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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

泥の撥ねたハイソックス

2009年05月25日(Mon) 07:16:27

その学校では、どこのクラスでも。
男子のうち三人くらいは、吸血鬼で。
まるで数を競うみたいにして。
おなじクラスの女子を、片っぱしから襲って、血を吸っているのだという。
十代のうちに婚約を済ませるこの土地では。
同級生で結婚することもしばしばあって。
人間の男の子は、処女のお嫁さんをもらうチャンスはほとんどないらしくって。
それでも、彼女の純潔を食べちゃった吸血鬼の男の子と、仲良く共存しているという。

制服のスカートを、まくりあげて。
セーラー服着たままの胸を、揉みながら。
体育館の裏。だれもいなくなった教室。施錠されていない倉庫。
純潔を奪われてゆく女子たちは、太ももを伝い落ちてゆくバラ色のしずくを。
ずり落ちかけた白のハイソックスに、しっとりと滲ませていって。
男の子たちは血のついたハイソックスを、まるで戦利品のようにせしめてゆく。
数を競うときの、証拠にするために。

ねぇ―――
シンヤがいつになく、改まった雰囲気で。
幼馴染みの良一に話しかけてきたのは、放課後のことだった。
俺の正体、知っているだろ?
今さら、どうしたんだよ?
にこやかに笑いかけた良一は、すでに予感を持ってしまっている。
同級生の華子と結納を交わしたのは、つい先週のことだった。
―――処女の子の血が、欲しいんだ・・・
シャイなこいつにしては珍しくストレートに切りだしてきたのは。
よほど、切羽詰まっているのだろう。
これから頼まれる頼みごとに、内心胸をドキドキさせながら。
それでも良一は、相手に対する同情を失っていない。

クラスの女子のハイソックスを、集めている。
それも、処女喪失の痕を滲ませたやつを―――
十代の少年にしては、おどろおどろし過ぎる行為なのに。
良一はひどく素直に、相手の話を受け入れていた。
華子のやつ、欲しいんだろ?
自分のほうから、切りかえしてしまうと。
むしろユウヤのほうが、口をぽかと開けていた。

負けかかっているどころか。
クラスの女子を、まだ一人も、モノにしていないのだという。
やれやれ・・・世話のやけるやつ。
彼女を襲われる側の良一のほうが、そんなユウヤのおくてなあたりに、ため息ついてしまっている。

初体験はさすがに、済ませていて。
相手は、良一の母だった。
妹の雅恵のやつも。
学校帰りの途中、おさげ髪を引っ張りながら。口尖らしていたっけ。
あのあとふたり、雑木林に入っていって・・・
律儀なやつのことだから。
きっと、雅恵を嫁に選ぶに違いない。
雅恵を嫁にして、良一の嫁となる少女を犯す。
きっとそこまでで、いっぱいいっぱいなんだろうな。
母と、妹と、華子。
女三人の血で、足りるのだろうか?
良一はまじめに、心配し始めている。

あたりは、真っ暗闇だった。
遠くで鳴いているカエルの声が、シャワシャワと、三人の耳にしずかに響いてきたのは。
すべてがおわって、われに返ったときだった。
行こ。
真っ先に立ちあがったのが、華子だった。
片方の手で制服のスカートの泥を払いながら、もう片方の手で乱れた髪の毛をかきのけている。
その手がひそかに、頬の涙をぬぐったのを、良一は見逃していなかった。

正直なところが、気に入った。
良一のもちかけた相談に、華子は男の子みたいな声色をした。
しょうがないよね。しきたりだものね。嫉妬しないでね。
でも・・・あたしのほうが。こーふん、しちゃうかもよ~。
挑発するように、良一を突ついてからかっていたくせに。
けれどもあたしは、良一のお嫁さんだよ。それでいいよね?
そういって見あげたときの瞳だけは、しんけんだった。

真夜中近くに、電話をかけて。
華子は制服姿で、家を抜け出してきて。
待ち合わせた野原のまん中で。
汗ばむていどに愉しんだ、鬼ごっこ。
激しくもつれ合った草むらのなか。
闇に舞う草の切れはしが、蒼くさい空気を攪拌していた。
少女が恥じらいながら、初めての相手に手渡したハイソックスは。
真新しい生地に、ちょっぴり泥を撥ねかせていた。
口ゴムについたかすかな血を隠すように、折り畳んで手渡されたハイソックスを。
親友の許婚の純潔をかち獲た少年は、だいじそうにポケットにしまい込む。

数ヶ月後。
女の味見に目覚めたユウヤが、クラスの女子のほぼ三分の一をせしめたときいて。
もうっ。ずるいじゃん。
華子が口を尖らせるのを。
悪友ふたりは、肩そびやかして笑み交わし合う。


あとがき
いいなずけの純潔を、幼馴染の悪友にプレゼントする。
そんな行為に、悪友も、彼女も、もちろん自分自身も、初々しい昂奮に目覚めてしまう。
そんないけないプロットが、気に入っています。

家族が一人、増えるだけ。

2009年05月25日(Mon) 06:37:28

もちろん、だれもが・・・という義務はないのだけれど。
その村に家族を伴って赴任すると、奇妙なことになるという。
妻たちを、村の長老の愛人にされてしまうのである。
夫婦でカラオケに誘われると、デュエットの相手に帰り道を襲われるとか。
夜勤の日程表を提出すると、その日に夜這いをかけられるとか。
うちの場合は、「お見合い」というやつだった。

もちろん、お厭ならその場で断っても角が立たないので。
いちおう、そういうことにはなっている。
けれどもその場で断って、座を立って、ぶじに戻って来た奥さんの話を、聞いたことがない。
うちの妻のときだって、例外ではなかったのだ。
都会ふうのワンピース姿で、しゃなりしゃなりと出かけていった妻。
やがて先方から、お呼びがかかる。
奥さんが服を汚したから、着換えを持っていらっしゃい。と。

犯されちゃったわよー。
楽天的な妻は、いつものようにあっけらかんと。
ふつうなら、黙っていそうな話題を、いともぬけぬけと切り出してきた。
ほらー、せっかく新調したのに。もう着れなくなっちゃった。
あなた・・・このワンピース、あとであちらに届けてくださる?
初めて襲われたときに身に着けた服を届けるということは。
亭主みずから、妻が犯されることを認めたことになるという。
妻の留守中ずっと在宅していることになっていたけれど。
シャツについた枯れ葉や、ズボンの股間のシミに、目ざとい妻は気づいていたに違いない。

家族がひとり増えたと思えば、いいでしょう?
妻はどこまでも、おっとり構えている。
あのひと。あなたに遠慮して。
お留守の時だけ、来るって言うの。
そう。
籠絡された都会妻たちは。
夫の勤務時間中にだけ、娼婦になるという。
娘たちに、勉強を教えてあげると称して。
大人の女性になる勉強まで教え込まれていることを。
わたしはだいぶあとから知った。
仕事に出ているとき。出張に行っているとき。
わたしの留守宅は、ハーレムと化しているという。
ね♪あなたが留守のときにだけ、淫乱妻するから。
妻は甘えるように、わたしにしなだれかかってくる。
セックスには物足りないほど淡白だった妻が、ねっちりと色っぽくからみついてくるようになったことを。
わたしは心のどこかで、感謝している。

○○課長さんのお宅は、週三なんですって。
△△主任さんのところは、毎晩なんですって。
あそこは新婚さんだし・・・若いひとはいいわよね。
でも・・・××次長さんのところだって、週二はお見えになるらしいわよ。
それなのに・・・うちは二週間に一回。不名誉だわー。
きっとね。あなたに遠慮していると思うの。
妻のおねだり顔に弱いわたし。
在宅中に遊びに来ても、よろしいですよ。
妻の浮気相手に、そんな電話をかけていた。
家族が一人増えた。
そんな実感を、はじめて覚えたのは。
娘たちの勉強部屋を荒らしたあと、夫婦の寝室に忍び込んできた彼のため。
火の気のないリビングで、寒さと昂りとにがたがた震えながら。
娘たちが、夜中になっても嬉しげに、制服姿のままでいたことを思い出したときだった。

家族が一人、増えただけ。
妻の言い草は、わたしを楽にしてくれたけれど。
ある日、うっ・・・と、吐き気を訴えた妻。
孕んじゃったみたい。
エヘヘ・・・と、イタズラっぽく笑っていた。
どうやらほんとうに、家族が増えてしまうらしい。

初夜の季節

2009年05月21日(Thu) 07:49:37

村の娘たちにとって。
お嫁入りまえに体験する初夜は、愉しみな刻。
十四の齢に、必ず迎える儀式。
村に伝わるしきたりは、いまはひそかな愉しみの刻に変わっている。
相手は必ず、親の決めた既婚者でなければならなかった。
気になる彼氏の代わりに、親の知り合いだったり、親戚のおじさまだったり。
案外、彼氏のお父さまだったりすることもある。
クラスメイトの雅恵は、新調のビキニ姿で、お約束の部屋に出かけていって。
お父さんにしてもらっちゃった♪
羞ずかしそうに、囁いてきた。
あたしは、今夜。
深夜の勉強部屋。
セーラー服を着て、父を待つ。
重たい紺のプリーツスカートの下に、オトナっぽく黒のストッキングを身に着けて。
初めての男性に父親を択ぶ子は、案外多い。
だって・・・やっぱりよその小父さまは、まだ怖いもの。

留守宅は、お留守

2009年05月20日(Wed) 07:52:38

あらー。
今夜、お帰りになるの?
妻はしんそこ、がっかりしたような口ぶりだった。
ヨシオのお友だちとかみんなで、映画のチケットが取れたのよ。
それで、夜9時からの開演だから・・・
帰り・・・遅くなっちゃうわ。

子どもじゃあるまいし。
いまどき、親子連れで映画見物という年頃でもあるまいに。
ふつうの親なら、ちょっとふしんに思うだろう。
息子も娘も、もうそんな年頃だった。
わたしは受話器を置いて、それでも自宅へ帰る準備をつづけた。
単身赴任の身にとって、月にいちどの帰宅は、家族との絆を保つため必須のものだったから。

案の定、家は真っ暗だった。
わたしは構いもせずに荷物を置くと、スーツのまま外に出た。
鍵をしっかりとかけて、すぐお隣にお邪魔する。
もう、真夜中近い刻限だというのに。
お隣は灯りを、こうこうと点けていた。
どうぞ・・・
出迎えてくれた奥さんは、紫のドレスを身に着けている。
ホホ・・・
こっそりと洩らす忍び笑いの下。
たくし上げられたスリットから覗く太ももは、黒の網タイツに映えていた。
血色のよくない肌が、蒼白く輝いている。

