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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

田舎の女学校 4

2008年12月30日(Tue) 13:02:38

冬休みに入って。
学校は抜け殻どうぜん、がらんとしていた。
ただでさえ寒々とした、古びた木製の廊下を歩きながら。
すき間風の吹き抜けるたび、おれは肩をすくめて縮こまっていた。
村じゅうどこにも、制服を着ている女の子はいない。
たまたま、なじみの女子生徒の家で、婚礼があって。
もちろん招かれるまま、お邪魔をして。
なん日ぶりかに目にした制服姿に、つい欲情して。
袖を引くようにして、別室に連れ込んで。
あらかじめ用意されたように敷かれた、布団のうえ。
抑えつけた黒のタイツのふくらはぎから、うら若いバラ色の液体を、したたかに吸い取っていった。
え?もちろん花嫁のことも。粗略には扱わなかった。
婚礼のおわったあと。
息を呑んで見守るばかりの花婿のまえ。
ほんとうは彼がかち獲るはずだった純潔もろとも、女のすべてを呑み込んでしまっていた。
嵐が去って。夫婦ほんらいの契りを結びなおすようすを、閉ざされた障子ごしにうかがいながら。
女子生徒の黒タイツごし味わったのとおなじ香りのした血潮の残り香に。
おれはもういちど、舌舐めずりしたものだった。

おっと。
話が、それてしまったな。
夕べの酒が、ほんのちょっぴり。頭の奥に渦巻いているらしい。
だれもいないはずの校舎のなかを、いま時分うろついているのは。
当直の先生をアテにして、出かけてきたからなのだ。
女の先生が、ひとりで当直をしているときは。
おれはいつもこうやって、忍んできて。
女の生き血に飢えた喉を、たっぷりうるおして帰るのだった。
きょうの当直?
知れたこと。
都会から着任したばかりの、あの小賢しい黒髪の女教師に決まっているのさ。

職員室の、片隅に。
窓際に、背中を押しつけるようにして。
女教師は、立ちすくんだまま、激しくかぶりを振っている。
おれはずんずんと、女との距離を詰めていって。
お目当ての黒ストッキングの脚が、すぐ手の届くところまで。
恐怖に震える息が、おれの昂った息遣いと重なるところまで。
女のそばに、寄り添っていった。
すまねぇ。どうしてもきょうは、だれもいないのだ。
身ぎれいに装った女じゃないと、昂ることができないのだ。
こんな年の暮れに、めかし込んでいる女なんか、村じゅう探したってひとりもいやしない。
けれどもだれかひとりは、生贄にして。
うら若い女の血で、牙を染めなければ、おれは灰になっちまう。
だからおまえは、おれに襲われなければならないのだ。
―――なんて完璧な、身勝手な言い草だろうか。
おれは自分の論理の見事さに、自分で感心しながら。
納得できませんっ!って、顔に描いてある女のスーツ姿を、抱きすくめにかかっている。

どういうわけか。
おれは女を抱きすくめたまま。
そのまま白いうなじに噛みつこうともせずに。
ただ・・・着衣ごししみ込んでくる女のぬくもりを、ひたすら感じ取っていた。
まるで母親に甘える、幼な子みたいにして。
どうしたんですか?
身体を離したとき。さすがにいぶかしそうに見あげてくる、まっすぐな瞳を。
眩しすぎて、見返すことができなくなっている。
狙った獲物にたいして、ここまでスキをつくることなんて。めったになかったはずなのに。

力のうせたおれの肩を、突きのけて。
そのままそそくさと、職員室を出てしまえば。
もう・・・逃げちまうことだってできたのに。
なぜか女は、しゅんとした顔をして。
お好きなように。
手短かにそう告げると、もとのように自分の席に座り込んでいる。
ちょっとだけ、机から身を離して。
ちょうど、おれが女の足許にかがみ込む余地を作りながら。

すらりとした白いふくらはぎを、じんわりとなまめかしく染める薄々のナイロンが。
おれの意識を、極彩色に塗り替えた。
矢も楯も、たまらなくなって。
おれは先生のご希望どおり、机のわきにかがみ込んでいって。
ぬる・・・っ。
行儀悪く這わせた舌の先、先生はかすかにふくらはぎを引きつらせたけれど。
いつものように抗おうとは、しなかった。

先生。
だ・め・よ。
振り向くまでもなかった。
耳元に囁きかけてくるのは、お目当てのあの少女。
名前は確か―――有江といったっけ?いや、ちがうはずだった。

有江という女子生徒を、連れてこい。今すぐにだ。
昔からたぶらかしている、四十代の女教師は。
ついさっきまで夫の前で吸われつづけた肌を、蒼ざめさせたまま。
いぶかしそうに、おれを見返して。
有江さん・・・ですね?
あいまいに、頷いて。
連れてきたのは、似ても似つかないそばかす顔の女子生徒だった。
ノモトアリエさん、のことですよね?有江という苗字の生徒は、この学校に在籍しておりませんから。
えええっ?

男の学年主任をつかまえて、
おい、あのとき有江といっただろう?って、問い詰めても。
あれー?私そんなこと言いましたっけ?
おれは学年主任の胸倉をつかまえて。
あいつの家まで、瞬間移動して。
美人で評判の奥さんを、連れてこさせて。
だんなの目のまえで、思う存分生き血を抜き取ってやったりしたけれど。
存じません。存じません。どうしてわたしが、そんなことを口走ったのか・・・

あぁもちろん。
連れてこられたそばかす顔の女子生徒も、ちゃんといただきましたよ。
恥をかかせたく、なかったのでね・・・

どうも今日は、話が飛んでしまうのだな。
どこまで話したんだっけ?
そうそう。女教師が、いつになく素直にいうことをきいて。
机のわきに、おれをすべり込ませたところまでだったよな。

時ならぬ声に、振り返ると。
お目当てのあの少女が、きょうもどういうわけか、夏用の白い制服姿で。
夏の制服には合わせないはずの、黒のストッキングを脚に通していて。
ちょっぴりかがめたひざの上。
そこから上は、見ちゃだめよ・・・というように、白い手を重ね合わせるようにして。
傾げた小首に、じゃれ合うように。
きょうは三つ編みに結ったおさげを、肩先に揺らしている。
こんどは、あたしの番。
はしゃいだ声の下、スッと差し出される、黒ストッキングの脚。
性急に唇を寄せようとするおれに、
あんまり汚さないでね・・・
って、囁きながら。
それでも下品になすりつけられてくるおれの唇に、くすくす笑いながら応じてくる。

初めてモノにした、お目当ての少女の脚。
おれはつい夢中になって、べろを這わせて。
整然と走るナイロンの繊細な網目を、ぐにゅぐにゅになるまで、ゆがめていった。
あなた、やめて!
解放されたはずの、女教師は。
しんけんな声とまなざしを、おれのほうに投げてきて。
少女とおれのあいだに、割り込むようにして。
あなたはもう、お帰りなさい。間違いがあっては、いけないわ。
まっすぐ垂れた長い黒髪が、おれの目の前でしどけなく揺らいでいた。
うふふふふっ。では、味比べといこうか。
悪辣きわまる言い草を、口許にすべらせて。
もういちど、女教師の足許に舌を這わせる。
少女が脚に通した通学用のストッキングの、ざらざらとした舐め心地も。
大人の女が穿く、高価なストッキングのすべっこい舌触りも。
かわるがわる、愉しみながら。
まだ、消えるなよ。もうちょっと、いいだろ・・・?
どこかの時点で女たちが消えてしまうことを、おれはありありと意識しながら。
ぴったり息を合わせるように、かわるがわるに差し出されてくる黒のストッキングのふくらはぎに。
いままで味わったことのないほどの喜悦に、心震わせている。

困った人ね。
女たちは。時おり顔見合わせながら。笑み交わしながら。
飽きることなく這わされてくる、卑猥なべろに、苦笑いして。
いよいよ牙を、むき出したとき。
ここは私が・・・
身を寄せてきたのは、女教師のほうだった。
乱れて震える吐息の下。
ワイン色のインナーごしに映える胸元から。
かすかに覗く、乳房のはざま。
おれは女の両肩を抱きかかえながら、
この色だったら、濡れても目だたねぇよな?って。
相も変わらずふらちなことを口にしながら。
まだ汚れを識らない純潔な柔肌に、フラチな唇を這わせていった。
ぐいいっと、しずかな力を込めてしみ込ませた牙の切っ先が。
暖かい女の血潮に濡れたとき。
不覚にも涙を滲ませてしまった。
こんなことは・・・初めての獲物をモノにしたとき以来だった。

