淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・
気ままの構図
2009年01月30日(Fri) 19:39:11
さいきんあの女、不満を抱えていないか?
ひっそりと、告げ口でもするように。
あの黒い影はわたしに寄り添って、囁いてくる。
このごろすっかり、ご無沙汰だったのに。
急に切々たる恋文・・・だ。
投げてよこした何枚もの便箋には、見慣れた筆跡。
「あの女」。
ぞんざいに投げられた言葉がさすものは、ほかならぬわたしの妻のことだった。
どうやらサイクルが、あるみたいだな。あんたの女房は。
三か月も、ほうっておくと。
かならずこんなふうにして、届くのだよ。
それまで見向きもしなかったことなんか、忘れきったようにして・・・な。
浮気相手の気ままさを、愚痴られたとて。
寝取られている側からして、なにを返せば良いのだろう?
女は、勝手な生き物だからな。
じぶんのほうで必要なときにだけ、すり寄ってくるのだよ。
向こうが必要としていないときに、こちら側から近づいていくと。
猛烈な肘鉄砲を、喰らうことになるからな。
え?どうすればいいんだ・・・って?
ゆうゆうと、待っておればいいのだよ。
待てば海路の・・・というではないか。
さも得意げに、よどみなく得々と語る黒影の頬を、
ちょっとねじってやりたくなった。
え?オレ様のほうが、待てるのか・・・?だと?
いい質問だな。
たしかにオレ様も、飢えているからな。
そうそう気長に、待ってはいられない。
だからこそ。
あてにできる餌を複数、いつも用意しているのさ。
おまえの従兄の奥さんも。幼馴染みのフィアンセも・・・
はっははは・・・
みぃんなあんたの女房の、つなぎに過ぎないのさ。
・・・と、まぁ。そういうことにしておいてくれないかな?
よそでもおなじ嘘、吐いているんだろう?
わたしの指摘を図星・・・と言いたげに。
男はくすぐったそうに、ウィンクを寄越してくる。
夕刻。
なにも言わずに、いそいそと。
着飾った妻は、行き先も告げずに出かけてゆく。
果たして今夜、やつのベッドに侍る身は。
本命なのか、たんなる性欲のはけ口なのか・・・
それはだれにも、わかりはしない。
ただ・・・どちらにしても。
やつがせつじつに求めている獲物である・・・という事実だけは、崩れることがないのだが・・・
~抜粋~
2009年01月29日(Thu) 07:51:05
あっぷが連続したり。とまったり。
落差がやたらと、激しいです。(^^ゞ
今朝も目が覚めたのは、早かったのですが。
お話はなぁんにも、浮かびませんでした。(-_-;)
・・・な、わけで。
ここ最近描いたお話で、自分的に”萌え”なシーンを抜粋してみました。
・・・ヒマですね。(^_^;)
すでにお読みになった方には、つまらないかもしれませんが。
柏木がどーゆうところに萌えるのか、御覧になりたい方はどうぞ。^^
「そこかよっ」って。言われちゃいそうですが。^^;
だれとダレとが、どーゆう関係だったのか。
おおよそ察しはつくかな?
誤解を招くくだりもありそうな。(笑)
妹の婿になるやつに、両手を合わせて、せがまれて。
祝言のまえに、仲間うちでまわしたいと言われたのだ。
嫁になる女を、みんなでまわす。
それはやっぱり、婚家にとって最高のもてなしだったのだ。
なにも知らない妹を。
おれは、言葉巧みに呼び出して。
妹婿の、願うまま。
女学校の制服姿を、藁小屋のなかに引きずり込まれて。
さいしょに犯したのは、やっぱり村の長老だった。
お母さん似だね。かわいいね。って、おでこを舐めるばかりにあやしながら。
(中略)
都会育ちの女房を
はじめて村に 連れていったのは。
挙式を控えた直前で。
親父はなぜか、渋い顔をして。
お袋はなにか、言いかけていた。
わかっているよ。アノことだろう?
許婚が席を外したときに、おれがそういうと。
親父はあからさまに、膝を乗り出して。
今夜にも・・・わたりをつけておくことだな。
嫁になる女の前から隠していたメモ書きには、
その晩彼女に夜這いをかける男衆の名前が、ずらりと並べられていた。
―――お袋・妹・嫁・義姉・・・ (1月26日)
首根っこをつかまえられて、かぶりと牙を突き立てられたら。
どんなに気丈な女でも。
悲鳴をあげてしまうだろう。
着飾った正装のブラウスを、真っ赤に染めながら。
ぽたぽたとしたたる血潮を、点々と床にばら撒きながら。
ケイタの母親は、それでも目の前に迫る災難を振り払おうとして。
細い腕をむなしく、あらぬかたに泳がせている。
男はすがりつくように、女の肩を抱きすくめていって。
うなじを噛み、わき腹を噛み、スカートのうえからお尻まで噛みついていって。
彼女の息子にそうしたように、身体のあちこちに、思い思いに牙をうずめ込んでゆく。
(略)
ときに、ご主人だけが損をしていますね。
息子さんはどなたかに、血を吸われ放題。奥さんは私に犯され放題・・・
ふふふ。
それこそが・・・とても愉しく、そそられるのですよ。
迎え入れたほうの男は、妻の手を取って客人の掌に重ねてやると、
ひっそりと、出勤していった。
ほんとうは今夜は夜勤などないのを。
妻も間男も、息子さえもが心得ていた。
―――同級生の家庭問題について (1月26日)
お母さんには、ちょっと変わった趣向があるんだ。
たしか未亡人だと、言っていたよね。
それならどこにも、迷惑のかかる話じゃないよね。
よーく見てなよ。
仲のよい女と男がどんなことをするのか、きみたちはまだ、見たことがないだろう・・・?
その晩母さんは、淑やかに着こなしたスーツ姿を、まる裸にされちゃって。
じゅうたんの上、転げまわるようにして。
女はどういうふうに、男のひとをもてなすのかを。
身をもって、沙紀とボクとに教えてくれた。
―――向かい合わせの妹 (1月26日)
村で歓迎されるのは、ちょっとは羞じらいも識っている女。
あのときつけた枯れ葉が、彼女の頭にまだついている。
ふと気づいたオレから、枯れ葉を受け取って。
彼女は初めて、顔赤らめた。
―――村で歓迎される女のタイプについて (1月20日)
とっても、不得要領に。
迫られるまま、ひとりにうなじを明け渡し、
ひとりにスカートを、たくし上げられて。
ちょっと救いを求めるように、ボクのほうに視線を投げたそのときに。
さいごのひとりが、肩を押されるように腰かけたハイソックスの脚に、ゆっくりと噛みついていった。
きゃあああっ。
村の風習に慣れない都会娘は、さいごに本当に、悲鳴をあげた。
きゅうっ。ごくごくっ。じゅるうっ・・・
汚い音が、清楚な制服姿におおいかぶさっていって。
部屋の外へと促されたボクは、それでも襲われていく彼女から、視線を離すことができなかった。
ようやく、放してもらえたとき。
少女は顔赤らめて。ボクによそよそしく頭を下げて。
ふたたび顔合わせた時。
少女の目もとは、失血に黒ずんでいた。
(中略)
痛かった?って。気遣うボクに。
だいじょうぶ。キモチよくなっちゃった。
彼女はちょっぴり照れくさそうに、肩を揺らせると。
お誘い、受けちゃった。
ユウヤくんを抜きにしてって。
いいよね・・・?
失血に黒ずんだ目もとを、かすかなピンク色がよぎっていった。
(中略)
すれ違いざま、だれかが夕べはご馳走さまって囁くと。
少女は別人のように、紅くなって。
べつのだれかがこら!って、そいつのことを突っついている。
今夜。
彼女の勉強部屋に侵入する順番も。
きっと・・・ボクの知らないところで決められているに違いなかった。
―――みんなで、分けて (1月20日)
なかなかいい舌触りだったよ。お兄さん。
タイツの舌触りのことなんか、聞かされたって。
どんなふうに応えれば、いいのだろう?
男はこれ見よがしにもういちど、妹の脚から抜き取った黒タイツに、舌を当ててゆく。
先週のは、ざらっぽかったがね。
そうだった。
あのとき妹は、まだ意識があって。
ごつごつしていて、ざらっぽいんだって。ひどいよねえ・・・って。
その晩履いていたタイツの感想に、むやみと口を尖らせていた。
妹さんが、気づいたら。伝えておいてくれよ。
今夜のやつは、いい味だった・・・って。
妹はきっと、「ひどい!ひどい!」って。
やっぱり顔を、しかめるだろう。
闇のなか。
大の字に伸びた、白い脛が。
ひどくなまめかしく、目に眩しかった。
―――いもうと ~脱がされた黒タイツ~ (1月19日)
古風なナイロンストッキングは、なよなよとしていて、優しげで。
切ないくらいに、頼りなくって。
オレの不作法なあしらいをうけて、くしゃくしゃになってねじれていったけれど。
娘らしい装いの主は。
そんなオレの仕打ちを、仕方なさそうに優しく見守るばかり。
いけない子ねぇ。
ほんとうに・・・いけない子。
今夜はひと晩、姉さんが相手をしてあげるから。
彼氏やだんなさんのところに、女のひとたちを帰してあげて頂戴ね。
―――透きとおる女(ひと) (1月19日)
初々しい脚もとを彩るぬらりとしたオブラートを、いともむぞうさに剥いでしまうと。
少女は初めて、口尖らせて。
「恥ずかしくって、歩けない」
黒の革靴の脚で、オレを蹴るまねをした。
蹴りにきた足を、ぐいと受け止めると。
オレは少女の身体にツタのように腕をからみつけていって。
―――歩けないのなら、お姫様抱っこしてやろうじゃないか。
もうだれもいなくなった、日暮れの道で。少女の肩と膝裏を抱きかかえていた。
―――お姫様抱っこの帰り道 (1月19日)
―――抜粋おわり―――
うーむ。
長すぎるような、短かすぎるような・・・
こうゆう趣向はかなり難しいことがわかりました。
どのくだりに萌えるかなど、聞かせてもらえると嬉しいです。^^
七日間で、16話。
2009年01月27日(Tue) 00:17:38
いえ、だからといってどうだというわけでもないのですが。(^^ゞ
今月はそれまで、11話しか描いていなかったんですね。
それも12日以降は、一週間のお休み。
下旬に入ってから、倍のペースになりました。
↓これ描いたのが、起爆剤になったみたいです。
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-1610.html
やっぱり柏木の持っている最強のカードは、「まりあのお部屋」。(^-^)
お袋・妹・嫁・義姉・・・
2009年01月26日(Mon) 20:37:20
もの心が、ついたころ。
評判の美人だったお袋は、村の長老にぞっこん惚れられて。
親父の留守中。長老は、毎日のように家にあがりこんでいた。
ふたりのしていることの意味を、まるで知らない年頃だったおれは。
それでもことのただならなさに、ドキドキ胸を弾ませてしまっていて。
ふすまの影から、お袋の
裸姿を覗いていた。
こら。そんなところを見るんじゃない。
つい夢中になって、親父が帰ってきたのに気づかずにいて。
そんなふうに、叱られた時も。
親父はどことなく、にやにやとして。
まして部屋のなかの二人を咎めることなど、頭にないようすだった。
なんのことはない。
親父もいっしょになって、覗いていたんだ・・・ということに。
初めて気づいたときには、おれははたちを過ぎていた。
親父は長老を、歓迎して。
振る舞われた酒に、すぐに酔っ払って、
赤い顔をしては、奥に引きこもって寝入ってしまう。
そのあいだ。
おれはお袋演じる濡れ場を、ポルノビデオよりもどきどきとして、覗きつづけていた。
仲のよい人間には、自分の妻を抱かせるのが最大のもてなしなのだと。
都会に出るまで、思い込んでいた。
都会に出るまえの晩。
村の外でも通ることと通らないこととを、教え込まれて。
それでもさいごに課せられたのは、妹への夜這いの手引きだった。
妹の婿になるやつに、両手を合わせて、せがまれて。
祝言のまえに、仲間うちでまわしたいと言われたのだ。
嫁になる女を、みんなでまわす。
それはやっぱり、婚家にとって最高のもてなしだったのだ。
なにも知らない妹を。
おれは、言葉巧みに呼び出して。
妹婿の、願うまま。
女学校の制服姿を、藁小屋のなかに引きずり込まれて。
さいしょに犯したのは、やっぱり村の長老だった。
お母さん似だね。かわいいね。って、おでこを舐めるばかりにあやしながら。
こと果てたあと。
おれより三つ年若な長老の長男坊が、やってきて。
自分の取り分を・・・と、せがまれた。
お袋はまだ娘の時分、長老に女にされて。
長男坊は、そのお袋あいてに筆おろしをすませていて。
こんどは長男坊が、うちのだれかの初穂を摘む番だった。
都会育ちの女房を
はじめて村に 連れていったのは。
挙式を控えた直前で。
親父はなぜか、渋い顔をして。
お袋はなにか、言いかけていた。
わかっているよ。アノことだろう?
許婚が席を外したときに、おれがそういうと。
親父はあからさまに、膝を乗り出して。
今夜にも・・・わたりをつけておくことだな。
嫁になる女の前から隠していたメモ書きには、
その晩彼女に夜這いをかける男衆の名前が、ずらりと並べられていた。
ひどい!ひどい!
ほんとうに初めてだったらしいかよ子は、
ネグリジェ一枚の身を揉みながら。
蒲団の裾を、紅く濡らしていった。
おれはわざとのように縛られて、部屋の隅っこに転がされたまんま、
母を相手に筆おろしをした長老の息子が、しきたりどおりに振る舞って。
都会育ちの令嬢から純潔を奪い取るのを、
手も足も出ないまま、そのじつゾクゾクしながら見届けていた。
もっと!もっと!
かよ子の叫びが、そんなふうに変わるのに。
その夜ひと晩で、じゅうぶんだった。
祝言は、たいそう盛り上がった。
親父は家の誉れだとか、抜かしておった。
引き出物は、花嫁の母親だった。
なん年も未亡人暮らしをして、女手ひとつで娘を育て上げた五十前の淑女は。
娘婿と同じ年かっこうの若い衆に身体を開かれて、
いままでの苦労の埋め合わせにと、この世の極楽を見せつけられていた。
嫁ぎ遅れていた花嫁の姉も、着飾ったスーツ姿を母親の隣にまろばされていて。
引き剥がれたブラウスからぷるんと覗く、熟しかかった果実に群がる獣どもに、
われ知らず、身体を開いていって。
母親とふたり、装った。
気品に満ちた衣装を、台無しにされて。
色とりどりのストッキングを、引き裂かれて。
かなりエッチなレエスのついたスリップを、これまたとりどりに、さらけ出していた。
花嫁の姉は、進みかけていた縁談を、断って。
祝言のおわったつぎの日。
長老の次男坊の勉強部屋に、スーツ姿を忍び込ませるようになっていた。
いま、こうしてペンをとっていても。
階上の部屋では。
奥ゆかしい和式の礼装に身なりを整えたお袋が。
親父のことを、そっちのけにして、
昼日なかから家にあげた長老に、乱れた和装のまま、髪の毛をほつれさせていて。
もう肌寒くなった、庭先では。
真っ赤なスカート一枚に剥かれた女房が。
あらわになった白い肌を、薄闇に透かせながら。
長老の長男坊の、できのわるい悪童に、串刺しにされている。
悪童の連れ歩いている取り巻きも、いつものようにお相伴に与かっていて。
今夜の女房は、そいつらを六人も相手していた。
縁談を断った義理の姉は。
それでもあとを追いかけてきた縁談相手と、結婚をした。
初夜の床が輪姦の場になることを承服した姉婿は、大人物だったにちがいない。
お袋や嫁や娘がよその男どもを慰めているという息子や夫や父親たちは。
ちゃんと報酬をうける権利を、与えられているのだが。
うちではだれもが、それを行使しようともせずに。
ただひたすら、かがみ込んで。覗きつづけて。
最愛のものが溺れる有様に、ひたすら昂り耽っている。
ふすまごし揺れ動く、真っ赤なスカートが。
淫らな血を透けさせている白い太ももを。
ひどくあでやかに、引き立てていた。
同級生の家庭問題について
2009年01月26日(Mon) 18:31:00
小父さん、来てる?
夜の公園のなか、ひときわ闇の濃い暗がりで、中腰になって。
タツヤは声をひそめて、問いかけた。
がさ・・・
彼方で、かすかな気配がした。
ああ。やっぱり来ていたんだね。
もう、ふた晩もご無沙汰してたから・・・喉渇いちゃってるよね?
ごめんね。
ほら。小父さんが前に気に入ってた、ねずみ色のハイソックス。
履いてきてあげんたよ。
さぁ、遠慮なく・・・
噛・ん・で。
ベンチに座って、むぞうさに脚を投げだすと。
黒い影はそろそろとにじり寄って、それでもすぐには近づいてこない。
あっ、やだなぁ。この子のことかい?
だいじょうぶ。ボクの親友だから。
吸血鬼を見てみたいっていうから、連れて来てやったんだよ。
ケイタっていうんだ。よろしくね。
タツヤがケイタを促すと、未知の少年は礼儀正しく会釈をしかけてきた。
どうやら、しつけのいきとどいたうちの子のようだった。
男は初めて、手を差し伸べて。
タツヤの足首を、ギュッと握りしめると。
おもむろに、唇を近寄せてきた。
公園の街灯が、かすかに届いていて。
あざやかな太めのリブが、しなやかな筋肉に沿ったカーブを描いているようすを、ツヤツヤと浮かび上がらせている。
くちゅっ。
男の唇が、ハイソックスのゴムのすぐ下のあたり、いちばん肉づきのよいあたりに吸いつくと。
タツヤは身体をヒクッとこわばらせて、黙り込んでしまっていた。
ちゅう~っ。
ずり落ちたグレーのハイソックスは、赤黒い血のりをべっとりと光らせていた。
まだ、吸う・・・?
上目遣いになっていたのは、ベンチからすべり落ちてしまったから。
そのまま組み伏せられていった少年は。
無地のブルーのTシャツを、赤黒い不規則な水玉もようを散らされてゆく。
はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・
さすがに息が、荒くなっている。
やはり三日間もほうっておいては、いけなかったのだ。
ごめんよ。なかなか来れなくて。
タツヤはしんそこすまなさそうに男にわびると、
男はいたわるように少年を抱きかかえて、その場から立ち上がるのに手を貸してやっていた。
沙紀ちゃんは、カゼ引いちゃって。
月曜日に、代わりに母さんがきただろう?
でも、がんばり過ぎちゃったみたい。
ボクもどうしても、抜けられなくって。
ついふた晩も、あいちゃった。
ケイタくんは、都会から越してきたんだけど。ちょっと変わっているんだ。
村のひとでもないのに、吸血鬼に関心があるんだってさ。
どう?ちょっとだけでも・・・吸われてみない?
おずおずとした尻ごみは、すぐに封じられてしまっていた。
ふらつく足取りに似合わず、タツヤは素早くケイタの後ろに回り込んでいて。
軽く両肩に、手を添えただけだったのに。
ケイタは拍子抜けするくらいあっさりと、抵抗を放棄してしまっている。
だいじょうぶかな?
