淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・
未亡人、堕ちる。
2015年09月11日(Fri) 05:18:43
だめ!だめ!だめ!それだけはダメ!
ほかのことは何でもいうことをききますけれど、それだけはダメ!
男に迫られた母さんは、そんなふうに頑強に、最後の一線を守り抜いたという。
そう、ほかのことは何でも、いうことをきいちゃったんだけれど。
首すじをガブリとやられるのも。
ワンピースのわき腹に、かぶりつかれるのも。
新調したばかりのよそ行きの服に、吸い取られた血潮をボトボトとしたたらされるのも。
スカートを脱がされ、戦利品としてせしめられてしまうのも。
ふくらはぎを咬まれて、穿いているストッキングをチリチリに咬み破らせてしまうのも。
ストッキングを咬み破る――という行為は、
この街に棲みつく吸血鬼たちの習性からすると、
隷属的に屈従する。
という意思表示をしたのとおなじことになるはずだったのに。
そこまでのことを許しながらも。
母さんは、セックスだけはどうしても、許さなかったのだ。
男が母さんの意思を尊重して、それ以上迫ることを思いとどまったとき。
母さんは唯一、ディープ・キッスだけは、許してしまったのだけれど。
それは男に対する信頼の証し・・・だったらしい。
下着1枚に剥かれながら、母さんは男と会話を交わし、
男は着衣を剥ぎ取られた母さんのことを侮辱することもなく遇していた。
少しずつ。
男と母さんの距離が縮まったのは。
きっとそんな、ひとすくいの配慮からだったと、いまでも思う。
だんだんと。
母さんは大胆になって、許容範囲を拡げていった。
ディープ・キッスに加えて、ブラジャーを取り去ることも。
取り去られたブラジャーから覗いた乳首を、唇に含まれることも。
スカートの奥に、濡れた精液をまき散らされて、スカートの裏地を汚してしまうことも。
そして、フェラチオまでも。
真っ昼間、ボクたちが下校してくると、母さんは男を夫婦の寝室に招き入れていて、
男の一物を根元まで口に含んだ母さんの横顔に、
ボクは思わずちく生!と呟いて若菜に笑われて、
そのくせ、貞淑な主婦が堕ちてゆくのを目の当たりに、ズキズキとした昂ぶりに目覚めていった。
そんなころだった。
若菜が父さんを家にあげて、首すじを吸わせるようになったのは。
真っ先に気づいたのは、母さんだった。
女親とは、鋭いもの。
ふたりが逢瀬を愉しんでいる真っ最中に、娘の勉強部屋に乗り込んでいって。
「まあっ!?」
娘の相手がまさかかつての夫だったとは。夢にも思わなかったみたいだった。
それきり小娘みたいにもじもじとして、きまり悪そうに引き下がって。
父さんと若菜とを二人きりにして立ち去ってしまうという不覚をおかしたのは。
きっと――父さんがいながら男との関係を深めつつあることに、強い後ろめたさを感じてしまったからに違いなかった。
ちょうどその翌日のことだった。
母さんは街なかの、ホテルに誘われていた。
家を数歩出て、母さんは真新しいストッキングを穿いた脚を、ぴたりと止めた。
そしてくるりと回れ右をすると、まっすぐ家に戻ってきた。
若菜と父さんがいる部屋のドアをほとほとと叩いて、昼間からくんずほぐれつしているのを、咎めようともしないで――
わたし、あのかたとお付き合いを始めたんです。
父さんにむかって、そう”宣言”したのだった。
そう?
父さんは相も変わらず、あっけらかんと他人事みたいだった。
あのひと、母さんを大事にしてくれている?
エエ、だいじにしてくれているわ――あなたの次くらいに。
母さんがどぎまぎしながらも、そう答えると。
そう。
父さんはこっくりと、頷いていた。
だったらよかった。気を付けて、いってらっしゃい。
友達と遊びに出かける妻をふつうに送り出す、夫の態度だった。
行っても・・・いいの・・・?
むしろ躊躇する母さんの、背中を押すようにして。
母さんだって女なんだから。たまには好きな人のために、大胆にならなきゃ。
父さんは悪戯っぽく笑って、母さんの脇腹を小突いている。
ちょうど初めて咬まれた日にかぶりつかれたあたりを突かれて、母さんはちょっとなまめかしくうめくと、
すぐにさばさばとした、いつもの母さんらしい顔つきに戻ってゆく。
じゃあ行くわ。若菜をよろしくね。
ああ、彼によろしく。
ふふふ。
ふたりは声を交えてちいさく笑い、開かれていたドアがバタンと閉ざされてゆく。
キリッとしたタイトスカートに包んだ貞操を、これから捨てにいく母さんのことを。
ボクは玄関まで、送っていった。
浮気に出かける母さんを、こんなふうにサバサバと送り出すことができるのは。
父さんと母さんのおかげなんだと思いながら。
ボクは手にしたものを、母さんに差し出している。
ボクが手にしていたのは、封の切っていないパッケージ入りのストッキング。
どうせ破かれちゃうんでしょ?穿きかえ用に。
生意気ねぇ。
母さんはそんなふうに苦笑しながら、それでもボクからの浮気成就の祝福のしるしを、ハンドバックにしまい込んでゆく。
門がガチャリと閉ざされると。
ボクの背中を小指で突くやつがいた。
イタズラっぽく笑っている、若菜だった。
若菜の後ろには、父さんが。その傍らには、カツヒロが。すこし離れて、優衣さんが。
愉し気にフフフ・・・と、笑いあっている。
あと、尾(つ)けちゃお。
そういって白い歯をみせる若菜に、みんな同意らしかった。
母さんの貞操喪失、みんなで愉しまなくちゃな。
父さんはあっけらかんとしていて、どこまでも他人事だった。
父さんのことは、忘れてほしくはないけれど・・・
2015年09月11日(Fri) 04:38:11
母さんの血を、このひとに吸わせてあげようよ。
虚ろな声で、若菜がいった。
いつものように、通学用の白ブラウスの肩先を、血のりでべっとりと濡らしながら。
血を与えるのは、ボクたち兄妹にとって、日課になりかけていた。
日課にしちゃうと、血がなくなっちゃうよ。
そうカツヒロにからかわれては、相手役を代わってもらったり。
木戸原くん、貧血だよね?