女教師が、吸血を受けているあいだ。
お目当ての少女も、立ち去ろうとはしないで。
じっとたたずんで、担任の先生の受難を見守りつづけていて。
先生がとうとう、へたり込んでしまうと。
じわーっと浮いたストッキングの伝線を、指でなぞりながら。
わたしの脚も、どーぞ。って。
おどけ口調で、おれをそそのかして。
隣の席に、腰をおろして。
重たい制服のプリーツスカートを、たいぎそうにたくし上げて。
墨色のナイロンに薄く透きとおった太ももを、初めてあらわに見せつけてきた。

甘えるように吸いつけた、唇の下。
なよなよとした薄手のナイロン生地が、くしゃっとゆがんで。
紙のように薄いナイロンを、思うさま噛み裂きながら、
少女の清冽な血潮に、酔いしれてゆく―――。
はっとして。
少女の顔を見あげようとするおれの頭を、少女はふたたび自分の太ももの上、軽く抑えつける。
三つ編みをほどいた少女は、けだるそうに自分の髪を撫でつけながら。
もう片方の手は、さっきまで三つ編みを結わえていたリボンを、子供っぽい手つきでもてあそんでいた。

いずれ劣らぬ、脚線美。
とりどりな舐め心地の、薄いナイロン。
そして―――啜り出した血潮の味は、なぜかひどく似通っていた。
窓越しに斜めに入り込んでくる陽射しのなか。
静かになった職員室で。
放恣に伸びきった二対の脚は、薄墨色のストッキングに大胆に走らせた伝線を。
清純な女学生が。生真面目な女教師が。
おおっぴらに、さらけ出していた。


あとがき
この話。
どことなく、連作「院長、ご来客です」と似てしまいましたね。^^;

田舎の女学校 3

2008年12月30日(Tue) 11:54:35

ひとーり。・・・ちゅっ。
ふたーり。・・・くちゅっ。
さーんにん。・・・ちゅううっ。
仲良く並んで、腰かけて。
差し出される濃紺のハイソックスの脛に、
ひとつひとつ、刻印を捺(お)すようにして。
唇吸いつけて、うら若いバラ色のしずくを失敬する。
飢えた唇這わせた、しなやかなナイロンの生地の向こう側。
しくっ・・・と筋肉を引きつらせ、怖がる子。
疼いた皮膚に、跳ねるように脚すくめる子。
さいごの子はくすぐったそうに、
うふふっ。
肩をすくめて、笑みを洩らしていた。

ふ・・・ふ・・・ふ。
ここは校長室。
お当番ですよ。
とうの昔からたぶらかしている、四十代の女の担任は。
能面のような無表情でおおった蒼ざめた頬を、教え子たちのほうに向けて。
お掃除当番の子たちとは別れ別れに、
三人ほど、調達してきてくれたのだ。
喉の渇いたおれに、若い女の血をあてがうために。
きょうは、紺色のハイソックスの日。
かすかにつけた破れ目から覗く、白い皮膚に欲情するように。
おれはもうひと口ずつ、女の子の血潮を盗み取ってゆく。

やめなさい。
背後から、突き刺すような制止の声。
なんだなんだ。尖った声は、願い下げだ。
振り返ると、そこに立ちすくんでいるのは、
あのときの若い女教師。
純白のブラウスに透けるストライプもようが、なだらかなカーブを描く胸元まで。
サラサラと柔らかそうな長い黒髪が、しっとりと映えていた。
女らしい、うっとりするような風情とは、裏腹に。
女の声は、ただならぬほどとげとげしい。
振り向いたおれの口もとに、教え子たちの身体をめぐる紅いしずくが散っているのをみとめると。
白い細面の額に刷いたような細い眉を、キリキリと神経質に逆立てた。

うふふふふふっ。
もう、いただいちまったぜ。
身を起こしたおれは、ソファの上の獲物を見せびらかすように。
わざと険悪な笑みで、まともに女を見返してやった。
まぁ・・・青田さん、猪田さん、歌島さん・・・っ。
呆けたようになってソファに身をもたせかけた女の子たちに、駈け寄ろうとする先生の肩を掴んで、
荒々しくこっちを振り向かせて。
やめてくださいっ!
あくまで生真面目な女の横面を、張り倒して。
さぁ、そこに座るんだ。
尻もちをついた床のあたりを、ぐるっと指さしてやる。

きょうは、紺色のハイソックスの日。
大人の女は、お呼びじゃないんだが。
どうしても・・・って、言うんなら。
黒のストッキングの日に変更してやっても、いいんだぜ?
女は床の上、座り込んだまま。
ハッと身構えて。丈の短かい黒のタイトスカートのすそを、サッと抑えて。
黒の薄々のナイロンに滲んだ乳色の太ももを、とっさに押し隠そうとした。
かすかに血ののぼった頬が。
艶っぽく揺れる黒髪が。
おれの欲情に、火をつけた。
散れ。
ソファの上の女子生徒たちは、ふやけたような顔つきをして。
無表情にぞろぞろと、校長室から立ち去っていく。
ほんとうはもう少し、いただいて。
あのぴちぴちとした脚もとから、ハイソックスをずり堕としてやるつもりだったんだが。
足りない分は、あんたからいただくぜ。

足許に取りついてきたおれのことを、女はどうすることもできないで。
もう、半泣きになりながら。
むやみにおれの背中を叩いたり。
ひざの上に乗っかった肩を、押しのけようとしたり。
力の抜けた細腕に、いったいなにができるものか。
おれはいともやすやすと、女の脚を抑えつけていって。
お目当てのふくらはぎに、唇を吸いつけて。べろを這わせて。
ナーヴァスに引きつるふくらはぎの筋肉を、もてあそぶようにして。
硬質に透きとおる、気丈なほどに鮮やかな墨色のナイロンの、
見かけとは裏腹に、なよなよと頼りない舌触りを。
ちゅうちゅうと、聞えよがしな音を洩らしながら、
遠慮会釈なく、愉しみはじめていた。

このあいだ、あれほどもてあそんでやったのに。
性懲りもなく、女は毎日、黒のストッキングを穿いてきた。
いかにも都会ふうな、洗練された装いの下。
この村の女のだれもが脚を通したことのないような、舶来もののストッキング。
かすかに帯びた光沢の高貴さが、だれの目にも鮮やかだった。
誇り高い女のステータスを、思うさま辱めてやるような。
虐げる愉しみに、己を忘れかけたとき。
切れ切れに洩れる、涙交じりの吐息の向こう。
からりと音をたてて、校長室の扉が開かれた。

おじさま、だめよ。先生のこと苛めちゃ。
舌足らずな可愛い声に、ふと顔をあげると。
驚いた。
このあいだからずっと、お目当てにしているあの少女が。
なぜかひとりだけ、真っ白な夏のセーラー服姿で。
ちょっぴりかがめた膝に、両手を置いて。
ツヤツヤと光る、長い黒髪を。肩先にすべらせるように添わせながら。
こちらを覗きこむようにして、ほほ笑んでいた。

あの子を連れてこい。
きょう・・・今すぐにだ。
おれに耳打ちをされた、学年主任の男の先生は。
長い髪の毛の子?あ~、有江くんのことだね?って。
妙に納得したような顔つきをして。
おーい!有江くんはいないか?えっ?いない?
いつもこんなあんばいで。
近くにいながら、決して捕まえることのできない少女。
きょうにしたって。
わざわざ出席番号順で呼び出してもらったのは。
「あ」行で始まる苗字の彼女に、ひそかに狙いを定めてのことだったが。
きょう・・・彼女は紺のハイソックスを履いてきていなかったらしかった。

真っ白な夏の制服に。
濃紺の襟首が。襟首に走る三本の白線が。
おなじように、三本の白線をあしらった袖口が。
目に痛いほど、映えていて。
鮮やかなプリーツの走る、濃紺のスカートの下。
薄々の黒のストッキングが、白い脛をなまめかしく染めていた。
白い制服の胸元に映えた、ツヤツヤと長い黒髪と。
黒革のストラップシューズにくるまれた、しっとりと大人びた足許の装いと。
なにからなにまで同級生と変わらない、清楚で質朴なはずの装いが。
なぜか、先生の足許を彩る高価なストッキングとおなじくらい、女らしい芳香を漂わせていた。

這いずって逃げようとする人の気配に、はっと気づいて。
素早く脚を、抑えつけて。
ダメだよ、先生。生徒を置き去りにしちゃ。
もういちどこれ見よがしに、唇をなすりつけてやる。
お目当ての少女に、見せつけるようにして。
待っていろよ。
あんたの履いている通学用のストッキングも。
いま。おなじようにあしらってやるからな。
そういう想いをこめて、にゅるり、にゅるり・・・と、いたぶってやった。
そんなつもりじゃない。生徒を見捨てたりなんか、しません・・・っ。
女は四つん這いの、ぶざまな格好のまま。
黒のストッキングの脚を、吸われながら。
長い黒髪を震わせて、かぶりを振りつづけていた。

