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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

斜めに降り注ぐ夕陽のなかで 03

2013年06月30日(Sun) 21:32:48

えっ・・・ほ、本当・・・だったんですかっ・・・?
京極初子は色を喪って、さほど広くない校庭の片隅に追い詰められていた。
夏ものの白のセーラーに、濃紺のスカート。スカートのすそから伸びた脚は、薄黒のストッキングという服装だった。
ふくらはぎにぴっちりと密着した薄手のナイロンは、白い脛を妖しいなまめかしさで染めている。
初子を追い詰めた黒衣の男の視線は、その足許にいっしんに注がれていた。
ククク・・・ッ いい色の靴下を穿いているんだね。
じっくり咬み破って、愉しんで差し上げよう。

えっ・・・?えっ・・・?えっ・・・?
初子は恐怖の叫びをこらえる口許を、両手で覆っていた。
それはしかし、初子を追い詰めた吸血鬼にとっては、むしろ好都合なことだった。

初子

立ちすくむ黒のストッキングの足許にかがみ込むと、男は容赦なく、初子のふくらはぎに、飢えた牙を突き立てた。
牙に含まれた毒は、獲物の理性を、いともあっけなく奪い取ってしまうだろう。

ちゅ、ちゅ~っ・・・
生き血を吸い上げる音が、人影ひとつない校庭に、低く淫らに響き渡った。


みだれ髪を直しながら、初子は薄ぼんやりとした視線を、自分の足許に注いでいた。
―――聞いていたんです。奈子さんから。
思い切ったように切り出した様子を、男はこともなげに、受け流してゆく。
この廃校には、まだ女学生が通ってくるのだな。
ごめんなさい、偽物で。
そういう初子も、奈子とおなじ女装子だった。
偽物じゃない。
男の声色は、断固としていた。
あんたは大事なストッキングを、俺の愉しみのために咬み破らせてくれた。
すまない想いと感謝の気持ちを、お伝えしておく。
言いぐさはあくまでぶっきら棒だったが、それが無器用な彼の持ち味なのだと察すると、初子はそれ以上男を追及するのをやめた。
ごめんなさいね。奈子さんみたいに若くなくって。
そんなことはない。
男が自分の身体から吸い取った血に満足し、なおも欲情を覚えていることを、初子はすぐに察した。
なぜこんなことに、歓びを覚えるのだろう・・・?
初子は自分で自分の態度を訝りながらも、「穿き替え、持って来ているんですよ」といった。

しつような愛撫にさらされて蜘蛛の巣のように裂き散らされたストッキングは脱ぎ捨てられて、草地にとぐろを巻いた。
真新しいストッキングの封が切られ、初子の脛に引き上げられ、ふたたび不埒な唇を這わされて、チリチリに裂かれてゆく。
初子はそのあいだじゅう、くすくす、くすくすと、くすぐったそうな笑いをこらえかねているようだった。


From奈子 to初子
初子さん、こんばんは~
奈子です。お仕事いつも、大へんですね!
きょうはね、びっくりするようなことをお知らせします。
〇〇港に面した高台に、廃校があるのを発見しました!
ふだんは使われていないらしくって、奈子が行ったときには、人は誰もいませんでした。
夕陽のなかでの撮影、とても楽しかったですよ~。

でもね、初子さんはもしかしたら、来ない方がいいかも?
吸血鬼ものがお好きな初子さんなら信じてくれると思うんだけど、
この廃校ね、吸血鬼が出るんです。
廃校だと知らなくて女学生の血を吸いたさにここに来た吸血鬼が、そのまま棲みついているんですよ~。こわ~いっ。
でももし、血を吸われてもいい・・・って思うんなら、ぜひいらしてくださいね。
ここだけの話だけど。
じつは奈子も、吸血鬼さんに、血を吸われちゃいました。ポッ

吸血鬼さんは秘密厳守で、あたしたちの味方になってくれるヒトみたいです。
あたしはさっそく、お友達になりました。
ちょっと貧血になったけど、あたしが回復するまで付き添ってくれて。
それは紳士的な応対でしたよ。
脚フェチさんなのも、気が合ったところかな。
お気に入りの紺ハイソ、咬み破らせてあげちゃいました。 テレテレ
初子さんも、お気に入りの黒スト一足台無しにする価値は、じゅうぶんあるかも。
でも、奈子の彼氏ですので、誘惑だけはしないでくださいねっ。

では~




半日経った、夕暮れ刻―――
海に面したその柵ぎわに佇む女学生姿は、すっかり見慣れた背格好をしていた。
黒のストッキングを穿いた革靴が、ひと足ひと足、足許の下草をよけるようにして校舎に近づいてくる。
吸血鬼さん・・・?
奈子は待ち人の名前を、ひっそりと口にする。

校舎の昇降口

背後に忽然と現れた黒影に、奈子は振り向きもしないで、両手を胸に重ね合わせていた。
いつもあたしのこと、驚かすんだから・・・っ。
息を詰めて怖がる奈子のようすに、男はククク・・・と、いつものような嗤いを洩らしただけだった。
さいしょのときには侮辱としか受け取れなかったその嗤いが、じつは親愛の情の表現なのだと、もう奈子にはわかっている。

初子さん、来たの・・・?
ああ、来たよ。
襲ったの・・・?
ああ、ありがたく頂戴したよ。
恋人の受難をきかされた乙女のように、奈子の心は震えた。
初子さんの血、美味しかった?
ああ、美味しかった。
男の言いぐさが初めて過去形になったことで、奈子の胸に不吉なものがきざしたが、
男はそれと気づいたらしく、すぐに言った。
ちゃんと約束どおり、お家に帰してやったよ。
お礼に黒のストッキング、2足せしめさせてくれた。
男が奈子の鼻先にぶら提げた、戦利品。
それは白い脛をなまめかしく彩っていたとは思えないほどみるかげもなく裂け目を拡げ、ふやけたように初子の脚の輪郭をまだ残していた。
初子さんの脚、綺麗だったでしょ?
奈子の胸のなかに、軽い嫉妬がよぎった。
いまは、あんたのことしか目に入らない。
初子さんにも、そういったの?
もちろん、目のまえの獲物が、俺のすべてだからな。
男はどこまでも、正直だった。
もぅ。
奈子は黒のストッキングに染まった自分の足許を、忌々しそうに見おろした。
それは初子と示し合わせて穿いてきた、おそろいのブランドのストッキングだった。
どうしてこんな不埒なやつのために、わざわざ黒のストッキングなど穿いてきたのだろう?
心のなかで軽く舌打ちをしながら、けれども奈子は、男が足許にかがみ込んでくるのを、止めようとはしなかった。
なま温かい唾液が、奈子の足許を弱々しく包む薄いナイロン生地に、じわじわとしみ込んできた。

