影はすでに散っている。
妻はけだるげに、男と身体を絡み合わせて。
うつらうつらとしながらも。
男が思い出したように、我が物顔に抱きすくめてきて。
絶倫な精力を浴びるたび、女もまたわれにかえって。
それは熱っぽい返しで、応じてゆく。
夫の視線を、じゅうぶんに意識しながら。
まるで、ひけらかすように。自慢するように。
痴情のうわぐすりにしとどに濡れた身体をくねらせて。
自らの肢体をあらわにさらけ出し、牝犬に成り果ててゆく。

おはよう。
おはようございます。
家族の声が、行きかうわが家。
朝起きたら、きちんとあいさつすること。
几帳面な妻の決めた日常は、つねに忠実に守られている。
朝食をすますと、そうそうに出かけてしまう子どもたちを見送ると。
あの・・・
妻は口ごもったように、切り出してきた。
出かけるんだね?
ええ・・・夕方には戻りますから。
ああ、行って来なさい。気をつけて・・・
彼によろしく。思わずそう口走りそうになって。
はっとわれにかえって、語尾を濁していた。
なにもかも見通しているような白い頬は、イタズラっぽくほほ笑んで、
わたしの失態から、わざと目をそらしてゆく。

男は節度を心得ていて。
朝帰りになるときは、近くまで車で送ってくれるという。
そしてまた。
日曜日には、家族の夕食を優先させるため。
必ず午後三時には、妻を解放するという。
たしかにいちどなりとも、そのルールが破られたことはない。
妻とわたしの黙契。
彼と妻との黙契。
そして、妻を通しての彼との黙契。
それらいずれもが、なんのへんてつもない日常に埋もれながらも。
夜も昼も・・・わたしを侵蝕しつづけている。


あとがき
「連れ込み宿 五ーい」の続編です。
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-1201.html

感謝

2008年02月19日(Tue) 22:57:02

どこのランキングサイトにも登録しないで。
リンクしてくれるところも、少ないけれど。
なぜか上位にリンクしてもらっていて。
あるいは、ひどくさみしいときに、察したようにコメをくれたりして。
そうした少数の心優しい人たちは。
かげにひなたに、見守ってくれる。
自分のことを決して手放しでは好いていない私なのに。
此処に来るたび、ほんのちょっとだけ。自分が好きになりそうになる。
ささえてくれて、ありがとう。

ヒステリックに迫られて

2008年02月19日(Tue) 22:39:28

なっ、なにするの・・・っ!?
壁ぎわに追い詰められた奈津子は、怯えを隠すゆとりも喪っていて。
華奢な身体を包むエレガントなスカートスーツ姿に、嫌悪の震えを走らせる。
お願い。お願い。きょうはやめて。見逃してちょうだい。
昼間の高慢さをかなぐりすてた女は、手を合わさんばかりに懇願するけれど。
うふふふふっ。
蛭田は人がかわったように、意地悪な笑みを洩らしながら。
たったふたりだけの密室のなか、いつも強気な奈津子の硬い仮面を剥いでゆく。
すうっと伸ばされた猿臂に、身震いして飛びのいたはずが。
いつもの鈍さなど毛すじほどもないムチのようなしなやかな動きに囚われて。
いやっ、いやっ、いやっ、いやっ、いやああああっ・・・!!
女は身もだえをして、あらがうけれど。
もうなにをしても、ムダなんだよ。
男の腕は女をさとすように、あざけるように。
激しい抗いの手ごたえさえも、愉しみに変えてゆく。

高雅な色白の張りつめた肌が帯びるピンク色の生気は、
洗練されたウェーブを帯びた、つややかに黒い乱れ髪は、
敏捷な動きを封じ込めたフェミニンな装いは、
けだものの昂ぶりをいっそう高める。
ぴんと張った格好のよい胸を包むブラウスは、
裂けるほど張りつめて、ふしだらなくらいくしゃくしゃに波うって。
はからずも鮮やかに浮き彫りになる身体の線は、
取り繕われた礼節を、むき出しのなまめかしさに変えてゆく。

血に飢えた唇が、すっきり伸びた首筋に容赦なく吸いつけられて。
ひときわ、ぎゅう・・・っと、圧しつけられて。
きゃあっ・・・
たまぎるような悲鳴のあとは。
キュウ、キュウ、キュウ、キュウ・・・
人をこばかにしたような、不気味な吸血の音。

・・・・・・。
・・・・・・。
はあ。

奈津子はとつぜん、しらあっとした表情に舞い戻って。
はい、それまで。
さっきまで荒々しくかき抱いた蛭田の両腕を、こともなげに追い払った。
調子に乗るのは、そこまでよ。
リンと言い放った奈津子のまえに、蛭田はつきものの落ちたような顔つきをして。
奈津子の脛にツヤツヤ光るなまめかしいパンティストッキング姿を、残り惜しそうに盗み見ながら。
あの。せめて・・・もぅちょっとだけ。
そんなふうに、言いたげにしていたけれど。
昼間の高慢さを寸分たがわず取り戻した奈津子は、もう取り合うふうもない。
うなじに滲んだ血を、サッと手早く拭き取ると、
じゃあね。さよなら。
ジャケットに袖を通すなり、蛭田のわきをついとすり抜けて、
あれよあれよ・・・という間に、蛭田の鼻先でドアをばたんと閉ざしていた。

あらー。
九分九厘まで手中にしかけた獲物が、するりと掌のなかから抜け出してしまうと。
蛭田は阿呆のように、いつまでも口をぽかんと開けている。
だしぬけにドアが、もういちど開くと。
ホテル代、あなた払いよ。
どこまでも憎々しく笑う美貌が、あかんべえを送ってきて。
一瞬のちには、乱暴にばたんと閉じられる。
ドアの向こう側。
ざまーみろ。
奈津子が意地悪く口を突き出して笑っているようすが、マザマザと伝わってきた。

翌朝。
いつもなら。
ちょっぴり蒼ざめやつれた顔。
ことさらいつもどおりを装う、気丈な足どり。
ほかのものには見分けることができないほどの、微妙な身体の揺れ。
おはようのあいさつだけで、それらすべてを察してしまう。
夕べの満悦も。だまっておいてねのサインも。
意味深な瞬間のなか、いちぶしじゅうを嗅ぎ分けるはずが。
ふたりきりのエレベーターのなか、
女は驚いたことに、降りぎわいきなりあかんべえをかましてきたのだった。

どうなってんだろ。
悄然と入って行った営業部のオフィス。
けれどもだれも、蛭田の変化に気づいたりはしない。
だって営業成績万年びりの彼は、いつもそうやって、尾羽打ち枯らしているのがつねなのだから。
ちょっとお。あんた・・・
奈津子のトゲトゲしい声に、ぎくりとすると。
いま標的になっているのは、彼女とおなじ課の若手の男の子。
蛭田ほどではないにせよ、もの慣れずにもたもたしていると、たちまち悪罵の的にされるのだ。
隣の課の美しいお姉さまは、いつもみんなの恐怖の的。
きょうはなにがご悋気なのか、朝っぱらからじつにご機嫌がうるわしくない。
おい、おい。
脇から間々田がひじでつついてくる。
どうなってんだよ?お前、かげの奈津子係じゃないのか~?
おい、よせよ・・・
蛭田は微妙に、視線を避ける。
ははーん・・・という顔つきをする同期の切れ者に。
もう、勝手にしろ・・・
蛭田は蛭田で、やけっぱちになっている。

だいぶ、もててるみたいねー。どんな男にも、人気のつくことはあるっていうけど。
昼休み。人が散ってしまったがらんどうのオフィスのなか。
腕組みして近寄ってきた奈津子は、いきなり速射砲を浴びせかけてきた。
えっ???
虚を衝かれてオロオロする蛭田を尻目に、奈津子はくるりと背を向けて。
カッコウの良い脚も大またに、ハイヒールの音を遠ざけてゆく。
後ろから背中を、指で突っつくやつがいる。
こ~ら。わかっちまったぞ。
振り向くと。いつも蛭田に勝ち続ける同期のあいつが、ニヤニヤと笑っている。
いっつもこいつは、こんなふうに。
オレをにやにや笑いながら、同期のトップを走っていく。

からになったディッシュが乱雑に並んだ、カフェテリア。
逞しい体格の持ち主である間々田は、食欲も蛭田の倍はあるらしい。
さいきん、奈津子とどれくらいあるんだ?
頻度のことか・・・?
ばか。
いきなりばか扱いでは、いくら蛭田といえどもふくれ面のひとつもするのだが。
しょげきった声は、正直に応えてしまっている。
周囲に意味の取りにくいほどのニュアンスを込めて。
そう・・・ごとうびくらいかな。
十日にいっぺんかぁ。
間々田はばかにしたように、あからさまな表現に変換してあけすけに押し返す。
けれども放たれた二の矢は、もっと鋭い。
いままでは?
そこまでふつう、立ち入るかよ。
ふだんの蛭田でも、それくらいは感じるものなのだが。
やっぱりしょげ切っている蛭田には、それしきのことさえできないらしい。
やっぱり素直に、応えていた。
日に二回。
夜いがいは・・・仕事中か。
あははははっ。
間々田の声が大きくなったのは。
周囲から人影が消えたせいだろう。
おれはな。どんな夜でも瑞江を抱いているんだぜ?
え?
ほかの女とヤッた晩でも、瑞江のことを抱いているっていうんだよ。
ふーん。
じぶんの女に、あんたもてるわねって言われて、それを賞賛だと思い込むほど素直なの?
間々田は悪友に容赦なくとどめをさすと。
それでもふたり分の勘定書きを持って、先に出て行った。
午後は出張でもして、頭冷やすんだな。
と、いいのこして。

