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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

乱倫ロケ ~清太と菜々美の場合~

2015年03月31日(Tue) 07:36:22

青い空が、どこまでも高かった。
そよ風は、どこまでも透きとおっていた。

草原のなか、庄村清太は三脚を担いで、額の汗を拭き拭きふたりのあとを追っていた。
前を行くふたりは寄り添うでもなくはなれるでもなく、一定の間隔を保って足並みをそろえている。
ひとりは、女。ひとりは、男。
女は清太の妻、菜々美だった。
男は――本名はなんというのだろう。ある夜突然清太の家に現れ、夫婦の血を吸い取った吸血鬼だった。

吸血鬼が真っ昼間に外を歩いてもかまわないのか?
清太の持っている、創作に基く知識はあらかた、否定された。
ただどうやら――吸血鬼が若い女を好み、どうやら好色でもあるらしいという点だけは・・・はずれようがなかった。
初めて夫婦ながら襲われた夜。
首すじの傷を抑えながら、もうろうとなってしまった清太は。
妻が血を吸い取られるのを視、
そのあと服を剥ぎ取られながら情交に悶える姿まで目の当たりにする羽目になったのだから。

あの晩の昂奮を、清太は忘れることができない。
妻が犯されるという既婚男性としては最悪であるはずのの場面に遭遇しながらも。
不思議な歓びにゾクゾクと昂ぶってしまった彼は、不覚にも射精してしまっていた。
抑えた股間からヌルヌルと洩れてくる粘液の熱さが、まだ掌に残っているような気さえする。
菜々美は案外と、サバサバとしていた。
仕方ないんじゃない?この街には吸血鬼があふれているって・・・来る前から知っていたんだものね。
彼女は肩までかかる髪をさっと掻き退けると、
まだ咬まれていないもう片方の首すじも、自ら差し伸べていった。

さあ、このあたりで良いかな・・・?
背景にはすそ野の広い活火山が、噴煙をあげている。
彼の気分が険悪なときにはむやみとどす黒い噴煙は、
きょうは穏やかに凪いで、淡く白くたなびいていた。
吸血鬼はいきなり菜々美を抱きかかえ、膝をつくと。
菜々美の首すじに唇を吸いつける。
おっと、待って待って・・・・撮影の準備まだできていないんだから。
慌てて三脚を拡げる清太にかまわず、吸血鬼は菜々美の首すじに咬みつくと、
早くも・・・ごくごくと飲(や)りはじめている。
昼間の歩行に不便を感じたことはないが、陽射しはやはりこたえるものらしい。
菜々美の若さを宿した鮮血は、彼の喉を、胃の腑を、甘美にうるおしてゆく。

ファインダーのなかで、菜々美がうっとりと目を瞑る。
カシャ。
ふたたび目を開いた菜々美が、こんどは恍惚とした視線を相手に投げる。
カシャ。
足許にかがみ込む吸血鬼に応えて、菜々美が花柄のロングスカートをたくし上げる。
カシャ。
ふくらはぎに吸いつけられた唇の下、黒のストッキングが裂け目を拡げる。
カシャ。

ファインダーのなかで繰り広げられる、妻主演のアダルト劇。
けれども清太の手つきはいつものように、よどみなく一眼レフカメラを操作している。
もともと相手の男は、彼の雇い主だった。
吸血シーンを撮れるカメラマン急募。
そんな奇妙な求人に応じたのは、彼がこの世からあぶれてしまったから――
なん人もの乙女が毒牙の犠牲になるシーンを撮りつづけ、さいごに行き着いたのが、ほかならぬ妻の菜々美だった。
さいしょにシーンを撮るときは、手が震えた。
けれどもフィルム一本を使い切る前に、熟練した彼の手は本能的に、カメラを手ぶれなしに操作するようになっていた。
さすがに、プロね。
菜々美はわざと蔑んだような声色を作ったが、
果たしてそれは、最愛の女性を護ることを忘れておのれの技に没頭することを択んだ夫への怨嗟だけだっただろうか?
血を吸われ、犯されるたびに。
菜々美は声をあげ、演技に熱を入れはじめた。
夫のまえで見せつける――あなたへの仕返しよ――そういいながら。
出来上がった写真を満足げに眺める横顔には、夫へのひそかな称讃が込められていた。


やあ、待たせましたかの?
吸血鬼が能天気な声を投げたのは、山懐に近い村落のはずれにある納屋のまえだった。
相手は、作男のなりをした二人の男――どうにも見覚えがあると思ったら、
お隣のご主人とお客の一人だった。
お隣のご主人は。
不幸にも吸血鬼の子分の夫婦と隣り合わせたために、妻も娘も、息子の嫁も吸われてしまっている。
お客の一人は。
家族での記念撮影に来たときに目をつけられて。
晴れ着を着た奥さんと、上の学校への進級を控えた少女とを、かわるがわる咬んでいった。
いまではこの二人、嗜血癖もあらわに、互いの妻に迫り合う間柄だった。

いや、いや。多少お待ちしても、こういうことならね。
二人はにんまりと笑い、白い歯をみせた。
清太は、いやな予感にとらわれた。
その予感は案の定といわんばかりに的中する。
吸血鬼はいつものように穏やかな声色で、彼にオーダーをする。
さあ、きみの腕の振るいどころだ。
奥さんをまわすところを、撮ってもらうからね。

激しい吶喊の、連続だった。
菜々美は男を取り返るたびに、衣装を、髪を乱してゆく。
ブラウスをはだけられ、花柄のロングスカートをくしゃくしゃに踏みにじられ、
履き替えたばかりの肌色のパンストを引きずり降ろされ、
それらの装いにうら若い血潮を、それは景気よく撥ねかしてゆく。

ああん。だめよ。やめて――主人が視ているの。
ああ、ああ、だめっ、そんなにしちゃっ。あたし感じちゃう。羞ずかしい、侵されているのに、主人のまえで感じちゃうっ。
いったいだれを、そそろうとしているのだろう?
股間を熱くしながらも、清太の手つきは震えを帯びない。
自分のなかに、もうひとつ悪魔のような魂でも宿っているのか?
感情と意思とが裏腹な自分に戸惑いながら、彼はファインダーを覗きつづける。

一人めは、お隣のご主人だった。
奥さぁん・・・鼻にかかった声で甘えかかるのを、菜々美は思わず手で隔てようとした。
カシャ。
ブラウスの襟首を無理やり押し広げられ、ブラジャーの吊り紐を引きちぎられた。
カシャ。
はみ出たおっぱいを舐め舐め・・・
カシャ。

二人めは、写真館のお客。
まえから奥さんには、目ぇつけてたんだよ・・・
赤黒い唇が、菜々美の華奢な造りの唇に、おおいかぶさるようにして密着する。
カシャ。
強引にたくし上げられたスカートの奥に手を突っ込んで、股間に激しいまさぐりを入れる。
菜々美は表情を歪めながら、応えてゆく。
カシャ。
大またを開いて仰向けにぶっ倒れた菜々美。
破れたパンストをまとったままの脚をばたつかせ、白い脛もあらわに・・・腰を使い始める。
カシャ。

ククク・・・じゅうぶんたんのうしたか?さいごに吸血鬼が挑みかかるのを、
男ふたりは固唾を呑んで見守る。
なにしろ、自分たちの妻や娘を犯した男の所作だった。
きっと家族が汚された記憶と、二重写しにしているのだろう。
男たちの表情にも、清太はカメラを向けた。
カシャ、カシャ、カシャ・・・
こうしてはいられないな。
清太は初めて三脚から離れ、服を剥ぎ取られた妻の裸体に挑みかかった。


ははは・・・
ふふふ・・・
山を降りていく五人は、互いに談笑し合っていた。
菜々美はブラウスを剥ぎ取られ、写真館の客にせしめられていた。
お隣のご主人は、菜々美の脚から引き抜いたパンストを、満足げにぶら提げていた。
五人は三々五々、話し相手を代わっていたが。
妻の傍らを歩く男だけは、始終入れ替わっていって。
夫のまえで露骨にお尻を撫でたり、あらわになったたわわに実るおっぱいをまさぐったりしながら、
狎れ狎れしいキスを交わし合っている。
嫁の浮気って、ふつう姑さんはとめにかかるもんだども。
さすがだんなさんのお袋さん、まさかご亭主連れてきてらんこうさせてくれるなんて、思いもよらなかったなー。
周囲に人がいないのをいいことに、散々なことをあっけらかんとのたまわっていて。
そのたびに菜々美も、愉快そうにけらけらと笑っていた――

できあがった写真は、同行した男たちが分け取りをした。
二人の男は、それぞれ自分が菜々美を犯しているシーンを、携帯の待ち受け画面に設定した。
奥さんに妬かれない?という菜々美の心配は、無用のことだった。
彼らの妻は毎日のように、法事のお手伝い――にかこつけた乱交パーティーの常連になっていたから。
吸血鬼相手のセックスを日常的に提供する夫婦にとって、この街は暮らしやすい街だった。
清太と菜々美にとっても、暮らしやすい街になりつつある――

こんな画像、あったかな?
清太が首を傾げた一枚。
妻の待ち受け画面だった。
画面のなか。
清太の猿臂に巻かれた菜々美は、思い切り熱っぽく、あえいでいる。
その表情は、ほかのだれとのときよりも、切なげでイッている表情だった――

妻と娘を同伴される。

2015年03月30日(Mon) 07:28:55

4~5日旅行に出るから、奥さんを貸してほしい。
我が家に出入りをする吸血鬼氏から、そんなお願いを唐突にされていた。
できれば上のお嬢さんと三女さんも借りたいな。
男はヌケヌケと、そんなことまでお願いしてくる。
それでも頷いてしまっているどうしようもないわたし。
情ないことに、ドキドキしながら、よろこんで・・・とか応えてしまっていた。

吸血鬼が旅行に出るときには、生き血を提供するための同伴者が必要になる。
もちろん旅先で狙い目を探すのも手なのだが、リスクが大きいうえに良い相手にめぐり合えるという保証もない。
だから、供血相手に事欠かない地元で、調達していくのである。
同伴された既婚女性は、夫を裏切る行為を要求される。
そう、言わずと知れた、セックスのサービスである。
けれどもこの街では、そんなことは常識の部類に属する。
吸血鬼と仲良く共存しているこの街で、吸血鬼が家族の生き血目当てに自宅に訪問をくり返すのは普通の出来事だった。
そうした訪問客ののために妻や娘を犯されてしまうのは日常茶飯事だったので、
だれもが恥ずかしがらずに、家族の近状を周囲に伝えあったりしているくらいだった。
家族がみんな同行するんだって?そりゃ寂しいね。
ちょうど俺も出張だから、うちの女房貸してやろうか?
そんな寛大な申し出をしてくれる知人も、一人ならずいる始末である。

招待されたのは、妻と長女と三女。
きっとかわるがわる首すじを咬まれ、血を吸われてしまうのだろう。
けれども彼女らは、けっこうウキウキと旅支度に没頭していて、着ていく服選びに余念がない。
こないだの結婚記念日に買ってくれたワンピース、着ていくわね~。だなんて。
夫以外の男との同伴旅行に、夫からのプレゼントを着ていくくらいなのだから。

ひとり自宅に残ったのは、この春高校に進学する次女。
彼女は決意を秘めて家に残って。
夜なのに真新しい制服を着て、ひっそりとわたしの待つ寝室に忍び込む―――

美味しかった? ~彼氏と彼女~

2015年03月30日(Mon) 07:00:38

このひとが、吸血鬼?
堀井まどかは大きな瞳で、俺を見つめた。
こちらが照れくさくなるくらいに、まじまじと。
案外と、ふつうの人みたいだね。
だから言っただろ?ふつうのおっさんだって・・・
貴田シンジはそういって、恋人のことを軽くつねった。

わしが怖くないのか?
俺の問いに、まどかはキッパリと答えた。
ウン、シンジがあたしにヘンなやつ紹介するわけがないもん。
気を利かして部屋を出ていくシンジに、バイバイ、って手を振ると。
どこから吸うの?
って、いいながら。
白い首すじを、ピンと伸ばしていた。

数刻―――。
美味しかった?
首すじの傷をさすがに羞ずかしそうに隠しながら、まどかは訊いた。
俺が素直に、美味かった、というと、
よかった。
サバサバとした口調で、そういった。
どうせ血を吸われちゃうのなら、美味しいほうがいいじゃん。
痛い想いしたうえのまずかったなんていわれたら、合わないよー。
そりゃそうだな・・・俺は相槌を打たざるを得なかった。

足許にかがみ込んでくる俺に、
あら、あら。
って、戸惑いながら。
ハイソックスを履いた脚を咬みたがる俺の習性まで彼氏から聞かされているのか、
まどかは紺のハイソックスを履いた脚を、俺が吸いやすいように差し伸べてきた。
しなやかな脚の線に沿って流れるように走る縦縞のリブが、間近に迫った。
唇を吸いつけて、にゅるにゅると這わせてゆくと。
なんか、やらしいな・・・
彼女は本能で、感じ取っていた。

おかえり~。
戻ってきた彼氏を迎えるときも、まどかはさっき彼を送り出した時みたいに、小手をかざして手を振った。
だいじょーぶだよ。ちょっぴり貧血だけど・・・
というのは、明らかに強がり。
彼氏の顔を見ると緊張が解けたのか、ドッと彼のほうへと身を持たせかけていった。
おい、おい、だいじょうぶ・・・?
シンジはいつも、優しい。
そんなシンジの足許にも、俺は唇を吸い寄せていった。
ラインの入った白のハイソックスの脚をすくめながら、
シンジは自分の赤い血がハイソックスにしみ込んでゆくのを見おろしていた。

