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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

なんにも浮かばないなぁ。(^^ゞ

2011年10月31日(Mon) 07:45:46

ここ数日、”魔”の正体がぼやけています。

忙しくても体調が悪くても、囁きがとまらなくなる”魔”も、たまにはお休みするようです。
いくつか薄ぼんやりと、お話のすじが浮かぶときもあるのですが、
なかなか像を結んできません。
そういうときに無理にあっぷをしても、たいがいこれがなま煮えに終わるんですね。これが。
まー、無理せずいきましょう♪
自分が愉しいからつづけているんですから。(^-^)

女吸血鬼の唇

2011年10月26日(Wed) 08:09:25

白いうなじに吸いつけられた、赤黒くただれた唇は。
ひと晩じゅう、ヒルのようにうごめきつづけて。
彼女の生き血を、吸い尽くしていった―――

一週間後の夜。
恋人同士として愛し合ったあの肢体が、
ふたたびわたしの身体に、ツタのように絡みついてきて。
あのうっとりとする唇が、わたしの血を吸いはじめた。
彼女の干からびた血管を、自分の血で潤すことに、
わたしは夢中になっていた。

俺の血なんか、似合わないだろう・・・?
そういってふり返ると。
ジュースのストローを咥えた彼女は、夢見るような視線をさ迷わせて、こういった。
ピンクの口紅を刷いた唇で、謡うような声色で。

う~ん、ずうっと宿していたいな。
こんどはあなたの身体に、女のひとの血をめぐらす番ね。
妹さん、お呼びなさいよ。
手伝って・・・あげるから・・・

短文 ~同性愛~

2011年10月26日(Wed) 07:35:56

紺のハイソックスを履いたまま。
無理やり脱がされた半ズボンを横目に見ながら。
あいつのお○ん○んを、お尻の穴に入れられた。

女子校生犯している気分だった。
嬉しそうに呟くあいつのために。
つぎの日は姉さんの制服を黙って借りて、遊びに行った。

それがきっかけで。
あいつは本物の女子校生を犯したあげく・・・・・・ボクの義理の兄さんになった。
嫁にはいつも、言っているらしい。
浮気相手は男だから、心配するな。  だって。

短文 ~数知れず。~

2011年10月26日(Wed) 06:40:09

押し倒した人妻は、数知れず。
孕ませた人妻も、数知れず。
なにも知らない亭主殿も、数知れず。

ついでに。。

2011年10月24日(Mon) 07:57:54

お嬢さんの血を吸ったら美味しかったので、奥さんの血も吸わせて下さい。
ついでに、貴男のもね♪
小悪魔みたいに言い寄って来た吸血鬼は、男にしては妖しすぎ、女にしては力が強すぎた。

あー、美味かった♪
やっと放してくれたとき。
わたしの体内には、ほとんど血液が残っていなかった。
それくらい味わってもらえると、本望だね・・・
すっかり洗脳されてしまって。そんなことまで呟いてしまって。
でもいざ女房が襲われているときには、一人前に嫉妬していた。
あいつ。俺のときよりも時間かけて愉しんじゃって♪って。

すまないね。
ほんとうに喉が渇いていたのだ。
ふだんはあんな、失礼な迫りかたはしないんだ。
やつは言い訳がましくそう言って。
よかったよ~。だれも死ななくて・・・
女房や妻も、口をそろえてそういった。
ほんとうは。「よかったよ~」で黙るつもりだったのに。

献血よ。献血・・・
言い訳上手になった女たちは、そういってわたしを納得させて。
色とりどりのストッキングで足許を艶っぽく装って、出かけていく。
やつが好んで脚に咬みつくと知りながら。
そんなふうに口を尖らせているわたしにしても。。。
彼女たちが出かけた後、尾行するようにして家を出る。
足許を、紳士用のストッキング地の長靴下で染めながら・・・

カテゴリの追加について ~侵蝕される都会~

2011年10月24日(Mon) 07:11:25

都会のご一家が吸血鬼の棲む村で妖しい体験を重ねてゆくお話は、以前から
「村に棲みつく都会妻」
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-category-33.html
としてひとつのカテゴリにまとめていましたが、
(もう127もお話があるんですね)
都会をさ迷う吸血鬼が平穏な家庭を侵蝕していくお話のカテゴリは、いままでありませんでした。

「侵蝕される都会
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-category-35.html

久しぶりに、カテゴリを増やしてみました。
今朝の前作が、第一作ということで。^^

「まみちゃん」

2011年10月24日(Mon) 06:50:59

都会に潜入して初めてあてがわれたのが、「まみちゃん」という少女のいる一家だった。
「あてがわれる」というと、聞こえはいい。
しかし吸血鬼の存在を認知していない都会にあっては、あとはわが道を切り開くしかない。
だれかがなんらかの口実で、出入りを許された家庭。
その者になり代わって、ひたすら自力で侵蝕していくしかないのだった。

「まみちゃん」は、おさげ髪の似合う、無邪気な少女。
俺が吸血鬼だと正体を明かしても、びびらなかった。
姉ふたりを差し置いて彼女を狙ったのは、なんとなく彼女がそう接してくれるだろうと感じたから。
子供に近い心の持ち主は、意外なくらい純真で柔らかい心を持っていた。

吸血鬼のおじさん、まみちゃんの血を吸いたいの?
まだ稚ない彼女は、じぶんのことを「まみちゃん」と呼んでいた。

ああ、吸いたいね。
その可愛らしいブラウスを、きみの血で汚してみたいし。
真っ白なハイソックスを汚すのも、愉しいだろうから。
きみの首すじやふくらはぎは柔らかくって、
とても噛み応えがいいだろうね。

わざと露悪的にならべたことばに、
まみちゃんは怯えるようすもなく、
ただほんのりとほほ笑みながら、耳をかたむけていた。

じゃあ、いいよ。
まみちゃんの血を、吸わせてあげる。
でも―――ほかのひとには、手を出さないでね。
上のお姉ちゃんは結婚をひかえているから、お婿さんがかわいそうだし。
下のお姉ちゃんにも彼氏がいるから、彼氏さんかわいそうだし。
ママにはパパがいるから、パパがかわいそうだから。
まみちゃんがたっぷり、血をあげるから。
気の済むまで、生き血を吸ってね。

まみちゃんはにっこりほほ笑んでいた。
俺が迫っていくのを受けとめるような、力のあるほほ笑みだった。
柔らかいうなじに唇を近寄せたとき。
さすがにちょっと、顔をしかめたけれど。
無防備なうなじの肉を、引きつらせることもなく。
柔らかいままに、噛ませてくれた。
刺し込んだ牙が包み込まれるような、しっとりと潤んだ肌をしていた。

ちゅ、ちゅー・・・と血を吸いあげたとき。
まみちゃんはちょっぴり、べそをかいたけれど。
あたし、良い子だから。強い子だから。
力んで強がるわけでもなく、自分に言い聞かせるように。
じゅうたんの床を踏みしめて立つ白のハイソックスの両足は、
意外なくらいにしっかりしていた。

バラ色の血に濡れたハイソックスをぶら提げて、まみちゃんの部屋を立ち去ったのは。
もう土曜日の明け方になっていた。
さすがに耐えきれなくなって、ベッドにあお向けになった少女は、
傷口についた血がシーツにかすかなシミを作るのを厭うように、立てひざをしていて。
また来てね。
小手をかざして、俺を見送ってくれた。

それからは。
約束どおり、この少女だけを襲うことにした。
まみちゃんは言ってくれた。
遠慮しないで吸ってね。
でも、ほかのひとは駄目だからね―――
さいごのひと言は、ひときわ強かった。
あなたのことは、あたしひとりでせき止めてみせるから。

けれども俺の貪婪な食欲を支えるには、
まみちゃんの小さな身体には負担が大きすぎた。
一週間と経たないうちに、まみちゃんはみるみる蒼ざめていった。
ふっくらとしていた頬からは、血の気がひいて。
頼りないほどか細い手足は、
いまでもほんとうに血がめぐっているのかと思うほど、冷えてしまった。

まみちゃん、もう無理だ。降参しな。
俺に負けたからって、きみの不名誉にはならないよ。
たったひとりで、よくがんばったね。
そう言って、まみちゃんの頭を撫でて、褒めてあげたけど。
まみちゃんは激しくかぶりを振るばかり。
だめ。お兄さんたちがかわいそう。パパがかわいそう。
泣かんばかりにして、あたしひとりを狙って・・・そうくり返すのだった。

動いたのは、周囲が先だった。
夜更けの末娘の勉強部屋に漂う異様な空気を、まず敏感に察したのは母親だった。
俺がまみちゃんとふたりきりでいる勉強部屋に入ってきたとき。
彼女は子供の友だちを迎える母親よろしく、お紅茶をふたつ淹れたお盆を手にしていた。
あなたの正体は、娘からきいてしまいました。
娘は、あなたを裏切ったわけではありませんの。
親の言うことをきいたまでですわ。
わたくしは娘の懇願に、負けました。
主人と相談して、三夜にひと晩は、身代りを勤めさせていただきます。
だからそのかわり・・・どうぞ娘を、わたしたちから取りあげないでくださいね。
・・・・・・。
たしなむ習慣を持たなかったお紅茶は。
せっかくだから、淹れてくれたご本人に飲んでもらうことにした。
俺はもっと甘美で濃い飲みものを、このひとの身体から味わうのだから。
さいごまで渋っていたまみちゃんも、
「わたしを幸福にしてくれるのは、あなたなのだから」
お母さんにそう言われてはじめて、ふたつ並べられたティーカップを手に取った。

毎夜噛み破ってきた白のハイソックスの脚の代わりに差し出されたふくらはぎは、
肌色のストッキングで、薄っすらと覆われていた。
長い靴下をお破きになるご趣味があるそうね。
まず、好い趣味とは思っていただけないでしょうが―――
そうですね。あまり好ましいことではございませんけれど。。。
できれば回避したいという本心をちらりと覗かせながら。
それでもお母さんは、俺の意を受け容れてくれた。
まみちゃんも、大きくなったらママみたいに、ストッキング穿いてくれるかな?
明け渡す地位をあくまで惜しもうとするまみちゃんは。
それと引き換えに、俺と指きりげんまんをしてくれた。
それでもやはり、肌色のストッキングを穿いた脚にいやらしくぬめりつけた唇のうごくさまから、彼女の視線がはなれることはなかった。
お母さんの穿いていた肌色のストッキングは、他愛なく破けてしまったけれど。
彼女が淡い嫉妬を寄せるほど、とてもしなやかで、色っぽかった。

お兄さんたちと仲良くなるのは、意外にかんたんだった。
少なくとも彼らには、まみちゃんの目は光っていなかったから。
下のお姉さんの彼氏さんとはすぐに仲良くなって。
彼の好む球技の秘密練習の相手を、じつにうまくやってあげたら、
ひざ丈まであるスポーツハイソックスのふくらはぎを、差し伸べてくれて。
どうぞ遠慮なく・・・って、噛ませてくれた。
太めのリブがはっきり浮いたハイソックスは。
まみちゃんの履いているものみたいな柔らかさはなかったけれど。
しっかりとした舌触りを愉しみながら、
逞しい脛を覆う鮮やかなリブを、ぐねぐねとねじ曲げていった。
スポーツで鍛えられた熱い血は、同性の俺さえもドキドキさせてくれた。

上のお兄さんがひた隠しにしていたのは、女装趣味。
あるきっかけで突き止めてしまうと、話はうそのように早かった。
婚約者にうまく話して、あんたの趣味を認めさせるよ。
そのかわり―――
彼女の血を欲しいのか?
警戒に息を詰める花婿氏に、俺はゆっくりとかぶりを振った。
女装したまま、俺の相手をしてくれる・・・?
脚に通した舶来もののストッキングは。
お母さんのそれよりも、すべすべしていた。

わたしの理性を、奪ってください。
まみちゃんのお父さんの招きを受けて。
慣れない酒の相手をさせられたあと。
家族の寝静まった家の、リビングで。
彼は怒ったように、そう言った。
あなたはなにも、喪っていない。
詭弁だろう。
そうでもないさ。
俺はうそぶきながら、グラスを傾ける。
俺が欲しいのは血液と、しいて言えばご婦人たちの身体かな・・・
それ見ろ。
でも、みんなあんたを気遣っている・・・
ふと洩らしたそのひと言に、かれは長いこと黙っていた。
献血だと割り切れば良い。つごうの悪いことには片目をつぶれば、みんな察してくれるさ。
男の子たちは、俺に彼女や婚約者のバージンをプレゼントしてくれる約束をしてくれたんだぜ?
彼はしばらく、だまっていたが。
俺はふと、洩らしていた。
この酒美味いな。
酒が美味いって・・・?
ああ。どうしたわけか、初めてそう感じるような気がするな。
酒が美味いんじゃ、しょうがないな。
男は初めて、上機嫌になった。
ズボンのすそを、まくってみな。
ぶっきら棒に言われるままに、スラックスの裾を引きあげて。
俺は思わず、呟いていた。
これが、いちばん欲しかったかもしれないな―――
彼の脛を覆っていたのは、ストッキング地の紳士用の長靴下。
精いっぱい、俺の趣味に合わせたのだろう。
俺は遠慮会釈なく、薄っすらと白く滲んだ彼のふくらはぎを、がぶりと噛んだ。
働き盛りの血は意外なくらい口に合って、
気づいたときにはもう、顔が蒼ざめるほど、吸い取ってしまっていた。

みんな、小父さんにたぶらかされちゃったんだね。
まみちゃんはちょっぴり、ご機嫌ななめのようだった。
無理もなかった。
一家全員そろった夜は、結納のあとのことだった。
上のお兄ちゃんの婚約者が連れてきた両親とは、すぐに仲良くなって。
奥さんが和服の襟あしをくつろげるのを、先方のお父さんは手ずから介添えしてくれていた。
そのあとはお定まりの、落花狼藉―――

