FC2ブログ

妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

ぼくの純潔。

2016年08月29日(Mon) 07:38:55

セーラー服で女装して、夜の街を歩くぼくのことを。
その吸血鬼は、女の子として扱ってくれた。
だからぼくも魅入られた少女みたいに大人しく、血を吸わせてやった。

首すじを咬んでセーラー服を汚してはいけないと、
吸血鬼はぼくをベンチに腰かけさせて、
短いスカートからはみ出た太ももを咬んできた。
熱く押しつけられた唇の下。
初めて咬み入れられた牙は、ぼくの肌に執着した。

「本物の女の子みたいに柔らかな太ももじゃなくて、ゴメンね」
そういって謝るぼくに。
「こういうかっちりとした太ももも、悪くない」――男はそんなふうに応えながら、
女の子にしては筋肉質な脚に、強引に牙を咬み入れて、
ひと啜り、ふた啜り、ぼくの血を啜って、
ひと言、美味い――と言ってくれた。
ぼくよりもずっと年配の吸血鬼。
いったい、なん人の女の子のことを、咬んできたのだろう?
きみの血は、美味しいよ――彼はなん度も、くり返してくれた。

ハイソックスのふくらはぎも、ねだられた。
夕べやそのまえに襲った女の子たちにも、きっとそうしているんだろう。
ハイソックスをずり降ろそうとすると、履いたまま咬みたいんだとねだられた。
えっ?えっ?
たじろぐぼくに、お構いなく、彼は早くもぼくの足許にかがみ込んで、ハイソックスの脚を舐めはじめた。
しっかりとしたナイロン生地の舌触りを、愉しむようにして。

ハイソックスは好きだから、何足も持っているけどさ。
これ買うの、けっこう勇気要るんだよ。
妹のを買うような顔してさ。手に汗握りながら、はずんだ呼吸を押し隠しながら、買うんだよ。

言葉では、嫌だ嫌だとくり返しながら。
紺ハイソの足許に舌なめずりをくり返す吸血鬼のために、
もっと吸いやすいようにと、脚の角度を変えてやっていた。
ハイソックスを咬み破りたいというおねだりの裏に、
いかがわしいいやらしさと、心地よい屈辱感を自覚したぼくは、
彼の望みのままに、いさぎよく?気前よく?ハイソックスを咬み破らせてしまっていた。


それ以来。
彼とぼくとは、深夜にあの公園で、待ち合わせるようになっていた。
偽もの娘じゃ、がっかりだろう?
そういってからかうぼくに、
そうやって女の子のカッコして、若い血をめぐんでくれるだけで嬉しいのさ――男はそう応えてくれた。

血をご馳走することに慣れてくると、首すじからも吸わせてあげられるようになっていた。
えり首をまったく汚さずに、彼は血を吸うことができたけれど。
ほんとうは・・・セーラー服に血を滴らせながら女の子の血を吸うのが好みらしくって。
思い切って――かなえてあげた。
きれいにクリーニングして返すことを条件に。

しつような吸血を受けたあと、連れ出されたトイレの鏡に映ったぼくは、
まさにレイプされたあとの女学生。
真っ白な夏服のセーラーに、バラ色のほとびがあんなに似合うなんて、思わなかった。

セーラー服を脱ぎ与えると、素肌のままの上半身を、初めて彼に抱かれていた。
擦り合わされた肌は、ぞっとするほど冷たくて。
貧血でくらくらしているはずのぼくは、もっと吸いなよ・・・吸って頂戴・・・って。
彼に、おねだりをくり返していた。
その晩もお約束通り、ハイソックスの脚を咬まれてしまったけれど。
ぼくの履いている紺ハイソに執着してねっちりとかじりつく牙が、いつにも増していやらしかった。


そろそろ秋だね。夏服も終わりだね。
そう呟くぼくの唇に。
さっきまで首すじから血を吸い取っていた唇が、重ねられてきた。
ふとしたもののはずみ・・・?にしては、やけに長くてしつようだった。
丈の短いプリーツスカートを、せり上げられて。
やはり丈足らずの紺ハイソの脚を、めいっぱい突っ張って。
パンツを穿いていない股間に、ぼくは初めてのものを、受け容れていた。
まるで・・・女の子みたいに・・・熱っぽく・・・
それは、二度、三度とくり返されて、
それに、二度、三度と応じてしまっていた。
まるで純潔を捧げる乙女のように。
まるで少女を大人に変える男のように。
ふたりは熱っぽく、まぐわっていった。

不純異性交遊なんて、嘘だね。
純粋にあげたいから、差し出すんだね。
そういうぼくの首すじを、彼はまだ、ねっちりとしつように舐めつづけていて。
それが、ひどく幸せに感じられて。
つい、重大な約束をしてしまっている。
ぼくに彼女ができたらさ、紹介してあげるから。
その子が処女かどうか、確かめて。
もしもその子が処女だったら。
本物の女の子の処女の生き血を、たっぷりと飲ませてあげる。
彼女と小父さんとの相性がよかったら。
結婚する前に、先に姦らせてあげようか。
女の子のあしらい方のお手本を、ぼくも見せてもらいたいから――