奈子は目を瞑って男の行為を許していたが、男の舌がひざ小僧のすぐ下まで迫ってくると、ふと呟いた。
夕暮れの海を見ながら、血を吸われたい・・・
男は今にも奈子の足許に食いつこうとしていたが、むき出した牙をかろうじて収めて起ちあがった。
そうして、奈子の背中に腕を回し、肩を抱きながら、ふたり並んで海の見える柵のほうへと、さほど広くはない校庭を横切っていった。

海を背にしてこちらを振り向いた奈子は、夕陽のなかで影絵のようだった。
軽くウェーブした茶髪が、濃紺の襟首に流れた。
白のラインが三本走る、昔ながらのセーラー服は、地元の中学校のものだろうか?
この街に来て日の浅い吸血鬼には、そこまでの知識はなかった。
どちらにしても、この学校は、廃校―――
そして目のまえの恋人は、その廃校に通学する女学生だった。

柵の前02

逆光になった黒ストッキングの足許は、タイツを穿いているように真っ黒に見えたが、
陽に照らされたふくらはぎは薄手のナイロン生地に、かすかな光沢さえ反射させている。
男は惹きよせられるように、奈子の足許に唇を這わせていた。
初子とおそろいのストッキング・・・だね?
わかる・・・?
ああ、舌触りがいっしょだ。
さすがに・・・通ね。
奈子はわざと舌打ちしてみせたけれど、内心男のフェチぶりに少なからず感心していた。
足許にまとわりつく舌や唇のいやらしい感触から目をそむけるようにそっぽを向きながらも、良家の子女の装いだった黒のストッキングを、男の卑猥ないたぶりに惜しげもなくゆだねていった。
本当はこんなの厭なんだけど・・・貴男だから許してあげる。
恩着せがましくそう口にするのも、忘れずに。

不意に、ぱりり・・・と音を立てて、足許を包むナイロン生地がほつれるのがわかった。
なよなよと頼りない薄手のナイロン生地の感触が、ふくらはぎから剥がれ落ちてゆく。
足許をほどよく締めつけるゆるやかな束縛感が、じょじょにほぐれてゆくのを感じながら、奈子は日常が甘美に崩壊してゆくときの小気味よい解放感を感じていた。

いいわ、その調子、もっと咬んで。もっとハデに破っちゃって・・・

目のまえで貶められてゆくのは、自分だけではない。
草地にあお向けに倒れ臥した自分の傍らで、同時に初子も堕ちてゆくような錯覚に陥りながら、奈子は放心したように呟きをくり返してゆく。
もっと咬んで、もっと辱しめて・・・

彼のなかで、初子さんとあたしの血が、いっしょになる―――。
奈子の頬は、無邪気な少女と変わらない笑みを湛えていた。



初子です。

もう吸血鬼さんから、聞いたかな?
初子も、初体験済ませてきました。^^;
ちょっぴり貧血気味ですが、まだまだ元気っ☆
撮影も手伝ってもらい、さきほど日記にアップしてみました。
もちろん、吸血鬼さんとのイキサツは、伏せてありますヨ。^^
あとで遊びに来てくださいね☆(*^^)v
血を吸われちゃうのはちょっぴり怖かったけど、奈子さんが言うように紳士的なかただったので、さいごのほうはしっかり愉しんじゃっていたカモ?
^^;
どんどん発展していく自分が、怖いです。。。
おそろいのストッキング、時間差で破かれちゃいましたね。
夕方になって、いまごろ奈子さんが襲われているのかな・・・っておもったら、なんだかゾクゾクしちゃいました。

なかなかお逢いできないけれど、おなじ吸血鬼さんに生き血の味比べをしてもらって、またひとつ奈子さんとの距離感が近づいたような気がしています。
いまごろあたしたちの血が、彼のなかで仲良く織り交ざっているんですね・・・
ちょっぴりブキミ。でもなんとなく、というか、むしょうにウレしいです。
ときどき、彼に逢いにあの廃校に登校してもいいですか?
奈子さんの彼氏さんを誘惑したりはしませんので☆
なによりも・・・奈子さんと同級生になりたいので。

さてさて、おイタなおたよりがまた、長くなってしまいました。。
明日もお仕事です。
早く寝ないと~
今夜はお互い、佳き夢が訪れそうですね☆

ではでは。

斜めに降り注ぐ夕陽のなかで。 02

2013年06月30日(Sun) 21:24:25

斜めに降りそそぐ夕陽のなか。
あたしは独り佇んで、あの男を待っていた。
そう。人が吸血鬼と呼んで怖れる、あの男を。。。

待ったわよ。帰りが遅くなっちゃうじゃない。
下校途中の女学生になりきって、あたしは口を尖らせた。
すまないね。
男はさほどすまなさそうな顔もせずにあたしに近づいてきて・・・
もう何時間もまえからそうしているんだと言わんばかりに、
あたしのすぐ傍らに佇んでいた。

高台 佇む後ろ姿


ここは海の高台に面した、中学校の跡地。
あたしはこの廃校に通う女学生で、
男は通学途中の女子生徒の生き血を狙って学校にやってきた吸血鬼だった。
あたしの身体には、男の血が流れていたけれど。
男はあたしのことを、装いどおりの女学生として、遇してくれた。
ふたりのまえに広がる海の水面は、夕陽を映して、赤紫に輝いていた。
夕映えを映した彼の頬ぺたに塗りたくられたあたしの血は、そのとき間違いなく、女の子の血の色をしていた。

かちりと鳴らすライターの音に、
タバコは嫌。
あたしがいうと、男はもの分かりよく、ライターを懐中にしまい込んだ。

暗くならないと、姿をみせることができないの?
あたしがそういうと、
そういうわけでもないんだがね。
男の言いぐさは、どこかさびしげで、負け惜しみのような気がした。

ありがたがりなさいよ。
お気に入りのハイソ履いて待っていてあげたんだからね。
あたしは精いっぱい胸を逸らして、男の高い背丈と対峙しようとした。
紺ハイソの足許を、これ見よがしに見せびらかしながら。

ふふふ。弱みを握られたようだな。
男はあっさりと降参して、あたしにベンチに座るようにといった。
ベンチにくつろぐと、あたしは男のために、ハイソを目いっぱい、引っぱり上げていた。
あたしのハイソを咬み破りたいという、不埒な男を愉しませるために。

