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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

父さんの献血。

2011年11月25日(Fri) 07:58:21

黒光りのする、ストッキングみたいに薄いハイソックスを穿いた父さんが、
小父さんにふくらはぎを、咬ませている。
ごく、ごく、ごく、ごく・・・
ボクのときと、おんなじように・・・小父さんは父さんの生き血を、それはおいしそうに吸い取ってゆく。

うちの息子の血は、おいしいですか?
ええ・・・いつもたっぷり、頂戴してますよ。^^
生命に別条のないていどなら、いつでもいいですよ。^^

ふたりのあいだに漂う和やかな空気に、ボクはホッと、安堵を感じる。

ストッキングがお好きなら・・・家内がいつも穿いていますので。^^

父さんは実に、友好的だった。
でも・・・だいじょうぶ?母さんまで奪られちゃっても。
きっと、えっちなことまで、されちゃうよ。

ボクのときだって。
スポーツ用のハイソックスを履いた脚を、狙われて。

ハイソックスが好きなら、妹がいつも履いているよ。^^

そういって、妹を紹介してやって。
うっとりしちゃった妹は、ママよりも先に、小父さんの女にされちゃったんだから。

献血家族

2011年11月25日(Fri) 07:36:52

いつものように早めに出勤をすると、
事務所の所長がわたしを呼んだ。
単刀直入だった。

おめでとう。きみと、きみのご家族の血を吸う相手が決まったよ。

えっ。
息を呑んだわたしだったが、来るべきものが来た…という雰囲気で。
びっくりするほど動揺もなかったし、平静に受け止めていた。

いや、きみの奥さん。けっこう人気あるんだなあ。
美人で気だてがいいって評判らしくてね。
あと、年ごろのお嬢さんもいるだろう?それもおおきいみたいだね。

所長はひとり言をいうようにそう呟くと、隣室のドアに向かって、入りなさい、と言った。
入ってきたのは、坂尻さんだった。
いつも身近で業務の補助をしてくれる、年配の男性。
たしか息子と同い年の男の子がいたはずだ。

奥様がすでに、村の顔役のお相手をしていてね。
長いこと、家に戻っていなくて、実質やもめ暮らし…そうだったね?

所長の念押しするような問いに、坂尻さんは穏やかにうなずいていた。
身近な人間に家族や自分自身の血を吸われる。
抵抗がなかったといえばうそになるけれど、
不思議な安堵感を覚えたのも事実だった。
いつも黙々と働く坂尻さんには日ごろから好感を持っていたのは確かだけれど、
それは果たして、安どの理由になるのだろうか?
村の顔役に、奥さんを日常的に「お相手」をさせている―――
「お相手」というのはもちろん、吸血行為のことだろう。
案外と、男女の関係もあるのかもしれない。
第三者のまえでそんなことを上司に口にされているのに、穏やかな顔つきのままの坂尻さん。
妻を寝取られているような事実を明かされながら落ち着き払っている彼が、近々わたしとわたしの家族の血を吸おうとしている。
異常な立場なのに、わたしの気持ちはなぜか、ひどくしっくりと、落ち着いていた。

では、さっそく手続きを・・・
私はこのあと出かけなければならないのでね。
あとはおふたりで、よろしくやってください。

所長は無表情にそういうと、そそくさと席を立っていった。
手渡されたのは、黒の長靴下が一足。
女もののストッキングのように、薄いやつだった。
そういえば事務所のなかで、こんな靴下を履くものが、このごろ目だって増えていた。
だれが仲間になったのか。だれがまだなのか。
おなじ装いをすることが、きっと暗黙の諒解を招くのだろう。

薄っすらとしたナイロンに染まったふくらはぎを、たくしあげたスラックスの下からまる見えにさせると。
坂尻さんはスッと屈みこんできて・・・
くちゅっ。
靴下ごしに吸いつけられた唇が、生々しい音を漏らしていた。
ぬるぬるとした唾液を薄い生地にしみ込ませながら。
坂尻さんの唇が、ふくらはぎをなぞるようにして、這い回る。

キモチわるい、でしょう?

ほろ苦い笑みを浮かべて見あげる彼に、いえいえ、お気の済むように…わたしはさばけた応えをかえしていった。
圧しつけられた唇の両端から、チクチクとした硬質な感触が、滲むように皮膚を冒してきた。

ああ…噛むんですね?

すこし痛いですが…じき慣れますよ。

わたしがゆっくりと頷くと、それに応じるようにとがった異物が皮膚を冒してきた。
ア…
めまいを覚えたわたしは、その場にくずおれていた。
うつ伏せになった姿勢のまま、血を吸い上げる音がチュウチュウと、いつまでも鼓膜を振るわせつづけていた。
獣になった坂尻さんは、それはしつように、唇をなすりつけてくる。
ジュルジュルと汚らしい音をたてながらわたしの生き血をむさぼる坂尻さんに、わたしはなぜか同情と共感をおぼえはじめていた。
もっとお吸いなさい。そんなに喉が渇いているのなら―――
暖かい血液が傷口を通り抜けるたび、慕い寄ってくる唇が、ひどくいとおしく感じられた。

帰宅して、派手に伝線した薄い長靴下を洗濯機のなかに放り込む。
つぎの朝、出勤するまでのあいだに、妻はそれを乾かしておいてくれた。
洗濯機の中身を改めた妻は、吸血の痕跡を残した靴下を見て、きっと息を呑んで、そしてあきらめたように笑ったに違いない。
きちんとたたまれた下着のいちばん上にとぐろを巻いている薄手の靴下には、手に取らなくてもわかるほど、派手な裂け目がついている。
きょう…ちょっと出かけてまいりますので。
おずおずと背中越しに投げられる、とってつけたような妻の声。
そう…いってらっしゃい。
それだけではあまりに他人行儀だと…わたしはひと言つけ加える。
気をつけて。
動揺した面差しをあわてて引っ込めて、妻はそそくさと、家事に戻っていった。

あした奥さんとお逢いしますが…立ち会われますか?
それだけはちょっと、ご勘弁。

きのう事務所で交わしたそんなやり取りが、ふと脳裏をかすめる。
そういえば・・・昨夜の夫婦の営みは、ひどく濃密だった感じがした。


あとがき
前作の続きです。
どうも男性が吸血されるシーンばかりつづきますなぁ・・・。

ライン入りハイソックスの放課後~2 全部咬み破る約束

2011年11月22日(Tue) 07:54:32

きみのハイソックス、全部咬み破ってもいいかい?
仲良くなった吸血少年の坂尻くんは、つぎの日の放課後、出し抜けに僕に訊いてきました。
クラスのみんながまだおおぜいのこっている教室のなかでのことでした。
ああ、いいよ。いつでもねだれよ。
僕がぞんざいにそう応えると、女子のあいだから拍手がしました。
音を控えて両手をぱたぱたさせるだけの、目だたない拍手。
そういえば健也や幹彦も、おなじ拍手を受けていた時があったっけ。
あのときのあいつらとおなじように、照れくさそうに笑っているんだろうな、俺―――
健也や幹彦も教室に残っていましたが、こちらのほうを見るともなく窺っていました。
ちょっとばつが悪そうにしているのを察すると、坂尻君は、行くぜ、と言って、僕を校舎の裏へと連れて行きました。
学生服の黒のズボンをぶきっちょにたくし上げて、
ハイソックスのふくらはぎのあたりを横切る真っ赤な太いラインまであらわにすると、
教室にいるあいだじゅう、ずうっと陰気な顔をしてうつむいていた彼は、はじめて白い歯を見せて笑いました。
水曜って、体育の後も授業あるだろ。
だから我慢していたんだ。
スポーツの得意でない僕は、その日も体を動かすのをずるけていて、
先生もなんとなく、僕のほうは見て見ぬふりをしていました。
彼に汚れていないハイソックスのまま、脚を差し向けてやりたかったので。

なんか、いやらしいぜ…
はじめて面と向かってそういうと、
それまで僕の足許にうずくまっていた彼は、初めて見上げてきました。
ハイソックスの生地によだれをじくじくとしみ込ませるのに、熱中していたのです。
わるいね。でも愉しいんだ。
愉しいの?
うん、愉しい。
じゃ、いいか…
僕はもう片方の脚も、ズボンをたくし上げて、彼のために差し出してやりました。

ちゅうっ。
血を抜かれる時の、無重力状態みたいな感覚に夢中になりながら。
何度も何度も足許に唇を押し当ててはハイソックスを咬み破ろうとする彼のため、
左右の脚をかわるがわる、差し出していきました。
こんど、父さんにも逢ってくれる?
ああ、悦んで。
うれしいね。父さん若い人の血を最近飲んでいないんだ。でもそのまえに僕が…たっぷりと…
血の付いた牙をわざと目の前でむき出す彼に、僕はわざと、きゃ~♪って、悲鳴をあげてみせました。
それくらい、打ち解けたようすになっていたんです。
ねぇ、僕は死んじゃうの…?
けだるい夢見心地のなかでそう呟くと。
きみの母さん、いつも薄いストッキング穿いているんだよね…?
彼は謎をかけるようにそう呟いて。
僕はあいまいに、うなずき返していました。

