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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

女。

2009年02月27日(Fri) 07:00:42

まてよ、試しにやってみよう・・・


<あとがきといいわけ。>
いえね。仕掛けておいて仕掛けた本人が忘れてたのですが。(^^ゞ
このごろやけに、業者カキコが増えてきたのですよ。
で・・・カキコのある記事のタイトルが、けっこう「女」が含まれていて。
ためしに、まんまであっぷをしてみたのです。
ところが・・・
ぜんぜんカキコがないんですね。これが。
完全に、はずしました・・・
つまんないの。(ため息)
3月4日夜付記

年上の女(ひと)

2009年02月27日(Fri) 06:53:27

「ねぇ、英語力がアップするセミナーがあるの。参加してみない?」
キャンパスを歩いていたら、透子が声をかけてきた。
この時間、こんな場所にいないはずのひと。
初めて合コンで合ったときには、一流会社のOLだといっていた。

社会人との合コンは、学生にとってたびたびあるものではない。
だれかが持ってきたその話に、あまり気乗りしないで参加して。
向かい合わせに座った透子は、ジーンズ姿で。
隣り合わせに座っているおめかしした女の子たちとは、別な意味で異彩を放っていた。
襟だけ見える地味な白のシャツに、真っ赤なセーター。
セーターの上を胸まで垂れた長い栗色の髪。
浅黒い顔に、日本人ばなれした彫りの深い目鼻。
大きな瞳は、魅入られるほど活き活きと輝いていた。
ハルヤはいっぺんに、その女性に惹き込まれていた。
男性経験には長けているらしいその女は、外見ほど安っぽい女ではなかった。
地の魅力に加えて、社会でのキャリアがいっそう彼女の輪郭に輝きを帯びさせている。
そんな感じの女だった。
男女の立場が入れ替わるくらい、リードされながら。
ハルヤはちっとも、不愉快ではなかった。

キャンパスで声かけてきた透子は、このあいだとは別人のような装いだった。
淡いオレンジの、水玉もようのワンピース。
派手すぎず、地味すぎず、知的なようでいて、女らしかった。
ひざ下までおりたワンピースのすそからのぞく脚は、真っ白なパンプスにくるまれていて、
ふくらはぎを包むストッキングだけは、学生らしからぬ光沢に包まれていて。
そこだけが、大人の女―――という、彼女の本性をちらりと覗かせているようだった。
「どう?行かない?」
女の誘いにまだ答えを返していないことに、やっと気づいていた。

薄暗いバーのような会場は、ほんらいの趣旨とはまったくイメージが違っていた。
集まっている男女も、多くは社会人のようだった。
おなじゼミの女の子が三人、やっぱりあのときの合コンつながりで参加していたけれど。
お互い声もかけず、あいさつも交わさなかった。
それぞれに、年上の異性の連れを同伴していたから―――
むんむんとする人いきれは、むしろ猥雑な雰囲気を伴っている。
「変ね。ちょっと雰囲気がちがうみたい」
女ははじめて、不審そうに眉を寄せていた。

オープニングに流れているのだとさりげなく聞き流していたゆるやかな音楽は、鳴りやむことがなかった。
いつの間にか音量がおおきくなっていて、その音量に巻き込まれるように、周りの男女はいつしか踊りの輪を作っていた。
「踊ろ」
女に手を引かれたけれど。
「踊りは、苦手なんだ」
ハルヤは断っていた。
その代り―――
惹かれた手に引き寄せられるように、ハルヤは女の首筋に、唇を押しつけていた。
口許からかすかにしたたるバラ色の雫が、女のワンピースを濡らした。

ほんとは、よく知っているんだ。このセミナー。
隣り合わせに腰かけたソファが、お尻の下でふかふかとしていた。
お姉さんが誘ったんじゃなくって、ほんとうはボクが引き込んだんだ。
オトナな女のひとの血を、吸ってみたくって。
透子は、もうろうとなっているらしい。
一座のなかでもひときわ目だつ、真っ赤なワンピースの肩を。
栗色のロングヘアが、ゆらりゆらりと揺れている。
ねぇ・・・
ハルヤに身をもたれかけさせながら。
透子は人ごとのように、呟いている。
―――もしもお願いして、よかったら。生きたままうちに帰してくれないかな。
―――もっときみに、逢いたいから・・・

どうやって家に戻ってきたのか、自分でも記憶にない。
気がつくと自室のソファに、透子は横たわっていた。
真っ赤なワンピースの肩先には、血が撥ねたままだった。
さすがに、着かえさせるまでの配慮や度胸は、なかったらしい。
けだるそうに起き上がると、自分の足許に目が行った。
てかてかとした光沢入りのストッキングには、いくすじも伝線が走っていた。
あちこちぬらぬらと染みている唾液の主は、容易に察しがついていた。
―――エッチ、なんだ・・・
脛のうえで薄いナイロン生地をつまんで、ピンとはじいてみる。
女はいつもの余裕を取り戻し、ふふっと笑った。

がやがやとざわめくキャンパスは、きょうも活気に満ちている。
ハルヤはゼミの数人といっしょに歩きながら、あの晩の直後退学していった女の子たちのうわさ話をしていた。
なんの新しい情報も、会話のなかには見出せなかった。
彼が、すべてを黙っていたから。
友人たちと別れてしまうと、ハルヤは足取り軽くキャンパスの門をくぐり抜けた。
スッ・・・と、手を伸べてきたものがいる。
振り返ると、透子だった。
キリッとした感じのする、薄い色のスーツに身を固めた彼女は、まさにキャリアウーマンそのものだった。
スーツ姿でキャンパスにくる女の子も、いなくはなかったけれど。
彼女のようにそれが身についているものは、一人もいなかった。
引き込まれるように向かい合わせに立ったハルヤに。
女はひと言、告げただけだった。
「行こ」

筆が進まない

2009年02月25日(Wed) 06:43:13

このごろどうも、筆が進みませぬ。
とある村のしきたりの歴史について描いてみたいと、
この一週間くらい構想を練っているのですが・・・

ライン入りの靴下 2

2009年02月24日(Tue) 06:50:37

1.

よかったね。晴れて大人になれるんだよ。
親たちは、いとも嬉しげに娘の頭を撫で、外に送り出してゆく。
少女はちょっぴりべそをかきながら。
それでも親たちを心配させまいとして。
気丈に胸を張って、行って参りますを告げるのだった。

少女の行き先は、吸血鬼の待つ館。
さすがに心細いのか、ご指名に預かった少女たちは、仲良しどうし、示し合わせて。
連れだって出かけていくこともあるという。
紺色のカーディガンの肩先に。
伸ばしかけた髪を、かすかに揺らしながら。
少女は元気よく、足取りを速めていた。

あっ、文代ちゃん。
ごめんね、千恵ちゃん。遅れちゃった。
千恵ちゃんと呼ばれた少女は、文代のいちばんの仲良しで。
たまたま同じ日に、お誘いを受けたあと。
いっしょに、行こ。
どちらからともなく、そう言い交わしていた。
並んで歩く足許を、細めのラインが入った真新しい白のハイソックスが、きりりと引き締めていた。


2.

