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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

きみのまりあを、襲わせてくれ。

2008年04月30日(Wed) 06:45:26

透きとおるような蒼白い肌に、憂鬱そうなまなざし。
幼馴染みのリョウタが、そんな表情をするときは。
クラスメイトの男の子たちは、みんな彼のまえを避けて通る。
それは・・・欲望のシグナル。
彼の視線をさえぎるものは、だれかれ問わず獲物にされる。

つかつか・・・っと、ボクのまえに突き進んできたときは。
もう遅かった。
リョウタは半ズボンの脚を引き寄せるように、すりつけてきて。
ボクの股間に、ギュッと腕を回してきた。
矢のように鋭く射込まれた言葉に、黒い戦慄をおぼえた。
きみのまりあを、襲わせてくれ。
依頼でも、まして懇願でもなくて・・・要求だった。
はぜるような息遣いの向こう側。
抑えきれない欲情が、渦を巻く。

まりあはボクの、婚約者。
そうだと知りながら、リョウタは彼女を犯したいという。
ボクにはひと言も、しゃべらせないで。
ズボンごし、股間の昂ぶりをたしかめると。
もういいよ。なにも言うなよ。羞ずかしいだろ?
いいざま、スッと身を離して。
半ズボンの下、紺色のハイソックスの脚を見せびらかすようにした。

まりあからもらったんだぜ。これ。
えっ?
もう・・・そういう仲なの?
まりあのものだというハイソックスは。
男の子の脚には、丈がすこしだけ足りなくて。
脛の途中で、とまっている。
女の子が、自分の履いているハイソックスを、好きでもない男に渡すわけがない。
いかにもほんとうらしい、作り話に。ボクはまんまと、乗せられてしまった。

こんどはお前が、盗んでくる番だぞ。
詰問口調でそういわれて。
ふたり、連れ立って、まりあの家をたずねていった。
なにも知らないまりあは、男の子の来訪にテレながら、
お茶を出すわね・・・そういって、しばらくのあいだ座をはずす。
さあ。いまのうちだ。
リョウタに命じられるまま、まりあのタンスを引きあける。
ふんわりと香る、女の匂いにつつまれて。
思わずうっとりしていると・・・すぐにわき腹を小突かれた。

行儀よくたたまれた紺のハイソックスを、一足。
震える手で、取り出すと。
リョウタはひったくるように、ボクの手から取り上げて。
サンキュー。
口笛鳴らして、囁くと。
素早く、ポケットのなかにねじ込んでいた。

すまねぇな。
あれ・・・ウソだったんだよ。
毒液のような囁きを耳にそそぎ込まれたのは、まりあの家を出たすぐあとのこと。
えっ?
訊きかえすボクに、もういちど。
ハイソックスの脛を見せびらかして。
これ・・・お前ん家(ち)の隣のお姉さんのやつなんだ。

モノにした娘のハイソックスを、剥ぎ取って。
自分の脚に、身に着ける。
男のくせに・・・だなんて。怖くてだれも囁けなかった。
まんまと取り上げられたまりあのハイソックスを。
あいつが自慢げに人前にさらすのは。
きっと・・・そのころには・・・もう・・・
ズボンの奥。ボクはもういちど、股間を震わせている。

春の陽射しが奥まで入り込む、街はずれの廃屋で。
あっ・・・うふん・・・あうぅぅぅぅん・・・っ
ふすまごし、洩れてくるのは、女のコの切なる吐息。
ふだんのまじめさをかなぐり捨てた少女は、思いっきり身体をのけぞらせて。
ボクが聞き耳立てている・・・そう知っているくせに、聞こえよがしに声洩らしている。
ちゅ、ちゅう~っ。
吸血の音、響かせて。
さいしょはボクを、それからまりあをたらし込んでしまった憎い男は。
いま、我が物顔に振舞って。
ボクの未来の妻を、征服してゆく。

ゾクゾク・・・ズキズキ・・・
この昂ぶりは、なんだろう?
まりあも男と示し合わせたように、まるでボクを挑発するように、声洩らしつづけてゆく。
奪るんじゃないよ。盗むんだよ。
お前のフィアンセのまま、まりあをモノにしたいんだよ。
いちばんおいしいところを、もっていかれたはずなのに。
ドキドキ羞じらいながら、初めての刻を迎えるまりあのことを。
ふすまごし、じいっと見つめつづけてしまったボク。

これから毎日のように、犯してやる。
たまには仲間を集めて、まわしてやる。
お前の未来の嫁さんを、みんなで愉しむんだ。
とってもゾクゾクするだろう?お前・・・
羞ずかしがることはないぜ。
意外に多いんだ。そういうやつ。
いつか・・・やってみたかったんだ。
仲良しのやつの未来の花嫁をモノにしちゃうのって。

犯されたくなったら、紺のハイソックスを履いて来い。
まりあには、そういい含めてある。
だから・・・紺のハイソックスは、オレを欲しいというシグナルだ。
毎日、街はずれの廃屋で、待っているから・・・
お前が連れて来るんだぞ。
あいつの命令どおり・・・まりあはそれまで毎日履いていた白のハイソックスをやめて、
毎日、紺の靴下で脛を染める。

あはっ。
嬉しそうな、吐息。
息はずませて、もういちど・・・って望まれても、ためらいなく、腕投げかけて。
けれどもボクのまえでは相変わらずケッペキなまりあは。
まだキスさえも・・・交わしていない。
廃屋に連れて行って。
ふすま一枚へだてて。
はじめて淫乱になりかわる・・・ボクのまりあ。
あはっ。うふん・・・あはっ。あはっ。
聞こえよがしに声あげながら、よがり狂って。
きょうもボクを、昂ぶらせてしまう。

終わったぜ。
リョウタがふすまをあけると。
まりあはこちらからわざと目をそらして、身づくろいをしている。
ブラウスで隠そうとした一瞬、ぷるんとしたおっぱいが目のまえをよぎって。
見られてしまったまりあも。見てしまったボクも。
お互い視線をそらし合って、ドキドキしている。
そんなふたりを、面白そうに見比べながら。
じゃあ、あとはよろしくな。
まりあの脚から抜き取った紺のハイソックスを、みせびらかすように。
大またで、通りすぎてゆく。

いちど閉ざされたふすまが、ふたたび開いた時。
そこに佇んでいるのは、一週間まえと寸分変わらない、清純な女学生。
脚に履いているのは、先週までと変わらない、真っ白なハイソックス。
小首かしげて、もの問いたげに・・・じいっとボクを見つめて。
許してくれる・・・?
え・・・許す、だなんて。
いいの。それよりまりあを、許してくれる・・・?
たちの悪い誘惑をさえぎることのできなかった、ボクの恥ずかしい欲情に。
まりあはわざと、気づかないふりをしている。

帰ろ。
まりあの差し出した掌を、痛いほどギュッと握り締めて。
掌の暖かさを、いっぱいに感じ取って。
つよく握ってくる掌を、もういちど握り返す。
キスさえも交わさないふたりの、唯一の身体的接触。
もう・・・
甘えるように寄せてきた肩に、長い髪がさらさらと流れた。
ほんのちょっとだけ、わざとくっつくと。
結婚するまでは・・・、だ・め・よ♪
くすっと洩らした笑みは、初々しい羞じらいを含んでいる。

廃屋の門を出るとき。
まるであるじに見送られているように。
ふたり、ちょっとだけあの部屋のほうに会釈をして。
恋人同士、手をつないで立ち去ってゆく。
脚が埋もれるほどの雑草をかき分ける脚は、ひざ下まで。
真っ白なハイソックスにおおわれていた。

悪さをしないでね。ボクの血が効いているうちは・・・

2008年04月29日(Tue) 06:46:44

おしまいだね。坊や。
黒衣をまとった男は、にんまりとほほ笑んだ。
齢のわからない面貌は、深いしわを刻んでいたけれど。
ほんとうの齢をみせているわけではなくって。
ただ―渇いているーという証しでしかない。

よくがんばったね。
ここまでうまく逃げ回られるとは、思っていなかった。
でも、愉しい鬼ごっこはもうおしまい。
大人しく、私の腕に抱かれるがいい。
男はそういって、長い長い猿臂を伸ばす。
少年はけんめいにいやいやをして、けれども迫った壁は逃げ道をさえぎっていた。

これっきりで、お別れか。
あしたからべつの子と、鬼ごっこをするのかな。
きみみたいに、頭のいい子だったら愉しいんだけど。
きみが明日から口をきけなくない身体になるのが、とても淋しいね。
男はにんまりと冷たく笑みながら。
どこか淋しげに声を落とす。

少年はきっぱりとした唇をひらいて。
ひと言、男に願っていた。
逃がして・・・だなんて、もう頼まない。
おじさんは、ママの血も、姉さんの血も、吸い尽くしちゃったんだから。
でも、さいごにひとつだけ、願ってもいいかな?
男はゆっくりと、うなずいた。

ボクの血が、おじさんの身体のなかで効いているうちだけは、悪さをしないでね。
約束してくれる・・・?
せつじつな目の輝きに、男は黙って小指を差し出して。
まるで子供同士の約束みたいに、げんまんをかわしていた。
ちくりと刺した素肌は柔らかく、滲まされた血潮は暖かだった。

めまいを起こして、その場にくず折れて。
それでも男は少年を放さないで、血を吸いつづけた。
半ズボンの脚にも、腕を巻きつけて。
血を滲ませたハイソックスを、くしゃくしゃにずり落としていった。
長い靴下、好きなの?ボク何足も持っていたんだけどな。
意識を喪うまえ、少年はぽつんと呟いた。

ガマンしてたの?ほんとうに?
数日経って。おなじ公園で。
少年はブランコを揺らすのをやめて、男を見つめる。
ふらついた足どり。蒼ざめて褪せた頬。
男は約束を、守ったらしい。

震える手に握り締めて、差し出されたのは一本の杭。
これでわたしの胸を突けば、ママも姉さんも戻ってくる。
けれどもそうすると、小父さんとお別れになるんだね?
少年はなぜか淋しげに、ほほ笑んで。
男もひどく淋しげに、笑みかえしている。

突き刺さる杭に、男はちょっと顔をゆがめて。
それでも救われたような顔をして、それっきり、身体の輪郭を透きとおらせていった。
頬に走るのは、ふた色の暖かい呼気。
それがよみがえったママや姉さんのものだとは、
振り向かないでもわかっていた。

足許に散った、色あせた花びらは。
男がこの世に残した形見。
拾いあげた少年は、ナイフで指を切って、花びらたちにしたたらせてゆく。
淡い緋色の花びらは、濃厚な深紅にしずかに浸されてゆく。
それを見守っていたママや姉さんも、少年の血にわが血を重ねてゆく。

さいしょは姉さんの友だちに化けてきたんだよね?
それから、とっくにいなくなったはずのパパに化けてきたんだよね?
ボクのまえでは、本物の姿をして現れたんだよね?
どうしても、キミだけは偽る気分にならなかったのさ。
うつろな声に秘められた想いを、満足そうに受け止めて。
少年は真新しいハイソックスの脚を、男に見せびらかしている。

こんどはボク自身に、化けるつもりなんだね?
いいよ。ボクの彼女を、紹介してあげるから。
でも・・・悪さをしちゃ、ダメだよ。約束だからね。
悪さの意味は・・・血を吸い尽くすということだね?
もうひとつの意味を故意に押し隠した吸血鬼に、少年はくすぐったそうなウィンクを送る。

長い靴下が、好きなんだって。
ボクはねずみ色のハイソックス。彼女は真っ白なやつ。
ママは黒のストッキングで、姉さんはてかてか光る肌色のやつ。
ディナー中のテーブルの下、みんなくすぐったそうに脚を組み替えて。
すっきりとした脚の線に、活き活きとしたバラ色を沿わせてゆく。
命がけではなくなった鬼ごっこは、約束どおり三十分後に始まるのだろう。

抱いて。

2008年04月29日(Tue) 06:26:16

いつも顔をあわせるあの女は、その身にたっぷり、オレの好物をしみ込ませている。
香りに魅かれるようにして、オレは女につきまとい、
女はいやそうに顔しかめながら、電信柱によりかかる。

背中、痛くない?
圧しつけた電信柱の感覚が、女の身体を通してこちらまで伝わってくる。
女はぷいと、そっぽを向いていて。
吸い出した血潮の生温かさだけが、オレの心を染めた。

感謝してるよ。
オレがうそぶいたって、女はとっくにオレのウソなんかお見通しで。
どうせ空っぽにした酒樽にくらいにしか、想っていないんでしょう?
そういって、ひねくれてみせる。

くたびれちゃった。やなことばっかりだよな・・・
珍しく、女に愚痴ってしまった。
女は大きな瞳を見開いて、かわいそうね、と慰めてくれる。
珍しいいたわりに、ざわざわと胸ゆらめかせて。
抱きついた腕に、いつにない力がこもっていた。

弱いのね。
オレのことか・・・?
誰だってさ。
女はだまって、オレをみあげて。さいごにひと言、ささやいた。
抱いて。


あとがき
書きつづっているうちに、女の正体がわかりました。^^

桜は散っちゃったし。

2008年04月29日(Tue) 06:20:13

春のなかばは、肌寒くって。
生えかけた若葉も、凍っている。
お隣のお姉さんは、お嫁に行っちゃったし。
桜も散っちゃったし。

街に入り込んできた黒い影は。
ボクの毎日を、魔法のように塗り替えた。
ママは男と出歩いているし。
桜も散っちゃったし。

外に出かけたって、いいことなんか何もない。
気になるあの子は、誰かとデート。
白いキャンバスは、ヘンな色に染まっちゃったし。
桜は散っちゃったし。

窓の外の明るい景色は、ボクのものではない。
それは人ごとみたいに、そらぞらしい風に吹かれるばかり。
まだまだ外は寒いし。
桜は散っちゃったし。

耳もとでささやくあいつは、過激にボクをそそのかして。
ボクは季節はずれのマフラーを巻いて、そのくせ下には半ズボンなんか履いちゃっている。
やっていることは、ちぐはぐだし。
桜は散っちゃったし。

ハイソックスごしにまとわりつく空気は、ひどくそらぞらしくて。
けれどもいけない誘いに、ボクは胸を高鳴らせている。
人目を気にしたって、しかたがないし。
桜は散っちゃったし。

花嫁たちの純潔

2008年04月25日(Fri) 20:21:02


ふーっふっふっふ・・・
笑い声に、エコーがかかっていた。
まるでテレビの子供向け番組に出てくる、怪人みたいだった。
壁ぎわに追い詰められて恐怖に震えているのは、新妻の緋紗代。
さっきまでおおぜいの親類友人に囲まれて、紺のカクテルドレスを着てはしゃいでいたのが嘘のように。
怯えて、縮み上がってしまっている。
部屋の外から斜めに射し込んでくるおぼろげな照明が、侵入者の影を長く引き伸ばしていて。
人間離れしたその人影は、ピンクのスーツ姿にゆっくりとおおいかぶさってゆく。
ただならぬ光景のはずなのに。
彼女を救うため足が前に出ないのは,いったいどうしたことだろう?
それもそのはず。
新郎の範彦はひと目侵入者と視線を合わせた瞬間、どうやら催眠術にかかってしまったみたいなのだ。

きゃっ。
緋紗代が恐怖に引きつった声をあげた。
抱きすくめられた腕の中。
ピンクのスーツに、不自然なしわが走った。
荒い息とともに解かれてゆくブラウスのタイ。
首すじにあてがわれた唇は、しつようなくらいつよく、女の肌を吸った。
うーっ。
顔をしかめて目を瞑り、なおも痛そうに眉毛がピンと吊りあがる。
吸いつけられた唇のすき間からは、ぽたぽたと赤いしずくがしたたり落ちた。
ちゅう~っ。
人をこばかにしたような、あからさまな音をたてて。
目のまえで緋紗代が、生き血を吸い取られてゆく。
吸血鬼だっ!
範彦はけんめいに、声をあげようとしたけれど。
カラカラになった喉はこわばって、ひくいうなり声を洩らしただけだった。
満面・・・いや身体じゅうがほてったようにのぼせていて、いつもとようすがひどく違っていた。
あ。オレ・・・どうかしてる・・・
昂奮してるんだ・・・って、気がついたときには。
新妻は、「うーん」とひと声呻いて、ベッドのなかに埋もれかかっていた。

