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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

チョコレート色のハイソックス

2013年11月28日(Thu) 08:08:04

その学校の生徒は全員、チョコレート色のハイソックスを履いている。
どの子もきちんとした子らしく、顔つきも挙措動作も、申し分なし。
肉太で健康そうな脚。すらりとして恰好の良い脚。勢いよくどんどん進む脚。
どれもが、お揃いの太リブのハイソを、キリッとひざ下まで引き伸ばして履いていて。
下校時間などはそのありさまが、壮観だったりするのだが。
そのなかでほとんどただひとり、いつも弛めに履いている子がいる。
身なりに気を使わないのか、彼女のハイソックスはいつもたるんでずり落ちていて、
どの子の足許でも脚の線に沿って綺麗なカーブを描いているはずの太リブが。
その子の場合だけは、ぐんにゃりとだらしなく、ねじ曲がっている。
いつもべっこう縁のメガネをかけていて。
白い皮膚に蔽われた目鼻だちは、どちらかというと理知的なのに。
黒い髪の毛はいつも、ちょんまげみたいに結われて、毛先が真上を向いていた。

どんな子なのか。この子の首すじを咬むと、どんな血の味がするのか。やけに気になった。
その子の帰り道を憶えてしまうと、俺は先回りをして。
人けのない公園に差しかかったとき、声をかけてみる。
あのさ・・・
俺の声に敏感に反応したその子は、一瞬警戒心を込めた鋭い視線を投げたけれど。
なにか・・・?
とぼとぼとした足取りをわざわざ留めて、耳を傾ける姿勢を取ってくれた。
血が欲しいんだけど。
え・・・?
聞き取りにくかったのか。意味を測りかねたのか。その両方だったのか。
俺は畳み掛けるようにもういちど、声を発する。
きみの生き血が欲しいんだけど。
彼女はちょっとだけ考えて、意外にもこちらを気遣う気振りをみせていた。
よほど喉が渇いているんですか?
そうなんだ。きょうじゅうにだれかの血を吸わないと、死んじゃいそうなんだ。
あー・・・
どうやら訳知りの子らしいと、すぐにわかった。
その子の応えは、びっくりするほど柔軟だった。
これから塾があるから、貧血にならないくらいだったら。

腰かけたベンチのうえ、彼女は首まわりの髪のほつれを払っていた。
初めてじゃないのかい?
初めてだよ。
彼女はじいっと、上目遣いに俺をにらむ。
いや・・・落ち着いているからさ。
あわてたほうがよかったの?
からかっている感じは、まるでない。
むしろまじめに訊きたがっているようだった。

そうだね。
ふつうの子だったら。
両手でこうやって、口をふさいでさ。
泣きそうな顔をして厭々をしながら、咬まれちゃうんだ。
大人しい子だったら。
死なないですよね?吸血鬼になったりしないですよね?って、なん度も念を押しながら。
ほとんど無抵抗に、咬まれちゃうんだ。
活発な子だと・・・そうだな、こないだの子のときには、公園じゅうかけっこする羽目になったっけ。
さいごの俺の言いぐさに、彼女は声をたてて笑っていた。

そうね。うちの学校の子はみんな、OKなのかも。
みんな入学するときに、あなたたちのことは教わるから。
それにあたしの場合、ママがまだあたしくらいのとき、相手してたっていうから。
彼女の口ぶりは、ひどく淡々としていた。
見かけ、軽そうに見えた?
自分の見かけだけは、それでも気になるらしい。
声色がちょっぴりだけ、不快そうだった。

そんなことはないけど・・・変わった子だなって思った。
そう。
彼女はははは・・・と、あっけらかんと笑った。
そんならいいや。
軽い子だと思われるのだけは、嫌だったらしい。
はい、どうぞ。あんまり時間ないから。
彼女は俺が首すじを咬むと思ったらしい。
ひどく首まわりのあたりを気にかけて、しきりに手をやっていた。

俺が彼女の足許にかがみ込むと、たるんでずり落ちたチョコレート色のハイソの脚をちょっと引いて。
脚に咬みつくの?
意外そうに、そういった。
ハイソックス、気になるんだ。
へえ。
彼女は目を見開いて、ふしぎそうな顔をする。
うちの学校のハイソックスに目が行くなんて、お目が高いね。
テキもなかなか、言うものだ。
「変わったやつだ」という代わり、「お目が高い」ときたもんだ。
変わった色だね、とか、使い古した雑巾みたい・・・なんて言われたこと、あるんだよ。
彼女はそんなことさえ、あははと笑いながら教えてくれた。
良い色だと思うけどね。俺はちょっとだけ、彼女のハイソックスの色をほめて。
ちゃんと引き伸ばして履いてみてくれる?
そう頼んでみたけれど。
このままでいいよ。
彼女はハイソックスの口ゴムに手をやろうとはしなかった。

しょうがない子だ。
俺はちょっとだけ舌打ちしながら、彼女の足許に唇を近寄せる。
ちょっとだけ引いた足首をつかまえて、抑えつけて。
つい夢中になってしまった。
圧しつけた唇の下。しなやかなハイソックスの舌触りだけが、妙に印象に残った。
あくまで冷静な彼女の態度に、ついからかいたくなっていた。
きみの学校のハイソックスは、すべすべしていて、いい舌触りがするんだよね。
彼女の気をひいてやろうと、そんなことまで口にしたけれど。
ははは。コアだね。変わってるんだね。
初めて俺のことを、変わっていると口にした。
コアだね、という言いぐさが、なんだかこの子らしかった。

咬み入れたふくらはぎの肉は思いのほかしっかりした咬みごたえがあって。
ぬるぬるとこぼれ落ちた血潮は、ひどく暖かだった。
俺はなぜか、目の奥に潤いを覚えながら、彼女がもたらしてくれる恩恵に、夢中に舌をふるいつけていた。
血の味で、その子の性格がなんとなくわかる。
この子は―――堅実な子だ。

血って、暖かいんだよね。
赤黒く濡れそぼったハイソックスのシミを、気味悪がるふうでもなく。
彼女は淡々と、そういった。
ハンカチを取り出そうとポケットに手をやったのに、そこに目当てのものはなかったらしい。
あわててバッグを開くと、成績表がはみ出て見えた。
見せて。
俺が何気なくいうと、いいよ、といって、彼女は俺に成績表を手渡して。
そんなことお構いなしに、ハンカチをさがそうとバッグの中身を漁り始める。
抜群の成績だった。
俺が目を見張っていると、
そんなこともお構いなしに、彼女はしきりに足許をごしごしと、ハンカチで拭いていた。
真新しいハンカチはたちまち、真っ赤になった。
ちょっと待ちな。
俺はもういちど彼女の足許にかがみ込んで、吸い残した血潮を吸い取ると。
傷口の周りを綺麗に舐めて、血を止めてやっていた。
ハンカチ、汚すまでもなかったね。
彼女は苦笑いをした。
両脚からハイソックスを、するすると引き下ろして脱がせてしまうと、俺はポケットにねじ込んだ。
記念にもらうよ。
そうね。
彼女は素足に革靴を履いて、ベンチのうえでぶらぶらとさせた。

彼氏がいるんだ。いちおう。親の決めた結婚相手だけど。
あなた、血に不自由してるの?
これからもあたしに、会いたいんでしょ?
それでもいいかどうかって、彼氏に訊いてみるからね。
彼女は意外な名前を、口にした。
狭い世界だった。
俺がずっとまえから、生き血を吸わせてもらっている少年の名前だった。


濃紺の半ズボンに、おなじ色のハイソックスの脚を伸べて。
彼は彼女のめのまえで、俺にハイソックスを咬み破らせてくれた。
ちゅーっと吸い出される血潮の音を、目を細めて聞き入ると。
気の抜けたような薄ぼんやりとした顔つきになって、身体をだらりとさせていた。
ぐんにゃりと伸びてしまった彼氏のまえで。
彼氏がやられちゃったら、しょうがないよねー。
彼女は笑いながら、チョコレート色のハイソックスのふくらはぎを、俺のほうへと差し伸べていた。
珍しく。
彼女のハイソックスは、ひざ小僧の下まで、ぴっちりと引き伸ばされていた。
うふふふ・・・ふふふ・・・
俺は俺で、彼氏のまえで、彼女のハイソックスを咬み破るのが、むしょうに愉しくって。
彼女は彼女で、彼氏のまえで自分のハイソックスをくしゃくしゃにされるのが、愉しいらしくって。
彼は彼で、俺たちが仲良さそうにして、襲ったり襲われたりしているのを視るのが、愉しいらしくって。
代わりばんこに伸べられてくる脚たちに、俺は親愛のキスを、なんども重ねていった。

ねえ、いいの?ほんとに、いいの?
このままだとあたし、このひとに、ゆうわくされちゃうよ。
そそるような目をして、彼女は彼にそういった。
彼は笑いながら受け答えしていたけれど。
何度めの逢瀬のときだろうか。
急に目許を引き締めると。俺に訊いた。
彼女を欲しい?
うん、欲しいね。
ボクから奪い取ってでも?
きみが不幸になるようだったら、それは気がすすまないね。
きみの大事なひとだから、よけいに彼女が大事なんだから。
いつもなら、いちど襲ったらそれまでの縁。そんな場合がほとんどだったのに。
彼女はなん度も俺に献血してくれたし、彼もそんな俺たちに、好意的に応じてくれていた。
ときにはデートの約束をキャンセルしてでも、俺への献血を優先してくれたりさえ、したものだった。
きみは、どっちがいいの?
あたしは、あなたがいいと感じるほうがいい。
彼女の応えは、直截だった。
あなたは、どっちがいいの?
見届けられるんなら、先にやらしてあげてもいいかな・・・って。
ウン、それがいい!
勢いよくそんなふうに応じた後。
彼女は珍しく、羞ずかしがった。
あなたに視られながら、ヤルってことだよね?
珍しく口にした下品な言葉に、自分で照れていた。
あなたもけっこう、コアだよね。
からかい口調に戻った彼女は、彼氏のことを優しくにらんでいた。

夕暮れ刻の、だれもいない公園の片隅で。
彼氏は血を抜かれた身体をぐんなりと横たえて。
紺色のハイソックスに開いた咬み痕をしきりと気にかけながら。
いちぶしふうを、見届けていた。
勇気があるね。
俺は彼のことをそう褒め称えながら。
ちょんまげを解いた彼女の頭をかかえ込んで、スカートの奥になん度もなん度も、情愛の証しを衝き入れていた。
彼女は制服のスカートを乱しながら。
ちいさな息をはずませながら、応じていって。
だいじょうぶ・・・だよね?
って、しきりと彼のことを、気にかけ続けていた。

少女から女になって起ちあがった彼女のお尻から、スカートに着いた草きれを払ってやると。
彼もゆるゆると起きあがって、俺を手伝うように、ジャケットに着いた枯れ草を払ってやっていた。
キリリと引き伸ばして履いていたチョコレート色のハイソックスは、いつもみたいにたるんでずり落ちかけていて。
太ももから伝い落ちてきた血潮を、赤黒く滲ませていた。
記念に、あげる。
彼女は自分からハイソックスを脱ぐと。
いつもは俺にくれるはずのハイソックスを、彼のほうへと圧しつけていた。
処女喪失の証しに濡れたハイソックスを、彼が大事そうに鞄の奥にしまい込むと。
コアだね・・・あたしたち三人とも。
声を合わせて笑った笑い声のなか。
彼女の笑い声だけがちょっぴり、濡れを帯びていた。

婚礼の席で。

2013年11月26日(Tue) 07:56:50

殿村優 41歳。 
家族の状況
妻淳恵 36歳 ほか男児2名

4名とも健康体、血液提供可能。


「ようやく婚礼の席に、お見えになっていただけましたね」
マサルはにんまりとした笑みを泛べて、殿村と家族を迎え入れた。
婚礼の席は、街でいちばんのホテルの大広間。
縁もゆかりもない人の婚礼に招かれてよいものか・・・ふだんの生まじめな優だったら、真っ先にそんな遠慮をしたはずなのだが。
当地に赴任してすぐに取引先として姿を現したマサルは、この街にいくたりも出没する半吸血鬼の1人だった。
夕べのことだった。
マサルが本性もあらわに優の妻である淳恵に襲いかかって、生き血をたっぷりと吸い取っていったのは。
処女には一定の配慮が与えられるのが常だったが、反面性行為の経験を積んだ人妻の場合、その面での容赦はなかった。
淳恵は見慣れたベーズリ柄の訪問着を着くずれさせながら、夫の目のまえで、堕ちていった。
傍らににこやかに佇む淳恵は、きのうまでも淳恵とは別人だった。
婚礼の席が乱交の場になると聞かされながらも、夫の誘いにふたつ返事で応諾して、二人の息子を伴って会場に現れたのだった。
「この場で家内のことを、あんたが抱くというのか?」
優の声色は少し引きつっていたけれど。
マサルはさほど気に留めた風もなく、「いや」と否定の返事をかえしている。
「ほかの男性を数多く体験するほうが、奥さんのためになるだろうからね。相手は私のほうで、都合した」
妻を侵す相手は、マサルの取引先の男だ・・・と告げられた。