さいしょの少女は、なんども生唾を飲み込みながら。
ラインの入ったハイソックスの脚を、おずおずと差し伸べてきた。
役がらどおり、足首をつかまえて。
もう片方の掌で、少女のふくらはぎを、なぞるように撫でつけながら。
ぴっちりと引き伸ばされたハイソックスを、かすかにしわ寄らせると。
ちょっと咎めるような視線が、頭上に降ってきた。
探るような視線を、くすぐったく受け流しながら。
俺は、少女のふくらはぎに唇を吸いつけていった。
ワクワクと昂りを秘めた唇の下。
厚手のハイソックスが、しなしなとねじれていった。

抜け殻みたいになって、床に倒れた少女のふくらはぎを。
なおもヌメヌメと、唇とべろとでいたぶって。
それからほんのちょっぴり、首筋に影を落として。
ブラウスに薄っすらと散らしたバラ色の血は、ほんのりと甘かった。
もうひとりの女の子のほうを、振り返ると。
幼馴染の血を光らせた俺の唇に、ゾクッときたみたいだった。
うろたえて逃げ出す子を追いかけて、壁ぎわに追い詰めて、ねじ伏せる。
そんなことだって、ままあるのだが。
その子は気丈にも、顔色をあらためて。
あわてて立ちかけた椅子に、もういちど座り直して。
友だちとおそろいらしいハイソックスの脚を、心もち斜めに流して。
ひと言、どうぞ・・・と、呟いていた。

牙をさくり・・・と、入れたとき。
どういうわけか、接してくるぬくもりに、ひそかに涙していた。
この少女は、俺に同情している。
強がってそっぽをむくことも、できたのだけれど。
俺は少女の優しさに、すがるように。
ひたすら牙を埋め、整然と走るハイソックスのラインを、持主の血で汚していった。

すねの途中までずり落ちたハイソックスを、
少女はだまって引き伸ばすと。
もう、気が済んだ?
うつむきがちの横顔に、かすかな翳をよぎらせて。
少女は呟くともなく、呟いていた。
いや、もう少し・・・
遠慮なく出した手に、少女は大人のような苦笑いを浮かべながら。
さいしょの少女よりもちょっぴり太めなふくらはぎを、ゆるめるようにさし伸ばしてきて。
いちど引き伸ばしたハイソックスを、ふたたびくしゃくしゃにずり降ろされていった。


入れ替わり、たち替わり。
ふたりの少女は、吸血鬼の館を訪れる。
時には、真新しいセーラー服の襟首を、くつろげて。
時には、真っ白なブラウスを、不規則な水玉もようで彩りながら。
珍しくふたり連れだってきたときには、
どっちのハイソックスが、よけいに紅くなるかしら?って。
小首をかしげて、愉しげに。
すっかり少女らしい肉づきにおおわれた脚を、かわるがわる差し出してきた。

初めての晩、紺のカーディガンを着てきたあの大人しめなおもざしの少女は。
友だちの子よりもさきに大人になりたい・・・って、囁いてきて。
制服の重たいプリーツスカートの裏地を、ためらいもなく濡らしたのだった。

さいしょの晩、気丈にも大人びたポーズを取って、脚を斜めに差し寄せてきたもうひとりの少女は、
文代ちゃんのほうが、好きだったの?
童顔から少女の色香をみせはじめたそのおもざしに、微妙な翳りを含ませると。
珍しく履いてきた黒のストッキングの脚を、斜めに流してきて。
しきたり・・・なんですものね。
ひときわ、声を落としていた。

だれか、見ていたの?
さあ・・・どうかしら。
抱きすくめた腕のなか。
女になった少女は、どこか虚ろに呟いている。
脱ぎ捨てた制服を身にまとって、胸元のネッカチーフを結びなおしながら。
覗いてくれる人なんか、いなくてもよかったのに。
うつむけられた呟きは、どこか湿りを帯びていた。
珍しく涙ぐんだ少女の背中に、掌を添わせながら。
俺は心のなかで、呟いていた。
ずっと若いままの男に寄り添うなんて、そんな夢は見てはいけない・・・と。




あれからどれほど、月日が経ったことだろう。
そのあいだに、少女は女になり、女は母親になっていた。
そういう場所には、ひとりで行くものよ。
渋る母親に、長い長い三つ編みをまとわりつけるように甘えながら。
あのときの母親とおなじ齢ごろになった少女は、母親とおなじ道をたどろうとしている。
真っ赤なチェック柄のミニスカートの下は、ひざ上までの黒の靴下。
すらりとした脚は、スタイルに似合った洗練された足取りを身に着けていた。
少女の痕をゆっくりと追う、肌色のストッキングに包まれた脚は。
言葉で心を告げることのできなかった、まだうぶだったころに変わらないゆったりとした足取りを運んでゆく。

やだぁ・・・
その瞬間、ブラウスの襟首を濡らした少女は。
口ほどにもなく、泣き濡れると。
くたくたとひざから力を抜いて、傍らの床に倒れ伏した。
長靴下越しにふくらはぎを這う唇だけは、感じることができたらしい。
潔癖そうに、一瞬脚をすくめたけれど。
なぞるような愛撫の下、発育の良い脚から力を抜いて、すんなりと伸ばしていた。
足許に転がるまな娘を、優しく見おろしながら。
母親は、少女だったあのときのように、肌色のストッキングの脚を、優雅に斜めに流していた。

あたしのときも、こんなふうに他愛なかったの?
無言の視線に、応えるように。
あんたはもっと、いさぎよかったね。
薄いストッキングごしに擦りつけられた唇に。
さすがに女は脚をあげて、避けようとして。
けれどもしつように巻きつけられてくる腕に、ほほほ・・・と笑んで。
甘えるようになぞってくる唇の下、娘の靴下よりもグッと薄いストッキングを、波だてられてゆく。

少女の心を知りながら。
少女を慕う少年のまえ、血を流させたあと。
うつむいて立ち去った男のことを、少年はなぜか憎む気になれなかった。
おいしいところばかり、ついばんでゆくんだね?
少女の夫であり父親である男の声色は、どこかくすぐったそうだった。
心許した親友の軽い詰りを、受け流しながら。
男はちょっとだけ、寂しそうな笑みをよぎらせていた。

ライン入りの靴下

2009年02月24日(Tue) 06:11:00

その村では、人間と吸血鬼とが共存していた。
女の子はある一定の年齢に達すると、親に連れられて親しくしている吸血鬼を訪れて、処女の生き血を捧げていた。
ごく近しいものだけが、そのようすを見守るなかで・・・

―――ラインの入った靴下が好きなんだって?ヘンなの。
ふさふさとした黒髪に縁取られた童顔が、すこし頬っぺをふくらませて。
目のまえの男の悪趣味を、軽く詰っていた。
柄もののセーターに、クリーム色のカーディガン。
ひざ丈よりも少しみじかい無地のスカートのすそからは、初々しいひざ頭がツヤツヤと輝いていて。
そのすぐ下までぴっちりと引き伸ばされた真新しい白のハイソックスには、
黒や赤の太めのラインが三本、鮮やかに横切っていた。

男が悪いね、って呟くと。
少女はしょうがないなぁ・・・って、顔つきで。
そろそろと脚を、自分のほうから差し伸べてゆく。
唇を尖らせながら、それでも揶揄するように。
男のやり口を、見つめつづけている。

男は少女にスッと寄り添うと、上体を軽く引き寄せて。
柔らかなうなじと己の唇とを、ほんの一瞬重ね合わせた。
―――ばか。
近寄せられた男の額を、少女は指で小突いていた。
あごの辺りに、ほんのちょっぴり滲んだバラ色のしずくを、ハンカチで拭うと。
こんどは自分の唇に重ねられてくる男の唇を、そのまま重ねられていって。
マシュマロのように柔らかい唇を、好きなだけなぶらせていた。
―――たぶらかしたつもり?
無言で足許にかがみ込んでくる男のまえ。
少女はいま一度、吸いつけられてくる唇に、ハイソックスの脚をすべらせた。
バカねぇ。たぶらかされちゃったわけじゃ、ないのよ。
ほんとうはあなたのこと、蹴ってもいいんだからね。
少女のきつい視線は、ハイソックスのうえから吸いつけてくる唇を、そんなふうに責めながら。
それでも相手の不埒な悪戯を、許してゆく。
くちゅっ。
よだれのはぜる小さな響きが、少女を黙りこくらせていた。

厚手のナイロンのしんなりとした舌触りが、男の胸を浸している。
それはゆったりとした、血の温もり。
初々しい芳香と適度なうるおいとに、男はしがみつくようにして、少女の両膝を抱え込んでいた。
もう―――
じれったそうに身をよじる相手の動きを封じながら。
それでも容赦なく、少女のふくらはぎを噛んでゆく。
ハイソックスには、三本のラインが、いちばん肉づきのよいあたりに、ぐるりと巻きついていた。
上下が、黒。上のほうの黒のラインに接するように、赤のラインがアクセントになっている。
目ざわりなくらいに鮮やかな発色だった。
少女のふくよかな脚まわりをなぞるように整然と走るラインを、侵すようにして。
ぐいいっ・・・と、牙を刺し込んでいた。

