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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

早くも年の瀬

2015年12月30日(Wed) 07:31:24

まだ続くかな?もうここまでかな?
毎年そんなことを考えながら、年の瀬を迎えています。
新年のごあいさつは年の初めに描けば描けなくはないのですが、
年末のそれは、なかなか踏ん切りがつかないものですね・・・

よく話題にするのですが、すとれすが大きいほど、お話の数は増える傾向があるみたいです。
ココ以外のところでもひっそりとあっぷをしているのですが、
今月は例月になく多い感じがしています。 苦笑

ちょっと見てみると、月に30以上(つまり平均して毎日)あっぷしているのは、2012年の9月以来ですね。
あのときはたしかに、しんどかった・・・ (遠い目)

今月は、いっそう歪んだお話が多かったような気がします。
特に最後のは、「なんですかねえ・・・ (--;)」と言いたくなるような乱倫ぶり。
というか、どのお話も「なんですかねえ・・・(--;)」なんですけどね。
(^^ゞ

まだ気が変わってお話をあっぷするかもしれませんが、いちおうここで年末のご挨拶をしておきます。
今年一年、お世話になりました。
来年も、どうぞよろしく。。。

嫁の身代わりに姑が・・・

2015年12月30日(Wed) 07:23:27

(姑の告白)
吸血鬼に囚われた息子の嫁を救い出すために、身代わりになる――
そんなただならぬ気持ちを抱いて訪れた、山里の大きな屋敷は。
そんなまがまがしいことが行われているとはとても思えない、瀟洒な風情でした。
夫に送り出されて独り、訪いを入れると。
すぐに、奥へ通されました。
ええ、独りでお伺いしたんです。
夫は随(つ)いてきたいと申したのですが。
わたくしのほうから、堪忍してほしいとお願いしたんです。
だって。
この村の吸血鬼に、人妻が血を吸われるときには。
肌身も許さなければならない と伺ったので・・・
さすがに主人のいるまえで、そのようなことをお許しできるほど。
わたくし、破廉恥にはなれませんでしたから。

そのかたは、お屋敷の一番奥の広間にいらっしゃいました。
傍らには、息子の嫁が、気のせいかひどく毒々しい微笑みを泛べています。
嫁はわたくしの姿を認めると、すぐにその毒々しい笑みを消して、しおらしく謝罪するように、お辞儀をしました。
けれどもわたくしには、彼女が瞬間見せたあの笑みを、忘れることができませんでした。
むしろ、わたくしの血をご所望だという老吸血鬼のほうが、紳士に映ったくらいです。

このひとを(そう言ってあの方は、嫁のことを少しだけ、自分のほうへと引き寄せました)放す代わりに、
あんたがわしに血を下さるとお言いなのかね?
男の瞳は、むしろ悲し気に輝いていました。
わしだって、好きこのんでこのようなことをしているのではない。
そう言っているように見えたのは、わたくしの気のせいだったのでしょうか。
ハイ、そのつもりでお伺いしました。嫁をどうか、家に帰してくださいませ。
お応えの後半、気力を取り戻したわたくしの語気は、いつもの気丈さを取り戻していて、
そのことにわたくしは、寸分の安堵を感じました。

承知しました。美香さんをお返ししましょう。
男は意外なくらいにあっさりと、嫁の手を離しました。
嫁は男の傍らから、自分の足で歩いてきて、わたくしにそっと会釈をしました。
やはり謝罪するように、しおらしく。
けれども、なにかを言いたげにちょっとだけ開かれたその口許に、かすかに邪悪なものが漂うのを感じたのは。
果たして、わたくしの気のせいだったのでしょうか。
嫁は、「ごゆっくり」とだけ、わたくしに囁いて、そのまままっすぐにわたくしの傍らを通り過ぎて、広間の出口へと向かったのです。

安心されよ。嫁ごはご自分の足で、ご夫君のもとに戻られる。
老紳士の言葉は、信用して良いように直感しました。
こちらへ。
手招きに応じて一歩まえに出るのには、勇気が要りました。
立ちすくむわたくしを前に、老紳士は「ああ、そうですね」と、わたくしの気持ちを察したらしく。
ご自分から座を起って・・・気づいたらもう、間近に立ちはだかっていました。
失礼。
有無を言わせない瞬間でした。
男はわたくしの背後にまわり、わたくしの両肩を掴まえると・・・あっという間に首すじを咬んでいたのです。

あ・・・
声をあげるいとまもありませんでした。
刺し込まれた二本の牙は、皮膚の奥深く、根元までずぶりと埋め込まれて・・・
ちゅうっ。
血を吸い取る音に、わたくしは魂を消して、ただひたすらに立ちすくんでいました。


(息子の呟き)
ちゅうっ、ちゅうっ、ちゅうっ・・・
母の生き血を啜る音を隣室のドア越しに聞きながら。
ぼくはいたたまれない気分だった。
傍らには妻の美香が、毒々しい笑みを浮かべながら、ぼくの掌を握りしめている。
力づけてくれているように見えながら。
その実、血迷って室内に踏み込み、老紳士の行為を制止しようとするのを防いだのだと。
掌に置かれた妻の手の力の入れようで、それが伝わってきた。

お義母さまの血を、あのかたに吸わせてあげましょうよ。すこしでもまだ、お若いうちに。
あたしがお義父さまを、誘惑するわ。
そして、お義母さまの血を吸わせることに、ご納得いただくの。
あなたはただ、視て見ぬふりをするだけで良い。
吸血鬼さんに、少しでも多く、生き血を分けてあげたいのよ。

吸血鬼の棲むこの村に赴任して。
妻はすぐに、村の長老格でもあるその男に、目をつけられていた。
上司は彼を自宅に招待することをすすめ、
薄々相手の正体のわかっていたぼくは、それでもそのすすめを断ることはできなかった。
事情を抱えて都会を逃げ出さざるを得なくなったぼくと妻とは。
このひなびた村にとぐろを巻くそうした欲望に応じることを条件に、安住の地を得たのだから。
移り住んだ週の週末に、ぼくたちは初めて血を吸われ、
貧血で身動きできなくなったぼくの傍らで、妻は犯されていった――
理性まで奪われたぼくは。
その光景を、ただの男として、愉しんでしまっていた・・・

いま目の前で、妻をモノにした同じ男が、母さえも堕としてゆこうとしている。
ひそかにあとを尾(つ)けてきた父さえもが、なにも手出しをしようとせずに。
永年連れ添った母の受難を、つぶさに見守りつづけていた。


(舅の証言)
嫁の誘惑を拒むことはできませんでした。
お見合いの時に一目ぼれしてしまったのは、むしろわたしのほうでしたから。
だからこそ、従順だが優柔不断でもある息子の背中を押すようにして、この縁談をまとめたくらいです。
黒のスリップに黒のストッキング姿で迫ってくる嫁は、蛇のようにしなやかに身体をくねらせて、
独り寝の床に、入り込んできて。
ツタが巻きつくように、その白くて細いかいなをわたしの背中に回していったのです。
息子の目を意識しながら。
嫁の細腰を抱いて、何度も射精をくり返してしまっていました。

お義父さま。
声を落とした嫁は、おそろしいことを口にしました。
嫁の血を吸っている吸血鬼が、妻の生き血も欲しがっている。
だから私たちに協力して、呼び寄せてほしい。
そうじゃないと私、貧血になって身体を壊してしまう・・・
わかった。そうしよう。
妻には事の成り行きを半分しか告げずに、
それでも妻がすぐ行く、と応じてくれた時には、
共犯者たちと安堵と満足の笑みを交し合っていたのでした。
田舎に移り住んだ息子夫婦に、異変が起きている。
ひとり田舎に赴いた主人からの、そんな連絡。
くわしいことはお前もこちらに来てから・・・と。ただそうあるだけだった。

半開きになったドアの向こう。
妻はもう、酔い酔いにされていて。
もはや立ちすくむ余力さえなくなって、じゅうたんのうえにうつ伏していました。
男はなおも容赦なく、妻の脚に咬みついていました。
黒のストッキングをチリチリに咬み破られながら、血を吸い取られてゆく妻は、白目になってすでに気絶していました。
けれども、知らず知らずのうちに、自分の礼装を不埒な愉しみに供してゆく妻の気前のよい振る舞いに、
わたし自身がドキドキと胸を震わせていました。
息子夫婦にも悟られないようにと、無表情を装いながら。

侵されてしまったときには・・・
さすがに声がありませんでした。
嫁は残酷な微笑みを泛べて、わたしの傍らにそっと寄り添いました。
息子はただかたまって、固唾をのんで事の成り行きを見守っていました。
生みの母親の濡れ場を初めて目にすることに、異様な昂奮を覚えたのでしょう。
でも彼が性的に昂奮していることは、遠目にもそれと見て取ることができたのです。
あさましい・・・などとは、言えた義理ではありません。
わたし自身が、そういうことに歓びを自覚してしまっていたのですから・・・

嫁は、だまってわたしの手を握ると、言いました。
ふたりだけにして差し上げましょうよ。
ああ、そうするよ。
やっとの思いでわたしはそう応えると、嫁に手を引かれるまま、隣室へといざなわれてゆきました。
息子はまだ見ているつもりでしょうか。
「ごゆっくり」と、ひどく気の利いたことを言って、
早くもブラウスの胸をはだけ始めた新妻のようすを、ごくあたりまえのように見つめて、
わたしがもう自分から、嫁を密室に引き込むのを、止めようとはしませんでした。

お母様のを視て、あのひと愉しむおつもりよ。いやらしいわね。
ふたりきりになった嫁が、そういって白い歯をみせます。
わたしはその歯をふさぐようにして、力ずくの唇を重ねていったのでした・・・


(嫁の独白)
気高く厳しいお母様に、お行儀よくしつけられてきた和夫さん。
あなたの一家の誇りを汚すことが、あたしの隠れた欲望なのだと。
この村に来てつくづく、わかったわ。
あなたの目のまえで、初めてほかの男に抱かれたときの、
あなたの顔は、見ものだったわ。
ああ、とても、すっきりした。
都会でのあんなことやこんなことが、全部吹っ飛んじゃうくらいに。
あそこで出会った人たちには、もう二度と会わなくてもかまわない。
あたしはこの村で、吸血鬼の娼婦として生きていく。
その手始めに、あなたのお母様を狙ったの。
でも本当は。
おなじ女として、仰ぎ見るほどの存在であるお義母様に。
あたしのレベルまで、降りてきていただきたかった。
落差が大きすぎて、「降りる」じゃなくて「堕ちる」だったかもしれないけれど。
うふふ♪
でも、いいでしょ?
自分の母親が堕ちるところなんて、めったに見れるものじゃないわ。
あたしが犯されるときよりも、あなた昂奮していたわよね?ちょっぴり嫉妬♪
これからは。
あたし好きなように生きていく。
ええ、ずっとあなたの奥さんでいてあげるわ。
あなたの家名を汚すため。
笹部夫人のまま、あのひとたちに抱かれていくの。
どうぞ末永く、よろしくね・・・


(再び姑の告白)
それからというものは。
あのかたは毎晩のように、わたくしのところにお見えになりました。
真相を知ってしまうのに、半日とかかりませんでした。
いびつに歪んでしまったわたくしのベッドには、長年連れ添った夫はさいごまで順番を譲らされて、
ほかの男性たちの御用が済むのを、夜明けまで待っていてくれました。
ええ、村の衆の全員と契ってしまうまで。
それは続けられたのです。
わたくしは、身体の相性の良い男性を5人、選ぶことを命じられて。
その方たちと、交際することになったのです。
そのなかには、おぞましいことに、息子も含まれていたのです。
でも、理性を奪われてしまったわたくしには、むしろそんなことさえ、いまでは誇りに感じるのです。

毎日おめかしをして、きりっとした都会ふうのスーツに装って。
日ごとに入れ替わる恋人たちと交し合う、齢不相応の猥雑すぎる逢う瀬。
それは村はずれの荒れ寺や、ときには納屋で行われて、
わらや、泥や、どろどろとした精液や
吸い取られ辱められて、わざとほとび散らされたわたくし自身の血潮で、
わたくしはブラウスやスカートを、汚されていったのです。
ストッキングを一ダースほども、いたぶり抜かれ破かれたころには。
もうすっかり、娼婦になり切っていました。

息子とも、デートするんですよ。それも主人のまえで。
そういう夜は、主人は美香さんと、一夜を過ごします。
息子はわたくしを抱くときとおなじくらい、わたくしが凌辱される刻を歓びます。
ええ、息子に同伴されて、男たちと逢いにいくこともあるんです。
母を手引きしました。どうぞ気の済むまで辱めてください――
その日のわたくしのお相手にそう告げるときの息子の声は、昂ぶりに震え、上ずっていました。
居心地のよいおぞましさ。
そんな想いをかみしめながら。
わたくしは夫や、息子や、嫁のまえでさえも。
薄汚れた納屋の奥や陽射しの降りそそぐ休耕地の真ん中で、
新調したばかりのスーツを泥と男たちの精液にまみれさせながら。
見る影もなく破けてひざまでずり落ちたストッキングを、時折引き伸ばしながら。
あ、はあ~ん・・って、いやらしく下品な声をあげながら。
守り通してきた貞操を、きょうも惜しげもなく振る舞いつづけるのです。

わたくしの血は、嫁を救い出すために、費えとなることをお許ししたつもりだったのですが。
嫁を抱き、わたくしが犯されることを心の奥で希望していた主人をも、
妻と母親を吸血鬼にプレゼントしたがっていた息子をも、
我が家の家名に泥を塗り、わたくしを自分と同じ娼婦にしたがっていた嫁をも、
そして――都会の婦人の生き血や肉体を欲する村の多くの男性たちをも。
意図せざることではありましたものの、彼らすべてをわたくしの血が救ったのかと思うと、
わたくし自身も救われたような気がいたします。
きょうも辱め抜かれ、そして愛でられるために。
主人や息子が盗み見るなか、わたくしは鏡台に向かうのでした。

彼女と妹と。 (娘の身代わり・優香の彼氏目線)

2015年12月29日(Tue) 16:33:09

ぼくの血じゃ、だめなんですね・・・?
がっかりした。
いつも貧血ぎみな彼女のために・・・
彼女の血を吸っている吸血鬼を訪ねあて、
身代わりにぼくの血を吸ってもらおうと思ったけれど。
彼は、男の血は受けつけないたちだった。

処女の生き血が欲しいのだ。むろん、処女ではなくてもよいのだが・・・
たとえばきみのお母さんを連れてきたら、
お母さんはお父さんのことを、裏切るようなことをわしにさせられる。
きみも年ごろだから・・・どういう意味だか、わかるだろうな?
小父さんの言いぐさはひどくねちっこく、そのねちっこい言い方に、ぼくはなぜだか、ドキドキしていた。

家族の血を吸わせる。
途方もない裏切り行為のように思えたのに。
そんなふうにして、家族の血を共有してしまおうとする自分の姿を想像して、
ぼくは得体のしれない歓びを、識りはじめてしまっていた。
そう。
ぼくの血が口に合わなくても。
彼がぞんぶんに啜り取ってくれる情景に、淫らな想像をふくらませていた。
だって・・・
二年も付き合っていながらキスひとつ交わしていない優香が、吸血鬼に襲われているというのに。
そのようすをのぞき見することに、病みつきになってしまっているくらいだったから。
血を吸われるなんて、嫌。嫌っ! 家に帰してちょうだいっ!
わざとそんなことを口走って、自分のうえにのしかかってくる吸血鬼を興奮させて。
たちわるく意地汚く、制服姿をむさぼらせちゃっているのだ。
ユウくん、助けてっ!
なんて。
ぼくの名前を引き合いに出されてしまったときに。
思わずお漏らししてしまいそうに昂ってしまったことは。
墓場まで持っていかなきゃならない秘密なのかも。


もう。しっかりしなさいよ。
自分の彼女、吸血鬼に奪(と)られちゃうかもしれないんだよ。
優香は時折不満そうに、口を尖らせる。
ぼくが彼女の純潔の行方に、無関心だと思い込んでいるらしい。
紺のハイソックスを履いた脚で、お尻を軽く蹴っ飛ばされながら。
サッカーの才能あるんじゃない?なんて。
軽すぎる冗談を飛ばしてしまったりして。
スカートでサッカーやるわけないじゃん。
優香はまたも、口を尖らせるのだった。
ぼくに隠れて吸血鬼に逢って、
生き血をたっぷりと吸い取らせている優香。
毎回のように首すじに迫らされる淫らな口づけに、積極的に応えてしまっている優香。
ときには手足をばたばたさせながら。
真っ白なブラウスを血でびしょびしょに濡らされたり、
きりっとした感じのする紺のハイソックスを、惜しげもなく咬み破らせちゃっている優香。
そんなはた目にもエッチなことを、平気でさせちゃっているくせに。
ぼくの前では、あくまで真面目くさっている優香。
もしかすると・・・生真面目すぎるから。
自分がされているやらしいことを、やらしいことなんだって、まだ自覚していないのかも。

そんな彼女が、だしぬけにぼくの家にふらっと来た。
母さんに「優香ちゃん来たよ。約束してたの?」って言われて、玄関に出てみたら。
彼女は珍しく真っ白なハイソックスを履いていて・・・真っ白なはずのハイソックスには、
濡れた赤黒い血のりが、べっとりとしみ込んでいた。
なにもかも視てしまったはずの母さんは。
なにも気づいてない様子を、わざとらしくとりつくろって。
ぼくのことを彼女のまえに置き去りにすると、そそくさと台所にこもってしまった。

どうしたの?
なんて口火を切っていいかわからないぼくは。
そんな間抜けな問いを投げて。
またもや彼女を失望させはしないかと、はらはらしたけれど。
彼女はぼくの間抜けぶりなんか、眼中になくて。
その場でこう宣言したのだった。
あたし、吸血鬼の小父さんに犯してもらうから。

えっ。
腰を抜かしたぼくは、一方的に宣言をして後ろ姿をみせる優香をまえに、
どうすることもできないでいた。

別れたりしないからね。あのひとたちとは、結婚するわけにいかないんだから。
あなたの彼女のまま、犯されてあげる。
つぎの日の朝、登校途中に出逢った彼女は。
大きな瞳にいつにない毒々しい輝きを浮かべながら、そういった。
あなた、そういうの好きそうじゃない。
彼女の声色は、猛毒を含んでいる。
ぼくは一発で、ノックアウトされちゃっていた。

どうすればいいか、わかるでしょ。
あのひとがあたしに手を出さないのは、
あたしを犯しちゃうと処女の生き血が吸えなくなるからよ。
だから、代わりがいればいいの。
あのひと、ユウくんの妹の舞ちゃんに目をつけているわ。
彼女と妹と、両方喰われちゃうのって・・・ユウくん冥利に尽きるんじゃない?
彼女の猛毒は、致死量いっぱいに高まっていた。


妹の舞は、中学にあがったばかりだった。
まだまだ子供じゃないか・・・そう言いかけたぼくに。
それは舞ちゃんに対する侮辱だよ。
優香は冷ややかな白い目で、ぼくを見た。
そういうものなのか。
けれども一点だけ、認めないわけにいかないものがあった。
舞の学校は、ストッキングを履く学校だった。