社に戻ったのは、一時間後。
もー!なにやってんのよっ!!!
営業部のフロアに戻ったとたん、耳をつんざいたのは、隣の課のヴィーナスの声。
ヴィーナスなんかじゃない。あれはマルスだ。
思わずきびすをめぐらそうとしたとき。
ちらりと自分をよぎった視線が、すぐに伏せられるのを感じた。
その視線は、ふしぎな温度と湿りを秘めていた。
奈津子は第二の被害者に噛みつくのをやめて、いきなりついっとフロアから出て行った。
間々田が、あごをしゃくっている。だれにも気づかれないように。
行け。と。

あまりに足早に立ち去っていった女を、さがしあぐねて。
あちらの部署。こちらのオフィス。
人のいない社員食堂にさえ、顔を出して。
思い切ってドアを叩いた役員室には、女史がいつものようにきりりと背筋を伸ばして執務していた。
あの・・・
声かける心のゆとりなんか、とてもない。
女史はちらりと冷たい視線を投げてきて。
相手がだれだか確認すると、蛭田のことなんかてんで無視して、
視線の行き先を机上の書類に直行させた。

さいごに足を留めたのは、いつもの小部屋。
蛭田に逢いたくないとき、あの女がいちばん行きそうにない処。
いるわけないよな。
冷え冷えとした気分で、通りすぎようとすると。
かすかに人の声が、洩れてきた。
声をあげそうになって、思わず口を堅く閉ざしていた。
ドアの向こう側。
感じなれた気配の主が洩らしているのは、声を忍ぶすすり泣きだったから。
立ち去ろうか。思い切って、踏み込もうか。
逡巡する、一瞬二瞬。
不覚な身じろぎを、ドアの向こうは敏感に感じ取っていた。
入って頂戴。
リンと澄み渡った声色は。
いつもと寸分たがわぬ冷ややかさを帯びている。

目を合わせる勇気なんか、なかったけれど。
むりに視線を、奈津子の顔にもっていくと。
女は蛭田のおどおどとした視線をまともに跳ね返して。
無言で脚を、さし寄せてきた。
ストッキング、破って頂戴。
え?
早く。
女は冷然と、命じてくる。
鋭く小さな声色で、おっかぶせるように。
うんと、こっぴどく引き裂いて!
さっき、まともに目を合わせたとき。
女の目を覆っている目のくまと、紅いまぶたを。
蛭田は記憶の彼方に押しやった。

震える手指は、女の脛に触れると。
別人のように、力を帯びた。
足首を包み込み、密着させるような、しつような愛撫。
かばうほどこまやかで、いやらしいほどねっちりとした指先は。
薄手のナイロンのサリサリという衣擦れを奏でてゆく。
さりげなく爪をたてて。
ぴちっ・・・と裂け目を入れて。
適確に入れられた裂け目は、ぶちーっと大胆に広がっていって。
女の脚周りに張りつめていた光沢を、ゆるゆるとほどいてゆく。
ぶりっ!びちっ!ぱりぱりっ・・・!
男の瞳が、焔を帯びるのを。
女はしずかに腰かけたまま、しんけんなまなざしをそそいでいった。

ご悋気、おさまったみたいだね。
先刻こっぴどくやっつけられていた若い男の子たちの、ひそひそ声。
もうじき、終業時間。
きょうは、定時退社日。
ただでさえ、気分がほぐれる夕暮れ刻。
隣の課の怖いお姉さまは。
昼までとは別人のように、ご機嫌うるわしく。
取り巻きの若い妹ぶんたちを相手に、ころころと笑いころげている。
奈津子の履いているストッキングの色が微妙に変わったのを、目ざとく気づいたのは。
たぶん間々田だけだろう。
やりやがったな?
さっき半秒ほど、イタズラっぽい視線をちらっと投げてきた。
蛭田はくすぐったそうにそれを受け止めて。
さっきトイレにたった帰りに、それとなく廊下で待ち構えていた奈津子のつぶやきを、反芻する。
夕べのつづき。
そっぽを向きながら、かわいくない顔をして。
声だけはハッキリと、意志を伝えてきたのだった。


あとがき
ヒステリックに迫ったのは。
前半いい思いをしそうになった蛭田のほうではなくて・・・というお話でした。

彼女の純潔  ~都会娘たちの初夜~

2008年02月18日(Mon) 07:32:37

キョウレツ・・・だったよねぇ。
うん。すごかったよねぇ。
ジュンヤとナオキはふたり並んで、朝の道を歩いていた。
ふたりは21歳の大学生。
都会の大学が春休みになったので、それぞれ彼女を連れて帰郷してきたのだった。
ふたりとも。見違えるような都会ふうの若者になっていて。
連れてきた恋人たちも、洗練されたファッションに装った上品なお嬢さん。
けれども二人は、幼い頃仲良くしていた仲間のことを忘れてはいなかった。
学校が終わるとよく遊びに行った村はずれの雑木林には。
古くから、吸血鬼の一族が棲んでいて。
ひなびた家にあがりこんで、学校道具を置くと、それぞれの仲良しの勉強部屋とか裏手の納屋とかに紛れ込んで。
腹ばいになって、半ズボンからむき出しになった脚をぴんと伸ばして。
おなじ年恰好の少年たちに、ハイソックスのふくらはぎを噛ませてやっていた。
都会に出ていくまえの晩。
お嫁さんができたら、村に連れてきて。
ストッキングを履いた脚を噛ませてあげるよって、
涙さえ浮かべて別れを惜しむ仲間たちに、約束していったのだ。
村には、約束を破る男の子は、たえていないという。

そんな彼らが、なん年ぶりかで帰郷したとき。
彼らへの友情を恋人たちの純潔よりも優先したのは、とうぜんすぎるほどとうぜんだった。
夜更けになって。
村はずれの雑木林に連れ出されて。
闇夜のなか、かつては母や妹たちのストッキングを履いた脚を吸わせた相手に。
てかてか光るなまめかしいストッキングに包まれた恋人たちの脚を、惜しげもなくあてがっていったのだ。
女の子たちは、不慣れなあしらいに当惑して、
逃げ出して、追いつかれて、抱きすくめられて。
泣きじゃくりながら、うなじを噛まれていって。
けれども・・・激しい抵抗はつかの間で。
いちどうっとりしてしまうと、あとはもうなされるがまま。
堕ちるまえ、どれほど抗ったのかは、夫たちの誇り。
その誇りと、引き換えに。
将来を誓い合った少女たちが、ぬかるみに堕ちて、泥まみれにされながら。
別人のように髪振り乱して、娼婦に生まれ変わるのを。
少年たちは、息を凝らして見守っていた。

きみの彼女は、なん人相手したの?
七人・・・かな?
よく憶えているね。ボクなんか夢中になっちゃって、数えてなんかいられなかったよ。
あとで数えればいいさ。パパやママに報告しないといけないからね。
夕べの出来事。ビデオに撮って、送ってくれるらしいよ。
それは楽しみだね。
娼婦に堕ちた女たちが、なん人の男に愛されたのか。
それはあとあとまで、夫たちの自慢のたねにされるのだった。

おぉ。ハデにやったね。
純白のワンピースに、泥をべっとりと撥ねかした恋人を見て。
ジュンヤの叔父は、眩しそうな顔つきで祝福してくれた。
お風呂を沸かしてあるよ。ナオミさんはゆっくりしていくといい。
親切ごかしに、引き止めておいて。
いまごろはきっと、湯あがりの浴衣姿を抱きすくめて、ねやに引きずり込んでいるころだろうか?
高校生のころ、叔母を相手に筆おろしをすませたとき。
恋人ができたら叔父さんに抱かせてあげるって約束、やっと果たせたようだった。

あらぁ、せっかくのお洋服が。
ナオキの母親は、うわべだけは同情たっぷりに、未来の嫁を迎え入れる。
まゆみは新調のリクルートスーツのすそを惜しげもなく、ぬかるみに浸してしまいながら。
決まり悪げな照れ笑いをしながらも、いさぎよく。
都会のお嬢さんには不似合いな凄まじい身なりを、ためらいもなく朝陽にさらしていた。
ナオキの母も、身に覚えのあることだった。
都会から嫁いできたときの、いよいよ祝言という、まえの晩。
花婿の親族に、母親もろとも取り囲まれて。
色とりどりのスカートを、たくし上げられて。
ストッキングの舌触りを、試し比べられて。
さいごには母娘ながら、あけすけな祝福の洗礼を浴びるほど受けて。
父親の見ているまえで、女にされてしまっていた。
妻と娘が、ふたりながら堕ちてゆくありさまに。
謹厳だったはずの父親は、昂ぶりのあまり失禁してしまっていて。
ずっと心の奥深く秘めていた願望をかなえてくれた村のために、
永年連れ添った愛妻の貞操を一週間ものあいだ、村の男たちにふるまったのだった。

