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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

あの・・・もしよかったら・・血を。  ―――さいごの女(ひと)―――

2011年07月31日(Sun) 11:12:27

私はまだ、幼いころだった。
父はすでに、いなかった。
その男はいつも、父のところにお線香をあげにきて。
母は無言で、丁重に。
男を迎え入れ、送り出していた。
そうして、男の帰りぎわ。
いつもためらいがちに、呼びとめるのだった。

あの・・・よかったら・・・血を。

男は母にふり返ると、少女のようにおずおずと立ちすくむ母の肩を、抱き寄せて。
首すじにあてがった唇の端から、鋭利な牙を覗かせて。
遅れ毛のただよう白い首すじに、根元まで埋め込んでいくのだった。
白いブラウスの襟首に、かすかに撥ねる紅い飛沫―――

お若くなったわね。
渇いていただけですよ。

貌(かお)つきをひどく若返らせた、その男は。
母の声音を、頭上に受け流しながら。
男は母の足許に、かがみ込んでいって。
黒のストッキングのふくらはぎに、唇を吸いつけてゆく。
父を弔うために装われた、気品ある薄墨色の装いが、ぱりぱりと咬み剥がれていって。
薄いナイロンの生地の裂け目から、蒼白い脛がむき出しになってゆく。
そんな非礼を、おだやかに受け止めながら。

ご満足なら、それでいいのですよ。

なんと謝罪したものかと口ごもる男を、姉のようになだめている。



怖かった。
私はいつも、知らないふりをして。
自分の部屋で、ひざ小僧を抱えて。
男が去るのを、心待ちにしていた。
ひそひそと交わし合う声に、厭わしげにかぶりを振りながら。

貴男のなかで、刻が停まりつづけているのですね・・・
それも、辛いものなのですよ。
そうなのですか・・・

想いのこもった、母の声に。
男はひくい声で、応えるのだった。

いつか、さいごの女(ひと)があらわれて。
刻の封印が解かれるとき。
わたしはその女(ひと)といっしょに、齢をとって。
その女(ひと)といっしょに、死ぬのでしょう。

どうやらそれって・・・わたしのことじゃないようですね。
控えめにひそめた、母の声。
その時母は、きっとほろ苦い笑みを洩らしていたことだろう。



妙齢(としごろ)になったとき。
男どものもの欲しげな視線が、とても嫌で。
外を出歩くのさえ、おっくうだった。
母さえいなくなった、そのころ。
もっとも控えめで、もっとも想いを込めた目線を感じたとき。
私は初めて、ひとりの男に振りむいていた。
もうすでに、初老の男だった。
母を愛していった、あの男だと。
気づくのにそう、時間はかからなかった。

母の写真に、お線香をあげたそのひとは。
ひっそりと立ちあがると、辞去のあいさつを洩らして。
ゆっくりと、玄関さきへと、足を向けた。
わたしはおずおずと、起ちあがって。
母とおなじことばを、つぶやいていた。

あの・・・もしよかったら・・・血を。

初めて受け容れる牙は、ひどく遠慮がちで、痛みもほんとうに、かすかだった。
うつ伏せになった、たたみの上。
真新しい畳の青臭い香りが、ツンと鼻孔を衝くのをおぼえながら。
母のときと、おなじように、淡いナイロン生地のゆるやかな束縛がほぐれてゆくのを。
なぜか心地よく、受けとめていた。

私といっしょに、暮らすようになって。
私といっしょに、齢を重ねはじめた彼―――

ようやくさいごの女(ひと)に、たどり着けたのね。

母の写真はきょうも、穏やかなほほ笑みを絶やさないでいる。

いけない・・・いけない・・・

2011年07月30日(Sat) 10:51:47

いけない。いけない・・・
抑えつけられた芝生の上で。
勤め帰りのスーツに、泥を撥ねかしながら。
ひたすら、つぶやきつづけていた。
首すじに思うさま、牙を埋めてきたその男は、
強引なまでに、彼女の血を抜き取りつづけていて。
すぐに、吸い尽くされてしまいそうな気がしたものだから。

いけない・・・いけない・・・
切れ切れに声をあげる、その女(ひと)を。
男はいとおしげに、抱きよせて。
なおも逃れようとするその肩を、ひどく丁寧にさすりつづける。
与えられた至福の刻に、しんそこ酔い痴れ感謝しているのだと。
その想いは、荒々しい所作に隠れてしまいがちだったけれど。
逃げないで。
なおも這わされる唇を通して、想いが素肌にしみ込んでいった。

いけない・・・いけない・・・
女は帰り道を変えようともせずに。
レイプどうぜんに辱められた足許に、今夜も黒のストッキングをまとっている。
舐め心地を愉しまれている。その不快さ、おぞましさとはべつに。
あくまで女のたしなみを捨てまいとするように。
女はかたくななまでに装いを整え、ストッキングを脚に通しつづけていく。

いけない・・・いけない・・・
いかにも舐め心地よさそうに舐めつくされたあと。
おなじブランドのストッキングを、今夜も脚に通してしまった。
男の不埒な愉しみに、嫌悪に眉を逆立てながら。
失礼でしょう?いけすかないっ。
女はつよく咎めながら。
制止の言葉を口にしつづける。

いけない・・・いけない。
女はおなじことばを、今夜も男に囁きつづける。
それはすでに、自分の身体に加えられる苛みを制止しようとするものではなかった。
女は自分にたいして、つぶやきつづけていた。
男の想いに、引きずり込まれまいとして。

お前がいちばん ~幼馴染の妻~

2011年07月26日(Tue) 08:11:16

久しぶりに里帰りした幼馴染が連れてきたのは、都会育ちの新妻・妙子さん。
村の男は花嫁を、だれかと共有することになっていて、
妙子さんはむろん、そんなこととはつゆ知らずに、村での暮らしを希望していた。

お袋に言い渡されたんだ。
妙子の相手を早く決めろって。
どうしても、強いてだれかに抱かせなくっちゃならないのなら、やっぱりお前に頼みたいな。
言いにくそうにそういう幼馴染に、俺はめいっぱいの感謝をした。
裏の木立で待たせてある。あくまで献血だって、伝えてあるから・・・

はじめまして。
はじめまして・・・
ぎこちなくあいさつを交わすふたりの影を、やつはどこかから見守っているはず。
俺はいつになくぶきっちょに、彼女を引き寄せて、
白い首すじを、噛んでいた。
朱色のカーディガンに、バラ色のしずくを、目だたないほどに撥ねかしながら・・・

それ以来。
妙子さんとはたまに、逢うようになったけど。
あいつと約束した週一回の約束は、二回になり、三回になっている。
そのぶんはきっと、妙子さんの意思なのだろう。
洗練されたデザインの都会女の装いを、もうなんども俺の精液に染められた女―――
きょうも俺は、あいつの出勤を待って。
昂り果てた一物を、もてあましている。

「おとこ」

2011年07月26日(Tue) 07:53:50

お世辞にも、美人ではなかった。
体格もがっちりしていて、もっと言ってしまえば、でぶっちょだった。
吸血鬼としては血をいっぱい獲れそうなつごうのよさはあったけれど。
男まさりの性分から、不埒な意図で彼女に近づくものは、皆無だった。
琴緒という古風な名前をもっているのに。
その外見と気風の良さから、だれも彼女のことを本名では呼ばず、「おとこ」って呼ばれていた。

学校帰りに出くわして。
ひと目で喉が渇いているって、見破られて。
血が欲しいんでしょ?あたしのでもいい?って、訊いてきて。
手近な公園のベンチに腰かけて、
ハイソックス破るのは、勘弁ね。
じぶんからそういって、真っ白なハイソックスをずり降ろしていった。
たっぷりとしたふくらはぎは柔らかく、噛み応えがあって。
健康な少女は潔癖な日常を送っているのだと、生き血の香りから伝わってきた。

家まで送るよって言ったら、素直にそうしてくれる?って応えて来て。
その声がいつになく、頼りなげだったのは。
気前よく血を吸わせてくれた彼女にして、初めての失血はこたえたのだろう。
だれにでも吸わせるわけじゃないんだよ。あんたが初めてなんだよって。
自分に言い聞かせるように、言いつづけていた。

玄関のまえ、別れぎわ。
ガマンしてくれたご褒美に、やっぱり噛ませてあげるから・・・って。
ひざ下まできっちりと伸ばした白のハイソックスのふくらはぎを、差し伸べて。
好きなように、噛ませてくれた。
傷口のあたりに赤黒いシミを滲ませたハイソックスを、うえからいたぶりながら。
太めのりぶを、くしゃくしゃにねじ曲げていって。
もうっ。イタズラするんだからっ。
彼女は不平を鳴らしたけれど、思うままにやらせてくれた。

つぎの日彼女は、まだ青い顔をしていたけれど。
夕べの晩ご飯、お赤飯だった。
ちょっと羞ずかしそうに、こちらを見ずにそういって。
あのあとママとスーパーに行って。
ハイソックス安売りしてたから、一ダースも買っちゃった。
真新しい白のハイソックスを、みせびらかして。
噛んでもいいよ・・・って、行ってくれた。

週に二回も、逢ってくれるようになって。
スポーツ選手の彼女は、根性のあるところを見せてくれたけど。
かけっこはいつも、びりになっていた。

夏休みが、終わるころ。
制服の下、いつも履いてくる白のハイソックスの代わり、
いつになく、黒のストッキングを履いてきて。
ママに宿題、出されちゃった。
この夏のうちに、女になれ・・・だって。