もぅ。
少女は終始、ふくれ面だった。
脱がされたハイソックスは、少女の足形をわずかに残して、ふやけたようにたるんだまま、目の前にぶら下げられている。
悪趣味っ。
初々しい潔癖さを、体じゅうから吐露するように、男のことを罵っている。
悪いね。
男は素早く少女の頬にキスをすると、いちどだけしっかりと抱きしめた。
瞬時で解かれた抱擁に、少女は黙りこくって相手を見つめている。

外はまだ、暗かった。
閉ざした納屋の入り口を背に、男が二、三歩歩きだすと、ふと足を止めていた。
少女とおなじ年かっこうの少年が、立ちつくしたままこちらをじいっとうかがっている。
男はむぞうさに、手にぶら下げていたものを、少年のほうに差し伸べた。
少女の脚から抜き取ったばかりの靴下が、男の手の中で静かに揺れている。
見慣れたライン柄のハイソックスに滲んだ赤黒いシミに、少年の目が釘づけになった。

手渡された靴下を、おずおずと受け取りながら。
いいの?
少年は上目遣いで訊いていた。
お前が望むなら―――
男の尊大な口ぶりを、横っ面で聞き流して。
おずおずと受け取った掌は、もどかしげにまさぐっている。
少女の血が流れた痕を。

吸い尽くしてしまうことは、かんたんだ。
けれどもそんなことは、したくない。
俺はこの先もずっと、今の姿のままで、生きつづけなくちゃならない。
あの子はきっと、連れ合いがそんなふうであることに、満足できなくなるだろう。
夫婦というやつは、歩調を合わせて齢を取っていかなくちゃな。
吸血鬼は精いっぱい、少年を相手に強がりを言った。
納屋の戸を閉めるとき、背中で受け止めたすがるような視線を切なく思い出しながら。
少年がうつむいて、少女の靴下をポケットに押し込むと。
いい子だ。
そういうように、男は少年の栗色の髪を撫で、その肩先を通り過ぎた。
なぜか寂しそうに、うつむきながら。

いちど牙を受けた少女は、それから数年のあいだ、時おり納屋を訪れる。
無地のスカートは、濃紺色をした重たげな制服のプリーツスカートに履き変わって、
時には少女のお気に入りの、チェック柄の真っ赤なスカートになったりして、
やらしい・・・なぁ。
相も変わらず、吸血鬼の不埒な趣味をなじりながら。
真っ白なハイソックスに、バラ色のしずくを撥ねかしていた。

ある晩のこと。
こうこうと輝く満月を背に、納屋に入ってきた少女は、いつになくおずおずとしていた。
足許を照らす月明かりは、ハイソックスの色が透けるくらい明るかった。
さいしょのときとおなじ柄のラインが、すっかり女らしくなった脚線の周りを、以前とおなじように取り巻いている。
好きにして。
わざとぞんざいに放った、投げやりな言葉は。
少しだけ、語尾が震えている。
ふかふかとした、藁の褥のうえ。
あお向けに投げ出した脚は、使いかけたコンパスのように、ある角度を保っていた。
丈のみじかい無地のスカートの下、初々しいひざ小僧がつやつやと輝いていて。
ちらりと覗いた太ももは、透きとおった白さを帯びていた。

閉ざした入口の向こう側。
かすかなすすり泣きが、伝わってきた。
男はちょっとだけ首をすくめると。
いるんだろ?
中に聞こえないように、声を落として。
物陰にうずくまっている人影を呼び出した。

―――ほら。
差し出した靴下を、少年は受け取らなかった。
それは、おじさんが持ってなよ。
少女の太ももを伝い落ちたバラ色の雫は、ハイソックスを横切るラインをじっとりと濡らしている。
穴ぼこは、開けなかったの?
ちょっとだけ向けられた目は、イタズラっぽく輝いていた。
左右に、ひとつずつな。
ここと、ここ・・・
少女の脚を噛んだ痕跡に、指をさしてゆく男に。
おじさん、やだなあ。悪趣味だよ。
少年はひそひそ声で、囁くと。
じゃあね。
時々彼女にも、逢ってあげてね。
いやにもの分かりのよいことを告げると、
半ズボンのうえからちょっとだけ、なにかを落ち着かせるように手をあてがって。
男が譲ったドアを押し開いて。
帰ろう―――。
少女をわれに、返らせていた。

こうこうと月が輝く夜―――
少女は大人の夜を迎える。

浮気に出かける妻 戻ってくる妻

2009年02月19日(Thu) 06:37:15

ごめんなさい 今夜あなたを 裏切るわ
出かけるの あのひと好みに 装って
玄関で 見送るあなた かわいいわ
背に受けた あなたの視線 小気味よく
艶帯びた 黒スト脚で 惹きつけて
闇の道 響くヒールが 耳を刺し

出迎える 逞しい胸 心地よく
いやらしい 服の上から まさぐる手
ずるずると 脱がされ吸われ 堕とされて
服脱げば 主婦は娼婦に 変身し
あぁ入れて・・・ 夫のよりも 太いやつ
恋月夜 いまごろ夫は 何をして?

脱がされた ブラウス置いて 帰るわね
もぅ・・・いやだ。 パンストまでも ねだるのね?
ずるずると 脱いだパンスト 手に取って
あのhとに 見せびらかすの? あげた服

パンストを 脱いで素足で 帰る朝
脱いだのか? 素足のわたし 見る夫
スカートの 濡れた裏地に 萌えられる
そうなのよ 奪(と)られちゃったの 貞節を
どう?萌える? 昂るかしら? やきもちで…
服脱いで 破けた下着 見せつける
残り香を さぐるあなたの 頬を撫で

お知らせ ~カテゴリ「村に棲みつく都会妻」の増設について~

2009年02月17日(Tue) 03:53:25

従来「ご近所」のカテゴリに配されていたなかから、一部を別カテゴリにしてみます。
「ご近所」は、近所の男性が自分の妻を自由に訪ねてきたり、近所の主婦を皆んなでたぶらかしちゃったり、そういうたぐいの軽妙?なお話を集めたカテゴリです。
最近増えてきたお話のなかに、こんなのがあります。

古くから村に伝わる因習は、多くの場合他所の土地の人間には適用されない。
ほんとうに信用できる、代々のつきあいのある家系たちだけの関係に収まっている。
ところが、ひとつだけ例外が生まれた。

村のなかにぽつんとできた、都会の会社の出張事務所。
都会から赴任してくる社員は、ほとんど例外なく、妻を伴ってくる。
家族同伴が、赴任の条件らしい。
だれかの意向でよほど選ばれてくるものか、当地で行われる行事に順応できそうな者たちばかりである。
移り住んできた若夫婦は、村を挙げての歓迎を受ける。
亭主のよしあしを確かめると。村の男たちは争うようによしみを通じようとし、
ほどよくまわった毒酒にそそのかされた夫たちは、愛する妻を村に渦巻く性の因習のるつぼに投げ込んでゆく。

このパターン。
かなり以前からあったと思うのですが。
しっかり確立?したのは、「エリート会社妻集団凌辱」のつづきものを描いたころからですね。^^

村の若妻

2009年02月16日(Mon) 07:28:13

初体験は、16歳のときでした。
お相手は、いつもかわいがってくれていた、近所の小父様でした。
やもめ暮らしが長くって。ずっと独りで暮らしていらしたのです。
いまの主人との結婚がきまったのは。まだ15のころでした。
ある日母が、いつになくしんけんな顔をして、私のことを部屋の隅に呼んで。
小父様が、お逢いしたがっている。それも真夜中に。あなた、どう思う?
セイイチさん(いまの主人)に悪いわよ、って、さいしょは言いましたが。
嫁入り前に、お勤めを果たす ということが。
村ではふつうに、行われていたのです。
私は結局、その晩遅くまで起きていて、小父様の家にうかがいました。
真夜中に。学校の制服姿で。