薄黒いストッキングに脚を通して。
ばたばたと玄関から駆け出していく舞の、セーラー服の後ろ姿。
いつものろまで、遅刻ギリギリに家を飛び出していって。
大またにすたこらと走る、小回りの利いた短い脚。
けれども薄手のナイロンのオブラートにくるまれた発育のよい肉づきには、
なまめかしい陰翳が帯びられていた。
あの足許が。
優香の血を吸っているあの男の目の色を変えさせたというのか――

吸血鬼に、彼女と妹と同時に狙われていることは。
もちろん呪うべき境遇のはずなのに。
「身代わりにぼくの血を」
「気の毒だが、それはできない」
ささいな言葉を交わしたばかりに、できあがったつながり。
面と向かった彼は、どこいでもいそうなふつうの小父さんで。
血を吸うとき以外には、むしろいい人っぽいその人のことを、
なぜかあまり悪く思う気になれないでいるのは。
ぼくがおめでたいお人好しだからだろうか・・・?
そのほうがみんな、幸せなんじゃない?
彼女はむすっとした顔つきで、そんなふうに言ってくれたけど。

優香が吸血鬼とつきあって、貧血気味なんだ。
舞もそのひとに、血を分けてあげてくれないか?
ストレートに切り出した兄貴のぼくに。
舞は両手で口許を抑えて、怖がって。
ためらうセーラー服姿を、母さんの居合わせない家から、引っ張り出すようにして、手を取って。
家からすぐの小父さんの屋敷のまえに、ぼくたち兄妹は、佇んでいた。

さあ、咬ませておやり。
ぼくはちょっと意地悪な、丁寧口調になっていて。
黒のストッキングの足許に這い寄ってくる黒い影を怖がりながらも、
舞は薄黒く染まった自分の脚を、おそるおそる差し伸べていた・・・

ちゅっ。
はぜる唾液。
引きつる顔。
さらに力を込めて吸いつく唇。
ぱりぱりと裂けてゆく、黒のストッキング・・・

白三本のラインが入った襟首が、ゆっくりゆっくり、傾いてゆく。
舞はもう白目になって、ふらーっと頭を仰のけて。
その仰のけられた頭を、ぼくは支えてやりながら。
腕のなかで力を喪ってゆく小柄な身体から、
容赦なく血液が抜き取られてゆく気配を、ありありと感じてしまっている。

ちゅうちゅう・・・ちゅうちゅう・・・ちゅうちゅう・・・ちゅうちゅう・・・
安っぽい音をあげて吸い取られてゆく、舞の血潮。
小父さんのみせる旺盛な食欲を、呪っていいのか、よろこんでかまわないのか。
そんな刻一刻、舞は素直そうな頬を静かにくつろげて、眠りにつく。
貧血のもたらすその眠りをよいことに、男は舞の喉笛に食いついて、がぶりと咬みついていた。
襟首に走る三本の白のラインに、バラ色の飛沫が散った。


いい条件だよね。
優香がふて腐れたように、ぼくを睨んだ。
きみの純潔は、ぼくからプレゼントしたいんだ。
・・・いいよ。
視線をそらしながら応えてくれた優香の言葉をそのままに、
ぼくは小父さんに、アポイントを入れた。

舞の生き血がお口に合って嬉しいです。
こんどは優香を、犯してください。
ぼくの彼女ですけれど――小父さんに犯してもらいたいんです。
その代わり。
優香を犯しているところを、ぼくにも見せてください。
そうすれば。
ふたりで優香の純潔を分け合えるような気がするんです。

小父さんはくすぐったそうな顔をして、ぼくを視て、いった。
きみは良いものの考え方をするんだね・・・


半開きになったドアの向こう。
ブラウスをはだけた優香が、迫ってくる逞しい胸をへだてようと、か細い腕を突っ張って。
まだけんめいの抗いを、続けている。
ぼくのために守り抜いてきた操を、守り通すため。
そういう思惑で。
けれども彼女の抵抗はあっさりと折られ、
スカートの奥に秘めた浄い処は、辱められてしまう。
未来の花嫁の純潔がむしり取られてゆく光景を、ぼくは寸分たりとも見逃すまいと、目を凝らして見届けていた。
ユウくん、助けてっ!
そう叫んでぼくのことをそそっていた優香は。
あーっ、
あーっ、
と、股間を迫らされる恐怖におののいていって。
ユウくん、ゴメン。ゴメン。
痛い、痛い、痛っ!痛っ!痛あいっ!!
と、声をあげて自分の純潔が喪われるのを告げる。
あとは、男女の荒い息遣いの、交し合い・・・
ぼくは独り昂ぶりながら、失禁した半ズボンがぐしょ濡れになっているのも気づかずに、
ふたりの所作に見入っていた。

お世辞にもかっこよくなかった、優香の身じろぎ。
初めてというのは、そういうものなのか。
ぎこちない動きは、予期せぬ男の無遠慮な吶喊に耐えかねて。
ますますぎこちなく、固まっていった。
悔しそうに歯ぎしりしながら、優香は自分の身体を、彼氏以外の男に支配されていった。
そう、彼氏の目のまえで・・・

ねえ。きょうもあなたのこと、裏切ってもいい?
イタズラっぽい上目づかいは、いつもぼくと肩を並べて歩いている。
公然のカップルになったぼく達は。
いつもいっしょに歩いていて。
優香は、白のハイソックスを濡らす血のりを、おおっぴらに見せびらかして。
ぼくは優香を吸血鬼との密会現場に伴う役を、だれの目も構わずに務めあげている。
三人で愉しむこともできるんだね。
優香はくすっと笑って、白い歯をみせる。
純潔を奪われていったときに歯ぎしりをした、同じ歯は。
きょうもきらきらと、白珠のような輝きをみせていた。

優香のつぶやき。 (娘の身代わり・娘目線)

2015年12月29日(Tue) 15:16:18

忍田さん・・・いる?
あたしはいつものようにおずおずと、部屋を覗いた。
畳部屋のなか、毛布にくるまるようにして、忍田さんは横たわっていた。
きょうはきみのママが当番のはずだが。
上目づかいの弱々しい視線が、ちくりとあたしの胸を刺す。
ママ貧血だから・・・代わりにあたしが。
そういうあたしだって、貧血だった。
あたしの顔色でそれと察した忍田さんは、なにかいおうとしたけれど、
すぐに押し黙って、毛布をはねのけると、起きあがった。
はだけた浴衣から、蒼ざめた胸元があらわにのぞく。
かわいそう。血が欲しいんでしょ?
あたしは知らず知らず、同情の視線になっていた。

忍田さんが起きあがったあとの、布団のうえの空白が、あたしのために空けられていた。
「ジャケット、脱ぐね」
ブレザーを脱いでブラウスの襟元をくつろげると。
あたしが思い切りよく布団のうえにあお向けになる。
忍田さんは息荒く、あたしのうえにのしかかってきた。

尖った牙が首すじのあたりを、チクチクと侵してくる。
さいしょのころは、とても怖かった。
家に帰して・・・って、泣き叫んでいた。
でも、いまはちがう。
――血を吸われるなんて嫌。家に帰してください!
口ばかりはそんなふうに抵抗しているけれど。
ほんとうは・・・彼のことをそそりたいだけ。
案の定。
あたしの稚拙な誘いに乗った彼は、ククク・・・ッといやらしい笑いを洩らしながら、
尖った牙をあたしの首すじに、埋め込んできた。
じゅぶっ・・・。
飛び散る血潮の生温かさに、真っ白なブラウスを染めながら。
あたしは意味もなく、うつろな笑い声をもらして、
布団のうえで手足をじたばたさせて、はしゃいでいた。

あたしを抑えつけて、ひとしきり血を吸い取ると。
どうやら彼は、満足したらしい。
パパとママの血を吸い取ったのと同じ喉が、あたしの血に濡れている。
家族ぐるみで尽くしている気分が、言うに言えないほど、心地よい。

さいしょはいやいやをして。
それでも献血の義務を自覚しながら。
心ならずも相手をするそぶりで、ぎこちなく許していって。
血潮に秘めたうら若さを、すみずみまで味わい尽される。
あとはひたすら、のしかかってくる彼の身体に手足をすり寄せるようにして、
パンツを穿いてない無防備な股のあいだに、びっくりするほど熱くほてった鎌首を、なすりつけられてゆく。

彼があたしのことを犯さないのは。
あたしの彼氏に遠慮しているわけではない。
あたしを犯しちゃったら、処女の生き血を吸えなくなるから・・・ただそれだけ。
でもどうやら、忍田さんは――
中学に上がったばかりの彼氏の妹に、目をつけたらしい。
初めての瞬間は、いつ訪れるのか。
そんな紙一重のスリルを、きょうもたっぷりと、味わわされる。

腹ばいになったあたしの足許に。
彼はそろりそろりと、這い寄ってきて。
お目当ては、ハイソックスを履いたあたしのふくらはぎ――
この頃には珍しく、真っ白なやつを履いてきた。

さいしょに逢ったとき。
真っ白なハイソックスに、赤黒いシミを飛び飛びに散らされて。
泣きべそを掻きながらたどった家路。
それ以来。
あたしは白のハイソックスを、履かなくなった。
彼に逢うときには、きまって求められる、ふくらはぎへの欲情まみれのキス。
あたしはそれを、紺のハイソックスを履いて、受け止めている。
まだしも、血のシミが目だたないだろうと・・・

白はエエの。
忍田さんはしわがれた声で、そういった。
そお?
あたしは知らん顔をして、澄ましてそっぽを向いていた。
しなやかなナイロン生地のうえから、欲情まみれのいやらしい牙が、
あのチクチクとした気配を、迫らせて来る。
あたしは無意識に脚をよけて、彼はそんなあたしの足首を、力ずくで抑えつける。
あー、ダメ・・・っ。
わざと発した拒絶の声を、忍田さんは真に受けて。
あたしのことをわざとじらしながら、ふくらはぎを咬んでゆく。
真新しいハイソックスを、よだれでじゅくじゅくと濡らしながら。

ずぶ・・・
埋め込まれる牙に、
・・・っ!
声にならない声をあげて。
しみ込んでくる生温かい血潮が、とてもとてもいとおしい。
一滴でも多く、啜り取らせてあげたい――
パパとママから受け継いだ、たいせつな血。
でもその血潮で、このひとを気が済むまで、癒してあげたい――
あたしの逢瀬を見守ってくれるパパや、
あたしと交代で献血をしてくれるは、
あたしがハイソックスを汚しておうちに帰っても、きっと叱ったりはしないだろう。

忍田さんは、ハイソックスを履いた脚に、あちこち咬みついてきて。
あたしのハイソックスが真っ赤になるまで、やめなかった。
――お嬢さん、あんたの脚を咬んでいいかね?靴下を汚しても、かまわんかね?
ひと咬みするごとに、彼はわざわざあたしに許可を求めてきて。
――エエいいわ。思い切り咬んで。あたしのハイソックスを、真っ赤に汚して。
あたしは彼をそそるような言葉を口にして、許しつづけていった。

この靴下を履いたまま家に帰るのだぞ。
耳もとに注がれた命令言葉は、人のわるい意地悪さに彩られていて。
けれどもあたしは、応えちゃっている。
エエそうするわ。咬まれたてのハイソックス、みんなに視られるのが嬉しいわ。
彼氏の家に寄って、見せびらかしちゃおうかな・・・
男は含み笑いを浮かべた唇を、なおも圧しつけてきて――
真っ白だったあたしのハイソックスに、さらにおまけのシミを拡げていった――

吸血鬼の屋敷のまえに佇む妻。 娘の身代わり(夫目線編)

2015年12月29日(Tue) 13:32:50

逃げるだけの理性のあるものは、街から逃げた。
逃げることのできないものだけが、あとに残った。
あとに残ったものは、街を支配した吸血鬼たちに、つぎつぎと血を吸い取られていった・・・


その男は、忍田という名前でした。
勤め帰りの夜、とつぜん前に立ちふさがって。
「忍田といいます」
とだけ名乗ると、すぐにすれ違って・・・振り返るともう、姿はありませんでした。
口許についた真っ赤な血のりだけが、記憶に残りました。
家に戻ると、咬まれたばかりの娘が、妻に介抱されていました。
真っ白なハイソックスに、赤黒い斑点が散っていて・・・
男の口許に光る血のりと、すぐに符合しました。

「あなた、優香についていらして下さいな。せめて当校の時だけでも」
妻の希(ねが)いは、残酷なものでした。
血を吸われる習慣を持ってしまった娘のあとを尾(つ)けていって、
近くの公園で首すじやふくらはぎを咬まれるのを見届ける日常。
娘が貧血に耐えて、無事登校するのを見届けてから、わたしは通勤の道に戻るのでした。
あれ以来。
娘が真っ白なハイソックスを履くことはなくなりました。
首すじはもちろん、好んで脚にも咬みつく吸血鬼。
紺のハイソックスにガードされたふくらはぎは、
その発育の良い脚線をなんども侵されて・・・
そんな光景を、さいしょは週一、その後は二日にいちどくらいのペースで見せつけられたわたし。
いつか、不思議な昂ぶりに息をつめて、様子を窺っている自分に気づいていました。
娘は慈善事業のような気分で、うら若い生き血をサーヴィスしているのだ。
時にはほほ笑みさえ泛べながら紺のハイソックスのふくらはぎを咬ませてゆく娘を遠目に見やりながら、ことの真相をかぎ分けてしまっていたのです。

「代わりに、わたしの血を吸ってくれ」
忍田にそう願い出たのは、娘が家を出る間際、貧血を起こしてその場にへたり込んだ日の朝でした。
ところも同じその公園で。
男はわたしの首すじを咬んで、すこしだけ血を吸いました。
けれども男は言いました。
「悪いが、どうしても男の血は受けつけないのだ」と。
そしてもうひと言、わたしに囁いたのです。

あんたの奥さんに、そう伝えてくれ・・・

軽くひと咬み、そしてほんのわずかな血。
それを許してしまったことが、わたしの心の内部を、裏腹に変えてしまいました。

ああ、そう・・・
わたしは虚ろに呟くと、振り向いた視線のかなたに、もう男はいませんでした。
近くの公衆電話から。
わたしはなぜかドキドキしながら、家に電話をしました。
「あなた・・・?」
切迫した妻の声が、なぜか快く耳に響きます。
追い詰めた獲物の息遣い。
どうしてそんなことを、思ってしまったのでしょう?
けれどもわたしは、口を開きました。
自分が従属を誓った獣に、妻の生き血をあてがうために。
「やっぱり、きみが逢ってくれ。あちらのご希望なんだ」

夕刻――
わたしは忍田の屋敷のすぐ前にいました。
ご丁寧にも、勤務先に電話がかかってきて。
(娘から聞いたのでしょうか・・・)
教えてくれたのです。
ご厚意に甘えてご馳走になるから、念のため教えておきます という前置きで。
わたしは会社を早退し、すべてを心得ているらしい上司も、無届の早退を黙認してくれました。

忍田の背中の向こうに、妻がいました。
以前なら、なにをおいても間に割って入るつもりになった、切迫した情景です。
それが今では。
血に飢えた悪しき友人の目のまえに供えられた、美味しい獲物。
妻の怯えさえ、わたしの狂った網膜には、そんなふうに映っていたのでした。
妻は、怯えきった表情をしていましたが、
娘を護るために一歩も退かない母親の決心が彼女を支えているようでした。
忍田にもそれが伝わったのか、すこしきまり悪げに頭を垂れていました。
今朝、わたしの血を吸うようにと請いを入れたときとおなじ態度でした。

みすぼらしい初老の男の前に、花柄のワンピース姿の妻が、輝いて見えたのは、夕陽のせいばかりではなかったはず。
血に飢えたものと、健康な血潮を身体いっぱいに宿したものとの対比が、妻をなおさら眩く見せたのでしょう。
生き血を吸われる側ではなく。
生き血を吸わせる側に立ってしまったわたしには。
妻の怯えさえもが、鳥肌の立つような快感に思えてしまっていたのです。

忍田は妻に言いました。
娘さんは処女だから、手加減をして愉しませてもらっている。
しかし、大人の女には、手加減はしない。
どういう目に遭うのかわかったうえで来ていなさるのか と。
妻は恐怖にこわばった表情から、かろうじて感情を消しながら、言ったのです。
――主人と相談したうえで、伺いました――

「わかった。来なさい」
忍田は引導を渡すように、妻にそう告げました。
妻の運命は決まってしまったのです。


いちど鎖された扉には、鍵がかかっていませんでした。
――娘さんのときのように見届けたいのなら、勝手に上がってもらって構わない。
忍田は電話口でそうわたしに告げましたが、約束を守ってくれたのでした。
敷居をまたぐときの、わずかな床のきしみさえ気にしながら、わたしは男の屋敷に上がり込みました。

半開きになった扉のまえ。
ここから先は、入ってはいけない
扉は開いていながらも、そう告げているようで・・・わたしはなにもかもが終わるまで、そこで佇みつづけたのです。

ベッドの上に腰かけて、床に伸べたふくらはぎを、ストッキングのうえから舌でいたぶられながら、眉を顰める妻。
男はそんな妻の気配を背中で感じているくせに、くくく・・・うひひ・・・と舌なめずりをくり返しながら、ピチャピチャと露骨な音をたてて、淡いナイロン生地を波立てていました。
ストッキングを穿いた脚をくまなくよだれで濡らしてしまうと、
忍田は妻に見えないように、ふくらはぎのいちばん肉づきのよいあたりに、牙を突き立てていきます。
こちらからはわざと見えるような角度――これから咬むぞ、と、わたしに告げてきたのです。
じわり。
うそ寒い部屋のなかで佇むわたしは、冷たい汗を噴き出していました。
妻が咬まれて、顔をしかめつづけているあいだじゅう・・・

よそ行きの花柄のワンピースを着たまま、バラの花をしわくちゃにさせながら。
ワンピースのすそをお尻が見えるまでたくし上げられて、犯されてゆくありさまを。
足に根が生えたようになったわたしは、一部始終を見届けていたのです。
妻主演のポルノドラマを、ただの男の目線で愉しんでしまいながら・・・


やつは、妻の生き血を気に入ってくれている。
やつは、妻の身体を気に入ってくれている。
やつは、妻のことを愛してくれている。

妻は、戸惑いながらも、やつのことを受け容れてしまった。
妻は、歯噛みしながらも、やつに凌辱を許してしまった。
妻は、心ならずも、やつの奴隷に堕ちてしまった・・・

いろいろな思いが交錯する中、わたしは玄関へと足を向けていました。
むつみ始めたふたりが、気を散らさないように。
やつが妻のことを、独り占めできるように。
成就された一方的な恋情が、深められてゆくために――