奥へ・・・どうぞ。
招かれるまま、地下の部屋に降りてゆくと。
コツコツと響くハイヒールの硬質な足音の彼方、ひとのうめき声が洩れてきた。
うめき声の主と、先刻の電話でがっかりした声の主とが同じ人物であることは。
以前から・・・暗黙の諒解だった。

さし示された鍵穴の向こう側。
見覚えのある花柄のワンピースを着けたまま。
身をよじる妻の肢体には、小ぎれいなワンピースにはおよそ不似合いな荒縄が食い込んでいて。
熟した身体の線をいっそうくっきりと、きわだたせていた。
じりじりと燃えるローソクの焔が、熱いしずくを滴らせて。
黒ストッキングもろとも、むき出された太ももを灼いている。
歯を食いしばる面ざしによぎる愉悦を、彼女の夫は見逃していない。
ローソクの主は、この家のあるじ。
そう。
留守宅の妻はいつか、隣人の娼婦に己を塗り替えていた。

妻の愛人となった男の息子は、ヨシオの幼馴染みだった。
ふたりとも、齢には不相応に、半ズボンを穿いている。
ヨシオは友だちに自分の太ももを吸わせていて、
吸いついた唇からは、バラ色のしたたりがたらたらと伝い落ちている。
奥さんはツカツカと、わたしの横をすり抜けていって。
かざしていた燭台をテーブルに置くと。
部屋の隅で縛られている、セーラー服姿の娘に、おおいかぶさってゆく。
きゃー。
たったひと声の、叫びだった。
あとは、吸血の音に、かき消されていた。
息子や娘が吸血されている、かたわらで。
さっきまでローソクで妻を責めていた男は、ワンピースの襟足をはだけていって。
後ろから抱きついて、首筋に唇を吸いつけてゆく。

なかなかの映画見物でしたよ。
お隣の息子さんが、へらへら笑っているうちの息子にVサインをして、
おもむろに妻の上にのしかかってゆくのを、横目にしながら。
わたしはこともなげに、邸のあるじと夜の挨拶を交わしてゆく。
愉しんでいただけて、なによりですな。
あるじはにんまりとして、グラスをわたしにすすめた。
ワイングラスに満たされた紅い液体は、妻の体内から搾り採られたもの。
わたしはそれを、かるがると。
いとも心地よく、喉に流し込んでいる。

ご家族の血は、おいしいね・・・
毎晩、愉しませていただいているのだよ。
男の言い草に、わたしはにやりと頷いて。
そっと、首筋に残された痕を、撫でつけている。
洗脳された男は嬉々として、家族の血をプレゼントするという。
密かな病いを得たのは、きっとわたしにとって幸いだったのだろう。


あとがき
あっぷは23日の朝6時ですが。
想を得たときの日付にしておきます。

嗜血の病い

2009年05月19日(Tue) 07:40:06

確実に、人から人へ。
静かに静かに、広まってゆく。
さりげなく、近寄って。抱きついて。
首筋に這わせた唇に力がこもり、相手の血を吸い取ってゆく。
血を吸われたものは、みないちように、けだるい顔をして。
相手を咎めるでもなく、逃れようとするわけでもなく。まして、止めだてするでもなく。
もういちど、自分の血を確実に己のものにしようとして迫ってくる相手をまえに、
ただ、けだるそうな顔つきをして。
ふたたび吸われる傷口に、くすぐったそうに笑んでいる。
知人から知人へ。同僚から同僚へ。
夫から妻へ。妻から娘へ。妻の不倫相手から夫へ。
果てしなくつづいてゆく、汚染の連鎖。

けれどもだれ一人、死ぬわけでもなく、姿を消すわけでもない。
その安易さに。
静かに静かに、広まっていった。
ワンピースのえり首を赤黒く汚した人妻。
ストッキングを伝線させたオフィス・レディ。
真っ白なハイソックスに、バラ色のシミをつけて歩く、制服姿の少女。
そんな女たちが、街の通りに目だってきても。
だれひとり、そう、夫や父親たちですら、咎めようとはしなかった。

血を好む病。
もたれかかり、寄り添い合って。
いつか、街は歪んだ闇に堕ちてゆく―――

犯されています。奥の部屋で・・・

2009年05月19日(Tue) 07:33:15

奥さんは、どちらに?
わたしの問いに、男は冴えない顔色でかぶりを振って。
低く抑揚のない声で、応えていた。

犯されています。奥の部屋で。

指さす寝室からは、かすかなうめき声が洩れてくる。
彼には不似合いなくらい若くて美しい奥さんの声だった。

えっ?色めくわたしを、制するように。
お静かに。お静かに・・・
抑揚のない声は、どこか愉しげだった。
そういえば。
いま時分、学校から戻ってきているはずの娘さんの姿も、見えなかった。
お嬢さんは・・・?
わたしの問いに対する答えは、簡潔だった。

犯されています。勉強部屋で。

指さす階段のうえからは、かすかで切れ切れな声・・・

一週間後、ふたたび彼の家を訪れたとき。
おや、いつもご一緒の奥さまは・・・?
彼の問いにわたしは、抑揚のない声で答えている。

凌辱を受けています。夫婦の寝室で。

お宅は・・・?
訊きかえすと。
まるで、合言葉のように。

犯されています。きょうはリビングで。

ふ・・・ふ・・・ふ・・・
ふたり、声を合わせて含み笑いを交わし合う。
互いの首すじに浮いた、どす黒い痣を見つめながら。
共犯者に堕ちた自分たちを、みずからあざ笑うように。

お里帰り ~実家のこと~

2009年05月18日(Mon) 07:40:30

お母上は、未亡人。そうですかそうですか。
お義父さんは目を細めて、使い慣れない標準語のなかに土地のアクセントを滲ませる。
考えに夢中になると、ますます聞き取りにくくなる声だった。
実の父親なのに。
村のしきたりとはいえ、妻の処女を奪った男。
それがいま。
母や妹までも、狙っていた。

結婚してすぐのことだった。
妻が切り出してきたのは。
披露宴のときだった。
ぜひいちど。お母さんも妹さんも、こちらに遊びに来ませんか?
お義父さんはそんなふうに、母や妹を誘っていた。

行っちゃったね。
見送りに行った空港のロビーで。
妻はほのかに笑んでいた。
遠くなった後ろ姿は、黒一色のスーツに、制服姿。
清楚に装われた黒のストッキングも。
お行儀よくひざ下ぴっちりまで引き伸ばされたハイソックスも。
都会に戻ってくるときには、みるかげもなく引き裂かれたり汚されたりしているはずだった。
じゃ、わたしたちも、行こ。
妻の手に握られたチケットは、一日おくれの便だった。

さいしょの晩なんて、見るものじゃないわ。
他所の土地の人相手だと。たぶん・・・レ○プになるから。
妻はおそろしいことを、口にした。
力ずくでモノにしたあとは。ひと晩、村じゅうの男たちが総出になって。
理性がなくなるまで、ヤるのだという。
そうすると、淫らに目覚めた女たちは。
たとえ夫のまえ息子のまえでも、おねだりをやめなくなるという。
そうなるまでは、文字どおりの凌辱。
”旬”なのは、ふた晩めからだという。

ふた晩め。
あのひと、わたしが人身御供になっているのを覗くのが好きなんです。
妻の言い草に、母も妹も納得していた。
じぶんたちが視られたあとだったから。
同席することは、ついになかった。
都会では、恥ずかしいこととされていたから。
予定よりも一週間遅れで戻った母は。
この子が体調くずしちゃって・・・
見えすいたウソに、わたしはもっともらしくうなずいていた。

そのうちに。
あのときのビデオ、みんなで笑って見られるといいね。
えっ。ビデオ撮ってたの?
色めきたったわたしに、
あなたはもう大丈夫。
妻はイタズラッぽく、笑んでいる。

彼女を撮られる

2009年05月18日(Mon) 07:31:28

女性タレントのブロマイドのように。
ユウジは一枚一枚、大きく焼いた写真を見せてくれた。
どれもこれもが、クラスメイトの女子ばかり。
それも・・・ほとんど服を身に着けていない、露出度の高いものだった。
この写真を撮ったあと。絶対、姦ってる。
露骨にそうわかるものさえあった。
香織、ゆきみ、エリカ・・・
一枚一枚、いつもの彼女たちとは別人のような刺激的なポーズたちをめくっていいくと。
さいごの一枚に、どきりとした。
大きく写し出されたモデルは、俺の彼女のみどりだったから。
みどりはほとんど、全裸。
足許には脱ぎ捨てられた制服が散らばっていて。
太ももまでの黒のストッキングだけが、ぴっちりと引きあげられていた。
いつも上品に映る薄手のナイロンが、ひどく刺激的な彩りを添えている。
みどりはいつもの健康的な笑いにえくぼを滲ませて。
あらわになったあそこを、両手で隠していたけれど。
やつのひと言が、むざんな追い打ちをかけてきた。

撮った後。すみからすみまで、味わった。おいしかった。

―――。
刻が止まった一瞬だった。

おい、おい。泣くなよ。
焦ったのは、やつのほうだった。
こいつはたんに、女が好きなだけ。
おろおろしている態度からも、それは伝わってくる。
けれども、それとこれとは、違うだろう。
フォローのつもりだったらしいやつの言葉も、大した救いにはならなかった。
ついでにプロポーズしたんだけど・・・断られちまった。
本気だったのにな。お前たち、本当に仲がいいんだな。

一発だけ、殴らせろ。
俺の言い分に、やつは神妙に目をつぶった。

ユウジったら、頬ぺた腫らして。どうしたんだろうね。
また、だれかの彼女の写真、無断で撮っちゃったのかな?
いつものようにさわやかに笑うみどりは、なにも知らないようだった。
ふたりきりで歩く、下校の途中。
いつもの黒ストッキングが、いつも以上になまめかしく、脛を透きとおらせているようだった。
なーによ。人のことじろじろ見ちゃって♪
みどりはどこまでも、無邪気だった。
やつの頬についた痣で、なにもかもを察しているくせに。

こんどはどんなポーズで撮るんだ?
うーん、大股開かせてみようか?
あそこの毛の写ったやつは、没収だぞ。
わかってるって。
いつもの仲良しに戻った俺たちの傍らで。
素っ裸になったみどりは、バスタオル一枚で震えていた。
ストッキングも、いろんな種類があるんだぜ。
ハイソックスのときは、スカートの色と合わせなくちゃな。
やつは女の服のことまで詳しい。
撮った女子からもらった服で、ひそかに女装を愉しんでいることも。
俺はこっそりと、教えてもらっていた。

なにもかもを、打ち明けあった男。
俺は彼女に聞こえるくらいの声で、囁いていた。
処女を奪うとこ、再現しようよ。俺が撮ってやるから。
つま先まで真っ赤になって恥じらうみどりが、いつも以上にかわいかった。