ハイソックスを全部咬み破らせてくれ。
その約束を賢明な形で読み解いたのは、母でした。
全部咬み破られちゃうまでは、あなた生かしてもらえるんだろうね。
そういった母はたまに都会に出かけて行っては、ラインの入ったハイソックスをなん足も買い込んできて、
僕の箪笥をいっぱいにしていきます。
さいしょに咬まれた日。
彼にねだられるままに、血の付いたハイソックスに短パン姿で、下校したのです。
周りのひとに、とうとう血を吸われちゃったって、見せつけてほしいんだ。
彼の言いぐさを守ったつぎの日から、村の人たちの僕たち一家に対する態度は、あからさまなくらい打ち解けたものになっていたのです。
赤黒く染まった僕の足許を見た母は、一瞬息を呑んで、かるくため息をして、さいごにあきらめたように微笑みました。
今夜は赤飯にしようか…?
ひっそりと問いかけてくる母に、僕はそうだね…ってうなずいて、
照れ隠しに目線を合わせるのを避けるように、勉強部屋へと向かったのです。

ライン入りハイソックスの放課後

2011年11月22日(Tue) 07:39:31

そのころはちょうど、ライン入りのハイソックスが流行っていたころでした。
男子のあいだでも、クラスの五人にひとりはライン入りのハイソックスを履いていました。
体育の時間には、色とりどりのラインの入ったハイソックスの脚が、目いっぱいグラウンドを駈けていたのです。
もっとも僕の中学は田舎だったので、そういうイデタチをしていたのは、
ごくかぎられた都会出身の生徒だけでしたが。

開設されたばかりの田舎の事務所に父が家族を伴って赴任したのは、数か月前。
すでに、夏の陽射しもかげりを帯び始めた季節でした。
その日も体育の時間を終えて、ひとり教室に戻るところでした。
いつもは仲間といっしょに行動するのですが。。。
―――仲間というのは、いずれも都会出身で父親が同じ事務所に勤務している間柄でしたが―――
その日に限って、なんとなくはぐれてしまったのです。
体育館から校舎に戻る途中にささやかな木立ちがあって、いつもそこを通り抜けるのが習慣でした。
木立ちの途中で、僕の足が止まりました。
だれかがうずくまって、体育館の壁にもたれかかっているのです。
同級生の坂尻君でした。
気分が悪いといって、体育の授業を休んでいた彼は、学生服のままでしたが、
ティシャツに短パン姿の僕たちからみると、そのようすもひどくくたびれた、暑苦しいものに映りました。
そのときの僕は、白のティシャツに紺の短パン、黒と赤のラインが入ったハイソックスという姿でした。
ハイソックスの柄なんか、つい最近まで忘れていたのですが。
坂尻君のほうが、憶えていてくれたのです。

どうしたんだい?気分よくないの?
坂尻君はいつも顔色がわるく、性格も暗いほうだったので、
ふだんあまり言葉を交わすことのなかったクラスメイトでした。
じつは吸血鬼だ…っていう同級生もいました。
この街に以前から棲んでいる人のなかには、そう呼ばれている人がなん人かいました。
地元のかたとおつきあいをするのはいいけれど、気をつけてね。
母の口癖でしたから、母もきっとこちらに越してきてすぐにそのことを知ったのでしょう。
だからなんとなく僕たち都会派も、坂尻君のことを避けていたのかもしれません。
坂尻君は僕の問いかけに応えるように、顔をあげました。
そのときチラリと口許から、尖った犬歯が覗いたのです。
わざとだったんだ…あとで彼はそういってくれましたが、不思議と恐怖は感じませんでした。
じつは仲良しの都会派だった健也君も幹彦君も、とっくに彼らに咬まれていたのです。
なんだ。お前まだなのか~?
まるで女の子とのキスの初体験でも自慢するように、
彼らはライン入りのハイソックスをずらすと、
ふくらはぎにくっきり浮かんだ咬み痕を見せびらかしてくるほどだったのです。
なんとなく、血を吸われたことのないこちらのほうが、引け目を感じるような雰囲気でした。

どうしたの?具合よくなさそうだね?保健室行った?
僕は矢継ぎ早に、坂尻君に訊きました。
なんとかしゃべってもらいたい。なぜかそう感じたからです。
やがて正気づいた坂尻君は、眩しそうに僕を見上げてこういいました。
―――きみ、悪いけど血をくれないか…?
けっこう思い切って言ったんだぜ?好きな女の子に告る気分だったよな。
あのころはまだ、「告(こく)る」なんて言い方はなかったはずです。
だいぶあとになって、本人からそのときのことを訊いた時、彼はそういったのです。
院政で言葉すくなな彼にとっては、やっぱり懸命だったのでしょう。
―――血が足りないんだよね?
僕は確かめるように、そう訊きました。
彼は無言でうなずき返してきました。
不思議と、恐怖感はありませんでした。
これでやっと、健也や幹彦と同じ経験をできる…
それがいけない経験だったとしても、むしろ僕の中では一種のそんな安堵感さえ、感じていたのです。
ちょっと待ってね。
僕はそういうと、彼のぼんやりとした視線の前、
ランニング中にずり落ちてたるみかかっていたハイソックスを、きっちりとひざ下まで引っ張り上げました。
―――ハイソックス履いたまま咬ませてくれっていうから、金かかるんだよな~。
健也のそんな呟きを、ありありと思い出したからでした。
うずくまる坂尻君の斜め向かいに腰を落として,ライン入りハイソックスの脚を恐る恐る差し出すと、
彼ははじめて、にっこりとしました。
今まで見たことのない、人懐こい顔つきでした。

チクッと痛みが走り、彼の犬歯が食い込んできました。
皮膚を破られるときの痺れるような痛みが一瞬よぎり、けれども思ったほど痛くはありませんでした。
わるいね。
彼はそういうように、僕の脚を咬みながらちらりと上目づかいで僕の顔色をうかがうと、
僕の脚を両腕でくるむようにして身動きできなくしてしまったうえで、
そのままグッと犬歯を埋め込んでしまったのです。
ああっ。
思わず洩らしたうめき声に、彼は満足したようでした。
しきりに唇をうごめかせ、喉をクイクイ鳴らしながら、
僕の血を啜り取っていったのです。
貪欲な飲みっぷりに、本能的な恐怖もかすめましたが、
むしろ、吸い取られていく血液が皮膚を通り抜けていくときの痛痒いような感覚が心地よい疼きになって、
吸血されてしまうという行為に、僕は夢中になっていたのです。
こっちもいいかな?
さいしょにつかんだ右足を放すと、彼はもう左の足首を握り締めてきます。
痛いほどの握力でした。
ああ、いいよ。
僕は気軽に、応えてやりました。
右足に履いたハイソックスは、たるんでずり落ちて、
咬まれたふくらはぎのあたりには、べっとりとした血のりが、赤黒く滲んでいました。
もう履けないもんな…
思わずそう洩らすと、彼は悪いね、と言いながら、おなじように僕の左足にも咬みついて、
ハイソックスを横切るラインをくしゃくしゃにたるませながら、赤黒いシミで塗りつぶしていくのでした。

都会の子のハイソックスの脚を咬んだの、初めてなんだ。
もっと咬むかい?
いいの?
ご遠慮なく。
僕はそういって、伸ばした脚をうつぶせに横たえてやりました。
軽い貧血のせいか、頭がちょっとふらふらしたけれど。
彼の吸いっぷりだと、まだもうすこしは相手をしてやったほうがいいと考えたのです。
いい舌触りしているんだね。
僕の皮膚が?とおもったら、彼はまだハイソックスを話題にしているのです。
都会の子たちって、みんな女の子みたいにハイソックス履いているだろう?
気になってしょうがなかったんだ。
きみの友だちはほとんど咬まれちゃって、相手がいるものだから手を出せないし。
そうしたら父さんがくじを引き当ててきてね。
くじ引き…?
怪訝そうに顔をあげようとする僕を軽く制した彼は、なおも続けるのでした。

婦人会が、仕切っているんだ。
それでくじ引きで、だれがだれの血を吸うか、決めているんだ。
ほんとうにくじ引きにしているかどうかは、わからないけどね。
うまい具合に、のどの渇いた順番に、割り当てていくんだから。
きみのお父さんの事務所に、うちの父さんが下働きで雇われていてね。
お父さんともよく、話をするらしいよ。
さすがに、お宅の息子さんの血を吸わせてくれ…なんて話題は、まだみたいだけど。
さいしょに血を吸う相手は、顔見知りにすることが多いんだって。
そのほうが、血を提供するほうも安心できるからって。
でも都会の人って、変わっているね。
なかには自分のほうから、見ず知らずのひとのほうがいいって言ってくる人がいたらしいよ。
そのほうが変に気を使わなくっていいからって。
きみの母さんは近所づきあい、都会の人たちだけなんだって?
妹さんも、都会派の子たちとしか、つきあっていないんだってね。
だいじょうぶ。僕たち親子で、みんな堕としてあげるから。
僕の母さんね、吸血鬼になっちゃった村の顔役の爺さんの相手をさせられちゃって。
ほとんど家に帰ってこないんだ。
だからきっとそのうちに、都会のご家族の血にありつけるだろうって、父さん言っていたんだよ。
でもやっぱり…君の血っておいしいね。
ハイソックスも、いい舐め心地だね。
そういえば、咬みつく前に。
坂尻君は僕の履いているハイソックスをもの珍しそうにまじまじと見て、
咬みつく前に、それはしつっこく舐めまわして、
よだれをたっぷりとしみ込ませていたのです。
汗臭くって、嫌じゃない?
僕がそう気遣うのも、聞こえないふりをして。


