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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

奪(と)られた妻 ~ひとしの場合~  3 住宅街の公園で

2012年10月29日(Mon) 08:01:43

ブルルルルルルル・・・
愛車のエンジンが轟きを停めると。
あたりはまだ明るいうちとは思われない静寂に包まれました。
ここは自宅からほど近い場所にある、広い公園。
都会の郊外にありがちな、真四角な住宅のすき間に無理やりしつらえられたような一角。
申し訳ばかりに木立ちが佇む、その公園に、
わたしは妻の智美を伴い、降り立ったのでした。

デンさんは、真正面のベンチに腰かけています。
日向ぼっこをしていた老爺が、そろそろ日が落ちたので帰ろうか・・・としているふうにしか、みえませんでした。
もっともその老爺のなりは、街の景色にはおよそ不似合いな、泥まみれの野良着姿でしたが。
都会のどこかに根城を持ったらしい彼は、時おりこうやって、わたしたち夫婦を、あらぬところに呼び寄せるのです。

ベンチにどっかりと腰をおろしたデンさんのまえ。
わたしは妻の細い両肩を抱いて、囁きかけます。

しっかりね。ぼくへの気遣いはいいから、ゆっくり愉しんでお出で。

田舎に同伴して狂わされた智美の身体には、すでに狂疾の血がめぐり始めています。
そう、吸血鬼であるこの老爺は、妻の生き血をぞんぶんに吸い、それと引き換えに淫らな毒液を、四十二歳の一般家庭の主婦の体内に、そそぎ込んでいったのです。

夫の理解のもと、不倫の痴情に耽る都会の人妻―――
それがわたしたち男ふたりが思い描いていた、妻に対する願望でした。
ふたりながら、おなじ女を好きになった。
吸血鬼とはいっても、彼は女を食い物にするだけの男ではありませんでした。
妻への真摯な感情を察したわたしは、妻との間を懸命に取り持つことに腐心して、
彼は彼で、吸血鬼に対して共感を示した私たち夫婦のそうした気遣いに、一定の配慮をする。
そんな関係が、形作られはじめていたのでした。
そういうひとだから・・・
きっと、最愛の妻を、それも夫しか識らなかったはずの妻を、還暦を過ぎようという年配男の劣情に、
すすんで随わせようという意思を、わたしが抱いたのだと思います。
ええもちろん・・・彼に吸血される官能が、わたしを支配したという面も、もちろん否定することはできないのですが。

あなたを裏切ることになってよ?

妻は気遣いに満ちた上目遣いを、わたしに注いでくるのです。

いいとも、きみになら、よろこんで裏切られるさ。

わたしは余裕の笑みで、妻をもういちど抱きしめます。
花柄のワンピースのすそが、揺れ、夕風になびきました。

ロマンチックなのは、其処まででした。

じゃ、車で待っているから。

立ち去ろうとしたわたしのことを、

イイエ。

智美は握ったわたしの手を、放そうとはしませんでした。

あなたも、ごいっしょして。
わたし、あなたの前で、デンさんと愉しみたい気分なの・・・

え?

わたしは驚いたように妻を見ます。
真正面から見返してくる智美の瞳は、蒼白い焔を帯びていました。

ぜひ、そうしてちょうだい。
あなた、自分の奥さんが弄ばれるのを、この目で見届けるのよ。
そのほうがあなたも・・・愉しめるでしょう・・・?

抗すべくもないままに、
ふたりがかりで、縛られて。
芝生のうえに、転がされて。
妻は自分で、ワンピースを引き裂くと。
セクシィなブラジャーをあらわにした胸を見せつけて。
そのブラジャーすら、目の前で剥ぎ取らせて。

がぶり。
食いつかれた首すじから、バラ色の血潮をほとばせると。
わたしの血・・・花柄のワンピースに、似合うかしら。
呟くように、そういいました。
似合うとも、あんたの白い素肌にもな。
デンさんはそういうと、あとはもう息の合ったカップルでした。

それから小一時間というもの・・・
わたしは見せつけられ続けたのです。
びゅうびゅうと吐き散らしてしまった粘液に、スラックスの股間をびしょびしょに濡らしながら・・・


・・・・・・。
・・・・・・。


わたしたち夫婦のうえを、異形の刻が通り過ぎたあと。
ずり降ろされたストッキングを直しながら。
妻は低い声で、囁くのです。
愉しいでしょう?
奥さんが娼婦に化(な)ってくれて、あなた愉しいでしょう?

ああ、、愉しいとも・・・
きみは、素敵な妻だ。いつまでも、愛している。ずっと・・・

でもあたしは、あのひとのことも愛しちゃってるわ。
あなたそれでも、よかったの?

すべてを知り抜いた手指が、濡れたスラックスの股間にまとわりつきました。
しっかりと握りしめてくる掌のなか。
わたしの一物はまたもや、恥ずかしいほどの昂ぶりに、鎌首をもたげ始めていったのです。

奪(と)られた妻 ~ひとしの場合~ 2 都会のマンションで

2012年10月29日(Mon) 07:41:48

1.

その夜わたしは、デンさんと逢っていました。
デンさんは、わたしの生命の恩人。
出張先のとある村里で出逢った彼は、吸血鬼でした。
ほんらいならば一滴残らず吸い取られてしまうはずのわたしの血を。
生き続けるのにじゅうぶんなだけ、体内に残してくれて。
お礼にわたしは、彼の棲む村に、最愛の妻を呼び寄せて。
まだうら若さを宿した、四十二歳の人妻の熟れた生き血を与えたのです。
そして、都会妻の肢体に魅了された彼の劣情の赴くままに、
夫しか識らなかった貞潔をすら、淫らに散らされてしまったのです。

ここは、都会のマンションの一室。
ストッキングを穿いたおなごの脚を吸いたい。
露骨にそんな連絡を寄越したデンさんでしたが、さすがに都会でそのようなあてがそうそうあるわけではありません。
さっそくわたしのところに、連絡を寄越したのです。
折悪しく妻の智美は、不在でした。
わたしは妻の身代わりに、彼の待つマンションへと、ひっそりと出かけていったのでした。
ともかくも、あのどうしようもない渇きを、癒してやる必要をおぼえたので。