ママにばれちゃうから・・・ハイソックスの上からはかんべんしてよね。
初めての吸血に戸惑いぎみの声に、男は案外と素直に応じて、
半ズボンの太ももの、目だたない内側のほうへと、牙を埋め込んでゆく。
痛っ・・・
かすかに声をあげ、少年が顔をしかめると。
ちゅっ・・・
ひと呼吸おくれて、かすかにはぜる吸血の音が洩れてきた。
いつ聴いても・・・いい音だよね。
同級生が血を吸われる音にうっとり耳を傾ける少年は、すでにすっかり吸血鬼の虜になってしまっている。
いいよ、いいよ・・・って、いいながら。
けっきょく家まで、送ってもらってしまった。
ほとんど足腰立たなかったのは。
きっと・・・失血よりもショックのほうが大きかったのだろう。
無理もないよ。さいしょはだれだって、そうなんだから。
タツヤがわきから、言葉を添えてくれていた。
まだ・・・出会ってひと月にしかならないのに。
いい友だちに、なれそうだ。
そんな予感が、胸を浸した。
なにしろ・・・
血を吸われるのが、愉しい。
そんな秘密を、共有してしまったのだから。
夕暮れ刻の教室のなか。
ふたりきりになって、襲われて。
おおいかぶさってくるあからさまな食欲に、辟易してしまって。
思わず・・・悩乱してしまったのは。
つい、数か月まえのことだった。
いまのこいつが、おんなじ気分になっていたからって。
だれも、笑えやしないよね?
上目遣いでかえり見る小父さんは、ふふふ…と笑み返してくるばかりだった。
初めて訪れたケイタの家は、夕食どきだというのに、真っ暗だった。
きょうはママは、留守なんだ。
こんなに遅くまで、お仕事なのかい?
うぅん。
口ごもる雰囲気が、ちょっと不自然だった。
父さんは今夜は、夜勤だっていっていたよね?
う…ウン。
なま返事をくり返して、口ごもっていたけれど。
ケイタはやっと、口火を切った。
ママは、浮気しに出かけているんだよ。
相手は父親の、同僚だといっていた。
父親も薄々、気づいていながらも。
どうやら黙認しているらしかった。
それは・・・困ったものだね。
吸血鬼の小父さんは、しんそこ困ったように小首をかしげる。
なんとか役に立ってやりたい。
そういう殊勝な気分ももちろん、持ち合わせてはいたのだが。
それ以上に・・・ケイタの母親目あてでここまできたのは、タツヤの目にはみえみえだった。
ねぇ。
ケイタが声を、投げてくる。
まだ、部屋のなかは、真っ暗だった。
するすると、ずり落ちかけたハイソックスを引き延ばす気配がすると。
小父さん、噛んでもいいよ。
畳のうえに、自分からうつ伏せになってゆく。
さっきくらくらしたのは、失血のせいじゃない。
そのまえに、タツヤが襲われているんだし。
吸血されるのは初めてだというケイタには、じゅうぶん手かげんしているはずだった。
まだまだボクの血、吸わせてあげられるよね?
今夜はママも、戻らないし。
かまわないんだよ。好き勝手にやっちゃって。
暗闇のなか。
小父さんの大好きな組んずほぐれつが、始まった。
無言のまま、熱っぽく―――。
はぁ。はぁ。はぁ・・・
灯りのついたリビングは、置時計が真夜中過ぎを告げていた。
そろそろ寝ないと・・・と促す吸血鬼に。
あしたはお休みだから・・・と、あべこべにさえぎって。
つぎはまだ噛んでないほうの太ももだね。
わき腹なんかも、愉しいかな?
こんどは首筋ね。
思い思いに、姿勢を変えて。
失血のほどなど、頭にないかのように。
あちらこちら、食いつかせて。
来ているTシャツも、半ズボンも、ハイソックスにも。
赤黒い血潮のシミを、広げていって。
かえってそれを小気味よさげに、時おり姿見のまえに立っては、薄笑いしながら眺めていた。
ママを、懲らしめてくれる・・・?
都会育ちの少年の誘惑に、男は現金なくらい嬉しげに首を縦に振っている。
あああーっ!
首根っこをつかまえられて、かぶりと牙を突き立てられたら。
どんなに気丈な女でも。
悲鳴をあげてしまうだろう。
着飾った正装のブラウスを、真っ赤に染めながら。
ぽたぽたとしたたる血潮を、点々と床にばら撒きながら。
ケイタの母親は、それでも目の前に迫る災難を振り払おうとして。
細い腕をむなしく、あらぬかたに泳がせている。
男はすがりつくように、女の肩を抱きすくめていって。
うなじを噛み、わき腹を噛み、スカートのうえからお尻まで噛みついていって。
彼女の息子にそうしたように、身体のあちこちに、思い思いに牙をうずめ込んでゆく。
どうかね?お洒落な柄だろう?
ブラウスに散らされたバラ色のほとびにも。
うふふふふっ。今夜は罰として、その破れたストッキングをひと晩じゅう穿いていなさい。
ちりちりに噛み剥がれたねずみ色のストッキングにも。
女は姿見のまえに立って、つま先まで見おろして。
いとも愉しげに、へらへらと笑いこけている。
こんどはあんたの浮気相手の奥さんを、ここに呼び寄せてもらおうか?
なぁに、修羅場になったりはせんはずだ。
わしがたぁんと、手なずけてしまおうほどに。
いまのあんたと、おなじやり口でな・・・
これから夜勤ですか?ご苦労さまです。
いえいえ。今夜は家内を、よろしくです。
訪れたのは、浮気相手。
迎え入れたのは、ケイタの父。
お互いくすぐったそうに、気まり悪そうに顔見つめあって。
それでもひとりの女を共有することに、一種のくすぐったさを実感し始めている。
お宅の奥さまは、今夜のご予定は?
あいつ、血を吸われたくって、うずうずしていやがるんですよ。
さいしょに教え込んでくれたあのお人いがいにも。
大勢、妻に執心の男性がおりましてね。
それは・・・それは。
ときに、ご主人だけが損をしていますね。
息子さんはどなたかに、血を吸われ放題。奥さんは私に犯され放題・・・
ふふふ。
それこそが・・・とても愉しく、そそられるのですよ。
迎え入れたほうの男は、妻の手を取って客人の掌に重ねてやると、
ひっそりと、出勤していった。
ほんとうは今夜は夜勤などないのを。
妻も間男も、息子さえもが心得ていた。
あとがき
引きずり込んでしまった息子さんの家庭問題まで、めでたく解決?
本当かな・・・
向かい合わせの妹
2009年01月26日(Mon) 17:47:24
ひざ下までぴちっと引き伸ばされた靴下は、ストッキングのように薄くって。
さらさらとした触感に、なぜか胸がドキドキとする。
向かい合わせの妹は、学校帰りの制服姿で・・・椅子に縛りつけられていた。
うつむく視線が舐める足許は、清楚に透きとおった黒のストッキング。
彼女のストッキングと、ボクのハイソックスと。
どちらのほうが、薄いのだろう?―――
いまの場合、そんなことはどうでもいいはずなのに。なぜか想いにふけってしまう。
それもそのはず。
ボクはとっくの昔に、たぶらかされてしまっていて。
まだ傷口の乾ききっていない首筋の痕は。
ひっそりとしみ込んでくる疼きを、いまでもじんじんと伝えてくる。
いまから兄さんが、手本を見せるからね。
沙紀ちゃんはじいっとしていれば、それでいいんだからね。
なぜか声だけは、もの慣れた口調を帯びて。
ボクの口許から、よどみなく流れ出てくる。
そっと差し伸べた足許に。
小父さんはぐうっ・・・と、かがみ込んできて。
薄い靴下ごし、あてがわれた唇は。
ぞっとするほど、冷たかった。
ゾクゾクと昂っている、ふくらはぎの筋肉に。
尖った異物を、圧しつけられて。ぐいいっ・・・と、食い入らされて。
薄い靴下は他愛もなく、ぱりぱりとかすかな音をたてて、はじけてゆく。
ボクはもう、薄ぼんやりとなっちゃって。
足許から洩れてくる吸血の音に、聞き惚れている。
お兄様、怖いッ!
口をふさごうとした両手は、自由を喪っていて。
妹は羞じらいのまま、激しくかぶりを振っている。
小父さんは彼女の首筋に、食いつきたがったけれど。
初めからそれは、かわいそうだよ・・・
ボクの言うままに、それはあきらめて。
おもむろにそろそろと、足許ににじり寄って。足首をつかまえて。
黒のストッキングのふくらはぎに、唇をゆっくりと近寄せてゆく。
ちょうど・・・ボクの足許に、そうしたように。
くちゅっ。
よだれのはぜるかすかな音が、ボクをどれだけ昂らせたことだろう。
さいしょはたんに、唇を吸いつけただけだった。
いったん放して。
唾液を光らせた薄手のナイロン生地の表面に、人のわるそうな笑みを浮かべて。
もういちど、唇を吸いつけたとき。
きゃっ。
妹のちいさな叫びが、ボクの胸をずきりと衝いた。
ヒルのように吸いついた唇の下。
薄いストッキングが、ちりちりとはじけていった。
ちゅうちゅう・・・ちゅうちゅう・・・
きゅうきゅう・・・きゅうきゅう・・・
ごくっ、ごくっ・・・ごくり。
ナマナマしい吸血の音は。
まるで甘美な拷問のように、ボクの胸を締めつける。
いちどは引きつらせた頬を、妹はもう弛めきっていて。
黒のストッキングの足許にしつように吸いつけられてくる唇に、わざとふくらはぎをおしあてていって。
女学校の制服の一部を、惜しげもなく。
男の不埒な愉しみに、ゆだねている。
床に落とした視線が、にわかに輝きを帯びていて。
思いがけない囁きが、ボクの胸をもういちど、ずきん!と昂らせる。
―――母さんのストッキングも、あたしのみたいに破ってもらおうよ。
ちょうどそのときだった。
いつの間にか戻ってきた母さんが、開け放ったドアの向こう側、スーツ姿をこわばらせたのは。
あっけない鬼ごっこだった。
勝つに決まっている力比べだった。
あいつはボクたちの目の前で、母さんを床に組み敷いていって。
必死に抗う両手首を、ゆうゆうと抑えつけると。
わざとのように、鎌首を振りかざして、
高い位置から牙をひらめかせて、
うなじのつけ根を、ずぶりと冒した。
びゅうっ。
紅い体液が、勢いよくほとび散る。
ボクたちの足許にまで、かかるほど。
妹とボクとは、互いに顔見合わせて。なぜかほほ笑みあっていて。
ああっ、ああっ、ああっ・・・
悲痛な呻きをあげながら生き血を吸い取られてゆく母さんのことを、チラチラと横目で盗み見る。
おおいかぶさられた上半身は、男の肩越しにさえぎられていて。
ただ、丈の短いタイトスカートから覗く太ももが、じたばたと往生ぎわ悪く、床を蹴りつづけていた。
薄っすらとした肌色のナイロンが、うわぐすりのように。
部屋に灯された薄明かりに、てかてかとした光沢をよぎらせていた。
案外、カッコイイ脚だよね・・・
光沢に縁どりされた、肉づきのよい太ももに。
思わず渇きに似た衝動を覚えたのは。
たぶんボクも・・・血を吸われ過ぎちゃったからだろう。
仲良しの吸血鬼さんなんだ。
薄い靴下が、大好きなんだ。ヘンだよね。
たまたま学校で薄いハイソックスを履いていたら、狙われちゃって。
それから、仲良くなったんだ。
それからはいつも、薄い靴下を履いて。脚から吸わせてあげていたんだけど。
ボクの血だけじゃ、足りなくなっちゃって。
沙紀ちゃんのこと、紹介してあげたんだ。
いつも学校行く時、薄い黒のストッキング履いているからね。
そういえば母さんも、よそ行きのときには肌色のストッキングだったよね?
交替で、吸わせてあげようよ。ね・・・?
ボクのとほうもない言い草に、抗弁するいとまもなく。
小父さんは言ったものだった。
お母さんには、ちょっと変わった趣向があるんだ。
たしか未亡人だと、言っていたよね。
それならどこにも、迷惑のかかる話じゃないよね。
よーく見てなよ。
仲のよい女と男がどんなことをするのか、きみたちはまだ、見たことがないだろう・・・?
その晩母さんは、淑やかに着こなしたスーツ姿を、まる裸にされちゃって。
じゅうたんの上、転げまわるようにして。
女はどういうふうに、男のひとをもてなすのかを。
身をもって、沙紀とボクとに教えてくれた。
男子の園
2009年01月26日(Mon) 06:38:53
~ご注意~
このシリーズは、同性愛ぽい表現があります。
理解できないかたは、閲覧しないことをおすすめします。
教室はいつになく、がやがやとざわついていた。
濃紺のジャケットに、白のワイシャツ。紺一色のネクタイ。
半ズボンの足許は、やはり濃紺のハイソックス。
きりっとした輪郭のふくらはぎが揺らぐように行き交っているようすが、どこかユニセックスな妖しささえ帯びていた。
斜めに照らす陽のなかで、ハイソックスの太めのリブを浮き彫りになっている。
男子生徒ばかりの教室のなか。
それとほぼ同数の未知の訪客たちは、まるで品定めでもするように。
手当たり次第、生徒たちに声をかけ、言葉を交わし、またべつのあいてを求めていく。
タツヤはそのなかでも、ひときわ長身で目だった生徒。
肩にかけられた手に、ふと振り返ると。
じぶんよりもさらに長身の初老の紳士が、にこやかにほほ笑んでいる。
部屋をかえませんか?
男のいうままに、隣の教室に足を向けると。
そこはさっきまでの喧噪がうそのように、ひっそりとした静寂が、カーテンのように降りていた。
もう・・・日が暮れる。
寄宿生ばかりのこの学校で。
それはたいした意味をもっているわけではなかったけれど。
なにかを早く切りあげたい・・・そういう気分になるのは、おなじことだった。
手早く済まそうな・・・男はそんなふうに呟いたような気がする。
肩先で呟いたはずのその唇が、そのままさし寄せられてきて。
タツヤの首筋に、ぬるりと這った。
同性どうしの関係は、男子ばかりのこの学校で、決して珍しいことではない。
―――だいじなお客様なので、そそうのないように。
そう告げる担任の重々しい注文も、どことなくそんなセクシャルな予感を漂わせてはいた。
両肩をしっかりとつかまれたまま、
ぐぐっ・・・
食い入ってきた牙に、ああやっぱり・・・そう思わずにはいられなかった。
吸血されるのは、初めてだった。
かれの学年のなかでは、おくてのほうだった。
周りの生徒の半分ちかくは、すでになんらかの形で、体験を済ませていた。
だから・・・自分の身に起きたことを、わりあい冷静に受け止めることができた。
けれど・・・ぶつけられてくる相手の食欲は、並大抵ではなさそうで。
辟易せざるを得なかった。
くらっ・・・と眩暈が、おおいかぶさってきた。
やめて・・・やめて・・・
うわ言のような囁きを、追いかけるようにして。
尻もちをついた床のうえ。
二個の人影は這いずりまわりながら、悩ましい鬼ごっこをつづけてゆく。
むき出しの太ももの周りをさ迷う牙は。
時おりかするようにあてがわれ、そのたびに生硬な皮膚がなま温かい唾液をよぎらせた。
あっ、ダメだよ。ダメだってば・・・
じわんじわんとおし寄せる眩暈と、闘いながら。
タツヤはけんめいに、かぶりを振った。
来て御覧。
老紳士は青年の肩に身を添わせるようにして、抱きかかえて。
さっきの教室に、戻ってゆく。
陽の落ちたあとの教室は。
二人きりの教室も。
おおぜいの教室も。
いちめんの闇に、包まれている。
どうかね・・・?
したり顔の呟きを、聞くまでもなかった。
だれひとり、ふつうに立っているものはいなかった。
あるものはさっきまでのタツヤとおなじように、組み伏せられて覆いかぶさられていたし、
べつのやつはうつ伏せになったまま、ハイソックスを履いたままのふくらはぎを咬まれているらしい。
たったひとり、黒板に向かい合わせに立っているやつも。
黒板に両手を突いて、両足を突っ張るようにして。
ずり降ろされた半ズボンを踏みつけながら。
不自然な結合に、随喜の呻きを洩らしていた。
さっきまでのざわつきは、熱っぽく沈黙して。
時おり洩れる、ひくく押し殺した悩ましいだけが。
闇にからみくようにして、漂っている。
ふ、ふ、ふ・・・
老紳士はタツヤの肩に手を置いて。
つづきを・・・愉しむとしようか?
背後にしゃがみ込むと、やおら掌を延べてきて。
濃紺のハイソックスのふくらはぎを、たんねんに撫ではじめている。
ストッキング地の薄いナイロン生地ごしに、じわーんと伝わってくる掌の感触に。
股間にあらぬ昂りを覚えた青年は、ちょっと羞じらうようにもじもじとして。
さっきの教室に、戻ろうよ・・・
語尾がちょっぴり、震えている。
応えるようにあてがわれてくる唇は。
しなやかな筋肉におおわれたふくらはぎを、しつようになぞりはじめている。
こんど、家に招んであげようか?
未亡人している母さんと、中学にあがったばかりの妹がいるんだ・・・
闇に響く青年の声は、いっそうの震えを帯びてゆく。
うーむ。
2009年01月26日(Mon) 06:09:46
いちばん描きたいものが、なぜかなかなか描けません。
スリットの深く入った、シフォンのワンピース・・・
近親婚の村
2009年01月23日(Fri) 06:41:35
1
中腰になって。
向かい合わせの壁に、両手をついて。
お尻をキュッと、突きだして。
長い髪の毛を、ゆらゆらさせながら。
腰までたくしあげられた制服のスカートの奥。
突っ込まれて。
口許からちょっぴり、よだれを垂らして。
沙夜は、うめいていた。
「お・・・・・・兄ぃ・・・ちゃんっ!」
遠くから、声が聞こえる。
シュンイチぃ!沙夜ぁ!ご飯よぉ・・・
「あ、はーいっ!」
沙夜はあわてて、笑みをつくって。
いつもの無邪気な声で、階下からする母親の声に応えている。
やや間を置いて。
妹の腰から手を離したシュンイチも、なま返事をかえしていた。
引き抜いたばかりの、まだ怒張の去っていない一物を、もどかしげに撫でながら。
あとは、今夜な。
兄は妹に囁いて。
妹はなおもキスを迫る兄貴の腕を、かいくぐってゆく。
ごちそうさまぁ。
ちゃぶ台越し。
沙夜ののどかな声が響くと。
素知らぬ顔で片づけに入る母親の背中を盗み見て、
シュンイチもひそかに、くり返す。
ごちそうさまぁ・・・。あと、いただきまぁす。
こんどは沙夜が、自分の勉強部屋に兄を招く番だった。
やっぱ、制服がいいんでしょ~?
重たい濃紺のプリーツスカートのすそを引き上げて、ひらひらさせながら。
沙夜は無邪気に、黒ストッキングの太ももをさらけ出す。
2
妹を・・・犯してくれないか?