血まで再現しなくっても、よかったのに・・・
やつがすみからすみまで味わったのは、ファインダーを通しただけだったのだと。
シーツのシミを見るまで、知らなかった。
あと戻り、できないよー。
みどりは無邪気に、笑っていた。

結婚して何年にもなるのに。
写真館を開業したやつのところに、みどりは時々写真を撮ってもらいに行っている。
わくわくしながらおこぼれを見せてもらうのは、つぎの週末になるだろうか。

怪人の棲む病院

2009年05月18日(Mon) 06:52:23

画面に映し出されたのは。
真っ黒な背景に、赤いテロップ。
題して。
「襲われるナースステーション」

たしかに、この病院の看護婦たちだった。
おそろいの白衣をひるがえして。
いちように、恐怖の色をありありとたたえながら。
三人、もつれ合うようにして、部屋の隅に追い詰められてゆく。
恐怖におびえる女たちのまえに立ちふさがるのは、グロテスクな体形をした怪人。
2メートルはあろうかという背丈。グロテスクごつごつのついた皮膚。
なによりも。指先から長く伸びた吸血管が。
女たちの柔肌を、狙っていた。
キヒヒヒヒヒヒヒ・・・
吸血管の鋭い切っ先が、白衣のすき間を狙っていた。
「お前たちの血を、おれのエネルギーにする」
芝居がかった宣告に。
看護婦たちは、度を失っていた。

ぶすり。ぎゅう~っ。
一人めの看護婦が、白衣の胸に吸血管を突き立てられた。
あうううっ・・・!
悲痛な呻きをもらして仰け反る女は、みるみる顔色を変えてゆく。
同僚ふたりは、仲間を助けることも出来ずに、ただ口許を抑えて悲鳴をこらえているだけ。
意思を喪った泥人形が、鉛色の顔をして床に転がると。
二人めの犠牲者が、毒牙にかかる。
キヒヒヒヒヒヒヒ・・・
首っ玉を抑えつけられて、うなじに吸血管を刺し込まれた。
あああああっ・・・
白目を剥いた看護婦は、別人のようにふやけた陶酔の色を浮かべながら、
透明な吸血管を、自分の血で赤黒く満たしていった。
あ・・・あ・・・あ・・・
さいごに残ったのは、いちばん若い看護婦だった。
ナースキャップを振り落して逃れようとするのを、肩をつかまえて、こぼれおちた黒髪をたぐり寄せて。
キヒヒヒヒヒヒヒ・・・
嬉しそうな随喜の声が、女の悲鳴におおいかぶさった。
若い看護婦は白衣をびりびりと引き裂かれて、むき出しにされた白い肌に、鋭利な吸血管を吸い込まれた。
ゆっくりと引き抜かれてゆくバラ色の液体が、女から顔色を奪っていった。

倒れた三人の看護婦の足許に、にじり寄って。
怪人は床に這わせた触手で、白のストッキングに包まれた脚を撫でまわしている。
どろりとした粘液をうわぐすりのように光らせた触手は、
しなしなとくねりながら女の脚に巻きついてゆく。
薄手のストッキングはねじれて波打ち、しまいにオブラアトをとろかすように引き裂かれていった。

―――どうかね?少しは面白かった?
白衣の院長は、わたしのことを冷静に観察していたらしい。
だいじょうぶ。あなたは適合するようだね。では、治療を始めよう。
そっけなく言った横顔に、冷やかな笑みがよぎった。
わたしをその部屋に導き入れるとき。
ちょっとためらいながらも、囁いてきた。
あのドラマの続きなんだが。わたしの妻もヒロインなんだ。
つぎに襲われるのは、院長夫人と令嬢。
わかるかね?いまのきみと同じなのさ。

ひた・・・ひた・・・ひた・・・ひた・・・
身体じゅうにまとわりついている粘液は、足音さえも消すらしい。
怪人が目指している病室にいるのは、わたしの妻と娘。
閉ざされたドアの向こう側。
きゃあ~っ!
ふた色の絶叫が、わたしの耳をつんざいた。

ドアからは一歩も入ってはいけない。
けれども理性を超えると、人間なにをするかわからないからね。
開いたドアの向こう側には、鉄格子が嵌められていた。
怪人はいったいどうやって、この鉄格子を抜けたのだろう?
そんな疑問は、荒々しい光景をまえに吹っ飛んでいた。

黒一色のスーツ姿の妻が、怪人の触手に巻かれている。
制服姿の娘は、両手で口を覆って立ちすくむばかり。
さっきのドラマと寸分たがわぬ光景のなか、妻と娘がさらされていた。
怪人のふりかざす鋭利な吸血管が、病室の照明にきらりと光った。
ぶすり・・・
あうううううっ!
吸血管に吸い出されてゆく妻の血は、どす黒かった。
キヒヒヒヒヒヒヒ・・・
あの忌まわしい笑い声が、病室に響いていた。

壁ぎわに追い詰められて、尻もちをついた娘は、とうとう立ち上がることができなかった。
キヒヒヒヒヒヒヒ・・・
怪人は容赦なく娘を捕まえると、セーラー服のえり首ごし、
たったいま、妻の生き血を吸い取ったばかりの吸血管を、初々しい胸許に刺してゆく。
ああ~っ!
キヒヒヒヒヒヒヒ・・・
ぬらぬらとした緑色の触手に巻かれながら、絶叫する娘。
うねうねともつれた細長い吸血管は、バラ色の液体でカーブを描く。
若い娘を相手にしているときのほうが、嬉しそうな声だった。

横たわる二対の脚。
娘は、ひざ下までの白のハイソックス。
妻は、スーツに合わせた黒のストッキング。
まだ血色の残っている足許は、しなやかなナイロンの生地ごしに、ピンク色のふくらはぎをかすかに透きとおらせている。
キヒヒヒヒヒヒヒ・・・
順ぐりに巻かれてゆく、妻の脚。娘の脚。
女たちのストッキングやハイソックスは、いとも愉しげに引き剥かれ、ずり降ろされてゆく。
スカートのなかに侵入した触手は、奥の奥まで愉しんでいた。
気丈な妻も。
年頃になって生意気になった娘も。
苦悶のなか、甘美な陶酔を滲ませて。
怪人の求めるまま、奥の奥まで許していった。

治療代は、いらないよ。
奥さんと娘さんからいただいた血で、おつりをあげたいくらいだからね。
その代り時々、奥さんと娘を、病院に連れてくることだ。
こんどは院長夫人と令嬢、四人まとめてご馳走してみようか。
妻同士、娘同士。仲良くなれそうじゃないか。
院長の含み笑いは、ひどく病的で、満ち足りたものだった。


あとがき
う~ん・・・
なんとも、無内容。(笑)

彼女を口説かれる。 3 ~結納のあと~

2009年05月18日(Mon) 06:00:06

婚約、おめでとーございますっ。
やつが高々と、ビールのグラスを挙げた。
彼女も恥ずかしそうに、にこやかに、それに応えてゆく。
いつもいつも、調子のいいやつだ。
自分の結納みたいに、慶んでやがる。
まぁ・・・いいか。少なくとも俺は、彼女の正式な”相手”になった。
それでもやつは、彼女の裏の”相手”として、影みたいにつきまとうつもりだろうけど。

ねぇねぇ。凄かったよね。この人ったら。
座が和んで酔いがまわり、口が軽くなってくると。
彼女は「うふふふふっ。」と、思い出し笑いをする。
たしかに、ふつうの結納じゃなかった。
それもこれも、やつが同席したからだった。
あなたのお母様もうちのママも・・・そろって犯されちゃうんだもの。
パパたちだって、苦笑いしているだけだし。
びっくりしたけど、愉しかった~。
童顔の口許から謡うように洩れてくる舌足らずな声色と、あっけらかんとした口調が。
あのまがまがしい展開を、夢物語のように塗り替えていった。

お袋は、着込んできた黒の紋付の帯を、羞じらいながらするするとほどかれていった。
黒の着物に白い肌はよく映えるね。なんて。
親父はビール片手に、のほほんと。
自分の妻が息子ほどの年かっこうのやつに凌辱されていくのを、面白そうに見守っていた。
彼女のママは、お洒落なワンピースにやつの精液を垂らされて。
あらー、お洋服だめになっちゃう。とか、こぼしながら。
ニヤニヤと照れ笑いするお義父さんのまえ、むき出されたやつのペ○スを、臆面もなく咥え込んでいた。
高価なストッキングですねぇ。
ツヤツヤとした黒のストッキングを舌で嬲られ、彼女のときみたいにチリチリに破かれながら。
みんなの見ているまえで、裸身をさらす。
若いかたは、お元気でいいわね。
控えの間で彼女が正装を脱がされてゆくのを横目で見ながら。
彼女のママはおっとりと言い放ったものだった。

ね。つづき、やろ・・・
彼女が白い歯をみせるとき。
俺も悔しいくらい、昂りをおぼえはじめていた。
やつが彼女の後ろにまわり、ピンクのジャケットのえり首をくつろげて。
うなじの生え際に唇を当ててゆく。
俺はただ、だまって見つめるだけ。彼女もだまって、俺のことをじいっと見つめつづけている。
あ・・・
心もち、眉をひそめたのが合図だった。
畳に突いた掌が、そのまま力を喪って、すべっていった。

献血、ご苦労様。だいじょうぶ?
もたれかかってくる彼女の身体が、むしょうにいとおしい。
乱れた髪を、かきのけながら。
ヘンなこと、されてないよね?
イタズラっぽく笑うきみ・・・
やつはとっくに、姿を消していた。
おいしいものを余さず、せしめたあとだった。
おねだりして彼女に穿かせた黒のストッキングは、見る影もなく破られて。
やつの精液と彼女の汗を、仲良くしみ込まされたあと。
彼女の脚から引き抜かれ、やつのポケットに押し込まれていった。

だいじょうぶ。彼とはあなたのいないときに逢うわ。
彼ったら、あれでも遠慮しているんだって。
あなたが心のなかで、自分の出現を望んでいるときにだけ、出てくるんだって。
そのわりに・・・よく来るけどね。^^l
彼には血もあげるし、はめもはずしちゃってるけど。
あなたとは、身体だけの関係じゃない。
だから、あなたの奥さんになって、献血をつづけるの。
あたしが彼のことを気に入っているのは。
彼があなたを尊敬しているから。
あれはきっと、ウソじゃない。
別人のように、しみじみとした声色だった。

ひとの彼女をつかまえて、彼氏のまえでエッチするような人だけど。
あなたのこと、本当に好きみたい。
ねぇ。あたしがあなたのまえで乱れちゃうと、あなた昂奮する?嫉妬する?
ちょっぴりだけど、愉しんでる?
愉しんでるよ、ね~?
身をもたれかけさせながら上目遣いする彼女は、すぐにいつもの彼女に戻っていた。