ひなびた村の風景に。
白のラインが鮮やかな襟首のセーラー服に濃紺のプリーツスカートといういでたちは。
じゅうぶん都会ふうに映ったのでした。
その晩は、おろしたばかりの真新しい黒のストッキングを、履いていきました。
羞ずかしがってうつ伏せになってしまった私を、あやすようにして。
小父様は、黒のストッキングのふくらはぎに、なぞるように唇を這わせてきたのです。
つま先まで真っ赤になるくらい、羞ずかしかった、一夜。
私は翌朝、まだひりひりする腰まわりを気にしながら、ちょっとがに股になって。
家路をたどったのでした。

お嫁入りしてからは。
すべてがあっという間に、経っていきました。
祝言、妊娠、出産・・・
ほとんど同時に来るような、あわただしさでした。
そのあいだ。小父様は何くれとなく面倒を見てくれましたが。
とうとう私の肌に触れるようなことは、なさいませんでした。
そろそろいいんじゃないのか?
ある晩切り出してきたのは、主人のほうでした。
下の子の七五三まで、すませたのだから・・・って。
今夜、ボクが寝ちまったら。
おめかしして出かけても、いいんだぜ?
小父さん、愉しみに待っているみたいだから・・・

久しぶりに私のことを抱きしめてきた小父さんの身体は、ひと周り小さくなったような気がしました。
主人に気を使って、太ももを濡らすだけにした乳色の液体を。
わたしは口に含んでみせました。
中にしてもいいよ・・・って。
手を伸べて仕向けてあげると。
上手になったな・・・
野太い囁きは、いまでも羞ずかしさがいっぱいになるようなことを伝えてくるのです。
もう・・・残されている時間は、いくらもないのかもしれません。
でもそれまでのあいだ、私はあの人を悦ばせてあげたいと思っています。
生まれて初めて、女の歓びを教えてくれたあのひとを。

あとでききました。
さいしょに招ばれたあのとき。
主人は隠れて覗いていたのだと。
まだ稚なさののこる許婚が、セーラー服を脱がされてゆく光景を。
今も時おり。
小父様が当家に立ち寄られるとき。
主人はそれとなく座をはずして、着飾った私を、あのひとと二人きりにしてくれます。
私の若さを吸い取るように、しつようにからみついてくる腕や太ももの背後から。
情愛たっぷりの視線が注ぎこまれてくるのを、感じるときがあります。
ふたりの男に、愛されて。
ふたりの男に、誠を捧げる―――
そんな気持ちで、殿方たちと接している毎日です。

ラブ・ゲーム

2009年02月16日(Mon) 06:55:07

都会から当地に赴任してきて、はや三年になります。
去年結婚したばかりの26歳の妻と二人暮らしをしています。
村は閉鎖的な社会、といわれますが、いちど溶け込んでしまうとなかなか暮らし良い土地だと感じます。
垣根を取っ払ってしまうことが、肝心みたいですね。
娯楽の少ない土地だから・・・と、村の人たちが作ってくれたお店があるんです。
カラオケボックス のようなところです。
そこで毎週、村の人とカラオケ大会をやるのですが。
垣根を取っ払うために、欠かせない場になっているんですよ。

赴任して一か月経つか経たないかのころでした。
わたしが初めて、そのお店に呼ばれたのは。
夫婦で呼ばれたのですが、会社の同僚も数名、おなじように呼ばれていました。
村のかたがたは、どなたも年配の男性ばかりでしたが、終始和やかな雰囲気でした。
さいしょのうちは、先方の奥さんたちも参加していて、
妻たちとおしゃべりなどをしていたのですが。
場が和んでくると、いつの間にかお帰りになってしまっていました。
気がつくと、招ばれた都会妻たちの人数と、先方の男性の頭数とはまったくおなじでした。

だいぶ遅い時間になったころ。
いっしょにトイレに立った上司が、こっそり耳打ちしてきました。
うまく話をつけとけよ・・・と。
え?って怪訝そうな顔つきをすると。
聞いてなかったのか?って、逆に困った顔をされました。
ああ・・・あのことか、と思いました。
赴任してきてすぐに家に招んでくれた同僚が、男どうしになったとき、耳打ちしてきたのです。
カラオケ大会があるからな。それまでに覚悟、決めとくんだぞ。
そう。
村の顔役たちが、都会妻たちの品定めをする会だったのです。
耳打ちしてきた上司に、いい感じですねって答えました。
上司はふふふ・・・と、笑っただけでした。
見直したぞ、という雰囲気が、ありありとうかがえました。
妻とわたしの間に割り込んできて、ずっと妻と話し込んでいる六十近い男性は、
でっぷりと太った白髪頭のかたで、
本気で嫉妬したくなる気分は、なぜか消えていました。
いま考えると、お酒のなかになにか入っていたのかもしれないですね。

さいごに一曲ずつ、デュエットを唄うんです。
もちろん妻たちと、先方の男性たちとの組み合わせです。
ご主人に促された都会妻たちは、ちょっとためらいながらもマイクを握り、
それぞれ隣の男性と声を合わせてゆきました。
上司の奥さんは、村長さんと組んでいました。
五十まえの年配でしたが、上品な感じのご婦人でした。
歌いながら肩に腕を回されて、さらにその腕が着飾ったワンピースの襟首にまで忍び込むんですが、
奥さんもその手を避けるふうもなく、上司も笑いながら手拍子を合わせていました。
ワンピースの内側にすべり込んだ手が奥さんの胸に悪さをするのが、
服に波打つしわで、それとわかるくらいだったのですが・・・
だれもが、見て見ぬふりをしていました。
妻は皆と同じように手拍子を合わせながら、時おり上目遣いで、わたしのほうを窺ってきます。
何度めか、上目遣いを向けられたとき。
いいんじゃないの?とだけ、囁いてみたら。
クスッと笑って、脚をすくめました。
肌色のストッキングに包まれたピンク色のふくらはぎが、ゾクッとするほどなまめかしく映りました。
唄い終わると、三々五々、家に引き上げていくのです。
上司は奥さんの手を取って立ち上がると、がんばれよ、と囁いていきました。
さっきのデュエットの相手の男性が、あとを追いかけるように出ていきました。

妻はもちろん、隣の男性と唄いました。
でっぷり太った白髪頭氏は、妻にだいぶご執心のようでした。
妻の肩をなぞった彼の腕は、肩から首筋、髪の毛といじくりまわし、
それから短めのスーツのスカートのなかにまで、吸いこまれていきます。
しまいにはマイクを放り出し、持ち前のでかい地声をはりあげながら、
両手で妻の洋服姿を、いじりまわしていくのです。
妻はなにごともないような顔をして、きれいな声で歌調も乱さず唄いつづけていましたが、
肌色のストッキングにしわが寄るほど、彼の撫で撫ではしつようでした。
さて・・・
真っ先に立ちあがった白髪頭氏は、わたしのほうを見てにやりとしました。
わたしも彼と目を合わせて、帰りましょうか、と促しました。
傍らの妻は、エヘヘ・・・とイタズラっぽく笑うと、肩をすくめてみせました。

家まで送って行ってくれる、という名目なのですが。
たいていは、家までガマンできなくなるようです。
カラオケ帰りの都会妻たちは、着飾った服に泥をつけてご帰宅・・・というわけです。
妻がとうとう迫られてしまったのは、家まであと少しの雑木林のなかでした。
白髪頭氏は強引に妻の手を引くと、道をそれて林のなかへと踏み出します。
ここは滑りやすいから・・・こっちは歩けるから・・・・って。
奥へ奥へと、誘い込まれてしまったのです。
暗がりでも足場を心得ているくらい、勝手知った場所のようでした。
わたしのまえを、踊るように。
妻の着ている白地に黒の水玉模様のスーツ姿が、闇に溶けていきます。
途中まではついていっていい・・・といわれていたのですが。
樹をひとつへだてたあたりから、いちぶしじゅうを視てしまいました。
視線が釘づけになって、離れなくなって・・・
ブラウスを脱がされてむき出しになった両肩がはげしくあえぐようすが、闇に白く透けていました。
乱されたタイトスカートのなか、強引に沈み込んでいったむき出しの逞しい腰も。
丸太ん棒のように太い毛脛の太ももをすりつけられて、ストッキングをずりおろされていった細い脚も。
わたしの記憶から去ることは、ないでしょう。
最愛の妻を、蹂躙されてしまっているというのに。
どうして、昂ってしまったのでしょう?
夢中になって相手にしがみつき、牝と化してゆく妻が、とてもいとおしかった。