お父さんが視て視ぬふりをする傍らで。
まっさきにお母さんが、奥ゆかしい洋装を着崩れさせて、
娘たちに手本を見せてくれた。
上の娘から純潔を奪い取っているあいだ、
片時も離れたくないという花婿は、血の気の失せた頬を妖しく歪めながら、花嫁の手を握りつづけていた。
いちばん気に入りの紺のハイソックスを穿いてきた彼氏さんは、
これじつは、彼女のおさがりなんだ。
そういって、彼女の視てるまえで噛ませてくれて。
彼女の部屋の片隅で、尻もちをついたまま。
素っ裸になった俺を、制服姿で迎えた恋人が。
制服姿のままお尻に尖った一物を突っ込まれて、
四つん這いになってはぁはぁ息を切らすのを、ドキドキしながら見つづけていた。

みんなひと晩で、始末しちゃうなんて。
まみちゃんね、お兄さんたちにおわびをしなくちゃいけないわ。
「おわび」の具体的方法を、いまはすっかり心得てしまった彼女だった。
そんなことを、思う必要はないのだよ。
俺はまみちゃんの両手を握りしめて、そう囁いた。
きみにもちゃんとした彼氏が、いずれできるのだから―――
まみちゃんはビクッとして、顔をあげた。
小父さんが彼氏になってくれるんじゃなかったの?
瞳には、せつじつな輝きが込められているのを知りながら、
俺はわざと、目をそらせた。
小父さんは齢だし―――それに、独りであとなん百年も生きつづけなければならないんだ。
まみちゃんをほんとうに俺のものにするには、まみちゃんも吸血鬼にならなくちゃならないよ。
きみはでも、人間として生きていたいのだろう?
まみちゃんはこっくりと、素直に頷いていた。
少女のうなじの動きに合わせて、おさげ髪がユサッと揺れた。

あたしの未来の彼氏さんに、乾杯♪
未来の彼氏さん、赦してね。
まみちゃんは髪をサッと撫でつけて。
真っ白なハイソックスをひざ小僧のすぐ下までキリリと引きあげると。
用意はできたわよ。
そう言いたげに、真顔で俺を視る。
ひと晩かぎりの花嫁だった。

たしかにほかの女たちも抱いたけれど、それは肉欲だけのこと。
研ぎ澄まされた劣情が、ほどほどになるまでにふるい落として。
いちばんいやらしい部分は、お母さんやお姉さんたちに遠慮なくふりかけてきた。
まみちゃんが身を張って、彼らの血を守ろうとしたように。
女三人は俺の劣情が優しく和むまで、俺と肌をすり合わせてくれた。

あんまりいやらしく、しないでね。。
まみちゃんもいざとなると、さすがに怯えを顔に浮かべる。
ああ、まみちゃんに嫌われたくないからね・・・
俺はいままでになく優しくほほ笑んで、
ウットリするようなキスで、唇を結び合わせると。
股間に秘めた鎌首をひそかにもたげて、少女の身体に、挑んでゆく。
押し倒されたまみちゃんは、ちょっぴり痛そうに顔をしかめながら。
せっかく引き伸ばしたハイソックスが、たるんでずり落ちていくのを。
お母さんに買ってもらったばかりのチェック柄のスカートのすそが、お行儀わるく乱れるのを、
ずっとずっと、気にしつづけていた。

村に関する報告文

2011年10月19日(Wed) 07:55:47

とある報告文の断片から―――


妻が日常的に吸血を受けているという夫たちへのアンケート結果。

質問1
奥さまの血液摂取のありかたについて、もっとも近いものに丸印をつけてください。

たんなる採血行為―――14件
博愛的な献血行為―――21件
黙認ないし公認された恋愛の一部―――11件
劣情を伴なった性欲処理―――8件

質問2
そのようなありかたについて、夫としてどのようにお感じになりますか。

屈辱・憤りを覚えている―――0件
歓び・誇りを感じている―――40件
ふつうに満足している―――14件

注記:上記から窺えることは、パートナーは夫の満足度を考慮してその妻と接していることが考えられる。
不満足であるとの回答が零件であることが、それを裏付けている。
歓び・誇りを感じているという積極的評価は若い夫婦に多く、年配の愛妻家にも目だっている。
夫婦仲が希薄、もしくは性欲について淡々としている夫婦には、ふつうに満足しているとお回答が多かった。


質問3
奥さんにお訊ねします。
貴女が実行されている献血行為について、最もあてはまるものを下記から択んで下さい。

たんなる採血行為―――14件
博愛的な献血行為―――5件
日常を忘れる、スリリングな恋愛―――14件
夫婦生活のカンフル剤―――21件
たんなる凌辱行為―――0件

注記:
たんなる採血行為とするご夫婦は、完全に一致していたが、いずれも50代~60代の夫婦だった。
息子夫婦や娘夫婦が吸血鬼と熱烈な関係にあって、補完的に血液提供をしているケースと考えられる。
博愛的な献血行為と自覚している妻が、夫の場合より少ないのは、注目できる。
夫が博愛と受け取っているはずなのに、本人はスリリングな恋愛に走っているケースも見受けられ、
このあたりのミスマッチはなんともいえない。
やがてそれは、スリリングな恋愛や公認された性交渉を伴なうものに発展していくようである。
夫婦とも博愛と自覚しているケースはいずれも、吸血鬼との交際が成立してから三か月以内のケースであった。

筆者の体験では、さいしょはあきらかに無感情な採血行為であったものが、
筆者と、妻の相手の吸血鬼が和解することによって博愛的な交流が生まれ、
夫として妻の献血行為に対する歓びが生まれ、
妻の自発的な貞操喪失を機に、それは夫婦生活を充実させるためのより重要な関係に深まった。

(最後の四行は、公表する際は削除すべきか?)→走り書き。

たまたま居合わせたからさ。

2011年10月19日(Wed) 07:40:08

どうして妻を、襲ったんだ?
そう訊くわたしに、男は無表情に応えた。
たまたま居合わせたからさ。

病院の待合室でのことだった。
提供された看護婦の生き血に飽き足らず、病室を抜け出したこの吸血男は、
たまたま待合室に居合わせた妻を襲って、妻の生き血を気絶するまで吸い取ったのだった。
それ以来、妻は熱に浮かされたようになって、男の棲み家を定期的に訪ねるようになっていた。

そういうほうが、まだしも気が楽だろう・・・?

男は相も変わらず、無表情だった。
たしかに、男のいうとおり。
その無感情な雰囲気が、まだしも救いになっていることを、いやというほど自覚させられながら。
体内の血液を無感情に摂取されている妻の、生き地獄のような日常を、思わずにはいられなかった。

痛がって帰ってくるときもある。

そうだろうな。なんども噛みつくからな。

服が血で汚れたまま、街をさ迷い歩いていることもある。

そうかもしれないな。俺に血を吸われると、ぼうっとなっちまうからな。

せめてもうすこし、なんとかならないだろうか?

奥さんの苦痛を和らげたい・・・って?

そういうことさ。

わかった。

男は短くこたえて、わたしとの会見を打ち切った。
ふたりのあいだを取り持ってくれた婦人会に、わたしがお礼をいっているあいだ。
男はあともふり返らずに、立ち去っていた。

吸血鬼と共存しているこの街では。
いちどできてしまった関係は、黙認するしかなかった。
すべてを喪って、本気で移り住む気にならなければ。
妻にはむろん、そんな気はなかったし。
わたしもそうした妻と、別れようとするつもりは毛頭なかった。

つぎの日から。
妻の顔つきが、変わっていた。

これから献血に行きますからね。

ショルダーバッグを提げ、花柄のスカートのすそをひるがえして出かけていく妻。
行く先に待ちうけている毒牙は、妻の理性を狂わせたらしい。
時には性的な交わりも、あるらしく、
すそを汚したスカートを、夫に視られないようにこそこそとクリーニングに出している気配が、まざまざと感じられる。

苦痛を伴う、無感情な採血行為と。
愉悦を伴う、淫らな献血遊戯と。
夫としては、どちらを受け容れるべきだったのだろうか?

すまないな。
おれはけっきょく、あんたの奥さんを、食べ物としてしか視ることができない。

もういちど逢った時の男の言い草が、なぜか無上の慰めのように思われた。
彼はわたしには、明らかに友情を感じている―――

貞操喪失の夜。

2011年10月19日(Wed) 06:10:53

午前1時17分、貞操喪失―――

冷たい響きのする事務的な声で、悪友は妻の運命を告げてきた。
受話器を握り締める掌に、思わず力がこもっていた。
時計を見ると、もう二時をまわっている。

ずいぶんしつこくやったんだね。

夫としては穏やか過ぎる苦情に、一転して彼の声はくだけていた。

いやぁ、さいしょは厭がって抵抗されたんだけどね。
さいごはノリノリになっちゃったよ。
奥さん、いい身体してるんだね。うらやましいや。
時々デートに誘うけど、いいだろう?
ああ、いま奥さんに代わるから・・・

受話器を通して、電話口が入れ替わる気配。
いったいなんと、声をかければいいのだろう?

ああ、あなた・・・?
ごめんなさい。なんて言ったらいいのかしら・・・言葉が思いつかない・・・

妻の声は切れ切れで、まだ息遣いがおさまらないらしい。
ぼう然自失のていなのは、無理もないだろう。

よかったの・・・?
よかった。

短いけれど、ハッキリした声色だった。
口走ってしまって、思わず自分の口を手でふさぐ気配がしたけれど。
わたしはかまわず、つづけていた。

うまくやっていけそう?
怒らないの?
できてしまったものは、しかたがないさ。でも、ちゃんと家に戻ってくるんだよ。
そうね・・・明日はケンイチのテストの日だったわね。

声色がようやく、母親を取り戻しかけたとき。
妻ははっとして、口をつぐんだ。
後ろからまわされた掌が、妻の乳房を掴んで揉んでいる・・・
受話器を通してなんとなく伝わる、熱っぽい気配。

キモチ・・・いいの?
ゴメン、くせになりそう・・・
じゃあ、おめでとう。
いいの・・・?
ああ。本当は・・・俺のほうからきみのことを彼に頼んだんだ。
ずるい。

妻ははじめて、クスッと笑った。
ホテルにいるあいつに、荷物を届けてほしい。
わたしがそういって、なにも知らない妻に持たせたのは
―――妻じしんの着替えだった。

愉しんじゃうからね。

宣言する妻に、

朝までゆっくりしておいで。

売り言葉に、買い言葉。
悪友が割って入った。

受話器、このままにしておくからさ。
気の済むまで、聞いてていいよ。

ああ・・・うちの家内と、仲良くね♪

一家の主婦を汚された家の受話器は、明け方まで置かれることがなかった。

帰宅した妻は、わたしの持たせた服に着替えていた。
こざっぱりとしたワンピースは、すこししわになっていて、
別れぎわまで彼女におおいかぶさっていた熱情が、ほの見える思いだった。
帰ってくるなり、抱きすくめて。
そのまま土間に、押し倒していた。
息子はまだ、すやすやと健康な眠りにおちている―――

よくわかったわ。
あなたたち、ほんとうに仲がいいのね。

乱れ髪を掻き除けながら、起きあがった妻―――
別人のようにさばけた顔つきをした女が、そこにいた。

木曜の夜、お誘い受けているの。
あなたにはナイショ・・・って言われたんだけど、いちおう話しておくね。

妻は妻なりに、わたしに忠実さをみせようとしていた。

あれ以来。
週にいちどか二度、妻は彼の誘いに応じている。
ときにはわたしにも告げずに、逢っているらしかった。
家に招んでいるときも、きっとあるのだろう。
わたしも妻も、もちろん息子も吸わない煙草の煙が、
帰宅したばかりのリビングにたちこめていることもあったから。
けれども妻はいつもひっそりと笑い、おかえりなさい―――というばかり。
今週はなん着、遠くのクリーニング店に服をだしたことだろう?

母恋歌 ~其の弐~

2011年10月19日(Wed) 04:41:22

前作よりもやや、享楽的な雰囲気で・・・。^^

母のため イケメンの友 夜這わせて
いけないわ やめてちょうだい ああやめて・・・
パンストに 裂け目滲ませ かぶり振る
脱がされて ふやけたパンスト 部屋の隅
着たままは いやよと母は 服を脱ぎ
まばゆくて 視線そらした その裸体
雨戸ごし 母の呻きに 耳焦がす

シミ滲む 母のスリップ 手渡され
おめでとう それでもちょっぴり 悔しいな・・・
服だけで いいのと誘う いけない目
友は言う お前もいっしょに 乱れろと
のしかかり 夢中ではぎ取る 母の服
息遣い ただただ荒く はぁはぁと
誘われて そそのかされて 堕ちてゆく
順繰りに 口に含まれ 勃たされて

このひとに パパのいない日 伝えてね
あくる朝 だれもがオトナ 知らぬふり 

五七五にしても、五七五七七にしても、熟語を使っちゃうと雰囲気が堅くなるような気がします。
そうは言いながら、「裸体」はやっぱり、「裸体」なんですよねぇ。(^^ゞ

母恋歌

2011年10月19日(Wed) 04:31:46

あとは、こんなのも。^^

悪友に 母を手籠めに された夜 薄闇に舞う パンストの脚
厳格な 母が牝へと 堕ちるさま われを忘れて 覗き愉しむ
悪い子ね スリップ姿で 叱る母 恐れ入りつつ 照れ笑いする友
仕方ない 汚れついでに 教えるわ まだできるわね? さあいらっしゃい
息詰めた 息子が視てると 知りながら のしかかる友に 呻き洩らして
お母さん 男二人は 嫌ですか? むき出しに問われ ほの笑う女(ひと)
出てこいよ 姦っちまおうぜ 思い切り 手をひく友は 無邪気に笑う
そのまえに 灯りは消そうね 母は言い 居ずまい正し 髪整える
キスはまだ したことないの? 問う母の 間近な瞳に 生唾を呑む
ためらって 尻込みしつつ 向き合って 背中押されて あとは夢中に・・・
できたじゃない 上から覗く 乱れ髪 ティッシュで拭かれた 羞ずべき濡れを