とっさに脚に通したのは、紳士用のハイソックスでした。
いまではめったに見かけることのなくなった、ストッキング地のものでした。
紳士用とはいえ、なまめかしいほどの光沢を帯びた薄手のナイロンに、スラックスの足首が透けるのを。
わたしはまるで娼婦のように見せつけて。
彼はものもいわずに、足許にむしゃぶりついてきたのでした。

うつ伏せに押し倒されたじゅうたんの上。
よだれに濡れた唇を、ヒルのようにしつように、這わされながら。
ふくらはぎを締めつけていた薄手のナイロン生地の緩やかな束縛感が、じょじょにほぐれてゆくのを。
真っ赤なじゅうたんに手指の爪を、カリカリと突き立てながら、
妖しい快感に、ひたすら耐えていたのでした。

智美は遅いの。
すでに妻のことは、もう呼び捨てでした。
なぜなら、名義上はわたしの妻でありながら。
智美はもう、彼専用の娼婦に堕とされてしまっていたのですから・・・

都会に戻ってどうにか理性を取り戻した智美は、あの屈辱の宴のことは決して、口にしようとはしませんでした。
けれどもあの熟れた肢体を蔽う柔らかな皮膚は、
突き入れられた牙によって沁み込まされた淫らな衝撃を忘れることがあるでしょうか?
脂の乗り切った肉づきは、夫の前で巻きつけられた猿臂の熱っぽい呪縛から、逃れることができるでしょうか?
いったん汚辱を識ってしまった貞潔を、ふたたび辱められまいとする意志を、守りつづけることができるのでしょうか?

わたしは彼女の厳しい倫理観をまぎらわせるために、彼にせがまれるままに、携帯を取ったのでした。
―――取引先のお通夜に招ばれているんだ。急いで支度をして、出てきてくれないか?
幸か不幸か、娘のひとみは、塾で帰りが遅くなるということでした。


2.

あっ!あなた・・・っ!?
事態を一瞬で察した妻は、両手で口許を抑え、立ちすくみました。
玄関先の板の間に、淡い黒のストッキングのつま先が、寒々と映えていました。
それこそが、この不埒な田舎出の老爺が、しんそこ求めていたものでした。

きみの代役を・・・おおせつかっちゃってね。
すこしのあいだ、愉しませてあげてくれないか・・・?
わたしはやっとのことで、そう言いました。
それは、いまから繰り広げられる儀式の、屈辱に満ちた予感のせいばかりではありませんでした。
失血のため、ほとんど口がきけなくなっていたのです。
血管という血管から血潮を抜き取られてしまったわたしは、いつかデンさんの心中に共感を覚えていたのです。
かれの体内には、うら若い血潮が一滴でも多く、取り込まれなければならない・・・
かれの劣情を成就させることで、血潮の涸れ切ったわたし自身も満ち足りるような・・・そんな錯覚に陥っていたのでした。

伸びてくる猿臂に、妻はとっさに飛びのきました。
虚空を引っ掻いたデンさんの、熊手のような掌を、かわしつづけることはできませんでした。
彼は身体ごと、黒一色の喪服姿の智美に、飛びかかっていって。
妻に対する自らの好意と劣情のつよさとを、全身で露わにしていったのです。

目のまえで繰り広げられるドラキュラ映画のヒロインに妻が選ばれたことに、
わたしは言い知れぬ満足を覚えていました。
胸元に輝く真珠のネックレスを引きちぎられた智美は、
ほどかれた長い黒髪を振り乱しながら逃げ惑い、
「厭ですッ!勘弁してくださいッ!」
とか、
「いけない、主人のまえでなんてッ!」
とか、
「恥知らずッ!」
とか、
かなわぬ抵抗に夢中になり、切れ切れに叫びながらも、
手首を握られ、
肩を抱きすくめられ、
無理やりに唇を奪われ、
音をたてて押し倒され、
ねじ伏せられ、
抑えつけられて。

しまいには、
「あああッ・・・!」
ひと声呻いて、そしてすべてを、思い出してしまったのです。
そう。あの屈辱の儀式で初めて味わった、抗いがたい快感を。
夫の前ですべてをさらけ出し、ありのままの牝にかえってしまう、あの歓びを―――

「あなたっ。あなたっ!あなたあっ・・・ごめんなさい・・・っ」
絞り出すような呻き声が、わたしのまえで見せた妻の最後の理性になりました。
苦悩する整った白い横顔が一瞬覗いて、すぐに伏せてくるデンさんの背中に隠れました。
立て膝をした薄黒のストッキングの脚が、ただじたばたと虚しい抗いをつづける向こう側。
しっかりと結び合わされた唇と唇を、わたしは鮮烈なまでにナマナマしく、想像してしまっていたのでした。

わたしはといえば。
ぐるぐる巻きに縛られて、じゅうたんの上に居心地良く転がされていて。
ただ、妻に対するおぞましい凌辱を、視て愉しむ権利しか、許されておりませんでした。
こういうときほど、ほんの取るに足らない些細なことが、気になるものです。
スラックスを脱がされていたことに、わたしは安堵の念を憶えていました。
むき出しにされた男自身は、恥ずかしいほどに怒張を窮めて、
しまいには真っ赤なじゅうたんのうえ、どろりとした粘液をびゅうびゅうと、吐き散らかしてしまったのですから・・・

おなじ色をした粘液が。
妻の股間の奥をじわじわと染めるのを。
わたしはみすみす、目にする羽目になりました。
彼は妻を荒々しく引きずり回すと。
わざと姿勢を変えて、わたしのために獲物にした女のようすがよく見えるようにしてくれたからです。

無念そうに顔をしかめ、眉を逆立てている智美の首すじに、赤黒く膨れた唇をヌメヌメと這わせたあと。
その唇のすき間から、どきりとするほど真っ赤な舌を、チロチロと覗かせて。
黒の喪服に眩しく映える白い皮膚を、ぬるぬる、ピチャピチャと、
わざとお行儀悪く、ねぶり抜いていくのです。

エエのお。エエのお。あんたの女房の素肌は。なまっ白くて、すべっこくって。
えぇ?あんたも嬉しそうに、〇んぽこおっ立てて・・・女房を乳繰られるのが、そんなに嬉しいかや?