カラオケ大会は、定期的にやってきます。
もちろん妻も、こころよく出席しています。
白髪頭氏ののぞむまま、いつも都会ふうに着飾って。
帰り道に襲われてしまうことが多かったのが。
このごろは家のなかで・・・ということになっています。
なにしろ、いまの季節・・・外は寒いですからね。
いまも。
夫婦のベッドのうえ。シーツを乱しながら。
妻はもてなしつづけています。
いちど、お相手を決めてしまうと。
みだりに変えることはないみたいです。
たまに白髪頭の名代として、息子さんが来ることがありますが。
学生さんは、性急ですね。
息せき切って、現れて。
短距離走みたい。って。妻はいつも苦笑いをしています。

子どもの欲しい年代のご夫婦の家には、あまりお邪魔したがらないようです。
かりにお邪魔をしても、ご主人の許可がないかぎり、中には出さないとききました。
けれども・・・うちの場合には、中まで出していただいています。
子作りは、もう少し先でもいいかな?
もう少し、夫婦で愉しんじゃおうかな?って。

よろこんでいただけるのですか?

2009年02月15日(Sun) 06:31:49

ふすまひとつへだてた、向こう側。
妻が必死のあらがいを、演じている。
相手は夜這いをかけてきた、ご近所の老人。
妻とは父娘ほども、齢がへだたっている。
はぁはぁとせめぎ合う物音と、吐息。
まるで、初めての夜のようだった。

よくやった。
そこまで抗えば、亭主への義理もたっただろう。
さぁ、あとはお愉しみの時間だ。
往生するんだな。

内証にしていただけますよね?
主人には、なにも仰らないでくださいますね?

妻はなんども、念を押すようにくどくどと、男に訴える。
男はいい加減に肯きながら、あくまで手をゆるめようとしない。

おまえには、年寄りを悦ばせる義務があるのだ。

男の言い草に、妻はなおも切々と言いつのる。

よろこんでいただけるのですね?
べつだん、いけないことをするわけではないのね?
当地のしきたりどおりに、主婦としての務めを果たすだけですわよね?

そういことだ。

男が息荒くそう囁くと、妻は観念したように身体の力を抜いた。
あっけないほどに他愛なく、堕ちていった。

いいな?決して覗いているなどと、しゃべってはならねぇぞ。
あんたの気配をかぎつけた日にゃ、首をくくりかねないからな。
なに?今夜が初めてなのか?って?
そんなわけないだろう。
もうひと月もまえから、あんたの許可を得てお邪魔しているんだぜ?
なにごともないわけ、ないじゃろうが。
あんたの女房をいただいて、指折り幾晩になるかねぇ。

さいしょの夜なんか、見ぬが花じゃ。
エロ小説とは、ちがうんじゃから。
ひどく泣きわめいて、大変じゃった。
あんたらは村のしきたりを知らない、都会ものの夫婦なんだからな。
ようやっと、見せてやれるほどに飼いならしたところじゃ。
そのうちいずれ、晴れてご披露できるときが来るじゃろう。
ふ、ふ、ふ。
愉しみに待っておれ。
どれ、あんたのほうは、もうとっくにイケそうじゃな。
ズボンのなかが、えらく元気なようじゃから。

結婚を許されない人

2009年02月03日(Tue) 07:13:43

登場人物
俊次・・・このお話の主人公
麗(れい)・・・俊次の妹、畑沢医院の看護婦。
美沙子・・・俊次の初恋の人。いまは村の開業医の妻
畑沢・・・村の開業医
ハジメ・・・畑沢の息子
絢(あや)・・・畑沢の娘

0.序
結婚を許されない生まれの男は、月に一夜だけ好きな女を呼び出すことができる。


1. 濡れ場

藁小屋のなか。
立ち込める冷気に、熱した吐息が白くたちのぼっている。
がさ、がさ、がさ、がさ・・・
耳障りな音をたてる藁のなか。
男女の一対の脚がからみ合って、藁を踏みしだいていく。
白い息が、いっそう濃くなった。
外はとっくに、夜が白んでいる。
女は耐えかねたように身体をそらし、男をへだてようとしたけれど。
男はゆっくりとかぶりを振って、頑是ない幼な児を寝かしつけるようにして、
女を藁の褥に沈めてゆく。

ほとんど力ずくのまぐわいが、もう何時間つづいただろうか。
儀式なんですよ―――
女は咎めるように、なんどか男に囁いていた。
気丈な女らしかった。
村にはまれなくらいにノーブルに輝く肌を光らせながら、
気の強そうな瞳が、力強い輝きを秘めている。
だから、儀式なんだから―――
女が儀式だと強調するのは。
本意で抱かれているわけではない。
貴方にもそれをわかって、クールになってほしい。
そんな想いが、込めれられている。
女がそこまで突っ放したくなるくらい。
男の抱擁は、熱かった。

女の素足が、小屋の出口の前に立った。
もうすこし―――
後ろから肩をつかんだ掌の主が、囁いた。
髪が揺れるほど激しくかぶりを振って、もう一歩前に踏み出そうとしたとき。
このなかにいるうちだけは、夫婦なんだぞ。
脅迫めいた声が、女のうごきを封じていった。

ふたたびまろばされた藁のなか。
ぱたぱたぱたぱた・・・
だれかが走り抜けていく足音に、女はびくっと肩をすくめた。


2.朝の食卓

「はい、ご飯のおかわりね」
美沙子はかいがいしく、息子のおかわりをちゃぶ台に置いた。
中学に入ってから、ハジメの食欲はみるみる増した。
もうじき大人の、仲間入りだもんな。
夫の畑沢が半ばからかうように、半分は頼もしそうに、息子の横顔に声をかける。
ハジメは照れ隠しをするように、父親の言い草を横っ面で聞き流して、
「行ってくる」
詰襟を着た上体を揺らして、傍らに投げてあった鞄を拾い上げた。

息子の足音が遠のいていくと。
気まずい沈黙が夫婦のあいだを流れる。
けっきょく、ひと晩じゅうだったんだな。
低く抑えようとした声色が、それでも尖った響きをもっていた。
夫の声色のすべてを察して、女は羞ずかしそうに視線を落とした。
取り換えたばかりの畳の色が、いまいましいほど青い。
妻のしぐさに追い打ちをかけるように、夫は容赦なく言い放った。
義理さえ果たしたら、すぐに戻ってきたってよかったんだぜ。
切り口の鋭い語調に、いちばん気になっていた息子のようすを聞き出す勇気が失せていた。


3.しきたり

結婚を許されない生まれの男は、月に一夜だけ好きな女を呼び出すことができる。
夫たりとも、それを妨げることは許されない。
ご指名を受けました。
妻はたったひと言、夫にそう告げると。
夫はそれ以上深く追求せずに、
「気をつけて」
ひと言囁いて、妻を送り出す。
妻の一夜を支配する相手のことを、聞き出すこともタブーであった。
選ばれた女は、「一夜使い」と呼ばれていて。
村の穢れを取り払うための使いと考えられていた。
呼び出しが重複したときにだけ、女に選択権が許されていたけれど。
ふしぎといさかいなく、選ぶ権利をもった男どもは、それぞれの相手を選びだしていた。