くぐもった声に同意の頷きを返すのは。
シュンイチの悪友三人組。
いいのか?ほんとうに姦っちゃっても。
ごくりと呑み込む唾が、ひどく生々しく、シュンイチの耳にも響いた。
ああ・・・
妹の輪姦を願う彼の声も、震えて上ずっていた。
きゃあっ。きゃあっ。
草むらのなか。
泣きじゃくる制服姿が、いつにもましていとおしかった。
お、おいっ、壊すなよっ。大事な妹なんだからな。
兄貴は草むらの向こう、丈の高い草の穂と闇を透かすように、中腰になって。
沙夜に乗っかって、あまりにもノッちゃっている悪友のひとりに。
耐えかねた声を、投げているけれど。
―――今夜は、お祭り。
そう割り切った悪童どもは、いまさら悪い兄貴の言い草に耳を貸そうなんて思っていない。
ふーうー。くたびれた。
ご馳走様ぁ。
妙にすっきりとした顔つきをして、悪童どもが草むらをかき分けて。
体液だらけの一物を重たくぶら下げたままの下半身をぶら下げたまま、ふたたび姿をあらわすと。
あとはお兄ちゃん、うまくやってね♪
童顔をにっこりと弛めたまま。
いつものようにバイバイと、子供っぽく別れの挨拶を投げていった。
もう~っ。
ぶらぶらさせないでよっ。
帰り道。
引き裂かれた黒のストッキングをぶら下げて、前を歩いてゆく兄貴に、
沙夜は口を尖らせていたけれど。
あとを追いかける足どりは、初めて兄貴に迫られた夜みたいに、
ちょっぴり、がにまたになっていた。
何くわぬ顔をして、家に戻ると。
鏡に向き合って、長い髪の毛を掻きのけながら。
あーあっ。くったびれたっ♪
いつかどこかでそんな言葉を聞いたような気がして、
シュンイチはあっけに取られて、身づくろいする妹の後ろ姿を見守っている。
3
わかっているんだろうな?
親父の怖い怒り顔に。
シュンイチはさすがに、視線を手前の畳に落としていた。
わかっているよ・・・
くぐもった声は、それでも。
両親の許容を察していて。
隣に正座している妹の手を、ギュッと握りしめていた。
好きにしなさい。
親父が立ち上がると。
こんどはお袋が、妹のほうに唇を寄せて。
父さんといっしょに、どっか出かけてくるからね。
両親の帰らないひと晩―――
がらんとした家のなか、兄と妹はふたりだけの夜を迎えていた。
4
おばんです~。
神妙そうな、くすぐったそうな訪(おとな)いの声が。
今夜も締めきった雨戸ごし、漏れてくる。
はぁい。
腰をあげようとするとする沙夜を、シュンイチは腕をサッとあげて制すると。
―――言っただろ?こういうときは、女のほうから返事しちゃ駄目なんだって。
まるで耳元に口づけするほどに近寄せた唇が、小声で叱正をとばすのを。
タートルネックのセーターに、千鳥格子のプリーツスカートのうえ、エプロンを着けたままの服装は。
すっかり、初々しい若妻になり切っていた。
あがれよ。
ぞんざいに投げられたシュンイチの声に。
悪りぃな。
あがるぜ。
ふたり、三人・・・と、いっぺんにあがりこもうとするのを。
順番、順番。
ことさらしかっつめらしい声色で、若い夫は悪友たちを、
植え込みの陰、並んでしゃがみ込ませていった。
妹と結ばれる男は、生涯いっしょに暮らすことを許されるけれど。
週に一夜は、客を迎え入れて。
子種をそそぎ込んでもらう。
そうすれば、近すぎる血を持った育たない子どもが生まれてくることは、ない―――。
公認で情事に耽る妻を見守る夫のいくたりかは。
近すぎる少女に手を出した報いを、ほろ苦く笑みながら、受け入れていくという。
絶好調?^^;
2009年01月21日(Wed) 07:25:57
えっ?このごろ絶好調じゃ、ないですかって?
ストレスですよ。す・と・れ・す・・・。
いぢって愉しむ。
2009年01月21日(Wed) 07:10:40
女房のいないときにね。
あいつを家に招(よ)んでやったんですよ。
そしたらね。
どこから見つけ出してきたのか、黒のストッキングをぶら下げて持ってきて。
これ、もらってもいいだろ?
って、言いやがるんです。
どうするんだよ?そんなもの。って。
もちろん、訊きましたよ。
そうしたらやっこさん、ヌケヌケとね。
いぢって愉しむんだ。
って、囁きやがるんです。
私のほうも、面白がってね。
ふふん・・・どんなふうに?って。
やっぱり訊いちまいましたよ。
そしたらね。
舐めてみたり。
巻きつけてみたり。
しごいてみたり。
脚に通してみたり。
そのうえから、さすってみたり・・・
あとからあとから、きりがないこと、抜かしやがるんです。
つい・・・そのね。ゾクゾクしちゃって。
絶対内緒だぞって。くれてやってしまったんですヨ。
いま?
ええ、本人が。
本人って、もちろんストッキングの持ち主のことですヨ。
自分で穿いて、穿いたうえから、指でなぞらせてやってます。
こういうイタズラは、もっと愉しいなぁ。
ヌケヌケと、そんなこと呟かれて。
ぞくーって、きちゃいました・・・
あいつ、女房のやつから、何足せしめたんだろう?
たまーに、わたしのいないときに逢ったりしているようなんで。
わたし?
どうにも、たまらなくなっちゃいまして・・・ね。
あいつが来ると、二人きりにしてやって。
その代りに、こんなふうに。
覗いて愉しんじゃって・・・いるんですヨ。
いぢって愉しむやつと。
覗いて愉しむやつと。
仲が良くっていいわね・・・って。
女房のやつ、照れ笑いしながら、拗ねるんですヨ。
あとがき その1
人目に触れるようなところに、奥さんの下着をさらしてはまずいです。
お部屋の整理整頓に、気を配りましょう。
ただし、ヘンな趣味があって相手の男性をそそるときは、そのかぎりではありません。
あとがき その2
狙った奥さんのダンナと仲良くやりたいときは、彼の趣味に合わせてみて。
たとえば女もののパンストを一足、ぶら下げていくといいでしょう。
安い投資です。
・・・どちらが、真相?^^;
わたしだけが、女。
2009年01月21日(Wed) 06:55:34
せめてここにいるときだけは、わたしだけが女だと思って・・・
ひたと見つめた瞳に、力がいっそうこめられていた。
オレが、吸血鬼で。かの女が、ヒロインで。
一対一で、密室の中。それは愉しい追いかけっこをして。
壁ぎわに追い詰めたそのときに。
かの女がとっさに、はなった言葉。
女はこんなときでさえ、女なのか・・・。
オレはゆっくりと女の二の腕を抱きすくめて。
血を吸うまえに、口づけをした。
あとがき
くろすさんのトコの、「濡れた友禅」てね。力作なんですヨ。^^
たいとる見ただけで、萌えますでしょ?^^
私は行為そのものの描写を得意としないので・・・
こちらのほうがはるかに、正統派でもあるんですヨ。
そのなかにね。
「少しだけでもいいから、私のことを愛して欲しいの」
って、セリフがあるんですヨ。
泣かせますねぇ。
http://cross1007.blog79.fc2.com/blog-entry-46.html
ウチに出てくる女に、なにか言わせようと思ったら。
いきなりこんなコト、口走ったんです。^^;
かわいいですか?・・・怖い、ですか?
(笑)
・・・。
なんだかあとがきのほうが、長かったなぁ。 (-_-;)
村で歓迎される女のタイプについて
2009年01月20日(Tue) 07:57:32
村で歓迎されるのは、体格のよい女。
うら若い血液を、たっぷり吸い取ることができるから。
ピンクのスーツに、グレーのストッキング。
むっちり肉のついた太ももに、オレの悪友どもは無言の歓声を放っていた。
村で歓迎されるのは、良家の生まれの上品な女。
両親といっしょにやってきた彼女。
父親はその晩、村長の屋敷で酔いつぶされて、洗脳されて。
上品に着飾った自分の妻が、恥じらいながら受け容れてしまった凌辱を、
男の視線で、愉しんでしまって。
第二幕が、輪姦にエスカレートしちゃったのは。
ダンナ自らが、希望した結果だった。
村で歓迎されるのは、すこし潔癖で、気位の高い女。
あの奥さんの娘なら、間違いない。
先に抱かせてくれよな?
ごま塩頭の村長の、好色そうな赤ら顔に、
オレは一も二もなく、頷いていて。
お手柔らかに、願いますよ。
なんて・・・利いた風なことまで、言っちゃって。
座敷のなか、目の前に転がされたのは。
ロープをぐるぐる巻きにされたスーツ姿。
真っ赤なスーツに、いつものグレーのストッキングが、
むっちり肉づきの良いふくらはぎを、いつもよりいっそうなまめかしく染めていた。
吸いつけられた唇の下。
薄いナイロンがブチブチと音をたてて引き裂かれてゆくのを。
オレはつい、どきどきしながら、見守っていた。
彼女はキュウっと、眉逆立てて。
足許に擦りつけられてくるごま塩頭の不作法を、切れ切れな声でとがめながら。
自分の言葉によけいにそそられちゃった村長の手を、
ブラウスの胸から取りのけることができなくなっていって。
とうとう・・・自分から、ブラジャーの下に導いてしまっていた。
村で歓迎されるのは、鷹揚であけっぴろげな女。
あくる朝。
夕べはどうも・・・って。
村の若者のなん人もが、すれ違いざま彼女に声かけてゆく。
そんな彼らに、彼女はぞんざいなくらいあけっぴろげに、声返していくのだが。
だれもが夕べ、彼女のことをモノにした連中だった。
村長に純潔を奪われた女は、そのあと村の若者たちにあてがわれて。
投げ込まれた草むらのなか、分け取りにされてしまうのだった。
がさがさ穂先を揺らせながら、丈のみじかい真っ赤なタイトスカートから覗いた太ももを、じたばたさせて。
ひざ下までずり落ちたグレーのストッキングを、時おり引っ張り上げる指先だけが、見えるのだった。
もう~っ。やめてくださいよぉ。
こと果てたあとになってまで。
足許にひらひらさせたストッキングを裂き取ろうとしてくる若者に。
彼女は困り果てたように、声あげたけれど。
オレに片腕をつかまれたままの恰好で、
とうとう見る影もなく、ストッキングを引き裂かれてしまっていた。
もうっ。やらしいっ!って。愉しげに声あげながら。
村で歓迎されるのは、ちょっとは羞じらいも識っている女。
あのときつけた枯れ葉が、彼女の頭にまだついている。
ふと気づいたオレから、枯れ葉を受け取って。
彼女は初めて、顔赤らめた。
みんなで、分けて。
2009年01月20日(Tue) 07:32:41
この子が、夕べ婚約した美咲さん。よろしくね。
そこまでは、ふつうのあいさつだった。
美咲さんは、都会ふうの制服姿。
空色のブレザーに、真っ白なブラウス。赤いリボン。
グレーの千鳥格子のスカートの下は、発育の良いふくらはぎ。
ひざ小僧のすぐ下まで引き伸ばして履いた、真っ白なハイソックスが。ぴっちりと覆っている。
美咲さんがきちんとお辞儀をすると。
左右に分かれた束ねた黒髪の房を、肩先でぴんとはずませていた。
彼女をまえに、幼馴染み三人は。
少女の初々しさに、気押されるように。
いかにももの慣れない田舎少年まる出しにして。
ぶきっちょにばらばらな挨拶を返している。
そのあとボクは、さいごにひと言つけくわえる。
みんなで、分けて。
ボクのひと言に、みんな生き返ったように顔をあげて。
黙って少女に、翳を重ね合わせてゆく。
こんどは彼女が、おどおどとする番だった。
とっても、不得要領に。
迫られるまま、ひとりにうなじを明け渡し、
ひとりにスカートを、たくし上げられて。
ちょっと救いを求めるように、ボクのほうに視線を投げたそのときに。
さいごのひとりが、肩を押されるように腰かけたハイソックスの脚に、ゆっくりと噛みついていった。
きゃあああっ。
村の風習に慣れない都会娘は、さいごに本当に、悲鳴をあげた。
きゅうっ。ごくごくっ。じゅるうっ・・・
汚い音が、清楚な制服姿におおいかぶさっていって。
部屋の外へと促されたボクは、それでも襲われていく彼女から、視線を離すことができなかった。
ようやく、放してもらえたとき。
少女は顔赤らめて。ボクによそよそしく頭を下げて。
ふたたび顔合わせた時。
少女の目もとは、失血に黒ずんでいた。
ボクに促されるままに。
ふつつかでした・・・って、お辞儀をすると。
少年たちは、またもとの朴訥な田舎の子どもにかえっていって。
大事に・・・な。
だれかが申し訳なさそうに、ひと声返すと。
だれもが無言のねぎらいを、重ね合わせてきた。
ボクは少女に、優しくキスをして。
彼女は甘えるように、唇と唇とを、からめ合わせてきて。
少しして、身を放すと。
ボクはそれでも、少女の身体を点検してしまっている。
ジャケットの下。
ブラウスの肩先は、赤黒く染まっていて。
ハイソックスは両足とも、ふくらはぎのあたりをおなじ色のシミをべっとりとさせていた。
ためらいながら引きあげたスカートのなか。
太ももには三か所も、くっきりとした噛み痕が。
等間隔の左右の牙を埋められたようすを、刻印されるように白い肌に浮き上がらせていた。
さいごにつけられたひとつは、女の子のだいじな処から、数センチと離れていなかった。
痛かった?って。気遣うボクに。
だいじょうぶ。キモチよくなっちゃった。
彼女はちょっぴり照れくさそうに、肩を揺らせると。
お誘い、受けちゃった。
ユウヤくんを抜きにしてって。
いいよね・・・?
失血に黒ずんだ目もとを、かすかなピンク色がよぎっていった。
リョウタの家に、行かせるから。
みんなで、分けて。
仲良く、分けるんだぜ?
電話口に向かって。なんども念押しをするボクに。
だいじょうぶだよ。慣れているから・・・って。
慣れている。
そのひと言に。
どうしてボクは、こんなにも昂りを覚えてしまうのだろう?
婚約者は、抜きにすることになっている、
廃屋を舞台の密会は。
少女の上半身は、覆いかぶさってくる少年たちの影に隠れていて。
どんな表情をしているのかさえ、見届けることができなかった。
リョウタの家は、数年前。
家族ながら生き血を吸われて、死に絶えたことになっていた。
キュウキュウ。ちぅちぅ・・・
いやらしい吸血の音を、響かせながら。
異形の少年たちが、夕餉をすませると。
折り重ねた体をたいぎそうに起き上がらせて、制服姿の少女を、開放した。
けだるげに起き上がった少女は、まるで別人みたいによそよそしい顔つきをして。
乱れた髪を梳きながら、ブラウスについた血のりを、しきりに気にするようだった。
下校途中。
ひとりは路地に、呼び入れて。
仰のけられたおとがいの下、牙を噛み入れていって。
もうひとりは公園に、誘いこんで。
白のハイソックスのうえから噛んだふくらはぎに、少女がくすぐったそうに笑うのを時おり見あげながら。
ハイソックスにしみ込んでゆく血潮を、愉しそうになぞっていって。
さいごのひとりは、いつもの廃屋に連れ込んで。
腰までたくし上げたスカートの下、むき出しになった太ももに、刻印を捺してゆく。
女の子のだいじな処にかぎりなく近いあたりを・・・狙うようにして。
みんなで、分けて。
三度めに、ボクが発した言葉のまま。
少女は照れ笑いしながら、ボクに軽く手を振って。
ボクも彼女とおなじように、軽く手を振って。
やがて。。。草むらのなかに身を淪(しず)めた少女は。
もう・・・少女のまま起き上がることはない。
ボクの婚約者から純潔をかち獲たのは、案の定。
パンティのすぐ下の、太もものつけ根に噛みついたやつだった。
彼女の首筋が好きなやつも。彼女のハイソックスを集めたやつも。
くじ引きで決めた順番どおり、かわるがわる、彼女のことを犯していった。
まだ柔らかな、彼女の下肢は、むざんなほどに、荒らされていて。
泣きじゃくる彼女のことを、あやしながら。
ボクはなんども、犯された太ももを、なぞりつづけていた。
おはよう。
おはようございます。
ようっ。
元気よい声がはじけ合う、通学路。
鞄で互いの背中をたたき合いながら。
悪童三人に囲まれて、ボクはいつもの通学路を歩んでいく。
通りの向こうから歩いてきた彼女にも。
彼らはいつもと同じように、手を振って。
けれどもすれ違いざま、だれかが夕べはご馳走さまって囁くと。
少女は別人のように、紅くなって。
べつのだれかがこら!って、そいつのことを突っついている。
今夜。
彼女の勉強部屋に侵入する順番も。
きっと・・・ボクの知らないところで決められているに違いなかった。
あとがき
都会から越してきた少女が、地元の少年と婚約をして。
村のしきたりのままに、婚前の凌辱を受け入れてゆく。
そんな情景を、いつものさわやかな(笑)タッチで、描いてみました。^^
きっと彼女の母親も、夫もろとも洗脳されちゃっていることでしょう。^^
エリート会社妻、集団凌辱のノリ ですな。^^
どうも夕べから、ふどーとくな話を描きたくてしょうがなくなっている柏木です。(^^ゞ
どれもこれも・・・類型的なものになっちゃいましたが。(^^ゞ
いちばんの気に入りは、黒タイツの脚を噛ませる妹の話かな?(笑)
外泊許可
2009年01月20日(Tue) 02:25:27
パパがママに、外泊許可をした。
行き先はもちろん、吸血鬼のおじさんの館。
ウキウキと出かけてゆくママの、藤色のワンピースの後ろ姿を。
パパと二人、見送っていた。
短かめのワンピースのすそからのぞく、黒のストッキングの足許が。子供心にも眩しかった。
つぎの日の朝。帰ってきたママは。
別人のようにきらびやかな雰囲気を身にまとっていた。
化粧もいつもより、濃かったかも知れない。
パパはボクのまえにもかかわらず、お帰りと言ってママのことを抱きしめて。
こんなふうに、言ったものだ。
こんどあの人がうちに来たら、わたしに断らないで、家にあげておやりなさい。
そのときケンジは、ママのお部屋を覗いたらいけないよ。
ボクはパパの言いつけを、守らずに。
おじさんがくるといつも、ママの寝室を覗き見している。
それがだって、条件で。
おじさんをママに引き合わせたのだから。
けれどもパパは、そんなボクのやり口に。
おおよそ察しを、つけていたらしい。
パパのいないときに覗き見しているボクのことを、怒ったりしない代わりに。
ボクがいないとき、パパがボクとおなじことをしているのだから。
いもうと ~脱がされた黒タイツ~
2009年01月19日(Mon) 20:49:20
欲しいんでしょう~?ショジョの生・き・血♪
連れてきた妹は。
もう・・・三回め、ということもあるのだろうか。
ひどく挑発的で、愉しそうだった。
揶揄する口調に、まんまと乗って。
吸血鬼は妹の足許に、四つん這いになってにじり寄る。
妹は、長めの制服のスカートもはしをつまんで、
黒タイツの脚を、スッと差し出して。
どきどき、ワクワク・・・という目つきをして。
吸いつけられてくる唇を、息を呑んで見守っている。
にゅるっ。
朱の唇からはみ出した、露骨なほど赤い舌なめずりに。
よだれの痕が、黒タイツに白い糸を引いていた。
もう・・・エッチ。
妹は、柔らかい声色で吸血鬼のことを罵りながら。
それでも差し出した脚を、引っ込めようとはしなかった。
足許を装う制服の一部に対する凌辱を、それはウキウキと、見守っていた。
ちゅうっ・・・・
ふたたび圧しつけられた唇の下。
押し殺すような吸血の音が。
ぎゅうっ。ぎゅうっ。ごくり・・・と。忍びやかに洩れてきて。
やつは旨そうに、妹の生き血を、飲み味わいつづけている。
ふう~っ。
さすがに目を白黒させて。
制服姿が均衡を喪って。
その場にくたりと、くずれ落ちた。
う、ふ、ふ、ふ。
男は妹の脚に、なおもしつようにからみついていって。
黒タイツを、ずるずると脱がせていった。
しわくちゃになったタイツは、黒い帯のように引き伸ばされて。
男はまじまじと、自分のつけた噛み痕を、たんねんに確かめて。
あきらかに、悦に入っている。
いやらしい~っ。
妹の声が、聞こえてきそうだったけれど。
もはや彼女は、気絶してしまっている。
なかなかいい舌触りだったよ。お兄さん。
タイツの舌触りのことなんか、聞かされたって。
どんなふうに応えれば、いいのだろう?