デンさんの辱めは、わたしにも向けられるのです。

これ、なんとか云うたらどうぢゃ?愉しんどるんぢゃろ?え?

畳み掛けるように問いかけるデンさんの声色に、わたしはつい、口車に乗ってしまいました。

はい・・・愉しいです。嬉しいです。
家内の肉体を貴男が気に入ってくれるのが、視ていて無性に惹かれるんです。。

わたしの言葉に思わず顔をそむけた智美の、首根っこをつかまえて。
わざとのように、グイッとわたしのほうへと振り向けさせて。
まんまと術中に堕ちた夫を指さしながら、デンさんはもう得意満面です。

ほれ見ろ。お前ぇの亭主は、変態だ。
お前ぇが犯されるってのに、あんなに悦んでいやがるんだ。
ええ亭主と添うたものぢゃのお。え・・・?え・・・?

あとはお前ぇの身体に訊いてやる・・・そう言わんばかりに、
漆黒のブラウスからはみ出た乳房を、デンさんはじわり、じわりと、責めたててゆきます。
百合の花びらのように気品を添えていた胸元のリボンはむしり取られ、
素肌をかすかに透けさせていた上品な薄手のブラウスの生地は、むざんにむしり取られて、
黒のレエスつきのブラジャーを剥ぎ取られた無防備な乳房は、
その豊かな輝きを喪服の黒い生地越しに、あらわに放っていたのです。

おぉ、旨そうぢゃ。
デンさんは唇をわざといやらしくすぼめて、妻の乳房を口に含みました。
え?あんたの女房、生意気を言う割には淫乱じゃのお。ほれ、乳首が勃っとるわい。
言われるまでもなく、干しブドウのように熟れた智美の乳首は、格好のよい乳房の頂上で、ピンと張りつめていたのでした。
ああ・・・っ。
絶望の呻きをあげて、智美が顔を蔽います。
顔を蔽う両手はすぐに、男の手で荒々しく払いのけられてしまいます。
余計なことするでねぇ!
ビシ!ビシ!
分厚い掌の平手打ちが、智美の頬をなんども過ぎりました。

ああっ!乱暴はよしにしてくださいっ。
思わずわたしが叫ぶと、デンさんは優しい声になって。
でぇじょうぶだ。手加減しとる。わしはおなごには優しいのぢゃ。
ああ、そうでしたね・・・
わたしが思わず声色を和めたほどに、そのときのデンさんはほのぼのとした表情を過ぎらせたのでした。

智美、デンさんの言うことをきいて、お相手をしてあげなさい。
声を低めたわたしに、妻は童女のように素直に、「はい・・・」と応えると。
股ぐらを引き剥かれた黒のパンストを穿いたままの脚を、ゆっくりと、披(ひら)いていったのでした。

ああああああ・・・っ!
すすり泣くような声を、洩らしながら。
視ないでっ!視ないでッ!
わたしへの懇願を、くり返しながら。
男ふたりは、行為のなかでも、見入っていました。

獲物の人妻が振り乱す黒髪の、淫らさを。
食いしばった歯のすき間から洩らされる声の、はしたなさを。
口許からヌラリと垂らしたよだれの、生々しさを。

四十二歳の主婦の足許を淑やかに染めていた薄手の黒ストッキングは、
ずるずると脱げ落ちてゆくにつれて、ふしだらな皺を寄せてくしゃくしゃになってゆき、
腰回りまでまくりあげられたスカートは、ピンク色に染まった筋肉がムチムチと輝くのをあらわにして、
そのうえで、吐き散らかされた男の淫らな粘液を、目いっぱいなすりつけられていったのでした。

あお向けになった妻は、もう恥ずかしげもなく横顔を見せて。
瞳には蒼白い焔がチロチロとよぎり、
細いかいなは夫の前で臆面もなく、のしかかってくる逞しい背中に巻きつけられていったのでした。
まして腰のあからさまな上下動は、わたしとの夫婦のセックスの時にはついぞ経験したことのないほどに、
痙攣に似た激しさと、すき間もなく密着した熱っぽさを見せつけて。
夫であるわたしを嫉妬に焦がれさせ、完膚なきまでの敗北感を与えてくれたのでした。


3.

指切り、げんまん。

ぐるぐる巻きに縛られて転がされた夫の前。
一糸まとわぬ肢体を惜しげもなくさらしながら。
智美はデンさんと、指切りをしていました。
甘えた声色、媚びるような上目遣いは、わたしにではなく、デンさんに向けられたものでした。

しょうもない亭主を縛りあげて、また愉しんじゃおうね♪
つい一週間まえには、夢にも思いつくことのできなかったことを。
智美はわたしに見せつけるように、ごま塩頭の助平爺ぃを相手に、いともやすやすと約束してしまったのでした。

ねっ?あなたいいでしょ?たまにはあなたを裏切っちゃっても。
そうすることであなた、昂奮するんだよね?
智美の浮気を、愉しむことができちゃうんだよね?
言ってみて。智美がほかの男とお〇んこするのが嬉しい・・・って。

媚びるような声色は変わりませんでしたが。
きつく責める目線に、かすかな憐憫とイタズラっぽい意地悪さを湛えて。
時おり乳首を狙う情夫の手をゆるやかに払いのけながら、智美はわたしへの罪のない意地悪を、くり返すのでした。

さあ、言ってみて。

妻の命令どおりに、わたしはくり返すのでした。

ああ、そうだよ。ぼくの妻であるきみが、デンさんに犯されるのがぼくは嬉しいんだ。
見ていて無性に、ドキドキしちゃうんだ。
ぼくはやっぱり、マゾだったんだな。
きみがデンさんとお〇んこするの、もっともっと視てみたい。
デンさんといっしょのときには、結婚していることを忘れて、愉しんでくれないか?