ジュンヤもナオキも、恋人たちの純潔を村はずれの草むらに散らしてしまったことを、後悔していない。
ふたりがスラックスの下に履いているストッキング地の靴下は、ひざ下までの紳士用だったけれど。
この村でそれを穿くのは、一人前と見なされた男たちだけ。
一人前と見なされるには・・・将来の伴侶を汚されることが通過儀礼。
やあ。おはよう。
いっしょに帰郷したマサカズが、向こうから声をかけてくる。
マサカズのスラックスの下、薄い靴下がてかてか輝くのをみとめると。
おや?と顔を見合わせた。
彼女、犯されちゃったの?
まあ・・・ね。
照れくさそうに囁くマサカズは。
晩まで待てなかった幼馴染を五人も自宅に呼んで。
勉強部屋で、押し倒されちゃったんだよ。
まじめなコだと思ったけど・・・やっぱり処女だったよ。って。
すっかり仲良くなっちゃって。まだ放してもらえないんだよ。って。
はにかみながらも誇らしげに、告げるのだった。

ナオキぃ!
マサカズぅ!
向こうから、女の子たちの若々しい声がはじけてくる。
若い娘たちはふたり、細い肩を並べて駆け寄ってきて。
人目もはばからず、互いの恋人たちと抱擁を交わしている。
愉しかった?
ウン。さいしょはびっくりしたけど・・・ね。
もっと愉しみたいだろ?
そうよ。だから呼びに来たの。ナオキに見られるほうが燃えそうだから。
そうよ。途中で逃げちゃうなんて、ひきょうだぞ~♪
お式は、この村で挙げようね。
母や妹にも、彼氏ができるかしら?
パパ、卒倒しちゃうんじゃないかなあ・・・
だいじょうぶ。うまくいくって。
ママの花柄のワンピース、おなじぬかるみに浸してみたいわ。
もちろんパパのことを、うまく抱きこまないとダメよ。
お友だちも、おおぜい呼んじゃうから。
じゃあ・・・指きりげんまん。ね♪
恋人たちはまえよりももっと睦まじげに、腕を組んで。
ちりちりに破けたストッキングの脚を、思い切り陽にさらして。
血に飢えた悪友たちが待ち受ける処へと脚を向けてゆく。

ふた組のカップルを眩しそうに見送ったジュンヤは。
さて、そろそろ・・・
叔父はもう、彼女を放してくれただろうか?
息子たちの筆おろしも、頼んだぜ?
都会からかけた電話ごしに、そう囁いてきた叔父。
年下の従弟たちは、いまごろ代わる代わる、ボクの妻となる人を愉しませている時分だろうか。
将来を誓い合った最愛の人を、いさぎよ分かち合った夜。
夫婦の間に秘められたおとぎ話は、いつまでも互いの胸を行き来するのだろう。

花嫁も・・・

2008年02月18日(Mon) 05:48:51

薄れゆく意識の彼方。
未来の花嫁が少しずつ、飼いならされてゆく。
白い素肌を、ピンク色に染めながら・・・

ママが戻ってきたのは、お昼過ぎだった。
愉しかったかね?
エエ、とてもお上手なんですよ♪
パパはあくまで、おだやかに。
ママはとっても、愉しそうに。
ふたり、夕べの話に興じている。
ケッペキだったはずの真美さえも。
おいしそうだったよね、って、声はずませていて。
処女の生き血がお好きなのよ。
あたし、お嫁入りするまでいい子でいるんだから。って。
とんでもないことを、さりげなく口にしている。

こんどは、さよりさんの番だよな?
パパが愉しそうに、水を向けてきて。
ママのときも、さいしょはパパが連れて行ったんだよ。って。
びっくりするようなことを、ささやいてきた。
初めてじゃ、なかったんだ。
そうだよ。この村の娘たちは、だれもがお邸に招待されるんだ。
花婿が花嫁をエスコートして。結納を済ませたことを、ご披露して。
処女の生き血を捧げに行くんだよ。
どうしても、怖いのだったら。
きみのママか、彼女のママが連れていくんだけど。
そんなくらいだったら・・・自分で行ったほうが愉しめるだろう?
パパの言い草を、否定できないボク。
あの晩ふたりして・・・ママが貞操を喪うところを見てしまった間柄。

りぃん、ろぉん・・・
恐る恐る鳴らした、お邸のインターホン。
隣には、なにも知らないさよりさんが、白一色のスーツ姿でひかえている。
すけすけの白のストッキングのなか。
すらりとしたふくらはぎが、ピンク色に輝いていた。
どれ。おみ脚を拝見しますよ。
吸血鬼のおじさんは、じゅうたんのうえ。
彼女のまえに、うやうやしくひざまずくようにすると。
さよりさんはすっかり、恐縮してしまって。
腰を降ろしたソファの隣を、すすめるのだけれど。
小父さんは舌なめずりを、こらえ切れないで。
とうとうさよりさんのひざ小僧に、むしゃぶりついてしまっている。
きゃっ。
ひと声あげて、のけぞると。
ストッキングの足首を、キュッと引きつらせて。つま先立ちをして。
そのままじいっと、ふくらはぎを震わせつづけていた。

どぉれ・・・
首筋から引き抜いた牙の下。
赤黒いしずくを、ひとすじしたたらせて。
それがどろりと垂れ落ちて、純白のブラウスに滲むのを。
小父さんとふたり、顔を並べて見守っている。
おいしかった?
小声で囁くボクを、小父さんは軽く押しとどめるようなしぐさをして。
しばらく・・・ふたりきりにしてくれないか?
ボクは唇の下、歯と歯をがちがち震わせながら。
ウン、いいよ・・・
それだけ言うのが、やっとだった。

半開きにしたドアの、向こう側。
白のスーツ姿のさよりさんは、ソファの背もたれにもたれかかっていて。
じょじょに姿勢を、くずしてゆく。
真紅のじゅうたんのうえ、横たえてしまったふくらはぎに。
小父さんはいとも旨そうに、唇を吸いつけていって。
すけすけの白のストッキングを、唾液で汚しながら。
舌をぬるりと、這わせている。
きゃっ。
悲鳴をあげたのは、彼女なのか。ボクだったのか。
なよなよと薄いストッキングは、いびつにねじれ、波うって。
ふしだらな裂け目を、タイトスカートの奥にまで忍び込まされてしまってゆく。

おじゃましました。
じゅうたんの上、正座して。
礼儀正しく、三つ指を突いて。
良家のお嬢さんらしく振舞うさよりさんは、ちょっぴり心地よげに、口許から白い歯をのぞかせて。
いつでも遊びに来なさい、という小父さんに。
よろこんで、うかがわせていただきます、って。
尋常な応対をしていたけれど。
遊びに来る=血を吸われに来る。
うかがう=ストッキングを破らせに来る。
三人のあいだを、そんな公式が。
暗黙の諒解裡に、かけめぐる。
脛を包んでいた白のストッキングに、欲情に満ちた毒液をしみ込まされて。
処女の誇りを秘めた血潮を、ぞんぶんに愉しまれた乙女は。
首筋に浮いた痕を、さりげなく長い黒髪で秘めてゆく。
別れぎわ。
また、ストッキングを濡らしていただくわ。ご一緒してくださいね。
睨むように振り返ったさよりさんに。
ボクはにっこりと、ほほ笑み返すと。
さよりさんは、いつもの淑やかな笑みにもどって。
よろしく・・・ね。
小首をかしげるような会釈を、送ってきた。
見送る後ろ姿は、いつもとおなじように落ち着き払っていたけれど。
破けたままの白ストッキングの脚をさらして歩く足取りは。
どこか、周りに見せびらかそうとするような気負いに満ちている。

それから幾晩、つづいただろう?
真夜中に誘い出された乙女は、あるときは白。あるときは肌色と。
ストッキングの色を選んで行って。
純白のブラウスや、ストライプ柄のブラウスを。
夜な夜な、自分の血で彩っていって。
礼装を辱められるたびに、大胆になって。
披露宴を翌々日にひかえた夜は。
黒のストッキングで、キメてきた。
貴方の花嫁になるまえに。吸血鬼の花嫁になりたいの。
せがまれつづけたボクは。
未来の花嫁とおそろいのストッキングを脚に通して。
ふたり、肩を並べて真夜中のバージンロードをたどってゆく。
最愛の花嫁を、背徳の床に投げ込んで。
いちぶしじゅうを、見守るために。


あとがき
お嫁さんをもらうときには。
みんなと仲良くできるように、打ち解けた一夜をもつことだよ。
そんな訓えが、あるとかないとか。^^

あのおうちと仲良く・・・

2008年02月18日(Mon) 04:58:34

こーら。どこへ行く。
マサオがぎくりとしたのは、もっともだった。
いまは真夜中。
家族はとうに、寝静まっているはず。
それなのに、彼はこっそり外出しようとしている。
半ズボンの下に履いているのは、太ももまでのストッキング。
それはママのタンスの抽斗から失敬してきたやつだった。
ギイ・・・
リビングに通じるドアが開いてあらわれたのは、寝巻き姿のパパ。
あたー。
いちばん見られなくないやつに・・・
マサオはつま先から凍りついていくような気分だった。
忘れもんだよ。
パパがにやりと笑って渡してくれたのは、ローソクの灯った燭台。
これ持って行くんだろう?途中で火を消すなよ。
パパは言いたいことだけを言って、すぐに顔を引っ込めた。
ばつの悪そうな顔をしている息子の顔を、もうそれ以上見ないようにして。

