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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

おやすみなさい、・・・。

2008年05月30日(Fri) 07:12:07

放恣に開かれた、仰向けの身体。
妻の細腰におおいかぶさる、逞しい筋肉を隆起させた男の腰。
くり返される上下動に、ひとつになって。
夫婦のベッドのうえ、荒々しい呼気を交し合う。
せめぎ合う、肉と肉。
どちらが調教し、どちらが飼いなさられているのだろう?

主人を愛している・・・
けれども、あなたの身体から離れることができない。
牝に戻った女は、矢を射るような語気で、いいつのる。
こちらにも聞こえるほど、あからさまな声で。
髪振り乱し、煌々と輝く瞳。
そこにはふだんの淑女とは、別人がいた。

あくる朝には、すべてが夢となって。
わたしの前には所帯持ちのよい主婦の顔が笑みかけるはず。
男ふたりは、決まり悪げに顔見合わせて。
そ知らぬ顔の女は、朝餉の支度にいそしむのだろう。

おやすみなさい。妻の潔癖症。
おやすみなさい。わたしの理性。

正装して待つ

2008年05月29日(Thu) 07:18:33

かつて、淑女であったころ。
夜になっても正装を崩さずに、夫の帰宅を待った。
夫が背広を脱いで、湯を浴びて。
それからはじめて、正装を解いて、入浴した。
いまは―――

りりりりりぃん・・・
夜更けの呼び出し音に、受話器を取って。
――ああ。わたしだ。今夜も遅くなる。おまえはもう寝んでいなさい。
――はい、わかりました。遅くまでご苦労さま。
声の表情を消しているのは、婦人としてのたしなみだった時代もあるのだが。
いまは・・・
振り乱された髪。
失血に蒼ざめた頬。
血のりに濡れたブラウス。
伝線がスカートのなかにまで忍び込んだ、黒のストッキング。
いまいちど、己の身なりを見回して。
ふっとため息して、受話器をカチャリと置く。
乱れた髪だけを、ゆったりと肩に流して。
では・・・つづきを愉しみましょうか?
夜の主人を、艶然とかえり見る。
夫はいまの濃い媚態を、たぶん夢にも知らない・・・はず。

真夜中の散歩道

2008年05月27日(Tue) 07:51:52

何をなさるのっ!?厭ッ!イヤですっ!
電信柱に縛りつけられながら、通子は抗いつづけた。
けれども人通りの絶えた夜道では、聞きとがめる者もいない。
左右どちらも草深い荒地のなか、切れ切れな女の声だけが、闇に散ってゆく。
首、肩、脚へと、複数の唇が吸いつけられてくる。
ぬるぬると這い回る唇が、ストッキングに唾液をなすりつけてきた。
あ、あ、あっ・・・!
通子はひと声うめくと、しずかになった。
華奢なスーツ姿にからみついてきた男どもは、夢中になって生き血を喰らいはじめている。
礼装になすりつけられてくる唾液と自分の血に閉口しながら、通子は立ち尽くしているほかなかった。

家の玄関に倒れこむと、通子は肩で息をついていた。
怖ろしかったし、悔しかった。
乱された髪と服装とが、敗北感と屈辱に追い討ちをかけていた。
「どうしたんだね?」
妻の遅い帰りに、さすがに気をもんでいたのだろう。
タカオは新聞をおいて迎えに出てきて、妻の異様なありさまに息を呑んだ。
ブラウスにも、ジャケットの襟首にも、血が転々と散っている。
首筋やふくらはぎには、明らかに噛みついた痕。
どす黒い痣のようになった噛み痕には、吸い残された血のりがテラテラと光っている。

介抱してくれる夫の腕のなか、息も絶え絶えになりながら、
通子は見てはならないものを見てしまった。
夫の指につけられた歯型は、自分のものだったから。
ぎょっとした妻の視線に、夫は気づきもせずに、汚れた妻の服を脱がせ濡れたタオルでていねいに肌を拭いている。

出かけてきますね。
いつになくうつろな通子の声色に、夫は気づくようすもない。
ああ・・・もう遅いから、気をつけて。
いつものようにやさしく、玄関まで送り出してくれた。
血潮が活き活きと脈打つわが身を、みずから抱きすくめるようにして。
通子は靴脱ぎに腰かけて、ハイヒールをつっかける。
あの晩履いていたのは、プレーンな肌色のストッキング。
チリチリに噛み破られたあげく、あのメンバーのだれかによって、脚から抜き取られてしまっていた。
今夜脚に通したのは、つややかな光沢を帯びた黒のストッキング。
いったいだれがわたしを電信柱に縛りつけ、
だれがわたしの首筋を狙い、だれが脚に唇を吸いつけるのか。
破けたストッキングをせしめるのは、だれ?
夫に訊いてみたい気持ちを抑えながら、
妻は礼装に包んだ華奢な身を、闇に溶け込ませてゆく。
行くあてもない夜の散歩道をたどるために。

待つための部屋

2008年05月26日(Mon) 07:35:36

ママはみんなの人気者です。
男のお友達も多いみたいです。
ママが男の友達に会いに行くときには、パパがいっつも送り迎えをしています。
パパも、ママのお友達と仲良しなんです。

ジィジィジィジィ・・・
窓越しに、セミの鳴き声がかしましい。
ひんやりと冷房のきいた室内は、アンティークな調度が所狭しとならんでいて。
茶系統の部屋にふさわしい、古びた翳りに包まれている。
部屋のまん中にしつらえられたソファーに深々と腰かけた長谷村は、薄ぼんやりとした顔つきで、
時おり手を伸ばして、グラスのなかの透明な液体で唇を浸している。
隣室から時おり、人の声が洩れてくる。
あっ・・・
オオッ・・・
引きつった間歇的な声。
声の主は、一時間前からずっとその部屋で三人の男性といっしょにいる妻のもの。
きりっと装った礼服を着崩れさせながら、真っ昼間から性の奴隷に堕ちていた。

みぃん。みぃん。みぃん。
べつのセミが、窓の間近で鳴きはじめた。
捕ることができるなら、息子はきっと喜ぶだろう。
けれども長谷村はセミの鳴き声にも、隣室の声にもまったく無関心に表情を消したまま、
時おり思い出したように、目のまえのグラスを口に持っていく単調な作業をくり返すだけ。
そのたびに、グラスのなかの氷がからりからりと無機質な音をたてていた。
首筋に浮いた、どす黒い痣。
皮膚に青白く滲んだ静脈に、血はほとんどめぐっていない。

はぁ、はぁ、はぁ、はぁ・・・
あはぁん。
ドアの向こうで、宴は最高潮に達したらしい。
残された理性のかけらをよすがに、必死に歯を食いしばっていた長谷村夫人は、忍耐力をへし折られて。
いまは夫に聞こえよがしに、あらぬ声をあげてしまっていた。
夫はそれでも無表情に、氷入りのグラスをテーブルから口許に往復させつづける。

夕闇―――。
だしぬけにドアが開かれ、どやどやと人が入り込んできた。
全裸の男たちに取り囲まれるようにして、長谷村夫人も姿を現した。
きちんとセットしていた黒髪を振り乱し、はだけた胸元からはブラジャーを剥ぎ取られたおっぱいをぽろりとさらけ出している。
スカートはかろうじて身に着けていたが、片方になった黒のストッキングはくもの巣みたいにチリチリに引き裂かれていて、
不規則な裂け目から、白い脛を淫靡に滲ませていた。
男の一人は女からせしめたブラジャーを得意そうにぶら下げていて、
それでも薄ぼんやりとしている夫の前、にこりと笑って見せびらかした。
夫は無表情にそれを受け取り、乳首のあたりに軽く接吻を加えると、男に返してやる。
べつの男は女の脚から脱がせたもう片方のストッキングを、夫のまえでむぞうさにポケットにしまい込んだ。

愉しんだかね?
夫ははじめて、口を開く。
感謝とも謝罪ともつかぬ面差しで、妻が腰をかがめると。
夫は立ち上がって、妻の額に接吻をする。
じゃあ、行くよ。・・・どうも家内がお世話になりました。
うつろな声色に、男たちは神妙にお辞儀をして、夫婦を玄関まで送り出す。

玄関の外は、昼間とは裏腹に肌寒い。
セミの鳴き声は、いつの間にかやんでいた。
はだけたブラウスからあらわになった、夫人の白い胸まわりが、門灯になまめかしく浮かび上がる。
いいんですか?こんな格好で・・・
だれにも見られや、せんでしょう。
夫はわざと近所に聞こえるような声で、男に応えた。
気が向いたら、また声をかけてください。
たんなる女ひでりでも、お相手させますよ。
妻を犯されているあいだとは打って変わって、夫は饒舌だった。

では・・・
夫に促されて、妻は身を寄り添わせるようにして。
コツコツとハイヒールの音を路面に響かせる。
子どもたち・・・もう寝ていますよね?
ああ・・・もちろんだ。
周囲の家々から覗き見る好奇の視線が、足音を追いかけていく。


毎週金曜日に、パパとママはお出かけします。
ボクはおばあちゃんの家に預けられて、晩ご飯をいただいて、
お姉ちゃんが迎えに来ると、いっしょに家に帰ります。
夜遅く、パパとママが帰ってくると、ボクは寝たふりをします。
ふたりがなにを話しているのか、ぜんぶ聞いちゃったこともあります。
お姉ちゃんは、よしなさいって言って、いつもボクを叱るのですが。
やっぱりボクといっしょにパパとママのお部屋を覗き見しています。
男の人たちと仲良くして戻ってくるママは、ゾクゾクするくらいきれいです。
ボクも大きくなったら、ママみたいなお嫁さんをもらって、
男のお友達をパパに負けないくらいおおぜい、作りたいです。

交換される血

2008年05月25日(Sun) 07:14:03

どちらが先に、奥さんにたどり着くだろうね?
傍らからしたり顔で語りかけてくるのは、わたしの血を吸い取った憎いやつ。
けれどもじんじんと痺れてしまった脳裏は、冷酷な言葉の裏側に隠された好意を、薄々感じはじめている。
やつはわたしの血を吸って、地獄に堕とした。
楽園という名の地獄に。
そうしてアルバムの一頁めに貼りつけた写真に、むぞうさに書き入れをした。
わたしを含め、妻、娘、息子の写った写真のなか。
赤いペンで囲まれたのは、わたしの顔。

これから一週間かけて、ご家族の生き血を順ぐりに吸い取って進ぜよう。
う、ふ、ふ、ふ・・・
老紳士は隣の老婆とともに、顔見合わせて。
己の唇を、心地よげに指でなぞっている。
その唇たちに分け取りにされて、吸い尽くされてしまった、わたしの血。

土葬にされたわたしは墓から這い出して・・・けれどもまだ、皮膚の色は土気色だった。
写真に写った息子の顔に丸印がつけられたのは、それからたったの一週間後だった。
手土産だよ。
男は手にぶら下げていたものを、自慢げに見せびらかした。
男は息子の血を吸って若返った顔に、笑みを浮かべて。
息子の脚から抜き取られたという、ねずみ色をしたハイソックスは。
見覚えのある柄に、塗り重ねるようにして。
赤黒い血のりが、べっとりと貼りついていた。

奥方は、どちらにめぐんでくださるかの?
老婆はもの欲しげな顔つきをして、わたしに意地悪な笑みをむける。
家内のひろ子の生き血を吸いたい・・・ありありとそう書いてある皺くちゃの顔から。
視線をそむけるのが、精いっぱいの抵抗だった。
う、ふ、ふ、ふ。お察しするよ。だれもがさいしょは、そうなのだから。
けれども・・・決めなければいけないよ。
息子さんは、この男とすっかり仲良しになって。
若い女の血を吸いたいのなら、いつでもママを連れてきてあげる・・・って。
そんな約束を、しているのだよ。
奥方は奥方で。
わらわと取引を始めたのだよ。
お前の身体から吸い取った血を、取り戻すために。
ご自身の生き血を、引き換えようとしてござる。

待ち合わせた公園に、妻はほんとうに現れた。
妻のひろ子は、すらりとした身体に、地味なグレーのスーツ姿。
脚にまとっている黒のストッキングは、わたしが家を離れてから、ずっとつづけている習慣だった。
う、わ、は、は、は。
有頂天な老婆のまえ、ひろ子は強いて怯えを押し隠して。
お約束どおりに・・・していただけるんですね?
残った疑念のありったけを、ぶつけてくる。
老婆があごをしゃくるのは、わたしが姿を見せる合図。
あなた・・・!
すがりついた腕は、ちょっとの時間だけ許されたけれども。
やがて、もぎ離されて・・・グレーのスーツ姿はもがきながら、草むらのほうへと引きずりこまれていった。
スーツの下、妻の裸身が透けて見えるような錯覚。
華奢な身体つきとプライド高い感受性は、
貪婪な食欲に、どこまで耐えることができるのだろう?