目いっぱいの屈辱の歓びに目をくらませながら言いつのるわたしに、智美はさらに残酷な嗤いを泛べました。

イイエ。
あなたの妻であることは、忘れないわ。
だって、智美は、N嶋夫人として、デンさまに辱め抜かれるんですもの。
N嶋家の恥を、おおっぴらに上塗りさせていただきますからね♪

妻の言いぐさに抗弁もならず、わたしはただ、肯定しつづけざるを得なかったのです。
うん・・・うん・・・そうだね。きみがそう言ってくれるのが、ぼくはむしょうに嬉しいんだよ・・・
胸の内を、限りない歓びで満たされながら―――



あとがき
うーん、マゾですね。。。 (^^)
やっぱりマゾは、イイですね♪

依頼主殿、もしまだこちらを御覧でしたら、ナイショのコメでメアドを教えて下され。
訊きたいことがでてきそうなので。^^

夜道は必ず、懐中電灯をつけて歩くように。

2012年10月24日(Wed) 07:38:47

夜道は必ず、懐中電灯をつけて歩くように。

これは決して、安全のためばかりではなかった。
けれども村人たちは、今夜も灯りを掲げつづける。
その灯を目当てに、血が要りような吸血鬼たちが群がるために。



その少年が通りかかったのは、夕暮れのとばりが下りたころ。
サッカーの練習帰りらしい、白の短パン姿の彼の足許は。
薄灯りの下でも、白のストッキングが眩しく映えていた。
ユニフォームは泥だらけだったけど、この地区の少年たちは皆、帰りには真新しいストッキングを履いて帰ることになっていた。

あっ、吸血鬼だなっ!?
少年は声をあげ、自転車をとめる。
けれどもそこで予想されるような抵抗や揉み合いは、ついに実行されない。
わかったよ。血を吸いなよ。
もの分かりよく自転車を降りた彼は、正面と背後から忍び寄る影たちをまえに、観念したように目を瞑る。

あっ!痛てえっ!もっと手加減しろよなっ。
少年は非難をしたけれど。
それに応えるのは、キュウキュウ・・・ちゅうちゅう・・・という、あからさまな吸血の音ばかり。
あー・・・
つぎに洩れた声色は、どこか弛緩していて。
少年が感じているのが苦痛ばかりではないことを告げている。

もう気が済んだの?まだ足りないんだろ?
ところどころ紅く染まったストッキングを、ひざ小僧まで引き上げながら。
少年はじぶんを襲ったふたりの吸血鬼を、見比べる。
手加減してくれたお礼に、いいこと教えてやるよ。
あと30分、待ってみな。
俺の姉ちゃんが塾帰りに、ここ通るから。
今朝登校してったときには、黒のストッキング履いてたぜ?

ひと言余計よ・・・って、姉ちゃんがしかめ面をするのを予期しながら。
少年は「じゃあねっ」と言い捨てて、勢いよく自転車をこぎ始めた。
白のストッキングのふくらはぎをところどころ染めている紅い斑点が、サドルの両脇で上下をくり返していた。



時折揺らぎながら、ゆっくりと近寄ってくる灯りがひとつ。
それがさっきの少年の姉のものだと、吸血鬼どもは知っている。
ぺろりと舐めた口許には、少年から吸い取ったばかりの血潮が、まだテラテラと光っていた。
自分の体内をめぐる血液を求めて、セーラー服のすき間を侵されようとは、
来週のテストのことで頭がいっぱいの少女は、夢にも思っていない。

「ええーっ!?」
自転車をとめて、少女は叫び、立ちすくむ。
「見逃して・・・もらえるわけ・・・ないですよねっ?」
哀願を交えた問いかけにも、ふたつの影はかぶりを振るばかり。
弟さんがさっき、ここを通っていった。
その言いぐさにすべてを察した少女は、長いおさげをセーラー服の襟の向こうに追いやった。
薄暗いなかでも噛みやすいように、首すじをあらわにするために。

がぶっ。
ぶちり・・・
ひとりは正面から迫って少女のうなじに食いついて。
もうひとりは背後から這い寄って、ふくらはぎに噛みついた。
白のラインが三本走る襟首を、かきのけながら。
揺れるスカートのすそを、かいくぐるようにして。
牙を迫らされた白い膚は、みるもむざんに冒されてゆく。

ちゅうちゅう・・・キュウキュウ・・・
先刻弟を襲ったふた色の吸血の音が、いまセーラー服の少女におおいかぶさる。
ヒルのようにしつように這わされた唇の下。
ばら色のしずくはほとび、襟首を走る白のラインにしみ込んでいって。
黒のストッキングごし刺し込まれた牙に、薄手のナイロン生地は、じりじりと裂け目を拡げていった。

もう気が済んだ?いいこと教えてあげるから。
パート帰りの母さんが、このあと一時間ほどすると、帰ってくるの。
それから30分で、父よ。
父はきっと、母さんが襲われてるところ、見たがるわ。
やっぱ、心配みたいだから・・・
ふたりの血を吸えば、さすがにもう気が済むんじゃない?
きょうもお嫁入りまえの身体を汚さないでくれて、ありがとね。
お礼にまた明日・・・処女の血を愉しませてあげるから♪

おさげ髪をセーラー服の襟に揺らして。
細い肩をリズミカルに上下させながら、
少女は自転車でこぎ去っていった。



カツンカツンと響く、パンプスの足音に。
その背後にちょっと間隔を置いて伝わってくる、革靴の足音に。
ふたりの吸血鬼は顔を見合わせ、にんまりと笑みを交わし合う。

立ちどまったらすぐに、叢のなかに引き入れるだぞ。
だんなは勝手に、あとをついてくるだろうな。
そこで、キヒヒ・・・なに、あちらも心得ているさ。
夫婦で生き血を分け取りか。たまんねぇな。
奥さんは、まわしてもいいって話だぜ?脂の乗り切った、ええ身体しておるそうぢゃ。
だんなもきっと、いつもみたいに悦んで視よるぢゃろ。
ちげぇねぇ。くくくくくく・・・っ。

晩ご飯の食卓には、貧血で顔色の悪い四人が顔見合わせて、
なにごともなかったかのように、いつもの団らんの刻を過ごすのだろう。
勤め帰りを急ぐふたつの足音が、劣情を逆なでさせる男どものすぐ間近に、近寄ってきていた。