コツ、コツ、コツ、コツ・・・
春先とはいっても、真夜中の空気はまだまだひんやりとしている。
薄いストッキング一枚の足許を、冷や冷やとした夜気に撫でられながら。
それがなぜか、むしょうに心地よいと感じるのは。
きっと、ボクがマゾだから。
マゾ・・・
まだまだ十代。うぶな心の持ち主は、言葉を思い浮かべただけで頬を火照らせてしまう。
じりじりとかすかな音を立てている灯火のせいだけではないのだろう。
こんなことなら、思いきって。
妹の真美がいつも履いている、真っ赤なチェック柄のスカートも履いてくるんだった。
そんな妙な後悔をするくらい、パパはあっさりと送り出してくれた。
自分の妻のストッキングを穿いて、息子が真夜中ひっそりと出かけていく。
そのことの意味を、パパが知らないわけはないはずなのに。
待てよ。
スカートだったら、太ももがもっとすーすーしただろうな・・・

時おり吹いてくる微風にローソクを吹き消されまいかとびくびくしながらも、
マサオはどうにかローソクを消さずにお邸にたどり着いた。
そのあと彼の身になにが起きたのか、だれも知らない。
いつも早起きしているお隣のご主人が庭に出たときに。
マサオらしい人影が薄ぼんやりとした足取りで、自宅の門をすうっと音もなくくぐり抜けて行ったのを見ただけだった。
半ズボンの下には黒のストッキングを穿いていて、それはびちっと派手に破けていたという。

ほら、ママが出かけるぞ。
パパの声で起こされて。
眠い目をこすりながら階下のリビングに降りていったのは、それから数日後の日曜日のこと。
リビングの時計の針は、午前三時をさしている。
ふつうの時間じゃない。
えっ、どこ行くの?
思わず声をあげたくらい、ママの晴代はあでやかに着飾っている。
純白のボウタイブラウスに、黒のロングスカート。
目の覚めるようなワインカラーのジャケット。
いつもキリキリと頭の後ろに結い上げている髪の毛は、さらりと肩に落としていて。
まるでどこかのお嬢さんみたに、若々しく見える。
どこに行くって?
きみがこのまえ、おイタをしに行ったあのおうちさ。
パパは愉しげにマサオを見て。
傍らの真美はぷっと不平そうに頬をふくらませる。
真美は濃紺のジャケットに、白のブラウス。じんわりとした光沢のある青のリボン。
真っ赤なチェック柄のプリーツスカートのすそを、いつものように太ももにひらひらさせている。
太ももまでの黒ストッキングのゴムが、みじかいスカートのすそからちらちら覗いているのが。
いつになくなまめかしくて、オトナっぽい。
真美も出かけるの?
いぶかしそうにマサオがパパに訊くと。
ああもちろんさ。ふたりであのおうちの人たちと仲良くして来るんだよ。
まるで幼い子どもに言い聞かせるような口調だった。
こんな夜更けに、二人してなにをしに・・・?
いや、いや。
マサオはすべてを、知ってしまっているのだ。

はい、お兄ちゃん。
妹がしぶしぶ兄に手渡したのは。
いつも学校に履いて行く、黒のストッキング。
なれた手つきで脚に通していく兄のことを、さもケイベツしたように見守っているのが。
横っ面にくすぐったい。
これでみぃんな、おそろいね♪
ママがウキウキと、口にする。
ママのとおなじくらい透けていて、脚の輪郭には淡い光沢さえちらちらしている。
ズボンを履いたパパの足許も。
よく見ると、ストッキング地の靴下。
これは紳士用だぜ?
愉しげな弁解に、娘はもう・・・!って口を尖らせて。
パパのお尻をひっぱたいている。

晴代も、真美も。きょうから、あの家と同じ苗字に変わるのだよ。
いままでどおり、この家にいっしょに住んでいても。
晴代はあのかたの第七夫人にしていただくのだし。
真美は養女にもらわれていくのだから。
従姉のさよりさんと、お前が婚約したら。
さよりさんをお邸に連れていくのは、マサオの役だろうね?
パパはイタズラっぽく自分の妻をふり返ると。
家名を汚してきますわよ。
ママがくすっと、ほほ笑むと。
そんなことはない。
あのかたの寵愛を受けることは、名誉なのだと心得なさい。
さあ、ご披露が済んだら、男どもは退散。さっさと寝た寝た・・・
自分から率先して、夫婦の寝室に引き上げてゆく。

ベッドにもどったあとも、まんじりとはしなかった。
門を開け閉めする音がカランカランとうつろに響くと。
マサオはさっと起き上がって。半ズボンを脱ぎ捨てて。
代わりに真美の部屋から拝借してきた青のチェック柄のスカートを、腰に巻いて。
そう・・・っと、抜き足差し足して家を抜け出すと。
とっくに影を消した母と妹の後を追いかけている。

ああっ・・・うっ・・・うぅん・・・
母と妹。どちらの声だろう?
おそるおそる覗き込んだガラス戸ごし。
彼があの晩持って行った燭台が、ゆらゆらと長い焔をくゆらせている。
焔に浮き彫りにされたふたつの女体は、素肌をむき出しにして。
着崩れさせた礼装が、かえって全裸よりもふしだらに映った。
真美がうなじを抑えて、あえいでいる。
真っ赤なチェック柄のスカートからにょっきり伸びた太ももは。
ストッキングの裂け目をびちっとハデに走らせていて。
白のブラウスには、点々と。
吸い取られたバラ色のしずくの残滓が散っている。
吸血鬼がとりついているのは、ママの胸元。
きりっと結わえていたブラウスのタイを、ほどかれて。
花びらみたいに、ひらひらさせて。
ママはあらぬかた、うっとりと視線をめぐらせて。
うなじをちゅうちゅうと、やられてしまっていた。
すべてが数日前、マサオにおおいかぶさった儀式のまま。
あの晩美味しいとほめられた生き血と、おなじ血を。
白髪頭の吸血鬼は、さも旨そうに、むさぼっている。
家族の女たちが、つぎつぎと生き血を吸い取られているというのに。
胸をズキズキとはずませてしまうのは、なぜだろう?
死なせることはない・・・
たしかに彼は、そう約束してくれた。
これは、家と家との契約。両家のあいだで代々取り交わされてきたしきたりなのだから。
男が毒液のように吹き込んできた言葉が、鼓膜にまだしみ込んでいる。
おいしい?おいしいかい?ああ・・・おいしいんだね。
もっと吸って。まだ、だいじょうぶだから・・・
あの晩とおなじ囁きが、口をついて洩れてくる。
おや・・・?
ガラス戸と向かい合わせのドアが、半開きになっていて。
その向こうにある人の気配は・・・
マサオはいつか、くすくす忍び笑いをしている。
マゾの血。パパからもらった血だったんだね・・・?

あとがき
妻や娘を吸血鬼の邸に召し出されて。
血を吸われたり、犯されちゃったり。
苗字まで変わる・・・ということは。
令夫人のまま、お妾にされてしまうのですね?
それが家の名誉になるなんて。
仲良くすることになるなんて・・・。^^

吸血少女 まりあ

2008年02月16日(Sat) 12:59:29

ダメよ。逃がさない・・・
逃げちゃったら、もう逢ってあげないんだから。
そのひと言が、ボクを釘づけにした。
まりあと、逢えないなんて。
そんなこと、とても考えられなかったから。
たとえ彼女が、吸血鬼だったとしても。

薄茶色に染めた長い髪を、肩先に揺らしながら。
まりあはかわいらしいピンク色の唇を、さし寄せてくる。
うっとりと、まつ毛震わせながら。
キスをねだる恋人のように、身を寄り添わせてくる。
けれどもその口許から洩れている犬歯は鋭利に研ぎ澄まされていて。
過去にどれだけの人の皮膚を切り裂いてきたのか、
残忍な輝きに彩られている。
けれどもボクは、身じろぎひとつしないで。
じっと、まりあの牙を待っている。
彼女のせつじつな情欲に、応えるために。
日々のおやつに、チョコレートを欠かさないボク。

ボクの着ているしまもようのTシャツを、くしゃくしゃにしながら。
まりあは目の色を変えて、抱きついてくる。
いつもエレガントに装っているのは。
ボクを魅せるため。
黒のストッキングの、濃密な色香が。
きょうもボクのことを、誘蛾灯のように引き寄せた。
ああ、おいしい・・・
無言の声を、唇に滲ませて。
ボクの血を、いっしんに飲み耽る少女。
いまのこの刻だけは。
きみを独り占めにできる。
華奢な背中を、抱きしめて。
どちらが襲っているのか、わからないときすらある。
牙で貫かれながら。まりあの股間に割り込んで。
ひくひくと昂ぶった怒張が、ぬらりとうるおいを帯びた肉襞に、のめり込んでゆく。

だいじょうぶだから。
きみがいちばん欲しがるものを、いつでもいくらでも、あげるから。
浮き立たない気分のときも。人恋しい焔をかきたててしまう夜も。
いつでも、ボクのところに来ておくれ。
ボクはこうして、ボク自身のぬくもりで。
きみを心から、暖めてあげるから。