君に捧げる純潔~詩歌~

2011年10月19日(Wed) 04:24:33

あるかたとメールのやり取りをしていたら、こんなのが浮かびました。


初めての 痕を散らしたスリップを まじまじ視られ 羞じらいており
あなただけ あなただけよと 君のため 処女を散らした 夜の教室
三つ編みを ほどいて君の 家訪ね 大人にしてね♪と そっと呟く
制服に ずれたブラジャー 押し隠し ひとり羞じらい 家路をたどる
帰るなり してきたんだね 笑んだ母 髪に残した 藁屑払いて
おめでとう パパには内緒に しとこうね 遠い目をする 母の横顔

気がつくと、そこには秋の景色・・・

2011年10月17日(Mon) 08:41:16

あっぷ用縮小加工111008 129

白のハイソックスの足許が埋まる草むらは、
名もない草花の穂先も色づいていて。
遠く波打つように首を傾げるススキの穂も、
銀色に輝いている。

みわたせば其処は、いちめんの秋―――

あっぷ用縮小加工111008 130


あとがき
今回は、えろはなしです。(^^ゞ

ブログ拍手♪

2011年10月16日(Sun) 06:37:08

今月に入ってからもあっぷは怖ろしく順調ながら、拍手はまだ三つという柏木です。
(TヘT)
え?零よりはましだろ?ですって?
そーですね。(^^ゞ
なにせ冬服の季節になってから、コメは零という柏木ですから。
(TヘT)
あっ!そんなことござんせん!桜草さんありがとう♪
(わざと間違えておいて、お礼を言う)

というわけで、ひさびさに拍手をいただいたお話はこちら。
「婚約者の訪問」
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-2560.html

えーと、どんなお話だったっけ・・・? (^^ゞ
という無責任な管理人だから、こういうコトになるのか。。。
(TヘT)

まあそれはさておいて、
このお話三か月ほど以前に描いたものなのです。(7月10日あっぷ)
一読して、思い出しました!
あたりまえ?
でもこれくらい描いていると、たまーに記憶がおぼろなお話もあったりなかったり。(ココダケノハナシ)
うーん、われながらこれいいなあって想うこともしばしばです。(^^ゞ

読み返してみて、思いました。
あー、これイイわ!(自画自賛)
お話のほとんどは、いちどあっぷするとあまり読み返したりしないので、結末やオチは完全に忘れていたのですが。
おひまでしたらぜひ、ご一読を♪
ちなみに、婚約者モノです。^^

どらやき。

2011年10月15日(Sat) 07:23:36

はじめに―――さいきんにしては珍しく、小説タッチです。


獣のように熱く、むさぼりあって。
蜜のように甘く、からみあって。
ことが果てると美知子はベッドから起きあがり、
傍らの水差しを逆さにして、中身をぐっと飲み干した。
男は女のそうしたいちぶしじゅうを、けだるい目線で追っていた。

さいしょのときには、
「ミチオさんに悪い。ミチオさんかわいそう」
と、夫の名前を口にしながらあれほど情交を拒み羞じらったはずの人妻が、
いまはむき出しの裸体を、むぞうさにさらしている。

あっ、どらやきだ!
美知子は頓狂な声をあげ、こたつの上のお皿にひとつだけ残ったどらやきを、かっさらった。
喰いたきゃ喰えよ。
うん・・・でも、あのひとのお土産にする。
女の口をついて出る夫の名前が、いまは「あのひと」という代名詞になっていた。
けれどもそれは、決して他人行儀なよそよそしいものではなくて、
近しいひとをあえて名前で呼ばないのと同じことだった。
彼女が「あのひと」と、夫のことを口にするときによぎらせるかすな羞じらいを、男は的確に読みとっている。
この部屋で夫の名前を口にするのを、女はあえて避けていた。

こんなところから持ち帰ったもの、だんなが喰うかよ。
男は呆れたようにつぶやいた。
まさか。言うわけないじゃない。
口を尖らせる女に、男は「好きにしな」といっただけだった。
寝そべったままライターを点けようとすると、
女は「寝たばこはだめ」といった。
起きあがってふたたびたばこを口にくわえると、
女は「たばこは匂いがつくからだめ」といった。
男は女の言い草を、いちいちうるさそうに受け流しながら、
それでもたばこをテーブルのうえに転がした。
転がったたばこを、女はほっそりとした指で受けとめて、
そうっと灰皿に立てかけてゆく。

帰るね。
身づくろいをしてショルダーバックをぶら提げた女を、男はひきとめなかった。

翌週も約束の時間に、美知子が男のアパートにやってくると。
男は「あがんな」と、ぞんざいにあごで指図した。
「散らかしちゃってぇ」
お母さんが下宿先の息子をたしなめるようなため息をついて、女は玄関でパンプスを脱いだ。
あがりこんだ床の冷たさに、肌色のストッキングのつま先のなかで、綺麗に並んだ足指が寒そうに縮こまる。
「ストーブ点けるね」
いそいそと立ち働く女をうるさがりもせずに、男はベッドのうえに寝そべったままだった。

テーブルのうえに、白い箱が置かれている。
箱にはシールで封がしてあって、シールには駅前の洋菓子店の名前があった。
「だんなと二人で喰いな」
男がぶあいそにうそぶくと、
「ショートケーキね?冷やしておくわ」
女は白い箱の封を切らずに、冷蔵庫に仕舞い込んだ。
滞在時間の長さを、予告するように。

「こらー、寝てばかりいちゃ駄目」
女は服のまま、あお向けに寝そべったままの男のうえに四つん這いになった。
ふんわりとしたロングのプリーツスカートが、むき出しになった男の腰にまとわりついた。
「いいのかい?スーツ汚すぜ?」
「きょうはあのひと夜勤だから、だいじょうぶ」
女は思い出したように身を起こし、手早くジャケットを脱ぎ捨てると、
ブラウスの胸もとからボウタイを垂らしながら、ふたたび男にかがみ込んでいって、唇に唇を重ねてゆく。

しつようなほどの口づけに、舌まで入れて応じたあと。
「お前からするなんて、珍しいな」
自分のうえでまだ四つん這いになって顔を覗き込んで来る女の頬をつねると、
男はスカートを穿いたままの女の腰に、さりげなく腕をまわしていた。
「だって、こういう仲じゃない」
「そりゃそうだ」
男は女を傍らに転がすと、こんどは自分が上になって、女を責めた。
「あっ!駄目!スカートがしわになる・・・」
さっきとは裏腹のことを口にしながら、
女は自分のうえにおおいかぶさる嵐を、身もだえしながら受けとめていく。

「スカートに、しみがついた」
女は男の頬を、軽くひっぱたいた。
「ストッキング、破けた」
女はもういちど、男の頬をひっぱたいた。
「髪の毛、ぐしゃぐしゃになった」
女がさらに、手を振り上げると。
男は女の手首を掴まえて、ねじ伏せた。
嵐がもういちど、女のうえを通りすぎた。

「あのひと、感づいたみたい」
女が口にした、容易ならざる情報を。
男は煙草をくゆらしながら、受け流した。
「聞いている?」
女の声が、すこし尖った。
「まあ・・・な」
男はわざと、女の嫌うたばこの煙を、女のブラウスに吹きかけたけれど。
女は身じろぎもせずに、それを受けとめていた。

男はまじまじと女を視、女はそういう男をまともに見返している。
「離婚されたら、ここに来るさ」
男の言い草に、ほっとしたように肩を降ろすと。
「あのひと、離婚なんかしないわ」
声はまだきつさを、残していた。
「どうしてわかるんだ」
「だってあのひと、わたしに惚れているんだもの」
「自信あるんだな」
「わたしも、あのひとに惚れているんだもの」
「それはまた・・・ごあいさつだ」
男は苦笑いをしながらたばこを灰皿にもっていって、ぐりぐりとこじつけて火を消した。

「わたし、どうすればいい?」
「なるようになればいいさ」
「あなたはのん気ね」
「おれはいつもこのでんだ」
「うらやましいわ」
「おれはまっとうなあんたのほうが、うらやましい」
「なに言っているんだか」
「まったくだね」
女のまなざしに、はじめて翳りがよぎった。

「どうしたの?」
「あのひと、変態らしい」
「そりゃ、よかった」
「どうして?」
「仲良しになれるかもしれないからな」
男は余裕をみせるように、わざと大きな欠伸をした。
「さすがにあんたとおれの仲を知ったら、そうはならないか?」
「どうかしら」
女はあいまいに頷くと、思い切ったように言った。
「あたしがあなたに抱かれているところ、あのひと視たら悦ぶかもしれないの」

男の反応は、女の予想に反して静かだった。
二本目のたばこを手にとって火を点けたのを、女はとめようとしなかった。
しばらく考え深げに、男はたばこを口に持って行き、吸うともなしに吸って、
女にたばこをあずけると、口から白い息を吐いた。
「そういうだんな、珍しくないんだぜ」
男を識るまで、夫の身体しか識らなかった美知子より、
男は深いところまで見とおしていた。

身づくろいを済ませた美知子を、玄関まで送りかけて。
「冷蔵庫に忘れ物しているな」
男がそう言うと。
女はわざと、冷蔵庫の中身を忘れていたらしい。
「持って帰るの、よそうかな」
冗談とも本気ともつかない口調だった。
「甘いものは嫌いじゃないが」
男の声色は、あくまで静かだった。
「独りでふたり分のケーキを喰うのは、ちょっと切ないかな」
女はちょっとのあいだ、黙っていたが、
「う・そ♪」
さっきとは打って変わって晴れやかな顔で、
「おいしくいただくわ」
きびすをかえして、冷蔵庫の扉を開いていった。

「ねえ」
玄関先で靴を穿くまえに、女は男に背を向けたまま。
「ストッキング、破ってくれない?」
なにかを決意したような、力をこめた声だった。
「え・・・?」
聞きちがえをしたのかと訝しむ男に、女はもういちど、言った。
「ストッキング、破って頂戴」
「そいつは嬉しいね」
男は女の足許にかがみ込んで、
折り目正しく装ったスーツのすその下から覗く、すらりとしたふくらはぎに手をかけた。
女の脛を覆っていた薄手のナイロンは、節くれだった指を圧しあてられて、
ふしだらな弛みを波打たせ、他愛なくねじれてゆく。
ストッキングが裂けるぱちぱちというかすかな音を、女は目を瞑って耳にしていた。

このまま家に帰るの。
あなた車で送っていって。
そして家のまえで、わたしを降ろして。
そのまま帰っちゃっていいから。
あたし、なにもいわないで、だんなにあたしのなりを見せつける。
髪の毛がぐしゃぐしゃになって。
ブラジャーの吊り紐が切れていて。
はだけたブラウスから、おっぱいがまる見えになっていて。
スカートの裾に、あなたのつけたエッチなネバネバが、シミになっていて。
ストッキングまで破けて、足首までたるみ堕ちていて。
それでもあのひと、あたしのことを抱くかしら・・・?

六時を過ぎても帰ってこない妻を案じて、夫は妻の用意した夕食にも手をつけず、彼女の帰りを待っていた。
出かけるときには折り目正しく装っていたスーツを派手に着崩れさせて帰宅した妻を迎えて、
エンジン音を轟かせて走り去っていく車を遠目に認めて、
夫は一瞬はっとしたけれど。
なにごともなかったように妻の手からケーキ箱を受け取って、
「お風呂が沸いているよ」
と、声をかけて。
湯上りの妻のため、紅茶まで淹れて。
なにごともなかったように、妻が情夫のアパートから持ち帰ったケーキまで、一緒に食べた。

「ひとつだけ、いい?」
ひたと見つめる女の視線を、夫はおだやかなまなざしで受けとめて。
ひと言「いいよ」といった瞬間、夫の頬に、平手打ちの音が鋭く鳴った。
「いつからそんな、女々しいひとになったの!?」
いままで聞いたこともないような、激しい声だった。
夫は静かに妻を見返して。
やはりなにごともなかったような静けさを、かえしていく。
女は知らず知らず、夫の視線を返せなくなっていた。

きみの浮気を知って、それでもきみがいとおしいと想えたとき。
ぼくのなかに、悪魔が宿った
淫らな悪魔は、ぼくに囁いた。
女はふたりの男を愛せるのだと。
ぼくは彼の囁きは、ほんとうなのだと思っている。

しばらく冷え切っていた夫婦のあいだに、熱い夜が戻った。
新婚のころの熱さとは彩りを変えた、妖しい色合いを秘めながら。

つぎの週も、そのまたつぎの週も。
女は男の棲むアパートに、通い妻をつづけていた。
ときには夫が夜勤だから・・・と、自宅にさえ男をあげるようになっていた。
ほんとうに夜勤だったのか?
夫婦のベッドをぎしぎしときしませながら。
男はどこからかそそがれる熱い視線を感じていた。
その視線の厚さは男のなかに入り込んできて、
自分の下で、もっと・・・もっと・・・とおねだりをくり返す女が、理性を忘れて悶えるのを。
さらに手助けしているような気がしていた。

三人で一体のセックス。
女の家を独り出た男は、ひと言そう、ひとりごちた。
異常なはずの言葉が、いまはそんなにアブノーマルなものではないような気がしてくる。
写真でしか見たことのない、端正で清潔そうな彼女の夫と、
お互いに識っていることを隠し合いながら言葉を交わしても、「仲良し」になれるような気がした。
男は眩しげに目を細めながら、リビングの灯りをもういちどふり返る。
夜道に妖しく浮かび上がる灯りは、まだ淫らな輝きをつづけているようだった。

家から出ても 戻っても。

2011年10月14日(Fri) 07:34:02

ふらふらと、家から出て来てしまっていた。
真っ昼間、情夫を迎えるという妻といっしょに、どうして居続けることができるだろうか?
なにも知らない娘は、学校に行ってしまっていた。

つい足を向けてしまったのは。
いっしょにこの街に赴任してきた上司の家。
上司は気軽に、迎えてくれた。
お茶でも・・・と思ったけど。あいにく家内が出かけていてね。
いまはす向かいのご隠居のところに、お嫁に行っているんだよ。
ついそこまで買い物に行っている。そういう口調だったが。
お嫁に行く。
それがこの街でどういうことを意味しているのか、鈍感なわたしでも容易に察することができる。
社内でも指折りの才媛で、在籍中には社長秘書まで勤めた女(ひと)が。
田舎のごま塩親父に迫られて、ブラウス姿を乱していく・・・そんな有様を想像して、
つい、ごくりと唾を呑み込むと。
こちらの雰囲気を察したように。
きみの奥さんは、どうしているの。
上司は二の矢を放ってきた。

エエ、じつは・・・
妻が迎えるという相手の男を紹介したのは、ほかでもない上司と、上司の夫人をいま独り占めにしているごま塩親父だった。
みなまで語らせずに上司は手で制しておいて、
それはうまくやったね。おめでとう。
見当違いな挨拶に、わたしが目を白黒させていると。

そういうことなら、早く帰っておあげなさい。
いまごろ奥さん、庭先で犯されているんだろう?
いっしょにいてあげない手はないよ。
奥さんもきっと、心細いだろうから。
早く帰っておあげ。
いまごろなら庭土にもみじが散っていて、
奥さんのあで姿も、さぞかし見映えがするんじゃないかな?