目のまえで妻を凌辱されながら、びゅうびゅうと盛んに射精をくり返してしまったのを妻に視られた夫。
もはや、淳恵が娼婦に堕ちることは、本人を含む誰もが望むところだった。
「きみはどうするんだ?」
優の問いに応える代わり、マサルは殿村の家の息子たちに、代わりばんこに視線を這わせる。
「おれは二刀流なんでね」
うそぶくマサルの言いぐさに、殿村も、淳恵までも、蒼白になったけれども。
白のワイシャツのえり首から覗く首すじや、濃紺の半ズボンとおなじ色のストッキングの間からむき出しになった発育の良い太ももに視線を這わせる吸血鬼のことを、もはや咎めようとはしなかった。
「お二人とも、未経験のはずだね。ここでの景色は目に毒だろうから・・・」
隣に部屋を取ってある。
マサルは目で、殿村に合図をした。

・・・・・・!!
妻の淳恵のまえに引き据えられるように連れてこられたのは。
おどおどとした五十年輩の男性・・・それは同じ事務所に勤める船川だった。
えっ、あんたが淳恵を・・・!?
思わず口にする殿村をしり目に、吸血鬼はうそぶいた。
「そう、あんたが赴任した時の歓迎パーティーで見かけて以来、ご執心なんだとさ。」
思い当ることは、たびたびあった。
妻の下着が物干しから盗まれる事件が、再三起こったりとか。
パート勤めを始めた妻が、なん度もだれかにあとを尾けられた形跡があったりとか。
ぜんぶ、あんたの仕業だったのか?
思わずぶつけようとした言葉を遮るように、淳恵が口を開いた。
「異存ないです。よろこんで・・・お受けします」

むごいことに、儀式は夫の目のまえで行われた。
彼の苦痛を軽減するために、吸血鬼は殿村のスラックスをたくし上げると、脚を咬んだ。
殿村はいつも、ストッキング地のひざ丈の靴下を穿いている。
それを脱がす手間も惜しむように、男は飢えた唇をぬらりと吸いつけて、
薄いナイロン生地をぱりぱりとはじけさせながら、殿村の血を喫った。
薄ぼんやりとしてその場に尻もちをついてしまった殿村のまえ―――
冴えない五十男が、着飾った淳恵の洋装に、おずおずと手をかけてゆく。
ブラウスのえり首から差し入れた掌に、胸をまさぐられ。
タイトスカートのすき間から差し入れられたもう一方の掌に、スカートを波打たせて。
淳恵はムザムザと、鶴のようにほっそりとした白い首すじを、夫の同僚に吸わせてしまっている。

ああ、こんなことに・・・とうとう、こんなことに・・・

嘆き節はもはや、だれの耳にも届かない。
淳恵の身じろぎがしだいしだいに熱さを帯びていって。
肌色のストッキングに包まれた脛が、卑猥になぞる指先に愉悦の引きつりを滲ませる。
熱く重ね合わされる唇と唇に。
息子ふたりは、「うわぁ」とひと声、漏らしていた。
その息子たちも・・・
首すじや太ももに這わされてくる唇を、無表情に受け止めていって、

ちゅー・・・

自分の血を吸い取られてゆく音に、くすぐったそうに眉をしかめた。
齢の順に差し伸べられたふくらはぎを、濃紺の長靴下を履いたまま。
唇をくちゅり、くちゅり・・・と、這わされていって。
下の児はいみじくも、呟いたものだった。
ボクたちのハイソックス、父さんのやつみたいに綺麗に破けないね。
黒の薄地の長靴下には、帯のような裂け目が、男にしては白すぎる殿村の脛を、滲ませている。


それから後の記憶が、殿村にはなかった。
妻も息子も、血を吸い尽くされてへたり込む自分のすぐそばで、堕ちて言ったに違いないというのに。

お尻が痛い。
ボクも。
息子ふたりは、かなりいけない経験をさせられたらしい。
なおも足許にかがみ込んでくる吸血鬼の小父さんとは、すっかり仲良くなったものか、
半ズボンの下、たるんだハイソックスをぴったりと引き伸ばして、しきりに舌を這わせてくる小父さんが脚を吸いやすいようにと、自分から角度を変えて吸わせ始めてしまっている。

妻の淳恵は、冴えない同僚のすぐ傍らに、まるで夫婦のように寄り添って。
しきりに自分に、お礼を言っている。

嬉しいわ、あなた。このかたとの交際を認めて下さるなんて。
都会に戻ってからも、交際させていただくわね。

けっこうなことだね。そのほうがボクも、ドキドキするから・・・

ついこぼしてしまった妖しい受け答えに応じるように。
息子たちが口々に、仲良しの小父さんに約束を口にし始める。

奥さんの血を吸われるのって、愉しそうだね。
ボクが結婚するときには、お嫁さんの血を吸わせてあげるからね・・・


あとがき
化生である吸血鬼に奥さんの血を吸われるというのも、さることながら。
身近な同僚に奥さんを飼い慣らされてしまうというのも、いっそうナマナマしいかも知れませんねぇ。
^^;

婚礼前の儀式

2013年11月26日(Tue) 06:44:32

握りしめた掌のなか。
マナーモードにしたケータイが、かすかな振動と共に、着信をつたえてきた。
明日婚礼を挙げることになるはずの、雅恵からのものだった。

開通ぅ~! \(^o^)/
儀式は無事に、終わりました。
すこし痛かったけど・・・(涙)
でも愛しているのは貴夫だから、安心してね♪

婚約者からの、処女喪失を告げるメールは、どこまでもあっけらかんとした文面だった。
つづいてあとを追うように、もう一通のメールが。

雅恵さんは処女でした。
ご馳走さまでした・・・


こちらも一見神妙そうにみえて、ひどくあっさりとした文面だった。
行間に含まれた淫らな毒が、貴夫の胸の奥をちょっぴり浸したとしても・・・
婚礼当日に花嫁に対してなされることは、あくまでも”儀式”ということになっていた。
だから行われる性通も、一回かぎりとされていた。
けれどもそこは男女の間のこと、相性が良かった場合には、”儀式”が二度三度と繰り返されることも、少なくはなかった。
そして携帯画面をいちばん下までもどかしく手繰る指が、凍りついていた。
さいごの行には、こんな一文が。

追伸 これから二回戦に、突入しますw

末尾の”w”は、いかにもフキンシンだった。
花嫁の貞節を汚す行為を、わざと茶化している。
ああやっぱり・・・と思いながらも、貴夫は寝床のうえで独り、悶々とするのだった。


この街では、花嫁は婚礼前に、年上の男性相手に処女を喪うしきたりとなっていた。
相手の男性は、花婿の側で選ぶことになっていた。
雅恵の相手をつとめる相手は、貴夫が幼いころから兄のように懐いていた基司だった。
両親と連れだって基司の家を訪れたとき。
紋付を着込んだ母は自分が花嫁になったかのように三つ指をついて、「末永くお願いします」と挨拶するのを、ひどく違和感なしに受け止めてしまっていた。
自分が得る最良のものを、大好きな基司兄さんにもおすそ分けをする。
なぜかすんなりと、そういう気分になれていたのだった。

もどかしい手に、ふたたび動きを与えた貴夫は、まず雅恵のほうに、返信をした。


お疲れさまでした!立派にお役目を果たせたみたいですね。
挙式は5時間後ですので、待ってます。
あとは気づかいなく、基司兄さんに優しくしてもらってください。
妬きもちは、やかないことにしますから。 (笑)


返事はすぐには、来なかった。
もどかしい手は、ふたたびケータイをまさぐりはじめる。
基司のほうにも、返信をした。


華村家の花嫁の純潔を基司兄さんに愉しんでもらえて、ちょっと誇らしい気分です。
雅恵の相手が基司兄さんで、心から良かったと思います。
ほんとうを言うと、ちょっぴり悔しいけれど。 苦笑
でも、基司兄さんが雅恵と仲良くなってくれたのが、むしょうに嬉しいのも事実です。
最愛の妻・雅恵のことを、どうぞ末永くお願いします。


こちらも返事は、すぐには来なかった。
双方から返事が来たのは、30分ちかく経ってからのことだった。
さいしょは雅恵のほうからだった。


ごめん~! (>_<)
ちょっと夢中になってしまいました・・・ (^^;)
基司さんいわく、
わたしって、Hの才能があるらしいです。
これからも華村家の嫁としておつきあいさせていただきますとお約束しましたので、
謹んでご報告申し上げます。
m(__)m
身支度する前に必ず行きますから、待っててね♡


つぎに後を追うように、基司から。

あれから三発やりました。(^^)v
雅恵はいい女です。
赤ちゃんができちゃったら、ゴメンです。(^人^;)
華村の嫁になっても、きみの留守中に時どき借りるからねっ。^^



白のスーツに身を包んだ雅恵が貴夫の部屋に現れたのは、それから三時間ほど後のことだった。
「ごめんなさい、遅くなっちゃった。すぐ・・・できそう?」
箱入り娘のはずの雅恵の直截な言い方に、貴夫は何と言ったものかと口ごもったが。
「失礼―――」
雅恵は素早く貴夫のまえにかがみ込んで、貴夫のスラックスを降ろしにかかった。

え?え?え?

ためらう間もなかった。
ブリーフからこぼれ出た一物を、雅恵はためらいもなく、口に含んでゆく。
不覚にも、恥ずかしいことに、ぬめる唇に呑み込まれた一物は、あっという間に逆立ち始めていった。

「さっ、早く・・・」
雅恵の言葉が間歇的に引きつってきた。
純白のタイトスカートのすそを振り乱して、貴夫を傍らのベッドへと、押し倒してゆく。
なにかを拭い取るようなしつようさで、雅恵は重ね合わせた唇を、なん度もなん度も重ねつづけてきた―――

・・・・・・。
・・・・・・。

よかった・・・。
安どのため息とともにひと言そう洩らすと。
雅恵は俯いたまま、乱れたスカートのすそから、粘りついた貴夫の体液をハンカチでぬぐい取っていく。

これから、支度してきますから。

結納の場でそうしたような他人行儀な口調に戻ると、雅恵はそそくさと、貴夫の部屋から出ていった。

この街のしきたりでは、挙式のあとが、本物の披露宴になる。
そこでは花嫁は”披露”される立場だった。
主賓に招いた町長が、さいしょに雅恵を抱くはずだった。
そのあとは、花婿の友人たちが何人も・・・
「おれにも抱かせろ~!」目の色を変えてそうせがんだ連中のなかから5人も選ぶのは、けっこう骨が折れた。
そのうち3人はすでに既婚者で、貴夫も彼らに許すのと同じ恩恵を受けた同士だった。
婚礼の前後に経験する男のうち七人までが、花嫁の純潔を獲たと自慢できる資格を持っている。
そのあとはもう・・・乱交状態になるはずだった。
新婦である雅恵の母の黒留袖を解くのは、さっき花嫁の股間をバラ色のしずくで彩った基司の役目。
新郎である貴夫の母の洋装に挑みかかるのは、花嫁の父親に決まっていた。
本来の役目を基司に譲った貴夫の父は、雅恵の姉の新妻ぶりを、夫のまえで愉しむ権利を頂戴している。
だれもがそれぞれに、得をする夜になるはずだった。
貴夫自身の役柄は・・・おおぜいの男たちを相手に親密な交際を強いられる花嫁にひと晩じゅう付き添うという、とても名誉な役柄。
さいごにふたりが結合をみて、婚礼は幕となる―――

花嫁の純潔を獲た男性は、時として新妻の浮気相手として関係を続けることになるというのだが・・・
おそらく基司はそうするだろうし、雅恵はきっと、貞淑妻を装いながらも情夫と共謀するだろう。
そして貴夫自身もまた・・・妻を寝取られる歓びに目覚めてしまった彼は、ふたりの密会を時おり覗くことを、愉しみとすることになるのだろう。


白無垢に身を包んで現れた雅恵は、まるで別人のようだった。
花嫁人形のように塗り込められた厚化粧の下。
可愛い唇がほんのりと、囁いてきた。
あれからまたお逢いして・・・ぎりぎりまで放してもらえなかったのよ。

そうか。この分厚い純白のヴェールに包まれている雅恵の下肢には、いまでも基司の体液がまとわりついているのか・・・
肚の底からこみあげてくる灼けるような衝動に耐えながら、貴夫は婚礼のあとの披露宴のありさまを、熱く想像してしまうのだった。
愉しい初夜は、もうそこまで迫っていた。