ハイソックスなら、男のひとでもオッケーなんだね。
まどかは冷静に観察していたけれど。
また逢っても、いいから。
あたしもシンジに負けないように、紺のハイソックス履いてきてあげる。
友達の友達は、友達だからね・・・って、
まどかは俺と強引に指切りげんまんをすると。
じゃあね~♪って。
彼氏と手をつないで部屋を出ていった。
俺のポケットに、密かに走り書きをしたアドレスを残して。

当分は彼氏といっしょに来ます。
ひと言メモの裏読みをするのは、さすがに遠慮をしよう。
人間の生き血を欲しがる俺のために、彼女を紹介してくれたヤツのためにも。

仇敵にあらず。

2015年03月27日(Fri) 08:18:20

懇意になった吸血鬼に、妻を誘惑してほしいと依頼した時には、声が震えた。
どんなふうにして妻を堕とすか・・・という相談を受けたときにも、震えが止まらなかった。

わたしもすでに、嗜血癖を植えつけられていたから
首すじに咬みつかれて喘ぐ妻を目の当たりにし、
その妻の生き血を美味しそうに吸い上げる吸血鬼を視て、
美味しい血にありつくことができた彼のことを、羨ましいと思った。
妻の生き血を気に入ってもらえてうれしかったし、誇らしかった。
吸わせてあげられてよかった・・・心からそう思った。

襲った女性がセックス経験者の場合、ほぼ例外なく性的関係を結ぶときいていたし、
妻もまた、例外ではあり得なかった。
人並み程度には、魅力的で、女らしかったから・・・
若い日には、彼女の口づけを勝ち得るためだけに、情熱を燃やしたこともあった。
その彼女が羞いらいながら脚をゆっくりと開いてゆくのを、
固唾を呑んで、見守っていた。

夫の仇敵に生き血を吸わせ、身体まで開いていった妻・・・
もはやわたしを裏切ることに、罪悪感はない。
奉仕活動に献身することは、夫の名誉を守ることよりも、彼女のなかでは重要だったから。
そんなふうに踏みにじられてしまうことが、むしろ快感――
夫婦ながら堕落した夜。
わたしは妻と彼とのあいだの、新しい関係を独り祝う。

理恵子の血を吸わせてあげることができて、よかった。

2015年03月26日(Thu) 08:08:48

幼いころからの悪友が。
吸血鬼に襲われて、吸血鬼になってしまった――
蒼い顔をして、わたしのまえに現れたとき。
わたしは躊躇なく自分の血を吸わせ、そして妻の理恵子を差し出していた・・・

理恵子の血を吸わせてあげることができて、よかった。
わたしはしんそこ、そう感じている。

吸血鬼があふれるようになった、この街で。
生命を落とす危険と裏腹な日常で、暮らしていて。
けれどもやつが独身を通したのは。
ほんとうは、理恵子が好きだったから。
好きな女を吸血相手に選んだのなら。
相手を死なせることは決してするまい・・・そんなふうに考えたのだ。

わたしの姑息なかけ引きは、どうやら間違いではなかったらしい。
やつはわたしの血を全部吸い尽して、わたしを墓場送りにし、
そして理恵子の夫におさまった。
旨そうだな。嬉しそうだな。
窓の外からふたりを覗き込んでいる、わたし――

けれどもそんなわたしも、孤独感は感じていない。
弟が、もらったばかりの嫁を紹介してくれたのは、吸血鬼になって間もなくのことだった。

義妹と元妻とは、かわりばんこにわたしのまえに現れて。
肌色のストッキングに彩った、自慢の脚線美をさらしてゆく――
悪友は、もともとあんたの女房だからと、わたしの夜這いを大目に見るし
弟は兄譲りの性癖まる出しにして、情事に耽る新妻に見とれていた。


あとがき
完全に奪ってしまうお話は、ここではマレなような気がしています。。

赦すけど、忘れない・・・

2015年03月26日(Thu) 07:24:12

赦すけど、忘れないです。
謝罪をする男に、わたしはそういった。
それは、忘れられないですよ・・・
目のまえで妻を、犯されてしまったんですからね。

赦すけど、忘れないです。
謝罪をする男に、理恵子も同じことをこたえていた。
それは、忘れられないわ・・・
激しすぎるんだもの。
理恵子が口にした「忘れない」の内容は、わたしとはすこしトーンが違っていた。

いや、俺も奥さんのことは忘れられないです。
男も同じようなことを、呟いた。
ほんとうに、いい身体してますよね。ご主人が羨ましいです。
男の目の色あいに、嘲りも蔑みも浮かんでいないのを観てとると。
わたしは思わず、口にしてしまっていた――

たまにだったら、いいですよ・・・

語尾の震えに、いびつな昂ぶりが込められていることを。
ふたりはきっと、気づいている。
男はすみません、と、頭をさげて。
理恵子はありがとう、って、心からの感謝のまなざしを投げてくる。

あ~ん、お洋服、台無し・・・
和解が成立すると、理恵子はふつうの主婦の顔に戻っていた。
こんど弁償しますから、という男に。
高級ブティックに連れてって、家内の好みの服を買ってやってください。
わたしもそんなことを、口にしてしまっている。
俺好みの服を着せて、街を歩いてもいいですか?という男に
あんまりおおっぴらにされるのは・・・照れますねぇ、と、つい本音を漏らしてしまって。
そんな男どうしのやり取りを、「やらしいわね」って、妻も、笑いながら受け流している。

このワンピース、わたしの見立てなんですよ、というわたしに。
ご主人センスいいですねえと男は呟いて、
奥さんをデートに誘うとき、ご主人のセンスの服っていうのも、いいですよね・・・なんて言い出した。
わたし好みの服を着た理恵子が、服を破かれながらモノにされてゆく――
そんな光景が、わたしをふたたび、昂ぶらせた――

このひとの妻のまま、貴男に抱かれるわ。
そう宣言する妻に。
奪うのはよくないからね。夫婦関係はだいじにしてくださいね。
男のほうもまた、そんなふうに包みかけてくる。
じゃあわたしはせいぜい、家内の着る服代を工面するために、稼ぐかな。
というわたしに、
ご主人マゾですね・・・
男はにやりと笑って、そういった。

赦すけど、忘れない。
忘れられない。
妻を犯される体験は、それくらいに深く、夫婦の間柄を塗り替えていた。

こういうことは、愉しんじゃったほうがいい。

2015年03月26日(Thu) 07:00:12

すっかり姦られちゃいましたねぇ。おふたりに。
母さんは自分を犯した吸血鬼に、そういった。
いつもと変わらない、声色だった。

まあ、まあ、しかたないでしょう。このあたりの風習だそうですね。
郷に入りては・・・って、申しますものね。
自分に言い聞かせるように、そういうと。
母さんは真紀子をふり返って、こういった。
こういうことは、愉しんだほうがいいの。

真紀子はべつの男に血を吸われ、姦られているさいちゅうに。
ずうっと悲鳴を、あげつづけていた。
けれども――
涙目の顔だちに浮かんだ表情は、いままでとは別の感情を、滲ませている。
一瞬白い歯をみせた真紀子に、母さんは「それでいいのよ」と言った。
姑を犯したばかりの男が目の前に立ちはだかるのを、真紀子はぼう然と見あげていた。
戸惑う真紀子に、母さんを犯した男が迫っていって。
母さんは、嫁を犯した男に、自ら唇を与えていった。

相手を取り替えあって情事に耽る嫁姑に。
おや、おや。あいつもなかなか、やるじゃないか。
白髪頭を掻きながら。
父さんはのんきにも、そんなことを呟いている。
永年連れ添った妻が、自分以外の男を、同時に2人も受け入れてしまっているというのに。
もっともぼくも、同じ立場・・・
2人めの男を相手に腰を振りはじめる真紀子を見つめ、
目線がクギづけになって、離せなくなっている。
真紀子のあしらいは、さいきんご無沙汰がちの夫婦の営みよりも、熱っぽかった。
それでいいんだ。
こういうことは、愉しんじゃったほうがいい。
母さんと似たような言い草だった。
やっぱり似たもの夫婦なのだろうか?

唇をせわしなくうごめかせ。
ふたりの女たちから生き血を啜り取ってゆく男たち――
旨そうだね。
ぼくが呟くと。
気に入ってもらえる方が、まだしもだな。
父さんも応えてくる。

ふたりの顔色がすっかり蒼くなったころ。
宴は終わった。
まだ吸い足りなさそうな男どもに、
母さんはまたいらっしゃいよなんて言っているし。
真紀子は最初の男とメールアドレスの交換を始めていた。

ここで男どもが出ていったら、間抜けだよな。
あけすけに挨拶でも、したいのだろうか?
これからも家内をよろしく・・・なんてふうに。
でもそんな衝動、わからなくもなかった。
こちらの気分を見透かすように。
母さんは真紀子に囁いている。

だいじょうぶ。
男のひとたちもきっと、今頃覗いて愉しんでいるから。

【ニュータウン情報】パートナーの不倫を愉しむ夫たち

2015年03月20日(Fri) 09:59:32

鷹森貴志さん(38)・規子さん(34、いずれも仮名)の夫婦は、週に1~2回、それぞれ別々のパートナーと夜を過ごす。
明け方までには帰宅して、夫婦で朝食をともにし、貴志さんは何事もなかったかのように出勤していくという。
「さいしょに浮気したのは、わたしのほうなんですよ」と語るのは、夫の貴志さん。相手は男性だったという。「強引に迫られてしまいましてね。ひと晩で教え込まれてしまいました」
ここの人たちは、用意周到ですね・・・と、貴志さんは苦笑いする。貴志さんに同性愛の歓びを目覚めさせた相手の男性・Aさん(47)は、実は規子さんを狙っていた別の男性Bさん(64)が差し向けたのだと、あとで知らされたというのである。
「妻に目をつけていたAさんにとって、わたしの存在は目ざわりだったんでしょう。こちらが理解を示し協力的になってからは、いまのように打ち解けた関係になりましたが・・・やっぱり妻を犯したいと願っている男性と仲良くなるには、時間が必要でした」
Aさんも同性愛の心得があり、肌を合わせるようになってからは親密になった・・・と、貴志さんは語る。
「妻との待ち合わせ場所をBさんに知らせてわたしはわざと遅れていったり、Bさんの所属する同好サークルに妻を誘ったり・・・ささやかでしたが協力を惜しみませんでした。(Aさんを貴志さんに差し向けたのは)妻の浮気中に独りになるのは寂しいだろうという配慮だったそうで・・・ほだされました」

そんな貴志さんの「尽力」もあってか、規子さんとBさんは出逢って一か月半でめでたくゴールイン。
「妻がBさんの誘いに応じてホテルに現れた、って、Aさんがメールで知らせてくれましてね。仕事を早びけして、ドキドキしながらホテルに向かいました。犯されてゆく規子を観ているうちにたまらなくなって・・・」
ずっと手を握ってくれていたAさんとことに及んでいるうちに、規子さんはすっかり、Bさんの虜になっていた。
「妻のことを気に入っていただけて、むしょうに嬉しかったのを憶えています。でも、Aさんがわたしの手を握っていたの、Bさんが妻を犯すのをわたしに邪魔させないためだったそうですよ」と、貴志さんは笑う。
以来、規子さんとBさんとの間には、真剣交際が続いているという。
「父と同じくらいの年輩のかたなんですけど、お上手なんですよね・・・それで思わず声あげちゃって。隣の部屋から主人が覗いていたのを知った時にはもう赤面でした」
生真面目な令夫人として知られていた規子さんも、いまは屈託なく当時のことを語る。
「主人の同性愛のことですか?妻としては、なにもいいません。言える立場でもないですし」といいながらも、Aさんとデートに出かける夫の鞄に、女性用下着を忍ばせることを規子さんは怠らない。

AさんとBさんも同性愛の関係で、Aさんの夫人(42)もBさんの交際相手の一人だという。
「ここの土地は、ややこしいですね。でもほうぼうに深いつながりがあるからこそ、争いも起こらないのだと思いますよ」
当地がすっかり気に入ったという貴志さんは、この春には兄夫婦を誘うつもりだという。



友田優司さん(40)・佳苗さん(33)は、都会からの転入者。地元の風習である「人妻披露パーティー」の常連になっている。
「「人妻披露パーティー」というのは、ご夫婦やカップルと単独男性が数名から十数名で開くんです。夫が自分の妻の自慢をして、ほかの男性たちにご披露する・・・という内容です。ご披露自体の内容は、ナイショですよ」
おどけて笑う優司さんだったが、初体験のときはさすがに恥ずかしかったと打ち明ける。
「夜這いがふつうに行われている土地なんですよね。ここ。それで私も誘われたのが、運のつきでした。ええ、お礼をねだられましてね。それで、家内を連れて行ったというわけです」
夫人の佳苗さんは、その場が性的なパーティーとは知らされずに出かけたという。「パーティーだからいいかっこしてこいよって言われたんですが、相手の男性たちへのご馳走の一部なんですよね。好い服一着、台無しにされちゃいました。でもメンバーの方たちは親切で、お詫びに新しい服を買ってくださったんですよ。一人一着。大儲けです。ええ、試着のときにはついて来てくれて・・・ホテル経由で帰宅しました」
あけすけに語る佳苗さんを、ご主人は優しく睨んでいるのが印象的だった。
「わたしには男性が群がってくるんです。慣れているんでしょうね、エエ、恥ずかしながら、いかされてしまいました」
「主人が男のひとと抱き合っているのを視て、私も覚悟?が決まってしまいまして・・・はい、夫婦で枕を並べて討死にです」
ご主人は退席するケースもあるというが、奥さんから「心細いからいっしょにいて」と言われる場合が多いという。
自分の妻が男たちにかわるがわるのしかかられてゆくのを見て「あの昂奮が忘れられない」とリピートする夫たちが、意外にも多い。

