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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

善良なひと

2009年09月29日(Tue) 08:12:02

さっきね。
知り合ったばかりの、さる善良な青年が。
若い女の生き血を欲しがる私のために。
お母さんを、連れてきてくれたんですよ。
えび茶のスーツの下、目の覚めるように鮮やかな発色をした黒の薄々のストッキングが、白い脛に映えていて。
私は思わず、しゃぶりついてしまったのですよ。
そう、その青年は、私のため。
ちょっとだけためらいながらも、お母様の両肩を優しく抑えてくれたのです。
お母様も、わきまえのある気丈なご婦人だったので。
「見ちゃダメよ」
って、息子さんに注意して。
ご自分も目をつむって、少しだけ、ぶきっちょに。
流れるようなおみ脚を、さらりと差しのべてくれたのですよ。
どうして私が遠慮など、するでしょうか。
すぐさま唇を吸いつけて。
ちゅうっ、ちゅうっ、ちゅうっ・・・
思うがままに、いたぶり抜いて。
黒のストッキングがちりちりになるまで、
破ってしまったのですよ。
息子さんがお母様の言いつけを守らずに。
チラチラと足許を盗み見る視線が、とてもくすぐったかったっけ。
視ているだけでいいって、仰るんです。
ですからめいっぱい、見せつけてしまいました。
血の気を喪われたお母様が、息子さんに抱きついてしまうまで。
仲のよろしい母子って、いいですな。
スラックスの下に忍ばせてくれたサッカーストッキングを噛ませてくれた彼。
どちらも長い靴下も、絶妙のお味でしたとも。
ごちそうさま。^^ 

ブログ拍手♪

2009年09月24日(Thu) 20:37:22

ブログ拍手って、つぎに描くお話のヒントになったりすることもあるのですが。
それ以上に多いのは、
ふーん、俺ってこんなお話描いていたんだ・・・
とくに古いやつって、読み返してみて初めてありありと思い出す、というパターンのものがかなりあるのが正直なところです。
そのうちのひとつが、↓これです。
2005年の12月に描いていますから、もう4年近く以前のものです。

「親友の婚約者」
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-68.html
このころしばしば登場していた蛭田くんのお話です。
蛭田くんはふだんはミスばっかりのサラリーマン。
血の本能に目ざめるときだけ、別人のように敏捷になるタイプの、いけないやつですが。
ここではふた組の親友&その婚約者のカップルが脈絡なく登場します。
親友のキャラが対照的なのと、あともうひとつ特筆しておきたいのは、エンディングでみせた婚約者令嬢のサプライズな言動です。
蛭田はもちろん、したたか者の彼氏のことまで背負い投げにしちゃうんです。(あ もちろん、言葉でですよ 笑)
ここ、ありありと思い出したんですが。
ほんとうはここまで計算に入れてお話を組み立てたわけではなくて、登場したキャラが勝手に暴れたんですね。
そこだけが出色な(?)お話です。


「魅力的な妻をもった男の義務について」
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-1860.html
こちらは最近作です。
このごろどうも「魔」のとりつきかたがいまいちで。
濃度や細工の薄いお話がわれながら多いかなあと思っていたのですが。
最近凝っているジャンルなんですね。
村に赴任してきた都会のサラリーマンの奥さんが、地元の因習に洗脳されていっちゃう みたいなお話。
柏木ワールドらしく、ご主人の協力?が不可欠なのですが。
村から離任したあとも、時折出かけてゆく妻。
住んでいたころを懐かしく思い出す夫。
ちょっぴり切ない余韻を含めてみました。^^

拍手を頂戴した読者の方に感謝いたします。

喪服家族 2 ~法事と披露宴と~

2009年09月24日(Thu) 11:32:07

※ご注意※
このお話、長いです。
珍しく、構想に三日描くのに三時間くらいかかっちゃいました。A^^;
ちょっと迷っていたところでアドバイスをくださったお仲間のSさまに、心から感謝です。^^
なお、タイトルが同じな前作とは関連性がありません。
強いて言えば、気品漂う喪服姿の年配女性がヒロインというくらいでしょうか。
それでは、はじまり、はじまり・・・



ええ。もちろん、遠い記憶のなかのお話です。
なん年まえのことでしたか。それすら、定かではありません。
その会席のまえ。
半ズボンの着用を母から命じられたのを、まるで小学生みたいだと嫌がったのを憶えていますから。
おそらく中学校にはあがっていた時分のことでしょう―――

わたしの住んでいた村に、吸血鬼が入りこんできたときのことでした。
きっとその日は、法事かなにかのあとだったのでしょう。
ちょうど父が、村に移り住んできた吸血鬼に血を吸われて、わたしのまえからいなくなったすぐあとのことですから。
親戚一同が、顔をそろえておりまして。
老いも若きも、ほとんどが。黒一色の礼服姿でした。
女家長として一座の中心にいた祖母は、すでにみごとなまでの白髪だったのですが。
面長でノーブルな面ざしに、取りみだした色はひとつもなくて。
いつもは和装の身を、めずらしく洋装の黒の礼服を着ておりまして。
それでもやはり、和服を着ているようなおごそかな雰囲気を漂わせておりました。
終始、この旧家の家長らしく。それは気丈に振舞っていて。
現れた黒い影のような訪問客に、丁寧にこうべを垂れるありさまは。
「賢夫人」という昔言葉がふさわしいくらい、正統なものでした。
若いころから、しっかり者と評されただけはあって。
相手が自分の息子の血を吸った相手だと知りながら。
どういう合意が成り立ったものか、旧家の親族のすべて、老いも若きも、全員が。
彼に血液を提供するという決めごとに。
まるでみずから望んでそうするかのように、余裕と威厳たっぷりに微笑んでおりました。

わたしはといえば、まだ中学にあがったばかりのみぎり、生意気盛りのことでして。
着用を命じられた濃紺の半ズボンを、小学生みたいで嫌だとごねまして。
母はいつもの気丈さで、私のことを叱りつけ、
きょうのご来客は、特別なひとなんだからって。
上目遣いに睨んでくる目つきのあまりの怖さに、いつになく気圧されまして。
渋々、あてがわれた半ズボンとハイソックスとを、身に着けたのでした。
けれどもさいしょに履いた小学校のころのハイソックスは、もう寸足らずになっていて。
代わりに渡された姉のものは、すこし丈が長すぎて。
ひざ小僧の半ばまで隠れるくらい、引っ張り上げて履いておりました。
ささいなことに、過ぎないのですが。
なんとも居心地のわるい丈だったのを、いまでもよく憶えております。
真新しい純白のハイソックスが、ひどく眩しくおもえたことと、
半ズボンのすそからはみ出た太ももが、スースーとして肌寒かったこととが。
妙に照れくささを誘ったことも、よく憶えています。

吸血は、脚から行なわれる・・・とききました。
てっきり首筋だとばかり、おもっていたのですが。
あえて首筋を狙わないのは、生命までは奪らないという意思表示の証しなのだときかされました。
ガマンしていれば、あっという間のことだから。
母は私の手を握りしめ、自分自身にも言い聞かせるように、そう訓えてくれました。
握り合わせた掌と掌。
お互いの体温を感じながら。
その体温の源を吸い取られてしまうのだということが、むしょうに残り惜しく思えたのですが。
祖母は私のことを認めると、
―――ああ、カズ。こっちへいらっしゃい。
いつもの歯切れのよい伝法な口調で、わたしのことを手招きしたのです。
母は、自分の夫を奪った賓客と顔を合わせるのを避けるようにして、
わたしと入れ替わるようにして、別室に消えてゆきました。

―――そのせつは、息子が大変お世話をおかけいたしました。
訪問客をまえにした祖母は、周囲の男女に対する家長としての権高な態度とは裏腹に。
賓客に対してはどこまでも鄭重に、畳のうえに三つ指を突いて深々と頭を下げました。
黒影のような男は、挨拶も返さず、すすめられた座布団さえ無視して、ひっそりとうずくまっているだけでした。
男の手の甲には、引っ掻いたような傷痕がありました。
父が抗ったときに、できたもののようでした。
祖母は男の手の甲を取り、上からいたわるように撫でながら。
―――ご事情を存じあげないこととはいえ、痛い想いをさせてしまいましたね。
喪われたものの大きさに比べればはるかにささいな、相手に対して与えた損失を。
ひどく惜しんでみせるのでした。
―――お怪我のつぐない、ふつつかながら妾(わたくし)の血でおさめさせていただきましょう。
初老の賢夫人のしっかりとした口調に、黒影は初めて深々と頷きました。

祖母は傍らの廊下にしつらえられた籐椅子に腰かけて。
ひざ下まである漆黒のスカートを、ひざ小僧のすこし上まで見えるくらいまで、さらりとたくしあげていきました。
薄手の黒のストッキングごし、白い脛をぬるりと滲ませたふくらはぎを、惜しげもなくさらけ出して。
―――どうぞ、ご遠慮なく・・・と。
息子よりも年若そうな吸血鬼のまえ、男のような潔さで差しのべていったのでした。

首筋の代りに狙われたふくらはぎは。
薄々のナイロンの生地に、しっとりと包まれていて。
どんなに年配の婦人の脚とはいえ、はっとするほどのなまめかしさをたたえていて。
その、犯しがたいほどの気品を漂わせた礼装を、あえて噛み破らせるという冒瀆を、
生命の保証と引き替えに忍ばなければならないのに。
祖母は気丈にも、男を挑発するほどの剄(つよ)い視線で見おろしていて。
―――さぁ、お好みどおりになさるように。
礼装に包まれた足首がさらされた凌辱が、どんなにむごく意地汚いものであったとしても。
すべては祖母の意向どおり。
そんなふうにさえ、思えるほどでした。

息をのんで見つめる、万座のなかで。
祖母のふくらはぎに忍び寄る脂ぎった唇が。
黒のストッキングごし、ちゅうっ・・・と吸いつけられていきました。
そいつはまるで、刻印を捺すように。念入りになすりつけられてきて。
かすかな唾液を、薄手のナイロンにしみ込ませていったのです。
清楚な装いを、ふしだらによじれさせながら凌辱してゆく荒々しい唇の洗礼を。
祖母は、こともなげに受け止めて。
くちゃくちゃと舌を鳴らす意地汚い音が足許からあがるのにも、まったく動じることもなく。
逡巡の色をみせた叔父たちを「静かになさい」叱りつけるほど、終始気丈に振舞っておりまして、
しつように吸いつけられた唇の下。
なよなよと柔らかくて薄いナイロンの礼装が、小さく音をたててはじけ、裂け目を広げてゆくありさまを。
婦人の恥辱と、じゅうぶん自覚しながらも。
わたしのほうを振りかえると、
―――ほら、よく御覧。怖くなんか、ちっともないんだよ。
孫に訓えるゆとりさえ、見せつけたものでした。

―――カズミは男の子だから、おばあちゃんや母さんみたいにストッキングを穿くわけにはいかないけれど。
―――長い靴下がお好みだそうだから、ハイソックスのうえから噛ませておやり。
―――父さんの血がお口に合って、妾(わたし)の血だってこんなにおいしそうに飲むひとだもの。お前の血だって、きっと気に入ってもらえるだろう。
―――生命までは取らないって、ちゃんとお約束しているんだから。あくまでうちの跡継ぎらしく、気前よく振舞うんだよ。
わたしがごく自然に、祖母の訓えに頷いたのは、いうまでもありませんでした。
さいごに祖母が放ったひと言は。
胸にチクリと、心地よい刺を突き刺しました。
―――お姉ちゃんのハイソックス、よく似合うね。
と。
祖母はそれから、すーっと意識を遠のかせて。
かすかにほほ笑んだ白皙の頬を、いっそう透きとおらせて。
籐椅子の背もたれに、身を横たえたまま。
そのままずるずると、姿勢を崩していったのです。