男はこれ見よがしにもういちど、妹の脚から抜き取った黒タイツに、舌を当ててゆく。
先週のは、ざらっぽかったがね。
そうだった。
あのとき妹は、まだ意識があって。
ごつごつしていて、ざらっぽいんだって。ひどいよねえ・・・って。
その晩履いていたタイツの感想に、むやみと口を尖らせていた。
妹さんが、気づいたら。伝えておいてくれよ。
今夜のやつは、いい味だった・・・って。
妹はきっと、「ひどい!ひどい!」って。
やっぱり顔を、しかめるだろう。
闇のなか。
大の字に伸びた、白い脛が。
ひどくなまめかしく、目に眩しかった。
あとがき
「いもうと」で、サイト内検索をかけますと。
このお話の元ネタが、出てまいります。
とりあえずは、このあたりかな?
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-653.html
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-671.html
とくに第一話。
「は・・・はいっ!だいじょうぶですから・・・」
気丈に応えた制服姿の妹が、
差し出した黒ストッキングの脚をちゅうちゅう吸われながら体のバランスを崩してゆく・・・シーン。
かなり気に入っているんです。
三回目って、描きましたが。
たぶんもっと、逢っているようですね。^^
ありついた処女の生き血
2009年01月19日(Mon) 19:42:48
あの・・・
え・・・?
ちょっとのあいだ、ガマンして。
互いにそう、言い交わし合って。
白のタイトスカートから伸びた足許に。
闇から迫る唇が、忍び寄る。
力いっぱい、抑えつけたボクの掌の下。
お行儀よく揃えられた、流れるような脚線美。
その上をなぞるようにして、吸いつけられた唇は。
つややかな光沢をてかてかとよぎらせる肌色のストッキングを、
見るも無慙に、噛み破って。
ちゅうちゅう。ちゅうちゅう。
不気味に機械的な、規則正しい音を洩らしながら。
ボクの婚約者の生き血を、吸い取っていった。
きゃああああっ。
きっと彼女は、そんなふうに。
華やかな悲鳴を、闇に散らしていったはず。
それなのに。
ボクの耳にただ、残っているのは。
ひざ小僧を抑えつけたボクの手を痛がった、ひそやかな囁きだけ。
痛い。
え・・・?
あなたの、手。
ひっそりと、眉をひそめて。
うつむき加減に、身を寄せてきて。
由貴子さんはそんなふうに、小声で囁いたのだった。
慕うように。
もてあそぶように。
黒マントを羽織ったけだものは。
由貴子さんのスーツ姿に襲いかかる。
首筋を噛まれ、
おくれ毛をあやした胸元を噛まれ、
長袖のブラウスごしに、二の腕を噛まれていって。
それでも慕い寄せられてくる唇を、よけることもできないで。
ポニーテールの黒髪を、振り乱して。
かきのけられた白ブラウスの襟首から、
余裕たっぷりの牙を、もういちど忍び込まされてゆく。
ぺたんと尻もちをついて。
脚をくの字に、折り曲げて。
折り曲げた脚を、ストッキングのうえから、なぶり抜かれて。
どこか遠くから聞こえる、きゃあきゃあという叫び声。
必死の悲鳴はなぜか、くすぐったげにはしゃぎきっているようにしか、耳に響かない。
身体の随所から吸い取られてゆく血の味に。
ひどく魅せられてしまったように。
吸血鬼はなおも、彼女の素肌を恋い慕う。
処女の生き血だ。久しぶりに、ありついた。
柏木家の嫁として、ふさわしいお嬢さんだ・・・
まるでうわ言のように、賞讃のことばを呟きながら。
わたしの許婚をさいなんでゆく、魔性の手。指。爪の先・・・
ブラウス越しのまさぐりに。
由貴子さんは柳眉をピリピリと逆立てて。
拒みながら。悶えながら・・・
男の欲求に屈して、ためらいながらも応えはじめてゆく。
彼女の手が、彼の手を取って。
はだけたブラウスの襟首の奥に導いたとき。
彼女の脚が、からみついてくる唇に、吸いやすいように角度を変えたとき。
電流のように走ったあの衝動は、いったいなんだったのだろう?
あとがき
婚約者の由貴子さんが初めて襲われるシーンは、初期作品に登場します。
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-82.html
透きとおる女(ひと)
2009年01月19日(Mon) 17:28:21
目のまえのふたりの女は、それぞれ着飾ったスーツ姿を競うように。
思わせぶりにしなをつくり、誘惑の視線をチラチラさせてくる。
けれども、どういうわけだろう。
きょうは・・・ひどく興が乗らないのだった。
ひとの女を獲(と)る、という。無類に面白いはずの遊戯なのに。
オレはだまってゆっくりとかぶりを振って。
女たちに去るように、願っていた。
あら。
ふたりはひどく、残念そうにして。
それでもオレの気持ちをくんでか、残り惜しそうに立ち去りかける。
オレはひとりひとりを、抱きよせて。
感謝している。だいじな人がいるというのに、わざわざオレに逢いに来てくれて・・・
くぐもるような呟きに、女たちは深々と頷いて。
けれども年かさの女のほうは、イタズラっぽく笑みかけてきて。
ねえ・・・せめてストッキングだけでも、破ってくれる?
うちの人、わたしがストッキングを伝線させて帰ると、凄く興奮するんだもの。
惜しげもなくさらけ出された足許は。
ワインカラーのタイトスカートに、蒼のストッキングに包まれていた。
オレはスッと女の足許にかがみ込んでいって。
乞い願われるまま、ツヤツヤとしたナイロン生地のうえ、唾液をぬめりつけていって。
ばりり・・・
ストッキングの裂けるかすかな音に。
女はひどく満足げに、ニッと笑いかけてきた。
若いほうの女も、負けてはいなかった。
ねぇ。いつもみたいに。
スカートの裏地で、あなたのおち○ん○んを、撫でてあげる。
ガマンしないで、ビュッと吐き出してくれる?
彼氏、そういうわたしのことが、とても愉しみみたいなの。
まだ犯されていない太もものすき間に。
肌色のストッキング一枚へだてた初々しい素肌が息づいている。
オレは女の願うまま・・・スカートがぐしょ濡れになるくらい、吐き出してしまっている。
女たちが、立ち去ると。
オレはゆっくりと、後ろを振り返る。
あたりをひっそりと包む、薄闇は。
音もたてずに、なだらかな肢体を透けさせてきた。
セーラー服姿の、三つ編みの少女。
いまのオレよりも、はるかに若いその姿を見て。
オレはただひと言―――。
姉さん・・・。
囁きかけていた。
卵型の色白の顔を、人なつこく和ませて。
控え目に、おずおずと、スッと差し出された足許に。
オレは甘えるように、餓えた唇をしゃぶりつけていた。
古風なナイロンストッキングは、なよなよとしていて、優しげで。
切ないくらいに、頼りなくって。
オレの不作法なあしらいをうけて、くしゃくしゃになってねじれていったけれど。
娘らしい装いの主は。
そんなオレの仕打ちを、仕方なさそうに優しく見守るばかり。
いけない子ねぇ。
ほんとうに・・・いけない子。
今夜はひと晩、姉さんが相手をしてあげるから。
彼氏やだんなさんのところに、女のひとたちを帰してあげて頂戴ね。
こんな夜は、せつないほどにゆっくりと過ぎていって。
翌朝なにもかもを忘れたような朝空に。
オレはひそかに薄っすらと涙する。
お姫様抱っこの帰り道
2009年01月19日(Mon) 17:06:52
たまには化粧けのない女を、襲ってみたい。
バス停のちかくにスッと佇んだその少女は。
長い黒髪をいともむぞうさに、肩にそよがせていて。
からかうような眼をして、こちらをじいっと見つめていた。
濃紺一色の地味な制服姿は、清楚というよりも。
質素というふぜいで、少女らしい丸みを帯びた肢体の線を隠していて。
ただ・・・プリーツスカートの下ににょっきり伸びた発育の良い脚だけは、
薄手の黒のストッキングに透けて、ひどくなまめかしい白さを滲ませていた。
オレが足許にかがみ込んで、衆目の視線をいとわずに少女の脚を舐めはじめると。
少女は初めて、脚をすくめて。
「やだ。」
やけにはっきりした声を、頭上に浴びせかけてきた。
う、ふ、ふ、ふ、ふ・・・
見て見ぬふりをする通行人たちを、尻目にして。
初々しい脚もとを彩るぬらりとしたオブラートを、いともむぞうさに剥いでしまうと。
少女は初めて、口尖らせて。
「恥ずかしくって、歩けない」
黒の革靴の脚で、オレを蹴るまねをした。
蹴りにきた足を、ぐいと受け止めると。
オレは少女の身体にツタのように腕をからみつけていって。
―――歩けないのなら、お姫様抱っこしてやろうじゃないか。
もうだれもいなくなった、日暮れの道で。少女の肩と膝裏を抱きかかえていた。
もうっ。
少女はまだ、口をとがらせていて。
すりむけてしまった黒のストッキングの脚もとを、恨めしそうに見おろしていたけれど。
オレがキッスをした額を、さっと撫でつけると。
はじめてオレの首根っこを、抱きすくめてくる。
少女の名は、まりあ。
いつもオレが飢えているときに。
オレを誘うようにして、オレ好みに装って、目の前に立つ女。
服属。
2009年01月12日(Mon) 08:08:36
家内に惚れて、いるんですね?
家内のどこが、お気に召しましたか?
もうとっくに、お気づきでしょうけど・・・けっこういい体、しているんですよ。
おしゃれのセンスも、悪くはないですよね?
それにまだ若々しいし。血も美味しいと思いますよ。
あなた・・・吸血鬼なんですよね?
わたしの問いに、男はくすぐったそうに耳傾けていたけれど。
最後のひと言には、さすがに色をなしていて。
そのまますう・・・っと、寄ってきて。
有無を言わせず、わたしの首筋を吸ったのだった。
吸い尽くしてしまうのに、あっけないほどの刻しか要しなかった。
ずり落ちたソファの下。
じゅうたんにしみ込んだわたしの血は、まだなま温かった。
ふらふらと、起き上がると。
意識がちゃんと、あるようだな。
だれのおかげで、意識があるのかな?
あんた・・・オレ様のやり口に、理解がありそうじゃないか。
せっかくだから。
手引きをしてくれないかな・・・
わたしはもちろん、頷いている。
そそのかされて。譲り渡して。
忍び込ませて、侵蝕されて。
強引に迫られて。奪い尽くされて。
洗脳させて。裏切らせて。
それでも素知らぬ顔をして、盗み取らせる。
破滅願望。無理解な人は、そんなふうにして、わたしのことを呼ぶのだろうか。
妻が堕ちてしまうのは、あっという間のことだった。
なにしろ―――
だれよりも強力に阻止しなければならない夫のわたしが、妻を堕とす側にくみしてしまっているのだから。
わたしの紹介で家にあがりこんできたその男に、妻は疑いひとつ抱かずに。
夕餉の支度をし、お酒の酌をして。
そのまま男の目に引き込まれるようにして。
みずから・・・ブラウスの襟首をくつろげていた。
あうっ。あうっ。あうっ。
規則正しく洩れてくる吸血の音と。妻のうめき声が重なるのを。
わたしは小気味よげに、見守っていて。
じゅうたんにしみ込んだ妻の生き血に、薄い靴下の足の裏を、心地よく浸していった。
わるい人。
妻はたったひと言、そう呟いただけだった。
断たれたブラジャーのストラップを、残り惜しげにもてあそびながら。
高かったのよ。このランジェリー。
代わりを買ってもらうわね。
女らしいおねだりは、忘れることがなかったのに。
すでにわたしだけの妻だったことは、とうの昔に、忘れ去っているようだった。
裂けたストッキングが、ひざ下までずり落ちていて。
剥ぎ取られた衣装もろとも、女は身も心も、堕とされてしまっている。
男はなおも意地汚く、薄いナイロン生地のうえから舌を這わせて。
淡い光沢を帯びたノーブルなはずの装いに、ねじれを波立てていくのだった。
お義母さまも、ご紹介しなくちゃね。そのつぎは、うちの母。
お義父さまや、父には、このさい目をつぶっていただきましょう。
貴方にできることなのですから、ふたり目三人目がいても、おかしくないはず・・・
実家に足を向けると、男は真っ先に父の書斎を訪問した。
男が父と打ち解けてしまうまでのみじかい時間に。
妻は母をせかして、礼装させて。
なかなか出てこない父を迎えるため、紫のスーツ姿を書斎に送り込んだのだった。
さすが、用意がいいね。
お客様の好みを、よくわきまえているのだね。
父は首筋を、さりげなく撫でながら。
じぶんの仇敵だったはずの男の牙にかかって、真っ白なブラウスをバラ色に染めてしまった母のことを、ほめていた。
衣装を堕とすことに熱中し始めた男の手並みまで、ほめつづけていた。
つぎの週は、法事だった。
弔うための衣装は、男たちをそそっていて。
たたみの上、抑えつけられた黒のストッキングの脚は。
妻の格好のよい脚が、じつは母譲りなのだと告げていた。
そのまえに洗脳されてしまっていた義父は、永年連れ添った妻の手引きをすることに、むしろ嬉々として同意していて。
剥ぎ取られた喪服のすき間からにじませた白い肌に吸いついた唇が、義母のすべてを吸い取ってしまうと。
寛大にも、同年代であるわたしの父や、娘婿のわたしにまでも。
護り抜かれた操を蹂躙する栄誉に、浴させてくれたのだった。
いやらしいわね。男のひとたちって。
ほんと・・・女は行儀がいい男性が好きなのに・・・ね。
女たちは口々に、夫たちを罵りながら。
きりりと結いあげた黒髪を、つややかに輝かせて。
ブラウスのリボンが、胸元をきっちり引き締めて。
それでも唯々諾々と、たたみの上に横たわっていく。
まだ剥かれていない上半身とは、裏腹に。
スカート姿の下半身は、あられもないことになっている。
脚に通した薄いナイロンの装いは、くしゃくしゃになるほどいたぶられ、堕とされて。
ひざ下までずり落とされて。
眩しい太もももあらわになるほど、スカートをたくし上げられていて。
いちばんさいしょに、訪問客とひとつになったのは。妻だった。
まぁ、お若い方は・・・
母が苦笑すると。
いけない子。
義母が妻の頬を、かるくつねっていたけれど。
ふたりとも、あられもなくはだけられた下肢を、蹂躙されていって。
やがて・・・おなじ牝どうしに、堕ちてゆく。
献血、ごくろうさま。
ねぎらいの言葉に、うやうやしく一礼をかえしながら。
底の浅い盃に汲まれた、だれのものとも知れない血潮に、夫たちは唇を浸してゆく。
横目で妻が堕ちてゆくのを、愉しみながら―――。
あとがき
妻を寝取られて破滅してしまう・・・というよりも。
妻を堕落させる手引きをして、みずからすすんで破滅してゆく。
そんなやり口も、オツなもので。^^
中学の自警団
2009年01月12日(Mon) 07:37:50
中学の周りに出没する吸血鬼が、下校途中の女子生徒を次々と襲っている―――
そんなうわさが村に広がったのは、ある夏の日のことだった。
襲われたとうわさされた女生徒の親たちは、躍起になって否定したけれど。
制服姿の少女がぼう然となって、真っ白なハイソックスに赤黒いシミを滲ませて歩いているのを。
近所の主婦が、目撃していた。
その主婦も。
自分の娘が襲われて、スカートの裏まで濡らして帰宅したことは。
決して口にしようとしないでいた。
自警団が、組織された。
それも、男子生徒のあいだでだった。
大人たちはなぜか、言を左右にして、自警団に加わろうとはしなかったのに。
カズヒコは同級生の蒜沢といっしょに、夕闇の校舎を見あげている。
人数の限られていた自警団は、ふたりひと組でまわることになっていた。
つい昨日も―――
自警団の少年たちが、あべこべに犠牲になっていた。
ひとりが吸血鬼に襲われているあいだ、もうひとりが助けを呼びに走る。
そういう手はずだったのに。
助けを呼びに行ったはずのひとりが、どう怖気づいたものなのか、
そのまままっすぐ家に逃げ帰ってしまったのだった。
だれもがなぜか、逃げたものを責めようとはしなかった。
襲われた少年は、都会から来たばかりの男子生徒だった。
首筋を噛まれて血を吸い取られて、意識が遠くなっていくあいだ、彼はずっと相棒の来援を待ち望んでいたはずなのに―――。
一夜あけると、首筋にバンドエイドを貼っただけで、いたって能天気に登校してきたのだった。
逃げた方の相棒が、きょうの蒜沢だった。
かれは弁解ひとつしようとせずに、きょうも自警団に加わっている。
こんどはオレが、襲われるからさ・・・
蒜沢はうっそりとした口調で、そう呟いた。
決して醜い少年ではない。むしろ目鼻立ちが整った、男の子にしては白すぎる皮膚がノーブルなほどに透きとおっているのだが。
いつもひっそりと、クラスの隅っこにいて。
無口な性格がわざわいしているのか、あまり美少年という雰囲気を持っていない。
きょうはまして、そんな感じだった。
やっぱり仲間を見捨ててしまったことで、気が咎めているのだろうか?
どんなやつだと思う?
いきなり投げかけられた問いに、カズヒコが戸惑っていると。
あいつののことさ。相手のことを知るのも、だいじなんじゃないのかな。
うっそりとした呟きに、カズヒコはたしかにそうだね、とうなずいた。
そんなこと、考えてもいなかった。
けれども。なぜか応えはすぐに、口をついていた。
寂しいんじゃないかな。
え・・・?
意外な答えに、蒜沢は思わず立ち止まってしまっている。
だって・・・だれも死んでいないじゃないか。
なかにはまえの晩襲われた子が、平気で学校に出てきたりしているし。
たしかに・・・ね。
蒜沢はまた、ゆっくりと歩き出す。
体育館のまえだね。ここで三日前、部活帰りの子が襲われたんだ。
君も知っているだろう?佐藤ユリ。おなじ部、だったよね?