おそるおそる組み敷いていった、たたみのうえ。
彼女は珍しく俯いていて。
ことが果てるまで、目を合わせないようにしていた。

「おとこ」と呼ばれた少女が、女になった日。
うちの晩ご飯も、お赤飯になっていた。

凌辱。

2011年07月21日(Thu) 07:16:36

スカートをはぎ取られた女房は。
ついぞ見かけないガーターストッキングのゴムを、太ももによぎらせながら。
前から、後ろから。
男ふたりに、サンドイッチにされて。
長い黒髪とブラウスのタイを、揺らしながら。
代わりばんこに、受け入れさせられた。
きゃーきゃー悲鳴をあげて厭がっていたのに。
口許からよだれを垂らして、もっともっとと欲しがるまでに。

勉強部屋で迫られた娘は。
濃紺のプリーツスカートをはぎ取られて。
太もも丈の黒のストッキングが、ひざ小僧のあたりまでずり落ちさせたまま。
さっきまでママがそうされたみたいに。
前から。後ろから。
男ふたりに、サンドイッチにされて。
三つ編みのおさげ髪と、セーラー服のリボンを揺らしながら。
代わりばんこに、突っ込まれてゆく。
ぴーぴー泣きじゃくっていたのが。
腰の振りかたを覚えるまでに。

ふたりが来る夜は。
勉強部屋と、リビングと。
順々に、案内をして。
立ち入り禁止と言われたのを、律義に守って見守るわたし。
男どものお○ん○んの先っちょを、真っ赤に濡らした娘さえもが。
初めてかけたパーマに、照れながら。
いままで下着は白と決めていた女房が。
毒々しく輝くサテン地の真っ赤なパンティを見せびらかしながら。
耽ってゆくありさまを。


あとがき
あー。。。(ため息)
またもやヘンなお話が。。。(-_-;)

幸福な結論 ~いとこのお姉さん~

2011年07月20日(Wed) 07:22:55

初めてだというのに、びっくりするほど落ち着きはらって。
彼女は気丈に、ほほ笑んでいた。
ブラウスの襟首を、吸い取られた血の名残りで染めながら。

ふさふさとした淡い茶髪に囲まれた、頬骨の目だった輪郭の濃い目鼻だち。
世間では十人並としか言わないかもしれないけれど。
すこしうろたえながらも一度咬まれてしまうと、あとはなりゆきにまかせてくれた女(ひと)―――

姉さん、って呼んでもいい?
遠縁の娘にあたる、その年上のひとは。
洗練されたスーツ姿で、大人びた初々しさを漂わせていた。

おイタですね。そう、軽く咎めながら。
裂けたストッキングの足許を、困ったように見おろして。
もう履けないからいいわよ と。もう片方の脚にすりつけられた唇に、応えてくれた。

ここに来る前に、親から言い含められていたという。
親からもらった血を、そんなふうに辱められなければならないことに。
彼女はさすがに、泣いたという。

その話を聞かせてくれた、二度目のときに。
鮮やかに青いスカートの下に履いてきてくれた、グレーのストッキングは。
初めてのときのやつよりも、グッと薄手で、ひきたっていた。

来週、お嫁にいくの。相手は五十すぎのひと。あたし後妻なんだ。
まるで都会に帰ると告げるときほどの、さりげなさで告げられた、衝撃のひと言。
思わず、押し倒してしまっていた。

お嫁に行けないわ。
切れたブラジャーの吊り紐をいじりながら、
俯いた面差しを優しげな淡い茶髪に隠しながら、涙声だけは、隠せなかった。

こういう方法も、あったんだ。
蒼ざめた顔色は、ボクとおなじ肌の色。
こうしたくはなかったけれど、彼女を護るにはこうするしか思いつかなかった。

いまさら人間に戻れなんて、いわないよね?
母親をたぶらかして、ボクのために連れて来てくれたひとは。
あたしにも頂戴、っていいながら。お母さんの血に酔い痴れていた。

あなたのために履いたのよ。
お母さんの足許を染める、黒のストッキングのなまめかしさに。
ついいやらしく、べろを這わせた。

いけないひとですね。ほんとう、イタズラっ子なんだからっ。
母娘できゃっきゃとはしゃぎながら、彩られた脛を踊るようにくねらせて。
まだ血の残っているお姉さんも、ストッキングの味比べに応じてくれている。

息子も母も。

2011年07月19日(Tue) 08:22:56

子供どうし、戯れ合っているうちに。
吸血鬼の本性をあらわにした、あいつ。
いきなり首すじを、噛んできて。
ボクがぼうっとなると、こんどはハイソックスの脚を、おねだりされた。
真っ白なハイソックスのうえ、ヒルのように吸いつく唇に。
ボクはドキドキしながら、見入っていた。
ハイソックスのまま噛んでもいいかな?って、せがまれて。
やだ。痕がついて、ママにばれちゃうよっ。
いちどは拒んだけれど。
くり返しくり返し、おねだりをされて。
ちょっぴりだったら・・・いいよって。
根負けをしたら。
貧血するくらいたっぷりと、血を抜かれて。
真っ白だったハイソックスには、真っ赤なシミがついていた。
家に迎え入れてくれたママは、ハイソックスのシミをみとめると。
おめでとう、って言ってくれて。
その夜のごはんは、赤飯だった。
そのころからだっただろう。
いつも行儀よく、家でもストッキングを履いているママが、
ボクがハイソックスを赤く濡らした日の夜、いつもどこかへ出かけていって。
黒のストッキングが破けたまま、戻って来るようになったのは。

弟も・・・姉も。

2011年07月19日(Tue) 08:19:10

学校からの、かえり道。
舗装道路を外れて、傍らの草っ原に足を踏み入れると。
あいつはそこで、待ち受けていた。
ほら、真新しいやつ、履いてきてやったぜ?
自慢げに見せびらかしたのは。
半ズボンの下、脛を覆うハイソックスの脚。
リブが太めな白のハイソックスには、黄色とクロのラインが、色鮮やかに横切っていた。
おっ、いい感じだな。きょうのやつ。
あいつは言いざま、足許にかがみ込んできて。
ちゅう・・・っ。
臆面もなく、唇を吸いつけて来て。
ちゅうっ、ちゅうっ、ちゅうっ、ちゅうっ・・・
せっかちに唇を這わせてくると、ハイソックスを噛み破って、生き血を吸いはじめていた。

あっ!おいっ!よせよっ!いきなり・・・っ・・・
ボクは表向き、あわてふためいた態度をつくって。
あいつを止めさせようとしたけれど。
夢中になった唇は、真新しいハイソックスの生地を撫でるように、せわしなくうごめいて。
性急な吸血行為は、とどまることがなかった。
好い調子で飲(や)られちゃって。
そのうちすっかり、気分が酔い酔いになってきて。
あいつはとんでもないことを、言い出した。
こんどは、女の子を襲いたいな。お姉ちゃん、連れてこいよ。

お姉ちゃんなら、あそこを歩いているさ。
ボクが目をやる舗装道路には、胸もとに真っ白なスカーフをなびかせた濃紺のセーラー服姿。
尻もちをついたボクを、ほっぽらかしにして。
あいつはこっけいなほど大急ぎで、草っ原から路上に這いあがる。
アッ、何するのよッ!
お姉ちゃんが咎める声の下。
ヒルのように貪欲な唇を吸いつけたふくらはぎの周りから、
薄手の黒のストッキングが、破けていった。
蒼白く透きとおる脛が、裂けてゆく薄いナイロン生地から露出していくありさまに。
ボクはつい、視線をくぎ付けにしちゃってる。

あれからなん年、経っただろうか?
色気づいてきたあいつは、そのあとすぐに、ボクのママに迫っていって。
血を吸うだけじゃなくって、パパの目のまえで、モノにしちゃって。
それからお姉ちゃんのお婿さんに、おさまっていた。
ボクが結婚をするときには、くり返しくり返し、彼女を襲って、処女の生き血を愉しんで。
婚礼の新床に忍び込んできたあいつは、
ボクのハイソックスを汚したときの悪戯心のまま。
花嫁の純潔まで、汚していった。
以来、なにもないことにしていたけれど。
その実妻は、週にいちどは、ナイショで彼と逢っているらしい。

いまでもスラックスの下に忍ばせている、黄色とクロのラインの入った、古びたハイソックス。
まだ赤黒いシミがほんのりと、滲んでいる。

舗装道路

2011年07月19日(Tue) 06:33:59

山あいの木立のなかを、舗装道路が一本、微妙なカーブを描きながら走っている。
曲がりくねったアスファルトを踏みしめて、ゆっくりと歩いてきた少年は。
紺のセーターに、薄茶の半ズボン。
半ズボンの下には、しなやかな黒のタイツがひどくみずみずしい輝きを帯びていた。
良家の子弟だということは、まだやんちゃ盛りの名残りが消えない年頃なのに、
行儀よく着こなした白の開襟シャツでそれと察することができた。

少年は人をさがすような目つきで周囲を見渡すと。
―――叔父さん、どこ・・・?
声変わりしかかった声が、雲ひとつない虚空に吸い込まれていった。
がさり。
木立のなかの草地を踏み分ける足音に、少年はビクッとふり返った。
まだ怖いのかい?
からかうような叔父の口調に、反発するように。
べつに・・・怖くなんかないさ。もうすっかり、慣れちゃったから。
不平そうにプッとほほを膨らませながら。
これから叔父が彼にしようとしていることを、ことさら露悪的に口にした。
ボクの血を飲むんだろ?