優司さんによると、勤務先の上司や同僚たちもかなりの人が同じグループに属しているという。
「都会妻三人大会なんていうのがありましてね。いちばん若い広田くんの奥さんがモテモテでしたけど・・・でも46歳になる課長の奥さんも、うちの家内も、十人以上は相手してましたね」
課長は広田君の奥さんにまえまえからご執心だったらしくって。どさくさ紛れに抱きついていましたが・・・広田君も止めずにじーっと見ていましたっけ。あの二人、齢も立場も離れていますが、それ以来仲がいいんです。
こういう場を通して結びついた社内不倫のカップルは、都会に戻ってからも交際を継続するケースが多いという。
このパーティーは、出会いの場でもある。佳苗さんにもパーティーをきっかけに親密な関係になった男性が、数人いるという。

「セックスは相性ですから・・・いっしょにして愉しい相手が決まってくるんですね。家内を連れて行くときに必ずお見えになる男性のかたが何人かいらして・・・大事にしてくれるんで、感謝してますよ」
「うちに帰ってから真剣に嫉妬するくせに」と、佳苗さんは笑っている。
「春は転勤の季節ですが・・・わたしは希望を出していません。新しく赴任してくる人がいたら・・・間違いなく引き込むでしょうね」
共犯者は多いほど心強いですから・・・すっかり土地に同化した優司さんは、そういって笑った。

目のまえで。

2015年03月20日(Fri) 08:47:03

【妻の独白】
愉しんじゃっていた。夫のまえで。
強引に迫ってきたのは、ここに赴任してからずっと相談相手になってくれていた、年配の男。
縛られた夫を見せられ、ブラウスを破かれた私は――本能的に従順になっていた。
夫から目をそむけながら。視ないで・・・視ないで・・・と、くり返しながら。
それでもからみついてくる、しつような熱い視線に、身を晒しながら。
あたしは髪振り乱し、股間に激しく突き刺さってくる一物に、腰を揺すりつづけていた。

視ないで・・・視ないで・・・の懇願は。
離れないで・・・離れないで・・・に変わっていって。
もっとあからさまに。
もっとして・・・主人のより、大きいッ!
って、エスカレートしていった。
あたしがうめくたび、夫は激しい射精をくり返していた。

目のまえで。支配されてしまうということが。これほど快感だったとは・・・
塗り替えられた日常に、いまは気分が浮きたつ想いです・・・

【夫の独白】
見せつけられてしまうということが、これほど快感だったとは・・・
視ないで・・・視ないで・・・が。
もっとして・・・もっとして・・・に、塗り替わっていって。
反射的に反応しているだけだった腰の動きが、別種の熱を帯びていって。
妻が恥ずかしい言葉を口走るたび、不覚にも射精をくり返してしまっていた。
男ふたりで交わりをしていた布団のうえで、夫しか識らない身体が汚されてゆくのを。
むしろウキウキとしながら、見守りつづけてしまっていた。

愉しんでしまっていた。妻の目のまえで。
男の一物をしゃぶることに、目覚めてしまったわたし――
きょうの味は、格別だった。
目のまえに迫らせられた一物は、ついさっき、妻を犯し抜いたものだったから。

根元まで、口に含んで。
どろどろとした粘液を、喉を鳴らしてのみ込んでゆく。
妻を犯したペ〇スを咥える・・・という行為は。
完全な服従を誓ったしるし。

妻の目のまえで、支配を受け容れてしまうということが、これほど快感だったとは・・・
塗り替えられた日常は、恥まみれのわたしにはひどく居心地のよいところだった。

【ニュータウン情報】30代~40代夫婦間で流行、「婚外披露宴」

2015年03月20日(Fri) 08:36:21

既婚女性が夫以外の男性と結婚式を挙げる趣向の祝宴、「婚外披露宴」が19日、タウン内に所在するラブホテル「クイーン」で行われた。
新婦の加藤涼子さん(36)は、夫の正幸さん(39)の見守る前、10年前に正幸さんと挙式して以来という純白のウェディングドレスもきらびやかに登場。
50人以上詰めかけた招待客のまえで婚外結婚の誓いを誇らしげに宣誓すると、
新郎の熊手幸吉さん(62)と、熱いキスを交わした。

二人の出逢いは、「クイーン」向かいのビルが火事を起こした昨年暮れのこと。
逃げ遅れた涼子さんを幸吉さんが救出したのがなれ初めとなった。
妻を救われた夫正幸さんは感謝のしるしとして、涼子さんとのデートを幸吉さんにプレゼント。以来正式な交際を続けていたが、幸吉さんの熱烈なプロポーズを涼子さんが受け入れたことから、婚外披露宴が挙行されることとなった。
式場に選ばれた「クイーン」は、夫に隠れて幸吉さんに逢うときに頻繁に使ったラブホテル。
想い出の場所で夫の祝福を受けた新婦は、二人の夫と腕を組んで、バージンロードを歩む。

新婦・加藤涼子さんの談話
理解のある今までの夫と頼もしい新しい夫に支えられて、きょうの日を迎えることができました。
式場で用意してもらった宣誓の文章のなかに、「今までの夫を裏切るのではなく、愛する男性が二人になるということです」というくだりがあるのですが、共感しました。加藤とは結婚して10年になりますが、愛情がなくなったというわけではありません。むしろ、すごく愛しています。お互いに。だから、きょうの式も実現したんだと思います。じつはうち、夫同士も恋愛関係にあるんですよ。(笑)うまくいかないわけがないですね。
披露宴は、怖いですが愉しいです。
招待された女性は列席した男性を相手にご奉仕するんですが、母も、結婚している妹も、こんなことは初体験だと思います。父や義兄もそれなりに愉しんでくれたようですので、きっと皆さん素質がおありなんですね。もっと多くの既婚者の方たちに、「婚外披露宴」を体験してもらいたいと思います。

新郎・熊手幸吉さんの談話
さいしょに仲良くなったのが、正幸(新婦の夫)なんです。おなじ「幸」の字を持ってますねって。
「わし、あんたの奥さん狙っとるんじゃけど・・・」っていったら、嬉しがってくれましてね。ウマが合うんですよ。私たち。
それで、チャンスもらって射落として・・・(笑)最愛の奥さんを誘惑する機会をくれた正幸に感謝です。
ええ、いい身体してますで、正幸が独り占めにしちゃ、イカンです。(笑)
でもきょうは、ふたりに共通の「幸」を、正幸から分けてもらえました。3人で、理想の家庭を築いていきたいと思います。

夫・加藤正幸さんの談話
幸吉さんとはもともと、同性愛の関係でして。こちらに赴任してきてすぐに知り合って、強引に手ほどきされました。妻のときも、同じですね。やっぱり強引で。(笑)
涼子さんを狙っていると言われた時には、もちろん警戒もしましたけれど、「この人なら」という気持ちもありました。
最愛の妻が注目されるのは、夫として誇らしい部分もあるわけです。
それで、火事の時に救っていただいたお礼として、妻とのデートを”献上”したんです。
目のまえで奪われちゃったときに、直感は正しかったと確信しましたね。婚外披露宴をやろうと感じたのは、そのときでした。
今後は妻を支配されちゃう日常をおおっぴらに受け入れてしまうわけで・・・気分は複雑ですが、夫を二人持つこととなった妻を支え、見守っていきたいと考えています。
妻をほかの男性と交際させるというのは夫として勇気のいる決断だと思いますが、一夫多妻の国だってあるんですから、逆もアリでしょう・・・ということで。(笑)
個人的にも、幸吉さんを交えた新生活を愉しみたいと考えてます。

火事場から救い出す

2015年03月20日(Fri) 08:10:30

1.
うそ。死んじゃうかも・・・
気がついたときには、あたりには煙が充満していた。
昏倒していたのは、ほんのわずかな時間だったはず。
見回しても、出口は一か所。そして煙はその方角から、流れ込んでくる。
涼子は首すじにつけられた傷に、触れてみた。
ヒリヒリする。ジンジンする。
咬まれて血を吸われた・・・?
微かに残る、異様な感覚。
そのあと気を失って倒れて・・・いま気がついたけれど、着衣が乱れていた。
股間にはありありと、恥ずかしい衝撃の余韻すら残っていた。
そのまま置き捨てられて・・・置き捨てられた場所が、火事場になっていた。
もう、このまま死んじゃおうか?
そんな想いもチラリとよぎったけれど。
夫の顔が思い浮かんだとき、そんな衝動は意識的に掻き消していた。

どうやら起ちあがることはできた。
眩暈がするのは、煙のせい?それとも、失血のせい?
たとえ逃げ道があったとしても、満足に逃げられるような状態ではない。
もう選択の余地はないのか?
意識が死ぬ方へと転化しかかったそのとき――
「こっちだ!」
叫ぶ声がして、声の方角から伸びてきた力強い腕が、涼子を強引に引っ張っていた。

「ありがとうございます。おかげで家内が助かりました」
現場まで駈けつけてくれていた夫は、服を焦がした涼子を両腕で抱き留めながら、涼子を救った男にお礼を叫んでいた。
「いやいや、なによりでしたね」
男はおだやかにそう言い残して、「お名前を・・・」といいかけた夫を振り切って、人ごみのなかに身を隠していった。
夫の腕に抱かれながら涼子は、自分の生命の恩人はつい今しがた、彼女の血を吸って犯した男と同一人物だということを、はっきりと感じていた。


2.
吸血鬼がこの街に入り込んでいます。
知っているだけでも数人、犠牲者が出ています。
犠牲者が既婚の婦人の場合には、必ずと言っていいほど性的暴行まで受けています。
幸い死亡者はまだ確認されておりませんが、街としてはゆゆしい事態です。
当局への相談も含めて、早期に対処するべきです。

夫は町内会長に、性急な声色でまくしたて、決断を迫った。
そうですねえ・・・たしかに深刻な問題ではありますねえ・・・早急に、対応しましょう。
さいしょはなぜかひとごとのような態度だった年配の町内会長は、いい加減な態度では相手が立ち去らないであろう様子を感じ取ると、締めくくりの言葉だけを確約にすり替えていた。
しっかり頼みますね、と、夫は念を押すように言い、涼子を促して公民館の打ち合わせテーブルの席から起ちあがった。
夫の同僚二人が、吸血鬼に襲われたのだという。
そんな夫も――妻の首すじに着けられた咬み痕には、まだ気がついていないらしい。
涼子は咬まれた痕を、髪の毛の下に入念に隠していた。

じゃああたし、ちょっと用事あるから・・・
あ、そう。帰りは何時ころ?
そうね、夕方までには。晩ご飯作る時間までには、戻ってくるね。
小手をかざしてバイバイをして、
夫がなんの疑いも示さずにきびすを返すのを確かめると。
涼子は安堵に肩を落とした。
膚の奥深く、血管のなかから声がする・・・そんな気がしていた。
声は涼子に命じていた。午後に時間を空けて、公民館に戻るように――と。


3.
さいしょの一回は強いられたものだったけれど。
二度目の逢う瀬は、自分から応じたものだった。
男は息荒く涼子に迫り、着衣のまま求めてきた。
性急な欲求のせいばかりではない。
服を着た女性を襲うのが好みなのだ。
ブラウスの襟首を汚さないよう、用心深く咬み入れられてくる牙に、涼子は首すじを伸べて応じていった。
血を吸った相手の女性を気遣って、わざわざ現場に舞い戻り、火事から救ってくれた男。
そのお礼を、したかっただけ――
お礼をしたい気持ちだけは、夫も同じなはず――
でもまさか、こんな形での恩恵を妻が相手に施しているとは、夫はまだ夢にも知らない。

男は、脚にも咬みついてきた。
派手に破けた肌色のストッキングの裂け目がじりじりと拡がってゆくのを、
老け顔の目じりをしわくちゃに歪ませて、目を細めて愉しんでいる。
ほんとうは、服を破いたり汚したりするのも、好きなのだろう。
変態――毒づこうとしながらも涼子は、相手の言いなりになっていく自分を、どうすることもできずにいた。
ストッキング越しに圧しつけられた唇が、ぬるぬるとうねり、薄いナイロン生地に唾液をたっぷりとしみ込ませてきたときに。
男が自分の脛を吸いやすいようにと、脚をくねらせて応えてしまっていた。
ストッキングの脚をくまなく愉しんだすえ、男は牙を突き立てて、薄手のナイロン生地をぱちぱちと音を立てて咬み破っていった。


4.
家に戻ったのは、昏くなってからだった。
無言で唇を引き結んだ涼子の後ろには、涼子が自分で選んだ浮気相手が、ひっそりと佇んでいた。
驚く夫が犠牲者の仲間に加わるのに、ものの数分と要しなかった。
涼子の血で力を得た吸血鬼は、自分より20歳は若い夫をやすやすと組み伏せると、
涼子のときと同じ経緯で、夫の首すじを咬んでいた。