あのかたと、お付き合いさせていただきます。
でも、あなたと別れるつもりは、ありません。
あなたの妻として、あのかたに抱かれたいと思います。

わたしよりも二時間もあとになって帰宅した妻は、
謝罪するように無言で三つ指を突いた後、棒読みするような抑揚のない声色でそう告げました。
そして、わたしの返事もまたずに、台所に起っていって・・・いままでと寸分違わぬ日常が、再開されたのです。


週に二、三回、妻は娘と入れ替わりに、忍田に呼び出されて出かけていきます。
よそ行きのスーツやワンピースに装い、きっちりとメイクをキメて、
いつもより数段見映えのする風情で、不倫の宿へと脚を向けるのです。
破かれると知りながら、真新しいストッキングを通した脚で、大またな歩みを進めて――
あれほど嫌がっていた、足許へのいたぶりも。
あれほどためらっていた、首すじからの吸血も。
あれほど忌んでいた、吸い取られた血潮で装いを濡らされる行為までも。
妻ははしゃぎながら、嬉々として受け入れてゆくのです。
わたしに視られていると知りながら、
あえてわたしに見せつけるようにして・・・


恐怖の面差しのまま、初めて男の屋敷のまえに佇んだ妻の影を。
毒蜘蛛の仲間に堕ちたわたしは、体液を吸い尽されてしまえと願っていました。
あのときから――
わたしとわたしの家族とは、崩壊を免れるのと引き換えに、違う彩りに染められていたのでした。

娘の身代わり。

2015年12月26日(Sat) 07:52:51

忍田が足音をひそめて近寄ると、そこには女の影が佇んでいた。
濃い夕闇が視界を奪って、影の主がたれなのか、すぐに判別できない。
きょう待ち合わせているはずの少女は、16歳。
ふた月ほどまえから血を吸うようになった、県立の高校生だった。
案に相違して。
そこに佇んでいたのは、少女よりもはるかに年上の女だった。
面差しがどことなく、少女のそれと似通っている。
女はおずおずと忍田を見、気まずく口ごもりながらも、話しかけてきた。
「優香が・・・娘が体の具合を悪くして・・・」
みなまで言えずに言いさした言葉を、忍田は無遠慮に継いだ。
「お母さんが身代わりに、わしに血を吸われにおいでなすったのか」
女は凍りついたように、立ちすくむ。
赤いバラをあしらった小ぎれいなワンピースに、ぴかぴか光る黒のエナメルのハイヒール。
肩先に波打つウェーブの栗色の髪は、美容院でセットしたばかりのように鮮やかな輪郭を持っている。
女というものは、こういうときでさえ、己をひきたてようとするものなのか。
忍田の胸の奥で、なにかがぶるりと慄(ふる)えた。

優香と呼ばれる少女が血を吸われ始めたときには、週一回の約束だった。
それが週二になり、週三になり・・・いまではほとんど、毎日のように逢っている。
身体の具合も悪くなるわけだ。
それほどまでに、彼の牙から分泌される毒は、無防備な素肌に色濃くしみ込まされたのであろう。
ここは吸血鬼の支配する街。
逃げるだけの理性を持ったものたちはすでに逃げ、
残っているのはひたすら、支配を甘受しようとする者たちだけだった。
忍田はきょうの日の来るのを予期しながら、少女の血を容赦なく啜りつづけた。

今朝のことだった。
少女の家から出勤してきた背広姿の男が、目ざとく忍田をみとめた。
彼女の家のものには、面が割れていないはず。
それなのにいち早く彼を、娘の生き血を吸う吸血鬼だと察したのは、親というものの持つ本能なのか?
男は人目の立たない近所の公園へと忍田をいざない、真剣な顔つきで懇願した。
「娘の血を吸うことについては、なにもいわない。でもせめて、死なせないでくれ」
代わりに自分の血を吸ってもらえないか・・・?男の申し出は、要するにそういうことだった。
忍田は言われるままに優香の父親の首を咬み、ほんの少しだけ血を啜った。
けれどもやっぱり、無理だった。
「悪いが、どうしても男の血は受けつけないのだ」
身を挺してまで娘を守ろうとした父親に、忍田は衷心から頭を下げた。
けれどもそのあとには、血をほしがる本能が、忍田に冷酷な囁きを強いていた。
あんたの奥さんに、そう伝えてくれ―――――と。

自分の妻の血を吸おうとする男に、協力する夫などいるのか・・・?
そう問いたげな視線に、忍田はいった。
力を貸してくれたら、恩に着る。
もちろんふたりとも、殺(あや)めたりはしない。
最愛の妻とまな娘の生き血をみすみす啜らせた恥知らずな男だなどと――――
この街ではあんたのことをそう思うものはだれもいないし、
俺もそんなことを考えたりはしない。
ただ俺には、血を吸う相手がもうひとり、どうしても要りようなのだ  と。

男が勤務先から自宅へ、どんな連絡をしたのか、忍田は知らない。

優香の母親は相変わらず、こわばった視線で忍田を見あげている。
肉づきのよい身体つきをした彼女だったが、上背は忍田よりもずっと劣り、
彼女が体内に宿す血液の全量をもってしても、忍田を満足させられるとは思えなかった。
「わしは処女の生き血が大好きじゃ。だから娘さんには、手加減して愉しませてもらってる。
 しかしあんたは、大人の女だ。手加減はせん。
 どういう目に遭うのか、わかったうえで来なさったのか」
母親はこわばった顔つきをさらに凍りつかせたが、やっとの思いで、いった。
「主人と相談したうえで、伺いました」
忍田はちょっとだけ気の毒そうな顔をして、女を見た。
けれどもその口から発した言葉はみじかく、さらに容赦がなかった。
「わかった。来なさい」
忍田は門柱にもたれかかるようにして彼が通りかかるのを待っていた女の背中を邪慳に押し、
門の中へと追いやった。
硬く施錠されているはずの玄関は、忍田が手を触れると苦も無く押し開かれ、
ふたつの人影は鎖された古びたドアの向こうへと消えた。

「横になるかね?」
忍田の問いに、女はかぶりを振るばかりだった。
見通しの良い庭に射し込む夕陽は、門前の暗さとは裏腹な明るさをまだ持っていたが、
女はその情景に目をやろうともしない。
「わしの好みは知っていような?」
スイッと傍らにすり寄り、囁きかけてきた男の気配に女はビクッとして顔をあげた。
けれども、伸ばされた猿臂に両肩を抱かれ、身じろぎひとつできなくなっている。
「あんたの名は・・・?」
「美穂・・・永黒美穂といいます」
美穂さん・・・か。
名前を識ってしまうと、妙な親近感がわくものだ。
そこには人格があり、親族知人の係累がある。
かつてはその身に温かい血潮を宿していた時だってある。
忍田は相手のおびえを、なんとかして落ち着かせようと思った。
女の言葉が、忍田に一歩先んじた。
「ふくらはぎを咬むんですよね・・・?それから首すじ」
「娘さんから聞いたんだね」
「は、はい・・・」
「じゃあさっそく、お世話になろう」
忍田は並んで腰かけたベッドから腰をあげ、すぐにその場に四つん這いになると、
美穂の足許にそろそろと唇を近寄せてゆく。
「ひっ」
思わず避けようとした脚を掴まえると。
忍田は美穂のふくらはぎを吸った。
くちゅっ。
生温かいよだれを帯びた唇が、美穂の穿いている肌色のストッキングをいやらしく濡らした。

美穂はベッドのうえ、仰向けに寝かされていた。
男はさっきから、表情を消した美穂のうなじに咬みついて、
キュウキュウ、キュウキュウ・・・生々しい音をたてながら、生き血を啜りつづけている。
放恣に伸ばされた美穂の脚に、パンティストッキングはまだまとわれていたが、
あちこちに咬み痕をつけられて、むざんな裂け目を走らせている。
着衣ごしにまさぐられる胸が、恰好のよい輪郭を、くしゃくしゃにされたワンピースに浮き彫りにしていた。
「優香と同じ香りがする」
男は女の耳元で、彼女の娘の名前をわざと呼び捨てにした。
「家に・・・帰してください・・・」
「あの子もさいしょのときには、そう言っていた」
吸い取ったばかりの美穂の血をあやした唇が、彼女の唇まで求めてきた。
避けようとしたが、すぐに奪われてしまった。
二度、三度、重ね合わされてくるうちに。
舐めさせられた血潮の、錆びたような芳香が鼻腔に満ちて――――
いつの間にか女のほうから、忍田の唇を求めはじめていた。
どういうことなの?いったいなぜなの?
女は自問しながらも、忍田とのディープ・キッスを、やめられなくなっている。
男の手がだしぬけに股間に伸び、ショーツとパンストとを、いっしょに引き破った。

あっ・・・!と思ったときにはもう、遅かった。
男は目にもとまらぬ速さで女の股間に自分自身を肉薄させて、
怒張を帯びた硬い肉棒が、女の秘部にもぐずり込んでいた。
あっ・・・あっ・・・あっ・・・
女は有無を言わさず、犯された。
白濁した精液がどろどろとそそぎ込まれるのを、もうどうすることもできなかった。
征服・・・された?こんなに、あっけなく・・・?
脳裏に戸惑いを漂わせながら、女はなん度も吶喊を許し、不覚にも応えはじめてしまっていた。

こぼれた粘液がシーツをしとどに濡らすころ。
男はふと、呟いた。
――――我慢づよいご主人だ。
半開きになったドアの向こう。
忍ばせた足音がかすかに床をきしませながら遠ざかるのを、美穂は確かに耳にした。

気を利かせ過ぎた夫

2015年12月26日(Sat) 04:23:22

オイ、帰るぞ。
貢田(みつだ)博はふすまの向こうに、声を投げた。
法事のあとの宴も尽きて、皆が三々五々、家路につき始めたころだった。
はぁい、今すぐ。
ふすまの向こうからは、妻の声。
いつになくウキウキとした声色に、貢田の声の語尾が震えた。
ふすまの向こうでなにが起きているかは、先刻ご承知。
この村では、法事のあとにはきまって、人妻相手の濡れ場が展開する。
席に紛れ込んだ村の衆は、都会育ちの人妻を物色して、
法事のあとの宴が始まると、思い思いに夫婦の間に割り込んで、妻のほうだけを、別室へと連れ込んでゆく。
どうしてそんなことが許されるのかって?
この村を訪れる都会育ちの男女はだれもが、いわくつきの過去を持っていて。
世間から身を隠すのと引き換えに、妻の貞操を犠牲にする――――そんな取引が成り立っていたから。

ふすまの向こう側。
貢田加絵は背中に両腕を回して、ブラジャーをつけ始めていた。
それでも相手の男はなおも未練がましく、加絵の下肢にまとわりついて、
ひざ下までずり落ちた加絵のストッキングを、舌でいたぶって皺寄せてゆく。
もう、しょうがないわねえ。
加絵は甘い声で情夫を咎めると。
主人が行こうって言ったら、帰してくれるお約束よ。
そういって、相手をたしなめた。
男は案外と素直に、加絵を離した。
ふすまが細目に開いて、有無を言わせぬ語気が、そそぎ込まれた。
――――どうしても気が済まないのなら、夜の10時ころうちに来なさい。私はもう、寝ちゃっているから。
どこまでももの分かりの良い旦那だった。

またねぇ。
加絵が後ろを振り向いて、男に手を振る。
男は慇懃に、ふたりの後ろ姿に最敬礼をする。
そして、周囲を睨みつける。
あの夫婦をこばかにするやつは、ぶっ殺すぞ。そんな顔つきをして。

夜10時半。
やっぱり――――
失敗した・・・と、貢田は何度目かの寝返りを打った。
10時ころに、妻の情夫が家に来る。
そうわかっていたから、いつもより多めに酒を飲んで、早くに床に就いたつもりだったのに――――
あらかじめそんなことがあるとわかっていたら、とても眠れるものじゃない。
隣のリビングから洩れてくる物音を、彼はあまさず聞き洩らすまいと、知らず知らず聞き耳を立ててしまっていて。
そのために、睡魔はとうとう、訪れなかった。
男の訪問は、明け方までつづいて。
くたくたに疲れ果てた妻が、隣に延べた布団にもぐり込むや否や、貢田はその妻の身体に、のしかかっていた。

都会にいるころよりも。
夫婦の営みは活発になった。
ほかの男を識ってしまった妻の身体は別人のように若返り、貢田の求めに敏感に反応するようになっている。
これは災厄なのか。ご利益なのか。
貢田はいまだに、決めかねている。

家の外は、寒いはず。

2015年12月26日(Sat) 03:50:35

えっ?寒くないの? ですって?
そりゃ、寒いですよ。ここ、外ですもの。
エエ、自分の家ですよ。この家は。
でも、中に入っちゃ、いけないんです。いまは。
どうしてなの? ですって?
うちの中でね、いま、彼女が犯されてるんです・・・

エエ、もう長いつき合いですから。
彼は親戚の叔父さんでしてね。結婚していないんです。
母の弟なんですが、女の身体は実の姉が初めてだったそうなんです。
そうとは知らず、子供のころからボクは叔父さんに懐いていて・・・
約束してたんです。
将来結婚するときには、ボクのお嫁さんとキスさせてあげる って。
それが、今夜成就するんです。

きみが叔父さんに抱かれるところ、視てみたい・・・って。
そう言ったら彼女、もちろんびっくりしてました。
エエ、面識はすでに、あったんです。
結婚が決まった時に真っ先に、叔父さんに紹介しましたから。
叔父さんね、吸血鬼なんです。処女の生き血が大好きで・・・
彼女ができたら、血を吸わせてくれよって、頼まれてたんです。
生き血を吸ったら、きみの彼女の身持ちがわかるからって。
ですからボク、自分からお願いしたんです。
彼女を襲って、血を吸って。
処女かどうか、判定して・・・って。

ボクわざと、席をちょっとだけ、はずしたんです。
そのすきに、しっかり襲われていました。
スーツ姿のまま気絶した彼女のうえに、またがって。
首すじからチューチュー、血を吸ってました。
それ視ているうちに、なんだかドキドキしてきちゃって・・・
止められなくなっちゃったんです。
叔父さんは、彼女の足許にもすり寄って。
あの格好の良いふくらはぎにも、咬みついていきました。
ストッキングをブチブチと咬み破りながら・・・
もう、たまらなくなっちゃったんです。

気がついた彼女――――すっかり虜になっていて・・・
もともとサバサバとした子でしたから、
約束しちゃったんです。
そんなに美味しいんなら、時々吸わせてあげてもいいよって。
それ以来。
彼女の血をあげるときには、送り迎えをするようになって・・・
でもそのうちに、三回に一回は、彼女、ボクに内緒で叔父さんに逢っていたみたいなんです。
それを叔父さんから告げられた時、恥ずかしいんですが、やっぱりドキドキしてきちゃって。
結婚式を来月に控えているきのう、思い切って彼女に行ったんです。
きみが叔父さんに抱かれるところを視てみたい。
嫁入り前の身体を汚されるところを、視てみたい・・・って。

彼女、びっくりしていましたけど・・・すぐにね。
肩まで伸びた黒い髪を揺らして、ウン、って、頷いてくれたんです・・・

ほら、壁に大きな節穴があるでしょ?
ここから覗けるんです。
彼女がブラウスをはぎ取られて、ブラジャーの吊り紐をあらわにしながら抱かれてゆくのが。
パンストをしわくちゃにされてずり降ろされて、まだ片脚に穿いているのが。
脱がされたブラウスからおっぱいをチラチラ覗かせながら、乳首を吸われているのが。
権利を不当に侵害されるのが嬉しいなんて・・・自分でもヘンな性癖だと思うけど。
相手が叔父さんだと思うと、とてもドキドキしちゃうんです。
叔父さんも、ボクの彼女だからよけいに燃える・・・って、言ってくれるんです。
ボク、叔父さんのことは、こんなことになった今でも大好きだけど。
叔父さんもきっと、ボクのことが好きなんだと思います。

ほら、ほら。あんなに腰を使われて。
じっくりしつけられて。
たっぷりそそぎ込まれて。
結婚前にこんなことになっちゃって、これから彼女どうなるんでしょう?
きっと、結婚してからも時々、新居に叔父さんのことをあげちゃうんだろうな。
ボクが勤めに出ている隙に。
そんな彼女のことを、ボクはきっと、止めることができないんだろうな。
夜遅い時には、自分から叔父さんに、連絡しちゃうんだろうな。
ボクの新居を襲ってください。 って・・・

エエ、寒いですよ。冬ですから。家の外ですから。
でもね。
さっきから。
身体が火照って、たまらないんです・・・

若いひとじゃなくって、よかったの?