叔父へのプレゼント ~同級生の彼女~

2013年11月26日(Tue) 04:39:12

ごくっ・・・ごくっ・・・キュウ・・・ッ

圧し殺すような吸血の音に、舞原貴幸は、声を飲んで情景を見守っていた。
女子の制服を着た同級生が、中年の男に首すじを咬まれ、生き血を吸い取られている。
そんな光景を白昼目の当たりにして、ただぼう然と見とれてしまっているのだった。
女装している同級生の名は、片瀬真沙雄。女子として登校しているときには、下の名前は「真沙恵」という女の名前で呼ばれている。
相手の吸血鬼は、実の叔父だときいている。
恋人の日ノ瀬みちるまでも紹介して、二人ながら生き血を捧げている関係・・・ときいていた。

吸血の儀式は、どうやら終わったらしい。
吸血鬼はのしかかっていた真沙恵のうえから身を起こして、
真沙恵は肩で息をしながら、まだうつむいていた。
ずり落ちかけた白のハイソックスの脛が、妙に眩しい。
首すじにふたつ綺麗につけられた噛み痕には、吸い残された血潮が、チラチラと輝いていた。

吸血鬼がスッと姿を消したとき。
貴幸はしぜんと、脚を真沙恵のほうへと向けて・・・つぎの瞬間、自分でも信じられないような言葉を発していた。
「オレ、女子のかっこしているお前になら、血を吸われちゃってもいいかも」
ほんとう・・・?
見あげる目線が、女の目になっている。
貴幸はそう思った。
「じゃあ悪いけど、お言葉に甘えるわ」
口調までもが、女子の口調になっている。
かすれかけた、男子にしては高いトーンの声色が、その女言葉を不自然ではないものにしていた。

近寄せられる唇が、急いた息遣いをしているのに気づいて。
貴幸は胸をドキドキとはずませていた。
本物の女子に襲われるよりも、オレって昂奮してるかも・・・
むせ返るほどの恍惚に目がくらみ、つぎの瞬間、うなじのつけ根にもぐり込んでくる牙が、痛痒い疼きを伝えてきた。
あっ、血を吸われちゃう・・・
皮膚の下をめぐる血潮を、グイッと引き抜かれる瞬間・・・
貴幸は目を丸くして、目いっぱい見張った目を、ゆっくりと悩ましげに閉じてゆく。

ちゅうっ、ちゅうっ、ちゅうっ、ちゅうっ・・・

あっ、あっ、あっ、あっ・・・

自分のうえにおおいかぶさる吸血の音が度を重ねるにつれて、
貴幸は姿勢を崩し、その場に尻もちをついていた。
濃紺のハイソックスと半ズボンの間から覗く太ももの白さが、夕陽に照らされてしっとりとした輝きを帯びていた。
「初めてのときはね、脚も咬まれたの」
と、真沙恵。
「そう・・・」
と、貴幸は、うつろに頷く。
「太ももと、ふくらはぎと・・・ふくらはぎはね、ハイソックスのうえから」
真沙恵の指が、貴幸の足許のその部位を、順々に指さしてゆく。
「そう・・・」
貴幸はただ、虚ろに返事をするばかり。
「咬んでも・・・いい?」
「どうぞ」
応えは言下に、かえってきた。

シクッと刺し込まれる牙に、半ズボンの下の太ももが少しだけ、引きつった。
ちゅう・・・っ。
吸い上げる血の音が、すこしもブキミなものに思われない。
あー・・・
恍惚のあまり、少年は喉の奥底からうめき声を洩らした。
「ハイソックスも破っていいかな?」
女装の同級生のイタズラっぽい笑いに釣り込まれて、貴幸はついうなずいてしまっている。
ひざ小僧のすぐ下までピンと引き伸ばしたハイソックスが、唾液を帯びながらくしゃくしゃにされてゆくのを、
ただヘラヘラと哂いながら、見おろしつづけていた。

「彼女、連れてきて」
真沙恵の目は、しんけんだった。
「いいよ。お前が血を吸うの?」
「ううん、わたしの叔父さんに、紹介するの」
「お前も血を吸って、いいんだぜ?」
「うん、でもわたしはそのあいだ、貴幸の相手をする」

傍らで組み敷かれる制服姿の彼女と、
手を握り合ったままあお向けになった貴幸にのしかかる真沙恵―――
想像だけで、半ズボンのなかの股間が熱くなった。
「昂奮、してるよね・・・?」
「あ?・・・ああ・・・」
冷やかな指摘さえもが、快感だった。

一時間後。
狂おしい想像力のなかで思い描いた光景は、実現していた。
紺のベストにブレザー、グレーのスカートに白のハイソックス。
見慣れた制服姿の彼女は、大きな瞳を見開いたまま、一方的に組み敷かれていって。
飢えた唇があやした唾液を輝かせながら、彼女の白いうなじにチロチロと這うのを、目の当たりにさせられて。
彼女と同じ制服を身にまとった真沙雄―――いや真沙恵が、上から体重をあずけてきて、貴幸の首すじを咬んだ。
ハッと見開かれた瞳が、彼氏が咬まれるのを見届けると。
こんどは自らを襲う苦痛に、眉をしかめてゆく。

浮気じゃないからね。
女装の男子に、浮気なんかしないから・・・
ほんとう・・・それって、ほんとう・・・?
彼女の呻きに似た問いかけに。
ほんとうだから・・・と言いさして。
ほんとうなんだろうか?と、自問していた。
ジッパーをずり降ろされた半ズボンのなか。
熱くなった股間には、真沙恵の手が差し入れられていて。
不覚にも洩らしてしまった体液は、真沙恵のパンティに粘りつけられている。
それを傍らの彼女は気づいているのか、いないのか。
みずからもまた、スカートのなかに手を入れられて。
彼氏にも見せたことのない秘所を、あられもないまさぐりに、ゆだねはじめてしまっていた。

新しい関係も、悪くないと思うよ。
男言葉に戻った同級生の囁きに頷くと、重ね合わされてくる唇に、貴幸は応えはじめてしまっている。
隣ではとっくに、まだ自分さえもがかち得ていない口づけを、
少女は中年男のために、許しつづけ、耽りつづけてしまっていた。


あとがき
ヘンな時間に目が覚めたと思ったら…。(^^ゞ

叔父への贈り物 ~女子生徒として通学~

2013年11月22日(Fri) 09:43:57

待ち合わせた放課後の校舎裏。
こちらに歩み寄ってくる白のハイソックスの足許が、ひどく眩しく映る。
肩先までの髪型は、そっけないほどシンプルにまとめられていて、
化粧気などもちろんない、素朴な目鼻立ちは、質実剛健という周囲の評判そのものだったが。
深い色をたたえた、大きな二重まぶたの瞳。
どきっとするほどツヤツヤとした黒髪に縁どられた、白い丸顔。
つき合うようになってからいまさらのように気づいた彼女の美点をまえに、真沙雄はいまさらのように、胸のドキドキを抑えかねている。
ややずんぐりとした体形は玉にきず・・・といわれるかもしれないが、彼「ら」にとってはそれさえもが魅力。
なにしろ、発育のよい少女のしなやかな肉づきからは、処女の清冽な生き血をふんだんに摂ることができるのだから。

自分のことを待ち受ける真沙雄を遠目にみとめると、みちるは彼にチラと目を留めただけで、会釈もせずに足を速めた。
「きょうのデートの約束なんだけどさ」
あいさつ抜きだった。
そこまで話しかけたとき、

あー・・・

少女は軽く顔をしかめて、首すじのあたりを抑えて立ちすくむ。
かすかにピリピリと震える長いまつ毛が、意外なくらいに悩ましい。
ひざから力が抜けそうになるのに気づいた少年は、とっさに彼女を抱きとめていた。
彼女の体重を受け止めて初めて、ビクッとしたようにたじろいだけれど。
みちるは真沙雄に抱きとめられたままの格好で、息を弾ませた。
迫った息遣いが少年の耳朶を、悩ましく染める。

発作だわ。
少女は呟いた。
このごろよく、発作が起きるの。と。
どういうこと?
もの問いたげな少年に、少女は残酷な返しをつきつけた。

きのうのデートの約束、なしにしてくれない?
あなたの叔父さまに、血を吸われたくなった・・・

家に帰ったら電話が来ていて、彼女の血を吸いたいという言伝を母親が受け取っていたという。

行っておあげなさいな。母さんはきょう、差し上げ過ぎちゃって・・・二日つづきはさすがに無理だから。

それとなくきょうの情事を告白する母には答えもせずに、みちるは無表情に呟いていた。
約束のもの、用意してくれた・・・?

あなたの叔父さまに、血を吸われたい。
制服のブラウスを、あたしの血でなま温かく、ぐっしょりと濡らしながら、抱きすくめられたい・・・
ねえ、あたしって、ヘンかな?
でもこんなふうにしたのは、あなたなんだよ?

ああ、そうだね。そうだよね・・・

真沙雄は苦しげに、そう応えるばかりだった。
自分の恋人が、血を吸われようとしている。
相手は人もあろうに、自分の叔父。
けれども叔父に血を与えたボクは、自分から彼女を誘って、叔父に襲わせていた―――

狂おしい人間関係の連環に、眩暈を感じた。

これ。

少女が差し出したのは、大きな手提げ袋。
問われるよりも先に、中身を告げていた。

あたしの制服だから。
デートの代わりに・・・
いまからこれに着替えて、あたしにつきあって。
あたしはあのひとに、血を吸われたい。
あなたの視ているまえでも、かまわない。

いつもは寡黙に引き結んだちいさな唇から、時おり白い歯をのぞかせて。
可愛い唇はまるで朗読するようなよどみのなさで、冷酷な言葉をつづっていった。

少年は頬を上気させて、応えている。

わかったよ・・・



ほら、こっちよ。早く!

少女の鋭い語調の囁きが、足取りのおぼつかない真沙雄を導いていった。
学校の裏門から人目を避けるように忍び出たのは、おそろいの女子の制服姿の二人。
紺のブレザー、白のブラウス。胸元には赤いリボンをたなびかせ、腰周りには赤のチェック柄のプリーツスカート。
白のハイソックスに包まれた長い脛が二対、競い合うようにして足取りをそろえていった。

さいしょは、あなたからよ。
うん、そうだね。美味しいご馳走は、あとからだものね。
ふふふ・・・

みちるははじめて、会心の笑みを洩らした。
「美味しいご馳走」と思われるのが、嬉しいらしい。

だって、せっかく痛い思いしてまで血を吸われるんだもの。
美味しいほうがいいじゃない。

彼女の考えは、単純明瞭だった。

姉妹のようだな。お前、女子の制服似合っているぞ。

出迎えた叔父は、満足そうに目を細めていた。
みちるが真沙雄に、彼女の制服を着るよう仕向けたのは、どうやら叔父らしい・・・
いまごろになってようやく、気づいていた。

しっかり味わってよね。ひとがせっかく、痛いのガマンしてあげてるんだから。

少女の言いぐさに、叔父はにんまりと笑んだだけだった。

ほんとうに、痛いのだろうか・・・?
白のハイソックス越しに突き入れられてくる叔父の牙が、皮膚の奥に強い疼きをしみ込ませてくるのを感じながら。
少年は軽い疑念を感じていた。

ちゅうっ。ちゅうっ。ごくり。きゅうううっ・・・

いつもながら生々しく鼓膜を染める吸血の音が、いつも以上にナマナマしかった。

美味しいほうがいいじゃない。

恋人の言いぐさに、心のなかで頷きながら。
真沙雄は失血にひざの力がゆるんでくるのを覚えていた。

さいしょは真沙雄さんに、連れてこられたんです。
ボクがお手本を見せるから、叔父に血を吸わせてあげてくれないか・・・って。
襲われちゃったなんて、嘘なんです。
あたし、自分の意思で応じただけなんだから。
真っ白なハイソックスに、血のシミが滲むのはちょっと屈辱だったけど。
そのうちになぜか、そんなことが、とても嬉しいような気がしてきちゃったんです。
だって、血がなくて困っているひとに、献血しているわけでしょう?
学校で教わっている”奉仕の精神”と、いっしょなのかなって、思っちゃった。
さいしょは軽い気持ちで血を上げてたんだけど。
服の上から咬まれて、お洋服汚しながら血を吸い取られているのって、日常を超えちゃうみたいな感じがしてきて。
唇で素肌を舐められながらチュウチュウやられていくうちに、なぜかウットリしてきちゃったんです。
彼氏のキスと、いい勝負だわ。イイエ、真沙雄さんとのキスよりも、ドキドキするかも。
ええ、真沙雄さんも、よき協力者なの。
あたしが血を吸い取られてウットリしちゃうのを、優しく見守ってくれていて。
帰り道も、エスコートしてくれるんです。
だから放課後は、なるべくいっしょに過ごすの。
母が父を裏切るのと訳が違って、あたしは彼といっしょに慈善行為に励んでいるだけなんですから。。


いつもの通学路を大またに闊歩するのは、スカートの下から覗いた白のハイソックスの脚。
胸もとには彼女とおなじ色のリボンが揺れて。
頭のうえを蔽っているウィッグは、頬を心地よく撫でていた。
女子として登校する日は、前日から異装届を出すことになっている。
その日だけは、名前さえも、真沙雄から真沙恵に変更となる。
朝出欠を取るときに。女子の名前でフル・ネームを呼ばれるのが。
いまでもむしょうに、ドキドキする。

女子生徒の制服を着用して通学する男子生徒は、実は決して少なくない。
そうした生徒たちは、授業中に呼び出されて、意中の吸血鬼との献血行為に耽ることになる。
授業は出席したことにされていて。
向学心の強い生徒には、補習の機会まで用意されているという。

真沙雄のような例は、けっして珍しくない。
そのことが。
恋人を日常的に吸血されながら。
おそらくは彼のことを裏切って、浮気さえしているだろう恋人のことを想像して、昂ぶりさえ感じながら。
彼らは女子学生として、通学路を闊歩していく。

叔父へのプレゼント ~恋人の母親~

2013年11月20日(Wed) 08:15:54

あ・・・あなたの叔父さまに、血を吸われたくなってきた。

みちるの横顔は、ひどく真剣にみえた。

いいよね?