まりあの尾行者

2008年02月16日(Sat) 12:49:36

だれかに、尾けられているみたい。
まりあは心配そうに、声翳らせて。
マコトの横顔を上目遣いに窺った。
え?そんなこと、ないだろう?
マコトはいつもと変わりなく、爽やかに笑んで。
怯える恋人を、なだめている。
まるであやすように、長い髪の毛を撫でながら。

だって・・・
ほら。あそこのブロック塀の陰。
だれかいるでしょ?
ほらっ。
電信柱に隠れて。
こっち、見ているでしょ?
だいじょうぶ。だいじょうぶだって。
マコトはまりあが怯えるたびに、髪を撫で肩を抱き寄せながら、なだめつづける。

そんなに気になるなら、近道して表通りに出ちゃおうか?
いつもの散歩道を切り上げるのがさももったいないという顔に。
まりあはちょっとのあいだ、ためらったけれど。
背後から忍び足が、ひたひたと迫ってくるような錯覚に襲われて。
同意の頷きをかえしていた。
こっち。こっち。
マコトは痛いほど握り締めたまりあの手を引っ張るようにして。
両側をブロック塀が迫る人けのない狭い道を、小走りになってかけてゆく。
さあ。もうだいじょうぶ。
ようやく追いついたまりあが、表通りに通じる道に折れようとしたとき。
ゃだ・・・っ
声が、引きつっていた。
目のまえに立ちはだかったのは、不気味な黒衣に包まれた、得体の知れない男。
背の高さにまかせて、おおいかぶさるようにして、まりあに迫ったきたのだった。

だいじょうぶ。だいじょうぶ。
マコトはまりあの背中を、押すようにして。
恋人を怪人の猿臂のなかに追いやった。
あまりにもむぞうさな、なれた手つきで。
まりあのおとがいを、仰のけると。
怪人はまりあのうなじに唇を這わせて、
ちゅ・・・っ
つばのはぜるような音をたてていた。
鋭い痛みといっしょに鋭利な異物が皮膚を侵すのを、まりあは感じた。
ちゅうっ、ごくん。ごくん・・・
おいしいジュースを、飲み干すように。
黒衣の怪人は、まりの血を吸い取ってゆく。

上出来、上出来。
黒衣の男は、倒れたまりあの上から起き上がると。
息の合う相棒のことを、ほめたたえた。
いやぁ。
照れくさそうに笑うマコトは、恥らうまりあの胸を押し広げると。
どうだい?ボクの彼女。いいおっぱいしているだろう?
うらやましいね・・・おすそわけにあずかりたいな。
仲の良い友だちは、最愛の恋人の胸を、気前よくまさぐらせている。
あ、あ、あ・・・っ!なにするの?いや、イヤ!いやぁん・・・
道路に身体を、横たえながら。
まりあはブロック塀の向こう側の民家に、頭上を通り過ぎてゆく表通りの足音に。
ひどく気後れしながら、それでも知らず知らず身体を開いてゆく。

通りを歩いていると、気づかない路地があったりします。
其処に隠れて、愉しみに耽っている人たちをみても。
邪魔をするのは、大人げないですね。
気づかないふりをして、そのあまま通りすぎてしまいましょう。
ちょっとだけ、盗み見るくらいなら。
恋人も、そのお相手も。
そう、気にはかけないでしょうけれど。

人妻まりあの饗応

2008年02月16日(Sat) 12:34:23

身体にぴちっと密着した、ショッキングピンクのワンピース。
広い胸ぐりからあふれそうなおっぱいを、見せびらかすように揺らしながら。
まりあはわたしと客人のまえ。
ワイングラスをふたつ、お盆に載せて現れた。
おい、おい。
身体のライン、強調し過ぎだよ・・・
思わず声をたてそうになったのは。
まりあのセクシィすぎるワンピース姿を、客人に食い入るように見入られたから。
舐めるように、眩しげに・・・

まりあを欲しい。
妻が座をはずすや否や。
予期したとおり、おねだりがはじまった。
仲良しのこの男の正体は、吸血鬼。
彼を家に招くことがどれほどキケンなことなのかは。
子どものころ家に招んだとき。
それまで貞淑だった母と、まだ女学生だった姉さんとが体験してしまったことで。
じゅうぶん立証済みだったのだ。

ひとの女房を、いきなり呼び捨てにするんだね。
彼の無作法を、さりげなくたしなめながらも。
彼の要求そのものをたしなめることができなくなっていく。
ねぇ、頼む。頼むよ。
ほんのちょっとだけ、うなじを吸わせてくれたら。
もうそれだけで、放してあげるから。
そんな見え透いたウソを、お互いにウソだと分かり合いながら。
さいごにわたしが、堕ちてしまったのは。
きみの一番たいせつな女(ひと)だから、欲しいんだ。
そんなひと言。
わかった。じゃあちょっとだけ、席をはずすから。
わざとドアを半開きにしたまま出た廊下は、ぬらりと妖しい薄闇に包まれていた。

あっ!なにするんですっ!?
妻の声が、夜の静寂を切り裂いた。
けれどもそれは、一瞬のこと。
ちゅっ・・・
奇妙な音が、すべてを沈黙させたのだ。
胸が張り裂けるような、無音の緊張。
そのなかで、ただひとすじに・・・
ちゅ―――――っ・・・
途切れることなくつづく、吸血の音。
わたしは不覚にも、胸をドキドキとわななかせて。
妻の受難のいちぶしじゅうを、覗き見ている。

触手のように、長い腕が。
ショッキングピンクのワンピースのうえ、迷うように這い回って。
もどかしげなまさぐりに、さいしょは抗っていたまりあの手も、
いつか緩慢になってゆく。
それはたぶん、失血のせいばかりではない。
服の上からじわりとしみ込まされた、甘美な誘惑に。
ヤツの優美な獲物は、たちまち姿勢を崩していった。
横たえられたふくらはぎを、ゆるゆるとなでさすりながら。
肌色のストッキングの上から、咬みついてゆく。
きれいな光沢だね・・・って、ほめながら。
舐めるように唇を吸い着けられて。
薄手のナイロンの光沢ごし、ふくらはぎの筋肉がシクッと引きつるのを。
わたしは胸ズキズキとはずませながら、ただの男として、光景をたんのうし尽くしてしまっている。

深夜。
夫婦のベッドのうえ。
まりあは失血のあまり、放心状態で。
手足をだらりとさせたまま、横たわっている。
一件がすんだあと。
ハッと我に返ったまりあは。
アラッ?どうしたの私・・・?
吸血されたことは、記憶に残されていなかった。
客人のまえ、無作法に寝転がっていたじゅうたんからあわてて起き上がると、
そそくさと一礼して、リビングから立ち去っていったのだ。
今宵、まりあを私のものにする。
くぐもった声色が、わたしの鼓膜を妖しく震わせていた。
いま。儀式が始まろうとしている。
灯りの消えた夫婦の寝室で。

糸を引かれたマリオネットが、起き上がるように。
まりあはゆらりと、身を起こす。
乱れ髪を、けだるそうにかきあげて。
ふらふらと、ベッドのうえからすべりおりた。
まるでなにかに吊り上げられるような、不自然な動きのままに。
けだるそうに身じろぎをつづける、豊かな肢体は。
タンスの引き出しから取り出したナイロンストッキングを、
するすると手際よく、脚に通してゆく。
まるで娼婦が、身づくろいするように。
ひそやかな衣擦れを、身体の周りにまとわりつけながら。

黒のシースルーのネグリジェ姿が、足音を消して廊下をすすんでゆく。
こんななまめかしいなりを、まりあがするのは。
夫婦のセックスがマンネリになってからは、たえてないことだった。
まりあが真っ先にめざしたのは、玄関。
玄関先の土間に、かがみ込んで。
すぐに立ち上がって、くるりと回れ右をしたときは、
一瞬目が合ってしまって、どきりとしたけれど。
わたしに尾けられていることなど、まるで意に介するふうもなく。
まりあは無表情に、わたしの目のまえを通り過ぎてゆく。

ゆらゆらと、長い髪をたなびかせながら。
ぴかぴか光る、黒のエナメルのハイヒールをぶら下げて。
まりあはひたひたと、足音を消して。
そう。客人にあてがわれた一室をめざしている。
かちゃり。
冷たく響く、ドアノブの音に。
ひやりとしたものを、覚えた瞬間。
ばたん。
開かれたドアは、まりあの姿をのみ込んで。
あっという間に、鎖されていた。

おそるおそる半開きにした、ドアのむこう。
素足になったまりあは、黒のストッキングに脚を通してゆく。
さっきまで穿いていたストッキングは、男の手のなかで嬲りものになっていて。
べつに用意した、真新しいやつに穿き替えているようだった。
さっきまでまりあが脚に通していた薄絹は、男の掌のなか、くしゃくしゃになって。
節くれだった指先が、まさぐるように。
ひどくいやらしく、もてあそんでいた。
男はわたしの妻がストッキングを穿くようすを、にやにやと愉しげに盗み見ながら。
自分もむき出しの脚に、手でもてあそんでいたまりあのストッキングをまとってゆく。
まりあの脚線をのこした薄黒いナイロンが、男の逞しい脚の輪郭に重ねられて。
ごつごつした筋肉に鎧われた太ももを、じんわりと包んでゆく。
わずかに丈が、足りなかったのか。
ストッキングのゴムは、男のひざのすこし上あたりで、留められた。
アンバランスな光景だったけれども、それはひどくそそられる眺めだった。
さっきまで、まりあの脚を優美に彩っていたものが。
男の荒々しい肉づきに、蹂躙されていた。