家に戻ると妻はもう、庭先からあがってしまっていて。
泥だらけになったワンピースが、洗濯機のへりにひっかけられていて。
ぬかるみに濡れたすそが、こちら側に覗いていた。

あらー、残念ね。もう終わっちゃったわよ。
そういう妻は、なにごともなかったように髪をセットし直していて。
水玉もようのブラウスに、紺のスカート、肌色のストッキング。
すぐにもお出かけに行きそうな装いだった。
お出かけに行く・・・ですって?そうじゃないわよ。もう一回「イク」んですから。
思わせぶりに目線をそらした妻が、甘えるように見あげたのは。
さっきまで庭先で妻を汚していた男―――

お邪魔していますよ。
奥さんお借りして、本当にすいません。
ひと目惚れしちゃいましてね・・・気分が落ち着くまでのあいだ、どうかおおめに見て下さい。
そうそう。ボクね。
奥さんを独り占めにしちゃうと、つい中に出しちゃうんですよ。(^^ゞ
かさねがさね、ごめんなさい。

そうよ。たっぷり中に出されちゃったわ。
あなたがいらっしゃらないからよ。

妻も恨めしそうに、口を尖らせていた。

もう帰るのか。そうとばかり思っていたら。
アラ。どうしてわたくしが着替えたのか、お察しにならなくて?
妻は親しみのこもった意地悪そうな目で、わたしを見る。
お見えになったお客さまには、二着汚れさせてあげるのよ。
クリーニングに出したばかりの紺のスカートのすそを、妻はピンと引き伸ばした。
つい一週間ほどまえ。このスカートを穿いたまま。
泣きじゃくりながら凌辱されていったのは、いったいどこのだれだったのだろう?

すみません。痛くなかったですか?
行為の最中、ぐるぐる巻きに縛られていたわたしを、荒縄から解放してくれるとき。
男はいたわりたっぷりに、ねぎらってくれた。
ね。このひと、やることは粗っぽいけど、悪気はないのよ。
彼に対する妻の弁護も、もっともなように思えてきた。
ぐるぐる巻きにされたわたしの、目のまえで。
男はいとおしげに妻を掻き抱き、スカートの奥をいやというほど、衝いていった。

すみません。
男は頭を掻き掻き、わびを言う。

さっきは独り占めにしているとつい中に出しちゃう、なんて申しあげましたが。
ご主人に視られているとやっぱり、中に出しちゃうくせがあるんです。

子供が生まれると、いいかもね。
優香にも妹か弟ができると、愉しいだろうから。

妻もしれっと、そういった。
娘の優香は中学にあがるとき、彼に入学祝をしてもらう約束になっている。
男は妻の言い草を否定も肯定もせずに、ただ照れくさそうに笑っていた。
彼とまともに交える目線にドキドキしながらも、わたしも照れくさそうに笑っていた。

間借り。

2011年10月12日(Wed) 07:05:02

禿げででぶっちょの大家からアパートを借りて。
その大家に女房を貸している。
それでも正規の家賃を支払っているのは。
女房主演のポルノビデオを、毎晩のように見せつけられてしまっているから。
とうぶんのあいだ、引っ越しは考えていない。夫婦とも。

命拾い。

2011年10月12日(Wed) 04:24:40

目の前が、まだぐるぐるとまわっている。
二日酔いに似た失血の感覚に、慣れてしまったのはいつからだろう?
案外と。
初めてやつに襲われたその夜からかもしれない―――

あんた、ラッキーだったな。
たまたま奥さんが居合わせたから、命拾いしたんだぜ?
採られた血の量が致死量を上回らなかったのは、たんに頭数のせいなのか・・・
傍らの妻は、わたしとおなじ噛み痕をうなじにくっきりと描かれたまま、
ただニコニコとほほ笑んでいた。

ああ、本当は・・・
彼女が命乞いをしたからこそ、夫婦ながら生きながらえているのだろう。
やつも妻も、そんなことはおくびにも出さないのは、
せめてものことわたしの体面を考えているからなのだろう。

献血して来ますね。
ああ、いってらっしゃい。
ふらふらですわ、もう。
ああ、お疲れさん。
そんな会話が夫婦のなかに、ごくふつうに入り込んでいた。

隣室にひきたてられてゆく妻は、今宵も生き血を絞り獲られてしまうのだろう。
よそ行きのスーツに装われたたっぷりとした肢体に、もの惜しげな視線を投げると。
薄黒いパンストに包まれたふくらはぎが、ひどく悩ましく映った。
しばらくそこで、反省していたまえ。
やつは捨て台詞のようにそういうと、妻を目の前で押し倒す。
なにを反省せよというのだろうか?
たしかに・・・あの晩やつを家に招かなければ・・・いまごろは・・・

真夜中の妻。

2011年10月12日(Wed) 04:01:28

目が覚めた。
きついアルコールが、頭のなかをぐるぐると渦巻いている。
ソファから起きあがると、リビングはすでに薄暗い。
だれもが寝入ったあといつもそうしているように、
濃いオレンジの灯りが、部屋全体を心地よく翳らせていた。

起きあがった気配に気づいた妻が、寝室から出てきた。
ずっと半開きになっていたドアを、すこし押し開いて。
四十を過ぎたはずの妻。
スリップ一枚の姿は、いつになく艶っぽかった。
寝室の奥の闇を窺うと、
彼女はわたしをあやすように頭を撫でて。
寝ているわ。
幼な児のことをいうような口調だったが、
その主語は、わたしたち夫婦よりずっと年配の男―――
酔いがまわるすこし前、妻との仲を裸で披露した、逞しい肢体の持ち主だった。

飲み直そ。
妻は飲みさしのワインのボトルを台所から持ってきて。
グラスをふたつ、器用な手つきで並べて。
赤い液体を、なみなみと注いだ。
チン。
澄んだ音色が、薄闇に響きを投げた。
グッと飲み干す妻。
頭痛を気にしてちびりとやるわたし。
無理しないでね。あしたはお勤めでしょう?
妻はわたしを見透かしたことをいう。

スリップの裾から伸びた太ももに、そうっと手を這わせる。
あらいやだ。
口ではそういいながら、這わされた手を取り除けようとはしなかった。
たっぷりとした肉づきは、かすかな弛みを見せていたが。
すべすべとした手触りはかわらない。
はい、お水。
口許に押しつけられたコップが、心地よい冷たさを伝えた。

愛しているから、心配しないでね。
置きっ放しになったわたしのグラスに、
彼女はもういちどグラスをあてると。
残りをさっと飲み干して、情夫の待つ褥へと戻っていく。
あら、やだ・・・
闇の向こうから洩れる、妻の声。
もうダメよ。ダメ・・・だめ・・・
悩ましい声はわたしをソファから引きずり出して、
いいといわれた寝室の出入口まで、足を運ばせる―――

同族。

2011年10月11日(Tue) 08:06:25

ガマンしろよな。しきたりなんだから。
真奈さんを責めたり、するんじゃないぞ。
うちの加代子だって、新婚初夜に親父に姦られちゃったんだから。
受話器の向こう、兄の声がひっそりと洩れてくる。
家族に聞かれまいとして、ひそめた声だった。

ふすまひとつへだてた、夫婦の寝室で。
妻の真奈は、紺と白の水玉もようのワンピースをくしゃくしゃに着崩れさせながら。
こともあろうに、父に組み敷かれているところだった。

この村に嫁入る女は、だれもが例外なく。
花婿の父親の褥の塵を払わなければならないというしきたりを。
都会育ちの妻に言い聞かせると。
厳格な家庭に育った彼女は、戸惑いながらも。
すべては夫に従うように。
そう教え込まれてきたらしく。
案外と素直に、頷いてくれた。

真奈は、明るく父を迎えてくれて。
気丈に振る舞ってくれたけれど。
いざそのときになって、父とふたり差し向かいなると、
さすがに戸惑いを隠せずに、いちばんしてはいけないことをしてしまっていた。
操を守るために、抗う―――という。
婦人としては当たり前のことを。

ふだんはもの静かでわきまえのあるはずの父が。
わが身を隔てようと突っ張る腕に、不覚にもわれをわすれて。
都会ふうの正装に欲情したかのように、次男の嫁を見境なくねじ伏せていった。
農作業で鍛えられた逞しい猿臂に、か細い肢体を抑えつけられながら、
むせび泣きを隠しつつ、真奈は父を受け容れて、
しまいにはワンピースのすそを揺らしながら、
都会のイケイケギャルのような激しい腰つきで、応えはじめていった。

妊娠、おめでとう。でかしたわね。
なにも知らないらしい母は、真奈とわたしを祝福してくれた。
男の子かな。女の子かな。名前はどうするの?
祖母になる女がふつうに口にする質問攻めを、浴びせてきたけれど。
私と二人きりになったとき。
母はこっそり、囁いたものだった。
いいじゃないの、うちの子であることに代わりはないんだから。
真奈さんにも、そう言っておいたわよ。
哲也との子供は、二人目からでいいじゃないって。
あなたの小さい妹のみどりだって・・・
あなたと母さんの子なんだから。

生まれてきたのは、男の子だった。
名前は父の一字をとって、つけられた。
わたしの名前とは、似ても似つかなかった。
そういえば。
わたしの名前は、母の兄の名前とそっくりだった。
そういうことだったの?
祝いの席でふと母のほうを見返ると。
母はわざとのように、視線をそらしていった・・・

あんまりだった待ち合わせ

2011年10月11日(Tue) 06:52:11

加工p110917! 112  弐 - あっぷ用

公園で、彼氏を待っていたら。

変態さんが、やってきた。

きみの履いている、その薄々のハイソックスを舐めて、
よだれをジュクジュクとしみ込ませてみたい・・・って、せがまれて。

加工p110917! 113 弐 - あっぷ用


脚を恐る恐る、差し出しちゃった♪


くちゅっ・・・くちゅっ・・・ぬるっ・・・ちうう・・・っ。
ナマナマしい音が、足許から洩れて来るのを、目をそむけながらきいていた。
いやらしい舌舐めずりが、薄手のナイロンごしに圧しつけられて。
ハイソックスをくしゃくしゃにたるませながら、通りすぎて、
なま温かいよだれをぬるぬると、それはたっぷりと、なすりつけていった。

待ち合せの時間に、わざと遅れてきた彼―――
きみのハイソックス、舌触りがよくておいしいんだって?って、囁いてきた。
もうっ。。。

情婦の帰宅。

2011年10月11日(Tue) 06:22:14

助手席に載せた彼女は、親友の愛妻。
さっきまで、ホテルのベッドでまぐわったあの余韻が、
まだふたりの身体になまなましく息づいている。
彼女の自宅のすこし手前、100mほどのところに車を停めて。
ここから一人で帰れる?って訊くと、
エエだいじょうぶ。
心強い返事が、かえってきた。

わざとのように。
いや、ことさらわざと。
ベッドから起きあがったそのときのままの恰好を、彼女に強いていた。
自宅を出るときには、きちんとセットされていたなまめかしい黒髪は、
結わえをほどかれ、振り乱されたままになっていたし。
誕生日に夫に買ってもらったという、真新しい純白のブラウスは、
胸もとをはだけ、ブラジャーをはずしたおっぱいを、ゆらゆらとさせていたし。
きっちりとアイロンのきいた、清楚な漆黒のフレアスカートのすそには、
俺がわざとほとばせた、あのどろどろとした精液をたっぷりしみ込ませていたし。
脛が蒼白く透ける、気品漂う黒のストッキングは、
よだれと精液をたっぷりしみ込まされた挙句、裂け目をいくすじも、滲ませていたし。

彼女の身に、なにが起きたのか。
どれほど強烈な嵐が、彼女の身体を吹き抜けたのか。
彼女の夫は、ひと目で察することになる。

ひとりで、歩いていくわ。
彼女は怖れ気もなく、自分からドアを開けて。
じゃあね♪
小手をかざして、手を振って。
身を乗り出して、頬っぺにキスをしてくれて。
俺はお返しに、静脈の透ける白いもち肌におおわれた豊かなおっぱいを、
ぎゅうっと抓ってやった。
彼女はちいさく叫ぶと、
もうっ。
俺を軽く、ひっぱたいて。
それから打って変ったように礼儀正しく一礼すると、
ハンドバックを提げて、地面に立った。

すたすたと、夫の待つ家をめざして、あともふり返らず歩いてゆく女。
見つめる窓辺には、彼が憩っているであろう灯り。
ストラップのはずれかかったパンプスが、足を運ぶたびにかすかに脱げかかって、
薄黒いナイロンを滲ませたかかとが、見え隠れしていた。

鳴らしたインターホンに、かがみ込むようにして帰宅を告げて。
出迎えた夫は、乱れ切った彼女のなりを目にして、
ちょっとびっくりしたように、立ちすくんだけれど。
すぐに門の鍵をあけて、彼女を抱きかかえるように、迎え入れて。
門に施錠をすると、心を込めた優しい抱擁に、彼女を包み込む。
さっき俺と交わした激しさとは裏腹の、優しい優しいキスを与えて。
彼はこちらを見るともなく視線を投げて。
俺は向こうを見返すともなく、視線を交えて。
夫が妻を促して玄関のドアの向こうに消えるのを、
さいごまで見届けると。
切ったエンジンをふたたび入れて、
ブゥーンと、聞えよがしなエンジン音をとどろかせ、其処を駈け去った。

