淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・
雑誌の挿絵が、ボクたちの未来を予言する。
2013年07月26日(Fri) 07:27:22
これが、オレ。
こっち、おまえの嫁さん。
ふふふ・・・
ユウくんは意味深な含み笑いをして、ボクの顔色をうかがう。
どう?そういうの。
吸血鬼ものの雑誌の表紙らしいその画を覗き込んだボクは・・・
思わず股間が逆立つのを感じていた。
勃ってるな?おまえ・・・
不覚にも、半ズボンの股間をさぐられて。
ボクはますます、そこを固くしてしまっていた。
かけっこは、いつもビリ。
勉強だって、そんなに得意じゃない。
だから、女の子にモテるなんていうことは、とっくの昔にあきらめていた。
結婚?そんなものはむろん、ボクらの年頃では遠い先のことだった。
けれども読書好きだったボクの想像力は、ほかの子たちの何倍あっただろう?
ボクは惹き込まれるように画を見、
ユウくんはそんなボクの様子を笑うこともなく、
得心が行くまで見せつづけてくれた。
女のひとは、大人の女性だった。
あんがいユウくんは、年増が好みだな・・・って、おもった。
でもそれは、すぐに納得してしまっていた。
彼がボクの家にしばしば遊びに来るのは、母さんの生き血が目当てだったから。
吸血鬼は、いちど招き入れられた家じゃないと、なかに自由に入り込むことはできないという。
それをどこまで意識していたのか、ボクはユウくんと母さんとを結びつける役目を果たしていた。
画のなかの女のひとは、うっとりとした表情をたたえている。
これから首すじを咬まれ、血を吸われちゃう というのに。
もしかしたら、生き血を吸い尽くされて、生命も奪われてしまうかもしれない というのに。
鉛色の皮膚をした吸血鬼のまえに、女のひとのバラ色の素肌は、いかにも血色がよさそうに映る。
その身をめぐる血潮であの鉛色の皮膚を若返らせるため、すすんで我が身を差し出そうとしているようにさえ、ボクの目には映ったのだ。
俺、おまえとはそういう関係になりたい。
ひっそりと囁くユウくんをまえに。
こういう美人がお嫁さんになってくれるんだったら・・・それも悪くないかもしれない。
ボクはひそかに、そう思った。
数年後のことだった。
良家で知られたボクの家が、ボクの花嫁をみつけるのは、ぞうさのないことだった。
話はとんとん拍子にすすんで、挙式は来月 ということに定まった。
ユウくんがお祝いを持ってきてくれたのは、そんなころだった。
ほら、やるよ。
披いた包み紙のなかからでてきたのは―――あのときの吸血鬼雑誌だった。
十年以上もまえのやり取りが、つい昨日のようによみがえってくる。
―――いいだろ?そういうことで。
―――ボクのお嫁さん、ユウくんに血を吸い尽くされちゃうの?
それってちょっと、かわいそうじゃないか?ボクもお嫁さんも・・・
そう言おうとしたボクの先回りをするように、ユウくんは違う違う・・・って、片手で打ち消した。
―――喉が渇いたときに、時どき貸してくれればいいから。
俺、おまえとはそういう関係になりたい。
含み笑いをした口許から、ユウくんの尖った糸切り歯がチラチラ覗く。
いつもボクのことを咬んで、ボクを夢中にさせてしまう、あの牙が。
それでもいいかな。こんな美人がお嫁さんになってくれるんなら・・・って思ったのは、そのときだった。
俺、おまえとはそういう関係になりたい。
美人のお嫁さんをユウくんと共有する関係。
ボクのたいせつなおもちゃを、「これ、ふたりのものね」といっていっしょに遊んだころ。
そうした記憶がまだ、ボクのなかで愉しい記憶として息づいていたからだろうか?