そう気遣う優衣が、男とボクの間に立って、淑やかにお辞儀をすることもあったけれど。
男にとって本命は、どうやらボクたちの血のようだった。
口に合うんだ。
男は淡々と、そういったけれど。
ボクはしらっとして、横目で男を睨んでいた。
ほんとうは、母さんが目当てだったんだろ?父さんの血を吸ってたさいしょの頃から・・・
図星。
男はニヤリと、昏(くら)く嗤った。
母さんの血を、吸わせてあげようよ。
あたしたちの血が口に合うんだもん。父さんの血だって、吸っていたんだもん。
きっと母さんの血も、気に入ると思うなあ。
若菜はうわ言のように、そんなことをいう。
自分の母親を吸血鬼に襲わせ、血を吸わせる。
そんなことをしていいのか?
そんなことにこだわるのは、ボクが息子で相手が女親のことだから?
でも、父さんが血を吸い取られちゃったのは、小気味よかったなあ。
若菜は時折、とんでもないことを口にする。
きみはどうなんだい?
カツヒロの問いかけに、ボクは本音をするりと洩らした。
父さんのことは、忘れてほしくはないけれど・・・母さんが愉しいのなら、それもアリかな・・・って。
ボクたちは知っていた。
セックス経験のある女の血を吸う場合、ほとんど例外なく犯されてしまうのだと。
かんたんなことだった。
家に上げてしまえばよかった。
もともと、ボクの部屋も若菜の部屋も、すでに男の根城と化していた。
ボクたち4人は、息を詰めて隣の部屋から、様子を窺う。
白地に黒の水玉もようのワンピースを着た母さんが、男に迫られていた。
気丈にも細腕をふるって、男を拒もうとしたけれど。
とうとう抱きすくめられちゃって、うなじを咬まれちゃって・・・
眉を顰めて、瞼をキュッと瞑って、悔しそうに歯を食いしばって・・・
生き血をチュウチュウと、吸い取られていった。
父さんのためだけの、貞淑な妻でいようとする努力を、男は完璧なまでにねじ伏せてしまっていた。
おかしいな。
そろいもそろって、あるシーンを期待していたボクたちは。
ちょっとだけ、顔を見合わせた。
母さんは男に、しきりとなにかを懇願している。
男はそんな母さんの哀願を受け流しては、
首すじをがぶりと咬んだり、
ワンピースのうえからわき腹に食いついたり(血がきれいに撥ねて綺麗だった)、
ディープ・キッスを奪ったり、
肌色のストッキングのうえから、ふくらはぎを咬んだり、
しまいにワンピースをはぎ取って戦利品にしてしまって、
母さんのことを、スリップ1枚にしてしまったり。
ありとあらゆることを、し尽くしたのに。
とうとう母さんのことを、犯そうとはしなかったのだ。
さいごには母さんの手を取って、手の甲に接吻までして、サッと身をひるがえして、立ち去ってゆく。
その場に取り残された母さんは、血の付いたスリップを屑籠に放り込んだり、
あたりに飛び散った血のりを丹念にぬぐい取ったり、
レイプされたあとみたいにほつれた髪の毛を、しきりに気にかけたりしていたり、
長いこと、身づくろいに余念がなかった。
どうやら男は柄にもなく、父さんを忘れたくないという母さんの気持ちを尊重して、犯すのはあきらめたらしかった。
つぎの日曜日。
母さんがウキウキとよそ行きのスーツに装って、出かけてゆくのを、
ボクたち兄妹は、素知らぬ顔をして見送った。
母さんのいなくなった部屋の中。
若菜は屑籠から、風の着られたストッキングのパッケージを取り出して、
新しいストッキングおろしたのね?って、白い歯をみせていた。
初めて襲われたあの日には、母さんがシャワーを浴びているすきに、やはり屑籠をあさって、
あのひとにプレゼントしようよ♪って、血の付いたスリップをねこばばしていたっけ。
あの晩母さんを犯さなかったことで、男は母さんから一定の信頼を勝ち得たらしい。
それからも、ふたりの清い?交際がつづいた。
もちろん、彼のために装った衣装は、いつも見る影もなくはぎ取られ、紅いまだらもように染められてしまっていたけれど。
母さんは惜しげもなく、父さんから買ってもらった洋服を、男の慰み物に供していった。
えっ???
息が止まるかと思うくらい、びっくりしたのは。
そこに立っていたのが、父さんだったから。
生き返ったの?
ああ、そういうことみたいだな。
父さんは以前と同じ、すっとぼけた口調で、ひとごとみたいにのんきな感じでそう言った。
へえー、父さん血を吸えるの?
若菜までもが興味津々に、父親にすり寄った。
もともとお父さん子だった若菜は、父さんが蘇生したのは大歓迎だったらしい。
自分たちが母さんを吸血鬼に襲わせたことなんか、おくびにも出さずに、お帰りなさい♪なんて、嬉しがっちゃっている。
うーん、血は吸えるみたいだけど、まだ吸ったことがないや。
父さんは、うら若い匂いをぷんぷんさせて迫ってくる娘に、辟易しちゃっていたけれど。
若菜はいっこうに、かまわないらしかった。
処女の生き血だよ?父さんにも吸わせてあげようか?なんて。
カツヒロが聞いたら卒倒しそうなことまで、こともなげに言いだしている。
父さん、あの、ボク・・・
やっぱり親の前では、つい正直になってしまう。
バカねえ・・・と顔をしかめる若菜のことは、横っ面で受け流して。
ボクはくちごもりながら、母さんと、あいつとが・・・って、言いかけていた。
父さんの反応は、意外なくらいさばさばしていた。
ああ、わかってるわかってる。
母さんの血をあいつに吸わせるために、キューピッド役を買って出たっていうんだろう?やるじゃないか。
ボクも若菜も、目を丸くして父さんを見た。
たぶんね、私が復活したのは、そのせいなんだよ。
あのままこちらに戻ってくることはできないはずが、
自分の女房が貞操の危機を迎えたってんで、舞い上がっちゃったんだろうな。
でも私は、もう少しおとなしくしていることにするよ。
母さん、あいつにどこまで本気になるかな?