ぼくの”純潔”を捧げた夜――
静かな涼しい風が、火照った肌にやさしく通り過ぎていった。

真夜中の公民館

2016年08月29日(Mon) 01:12:12

月に一度のその夜は。
吸血鬼と人間とが共存するこの街では、お決まりの夜。
男たちは妻や娘、姉や妹を家に残して、公民館で宴を張る。
家に残った女たちは、よりどりみどり。吸血鬼の餌食にされる。
もちろん、生命の保証はあっての好意――でも、貞操は無事では済まされない。
血を吸った女の操は犯すのが、彼らにとっては礼儀なのだという。
襲った女が魅力的だったことの証しとして、愛していくのだから。

少年のころ、父に連れられて宴会に行った。
そこでは大人たちがお酒で顔を赤くしていて、ぼくたち子供は隅っこで小さくなっていた。
父はしばらくの間、口数少なくその場にいたが、やがて堪えられなくなったらしい。
留守宅で母と姉とが、ムザムザと吸血鬼の餌食になることが。
「おまえはここにいなさい」そう言い残して、父は家へと取って返した。

よせばいいのに・・・という人と。
そこは気になるだろうさ・・・という人と。
父の背中に投げられた囁きがそう冷たいものではないことに、ぼくは安堵を覚えていた。
黙認の形で公民館まで逃げてくれば、まだしもかっこうはつく。
けれども吸血鬼たちに侵蝕されている真っ最中のわが家に戻れば――そこから先は、どうなるのだろう?

やがてぼくも、ガマンできなくなって、
「ぼくも気になるから」
大人の人に、そう告げてそこを出た。
よしなよ・・・という声と。
まあまあ・・・と、その声の主を引き留める声とを、
さっき父が出ていったときと同じように、背中で聞いた。

家に着くと、そこは真っ暗だった。
電気をつけようか・・・と思ったけれど、なぜかそうしてはいけないような気がして、手を引っ込めた。
洋間の手前で父が倒れていた。
父はかろうじて意識はあったけれど、寝ぼけたような顔をしていて、なんかとりとめもないかんじだった。
母と姉とをかばってさいしょに血を吸われ、理性を引き抜かれたうえで、すべてを見届けてしまったのだと――あとで知った。

奥の部屋には布団が二対敷かれていて、それぞれの布団のうえに、母がいて、姉がいた。
どちらも吸血鬼が一人ずつのしかかって、必死で腕を突っ張る母娘のうえに、黒い影をおおいかぶせていた。
ドキドキしてきたのは、そのときだった。
いつも厳しい母が。
いつもきちんとお行儀のよい姉が。
見慣れたよそ行きの服を着崩れさせて、おっぱいや太ももをちらつかせながら、
眉をひそめているのに、どこかキモチよさそうで、止めてほしくないようすで。
吸血鬼を相手に、ぼくの識らないひと刻をともにしている。
そのことへの嫉妬と悔恨と、正体不明の不思議な昂ぶりとが、
半ズボンのなかに押し込んであるものを、勃ちあがらせていった。

あの。
ぼくはどちらの吸血鬼にともなく、言っていた。
昂ぶりに震える声で――
ぼくの血も、吸ってください・・・

母におおいかぶさっていたほうが、起きあがって、ぼくのほうへと向きなおった。
母は布団のうえにあお向けになって、首から血を流したまま息をぜーぜーさせていた。
「来ちゃダメじゃない」
母親らしく洩らした声が、咎めながらも受け入れてくれていた。

ハイソックス履いているんだね。女の子みたいでいいな。
吸血鬼はそういうと、ぼくを畳のうえに抑えつけて、首すじを咬んだ。
ちゅうっ・・・
ほかのみんなと同じようにされて、ぼくは我を失っていった・・・
男の手は、半脱ぎにされた半ズボンのなかにまで、伸びてきて。
お尻に突き込まれてきたものの正体はぼくにもよくわかったけれど、
しまいまでわからないふりを、し続けていた。

その夜からのことだった。
ぼくが姉の服を借りて女装をして、家にとどまって吸血鬼の相手をするようになったのは。

そのころからのことだった。
家にとどまった夫たちが、知人たちにも家にとどまることをすすめて、
だれもが家に居るようになって、公民館での宴会が途絶えたのは。

悪友の部屋。

2016年08月29日(Mon) 00:09:55

悪友の部屋はいつも、黴(かび)臭いような、精液の匂いに充ちている。
四十過ぎても、まだ独身。そのくせ女にはこと欠かない。
妻子持ちのこちらとしては、うらやましくなるような身分だが。
きょうの悪友は、ただならぬことを口にした

――きょうここに来るの、お宅の奥さんだから。

って。

えっ?えっ?
信じられない。いつからそんなことに??
矢継ぎ早のわたしの問いを、くすぐったそうに受け流しながら。
やつはひと言だけ、応えてくれた。

――でも安心しな。ちゃんと避妊はしてるから。ほら。

たしかに枕元のティッシュの隣に置いてあるのは、数個の避妊具。
一個ではなくて、数個。
あんた、いい奥さんもらったな。
奥さんのときだけは、ほかの女のときよりも多く用意してるんだぜ?
羨ましそうにわたしを見る悪友の視線を、まともに見つめ返すことはできなかった・・・

時ならぬ車のエンジン音に、やつは色めきたつ。
――ほら、ほら。奥方のお出ましだ。さっさと隠れた隠れた。
窓越しに外を見ると、たしかに妻の車。
そして運転席には、ごく見慣れた横顔が、そこにあった。
やつはわたしをせきたてて立たせると、
隣の部屋には覗き穴があって、ここから覗けるようになってるからと、
口早に告げながら、隣室へと促した。