まりあは丸いすのうえ、カッコウの良い脚を片方乗せて。
足許にかがみ込んでくる男に、誇示するように見せびらかした。
脛を彩る黒のストッキングは、薄くなまめかしく透きとおっていて。
ぴかぴか光る硬質なエナメルのハイヒールと、好対照をなしていた。
男は女の脚をめでるように、両方の掌ではさみ込むようにして。
ねっちりとした手つきで、さすりあげてゆく。
なよなよと薄いストッキングは、そのたびに
ひどくふしだらに波うちよじれを加えていった。
ククク・・・
含み笑いを浮かべた唇を、なすりつけるように這わせていって。
まりあがちょっと顔をしかめたとき。
鋭い伝線をひとすじ、ぴちっと走らせて。
流れるような脚線をせり上がった裂け目は、ネグリジェのすその奥にまで、しのび込んでゆく。
ァ・・・
喉の奥から、引きつるようなうめきを洩らして。
まりあが姿勢をくずしたのは、そのときのことだった。

じゅうたんのうえ繰り広げられる、淫靡な舞踏。
黒のストッキングに包まれた男女二対の脚は、淫らに交わり、乱れあって。
擦れあう脚と脚のあいだ、薄いナイロンが妖しいしわを波だてていく。
さいしょは正常位、それからバック、騎乗位と。
ぴったり息合わせたふたりは、あらゆる体位を交えてゆく。
娼婦に堕ちた女は、ただひたすらに情夫の情けをもとめつづけて。
硬く怒張した逸物を、喉の奥まで突き刺さるほどに、迎え入れて。
わたしのときとは比べものにならないほど、ていねいに、たんねんに、
貞潔を穢した兇器を、ねぶり抜いてゆく。
侵される両の太ももを彩る黒のストッキングは。
ぎらぎらと毒々しい光沢をよぎらせて。
やがてふしだらに、脛からすべり落ちるようにして、堕ちていった。
あん、あん、あん・・・あぁぁぁぁぁぁぁぁん・・・っ!

しずかになったまりあから。
いまいちど、生き血をズズズ・・・と啜り取ると。
男は礼拝するように、恭しく。
まりあの手をとって、手の甲に接吻を重ねてゆく。
放恣に伸びきった脚もとから。
するり、するりとストッキングを抜き取ると。
にまにまと、いやらしい笑み浮かべて満悦しながら。
女をお姫様抱っこして。
廊下で待つわたしになど、目もくれないで。
情婦にした人妻を、夫婦のベッドに投げ込んでゆく。

チチチ・・・
チチチ・・・
鳥の声。眩しい朝日。
すべては、夢だったのか?
妻のまりあは、エプロンを着けて。
かいがいしく、朝の用意に余念がない。
けれども盗み見たノーストッキングの足許には。
綺麗に並んだ、ふたつの痕。
ふくらはぎに浮いた、赤黒い痣のような痕は。
きっとスカートのなかにも、もっと奥にも、つけられているはず。
夫婦のベッドをひと晩譲ったわたしは、けっきょく廊下に寝るはめになって。
じんじんとする頭を抱えながら、やつの残した置手紙をまさぐっている。

ごちそうさま。
これからは、きみの留守を狙って襲うことにする。

たった二行が、わたしの胸を、またも烈しく疼かせていた。
留守でなくても、留守にするのだぞ。
やつはきっと、そう囁くのだろう。
あるいは、わざわざわたしのいるときを狙って。
まりあを公然と支配するのだろうか。
十時にビジネスで面会予定のあの男。
ズボンの下にはきっと、妻のストッキングをこれ見よがしにまとっているのだろう。


あとがき
情事のときに身に着けていたものを、情夫に与えて。
情夫はそれに応えて、自分の脚に通して。
まっ昼間から、夫に見せつける。
おまえの妻を、とうとうここまでモノにしたのだぞ・・・と、宣言するように。
ひとつの支配の形態だと思えます。

まりあの番

2008年02月16日(Sat) 10:49:32

とうとうくじに、当たってしまった。
今年吸血鬼に捧げられる乙女を選ぶくじ。
去年当たった親友のりまちゃんは、あれから家に戻っていない。
いっしょに住んでいたお母さんもろとも、がらんどうの家を残して、消えてしまった。
ふたりに何が起こったのか、だれも教えてくれないけれど。
教えてもらわなくたって、だいたいの察しはついている。
まりあはぶるっと、身を震わせて。
じぶんでじぶんの胸を、いとおしく抱きしめていた。
こんなにかわいいのに。
こんなにきれいなおっぱいなのに。
まだ、彼氏もできない身空で、生き血を吸い尽くされてしまうのか。
約束の夕暮れ刻、吸血鬼の待つお邸に行く途中、
まりあはりまちゃんの家に足を向けた。

開きっぱなしのくぐり戸を抜けて。
やはり開きっぱなしの玄関を通り抜けて。
靴のまま、廊下に足を踏み入れて。
幼い頃追いかけっこをした柱の周り。
晩ご飯をごちそうになったとき、いっしょに囲んだテーブル。
なにもかもが、去年のままなのに。
なにもかもが、記憶のなかとおなじように色あせていた。

お邸に着くと、まりあは革靴を脱いで。
精いっぱいおめかしした、黒のストッキングのつま先を、冷たい廊下にすべらせる。
人の気配のない、がらんどうの広間。
それはどこか、りまちゃんの家のリビングを思わせた。
まりあは所在なげに、部屋の隅っこにしつらえられたソファに腰を降ろして。
目のまえのテーブルにむぞうさに置かれた雑誌を手に取った。
雑誌にはさまっていた紙が、はらりと落ちて。
拾い上げる手が、ふと止まっていた。
見覚えのある筆跡。りまちゃんの字だった。

きょうもあのひとに、血を吸われる。
夕べもあのひとに、血を吸われた。
だのにどうして・・・
こんなことがキモチいいんだろう?
だんだんあたし、ヘンになってゆく。

ぞっとして、紙を元通りにたたんで、テーブルに置こうとしたそのときに。
くくくくくっ。
人の悪そうなくぐもった含み笑いが、足許から聞えてきた。
あっ!と思うまもなく、まりあは足首をつかまれてしまっている。
いつの間にか、じゅうたんの上腹ばいになって。
まりあににじり寄っていた黒い影は。
おびえるまりあのすくんだ脚を、べろでなぞるように舐めあげる。
ぬるっとした生温かい感触が、薄いナイロンを通して素肌にしみ込んだ。
やっ、やめて・・・やめて・・・
嫌悪の情に、まりあはまつ毛をピリピリ震わせながら、抗って。
けれどもいちど、スカートのすそを黒影に明け渡してしまうと。
黒影は容赦なく、スカートを腰までずりあげてしまった。
あっ、ダメ!
スカートを抑えようとする手。もっとはぐりあげようとする手。
手と手のせめぎ合いに、きりっとしたプリーツスカートはもみくちゃになってゆく。
ダメ。だめ。だめ・・・・だめ・・・・・・
太ももに、ぬるり。
ふくらはぎに、ぬるり。
ストッキングごし、パンティラインをなぞるように、ぬるり。
たちのわるい舌の誘惑は、まりあの抵抗をすこしずつ、そぎ落としていた。
あっ、あっ、あっ・・・
りまちゃんも、こんなふうに堕とされていったのだろうか?
じんわりと痺れてしまった頭のなかで、そんな想いが薄ぼんやりとよぎってゆく。
牙が、目のまえに迫っているというのに。
りまちゃんの肌を、容赦なく切り裂いたであろうおなじ牙が。

ひっ。
悲鳴を飲み込んで。脚をすくませて。
まりあはうなじを噛まれていた。
ちくっと刺し込む、牙の感触に。
まりあは縮みあがって、身を硬くして。
まるでそうすることで、血液を一滴でもよけいに体内にとどめようとするかのように。
血を吸い取られてゆくあいだ、じいっと身体をこわばらせていた。
ひとしきり、まりあの血を吸うと。
影は吸いつけた唇を、まりあから放したけれど。
痛いほどつかんだ両肩は、決して手放そうとはしていない。
うふふふふふっ。
蒼ざめた唇に、いま吸い取ったばかりのまりあの血が、バラ色の輝きを散らしている。
わざと見せつけるように、妖しいぬめりを帯びた舌が、口許に着いた血を舐め取って。
影は白い歯をみせて、ひと言「うまい」と、呟いた。
いひひひひひひひひっ。
影はなおもたちのわるい含み笑いをおさめずに。
まりあの着ているブラウスを、びりびりと破いていって。
青いブラジャーのストラップを、長い爪で断ち切った。
ストラップと肩の肉のあいだにすべりこんだ爪は、ナイフのような切れ味で。
ストラップを断つときの、ぶちりという音を耳にすると。
まりあはへなへなと、ソファの下に尻もちをついてしまった。