いつも悪いな。
白皙の頬を上品に輝かせながら少年ににじり寄ってくる男は、
白髪交じりの見かけほどには齢をとっていないようだった。
けれども頬はげっそりと痩せこけていて、口許もカサカサに渇いている。
ずいぶんガマンしたみたいだね。
こんどは少年が、叔父を揶揄する番だった。

両肩を抱きすくめ、首すじにチュッと唇を吸いつける。
圧しつけられた口許に、バラ色の飛沫がかすかに散った。
ワイシャツ、汚すなよ。
少年は落ち着き払って、叔父のやり口を遠回しに非難する。
ふふ・・・
襟首ひとつ汚さずに、少年の血を吸い取ると。
わざとのようにべろを這わせて、つけたばかりの傷口にぬめらせた。
止血の手当てかい?気が利くんだね。
少年は親しみを込めた冷笑を叔父に投げながら、あたりを窺った。
手ごろなベンチが見当たらなかったので、ためらいもなく舗装道路の隅に寝転がっていた。

タイツをイタズラするなんて・・・いい趣味じゃないよね?
しなやかなタイツにくるまれた、男の子にしては格好のよい脚を、惜しげもなくさらしながら。
暑さを帯び始めた陽射しを受けて、タイツのなかで息づく若い皮膚が、じっとりと汗を帯び始めている。
うふっ。きょうのタイツ。いつもよりいい舌触りがするね。
妙なほめられ方だったけれども、少年はまんざらでもないらしい。
ママがこのあいだ、都会の実家に帰ったとき、デパートで買ってきてくれたやつなんだ。
わざわざ叔父さんのために、履いてきてやったんだぜ?
子供っぽい自慢をしながら少年は、恩着せがましく自分のタイツを自慢した。
くまなく唇を這わされたふくらはぎの周り、少年の脚にぴったりと密着したタイツには。
いやらしいよだれがたっぷりと、しみ込まされている。



初めて叔父の正体を知ったのは、去年の秋のことだった。
あの子、変わってるよね?男のくせにタイツなんか履いちゃってさ・・・
そんなかげ口は、ことさら本人のまえで口にされなくても。
それとなくしっかりと、耳の奥まで届けられる。
悪意の含まれたうわさの声に、かすかな胸の痛みを覚えることはあったとしても。
タイツに魅せられた少年は、じぶんの日常を変えようとはしなかった。
もう、いい加減になさったら?
朝の支度を整える母親はため息をつきながらも、
デニムの半ズボンの上、黒のタイツをきちんと折りたたんで重ねてやっていた。

夕暮れの弱々しい陽射しのなか、学校帰りの道を急いでいるときに。
足早に立ち去って行く年上の女学生を目にした彼は。
彼女が首すじを微かに抑えているのを、目にしていた。
この村に吸血鬼が出没する ということも。
その吸血鬼の存在を、村のものたちは意図的に外界から隠蔽し共存しようとしていることも。
彼はなんとなく、知っている。
いまの女学生が吸血鬼に遭ったのも。
平和裏に血を分けてやって、ぶじ解放されたということも。
すぐに察しをつけていた。
立ち去る少女の腰の周りに揺れる、濃紺のプリーツスカートの下。
黒のストッキングが派手に破けていて。
露出した白い脛だけが、ひどくあざやかに脳裏に灼きついた。

ふり返ると、そこにいたのは叔父だった。
説明されなくても、察しがついた。
吸い取ったばかりのバラ色のしずくを、口許にまだチラチラと光らせていたから。
ええっ!?叔父さんまさかっ・・・?
少年らしい驚きを口にして、腰を抜かさんばかりにして飛びのこうとした少年に、獣の猿臂が伸びる。
不幸なことに少年が背にしたのは、微かな上り坂の斜面だった。
ひざから力が抜けて、その場に尻もちをついた少年の足許に、飢えた唇が近寄せられて来る。
ちゅっ・・・
黒タイツごしに這わされた唇は、妖しいほどに柔らかく、散った唾液がひどくなま温かかった。
あっ・・・あっ・・・ダメだッ!ダメだったらっ。
少年の制止も耳に入らないように、叔父は容赦なく唇を吸いつけてくる。
いけない。このまま吸わせちゃったら・・・
血を吸われて、ボクまで吸血鬼にされちゃうっ。
少年の怯えを、消し去るように。
叔父は少年の肩をやおら抱きすくめて、耳もとで囁いた。
吸血鬼になんか、ならせないよ。ちょっと喉が渇いているだけだから、血をおくれ―――
まるで呪文のように鼓膜から脳裏に届いた囁きに、少年は抵抗する力を喪った。

初めて噛まれた首すじが、まだジンジンと疼いている。
縫い針で刺されたほどの微痛に少年はかすかにうめき、かるい眩暈に耐えていると。
はい、おしまい。
拍子抜けするほどあっけなく、初めての吸血は終えられていた。
エ・・・これだけでいいの?
まだ吸われ足りないかい?
揶揄する叔父に、まだだいじょうぶだって、と応えると。
じゃあ、遠慮せずにもう少し。^^
叔父はわざと見せつけるように舌舐めずりをすると、
赤黒く濡れた舌を、黒タイツの足許にふるいつけていった。

やら・・・しぃ・・・なぁ・・・ダメ・・・ダメだって・・・
声を惑わせながらも少年は、叔父の痴態を許しはじめていた。
少年が好んだタイツを、叔父もまた気に入ってくれている。
そんなわずかばかりの共感が、ひとと打ち解けることのすくない少年を、もの分かりよくしていた。
すぐに噛みついて血を吸い取ってしまえば、用は足りるはずなのに。
タイツのうえから牙を埋め込むまえに、叔父はなんども唇を押しあててきて。
しなやかなナイロンの舌触りを、じわりじわりと愉しんでゆく。
きみのタイツ、しっかりした舐め心地がするんだね。
ほめ言葉のつもりだろうか?臆面もなくそんなことを口にする叔父に。
そ・・・そお?
少年はちょっとためらいながらも、彼が吸いやすいように、脚の向きを少しずつ変えていく。
噛んでもいいよ。血を飲みなよ。
少年がそういって、吸血を許したとき。
すでに少年のタイツは気持ち悪いほど、よだれをたっぷりとしみ込まされていた。



それから数カ月。
いまのような関係が、つづいていた。
叔父はそれとなく、日時と場所を指定してきて。
少年はいつものように、タイツやハイソックスを半ズボンの下に装って、
新しいやつ、わざわざ履いてきたんだよ とか、
気に入りのやつなんだ とか、
恩着せがましく叔父にそういいながら、
なおも足許に唇を近寄せて、恥知らずな愉しみに耽りはじめる叔父に、
タイツ破いたりしないでよっ とか、
あっ、ダメッ、痛いじゃないかっ とか、
わざと非難を口にしながら、血を吸い取らせてやっている。

タイツを履くものと。
装われたタイツを凌辱するものとが。
かろうじて見出した、共感の接点。
少年はきょうも半ズボンの下、真新しいタイツを脚に通して。
劣情に満ちた唇が加えてくる着衣に対する凌辱を、密かに愉しみはじめている。
時おり場違いに耳障りなエンジン音をとどろかせて、傍らの舗装道路を通り抜ける車たちは、
いったん速度を緩めてふたりのようすを窺うようだったが、
どの車もふたりがだれなのかを確かめると、ふたたびスピードをあげて自分のペースに戻ってゆく。
吸血鬼のための献血に耽るものを目にした通行人が、足早に立ち去るように。



お帰り。
ママはいつになく、顔色がわるかった。
その日もタイツの脚を、愉しまれたあと、家に戻って。
学校道具を勉強部屋に放り投げて、リビングに降りていくと。
具合が悪くて半日寝ていたという母が、けだるげに身体を動かしながら、夕餉の支度に入っていた。
また、血を吸われてきたの?
ああ、抵抗したんだけどね・・・ダメだった。
見え透いた嘘を口にする息子の足許は、タイツが派手な裂け目を滲ませている。
―――そう。
ママはいつも、花柄のエプロンをしている。
誕生日に彼が贈った、淡いブルーにヒマワリの花が咲いたエプロン。
そのはしばしに散った赤黒く凝固しかかった飛沫が、少年の網膜を狂おしく染めた。
えっ・・・?