残らず、召しあがっていかれましたわ。

2012年10月24日(Wed) 07:13:16

私の手料理、よほどお口に合ったのかしたから。残らず召し上がって行かれましたわ。
満足そうに、ほほ笑む妻は。
黒のストッキングを履いた彼女の足許を、
その邪悪な訪客がもの欲しげに盗み見ていったことを夢にも知らなかった。

よほど美味しかったんでしょうね・・・初美の血。
残らず召し上がって行かれましたわ。
涙ながらに呟く妻の悲嘆は、ながく続かなかった。
黒一色のスーツの下、素肌を蒼白く輝かせる漆黒のストッキングの足許を。
”彼”はやっぱりもの欲しげな目つきで、しげしげと見入っていったのを、妻は夢にも知らなかった。

どうやらお口に合ったみたいだわ。私の血。
残らず召し上がって行かれましたわ。
初美も嬉しそうに、私の血を飲んだのよ。
エッチまでされちゃった・・・ごめんなさいね。
あっけらかんと笑う彼女は、もう別世界の人。

あなたっ。
逃がさないわよっ。
あのひとはもう行ってしまったから、あなたの血は初美と二人で分け取りよっ。
どうせ美味しくないんでしょうけど・・・
残らず飲み尽くしてあげますからねっ。
はい、はい・・・
言うなりになって噛まれていったわたし。
どうやら別世界に移り棲んでも、家族の力関係は変わりそうにない。


あとがき
吸血鬼になっても、仲良し家族であることは変わりがないようで。 笑

10月23日 午後1時半ころ構想。

献血家族 ~変態でも、生きているほうがずっといいわ。~

2012年10月22日(Mon) 04:46:22

目が覚めたときにはもう、喉がカラカラだった。
刻限はまだ、夜明け前―――
若い生き血を求めて、俺は身を起こしていた。

ここは、人間の棲む街。
人知れず吸血鬼と共存が許されているという、俺たちにとってはオアシスのようなところ。
招待を受けた俺は、ぶらりと紹介者のところを訪れて。
紹介者があてがってくれた宿は、ごくふつうの一般家庭だった。

生き血を求めて家のなかをさ迷った俺は、
二階で寝ている少年の、勉強部屋のまえに立っていた。
いっしょに晩御飯を食べながら、冗談を飛ばし合った快活な少年。
人としての愛着はあったが、喉の渇きには代えられなかった。

ギィ・・・
扉を開く音に、少年は敏感すぎる反応を示した。
「だれ?」
「俺だよ」
あらかじめ正体を知られていることに、かえって気安さを覚えていた。
「あぁ、吸血鬼さん。待っていたんだ」
「え?」
ベッドから起き出してきた少年は、まるで昼間みたいな、濃紺の半ズボンにおなじ色のハイソックス姿。
「待っていたんだよ。今夜は来ないのかと思った」
薄闇に透ける少年の横顔が、ひどく大人びてみえた。
「殺さないって約束してくれる?そうしたら暴れたりしないで、血をあげるよ」
「もちろんだ」
”商談”は、いともかんたんに、まとまった。

ふたたびベッドに戻った少年は、あお向けになって目を瞑る。
俺はその神妙な寝姿に覆いかぶさるようにして、少年の首のつけ根に、唇を吸いつけていた。
柔らかな皮膚を通してドクドクと伝わってくる脈動が、あらぬ欲情をそそる。
しみ込ませるようにして沈めていった牙に、
少年はとっさに仰け反り、「あっ」と声をあげ、そしてすぐに、静かになった。
ちゅ――――――・・・
啜り取ってゆく血潮の若いぬくもりが、干からびきっていた俺の胸の奥を、柔らかく染めた。

「小父さん、エッチだね」
少年は怜悧な上目づかいで、からかうように俺を見ている。
ふくらはぎの噛みごたえがまだ、歯のすき間にありありとのこっている。
濃紺のハイソックスにつけた噛み痕から、白い皮膚が覗いていた。
戯れのさいちゅうにずり落ちかけたもう片方のハイソックスをピンと引き伸ばすと、「こっちも噛んで」
彼はいとも、物分かりが良かった。
真新しい厚手のナイロンの、しっくりとした舌触りが、ひどく心地よかった。



「息子の血は、お口に合いました?」
階下に降りていくと、奥さんは気軽に、声をかけてきた。
まるで、「夕べのお食事お口に合いました?」といっているような、ごくさりげない口調だった。
「お口に合いました」
俺は照れ隠しに、エヘヘ・・・と笑いながら応えた。
奥さんは嬉しそうにうなずいて、「それはなによりでした」。
丁寧なお辞儀が、かえってきた。
どうやら俺の、負けらしい。

数年前までは、都会に住んでいたという。
どうしてこの街に移り住んできたのか。
どんなふうにして、吸血鬼の牙に素肌をなじませていったのか。
だれもが決して、語ろうとしない。
「まぁ、暗い話はよしましょうよ」
やんわりと諭すような口調だった。
「あなたはなにも考えないで、わたしの血を吸って、犯してくださればそれでいいんですよ」
あくまで、さりげない口調だった。

びっくりしたのは、夫婦の寝室にお邪魔した時だった。
気を利かして座をはずそうとしたご主人に、
「あなた、行かないでね。せめてドアから覗いてて頂戴ね」
戸惑いを隠せない男ふたりを見比べながら。
奥さんはゆったりと、ほほ笑んでいる。

スカートの奥は、すでに俺の吐き散らかした粘液で、べとべとになっている。
それでも奥さんは、「もっと・・・もっと・・・」と、せがみつづけた。
「主人のよりも、大きいわあ」
その声色は、じつに満足そうだった。
ドア越しに熱っぽく注がれてくるご主人の視線を、くすぐったそうに受け流しながら。
女はしなをつくって、「もっと」と、せがんでいた。

息子が庭先で、覗いていますのよ。
あなた、あの子に大人の男としての手本を見せてあげて頂戴。
主人は夫の手本を、息子に見せていますのよ。
あの子も・・・嫁を貰ったら、わたしと同じようにご馳走しなくちゃいけないんだから♪
俺の背中に、ゆうゆうと腕(かいな)をまわす奥さんは、軽く息をはずませていた。

ええ、そうなんです。
この街に来てから、わたしたち家族は、作りかえられちゃったんです。
気がついたらもう、変態になってしまいました。
でも・・・変態でも、生きているほうがずっといいわ。
あなたも、生きて。あたしたちも、生きるから。

ご主人は、奥さんの振る舞いにじゅうぶん、満足したらしい。
いつでもまた来てくださいと、言ってくれた。
少年は俺と目が合うと、エヘヘ・・・とイタズラっぽく笑って、
いつでも血を吸いに来てねと、言ってくれた。
俺はまた、来るだろう。
変態として生きようとする彼らのために。そして、俺自身が生きるために。

若い看護婦と婦長

2012年10月10日(Wed) 05:54:31

ふ・・・婦長っ!?この患者さん達、みなさん血を欲しがっていらっしゃいますっ!