昔のハイソックスが、箪笥の抽斗の奥になん足か残っていた。
あれから上背の伸びたボクには、すっかり丈が短くなっていたけれど。
ボクはユウくんのまえ、それを履いて脛の途中まで引き伸ばしてやった。
これから彼女、うちに来るんだ。
それ以上なにも言おうとしないボクの目を覗き込んで。
ユウくんはひと言だけ、すまないね、と言った。
それだけでボクたちには、じゅうぶんだった。
足許にかがみ込んできたユウくんは、あの懐かしい痛痒さを、靴下ごしに埋め込んできた。
あ、あ、あぁ~っ!!
六畳間のボクの寝室に、華絵さんの絶叫が充ち充ちた。
まるで、吸血鬼映画の一コマみたいだった。
華絵さんはみるみるうちにユウくんの猿臂に抱き込まれて・・・
うなじをかぶり!と、やられてしまっていた。
大の字に伸びたピチピチとした肢体のうえに、
ユウくんは舌なめずりをして、のしかかっていった・・・
部屋のすみに伏せられた雑誌の表紙と、目のまえの現実が、初めて重なり合っていた。
行ってきますね。
ああ、彼によろしくね。
華絵さんは独身時代のショルダーバックを片手に、白一色のスーツ姿で立ちあがる。
視線で彼女を見送る彼女は、「アラお出かけ?」と呼びかける母さんに、「ええ・・・ちょっと。」と言いよどむ。
けれどもそれですべてを察した母さんは、「行ってらっしゃ~い」って、おどけた手振りで手を振るだけだった。
照れ笑いを泛べた華絵さんは、ボクのほうをもういちど、「ごめんなさいね」と言いたげに振り返ると、ドアを開けた。
親と同居の若夫婦が、夫婦ながら交代で、ユウくんに献血しているのを。
時おり仲間に混じる母さんも、すべてを熟知しているのだった。
たまの浮気もいいだろ?な?
あのときのボクに話しかけたのと同じ支配的な口調を蔽いかぶせてくるユウくんに。
華絵さんは無言だったけど・・・恐るおそる、肯いてしまっていた。
とどめを刺すようにもういちど、首すじをがぶり!とやると。
薄紫のワンピースに、ジュッ!と血が撥ねて。
ヒッ・・・!と喉の奥から悲鳴をあげた華絵さんは、それきり黙りこくってしまっていた。
ボクの未来の花嫁は、ボクの部屋のなか、ボクの目のまえでねじ伏せられて。
チュウチュウとあからさまな音を立てて血を啜られてゆく。
処女の生き血が・・・お好きなんですね?
春原さん、いいの?わたくしがこのかたに献血するの、お咎めにならないの・・・?
終始わたしの態度を気にかけながらも、ギュウッと抱きすくめられた猿臂のなかで。
華絵さんは身もだえに悩ましさを滲ませながら、強引な献血に応じ始めていた。
あの雑誌の挿絵の美女みたいに、自分の身体をめぐる処女の生き血を、心ゆくまで愉しませちゃっていた。
処女の生き血を捧げる儀式を、婚約者同席のうえなんども遂げた華絵さんは、
ある晩真夜中にうちに電話をかけてきて。
これから彼に招ばれているの・・・って、ひっそり囁きかけてきた。
傍らの母さんはゆったりとほほ笑んで、おめでとう、って言ってくれた。
ボクも行くから・・・返事をするとき、いつになくドキドキしちゃっていた。
あれ以来。
彼女は時折彼の呼び出しを受けては、喉をカラカラにしたユウくんのため、若妻の血潮を分けてやっている。
ああもちろん、そのあとに・・・熱い吐息を交し合うあの儀式さえも、遂げられてしまうのだ。
「俺、おまえとはそういう関係になりたいから」
ユウくんの含み笑いに、悪意はひとかけらも、混じっていなかった。
そろそろいいんじゃない?