詰問口調に、つよい目線。
抗うことはできなかった。
むしろ・・・叔父との関係を理解してくれたみちるには、頭があがらないでいる。

絶対ヘンだよね?
真っ白なハイソックスに、べっとりと血をつけられちゃうのが愉しいなんて。

そんなことを言いながら。
少女は自分の置かれた環境を、あきらかに愉しみはじめていた。

ゴメン、きょうのデートはここまでね。
あたし、叔父さまに誘われているんだ。
悪いけど、血を吸われてくるからね。
妬きもちやいちゃ、だめなんだよ。
だってあなたが、そう仕向けたんだもの。

恋人を挑発するように、みちるは白い目で真沙雄を視た。
叔父さまに咬まれるの、愉しくなっちゃった。
こんなあたしだから、あなたあたしのこと、気になるんでしょ?

少女の言いぐさは、たしかに的を射ているのだった。



母さんのこと、連れてきてあげるから。
真沙雄の願望を見透かしたように。
初めて自分の意思で血を与えたつぎの日に。
ほんとうに母親のことを、叔父の待つ真沙雄の自宅に、伴ってきた。

「どういうことなんですか!?」
意図を告げずに娘に伴われたみちるの母親の怪訝そうな表情が、一瞬の苦痛に眉をしかめた。
腰かけたイスの背後から忍び寄った叔父は、ねずみ色のストッキングのふくらはぎに、あいさつ抜きに咬みついていた。

ちゅー・・・・っ。
母親の血を吸い上げる音に、ちょっとだけ顔をしかめたみちるは、
母さん、だいじょうぶ?
椅子の背もたれにそっくりかえった母親の肩を抱いて、あやすように髪を撫でていた。
娘の手で撫でられた髪は、中年男の汗臭い指先に掻きのけられて。
あらわにされた首すじに、恥知らずな唇がふたたび、貼りついた。

ちゅー・・・っ。
唇を吸いつけられるたびごとに。
女の表情から屈辱や怒りが陰をひそめて。
怨みのこもった眼差しが、ストッキングをブチブチと噛み破りながらふくらはぎになすりつけられてくる唇に注がれる頃にはもう、
「お父さんには内緒にしないとね」
そんな軽口さえ、洩らしはじめていた。

とざされたふすまの向こう。
母親のなまなましいうめき声を聞くまいとするように。
少女はずうっと、耳をふさぎ続けていた。
同級生の唇が、自分のことを撫でまわすように。
身体じゅうに吸いつけられてくるのを、厭いもせずに。

あなたもストッキングなんかに、関心あるの?
冬になったら、あたしも黒のストッキング履いて学校行くから。
破くのは、はき替えのあるときだけにして頂戴ね。

ふすまごしの気配は、どうやら母が、父を裏切ることに熱中し始めたらしい様子を伝え始めてきたけれど。
もう彼女は、耳をふさいではいなかった。
あなたがあたしの血で喉を鳴らすの、聞き逃しちゃいけないからね・・・
ふふふ。
男に抱かれて血を吸われながらほほ笑むことを。
みちるは早くも、覚えはじめていた。

あなた、不思議なひとね。
気になるひとを、自分で襲うだけじゃなくって。
そのひとがほかの男の腕のなかでどうなるかが、気になるなんて。
どうなるのか、ちゃんと見届けてちょうだいね。
人妻になっちゃったら・・・きっとあのひとの求愛を、拒むことなんてできなさそうだから。

叔父へのプレゼント ~みちるのハイソックス~

2013年11月20日(Wed) 08:00:13

ひどい貧血・・・
みちるは額を抑え、俯きつづけていた。
悲しい、というよりも。苦しい、というよりも。ただひたすら、悔しかった。
身体じゅうの血潮を、男ふたりに舐め尽くされてしまったのだから―――

ごめんよ。だいじょうぶかい・・・?
真沙雄がおずおずと、声をかけてくる。
額を抑えつづける彼女の傍らに、さっきからずうっとひかえていて、
気遣わしそうにじっと、こちらを見守っていた。

少年の、気遣いに満ちた視線を、
少女は、はげしい怒りの視線で、はね返していた。

だいじょうぶなわけ、ないじゃない。
ふたりして血を吸うなんて、ひどい!

腰が抜けるほど血を吸い取られて、へたり込んでしまっているのを感じながら。
無力だとわかり切っている悪罵を投げつけずにはいられなかった。
それくらい彼女は敏感で、生娘らしい潔癖さに満ちていたから。

身体の底が抜けてしまったような無力感を、腰周りにまとわりつかせながら。
少女は訊いた。
いつもこんなふうに、身動きできくなるくらい、女の子の血を吸うの?
二人がかりで、力づくで抑えつけながら・・・

ボク、女の子の血を吸ったの、きみが初めてなんだ。

息を詰めて口ごもりながら漏れた言葉を、少女は確かめるように、なん度も心のなかで反芻する。

母に言いつけてやる。

気の強い潔癖さは、悪罵を投げるのをやめない。

覚悟している。叱られるよね?もっとひどいこと、されちゃうのかな。

少年はそういいながら、外出用のジャケットを手にした。

家まで送るから。ひとりで歩けないだろ?

少女は忌々しそうに少年をにらみ、けれども口を尖らせながら、自分を起たせてくれようとする少年の手を取った。

(似合いの二人だぜ)
優はすこし離れたところから、そんなふたりのやり取りを、横っ面で窺っている。
モノにした少女の―――甥の嫁になるかも知れない生娘の―――柔らかな肢体から吸い取った血潮が。
いま、彼の体内を心地よく駆けめぐっている。
気分まで、若々しくなってきやがる。
少女を支配したはずの自分の猿臂が、少女の血液をめぐらせていて。
ピチピチとした生気に満ちた清冽な血潮が、男を内側から支配しようとしている。
姉さんのときも、こうだったっけ。
遠い昔、畳のうえに抑えつけたセーラー服の襟首をかきのけながらむさぼった血潮の記憶が、
なぜかありありと、いくばくかの哀しさを帯びながら、優の胸を甘苦しく浸した。


「イイエ、どういたしまして」
みちるの母親は、通学用の白いハイソックスを真っ赤に濡らした娘の帰宅を出迎えながら。
精いっぱいの気丈さを取り繕って、紋きりばったな会釈を、真沙雄に向けて返していた。
母鳥が雛をかばうように、傷つけられた娘を訪問者の視界から身をもって遮りながら、
女は心ばかりの怨みを込めて、吸血鬼の少年にばか丁寧な応接を試みた。
「あなたの心臓に杭を打たせていただくか、娘の交際相手としてお迎えしたものか、本人ともよく相談してみますので」
表向きだけは、どこまでも折り目正しい語調だった。
「もう、いいから。そんなに怒んないでも」
娘はぶっきら棒に、母親の庇う手をいかにも鬱陶しげに振り払うような言い方をして、
投げやりな足取りをバスルームのほうへと向けて、二人の前から姿を消した。
「ともかくきょうのところは、お引き取り下さいね」
少年のおどおどとした態度や、もどかしげになにかを言おうとするようすを一切無視して、
母親は娘の後を追って、そそくさと座を起った。

投げられた悪罵をとうぜんのものとして受け止めた少年は、
(つくづくボクも、吸血鬼になってしまったな・・・)
そう思わずには、いられなかった。
ひざ下丈のロングスカートのすそからチラチラと覗く、ねずみ色のストッキングに透きとおった彼女の脛が、ひどくなまめかしく真沙雄の網膜を染めていた。
みちるさんの血が美味だということは・・・
あらぬ想像をたくましくしてしまうところに、真沙雄は吸血鬼としての本性を、自覚せずにはいられなかった。


潔さが、真新しいハイソックスの白さにあらわれていた。
少女はピンと胸を張り、挑戦するように男ふたりと対峙している。

脚、咬まないことにしようか?
優が低い声色で少女を気遣うと。
ううん、いいんです。だれかに視られたからって、べつにかまわないから。
血に飢えた吸血鬼たちの慾情を、そそろうというのか。
白のハイソックスで覆った発育のよいふくらはぎを、むしろ見せびらかすように差し伸べてゆく。
女の子の生き血、欲しいんでしょ?遠慮なさらずにどうぞ。
無邪気に笑んだ唇から歯並びのよい前歯が、ニッとむき出しになった。

さきに手を出したのは、優のほうだった。
じゃあ手始めに・・・そう言いながら、少女の足許ににじり寄って。
革靴の足首をかかえ込むように抑えつけてしまうと。
たっぷりとしたふくらはぎに、にゅるっと舌をなすりつける。
しなやかなナイロン生地の表面に、唾液が粘っこく糸を引いた。
ふたたびふるいつけられた唇は、もっとしつようだった。
脚のラインに沿って整然と流れるリブの縦じまが、ぐねっとねじれた。
「あッ、もう・・・!」
思わず口にした小さな叫び声の下をかいくぐるように。
埋め込まれた二本の牙が、ハイソックスの生地のうえにバラ色のシミを滲ませていった。

行為のあいだ。
真沙雄はずうっと、濃紺のブレザーの両肩を、抱きかかえるようにして、支えていた。
まるで自分自身もが、叔父への献血に励むように。
少女とおなじ向きの視線が、チュウチュウと鳴る吸血の音を洩らす唇の蠢きを、見つめつづけていた。

ずううっと視られながらでも、照れたりしないんですね。
少女はあきれたように、優に言った。
夢中・・・だからね。
相手の唇を濡らした自分の血が、毛深い手の甲に拭われていくのを、少女は平然と見つめている。
あなたは吸わないの?
こいつ、オクテだからな。
ほんとに・・・
みちるはぽっちゃりとした掌で口許を隠して笑った。

ほら、いいのよ。噛んでも。
差し伸べられた無傷なほうの足許に。
少年はそろそろとかがみ込んでいって。
それでも心配らしく、傍らのベンチを指さして、座るようにといった。
いちおう心配してくれてるんだ。ありがと。
少女は遠慮なく、ベンチに腰かけた。
ほら、噛んでよ。叔父さまみたいに、あたしのことを夢中にさせて。

少女はきちんと結わえた胸元のリボンをもてあそびながら、
チクリと刺し込まれてくるほろ苦い疼きを、真正面から受け止めていく。

叔父へのプレゼント ~半吸血鬼にされた甥~

2013年11月19日(Tue) 07:45:15

ぴかぴかと磨き抜かれた、堅い木の床のうえ。
白のハイソックスを履いたふくらはぎが、すんなりと伸べられている。
真新しいハイソックスには、赤と青のラインが2本、ふくらはぎの肉づきのいちばん佳いあたりを、鮮やかに横切っていた。
真沙雄にとって、せいいっぱいの装い、だろうか?
けれどもすでに渇いた欲情をたぎらせてしまっている優の瞳には、それはいま彼が渇望している若い血潮をたっぷり宿した肉体としか、映っていないのだった。
相手は姉の一人息子だった。
けれどもいまの彼に、容赦はない。
古い家系のこの家のしきたりでは、与えられるべくして与えられた恩恵だった。