2015年12月23日(Wed) 11:46:09

ずん胴のおばさんスカートの下に
履き心地の柔らかな、昔ふうのストッキングを穿いて
息子の嫁と娘とを連れてやってきた、淫らな山村。

結婚三年目にして夫以外の男の味を覚えた嫁と
息荒く群がる何人もの男の前、セーラー服を脱いじゃった娘。
訪ねていった公民館は、真っ昼間から乱交のるつぼになっていて
若い女ふたりにも、不自由しないほどの数の男どもが、群がっていった。

若いひとたちのほうじゃなくて、よかったの?
ただひとり、わたしのまえに現れたごま塩頭に
わたしはからかうように、声を投げる。
男はゆっくりとかぶりを結って、わたしのほうへと歩み寄ると
やおら両手を床について四つん這いになって
ストッキングに包まれたあたしの脚を、舐めはじめた。

麗しの大根足・・・って
あんまり嬉しい気のしないほめ言葉に
わたしは薄茶のパンプスを穿いたままの爪先を、男のほうへと差し伸べてやって
ねちねちといやらしく這わされる舌にみなぎる劣情に、
しぐさだけで、応えてやった。

しつような舐めに、しわくちゃにされて
じわじわとよじれてゆく、肌色のストッキング。
やっぱりストッキングはエエなあ。気品を感じるなあ。
気品のかけらも感じさせない男のやり口に、わたしは「いけすかない」と口を尖らせる。

隣室からは、きゃあきゃあとはじける、嫁と娘のはしゃぎ声。
ビリビリ、ブチブチと、服の裂ける音まできこえる。
母親として、姑として、女の手本を示すべきわたしまで
男に肩を捕まえて、床にひざを突かせられる。

そう。このひとは。
わたしひとすじと決めているらしい。
主人の遠縁の法事だといわれ 初めて訪れたこの村で
主人以外の男性の身体を、初めて思い知らされたとき
主人にあらかじめ話をつけていた・・・というこのひとは
いの一番に、わたしのうえに覆いかぶさってきた。
都会の奥さんの脚は、エエなあ。
薄々のストッキング破くの、たまんねえなあ。
きょうとおなじ、そんな言葉を口にしながら
夫にしか許したことのなかった股間を、剛い肉棒を埋め込んだ彼は
いまでもわたしを抱くたびごとに、あの”感動の夜”を、思い出すのだという。

お父さん、ごめんなさい。
有一、、ごめんね。
ひろ子さん、いっぱい愉しんでね。
佑香、うんと可愛がってもらうんだよ。
家族に対するいろんな想いをよぎらせながら、
わたしもブラウスのリボンを解かれ、スリップを引き裂かれる。
ストッキングを穿いたままの女と姦りたいという男の望みのままに
太もも丈のストッキングに、ノーパンティの腰から下は
丈長のおばさんスカートをたくしあげられてしまって
そらぞらしい外気が、すーすーと肌寒かった。

アラ都会の奥様、いいお日和で。
通りがかりの顔見知りの村の奥さんが
わざとのように、声かけてくる。
三人の女たちの先頭を歩くわたしは
しばらくごやっかいになりますねえ。
悪びれずにそうあいさつをする。
剥がれた服をまとい、素肌をちらちらと覗かせながら歩いているわたしたちの身に
なにが起きたのかなど、おくびにも出さず
村の奥さんは「ゆっくりしてってくださいね」とだけいって、すれ違ってゆく。
たしか、彼女の旦那もさっきまで
娘や嫁に覆いかぶさっていったはず。
「ゆっくりしてってくださいね」。
「ウチの旦那の面倒も、よろしくね」
きっと本音は、そういう意味なんだろう。

背中ごし、わたしのすぐ後ろを歩く二人も、
村の奥さんに礼儀正しく会釈を投げるのを感じながら
早く宿について、お着替えしなくちゃね
そう、この村では夜は早々と訪れて
若い女目当ての男どもが、わたしたちの宿に乗り込んでくるはずだから。
「やですわ、義母さまったら」
嫁のひろ子さんが、笑いをはじけさせる。
「そのまえにあたしたち、宿のかたたちと仲良くならなくちゃいけないじゃないですか」
図星を刺した嫁は、息子を裏切った時のイタズラっぽい笑いを、
整った横顔にそのまま残していた。

そうね。あのひとたちは、全裸がお好きだから。
好みに合わせなくちゃならないわね。
そういうわたしに
ママ、その手間省けちゃうみたい
娘の佑香が囁いた。
なるほど。
破けた女の服をほしがる、変態男どもが
あたしたちの行く手を、阻もうとしていた。
夏でよかったわね。
ほんとうにね。
全裸にヒールやローファーだけになったわたしたちは
宿まであともう少しの道のりを
降りそそぐお陽さまの下、恥ずかしさをかなぐりすてて、歩いてゆく。

妹分と 妹と

2015年12月21日(Mon) 07:43:53

母校のハイソックスを好んで咬み破る、あのいけ好かない吸血鬼に。
とっくに卒業しちゃったあの学校の制服を着てくれとせがまれて。
あいつは「まだまだ似合う」とかいって、おだてるけれど。
制服なんてぜったい――現役生のほうが似合うに、決まってる。
そんなわけであたしは、仲の良かった後輩を家に招んだ。
もちろん、あいつにはあらかじめ、声かけて。

やだーっ!やだーっ!
気丈なあの子もべそ掻いて。
あたしに両肩を抑えられ、あいつに胸と首根っこをつかまえられて、咬まれていった。
おいしそーって、思ってしまったのは。
あたしにもあいつの狂気が、乗り移りはじめていたから?
でもさいごには、力の抜けた身体をうつ伏せにして。
学校名の頭文字をあしらった、指定の白のハイソックスを履いたふくらはぎを、
あの子もしぶしぶ、咬ませていった。
真っ白な生地に包まれた、たっぷりとしたふくらはぎに、
赤黒く膨れあがった、飢えた唇を吸いつけられて。
真っ白な生地に、赤黒いシミを拡げながら、
あの子もあのときのあたしみたいに、チューチューおいしそうに、血を吸い取られていった。

よかった。かっこよかった。よくやった。
それでこそあたしの、妹分!
あたしはべそを掻き掻き羞ずかしがるあの子の頭を撫でて、ほめてあげた。


同じ香りの血を吸いたい。
そんなふうにあいつに、せがまれて。
あたしは貧血で、もうふらふら。
母さんだって、あたしよりひと周り大柄な身体をしぼませてしまったように、うつろな目になっちゃっている。
それであたしは、ひと肌脱いだ。
えっ?香奈ちゃんはまだ、早いって。
母さんはそう、たしなめたけれど。
ほかに吸わせてあげる女の血なんて、ないじゃない。
あたしはきっぱりと、そういった。
いい。母さんは知らん顔していて。あたしがうまくやる。

まだあたしのいたあの学校に入る齢ではなかったけれど。
あたしは妹の香奈を、部屋に招んで。
姉さんの制服着させてあげると、はしゃいでもらって。
紺のセーラー服に、プリーツスカート。
真っ白なハイソックスを、ひざ小僧の下までぎゅっと引き上げてやって。
夢中になってる香奈の後ろには、もうあいつが、迫っていた。

べそを掻き掻き、血を吸い取られる妹の、両腕をしっかりと、抑えつけてあげながら。
だいじょうぶ。母さんにも内緒に、してあげるから。
そんなふうに渡された引導に、妹もほっと安堵したようだった。
白のハイソックスのふくらはぎになすりつけられてくる、ヒルのような唇には、
いつまでたっても気持ち悪そうにしていたけれど。
だいじょうぶ。そのうち慣れちゃうんだ。
香奈も姉さんの学校に入ったら、自分の制服でご馳走してあげるんだよ。
うふふふふっ。
身体じゅうに毒が回り切っちゃったらしい妹は、やっといつもみたいに笑ってくれた。

さすがだよ。かわいいよ。
それでこそあたしの、妹だよ。

女子大の庭で。

2015年12月21日(Mon) 06:38:49

談笑している若い女子たちの姿ほど、遠目に見ていて眩しいものはない。
そんなまっとうなことを考えながらも、つい彼女たちの首すじに目が行ってしまうのは、
己でさえ時には忌まわしい、本能の教えるところ。
いつか彼女たちのことを見比べ始めていて、「どの子の血を吸おうか?」と値踏みをする目つきになっている。
幸い、笑いさざめく彼女たちは、そんな俺の不埒な意図など、まるきり気づいていないらしい。
やがて小手をかざして手を振り合うと、三々五々、散っていった。
目ざす女子は幸いにも、連れはおらず、一人で歩き始めていた。
白のカーディガンに、薄茶の長めのスカートに、白のハイソックス。
どこででも見かけるような、ごくふつうの大人しいたたずまい。
軽くウェーブのかかった黒髪を肩先に揺らして歩みを進める後姿に、
俺はワクワクとしながら、声をかける。
「お嬢さん、あんたの血を吸いたいんだけど」

え?
振り向いた彼女は、近くで見ると意外なほど童顔だった。
俺の言っている意味を理解すると、
やはり誰かから、聞かされていたらしい――この界隈には吸血鬼が出没すると。
えっ?あのっ!ほんとなんですかっ・・・!?
あわてふためき、うろたえて、しまいには絶句して。
すぐさま問答無用とばかりに、駆け出した。
愉しい鬼ごっこが、始まった。

三日前、さいごに若い血にありついたのも、このキャンパスだった。
真っ赤なサッカーストッキングを履いた色の浅黒い彼女は、運動部。
さすがに追いつくのに、骨が折れたっけ。
それに比べればこの子は・・・まぎれもない文化サークル。
白のカーディガンの両肩を捕まえて、羽交い絞めにしてしまうのは・・・造作もないことだった。
仰のけたおとがいの下に、飢えた唇を吸いつけて。
太い血管の秘められたあたりを探りあてると――容赦なくがぶり!と、食いついてゆく。
ああッ!
彼女は身もだえしながら、俺に血を吸い取られていった。
俺は力ずくで、ぎゅうぎゅうと、うら若い生き血を、むしり取っていった。

貧血で薄ぼんやりとなってしまった彼女を、ベンチに座らせると。
彼女はブラウスの襟首に着いた血を気にしながら、ひどいです、ひどいです・・・と、呟いていた。
俺は意地悪く、脚も咬ませてもらうからね・・・と、彼女を横抱きに抱き寄せて囁くと。
彼女は伏し目の姿勢のまま、図星な非難を俺に浴びせた。
それってなんか、いやらしいです。

くっくっくっ・・・
くっくっくっ・・・
意地汚い含み笑いの下、真っ白な無地のハイソックスはしわくちゃにいたぶられてずり落ちて、
おまけに刺し込まれた牙の痕を、赤黒い不規則な斑点に変えてゆく。
「ちょっとだけ」の約束のはずが、くまなく何度も咬んでゆく。
彼女はもう、抵抗するゆとりもなくなって、ただただ・・・俺のなすがままにされてゆく。

死んじゃうの?わたし。
彼女のうつろな問いに、俺はゆっくりとかぶりを振る。
だいじょうぶ。きょうの友だちにも、また逢えるから。
お友だちは紹介しませんからね。
安心しな。俺が勝手に声かけるから。
みんなに注意するんだから。
そうだね、そのほうがみんなも、心の用意ができるからね。
ひどいです、ひどいですと、力なくくり返す彼女を促して。
家まで送る、と、親切ごかしに伝えると。
そういって・・・帰りを待ち伏せするつもりなんでしょ?と、
親切の裏に隠した魂胆まで、しっかりと見抜いてきた。
あんたの帰り道を知るのも狙いだが、隙だらけのまま帰り道を歩かせたくないのも本当だ。
どこか弁解をしている。自分でそうわかりながらも、俺はもういちど、彼女を促した。
彼女はふらふらと起ちあがると、手を取ろうとした俺の手を振り切って、自分の足で歩き始めた。
緩慢な足どりだったけれども、随(つ)いて来る俺のことを拒んでいるようすはなかった。
帰る道々。
ブラウスの襟首に飛び散った血のりと、
赤黒いシミをあちこちにつけた白いハイソックスの足許を、彼女はしきりに気にかけていた。

その日も――
彼女のサークルはキャンパスの一隅のベンチで一段になって。
花が咲いたようなあでやかさが、遠目にも眩しい人の輪を作っていた。
だれもが罪なく笑いさざめいていて――きのう襲った彼女でさえもが、なにもなかったようにはしゃいでいた。
若い復元力がうらやましくもあったし、眩しくもあった。
彼女たちが三々五々、別れていくまで、飽きずにその風景を、見つめていた。
どの子にしようか――考えはとうとう、まとまらなかった。

きょうの彼女は空色のロングスカートに、淡いピンクのカーディガン。
長めのスカートにカーディガンを合わせるのは、どうやら彼女こだわりのスタイルらしい。
彼女は友だちひとりを連れて、まっすぐこちらに歩み寄ってくると。
ベンチに腰かけたままの俺をきつい目つきで見下ろして、切り口上に声をはずませた。
「お友だち紹介してあげる。吸血鬼に興味あるんだって」
え?
いぶかしげに女の子たちの顔を見比べると。
ニューフェースの彼女は、羞ずかしそうに会釈をしてきた。
きりっと結い分けたおさげの黒髪にふち取られた広いおでこには、まだニキビが残っていた。

木曜日の男、と。
俺にはあだ名が、ついていたらしい。
こう見えたって、多忙なのだ。
女子ばかりのこのキャンパスのなか、黒い影のように徘徊する俺は、けっこう有名だったらしい。
「木曜日の男。あいつね、吸血鬼なんだ。あたしもきのう、血を吸われちゃった」
彼女は友だちにそういって、首すじに俺がつけた咬み痕を、誇らしげに見せびらかしたらしい。
「ええー!?うそ。・・・でも面白そう」
古風で大人しやかな顔だちの少女は、意外にも発展家らしい。
差し伸べられた黒タイツの脚にかじりついて、タイツを咬み破りながら吸い取った血に、純潔な香りをかぎ取った俺は、ひそかに安堵したものだった。
この子が女子校出身じゃなかったら、あぶないところだったな。と。

それ以来。
俺は彼女の手引きで、ひとり、またひとりと、彼女の友だちを牙にかけていった。
「あの子はどうしてもいやだっていうから、見逃してあげて」
そんな彼女の希望も、もちろん尊重させていた。
軽い微熱のあった試験まえのあの日にも、俺がせがむと断らないで。
俺に咬ませるため、軽くウェーブのかかった黒髪を掻きのけて首すじをあらわにしてくれたくらいだったから。
さいごに牙をかけた希望者で、七人めだった。
いつも短いソックスを履いていた彼女は、心を決めた証拠に、肌色のストッキングを穿いてきていた。
女の子の靴下破くのが好きなんですって?やらしいよね。
ボーイッシュな彼女はぶつぶつ言いながらも、俺に首すじを咬ませ、ストッキングを破らせてくれた。
初めて咬んだ首すじは、意外なくらいしっとりとした膚をしていた。

季節がめぐると、人は変わる。
あのとき人の輪を作って笑いさざめいていた彼女たちは、もういない。
みんな卒業をして、いまごろは新しい舞台で笑顔を活き活きとはずませているころだろう。
俺はそれでもこのキャンパスに出没して、「木曜の男」の伝説を体現しつづけている。
目線のかなたには、女子学生の集団。
あのときと同じ若さの少女たちが、あのときと同じ無邪気さをはじけ合わせている。
どの子にしようか――?
ふと遠い目になった俺の傍らに、人影が立った。
ふり返るとそこには、黒のストッキングに包まれた、豊かなふくらはぎ。
「言ってなかった?こんどここの付属中学の先生になったのよ」
軽くウェーブのかかった黒髪が、大人びた落ち着きを帯びていた。
「おばさんになっちゃったらもう、相手してくれないのかな?」
イタズラっぽく笑う白い顔は、「そんなわけないわよね」という自信が満ちていた。
純白のブラウスの胸元を引き締めるリボンをほどいてやろうか。
それとも、黒のストッキングをブチブチを咬み破って、恥ずかしがらせてやろうか。
女の術中にかかって、早くも値踏みを始めた俺の目つきを。
彼女は面白そうに、窺っている。

身代わりのはずが。  ~女装する夫~

2015年12月14日(Mon) 07:56:46

頬や額やおとがいに、ファンデーションをくまなく塗りこめて。
まぶたには色濃いアイシャドウ。
仕上げに濃いルージュをサッと刷く。
妻から教わった、覚えたてのメイクは、まだまだつたなかったが。
肩先をそわそわとかすめるウィッグの髪に囲まれた顔だちは、
男の輪郭をかなり消すことに成功していた。

鏡台の前から起ちあがると。
身にまとったワンピースがふぁさっと揺れた。
丈の短めなワンピースのすそから入り込む外気のそらぞらしさが、
薄手のストッキングに包まれた太ももにまで、伝わってくる。

行ってらっしゃい。
かけられた声に振り向くと。
ドアの向こうに佇む妻が、貴志の女装姿を見つめていた。
貴志は無言で腰を折り、妻に会釈を返してゆく。
しぐさのほうは――かなり女になり切っていた。

幾晩も。
立場が逆だった。
真夜中、家を抜け出して。
吸血鬼に血を吸われに出かける、着飾った妻――
それをむざむざと見送っていたころの悔しさは、もう貴志の意識の中にはない。
首のつけ根につけられた咬み痕が、むず痒く疼いていた。


吸血鬼の支配下になりつつあるこの街で。
娘が血を吸われ、妻までもが血を吸われた。
処女の生き血を好む彼らの嗜好のために、娘の純潔こそまだ無事だったけれど、
既婚の女性はことごとく、吸血鬼に襲われると犯されていった。
貴志の妻もまた、例外ではなかった――

さいしょは屈辱にふるえ、仕返しを誓った貴志だったが。
やがてそれが不可能になると知ったころには、
妻も娘も、身体じゅうの血を舐め尽されようとしていた。
彼女たちの生命を救うには、方法はひとつしかなかった。
彼自身も、血を吸われてしまうこと。
提供する血の量を増やすことだけが、生き残るための道だった。

好んで脚に咬みつく吸血鬼のために。
娘も妻も、ハイソックスやストッキングを咬み破られて帰ってくる。
貴志は愛用していたストッキング地の長靴下を履いて、吸血鬼のもとを訪ねていった。

あなたの好みに少しは合いますかね・・・
皮肉のように口にした言葉を真に受けて。
吸血鬼はむしろ感激して、彼を部屋の奥へといざなった。
そうして、ソファにうつ伏せになるように貴志に求めると。
スラックスを性急にたくし上げて、濃紺に染まった貴志のふくらはぎにしゃぶりついてきた。
ほの暗い照明の下。
紳士用の長靴下は、妖しい光沢に包まれていて。
薄い靴下ごしに這わせた舌を、貴志のふくらはぎに迫らせた。
ドキドキした。
その瞬間、チクチクとした牙が二本、ずぶりと貴志のふくらはぎに埋め込まれた。

42歳の働き盛りの血液は、吸血鬼をいたく魅了した。
男は貴志の脚にとりついて、彼の生き血を吸い、また吸った。
母乳を求める赤ん坊のように、性急でしつようだった。
半熟卵の黄身を吸い出すように、血潮を吸い上げられてゆきながら。
貴志はどうして妻や娘がこの男の手中に堕ちたのかをさとった。
さとったときにはもう、遅かった。
彼は吸血鬼に求められるまま、靴下の舌触りをくまなく愉しませ、なん度もなん度も咬み破らせてしまっていた。
そのうえで。
妻を犯した一物をさえ、彼は受け容れざるを得なくなっていった。
こんなに猛々しいものが、妻の股間に埋め込まれたのか――
貴志は狭苦しいソファのうえで身をのけ反らせ、いつか悩ましいうめき声さえ、洩らしていた。
あとから尾(つ)けてきた妻が、ドアの向こうに佇んでいて、
不覚にもあらわにしてしまった媚態を逐一見られてしまっているのを気配で感じながら、
もう・・・どうすることもできなくなっていった。


妻と娘の血を守るため、身代わりになる。
そんな大義名分が、貴志の行動を支えていた。
彼は勤務先にまでやってきた吸血鬼のために別室を用意して、いつも気前よくスラックスのすそをたくし上げていった。
濃紺や漆黒の、薄手のナイロン生地になまめかしく染めたふくらはぎを、同性の情夫に愉しませるために――


あなた、みつえの制服着てってちょうだい。
きょうは具合悪そうなのよ・・・
妻の誘いは、悪魔の囁きだった。
父親のひょう変を、最初は娘らしい潔癖さで嫌悪した娘のみつえは、やがて両親に協力的になった。
貧血が治らずに学校を休まなければならないのに彼からの呼び出しがきたときには、
娘をかばうため父親が、身代わりに娘の制服を着て学校に脚を向けた。
リブ編みのハイソックスは丈足らずだったけれども。
彼は娘のハイソックスを目いっぱい引き伸ばして、吸血鬼を応接したし、
吸血鬼もまた、女子高生の制服を着た貴志のことを、あくまでも女学生として扱った。
お嬢さん、生き血をたっぷりといただくよ・・・そう呟きながら、欲情もあらわな唇を、通学用のハイソックスのうえから吸いつけていくことで。