母さんが、イタズラっぽい含み笑いをして、こちらを窺う。
お父さんもこれくらいの感じで、あとを追いかけてきたわよ。
へえ・・・
感心したように母さんを見、茶の間でひっそりと新聞に顔を埋めている父さんのほうも覗き見ると、
ボクはそわそわと、外出の支度にとりかかっていた。
夏休みの宿題
2013年07月23日(Tue) 07:38:34
◆吸血鬼の生徒諸君へ
其の一
当村以外の地域に居住する家庭を一軒選び、一家全員の血を吸って家族ぐるみで支配をしてください。
そうなった過程をレポートにまとめ、提出すること。
其の二
人間の親友の近親の女性(母親、姉妹または結婚を前提として交際している女性)を3人選んで誘惑し、生き血を吸って懇親を深め、性的関係を結んでください。
そうなった過程をレポートにまとめ、提出すること。
(女性を狙う前には必ずお友だちの同意を得るようにしてください)
保護者のかたへ
当村では処女をみだりに犯すべからずとの不文律がありますが、夏休み期間中のお子さんについては規定の対象外とされております。
◆人間の生徒諸君へ
其の一
村外に居住する親族または友人を家族で招き、家族ぐるみ知り合いの吸血鬼に紹介してください。
その後の過程をレポートにまとめ、提出すること。
吸血鬼の生徒には同様の宿題を課しているが、共同制作としてもよい。
其の二
吸血鬼の親友に、自分の親しい女性(母親、姉妹または結婚を前提として交際している女性)を紹介し、誘惑する機会を与えてください。
彼女たちが初めて性体験をする場合には必ず同席し、その時の自身の心境をレポートにまとめ、提出すること。
吸血鬼の生徒には同様の宿題を課しているので、自分の家族または交際相手を誘惑する生徒とはコミュニケーションをよく取り、それぞれの課題に取り組むこと。
附則
都会から転入して二か月以内の諸君
まだ吸血体験を未経験の諸君
夏休み中に、本人を含む家族全員が吸血を体験してください。(必須)
その時の自身の心境をレポートにまとめ、提出すること。
吸血相手の人選を生徒がする場合には、事前に保護者の了解をとってください。
また、保護者に別の心当たりがある場合には、保護者の指示に従ってください。
~ご家族のかたへ
お子さんの夏休み体験を豊かなものとするために、ご協力をお願いします。
吸血体験は本人だけではなく、ご家族のかたがたにも多大な影響が生じます。とくにご両親の婚姻関係、あるいはご家族全体の関係に影響が出る場合もあります。
当校では吸血行為は懇親を伴うものであり、人と人とを結び合わせる重要な体験であると考えております。
起こったすべてのことを良い方向に転化することにより、親としての模範を示すよう心がけてください。
なお、この宿題のために生じることが予想される損害については、それが物質的・精神的いずれの場合も学校は責任を負いかねます。あくまでも自己責任の範囲内で行うようにしてください。
※上記のように当村の居住期間の浅い生徒諸君の夏休みの宿題は上記のみとしますが、なお進んで其の一・其の二を実行した場合には、加点の対象とします。
以 上
立場を行き来。
2013年07月23日(Tue) 07:17:44
吸血鬼が、おなじ街に棲む一家を狙った。
さいしょに襲ったのは、跡取り息子。
半ズボンに紺のハイソックスの制服に夢中になって。
紺のハイソックスのふくらはぎに噛みついて、
全身の血を、チューッと吸い取ってしまった。
つぎに狙ったのは、奥さん。
息子を弔うために装った、黒の礼服に夢中になって。
脛が透ける黒のストッキングのふくらはぎに噛みついて、
全身の血を、チューッと吸い取ってしまった。
ひつぎ二つを前にして。
お父さんは抗議した。
わたしたち一家は、あなたになんの悪意も持たなかった。
それなのに、どうしてこういうことをするのだろうか?
ごもっとも。
吸血鬼はすこし、反省した。
ひつぎのふたが、開くたび。
彼の競争相手が、増えるだけのことではないか?