体育館の裏手で、襲われたらしくって。
ほかの生徒に声かけられたのも、気づかないふりをして出ていったけれど。
短パンの下に履いていたユニフォームのストッキング。
ちょうどふくらはぎのラインのあたりに、血がべっとりついていたらしいよ。
蒜沢はめずらしくよどみなく、事件の経緯を語っていた。
ちょうど・・・きみもおなじ柄のハイソックス、履いているんだね?
白地のハイソックスには、濃紺のラインが三本、ふくらはぎに巻きつくように横切っている。
そういえば。
部活のおわったあとのカズヒコが短パンにハイソックスなのは当然として。
万年帰宅部の蒜沢までが、まるで小学生みたいに半ズボンに真っ白なハイソックスを脚に通している。
ここで別れよう。
体育館をはさんで、両側から回り込んでみよう。
なにかあったら、すぐ声をあげるんだぜ?
ふたりひと組・・・そのルールを破ろうとしている蒜沢に。
なぜか出かかった異論を、飲み込んでしまっている。
おーい。
恐れていた大きな声があがったのを耳にしたのは、カズヒコのほうだった。
どきん!思わず高鳴った心臓を抑えつけて。
カズヒコはボールを弾ませてゴールに突進するときのように、勢いよく駈け出した。
どうしたぁ?
体育館の脇のコンクリートの階段に、蒜沢は尻をぺたりと落として、うずくまっていた。
そして、ひざの下まで引き伸ばされた真っ白なハイソックスには、赤黒いシミが―――。
おいっ、だいじょうぶか!?しっかりしろよっ!
激しく揺さぶるカズヒコに、蒜沢ははじめて顔をあげた。
ぎょっとした。
蒜沢は、笑んでいたのだ。
気の毒だったね。
ボクと組んだやつは、みんなこういうふうになっちゃうんだよ。
ほら、感じるかい?きみは、初めてだろうけど。
慣れてみると、案外キモチよくなってきちゃったり、するんだよなぁ。
抱きかかえてくる蒜沢の意図に負けまいと、懸命に体勢を立て直そうとしたけれど。
足許に吸いついた唇は、容赦なく血を啜りあげていて。
抱きすくめられた蒜沢の腕のなか、カズヒコは意識を遠のかせていった。
体育館のかたわらの、いまはすっかり暗くなった木立ちのなか。
ぐったりと横たえた身体は、まるで空っぽになってしまったように、頼りなくなっている。
けれどもそいつは、まだ足許にヌルヌルと唇を這いつかせてきて。
カズヒコの履いているハイソックスの、ふくらはぎのいちばん肉づきのいいあたりを、舌で撫でまわしていた。
ちょうど、紺色のラインのあたりだった。
両肩を抑えつけているのは、蒜沢。
噛んでご覧。
落ち着き払った彼の声色に応じるように。
圧しつけられた唇の両端から伸びた犬歯が、グッと突き立てられてくる。
うう・・・っ。
思わずあげたうめき声に。
蒜沢はまるで弟の頭を撫でるように、カズヒコの髪をかきのけて。
だいじょーぶ。死なせたりはしないって。
きみもさっき、言っていたじゃないか。
きっと、寂しいんだろう・・・って。
そうなんだ。こいつ、さびしいんだよ。
みんな、ほんとうは知っているんだ。
女の子を襲っている吸血鬼がだれなのかって。
この村はね。
吸血鬼が、人間と同居しているんだ。
ほんのひと握りなんだけど。
生徒のなかにも、吸血鬼がいて。
同じクラスの子から、順番に、血をもらっているんだよ。
きみも、夕べのやつと同じように。都会から越してきたばかりだったよね?
都会暮らしの君たちに、早く馴染んでもらおうって。
クラスのみんなで、話し合ったんだよ。
あいつもきょうは、ふつうに登校してきただろう?
きみにもぜひ、そうしてもらいたいね。
えっ?抜けちゃった血は、どうするんだ?って?
それは・・・自分で考えるといいよ。
ヒントをあげよう。
肉親の血が、いちばん口になじむんだよ。
でもいきなり噛んだら、びっくりしちゃうし。
むだにけがをさせちゃうだろうから・・・
ちょっと来て御覧。
蒜沢が手招きしたのは、木立ちのさらに奥のほう―――。
よぅ。
昨日襲われたはずの少年が、いつものようにぞんざいに声を投げてきた。
父親の勤め先が同じ会社のこの少年は、おなじころに村に越してきて。
それぞれ隣同士のクラスに、転入していたのだった。
こんなに遅く、どうしたの?
そっちこそ・・・
苦笑交じりのクラスメイトは、「だれにも言うなよ」と言いながら。
木立ちの傍らを、そっと指差していた。
木の根もと。腰を落としているのは。
時おり見かける、彼の母親だった。
モスグリーンのスーツの下。リボンを結んだ白のブラウスを、真っ赤に濡らしてしまっていた。
母親にかがみ込んでいるのは、少年の同級生のシンジ。
うつむいている年上の女の首筋に、さっきから唇を這わせていて。
せわしなく、うごめかしているのだった。
さぁ、お前の番だ。やれよ。
シンジに場所を、譲られて。
クラスメイトは自分の母親に、のしかかってゆく。
目の前をよぎったかすかな舌舐めずりが、まだ耳に残っていた。
ちゅう・・・ちゅう・・・
あらかじめ、傷をつけておくとね。飲みやすいだろ?血・・・
そそのかすように囁きかけてくる蒜沢に、カズヒコはこっくりと頷いていた。
そう。血が欲しい。オレの体内から喪われてしまった血を。
きみには若いお母さんと、あと妹さんがいたよね?たしか、一年A組だったっけ。
あのクラス。女の子ばかりだから。
きみが手引きしてくれると、都合いいんだけどな。
カズヒコはそれには応えずに。
もっと、吸えよ。
ハイソックスのふくらはぎを、投げ出すようにして。
うずくまっている影のほうへと、脚を差し伸べる。
お前。変態だな。そんなに靴下、好きなのか?
蒜沢がかわって、こたえてやっている。
ああ。そうみたいだね。
だからボクも、きょうは半ズボンなんか履いてきているんだよ。
君ん家(ち)は、みんな都会ふうにおしゃれだよね?いつもきっちりした服装しているし。
喜ぶんじゃないかな。妹さんの履いているハイソックスも。
お母さんの履いている黒のストッキングも、面白そうだね。
ほら、見てごらん・・・
あっちのお母さんも、ちりちりにされちゃっているから・・・
あとがき
たくさんのねたが、あまり鮮明でないイメージのまま、たくさん浮かんでしまうときがよくあります。
はからずも吸血鬼たちの心情を見抜いてしまった都会の少年を、周りにひそむ吸血鬼が仲間に入れようとするお話にしあげたかったのですが。
こうゆうときって、キーがうまく乗らなかったりするんですよね。。。
ストッキング交換
2009年01月12日(Mon) 06:50:16
あなた。
妻がわたしの書斎を訪れたのは、深夜―――
この刻限に、正装して現れるとき。
装いじたいに、彼女のメッセージが込められているのだが。
妻はもうひとつ、メッセージを用意してきている。
手にぶら下げているのは、帯のように長い黒の薄衣。
今夜はこれで、慰んでくださいね。
わたくしはこれから、貴方のことを裏切らなければならないので。
ふふふっ。
軽い含み笑いを浮かべて、くるりと回れ右をして。
そのまま玄関に、立ち去ってゆく妻。
わたしは思わず、ふらふらとあとをついていく。
すこしのあいだ、待ってくれないか?
わたしもごいっしょ、させていただくから。
妻はちょっと怪訝そうに、上目遣いを返してきたが。
うふふふふっ。
くすぐったそうに、ほほ笑むと。
あなた、悪趣味ね。
そそのかすように、囁いたのだ。
肩をすくめて、挑発するように―――
数分後。
ズボンをたくし上げて、薄黒いナイロンに包まれた脚を。
妻はおなじ黒のストッキングのつま先で撫でながら。
おそろい、ね?
まぁ、あのひとのまえでは、紳士用の靴下ということにしておきましょうね。
くすっと笑んだ口許から、なま温かい呼気がわたしのまえをよぎっていった。
応接間に待たされているあいだ。
わたしは、ただひたすらに―――たかぶりつづけていた。
おや、いいのかね?視なくても。
妻の情夫に、揶揄するようにそそのかされたけれど。
わたしはだまって、ゆっくりとかぶりを振ったのだ。
いきなり押しかけてきたのだし。邪魔しては、悪いからね。
そう、いくら夫婦であっても―――
この邸のなかでは、妻を独り占めにする権利を持つのは彼のほう。
あぁ・・・うぅん・・・っ。あひいっ。
切れ切れに洩れてくる声だけで。
わたしの股間は、ビンビンと昂っていた。
太ももまでのストッキングが、まえにもまして責めるように締めつけてくるようで。
キュッとした肌触りの薄いナイロンのしなやかな感触が、皮膚を侵蝕するように、しみ込んでくる。
ひと刻たって。
男は自分の情婦といっしょに、ふたたびわたしの前に現れる。
情婦となった妻は、もう黒のストッキングを穿いていない。
ゆらゆら揺れる黒のスカートのすその下。
むっちりとしたむき出しのふくらはぎが、なまめかしいほど白く、眩しかった。
ふ・・・ふ・・・ふ。
気がつかないかね?
妻の情夫は、揶揄するように。わたしを見て。
自分のスラックスのすそを、そう・・・っと、たくし上げてゆく。
黒光りするような脛は、私よりも逞しく、ごつごつとした筋肉におおわれていたが。
その周りを薄っすらと、うわぐずりのようにコーティングしているのは。
まぎれもない、妻が穿いてきたはずの黒のストッキング。
戦利品扱いされた妻の装いは、男の脚にまとわれて。
この女はおれの持ち物だ。なにもかも・・・
誇らしげなまでに隆起した筋肉が、妻のストッキングを犯している。
そんな妄想が、めまぐるしく頭の中をかけめぐった。
返してやるよ。
男は別室にさがって、スラックスを脱ぎ捨てて。
情婦の身に着けていた黒のストッキングを、脚から取り去ってゆく。
その代り―――
妻の主の命令は、ちょっとほろ苦く、それでいて心地のよいものだった。
奥さんがノーストッキングじゃ、気の毒だろう?
それはあんたの穿いているやつで、おおってやるがいい。
あんたが穿いて帰るのは・・・
私が脚をとおしたほう。
穿き心地が、いっそうよろしいですよ・・・
なにしろ。
奥さんの淫らな汗がたっぷりと、しみ込んでいるやつですからね・・・
帰り道。
スラックスの下、じわじわとしみ込んでくるのは。
妻のかいた淫らな汗の残滓?それとも、嫉妬という名の、毒?
出先で服が 破けてしまったとき。
2009年01月05日(Mon) 07:14:25
力づくで、押し倒されて。
息荒い唇を、迫らせられて。
やめて!やめて!
はしたなく取り乱すわたしを、ねじ伏せるようにして。
はね上げたスカートの奥。
男はぐいぐいと、昂りに狂った自分自身を、あてがってきて。
夫のものしか受け入れたことのない処を、踏みしだくようにして貫いていた。
もう…取り返しのつかない身体にされてしまったとき。
勝手のわからない密室のたたみ部屋のなか。
しつようなくらいの衣擦れが、ひりひりと疼くのをおぼえていた。
わたしを凌辱した男と組みになって、わたしの脚を抑えつづけていて。
役目が済んだという冷ややかな充足感にみちた貌の持ち主は。
ほかならぬ、息子の嫁だった。
自分の情人に、目ざわりな姑を狂わせてしまう―――
なんというまがまがしい、くわだてだろう。
けれども嫁は、いままで見たこともない人なつこい笑みをして。
おめでとう。これでやっと、わたしもお義母さまのお友だちになれそうだわ。
共犯者のように悪戯っぽく、わらいかけてきたのだった。
あのひと、覗いているんですよ―――
夫のいない現在(いま)。
「あのひと」に当たるのは、息子しか思い当らなかった。
わたしのときも、強引だったんです。
そう。場所も、この部屋だったんです。
このひと、いきなり迫って来て。
やめてーっ!て。叫んだんですよ。わたしだって。
あなたは主人の、お友だちじゃないですか・・・って。
でもけっきょく、逃げられなくって。
獣が小鳥を食い尽くすみたいに、されちゃったんです。
わたし・・・ぴーぴー泣きながら、犯されていったんです。
嫁姑ながら。おなじお部屋で、悪い女にされちゃったんですね。
さあ、帰りましょ。
これからづづきを、お義母さまの家でするのよ。
その破れた喪服では、帰れないでしょうから。
車で送ってあげますから。
この人も、いっしょに乗ってもらって。
家に着いたら。
こんどはお義母さまが、乗られるんですよ。
・・・・・・愉しかったでしょう?
わたしが身づくろいをしている、かたわらで。
息子の嫁の妙子さんは。
どうやら女の服に執着する性癖の持ち主らしいあの忌まわしい男のまえ。
グレーのスーツに装った下肢を、すり寄らせて。
たったいまわたしを犯したペ○スを、スカートの裏地にくるんで揉みしごいてやっていた。
さあ。第二幕だね。
なんとむごいことに―――。
それは、夫の写真のまえで、行われた。
破れかけた喪服を、着かえさせられて。
ごていねいに、ストッキングまで、履き替えさせられて。
こざっぱりとしたワンピース姿を、ふたたび組み敷かれていって。
夫にしか見せたことのない肌を、びりびりと破かれてゆく服の生地のすき間から滲ませながら。
わたしは二度目の屈辱を、耐え忍んでいた。
けれどもそのあいだ、わたしの理性はどす黒く塗り替えられていって。
男の去りぎわ、口にしてしまったのだった。
喪服がお好きなようでしたら・・・
もう一着、ございますの。
こんどはさっきの妙子さんみたいに・・・スカートの裏地を濡らしていただこうかしら。
黒のパンストも、こんどはもう少し薄いのを、ご用意しておきますね。
庭先から時おり聞こえてくる、不用意な音は。
そこにありありと、息子の気配を伝えてきた。
あとがき
妻を犯させ、母親まで犯させて。
庭先で独り昂っている、若い夫。
歪んでいます。
歪みすぎています。^^
連れ込み宿 ~法事の帰り~
2009年01月05日(Mon) 06:11:15
―――わたしがいなくなったら。母さんを鬼藤さんに逢わせてやってくれないか?
―――きみは母さんを連れていくだけで、かまわないから。
―――大人の男女なのだから。あとのことは二人で相談して、決めるだろうから。
1.
父の法事の帰りだった。
母は美津子、五十七歳。妻は美佐江、三十三歳。私、ノボルは三十五歳。
漆黒のスーツは、よく見るとなかなか凝ったデザインで。
けれどもやっぱり、そこはこういう場の礼装らしく、色香というものをまったく遮断していて。
どこまでも禁欲的な雰囲気だった。
申し合わせたように脚に通している、黒のストッキングは。
肌の透ける薄さに、脛の白さをどきどきするほど浮き上がらせていて。
スカートのすそから下だけが。妙にアンバランスになまめかしい。
なぁによ。さっきから。
人通りのすくなくなった路のようすに目を配りながら。
妻の美佐江が、口を尖らせる。
―――さっきから人の足許ばかり、じろじろ見ちゃって。
―――黒のストッキングがそんなに珍しいの?
やらしいわよねぇ。ノボルさんったら。ねぇお義母さま。
そんな内容のあいさつをいきなり振られて、母は困ったように微笑をかえすだけ。
―――いいわね。あなた達は。相手がいるのだから。
無言でそう言っているようにみえたのが、ちょっと意外だった。
じゃあボクはここで。これから仕事が入っているんだ。夜勤になるから、夕食もいらないからね。
―――祭日なのに。オ・シ・ゴ・トなんですって。
妻はあかんべえをするような、わざと小意地のわるい態度をとって。
子供みたいに、ちょっとはしゃいだ。
それでも「祝日」といわないで、最近あまり言わなくなった「祭日」と言い換えるあたりは、さすがに彼女も大人なのだ。
別れぎわ、ついもごもごと、口にしてみる。
「いや、それって、ガーターストッキングなのかな?ってさ」
―――もー、やっぱりやらしいんだからっ。
妻はとうとうこらえ切れなくなって、言葉をあけっぴろげにはじけさせた。
お義父さまに、失礼よ。とか。こういうときに、不謹慎じゃない。とか。
さすがにそこまで、いなくなった人を思い起こさせるニュアンスは控えていたが。
ボクの背中を打つ手のひらが、甘えるようにしなだれかかる。
―――こんなとき、ガーターなんて履くわけ、ないじゃない。エッチなビデオの見過ぎでしょっ。
新婚そうそう、学生時代から観ていたビデオのコレクションを見つかって。
「喪服妻 悩乱」とか、「喪服妻 淫乱調教」とか、「あなた、ごめんなさい・・・喪服奴隷に堕ちた未亡人」とか。
そのテのやつを観た経験は、男ならだれでもいちどはあるだろうけれど。
傍らに寄り添うようにしていっしょに観てくれた妻は、たったひと言。
―――ナンセンスねぇ~。
優雅な肢体をだらりとソファに投げるようにして、のんきなため息を、洩らしたのだった。
じゃあ、本当に仕事行くから。
道が枝分かれしたのは、人のすくない四つ角だった。
お互いが視線を自分の行く手に戻した後。
もういちどだけ、振り返って。
黒のストッキングの脚をそろって並べる妻と母の後ろ姿を、そっと見る。
べつべつの家から出かけてきたふたりの足許を包むナイロンの装いは。
とうぜんのように、べつのブランドらしく。
妻の履いているのは、かっちりとした鮮やかな発色に、かすかな光沢を滲ませていて。
なぜか年配の母の方が、この寒風のなか、肌の地色がひきたつ薄いストッキングを身に着けていた。
2.
久しぶりに、喪服なんだな。
男はそういいながら、まず美津子のほうににじり寄り、後ろ手に縛った両手首を、ソファの下敷きにするようにして。
わざと舌を這わせて、下品に首筋をなぶっていった。
やはり後ろ手に縛られていた美佐江のほうは、男が迫ってきたとき挑戦的におとがいを上向けて。
額を覆うヴェールを、かき寄せられていった。
まるで花嫁が誓いのキスを交わすときのようにして。
首筋から頬、そして額の生え際・・・と、男は舐めるように、美佐江のおもざしを侵してゆく。
化粧が落ちるわ。
殺風景な言葉が、かえって男をそそったらしい。
バランスを失った男女の身体が、義母と向かい合わせのソファになだれ込んだ。
お部屋のほうが、整いました。
無表情に干からびた声が、部屋の外から投げいれられる。
それがなければ、このあとどういうことになっていたのか、三人のだれにも想像がつかない。
あわてて身づくろいをすると。
女たちは後ろ手に縛られた両手を、入ってきた老女の目に触れないようにと、
さりげなく隠すようにして、移動をはじめた。
ほっそりとした痩せぎすの老女は、なん十歳も年下の男女のそんな様子など目に入らぬように。
ご案内いたします。
ただひと言、ぶあいそ過ぎもせず、相手をどぎまぎさせるような思い入れも込めないで。
スッと三人の前に立って、用意された部屋のほうへと、しずしずと歩みを進めていった。
通されたのは、十畳もあるような大きな部屋。
金襴の褥―――そういいたくなるような、ご立派な布団がふた組み。
俗に3Pと呼ばれる客も、しばしばここを使うらしくて。
男一人、女二人の組み合わせが、宿の敷居をまたいだときも。
老女はさして、驚くふうも浮かべずに。
お布団はふた組、ご用意いたしましょうね?