さいごのひと言の呟きは、イタズラっぽく声を弾ませていた。
折々出没する父さんの影にも気づかずに。
母さんは男と、みるみる距離を縮めていった。
映画に行き、ドライブに誘われ、夕食もいっしょに出かけて行った。
そう、男はふつうの人間のように飲み食いも、するのだった。
父さんは、そんな母さんの変化を、賞賛すべき忍耐力で見守っていた。
むしろ、二人の交際が深まっていくのを、悦んでいるふしさえ感じた。
そんなことで、いいのかな・・・息子のボクのほうが、ちょっと焦っていた。
母さんを襲わせて、男に血を吸わせてしまった張本人のくせに。
ねえ、母さん、あのひととお付き合いをしてもいいかしら?
母さんがウキウキと、ボクにそんなことを口走ったのは、それから半月と経たないころだった。
再婚・・・するの?
おそるおそる訊くボクに、母さんは「まさか」と笑い、お付き合いをするだけよ、とこたえた。
わたしの夫は、父さんだけよ。父さんだけは別格なのよ。
ああ・・・そのひと言があるから。その気持ちがあるから。父さんは母さんのことを、許せるんだ。
初めて納得のいったボクは、母さんの好きにしていいよ、とこたえ、それから心を込めてつけ加えた。
「おめでとう」。
妹の彼氏。
2015年09月11日(Fri) 03:59:20
親友のカツヒロは、妹の彼氏。
妹の彼氏という存在は、どこかまぶしくて、目を背けたい気持ちにかられるもの。
だって、妹と親友を結びつけた・・・ということは。
そのまま、妹を犯す権利を与えた・・・という意味でもあるのだから。
けれども、あいつなら許せるな。だからこそ、妹の彼氏に、なってもらった。
同じクラブに属するカツヒロとは、帰りがいっしょになることが多い。
そのカツヒロのまえ、思わず口を、すべらせてしまった。
――若菜の彼氏になってもらったってことは、若菜を犯してもいいっていうのと同じことだよな?
しまった・・・と焦る俺に、カツヒロはちょっと目を細めただけだった。
わかるよ、その気持ち。
俺も自分の妹を、吸血鬼の小父さんに紹介するときには、そんな気がしたもんな。
この街の住民は、吸血鬼と共存している。
そんなうわさは、聞いていたけれど。
親友の口からそれが漏れると、どこか生々しい気分になる。
それ・・・うわさだけのことじゃあ、なかったの?
ああもちろんさ――カツヒロはこともなげに、そういった。
きみもそのうち、だれかに血を吸われるんだ。
俺はもう、吸われちゃったけど。まだ特別の相手はいないんだ。
妹も、お袋もそう。うちはそういう家みたいなんだ。
でも、俺はきみの血を吸うのとおなじやつに、咬まれたいな。
だって、きみの血を吸うということは、若菜の血も吸うっていうことだろう?
いくら彼女だからと言って、その彼女の兄貴のまえで、”若菜”なんて呼び捨てにすることはないだろう?
カツヒロの言い草よりもまずそちらのほうに、ビクンときたのは。
ボクも若菜に、気があるのだろうか?
実の兄妹だからといって、エッチな関係になってはいけない――そんな倫理観は、この街では素通りされてしまっている、という。
ああ、ごめんごめん。
カツヒロは目を細めて謝った。すぐにこちらの胸中に、察しをつけたらしい。
きみはまだ、この街の雰囲気に慣れていないからね。
自分の彼女やお袋までも呼び捨てにされてみたら、考え変わるとおもうよ。
そんなものだろうか?でも、ボクはまだ、この街に慣れていないのだろうか?
父さんだって、この街のだれかに血を吸われて――いまはもう、この世にいない。
もっとも、父さんの相手の名誉のためにひと言いえば、父さんがいなくなったことは血を吸われたことが原因ではない。出張中の事故が原因だった。
ほんとうは・・・相手に血を吸い尽くされて吸血鬼になりたかったのだと、ボクはあとから母さんから聞いた。
念のため土に埋めた父さんは、もうなんヶ月にもなるというのに、まだボクたちの家に戻ってこない。
母さんも、とっくにあきらめちゃっているようだった。
カツヒロと別れて、夕暮れの街を歩いていると。
ふと、呼び止められたような気がした。
振り向くとそこにあるのは、街の柔らかな闇――
声は、その闇の向こうから聞こえてきた。
きみ、木戸原さんの息子さんだね・・・?
そうだけど?
訝しげに応えたボクのまえ、影は意外にいさぎよく、その身をさらした。
気の抜けたような顔つきの、初老の男。
まとっている黒いマントが、彼の正体を告げていた。
わしは、きみの父さんの血を吸っていた者。あれからもう、100日近くになるね。
なにをしに来たの?