あとがき
↓の続編にあたります。
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-2699.html

わたしの血を吸った男は、無類の女好きだった。

2011年11月21日(Mon) 07:18:53

首すじにチクリと、かすかな痛みを感じた。
吸いつけられた唇の両端から、尖った異物が皮膚に食い込んできて。
そのままずぶずぶと、根元まで埋め込まれてくる。
血を吸われる…殺されてしまう…
そんな、不吉で危険な自覚とは裏腹に。
淫らな歓びに似たものを。
皮膚の奥までもジワジワと、沁み込まされてゆく。

脳天まで痺れるほどの甘美な毒液と引き換えに、克雄の身体から血潮が抜き取られていった。
働き盛りの四十代の血液が、微かな吸血の音からは想像がつかないほどの貪欲さで、容赦なく搾り摂られてゆく。
克雄は観念したように、眼をつむった。
相手の吸血鬼は、日頃から面識のある男。
そして、無類の女好きで知られていた。
じぶんがこのまま、生命もろとも吸い尽くされてしまったあと。
遺された妻と、年頃の娘たちにどういう運命が待ち受けているのかは、言われなくても察しがついた。
しかし男は田舎者らしい律義さで。
ことばもあらわに、告げてくる。

あんたの女房は、わしのもんだ。
うちの納屋ん中さ、連れ込んで。
たっぷり可愛がってやるからのお。
娘どもも、田楽刺しだ。
嫁入り前の身体、うれしいのお。
いやというほど、慰んでやるでのお。

刺し込まれた牙が。しつように這いまわる唇が。
働き盛りの血潮を、もとめてくる。
克雄のなかで、なにかが入れ替わった。

そうしてくれ。ぜひにも、そうしてくれ。
あんたに味わわれるのなら、家内も娘たちも本望だろう。
女たちの生き血、たんと啖らうがいい。
ほんとうならわたしが生きたまま、あんたに引き合わせるのがすじなのだが。
あー、生命乞いを、受け入れてくれるなら。
あいつらが血を抜き取られるところ、この目で見届けてみたかったな・・・

願いがかなったのは、いうまでもない。
克雄の身体から吸い取った血のりをあやしたままの牙は、
喪服に身を包んだ彼の妻の胸に突き立って。
顔色が悪くなるまで、熟れた血潮を啜り取られていったし。
その場に立ちすくんだまま、悲鳴の漏れそうな口許を両手で抑えながら恐怖に耐えようとした娘たちも。
齢の順に、啖らわれていった。
その豊かな発育ぶりを、節くれだった卑猥な掌で愛でられながら。

シュールな関係。

2011年11月21日(Mon) 07:18:09

冬山で倒れたところを救ってくれた男は、吸血鬼だった。
お礼にわが身にめぐる血潮をそっくり、吸い取らせてやったうえ。
都会の自宅に招いてやった。
其処に棲む妻や娘ったちのうら若い生き血を、あてがうために。
彼らは、いちど招かれた家でなければ、自由に出入りすることはできなかったから。
正直に来意を告げた彼のため。
夫を救ってくれた感謝のしるしにと、妻は自ら柔肌をさらけ出し、
娘たちはブラウスをバラ色に染めてゆく。
処女の生き血が欲しいときには、娘の部屋へ。
淫らな劣情を満たしたいときには、夫婦の寝室へ。
都会のものは、女房を寝取らせるときも、さばけているのだな。
きょうもリビングで新聞を広げながら、夫婦の寝室を明け渡したわたしに、
男はにんまりと、片目をつぶって。
わたしも笑って、ちょっぴり妬けるがね…なんて応えてしまっている。
独り斃れて凍りついてしまうより。
寝床のうえではずむ女体を、夜な夜な鑑賞するほうが。
どれほど愉しめる日常だろう?

村の空気。

2011年11月14日(Mon) 06:05:31

≪夫の述懐≫
村に引っ越して、数か月というころだった。
経営者の生まれ故郷というこの村に新しい事務所が出来、初代の職員はぜんぶで十数名。
そのうちのほぼ半数がこの村の因習に毒されて、
自身も家族も、村に棲む吸血鬼の毒牙にかかったり、
妻や娘、はては息子までも、村の男衆の獣じみた性欲の犠牲に供してしまうと。
むしろそうなっていないものが、健常な立場というものに後ろめたさを感じるようになっていた。

さいしょに毒牙にかかったのは、事務所の責任者とそのご家族だった。
奥さんが話しやすいお人柄だったから。
村のものたちにすれば、そういう言い草だった。
責任者として、模範を示すようにという責任感があったから。
責任者氏にいわせると、そういうことになっていた。

うちは比較的、さいごのほうまで残っていたほうだった。
奥さん、身持ちがよさそうだったからね。
妻を堕とした男衆にすれば、そういう言い草だった。
ちょっと敷居の高い、都会の家の雰囲気がよかったな。
だれかもそんなことを、洩らしていた。
美人ぞろいだったから・・・愉しみをさいごまでとっておいたのさ。^^
べつのひとは、そんなことさえ言ってくれた。

どちらにしても。
周りがそういう雰囲気になってしまうと。
体内に温かい血液をめぐらせているということ自体が、
なんとなく気の重いものになってくるのだから、
周囲の雰囲気というものは不合理で、不思議なものだった。
わたしは職場のなかで。
きみのところは、まだだったっけ?
さりげなくそんなふうに、堕ちることを促されてもいたし。
妻は奥さん仲間のなかで。
あらー、お宅まだなの?早く済ませないと、地元のかたたちとも仲良くなれないわあ。
それとなくそんな言い回しで、早く済ませることを催促されていたし。
息子も娘も、早くクラスの子たちと、打ち解けたくなっていた。
良好な人間関係を作り上げるためになら、ちょっとくらい血を吸われたってかまわないじゃないか。
家族全員が、そんな気分になっていたのだ。


あとがき
あとがつづくかどうか・・・未定です。 笑

だから・・・好き。

2011年11月14日(Mon) 05:11:31

あたしが初めて、血を吸われるときも。
ずうっといっしょにいて、手を握ってくれていた。
あたしが初めて、女にされちゃったときも。
ずうっとそばにいて、手を握り締めてくれていた。
やっと放してもらえたあと、泣いちゃったときも。
だまって、ハンカチを差し出してくれた。
だから・・・好き。

ブログ拍手♪

2011年11月12日(Sat) 10:34:57

ちょっと目を離したすきに、なんと二日間で、拍手が35も!
このごろ注目度が落ちたのか、(もとからないけど 笑)月に数回という悲惨な?こともあるくらいなので。
少なくとも数か月分に匹敵します。(・0・)

時間帯もばらけているし傾向もまちまちなので、複数のかたからいただいたのでしょう。

しいていえば、お隣同士の記事が目だちますね。
こんな感じで、つながっています。

その1
どうもこのところ
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-1370.html
パンストを脱がされて
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-1371.html
薄闇のなかの情事 ~服汚しちまったな。すまないね。~
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-1372.html
2008年3月28日~29日あっぷ


その2
妹を、嫁に娶って
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-1953.html
俺様。
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-1955.html
いよいよ年の暮れ。
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-1956.html
振り袖姿の未来の花嫁を、御挨拶に伴う時。
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-1957.html
2009年12月30日~2010年1月2日あっぷ


その3
抵抗プレイ
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-2445.html
えっちな泥棒
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-2447.html
2011年3月~4月
でもこれは、日付が離れているんです。URLは近いんだけど。いったいなにをやったのかな・・・
お話の傾向は、似てますね~。^^


その4
デニムの半ズボンに、スポーツ用ストッキング
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-2505.html
お見合い写真
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-2506.html
2011年5月30日
この二編は、あるサイトさまの画像に触発されて書いた、同傾向のお話です。^^


その5
純愛
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-2525.html
浸食される家庭 古屋家の場合 3 初吸血
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-2526.html
桜色のストッキングを穿く女
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-2527.html
2011年6月13日
「侵蝕される家庭」では、コメントのなかで次作の「桜色の~」を紹介しています。


その6
後姿~暴兵たちと妻~
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-2538.html
彼女。
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-2539.html
2011年6月21日
前作は、柏木にしては珍しい鬼畜系。次作は、純愛もの。
「彼女。」は、やはり今回拍手をいただいた↓で紹介しています。
ブログ拍手♪
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-2548.html
2011年6月25日


長々と書いちゃいましたが、
「彼女」
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-2539.html
と、
「純愛」
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-2525.html
は、いま読み返しても好きです。

「暴兵~」は、描いた直後はちょっと・・・だったのですが、読み返してみるとなかなかよろしいかな。^^

それと、柏木的に穴場はこれ。↓

汗っかきな少女
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-2555.html
女吸血鬼の好きなお客さま。
ご覧いただいていますか~?