丈の短いワンピースで女装した貴志が向かったのは、公園だった。
こうこうと輝く照明の下。
黒い影がひっそりと、佇んでいた。
奥さんだね?
ひとのわるいやつだ、と、貴志は思った。
貴志だと知っていながら、妻と勘違いをしたふりをしている。
だんなの目を盗んで、家を抜け出してきたんだね?
男はなおも、言いつのる。
助平な女だ。淫乱な女だ。
男はさらに、言いつのる。
それでもわしに、ストッキングを破かれたくて、また来たのだな。
貴志は意を決して、女になり切った。
エエ、弓枝です。
そうなんです。主人を裏切って、貴男に逢いに来ました。
仰る通り、淫乱なんです。
弓枝は淫乱な、いけない妻です。
貴志さんの妻なのに。夫を裏切るのが愉しいんです・・・

クックックッ。
男は忍びやかに嗤うと、貴志の両肩を抱きすくめようとした。
イヤッ!!
反射的に声をあげて、飛びのこうとしたけれど。
力強い猿臂に、たちまち圧倒されてしまっていた。
ああ・・・っ。
女だ。女になり切っている。自分のなかの女が、目覚めてしまった。
貴志は実感した。
けれどももう、どうすることもできなかった。
ああ・・・っ、あなたあっ。
どこかに夫であり男である自分自身の目が、いまの女の姿をした自分のことを、暗闇の向こうから見つめているような気がする。
男である貴志は、女になり切った貴志を、嫉妬の目で見つめている。
嫉妬は甘美な陶酔を呼び、幻の貴志はスラックスの股間に手をあてがって、自慰に耽りだしていた。
そうよ、あなた嫉妬するのよ。あたし、このひとに抱かれちゃうのよ。
あなたの奥さん、犯されちゃうのよ。
あたし、声をあげて、悶えちゃう。
悶えて、悶えて、悶え抜いて、感じちゃっているのを見せつけてあげる。
そうよ。あなたの男としての愉しみは。
あたしが犯されるのを視ながら、自慰をすることで満たされるのよ。

貴志のなかで目覚めた”女“は、いちど語りはじめた言葉を語り止めようとはしなかった。
さいきん、妻は警戒している。
自分よりも、娘よりも、貴志の出番のほうが多いのだ。
妻が女として、自分に嫉妬していることに。
貴志は奇妙な誇りを覚えた。

夫が万一、血を吸い尽されてしまったら。
未亡人の装いで、黒のストッキングを破らせてしまおう。
今やそんなことくらいしか頭にないはずの妻が、むしょうにいとおしい。
首すじに食いついた唇が、傷口につよく押し当てられて。
貴志の温かい血を、ぬるり、ぬるり、と、抜き取ってゆく。
おぞましかったはずの感覚が、いまはゾクゾクとつま先立ちしたくなるほどの歓びを帯びていた。
もっと、吸って・・・もっと、吸って・・・ああ、素敵。吸い尽しちゃって・・・っ。
抱きすくめられた猿臂の力強さが、心地よい。
女の感覚として、歓ばしい。
男が貴志の失血ぶりを察しつつ、加減しながら血を吸っていることさえ忘れて、
彼は忘我の中で、叫んでいた。
貴男になら・・・あたしのたいせつなもの、全部あげちゃうわ・・・っ。


あとがき
初めは気が進まないながら、妻や娘の身代わりに血を吸われるようになった男が、
女の身なりをして吸血鬼の応接をくり返すうちに目覚めてしまう。
けっこう好きなパターンなんです。^^;

姦の村 4  二度目のお嫁入り

2015年12月14日(Mon) 04:21:40

さいしょはまるで強姦だったと、いまでも思う。
あなた!あなたあっ。助けて~っ!
肌色のパンストを履いた脚を、思い切りじたばたさせて、
薄い唇から覗いた白い歯を、思い切り歯ぎしりさせて。
冷や汗の浮いた白いうなじを、思い切りのけ反らせ、激しくかぶりを振りながら――
股間を突き抜かれてしまうと、
ぎゃあーっ!
と。断末魔のような絶叫をあげたのだった。

いまでもそのときのことは。
逐一ビデオに、残されている。
こんなのを表ざたにされたら、あんたがた夫婦もお困りだろう。
そういってほくそ笑む長老は、そのビデオを気前よく、無償でわたしに手渡してくれて。
心ばかりのお礼にと、妻を残して夫婦の寝室を明け渡してやって。
そうとは察しながらも、相手の思うつぼにはまっていった夜――

そのビデオはいまでも、三人の間での宝物。
必死になって操を立てようとしてくれた妻に、わたしは感謝をくり返して。
貞淑な妻を明け渡してやったわたしに、長老も感謝をくり返して。
主人のまえで女の歓びを教えてくれたと、妻は長老に感謝をくり返す。
長老は妻に、いい身体と声をしとると賞賛し、
妻はわたしに、不倫を許してくれたわたしの度量を賞賛し、
わたしは長老に、妻をイカレさせた男っぷりを、同じ男として賞賛する。
屈辱まみれだったはずの凌辱場面は、いまは記念すべき三人のなれ初めの記憶。

赴任期間が切れて、村を出て行かなければならなくなったとき。
長老は妻に、求婚をした。
わたしのまえでの告白だった。
だんなを独りで行かして、わしと暮らしてもらえんか?
妻は言下に、そうします、と、応えていた――

この村から、単身赴任してね。
私――この方のところにお嫁入りしますから。
エエ、法的にはずっと、あなたの妻。
あなたがこの家に戻ってくるときも、あなたの妻。
でもあなたは、妻である私を、このかたに寝取らせ続ける義務を負うの。
私のこと犯されて嬉しいあなたが受ける、当然の罰よ。
甘美な毒を含んだ妻の非難は、半ばは本音。半ばはからかい。
転勤を控えたわたしは、妻と長老とを結びつけるため、
自宅を祝言の場にして、皆を招いた。
そう、妻が初めて犯された座敷を――わたしは妻を公的に開放する場に選んだのだ。

妻が脚に通していたパンスト一足だけを手に、わたしは村を出る。
そのパンストは、あの夜妻が穿いていたもの。
むざんに破けたパンストのすき間から覗いた白い脛は。
いまでも記憶のなかに鮮やかだった。
都会育ちの婦人が帯びた気品のシンボルだったパンストを。
いまでは劣情滾るよだれにまみれさせ、愉しませるために脚に通す妻。
そう――きみと、きみをそこまで堕とした彼とは、たしかにお似合いだ。
そして――きみと、きみがそこまで堕ちるのを視て愉しんでしまったわたしも、やはりお似合いのはずだ。

長老が妻のために用意した妾宅に、妻を伴うとき。
わたしは手を取って、彼女を助手席に乗せた。
夫婦としては、最後のドライブだった。
二度目のお嫁入りね。
妻は目を細めて、ノーブルに笑う。
白のパンプスにお行儀よくおさまった足の甲は、真新しい肌色のパンストに包まれて、
この村に来るまでと変わらぬ気品を帯びていた。


あとがき
前作までの主人公・嘉藤の上司である、長柄次長が主人公となったお話です。
公認不倫の末夫婦が分かれてしまうのは、柏木のなかではバッド・エンドなのですが。
ここまではギリギリでアリかな と思います。
ほとんど奪い尽されてしまっているはずなのですが、夫婦は夫婦の余地を残しています。
その部分が、独り都会に帰ってゆく長柄次長の活力になっているようです。

姦の村 3  村から離れても。

2015年12月14日(Mon) 03:47:53

毎晩のように列をなす、夜這いの男たち――
そのなかに、職場の上司を見出したのは。
ひと月と経たないころのことだった。

妻を差し出したものはだれでも、その村の女を抱くことができる。
男衆のひとりが教えてくれた村の掟そのままに、行動した結果に過ぎなかった。
「すまないね、嘉藤くん。奥さんには以前から、執心だったのだよ」
長柄次長はそういって、すこしだけ申し訳なさそうな顔をしたけれど。
村の掟のなかではもちろん、そうしたことも受け入れなければならないと、
妻をさいしょに犯した男から、告げられていた。

もちろんわたしも、そうした資格を与えられた一人だったけれど。
妻以外の女性を抱くことは、ついになかった。
妻がほかの男に犯される。
見慣れたスーツを着たまま犯される。
着飾った衣装をはぎ取られながら、凌辱されてゆく・・・
そんな光景にゾクッと感じてしまった以後、わたしは別人のようになっていた。
いや、そうではなかったのかも。
性格検査が見通した知り得なかった本能が。
異常な風習がまかり通るこの村で、初めて開花しただけなのかも知れなかった。
「気にしなさんな。そういう人もたんと居るから」
妻をさいしょに犯したその男は、わたしをかばうようにそう囁いた。
「わしらにとって、あんたのような旦那は、とても都合がエエもんでのう」
目じりを好色そうに皺寄せながら、男は上目遣いにわたしを見た。

そんなわたしのことだから。
日常職場で上司として顔を合わせている長柄次長が、妻を抱きに訪れたとしても。
日常を踏み破る昂ぶりを、いっそう強く感じただけだった。
長柄次長と妻との交情は、ほかの男どもと同じように、2~3日に一度くらいの頻度で、つづけられていった。

3年後。
長柄次長は転勤になった。
奥さんを村において、単身赴任するということだった。
お互いの家同士、家族ぐるみの交際が始まっていたこともあって。
妻は長柄夫人と連れ立って、法事の手伝いなどに呼び込まれては。
左右に並べられて仰向けに押し倒されて、
「奥様っ!?」「おくさまあ・・・っ!」
と、呼び合いながら。
ブラックフォーマルの装いもろとも、
輪姦される都会妻を、演じつづけていた。

長柄夫人が、村の長老のひとりと再婚したのは、それからしばらくしてのことだった。
法的には、長柄夫人のままだった彼女は、夫の臨席のもとで長老と祝言をあげると。
長柄の家を出て、長老の用意した妾宅へと、移っていった。
たまに長柄が村の家へと帰宅すると。
そのときだけは、ひとつ屋根の下で時を過ごすのだったが。
迎えた夜の半分以上は、夜這いをかけてきた長老が、
長柄のまえで己の男っぷりのよさを披露することで過ぎてゆくという。
「それがたまらんのだよ」
淡々と語る長柄次長は、立ち戻った都会で吹き溜められたストレスを、
村での非日常の体験で、散らしているようだった。

5年間の村での生活を終えたわたしたちが転任した先は、都会の事務所。
事務所の責任者は、長柄次長だった。
職場では、謹直そのもの。
仕事の運びようも、依然と変わらず堅実そのものだった。
村においた妻がまさかその土地の長老に奪られてしまい、
その奪られたことを快感にしているなどとは、おくびにも出さずに・・・

そんな日々が始まって、一週間と経たない頃に。
帰宅したわたしを、妻はウキウキと迎え入れていた。
「お誘いを受けているの。長柄次長に」
え?と訊き返すわたしに、
妻は携帯の画面を見せつけた。
「ご主人に内緒で、いちどお逢いしませんか?」
アドレスは、まごうことなく彼のものだった。

次長が待つという、ホテルの一室に。
わたしたちは夫婦で、お伺いをした。
ときならぬわたしの来訪を、ふしんそうに迎え入れた彼のまえ。
わたしはきちんとあいさつをして、告げている。
「妻を犯していただけませんか?わたしのまえで・・・」

妻が用意したロープで、ぐるぐる巻きに縛られたわたしのまえで。
妻はなにかから解き放たれたように、長柄次長のほうへと軽やかに身を移していって。
ウキウキとした笑みをたたえ、にこやかに言った。
「ふつつかですが、どうぞよろしく」

こうして、村での風習が生んだ婚外性交は、都会での公認不倫に塗り替えられた。
夫婦の風景がふたたび替えられた、記念すべき夜。
きちんと装われたスーツはしどけなく乱されてゆき・・・
都会の一隅で、村の光景が再現されてゆく――

姦の村 2 父娘ほどの年齢差。

2015年12月14日(Mon) 03:22:27

妻が総てを体験してしまうまで、さほどの日数はかからなかった。
村の男衆の数は、知れたものだったから。
そのわずかの間に妻は、十代から七十代まで、あらゆる男どもとセックスをした。
毎晩、よそ行きのスーツに着飾って
納屋に引きずり込まれた都会育ちのスーツ姿は、泥とわらとにまみれながら、
飢えた唇のまえ、白い裸身をさらけ出していった。

ひと通り、男たちと身を重ねてしまうと。
妻を気に入ったものだけが、わたしの家に夜這いをかけるようになった。
庭先から雨戸をほとほとと叩く音がすると。
わたしは男たちを居間へとあげてやり、
妻はいそいそと、都会仕立ての服へと着替えてゆく。
洗練された衣装や、すべすべとしたスリップ、それになまめかしいストッキング。
そんな装いに、泥臭い彼らは無性に焦がれ、むやみと汚したがるのだった。
そんな彼らの感情も、わからないではなかったのだ。
なにしろ、わたしにしてからが、
着飾った妻が泥まみれにされ辱められてゆくのを目の当たりにすることに、
不覚にも歓びを見出してしまっていたのだから。

どちらかというと、妻は年配の男性に好まれるようだった。
そのほとんどが、父親くらいに年齢差のある連中だった。
彼らは息荒く妻にのしかかって、ごま塩頭を乳房の間に埋め込みながら、
鍛え抜かれた浅黒い臀部を、たくし上げられたスカートの奥へと肉薄させてゆく。
ほんとうに、還暦を過ぎたほどの連中なのか?そう疑うほどに、彼らの精力は凄まじく、
妻を犯されながらも、同じ男として賞賛を禁じえなくなっていた――

「親孝行をしているみたい」
父親を早くになくした妻は、そういいながら。
劣情もあらわに迫ってくる男どもに甲斐甲斐しく接していって。
突き出される鎌首を唇で受け、舌で撫でまわしては、吐き出される粘液を呑み込んでゆく。
そんな奉仕ぶりがまた、気に入られていって。
男どもは引きも切らず、我が家への夜這いをくり返してゆく。

「服を破かれると感じちゃう。日常じゃなくなるみたいな気がするの」
きちんとした服装をしつけられてきた妻は、そういいながら。
衣装もろとも踏みにじろうとする男どものまえ、着飾ることをやめようとはしない。
どこまでも取り澄まして。
夫がいるんです。失礼です。やめてください・・・
制止の言葉をわざとのように口にしながら、押し倒されてゆき、
都会妻の衣装を引き裂かれながら、欲望に屈してゆく――

姦の村

2015年12月14日(Mon) 03:05:50

あの村から離れた安ど感と寂寥感とは、体験したものでなければわからない。
あの村に戻る緊張感と開放感とは、やはり体験したものでなければわからない。

赴任すれば夫婦もろとも、乱交の渦に巻き込まれるといわれるその村に。
綿密な性格検査や素行調査の上選ばれた者だけが、赴任を許される。
もちろん、そんな切羽詰まった場所に吹き溜まるのは、
いろいろな事情を抱えた、訳ありのものばかり。
お互い顔を突き合わせても、話題にする場合そうしない場合・・・
それらをことごとくわきまえ合いながら暮らしていけるのは、
抱えた労苦がただならないものだったからに違いなかった。

女とみれば見境なく抱きたがる男衆であふれたこの村に。
わたしが妻を伴って赴任したのは、5年前。
妻にとっては、30代の最後の夏だった。

「なにも感じないから」そう誓ったはずの妻は。
ぐるぐる巻きに縛られて、畳の上に転がされたわたしの目のまえで――
はぁはぁ、ぜーぜーと、よがり狂いながら、犯されていった。
あなたがМだっていうのは、ほんとうなのね。
振り乱したままの髪を、帰り道の夜風に流しながら、妻はフフッと笑っていた。
蔑むような笑いではなかったことに、わずかな救いを認めながら。
わたしは来た道を戻ろうと、妻を誘っていた。
底知れない欲情のとぐろを巻いた男たちの影が澱む、その座敷へと。

もう一度、妻を目のまえで犯してほしい。
紙一重の差で仇敵になっていたかもしれない男たちのまえ、
わたしはそんなまがまがしい希望を、頼み込んでいて。
妻は着づくろいもままならないほどに乱された着衣を、どうにか体裁を整えていて。
これだけはと穿き替えた肌色のストッキングが、男たちの毒々しい欲情を、いっそうそそったのだけは、伝わってきた。

はぁはぁ・・・
せぃせぃ・・・
妻は息遣いも切なげに、のしかかってくる男たちをひとりひとり、応接して。
わたしはそんな妻の痴態を前に、独り昂ぶりに身を任せていた。

夫婦の運命を変えた、記念すべき夜。
田舎の空は、満天の星に彩られていた――

いやらしいです。迷惑です・・・

2015年12月14日(Mon) 02:29:33

いやらしいです。迷惑です・・・
そういいながら。
スーツ姿の妻は、ふくらはぎを咬まれていった。
穿いていた肌色のストッキングを、むざんにびりびりと、破かれながら。

いやらしいです。迷惑です・・・
そういいながら。
ブラウスのえり首のすき間から、妻は首すじを咬まれていった。
赤黒い血潮をぼとぼとと、真っ白なブラウスに散らされながら。

いやらしいです。迷惑です・・・
そういいながら。
妻は素肌を、吸われていった。
はだけられたスーツの合間から、素肌をチラチラ覗かせながら。

いやらしいです。迷惑です・・・
そういいながら。
妻は下着を、はぎ取られていった。
小娘みたいな恥じらいで、頬を桜色にほてらせながら。

こうなることを、本能で予期していたのか。
生き血を吸われる最初から。
妻は恥じらいつづけていた。
ブチリ、ブチリと、ブラジャーの吊りひもを引きちぎられて。
サリサリ、パリリと、ストッキングを引き裂かれて。
はぁはぁ、セイセイ、あははははぁん・・・っ。
切なげな吐息に、媚びをいっぱいにまみれさせながら。
妻はわたしのまえで、堕ちてゆく――

いやらしいです。迷惑ですよ。
困惑の色をわざとらしく滲ませながら。
わたしは吸血鬼に、抗議をしたけれど。
もうふたりとも、聞いてはいない。
ただひたすらに、乱れ合って――
服従を悦んで受け容れる妻に、征服された妻を視て歓ぶ夫――
わたしたちは互いのまえで、堕ちてゆく――

相手の都合。

2015年12月14日(Mon) 00:35:53

(少女の日記)
朝8時。
いつもと同じころに家を出た。
出がけにママから、「気をつけてね」って言われて、あたしはちょっとだけ、ぞっとした。
そういえば、いつも表通りまでいっしょに出かけるパパは、早めの出勤だといって、とっくに家から出かけていた――
開け放たれた玄関の向こうに広がる外の風景が、いつになく薄暗く感じた。

(解説)
この街は吸血鬼に、征服されつつあった。
市内の中学・高校はいずれも吸血鬼を受け容れてしまっていて、
学校の周辺に出没する吸血鬼に若い血液を提供するためのルールを構築していた。
ある学校では「接遇」という科目を設けて、供血行為を正課として採用しているし、
別の学校では白昼堂々と来校して生徒の血を欲しがる彼らのために、出席番号順に当番を決めて相手をさせていた。
この少女が通う学校も例外ではなく、採血の対象となる女子生徒が日ごとにスケジューリングされていた。
当日血液を提供する義務を負う少女は、登校する際に保護者から、「気をつけて」と声かけをされることで、自分の役割を自覚した。

(少女の日記)
表通りに出るすぐ手前で、詩織ちゃんと出会った。
おはよう~と明るく声を交し合い、一瞬吸血鬼の予感を忘れることができたのだけど。
それはほんとうに、一瞬のことだった。
詩織ちゃんの履いているハイソックスの、真っ白なはずの生地が、ふくらはぎのあたりにべっとりと血のりをあやしていたから。
「どうしたの?」って訊くと、「彼氏に噛まれたの」とだけ、いった。
詩織ちゃんには特定の吸血鬼がついていて、いつもその人に血を吸わせていると聞いていたけど。
実際、その証拠をあからさまに見せつけられると、本能的な嫌悪が先に立つ。
あたしだって・・・
血を吸われた経験は何度もあるし、そういうこの街の日常に慣れかけてしまってはいるのだけれど。
それでも――噛まれるときの瞬間の恐怖と、血を抜かれるときのどうしようもない嫌悪感や敗北感だけは、どうすることもできないし、それを忘れてはいけないのだと思う。
忘れてしまう――ということは、恥を忘れることにつながるような気がするから。

(解説)
吸血鬼たちは、制服姿の少女を好んで襲っていた。
ブラウスの襟首を汚されることをきらう少女たちは、タイツやハイソックスを履いたふくらはぎを噛ませることで、相手の吸血鬼を満足させるよう努めていた。
穴の開いたタイツや血の付いたハイソックスを履いて登下校する獲物の姿を遠目に見守るのが、彼らの意地悪い嗜好のひとつだったのである。

(少女の日記)
近づいてきた定期試験の追い込みがそろそろ。
二時限目の数学では、絶対聞き落せないところがあった。
三時限目の現代国語では、試験範囲の説明がある。
・・・(略)・・・
放課後には、生徒会役員の打ち合わせ。
来年度の予算決めなので、絶対出席しなければ。
吸血鬼なんかに、襲われているひまなんかないのに・・・!