だぁめ。
額に軽く触れた、少女の掌の冷たさに。
おれははっとなって、先生の脚を吸うのをやめて、頭をあげて。
女先生は素早く立ち上がると、教え子をかばうように、ふたり寄り添いあうようにして。
部屋の隅っこに、立ちすくむ。
いずれ劣らぬ、薄墨色に映えた脚線に。
おれは、舌なめずりをしながら、にじり寄る・・・

はっとした。
愉しかった・・・?
少女の冷やかすような声が、部屋の隅からにじみ出たような気がした。
けれども声の主はおろか、さっきあれほどいたぶり尽くしてやった女先生すら、
影ひとつ、とどめていない。
手にしているのは、帯のように長い、黒の長靴下。
透きとおるナイロンは、ふやけたように萎えたまま、それでも女の脚の容をとどめている。
まだぬくもりが、残っているのだから。
脱いでいくらも、経っていないはず。
だれの持ち物なのか。いったいどうやって、脱がせたものか。脱いだものか。
それすらも、記憶の切れ端すら、とどまっていない。
冷え切った室内は、もうなん時間も人がいなかったように、シンと静まり返っていて。
下校時間を告げる校内放送が、ひどく遠くから洩れてくるばかり。

あんまりいろんなひとを苛めた罰ですよ。
きょうはもうこれくらいにして、さっさとお帰りなさい。
少女の声だろうか。女教師の声だろうか。
どちらともつかない、甘い響きを秘めた低い囁き。
それが、まるで悪ガキを諭す母親のような声色で。
いつまでも鼓膜の奥を、くすぐりつづけている。


あとがき
ちょっと好評だったことに、げんきんなほど気をよくしてしまいまして。(^^ゞ
つづけるつもりのあまりなかった続編を、描いてしまいました。
先生の白の透けるブラウスと、少女の真っ白な夏の制服と、
白い上衣に映える黒髪と、なまめかしい黒のストッキングと。
わざとだぶらせて描いたのは、お気づきいただけましたでしょうか?^^

わざわざ出席番号順で女子生徒を呼び出すなんて、手の込んだことをしているくせに。
お目当ての子がどんな靴下を履いているのかチェックしていなかったなんて。
おっさん吸血鬼のずさんなリサーチ不足ぶりは、座布団をあげたいくらいですが。(笑)

ちょっと唐突な結末ですが。
どうもこの少女は、つかまえようがありません。
実のところ、あとでどの先生にお伺いしても。
「有江」という苗字の生徒は、どの先生の受け持ちのクラスにも、いなかったということでした。

―――夕べ、ほんとうに見ちゃいましたよ。お目当ての女性をつかまえそこねる夢。(苦笑)

田舎の女学校 2

2008年12月29日(Mon) 08:29:36

制服が、濃紺一色の季節になっても。
柔らかになった陽だまりのなか。
少女たちのはしゃいだ声には、変わりがなかった。
長めのプリーツスカートを、重たそうにさばきながら。
歩みを進める少女たちの足もとは。
ひざ下ぴっちりの白のハイソックス。もっさりとした黒タイツ。
なかには、肌の透ける薄さの黒のストッキングの子までいる。
濃淡まちまちな靴下に覆われた初々しい脛に、欲情するなというほうが無理な話だろう。

やだー。
さいしょに迫ったその子は、その場に尻もちをついちゃって。
黒のストッキングの脚を、おもうさまいたぶり尽くされてしまっている。
大人びた薄い靴下が、びりびりと他愛なく破けていく。
オレは面白がって、脛がまる見えになるまで、いたぶりつづけてしまっていた。
そうだ。きょうは、黒のストッキングの子だけ、襲ってみよう。

えへへへへ・・・
夏にきたとき。さいしょに襲ったあの少女は。
オレ好みに肩まで髪を伸ばしていて。
長いスカートをひるがえして、思わせぶりに逃げ足をする。
陽射しの下、つやつやと微妙に輝く薄いナイロンのふくらはぎを、さらけ出しながら。
へたり込んでしまったさいしょの子を、その場に置き去りにしたまんま。
オレはあとを追いかけていって。
すぐさま追い付いて、肩をつかまえて。
はぁはぁと荒い息遣いが、濃紺の制服の肩先を揺らしていた。
そのまま首筋を、仰のけて。
さぁ、観念するんだぞ。
引導を渡すように、囁くと。
女は急に、甘えるように大人しくなって。
オレに噛まれるまま、首筋を侵されていった。
くたりと腕のなか、崩れ落ちた制服姿を。
そのまま枯れた芝生のうえ、まろばして。
ふくらはぎにあてがった唇の下、薄手のナイロンが頼りなげに、よじれていった。

やめてください。
うちのクラスの生徒を襲うのは、やめてください。
だれだろう?
なん人めかの女の子を、組み伏せて。
ようやくその気にさせたとき。
背中越しに投げられたのは、大人の女性の声。
処女以外には、用はないぜ・・・って、言い返そうとしたオレは。
ふっと、口をつぐんでいた。
冬空の下。
黒のスーツに、純白のブラウス。
黒のパンプスに、透きとおるように薄い黒のストッキング。
キリッとしたいでたちに、背筋を伸ばして。
氷を含んだように冷たい微風をまともに受けて。
口許をキッと引き締めたその女は、長い黒髪を、静かに揺らしていた。

まぁ、ちょっと待て。
せめてこの子は、やらせてもらうぜ。
やめなさい・・・という声を、オレはまるっきり無視して。
腕のなかでうっとりとしていた女の子の首筋を、軽く噛んでやる。
だめっ!
ヒステリックな声といっしょに、平手打ちが飛んできた。
おい。ずいぶんじゃねぇか。
オレを怒らせると、あとが怖いぜ~。
居直ろうとしたオレのまえ。
どうやら担任の先生らしいその若い女は。
ひなびた校舎の風景とはまるでミスマッチな都会ふうの身なりを、そっとすくめて。
わたしが、身代りになりますから・・・
ほとんど棒読み口調で、嬉しいことを言ってくれた。

そう来なくっちゃ。
先生に促されて立ち去りだした教え子たちを尻目にして。
オレはさっそく先生の、黒のストッキングの足許にかがみ込んでゆく。
きょうは、黒のストッキングの日。
そう決めたオレのために、わざわざ黒を穿いてきたとしか、思えなかった。
そんなはずは、ないはずなのに。
渋々ベンチに腰をおろした先生は。
お行儀悪く、意地汚くねぶりつけられてくる唇を、
まるでヘビでも見るように厭わしい視線で耐えている。
さすがに大人の女性の穿くストッキングは。
素朴な女学生のそれと比べて、段違いにお品がよろしい。
ぬるりと這わせたべろに、応えるように。
しなやかでなまめかしい舐め心地が、悪戯心をよけいにそそる。
ぬるり・・・ぬるり・・・くしゅっ。
ねじれて大きくしわを波打たせたストッキングは。
女のスキを見せつけるようで。
オレはつい夢中になって、女の脚に欲情してしまう。
都会女のスキひとつない装いは、たあいもなく乱れていって。
薄々のストッキングは、みるもむざんに、破けていった。

先生、まじめなんだな。処女なんだね。
オレはあたりに聞えよがしなおおっぴらな声で。
まだ背筋をしゃんと伸ばして、首筋からの吸血に耐えている先生を、ついからかってしまっている。
唇を引き締めて。身体をかたくなに、こわばらせて。
裂き散らされてしまったストッキングを、太ももの上を吹き過ぎる冬風にひらひらさせながら。
オレが遠慮会釈なくしみ込ませてゆく、悪魔のような疼きをガマンしつづけている。
もう。頼むよ、先生。もうちょっと、ノリノリでいこうや。
オレがいくら促しても、先生はノッてこなかった。
校舎の影から送られてくる、女生徒たちの視線―――
オレはちょっぴり、ひやりとなって。
手近な倉庫の裏手に、先生を引きずりこんで。
そのまたさらに向こうの、生垣の影。
そこまで連れていくと、ようやく先生は堕ちてくれた。
悩ましくのたうち、蛇のようにくねる白い生身に、しょうしょうへきえきしながらも。
きょうのところは、ショーツのうえから濡らすだけでガマンしておいた。

ずっと彼方から見つめる、少女たちの眼。
そのなかに、きょうもとうとう襲いそこねた、あのお目当ての少女もいた。
待っていろよ。こんどこそ、かならずつかまえてやるからな。


あとがき
くろす様にちょっとおだてられたら。
なんだか少し、調子が戻りましたですよ。^^

あー、びっくりした。

2008年12月29日(Mon) 08:06:05

なにも描かないうちにうっかり送信ボタンをおしてしまいました。(^^ゞ
だって、しばらく放っておいたら、スクリーンセイバーになっていて。
てきとうにEnterを押したら、投稿されてしまったんだもの。^^;
画面を見たら、のっぺらぼうの記事が。(・~・;)
「妖艶なる吸血」史上初の、なにもない記事・・・って。(大笑)
あわててひとつ、描きましたとさ。^^