男に相槌さえ打たないで、ボクは訊いた。
きみの血を、吸いに来たんだ――
父親が吸われたら、息子があとを引き継ぐのが役目なのか・・・
ボクは無表情のまま、男が近寄ってくるのを迎え入れて、首のつけ根に鈍い痛みを感じていた。
咬み入れられた牙は、皮膚の裏側で重く疼いて――気が付いたときにはもう、夢中になっていた・・・
その次の日から、ボクは部活のあとの帰りを独りでたどるようになった。
独りで帰る・・・というボクに、カツヒロはちょっとだけ目を細めたけれど。
それ以上なにも訊こうとはせずに、にこりと微笑んだ。
じゃあ俺は、若菜といっしょに帰るから。
帰り道には、自宅近くの公園に、必ず寄り道をした。
黒マントの男はそこでボクを待ち受けていて、
ボクは部活のユニフォームのまま、短パンの下から太ももをさらして、男の牙を埋め込まれていった。
帰り道を制服に着替えなかったのは。
ひざ下までぴっちりと引き延ばしたユニフォームのストッキングが、男のお気に入りだったから。
ボクは練習のあとは必ずシャワーを浴びて、ストッキングを穿き替えて、家路についた。
あああ。やっぱりね。
聞きなれた淡々とした声色が、ストッキングの足許を男に愉しまれながらうつむいていたボクの頭上に、降ってきた。
だいぶ顔色よくないぜ?三日も連チャンだもんな。
カツヒロは柔らかく微笑むと、言った。
選手交代だ。きょうは俺が相手するよ。
カツヒロもまたユニフォーム姿で、短パンの下から逞しい筋肉によろわれたふくらはぎをさらしている。
おそろいのストッキングに縦に流れる太めのリブが、鮮やかなカーブを描いていた。
俺、木戸原とちがって脚太いからな。おっさん、こんなみっともない脚でも、咬んでくれるかな?
男はもちろんだ、ありがたくいただく・・・といって、カツヒロの足許に唇を吸いつけてゆく。
恋人がべつの男とキスをかわそうとするときのような嫉妬・・・を感じたのは、なぜだろう?
ちゅーっ・・・
ボクのときとおなじ、妖しく微かな音を洩らしながら、男はカツヒロの血を喫った。
そうして、若者二人の身体から吸い取った血を口許に光らせたまま、こういった。
どっちが若菜さんを、紹介してくれるんだい?
兄と恋人に紹介された吸血鬼に、若菜はさすがに目を丸くしながらも、意外なくらい従順に応じていった。
自分の部屋に、男3人を引き入れて。
こげ茶色の胸リボンに赤のチェック柄のプリーツスカートの制服を着たまま、
若菜は羞じらいながら、じゅうたんの上に組み敷かれていった。
初々しい、若々しい、柔らかな身体のうえに、ツタのように絡みついた男が。
若菜の健康な素肌に唇を這わせ、うら若い血潮を吸い取ってゆく――
貧血に顔を蒼ざめさせた男ふたりは、ウットリとなって血を吸い取られてゆく妹を、恋人を見守りながら。
説明のしようのない、羞ずかしい昂ぶりに、気分を妖しく惑わせていた。
つぎは、あんたの彼女の番だな。
男は淡々と、ボクにそういう宣告をする。
ちょうど同じころこの街に越してきた、父さんの同僚の人の娘――優衣もこの男に、喰われてしまうのか。
あの男、きみのことを本当に、好きなんだな。
カツヒロはいつもの淡々とした口調で、ボクに言った。
俺もきみが好きだから、きみの妹を欲しくなった。
きみ、俺に”若菜”って呼び捨てにされて怒っていたけど、内心ちょっと、ズキズキしてただろ?
同じことを、優衣さんのときにも感じるんじゃないかな。
彼女があいつに、髪の毛をつかまれてねじ伏せられて、首すじをガブリとやられちゃったときとかに・・・
いまでも、トラウマになっている。
そう。ボクはそのつぎの日には、男に優衣を紹介していて。
なにも知らずに訪れたボクの部屋。
髪の毛をつかまれてねじ伏せられて、首すじをガブリ!とやられちゃって。
ブラウスに撥ね飛ぶ血潮。
アーッ!という、たまぎる悲鳴。
濃紺のハイソックスのふくらはぎに吸いつけられた、赤黒く膨れあがった唇。
そんなもののすべてに、ボクは嫉妬し、昂っていた。
処女の生き血が好物だから、優衣はまだ犯されてはいないけれど。
彼女の純潔を喰われてしまう・・・という妄想が。
ボクの理性を崩れさせ、いびつに歪めてしまっている。
お袋も妹も、吸血鬼の小父さんに犯してもらったんだ。
若菜のことも、あのひとに先にヤッてもらっちゃうつもりだけどね。
目を細めて淡々と呟くカツヒロに。
知らず知らず、頷き返してしまっていた。
老婆のひとりごと。
2015年09月11日(Fri) 03:17:52
昨夜はひさびさに、エエ獲物にありついた。^^
脂ののり切った人妻の熟れた生き血に、娘のほうは生娘ぢゃった。
奥方は、気丈なお方。
わしが娘に手を伸ばしたら、必死に庇いおった。
そのうえで、おびえた娘ごに手本を見せようとして、
すすんでわらわのまえに、肌身をさらされた。
そこまで誘われて、わらわが黙っていられようか?