あのひと、村から出ていったわ。
育ち盛りの間はしばらく、吸血を控えないといけないんだって。
あなたのために、さよならするんだって。そう言っていたわ。
さっきまで、ふたりして愉しんでいたんでしょう?
なにも言わずに、木立の向こうに消えていったでしょう?
いつもと立ち去る方角が、違っていなかった?
母親の示唆したことがすべて正しいのを、少年はだまって頷いて応えていた。

血を吸うあてもないのに、村を出た―――?
少年の心配を打ち消すように、ママはゆっくりとかぶりを振った。
母さんの実家に、しばらく世話になるって。
トモミ伯母さんや香織姉ちゃんの血が目あてなんだってさ。
少女のようにイタズラっぽくほほ笑むママ。
そういえば一族ぐるみで、彼のことを保護しているんだっけ。
年ごろになってみるみる美しくなった従姉に、あの叔父が絡みついてゆく光景が、
想像のなかでひどくまがまがしく、少年は淡い嫉妬を感じた。

染みてるでしょ?
手を取って握らされた、ワンピースのすそが。
乾きかけた粘液の微かな湿りを、まだ帯びていた。
叔父さんね。ずうっと、ママのことが好きだったの。
それで、きょうになって、パパが出かけた後にうちにやって来て。
想いを遂げていったのよ。
パパも薄々、知っているわ。でも口に出しては、いけないわ。
あなたがタイツを履いて学校に行くの、ママがどうして咎めなかったか知ってる?
パパもその昔、吸血鬼と仲良しだったのよ。
でもあなたに、パパの真似ができるかしら・・・?
あなた、香織姉ちゃんと結婚する?それとも、同級生のだれかを択ぶ?
どちらにしても。パパがそうしたみたいに、スマートに。
自分の彼女のこと、あのひとに紹介できるかな?
羞じらいを隠そうとして横を向いた息子を見る母親の目は、どこまでも優しいまなざしを絶やさなかった。


あとがき
こちらに触発されて、描いてみました。

http://www.flickr.com/photos/30788655@N08/5203593817/in/set-72157624559419441/
メインは↑この絵。
上り坂の斜面を後ずさりする、タイツ姿の少年くんです。


http://www.flickr.com/photos/30788655@N08/5204193154/in/set-72157624559419441/

自分の血を吸いに来る吸血鬼の叔父さんを待ちうける少年くんの後ろ姿 というイメージです。
セピア色の画像から、過去の追憶というプロットを考えました。

http://www.flickr.com/photos/30788655@N08/5204192380/in/set-72157624559419441/

舗装道路のうえ、気持ち良さそうに腹ばいになる少年。
半ズボンの下のタイツが、キュートです。^^


http://www.flickr.com/photos/30788655@N08/5035796015/in/set-72157624559419441

作中にうまく盛り込めなかったのですが。
初めて襲われた少年くんは、ふたたび彼の血を欲しがって自宅にあらわれた叔父さんのまえ、こんなスタイルで出迎えて、和解をして。
ためらいながらも、黒タイツの脚を差し出していったのかも。^^

以上は前作で多大な刺激を頂戴した「着たいものを着るよ」http://manndokusai.blog77.fc2.com/の管理人・stibleさまが掲載されているFlickrの画像でした。
stibleさまに、心からの感謝をお捧げいたします。

やりましたね

2011年07月18日(Mon) 06:28:14

珍しくいつものノリとはぜんぜん違う記事です。
やりましたね。女子サッカー!
なんとなく真夜中過ぎまで起きていて、それから布団に入ったのですが。
ヘンな時間に目が覚めて、テレビ入れたらやっていまして。
とうぜんのことながら、さいごのさいごまで、観てしまいました。(^^ゞ
一点とられては取り返し、二点めを取られては土壇場で取り返し、
PK戦のときにあのおっかない顔をした監督さんが笑顔で選手を送り出したとき、もしや?とおもったのですが。
それにしても。
う~ん、すごい。凄すぎる!
ふだんは観ないサッカーに、大興奮してしまいました。(^^)/

・・・というわけで。
とりあえず寝ます。(^^ゞ

13人のロストバージン

2011年07月18日(Mon) 01:50:12

ポップな音楽とともに流れる映像は。
それは淫らなものだった。
同級生の女子13人が全員、藁小屋や草むらで、犯されている風景―――
どれもが例外なく、村に棲む吸血鬼のひとり息子のしわざだった。
当の本人は観客の男子全員と同じくらい無邪気な顔をして、
得意満面・・・というよりはどちらかというと、陰気な面持ちで。
自分の罪を自白するような態度で、ビデオを披露に及んでいる。

テロップで流れるのはA子とかN江とかいった、それとなくイニシャルを滲ませた仮名。
それに、襲撃年月日と描かれた、もっとあからさまな内容。
季節によってセーラー服の冬服を着ているものや、夏服になったばかりのもの、
なかには川辺で犯される水着姿 なんていうのもある。
顔はなるべく、写らない工夫をしてあったけれど。
じたばた暴れる脚に履いた黒のストッキングが、めくれあがったスカートからガーターを覗かせたのは、
村で一番の素封家の娘である金垣満枝のものだったし。
抑えつけた両肩からこぼれた長い黒髪は間違いなく、クラスで一番の優等生だった江藤恭子のものだった。
あの恭子ちゃんまでも・・・
だれかが呟くのを、とめるものはいなかった。

あっ、あれは・・・
藁小屋のわらのなか、縦ひざをしてそろえた脚を、決して開くまいとする、夏服姿の少女。
赤のラインが三本入ったハイソックスは、ほかならぬ許婚の前葉節子のものだった。
必死にこらえたひざ小僧の間を、力づくでおしひろげられてゆくのを、どうすることもできないで。
少女は激しく嫌々をしながら、おかっぱ頭の黒髪を振り乱している。
ひざ下までぴっちりひきあげていたハイソックスがずり落ちていくにつれ、
整然とした赤のラインがじわいわと折れ曲がってゆくのが。
手が届くほど鮮明に、映し出されていた。
凌辱されてゆく少女のありさまが、むざんなまでに写しだされる画面には。
会いも変わらず能天気に明るい音楽が、流れつづけて。
まるでふたりのせめぎ合いが、愉しい戯れであるかのような錯覚さえ、観るものに与えようとしている。
襲撃年月日 ××年7月17日
・・・それは、結納を交わしたちょうど翌日のことだった。

ぐったりとなった節子のうえで。
少年は吸い取った血潮が点々と散った頬を、剥ぎ取った少女のセーラー服で拭っている。
こいつ!
思わずやつの背中を、どやしつけていた。
うわっ・・・
やつがあわてた声をあげたのが、合図だった。
だれもかれもが、いちように。
やつの背中を手ひどく、どやしつけていく。
こんにゃろう。ひとの彼女でいい思いしやがって。
みんなが口々に、そういって。
エンディングの流れるテロップの暗がりは、にわかに闇討ちの場に早がわりした。

痛~っ。
照明がついたとき、吸血鬼が身体のあちこちを痛そうにさするのを。
わはははははっ。
笑い声はひどく、陽気なものだった。
さっきのまがまがしい映像が、幻のように消え果てた後。
だれもがその記憶を、吹き飛ばすかのように。

上映会がおわったあと。
だれもがその集いのことを、話題にするものはいない。
思い思いにたどる家路の向こう。
彼らをまつ少女たちを待つ抱擁は、いつになく執拗で熱いものになっていたかもしれないけれど。

・・・息子だ。

2011年07月15日(Fri) 16:02:13

しばらく顔を合わせていなかった兄が、息子を伴なってやってくるという。
めったに会わない人間のためにわざわざ日を空けて相手を待つのは、たまらなく苦痛だったのだが。
ほかならぬ兄であってみれば、むげに断ることもできなかった。
電話越しに聞こえる兄の声色や、その背後からなんとなく感じる一種重苦しい雰囲気は、
口実を作って婉曲に断るなどとうていできないものを感じさせたから。

遠い街に住む兄は、近くの街のホテルで一泊してからくるという。
朝いちででかけても、なおかつ中途で電車がなくなるほど遠いものなのか?
しかし兄は車でやってきた。
錠を開けた鉄扉をギイィ・・・と押し開いた兄は、濃紺の制服姿の子を促して、玄関へと向かう。
出迎えるのもおっくうだったので、鳴らされたインターホンにはただ「中へどうぞ」と答えただけ。
真っ黒なガウンをたいぎそうに羽織って起きあがったとき、
狭い自室の木の扉を、表からだれかがノックした。
いるかね?
久しぶりに耳にする、兄の声だった。

その子は整った目鼻立ちに感情を消して、白い壁にもたれかかっている。
父親に座りなさいとなんどか促されたのさえ、聞こえていないようだった。
息子さん・・・だよな?
さすがに戸惑いの声で囁くと。
・・・息子だ。
兄は気まずそうに、そう応えた。
たしかに。
甥という関係のその少年の顔をさいごにみたのは、もうなん年も前だった。
そのころはたしかにひとり息子だったから、同じくらいの年かっこうの子がもうひとりいるとは思われない。
けれども白壁にもたれかかるその子は、まぎれもなく少女だった。

純白のブラウスに、濃紺のリボン。おなじ色のセーター。
プリーツがきりりと整ったスカートの下、黒のストッキングに、白い脛がかすかに透けている。
この子はね、女の子になりたがっているんだ。
兄はわざとのように息子から視線を外して、こちらに目を向けた。

孝夫という、ちゃんとした男の子の名前があるんだけどね。
わたしも妻も、仕事から抜けられないでいるうちに。
広い部屋に自分の隠れ場所を作って、こんな趣味に耽っていたらしい。
兄はひとごとのように淡々と、語りはじめた。
息子の趣味を、母親はとうてい容認しなかった。
どうしても趣味を捨てないという息子に、彼女は出ていけと言った。
いっそ・・・あの弟さんにあずけちゃったら?
この家は娘に婿を取って継がせればいいでしょう と。
淡いピンクのルージュを刷いた形の良い薄い唇が、そんな冷酷な言葉を吐いたという。
彼女は義弟の正体を、よく心得ていた。