(吸血鬼の走り書きメモ)
きょうのターゲットについて。
氏名
 瀬藤まなみ 16歳 
所属
 私立〇〇学園 2年B組 学級委員と生徒会役員(書記)を兼務。
当日のスケジュール
 一時限 化学 本人の不得意科目。ただし授業態度は熱心
 二時限 数学 授業中、本人の不得意部分についての詳細解説の予定あり
三時限 現国 定期試験に関する説明を含む授業
・・・(略)・・・
放課後 生徒会役員打ち合わせ
本人にとって、特に忙しい予定が集中しているもよう。
上記は母親から聴取。
父親との関係も良好であり、家族間のコミュニケーションは深いようである。

(少女の日記)
三時限の真っ最中、またもあかねちゃんが、授業中に吸血鬼に襲われた。
そいつは突然、教室の後ろのドアを開けて入り込んできて、
最後列の座席に座っていたあかねちゃんの背中を羽交い絞めにすると、
やおら首すじにかぶりついたらしい。
叫び声を聞いたみんながふり返った。
でも先生は何事も起こらなかったような態度で授業を続け、
みんなもすぐに180度目線を移して、吸血シーンから黒板の板書に集中した。
おかしい。なにかが、おかしい・・・
でも、だれもそれを咎めることはないし、話題にすらのぼらない。
そうしたよそよそしい空気のなかに、あたしもいる。

(吸血鬼の呟き)
ターゲットの教室であるB組の三時限目を襲ったのは、Dだった。
俺の生前、俺と妻とを食い物にした男だった。
もともと露悪的な性格で、授業中とか、友達と廊下を歩いているときとかにターゲットを襲うのを好んでいた。
俺と妻の時も、血を吸われて眩暈を起こしてへたり込んだ俺の前で、これ見よがしに妻の生き血を吸い上げて、セックスまで遂げていった。
それに昂奮を感じてしまった俺も俺だったが、妻はそんな俺の態度を赦してくれた。
気持ちよかったから・・・それを大っぴらにできることに救いを感じる と。
倫理観や常識を、お互いの感情の利害の一致が吹き消していた。
やつはそういう、Мな天性の持ち主を見分ける嗅覚を持ち合わせていた。
襲われた生徒はもちろん同情に値するが、意外に状況を愉しんでいることは容易に想像できる。

(少女の日記)
六時限目まで、なにごとも起こらない。
出がけにママが呟いた「気をつけて」は、そういう意味ではなかったのかも?
でも、これからが大事なんだ。
生徒会の予算決め。
書記のあたしは、いろいろやることがある。
長い廊下を独り生徒会室に向かう。
襲われませんように。お願いだから、今出てこないで・・・
そんな想いだけを胸に抱きながら、人けのない廊下を急ぎ足で歩いた。

(吸血鬼の呟き)
嗜血癖がついた俺を、妻は見捨てることをしなかった。
妻はDの、いわゆる「オンリーさん」になっていたが、
夫婦間での供血は認めらていたので、
Dの許しを得つつも俺への献血を続けてくれた。
「次はいつ」
血を吸った相手にそんなふうに呟いてしまうと、「オンリーさん」になってしまうのだ。
「オンリーさん」になると、血を吸わせる相手はその男だけに限定される。
そういう意味では、気が楽になるのだと・・・あとからわかった。
以来妻は、Dに対しては文字通り献身的に、生き血を捧げつづけているのだが・・・
夫である俺としては、かなり複雑な気分ではある。
代わりに得たのが、いまの立場。
妻の生き血を日常的に吸われ、貞操をほかの男と共有する日々とともに、
女子学生をより取り見取りに襲うことができる特権を享受する。
きょう一日・・・あの少女をいつでも襲うことが許されていた。

びくびくしながら長い廊下を歩く少女の胸中を、俺は手に取るように察し尽していた。

(少女の日記)
生徒会の打ち合わせが終わると、あたしはだれもいなくなった廊下を抜けて、教室に戻った。
教室にも、もうだれもいなかった。
襲われるとしたら今?って思ったけれど。
夕暮れ迫る刻限なのに、妙に明るく感じられた。
今朝の朝らしくない昏(くら)さが、うそのよう。
ママの囁きはほんとうに、他意のないものだったのか?
あたしは鞄を手に取って、教室を出た。
念のため、真新しいハイソックスに履き替えて。

(解説)
当校のハイソックスは指定品で、校内の購買でいつでも購入可能である。

(少女の日記)
やっぱり――
あたしは目がくらむ思いだった。
男は家の近くの路上で、あたしのまえに立ちふさがったのだ。
手を引かれて近くの公園に引きずり込まれたあたしは、力いっぱい逃げ回った。
もちろんそんな努力は、徒労に終わるのだけど・・・
そうするしか、そのときのあたしには、選択肢がないと感じていた。
いよいよ追いつかれて羽交い絞めにされてしまうと。
やだ!やだ!放して!怖いっ!
あたしは思いつく限りの拒絶的な言葉で、訴えつづけた。
わかっているはずだ。
男のひと言が、あたしを黙らせた。
み・・・見逃してっ。
あたしはさいごに、そういった。
無理だとわかっているはずだ。
男は冷酷に、そう呟いた。
ずっとあたしのこと、狙っていたのね?
ああそうだ。朝からずっと。
どうして今なの?
生徒会の打ち合わせ、ご苦労さん。
男のひと言に、あたしの気持ちが崩れた・・・
こいつはなにもかも、知っている。

(吸血鬼の呟き)
少女はがっくりと、身体の力を抜いた。
飢えた唇が、うなじに触れさすと。
うなじに帯びたぬくもりが、ひどく心地よかった。
きょうの大事な御用は、ぜんぶ済ませたようだね。
俺は少女に引導を渡すつもりで、そういった。
少女はためらいながらも、こっくりと頷いてくれた。
俺はあてがった牙をそのまま、少女の柔らかな皮膚に、埋め込んでいった。
忘我のひととき――
この娘にとっては、身の毛のよだつ瞬間の連続にすぎなかっただろうけど。
俺にとっては、渇ききったものすべてを、暖かなねぎらいで満たす貴重な刻だった。

(少女の日記)
「次はいつ」って、しぜんと呟いていた。
男はビクッとしたようにあたしのうえから身を浮かせ、「いいのか?」って、訊いてきた。
「授業中に襲われるよりはまし」って、本音で応えていた。
いずれは、だれかのものにならなければならないのなら。
まだしも、こちらの事情を考えてくれるひとのほうがましだったから。
男は嬉しげに、あたしの足許に舌をしゃぶりつけてきた。
真新しいハイソックスが意地汚くいたぶられ、ずり落ちてゆくのを、どうすることもできなかった。
信じられないことに、あたしはそのとき、「咬んで」って、言っていた。
制服の一部であるハイソックスが咬み破られてゆくのが、ひどく小気味よかった。
夜風に乱れた髪を流されるままにしながら、あたしは目いっぱい、あたしの血を男の渇きを満たすために、ごちそうしていた。

(少女の日記)
朝7時――
いつもより早く、家を出る。
ママは今朝も「気をつけて」って、声をかけてくれた。
二人きりで約束をするようになっても、あの男は律儀にも、ママにも予告をしてくるらしい。
あいつがママの浮気相手だとわかった今も、あたしはごくしぜんに、あいつのことを受け容れていた。
何もかも知っているらしいパパは、ママのことを責めたりはまったくしないで、ふつうに接していたし、
昼間に人間の仮面をかぶって時々うちにくるようになったあいつとも、ごくしぜんにやり取りをしている。
そして、パパが出かけた後、ママが血を吸われ、あたしもハイソックスを破られる。

学校を早く出るときは、パパとは別行動になるけれど。
あたしが家を出てすぐに、パパも家を出るのだという。
そして、公園で待ち合わせているあたしが、ハイソックスを真っ赤にされてしまうのを、遠目に見届けてから、出勤していくのだという。

「おはよう」
詩織ちゃんはきょうも、血のりの付いたハイソックスを履いている。
「おはよう」
返事を投げるあたしも、血の付いたハイソックスを履いている。
通りかかる人たちがふり返るのを、気にもかけずに。
むしろ見せびらかす快感をさえサバサバと感じながら、
あたしたちはいつものように、通学路をたどってゆく。

婚約者のゆう子さん

2015年12月10日(Thu) 06:18:15

婚約者のゆう子さんは、大きな瞳を見開いて、
わたし以外の男を視てる。
男はゆう子さんに、生き血を吸わせろと要求し、
ゆう子さんは素直にこくりと頷いて、男の欲求に屈してゆく。

若い血を吸い尽されてしまったわたしは、生ける屍。
その身代わりに、ゆう子さんは、わたしに伴われるまま吸血鬼への訪問をくり返して、
うら若い血潮を、吸い取られてゆく。

わたしのときには、ひと思いだったのに。
ゆう子さんの生き血は、ちびりちびりと、愉しまれながら、吸われてゆく。

そんな情景を目の当たりにしながら。
わたしは、自分自身の喉の渇きが癒されるような気分になって。
ただうっとりと、ふたりが身体を重ねてゆくのを、見守っている。

彼女が犯されないのは、男が処女の生き血を好んでいるから。
けれども挙式の日取りが近づくにつれ、男の態度は露骨になった。
血を吸い取られるときにまさぐられる胸の疼きを、
首すじを吸ったついでにと重ね合わされる、自分の血を帯びた唇の生臭さを、
ゆう子さんはただ恍惚と、受け入れてゆく。

つぎは妹を・・・と、望まれている。
口にする処女の生き血を絶やさないため。
そして、ゆう子さんがわたしの妻となる直前まで、処女の生き血をたっぷりと、愉しむため。
おそらく挙式の前の晩――彼女はわたしのまえで、犯される。
けれどもそんな、忌まわしいはずの想像さえもが
わたしのことを―――狂わせる。

12月9日 8:13脱稿。

教え込まれて。

2015年12月10日(Thu) 06:16:33

息子のけんじが、初めて性の歓びを教えられた相手は、男だった。
父親よりもずっと年上のその男に、芝生のうえに組み敷かれていって。
ご自慢のサッカーストッキング以外、すべてを脱ぎ去った身を陽射しの下に曝しながら、
セイセイとあえぎ声を洩らしていた。

男がつぎに狙いを定めたのは、わたしの妻だった。
息子が手引きをして、男の夜這いを許したのだ。
スカートの奥をまさぐられてしまった妻は、
肌色のパンストをむしり取られて、
不覚にも濡らしたショーツをつま先まで降ろされて、
奥さん、濡れてるね・・・って、からかわれながら。
スカートの裏地を、どろどろとした淫らな粘液に染められていった。

男は息子をそそのかして、
母さんから女の愉しさを教わるとよい・・・と、背中を押した。
すっかり買いなさられてしまった妻は、男の命じるままに、
黒のパンストを脚に通して、息子を誘惑した。
毛脛を荒々しく摺り寄せられて、肌色のパンストをしわくちゃにたるませていったように、
重ね合わされてくるサッカーストッキングのしなやかなふくらはぎに、
黒のストッキングの脚を、巻きつけていった。

息子が初体験を覚えたときも。
妻がわたし以外の男を初めて識ったときも。
そして息子が、母親を相手に筆おろしを遂げたときも。
わたしは男に、「おめでとう」と囁いていた。
遠い若い日。
わたしの股を初めて割ったのは、あの男だったから。

12月9日 7:54脱稿。

それぞれの時代。

2015年12月10日(Thu) 06:15:34

ハイソックスが流行っていなかった、私の学生時代。
丈長の靴下を、目いっぱい引き伸ばして。
ふくらはぎを咬みたがるあいつに、サービスしていた。
真新しいしなやかな生地にしみ込む、生温かい血潮の感覚に。
ひとり、胸震わせていた。

社会に出たころには、サポートパンストなるものが、流行り始めていた。
強度が強く、いままでよりも発色が鮮やかなストッキングを穿いた脚に、
あいつは夢中になって、しゃぶりついてきた。
光沢よぎるふくらはぎに、よだれをたっぷりとなすりつけられて。
それでもあたしは、ボディコンといわれた流行りの服を着たまま、
脚をばたばたさせて、はしゃぎ切っていた。

ルーズソックスが流行ったころは、三十代の主婦。
ラブホテルの部屋のなか。セーラー服に着替えてやって、
長すぎる分厚い靴下を、くるぶしの当たりでぐにゅっとたるませて。
やっぱりお前イカスよという、ウソだらけの囁きを、
あえて真に受けて、うなずいていた。

おばさんタイツに身を包む日々も、
たまにはと張り切って、今夜も薄々のストッキングを穿いて。
淹れたてのお茶を、部屋へと運び込む。
あなた、よろしかったら今夜もいかが?
刺激的だった毒のある誘惑は、いまでは情けないほど穏やかな、優しい声。
永年連れ添った吸血鬼の夫は、
いつになく優しく、ふくらはぎを咬んできた。

12月9日 7:35脱稿

初夜。

2015年12月10日(Thu) 06:14:11

20代の若い血を吸い取られたわたしは、婚約者のゆう子さんを伴って
あの男の待ち受ける密室を、訪ねてゆく。
わたしの血を吸い取ったあの男に、処女の生き血を与えるために。

悪堕ちとか、寝取られとか、人はいうけれど。
これはあくまでも、崇高な使命。
師と仰ぐひとに、最愛の人を引き合わせて。
そのひとの秘めた生命力と若さと熱情を、
底知れぬ渇きを癒しつつ、愛でていただくという・・・

なにも知らない、わたしの未来の妻は。
もうひとりの夫に初めて仕えるために、呪われた扉を押し開く。
処女にとっては最も忌むべき、好色な唇を
その白い首すじに吸いつけられるために。
キリリと張り詰めた若いOLにとっては最も厭うべき、淫らな腕に
純白のブラウスの襟首を、押し拡げられるために。
礼儀正しい婦人としては最も嫌悪すべき、不潔な舌に
足許に透きとおるパンティストッキングを、
破けた蜘蛛の巣のように、チリチリに咬み剥がれてしまうために――

12月9日 7:32脱稿

呼び出された妻のつぶやき。 ~吸血接待業。 3~

2015年12月07日(Mon) 08:14:29

そんな怖いこと止めて・・・って、あたしは言ったんですよ。
いくら多重債務があるからって、吸血鬼の相手をするなんて。
でも支払いが明日に迫った数百万円をどうすることもできないで、主人は出かけていきました。
あくる朝支払いを済ませて主人が家に帰ってくると、久しぶりに抱き合いました。
生きてくれていてよかった って。
身体に無理がないよう、依頼が来るのは多くて週に一度。
それでどうにかやっていけるからって。
主人はあたしまでこの商売に身を浸さないで済むようにと、考えてくれているようでした。
あたしで良かったら、いつでも代わりをするからと。
そうあたしが声をかけたとき。
主人は怖ろしいことを、言いました。
セックス経験のある女性の血を吸うときはね、セックスまで強要されちゃうんだよ。
あたしは、主人しか識りませんでした。

そんな主人から電話がかかってきたのは、アルバイト先から。
「アルバイト」というのは、自分の血を吸わせるという、本業よりも収入の多いあの副業のことを口にするときの、夫婦だけにわかる隠語でした。
そろそろ寝ようという刻限でした。
出てこれないか?着替えの服と、ストッキングの穿き替えをもって。
主人の言わんとしていることは、すぐに察しがつきました。
「気が合えば、奥様を紹介頂ける方ならなお可」という、主人を指名した人の条件を思い出しました。
わるい人ではないのだろう。
主人の声色からそう判断したあたしは、よそ行きのスーツに着替え、地味な肌色のストッキングを脚に通して、家を出ました。

主人の前でしたからね。
独りで待ち合わせるよりも、心強かったです。
初めて首すじを咬まれる時も、主人があたしのことを後ろから抱きとめて、介添えしてくれました。
主人の前でしたからね。
二人きりでお逢いするよりも、昂ってしまいました。
すっかり血を抜かれた主人は、犯されてゆくあたしのことを、どうすることもできないでいるようでした。

あなた、視ないで・・・視ないで・・・っ!って、言いながら。
いちど感じてしまうともう、止め処がなかったんです。
あなた、視て・・・視て・・・御覧になって・・・
あなたの奥さん、牝になっちゃうわっ。

それ以来のことでした。
夫婦そろってアルバイトに行く機会がグッと増えたのは。
お相手があの方に、ほとんど限定されていったのは。

吸血接待業。 2 若い既婚のビジネスマン

2015年12月07日(Mon) 07:53:42

「ストッキング地のハイソックスをたしなむ、既婚の若いビジネスマンの方。
(40歳位まで)
 お気が合えば奥様を紹介いただける方なら、なお可」
そんなオーダーが斡旋者からパスされてきたのは、金曜の夜のことだった。
早めに帰宅していたわたしはサッとシャワーを浴びると、妻に告げた。
「アルバイト行ってくる。帰りは遅いか朝になるから、寝てていいからね」
妻が感情を消した顔で頷くのを横目に。
ふだん穿きのスラックスをたくし上げると、黒の薄手のハイソックスを、するすると脚に通していった。