親友が連れてきた妻に、ひと目惚れをして。
隠しだてすることなく、ためらいもなく、
親友に面と向かって、彼の合いサイトの交際を申し込んでいた。
きみの奥さんと、姦りたいと。
狂気の沙汰と片づけることもなく、彼は真顔でさいごまで話を聞いてくれて。
一発俺をぶん殴ったあと、ちいさな声で応じてくれた。
彼女にすすめてみる・・・と。

幾人もの人妻を往生させてきた俺にとって。
たっぷり与えられた誘惑の機会をものにするのは、造作もないことだった。
数ヵ月後、貞淑だった彼女は羞じらいながら、
ドライブに誘った帰り道、名もないドライブインのベッドで、
夫にだけしかゆるさかなった肌身を、俺の前にさらけ出していた。
最愛の妻の貞操をプレゼントしてくれた親友は、
俺が得々と話す以前に、妻から報告を受けていて。
照れたような笑みを浮かべながら、おめでとうって言ってくれた。
激しかったんだって?
つけ加えられた言葉の端に、かすかな嫉妬を滲ませながら。

夫を通して、交際を申し込んで。
夫経由で、デートに誘って。
彼女は誇らしげに、
主人はこころよく送り出してくれたわ。
助手席に乗り込んでくるなり、そういうのだった。

いまごろは夫婦のベッドのうえ、熱いまぐわいが交わされているのだろう。
そこから先の想像を吹っ切って、俺は思い切りアクセルを踏んだ。

習慣性というもの。

2011年10月09日(Sun) 06:19:03

いちどだけです。
生命の保証は、当然します。
ただし、血を吸われるのって、習慣性があるんです。
二度目以降は、ご本人の責任において、愉しんで下さいね。

都会からこの街に越してきて、二週間後。
わたしは娘とふたり、やもめの父子にそういう迫られ方をした。
逃げ場を喪ったわたしたち母娘は、けっきょく言うことを聞かざるを得なかった。
ほんとうに・・・いちどだけですよ・・・
そう言いながら。
わたしは肌色のパンストのふくらはぎを唇で吸われ、
娘は真っ白なハイソックスに赤黒いシミを滲ませた。

娘があちらの息子と、密かに会っていると知ってしまって。
喉をからからにしている、その父親にも恵んでいると聞いてしまって。
わたしは娘の身を守るため、ふたたびその家に出向いていった。
ドキドキしてきた・・・血を吸われたくなってきた・・・
そう訴える娘を連れて。
ほんとうに・・・困るんですよ・・・
そう言いながら。
わたしはグレーのストッキングに、お父さんのよだれをしみ込まされて。
娘は黒のタイツに、太い裂け目を走らせた。

夫が別ルートで、この交わりに加わっていて。
ストッキング地の長靴下を履いて、おなじ家に出入りしていると知ってしまって。
夫はわたしたちよりも先で、若い女の血を欲しがる彼らのためにおぜん立てをしたのだと、聞いてしまって。
わたしはもうどうとでもなれという気分で、ふたりの待つ家に出向いていく。
襖の陰からは、夫の目―――
ドキドキするんだ・・・きみが迫られてしまうと・・・
そう訴える夫をまえに、あいまいに頷いた私。
夫の願望のためなのか。それとも心の奥底に眠っていた自分自身の望みがあったのか。
まったく・・・ひどいかたたちですね・・・
そう言いながら。
わたしは黒のストッキングの片脚ずつを、親子の唇のいたぶりにゆだねて。
娘も通学用の黒ストッキングに、穴をあけられてゆく。

妻や娘が脚に通している、清楚なハイソックス。上品なストッキングに、
よその男の唾液をしみ込まされてゆく日常を、夫はどう感じていたのだろう?
予感は想像を超え、そしてわたし自身をも奈落の闇に陥れた。
わたしは夫のまえ、夫婦でお招ばれに出かけるときでさえ。
あらかじめあの家に立ち寄って、
色とりどりのナイロンで染めた足許に。
男たちのよだれをしみ込まされるのが習慣になっていた。
あなた、御覧になって。
またあのかたたちに、汚されてしまいましたの。
あのおふたりののよだれが、いまわたくしの足許に、沁みついていますのよ。
そう、囁きながら・・・

晴れて夫の許しを得て、彼に抱かれる夜。
どこまでも堕ちてゆくわたしを、夫は寛大に許してくれた。
首すじの噛み痕は、アクセサリイどうようにわたしのうなじを飾り、
ハイソックスのシミは、ワンポイントのように娘の足許をひきたてている。
初めて脚に通すガーター。
初めてブラウスの襟首からもぐり込む、夫以外の掌。
初めてわたしの股間を冒す、夫以外のあのいやらしい触手―――
娘はさっきから、とうに受け容れてしまった彼氏のものを唇に含んでいて。
初めて訪ねてきたときとおなじ、真っ白なハイソックスを。
処女を捧げた証しで、赤黒く濡らしていた。

呼び出しに応じた少女

2011年10月07日(Fri) 06:51:20

吸血鬼の男の子五人組は、ひどく忌まれた存在だった。
いつもいっしょに行動して、学校帰りの女学生や、もっと年上のお姉さんの勤め帰りを狙っていて。
ひとりの獲物をみんなで追いかけまわして、さんざん血を吸い取ってしまうのだから。
生命の危険はないていどの血の量を摂られるだけって、わかっていても。
重たい貧血に頭を抱えながら起きあがって、制服やスーツについた泥を払う彼女たちは、
ひどい、ひどい・・・って、
必ずといっていいほど、恨み言を残して立ち去るのだった。

教室でタカシが呼びとめたのは、おなじクラスの風祭美紀だった。
悪りぃけど、放課後体育館の裏に来てくれないか?
体育館の裏。
それは少女たちが襲われて、血を吸い取られる場として通っていた。
少女は目を見開いたまま、タカシのことをじっと見つめて、
しばらくのあいだ、彫像のように動かなかった。
頼んだぜ?いいな?
美紀の態度に戸惑いを見せたタカシは、むしろ自分のほうが逃れるようにして、その場を立ち去っていった。
メンバー交代で、クラスの子を一人ずつ呼び寄せる。
そんなゲームを始めた週の、金曜日。
一組の渡辺紗耶香も、二組の阿部まみ子も、三組のミス二年生も、四組の学級委員も、
もちろん指定の場所には現れずに、
こっそりたどった逃げ道でつかまえられて。
泣きじゃくりながら、ブラウスをバラ色に染めていった。

あてにならねーだろ。
そりゃそうだよな。
タカシたちはうつむきながら、それでも体育館の裏で、時間をつぶしていた。
たばこはよそうぜ。
そーだな。
いつもの癖で制服のポケットからたばこを出しかけたミキヤは、仲間にたしなめられると聞き分けよく、
ブツをそのままポケットに戻していった。
これから女の子の血を吸うときに、たばこ臭くちゃ嫌われるだろ。
きのう学級委員の呼び出しに成功したリョウスケがそう言ってから、
こういうときには禁煙することになっていた。
陽だまりの中ではいつも俯いている彼らだったが、
しんそこ心を許し合ったものどうしの連帯感が、周囲を暖かく包んでいる。

あの・・・
かけられた声にぎくりとしたのは、男の子たちのほうだった。
タカシの呼び出した風祭美紀が、仲良しの梅田憲子とふたり、寄り添い合うように佇んでいる。
あなたたち、女の子の血が欲しいんでしょう?
お友だち連れてきたの。
ちっとは手加減してね。
怯えを見せまいとするけんめいなまなざしに、たじろいだのはタカシのほうだった。
先に吸えよ。
傍らのリョウスケが、タカシを促している。
憲子にはミキヤが、そして美紀にはタカシが、寄り添うように向かい合う。
手加減・・・してね・・・
美紀は生唾を呑み込んで、そして目を瞑った―――

初めて味わう美紀の生き血は、ほかの女の子とは違う香りを秘めていた。
ひとしきり血を吸うと、美紀はふらふらとタカシの抱擁から身を放し、
すぐにべつの男の子につかまえられた。
眼の色を変えて憲子におおいかぶさるタカシのほうを見まいとして、
そむけた首すじに、べつのやつの唇が這った。
女の子たちはセーラー服の襟首に走る白のラインをバラ色に浸し、
純白のセーラーブラウスの胸もとをおなじ色のシミを滲ませ、
ブラウスをまくりあげた二の腕を噛まれ、ハイソックスのふくらはぎを吸われていった。

その日の当番の男の子は、自分が呼び出した女子を最初に襲う権利を持っていた。
そんなルールを知るわけもない美紀が迷わずタカシをさいしょの相手に択んだことを、
仲間たちは不思議がりもしないで。
悪りぃな。おれも相伴するぜ。
美紀ちゃんの血は、旨いな。
口々に、タカシを冷やかすようにして。
制服の少女ふたりに、行儀の悪いあしらいを加えていった。

美紀の連れてきた憲子が、彼女の血をさいしょに血を吸ったミキヤと付き合い始めると。
男の子たちは彼らをふたりだけにしてやる気遣いをみせていた。
美紀はそれでも、男の子たちの輪から抜けられなかった。
タカシがみんなで、美紀を襲いたがっていたから。
彼女は連れて来る友だちを引き換え引き換えしたけれど。
同性のクラスメイトに人気のある美紀は、連れの女の子にこと欠くことはなかった。
やがてもうひと組みのカップルができあがると。
タカシといっしょになって美紀の血を吸う男子はふたりになった。
犯しちゃおうぜ。
タカシの言い草に、ほかのふたりは面白そうに頷いて。
そのときには美紀ちゃんのお母さんも、呼んじゃおうよって。
いけない計画に、熱中するのだった。

並んで犯された、芝生のうえ。
お母さんはスーツについた泥を払いながら。
娘をかばうように、起きあがらせていた。
さいしょにあなたとしたのが、タカシくん?
・・・うん。
さいしょに血を吸ったのも、彼なの?
・・・うん。
無表情に応える娘に、お母さんはよかったね、って声をかけると。
いいじゃないの。
さいしょのものさえ、好きな男の子にあげられたのなら。
あの子は獲物を分け合いたいタイプなんでしょう?
それを承知で、あなたも誘いについていったのね?

周りのだれもが、美紀の気持ちを承知していて。
けれども稚ないままの恋心は、気になる少女を苛めることしか教えてくれなくて。
女の子に悪戯するのは、仲間といっしょにやるのが愉しい、そう思い込んでいた。
タカシの好みのままに、彼の恋人をご馳走になった悪友たちも。
やがてそれぞれに、彼女を見つけていって。
五人組はしだいに、ちりぢりになっていたけれど。
結婚して姓を変えた美紀のところでは、
いまでも時おり、クラス会が開かれるという。
母親もかつて、おなじ体験をしたのだと。遠回しに告げられた少女は。
愛する人のまえ、羞じらいながら。
夫の悪友に、素肌を触れさせていくのだった。


あとがき
ちょいとなま煮えですが・・・ (^^ゞ
あっぷしちゃいましょ。 (^^ゞ

相手校のキャプテン

2011年10月07日(Fri) 06:15:13

ねえ、仁藤恵子って知ってる?あなた中学いっしょだったよね?
近寄って来た浦川小百合は、挑戦的な口調で、過去の同級生の名前を口にした。
知ってるさ。隣の学校の、運動部のキャプテンだろう?
俺は気のない声で、そう応えた。
なにを言いたいのかは、よくわかっている。
優雅なウェーブのかかった黒髪に、色白の瓜実顔。
名前のイメージどおりの清純な顔をしながら、この女の考えていることは陰険だ。
俺の正体が吸血鬼だって知りながら、試合の相手校の主力選手の血を吸わせて、
自分の試合を勝ちに持っていこうとしているのだ。
じっさい、強豪だった二回戦の相手校は、選手二人を俺に襲われて、まさかの敗北を喫していた。
あいつの血を吸ってこいっていうんだな?
血を吸うのは、お好きでしょう?
謡うような響きをもった浦川の美声には、どこかひとを嘲る色が滲んでいた。

呼び出しに応じてくるとは、よもや思わなかった。
仁藤恵子は中学のころから俺の正体を知っていたし、さほど親しいわけではない。
まして明日は俺の学校のチームと試合というときに、
血を吸われてしまう危険を冒してまで逢いに来るとは、とうてい思われなかった。
姿を現した仁藤恵子は、練習を終えたあとのユニフォーム姿。
セーラー服のほうが、よかったかしら?
陽灼けした頬に微笑を滲ませながら、人なつこそうに俺のほうへと近づいてくる。
お前の血、吸ったことなかったよな・・・?
俺は不覚にも、さいしょから自分の意図を口にしていた。

おなじ班のときだったかな。
あたしが班長で、あなたが副班長。
あなたわざとふざけて、ハイソックスのうえから唇押しつけてきたじゃない。
どうしてあのとき、咬まなかったの?
むぞうさに結わえただけのおさげ髪の間で、化粧っ気のない顔が笑っていた。
だってお前あのとき、風邪ひいてただろ?
かばってくれたわけ?
風邪ひいてる女の血なんて、まずいからな。
仁藤はそれ以上、俺の言い逃れを追求しようとしなかった。
ガールフレンドなんだ。小百合ちゃん。
肌きれいだし、かわいいもんね。
こいつ、なにもかも察している―――
俺はなんだか、この女に負けたような気がした。

いいよ。吸っても。喉、渇いてるんだよね?
仁藤恵子は小首を傾げて、目を瞑った。
試合まえの運動部の選手の生き血って、どれだけたいせつか、わかってるよね・・・?
肩を抱きすくめてうなじに唇を近寄せたとき、
彼女のまつ毛がかすかに震えているのに、はじめて気がついた。
吸いすぎだよ~。
女が俺の腕の中で姿勢を崩し、そのまま芝生のうえに尻もちをつかせると。
スポーツ用ストッキングのふくらはぎに、唇を吸いつけていった。
淡いブルーの、真新しい生地。
はっとした俺は、思わず女の顔を見あげたが。
女はいいんだよ、というように、ためらいなく脚を差し向けてくる。
女は俺のために、ストッキングを履き替えて来てくれていた。