あ、あ、ああーっ!
耳をつんざく、妻の悲鳴。
その悲鳴をかいくぐるように、浅ましい吸血の音がしずかな音をたてる。
じくじくと陰にこもった、キュウキュウという音を洩らしながら。
妻はすすり泣き、生き血を吸い取られてゆく。
どうして、勃ってしまっているのだろう?
老婆の淫靡な欲望に屈した妻は。
清楚に透き通る黒のストッキングのふくらはぎさえ、許してしまっているというのに。
妻の生き血と引き換えに注入されたわたしの血は。
干からびかけた血管のなか、淫らな想いに毒々しくたぎっていた。

とうとう妻は、自宅に吸血鬼を引き入れてしまった。
留守宅を汚してしまった後ろめたさに、居合わせたわたしの視線を避けるようにうつむいて。
それでもブラウスの第2ボタンまでゆるめてしまった妻。
目のまえの吸血鬼は、年上の男だというのに。
亭主のまえ、レエスのついたブラジャーまで覗くほど、胸元を見せつけてしまっている。
どうぞ、わたくしの血をいつくしんでください。
息子の約束を、守らされて。
男の吸血鬼にさえ、生き血を与えることになった妻。
控えめにさらした素肌に、強引に唇を這わされていって。
くず折れたじゅうたんの上。
濃紺のタイトスカートのすそから、太ももをさらけ出しながら。
身をよじり、もだえながら、生き血を吸い取られてゆく。
ひろ子という名は、変わらなくても。
心のなかでは、わたしの苗字を捨てた妻。
せいいっぱいの想いを滲ませた血潮は、情夫の喉を通って、胃の腑を浸して、
干からびた血管を、ゆるゆるとうるおしてゆく。
秘められた女の熱情に感応した吸血鬼が、男としての振る舞いに及んだのは、もちろんのことだった。

妻の婚礼という、秘せられた儀式。
大の字に、仰向けにされて。
放恣に脚を開ききって。
太ももの半ばに密着したストッキングのゴムを、タイトスカートのすき間からちらちらさせている。
清楚な黒から、淫靡な肌色に。
毒々しい光沢に染まった妻の脚は、娼婦の脚と化していた。
おめでとう。
感情を消したわたしの声に。
妻はほっとしたように、頬をゆるめて。
けれどもすぐに、表情を引き締めて。
まるで嫁入りする娘のように、わたしのまえで三つ指を突く。

妻の写真が赤丸で囲まれ、さいごに娘の顔も、赤く縁取られてゆく。
すべてはあんたの履いていた、薄いビジネスソックスが発端だったな。
男はにやり・・・とほくそ笑みながら。
わたしの靴下のうえ、息子のハイソックスを重ねていった。
その上を、貞潔をむしり取られた人妻のストッキングがとぐろを巻き、
さいごに、通学用の黒ストッキングが、はらりと被せられる。

すっかり、お気に召してしまいまして。
妻は羞じらいながら、うつむいて。
ととのえられた和装の襟足を、吸血鬼の唇に添わせてゆく。
彼のまえで、だなんて。趣味悪いわ。
娘は口を尖らせて、それでも純白のセーラー服に散らされる血潮のあとを、
向かい合わせの姿見に映して、興味津々、見入っている。
息子も、わたしも。娘の恋人さえも。
はらはらしながら、覗き見をして。
入れ替えられた血を、マゾヒスティックにたぎらせてゆく。


あとがき
血を抜かれた亭主のまえで、妻を襲う計画に熱中する吸血鬼たち。
どちらの思惑が成功するかと、だんなそっちのけでいさかい合って。
けれども支配されてしまっている夫は、妻の生き血を欲しがる彼らの悪だくみに加担して、
望みどおりに獲させてゆく。
妻のほうは、きりっとした礼装に身をやつして。
ためらいながら、生き血を与えていって。
さいごには夫の仇敵の思うがまま、身体じゅうを舐め尽くされて・・・
夫のまえ、ごくしぜんに・・・夫を裏切る告白をさせられてゆく。
家庭に戻った夫は、いままでどおりの日常を楽しみながら、
日常の裏に隠された淫靡な侵食に、愛する妻子を堕とされてゆく。
そんなお話にしたかったのですが・・・。^^;

寂しい夜道の口裏合わせ

2008年05月25日(Sun) 06:11:40

彼女を、紹介してやるよ。約束どおり。
いつもキミと待ち合わせているあの公園に、連れてきてやるから。
そう、やっぱり裏道がいいのかな?
キミは意外と、恥ずかしがりやさんだから。
あそこは、ボクの血を、キミにすっかり抜かれちゃった場所。
いまでも血管が渇きに疼くとき。
あの晩のことを思い出して、つい胸をずきずきさせてしまうのさ。

彼女、きっとおめかししてくるよ。
なにしろ、ボクとのデートだからね。
いつ抱かれてもいい・・・って、とっくに覚悟を決めているんだよ。
悔しいなぁ。
キミにはいちばんおいしいところを、もって行かれてしまうんだね。
黄色いワンピースが、彼女の一番のお気に入り。
ぴちぴちした太ももが覗くくらい、短い丈で。
今夜はボクだけじゃなくて。キミも・・・きっと目を奪われちゃうんだろうな。
デートのときにはいつも穿いてくる、肌色のストッキング。
きみ、むぞうさに破っちゃうんだろう?

どうやって、引き合わせようか?
彼女・・・まだキミやボクの正体を知らないんだ。
やっぱり、定番どおり・・・
ふたりとも襲われちゃう・・・って筋書きで、お願いしようかな。
さいしょに襲われるのは、もちろんボク。
きみはあの晩と同じように、彼女の目のまえで、ボクの生き血を吸い尽くす。
ごく短時間で、すませるのだろうね。
ボクの身体のなかに、血はもうほとんど、残っていないから。
さいしょは、痛そうな叫び。それからだんだんトーンを落としていって、さいごに和ませる。
そうすれば・・・彼女もどんなふうにキミの相手をすれば気に入られるのか、すぐに察しをつけるだろうから。

た、す、け、てーっ!
彼女はきっと、叫ぶだろう。
けれどもあたりは、人っこひとりいない、草ぼうぼうの寂しい夜道。
きみが彼女の血をまる呑みにしちゃうまで、助けはきっと、間に合わない。
えっ?ひと晩で吸い尽くすのは、もったいないって?
ボクもいま、そういおうと思っていたんだよ。

ボクの血に濡れた牙を、首筋に突きたてられて。
ぶちゅっ!って、唇を這わされちゃって。
いくらもがいても、キミの腕のなか。
彼女は抜け出すことができない。
くんずほぐれつ・・・の愉しい抗いのなか。
黄色いワンピースの肩先は、持ち主の血に濡れる。
腕から抜け出すほうが先か。
血を吸い取られて身動きできなくなっちゃうほうが先か。
もちろん勝負は、見えているんだよね?
キミはこういうとき、手加減しない人だから。
あー!早くもタイムリミット。
想像のなか、彼女は抵抗を弱めていって。
じょじょに姿勢を、崩していく。

うら若い女の生き血は、さぞかしおいしいことだろうね。
ほかならぬボクの彼女の生き血だから。
キミはさぞかし、気に入ってくれるだろう。
じゅるじゅる、ごくごく・・・って、いやらしい音を立てて。
せいぜいボクを、悔しがらせることだね。
いっぺんに吸い取っちゃ、いけないよ。約束だよ。
ボクは冷たい地面に頬を浸して。
彼女の血に酔いしれるキミを、羨望の目で見守りつづけているから。
あ・・・恨みっこなし・・・だったよね?
もちろんさ。
キミは彼女を、この世の極楽に堕としてくれるのだから。

身体のなかをめぐる血を、キミにぬるぬると吸い出されちゃって。
くたくたと力をなくして、地べたにひざ小僧を突いちゃって。
でもキミは、ボクを抑えつけたあの逞しい腕で、彼女の身を支えてくれるんだよね。
肌色のストッキングが、それ以上汚れないように。

ベンチに寝そべった彼女は、もう覚悟を決めちゃっている。
そう・・・捧げる相手が変わるだけで。
彼女は予定どおり、女になる。
もうすっかり、キミとは打ち解けちゃっていて。
支えてくれたお礼に・・・って、むっちり肉のついた太ももをさらけ出して。
泥をつけずにすんだ肌色のストッキングを穿いたまま、キミを愉しませちゃう。
あなただけよ・・・って、くすくす笑いながら。
彼氏の仇敵の飢えた唇に、柔らかい白い肌を惜しげもなく吸わせちゃって。
ストッキングを汚さずにすんだお礼だから・・・って。
黄色のワンピースの胸に、思い切りよく血を撥ねかせていく。

丈の高い草むらに、キミは彼女を投げ込んで。
狭い小道に脚だけ覗かせて。
彼女はキミの、エジキになる。
真夜中の婚礼は、満月だけが招待客。
嫁入り道具は、うら若い生き血と裂かれた着衣。
ちりちりに破けたストッキングは、ハイソックスみたいな丈になって、ひざ下までずり落ちていて。
堕とされたレディは、へらへら笑いながら、着衣を着崩れさせていく。

あたりに散らばった、ハンドバックの中身。
口紅、手鏡、ハンカチーフ。
ぴかぴか磨かれた、白いエナメルのハイヒールは、向きを変えて転がって。
花びらが散るように、浅ましくさらけ出された下着類。
ブラもパンティもおなじレエス柄の白なのを、ボクはどうしてか知っている。
そう。だって。
彼女のたんすの引き出しから抜き取ったストッキングを、身代わりに脚に通して。
キミに何回か、プレゼントしたんだったっけ。
脱ぎ捨てられたストッキングは、うつろな抜け殻みたいになって、草の穂先に引っ掛けられていて。
彼女がまだレディだったとき、足許を魅きたてていたあの光沢を、わずかな灯りに滲ませている。

黄色のワンピースだけは、脱ぎ捨てられずに、身に着けていて。
服のすき間のあちらこちらからチラチラこぼれる素肌は。
いっそ全裸より罪深く美しい。
彼女をモノにされちゃったボクは、情けないほど股間を昂ぶらせながら。
汚されて堕ちてゆく恋人の変貌を、毛すじひとすじ見逃すまいと、見守っている。
振り乱された栗色の髪の妖しいほつれも。
泣き濡れた頬に時おりよぎる、淫らな翳も。
太ももを伝い落ちる、バラ色の血も。
なにひとつ、見逃さないで。

え?そういうことだったの?
彼女は怒ると、頬をかわいく膨らませるんだ。
頬っぺたについた泥と、バラ色の血と、草の葉っぱを拭ってやって。
とっさにそむけた頬によぎった安堵の色を、ボクは見て見ないふりをする。
静脈の透ける白い肌にしみ込まされた淫蕩を、ボクはつぶさに見届けて。
これからもこんなふうに・・・愉しまないか?って、囁きかけて。
もぅ。
ツンとすました彼女の、柔らかなおっぱいに手をやると。
もうふりほどかないで、くにゅくにゅさせてくれちゃっている。
順番・・・だぜ?
キミのいけない囁きに、彼女は初々しく頬染めて。
けんかしないでね・・・って、いいながら。
抜き身の裸身をいさぎよく、濡れた泥にまみれさせてゆく。

週末のデートは、公園の裏道。
愉しい口裏あわせに、彼女も一枚くわわって。
きっと・・・そう。
こんどはきっとキミのために、女友だちを用意してくることだろう。

ワンピース40

ママを襲うのは、だれ?

2008年05月25日(Sun) 00:16:00

うわッ!やめろっ。やめろおッ・・・!
口では制止し、手足も抗っているけれど。
それが形ばかりの抵抗なのだということは。
お互い・・・とっくにわかり合ってしまっている。
吸血鬼の小父さんの手中に堕ちて。
ボクはゾクゾクしながら、小父さんの牙を待ち焦がれていた。

すべては、あの最初のときのリプレイなのだ。
おなじ公園で。いまとおなじくらいの濃さの夕闇のなか。
いきなり黒のマントにくるまれて。
真っ赤な裏地の鮮やかさに、なぜか不穏に胸昂ぶらせて。
小父さんはむしり取るように、ボクの血をぎゅうぎゅうと漁り獲っていったのだった。
その場でボクを、すっかり夢中にさせてしまって。
逞しい胸に抱きすくめられて、ぶるぶる震えながら。
もっと・・・もっと・・・と、せがんでいた。

痛みは落ち着いたかね?
頭がくらくらしたりは、しないかね?
どぅれ、だいぶ顔色がわるくなってきたようだね。
小父さんは冷静に観察しながら、それでも獲物であるはずのボクを、気遣ってくれて。
たんなる餌食では、ないのだよ。
いっしょに愉しむパートナーなのだから・・・
その囁きだけは、信じても良い気がした。

差し出したふくらはぎに。
ハイソックスの上から、唇を吸いつけてきて。
ねずみ色のハイソックスに、赤紫のシミを、たっぷりと滲ませてゆく。
厚手のナイロンごしにすり寄せられた唇が、ひどく心地よげに舐めまわすのを。
ボクはうっとりと、許していった。
ハイソックスが好きなのかい?なんだかやらしいな。って、つぶやくボクに。
小父さんは初めて、照れくさそうな笑みを洩らした。

さぁ、白状するのだ。
感じているのだろう?生き血をもっと、吸い取られてしまいたいのだろう?
たちのわるい囁きに、あっさり降参したボクに。
小父さんはただならぬことを、囁いていた。
きょうここに来るときに、頭の上で樹が揺れなかったかね?
あれは・・・お前さんを狙ったものなのだ。
私に遠慮をして、手は出さなかったようだが・・・
どんなやつだか、わかるかね?