ハイソ伸ばし


咬んでも、いいよ。
そう言ったあと。あたしはあわてて、言い直した。
お願い、咬んで。あたしのハイソ、咬み破って・・・って。

クククククッ・・・
くぐもった嗤いを、拡がってくる薄闇に陰湿に響かせて、
男はあたしの足許に、かがみ込んできた。

ああ・・・もうダメ・・・っ。
咬み破られちゃう運命に堕ちたハイソは、真新しいやつで、
あたしのふくらはぎの輪郭を、ツヤツヤときわだたせていた。

ちゅう・・・っ。
男の唇が、いやらしい音をたてて、あたしのハイソをよだれで濡らした・・・

限られたお小遣いをはたいて買ったハイソだった。
たった一回履いただけで破らせちゃうのは、もちろん本意ではない。
けれども男は、あたしの足首をハイソのうえからくまなく舐めて、
ふくらはぎの輪郭をなぞるように、じわーっと舐めあげていった。
テクニックだけじゃない。
ハイソ破りなんて気が進まないあたしのことを百も承知で、
その代わり男は、あたしのハイソを目いっぱい、愉しんでいた。
そこまでされたら・・・され甲斐があるかな・・・って、ついほだされちゃうほどに。


手渡された封筒を、あたしは邪慳につき返していた。
そんなつもりじゃないから。
売春や援交しているみたいじゃん。
ほんとの女の子みたいに、蓮っ葉な言い方で。
あたしは、ふくれてみせていた。

そんなつもりじゃないから。
男は口真似のように、あたしの撥ねつけた言葉をおうむ返しに口にすると。
含み笑いを消さずに、囁いた。
その封筒に入っている金を使いきるまで、俺に破ってもらうためのハイソを買い込むんだな。
・・・。
あたしは淫売みたいな胡散くさい顔つきをして、けっきょく封筒を受け取ってしまっていた。


斜めに輝く夕陽の下。
あたしはふたたび、男に逢っていた。
家族の目を盗んで作った、わずかな時間。
仕事帰りの車は、人けのない舗装道路の路傍に、ひっそりと停まっていた。

ほほぅ・・・
男は感心したようにあたしの足許を見おろして、自分の顎を撫でた。
それが上機嫌のときの癖であるのを、あたしはとうに覚えていた。
服を汚したがる俺の趣味を、あんた憶えてくれていたんだな。
あたしの足許は、いつもと違う真っ白なハイソで、覆われていた。

白ハイソ

きょうは、倒れるまでは、吸わないでね。
ここにはベンチ、ないから。
あたしはそういって、男に背を向けると。
目のまえの電信柱を両手で掴まえて、片足で踏ん張った。
さきに咬ませてあげるほうの右足からは、わざと力を抜いていた。

車のなかにしようか?と遠慮する男に、あたしはいった。
見たいんでしょ?ハイソの白い生地に真っ赤なシミが拡がるところ。
車のなかじゃ暗くって、よく見えないわよ。
さっきから。あたしも彼も、気づいている。
あたしの言葉が、心の底から女言葉になっていることを。

やっ!やだっ!痛っ!!ひどいっ。ハイソ汚れちゃうっ!
くすぐったそうな声をはじけさせながら。
あたしは足許に刺し込まれる痛痒い疼きに、胸をズキズキと昂ぶらせていた。

なん回、咬まれたことだろう?
ひとつひとつの刺し傷は浅く、咬まれる度に痕を消していった。
消えない痕は、ハイソの白い生地のうえに、派手なバラ色を、点々と色づけていった。
さいごに、くらあっ・・・とするほど、あたしの血を引き抜くと。
ひざ小僧から力が抜けて、危うくその場にくずおれそうになるあたしのことを、
がっしりとした腕で、支えてくれた。
男はあたしを電信柱にもたれかけさせると。
男はあたしの身体から吸い取った血潮を輝かせたまま、口許をにんまりと弛めて見せた。
美味しかった・・・?
いつかもおなじ問いを、投げたような気がする。
美味しい。
男の応えは、またもや現在形だった。
まだ、吸うの?帰れなくなっちゃうよ・・・
帰れなくてもいいかも?あたしはそんな不吉な衝動を、すぐさま闇の彼方へと追いやった。
ふふ・・・
男は含み笑いを、消していない。
吸うには吸うが・・・
男の息遣いは、かすかな熱気を帯びていた。
かすかだが、ひどくしつような熱さを秘めていた―――
だしぬけに重ねられた唇を。
あたしは唇で受け止めていて。
女と男のする接吻を、交し合っていた。
熱く、激しく、そして際限もなく・・・・・・

夕陽はとっくに、落ちていた。

斜めに降り注ぐ夕陽のなかで。

2013年06月30日(Sun) 21:18:18

斜めに降り注ぐ夕陽のなか。
紺ハイソの脚がしぜんと歩みを止めて、恐怖にこわばっていた。
セーラー服の肩先に流れる長めのウィッグが、さらさらと頬を撫でるのを感じながら。
あたしはただ立ちすくんだまま、向かい合わせになった校舎とあたしの間に立ちはだかった黒い影を、ただぼう然と見つめていた。


男はいかにも、場違いなかっこうをしていた。
そう、すくなくともあたしは、セーラー服という、いかにも学校にいるひとらしい服装をしていたのに。
その男は黒ずくめのスーツのうえから、真っ黒なマントをまとっていたのだ。
マントの裏地は、鮮やかな真紅。そして胸元のリボンタイも、おなじ色をしている。
まさに、映画なんかに出てくる、吸血鬼のかっこうそのものだった。
異形の装い・・・と言う意味では、あたしに彼を笑う資格はない。
だってあたし、女装子なのだから。

お立ち台


海辺の廃校跡は、かっこうの撮影場所だった。
だれも訪れる人のないその場所に佇むのは、草深くなりかけた校庭の向こうにそびえる、鉄筋コンクリートの校舎(だったもの)だけ。
そんなロケーションが気に入って、あたしは仕事帰りに時折、この場所を訪れるようになっていた。
いままで人影らしきものに出逢ったのは・・・そう、今回が初めてだった。

女装さん・・・だね?
そのものずばりな口調に、あたしはすんなりと頷いていた。
自分でもびっくりするくらい素直な態度で、そうしていた。
吸血鬼さん・・・ですね?
あたしは強いて、口許に笑みを浮かべようと努めた。
努力はほんのちょっとだけ報われて、男に投げた言葉の語尾が、すこしだけ和らいだものになっていた。

この服装じゃ、すぐにそうとわかるな。
男はちょっぴり苦笑しただけで―――恐ろしいことに自分の正体を否定しようとしなかった。
なり切っているつもりなのか?それとも本物なのか?あたしには判断がつかなかった。
男は言った。
女学生の血を吸いたくて訪ねてきたのだが、お門違いのようだったな。
此処が廃校だったとは知らなかった、と、男は言った。
ええ廃校なんです。
あたしは言った。
廃校だから、あたしみたいな偽女学生でも、いいのかな・・・って。