籐椅子の傍らに移されて身を横たえたままの祖母の目のまえで。
母、姉、わたしと、齢の順に。籐椅子に腰かけていって。
祖母がお手本をみせてくれたのと、そっくり同じようにして。
噛まれていきました。
母の穿いていた、ねずみ色のストッキングも。
紺一色の制服の下、姉が身に着けていた黒タイツも。
父の首筋や祖母のふくらはぎに這ったのとおなじ唇を、吸いつけられて。
むざんな裂け目を、ふしだらなくらい、走らせていって。
脛の色があらわになるほど裂け目が広がるころには、うずくまるようにして籐椅子からすべり落ちていったのでした。
わたしの番になると、黒影の男は、はじめてニッとほほ笑んで。
―――息子さんだね?お父さんとそっくりだ。
まるでわたしの面ざしに父の面影を求めるように、なぜか懐かしそうに話しかけてくるのです。
ひどく人恋しげなその態度に、わたしが気を許してほほ笑むと。
―――お父さんも、お祖母さまも、ご立派なかたたちだね。
―――どうか怖がらないで、血を分けてくれないか?
無言で頷くわたしの頭を撫でたあと。
男はおもむろに、足許にかがみ込んできて。
ひざ小僧のすぐ下の、外側のふくらはぎに、唇を吸いつけてきて。
なまの唇がかすかにあやす唾液がハイソックスにしみ込んできて。
厚手のハイソックスごし、圧しつけられてきた鋭い異物が、つねるような鈍い痛みをもぐり込ませてきたのでした。
祖母がストッキングを噛み破られるとき。きっとこんな気分だったのだろうと思いながら。
祖母や父の血と同じくらい、おいしそうに飲んでくれいていることを、どこか誇らしく感じながら…

時間にしたら、ものの数分もかからなかったに違いありません。
祖母ほど身体の大きくなかったわたしにしても、それくらいのあいだは持ったとおもうのです。
気がついたときには、まるですべり台のようにして。
籐椅子からすべり落ちた格好で、尻もちをついてしまっていました。
軽いめまいが、心地よくて。
じんわりと疼く傷口が、妙にくすぐったくて。
ハイソックスにしみ込んだ血がぬらぬらしているのさえ、愉しい気分をひきたてるくらいでした。
頭のなかが、空っぽになったような心地がしていて。
ぜんぶ吸い取られちゃっても、いいかな…なんて。
そんな信じられないようなことまで、こともなげに思い浮かべておりました。

尻もちをついたわたしのすぐ傍らで、姉は立った姿勢のまま、男の唇を黒タイツの脚に吸いつけられていました。
黒タイツのふくらはぎに這わされた唇が、ヒルみたいにうごめいて、姉の血を吸い取ってゆくありさまが。
ひどく愉快に思えて、ふと姉を見上げると、照れたような顔をしてにらみ返されていましたっけ。
母は母で、別室に引きこもったまま。出てこなくって。
姉のタイツを破って尻もちをつかせたその男は、自分から別室に足を運んで、
こんどは母の足許に、しゃぶりついていきました。
祖母が脚に通した黒のストッキングや、姉のタイツを破った唇が。
母の履いているねずみ色のストッキングにまで、迫っていって。
意地汚くねぶりまわした唇の下、ぴりぴりと裂け目を滲ませていくのを。
わたしはなぜか、ドキドキと昂ぶりながら、覗き見していたのです。

ふと気がつくと。
周りじゅうの男たちが、瞳を狂った色に染めながら。
手当たり次第に、女たちに襲いかかっていました。
「お祖母さまっ!」
両手で口をふさいだ従姉は、自分の父ではない叔父にその手をとりのけられて、あちらの部屋へと引きずられていきますし、
ちょっと、××さん・・・と、娘への非礼をとがめようとしたその母親は、自分の息子に後ろから抱きつかれていて。
黒のスカートのうえから、お尻を噛まれてしまっています。
配偶者のうなじを掴まえて、喉笛に食いつく男。
妻を取り替えあって、喪服姿を引きずり倒していく親族。
男たちはいつの間にか、だれもが首筋に血をあやしていて。
そんなこと気づきもしないようにしながらも、飢えた本能のまま白い皮膚を思い思いに食い破っていったのでした。

成人女性のなかでいちばん若かったのは、まだ結婚したばかりの従兄の嫁でした。
他所の土地から嫁いできた彼女にとって、供血の風習は違和感ばかりのものだったはずなのに。
一座の女性のなかでもいちばん薄いストッキングを穿いていて、
うら若い脚線美で、夫以外の男性までも魅了していて。
夫である従兄のまえ、なん人めかの親族から凌辱の洗礼を受けながら。
あなたもわたしの血を、吸ってくださるのよねって、従兄に向かって言いつづけていました。

叔父のひとりに迫られた姉がセーラー服の襟首を押し広げられるようすは、さすがに見るに忍びなくて、
別室に引きこもった母のようすを覗きに行くと、
脚から吸われるかぎりは生命を保証するという約束を無視するように、
独り母だけは、首筋からの吸血を希望しています。
今や喪服を脱ぎ棄てて、夫を弔う身から、吸血鬼に服属を誓うように。
華やいだ色の衣装で盛装をしていたのです。
場違いなピンク色のスカートの下。
すでにねずみ色のストッキングを伝線させて、赤紫の血のシミをぬらっと足許に光らせながら。
もはや、夫の亡い身ですから・・・と、
夫のもとに行こうと試みたようでした。
父の血を吸い尽くし、その母親や息子であるわたしの血を啖ったその男は、母の柔肌にまで牙を迫らせて、
うずくまるように座り込んだ母の後ろに回り込むと。
彼女の望みどおり、がぶりとうなじに食いついたのでした。
サッと降りかかった真紅の飛沫が、純白のブラウスに毒々しく映えるのを。
息を止めて見守る、ボクのまえ。
母は夫の仇敵に組み敷かれ、しまいには薄いピンクのスカートを身に着けたまま、犯されながら。
お尻を迫らせてくる男の言うなりになって、必死になって腰を振りつづける母は、
嫁としてのつとめをきっちり果たしたと、きっと姑にほめてもらえることでしょう。
御覧、坊や。
女というものは、こういうふうに愛するものなのだよ。
男はわたしに訓えるように、つぶやくと。
その呟きを洩らしたばかりの唇で、とどめを刺すような勢いで、母の血をむさぼっていったのです。
畳のうえに引き据えられて。犯される姿勢のまま、首筋を吸われてゆく母が。
破けたねずみ色のパンティストッキングを、ひざ小僧の下までずり下ろされて。
まるでハイソックスくらいの丈に堕ちてしまった薄手のナイロンが、薄日を受けてぬらぬらとしたきらめきをあやすのを。
わたしはいけないものを見るような目で、すっかり愉しんでしまっておりました。
狂ったような昂りの渦のなか、母が身動きを止めてゆくのを。
ただうっとりと、見守っていたのです。
夫に操を立ててこの世を去るといいながら、夫の仇敵の凌辱まで受け容れてしまったのは。
彼女のなかで、決して矛盾していないのだと。
そのときのわたしのあて推量は、たぶん間違ってはいないのでしょう。

静かになった母親の姿に、しんみりとなった姉までが。
首筋からの吸血を、おねだりしていって。
さいごの一滴まで尽くされてしまったのは、翌朝のことでした。
両親の血を吸った男がほかの女を餌食にしているあいだ、シャワーを浴びて身を清めた姉は。
気に入りらしい夏もののセーラー服に着かえると。
薄々の黒のストッキングで涼しげに透きとおらせた足首を。
劣情をにじませた飢えた唇に、惜しげもなくいさぎよく、吸いつけさせていったのです。

ボクも、跡取り息子らしくしなくちゃね。
もうその時分には、身動きできる女子供はほとんどおりませんでした。
仲良しの従妹の真由美ちゃんすら、白のハイソックスが真っ赤になるまで、男に愉しませてあげたあと。
真由美もママみたいに、ストッキング穿いてみたかったな・・・って呟いて、
くすぐったそうにはしゃいで笑いこけながら、さいごは安らかな面持ちで、絶息していきました。
真由美ちゃんの傍らに仰向けになったわたしは、冷たくなった彼女の手を握ると、
さぁ、好きにして・・・
ボクのたいせつなひとの血をぜんぶ吸い尽くしちゃった小父さんに、ボクの血もあげるから・・・って。
真由美ちゃんが好きだったのだね。きみにも一滴くらい、遺しておいてあげればよかったかな。
男はわたしの頭を、いとおしげに撫でさすりながら。
好きだった女の子の血をあやしたままの牙を、わたしの首筋に突き立ててきたのでした。

えっ?なにかがおかしい・・・ですって?
ご賢察どおりですね。
語り手のわたしが、少年の姿のまま死んじゃう話なんて、信じられませんよね?
げんにあなたは、ついさっき。
母や祖母、それに家内の真由美にも、ご挨拶を頂戴したばかりですからね。
約束が守られずに親族全員の血を吸い尽くされてしてしまったという結末も、いささかダークだったかもしれませんな。
でもね。
自発的に希望する場合は、そのかぎりではないのですよ。
たまたま全員が、彼と仲良くなってしまって。
ぜんぶあげたいと望んだだけのことですから。
ああ、話がそれてしまいましたね。
想い出話のなかで、わたしが亡くなっているわけを。
このさいすべてを、お話しておきましょう。
貴男はわたしの、縁つづきになろうとしているお人ですからね。
そのまえに、おひき合わせしたい者が、なん人かおるのですよ。
こちらへどうぞ。

―――――――――――

男の話は、ここまでだった。
私は男の異常な打ち明け話に、不可解な愉悦を覚えていた。
すでにかれの話術に、圧倒されてしまっていたのかもしれない。
話のそこかしこに伏在する無数の矛盾点など、もはや気にも留めなかったのだから。
招き入れられた和室の大広間には、黒の礼服姿の男女が、ずらりと居並んでいる。
そのひとりひとりの顔を、男から手渡された写真と見比べて、
三十年以上昔の写真のなかの男女と彼らとが瓜二つであることを認めたときの、
あの慄っとしたときの感覚は、それこそ忘れられないものだった。
血の気のない顔つき、虚ろな目で、だれもがじいっと私のほうを見つめていて。
その目色のなかに渇いた欲情が秘められていることも、容易に見取ることができた。
これから彼のお嬢さんと私の息子とがあげる婚礼が、披露宴という名をもっているのは、むろん世間並みのことのはずなのだが。
ほんとうは、だれがなにを“ご披露”する場であるものなのか、
私は容易に察することができていた。
いつの間にかつけられていた首筋の赤黒い痕は。
さっきからじんじんと、妖しい疼きを響かせていて。
すべてを理解してしまった私自身が、彼らが目当てにしているのとおなじ液体をたとえようもないほどに欲しているのだと。
そして彼らは、侵略者でも、まして仇敵でもなく。私の手助けをしてくれる同属なのだと。
疼きはすべてを、教えてくれていた。
彼の祖母とあきらかにわかる老婦人に、慇懃な一礼をすると。
かつて彼女が、親族全員の血を捧げたいと申し出たように、
自分の愛する家族を、これから紹介いたしますと告げていた。

―――では、新郎がわの親族を、そろそろ呼び集めることにしましょうか
私はそういって、息子はもとより、妻や娘、妹夫婦らを招き入れる。
首筋にひっそりとつけられた赤黒い痕は、共犯者の証し。
血を喪った身でありながら、表向きは人間として生きてきた彼らのために、
私のもっていた血と同じ味わいのする、さらに若い血を供することが。
まわりまわって、自分自身にかえってくるのだと。ひそかな下心を押し隠しながら。
着飾って現われた親族のひとりひとりを、彼らに引き合わせていった。

今年成人式を迎えたばかりの振袖姿の姪の血は、さぞおいしいだろう とか。
まだセーラー服姿の娘は、年上のおじさま達を相手にして、彼のお姉さんみたいに賢く振舞って。
制服のスカートの下身に着けた黒のストッキングを、上手に愉しませることができるだろうか とか。
お祖母さんの黒の礼服には、ほど遠くても。
えび茶色のスーツに黒のストッキングの妻は、礼装のまま受け容れる凌辱を悦ぶことができるだろうか とか。
花婿となる息子は、花嫁が実家の叔父たち相手に嬉々として耽るであろう凌辱を、ともに愉しむことができるだろうか とか。
あとからあとから湧きあがってくるいけない想像に、心昂ぶらせながら。
私は私の愛する家族ひとりひとりの名前を呼んで。
これから始まるまがまがしくも愉しい“披露”宴の、幕開けを告げようとしている。


あとがき
前半は法事、後半はおめでたい披露宴で〆てみました。^^
どうもこのごろ、年配女性の盛装に萌えてしまう、いけない柏木です。^^;

喪服家族

2009年09月24日(Thu) 07:52:07

だれかがこの世から、いなくなると。
その家の女どもは、薄い黒の沓下を履くだろう?
そいつが俺の、お目当てなのさ。^^

白黒写真の主は、その家のあるじ。
まだ脂の乗り切ったお齢だった。
肩を落としている初老のご婦人は、その男の母親。
もうすでに白髪になっていたけれど。
ノーブルで彫りの深い顔だちは、いまでも凛とした風情を漂わせていて。
そこらの小娘よりもグッとそそられるものを持っている。
肝心なのは、そのご婦人が。
ご自分の魅力に気づいていないのと、
もっと言っちまうと、
目のまえのやつがその魅力を狙いにしているのにまったく無警戒なこと。
重たげな黒のスカートの下、ちらちら覗くひざ小僧が。
薄墨色のナイロンにくるまれて、脛の白さをひきたてているなぞという不埒なことには。
ましてまったくといっていいほど、注意がはらわれていないのだった。