家のなかでだれか一人、血を吸い尽くされて吸血鬼となる。
それがこの旧家での、因習として伝わっていたから。

ほんとうは娘を生んであげれればね、あなたに生娘の生き血を飲ませてあげることができたんだけど。
姉の言いぐさに、優は当然のように肯いていたし、
言葉の主も自分の言っていることを当然と考えていた。
そして優の義兄さえもが、傍らで相槌さえ打っている。
うちの真沙雄は、ハイソックスが好きみたいだから。
その日はハイソックスを履いて、優くんの相手をさせたらいいだろう。
そんなことさえ、こともなげに、言ってみせるのだった。


いいよ、叔父さん。遠慮なくやって。
真沙雄は乾いた声色で、叔父の牙を望んでいた。
すまないね、悪いがきみの生き血をそっくりいただくよ。
うん。ほんとうは血を吸われるなんて嫌だったんだけど・・・相手が叔父さんだったら、しょうがないかな。
整った横顔の持ち主である少年は、さいごは笑みさえ、漏らしていた。

キュウッ。
不気味な音とともに吸いつけられた、魔性の唇の下。
真沙雄の脚線に沿って整然と流れるハイソックスの縦じまが、ぐねぐねとねじれた。
悪いね。しょうしょうイタズラさせてもらうからね。
叔父の不埒な意図を知ってか知らずか、真沙雄はただうっとりと、頷いていた。

吸いつけられた唇の下、赤黒いシミがじんわりと、拡がってゆく。
「叔父さん、美味しい・・・?」
薄目を開けて問いを投げる少年に、優が「旨いぜ」と囁くと。
少年は安心したように、目をつぶる。
「いちばんお気に入りのハイソックス、履いてきてあげたから。うんと愉しんでね」
「嬉しいね」「ほんとう?」
目を見開いた甥を、優は抱きすくめていた。
「首すじを咬むの?」
「とうぜんそうするが・・・そのまえに」
叔父は言葉を切った。
「おまえ、とうとう女を愛さずに仕舞ったな。俺がお前の身体に、女の愛し方を教え込んであげよう」
え・・・?
問い返そうとする甥の唇を、吸血行為を重ねて赤黒く爛れた分厚い唇が塞いだ。
「うふふふ、ふ。これは特別だ。姉さんが娘を生んでくれなかった代わり、いちどだけ、女として愛してやろう」
ずり降ろされた半ズボンからあらわになった股間に、どす黒く怒張した肉塊の熱さが沁み込むのを、
少年はさしたる違和感もなく、受け容れていた。


ちゅうちゅう・・・キュウキュウ・・・
不気味な吸血の音が、静かに横たわる少年の身体におおいかぶさってから、どれほどの時間が経ったことだろう。
身を起こした優は少年の首すじに手をあてがい、息がないのを確かめると。
静かに合掌をして、それから呟いた。
いちどで済ませちゃうには、もったいなかったかな・・・

「ご馳走さまでした」
頭を下げる優に、さすがに母親は横を向いてすすり泣き、父親は気丈につくろった無表情を崩さずに軽く頭を下げて応えた。
「いかがでしたか?」
「真沙雄くんの生き血は、旨かったです。きっと一生の思い出になります」
「そういってもらえて、真沙雄も満足だろう。で・・・いつ起きあがるのかね?」
「そうですね。もうじきだと思いますよ」
「案外に、はやいんだね」
「真沙雄くんに血を与えるのは、親御さんの務めです。なにかと大変でしょうが、ここから先はよろしく頼みますよ」


ふすまの向こうでは、早くも冷たくなった身体が、身じろぎを始めている。
半開きにしたふすまのこちら側で息を詰めている昌代夫人は、息子が半吸血鬼として生き返るのを、今か今かと待っている。
「昌代・・・」
部屋の奥の暗がりから、声がした。夫のものだった。
「後を頼む。おれはもう動けない」
昌代はおずおずと、喪服のスカートのすそを揺らして、黒のストッキングに透けるつま先を、暗がりに踏み入れた。
数歩と歩かないうちに、暗がりの底に横たわっている夫の身体につまずいた。
たくし上げたスラックスの下、夫は、長めの靴下に咬み痕を赤黒く滲ませていた。
無言で腕をからみつけてくる男に、昌代はとっさに抗ったが、すぐに自分の意思で抵抗をやめた。
息子の腕が否応なく彼女をねじ伏せ、うなじを狙ってくる。
ちくりと突き刺す牙が皮膚を破り、生温かい血潮がブラウスを浸すのを、昌代は感じた。


こうこうと明るい照明が、行為の過ぎ去った部屋を静かに照らしていた。
夫は靴下に穴をあけたまま、惚けたように寝そべっていて。
昌代は振り乱した髪もそのままに、黒のストッキングに走る伝線を、しきりに気にかけていたけれど。
夫の前ではもっと気にかけなければならないはずの、漆黒のスカートに撥ねた白濁した粘液を、どろどろと這わせたままにしている。
夫以外の身体を識らなかった身に、息子の愛撫がしつようなまでにくり返され、
自らもまた、埋み火となりかけていた情念に焦がれるように、応えつづけてしまっていた。
真沙雄は母親の手を取ると、指先に自分の下半身から分泌したばかりの粘液に浸して、それをそのまま母の口許へと持っていく。
いちどは拒みかけた掌が動きをとめて、こんどは自分の意思で、粘液を唇に含んでいった。
その唇に、熱い息吹を含んだ息子の唇が、激しい勢いで重ね合わされてくる。
惚けたほうに見守る夫の前―――
昌代はわれを忘れて、乱れはじめた。
首にかけた真珠のネックレスを、シャラシャラと、虚ろな音を立てて揺らしながら。



「どうぞ」
勉強部屋にいた真沙雄は、ほとほとと叩かれたドアのほうを見返ると、叔父を招じ入れた。
真沙雄の身なりは、一変していた。
学校から戻ってくると、クラスメイトの女子生徒が着ているのと同じ、女子用のブラウスに袖を通し、スカートを腰に巻き、紺のハイソックスをひざ小僧のすぐ下まで、ぐーんと伸ばす。
この子が女の子だったら、処女の生き血を飲ませてあげられたんだけど。
母親のその願望を近づけるべくして、真沙雄がやったのは。
家庭にいるあいだだけでも、女の子になり切ることだった。

含み笑いを泛べながら近寄ってくる叔父のまえ、イスから起ちあがった真沙雄は、ほんのりと微笑を返して。
圧しつけられてくる叔父の唇を、自分の唇で包んでゆく。
丈の短いスカートの奥は、叔父の手にギュッと握りしめられて、熱く昂ぶりはじめていた。

スカート、ぐしょぐしょになっちゃうよ・・・

真沙雄がふたたび虚ろな声を発したとき。
叔父はすでに甥を相手に数度の交尾を遂げたあとだった。

よく俺に仕えたな。ごほうびに・・・お前、明日から好きな女の子を襲って、血を吸うとよい。
そうすることで、おまえはいっそう、女に近づくことになるのだから。



日ノ瀬みちるが、真沙雄の呼び出しを受けて彼の家を訪問したのは。
それから数日後のことだった。
襟もとに紺の縁取りのある白のベストに、濃紺のブレザー。
グレーのプリーツスカートの下は、やはり濃紺のハイソックス。
血色のよい丸顔に、ちょっと怪訝そうな表情が浮かんでいるのは。
勉強部屋に現れたのが、彼女を呼び出した真沙雄ではなく、その叔父だったから。

真沙雄の叔父が吸血鬼だということは、みちるは誰からともなく聞かされている。
因縁のある相手いがいの男に、きむすめがいきなり血を吸われることはない―――そう聞かされてはいたけれど。
無言で迫ってくる優は、みちるとの間に何らかの因縁があると信じて疑わないらしい。
そんな気配を察して腰を浮かしかけたときには、すでに遅かった。

ぎゃあ!

獣じみた声が、静かな邸の廊下に響き渡った。

「叔父さんの気に入るように、太めの子を択んだんだよ。血をいっぱい獲れそうだからね」
冷やかな声色の持ち主は、足許に倒れている少女とお揃いの、女子の制服姿だった。
白目を剥いてあお向けになったみちるは、ブラウスの襟と、濃紺の縁取りのある白のベストとを、赤黒く光らせて。
意思を失ったまま、生娘の血に飢えた中年男を相手に、血液を提供しつづけていた。
「照れるな。真沙雄。本当はお前、この娘のことが好きなんだろう?」
図星を刺されてグッと言葉に詰まった真沙雄は、案外素直に頷いている。

「おれに襲わせたりなんかしないで、自分で襲えばいいじゃないか」
「だって・・・なん度もそうしようかと思ったんだけど・・・」
「いざとなると、踏ん切りがつかなかったんだろう」
「うん・・・まあ・・・」
「そんなことにならないようにと、俺がわざわざケツの穴を掘ってやったのに。効果なしだなお前」
下卑た言いぐさに顔をしかめながらも、わざとストレートに言うのが叔父の親切・・・と割り切っているらしい少年は、叔父に言う。
「みちるさんの血、美味しかった?」
「ああ、この娘は生娘だ。お前の嫁にする女なんだろう?遠慮なく味わえ」
叔父にそう言われて初めて、真沙雄はみちるに身体を近寄せた。
渇いた唇がしきりに、少女の柔らかいうなじを欲しているのが、はた目にもわかる。
「ほら、やれ。やってしまえ」
なん度もけしかけられてやっと、真沙雄の唇は少女のうなじを這い、叔父がつけた傷口を求めてゆく。
柔らかいうなじに咬み痕がふたつ、綺麗に並んで紅く濡れていた。
おずおずと吸いつけられた唇が・・・つぎの瞬間、キュウッと強く吸って。ゴクゴクと喉を、鳴らしていった。

親友同士。

2013年11月19日(Tue) 06:45:30

この街で、若いひとの血を欲しかったら。
お近くの、〇〇学園に行くことだね。
良い家の坊ちゃん嬢ちゃんが通ってる学校なんだが。
創立者が吸血鬼と懇意でね。
父兄も承諾のうえで、生徒の血を自由に吸わせてくれるようになっているんだ。
かく申すわしも、折々世話になっておるがの。。。
特定の相手のいる子は別じゃが、そうでなければ、校内なら自由に襲って構わんそうじゃ。
手っ取り早く生き血を吸いたければ、なるべく学年の若い子を狙うといいよ。^^

吸血鬼仲間のあいつに、教わるまでもなく。
俺はまっすぐに、その学園をめざしていた。
もともとこの地を訪れたのは初めてではなくて。
昔はここの住民だったのだから。

目当ての生徒は、すぐに目星をつけていた。
校門をくぐってすぐに、目に触れた子。
理由はただ、それだけのはずだった。

キリッとしたショートカットのその子の名は、片瀬まさみ。
近くにいた担任と思しき教諭から名前を訊いて、確かめておいた。
名前くらいは・・・知っておかないとなにかと不便だったから。

まさみはまるで俺を誘うように、校舎の裏手へと足を向けてゆく。
真っ赤なチェック柄のミニスカートの下は、ひざ下までたっぷりとあるグレーのハイソックス。
この学校のトレード・マークにもなっている、指定のものなんだそうだ。
俺の頃はまだ・・・たしかセーラー服だったはず。

昔の記憶を追いやるように、俺は少女の後をそれとなく、追いかける。
いまはすっかりリニューアルされた真新しい校舎は、ぴかぴか輝いてみえたけれど。
内実は・・・俺たちのような連中のための、昏い巣窟と化している。

アッ!何するのッ!?
怒り口調だった少女は、俺のただならぬ形相を見て、とっさに俺の正体を察したようだ。
た、助けてぇ・・・
すぐに涙声になって、その涙声さえもが、すぐにかき消されてゆく。
掴まえた両肩のすき間に、顎を食い込ませるようにして。
柔らかいうなじをゆっくりと、抉ってやった。
勢いよくピュッと噴きだした血潮は、生温かくピチピチとした生気を宿していた・・・

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悪いね、お嬢さん。ちょっとだけ、イタズラさせてもらうからね。
俺はそういって、少女の足許に唇をさ迷わせる。
まさみの顔色に新たな怯えがよぎるのを、横目で窺いながら。
「イヤッ!よしてくださいッ!」
制服の一部であるハイソックスをなぶりものにさせまいと、まさみは脚をじたばたさせたけれど。
雨あがりにぬかるんだ地べたに抑えつけたふくらはぎに、むざむざと卑猥な唇を這わされてゆく。
たっぷりと帯びたよだれを、じわじわとしみ込まされていきながら・・・
少女はけんめいに、いやいやをくり返していた。

ウフフ・・・フフフ・・・好い味わいだね。咬み破るのは、たっぷり愉しんだあとにするからね・・・
俺の意地悪な言いぐさに返事をせずに、
少女は丈の短いスカートを抑えて、あらわになりそうな太ももをとっさに抑えつけていた。