あいまいに頷く男に、そのときだけはニッと笑いかけている。
では、おくつろぎくださいませ。
老女が古風に、手をついて。
顔が見えなくなるほど深々と、一礼すると。
ぱたり。
耳障りでもないかわり、たしかに閉ざした―――と伝えるほどに。
かすかな響きを、ふすまとふすまの間に残していった。
さぁて・・・と。
どちらから先に、料理しようかな。
年配のほうの女は、美津子。五十七歳。
若めのほうの女は、美佐江。三十三歳。
嫁と姑の間柄になるふたりのあいだ、一瞬だけ冷やかな、無言の駆け引きが交わされる。
―――どちらなりとも・・・
代表するように、姑のほうが。心持ち目を伏せながら、ちいさな声で無表情に呟いた。
じゃあ、きょうは齢の順でいこうか。
嫁が犯されているあいだ、姑は伏し目がちに視線をそらして、部屋の隅を凝視し続けていた。
やがて、自分の番がまわってくると。
美佐江さん、むこう向いててね。
嫁に目で合図を送ると、はじめて羞ずかしそうに、頬をバラ色に染めている。
ほどかれたボウタイをゆっくりと結わえてゆく嫁の傍らで。
荒々しく押し倒された胸もとに、ブラウスのフリルが隠微に揺れた。
昂りの余韻が、さめやらない。
美佐江は虚脱したような無表情のまま、長い黒髪をゆっくりと、手で梳いている。
男の手によってほどかれたボウタイが、あらわになった胸のはざ間をはさんで左右に分かれたまま。ふしだらに、畳の上まで垂れている。
淡い花びらのように、ふんわりと結ばれて、胸元を凛々しく引き締めて、
漆黒のブラウスのうえ、長々と垂れて淑やかな風情を漂わせていたときの面影は、
装いにも、装いの持ち主にも、残されていない。
なん回抱いたら、気が済むのだろう?
義母とふたり。
かわるがわる、喪服のすき間から這わされた指は。
すっかり敏感になってしまった柔肌を、酷いほど揉みしだいては。
下から探りいれられる怒張した一物が、さっきもまた、どろどろと濁った粘液を、身体の奥へと吐き散らしていった。
夫よりもはるかに年上のこの男は、結婚してから夫が注ぎ込んだ以上の精液を、彼女の体内に注入してしまっている。
傍らでは姑の美津子が、まだ男にのしかかられていて。
あくまでしつような要求に、細い腰を激しい上下動にゆだねきっている。
腰までたくしあげられた黒のスカートごし。
太ももを横切るガーターが、淫靡なねじれをみせていた。
3.
嫁の美佐江と別れると。
美津子ははじめて、ちいさなため息を漏らしていた。
軽い疲労を帯びた、悩ましい重さを秘めたため息を。
どれくらいに、なるだろうか。
こんなふうな関係になってから。
鬼藤さんに、ご挨拶にいかなきゃ。
夫の死後なにかとめんどうをみてくれた人の名を、息子が口にしたとき。
美津子はなんの疑念もなく、黒一色のジャケットに腕を通したのだった。
喪服じゃ、無粋かしら。
いや・・・いいんじゃない?
息子が一瞬よぎらせた、含み笑い。
それが、足許に帯びた黒のストッキングのなまめかしい薄さに投げられたものとは、露知らなかった。
あのとき・・・もっときちんと、問い質すべきだったのだろうか?
ひとしきり。型どおりの挨拶がすむと。
息子はそそくさと、立ちあがって。
ごめん。母さん。ボクこれから仕事が入っているんだ・・・
母さんはもう少し、鬼藤さんのお相手してて。
広いお邸には、女中さんがなん人もいるようだったし。
奥さんの姿こそ、みえなかったものの。
べつだん二人きりになるわけでも、なさそうだったから。
どうです。庭でも御覧になりながら。
じぶんや夫よりも年配の鬼藤に、にこやかにすすめられるまま。
では―――。
息子に促されるまま、別れ別れになったのだった。
息子が出ていったらしく、門を施錠される音が遠くですると。
鬼藤の形相が、一変していた。
その日美津子は、夫いがいの男の体をはじめて識った。
息子の持っていたビデオの話。
よく、美佐江さんが話していたっけ。
「喪服妻 悩乱」「喪服妻 淫乱調教」「あなた、ごめんなさい・・・喪服奴隷に堕ちた未亡人」
―――どれもが、いまのわたしそのものだった。
喪服を装う日常は、その後もかわらなかったけれど。
つぎの日から、毎日装う喪服のスカートの下に装う黒のストッキングは。
夫を弔うためではなく、情人を愉しませるためにまとわれるようになっていた。
4.
鬼藤さんのところ、行かないの?
息子はきょうも、声をかけてくる。
いつもお世話になっているんだから。ないがしろにしたら、いけないでしょう?
一点の曇りもない息子の笑みに。
美津子はきょうも、装っていた。
一周忌がすんだとき。
美津子ははじめて、喪服を脱いで。
金ボタンのついた、オフホワイトのジャケットに。
おなじ色の、ひざ上丈のタイトスカート。
髪はきりりとアップに結って。
いつも餌食にされてしまう首筋を、見せびらかすようにいさぎよく、じかに外気にさらしている。
タイトスカートの下に装う、ナイロンストッキングは。
シリコンストッパーのついた、太もも丈で。
かすかなひきつれひとつない、真新しいナイロン生地が。
てかてかとつややかな光沢で、引き締まったふくらはぎの肉づきを、薄っすらとなまめかしく、包んでいた。
うん。似合うよ。母さん、素敵だ。
息子は邪気のない笑みをはじけさせて、まるで淑女をエスコートするみたいに、手を取ってくれている。
5.
鬼藤さん、まえから母さんのこと、好きだったんだってね。
だからずっと、事業に成功してからも。独身のままだったんだってね。
父さんもちゃんと、そのことをわかっていたんだね。
久しぶりに見る、懐かしい筆跡は。おどろおどろしい文章をつづっていたが。
いまの美津子には、赦免状のように救いに満ちたものだった。
わたしがいなくなったあとは、鬼藤――氏の所有になるように。
鬼藤兄はわたしが生涯もっとも信頼し尊敬する人物だから、貴女をゆだねてしまうことに屈辱を覚えない。
手紙をノボルに託するのは、ひとつには息子の協力あってこそ愉しめる、人目を忍ぶ恋路になるからということと、
さいしょの一回は、凌辱するように愉しみたい・・・そんな鬼藤兄の希望をかなえてやりたいからなのだ。
―――お写真のまえに、線香を絶やさないようにするわ。
―――いちど、ぜひうちにお招きして。
―――お父さんのまえで・・・していただくお約束、しているんだもの。
そうそう。ぜひ、そうしてあげて。そのほうが、父さん喜ぶから。
息子の邪気のない顔に、救い以外のものが込められていることに。
美津子はどこまで、気づいていただろう?
6.
美佐江さん?
こんど、体あかないかしら。
いつもわたくしがお世話になっている鬼藤さんのことなんだけど・・・
あなたに、ご執心・・・なのよ。
そんなわたしの言い草に。
嫁は意外なくらいあっさりと、頷いていた。
さいしょは、喪服がいいわ。
わたしもお揃いで、喪服着ていくから。
喪服フェチなんですか?鬼藤さんって方。
さあ・・・
わたしはあいまいに応えると、息子の家の玄関を押し開けていた。
嫁を、不道徳な禁断の淵に堕としてしまうために―――。
さいしょにお逢いしたのは、お邸だったけれど。
ここだと、周囲の目もあるから・・・って。
それからは、とある古びた宿を指定されていた。
夜は盛り場になるらしい、昼は人通りのすくない、
ひっそりと白茶けた街なみをくぐり抜けて。
一見ただの住宅街としか写らない一角に。
塗料のそげ落ちた、木目むき出しの塀をもったその家は。
周囲の風景に溶け込んで、いともひっそりと佇んでいた。
半世紀はまえから営業しているらしい、その宿を。
人は、「連れ込み宿」と、呼んでいた―――。
ああっ。うん・・・うぅうんっ。
嫁ははしたない声を洩らしながら、
まだ、隣の布団のうえ、狂うことをやめようとしない。
息子の嫁というつつましやかな体面をかなぐり捨ててしまうのが、あっけないほどすぐだった。
脱がされた黒のスカートは、部屋の隅にきちんと折りたたまれていて。
腰から下に身に着けるのは、薄々のガーターストッキング一枚だけ。
太ももを横切るガーターは、毒々しいレエス模様に囲まれていて。
淑やかな礼装の下に押し隠さしているのが、研ぎ澄まされた女体なのだと告げているようだった。
お手本ですよ。
念のため・・・と、鬼藤に縄をかけられて。
ぐるぐる巻きにされた喪服姿の嫁は、部屋の隅に引き据えられて。
夫としか経験のなかった秘めごとを、嫁のまえ見せつけるという体験に。
いざ、ブラウスに手をかけられるとき、ひどく惑乱してしまったけれど。
齢のせいか。もともと夫が淡泊だったせいか。
一回戦で、果ててしまうと。
男はすぐに、縛(いまし)めを解かないままの嫁に覆いかぶさっていって。
嫁はさすがにかぶりを振って、必死にいやいやをしながら。
それでもいちど、男の唇をまともに受け止めてしまうと。
そのまま、ヒルが吸いついたように、離れられなくなっていって。
お嬢さんのような気品を漂わせた黒のフレアスカートを、畳のうえに乱していった。
息子の嫁を、堕落させたというのに。
わたしの胸に、罪悪感はない。
だって―――
それがあの子の、希望だったのだから。
母さん。鬼藤さんと、ぐるになって。
美佐江を堕としてくれないか?
ボク、美佐江がほかの男に抱かれるの、見てみたいんだよ・・・
もっと抵抗したほうが、よかったかしら。
こんなこと。さすがに初めてだったし・・・わたしの演技、へたでしたよね?
無邪気に顔を覗き込んでくる嫁も、さすがにカンが鋭かった。
喪服を着ていくように―――
そんなわたしのリクエストで、すべてをさとってしまったらしかった。
7.
紫のジャケットに、ワインカラーのインナーを胸元から覗かせて。
ジャケットとおなじ色の、ひざ上丈のタイトスカートの下、
鮮やかな発色をした黒のストッキングが、ハイヒールの足許を、凛々しいほどに引き締めている。
そんなひきたつ服装をして。いったいどこへ行くと、いうのだろうか?
妻はわざとのように、ボクには行き先を告げようとしない。
帰り、遅くなるけど・・・あなたは夜勤、だったわよね?
強気の切り口上の語尾が、ちょっぴり震えを帯びているのを。
敏感になってしまった耳は、聞き逃したりしなかった。
ああ・・・ゆっくり愉しんでおいで。
まるで同窓会かなにかに出てゆく妻を、送り出すようにして。
浮気に出かける妻を、送り出してしまうのが。
月に二度・・・いや週に二、三回は、逢っているはず。
そのすべてを、うかがうことができなくても。
ボクの胸の奥、淫らな血をドクドクと脈打たせるには、じゅうぶんだった。
玄関を出ると。
向こうの四つ角に佇んで、妻を待ち受けているのは、母。
お気にいりの真っ白なジャケットに、金ボタン。
嫁と申し合わせたように、タイトスカートの丈はひざ上丈で。
薄墨色のストッキングだけは、喪服のスカートを着けていたときと、変わらないように見えたけど。
白の服には印象のきつ過ぎる、あざやかな発色をしたナイロンの黒糸は。
夫を弔うには不自然なほど、毒々しい光沢をよぎらせている。
母・美津子。五十七歳。妻・美佐江。三十三歳。
”アナザー・マリッジ”とでも呼びたくなる、第二の春を。
そろって愉しみはじめた嫁と姑は。
柔らかな陽射しのなか、我が身を活き活きと引き立てている。
終章
はっ、はっ、はっ、はっ・・・
ぜぇ。ぜぇ。はぁ・・・はぁ・・・
生ぐさいほど漂ってくる、ふた色の呻きは。
華やかに装ったスカートの奥深く、侵してくる肉棒に。
しんから焦がれ抜いている。
すっかりたぶらかされてしまった、妻と母。
そして、それ以上に深く惑ってしまっている、ボク。
けれども惑っているのは、ボクだけではないらしい。
「連れ込み宿」と呼ばれたその宿の。いちばん奥まった一室は。
ふしぜんなほど、きらびやかに飾り立てられていて。
その宿を知るものたちのあいだでは、「殿様部屋」と、呼ばれていた。
いちばん特徴的なのは。
庭先に、部屋からも存在がわからないような隠し部屋がしつらえられていて。
細めに開いたすき間から、なかを覗き込めるようになっていること。
ほら。やっぱりガーターストッキング穿いてりるじゃないか。
見当違いなところで口を尖らせるボクは。
なよなよ、きりりと。
ふたりの足許を淫靡に染める薄いナイロンに、視線を囚われてしまっている。
貴方の好みに、合わせただけじゃない。
妻に聞こえたらきっと、そんなふうに強弁されてしまうだろうけど。
さっきから。
ズボンの下に、隠すように身に着けている薄手のナイロンが。
優しくしなやかな締めつけ感を、ボクの太ももにギュッと伝えてくる。
ボクにはすこしサイズの小さい、パンティストッキング。
もうパンストは履かないかも。・・・っていう妻に、おねだりをして。
まだ淑女だったころに身に着けていたはずのパンストは、
淡いすね毛の浮いた男の脚にまとわれてさえ、つややかになまめかしい透明感をよぎらせている。
な?愉しいだろ?
ふと洩れてきた声に、隣を振り返ると。ほかに客はいない。
けれども明らかに耳にしみ込んでくる声は、聞き覚えのある、懐かしい声。
鬼藤さんが、美津子に目をつけている。そう感じたとき。
どういうわけか、逆らいがたく。ひどくどきどきしてしまったのだよ。
だから、鬼藤さんの望みをかなえることは。
父さんのひそかな願望も、かなえることになっていたのだよ。
きみはわたしの願いを、とても素直に聞き入れてくれて。
母さんのことを、綺麗に堕としてくれたね。
自分の母親を、エスコートして。父親以外の男の獣欲に、まみれさせてしまう―――
わたしの願いだから、引き受けてくれたことだろうけど。
あのとき・・・お前もドキドキしていただろう?
きっと。たぶん美津子だけじゃすまないだろうって、あのとき感じてしまったのだよ。
自分の妻を、犯されてしまうのは。
母親のとき以上に、昂るだろうから。
自分から、機会をもうけて。母親の情人に、妻までも征服されてしまう。
そんな境遇を、お前はきっと、ドキドキ昂りながら、受け入れてしまうに相違ない。
お前には、父さんとおなじ血が流れているのだから・・・
初めての法事の帰り道
2009年01月04日(Sun) 19:34:05
おいおい。見ろよ。来たぜ?
男どもの囁き声が、ここまで聞こえてくるようだった。
美由紀は母親と、年若い叔母たちと。
まだ稚ない妹の、まゆみちゃんと。
五人連れだって、村はずれの寺へと、歩みを進めていた。
まだローティーンのまゆみちゃんは、真っ白なハイソックスを履いていたけれど。
それ以外の四人は、申し合わせたように、黒のストッキング。
黒一色の礼服姿の母たちとちがって制服姿の美由紀ですらが、
ふだん履きなれない黒のストッキングに脚を通していた。
そう。きょうは、身近から去っていった父の、法事の帰り道。
まえの三人は、母娘だな。
後からくっついてくるふたりは、べつべつだろう。
女性ばかりの一行を木陰から盗み見ている人影のなか、ごま塩頭のやつが呟いた。
よくわかるな。
頭だったやつが、感心したようにつぶやき返した。
彼は人影のなかで一番若かったけれども。
ほかの者たちは終始、彼のオーラに押されぎみのようだった。
なにしろ・・・
ごま塩頭は、得意そうにつづけている。
顔つきが似ているから、親族だってことはわかるんだが。
わしが目ぇつけたのは、ストッキングの色あいさ。
まえの二人は、同じ薄さだろう?
たぶん母娘で、おんなじやつ履いているんだろうな。
いまどきの女学生は、ストッキングなんか履かねぇから・・・
ハイソックスのお嬢ちゃんは、お姉さんと手々つないでいるからな。
あの三人が、母娘だ。
後ろのふたりは・・・母親の姉妹かな。
面白ぇもんだ。
いちばん年配の女にかぎって、すけすけに薄いやつ履いてやがらぁ。
おばちゃんたち、寒くない?
見あげるようにして後ろを振り返ったまゆみちゃんに。
そうねぇ。寒いわね・・・
季節がら、コートがあってもおかしくないころ合いだったのに。
女たちはだれもが薄着で、帰り道を遮るように吹き寄せてくる木枯らしが。
だれにもすこし、身にこたえはじめていた。
ごめんなさいね。つきあわせちゃって。
後ろを振り返って軽く目を伏せた艶子夫人に。
姉と妹とは、かぶりを振って。
いいじゃないの。あの人の希望なんだから。
艶子の夫が書き残した手紙には、さいしょの法事のときには、なるべく薄着で来るように・・・そう書かれていたのだった。
おぉ、いい感じだねぇ。
先頭の女が、後ろの連れを振り返ったとき。
陽射しを照り返して影を帯びた首筋が、キュッと浮き上がる様子に。
木陰の男どもは、ひっそりとしたどよめきをあげている。
あれは、若後家だろう。
足首の締まり具合も、なかなかだね。
いや、後ろの女の、あの色っぽい腰つきも捨てがたい。
じゃ~、上のお嬢さんはわしがいただくかな。
わしは、いちばん後ろの年増女だね。
お前ぇ、すけすけに薄い黒の靴下に目がないね・・・
仲間うちの下品な応酬に、うすら笑いがくぐもった。
残りものに、福ありかな。わしはそれじゃあ、あのお嬢ちゃんをいただこう。
真っ白なハイソックス、真っ赤に汚してしまおうかね。
ざく、ざく、ざく、ざく・・・
どこまでもつづく砂利道が、木立ちのあたりで区切れている。
そこから先は、丈の低い下草だけの、柔らかな地面―――。
ハイヒールで歩き疲れた女たちが、かすかな安堵を浮かべたとき。
母親を追い越してひと足先を歩いていた美由紀が、ふと立ち止まった。
木立ちの中で不埒な意図を抱いている黒影どもに、やっと気がついたのだった。
ようやく、お気づきのようだぜ。
じゃ~、それぞれツーショットで、迫ってみるかな。
男どもはいっせいに、立ちあがった。
な、な、なにするんですっ!?
艶子夫人は取り乱したように二、三歩まえに駈け出して、娘たちを背中でかばった。
待ったぜ。あんたたちみんなに、用があるんでな。
ど、どんな御用が・・・
かすれた声をくぐるように、男どもが女たちを取り囲むようにして、前に出ると。
母親を押しのけるようにして前に飛び出たのは、いちばん稚ないまゆみちゃんだった。
ねぇ。ゴクゴクするんでしょ?
舌足らずだが凛と言い放った声色に。
男どもばかりか、背後の女たちまで、黙りこくってしまった。
ゴクゴクする・・・って・・・
村に棲む女たちなら、だれもが分かりきったこと。
婚姻関係の枠を超えて、ひとたびせがまれれば、拒むことは許されない。
年端もいかないこの少女は、どうしてそれを、知っているのだろう?