俺はご婦人に、真実を曝露して。
半信半疑のご婦人を、写真のまえ力づくで抱きよせて。
鶴のように細くて白いうなじに、唇吸いつけてやって。
息子のときの、おなじように。
カリリと強く、咬んでやる。
う~ん。
こたえられない・・・
たしかにトシを取っちゃ、いるけれど。
じつに、じつになまめかしいね。女の生き血ってやつは。
俺は奥さんの首すじに、甘えるように唇なすりつけて。
ブラウスの襟首を、持ち主の血と俺のよだれでじわじわと浸してやってゆく。

あ・・・あ・・・あ・・・
悲痛なうめき声、洩らしながら。
ご婦人は畳の上、まろび臥す。
羽交い絞めにした喪服姿が、血を抜き取るにつれて抗う力を喪って。
さいごには小娘みたいに、お行儀よくお寝ん寝だ。
俺は女をうつ伏せに横たえて。
お目当てのスカートの下。
黒のストッキングのふくらはぎににじり寄る。
薄々の沓下は、キュッと引き締まった脚線の、輪郭だけを黒く縁取っていて。
透明なナイロン生地は、黒というより薄墨色と呼びたくなるほど淡い艶を滲ませていた。
障子越しに滲む外の光を受けた薄々のナイロンが滲ませるつややかな光沢は。
装うものの意図を見事なほどに裏切っていて。
胸の奥底からはぜる劣情の欲するままに、倒れ臥した女のふくらはぎに唇をなすりつけてゆく。
劣情の滾る脂ぎった唇の下。
なよなよとした薄手のナイロンはふしだらによじれていって。
しまいには、まるでオブラアトのように他愛なく、ぱちぱちとかすかな音をたてて、はじけていった。

う、ふ、ふ、ふ・・・
得意げになって含み笑いする俺とおなじくらい。
たちのわるい忍び笑いを重ねてくるのは。
その家の若奥さん。
死んだ男の妻だった。
オ義母サマ、イイ夢御覧ニナッテイラッシャルゴ様子ネ。
ドウナルコトカッテ、気ガ気ジャナカッタケド。
案外、他愛ナイモノデスネ。
女が喪服のスカートをたくし上げて見せびらかしてくる脚を。
俺は愛でるようにして、掌でなぞってゆく。
女の脛を彩る、黒のストッキングは。
姑が脚に通しているやつよりも、毒々しい光沢を滲ませていた。
脂の乗り切った女のいやらしさを、見せつけるようにして。
太ももを横切る黒いガーターに、素肌の白さがそそられるほどに眩しい。
いやらしい女だ。こういう席にガーターストッキングを穿いてくるとは。
咎めるような俺の言い草に、女はフンと鼻を鳴らして。
コレナラ穿イタママ、姦レルジャナイ。
夫の写真のまえ。もっとふらちなことを、うそぶいていた。

さいしょに顔を合わせたとき。
女が履いていたのは、どこでも目にするような、バーゲン品の肌色のパンティストッキング。
それでも身体全体からにじみ出るうら若くなまめかしい生命のオーラを感じた俺は、
ふたりきりになった空間を、女の悲鳴で染めていた。
俺が引き込んだのか。じつは女に、引き込まれたのか。
よくわからなくなるほどに、溺れちまっていた。
男の生前からモノにしてあったこの女は。
いまやすっかり、俺の忠実な共犯者。
まるで実の女房のように、甲斐甲斐しく立ち働いて。
肌色のパンストの持ち合わせがなくなるまで、咬み破りつづけた揚句の果てに。
大事な跡取り息子を、俺の牙にかけてしまうと。
あとは蟻地獄みたいに、ことがしぜんに流れていった。

やらしい・・・なぁ。
半ズボンの下、ねずみ色のハイソックスを履いたふくらはぎに俺が唇を這わせると。
その少年は、けだるそうな声で、俺の意図を言いあてていた。
賢明な息子さんのようだね。
俺の言い草に少年の母親は得意げに白い歯を覗かせて。
いけない意図に自分を陥れた母親のことを、少年はイタズラっぽい目をして睨んでいて。
彼の祖母がいまウットリとなってうつ臥しているおなじ畳に、おなじ姿勢でうつ臥したまま。
鼠色のハイソックスに吸いつけた唇が、赤黒いシミを滲ませ広げてゆくのを、
心地よげに、愉しみ始めていた。

あの・・・わたくしのストッキングも。
女はためらいがちに、口をひらいて。
この子のハイソックスみたいに、お愉しみになってくださいな。
花柄のワンピースのすその下、覗かせたふくらはぎは。
初めて見る黒のストッキングに染まっていた。
惚けたように寝ころんだ息子のすぐ傍らで。
女は初めて俺のまえ、パンティストッキングを自分から脱いでいった。
夫ト、義母(はは)ト。ソウネ、娘ノコトモ。
アナタナラキット、上手ニ導イテ下サルワヨネ・・・
あお向けの姿勢で、いっしょに腰の動きを合わせながら。
うわ言みたいに言い募る女の言い草に。
女の息子は薄目をあけて俺をみて、
そうしてひどく愉しそうに、笑みを送ってきたのだった。
自身の血と、息子の血を俺にご馳走してしまった女は。
夫を黙らせ、いままた義母に服従の沈黙を強いようとしていた。
―――狡イワ。美奈子サン。
喪服のブラウスを血浸しにしたまま起きあがった初老の女は、
もはや貞淑な未亡人では、なくなっている。

サァ、モット・・・召シ上ガレ。
老婦人は重たい喪服のスカートを、しどけなくひざの上までたくし上げると。
まだほつれていない薄墨色のナイロンに染めた白い太ももを、これ見よがしにさらけ出して。
アノ子モキット、許シテクレルデショウカラネ・・・
真相はよく知っているのだと言いたげな呟きを、さりげなく洩らしていた。
キャッ。イヤラシイ。
這わせた舌に、小娘みたいなはしゃぎ声たてながら。
さっきまで堅く秘めていた白い肌を、女はいさぎよいほどの思い切りの良さで、さらけ出す。
ぬるりとした白い肌は、外からの柔らかな光を照り返して。
還暦過ぎた女のものとは思われないほどの色香を、見せつけてきた。
いや、たぶん。
その齢になるまで、こういう色香はあらわれないものなのだ。
奥ゆかしく秘めればこその、馥郁たる女の艶に。
いけない劣情をあらわにする俺のまえ。
女は息子を弔うための装いを、不埒な愉しみのため惜しげもなくさらしていった。

娘ガモウジキ、戻ッテキマスワ・・・
若奥さんの囁きに。
ソウネ。アノ子モ早ク、大人ニシテアゲナイトネ。
祖母らしい気遣いをこめた瞳の色の深さに。
その嫁とそのまた情夫とは、もっともらしい頷きをかえしてゆく。
濃紺のセーラー服の、重たげなプリーツスカートの下。
母親が今朝、娘に履かせたのは、いつもの厚手のタイツとは引き替えに。
祖母と同じ、なよなよと薄い黒のストッキング。
ただいまぁ・・・
玄関先から響いてくる生気に満ちた声に。
俺は新たな劣情をあらわにしていった。

ホホ・・・ホホホ・・・
女どもの忍び笑いが、まるでかしましいくらいに。
部屋のそこかしこから、洩れてくる。

少女はわざわざ、季節はずれの夏用のセーラー服を身に着けて。
ほどいてやった空色のリボンの下、覗く胸元を恋うるようにした俺が、
むぞうさに制服を引き裂くのを、目を瞑りながら耐えていて。
太もも丈の黒のストッキングの脚、なぞりながら。
さらにその奥に突っ込んだ指先は、びっくりするほどの濡れをつかまえていて。
母や祖母や弟の見守るまえ、羞じらいながら。
制服のスカートの裏地を、純潔の証しで紅く染めていった。

小父さん、やらしいね・・・
夏の制服に黒のストッキングなんて、ふつうは着ないよね。
小生意気に賢しらを口にしながらも。
少年は姉の箪笥からせしめてきた黒のストッキングで、姉とお揃いにした半ズボンの脚をさらけ出して。
濡れるようになまめかしさに染まった自分の脚に、ひどく戸惑いながら。
俺の唇に、ふくらはぎを侵させていって。
あ~、血を吸われちゃった。頭がおかしくなってきた・・・
つごうのよいことを口にしながら、母親にのしかかっていって。
かねてから気になっていたというワインカラーのブラウスを、わざわざ身に着けてくれた母親の好意に応えるように。
ぶりぶりと思い切りよく、ひき剥いでしまって。
あらわになった白い胸に、甘えるように顔を埋めた。

嫁と孫娘とが、淫姦に耽るのを。
咎めるような視線で見守る祖母も。
ひとり身に着けていた漆黒の装いを、踏みしだかれるようにして凌辱させてしまうと。
やはり他愛なく、堕ちてしまった。
いまは小娘みたいにころころと笑いこけて。
死んだはずの息子が、息荒く迫ってくるのを軽く咎めながら。
―――ダメデスヨ。恵子サンノ前ジャナイノ。
制止のことばとはうらはらに、息子の掌をブラウスの襟首の奥にまで、迎え入れてしまっている。

家族の生き血、すっかりお口に合っちゃったんですね。
母の面倒までみていただけるとは、思ってもいませんでしたよ。
ほとんど言葉を交わしたことのなかったご主人が。こうも親しげに語りかけてくるのは。
女家族を共有する間柄になったからだろう。
俺のいけない意図を、いまでは快く許しながら。
妻を、娘を、母親までもねじ伏せる俺の男っぷりのよさに、
いけない昂りを愉しみはじめている。


あとがき
またまた、長々と・・・。(^^ゞ
家族全員を堕とすのって、描いてるだけでもかなりパワーが要りますな。^^

感染性嗜血症候群

2009年09月20日(Sun) 13:48:15

とうとうこの街にも、吸血鬼が侵入してきたらしい。
A村の助役の外川は深刻な表情で、部下の矢崎をふり返る。
え・・・やはり。
ワイシャツ姿の矢崎も顔を曇らせて、上司と部下ふたりだけになった夜の役場は、窓の外よりも暗い雰囲気を漂わせた。
奇妙な流行病は、特異な発症例を伴なっていた。
手当たり次第に周囲の人間を襲い、うなじやのど笛、胸元に脚・・・あらゆるところに食いついて、生き血を啜る。
症状は発症者に血を啜られることにより感染し、一度噛まれたものは数時間もするとおなじ症状を呈するのだ。
発症者は、近親者の血を好む傾向があり、家族のなかでひとりが発症すると、瞬く間に家族全員が発症するので、流行の坩堝に陥った隣の町では、ひと晩で一家五人全員が発症した事例が報告されていた。
また、若年のものが発症すると別人のように淫乱になり、異性同性の別を問わず見境なく接近を試みて、ひたすらまぐわいを遂げようとするという。

・・・恐ろしい病ですね。
外川から病の全貌をきいた矢崎は、いまさらながらため息をついた。
流行病の根源は、人数不明の”吸血鬼”と呼ばれる特定の集団であるらしかった。
彼らはひそかに平和な家庭や職場に侵入して人々の血を吸い取り、嗜血ウィルスを注入していくという。
その吸血鬼というやつは、いったいなん人いるのでしょうか?
矢崎の問いに対する答えを、外川は持ち合わせていない。
それくらいたくみに、彼らは犠牲者に接近を試みて。
吸い取った血と引き換えに、毒液を注入していくものらしかった。
流行病を恐れた住民たちは等しく、警戒感を強めていて。
とくにもっとも感染の多い時間帯とされる深夜には、門扉を堅く閉ざしているというのに。
そのすさまじいまでの感染能力から察すると。
かれらはいったいなん十人、あるいはなん百人いるものか。
ほとんどが病の支配下に置かれた隣町のことを考えると、
たかが町の公的機関のうごきひとつでなにか有効な対策がとれるとは、とうてい想像することもできなかった。