それにしても。
コメント少ないな・・・(;_;)
あと。
今回拍手を頂戴した中で最多の4回を記録したのが、なぜか紹介記事の「どうもこのところ」
でした。^^;

拍手記事からお客様の目線をトレースしたくて書いてみたんですが、うまくかけないものですね~。
(^^ゞ
ではでは。

思惑。 ~美妻の足許~

2011年11月10日(Thu) 05:53:00

いっしょに歩くこの女(ひと)が、
俺の唾液のしみ込んだパンストを穿いているのかと思うと、ひどくゾクゾクしてくる。

いっしょに歩いている妻が足に通しているパンストが、
すぐ傍らの男のよだれでヌラヌラ濡れているのかと思うと、ひどくゾクゾクして来る。

あ~、いやらしいひとたち。
足許が落ち着かなくって、しょうがないわ。
ふたりとも、エッチ・・・

短文。 ~~ハネムーン・ベビィ~~

2011年11月09日(Wed) 07:51:28

ハネムーン・ベビィだね♪
みんながそういって、祝福してくれた。
けれども・・・もしもそれがほんとうならば。
それは、わたしの子ではない。

表向きは、なに喰わぬ顔をしていても。
みんなもその事実を、よく識っている。
それまで汚れを知らなかった花嫁の肉体と、おなじくらいに・・・

気前よさ。いさぎよさ。

2011年11月09日(Wed) 07:48:03

すまないね。喉がからからだったんだ。
こともなげな澄まし顔の悪友の足許には、妻と娘が、気絶したまま転がっていた。
よそ行きのブラウスやスカートを、赤黒い血潮で毒々しく染めたまま。

おかわり、いただくぜ♪
やつは性懲りもなく、わたしのことまで引き寄せる。
ふたりとも、気前よくご馳走してくれたんだぜ?ご亭主も見習うべきだよね?
・・・って、勝手なことをほざきながら。

首のつけ根をチクッ・・・と走る、痺れるような痛み―――
ちゅー・・・と抜き去られる血潮に、顔色がみるみる悪くなっていくのが、感覚でわかる。
美味い。美味いよ…
しんそこ感に堪えたように、やつはわたしの身体を強く強く抱きしめた。

ひざから力が抜けて、尻もちをついてしまった目の前で。
妻と娘は並べられて、気絶したままブラウスをはぎ取られていった。
ちく生。わたしの血はずいぶんと、吸い残しちゃうんだね?
怨みがましい言葉を吐くと。
意外そうな応えが、かえってくる。

サービスのつもりなんだけどな。
たっぷり昂奮して、愉しんでくれよな。
いつもみたいに、やめろ…よすんだ…って、懇願しながらね。

案外女たちも、意外に正気づいているのかも知れなかった。
犯されているさい中、夫や父親のまえで白い歯を見せまいと、必死に口許を引き締めていたのだから。
こんどもいさぎよく…愉しんでしまおうか…?

スラックスの下、ストッキング地の長靴下の脚を隠して。

2011年11月09日(Wed) 07:40:35

スラックスの下、ストッキング地の長靴下の脚を隠して。
真夜中に家を出る。吸血男に逢うために。
通された古びた畳部屋のなか、なにかを探し求めるように、見まわすわたしに。
すべてを見抜いている吸血男は、呟きかけてきた。
さっきまで奥さんの血を吸っていたんだよ。
なんと応えたものか、とっさに言葉を詰まらせたわたしは、あいまいに笑って。
美味かったかね?
そう訊くと。
応えのかわりに目のまえにぶら下げられたのは、肌色のストッキング。
妻の足形を残して、ふやけたようになって。室内の微風を受けてそよいでいた。
ふくらはぎのあたりには、大きな裂け目。そして、赤黒い血のりがかすかに、けれども毒々しく、こびりついている。

しつこく噛んだね?
咎め口調になるわたしに、
ウフフ・・・と照れ笑いする吸血男。
よほど、ご執心なんだね?
問わずにいられないわたしに、
こんど、プロポーズしようと思っている。
ヌケヌケとそんなことまで、口にしている。
応援しちゃおうかな?
冗談ごかしに、そう応えると。
夜だけ、るす中だけ、おいしい所だけいただくよ。
夫婦関係を壊すことなく遂げられる、よこしまな劣情に。
わたしはチン、とグラスを鳴らす。
こちらのグラスには、なみなみとワインが。
けれどもかれのグラスの中身は―――どうやら今宵の獲物から絞り取った血のようだった。

まだ吸い足りないのか?
息荒くわたしの肩を掴まえて、むき出した牙を首すじに近寄せられたとき。
わたしはあきれる想いで、そういった。
犯した女の亭主の血は、格別なんでね。
情交を遂げたのだと聞かされて、血が燃えた。

こぼれた血が、ワイシャツを濡らしている。
帰り道は暗いから、見とがめられることもないだろう?
彼の言い草に、しずかに頷くわたしだった。
もっと愉しむだろう?
わたしのぶきっちょな誘いかけにさえ、まんまと乗って。
吸血男の目線は、薄い沓下に透ける足の甲に注がれていた。

家内のストッキングほどには、愉しくないだろうけど。
スラックスを引きあげて、薄い沓下に透けた脛を見せてやると。
そんなことはないさ・・・
男はスラックスをさらにたくし上げて、ふくらはぎのいちばん肉づきのよいあたりに、唇を吸いつけた。
言葉はまんざら、嘘でもなさそうだ…
そう感じたのは、薄いナイロン生地ごしに這わされた唇が、それはしつような熱っぽさを帯びているのを感じたから。
彼のため履いてきたストッキング地のハイソックスは、噛み破られるまえに、
にゅるにゅると舌まで這わされ、よだれをたっぷりとしみ込まされて、
履き口から脛周り、くるぶしやつま先までと、すみずみまで愉しまれてしまっている。

妻の膚を侵した牙が、わたしのふくらはぎにも食い込んでくる。
チクッとした刺すようなこの痺れを、妻も味わったのだろうか?
器用ななつだ。家内があんたに夢中になったの、判るような気がするな。
あんた、優しいんだな。奥さんがあんたを慕うのが、わかるような気がするね。
ちゅうっ・・・ちゅうっ・・・ちゅぱっ。
わざとらしい音まで立てて、愉しまれてゆくのが。
なぜか自慢に思えるようになっていた。

わたしの血もたいそう気に入られてしまったらしい。
もう・・・かなり貧血になっているというのに。
男はなかなか、吸いやめようとしなかった。
わたしも、つよく抱きすくめられた猿臂を、ふりほどこうとはしなかった。

通された別室で見合わせる、血の気が抜けて蒼ざめた顔と顔。
ごくろうさま。
いいえ、あなたこそ。
しぜんとのは、ねぎらいのことば。
血を吸われるものどうしの連帯感が、夫婦のきずなにべつの色を添えていた。
長かったわね。
なかなか放してもらえなくてね。
奇妙な嫉妬が、やはり夫婦のあいだに別のフィルタで蔽っていった。

スラックスを脱いだまま。
欲情に満ちた猿臂のなかであえぐ妻の横顔に。
さかんな射精が、裂け目を滲ませた長靴下を濡らし、むき出しの太ももに散った。


あとがき
きのうの朝ほぼ描きあげたものに、ちょっと加筆したお話です。


ごうかん。

2011年11月08日(Tue) 07:34:51

おい、だんなさん。今夜遊びに行ってもええか?
奥さんさ、ごうかんすっから。
村の男衆は、いつも言い草があからさまだった。

此処に棲みついた都会の夫婦ものが、土地の人間に受け入れられるには。
奥さんと仲良くすっとこから、始めるだよ。
そう迫られて。
さいしょは文字どおり、強姦だった。
よそ行きのスーツを着崩れさせながら凌辱される妻のようすに、
ズボンを脱がされていたわたしは、勢いのよい射精を、男衆にも妻にも視られてしまっていた。

強姦も毎日のことになると、情が移ってしまうらしい。
強姦に耐えていた妻は、
強姦を受け容れるようになって。
しまいには、強姦されるのを愉しむようになっていた。

だんなさんに悪りぃから、昼間にすっぺか?
ちょっとだけ気の毒そうにわたしの顔いろを覗き込んだ男衆に、
わたしは気弱に、応えていた。
昼間だと仕事にならないだろうから、やっぱり夜いらっしゃい。
昼間されたら仕事にならないのは、わたしのほうもおなじだった。

夜に夫婦の時間を済ませると、
よそ行きのスーツを着て、ひっそりと出かけていく妻―――
寝入ったふりをして、あとをつけていく夫―――
納屋のなか、スリップ一枚にされて、藁まみれになって戯れる妻
そんな妻の痴態を覗き込んで、独り昂ってしまう夫―――

今夜もええかね?
仕事ちゅうにもそんな会話をしかけてくる男衆に。
お待ちしてますよ。
きょうもウキウキとしながら、応えてしまっている。

毒ベビに咬まれた!