起ちあがりざま、わたしはベッドのうえに手をやって、避妊具一式を取り払う。
――できちゃったらさ、ウチで育てるから。

たいへんなことを口にしてしまったくせに、なぜか声が上ずるのを抑えることができなかった。

相姦企業 ~一社員の手記から~

2016年08月19日(Fri) 08:05:09

会社勤め20年になる社員です。
もちろんおおっぴらにではないのですが、当社ではフリーセックスが奨励されています。
そのせいか、比較的大きな会社であるはずなのに、社の雰囲気はアット・ホームです。
なにしろわたし自身、そのセンでは社長ともつながりがあるくらいですから・・・
社長の愛人を専務が共有していて、
その専務と結婚前まで肉体関係のあった(もしかしたら今でも?)もと秘書嬢の夫がわたしの部署の部長で、
妻はその部長の愛人になっています。
妻とは社内結婚なのですが、そのころから複数の幹部社員と関係を持っていました。
結婚して家庭に入る場合でも、かなりの場合そうした夫以外との関係は持ち越しになるようです。
そのことが、夫の社内での立場をよくする場合が多いので、
夫たちのなかには自分の新妻と上司や同僚との関係を、ほぼ公然と認めている人も多いのです。
さすがにわたし自身、もらったばかりの嫁に対し浮気を奨励するほどの心臓ではなかったのですが・・・
出勤後に妻が着飾っていそいそと家を出、だれかと逢っていることは薄々知っていました。
本人がそういう重たい告白をするまでもなく、
社内ではそういう自慢話が飲み会のねただったりするんですね。(苦笑)
「お前の奥さん、いい身体してるな」
そんなあいさつが、そこかしこで花咲くのです。

社内婚の場合、その部署の所属長や役員は新婦に対する初夜権を持っています。
「初夜権」とは、結婚を控えた女性の処女をGETできる権利のことです。
特定の女子社員の純潔に対してだれが初夜権を持つかは、本人の部署や夫の立場により変わりますが、
夫になる男性が自発的に新婦の処女をだれかに捧げる意思を持っている場合は、決定権を与えられるみたいです。
私の場合、妻は入社とほぼ同時に某役員に処女を捧げてしまったので、そのあたりの事情には詳しくないのですが・・・
新郎に無断で・・・というのはよくある話ですが、わたしの場合などは、別部署で働いていた妻を紹介された時点ですでに、なん人も男がいたくらいですから。

単身赴任をした場合、その妻はパートとして出勤することができます。
当然、恋愛も自由です。
だから、美人の妻を持った社員は、単身率が非常に高いです。
子供のいない家の場合、留守宅がラブホテル同然になるケースも、多々あるようです。
夫の側にも、妻の貞操をすすんで譲り渡す場合にはそれなりの見返りがあって、
多くは赴任先の女子社員と関係を持ちます。
現地採用のパートさんのうち20代から40代くらいの女性は、現地妻要員として採用されています。

取引先にそうした女子社員や社員の妻を貸し出す制度もあるみたいです。
特に経営者の方に多いのですが、社の制服を着用した女性の派遣を好んで依頼してくる場合があります。
先方が、デートの場所を確保できない場合には、社にお招きします。
そうした女子社員や社員の妻が取引先の接待をするための特別室が、オフィスのなかにいくつもあるのです。
わたしの妻も――そうした接待の経験者です。
そういうときの彼女は、わたしの出勤時間に合わせてオフィスの制服を身に着けて、いっしょに家を出ます。
わたしが生活費を稼ぐために働いているあいだ、妻は同じオフィスの別の部屋で、頭のはげた取引先の社長を相手に情事に耽ります。
そういうときにはさすがに、なかなか仕事にならなかったりしますね・・・
なにしろ相手の社長さんは、わたしが窓口だったりするくらい、ごく身近に顔を合わせる間柄ですから。

こうした関係は、お互いを尊重することが鉄則なりますし、それが守れる人の間でのみ成立しています。
社内に存在する、まるで村社会のような人間関係。
けれどもそれに関わる男女はだれもが、節度をわきまえ、相手を思いやる、ちょっと見には模範的な社会人なのです。
模範を演じるには、少なからぬストレスがつきまといます。
そうしたストレス社会を乗り切るために、このような常識を突き抜けたアブノーマルな世界に身を浸すことも、ひとつの解決策なのかもしれません。
昼は良妻賢母、夜は娼婦と化す妻も、わたしと同じ意見です。

父が夫となった話。

2016年08月14日(Sun) 17:02:29

長く単身赴任をしている男がいた。
男は親友に妻子を託していたが、その親友は独身だった。
というのも、親友は男の妻とも幼なじみで、ごく若いころから彼女を見初めていたからである。
親友である男は、貧家の出であった。
だから、女を幸せにすることができないと思い、想いを告げることなく身を引いたのだった。
男は、そうした事情をすべて知りながら遠地に赴任し、親友に妻と娘とを託した。
夫が長く家を留守にしているうちに、親友がその妻と通じるようになったのは、ごく自然ななりゆきだった。

男は妻と親友との関係を知ると、それを快く許した。
そして、そうなるまでのまる一年ものあいだ孤閨を守り夫に操を立てようとした妻をねぎらい、
むしろ二人が逢瀬を遂げられるよう、すすんで仕向けるようにさえなっていた。
親友である男は、幼い娘に対しても、養い親同然に尽くしていたので、母娘どちらからも慕われていた。
ただし、親友の家が貧しいことに変わりはなかったので、彼は自分の粗末な家に分かれて住み、
表だって男の家に居るときにも、使用人のように振る舞い、奥の座敷に入ることはなかった。