PLLLLLLL・・・
外川の携帯が、突如くぐもるような着信音を響かせた。
ちょっとまって。
助役はみじかく矢崎を制して携帯を取ると、向こう側からは妻の声がした。
―――アア、アナタ?遅クマデゴ苦労サマ・・・
いつも聞き慣れているはずの妻の声は、もっと低く落ち着いたもののはずだった。
それがいつになく、今夜はどこか切迫したものを帯びている。
心騒がせながら先を促す外川の耳にそそがれた情報は、意外なものだった。
―――サッキ、ソウ10分クライ前ニ、矢崎サンガオ見エニナッタノ・・・
え?
矢崎は目の前にいる。
もうすでに、二時間は話し込んでいるはずだった。
白のワイシャツ姿の矢崎は、微動だにせず、怪訝そうな視線をこちらに注いでいた。
「どういうことだ?矢崎くんはいま、わたしといっしょにいるのだが・・・?」
―――ソウナノ?デモ、ソンナコトハドウデモイイワ。
半ばパニックに陥った夫のようすなどまるっきり無視をして、外川の妻はこともなげに言葉を継いでゆく。
―――早クアナタニオ目ニカカッテ、ゴ相談シタイコトガアルノ。
携帯電話と見比べあった矢崎の顔が、とつぜん愉快そうに笑み崩れている。

とうとうわかってしまいまいたね・・・
矢崎のひくい笑い声が、狭い事務所にくぐもりわたった。

そいつは知人に化けて、獲物に接触を試みるんです。
哀れな犠牲者はなにひとつ疑いをさしはさむことなく訪問者を迎え入れて、毒牙にかかります。
けれども、襲われているさいちゅうは、ひどく夢見心地なひと刻なのですよ。
昨晩妻が、私の弟の訪問を受けました。
弟だと思い込んで家にあげた私も、浅はかでしたが。
まったく本人と、うり二つでしたよ。
さいしょに妻が噛まれて。私は妻に噛まれたのです。
あいつは、支配下においた男女に化けることができるのですよ。
ひとりで、いろいろな顔を持ち合わせていて。
己れにとって、訪問先にとって、最も好都合な人間になり澄ますのです。
本物の吸血鬼って、案外ひとりしかいないのかもしれないですね。

矢崎のつぶやきを、外川は最後まできいていたわけではなかった。
いつまでも繰り言のように呟きつづける矢崎をおいて、彼は一目散に我が家へと向かった。
そこには妻と、大学生の息子と、中学生になる娘とが、父親の帰りを待っているはずだった。
遠目にみえる一軒家は、いつもとまるで変わりないかのように。
家のあるじを待ちうけて、ひっそりと門灯が点されていた。
ギイ・・・
妻の手によって開かれた扉は、いつになく重苦しい軋みをよぎらせる。
靴を脱いで、リビングにあがりこんで。
室内は照明がついていて、ふつうに明るかったが。
だれも、迎えに出てこなかった。
美代子?カツヤ?千華・・・っ!?
家族の名を口にしたとき。
背後にゆらりと、ひとの気配が立った。
それから後ろから羽交い絞めにしてきた妻に引きすえられ噛まれてしまうまで。
数十秒と、かからなかった。

ヨカッタワネ。アナタ・・・
矢崎サンニ化ケテ オ越シニナッタアノオ方ハ。
トテモ 親切ナオ方デシタワ。
アナタガ千華ノコトヲ襲イタガッテイラッシャルノヲ、ヨクゴ承知デ。
アノ子ハ手ツカズノママ、オ発チニナリマシタノ。
マダ・・・何モ知ラナイデオ勉強中デスワ。
私タチノ、ソレハ可愛イ千華デスモノ。
仲良ク山分ケニ シマショウネ・・・

一時間後。
外川は妻の美代子が矢崎の顔をした侵入者に嬉々として素肌をさらし、生き血を吸い取らせてしまうのを。
スカートをたくし上げ、ついぞ見覚えのないガーターストッキングの太ももをさらけ出しながら、
夫のまえで姦通に耽るのを。
さらに息子のカツヤにしなだれかかって、押し倒して。
ふたり、ものも言わずにまぐわいを遂げるのを。
外川はへらへらと笑いながら、見守っていた。
彼の下には、制服姿の千華が。
さっきまでべそをかいていたのを忘れて、父親の一物を咥え込んでいる。
家族の理性と常識が崩壊するのを、外川は小気味よく感じた。

血を吸われたものは、生き血を啜られる見返りに。
じぶんが訪れたいひとのことを、思い浮かべるだけで伝えることができるという。
矢崎の弟は、ずっと想っていた兄嫁のことを念じ、
矢崎もまた、上司の妻である外川夫人を念じていた。
さいしょに訪れたのは、矢崎の顔をした吸血鬼だったとしても。
二度めに外川の妻と夜をともにしたのは、矢崎本人だったに違いない。
けれどもそれを、もはや外川は咎めようとはしていない。
いま、彼の唇を浸しているのは。
ほかならぬまな娘の清らかな血―――。
彼の顔をもった吸血鬼は、いまごろ部下の妻のところを訪れている時分だろうか。

伝染性嗜血症候群とひそかに名づけられたこの病は。
手当たりしだい、周囲のものの血を啜ると快方に向かう。
死亡者はまったく出ず、快癒したものたちは首筋に残った噛み痕を撫でながら。
それでもいちどつくりあげられたまがまがしい性関係だけは、とまることがない。
外川は部下の矢崎に妻を明け渡し、矢崎は外川の息子とかわるがわる、妻を訪れている。
帰宅の早い夜、妻の美代子がいつになくこぎれいにおめかししているときは。
外川はなにも問おうとせずに、家をあける。
彼の行き先では、部下の妻と、その夫とが。
昂りを込めた歓待をするはずだった。
パパ。若い女性が欲しかったらいつでも相談してね。
娘の千華は、担任の女性教諭や彼女に言い寄ってくる男子生徒の姉たちをなん人もたぶらかしていて。
孝行娘のようなかいがいしさで、父親に女をあてがいつづけていた。


あとがき
いつも苦労する序章を楽々と描きながら。
正式アップにこぎつけたのは、二日後の十時前でした。A^^;
たいがいここまで引きずると、ボツるんですが。
デキのよしあしは・・・問わない事にしてください。(苦笑)

先に差し出すのがすじですよ。^^

2009年09月19日(Sat) 07:21:46

妻と息子を連れて赴任した村には、奇習があった。
それは、十代の男の子に対する、既婚女性たちの性教育。
ある年齢になった男の子は、じぶんの母親くらいの女性と引き合わされて。
あらゆることを、教わるという。
村に生まれ育った青年たちは、かならず通る道だという。
亭主はそのあいだ、見て見ぬふりを強いられるけれど。
だれもがお互い様・・・と、苦笑しながら片目をつぶる。
ちょうど越してきた時。息子はまさに、適齢期だった。

あの子にもぜひ、経験させてあげなくちゃ。
お友だちといっしょでなければ、かわいそう。
妻はやけに積極的で。
村の婦人会に働きかけていたけれど。
ある晩決まり悪げに話すには。
まず・・・こちらが差し出すのがすじ だという。
差し出す・・・って?
鈍いわたしでも、すぐに察しないわけには、いかなかった。

いいですな?
息子さんが権利をもつのは、一年後ですよ。
やたらに割り込んじゃったら、恨まれちゃいますからな。
でも・・・よかったじゃないですか。
同級生の子も、だいたい来年くらいからなんですよ。
息子をよろしく・・・と、わざわざご挨拶に見えられた先方のお父さんは。
丁重に手土産を差し出しながら。
ちょっと気の毒そうに、わたしのことを見たけれど。
だいじょうぶですよ。じきに慣れますから・・・
妻に聞こえない声で囁くと、エヘヘ・・・と笑った。

じきに慣れる。
意味がわかるのに、そう時間はかからなかった。
結婚前に、わたししか識らなかった妻は。
ひと夏に、三人もの若い衆を体験していた。
息子がお世話になるころには。
わたしはすっかり、とり憑かれてしまっていて。
―――姦られるだけの立場も、わるくないものですね。
さいしょに訪れたお父さんに、囁きかえすまでになっていた。
妻とほかの男の痴態を観る・・・という、人聞きにはまがまがしいことが。
それほど刺激的な愉しみになっていた。

先方のお父さんは、照れたように笑いながら。
皆さん、観る愉しみから覚えていかれるようですよ。
十年まえ、都会からやってきた私みたいに・・・ね。
当時息子は、まだ五歳。
若妻を抱くのは愉しいと。
村の風習を妻に教え込んでくれたかたがたは、そんなことまで言っていかれました。
ええ、もちろん。
奥様がさいしょに経験されたのも。
いまでもご主人の目を盗んで、愉しんでいらっしゃるのも。
十代の男の子だけでは、ないのですよ。

怒りではなく、不覚にも昂りを覚えてしまったわたしのことを。
お父さんは見透かしたような苦笑を交えて。
こっそり囁いたものだった。
なーに。わたしのときだって。あなたとおなじでしたから・・・

ブログ拍手♪

2009年09月19日(Sat) 07:05:59

本当に久しぶりに。
最初期のお話に、拍手を頂戴しました。(*^^)v

http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-465.html

これだけだと、なんのことだかよくわからないようなお話なんですが。(^^;)
まず間違いなく、柏木ワールドに通じたかたからいただいたものだと思います♪
このあとずっと、数話にわたって。
さいごの一行から派生したお話が続きます。
でも・・・このお話すでに一拍手入っていたのでした。(イツノマニ・・・?) (・_・;)
うーん。見ているひとは、見てくれているものですね・・・
感謝。m(__)m

魅力的な妻をもった男の義務について。

2009年09月18日(Fri) 07:55:52

魅力的な妻をもった男は。
その幸せをほかの男とも分かち合わなければならない。

そんな隠れた掟のあるその村で。
都会から赴任してきた夫婦ものにまで適用されるとは、夢にも思っていなかった。
じっさいに適用を受けたさいしょの夜。
それは仲良くなりかけた村の人たちとのカラオケパーティーの夜だった。

奥さん、つぎの店に行きましょう。だんなさん、奥さん借りていいよね?
気軽に受けてしまったときには。妻はもう後ろ姿を見せていて。
白っぽいフレアスカートがひらひらと、闇に消えていくときだった。

翌朝、朝帰りした妻は、別人になっていて。
こっそりと覗いていたわたしも、別人になっていた。
つぎの店というのが、じつは村はずれの納屋だとわたしが知っているのを、
妻はほんとうに、知らずにいたのだろうか?

だんなさんに迷惑かけちゃいけないからって。
昼間が自由になる若いひとは、真昼間からわたしの家に入り浸って。
七人、相手しちゃいました。
妻もさすがに、決まり悪そうだった。

夜には夜で。
ほとほとと、雨戸を叩く音。
わたしは知らん顔をして、表に出て。
「おわりました」
そんなメールが妻から届くまで。肌寒い夜をぶるぶる震えて過ごしていた。
あのときの身震いは、寒さのせいばかりではなかったはず。

村から離れたいまでも。
妻は時折り、出かけていって。
魅力ある若妻を、演じてくる。
わたしもあとを、追いかけて行って。
お互い知らん顔をして、べつべつに帰宅して。
互いに互いの記憶を重ね合わせながら。
いつもより熱い夜を、重ねてゆく。

魅力ある妻をもった男は、分かち合わなければならない。
理不尽なはずのルールが、いまはむしょうに懐かしい。

棲み分ける男。

2009年09月17日(Thu) 07:23:38

単身赴任するんだって?
寡夫(やもめ)暮らしをしていた悪友は、わたしを気遣うようにそういうと。
赴任した翌週くらいには、すでに。
妻を堕として通い夫になっていた。

わたしが帰宅すると、手を引いて。
赴任先に戻ると、犯しに来て。
かわるがわる、ひとりの女を抱いていて。
やっぱり若い女はいいね。
そう囁いて。
妻の貞操をプレゼントしたのと、引き換えに。
独り寝の夜に、異様な昂りを与えてくれた。

戻ってくるんだってな?
あいつはわたしを気遣うように囁くと。
ふっつりと、妻への訪(おとな)いは絶えたけれど。
奥さんと、うまくやってる?
もういちど現れて、わたし達が元に戻ったことを確かめると。
お母さん、未亡人しているんだっけ?
母を気遣うように、そういうと。
つぎの晩、母は黒のブラウスを取り去られて。
彼のまえ、まだうら若い素肌をさらしていた。

出張がちな日々が、訪れると。
奥さんのこと、心配だろう?
あいつはわたしを気遣うように囁くと。
母娘どんぶりというのは、たまに聞くけれど。
嫁姑ながら・・・ってやつも、オツなものだね。
こんどはそんな囁きで、わたしを狂わせて。
わたしのいる晩は、母のもと。
わたしの留守には、妻のもと。
かわるがわるひっそりと、通って来るのだった。