田舎の女学校

2008年12月29日(Mon) 07:44:31

校舎の裏庭でたわむれあっている、真っ白な夏服の女学生たちは。
さながらモンシロチョウのようだった。
手近なひとりを、つかまえて。
そっと耳元で、囁いてみる。
ねぇ、きみ。
吸血鬼って、怖くない?
ほんのちょっぴりで、かまわないから。
きみの生き血を、吸わせてくれないか?
さいしょにつかまえた女の子は、とろんとした目をして、オレのことを見あげてきて。
ばっかじゃないの?って、うそぶきながら。
それでもセーラー服の襟をかきのけるようにして、首筋に唇を吸いつけられるのを。
あまり嫌がるふうもなく、好き勝手にやらせてくれた。
もぅ・・・
女の子は首筋を軽く手で抑えながら。
ほかの子も、襲いたいんでしょ?だれ連れて来てあげようか?
オレはためらいもなく。
さっきからずっと目をつけていた、長い黒髪の少女を指さしていた。

はじめましてー。
あどけない顔つきで、近寄ってきたのは。
お目当ての彼女とは、なぜかまるっきり別人で、
けれどもおなじくらいふさふさとした黒髪を、そよ風にたなびかせながら。
人なつこい笑みを、近寄せてくる。
痛ーいっ!
2人めの子は、びっくりするほど大きな声で叫んでいた。
噛まれた首筋を、手で抑えながら。
もーっ。貧血になっちゃうよー。
おかわり、だれがいいの?
ちょっと吸い過ぎたものか・・・足もとまで、ふらつかせていた。
オレはだまって、さいしょから目をつけていた、長い黒髪の子のほうを指さしている。

ねぇねぇ。
背中を指で突き刺したのは、さいしょに襲った子だった。
イタズラッぽい含み笑いをしながら、連れの女の子の両肩を、軽く抱き支えていた。
逃げられないわよっていうように。
この子、クラブの後輩♪わたしが保護者なの。
血を吸ってあげて・・・
こんなありがたい申し出、断るわけはない。
お目当ての少女のことを気にしながらも、含み笑いをつづける少女に座らされた後輩の子の足許に、
オレはゆっくりと、唇を添わせていった。
バラ色に染まったハイソックスを、ずり降ろして。
もういちど、じかに噛みついたふくらはぎは。
とろけるように、柔らかかった。

おいおい、違うって。その子じゃないんだって。
2人めの少女が連れてきた子を見て、オレはかろうじて、そんな言葉を呑みこんだ。
そんなに美人じゃないけれど、だれもが素直そうなおもざしに柔らかな笑みを浮かべていて。
この少女も、さらさらと流れる栗色の長い髪の毛を抑えながら。
オレのいけない悪戯に、真っ白なハイソックスのふくらはぎをゆだねてくる。
横目に見た視線のかなた。
さいしょから目をつけていたあの少女は、幸いなことにまだ立ち去らないで、友だちと談笑を続けている。

お目当ては、あの子なの?
おじさま、寄り道ばっかりしているね。
なん人めの子だろうか?
まるで、オレが目をつけているその少女をかばっているかのように。
入れ替わり、たち替わり、現れる女の子たち。
おそろいの白のハイソックスの下は、
発育のよい、しなやかな筋肉。柔らかい皮膚。健康な血潮。
胸元に長く垂らしたセーラー服のリボンを揺らしながら、
だれもがきゃあきゃあとくすぐったそうなはしゃぎ声をはじけさせて、
オレの牙に、初々しい血潮を散らしてしまっている。
さいしょの子も。二番目の子も。そのつぎも・・・
一人のこらず、処女だった。
だれもが順朴で、疑うことも知らないで。
素朴に着こなしたひなびたセーラー服が、かえって都会の子にない初々しさを漂わせている。
うん。やっぱり襲うのなら、田舎の子に限る。
オレはけしからぬ感想を胸に抱きながら、
なん人めかの子のセーラー服の襟のラインを、持ち主の血潮で彩っていた。
視界の彼方に、まだ立ち去らないでいるあの少女を見つめながら・・・


あとがき
夢のなかで、気になる女性が現れて。
それなのになぜかなかなか近づけない・・・
そんな夢を見たことはありませんか?

業務連絡

2008年12月28日(Sun) 06:03:49

リンクを変更しました。
「花盗人」→「秘すれば花」
http://cross1007.blog79.fc2.com/

以前から愛読していた、くろすさんのブログです。
モノトーンな背景のなか語られる妖艶なストーリーと、画像のコラボレーションが見事で、
つい惹きいれられるように入り込んでいたのですが。
ある日突然、いなくなってしまわれたのです。
リンクの削除は気持ちが落ち着いてから・・・と思っていたのですが、
嬉しいことに、やっと復活されました。
ブログの再開を、心からお祝いします。
皆様もぜひ、いちどお訪ねになってみてください。
春先になれば、各地の桜の素晴らしいな画像が見られるかも。(*^^)v
花を期待して覗いてみたら、案外華のある淫ら絵だったりするかも、ですが。(笑)

吸血タイム

2008年12月28日(Sun) 05:54:20

時計の針が、午後四時ぴったりになると。
「吸血タイムだよ」
だれ言うともなく、呟きが洩れて。
マサオは隣で遊んでいた真美ちゃんを、
リョウタはさっきまで冗談を言い合っていた好美ちゃんを。
だしぬけに両肩をつかまえて、押し倒して。
女の子たちは、ひと声、
「きゃっ。」
ちいさく叫ぶと、
ポニーテールの髪を振り乱しながら。
それでも慣れているらしく、白いうなじをすうっと伸ばして。
とがった歯をむき出しにしてくる男の子たちに、素直に噛ませてしまうのだった。

吸血鬼の男の子は、人間の女の子を。
人間の男の子は、吸血鬼の女の子に。
いともやすやすと、組み伏せられていって。
しんと静まり返った室内には。
ちゅうちゅう・・・ちゅうちゅう・・・
ナイショの悪戯のくすぐったい音が。
いつまでもひっそりと、続いてゆく。
さっき、お茶のお代わりを入れに来た人間の家のお母さんは。
襲われている女の子たちのなかに、自分の娘が含まれているというのに、
しぃんとなりをひそめて、納戸で縫物かなにかをしているらしい。

時間が近づくと、だれもがそわそわと相手選びに入っていて。
さりげなく、目当ての子に近寄っている。
男の子と女の子の場合もあったけれど。
女の子どうし、男の子どうしの組み合わせも、あまり珍しくない。
ほんとうに仲良くなれるのは、同性どうしらしかった。

ふーん、男の子と仲良くなったの?
息子のユウタの話をききながら、吸血鬼のお母さんは家事の手とめなかった。
だって、いつもボクのためにって、真新しいハイソックスを履いてきてくれるんだよ。
同性愛だなんて冷やかすやつは、どこにもいない。
友だちの美沙緒はきょうも、ライン入りの紺のハイソックスを履いてきて。
時間が来ると、半ズボンの脚を伸ばして、すすんでユウタに組み敷かれていったのだった。

来年からさ・・・
美沙緒ははこっそりと、ユウタに話しかけている。
ここは、誰も来ない放課後の、校舎の裏手。
学年が下のユウタのことを、わざわざ呼び出した美沙緒は、
いつものように半ズボンの足許にかがみ込んでくる友だちに、
ちょっぴりほろ苦く笑いながら、ハイソックスの脚を噛ませたばかり。
おいで。
美沙緒が振り返ると、ユウタのすぐひとつ下の学年のその女の子は、
無言でおずおずと、物陰から姿をみせた。
かたくなにぴったりととざした薄い唇が、かすかなためらいと恐怖を滲ませている。

妹のめぐみ。来年から遊び仲間に加わるんだ。
ほかの子に、むざむざ噛まれちゃうのは、もったいないから。
きみにあげるよ。ボクももうじき、卒業だから。
いいの・・・?
ユウタは表向きのためらいと、抑えきれないワクワクとに体を浮つかせて。
二、三歩後ずさりする少女の背後に素早く回り込んでいた。
「お兄ちゃん、やっぱり怖い・・・」
少女の訴えを、兄は優しく受け流して。
「だいじょうぶ。オレがついてるからさ」
って。
めぐみの肩を、優しく抑えると、その場に座らせて。
真っ白なハイソックスの脚を見つめて、悪友を促している。
早くも女らしいカーブを帯びた伸びやかなふくらはぎは、
少年の牙を、異様に疼かせていた。