いったいこんなことを、予想することができただろうか?
夫の前で、ほかの男に犯されるなんて――
けれどもそれは、現実のものになっていた。
夫はぐるぐる巻きに縛られて、猿ぐつわまでされている。
そのまえで、わざわざ見せつけるように――男は涼子のブラウスを剥ぎ取っていった。

ほんとうは、あの場でこんなふうにしたかったんだ。
襟首汚しちまったし、クリーニングにも出せないだろう?
男はそう言いながら、にまにまとした笑みを泛べて、涼子のブラウスを引き裂いてゆく。
むしり取られたブラジャーの吊り紐がはじけて、あらわな肩先を鞭のように打った。
へへへ・・・だんなさん、悪いね。ちぃとばかし、愉しませていただくでの。
男は舌なめずりをしながら涼子に迫って、乳首を含んでゆく。
「あぁあ・・・っ」
静止を求める夫の叫び声は、猿ぐつわに阻まれて、くぐもった呻きにしかならなかった。

ノーストッキングに引き剥かれた脚を大の字にしたまま、
のしかかってくる男を相手に、涼子は夫婦でしかしたことのない行為に、耽っていった――


5.
いけない・・・いけない・・・
でもあたし、愉しんじゃってる。

髪をユサユサと、揺らしながら。
客をとる娼婦のように、腰を振りながら。
喘ぎ声をあらわに、洩らしながら。

あたしは主人の前での行為に、いつしか熱中してしまっている。
かまわないでしょう?
男同士がキスを交わし、肌を合わせ、股間まで交わらせていくのを。
完全に相手のペースとはいえ、主人がそれを受け入れてしまったのを。
あたしはどちらに手を貸すでもなく、茫然と佇みながら、いちぶしじゅうを見守っていた。
主人は唯々諾々と男に縛られていって、
「奥さん借りるね。すまないね。でもよかったら、だんなさんも愉しんでね」
そんな相手の囁きに、どんよりとだが頷き返してしまっていた。


涼子をあんたから奪うつもりはない。
だから時々、逢いに来るのを許してほしい。
見て見ぬふりをするのでも、かまわないから。

まじめな交際を希望してます。
奥さんくらいの年代の女が、好みなんです。
身体つきもいいし、血も美味い。わしにとっては、好い女です。
なに、ご夫婦でいままでどおり、ふつうに暮らしておればエエんです。

たまにわしが、忍んでいったら。
だんなさんはそんなとき、さりげなく座を外してもらってもいいし、
きょうみたいな感じでも愉しめるというなら、荒縄持参でうかがいますよ。
わしと仲良くしたいというなら、奥さん抜きで逢ってもいいです。
奥さんも、だんな抜きで逢いたくなったら、連絡待ってます。
秘密は厳守する・・・っていいたいのですが。この街では無理だな。
あんたが町内会長に言ってたみたいに、犠牲者のことってどういうわけか、すぐ広まっちゃうんだよね。
町内会長が奥さんと娘を、わしらの仲間に喰われちゃってるの、まだあんたは知らなかったかね。
まあこんなふうに、犠牲者同士は分かり合っちゃうことになるのでね・・・
その内輪のなかでの、秘密厳守ということで。

男がいいように申し渡しをしていると。
猿ぐつわを外された主人が、おずおずと口を開いた。
「涼子は、どうなんだ・・・?」
あたし?あたしはもちろん、このひとにぞっこんよ。
だって、上手なんだもの。あなたとは最近、なんにもないし。
だから首すじの傷のことも、気がつかなかったんでしょう?
そんな想いを凝縮させて、あたしはたったひと言、応えていた。
「あたし、このひととおつきあいします。よろこんで・・・」
そうか、と夫は、一瞬寂しそうに目を伏せる。
ちょっとかわいそうだったかな・・・さすがにあたしはそう思ったけど。
つぎの夫のひと言が、あたしを安堵させ、そして満足させた――
「せめて、俺から交際をお願いしたってことに、してもらえないかな」
嬉しいねえ・・・あたしの思惑など眼中にないその男は、夫の提案を即座に受け入れていた。


6.
血を吸った相手の女性が火事に巻き込まれたとみてとって、躊躇なく引き返して火の中から相手を救い出す。
そこまでやる吸血鬼など、きいたこともなかった。
けれどもあのひとは、そこまでのことをしてくれた。
涼子に対する愛情を、夫であるわたしですら、感じざるを得なかった。
「涼子への愛情と、あんたへの誠意を示したかっただけ」
そんなあのひとの言葉も、嬉しく響いた。
わたしが火事場に飛んでいったのも、ぐうぜんではない。
そこで涼子が襲われるであろうことを、まえもって告げられていたから。
けれども火事までは、予想外だった。
ばちが当たったんだ、と思った。とっさに火の中に駈けこもうと思った。けれども不覚にも、躊躇してしまった。
いつの間にかわたしの傍らに立ったあのひとは、わたしを制すると、自分から日の中に駈けこんでいった。

恥ずべきなのは、日常的に浮気に耽るようになった妻ではない。
妻をすすんで吸血鬼に引き合わせた、わたしのほうだった。
勤務中に血を吸われたわたしは、男同士の関係を迫られて――不覚にも受け入れて、目覚めさせられていた。
たいがいのことは、目ざめさせちまうことができるんだ。わし。
そういいながらキスをねだるあのひとに、わたしは自然な態度で、応じてしまっていた。
三十代の人妻の生き血をご馳走したい。貞操をプレゼントしたい。
そんなわたしの申し出を、あのひとはくすぐったそうに受け止めてくれて。
雑居ビルの一隅にわたしが呼び出した涼子を、気に入りのワンピースもろとも汚していった。
手慣れたようすで、むぞうさに――
涼子を征服した男は、余勢をおさめるためにわたしとの関係を望んで、向かいにあるラブホテルで刻を過ごした。
涼子のいたビルの火災を知ったのは、そのときのことだった。

きょうも涼子は、休みの日のわたしを置いて、あのひとに逢いに出かけて――
ホテルから戻ってくるのに、三時間は経っていた。
羞ずかしそうに、誇らしそうに。
ドアをひっそりとあけて、舞い戻ってくる。
はずれかかったブラジャーがはみ出たえり首には、血のりが沁みて。
きちんとセットしていた栗色の髪はぼさぼさに乱れて。
脚に通していった真新しいストッキングは、見るかげもなく咬み剥がれて。
わたしは自分の妻を迎え入れると、キスをしてやる。妻もわたしに、応じ返してくる。
途絶えていた夫婦関係は、みごとに復活していた。


涼子をあんたから、奪うつもりはない。
けれども奥さんは、わしの気に入りの女の一人に加えさせていただく。
あんたはいままでどおり、ご夫婦仲良く暮らせばいい。
涼子の服代を稼ぐために、あんたは働く。
女房が浮気で使うホテル代を稼ぐために、あんたは働く。
お仕事もそのほうが、張り合いが持てるだろう?

見て見ぬふりをするのなら、ご好意に甘えよう。
覗いて愉しめるなら、見せつけてあげよう。
たまにはあんたのことも、ホテルに誘ってやるよ・・・

あのひとの囁きは甘い毒を含んでいる。
囁かれるままに頷いてしまったわたしに
フフフ・・・と笑う妻。
そんなときの妻のほほ笑みにも、甘い毒が含まれている。
塗り替えられた日常――
わたしはひどく、満足をしている。

母さんと朝帰り

2015年03月15日(Sun) 09:57:00

シンジのお母さん、いまおいくつ?

39歳・・・かな?

若いうちに結婚したんだね、と、由紀子さんはいった。
女の言い草のように、ボクには聞こえた。

40歳の誕生日のまえに、ヤッてもらおうよ。

由紀子さんの瞳が、昏く耀いていた。
ヤるって、なにを・・・?
一応そらとぼけてみたけれど・・・そんなことが通用するわけは、むろんなかった。
由紀子さんに血を分けるようになっていた母さんは。
彼女の呼び出しなら、それが真夜中でも受け入れてしまうだろう。
でも、既婚の女性が男の吸血鬼と逢うことがなにを意味しているのか・・・
母さんはちゃんと、わかっているのだろうか?

暗くなってから家に戻ると、父さんはもういなかった。
今夜は夜勤だと言っていたっけ。
勉強部屋の机のうえに、メモが乗っていた。

母さんを連れ出すのなら、戸締りはちゃんとしておくように。

父さんの筆跡だった。

こげ茶のストライプの入った白のブラウスに、えび茶色のタイトスカート。肌色のストッキング。おなじ色のパンプス。
母さんの身なりは、そんな感じだった。
ストッキング着用は、義務付けみたい。
由紀子さんは面白そうに、笑っている。
あたしたち学生だと、ハイソックスなんだけどね。
ことさら見せびらかした紺のハイソックスには、ふくらはぎのいちばん肉づきの柔らかなあたりに、咬み痕がふたつ、浮かんでいた。
母さんの肌色のストッキングも、あんなふうに破かれるのだろうか?
ストッキングだと、派手に裂けるんだよ。
由紀子さんがそんなことを知っているのは、自分のお母さんのときのことを言っているのだろうか?

こんな夜更けに、どこに行くというの?
母さんは由紀子さんとボクのことを、等分に見比べた。
いいから、急いでくださいね。
由紀子さんの真顔には、母さんも抗えなくなっていた。

連れていかれたお邸の、いちばん奥の日本間で。
男と二人きりで置き去りにされるとき。
「献血だと思えばいいんだよね?」
母さんはなん度もボクに、そう訊いてきた。
「献血というか・・・なんというか・・・」
口ごもるボクに。
「慈善事業ですから」
由紀子さんはキッパリとそう言い放って、母さんに引導を渡してしまった。

ふすまが閉ざさされる間際――
うつ伏せに横たえられた肌色のストッキングのふくらはぎに這う唇が、好色なよだれを光らせるのが。
酷く胸に灼きついていた。
「おとう様、見えているから」
由紀子さんは、意外なことを言う。
「シンジがわたしを奪われる刻。シンジも見守ってくれるよね・・・?」
思い詰めた表情が、怖ろしい問いに対する肯定の応えを、ボクに強いていた。

翌朝――
ノーストッキングに剥かれた母さんの脛が、ひどく眩しく映った。
「あのお宅、母子で朝帰りですってよ」
ご近所の朝食の食卓で、そんなささやきが洩れるのを、なぜだかありありと感じることができた。
濡れ衣をボクがかぶって、あの男がいい想いをする――
そんな図式が、ボクたち一家にも、影を伸ばしてくるのを。
もう後戻りできない状態になっていた。
そして、後戻りしたくない心境にまで、なっていた・・・

恋と不倫と

2015年03月15日(Sun) 09:34:38

1.
草むらの端から、白のハイソックスをきちんと履いた一対の脚が、伸びている。
もうひとりの身体は、横たわる少女の身体にのしかかって、彼女の薄茶のスカートから上を押し隠していた。

ゴクゴク・・・
ゴクゴク・・・

男は喉を鳴らして、少女の生き血を飲みふける。
息荒く背中をもたげてこちらをふり返ると、男はにんまりと笑った。
ボクも虚ろな目をしながら、笑い返していた。
遅れて、少女が身を起こした。
由紀子さんのブラウスの肩先は、バラ色のシミに濡れていた。
肩を上下させて、息を弾ませていた。
彼女の奪われた血の量がハンパじゃないことが、蒼ざめた顔色でそうとわかった。
彼女の顔色をみるまえから、いちぶしじゅうを見届けていたボクは。
彼女を愉しまれた刻の長さから、容易にそれを察することができたのだけど。

旨かった。

男はボクの望む感想を、はっきりと口にした。

せめて美味しいと言ってほしい。
せめてボクたちのしていることに、感謝の気持ちを持ってほしい。
ボク、ヘンなこと言っていますよね・・・?