く、ふ、ふ、ふ・・・
ピンクのスーツのすそからにょっきりと覗く緋紗代の脚は、黒のストッキングに包まれている。
薄手のナイロンごしに透ける白い脛に、惹きつけられるように。
怪人の唇が、ヒルのように吸いついた。
ナイロン製のしなやかな生地のうえからにゅるりとなすりつけられた唇は、そのままもの欲しげな唾液を光らせながら、脚線美をなぞるようにぬめりあげてゆく。
ストッキングに走るひきつれやたるみが、足許を彩る気品を猥褻な色香にかえていった。
ぐ、ふ、ふ、ふ、ふっ。
もはや、疑いなかった。
範彦の花嫁に向けられた欲望は、吸血だけにとどまらなかったのだ。
侵入者は肌脱ぎになると、新婦のスーツ姿のうえにのしかかってゆく。
はだけたブラウスやスカートのすき間から、生身の裸体をすべり込ませる。
あ、あっ!やめろ。やめてくれっ!
範彦の叫びは、むなしかった。
ブラウスの切れ端が、むしり取られた花びらのように床に散らばった。
力なくだらりと伸びた脚。
太ももまでのストッキングが、淑やかにも淫らにも映る薄墨色に、凌辱される女の下肢を彩っていた。
侵入を許した瞬間。
抗う手は動きをとめて、目じりからつつっ・・・と、涙がしたたり落ちる。
キュッと結ばれた口許からチラと覗いた歯の白さを、範彦は終生忘れないだろう。


ふーん。
姉さんそれで、落ち込んじゃっているのかな。
義兄からいちぶしじゅうを聞かされた和美は、声がわりした低いトーンで、まるで人ごとのようにつぶやいた。
自室のベッドのうえ、自堕落に寝そべりながら。
義兄も義兄で、そうシンコクな顔つきをしていたわけじゃない。
―――ねえねえ?姉さん処女だった?初夜のときの姉さんて、どうだったの?
無邪気にあからさまな質問を投げてきた新妻の弟に、新婚旅行の土産話みたいにして、初夜のようすをごくかいつまんで説明したのだった。
―――それがさー。緋紗代さん確かに処女だったんだよ。
―――義兄さんが犯すまではね?(笑)
―――いーや、さいしょに犯したのはボクじゃなくて、吸血鬼。
―――え、えー?
和美は面白いねたをつかまえた、という顔をして、次の義兄の言葉を待ち受けた。
ー―ー処女の生き血が好物なんだ。だから緋紗代さん、気絶するまで吸われちまったんだよ。
―――ウソだ。^^
―――どーして?
―――だってー。ボクが吸血鬼だったら、意識のあるうちに犯すよね。
鬼畜だなぁ。範彦は苦笑いをした。
やつの放った毒液でいくら麻酔をかけられていたとはいえ、痛そうに顔をしかめたあのときの緋紗代の面差しは、いつまでたっても忘れることはないであろう。
けれども彼は、もうひとつ「ねた」を持っていたのだ。

どうやって生きて帰れたか、わかるかい?
うーん、まさか吸血鬼氏と仲良くなっちゃったの?
図星なこたえに、内心びっくりしながら、範彦はあとをつづけた。
やっぱり乾いた口調のままだった。
まあ・・・そんなところかな。家にきたときは緋紗代の血を吸わせてやるって約束なんだ。
でもあいつ、処女には目がないからな。
言うんだぜ?
オレが征服した処女は、おまえの花嫁で12人めだ。13人目を紹介する権利をおまえに与えてやろう。
ってね。
それでボクは・・・キミと絵里ちゃんを推薦したんだ。
えーっ!?


ただいまー。
範彦が家に戻ると、迎えに出てお帰りなさいを言ったのは緋紗代ではなくて母の美登里だった。
実家と新居とはそう離れていないとはいえ、やたらと姑が新居に出入りするのは好ましくない。
範彦はちょっとだけ、顔をしかめた。
太り肉で迫力満点の美登里の脚は、てかてか光る肌色のストッキングのなかで、はち切れそうに見える。
母さん、珍しいね。光るストッキング履くなんて・・・思わず口にしようとしたら、思わぬ返事が返ってきた。
お宅の怪人さんが、光るやつ履いて来いっていうのよ~。
そんなストッキング、いつものスーパーに売ってないから、わざわざ街なかのデパートまで行ってきちゃった。
えー!?
よく見ると、てかてかのストッキングはあちらこちらぶちぶちと破けていて、目映いほどの光沢も、裂け目のあたりだけは途切れている。
ちょっと蒼ざめた頬の下、珍しく髪をアップにしてあらわに魅せた首筋には、ぽっちりと二つ、紅い咬み痕が綺麗に並んでいた。
お父さんには、しゃべっちゃダメよ。あの人ったら気が小さいから、気絶しちゃう。

あとから緋紗代に訊いたところだと、母親の振舞いは至極開けっぴろげで能天気なものだった。
きゃ~!どうしましょ。
ウキウキとはしゃぎながら怪人の猿臂に巻かれていって、うなじをちゅうちゅうやられてしまうと、
他愛もなく白目になって、たたみの上に仰向けにぶっ倒れたというのだ。
犯されているあいだも、おほほほほ・・・って。それは愉しそうに笑っていらしたわ。
緋紗代は自分よりも愉しんじゃっているようすの姑に、ホッとしたような困ったような、フクザツな顔をしていたけれど。
だってお義母さま・・・長いんですもの。
母の情事を語るさいちゅう、しじゅう不満げな顔色をしていた理由の大部分は、案外そんなあたりにあるのだろう。
そう。
新婚旅行帰りの彼女が元気がなかったのは、夫以外の男のために純潔を奪われたショックなどではなくて、たんなる失血と度重なる情交によるものだったのだ。

母さん頼むよ。破けたストッキング履いたまま帰るのだけは、よしてくれよ。
だって~。このストッキング高かったのよ。四千円もしたんだもの。
値段の問題じゃない。
いちど破かれ脱がされてしまったストッキングを、どうしてわざわざ履く気になるのだろう?
節約主義にも、ほどがある・・・
範彦は見当ちがいなところで、ぶつぶつ文句を言っている。
で・・・?
辺りを見回すと、妻の姿がない。
息子の顔色を察したように、母親はどこまでも能天気に言い放ったものだった。
あらー。察しがわるいわね。
母さんなんか、ほんのオードブルなのよ。本当のお目当ては、あなたの奥さん♪
緋紗代さん、張り切ってたわよ~。
ばっちりとおめかししちゃって、新婚旅行のときに着てったピンクのスーツ着込んでいたわ。
愉しげに息子を挑発する姑の声に応えるように、夫婦の寝室のほうから声が洩れてきた。
き、効くぅ~と言っているらしいのを、勤め帰りの夫はかろうじて聞き流している。


夫婦のベッドのうえ、緋紗代はスーツ姿のまま、荒縄でぐるぐる巻きにされていた。
あーあー。
お袋のことを、咎められない。笑うことさえできない。
範彦じしんも、もう能天気になってしまうしか、手がないようだった。
初夜の床を襲った吸血怪人は、女ふたりの血を吸って、鼻筋のとおったいい男になっていた。
水もしたたる・・・とはいうけれど。
母や妻の身体から吸い取った生き血を口許からしたたらせている侵入者は、整った白皙の面貌を輝かせて、憎らしいほどの二枚目ぶりである。
ようこそ。
しらけ切った範彦の声を気にするふうもなく、
怪人は、やあ・・・と気軽に会釈をかえしてきた。
妻が無事ですまなかったのは。
なかば剥ぎ取られた黒のストッキングの裂け目に滲んだ透明な体液からそれと知れた。
悪いが今夜ひと晩、緋紗代はオレの奴隷だぜ?
怪人は範彦の妻の名前をわざと呼び捨てにし意地悪く笑むと、女を促して、おとがいを仰のけさせる。
正座して待ち構える面前に、男は股間をさらけ出して、さっきまで存分な振舞いをしてのけた一物を、受け口になった唇のすき間に割り込ませてゆく。
うう・・・う。
夫のまえでの戯れに、さすがに緋紗代は顔を背けていたけれど。
唯々諾々と相手の意に従うようすと、嫌がっていない唇のうごきとが、すべてを裏切っていた。
妻の口許を濡らしているのは、自分の唾液なのか、男にしたたらされた精液なのか。
ぬらぬらとした淫蕩な輝きは、唇と陰部との区別を難しくしている。

和美くんには、言い含めてきたんだろうな?
自分の意思が通らないわけがない。
そう決めてかかっているような口ぶりにわざと水をさすように、
いちおう、話はしてきたよ。でも、決めるのは本人だからね。
で・・・?いつ、彼女をオレのところによこすつもりだ?
怪人はどこまでも、楽観的である。
そうした楽観的な態度だけは、ガマンならなかった。
なんとか、突き崩してやろうと思った。
まさか・・・どこの世界に自分の婚約者を連れてきて「さあ処女を奪ってください」っていう男がいるものか。
うーん・・・
怪人は腕組みをした。
しんそこ不可解なように首をひねっているようすに、範彦は思わず笑い出してしまった。
怪人の逆立った先端は、いまだに妻の唇に咥えられている。


そうかねそうかね。ぶじ、もどってきたのかね。
ああ・・・ああ・・・よくわかった。和美には私たちのほうからもよく言っておくよ。
それにしても・・・いまさらなことだけど。
わざわざあのホテルを結婚式場に択ぶなんて・・・ねぇ。
白髪交じりになった頭を時おり掻きながら、誠一郎は受話器を握ったまま、妻のほうをチラチラと盗み見ている。
会話の半分しか聞き取れないのに、妻のスミ子はおおよその内容を察してしまったらしい。
電話がまだつづきそうだと見て取ると、夫のほうをチラと見て、そそくさと立ちかけた。
受話器の口を抑えた夫の声が、あとを追いかける。
スポーツ・ジムに行くにしちゃ、ずいぶんとめかしこんだんだね。
夫の冷やかしをさりげなく受け流して、スミ子は黒のストッキングに透ける形のよい脚を玄関へと向けた。

行ってらっしゃい。
玄関先から、表向きだけのにこやかな表情を貼りつけて妻を送り出す夫に、
電話、切っちゃったんですか?
わざと小首をかしげて、訊いてみた。
さぐるような上目遣いをくすぐったそうに受け止めると。
スポーツ・ジムなら汗かいて、化粧直したりシャワー浴びたりするんだろうね?
ええ。髪の毛が濡れていても、ヘンじゃないですからね。
―――浮気に出かけるのよ。
ありありと顔に描きながら、スミ子はしゃあしゃあと応えていた。
この夫婦、仲はいいのだが・・・
合わないセックスだけが悩みの種で、子どもから手が離れてからはなかば黙認のかたちで、スミ子は夫よりもずっと年上の男のもとに入れ込んでいるのだ。
送り出すときに、こうした軽い詮索をして。
それに対して、ミエミエなウソをお返しして。
帰宅を迎えるときには、かすかな痕跡をさりげなく口にして。
迎えられるほうは、アクセサリイのように、情事の痕跡をこれ見よがしに身に着ける。
それが、夫婦のあいだでの儀式になっている。


出ていらっしゃい。遠慮はいらないのよ。御覧になっているんでしょう?
リンと響いた、よどみない声色に。
かなわないなぁ・・・和美は頭を掻き掻き、クローゼットのなかから姿をあらわした。
はは・・・お母さんのほうが、一枚うわ手だったね。
母の浮気相手はベッドのうえで、おうように笑っている。

中学二年生のときだった。
和美が初めて、母の浮気の現場を眼にしたのは。
いつも学校の父母会や授業参観のときに着てくる深緑のワンピースをはだけながら、
見知らぬ男にお尻を腰でつつかれながらアンアンともだえている母。
その光景は、それまでの人生が完璧に塗り変わってしまうくらいに衝撃だった。
黙ってるよ。ボク・・・
ママに優しい小父さんは、無条件にボクの味方。
じじつ、小父さんは引っ込み思案でいつも独りでいた和美の、よい遊び相手になってくれていた。
パパのことは尊敬しているし、キライじゃないけど・・・
でも、小父さんとママのことは黙っているね。
口止め料がわりなのか、濡れ場となる夫婦の寝室は、いつもドアが開けっぱなしになっていた。

女の子の服の着方や化粧の仕方を教えてくれたのも、小父さんだった。
和美は、女の子でも通用する名前だね。
小父さんは男の子にしてはさらさらとしたロングヘアを撫でながら、スカートを巻いた少年の腰を、逞しい自分のひざに乗せてあやしている。
それ以来。
姉の制服や母が浮気現場で着替えたあとのワンピースは、和美の”女の子ごっこ”のかっこうのねたになっていた。
和美の秘密のすべてを握っている小父さんは、いまではだいぶ闊達になった彼にとって、まだ救世主であり王様だったのだ。

範彦くんのお嫁さんは、とうとう頂戴できなかったなー。
王様のあけすけな言い草に、和美は目をぱちくりさせてしまった。
ママはおっぱいをぷりんとさらけ出したまま、小父さんのとなりに正座して、かしこまって耳を傾けている。
えっ?このひと、姉さんのこと狙っていたの?
そういえば。
姉の制服を和美に着せるときの小父さんの顔つきは、ただごとじゃなかった。
お互い同性愛の趣味はかなったから、どうのこうのということはなかったのだけれど。
緋紗代のハイソックスを履いた和美の脚への執着は、かなり濃いものがあった。
たたみのうえに寝そべらされて、長いこと、ハイソックスのうえからふくらはぎを吸われつづけたのだったのだ。
たんなるフェチじゃ、なかったんだー。
母親似だった緋紗代に関心がいったのは、母にそそがれた濃い愛情と無縁のものではなかっただろう。
そして、和美も母親似だったのだ。

こんどは、和美くんのお嫁さんを世話してもらおうかな?
予期したとおりの言葉に、和美はスカートの奥で勃ってくるものの気配を消そうと、やっきになっている。


お嫁さんを世話する。
ふつうは、独身男性のために花嫁候補を見つけてくることをいうはずだ。
まだ世間の狭い和美にも、さすがにそれくらいの言葉の知識はあった。
ところが親切な小父さんのお邸で呟かれた「世話」は、それとは正反対のもの。
だって和美には絵里という、同い年の婚約者がもういるのだから。
「こんどは、和美くんのお嫁さんを世話してもらおうかな?」
それは、すでに定まっている婚約者に、暗に逢わせろと言われたのとおなじこと。
母親の例からして、逢わせる以上ただですまないことは、わかり切っていた。
そして、いつも親切な小父さんは、和美にとって王様なのである。
でも。
じぶんからすすんで、花嫁の純潔を食い散らされたいなどと願う男の子なんて、はたしているんだろうか?
和美にはまだ、いっさいがナゾである。


ようこそ。
和美が連れてきた絵里をまえに、小父さんはとても鄭重だった。
まるで上流階級の家が他所のお宅の嫁入り前のお嬢様を迎えるような物腰に、ボーイッシュな絵里はすごく恐縮して、仔猫みたいに小さくなっていた。
気をつけて気をつけて。
コーヒーを淹れてあげましょう、と親切な小父さんが引っ込むと。
和美は小声でそういいながら、絵里の横腹を小突いた。
えー?だって・・・
絵里の声は、必要以上に大きい。
いい小父さまじゃないの。貴族みたいにエレガントだし~。和美も見習ったらぁ?
そ、それはたしかに、否定しないけど・・・
和美はまだ、ごもごもと口ごもっている。
ツタのからまるお邸なんて、めったに入れないもんね。和美が連れてきてくれなかったら、お母様にお願いしてつれてきてもらおうって思ってたんだけど。
えー!
よかった。
ママはいちばん、信用できないや。
なにしろ、小父さんとぐるなんだもんな・・・
和美はひそかにほうっと安堵の吐息をついた。
女の子の純潔を守る・・なんて。なんて大変なことなんだろう?
と、ともかくここ来る時は、かならずボクにことわって。あと、ボクといっしょのときじゃないと、絶対ダメだからねっ。
隣室に引き取った小父さんに聞えないように、絵里の耳もとに、吹き込むような性急さで囁いたけれど。
いちばん信用のおけないの、じつはボク自身だったりして・・・
このあいだ、母の浮気現場で「お嫁さんを世話してほしい」って小父さんに迫られた時。
スカートのなかで勃ってしまったことを、ありありと思い出してしまっていた。