うまいこと、やったものだね。
吸血鬼のお父さんは、顔を隠すようにして読んでいた新聞をひざに落とすと。
一人前の男を見る目をして、息子のことをほめていた。
ユウタの傍らに羞じらうように腰かけているのは、すっかり大人びた親友の妹。
近々結婚を、控えていた。
妹の嫁入りを気にしていた美沙緒のほうは。
ずっと交際していた少女と、つい先日婚約をしていた。
一人で出てこれる?フィアンセを紹介するから。
そういって、幼馴染みを誘った美沙緒は、
まだ、処女なんだ。
小声で悪友の鼓膜をくすぐっていた。
あんまり仲良くし過ぎちゃ、ダメよ。わたしのお姉さんになる人なんだから。
めぐみがかすかに声尖らせるのを。
ユウタが「ならわしだから」って、弁解するのを。
だれもが愉しそうに、見守っていた。


あとがき
難産の?今月の10作めです。
うーん。うまく描けないものですね・・・

一足、525円。

2008年12月26日(Fri) 06:49:07

いつも夜道を通りかかるその娘は。
グレーのスーツに、白のブラウス。
清楚だがありふれたいでたちを、まるで制服でもあるかのように、あきもせずに身にまとう。
いかにも着慣れないスーツ姿に、
存在感のない肌色のストッキングを、いかにも穿き慣れないように穿いていて。
スーツに合わせたねずみ色のパンプスも、どこか垢ぬけしない雰囲気で。
いまどき珍しいほど、ひなびた顔だちで。
お世辞にも、美人という形容からはほど遠かった。

独り歩きの夜道で、呼び止めて。
手短かに、オレの素性を口にすると。
もう、蒼ざめてしまって。縮みあがって。
追い詰められた壁ぎわで、うつむきながらつぶやいている。
どうしてわたしには、こんなひとしか・・・
ご挨拶だな。
お前の友だちの彼氏のだれよりも。
オレは強力なんだぜ?
もちろんそんなこと、なんのフォローにもなっていない。
オレは女の手を引いて。
手近な公園に、引きずり込んだ。
もちろん。公園目あてで、女に声をかけたのだが。

決して、死なせるようなことはしない。
映画に出てくる吸血鬼とちがって。
ほんの少し、貧血にならないていどにいただくだけだ。
人助けだと、思ってくれ。
灰になっちまうんだ。
今夜じゅうに、若い女の血を吸わないと。
ほんとうの弱みを口にすると。
女はそれでもしぶしぶと、言われるままにベンチに腰かけた。
腕をつかまれ、逃げられないのと。
いくらなんでも、立ったまま噛まれるのは辛いと判断したのだろう。

オレは素早く、女の足許にかがみ込んで。
アッ!
女がスカートを抑えて、脚を引こうとするせつな。
ストッキングのうえから、ふくらはぎに食いついていた。
ほどよい肉づきをした彼女の脚は、絶妙なカーヴを描いていて。
絶世の美女なみに、誇らしげに闇に映えていた。
捕まえた足首が、キュッと引きつって。
女が脚の筋肉をこわばらせたとき。
すでに、オレの牙が深々と侵していて、皮膚の奥深く秘めた血管を断っていた。
ああ・・・
気の毒に。
この齢で、女はまだ処女だった。

ううっ・・・
女が顔を覆って、べそをかいたのは。
噛まれた痛みなどよりも。
ストッキングを破られてしまったことに対するものだった。
このままじゃ、帰れない・・・
噛みつくときに。
脚なら目だたないだろう?服も汚さずに済むから・・・って、囁いて。
女もかすかに、頷きはしたけれど。
ストッキングが破れてしまうことまで、計算に入っていなかったらしい。
あたりに人の気配がないのを、気を配って。
オレは女のほうからわざと視線をそらしながら、
女がその場でそそくさと履き替えに脚を通すのにつきあってやっていた。

来たわよ。約束通り。
つぎの日の晩。
真夜中の公園に。
女は独り、足を運んできた。
見慣れない真っ赤なジャケットに、おなじ色のスカート。
いつもアップにしている髪型を、お嬢さんぽく肩に流して、
化粧もいつもより、気持ち濃い目に刷いている。
人助け・・・だからね。
短かめのスカートのすそを、ぶきっちょに精いっぱい引っ張って。
座ったらまる見えになる、黒のストッキングの太ももを、なんとか押し隠そうとした。

ストッキングの脚が、お好きなんでしょ?
特別に、高いやつ穿いてきたのよ。
女の指摘は、図星だったが。
ふくらはぎにあてがった唇を、不覚にも笑みに弛めてしまっていた。
一足525円。
ひと口、吸ってみただけで。
たいがいのブランドは、当ててしまうほどに、唇になじませてしまっている。
高いストッキング。
絹製とか、インポートものだったら、ともかくも。
けれどもオレは、そんな女の不器用さがむしょうにいとおしくなっていて。
むやみに足許を撫でさすって、ストッキングに皺を寄せては、
彼女のひんしゅくを、かっていた。

毎晩は、無理だけど。
そんなに血に飢えているのなら、週2くらいは、協力してあげる。
あくまで献血ですからね。いやらしいことは、しないでね。
女は自分の潔白さを強調するように、かたくなに硬い声色を作りながら。
ふつかにいちどは、公園に現れて。
一足525円くらいの、けれどもいつも真新しいストッキングを脚に通して、現れて。
不埒な唇の前、ゆったりとした脚線美を惜しげもなく見せびらかすようにさらしては、
ねじれひとつなく装った薄手のナイロンに、お行儀悪くよだれをほとばせるオレのことを、
ほろ苦く笑みながら、見おろしていた。
日に日にやせ細った女は、いつか見違えるほどの美しさを、身に帯びるようになっていた。

女はよほど、もてるようになったらしい。
けれどもオレの喉を潤す血潮は、いつまでも汚れひとつみせないでいた。
好きな人がいるの。でも・・・あなたを選んでしまった。
女が口ごもりながら、つぶやいたのは。
とうとうこらえきれなくなって、手近な芝生にまろばせて。
スカートの奥深く、逆だちするほどに昂る一物を、挿入して。
スリップを紅く、濡らしてしまったあとだった。
ばかだな。お前。
オレは女の髪を、いとおしく手で梳いてやりながら。
しくしく泣き臥せる女のことを、いつまでもいとおしみつづけていった。

半年後。
祝福に包まれた教会に、オレはもちろん近づくことができないまま。
白のウエディングドレスに包まれた幸福に満ちた表情を。
まぶしげに遠目に見守っている。
人としての幸せを、取るように。
オレには心配、要らないのだから。
これ以上やせ細らせるわけにはいかない。
女の肌は、人目にはつかないほどに色あせはじめ、すでに危険な兆候を示していた。

人妻の生き血には、関心ないの?
彼がわたしに目を向けなくなったりしたら。
もしかして、また連絡するかも知れないよ。
ふつか前、最後に逢ったその晩に。
女はくすぐったそうに肩をすくめて、くすっと笑んで。
あまりあてにならなさそうな申し出に、オレはほろ苦く笑い返していた。
牙にあやした血潮には。
オレが命令したとおり。
ほかの男と交わったあとの、かすかな澱みを帯びていた。

幸せそうなカップルが、教会の仕立てた馬車に乗り込んで、姿が見えなくなると。
オレは手の指に巻きつけた薄いナイロンの切れ端に、
そっと、唇を当ててやる。
たしかに安物には、ちがいなかったが。
初めての夜、女の脚から脱がしたその装いは。
なよやかで妖しい感触の向こう側。
ひっそりとした熱情を秘めた皮膚の気配を、まだ宿しているかのようだった。


あとがき
スタンダードなストッキングは、一足525円くらいするようです。
その昔、女子中高生向けに売られていた黒のストッキングは、二足で380円でした。
まだ、消費税などなかった時代のお話ですが。(笑)

そこにあお向けになって。脚を開いて。目をつむって。

2008年12月21日(Sun) 09:54:59

ここはだれも来ない、廃屋のなか。
いまはきみと二人っきり、顔見合わせあっている。
オレはいい歳をした、生身の男。
きみは制服姿の、女学生―――
どういうことになるのか、もう予想がつくだろう?

したことがない・・・だって?
そいつはかえって、嬉しいね。
きみも年頃の女の子なら、
知っているだろう?男のひとの癒やしかた。
わからないって?
わからなかったら。
そのままそこに、あお向けになって。
脚をすこしだけ開いて、目をつむって。
あとはなにが起きても、目を開けたりしないこと。
守れるかい・・・?