最後のひと言は自己反省になってしまったけれど、
男はこちらの意図するところを、察してくれたらしい。
加瀬由紀子なんて名前は知らないといったとき、あんたはとても残念そうな顔をしていたからな、と言ってくれた。


2.
ボクの血を吸い尽した由紀子さんは、血液を宿したま人間に戻っていた。
逆にボクは、嗜血癖を植えつけられて、学校にも出たりでなかったりしていた。
嗜血癖を残したのは、ボクだけではない。
由紀子さんも、ほかの生徒たちも、皆そうだった。
かれらが一斉に復学を果たした時、教室には沈黙の戦慄がよぎったけれど。
出席をとるときの担任の大原先生は無表情に加瀬由紀子や田上良一の名前を読み上げて、
生徒たちは生気のない返事を返してゆく。

休み時間は、鬼ごっこの場と化した。
友原智恵子と水崎ユリは、笑いながらクラスメイトのことを教室のすみに追い詰めていって、ふたり仲良く両側から、その子の首すじを咬んでいたし、
田上良一は彼女の目を盗んで、クラス一の美人といわれた麻生真知子に迫っていって、紺のハイソックスのふくらはぎに咬みついていた。
由紀子さんはボクのところに、友達を引っ張って来て。
「ほら、あんたも吸いなさいよ。無理しちゃだめ」
そういって、ボクの唇に彼女の首すじを強制的にあてがってきた。
温もりを含んだうなじは、喉の渇いたボクには、うってつけの誘惑だった。
あぁ~・・・
悲しげな声をあげた尾藤ユカリは、あとでひじ鉄でボクをつついた。
「ブラウス汚したじゃないの」って。


3.
由紀子さんと男の関係は、まだ続いていた。
血を取り戻した彼女は、自分の血のおいしさを男に愉しませる義務を負っていたから。
なぜって、由紀子さんは男の元配下で、ボクは由紀子さんの配下だったから。
処女の血は、貴重品なのよね。
そういう由紀子さんの言葉通り、男が由紀子さんに性的な行為を強いることはなかったけれど。
血を吸わせることだけでも、じゅうぶん性行為に近いのではないか?
ボクはそんな疑いを、持ち始めていた。


4.
ほら、きょうの獲物。
その日、由紀子さんがむぞうさに腕をつかまえて引きずってきたのは・・・妹の香奈だった。
香奈の首すじには、だれがつけたものか、早くも赤い斑点がつけられている。
「お兄ちゃんも、女の子の血が欲しいの?」
大きな瞳で見つめる少女は、いつも見慣れた妹とは別人のような気がした。
「しょうがないなあ・・・」
むぞうさに引っぱり上げた、空色のハイソックスのふくらはぎに・・・
ボクはおずおずとかがみ込んで・・・しかし咬みつくときにはもう、いつもほかの女子にしているときみたいに、
生えかけた牙を根元まで、柔らかい皮膚にずぶずぶと埋め込んでいた。
空色のハイソックスに真っ赤な血が撥ねるのが、ひどく刺激的だった。

あなたたち。兄妹で近親相姦しているみたいだね。

由紀子さんは愉しげに、ボク達をからかった。


5.
あたしと結ばれる・・・ってことはさ。

由紀子さんは唐突に、大胆な発言をしてくる。
妹の香奈はもうとっくに伸びてしまって、傍らの芝生のうえに大の字になっていた。
まだか細い身体から採れる血は、他愛ないほど少量だった。

あいつとも結ばれる・・・ってことなんだよね?

そういうことに、なるよね・・・

処女は例外、といいながら。
セックス経験のある女性は、吸血鬼と性的関係を結ばなければならない。
由紀子さんのお母さんも、ボクの母までも、あの男の情婦になっている。
あの男の配下になってしまったボクが、だれかと結婚すれば。
花嫁はただちに、あいつのセックスフレンドにされてしまうことになっていた。

どうする?シンジは嫉妬する?

由紀子さんはボクの顔を、面白そうに覗き込んでくる。
恋が成就した時に、不倫を受け入れなければならない――
それはかなりの、ジレンマだった。

いいじゃない。周りの女子たちを牙にかけて愉しんでいるんだし。

どこまで本気なのか、由紀子さんは白い歯をみせて、ニッと笑った。
どこまでも、無邪気な笑いだった・・・

いびつな食物連鎖

2015年03月15日(Sun) 09:07:51

加瀬由紀子?知らん名だね。

男は写真のままの冷ややかな無表情のまま、ボクを見おろしながらそうこたえた。

え?だって加瀬由紀子がボクの血を吸ったから、あなたはボクのことを知っているんでしょう?

思わず訊きかえしたボクに、男はやはり冷淡だった。

わしにわかるのは、あんたの顔つきだけじゃよ。
あんたが血を吸われたがっているようだったから、望み通りにしてやったまで。

男はボクの身体から吸い取った紅いしずくを滴らせた口許を、むぞうさに手の甲で拭った。
眩暈がする。かなりくらくらと。それくらい男は、容赦なくボクの血をむしり取った――

ボクの血は、美味しかったですか?そうでもないんですか?

けんめいに聞き出そうとするボクに、

味なんか関係ないね。

男はそっけなく、そういった。
ショックを受けたようすのボクに、さすがに悪いと思ったのか。ひと言つけ加えてくれたけど・・・

でもまあ、悪い味ではない。


定期入れに忍ばせていた由紀子さんの写真を突きつけて、なおもボクは言い募っていた。

彼女です、加瀬由紀子さん。
この人の血、小父さんが吸ったんでしょ?

男は目を細めて由紀子さんの写真を見、そしていった。「憶えている」と。

彼女の血は、美味しかったの?

男ははっきりと、うなずいていた。「ああ、旨かった」。
ずきり!とした嫉妬が、どす黒く胸を衝(つ)く。
やっぱり・・・やっぱりこの男が、由紀子さんを・・・!
怯えた顔をした由紀子さんが、風体もみすぼらしいこの男の腕に抑えつけられて・・・
首すじを咬まれたまま悔しそうに顔を歪めながら、生き血を吸い取られてゆく・・・
そんな想像上の光景に、ボクは胸をわななかせた。

この娘なら、よく憶えている。学校か塾の帰りに襲ったのだ。
怯えた顔が、かわいかったぞ。
やっぱり生き血は、若い子に限る。
不覚にも、とまらなくなってしまってな・・・
なん度かに分けて吸い取ってやろう。そう思ったときにはもう、吸い尽しちまっていた・・・

もっと早くに、理性を取り戻してよ・・・
彼女だってボクの血を、なん度にも分けて愉しんでいるじゃないか・・・

仲間が増えることは、好ましいことではない。
競争相手が増えるからな。
じゃが、あの子のやり口は、悧巧だった。
ご両親がすすんで、あの子に血を分けたのだ。
わしに咬まれたおなごは・・・まあ、そんなことはお前にはどうだっていい。
あの子がお前を吸い尽さん以上は、わしもお前を吸い尽すことはない。
言うべきことは、それだけだ・・・


どうなるっていうんだろう?「わしに咬まれたおなごは・・・」

あいつに咬まれた女のひとは、あいつとセックスさせられる。

由紀子さんの言いぶりは短兵急で、思い詰めた顔をしていた。
あたしは処女だから、例外。
処女の生き血は、あいつらにとっては貴重品だから
でも、母さんは免れなかった。
それをわかっていたから、さいしょに血をくれようとした母さんを、父さんは止めようとした。
でも、父さんの血だけでは、足りなかった・・・
父さんはすべてを見通しながら、あたしが母さんのことを咬むのを、許してくれた。
ああ、そうだわ。
シンジにとっても、ひとごとじゃないのよ。
初めて咬んだあと、シンジのお母さんに手伝ってもらって家まで送ったでしょ?
そのあとあたし、シンジの母さんのことを咬んだから。
だから、ほら・・・あんなふうに・・・ね・・・

彼女の視線の先は、公園の片隅に向かってゆく。
背の高い草むらが、穂先をがさがさと揺らしていて。
揺れる穂先のすき間から、横たわる一対の男女が見え隠れした。
女のほうは、母さんで。男のほうは、あいつだった。
見慣れた幾何学模様の、モノトーンのワンピース。
すそが太ももまでまくれあがって・・・肌色のパンストがひざ小僧のあたりまで、ずり降ろされていた。
見てはいけないモノを、視てしまった。
そして、視てしまった目を、放すことはできなくなっていた。
傍らで由紀子さんが、くすくすと笑っている。
父さんのときも、そうだったっけな。
どうして視てはいけないはずなのに、そうやってじいっと眺めちゃうのかしら。
そういえば――シンジのお母さんも、お父さんのまえで、きまり悪そうにしていたよ。

知らないのはどうやら、ボクだけだったらしい・・・
由紀子さんはクスクス笑いを泛べた唇をそう・・・っとこちらへと近寄せてきて、ボクの首すじを咬んだ。
つねるような微かな痛みが、首のつけ根に走る。
尖った異物が容赦なく刺し込まれ、彼女はゴクゴクと喉を鳴らしながら、ボクの血を飲みふけりはじめていた。
致死量近い血を喪っても・・・ボクはそのまま、彼女のやりたいようにさせていた。
止めることはできなくなっていたし、止めさせなければならないとも思っていなかった・・・

【追記:2015.4.18】
本作をイメージしたイラストを、↓に掲載しました。
http://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=49893523

近しくなったのか。奴隷にされたのか・・・

2015年03月15日(Sun) 08:46:14

由紀子さんに血を吸われるようになってから、十日間が経過した。
あれから毎日、由紀子さんはボクのことを呼び出して、
ボクは家族にも黙って、由紀子さんに逢いに行った。

授業や部活もだいじでしょ?だから呼び出すのは夜か夕方にしてあげる。
塾帰りにはゼッタイ、公園に来るんだよ。

吸われる血の量はさいしょのときがマックスで、あとはしょうしょうの貧血程度だったから。
毎日逢うことができるのかもしれない。
由紀子さんとの間にできた秘密の関係は、ボクにとって好ましいものだったから。
どちらかというとワクワクしながら、由紀子さんの呼び出しに応じていった。

ほんとなら、十日も逢ったらあなた、死んじゃっているわよ。
あたしのときだって、そうだったんだから。
どうして寸止めにしてあげているのか・・・すこしはありがたがってもいいんじゃない?

吸い取った血で濡らした唇で、由紀子さんは顔をしかめてそういった。
そうなんだ。
ボクには塾も学校も部活もあるけれど、由紀子さんはあれ以来、絶えて学校に姿をみせることはないのだから。

さいしょのときには、どうやってかえったのか、よく憶えていない。
ただふわふわと身体が浮いたみたいになって家路をたどったのを、なんとなく記憶しているだけだった。

お母さん呼んだんだよ。
シンジが具合悪くなっちゃったって言って。
救急車呼ぶほどじゃないから、いっしょに家に運ぼうって言って・・・シンジのお家まで運んで・・・

ニッと笑った由紀子さんは、それ以上は語らなかったけれど。

気をつけてね。

そういってボクのことを送り出してくれる母さんの首すじにほんのりと浮いた赤い斑点に、気づかないわけにはいかなかった。

いちどおうちにお邪魔しちゃうとね、あとはいつでも入れるの。

突然勉強部屋に現れた由紀子さんに、血をねだられたことだってある。
よく眠れないの・・・
あの晩の由紀子さんは、白地に緑の鮮やかなチェック柄のスカートに、真っ赤なハイソックスを履いていたっけ。

仲良し三人組だった友原智恵子と水崎ユリは、由紀子さんが襲って血を吸ったという。
そのあと姿を消した鈴原芳香は友原智恵子が、田上良一は水崎ユリが襲ったのだという。
鈴原芳香と友原智恵子は同じ運動部に所属していた。
夜中の校庭でボールの撥ねる音が聞こえる・・・というのは、たぶん空耳ではないのだろう。
一方的に水崎の片思いだった恋も、いい展開をしているらしい。
夜中にデートしているふたりを見かけたという声を、ちらほら耳にしていた。
由紀子さんとボクの関係は・・・果たしてどこまでみんなに知られているのだろう?


獲物は分け合うこともあるらしいけど、水崎は田上のことを決してほかの仲間には譲らないのだという。

そういえばあたしも、シンジのことほかのやつに吸わせていないよね。

由紀子さんはそういって思わせぶりに笑いながら、ボクの反応を面白そうに窺っている。

でもね、自分の血を吸った相手には、自分の獲物を譲らなければいけないの。
だからあたしは田上君の血を吸うことができるんだけど・・・まだそんな要求はしていないなあ・・・

両親はすすんで、由紀子さんの牙にかかったのだという。

それにシンジと、シンジのお父さんとお母さん。あたしの配下はけっこういるの。
だからひとの獲物を欲しがらないでもやっていける――

ボクばかりか父や母まで、配下というひとくくりにされてしまうのか。
彼女の配下と認められることが嬉しいような・・・
両親まで同じようにされてしまっていることが悔しいような・・・
ゾクゾクとするような昂奮と屈辱とが、ボクのなかで入り混じった。
そういえば。
このごろは由紀子さんはボクのことを、「鳥居くん」とは呼ばずに「シンジ」と名前で呼び捨てにしている。
距離が縮まったということなのか。それともたんに、奴隷になってしまったことを意味するだけなのだろうか。

それからね。
こいつ。
こいつに望まれたら、血を分けてやってね。しかたがないの。

由紀子さんは一片の古びた写真を、ボクに突きつけた。
写真のなかで、表情を消した白髪の老紳士が、冷やかにこちらを見つめている。
この男には無条件で血を吸われなければならない・・・ということは・・・
由紀子さんの血を吸い取ったのは、この男・・・?
写真の男に、激しい嫉妬をおぼえた。

あいつったら、美味しいともなんとも言わないんだよ・・・

2015年03月13日(Fri) 07:18:04

学級委員の由紀子さんは、先生のお覚えめでたい優等生。
いつもブレザータイプの洋服をきちんと着こなして、周りの女の子よりグッと大人びた雰囲気を持っている。
あの大きな瞳でじっと見つめられると、ドキッと胸を高鳴らせるのは、きっとボクだけではないだろう。
薄茶のプリーツスカートの下、ひざ小僧のすぐ下までたっぷりと履いた白のハイソックス。
本人は「脚太っ。視ないで!」とか仲間うちで言ってるけれど・・・あのふくらはぎのラインは、顔と同じくらいにグッとくる。
「視ないでっ!」って仲間うちではしゃいでいるときの、あの輝く笑顔と同じくらい。
その仲間うちのなかに入り込める異性は、さすがの由紀子さんにもまだ、いないみたいだった。

ある朝、担任の大原先生が、沈痛な面持ちで教室に入ってきた。
由紀子さんが学校を休んで、三日目のことだった。
「加瀬(由紀子さんのこと)が、火曜の学校帰りに吸血鬼に襲われた」
えっ・・・?と、教室じゅうに、動揺が走る。
血液を全量喪失・・・って。
いったい先生、なに言ってるの・・・?