ううん・・・と、かぶりを振ったボクに、小父さんはたたみかけてくる。
きみのお父さん。こんどは気の毒だったね。
ひと晩戻ってこなかったパパの体内には、血液は一滴も残されていなかった。
あれは・・・私ではないのだよ。
わかっているさ。小父さんは・・・そういう人じゃないもの。
長いつき合いの、生き血好きの老婆なのだよ。
老婆・・・?
そういう小父さんだって、髪の毛は銀色をしている。
ボクの血でおなかいっぱいになったときだけ、真っ黒、ツヤツヤになる髪の毛が。
いままた、黒い艶を帯びてきた。

お婆はね。昂奮すると、見境がつかなくなってしまうのさ。
だからいつも、吸いすぎて、友だちを減らしてしまうんだ。
私たちは、互いのエモノに手を出さないしきたりになっている。
それが・・・人間どもと比べて唯一、ましなところなのだろうな。
自嘲まじりの声色に、寂しさが滲んでいる。
感情を隠したくなると、小父さんは決まって、わざと意地悪をする。
そう・・・いまもまた、ボクのふくらはぎにがぶりと食いついてきた。

じゅるうっ。
きゅううううっ。
押し殺したような音が、随喜をまじらせていて。
ボクの血が小父さんの喉だけではなくて、胸の裡まで浸しているのだと感じるとき。
ボクはひそかな幸福感に包まれる。
お婆はパパを。私はキミを。モノにした。
では・・・ママはどちらのものになるべきなのかね?
小父さんはイタズラッぽく笑んでいたけれど。
ママに対する執着は、ボクの肩を押さえつけた掌に、あからさまに滲んでいる。

ママは取引を、始めたぞ。
お婆はまだ、パパから吸い取った血を持っている。
パパを生き返らせるためには、その血が必要なのだ。
ママはその血を得るのと引き換えに、ご自身の血をあけ渡そうとしているんだよ。
えっ?
戸惑うボクに、吸血鬼はたたみかけてくる。
夫の仇敵に身を任せるなんて、あまり健全ではないと思うだろう?
下品な婆さんの奴隷に堕とされてしまうくらいなら、
キミの悪友を悦ばせるほうが、キミにとってもすじがとおるだろう?
どうかね・・・?ママを連れてきてくれるかね?

あ、あ、ああーっ!
目の前でママが、じゅうたんの上に抑えつけられて。
血に飢えた唇を、首筋に吸いつけられちゃっている。
真っ白なブラウスは、バラ色のしずくに濡れ濡れになって。
首筋のどす黒い噛み痕には、吸い残された血が、てらてらと輝いていた。
相手は、小父さんではない。
しわくちゃな顔をした老婆が、信じられないほど強い力でボクのことを突きのけて。
ボクは尻もちついたまま、薄ぼんやりとなってしまって。
ママの生き血が、搾り取られるように老婆の喉に消えてゆくのを。
ただぼーぜんと、眺めていた。
股間にじくじくとしているのは・・・昂ぶりの歓び。
いけない愉しみに目覚めてしまったボクは、
残念だったね。小父さん。
心のなかで、そう小父さんにわびながら。
それでもママが、ボクとおなじようにされてゆくのを、
もう、ゾクゾクしながら、見守りつづけている。

ママの生き血は、おいしいかい?
どう?とっても若々しくて、色っぽいだろ?
ダメだよ、いっぺんに吸い尽くしたりしたら・・・
そう。いつの間にか、毒液にたぶらかされてしまったママは。
老婆と打ち解けて、振り乱した髪を撫でつけて。
いかが?って。肌色のストッキングの脚まで、ロングスカートのすそからさらけ出しちゃっている。

けっきょく、おなじことなんだね?
小父さんは、ボクのことを抱きすくめて。
いつもよりずっとしつっこく、ボクの血をじゅるじゅると啜り取ると。
お婆さまと、エモノを交換し合っていた。
へろへろになるまで生き血を抜かれたボクは、
廊下に追いやられて、ぐったりとなってしまったけれど。
白い線の入ったセーラー服の襟首に、ロングヘアをさらりと流した姉さんと。
きりりと結いあげていた黒髪をほどいて、お嬢さんみたいに肩に垂らしたママと。
ふたりの黒髪が、乱れあいもつれ合うみたいに。
畳のうえ、とぐろを巻いて。
乱れ舞い、狂い舞ううちに。
衣装をしどけなく、くつろげていって。
ママは生き返ったパパの前。
姉さんは、やっぱり吸い尽くされちゃった婚約者の前。
じょじょにスカートを、ずりあげられていって。
太ももを割って、狂わせるのは、男性である小父さんの役目。
血をよこせぇ・・・って、迫って、いじめるのは。お婆さまの役目。

覗き見つづけるボクたち男性軍は。
互いに言葉も交わさず、目配せもするゆとりもなく。
女たちが娼婦に堕ちてゆくありさまに、陶然としている。
もう言葉は、いらないんだね?
エモノの取り合いなど、ほんとうははなからあり得なかったんだね?
ちょっとはめられたかな・・・?
ふくれるボクを、パパも義兄さんも、苦笑しながらなだめてくれる。
キミも年頃になったら、彼女を連れてくるんだぞ。
ウン、約束ね。
指きりげんまんをしたボクは、まだ幼かったのだろうか。もうませてしまっていたのだろうか。

点景

2008年05月24日(Sat) 23:32:46

公園の新緑が、朝日に映えて眩しい。
あたりに人影のない、朝6時半。
さわやかな一陣の空気が車の窓越しにも心地よい、静寂の刻―――。
それは唐突な車のエンジン音で破られた。

公園まえの舗装道路に入ってきたのは、白色のセダン。
目だたない木陰にひっそりと停車した。
降りてくる人影はなく、音を忘れたようにひっそりとしている。
ぱたぱたぱたぱた・・・
名も知らぬ野鳥が、羽を連ねて数羽、いっせいに羽ばたいた。
あたりはふたたび、しぃんとした静寂。

おもむろに響いてくる、二台目の車のエンジン音。
真っ黒なセダンは、先客よりも数等、上級の車種であった。
白のセダンのすぐそばに、すべるように停止すると。
待ちかねたような人影が、白のセダンから降り立った。
黒のジャケットに、真っ赤なワンピース。
肌色のストッキングの脚が、斜めの陽射しを眩しく照り返した。
あっ!
思わず声を、洩らしていた。
見覚えのある服装は、けさ早く朝食もそこそこに玄関を出た妻のもの。
そして迎え取る黒のセダンの主は―――。
こちらから向けた熱い視線に気づくようすもなく、
なめらかな加速とともに発進した。
助手席に、妻を乗せたまま。

ぶうぅぅん・・・
軽やかなエンジン音を残して通り過ぎた、一陣の点景。
取り残されたのは、自宅の車庫からけさ出て行って、
女友だちを乗せてどこぞの海岸に出かけると言い置いたはずの自家用車だけ。
車窓のなかを覗き見する気力も湧かないままに。
そのまま声を、呑んでいた。
傍らの黒い影が、さっきから。
くっ、くっ、くっ・・・
忌々しい小気味よげな含み笑いを、無遠慮に洩らしはじめている。

いかがかな?
似合いのカップルじゃろう?
にたにたとほくそ笑む老婆の目に、好色なものが露骨に滲んでいる。
海辺に行くのは、嘘ではなかろう。
けれどもそれは男と・・・どんな旅路になるのやら。
老婆の唇が、首筋を這った。
かさかさに干からびた唇が、うるおいを懸命に求めて、
ぬるりと舌をぬめらせてくる。

人知れず秘めようとしたこちらの昂ぶりを、憎たらしいほどすばやく感づいて。
よろしかろう。よろしかろう・・・
老婆は自分とは反対側の肩を、ギュウッと抱き寄せてくる。
おなじように・・・されるのだね?
やっとの思いで、そう囁くと。
ご賢察・・・
女の声は、かすかな震えを帯びている。

わかっておろうの?
わしが、世話したのよ。
奥方に隠れて女の服を着てさまよい出ていくご亭主と。
亭主にうそをついてまで、浮気に出かける奥方と。
よぅくお似合いの、ご夫婦じゃ。
老婆はあやすようにわたしの二の腕をさすりながら、
ぐい・・・っと牙を、食いいれてきた。

身に着けた女もののスリップのなか、どろりとした血のしたたりがすべり込んでくる。
老婆はわたしの太ももを撫でながら、
くもの巣みたいにチリチリに破けた黒のストッキングを、まだ飽きもせずもてあそんでいた。
いまごろは・・・奥方も。おみ脚ばたつかせて、
あの肌色の靴下を、男に破らせておるであろうの・・
くっ、くっ、くっ・・・
老婆の意地悪い声色が。
ひどくなまめいて、鼓膜に反響する。

似合い・・・ですね。
お前たち夫婦のことかえ?
いや・・・家内と彼とのことですよ。
そうか・・・
祝福してやりたいですが・・・妻のノリでは黙認しているほうが賢明でしょうね?
さあ・・・いかがなものかな?
老婆はたち悪くほくそ笑みながら。
何度めかの咬みを、うなじにチクチクと刺し込んできた。

看護婦まりあの「受難」

2008年05月19日(Mon) 10:18:34

∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
某病院の廊下。院長が白衣姿のまりあを追いかけて呼び止める。

院 長 まりあ君、大変だ!病院に収容していた吸血鬼が逃亡した!
     きみも気をつけて、早く帰りなさい。
まりあ えっ!?吸血鬼?そんなキケンな人が入院していたんですかっ!?
院 長 病院の最高機密だったのだ。きみに報せなかったことを、おわびする。
まりあ わかりました!早く・・・早く逃げます!
     (恐怖に頬を引きつらせる)
院 長 うん。そうしなさい。わたしもほかの患者の安全を確かめてから退去するから・・・
     (まりあ、駆け足であわてて去る)
院 長 (無線機らしきものを取り出して)うん。いま裏門から出て行った。
     たぶん帰り道は公園を横切るはずだ・・・
∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
公園。新緑に包まれた木立ちと、青々とした草むらの真ん中に、細くて白く浮かび上がった小道。
向こうから駆けてくるまりあを、お約束どおりの不穏な生温かい風が包み込む。

まりあ  (あたりを窺いながら)どうしたの?どうしたの?気味の悪い風・・・
     (まりあの前に立ちはだかる、黒衣の人物)
まりあ  きゃあっ!だ、だれ・・・っ!?
吸血鬼 院長に聞いて知っているだろう?私が入院加療中の吸血鬼だ。
まりあ  あの・・・あの・・・お願いですから、見逃してください・・・っ!
吸血鬼 なにをあつかましいことを。お前、看護婦だろう?
      看護婦が患者を治療しないで、だれを治療するというのだ?
まりあ  えっ!?わたしは若い男性を専門に・・・なに言わせるんですか!
吸血鬼  ほら見ろ。私は十分若いぞ。まだたったの四百歳だ。
      がたがた抜かしているひまがあたら、さっさと服を脱げ!
まりあ  それって、治療じゃないと思います・・・
吸血鬼  うるさい!つまらんところで冷静な指摘をするな。
      私の治療には、若い女の生き血がたっぷりと要るのだ。
      お前の血をアテにして、こうして待ち構えていたのだぞ?人の期待を裏切るもんじゃない!
まりあ  そんな・・・勝手に期待されても困ります!それに看護婦だけじゃ治療はできません。
吸血鬼  院長はとっくに逃げちまった。なんなら院長の奥さんを呼んで来い。院長の代理ということで・・・
まりあ   医療行為は資格がないとできないんですよ~
吸血鬼  若い女の生き血があれば、あとは勝手に自力でよみがえってみせるわい。
      (まりあをつかまえて、いきなり首筋に噛みつこうとする)
まりあ  やだっ!やだっ!だめーーーっ!
      (公園じゅう追いかけまわす。カメラ、ばかみたいに早まわりをつづける)
吸血鬼  そーら、つかまえたっ!
まりあ   あああぁ・・・(かなり真に迫った、絶望のうめき)
吸血鬼  (まりあの目の前にロープを突きつけて)その樹に縛りつけて、血を吸い取ってやる~
まりあ  あ・・・わたし、縄を見るとうっとりしちゃって・・・(目がとろんとして、うっとりと縄を見つめる)
吸血鬼  変わった女だな。さては処女ではないな?よ~し、望みどおりにしてやるぞ。感謝するがよい。
      結婚前にいけない遊びにふけるやつは、私がこうしてこらしめてやるのだ!
      (とても嗜虐的な笑いを満面に浮かべながら、まりあをぐるぐる巻きに縛りつける。
      ギュッと締めつけるロープ、まりあの白衣に食い込んで、身体の線が浮き上がる)
吸血鬼  (目を細めて)うーん、なかなかよい眺めじゃ。
まりあ   患者さん、いやらしいです。ちっとも病気っぽくありませんっ。
吸血鬼  (いきなり首筋に噛みつこうとする)
まりあ   きゃあっ!
吸血鬼  往生際のわるい娘だ。
まりあ   だって首筋怖いんですもの。
吸血鬼  それなら、脚から噛んでやろう。
まりあ   え・・・?それ、なんかやらしいです・・・(白のストッキングの脚をすくめる)
吸血鬼  誘い上手だな、お前・・・
      (まりあの足許ににじり寄り、ストッキングの上から、くちゅっと唇を吸いつける)
まりあ   ああ・・・ん。いやらしいっ!
吸血鬼  すべすべ舌触りの良いストッキングを穿いているね?
まりあ   いやらしい・・・です・・・っ。
       (まりあ、思い切りもだえる。ロープ、ぶちりと切れる。ずいぶん弱いロープである)
まりあ   ラッキー!いち抜けたっ!(あわてて走り出す)
吸血鬼  あっ!待てっ!おおーいっ!
      (黒マントを引きずりながら追いかけるが、ロープの呪縛が解けたまりあの逃げ足は速く、
       追いつけない)
吸血鬼  うー、なんてことだ。待て、待てっ!もう少し、ナースストッキングの脚を舐めさせるのだ!
まりあ   (一瞬だけ戻ってきて)待ってあげるから、ちょっぴりだけサービスするわね♪
       (気前よく脚を差し出す)
吸血鬼  うふっ。ごちそうさん・・・
       (白ストッキングの脚ににゅるりと舌を這わせる。肌の透けるストッキングにヌラヌラと光る唾液)
まりあ   じゃね♪かけっこ、再開!(逃げ去る)
吸血鬼  あっ!待て・・・!

∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞

吸血鬼  ふう。逃げ足の速い女だ。とうとう逃げられてしまった。こんちくしょう!院長め!
      まりあの逃げ足が速いという情報はなかったぞ・・・(文句を百万遍くり返す)
      (まりあ、切れたロープをぶら下げて現れる)
まりあ   あの・・・忘れ物です。
吸血鬼  えっ!?戻ってきたのかお前?
まりあ   だって、ロープがないと女の子縛るのに困ると思って・・・
吸血鬼  切れたロープ持っててもしょうがないだろうが。
まりあ   それはそうですけど・・・いらなくなったら、きちんと分別ごみに出しておいてくださいね。
吸血鬼  吸血鬼がごみを分別するのか!?ええい、戻ってきたのを幸い、お前を噛んでやる。
まりあ   あの・・・ほんとうは、噛まれに戻ってきたんです。
       血が要るんでしょう?やっぱり私看護婦ですから・・・
       私の高い職業意識が、患者さんを見捨てるなっていうんです。
吸血鬼  ほんとか・・・?
まりあ   その代わり、殺さないでくださいね。(必死のまなざし)
吸血鬼  ばかな女だ。看護婦なら人体にどれくらい血液があるのか、わかるだろう?
       あんなに大量の血を、ふつうの人間がひと息で飲みつくせるわけがないだろうが。
まりあ   だってお芝居や映画では・・・
吸血鬼   あれはお芝居だお芝居。私が血を吸ってやると、愚かな人間どもは夢中になって
       過度に供血を習慣化させるから、勝手に血をなくしすぎて死んでしまうのだ。
まりあ   でもやっぱり、最初に血を吸うひとがいちばんよくないと思います。
吸血鬼   まあよい・・・(首筋に噛みつこうとして、思い直して)首筋は怖いんだったな?
まりあ   え、ええ。(脚にかがみ込んでくるのをよけて)でも脚はやらしいです。
吸血鬼   ぜいたく言うな(早くも白のストッキングを唾液で汚している)
       しんねりとして、噛み心地のよさげなふくらはぎをしておるの・・・
       (牙をむき出して、ストッキングの上からまりあの脚を噛む)
まりあ   痛いっ!あ、あ、あ・・・!だめ・・・だめぇ・・・っ
       (ちゅうっ・・・と、まりあの血を吸い上げる音。まりあ、その場にくたくたと尻もちをつく)
       (吸血鬼、なおもまりあの脚を放さずに血を啜りつづける)
まりあ   あ、あ、あ~ん。ひどいっ!ストッキング破けちゃった~(泣く)
吸血鬼   (吸うのをやめて)そういう問題か?もう少しガマンしろ。
       (もういちど脚を吸う。吸い始めるともうわれを忘れて、
        ストッキングがちりちりになるのも構わずに、しつようにいたぶりつづける。)
       (ひっきりなしにつづく、吸血の音。周囲を踊り子が取り巻いて、
        酔ったように手をかざし卑猥に腰を振って、意味のない舞踏をくり返す)

∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
草むらの穂先を、風がゆるやかに揺らしているなか、うずくまっているふたつの影法師。
まりあはうっとりと甘えるように、吸血鬼に寄りかかっている。

吸血鬼  いい子だ。気づいていたのか?吸血鬼はひと思いに人の血を吸い尽くすことができるのを。
       たしかに「ふつうの人間」にはひと息で吸い尽くすことはできまいが、私は吸血鬼なのだからな。
まりあ  でもおじさまは、まりあのこと助けてくれたのね?
吸血鬼  (しんみりとした目になって)もう少し、いっしょにいてくれるな・・・?
まりあ   うん。まりあ、おじさまが大好きよ。
       (二人、草むらのなかで抱き合う)
まりあ   処女じゃなくって、ゴメンね・・・
       (白衣の前をはだけ、あらわになった腰を振りはじめる。
        泥の撥ねたガーターストッキングを気にしながら、ゆっくりと脚を開いてゆく)
       (正常位、騎乗位、バック・・・と、体位をかえながら、二人は熱っぽい息を交し合う)
       (まりあ、さっきまでのぎこちなさはどこへやら、じつに扇情的に腰を振りながら、
        もっと・・・もっと・・・と声を洩らして、吸血鬼との情事に耽っている)
(どちらからともなく)うう・・・ん。
∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
まりあ  もうこんな時間。病院に帰らなきゃ。いかれたおじさまも、再入院ね。
      (飛んだナースキャップをかぶり直したり、はだけた白衣を直したり。
       まりあは身づくろいを始めているが、いけないおじさまの方は昂奮からさめやらず、
       裂けた白ストッキングの脚をまだいじくりまわしている。)
院 長  まりあ君、ここにいたのかね?とにかく無事で、よかった、よかった。
      今後はきみに、この患者の専属看護婦を命じる。よく面倒をみてあげてくれたまえ。
まりあ  ええっ!?だってこの人吸血鬼なんですよ!?
      わたし一人だったら、血を吸い尽くされちゃいます~っ。
院 長  だいじょうぶ。きみにはおおぜい、分身がいるだろう?
      OLまりあに、女医まりあ。女学生まりあに女教師まりあ。
      人妻まりあは、ダンナのOKが必要だろうが、
      女学生まりあはこの患者にぴったり適合する処女の生き血をもっているはずだね?
      毎日かわりばんこに相手をすれば、需要と供給のバランスがつり合うのだよ。
まりあ  そんな。そんな~っ!先生ひど過ぎますっ!
      (躍起になって抗議するが、後ろから抱きついてくる吸血鬼にとうとう首筋を噛まれてしまう)
まりあ  あ・・・あ・・・あ・・・(気を失って倒れる)
      (腕の中抱きすくめたまりあは、白衣のあちこちにバラ色のしずくを散らして、
       うっとりとなっている。吸血鬼、牙をゆっくりとまりあの首筋から引き抜く。
       引き抜かれた牙の切っ先から、血潮がほとび散り、
       いく筋ものしたたりとなって、まりあの白衣をきらきらと伝い落ちる。
       ちょっぴりホラー。)
吸血鬼  う、う、うぅむ・・・やっぱり若い娘の生き血は旨い・・・
       (こっちもうっとりしている。うら若い犠牲者の胸から身を起こすと、
        気を失ったまりあを、お姫様抱っこする。
        もちろん、あてがわれた病室のベッドに投げ込むためである)
院 長   じゃあ、あとは頼むよ。きみの病室にはもうひとつ、ベッドを用意しておいたから。
       (薄情にも、まりあを置き去りにして帰ろうとする)
吸血鬼  おっと待った。まりあ一人に責任を押しつけるのは酷だろう?
      今夜はお前の女房と娘を連れて来い。
      まりあを死なさないための中継ぎにするのだ。
       生命は保証するが、貞操と純潔の保証はいたしかねるがね。(たち悪くせせら笑う)
まりあ  (とたんに気がついて)だめーっ!浮気したら。
      (おっかない顔になって、吸血鬼の頬をつねる。)
      (吸血鬼と院長、引く。)
まりあ  病室の用意はOKね?じゃあ行きましょう。
      分身のみんなで、交代で面倒見てあげるから・・・ね♪
      そうそう。生命の保証をしてくれれば、貞操の保証はナシでもいいからね~♪♪♪

                            ―END―

あとがき
あんまり「受難」じゃなかったような・・・。(^^)

情事のなごり ~黒のパンティストッキング~

2008年05月19日(Mon) 06:02:41

お入りなさい。
部屋のなかから、男の声がした。
わたしが息をひそめていると、もういちど。
どうぞ・・・
少しためらうような声色に、相手の気遣いを感じて、わたしは初めて、窓ガラスに自分の影を映していた。
さっきまで。この部屋で。妻が、犯されていた。いまの声の主に、征服されて。

踏みしめた畳は気のせいか、ふたりの体温がまだ残っているようだった。
この上で、ついさっきまで。凌辱がおこなわれていた。
そう。夫であるわたしの、諒解のもと。
愉悦に満ちた嫉妬の視線を注ぎ込んでいた窓辺を、わたしはもういちど振り返っている。
あたかもそこに、もうひとりのわたしがまだ佇んでいるかのように。

カズエさんは、しばらく戻ってきません。
いま・・・シャワーを浴びにいったようだから。
妻の主になった男は、トーンの落ち着いた、透き通った声。
傍らに落ちていた妻の衣類に目を留めると。
スッ・・・と、拾いあげて、わたしに手渡しした。
さっきまで妻の脚にまとわれていた、黒のパンティストッキング。
つま先から太ももにかけて、縦にひと筋。
鮮やかなまでの裂け目が、広がっている。
透き通るほど薄いナイロンにしみ込まされた、目に見えない痴情の痕。
繊細な織り糸がつくり出すなめらかな光沢が、わたしの網膜を毒々しく染める。
男は澄んだ声色で。
穿いてごらんなさい。
不思議な命令に、わたしは唯々諾々と従っている。

どうしてわたしが、女もののストッキングをたしなむことを。
男は知っているのだろう?
手ぎわよくするすると脚に通していった薄手のナイロンは、
淡い脛毛の生えた向こう脛を、なめらかな密着感で包んでいく。
気品のある薄墨色は、なにも知らないわ・・・といわんばかりに。
妻が淑女であったころそのままの清楚さをたたえていた。
お気に召したようですね。
わたしの心の奥底まで覗き込むような目に。
わたしは抵抗する気持ちを失っていた。
差し上げましょう。よろしければ。
けれども・・・次回からは。
カズエさんのストッキングはわたくしが、頂戴しますよ。
わたしは口ごもりながらも、知らず知らず、もっとも適切な言葉を選んでいた。
妻のこと、呼び捨てにしてもらってかまわないです・・・と。
ストッキング、ほんとうに持っていって、だいじょうぶですか?
だいじょうぶ。彼女・・・抜け目のないひとだから。
ちゃんとハンドバックのなかに、穿き替えを用意しているはずだから。
男は終始、愉しげな笑みを口辺にたたえつづけている。

それ以来。
妻のストッキングは、週に二足も三足もせしめられてゆく。
二度めの晩は、きょうのように、黒。
ある日は、いつも目にする肌色。
べつの機会には、見たこともないほど毒々しい光沢をよぎらせていた。
二度めの黒は・・・逸してしまったさいしょのコレクションの埋め合わせ。
つぎのときの肌色は・・・妻の日常を支配したという証し。
そのつぎのあの毒々しい光沢は・・・妻がひそかに彼と好みを共通にした証し。
増えていく彼のコレクションを、見せつけられながら。
昂ぶりを、とめることができずにいる。

夕べのカズエは、従順だった。
きょうは真っ昼間から、カズエをお宅の庭で犯し抜いていたんだ。
今夜は、帰宅しないように。お宅でカズエを縛るのだから。
妻の主は、笑みを含んだおだやかなまなざしで。
手厳しい要求を、突きつけてきて。
わたしはそれを、苦笑しながら、受け容れていく。
どうぞわたしの宝物を、たっぷりとお愉しみください。
それが・・・わが家が貴方に捧げる礼節なのですから。
さいしょの一足の代償は、かなり高くついたようだった。

あとがき
前々作の、余話をイメージしました。
寝取った奥さんのご主人に、奥さんのストッキングを穿かせるのは。
ちょっと、悪趣味ですかな・・・?^^;

ママのお嫁入り

2008年05月19日(Mon) 05:16:07

さあ、今夜はお祝いだ。
勤めから帰ってきたパパは、いつになく上機嫌で。
テーブルいっぱいに盛られたごちそうに、ボクもつり込まれるようにご機嫌になる。
今夜のお祝いはなぁに?
無邪気に尋ねるボクに、パパはおおらかに笑って言った。
ママがね、お嫁入りするんだよ。
えっ?
ケゲンそうなボクに、パパはちょっと言いよどんだけれど。
噛んで含めるような声色で、こう語ったものだった。

ママはね。もちろんパパのお嫁さんなんだ。
パパのお嫁さんで、ジュンのママであることには、変わりないんだけれど。
こんどは、マサシおじさんのお嫁さんにもなるんだよ。

マサシおじさんは、近所に住んでいる独身のひとで、
おだやかでひっそりとしているところが、波長が合って。
ボクはむしょうに、なついてしまっている。

パパ、こんど単身赴任するだろう?
そのあいだ、マサシおじさんに、留守番を頼むんだ。
そうはいっても、おじさんもいろいろと忙しいし。
そう毎晩は、来れないけれど。
パパの留守中はいつでもうちに来て、夜はママといっしょに寝るんだよ。
ときには・・・ママのほうから出かけていって、マサシおじさんのところに泊めてもらうこともあるけれど。
ジュンは・・・ガマンできるかな?