アクセス統計

2009年05月17日(Sun) 10:57:44

ひさしぶりに、アクセス解析をのぞいてみました。
一日のアクセス件数が200にも届かない弱小サイトの運営者としては、どうしてもこちらの方面には鈍感になってしまいます。(^^ゞ
件数が伸びないから、鈍感なのか。
鈍感だから、件数が伸びないのか。
まぁ・・・それはともかくとして。^^;

どこからお見えのお客様が多いのかな~、と、リンク元アクセスを覗いてみたのですが。
リンク元アクセス数って、半年経つと消えちゃうみたいなんですよ。(TT)
そんななので、ここ半年のことしかわかりませんが。
ベスト7を紹介してみます。

まず、圧倒的な数を誇るのが

舞方雅人さまの「舞方雅人の趣味の世界」
11月以降毎月、圧倒的な件数で堂々のトップ!
「ストッキングの脚から吸血するエロさが良い」とおほめの言葉を頂戴してからリンクをいただきました。
(*^^)v
とってもメジャーなサイト様らしく、ファンの方がおおぜいいらっしゃいます。
ほとんどテキストオンリーなのですが、とても博学な方で、びっくりするほどいろんなジャンルのお話が愉しめます。
そうそう。うちのことをわざわざ紹介記事にしてくださったり、お話を頂戴したりしたこともありましたっけ。

第二位以下は、つぎのとおり。
第二位 NOKTON様の「催眠小説 NOKTON-PAGE」
四年前、サイトを立ち上げてすぐのころにリンクをいただきました。
美しい女性~それも人妻~を催眠術にかけて操って、自由にしてしまう。
そんな愉しいお話満載のサイト様です。
このごろすっかりご無沙汰ですが、お元気でしょうか。表向きの交渉はなくても、案外ウラで深く結びついていたりして。^^

第三位 さやか様の「スパンキングとSM」
ぴりりと利いたコメントで、作者の私めを震え上がらせてくださったサイト様です。
デビューされてから長いのに、いまでも毎日のようにあっぷが続いています。
精力的な活動には、とても頭が下がります。
こちらでも、うちのサイトの紹介記事を書いていただいたことがあります。(*^^)v
どこだか、探してみてくださいね。^^
きっと探している途中で妖しい絵の魅力にはまりこんで、たどり着けなくなることうけあいです。(大笑)

第四位 masteblue様の「日々の妄想を形にして」
長編SM小説のサイトさまです。
柏木のところとおなじく、ほとんどテキスト一点張りなのですが、ここも濃いリピーターのお客様が大勢いらしているようです。
SM小説の王道を行っていらっしゃいます。
このごろ柏木はすっかり忙しくなって、他所様の小説を愉しむ時間がほとんど取れないでいるのですが、
単なる猟奇描写だけではなくて、ちょっと愉しめるオチや登場人物・地名の秘密などが隠し絵のように嵌め込まれてあって、
いろんな意味で愉しめる大人の小説になっているところが、さらに秀逸です。

第五位 「秘密の小屋:ネット作品紹介 (小説・オリジナル)様
いつの間にかリンクしてくださった、ネット小説のリンク集様です。
まだもう少し、アクセス件数とかに関心のあったころ。
いつも一日100そこそこしかお人がお見えにならないうちの件数が、なんと500件に跳ね上がったことがあったのです。
びっくりして調べてみたら、こちらで登録された直後だったことがわかりました。
女装美少年の小説サイトとして紹介されたみたいです。^^;
ちょっと違うかな?属性。
せっかくお見えになったのに期待はずれだった方には、ごめんなさい。
吸血鬼にたぶらかされた少年くんがママの服を着て、身代りに吸血されるシーンとかなら、あるんだけど。(^^ゞ

第六位 祥子さまの「淑やかな彩」
ひと頃は、こちらからのアクセスが圧倒的だったのです。
ご自身のサイトのアクセス数も強大なものがあって、常時ランキングのトップクラスに並んでいたような。
惜しくもこのところ、ぴたりとあっぷが止まってしまいました。
祥子さま。お元気でしょうか・・・
きっとリアルな世界で、お仕事でご活躍中なのでしょうね。。

第七位 まりあ様の「夢のひと雫」
なんでベスト7にしたかというと。ココを載せたかったからなのです。^^
わが愛してやまない、まりあさんの小説サイトです。
リンク先のいちばん上にあるように、いちばん長いおつきあいです。
画像や絵と小説のコラボは圧巻。
もしかして、ご本人・・・?との問いには、もちろん答えていただけませんでした。(^^ゞ

ググりとか、検索画面の件数は、省略して考えましたが。
ブログのタイトル名で入ってこられる方の場合は、お気に入り登録一歩前というところかな?と。
少し期待したりしています。^^
こうやってみると、小説サイトさまからのアクセスが多いことがわかります。
分野はSM、洗脳ものと、やっぱり似通ったところになるようですね。
けれどもアクセス数の多さは、↑の感じですと、
サイトのオーナー様とのおつきあいの長さとか親密度以上に、
先方のお客様が多いかどうかのほうが影響が濃いみたいです。
なんにいたしましても。
こちらにランクされているサイト様。そうではないけれど仲良くしてくださっているサイト様。
これからもどうぞ、ごひいきに。m(__)m

彼女を口説かれる 2  ~部位~

2009年05月16日(Sat) 13:24:35

このひと。若い女の子の血がないと、ダメなんだって。
だからあたし、ときどきこのひとに逢って。あたしの血をあげることにした。
いいでしょ?

いつもの少し小生意気な口調で。
やはりいつもの、甘えるような上目遣いで。
彼女は俺のまえ、やつを初めて連れてきた。
あ・・・ああ。きみさえよければ。いいんじゃないかな。
俺はいかにも気が進まないというふうに彼女を見、やつを見た。
すみません。
照れたような殊勝な顔をして。
やつは俺に頭を下げる。

やっぱり噛みつくんですか?って訊く俺に。
やつはいちいち丁寧に、応じてくる。
ええ・・・そうなんです。
そのときどうしても、彼女の身体に触れたり、肌に唇が触れたりするんですが。
失礼のない範囲にしますので・・・どうか大目に見てください。
あっ、たまに・・・ですけど。
多少の興奮とか陶酔・・・っていうのかな。ありますので。
ちょっと、オーバーヒートするかも・・・ですが。
ご迷惑のかからない範囲にしますので・・・これもどうか大目に見てやってください。
いいですよね?
念を押してくるやつに。
ああ・・・迷惑のないようにね。
仕方なさそうに、応じていった。

それで・・・噛みつく部位なんですが。
彼氏である貴方には、いちおう許可を得ておこうと。
ここと・・・ここと・・・って。
彼女の身体のあちこちを、指さしてゆく。
ほっそりとした首筋。
はざ間の深い胸元。
しなやかな筋肉におおわれた二の腕。
脇腹を突かれたとき。
彼女はくすぐったそうに声たてて。
健康そうで血色の良い顔色を、さらに紅潮させていた。
脚と、太ももからもいただきます。
太ももだったら、スカートで隠れますからね。
そのときだけ、彼の顔つきが微妙な翳を帯びた。
スカートで隠れるって?
そのまえに・・・スカートめくるんじゃないのか?
俺の疑問を見透かしたように。
彼女は俺のすぐに寄り添って。
いいよね?って。上目遣いで。
甘えるようなまなざしを投げてくる。
ストッキング穿いたまま、噛まれちゃうんだって。
なんかエッチ・・・だよね?
イタズラっぽい笑みに覗いた白い歯が、挑発的に輝いていた。

俺が無言でうなずくと。
やつはさっそく、実演にとりかかった。
がぶり。
彼女の首筋に、飢えた牙が食い入るのを。
はじめてこの目にした。
ごくり。ちゅうっ・・・
ロコツな音を、立てながら。
彼女の生き血が、吸い取られてゆく。
そのあいだ。
彼女はじいっと目を瞑っていて。
どこか心地よげな翳さえ、ノーブルな横顔によぎらせていた。
彼女のなにかが、吸い取られてゆく。
彼女になにかを、刷り込まれてゆく。
あの直感は、きっと正しかったのだろう。

彼女を放した男は。
しばらくじいっと、彼女と視線をからみ合わせて。
おもむろに。
唇と唇とを、重ね合わせていった。
むさぼるような接吻だった。
これが・・・オーバーヒートってやつか?
大目に見てくださいね。
行為の済むまでのあいだ。
虫のよすぎる男の言い草を、俺はばかみたいに反芻しつづけていた。
俺のまえ、ほかの男とキスをする彼女は、ひどくうっとりとしていて。
さっき吸い取られたばかりの血を口許につけたまま。
にこりと笑んで。指先で拭って。
拭った小指を、お行儀わるく唇でチュッとしごいていた。
あたしの血、おいしい?
くすっと笑う口許を。男の唇が、再び襲っている。

がぶっ。ごくり、ごくり、ごくり、ちゅうっ・・・
がぶっ。ごくり、ごくり、ごくり、ちゅうっ・・・
わざと遠慮がちに、怖々と抱きすくめる腕のなか。
男は彼女の首筋、胸、二の腕と。
順ぐりに牙を、突き立ててゆく。
なめらかな艶を帯びた皮膚に、吸い込まれるように。
やつの鋭い牙は、彼女の素肌にすべり込まされていった。
脇腹をねだるやつのため。
ブラウスをちょっとたくし上げた彼女は。
あのイタズラっぽい挑発的な笑みに、白い歯をにじませた。
足許にかがみ込んでくるやつのことを見おろしながら。
ストッキングごし吸いついてくる唇に、唇を噛みしめて。
あー、やらしいよね・・・
小声の呟きに、応えるように。
黒のストッキングはパリパリと小さな音をたててはじけ、薄っすらとした伝線を滲ませてゆく。

彼女が身に着けていた黒のストッキングは、地味なふつうのやつだったけど。
薄墨色に染まった脚は、いつも以上になまめかしかった。
太ももに噛みつこうとするやつの手が、ゆっくりとスカートをせり上げてゆく。
俺はドキドキと、胸高鳴らせながら。
ストッキングを破られる彼女の横顔に、見入っていた。
きょうで五足め♪
彼女は両手でピースを作りながら。
くすぐったそうな笑みを、俺と自分の足許とに、等分に投げている。
薄墨色に染まった太ももに吸いつけられてゆくやつの唇は、かすかな唾液を光らせていた。

おもむろに、体重をかけられて。
ああっ。
彼女はひと声うめくと、その場に組み敷かれていった。
見ないで。見ちゃダメっ。
激しくかぶりを振りながら。声を唇でふさがれて。
うぐっ。あぐっ。
意味の伝わらない言葉を、それでもうめきつづけていた。
せり上げられたミニスカートから、あらわになった太ももは。
大きく裂けた黒のストッキングから、白い素肌をチラチラ覗かせて。
激しい吶喊に、応じるように。
戸惑いながらも、動きをひとつに合わせていった。