2011年11月08日(Tue) 05:55:56

山歩きのさいちゅうに。
藪からヘビが現れて、咬まれてしまった。
痛ッ!
飛び上がったときには、もう遅い。
毒がぐるぐると、全身にまわってゆくのが、ありありとわかった。
あたりには、人っ子ひとり、いなかった。
ここで死ぬのか?
あきらめかけたそのときに、向こうから歩み寄って来る人影。
わたしは懸命に、助けを求めていた。

おや、ヘビに咬まれなすったね?そりゃ大変だ。
男はその場で、わたしのズボンをたくし上げると。
こういうのには、慣れてるんで。
そういうと、傷口に唇をあてがって、毒を吸い出してくれたのだった。
これで助かる―――
その安堵は、つかの間だった。
ちゅうちゅう。ちゅうちゅう。
男はいつまで経っても、吸いやめなかった。

あんた、吸血鬼だったのか・・・?
すっかり顔いろが蒼くなってしまったのが、自分でもわかった。
とにかくきみの生命を救ったのは、間違いないからね。あとは、役得というやつだよ。
男はにんまりと笑いながら、こんどは首すじに唇を吸いつけてきた。
毒ヘビなんかよりももっとたちのわるい、ほんものの毒ヘビが。
わたしの身体にからみついてきた。
ちゅうっ、ちゅうっ、ちゅうっ、ちゅうっ・・・

助けてくれたお礼に、都会の家に招待するよ。
家内のことも、紹介するから。
生き血を吸わせてやることのできる女といったら、あいつ意外にあてがないのでね。
そんなわたしの言い草に、男はくすぐったそうに頷いていた。

ごちそう用意しましたのよ。
それともまずは、おビールかしら?
よそ行きのワンピースのうえにエプロンを着けた妻は、
なにも知らずににこやかに応対していたけれど。
男はスッと妻の傍らに影を寄り添わせると。
いきなり両肩を抱きすくめて、咬みついた。
毒ヘビの牙が、妻のうなじに刺し込まれるのを、
みすみす目の当たりにさせられながら。
わたしは手出しひとつしようとせずに、
妻がヒロインの吸血シーンに、見入ってしまっていた。
じんわりと湧いてくる妖しい嫉妬に、胸の奥をとろ火で焦がされながら・・・

男にいわれるままに、妻のうなじにとりついて。
まだ吸い残した血潮に濡れた傷口を、つよく吸って。
山奥で失くした血を、補うと。
いっぺんに吸っちゃ、だめ。
妻はわたしを巧みに制していた。

浮気相手、家に呼ぶから。
私、男の血を吸うわ。
あなたには、そのひとに奥さん連れて来させるから。
あなたたちふたりで、血を吸って。
そういえば、年ごろの娘がいるって、いってたわ。
ふたりで仲良く、山分けしてね。

まさかうちの妻が浮気をしていたなんて、
夢にも思っていなかったけれど。
生き血にありつけると耳にすると、
咎めだてすることをつい、忘れてしまっていた。
それくらいに。
わたしの喉は、渇きに引きつつっていたのだろう。

そのあとは。
あなたのお兄さまをお呼びしましょう。一家そろって。
そうしたら。
私の兄の家族も招待するわ。
このマンションのひとたちも。
おつきあいの親しい順に、お呼びしましょうね。

男が山奥へと立ち去ったあとも。
都会の郊外のこの街なかに。
吸血の病が、ひっそりと浸透していった。

妻の生き血を吸わせた男

2011年11月08日(Tue) 05:39:17

ひょんなことから吸血鬼と仲良くなって、妻の生き血を吸わせる羽目になった。
事情があって、委細は触れない。
その人がかけがえのない友人であったこと、生命の保証付きで妻を望まれたこと、夫婦で話し合って彼の要望に好意的に応じることにしたことだけを記しておく。
場所は相手の男性の家だった。
なんの変哲もない、昭和のたたずまいを残した二階建ての民家。
その一室でわたしは縛られ、妻は血を吸われた。

妖しく淫らな病をいやすため過不足なく血液を提供する、献血行為。
そういう名目だった。
首筋は怖いから、という妻に。
脚から頂戴する、という男。
服を脱ぐのは堪忍ね、という妻に。
ストッキングのうえから、という男。
かみ合っているようで、すでにいびつになっていたのかも。
賢明な振る舞いのようで、すでに火をつけてしまっていたのかも。

けれどもそうした舞台装置たちに、どれほどの意味があったのだろう?
軽く縛られてじゅうたんの上に転がされたわたしの前。
ソファに腰かけた妻に、男は獣のように息荒く、迫っていった。
噛ませたふくらはぎから、肌色のストッキングはみるかげもなく破れ落ちていって、
だらしなくずり落ちた薄手のナイロンは、高雅な輝きだけをふしだらに滲ませていた。
そのあと首筋に迫らせた牙に、妻はお約束破りですね、と軽い咎めを交えながらも。
お好きなように・・・観念したように、目を瞑る。
喪われた血と引き替えに、良家の主婦の理性はあとかたもなく奪われていた。

はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・
あっ・・・いけないっ。ううぅんっ・・・
はしたない声をあげながら。
ふしだらに悶えてゆく妻を目の当たりに。
求められた血液を、過不足なく提供する
偽りに満ちた謳い文句が、脳裏をかけめぐってゆく。

どうぞ、ごゆっくり・・・召しあがれ。
彼はわたしの縛めを解いてくれたのに。
縛めを解かれた手は、妻の最後の抵抗を抑えつけていた。
含み笑いにゆるんだ唇は、妻の首筋に這い降りていって。
乱されたスカートの裾の奥、むき出しの逞しい腰が、潔い処を踏みしだいていった。
沈み込んだ腰の下、妻は狂わされてゆく―――

いちど許しちゃうと、あとは獣・・・だからね。
淹れてくれた珈琲を、妻とふたり無言で口に含みながら。
お互いの情愛がまだ残されていることを確かめあうように、掌を握り合っていた。
妻の足許から抜き取られた薄手のナイロンを、これ見よがしに見せびらかしながらもてあそんでいる、彼のかたわらで。


あとがき
過去の下書きをみていたら、こんなお話が。
去年の4月25日というメモがあったのでその近辺をさがしたのですが、このお話どこにも載っていませんでした。
よって、ここに書いておきます。
さいごの一行だけは、ちょっと直しました。

懸命?賢明?

2011年11月07日(Mon) 07:12:18


夕暮れ刻の、薄闇のなか。
芝生のうえを駆け抜ける、一陣の風。
伸びはじめた芝生の葉先を大きく揺らした、大またのストライド。
通りすぎようとした人影は、ギクッとしたように、とつぜん立ち止まる。
人影の主は、短パンにハイソックスの少年。
せぃせぃと荒い息に肩をはずませながら、目の前に立ちはだかった黒い影を、びっくりしたように凝視している。
恐怖も忘れて、少年は叫んでいた。

どうしてそんなに、速く走れるの??

黒影の主は、おだやかなよく通る声。
まだ荒い息がおさまらない少年を見おろしながら、息遣いひとつ乱していない。

わしがこの世のものではないからさ。

そっか・・・やっぱり、そういうことなんだ。

少年は初めて、合点が行ったように頷くと。その場で尻もちをついていた。
肩をはずませている荒い息は、まだおさまらなかったけれど。
彼の声色ははずんでいなく、むしろ湿りを帯びた懇願になっている。

いまさらムシのいいお願いなんだけどさ・・・生命だけは取らないって、約束してくれる?
小父さん、血を吸うんだろ?

鬼ごっこは、ここまでかな?

よく通る声はちょっと冷やかすように、うなだれる少年に声を落とした。

小父さんが生き血を欲しがるのは、死にたくないからだろ?ボクだっていっしょなんだ。
終わるまで、大人しくしているからさ・・・

少年の訴えに、男は深々と頷いた。
彼はうずくまる少年の肩に手をかけると、おなじ目線の高さまで腰をかがめて、片方の手の、小指を突き出した。
指きりげんまんが、できるように。
少年はため息をついて、男の指きりに応じていた。

ありがとう。

洩らした声はそのまま、呻き声に塗り変わった。
影が影に重なって、二人ながらに倒れ伏す。
ふたつの影の接点は、影男の口許と少年の首すじだった。
しばらくのあいだ、少年は昂った息を鎮めようと、肩で呼吸をくり返していて、
立てひざをしたまま、噛まれていった―――

ちゅうっ。

唾液のはぜる生々しい音に、眉をひそめる整った目鼻立ちは、薄闇のなかでほとんど塗りつぶされていた。



ふたたび身を起こした少年は、さっきまでとはべつの昂りを帯びた息遣いに喘ぎながら、
口を大きく開けて、けんめいに呼吸をしようとしていた。
男は少年の背中や二の腕を撫でさすりながら、少年の息遣いを支えている。

ひどいや・・・ずいぶん吸ったよね?