やあ、いらっしゃい。
ホテルのロビーでわたしを出迎えた吸血鬼は、思ったよりも若い感じがした。
わたしの表情を読んだのか、男はきまり悪そうに言った。
切羽詰まってしまってね。
通りがかりのメイドを一人、襲ってしまった。
まあここでは、そんなアクシデントはもみ消されることになっているようだけど。
吸血鬼の定宿として知られる、このホテル。
外見はふつうのホテルで、一般の客ももちろん受け入れるのだが、
吸血プレイのための場として、特定の客室を持っていた。
若いメイドの血と、もはやみすぼらしい中年男になり果てたわたしの血とが、彼のなかでいっしょに織り交ざるというのか。
あまり、美味しくありませんよ。
わたしは苦笑しながら、言った。「口直しが必要になるかも」と。
吸血鬼は笑って、「ご謙遜を」と、言ってくれた。

ベッドに仰向けになったわたしは、腕に献血チューブを挿し込まれる代わりに、首すじに男の唇を吸いつけられていった。
チクリ、と刺し込まれた牙が容赦なく皮膚の奥を抉り、あふれ出てくる血潮を舌をふるいつけて啜り取ってゆく。
意外なくらい熱っぽく、男はわたしの首すじにからみついた。
わたしたちは愛人どうしのように、狭いベッドのうえに身をひしめき合わせながら、熱っぽく吸い、吸われつづける。
薄い靴下、穿いてきてくれたんですね。
男がそうささやくと、わたしは「御覧になりますか」と応じ、スラックスを引き上げた。
照明の下、肌の透ける脛が妖しい光沢に包まれて、ごつごつとした筋肉の隆起を浮き彫りにした。
ククク。
男は獣じみた含み笑いを、そのままふくらはぎへと圧しつけてくる。
あ・・・
わたしの声に応じずに、男は、薄いナイロン生地の舌触りを愉しむよう、にゅるにゅると唇を這わせはじめる。
しばらくの間。
わたしはうつ伏せになり、ストッキング地の靴下の舌触りを、男にサービスし続けた。
やがて牙が圧しつけられ、熱烈な口づけをしながら、咬み入れてくる。
あ・・・
わたしの声色もまた、熱を帯びてきた。
多重債務者の日常を隠すため、血液提供者として登録されて半月、いつか血を吸われることに快感を覚えるようになっている。
本来は苦痛であるはずのことが、苦痛を和らげる本能によって快感に変換される――きっとそういうことなのだろう。
咬み破られた薄い靴下に、生温かい血のりがしみ込むのを感じながら、わたしはすすんで献血に応じていった・・・

今度は、女もののストッキングを穿いてきてあげましょうか?
もう一度逢いたいと感じた吸血鬼は、彼が初めてだった。
面白そうですね。ぜひお願いしましょう。
男は快諾してくれた。
熱っぽい吸血プレイは、本心からのものだったらしい。
打ち解けた笑いが、お互いの頬にあった。
胸の奥がズキリ!となるようなことを言われたのは、そのすぐ後だった。
奥さんのストッキングも、ぜひこんなふうにしてみたいものですね。
男はわたしから吸い取った血潮を、まだ口許にテカらせていた。
妻の血が、この男のあごや口許を、こんなふうに彩る・・・
とっさに湧いた想像は、ひどくリアルだった。
「口直しが必要になるかも」
咬まれる直前、自分で口走った言葉を、わたしはありありと、思い出した。
「口直しなんかじゃ、決してありませんよ」
気遣う男に笑顔を向けて、わたしは携帯を手に取った。
「友里江?ちょっと出てこれないか?すこしおめかししてさ。着替えを一着、あとストッキングの穿き替えも、持っておいで」

吸血接待業。

2015年12月07日(Mon) 04:31:15

吸血接待業。
この街なかにはそういう職種が、ひっそりと存在する。
血に飢えた吸血鬼に癒しの場を与え、犠牲者が生命を落とす危険を回避するために生まれた職種。
特定の者だけに知らされた連絡ルートをたぐると、相手が姿を現して、
吸血鬼を受け入れる定宿で、血を提供する。
風俗業とよく似たシステムのおかげで、事情を知らないものが大半のこの都会でも、
本性をひた隠しにして隠棲しているものたちは、飢えずに済んでいる。

デパートの雑踏のなか、俺はさりげなく、俺の相手を待ち受けた。
濃紺のセーラー服に黒タイツの少女は、どちらかというと地味な造りの顔だちをしていた。
学校帰りに親と待ち合わせをしている優等生。まさにそんな感じだった。
「お待たせ。行こ。」
少女はニッと白い歯をみせ、まるで実の父娘のように、俺の傍らに寄り添った。

吸血鬼の定宿にも、なじみがあるらしい。
少女は黒のローファーに黒タイツの脚を、大またにして、
俺のまえに立つような歩調で歩みを進めた。
ドアを閉めてふたりきりになると、
少女はセーラー服の胸元のリボンをほどいて、手早く上衣を脱いでゆく。
いさぎよいほどの身のこなしだった。
「制服汚すと、やばいですから」
彼女はさっき作ったのとまったく同じ笑顔で、俺をふり返った。
真っ白なスリップだけは脱ごうとせずに、少女はベッドのうえに横たわる。
「どうぞ」
とだけ、少女はいった。
シーツを汚しても、ホテル内でクリーニングされる。
すべては完璧に、隠蔽されるのだ。
俺は息をつめて、目を瞑る少女の上へと、のしかかっていった――

ごくっ・・・ごくっ・・・ぐびり。
喉が渇いていた。汚らしい音をどうすることもできなかった。
露骨なもの音に、少女は顔をしかめながらも、吸血プレイに応じてくれた。
点々と血潮が散ったスリップのうえから、まだ控えめな胸の隆起を、俺はゆるやかにまさぐっていたが。
少女は気づかないようにして、腕をだらりとシーツのうえに伸べているだけだった。

静かになった少女の身体から身を起こすと。
濃紺のプリーツスカートの下を、掻きのけてゆく。
黒タイツに包まれたたっぷりとしたふくらはぎが、俺の好色な目を誘惑する。
「あ・・・」
気配に気づいた少女は、タイツを破らせまいとして脚をくねらせた。
それでもすぐに足首をつかませてしまうと、いった。
「タイツ破くの好きなんですか?」
「ええ、迷惑かな?」
「迷惑ですけど・・・お客様のお好みなら、しかたないです」
「そうか。すまないね」
俺は躊躇なく、少女の履いている黒タイツのうえからふくらはぎの一番肉づきの良いあたりに唇を吸いつけると、
口の両端から伸びた犬歯を突き立てて、ひと思いにタイツを咬み破った。

両方の脚にそうさせてしまうと、少女は無抵抗のまま、俺の行為を受け容れつづけた。
相手が処女の場合、みだりに犯すことは許されない。
俺もかろうじて理性を抑え、それでもぎりぎり許されている唇だけは、重ね合わせてしまっていた。
少女はこんなことにさえ、慣れているらしい。
むしろ積極的に、応えてくると。
「つぎはありそうですか?」とだけ、いった。
相手を気に入ると、またご指名が来る。
この少女もまた、家庭の事情か何かで、こうした客を取らなければならない境遇にいるのだろう。
「あるけど、身体もたないだろう?」
さりげなく気遣うほどに、少女に対する親近感が芽生えていた。
「そうですね。一週間くらい、いただけますか?」
「ああ、それくらいに来てもらえると、こちらも助かるよ」
「じゃあ、お約束」
指切りげんまんをしているときだけ、少女の横顔は幼げに映った。


一週間後――
おなじデパートの雑踏のなか、少女はこっちに向かって手を振った。
先日のビジネスライクな雰囲気とは変わって、人懐こい笑顔がそこにあった。
少女の傍らには、面差しのよく似た中年女性。
「母が心配だからって、いっしょに来てくれたんです」
少女は白い歯をみせながら、俺にそういって母親を紹介した。
「お嬢さんには、お世話になっております」
いささか悪のりが過ぎたあいさつに、お母さんは礼儀正しく応じてくれた。
「イイエ、こちらこそ娘がお世話になりまして」
まさに、”ご婦人”と呼ぶのがふさわしい受け答えだった。
「母もついてきます。喉、渇いているんでしょ?」
少女はイタズラっぽく、笑った。

部屋に3人きりになっても、少女はセーラー服を脱がなかった。
「スカーフが汚れるくらいなら、だいじょうぶですから」
俺は少女の首すじに食いついて、チュウチュウと音をたてて血を吸い取った。
お母さんの目のまえで、少女の発育を悦んでいることを、生き血を味わうことで見せつけていた。
「ア、ほんとにスカーフ汚したぁ」
わざと一滴したたらせた血潮に、真っ白なスカーフがシミをつくるのを、
少女はあっけらかんと受け入れていた。
「タイツも破る?」
たくし上げられたスカートの下、俺は這いつくばって脚を咬んだ。
「あー、もぅ・・・」
牙をチクチクと刺し込まれながら、脚のあちこちに咬みついて穴をあけられてゆくのを、
少女は面白そうに見おろすだけ。
やがて眼をとろんとさせてその場にへたり込んでしまうと。
彼女のお母さんが、覚悟を決めた顔つきで、ベッドの端に腰をおろした。
「薄いパンストは、もっと面白そうですね」
気絶した少女のすぐ目の前で。
気丈に振る舞うスーツ姿のお母さんを、俺は躊躇なく押し倒していった。


追記
おとといショッピングモールの雑踏のなかで、発想を得ました。^^

娘の制服代。

2015年12月07日(Mon) 03:54:34

自宅のリビングで。
妻は着ていたブラウスをはぎ取られて、犯されたままの姿勢で気絶していた。
かけつけたわたしを待ち受けていたその男は、「おかえりなさい」とぶっきら棒に声をかけてきた。
30分前、勤め先に電話をかけてきた妻の声は、切羽詰まっていた。
「あなた!早く帰って来て!家で男に襲われているの!」
男はその直後、躊躇なく妻を犯し、大胆にもわたしの帰宅まで待ち受けていたというわけだ。
「いったい、どういうことなんですか!?」
わたしの抗議を軽く受け流すと、男はいった。
「時々お邪魔するんで」

この村に赴任するときに、上司に言い含められていた。
「栄転ポストだよ。なにしろあそこは、社長の出身地だから。
 でも土地柄が、特殊でね。女とみれば見境なく抱いてしまう風習があるそうだ。
 奥さんは任地に帯同するのが、赴任の条件になっているから――どうなるかは、わかるだろうね?」
社長は生まれ故郷に報いるために、地元の雇用創出をうたって、この事務所をつくったのだが。
実態は、都会育ちの人妻を提供するために社員を赴任させたのだった。 
赴任の対象となる社員は、厳密な性格検査を経て選抜されていた・・・

覚悟してはいたものの。
いざこうなってみると、あきれてものが言えなかった。
妻はおっぱいをまる出しにして、ぶっ倒れていた。
白い乳房もあらわに、窓から射し込む陽の光に曝していた。
この村に赴任して、まだ一週間と経っていなかった。

「時々って・・・どれくらい?」
思わず口走るわたしに、男はいった。
「気が向いたらいつでも」
と。

翌日家に帰ると、妻は気に入りの紫のワンピースを着たまま、わたしの帰りを待っていた。
「私、浮気してしまいました」
妻は言いにくそうに、そういった。
昼間に紫のワンピースを着て外を歩いていたら、またもあの男に襲われたのだという。
(赴任してきた都会妻たちは、外出するときはよそ行きの服で聞かざることを義務づけられていた)
「この服・・・お気に入りなのに、破こうとするんです。
 ”この服だけはやめて!”っていったら、手を引っ込めてくれて・・・
 それで私、浮気することにしたの・・・その場で服を脱いじゃったんです」
わたしのことを恐る恐る見あげる妻の前には、離婚届が置かれていた。
わたしはなにも言わずに、その忌まわしい紙切れをくしゃくしゃに丸めていた。
「あいつといっしょになりたいのか?」
「イイエ、でも追い出されたら俺のところに来いって言われたわ」
――夫婦の選択は、ひとつしか残されていなかった。

あくる日帰宅すると、妻はまたもブラウスを裂かれて、床のうえで気絶していた。
「おかえりなさい」男はこのまえと同じように、ぶっきら棒にそういった。
「服破くの、趣味だもんで」
男は見当違いのことをいって、きまり悪げに頭を掻いた。
この土地の風習のままに動いているだけで、決して悪気はないのだ。
赴任したその日に、上司がわたしに言った言葉を、いまさらのように思い出していた。
「これ、洋服代。悪りぃから」
男は着崩れしたジャケットの内ポケットから、かねて用意していたらしい封筒をわたしに差し出した。
「いや・・・受け取れない」
受け取ってしまったら、妻に対する強姦同然のセックスを認めたことになってしまうような気がした。
「あー・・・そうだよな。かえって悪いことをした」
男はあっさりと、封筒を引っ込めた。
「こんど奥さん連れて、気に入った服を買うから」
男の言いぐさに、もはやわたしはなにも応えなかった。
妻が身じろぎをした。話し声に気づいて、われに返ったようだった。
「おかえりなさい」
目つきがとろんとしていた。
乱れた髪をけだるげに繕うと、「お茶淹れますね」といって、転がされていたじゅうたんのうえから起き上がった。
「すまない。もう少し、別れを惜しませてくれないか」
男のぶしつけな要求には応えずに、わたしは妻に声をかけた。
「お茶はふたつでいいから。お前と――この人の分」
勤め帰りの夫は、妻の浮気相手のために、そのまま外へと引き返したのだった。

外には出たものの、家から離れることはどういうわけか、できなかった。
庭先にまわり、縁側に腰をおろしたわたしは、隣家の人に気づかれないかと気にかけながらも、
家のなかの物音に耳を澄ませていた。
テーブルの上の茶わんが、ひっくり返る音。
蹴とばされたソファが壁にぶつかる音。
そして、妻の切なげなうめき声――
不覚にも、股間が逆立ち鎌首をもたげるのを、どうすることもできなかった。

それ以来。
妻はあの男と、ブティック通いを始めていた。
わたしが出勤してしまうと、もう自由の身だった。
三十代の人妻はショルダーバッグひとつを提げて、男と腕を組み、堂々と街なかを闊歩する。
裂かれた衣装の代わりを買ってもらうと、そのままラブホテルに直行して、夕方までをいっしょに過ごす。
男は律儀者らしく、わたしの帰宅時間に姿をみせることは、なくなった。

「由佳の制服代出してくれるっていうの」
妻が唐突にそう切り出したのは、日曜の朝のことだった。
だれが、という主語さえ省略しても、夫婦のあいだでそれがあの男のことだという黙契ができあがっている。
春から中学校に進学する娘の由佳は、友達のところに遊びに行っていた。
都会からいっしょに赴任してきた家の、同学年の少女のところだという。
「どうして?そんな筋合いないじゃないか」
口を尖らせるわたしが妬きもちをやいているのだと察した妻は、わたしをしり目に洗濯物の始末を始めながら、
「制服代助かるわぁ」
とだけ、いった。

真新しいセーラー服を着た由佳は、ハイソックスも新調したらしい。
白の無地の真新しいハイソックスが、発育の良い脛を、眩しくひきたてていた。
「制服のお礼に行ってくるわ。あなたにお願いしてもいいんだけど――」
きみとふたりじゃ、彼が目移りするだろう・・・といいかけたのを呑み込むと、
「いや、ぼくが行くほうがすじかな」
そういって、わたしは読みさしの新聞をおいて、起ちあがる。

娘を連れた父親は、あの夜の夫とおなじく、入った家からすぐに出て行った。
男の家は貧しげで、手入れのされていない庭に面した縁側は朽ちかけていた。
隣家に気取られるのを気にかけながら、
娘がじたばたと抗う物音やら、
「痛い!」「痛っっ!」という叫び声やら、
なん度もされてしまって慣れた身体に戸惑いつつも、べそを掻きながらも相手を始める気配やらに、
昂ぶりを抑えかねながら、聞き入ってしまっていた。

制服は入学前に、二着めが必要になっていた。
その二着めを着た由佳が、ラブホテルに誘い出されたと妻からきいたのは、翌日の夜のことだった。
ここの土地は狂っている。
あきらかにそれとわかる未成年が入って来ても、同伴の男が親子だというと、休憩を受け入れてしまうのだった。
もっとも、実の父娘の場合さえ、時としてはあるのだという――

「スカートの裏側がちょっとごわごわしているけど――中学ではみんなそうなんだって。
 授業中に呼ばれることもあるんだって」
無邪気な声できわどいことを口にする由佳は、自分の言っていることの意味をどれほど、心得ているのだろう?
その由佳が、すでになん着めかになった制服姿で、わたしの傍らに寄り添っている。
ふたりが歩みを進めるのは、男と二度目の体験をしたあのラブホテルだった。

村の男に自分の妻を提供した夫には、仲間に入れてもらえるという特権があった。
行使するしないは、もちろん自由意志なのであるが――
「だれがいい?より取り見取りだぜ?もちろん、あんたの会社の同僚の奥さんでも、たいがい平気だぜ?」
妻の仇敵であるはずのあの男は、すでに仲間の目線になっていた。
その男のまえで、わたしは躊躇なく、自分の娘を指名していた。
白いハイソックスに包まれた発育の良いふくらはぎに、魅せられたように――
「いいと思うわ」
妻が即座に、賛成した。
勉強部屋にこもっていた由佳を呼ぶと、
「あした、お父さんといっしょにあのホテルに行きなさい。小父さんにしてあげてること、お父さんにもしてあげて」
娘はわたしを値踏みするような目つきで窺うと、あっさりといった。
「ウン、いいよ。学校終わったらすぐ帰ってくるから」

「親子です」
あのとき、男が見え透いた嘘をいったときとおなじ文句を、わたしもホテルのフロントに告げていた。
ホテルのボーイはふだん通りの業務口調で、「親子連れさま、ご休憩――」とだけ、同僚に伝達していった。
傍らをふり返ると、感情を消した白い頬があった。
目は真っすぐと、前を見つめている。
これから別人のように乱れた吐息を重ね合うのを、はっきりと自覚しながら・・・


追記
服を破りながら荒々しい性交をするのを好む男が、妻の洋服代を払おうとする。
その彼が娘の制服代を持とうとするとしたら、意図はひとつ・・・
そんな話にするつもりでしたけれど、
描いているうちに、奥さんの存在感がグッと出てきて、
妻を相手に強姦同然のセックスに耽る男を咎めながらも、そんな日常を受け容れる夫の姿を描くのに熱中してしまい、
かんじんの後半が短くなってしまいました。
あと、父と娘とをかけ合わせたのは、描いているうちに生じた出来心が総てです。 (^^ゞ

「怖ろしい吸血鬼に、生き血を吸い取られてしまうんですよ・・・」

2015年12月07日(Mon) 01:27:30

その子さん。いますぐ逃げましょう。
おうちのなかに、吸血鬼がいます。
ぐずぐずしていると、怖ろしい吸血鬼に、生き血を吸い取られてしまうんですよ。
お父様はもう、血を吸われてしまいました。
さあ、急がなければ。

あたくしの勉強部屋にはいってくるなり、お母様は息せき切って、そう仰いました。
けれどももう、遅かったのです。
あたくしは平然と、お答えしました。

アラお母様。吸血鬼さんをお招きしたのは、あたくしですのよ。
あたくしの血を差し上げたのに、足らないらしくって。
お父様とお母様の血が欲しいって。
やっぱり、お父様の血だけでは、足りなかったのね。
そんなに喉が渇いていらしたのなら、お母様の血もあげるべきだわ。

えっ!?その子さん、あなたはなにを仰っているんですか!?