4.診療のあと

病院のとじまりがひとわたり終わると。
看護婦の麗は、肩に置かれた掌にぎくりとした。
すこしくらい、いいかな―――。
声の主は、院長の畑沢だった。
逆らえないよな。それにあんたは、結婚できない女なんだものな。
白衣のうえを、なぞるように。
男の掌がじんわりと、はぜるほどの欲情をつたえてくる。
ゆっくりとかがみ込んでゆく男の声が、下からせり上がるように鼓膜にしみ込んだ。
応じてくれるかぎり、いつまでも。
うちの病院で、使ってあげるから。
優しい声色の裏にある、卑劣な取引―――。
ひくっ。
麗がすくめた白のストッキングの足許に。
男の舌が、ぬるりと這った。

乱された髪を、つくろいながら。
ひそかに散らした涙を目許から拭い取ってゆく。
兄貴には、黙っていてやる。
そのほうがあいつも、みじめにならないだろうからな。
陰湿な歓びに耽る男の耳に、遠くをぱたぱたと走り抜けてゆくスリッパの足音は届かなかった。


5.飢えた狼

また今夜も、行くのか・・・?
ちょうどひと月たったある日のこと。
美沙子は夫のまえ、無言でうつむいている。
いくらしきたりで、許されていることとはいえ。
妻の情事は、畑沢には我慢のならないものだった。
それをどこまで、知っているのか。
妻は今夜もご指名を受けましたといって、男の待つ藁小屋へ、いそいそ出かけようとしている。
わざわざ色鮮やかなスーツ姿で、メイクまでばっちりとほどこして。
無言で夫のまえ、正座してうつむく妻の横顔に、
どこかしんねりとした頑なさを見出して。
ぴしゃっ。
思わず出た手に、女の頬が鋭く鳴った。
勝手にしろ。
気まり悪くそむけた背中越し。
妻はゆっくりと立ちあがった。

深々と頭を下げる気配が、伝わってきた。
けれども畑沢は、振り向かなかった。
ほんとうなら。
気をつけてとねぎらいの声をかけて、玄関まで妻を送り出すはずが。
仁王立ちになった両足は、根の生えたように動かなかった。
―――叩くつもりはなかった。もののはずみだったのだ。
言い訳がましい後悔だけが、取り残されている。


6.息子

どこ行くの?お兄ちゃん。
顔をあげると、声の主が無邪気な笑みをつくっている。
ハジメは俊次を、兄のように慕っていた。
幼いころから、遊んでもらっていた仲だった。

ひと月にいちどだけ。
両親が気まずく黙りこくる夜があって。
その晩母さんは遅くまで出かけて行って。
朝ご飯までには戻ってきてくれるのだけど。
寝てない証拠に、目の周りに隈を作っている。
そのとき出かけてゆく先で、待っているのが俊次だと知ってからも。
齢の離れたふたりの関係は、冷えることがなかった。
俊次兄さんと母さんが、大人の男女になっている。
そんな関係を知ってしまうと、しつけに厳しい母との距離が縮まったような。
だいじな母さんを、俊次兄さんがたいせつにしてくれてくれているのがうれしいような。
ひどくくすぐったい気分に、なってしまうのだった。

今夜の自分の行先を、だれと逢うのかも少年が察しているのを、
俊次もまた、察している。
母さんを、よろしくね。
母さんがほんとうに好きなのは、お兄ちゃんなんだと思うよ。
一見無邪気にみえる少年の声色の向こう側。
研ぎ澄まされた感性が育っているのを。
俊次だけは、気づいている。
無言で少年の肩を抱くと。
―――どう思う?
掌に込めた想いに応えるように。
―――・・・いいんじゃない?
お悧巧な応えが、かえってきた。


7.学校帰りの娘

ただいまぁ。
畑沢の表札のかかった門を、セーラー服姿が駆け抜けた。
部活で遅くなった絢は、あわただしく靴を脱ぐと、投げ捨てるように鞄を放り出して、
ばたばたと台所に向かっていた。
きょうは母さん、遅いんだっけ。
代わりに頼まれた夕食の支度を、七時までに済まさなければならなかった。
塾通いをしている弟のハジメは、九時すぎに帰ってくる。
べつに取り分けておかなくちゃ。
制服の上から手早く身体に巻きつけたエプロン姿が、早くも主婦のようなうごきをはじめている。

階下の気配が、騒がしく書斎まで伝わってくる。
すべてが癇に障る夜。
娘はわざとのように、声をかけてこなかった。
いい匂いが立ち込めてきたときに。
ご飯ですよぉ。
主婦気どりな娘の声を、なぜか耳にしたくなくて。
畑沢はじぶんから、階段を降りていった。

制服にエプロンの後ろ姿が、まだ忙しく立ち働いている。
穿き古された濃紺のプリーツスカートは、擦れててかてか光っている。
重たげにゆさゆさと揺れるすそからは、黒のストッキングのふくらはぎがにょっきりと伸びていた。
健康そうなぴちぴちとした脚が、薄黒いナイロンに包まれていて。
見てはならないものを、見てしまった―――
思いがけなく目にした娘の変化から、畑沢はとっさに目をそむけている。

お父さんは、これ大好きだったよね。
お皿によけいに盛る白い手。
母さん、早く帰ってこないかな。
白い歯を覗かせた、ピンク色の薄い唇。
ねぇ。ハジメのやつ、来週テストなんだってさ。
胸元をゆらゆらとする、純白のネッカチーフ・・・
思わず畑沢は、娘の手の甲をつかまえていた。
・・・・・・・・・・・・・・・?
訝しげに送られてくる視線を、ねじ伏せるように。
おまえは、母さんそっくりだ。
強引に引いた腕を、隣の客間に連れ出して。
きゃっ。やめてっ・・・
立ちすくんだ娘の、黒のストッキングのふくらはぎを。
あの看護婦のときのように、舌でなぞりはじめていった。


8.朝餉

気まずい朝が、やってきた。
妻の美沙子は傍らで、黙ってお茶碗にごはんを盛っている。
ハジメは黙々と、二杯目をほおばっていたし、
いつもありあまる元気をまき散らしている絢までもが、顔色がわるい。
おい。
畑沢は妻の遅れ毛に手をやって。
ついてた。
指先でつまんだ藁くずを、さりげなく屑籠に放り込んだ。
時間にして数秒のしぐさ。
しまったと思ったときには、避けなければならないはずの子供たちの視線が、いっせいにそそがれている。
なにも気づかないふりをして、畑沢はいつになく乱暴に、ご飯をかきこんだ。


9.交錯

あいつは、結婚を許されない生まれなんだ。
求婚のことばのあとに、畑沢の口から出てきたのは、そんな言葉だった。
薄々聞かされてはいた。
けれどもいちばん事情をよく心得ている畑沢の言葉をまえに、美紗子の結論は決められていた。
だれの意思でも覆えすことのできない事実が、目の前にあった。
一方的に愛されるだけの結婚生活は、ひどく索漠としたものだった。
結婚してからいっさいの交渉を絶っていた俊次から連絡がきたのは、子供の手が離れたころだった。
連絡をもらったら、応じなければならない。
姑にそう言い渡されたすぐあとだった。
夫はひどく、嫌がっていた。
ほかのだれもが、ひととおりは忌みながら。
さいごには卑猥な含み笑いをよぎらせて、妻に許していくはずの儀式のことを。
そんな夫の未練を断ち切ったのは。
儀式ですからね。あくまでも。
ひっそりとした威厳を漂わせた、姑の言葉だった。
母の言葉には、いかにプライドの高い畑沢といえども、逆らうことはなかったのだ。


10.疑念

家にあげるのだけは、だめだからな。
夫はかたくなに、俊次の来訪を拒絶していた。
たとえそれが、近しい同士の儀礼的な訪問であったとしても。
淫猥だが厳粛でもあるしきたりを秘めたこの村では。
夫たちは好んで妻の密夫を家に招んで酒をふるまい、ときには気を利かして座をはずすことさえあるというのだが。
その点夫は、たしかに常識的だった。

朝餉の片づけをしていると。
ふと目を落した畳の上。
夫の眼鏡が、転がっていた。
美沙子は軽く身づくろいをして、夫を追いかける用意をはじめた。
「本日休診」
夫の勤務先で待ち受けていたのは、そんな立て札。
けさも夫は、診療に出かけていったはずなのに。