美由紀は妹の肩を、ささえるように抑えながら。
あぶない。逃げましょ。
妹の耳に、囁いたけれど。
左右に結ったおさげを揺らしながら、少女はゆっくりとかぶりを振っている。
う・ふ・ふ・ふ。
どいつもこいつも、すべっこそうな黒の靴下、お召しなんだねぇ。
年配の伯母の、いちばん薄い黒ストッキングに目をつけていたやつが、
よだれを垂らさんばかりにして、にじり寄ってきたとき。
まゆみちゃん、あぶないっ。
稚ない妹の肩を強いて男たちの視線からそらそうとした。
制服のスカートの下に身に着けた薄々のストッキングが、ひときわキュッと締めつけてくるような気がした。
伯母たちも、初体験であるはずがない。
母も・・・口にすることさえなかったものの。
父親以外のだれかを相手に、夫婦の寝室から悩ましい声を洩らすのを。
早びけしてきたとき偶然、耳にしたことがあったのだった。
男たちは、よほど手慣れているのだろう。
すーっと女たちの集団に、寄り添うように近づいてきて。
年かさの伯母が、もうひとりの叔母が。母までもが。
ひとり、またひとりと、別々に手をひかれていって。
その場でまろび臥すもの。
だまって木立ちの影に、歩み去ってゆくもの。
それぞれに、一対一になって。
思い思いおおいかぶさってくる男どもの相手を始めていた。
母親だけは、羽交い絞めにされながらも。
娘たちに手をかけるのは、お許しください。かわりにわたくしが・・・とか言いながら。
うなじのひと咬みで、口をつぐんでしまっている。
母のうなじからしたたり落ちる赤黒い液体が、ぽたりぽたりと散って、足許の砂利を濡らした。
美由紀もべつのだれかに、肩をつかまえられていた。
後ろからだったので、顔が見えなかった。
大人の女たちが、程度の差こそあれ取り乱すなか。
まゆみだけがひとり、背筋をしゃんと伸ばして、自分の相手になる男の目を、まっすぐに見あげている。
どこから、吸うの?
まゆみの身体、まだ小さいから。
あんまりゴクゴク、やらないでね。
黒革のストラップシューズの足首を、つかまれると。
ぐるりとあたりを、見まわした。
周りの女たちは、あるものは首筋を噛まれ、あるものは黒のストッキングのふくらはぎを噛まれている。
母親の艶子夫人さえもが、黒一色のブラウスをびしょびしょにしながら、
砂利の上でストッキングを破らないように、注意深く腰を落としていくのだった。
年かさの伯母が、唇這わされたふくらはぎの周り、早くも薄いストッキングに伝線を走らせたのを見てとると。
ふーん、長い靴下、好きなんだね。お姉ちゃんのも、すぐ破られちゃうよ。
まゆみの冷静な目に、姉の美由紀までがどきどきしてしまっている。
薄々のストッキングが、太ももの周りを擦れるのが。
さっきからひどく、侵されてゆく皮膚の奥深く、淫靡な疼きを伝えはじめてきたのだった。
そんな・・・そんな・・・
心ひかれているクラスメイトのYくんが、想像のなか、眩しげな視線を美由紀に送ってくる。
Yくんに、合わせる顔がなくなる・・・
まだ手をつないだこともないクラスメイトのことを思い出して、美由紀はわけ知らず悩乱した。
キモチいいのー?お姉ちゃん。
真上に、まゆみの顔があった。
まだあどけなさの残る目鼻だちのなか、どこまでも冷やかな眼をしていた。
重たいプリーツスカートを、はぐりあげられて。
折からの木枯らしに、太ももがすーすーと肌寒い。
寒さが伝えてくる頼りなさを、おぎなうように。
ぬるりとした唇が、太ももに吸いついてきた。
薄手のストッキングごし、這わされた唇は。なま温かいよだれをたっぷり、含んでいる。
「やっぱり母親のやつと、おなじしたざわりだな・・・」
大人っぽい礼装のうえからじかにあてがわれる、なまの唇に。
少女は初めて、羞恥と裏腹の欲情を自覚した。
いちど火のついた欲情は、消し去ることができなかった。
おおいかぶさってくる、丸太ん棒のように逞しい毛むくじゃらの脚に。
黒のストッキングに透ける白い脚を、じぶんのほうから巻きつけていった。
姉さえもが、堕ちてしまうと。
じぶんから、体操座りをして。
自分の相手をしようという男のまえ、まゆみは白のハイソックスの脛をお行儀よく伸ばしている。
ちょっと待ってね。
ずり落ちかけたハイソックスを、きちんと引き伸ばしてから差し出す、落ち着きぶりだった。
娘らしい曲線を描きはじめた脚の輪郭を映すように。
ハイソックスを縦に流れる太めのリブが、陽射しを受た鮮やかな照り返しに、浮き彫りになっている。
その上から、じぶんの祖父くらいの年かっこうの男が、しわくちゃな唇をあてがってくるのを。
少女はくすぐったそうに、笑みながら。
真新しいハイソックスのふくらはぎを、自分のほうから押しつけてゆく。
みぃんなパパの、お友だちなんだよね?
いつの間にか、背後からまゆみの肩を支えていた人影を。
ふりかえりざま、少女はイタズラッぽく、笑いかけた。
ほ~ら、血がにじんできた。ひどいなぁ。大人って、お行儀よくないなあ。
まゆみが落ち着いたら、首筋を噛んでくれるのは・・・パパなんだよね?
木陰のなかにいるときから。
妻の艶子や、娘の美由紀、それにまゆみまでもが、欲情の対象にされて。
―――おぉ、いい感じだねぇ。
―――あれは、若後家だろう。
―――足首の締まり具合も、なかなかだね。
―――後ろの女の、あの色っぽい腰つきも捨てがたい。
―――じゃ~、上のお嬢さんはわしがいただくかな。
―――わしは、いちばん後ろの年増女だね。
―――お前ぇ、すけすけに薄い黒の靴下に目がないね・・・
―――真っ白なハイソックス。真っ赤に汚してしまおうかね。
だれもかれもが、わけへだてなく。官能の対象としてだけ、受け入れられて。
通せんぼされて、取り乱して、ひとりひとり、まろび臥してゆく。
そんな光景を、見せつけられて。
いちばん年端のいかない、まゆみだけは、私が介添えしよう・・・と申し出たのは。
もう、きっと。人格を骨抜きにされて、血を吸う種族として蘇ってしまったもののさがなのだろう。
仲間入りをしたあいさつ代わりに、身内の女を差し出す―――
そんなまがまがしいはずのしきたりに、ためらいもなく手を染めてしまっていたのだから。
まゆみの血は、きれいなんだね。
輝くような、バラ色をしているんだね。
父親のあやす声を、子守歌のようにうっとりと聞きながら。
この人のぶんが、おわったら。
パパにもたっぷり、分けてあげるね。
みんなおいしそうに、ママやお姉ちゃんやおばちゃんたちの血を吸っているんだもの。
まゆみも、負けないようにしなくちゃね。
妻と娘を吸われた家
2009年01月04日(Sun) 18:30:28
つかまえてきたぞ。あとは好きにするがええ。
村人たちは、ひとりの男を引きずってくると。
玄関先に、引き据えて。
ぐるぐる巻きにされて身動きもできない身体を、荒々しくごろりと転がした。
奥さんのかたきだ。埋めちまっても、だれも文句はいわねぇからな。
まぁそのまえに、ゆっくりと。
奥さんやお嬢さんの最後のようすなど、聞いておくがいいだろうよ。
ぞんざいな声色には、彼らなりの共感といたわりがこめられていた。
去ってゆく村人たちの足音が遠のいてゆくなか。
息子の恭司と父親の恭太郎は、お互い探りを入れ合うように。
しばしのあいだ、じいっと顔を見合わつづけていた。
恭太郎の夫人の陽子が襲われたのは、金曜日のことだった。
長女の香苗が、母親とおなじ運命をたどったのは、つぎの日の夜だった。
怯えきった末っ子のまどかが、セーラー服姿を血に染めて、血液を吸い尽くされて発見されたのは、
週明けの明け方のことだった。
都会から移り住んできて、三か月。
ようやくあたりのようすも、人の気風も、わかりかけてきたときだった。
吸血鬼が、出没する。
めったなことでは命までは取らないから。
村人たちは、見て見ぬふりをしている。
そんな呟きを、ここに来て長いおなじ転勤族の同僚から耳にしたのを、真に受けるまでにはなれなかったが。
さいしょから、奥さんに狙いをつけていた。
男は目を伏せたまま、自分から語り始めている。
きれいだったからな。都会育ちで、こぎれいにしていて。
わしは、惚れちまったんですよ。いけないことだって、知りながら。
さいしょの晩。
わしは奥さんを誘い出して、村はずれの納屋の近くまで、連れ出したんだ。
―――いったいどういうふうに、誘いかけたんだね?
恭太郎の声は、わなわなと震えを帯びている。
あんたが夜勤のあいだにけがをして、村長の家で休まされているって、報せに走ったんだよ。
服も目当てだったからな。
村長の家って言や、こぎれいな格好してくれるとおもってな。
道案内して納屋のほうに連れて行ったら。道がちがうって、言い出して。
そこで・・・想いを遂げちまったんだ。
わかってもらえないと、思うけど。
四十代の人妻の生き血って、熟れていて。とても旨いんだよ。
―――それだけじゃ、足りなかったっていうんだね?
あとを促したのは、息子のほうだった。
ああ。喉が渇いて渇いて・・・
おれの身体のなかをめぐっている奥さんの血が、娘さんの血を呼んでいたんだね。あれは。
―――か、勝手なことを・・・
思わず拳を握る父親を、押しとどめて。
恭司はなおも、尋ねていた。
―――姉さんにするか、まどかにするか。どうやって決めたの?
男は息子ほどの年かっこうの恭司の質問には応えずに、かまわず先を続けていた。
つぎの日の夜は、下の娘さんを襲ったんだ。
襲ったのは、部屋ん中だった。
―――それは、まどかのことだろう?そのまえに、香苗姉さんの血を吸ったんだよね?
そうだったっけな。
日に三人は、襲っているから。
なん日かすると、記憶があやふやになっちゃうんだよ。
ああ、そうだ。思い出した。
そうそう。つぎに襲ったのは、上の娘さんだった。
お袋さんの通夜だから、黒のストッキングを履いていたっけ。
黒のスカートから伸びた脚が、とてもきれいで。
庭先に隠れていたら、廊下の向こうから歩いてきて。
なにか、ものを取りにきたようだったな。
―――香苗が姿を消したのは。弔問客が立ち去ったあと、恭太郎がささいなものを取りにやらせたあとだった。
しまった・・・
恭太郎が目を伏せて涙声になるのを。
男も恭司も、うつろな目で見守っている。
手を引いて、庭先におろしてやって。
顔しかめて、いやがっていた。
わしと、もうひとりの相棒と。
ふたりがかりで、抑えつけて。
わしは首筋に。相棒は見境なく、二の腕に食いついていたっけな。
―――発見されたとき。半袖のブラウスを着た香苗の二の腕には、くっきりとした噛み痕が残されていた。
二の腕なんか噛んだって、ほとんど血なんか採れやしない。
そいつはまだ、血を吸うのはほとんど未経験だったから。
ともかく手近なところを噛んで、喉の渇きをなんとかしたかったんだな。
わしはそのあと、首筋につけた傷を、相棒に譲ってやって。
そのかわり、黒のストッキングの脚を噛んでやったのさ。
いちど、都会のお嬢さんの脚から、噛み破ってみたくってね。
抑えつけた脚は、身じろぎひとつできないで、わしに血を吸い取られるままだったけれど。
もう片方の脚は、しばらくじたばたしておったな。
なにしろ、ふたりがかりの吸血だ。
そのうち耐えられなくなって、だんだん静かになっちまったけど。
―――どうしてまどかまで、やってしまったの?
恭司がおそるおそるのように、訊ねると。
相棒は、もうひとりおってな。
そいつがどうしても、若い子の血を吸いたがっていたのだよ。
そうなったら、もう下のお嬢さんしか、残っていないじゃないか。
仕方がなかったのだよ。
わしひとりでは、なかったからの。
―――まどかはその晩、明日はがんばって学校に行くんだって、言い張っていた。
真夜中過ぎに、たずねていったら。
てっきりもう、ネグリジェ一枚になっちまったと思い込んでいたのに。
セーラー服を、着ていなさって。
都会の女って、肝心のときにはみんな改まったなりをするんだなって、妙に感心しちまった。
わしらが血をねだると、泣きじゃくって嫌がっておったが。
相棒のほうが、うまいこと言いくるめて、なだめてやると。
とうとう目をつぶって、身体の力を抜いちまった。
ふたりして、相談ずくで。
相棒は、首筋を。
わしはお嬢さんの脚からいただいた。
そういえば、奥さんを頂戴した時も、黒のストッキングを履いていなさった。
三人目の脚も、やっぱりおなじようにいただきたくっての。
ふたりがかりで、やっぱりちゅうちゅうと、犯すように噛んじまったのさ。
もうちょっと、齢がいっても、面白かったろうな。
わしの好みにしては、ちょっと細かった。
けど、やっぱり処女の血はこたえられねぇ。いいお味でしたよ。
その夜の相棒は。上のお嬢さんのときとは、別のやつで。
几帳面なやつだったから、すみからすみまで、一滴余さず、お嬢さんの血を吸い尽くしちまったんだ。
お嬢さんの柔らかい身体の、あちこちに噛みつきながらね。
わしはわしで・・・
奥さんと、上のお嬢さんと、下のお嬢さんと。
三人ながら、わしに黒のストッキングの脚を、馳走してくださったが。
だれもがおそろいで、同じやつを履いていらしたようだね。
あの薄黒いパンスト、まだまだひっちゃぶいてみたかったな・・・
―――教えてよ。生き返らすことができるんだろ?どうすればいいんだい?
わしを埋めないのか?奥さんやお嬢さんがたを辱めた、悪いやつなんだぜ?
―――いや・・・それよりも。母さんや姉さんやまどかが帰ってくるほうが大事だよ。
そうか。お坊ちゃんはなかなかお悧巧だね。
―――なにが悧巧なものか。こんなやつと取引きするなぞ・・・
―――父さん、もう世間体にこだわっている場合じゃないじゃないか。みんなが帰ってこれるって瀬戸際なんだから。
息子の声に、父親は口をへの字にして押し黙った。。
―――いいから。ボクにまかせて。ね?どうすれば三人を返してくれるの?
そうだね。三人が帰ってきたら・・・さしあたっては、あの晩のリプレイをお願いしようかな。
―――いいとも。喜んで約束するよ。
誓約書にサインすることまで求められて。
そんな恥知らずなものにサインなど・・・と渋る父親を。
紙切れ一枚のことじゃないか・・・と息子が説得して。
ふたりはとりどりに、ペンをとって、名前を書き入れた。
私 (世帯主氏名)は、吸血鬼である貴兄に若い女性の血液を補給するため
妻 陽子と長女 香苗 及び 次女まどか の三名を提供いたします。
一、貴兄は、致死量に達しない限りの血液を両三名から日常的に摂取し、
性的交渉を含めた親密なる交際を永続的に認めることを誓約いたします。
一、(世帯主氏名)及びその長男(氏名)は、この制約に基づく貴兄の言動に一切の異を唱えることなく、
村内におけるいかなる風評をも甘受し、悦びをもってこれを受け入れます。
一、貴兄と当家の女子家族との会見のさいは、正装をもって応接させます。
一、会見に際して生じる衣装への凌辱については、これを甘受し、つねに新調するよう努めます。
一、貴兄への血液提供に対しては連帯して協力し、不足した血液については他の親族を含めた対応を取ることを誓約いたします。
一、未婚女子二名及び将来発生するであろう長男の配偶者に対する初夜権を認めます。
―――ボクのほうが、すこし不利ですね。まだ見ぬ花嫁まで、凌辱されちゃうんだから。
さいごの条項に、ちょっと顔をしかめながら。恭司はそれでもさらさらと、ペンを走らせていた。
きゃあっ。
やめてえええっ。
三日後の夜。
灯りの戻った邸からは、女たちの悲鳴が庭先まで、漏れてくる。
連夜のことだった。
けれどもその悲鳴は、どこか愉しげで。
身もだえする気配や、脚ばたつかせる音さえも、悦びに響いていて。
くすぐったそうなはしゃぎ声と、はじける嬌声。
あなた、見て・・・見てぇ。血を吸われちゃう~。
日頃のしとやかさとは打って変わって、はしたない声をあげるのは、陽子夫人だろうか。
やだー、お嫁入りまえなんだから。彼氏にばれちゃうっ。
どこか羞じらいをみせるのは、香苗嬢の声だろうか。
もっと・・・もっと吸ってっ。姉さんよりもひと口多くっ。
稚なげな声に露骨な愉悦をみせるのは、まどか嬢だろうか。
男ふたりは、あからさまな照明の下、身をかがめるようにして。
夫婦の褥にまろばされる妻の痴態を、目に灼きつけようとする父親を。
父さん、こっちこっち、もっと気を利かせようよ。
息子はあの晩のときのように、たしなめている。
まどかを襲ったの。父さんだったんだね?
息子の口から洩れる、信じられない言葉に。
父親は短かく、頷いていて。
香苗も、処女だったんだな?