ボクだって、もう子どもじゃないんだから。
ひと晩くらいママがいなくても、心細くなんかないよ。
きっぱり言い張るボクに、パパもママも感心したように目を細めて、
それからお互いに顔見合わせて、照れくさそうに笑みあっている。

けれどもボクは、知っている。
これまでもずっと、独身のはずのマサシおじさんは、あちらこちらのお宅からお嫁さんをもらっていて。
タカシくんのママや、サトルくんのお姉さんも、お嫁さんになったことがあって。
じつはパパが家にいないとき、マサシおじさんはこっそりとママを訪ねてきていて。
ふたりきりになっているところを、ボクはなんども覗き見しちゃっていた。
パパにはナイショだよ・・・って、おじさんはウィンクしてみせて。
指きりげんまんで、約束して。
ふすまの向こうから、ドキドキ胸はずませて。
いちぶしじゅうを、愉しんでいた。
パパのことは、大好きだけれど。
マサシおじさんに恥ずかしがりながら服を脱がされくママを覗く愉しみを、無しにしたくなかったのだ。

いつの間に、パパは察してしまったのだろう?
けれども・・・マサシおじさんとママを取り合ったりしないで、
うまく棲みわけが、ついたのだろう。
うまいことを言うよね。
「ママのお嫁入り」・・・だなんて。
ボクはごちそうをほおばりながら、時おりふたりのようすを盗み見ていた。

十なん年か、経ったころ。
ママはまだまだ、若々しくって。
すっかり大人になったボクは、もうお嫁さんをもらっていて。
ママはあいかわらず、週にいちどはマサシさんのところに通っていて。
マサシさんのお嫁さんになりに行っている。
いちど、ごあいさつに・・・って、切り出したママは。
ボクのお嫁さんを、マサシさんの家に連れて行って。
お互いの亭主がお勤めに出ている真っ昼間に、
まるまる半日、おじゃまして。
ふたり、さりげなく視線をそらし合って。服の乱れをつくろいながら。
―――女はね、二度めのお嫁入りが重要なのよ。
―――浮気を認めてもらうくらい、あなたもあの子に愛されているのね。
ママの囁きに、さっきまでボクだけのものだったはずのお嫁さんは、
ちょっぴり照れくさそうにしながらも、はっきりとうなずいたという。
ぎこちなかった嫁と姑は、息の合う共犯者になっていた。

共犯者?
パパは覗き込んでいた新聞紙の谷間から顔をあげると、
パパやキミだって、マサシさんの共犯者なんだぜ?
わが家でいちばんのごちそうを・・・彼にたらふく食べさせているんだから。
パパはふふふ・・・と笑いながら、なにごともなかったように。
ふたたび新聞紙の谷間に顔を埋めている。

ブログ拍手

2008年05月19日(Mon) 04:37:30

しばらく落ちているあいだに、拍手を三ついただきました。
ふつかにいっぺん、いただいている計算です。
そのうちふたつは、今月あっぷした新作です。

「ねぇ、まりあ」
まりあを妄想のなかで脱がしていく・・・
そんな気合いを込めて、描いてみました。^^

「二等辺三角形と正三角形」
妻と夫と、妻の彼。
三人の関係は二等辺三角形から正三角形へ。
ちょっと理屈に落ちたかな?と思っていたのですが。
拍手をいただけて、ホッとしました。A^^;

昨日ちょうだいした
「凌辱アルバム」
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-292.html
は、かなり以前描いたものです。
おととしですね。^^;
なんとなく、内容は憶えていたのですが。
こういうアルバムは、結婚披露宴のアルバムなみに、価値があるかも?
お宅でもぜひ一冊、いかがでしょうか?^^

寝取られる妻

2008年05月19日(Mon) 04:19:54

約束の時間が近づくと。
妻はそわそわと、身支度をはじめて。
ことさら音を立てまいとする気配が、ふすま一枚へだてた向こう側から伝わってくる。
ふたたび現れた妻は、黒一色のスーツ姿。
恐る恐る、わたしの顔色をうかがいながら、言葉をえらぶようにして。
「行ってくるわね」
ごくありきたりの、みじかい言葉をいうのに、かなりためらっていた。
夫のまえで、なんと言えばいいというのだろう?
これからほかの男に抱かれにいく、なんて・・・

妻のおとがいの一角に、ごくめだたないていどにつけられた痕。
ふたつ綺麗に並んだ赤黒い斑点を。
わたしもまた、彼女とおなじ部位に滲ませている。
おのおの別々の機会につけられた斑点は。
理性を喪う・・・という。あたかもおなじ効果を、それぞれにもたらしていた。
皮膚のほんのわずかなすき間からしみ込まされた毒液は。
妻をほかの男のもとに送り出す。
そんな異常なはずの行為を、あきらかな愉悦さえ伴って、確約してしまっていた。
まだほんのわずか残された理性は。
お互いのあいだにかすかなわだかまりを漂わせ、
濃い羞恥に向きあうにはじゅうぶんなだけ、
ふたりのあいだにとどまりつづけている。

村に来て、ようやくひと月が経とうとするころ。
しんそこ村の住民として受け入れられるために果たされなければならない通過儀礼。
己の妻を、ほかの村の男たちと共有する。
互いに妻をとりかえ合い、親しみあう。
それでこそ、しんそこ打ち解けて日常を重ね合わせることができるという。
  たいせつな第一歩なのですよ。
  われわれのあいだでも。おふたりのあいだでも。
村の長の口調はおだやかだったけれど、
拒絶を許さない冷然さを滲ませていた。
互いの妻を共有し合い、かよい合う。
村ではとうぜんのしきたりは。
たしかに・・・人と人とを濃く結びつける。

相手の男性は、一見ごくさえない中年男。
わたしよりも齢は、ほんのいくつか上にみえた。
じつは数百歳も歳を重ねた、手だれの吸血鬼。
通りすがりの妻を見初めたのだと、はっきりそう告げられた。
いく千人もの女をモノにしてきた男の牙に、妻の肌が選ばれたのは。
  とても名誉なことなのですよ。
間に入ってくれた村の長は、ごくおだやかな声色で、わたしにそう告げたのだった。
  ご心配なく。
  ご夫婦の名誉や世間体が害されることは、ありません。
  貴方はただ、理解ある夫になりきりさえすれば、よろしいのです・・・
わたしは居合わせた妻と、顔を見合わせて。
やはり膝つき合わせていた、妻を所望の男性と視線をからみ合わせて。
よろこんで、お受けしましょう・・・
引き寄せた妻の手を、相手の男にゆだねていた。

「行ってくるわね」
ごくありきたりを装って、そう言った妻は。
なおもためらうように、ちょっとのあいだ言葉を呑み込んでいたけれど。
「だいじょうぶ。なにも感じない。献血の延長だものね」
つとめて明るく振舞おうとした声は、どうしてもつんのめってしまっていて。
本人の意図を、うまく果たしていない。
「ああ・・・ご苦労さん」
わたしもまた、妻とおなじように、声かすれさせながら。
わずかながらでも、その場を取り繕おうとしている。
互いに互いの想いをかよい合わせて。
わたしは妻を、玄関まで送り出す。
ぴかぴか光るエナメルのハイヒールに。
薄墨色のストッキングにくるまれたつま先が、すうっと収まってゆく。
喪に服するくらいの心づもりで選ばれた黒一色の装いは。
じつは・・・彼らをよけいにそそらせてしまうなど。
彼女は夢にも思っていなかった。

数時間後。
少し、顔蒼ざめさせているようだった。
招かれるときにはいつも、そんな顔色で戻ってくるのがつねだったから。
それさえ差し引けば、なにひとつ・・・変化が訪れたようには、見えなかった。
きりっと結い上げた黒髪も。
清楚に装われた黒の礼服も。
うなじも、おとがいも。輪郭のはっきりとした頬も。
出かけていくときと、なにひとつ変えられていないかのようだった。
けれども彼女に訪れた確実な変化を・・・幸か不幸か、実感してしまっている。
妻はわたしと目を合わせると。
―――ただいま戻りました。
―――おかえりなさい。ご苦労さま。
ごくありきたりな言葉を、少なくとも出がけよりはよどみなく交わし合ったあと。
妻はさらりと、視線をはずして。
居間にも自室にも目もくれないで、まっすぐ浴室へと足を向けた。
シャワーを浴びるまぎわ、妻が向けてきたのは。
洗濯機まわしますので・・・おズボン脱いでくださいな。
こたえを待たず、浴室のくぐもった音があとにつづいた。

ひざ小僧についた泥は、こっそりとお邪魔したあちらのお宅の庭のもの。
妻はひと目で、見抜いたのだろうか?
わざとのように開け放たれた窓ごしの風景。
辛くなったら目をそらそう・・・と、心に決めていたのに。
とうとういちぶしじゅうを、覗き見つづけてしまっていた。

ためらいがちに、震える指で。
妻はブラウスのリボンをほどいて、胸をくつろげていって。
そのあいだ男はずっと、黒のストッキングに装われた妻の脚を舐めつづけていた。
迫ってくる猿臂を、婉曲に拒みながら。
さし寄せられてくる唇から、素肌を隔てようとしながら。
しぜんしぜんに、姿勢を崩していって・・・
くまなく舐め抜かれた、服からこぼれる素肌。
ほてるほどしつようにまさぐられた、スカートの中身。
地味な黒のスカートは、くしゃくしゃになってたくし上げられて。
太ももをくっきりと、浮き彫りにしていった。
その上から、のしかかるようにして。
ある角度から沈み込んでいった、逞しい腰。
がっしりとした太ももの筋肉が、キュッと緊張を走らせると。
ひいっ・・・
喉の奥から搾り出すような声。
妻は他愛なく、狂わせられていた。

何度も、何度も。
男の要求のまま、みずから体位をかえていって。
いつか積極的に、奉仕している妻。

突き出された亀の頭は、うわぐすりをぬらぬらさせているというのに。
突っ立った男のまえ、ひざまずいて口に含んでいって。
うわぐすりを舐め取るように、しゃぶり抜いていた。

裂けたストッキングを残した脛を、毛むくじゃらな太ももに蹂躙されながら。
男の逞しい胸に、くまなく唇をすりつけていった。

さらりと流れる黒髪を、片手で抑えながら。
情夫のうえ、馬乗りのかっこうで、腰を揺らしつづけていった。

なれ初めは、正常位。
四つん這いになって、後ろから犯されたり。
互いに互いのモノを、舐めあったり。
指をからめ、唇をからめ、なん年も馴れ合った男女のように、あえぎ声重ね合わせて。
騎乗位を要求されたときには、じぶんから男のうえにまたがっていった。
ああ、見ちゃいられない。見ちゃいられない。
妻の痴態に、頭を抱えながら。
それでも昂ぶりを抑えきれず、失禁してしまったわたし。
永年連れ添った妻を、娼婦に堕とされてゆく光景に。
妻のなかの女をかいま見て。
男のぶつけてくるしつようなまでの劣情に。
捧げたものがお気に召したときの、下僕のような歓びを覚えていた。