吸血鬼は母子の首すじを、代わる代わるチューッとやって。
吸い取った血を半分ずつ、戻してやった。
吸血鬼にされて、わかったことがあるよ。
息子はいった。
喉がすごく、渇くんだ。身体がとても、冷たいんだ。
それで切なくなって、道行く人に声をかけちゃうんだ。
せっかくもとの人間に戻れたのだから。
ボクは彼にお礼をしたいな。
奥さんもいった。
もう、だれかれ見境なく、襲いたくなっちゃうの。
お気づきにならなくて、あなたの血も飲んだのよ。
そういえば・・・さぐった首すじにはふたつ、綺麗な穴ぼこがあいていた。
妻と息子はかわるがわる、吸血鬼に血を与えるようになる。
息子は紺のハイソックスを履いて。
妻は肌の透けるストッキングを穿いて。
長靴下が咬み破られて、ふしだらに破け落ちてゆくのを、
それは面白そうに、見おろしながら。
何かが間違っている。
うなじに傷を抱えた父親は、いいことを思いつく。
そもそも順序が、間違っていたのだ。
妻と息子を呼んでいった。
お前たち、大事な言いつけを忘れていた。
わたしの留守中、吸血鬼が訪ねてきたら。
お前たちの身体をめぐる生き血で、もてなしてあげなさい。
これは家長からの厳命だ。
吸血鬼の日記は、書き換えられた。
息子を狙って血を吸い取って、妻を狙って血を吸い取った。
そう書かれたいたものに、二重線を引いて。
夫君のご厚意のもと、令息と令夫人をご紹介いただき、生き血をプレゼントしていただいた。
おふたかたとも気前よく、生き血を吸い取らせてくださった。
以後は、家族ぐるみの交際を願っている と。
あとがき
ひさびさに描きますと、どうにも調子が出ませんな・・・ (^^ゞ
紅白戦の帰り道
2013年07月02日(Tue) 06:33:44
ゴメンッ!いまは見逃してっ!!
立ちはだかった吸血鬼のまえ、ユウタは手を合わせて懇願していた。
そんなことができたのは、彼が顔見知りだったから。
両親とも親しい彼は、もう何か月かまえからユウタの血も吸うようになっていた。
脚フェチなどといういかがわしい言葉を覚えたのは、彼のせいだった。
紺のポロシャツに、真っ白な短パン。
その下からにょっきり伸びた脚をふくらはぎまで覆っている、白いラインの入った濃紺のストッキング。
その濃紺のストッキングに欲情しては、しばしばユウタのことを芝生や畳やベッドのうえに転がして、ひとしきり舐めぬいていくのだから。
脚の輪郭に沿ってゆるやかなカーブを描く太めのリブが、たまらないのだという。
忌々しいことに、リブがぐねぐねによじれるほど舐めた後、牙をぐさりと埋めて赤黒いシミをつけてゆくのも、こいつにとってはこたえられない愉しみらしいのだ。
ほんとうは同じストッキングでも、母さんの履いているもっと薄々のやつとか、同じ濃紺でも、姉さんが通学用に履いているやつとかのほうが、気に入りに違いないはずなのに。
ユウタを襲うときは襲うときで、すごくコアに舐め抜くのは・・・じつは、口で言うほど悪い気はしていない。
彼の足もとに執着してストッキングを舐め抜いてよだれでぐしょぐしょになるまで濡らしたり、がっつりと貧血になるほど血を抜かれるのは、それだけユウタのことが気に入っているという証拠なのだから。
もちろん、こんなことをついでのようにやられたんでは、それこそたまったものではなかったけれど。
けれども今朝は、それどころじゃなかった。
母さんに聞かなかった?
今日はこれから、大事な試合なんだ。
レギュラーを決める、紅白戦。絶対勝たなくっちゃ。
帰りにいつもの公園に、必ず寄るから・・・と言って、彼は連れのアキラを促して、どうやら見逃してくれる気になったらしい彼の脇を、そそくさとすり抜けていった。
約束、守るの?
試合の後、アキラに言われたユウタは、ちょっと考えて、「違う道で帰ろう」と言っていた。
けれども、悪いことはできないものだ。
ご・・・ご・・・ごめんよ・・・っ!