ボクのお嫁さんの純潔を、ふたりの男が狙っている。
ひとりは、姉さんの初夜を襲った怪人。
こいつは、義兄さんのお母さんまでモノにしてしまった「前科」をもっている。
もうひとりは、親切な小父さん兼和美の王様。
こちらも、ママをたらし込んで、一家の日常に侵食している・・・という「実績」がある。
でも、姉さんのことは狙っていたのに、とうとう挙式当日まで手を出せないで。
けっきょく怪人に、おいしいところをさらわれてしまっている。
かわいそうだな。小父さん。
やっぱり小父さんにしようかな。
それとも、記念すべき13組めのカップルになってみようかな・・・って、迷いかけて。
ふとわれに返る。
冗談じゃない。絵里ちゃんの純潔は、ボクのものなんだ。

10
和美くん。和美くぅん。
表のドアをどんどんと叩いているのは、範彦義兄さん。
和美?かずみぃ!?
隣の部屋までようすを窺いに来ているのは、ママとパパ。
はさみ打ちだ。絶体絶命だ。
ようやく逃げ込んだはずの絵里の家は、もう無防備同然だった。
和美は絵里とふたり、手を取り合いながら震えを抑えきれないでいる。

夕べのことだった。パパまで意外なことを言い出したのだ。
お前、絵里さんのことどうするつもりなんだ?
どうするつもり・・・って?
なにげなく訊きかえしてみたら、いかにも愚問だといわんばかりに。
絵里さんをどなたに差し上げるのか、もう決めたのかな?
パパは惜しいことをしたんだよ。
ママと結婚したのは、都会だったから。
この村の風習どおりなら、ほんとうは真っ先に小父さんに逢わせてあげるところだったんだけど。
じぶんでスルのよりも・・・はたで観ているほうが。じっくりと、観察できるものだよ。
え?え?え?
するとパパは、小父さんの味方なの?
少なくともママを犯されちゃっていることは、小父さんとのあいだになんの溝も生んでいないらしい。
いや・・・ちょっと・・・それは・・・
いい加減にごもごもと返答をあいまいにして、そうそうに自室に引き取ってしまったのだ。

朝起きてみると。
裏庭の植え込みには、例の怪人が。
パパとママの寝室には、小父さんが。
息を潜めるようにして、ボクの部屋を見あげているのだった。
逃れるようにして、家を出た。
でも、どこへ行けばいいんだろう?
足は知らず知らず、絵里の家の方角へと向かっていた。

けれども、追っ手に容赦はなかった。
絵里の家には、あっという間に二人の標的にされていた。
止めを刺したのが、絵里の母親だった。
絵里ちゃん、出ていらっしゃい。だいじなご相談があるの。
襲われる・・・という本能的恐怖も、母親の命令にはかなわなかった。

択ぶ必要は、ないのですよ。
絵里の母親は、優しく笑っている。
けれども絵里によく似た彼女のうなじにつけられた赤黒い痕に、和美は油断のない視線を這わせている。
あ・・・キズのことですね?
よく気のつくたちの絵里の母親は羞ずかしそうに笑みながら、娘のほうをかえり見て、
ママも、お嫁入りまえに済ませたことなのよ。
怖ろしい言葉を、口にしていた。
左右に控えていたはずの怪人と小父さんが、影を薄ぼんやりと滲ませあってゆく。
ふと見ると、ふたりはおなじ姿になっていた。

そういうことなのだよ。
和美の父親は、息子の肩をぽんと叩く。
お前の負け、といわんばかりに。
昼間はツタのからまるお邸の主人。
夜になると街を徘徊する怪人。
どうやら分身の術も、心得ていられるようだから・・・同時にふたりの女を愛することもできるのだよ。

11
行ってくる。
ウン、気をつけて。
血をあげてくるだけだから、だいじょうぶよ。
そうだよね。もちろんだよね。
くどいほど念押しをして、指きりげんまんまでして。
和美は絵里と見つめあう。
分かれ道の行き先は、むろんツタの絡まるあの邸。

処女の血が欲しいんだって。
だから、お嫁入りするまでは、安全なんだって。
ぜんぜん信用できない、そんな言い草を。
あえて鵜呑みに信用して。
和美は絵里を送り出している。
制服のスカートの下。
真っ白なハイソックスに滲んだ赤黒い血のシミだけで、ひどく昂ぶってしまったけれど。
昂ぶりがおさまる気配は、まったくない。
きょうの絵里は、夏もののセーラー服に、黒のストッキングを合わせていた。
黒のストッキング。
姉さんが新婚初夜に穿いていたもの。
ママが男と逢いに出かけるとき、きまって脚に通してゆくもの。
薄黒いナイロンは、絵里のすらりとした脚を、じんわりとなまめかしく染めている。

絵里がお邸をさがるとき。
絵里の母親は和美に電話をかける。
娘の御用がすみましたので、迎えに行ってくださいね。
ハイ、お母様。
和美はよい子の見本みたいな素直な受け答えをすると、受話器を置いて、両親に行ってきますを告げに行く。
ママは庭先で服を着崩れさせて、地べたに仰向けになったまま、若い男たちの相手の真っ最中。
パパは縁側に出て、妻の所業など目に入らないような顔つきで、新聞を読んでいる。
将来はパパみたいにならなくっちゃ。
和美はひそかに、そう思っている。

ツタの絡まるお邸の奥深い部屋のなか。
絵里は白いセーラー服に、吸い取られた血をぼとぼとと落とされて。
夢見心地になっている。
処女でいられたのは、小父さんが処女の生き血を獲るあてをべつに見つけるまでのことだった。
絵里が、太ももまでのストッキングを着けるようになりました。
彼女の母親がそんな報告に訪れたとき。
両親はおめでとう。これで絵里さんも一人前の女ね、って祝福してくれた。
嬉しいのか、羞ずかしいのか・・・
立ちするほど勃ってきた一物が、ズボンのなかできゅうくつそうにヒクヒクとしていたっけ。
いまは、甘酸っぱい想い出だった。

お邸に着くと、たいがい客まで独り待たされる。
かなり長いこと待たされることもあった。
几帳面な絵里だったが、こういうときだけはさんざん待たせてもわびひとつ言わない。
髪の毛が濡れてるね。
シャワーを浴びたのよ。
首筋のキズ、広がっていないかい?
ええ、ヘイキ。だいじょうぶ。
スカートのすそが濡れてるよ。すこし匂うね。
レディに失礼な質問だわ。
別れぎわ、なにを渡されたの?
パンティよ。ベッドのうえに忘れてきたの。
え・・・ベッド?
やだわ。なに想像しているの?疲れたから、ほんの少し休憩しただけよ。
だけど、パンティを脱ぐなんて・・・
暑いから、脱いじゃったのよ。
そう。もうじき夏。
お邸の裏庭も、雑草の丈が高くなってきていた。
半ズボンに白のハイソックスという、子どものような身なりの和美。
ハイソックスのあちこちに泥が撥ねているのを、絵里は決して咎めようとしていない。


あとがき
えらく長くなりました・・・
それもあんまり、面白くないかも。
すらんぷです~(><)

処女の生き血を狙うもの

2008年04月22日(Tue) 07:54:11


だっ、だれだっ!?
紅いじゅうたんの敷かれた、ホテルの廊下。
エイイチの目のまえに現れたのは、干からびたミイラのような長身の男。
特撮ものに出てくる怪人のようなグロテスクな姿に、さいしょは着ぐるみかな?とさえ思ったのだが。
意識を飛ばされる瞬間、これは本物の怪人なのだ・・・と気がついた。
けれどもすでに遅かった。
目のまえのドアノブの向こう、さっき披露宴を終えたばかりの新妻・もと子に危険を報せるいとまは、残されていなかった。

もと子さん?入るよ。
いつもと変わらないエイイチの遠慮がちな声色に、もと子は苦笑しながら、腰かけていたベッドから立ち上がった。
もう・・・いつまでたったら「さん」づけをやめるのよ?
気軽に押しあけたドアの向こう、エイイチさんのほかにもうひとりの人影をみとめて、もと子はちょっとびっくりした。
新婚初夜の部屋を訪れようというのは、よほど図々しい人なのか、親しい人なのか、それとも・・・?
紹介するよ。ボクのお友だちなんだ。もと子さんも、仲良くしてくれると嬉しいんだけど・・・
何気ない口調の向こうに立ちはだかっているのは、どうみてもミイラそのものとしか思えない、干からびた長身の男。
獣じみた瞳を、らんらんと輝かせて、もと子のほうへと迫ってきた。
うぅん・・・
男の視線に射すくめられるようになって、もと子はその場で気を失った。

これから先を見届けるのか、廊下で待っているのか。それはお前が決めることだ。
侵入者のくぐもった声に、エイイチは無表情に「はい」とだけ応えている。
ミイラ男の目力に、すっかり洗脳されてしまっているのだ。
そのままその場を去ろうとしない新郎に、「よほど愛しているのだな」ミイラ男はニヤリと笑んだ。
そうだからこそ、いただきがいがあるのだぞ。
ミイラ男が取り出したのは、ムチのようにしなるワイヤーだった。
しなやかなワイヤーをスーツのうえから巻きつけられながら、エイイチはいつまでも無表情だった。
ベッドに横たえられた、純白のスーツ姿。
眠るように目を瞑っているもと子に、兇悪な意図を含んだ影が迫る。
  助けを呼ばなくちゃいけないのに。
  花嫁を救い出さなくちゃいけないのに。
  なぜ・・・ゾクゾクするのだろう?
薄ぼんやりとなってしまった理性は、胸のおくでひそひそ声を洩らすだけだった。

くちゅっ。
かさかさした唇が、もと子のみずみずしい唇を呑みこんだ。
ウ・・・
嫉妬に胸が焦げるようだ。
花嫁の唇をねっとりと揉みしだくと、ミイラ男の唇はかすかなぬめりを帯びて、柔らかなうなじへとすべりおりてゆく。
きゅうっ。
首筋の一角にひときわつよく、吸いつくと。
かさかさの唇を浸すように、赤い血液がどろりとしたたった。
あ・・・
男の正体を知った時、エイイチの胸をどす黒い閃きが貫いた。

あ、は、は、は・・・
花嫁の血に唇を血浸しにしたまま、ミイラ男は吸い取ったばかりのうら若い血を、花嫁のブラウスにしたたらせてゆく。
ぼた、ぼた、ぼた、ぼた・・・
バラの花びらが、散らされるように、
純白のブラウスは、紅いしずくの水玉もように彩られた。
男はそのまま身をすべらせるようにして、こんどは女の足許にかがみ込んでゆく。

ぬるり。
肌色のストッキングのうえから這わされた唇は、ぬらぬらとしたよだれを含んでいた。
かさかさの膚を、じょじょにうるおわせながら。
もと子の血を吸ったミイラ男は、すこしずつ生身の男へと変容してゆく。
飢えた唇にいたぶりを受けるたびストッキングの表面をよぎるひきつれが、エイイチの目に灼きついた。
なまめかしい。ひどく、なまめかしい・・・
そんなこと、想っている場合ではないのに。
痺れた理性は半開きの瞳で、花嫁に向けられた欲情を、妖しい歓びとして胸の奥まで浸してゆく。
パチパチッ。
薄いストッキングが、男の唇の下ではじけた。
う、ふ、ふ、ふ・・・
男がさらに淫らな意図を抱いていることを、察しないわけにはいかなかった。

もと子は、処女だった。
シーツのうえの紅い痕跡が、その証しだった。
放恣に開かれた太もものあいだ、痕跡は残酷なほど生々しく、花婿の胸を染めている。
見るかげもなく引き裂かれた肌色のストッキングをまつわりつかせたまま。
女は目を剥いて、それでも初めての歓びに、本能を震わせていた。
お前の花嫁は、支配した。時おりわが身を、満たしに来る。心から歓迎するように。
「歓迎します」エイイチの声は、どこまでも無表情だったけれど。
頬にはかすかな愉悦を、滲ませている。
どす黒い渦巻きが、妖しくひたひたと、男の理性をつき崩していたのだった。


ナオキが親友のエイイチの誘いを受けたのは、エイイチが新婚旅行からもどってきてひと月ほど経ったころだった。
結婚間近なカップルばかりを招いているときいて、そろそろお呼びがかかる頃かな?とは想っていたが。
親友の誘いになんの疑念もなく、ナオキは恋人のめぐみを連れて、新居を訪れた。
新居は都会の郊外の真新しい一戸建てだった。
通されたリビングはこぎれいにととのえられていて、新妻のセンスのよさと初々しい気張りを感じさせる。
もと子さん、きれいになったわね。
冷やかすようなめぐみの言葉に、もと子は羞じらうように目を伏せていた。
こいつ、すっかり色っぽくなっただろう?
エイイチの底抜けの自慢に、日ごろ屈折した彼のことを知るナオキは開けっぴろげな笑い声をたててしまった。

女たちが長い話に花を咲かせ始めると。
エイイチはそれとなく、ナオキを別室に呼んだ。
ここにくるカップルは、きみたちで10組めになるんだけど。
ボクに恥をかかせないでくれるよね?
え?なにかまずいことがあった?
いや・・・これから起こるんだよ。まずいことかどうかは・・・きみ自身が決めることに属するがね。
謎めいた親友の言い草に、ケゲンそうになったナオキだが。
突き出された写真をひと目みて、ああそういうことかと合点がいった。
まだ彼女のいない友だちに、お見合い写真を突きつけるように見せられたのは。
ミイラのように干からびた、瞳だけはらんらんと輝かせた男の写真。
びっくりしないんだね。
いままでのやつはみんな、びっくりして、彼女や奥さんを連れて立ち去ろうとして、後ろ姿を襲われちゃったんだけど。
え?襲われた?
そういえば。
彼の家に招かれてから行方不明になったカップル2組もあると聞いていた。
そうだろうね。
いがいなナオキの応えに、エイイチはちょっと意外そうに首を傾げた。
よく知っているんだ。彼のこと。
そう。
彼は一人ぼっちだったころのナオキの、ほとんど唯一の幼馴染み。


公園のブランコに揺られていたナオキは、この街に越してきて間もない少年だった。
引っ込み思案で、友だちひとり作れなくて、きょうも一人ブランコで所在なげに揺られていたのだった。
現れた怪人のグロテスクな姿に、ナオキはなぜか驚きを感じなかった。
じぶんを支配する人間を、本能で察したのかもしれない。
噛まれるままに、うなじを噛ませてしまっていた。
ちゅ~っ。
血を吸い取る音に、くすぐったそうな笑い声をたてると。
お前は、いい子なんだな。
男は別人のようにみずみずしく冴えた頬を輝かせて、少年を見つめた。
差し出したねずみ色のハイソックスを履いた足許に、危険なキスを受け入れて。
ねずみ色のハイソックスが赤黒く染まるのを、面白そうに眺めていた。

何度も逢ううちに。
ボクの血だけじゃ、足りないんだよね?
そういって、つぎの夕方には、ママを連れて公園に行ったのだった。
草むらのなか、仰向けに倒されたママは。
肌色のストッキングに裂け目の広げながら、脚をばたつかせて。
そのうち、静かになってしまった。
吸血怪人に、血を吸い尽くされちゃった?
そんな心配をしていると。
ひどく心地よげな、いままで耳にしたこともないような呻き声が。
苦しくないのよ。気持ちいいだけよ。
無言の報せが、少年を安堵させていた。