Prrrrrrr・・・
美沙子の携帯が鳴った。
「母さん?おれ、おれ」
息子のハジメの声だった。
「どうしたのよ。学校から?あんた授業中じゃないの?」
思わず尖った声になっていた。
「いいからいいから」
気のせいか、息子の声はひそひそ声だった。
受話器の向こう側から、先生の声までは漏れてこない。
「いま、父さんの病院なんだろ?」
「ど・・・どうして知っているの」
「父さん、メガネ忘れていったものね」
「あんた、気づいていたら言ってくれればいいじゃないの」
「どうでもいいもん。そんなことより」
ハジメの声が、いっそうトーンを落としてきた。
「病院の裏に回ってみて。裏口が開いているから、院長室を覗いて御覧」


11.息子

見たでしょ?
息子の問いに、美紗子はいつまでも顔を硬直させている。
見たんでしょ?
追い打ちをかけてくるような声色に、美紗子は初めて屹っとした。
おお、怖。
まるで大人が子供をからかうような口調だった。
いつもと関係が、逆転していた。
それくらい。
垣間見た光景の衝撃は、美紗子の心のなかを塗り替えてしまっていた。
病院のベッドのうえ。
からみ合う、一対の男女。
女のほうはあきらかに、嫌がっていた。
男のほうは残酷なほど、執拗だった。
かがみ込まれた足許に、舌を這わされて。
白のストッキングがくしゃくしゃになるほどに、なぞられていって。
女は悔しげに、けれども頬に滲んだ弛みは、あきらかに状況を愉しみはじめていた。
おなじやり口だった。
美沙子が畑沢との結納をすませたあと。
帰り道、呼び入れられた畑沢の家のなか。
少しくらい、いいだろ?
肌色のストッキングの上、這わされた唇の感触は。
まだいとわしいほど、皮膚の内側にしみ込んだままだった。

ボク、見ちゃったんだよ。
絢姉さんも、父さんとおなじ関係なんだよ。
え・・・?まさか・・・
父娘の関係なんだよ?
そういいながら。
美沙子の想いの向こうには、べつの男女が佇んでいた。
制服着た姉さんのスカートつまみあげて、黒のストッキングの脚舐めていたんだ。
息子の言い草は、残酷なくらいに直截的だった。

ね・・・だから。
指きりでもするのかと思った。
けれどもからめられてきた息子の指から、自分の指を抜けなくなっていた。
そのままの姿勢で、息子は体重を、乗せかけてくる。
だめ・・・
美沙子は一瞬、目をつむった。
まだ若すぎる母親の横顔によぎった翳が、少年を獣に変えた。
こらっ!だめえ・・・っ
近所をはばかってひそめた声は、息子のひと言にねじ伏せられた。
やり方知っているんだ。
母さんが俊次お兄ちゃんとしているとこ、ずっと見学していたんだから。

父さんの病院の看護婦さん。麗さんっていったっけ。
俊次兄さんの、妹なんだね。
麗さんも、結婚しちゃいけないひとなんだってね。
あんなにきれいなのに。
俊次兄さんだって、あんなに優しい人なのに。
どうしてなんだろう?って思っていたんだ。
やっとわかったよ。ボクもおなじようになる。

父さんと俊次兄さん。俊次兄さんのほうがずっと若いけど。
兄弟なんだって?父親ちがいの。
父さんの母さんが、実家のお兄さんとあやまちをおかして。
けれども父さんの父さんは優しいひとで、あやまちを咎めだてしなくって。
それで俊次兄さんと麗さんが生まれたんだろ?
近親結婚で、子供ができたら。その子たちは結婚してはいけないんだって。
ボク今夜、絢姉さんのこと襲うから。
父さんは家のこと、自慢するけれど。
父さんのプライドなんて、母さんを傷つけてきただけじゃない。
そんなもの、ボクがきれいに裏返してしまいたいんだ。
畑沢医院は、ボクと姉さんが経営する。

けれども・・・ね。
あの晩、ボクは塾に行かなかったんだ。
だって母さんが、俊次兄さんと逢う夜なんだもの。
ひと晩で、ふたりながら見ちゃったんだ。
母さんが、俊次兄さんに抱かれているところ。
姉さんが、父さんに襲われているところ。
ほんとうは姉さんが犯されているところを見て、
ボク昂奮しちゃったんだよ。
母さんは、俊次兄さんのものだから。
ボクは絢姉さんにしよう・・・って、そう思ったんだ。
短絡的すぎるかな。叱られちゃうかな。
でも母さん・・・よかったら今夜、ボクが姉さんを襲うのを。
だまって見逃してくれないかな?
手伝ってくれなんて、とてもお願いできないけれど。

息子の言い草を、反芻するように。
美沙子はしばらくのあいだ、黙っていたけれど。
やがてゆっくりと、頷いていた。
裸に剥かれた乳房の周りに、長い黒髪をヘビのように巻きつけながら。

その晩。
じたばたと暴れるもの音が、天井から伝わってきたけれど。
美沙子はエプロンをしたまま、黙って洗いものをつづけていた。
しばらく経って。
天井の向こうがわのじたばたが収まると。
スッと台所を立って、足音を忍ばせて階段をあがると。
娘の勉強部屋のなかをちらっと確かめて。
部屋の灯りを、外から消した。


12.ひとつの和解

それから俊次兄さんは、毎晩のようにうちに来るようになった。
俊次兄さんのことを嫌っていた父さんは、絶対家にあげちゃいけないって言っていたけれど。
母さんは父さんの留守中に、俊次兄さんを家に呼んで仲良くするようになっていた。
父さんは相変わらず、苦い顔をしていたけれど。
まえほど母さんに、つらく当ることはなくなった。
それは、麗さんと大っぴらな交際を始めたせいでもあるらしいけれど。
内心自分の妻のひそかな関係にゾクゾクしたものを感じるようになったらしい。
ちょうどボクが、犯される姉さんを覗き見て、ゾクゾク昂っちゃったみたいな意味で。
母さんが俊次兄さんを迎える晩、父さんは時おり早くに戻ってきて。
ボクたちにしーっと口止めをしては、夫婦の寝室を覗き見するようになっていた。

ボクはそんな父さんに、見て見ぬふりを決め込んでいて。
姉さんとふたり、手をつないで。
どちらかの勉強部屋に、足を向ける。
ハジメの部屋、いつも散らかっているよね。
姉さんはふくれ面をしながらも。
学校から戻ってからずっと制服を着たままでいてくれて。
今夜はおニューなのよ。サービスしてあげるって、くすっと笑って。
真っ白なハイソックスのふくらはぎを差し出して、舐めさせてくれる。
あなたがもっとオトナになったら、黒のストッキングも履いてあげようか?
挑発するようなことをいいながら、ベッドのうえ。
開いた太もものあいだに、ボクを迎え入れながら、
所在なげに三つ編みの髪の毛をもてあそんでいる。

父さんは、やっぱりずるい。
俊次兄さんから母さんの。
ボクから絢姉さんの。
それに麗さんの。
三人もの純潔を、独り占めにしちゃっているんだから。


あとがき
やたらと長くなりました。。。
珍しく、一時間半もかけてしまった。^^;
ぶっつけで描いたから、どこかで破綻しているかも。
おかしなトコがあったら、教えてくださいね。^^

仲直り

2009年02月01日(Sun) 14:03:26

だれもかれもが、倒れている教室のなか。
手近に転がっている女子生徒に近づいて。
制服のスカートから、にょっきり伸びた
発育のよさそうなふくらはぎに、かじりついて。
白のハイソックスのうえから、唇をぬるりと吸いつける。
血に飢えた、かさかさに干からびた唇を。
舐めるように、這わせていって。
疼きに疼いた鋭い牙を、ぐぐっ・・・と力まかせにうずめ込む。
唇の下。
ハイソックスの生地にしみ込んで、ゆっくりと広がってゆく血潮のぬくもりを感じながら。
おれはひと刻、至福の達成感を味わっている。