彼女のストッキングの舌触りも。
あそこの締まり具合までも。
やつは知り抜いてしまっているのに。
失礼、なかったですよね?
ご迷惑じゃ、ありませんでしたか?
しらじらしく、訊いてくる。
なにが起こったのか、よくわからなかった。
彼女はほんとうに、記憶が抜け落ちたような顔つきをして。
あたし・・・平気だったよね?
大きな瞳の上目遣いで、訊いてくる。
ああ・・・迷惑なことなんて、何もないよ。
献血、よくがんばったね。身体の具合、だいじょうぶ?
俺の言い草に、彼も彼女も満足したようだった。

じゃあ・・・
立ち去る彼を送り出すのもそこそこに。
俺はその場に彼女を押し倒していった。
あ。やっぱり失礼なこと、あったんだ。
彼女は白い歯を滲ませながら、それでも大胆に、ミニスカートの脚を広げていった。
やつの手でパンストを抜き取られた脚は、いつになくぴちぴちとはずんでいて。
俺の怒張をなんなく咥え込んでゆく。
腰を思いきり、動かしながら。
上になり、下になり、仔犬のようにじゃれ合いながら。
俺の上になって、股を開いてのけぞりながら。
輪姦なんて。初めてだよ~。って。
見おろしてくる瞳は、すべてを憶えている女のものだった。

彼女を口説かれる。

2009年05月16日(Sat) 08:43:41

カラオケボックスの隅っこで。
俺の彼女が、若い男に口説かれている。
いつの間に、そんな展開になったのか。
二人きりで入ったはずのこの部屋に。
俺の隣には、男とは不釣り合いに年のいった女が腰かけていて。
さっきからしきりに、なにか毒々しい囁きで、耳たぶをくすぐってくる。
そういえば、彼女のほうも。
いかにも爽やかそうなそいつ相手に、なにかを囁かれていて。
よほど面白いことなのか、無警戒な笑い声をはずませている。
肩に流れる長い髪を揺らしながら。

ねぇ。似合いのふたりだと、思わない?
損得勘定とか、抜きにして。
ううん。あなたよりもお似合いだなんて、失礼なことは言わないけれど。
とっても、息が合っているって、思わない?
ほら、ほら。あんなに脚ばたつかせちゃって。
彼女。恰好のいい脚してるんだね。
今どきの子なのに、きちんとストッキングなんか履いちゃって。
服のセンスも、素敵だし。
髪の毛だって、染めていないし。
さらっと肩に流しているだけなのに。とても上品だし。
きっと、いいお家のお嬢さんなんだね。
知っているんだ。きみの本性。
廊下ですれ違ったとき、すぐにわかっちゃったんだ。
きみならたぶん、こういう状況怒らないだろうって。
ほんとのこと、言って御覧。
悔しいけれど、ドキドキするでしょ?
彼女を、ほかの男に口説かれちゃうのって。
ああ、彼ならだいじょうぶ。
あなたから彼女を、取り上げたりなんかしないから。
でも・・・ほんのちょっとだけ。見て見ないふりをして。気づかなかったつもりでいて。
彼の愛し方は、ほかの殿方とはすこし風変わりなだけだから。
ほんのちょっとでいいから、あなたの彼女を盗ませてあげて。

女の理不尽な言い草に。
腑抜けのようになった俺は、ただうんうんとうなずいていて。
彼女もまた、男の語りにゆったりとうなずきつづけていった。
いつの間にか、引き込まれるようにして。
大きな瞳は、しんけんな深みを増している。

甘える上目遣いで、すっかり打ち解けちゃって。
髪を揺らして、すっかりはしゃいじゃって。
彼女の心は、もうやつのもの。
さりげなく後ろにまわされた腕を、拒もうともしないようすに。
情けないほど、じんじんしてしちゃって。
俺は、ズボンのなかを逆立てちまっている。

ちょっとゴメンね。すぐに戻るね。
そう言い置いて、彼女はハンドバックを手に立ち上がる。
はじかれたように、やつがあとを追いかける。
引き止めちゃだめ。
女が軽く、俺のひざを抑えにかかる。
けれども毒酒に痺れた理性は、俺の筋肉の動きを封じていて。
ただ、彼女の手を握り返しただけだった。
一瞬でいいから。あなたの彼女を彼に貸して。
理不尽なのぞみに、応えるように。

さあ、もう行っていいわよ。
きみが愉しむのに、ちょうど良い頃合いだから。
女は無言の囁きで。俺を部屋の外に連れ出した。
ビルの裏手の人目のない一角に、佇み寄り添う男女の影。
まるで恋人同士のように。
彼女は見知らぬ男に肩を抱かれていて。
もう片方の腕は、白のミニスカートを穿いた腰周りに。
食い込むように、巻きついていて。
彼の唇は、はだけたブラウスの胸元に。
彼女の視線は、あらぬかたに。
唇が、離れると。
バラ色のしずくがひとすじ、するりと流れて。
彼女のブラウスのえり首に、す早くすべり込んでゆく。
いやらしいまさぐりが、せり上がっていって。
黒と白のしましま模様のブラウスを、しわ寄せていって。
彼の唇は、彼女のうなじに。
彼女の腕は、彼の背中に。
まさぐりに、しましま模様が波打ちながら。
指のうごきを、服のうえから肌の奥深くにまで、しみ込まされてゆく。

御覧。いい眺めだろう?
低く押し殺した囁きは、さっきの毒酒以上に深い毒を含んでいる。
似合いのふたり・・・だよね?
コンクリートの壁を背に、ずるずると姿勢をくずしてゆく彼女の姿が。
薄ぼんやりと滲んでいるのは、きっと悔し涙のせいではない。
彼女の足許に、かがみ込んで。
肌色のストッキング越しに這わされた唇が、うねうねとなすりつけられるのを。
脚のラインを引き締めるように、ぴっちりと貼りついた薄い透明のナイロンが。
ねじれて波打って、チリチリに破かれてゆくのを。
俺は胸ズキズキ弾ませながら、覗き込んでいたのだから。

そろそろ戻ろ。あやしまれるから。
そんないけない囁きに。
彼女は素直にうなずいていて。
落としたハンドバックを手に、ふらふらと立ちあがる。
俺がプレゼントしたハンドバックを、さりげなく奪われながらも。
彼女は逆らったりしなかった。
さ。戻ろ。
すっかり女の言うなりになった俺は、あわてて忍び足で、女のあとを追っている。

ごめ~ん。待った?
どこ行ってたの?
ナ・イ・ショ♪
おいおい~。(^^;
もとの仲の良い恋人同士にもどったときに。宴はお開き。
あっ、破けてる。破けてる。ストッキング、破けちゃってるっ。
彼女が言い出すともなく。女がそそのかすともなく。
ふた色の嬌声がはじける廊下。
あらー、大胆な裂、け、目♪
色っぽいよ。色っぽすぎるよ。早く履き替えてきなよ。と、女。
ごめん、トイレ行ってくる。と、彼女。
われに返ったように、ばたばたと駆け出そうとする彼女を引きとめて。
ちょっとだけ、ためらって。唇震わせながら。
われ知らず、俺は囁きかけていた。
ねぇ。脱いだストッキング、俺にくれる?
彼女はくすぐったそうに、腰をかがめて。
えっち。
たったひと言、囁き返す。

今夜はおれが持ちますよ。
若い男は、あくまで礼儀正しくわたしに話しかけてきた。
当たり前だ。ひとりでいい想いしやがって。
軽く小突いた肩は、意外なほど逞しかった。
男は俺に突っつかれて。
くすぐったそうに、けらけらと。子供のように笑いこけた。
彼女、オレと家がいっしょの方角なんですけど。
わざとらしい言い草と。
彼女のハンドバックを離さない手と。
共犯者・・・ですよね?そう言いたげな顔色と。
トイレから戻ってきた彼女は、白のミニスカートの下に履き替えてきたのは。
てかてか、ツヤツヤとした。
肌が透けるほど薄い、妖しいくらいスケスケの、黒のストッキング。
女はイタズラッぽく、さっきから。俺の横顔を窺っている。
うふふ。今夜はあなた以外の人に送ってもらうの。
挑発的にほほ笑む彼女は、彼のほうに寄り添っていた。

つづきを、観る・・・?
悪魔のような囁きに。
俺はとうぜんのように、うなずいている。

視られていると、気づいているのに。
覗かれちゃってるって、知っているくせに。
見慣れた彼女の部屋の暗がりのなか。
男は臆面もなく、女の肌に舌を這わせて。
女はあられもなく、しましま模様のブラウスをはだけさせていて。
俺とするときと、おんなじように。
わが物顔に抱かれる腕の中。
おっぱいをぷるぷると、恥ずかしそうに震わせながら。
かわいく媚びるように、甘えてしなだりかかりながら。
くすぐったそうなはしゃぎ声を、ちいさくはじけさせながら。
イクときの喘ぎ声だけは、かろうじて押し殺していた。
黒のストッキングの片方に、スカートの奥まで裂け目を走らせて。
もう片方は、ひざ下までたるませて。
腰までたくし上げられてくしゃくしゃになったミニスカートは。
他所の男の精液で、裏地を汚されていった。
どろどろ、ねっとり。どっぷりと・・・

夕暮れ刻の、交差点。
ごめ~ん、待った?
駈け寄ってきた彼女は、いつものハンドバックを提げていない。
夕べ、あのお店に忘れてきちゃったみたい。
中に入ってた名刺を見たって、男のひとから電話がかかってきたの。
明日、受け取りに行くんだけど。
お礼はなにがいいかな?
わざとらしい作り笑いに、応えるように。
彼女の後ろにまわり込み、両肩に手をかけて。
黒のスケスケのストッキング。
やだぁ。
くすぐったそうな笑いを、はじけさせて。
ひじで脇腹を小突いてくる彼女は、いままでと変わらなく無邪気だった。

お里帰り その後

2009年05月11日(Mon) 05:10:51

いちど踏みはずしてしまったものは、なかなか元には戻らない。
坂から転げ落ちるような、容易さで。
なんの障碍も抵抗もなく、くり返された。
一度だけのはずが、二度めを生み、三度めを犯す。
一人はふたりになり、ふたりが三人になることもある。

黒のハイソックスに、同じ色のスカート。
そんないでたちを、目にしただけで。
わたしは里香の胸に手を伸ばしていた。
里香は、実の娘―――。
娘でありながら、血のつながりはないという。
さいしょはそんな言い訳で、自分をだましていたはずだった。
けれどもいまは、ごくしぜんに。
欲するときに欲し、態度ひとつで応じるような関係に。
びっくりするほどの自然さで、そうなっていった。