あれから十なん年たったのだろうか?
あー!それにしても。
よりにもよって、彼女まで襲われちゃうなんて!
ナオキは男ふたりの部屋のなか、ぐるぐる、ぐるぐる、いつまでも歩き回っていた。
ほら、落ち着くぜ。
エイイチが差し出したカクテルグラスには、紅い酒が充たされている。
中身の正体を訊きもせずに、ナオキは一気にあおっていた。
それでいいのさ。
振り返ったエイイチの顔がぼやけ、にじんで、いつの間にかミイラ男のそれとすりかわっていた。
久しぶり。
ナオキの頬に、少年のような微笑が浮かんだ。

高校に入って、彼女ができたころ。
怪人は街を追われて、立ち去っていた。
正体がばれて、棲むことができなくなったのだ。
さいごの晩、ママのところに現れた怪人は、ほほ笑むパパに迎えられて、夫婦の寝室をあけてもらって。
明け方になるまでママとふたりきり、別れをたっぷりと、惜しんでいった。
おなじようにしなくちゃならないね。
彼女・・・まだ処女だと思うから。お手柔らかにね。
ほほ笑みを投げられたミイラ男は、深く深く頷いている。

キャーッ!た・す・け・て・ぇ!!
ビデオ画面のなか、めぐみは満面に怯えをみせて、じりじりと壁ぎわに追い詰められてゆく。
やだぁ。
この場面になると、いまだに羞じらうめぐみは。
いまはもう、二児の母。
子どもの手がかからなくなって、こういうものを夫婦で真昼間から観られるようになるのに、ずいぶんと時間がかかったものだ。
ブラウスの二の腕を、かさかさの掌がつかまえて。
そのまま力づくで、抱きすくめて。
細いうなじに、食いついて。
ちゅーっ!と、処女の生き血を吸い出してゆく。
きゃあっ。
画面のなかの声と、傍らの妻の声が、重なった。
ふふふ・・・
いまのところ、もういちど。
巻き戻そうとするナオキに、
あっ、いやぁん。
肩をぶっつけ合いながら。
それでもめぐみの視線は画面に釘づけだった。
ちゅう~っ。
きゃあっ。きゃあっ。ナオキさん、助けてぇ。
空色のブラウスに血を撥ねかせたまま、くたりと姿勢を崩して、
めぐみはひざを、突いている。
う、ふ、ふ、ふ。
あの晩、花嫁のストッキングの脚を狙った時とおなじ目で。
ミイラ男は、若返った頬に欲情を募らせて。
白いハイソックスを履いためぐみの足許に、かがみ込んでゆく。
あぅぅぅ・・・
こんどうめいたのは、ナオキの番。
初めて会った公園で、自分の血をしみこまされたねずみ色のハイソックス。
そのときの記憶と、彼女を初めて襲われた時の記憶が、おりまぜになってゆく。
はい。きょうはここまでね。
玄関に聞えてきた子どもたちのはじける声に、
奥さんはわれにかえって、テレビ画面を消してゆく。

ストッキングを引き抜く男

2008年04月20日(Sun) 07:52:24


いつも、すまないね。
男はひっそりとそう呟くと、ようやく妻のうえから起きあがった。
妻は土気色の顔をして、ぜいぜいと肩で息をしている。
空色のブラウスにも、濃紺のスカートにも、点々と散らされているのは、血。
男はいまいちど妻の首筋に唇を這わせると、傷口をつよく吸って、ずるりと血潮を吸い取った。
ア・・・
妻は眉間に手を当てて、眩暈に耐えている。
なされた暴行は、吸血だけにとどまらなかった。
はだけたブラウスの下から覗く、ストラップを断たれたブラジャーと。
太ももまでたくし上げられたスカートの下、チリチリに裂けている黒のストッキング。
妻の身を襲った悪夢のような嵐は、残酷なまでにありありと、その痕跡をとどめている。
それでもわたしは、重苦しい眩暈と、じんじんと疼く首筋の痕に幻惑されて。
いつものように薄ぼんやりとして、ことのなりゆきを窺っているだけだった。

手土産を頂戴するよ。う、ふ、ふ、ふ・・・
男は妻の足許にかがみ込んで、無造作にスカートのなかに手を突っ込んだ。
露骨なまさぐりが、スカートを激しく波打たせる。
ウ・・・
妻は悔しげに顔を背けたけれど、満面に滲む愉悦の色を、どうすることもできない。
いただくぜ。
男は冷ややかにうそぶくと、そのまま妻の上にのしかかってゆく。
ぎし、ぎし、ぎし、ぎし・・・
破倫の昂ぶりの下、夫婦のベッドがきしむ音がつづいた。
行為が終わるまで、妻はまぶたをキュッと閉じて、まつ毛をピリピリと震わせていた。
声だけは、あからさまに洩らすまいと、歯を食いしばりながら。
彼女が抑えていたのは、あきらかに愉悦の呻きだった。

ごちそうさま。
男がさも心地よげに口を拭うと。
どういたしまして。
わたしの口からひとりでに洩れるのは、乾いた声。
男は妻の脚から抜き取った黒のストッキングを手にぶら下げて、
妻はなにも見まいと、はだけたブラスの襟元を、身づくろいしている。
口許についた血を、妻のハンカチで拭い取ると。
男は、じゃあな、と告げて、開けっ放しになっていた窓から庭先に消えた。
ぼう然とあとを見送ったわたしたちは、互いに視線を交し合う。
決まり悪げに戸惑った瞳。肩に波打つ乱れ髪。
わたしは黙って妻を抱き、ひと刻の熱情をともにすると、
もうそれ以上は言葉を交わさずに、なにごとも起こらなかったように、日常に戻ってゆく。


男と初めて出会ったのは、あるパーティーの帰り道だった。
すみません。血が足りないのです。
せっぱ詰まった表情に、ふたりで顔を見合わせていると。
献血をお願いします。さ、早く・・・
男は妻の手を引いて、ちかくの民家にわたしたちを招きいれた。
あまりの唐突さに、気を呑まれていると。
男はわたしの目をしっかりと捉え、それから妻の視線を釘付けにした。
軽い催眠に、ふらふらとその場に尻餅をつくと。
鋭利な切っ先のひやりとした感触が、首筋をかすめた。
血を抜き取られるのに、ものの数秒とかからなかった。
唯々諾々と縛られていくわたしを、妻はおろおろと見守っていたが、
つぎは妻の番だった。
妻のほうは、時間をかけて洗脳された。
新調したばかりのワンピースを、くしゃくしゃに乱しながら。
妻は初めての吸血に身をよじってもだえつづけた。
這わされた唇の下。
薄闇に透けて白く滲んだ柔肌が、淫靡に息づいていた。
そのまま凌辱を受けた妻の足許にかがみ込むと、
男はニッとほくそ笑んで。
お土産を、頂戴するよ。
ひっそりと、わたしに向かって呟くと。
ひざまでおろされた肌色のパンティストッキングを、むぞうさにびりびりと裂き取っていったのだ。
男がその日のパーティーの客で、ひそかに獲物を物色していたのだということと、
パーティーの主催者も、夫人をおなじ目に遭わされていた・・・ということは、あとで聞かされたことだった。

それ以来。
週にかならず一度は、男は妻のもとを訪ねてきた。
わたしが留守であろうと、在宅していようと、頓着なしだった。
有無を言わさずに家にあがりこむと、妻をつかまえて、たたみの上にまろばせるのだった。
そういうときに限って、妻はいつも着飾っていた。
男と示し合わせていたのだと気づくのに、時間はかからなかった。
夫のまえで凌辱するのを、愉しむかのように。
男は妻の生き血を吸い、犯してゆく。
帰りぎわ、妻の脚から裂き取ったストッキングを、わたしに見せびらかして。
いただいていくよ・・・とひっそりと告げて。
いつも庭先から、姿を消すのがつねだった。
初めて引き裂かれたストッキングは、肌色のごく地味なやつだったけれど。
そのうちすこしずつ、趣向が変わっていって。
妻の足許から抜き取られてゆくストッキングは、薄くてつややかなものになっていって、
きょうのように、なまめかしい黒のストッキングさえ、惜しげもなく抜き取られるようになっていった。


幾晩めのことだろうか。
男を迎えるようになってから、妻はひどく若やいで、色っぽくなっていた。
服装も決して派手ではなかったけれども、こぎれいになって、
近所の人からも、きれいになったね、と言われるようになった。
そんな妻が装ったのは。
さいしょの晩に身に着けていた、花柄のワンピース。
いつものように、手向かいひとつしないで縛られたわたしの前。
妻は男の胸に腕を突っ張って、いつものようにほんのすこしだけ、抵抗を試みる。
男は女の頬を平手で打って、髪の毛をつかんで、強引に唇を奪った。
凌辱の手口は、いつもさまざまだった。
箪笥から引き出したストッキングで妻を縛り、べつのストッキングで猿轡をかませ、
ひと晩じゅう、犯し抜いたこともあった。
今夜はそのまま、あの夜の再現だった。
くしゃくしゃにされ、淫らに波打つワンピース。
じたばたと暴れる脚。
肌色のストッキングの脛に、べろを這わせて。
男はあからさまに、妻を求めてゆく。
あ、あなたっ!あなたあっ!
妻の叫び声が、扇情的に、鼓膜を侵した。
助けてくださらないの?わたくしこのまま、犯されてしまうの?
責めるような声色が、かえって刺激を増幅させた。
わざとそうしているのを、ありありと感じるのに。
わたしはかえって、昂ぶってしまっていた。
夫として、もっとも恥ずかしいことだった。
目のまえで辱めを受ける妻を救い出すこともままならずに、
ひたすら、ただの男として、昂ぶりつづけていたのだから。

ワンピース姿を、長々と床に抑えつけてしまうと。
チャッ、チャッ・・・
男はワンピースを、引き裂いてゆく。
妻の理性や礼節を、その身から引き剥いでいくかのように。
キャッ!ヒイッ!!
怯えるような悲鳴が、あきらかに愉悦を含んでいる。
男は妻を床に抑えつけたまま、ワンピースをたくし上げて、後ろから交尾した。
あぁぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・
喉の奥から振り絞るような絶叫が、狂おしく耳の奥にこだました。

いただいていくよ。
男がわたしの鼻先にぶら下げたのは、妻が穿いていた肌色のストッキング。
みるかげもなく引き剥かれた薄手のナイロンは、どこか淫靡でいやらしい艶を帯びている。
私は浮かされるように、唇を震わせて。
信じられないことを、囁いていた。
今夜のやつは、わたしにもらえないか?
ふふっ。
薄闇の向こう、男はひっそりと笑んでいた。
いいだろう。
その代わり・・・オレの分はべつに頂戴するよ。
ああ・・・
スリップ一枚になった妻は、表情を消して、
真新しい黒のストッキングを脚に通してゆく。
頭の後ろで縛った黒髪を、ゆさゆさと揺らしながら。

夫婦と彼との新しい関係が、その夜からはじまった。

夫のまえでするのだけは、やめてください・・

2008年04月20日(Sun) 01:12:28

夫のまえでするのだけは、やめてください!
妻の叫びに、揶揄がかえってきた。
だいじょうぶだよ。あんたのご主人は、もう酔い酔いさ。
いちどオレ達に噛まれちまったら、もう理性はあちらに吹っ飛んじまうんだから。
そう。
わたしのうなじのつけ根には、さっき噛まれた痕が、じんじんと疼いている。
まず夫が襲われて、身体じゅうの血を抜かれ、理性をうしなわさせられる。
それから妻が襲われて、血を吸われ凌辱を受け、さいごに身体がからっぽになるまで血を抜かれる。
住み着いた街では、ひそかにそんな言い伝えが残されていた。
わたしはリビングに両脚を投げ出したまま、夫婦の寝室に引きずってゆかれる妻を、ぼんやりと見送っていた。
犯されるところを、夫のわたしにだけは見られたくない。
せめてその願いだけはかないそうだと察して、妻の抗いが弱くなった。

ふすまがぴしゃりと閉ざされて、ブラウスを着た妻の背中が隠れると。
さあ、お前も来るんだ。
一人残ったやつが、わたしを力づくで引きたてる。
えっ?
声、立てるんじゃねえぞ。奥さんに内緒で、たっぷり拝ませてやるんだからな。
恩に着ろよ・・・とでも言いたげな口調で、男は卑猥な笑みを満面に滲ませた。

いやっ!いやっ!やだっ!!
身を揉んであらがう妻のうごきを封じたのは、やはりあの男だった。
たったひと言、妻の耳もとに囁いただけだった。
そんなに声出したら、亭主に聞えるぜ。
抗いがぴたりとやむと、隙を盗むようにして。
男は妻の唇を奪っていた。
噛みつくような、強引な接吻に。
妻は窒息せんばかりに苦しがり、かぶりを振って、
けれどもいったん重ねられた唇を、引き離すことはできなかった。
そうして思う存分、男の匂いを嗅がされていった。

巧みな指づかいが、薄暗い灯りに滲んだ柔肌を撫でいとおしんでいる。
男は獲た戦利品を、すみずみまで確かめるように。
女の素肌に愛撫を滲ませてゆく。
さいしょは嫌がっていた妻が、顔を背けて、まつ毛をぴりぴりと、震わせて。
とうとう隠し切れなくなった吐息を、ほぅ・・・と洩らした。
う、ふ、ふ、ふ・・・いい子だ。はむかわなければ、悪いようにはしない。
男は笑んだ口許から、容赦ない牙を冷酷に輝かせた。
もはや妻は、わたし一人の妻ではなく・・・男どもの戦利品だった。

頼むから。頼むから。妻を吸い殺すのだけはやめてくれ。
ひそひそ声で、わたしは男の相棒に頼み込んでいる。
寝室に二人。わたしといっしょに、もうひとり。
あわせて三人もの飢えた男たちのまえ、妻の身体はいかにも華奢で、
総身をめぐる血をすべて吸い取らせてしまっても、とうてい足りるようには思えなかった。
幾晩かよってきても、かまわない。
ひと晩かぎりで吸い殺すのだけは、よしにしてくれまいか・・・
ふすまの向こうには、刻一刻と血を抜き取られてゆく妻。
わたしは懇願し、憐れみを乞い、服従を誓った。
相手の男が乱暴にふすまを叩いて制止の合図をおくったとき。
わたしは忌まわしい契約書にサインをしたためていた。
契約書の表紙には「貞操譲渡契約書」と、重々しく書かれてあった。

和解は成立した。
夫婦の生命と引き換えに。
男どもはいつでも好むとき、妻を襲う権利を獲得した。
わたしは心ならずも握手を交わして、男どもに「おめでとう」と言わされていた。
さて・・・と。
さいしょに妻を狂わせたやつが、にんまりと人のわるそうな笑みを送ってくる。
もうすこし、愉しませてもらうぜ。
縛ってやるから、ちょっとのあいだだけ、辛抱するんだぜ?
ぐるぐる巻きにされ、目を血走らせたたわたしの前、
身も心もすっかり奴隷になり果てた妻は、四つん這いになってよがり狂い、
さいごは連中に強制されて、勃ったわたしの一物を咥えて、くちゅくちゅと音まで立てて舐め抜いていた。
夫婦の営みでも、ここまで下品なまねは、したことがなかった。
わたしは妻の口のなか、滾った熱情をびゅうびゅうとほとばしらせていた。