よくお似合いだよ。
偽ものなんかじゃない。

男は間髪入れずに、そういった。
本心からではないにしても、マナーはわきまえているみたい。
ちょっぴりだけど、男と心が交わるのを感じた。

暑くないですか?そのかっこうで。
一歩だけ、歩み寄ってみた。
そんなことはない。わしの身体は、冷え切っているのだから。
応えは、ちょっとだけ悲しそうな口調だった。
だから、女の子の血を狙うんですね。
男は頷きさえしなかった。

狙われた子のこと、かわいそうだなんて、思わないんですか?
勇気をふるってぶつけたあたしの問いに、ふつうの吸血鬼なら、いうだろう。
「あんたはステーキや焼き魚を食べるとき、豚や魚のことをいちいち気の毒だなんて思うかい?」って。
けれども彼の態度は、ちょっとちがっていた。
おなじ人間だからね。
それはすまないと思っている。親のことを考えることもあるよ。
だからたいがいは、ちょっと貧血になるていどだけいただいて、放してやるんだ―――その街には、その日限りでいられなくなるけれど。

じゃあ、女の子を襲うたびに居場所を変えて・・・?
ああ。
大へんね。
自然なやり取りに、気持ちはすっかり落ち着いていた。
女の子の血じゃないと、いけないんですか?
そんなことはない。
飢えたら見境がつかなくなる・・・?
おっと、手きびしいね。
男は苦笑いするばかりだった。
ごめんなさい。
素直に詫びるとあたしは、思い切って言った。
あたしの血では、いけませんか?

男だけど・・・って、卑下するあたしに。
あんたはちゃんとした女学生だ。
間髪入れず、彼はこたえた。
この学校の女子生徒として、貴女を遇したい。
男が口にした「あなた」という言葉。
きっと「貴女」と書くのだろうって、あたしはかってに想像した。

近寄ってきた男は意外に長身だった。
男としても背たけのあるはずのあたしが、見あげるほどに偉丈夫だった。
見あげるほど近くに寄って来たのに、不思議と恐怖は感じなかった。
制服、汚れちゃうかな。。
あたしがちょっとだけ、気にすると。
咬むのは脚にしよう。
男はそんな気遣いをしてくれた。
ベンチに腰かけるあたし。足許にかがみ込む彼。
つかまえられたスカートのすそをちょっとだけたくし上げると、
太ももに、唇の熱さが吸いついてきた。
ひっ。
さすがに、声をあげちゃった。本物の女の子みたいに。

あっ、あっ。あ・・・っ
上ずった声色の下。
チューッ、ってかすかな音をたてながら。
熱く吸いつけられた唇が、温みを帯びた血潮を、吸い上げていった。
クラクラした。
不思議に痛みは、感じなかった。
ただ、疼きに似た痛痒さが、身体じゅうをぐるぐるとまわりはじめていた。
そう、毒がまわるみたいに。
失血のせいなのか。昂ぶりのせいなのか。
あとで男は、そんなに吸っちゃいない、って、言っていたから。
たぶんあたしはあのとき、たしかに昂奮していたのだろう。
血を吸い取られることが、昂ぶりにつながることなのだと。あたしは初めて気がついた。

目をあげると、男の顔が間近にあった。
あたしから吸い取った血潮が、彼の唇に、夕陽を受けてチラチラと輝いていた。
美味しかった?
というあたしに、
美味しい。
男のこたえは、現在形だった。
あんたの身体に秘められたその美味しさを、もっと味わいたい。
顔にはそんなふうに、ありありと描いてあるようだった。
ほんとうは首すじ、咬みたいんでしょ?
許してくれるのか?
制服汚さないって約束してくれたら。
約束しよう。わたしは慣れている。
男の言いぐさを、あたしは信じることにした。

目を瞑ったあたしが感じたのは、うなじのつけ根にめり込んでくる尖った異物の感触―――
そいつは痛痒い疼きを皮膚の奥にしみ込ませてきて、あたしは紺のハイソックスを履いた脚を、いびつにくねらせていた。
くすぐったいのを、ガマンするみたいにして。
吸いつけられた唇の柔らかさ。なま温かさ。
男どうしとは思われない、ねっちりとした唇の愛撫。
男が本気を出していることが、強く抱きすくめられた腕から伝わってきた。
夕暮れのベンチのうえ。
あたしたちは女と男の恋人どうしみたいに、互いの背中に腕を回して、吸われるままに許しつづけていった。

貧血・・・?
気遣う声に、重たい眩暈を振り払うようにかぶりを振ると。
こんどは、ハイソックスの脚を、おねだりされた。
あたしが遠慮しているのをいいことに、そこまでつけ入るの?
そんな思いを込めて、ちょっぴりきつめに睨んであげたのに。
男はぬけぬけと、言ったものだった。
相手の服を汚すのが趣味なのだ。わかってくれるね・・・?
あのときあたしが頷いちゃったのは、なぜなんだろう?
セーラー服の襟首を汚さずに血を吸い取ってくれたお礼に、ハイソックスを咬み破ってもいいって応えていた。
そしてすぐに、言い直していた。
お願い。ハイソックスを咬み破って・・・

紳士的な仮面の下からむき出しにされた男の欲情は、打って変わって貪婪だった。
ハイソックス越しに咬み入れられた牙は、チュッとひと口だけあたしの血を吸い上げると、
刺し込まれた傷口から引き抜かれて、こんどは別の部位を狙ってくる。
なんどもなんども、咬ませてしまった。
それは、制服の一部を侮辱する行為なんかではなくて、間違いなく愛情表現なんだと、あたしは感じた。
だから、もっともっと、咬ませてあげたいと思っていた。
気がつくともう、彼が吸いやすいようにと、自分から脚をくねらせて、脚の向きや角度を変えてやっていた。
真新しいハイソックスの丈が脛の半ばまでしか丈のないのが、もどかしいくらいだった。
あたしは貧血に耐えながら、それでもぞんぶんにお相手をして、悦んでもらおうと懸命になっていた。

脱がしたり、しないんだね。
というあたしに、
女として遇したい・・・といったはずだ。
男はしずかに、応えた。

よかったら時々、ここで散歩を愉しむとよい。
お望みならば、ごいっしょしよう。
男の囁きに、あたしは黙ってうなずいて。
そしてすぐに、言葉を添えていた。
お願い。また逢って。あたしの血を、もっと愉しんで・・・


校舎といっしょ 02

「ボク知らないよ」 ~母の手引きをする少年~

2013年06月18日(Tue) 06:36:30

こげ茶のロングスカートの下。
濃いグレーのストッキングに包まれたくるぶしに、男は渇いた劣情を感じた。
女のあとを尾(つ)けると、そこは都会から来た一家の新築の一軒家。

よそ者か。夜這いはなんねぇな。

あきらめてきびすを返そうとしたそのときに。
声をかけてきた少年がいた。
濃紺のジャケットに半ズボン。おなじ色のハイソックス。
都会の学校に越境入学している、その家の息子だった。

小父さん、母さんのこと興味あるの?