里香はとろんとした目つきをして。
グレーのカーディガンをせり上げられ胸元の真っ赤なリボンをほどかれして。
ひざから力を抜いていた。

そのまま、じゅうたんの上で、であった。
彼女の母親―――わたしの妻が、部屋に入りかけようとしたようだったが、
なかの気配を察すると、すぐさまドアのノブを閉めていった。
わざとのように、かすかな音を響かせながら。

制服を汚すまい・・・と思っていたのだが。
このごろどことなく細面になった娘は、しつように身体をからみつかせてきて。
度重なるおねだりに、ほだされるようにして。
一度のつもりが、二度、三度。
果てていって。
あれほどよそうと思っていたのに。
スカートの裏地に、たらたらと。
白く濁った液を、ほとばせてしまっていた。

パパ、制服だとすぐ昂奮するね。
見透かしたようなことを言って、からかうような上目遣いをして。
憎たらしいその頬を、両手で押えながら。
口づけを、交わしてゆく。
あとさき・・・だね。
口足らずな少女は、ふてくされたようにそっぽを向いた。
さいしょが、キス。それから、エッチ。
そういうことを、言いたかったらしい。

初めてのころは、ぽっちゃりとした肉づきで。
白のハイソックスがよく似合う、むっちり脚だった少女は。
このごろどこか、スレンダーになってきて。
顔まで細面になってきた。
そういう時期なのだろうか?
もともとやせ型だった彼女の姉のほうが、いまでは丸顔になったような気がする。

ねぇ。
少女がうつろな声をあげた。
なにか、言いたいことがあるらしい。
どうした・・・?
半ば父親の顔にもどりながら。
わたしは少女のさらさらとした髪を撫でるのをやめなかった。
里香はさりげなく、わたしの手を受け流して。
いつか告げるであろう言葉を、囁きかけてきた。
彼氏、できた。

・・・そうか。
―――これまでだな。
慶んでやらなければいけないことなのに。
真っ先に感じたのは、いま味わったばかりの果実にたいする、残り惜しさだった。
われながらあさましい・・・と感じたとき。追い打ちをかけるようにして。
もう、エッチできないね。
娘はまたも、からかうような上目遣い。

つきあっている男の人が、いたんだよって言ったんだけど。
それでもいい、って言ってくれた。
身体だけのつきあいだけど。まだつづいているんだよ、って言ったんだけど。
どうしてもやめられないの?って、訊いてきて。
どうしてもやめられないの!って、おうむ返しに答えたら。
それでもいいかな・・・って、言うんだよ。
それでもいいなら・・・って、あたしも言って。
エッチ、しちゃった~♪パパ、怒る?

腹這いになったまま滅入った顔をしていると。
娘はじぶんから、甘えるように身体をもたれかけてくる。
はずんだ息遣いが、耳たぶにかかった。
イタズラっ子のような幼さを、いまでも里香は失わない。
彼氏ともスルけど、パパともつづける・・・それでいいでしょ?
ズキズキするような明日が、目のまえに広がっていた。
わたしは彼女の手を撫でながら。
彼・・・こんなふうにお前の手を撫でていなかったか?って訊くと。
やだぁ。
少女らしい無邪気な笑いが、はじけていた。

そそるような流し目をして。
ずり落ちたハイソックスを引き伸ばしたのが、合図だった。
彼氏ができた・・・と、知りながら。
わたしは娘を、組み敷いていた。
パパの・・・バカ。
いよいよ挿入、というときに。
娘は白い歯をみせた。
突きいれてしまったときに。
娘の下肢は、咥え込んだものを放すまい・・・と、きつく締めつけながら。
悪魔のように、囁いていた。
彼・・・いま覗いているんだけど。
えっ。
いつの間にか半開きになっているドアのほうに、視線を迷わすゆとりもなく。
激しい上下動が、意思と無関係に始まっていた。
ドアの向こう側の昂りが乗り移って来たように。
ずぶ、ずぶ、ずぶ・・・と。
ナマナマしい交接を、遂げてゆく。
娘がほんとうのことを言ったのか、わたしにもわからない。

お里帰り

2009年05月10日(Sun) 04:00:36

今回の里帰り。
恵理だけを、連れていきます。
里香はお留守番、いいわね?
妻の宣言に、娘ふたりは聞き分け良く、頷いた。
肩先に揺れる黒髪は、二人ともすっかり大人びて。
父親のわたしが見てさえ、眩しげに映った。

夫婦ふたりだけになると。
妻は体を寄せてきて。
声をひそめながらも、改まった口調になっている。
お察しだと思いますが。
家に戻ってくるとき、恵理は女になっていますから。
瞬間、忌わしい因習の饐えた臭いが漂ったようで。
わたしは聞こえないふりをして、妻から視線を逸らしている。

因習。
そう、大学で出逢ったとき、すでに彼女の全身にまとわりついていたもの。
プロポーズをした時に、あらいざらい聞かされて。
羞恥に顔を覆った彼女の手を、包むようにして撫でていた。
気持ちは、変わらないから。
どうしても続けなければいけないことなら・・・なにもなかった顔してるから。
妻の村には、夜這いの風習が残っていた。

十四の齢になると。
娘はだれでも、男を迎えなければならない。
拒めば、村にいることのできないしきたりだった。
毎晩のように、ちがう男を迎えて。
しだいしだいに飼いならされて、女になってゆくという。
はたちになるころには、村じゅうの男という男と、契りを交わしていて。
女を共有するものどうしの連帯が、村を守りつづけてきたという。

最初の夜に訪れる男は、たいがい決まっていて。
多くの場合、血縁的に近い男だという。
妻にしても、さいしょに迎え入れたのは、実の父親だったという。
「まだ、子供だったから。よそのおじさんが怖かったのね」
こともなげに呟いたときの、彼女の横顔は。
見知らぬ女のものだった。
「母は、だまっていたわ。そういう女の子、多いらしいから」

恵理の相手は、だれになるのだろう?
舅のカツジなのだろうか?
骨太な身体つきをゆすりながら、朴直に肩をゆすって笑う癖のある舅は。
深い皺の刻まれた赤ら顔をしていて、齢よりもはるかに老けてみえた。
けれども、がっしりとした体格は、いま殴りあったとしてもびくともしないふうだった。

ひと晩、眠れない夜だった。
妻もとうぜん、無事な体ではあるまい。
それは、毎年繰り返されてきたことだった。
年に一度。夏祭りの季節に娘を連れて里帰りして。
祖父母が孫を祭礼に連れ出しているあいだ、村の男たちと契りを交わす夜、夜。
なかには本当に、上手な男もいるという。
その男のことを、口にするとき。
気のせいか、妻はいつも上の空の目をしている。

さすがにお姉ちゃんのことを、まだ齢を迎えていない下の娘に見せまい・・・とする。
母親ならではの、気遣いなのだろう。
おとなしい子だけど。
さいしょの晩は、いやがったり、泣いたりするかもしれないし。
あからさまに口には出さなくても、妻の顔にそう書いてある。
置いていかれるほうの里香は、なにも察していないのか。
留守番を言いつけられても、べつだん顔色ひとつ、変えなかった。
里香は―――十三年前の、夏に授かった児。
そう・・・わたしの娘ではなかった。

村にはいろいろと、しきたりがありましてな。
よその土地から来られた方には、きゅうくつに感じられるじゃろうが・・・
なに、慣れるとそれほど、気にならなくなるものですじゃ。
しばらくつきあっておると、いいこともありますでの。
都会育ちの婿に、なんとか合わせようとして。
一生けんめい、標準語をあやつろうとした舅の言い草は。
舅のつたない努力を裏切って、独特な抑揚を伴っていたけれど。
そのぶんどこか、とぼけた味があった。
こういう男だから。
妻の処女を奪った男。
そういう目で、見ずにすんできたのだと思う。
―――しばらくつきあっておると、いいこともありますでの。
なぜかそのひと言が、いまさら耳の奥によみがえってきた。

ジリリリリリン。
電話のベルが鳴った。
ちょうど、妻と恵理とが、里についた時分だった。
無事着いた・・・という、事務的な連絡と。
声をひそめて、なにか言いたそうにしていた。
恵理をよろしく。
里香に聞かれまいと、声をひそめるわたしに。
妻はいっそう、声ひそめていた。
恵理のことは、ご心配なく。お祖父ちゃんが、してくれるって仰っているから。
どきん!とした。
けれども妻は、かまわずにつづけている。
里香のほうは、あなたしっかりね。
え・・・?
思わず耳を、疑っていた。

知らなかったの?
村では、数えで齢をいうものなのよ。
満で十三歳の里香は、数えで十四。
なさぬ仲なのは、あなたもご存じだったのでしょう?
きょうまで村のしきたりを冒さなかったあなたのために。
里香を置いていきました。
処女をあげられなかったつぐないを、今させてください。
あの子。ちょっとは母親似でしょう・・・?
だれかが戻ってきたらしい。
あわててガチャリとおかれる受話器の音が耳を打った。
しばらくのあいだ。
わたしは受話器を手に取ったまま、立ちすくんでいた。

夜八時。
父娘で、落ち着かない夕食だった。
ジリリリリン。
ふたたび、電話のベルが鳴った。
妻の声が、受話器のむこうから伝わってくる。
そちら、まだなの?
恵理はもう、済ませたわ。
彼方から、はしゃぐような恵理の声が聞こえてくる。
もぅ。あの子ったら、恥ずかしがっちゃって。お祖父ちゃん、へきえきだったわ。
妻の声は、どこか愉しげだった。
役目を済ませた・・・そんな安堵さえ、伝わってきた。
里香に代わって頂戴。伝えたいことがあるの。
なんなら、あなたから伝えてください。
今夜のシーツはママが帰るまで、洗わないでとっておくように・・・と。

ウン。わかった。
はじめから言い含められていたらしい里香は、落ち着き払って受話器をおいた。
パパ・・・黒のストッキング好きだったよね?
夕食が終ったあとだというのに、娘は夏用の白のセーラー服姿のままだった。
いや、よく見ると。
真新しい制服に、着替えている。
さりげなく差しのべられたふくらはぎは、薄手の黒のストッキングに包まれていて。
ジューシィなまでに、ピンク色に輝いていた。

勉強部屋のベッドのなか。
黒髪をふり乱した里香は、別人のように息荒く昂って。
はだけたセーラー服から覗いたおっぱいを、わたしにもみくちゃにされながら。
濃紺のプリーツスカートのすそを、乱していった。
もぅ、いいよ。ストッキング破って頂戴。
まさぐる太ももから、もろいオブラアトのように引き破ると。
わたしの理性も、きれいに吹き飛んでいた。
実の娘と契るという、いまわしさも。
夫婦示し合わせて娘の処女喪失に加担しているという、いかがわしさも。
ずきずきとするスリルとしか、感じられなくなっていた。
恥ずかしいほど逆立った、わたし自身が。
男の子のように生硬な皮膚を、すべるようにさぐってゆく。
いよいよというとき、ひそめた細い眉が。
初めての夜を過ごしたときの妻と、うり二つだった。