惨憺たる試合だった。
相手校のキャプテン、仁藤恵子は、泥まみれになりながら。
奮戦に奮戦を重ねて、うちの学校に辛勝する。
なんども窮地に立たされながら、いつもより鈍い動きしか発揮できない身体をふるいたたせて、
けんめいにボールを追っていた。
チームの仲間の信頼を、守りきるために。
ここまでやりとおす自信があったんだな。
いろんな意味で負けたことに、みじめさが心の奥にまで滲んできた。
試合後両校そろって一礼をして、選手たちがコートの外にちりぢりに散ったとき。
グラウンドの隅っこの壁に寄り掛かっていた俺のまえ、仁藤恵子が足取りも軽々と小走りに駆けてきた。
俺のまえを駆け抜けざまに、白い歯を見せて。
手加減してくれたんだよね?
鮮やかなブルーのストッキングを履いた脚が賭け去るのを、俺はぼう然と見送っていた。

こんどは絶対、あいつを倒して。
浦川小百合は、復讐心に燃えた目つきで、詰め寄るように俺に命じた。
準決勝に進んだ仁藤恵子を、どうしても負けに導きたいらしい。
うちが負けたのは、実力の差。でもあいつだけにはこれ以上、勝たせたくないの。
どうしてそこまで意固地になるんだ?
訊きかけた俺は、女の剣幕に圧倒されるように、口を閉じた。
ふたたび開いた口から洩れたのは、自分でも意外なことに、拒絶のことばだった。
悪りぃが、俺は手をひくぜ。
そう・・・
女は意外に、素直だった。
卑怯な手を使って、嫌われちゃったかな?
気の強いこの女にしては珍しく、ちょっぴりさびしそうにほほ笑んだだけだった。

負けちゃった。
試合後、コートの外に佇んでいた俺を目ざとく見つけると、
仁藤恵子は照れたような笑いを浮かべて、俺に近寄ってきた。
このあいだの試合のときよりも、はるかにいい動きをしていたのに。
こんどの敵は、一枚も二枚もうわてだった。
俺はいつしか、恵子ひとりを目で追っていた。
こんどはキミに、襲われなかったのにな。
試合の流れを決めた仲間のミスをひと言も責めない態度は、
自分のつごうで体調を崩したことをひた隠しにして果敢なプレイを演じた彼女らしかった。
こんどからお前の血を吸うのは、試合後にするよ。
俺の言い草を、ごくしぜんに受けとめて。
じゃ、ストッキング履き替えてくるね。
恵子は仲間たちと足取りを合わせて、駈け去っていった。
一陣のさわやかな風が、ふたりのあいだを通りすぎる。
いまはもう、秋―――
あまりながくはいられない陽の光の下、
忌むべきはずの太陽が、なぜかいつになく、すがすがしかった。


あとがき
スポーツの秋 ですね~。(^^)/

ダッグアウトにて 2

2011年10月05日(Wed) 07:45:01

ねぇねぇ。ホームラン打ってきたら、イ・イ・コ・トしてあげちゃうっ♪
チームのみんなに、冗談言ったら。
11対0でコールド勝ちっ!
みんなきっちり1本ずつ。
補欠のUクンやTクンまで、俺も出せって勝手に打席に立って、ホームラン打っちゃった。(・0・)
試合のあと・・・ど~~する~~~?
 (((^^;

ダッグアウトにて。

2011年10月05日(Wed) 07:39:25

えっ?慰めてほしいって?
そんなこと言ってないで、がんばりなよ~。
試合負けちゃったら、あたしあっちのチームのマネージャーになっちゃうよ~♪
えっ?そんなことさせないぞって?
きずモノにしちゃうぞって?
きずモノ。。。って、どういうこと・・・?
あっ、ダメだよ。近寄りすぎっ!
そこから先は、立ち入り禁止っ!
えっ・・・?えっ・・・?ええ・・・っ!?

試合のあと、彼女はチームのみんなに慰められながら。
「えっ・・・えっ・・・」
 ってすすり泣きしながら帰りましたとさ。
めでたし、めでたし。^^



同級生たちと

2011年10月04日(Tue) 07:59:14

クラスメイト数人で、吸血鬼の家に遊びに行く。
男女とり合わせて数名という人数で、向こうもだいたいおなじ頭数の仲間を集めている。
たいがいはふつうに紅茶でも振舞われ、学校の話でもして帰るのだけれど。
発情期にあるときの彼らは、もちろん危険である。
そういうときにはまえもって報せがあって、ほかに吸血鬼の彼氏がいるとか、つごうのわるい人はついて来なかったりする。
その日も発情期と知りながら、クラスの数名で吸血鬼の家に遊びに行った。
血液を提供する当番にあたったものばかりだった。

きょうは、よりどりみどりだね。^^
すこしお兄さんな年ごろの彼らは、連れていった女の子たちとちょうど同数だった。
よりどりみどりの・・・みどりちゃん~!
ボクがいちばんなついているそのお兄さんは、おどけた調子で隣にいるみどりちゃんに襲いかかった。
きゃ~♪
みどりちゃんも吸血体験は初めてじゃないから、わざとおどけてボクのほうへとしなだれかかってきた、
ケンジくん、助けてぇ~♪
あわてて彼女をかばおうとするボクは、たちまち首すじを噛まれあっけなくダウン。
じゅうたんのうえに尻もちをつくとき、
親友のタカシがやっぱり、付き合っている尚子を守りかねて、
みすみす首すじを噛まれるところを見せつけられちゃっているのが視界をよぎった。

ああああ~血を吸われちゃう~!
彼女の危機だった。
けれども失血で動くすべを忘れた身体は、どうすることもできない。
みすみす・・・目の前で・・・
彼女はうなじを、くわえられていった。
うふふふふふっ、ボク、悪いね・・・
お兄さんは余裕たっぷり、みどりちゃんを追い詰めると。
濃いグリーンのハイソックスを履いたみどりちゃんの脚の脛にまで、唇を吸いつけてゆく。
だめーっ、ハイソックス破けちゃうっ。
もともと噛ませるために履いてきたんだろ?
そんな問いかけは、愚問だろう。
みどりちゃんはお気に入りのハイソックスを、ボクに見せるため、そしてお兄さんに噛ませるために履いてきたんだから。

ちゅうちゅう・・・ちゅうちゅう・・・
しずかになった室内に、吸血の音だけがただよっている。
男の子たちは失血のあまり薄ぼんやりとして。
連れてきた女の子たちが吸血されるようすを、ただばかみたいにぼーっとなって、見守っていた。
みどりちゃんは切なそうに目をつむり、時おりまつ毛をナーバスに震わせながら、
うなじや足許に代わる代わる唇を吸いつけて、旨そうに血をすするお兄さんの欲求に応えつづけている。
美味しいな・・・みどりちゃんの生き血は、美味しいな・・・
お兄さんは見せびらかすように、吸血をつづけていった。

数年後。
みどりちゃんと結納を交わしたボクは、
未来の花嫁をお兄さんの部屋へと、エスコートしていた。
みどりちゃんの処女の生き血を愉しみ尽くした彼は、
未来の花婿のまえ、彼女を女にしたいと望んだから。


あとがき
同工異曲のお話でした。(^^ゞ
生き血を吸われるようすを何気なく見なれてきた女の子が、未来の花嫁に。
気づかないうちに、自分の花嫁の初吸血や処女喪失に立ち会っていた・・・そんなプロットのお話です。

上級生の女の子。

2011年10月04日(Tue) 07:26:02

転校してきたさいしょの日。
集団登校の群の先頭に立っていたのは、ボクよりひとつ上級生の女の子。
長くてサラサラした黒い髪に、しぜんと目が行ってしまって。
ちょうどそのときに、彼女と目が合ってしまって。
けれども彼女は、嫌がりも咎め立てもしないで、ゆったりとしたほほ笑みをかえしてきた。
色の浅黒い、引き締まった目鼻立ちに、年ごろの女の子らしいしなやかさを滲ませて。

わかっているかな?
ハイソックスを歩きながら引っ張り上げると、彼女はボクと肩を並べて話しかけてきた。
四年生以上の子は、学校にいる吸血鬼さんに血を吸われる義務があるんだよ。
えっ。
ボクが驚いたのは、彼女が吸血鬼の話をしかけてきたからではない。
その話はもう、母さんから聞いていたし、
母さんにはちゃんと、父さんから紹介された相手がいて、
あしたはあなたもされるんだから、視ておきなさいって。
家にやってきた吸血鬼の小父さん相手に、血を吸われるところまで覗かせてくれたくらいだったから。
ボクが驚いたのは、彼女がみんなの前でおおっぴらに、そんなことを口にしたから。

あたしはもう二年以上吸われているから、なんでもないけど。
あなた相手が決まっているの?
まるで学期が始まる前に教科書を配られた?というような自然さで、彼女はボクにそう訊いた。
母さんがたしか、言っていたっけ。
あなたの血をぜひ吸いたいってかたが、学校で待っているから。
って。

じゃあ、ここで解散ね。
校門に着くと彼女はお姉さんらしい口調で、下級生の子たちを教室に送り出すと。
じゃあ、上級生の子は、あたしといっしょ。
あとにぞろぞろと、無表情の数人がつづく。
目指すのは校舎のはずれの、空き教室だった。
そこにひとりひとりが、ひと部屋に消えていく。
あなたはわたしといっしょ。
彼女はイタズラっぽく、笑っていた。
だって・・・あなたの相手とあたしの相手、おなじ人なんだもの。

お手本は要らないよね?ママのを視てきたんだから。
彼女は浅黒い頬をイタズラっぽく輝かせながら、
ボクの後ろに回って両肩を掴まえた。
目の前の小父さんは、母さんを襲った吸血鬼と良く似た人で、
ごま塩頭に赤ら顔。
あとできいたら、あの小父さんの弟だということだった。
ちくり・・・
注射針を刺すようなかすかな痛みに、じわじわ滲む血潮のなま温かさが重なり合った。
う、うーん・・・っ
初めての吸血に、ボクは夢中になってしまって。
母さんが父さん以外の男のひとに夢中になっちゃったわけが、ちょっぴりわかったような気がした。

貧血を起こして床に尻もちをついたボクのまえ。
彼女は椅子に腰かけて、ハイソックスのふくらはぎを、ゆったりと差し伸べていく。
濃紺のハイソックスのうえから、彼女の脚の線をなぞるように、
飢えた唇がスウッ・・・と吸いつけられてゆくのを。
ボクはなぜか、ドキドキしながら見守っていた。
彼の口許にはまだ、ボクから吸い取った血潮が、チロチロと輝いていた。
噛みついた瞬間、ひざ下までぴっちりと引きあげられたハイソックスが、かすかにくしゃっとずり落ちた。
吸血されてゆく足許を、眉をひそめて見おろす彼女の横顔が。
ひどく女っぽく、ボクの眼には映った。

つぎが首すじだった。
立つよう促された彼女は、正面か抱きすくめられた姿勢のまま。
おとがいを仰のけて、目を瞑って。
刺し込まれる牙に、うなじを侵されていった。
バラ色のしずくがつつ・・・っと、うなじを這って。
彼女の白いブラウスをかすかに汚すのを。
やっぱりボクは、ドキドキしながら見守っていた。

さすがにちょっと、貧血になったらしい。
彼女は額に手を当てて、ちょっとのあいだ耐えていたが。
ふたたび椅子をすすめられると、たまらないようすで腰をおろして。
そのままうつむいたきり、黙りこくってしまった。
男はひっそりと、教室から立ち去った。

大丈夫・・・?
声をかけるボクに、彼女はちょっぴり蒼くなった顔を向けて。
女の子が意中の男の子に秘密を打ち明けるときの、あのひっそりとした声色で。
あのひとにね。あたしが中学にあがったら、処女を奪われちゃうんだ。
ショジョ・・・って・・・?
さすがにボクも、その言葉の意味をおぼろげには知っていた。
それでもよかったら・・・あたしとつきあって。

数年後。
ボクは、ママの愛人となった小父さんの弟の家に、恋人となった彼女をエスコートして。
別室に連れ込まれて血を吸われる彼女を、ドキドキしながら覗き見するようになって。
なん回かそういう刻をすごしたすえに、
セーラー服姿のまま彼女が襲われて処女を奪われるありさまを、目の当たりにするはめになっていた。
この街に引っ越してきたその夜に。
夫婦の寝室でママが犯されるのを、パパが物陰からドキドキしながら見守ったように。

お得意様。

2011年10月02日(Sun) 08:26:10

妻の生き血を吸いに来る、その五十がらみの男は。
いつもひっそりと、玄関先に佇んで。
わたしに小声で、「奥さんいますか」と訊ねるのだった。
ああ、家内に御用ですか。どうぞ中へお入りください。
わたしはつとめておうように振舞って、男を自宅に引き入れてやる。
招かれないと、侵入することはできないんですよ。
そう教えてくれたのは、だれだったか。
けれどもいちど招かれた以上我が家にいくらでも侵入する権利を勝ち獲たはずのこの男は、それでもわたしに、訪問の許可を求めて来る。
わずらわしかったのは、事実だった。
そもそも妻の生き血を吸いに来る訪問者を受け入れなければならないという異常な習慣に、波立つ気持ちを抑えるのがひととおりでなかった。
けれどもそうした想いは、さいしょのうちのことだけだった。
無抵抗に唯々諾々と仰向けになる妻にのしかかり、男がチュウチュウと音を立てて妻の生き血を吸い取る光景は、なぜかわたしを夢中にさせてしまったのだから。