来る日も来る日も、男どもは妻を犯しに通ってくる。
近所の人たちは、真夜中の騒音をなんとも思っていないらしい。
よく耳を澄ますと、お隣も、はす向かいからも、
似たような物音や声が洩れてきていた。
血を吸うやつは、吸われるやつを幾人も、確保する必要があるのさ。
妻を狂わせた男とは、すっかり親しくなっていた。
夕方わたし宛に入る携帯メールで今夜のつごうを訊きながら、
それでも夫婦の営みを得る夜だけは確保してくれた。
血を与えすぎた妻が体調を崩したときには、病院通いの付き添いはむろんのこと、
わたしの出張の夜には、不寝番までつとめてくれる。
不寝番・・・ほんとうに体調がわるかったときには、襲ったりはしなかった。
バツ一だったこの男にとって、妻は自分の妻どうぜんだったのだろう。
ほかにも幾人か、おなじように堕とした人妻を持ちながら。
柔肌を噛むときも、生き血を啜り取るときも、妻の顔色や脈拍にまで気を配っていた。
ときには夫のまえで輪姦・・・というような過激な行為にまで走りながら。
寄せられた好意は、相棒の連中にまで行き渡っているらしく。
セックスに十人並みの熱意しかみせなかった妻が、しんそこ愉悦を覚えるまでに、
しんなりねっちりと、素肌を合わせ下肢を侵し抜いていた。
そのうち妻のほうから、体調が悪いの。不寝番をお願いしたいの。そんな申し出を受けるようになって。
そういう夜にはわたしは、二人にわざとだまされて。
ことさら用事を作って、男に不寝番を依頼するようになった。

どれほどの年月が経ったことだろう?
男どもは、あの夜と変わりなく、若い。
妻は男に手を引かれて、小手をかざしてバイバイをする。
いつも・・・わたしを尻目にべつの男に夫婦の寝室に引きこまれるときのしぐさだった。
高校生になった娘も、妻をまねて。
彼氏のまえ、手を振って。
だいじょうぶ。もうすこしのあいだ、処女でいさせてもらうから・・・って、彼氏のことをどぎまぎさせている。
息子の彼女まで、初々しく羞じらいながら。
おなじ約束を交わしているのだろうか、息子は彼女と彼女の彼氏の三人で、勉強部屋にひきとってゆく。
若いひとたちは、うらやましいですね。
和装に身を包んだ母は、優しく笑んでいる父のほうをかえりみる。
少~し、惑ってごらんになりますか?マダム・・・
ダンディな母の愛人が着物の襟首に手をすべり込ませようとするのを、夫の手前軽く小突くと。
父は父で、せっかくだから、お相手してさしあげなさい・・・と、泰然として寛大な計らいをしてしまっている。

ひいいぃ・・・
あっ、うう・・・
どこの部屋からも洩れてくる、愉悦の呻き。
男どもは、それぞれもパートナーの惑う部屋に、足音を忍ばせて。
窓辺から、ふすまのすき間から。半開きになったドアごしから。
最愛の人の濡れ姿を目にして、密かな愉しみに耽りつづける。

夫婦ながら生命を取られる・・・といううわさは。
よそ者たちを大人しくさせるための方便なのだとわかったのは・・・
夫婦ながら彼らと打ち解けてしまったあとのことだった。

誘う笛、琴。そして太鼓

2008年04月19日(Sat) 23:15:01


あら・・・?
目覚めてみると、あたりはいちめんの闇。
父も母も、もう寝入ってしまっているのか、あたりに人声はない。
どうしたんだろう?
ここは、山里深いひなびた旅館。
めずらしく休みが取れたから・・・と、久しぶりの家族旅行だったのだが。
山のうえの見晴らしのよいところまで案内してくれた村の人が、地酒を持ってきたといって父にもてなして、
アハハ・・・とあけすけに笑いあう大人たちだけの会話に、割り込む余地もなくなっていて。
手持ち無沙汰にしているうち、ふと睡魔に襲われたのだった。
服は、昼間のままだった。
校則の厳しい学校に通っていたリョウコは、セーラー服姿のまま、
冷えたたたみの上に横倒しになったように、寝そべっていたのだった。

けだるい・・・なぁ。
いかにもだるそうに身を起こしたリョウコの耳に響いてきたのは、研ぎ澄まされた音色―――
ほれぼれするほど吹き澄まされた、笛の音だった。
古びた柱時計がさしているのは、すでに真夜中を過ぎていた。
だれだろう?こんな刻に・・・?
リョウコは笛の主を、むしょうにつきとめたくなってきた。
いてもたってもいられずに、身を起こして。
ふら・・・と身体が揺れたのは、昼間の疲れが残っているからだろうか?
気づいたときにはもう、革靴をつっかけて表に歩き出していた。


闇が舞っていた。
闇が舞うなんて、おかしい・・・
そうとはわかっていても。
闇が舞っている。
そうとしか、感じることができなかった。
あがりこんだ古びた寺は、住む人もないまま放置されていたらしい。
リョウコの背丈ほどある枯れ草が生い茂る庭に、中まで見通せるほどの障子の破れ。
むざんなまでの、落魄ぶりだった。
それでもなぜか、床だけは場ちがいなほどぴかぴかに磨かれていて、
リョウコが恐る恐るつま先をすべらせた廊下は、まるで御殿のように掃除が行き届いていた。

はっとしたときには、もう遅かった。
背後から迫ってきた闇が、リョウコの口をふさぎ、全身を押し包んできた。
廊下からなかの部屋に引きずり込まれ、たたみにまろばされ、
古びたたたみのしんから冷えた冷たさを頬っぺたに感じながら、
身じろぎひとつできないほどの呪縛を受けて・・・
重たい制服のスカートを、いともむぞうさに、たくし上げられてしまっていた。
うなじに吸いついた、濡れた唇は。
体温を感じさせないほど、冷え切っていて。
ぬるりぬるりと這わされたそいつのすき間から、尖った異物が覗くと、
ジリジリと圧迫されるように、膚を侵されていた。
じゅっ・・・
闇に散ったほとびが。血を抜かれる感触が、なぜかむしょうに心地よくて。
リョウコは制服の襟首をほとびに浸しながら、へらへらと笑いこけてしまっていた。


まあ・・・
孝江はあたりの闇に戸惑いながらも、あわてて身を起こした。
村の人が振舞い酒を夫に振舞って、一杯だけ・・・と注がれ、飲み干したところまでは憶えている。
なれないお酒にちょっと気分が悪くなって、
休みます・・・と夫にいうや否や、睡魔に襲われて、
風通しのよい窓際の部屋にしつらえられたソファに身をもたせかけたところまでは、なんとか記憶を取り戻せた。
けれどもそのあとのことは、なにひとつ憶えていない。
昼間から身に着けたままの着物は、帯のあたりが少し痛くなってきている。
お風呂を浴びようか・・・とっさに帯を解きかけてふと時計を見あげると。
すでに・・・夜中の一時をまわっている。
夫もリョウコも、寝んだのだろうか。
さっきまで耳もとでざわついていた人声は、シンと底を打った静寂に取って代わっている。
ふと、耳を澄ますと・・・
どこかから、琴の音が響いてきた。
お琴。
娘時代、祖母の訓えもあって、すこしはたしなんだこともあった。
けれども結婚してからは、耳にすることさえまれになっていた。
懐かしさ・・・とはまたちがった、えもいわれぬ誘惑にかられて、
孝江は腰をあげていた。
まるであやつり人形のように、ふらふらと。


夫は物堅いサラリーマン。
いちど商用で訪れたこの村が気に入ったといって、たまの休みに彼女と娘を連れ出したのだ。
村が一望に見渡せる小高い山があるだけの、なんの変哲もない山里だった。
ここは料理がいいんだよ。
夫の言うとおり、近在のものたちは総出で夜の支度をしているらしい。
ひなびた村では、遠来の客が珍しいのだろう。
あわただしい雰囲気を屋外に感じながら、人懐こく素朴な村人たちに振舞われるまま、珍しく酒を口にした。
時おり娘に向けられる若者たちの好奇の視線だけには、それとなく母親らしい神経を尖らせながら。
それでも昼間の歩行に疲れていたのか、ソファに寝そべるときには、もう自分自身が無防備だった。

どう考えても、おかしかった。
住む人もなさそうな古寺の周りを、もう二周も足をめぐらしただろうか。
琴の音が洩れてくるのは、まぎれもなくこの寺のなかからなのだが。
灯りはなく、とても・・・人の棲んでいるようには見えなかったのだ。
けれども雅やかな琴の音は、あでやかな舞にも似た響きをかきたてながら。
彼女の鼓膜に迫り、歩みを寺の中へと差し招くのだった。

有無を言わさぬほどの、力だった。
目に見えない力にたぐり寄せられるようにして。
孝江は門をくぐり、靴脱ぎ石のうえで草履を脱ぎ、白足袋の足を床にすべらせた。
そのまま奥の部屋へとふらふらと入り込み・・・後ろから背中を押され、まろばされる。
帯を解かれるとき、堅苦しい和服の締めつけからの開放感に、
膚をあらわにすることへの警戒心を忘れてしまっていた。

琴が、嫋々とかき鳴らされる。
ときになまめかしく。ときに激しく。
はねあげられた着物のすそから覗く太ももに、夫以外の男の魔羅がかすめるたび。
久しく忘れかけていた女のうめきを、
もやはつつしみさえ忘れ果てて、はしたないままに洩らしてゆく。


おや。
池森は枕から頭をあげる。
完全に、眠っていたようだ。
目の覚めるような月灯りのなか、丈のある枯れ草が影絵のように浮かび上がっている。
どん、どん、どん、どん・・・
かすかな地響きに似た、太鼓の音。
くぐもった低い音は、土俗的なまでにプリミティブだった。
池森はふらふらと起き上がると、妻も娘もいなくなっているのを確かめて。
驚きもせずに、表に出た。

ずん、ずん、ずん、ずん・・・
遠鳴りなのか。それともわざと音を忍ばせているのか。
くぐもった太鼓の響きは、低く小さい。
けれども底力のある叩きぶりには、鼓膜を揺さぶるような迫力があった。
ドク、ドク、ドク、ドク・・・
心臓の鼓動が、太鼓のリズムに合わせるように、昂ぶってゆく。
そう、あの夜と同じだ。
はじめてこの村に宿をとった、あの夜と・・・
冷えかけた膚を、男の昂ぶりに染めながら。
池森は足早に、寺をめざした。

雑草だらけの寺の庭には、宴席がしつらえられている。
並べられた太鼓に、撥を振るう若衆は、もろ肌脱ぎになっているが。
音をことさら抑えているのが、撥の手つきでそれと知れた。
チロチロと燃えるかがり火。
こっけいな身振り手振りで、輪を作って踊る男衆。
池森の姿をみとめると、男衆は意味ありげな笑みを投げて、
身振り手振りにことさら滑稽味を添えてゆく。
靴脱ぎ石には、妻の草履と娘の革靴。
その隣に靴を脱ぎ捨てると、男はまっすぐ、いちばん奥まった部屋に向かった。
ドン、ドン、ズン、ズン・・・
背後から迫る太鼓の音。
胸苦しいほど、呼吸が迫ってきた。
心臓を脈打つ鼓動が、突き上げるほど狂おしい。
喉が渇いた。喉が渇いた。
男は息遣いを上ずらせながら、障子を開く。
ドロドロドロドロ・・・
太鼓の連打の下。
半裸に剥かれた妻と娘が、男衆に組み敷かれて。
われを喪って、愉悦のかぎりを尽くしていた。


ふふふ・・・
ハハハハ・・・
女も男も、腑抜けたみたいになって、笑い呆けている。
末座にしつらえられた小型のテレビには、さっき録画されたばかりの笑い絵。
ちいさな画面のなか、妻も娘も、キャーッとか、ひいーっとか、悲鳴をあげて。
けんめいに抗いながらも、都会仕立てのこぎれいな服を剥ぎ取られていって。
さいごには、淫らに舞い狂わされてしまっている。
どうだねぇ。いいあんばいじゃろうが。
じぶんの父ほどの年配の村おさは、酒瓶片手に池森の傍らにどっかと腰を降ろして。
お前(めえ)の女房はわしが真っ先にいただいた・・・と、さも自慢げに教えてくれた。
それはそれは、うちのやつがご厄介に・・・
応える池森も、目は血走って、狂いを帯びている。
いまは妻や娘までも共有するようになった、狂った目。
うへへへへっ、よし、よし。
村おさは野卑な笑い声で肩を揺らしながら、
わざと着物や制服着せてきたか。お上手だわい。
そういって、池森に酒を勧めた。
池森は笑って、杯を受けた。


旅先の村が気に入ったので、住み着くことにしたんだって?
正気の沙汰じゃないな・・・
池森の同僚たちはいちように、肩をすくめてみせたけれど。
会社を辞めてものどかな暮らしが成り立つらしい・・・という噂には。
かなり敏感に、羨望をあらわにしていたのだった。
そのなかの一人、沢松のところに一葉の葉書がが舞い込んだのは、それから数ヶ月経ってから。

夏休みの旅行先は、決まっていますか?よかったら村にいらっしゃい。

たった一行、そう書かれているだけだった。
沢松は池森の筆跡に魅せられたようになって。
あわただしく家族につごうをつけさせると、家族そろって村へと出かけていった。


ドロドロドロドロ・・・・
おどろおどろしい太鼓の音の下。
沢松の妻が、荒れ寺の庭の真ん中に転がされて。
新調したばかりのワンピースに泥を撥ねかせながら、凌辱されていた。
高校生の娘は、すでになん人もの男に犯されたあと、
スカートの奥をさらけ出したまま、放心したようにけらけらと笑いこけている。
もう五十代とは思えないほど若やいでみえる沢松の母親は。
嫁姑入り乱れて受けた凌辱に、ころころと笑いこけながら。
破けておっぱいがまる見えになったブラウスの襟元を気にするふうもなく。
初めて自分を狂わせた男の魔羅を、夫のまえ、頬ばるようにして口に含みつづけていた。

どうかね・・・?ここは、別天地だろう?
悪友の囁きに素直に頷く沢松は、いまでは太鼓の音色に鼓膜を狂わされ心ノ臓を揺すぶられてしまっている。
リョウコさんは、フルートやっていたんだね。
琴を弾いたのは、奥さんだったんだね。
それで、太鼓を叩いたのはオレさ。
まったくおんなじ手口で、オレの女房と娘も、ここでしっかり愉しんじまったのでね。
つぎはだれに、葉書を出すんだい?
欲しがるやつは、決まっているのさ。ただ自分自身が、そういうやつだと自覚していないだけなのさ。
おかげさんで今夜、自覚を深めたよ。おなじ自覚を、ほかのやつにも持たせたいね。
じゃあ、秋祭りに間に合うように、だれかに狙いをつけようか。
ふ、ふ、ふ、ふ・・・
男ふたりの笑いは、いつ果てるともつづいていて。
女たちは、表向き滲ませた嫌悪の情の裡に、密かな愉悦を染み透らせてゆく。