翌朝。
おはよう。パパお寝坊だね。
いつものように、男の子みたいにぶっきら棒な声がぶつかってきた。
あたし出かけるよ。朝食用意しといたから。
なにごともなかったように登校していく娘の後ろ姿を、ぼんやりと見送っていた。
今朝のセーラー服は、いつも見慣れた、すこし着古したもの。
脚にまとった黒のストッキングだけが、ひどく目に灼きついた。
のろのろとダイニングに入ると、焼きたてのトーストがお皿の上に、取り澄ましたようにおかれている。
椅子に手を伸ばし、後ろに引こうとして。ふとその手を止めていた。
椅子の背もたれには、裂けた黒のストッキングが。
ひらひらと音もなく、揺れていた。
―――しばらくつきあっておると、いいこともありますでの。
その昔、妻の純潔を味わった男の声が、どこからか洩れてきたような気がした。

男の子のいる家庭

2009年05月09日(Sat) 22:21:25

初めて生き血を狙ったその獲物は。十代の男の子だった。
都会から転校してきた、学校の教え子で、
色白な肌と礼儀正しさが、育ちのよさを感じさせた。
二重まぶたのまなざしは、どこか少年ばなれした悩ましさを秘めていて。
なによりも、真っ白な半ズボンから伸びた発育のよい脚が、ひどくツヤツヤと輝いていた。
しなやかな二本の脚は、ほどよい肉づきを伴うカーヴを描いていて、
いつもふくらはぎを覆っている、真っ白なハイソックスは。
ひざ下まで、ぴっちりと。女の子のように几帳面に引き伸ばされていた。
いつか・・・あのハイソックスを噛み破ってみたい。
そういう衝動にかられながら、私はいつも隠した牙をジリジリさせていたのだった。

吸血鬼は、一家をお揃いで支配して、はじめて一人前と見なされる。
少年と同じく都会に育った私には、早く認められる必要があった。
けれども・・・よその土地からの転入者というおいしい獲物を、そうそうモノにできるわけはない。
権利はいつも、村の長老にゆだねられていた。
私が彼とその家族に対する優先権を得ることができたのは。
ひとえに、妻と娘が私の意思にかかわらず襲われて、
長老たちの喉の渇きをうるおしたためだった。

いちど目は。
かれは、体調が悪いと言いだした。
そこは、教え子のことだから。
私はいちどだけ、猶予を与えた。
ほんとうに、具合が悪かったらしい。
彼は感謝して、下校していった。

数日経って。あしたは週末という日の夕刻に。
私は彼の携帯に、催促の電話をした。
・・・わかっているだろうね?
たったひと言で、聡明なかれにはすべてが通じた。
・・・もう、見逃してはいただけませんよね?
もちろんだとも。
突きあげてくる若干の良心と、それと反比例した荒い息遣いを抑えながら、
私はむしろ苦しげに、彼のことを促していた。
ハイソックスは、真新しいのを履いていらっしゃい・・・と。

街合わせた夜更けの公園に。
几帳面な彼らしく、約束の10時きっかりに現れた。
両親が寝静まってから、出てきたのだと。
口ごもりながら、そう告げてきた。
いつも着ている淡いブルーのTシャツに
やはりいつも見慣れた真っ白の半ズボンを履いて。
いつもは運動靴なのに、今夜はこげ茶の革靴を履いてきていた。
革靴に縁取られたハイソックスの甲は、規則正しく流れるリブが、整然と覆っていた。

足許に這わされる視線に、訝しげに見上げてくる彼に、
私は照れ隠しに顎を撫でながら。
ユニセックスで、いい眺めだ。ちょっと、女の子みたいだね。
口にしてしまうと、ちょっぴり大胆になって。
流れるような脚の線を、ハイソックス越しにさらりと撫でつけた。
脚から噛んでみたいね。そこの芝生に、腹ばいになって御覧。

おそるおそる、うつ伏せになる彼の足許に。
そろそろとおおいかぶさるように、かがみ込んでいって。
逃げられない体位だと、彼がさとったとき。
ふくらはぎを舌で、ぬるりと舐めていた。
ハイソックスのしなやかな生地の舌触りが、
ひどくすべすべとして、心地よかった。

そのままがりり・・・と噛もうとしたけれど。
なぜか私はそのまま彼を抱きよせて。
あごと肩とを、抑えつけて。
うなじに唇を、吸いつけていた。
柔らかい皮膚を、切り裂いたとき。
電光のような衝撃が走ったのは、彼のほうばかりではなかったらしい。

たらたらと流れる血に、驚く彼を。
場慣れした私は、いともやすやすと黙らせて。
半熟玉子の黄身でも、吸うようにして。
ちゅるちゅると音を立て、Tシャツのえり首を汚さぬよう、器用に啜り取ってゆく。
健全に発育した若い少年の、濃い活力が。
狂おしいほどに、私を潤わせ、夢中にさせる。

できれば・・・死なさないでくれませんか?
ああ・・・もちろんだ。
ちょっと、吸い過ぎたかな?身体の具合は、どうかね?
エエ。まだ、だいじょうぶだと思います・・・
ひそひそと、囁き合いながら。
煌々と蒼白く照りつける街灯のなか、影絵のようになって。
私は血を吸い、彼は吸われつづける。

こんどは母さんを、連れて来てもらおうか?
私がたちのわるいことを、囁くと。
彼はしばらく、うつむいていて。
ごめんなさい。
やっぱり母を罠にはめるようなことは、できません。
母のことが気になるのなら、父と相談してもらえませんか?
父親の名を出せば、私が思いとどまると思ったのだろうか。
それとも、村での正規の手順を、すでにわきまえていたのだろうか?

私はもうそれ以上、彼に無理強いをせずに、
ふさふさとした黒い髪を撫でながら。
ともかく今夜は、きみの血を愉しむとしよう。
少年の血のついたままの口許を、これ見よがしにさらしていくと。
彼はうっとりと、私の口許を見つめてくる。
衝動―――
稚ない唇を、飢えた唇で吸っていた。
自分の血の匂いに恍惚となる少年と。
初めて交わす同性の唇に、戸惑う私。

いま少し・・・
ふたたび、唇を重ね合わせたとき。
彼はなんの違和感もなく、しつような口吸いに応じてきた。
ハイソックス、イタズラしないの?
噛み破ってもいいんだよ。
いちばん気に入りの、ラインの入ったやつ履いてきてあげたんだから。
フフフ・・・
大人のように、笑いながら。
彼はずり落ちたハイソックスを、いつものように几帳面に引き伸ばして。
格好の良い脚を差し伸べてくる。
女の子のようにしなやかなふくらはぎに、夢中になって。
しつように吸いつけた唇の下。
整然と流れるハイソックスのリブを、じりじりとねじれさせてしまっていた。

じゃあ。行くね。
母のことは、父と相談してくださいね。
さいごまで、礼儀正しかったけれど。
立ち去るときの蹌踉とした足取りに、
いつもきちんと引き伸ばしたハイソックスは、すねまでたるんでずり落ちていた。

息子が、世話になっているそうですね。
彼の父親は、ある日の夕方突然職員室にやってきて。
先生方もいなくなった部屋のすみ、腰かけたソファで、足組みをして。
女のように細っそりした指先で、スラックスのすそをつまむと、するりとたくし上げていた。
丈の長い靴下が、お好きなそうですね。紳士ものでも、よろしいのですか?
わたしとしては、精いっぱいの妥協ですが。
家内の履いているストッキングと同じくらい、薄いやつですよ。
それ以上、詳しいことはなにも仰らずに。
足許にかがみ込んでいく私から、目をそらし続けていた。
働き盛りの血潮は、ひどく濃艶で。
彼の息子から吸い取った血潮と、似通った香りを漂わせる。
息子のときと、おなじように。
くしゃくしゃにたるんで、すねまでずり落ちた濃紺のストッキング地のハイソックスには。
大胆なくらいの伝線が、男にしては白すぎる皮膚をあらわにするほど広がっていた。

つぎの日の晩、訪いを入れた少年の家。
昼間にしつように血を吸い取った少年は、とうの昔に寝ついていた。
勤めから戻っていたご主人は。
息子は寝んでいますし、家内も留守ですが・・・とそらとぼけていたけれど。
ご主人のハイソックスの舌触り、なかなかでしたよ。
もういちど、頂戴したくって。
私の言い草を聞くと、照れ笑いを浮かべていた。
あれ一足きりしか、なかったのですよ。
ちょっと困り顔に、ほほ笑んで。
ふと、なにかを思いついて。
困り笑いを、悪戯笑いに塗り替えながら。
模範解答を、呟いていた。
家内のやつを、穿いてあげましょうか?

あと一時間もすると、あいつも戻ってきますから。
そのときは遠慮なく、召し上がってみてください。
わたしはきっと、あなたに血を吸われすぎて酔い酔いになっていて。
妻を救うことが、できなくなっている時分でしょうから。
帰宅した奥さんが。
夫がスラックスの下に穿いているのが、紳士用の靴下ではないとさとったときには。
ご主人のまえ、えび茶のスーツ姿を私に組み敷かれた格好で。
小娘みたいに、きゃあきゃあとはしゃぎながら。
地味な肌色のストッキングを履いた脚をさらして、チリチリに剥ぎ堕とされているさいちゅうだった。

父が、母を紹介したそうですね。
母とも、仲良くなっちゃったんですね。
時々覗いてもいいぞって、父から言われているんですが。
先生も、かまわないですか?
いつもより低い声を、洩らしながら。
少年は私に首すじを与えてくれていて。
ごくごくごくごくと、音をたてて血を呑まれるのを。
心地よげに、聞き入っていた。

足首までずり落ちた純白のハイソックスは、女の子のストッキングみたいに薄くって。
血色のよい脛をピンク色に滲ませていた。
男の子にしては、薄い地のハイソックスを。
恥ずかしがらずに、履いてくるようになったのは。
きっと・・・ほかにも同類の男子がなん人もいることを知ってからのことだった。
母、貧血みたいですから。今夜はお相手できないって。
口ごもったとき、珍しく履いてきた長ズボンをたくし上げると。
光沢ツヤツヤの濃紺のストッキングの脛をあらわにしてくることもあった。

きょうは、つづきがあるんですよ。
少し蒼ざめた頬を、輝かせながら。
少年は視線をそらして、校庭のすみを促した。
そこに佇んでいるのは、セーラー服に三つ編みの、少年とよく似た少女。
妹です。先生、ずっと狙ってたでしょ?
母を捧げるのは、父の役目でも。
妹のことは、ボクからプレゼントしようと思って。
彼女。
先生のために・・・って。
夏服なのに、黒のストッキング履いてきたんですよ。