由紀子さんは、生きてはいるらしかったけれど。
見かけても、近寄らないように。
見かけたら、学校に連絡するように。
昨日までの学園の太陽が、まるで要注意人物扱いだった。
それっきりしばらくのあいだ、由紀子さんが姿をみせることはなかった。

「友原が血を吸われたらしい」
「ユリもこのごろ、見ないよね・・・」
吸血鬼の犠牲になったらしい。
そんなトーンで語られるのは、由紀子さんと仲の良かった少女たちの名前。
仲良し三人組だった友原智恵子と水崎ユリが、相次いで教室から姿を消した。
それからも。
鈴原芳香と田上良一が、教室からいなくなった。
つぎは、誰・・・・?
だれもが疑心暗鬼になって、自分の教室を見まわしていた。

田上良一は、加瀬由紀子と並んで学級委員をやっていた。
由紀子さんに襲われたのだろうか・・・?
ほかの子の多くが恐怖で語る吸血行為。
けれども僕は、田上が羨ましくもあり、内心嫉妬していた。

冬場の夕暮れは、早い。
もう当時を過ぎてだいぶ経つのに、ちょっと学校でもたもたしていると、早くも夕闇が迫っている。
こういうことが続出している折りだったから、先生たちも早く下校するようにと厳しく言っていたけれど・・・
なぜかその日に限って、部活の後の打ち合わせが長引いたり、そのあとの片付けに手間取ったり、
ついでに言えば教室に忘れ物を取りに戻ったり・・・そんなこんなで、時刻は七時に迫っていた。
さいごに由紀子さんを見かけたのが、学校から塾への道すがら、ちょうどいま時分だったはず。
「鳥居くん・・・?」
聞きなれた声に、思わずボクはふり返る。
視線の先にいたのは、いつもの紺のブレザーに薄茶のプリーツスカートを穿いた由紀子さんだった。

きちんと整えられたふさふさとした黒髪は肩先でふんわりとウェーブしていたし、
白い歯をみせた表情も、以前のままだった。
けれど・・・
白のブラウスの襟首には、赤黒いシミが点々と散っていて。
胸もとを引き締めているふんわりとした紺の水玉もようのリボンにも、それは撥ねかっていて。
ひざ小僧ぎりぎりまでぴっちり引き伸ばされた真っ白なハイソックスにも、
同じ赤黒のまだら模様が、べったりと痕を残していた。
豊かな頬は蒼白く輝き、イタズラっぽく笑う口許からは――尖った犬歯が覗いている・・・

びっくりしたんだよ。
いきなり前に、立ちふさがってさ。
あいさつも説明もなんにもなく、首を咬まれたの。
気がついたときには、そこに尻もちを突いていて・・・
でも一滴あまさず飲んでしまうまで、放してもらえなかった。
欲しがるままに、あげちゃったけど。
美味しいでもなく、嬉しいでもなく、ずうっと顔つきも変えないで、
あの人ったら、あたしの血を吸い尽していったの。

悪いけど。ゴメンね。
チエちゃんやユリのこと、知ってるでしょ?
あの子たちも今ごろ、お友だちと逢っている頃よ。
え?田上くん?そうだったんだ。それ、きっとユリだよ。片思いだったもん。
なにほっとしたような顔してるのよ。
あなたこれから、あたしに血を吸い尽されちゃうんだよ。
怖くないの・・・?

ああ、これ?あいつったらね、ハイソックスを履いた脚を咬むのが好きだったらしくって。
しつこく咬まれちゃった。なんか、やらしい感じがしたよ。
鳥居くんも、部活帰りなんだね。
男子がハイソックス履くのって、こういうときくらいだもんね。
あたしのときみたいに、咬んじゃってもいい・・・?
えっ、あたしの脚を咬んだやつが羨ましい?
ヘンな羨ましがりかたするんだね・・・

由紀子さんは、ボクの首すじを咬み、脚を咬み、わき腹や二の腕からも血を吸い取ってゆく。
頭が、ぼうっとなってきた。ボクは家に帰れるんだろうか?

あたしのときはね・・・
あたしのときはね・・・
あいつったら、美味しいともなんとも言わないのよ・・・

ほんとうに怖かったんだろう。
震えるような声で、恨み言を連ねながら。
けれども由紀子さん自身も、ボクの血をひと言も、美味しいとは言ってくれないのだった。

和解・・・

2015年03月07日(Sat) 10:50:05

妻の憤慨のしかたは、ハンパじゃなかった。
いや、もちろん親父のやり方が、よくないのだが。
親父とは。
俺が当地に赴任してきて、真っ先に知り合いになった・・・吸血鬼だ。

女房の血を吸わせる約束をしてしまって。
なにも知らない女房を、土地の顔役の息子の結婚式に同伴して。
親父は俺たち夫婦の席のあるテーブルの下に、もぐり込んで。
女房の脚をいきなり、咬んだのだ。

「ちょっとっ!でていらっしゃいッ!」
おろしたてのパンストを破かれた女房のやつ、烈火のごとく怒りまくって。
きまり悪げにテーブルクロスの下から顔を出した親父を罵っていた。
いきなりなんてことをするの?ヘンタイ!ひきょう者!スケベ親父!
ふくらはぎから血を流しながらも、女房は相手を口汚く罵っていた。
そうしているあいだにも親父の咬み入れた牙からしみ込まされた毒液が、身体じゅうにまわっていって・・・
自分がどういうことをされたのが、無言でわかってしまったはずなのに。
それにしても。
テーブルクロスの下から顔だけ出して、自分がいま血を吸った女が毒づくのをぼう然と聞いていた親父の顔は、見ものだった。
ヘンタイでひきょう者でスケベ親父なのは、掛け値なしに正しかったので、反論のしようもない。
親父としてはただ、だまって聞いているしかなかったのだが。
やつだってなかなか、したたかなものだ。
ヘンタイでひきょう者でスケベ親父だと認めてくれたのだから、これからは時で行きゃエエんぢゃな。
翌朝いっしょに風呂を浴びながら、そんなことをのたまわったものだった。


わかった。わかった・・・
わしゃ、わびる。
あんたをここに連れて来てくれただんなのことは、かねがね尊敬している。
喉がカラカラなわしに血を恵んでくれたあんたには、感謝している。
これからもだんなを尊敬するし、あんたには感謝しつづける。
けっして、おろそかには心得ない。
ぢゃから、ぢゃからのお・・・

性懲りもなくにじり寄ってくる親父をまえに、女房は口をへの字に曲げて、悔しそうに睨みつけている。
ふたりのためにしつらえられたこの畳部屋からは、一歩も出ようがないのだ。
なにしろここに連れてこられてから、改めて首すじを咬まれてたっぷりと血を吸われ、
そのうえブラウスを破かれて、俺の前で犯されちまったのだから。

だんなのまえで、というのが、基本らしい。
そうすることで、相手の夫婦は劇的に気分を変えるのだから・・・という。
いや、ここで不覚にも、ゾクゾクと興奮を覚えてしまった俺は・・・
たしかにうちの会社の恥部と言われるこの片田舎の事務所に赴任させられる適性をもっていたのだろうけれど。

あなた、ブラウスとってきて。お願い。
命令口調の女房に、もちろんそうするさ、と答える俺。
けれども、俺がホテルの寝室からブラウスを取ってくるまでに。
お前、なん回射精されちまうんだ?

つぎの日になっても、女房の御機嫌はうるわしくなかった。
見栄っ張りなんだよ。あいつ。結婚式で恥かかされたって、気にしてやがるんだ
いきなりあんたも、ひどいな。
おおぜいの前でスーツ破かれて犯されたりしたら、そりゃあ立ち直れないだろ・・・

俺はいかにもお手上げ、というていで、親父を睨む。

すまん、すまん、以後気を付けるで・・・
親父は片手をあげて降参、といったが、なにどうして、決して参った景色はさらさらない。

しつらえられた畳部屋は、人妻と彼女を狙う吸血鬼の、お見合いの場。
仲良くなるまでここで対面しつづけることになるのだが。
仲良くなってからも密会の場として使用するカップルも、少なくないらしい。
さて、うちの女房殿の場合には、どんなことに相成るやら・・・

千鳥格子のスーツに、肌色のストッキング。
だんなの俺が見てもゾクッとするイデタチに、親父はさっきから魔羅をおっ勃たてているのがありありとわかる。

すまん、すまん。
だんなのことは、尊敬している。これからも、尊敬しつづける。
あんたに対しても、感謝している。これからも、感謝しつづける。
ご夫婦には絶対、恥などかかせない。秘密は厳守する。
ぢゃから、わしの渇きを救うてくれい。わしの恥ずかしい本能を、許してくれい。

ごま塩頭を振り振り、親父は壮絶?な謝罪をくり返す。
いっぽう、身体じゅうに毒の回った女房殿は・・・

ほんとうに、反省してる?
ほんとうに、感謝してる?
ほんとうに、だんなのこと尊敬する?
ほんとうに、秘密守れるの?

ぽつりぽつりと、妙なことを言い出して。
そのうち、おずおずと――
肌色のパンストを穿いた脚を、親父のほうへと伸べていった。

ちゃんと約束できるなら、少しなら咬んでもいい。


ふ、ふ、ふ、ふ・・・


親父がいつもこういう手で人妻を堕とすのを、赴任してからなん度見てきたことだろう?
キュッとしまった足首を抑えつけると。やつはふっくらと柔らかそうな女房のふくらはぎに、そろそろと唇を近寄せて――咬んでしまった。

ちゅうっ。

あ・・・

女房の横顔が、はっとこわばる。
けれどももう、問答無用というものだろう?

ちゅうっ、ちゅうっ、ちゅうっ、ちゅうっ・・・

吸血の音は狭い室内に蔓延して、
気丈に背すじをピンとさせていた千鳥格子のスーツ姿は、じょじょに、ゆっくりと、傾いていった・・・

畳の上に仰向けに倒れたのと。
男がのしかかって、スーツのジャケットの前を拡げるのとが、同時だった。
ぶちぶちっ。
やおらブラウスを剥ぎ取ると。
がぶり。
首すじに咬みついた。
びゅっ。
赤黒い血のりが、あたりにばらばらと散らばった。
男は顔をあげ、血のりにまみれた口許を、女に見せつけた。
それから剥き出しになった肩先に張り詰める、ブラジャーの吊り紐をつかまえて。
ぶちぶちっ。
はじけた吊り紐がムチのように、白い膚を直撃した。
にゅるん。
分厚く赤黒い唇が、妻の乳首を飲み込んでいく。
右、左、右、左、右、左・・・
交互にかわるがわる、熱っぽく吸われる乳首を振り立てながら、
女房はもう、無言になって相手を始めている。

女は発情させちまや、ただの娼婦になり下がるのさ。
なん度も親父が呟いていた呪文。
それがうちの女房の身にも、ふりかかっていった。

伝線の走ったパンストを片方だけ穿いたまま。
女房はなん度も、犯されてゆく。
千鳥格子のスカートのすそを、ぬらぬらとした半透明の粘液に浸しながら。
おなじ粘液を、きちんとセットした黒髪に、なすりつけられながら。
おなじ粘液を、口に突っ込まれた逸物から、びゅうびゅうと注がれながら。

どういうわけか。
女房の喘ぎ声も。
主人のより大きいわあとかいう、叫び声よりも。
さいしょは見ないで見ないでって言っていたのが、あなた視て視てっ!と態度を180度変更したことよりも。
突っ張ったふくらはぎに走るストッキングの伝線のほうが。
俺の記憶にはまざまざと、残っていた。

大雪で半休

2015年03月07日(Sat) 10:14:56

1.

事務所の外は、真っ白だった。
大粒のボタ雪が、ガラスにまだらになって貼りついている。
季節外れの大雪に、そのガラス窓の向こうに切れ切れに覗く街なみも、雪に埋もれたかのようだった。

これでは、仕事にならんな。
窓の向こうをいっしんに見つめていた営業所長が、分厚い眼鏡の奥から目を光らせた。
はい、一同集合。
軽くあげた両手に動きを合わせるようにして。
わたしたちは全員、所長のまえで起立した。

きょうは大雪で、仕事になりません。帰り道も危ないので、所長の判断により半日休業とします。
なるべく早く帰宅して、家の雪おろしなどに精出すように。

営業所長は簡潔にそういうと、自分も帰り支度を始めていた。
そのまえに、電話を一本、かけていたっけ。
相手はどうやら、この街の顔役の一人のところのようだった。

あ~、もしもし、〇〇物産ですが。ええ、はい。はい。きょうはこの大雪でしょう・・・それで、半日休業させてもらいますので。

どこの会社でもありがちな、ごあいさつ。
しかしそのあとのひと言だけは、よその会社とは決定的に違っていた。

はい、はい・・・人の生き血をご希望のかたは、社員の自宅にご照会ください。個別に対応いたしますので・・・


2.

人はいろいろな理由で、それまで自分が日常を過ごしてきた世界から、逃れざるを得ない立場に追い込まれる。
そうした人たちが口コミを頼りに、集まる会社。
そうはいっても、「社長がひと目で見抜く」という奇妙な適性検査の合格者でなければ、入社することはできなかった。
たしかに、適性のあるなしは、うちで勤めるにはかなり重要な要素のはずだ。
業務らしい業務は、なにひとつない。おまけに高給。
ただし、ここは吸血鬼と共存する街。
訪ねてきた吸血鬼に求められたら、血液を提供しなければならない。それも妻子もろともに――
この地に赴任してくるものはだれもが、50前後までの夫人か30前の娘か息子の嫁を、帯同してきていた。


3.