若い看護婦の坂口梨絵は、白衣姿を縮みあがらせる。
けれども婦長は薄っすらと笑いをうかべて、梨絵の手首を掴まえていた。

そうなんですよ。坂口さん。わたくしたちは患者さんの要望にお応えして、愛の献血に励まなければなりません。
どうか観念なさいな。

五十そこそこにはなる年配の婦長は、若いころの美貌をまだじゅうぶんに残していて。
ハッキリとした輪郭の瞳を怜悧にきらめかせ、身を揉んでうろたえる若い看護婦を逃がすまいと、手首に力を込めた。

婦長?婦長!?あぁ~っ・・・

血に飢えた患者たちに取り囲まれて、四方八方から牙を刺し込まれた若い看護婦は、
白衣のあちこちに血を滲ませて絶句した。

ちぅちぅ・・・きぅきぅ・・・

ひとをこばかにしたような吸血の音が重なると。
坂口看護婦は表情をこわばらせ、頬を蒼ざめさせて。
立ったまま、献血に励みはじめている。

立派よ、坂口さん。初心者にしては、上出来ですわ。

婦長はふたたび薄っすらと微笑むと、患者全員が若い看護婦に向かったことに嫉妬するでもなく、
くるりと背を向けてナースステーションをあとにした。

コツコツ・・・
数歩歩いて自分以外の足音に気がつくと、婦長は振り返った。
そこには自分と同年代の患者の安原の、蒼白な顔があった。

あちらじゃなくって、いいの?

年輩の婦長はむしろ怪訝そうな顔つきで、患者を見つめる。

あんたがいいんだ。

不思議なひとね。

婦長は仕方なさそうに手近な小部屋のドアを開くと、男と二人きりになった。
たまにこういう患者がいるのだった。
天の邪鬼なのだろうか。若いだけの魅力に飽き足らないのだろうか。

あんたのほうが、気分が落ち着く。

訊かれる前から男はそういって、婦長の身体を抱き寄せようとする。

ダメよ。身体だけはわたくし、お父ちゃんのものなんだから。

婦長の左手の薬指には、結婚指輪が光っている。

わかっていますって・・・

男の声はもう、かすれていた。
飢えた唇が純白のストッキングのふくらはぎに擦りつけられる。
カサカサに干からびた赤黒い唇がヒルのように吸いつけられると、
血色の好い婦長の足許を淡く染めた薄手のナイロン生地は、じりじりとよじれ、皺を深めてゆく。
婦長の脚に欲情した唇は唾液をあやして、ヌラヌラと光りはじめて。
純白のストッキングに、じわり・・・じわり・・・と、よだれをしみ込ませてゆく。

やだ・・・
けだるそうに呻く婦長は、にわかに姿勢を崩して床に横たわった。

きゃーっ!

若い看護婦の断末魔に似た悲鳴が、彼方から聞こえてきた。
どうやら隣室の宴は、最高潮に達したらしい。
おぞましい輪姦に身をゆだねる若い肢体が愉悦に染まるのも、時間の問題なのだろう。
事実、ものの数分もすると、「ひっ・・・あう・・・っ」と、猥雑さを含んだ声色が、自覚した淫らさを隠しきれなくなっていく。
たったひとりの患者に迫られた婦長の場合も、さして例外とはいえないようだった。
あっ・・・あっ・・・あっ・・・
吸い出されてゆく血潮を惜しむように、顔を蔽ったまま吸血に応じていった彼女。
「お父ちゃんだけ」というのは果たして、いつも口にしている社交辞令のようなものらしい。
はだけた白衣のあちこちから覗く、むき出しの肩。豊かな胸。そして、ストッキングを噛み剥がれたふくらはぎ―――
献血の夜は、どちらの看護婦の身にとっても、長くなるようだ。

私の彼女のご主人がね・・・

2012年10月08日(Mon) 07:20:22

「私の彼女のご主人がね・・・」
この街に棲む吸血鬼氏は、さりげない口調で、ときどきとんでもないことを口にします。
さっきからずうっと、自分の恋人の話をし続けていた彼の口から、その恋人に夫がいる・・・と告げるのですから。
あまりにもごく当然そうに口にするので、うっかりするとそのまま聞き流してしまうほどです。
「ちょ、ちょっと待ってください!貴方の恋人はだれかの奥さんなんですか!?」
わたしがかりに、そう言ったとしましょう。
彼はむしろ不思議そうな顔をして、「ええ、それがなにか?」と訊き返してくるのです。
そう、吸血鬼と人間とが共存しているこの街では、人妻が生き血の提供相手になることも、ごくふつうにおこなわれているのです。

さいしょは親しい男友達に血をねだるのですが。
もとより一人で相手をしようにも、彼の食欲は旺盛なので、とうてい彼一人の血では足りません。
体調を崩すほど吸われてから初めて、彼は奥さんに”援軍“を依頼します。
「はじめからそうおっしゃってくれればいいのに・・・」
奥さんはそういいながら、むしろふたつ返事で、ご主人の頼みを引き受けます。
いつもより濃いめの化粧をして、よそ行きのこ洒落たワンピースなどを着込んで、出かけて行って。
親友の妻という配慮もあってか、もちろんさいしょのときはごく紳士的な応対です。
家では考えられないほど鄭重に応接された奥さんは、首すじにつけられた噛み痕をむしろ自慢げに、ご主人に見せびらかすくらいです。
ご主人はもとより、なにもかも察しているのですが。
またお招き受けたいわぁ・・・という奥さんのため、親友に連絡を取ってやるのでした。