え?

訊き返そうとする間もなく、
少年は信じられないことを口にした。

うちに入れてあげるよ。ボク、母さんが押し倒されるところ視たいんだ。

喉から心臓が飛び出すんじゃないかと思うくらい、昂奮した。
夜這いならいままでも、なん回も遂げてきたはずなのに。
少年は家のカギを開けて男を引き入れると、声をひそめてこういった。
「ボク勉強部屋に行くから。母さんの部屋は、ボクの部屋の隣だよ」
ギシギシと階段をきしませてあがっていく少年について、足音をひとつにして女の部屋を目ざした。
できればあの濃いねずみ色のストッキングを穿いたままでいてくれないか・・・?
男は妙なところに、執着をした。
「じゃあね、がんばって」
少年は男の背中を押すようなしぐさをすると、自室に消えた。
男は荒くなる息を沈めようとし、それが無理とわかると、自分のなかに踏ん切りをつけて、母親の部屋のドアを開いた。
振り向いて息をのんだ母親は、外出着のままだった。
濃いねずみ色のストッキングも、穿いたままだった。

男の手でずり降ろされてくしゃくしゃになったねずみ色のストッキングは、
足首までたるんで、ふやけたみたいになっていた。
着衣を堕とされた女は、抱きすくめられた腕のなか、唇を重ねながら、堕ちていった。

部屋を出るとき、ほくほく顔になっているのが自分でもわかった。
女はまだ、放心していて、大の字になってあお向けになっていたけれど。
気づかい無用と、そのままにしてきた。
部屋から出てきた少年に、手にぶら下げた濃いねずみ色のストッキングを見せびらかして。
「ありがとよ。愉しんだかい?」
冷やかすように言葉を投げると、女は母親の目に戻って、怒りを帯びた視線を息子に向けた。
「ボク知らないよ」
少年は怯えたように、母親に応えた。

そのあと母子がどうなったのか、男はしらない。
けれどもあのときの柔肌がどうしても気になって、
それ以上に、女ひでりがひどくなって、
男はふたたび、あの家のドアをノックしていた。
少年は無表情に、血色のよくない顔をあげ、黙って男を迎え入れた。
足音を忍ばせて階段を昇る濃紺のハイソックスの足取りに、男はすがりつくような目をむけた。
階段のなかほどで。
男はやおら手を伸ばして、少年の足首を掴まえると、
ハイソックスのふくらはぎに、唇を這わせていた。
リブ編みの丈夫なナイロン生地のしなやかな感触に、かすかな唾液が重なった。
「どうしたの?」
少年は怪訝そうに振り向いたけれど、やめさせようとはしなかった。
「そうする人、たまにいるから」
とりなすように、そういうと、少年はふたたび、階段を軋ませ始めた。

ドアを開けたとき、少年はまだ男の傍らにいた。
「お内儀さん、きょうもねずみ色のストッキングなんだね」
女相手には、大胆になれる。男がぬけぬけとそういうと、女はまた母親の目をして息子を睨んだ。
「ボク知らないよ」
少年はやはり、怯えたような声色で、母親に応えた。

凌辱劇は、ドアを開けっ放しにしたまま始まった。
ドアは閉めて・・・女は哀願したが、男はきかなかった。
たちまちねじ伏せられた女は、股間に衝撃を覚えると、息子のまえでヒィヒィと声を上ずらせていった。


母さんには友だち、いないから。
村じゅうの男のひとと、仲良くなってもらうんだ。
少年の声は虚ろで、目線は放心し切っているようだった。
そんな心配、しないでいいんじゃないかな。
男は少年の隣で、そういったけれど。
少年の虚ろな声色は、まだ続いていった。

父兄会でね。小父さん達が来るでしょ。
母さんみんなに抑えつけられて、スカートめくられちゃうんだ。
クラスの子たちも興味しんしんで、その様子に見入っていて。
恥ずかしくて外は歩けないっていう母さんを、ボクは無理に散歩に誘って。
通りすがりの小父さん達が、母さんのことをいやらしい目でみたら、ボク言ってやるんだ。
母さんと仲良くしてね って。

少年の父親は出張がちで、顔を見たことはいちどもなかった。

ううっ・・・ううっ・・・ああっ・・・
隣室から洩れてくるのは、切れ切れな女の悲鳴。
いいの?母さんとやれなくても?
男の下に組み伏せられているのは、制服姿の少年だった。
濃紺の半ズボンには、不覚にも洩らしてしまった白濁した体液が、しとどに散っている。
リブをまっすぐに伸ばしてキリリと足許を引き締めていたハイソックスは、なかばずり落ちていた。
きょうはボクが、母さんの代わり?
そういう少年に、男はうそぶいた。
村じゅうの男と母さんが仲良くなったら、俺があぶれるときには面倒見てくれるんだろう?
少年は初めて納得したような顔をして、男から目をそらすようにした。
気がつくと、白い首すじを吸いやすいような姿勢だった。

豪快?千人斬り!

2013年06月18日(Tue) 06:12:33

人妻千人斬りの志をたてた男がいた。
誘惑、和姦、軟派、力ずく・・・なんでもアリだった。

999人目の餌食が、ほかならぬわたしの妻だった。
縛られたわたしのまえ、夫婦のベッドをぎしぎしいわせながら。
しまいには喘ぎ声まで、あげていた。

がんばって達成してくださいね。
別れぎわ励ましまでした妻とは、よほど相性がよかったらしい。

その後男はスランプになって、記録はストップしたままになった。
妻と逢瀬を重ねるようになった男は、記録達成をあきらめたい、と妻に言った。
あんたをさいごの女にしたいから・・・と。

そんなの駄目。

妻は珍しく強い口調で、男を叱った。

わたしがなんのために汚れた身体になったのか、わからなくなっちゃうじゃない。
浮気を重ねながらも、汚れている、と思っている妻。
汚れてなんかいないさ と。わたしは思わず、口走っていた。
離婚だけは勘弁してくれとうろたえていたわたしに、妻は「大丈夫よ」と力づけてくれていた。

いっしょに暮らしましょう?あなた、ガマンできるかな?
独り暮らしの母も、家に招びますから。

妻の言いぐさに、男ふたりは肯いていた。
夫婦二人暮らしの家に、男と、義母とが入居した夜。
男は義母相手に、千人斬りの”偉業”を達成した・・・

妻は男のプロポーズを受け容れて、
わたしが仲人を、つとめてやって。
ふたりは晴れて、夫婦になった。
表向きはあくまでも、わたしの妻。
けれども妻は、戸籍さえも入れ替えてやっていた。
男は、天涯孤独の身の上だった。