喪服の夜は、淫らな気分。

2009年09月15日(Tue) 07:26:49

耳元をそよそよと吹きすぎる夜風が、涼しくなってきた。
夜這いを許された、はじめての年。
周太はそれでも決心がつきかねて、目あての家の周りを徘徊するだけだった。
  だれもがしていることじゃないか。お前ぇの母ちゃんだって、二人や三人相手しているぜ?
悪い友人にそんなふうにそそのかされても。
度胸のない周太は、気になる女の棲む家の扉を、叩くことができない。
  正面切って入っていくやつが、いるものか。
  雨戸だよ、雨戸・・・
周太の見当違いを笑ったそいつは、あちこちでいい思いをしているらしい。
  そんなに決心がつかねぇんなら、オレが忍んじまおうか?
さすがにそのひと言には、腹が立って。うるさそうに追い払ったのだが。
相手が未亡人である以上、だれに望まれても、だれの相手をしても、いっこうにお咎めのない立場なのだった。

―――おい。今夜も決心、つかないの・・・?
いつの間にか、近寄ってきて。
悪友とおなじことを呟くやつがいた。
声色の違いで、別人と知れたけれど。
濃い闇に溶けている相手がだれなのか、全く心当たりがなかった。
―――喪服、着ているだろ?今夜。
―――夜に法事があるわけ、ないじゃないか?
―――あの女が夜喪服を着るのはね。男が欲しい夜なのさ。
チャンスだぞ、さぁ行け・・・と、背中を押されて。
ふらふらと、家に近づいて。
―――雨戸だよ、雨戸。
影のいうことは、悪友の言い草とさして変わらない。
雨戸はなんなく、すうっと開いた。

息をのむほどの、目の前だった。
女は洋装の喪服の股ぐらに両手を突っ込んでいて。
かすかな声さえ、洩らしている。
―――うまくやるんだな、兄弟。
そんな声色が、背後からしたような気がするが。
あとの記憶は、定かではない。

いきなりの闖入者に女があっ・・・と声をあげたのと。
ブラウスの胸元を引き締めていたリボンが、拍子抜けするほどかんたんにしゃらしゃらとほどけてしまったのと。
太ももをなぞったとき、黒のストッキングの手触りが、思った以上にするするとしたのと。
初めて女を犯す身が、いともむぞうさに、正確に女の芯をとらえたのと。
(けっこう憶えているじゃないか)
そんなふうに自嘲したのは、もう陽が高くあがったあとのこと。
女は夕べのなごりなど毛ほどもみせず身づくろいをして、
周太の傍らに、にこやかにお茶を置いていった。

はたちそこそこだった未亡人に溺れた周太が彼女と祝言を挙げたのは、しぜんななりゆきだった。
新妻はどこまでもかいがいしく周太に仕え、
彼女に前夫がいたことなど、しばし忘れるほどだった。
いちばん奥の、なにも置かれていない部屋の隅にひっそりと、前夫の写真があるのだけが、そのなごりだった。

夜の仕事も多い周太は、三日に一夜は家をあける。
そういう日、彼の新妻はなぜかウキウキと夫を送り出しているような気がする。
―――だってあなた、仕事にかこつけて忍んでいらしているんですもの。
新妻の言い訳が、彼自身の行動と食い違っているのを耳にして。
けれども周太は、ほろ苦く笑んで妻を抱き締めただけだった。
目の前には、ひっそりと置かれた前夫の写真。
―――やっぱり、あんただったんだな。
独り寝の褥間近の雨戸まで導いてくれたのも。
寂しい妻に、生身の男を与えたかったからなのか。
怒りや嫉妬は、おぼえなかった。
独りで生きていく寂しさを気遣って、自分以外の男を近づけて。
それでも最愛の女をあきらめきれずに通ってくる男。
きょうも代役を、よろしくな。兄弟・・・
夜勤に出かけるとき、周太はほろ苦く笑みながら。
部屋の隅、ひっそりと置かれたかれの写真に一瞥をくれてゆく。

ママ。ハイソックスを、たくさん買って。

2009年09月13日(Sun) 09:07:00

真っ赤なカーディガンに、白のブラウス。
赤のチェック柄のひざ丈スカートの下、ひざ下ぎりぎりまで引き伸ばされた白のハイソックスが、
とても柔らかそうだった。
ボクといっしょに、紅い頬っぺの少女を盗み見ていた小父さんは。
―――うふふふふっ。
―――おいしそうなお嬢ちゃんだね。きみの妹さんなのか。
―――ほんとうに・・・いただいちゃって、いいのだね?^^
わざと念を押すように、ボクのほうを振り向いて。
なにかに背中を押されるようにして、ウンと頷いてしまうと。
―――きみにお願いされたんじゃ、仕方ないかな。
って。
嬉しそうに、ニマニマと笑いながら、ゆっくりと立ち上がる。

きゃあ~っ。
まん丸な頬っぺの下、食いついてきた小父さんに。
妹の抵抗は、とても他愛なかった。
ごく、ごく、ごく、ごく・・・
ボクのときと、おんなじように。
絵梨花の血は、それはおいしそうに飲まれていった。
うつ伏せに倒れた、絵梨花の足許に。
小父さんは、嬉しそうに這い寄っていって。
柔らかそうなハイソックスのうえ、唇を吸いつけて。
ちゅうっ。
吸い出したバラ色の血潮が、しずくとなって。
純白の長靴下を、赤黒く浸していった。
ボクはたいぎそうに、ねずみ色のハイソックスをひざまで引き上げながら。
乾いてしまった血の痕を、薄ぼんやりとなぞっていった。

絵梨花の虚ろな声色に。
ママは訝しげにかがみ込みながら。
娘がなにを言おうとしているのか、訊き分けようとした。
―――ママ。ハイソックスを、たくさん買って。そうね、20足くらいあればいいかな。
―――仲良くなった小父さんのために、履いてあげるの。
―――脚から血を吸うときにね。ハイソックスを履いたまま咬ませてあげるの。
―――小父さんとっても、いやらしいんだよ。絵梨花のハイソックス破りたいんだって。
え?え?え?
ママは不思議な物語でも聞くように、絵梨花の呟きに聞き入っていて。
背後に立った黒い影に、なかなか気がつかないでいる。

アラ、ごめんなさい。普段履きなのですよ。お恥ずかしい。
小娘みたいに、羞じらいながら。
ママはブラウスの胸をちょっと抑えつつ、足許にかがみ込む小父さんのまえ脚を差し伸べてゆく。
吸いつけられた唇の周り。
肌色のストッキングが、チリチリになって、綻びていた。
―――おいしそうに、なさるのですね。
―――あまりたくさんは、お分けできませんわ。
―――この子のハイソックスを、買いに出なければなりませんので。
わたしのストッキングも、買い置きしとかなくちゃね。
いつもと変わらない、主婦らしい呟きだった。

奴隷になってくるわね

2009年09月12日(Sat) 17:11:30

近所の小父さんの家に、ママのお使いで行った時。
おめかしをした小母さんが、ちょうど家から出てきて。
小父さんがにこやかに、送り出すところで。
迎えに来た小父さんのお友だちといっしょに、出かけていった。
冗談ごかしの、口ぶりで。
「奴隷になってきますね~♪」って、三人で笑いながら。
あれは本当のことだったのだ・・・と、わかったのは。
それから二十年も経ったあと。

「奴隷してくるわね♪清美といっしょに」
あのときの小母さんと同じくらい軽いノリで。
黒の喪服に着かえた妻。
妻の隣にいる娘は、通っている学校のものとは違う制服を身にまとい、
ふたり、申し合わせたように、黒のストッキングで脛を染めている。

いとしい女房が初めて奴隷になった夜。
わたしは声をあげて、泣いていた。
まるで強姦どうぜんの仕打ちだったのに。
なぜか夜が明けるころには、相手の男と打ち解けていた。
このうえもなく、仲良くなってしまったのは。
妻を通しての、新しい関係ができたから。
娘が高校にあがったら、やはり奴隷に捧げるという約束が成り立ったのは。
ごくしぜんな、成行きだった。

黒のストッキングは、我が家に飼っている女奴隷の制服。
清楚なはずの薄い生地に。
淫靡な翳を、よぎらせて。
「奴隷になってくるわね」
「奴隷してくるから~・・・」
牝奴隷たちはきょうも、我が家をあとにする。
そういえば。
遠い日にご主人に送り出されていたあの小母さんも。
黒のストッキングを、穿いていたっけ。

飲みきれない酒

2009年09月10日(Thu) 08:04:34

村の男が黙って酒をぶら下げてきたときは。
―――今夜、お前んとこに夜這いをするぞ。
そういう意思表示。
だれが教えるともなく、教えてくれたそのならわしを。
いつか、自分のこととして、経験するようになっていた。
この村に赴任してきた夫たちの、ほとんどは。
そういう酒を、受け取っていて。
その晩は事務所で夜勤をして、独り苦い酒を愉しむのだった。

酒をぶら下げてくる男は、ひとりとは限らない。
―――おや、お宅もふたりめ?
―――いやぁ。じつは毎晩くれるひとがちがうんですよ。(^^ゞ
そんな会話が、日常風景のなかに見え隠れするほどだった。
うちの妻は、六人目。
贈られた酒を、飲みきれないほどの数だった。

酒が飲みきれないって?
そういうときはな。みんなを家に呼ぶんだ。
酒なんか、すぐになくなるさ。
そう耳打ちしてくれたのは。
村にきて初めて、妻の相手をした男。

男の言われるままに、家で酒盛りをすると。
六人の男が三々五々、集まってきて。
ひどく盛り上がる酒宴になった。
いつの間にか、交代で。
ひとりずつ、いなくなって。
戻ってくるときには、ひどく満たされた顔つきになっていて。
女もののブラジャーやパンティ、ストッキングなど。
妻の身に着けていたものをぶら下げて、戻ってくる。

たまにはこういう酒盛りも、愉しいだろう?
さいしょの男がぶら下げてきたのは、
初めて彼に抱かれた時身に着けていた、紫色のスカートだった。

空色のブラウスに、真っ白なタイトスカート。 ~妻・厚子の献血~

2009年09月07日(Mon) 07:14:16

空色のブラウスに、真っ白なタイトスカート。
肌色のストッキングに包まれた太ももが、夫のわたしの目にも眩しい。
ふさふさとウェーブした黒髪を、肩先にさらりと流して、
瞳をウキウキと輝かせて。
艶然と見つめる上目遣いの行き先は、きょうばかりはわたしではなかった。
そう。妻の厚子はいま―――吸血鬼の想い女(びと)になる・・・

独りで逢うのは、怖いわ。
あなた、いっしょにいらしてね。
夫のわたしの観ているまえで、好んで犯されようとは。
けれども、それがきみの望みなら・・・
肯いたわたしに、妻はウフフと、イタズラっぽい笑みをみせた。

抱きすくめられたブラウスの肩先が、赤紫色に濡れている。
妻はとっくに、気を失って。
吸血鬼の腕のなか、熱い接吻に身を任せていた。
そろそろと足許ににじり寄る、不埒な唇が。
わたしのほうをふり返り、にやりと笑んで。
それからおもむろに、肌色のストッキングのふくらはぎに、それはいやらしく、吸いついていった。

ちりちりに引きむしられた痕が、真っ白なタイトスカートの奥にまで、伸びていて。
妻は惚けたように、天井をみあげたまま。
まだしつっこく、足許をいたぶりつづけている男の、好みにゆだねてしまっている。
ぼう然となるほど血を抜かれているくせに。
彼女はまだ、昂りに肩をはずませていて。
ねぇ、あなた。コーヒー淹れてあげる。
リビングで召しあがって、ゆっくりしていてくれる?って。
起きあがって、台所に立つまえに。
わざわざ、わたしの目のまえで。
男と熱いキスを交わしていった。

ブラックのコーヒーは、ほろ苦い。
今朝はまして、ほろ苦い。
ふすま一枚へだてた、寝室で。
妻は娼婦となっている。
テーブルの向かいの椅子の背もたれに。
ひらひらと垂れ下がっているものは。
さっきまで妻が脚に通していた、肌色のストッキング。
透明なナイロンは、鮮やかな伝線を、むざんなほどに走らせていて。
這わされた接吻のしつようさを、ありありと見せつけていた。