非難のこもった詰問に、男は満足げに頷くと。
まだ飽き足らないというように、こんどは少年の足許に唇を這わせてゆく。
深緑に黄色のラインが一本入ったハイソックスが、しなやかな肉づきをした脛から、ずり落ちかかっていた。
男の唇がねっとりと、ハイソックスのうえからあてがわれると。

ああ、ダメ・・・

少年ははげしくかぶりを振って、拒もうとした。
ハイソックスごしに噛みつこうとした牙を、おさめると。
男は、わかったよ、と呟いて、けれどももういちど思いなおしたように、ちょっとだけ堪忍な、といって。
ふたたび唇を、ハイソックスのうえに這わせてゆく。
牙をおさめたままの、よだれを帯びた唇が。
少年の足許をなぞるように、にゅるにゅる、にゅるにゅると這いまわって。
ハイソックスはいたぶりにまかせて、くしゃくしゃになって、ずるずるとずり落ちていった。

わかったよ。好きにしろよ。

少年はいまいましそうに、呟くと。
ハイソックスをひざ下までぴっちりと引き伸ばして。
芝生のうえに、あお向けに寝ころんでいた。
影と影とが、ふたたび接点をもった。
男の唇と、少年のふくらはぎ。
唇はなん度も、しつように吸いつけられて。
吸いつけられた唇は、こんどは違う部位を求めて、あてがわれていった。



三日ほど経った夕暮れ刻。
おなじ芝生のうえを、ひとりランニングする短パン姿が、ふと足をとめた。
そのままゆっくり歩いて、大きな樹の根もとに近づくと、
所在なげに、よりかかった。

やっぱり来たね?約束どおり・・・

少年の見つめる虚空に、おもむろに人影が宿った。

わしが見えるようになったか?

ああ。歓迎はしたくないけどね。
それと、しょっちゅうつきまとうの、やめてくれない?

少年はもう、もの慣れた声色になっている。
言葉づかいはぞんざいだったが、友だちのように打ち解けた口調。
きょうの会合も、あの晩別れぎわに約束したとおりの刻限と場所だった。
ライン入りのハイソックスの足許に注がれる視線をじゅうぶんに感じながら、
少年はこれ見よがしに脚を組んでみせた。
きょうのハイソックスは、白地に青のラインが三本。

噛むんだろ?

わざと迷惑そうに、少年が言葉を投げると。

よく似合うね。

臆面もない声が、投げ返されてきた。

好きにしろよ。練習用のやつだから、なん足も持ってるんだ。

投げ出された脚に、男はそろそろと這うようににじり寄って、
ちゅう・・・っ、と唇を、吸いつける。
足許を包む厚手のナイロン生地の舌触りを、愉しむように。
ねっとり、ぐちゅぐちゅと、べろや唇を、意地汚く這いまわらせていった。

走る速さは尊敬ものだけど、やり口はひどいよね。

少年も、言葉に加減をしなかった。

親御さんにも、すまないね。

男が珍しく、神妙なことを口にすると。
少年は足許にかがみ込む男のまえ、なにかをぶら下げた。
さいしょに襲われたときの、緑色のハイソックスだった。

小父さんの言ったとおりだったよ。
知らん顔して、洗濯機に入れたら、母さんがだまって洗ってくれた。
みんな小父さんのこと、よく識っているんだね。

記念にやるよ・・・という、軽い侮蔑のこもった声に。
じゃあ、ご好意に甘えようか・・・と、男は差し出された靴下を受け取ると。
代わりにこれをやろうか?って。
少年の目のまえに、なにかをぶら下げた。
彼がもってきた贈り物よりも、ずっと丈が長く、薄々の生地だった。

まさか・・・?

そう。きのうきみの母さんが、訪ねてきた。


息子の相手がどんな男なのか、気になったのだろう。
きみと追いかけっこをして、俺が勝って。
どうしてそんなに速く走れるの?って、きみに訊かれたって話したら。
あの子、スポーツに夢中なのって、きかせてくれた。
血を全部吸わせてくれて、吸血鬼になっちまえば・・・俺と同じくらい速く走れるぜ?
俺は、そう言っただろう?
けれどもきみは、それは嫌だって、拒んだだろう?
あくまで人間のままで、勝負するって。
たまに血をあげるのはいいけれど、ボクはスポーツが命だから。
逢うのは週に一回にしてくれよな・・・って、きみがいったことも。
ぜんぶ、聞かせてあげた。

きみの母さんは、いい人だな。
それじゃあご満足できないでしょう?って、
きみがしてくれたように、脚を差し出してくれた。
首すじは見逃してくださいね。お父さんに悪いから・・・って。
その代わり、穿いていた肌色のストッキングを、こんなふうに愉しませてくれたというわけさ。

少年は黙って、その話を聞いていたけれど。

それは小父さんがもらっておけよ。
ボクがもらったって、置き場に困るから。

母親が男の手に残していった恥辱の証拠を、回収しようとはしなかった。
でも・・・。
少年は言いにくそうに、口を開いていった。

母さん時々、訪ねて来るって約束したんだろう?
いまみたいに、そうやって。見せてもらうのは、かまわないかな・・・
小父さん、ずるいね。
吸血鬼にしないって約束は守ってくれそうだけど。
ボクの血管のなかに、毒を混ぜただろう?
ああ・・・でもそのほうが、現実を楽に受けとめられるかもね。
母さんがボクの埋め合わせに、小父さんと逢うようになっても。
ボクの履いているハイソックスと代わりばんこに、母さんのストッキングを愉しむようになっても。
なんだか、受け容れられるような気がして来たからね。
父さんもどうせ、薄々気づいているんだろうね。
ということは・・・
ボクに彼女ができたりしたら、
小父さんに処女の生き血を吸わせるために、紹介しちゃうかもしれないということだよね?
そのときには・・・
若い女の子のハイソックスやストッキングを、たっぷり愉しませちゃうんだろうね・・・
ちょっと無念だけど、まあいいや。
もっとも・・・処女の子がお嫁に来てくれるかどうかは、わからないけどね。

少年はもういちど脚を差し伸べて。
ハイソックスの真っ白な生地が赤黒いシミを拡げてしまうまで、
男の唇に、若い血を吸い取らせていった。

さあ、きょうはもう終わり♪
あしたは母さんを、よろしくね。

なにごともなかったように駈け去ってゆく後ろ姿を、
男はいつまでも、目で追いかけてゆく。

解き放たれた少女

2011年11月03日(Thu) 18:50:10

あたしは、広村麗架。18歳。
都会でまれ育って、パパの仕事の関係で、初めてこの村にやってきた。
村っていうと古びた藁ぶき屋根の家なんかを想像しちゃうけど、
あたしの住んでいる一角は、都会から引っ越してきた人が多くって。
ほとんど都会と変わらない、いま風な家ばかりが建ち並んでいた。
だからふだんは、なんの違和感もなく暮らしていたし。
おなじ二学期の初めに都会から転校してきた優菜ちゃんとは、クラスもいっしょで、
いつもおそろいのブレザーの制服の肩を並べて、登下校をしていたのだった。

その優菜ちゃんが、とつぜん学校に姿を見せなくなったのは、
ここに越してきて一カ月後。ようやく学校に慣れてきたころだった。
それでも先生方はなにも起こらなかったように、淡々と授業を進めていたし。
おなじクラスの子にたずねても、「さぁ~?」って、三つ編みのおさげの髪を傾げるばかり。
思い切って、優菜ちゃんのおうちにも出かけていったけど。
優菜ちゃんのお母さんも、あいまいな受け答えをくり返すばかりだった。
悪い病気にでもかかっちゃったのか?
それとももっと悪い事件とかにでも、巻き込まれちゃったのか?
あたしは時おり独りぼっちで、校庭の隅っこでしくしく泣いちゃったりしていた。

優菜ちゃんのことに、関係あるんだけど。
ママがとつぜん、言いさした言葉に、
あたしはばね仕掛けの人形みたいに反応していた。
パパもママも、このごろ顔色わるいでしょう?そのことにも、関係あるんだけど。
そういえばふたりとも、このごろ妙に顔色が悪くって。
夕食が終ると早々と、寝支度に入ってしまうのだった。
たまらなかったのは、あたしまでさっさと寝かされてしまうこと。
けれどもどういうわけか、そういう晩にかぎって、じつにすやすやと、深く眠れてしまうのだった。
ほんとうは―――がんばって起きていれば、真相はもっと早くにわかったのだろうけれど。
そんなことは、いまのあたしにはもう、どうだっていい。

ママの言い草は、あたしをじゅうぶん過ぎるほど、びっくりさせるものだった。
蒼い顔をしたママは、まるでだれかに言わされているような棒読み口調で、こう言った。

この村は、吸血鬼に取りつかれているの。
パパもママも、それに優菜ちゃんも、吸血鬼に血を吸われちゃったの。
パパは実はこの村の出身で、それは仕方のないことなのだけれど。
関係のない優菜ちゃんまで犠牲になっちゃうのは、あんまりだと思うの。
あなた・・・申し訳ないけれど。
これからすぐに、街はずれの古い洋館のお邸に伺って、
お邸のあるじのおじ様に、お逢いして。
優菜ちゃんの身代りに、血を吸われてきてもらいたいの・・・
そのおじ様は、吸血鬼の一族の長にあたるかただから、
優菜ちゃんをきっと、元どおりにするよう取り計らってくれると思うのよ。

あたしがそのとき、どんなにびっくりして、どんなに腹立たしくって、どんなに情けなくって。
どんなに嫌がったか。
そんなことはもう、おぼろげにしか憶えていない。
血を吸われるなんて、厭!厭っ!って。
ママにすがりながら、泣きじゃくったような気がするけれど。
そんなことも、ふしぎなくらいに憶えていない。
そのときの話題になるといまでもママは、それは誇らしげに言うのだった。