ちょっぴり痛いかも、知れないけれど。
スカート履いたままだと、裏がわを濡らすかもしれないけれど。
自分で脱いだりする勇気は、とても持ち合わせていないんだよね?
ママはお勤めで、お昼はいないんだったよね?
ご用がすんだら、途中まで送っていってあげるから。
そのまま何事もなかったように、だまって家に戻って、シャワーを浴びて。
すみずみまで、よぅく洗って。
ふだん着に着かえて、ひと寝入りしてしまえば。
もう・・・だれにもわからないさ。
あんまり畳に脚を擦ると、黒のストッキングが破けるかもしれないけれど。
履き替えはちゃんと、鞄の中に用意されているんだったよね?

ことが果てると。
きみは廃屋のなかにたちこめる黴臭い匂いに顔しかめながら。
痛かった・・・
たったひと言、呟いて。
のろのろとけだるそうに、起き上がる。
もうすっかり、大人の女になった顔つきをして。
そうしてオレの不作法を、口尖らせてとがめながら。
スカートの裏についたねばねばと、裂けたストッキングにしみ込んだ紅いしずくとを、
真っ白なハンカチで、念入りに拭い取る。
きみの肌にしみ込んだ男の影は、もう永遠に消えることはないはずなのに―――

むすめ

2008年12月21日(Sun) 09:45:19

真っ赤なチェック柄のミニスカートから、
ぴちぴちとした健康な太ももを、さらけ出して。
ひざ上まである黒の長靴下を履いた脛を、
あけっぴろげに、開ききって。
わたしの下、はしゃぎきった声をはじけさせている。
やだっ!やだっ!やだったらっ!
ヤバイよ、親娘でこんなこと・・・

白のセーターのVネックをふちどる紺色のラインに。
その下からのぞく、さらに真っ白なブラウスの襟首に。
なま温かいよだれを、たらたらとしたたらせながら。
わたしは垣根を、越えていく。
初めて越えてしまった、あの夜。
妻が男を作って家を出た日のことだった。

もぅ・・・
予期せず最初の瞬間を迎えた少女は、
そのときまで幼いばかりに見えた横顔に、別人のような大人びた艶をにじませながら。
ちょっぴりふくれ面をして。口をとがらせて。
スカートの裏地についたねばねばを、ハンカチで拭っていた。
恋し合っていたころの妻と、うり二つに映った横顔を。
わたしはあろうことか、ふたたび押し倒してしまっていた。

夫婦のものだったベッドのうえ。
わたしの下になった女は、黒の長靴下の脚を精いっぱい突っ張るように立て膝になったまま、
ぎしぎしときしむ音に、身を任せている。
腰のうごきは、とっくにひとつになっていて、
慣れ合ってしまったカップルとおなじように、ただなりゆきまかせに。
ピクピクと間歇的に閃く衝動のまま、激しい擦れ合いに結びついていく。

衝動が去った後。
お互いがお互いの頭を抱いて。
しばらくのあいだ、じいっと息を潜め、肌を合わせ、
互いに互いの存在を、確かめあう。
初々し過ぎる柔らかい肌に、まるで母親のような、大人びたいたわりを秘めた血をめぐらせて。
敏感過ぎるほど尖ったわたしの神経を、柔らかく包み込んでゆく。
いつかきみが、自分の母親とおなじようにして。
ほかの男のもとに走るとき日がくるときまで―――


あとがき
別れてしまったからといって。
ワルイコトに走っては、いけませんね・・・。^^;

やれ、やれ。(私信)

2008年12月20日(Sat) 07:59:18

今月は、いつもの月にもまして不作です~。
いつも明け方に訪れる「魔」が、さっぱり現れません。

例年12月って、わりとお話が豊作なんですよ。
それが、いまの感じだとブログを立ち上げた月以来、初めて10を切るかもです。
ブログ立ちあげた月って、5月の29日なんですが。
それでも四つ、描いています。^^;
おととしの12月に、ひと月で108も描いたなんて、信じられないですよね~。
108話。
煩悩の数字です。(爆)
意図してやったわけじゃなくって、夢中になってタイムリミットまで描きつづけていたらそういうことになったわけでして。
描きあげて、あっぷして、ふとアーカイブの数字みたら、「108」だったという。
あきれましたね。われながら・・・。(^^ゞ
でもいまさらもうひとつなんて描けないくらいに描き抜いちゃった後だったので。
修正のしようもありませんでした。(苦笑)

どうして不作なんでしょうか?ですって?
さぁ~。(・・;)
お客様が減ったせいかな~。(人のせいにしてはいけません)
すとれすが減っているのかな~。(そうだとしたら結構なのですが・・・)
まぁ、のんびりやりますよ。

おっ、これでも一応、一話カウントになるわけだ。
これで6つめっ!(*^^)v
(レベル低すぎ・・・)

潜入。

2008年12月19日(Fri) 04:48:54

「慰安旅行の21人、全員不明?」
そんな新聞記事の小見出しが、ある日ひっそりと紙面の片隅に掲載された。

深い眩暈の末―――
目覚めた視界の向こう側に、見慣れた妻の心配そうな顔があった。
あぁ、よかった。どうやって戻ってきたの?
迫村は頭をゆるく振って、けれどもなにも応えることができなかった。
あの晩。
山奥の村の旅館に泊って、宴会がいつになくコアな盛り上がりをして。
突然灯りが消えて、それから・・・
うわついた視線が舐めまわすのは、古ぼけた天井のはめ板。
もうそろそろこの家も、いろいろ手を入れなくちゃいけないな・・・
脈絡のないことを思い浮かべたとき、妻は気を利かせたように話題を変えた。
いいわいいわ。疲れているんでしょ?
いまおいしいもの作ってあげるから・・・
どうやって家に戻ってこれたのか、どうしても思い出すことができない。
けだるい疲労感が心地よく、ふわふわとなってきて、
喉に異様な渇きを覚えると、迫村はふらふらと立ちあがった。
自分の身体が、まるで自分のものではないようだった。

ダイニングに向かうと、妻の後ろ姿がいそいそと、台所仕事に熱中していた。
だいぶ近寄っても、こちらの気配に気づかないらしい。
思わずすり寄るようにして、いきなり後ろから抱きすくめていた。
あら、あら・・・
突然の抱擁に、妻はちょっとびっくりして、かすかなはしゃぎ声をたてた。
真美がもうじき、戻ってくるのよ・・・
かすれかけた声色が、首筋に押しつけた唇ごしに甘く響いた。
そのまま力まかせに、尖った犬歯を突き立てていた。
―――・・・・・・。

じゅうたんにぺたんと腰を落としたまま、妻は首筋についた血をエプロンで拭っている。
ほつれた遅れ毛が。投げ出した脚が、ひどく自堕落に映った。
真美が戻ってきたら・・・そうするの?
きみとおれとの娘だ。合うにきまっている。
己の意図をはっきりと自覚した男が声を震わせたのは。
かすかに残っている逡巡のせいなのか。それとも単なる渇きのせいなのか。
疲れている・・・わけではなくて。憑かれている。
おいしいもの・・・は、わざわざ作ってもらう必要はない。
吸血鬼に堕ちたいま、どんなふうにして生き延びていくのか?
さしあたって得られた答えは、たったひとつだった。

三十分後。
なにも知らない真美は、いつものようにお昼ごはんの食卓に腰かけて、
大好きなパンケーキをぱくついていた。
デニムのミニスカートから覗いた血色のよい太ももが、いつになく眩しく映る。
迫村はじゅうたんに落ちたものを拾うふりをして、娘の足許ににじり寄って、足首をつかまえる。
ハイソックスを履いたふくらはぎに噛みついた時。
娘の口もとから洩れた悲鳴は、意外にちいさかった。
厚手のハイソックスは妙に舌触りがよくて、
しなやかなナイロンごしに感じる皮膚のぴちぴちとした若々しさが、男をうっとりとさせる。
ごくごくと喉を鳴らして嚥(の)み込んだ血は、たしかに若い女のものだった。

よう。
玄関口、顔を出したのは。
直属の上司のY部長だった。
いつものように背広ネクタイの姿だった。
家に招んだのは、新婚当時のことだったろうか?
この家も、だいぶ古くなったね。
気さくに妻に声をかけるようすは、いつもの部長と変わりなかったが、
周囲を見回す目つきは隙がなく油断をしていなかった。
目と目を見つめ合って。
きみもそろそろ、出社しないか?
問いかけてきたときには、お互いの正体をわかり合ってしまっている。
もう、奥さんも娘さんも、吸っちゃっているようだね。
きみが戻ってきていなかったら、おれがいただこうと思っていたのさ。
フフフ・・・
容赦のない声は、すでに自分の家族を牙にかけてきた・・・そう告げていた。
きみんとこは、若くていいな。
うちは古女房と、息子夫婦。
まぁ、さいごに襲った息子の嫁のときには、ちょっとどきどきしたがね。
娘さんは、これからが楽しみだね。
あんまりやせ細るまで、ヤり過ぎるなよ。
さりげない言葉つきが、妙なくらいに卑猥なニュアンスが含まれている。