姉の生き血を喫うことで初体験を果たした息子に、すこしだけ父親らしい問いを投げている。
さいしょの晩。
偽りの報せに戸惑う母親を、恭司はせきたてるようにして身支度させて。
さすがに納屋のなかまでは、一歩も入ることができなかった。
相手の男の罪滅ぼしのように。すこしだけ口にした、母親の血は。
ほんとうは空っぽになってしまっている身体のすみずみにまで、活き活きといきわたるバラ色の液体に、目ざめてしまって。
じぶんのほうから、せがんでいた。
―――母さんがこんなふうになっちゃったら、こんどは姉さんが黒のストッキングを履くんだね。
つぎの晩。
恭司はもっと、積極的だった。
蘇った姉娘は、まだくっきりと噛み痕の滲んだ二の腕を見せながら。
しばらく半そで、着れないじゃない。
ちょっぴりだけ姉らしい文句に、口をとがらせていた。
職場の同僚の妻から、生き血を吸い尽くされてしまっていた父親は。
かねて狙っていた妻の血ばかりか。年頃の娘の血まで、吸いそこなって。
妻と長女をモノにした、ほんらい仇敵のはずの男と、ぐるになって。
親類の家に泊まらせた息子の留守のうちに、妹娘を牙にかけて。
几帳面な仕事ぶりどおり、一滴あまさず吸い取ったのだった。
生き返った女たちは。
自分たちを牙にかけた夫や息子、父や兄弟にあてつけるように。
男家族の制約相手に、すすんで手の甲をゆだねていって。
公然と、情交さえも果たしていって。
父と息子の望むまま、我が身を提供する愉しみに、堕ちてゆく。
あとがき
なんだか、長たらしいだけになっちゃいましたね。(^^ゞ
ごめんなさい。m(__)m
礼儀正しく、最敬礼。
2009年01月04日(Sun) 17:13:57
その少年たちは、夕方いきなりやってきた。
四人も五人も、群れをなして、ずかずかと、夫婦の寝室まで入り込んできて。
引きずり込まれた女房は、夜中まで閉じ込められて。
カギのかかったドア越しに聞こえる音だけが、わたしの脳裏を狂おしく染めた。
数時間経過して。
開かれたドアから、一列になって。
意気揚々と現れたあいつらは。
先頭のやつは、女房の着ていた白のブラウスを。
つぎのやつは、紺色のスカートを。
そのつぎは、黒のストッキングを片方ぶら下げて。
わたしに見せびらかすようにして、視界のまえによぎらすと。
ご馳走さま。
そのときだけは、礼儀正しく最敬礼をした。
ブラウスも、スカートも、力づくで剥ぎ取られた裂け目をあらわにみせていて。
黒のストッキングも、ほとんど切れ端状態になっていた。
ちょっと遅れたもうひとりは、もう片方のストッキングを。
さいごに出てきたやつは、ひもの切れたTバックを。
ひらひらさせながら、現れた。
すみません。本当に、お世話になっちゃって。
でも、奥さん悪くないですからね。なにも後ろめたいことなんか、していなかったですからね。
ミエミエの弁解を、真に受けたふりをして。
気をつけて帰るんだよ。
わたしのひと言に、さいしょに出てきた三人も合わせて。
まわりじゅう、わたしのことをぐるりと取り囲むようにして、礼儀正しく最敬礼。
お礼にこんど、お袋のこと連れてきますから。
あっ、オレ妹連れてきますから。
じゃあうちは、姉貴のやつを・・・
ボク・・・奥さんにいっぱいお世話になったから。彼女紹介しますね。
あけっぴろげな村のつきあいは。
女の家族を関係させると、かならずお返しがつきものになっている。
ひとりにやにやしている、頭だったやつだけは。
とうとうさいごまで、なにも言わなかったけれど。
わたしを含め、居合わせただれもが納得してしまっている。
そう。
影の村長といわれた彼の父親は。
どこの家庭も、いちどは訪問を歓迎していたのだから。
小父さん、遠慮しないでね。奥さん、部屋で待っているってさ。
小憎らしいことを口にするその口許を、軽くひねりあげると。
あははははっ。
邪気ひとつない哄笑を背に、わたしは寝室をさしている。
昂る股間に、胸わななかせながら・・・
身内の血を吸血鬼に勧めるときの礼句集
2009年01月04日(Sun) 04:58:19
夫が妻を
「お目にとまってしまいました?う~ん、悔しいな。ドキドキしちゃうな・・・」
―――本音はさいご?^^
「最愛の妻を、貴方と共有したい」
―――ばっちり、キマッたかな?(笑)
「さしあたっていちばんアテになる若い女の血って、きみのしか思いつかなかったんだ」
―――う~ん、思いつきであてがうのは、奥さんに怒られるような気が。(^^;)
「ん~、悔しいな。家内をむざむざ奪られちゃうなんて、とっても悔しいな~。あっ、ダメだよ。エッチなことしちゃ。ほら、そんなにロコツに身体をくっつけないでっ。ちょっとだけ、ちょっとだけだからね。気絶するまで吸っちまっちゃ、ダメだからね。だいじょうぶ。お前は目をつむっていなさい。そんなに痛はしない約束なんだから。・・・でも、ガマンできなくなったら、ボクを呼ぶんだよ」
―――熱演ごくろうさまです。^^ ほんとはさいごに、呼んでもらいたい?(笑)
妻が夫を
―――奥様も、吸われっぱなしではいられません。(笑)
「えっ?貴男の奥さんと、うちのひととを?主人は文句ないでしょうけど・・・あたしがどうかな?(^^メ)」
―――引き込んでおいて、嫉妬して。女心は複雑?^^;
「あなたとのことを黙認する、口実さがしをしているみたい・・・」
―――う~ん。そういう手もあったのか・・・
「あのひとのこと、黙らせて…」
―――怖すぎる・・・
花婿が婚約者を
「まだ・・・処女ですヨ。^^」
―――こら~。(笑)そんなふうにそそのかしちゃって。・・・悪いやっちゃ。^^
「彼女の身持ち、貴男の牙で確かめてもらいたくって」
―――もっと自信を持ちましょう。(^^)/
「・・・手を握るまでにしておいてくださいね」
―――純情・・・ですな。^^
「もしもガマンできなくって、彼女のパンティ脱がせちゃったら・・・あとでナイショでボクに譲ってくださいね」
―――アブナイ交換条件です。バレたらコロサレます。^^
姑が嫁を
「当家のしきたりでございます。×子さんにも、早く馴染んでいただかなければ」
―――これでは息子も、逆らえない?(笑) 「馴染んで」が「染み込んで」に見えるのは、気のせいですよね・・・?
「齢の順ですよ♪」
―――お姑さんの貫禄ですな。嫁も姑もおそろいで、明るくウ・ワ・キ♪^^
「若いかたのほうが、貴男も愉しいでしょう?」
―――あっ、図に乗ったらいけませんヨ。甘えるような上目遣い、怖~い光を宿しているかも。^^;
嫁が姑を
―――お嫁さんも、「反撃」です。^^
「少しでもお若いうちに、味わっていただきたくて・・・」
―――あとで、ひと荒れきそうです。 (((^^;
「お義母さん、これでわたしの浮気のことだまってくれるかしら~」
―――きょうからは、同じ穴のむじな?
「お義母さま?法事のあと、愉しいことがあるんですの。ご一緒しません?おそろいの黒のスーツで。もちろん、ユウタさんやお義父さまには内緒ですよ~。^^;」
―――きっとこういう話にウキウキしてついていく、理解のあるお姑さんなんだと思います。^^
母が息子を
「あの子にだけは、私の浮気をわかってもらいたくて」
―――ダメです。そういう誤魔化しは。^^;
「・・・あの子が、覗きたがっているんです・・・」
―――たぶんトラウマになります。息子の結婚遅れます。^^;
「あなたもお嫁さんの番がまわってきたときは、片目をつぶってあげてね」
―――う、ふ、ふ・・・。
母が娘を
「わたしがさきに、お手本を見せますから・・・」
―――ママの性教育・・・ですな。^^
「怖かったら・・・手を握っててあげる」
―――優しいお母様ですね。^^ さあ、逃げちゃわないように、肩をグッとつかまえて・・・。^^
「ヘンなことされないように、わたしがついててあげますからね」
―――お嬢さん、じつはそちらを期待していたりして?(笑)
娘が母を
「ママの血も、あたしとおなじ香りがするかも・・・ね♪」
―――ちょっぴり甘えて、乙女チックに・・・
息子が母を
「パパにだけは・・・ナイショだからねっ」
―――覗かせてもらうのと、交換条件?^^;
兄貴が妹を
「彼女・・・この世でただひとり、ボクとおなじ血をもっているんですよ」
―――自分の血の味を気に入ってもらったお礼です。
「×美のやつ、きょうでセーラー服着るの最後なんだぜ?いいのかな~?今日じゃなくって・・・」
―――制服フェチの吸血鬼には、殺し文句?^^
妹が兄貴を
「いちばん頼りにしているお兄ちゃんに、わたしのことをわかってもらいたいの」
―――仲良し兄妹・・・ですね。^^
「兄貴の彼女、あたしよりもかわいいんだよっ。^^」
―――将を射んとすれば・・・ですね。怖い妹さんです。^^;
妹が兄貴の彼女を
「兄貴のこと、誘っておいて。ほんとは彼女のほうが気になるんでしょ~?いいよ、あたしが連れて来てあげる」
―――引き込んでいますネ。^^
「お兄ちゃん、あたしのこと紹介しといて彼女だけ取っとくなんて、ズルイッ!」
―――それは、お兄ちゃんズルイ。^^
「お姉ちゃ~ん・・・いっしょに処女捨てちゃおっ♪」
―――悪い妹です。(笑)
姉が妹を
「あたしが卒業しちゃったら、M枝ちゃんのことをよろしくね♪彼女、中学にあがったら黒のストッキング履いて学校行くんだって~」
―――はい。お姉ちゃんのときと同じくらい、びりびり破っちゃいましょう。^^
「○美ちゃん、あたしよりも美人だよ~」
―――姉妹そろっておいしくいただいた後は、美人の妹を紹介してくれたお姉さんへのフォローをきちんとね。^^
妹が姉を
「×子姉さん、来年お嫁に行くの。もう彼氏さんと、ヤッちゃってるかもっ♪」
―――ほ~ら、そんなふうにそそのかしたら、お義兄さまにウラマレちゃいますよ~。
えっ・・・お姉さんの身代わりになって弁償しますって?・・・あぶないあぶない。^^;
「えーっ!お姉ちゃんとは、まだなんだ。ほんとはお姉ちゃんのこと、気になっているんでしょ?わたし、呼んできてあげる~」
―――お姉さん想いの妹さんですね。^^
さいごに
―――よくまぁ、ここまでおバカなことを思いつくもんです。(われながら・・・)
さすがに、全部の組み合わせってわけにはいきませんが。(萌えない組み合わせもあるし 笑)
みな様。どうぞ仲良く、吸血体験をお愉しみくださいね。^^
1600話。
2009年01月03日(Sat) 06:21:43
昨晩新作をあっぷしまして、ふとURLを見ましたら、「1599」。
そうなりますと、今回は当然「1600」となるわけです。
よくも描いたもんだ・・・
読んでくださっているかた、いつもほんとうにありがとうございます。
年末年始に入って、”拍手”をたくさん頂戴しています。
以前の傾向としては、比較的新作に頂戴していたのですが。
このところ、旧作への拍手が目だっています。
たとえば、「重役室」。
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-46.html
先月の17日にふたつめの拍手を頂戴して以来、昨晩6つめの拍手を頂戴しています。
「不思議な派遣社員」も、11月18日に2つめの拍手をいただいてから、12月30日で5拍手め。
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-65.html
「危機・・・!(脱力ねたです)」も、12月23日に2つめをいただいて、昨日で第四の拍手。
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-251.html
ま・・・多いといっても、このレベルですが。(^^;)
どなたか、旧作を熱心に読み返してくださっているかたがいらっしゃるのでしょうか?
だとしたら、嬉しいですね・・・
密室のみそかごと
2009年01月02日(Fri) 23:39:47
外に出ると、満天の星。
寒風に凍えるように、心細げにまたたく星を一瞥すると。
まりあはふう・・・っ、と吐息をついた。
年の変わり目・・・といったところで。
じつは、なにが変わるわけでもない。
そんな思いは、歳月を経るごとに、実感として積み重なってくる。
ばさっ。
湯あがりの長い髪を、むぞうさに肩に流すと。
たった一枚身にまとったバスローブを、むぞうさに室内に投げ込んだ。
凍りついた空気に、いさぎよいほどに裸身をさらし。
くるり。くるり。
洗い髪をひるがえしながら。
しばしの間。だれも観客のいないはずの、ベランダ上の舞い。
星たちが、見ている。
空を流れる雲が、覗きこんでいる。
冷え切った空気が、素肌を侵してくる。
寒い。けれども、スッとする。
すべてをさらけ出すことへの快感が、女にすべてを忘れさせた。
でも・・・やっぱり寒いっ。
白い裸体を、あたりの暗闇に溶けるほどなじませてしまうと。
まりあはサンダルを脱いだ素足を逆戻りさせて、
そそくさと居間のじゅうたんへとすべらせた。
さっきから身にまとわりついた、不健全に暗い気分は、
きのうまでぶっ続けだった仕事が投げかけた影のせい。
それを、振り払おうとして。
シャワーにつかり切り、暗闇に浸かりきり・・・
しなやかに腕を振り、腰さえくねらせて。
それでも。あー、なにをやっても、振りきれない。
まりあの足は、しぜんと玄関へと向かっていた。
人どおりの絶えた、マンション前の道―――
ベランダ上の再現をしてみようかと、一瞬思いさえしたものの。
さすがに結婚前の女の理性と本能が。
そうした狂おしい衝動を引きとめた。
なにを羽織ってみようか・・・?
数分後。
毛皮のコートに身を包んだまりあは、重たい鉄のドアをばたんと閉ざして、
ハイヒールの足音を、だれ聞くひともいない夜道に響かせていた。
まりあが目指したのは、街はずれにあるネットカフェ。
いつも通勤途中に、横目で通り過ぎていたので。
入るのは、きょうがはじめてのことだった。
雑居ビルのエレベーターを、最上階まであがっていって。
開いたドアの向こう側から流れ込んできたのは。
かすかな煙草の匂いと、雑然とした人いきれ。
それに、ひそやかな喧噪。
ベランダから見おろした街は、あれほど静まり返っていたというのに。
ここには信じられないほどの、人影、人影。
だれもが互いに無関心を貫いて。自らへの無関心も、要求する。
たがいに視線を避けあって、己の世界に没頭する人の群れ。
いらっしゃいませ。
蝶ネクタイをした若い男性の店員が、おはじめてですか?と問いかけてくるのを。
まりあはわざとぶあいそうに、無言で首を縦に振っている。
両隣のボックスには、人はいないようだった。
満席になってしまえばともかくも。
わざと、席を離しているようだった。
見あげるほどのスチール製の壁が、左右と、目の前に。
向かい合うデスクには、特大ディスプレーの最新式のパソコンと。
背後には彼女をガードするような、やはり左右と同じ高さの壁―――。
密室空間は、牢獄のような居心地のよさを保証してくれる。
まりあは、それだけが旧式の、ひもつきマウスを手に取って、
狭いデスクのスペースのうえ、くるりくるりともてあそんでみる。
ひもつき―――。
自分で呟いてみて。
古臭い。けど・・・いい響き。
小悧巧に上向いた格好のよい鼻を、ツンと取り澄ましてみるのだった。
使い勝手の違うパソコンは、意外にいうことを聞いてくれなかったりする。
まして、つい最近バージョンアップされたらしい機能は、ちょっと戸惑うほどのものだった。
見たいサイトが、すぐにどうしても出てこないのだった。
まぁいいか。いっそタイトルで検索かけちゃおう。
まりあはわざと一本指で、サイトのタイトル名を検索画面に打ち込んでゆく。
「よ、う、え、ん、な、る、吸血」。
画面はなかなか、切り替わらない。
いつまでも、じ―――っと、真っ白なまんまでいて。
おかしいわね。フリーズしたのかしら?
ひもつきマウスのひもを所在無げに指に巻きつけながら。
まりあはそれでも、画面が変わるのをじっと待ちわびた。
人を呼ぼうかしら?
それもいっそ、めんどうな・・・
店内は一面の、薄闇のなか。
かすかな人の気配は、その薄闇の彼方に埋没していて。
なにをしているのか。互いに互いを明確にし合わないことが、ひとつの黙契にさえなっているようだった。
周囲に誰もいないらしい解放感が、さっきからまりあのことを、ひとつの衝動に導こうとしている。
そう。毛皮のコートの下は・・・一糸まとわぬ、研ぎ澄まされたような白い裸身。
女はゆっくりと、コートを脱いでゆく。
かぎられたスペースのなか、重たいコートを音もたてずに脱ぐのは、案外手間だった。
脱ぎ終わるのと。画面が切り替わるのと。どちらが、先?
反応の遅いパソコンを、からかうように。
まりあはちらちらと、まだ切り替わらない真っ白なディスプレーを盗み見ながら。
そう・・・っと、身をかがめて。
ゆっくりと、肩をゆすぶって。
身じろぎするたび、コートの重さが両肩からずり落ちてゆく。
コートを脱いでしまうと。
豊かなおっぱいが、むき出しになったままぷるんと震えた。
う・ふ・ふ。
見える?見えないわよね?
か・し・わ・ぎ・さん?
女がことさらに、笑んだのは。
唯一身に着けた、黒のガーターストッキングのせい。
それとも貴方だったら・・・見えるかしら?
貴方の好みに合わせて、装ってきたんだから。
見えるものなら。御覧になって。気の済むままに・・・
お行儀悪く、ストッキングの両足を、画面のまん前に載せてみる。
これ見よがしに。ディスプレーの向こう側に人がいたとしたら、よ~く見えるようにして。
座り心地のよいアームチェアに。女社長見たいに、ふんぞり返って。
ハイヒールのつま先で、つんつんと突いてみたくなる、ようやく現れた、サイトのタイトル文字。
ゆらっ。
なにか薄べったいものが、おもむろにまりあの全身を包んでいた。
う、ふ、ふ、ふ・・・。
そんなにわが身が、恋しいか?
押し殺すような低い声は、たとえ隣のボックスに人がいたとしても、聞きとることはできなかったろう。
薄べったいものは、目に見えない透明色のまま。
肩の上で、あごの形になり、
胸の周りで、腕の形になり、
ディスプレーのまえに載せた脚の周りですら、別の腕の形をなしている。
あごはあざ笑うように、カクカクとした上下動を肩の筋肉にしみ込ませてきて、
胸を抱きすくめた腕は、それぞれ掌のなかに抑えつけた乳首を、
五本ずつの指で、なだらかに撫でまわしてきて、
足許にまとわりついたほうの腕たちは、しつようなまさぐりに薄いナイロン生地をひきつれに波立てている。
あ・・・あ・・・あ・・・
まりあは喉の奥から出かかったうめきを、けんめいにこらえている。
いつの間に・・・っ!?
心の叫びは、くぐもった囁きになってかえってくる。
ベランダの上からずっと、あとを尾(つ)けてきたのさ。
ベランダの・・・うえ・・・?
だれも目にしていなかった筈の舞い。
話はすでにそこから、はじまっていたのか?
年の移り変わりなど、なんの意味もないって?
そう。たしかに・・・時間と空間の隔たりは、われわれの間になんの問題ももたらさないのだよ。
話をすり替えないで・・・
力のない抗議は、すでに説得力をもっていない。
くすぐったい。くすぐったい。とても、とても、くすぐったい・・・
まりあをまさぐる腕は、何本になるのだろう?
あわてて羽織りなおそうとした毛皮のコートは、あっけなく手から離れて、ご丁寧にもデスクの下に折りたたまれて。
何対になるのかさえ定かでなくなったあの腕、この腕、その指、この手のひらが。
まりあの素肌をじんわり責めて、声あげそうになるほどの疼きを、しみ込ませようとしてくる。
ゆるゆるとした誘惑の彼方に閃く、稲妻のような衝動に。
まりあは何度も耐えかねて、声あげそうになって。
店内にじつはかなりいるらしい人の耳の存在を意識して、
必死になって、歯を食いしばる。
それが、囁きの主のつけめだったのか。
まさぐりは首筋や脇の下、それに太ももの奥へとエスカレートしていって。
まるで意地になったみたいになって、まりあの声を要求する。
うっ、ううっ・・・あぁぁぁぁぁんっ。
いちど、あからさまな声色をほとばしらせてしまうと。
あとはもう、とめどがなかった。
あっ、あああん。ダメ。だめえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ・・・
ざわざわとした店内。耳に迫る人いきれ。
背の高かったはずの周囲の壁は、意外なほどに低く、その壁ごしに、周りじゅうから、人の目がそそがれる。
まりあはただ、瞳をめぐらして。
男たちの好奇の視線を一身に浴びながら。
食い込んでくる視線さえもが、心地よくなって。
股間の奥深く、とどめを刺すようにまさぐり入れてきた指先に。
悲鳴に似た歓喜を、口にし続けてしまうのだった。