日頃厳しいお母様のうろたえようが面白くって、
あたくしはけらけらと、笑いこけてしまったのでした。
そのあいだに、吸血鬼の小父様は、あたくしの部屋にいらっしゃいました。

その子さん?その子さんっ!?

お母様はますますあわてていらして、小父様とあたくしのことを、等分にみくらべていらっしゃると、
吸血鬼の小父様が背後からお母様に近寄って、両肩をつかまえてしまったのでした。
お気に入りのよそ行きのワンピースに、みるみるしわが走ります。
小父様のほうへと向きなおろうとしたお母様の二の腕を、こんどはあたくしが抑えました。

アッ!その子さん、なにをなさるんですっ!?

お母様の問いにお答えしている余裕は、もうありませんでした。
あたくしがお母様のことを抱きすくめると、小父様はお母様の頭をつかんでおとがいを仰のけると、栗色に染めたショートカットの髪を掻きのけて、あらわになった首すじに、がぶり!と咬みついたのです。

くちゃっ、くちゃっ、じゅるう・・・っ。

汚らしい音を立てて、小父様はお母様の生き血を、啜り取っていきました。
あたくしの血を吸い取った時と同じ、あの忌まわしい音を立てながら。
つま先立ちしたくなるような慄(ふる)えが、あたくしの身体に走ります。
小父様がひと口、お母様の生き血を飲み味わうたびに、あたくしまでもが渇きをうるおされるような・・・そんな錯覚がしたのです。

あっ・・・あっ・・・あっ・・・

あたくしの腕の中、お母様の抵抗がじょじょに弱まっていくのを感じました。

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やった!やったわ!
あたくしは心の中で、快哉を叫びました。
だって、なにかをなし遂げたときには、どうしたって、嬉しくなってしまうものではありませんか。
やがてお母様は、ご自分の身体を支えることができなくなって、
肌色のストッキングを穿いたひざを、じゅうたんの上に突いてしまいました。
そのままぐったりとうつ伏せになるお母様の足許に、小父様はなおもいやらしい舌を這わせていきます。
そう、学校帰りのセーラー服姿を初めて襲われたとき、貧血を起こして倒れたあたくしの足許に這い寄って、白のハイソックスをよだれで汚していったときのように。
お母様の穿いていらした肌色のストッキングは、小父様の舌や唇にいたぶられて、しわくちゃになりながら、咬み破られていったのでした。

うふふ。

あたしは満足そうな含み笑いを泛べて、小父様に言いました。

これで、お母様も大人しくなってしまわれたわ。
さあ、あたくしの残りの血も、吸ってちょうだい。

小父様は、お母様の身体から吸い取った血をしたたらせたままの唇をにんまりとさせながら、仰いました。

そうだな、もう少しだけ、いただくとするか。

あたくしは、まだ咬まれていないほうのハイソックスを、ひざ小僧までぴっちりと引き上げると、小父様の前へと差し伸べていきます。

くちゅっ。

よだれのはぜる音に、あたくしは顔をしかめて、「下品だわ」と思わず口走ると、
小父様はちょっとだけ顔をあげて、「嬉しいくせに」と仰います。
そうです――今ではもうすっかり、小父様の虜。
あたくしの血で喉を鳴らす小父様のことを、うっとりとしながら見おろしているばかりだったのでした。

意識が去りかけたあたくしの傍らで、小父様はもういちど、お母様の上へとのしかかってゆかれます。
お母様がなにをされているのか――生娘のあたくしにも、それは容易に察しがついたのでした。

夕べお母様になさったこと、あたくしにはしてくださらないの?

あくる朝、登校途中を待ち伏せしていた小父様に、あたくしはお尋ねしたのですが。

わしがなにを好んでおるのか、ようわかっておるくせに。

とだけ、仰いました。
そう、小父様がもっとも好まれるのは、処女の生き血だったのです。
あたくしはくすぐったくなって、思わずくすりと笑いました。

じゃあ、あたくしの代わりに処女の生き血をもらえる女の子ができたら、犯していただけるのね?
あたくしのお友達のなかで、なるべくかわいい子を、こんどご紹介するわ。

あたくしの問いに、小父様は笑うだけでした。

もしもし?かな子さん?あしたはお時間あるかしら?
うちに遊びにいらしてくださらない?
お見せしたいものがあるの。エエ、貴女だけに・・・

そんなお誘いのお電話を、同級生のかな子さんにしたのは、
その日の夕刻のことでした。
さいしょにお電話口に立たれたかな子さんのお母様、よもや娘を襲う悲運を、お察しになれるはずもございますまい。
そしてご自身の操さえ、やがて汚されていってしまわれるのも――
娘の学友が、そんな悪魔の囁きを口にするなど、よもや思い到りもなさらずに、
電話口の向こうから、行ってらっしゃいよ、というお声がするのを、
あたくしはにんまりと笑い、白い歯をみせながら、聞き入っていたのでした。


追記
ことさら、昭和のお嬢様テイストに仕上げてみました。^^

真夜中の庭先で。

2015年12月04日(Fri) 08:03:20

薄闇に包まれた縁側に、白い素足が映えた。
ピンクのネグリジェを着た少女は、庭先のかすかなもの音に耳を澄ませ、
豊かでつややかな黒髪を揺らして、音のしたほうを振り返る。
さっきまでだれもいなかったはずの庭に、人影がひっそりと佇んでいた。

「あ・・・来てくれたのね?」
少女はひっそりとそう呟くと、素足のまま庭先に降りた。
冷気を含んだ地面が足の裏に染みたが、少女はかまわず歩みを進め、人影との隔たりを詰めていった。
「すまないね」
影の主はそういうと、目を瞑って寄り添う少女の耳朶に、唇を近寄せてゆく。
ひそひそと囁かれる声色に、少女はくすぐったそうに応えると。
「どうぞ」
と、ひと言だけ呟いて、肩までかかる髪の毛をサッと掻きのけた。
男の赤黒い唇が、少女の白いうなじに、ヒルのように這った。

ちゅうっ。
薄闇のなか、生々しく洩れるのは、おぞましい吸血の音――
少女は自分がなにをされているのかをはっきりと自覚しながらも、影に託した身体を離そうとはしない。

ちゅーっ。ちゅーっ。
心地よげな吸血の音が、どこまでもつづいた。
ひとしきり少女の血を吸うと、吸血鬼はか細い身体をいとおしげに抱きしめて、
もと来た縁側へと、少女を促した。
少女は従順にこっくりと頷くと、半開きになった雨戸の向こうへと、足音を消して身をすべり込ませてゆく。
とざされた雨戸のほうへと、男は両手を合わせて伏し拝むしぐさをすると、踵を返して家の敷地を出ようとした。

「あの」
ためらいがちにかけられた声を、予期していたかのように、男は声のほうをふり返る。
声の主は、さっき彼に対して事前行為を施していった少女の母親だった。
昼間のようにブラウスとスカート姿の彼女は、少女とよく似た面差しをしていた。
「うちの子は、あとどれくらい、身体がもつんですか」
女の声が、かすかに震えている。
「安心しなさい。死なすつもりはない。そうするには、あの子の血はとても美味しいからね」
処女の生き血が大好物であることを、少女の母親はよく心得ているらしい。
「あの」
彼女はもういちど、声を励ました。
「もしよろしかったら、私に代わりが務まらないでしょうか?――あの子が不憫で」
「べつだん、気の毒がることはない。あの子はあの子で、愉しんでいる」
男はよどみなくそういったが、ふと女の顔つきに目を留めた。せっぱつまった顔をしていた。
「既婚の女を相手にするとき、わしがなにをするか知っているね?」
「あ・・・はい」
女はうろたえて声を返すと、
「主人は、知らないことにすると申しております」
とだけ、いった。
「心得た」
男はにんまりと笑うと、初めて女のほうへと歩み寄り、
だしぬけに猿臂を伸ばして抱きすくめた。
「あ!」
不用意にあげた声を恥じる女に肉薄すると、もう首すじを咬んでいた。
地味なモスグリーンのカーディガンが、赤黒いシミに濡れた。

狭い縁側のうえ、窮屈そうに腰を振る女を組み敷いて、男は荒い息をたてている。
獣のような無言の呻きは、時折女の切なげな吐息と折り重なって、深い口づけとなっていった。
破けてずり落ちたストッキングが、少女の母親が堕落したことを、如実に物語っている。
「あんた、だんな以外の男は、初めてのようだね」
下品な囁きに、女は無言の頬を染めて、肯定していく。

安心するがいい。
あの子はそれなりに、愉しんでいる。
奥さんもそれなりに、愉しめるようになった。
あんたは見て見ぬふりを続けるがよい。
うわべの安穏を守っておれば、時というものはさりげなく、流れてゆくものなのだから。

庭の茂みから注がれる熱っぽい視線に、男は心のつぶやきを返してゆく。
いちど彼に血を吸われたものだけに伝わる、心のつぶやきで・・・


あとがき
庭先で妻が生き血を吸い取られるシーンを愉しめるようになっているだんな様も、
しっかり血を吸われてしまっているようです。^^

吸血鬼の親心。

2015年12月01日(Tue) 08:04:11

すべての財産を失った桐原は、死を覚悟した。
それは、家族もろともの死であった。
けれどもそのとき、見知らぬ男からの電話が、すべてを変えた。
受話器の向こうから聞こえる、正体不明の声は、とある郊外の村に来るよう、桐原を誘っていた。

桐原は早速、声の主の求めに応じ、息子を伴って村に向かった。
もはやそうするよりほか、道はなかったからである。
どうして息子がいることを知っているのかなどと、考える余裕もなかったのである。
彼とその家族は、予期せぬ歓待を受けた。
相手は、電話の声の主だった。
しわがれた声色通りの年配の男は意外なくらいに物柔らかな紳士だった。
その背後には、ひとりの少年がいた。
引っ込み思案な暗い瞳が、同年代である桐原の息子に注がれた。
この子は病気だから、普通の食事ができないのだと、電話の主の老紳士は説明した。

久しぶりに、腹いっぱいの食事だった。
桐原の息子も嬉しそうに、ステーキをほおばった。
老紳士とその息子らしい少年とは、押し黙って二人の様子をうかがっていた。
息子が嬉しそうにごちそうをほおばっているのは、親として嬉しい限りです。
桐原はそういって、礼を述べた。
老紳士は、まったく同意という顔つきだった。
しかし、その直後だった。
様子が一変したのは。

気がつくと、老紳士は桐原のことを、羽交い絞めに抱きすくめていた。
桐原の首のつけ根には、深々と、老紳士の剥きだした犬歯が、食い込んでいた。
かすれた視界の向こう、息子もまた、自分と同年代の少年に襲われていた。
真っ白な半ズボンの下から覗いた太ももが、みるみる血色を喪ってゆく。
ひざ小僧から力が抜け、息子は硬い床の上に姿勢を崩した。

御覧なされ。
うちの息子・・・あんたのとこの息子の生き血を、それは美味しそうに飲んでいるじゃろう?
息子が嬉しそうにごちそうにありついているのは、親として悦ばしいかぎりなのじゃよ。
老人の囁きに、桐原はなにかに屈したように、頷き返すだけだった。

な?後悔はないじゃろう?
そういう老人のまえ、ふたりの少年は、血を吸うものと吸われるものと、正反対の立場にいながらも、
笑い声を交し合い、首すじを吸い、吸われていった。
血を吸うものばかりではなく、
血を吸われるものさえも、歓びに目覚めていったのだ。
そんな息子を咎める資格など、桐原にはもうなかった。
老人に完全に堕とされた彼もまた、自身の生き血を、惜しげもなく振る舞い始めていたのだから。

ふたりの少年は、じゃれ合い、転げ合って、血を吸い、吸い取られてゆく。
今度は、奥さんの番じゃな。
夜にお連れなされ。息子さんもごいっしょに。
父子ふたりがかりで妻を、母親を吸われる歓びは・・・もう察しが付くじゃろう・・・?
男の言いぐさに、桐原はまたも、頷いてしまっている。
明日をも知れぬ生活だったのが、いまは安住の地を見出した想いだった。

彼女の生き血を、ねだられて。 2

2015年12月01日(Tue) 05:52:51

マサヤくん、待った?
向こうからやってくる制服のブレザー姿は、婚約者のゆう子さん。
ひざ下までぴっちりと引き伸ばした真新しい白のハイソックスが、遠目にも眩しい。
どうしたの?ぼんやりしちゃって・・・あっ、わかった。やらしいなあー。
ひじで脇腹をどん!と小突かれて、僕は辟易しながらも彼女を促した。
うん、行こう行こうっ。
彼女はあくまでも、元気。
ピンと背すじを伸ばしてスタスタと歩き出した歩みの速さに、僕が置いて行かれそうだ。
ふたりが目ざすのは――吸血鬼の家。
そこでは年端もいかない男の子が、喉をからからにして、ゆう子さんのことを待ち構えている。

やあ、いらっしゃい。マサヤくんいつもすまないね。
小父さんは白髪頭の温厚な紳士。
彼も吸血鬼らしいのだけど、息子の獲物は狙わないらしい。
協力的な人に、よけいな負担はかけたくない――そんな新年の持ち主らしい。

じゃ、マサヤくん――ゴメンね。待っててね。
「ゴメン」なんて、言われると。
かえって波立つものが、胸の奥にある。
鎖されたドア一枚を隔てて、僕は隣室に背を向けて、出されたティーカップを独り手に取る。

ぅ・・・
かすかな呻きが、ドア越しに洩れたのは、錯覚だろうか?
覗いてもいいことになっている。鍵穴を通してなら――
まさかそんなことまではするまいと、自分に禁じながら・・・
いつも誘惑に屈してしまっている自分がいた。
鍵穴のむこう。
じゅうたんの上に腹ばいになったゆう子さんは、
濃紺のプリーツスカートのすその乱れを抑えながら――
真っ白なハイソックスを履いたふくらはぎを、自分よりいくつも年下の男の子に、咬まれていた。
ユウくんという名のその子が這わせた唇の下、ちょっとだけずり落ちたハイソックスには、赤黒いシミが広がってゆく。

両脚とも咬まれてしまって。
もうそろそろ、いいかな・・・?
そういって起き上がろうとするゆう子さんのことを、
ユウくんはなおも引き留めて、おねだりをくり返す。
「もう少しだけ、欲しいんだけど。」

もう少しだけ・・・
もう少しだけ・・・
幼いころから仲の良かったユウくんに、僕さえもが直接、彼女の生き血をねだられていた。
だからお姉ちゃんを、うちに連れてきて。
ボク、若い女の子の血を吸いたいんだよ。
彼の切なる願いは、どういうわけか僕の心の奥にしみ込んできて。
僕は彼のいけないお願いを、断りきることができなかった。

鍵穴のむこうのゆう子さんも、いっしょだった。
起き上がろうとしたブレザー姿は、引き留めてくる男の子の手に抑えられて、動きを停めて。
しょうがないなあ・・・って、いいながら。
ブレザーを脱いで、セーターまで脱いで。
ブラウスのボタンを二つ三つ、外してやって。
それから仰向けになって、目を瞑る。
僕の彼女のうえにのしかかっていったユウくんは、ゆう子さんの着けているブラジャーをはぎ取ると、
胸の谷間に勢いよく、唇を埋めていった。
僕さえ目にするチャンスのないはずの、ゆう子さんのブラジャー、胸の谷間。
ピンク色をした乳首はピンとそそり立って、稚ない指先がねぶりまわすまま、もてあそばれてゆく。
しきりに背すじを伸ばす彼女の心の疼きを、ユウくんはどこまで識っているのだろう・・・?
いや、きっとなにもかも、わかってしまっているはずだ。
どきりとするほど濃い黒髪をまさぐる指が。
スカートからはみ出したブラウスの下、すべり込む掌が。
しきりと彼女を、誘惑している。
僕の股間まで、触れていくような、露骨な誘惑を込めながら。
そう。
ユウくんはすでに、彼女のお母さんと僕の母とを、犯していた。

ドキドキしているね?
背後の声にビクリとするいとまも与えずに。
声の主は僕のことを羽交い絞めに抱きすくめると、
短パンのうえから僕の股間をさぐっている。
勃っているじゃないか。
恥ずかしさに声も出ないでいる僕に。
ユウくんのお父さんは囁いた。
恥ずかしいことはない。大切な人が誘惑されているんだ。男の子として、むしろ当然の反応だ。
そういいながら。
短パンのうえからのまさぐりを、止めようとはしなかった。
着衣を通してじんわりと滲んでくる触感に、勃ったものの先端が、止めようもない潤いを洩らしはじめてゆく――

彼女が正気づいたときにはもう、僕はパンツをはき替えて、なにごともなかったような顔をつくろっていた。
だいじょうぶ?貧血?
本気でそう気遣う僕に、彼女は軽くかぶりを振って、「ううん、だいじょうぶ」とだけ、いった。
半裸になるほどはだけられていたブラウスは、お行儀よく襟までボタンをきちんと留めていて。
丹念に梳いたらしい黒髪は、ちょっとの乱れも窺えなかった。
大股を開いているときは、だらしなく脛までずり落ちかけていた真っ白なハイソックスは、
元通り、ひざ小僧のすぐ下にまで、ぴっちりと引き伸ばされていて――
けれどもふくらはぎのいちばん肉づきのよいあたりには、
咬まれた名残の赤黒いシミがベットリと滲んでいた。
まだ乾ききっていない血のりは、真っ白なナイロン生地を赤黒く濡らし、ぬらぬらと生々しく光っている。
そのナマナマしい濡れを、僕はつとめて平静に目にしたけれど。
彼女は自分の足許を見おろしながら、
そんなにじろじろ、視ないでよ。やらしいなあ。
と、いつもの明るさを取り戻して、笑い飛ばした。

夕暮れの街は、買い物をする主婦や勤め帰りの男女がおおぜい、行き交っている。
おなじ制服の男女や、違う学校に通う子たちも、ひっきりなしにすれ違う。
そのだれもが、ゆう子さんの白いハイソックスにべったりとなすりつけられた赤黒いシミに目を留めて、
さりげなく目をそらし、通り過ぎてゆく――
恥ずかしいものを衆目にさらすのが、どうしてこんなにくすぐったいのだろう。

なん才も年下の男の子とたわむれあって、
血を吸い取られて、ハイソックスを汚されて、
ブラジャーまではぎ取られてゆく、婚約者の彼女。
そんなふしだらな光景が、僕の網膜を妖しく彩って。
ノーマルだったはずの日常を、いびつな翳りで支配してゆく――