かりに彼の悪友が奥さんといい仲になってしまったとしても、この街のひとたちのなかで寝取られた夫のことを悪く云うものはいません。
むしろそうすることは、却って賞賛の対象だったりするのですから。
奥さんが吸血鬼に血を吸われたり、情婦にされてしまうことはむしろ、この街では自慢話に属する事柄になっているのです。

都会から移り住んでくる夫婦ものでも、おなじことがいえます。
さいしょはよそよそしかった土地の人間が。
彼の奥さんが血を吸われるようになると、初めて打ち解けるようになって。
それが恋に発展して、夜誘い出された奥さんが朝帰りをするようになると、初めて家を行き来する間柄になって。
夕方になるとそわそわし始めた奥さんを、ご主人がさりげなく送り出すようになると、やっとその街の一員として、認められるようになるのです。

冒頭に登場したくだんの吸血鬼氏、ひとわたり自分の愛人の夫のことを、親しげに語ったあと、こう宣言したのです。
「きみの奥さんも近いうち、ボクの彼女の一人になるのだヨ。^^」


一週間後。
法事の手伝いに招ばれて礼服姿で出かけた妻は、噛み破られた黒のストッキングにひとすじ裂け目を滲ませて、べそを掻き掻き帰宅してきましたが。

翌日には。
ストッキング代、弁償してもらってくるわ!
憤然とそう口にして出かけて行った妻は、首すじにつけられた噛み痕をさりげなく髪で隠しながら、まんざらでもなさそうな顔つきで戻ってきて。

一か月後。
日曜の夕方になりますと、そのときとおなじ黒の礼服をいそいそと着込んで、おめかしをはじめまして。
穿き替えのストッキングを何足もハンドバックに詰めて、玄関で低くて重いエンジン音を轟かせている迎えの車に乗り込んでいきます。
たまの休みはご夫婦で過ごすのがいい・・・そういう吸血鬼氏の配慮で、彼は週末を我慢するのですが。
それに応えてわたしも、彼の運転する黒塗りの車を、玄関先でひっそりと見送るようになっていたのです。
正直なもので。
赴任以来はかばかしくなかった商談が進むようになったのは、ちょうど妻が初めて朝帰りをした日のことでした。

下校を待ち伏せて。

2012年10月07日(Sun) 06:33:58

のどをカラカラにして、道を歩いていたら。
向こうから歩いてくるのは、見覚えのある制服姿。
あらおじ様?どうしたの?
駆け寄ってくる白の夏服姿が眩しかった。
あーっ!わかったっ!
若い女の子の生き血が欲しくて、学校帰りを待ち伏せしようって魂胆ね?
いけないわあ。
少女はあくまでも、あっけらかんと明るかった。
いいわ。あたしが襲われてあげるから。

黒のストッキングの足許に、唇を近寄せたときには。
さすがに「いけすかない」って、顔をしかめたけれど。
腰かけたベンチの前、四つん這いになって。
近寄せていった飢えた唇に、少女は「ウフフ」と笑いながら。
すらりとした脚を、見せびらかすようにした。
肌の透けて見える薄黒のストッキングに、不覚にもつい欲情して、
よだれをたっぷりと、なすりつけてしまっていた。
薄手のナイロン生地は、欲情もあらわないたぶりを受けて、
みるみるうちに噛み剥がれていった。

「いけすかない・・・なぁ」
少女がふたたび、軽い非難を口にしたとき。
たっぷりと吸い取ったうら若い血潮に、俺はしんそこ満足していた。
見るかげもなく裂け目を拡げた黒のストッキングをそのままに。
俺と連れだって家路をたどる少女。
ふしだらな裂け目を滲ませた足許を見とがめた級友に呼び止められたときも。
「いけないイタズラされちゃって、貧血なのよ~。罰として、ガードマン頼んだの♪」
彼女はこともなげに、そう口にする。
あたかも最上級生としての矜持を、守るように。
そう。
彼女の通う女学校は、名門校と謳われた誉れのかげで。
来校してくる吸血鬼をお得意として、うら若い処女の生き血をひさぐ場でもあったのだから。

おじ様に襲われている限り、処女を喪うことはない。
少女はそう、信じ切っていた。
じじつ俺は、彼女の身体をめぐる処女の生き血を愉しむために。
そちらのほうの愉しみは、ひかえるように心がけていた。
けれどもそれがすべてではないことを、彼女はいずれ知ることになる。

卒業式の日。
さいごに身にまとうセーラー服のまま、式場から直接、足を向けてきた彼女。
「待ったあ?」
のどかな声色は、どこまでも無防備だった。
待ち合わせをした納屋のまえ。
俺は卒業おめでとうを言ってやり、それからひと言、つけ加える。
「これからお祝いを、してやるよ。中に入んな」


あとがき
前半を描きかけたのが、先月の24日となっていました・・・
このごろ、サボり気味ですな・・・。(^^ゞ

ある女の一生

2012年10月04日(Thu) 07:50:03

初めて襲われたときも、夫にはなにも告げないで。
それからも男と、逢いつづけて。
男のおもうまま、自分の身体を愉しませて。
あの男と別れて俺と・・・
そんな誘いだけは、いっさい受けつけず、
それでも男とのあいだの子供まで生んで。
その子が美しい娘に成長すると。
男はその娘をも欲した。
白髪頭を掻き掻き、父娘ほどもちがう結婚を、男が申し出たとき。
娘の両親はよろこんで、結婚を承知した。

やっとほんとうの恋人に、出逢えたのね。
この子を末永く、よろしくね。

秘められた近親恋愛を、女は真心から祝福する。
いまだかつて笑ったことのない男は、初めてほほ笑みを泛べて。
そのほほ笑みには謝罪と含羞とが、込められていた。

制服少女に捧げる吸血

2012年10月02日(Tue) 21:58:56

濃紺のプリーツスカートのうえ。
ぎゅっと握りしめたふたつのこぶしを撫でながら。
その老紳士は少女の背後に寄り添うようにして、もう片方の腕でブレザーの肩を拘束している。
少女のうなじに沿わされた唇は、白い皮膚のうえ、ヒルのようにじかに吸いついていて。
さっきから。
チュウチュウ・・・きぅきぅ・・・
耳ざわりで異様なもの音をたてながら、少女の生き血を吸い取っていた。