会社が半休になるという現象は、どうしてこうも勤め人という人種をウキウキとさせてしまうのだろう?
わたしはそそくさと会社を出ると、雪だまりを避けながら、足早に家路をたどる。
あたりはいちめんの、白、白、白。
路上も、屋根の上も、電信柱の半分も。
なにもかもが、白にうずもれている。
寒さに身を縮こまらせながらたどり着いた我が家の玄関先は、すでに雪かきが行き届いていた。


4.

ただいまあ。
ドアを開けると、むっとするほどの暖気にくるまれた。
寒い外から帰宅して、暖気に迎えられるというほど、安堵を誘うものはない。
はぁい・・・
妻の友里恵の声が、遠くからした。
わたしはコートを脱ぎ捨て、マフラーを取り去ると、まっすぐ茶の間に向かう。
こたつには、もうすっかりなじみになってしまった初老のごま塩頭。
よお、お帰りんさい。
顔をもたげてこちらを振り向いたのは。
農作業で夏場にたっぷりと陽灼けした赤ら顔――
わたしも妻も、彼のことを名前では呼ばず、「おっさん」とか「おじ様」とか呼んでいた。

ちょうどお茶が入ったとこだよ。
どてらを羽織ったおっさんは準備が良くて、
急須を取り上げると、わたしの分まで用意していた湯呑みになみなみとお茶をそそいだ。
ほれ、干し柿喰うかい?わしんとこで取れたやつ。
ぽんとほうられた干し柿を片手で受け取ると、もう片方の手にとっていた湯呑みに口をつけ、
それから干し柿をひと口かじる。
素朴な濃い味が、口のなかに広がった。

おっさんは飾り気なしに、思い切りストレートに本題に入った。
喉渇いたで、あんたらの血を飲ませてくれんかの?


5.

えっ?わたしの血もですか?
戸惑うわたしににじり寄って、おっさんは首すじに生臭い吐息を吹きかけてくる。
あ~、わりいの。
今朝はの、朝っぱらから魔羅が勃ってしょうがないで、友里恵さんさ抱きに来たで。
んだがおなごの身体さ愉しむ前にゃ、精をつけねばの、そんで、あんたの帰りさ待ち焦がれとったで・・・
化け猫みたいな息吹きはわたしの理性を痺れさせて。
わたしはいつもの癖で、つい小首を傾げてしまっている。彼が咬みやすいようにと。


6.

ちゅー。こっくん、こっくん・・・
男同士で抱き合って、なにしてんのよ。
友里恵は苦笑いしながらも、洗濯物を畳む手を休めようとしない。
痺れた首のつけ根から、生温かい血をぞんぶんに引き抜かれるのをありありと感じながら、
わたしはどうすることもできなくなって、おっさんに身体を預け切ってしまっていた。

ふー。

お互い同時にひと息ついて。
ぷははははっ。
おっさんはあっけらかんと、笑っていた。
眩暈が、ひどい。
事務所にやって来る吸血鬼のうち、もっとも多くの量を吸われるのがわたしだと、職場ではもっぱら評判になっていた。
さして若いわけでもないというのに、時には翌日休まなければならないほどに、わたしは多くの量を吸われていた。

風見さんの血は、きっと美味いんですよ。
後輩の重瀬が、もの分かりよさそうにそういった。
まんざらでもなかったのは・・・いったいどういう心理なのだろう?

わたしがこたつに脚を突っ込んだままぶっ倒れたのと。
友里恵が洗濯物をたたみ終わったのと。
ほぼ同時だった。

風見さん、悪りぃね。奥さんいただくよ。
あんたもう、わしの相手はようし切らんじゃろ?
おっさんは行儀悪くズボンの股ぐらを抑えながら、友里恵のほうへと迫っていった。

逞しいむき出しの腕を背中に廻されながら、友里恵がいった。
あっちでしてくるからね。
両手を合わせてごめんなさいポーズを取りながら、苦笑いをしていた。
気になったら、覗いてもいいからね。
羽交い絞めされて隣の寝室に引きずり込まれながら。
友里恵はこちらを振り向き、イタズラっぽく片目をつぶってみせていた。

ああッ・・・ずたん。ばたん・・・っ。

始まった。ああ、始まった。
妻がヒロイン演じる、真っ昼間のポルノビデオが。
そう、人妻の生き血を愉しむときは、性欲処理もしてしまうのが、彼らの礼儀とされていた。
あ~、たまらんな・・・
わたしも股間の疼きをこらえきれなくなって。
さっきまで貧血を起こしていたくせに、頭にムラムラと血をのぼせてしまって。
こたつから起ちあがり、夫婦の寝室を――四つん這いになって、覗き込んでいる。

汚されて、染められる。

2015年03月03日(Tue) 08:15:15

初めて吸血鬼の棲む邸に伴った妻は、純白のスーツ姿。
結婚記念日に新調したスーツを、初めて生き血を吸われ犯されるその日の衣装に選んだ妻は。
クリーム色のタイつきブラウスを惜しげもなく真っ赤に染めながら。
生き血を吸われ、犯されていった。

それからひと月かけて。
妻の持っているよそ行きの服は、一着また一着と、真紅に染められていって。
入れ替わりに、男の選んだ服を、身にまとうようになった。

ふた月後。
傍らに寄り添う妻が身にまとうのは、きんきらきんのミニのワンピース。
そのまえは、真っ赤なミニスカートだったっけ。
汚された妻は。衣装もろとも塗り替えられて。
男の色に、染められていた・・・

おいしいほうが、まだいいよ。

2015年03月03日(Tue) 08:08:30

意識が戻ったのは、娘が血を吸われた直後だった。
娘はソファに横たわり、目を見開いて。
自分の血を吸った男が真っ赤に濡れた頬を手拭いで無造作に拭うのを、ぼんやりと眺めていた。
真っ赤に濡れた制服の白のブラウスが、痛々しい。
けれども本人はさほど苦にしていないらしく、男に促されるとソファに座り直して、足許ににじり寄ってくる男のまえに、白のハイソックスを履いた脚を、自分から差し伸べてゆく。
妻はもう、意識を取り戻していたが、身動きできないほど血を吸い取られてしまったらしく、わたしの傍らにへたり込んだままだった。
「いけない・・・」と声をあげて娘を制しようとしたけれど。
それ以上手出しすることもできないで。
真っ白なハイソックスが赤黒いシミで染まるのを、ただぼんやりと見守っているだけだった。
夫婦で。娘を守ることができないままに・・・白のハイソックスに赤黒いシミが拡がってゆくのを、ただ薄ぼんやりと眺めていた。

娘が男に訊いた。
「あたしの血、おいしいの?」
男は黙って、頷いた。
「処女の生き血だもんな」
ははは・・・娘は棒読み口調で笑うと。
「でも、おいしいほうが、まだいいよ」といった。
男は顔をあげ、娘と見つめ合って。
それから始めて、神妙なことを口にした。
「血をくれて、ありがとな」
娘はかぶりを振って、「もっと吸う?」といいながら、もう片方の脚も差し伸べていった。
妻のワンピースのすそから覗く太ももに、ストッキングの伝線がいくすじも走っている。
娘はきっと、母親の応接ぶりを見習ったのだろう。
ずり落ちかけたハイソックスをわざわざきちんと引き伸ばして、脚を差し伸べていった。

「おいしいほうが、まだいいか」
ぼう然と呟くわたし。
「それはそうかも、しれないわね」
咬まれた首すじを抑える妻とふたりで、顔を見つめ合った。
「父さんの血だけじゃ、足りなかったんだね。残念」
「あたしの血だけでも、足りなかったみたい」
「命を助けてくれるだけ、まだいいじゃん」
娘がソファから、声を投げてきた。
「あい済まんことです」
わたしたちの血で頬を染めながら、男が言った。
四人は初めて、顔を和らげて―――状況を受け容れてゆく。

娘がくたりと姿勢を崩し、へばってしまうと。
「だんなさん、済まないねえ」
男は妻の手を引っ張って、別室にいざなおうとする。
「武士の情けで、向こうの部屋で」
隣室で妻の貞操が喪われる・・・せめて潔く散らしたいな・・・
ふと口を突いて出てきたのは。
「夫として、見届けます」
「羞ずかしいわ」
「かまわないから」
「それじゃあ・・・」

わたしに背中を向ける妻。
ワンピースのジッパーを、思い切りよく下ろしたわたし。
気絶した娘と視界を隔てるため、テーブルのこちら側に、自ら身を横たえる妻。
白い膚に食い込んだ紫色のブラジャーのストラップが、ひどく目に沁みる。
華麗な第二幕が、おもむろに幕を開いていった・・・

お礼なのかな・・・?

2015年03月02日(Mon) 07:54:50

紹介されたばかりの妻を。
やつは穴のあくほど見つめていた。
妻は気づかなかったけれど。
肌色のストッキングに包まれたふくらはぎを。
じとーっとした目で、見つめていた。

きっと、あの肌色のストッキングをブチブチと破きながら。
妻の生き血を吸いたがっているのだろう。
なにしろ、サッカーストッキングを履いた、男のわたしの血さえ、愉しそうに吸ったのだから。

わたしがおずおずと、彼に訊くと。まさに図星。。。
彼は手を合わせて、わたしに懇願する。
奥さんを襲わせてくれないか。
お礼は必ずするから。 と。
断り切れるわけはなかった。
だって・・・もう彼に血を吸い取られたあとだったから。

ちゅーっ。

いきなり首すじを咬まれ、白目を剥いて、他愛なくぶっ倒れた妻。
やつは得意満面、のしかかって、肌色のストッキングを穿いた妻のふくらはぎに咬みついていく。
そればかりではなくて。
ただ、ヲロヲロとするわたしの前。
やつは妻のことを、犯していった。。。

恩に着る。お礼は必ずするから。
やつはそんなことを言いながら、きょうもわたしを拝み倒して。
妻を誘惑し、誘蛾灯に引っかかったように妻は、今夜も黒のストッキングを、びりびりと咬み破かれてゆく。
恩に着る。お礼は必ずするから。
それにしても、奥さんいい身体しているんだね。。。

わたしの身体的欠陥のせいで、授かることのなかった子宝。
妊娠したと告げた妻は、その日もやつの誘いを断らなかった。

これは、ほんとうにお礼なのかな・・・?

いつになく。やらしいね・・・

2015年03月02日(Mon) 06:59:13

小父さん、小父さん・・・
きょうの小父さんは、なんかいやらしいよ。
裸になって生き血を吸わせろ なんて。
ちょっといやらし過ぎや、しないかい?

血を吸われるのは、かまわないけど。
小父さんが美味しそうにゴクゴク飲んでくれると、ボクも嬉しかったりするからね。
でも、きょうのはいつもと、すこし違うね。
裸になれ なんて。
ハイソックスだけは、履いていていい なんて。

Tシャツや半ズボンを脱ぐときに。
ボクがちょっぴり、ドキドキしたの。
小父さん、気がついている?
きょうのボクは・・・なんだかいつもより、汗っぽいや。

あっ、ボクの首すじ咬んだね?
血が、すーっと垂れていく。
鈍い痛みが、じんわりと。
ボクの理性を痺れさせてく。

小父さん。
小父さん。
ほんとうは・・・お目当てボクじゃないんだろう?
母さんの血を吸いたいの?
婚約したばかりの姉さんを襲いたい?
妹のセーラー服のえり首から覗く首すじを見つめる目も、いまとおんなじくらい、やらしいよ。
でも、でも。
この昂ぶりも、うそじゃないんだね?
股のすき間にじんわり拡がるこの生温かさ――
いったいきょうの小父さんは、どうしちゃったの?
いつもより。
ボクを抱きすくめる腕にも、ギュッと力がこもっているよね?
あ、うん。求められてる気分って、悪くないよ。むしろ好きだよ。
だから小父さんに、生き血を吸わせろってせがまれても――ボクはつい、許しちゃうんだよね。

どうするの?どうするの?
えっ?お婿に行けなくなるかもって?
そんな心配、ないじゃない。
ボクだって、お嫁さんをもらうときには。
処女のうちに、小父さんに紹介してあげるつもりなんだから・・・


追記
このワンシーンを、イラストにしてあります。
http://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=49046772

妻を伴い、女装をして・・・妻の浮気相手に逢う。

2015年03月02日(Mon) 05:54:48

細いロープのように肩先に食い込む、スリップの吊り紐。
そのうえから、ふぁさっと覆うようにタイつきのブラウスを着込むと、妻は胸もとのリボンを器用に結んでくれた。
取り上げたフレアスカートは羽毛のように軽く、腰に巻きつけるとひざ小僧のあたりを頼りなく撫でた。
脚に通した黒のストッキングは、淡い脛毛を視界から遮って、なまめかしい翳りで足許を彩った。

上出来じゃない。

妻はわたしを頭のてっぺんから脚のつま先まで見つめると、そういった。
いままでの蔑むような感じは、どこにもなかった。
夫の女装趣味を知るや、嫌悪感もあらわに虫唾を走らせていたはずなのに。

ウィッグかぶると、けっこう女っぽくなるものね。
さあ行きましょ。いまさらあなたも、恥ずかしいことなんかないんでしょ?