ストッキング、お好きなのね?
もう一足、噛み破らせてあげましょうか?
都会育ちの妻は、慣れた手つきでストッキングをずり降ろすと。
傍らに置かれた新しいパッケージの封をむぞうさに切っている。
男からの贈りものは、舶来もののガーターストッキング。
これなら、穿いたままできるわね。
あなた、コーヒー入りましたよ。
のどやかな声色が、日常と異界とを行き来する。
わたしにはたったひとつの言葉しか、選択肢が残っていない。
気のきいた夫として。訪問客をもてなす家のあるじとしての、ひとつの言葉。
どうぞ、召し上がれ。ごゆっくり・・・

真っ赤なカーディガンに、白のブラウス。
チェック柄のスカートに、空色のハイソックス。
精いっぱいのおしゃれをした娘は、もう三十分もまえに、
あやされながら、血を吸われ、勉強部屋に転がされている。
彼女が眠りからさめるころ。
妻は情事の余韻すら消し去っているに違いない。

ああ・・・ああ・・・ああぁ~っ
悩ましい声が、鼓膜を突き刺すのを愉しみながら。
わたしはコーヒー片手に、
不倫のまぐわいを遂げた、ふすまの向こうのふたりに。
心からの祝福のまなざしを、投げてやる。

喪服妻を狙う影 ~選手交代~

2009年09月07日(Mon) 04:35:00

おや。どうしたんだ?その痕・・・
沼尻が妻の初枝を見とがめたのは。
帰宅した妻の首すじに浮いた、赤黒い痣。
ああ・・・これね。
初枝はちょっとためらったものの、すぐに口を切った。
びっくりしたわ。襲われちゃったのよ。吸血鬼に。

あなた、ご存じでしょう?
最近また、出没するようになったのよ。
人は殺さないっていうから、事件にならないんですって?
もちろん私も、被害届なんか出すつもりはないけれど。
まるで堰を切ったように話しはじめた妻の口調は、まるで小娘みたいだった。

ああ。やっぱりきみだったんだね?
夜更けの街角―――
沼尻は得心がいったように、目の前にひっそりと現れた黒い影に語りかける。
久しぶりだね。
黒影もまた、懐かしげな声を洩らして。
通行人の首すじを狙っていたはずの口許を、ほころばせた。

親が決めた縁談がまとまるのは、村ではごく早かった。
その頃の初枝は、まだおさげ髪の女学生だった。
幼馴染だったその少年が姿を消したのは、ちょうど沼尻の縁談がまとまったころだった。
あれから、どうしていたんだい?
少年のころの口調に戻った沼尻は、
相手が血を吸う性(さが)を持ち合わせていると知りながら、ちっとも怖がるようすがない。

ううん。ちょっとね・・・
それより、喉渇いているんだ。
襲うの、女だけだって聞いたけど。
沼尻は思わず、クスリと笑う。
週に一、二度。真夜中に。
家をこっそりと抜け出して、女の姿で街を歩く―――
そんな妖しげな趣味が、こんなところで活きるとは思わなかった。

それ、奥さんの服かい?
そう―――
女にしては上背のある初枝は、沼尻とほとんど変わらぬ背丈をしていた。
目をつけた衣装をこっそりと持ち出す夫のことを。
ええ。ストレス発散なんでしょう。よろしいんじゃないですか?
初枝はいつも、見て見ぬふりを決め込んでいた。
きょうの装いは、漆黒のワンピース。
ひざ丈のすそから覗く、男にしては綺麗な脚線を包むのは、薄墨色のストッキング。
足許にかがみ込む黒影の前、差し出される足首に。
まるで貴婦人に対するような接吻が、重ねられる。

あら、あなた。その痕・・・
翌朝、歯磨きをしているときだった。
妻の視線の高さにある首すじに、夕べ彼女自身がつけられたのとおなじ痕を見出して。
―――どうなさったの?
―――いや、べつに・・・
たんすの奥にしまわれたワンピースに残る、微妙な乱れのことは。
夫婦どちらからも、話題にのぼることはない。

きみ、全部吸いなよ。
え・・・?
わかっているんだぜ。
ほんとうは、わたしが初枝と婚約したから。きみ、姿消したんだろ?
図星の言葉に、黒影は声もなくたたずんだ。
ほんとうなら、嫁入り前に襲うこともできただろうに。
それではわたしが悲しむだろうと思って、きみは永遠に初枝をあきらめたつもりだったのだね。
けれどもやはり、どうしても忘れられなくて。
戻ってきたときには、わたしたちはもう子供が巣立つほどに年を取ってしまっていた。
ちょっと、不思議だったんだ。
処女しか襲わないはずのきみ達が、どうして50を越えた女を襲ったのかって。
でも、いまならわかるかな。

全部、吸い取らせてあげよう。わたしの血。
男の血なんて、旨くはないだろうけれど。
お目当てのご婦人の旦那のことは、抑えておかなくちゃならないのだろう?
選手交代だね。
こんどはわたしが、姿を消して。
きみが、彼女の主になる。
いいのか・・・?
ああ。いい方法があるはずだよね?お互いが共存できるためのいい方法が。

気がついたときには、あたりはいちめんの闇―――
ここは、どこかな?
あたりを見回す沼尻に、黒影はくすくすと笑いかけた。
墓場だよ。きみの・・・
なるほど。そよそよと頭を揺らがせている柳の木に、見覚えがあった。
あれから一週間、経つんだぜ。あしたはきみの、法事の日。
だから、起こしてあげたんだ。
珍しい風景を、見せてあげるから。
黒影は悪戯っぽい含み笑いを、消そうとしない。

陽射しの照り返しは、まだまだ強かったけれど。
頭上に広がるいちめんの青空は、すでに秋色の深さを秘めていた。
法事を終えて、人々が会釈し合いながら、三々五々散ってゆく。
あとに残るのは、ごく近親のものばかり。
それもまた、深々と会釈を交えながら、ひと組またひと組と、お寺の門をくぐり出てゆく。

いい眺め、だろう・・・?
傍らの黒影は、昼日中では透き通ってしまって、気配と輪郭しか目にすることができなかった。
話しかけられた沼尻にしてからが、黒影とおなじにしか、周囲の目には映らなかったはず。
ああ・・・いい眺めだね。
男ふたりの視線を愉しませたのは。
沼尻の身内の女たちの、黒ストッキングの脚、脚、脚・・・
すらりと上品な、細い脚。
むっちりと肉のついた、頼もしげな脚。
黒一色に塗りつぶされたようなタイツ姿もあれば、グレーか紺かと見まがうほどに薄いやつもある。
女たちの装う黒のストッキングは、まだ汗ばむほどの陽気のまえ重たげなトーンをかもし出していたけれど。
多くの脚たちは、涼しげな薄手のナイロンに染めあげられていた。

さいしょに門から出てきたのは、娘夫婦。
待ってろ。
言いさした言葉を置き捨てるように素早く、黒影はふたりのまえに立ちはだかる。
あ・・・どうも。
娘婿は口ごもりながら、礼儀正しく会釈をして。
娘はかがみ込んでくる黒影のまえ、黒のストッキングの足首を、惜しげもなくさらけ出す。
吸いつけられた唇の下。
まだ三十そこそこの娘の足許を染めあげる薄手のナイロンが、他愛なくぱちぱちと、はじけていった。

小娘のようにはにかんだ妻を抱きかかえて、自家用車に押し込むと。
娘婿はなにごともなかったかのように、義兄夫婦に会釈をして、アクセルを踏んだ。
門をくぐり出てきた長男は、ほとんど目に映らない黒影の存在にすぐに気づいて、
「こっちこっち」と、妻を手招きして。
都会育ちの厚子さんまでもが、高価そうなインポートものの黒ストッキングを。
招かざる弔問客の好色な唇を吸いつけさせて、ふしだらないたぶりにゆだねていった。
「母さん、ゆっくりしていったら?」
長男が謎をかけるように後ろを振り返ったのは。
まだ幼い娘までが、母親にあやされながら。
白いタイツにバラ色のシミをつけられて、はにかみ笑いをうかべたあとだった。

だれもかれも、いつの間に・・・?
沼尻がいぶかしんだのは。
たった数日のあいだで、ひとつの家族にこれほどの変化が訪れるものだろうかという疑問。
ふたたび寄り添ってきた黒影は、彼の不審を打ち消すようにして。
きみたち夫婦だけは、そっとしておきたかったのだけれど。
ほかの連中は、ボクには見ず知らずの他人だからね。
順ぐりに、いただいてきたのだよ。
そう。外堀はとっくに、埋められていたのだった。

独り残った妻は黒のバックを両手に提げ、小娘みたいにもじもじとして。
まな娘や嫁たちのはしたない振る舞いに眉をひそめながら、
それでも立ちはだかる黒影のまえ、礼儀正しく会釈をする。
黒一色のひざ丈スカートの下。
質素な装いのはずの黒のストッキングが、脛の白さを滲ませていて。
夫の目にも、そそる眺めだった。
妻に言い寄る男には、見せたくない風情だった。

初枝さん。憶えていないかな?ボクのこと・・・
本人に話しかけるのはどうはら、きょうがはじめてのことらしい。
ひどく純情なんだな。
沼尻が灼けるほどに、そうおもったのは。
昼日中に、衆目のまえで黒のストッキングを辱められることをきらった妻が拒絶をするのを。
かれが尊重して、おめおめとひきさがってきたからだった。

やっぱりわたしの、出番かな?
どうやら、お願いすることになりそうだね。
吸血鬼に血を吸われていちど土中に埋もれたものは。
十三日経つと、起き上がるのだという言い伝えを。
このさいはっきり、証明しておくべきらしい。
真相は、じっさいにはすこし違っていることを、沼尻は識ってしまっている。
七日で起き上がったあとの数日は、
自分を奪った仇敵が、親族までも従順にしてしまうのを見届ける期間にあたるのだということを。

沼尻の職場は、拍手に包まれていた。
いちど弔われたものがふたたび起き上がって、以前と変わりなく暮らすようになることは。
この村では、ざらに起こることだったから。
しかるべき立場の人々に、これからの自分の立場を説明することになる。
じぶんが目ざめたのは、吸血鬼としてではなくて。
ごくたまに血を嗜むていどの、半吸血鬼であることと。
家族とは、とうぶん別れて暮らすことと。
そのあいだ沼尻と入れ替わりに妻と暮らすのは、かつての幼馴染であることと。
しかるべき期間が経過したら、元通り妻と暮らすようになることと。
そのあとも同居をつづける彼とは、妻を共有するというもっとも親しい関係を築くということと。
滞在客をもてなすのに必要な若い女の血は、長男や娘婿の同意のもとに確保していあるということと。
こういう隠微な情報は、報告を受けた人たちによって、それとなく周囲に洩らされ広められてゆくはずだった。

隣家に住む、娘夫婦も。
離れに暮らす、長男夫婦も。
いや、都会に移り住みながら、法事に参加して。
新婚そうそうの花嫁の脚から、黒のストッキングを気前よく引きむしらせてしまった次男さえもが。
今夜の訪問客のことを、報らされている。
訪問客は、彼らの母親の花婿であることも。
花婿は花嫁の生き血を欲していることも。
花嫁は花婿の嗜好を受け容れて、肌身をさらすつもりでいることも。
まだ、夫を弔う身である女の嫁入り衣装が、漆黒のスーツであることも。

漆黒のスーツの下、脚に通したストッキングは。
親族のだれのものよりも地味な、礼装用のパンティストッキング。
けれども生地の薄さがかもし出すなまめかしさは、身に着けるものの意図を裏切るように。
白い素肌をじんわりと滲ませて、淫靡な色合いを寄り添わせていた。
花嫁が脚に通す純白のストッキングよりも。
喪を破る。
そんな行為には、いまの装いこそがふさわしかった。
やがて捧げることになる血潮が、めまぐるい昂りを帯びて脈打つのを。
ブラウス越し抑えた掌の下、初枝はありありと感じていた。

いやいやをする手を、取り除けて。
うなじに這わされる唇からは、バラ色のしずくが伝い落ちて。
乱されたスカートのすそから覗くひざ小僧に、唇吸いつけられて。
他愛なくくしゃくしゃになってゆく黒のストッキングに、歯噛みをしながら。
礼装を乱された女は、ひと刻の惑いに、堕ちてゆく―――
夫を弔うための装いを。
夫いがいの男性の劣情に、踏みしだかれて。
貞淑な人妻は、一夜にして娼婦になっていた。