うちの家系の女のひとは、だれもが血を吸われることになっているんだから、
あなた処女のうちに、血を吸われに行ってらっしゃい♪って、ママが言ったら。
あなたとっても嬉しそうにして、ルンルン気分で出かけていったのよ♪

って。
たぶんきっと、それがほんとうのことなのだろう。
だっていまのあたしのなかでは、不快で暗い不確かな記憶よりも、
ママの能天気な言い草のほうが、よほどしっくりくるのだから。
ただよく憶えているのは、その日のためにママが大人っぽいスーツを一着、新調してくれていて。
それはウキウキと、道行くみんなに見せびらかすように。
しゃなりしゃなりとした足取りで、お邸までの道のりを、はずんだ足取りで歩いていったことだった。
いつも履きなれた、チェック柄のプリーツスカートに紺のハイソックスの代わりに、
初めて穿いたタイトスカートの下、薄手の黒のストッキングの足許がすーすーするのを気にかけながら・・・

インターホンごしに、初めておじ様と言葉を交わしたとき。
あたしはきっと、あがっていたと思う。

あの・・・っ。あの・・・っ。
父と母とに言われまして、血を吸っていただきたくって・・・伺いました・・・

って。
たったそれだけの用件を伝えるのに、ひどく手間取っていたから。
きっとそのときは、初めてことの真相を教えてくれたときのママみたいに。
だれかに言わされているような、棒読み口調になっていたに違いない。

ひとりでに開かれた、扉の奥。
古びたアンティークな家具や本棚、そして薄暗い空気の奥に。
おじ様はひっそりと、ソファに深々と腰をおろしていた。
招き入れられたあたしが、初めて踏みしめた深紅のじゅうたん。
そのじゅうたんに、パパやママや優菜ちゃんの生き血がしみ込んでいるだなんて、夢にも思わずに。
足許をぴっちりと引き締めている黒ストッキングのつま先を、器用にすべらせていった。

おじ様はあたしのことを、ほめてくれた。
だって、言葉を交わすことができるから・・・って。
ふつうは相手が吸血鬼だというだけで、怖くなっちゃって。
いつも無邪気で可愛い優菜ちゃんも、すっかり怖気づいちゃって。
あたし怖い!って、逃げまどったものだから。
追いついたまま両肩を抱きすくめると、
もう、有無を言わさず首すじをがぶり!とやっちゃったんだって。

優菜ちゃんはどこにいるの?質問に応えて・・・ってあたしがせかすと。
おじ様は動じることなく、穏やかに笑って。勇ましいお嬢さんだな、って言いながら。
以前のままの無邪気な子だよって、教えてくれた。
さいしょはきゃーきゃー騒いで逃げまわってばかりいたのに、
このごろはおっかなびっくりだけど、会話も交わせるようになったって。
そんな言い草の向こう側に、いつもと変わらない優菜ちゃんがいるような気がして。
あたしはちょっぴりだけど、気が和むのを感じた。
勇ましい・・・どころか。
とっても、とっても、怖かったけど。
会話が途切れたら、おじ様がいまにも襲ってくるような気がして、
あたしは頭をフル回転させて、会話が途切れないように、がんばった。

おじ様はおじ様で、誤解を解こうと必死だったらしい。
いま思いだすと、笑っちゃうけれど。
だけど、あたしのほうだって。
血を吸われたら死んでしまって、吸血鬼にされちゃって。
心の底から、吸血鬼になっちゃって。
おまけに、化けものみたいに毛むくじゃらになっちゃうっ・・・て信じ込んでいたんだもの。

血は吸うけれど、死なせない。
ご両親も近々、体調がよくなるだろうし・・・
お前が心を喪うこともない。
友だちも学校に、戻ってくる。
だれもがきっと、何事も起こらなかったように彼女を迎え入れるだろう。
きみが大人しく、わしの餌食になってくれるのなら・・・

餌食・・・って言葉だけが、引っかかったけど。
あたしは優菜ちゃんが元のまま戻って来てくれるなら、なんにもいらないからって応えていた。

わしは犠牲者の服を血で汚すことに歓びを感じている。
行儀のよくない好みだが、合わせて上手につきあってくれるだろうね?
とか。
きみが脚に通している、黒のストッキングに欲情した。
舌でいたぶったり、噛み破ってしまっても、かまわんかね?
とか。
バラ色のしずくを散らしたブラウスに、破けたストッキング。
そのままの格好で、家に帰してあげるのだ。
父上はなにか仰るかもしれないが、気にならないかな?
とか。

おじ様はそれはくどくどと、ご自分のいけない好みをひけけらかしてきたけれど。
あたしはいっさいその手には乗らないで、怯えたようすを、毛ぶりほどもみせなかった。
好きなように辱めてください。それがあたしの希望です―――
ためらいもなく、あたしがそう言い放つと。
おじ様は初めて、ソファから起ちあがった。

初めておじ様の唇が、うなじを這ったとき。
吸いつけられてきた、干からびたカサカサの唇に、
さすがに心が、震えていた。
ゾクゾクするじゃろう?
おじ様は意地悪にも、そんなことを言って苛めたけれど。
声をあげ放って、泣き叫びたい衝動を、かろうじてこらえていた。
ジャケットを着たままの両肩を、身動きできないほどがんじがらめに抱きすくめられながら。
あたしは立ったまま。というか、立ちすくんだまま。
首のつけ根のあたりに、尖った異物がチクリと突き刺さるのを感じた。
痺れるような疼痛と、じわりと滲んでくる血潮のぬくもりを。
なにも感じまいとしながら、小刻みに震える胸の奥まで、沁み入るほどに感じていた。

心を喪うことはない。
ほんとうに、そうだったのか・・・?
あたしにはちょっぴり、自信がない。
意識は右に左に揺れ動いて。
あたしの身体から吸い取ったばかりの血を、
口のなかでクチュクチュと転がす下品な音に、聞き入って。
思わず・・・もっと吸って・・・って、口走っていたし。
ふらりと頭を揺らして座り込んだあたしを、ソファに腰かけさせてくれたそのひとは。
黒のストッキングの足許に、卑猥に緩められた口許を、迫らせてきて。
飲血のために潤いを帯び始めた忌むべき唇を、
薄手のナイロン生地越しに、ヒルみたいにいやらしく、なすりつけてきたときも。
ハデに破って頂戴ね♪なんて、お願いしちゃったりしていたのだから。
噛み破られたストッキングが、グズグズに弛んで、脛からずり落ちていって。
ふくらはぎの周りをぴっちりと張りつめていた緩やかな束縛感が、他愛なくほぐれていくのがひどく小気味よくって。
あたしは足許に加えられる凌辱をいちぶしじゅう、面白そうに見おろしていた。

優菜に逢いたいか?
おじ様が耳もとで、そう囁いてくれたとき。
あたしは深紅のじゅうたんのうえ、おじ様に抑えつけられていて。
バラ色に染まったブラウスの襟首を、けだるげにくつろげながら。
ええ、ぜひ逢いたいわ・・・って、言っていた。

優菜ちゃんが、もう吸血鬼になっちゃったことも。
それでもまだ、体内にめぐり残している血液を、夜な夜な吸わせるために、このお邸にかよっていることも。
あたしのママが、犠牲になったとき。血を吸われる女の頭数がふえて、負担が軽くなるって、悦んだことも。
麗架ちゃんも、早く血を吸われるようになればいい、って、願っていることも。
おじ様の大好物の処女の生き血と引き換えに、教えてもらっていたけれど。
あたしはちゃんと、納得していた。
だって。
あたしの爪は、さいきんのママと同じくらい、異様に長く伸びちゃっていたし。
あてがわれた鏡のなかに映るあたしの瞳には、紅い輝きが宿っていたから。
心は喪わなかったとしても。
身体と魂は、すっかり吸血鬼の色に、塗り替えられていた。
やっぱり、そうか・・・
毒牙にかけた娘が真相を知ったと察したおじ様が、ちょっぴり神妙なまなざしを向けたとき。
あたしはあきらめ顔で、そうつぶやいて。
それからイタズラっぽく、笑い返していた。

こんなにおいしそうに、吸われる血なんだもの。
血を失くしちゃった優菜ちゃんが、かわいそう。
だから、あたしの血で癒してあげたい・・・って。
あたしは心から、そう願っていた。

久しぶりで会った優菜ちゃんは、いままでとほとんど変わりがなかった。
優菜ちゃんは可愛く無邪気に笑いながら、「血を吸ってもいい?」って、訊いてきて。
あたしはもちろんよ♪おじ様にお願いして、あなたの分を残しておいていただいたの。(#^.^#)
って、ためらいもなく、応えてあげていた。
あたしのうなじにおじ様が自分でつけた傷口を見せて、ここから吸うがよい・・・って教えてくれたのに。
優菜ちゃんは強くかぶりを振って。
あたしも麗架ちゃんの肌を噛みたい・・・って、言ってくれて。
あたしも悦んで、噛ませてあげていた。
麗架のブラウス、もっともっとバラ色にしてあげる。
派手に汚して、帰ろうね♪って。
あたしは頭がぼうっとなって、それでも優菜ちゃんに血を吸ってもらえるのが、嬉しくて。
優菜ちゃんは可愛い唇を真っ赤に濡らしながら、あたしの血を夢中で吸いあげていた。