ママのお仕置き

2008年04月18日(Fri) 08:19:37

やだっ!やだっ!やだってば!明日試験なんだよ~っ!血を吸われちゃったら、試験受けれなくなっちゃうよっ!
試験は受けなきゃ、だ~め!がんばってね♪
(たくみに組み伏せ、うなじに唇を近寄せる)
(真顔になって)悪い成績を取ったら、許さない。
え”っ!
がんばるのよ。ママがキスしてあげるから・・・(陶然と目を瞑る)
(必死にかぶりを振って)やだっ!やだっ!やだったらっ・・・!
さあ、おっしゃい。貴方が生まれて初めてキスしたのは、だぁれ?
(黒髪を振り分けて、愛らしくほほ笑む)
え・・・いや、その・・・
(応えには耳を貸さずに、おもむろに唇を突き出して、息子の唇を噛むように揉みしだく)
あ・・・あ・・・ううっ。
いかが?恥ずかしがった罰ですよ。
(妖艶にほほ笑む)
(はっとわれに返って)いや・・・(抱きすくめられた腕のなかからのがれようとするが)
(しっかりと引きとめて)いただきまぁす♪
ちゅう・・・・っ。
―――
ふーっ。おいしかった♪
ひどい、ひどいよ~。明日テストなのにー。
美佐子さんの服着た貴方を襲うのは、愉しいわ♪
あっ。。。(ー_ー;)
(空色のブラウスにモノトーンのチェック柄のスカート、白のハイソックス姿。決まり悪げに目をそらす)
ハイソックス、お似合いね。透けるやつは、男の服には合わないですものね。
(よーくわかっているのよ♪というオーラを放ちながら)
じゃあもうすこし、愉しませてね・・・
あっ、ダメ・・・!
(ハイソックスの脚をじたばたさせるが、つかまえられてしまう)
ちゅーっ。
ああ~っ!(><)
―――
破けちゃったじゃないか~。
(裂けたハイソックスの脚を、決まり悪そうにもじもじさせている)
だって、おいしそうだったんですもの♪
それにもともとこの服は、わたくしが美佐子さんからお預かりしていたんですよ。(がらりと態度をあらためて)それをどうして貴方が着ているの?
えっ!あっ・・・あの・・・それは。(((^^;
言い訳はいらないわ。わたくしだって、後ろめたいことのひとつやふたつはございますもの。
(息子を引き寄せうっとり見つめながら)美佐子さんの血を、あのかたといっしょに頂戴したんですよ。
ええっ!!?
あなたの未来の花嫁ですもの♪あのかたに召し上がっていただくのは、当然ですからね。美佐子さん、うっとりとしていらっしゃって。かわいかったわ♪
そ、そんなぁ~!ボクの人生、台無しになっちゃうよっ!(><)
あら、あのかたがそんなにお嫌?(怖い顔になる)
え・・・そんなことないけど。(((^^;
だいじょうぶ♪まだ彼女は処女よ。だってあのかた、処女の生き血がお好きなんですもの。
服が血で汚れたから、家に着て帰れない・・・って仰るから、わたくしがお預かりしていたのですよ。
かわりにわたくしの服を着て、ご家族お留守のお家にお帰りになったんだわ。
でも・・・着たければ着てもよろしいのよ。その代わり、口止め料はいただきますわね。
あっ、ダメッ・・・
ちゅう~っ。
―――
さあ、お約束なさい。美佐子さんの血をこれからも吸わせてくださるって。
えっ?あの・・・あの・・・
貴方が拒んでも、きっとあの方は美佐子さんを自由に操っておしまいになることよ。
ご自分から潔くお捧げになったほうが、まだしもかっこうがつくのですよ。
えっ・・・?だって・・・
想像なさっていますよね?美佐子さんをあの方に抱かれているところ。
だ、誰がそんなっ!ふしだらなことを・・・
ほ~ら、勃ってるし♪
(昂ぶる股間を、するりと撫でる)
さあ・・・ここから先は、お父様にもナイショよ。
(じいっと顔近寄せて、唇を重ねてゆく)
え・・・あ・・・ア・・・ッ・・・
(放恣に伸びきったハイソックスの脚に、しなやかな筋肉がキュッと隆起する)
あ・・・オ・・・オオオッ・・・
(吐息を洩らす由貴子。振り乱した黒髪を息子の胸に流しながら、ブラウスを剥ぎ取って乳首を吸いはじめる)
だ・・・だめ、だめだって・・・
ねぇ。
なぁに?
美佐子さん、呼んじゃった♪
えっ!?
りぃん。ろぉん。(インターホンの音)
ほら、もう玄関まで来ているわよ。もう間に合わないわね。^^
ごめんくださ~い♪
はーい♪そのままあがって頂戴ね♪
(声だけは明るく、けれども息子のことはしっかりと、腰で抑えつけている)
きゃー。(><)

連れ込み宿

2008年04月14日(Mon) 07:39:02

古びた天井の木目だけが、ことのなりゆきのすべてを見おろしていた。
学校帰りの革製の鞄が、すぐ傍らに転がっている。
さっきまで。
おなじ畳のうえ、愉悦の声をあげていた少女は、もう帰った後だった。
帰りに、フルーツパーラーで待ち合わせて。
甘いものを存分にほおばったあと、彼女は無邪気に笑って、ひと言囁いただけだった。
行こ。
ニッと笑んだ口許に、えくぼを浮かべながら。
彼のことを、隣室に待たせて。
真っ赤なTシャツの胸を、おし広げるようにして。
黒い影の主のまえ、身体を開いていったのだ。
婚約者が、じぶんを裏切る愉悦に身をゆだねているのを。
ゾクゾク胸昂ぶらせながら、いちぶしじゅうを覗き見して。
薄暗い電灯の下。
ストッキングがずり落ちてむき出しになったひざ小僧が、ひどく眩しく輝いていた。

身づくろいがすんだあと、部屋に招び入れられて。
彼女はなにごともなかったような顔をして。
肩に流した長い髪を、上品に揺らしながら。
お待たせ。
とだけ、告げたのだった。
部屋のすみに脱ぎ捨てられた、太ももまでのストッキングを。
彼女はむぞうさに、つまみ上げて。
あげる。
これ見よがしに、彼のまえにぶら下げた。

きりっとした折り目のついたプリーツスカートをひるがえして、彼女が去ると。
彼は男とふたり、取り残されるように部屋に残っていた。
あとはしぜんの、摂理だった。
女ものの靴下を穿いて。
ぴっちりと締めつける、薄手のナイロンに、皮膚を疼かせて。
少年は恋人の代役を、演じ始める。
畳のうえ、身をよじらせるたび。
しなやかなナイロンの呪縛が、少年の血をなまめかしく染める。
これで、あの娘を狂わせたのだ。
きみの口で、きれいにしなくちゃいけないね?
小父さんは気さくに声をかけて。
ズボンのジッパーを、再びおろしはじめた。
ボクのおチ○ん○んを、舐めて。
衝動的に、口走って。そう懇願したのは、いつのことだっただろう?
いつか立場は、逆になっていた。
赤黒く怒張したそいつは、目のまえに迫ってきて。
頭を上から、抑えつけられて。
逃げ道はもう、なくなっていた。
けれども少年は、眼を瞑ってそれを咥えこんでいく。

くちゅ。くちゅ。
にゅる。にゅる。
薄暗い部屋。はぜる唾液の音だけが、洩れてくる密室。
き、み、の・・・母さんを犯したい。
くぐもった昂ぶりに震えを帯びた男の声が、頭上から降ってきた。
こ、れ、で・・・このペ○スで。辱め抜いてやりたいのだ。
昂ぶりに、少年も声震わせながら。
お願い。母さんを犯して・・・ボク、手伝うから。
幾度も繰り返されてきた忠誠の誓いを、その夜も立てつづけていた。

息子さんの写真です。
差し出された写真を手にしたのは。
少年とよく似た面差しの、中年の紳士。
咥えておられるのは、わたしの持ち物ですよ。
男はさりげなく、自分の太もものつけ根に手を置いて。
これで・・・息子さんの花嫁を支配して。
息子さんご自身をも、支配させていただきました。
逆の立場の写真も、ございます。
息子さんのほうから、舐めてほしいと言われましたので。
若いひとの精は、やはり勢いが違いますな。
まるで、ワインの香りを品評するように。
言葉遣いだけは、丁寧でも。
いけしゃあしゃあと、告げられた言葉は。
父親としては、聞き捨てならないほど、忌まわしいものであったはず。
けれども突きつけられたほうの男は、こともなげに相方の笑みを受け流して。
だいぶ・・・お世話になっているようですな。
乾いた声で、受け答えしている。
こう・・・出られてしまうと。なにか、脅迫されているようですが。
貴男は、紳士的なかたのようですから・・・要求はなんでも、呑まなければならなさそうですね。
もの分かりのよいお方のようですな。
そうであればこそ、仲良く共存できるというもの。
男は声をひそめて、父親に囁きかけた。
奥様と、仲良くなりたい。貴男と、兄弟の契りを交わしたい。
耳朶に触れる呼気に、父親はくすぐったそうな翳をよぎらせたけれど。
貴男とおなじ愉しみは、わたしには難しいようだが。
隣から覗くのは、愉しめるかもしれませんね。
婉曲に、帰順の意を表したのだった。

エスコートは、息子さんでしょうな。
そうですね。私がお連れするのは、つぎの機会にしましょうか。
打ち合わせは、かんたんにまとまっていた。
わたしの実家では・・・
娘の祝言の夜に、花嫁の母親は祝い客のまえで身体を開くしきたりがあるのですよ。
愉しみは、なかなかあとまで取り置くことができないものですね。
ふふ。あはは。
男たちは、たちの悪い笑みを交し合いながら。
夫は妻を譲り渡し、男はまた、奴隷をひとり増やしていった。

紹介します。ボクの母です。
ようこそ。はじめまして。
初めてですの。こういうところ・・・
なにが起こるのか。なにをされるのか。
まえの晩、夫にしずかに告げられて。
妻は静かに、御意に従いましょう、と、頭を垂れた。
その夜の愛撫が、まだ身体のそこかしこに残っているけれど。
きっと・・・さらに深い服従を、いまから強いられるのだろう。
女は薄黒く装ったストッキングの脚を、さりげなくたたみのうえに伸べていって。
あなたは少し、はずしてちょうだい。
息子に投げた声色は、ほんのすこし反り返っていた。

ある日は。
ひとつ畳のうえ。
嫁と姑を、並べてまろばして。
色とりどりのスカートやストッキングに装われた下肢に、いたぶりをくわえて。
細目に開いたふすまのかげから洩れてくる、嫉妬に満ちた視線を、くすぐったく受け流しながら。
ひとり、またひとり・・・と、愛し抜いてゆく。
またある夜は。
二階の寝室。階下の寝室。
ふた部屋を、ふたまたかけて。
そのたびに、部屋の男あるじに、場所を譲らせて。
パジャマ一枚で震えている夫たちが、昂ぶりの震えを覚えるほどに。
その妻たちを、娼婦に変えてゆく。
覗いていらしたの?いやらしいわね。
あなた、しっかりしないと、お嫁さんを盗られてしまうわよ。
しゃあしゃあと口にする姑に。
お義母さま、毎晩長すぎますわ。
若妻もまた、横目で夫を挑発している。
すべてはあの一夜のあやまちから始まったこと。
素肌に這わされた一片の唇が、夫婦を、家族を、変えてしまった。

父親の帰宅

2008年04月14日(Mon) 06:39:10

じゃあ行ってくるぞ。
男は藁小屋の入り口になっている莚をはね上げて、広田が止めるのも受け流して出て行ってしまった。
ククク・・・
背後から聞えるのは、老婆の笑い。
さっきのおぞましいやり取りが、まだ広田の胸のなかで高鳴っている。
  お前は、吸血鬼にされた身。
  けれどもまだ、人の生き血を喰ろうてはならぬ。
  まずはこの者に、お前の家族の血を吸わせるのだ。
  ことは順ぐりに、果たさねばのう。
男は広田の家の近所に住まっていた。
ある日突然、家族全員と行方不明になっていた。
  この男も、この男の娘も、女房も。
  みぃんな、わらわが喰ろうてやったのよ。のう?
さいごの「のう?」は、男に向けられたものだった。
男は恭しく一礼すると、家内や娘の血がお気に召してなによりでした、などと呟いている。
  ふふふ・・・
老婆は男の応えが気に入ったらしい。
行け、とみじかく男に命じた。
広田の家族の運命は、こうして定まった。

知らぬ仲ではなかろう。
日ごろ顔つき合わせて暮らしているものに、己の家族の血を啜られるのは、気分のよいものじゃろ?
老婆は顔をすりつけるようにして、小気味よげに笑っている。
待っておるのじゃ。そのうちあれが、よき報せを持ち帰るじゃろうて。
クククククククク・・・
その得意げな笑い声をさいしょに聞いたのは、
真夜中になってしまった帰り道でのこと。
そのあとの記憶は・・・喪われている。
安心せよ。家族はもはや、お前を待ちわびてはおらぬ。
いちど弔われてしまった身なのじゃからな。
弔われて、墓に埋められて・・・その晩のうちにこうして目を覚ました。
そういうことなのじゃよ。
広田の蒼ざめた頬を、老婆はあやすようにいとしげに撫でつづけている。

男が戻ったのは、もう夜更けのことだった。
いただいた。相手は息子さんだったよ。
さすがにすこし、気の毒げであった。
アツシを・・・襲ったというのか!?
取り乱した瞬間の記憶が、また飛んでいる。
どうやら、泣いたらしい。
われにかえったときには、ひどく疲れていた。
気がつくと、老婆に後ろから抱きかかえられて、竹の管のなかにある液体を、喉に注がれていた。
乾いた砂地に水がしみ込むような心地よさに浸されていた。
旨かろう?
老婆の問いに、頷くと。
そもじの息子の血じゃ。
いやらしい笑みが、にたーりと、喉もとに迫ってきた。

シャツを真っ赤にしながら、相手をしてくれたよ。
別れぎわ、あんた願っただろう?
素肌を吸うのはやめてくれ・・・って。
え・・・?
たしかに、藁小屋をあとにする男の背中を追いかけて。
なにかを願ってぶつけたような気がする。
いわれてみれば・・・妻や娘たちの素肌をよその男に吸わせるなど、耐えがたいことであったのだ。
息子さんにも、礼を尽くさせていただいたよ。
お父さんの血の味と、そっくりだね・・・って言ってやったら。
すこし、嬉しそうにしていたぜ?
目のまえにぶら下げられたのは、息子の脚から抜き取ってきたという靴下だった。
ひざ丈の白い靴下にはところどころ、紅いシミが浮いていて。
男のしつような愛撫の痕を、忌まわしいほどにとどめていた。

あんたも来るかい?
どうしてそんな誘いに、乗ってしまったのだろう?
内心の後悔とは裏腹に、広田の足どりは奇妙に軽かった。
公園の繁みに、身を隠れさせられて。いちぶしじゅうを、見届けさせられた。
男と待ち合わせていたのは、たしかに息子のアツシだった。
濃紺の半ズボンの下、おなじ色のハイソックスを履いていて。
噛ませてやるよ。濃い色だったら、目だたないよね?
そう呟いて、きりりと引き締まったふくらはぎを、じぶんから差し伸べていた。
すこし蒼い顔をしていた。
失血に息をはずませながら。
こんどは姉さんを、連れてきてやるよ。
そんな怖ろしいことさえ、和やかな声色で約束してしまっていた。

それから毎晩、男は広田の家に出かけていった。
老婆は苦々しげに見送る広田のことを、いつも小気味よげにほくそ笑みながら窺っていた。
つぎの日に襲われたのは、娘の初美だった。
息子は首尾よく、わたりをつけてしまったらしい。
女学校の白い制服を真っ赤にしながら、娘は泣きべそをかきながらも、さいごまで気丈に振舞ったと聞かされた。
目のまえにぶら下げられたのは、黒のストッキングだった。
男の唇に撫でられて、むざんに裂け目を走らせていた。
親しみの色を浮かべてにんまりと笑んだ口許には、娘の身体から吸い取った血液がまだ光っていた。
広田の嫉妬に満ちた視線に気がつくと、口許をなぞるように指先で拭って、
拭った指先を、広田の唇に沿わせていった。
われ知らず、広田は娘の血を啜り、しずく一滴あまさず舐め取ってしまっていた。

いよいよ今夜は、奥さんの番だな。
うまく堕としてやるから、愉しみに待つといい。
男はそううそぶいて、藁小屋をあとにした。
来い。
広田の手を邪慳に引いたのは、老婆だった。
女房のことが気になるのじゃろ?見届けさせてやる。

家に着いたのは、もう夜更けだった。
よほど気持ちが、昂ぶったらしい。
どこをどう歩いたものか、憶えていなかった。
ただ、いまにいたるまで、鮮明に憶えているのは・・・
黒一色のフォーマルスーツに身を包んだ妻が、両手で顔をおおって、
男に抱きすくめられている光景。
女が顔をおおっているのは。
屈辱からではなく、いま起こりつつある現実を認めたくない・・・という想いですらなく、
たんなる羞恥心からであった。
吸血鬼に、夫とわが子を喰らわれながら、
おなじ牙にわが身をゆだねてしまったというおぞましい現実は。
彼女のなかでは、すでにうっとりするような陶酔につながってしまっていたのだった。
約束を、破ってしまったよ。つい、うっかりとな。
あくる朝、男が照れ笑いしながらそう告げたように。
男は妻のうなじに、じかに唇を吸いつけてしまっている。
愛撫するように押し当てられてゆく唇の下。
熟した血潮がチラチラと、輝きをたたえていて。
それを啜られるたび、妻は押し殺したような随喜の呻きをあげつづけていた。