お義母さまもお若いうちに、どう・・・?
うちは両親ともに健在だったけれど。
勢い余った千一人目の餌食は、ほかならぬ母になっていた。
母も時折黙って、わたしの家にやってきて。ブラウスのタイをほどくようになっていた。
父も母には黙って、わたしの家にやってきて。
いちぶしじゅうをつぶさに見届けて、母より先に帰っていくようになっていた。

義母はわたしの年増好みを察していたのか、
妻の不始末の罪滅ぼしに・・・と、わたしを孤閨に誘い込んだ。

男は義母や母をも巻き込みながら、以後家から出ようとはしなかった。
天涯孤独の身に、家族を与えられて。
記録はどうやら、千一人斬りでストップするらしい。

おあずけの夜。

2013年06月18日(Tue) 05:02:35

吸血鬼を、家に迎えるようになってから。
男のわたし相手のときには、ぐびりぐびり・・・と、豪快に。
妻相手のときには、ちびちび、じわじわ・・・って、意地汚く。
血の吸いかたにも、扱いにも、格差があるなあって思ったものだ。
いやもちろん、どちらがいいとかいうんじゃなくて。

働き盛りの血潮は、魅力が高いのだ。
やつの言いぐさは、嘘じゃなかったに違いない。
じっさい、ひどく美味しそうに、飲み味わっていたから。
けれども必ず、こう付け加えることは忘れなかった。
人妻の熟れた血潮も、美味なのだ。

ふつうの吸血鬼は、家に入り込むようになると、
娘も人妻も、手当たり次第に犯しそうなものだったが。
この街では一定のルールがあるのだと、やつは自慢げに語るのだった。
処女はむやみと犯してはならず、人妻も旦那の了解を得てから誘惑に取りかかる。
そういいながら。
いつ、始めたらいいかね?
揶揄することも、忘れなかった。

ぐびりぐびりと、豪快?に。
ちびちび、じわじわっ・・・って、意地汚く。
もちろん、わたしの血がなくなるほうが、先だった。

息も絶え絶えになったわたし。
覗き込むようにして見守る妻の傍らで、やつは嬉しげに笑っていた。
そりゃそうだろう。念願かなって、妻をやっと手に入れられるのだから。
うーん、悔しい。やっぱり、悔しい・・・
そういって歯噛みするわたしに、やつは愉しげに囁いた。
あんたには世話になってる。すんでのことで渇き死にするはずだった俺を、救ってくれた。
だから、なんだというのだ・・・?
もの問いたげに見あげるわたしに、やつは言ったものだった。
死んでも生かしてやるよ。この街じゃあ、ざらにいるんだ。

そう。死んだはずなのに、ずうっと意識があった。
息絶えたとき、妻は顔を蔽って泣いて。
弔いには厳粛な顔つきの男女が、黒一色の服で行き来した。
別室では、やつの情婦になった隣家の人妻が。
手伝いの手を休めては、やつの手に引きずり込まれていって。
黒のストッキングの太もももあらわに、乱れ抜いていった。
そして、妻の貞操が破られたのは、
わたしが埋められた、その日の晩のことだった。

無理やり力づくで・・・と想像したいところでしょう?
けれどもそれは、事実と違うのです。
ほんのひととき、首すじを吸われただけで。
それも、いつもながらの吸血のその延長線上で。

やつの手が喪服のブラウスの胸をまさぐって、ブラウスをびりびりとはぎ取って。
露わになる白い膚に吸いつけられた唇の、紅いことといったら・・・!
上半身裸に剥かれた妻は、自分の手でブラジャーを取り、ショーツをずりおろしていた。
むき出しのおっぱいはあふれる生気を四方に放って、吸血鬼はまぶしそうに仰ぎながらまさぐった。
四つん這いになった妻は、胸をプリンプリンと揺らしながら。
乱れた黒髪をユサユサと揺すりながら。
漆黒のスカートをはねあげられて。
太ももまでの黒のストッキングには、精液をべったりと光らせていた。
唇のすき間にまで突っ込まれたぺ〇スは、化粧を吐いた顔の真上で暴発をして。
妻は嬉々として、それをローションみたいに、頬ぺたに塗りたくっていった。
わたしを弔うための装いは、一夜にして、情夫のための慰み物と化していた。

ふたたび家にあがりこんだとき。
その家のあるじはもう、わたしではなかった。
けれども妻は、以前のようにわたしを気遣いたっぷりに迎え入れてくれて、
首すじさえゆだねて、生気にあふれた紅い血潮を、含ませてくれさえした。
けれども彼女ははっきり言った。
あたしの生き血は、あのひとが独り占めにするって。
いつものように、無邪気な口調だった。

家に戻る代わり。
わたしは以前とおなじように、やつを家に迎え入れてやって。
やつはそのまま一夜を過ごし、妻を我が物顔に掻き抱く。
そういう晩には、シグナルがある。
夜中だというのに、妻はいそいそと身支度をして、着飾るのだから。
今夜はあたしに、指一本触れないでね。おあずけの夜ですよ。
イタズラっぽく笑う妻。
色っぽいガーターストッキングや、派手なデザインの網タイツを穿いた脚を、
今夜もわたしに、見せつけようというのだろうか・・・

落花狼藉のなかで。 ~許された姦関係~

2013年06月18日(Tue) 04:08:29

宴のあと・・・というよりも。
落花狼藉のあと・・・といったほうが、ふさわしかった。

白布を巻いた丸テーブルはことごとく倒れて、
脚の折れたテーブルを蔽う白布の向こうには、放恣に伸び切った女たちの脚が覗いていた。
婚礼の間のはずのその席は。
侵入してきた吸血鬼たちによって、瞬時に乱倫の場に、塗り替えられていた。
花嫁は無事なのか・・・?
そんな懸念など念頭にあがらないくらい、すべてが差し迫っていた。
わたし自身が、当事者だった。
部屋に入り込んできた吸血鬼のひとりがわたしを後ろから羽交い締めにして、首すじに噛みついてきたときから。

おびただしく吸われた血の量にわたしが卒倒すると。
やつは立ちすくむ妻に、襲いかかっていた。
金切り声の主の、着飾ったワンピースが血のりに濡れるのを、目の当たりにしていながら。
わたしは自分のシャツに撥ねた血のりを、ひどく気にかけていた。

昏倒したわたしがわれにかえったとき、わたしたちを襲った者の正体がわかった。
この村に招かれて泊められた家のあるじだった。
薄ぼけた感じのする、さえない中年男に、わたしは無性に親しみを感じていたのに。
いまその彼は、わたしたち夫婦の血潮で、口許を真っ赤に染めている。

だれかれかまわずじゃなくって。
男は言った。
喜美代さんを襲ったのは、相手が喜美代さんだったからだ。

そういえば。
男はおずおずとだが、夕べも妻と話したそうにしていた。
陽気にワイングラスを傾ける妻は、内気で陰気な中年男のそんなようすに、まったく気づいていなかったみたいだったけど。