首っ玉にかじりついて、うなじをガブリと喰ろうてやった。
随喜の悲鳴が、なんともくすぐっとうてのお。
娘ごは、親孝行なお子ぢゃった。
母親が、自分ひとりだけいい思いをしとうて、娘ごを逃がそうとしおったに、
そんな人の気も知らんで、母を見捨てて逃げられないと訴えおった。
ぢゃによって、望みどおりにしてやった。
あの真っ白なハイソックスも、わらわに咬み破らせとうて、わざわざおニューを履いてきたのぢゃろうて。
そうそう。奥方のストッキングも愉しかった。蜘蛛の巣みたいに、チリチリにしてしもうたぞえ。
奥方は、礼儀正しいお方。
あれほどの目に遭(お)うてもなお、こぎれいなお召し物で夜道を出歩いて見えられる。
よそ行きのスーツやワンピース姿をわらわの悪戯にさらして、血のりに濡らしてもらいとうて、ウズウズしておるのぢゃ。
娘ごは、素直なお子ぢゃ。
母ごにせがんで、制服をなん着も買うてもろうて、
白のブラウスも、ハイソックスも、わらわの慰み物にさせてくださる。
そのうえチェック柄のきりっとしたプリーツスカートまで、行きずりの男どもの精液で裏地をべとべとにしたがっていらっしゃる。
人の生き血を吸う老婆
2015年09月11日(Fri) 02:50:46
夜道の街なかは、街灯が明るくても危ない。
街のように、人の生き血を吸う老婆が出没するようなところでは。
その晩餌食になったのは、40代の母親と、10代の娘。
宝井喜和子は、帰り道を急いでいた。
娘の彩菜の通っている学校で親子面談があり、それが意外なくらいに長引いたのだ。
まさか教師たちまでがぐるになって、母子の帰り道を昏(くら)くしたなどとは、その時点での彼女は気づいていない。
なにしろ宝田家は、つい先日夫の仕事の都合で都会から引っ越してきたばかりだったのだから。
夜道に吸血鬼が出没する・・・そんなうわさだけが、喜和子の耳に届けられていた。
ハッとして顔をあげると、痩せこけた着物姿の女が、ひっそりと佇んでいた。
彩菜をかばうように、胡散臭げに通り過ぎようとしたら、呼び止められた。
ククククク・・・ッ。そもじ、だまって素通りするつもりかえ?
よく見ると、ほつれた白髪に、ところどころシミの浮いた、みすぼらしい着物姿。
顔色は悪く、眼窩は落ちくぼんでいて、色あせた薄い唇はしまりなく弛み、ケタケタと人のわるい薄哂いを漏らしている。
どっ・・・どちら様でしょうかッ!?
喜和子はおびえる娘をとっさに身で庇いながら、声だけは気丈に尖らせていた。
どちら様もこちら様も、ねぇもんだ・・・
歯のほとんど抜けているらしい口許は、ひどくだらしなく、呟くようなだみ声は、ひどく聞き取りにくかった。
え・・・?
喜和子が目を細めて老婆の声に耳を傾けようとしたとき――その一瞬だけみせたスキが、命とりだった。
がばっ。
着物の裾を広げて、老婆が襲いかかってきた。吸血蝙蝠が、羽を拡げるようにして。
ああっ、なにをなさいますッ!
喜和子がとがめだてするのも聞かずに、老婆は痩せこけて色あせた唇を、喜和子の首すじに素早くあてがった。
ほとんど抜け落ちているかとみえた歯だったが、犬歯だけは健在だった。
不潔に黄ばんだ歯が、喜和子の白い首すじに突き立った
がぶり!
白のブラウスに赤黒い血がほとび散り、キャアッ!という悲鳴が、喜和子の唇からほとばしった。
老婆は喜和子を羽交い絞めにすると、うなじにかぶりついて、生々しい音をたてながら生き血を啜り取った。
じゅるっ・・・じゅるっ・・・じゅるっ・・・じゅるうっ。
汚らしい音が、きちんと装われたスーツ姿におおいかぶさってゆく。
気位も高そうな都会妻にのしかかり、むぞうさに啜り取ることで、喜和子の血を辱めてゆく。
あ・・・あ。。。ァ・・・っ。
喜和子はクタクタと姿勢を崩し、その場に尻もちをついて板塀でかろうじて背中を支えた。
傍らに立ちすくむ彩菜が、両手で口元を覆っているのを、老婆は見返った。
不吉な予感におびえた声が、老婆を娘からさえぎろうとした。
娘は・・・娘だけは見逃してください・・・
老婆はふたたび喜和子を見返り、ニタニタ哂いながらゆっくりとかぶりを振った。
なんねぇな。
老婆は母親から吸い取った血のりで頬をべっとり濡らしながら、少女のか細い影に迫っていった。
彩菜は中学の制服姿をひるがえそうとしたが、白のハイソックスを履いた両脚は、地面に根づいたように動かなかった。
恐怖と、母親を見捨てて逃げることへの懸念と後ろめたさが、彼女を棒立ちにさせたのだ。
ほほお、逃げんのか?
からかうような口調の老婆に、少女はおずおずと口を開く。
母を見捨てて・・・逃げられないです・・・
ククク。親孝行な娘ごよのぅ。褒めてやるわい。
老婆はニタニタとした哂いを消さずに、少女との距離を詰めてゆく。
親孝行だろうが親不孝だろうが、どうでも良い。
ただ、彩菜がこの場から逃げようとしないという、求める生き血を獲るのに都合のよい態度をとったことが、
老婆をご機嫌にさせた過ぎなかった。
クヒヒヒ。母ごに負けぬよう、たっぷりとめぐんでくだされや。
娘を咬ませまいと焦る母親が、失血のあまり起ちあがることもできずに地団駄踏むのをしり目に、
老婆は娘のおとがいを仰のけた。
白くて細い首すじが、頼りなげに闇に泛ぶ。
ホホホホ・・・
老婆の哂い声が、いちだんと高くなった。
そして笑みを泛べた唇を、まっすぐに少女のうなじに向けて近寄せて、
ツヤツヤとした黒髪を手早く掻き退けると、あっという間に吸いつけていた。
キャーッ!
第二の悲鳴が細く鋭く、夜道に響いた。
くちゃ・・・くちゃ・・・くちゃ・・・っ
少女のうら若い血潮もまた、汚らしくむさぼる音に辱められた。
やめて・・・よして・・・
母親はまな娘の受難の場から目をそらしながら、うわごとのように呟きつづけ、
いやっ・・・いやっ・・・
娘もまた、目を瞑りかすかにかぶりを振りながら、震える声で訴えつづけた。
老婆は彩菜の懇願に耳を貸す気などさらさらない、と言いたげに、処女の生き血を辱める音を、重ねつづけていった。
彩菜が母親がそうしたのと同じように、喜和子とは向かい合わせになって、道の向こう側に尻もちをついた。
よいな?真っ白なお召し物には、真っ赤な血潮がよう似合うでの?