いい子だ。いい子だ。
黒影は、まりあの髪の毛を、あやすように撫でつけると。
もういちど、まりあのうなじに噛みついていって。
ちゅうっ・・・
聞こえよがしな音をたてて、まりあの血を吸い上げた。
ああ。
吸われちゃう。
ママからもらった、たいせつな血・・・
ぬくもりとともに、生命力まで抜き出されてしまうような、うっとりとした感覚に。
まりあは我を忘れて、吸血鬼にしがみついていた。
よし、よし。
すこしのあいだの、しんぼうだ。
今にこういうことが、気持ちよくなってしまうのだよ。
おじさんが、たっぷり教え込んであげるから。
まりあを自家薬籠中のものにした吸血魔は、まりあをしんそこいとおしげに抱きしめると。
こんどはあらわになった胸に、食らいついていった。

あっ、そこはイヤ・・・
お手入れを欠かさなかった胸元を、鋭利な牙で切り裂かれるとき。
まりあはしんけんにかぶりを振って、いやいやをしたけれど。
影はあざけるように、思い入れたっぷりに、ゆっくりと。
ぷりんと張ったまりあの胸に、牙をしずかに沈めてゆく。
きゃっ。
いやん・・・
ちくりと刺すような痛みは、痺れるような疼きを含んでいて。
疼きはまるで毒液のように、まりあの柔肌にしみ込んでゆく。
あっ、だめ・・・
言葉とは、裏腹に。
まりあの腕は、影の背中にツタのように巻きついていて。
自らの身体を、不埒な暴漢の身体に、ぴったりと密着させてしまっている。
そう、そう。
きみはなかなか、素質があるね。
影はなおも、まりあのことをあやしながら。
それでも情け容赦なく、まりあの血を吸い取ってゆく。

おじさま。おじさま。
殺さないで。死なせないで。
まりあ、ずっといっしょに、いてあげるから。
きっと、仲良くなれるから。
いつまでも、いいお友だちでいられると思うから・・・
若い肢体から血潮を抜き取ってゆく、憎いはずの吸血鬼に。
まりあはあらぬ声を洩らしつつ、懇願している。
うふふ・・・ふふふ・・・ふふふ・・・
小気味よげな男の哂いに。
ふふ・・・ふふ・・・ふふふ・・・
柔らかな女の声が、くすぐったそうに交わってゆく。
胸元を大きくはだけ、スカートのすそを振り乱して。
黒のストッキングを、男の劣情のおもむくまま、破り取らせてしまった女は。
いまはみずから、好むように。
むさぼるような吸血を、受け容れはじめていた。

しばらくね。
ロングの茶髪をなびかせた少女が、ソファに腰かけて。
ミニスカートから覗く、流れるようにすらりとした脚を。
惜しげもなく、人前にさらしている。
まりあがびっくりしたのは。
それが、行方不明になっていたりまちゃんだったから。
ここでの暮らし。愉しいよ。
あたしの身体には、血がほとんど残っていないけど。
おじさま、いやらしいから。
ぜんぶ吸い尽くさないで、いつまでも取っておくんですって。
まりあもきっと、選ばれちゃうだろうなあって思ったから。
一年間我慢して、ここで待っていたの。
ここでの暮らしに慣れたら、ママも連れてくるといいよ。
あっ、ママまで連れて行かれちゃったら、まりあパパがかわいそうか。
うちはママしか残っていなかったから、よかったけど。
だから、ママは通いで遊びに来るんだろうね。
それからひとつ、お願い
りまにも、まりあの血を吸わせてね。
少しだけでいいから。
いま・・・すぐに♪


あとがき
美少女ふたりのたわむれは、言葉にできないほど眩しいです。^^
幼い頃みたいに、柱の周りで追いかけっこして。
無邪気にかえったまりあは、はしゃぎながら襲われていくんでしょうね。^^

婦長との想い出 白のラメ入りストッキング

2008年02月14日(Thu) 07:37:40

さいごに堕とした看護婦が。
白のラメ入りのストッキングを、履いてきたとき。
仲間の看護婦達は、口々に。おめでとうって声かけている。
女は新婦のように、顔赤らめて。
それでもすぐに、忙しい日常に埋もれていった。

思い出しちゃうわー。
わたしが初めて、ラメ入りストッキング履かされたとき。
太っちょの婦長が、オレの隣でひとりごちる。
そうだった。
院長の紹介で、個室の病室におびき寄せて。
肉づきたっぷりの身体つきを白衣ごしに愉しみながら。
しっかりとしたうなじに牙を、突き立てて。
健康な血を、たっぷりめぐんでもらったんだっけ。
二、三の看護婦が、ラメ入りのストッキングを履いてきたとき。
婦長はむやみと、目くじらたてていたけれど。
つぎの日にラメ入りストッキングを履いてきた婦長は、
恥ずかしそうに、抜き足差し足しながらナースステーションに入ってきた。
わけ知りの看護婦たちだけは。
婦長の履いている派手なストッキングの意味を察して。
オレと婦長とに、等分に。おめでとうの目配せを投げてきた。

オレに血を吸われた看護婦は、
仲良くなったしるしに、翌日はラメ入りの白ストッキングを履いてくることになっている。
そういうルールになじんだ婦長は、頼れる婦長ぶりを発揮して。
一週間後、無人の病室に呼び出したオレのまえ。
若い看護婦を三人、ロープで縛って連れてきて。
患者さんの輸血とストレス解消に従事するよう指示していった。
ああもちろん。
さいしょにじぶんで手本をみせたものだから。
若い子たちも、ノッちまって。
それは愉しい夜になったものだった。
翌朝、ラメ入りの脚が、三つ増えて。
ふつうの地味めなストッキングの脚たちに立ち交わっているのを。
オレはほくそ笑みながら、眺めていた。

今夜は夜勤なんですよ。
イタズラっぽく笑いかける婦長の足許が、どぎつい光沢に包まれている。
今でもね。こういうの履いて出かけると。
主人がいうんですよ。
ええっ?病院にそんなハデなの、履いていくの?って。
うちはそれが規則ですからって、教えたら。
時々ようすを、見に来ているみたいなんです。
なにをどこまで見ているのかまで、知りませんけど。
病院では、忙しくしていますからね。(笑)
婦長はどっきりとするようなことを告げたあと。
そっと身を寄せてきて、囁いた。
襲ってね。
気丈な顔をしながらそう告げられると。
オレはつい、くらくらしてしまうのだよ。

さいごの一人!  ~院長、ご来客です~

2008年02月14日(Thu) 07:19:53

やったぁ!
さいごまで堕ちなかった看護婦を、とうとうモノにしたとき。
オレは思わず、ひくくうめいたものだった。
相手は四十なかばの、人妻看護婦。
追い詰められた無人の病室。
もう逃げられないとわかって。かんねんして。
じぶんから、ベッドに仰向けになっていった。
勤務中の看護婦から摂取する血液は100cc未満にしてくれと、院長から頼み込まれていたのだが。
まあいいや。さいごの一人陥落記念に。たっぷり吸っちまえ。
追いかけっこのお相手は、親しみ深い抱擁のなか。
ひと声、うっ・・・とうめいて、気絶した。

われにかえった女は、血の着いたシーツを、羞ずかしそうに取り除けると。
すぐに洗いますから。
乱れ髪を手早く整えて、そそくさと出て行った。
あーあ。裂けたパンストのまま、歩いて行っちまった。
まあいいか。しばらくのあいだ、わざと教えずに。
ここでこうやって、いい眺めを愉しむとしよう。

帰りぎわ。
オレは女を引き寄せて。
血のにじんだ傷口を、もういちどつよく吸ってやって。
安心しなさい。ダンナにはあらかじめ、申し渡してある。
あしたは正式に、私の女になるのだ。
承諾のしるしに、出勤のときには黒のスカートに黒のストッキングを履いて来い。
その姿のまま、私の枕の塵を払うのだ。
なに?それはご勘弁?
ならぬ、ならぬ。お前はもはや、ダンナから私に譲り渡された身。
証拠を見せよう。
お前がいくらめかしこんでも、ダンナは文句をいわず送り出してくれるはずだから。

女は翌朝、言われたとおり、黒ずくめの礼服を着て病院に現れた。
えんぎでもないカッコウをさせるな・・・って、院長にいわれて。
さっそく人けのない病室に、女を引き込んだ。
おいしそうな脚は、薄黒いストッキングにくるまれて。
いつもとはちがう彩を放っている。
うふふふふっ。
恥知らずに昂ぶった唇を、なぞるようにおしつけてやったとき。
女はしんそこ情けなさそうな顔をして、オレをにらんだ。

そう、そう・・・
思うさま血を奪われて従順になった女のたいどに、満悦しながら。
オレは女を部屋の隅っこに引きずっていって。
天井からじゃらり・・・と鎖を垂らす。
治療道具なんかじゃない。これは責め道具。
こいつでお前を、ぐるぐる巻きに縛り上げて。
上から吊るしてやる。
オレの言い草に震え上がった看護婦は。
それでも目をつぶって、オレの意のままになってゆく。
黒の礼服に、鎖を食い込ませて。
べつに垂らしたフックに、スカートのすそをわざとひっかけて。
脚が床に着くくらい、軽ーく吊るしてやったとき。
女は情けなさそうな顔をして。つま先立ちになって。
戸惑ったように、脚をすくませた。
眺めのいいカッコウは、かねて用意の姿見に映って。
もっと恥ずかしそうにそらす視線を、わざと姿見に向けるよう命じてやった。
うふふふふっ。
素人くさい立ち方は、いっそうそそられるものなのだよ。