やがて、男が任期を終えて、家に帰ってきた。
親友はもとの粗末な貧家に戻ろうとしたが、娘は彼を強く引き留めた。
娘は父親の親友を、実の父のように慕っていたからである。
遠くからやって来たあの人は、自分の父ではない――と、娘は言った。
娘はごく幼いときから父親と別れていたので、父親というものがどのようなものなのか、わからなかったのである。
戻って来た実の父に娘が懐かないことは、二人の男を当惑させた。

親友は男に言った。
父親は敬われるものであり、夫は愛されるものである。
だから、私はあの娘に、あなたをきちんと敬うように仕込もうと思う。
その代わり、すでに愛されてしまっている私はあの娘の夫となって、ずっとあの娘のそばにいようと思う。
男は、妻につづいて娘をも親友に与えることを、躊躇しようとはしなかった。
託したものをすべて返してくれた親友を、心から信頼していたのである。
親友は、男の娘と契りを結び、娘は実の父を敬い、夫を愛するようになった。

男は自分の留守中に親友が男の家を訪れて、ときどき妻を抱くことに気づいていたが、
あえて咎めようとはしなかった。
最愛の二人の女性を二人ながら親友に与えることを、むしろ歓びとしたのである。
親友の妻となった娘もまた、夫が母のもとに通うのを知っていたが、
あえて咎めようとはしなかった。
もともと幼い頃から、彼が母とむつまじく共寝するのを知っていたからである。

四人の振る舞いを不貞であるとか、不道徳であるとか批評することはたやすいが、
彼らは皆、自分の務めを良く果たしただけである。
夫は遠地で務めを果たすことで妻と娘を養い、
親友は彼の最愛の妻と娘を護り、そして愛し、
妻は身近にあって自分と娘に尽くす男に、最も大切にすべきものを与えてこれを慰め、
娘は大人たちの訓えをよく守り、父を敬い夫を愛したのだから。

もしも最も称賛されるべきものをひとり挙げるとするのなら、それは遠地に赴いた夫ということになるだろう。
不自然に離れ離れになってしまった家族が、本当にばらばらになってしまわないために、
彼は賢明にも妻の不貞を許し、妻を慕う親友を留守宅に迎え入れて、
愛する者たちが好んで行うところを、快く許し受け容れたのだから。


あとがき
大昔の説話みたいなものが思い浮かんだので、フッと思い立って描いてみました。
どこか・・・おかしいでしょうか・・・? (^^ゞ

なだれ込む「彼ら」。

2016年08月09日(Tue) 00:58:45

家の外には、多数の吸血鬼たちがうごめき、われわれの様子を窺っている。
それをだれもが警戒していたのだけれど――
さいしょに狙われたのは、妹だった。
縁側に出ていた妹は、わずかのスキを突かれて彼らの餌食になった。
廊下でのたうちながら血を吸われて、気づいて駆けつけたときにはもう、彼らは去ったあとだった。

ピンクの浴衣に着かえた妹は、その夜ひっそりと家を出た。
「あなた、未華子さんが家にいないわ」
妹の姿が見えないことに妻があわてて、わたしのところに駆けつけた。
わたしはすぐに、妹のあとを追った。

ピンクの浴衣の後ろ姿が見えたとき。
妹の周囲には何匹もの吸血鬼が、すでに徘徊を始めていた。
「妹を返してほしい」
わたしは言った。
「もちろんそうするつもりだ。だが条件がある。家に入れてくれ」
「それは困る。妻や母まで襲うつもりなのか」
「もちろんだ。妹さんの相手はこの男が、あんたの相手はわしがする。お母さんの血を吸うのはこの男だ
 そうだ、奥さんの血もわしがいただく」
「そんなことまで決めているのか」
「我々は仲が好い。獲物は分かち合うことにしている。だが、さいしょに咬む相手だけは決め合っているのだ」
「そんな勝手なことは許さない」
「だが・・・見てくれ。妹さんはもう、我々と仲良くなりはじめているぞ」
男に促されて傍らを見ると、妹は吸血鬼どもに取り込まれて、ひたすらうっとりとなっている。
ひとりは妹の首すじを、ひとりはピンクの浴衣の襟足から胸もとを、
もうひとりは手の甲から、ほかのひとりは足許を・・・
一瞬みせたスキを突かれて、わたしも首すじに疼痛を覚えていた――

「なかに入れてあげようよ」
玄関までたどり着いたとき、妹は蒼い顔をあげて、わたしにそう訴えた。
「そんな・・・」
「いいの」
妹は問答無用とばかりに、玄関をからりと開ける。
妹を抱きかかえるようにして玄関に入ったわたしは、彼らの侵入を妨げようとしたが、
彼らはいっせいに、家のなかへとなだれ込んできた。

ああッ・・・!
仏間から聞こえるのは、母の悲鳴。
予告したあの男が、いまごろ母を咬んでいるのか。
妹もまた、浴衣の袖を振り振り、数匹で群がる男どもの餌食に、若い血を散らしてゆく。