男の囁きはつづいて、そのことばはわたしを焦がれさせる力を持っていた。

それからね。
喜美代さんを襲ったのは、それがあんたの奥さんだったからだ。
あんたの奥さんだから―――辱めてみたい。

妻には男の言いぐさが聞こえているのだろうか?
失血に蒼ざめた頬は無表情で、ただ事務的に身づくろいをつづけるばかり。
くり返しくり返し、乱れた着衣に、血に汚れた膚に、掌は行き来するけれども。
ワンピースを不規則に彩るバラ色の水玉もようは、もうどうしようもないにしても。
振り乱した髪も、乱れたワンピースのえり首も、いっこうに整わないのだった。

男は妻の脚を掴まえて、吸った。
妻は無表情のまま、そして脚も床のうえにむぞうさに、投げ出したままだった。
肌色のストッキングのうえから這わされた唇は、ヌルヌルとしたよだれを薄いナイロン生地に沁み込ませていったけれど。
妻の無表情は、変わらなかった。
それを承諾と取ったのか、男はやおら口許から牙をむき出しにすると、
それを二本ながら、ずぶずぶと埋め込んでいくのだった。
ほとび散る血も、ブチブチと裂けるナイロン生地も。
妻の顔色を変えさせることは、なかった。

家内の生き血は、お口に合ったかな?
わたしは皮肉とも本音ともつかない口調で、曖昧に笑った。
男も笑った。妻から吸い取った血潮を、満面に光らせながら。
たまたま・・・わたしが履いていたのがストッキング地の長靴下だと思いだした。
女ものには比べようもないだろうね。
わたしは苦笑を泛べながら、スラックスのすそをたくし上げる。

いいえぇ。慎んで・・・
男は神妙に頷くと、そのままわたしの足許に、唇を吸いつけていった。
痺れるような痛み・・・そして、妖しい疼き。
同性のわたしですら、耐えかねるほどの、濃い疼き―――
これを妻は、経験してしまったのか・・・
血を吸われるわたしの傍ら、妻はいつまでも無表情に、はかどらない身づくろいを続けている。
ブチブチと音を立てて裂けるナイロン生地から素肌が露出するのが無性に面白くって、
わたしはもう片方のスラックスを、たくし上げていった・・・

失血の眩暈が、すべてを覆い隠していた。
さいしょはじたばたと、激しく暴れる気配がした。
やがてそれは静かになって、男の荒い息ばかりが聞こえてきた。
そして、傍らに大の字にあお向けにされた妻が、時おりうめき声をあげるのを、たしかに耳にした。

強姦、ですよ。そう思ってください。そうじゃないと奥さんが、かわいそうです。
さいごまで必死になって、節操を守り抜こうとした―――そういうことにしておきましょう。
男の無表情は、妻のそれに似通っている。
ふとそう感じた。


あのひとのところに、行ってきたの?
湯あがりの妻は、小ざっぱりとした花柄のワンピース姿。
わたしは蒼くなった顔色を、さらに蒼く深めて部屋に戻り、妻はブランデーのグラスを片手に出迎えてくれた。
気付け薬よ。あなた、しっかりなさって・・・
念じるような口調でわたしの顔を覗き込むと。
矢のようなはやさで、囁きかけてきた。
――――こんど行くときは、あたしもごいっしょさせて。

いますぐ、行こう。
戸惑う妻の手をひくようにして、わたしは宿のあるじの部屋に向かっていた。
湯あがりなのに?とためらう妻に、ストッキングまで穿かせて・・・

いいんですか?
彼の念押しは、ある意味苦痛でもあった。
自分がしようとしている恥ずべき行為をまえに、われにかえらせてわけだから。
ああ、かまわない。わたしたち夫婦は、もうあなたの奴隷なのだからね。
友人ですよ、と、男はやんわりと訂正すると。
わたしは妻の後ろから、彼女の両肩を抑えていた。
目をつぶっておいで。
妻は童女のような素直さで、目を瞑る―――
男は妻の唇を奪い、奪われた唇は唇同士のまぐわいに、積極的に応じ始める。
下腹部がジリジリと焦げる思いで、それを見守るわたし・・・
やがて男は凶暴な目になって。
妻の首すじを、咬んでいた。

落花狼藉の、真っ最中である。
妻は嬌声をあげ、腰をくねらせながら、相手の慾情に応えつづける。
あなた・・・あなた・・・視て。見てぇ。御覧になってぇ・・・
あくまで見せつけようとする妻。
悩ましく乱れる肢体に、われ知らず目線を集めてしまうわたし。
おしゃれな妻がなん着も携えてきたスーツやワンピースは。
帰宅するまえにきっと、すべて台無しにさせてしまうつもりなのだろう。

闇に響く吸血の音  ~ふたりの少年たちの語らい~

2013年06月18日(Tue) 02:37:42

はじめに。
多少同性愛ちっくな、お話です。


ぅ・・・ぁ・・・
ユウヤはウットリとしながら、自分を組み敷いている相手の意のままになっていた。
相手はユウヤのうなじを噛んで、血を啜り取っているというのに。

Tシャツの胸には、しま模様の柄が消えかかるほど赤黒い血に浸されていて、
少年の頬も、ひどく蒼ざめているというのに。
  吸って・・・もっと吸って・・・
ユウヤはうわ言のように、くり返している。
  ボクの血を、もっと愉しんで・・・キモチいいんだから。
口許には薄っすらと、恵美さえ漂わせながら。

相手は、おなじくらいの年かっこうの少年。
ユウヤの幼馴染だった。
吸血鬼と人間とが共存しているこの街では。
仲良しのふたりのあいだに多かれ少なかれ、こんな運命が待ち受けている。
片方がもう片方を襲うことで、新たな友情を確認し合うのだ。

いつもこんなふうに、父さんや母さんの血も吸っているの?
ユウヤの問いかけに、良太はみじかくこたえた。「ああ、まあね」
凄い・・・ユウヤは目を輝かせた。
ふつうの男の子なら忌まわしいと感じるような、親友と両親の関係に、
むしろ彼はよけいに、親友に対する依存心を高めたらしい。
なにしろ―――威厳たっぷりの父やしつけに厳しいしっかり者の母の血を、夫婦ながら吸っているというのだから。
自分のすべてに等しい存在であるはずの両親を、ふたりながら支配している。
それがえも言われない居心地の良さを、ユウヤにもたらしたようだった。

良太のこたえがやけにあっさりしていたのには、理由があった。
ユウヤの両親をほんとうに支配しているのは、彼自身ではなくて、ほかならぬ彼の父親だったから。
彼はユウヤの両親を、ユウヤが生まれるずっと以前、若夫婦のころから支配していた。
そうした縁で、ユウヤの血を吸うと決めた良太のために、この幼馴染の親たちはすすんで献血に応じたのだった。