おい、やり過ぎるなよ。生かして帰す約束だからな。
たしなめたのはむしろ、おじ様のほう。
あたしたちはそれでも、はらはらしているおじ様をしり目に、
吸血プレイに耽ってしまった。
バラ色に濡れたブラウスに、スリットが裂け目にかわったタイトスカート。
おじ様と優菜ちゃんとに、派手に噛み破られたストッキングのまま、家に帰ると。
ママはひと言、おめでとう♪って、言ってくれて。
パパは蒼い顔いろのまま、凄まじい姿で帰宅した娘を、遠くから見守るばかりだった。
眠りに就いたのは、もう明け方だった。
じょじょに戻ってくる体温を、確かめながら。
優菜ちゃんが学校に来れない理由に、ようやく納得がいったのだった。

パパは致死量近い血を、おじ様のために抜かれていた。
おじ様に勧められるまま。
あたしはパパに、献血をすることにした。
麗架がいつも学校に履いていく紺のハイソックスがたまらないって、パパが言っていることも。
おじ様はこっそり、耳打ちしてくれた。
だからあたしは、おじ様のお邸に行かない日の真夜中は。
勉強部屋にやって来るパパを、制服を着たまま、待っていた。
紺のハイソックスを、ひざ下までお行儀よく、ぴっちりと引き伸ばして・・・
ハイソックスを履いたまま、ふくらはぎを噛ませてあげた。
靴下代も、ばかにならないわね・・・
ママはあたしのために買ってきた真新しい紺ハイソと、
じぶんのために買ってきた、てかてか光るストッキングを見比べて。
主婦らしいため息を、ついていた。

パパがあたしの勉強部屋に来ている留守に、
入れ違いにおじ様は、夫婦の寝室に忍び込んで。
おじ様のためによそ行きのスーツに着飾ったママは、
おとがいを仰のけて、おじ様の強烈なキスを、お見舞いされていた。
明け方おじ様を見送るママのスカートのすそに、白く濁った粘液がねばりついているのを。
パパはわざと、気づかないふりをしていて。
ママの肩を優しく抱いて、ごくろうさま♪って、ねぎらっていた。
おじ様がママにするようなことを、パパがあたしにすることはなかった。
だって、処女の生き血は、貴重だったから。

あたしに縁談が起きたのは、高校を卒業するころだった。
この村では、はたちまえに結納を交わすのがふつうだったから、
決して早すぎるとは、思わなかった。
相手は、都会にいたころの同級生の男の子だった。
その子がいいかな?って、思ったのは。
おじ様にその子の家族構成を聞かせたときだった。
彼はあたしと同級生で。
下に妹が、三人もいて。
上から順番に、高1、中1、小6で。
いちどだけ、遊びに行ったことがあるけれど。
お母さんが美人で、娘は3人とも、お母さん似で。
まじめなおうちだから、みんなきっと処女だよ・・・って、おじ様に囁いてみたら。
もう、恥ずかしくなるほど、のりのりになっちゃって♪
村祭りに一家全員を招ぶように・・・って、言われちゃった。

先方のお父さんは、協力してくれるだろうか?
そんな無茶なことを言われても。
理解してくれるんじゃない?
あたしは軽く、こたえていた。
息子の彼女が一家全員を売ろうとしている・・・そんなこととはつゆ知らず、
お父さんは一家でお祭りに来てくれるって、約束してくれた。
指きりゲンマンをした相手の首すじには、綺麗な傷口がふたつ。
目だたない大きさで、それでもちょっぴり、吸い残した血を滲ませていた。
だってあのおうちに招ばれたことがあるのは、あたしだけだったから。
お父さんが息子の彼女に、ちょっとした悪戯をするのを許してあげた見返りに。
あたしは働き盛りの男のひとの濃~い♪血を、たっぷり分けてもらったのだ。
あとはおじ様が、うまく説明してくれるって、約束してくれたから。
あたしはとても、動きやすかった。

村祭りの晩は、それは愉しい夕べになった。
娘たちの頭数が、多かったから。
おじ様は、かつておじ様の奥さんを牙にかけたお仲間をふたり、誘っていて。
高1と中1の妹娘は、このふたりにモノにされていた。
お母さんはお父さんに連れ出されて、事情の説明をお父さんから聞かされて。
夫の言うなりに、浴衣の帯を、ほどかれていった。
さいごにおじ様に噛まれたのは、あたしの彼氏。
噛まれてうっとりとなったあと、じぶんの彼女が犯されるところを。
それはドキドキとしながら、ずうっと、見守ってくれていた。

あなたのパパを説得するの、大変だったのよ。
黒のストッキングの脚に、イタズラしたいって。
それはロコツに、せがまれちゃって。
ご家族みんなの血が、あたし欲しかったから。もう、しょうがなくって。
あなたのいない勉強部屋で、うつ伏せになって脚を投げ出したんだ。
あたしのストッキングをよだれで汚した見返りに、あとでたっぷり生き血をいただいたけど♪
初めて交わしたキスのあと。
そんなあたしの囁きに、彼は恥ずかしいほど、頬赤らめていて。
視てみたかった。
そんなことを、言うものだから。
今夜あのおじ様に、あたし犯されちゃうんだ♪
処女喪失の貴重な瞬間。見届けてくれるよねっ?
言いにくかったことのはずなのに・・・とってもスラスラと、言えちゃった♪

なにも知らない小6の末娘は。
良い子の寝る時間にはもう、寝かしつけられちゃっていた。
それでも・・・お母さんを襲って、身体じゅうの血を舐め尽くしたあとのおじ様に
首すじを吸われちゃっていた。
吸われた血は、ほんのちょっぴりだったけど。
もう・・・おじ様の奴隷どうぜんの身になっていた。
いい子だ、よく寝るのだよ。これでもう、予約ができてしまったのだから。
それに・・・すやすや寝ている子を襲うのは、つまらないからな。
処女を奪うのは、卒業祝いのお愉しみにとっておこうか?
いつもながらのいやらしい言い草を、あたしはいつものように、クスクス笑って聞き入っていた。

それ以来。
彼の一家は交代で、村に遊びにやって来る。
妹娘たちは、お友だちを連れて。
PTAの役員をしてるお母さんは、お母さん仲間を連れて。
お母さんが来るときには、必ずお父さんも同伴なので。
そういうときには、お母さんが襲われている隣の部屋とかで、
黒のストッキングを穿いて、手持無沙汰なお父さんの相手をしてあげたりしちゃっているし。
彼氏が来るときには、当然のマナーとして、彼氏のまえでおじ様に襲われて。
ぐるぐる巻きに縛られて、部屋の隅っこに転がされた彼氏のまえ、
おじ様と、それはえっちに乱れて。未来のお婿さんに、見せつけちゃったりしているし。
あたしのママがおじ様に襲われているときには、パパともウフフ・・・な関係だったり。
村の暮らしは、愉しいよ。
あなたもこんどの秋祭りには、お友だちを連れて遊びに来てね♪


あとがき
某チャットできょう知り合ったあるかたとのやり取りで、こんなお話を描いてみました。^^
いつもながら。
どんどん、えすかれーとしていきますねぇ。A^^;

密室の落花狼藉

2011年11月03日(Thu) 11:09:11

戸惑いながら抑えつけられていった、床のうえ。
誘い込まれた小部屋には、甘美な誘惑が待っていた。
こんな世界に、足を踏み入れてはならない・・・
理性は胸の奥、あきらかにそう叫んでいたけれど。
ハイヒールの脱げたつま先は、陶酔に引きつって。
拒み姿勢もあらわな足許は、薄墨色のナイロンの淫靡な輝きに彩られていた。
惑いながら。吐息しながら。悶えながら・・・
女はどこまでも、堕ちてゆく。
蜜のように甘い、アリ地獄のるつぼへと。 110428 (2) web

あずま屋

2011年11月03日(Thu) 09:48:04

秋風のなか。
少女ははっとして、足取りをとめた。
あら・・・。久しぶり。元気だった?
謡うような声に幻惑された黒影の主は。
それでも少女を、言葉巧みにあずま屋へといざなった。



「こんなところに呼び出して、いったいなんの御用かしら・・・?」



「やだわ・・・っ。あんまりひどいイタズラ、なさらないでね・・・」



いっぱいイタズラされてしまったあと。。
少女はずり落ちたハイソックスをきちっと引き伸ばして、
素知らぬ顔で、あずま屋を離れた。
あたりはいちめんの、秋風。
少女は風の彼方へと、駈け去っていった。
足許にしみ込まされた唾液のなま温かさを、振り払うようにして。




あとがき


>ずり落ちたハイソックスをきちっと引き伸ばして
というくだりで、
ヌラヌラ光るよだれをハイソックスのリブにしつようにしみ込まされてゆく少女が、
屈辱をけんめいにこらえながら、足許を見つめている図を想像できたあなた。
ここの相当コアな読み手でいらっしゃいますね・・・?^^