ごく・・・ごく・・・
ちゅう・・・ちゅう・・・
小ぎれいな濃紺の制服の背中に泥をつけながら。
少女は眉をピリピリと震わせて。
圧し殺すような吸血の音に、歯を食いしばって耐えている。
その初々しさが、可愛ゆらしくて。
頬ぺたにチュッとキスをしてやった。
吸い取ったばかりのバラ色のしずくが、少女の柔らかな頬を染めた。



吸血鬼に血を吸われるのは、入学するときからわかっていたの。
だから仲良しのまゆうちゃんとは、おんなじひとに吸われようね・・・って、約束したの。

俯きがちに呟く少女は、携帯で呼びつけた親友のことを、そんなふうに紹介してくれた。
隣室には、まさみの母親が、口をあんぐりさせたまま、大の字になって気絶していた。
ブラウスとカーディガンにべっとりと付着した血のりを、少女は小気味よげに見おろしている。
鮮やか過ぎるよ。腕前。母さんなにされたのか、きっとわかってないと思う。
そのあと吸われた自分の血を、指先にちょっぴり浸して。
まさみはその指先を、チュッと含んでみた。
ほろ苦い芳香に眉をしかめながら。
あたしの血って、美味しいの?
深い瞳の上目遣いが、俺の網膜に食い入ってきた。

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こんちはぁ・・・

なにも知らない親友の入れた、のんびりとした訪いに。
少女は我にかえると、「あ、まゆうちゃん?こっちこっち♪」と、牙を研いで待ち受ける俺のほうへと、親友をいざなってくる。

「きのうあたしね、血を吸われちゃった。このひとに」
「えっ?」
「だからまゆうちゃんも、あたしみたくこのひとに血を吸われるの。
 血を吸われるのは同じ人にしようって、言ったよね。約束守ってね」
「えっ?・・・えっ?・・・」
「あたしがお手本、見せるから。次はまゆうちゃんの番だからね」
色白でふっくらとした顔立ちのまゆうちゃんは、ルックスどおりのおっとりとした性格らしい。。
親友が首すじを咬まれて、ウットリとなって、姿勢を崩して畳のうえに尻もちをついてしまうまで、
まゆうちゃんは、まさみとおそろいの赤のミニスカートに黒のストッキングの足許をすくませて。
がたがた震えながら、いちぶしじゅうを見守ってゆく。

いっしょに血を吸われるときには、黒のストッキングにしようね。
校則では、正装は黒のストッキングって決まっているものね。

そんな約束を守るために、まさみはまゆうに黒のストッキングを履いてきて・・・って、あらかじめ頼んでいたのだ。

さて・・・と。
まさみを気絶させてしまった俺は、まゆうのほうへと向き直る。
口許に光らせたまさみの血のりは、初体験の少女を怯えさせるにじゅうぶん過ぎるほどだった。
「ヤです。ヤだぁ・・・」
気の強いまさみでさえ、涙声だった。
ましてまゆうのほうは、なんなく俺の手に落ちていた。
牙を刺し込んだうなじの肉は、まさみのそれよりも柔らかだった。
(悪いけど、まさみの母さんの首すじが、いちばん筋張っていた。)
首すじに唇を這わせて、ふっくらとした皮膚の感触を味わいながら、トクトクと噴きこぼれてくる血潮を舌に浸す。
うら若い、ほんのりとした錆臭さが、俺を夢中にさせていた。
まゆうは大人しくその場に腰を降ろして、しつけの良い家の娘さんらしく、正座をしたまま生き血を吸われた。

吸い取られた血の量に耐えかねて、まゆうが姿勢を崩してしまうと。
俺はまゆうの真っ白なブラウスに、吸い取ったばかりの血潮をわざと、ぼとぼととしたたらせてやって。
なにをされたのかを察したまゆうが、顔をしかめたのを。
宥めるように、閉じた瞼を撫でてゆく。

悪いね。ふたりとも。
黒のストッキング、たっぷりイタズラさせてもらうからね。
破く前に、たっぷりと愉しんであげるからね。。。

さいしょにまゆうの、ふっくらとしたふくらはぎを。
それからまさみの、しなやかに引き締まった太ももを。
代わりばんこに、唇ですって、侵してゆく。
そのたびに、少女たちの足許を墨色に染めた薄手のナイロン生地は、
ブチブチ・・・ッとかすかな音をたててはじけ、鮮やかな裂け目に白い脛をあらわにしていった。
いい舌触りだ。小気味よい裂けかただ・・・
俺はひと刻、うら若い少女たちの二対の下肢と戯れて。
素足どうぜんになるまで、いたぶり抜いてしまっていた。

帰るから。
虚ろになったまゆうの声に。
うん、また明日。
返事をかえすまさみも、さすがに薄ぼんやりとした声色だった。

見るかげもなく破かれた黒のストッキングの足許を見おろして。
母さんに、なんて言い訳しようか?
ちょっと戸惑うように視線を迷わすまゆうに、
まゆうのお母さんも、この人に紹介してあげればいいじゃん。

えー?
困惑のなかに愉快な想像にくすぐったげな声色が織り交ざるのを。
まさみも俺も、共犯者の目になって確認していた。

祝勝会。

2013年11月14日(Thu) 08:30:49

初めて吸血鬼の小父さんに血を上げたのは、中学生になる前だった。
進学祝いに・・・って、父さんが。
大人ものの肌の透けるハイソックスを買ってくれて。
父さんみたいにふくらはぎを咬まれて、初めて血を吸われたとき。
体の力が抜けてゆくのを感じながら、うっとりとなっちゃって。
父さんや母さんが好んで献血をするわけが、わかったような気がしていた。

進学してからは、サッカー同好会に入っていた。
同好会だったから、ひ弱なボクでも入れてもらえた。
本気でやりたい奴は、正規の部に入っていったから。
時おりボクは、こっそりと。
ユニフォームの青いストッキングを穿いて、小父さんを悦ばせることを忘れなかった。
決して後ろめたい行為ではないことが、あとになってわかった。
チームのメンバーのなん人もが。吸血鬼の友だちを持っていて。
ボクとおなじように、青のストッキングに赤紫のシミを作っていたから。

弱いチームだったから、どこもうちとはカードを組んでくれなかった。
唯一相手になってくれるのは、吸血鬼の子だけで作られた、地元のチームが1チームだけ。
この子たちは、強かった。
相手チームのはずのボクたちの血を、日常的に吸っていたから。
あの怪物じみた動きなら、ふつうのチームと戦っても勝てただろう。
けれども、吸血鬼のチームなんか相手にしてくれるチームは・・・ボクたちのチームしかなかった。

試合後負けたチームのメンバーは全員、彼らの祝勝会に招かれて。
同伴した彼女や妹ともども、生き血を吸い取られちゃうのがつねだった。
会費は要らないよ。きみたちからはだいじなものをもらっているんだからね。
いつも彼らは遠慮して、そんなふうに言ってくれたけど。
彼女の血を金銭で譲るみたいで、イヤだから。
ボクたちはそういう理由で、会費を払い続けていた。

ボクは小父さんという相手がいたから、てっきり同性愛の人だと思われていたらしい。
さいしょは血を吸われることも免除だったけど。
特別扱いは、なしにしてよ。仲良くやれないじゃない。
小父さんに教えられたように、そういって。
すすんで仲間に、加わっていった。
血を吸う嗜好のひとたちは。自分たちが理解されないことをわかっているから。
同性愛の人や、恋人や奥さんを寝取られて歓ぶひとたちとも、分け隔てなくつきあっていた。

文化部に所属していた彼女は、ボクがそういうサークルの一員だということを知りながら。
ボクに分け隔てなく、話しかけてくる。
どうしてそういうクラブに入っているの?
いつから血を吸われるようになったの?
自分の彼女がほかの男の子に血を吸われちゃっても、平気でいられるの?
えっ?むしろ愉しいの?変態~。
さいごの「変態~」も、決してイヤそうな言いかたではなかった。
彼女の白い顔には、「面白い人~」と描かれていたから。

チームのメンバーに、初めて彼女を紹介したのは。
いつものように負けたゲームの後、祝勝会に出かけるとき。
えっ?いいの?彼女、だいじょうぶ?
チームメイトたちは口々にそういって、気遣いながらも。
ボクに彼女ができたことを、慶んでくれていた。
ユウタのやつ、やっと一人前になってきたな・・・というように。
それにはいろんな意味があって。
彼女の血を吸われて歓ぶやつが、またひとり増えた・・・という意味で、共犯仲間が増えたことを悦ぶ気持ちと。
ボクがマイナーな敵チームの連中に、潔く彼女の血を吸わせる気になったことを、賞賛したいという気持ちと。
もちろん純粋に、ボクに彼女ができたことを慶んでくれる気持ちと。
いろんな気持ちがひとつになっているのを、いやでも感じてしまっていた。

「ユウタの彼女も来ているよ」
おおー!!
吸血鬼の男の子たちが、いっせいにどよめく前で。
制服姿の彼女は、にこやかにみんなにお辞儀をしていた。
襟首から覗くしっかりした肉づきのうなじや、脛を蔽う真っ白なハイソックスのふくらはぎに、熱い視線が注がれるのを感じながら。
彼女はてらいも怖れもなく、「仲良くしてくださいネ」と、無邪気な笑顔をみせる。
半そでのブラウスからむき出しになった二の腕や。
白い前歯の輝く口許が。
ひどく眩しく見えたのは、なぜだろう?
彼女の肢体をめぐる若々しい血潮を味わう幸運を得た相手チームの面々が、ひどく親しげに思えたのは、なぜだろう?

輪姦の輪のなかで、彼女も制服のスカートをたくし上げられて。
相手チームのキャプテンに、組み敷かれてゆく。
キャプテンはボクにひと言、「ご馳走になるね。彼女、初めてなの?」
そうだと頷くボクのまえ、処女を獲得できるという会心の笑みに、彼の唇はニッと笑んだ。
ボクも「おめでとう。うまくやってね」と、笑み返していた。
すんなり伸びた足許に、ずり落ちかけた白のハイソックスが、からみつくように皺を寄せている。
ぐねぐねと歪んだ縦縞もようには、ところどころ咬まれた証拠の赤いシミ。
立て膝にググッと力が籠められ、握りしめたこぶしがキュッと固くなる。
眉毛を寄せて。歯を食いしばって。
彼女は初めての痛みを、耐えていた。

キャプテンは六回、彼女にゴールを決めた。
ボクはそれを、四回・・・五回・・・って、ばか正直に数えていた。
彼女は、なん回だったかなんて憶えていない、ってあとで言っていた。
でも、無我夢中でしがみついていたって。
「無我夢中」のひと刻がおわると。
ふたりは、ぜーぜー、はーはー、激しい運動の後のように肩で息をして。
そのままの姿勢でしばらく、身体を重ね合わせていて。
やがてキャプテンが身体を起こして、彼女のことも助け起こしてくれて。
彼女も頷いて、彼の手を取って。
それでいながら、こっちのことも振り向いて。
「だいじょうぶだからね」って、笑いかけてきた。
犯されちゃう前とおなじ、無邪気な笑顔だった。
ボクはキャプテンと、ふたりして。
彼女の制服に着いた泥を、競い合うように払っていた。

「痛かった?」って訊くキャプテンに。
「痛かった~」って、しんそこ痛そうに泣き笑いする彼女。
「嫌だった?」って訊くボクに。
「ううん、嫌じゃなかった。愉しかった」って言ったあと。あわてて口をふさいでみせる彼女。
こういうことに慣れているはずのキャプテンは、顔を赧(あか)らめてボクに囁く。
処女にあたったの、オレ初めてなんだ。
そうだったんだね。おめでとう。
今年じゅうに、処女をひとりモノにするっ・・・って宣言したのに。夏までかかって焦っていた。
ボクの彼女で達成してくれて、嬉しいような、悲しいような・・・
とほほなボクの背中をどやしつける掌が。心からの感謝を伝えてきた。
時々、ヤらせろよな。
彼女のまえで言うキャプテンに。
ナイスゴール!
やっぱり彼女のまえで笑うボク。
あっけらかんとした笑いに、笑ったボク自身が、びっくりしていた。
「この~、すけべっ!こんどからたっぷり、見せつけちゃうからね~」
彼女の笑いも、あっけらかんとしていた。