もう、言い訳はきかなかった。
だって、約束を破るのを見越した吸血鬼は、ユウタ達が選んだ道のほうで、待ち受けていたから。
仲直りしよ。お詫びにさ、ストッキング新しいやつに履き替えてやるから。
おずおずと切り出したユウタに、吸血鬼は明かに怒りを納めかけていた。
おっ、それいいアイデアじゃん!
連れのアキラも、うまいタイミングで同調してくれた。
彼らの足許は、きょうの試合の激戦のあとを物語るように、どろどろに汚れていた。
公園の水道の蛇口からほとばしる水を浸した素足が、ひどく気持ちよかった。
買ったばかりの真新しいストッキングのつま先を足の指先に合わせて、グッとかかとまで突っ込んで、それから脛のうえまでぐーんと引っ張りあげる。
ツヤツヤとしたリブが、すんなり伸びた少年たちのふくらはぎの周りで、ゆるやかなカーブを描いた。
吸血鬼がよだれをたらさんばかりにして、その様子に見入っているのが、あからさまなくらいによくわかった。
ちくっ。
あー・・・
先に声をあげたのは、ユウタだった。
かりり。
ウー・・・
巻き添えのアキラも、顔をしかめていた。
吸いつけられた唇の下、ストッキングの生地に赤黒いシミが、じわじわと拡がっていった。
しつように這いまわる唇のあとを、唾液が白い糸を引いて追いかけていった。
アキラのやつ、すっかり誘い上手になっちゃって。
ユニフォームの一部である濃紺のストッキングを嫌々咬ませているように見せかけて、
アキラは悩ましげにかぶりを振りながら、サッカーストッキングの脚を激しくくねらせては、吸血鬼が吸いやすいようにさりげなく脚の向きをやっている。
ストッキングがよじれてずり落ちるたび、ひざ小僧のあたりまで引き伸ばしては、ツヤツヤとしたリブを見せつけて、挑発しているのだ。
咬まれる部位が多い分、アキラの履いているストッキングに撥ねた赤黒の水玉もようは、ユウタのそれよりも多いみたいにみえた。
あーあ、あんなにハデに撥ねかしちゃって・・・小母さんになんて、言い訳するんだろ?
アキラよりも先にさんざん血を抜かれてしまったユウタの身体は、中身が空っぽになったみたいだった。
あー。またまた、がっつり貧血だよ~。
ぶつぶつと恨み言を呟きながら、頭を抱えて芝生の上に寝転がった。
さいしょのころは、ユニフォームの一部を汚されるこの忌まわしい遊戯に、ユウタはあからさまな嫌悪感を覚えていた。
だって、チームメイトを裏切るような気がしたのだから。
ところがその点は、なぜかアキラのほうがわけ知りだった。
ヘイキだって。たいがいのやつが、あいつにストッキング履いた脚咬ませちゃってるらしいから。
へええ・・・驚きに目を見開くユウタのことを、背後から忍び寄った吸血鬼が羽交い絞めにして、飢えた牙を首すじに突き立ててきたものだった。
初めてポロシャツの肩先まで血に浸すはめになったのに、アキラのひと言に自己嫌悪をみごとに拭い去られたユウタは、もっと・・・もっと・・・と、牙のおねだりさえしていたのだった。
草地に顔を半ばまで埋めてアキラが寝入ってしまうと。
吸血鬼はふたたび、ユウタの足許にかがみ込んできた。
獣じみた性急な息遣いが、厚手のナイロン生地ごしにも、熱くおおいかぶさってくる。
あー、まだやるの・・・?
口では嫌がりながらも、ユウタは受け入れる牙のもたらすあの痛痒い疼きを予感して、ふくらはぎをピンと伸ばしている。
きょうの試合に履いたストッキングは、記念に大事にとっておくつもりだった。
だって、手ごわいライバルに勝ってレギュラーの座を射止めた大事な試合に履いたやつだったから。