行ってらっしゃい。
ああ、行ってきます。帰りは遅く、なるからね。
送り出した夫の足音が遠のくと。
女はエプロンをはずし、いそいそとおめかしに熱中する。
きょう、同居の滞在客を悦ばせるのは。
娘時代のタイつきのブラウスがふさわしいだろうか。
それとも、あの夜の喪服がいいだろうか。
ストッキングを脚に通すとき。
かすかな羞じらいに、女は頬を染める。
夫が贈ってくれたガーターストッキングの、毒々しい輝きが。
それまでの質素な生活を、塗り替えてしまうような気がしたから。

うふふふふっ。行ってしまったわ。あのひと。
ねぇ、観てちょうだい。
喪服だと、よけいに欲情なさるのでしょう?
ストッキングも、お好きなんでしょう?
出ていらっしゃい。
わたくしの正装を、気のすむまで辱めさせてさしあげますわ。
娼婦の本性をむき出しにする人妻を。
立ち去った足音の主が、庭先から熱っぽい視線で見つめていることを。
女も、女の日常を盗み取っている男も、ありありと感じ取っている。

ママを救った夜。

2009年09月06日(Sun) 09:13:14

久しぶりに目にしたママは、さいごに会ったときと変わらないくらい若かった。
ボクの目の前から突如として連れ去られた十年前のあの日と、すこしも変わらないくらいに。
そして、いま。
柱に縛りつけられたボクに、すがりつくようにして。
ママは、獣と化していた。

さいごに目にしたときのママは。
小綺麗に装ったスーツ姿を、初めて見るほど醜怪な姿をした男の猿臂に巻かれていって。
首すじにしゃぶりつけるようにして這わされた唇を、自らのバラ色の血潮で血塗らせて。
生き血をひと口ひと口啜り獲られるたびに洩れる、キュウキュウといういやらしい音を耳にしながら。
苦痛と屈辱の表情をみるみる和らげていって。
別人のように淫蕩な娼婦に、おもざしを翳らせていった。
パパになり代わってママのパートナーになったその男は、ぼう然と立ちすくむパパやボクをまえにして。
それはおいしそうに、ママの生き血を吸い取っていって。
あっけないほど素早く、ママを奴隷に変えてしまっていた。

献身的な妻、そして優しい母親から、牝奴隷にすり変えられたママは。
別人のように媚を含んだ、うっとりとした上目づかいを新たなご主人に向けながら。
ボクたちにはもう目もくれず、ハイヒールをつっかけるようにして、家を出て行った。
さいしょに咬まれたふくらはぎの周りを、ちりちりに裂けた肌色のストッキングがまだまとわりついていたけれど。
ママは、そんなことを気にするふうもなく、
えり首や胸もとに血が撥ねたままのブラウスを鏡に映して、ウフフ・・・と笑って。
ボクに向かってさいごにひと言、いい子になるのよ・・・と言い置いていった。
まなざしひとつ、与えようとしないまま。

再会をよろこぶ言葉など、なにもなかった。
ママの目には、ボクはたんなる餌に過ぎなかった。
まるで爬虫類が、樹液をむさぼるようにして。
ボクの身体におおいかぶさって、傷口にぺろぺろと舌を這わせてくる。
ママが理性を奪われたあのときに、憎むべき仇敵が発揮したあの貪婪さと、おなじだった。
ククククク・・・ッ
傍らから、意地の悪い含み笑いが洩れてきた。
けれどもその声色は、本来の刺まで伝えてこない。
ボクの体内から抜き取られてゆく血液がたてる、クチャクチャと生々しい音にかき消されがちだったから。
どうかね?息子の血の味は?
己とつながったものの血は、ひと味ちがうというだろう?
ママをボクから奪った男は、まるで悪知恵をさずけるように囁いたが、
そんなものに耳も貸さないで、ママはボクに対する吸血に、いっしんに耽ってゆく。

抜き取られる血と引き替えに、鋭利な牙から甘美な毒が注入される。
それは皮膚を突き刺すほど冷ややかで、なおかつ骨の髄まで沁みとおるほど心地よいものだった。
あー・・・。身体の力が、抜けてゆく。
毒がまわるのを自覚しながら、ボクはママに征服されてゆく歓びに、目覚めはじめていた。
一心不乱に吸血の歓びに耽るママに、一滴でも多くの血をあげたくて。
ボクは知らず知らず、ママの動きに合わせて身をくねらせていって。
抜き去られてゆく生温かい液体のひとしずくひとしずくに、想い込めて送り出していた。
ボクの血が、ママの糧になりますように・・・って。

ママを探すのはもう、あきらめなさい。
わたしは最愛の彼女を、あのかたの贈り物にしたつもりなのだから。
かつては負け犬のつぶやきのようにさえ聞こえたパパの言い草が、
刻一刻と生存に必要な量の血液を喪いつつあるボクの耳の奥に、生き生きとよみがえる。
ママが誘拐された後。
さいしょの数日間は抱えていたはずの鬱屈しきったものを、
いつの間にかこの男は、きれいにかき落としていた。
その浅ましいほどの豹変ぶりが、うとましいというよりもむしろ、羨ましくて。
ボクはパパに反撥しつづけていたけれど。
パパはどこかで、ママに逢っている。
そんな根拠のない確信が、ボクの心をいっそう嫉妬深くさせていたことは、間違いない。
パパはママと、定期的に密会している。
けれどもおそらくその密会の体験から、ボクには言いつづけていた。
ママのことは、あきらめなさい。もう決して、探さないように。
もちろんそんな忠告にボクが耳を貸さないであろうことも、彼の予想には含まれていたはずだけど。

ママがはじめて、ママらしい言葉を口にしたのは。
失血でいい加減、頭がくらくらしてきたころだった。
カツヤ、大きくなったんだね。年ごろの男の子の血は、とてもおいしいのよ。
かつてと同じようにやさしく笑んだ口許には、さっき吸い取ったばかりのボクの血が跳ねている。
辺りの微光をうけて。
ボクの身体の一部だったはずの紅い液体が、朱の唇にぬらぬらと輝いていた。
思わずうっとりと、見とれてしまっていた。
母さん、喉が渇いているの。もっと・・・いいよね?
にたりと笑んだ口許だけが、ボクの知っているママとはかけ離れていたけれど。
もっと・・・吸って。
そう囁くことができたのは。
ママが血を獲る行為を通して、ボク自身が欲情していることを自覚してしまっていたから。
これ以上吸わせてしまったら、生命の保証すらあやしくなる。
そんなことはこのさい、もうどうでもいいことに思えていた。
応えの代りは、熱い接吻と執拗な吸血。
もう・・・無我夢中だった。
ママを真人間の世界に連れ帰ろうという当初の目的は、どうでもよくなっていて。
あべこべにボクが、異形の世界に連れ去られていたのだけれど。
でもボクは、すべてが満たされた幸福感に、酔っていた。

あとは、つぎに逢うときの愉しみに、取っておくからね。
ふたたび目ざめたときありありと記憶に残ったのは、呪いを含んだ再会の約束。
ウン・・・また逢おうね。すぐにね。
空っぽになった脳裏から記憶の切れはしをたぐり寄せながら。
ボクは虚ろに、つぶやいていた。

それから、一週間経った夜。
開け放たれた窓の下。
ベッドの上のボクは、濡れたシーツを身体じゅうに巻きつけながら。
自分自身の若々しい体液に紅く染まったシーツの濡れさえ、愉しんでいた。
ママはいっそう若く、写真でしか知らない生娘のころのように頬を輝かせて。
まるでヘビのように、しつようにからみついてくる。
ボクたち母子は、宿した血を欲し与える行為に、熱中しきっていた。
その夜のママの装いは。ひどくなまめかしいものだった。
そう、母子であることを忘れるくらいに、妖艶に。
ふわふわとしたシフォンの黒のショートドレスが、まるで小娘みたいにチャーミングで。
黒のガーターストッキングを穿いた太ももに、知らず知らずむしゃぶりついていた。
今夜のママの装いは、ボクのためのもの。
パパだけのものではなくなったママが、いまボクのものになってくれようとしている・・・
生き血を吸われているというのに。
股間のものは、恥ずかしいほど勃ってしまっていた。
それを根元まで、呑み込むようにして。
居心地のよい柔らかな肉襞は、熱くほてっていた。
もうそこでは、血の禁忌はむしろ刺激を呼ぶものでしかなかったのだ。

研ぎ澄まされた感覚は、知らなくてもよいことまで感知してしまっている。
隣室で息をひそめ、なかの様子を窺う人の気配を、ありありと感じながら。
ママとの密会を。
それも、ほかの男を介しての密会を。
こんなふうにしてずっと愉しみつづけてきたパパに、ボクはやっぱり嫉妬していた。
ママを探そうとしていたころのボクをたしなめるときの言い草が、もういちどよみがえる。
―――わたしは最愛の彼女を、あのかたの贈り物にしたつもりなのだから。
それはきっと、とても甘美な体験だったに違いない。

ああ、わかっているよ。
ママをボクから奪って、いまこうして再会させてくれたあのひとに。
お礼をしなくちゃ、ならないんだよね?
それを避けるために、パパはボクのことを、ママから遠ざけようとしていたんだね?
もちろん、お礼をするよ。
ママが別れぎわ言いつけたみたいに、ボクは良い子になったから。
あのひとが欲しがっているのは、ボクの彼女。
結婚するまえに、欲しいんだろう?まだ処女のうちに。
20をすこし過ぎたばかりの、あの女(ひと)を。
飢えた牙と卑猥な唇が、求めているというんだね?
ボクの身体に流れているのは、パパの血。
いまこうして味わってくれて、よくわかるでしょう?
パパと同じくらい、マゾヒスティックに感じる血が。
あのひとを歓待するようにって、命じている。
まるで、痺れ薬を飲まされてみたいに。
ボクはママの言いつけに、素直に頷きつづけていた。

結婚前に、あの女の身持ちを確かめるため。
あのひとにあの女を、引き合わせてあげればいいんだね?
うちの嫁になるのに、ふさわしい娘かどうかを見極めるため。
あの女の血を、あのひとに試していただくんだよね?
気絶するほど、ぞんぶんに召し上がっていただいて。
それをしたさに、あのひとはボクにママを逢わせてくれたんだよね。
うん。もちろん、すぐに実行に移すよ。さすがに、よろこんで・・・とは言いにくいけど。
うちの家族とごく親しい人に、血をあげる。それだけのことだものね。
ママの事実上のご主人で、パパにとってもご主人様なひとが。
ボクの花嫁のパートナーにもなってくれる。
彼女にもそう説明すれば、きっとわかってもらえるね。
もちろん・・・あのひとにたっぷり、血を抜いてもらったあとに だけど。
彼女のうら若い血は、きっとあのひとのお気に召すはず。
羨ましいけれど。ガマンできるよ。
ママとの密会をつづけてきたパパみたいに。
あのひととボクの彼女との密会を。ボクもきっと愉しむことができると思うから。

性装

2009年09月01日(Tue) 07:45:19

「性装していらっしゃい」
家内を呼び出すとき、あの方はいつもそういうメールを寄越します。
「奥さまを性装させて、×時に家から送り出すように」
わたしにメールを寄越すこともあるんです。
ウソ字などでは、ありません。
妻の正装は、あの方にとっては性欲のはけ口なので。。。

夕方出かけていった家内は、真夜中に帰ってきて。
あの方は車で送ってくださるのですが。
家のすぐ手前で、家内をおろして、わたしとは顔を合わせずにお帰りになります。
家内はといえば。
はだけたブラウス。
ストラップの経たれたブラジャー。
裂けた切れ端が足許まで垂れ下がっているスリップ。
破れた蜘蛛の巣みたいに伝線したストッキング。
裏地にべっとりと白い粘液をあやしたスカート。
ふらつく足取りで、乱れ髪を肩先に揺らしながら、戻ってまいります。
車を降りてから家までの、ほんの数十メートルが。
とても長く、感じられるそうです。

迎え入れたわたしは、妻の装いのそこかしこに残された、あの方の痕跡をたどりながら。
服装検査に、熱中してしまいます。
こんなこともされたのか?あんなふうにもされたのか?
いちいちの訊問に、妻はええ・・・とか、はい、とか、とりとめのない反応を返しながら。
姿勢を崩して、いくんです。
”性装”と呼べるほど堕とされた正装は、わたしのようなものにとってはなによりのご馳走です。

「ごめん!あと5秒待って!」 2

2009年09月01日(Tue) 07:28:27

よくね。当てっこをするんです。
うちの嫁のとこに、今週は何回通ってきたのかって。
さすがにさいしょのころのような、へまはやりません。
音もなくすーっと忍び込んできて、用をすませて、サッと消えていなくなってる。
在宅中に現れて、気がつかなかったこともあるんですよ。
まるで忍者です。(笑)
ですから、意外に当たらない。