その夜父さんは、ビールのジョッキを掲げながら。
「彼女を犯されたんだって?おめでとう」って。
ヘンなお祝いを言ってくれた。
どうして?って訊いたら。
愉しくなかった?って、逆に訊きかえされた。
そんなことはなかったけど・・・
口ごもるボクに。
その屈折した気持ち、彼女にちゃんと伝わってると思うよ。
祝勝会のあと、ふたりで手をつないで帰ってきたんだろう?
彼女の掌、暖かだっただろう?
ひとりの男の子に、彼氏彼女ながら血を吸われて。
たいせつな瞬間を、三人で体験して。
青春してるじゃない♪
母さんまで、ウキウキとして、からかうように笑っていた。
父さんも、ン十年まえに、サッカーの試合に負けて。
だれかさんに、彼女のことを犯されちゃったんだ。
その彼女が、いまの母さん。
母さんの純潔を汚した奴・・・だれだかわかるよな?
彼が相手チームのキャプテンだったの、帰り道に仲間に自慢していたっけな。
あいつも帰り道に、モノにした娘(こ)が処女だったって、自慢していたらしいけど。

歴史はどうやら、ヘンな形でくり返すらしい。

2013年11月11日(Mon) 15:30:33

最初に夫が咬まれて、しかし堕落からはかろうじて踏みとどまった。
つぎに息子が咬まれて、その場で意気投合という形での堕落を遂げた。
やがて妻も咬まれて、けれども一線だけは守り抜いていた。
夫はそんな妻に宥恕を与えるために、自ら咬まれて堕ちていった。


薄暗い電燈は、都会の明るい室内に慣れた目にはことさら昏かったが、
築数十年を経たこの古びた一軒家には、似つかわしいぬくもりを秘めている。
半開きのふすまの向こう、息子のトシオは祖父ほどの年配の男と向かい合っていた。

男は黒衣に身を包み、銀色に輝く髪をふさふさとさせていた。
顔色はわるく、ほとんど土気色をしているが、秀でた目鼻立ちには怜悧さと知性とをかいま見させている。

少年は学校帰りの白のワイシャツに濃紺の半ズボン。
目にも鮮やかな真っ赤なハイソックスが、ひざ小僧の真下までぴっちりと引き伸ばされている。
色白の頬に朱を刷いたような唇は、どこか少女のように小造りだったが、
控えめな輝きを帯びた大きな瞳は、大人しい見かけに似ずはっきりした意思の持ち主であることを窺わせた。

年輩の男は少年の足許に指を這わせて、足首からすーっとせり上げてゆく。
それから唇を近寄せて、しなやかな肉づきを帯びたふくらはぎに、ハイソックスのうえから吸いつけていった。
ちゅうっ・・・
唾液のはぜる音が、妙になまなましい。
「ぁ・・・」
少年は、喉の奥から、引きつるような呻きを洩らした。
ヒルのように醜く爛れ膨れあがった唇が、ナイロン生地の舌触りを確かめるように念入りに這い回って、
生地の表面に縦に流れるリブを、毒々しく浸してゆく。
「やらしい・・・なあ・・・」
虚ろな声色の下、老紳士は掴まえた脚を放そうとはせず、舌までふるいつけて、ハイソックスを濡らしつづけた。
ひざ小僧の真下を締めつける口ゴムからつま先まで整然と流れるリブが、踏みしだかれるようにグネグネと歪められてゆく。
「赤のハイソックスなんて、女の子みたいだろ?小父さんが言うから履いてあげたんだからね・・・」
少年の呟きに男はなん度も肯きをみせ、やがて口許から尖った犬歯をむき出しにした。
「アッ。やめて・・・っ。」
切迫した制止の声は、どこまで本気だったのか。
ねじ曲げられたリブごしに突き立った牙は、ふくらはぎのいちばん柔らかなあたりにずぶずぶと埋め込まれていって、
ほとび出た血潮を蔽うように、唇があてがわれる。

くいっ・・・くいっ・・・

しのびやかだが露骨に喉が鳴る音が、静かな室内に響いてゆく。
少年はほんのりと頬を染めていたが、やがて顔色を白くしていって、くらりと頭をおおきく揺らがせた。
老紳士は少年の両肩を支えると、崩れる姿勢を抱きとめてやり、しずかに畳のうえへと寝かせた。
うつ伏せの姿勢のまま、トシオ少年はほんのりと瞼を開くと、いった。
「もっと吸いなよ。かまわないから」
吸い取った血潮を牙に光らせたまま、男は少年の足許に四つん這いになると、
無傷なほうの靴下のうえに唇を吸いつけてゆく。
「小父さん、ほんとにやらしいなあ・・・」
少年は甘苦しく笑みながらも、自分の身体から血液を吸い取ってゆく男の行為を制止しようとしない。
人の生き血を吸いたいという彼の衝動に、嫌悪の情を感じないらしい。
むしろ彼の願望を好意的にかなえてやろうとしているようすだった。

「どう?おニューのハイソックスの舌触り」
からかうような口調のトシオに、男はこたえた。「格別だね」
「母さんの穿いているストッキングほどじゃないだろうけど、少しは愉しんでもらえたかな」
ククク・・・
返事の代わりに卑猥な含み笑いで応じると。
男は顔をあげ、少年と目線を交わらせた。
痩せこけた頬にはかすかに血色が戻り、目つきもギラギラとしたものをたぎらせている。
頬にべっとりと着いた自分の血のりを、少年はいとおしげに撫でて、指先に着いた血を唇で吸った。
「ボクの血、おいしい?」
男は無言で頷いた。真実味のある目の輝きが、少年の好意に応えていた。
「なら、よかった」
少年は安堵したように呟くと、
「父さんと母さんから受けついだ、大切な血なんだからね。あんまり服を汚すのに無駄遣いしちゃダメだよ」
まるでイタズラな弟をたしなめる兄さんのような口調でそういうと、目を瞑る。
首すじを噛んでいい・・・という、合図だった。
男は当然のように、少年の好意に甘えてゆく―――
シャツに飛び散った血のりに苦笑しながら、自分の血を飲み耽る男がゴクゴクと喉を鳴らすのに、嬉しそうに聞き惚れている。

「力づくで征服されるのって、案外快感かも」
ふすまの向こうからいちぶしじゅうを覗き見する瞳の主の脳裏に、トシオの呟きがよみがえった。



「親孝行な息子さんだね」
不意にかけられた声に、女はびくっとふり返った。
年のころは四十前だろうか。
束ねた黒髪はまだ若々しく、控えめな目鼻立ちはさっき毒牙にかけられた少年とよく似ている。
「あの・・・息子は今・・・?」
おずおずともの問いたげにする母親の肩を、薄緑のカーディガンのうえから掴まえると。
「あんまり母さんの血を吸わないでね。母さんは明日生け花教室だから・・・喉が渇いているなら、ボクの血をたっぷり飲んで」
少年の口真似を、女の耳朶に吹き込むように、囁きかける。
「真っ赤なハイソックスも、美味だった。あれはお母さんのお見立てかな?」
男は女をからかうようにそういうと、さっそく女をねじ伏せにかかる。
ダイニングキッチンでのことだった。
女はエプロンをはずすいとまも与えられずに、古びたフローリングのうえに押し倒された。
「あうっ!」
首すじを咬まれるのを、立て膝をして身を硬くしながら、応じていった。

ずるっ。じゅるうっ。

ことさら汚らしい音をあげて生き血をむしり取ってゆくのを。
覗き見の瞳の主は、狂おしい目線で見守っている。
自分の妻から抵抗の意思を奪うため、わざとのように立てられる忌むべき吸血の音―――
「観念するんだな、房子」
男はとどめを刺すようにそう告げたが。
女はまだ気丈にも、
「房代です」
呼び間違えられた自分の名前を訂正する気力を残していた。

房代夫人は、なんとか逃れようとする意思を持っていた。
フローリングの床を背にしながら、必死に這いずって、男の毒牙を避けようとする。
けれどももちろん、はかない抵抗に過ぎなかった。
男は女の足首を掴まえると、肌色のストッキングのうえからふくらはぎを吸った。
「スケスケの薄いストッキングというやつは、いたぶると愉しいものだな」
ぼつりとした呟きが、女の羞恥心に拍車をかけた。
「あなたとお逢いするの・・・主人に・・・悪くって・・・」
切れ切れに、この逢瀬が気の進まないものだという女の訴えを、
男はこともなげに受け流す。
「きょうのやつはいちだんと、なよなよしておって、そそられますねぇ・・・」
なおも、房代夫人の足許を辱める行為をやめようとしないのだった。
「厭っ!!」
もういちど首すじを咬もうとしてのしかかってくる男に、房代夫人は腕を突っ張って抵抗した。
「あしたの約束が待ちきれなかった男に・・・あなたもつれないことをするんだな・・・」
男は膂力にまかせて、グイグイと、房代夫人のか細い腕を圧倒してゆく。
「お望みなのは・・・お望みなのは、生き血だけではないのでしょうッ!?」
身をおののかせて震える声をあげた房代夫人の両肩を、男は羽交い締めに抱きすくめようとした。
女はそうはさせじと、必死で腕を振りほどこうとする。

無言の抗いは、意外な展開ですぐに熄(や)んだ。
瞳の主が、のっそりと身を起こして、ダイニングに足を踏み入れる。
そうして、自分の妻のうえにのしかかっている吸血鬼を制止しようとするのとは裏腹に――――妻の腕を抑えつけていた。
「あ、あなた・・・ッ!?」
夫の手でねじ伏せられた細腕は、それ以上の抵抗をやめた。
二、三度かぶりを振ってほつれた髪を肩先から追いやると、身体の力を抜いて目を瞑る。
これ見よがしな接吻が、夫の目のまえで遂げられた。


「マシュマロみたいな唇ですな」
振る舞われた地酒に舌鼓を打つような問いに、
「自慢の家内ですからね」
振る舞った地酒を褒められて満更でもない・・・という態度の応えががえってきた。
「太ももといい、ふくらはぎといい、むっちりと佳い咬みごたえがするね」
「熟れた三十路妻ですからね」
「生き血の香りも、ほどよく熟しておられる。さすがはトシオくんのお母さんだ」
「母子ともども、お気に召されてしまったようですな」

家族を売ったという想いは、彼にはなかった。
むしろ、提供した血液を気に入ってもらったことへの、ある種の歓びが彼を支配していた。
「男ものの靴下では、興を殺ぐことでしょうが」
夫はスラックスの下の靴下を、目いっぱい脛のうえまで引き伸ばすと、
「わたしも同じように、していただきましょうかね・・・」
さすがに目のまえで姦られるのを、しらふで見届けるわけにはいきませんから、と、言い訳がましくつけ加えたが。
彼自身がすでに、咬まれて血を吸い取られる快感に、真っ先に目覚めてしまっていたのだった。

息子の履いていた真っ赤なハイソックスのリブごしにそうしたように。
男はその父親の、長めに履かれたビジネスソックスのリブごしに、牙を埋めてゆく。
房代夫人は夫が堕ちるところを、首すじにつけられたばかりの傷を抑えながら、声を失って見守っている。
チクッと刺し込まれる感触が足許に滲んだつぎの瞬間―――
彼は、ああやっぱり・・・と思った。
こんな咬まれかたをされたら。こんなふうにゴクゴクと生き血を飲み耽られたら。
だれだって、夢中になってしまうはず。
妻を咎める資格は、俺にはもうない・・・


やはり、働き盛りの血は、精がつきますな・・・
こんなに吸っていただけるとは、咬まれたかいがあるというものですね・・・
では奥方を、遠慮なく頂戴しますよ。
ほかの男に支配されてしまうのは癪なんですが・・・貴男ならまあ、よしとしましょうか。
交し合った目色にそんな感情を滲ませて。
やがて夫の目からは力が失せて、その場に尻餅をついてへたり込んでしまった。

「ご主人の血も、息子さんの血も、それに貴女の血も・・・わしの中で仲良う織り交ざっているのですぞ」
「は・・・はい・・・」
「今少し、この老人の渇きを慰めていただけるかな・・・?」
「は・・・はい・・・よろしければ・・・」
房代夫人は夫が意識を失っているのを確かめると、もういちどだけ夫のほうへと謝罪に満ちた視線を投げた。
「では、いまいちど、誓いの接吻を・・・」
「なにを誓えと仰るのですか」
「今夜娼婦に堕ちること。そしてわしに末永く服従すること。亭主のまえであられもなく乱れ果てること」
どうじゃ、といわんばかりの目つきに、房代夫人はもういちど潔癖そうに目をそむけるが、もはや抵抗する意思は消え果ているらしい。
まだ破かれていない肌色のストッキング越しに、飢えた卑猥な唇がヒルのようにヌルヌルと這わされるのを、どうすることもできなくなってゆく。