妻の手を引いて夫婦の寝室に逃れたけれど、そこがわたしたちにとっての修羅場になった。
「あなた、あなた、なんなの?この人たち」
わたしは手を振って彼らを阻止しようとしたが、多勢に無勢だった。
さっきわたしの血を吸った男が、妻に迫って首すじに牙を突き立てる。
ほかのやつらは左右からわたしに迫り、腕といわず脚といわず、食いついて来る。
あ――ッ!
ひときわ強い悲鳴が、わたしの鼓膜をつんざいた。妻の声だった。

わたし自身も、むざんな吸血に身をさらしながら。
その場にうずくまった妻が頭を抱えて、ムザムザと生き血を吸い取られてゆくのを、見せつけられていった――

夜は深い。
その晩ひと晩じゅう、わたしたち家族全員は、芋虫のように身を転がしながら、彼らの欲望に身をさらし、
死なされはしなかったものの、ひたすら全身の血を舐め尽されていったのだった――


あとがき
縁側に出ていた妹が、まっさきに血を吸われた。
一人でお祭りに出かけた妹を追いかけて家に出ると、わたしまで食われてしまった。
そいつらはしつこくわたしたちにつきまとい、家の中にまで入ってきた。
母も妻も、食われてしまった。
じわじわと痛痒い食われた痕をひっ掻きながら、妻はこぼす。
――この夏はほんとうに、蚊が多いわねぇ。

おあとがよろしいようで。^^

あなたも来ない?

2016年08月08日(Mon) 04:43:41

あなたも来ない?血を吸われるのって、楽しいのよ。
ランチの後そんなふうに気軽に声をかけられて。
どうせいつかは吸われるのだから・・・と、ついていってしまったあの日。

そこには男たちがおおぜい待ち構えていて。
よく見ると、自分を入れた女性の数と、同じ頭数だった。
助かるわ。来てくれて。ひとりあぶれちゃうところだったのよ。
私は数合わせで連れてこられたのか?
そんなことを抗議するゆとりは、すでになかった。
女たちはだれもが、血に飢えた吸血鬼たちに自分から組み敷かれていって。
あれよあれよ・・・という間に、自分も畳のうえに抑えつけられていた。
首すじに走る初めての疼痛は、チクリと胸まで届く鋭い痛み。
それは甘美な痛痒さに変わっていって、いつか夢中になって、血潮を舐め尽されていた。

その場で犯されてしまうのは、この街の主婦のあいだでは常識――
その場に居合わせた女たちは皆、夫の同僚の妻たちだった。
お互いさまね。きょうのことはご主人たちには、内緒、ナイショ・・・
さいしょに声をかけてくれた、夫の上司の奥さんは。
まるで呪文みたいに、そんなことを囁きかけてきて。
ほかのひとたちも皆、その奥さんに同調するように。
申し合せたように、頷きあっているのだった。

それからは、娼婦のような日常――
夫を会社に送り出すと、
だれかれと言いだすまでもなく、いつものランチのお店に集まり合っていて。
だれかれと言いだすまでもなく、あの場所に脚を向けていた。

だれもが申し合せたように、小ぎれいな格好をしていて。
だれもが申し合せたように、真新しいストッキングを脚に通していた。
鼻息荒く迫ってくる男たちに、身に着けたよそ行きのブラウスやワンピースをはぎ取られて。
ストッキングを穿いたまま、ふくらはぎや太ももや、もっと上までも――熱い唇を吸いつけられていった。

それが慈善事業でもあるかのように、
だれもが唯々諾々と、むしろすすんで男どもの相手をしてやっていて。
めくるめく輪姦の場に、身をゆだねていった。
まるで不倫ドラマのヒロインになったように、夢見心地になりながら。

夫がそれを知るのは、時間の問題。
けれども、吸血鬼と人とが共存して暮らすこの街では、それはたいした問題ではない。
慣れていないのは、都会育ちの私たちだけ。
夫は戸惑いながらも状況を受け容れてゆき、黙認することを約束してくれる。
それを良いことに私たちは、夫の勤務中に逢引きを遂げる。
娼婦よろしく、小ぎれいな服を身に着けて。

夫たちが顔つき合わせて
打ち合わせをしたり、
書類を作ったり、
取引先に会ったりしている時に。
私たちは夫たちと同じ顔触れで、
ブラウスをはだけられたり、
スカートをたくし上げられたり、
ストッキングを破かれたりするのだった。

あなたも来ない?血を吸われるのって、とっても楽しいのよ。
吸われ過ぎて具合を悪くしたご夫婦の代わり、新たに赴任してきた人の奥さんを。
きょうは私がそういって、楽しいサークルに引きずり込んでゆく。

一体感。

2016年08月04日(Thu) 06:41:11

ごくっ・・・ごくっ・・・ごくっ・・・ごくっ・・・
いつもながら彼は、豪快な音をたてて。
わたしの生き血を、飲み耽ってゆく。

首すじに牙を突き立てて。
両肩を、ギュッと抱きすくめられて。
身じろぎひとつできないほどに、がんじがらめにされながら。
わたしは体内をめぐる血液を、グイグイと力強く、抜き取られてゆく。
彼は支配欲もあらわに、わたしをがんじがらめにし、
わたしは彼の支配欲をそのまま受け入れて、わが身を心地よくゆだねていく。

気が向けば。
半ズボンからむき出しになった太ももにも。
ガブリ!と派手に、喰いついて来る。
いっそ小気味がよいくらいの咬みっぷり。飲みっぷり。
そんなふうに彼のわたしに対する仕打ちを、肯定的に感じるようになったのは。
たぶんわたしのなかに・・・人知れず嗜血癖が芽生えてきてしまったためだろう。