乾いた道が、どこまでも伸びている。
ここ二週間ほど、雨がなかった。
からからにこわばった地面よりも、もっと渇いたのどをほてらせながら。
男はずんずんと、道を歩んで行った。
すっかりなじみになった広田の家は、もうすぐだった。
そこには男の渇きをうるおすべき血潮を秘めたものたちが、息遣いをひそめて暮らしている。
素肌を吸ってくれるな。
たしかに、男親として、夫として、当然の想いだろう。
けれども・・・男は奇妙な感覚に襲われていた。
ブラウス越しに、胸元に噛みついたとき。
スカートのうえから、太ももを噛んだとき。
薄手のストッキングに淡く染められたふくらはぎに、唇を這わせたとき。
あのときめくような衝動は・・・女の衣裳が秘めるなよやかな感触が呼んだもののはず。
お待ちします。心から。
じぶんの女になった、広田の妻は。
広田に盗み見られていると、どこかで感じながら。
それでもきっぱりと男を見あげ、みずから唇を重ねてきたのだ。
嫉妬に満ちた視線をくすぐったく受け流しながら、女のスカートをたくしあげていったとき。
浴びせられた視線のなかに、愉悦が秘められているのを。
視られるものも、視るものも、感じ取っていた。

二週間ぶりの、帰宅だった。
そのじつほとんど毎晩、戻ってきていたのであったけれども。
面と向かって、家族と顔をあわせるのに、それだけの時間がかかったのだ。
姉を売った弟。
嫁入り前の身を、みずから穢した娘。
夫に見せつけながら、貞操を散らした妻。
互いが互いの事情を、きちんと呑み込みながら。
ただいま。お帰りなさい。顔色がよくないね?ええ、でも平気なんですわ。
ごくさりげないやり取りが、夫婦のすき間を埋めてゆく。
おいしく飲んでいただいているようだね?
ええ・・・お許しくださるでしょう?
かんじんのやり取りだけは、まなざしを交し合うだけで、通じ合ってしまっている。
今夜はお客様をなん人か、お招きしているのだよ。
相手をしてくれるね?お前たち・・・?
うふふ・・・ふふ・・・
暗くなった勉強部屋から。夫婦の寝室から。
受け入れるもの受け入れられたものたちのひめごとが、洩らされた笑み声になって、流れてゆく。
女たちは、黒のストッキングの脚を広げて、
順ぐりに挑みかかってくる男どもを、羞じらいながら、愉しみ合いながら、あしらってゆく。
父さん、手加減してね。
イタズラっぽく笑った息子があてがってくれたのは、彼の未来の花嫁だった。
抱きすくめた腕のなか、夢見心地になった少女をあやしながら。
隣で妻がほかの男に抱かれているのも。
息子が、男同士の愉悦に耽りあっているのも。
嫁入り前の娘が、娼婦のように男たちのまえ、器用に腰をさばいてゆくのも。
すべては明け方までの、夢―――

過去の映像を目のまえに 2

2008年04月10日(Thu) 07:28:50

スクリーンのなか、抗う妻は。
おとぎ話に出てくる、囚われのお姫様。
こぎれいに装ったワンピースを、引き裂かれて。
黒い下着も、剥ぎ取られて。
ぽろりとこぼれたおっぱいを、あわてて隠そうとした手を、とりのけられて。
あああああっ。
揉みしごかれて、のけぞって。
男は妻の反応を愉しむように、じわりじわりと、堕としていって。
じたばた抗う足許を染める空色のストッキングに、うっとりするように、むしゃぶりついてゆく。

もう~。
あなたたちったら♪
隣でいっしょにスクリーンを観ていた妻は。
わたしの頬を、かるくつねった。
なんにも知らされていなかったから、あんなに必死になっちゃったのよ~。あぁ恥ずかしい。
しんそこ羞ずかしそうに、目を伏せながら。
それでも視線は、映像を追いつづけている。
必死に抗う女って、色っぽいからね。
傍らの男は、わたしのことをフォローするように、
冷ややかなくらい、落ち着いた声で。
妻の手の甲を握り締める。
握り締められた掌に。
妻はこれ見よがしに、キッスをして。
うふふふふっ。
わたしを挑発するように横目で盗み見て、笑いこけている。

堕とされた妻と夫。
数週間まえまでは、どこにでもいるふつうの夫婦が。
日常にひっそりと忍び込んできた影のような男に、たぶらかされて。
いまは生き血を吸い取られ、すべてを捧げ抜いてしまっていた。
わたしの魂を引き抜いた男は、意気投合したわたしと示し合わせて。
ある晩ふいに、妻を襲ったのだった。
暗く閉ざされた密室のなか。
わたししか識らなかった身体は、放恣に開かれていって。
そそぎ込まれた精液の熱さに、うぶな若妻はあっという間に堕ちていった。

初めて襲われた、記念すべき一夜。
撮られた記憶は、冷酷なまでに、その夜をあからさまに、再現する。
必死に抗う妻。
素肌を侵され、毒液を注がれる妻。
じょじょに酔わされてゆく妻。
娼婦に堕ちた妻。
いまは無邪気に、イタズラを愉しむように。
わたしのまえ、生き血を吸わせ、着衣のまま身体を開いてゆく。

また、見せてもらいましょうね♪
こんな映像見せつけられたら、いくらあなたでも、昂ぶっちゃうわよね?
からかうような上目遣いに、お茶目な瞳を輝かせて。
この密室のなかでだけは、許して・・・ね♪
ひと言告げたその瞬間。妻は娼婦に変貌する。
薄闇のなか。白い素肌を妖しく滲ませて。
気品を帯びたストッキングの脚は、淫らな艶をよぎらせる。
ひと言告げられたその瞬間。
わたしは血潮をマゾの色に染めあげて。
素肌を淫らに染まる伴侶のまえ、恥知らずな昂ぶりにわれを忘れてゆく―――


あとがき
おんなじようなねたの、翻案です。
ほとんど変わらないですが。(苦笑)

過去の映像を目のまえに

2008年04月10日(Thu) 07:14:25

きゃーあーっ! あ、な、たあぁぁぁぁぁっ!!!
絶叫する妻の声は、スクリーンのなかからのもの。
道代!道代っ!?
あとをつづいているわたしの声も、スクリーンのなかのもの。
見慣れた濃い紫のスーツ姿の妻は。
半裸の男に抱きすくめられて、うなじに唇を吸いつけられていた。
や、やめろ!やめろ!やめろおっ!妻になにをするつもりだ!?
わななく声を、あざけるように。
男は片頬で笑うと、弛んだ唇をいっそうつよく妻の首筋に吸いつけて。
ちゅう・・・っ。
忌まわしい吸血の音を、洩らしてゆく。
脱げかかったジャケットからはみ出した、純白のブラウスの肩に。
吸い散らされた血のしずくが、バラ色に撥ねかって。
じわりじわりと、シミを広げてゆく。
あうううううっ・・・
白目を剥いた妻が、その場に倒れ臥すと。
男はにんまりとして、横たえられた足許ににじり寄っていって。
かすかに光沢を滲ませた黒のストッキングのうえ、
恥知らずな唇を、いま一度貼りつけてゆく。
あっ、オウウッ!やめろおっ!
むなしく響くわたしの声。
いっしょに並んでスクリーンを見つめる妻は、そっと手を握りしめてきた。
心地よい体温が伝わってきて。
いつかわたしも、妻の掌を、つよく握り返している。

スクリーンの映像のなか。
チリチリと引き剥かれてゆく、黒のストッキングは。
淫靡な伝線を、あからさまに走らせて。
はぐれあがった紫のタイトスカートの奥にまで、じわりと忍び込んでいって。
男は伝線のあとを追うように、身体をせり上げていって。
太ももを引き締めるガーターを認めると、にんまりとわたしのほうに笑みかけて。
脱がさないほうが、いやらしいだろうね?
ひと言同意を求めるように、わたしに軽く会釈をすると。
たくし上げられたスカートの奥、逞しい腰を沈ませてゆく。
あえぐうなじに這わされた唇が。
ひときわつよく、吸ったとき。
あうううっ。
妻は吸血されるのとは別ものの衝撃に、身体を硬く引きつらせた。

どく、どく、どく、どく・・・
引き抜かれる血潮。
そそぎ込まれる精液。
そのどちらもが、等分に。
ふたりのあいだで、交換されてゆく。
わたしのまえ、わたしを裏切る契約を交わした女と男は。
からみ合わせた両腕に、たがいに交歓をこめ合いながら。
脚までも、もつれ合わせてゆく。
逞しい筋肉に鎧われた脚と、剥ぎ堕とされたストッキングをからみつけた白い脚。
互いが互いを、しつように求め合うありさまを。
わたしは熱っぽい視線で、見つめてゆく。
スクリーンのなかのわたしとおなじくらい、熱っぽい視線が。
じぶんの傍らから注がれているのを盗み見て。
妻は羞じらうように、身をすり寄せてきた。

もう。わたしったら。ずいぶん乱れちゃったのねえ。
迫真の画面とは裏腹に、妻の声はのどかに響く。
あらー。あなたったら、昂奮しちゃって。もう♪
おまえがあんまり色っぽく媚びるからだよ。
せきあげる昂ぶりを抑えながら。
わたしは無理して、妻のトーンに合わせてゆく。
理解ある夫の持つゆとりを、なんとか演出しようとして。
けれどもむなしい努力を冷やかすように。
妻はくすり・・・と、ほほ笑んで。
じゃあ今夜も・・・ガマンしてくださるわね?
ああ。。。ガマンするとも。
意地を張るように応えると。
妻は素早くわたしの頬にキッスをして。
傍らに影のように控えていた情夫に、身を投げかける。

男が獲物を抱えた蜘蛛のように、妻を後ろから抱きすくめると。
あああああっ!あなたあっ!助けてッ!!
妻はあのときとそっくりの、しんけんな絶叫をあげながら、もだえはじめる。
うなじに許した唇は、早くも吸血の音を洩らしていって。
わたしを煽るかのように、妻のブラウスをもみくちゃにしていって。
肩先に血を濡らしたブラウスは、めりめりと引き裂かれて。
黒い下着に映えた胸元を、さらけ出す。
まさぐり抜かれた太ももの周り。
黒のストッキングは、淫靡に堕ちて。
シャープな伝線。引きつれ、たるみ・・・
脚線美を気高く透きとおらせた薄絹は、淫靡な変容をとげていって。
薄絹の持ち主が娼婦に堕ちるのを、これ見よがしに、見せつけてくれる。
わたしはぼたぼたと白い粘液を散らしながら。
縛られたわが身を、どうすることもできないままに。
今夜も凌辱のお芝居に、最愛の妻をゆだねてしまう。

いかにもおいしそうに、妻の身体にのしかかる男は。
ひと言わたしに、
ご馳走様。
イタズラっぽく、呟きかけると。
そのままググ・・・ッと、腰を沈ませていって。
妻と、わたしをも、狂わせた。

変容  ~怪人との逢瀬~

2008年04月10日(Thu) 06:48:52

どこかの国ではね。
かなり年上のその友人は、いつものように。
年配らしいおだやかな声で、語りはじめた。
娼婦をとるときにはこんなふうに、ヒルに娼婦の血を吸わせるというのだよ。
目のまえで、体調10cmはあろうかという半透明の軟体動物が、ヌルヌルとした粘液をうわぐすりのように光らせて、彼の手のなかで不気味にうごめいている。
娼婦・・・?
わたしは彼女と目を見合わせた。
彼女はなぜか羞じらうように、目を伏せてゆく。
さあ・・・
男は彼女のほうへとにじり寄ると、手にしたヒルをおもむろに突き出して、
彼女の首筋に這わせてゆく。
ひっ・・・
ぬるりとした感触に、縮みあがるように。
その瞬間彼女は座ったまま、白いハイヒールの爪先を立てていた。

白いうなじに這う半透明のヒルは、淫靡なうごめきをつづけながら。
じわじわと、その身を彼女の血潮の色で滲ませてゆく。
あ・・・あ・・・あ・・・
肩を抑えられ、首筋をとらえられながら。
押し殺したような呻き声をあげる女は、
肩先まで流れる長い黒髪を、かすかに震わせて。
首筋に這わされたヒルをもぎ離そうとした手指は、
いつかいとおしむように、自分の血を吸う軟体動物を包むように覆っていた。
一瞬走った嫌悪の翳は、いつか甘い苦悶に浸されている。

さぁて・・・と。
彼はおもむろに手を伸ばして、彼女の首筋からヒルを引き剥がした。
あ・・・うっ。
よほど強烈に吸いついていたのだろう。
彼女はとっさに、上半身を波打たせた。
振り乱された黒髪が、白一色のスーツの肩先にゆさっと揺れる。
しばらくのあいだ。傷口を抑えながら、荒い息を吐いていた。
瞳に滲む蒼い焔。
それは彼と出逢っからというもの、こうして過ごすひと刻だけに宿される情欲の焔。

つぎは、きみの番だね?
穏やかな上目遣いが、逃がさないぞと告げていた。
彼女の血を吸って膨らんだ、忌むべき軟体動物が。
こんどはわたしの首筋に、あてがわれる。
そいつの冷ややかな体温が、わたしの皮膚に伝わってきた。
痺れるような痛みが、皮膚の奥までしみ込んでくる―――
にじみ出た血潮が、ヌメヌメとうごめく軟体に吸収されてゆくのを覚えながら。
彼女の血とわたしの血が、そいつの体内で交わることに、なぜか陶酔を感じはじめていた。
皮膚を破られて生き血を吸い取られながら、わたしは変容を遂げてゆく。
彼はブランデーグラスを傾けながら、冷ややかにわたしの顔色を観察し、
彼女はくすくすと笑いながら、まるで引力でひきつけられるように、彼に身を寄り添わせてゆく。
妖しくなってきた視界の彼方。
人の形をしていた彼の輪郭が、滲むようにかすんでいって。
やがて不自然に鮮やかな黄緑色をした、巨大な軟体動物になりかわってゆく。
薄暗い密室のなか。
彼は大ビルに変容し、わたしは心のなかを変容させてゆく。
彼女も、微笑を振りまきながら。
変容して、娼婦に変わる。

ふ、ふ、ふ。
大ビルは彼の声を含ませながら、触手をあやつって。
純白のスーツに身を固めた彼女の身体に、巻きつけてゆく。
透明なチューブに似た触手は、折り目正しいスーツのジャケットをところどころしわ寄せながら、ゆっくりと巻きついていって。
かんじがらめに、緊縛してしまう。
ううっ・・・
傍らの柱ごと、立ったまま巻かれた彼女は、わたしのほうを見るまいと目をそむけ、
振り乱した黒髪が、頬をおおってゆく。
触手の先端が、ブラウスの襟首にもぐり込んでゆく。
あ・・・あ・・・あ・・・
彼女を征服される。
それも、人間ばなれした怪人に。

ちくり。
触手の鋭い先端が、彼女の豊かな乳房を突いた。
はだけられたブラウスのすき間からのぞく胸元は、青白い静脈が透けるほど白く、
柔肌の下脈打つ血液を、触手が欲しているのは、目に見えるほどあからさまだった。
触手の先端は、そのままぐぐ・・・っと、埋め込まれて。
ちゅーっ。
人をこばかにしたような、あからさまな音といっしょに。
彼女の血潮が、抜き出されてゆく。
真っ白なスーツのうえ巻きつけられた、透明なチューブが。
赤黒い液体に、ゆっくりと充たされていった。
長いチューブを、這うようにして。
彼女の血が抜き取られてゆく、残酷な光景。
純白のスーツの周り。
縛りついたチューブは、紅い紐のように、彼女をがんじがらめに緊縛している。
あ・・・あ。。。ア・・・っ。
生命の源泉を搾り取られる、甘美な苦痛。
喉からほとばしる呻き声が、なぜか扇情的にわたしの鼓膜にしみ込んできた。
わたしにからみついたままのヒルは、わたしたち二人の血を吸って、数十cmにも成長していて。
シャツの上から吸いつけた吸血口が、皮膚に擦りつけられてくる。