男はわたしに、どこまでも鄭重に接してくる。
わたしはそんな情夫の心遣いにこたえるように。
ふたりきりのときには、露骨な要求を許してしまっている。
今宵・・・奥さんをわたしの奴隷にしたい。
喜んで、お相手させましょう・・・
隷属の告白に、ゾクゾク震えるような昂ぶりに声うわつかせているわたし。
それを耳にするともなく、だまってお茶を煎れかえる妻。
今夜もまた、男は忍んでくる・・・


あとがき
久しぶりに描いたのですが・・・
う~ん。長い割りに、生煮えですな。(^_^;)

二等辺三角形と正三角形

2008年05月15日(Thu) 07:45:42

机の上に開かれた、大学ノート。
まゆみは瞳をきらきらさせて、永村医師を見あげている。
真っ白なノートに書き込まれたのは、二等辺三角形。
乱雑に描かれた割に正確なフォルムをもっているのは。
医師の几帳面な性格の表れだろうか。
「二等辺三角形というのは、どういう三角形だか説明できるかね?」
とっさに答えにつまったまゆみのまえ。
自ら描いた三角形をなぞりながら。
「辺AB=辺AC。三角形の三つの辺のうち二つの長さが等しいのが、二等辺三角形だね?
  辺AB=辺AC>辺BCという関係になるから、頂点Bと頂点Cの距離は頂点Aよりも近い関係になる」
やだわ、先生ったら。わたしのこと、子どもあつかいにして。
まゆみはぷっと、ふくれて見せる。
はたち前の女学生は、少女からレディになりかけの色香を、本人も自覚しないままに漂わせていた。

吸血鬼になった父親は。
正気を取り戻した昼間だけは家に戻ってきて。
本性さらけ出す夜には、病院に隔離される。
けれども彼は、病院の塀を乗り越えて。我が家に侵入してきて。
己の妻や、まな娘まで。
毒牙にかけてゆくのであった。
妻も娘も、跡取り息子も。
父親のそんな正体を知りながら。
さいしょは軽く、あらがって。
それでもいよいよのしかかってくると。
皮膚のいちばん柔らかなあたりを、自分のほうからくつろげていって。
ひと晩、みだらな欲望に、身を任せるのだった。

娘の勉強部屋の真下は、夫婦の寝室。
きょうも帰宅してきた父親は、妻を婉曲に問い詰めている。
夕べもあいつは、来たのだろう?
そう。
夜の自分は、別の自分。
あるようでない記憶のかなた、もだえる妻は別人のような娼婦。
その記憶の残影を、再現しようとして。
彼は妻を、問い詰めつづける。
夕べもあいつは、来たのだろう?

夫婦のあいだでのやり取りは。
夫人もすこし、羞じらいながら。
それでもいかにももっともらしく受け答えしていくのは。
永年の関係が、そうさせるのだろう。
―――ええ、お見えになりましたわ。夕べも。
―――どんなことを、されたのだね?
―――血を吸われて、抱きすくめられて・・・
―――それから?それから・・・?
―――・・・・・・。
―――こんなふうに、されちまったわけじゃ、ないだろうな?
やおら妻のことを抱きすくめた男は、そのまま力づくで妻をたたみのうえに組み敷いてゆく。
着飾った服が、まるで花びらを散らすように。
しどけなく、くつろげられてゆく。

あっ、だめ。昼間から・・・いけませんわ。
なにを言う。夜はあいつのものになるくせに・・・
妻の拒絶に、かえって気分を昂ぶらせた夫は、
階上の勉強部屋の子どもたちの気配にさえとんじゃくなく。
組み敷いた女から、うめき声を絞り取る。
うふふふ・・ふふふ・・
閉ざされたふすまの向こう側。
ふくみ笑いがふた色、いつまでもくすぐったそうに揺れていた。

ほかのやつに抱かれる気配が。
夫をなおさら、鋭敏にする。
妻はそれが同一人物であると知りながら。
同一人物ではなくなっている部分をさえ、いつか愛しはじめていて。
そうした気配の変化が、いっそう夫を苛立たせ、昂ぶらせる。
抱かれているのだな?
念を押しながら、妻を犯しに現れる夫のまえ。
妻はいつも、着飾ってゆく。
いびつなゆがみが息づいた、日常の循環のなか。
娘の大学ノートに書き加えられたのは、正三角形。

「・・・すべての辺は、ひとしくなる」
ええ、そうね。
娘はおとがいを、仰のけて。
無言のこたえを、かえしてゆく。
ふたりはいつか、ぴったりと身を寄り添わせて。
ブレザーを脱いだブラウス姿から、抜き身の裸身が見え隠れする。

きみの母さんのことも、抱いている男だぜ?
知っているわ。
そのほうが・・・きみのお父さんも、愉しいらしいから。
いいわけよ。
女になった少女は、けだるげに眉ひそめながら。
男の無作法を、拒みながら、誘い込んでいる。
きみもさすがに、女だね。
ええ・・・もう、子どもじゃないもの。

ぎこちない太ももの動きは、初々しく。
ぬめるような白い皮膚に、血の気を透き通らせてゆく。
二等辺三角形の二辺は、距離を縮めて。
妻と夫とのあいだに、割り込んできて。
ことのついでに・・・というわけでもなく。
発育のよい娘の太もものすき間をも、割ってゆく。
だ、い、じょ、う、ぶ。
なにが・・・?
マサオも、知っているわ。
あの親子。ふたりして。
ママが、奥様が、姦られちゃっているところを、すき間から覗いているの。
いまも、そうしているみたいに・・・ね。

机のうえに放置された、大学ノート。
真っ白なページのまん中に、乱雑に書きこまれたふたつの三角形が。
いつまでも、静かな無表情を取り繕っている。

ねぇ。まりあ

2008年05月13日(Tue) 07:55:27

ねぇ。まりあ。
そこに立って、服を一枚一枚、脱いでいってごらん。
そのようすを、わたしが逐一、写真に撮ってあげるから。
そう。そうして、地味めな服で。
取り澄ました顔をして。
ちょっぴり、羞じらいながら。
髪の毛をほどいて、肩に流して。
ブラウスのリボンをほどいて。
ブラにガードされたおっぱいを、レエスごしにちらちらさせて。
ブラウスを思い切り脱いで。
おっぱいを隠しているブラまで、取り去って。
下は折り目正しいスーツのスカートに、肌のツヤツヤ透ける黒のストッキング。
上は一紙まとわぬ裸身。
どうかね?
ちょっぴり、昂奮してこないかね?
さあ・・・つづきをやるんだ。
なに。羞ずかしがることはない。
観ているのは、私と・・・そう。このカメラだけなのだから。
つぎは、スカートだね。
横を向いて、顔をうつむけて。
ジッパーを、おろすんだ。
え?はずかしい?
かまわないさ。いつもしていることじゃないか。(パシャ)
それからまず、片足だけ、引き抜いて。
そう。そこでいったん止めて。(パシャ)
こちらを向いて。ひざをそろえて。(パシャ)
それからすとんと、スカートを落とすんだ。(パシャ)
足許に広がったスカート、なかなか見ものだね。^^
そう。やっぱりガーターを穿いてきたんだね?
じゃあ、片方ずつ、脱いでもらおうか。
もちろん・・・ゆっくりと・・・ね。
なに?恥ずかしい?
じゃあ・・・脱ぐのは片方だけに、しておこうか?
もう片方は、わたしがたっぷり、いたぶってあげるから。
ごほうびに・・・
今夜は思い切り、狂わしてあげるから。

強制入院

2008年05月13日(Tue) 07:45:21

不鮮明なビデオ画面に映っているのは、妻と息子。それに十八になるまな娘。
みないちように、作り笑顔としか思えない笑みをたたえて、画面のこちら側にいる御薗のことを見つめている。
「だいじょうぶですわ。わたしたち。どうかあなた、早くご病気を治してくださいね」
妻はいつものようにしとやかに、旧家の嫁としてふさわしい控えめな言葉遣いで呼びかけてくる。
「痛くないからね。このごろ楽しみにしてるんだよ」
気丈に声をはげましているのは、まだ童顔の残る跡取り息子。
「いつでも、もどってきてください。わたしたち、ガマンできるようになったから・・・」
娘のまゆみは、目じりにほんのちょっぴり、涙を溜めているようだった。
怒りに目を血走らせて、御薗はあたりを見回す。
病室の窓には、鉄格子。
ビデオ画面の後ろに、逃亡を妨げるように立ちはだかっているのは、永村医師と病院の看護婦一名。
背後のドアの向こうには、まだべつの人物がひかえているらしい。
「貴様!貴様らっ!よくも家族を・・・」
洗脳したな?という声は、怒りのあまり喉につかかっていた。

ひと月ほど前のことだった。
「痛いよー!噛まれちゃったよー!」
喉もとを抑えながら駆け込んできたのは、息子のシゲルだった。
抑えた指の間からは、血潮がぽたぽたとしたたっている。
夜寝ているあいだに、侵入してきた何者かに首を噛まれたというのだ。
「まあ!だいじょうぶ?だいじょうぶ?」
気遣わしげに駆け寄る妻の首筋にも、おなじ痕が。
赤黒い痣のような噛み痕が、測ったようにおなじ間隔をおいてふたつ、母子の首筋に並んでいる。
「強制入院です」
旧知の間柄のはずの永村医師がよそよそしい薄笑いを浮かべて御薗家を訪れたのは、それから数日後のことだった。
―――お前を家族から引き離す。
冷酷な意図が、整った白皙の目鼻だちにありありと滲んでいた。

まるで拉致されるようにして収容された、永村医院の奥まった病室。
看護婦一名が割り当てられて、常時監視するようにして、御薗の看護にあたった。
なにかわからない薬を飲まされたり、注射で採血されたり。
採られた血を、永村のやつは悪辣な仲間たちと顔つき合わせて、
にんまりほくそ笑みながら、口に含んでいるのだろうか?
入院と称して、御薗の帰宅を阻んでいるのは明白だった。
それからは毎晩のように、恐ろしい業火が御薗を包んだ。
―――家族全員が洗脳されるまで、お前はここにいなくちゃならないよ。
永村医師の無表情の裏に、そんなメッセージが隠されている。
早く戻らねば。家族を救わなければ。
焦れば焦るほど、小人数で運営されているはずの病院側の準備の周到さを思い知っていた。
「え?お帰りになりたいのですか?いま帰っちゃ、ダメですよ。」
おためごかしな言辞をくり返す永村医師は、どこまでも偽善的な笑みで、
御薗の必死な願いをやんわりとさえぎりつづける。

とうとう御薗は奥の手を使うことにした。
看護婦をたらし込んで、脱走するのである。
五十に手がとどく齢になりながら、御薗はレディキラーで通っている。
すでにしばらく前から、清野看護婦への対応は変えていた。
これも家族のためなら、いたし方ない―――
密閉された病室のなか、さすがにあからさまなことはできなかったが、
御薗の想いはじゅうぶん、彼女には通じたらしい。
清野看護婦は、思慮深く気丈なベテラン看護婦だった。

「さ。今夜こそ・・・いいですね?」
永村医師が病室を去ると、ほんの数秒、清野看護婦はあとにとどまって、
御薗の耳元に矢のような声をすべり込ませた。
「ああ。わかった。迎えに・・・」
みなまで言い切るいとまもなく、清野看護婦は知らん顔をして、逃れるように病室を出た。
その夜のことだった。
当直ではないはずの清野看護婦が、白衣のまま病室に現れたのは。
さすがに緊張して、頬を引きつらせている。
清野看護婦は、御薗よりいくつか若い。
きりっとした目許に、ありありと緊張を滲ませているのは。
―――病院を裏切る。
いや、それ以上に。
―――吸血組織と対決する。
そんな正義感のせいかもしれない。
照明の消えた病院のなか。
廊下に差し込む月明かりに浮かんだ清野看護婦の、
輪郭のはっきりとした細面が、ノーブルな若々しさをたたえていた。

ブルルルルルルル・・・
エンジン音もひそめるようにして、
清野看護婦の車が、病院を離れる。
ざまあみろ。
鉄格子のついた病室は、はるか遠くに小さくなっていった。
家までは、十分ほどの距離だった。
車を降りると、御薗は身のこなしも軽やかに、
施錠された門には目もくれず、家の塀を乗り越えている。
下から手を差し伸べる清野看護婦を、軽々と引っ張りあげて。

きっと今夜も、やつは出現する。
御薗は確信に近い見通しをもっていた。
家族の血を狙う憎いやつは、どんな面貌の持ち主なのだろう?
永村医師が主犯なのか。ほかにもっと兇悪な相棒がいるのか。
どちらにしても、彼を強制入院させた永村が片棒を担いでいるのは疑いない。
背後を振り返ると、張り詰めた面持ちの清野看護婦が、ゆっくりとうなずいてみせる。
御園は身軽に二階のベランダによじ登ると、看護婦の手を取って引っ張りあげた。
二階の雨戸が、半開きになって、灯りがこうこうと漏れている。
そこは夫婦の寝室だった。
もう・・・
気丈な妻までが、洗脳されてしまっているのだろうか・・・
絶望に似た気分が、一瞬御薗の脳裏を浸したが。
すぐに思い切ったように、彼は雨戸を押し開いていた。