吸血鬼の遺伝子を伝える家系の血が、兄を人間に、弟を吸血鬼にした。
世間から隔離された弟は、家族や親せき、訳知りの知人たちの血で養われ、
やがて独り立ちをすると、一家とははなれた土地で暮らすようになった。
生まれ育った家を去る直前、当時新婚だった兄嫁を、血に飢えた弟はいちどだけ襲ったのだった。
厳しい家庭に育った兄嫁は、義弟の秘密を守ることは約束したものの、
二夫にまみえるつもりはないとつよく主張、そのために彼は、土地を去らなければならなかった。
あの怜悧な血潮の味をこよなく愛しはしたものの、義姉に対する未練はもうなかった。
兄夫婦のあいだにひとり息子が生まれたのは、それからしばらくしてのことだった。
いちどだけ顔を合わせた少年時代の甥は、義姉ゆずりの整った顔立ちに、兄の優しさを秘めた子だと彼には映ったけれど。
―――二度と来ないでくださいね。
義姉はあくまで冷たく、かれの帰郷の望みを断ったのだった。

秀麗な横顔に、どこか寂しさがある。
ひとの感情を読むことに長けた吸血鬼は、値踏みをするような目つきで女装の少年を見つめ、
たえず吸血の危険にさらされる息子の日常を想いやった父親は、そういう弟を複雑な想いで窺っている。
こっちへいらっしゃい。
小声で呼びかけると、少年は案外従順に、もたれかかった白壁から背中をはなし、こちれに足を運んできた。
楚々とした足取りさえもが、少女らしかった。
香菜子です。よろしく。
少年があえて口にしたのは、女の子としての自身の名前らしい。
よそよそしく澄んだ、ぶっきら棒な声は。
悪意からではなくて、人とのかかわりを苦手とする不器用な性格からくるものだった。
じゃ、兄さん。この子預かるから。
即座に気持ちを決めて兄をふり返ると、兄は「頼む」というように、頭を下げた。

物陰に弟だけを呼んで、
―――生命だけは、獲ってくれるな
こんこんとそう諭されたのは、無理もないだろう。
父親の車のエンジン音が遠ざかってゆくのをまるで無視して、制服姿の少年、いや少女は所在なげに、辺りを見回している。
がらんどうな白壁の部屋。
この部屋に、少年の身の回りのものが、あしたにもとどくことだろう。
わかっているね・・・?
自分の境遇を説明するのに多くの言葉を費やしたくなくて、ただひと言そういうと。
孝夫、いや香菜子は、じぶんのほうからこちらへと歩みを進めてくる。

自宅からは男の子のかっこうで送り出された”彼”は、
此処を訪れるためにホテルを出るときに、女の子の制服に着替えるといって譲らなかったという。
ボクは女の子として、暮らしたいから。
初対面から、制服着るんだから。
そういう彼の意を汲んで、もしかすると兄は、途中で宿を取ったのかもしれない。
叔父さん、血を吸うんだよね?パパから聞いたよ。
ボクはずっと、女の子でいるんだから。
それさえ許してくれれば、血をあげてもいいからね。
服が汚れたら・・・新しいのを買ってくれればいいから。
暗に。
持ち主の血を撥ねかせながら吸血する嗜好すらも、受け容れようといっているかのようだった。

ちゅっ・・・
か細い両肩を、ギュッと抱きすくめて。
うなじの辺りに、はじめて忍ばせた唇に。
さすがに”彼”はちょっとだけ、ためらいをみせたものの。
いちど、柔らかな皮膚に唇を這わせてしまうと、もうそれ以上抗いを見せようとはしなかった。
床におひざをついたらね。ストッキングを履いたまま脚を愉しませてもらうことになっている。
はじめて囁いた長いことばに、ぶきっちょに結ったおさげ髪が、素直に頷いた。

ごくっ、ごくっ、ごくっ、ごくっ・・・
喉をせわしくならしながら、少年の、いや香菜子の血をむさぼりつづける。
ちゅう、ちゅう、ちゅう、ちゅう・・・
傷口を踊るように舐める唇を、香菜子は決して嫌がろうとしない。
すすんで献血に応じるかのように、吸いつけようとする唇に、むしろ肌を近寄せてくる風情があった。
香菜子。香菜子。
うん、その名前で呼んで・・・
自分の存在を女として認められたことに安堵してか、
香菜子ははじめて、黒ストッキングの足許をふらつかせた。

う~ん・・・思い切り貧血だよ・・・
床に横たわる、濃紺の制服姿。
これからは毎日、吸血のされ方を教育してあげるからね。
叔父さん、いやらしくないかい?
そのときだけ、男ことばになった香菜子は。
約束だから・・・ストッキング愉しんじゃって。
くぐもった声で、お気に入りの衣装に凌辱を受け容れると表明した。

ちゅっ。
吸いつけた唇の下。
しなやかなナイロン生地の舌触りが、ひどく心地よい。
真新しいストッキングに、かすかに唾液がはるのを。
香菜子はちょっと嫌そうに、眉をしかめたけれど。
引き締まった肉づきのふくらはぎに、牙を埋められて。
ナイロン生地の表面に、ブチブチ・・・ッと走る伝線を、
それは面白そうに、見おろしている。
仲良く暮らせそうね。
懐かしい兄と義姉の血がおり混ざった、香菜子の血―――
酔い痴れるまま”彼女”を、堅く抱きすくめて。
血に濡れた唇をブラウスに圧しつけてやると。
香菜子はきゃあきゃあと脚ばたつかせて、はしゃぎはじめていった。


あとがき
このお話は、近頃お邪魔するようになったstibleさまのブログ「着たいものを着るよ」のひとつに想を得て描いたものです。
イメージになった記事は、こちらです。↓
http://manndokusai.blog77.fc2.com/blog-entry-843.html
「撮影するときにはとくになにも考えていない」とは、stibleさま本人のコメントですが。
とてもそうは思えないほどストーリー性のある組写真となっています。
ほかにも半ズボンに黒タイツの少年など、柏木としては琴線に触れる画像が満載です。
ぜひ訪問してみてくださいね。^^

>stibleさま
リンクの許可をいただきましたのに、お話の構想がまとまらず、つい日を費やしてしまいました。
どうぞこれからも、よろしくおつきあいくださいませ。

ばか律義な女(ひと)

2011年07月12日(Tue) 06:47:23

ごく、ごく、ごく、ごく・・・
スーツ姿を、痛いほど抱きすくめて。
自分の血をむさぼりながら慣らす、喉の音に。
真由は聞き惚れていた。
うっとりとかすんだ視界のむこう。
男は吸い取ったばかりの血潮を牙の切っ先からしたたらせて、彼女の顔いろを見守っている。
すこし、疲れたか?
ううん。
女はまだ、男の背中に腕をまわしたまま。
ゆっくりとかぶりを振った。
とろんとなった目つきが、すでに理性を喪っている。
ひとりで帰れるか?
うん、平気。あなたの相手を狙うやつなんて、いないから。
ブラウスに血が撥ねれるよ。
男の口調はどこか、揶揄を含んでいたが。
すっかりのぼせあがっている女に、それは通じない。
だいじょうぶ。夜道暗いからw
じゃね。
小手をかざした片手を軽く振って、
女は気安い男友だちと別れるように、立ち去ってゆく。

ちょっと、真由ったら。だいじょうぶ?顔いろよくないよ。
気の強い同僚の貴恵は、親友の顔を心配そうに覗き込む。
そお?あたしけっこう、平気だよ。
あいて・・・吸血鬼なんでしょう?
ひそひそと問いかける貴恵は、ひどく切迫した目で真由を見つめた。
この街に吸血鬼がなん人も出没するのは、公然の秘密になっている。
けれどもどうやら、真由に取り憑いたのは、たちのわるいやつらしい。
ここ数日で、真由はひどく顔いろを悪くして、やつれていっている。
ばか律義なのも、ほどほどにしなさいよね。このままじゃあ、死んじゃうって。
真由の肩を揺すらんばかりにして貴恵は言い募ったけれど。
白い頬に柔らかな笑みを浮かべた真由は、薄っすらとした声色で、こういった。
だって、あたしぶきっちょなんだもの。ひととは律義につきあうことしか、できないんだもの。

その夜も、いつもの公園で。
真由はブラウスの襟首を、男のためにくつろげてやっていた。
すでにうなじの周りには、血のりをべっとりとあやしてしまっている。
解いた黒髪が、長々と。
白のブラウスの肩に、流れていて。
その純白を、バラ色の血のりが、ナマナマしく染めていた。
男は、ベンチに腰かけた女の足許にかがみ込んで。
肌色のストッキングのふくらはぎに、不埒な舌を這わそうとしている。
しなやかでなまめかしい薄手のナイロンが、男の脂ぎった劣情のなぐさみものにされるのを。
女は淡々と、見おろしていた。

いい舌触りだね。
男がからかうと、
気に入ってくれたの?
女は半ば放心状態で、声を揺らした。
ああ―――
ふた色のため息が、それぞれの想いを秘めて。
ほぼ同時に、ふたつの唇から洩らされる。

あたし、莫迦な女だよね・・・?
女の問いに、男はこたえない。
なよなよとしたパンストを、脛の周りによじらせていく悪戯に、余念がないらしい。
そう、あたしいっつも、莫迦なんだ。
どうしたって、ひとと律義につきあうことしか、できないんだもの。
あなた、わたしのこと、ずうっと憶えていてくれる?
え・・・?
男がかすかに顔をあげる気配に、女は軽くため息を洩らす。