老婆は彩菜にささやきかけ、彩菜はあいまいに頷いている。
よし、よし・・・
あやすように制服姿の肩先を撫でつけると、彩菜の胸元を引き締めていた紺のひもリボンを、サッとほどいた。
少女の胸元からせしめたリボンを着物のかくしにしまい込むと、
老婆はふたたび、少女のうなじに唇を這わせてゆく。
やめて・・・やめて・・・娘を放して。。。
喜和子はまだ、うわごとを呟きつづけていた。
彩菜がガクリと頭を垂れてしまうと。
老婆は耳元に口をあてがうようにして、意識をもうろうとさせた少女に囁きかけた。
白のハイソックス。美味そうぢゃの。咬ませてたもれ。破いてみとうなった。。
彩菜が童女のような素直さで頷くのを目にして、喜和子は目をそむけた。
くひひ・・・クヒヒヒ・・・
自家薬籠中のものになった少女の姿勢をくつろげると、
老婆は化け猫のような息遣いをはずませて、彩菜の足許に唇を近寄せた。
白のハイソックスに包まれたふくらはぎは、年ごろの少女のふっくらと丸みを帯びた脚線を、まぶしくひきたてている。
どうやら、おニューのようぢゃね?
老婆はぐったりとなった少女の顔をもう一度のぞき込むと、「ハウッ!」と声を漏らして食いついた。
くちゅ・・・くちゅ・・・ぐちゅうっ。
血潮を飲まれる音を洩らしながら、白のハイソックスに赤黒いシミが拡がっていった。
眠りこけた娘のうえから顔をあげた老婆の唇に、まな娘の身体から吸い取った唇がてらてらと光るのを、
喜和子は嫌悪と屈辱のまなざしで見返した。
けれども、どうすることもできなかった。
無抵抗の気丈さは、老婆の加虐心をそそりたてただけだった。
聞いておろうの。わしはおなごの履く長靴下が好みでな。
娘ごのハイソックスも、愉しませていただいたというわけぢゃ。
そもじの穿いている肌色の薄々のストッキングも、面白かろう?
チリチリにひん剥いてくれようの。
喜和子は激しくかぶりを振り、手をあげて老婆を制しようとした。
そんな喜和子の狼狽を愉しむように、老婆はニタリニタリと薄哂いを洩らしながら、ハイヒールの脚を抑えつけた。
黒のエナメルのハイヒールの硬質な輝きに、淡い光沢を帯びた肌色のストッキングが、なよなよとたよりなげに映えている。
うひひひひひひひっ。
老婆は卑猥な哂いをこらえ切れずに喜和子の脚にむしゃぶりつくと、赤黒く爛れた唇をヒルのように這わせていった。
ああああああっ!
嫌悪にかき乱された悲鳴を、街灯が無同情に照らした。
くっくっくっ。ケッケッケッ。
老婆はニタニタ哂いを、おさめていない。
意地汚く抱きかかえているのは、少女の脚から抜き取った血のりに濡れたハイソックス。
その母親が着ていたジャケットにブラウス、それにひざ丈のスカートまで、ひん剥いていた。
あの夜道で真っ裸でいたらどうなるか。
居並ぶ家々のあるじたちは皆、きょうの母娘のように、妻や娘、それに息子までも喰われたものたちばかりだった。
彼らはその見返りに、老婆の餌食になって道に身を横たえた女たちを、見境なく犯す権利を与えられていた。
なにも知らない足音が、むこうからこちらへと歩みを進めてくる。
足音の主は、喜和子の夫、彩菜の父親。背広を着ての勤め帰りだった。
老婆は人が変わったように愛想のよい哂いを泛べて、すれ違おうとする男の足音を止めた。
おや、おや、ご主人様、遅いお帰りで・・・お仕事、ご苦労様ですねえ。
そうしてわざとのように、痩せこけた頬をべっとりと濡らしている彼の妻や娘の血を着物のたもとで拭い取り、
ついでにわざとのように、両腕に抱えた女たちの衣類を取り落とした。
おや、おや、いかんの、せっかくの手土産。
持ち主の血に染まった白のボウタイブラウスが、くしゃくしゃにまくられた海老茶のスカートが。
学校の制服の一部だったひもネクタイが、しつような咬み痕をいくつもつけられた白のハイソックスが。
いぶかし気に地面に視線を落とした男は、せわしなく拾われてゆく衣類に見覚えがあるのに気がつくと、
顔色をかえてまっしぐらに、老婆がたどってきた道を駆け出して行った。
ホッホッホ。遅い遅い。遅すぎるでのお。でもだんな様も、たんまりお愉しみなされや。
女房や娘が喰われるところなぞ、そうそう目にすることはできぬでのお。
息せき切って走り抜けた終着点。
街灯の下、仰向けに転がされたふたりの女のうえに、いくつもの人影がのしかかり、息を弾ませていた。
妻はすっかり娼婦になり果てて、夫以外の男と悦楽の吐息を洩らしつづけていたし。
娘はさっき流したのとは別の意味の血潮を太ももにあやしながら、初体験の昂ぶりにわれを忘れかけている。
夫は立ちすくみ、茫然とし、初めて自覚する妖しい歓びに胸を染めてゆく――
そして、妻と娘とがヒロインを演ずるレイプシーンを、その場で尻もちをついたまま愉しみ始めていった。
あとがき
うーん。。。
老婆は、いつも唐突に現れます。^^
美味しいようなら、それがなにより。
2015年09月09日(Wed) 07:52:46
男の血に目覚めたことなんて、いままでなかったんですがね・・・
彼はそう言いながら、わたしの両肩にしがみついて。
首すじにあてた唇に力を込めて、血を飲み耽ってゆく。
いや、旨い。じつに、旨い。
そんな呟きをうわごとのようにくり返しながら、彼はわたしの肩を放そうとはしなかった。
失血に脳天を痺れさせながら、わたしもうわごとを折り返してゆく。
わたしの血、そんなに美味しいんですか。それはなによりですね・・・
他人事のようにそういってしまうと、いっそ潔い気分になれた。
ほんとうは、家内の生き血がお目当てなんでしょう・・・?