奥さんいますか。
奥さんいますか。
男は毎晩のように、訪ねて来る。
吸い取る血液は、さほどの量ではない。
だから妻も、よほど身体の調子がすぐれないとき以外は、つとめて男の相手をするのだった。
うちの家内、すっかりごひいきですね。
あるとき揶揄をこめて、男にそういうと。
ほかのやつに襲われちまうのは・・・がまんならねえ。
そのときだけは、兇暴な光が目に宿っていた。
そこまで家内にご執心?
でもわたしはいつも、家内を抱いているんですよ。
つい、挑発するようなことを口にしてしまったことを、半ば後悔したけれど。
男はむしろ当然というように。
夫が妻を抱くのに、なんの不都合があるものか。
無理をいっているのはこっちのほうなんだから、だんなさんは気を遣わなくてもいいんだよ。
男はめずらしく、ながい言葉を口にした。
そうしてその晩も、着飾った妻のスーツ姿にのしかかって、生き血をチュウチュウと吸い取っていった。

夫婦のあいだをへだてようとしない男の言い草に、打ち解けたものを覚えたわたしは。
妻への気持ちをたしかめると。
彼女を口説き落とせたら、想いを遂げるがいいと云ってやった。
数カ月後。
長年連れ添った妻は、わたし以外の男を初めて識るようになっていた。

妻の熱演

2011年10月02日(Sun) 08:16:01

少してこずったが、奥さんいい女だったぜ。
暴漢はわたしの肩を慣れ慣れしく、ぽんと叩いて立ち去った。
あとには、視線をそむけあっている夫婦が、取り残されていた。

数ヵ月後。
あの晩とおなじように、妻は激しく抵抗し、泣き叫びながら、犯されていった。
わたしもあの晩とおなじように、ロープでぐるぐる巻きに結わえられて、
妻の凌辱をさいしょからしまいまで、見届けさせられるはめになっていた。

あのときとちがうのは。
暴漢だけではなく、妻も、わたしさえもが、プレイを愉しんでしまっている という事実。
あの晩の激しい抵抗を餞(はなむけ)にして、妻はあの男の娼婦に堕ちた。
そしてわたしもサラリーマン家業から足を洗って・・・寝取られ亭主という職業に就いていた。

夜な夜な、我が家は強姦魔の訪問を受けて
妻は抵抗の末凌辱されて、
夫は妻の受難を目で愉しんでしまっている。

ああっ!厭っ!厭ッ!
あなたあっ!助けてえ・・・っ
妻の熱演は、今夜も夜の街に響き渡る。

婦人会の淫らな罠 ~都会育ちの主婦、堕ちる~

2011年10月02日(Sun) 07:48:39

☆珍しく長文です。お急ぎの方はご注意ください☆

初めて出席した婦人会で、わたしはびっくりするようなことを告げられた。
この街には吸血鬼が棲んでいて。ふつうの住民とかわらない暮らしをしていて。
吸血鬼と人間とのあいだには、かなり以前に和解が成り立っていて。
吸血鬼は人の血を吸っても相手を死なせないかわり、人間たちはすすんで彼らに血を提供するならわしになっていて。
娘が年頃になったり、だれかが他所の土地から嫁をもったりすると、
家族のものたちはそうした娘や嫁に言い含めて、
吸血鬼の棲む家を訪問させることになっていた。
慈善行為と見なされたその振る舞いは。
他所から移り住むものたちにも、ひっそりと伝えられていくという。
血を吸われることは、決して忌むべき行為ではない。
恵まれない近隣住民に向けられるべき、情愛を込めた施しなのだ。
住民たちがそう思っている証しに、婦人会には”博愛サークル”という、別名がつけられていた。
そう。この街では女性が吸血鬼の相手をするのは慈善行為なのだから。


すべてを教えてくれたのは、わたしを婦人会に招いてくれた隣の奥さん。
加恵さんというそのひとも、ショートカットにした茶色い髪の生え際に、ふたつ綺麗に並んだ噛み痕を持っていた。
赤黒い痣のような噛み痕は、ときにはかさぶたになり、ときには吸い残された血潮をまだ生々しくあやしていた。
わたしみたいに五十近くになってもね。恥を掻かせないようにって、いまでもお誘いがあるのよ。
って。
加恵さんはむしろ誇らしげに語るのだった。
あの髪形で。あの噛み痕で。
きっとご主人も承知のうえで、血を吸わせているのだろう。
慈善。博愛。
その言葉のとおりのおだやかなほほ笑みを、いつもあのひとは絶やさない。

三原さんの若奥さんは美人だから、お招ばれが多いの。
スポーツジムに通ってらして、体調管理もきっちりなさっているんですって。
宝田さんご夫妻は、おしどり夫婦で有名なの。
奥さんがお招ばれすると、ご夫婦でお出かけになるんですって。
娘のマミちゃんも中学にあがるお祝いに、お母さんに連れられて、
卒業式の日におめかしをして、噛まれに行ったんですって。
帰り道にたまたますれ違ったんだけど、おろしたばかりのハイソックスに赤黒いシミをべっとりつけちゃって・・・でもとてもにこやかに、お辞儀をしてくれたのよ。
学校の近くに住んでいる町村さんのところの沙希子さんは、都会にお嫁に行ったんだけど。
里帰りしたときだけお招ばれして、御主人には内緒で噛まれていたの。
それが、去年のお盆に初めて、未亡人しているお姑さんを連れて来て。
いまではふたり仲良く、黒のストッキングを穿いた脚を咬ませてあげているんですって。

まるで近所の軽いうわさ話しみたいにして、わたしも顔見知りのひとたちの家族の内幕を聞かされて。
なんだかそうしたことが、ひどく身近に思えてきた。


よろしければあたしが、ご案内しましてよ。
そういう加恵さんをあと押しするように。
そうよそうよ。お邪魔してらっしゃいよ。
だれもが口々に、そう言いだした。
婦人会の出席者は、清楚なブラウスにスカート、またはワンピース。ストッキングの着用まで義務づけられていた。
肩を並べてにこやかにほほ笑む彼女たちの口許は、なまめかしいルージュのすき間から白い歯を見せていて、
申し合わせたように着けたボウタイブラウスの、ふんわりとしたタイが、胸元で百合の花のように揺れていた。
婦人会のみなさんに口々に急かされて、わたしは会合の席を早引けさせてもらっていた。
会長のお宅を辞去すると。
加恵さんはいかにも中年女らしい、しれっとした顔つきになって。
よかったわ、抜け出すことができて。あの面子だと、あとは街の顔役相手に、いつも乱交パーティーなんだから。
えっ。
思わず息をのむわたしに、加恵さんはイタズラっぽく笑って、

あたしだって、愉しんじゃったことはあるのよ。
でもあなたはまだうぶだから、やめといたほうがいいわ。
奥さんたちのなかにはね、
さいしょが肝心なんだから巻き込んじゃおうよって。そう仰るかたもいたんだけど。
あたしがそれはちょっと・・・って言ったら、みんな納得してくれたわ。
いくらなんでも、さいしょから乱交パーティなんて。
ちょっと刺激が強すぎて、まだ愉しんじゃうわけにはいかないでしょう?

どこまでがほんとうで、どこかに嘘があるのだろうか。
信じられないことを口にした加恵さんは、気にしないでね、というように、クスッと笑っただけだった。


加恵さんは足取りも早く、ずっと若いわたしのほうが、追いつくのにけんめいになっていた。
急がないとね。お宅ご主人のお帰り早いんでしょう?学校の先生ですものね。
ごみ出しのことや道路のお掃除当番のことまで、身近なことによく気がついて教えてくれたお隣さんは、こういうときも頼もしかった。
加恵さんが足を向けたのは、街はずれにあるひっそりとした邸宅だった。
古びた軒は傾(かし)がりかかっていたし、庭にはうっそうと繁った木立ちが、窓も見えないほどに伸び放題になっていたけれど。
そういうほうが、つごうがいいでしょ?
加恵さんは招いた家のみすぼらしさを、むしろ自慢げに説明するのだった。

きょうはお二人待たせていますの。
あたし、まだ慣れていないかたのお相手をするから、あなたもあたしのするとおりになさってみてね。
慣れてるかたのお相手を、お願いするから。
ちっとも怖くなんかないし、それは呆気ないくらいで済んじゃうからね。


通された応接間は、古いけれど贅沢な調度に囲まれていた。
薄暗い湿気の多い室内の空気が、皮膚にひんやりとまとわりついた。
ちょっと湿っぽい感じのするじゅうたんが、薄いストッキングのつま先に薄気味悪く、わたしは思わず脚をすくめたほどだったけれど。
加恵さんは「じきなれるわよ」と言っただけだった。


待っていた吸血鬼は、加恵さんの言うとおり二人だった。
父子らしいふたりはよく似た面ざしをしていて、
蒼白い細面は、知性的な翳りをもっていた。
「街の顔役」という脂ぎった想像しかできない男どもを思い描いていたわたしは、なぜかすこしだけ、ほっとする思いだった。

こちら、お隣の若菜さん。きょうが初めてなの。手加減してあげてね。
ああ、こちらは三丁目の若木さんのご主人と息子さん。
ご主人は去年、息子さんは今年発病なすったの。
奥さんと娘さんが看病しているんだけど、ほかのかたのお相手もしなくちゃならないから、いつも血が足りないんですよね?

後半は相手の男たちに尋ねるような口調になっていた。
年かさのほうが、ひっそりと言った。

きょうは家内は婦人会、娘は部活動なんですよ。

それはきっと、吸血の場に過ぎないのにちがいない。
婦人会―――
あの席に居合わせた面識のない奥さんのだれかが、彼の奥さんだったはず。
そうするといまごろは・・・
ごま塩頭で赤ら顔、でぶっちょな顔役が、目のまえのご主人の細面で華奢な奥さんに迫っていくまがまがしい想像が、ふと脳裏をよぎった。


さいしょは首すじです。
目を瞑って、じっと動かないでね。
初心者の吸血鬼さんでも、ちゃんと咬みかたや加減はわかっていますから。
そんなに固くなることはないのよ。
そうね。予防注射だと思えばいいわ。
加恵さんはゆったりと手近なソファに腰をおろすと、
わたしには向かいの席をすすめてくれた。
彼女の後ろには息子さんのほうが、わたしの背後には父親のほうが、さりげなくスッと身を寄せて来る。
不思議に恐怖を感じなかったのは、身近な加恵さんといっしょだという安心感からに違いなかった。
窓から射す夕陽で逆光になった加恵さんの表情はよくわからなかったけれど。
白いブラウスを着た豊かな上半身が、若い男の子のぶきっちょな腕に巻かれていくのはよく見えた。
一瞬遅れてわたしの身体も、背後からおなじように、抱きすくめられている。

ちくっとするわよ。

予防注射のときの、看護婦さんみたいな口調だった。
加恵さんがみじかくいうのとほぼ同時に、湿りを帯びた唇がうなじのつけ根のあたりに吸いつけられた。
初めて経験する、夫以外の男のなまの唇―――
いや、よけいなことは考えまい。これは慈善行為なのだ。
入会したばかりの“博愛サークル”が推奨している重要な通過儀礼だし、もしも不調におわったら加恵さんやまわりのみなさんに合わせる顔がないだろう。
わたしは注射のときにいつもそうするように、キュッと目を閉じていた。


アラ、目をつぶっちゃったのね。
イタズラっぽく笑う加恵さんは、いっしょにお紅茶でも飲んで談笑するときみたいに、ごくゆったりとかまえていた。
だって・・・注射怖いんですもの。
わたしの言い草に、ほかの三人は和んだように声にならないほどの笑いを浮かべた。

痛くはありませんでしたか?

隣に腰を下ろした初老の男性は、細面の頬に穏やかな笑みをたたえている。
寂しげで柔らかい、ひっそりとした声色の持ち主だった。
どこか、胸にずきんと残る印象の声色だった。
化け物でも、ましてゾンビのような得体のしれない獣じみたものでもない、ごく良識的な隣人の態度と顔つきに、わたしは彼らとの距離の近さを感じていた。

エエ・・・だいじょうぶですわ。もっと貧血みたいになるかと思いました。

アハハ。ふつうになさっていても平気なんですよ。
いきなりそんな、ご気分のわるくなるようなことは致しません。
というのも、この街のかたがたが頻繁に血をくださるので、相手が血の気をなくすほどむさぼる必要がないのですよ。

なるほど。そういうことのために、いまの秘密のシステムが作用しているのか。
思わず頷いたわたしに、加恵さんはおだやかに、

いますこしだけ、いかがですか?

そういいながら、自分はすでにブラウスの胸元をくつろげていた。
息子さんはためらいもなく、加恵さんの首すじにかぶりついていった。

いけないわねぇ。ブラウス汚しちゃったじゃないの。

真っ白なブラウスに点々と、赤黒いシミが毒々しい花が咲くように散っている。
生々しいシミとはふつりあいに、加恵さんはおだやかに笑っていて、
言葉つきも、小さい子のおイタをたしなめるような、気軽なからかい口調だった。
笑いながら咎められた若い男の子は頭を掻き掻き、すみませんと謝っていた。
彼女の着ているブラウスの襟首には、バラ色のしずくがチロチロと輝いている。

きれいですね。

思わずわたしがそういうと、

あなたもこんなふうにしていただいたら?

加恵さんはそそるような言い方をした。
わたしが着ていたのは、赤と黒の花柄のブラウスだった。

これなら目だたないわね。

そんなことを口にするわたしも、かなり大胆になっていた。


ぶちゅっ。
かすかに撥ねた血が、わたしの首すじに散り、そしてブラウスを濡らしている。

だいじょうぶですか?