忘れちゃうよね?
食べ終わったお料理のこと憶えているのは、その夜かぎりのことだものね。
べつの獲物をみつけたら、あたしのことなんて忘れちゃうんだよね。
でも・・・それは悲しいなぁ。
悲しいけれど。しょうがないんだ。
あなたはそういうひとみたいだし。
あたしもこういうひとなんだから。
ね?あたしいつ死ぬの?もうじき?
さいごに吸うときは、教えてね。
そのときは。
嘘でもいいから、あたしのこと愛してるって言ってくれる?
女の囁きだけが、悲しく謡うように。
夜の闇に、吸い込まれてゆく。

お嬢さん、悪いな。
え―――?
血を吸い尽くしちゃうこと?
わるくないよ。べつに。
好きなひとに、欲しがるものをあげているだけなんだもの。
でもあたし・・・世間なみでいったら本当に、おばかさんなんだろうね。
芝生のうえに、組み敷かれていきながら。
スカートの奥に忍び込んだ掌が、
ショーツのなかをまさぐるのを感じた。
初めて許した侵入は、それはそれは丁寧で。
まるで壊れものを扱うように、たんねんな作業をすすめていった。

今夜でお別れだ。
俺は、処女の生き血にしか興味が無いんでね。
芝生のうえ。
ぼう然と座り込む女に、男は無情な声をかけた。
白のタイトスカートのすそが、初めて流された血に、かすかに浸されている。
そう。
行っちゃうんだね。
今夜で吸い尽くされちゃうんだとおもっていたのにな・・・
せっかく身体で男を知ったんだから、あんたももうすこし、狡くなることだな。
男はわざと冷ややかに、そういうと。
いつも独りで帰るという女を、送るつもりもないというふうをつくろって。
闇の彼方へと背を向けていった。
とうとういちども、ふり返らなかった。

あいつに襲われて、死ななかったんだって?
もう七件も、やっちゃっているやつだったんだよ。
顔いろを取り戻した親友に、貴恵がほっとしたようにもたれかかると。
ばかね。
真由は薄っすらと、ほほ笑んでいる。
いままでの彼女が浮かべることのなかった、かすかな妖しさを秘めたほほ笑みだった。
きっとあのひともう、人を殺さないよ。
なんとなくだけど、そんな感じがする。
でも、あたしのことはきっと、忘れちゃうんだろうな。
あたしはずうっと、彼のこと憶えているけれど。
ばか律義だといわれた女は、やはり狡くなり切るつもりはないらしい。

薄いソックスを履いて、登校する。

2011年07月11日(Mon) 08:17:53

おまえ、ヘンタイだな。そんなに薄いハイソックスなんか穿いてきて。
濃紺の半ズボンの制服の下。
ふだんひざ下を包んでいる、太めのリブの濃紺のハイソックスのかわり、
色はおなじでも、ストッキング地のやつを、初めて学校に履いてきたとき。
そんなふうにボクのことをからかった友だちが。
きょう、照れくさそうにして。
ボクとおそろいに、薄いやつを履いてきた。
ひとのこと、言えないや。(^^ゞ
決まり悪げにうそぶく彼。
きっときのう参観にきたお母さんを、担任の先生に喰われちゃったにちがいない。
たしか、両親で来てたっけ。
お父さんもきっと、ぐるなんだね?^^
ちょうど、うちみたいにさ。^^;

彼はちょっとだけ、薄々のソックスの脚を伸ばして来て、
ボクの足許に、さらりとからめた。
薄手のナイロンの、ツヤツヤとした感触が。
敏感になったふたりの脛を、妖しくよぎる。
きょうはどっちのやつが、さきに噛み破られちゃうのかな。競争だね。
負けず嫌いの彼は、
俺、一時限めが個人授業なんだ。
あ、ボクも・・・
お互い、顔見合せて、白い歯を見せ合って。
相手がちがうんだね。 笑
含み笑いを、交わしながら。
じゃ、授業終わったら、見せ合いっこしようぜ。破けぐあい。
そんな約束に、子供っぽく指きりまでしてみせる。

一時限めのおわりが、今から愉しみ・・・

ストッキング地、ライン入り、アーガイル柄・・・

2011年07月11日(Mon) 08:10:32

すんなり伸びた、ハイソックスのふくらはぎに。
もの欲しげに這わされた唇の下。
薄々のストッキングのような、薄手のナイロンが。
ラインが横切る太めのリブが。
お洒落なアーガイル柄が。
つぎつぎと、赤黒いシミに染まってゆく。

半ズボンの脚をそろえた少年たちは、
噛まれるとすぐ、目つきをとろんとさせてしまって。
色白の頬に、淫らな翳をよぎらせながら。
白髪の男の吸血に、うら若い血潮を許していった。

山歩きで道にはぐれた少年は。
父さんや母さんが噛まれて、理性を忘れてしまったあとで。
べそをかきながら、装いを乱されていったくせに。
登山用のもっさりしたやつじゃ、あまり愉しめなかっただろう?って。
ちょっと薄いのを履いてきていたし。

村に親善試合で訪れた少年は。
試合後の懇親会で、必要以上に深入りしてしまったあと。
チームのユニフォームで愉しまれちゃうことが、むしろ仲間との連帯を深めると知って。
さいしょはしぶしぶながら、いまはもうすっかりはしゃぎながら。
真新しいスポーツストッキングを、ふしだらにずり降ろされるようになっていた。

ストッキング地のハイソックスを好む少年は。
彼の姉の婚礼で、夫婦ながら血を吸われた父さんに。
こんどからこういうの履いていきなさいって渡された、薄々のハイソックスに戸惑いながら。
じぶんの血が、姉さんとおなじくらい美味だということを。
姉さんの純潔を奪い、母さんを父さんのまえで悦ばせてしまった小父さんに、主張しつづけていた。

男の子じゃあ、つまんないんだろ?
見透かされた老紳士は、ちょっぴりバツの悪そうな顔をしながらも。
噛み応えがあって、愉しいよ ってかえしていた。
そうこなくっちゃ。
少年たちは、自分の血を褒められた嬉しさを口にすると。
こんどは彼女を、連れてくるね♪
そう約束して、立ち去って行った。
裸足で帰っていく少年たちの足取りのあとに。
くしゃくしゃにたるんだ靴下が、むぞうさに脱ぎ棄てられていく。

来週は。
彼らの恋人たちが。この畳のうえで。
薄っすらとなまめかしく脛を染めるストッキングを。
むざんに散らされていくのだろうか。

母さん、レイジのことどう思う?

2011年07月11日(Mon) 07:10:21

狙っているだろ。
え?
だから、狙っているだろ?
母さんのことを・・・そういいかけてさすがに、コウタは息を呑み込んだ。
幼馴染が自分の母を狙う なんて。
やっぱり口にするのは、ためらわれたから。

ああ・・・まあな。
いっしょに歩いているレイジは、ちょっと照れくさそうに下を向いた。
まるで、好きな女の子を友だちに言いあてられて冷やかされたような雰囲気で。
ちっ。
コウタはわざと聞こえるように舌打ちをすると。
幼馴染の耳もとに唇を近づけて、信じられないようなことを口にした。
―――取り持ってやろうか・・・?

いいの?
思わずふり返ったレイジの、しんけんそうな顔つきに。
こいつ・・・飢えている。
とっさにそう感じた。
吸い殺したりしないって、約束してくれよ。
指きり、げんまん。
レイジは吸血鬼だった。
でもこうやって約束してしまえば、だいじょうぶ。
仲良しのユリカちゃんを紹介した時だって、そうだった。
さいしょはべそをかいていた彼の稚ない恋人は。
お気に入りのハイソックスの脚をじぶんから差し出して、
バラ色のシミがみるみるひろがるようすに、無邪気にはしゃいでいたのだった。

母さん、レイジのことどう思う?
え?
だから、レイジのことどう思う?
どう思うって、どういうことよ。
だから・・・
決まり悪そうに言い淀んだコウタは、
母に気づかれないように、自分の足許をちらと見おろす。
スラックスの下に隠れた、薄いナイロン地のハイソックスは、びりびりに裂けていた。
いつものさ、あのふらっとした感覚があれば・・・うまくしゃべれるかな。
そういう彼の足許に、幼馴染はもの欲しげな唇を、ためらいなく吸いつけたのだった。

ひとりでに。
唇がうごいている。
―――レイジのこと、母さんは女としてどう思う?
えっ。
―――抱かれて欲しいんだ。彼に。あいつ、母さんのこと好きだっていうんだもの。

数時間後のことだった。
―――レイジくんを、ここに連れて来て頂戴。今、すぐに。
え・・・?
信じられないという顔になった息子に、母親はおっとりとほほ笑んでいる。
―――だいじょうぶよ、お説教してあげるんだから。
けれどもじっさいに、半開きになったふすま一枚向こうの居間でくり広げられているのは。
母の予告とは裏腹なことだった。

いけない、いけないわ。
でも・・・でも。いちどだけ。
そぅお?いちどだけでもいいの?
うん・・・まずはいちどだけ。コウタのやつも、悪い気はしないだろうから。
自分の名前を出されて赤面するコウタのことを、どこまで感づいているのだろう?
母子ほどの齢の差がある少年に迫られながら、その口から洩れた息子の名前は絶大な効果を持っていた。
母は目をつぶって、受け口になっている。