実際に、人の生き血を吸ったことは、ほとんどない。
首すじについた、吸い残された血を指先で拭って、
自分で自分の血を、チュッと唇に含んだくらいはあるけれど。

でも――なんとなく彼の気持ちが、わかるような気がする。
ねっとりと充実した、暖かいバラ色の液体を。
頬に撥ねかし口に含み、喉に流し込み、胃の腑にわだかまらせる歓びを。

人の生き血は、吸わないけれど。
彼にもっと血を吸わせてやりたい・・・そんな気持ちはとても強い。
だから、多少の貧血をいとわずに、彼に逢いに出かけてしまう。
家族に隠れてさえも。
けれどもそのうちに、そんなことをする必要はなくなってきた。
若い女の血を吸いたい。
そんな彼の願いをかなえるために、わたしは妹を逢わせてしまった。


ごくっ・・・ごくっ・・・ごくっ・・・ごくっ・・・
白目をむいて気絶した妹の、足許にとりついて。
着ている制服を汚すまいと、彼はもっぱら妹の脚に唇を吸いつける。
履いているなハイソックスを脱がそうともせずに、ふくらはぎに咬みついて。
真っ白なハイソックスが真っ赤になるほど、彼が飲み耽るのを見届けたとき――
あの充足感は、なんなんだろう?
まるで自分自身が吸血鬼で、やっと活きの良い血にありつけたような、
そんな充足感が、身体のすみずみにまで行きわたる。

気がついたときには、気絶からわれに返った妹を助け起こして、
これからこの人に毎晩血を吸ってもらうんだよ・・・って、納得させていた。

わたしの血と、妹の血と。
それだけでも足りなさそうな彼をまえに。
妹は囁いたのだった。
――母さんの血も、吸わせてあげようよ。


ごくっ・・・ごくっ・・・ごくっ・・・ごくっ・・・
白目をむいて放心した母のうえにのしかかって。
彼女のご自慢のワンピースに、持ち主の血をふんだんに撥ねかしながら。
咬みついた首すじのうえ、彼はいつも以上にせわしなく唇をうごめかせてゆく。
母の生き血を吸いあげる勢いの良さが、どうしてかむしょうに、小気味よく耳をくすぐる。
――よかった。母さんの血も、気に入ったみたいだね。
飼いはじめたペットが餌を勢いよく食べるのを見てほっとしたときの妹を思い出す。
いまも同じ顔つきで、目を細めて満足そうに。
自分の血を美味しいと言ってくれた男が母を生き餌(え)にする有様を、見守っている。
控えめだった妹の、べつの顔を見たような気持になったけれど。
いっぽうで。
共犯者の連帯感を、安堵とともに噛みしめていた。
母が咬まれて、生き血を吸い取られていくという、シリアスな状況のはずなのに。
そう。
まさに共犯者だった。
抵抗する母の手足の動きが、じょじょに緩慢になってゆくのを、
妹とふたり、肩を並べて見入っていて。
妹なんかは小声で、がんばれ、がんばるんだ吸血鬼さん・・・って、
自分の母親を組み敷いて血を吸う男の肩をもっていたくらいだから。

気がついたときには、気絶からわれに返った母は妹を助け起こされていて、

母さんも捨てたもんじゃないんだね。
これからはこの人に毎晩血を吸ってもらうようがんばらなくちゃね

・・・と、気丈な納得ぶりを、まだ立ち去らないでいる情夫の耳に届けるように、そういった。
自慢のワンピース、着れなくなっちゃったから。記念にあなたにあげるわね。
血の撥ねたワンピースを、初めて襲われた相手に渡す行為は。
相手のすべてを受け容れることを意味していた。
ワンピースの肩先に撥ねたのは、母の血潮だったけれど。
すそをどっぷりと濡らす、生温かい半透明の粘液には、
母も息子も娘も、気づかないふりをしつづけていた。

母のワンピースをもらえる彼が羨ましいと、半分は嫉妬を覚えたけれど。
母のワンピースをあげたいと、もう半分は私自身も熱烈に思っていて、
まるで私じしんが受け取ったかのようなうれしさを覚えてしまったのは。
私が彼になり、私が母になり切っていたからなのかもしれない。
そういえば妹のときも。
私じしんが妹の制服を着て襲われているような――奇妙な一体感が、そこにはあった。


わたしの血と、妹の血と。母の血と。
それだけでも足りなさそうな彼をまえに。
妹は囁いたのだった。
――真由子さん、襲わせてあげようよ。まだ処女なんでしょ?

婚約者の真由子は、会社勤めのOLで。
ふっくらとした豊かな肢体の持ち主だった。
もちろん、彼の相手として、なん度夢想したかわからない。
だって、彼女の豊かな肢体をめぐる血潮が、彼の気に入らないはずはないのだから。
妹のそそのかしに、われを忘れたわたしは、翌日真由子を、いつもの公園に呼び出していた。

目と目を見つめ合った瞬間から。
真由子は相手の正体を察したらしい。
ちょっと顔を蒼ざめさせて。
わたしの首すじにつけられた咬み痕に、目を見張って。
ものも言わずに、駆け出した。
はじめから勝ち負けの決まっている鬼ごっこを、
わたしはどちらにも手を貸さず、佇んだまま見守っていた。