木曜の晩には、もろにかち合っちゃって、
庭先から窓に張りついて、ゾクゾクしていましたし。
向こうもちゃんと気づいていて、わざと見せつけるようなプレイしましたから、そこで一回。
火曜日もなんとなく、帰宅した時の嫁の様子がおかしかった。
きっとあといちどくらいは来ているのだろうと思ったら、なんと毎晩でした。^^;
最近本腰入れ始めている女とヤル前に、うちの嫁を実験台に使用したこともあったとか。
(ばれたら殺されますが 笑)
よう続くな・・・って、感心しましたよ。お互いトシだもの。

嫁のほうから出かけていくときも、あるんです。
あちらの奥さんはさばけた人でして、
だんなが女を家に招んでも、平気みたいです。
このあいだも、ちょっと面白かったですよ。
あいつ、玄関に着かえを忘れてっちゃって。
気づかないのか、あきらめたのか、取りに戻らないものですから。
あとから、届けてやったんです。一時間ほど待ってから。
そうしたら、奥さんが出てきましてね。
うちの家内お邪魔してますか?って、訊いたら。
いえ、そんなことはないと思いますよ。って。
引き入れた女がどんな女で、だんなとはどういう関係なのかまでは、知ったことではないのでしょう。
でも、わざとらしく目をくりくりさせて、玄関の片隅のあたりを、ちらと見るんです。
いつも見なれた嫁のハイヒールが、ちょこんとお邪魔してました。(^_^;)
家内が立ち寄るようでしたら、これ着替えですのでって、奥さんに渡してきました。

え?奥さんとはどうなのかって?
どうやら、さばけた人のようで。
こういう立場の夫に、応じることもあるらしいのですが。
交換条件なんて、野暮なことを言うつもりはありません。
わたしはやっぱり、嫁ひとすじなんですよ。
ハイヒールが置かれているのを見ただけで、勃っちゃったくらいですからね。(苦笑)

自分で姦るのと。
ひとに姦ってもらうのと。
どちらも、嫁を愉しむことに変わりはないような気がするので・・・

「ごめん!あと5秒待って!」

2009年09月01日(Tue) 07:17:42

自営業の悪友と、サラリーマンのわたし。
業種にもよるのでしょうが、時間が自由になる悪友は、人妻を食い放題。
サラリーマンというやつは、逆に時間が自由になりませんからね。
食われ放題に、なりかねないのです。

その日に限って、一日早く戻ったのが運の尽き。
見ちゃったんですよ。
夫婦のベッドのうえ、悪友と妻ががんばっちゃっているのをね。
いや~、ショックでした。
でも、テキも焦ったみたいです。(そりゃそうだ)
わたしの顔見て、妻は声もなかったけれど。
あいつ、とっさに言いやがるんです。
「ごめん!あと5秒待って!」
ちょうど入れている、真っ最中でしたからね。
わたしの返事も、バカでしたが。
はいはい、どうぞごゆっくり・・・って。
サラリーマンがどうのという問題じゃありません。(苦笑)
だから嫁を食われてしまうんです。

待ち構えたリビングに、さすがに二人とも、身づくろいしてきましたけど。
すでにそうなるまでに、一時間経過・・・ (-_-)
なにか言うことあるよね?
・・・ゴメンナサイ。(素直でよろしい)
妻はさすがに、決まり悪そうにもじもじしていましたけど。
こいつのって、オレのよりでかいだろ?
ジョークのつもりだったんですが・・・
素直に、うなずかれちゃいました。(^_^;)

で、結局。
単身赴任期間中は、見なかったことにすると。
遠くにいる時点で、すでに勝負ついちゃってますから。
向こうも女房持ちだし、本気で奪(と)る気がないのは、一致していましたから。

覗いてたよね?
帰りがけに、図星を刺されて。
ふーん、そういう趣味あるんだ。
嫁はわかったふうなことを、うそぶいて。
覗かれるのは、やだな。。。ってぬかしやがるものですから。
言ってやりました。
かち合ったら、観るからね。^^
ん~、恥ずかしい。
初めて、恥ずかしがっていました。

単身赴任。三か月前に解消したんですが。
それまでの交際期間三年は、うちの夫婦にとって大きかったかも。
ええ、交際はまだ、つづいていますよ。もちろん。
お約束はきっと、破るためにあるのでしょう。(苦笑)
真っ先に約束を破ってあいつを家に招んだの、わたしのほうですから。

でもね。
あいつ、巨根のうえに浮気症なものだから。
すぐに捨てられると思ったんですよ。
ところが、まだつづいている。
棄てられなかったんだ~って、言ってやったのですが。
嫁のやつ、以前よりも若々しくなっていやがりましてね。
いちおう今でも、うちはあいつの巡回先に含まれているのです。
名誉な話のわけ、ないんですが。
やっぱりどこか、くすぐったいですね。
引く手あまたの男が、自分の嫁目あてに通ってくるのって。

息子の祝言

2009年09月01日(Tue) 06:39:05

まったく、似つかわしくない話題だった。
明日は息子の祝言をひかえた晩に、耳にしたのは。
息子の花嫁は、とうの昔に男を知っていて。
初めての男は、ほかならぬ実の兄。
二人めの男は、実の叔父。
おまけにふたりとも吸血鬼で、若い女の生き血を好むという。

花嫁の芳しからぬはずのうわさ話を、
息子は得々と、むしろ愉しげに口にして。
さいごに、びっくりするようなことを告げたのだった。
母さんも、誘惑されます。
嫁の恵理子もそれを、望んでいます。と。

盗まれてしまうのは、好みではありません。
もちろん、奪われてしまうのも。
ですからこうしましょう。
わたしのほうから、望んでお譲りするのだと―――
いつの間にかうなじのつけ根につけられた痕が、
まだじんじんと心地よく、疼いていた。
痕をつけたその同年輩の男性は、
むしろおどおどと、頭を掻き掻き会釈を返してきて。
意外なくらい、照れくさそうに、わたしの申し出を、聞き入れてくれていた。

あ、痛うっ・・・
障子越し浮かび上がった人影が、硬直したように立ちすくんで。
背後から抱きすくめてくる別の影に、飲みこまれるようになって。
はうううううっ。
すすり泣くようなうめき声が、わたしの耳をつんざいた。
あっけないほど、他愛なく。
その場にくたりとくず折れたのは、さっきまでわたしだけの妻だった女(ひと)。
ひざ丈のスカートの下。
微かな灯りを照り返す肌色のストッキングの淡い生地が、濡れるような光沢を放っていて。
まだじゅうぶんにうら若さを帯びたふくらはぎが、それはジューシィに輝いている。

よろしければ、いま少し・・・
わたしの申し出にくすぐったそうにうなずいたその男は、
ストッキング越し、なぞるように舌を這わせていって。
いちばん肉づきのよいあたりに吸いついた、唇の下。
くしゃくしゃに波打つ薄手のナイロンが、ぴりりと微かな音をたてて、はじけていった。
気を利かせて場をはずしたつもりなのに。
男はそれ以上、妻の身体には触れようとはせずに。
本番は、ぜひ当日に・・・
やっぱりあんたの前でやらんとね。
そんな恐ろしい呟きに、胸をゾクッと震わせていた。

当日は、恥ずかしいほど晴れ渡った天気だった。
村でたったひとつの結婚式場は、地元の人とわたしの身うちとであふれかえっていて。
都会ふうに洗練された服装をした、わたしの身うちと。
いかにもやぼったく素朴な顔だちをした、地元の人々と。
容易に見分けがつくほど、かけはなれている両者が。
熱気を帯びた人ごみのなか、雑然と交り合っていた。
夜になったら、この距離感はさらに縮まるのだろう。
ストッキングに装われた都会の女たちの足許に、
まるで品定めをするように無遠慮に注がれた男どもの視線が、
露骨なまでに好奇心をむき出しにしていた。

夜の花嫁は、忙しい。
お父さんのお相手をつとめるっていうのも、ありなんですよ。
花嫁の叔父は、そんないけないことを囁いてきたけれど。
それでは息子が気の毒だし、彼女は彼女でいろいろあいさつがあるのでしょう?
とっさに返した返事は、男に満足以上のものを与えたようだった。
だんなさん、よくわかっているね。
素朴な共感は、そのまま妻への好奇心へと直結して。
妻にしては珍しい黒のストッキングの足許に、露骨な視線を這わせていった。
今夜の宴には、花嫁がふたり、いるらしい。

あのかた、人の生き血を召しあがるんですってね。
怖いわ、私。そんなかたと、ふたりきりになるなんて。
あなた、ずっといっしょにいてくださいね。
夕べ襲った一瞬の出来事は、妻の記憶にとどまっていないはずなのに。
正直な恐怖を訴える声色は、どこかしんねりとした艶を含んでいて。
珍しく脚に通した薄墨色のストッキングに透けるふくらはぎを、
ひどくもどかしそうに、見おろしている。

まどかの手引きは、ぼくがしようか?
息子は、じぶんの妹を新しい義兄に与える役目を買って出たが、
妻はそれをさえぎっていて。
二人きりにしてあげるだけで、いいのでしょう?
お嫁さんのお兄さんと、うちの娘が仲良くなるように。
そういうことは、女のほうが好都合ですからね。
花婿はよけいな御用を作らないことですよ。
どこまで知っていて、どこまで気づいていないのか。
妻はあくまで、親族の懇親に気遣いをする主婦の顔を装っていた。

乱痴気騒ぎ、そうに違いなかった。
きりりとしたスーツを装った妻は、制服姿の娘の手を引いて、
どちらもおいしそうな足許に、好奇の視線を這わせてくる男どもを、まるきり無視して。
花嫁の兄に丁寧に頭を下げて。
しばらく若いひと同士で、お話しでもなさっていらっしゃい。
命令口調で言い捨てると、隣の狭い和室に、身をくぐらせて。
待ち受けていた男のまえ、いさぎよいほどすんなりとうつ伏せになって。
黒のストッキングのふくらはぎを、さらけ出してしまっていた。
狂おしくあてがわれる唇の下。
清楚な薄手のナイロンが波打ちよじれていくありさまを。
わたしは、心ゆくまで見守っていた。

若い男とふたりきりになった後、たちまち気絶してしまった娘は、
その時分にはもう、正気づいていて。
自分から吸い取った血を拭おうともせずに、母親のうなじを吸おうとする恋人のようすを、
うっとりとしながら、窺っていた。
従順に首すじを吸わせる母親を、お手本にするように。
入れ替わりに部屋に入ってきただれかを相手に、セーラー服のリボンをほどいていった。

相手は幾人も、入れ替わっていた。
いつか場所も、密室から庭先に移動していた。
丈の高い草が、痴態を覆い隠していたけれど。
穂先のざわつきは、行為の激しさだけを伝えてきて。
わずかに覗く、立て膝をした脚だけが、くねくねとくねりつづけていた。
清楚だったはずの黒のストッキングは、ひざ下までだらしなく、たるみ落ちていて。
さらけ出された色白な太ももが、いっそうツヤツヤと輝いている。

祝い酒に含まれた毒にあてられた都会の男どもには、することがなかった。
連れてきた弟夫婦は、とっくに輪姦の渦のなかに巻き込まれていたし、
妹も村のだれかの誘惑を、断わり切れなくなっていた。
うまいことだんなの了解を取りつけると、母親似の娘とふたり、連れだって。
仲良く並べた、こぎれいなスーツ姿の肩先を、荒い息遣いに昂らせていった。
きょうの佳き日を祝うため、だれがだれの相手をするのかと。
昼間の品定めのあと、うらみっこなしのくじ引きをしたらしい。

那美さんも、お盛んだねぇ。
いつの間にか傍らにやってきて、苦笑いを投げてきた兄は。
妻の痴態を面白そうに眺めていって。
うちだけ除けものは、さびしいからって。
いっしょに酒飲んでた人に、家内のことをお願いしちまったんだ。
この齢で、浮気なんてねぇ・・・って、あいつ照れていたんだけど。
ほら、あっちの奥の部屋で。
ちょうどいま、黒留袖の帯をほどいてもらっているところだよ。
兄さんそれは・・・観ておいた方が、いいんじゃない?
やっぱりそうかな?エヘヘ。
頭を掻き掻き義姉の濡れ場に戻ってゆく兄を見送る余裕なんかなかった。
ちょうどなん人めかの妻の情夫が、着飾ったスーツ姿をわがもの顔に組み敷くところだったから。


あとがき
かなりブランクしてしまいましたが、前作の続編のイメージです。^^