  きみはだんだん、咬みかたがじょうずになってくるね。
何度めか、良太がユウヤの太ももを咬んだとき。ユウヤが呟くようにいった。
  そうかい?そんなことないと思うけど・・・
良太にはほんとうに、自覚症状がないらしかった。
  ううん、絶対上手くなってる。
  だってボク、こんなに血を吸われて具合が悪くなっているのに、
  まだきみに血を吸われたがっているんだぜ?
服に撥ねた血を気味悪がりもせずに、ユウヤはTシャツに滲んだ自分の血を指先ですくい取ると、その指先をチュッと吸った。
  美味しいだろう・・・?
  ああ、なんとなくわかるかな。
じっさいユウヤの口に残る血潮は、ほろ苦いばかりで、人間のユウヤにはちょっときつい風味がしたけれど。
―――良太といっしょなら、こんなことだって愉しい。
かれはしんそこ、そう感じているようだった。

  あと、きみに血を吸われていないのは、清美だけなんだね?
ユウヤが自分の妹の名前を口にするときだけは、ちょっとためらいがちになっている。
  うん、清美さんは、きみが手引きしてくれなくっちゃいけないな。
良太はユウヤのそんな態度に気づかないふりをしてこたえた。
  あんまり乱暴に、しないでくれよな。
  俺がきみに、乱暴にしているかね?
  ああ・・・乱暴だね。ショッキングなくらいにね。
瞬間、ふたりの少年は、互いの唇を重ね合い、吸いあっている。

無言のキスの応酬が、しばらくのあいだつづいた。
やがてどちらからともなく唇を離すと、荒くなった息を、無言のまま交し合っていた。
  わかっているよ。きみはボクのことを殺さないし、清美のことも悪くはあしらわないって。
  さきに言っておくけれど。
良太はいった。
  清美を襲うのは、俺じゃない。父さんなんだ。
  え・・・?
訝しげに見あげるユウヤの唇をふたたび吸うと、良太はつづけた。
きみの家族の中で唯一処女の血をもっているのは、清美だけだからね。
ひとの妹をあえて呼び捨てにしながら、良太はなおもユウヤの唇を吸い、また吸った。
吸血のときとおなじくらい、しつような吸いかただった。

  は、は、は・・・
虚ろな嗤いが、闇に響いた。
  きみは俺の恋人なんだ。ゆっくり逢瀬を愉しもうじゃないか・・・
良太はユウヤの肩に、本物の恋人のように腕を回し、自分の腕をユウヤの枕代わりに彼の頭をもたれかけさせると、
まだ咬んでいないほうの首すじに、唇を這わせた。
  咬んで。
ユウヤはためらいもなく、そういった。
返事の代わりに、鈍い疼痛が首のつけ根に食い入ってきた。
なま温かいしぶきがジュウッ・・・と不気味な音を立てて、Tシャツのえり首を濡らした。

自分が虐げられていること。その行為を相手が愉しんでいること。
相手は自分の身体のすべてを知り、気遣いながら、自分のことを侵しつづけていること。
それらのすべてが、ユウヤのなかで快感にすり替わっていた。

  きみの取り分が、減っちゃうね。
  きみは清美と、結婚してくれるんだろう?
  そんなたいせつな相手を、小父さんにあげちゃってもいいの?
ユウヤの言いぐさは、どこまでも良太に対して同情的だった。
良太の言いぐさは、そんなユウヤをぞくり!とさせるほど、刺激的だった。
  ああ。その代り・・・
  俺が処女の生き血を欲しくなったときには、きみの花嫁を襲うから。

良太は謡うように、囁きつづけた。
  自分が侵されることがキモチよくなっちゃったひとはね。
  自分の彼女や嫁さんが、おなじやつに侵されることで、もっとキモチよくなっちゃうんだよ。
  俺の血を全部吸い取って、吸血鬼にしてくれたのは、父さんなんだ。
  母さんは俺の小さいころ、父さんじゃない男のひとに血を吸われて、吸血鬼になったんだ。
  きみならきっと、信じてくれるだろう?
  父さんも俺も、母さんが身もだえしながら血を吸い取られてゆくのをみて、ゾクゾクしていたんだぜ?

ユウヤは重たい眩暈の向こうに良太を見つめながらこたえた。
  わかる、わかるさ・・・
  良太は侵される歓びを知ってしまったから、
  ボクをこんなふうにすることができるんだよね?
  きみがボクの血を吸い尽くさないつもりなら、約束するよ。
  新婚初夜に、ボクの花嫁をよろこんでプレゼントするって・・・ね。

チュウチュウ・・・キュウキュウ・・・
ふざけたような物音はそのあともつづき、二人の少年は組んずほぐれつ、上になり下になりして、戯れ合った。
クスクス・・・けらけら・・・と、時おり洩れてくる声色は、ふたりが愉しんでいることを告げていた。
ふたりが愉しんでいるのが吸血なのか、接吻なのか、それはふたり以外にはうかがい知ることはできなかった。

肯いていた。

2013年06月11日(Tue) 07:48:31

ノックされたドアを開けたのが、運の尽きだった。

侵入してきたその黒衣の男は、わたしの首すじに食いついて、
ごくりごくりと、生き血を啜った。

眩暈を起こして倒れたわたしに、両手で口をふさいだ妻は、あっという間につかまえられて。
じわりじわりと、生き血を吸われた。

わたしのときよりも、ずっとずっと、時間をかけて・・・

あんたからわしに、頼み込んだのだよな?
夫婦ながら、血を吸われたいって。
男の言いぐさに、わたしは黙って、肯いていた。
目のまえで女房を、辱めて欲しいって。
男の言いぐさに、わたしはまたもや、肯いていた。

お前ぇからわしに、手を合わせたんだよな?
亭主を裏切りたいんだって。
男の言いぐさに、妻は意外にも、肯いていた。
これからも、だんな以外の男とセックスしたいんだって。
男の言いぐさに、妻はまたもや、肯いていた。

うっふっふ。
あんたの本性、見え見えだぜ?
男の冷やかしを誤魔化せないほどに、
床一面にひろがった、わたしの精液。
そいつはわたしの意志を裏切るように、それは淫靡に輝いていた。

くひひひひ。
お前ぇの本性も、ばればれだな?
男の冷やかしを誤魔化さないように。
妻はその精液を、舐め取っていった。
猫がお皿を舐めるような、ぴちゃぴちゃといういやらしい音を忍ばせながら・・・

どうだい?ええ眺めじゃろ?
床に拡がったわたしの精液を舐める妻。
その妻の後ろからのしかかって、まくりあげたスカートの奥を突っつきつづける男———
今夜、終わってほしくないよな・・・?
男の言いぐさに、やはりわたしは、肯いていた。