彼は獲物がわたしの婚約者だと知りながら、
獣が獲物を掴まえるような荒々しさで、
後ろから追いついた真由子の肩を引き寄せたのも。
勤め帰りのスーツ姿を引きずり倒して、泥まみれにさせたのも、
わざと粗っぽく、牙を叩きつけるようにして、彼女の首すじをガブリとやって、
真っ白なブラウスにバラ色のしずくをふりかけたのも。
脚をじたばたさせて彼女が抗い、その抵抗を力ずくで抑えつけていったのも。
チュウチュウとあからさまな音を立てて真由子の血が吸われ、
音が深まるにつれ、脚のじたばたが弱まっていったのも。
妹のハイソックスをみるかげもなく咬み破ったように、
真由子の履いているテカテカとした肌色のストッキングも、
むぞうさにブチブチと、咬み剥がれてしまうのも。
わたしはまるで自分がしているかの錯覚をおぼえながら、
ゾクゾクとした昂ぶりもあらわに、
妹や母をも汚した男が、わたしの婚約者を征服していくいちぶしじゅうを、見守っていた。

ごくっ・・・ごくっ・・・ごくっ・・・ごくっ・・・
真由子の血を、彼が旨そうに飲んでくれているのを。
ああよかったと感じているわたしがいた。
彼が活きの良い血液にありつけたことを、ああよかったとだけ感じていた。
まるで自分自身が、血で満たされた吸血鬼のように。
彼が彼の胃の腑を、わたしの未来の花嫁の血で満たしてゆくのを、
ひどくうれしく感じていた。

彼女が生命を落とすことはない。
だって、彼は若い女の生き血を継続的に欲していたから。
くり返し突き入れられた牙は、彼女の理性を見る見るうちに麻痺させていって。
彼女はぼーっとなって、
奪われるまま、生き血を飲み耽られていった。
自分の身体をめぐる血液が、相手の男の渇きを満たしていくのを、
ただただぼう然として、寄り添いつづけていた。

白目をむいて仰向けにぶっ倒れ、満天の空をうつろな目で仰ぐ真由子を。
わたしはあろうことか、彼が真由子の血を吸いやすいようにと手助けをしてやっていて。
勤め帰りのジャケットのうえから、彼女の両肩を抑えつづけていた。
ブラウスをはぎ取られ、ブラジャーをむしり取られて、
乳首を含まれ、ぞんぶんに舐められて。
でも、彼女の裸体をまだ目にしたことのないわたしは。
まるで、自分自身が彼女を犯そうとしている気分になって、
彼の所業を妨げもせず、視つづけていた。
彼と手を組んで、ふたりがかりで彼女をねじ伏せようとしていた。

ストッキングを片方だけ脱がされて。
彼女はふたたび、足摺りをくり返していた。
初めて受け容れる男の肉に、恐怖と期待とを滲ませながら。
受け容れなければならない男の肉が、婚約者のそれではなくて、
そうしたことを、婚約者自身が望んでいて、
自分自身さえもが、血を吸われてしまった以上は・・・と、
あきらめと観念と無念さと、ひそかに感じはじめた好奇心を秘めながら。
彼女はゆっくりと、自分から脚を開いてゆく――

突き入れられたものが引き抜かれる瞬間、彼女はすすり泣き交じりの吐息を洩らし、
それから言った。
ケンくん、ゴメン・・・っ。
きっと感じてしまったのだろう。
彼はそんな真由子になおものしかかって、
草の褥のうえで、なん度もなん度も彼女を犯し、辱め抜いてゆく。

婚約者の純潔が散った夜。
わたしも、わたし自身の「初夜」を過ごした。
彼女のうえにおおいかぶさる吸血鬼は、もうひとりのわたし。
わたしは今、自分の血を共有する男といっしょになって彼女を犯し、血を抜き取ってゆく。
妹や母さえも、そうしたように・・・


あとがき
昨日から構想し、やっと書き上げました。
頭のなかでわだかまっていた二作があっぷできて、すこし安堵。

ご夫君の勤務中に犯された奥方は、意外に冷静である。

2016年08月04日(Thu) 05:54:49

下校してきた娘たちのハイソックスは真っ白なままで、
いつもみたいに血のりを赤黒く撥ねかしたりはしていなかった。
あのひと律儀なんだなあと、幸恵は思う。
明日はふたりともテストだから襲わないでねってお願いをしたら。
娘たちのことを見逃してくれたようだった。
さすがに母親の私は、その埋め合わせとばかりに、
朝っぱらから襲われて、たっぷりと血を吸われてしまったけれど。

夫の生き血も、気に入ったらしい。
まだ吸い足りないから居場所を教えろというので、勤務先を教えてやった。
夫も仕事中に、娘たちの埋め合わせを果たしてやったに違いない。

初めて襲われたときにはびっくりしたけれど、すぐに慣れた。
夫婦ながら、襲われて。
先に咬まれた夫の目のまえで、それは美味しそうに吸血されて、
鼻息荒く押し倒されたにはもう、すっかりその気になっていた。
どさくさまぎれ?ことのついで?
そんなふうには思ったけれど。
パンストをむしり取られてあらわにされた股間に、
猛り狂った肉棒というもうひとつの太い牙を突き入れられた瞬間、
夫の目のまえだというのに、恥も外聞もなく、おおっぴらに叫んでしまっていた。
ずずんと肉薄された衝撃は、最後に残った理性のひとかけらまで吹き飛ばして、
つづきをおねだりされた幸恵は、自分から促すようにして、
夫の目の届かない隣室へと、引きずり込まれていったのだった。