ととのえられたベッドの向こう側。
若い女がひとり、アームチェアに縛りつけられている。
さるぐつわをされて、身をよじっているのは。
これから行われる儀式に参加することへの、拒否表示であろう。
妻は優雅なほほ笑みをたたえながら、ノーブルな横顔をこちらに向けていた。
まだ・・・二人の登場には気づいていないようだった。
縛られた女は、ふた月ほど前から家にあがったお手伝いさんだった。
たしか今年で21。身分は学生のはず・・・
御薗の思惑をよそに、妻はよどみなく、やんわりとした脅迫をつづけていた。
「まだ、慣れていないようね。でも、もうダメよ。逃げられない。
  もうじき、あのひとが来るわ。生き血をたっぷり、吸われてお仕舞い」
冷たい笑みに頬を引きつらせると、妻はこちらに向き直る。
じつはさいぜんから、屋外の気配を察していたらしい。
そして―――信じられないことを口にしたのだ。
「さああなた。若い娘を差し上げますから・・・でも、そのまえに・・・」
妻は自分の胸をおおっているブラウスを、剥ぎ取るように荒々しくくつろげると。
「さあ・・・吸って・・・」
御薗の理性が、停止した。

ちゅ、ちゅう~っ・・・
旨い。むしょうに、旨い。
妻はとっくに、壁にもたれかかったまま気絶していた。
気丈な清野看護婦さえ、じゅうたんにうつ伏せになっていて。
ふたりとも、したたかに血を抜かれた証拠に、
白衣やブラウス、それにちりちりに破けたストッキングにも。
うら若いバラ色のしずくを、チラチラと光らせている。
腕のなかにいる若い女も、いまは恍惚の刻に身をゆだねてしまっていて。
もっと・・・もっとぉ・・・
飽くなき欲情をあらわにする御薗の吸血を、自分からせがみつづけていた。

おわかりですかな?
いつの間にか傍らに身を寄せて、永村医師がささやきかけてくる。
吸血病に侵されているのは、ほかならぬあなたご自身なのですよ。
ご家族から、内密の相談を受けまして。
世間体をはばかって、入院していただいたのです。
けれども貴方の吸血癖は、とどまるところを知らなかった。
夜陰に乗じて病院を脱走して、ご家族全員を、洗脳してしまわれた。
だから・・・今夜の一時帰宅も、ご家族のご希望によるものなのですよ。
ふと見ると。
傍らに腰かけている清野看護婦は、両手をつつましくひざの上に重ねて、
羞じらうような笑みをみせていた。
首すじにはすこし前、彼がつけた痕をくっきりとさせたまま。
なにしろ、ほら・・・私の血まで吸ったくらいですからな。
ズボンをたくし上げた永村医師のふくらはぎは、ひざ丈の薄い靴下にくるまれていたが。
薄手のナイロンに透けた皮膚には、あきらかな痕が滲んでいる。
うっ・・・
せきあげてくるようなどす黒い衝動が、ふたたびつきあげてくる。
「どうぞ」
永村医師は無表情に自分の脚を差し出すと、薄い靴下を噛み破られるときだけ、ちょっと苦い顔をした。
息子も、娘も、昼間のように着飾って。寝室に現れて。
順ぐりに、ベッドに仰向けになって、御薗に血を提供してゆく。
「退院ですな」
やむを得ません・・・そんな口ぶりで告げる永村の声を。
もはや御薗は聞いていない。

あとがき
どんでん返しになったような、ならなかったような。^^:

えー。

2008年05月11日(Sun) 08:00:55

ちょいとお休みが、つづいてしまいました。(^^ゞ
パソコンがGWを、欲しがりましてね・・・(苦笑)
まあそんなわけで、いけないお話をまた折々つづっていきたいと思います。^^

おめーの好きなハイソックス、履いて来てやったぜ。

2008年05月11日(Sun) 07:57:39

ここに来るたび、いつもちょっぴりくすぐったい気分になる。
ほんとうにオレ、男らしいことしているんだろうか?って。
利用されているだけなんじゃないのか?って。
なんどもそう、疑ってみたけれど。
あいつはオレに感謝している。
その確信だけは、こ揺るぎもしない。
ミノルは、あたりをチラチラと盗み見るようにうかがうって。
人目がないのを確かめてから、公園のなかに足を踏み入れた。
いつものように思い切りよく、大またな足取りで。
公園のまん中にある、噴水のある広場のほうへと。

夕暮れ刻のその公園に、ふつうの女の子は寄りつかない。
時おりカラスがカァカァと殺風景な声たてるそのかいわいは、男の子にしたって気味のいい場所ではなかった。
けれども少年は臆するふうもなしにスタスタと歩み寄っていった。
「おーい!どこにいるんだ!?きょうは欲しくないのかよう」
むしろ小気味よげに、叫んでいた。
薄い闇に透けて、半ズボンの下に履いた真っ白なハイソックスが眩しく映る。
半ズボンにハイソックスだなんて、女の子みたいななりだけど。
この時分の男の子はだれでも、そういうかっこうをしていたのだった。

声がこだまして、闇のかなたに吸い込まれていったとき。
その闇の隅っこの一角が、がさりと揺れた。
少年はさすがにどきりとして、足をすくめてようすをうかがう。
けれども近寄ってくる足音と、大きくなってくるうっそりとした黒い影を、
むしろ少年らしいはしゃいだ声で迎えていた。

真新しい白のハイソックスの脚を、見せびらかすように差し出して。
「ほら。おめーの好きなハイソックス。履いてきてやったぜ?」
わざと悪ぶって、自慢そうに胸を張る。
―――いつもすまんな。
影は大人の声色を静かにくぐもらせると。
好きにしろよ・・・と語尾を震わせる少年の両肩をいとおしむように抱くと、
傍らの木立ちに連れ込んで。
手ごろな太さの樹に、ロープでぐるぐる巻きに縛っていった。
痛くないように、ゆるゆると。

ウン。だいじょうぶ。怖くなんかないぞ。
ミノルは背すじをまっすぐ伸ばし、心のなかで自分に言い聞かせている。
献血なんだ。献血・・・
血のないあいつは、オレの血できょう一日をなんとか生き永らえているんだ。
ちょっとだけ、チクリとするけど。
痛そうな顔したって、いいんだぜ?
って、あいつはいうけれど。
痛くなんかないんだ。痛くなんか・・・
さあ、吸えよ。
ミノルはわざとおとがいを仰のけて。
吸血鬼が噛みやすいようにと、首すじをあらわにしていった。

ちく・・・っ。
かすかに疼くような痛みが、少年の柔らかい皮膚にしみ込んできた。
痛っ。
反射的にゆがめた顔を、あいつは小気味よさそうに覗き見て。
つけたばかりの傷口を、うっとりと見つめると。
すぐにもういちど、肌に唇を吸いつけて。
じわりと滲んできた血潮に、唇を浸してゆく。
ちゅうっ。
生き血を引き抜かれる瞬間は、いつもつい夢中になってしまう。

勃ってるね。
うるさい。
ミノルは小生意気に、口ごたえして。
半ズボンの中に忍ばされた手を、腰をひねって振り払ったけれど。
足許にかがみ込んでくるそいつの目の前に、
白のハイソックスの脚を、きりっとそろえて差し伸べてやる。
力を抜いたふくらはぎの筋肉が、しっとりとしたナイロンの生地の向こう側ぴちぴちとはずんでいた。
真新しいハイソックスのうえから、飢えた唇をヌルヌルと這わせてくるのを
少年は面白そうに、見守っている。

うねうねとしつっこく、ヒルのようになすりつけられてくる唇は。
真新しいナイロンのうえ、じわーっとよだれをしみ込ませていって。
少年がふと、視線を迷わせると。
それを待っていたかのように、唇の裏側に秘められた尖った牙の切っ先が。
脚の線に沿って流れるような太めのリブの合い間に、サクリと埋め込まれる。
うっ・・・うう・・・
かすかな呻きを、くすぐったそうに耳にしながら。
男はなおも容赦なく、チュウチュウとあからさまな音をたてながら、
うぶな少年の若い血潮を、吸い取ってゆく。

樹の幹によりかかる少年は、ずるずると姿勢を崩していって。
ゆるく巻かれたロープが、はらりと解けて。
尻もちをついた半ズボンの周りに散らばった。
男はそれでも少年の脚を放さずに、血の滲んだハイソックスを蹂躙していく。
キュウキュウと押し殺したような音を闇に秘めながら。


ここに来るたび、いつもことさらに胸を張ってみる。
学校ではいつも、がき大将だけど。
このお邸の中だって、オレじゅうぶんに、威張っている。
「さあ、みんな入るんだ。急げよな」
連れは、クラスメイトの男の子ふたり。
気の弱そうなヨシオに、素直で人のよさそうなカズユキ。
どちらも色白の柔らかい頬っぺをしていて。
女の子の服を着たって、それなりに通用しそうな線の細い目鼻だちを持っている。
ミノルは、やけにサバサバとした口ぶりで。
「早くあがれよ」
って。まるで自分の家のように、ふたりをせかした。
おそろいの濃紺の半ズボンの下、ハイソックスの色だけはまちまちだった。
ヨシオは、無地のねずみ色。
カズユキは、白に三本紺色の横線が入ったやつ。
ミノルは、わざとのように無地の白。
だれもが例外なく、ふくらはぎの肉づきのいちばんいいあたりに、赤黒いシミをつけていた。

赤黒いシミをつけたハイソックスの脚が三対、玄関にふくらはぎをそろえている。
後ろからようすを窺っていた黒い影は、そのまま少年たちにつづいて、自邸のなかに足を踏み入れる。
「立派な家だなあ」「そうだよね」「見ろよ、あのステレオきっと高いぜ」
三人はかわるがわる声を交わしながら、大きな古びた邸のたたずまいに圧倒されているようだった。
「この部屋で・・・いいんかな」
「かまわないから、ソファに腰おろそうぜ」
ミノルがみんなを指図しようとしたとき、三人は背後から尾けてきた影の存在に、ようやく気がついた。
わっ!
不用意にあげた自分の声に、なおさら飛び上がって。
すぐに相手に害意がないのを見てとると、恥ずかしそうにうふふふふって笑いかけて。
お互い仲間を咎めるように、ひじで相手をつつき合っている。

だれが最初かな?
ソファに腰を下ろしお行儀よく並べられたハイソックスの脚を見比べる。
三人とも、足許にまとわりつく視線に、くすぐったそうに顔しかめていたけれど。
ハイッ!
真っ先に手をあげたのは、ミノルだった。
学校でこんなふうに挙手することなんか、めったになかったけれど。
それは・・・がき大将の特権というものだろう。
「新しいやつ、ママに内緒でおろしてきたんだぞ。すぐに汚しちゃうんだもんな」
まだヌラヌラしている赤いシミを、さらけ出して。
少年はわざとメイワクそうに、口を尖らせている。
ありがたく思えよなっていわんばかりの態度で、
白一色のハイソックスの脚を、そろりと差し伸べてきた。

くちゅ。くちゅ。くちゅ。
三人とも順ぐりに、ふくらはぎを噛まれていって。
ハイソックスの赤黒いシミを広げていった。
ほら。順番順番。
真っ先に噛まれたあとも、仲間ふたりを仕切っていたミノルも。
もう、ソファの下にすべり落ちて、尻もちをついたまま。
目を白黒させながら、ハイソックスをずり下ろしてゆく吸血鬼の意のままになって。
ご自慢のおニューの一足を、まんまとせしめられてしまっている。
ほかの子たちも、ひざ下までのハイソックスをくしゃくしゃにされながら、
ずるずるとだらしなく、引き抜かれていった。
ぼうっとなっている少年たちに、吸血鬼は人のわるい笑みをたたえながら。
慇懃な手招きに、引き込まれるようにして。
順ぐりに、うなじを噛まれてゆく。
ボーダー柄のTシャツに、赤い飛まつがほんのちょっぴり撥ねかせながら。

さあ・・・お帰りはあちら。
賓客たちを、うながすと。
少年たちは表情をけしたまま、腰を重たそうにあげていた。
首すじには、きらきらとした血潮をすべらせたまま。
Tシャツには、血のりをべっとりと光らせたまま。
ハイソックスを脱がされたむき出しの足許が、やけにツヤツヤと眩しく映る。
ミノルはさすがに、尊大に。
「オレたちの血、美味かったか?」
あくまで「ほどこしてやっているんだ」という態度だった。
自分から吸い取った血をしたたらせたまま、吸血鬼が満足そうにほほ笑むと。
初めて納得したように。
「それなら、いいよ」
それが男らしいしぐさだと言わんばかりに、きっぱりと言い放つ。
「ちょっぴり汚れちまったけど、ママには言いっこなしだぜ?」
ほかのふたりにも、命令口調で、入ってきたときとおなじように、胸を張って。
先頭にたって、玄関へと足を向けた。