あれほど避けていた話題を、自分のほうから切り出していた。
わたしの血なんかを美味しがってくれる、あなたがいい。
家内の相手は、あなたがいい。
わたしはそういうと、傍らに落ちていた携帯を手に取って、妻のナンバーを指先ではじいていた。
――よそ行きの服に着替えて、待っていなさい。そうそう、ストッキングを穿くのを忘れないように・・・
彼の趣味に合わせて脚に通していた薄々の長靴下は、しゃぶるようにいたぶられてチリチリに咬み破かれていた。
痛ーッ!
首すじに牙を埋め込まれた妻は、
半袖のワンピースの両肩をつかまれたまま、うめき声をあげた。
ワンピースの半袖は、彼の掌の下でくしゃくしゃになっていた。
傾きかけた身を支えようと突っ張っていた、むき出しの二の腕が力を喪って、くたりと折れた。
彼はしんそこ嬉しそうににんまりと笑って、肌色のストッキングを穿いた妻の足許ににじり寄った。
わたしのときよりも、しつように。
妻の穿いている肌色のストッキングはしゃぶるようにいたぶられ、よだれに濡れて、引きずりおろされてゆく。
吸血劇の第二幕は、凌辱――
お手本を見せるために生き血を抜かれた身体は重く、身じろぎひとつできないでいる。
妻を魔手から救い出すどころか、わたしの下半身は、恥ずかしい昂ぶりに染まっていた。
謝罪の一瞥をくれた妻は、わたしのほうから視線をそらし、敗れ堕ちたストッキングを穿いたままの足を、ゆっくりと開いていった・・・
妻の身体、そんなに気に入っていただけましたか。
美味しいようなら、それがなによりですね・・・
巨大蛾
2015年09月09日(Wed) 07:37:57
クヒヒヒヒヒヒヒ・・・
奇怪な唸り声を嬉し気に響かせて、わたしの上にのしかかっているのは、巨大な蛾。
真っ白な重たい翅(はね)に、背広を着たまま捕らえられて、
首のつけ根には太い管をぐさりと挿し込まれ、生き血を吸い上げられてゆく。
めまいが・・・ひどいめまいがしてきた。
巨大蛾は、人語を囁いてくる。
お前の血は、旨い。お前の血は、旨い・・・
クヒヒヒヒヒヒヒ・・・
膨れあがった下半身をなすりつけるように摺り寄せながら、やつはわたしの血を吸い取ってゆく。
たしかに自分で言っている通り、それはそれは旨そうに。
この街に転入してきたら、吸血鬼に襲われるのが通過儀礼・・・とは教わってきた。
それでも夫婦ともども都会を逃れてこなければならない事情というのを抱えたわたしに、それ以外の選択肢は残されていなかった。
しかし・・・
よりにもよって、こんな怪物に襲われるとは!
いいかな?あんただけじゃない。奥さんも血を吸われるんだぞ。それでも赴任に同意するのかね?
まえの上長はたしかに、そう念を押してきた。
まあ・・・私もあそこには赴任した経験があるのだがね・・・
と、つけ加えることも忘れずに。
わたしは意思を喪った人形のように、こっくりと頷いていた。
たしかに、生身の男に妻まで襲われるということには、正直かなりの抵抗を感じていたし、
赴任後の上司との妻を交えた面談でも、そんな話をした覚えがある。
そうだな、蛾の怪物に襲われたのだというのなら、まだしもあきらめがつくのかな・・・
薄れゆく意識の下、わたしはうすぼんやりとそんなことを考えていた。
ヒイイイッ!
妻は喉の奥から悲鳴を漏らし、壁を背にして逃げ惑う。
なんとか逃れようとするのだが、巨大蛾は長い触手を伸ばして、妻の行く手を遮りつづける。
妻にしても、血を吸い取られた夫が足許にぶっ倒れている状況のなかで、いつまでも逃げ回ることができるとは、思っていないらしい。
そうはいっても、真っ白な巨大蛾が自分の血を求めて触手を伸ばしてくる光景には、本能的に恐怖を感じ、あらがってしまうのだろう。
脳天を薄ぼんやりとさせてしまっているわたしは、不思議な昂ぶりを覚えていた。
子供のころに観ていた特撮もののドラマに、そういえばこんな感じの怪人が登場していたっけ。
あのとき、ふつうの人間が襲われて餌食にされてゆくのを、たしかドキドキしながら見守っていたっけ。
それがいま、現実のものとなって目の前にあった。
ワンピース姿を触手にからめとられた妻は、わたしのときと同じように、首すじに吸血管を埋め込まれていった。
生身の男に妻が抱きすくめられて生き血を吸い取られるというのには、抵抗がある。
たしかにそう思っていた。
この街の吸血鬼は、そんなわたしの心境をくんで、こんな化け物を吸血相手に選んだのだろう。
血を吸われて昏倒した妻は、やはり血を抜かれて意識をさ迷わせている夫の傍らで、ずっと抱きすくめられていた。
ただし巨大蛾は、いまは人間の男に姿を変えている。
正体はきっと、こっちなのだ・・・わたしは薄ぼんやりとそう自覚して、自覚しながらも抱きすくめられている妻の肢体から目を離すことができなくなっていた。
男は膨れあがった下半身を、妻の股ぐらに擦りつけていって・・・もうひとつのおねだりまでをも、果たそうとしていた。
巨大な怪人が妻を襲って、征服しようとしている。
化け物が人に入れ替わっても、そんな情景に昂ぶりを覚えつづけているわたしは、いったいなんなのだろう?