じんわりと染みてゆく、なま温かな養分が。
おれに久方ぶりの安らぎと、救いと、ついでにエッチな昂りまで、思い出させてくれた。
わるく思うなよ。
おれに不埒な衝動をわきたたせたのは。
ほかでもない、おまえの血なんだから・・・
少女のパンティを脱がすのは、ひと苦労だった。
怯えきった少女は、股間まで濡らしてしまっていたから。
あう・・・あぅ・・・
言葉にならない言葉を、口元に迷わせながら。
それでも少女は、かぶりを振って。
傍らに投げ捨てられたパンティを、視界からとおざけようとする。
もの憂げにそむけられた顔の側に、わざともういちどパンティを移動させてやると。
目をつむってしまった少女のスカートを、引き剥ぐようにたくしあげて。
逆立った一物を、真っ白な太ももになすりつけていった。

一人めが、ぐったりしてしまうと。
おれは物でも置くように、ぞんざいに、少女の身体を教室の隅まで転がした。
これだけじゃ足りない。さて、もうひとり・・・
みのり!みのり!
クラスメイトの傍らに倒れ伏した姿勢のまま、
おれが血を吸い取ってゆくあいだ、親友の名前を呼びつづけた少女。
身動きひとつできない身体を、足蹴にして、あお向けに転がして。
ふ、ふ、ふ、ふ、ふ・・・
つぎは、おまえの番だ。
肩に流れる黒髪を、ギュッと握りしめて。
つかまえて放さないぞ・・・そんな意志を伝えるために。
力まかせに、ギュッと引く。
ゆ、優子ぉ・・・
教室のだれかが、黒髪の少女の名を叫んだ。
優子ちゃんは大きな瞳を見開いたまま、怯えたようにおれの顔を見つめるばかり。
むき出した牙からしたたり落ちる親友の血を、制服の胸元にほとび散らされて。
長い黒髪の少女は、他愛ないほどあっさりと意識を喪った。
吸血鬼のまえで、意識を喪う。
それは、すべてを吸い尽くしてしまって構わない・・・という、許諾の意思表示。
本人にそのつもりがあろうがなかろうが。
おれはそんなふうに、解釈する。
仲良しだったケイコちゃんの血をあやしたままの黄ばんだ犬歯を。
もうひとりの子の首筋に、突き立ててゆく・・・
優子ちゃんのうなじは、クラスメイトのふくらはぎより柔らかかった。

身体の力が抜けてぐったりとなった少女のことを
もう、お前は用なしだ・・・
そういわんばかりに、転がすと。
ばさっ。
長い髪が教室の床に、むざんなまでに広がった。
おっとと。これだけは、忘れちゃいけない。
せっかくあとの愉しみに、とっておいたんだから・・・
重たい制服のスカートを、たくし上げると。
すらりとしたふくらはぎに、靴下のうえから唇を這わせた。
優子ちゃんは、黒のストッキングを履いていた。
ぱりぱりと音を立てながら。まるで凌辱するように。
少女のストッキングを、噛み破っていって。
ぐったりとなった身体から、なおも無慈悲に吸い取ってゆく。
血を吸い取らせまいとして、わずかに身じろぎする少女の抵抗を封じながら。
抑えつけた手首のかすかな抗いは、おれの征服欲をいっそう愉しませただけだった。

Tシャツに短パン姿の少年のまえ。
ぶらーんとぶら下げてやったのは。
そいつの彼女だったみのりがさっきまで履いていた、白のハイソックス。
真っ白な生地に赤黒く滲ませた血潮の量に。
彼氏はさすがに、目をむいたけれど。
たぶらかされて、腰を抜かしてしまった身体はもういうことをきかなくなって。
おれが指先ひとつ、裏返すと。
指の動きをまねるように、床のうえ、うつ伏せになって転がった。
ラインの入ったハイソックスは、見た目も鮮やかな白さに輝いていたけれど。
ちゅうっ。
聞えよがしに吸いつけた唇の感触に。
おれはつい、囁いていた。
彼女のやつのほうが、グッとそそられるよね。
もっと・・・舌触りも、なめらかだったし。
抵抗不能なまでに、吸い取ってやった挙句。
やっぱ。男の血は好みにあわんな。
うそぶくおれを、やつは恨めしそうに見あげただけだった。

ベンチに腰かけて。
組んだ足許に、にじり寄って。
たくし上げていったズボンの下から覗くのは。
男ものにしては、薄過ぎる靴下。
薄墨色にぐーんと引き伸ばされた靴下の丈は、たぶんひざより上まであるらしかった。
いけないお兄さんだね。
妹さんのもちものを、悪戯していたんだね?
悪戯なんて、失礼な。
お前だな?優子の血を吸ったやつは・・・
あぁ、妹さんの血は、おいしかったよ。すっかりご馳走になった。
あんたが血をくれれば、おれのなかで妹さんに逢えるかもな。
身勝手なおれの言い草に、彼は動きを止めて、応じていって。
しまいに、ベンチのうえからすべり落ちるようにして、尻もちをついていた。

ケイゴ?ケイゴだよね?
薄闇の向こう。おれの名前を呼ぶやつは。
同年代の女の子。
いいよ。おいで。怖くないから・・・
養分、欲しいんでしょ?
あたしの血でよかったら、あげるから。
寒そうな顔、してるよね。独りでさびしかったんだよね?
いいよ。みのりや優子とも、あなたのなかでいっしょになれるよね?
ひたと見すえてくる、よく輝く瞳。
瞳の主は、おれに抱きすくめられても、抵抗ひとつ試みないで。
制服の襟首に、血が撥ねるときですら。
ためらいひとつ、みせなかった。
黒のストッキング、好きなんでしょう?
薄いやつ、持っていなかったから。
ケイゴのために、わざわざ買ったんだよ・・・
うつろになりかけた声色を、かいくぐるようにして。
少女の下肢を彩る薄いナイロンに欲情したおれは、
もどかしいほど震える唇の下、みさえの制服の一部を、くしゃくしゃに波立てていった。

ごく、ごく、ごく、ごく・・・
目のさめるほどの味わいをもった、清冽な少女の血潮―――
それが渇いた喉を通り抜け、胃の腑に澱み、干からびた血管をうるおして。
ぐるぐると全身を、かけ巡る。
ひとしきり、一巡すると。
おれはぐったりとなった少女のことを、力いっぱい、抱きしめていた。

ほら、吸ってみろよ。
みのりの彼氏は、運動部の主将だった。
ぞんざいに差し出された、ふくらはぎ。
男の血は、好みじゃないけれど。
腹の空いていたおれはためらいもなく、ハイソックスの脚に食いついていた。
ごつごつとした、筋肉質のふくらはぎ。
ちっ。相も変わらず、いい噛み心地ではありませんね・・・
男もののハイソックスはごつごつしていて、舌触りが悪いんだ。
おれが無遠慮に、うそぶくと。
お前の舌も、あてにならんな。
やつは冷やかすような眼で、おれのことを覗き込んだ。
この靴下。みのりのやつから借りたんだぜ?

妹萌えさんは、まだズボンの下に隠しているのかな?
すそをめくろうとするおれのことを、傍らに立つ優子が、しきりにやめさせようとする。
気になるのぉ?でも兄貴、このごろあたしの箪笥を狙わなくなったんだよ。
どうやら彼女が、できたらしいよ。
彼女の部屋から、だまって持ってくるんだってー。
やめさせようとするくせに。ひとをそそらせるようなことをいう小娘だ。
その彼女さんとやらも・・・こんなふうにしてやろうか?
スカートのすそからちらちらと覗く、ひざ小僧の下。
黒のストッキングの足許に唇を這わせてやると。
兄も妹も、おとなしくなった。

だれもがいちどは墓場に入ったなど。
いまではだれに話しても、信じてもらえないだろう。
みさえ。みさえ。
こんどはおまえを、甦らす番だ。
白黒写真の額縁のなか。
おれの喉をもっともうるおしてくれた血の持ち主は、
うるんだ瞳で、訴えかけるように見つめてくる。
信じているよ。はやく逢おうね。
そう、ささやきかけるようにして。