身内の女性をひとり、紹介すれば。
血を吸われる側として、一人前になれるのだと。
この子の父親は、そう入れ知恵したのだろうか。

学校からのかえり道 三人と三人

2009年05月05日(Tue) 12:31:51

ああ。この子たち?
怖がらなくって、いいのよ。あたしの仲良しなんだから。
弟みたいなものだと思って。
血のつながりは、ないけれど。
でも・・・
この子たちには、あたしとおなじ血が流れているの。
だって。
あたしの血を吸って、生きているんだもの。

三人連れだっての帰り道。
公園の路上で立ちふさがったのは、年下の少年たち。
おそろいの紺の服装は、どこかの学校の制服みたいだったけれど。
半ズボンの下からさらした太ももは、血のかよっているようにはみえないほど蒼白かった。
こちらは、女学生の三人連れ。
むこうは、少年たち三人。
数は、おなじだったけど。

気にしないでね。
嫌だったら、無理には襲わない子たちだから。
怯えきったほかのふたりにほほ笑みかけると。
栗色の髪の少女はひとり、前に出て。
ひっそりと立ちすくむ少年たちのまえ、黒ストッキングの脚を歩み寄らせた。
どうする?って、振り返る少女に。
クラスメイトふたりは、小刻みにかぶりを振って。
わ、わたしたちは・・・
おそろいの薄墨色のストッキングの脚を、ちいさく後ずさりさせていた。

そうね。無理には、すすめないわ。
栗色の髪の少女は、ちょっぴり寂しそうにほほ笑むと。
それでも慣れた足取りで、傍らのベンチに、腰かけた。
少年のひとりはそろそろと、彼女の後ろにまわり込み、
セーラー服の襟首を軽く抑えながら、うなじに唇を近寄せる。
もうひとりは、足許にかがみ込んで。
白い脛が涼しげに透ける、薄手の黒のストッキングのふくらはぎに、唇を吸いつけた。
制服の一部である薄いナイロン生地に、かすかに唾液を散らしながら。
少女は得意げに、ニッ、とほほ笑むと。
三人めの少年のため、長袖の制服の腕を、思い切りよくたくし上げる。

夕闇せまる、公園のなか。
うずくまる三つの影の下。
ちゅうちゅう・・・ちゅうちゅう・・・
生々しい音が、漏れてくると。
少女の連れのひとりは、たまりかねたようにその場を逃れた。

ひたひた。
ひたひた。
あとから追ってくる足音に怯えて脚をすくませると。
背後から手首をとらえてきたのは、親友の佐保美だった。
じぶんとおなじように、まっ蒼な顔をしながら。
佐保美はけんめいに、かぶりを振っている。
逃げちゃ、いけないような気がする。
でも・・・
あたしだって、怖いよ・・・でも・・・
薄闇のなか立ち惑ったふたつの影法師は。
やがてきびすをかえして、もときた道を戻っていった。

うふふ・・・ふふふ・・・
忍び笑いを、洩らしながら。
栗色の髪の少女は、くすぐったそうに笑いこけている。
ちいさくばたつかせた脚は。
しつこくいたぶられ噛み破られた黒のストッキングから、
白い脛をあらわにさせていた。

ごめん。また襟首汚しちゃった。
背後のひとりが、呟くと。
もう・・・クリーニング代、ばかにならないのよ。
少女はやたら現実的なことを気にして、口を尖らせながら。
こんどは腕まくりをした長袖を、元に戻していって。
セーラー服の上衣のすき間から、腰に噛みついているやつのことを、
睨むようにして、覗き込む。
スリップ着てこなくって、よかったわ。
また、破かれちゃうところだったね。
なまの唇に、素肌を許しながら。
少女はこともなげに、流れた血をハンケチで拭った。

女王さまみたいでしょ?
あなたたちも・・・こんど気が向いたら、乗ってみない?
さっきから、息をつめて見守っていたふたりのクラスメイトは。
蒼ざめながらも、頷いている。

一週間ほど経った、夕暮れどき。
まっすぐ、帰るの?
三人の少年たちが、立ちふさがるように現れると。
三人の少女のふたりは、二、三歩退いて。
もうひとりのほうは、逃れるように立ち去ろうとしたけれど。
もう片方に、引きとめられて。
かすかにうなずくと、こんどは真っ先に。
あたしたちも・・・いいかな?
おずおずと、申し出ていた。

仲良く並べられた、三組の脚たちは。
おそろいの黒のストッキングに、血色のよいふくらはぎをピンク色に滲ませて。
二度三度は、払いのけたりさえぎったりしていた不埒な唇たちを。
とうとう薄手のナイロンごしに、受け入れていって。
ぱりっ。
ぱりはりっ・・・
ストッッキングの裂けるかすかな音に、肩すくめあっていた。

母親たちが、同じ経験をしてきたことを識ってしまった少女たちが。
大人への階梯を、昇り始めようとしている。


あとがき
実際のあっぷは、9日の午後10時ころですが。
描きはじめた時間であっぷします。

洗脳の刻2

2009年05月03日(Sun) 16:37:09

初めて流した血潮を、たらたらと滴らせたブラウスを。
きみは潔く脱ぎ捨てて、投げるようにして相手に差し出していた。
汗ばんだブラウスの、かすかな温もりに。
あいつは眩しそうに、頬ずりをして。
がさがさと不器っちょな手つきで、鞄のなかに隠していった。
ブラウスをはぎ取られた胸もとをガードするブラジャーには、さすがに手を触れさせなかったけれど。
彼女は頬っぺについた泥を手の甲で拭うと、イタズラっぽくほほ笑んで。
胸元を引き締めていた真っ赤なリボンだけを、うなじに巻いてゆく。

行こうか?
きみは初めて、いつもの透きとおった瞳に戻って。
わたしのことを、にこやかに見あげると。
ベンチから腰を上げようとして、鞄を手に取った。
チェック柄のプリーツスカートの太ももを。
男はいまいちど、おしとどめる。
ちょっと待って。あと、すこしだけ・・・

いぶかしそうに見おろす視線の向こう。
あいつはいつものいやらしい性癖を発揮して。
ハイソックスを履いたきみのふくらはぎを狙っている。
ひざ下までぴっちりと引き伸ばされたハイソックスの、脚のラインを映して微妙なカーヴを描いたリブが。
じりじりと不自然に、よじれていった。

首すじよりも・・・やらしいなぁ。
きみは声を落として、呟くと。
真っ白なハイソックスに着けられた赤黒いシミを、撫でるように拭おうとして。
むだだとわかると、するすると脱ぎ捨てた。
さっきのブラウスみたいに、いさぎよく。

つぎのお愉しみに、取っておこう。
きみの彼女から、スカートとパンティをもらうのは。
得意げにうそぶくあいつを、軽く睨むと。
わたしはいとも中睦まじげに、彼女と手をつないで、その場を立ち去った。

それから毎日のように見せつけられる、思わせぶりな戦利品。
ストラップの切れたブラジャーには、ぬらぬらとした唾液が。
薄々のグレーのストッキングには、うす紫色をした血潮の痕が。
あれほど執着した制服のプリーツスカートは、裏地にぐっしょりと、透明な粘液を光らせていた。

ほんとうに奪うのは、きみのまえ。
さいしょから、そう決めていたんだ。
ゆう子も、愉しみにしているんだぜ?
ふんぎりのつかないわたしを、からかうように。あいつはわたしのフィアンセを呼び捨てにする。

目もくらむような、上下動。
いままでさんざん繰り返されてきた前戯に、のめり込むように。
ゆう子さんは、いけないため息に昂りながら。
スカートの奥、逆立つ赤黒い肉塊を、忍び込まされていった。

痛ーっ。痛ーいっ。タ・カシィ・・・っ
あまりに真に迫った声に、わたしは身震いをして、
ついでに股間の先端から、恥ずかしい液をしたたらせていた。
ゆう子さんは、もうっ・・・と言いたげに、肩そびやかして。
甘い劣情に浸り抜いてゆく。

愛人つきの、お嫁入り。
わたしの出勤と入れ違いに、新居に侵入するわるいやつ。
あとはよろしく。こんどはわたしのいる時に、遠慮なく。
言うほうも、言われる方も、照れくさそうに視線をそむけ合っている。

洗脳の刻

2009年05月03日(Sun) 15:45:08

見ているだけでいいよ。
未来の花嫁を手ごめにされるなんて、とても協力できないだろうから。
あいつは親切にも、そういってくれた。
誰でもいい。
親しい吸血鬼に、いちどは婚約者を差し出さなければならないしきたりという。
甘く苦しい、縄のようにしややかな運命の糸が。
わたしをがんじがらめに、縛りつけていた。

たそがれ刻、人けのない公園を。
ゆう子さんは息せき切って、逃げ回っていた。
汗ばんだ制服のブラウスを、はずませながら。
木立ちの影にかくれているわたしの間近かの樹の下で。
とうとう肩をつかまえられて。
ツタのように巻きついてくる猿臂を、どうすることもできなくって。
みるみる、がんじがらめにされてしまう。
ボクのために純潔を守ろうとしているゆう子さんが。
大人しくなるのは、時間の問題だった。

サラサラとした黒髪が流れる、小麦色の首すじに、あいつの唇が貼りついて。
ちゅうううっ・・・
ひときわつよく、吸いはじめていた。
厚い胸からわが身を引き離そうと抵抗する細い腕が、動きをとめて。
くたりと力を抜いて。
するすると落ちていって。
風にそよぐ制服のスカートのすそに、だらりと垂れた。

ぐちゅうううっ。
汚らしい音をたてて飲まれてゆく、ゆう子さんの生き血。
傷口を踊るようにねぶり回すあいつの唇が、遠目にも悦んでいた。
ベンチのうえ、腰かけて。
膝のうえには、制服姿の獲物。
男は舌なめずりを繰り返し、わたしの未来の花嫁を吸い、また吸ってゆく。
とどめを刺すように。容赦なく。

彼女が薄っすらと、目をあけたとき。
わたしは彼女の名誉を汚そうとする男の手助けをして、
ふたりがかりで、身体を支えていた。
いぶかしそうに彼女はわたしを見、あいつのことを見る。
あいつが臆面もなく、唇を近寄せると。
さっきあれほど厭っていた吸血に、うなじをさし寄せるようにしてためらいもせず、応じてきた。

とろんとした目つきに、覚束ない言葉づかい。
抑揚のない冷やかな声色が、彼女が洗脳されてしまったことを、告げていた。

約束どおり、あなたのお嫁さんになってあげる。
その代わり。
愛人つきでお嫁入りしても、いい・・・?



あとがき
自分の住む街に吸血鬼が同居していて。
そのなかのだれかに、妻や恋人をゆだねなければならないとしたら。
貴男は、親しい相手を選びますか?
それとも・・・見ず知らずの男に、遂げさせますか・・・?