くたり。
触手をほどかれた途端、彼女は肌色のストッキングに包まれたひざ小僧を床に突いて。
四つん這いになって、突っ伏している。
かすかに上下するおとがいが、喪われた血の量をものがたっていた。
大ヒルに化けた男は、なおも容赦なく、かすかな澱を残した透明な触手を、
ストッキングを穿いた彼女のふくらはぎに巻きつけてゆく。
かすかなてかりをよぎらせた肌色のストッキングは、透明感を滲ませていて。
締めつけるように巻かれてくる触手にいたぶられて、くしゃくしゃになっていって。
オブラアトのように他愛なく、チリチリになって剥ぎ堕とされてゆく。
ふ。ふ。ふ。
大ヒルはふたたび、男の姿に戻っていた。
とうとう堕ちたな。
あとは人の身に成り代わって、喰ろうてやろう。

我が物顔に彼女に迫り、衣裳を剥いでいって、堕としてゆく。
身体も心も痺れさせられてしまったわたしのまえ、
堕ちてゆく婚約者は、悩ましくまつ毛を翳らせていた。
半脱ぎになったズボンからむき出しになった筋肉質の脚は、
破れたストッキングをまつわりつかせた白い太ももの間に分け入って、
逞しく筋肉を浮き上がらせた臀部を、スカートの奥へと沈み込ませていった。
あぁあ・・・
引きつるような呻きを喉からほとばしらせて。
その瞬間、彼女はキュッと、唇を噛んでいた。

ふふ・・・ふふ・・・ふふふ・・・
くすぐったそうな含み笑いを、虚ろに響かせながら。
黒髪に隠されていた白い頬は、いつか淫蕩な笑みを浮かび上がらせていた。
ホホ・・・ホホ・・・ホホホ・・・
もはやつつしみをかなぐり捨てた女は、未来の夫のまえ。
公然と夫を、裏切りつづけてゆく。
純白のスカートのすそに散らされた、ぬるぬるとした粘液は、
彼女を身体の裏側から支配している。

一週間後、またここに来るのだぞ。
こんどはお前の妹も、連れてこい。
生娘のうちに、味わっておく。
おだやかな声色は、もとのままだったが。
気づかいに満ちていたはずの言葉は、いつの間にか命令形に変わっている。
くぐもった声に、拝礼するように。
わたしたちは黙って頭を垂れて。
手に手を取り合って、部屋を出る。
ここに入るまえとおなじように、さも仲睦まじげに。


あとがき
くろすさんと吸血三葉虫のやり取りしていたら、昔のことを思い出してしまいました。(^^ゞ

息子をそそのかして・・・

2008年04月07日(Mon) 07:48:57

妻の名は、やよい。
都会育ちで、頭が良くて、いつもキビキビしていて。
すこしプライドの高すぎるのが、玉に瑕なのだけれども。
彫りの深いノーブルな顔だちが目を引いて、ごく若いころ結婚して。
生まれた子どもが大きくなっても、彼女はまだじゅうぶんに、若かった。

生まれ育った村は、特異な風習を秘めている。
ヨーロピアンに洗練された街並みのそこかしこに、まだわらぶき屋根が見え隠れしているように。
ウメという名前の母親は、咲き誇る梅の樹の下で犯された。
ミツオという友人は、桜の樹の下、白一色のスーツに身を包んだ未来の花嫁の身体を開かれて。
文字通り、充たされてしまっていた。
おなじように、してあげなよ。
村に越してきたとき。
かつての幼馴染達は口をそろえてそういった。
そうだね。
そうしないと、元どおりの仲良しには、なり切れないだろうからね。
おなじ秘密を共有するものどうし、付き合いの古さは、そのまま縁の濃さにつながっていた。

お宅のお坊ちゃん、公園であのおじさんと仲良くしているようだね。
おなじ職場になったミツオが、そう耳打ちしてくれたのは。
移り住んできて、まだ一ヶ月と経っていないころだった。
跡継ぎにふさわしい男の子にしてあげないとね。
謎めいた笑みは、仕組まれたシナリオのすべてを物語っていた。

出勤間際。
わたしは息子の良夫を呼び寄せて。
ママのことを、よろしくな。
こっそりと、囁いてやると。
息子はびっくりしたように、顔をあげて。
まじまじと、わたしの顔を見つめて。
ウン・・・わかった。
ぼそりと応えた声色が、妙に艶をおびていた。
彼にママのことを、おねだりされて。
若い女の生き血を吸わせるために、公園に連れ出そうとしていた彼。
よくいまごろを、選んだね。
いまは、春先。
やよいという名前どおりに。
きみのママは、きみとわたしだけのものでは、なくなっていくのだね。
いまごろは。きっと・・・
初々しい風の香る新緑の公園の隅っこで。
まだじゅうぶん若々しいスーツ姿を、妻は泥まみれにしていることだろう。
帰宅したときに、どんなふうに取り繕うのだろう。
どんなふうに、しらばくれるのだろう?
妻の浮気にゾクゾクするという、きわだった趣味の夫たちを、
もういまのわたしは、笑えなくなっている・・・

真夜中の独り芝居

2008年04月07日(Mon) 07:31:50

おかえりなさ~い♪
いつもわたしより帰りの早い妻は、こちらが疲れているのを見越しているように。
きょうも明るい声で、迎え入れてくれる。
あー、参った、参った。
きょうも早く寝るの?
うーん、そだな・・・
ふと女房どのの足許を見ると。
おや?あんなにてかてか光るストッキングなんか、いつも穿いていたっけな?
そもそもあいつ、ストッキングなんか穿くんだっけな?
そう、妻の理恵の足許は、いつになく薄々の靴下に、足指までも透きとおらせていた。
よく見ると。
夜だっていうのに、ばっちりおめかしまでしている。
ご自慢の花柄のブラウスに、黒いスカート。
髪型もアップにして、うなじをすっきりとさらけ出していて。
雰囲気までもが、どこかウキウキと華やいでいた。
まるでこれから、どこかに出かけるみたいに。

じゃ~あ~♪ お布団敷きますね♪
理恵は鼻唄交じりにわたしのまえを横切って、
夫婦の寝室にわたしの分だけ、布団を敷きはじめる。
うつむきながらシーツを整える、妻の後ろ姿。
なにげないしぐさなのに・・・
白い肌によぎるかすかな翳りに、いつになくぞくりとしてしまう。
え?早く寝ちゃってもいいわけ?
子どものいない若夫婦の過ごす夜は、もっと熱く濃いものだったりするはずなのに。
理恵は鼻唄交じりにわたしの分だけの布団を敷いてゆき、
わたしはわたしで、おめおめと先に寝ちゃったりしている。

・・・。・・・っ!○×○○っ。
ふすま越し、人の声にふと目覚めて。
辺りを見回すと、部屋は真っ暗。
かすかな灯りは、妻の起きている隣室からのものだった。
見てはいけない。覗いちゃいけない。
なぜかそんな警鐘が、まるで本能的なまでに性急に、わたしの胸を早鐘のように鳴り響く。
けれどもわたしは誘惑に抗しきれずに、
すうっ・・・と、ふすまを細めにあける。
ぜんぶ開ききってしまう勇気は、いまのわたしにはないけれど。
おぼろげにかいま見る情景は、見慣れた日常とはかけ離れていた。

すぐ手の届く目の前に、伸べられているのは妻の脚。
あのてかてか光る、黒のストッキングを穿いたまま。
ヘビのようにくねるたび、ぎらつく光沢がぐねぐねと、毒々しい輝きをよぎらせてゆく。
い、いけませんわ・・・主人いるのに・・・だめっ。
かすかな囁きを解読したとき。
わたしは耳から毒液をそそぎ込まれる思いがした。
あっ、あっ、あ・・・っ。血を吸われちゃうっ。
血を吸われる?
そんなことが、あるわけがない。
ふと現実に立ち戻った理性が、昂ぶった本能をクールダウンさせようとする。
そうだ、血を吸われるだなんて。おとぎ話の世界に決まっている・・・
けれども・・・
畳のうえ、崩したひざ小僧。
ひざ頭をてかてかと彩る、ストッキングの光沢。
家のなかなのに、なぜか黒の革靴を穿いた脚が。
大仰にばたつき、キュッと立て膝になり、くねりまわり、横倒しになって。
しまいにぐったりと、魂を抜かれたように、動きをとめた。
あ・・・はぁ。。んっ・・・んんん。
口許から洩れる理恵の声色は、まちがいなくアノ時に洩らす呻き声。
相手もなしに、あんな声を出せるなんて。
わたしは思わずふすまに手をかけて・・・それでも開ききる勇気はなかった。
目のまえを妻の脚だけが、なまめかしい光沢に濡れながら、くねりつづけてゆく。
ひいっ・・・
ひと声、消え入るような声を洩らすと。
妻はぐったりと、身体の力を抜いた。
ちぅちぅちぅちぅ・・・
肌を吸うような音が洩れてくるように思えたのは。
たぶん、きっと・・・耳の錯覚に違いない。
朝になると、妻はなにかぶつくさ文句を垂れながら。
いつもみたいに朝餉の支度に精を出しているはずなのだから。

ただいまぁ。
お帰り。早かったね。
今夜はくたびれた♪早く寝るよ。
あら♪じゃ~お布団敷きますね。
どこの家庭でもある、ごくありふれた会話。
そのなかに夫婦それぞれの思惑が交叉するのは・・・
やはりどこの家も、おなじなのだろうか・・・?

家族芳名帳 ~名前のごとく~

2008年04月07日(Mon) 07:12:19

ママの名前は、やよい。
都会育ちで、いつもきれいで、ちょっとキビシイのが、玉に瑕だけど・・・
ボクにとっては、自慢のママ。
あいつがいけない囁きをボクの耳にそそぎ込んだのは。
パパが会社を辞めて、実家のあるこの村に越してきてからすぐのことだった。

いいね?坊や・・・女のひとは、名前のとおりの運命を秘めているのだよ。
キミはそれを、現実のものにしなくちゃならない。

シャツの襟首についた血を気にしながら、ボクは薄ぼんやりとなりながら。
とても素直に、頷いていた。
まるで自分じゃないみたいに、はっきりと。

ウメという名のおばあちゃんは、春先に近くの梅林に連れて行かれて。
そこで初めて血を吸われんだって、ボクにこっそり教えてくれた。
まわりじゅう、梅の花びらがきれいでねぇ。
とてもうっとりした気分になってしまったのですよ。
まるでおとぎ話を語るような、のどかな口調は。
この村ではそうすることがしぜんなのだと、ボクに教えてくれていた。

ママのことを、よろしくな。
出勤まぎわ、パパはボクだけに聞えるように、そっと囁いていった。
公園で仲良くなったあの小父さんに、おねだりされて。
きょうはママを連れ出す日。
約束の公園には、桜の花が咲き乱れていた。
入学式の帰り道。
散りばめられた花びらのうえ。
ママは新調したばかりのピンク色のスーツを、雨上がりのぬかるみに浸しながら。
いまは青々と晴れ上がった空の下。
ウンウンと呻き声洩らしながら、小父さんに組み敷かれていった。
そう―――ママは名前のとおり、春先に。
むっちりとした大きな身体に秘めた生き血といっしょに。
なにかたいせつなものを、小父さんにプレゼントしちゃったのだ。

真っ白なプリーツスカートのよく似合う妹の夏美は。
夏休みに入る直前、終業式の帰り道。
スカートをひるがえして、草むらを逃げ惑って。
けれどもとうとう、逃げ切れなくなっちゃって。
小父さんの黒いマントに巻かれていって。
かりり・・・と、うなじを噛まれていった。
入学式のとき、ママが履いていた肌色のストッキングをぱりぱりと噛み破ってしまったみたいに。
小父さんは夏美の履いている真っ白なハイソックスのうえ、唇吸いつけて。
ちゅうちゅう、ちゅうちゅう、いやというほど、吸いつくしていった。

いっしょに覗いていたマモルくんは、
草陰の合い間から、伸び上がるような姿勢になりながら。
ドキドキ、ドキドキ、胸弾ませて。
友だちの妹が吸血されるありさまに、ワクワクとして見入っていた。

同級生の華絵ちゃんは、たしかに季節を意味する名前じゃなかったけれど。
めそめそとべそをかきながら、
制服のブラウスを、真っ赤にして、血を吸い取られていった。
ボクは夏美のときのマモルくんみたいに、心臓が口から飛び出しそうなくらい、ズキズキ胸わななかせて。
ブラウスのうえ、刻印されるほど濃く描かれた血潮に、絵のように見入ってしまっていた。

良子!良子!行きますよ・・・
妻となった華絵は、しょうしょう耳ざわりなほどの大声で、着慣れない制服に時間をかけている娘のことを呼んでいた。
かっちりとした頬の輪郭が、黒一色の礼服に、まるで白バラのように映えている。
足許を染めているのは、薄手の黒のストッキング。
わざと娘とおそろいにしたその裏の意図は、だまっていても伝わってくる。
さいごまで、だまっていてくださいね。
チラと送られてきた流し目に、
わかっているとも。
さりげなく頷いているわたし。

玄関を出ると、隣どうしになったマモルくんが、やあ、と会釈を投げてくる。
後ろから寄り添うようにしたがっているのは、いまは彼の妻となった妹の夏美と、お嬢さんのめぐみさん。
仕事に出る時間もちがうので、このところは、会話を交わすこともめずらしくなっていた。
女たち四人をさきに行かせて。
ひさしぶりにひそひそ話しに打ち興じる。
夏美のやつ・・・いつから青のストッキングなんか穿くようになったんだ?
義兄さんだって、よく知っているくせに・・・
彼はふふふ・・・と含み笑うと。
守れなかったからなあ。って。またくすぐったそうに笑いこける。
未来の妻の貞操を守りきれなかったマモルくん。
きょうは娘さんの純潔も、守り抜くわけにはいかないのだろう。
なにしろ、娘は「めぐみ」だからね・・・
伸びやかなふくらはぎを覆っている真っ白なハイソックスは、
お行儀よくぴっちりと、ひざ小僧のすぐ下まで引き伸ばされていて。
彼女のママが夏草の上、むさぼられてしまったみたいに。
小父さんを愉しませてしまうのだろう。

そういうわたしにしたところが。
ママとおそろいの黒のストッキングに、ウキウキはずむ足どりの娘が、
ママやお友だちと、脚を並べていたぶられるだなんて、
まだ夢にも思っていないはず。
帰り道には。
めぐみさんは、白のハイソックスがちょっぴりずり落ちたまま。
娘は、薄黒いストッキングに、ぴちっと裂け目を走らせて。
ぴかぴか光る真新しい革靴を並べて、ちょっぴりけだるい足どりで、戻ってくるのだろう。
母親たちが、伝線したストッキングの脚を、あからさまにさらして歩いているのとは裏腹に。
それで、いいのだよ。
きみが良い子でなくなる瞬間を、わたしは陰からそっと見届けてあげるのだから。

なにしろボクも、良夫だからね・・・
苦笑いするボクに、マモルくんはおなじ苦笑をかえしてくる。
守れなかったマモルくんに、良き夫の良夫さん。
くすくす笑いに、忍び笑いを重ね合わせながら。
あと二時間ちょっとあとにそれぞれの妻子に訪れる淫らな祝宴に。
もう・・・想いをはずませあっていた。


あとがき
やよいさん、ウメさん、夏美さん、良子さん、めぐみさん。
それに、よしおさんにまもるさん。
こんな落書き目に留まったからって、怒らないでくださいね~。^^;