さあてと。
さっそくオレの女になってもらおうか。
女を縛しめから解き放つと。
なにもかもが虚脱したようになって、シーツの上に手をつく女にのしかかっていく。
うふふふ・・・ふふふ・・・
スカートまくりあげて、お尻を撫でながら。
ガーターストッキングとは、めかし込んだな。
穿いたまま犯されたいのだな。
よろしい。望みをかなえてつかわそう。
言いたい放題を呟きながら。
女の腰に腕を回して。
そおれ・・・
脚をおおまたに、開かせて。
そのまん中に、もうひとつの牙を、ずぶずぶともぐらせてしまっていた。

病室を出るときには、女はほんとう愛人みたいに、オレに寄り添っていた。
そんな態度にますます満悦しながら、廊下に出て。
さあ、オレとべたべたしながら、歩くんだ。
みんなにお前がオレに服従したことを、教えてやるためにもな。
大威張りで、そうつげたとき。
このお!
吠えるような声とともに、鉄拳が炸裂。
オレはみごとに、吹っ飛んで。
廊下の隅まで、吹っ飛ばされた。

こん畜生!
ひとの女房と、やたらいちゃいちゃしやがって。
男はオレのことをもう二、三発ポカリポカリとなぐりつけると。
ああ、これで胸がスッとした。
ガマンして最後まで、だまって覗いているだけにしようと思ったけれど。
あんまりなれなれしくしやがるから、ちょっと頭に来たんだ。
これでおあいこだぜ。吸血鬼殿。
あとは、好きにするがいい。
オレが単身赴任のあいだは、女房のことを支配させてやるからな。
ウム・・・
思わずぐうの音も出なくなったオレを尻目にして。
亭主はゆうゆうと、病院をあとにした。

牙の効き目が、足りなかったか?
首かしげていたオレに、女がとりなすように、しゃがみこできた。
頬についた擦り傷に、ガーゼをあてがって。軟膏を塗ってくれて。
さすがですね。主人にもちゃんと、意地を張らせてくれたんですね。
盗み取られるのは、性分に合わないんですよあの人。
でも、気前はいいほうなので・・・
だれかを襲いたくなったら、いつでも訪ねて来てくださいね。
さいごまで堕ちなかった女を征服するのは、楽しいかしら。
あなたが来たときに主人がいても。
あのひと、もうきっと文句は言わないでしょうから。

ハイソックスのおばさんと悪戯坊主

2008年02月14日(Thu) 06:25:30

おキヨさん、お客さんだよ。
お客さんのとぎれたあいだ、テーブルを拭いていたおキヨさんは手を止めて、
はーい!
ちょっとせかせかとした威勢のいい声で、店主の声にこたえると。
声とおなじくらいせかせかとした足取りで、厨房の奥に引っ込んだ。
おそろいのしましまもようのエプロンに、紺の地味なスカート。
サンダルばきの脚には、だれでも履いているような黒のハイソックス。
白髪頭の店主は、ちょっと人のわるそうな笑いを浮かべると。
  小さなお客さんだよ。
  混んでいるんだよって言ったら、お客さんいなくなるまで待ってるって。
  店の裏で、お腹空かせて待ってるよ。
  きょうはお店のほう、もうあがってもらってえかまわないから。
ああ、はいはい・・・おキヨさんはエプロンをはずして。
ちょっと考えて。
バッグから新しい靴下を取り出すと、いま履いているハイソックスを履き替えてゆく。
ひざ下まで引き伸ばした真新しいハイソックスは、
いままで履いていたやつより薄くって。
ストッキングみたいに、肌の白さを、じんわりと滲ませている。
あとのお掃除、お願いねぇ・・・って、奥の仲間に声かけて。
ごめんください。
店主にきちっと、一礼して。
厨房の裏手に出て行った。

キヨエさんは、街の食堂で働いている、どこにでもいるおばさんだった。
きのう、子どもの友だちの母親から電話があって。
そろそろ来るころかな・・・って思いながら、お膳の上げ下げをしていたのだった。
案の定、息子とおなじ年恰好の男の子が、草むらのなかに腰かけていた。
待ちましたー?
明るい声で、声かけようとして。
その子がなにかを手にして、じいっと見入っているのに気がついて。
思わずじいっと、黙ってしまった。
男の子がしげしげながめてしんみりしているのは、一枚の写真。
じぶんとおなじ年恰好の女の人が、セーラー服のお嬢さんといっしょに写っていた。
きのうの電話の主は、写真の笑顔とはうらはらに、ひどく申し分けなさそうだったっけ。
おキヨさんは、ちょっとのあいだ声を飲み込むと。
なにも気づかなかったようにして。
待ちましたー?
持ち前の明るい声を、男の子の背中に投げてゆく。

あ。すいません。
男の子は持っていた写真をあわててポケットにしまいこむと。
慣れているのか、意外なくらいの素早さで。
おキヨさんの後ろ側に、すっと回り込んでいる。
逃げられないじゃない。
とっさの思いを押し隠して、おキヨさんは古びたイスに腰かける。
昔お店で使っていたイスは、雨ざらしになっていて。
ところどころ、塗料ははげていたけれど。
幸い、がたぴししたりはしなかった。

履き替えたんだね。
足許ににじり寄った呼気が、ひざ小僧を打ったとき。
男の子の声が、すこし濡れているのに気づいたけれど。
おキヨさんは気づかないふりをして、黙って脚を差し伸べた。
この子のお母さんみたいに、エレガントでもなんでもないけれど。
開けっぴろげな明るさが、どこまでも伸びやかな声で。
のんきな返事を、かえしていく。
  そーよ。新しいやつのほうが、いいと思って。
  お店のなか、のぞいていたのー?やらしいなぁ。
ごめん・・・
男の子は、ちょっとくぐもった声をして。
甘えるように、唇をなすりつけてきた。
薄手の黒のハイソックスは。
ぶきっちょにねぶりつけてくる唇の下、くしゃっとゆがんで。
ぱりぱり・・・っ、と伝線を広げてゆく。
血を吸われるのって、いつも不気味なかんじがするけれど。
すすり上げる時の切なげな呼気に、おキヨさんはだまってしまって。
吸われるままに、吸わせてやった。

軽い失血のせいだろう。
スッ・・・と、頭の奥が澄んだようだった。
ひざ小僧を押さえつける手の力は意外に強く、
身じろぎひとつできないように、ギュッと力を込めていて。
おキヨさんは男の子ののぞむまま、血を吸い取られていった。

もう、気が済んだ?
ちょっと蒼い顔をしたおキヨさんが声かけたのは。
男の子が残り惜しそうにさいごのひと口を啜り取って、唇をはなしたあとだった。
男の子が黙って頷いて、口許にぬらつかせたおキヨさんの血を手の甲で拭き取ると。
お行儀わるいぞ、って、笑ってとがめて。
これじゃあ、履いて帰れないねぇ・・・っていいながら。
ハイソックスをもとのやつに履き替えてゆく。
こっちも噛みたい。
さいしょから目をつけていたらしい、男の子の甘え言葉。
もう・・・
ふたたびさし寄せた足許に。
男の子は、甘えるように唇を吸いつけて。
丈夫な厚手のハイソックスには、目だたない穴がふたつ、あいただけだった。

娘を連れて、旅行に出ている間。
心配だったお母さんは、気心知れた友達のところに電話をかけて。
明日あの子のお守りを、お願いしてもいいかしら?って。頼んで回っていた。
受話器をとったおばさまたちは。
申し合わせたように、気さくな声で。
若い子のお相手ね?よろこんでしちゃうわよ。あっ、お土産忘れないでね。
すみませんすみません。
いいからいいから。
楽しげな応酬がすむと。
明日はなにを、履いていこうか・・・って、ウキウキと服選びに熱中するのだった。

あしたはだれなの?
そう。ミチコおばさんね。
あそこの家は、お医者さんだから。
きっと、着飾ってくれるよー。
楽しみだね。坊や。
でもミチコおばさんは痩せっぽちだから。
あんまりいっぱい、吸っちゃダメだよ。
足りなくなったら、いけないから。
きょう、吸いだめしておくかい?
あしたはお仕事お休みだから。ちょっとくらい吸い過ぎたっていいんだよ。

お行儀よく並べられた、ハイソックスの脚。
年頃のお姉さんの脚を見るような、眩しげな目が。
うっとり引き寄せられるようにもういちど、
まだ熱い唇を、おずおずと這わせてきた。


あとがき
年齢にかかわりなく。
ハイソックスの足許って、若々しく見えたりするものですね。^^

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2008年02月12日(Tue) 22:51:04

またまた「~このサイトのご紹介~ 魔性の淫楽への招待状」が拍手を頂戴しました。
ありがとうございます♪
それにしても、不思議ですねぇ。
レベルの低いうちでは、この記事が最多の7拍手。
たんなる冒頭の紹介文なので、ちょっと不思議・・・
まぁ、紹介文といえども気張って描きはしたんですがね。えっへん。
文章のどこかに、萌えの要素があるのだろうか?
それとも中身がどうってことないから、表看板だけ拍手をもらえた?
いかにもありそう・・・・・・。^^;