それからは。
父親よりもはるかに年配の老爺を相手に、春をひさぐ日常――
熟れた人妻の肉体に、老爺は鼻息荒くむしゃぶりついてきた。
かりにその場に夫が居合わせても見境なく、
むしろ見せつけるのを愉しむかのように鼻息荒く、おおいかぶさってきて。
スカートを荒々しくたくし上げ、パンストをむぞうさにむしり取って、
はしたないほど熱した肉棒を、股間に割り込ませて来るのだった。
そんなとき、プライドの高かったはずの夫は、ただおとなしく、
気まずそうに目を背けたり、気を利かせたように座をはずしたり・・・
さいしょはふがいないひとと思っていたけれど。
その場から立ち去ったように見せかけて、
物陰からじっとりと幸恵の痴態を覗く視線にきづくころにはもう、
――夫も夫なりに、愉しんでいるのだ。
そう理解して。
いまでは真昼間から、ご近所にまる聞こえになるくらいおおっぴらに、
・・・よがり狂ってしまっていた。

娘たちの血を吸いたがるので、ふたりの登下校の刻限や道順を教えてやったり、
あの子たちも吸われはじめたのよって、夫の機嫌の良いときを見計らって伝えたり、
いろいろ便宜をはかってきた。
魚心あれば水心なのか。
ほんとうに体調が良くない時とか。
大事な行事を控えているときとか。
血を吸われながら家族のそんな情報を伝えてやると、
律儀に襲うのを控えてくれるようになっていた。

家族みたいなもんじゃからのぉ
老爺はそんなふうに幸恵の耳もとで囁いたが、
案外本気でそう感じてくれているのかもしれない。
たしかに、「家族みたいなもん」には、ちがいはないのだ。
なにしろ、老爺も体内に、自分や娘と同じ血を宿しているうえに、
幸恵自身は、夫にしか許していないできたことさえ、許してしまっているのだから・・・

初めて血を吸われたときには、あまりにも多量の血を漁られて、
目をまわしてその場で昏倒してしまったけれど。
血に飢えた相手のまえで気絶してしまうというのは、
自分の血を残らず飲まれてしまってもよいという意思表示ととられかねない
・・・と、老爺から教わったとき。
相手は命の恩人かもしれないと思ってしまった。
セックス経験のある女性は、その場で凌辱を免れないときいていたし、
老爺が案の定、ブラウスのえり首から手を突っ込んで、胸をまさぐりはじめたときも、
案外と惜しげもなく、夫しか識らない身体を開いてしまっていた。
さいごのほうでは――不覚にも、息をはずませて応えてしまっていたっけな。
たまの浮気もいいなぁ・・・と。
血に濡れたブラウスをまといながらぼう然と、そんなことまで思っていたっけ。

今朝もまた・・・襲われてしまったけれど。
思うさま血を漁り取られたり。
お洋服に派手に血を撥ねかされ、しまいにはぎ取られてしまったり。
ストッキングをブチブチ破かれながら辱めを受けたり。
そんなことがむしょうに――小気味よくさえ思えるようになっていた。


夫が戻ってきた。私は出かけてゆく。
そう、あの薄汚い老爺に抱かれるために、小ぎれいに装って。

お呼ばれしちゃった。献血してくるから、ひと晩帰れないわ。
あの子たち。明日はテストだから、かまわないであげてね。
え?あなたも吸われちゃったの?どうりで蒼い顔なさっているわね。
私も朝いちど吸われちゃったけど。
知ってる?あのひとの精液を飲ませてもらうと、恢復早いのよ。
こんどあなたも、試させてもらうといいわ。

精液――その言葉を耳にすると、夫は獣になっていた。
荒々しく自分の妻を押し倒し、ワンピースを引き裂き、ブラジャーをむしり取ると、
乳首を我が物顔に口に含んで、チュウチュウとやり始めた――まるで吸血鬼みたいに。
あなた、二階には娘たちがいるのよ。
そういって、たしなめようとしたけれど。
階段の上の人の気配は、いちどは踊り場ごしに玄関へと目線を注いできて、
すぐに二人顔を見合わせて、引っ込んでいく。
まったくっ、もうっ。
じれったそうに足摺りをしたふくらはぎからは。
破れ落ちたストッキングがじりじりと弛みを深めてゆく。

わかりやすいひと。
嫉妬に引火した性欲もあらわに迫ってくる夫の吐息が、
まるで新婚のころのように、熱っぽい。
――だんなさんとも仲良うまぐわうのじゃぞ。
老爺はニタニタと笑いながら、そういっていた。
ごめんなさいね。お約束の時間に間に合わないわ。
そうだ。その代わり今夜は夫に車を出してもらって、送り迎えをしてもらおう。
浮気妻を、浮気相手のところに送り届けて。
息をひそめて、お家で大人しく待機してもらって。
そのうえ、半裸に剥かれた着衣の乱れを、ご近所さまの目にさらさぬように。
また車で、迎えに来てもらおう。
迎えに来た夫には、ちょっとだけ待ちぼうけをしてもらって。
そのあいだ、夫の待たされている部屋に聞こえるように、
おおっぴらに声、あげちゃおう。


あとがき
前作を描いてすぐに構想が始まったのですが、どういうわけか完成はいまごろに。
頭のなかでわだかまっているお話がうまくモノにならないと、どうにもスッキリしないものです。