みんな、戻ってきているらしいんだ。
どうやってって・・・きみだってわかっちゃいないんだろう?
全員、この世から消えたことになったまま。
吸血鬼にすり替えられて、自宅に戻っている。
長く暮らすには、もうひと家族くらいは巻きこまなくちゃならんだろうな。
さいごのひと言をつぶやいたときは、まるで経営計画を部下に告げるときのようにおごそかだった。

弟夫婦は、新婚だった。
部下のエミに気があるらしい弟を家に誘いあげるのは、容易だった。
弟のほうはエミに任せて、迫村は弟の新妻に迫っていた。
薄ぼんやりとなってしまった弟は、新妻が兄に襲われるのを、へらへら笑いながら見守っていた。
若い人だと、ノルようね。
週末に家に招ぶと約束して弟夫婦が立ち去ると。
妻はちょっとだけ不平そうに口を尖らせた。

「法事」と称するものがあの村で執り行われたのは、
それから三か月ほど経ってからだった。
ざく、ざく、ざく、ざく・・・
朝もやの立ち込めるなか。
村はずれの寺に通じる砂利道を踏みしめる音がつづいていた。
草むらの影から、餓えた視線を覗かせているのは。
あの日に難に遭った、化生のものたち。
男は、背広ネクタイ。女は、会社の制服姿。
だれもがひっそりと声をたてないで、自分たちの家族が寺に向かっていくのを見つめている。
参道の女たちは、いずれも黒いスカートに黒のストッキング。
濃淡とりまぜたナイロンごし、白く滲ませた脛に、男どもは悩ましい視線を迷わせていたけれど。
きょう、餌にありつくのは、村の男どもだった。
己の血を吸い尽くしたやつが、きょうは妻や娘に迫ってゆく。
本番は、寺の離れの大部屋だった。
あの晩とおなじように振る舞われた料理に、一同がようやく空気をほぐしたころ。
庭先から這い込んだ黒い影が、ひとつ、ふたつ・・・
まるで夜這いをしかけるようにして、細めにひらいた障子の向こうに消えてゆく。
きゃあっ・・・
聞こえてきた悲鳴はどこか嬉しげで、くすぐったそうな響きを帯びていた。

おや、お詣りに来たのかね?
部長の言葉に照れながら。
女子事務員のエミは、エンジ色の制服姿を立ち止まらせる。
母と、妹なんです。
ご精が出るね。
娘の上司のからかい文句に、エミとよく似た面ざしが、少女のようにはにかんでいる。
淑やかに装った黒のスーツの下、薄墨色のストッキングが、派手に裂けていた。
学校の後輩が3人、おなじ学校に入るんです。
わたしがどうなったのかを、まだ知らないうちに。
此処に連れて来てあげようと思うんです。
お嫁さんを欲しがっている若いひと。
愛人を欲しがっている人たちと同じくらい、いらっしゃるんですよ。
アナタモ奥サマヲ、愛人ニサレチャッタンデスヨネ?
エミの無言の問いかけを、くすぐったそうに受け流して。
部長は連れの迫村夫妻をかえり見て。
こんどは奥さんの妹夫婦だったね?
さっそくお連れしようじゃないか・・・
まだなにも知らずにいるふたつの人影が朝もやにけぶるのを、
小気味よさそうに、見透かしていた。

切望。

2008年12月17日(Wed) 03:12:54

あー。
また、やってしまった・・・
どうしてオレは、こうもどじなんだ。
出張行程は、どたばたになるし。
かんじんの打ち合わせは、さんざんになるし。
不幸中の幸い、周りのだれもがおだやかな人ずくめだったことさえも。
かえって、申し訳なさを増幅するばかり。

オレは柏木。
ふだんは名もない万年平社員。
正体が吸血鬼・・・だなどというヤバすぎる真相は、
つねに、平凡すぎる外貌の下に無理やり押し隠して生きている。
真夜中になると否応なく発揮してしまう、超能力。
その見返りというか、なんというか。
昼間は正体を隠すという必要以上に、どじの連続なのだった。

きょうもオレは、めまいのするほどの自己嫌悪に包まれながら、
苦い思いに胸を噛みながら、たったひとりの自宅への帰り道をたどっていた。
あのぅ・・・
背中越し、若い女の声がおずおずと投げられてきたのも。
さいしょの二度三度は、まさかオレのことではあるまいと。
よけいに背中を丸めて、通り過ぎようとしたのだった。

いつの間にか。
女の影は、目の前に回り込んでいた。
うっそりとしたさえない目をあげると。
そこには闇夜に透けて、優しげでなだらなかプロポーションが浮かび上がっている。
ふたりの真上にそびえる電信柱。
さびれた灯りに照らされて、まるで幻のように。
眩しすぎるほどの脚線美が、すぐ目のまえにあらわにされる。
オレ好みの、薄々の黒のストッキングに映える白い脛が。
ちょっと照れくさそうに、娼婦のようになまめく絶妙なくねりを描いていた。

ふふっ。
無邪気すぎるほどの、ほほ笑みが。
―――また、しくじっちゃったの?
軽い揶揄を含んでいたけれど。
親しげな冷やかしの下、かぎりないほど暖かいいたわりが、
冷え切った胸を柔らかいオブラアトのようになって押し包んでくる。
座りましょ。
灯りの下、しつらえられた公園のベンチに。
かの女はすらりとした腰つきを、軽やかにすべらせる。

やっぱり・・・
女はくすくすと、笑っている。
自分の隣に座らないで、まん前にかがみ込んでくるオレのことを。
明るいいたわりのこもった視線が、冷えた首筋に。こわばった肩に。
暖かくそそがれる。
オレがいま、いちばん欲しがっているもの。
疼く牙が求めるものも。
乾いた心が欲するものも。
ぬくもり―――。
ただその一点だけなのだと、女は慧眼にも見抜いている。

ぬるりと這わせたべろの下。
ノーブルな輝きを秘めた薄手のナイロンが、かすかなひきつれを走らせる。
すぐに破かないで。
たっぷり舌で、愉しんで。
せっかく貴方のために、装ってきたんだから―――
すらりとした脚を、かすかに揺らすようにして。
オレの吸いやすいように、さりげなく角度を変えてくる。
すがりつくように握りしめた掌のなか。
ハイヒールの脚は踊るようにして、軽く組み替え、しなやかな筋肉をキュッとはりつめる。
どちらがいたぶっているのか。それともじゃれ合っているのか。
わからなくなるほどの、至福のひと刻。
オレはいつか、すべり込むようにして女の傍らに身を添わせていって。
背中越し腕を回して、女の遠いほうの肩をつかまえていた。
こんどはオレが、女の身体を暖めるようにして。

ブラウス、汚してもいいんですよ。
ストッキング、破いてもかまわないんだよ。
女はしつよう過ぎるオレの抱擁のなか。謡うように、口ずさんでいる―――。
いつか、しっとりとしみ込むようにして。
オレの胸が、手足が。喉の奥さえも。
女の温もりに、満ち満ちたとき。
女はいつの間にか、スッと背筋をそらせて。
がんじがらめにしてやったはずの猿臂から、いともやすやすと抜け出している。
少しは元気になった?
また、来るからねね。
こんどは鬼ごっこ、愉しもうね。
女の童顔からこぼれる笑みに、オレは深々と頷き返していた。
掌に残る、あのたっぷりとしたおっぱいの感触が。
滲むぬくもりのなか、まだありありと残っていた。

女の名は、まりあ―――
時間と空間のへだたりは、オレにとってはなんの問題もない・・・なんて。
エラそうにうそぶくオレのお株を、時おり奪うようにして。
オレが切望するまさにその瞬間をたがえずに。
時も空間も、いともやすやすと超えてくる。
どちらが、超えてくるんだか。どちらが、「魔」を備えているのだか。
オレはやっと、いつもの落ち着きを取り戻して。
誰も待っていないはずの我が家へと、ちょっぴり浮ついた足取りを向けるのだった。


あとがき
北国の雪のように降り積もった業者サンの熱心な宣伝カキコに埋もれたわけではなかったのですが。
「魔」の囁きがさっぱり訪れないままに、つい日を過ごしてしまいました。
そんな私の眠りを、とんだ刻限に呼び覚ましてくれたのは。
まりあさん。やっぱり、貴女だったのですね。^^
いつもよりちょっと落ち込みトーンなのは・・・実生活の反映?(苦笑)
それもまた、彼女がしっとりと秘めたエロ・・・もとい活力が、
妖しいほどの恢復力で補ってくれたようです。
感謝♪