ここに呼び入れたときは。ちょっぴり誇らしい気分だった。
若い女の生き血をおねだりされて。
きょう・・・あいつに逢わせるのは、大好きなオレのママ。
意外にも。ママはさいしょから、心得ていたらしい。
街の大人たちは、じつはみぃんな知っているんだ・・・って。
だいぶあとになってから、聞かされた。

その公園を夕方通り抜けようとする子は、男女問わず襲われて。
ハイソックスのふくらはぎに血を滲ませて出てくるのだという。
だんだん慣れてくると、わざと真新しいハイソックスを履いて、その刻限にうろつきまわる子だっているという。
いちど狙われたら、何度でも襲われる。
けれども、生命まで奪われることはない。
若い子たちは、老練な吸血鬼に手なずけられて。
自分から公園に足を向け、お邸に招ばれるようになるという。
家に帰ってきた子どもが、ハイソックスに赤いシミをつけていたなら。
それは、吸血鬼になれ初めた証拠。
やがてはだしで帰ってくるようになったなら。
そうとう深い関係になってしまっているのだ・・・って。

なぁんだ。知っていたのか。
ちょっぴり気抜けしたのもつかの間、ミノルはママの顔を疑わしそうに盗み見た。
知っていながら、大人たちは手を打たないの?
子供たちが、血に飢えた魔物の意のままにあやつられてしまっている・・・っていうのに?
そういえばママの首筋にも、目をこらさないと気がつかないほどだったけど。
黒っぽい痕が、古い痣のように浮いていた。

初めて襲われたあの日。
やだっ!やだっ!やめろお!って。
ミノルは大声で叫びながら、力いっぱい抗っていた。
やがて地面にねじ伏せられて、うなじに食いつかれて。
理性を失うほど、血を吸い取られてしまったあと。
彼をモノにした男はひと言、残念そうに呟いたのだ。
―――もったいなかったな。せっかくのハイソックスが泥だらけだね。
泥のついていないあたりをわざわざ選んで唇を吸いつけてきて。
真っ白な生地に滲ませたばら色のシミを、得心したように見つめて。
それではじめて、放してくれて。
体のあちこちに、服のすれた疼痛が滲むのが、ひどく屈辱的だったはずなのに。
つぎの日、また公園を横切ろうとしていた。
血がないと、生きていけないのでね・・・
さいごにひっそりと呟いたひと言が、どうしても気になってしまったので。
ひどいぞ!お前、やめろって・・・
いきなり地べたに押し倒されたとき、やっぱりミノルはぷりぷりと怒っていて。
けれども無意識に、真新しいハイソックスを泥で汚すまいとして。
首筋を吸われているあいだじゅう、立て膝しつづけていたっけ。
オレなにしてるんだろう?って、思いながら・・・

とにかく、気が強くって。
いつも一番じゃないと、ガマンならなくって。
正義感いっぱいで、まっすぐな気性だったオレ。
いまでもあのときは、無理矢理ねじ伏せられたんじゃなくって。
オレのほうからいさぎよく、血を差し出してやったんだって、思い込んでいる。思い込もうとしている。
その証しに・・・きょうあいつを、オレの家に招んでしまった。
若い女の生き血を、吸い取らせてやるために。
あいつの獲物に選んでやったのは。ほかでもない大好きなママ。

あら、あら。
ママはソファに腰かけて、ころころと笑いつづけている。
ちょっぴり羞ずかしそうに、口許に手を当てながら。
オレがささいなイタズラをしたときに、軽く咎めるくらいの口調で。
ママのお咎めを、頭上に浴びながら。
しとやかにそろえた足許にかがみ込んでいるあいつは。
スカートの下に履いていた、肌の透ける薄いストッキングをチリチリに剥いでしまっていた。
「薄いやつのほうが、面白いんだろ?すぐ破けちゃうしな」
ミノルの子どもっぽい言い草に、吸血鬼はにんまりと笑みながら。
先刻たっぷりと血をくれた少年の、すこし蒼ざめた頬を眩しげに見つめると。
ママの脚を放して、もういちど。
ミノルの足許に、にじり寄っていく。
あら。ダメよ。やり過ぎたら身体こわすわよ。
いつもママの小言を聞くとき、そうするように。
ミノルは頬をぷっとふくらませて、横っ面で聞き流していった。
きょう、あいつのために履いていたのは。
サッカーのときに履く、赤いラインが三本走ったハイソックス。
鮮やかに横切るラインのすこし下、いちばん肉づきのいいあたりに、
あいつはチクリ・・・と、鋭い切っ先を突きつけてくる。

はぁ。はぁ。
ミノルはだらしなく、尻もちついたまま。
ずり落ちたハイソックスを、けだるげに引き伸ばして。
ふくらはぎの傷口を、かくしていく。
もうじきパパも、帰ってくるだろう。
だから・・・吸われた痕を隠しておくんだ。
けれども。
傷口の上に重ねたハイソックスは、ぬらぬら滲んだ血潮を吸って、
鮮やかなバラ色を、滲ませていく。
あいつの好きそうな眺めだなあ・・・
かすんだ視界。ぼんやりとした意識。
その向こう側で、ママはちょっぴり羞ずかしそうに首振りながら。
脱げかかった服をかき寄せて、まる見えになったおっぱいを隠そうとしている。
ストッキングの片方は、脱ぎ捨てられて、部屋の隅っこでとぐろを巻いていて。
もう片方は、まだ履いたまま、ハイソックスみたいにひざの下までずり落ちている。
だらしない格好が大嫌いなはずのママが。
ブラウスのボタンを二つ三つはね飛ばして。
レエスのついたブラジャーまで、剥ぎ取られちゃって。
スカートを腰まで、たくし上げられちゃって。
血を吸われる以外のイタズラまで、されてしまっている。
なにをされているのか。それがどういう意味をもっているのか。
ぼんやりとなっちゃった頭では、よく理解できないけれど。
帰りぎわ、耳元に口を寄せてきた吸血鬼のおじさんに、
―――パパには内緒にしておくんだぞ。
って、言い含められたとき。
「うん。わかった。ナイショ・・・だね」
指きりげんまんまでしてしまっている。
パパのことは、大好きだけど。
きょうのことは、黙っていて。
お礼代わりにときどき、おじさんがママに逢っているところを覗き見してもいいって約束してもらっちゃった。


ここに連れてくるとき。なんどか、思いとどまろうとしていた。
半ズボンにハイソックスのいでたちは、いまだに変わりないけれど。
彼女には「子どもみたい」って、ちょっと笑われたけど。
それでも「いっしょに歩くのは嫌」とは、言われなかった。
濃紺のプリーツスカートをなびかせて、いっしょについて来てくれた美緒ちゃんは。
オレと合わせるように、白のハイソックスで脛を覆っている。
おなじクラスのかわい子ちゃんで。
つき合えよ・・・って、強引に誘ってから。
いっしょに下校したり、そこらへんを散歩したりするようになって。
いつかの約束をかなえるために、きょう初めてお邸に連れていくところなのだった。
「ショジョの血が、欲しいんだろ?オレに妹がいたら、連れて来てやったんだけどな。
  でも・・・彼女ができたら、きっと紹介してやるからさ」

「あんまり痛く噛むなよな。相手は女の子なんだからな」
―――わかった、わかった。
「吸い過ぎるんじゃないぞ。初めて吸われたときは、オレだって気分悪かった」
―――心得てる心得てる。
「いいか?オレの大事な彼女だぞ。ほかのやつだったら絶対許さないんだぞ。大事に扱えよな」
―――むろんだ。お前の未来の花嫁だ。心して味わってあげるから。
口酸っぱくして言いつづけたあげく、さいごの「花嫁」という言葉に、どきどきしてしまって。
でも美緒ちゃんはふたりのやり取りなど耳に入らなかったような顔をして、「はいどうぞ」って。
制服のスカートから覗いた白のハイソックスの眩しい脛を、きちんとお行儀よくそろえている。
すこしかがんだ丸顔の両側で、つややかな黒い髪を束ねたおさげが無邪気に揺れた。
その瞬間。
さすがに「あっ」って、声を洩らして。
すくんだ脚をつかまえられて、ちゅう~って血を吸い取られていって。
美緒ちゃんは目じりにちょっぴり涙浮かべて、耐えていた。
けれどもそれも、ほんのつかの間のことで。
あとはオレのときと、おんなじように。くたくたと姿勢を崩してしまって。
じゅうたんの上まろばされて、もういちど。
たっぷりしたふくらはぎを、ハイソックスのうえから噛まれちゃっていた。

「首筋も、どうぞ・・・」
うつろな声で、ささやきながら。
美緒ちゃんはじゅうたんの上、あお向けになったまま。
男の唇を、白いうなじに這わされてゆく。
ふっくらとした皮膚に、重ね合わされるようにして。
ぬらりとしたよだれの光る唇が、吸いついていって。
皮膚をじわじわと、圧迫していって。
おもむろにむき出された牙が、注射針のように食い入っていく。
ちゅうっ・・・
ああ・・・たまらない。
まるで自分の血が引き抜かれていくときのような、虚脱感、恍惚感。
なぜか半ズボンのなかで、鎌首をむくりと逆立てながら。
オレは生き血を吸い取られてゆく美緒ちゃんのうっとりとした横顔から、目が離せなくなっていた。


ハイソックス、取替えっこしよ。
美緒ちゃんをお邸に誘ったある週末。
オレはおそるおそる、切り出していた。
濃紺のプリーツスカートの下。
美緒ちゃんのハイソックスは、ママの履いているストッキングみたいに薄くって。
ピンク色をしたふくらはぎが透けるようすが、ひどくオトナッぽい感じがした。
いつも言いたいことばかり言って、意見を通しつづけているオレなのに。
なぜかそのときだけは、つんのめったみたいに口ごもってしまって。
女の子のハイソックスを履いてみたいだなんて。
羞ずかしいよな。男らしくないよな・・・って、思い直して。
けれどもいちど、美緒ちゃんがあの薄いハイソックスを履いてあいつに噛ませちゃったとき。
じわじわ、ゾクゾク、昂ぶってくるどす黒いものを、どうすることもできなくなって。
ハイソックス、取替えっこしよ。
つい。口走ってしまっていた。
美緒ちゃんは、いつものようにオレのわがままを受け止めて。「いいよ~」って、気軽にうけあってくれた。
「じゃあここで」彼女がそう言ったのは、途中で立ち寄ったオレの家。
ママはだれかとどこかに出かけたらしくって、お留守。
ふたりきりの家、美緒ちゃんはするすると、ストッキングみたいに薄い白のハイソックスを脱いでいって。
くしゃくしゃにたるまった薄手のナイロンは、どことなくふしだらな感じがして。
脚に通すのに、ちょっと気後れした。
美緒ちゃんの脚にまとわれていく、オレのハイソックスは。
まるでもともと女の子の履き物みたいに、しっくりと彼女の脚を包んでいた。

男が薄い靴下・・・って、ヘンだよね?
ミノルはなんども言い訳を繰り返しながら。
くすぐったそうにほほ笑む美緒ちゃんのまえ、薄いハイソックスのふくらはぎを吸血鬼のまえにさらしていく。
けれども男らしく隆起した筋肉は、すべすべとしたハイソックスのなか、アンバランスな色気を妖しく放っていた。
気づいていないのは、ミノルだけだったかもしれない。
う、ふ、ふ、ふ。
うつ伏せになったふくらはぎにあてがわれた唇が。
くすぐったそうな笑み声も洩らしてゆく。
たっぷり、イタズラしてやるぞ・・・
思わず「いやん」だなんて、言ってしまった・・・
唇に滲んだ含み笑いが、いつもより間近に感じられる。
素足になまの唇をあてられたとき。
思わずどきどきしてしまったことがあったっけ・・・
でもいまは・・・脛の周りをずれてゆく薄いナイロンのくすぐったい感触が。
妖しく心地よい疼きを、皮膚にじんわりとしみ込んでくる。
美緒ちゃん・・・こんなふうにして、噛まれていったんだ。
ママも・・・薄いストッキング噛み破られるときって。
やっぱりくすぐったかったんだろうなって思ったとき。
ちくり・・・ちゅうっ。
ううぅぅぅ・・・っ。
オレはそれこそ、女の子みたいに眉毛をさかだてちゃっている。

十九歳まで、処女でいようね。
血を抜かれて薄ぼんやりとなっちゃった美緒ちゃんに、
あいつはこっそりと、ささやいている。
お嫁に行くまで、だいじにしたいな・・・
美緒ちゃんはうつろにつぶやくけれど。
おじさんはそんなこと、許してくれそうにない。
こっそりと、もらい受けてしまおうか?
それとも、彼氏のまえで堂々と、犯されてみるかね?
彼・・・男らしいのが好きだから。
きっといさぎよく、おじさんのためにキミの処女をプレゼントしてくれると思うんだけどな。
さっきから・・・とってもくすぐったいんだけど・・・
オレはさっきから、半ズボンのなかで鎌首を逆立ちさせて。
ふたりの会話に、聞き入っている。
どんなふうに、捧げちゃおうかな・・・って。いけない想像に昂ぶりながら。