きちんと着こなしたブラウスの、真っ赤な胸リボンだけが、故意にずらされていて。
第一ボタンを外された胸元が、かすかに覗いている。
柔らかい体温を湛えた髪の生え際を間近に、老紳士はうっとりと目を細めていて。
ただひたすらに、少女の身体を拘束し、握ったこぶしを撫でつづけていた。

いい子だね、よくがんばったね。もういいよ。
解き放たれた華奢な身体は、起ちあがると、ふらふらと二、三歩、歩みを進めたが。
自分の血を吸った男から一刻も早く離れようとする、けんめいの努力を裏切って、
黒タイツのひざ小僧からは、力ががくりと抜けていた。

思うツボ・・・
薄っすらとほほ笑んだ、老いた頬。
老紳士はうつ伏せに倒れた少女に、もう一度近づいて。
まだ恵んでくださる、というのだね?
念押しするように、耳もとに囁きかけて。
悔しげに唇をキュッと引きつらせる少女のうなじに、ふたたび牙を埋めてゆく。
じゃあ遠慮なく、いただくよ・・・
それは嬉しげに、囁いてから。

さて、愉しませてあげたご褒美は、黒タイツのおみ脚・・・というわけだね?
おしゃれだね。お似合いだね。オトナッぽいね。。。
老紳士は少女を褒めながら、黒タイツのふくらはぎに頬ずりをして。
厚手のナイロン生地になすりつけた舌の痕を、粘りつく唾液でじっくりと光らせてゆくと。
ふたたび、飢えた牙をきらめかせて。
黒タイツの脚に、埋めてゆく。

ブチブチブチ・・・ッ
かすかな音を立てて裂けてゆくタイツの生地から。
肢の白さがほんのりと、露出してゆく―――
その肌の白さを、いとおしむように。
老紳士はタイツを引き破り、なおも肢をあらわにしていった。

悔しげに引き結ばれていたはずの、少女の唇が。
吸血魔の目を盗むかのように、愉悦の花を開かせる。
白い前歯を、滲ませて。
ふふ・・・うふふ・・・ふふふ・・・
くすぐったそうに笑みを洩らしつづける少女の声色は、辺りの薄闇を蠱惑的に浸していった。


あとがき
時おりお邪魔させていただいているサイトさま「着たいものを着るよ」の、こちら ↓ の記事に目を惹かれ、描いてみました。
http://manndokusai.blog77.fc2.com/blog-entry-982.html
上から4番目の画像のイメージです。
http://farm9.staticflickr.com/8029/7976360736_349836dd62_b.jpg
一番下の画像も、じつは気になっているんです。^^;

セーラー服と吸血老婆。

2012年10月02日(Tue) 08:02:59

振り乱した白髪に、古くて薄汚れた着物。
干からびきった横顔に、もの欲しげで浅ましいヘラヘラ笑い。
柏木ワールドに登場する、ある意味最強?の吸血鬼です。^^

相手をする女学生は、伏し目がちの、いかにも淑やかそうな娘。
唇をギュッとかみしめているのは、
村の生贄として選ばれたことを親たちに言い含められて此処に来たからなのでしょう。
すべては村のしきたり。
気絶するほど血を吸い取られさえすれば、生きて家に戻れると自分に言い聞かせて、
老婆のあからさまな欲望のまえに、清楚な制服姿をさらしていきます。

対する老婆。
うへへへへへへえっ・・・って。
いかにも嬉しげに、目じりに皺を寄せて。
節くれだった指で、セーラー服の襟首に走る白のラインをなぞっていきます。
「よう来た、よう来た・・・わらわに血を吸われとうなったかや?」
と、潔癖な娘の神経を逆なでするようなあしらいに。
「あの・・・あの・・・どうぞお手柔らかに・・・」
娘の哀願にも耳を貸さず、老婆は見かけに不似合いな膂力で、制服姿を組み敷いていくんです。
「いつまでも気を持たせてわらわを待たせるから、喉が渇いてしょうがない」
そんなことをぶつぶつとつぶやきながら、白いうなじに食いついていきます。
がぶり!
「きゃあ~っ」
たちまち気絶する娘のうえにのしかかって、
老婆はキュウキュウ、ゴクゴクと、生き血を飲み味わっていくんです。
「旨めぇ。旨めぇ。やっぱり若いおなごの生き血は妙薬ぢゃ」
とか、呟きながら。

この老婆、若い女子を襲うときには、性欲もあらわに迫るのですが。
同性愛の嗜好というよりはむしろ、若いエキスに対するフェチズムを持っているようです。
うら若い肢体からその若さを搾り取るようにして、生き血をむさぼってゆくのです。

もとより、「セーラー服と吸血鬼」http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-2898.htmlに登場する初老の紳士のような、律義さや思いやりは、なさそうです。
髪の毛をひっつかんで小突き回して、
セーラー服に血が撥ねるのも構わず生き血をむしり取っていって、
気が済めば、気絶した娘を道端に放り出す・・・そんなイメージです。

↑ はしきたりによって納得づく(納得しているのか?)であらわれた少女の場合ですが、
出し抜けに襲うのも、好きそうです。

こういうときにももちろん、男の吸血鬼よりも容赦ないです。
うら若い制服姿の乙女を目にすると、
「血を寄越せぇ・・・っ」
って、見境なく追いかけまわすのです。
逃げ惑う少女と、追い詰める鬼婆の図です。
文字通りの「鬼ごっこ」です。^^
勝つに決まっている鬼ごっこを制すると、老婆は自分の獲物に対して支配権を行使していきます。
制服姿をいじくりまわされ弄ばれながら吸血されてゆく、いたいけな少女。
痛々しさの中に、毒々しい愉悦が漂うのは、きのせいでしょうか?