妻はサバサバとそういうと、お気に入りの黒革のショルダーバッグを翻すようにして、肩に提げた。
もう三十分近く前から玄関先に到着していた迎えの車は、鈍いエンジン音を響かせている。


着いたのは、街はずれの大きな邸だった。
ここに来るのは、わたしは二度目。妻はなん度も・・・

妻が浮気をしている。
そんな匿名の告げ口をたよりに踏み込んだとき。
いつもよりずっと若やいだ雰囲気をまとった妻は、スリップ一枚でベッドにいた。
男もほとんど全裸だったが、その皮膚の色を見てわたしはぼう然とした。
死人のように蒼い、見たこともないような色だったから。
男はスッとわたしに近寄ると、いきなり首すじを咬んでいた―――


夫婦で奴隷になるわ。それしかないもの。
貴方も女になって、このひとに咬まれればいい―――

どちらに言うともなく毒づいた妻の言に、男は頷いて見せた。
男の口許には、わたしの身体から吸い取った血が、まだ濡れを帯びていて。
妻はそっと近寄ると、それをハンカチで拭って笑った。
記念に取っとけば?
謡うような口調には微かな嘲りを帯びていたが、わたしが吸い取られた血がしみ込んだハンカチをポケットにしまうと、ひと言だけ「それでいいのよ」と、真顔でいった。
最愛の妻を、吸血鬼の交際相手として受け容れる見返りに、わたしも女になることを許された。
ただし、妻の浮気相手に血を提供するためにという条件が附せられていたけれど。


死人のような顔色の吸血鬼は、物腰は柔らかで、応対も紳士的だった。

きれいな脚をしていらっしゃるね。

そんなことを言われて胸をときめかせてしまったのは・・・夫としては不覚であることに違いはなかった。

あなた、このお邸では女でいるんですものね。
この邸にいる女は、だれもがこのひとに服従しなければならないの。
血が欲しいと言われたら、生き血を吸われて。
身体が欲しいと言われたら、操なんか投げ出すの。
わたくし、このひとに抱いてもらったこと、後悔しないわ。
愛人に選ばれたことに、誇りを感じる。
あなたの奥さんが性欲のはけ口にされちゃうのも、なんだか小気味よくってよ。

妻の言い草のいちいちが棘になって、わたしの胸に突き刺さる。
棘の一本一本には毒が含まれていて、
その毒はわたしの身体をめぐる血液をも妖しく染めて、狂おしい衝動をかきたててくる。

縛らせてもらいますよ、マダム。

吸血鬼の手によって自分の身体に巻かれてゆく紅いロープが、網膜に妖しく灼きついた。
ギュッと縛られる感触に、どす黒いときめきを覚えて・・・わたしは思わず「うっ」と声をあげる。
食い込むロープに添ってしわ寄せられる純白のブラウスに。
反らせた足の甲に映える黒のストッキングに。
わたしの目線は惑いながらからみついてゆく。

吸血は、あっという間だった。
ストッキングを破りながらふくらはぎに咬みついた男は、そのあと首すじにも喰いついてきて・・・
獰猛に、わたしのことをむさぼっていった。
激しい貧血に眩暈を起こしてその場に倒れ込むと。
わたしは思わず、口走っている。
「やっぱり本当のお目当ては、家内なんですね・・・」
むらむらと湧き上がった嫉妬は、
妻を抱かれてしまうため?
それとも相手の男の寵愛が、別の女にあると知ったため・・・?

ホホホ・・・
妻は嬌声をあげながら、男に組み敷かれてゆく。
脚をじたばたさせながら、花柄のワンピースを自分からたくし上げていって。

やめろ。やめなさい。はしたないだろう・・・?
いやよ。やめないわ。あなたの奥さん、侵されちゃうの。嬉しいでしょう・・・?
いけない、いけない。そんなことは・・・
あらあ。なに仰るの?あなただって、昂奮しているくせにい。

せめぎ合う夫婦のやり取りが、いっそう昂ぶりを呼んでいた。
いつか、妻の身体に折り重なる身体は、ひとつだけではなくなっていた。
吸血鬼のつぎには、わたし自身が。
それから、どこからともなく現れた男たちが――ー

わしの気前のよいのを、恨まないで下されよ。
この連中は、あんたの同類でね。
わしに奥方を吸われたり寝取られたりした連中なのじゃ。
じゃから、多少のことは多めに見るがよい。
なに?知った顔がおるって?
安心せい。この場での出来事は、口外ご法度になっておるでの。
しかも、お互いさまじゃ。
こんどはあやつらの女房を、あんたが抱くことだってできるのじゃから。
もっともあんたの場合・・・どうやら人の女房を抱くよりは、自分の女房が抱かれるのを視ているほうが、ご満足のようじゃがの。

なにひとつ、否定できないまま。
わたしはその場に居合わせた男性全員に、妻を分かち合うことを強いられていった。
いままで経験したことのない、どす黒い歓びに身を震わせながら―――

木乃伊―ミイラ―のような人妻

2015年03月02日(Mon) 05:24:59

木乃伊(ミイラ)のように、痩せこけた女だった。
濃い茶褐色の皮膚は、常人のものではない。
そいつがゆっくりと、俺のほうへと向かって這い寄ってくる。
四つん這いのまま伝い歩きするような腕もひどく痩せこけていて、まるでコオロギの四肢のようだった。
その場を逃れようにも、ロープでぐるぐる巻きにされた身体は、身じろぎひとつできない。
むき出しの二の腕をグイッと引かれ、女は俺の首すじに唇を寄せてくる。
カサカサの掌だった。
まるで爬虫類に喰いものにされるような、かすかな恐怖がよぎる。
ぬるりと首すじに這った唇は思いのほか、柔らかかった。

女は、俺の首すじに圧しつけた唇に力を籠めた。
唇の両端から、尖った異物がにじみ出た。
そいつは強く咬みついてきて・・・鈍い痛みとともに、生温かな血潮が肩先にこぼれるのを感じた。

ずず・・・っ。じゅるう・・・っ。

女はナマナマしい音を洩らしながら、俺の血を吸い取っていった―――


ものの十分ほどの間だろうか。三十分は経っただろうか。それとも、もっと?
女は見違えるほど眩い、白い皮膚に包まれていた。
胸と二の腕は豊かな柔肌におおわれて、腰のくびれはキュッとセクシーだ。
さいしょに見た通りの女が、そこにいた。
女は裸体の男のうえにまたがり、腰と腰とを結び合わせている。

はあっ、はあっ、はあ・・・ん。

切ない上下動を、時には激しく、時にはしつように腰をくねらせながらつづけていって。
男は寝そべりながら女の身体を支配して、欲情のほとびをなん度も吐き出しているらしかった。
なんの因果で、こんなモノを見せつけられるのか。
全裸で縛られたままの俺は、強烈な貧血にあえぎながらも、ただげんなりとなって、そのいちぶしじゅうを見届ける羽目になっている。

うちの女房と寝ませんか?お代なんか要りませんよ。
私、特殊な欲求の持ち主なので・・・女房がほかの男に抱かれるのを見ないと、昂奮できないんですよ。

女房の裸です、と、男が見せてくれた写真は、いま目の当たりにする蠱惑的なプロポーションそのものだった。

うちのやつ、縛りが好きなんですよ。
しょうしょう不自由でしょうが、縛らせてもらいますよ。

男の言うなりに体を任せたのが、すべてのことの始まりだった。

こんどはあなたが、奥さんを紹介してくれる番ですね。

男はいい気なことをいいながら、俺の前でベッドをきしませ続けていて。
俺は俺で、二日酔いのようにけだるい貧血から立ち直ることができないで、ただげんなりと床に転がっていた。


ぱしぃん!
ほうほうの態で帰宅した俺を見舞ったのは、妻の平手打ちだった。

ひと晩、どこにいたって言うのよ?
親切なかたがいらしてね。
あなたが人妻と逢っていた・・・って、教えてくれたわ。
あたし今から、その人と会って来ますから!

昔から気の強い女だった。
白いスーツをきちっと着こなした妻は、頬を抑えて見送る俺に尻を向けて、
背すじをキリッとさせて、家から出ていった。


どういうわけか、追いつけなかった。
バス停では間一髪で、妻の乗り込んだバスに乗り遅れ、
やっと追いついた駅のホームでも、電車は一本あとだった。
ようやくたどり着いたのは、夕べ一夜を過ごしたあの街の駅。
白いスーツ姿はスカートのすそを邪慳にさばきながら、前へ前へと進んでいく。
いつになく大またで、シャキシャキと歩く妻。
それにしても、手の届きそうな距離まで詰めながらも追いつけないというのは、どういうことだろう?
夕べのきつい貧血が、まだたたっているのだろうか?
バタンと閉ざされたドアのまえ、俺は所在なく1時間近くも、佇んでいるよりほかなかったのだった。

ドアを開けてくれたのは、ご主人だった。

夕べは、どうも。

ぶっきら棒だったが、どこかうっそりとしたさえない様子だった。
じっさいに、この男の女房を抱いたわけではない。
木乃伊かコオロギみたいに干からびた彼の女房は、俺の生き血を吸い取って白い膚の女に蘇り、
まるでわざと見せつけるように、夫婦のセックスに耽り込んでいた。
だから、べつだん俺はこの男になんの害ももたらしてはいない。
むしろこっちのほうが、文句を言いたいくらいだった。

どうぞ。

男はなおもぶっきら棒に、俺を二階へと促した―――


ふたたび俺は、まる裸にされて―――
夕べと同じように、床に転がされていた。
部屋で出迎えたのは、男の女房だった。
夕べと同じ、きらきらと眩い白い膚をしていて、目には蒼みがかった妖しい輝きを帯びていた。
その眼を見つめた途端、俺は理性を喪っていて。
ただぼう然と立ちすくんだまま、首すじに抱きついてくる女の牙を、自分の膚で受け止めていた。
ちくん、と走る、微かな痛み―――俺は陶然となって、生き血を吸い取られていった・・・
気がついたときには、夕べの再現となっていた。
ただし夕べと違って、セックスに耽る全裸の夫婦の反対側に、意識を喪った妻が横たわっていた。
白のスーツのジャケットは、肩先にべっとりと血のりを光らせていた。

威勢のよろしい奥さんをお持ちだね。
さいしょの平手打ちは、わしもよけ切れなかったよ。
いや、いや。奥さんの非礼をわびることなんて、ないから。
その見返りに、奥さんの身体から・・・
うら若い生き血をたっぷりと、頂戴したからね。

妻のスーツ姿にのしかかっている男は、木乃伊のように痩せこけていて。
まるでツタが絡みつくみたいにして、妻の四肢に手足を絡みつかせていた。
なん度目か、圧しつけられた唇は、真紅の輝きにまみれていて。
男は賞玩するように妻の首すじを舐めながら、トクッ、トクッ・・・とかすかな音を洩らしながら、妻の生き血を吸い取っていた。

心配めさるな。
ご夫婦とも生かしたまま、家に帰してあげよう。
この女(ひと)は、わしにとってもかけがえのない女になるのだから―――

男の言い草に予感した不穏なものは、まさに予感通りの正体をあらわにしてゆく。
意識をもつれさせた妻は、ブラウスを脱がそうとする男の手を振りはらうと・・・
両手でブラウスに爪を立てて、自分で引き裂いていった・・・
ブラジャーの吊り紐がはじける音を。
唇と唇がクチュクチュとせめぎ合う音を。
吐息と吐息とが、重なり合って。
ずり降ろされた肌色のストッキングをふしだらに弛ませた脚が、床を這いずりまわるのを。
俺はただ、呆気に取られて見つめていた。

彼の奥さんは、彼ひとすじのようらしいね。
だから、あちらの奥さんとはセックスを愉しんではいないのだ。
そのかわり、しょうしょう血を吸い過ぎて、あんな身体にしてしまった。
あちらの奥さんの肉体をよみがえらせるには、男の血が必要なのだ。
いい奥さんでね。
浮気相手の奥さんを紹介してあげる・・・って、言ってくれたのさ。
それが、あんたの奥さんというわけ。
あんた・・・自分の女房がほかの男に抱かれると、昂奮する男だろう?

否定することなど、できはしない。
不覚にも昂ぶった股間を、男に抑えつけられて。
生ぬるい唇に、根元まで含み込まれていたのだから。
妻はただぼう然と、男ふたりの葛藤を見つめるばかり。
はっきり視られた―――
そんな実感がなぜか、狂おしい開放感を生み出して。
俺は男の口のなかに、激しく射精してしまっている。
唇に着いた半透明の粘液を手の甲で拭いながら、男は言った。

やっとわかったよ、こんなに仲の良いご夫婦に、子宝が授からないのが。
あんた、種なしだね?

ひたかくしにしていた診断結果を、俺は認めないわけにはいかなかった。

けれども、後継ぎはどうしても、要りようなんだろう?あんた、旧家の一人息子なんだから。

これも、頷くしかなかった・・・

安心しなさい・・・わしが孕ませてやるから・・・・・・

い、いけない!いけない!い・け・な・い・・・っ・・・

ふたたび妻にむしゃぶりついた男への呼びかけは、虚しく壁に吸い込まれてゆく。
放恣に身体を開いた妻は、ひとつ屋根の下執拗なセックスに耽る夫婦と競うように、熱っぽい抱擁を重ねてゆく。
布団のうえ、行く先を失くした俺の一物は、なおも半透明の粘液を布団に散らしつづけていった。


追記
挿絵などを、 ↓ コチラに載せてみました。
http://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=49046838
「吸い取られてゆく妻」