―――お目当ては、あんたの女房の穿いている、薄々のストッキングなのだよ。
さいしょに俺の血を吸い取ったあと、たしかにやつはそういった。
夫の脳裏を、狂おしい嫉妬が駆け巡った。
血の抜けた身体は動かすこともかなわなかったが、目の前で行われていることは、逐一彼の網膜を染めている。
這わされてくる唇に、肌色のストッキングがふしだらな引きつれをよぎらせるのも、
なすりつけられてくるべろに、上品なナイロン生地が唾液にまみれてゆくのも、
たっぷりと、見せつけられるはめになっていた。
けれども夫としての嫉妬は、彼の心を害することはなかった。
すでに血液中に紛れ込まされた毒液が彼の理性をほど良く痺れさせてしまっているために、
ちくしょう、ハラハラさせやがって。
そうは思うものの、男を憎み切るほどの強い感情は湧いてこない。

ほしいままに、肌色のストッキングを咬み破らせて。
男の言うままに首すじをゆだね、生き血を吸い取らせて。
吸い取ったばかりの血に濡れた唇を重ね合わせてくるのに応えあって。
そしてゆっくりと、房代夫人は脚を開いてゆく・・・
ひざ小僧の下まで破れ落ちた肌色のストッキングを、しわくちゃに弛ませたまま。

「うぐっ!」
挿入の瞬間。
妻は眉をキュッと引きつらせ、白い歯並びをむき出しにした。
初めて咬まれたときと同じくらい、悔しげなしかめ面。
しわくちゃにたくし上げられたタイトスカートが、太ももから腰つきまでのラインを、むざんなまでに浮き彫りにする。
ぐい、ぐい、ぐい・・・と、妻の股間に肉薄した逞しい腰が、もう遠慮会釈なく沈み込んでゆく。
幾人もの女を娼婦に堕とした、魔性を帯びた肉の柱が。
いま、妻の秘奥を貫いてゆく。
びゅうっ。
聞こえるわけはないのに・・・射精した音さえ耳にしたような気がした。
「ううっ・・・ううっ。。。うぐうっ!」
声にならない声を振り絞り、妻はなにかを耐えようとしている。
キュッと強く結ばれた瞼には、光るものが滲んでいた。
ああ、房代が、妻が征服されてゆく・・・
彼はジリジリと焦れながら、不覚にも股間の昂ぶりをおぼえた。
いままさに、毒を含んだ魔性の精液が、じわじわ、じわじわと、妻の肉襞に浸透していこうとしているときに。
「あぐうっ!ウ・・・ウ・・・あうっ!」
腰の動きが、はげしくなった。
妻は必死に、なにかをこらえている。
しかしそれも、つかの間のこと・・・

あはぁん・・・

彼の耳には、確かにそう聞こえた。
堪えられなくなった妻が洩らしたもの・・・それはあきらかに、よがり声だった。

もう、ふたりとも、無我夢中だった。
組んずほぐれつ、ひたすら抱きすくめてしつようなまでに身体を密着させてくる情夫にたいして、
房代夫人はぶきっちょな抱擁で、応じていった。
さいしょはおずおずと、背中に腕を回すていどだったのが。
やがて大またを開いて。四つん這いになって。転げるようにいくたびも、体位を変えながら。
「いくっ!いくっ!イクウッ!」
と、夫婦の営みでもめったにあげない声さえ洩らしはじめていくのだった。


おめでとう、よくがんばったね。
彼に気に入られるなんて、わたしも誇らしい気分だよ。
時どき逢っていただきなさい。
生け花教室・・・あれはきみと彼とが逢瀬を遂げるための、口実だったのだろう?
彼から聞いたよ。
さいごまでわたしのことを気にしてくれて、操を守り通してくれていたって。
それで・・・きみの不服従について、ぼくは罰を受ける気になったんだ。
きみを目のまえで辱められ、お熱いところを見せつけられる・・・っていう罰をね。
え?だって、そうだったじゃない。とても息があっていたよ。
きみたちはたぶん、セックスの相性もバツグンなんだ。夫のぼくがいうんだから、間違いないさ。
時どき、抱いていただきなさい。
見せつけたくなったら、遠慮なくぼくを呼びなさい。仕事中でも、かまわないから・・・



房代をひと晩、独り占めにさせてくれないか?
いいとも。でもぼくが夜勤の時には、いつもそうしているんだろう?
いやいや、今回きみにおねだりをしたかったのは、「お持ち帰り」というやつさ。
房代をわしの家に連れていって、ひと晩お預かりしたいと言うわけさ。
うぅん・・・
彼は少しだけ、考え込んだ。
けれども、約束は守る、という男の言葉を信じて、妻をゆだねることにした。
約束とは・・・
生命は奪わない。
離婚もさせない。家族離散もない。
だって、わしはお前の夫人のまま、房代を辱め抜きたいからさ・・・
そういう忌むべき約束だった。


見慣れたよそ行きの、黒のワンピース姿の妻。
その妻が、いま男に手を引かれるままに、自宅を立ち去ろうとしている。
ククク。ご近所の衆が皆、この家の様子を視ているようだね。皆さん息をひそめて・・・
男の言いぐさは、そのとおりらしかった。
ご近所の評判が気になったのか、妻は羞じらいの色を泛べ、夫を見返る。
夫は妻に軽くキスをして、なるべく早くに帰っておいでと囁いた。
ふたりの間を遮るように、男の猿臂が房代の肩越しに、なれなれしく廻された。
房代は俯いて頷くと、男の言うなりに、玄関に置かれたハイヒールに、黒のストッキングのつま先を収めてゆく。
コツコツ・・・と遠ざかるハイヒールの足音が、彼の鼓膜にいつまでも響いた。


たまりかねて鳴らしたインターホンを、男はとっくに予期していたようだ。
「ああ、やっぱりね」
妻を独り占めにさせるために、情夫の家に一泊させる。
服従のための儀式に耐えきれない夫は多いという。
「房代は・・・?」
「ああもちろん、くつろいでもらっているよ。まだいただいていないがね」
いただいたのは、キスだけさ。こちらのほうは、濃厚に、ねっとりと・・・
もう、ガマンならなかった。

隣の部屋に、布団を用意してあるからね。
そこで気がすむまで、物音だけを聴いているがいい。
だれもきみのことを、咎めたりはしないのだから―――

男の言うなりに、ひと晩、妻が情夫と逢瀬を遂げるその部屋の隣室にいて。
夜明けが訪れるころ、夫は身も心もマゾヒスティックな奴隷となっていた。

夫としてのプライド。

2013年11月04日(Mon) 13:25:00

目が覚めたときは、もう真夜中だった。
あたりは真っ暗だった。
寝室の照明をオフにしたのは、夜の九時過ぎくらいだっただろうか?
周囲の気配は、夫婦の寝室のなかとは思えないくらい、ひっそりとしている。
傍らに身を横たえているはずの妻の姿は、当然のように掻き消えていた。

やれやれ・・・
わたしは苦笑いを泛べ、身を起しかける。
そしてつぎの瞬間、喉を掻きむしるほどの狂おしい衝動にとらわれた。
首のつけ根のあたりが、じんじんと疼く。
疼きが音になって暗闇に響くか・・・と思うくらいの、激しさだった。
わたしは大の字になって、ふたたびベッドのうえに倒れ込み、
疼きの元である首すじを、強い力で抑えつけた。

ちょうどそこには、咬まれた痕がふたつ―――
つい先週つけられたばかりのものだった。
ふたつ綺麗に並んだ、縫い針を刺した程度のかすかな傷痕。
それが夜な夜な、疼きつづけて、眠りを妨げるのだった。
一夜明けての出勤をひかえ、必要となるはずの眠りを。

おなじ大きさ、間隔の歯形を・・・妻の智枝美もつけらえていた。
夫婦ながら、一夜にして、同じ咬み痕をつけられて・・・そして支配されてしまっていた。
妻はいまごろ、情夫の家に自ら出向いて。
わざわざ装ったよそ行きのスーツの肩先を血に浸しながら、うっとりとなっている時分だろうか。

血を吸われたい・・・
抗いがたい衝動のままに、わたしはベッドから跳ね起きて、着替えをはじめる。
あの夜以来植えつけられてしまった本能のままに、わたしは玄関のドアを開いた―――
初冬の冷気が、おおいかぶさるようにして、わたしを包む。


「やはり、ここでしたね」
わたしが語りかけたのは、抱き合っている男女の、男のほうだった。
妻はその男の腕の中、娼婦と化していた。
新調したばかりのブラウスにバラ色の斑点を散らして、惚けたように笑みつづけて。
焦点の合わない目を、わたしのほうにチラと向けただけだった。

「ご馳走になってるよ」
男はわたしの父くらいの年代だった。
しわくちゃな面相をいっそうくしゃくしゃにして、イタズラっぽく笑う。
邪気のない笑みだった。
無理もなかった。
彼にとっては、ただの食事に過ぎないのだから。


こんどのきみの赴任先・・・気をつけたまえ。吸血鬼が棲んでいるって、もっぱらの評判だから。
辞令をくれたもとの上司は、しゃくし定規で感情の消えた口調で、そうつけ加えただけだった。
俺も一年、いたんだよ。こっちから希望しない限り、めったなことはないってさ。
そのあと耳打ちしてくれた同期の彼に、お礼を言うべきなのかどうか・・・
あとで知ったことだが、夫人同伴で赴任した彼も、いまのわたしと同じ憂き目をみていたのだった。

この街に赴任する者は、家族を帯同することが義務づけられていたから。
結婚してまだ二年の妻を伴うのに、なんのためらいもなかった。
とはいえ、もちろん、妻の智枝美に事情を告げて用心させたのは言うまでもない。
それから、妻に執着する吸血鬼が現れて。
幾たびか、出し抜いたり、迫られかかったり・・・そんな知恵比べがつづいたあと。
赴任して三か月たったある晩、わたしたち夫婦は招かれたとある席で、
夫婦ながらワイシャツやブラウスをクリーニングに出す羽目になっていた。

妻を不名誉から守ろうとした努力について、彼女は心から感謝してくれている。
夫への操をさいごまで守ろうとした妻に、もちろんわたしも感謝を惜しんでいない。
「いっしょうけんめい、抵抗したんだものね」
「そうね。あなたも、必死に守ってくれたんだからね」
そう言い交わしながら、首すじにつけられた噛み痕の疼きを抑えながら、
夫婦連れだって、相手の男の家に向かって、知らず知らず、歩みを進めていた。


「クリーニング代です。取って頂けませんか」
男の言いぐさは、どこまでも慇懃だった。
慇懃無礼でもなく、妻を寝取られたわたしを蔑む色は欠片も感じられなかった。
妻を守り切れずに、血を吸い取られてしまった夫。
そのあと、男の衝動の赴くままに犯されてゆく妻を、目の当たりにさせられてしまった夫。
ささいな憐みも薄笑いも、きっと極度の侮辱としか受け取れなかったそのときの心裡状態にして、欠片もかんじられなかったのだから。
事実彼のいうように・・・感謝の念しか抱いていなかったのだろう。
差し出された茶封筒は、事前に用意されたものらしかった。
「十万・・・くらいかな」
あとで同僚が口にした金額どおりのものが、きっと入っていたに違いなかった。
彼はきっと、受け取ったのだろう。
わたしはあえて、それは受け取れませんからとだけ、応えていた。

妻を犯した男から、お金を受け取るということは。
妻の貞操を、金で譲り渡したのと同じことになる。
なぜか、そんな気がしてならなかったから。
「潔かったわ」
わたしが金を突き返したのを見ていた妻は、あとでわたしにそういった。

「潔かったわ」
妻がわたしを称賛するわけは、もうひとつあった。
なんどか首すじを抑えながら、夫婦で彼のもとを訪れる夜を過ごした後。
わたしは、妻が白昼独りで彼のところを訪れていると、ふとしたことから知ってしまった。
同僚の囁くままに、職場を抜け出して忍び込んだかの家の庭先―――
なまなましい喘ぎ声に、わたしは我を忘れて、思わず立ち上がってしまっていた。
その場でわたしは、妻と男との交際を認めてやり、「おめでとう」と祝福さえしてしまっていた。
妻に対する主導権は、あくまで夫が留保するもの。
そうしたわたしの考えに、男は当然のように肯定してくれた。
最愛の妻の貞操を夫に優先して愉しむ権利を、わたしは自分の意思で与えていた。


「家内ひとすじというわけでは、ないのですね」
つくった渋面が、思いがけないほど本心をわらわにしていた。
「ご負担をかけたくないのでね」
彼の食欲を支えるには、健常な成人男女が六、七人は必要なのだという。
そうとはいえ、最愛の家内が彼にとって最愛でないことに、わたしは憤りに似たものを感じていた。
「気持ちはよくわかるよ」
彼は慰めるように、わたしに言った。
「智枝美のときには念入りに、可愛がってやろう」
彼にそう言われたときの安堵と誇らしさは・・・いったいどういうことだったのだろう?

数か月後。
智枝美は初めての子を身ごもった。
ちょうど、夜の歓びを彼に独り占めさせているあいだのことだった。