ご主人はわたしの両肩を、力を込めて抱き支えてくださっていて。
頼もしい力が、服を通して伝わってくる。

ええ、お気がすむように・・・どうぞ・・・

軽い昂奮のせいで、うまく言葉がまわらない。
とにかくあなたを咎めはしない。よろこんで血をさしあげます。
そういう気持ちを込めたつもりだった。
ご主人はそんなわたしの想いを、ごく自然に汲み取ってくれていた。

ああ、初めてにしてはお上手ねぇ。

加恵さんは目を細めて、ブラウスを濡らすことを許したわたしの振舞いに、称賛の声をあげていた。

バラ色のシミ、よく似合ってよ。
柄もののブラウスって、目だたないようで目だつのね。

ああ・・・ユリの花をあしらったブラウスの白い花弁に、毒々しいほとびが染みついて、拡がってゆく。
姿見のなかで、わたしは首すじをなん度も噛まれ、花柄のブラウスはわたしの血で浸されていった。
毒々しいバラ色のほとびが、狂おしく乱れ咲く花びらのように、ブラウスの柄を塗り替えていった。


ふらり・・・
わたしはめまいを覚え、彼の腕に抱きとめられていた。
知らないうちに、失血が濃くなっていた。
加恵さんもどうやら、息子のほうを相手に失血の度を濃くしていたらしい。
じゅうたんのうえにぺたんと尻もちをついていて、

あなたもこうなさったら?落ち着くわよ。
姿勢を崩しても、失礼にはならないから。

そうね。むしろ打ち解けたことになるのかも。
加恵さんの指示に、わたしはひどく素直になっていて、
言われるままに、彼女の隣に腰を下ろした。
しきりに済まながるご主人に、できるだけにこやかに会釈をかえしながら。

ストッキングの穿き替え、お持ちになってる?

加恵さんは妙なことを訊いてきた。
いいえ、とわたしが応えると、

あたし余分を持ち歩いているから、あとであげますね。

そういうと、こんどはじゅうたんのうえに、野放図に寝そべっていく。

あなたもうつ伏せになって。
このかたたち、脚を咬みたがるのよ。
このかたの奥さまが初めて襲われたときにも、ストッキングを穿いたまま脚を咬まれたの。
その光景を思い出すと、ついそそられてしまうんですって。
だからあたしたちも、再現してあげましょうよ。
寝そべったまま、脚をかませてあげるの。ストッキングを穿いたまま・・・いいでしょう?
破けちゃったあとは、好きなようにさせてあげて・・・穿き替えはあたしのぶんをあげるから。


いなやはなかった。
わたしは加恵さんに手を取って促されて、そのままじゅうたんにうつ伏せにされていた。
湿り気を帯びた古いじゅうたんのひんやりとした感触が、ブラウスを通してわたしの上体を濡らすように包んでいた。
足首と、スカートごしに太ももを抑えられて。
ご主人の腕が、わたしの両脚に、ツタのように絡みついてくる。
すぐかたわらで、加恵さんもおなじように、黒のストッキングの脚をためらいもなくさらしていた。
息を乱した息子さんが、牙をあらわにむき出して、加恵さんの足許にかがみ込んでいった。
くちゅっ・・・と、息子さんは、黒のストッキングのふくらはぎに唇を這わせると、そのまま牙を埋め込んで。
豊かなふくらはぎを薄墨色に染めたストッキングを、メリメリと噛み破いていった。


あ・・・
こんどは、わたしの足許に。
ご主人の唇が、ぬらりと吸いついていた。
意外なくらいしつような感じのする吸いかたに。
わたしはちいさく、声をあげていた。
唇にかすかに染みた唾液が、肌色のストッキングにしみ込んでいた。
じゅくじゅく、じゅくじゅく・・・さっきまでの慎み深さとは裏腹な劣情をさえ滲ませて。
ご主人はわたしのストッキングに、どろどろとしたよだれを、それはナマナマしく、すり込んでいく。

よろしくてよ。

不覚にも声をあげてしまったわたしの不作法をとりなすように、加恵さんは寝そべったまま、わたしの手を握りしめた。
暖かな掌に包まれて、失血に冷えた手の甲に安らぎをおぼえていた。
同時に、「逃げられないな」そんな想いもよぎったけれど。
みすみす加恵さんの術中に堕ちてゆくことが、なぜかひどく小気味のよいことに思えていた。
加恵さんはわたしの手の甲を撫でさすりながら。

ひどい。あぁひどい。こんなにたっぷりと奪われてしまうなんて。

そんなふうに呟きながら。
ご自身も吸血に耐えていた。
息子さんは早くも、ちゅう・・・ちゅう・・・と露骨な音をたてて、加恵さんの血を吸いあげている。
ご主人はわたしのストッキングを破るのをためらっているのか、脚を噛まずにあちこちと部位を変えて、接吻をくり返している。
礼儀正しい、ソフトな感じの口づけではあったけれど。
さいしょのひと口どうよう、濃厚なしつようさを秘めていた。
夫いがいのひとに許す脚へのいたぶりに、わたしはかすかな戸惑いを覚えていた。
ストッキング越しに這いまわる唇が、露骨な欲情を帯びているのを、さすがに鈍いわたしでも感じ取ってしまっていたから。

どうぞ。お破りになってもよろしいのですよ。

わたしがすすめると。
ご主人は承諾を得たと知って、はじめて牙をあてがってきて。
チクリとした痛みを、皮膚の奥へと潜り込ませてきた。
力のこもった噛みかただった。
わたしは飛び上がったが、脚に絡みついたご主人の腕と、掌を握りしめてくれている加恵さんの手とに妨げられて、身じろぎひとつできなかった。
縄で縛られるのに似た強固な制約を受けながら。
薄手のナイロンがパチパチとはじけて、足許を包むゆるやかな束縛が、じょじょにほぐれていった。


ちゅうちゅう・・・
キュウキュウ・・・
ふた色の吸血の音が、競うように。
薄暗い室内に、満ちていた。
加恵さんはわたしの掌を握りしめたまま、
放心したように、呆けたように、ウットリとほほ笑みつづけていたし。
わたしはわたしで、破けたストッキングごしにしつように這いまわるご主人の唇に戸惑いつづけていた。

さあ、慈善行為はここまで。あとは本番よ。
此処から先は、お教えするものじゃないわ。
ご主人とするように、うまくなさって。

謎をかけるような加恵さんの囁きに、わたしは何気なく頷いて、
そして頷いた内容に、ぎくりとした。

え・・・・・・?

振りかえると加恵さんは、ご自分からブラウスの胸をはだけていって。
のしかかる息子さんの頭を、まるで赤ん坊をあやすように抱いていて。
剥ぎ取らせたブラジャーから覗く豊かなおっぱいの乳首を、性急な唇にクチュクチュと含ませてやっている。

赤ちゃんだと思えばいいの。
なにが起きても、もうあなたのせいではないわ。

あとのことばに、根拠のない救いを見出すように。
猿臂を広げて欲情もあらわに迫ってくるご主人の唇を、
わたしは熱っぽい口づけで、受け容れていった・・・


劣情をぶち込むような交尾だった。
力のこもった手に、ブラウスを剥ぎ取られ。
長く尖った爪に、ブラジャーのストラップを断ち切られて。
破れたパンティストッキングを、片足だけ脱がされると。
ショーツは自分から、足首まですべらせてしまっていた。
スカート一枚だけを、身に着けたまま。
わたしはなん度も、前から後ろから、おねだりをされて。
そのたびに脚を大きく拡げて、応えつづけていった。
四つん這いにされて。おっぱいをブラブラと揺らしながら。
ほどかれて胸まで垂れた黒髪を、ユサユサと揺すぶりながら。
夫のまえですらあげないほどのはしたない喘ぎ声を、
ひーひーと露骨にあげて。
強いられた不倫行為に感じてしまっていることを、自ら告白してしまっていた。
しまいには。
父子は獲物を取り替えあって、のしかかってきて。
性急に迫ってくる息子さんの、まだ幼稚で乱暴な愛撫にさえ、
母親のような優しさで、応えつづけていった。
そう。
この村では、母親が息子の相手をすることも、決して珍しいことではないと、あとでしった。

慈善行為よ。ジゼン行為・・・

呪文のように繰り返される、加恵さんの囁き。
慈善は事前という意味も込められていたのだとわかったのは、
われに返って乱れ髪を整え、身づくろいをすませたあとだった。


なにも起きなかったように装いを整えたわたしは、
鏡に向き合って、痕跡が残されていないか、入念に点検を繰り返していた。
鏡の向こうでは、不実な女が独り、よそよそしい顔つきで唇にルージュを刷いている。

入会、おめでとう。

なにも知らなかったころとおなじ穏やかなほほ笑みを投げてきた加恵さんに、
わたしは無表情をつくって向い合せになると。
自分でも予期しない行動をとっていた。

ぱしぃん!

加恵さんの白い頬に、平手打ちの音が鳴り響いた。

頬に軽く手をあてがいながら、加恵さんはやはりなにごともなかったように、おだやかに笑っている。

うふふ。あなたやっぱりうぶなのね。

揶揄するような口調に、もう屈辱は覚えなかった。
わたしはぶきっちょに、加恵さんに向かってこんどは最敬礼をして。

ありがとう。

って、返事をして。

いきなり乱交パーティーはどうかなって、思ったけど。
けっきょくそうなっちゃったわね。

加恵さんは平手打ちを食ったことすら意に介さずに、それとなく免れた顔役相手のお勤めがあることを、思い出させてくれていた。
平手打ちといい。加恵さんへのお礼といい。
わたしがわたしで、なくなってしまったようだった。

時々誘ってくださいね。

わたしは別の女になったような心地のままに。
ごく手短かに、謝意とお願いを口にしていたのだった。
負けちゃった。
心のなかで、わたしはそう、呟いていた。
負けた後の不思議な心地よさと、股間に滲む疼きの余韻とは、たぶん関係はないのだろう。
ごめんね、あなた。
夫への後ろめたさをおぼえたのは、さらにあとのことだった。


加恵さんに借りたストッキングは、おなじ肌色でもすこし色ちがいだった。
淡い光沢の浮いたやや厚手のストッキングを引きあげるとき。
男たちは好奇の視線を私の足許に這わせ、わたしは演じる女として、思い入れたっぷりな動作で、ストッキングに脚を通していく。
舐めるだけ。
ご主人はそういうと、やおらわたしの足許にかがみ込んで来て。
ストッキングに包まれたふくらはぎをなぞるように、ちろりと舐めた。
ちろり。
ちろり。
片方の脚には、ご主人が。
もう片方の脚には、息子さんが。
足首を握りしめて、舌を這わせてくる。
あなた、もてるのね。
冷やかし口調の加恵さんに、わたしは照れくさそうに笑って、応えている。


帰宅したときには、もう夫は家にいた。
色ちがいのストッキングを穿いたわたしの脚に、チラと目をやったように見えたのは、きっと錯覚なのだろう。
まして、ストッキングにはさっきまで性交していた親子の唾液がしみ込んでいる・・・などと。
夫は想像もできないに、ちがいない。
おかえりなさい。婦人会おそくなっちゃった。
わたしは婦人会帰りを装って。
晩飯は済ませてきたよ。今夜は早く寝ようかな。
夫はさりげなく、あきらかに顔いろのわるいわたしを気遣っていた。


その日から。
嘘を装う日常が、はじまった。
所帯持ちの良い主婦を演じるために、甲斐甲斐しく夫の世話をし、
「このごろばかに、やさしいね」
夫にそう冷やかされても、肩をすくめて舌を出してふざけて返して。
その夫が家からいなくなると、慈善サークルに顔を出したり。
あの父子の待つ邸を、訪れたり。
加恵さんといっしょのときもあれば、ひとりだけで顔を出すことさえ、慣れて来て。
あの忌まわしい顔役とのおなじみの集いにも、積極的に参加するようになっていた。
いちど他人の精液で濡れてしまったわたしの陰部は、おおぜいの男どもの劣情のほとびを羞ずかしげもなく呑み込んで。
じぶんでも戸惑うほどの娼婦ぶりだった。
そんなわたしを、加恵さんはいつも傍らから見守ってくれていて。
夫の帰宅時間も忘れて乱れそうになるわたしに、それとなく終わり時間を促したり、
複数の訪問客相手に噛みをふり乱している最中に夫が勤務先から急に戻ってきたときなどは、表で夫を呼び止めて話し込んで、急場を救ってくれたりしたのだった。


夫はどこまで、気づいているのだろう?
この街に棲む吸血鬼と住民たちとが共存しているということは、夫の同僚からの情報として、夫の口から教わった。
「気をつけたほうがいいよ」と、遅すぎた警告をする夫のことが、少し滑稽に思えて。
噛まれに行こうよってお友だちに誘われたら、ついて行っちゃうわよ、って、応えていた。

仲間外れにされると、大変みたいなの。

そう付け加えることも、忘れずに。
夫はなぜか、少し気の抜けたような声になって。

まあ・・・ここでは献血と同じようなものだって聞いている、まさか死ぬわけじゃないからね。きみの血なんだから、好きにしなさい。

意外にもの分かりのよいところを、みせてくれた。

あしたも婦人会なの。

毎日のように同じ言い訳をくり返すことに、さすがに後ろめたさを覚えて。
口ごもりながらそう告げるわたしに。
夫はいつもと変わらず、おだやかにほほ笑みながら。

ああ、夜も遅くなるんだったね。さきに寝んでいるから。
それと、来週の火曜日は夜勤だから、家には戻らないよ。
お友だちを招ぶのなら、この日がつごういいかな。

さいごのひと言を口走ったとき。ちょっと気まずそうに口ごもったのを、わたしは見逃さない。
火曜日の夜。
夜勤のはずの夫が、じつは密かに帰宅していて、
隣室に通じるドアの隙間から熱い視線を注いでくるのを感じながら、
赤ら顔にでぶっちょの顔役氏と。
その顔役氏に奥さんを寝取られた揚句、二人の交際を認めてしまっているあの穏やかなご主人と。
ふたりながら、お相手をして。
しつような吸血のあとを伝線に滲ませたストッキングを、片方だけ脚に通したまま。
あとは真っ赤なスカート一枚だけを、腰に巻いて。
四つん這いになって。おっぱいをぷりんぷりん揺らしながら。
夫のまえでは決して洩らさないほどはしたない、ひーひーというあえぎ声を。
隣室に届くほど露骨に、洩らすことになるのだろう。


あとがき
めずらしく先月の28日から描きはじめて、
ついいましがたまで、かかりました。(^^ゞ
私にしちゃ、手こずりましたな。。。
長いだけ といううわさも、なきにしもあらず・・・ですが。