自分の心のなかに棲む怪人の存在に気づきながらも。
犯されてゆく妻を――歓びに目覚めてゆく妻を目の当たりにしながら、
わたしは不覚にも、射精を繰り返していた。
優等生の呟き。
2015年09月08日(Tue) 07:35:30
ヒルのようにじっとり濡れた唇を、素肌に這わされて。
お父様、お母様から受け継いだ血潮を、むざんに吸い取られてゆく。
小父さまといっしょにのしかかってくる、忌むべき欲望に屈してわが身を捧げるひと刻――
でもいちばん悔しいのは、大人びた装いのはずの黒のストッキングを履いた脚を辱められること。
ご自身は・・・よく我慢したご褒美だというけれど。
素肌に浸み込まされた邪悪な毒液に、皮膚の奥がジンジン疼く。
でもわたくしは――割り切っている。これは慈善行為なのだと。
だから今夜も、時間通りに伺って。
身に迫る屈辱と妖しい疼きとに、耐え抜いてゆく・・・
吸血鬼のいけない呟き。
2015年09月07日(Mon) 08:08:54
優等生の娘(こ)の生き血を啜るのは、とても愉しい。
その子の履いている黒のストッキングをぱりぱりと咬み破るのは、さらに愉しい。
几帳面な彼女は、いつもおなじ刻限に、おなじ曲がり角に現れる。
礼儀正しい彼女は、いつも真新しいストッキングを、脚に通してくる。
街の婚礼
2015年09月07日(Mon) 06:52:23
この街の婚礼は、いっぷう変わった風習を持っている。
宴たけなわになると、招待客のうち男性だけが、帰ってゆくのだ。
それと入れ替わりに、どこからともなく、蒼白い顔つきの男たちがふら~っと現れ、宴席にさ迷い込んでゆく。
閉ざされたドアの向こうには、黄色い悲鳴が華やかに満ち溢れる。
薄いピンクに、濃い紫。淡い茶色に、深い濃紺。
色とりどりの光り物のスカートの下。
追い詰められた女たちは、新婦の友人、新郎の妹。それに新婦の兄嫁。
だれもがスカートの裾からにょっきり覗くふくらはぎを、真珠色に輝くストッキングに彩っていて。
それを目当てに、飢えた男の指が、唇が、迫ってゆく。
立ちすくんでいるのは、拒んでいない証拠。
はち切れんばかりのおっぱいの隆起は、揉んでほしい証拠。
拒絶の哀願は、姦ってほしいという意思表示。
なにもかもを、おのれの都合よいように受け取って。
顔の蒼い男たちは、うら若い女たちへと迫ってゆく。
衣装の下に隠された、うら若い柔肌を求めて。
ねじ伏せられた赤いじゅうたんの上。
女たちは競うように、肌色のストッキングに包まれたふくらはぎをさらして、
薄いナイロンの舌触りを愉しまれ、辱められながら咬み破かれてゆく――
引き裂かれたパンストをまだ脚に通したまま、その両脚をゆっくりと開いていって、
堕ちる瞬間の昂ぶりを、諦めのため息に織り交ぜてゆく。
主賓席では、新郎新婦の母親たちが。
黒留袖の帯をほどかれていって。
いずれ劣らぬ珠の肌をさらけ出しあって、
肩を並べて淑徳を散らしていって。
永年連れ添った夫たちを、その目の前で裏切ってゆく。
純白のウェディングドレスをまくり上げられた新婦は、
ツヤツヤとした光沢に包まれた城のストッキングの脚をばたつかせながら、
抑えつけられた円卓のうえ、テーブルクロスをくしゃくしゃにしながら、はやくもなん人めかの男を迎え入れて、
うろたえる新郎のまえ、花嫁修業に耽ってゆく。
そう。一部の男性は、退席を許されない。
この佳き日の主役を勤める男性と。
その種の歓びを自覚できるものたちは。
招待客の男性の多くが席を立ったあとも、宴席にとどまるという忌まわしい特権を与えられる。
妻が、娘が、妹が組み敷かれ、
よそ行きのスーツのすそを乱し、
ブラウスをはだけられ、
ブラジャーの吊り紐を切られながら、
家族の前であることも忘れて、吸血鬼どもの支配を受け容れよがり狂ってしまうまで、
しっかりと見届けさせられ、たんのうさせられる。
宴は、真夜中まで尽きることがない。
この式場では、披露宴の部屋の借り切りは、真夜中までとなっているから。
昂ぶり切った夫たちは、さいごには相手を取り換えあって、交わってゆく。
新郎は、新婦の友人代表と。
新婦の父は、新郎の母と。
新郎の父は、自分のまな娘と。
見境なく襲いかかって、身体を交え息を弾ませあってゆく。
それが、夫たちの払った代償に対する対価――
吸い取った血潮を口許に光らせたまま。
”彼ら”は、吸い取った血潮の持ち主である親族たちが、淫らに堕ちてゆくのを、愉しげに見届ける・・・
仲良し家族?
2015年09月03日(Thu) 07:33:43
父さんは、吸血鬼の小父さんと仲良くなって、
自分の血をぜんぶ、あげちゃっていた。
そして吸血鬼になって、いまでは母さんの生き血を、小父さんと分け取りにして、毎晩愉しんじゃっている。
兄さんは、婚約者の華絵さんを小父さんに紹介して。
まだ処女のうちに・・・って、襲わせちゃっていた。
夜中に呼び出されて、ウットリしながら血を吸われる華絵さんのことを、毎晩覗き見して愉しんじゃっている。
ボクは、華絵さんからもらったセーラー服で女装をして。
毎晩下校する女子生徒を装って、夜道をたどる。
小父さんはボクのことをあくまで女学生として扱ってくれて、毎晩女生徒レイプごっこを愉しんじゃっている。
あとがき
いちばんヘンタイさんなのは、だれでしょう? 笑