畳のうえに正座したまま、幼馴染の唇を。
男女の交わりのように受け容れていく母親に。
どうしてこんなに、ドキドキしてしまうんだろう?
父さんがいないあいだのこととはいえ、
母親を売るようなまがまがしい行為を咎めかけた良心が、どこかに溶けるように消えてゆく。
唇が、せめぎ合っている。応じ合っている。
そんな・・・しつけに厳しいあの母さんが。
うっとりと閉じられた瞼に女を感じて、
コウタはいつしか、ズボンのなかが勃ってくるのを覚えていた・・・

どうだい?母さんちょっとはゆるくなったかい?
ふり返るコウタの視線のかなた、レイジがいつもの親しげな顔で近寄って来る。
いいや、ダメだよ~。やっぱりしらふのときには、厳しいね。
しらふのときは、っていいながら。
そうじゃないときの母の痴態が、羞ずかしいほどあからさまに、想像力の視界をよぎる。
それでいいんじゃないのか?
お袋さんはどこでだって、厳しいものなのさ。。。
そううそぶくレイジはどうやら、母親にしかられたあとらしかった。
あんまり同級生の子に手を出すなって、言われちゃった。(^^ゞ
頭を掻くレイジを、コウタはどやしつけていた。
おまえ、またユリカの血を吸っただろ~!
呼び捨てにするようになった仲良しのユリカちゃんとは、結納を交わす間柄になっている。
けれども彼はきっと、評判の美人であるユリカに、手を出しつづけることだろう。
ちょうど・・・コウタの母のスカートの奥を、まさぐるように。
すっかり色気づいた幼馴染をどやしつづけながら。
コウタはふたたび、ズボンのなかに逆立って来るものをおぼえていた。

おでぶちゃん

2011年07月10日(Sun) 07:34:50

学校帰りに呼びとめて。
血が欲しいんだって、おねだりすると。
いつも、頬をぷっとふくらませて、めいっぱいにらめつけながら。
それでもそのへんのベンチに、腰かけて。
お気に入りのライン入りのハイソックスを履いた脚を、差し伸べてくれる。
彼女は食いしん坊で、いつも太っていて。
陰では”おでぶちゃん”って、いわれていた。

眉子が足許を赤黒く濡らして家路をたどるのは、いつものこと。
口許に吸い取った血をしたたらせたままの、ボーイフレンドは。
気丈に胸を張って歩く彼女が、時々貧血でよろけるのを支えてやりながら。
家まで影のように寄り添っていく。
もうっ。すこしは手加減しなよっ。
別れぎわ少女は、そんな憎まれ口を叩いては。
脱いだハイソックスを、それは厭そうに、彼の掌に押しつけていった。

病気、治ったよ。もうだいじょうぶだからね。
おでぶちゃんは、そういうと。
眉子―――
名前を呼ばれて、はにかんで。
それでも真っ赤なチェック柄のスカートの下、黒タイツの脚をめいっぱい伸ばしていった。
わたしが病気のあいだ、ほかの女の子襲ったでしょ?
え・・・?
おもわず顔をあげた彼の頬を、
ぱしぃん!
稲妻のような平手打ちが襲っていた。

タイツだとオトナっぽいね。
少年はおでぶちゃんをからかいながら。
おでぶちゃんは、足許にうずくまる少年を、優しく見降ろしている。
時ならぬ訪れを告げた嵐は去って。
ボーイフレンドのまがまがしい歓びに、少女はけんめいに応えていった。

それからのことだった。
彼は男ばかりを、襲うようになって。
眉子は別人のようにスリムになって、おでぶちゃんの蔭口が忘れられていったのは。

婚約者の訪問

2011年07月10日(Sun) 06:50:38

来客の一行が漂わせる、独特の華やかな雰囲気が。
近い将来に執り行われる結婚を、暗示している。
一座のなかの中心にいるうら若い婦人は、都会ふうのスーツを初々しく着こなしていて、
まだ少女の面影を宿した面差しに、かすかな羞じらいをよぎらせていた。

いいのか?おい。
可憐な主賓のすぐ隣に始終控えている若い男が、なにかのはずみでちょっと人の輪から外れたときに。
その彼の袖を引いて耳打ちしたのは、この邸の年老いたあるじ。
良作といういかにも田舎めいた名前を帯びたこの男が、吸血鬼だという秘密は。
村ではほぼ公然に、知れ渡っている。

袖を引かれたいかにも律義そうな青年は、じぶんの息子よりも年若で。
まっすぐ見返して来る目線を、良作は眩しげに受けとめる。
そう。
結婚を控えた若い女が、この邸を訪れると。
必ずや彼に咬まれて、うら若い血潮を吸い取られなければならなかったのだ。

青年はクスリと笑い返して、こういった。
―――彼女、小父さんのために連れてきたんだよ。
わしのことは、言い含めてあるんだろうな?
なおも声をひそめる老人を、青年は軽く笑い飛ばしている。
―――まさか。面と向かってそんなこと言えないよ。そこは小父さんがうまくしてくれるんでしょ?
初々しく美しい婚約者の生き血を、吸血鬼に捧げるというまがまがしい行為に加担することに。
青年はさして、罪悪感をおぼえていない。
彼の母も、彼自身さえ、老人の毒牙にかかった経験を持っていたから。
―――うちの嫁がつとまるよう、きれいに堕としてやってね。
周囲に彼と老人の親密さが伝わるように、彼はわざとだれにでも聞こえるように。
あっけらかんとした笑い声をたてていた。

彼女が邸にいるあいだ、とうとうチャンスは訪れなかった。
なにも知らない両親に伴なわれてやってきた若い娘を毒牙にかけることは、
たとえ邸のなかだとしても、そうかんたんに実行できるものではない。
親たちまでは、巻き込まないでね。
青年の希望をかなえるためには、
襲われる娘を目の当たりに悲嘆にくれる母親の怨嗟を、どう処理しなければならないかを考えなければならなかったから。


その日の夕暮れ刻―――
絶好の好餌をみすみす逃してしまった良作は、泥道をとぼとぼと歩いていた。
邸から一本に伸びたこの泥道を抜けると、村の通りに出、通りは都会に通じる幹線道路に通じている。
そのさきに娘の住まう都会があるのだと、老人は薄ぼんやりと空想した。
もの想いが過ぎたのか?
思わずそう訝るほどに、唐突に。
淡いピンク色のスーツを着たきょうの主賓が、彼の目のまえにあらわれていた。

さきほどは、どうも―――
礼儀正しく垂れた頭の動きにしたがって、肩までの黒髪がユサッと揺れた。
豊かな黒髪をなまめかしくよぎる色つやを、良作はうっとりと眺めていた。
女は連れもなく、ひとりらしい。
色白の頬に、すこしか弱げな翳りを浮かべながら。
女は意を決したように、薄い唇をひらいていた。
―――わたしの血を、吸うんですよね?

え・・・
思わず口を半開きにした吸血鬼に、女はおっとりと笑みをたたえて。
親だけは巻き込まないでってお願いしたの、わたしなんです。
両親のことを気遣ってあの場でどうこうということもなく過ごさせていただいて。
でもやっぱり、それではいけませんよね?
ひっそりと謡うような、女の口ぶりが。
一種の旋律を伴なって、良作を魅了しはじめる。
いつか知らず知らず、女の後ろに回りこんでいた。
ピンクのスーツの肩に手をかけ、抱き寄せる。
思いのほか、華奢な造りの身体つきだった。
だが、あいつがいない。
いないところで襲うのは本意ではない。やつにも見届けさせないと―――
想いはすぐに、伝わったらしい。
ちゃんと見てますわ。
女はくすくすと、笑っていた。

間近の物陰からからみついてくる視線を、くすぐったく覚えながら。
良作は初めて、女の首すじを噛んだ。
真っ白なブラウスの胸もとを、百合のようにふんわりと飾っているタイに、したたる血がかすかに撥ねた。
良心とは今夜、別々に泊まるんですよ。
貧血にずるずると姿勢を崩しながらも、女は気丈にそういった。
尻もちをつくように腰かけた切り株のまえ。
グレーのストッキングに染まった脛が、清楚な輝きを秘めている。

お破りになるんでしたよね?
血を吸い取られることよりも、女はむしろ装いを穢されることを忌むようだった。
行儀よくそろえたひざ小僧を、女は自ら動きを封じるように、両手で軽く抑えつける。
掴まれた足首と、抑えられたひざ小僧のあいだ。
女の足許を染める、薄々のナイロンが。
劣情に満ちた唾液をたっぷりとしみ込まされながら、ふしだらにひきつれ、ねじれていった。
女の漂わせる清楚な雰囲気を、毒々しく侵蝕するようにして。

スーツの背中は、もはや泥まみれだった。
泥道の真ん中で、両脚を拡げたあお向けの姿勢で。
太ももまでのストッキングを、片方ずり降ろされながら。
セイジさん、ゴメン―――
しきりに婚約者の名前を、呟いていた。
間近な物陰に、どどくような声で。
さあ、姦って―――
いなやはなかった。
涙声に震える女の囁きに、応えるように。
獣となった老人は、可憐なスーツ姿にのしかかっていって。
一気に想いを、遂げている。

―――そういうことだったのか。
―――ええ。^^;
踏みにじるように強引に抉った股間は、いともやすやすと獣の身体を受け容れていた。
黙っていてね。代わりにいい村の女になりますから。
お安い御用だ。
幼いころから自分に懐いていた青年の、未来の花嫁を組み敷きながら。
取引は一瞬で、成立する。
過去を持った女は、泥まみれになりながら過去を捨て、
彼女の純潔は、此処で喪われたことになる。
一回だけって約束じゃないか。
口尖らせるであろう青年の口吻を想い浮かべながら。
良作は三度めの吶喊を、果たそうとしていた。