お見合い写真 2

2008年12月07日(Sun) 23:10:50

O型の血が、好みなんだってね。
だったら香保里さんの血も、気に入るだろうね。
妹の夏美が、薄っすらとほほ笑みながら。
ある晩そんなことを、わざわざ囁いていった。
どうしてそのときに、言い訳ひとつも思いつかないで。
胸をずきずき、轟かせてしまったのだろう?
香保里は来春に挙式を約束した、お見合い相手だというのに。

おなじオフィスの、ちがうセクションで。
きょうもハイヒールを響かせながら、肩で風切るように闊歩している女。
理知的な色白の細面に、はっきりとした瞳。
スレンダーな体格にぴったりと寄り添った、千鳥格子のブラウスは、
長めのタイを胸元にひらひらとなびかせていて。
ウエストをきりりと引き締める、黒のタイトスカート。
そのまた下に覗くすらりとした脚を、薄々の黒のストッキングがなまめかしく巻きついていて。
だれもがオレのことを、羨望の目で見つめるのだった。

お見合い写真だったら、もう撮る必要ないんじゃない?
栗毛の髪を、もてあそびながら。
香保里はそれでもまんざらでもない顔つきで。
オレのファインダーのまえ、ポーズを取ってくれた。
写真を撮りたいんだ。
婚約者からの他愛ない依頼を、どうして不審がることがあるだろう?
ファッションモデルよろしく、腰に手を当てて、背筋をピンと伸ばして。
すらりとした上背のあるプロポーションが、いっそう若々しく、挑発的に映る。

このいでたちのまま、あいつの前に立ちすくんで。
抱きすくめられるのを拒もうとして、ソファに投げ出されて。
千鳥格子のブラウスを、くしゃくしゃにされながら、
柔らかく隆起したおっぱいを、しつようなほどに揉み抜かれて。
せり上げられるタイトスカートから、ストッキングのガーターまで露出させて。
オレよりも先に、男の術中に堕ちてゆく。
太ももにぬらぬらと光る、純潔の証しを。
オレは苦笑を交えて見届けるばかり。

来週も・・・約束しちゃった。
あなた、見に来る?いいえ・・・来るわよね?
ぜひ、御覧にいらしてね。
わたしが乱れて、あなたを裏切る娼婦になるところ・・・

正装を乱された女たちは、いったいどこまで堕ちてゆくのだろう?

お見合い写真 1

2008年12月07日(Sun) 22:59:47

何枚も撮った、記念写真。
妹には・・・お見合いのときにでも使えよ・・・って言ったけれど。
ほんとうはすでに、使い道がきまってしまっている。
オレの生き血を一滴残らず吸い取った、憎たらしいあいつ。
こんどは妹の血を、欲しがっている。
声わななかせながら、夢中になって。
吸わせてくれ・・・って、呟かれたとき。
オレはどうして、強く拒絶できなかったのだろう?
お前とおなじ血をあやしている、この世でただ一人の女。
鮮やかなブルーのブラウス姿に、しがみついて。
剥ぎ取った衣装の下からあらわになった白い肌に、
牙をぶすりと突き刺して。
思うさま、吸い取ってしまいたい・・・
そんな魔性の欲求に、
植えつけられた本能が、呼び合うように引き寄せられていた。

どこかかたくななところのある妹の夏美。
きょうも、鮮やかに映えるブルーのブラウスに似つかわしくない気難しい顔つきをして、
それでもしぶしぶのように、ファインダーのなかにおさまっていた。
綺麗にとれた数葉の写真。
舌なめずりをしているあいつの前、おずおずと差し出す手が震えていたのを。
誰も咎めることはできないはず・・・
きょう。
妹は、写真とおなじ服装をして。
黒のタイトスカートに装った足取りを、あいつの邸の石畳に、響かせてゆく。

行ってきたわ。
家に戻ってきた夏美のやつは。
相も変わらず、気難しい顔をして。
けれどもブルーのブラウスの肩先に、赤紫に広がった痕を、隠そうともしないで歩み寄ってくる。
兄さん、知っていたの?
咎める口調を、くすぐったく受け流すと。
夏美は長い髪の毛をさばさばとかきのけて。
痛かった。
でも、つぎの約束してきちゃった。
フフフ・・・
さいごの含み笑いは、いつもの生硬さとは裏腹のものだった。

だれでも堕としてしまう、あり地獄のような男。
あいつにはあとなん人、若い女を捧げればいいのだろう?

ごく、ごく。

2008年12月02日(Tue) 06:58:17

ケンジ。ちょっと…
リョウタがそんなふうに、口ごもりながらボクを物陰に呼ぶときは。
必ずといっていいほど、喉の渇いているときだった。
体育館の裏手、ひっそりとたたずむ平屋の倉庫。
そのまた裏手は、草が生い茂っていて。
人が来ることはめったにない。
ひんやりとする倉庫の壁に、立ったままの姿勢で抑えつけられて。
リョウタは無表情に、ボクの首筋に唇を這わせててくる。
男同士で、ヘンだけど。
決してそのテの趣味に走っているわけではなかった。
唇の端からにじみ出てくる二本の牙が。
薄い皮膚を食い破って、ずぶりと深々と突き刺さってくる。
ぬるり・・・ぬるり・・・
緩慢に洩れてくる血潮を、まるでジュースか水でも飲むようにして。
かれはごくごくと、のどを鳴らして飲み耽る。
ケンジの血が、いちばんおいしいんだよ。
血のりをべったりとあやした口許に、無邪気な笑みをたたえながら。
あまり嬉しくない感想に、ボクはそのたび顔をしかめてみせるけど。
ほんとうは、まんざら・・・でもなかった。
稚拙に圧しつけられてくる唇の下。
ボクはずきずきと、皮膚を熱っぽく疼かせているのだから。

ある日のことだった。
ケンジ、ちょっとだけ・・・
いつものように、物陰に呼び込まれて。
リョウタは半ズボンの下、ボクの穿いているハイソックスをくしゃくしゃにたるませながら。
ふくらはぎを噛んでいた。
ねぇ。
うん・・・?
ケンジのママの血も、おいしいんだろうね。
えっ・・・?
パパに、吸わせてやりたいんだ。
母子ながら・・・
まがまがしい想像が、なぜかボクをずきりとさせる。
今夜、ママに訊いてみるよ。
そう応えるのが、やっとだった。

ママはその晩、単身赴任で遠くに行っているパパに、長いこと相談の電話をしていた。

ふすま一枚隔てた向こうの居間から。
ごく、ごく。ごく、ごく。
血を呑んでいる音が、伝わってくる。
かすかな身じろぎの気配とともに。
ボクはいつもより、昂りながら。
半ズボンの脚を、うつ伏せにして。
白のラインの入った紺色のハイソックスの脚を、リョウタのまえにさらしていた。
いちばん気に入りのやつを履いて、リョウタのまえに立ったとき。
ママを別室に連れ込んでいった父親をうらやましそうに見送った少年は。
はじめて満足そうに、ニッと笑みをかえしてきた。

食い入ってくる牙が、ゾクゾクと伝えてくる疼きよりも。
ふすまの向こうが、気になっていた。
わざと細めに開かれた、すき間から。
もだえるスーツ姿が、かいま見える。
ブラウスをはだけ、スカートをたくし上げられて。
ママの太ももは、思ったよりもずっと白かった。
珍しく身に着けた黒のストッキングは、太ももまでの丈だった。
白い太ももを区切るようにして、つま先までは、ドキドキするほどの薄黒に包まれていて。
ママが脚をくねらせるたび、ボクはなぜかドキドキ昂ってしまっていた。

引き抜いたお○ん○んを、ぶらぶらさせながら。
リョウタのお父さんは、つぎはお前の番だといって。
あお向けの姿勢のまま放心状態のママのうえ、リョウタをまろばせるようにおおいかぶらせた。
どういうことなのか、薄々察しをつけながら。
失血にぼう然となったボクは、ママの両腕を抑えつけてゆく。
ありがとね。
リョウタの声に、くすぐったくなって。
うふふふふっ。
イタズラッぽく、笑い返しながら。

こんどはルリちゃんのいるときに、来てもらいましょうね。
ほつれた髪を直しながら、ママはそんなことを呟いていた。

いいなぁ。
下校の道々、リョウタは口をとがらせている。
真っ先にボクの妹にとりついて、処女の生き血にありついたお父さんのことが、妬けるらしかった。
いまでは二人がかりで、母娘ながら畳に転がして、分け取りにして愉しんでいるというのに。
最初の男・・・っていうのが、いいのかな?
ボクは自分で口にした大人の言葉に、自分で昂奮してしまって。
彼女ができたら、リョウタに真っ先に紹介してやるよ・・・
彼がくすぐったそうに笑ったのは、耳たぶをかすった息のせい?


あとがき
消えそうになったイメージのあるうちにと、キーをたたいたのですが。
うーん。少し消えかかっていますね。(^^ゞ