あとがき
過去を隠してやってきた女は、処女として嫁いできて。
めでたく村の女となったのでした。^^

侵蝕される家庭~古屋家の場合~7 夜の外出

2011年07月04日(Mon) 08:01:11

その翌々日の、真夜中のことだった。
夜道をたどる、チャコールグレイのスカートスーツ姿。
夜風がさらりと、肌色のストッキングの表面を撫でた。
スカートの奥に入り込んでくる夜風が、すーすーとしてそらぞらしい。
履き慣れない靴を履いているときの、覚束ない足取りのパンプスが、
通りのアスファルトから公園の地面へと踏み入れられる。
男はひっそりと、待ちうけていた。

・・・好きにしてよ。
スカートスーツの声の主は、ほかならぬ洋祐だった。
母親の身代わりになって、母親の装いのまま襲われてやる。
口を尖らせた青年にとっては、これが最大限の譲歩らしい。
よく似合っているね。
男はしんそこのように、青年をほめ、洋祐はなぜかくすぐったくなって、もじもじしながら肌色のストッキングの脚を、差し伸べてやっている。
男のなまの唇が、ストッキングの薄い生地ごしに洋祐の脛を舐めた。

あ・・・ぁ・・・あ・・・
目のまえの視界が、ゆらゆらと揺れている。
三半器官だめになってしまったような、無重力状態のような感覚だった。
フットサルのストッキングのときよりもいちだんと露骨に這いまわる、淫らな舌。
美奈子のストッキングを、舐めくりまわしてやりたい。あのすべっこい舌触りを、くまなくたんのうしてやりたい。
男の言い草に負けた洋祐は、心をずきずき疼かせながら。
母親の装いを、身にまとっていったのだった。

ああ・・・母さんが汚されてゆく・・・辱められてゆく・・・
吸血の甘美な苦痛が、歓びにかわるとき。
足許でちりちりと破れ堕ちてゆく、美奈子のストッキングが。
ひどくふしだらに、少年の網膜を染めた。
辱められてゆく・・・辱め抜かれてゆく・・・
うわごとのように呟く声の下。
男はくいっ・・・くいっ・・・と、不気味に喉を鳴らしながら、
若い血潮を、しずかに味わっていた。

味わわれている。
そう、自覚しても。
洋祐のうわごとは、とまらなかった。
辱められたい・・・母さんを、辱め抜かれたい・・・
え・・・?
男が血に濡れた頬を、あげたとき。
洋祐は相手を正視して、唇をゆっくりと開いていった。
母さんのことを、辱め抜いてくれる・・・?

侵蝕される家庭~古屋家の場合 6 幻影Ⅱ

2011年07月04日(Mon) 07:49:59

前作はこちら。
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-2531.html

きみが母さんの血をくれるとき―――
美奈子のストッキングの舌触り、たんのうしてみたいものだね。

あの囁きが、胸から去らない・・・
真っ昼間なのに。
幻影と、わかっているのに。
独りきりの勉強部屋のなか。
目のまえの、手の届くほどの距離の畳のうえ。
母が眉をひそめ、嫌々をくり返している。

黒影の侵入者は、母の足許ににじり寄って、足首をつかまえていた。
握り締めた脚首の周りを、肌色のストッキングがきついひきつれを起こしているのが。
洋祐の網膜を、狂おしく彩った。

うふふふふふっ。
愉しませていただくよ、奥さん・・・
吸血鬼はわざとのように、いやらしい舌舐めずりをさせて。
息遣い荒く抵抗する美奈子のふくらはぎに、
強引に、唇を這わせていった。
あ・・・っ。
美奈子は息子の目のまえで、朱唇をひろげ、白い歯を輝かせた。

傷口から毒々しくそそぎこまれてゆく妄念を、振り払おうとするように。
激しくかぶりを振りながら、歯を食いしばって屈辱に耐えている。
男の腕にとられた、ストッキングに包まれたふくらはぎが。
ひどく高貴なみずみずしさに、彩られていた。
しつように吸いつけられた、唇の下。
淡いナイロン生地が、みるみるうちに裂け目を広げてゆく。

美奈子のストッキングの舌触り、たんのうさせていただくぞ・・・
男の囁きがふたたび、洋祐の鼓膜を打った。

いつものお勤めのときの、キリッとしたスーツのまま、凌辱を受けてゆく母―――
洋祐は母を救おうとする努力さえ忘れて、ただ脚を震わせていた―――

私の太ももで、あなたの渇きを癒してね。

2011年07月04日(Mon) 06:30:02

私の太ももで、あなたの渇きを癒してね。
差しのべられた太ももは、すんなりと伸びていて。
ひざの上から股にかけての肉が、豊かにたっぷりと、そしてみずみずしい。

男はやおら、女にのしかかっていって。
ストッキングを降ろそうとする指先を、掌で蔽っている。
訝しげに見あげる女に、ゆるくかぶりを振って、イタズラっぽく笑う。
そお。
女はぷっとふくれ面をして、それでもまんざらではなさそうに、
ストッキングの太ももを、そのまま男にゆだねていった。

薄いナイロン生地ごしに這いまわる熱い唇から、
ぬるぬるとした唾液が洩れて、くまなく汚していくのを感じながら―――
きちんと装った礼装に対する辱めを、むしろ歓びに変えていった。

ちゅうっ・・・
露骨すぎる吸血の音に、ドキドキ胸を震わせて。
女は深くゆるい呻きを洩らしながら、
蔽いかぶさる男の頭を、ふわふわのロングスカートで蔽ってゆく。


あとがき
前作「いやらしい」にいただいたコメに刺激されて、こんなものを・・・。^^

ラフな服装の少女

2011年07月02日(Sat) 10:27:52

ぼさぼさの茶髪に、ラフなTシャツ。
ひざ丈のもさっとした、デニムのスカートの下、
黒のタイツにかすかに透ける脛。

逢いに来てくれた女の、両肩に手を添えて。
つかの間交わした口づけに、はずんだ息をぶつけあって。
身体をなぞるようにして、撫でおろす両掌が。
いつか、タイツの太ももに、触れていった。
冒すようにまさぐる掌に、少女は口尖らせて。
―――やると思った・・・
ぼつりと呟いた。

そのままゆだねきった、足許に。
あらんかぎりの、悪さをして。
しまいに欲情のままに、吸いつけた唇の下。
タイツがめりめりと、裂け目を広げてゆく―――

もう、やだなぁ。
舌打ちをする少女は、それでも脚を引っ込めようともせずに。
いたぶられるままに、いたぶらせつづけていって。
さいごに顔をあげ、目線を交わし合うと。
ぱしぃん―――
平手打ちが音高く、頬に鳴った。

罰だよ、罰・・・
少女は面白そうに、頬を抑えるこちらに笑いをこらえていて。
素早く頬を近寄せて、それはねっちりとした口づけをくれると、
裂けた黒タイツの脚を夕陽にあてながら、走り去っていった。

汗っかきな少女。

2011年07月02日(Sat) 10:15:03

汗かいてる?あたし・・・
ヘンだよね?やっぱ、ヘンだよね?
血を吸われちゃっているのに、昂奮して汗かくなんて。
あたしったら、どうかしてるよ。
血を吸われてるのに・・・昂奮するなんて・・・

ツヤツヤとした黒髪を、振り乱しながら。
はだけたブラウスの襟首から、はずんだ胸をチラチラさせながら。
尻もちをついた真っ赤なスカートを、泥だらけにしていきながら。
ほどけることのない固い抱擁のなか、少女はだんだんと、しずかになっていった。
さいごまで、汗をかきながら。

はあ、はあ、はあ・・・
はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・
弱い吐息は、抱かれるほうの。
昂る息遣いは、抱きすくめる側のもの。
あのときの少女は、いまは襲う立場になっていて。
かつて、暖かい血をその身に通わせていたころ。
連れだって通学していた娘たちに、襲いかかっている。

汗、かいているよね?あたし・・・昂奮してるんだね。
だってカヨちゃんの血、それはおいしいんだもの。
もうちょっと、我慢してね。
ぜんぶ、きれいに吸い取ってあげるからね。
もうちょっと・・・もうちょっとだけ、ここにいて。
あたしといっしょに、いて頂戴。
あー、おいしい血。
あとで小父さんにも、わけてあげるから。

抱きすくめられた若い娘は、それはもう怯えきっていて。
こぎれいなワンピースいちめんに、撥ねかった血を点々とさせて。
息も絶え絶えに、なっていく。
うしろにまわって、肩抑えつけて。
少女の一味に、くわわって。
しきりにいやいやをする上半身に、のしかかった少女は。
なん度めか、親友の首すじをがぶりとやっていた。

仲良しなんだ。三人にいるんだ。
その三人だけは、やらせてね。
あんまり仲間が増えると、競争相手も増えちゃって。小父さん困るかな?
でもあたし。この三人とはずっといっしょにいたいんだ。
あたしの血を吸った罰だよ。仲間増えるの。
でも、いいよね?
小父さんだって、年ごろの若い子の血、分け前にあずかれるんだもの。

親友の身体から吸い取った血を、口許にしたたらせたまま。
少女は謡うように、揶揄をくり返す。
組み敷かれた若い犠牲者が、俯けた頬に翳をよぎらすのを、
それは愉しげに、見守りながら・・・